衆議院

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第36号 平成22年6月14日(月曜日)

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平成二十二年六月十四日(月曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十四号

  平成二十二年六月十四日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 議員辞職の件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 議員辞職の件

議長(横路孝弘君) 去る十一日、議員河上みつえさんから、このたび、一身上の理由により議員を辞職いたしたく、右お願い申し上げたい旨の辞表が提出されております。

    ―――――――――――――

    辞職願

  私はこのたび、一身上の理由により議員を辞職致したく、右お願い申し上げます。

   平成二十二年六月十一日

                河上みつえ

  衆議院議長 横路 孝弘殿

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) これにつきお諮りいたしたいと思います。

 河上みつえさんの辞職を許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、辞職を許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑

議長(横路孝弘君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。谷垣禎一君。

    〔谷垣禎一君登壇〕

谷垣禎一君 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、菅総理の所信表明演説について質問いたします。(拍手)

 先ほど、驚くべき情報が入ってまいりました。

 民主党は、会期を一日延長し、わずかながらとはいえ予算委員会を開催することをみずから提案しておきながら、これを撤回し、予定どおりの会期で国会を閉じたいとのことであります。

 政権がかわって新しい内閣が成立したものの、予算委員会も開催せずに国政選挙に入ったことはいまだかつてありません。国会において十分な議論を行い、説明責任を果たすためには、予算委員会の開催が必須であります。

 前政権が行き詰まった要因を隠ぺいし、国政を左右する重要課題にふたをし、国民の目から選挙戦での選択肢を覆い隠したまま参議院選挙に臨む、これこそ、まさに民主党の党利党略のみの姿勢を如実に表現しております。このような逃げの手法は菅総理みずからの意思なのか、政権発足当初から逃げの姿勢に終始するのか、総理の考えを伺います。

 このたびの総理の交代による政治的空白の間も、口蹄疫の感染は拡大しました。手塩にかけた家畜を処分しなければならない悲しみと今後の生活への不安にさいなまれておられる宮崎県の畜産農家を初め関係者の方々に、心よりお見舞いを申し上げます。

 我が国の畜産の心臓部に感染が飛び火しており、この問題は新たな局面に入っております。これまでの防疫体制を抜本的に強化し、危機管理の観点からも、人の移動制限等のあらゆる事態を想定しなければなりません。地域の皆様の経営支援や生活再建のためにも、国として全力を挙げて対策を講じることを強く求めますが、国会としても、万全な対応をとるべく、会期延長等によって備えることが必要と考えます。菅総理のお考えはいかがでしょうか。

 さて、私は、まず、菅総理が、鳩山内閣の副総理として、前内閣がもたらした国政の停滞と混乱について、鳩山前総理とともに重い連帯責任を負っているのではないかという観点から質問をさせていただきます。

 鳩山前政権は、たび重なる食言、約束違反により、昨年の総選挙で新しい政治に期待し政権を託した国民を裏切り、国民の深い失望と人心の離反を招きました。その第一が普天間基地移設問題であったことは言うまでもありません。ところが、総理に次ぐ副総理の立場でありながら、菅総理がこの問題に具体的にどのような役割を果たされたかが全く見えません。

 鳩山前総理は、昨年夏以来、移設先のさしたる見込みもないままに、国外、最低でも県外と言い募り、沖縄県民の期待をいたずらにあおりました。米国のオバマ大統領に安易にトラスト・ミーと伝えながら、昨年末には何ら方針を示さず、みずから大見えを切った五月決着も、辺野古に決めたらどんなに楽だったか、くい一本打てなかったとまでなじった現行案に憶面もなく回帰しました。関係者の合意も連立与党の合意も得られず、決着とはほど遠い状況のまま、結局、退陣へと至りました。

 菅総理は、副総理として、こうした前総理をいさめ、事態を収拾するために関係各大臣に必要な指示を下し得る立場にあったはずですが、昨年夏以降、昨年末、本年五月末の各段階で普天間基地移設問題にいかなる関与をなされたのか、具体的にお答えいただきたいと存じます。

 また、そもそも、鳩山前総理が県外、国外に移設先を求められたことは適切だったのか、その結果、沖縄県民の心をもてあそんだあげくに辺野古に戻ってきたことは正しい結論であったかどうか、鳩山前総理のどこをどのように引き継ごうとしておられるのか、かつて沖縄の海兵隊不要論を唱えられた菅総理の御所見をお聞かせください。

 私の印象では、菅総理はこの問題への関与を意図的に避けてきたように感じます。

 かつてテレビ番組で同席した折に、私は責任者ではないとされた上で、普天間問題は、日本、米国、沖縄、そして連立三党の四元方程式であると述べられましたが、方程式の解探しは鳩山前総理に任せ、みずからの所管外であるかのようにだんまりを決め込む。そのようなことが、副総理というお立場として、まして縦割りの打破や政治主導を掲げる民主党政権の副総理として許されるとお考えですか。

 菅総理の場合、結果的に鳩山前総理を支え切れなかったわけですが、わざと支えなかったと言えるのではないですか。政権ナンバーツーの地位にありながら、普天間基地移設問題について、あえて職場放棄、戦略的サボタージュを決め込んだのではないですか。副総理として、その不作為の責めは重大と考えますが、いかがお考えでしょう。見解をお伺いします。

 この問題が極めて重要なのは、今回の民主党の代表選挙において、岡田外務大臣や前原沖縄担当大臣といった有力候補とされる方々が、普天間の戦犯であることを自覚して立候補を控えたとされているからです。結局、だんまりを決め込んだ菅総理が、民主党代表、ひいては内閣総理大臣としての地位を手中におさめたということは、政治的嗅覚にすぐれたポリティシャン菅直人としてはまさに面目躍如ということなのかもしれませんが、そのような自己保身第一の姿勢に関しては、副総理、ましてや総理大臣としての資質を疑わざるを得ません。

 実際、菅総理が、出馬記者会見の際、普天間基地移設問題について、重荷を鳩山総理にみずからがやめるということで取り除いていただいたと、人ごとのように述べられました。このような態度は、今なお残るこの問題の重荷を総理大臣としてみずから背負う覚悟がないことを端的に示しているのではないでしょうか。

 菅総理、あなたは、日米合意に至るまでの混乱や沖縄県民への裏切りの責任は前総理に押しつけ、日米合意の履行のための困難な道のりは人任せ、担当閣僚任せにして、危ない橋は渡るまいと考えておられるのではないでしょうか。鳩山前総理は、理想や意欲はありながらそれを実現する手法を著しく欠いていたわけですが、菅総理に至っては、その理想や意欲すらないのではと懸念される次第です。

 沖縄県民もこの代表質問を聞いておられると思いますので、この機会に、普天間基地移設問題に対するみずからのお考えと、みずからのリーダーシップと責任のもとで四元方程式の解決に取り組む覚悟を、具体的に披瀝していただきたいと存じます。

 より具体的に伺います。

 菅総理は既にオバマ大統領との電話会談で先般の日米共同声明を履行することで一致したとされておりますが、その共同声明においては、辺野古に建設される代替基地の工法について八月末までに検討を終えることとされております。鳩山前総理は、辺野古の海が埋め立てられることは自然に対する冒涜とまでおっしゃりながら、最後は埋め立て方式に回帰されつつあったようですが、菅政権においても、工法として埋め立て方式を採用する方向性なのでしょうか。その際、沖縄とどのように協議しながら日米交渉を進めていかれるのでしょうか。鳩山前総理の冒涜発言を踏まえた総理御自身の埋め立て方式に対する評価とあわせて、菅総理にお伺いいたします。

 いずれにしても、沖縄県民の理解と協力を得なければ、日米共同声明の履行がおぼつかないことは明らかです。菅総理は、八月末の工法の決定までに沖縄の合意を得るおつもりなのか、それとも、鳩山前政権のやり口同様、沖縄の合意を得ることなく工法まで決定してしまうのか、方針をお聞かせください。

 さらに、この間の迷走で日米同盟に取り返しのつかない大きな傷をつけてしまったわけであり、米国民の日本に対する信頼を具体的にどう取り戻すのか、お聞かせください。

 また、地元の頭越しで決定された徳之島への訓練移転についても、菅総理としてどのような取り組みをなされるおつもりか、お伺いいたします。

 次に、政治と金の問題についてです。

 菅総理はクリーンな政治を標榜しておられますが、政治と金の問題についても、鳩山前総理との一定の連帯責任を免れないものと考えます。

 鳩山前総理が実母から巨額の贈与を受けていたという問題が取りざたされていた渦中において、菅総理は税制及び徴税行政の責任者たる財務大臣の職にあり、確定申告時期においては納税者の怒りの声も直接耳に届いていたはずです。にもかかわらず、菅総理は、この問題でもお得意のだんまりを貫かれ、税制及び徴税行政の責任者としての矜持を示すこともされませんでしたし、鳩山前総理に対し、身の処し方をアドバイスした形跡もありません。

 今になってクリーンな政治を掲げるのは結構ですが、前政権の内部にあって、総理は、クリーンな政治を実現するためにどのような努力を講じられたというのでしょうか。改めて、鳩山前総理の政治資金をめぐる問題に対する菅総理の御見解と、鳩山前政権の副総理兼財務大臣としての不作為の責任についてお伺いいたします。

 鳩山前総理は総理を結局辞任されましたが、クリーンな政治、クリーンな民主党というのであれば、このまま幕引きするのは許されるはずはなく、国会の証人喚問を通じて真相を解明しなければなりません。

 鳩山前総理は、一度は国会に提出すると約束した元公設秘書の公判で用いられた関係書類をいまだ提出されていないことも問題であり、国会として、鳩山前総理御本人から話を伺うよりほかありません。菅総理御自身も、毎月一千五百万、七年間で十二億六千万円の贈与を知らなかったとされる鳩山前総理の説明を信じておられるのでしょうか。ほとんどの国民は納得しておりません。

 鳩山前総理と関係者の証人喚問の実現を求めますが、前向きに対応されますでしょうか。お伺いいたします。

 小沢前幹事長の資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反事件については、小沢前幹事長の不動産購入資金の出所の説明が、政治資金、銀行からの借入金、自己資金と二転三転したことを菅総理はどう受けとめていらっしゃるのでしょうか。総理はこれで納得されているんですか。

 小沢前幹事長は、幹事長職こそ辞したものの、国会の場でみずからの疑惑について何ら明らかにしていません。クリーンな政治を掲げるなら、ここでも小沢前幹事長の証人喚問が不可欠と考えますが、小沢前幹事長の事件に関する菅総理のお考え及び証人喚問の実現に向けたお考えをお伺いします。

 本件に関連して、民主党の辻惠議員が検察審査会事務局に接触したことが発覚しました。司法に圧力を加えようとしたとの疑いは免れません。

 本事件に関しては、辻議員に限らず、検察や検察審査会に動きがあるたびに、民主党内で圧力をかけるような議員連盟が創設、開催される事態となっており、その異様かつ執拗なことは目に余るものがあります。辻惠議員の行為に対する御見解及び権力の濫用を事とする民主党の体質について、改善を図る心構えがあるのかをお伺いします。

 また、荒井国家戦略担当大臣にも事務所費問題が発覚しました。

 大量の漫画等の購入費が経費として計上されており、社会常識からかけ離れた荒井大臣の政治活動の実態が明らかになりました。(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

谷垣禎一君(続) 過去においても、蓮舫行政刷新担当大臣と川端文部科学大臣にも浮上した問題でありますが、新政権発足直後からこのありさまでは、クリーンさをアピールする資格などないのではないでしょうか。本件について、総理の見解をお伺いいたします。

 次に、強い経済、強い財政、強い社会保障という言葉で語られる菅内閣の経済財政運営についてお伺いします。

 まず、強い経済についてですが、菅総理は、最近、経済の猛勉強をされているかのように伺っております。総理になって初めて沖縄における海兵隊の抑止力という安全保障のイロハを学ばれた鳩山前総理に比べれば、事前に勉強を積み重ねてきたことはよしとしますが、私も菅総理も六十代半ばであります。我が国経済のかじ取りが六十の手習いにゆだねられるとすれば、本当に強い経済が築かれるのか、少々不安を禁じ得ません。

 そこで、お伺いします。

 菅総理は、菅ノミクスや菅ジアン経済学と呼ばれる経済思想をお持ちと聞いております。ワイズスペンディング、賢い政府支出、すなわち、雇用と需要に焦点を置いて支出を行えば経済は成長するということのようです。

 このこと自身は私も否定はしません。問題は、総理御自身が、昨年五月の予算委員会で、民主党が掲げる高速道路料金無料化こそが賢い政府支出であるとして、当時の麻生政権の補正予算を批判されたことであります。

 賢い菅総理に経済財政政策をお任せすれば、高速道路を無料化することによって経済を成長させ、財政も健全化させるということのようですが、にわかには信じられません。そのお考えを撤回されないとすれば、新成長戦略の柱として盛り込まれてしかるべきと考えますが、所信表明演説では触れられておりません。

 国民の多くが反対する高速無料化について、財政支出としての評価、成長戦略との関係について、まずお答えください。

 いずれにしても、このように菅総理が編み出された成長理論は、財政支出と結びつけば野方図な歳出膨張に陥ることとなりかねませんが、総理の見解を伺います。

 続いて、菅総理が政権発足後最初に決定した重大な経済政策、郵政肥大化政策についてお伺いします。

 先日、衆議院で強行採決された郵政改革法案は、国の保証をつけて、地方で中小企業に回るべき資金を全国から吸い上げたあげく、国債や第一の道たる公共事業あるいは外国債券に回す、荒唐無稽な法案であります。これが、菅総理の言う強い経済、強い財政政策なのでしょうか。総理の見解を伺います。

 また、この法律は、急転直下、廃案となるようですが、なぜでしょうか。やはり、総理の経済政策にふさわしくない部分があるのでしょうか。お答えください。

 次に、強い財政についてお伺いいたします。

 菅総理が財政健全化に並々ならぬ意欲を示されていることは率直に評価いたしますが、具体策となると、余りに抽象的で不安を覚えます。

 まず、財政運営戦略及び中期財政フレームの策定については、今の今までこうしたものが存在しなかったこと自体が異常と言わざるを得ません。

 昨年の総選挙における民主党のマニフェストは、我が党と異なり、財政健全化目標については一切言及されておらず、結果として、二十二年度予算編成は、羅針盤なき航海そのものの、ばらまき予算に終わりました。これだけの債務残高を抱える我が国の政府が、政権交代後九カ月となる今になっても財政健全化目標一つ示せていないのは、財政に対する危機感の欠如のあらわれ、政府の怠慢であると考えます。

 我が党は、まずは十年以内の国、地方を合わせたプライマリーバランス黒字化の確実な達成を初めとする財政健全化目標を掲げてきたわけでありますが、政府はいかがなさるおつもりでしょうか。いつまでも検討などと言っていないで、鳩山前総理もお茶を濁すようなことはしないと明言された以上、この場で確固たる裏づけのある具体的な財政健全化目標を直ちに示すことこそ強い財政を掲げる総理の責任と考えますが、明確なお答えを求めます。

 財政運営戦略や中期財政フレームについては、サミット前には公表するとの発言もあったようですが、そもそも昨年から、来年前半にはつくると言い続けてきたことを考えると、会期終了後になって公表されるとすれば、国会軽視も甚だしいものと考えます。

 特に中期財政フレームについては、複数年度にわたる予算編成に影響を与えるものであり、六月中とは言わず、財政運営戦略や財政健全化目標とあわせて直ちに公表した上で、十分な時間をとって国会の審議に供するのが筋と考えますが、いかがでしょうか。明確な御答弁をいただきたいと存じます。

 菅総理は、そもそも鳩山前内閣の財務大臣として財政健全化法の提出に向けた準備作業を進めておられ、一時期は四月末国会提出の勢いでしたが、その後、音さたなしであります。

 総理は、法律という形をとることにより、超党派での国会における財政健全化の議論を行う土俵ができるという趣旨まで述べられていたわけですが、そこまでお考えの法律をみずから総理になっても提出しないどころか、財政運営戦略や中期財政フレームについても国会に示さないとなれば、大見えを切った割には言葉を守れないという点において、鳩山前総理と変わらないのではないかという疑念を抱かざるを得ません。

 我が党が財政健全化責任法を出して三カ月近くたちましたが、本来、その修正協議などで対応できたはずであります。財政健全化法に対する取り組みはどうなってしまったのか、お聞かせください。

 菅総理は、平成二十三年度当初予算における国債の新規発行額について、かねて二十二年度予算の水準である四十四・三兆円以内とするお考えを示されていますが、これは菅政権の不退転の公約と受けとめてよろしいでしょうか。よもや、実現する見込みもなくぶち上げたが守れないという、第二の普天間問題に陥るということはないでしょうね。改めてお覚悟をお伺いします。

 また、二十三年度予算に限らず、総理在任中の予算編成については、これを守られるという理解でよろしいでしょうか。

 もっとも、二十三年度予算においてすら、ばらまきばかりの民主党マニフェストの見直し、すなわち、マニフェスト仕分けを行わない限り、その実現は不可能であります。さらに、菅内閣のもとでは、各大臣、各省庁が、我こそは経済成長をもたらす賢い財政支出だ、税収にも寄与するので結局国債発行額も抑制されるのだという主張を繰り広げ、昨年秋の概算要求のように、歳出額が際限なく膨らむおそれもあります。

 財政破綻に導くマニフェストを撤回することに加え、概算要求段階から歳出の歯どめをかけ、中期財政フレームでも分野別にまで踏み込んだ具体的な歳出抑制の方針を示す必要があると存じますが、この三点について、いかがお考えでしょうか。

 消費税についてお伺いします。

 消費税については、総理就任後明らかにトーンダウンしており、所信表明演説ではついに言葉が見当たらず、消費税隠しとのそしりを免れません。消費税を引き上げるべきとお考えか、上げるとしたら何%ぐらいまでとお考えなのか、歯切れよくお答えください。

 消費税の使途についてもお伺いします。

 先ほど来申し上げているとおり、菅ノミクスや菅ジアン経済学のもとでは、成長につながる賢い財政支出については増税をいとわないということになりかねません。そうなりますと、消費税を増税したとしても、使途は、現在の予算総則に定められた高齢者三経費、さらには社会保障分野に限られず、成長分野でありさえすれば、それこそ高速道路無料化の財源であろうと充てられるということになるのでしょうか。となると、これまで最低保障年金の創設などに充てるとして消費税の社会保障目的税化を掲げてきた民主党マニフェストの方向と異なることになります。消費税を社会保障目的税と考えるのか否か、見解を改めてお伺いします。

 なお、菅総理は、仮に増税を行ったとしても、それを賢い財政支出に振り向ければ経済は成長するので増税と経済成長が両立するとお考えと聞きます。しかし、増税分を賢い財政支出に振り向けることができたとしても、それで使い果たしてしまえば財政収支の改善にはほとんどつながりません。うまく経済成長できたとしても、我が国の税収が名目GDPの一割に満たないことからおわかりいただけますように、その経済成長による増収効果はたかが知れております。

 すなわち、菅理論では、増税しても増税しても財政収支の改善効果は限定的であり、財政健全化の見地からは、増税幅が幾らあっても足りないということになります。

 もちろん、増税の必要性を訴えるに当たっては、国民に夢を語ることは政治手法として重要なことだと思いますが、新たな財政支出に充てる、成長分野に充てるといった景気がよい話ばかりを訴えるのではなく、打ち出の小づちはもうないのだということを国民に率直に語りかけることもまた政治家の役割ではないでしょうか。

 増税と経済成長の関係について、総理の見解を改めて伺います。

 税制改革の時期について伺います。

 消費税を含む税制抜本改革について、平成二十一年度税制改正法の附則第百四条において、既に検討の基本的方向性に加えて、二十三年度までに具体的な内容を定める法案を提出するというスケジュールが法定化され、政府を拘束しております。政府の税制調査会もこの方向性を踏まえて検討されているようですので、問題は、二十三年度までに具体的な内容を定める法案を提出するというスケジュールであります。

 菅総理は、代表選出馬の際の記者会見において衆院解散について問われ、来年度予算の編成後でも理解を得られると答えられています。

 すなわち、衆議院を解散して信を問うた上で二十三年度までに法案を提出するというスケジュールも十分可能と考えられますが、附則第百四条の税制抜本改革の法案の提出時期についてそのまま守るお考えなのか、見解をお聞かせください。

 なお、菅総理は、財政健全化について、財政健全化検討会議を創設し、与野党の壁を越えた議論を行うことを呼びかけておられます。

 我々も、かねて社会保障の改革や消費税を含む税制抜本改革には超党派の議論が必要と考えており、与党時代はもちろん、二月一日の衆議院代表質問でも私は社会保障円卓会議の設置を具体的に提案いたしましたが、当時の鳩山総理は拒否されました。

 加えて、我が党が提出した財政健全化責任法には、「党派を超えた国会議員により構成される会議を設置」と明記されている上に、巷間伝わってくる民主党マニフェストと同じ財政健全化目標も先んじて掲げておりますが、先ほども申し上げたように、たなざらしのままであります。

 さらには、財政運営戦略も中期財政フレームについても、国会での議論の余地を与えないようなタイミングで発表しようとされています。

 このような中で突如として政府・与党の方から呼びかけをなされても、ポーズだけではないかという疑いを禁じ得ません。超党派の会議であれば呼びかけなど不要であります。我が党の法案さえ成立させれば、呼びかけという口約束ではなく、法律という形で国民にきちんと約束した上で設置できます。

 しかるに、無駄が二十兆あるいは九・一兆削減できるから財源捻出は可能だと、荒唐無稽なマニフェストに拘泥するなどして建設的な議論を進めてこられなかったのはどちらなのか。まずはマニフェストを撤回していただき、我が党の財政健全化責任法の取り扱い、財政運営戦略及び中期財政フレームの公表のあり方について善処していただくことが必要であります。

 また、協議の内容は抽象論にとどまらず、社会保障や税制のあり方を含めた広範かつ具体的なものでなければなりません。こうしたことをどこまで具体的かつ真摯にお考えなのか、言いかえれば、総理の本気度をお伺いしたいと存じます。

 最後に、国会運営のあり方についてお尋ねします。

 最近の与党の横暴な国会運営については目に余るものがあります。郵政改革法案は、かつて百時間以上の審議時間をかけ、さらには国民に信を問うた郵政民営化の方針を大転換するものであるにもかかわらず、郵政票目当てで、選挙前に法案を通すことを最優先して、わずか六時間弱の審議だけでの強行採決が行われました。

 このように、与党は、選挙目当てで、自分たちに都合のいいことに関しては数の力で議会のルールを踏みにじることにちゅうちょがない一方で、政治と金や普天間基地移設問題など都合が悪いことには集中審議の要求に頑として応じませんでした。

 強行採決は、郵政改革法案に限らず、公務員制度改革関連法案、地球温暖化対策基本法案など十回に及び、まさに与党の思い描く日程を消化するためだけに国会が私物化され、議会制民主主義が冒涜されております。さらには、強引に衆議院を通したものの、参議院選挙の投票日をおくらせたくない一心で、これらの法案の多くは、参議院において審議未了の廃案となる見通しです。

 政策よりも選挙を優先する、行き過ぎた選挙至上主義という小沢イズムは、菅政権にも脈々と引き継がれて、国会をないがしろにしております。国権の最高機関たる国会が、与党の汚れた思惑によって最低機関におとしめられつつあることは、もはや見過ごすことはできません。参議院で与野党逆転を実現することこそが、多数派の理不尽な暴走を阻止する、衆議院に対するチェック機能としての参議院に本来期待された役割を取り戻す唯一の道である、このように考えます。

 菅総理におかれても、せめて、先ほど申し上げた鳩山前総理や小沢前幹事長の証人喚問の実現、普天間基地移設問題、経済財政運営を初めとした内政、外交の基本方針や政治と金の問題をめぐる予算委員会の開催によって、選挙の前に国民に選択肢を提示する責務を果たし、いささかでも議会の権威と権能を取り戻せるよう、総理みずからが指導力を発揮すべきものと考えます。

 これまでの与党の国会運営に対する反省と今後の取り組みについて、見解をお聞かせください。

 鳩山前政権が重ねた内政、外交の失敗や政治資金問題は、民主党の体質的、構造的問題に起因するものであり、鳩山前総理の責任にのみ帰すべきものではありません。いわば会社の体質、構造に問題があったのであり、社長一人をかえたところで問題が解決するわけではありません。

 本来は、経営陣が総退陣して会社の更生が図られるべきであるにもかかわらず、経営陣は軒並み留任で、普天間基地移設問題や政治と金という重要な経営事項についてはあえてほおかむりをしてきた副社長が平然と社長に昇格するということは、許されざることであります。菅総理は、本来、そうした不作為の責任も含めて、鳩山前総理とともに身を引くべきだったのではないでしょうか。

 今、支持率を見る限り、菅総理に対する国民の期待は確かに高いものがありますが、昨年の秋も国民は政権交代で誕生した鳩山前総理に大いに期待し、結果として無残にも裏切られました。

 今回、社長をかえても、経営陣や社員がかわらない限り、同じ歴史が繰り返されることは目に見えております。口蹄疫問題の連帯責任を負うべき山田前農林水産副大臣を大臣に昇格させる、普天間問題に関与した岡田外務大臣、北澤防衛大臣、前原沖縄担当大臣を留任させる、これはまさに前政権の失政の残滓を引きずる内閣であります。

 しかも、民意を受けていない、正統性を欠いた内閣でもあります。

 鳩山前総理が辞職し、福島党首も県外、国外移設の約束をたがえられたあげくに更迭され、亀井代表も郵政改革法案成立の約束を裏切られて辞職し、政権発足当初の連立三党首はすべて閣内から去りました。マニフェストも空証文に終わった上に、国民との約束違反は素知らぬ顔で見直しを図る。鳩山、小沢両氏の金銭スキャンダルにふたをする余り、政治主導や地域主権、地球温暖化対策といった内閣の看板法案の多くも成立に至っておりません。

 事ここに至っては、菅総理が著書で明記されたとおり、政策的に行き詰まったりスキャンダルによって総理が内閣総辞職を決めた場合は、与党内で政権のたらい回しをするのではなく、与党は次の総理候補を決めた上で衆議院を解散し、野党も総理候補を明確にして総選挙に挑むべきではないでしょうか。これは総理御自身の御著書であります。総理に御見解を伺います。

 総選挙を逃げるならば、それは政権に居座り、参院選に勝つためのごまかしにすぎないことの証左であります。

 我々としても、来るべき参院選で国民の皆様に精いっぱいのお願いをして、このような失望の歴史の繰り返しを断ち切るべく全力を尽くします。

 国民の皆様方には、まずは、クリーンな政治を標榜する新体制が鳩山前総理や小沢前幹事長の証人喚問などを通じてうみを出し切るか、開かれた党運営を掲げる新体制が国民にとってより重要な国会について開かれた運営を行うか否かを刮目してごらんいただき、皆様方の御賢察をお願いして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 谷垣総裁に誠実にお答えしたいと思いますが、質問をいただいたのがわずか二時間前、そして菅原議員に至っては、十二時四十五分という、わずか十五分前に質問通告をいただきました。そうした形で、誠実に精いっぱいお答えはさせていただきますけれども、そうした時間的制約をつくったのは質問者の谷垣総裁であることをまずもって申し上げておきます。

 先ほど谷垣総裁から、国会運営についての御指摘がありました。(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

内閣総理大臣(菅直人君)(続) 私がお聞きしているのは、与党からの一定の提案を野党がお断りになって、そして、日程どおり、国会法で決められた会期どおりにこの国会が終了されるであろうということの報告をいただいたところでありまして、それはそれとして一つの国会のルールだと考えております。

 まず、口蹄疫問題について御質問をいただきました。

 私自身、先週土曜日に宮崎県に伺いまして、そして実際の、畜産農家からもお話を聞き、また東国原知事を初めとする首長さんからもお話を聞いてきたところであります。

 この問題は、まさに国家的危機とも言える課題であり、感染拡大の防止に、自治体とももちろん一緒になって、政府として一丸となって全力を挙げていくことを国民の皆さんに申し上げておきたいと思います。

 次に、普天間基地移設問題に対する副総理当時の私の関与についての御質問をいただきました。

 私は、国家戦略担当になったときに、鳩山総理から、これとこれとはやってほしいという指示書をいただいておりまして、外交については、財政のことなどがあるので菅さんの方には負担をかけないからという、そういう言葉もいただいておりました。

 この問題については、平野官房長官を中心とする沖縄基地問題検討委員会が必要な検証を行ってきたと了解をいたしております。最終的には、五月二十八日の閣議決定に閣僚の一人として署名をし、その決定については責任を共通にするもの、このように考えているところであります。

 鳩山前総理が導いた結論について、いろいろな観点からの御質問をいただきました。

 我が国周辺の東アジアの安全保障環境には、最近の朝鮮半島情勢などに見られるように、不安定性、不確実性が残っております。したがって、海兵隊を含む在日米軍の抑止力は、安全保障上の観点から極めて重要だと認識をいたしております。

 普天間飛行場の移設については、先般の日米合意を踏まえつつ、同時に、閣議決定でも強調されたように、沖縄の負担軽減に全力で尽くしてまいりたい、このように覚悟いたしております。

 普天間問題での、私が戦略的にサボタージュなどをしたのではないかというお話でありますが、谷垣総裁とも思えない勘ぐりだと申し上げておきます。

 普天間基地移設問題に取り組むについては、沖縄には米軍基地が集中し、沖縄の方々に大きな負担を引き受けていただいている現状を十分理解しなければなりません。普天間基地の移設、返還と一部海兵隊のグアム移転は、何としても実現をしなければなりません。

 普天間飛行場の移設については、先般の日米合意を踏まえつつ、同時に、閣議決定でもあります沖縄の負担軽減に尽力をする覚悟であることは、先ほど申し述べたとおりであります。

 埋め立て方式等についての御質問がありました。

 先般、日米合意において、本年八月末までに、代替施設の位置、配置及び工法に関して、日米の専門家の間での検討を終えるということになっております。さらに、これと並行して、移設計画や負担軽減の具体策について、沖縄県を初め地元の方々に誠心誠意説明し、理解を求めていきたいと考えております。

 この間の迷走で日米同盟に取り返しがつかない傷をつけてしまったといった御指摘もいただきました。

 日米安保体制を中核とする日米同盟は、日本の防衛のみならず、アジア太平洋地域の安定と繁栄を支える国際的な共有財産であります。私の内閣においても、日米同盟は日本外交の基軸であることには変わりありません。

 普天間飛行場の移設問題に関しては、先般の日米合意を踏まえて、しっかりと取り組んでいきます。

 日米間には、協力して対応すべき重要な課題が数多く存在します。先日六日に行ったオバマ大統領との電話会談においても、日米関係の直接の課題のほか、韓国哨戒艦沈没事案やイランの核問題についても意見交換を行い、日米が緊密に連携していくことを確認いたしたところであります。

 日米安保条約五十周年の本年、二国間関係のみならず、アジア太平洋地域情勢やグローバルな課題についても緊密に協力していき、日米同盟を二十一世紀にふさわしい形で着実に深化、発展させたいと考えております。

 徳之島への訓練移転についての御質問をいただきました。

 先般の日米合意では、米軍の活動の沖縄県外への移転を拡充することの関連で、適切な施設が整備されることを条件として、徳之島の活用が検討されることといたしております。これは、沖縄の方々が米軍のプレゼンスに関連して過重な負担を負っており、その懸念にこたえることの重要性等を日米双方が認識したものであります。

 いずれにせよ、普天間飛行場の移設については、先般の日米合意を踏まえつつ、同時に、閣議決定でも強調されたように、沖縄の負担の軽減に尽力を尽くす覚悟であります。

 鳩山前総理の政治資金をめぐる私に対する見解、あるいは副総理当時の不作為についての御質問をいただきました。

 資金管理団体の違反については、残念なことではありますけれども、この件は、検察によって御本人の関与は否定され、不正な支出についての指摘もなかったわけでありますが、総理みずから責任をとって潔く辞任されたものと理解をいたしております。(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

内閣総理大臣(菅直人君)(続) また、政治家個人の問題について、私も、個人的な形では申し上げたことはありますけれども、内閣の一員として外に向かって申し上げなかったということは、これは御理解をいただきたいと思っております。

 鳩山前総理と関係者の証人喚問を求めるという件についてであります。

 鳩山前総理が、みずから政治責任をとり、総理を辞任されたことの意味は、極めて重いと思っております。検察の調べでも本人の関与はないとされ、司法の判断も同様であると考えておりまして、以上のことを踏まえて、国会での扱いについては国会でお決めいただきたいと考えております。

 小沢氏の政治資金問題等に対する御質問、あるいは辻惠議員の行為についての見解の御質問がありました。

 小沢前幹事長は、検察が一年がかりで調べて不起訴とされ、そして本人も本人なりに説明されてきたわけですが、一回目の検察審査会では起訴相当と判断をされ、国民の納得が十分に得られず、みずから決断して幹事長を辞任されたことでありまして、政治的には大きなけじめをつけられたと認識をいたしております。

 小沢氏の問題について、さらに検察審査会で議論をされている最中でありまして、総理大臣としては、これ以上踏み込んだ発言は慎むべきと考えております。国会での扱いについては国会でお決めをいただきたい、このように思っております。

 なお、辻議員についての関係のことは、事実関係を承知しておりませんので、お答えは差し控えたいと思います。

 荒井大臣の事務所費等についての御質問をいただきました。

 閣僚の事務所費問題については、党として調査し、領収書等を公開して、架空計上などの疑惑が事実ではないことが明らかになったと承知をいたしております。

 荒井大臣の事務所費については、違法ではないけれども、政治資金の使い道として不適切な部分があり、訂正願を出すと聞いております。

 なお、本日午前中に、仙谷官房長官が荒井大臣を招いて厳重に注意をされたと承知をいたしております。

 強い経済について、谷垣総裁御自身から、財政健全化に並々ならぬ意欲を示していることの御評価をいただきまして、大変心強く感じたところであります。

 この中で、高速道路の無料化と成長戦略の関係をまずお聞きになりましたが、高速道路を無料化することによって、物流コストの軽減や観光の振興など地域の活性化を促進し、成長につながるもの、このように考えております。

 また、成長理論が財政支出と結びつけば歳出膨張につながるといった御指摘がありました。

 しかし、私が申し上げているのは、例えば温暖化ということを実行しようとすれば、イノベーションがそこで必要になり、さらには新しい製品が生み出される、あるいは、介護というものに財政出動すれば、そこに雇用が生まれ、新しい経済が拡大するわけでありまして、そういった形で使い道を間違えなければ経済成長につながるということは、私は、間違った理論だとは全く思っておりません。

 郵政改革法案は荒唐無稽な法案だといった指摘をいただきました。

 郵政改革法案は、民営化で経営基盤が脆弱となったこと、その役務を郵便局で一体的に利用できないなど利便性が低下していることなどに対応するものでありまして、株式会社を前提として組織を再編するもので、公営や国営に戻すものではありません。

 政府・与党としては、参議院選挙後の臨時国会において、郵政改革法案を再び提出し、早期の成立を期する考えであります。

 強い財政に関して、中期財政フレーム、さらには財政健全化目標の提出時期等について、いろいろと御質問をいただきました。

 中期財政フレームにおいては、今後三年間の歳出の骨格等を定めるとともに、財政運営戦略で新たな財政健全化目標を定める考えであります。具体的な内容については、今月中にはお示しすることができると思っております。

 なお、谷垣総裁が、自分たちが出している法案で、十年以内にプライマリーバランスを黒字化する、こういう中身が入っておりますが、それで十分かどうかは別として、私たちもこの程度の目標はしっかりとこの中に掲げさせていただきたい、このように思っております。

 財政健全化責任法について、自由民主党から出されていることはよく承知をいたしております。

 財政健全化という我が国の将来を左右する重大な課題について、与野党の壁を越えた国民的な議論をぜひ行いたい。これについては、谷垣総裁からも考え方としては賛成だということが御質問の中に入っておりました。ぜひ、余りややこしい条件を抜きにして、一緒に議論をしようじゃありませんか。

 来年度以降の国債発行額について、四十四・三兆円以下を今後とも維持するのかという御質問がありました。

 皆さんおわかりだと思いますが、四十四・三兆円を守ったとしても、このレベルを三年間続ければ債務残高はGDP比二〇〇%を超えるんですよ。こういった意味で、私は、最終的には、政権交代をした中で、新たな内閣としての閣議決定で先ほどの中期財政フレーム等を決めますけれども、この程度の目標は何としても実行しなければならないという認識を持っていることは、はっきりと申し上げておきます。

 マニフェストを撤回し、概算要求から歳出の歯どめをかけ、中期財政フレームでも分野別に歳出抑制の方針を示すべきという御指摘でありますが、二十三年度予算編成においても、厳しく、無駄の削減など、歳出を抑制するところは抑制したいと思っています。

 ただ、一つだけ気をつけなければならないのは、額だけを下げればいいという発想を私はとりません。つまりは、中身を何に使うかが一番問題であって、とにかく額だけ少なくすればいいといった従来の財務省のような考え方はとらないで予算編成をしてまいりたいと思っております。

 消費税について、いつ上げるのかという御指摘をいただきました。

 今、参院選に向けてのマニフェストの中でも、消費税の扱いについておおよそ最終的な方向性ができたところでありますので、多分、数日のうちにはマニフェストという形での御提起はできると思っております。おわかりのように、基本的には、消費税だけではなくて、所得税や、さらには法人税、さらには、消費税をもし引き上げるとすれば、軽減税率を入れるのかどうするのか、そういったことをあわせて今検討しておりますので、そういったことも含めた中で、そう遠くない時期に一つの方向性をお示しできる、このように考えているところであります。

 増税と経済成長の関係について、先ほども申し上げましたけれども、これも、谷垣総裁から、必ずしも自分も反対ではないという言葉をいただきましたが、まさに、雇用を生み出し、仕事を生み出すような分野にそうした財政出動をすることで経済の成長につながっていく、そうした経済の成長に多くつながるか余りつながらないかということを基準にした予算編成を行っていきたいと考えております。

 平成二十一年度税制改正法附則百四条の取り扱いについてお話がありました。

 この百四条の存在はよくよく私も承知しておりますけれども、この法案をそのままにして矛盾のない形でやっていくのか、それとも、場合によってはその中身を変えて、もっと迅速に物事を進めることができるのか、あるいはもっと遅くなるのか、こういったこともこれからの税制抜本改正の議論でぜひ検討をしていきたい、こう考えております。

 財政健全化や社会保障、税制の改革についての本気度ということをお問いになりました。

 これは皆さんも御承知のように、私は、財務大臣の時代からこうしたことについて、何とかしなければと、当時の鳩山総理とも何度も話を繰り返す中で、できるところまでは進めてきたつもりであります。今回、内閣の責任者になりましたので、まさに強い経済と、強い財政と、強い社会保障を実現するために、不退転の覚悟で臨んでまいりたいと考えております。

 与党は郵政改革法案を六時間弱の審議で強行採決した等々の、国会運営についてのいろいろな御指摘がありました。

 私も長い間国会におりますので、いろいろな場面を見ておりますが、なるべくなら中身のある議論を積み上げていくことが望ましい、このように思っております。そういった意味で、本来なら強行採決といったものが望ましくないということは、一般的にはそのとおりでありますけれども、どうしても決めなければいけないときには決めなければならないということも、また同時に事実だと思っております。

 鳩山前内閣が重ねた失政等について、いろいろと最後の方で御質問をいただきました。

 私は、例えば何人かの大臣が留任をしたことについていろいろと御指摘をいただいておりますが、留任した方、あるいは新しく任命をさせていただいた方、すべてはまさに適材適所で選ばせていただいたことを、この場をもって、自信を持って申し上げておきたいと思います。

 そして、衆議院の解散等についても触れられましたけれども、今まさに、通常の日程で七月には参議院選挙を目の前にしているわけでありまして、そして、私の内閣の方針は所信表明演説でも明らかにさせていただいているわけですから、どうか野党の皆さんも自信を持って参議院選挙で国民に信を問うていただきたい、私たちも国民の信を参議院選挙で問うていきたいということを申し上げて、私の答弁とさせていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 菅原一秀君。

    〔菅原一秀君登壇〕

菅原一秀君 自由民主党の菅原一秀です。

 自由民主党・無所属の会を代表して、質問をいたします。(拍手)

 その前に、先ほど菅総理が言われました、質問通告が遅かった。安倍政権の時代、私も政務官をやっておりましたが、民主党は全く通告をしてきませんでした。

 もとより、菅総理、あなたあるいは民主党は、政治主導の国会にしようではないか、法制局長官の答弁もやめようじゃないか、ダイナミックな議論をしようじゃないか、そうしてきたのは、菅総理、あなたではないですか。まさに総理の資質を疑う発言であった、このことを冒頭申し上げたい。

 また、先ほど、予算委員会の日程を野党が断ったと菅さんはおっしゃいました。御自身の国対によく聞いてください。先週の金曜日、与党が、月曜、火曜に本会議をやって、一日ずつ衆参で予算委員会をやろうと提案をしてきた。とするならば、その案は生きているんですか。確認をしたいと思います。

 早速質問に入りますが、答弁が不十分であったらば再質問をさせていただくことを冒頭申し上げます。

 まず、宮崎県で発生している口蹄疫問題に関しまして、大変深刻な事態に巻き込まれております畜産農家の皆様方に対し、心からお見舞いを申し上げます。

 また、そのさなか、鳩山辞任騒動で政治空白が生じ、先週十日には新たに都城市、宮崎市、日向市においても発生が確認され、今や九州全域に拡大する懸念があります。これは、危機管理が不十分であったことによる感染拡大であり、初動のおくれがそもそもの要因であることからすれば、まさに民主党政権による人災であります。

 菅総理は、一昨日、宮崎を訪れ、国家的危機であり、必要なことはすべてやると述べたそうですが、その後、政府の対策本部にも寄らず、街頭演説に直行しております。翌日には、同窓会に出席をしております。この間、総理は対策本部にどのような指示を出されたのでしょうか。これまで努力を重ね育ててきた母牛、子牛をあしたにも殺処分しなければいけないという選択を迫られている畜産農家は、これでは浮かばれません。

 直ちに国会を延長し、口蹄疫対策特別委員会を設置し、集中審議を行い、一定の対策予算を確保し、農家と家畜の救済を実効あらしめることが喫緊の課題であります。総理の決意を伺います。

 次の質問に入ります前に一言申し上げたいと思います。

 それは、先日の菅総理の所信表明の演説の最中、政権のかなめと言われる仙谷官房長官が、その大臣席でほとんど居眠りをしておりました。主人である総理が懸命に原稿を読んでいるときに、その女房役である官房長官が、秘書官から慌てて起こされるまで、ひな壇で爆睡をしているとは言語道断。演説の中身がなかったのか、支持率が戻ってきて安心したのか、ただ疲れていたのかわかりませんが、新政権のスタートの日に、ましてや口蹄疫問題を初め難問が山積する中、余りの緊張感の欠如に驚きと憤りを感じた次第であります。

 もっとも、菅総理も、財務大臣時代、予算委員会でしょっちゅう居眠りをしておりましたから、部下を注意することはできないかもしれませんが、これでは、鳩山ルーピー内閣から菅スリーピー内閣へバトンタッチをしたと国民からやゆをされても仕方ありません。猛省を促すものであります。

 次に、郵政問題に移ります。

 先週、突如として、亀井金融・郵政担当大臣が辞任をいたしました。私は、四月のこの本会議の壇上で、鳩山政権は五月末に行き詰まることを予測し、ツルは千年、カメは万年、ハトは一年と申し上げました。事実そうなったのですが、今回、ハトだけでなく、カメも一年であったことに大変驚いております。

 去る六月四日の民主党と国民新党との連立合意で、現在国会で審議中の郵政改革法案については速やかにその成立を期すとし、菅総理は、百丁目百番地までともに歩む、こう明言していたにもかかわらず、わずか六日後に平気で約束をほごにいたしました。

 さらに、今回の辞任劇は、大臣がやめても連立は維持という不可解かつこそくな目くらましであり、連立政権が何よりも選挙を優先させていることの証左であります。このような約束違反を繰り返していたら、国民新党は離脱しなくても、国民の心は早晩離脱するでありましょう。

 二〇〇五年総選挙において国民の大多数が支持をした郵政民営化は、まだ道半ばであります。しかし、本法案は、郵貯と簡保の限度額の拡大を含め、官から民へという郵政民営化の本旨に逆行するだけでなく、二百七十兆円もの資産を抱える巨大な官製金融をさらに肥大化させ、その結果、民業圧迫になることは火を見るよりも明らかであります。

 また、郵貯は資金の約八割を国債で運用し、簡保を合わせると二百兆円を上回りますが、さらにこの国債の受け皿が大きくなることは、不断の無駄の削減や天下り根絶、独立行政法人等の改革が停滞することも危惧されます。

 総理、あなたは、この郵政民営化を後退させ、国営に戻す法案を通すおつもりなのでしょうか。民間の力を生かし、強い経済を目指すという主張と矛盾するのではないでしょうか。明確にお答えください。

 政権交代からの九カ月半、多くの国民の皆様が民主党政権下で目にしたのは、政治と金の問題、普天間基地移設問題での鳩山総理のリーダーシップの欠如、数の力に物を言わせた強引な国会運営でありました。衆議院において、憲政史上例を見ない十回連続の強行採決をしたにもかかわらず、法案の成立率は六割、自民党時代の九割と比べれば大きな開きがあります。

 きょう現在、郵政改革法や地球温暖化対策法、国家公務員法を初め、議員立法を含めると六十本以上の未処理法案があります。にもかかわらず、国会を閉じてしまうのでしょうか。政権のぼろが出ないうちに選挙をやってしまおうということであれば、国民生活を度外視した党利党略以外の何物でもありません。総理には、一国のリーダーとして、このような暴挙を厳に慎むよう申し上げ、かつ見解をお伺いいたします。

 先ほど谷垣総裁も触れましたが、本日の与党の蛮行は断じて許されるものではありません。衆参一日ずつの予算委員会の開会という、この提案を突如撤回して、予算委員会を開催することもなく、会期延長もなしで今国会を閉じるという、まさに一方的な通告であります。

 このような暴挙は、予算委員会における我々野党の追及に耐えられないという与党側の事情によるものであり、特に荒井国家戦略担当大臣の事務所費の問題についての追及をかわしたいという、まさに疑惑隠しの意図丸出しの蛮行と断ぜざるを得ません。

 荒井大臣に伺います。

 北海道が選挙区の荒井大臣が、荒井さとし政治活動後援会を北海道からも国会からも離れた府中市になぜ置いていたのでしょうか。特に、知事選に出馬をし落選後の二年間、事もあろうに菅総理の選挙区である府中市に事務所を置いた理由を明確にお答えください。

 また、荒井大臣は、後援会の事務所費経費について、議員会館で使った備品のリース料などの雑費と説明されているようですが、これは事実でしょうか。荒井さとし政治活動後援会では、大臣が議員会館を使用していない時期の二〇〇七年及び二〇〇八年の備品・消耗品費や事務所費も計上しております。御自身の説明と明らかに食い違っていますが、事実関係をここで明らかにしていただきたい。

 また、報道によれば、公開した領収書の中に明らかに政治活動にそぐわない出費が含まれていたことについて、荒井大臣は、秘書が自費で買ったレシートが混入したと釈明し、政治資金収支報告書の修正を検討されているとの報道がございますが、これはどちらが事実なのでしょうか。

 荒井大臣が公開したとされる領収書が実際の支出と違っていた以上、民主党の内部調査の信頼性は完全に損なわれたと言える、こう思いますが、菅総理の御所見を伺います。

 政治家の資金問題に関しては、政治家自身が責任を持って説明すべきではないでしょうか。やましいところが全くないのであれば、荒井さとし政治活動後援会の領収書や帳簿を、たった二時間の時間限定というこそくな手段で公開するようなことなく、全面的に公開すればいいのではありませんか。総理の見解を伺います。もし、そのようなことすらできないのであれば、即刻辞任すべきであり、任命権者の総理の見解を伺います。

 わずかこの一年の間に、民主党だけで、鳩山前総理、小沢前幹事長、石川知裕衆議院議員、小林千代美衆議院議員と、四人もの現職国会議員の名前が取りざたされ、本人や秘書などの関係者の逮捕、起訴が十名にも及ぶという、憲政史上まれに見る異常な事態が重なりました。

 一日五十万円もの子ども手当をもらっていた鳩山前総理の件にしても、捜査が終われば資料を出すと予算委員会で総理御自身が答弁しながら、いまだに提出されておりません。

 小沢前幹事長については、検察審査会が異例の起訴相当の決議を行いました。検察は最終的に不起訴処分としましたが、国会の場できちんと説明することが国会議員の責務であり、何もやましいところがないのであれば、証人喚問を通じて堂々と国民の皆様の前で身の潔白を証明するべきであります。

 最近のマスコミの世論調査では、内閣及び民主党に対する支持はV字復活を示しておりますが、これは同時に、菅総理による脱小沢、小沢隠しが功を奏した、そういうマスコミの論評もございます。

 しかしながら、閣僚、党役員人事を見ますと、よろいの下に小沢前幹事長の影が見え隠れしていることは、だれの目から見ても明らかであります。反小沢の急先鋒と言われた枝野幹事長でさえ、就任前と打って変わり、小沢前幹事長について、幹事長職を辞したことで政治責任を果たした、かつ、法的責任については防御権があると擁護に転じ、今や小沢前幹事長に選挙協力を依頼するありさまであります。

 菅総理の言われる、小沢さん御自身の御判断とか幹事長の辞任でけじめがついているというのであれば、国民感覚からすると到底納得できませんし、そもそも一つの政党の役職を辞することが本当にけじめと言えるんでしょうか。疑惑を晴らすためにも、国民の七割がやるべしと求めている証人喚問を直ちに行うべきであります。菅総理、この点、イエスかノーかではっきりとお答えください。

 総理は、代表選への立候補記者会見で、小沢前幹事長について、しばらくは静かにしていただいた方が、御本人にとっても、民主党にとっても、日本の政治にとってもよいのではないかと言われましたが、他党の私から見ても、国民の代表である国会議員の言動を封ずるかのような発言はいかがなものかと考えます。それとも、証人喚問は必要ないと言外におっしゃっているんでしょうか。この発言の真意を伺います。

 また、総理は、六月四日、代表選前の演説で、政治と金の問題について、私も一〇〇%真っ白というところまで自信はありませんがと発言をしておられます。またお遍路に行かなければならないような、やましいことでもあるのでしょうか。総理御自身、どのような意味で発言をされたのか、お聞かせください。

 次に、安全保障について伺います。

 我が国が資源外交を展開し、繁栄を築いていくためには、安全保障の確立は必須の課題であります。

 日米同盟は、北朝鮮の核の脅威を抱える我が日本の防衛、そしてアジア太平洋の平和とその繁栄の基盤であり、それゆえ、普天間問題の早期解決は喫緊の課題であります。

 しかし、鳩山政権の九カ月間は、米国側の卓越した大人の対応に助けられたものの、戦後日本がこつこつ築き上げてきた国際的信用を失墜させました。

 にもかかわらず、この普天間問題に財務大臣だから無関係とほっかむりをしてきた菅総理を初め、関係する三閣僚が同じポストに留任していること、まさに不可解であり、そして、一つの内閣をつぶした問題に深く関与していた大臣がそのまま居座るということについて、みずからも含め、総理は政治的道義的責任をどう国民の皆様に説明をされるのでしょうか、お答えください。

 一方、我が国の安全保障の脅威の一つは北朝鮮であります。

 ミサイル実験の強行や韓国哨戒艦沈没事件など、いまだ東アジア、世界の平和に暗い影を落としております。もちろん、一日も早い拉致問題の解決は、国の根幹にかかわる大変重要な課題であり、全国民の願いでもあります。

 ところが、菅総理は、過去に、日本人の拉致実行犯である辛光洙元死刑囚の釈放要望書に署名しております。現国会議員で署名したのはたった二人、総理ともう一人、千葉現法務大臣であります。

 この件に関し、総理は、後に知らなかったと答えておりますが、それ直前にマスコミでも報道され、国会でも取り上げられたにもかかわらず、知らなかったとどうして言えるんでしょうか。

 日本のトップと法を扱う最高責任者がともに拉致実行犯の釈放署名にサインをしていたということは極めて重要な問題であり、これで本当に拉致問題の解決が前に進むのでしょうか。菅総理、いついかなる状況で、なぜ署名したのか、その理由をお聞かせください。

 加えて、一九九九年の国旗・国歌法案の採決で、菅総理、あなたは反対されましたね。私たちは決して忘れておりません。この本会議場にも国旗があります。国をとうとぶ心のない者に国民の生命と財産を守る総理の資格などありません。この法案に反対された理由と、反対した人でも総理の資質があるかどうか、菅総理の御所見をお伺いいたします。

 次に、昨年の総選挙における民主党のマニフェストについてでありますが、子ども手当は満額支給断念、やると言った暫定税率の廃止もやらない、無料化と言っていた高速道路は一部値上げ、マニフェスト違反のオンパレードであります。

 ここに来て、総理や閣僚が口々にマニフェストの修正を言い出しましたが、先ほど、参議院選挙で信を問うべきと菅総理は言われました。しかし、それでは筋が通りません。直ちに衆参同日選挙を断行するお考えはありませんでしょうか。

 次に、これも所信表明演説から抜けておりましたが、総理は、就任記者会見で、政治の役割は最小不幸の社会をつくることと力説しました。

 確かに、民主党の目玉政策である子ども手当、高校授業料無償化、農家の戸別所得補償など、手元に現金が行くことは、当面の最小不幸につながるかもしれません。しかしながら、この考え方は、我が党が唱えている、効率的な成長戦略によって経済のパイを拡大するという考え方とは違い、富める者から貧しい者への富の再分配に重点を置く、いわゆる社会主義的な発想であります。しかも、このばらまき政策の原資は、当初、予算の組み替えと税金の無駄を改めることで十六・八兆円の財源を捻出し充てると言っていたのが、ほとんどかなわず、国債などの借金に依存する結果となりました。

 今を生きる人々にとっては最小不幸社会かもしれません。しかし、子や孫の将来世代は財政的児童虐待によって最大不幸社会に陥るのではないかという不安を感じているのは、私だけではないはずです。

 総理の言う最小不幸社会と、もう一つ提唱されている強い財政との両立は可能なのでしょうか。御見解をお伺いいたします。

 さらに、菅総理は、強い社会保障を掲げました。

 ところが、先般、年金制度改革の基本原則に関する報道では、マニフェストで掲げた最低保障年金月額七万円の金額が明記されていないだけでなく、制度設計の基本となる保険料、新制度への移行期限、肝心の税財源があいまいであるなど、具体論が見えないとの問題点が指摘をされております。

 医療制度についても、関係者の合意なく、協会けんぽの被保険者であるサラリーマン等の負担増による高齢者医療制度のその場限りの対応をしており、ふえ続ける医療費をどう負担していくのか、しんの通った方針が全く見えません。

 介護についても、ふえ続ける需要に供給サービスが追いつかない状態へいかなる対策が必要なのか、この点も不明であります。

 一方、我々自由民主党は、働きながら子育てしやすい環境整備を進め、保育園の大幅な整備、そして不妊治療対策などの少子化対策を進めながら、年金制度については、安定的財源を確保しつつ現行の社会保険方式に改良を加え、医療制度については、医療費の増加を適正化しつつ、負担のあり方を不断に見直す方針を堅持し、がん対策や救急医療対策の拡充に努め、さらに介護については、介護報酬をアップしマンパワーの確保等供給力の拡充に努めてまいりました。より安定した信頼できる社会保障を築いてまいります。

 総理の所信表明には、社会保障と成長戦略のリンクに関するお話はございましたが、年金、医療、介護についてはたった四行で、全く具体像がございませんでした。あなたの言う強い社会保障とは、経済面だけのことなのでしょうか。お伺いいたします。

 そして、今、社会保障や財政の持続可能性を確保するためには、不都合な数字の真実から逃れることはできません。我が党は、今回、マニフェストにも明記いたしますが、徹底した歳出削減と無駄撲滅をした上で、消費税の引き上げを含む税制抜本改革に真っ正面から取り組む覚悟であり、最小不幸社会というネガティブな考え方ではなく、若い世代が将来に向けこの日本に夢と希望が持てる、自助自立による最大幸福社会を目指します。

 種々の意見の相違はありますが、社会保障の問題解決がおくれることによる最大の被害者は、国民の皆様であります。国民の将来不安を解消することは政治の一番大事な仕事であり、この分野は政争の具にしてはならないと考えます。

 総理も、先日の所信表明演説で、我々に財政健全化検討会議の設置を呼びかけました。しかし、総理、呼びかける前に、選挙目当てのばらまき政策をやめることが大前提であります。そして、国の資産の整理、売却を進め、天下りを根絶し、税金の無駄遣いをやめさせること、さらには、雇用、年金、医療、介護等に関する具体像を提示していただきたい。このことがまず先決であります。そして、その上で、総理は、消費税引き上げを今回の参議院選挙のマニフェストに盛り込む覚悟があるのかどうか、あるとするならば、時期と率を明確にお答えください。

 我が党は、昨年の総選挙における敗北の反省に立ち、新たに策定された綱領と立党以来守り続けてきた自由と民主の旗のもとに、改めるものは改め、維持すべきものは守り、秩序の中に進歩を求め、国際的責務を果たす日本らしい日本の保守主義を政治の理念として掲げました。

 また、近々発表する参議院選挙公約に、恒久政策には恒久財源、頑張る人、頑張った人が報われる社会、手当よりも仕事などを柱とする、ばらまきではなく、生活力アップにつながる政策を具現化してまいります。

 このまま本質が変わることなく民主党政権が続けば、家族、地域、国が崩壊しかねない不安や財政破綻、債務残高の発散等、ギリシャ以上に国民生活が最悪のシナリオをたどることも危惧され、まさに一刻の猶予もありません。参議院選挙で我々は必ず勝利をおさめ、政権奪還への序章としてまいります。

 総理は、記者会見において、みずからの内閣を奇兵隊内閣と評されました。奇兵隊は、身分制度にとらわれない武士階級と農民、町民から成る混成部隊として、高杉晋作によって発案、組織され、幕末の動乱の中、多大な成果を上げました。一方で、奇兵隊は大変動きが機敏であったことで有名ですが、総理は、会見で、逃げ足が速いと言われました。その意味でいえば、総理、あなたと全く同じではありませんか。

 ことしの元旦、小沢邸の新年会で最前列に座っていた、そしてその当時の幹事長に恭順の意を示していたかと思えば、総理になった途端、今度は脱小沢ですか。さすが平成の奇兵隊隊長の面目躍如と言えましょう。ただし、国民生活のかかる政権の重責から逃げるようなことはしないでいただきたい。

 私は、ごく普通の家庭に生まれ、サラリーマンを約十年間経験いたしました。三十一歳のときには、父の会社が他社の借金の保証人になったことがきっかけで倒産し、自宅を初めすべてを失うというささやかな経験をいたしました。

 自殺者が年間三万人を超える中、日々の暮らしがどうなるのか、これが国民の皆様の一番の関心事であると痛感いたしております。

 若者や障害のある方々の雇用の確保と、幾つになっても健康で働ける社会、そしてだれもが挑戦を続けられるその環境づくりのために全力で取り組んでまいります。

 一方で、我々自由民主党も、国民の皆様の信頼を取り戻すべく、変わらなければなりません。私のような三回生が代表質問に登壇させていただけること自体、まさにその過渡期であり、本気で変わるとの強い信念に基づき、自民党は変わったと国民の皆様に感じていただけるよう、一丸となって直往邁進してまいります。

 幕末の志士で、勝海舟らと並び幕末の三舟と称されている山岡鉄舟は、あの西郷隆盛をして、金も要らぬ、名誉も要らぬ、命も要らぬ人は始末に困るが、そのような人でなければ天下の偉業はなし遂げられないと言わしめた人物であり、江戸城無血開城など、身命を賭して日本の夜明けに奔走しました。

 私も、日本を覆っている閉塞感を打破すべく、次代の日本の夜明けに向け、命も要らず、名も要らずという山岡鉄舟の気概を持って、国会という主戦場で代議してまいりますことをお誓い申し上げ、代表質問とさせていただきます。

 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 菅原一秀議員にお答えを申し上げます。

 まず、口蹄疫に関してであります。

 私、八日に正式に総理に就任いたしまして、十二日の土曜日に宮崎に出かけまして、永野さんという畜産農家の皆さん、近所の方数名とお会いいたしました。

 菅原さんも言われていますが、本当に何十年とかけて、いい牛を、種牛を育てられて、それをすべて殺処分にしなければならないというお話を聞いて、本当に涙が出る思いもいたしました。

 それだけに、まずは徹底的に感染拡大をとめて、そしてその後、きちっと再建ができるように全力を挙げたいと申し上げてきたところであります。

 国会延長については、これは国会の中で御議論をいただきたいと思います。

 郵政民営化の後退は強い経済と矛盾するという御指摘であります。

 郵政改革法案は、民営化で経営基盤が脆弱となったこと、その役務を郵便局で一体的に利用できないなど利便性が低下していることなどに対応するものでありまして、株式会社を前提として組織を再編するもので、公営とか国営に戻すものではありません。郵便インフラの強化などは強い経済に資するものとも考えております。

 また、六十本以上の未処理法案がある中でなぜ国会を閉じるのか、国民を度外視した党利党略ではないかという御指摘であります。

 基本的に、国会の運営については国会の各党各会派によって議論をされるものと承知をしておりますので、これ以上の発言は差し控えます。

 荒井大臣の問題については、民主党の内部調査の信頼性が問題だという御指摘であります。

 党の調査で架空計上など疑惑が事実でなかったとされ、そのことは党の顧問弁護士も確認していると聞いております。

 なお、不適切な支出があったことも指摘されており、訂正願を速やかに提出するとされております。これをもって党の調査の信頼性が損なわれたとは考えておりません。

 なお、本日午前、官房長官が荒井大臣に対して厳重注意を行ったということは、先ほどお答えしたとおりであります。

 荒井大臣の領収書や帳簿を全面的に公開すべきという御趣旨でありますが、帳簿の控えは、たしか、報道記者の皆さんにも配付したと承知をしておりますし、領収書等も閲覧に供したと聞いております。

 過去、自民党も含めて、領収書のコピー配付をした例があるかどうかは私も詳しくは知りませんが、少なくとも、透明性と公開という点においては何ら問題がないと考えております。

 辞任すべきとの主張については、全く同意できません。

 小沢前幹事長の政治と金の問題に関する証人喚問をすべきということについてでありますが、この問題については、各党各会派の議論に基づき、国会でお決めいただく問題だと思っております。私としては、それ以上のことを申し上げることは控えたいと思います。

 総理の、しばらく静かにしていただいた方が、本人にとっても、民主党にとっても、日本の政治にとってもいいのではないかという発言について、いろいろ御質問がありました。

 私も、二〇〇四年に年金未納、後で間違いだとわかりましたけれども、そのときに責任をとって辞任をいたしました。

 一般的に、責任をとって辞任した後はしばらくはおとなしくしているというのはごく自然なことだと私自身思っておりましたので、その趣旨のことを申し上げたわけであります。

 小沢前幹事長は、みずから決断をして幹事長を辞任されたわけであります。何か、党の役員を辞任することは余り大したことはないような趣旨のことも言われましたが、私は、そういうふうには思いません。大変重い政治的意味を持っていると思います。

 小沢氏の問題については、検察審査会で議論がされている最中でありまして、これ以上、総理としての発言は慎むべきと思っております。

 代表選挙の演説で、私も一〇〇%真っ白というところまでは自信はありませんがということを聞かれました。

 これは、この問題に限りませんが、一〇〇%私は正しいとか、一〇〇%生まれてこの方悪いことは一切していませんと言える人があるとすれば、それは神様ぐらいでありまして、残念ながら、私にはその自信がありませんので、このように申し上げたところであります。

 普天間基地移設問題に関する副総理としての責任と関係閣僚の留任についてということであります。

 これは先ほども申し上げましたように、私も、個人的には総理に多少の意見は申し上げておりましたが、担当する役割として、総理から経済財政の方を仰せつかっていた関係もあります。また、関係閣僚の留任については、先ほど申し上げたように、まさに適材適所の方だと思って留任をしていただきました。

 辛光洙元死刑囚の釈放要望書への署名について御質問をいただきました。

 この問題は、かつて安倍総理が官房長官時代にNHK討論の場でも質問をされ、また、最近では、岸参議院議員が参議院の委員会の場でも質問をされ、私からしっかりとお答えをさせていただきましたが、きょうもわざわざ御質問いただきましたので、経緯を申し上げておきたいと思います。

 かなり以前なんですけれども、全斗煥大統領が来日をされるという前に、在日韓国人であった皆さんの中で、韓国で民主化運動をやっていて、逮捕され、死刑の判決を受けた方などがおられたところ、当時の社会党土井たか子委員長が、そういう在日韓国人で、大学生などで、そういう民主化運動で逮捕され、死刑判決を受けた人の助命嘆願をしたいという趣旨で、関係する社会党はもとより、公明党、そして、私は当時社民連という政党におりましたが、社民連の皆さんに声をかけられたと記憶しております。

 当時、社民連は田英夫さんが党首で、私はまだ一年坊主か二年坊主のころでありましたが、そうした趣旨だということを、つまりは、そうした在日韓国人の民主化運動によって逮捕された人に対する釈放要求だということの趣旨でありましたので、署名をさせていただきました。

 その後、その署名対象の中に工作員の辛光洙が入っていたということで、これは、私が十分に確かめることができなくて署名したことは、これは私の間違いでありましたので、そのことについては従来から間違いであったことを反省いたしているところであります。

 国旗・国歌についてもいろいろと言われましたが、もっと早く聞かれていれば、当時のことをもっと細かく改めて見直したんですが、何しろ十五分前の質問ですので、私の記憶に沿ってお答えをいたします。

 たしか、当時、私のおりました党で、国旗については法制化することを賛成というか、提案をいたしました。しかし、私は当時野党でしたが、当時の与党は国旗・国歌一体での採決ということになりまして、当時、たしか旧民主党の時代だったかと思いますが、自主投票という扱いをいたしまして、私は、国旗はあの国旗が大好きでありますし、国歌も決して嫌いなわけではありませんけれども、もっと元気のいい国歌であってもいいかなという意見もありまして、そういう意味で、自主投票という中でそちらの法案には賛成をしなかったというのが経緯、事実上の経緯を申し上げているので、よくお聞きをいただきたいと思っております。

 今、私は常に、国旗があるところではきちんと国旗に対して敬意をあらわし、国歌斉唱の折には皆さんとともに国歌斉唱をいたしていることは、もちろんのことであります。

 マニフェストの修正は筋が通らない、あくまで衆議院でマニフェスト自身を問うべきという御趣旨であります。

 いろいろな物の考え方はあるかもしれませんが、この間、ギリシャの問題も新たに起きました。また、リーマン・ショック以降の経済の変化もあります。そういった中で、税収の大幅落ち込みなどを含めて、参議院選挙において、従来のマニフェストに沿ったものもありますし、若干修正したものも出てくるかと思いますが、それを政権公約として参議院選挙で国民にお示しをするということは、まさに判断するのは国民の皆さんですから、そうした形で御審判をいただくのは当然のことだと思っております。

 また、私の申し上げている最小不幸社会ということについて、あるいは若干の誤解があるのかもしれません。

 つまり、私が申し上げているのは、政治というのは権力ですから、あなたはこうすることが幸福ですよと言われても、必ずしも、それが幸福だと思う人と思わない人が当然あるわけですから、逆に言えば、不幸になるというのは、例えば両親が亡くなったとか、いろいろな理由で不幸になる要素がある。そういう不幸になる要素を政治の力で少なくしていくこと、できるだけなくしていくことが私は政治の責任だと思って、この言葉を使わせていただいているわけであります。

 こういった意味で、特にこのことが強い財政と両立をしないとは全く思っておりません。

 また、強い社会保障とは経済面だけのことなのかと言われておりますけれども、もちろん経済にかかわる問題も多いわけですが、先日所信表明でも申し上げましたように、今、新たに日本社会には孤立化という問題が、私は非常に大きな問題だと思っております。

 つまりは、体を壊したお年寄りが地域社会の中で孤立してしまう、あるいは若い人も友達がいない。やはり、家族や地域社会や企業がそれをフォローしてきた社会から変わってきておりますので、こうした孤立化を招かないで済むような社会をつくっていくということで、一人一人を包摂する社会の実現、これも社会保障としては大変重要なことであり、鳩山前総理が言われた新しい公共の考え方がまさにここに必要だと思っております。

 消費税引き上げをマニフェストに盛り込むのかということでありますけれども、消費税については何らかの表現が盛り込まれるというふうに承知をいたしております。ぜひとも期待をいただきたいと思っております。

 なお、いろいろ、それ以外にも言われましたけれども、とにかく十五分間で準備をしたものですから、多少の答弁漏れがあるとすればお許しをいただきたいと思います。

 最後に、私がお正月に小沢前幹事長のお宅に行ったことについていろいろとおもしろく言っていただきましたが、二〇〇三年に、私が代表のときに、当時の小沢代表率いる自由党と合併をいたしました。そして、その翌年の二〇〇四年から、小沢代表のお宅で正月に新年会が開かれるときには、一度も欠かさず顔を出させていただいております。

 それは、私としては、ある方から、合併をしたときに、名称も政策も人事もすべて従来の民主党のままでいいと当時の小沢代表に言っていただきました、しかし、その場合に、形としては吸収合併でしたから、やはり吸収合併をした方が辞を低くして、特に先輩議員でありますから、先輩である小沢さんに教えを請うという姿勢をとられることがいいですよと。私もそう思いましたから、それを実践しているのが今日まで続いているということでありまして、決してことしだけ行ったということではないということだけははっきり申し上げておきます。(拍手)

    〔国務大臣荒井聰君登壇〕

国務大臣(荒井聰君) お答えいたします。

 府中に私の後援会の事務所をなぜ置いたのかという御質問でありますが、政治団体の事務所を東京に置きましたのは、私が北海道だけではなく東京でも活動していたからであります。また、府中市に置いたのは、事務所の機能を担っていただける場所が当時からほかに心当たりがなく、私の友人である幼なじみの方が快く引き受けていただいたからでございます。

 次に、備品計上についてでありますが、六月十一日の会見において既に御説明させていただいたところでございますが、議員会館で使ったものと限定して御説明した覚えはございません。したがいまして、私が議員会館を使用していない時期に、荒井さとし政治活動後援会の活動に伴って支出した備品・消耗品費を当然計上してございます。

 次に、収支報告書の修正の件でありますが、既にこれも六月十一日の会見において明らかにしてございますが、現在、弁護士事務所や監査事務所で領収書のチェックなどを行っていただいております。その結果を待って、必要があれば修正申告する所存でございます。

 いずれにいたしましても、過去の事務所経費の問題、使途不明金が多かったとか、表に出せない金を隠すため領収書が公開できないといったような問題とは本質的に違うということを申し上げさせていただきます。(拍手)

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) この際、十分間休憩いたします。

    午後二時五十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時七分開議

副議長(衛藤征士郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。

     ――――◇―――――

副議長(衛藤征士郎君) 私は、副議長として、自戒と自責の念を持って、一言発言いたします。

 国会は、国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関である、これは憲法第四十一条の規定であります。

 私は、あえて議員各位に申し上げます。

 私たちの諸先輩が営々として構築した国会の権威と権限、そして、国会の誇りと国会議員としての矜持を堅持して、国民の信頼と負託にこたえ得る厳正な国会運営を強く要請いたします。(拍手)

     ――――◇―――――

副議長(衛藤征士郎君) それでは、議事を進行いたします。

 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。井上義久君。

    〔井上義久君登壇〕

井上義久君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました菅総理の所信表明演説に対し、質問します。(拍手)

 鳩山前総理は、辞任の理由として、普天間基地と、政治と金の二つを挙げました。確かに、これも大きな要素です。しかし、本質的な原因は、この九カ月間にわたる鳩山内閣の政権運営の失敗に尽きると私は思います。

 菅総理、あなたは、鳩山政権では、副総理として、そして国家戦略担当大臣、財務大臣と、まさに政権運営のかなめにありました。九カ月間、政権運営をともに担ってきたわけで、いわゆる鳩山、小沢、菅のトロイカ体制の一人として、あなたには、前政権の失政に大きな責任があります。

 第一は、成長戦略や財政健全化の道筋を内閣として示すことができなかった責任。これは極めて致命的な問題です。

 第二は、昨年十一月にみずからデフレ宣言をしておきながら、今日まで肝心のデフレを克服するための対策を提示できなかった責任。まさにデフレ対策なしのデフレ宣言です。

 そして第三は、マニフェストに掲げた施策に必要な財源を予算の組み替えや無駄の削減などでいとも簡単に捻出できると公言しながら、結局、財源なき施策を積み重ね、今年度の予算編成では過去最悪の四十四兆円を超える膨大な国債を発行、借金を膨らませた責任です。

 そして、普天間基地、政治と金の問題では、副総理として何の汗をかくこともなく、ただただ沈黙を守り、みずからの責任を果たそうとされませんでした。鳩山、小沢両氏は辞任をいたしましたが、総理、あなたはどう責任をとりますか。お答えください。

 そもそも今の内閣は、鳩山前内閣が行き詰まった結果、看板をかけかえたにすぎません。まさに参院選向けの首相交代劇そのものです。

 菅総理、あなたは、かつて、総理の首のすげかえに対し、やめざるを得なかった首相を支え切れなかった人にリーダーシップはないと批判をし、政権が行き詰まったら衆議院を解散すればいいんですよとの趣旨の発言をされました。立場が変わるとこのような言々を簡単に翻すのですか。まさに御都合主義ではありませんか。

 トップをかえるだけで政権を続けるのは正統性に欠けます。ましてや今回の政権のたらい回しは、まやかしのマニフェストで政権を獲得した国民だまし政権であり、今後、政策転換をするのであれば、国民からの新たな負託が必要なのは当然です。

 鳩山前総理は、言葉の軽さから国民の信頼を失いました。国民に約束をする、できなければいとも簡単に謝罪をする、しかし責任はとらない。この繰り返しが国民の政治への信頼を失墜させたのではありませんか。

 総理、あなたは、言葉に責任を持つという意味をどのようにお考えなのですか。お答えください。

 以下、当面する政策課題について質問します。

 まず、政治と金の問題について伺います。

 副総理だった当時、あなたは、鳩山、小沢両氏の政治と金の問題について、なぜ国民に対し説明責任を果たすよう助言できなかったのでしょうか。副総理という要職だったにもかかわらず積極的な発言がなかったということは、結果として不祥事を容認していたと言わざるを得ません。その責任をどう認識されているのか、まず国民の前に明らかにすべきだと申し上げたい。

 鳩山氏については、十二億円にも上る資金の使い道や自身の関与の有無など未解明なままです。鳩山氏は、三月三日の予算委員会では、裁判が終われば書類の返還を求めて皆様方に見ていただきたいと答弁されました。ところが、四月二十一日の党首討論では、資料の提出は必要ないと前言を翻しました。総理は、こうした答弁の変遷を見て、果たして説明責任が果たされたとお考えですか。

 また、総理は、民主党代表選の出馬会見で、小沢氏について、幹事長も国民のある種の不信を招いたことで、少なくともしばらくは静かにしていただいた方が、本人にとっても、民主党にとっても、日本の政治にとってもいいのではないかと発言されました。問題があったと認めながら静かにしろと言う、これこそ疑惑隠し以外の何物でもありません。とりわけ、日本の政治にとってもいいとまで言われましたが、では、小沢氏の何が問題だったのか、明確にお答えください。

 小沢氏については、資金の出所など、今もって全く説明責任が果たされていません。予算委員会での集中審議はもちろん、参考人招致、証人喚問も視野に入れて解明すべきであると考えます。クリーンと言うなら、総理は民主党の代表として党にその実現を指示すべきであります。

 さらに、小沢氏の元秘書で逮捕、起訴された石川知裕衆議院議員、そして、北海道教職員組合から違法な企業・団体献金を受け取り、選挙対策の資金管理責任者に有罪判決が下った小林千代美衆議院議員、この二人に対する辞職勧告決議案も民主党の反対で宙に浮いたままです。

 総理、辞職勧告決議案を採決すべきだと思いますが、いかがでしょうか。それができないというなら、菅政権は政治と金の疑惑隠し内閣と断ぜざるを得ません。明確にお答えください。

 政治と金の問題では、再発防止策をしっかりつくり上げなければなりません。

 公明党は、既に、政治家の監督責任を強化する政治資金規正法改正案を今国会に提出。審議に入っており、何としても今国会で成立させるべきです。総理、いかがですか。さらに、企業・団体献金の全面禁止についても、そのための協議機関設置の提案に対して、鳩山前総理は前向きの答弁をされています。総理、再発防止策をしっかりやろうではありませんか。答弁を求めます。

 荒井国家戦略担当大臣の事務所費問題について伺います。

 公表された事務所費経費の領収書によれば、漫画本、マッサージ料金、女性用の下着、トランクス、靴下などが含まれており、政治家の後援会の事務所経費としては極めて不適切であり、私的な使用と受けとめられてもやむを得ません。

 新内閣がスタートしたばかりなのに、またしても政治と金の問題ですか。そして、またも疑惑隠しですか。総理、国民に納得いく説明責任を本人からさせてください。結局、鳩山政権時代の体質をそのまま引きずっているのではないでしょうか。

 総理、このまま国家戦略担当大臣という重要な職に引き続き据え置いていいのですか。本当に国家戦略を立てられるのですか。本来、景気や雇用対策、待ったなしの介護問題など国民生活に直結した問題を議論すべきなのに、またこうした政治と金の問題を取り上げざるを得ないのはまことに残念です。

 総理、そして荒井国家戦略担当大臣、事務所費問題について、国民に納得いく、責任ある答弁をしてください。

 与党側は、これまで衆参で予算委員会の開催を提案しておきながら、けさの国会対策委員長会談で一方的にこれを撤回し、この代表質問でこの国会を強引に閉じるという暴挙に出たことは、まことに遺憾です。

 菅総理は、山積する重要課題に対し、新しい総理としてどう取り組むのか、少しでも明らかにする機会を設けるべきです。政治と金の問題についても、再発防止策を含め、今国会で決着を図るべきです。それとも、荒井大臣の事務所費問題を含め、ぼろを出したくないということでしょうか。

 我々は堂々と論戦を挑んでまいる決意です。総理、逃げてはいけません。国民のために、きちんと議論しようではありませんか。それとも、争点を明確にして国民の審判を受ける自信がないのですか。そうでないなら、総理は党代表として予算委員会を開催するよう指導力を発揮すべきです。御答弁いただきたい。

 次に、普天間基地問題についてお伺いいたします。

 鳩山前政権の失政により、地元沖縄県の皆様方の心は踏みにじられ、今や民意は期待から怒りへと変わり、解決への道のりはより困難なものとなってしまいました。その責任は重大です。

 菅内閣は、引き続き日米共同声明を遵守するとしていますが、八月末までに代替施設の位置、配置及び工法に関する検討は本当に完了できるのでしょうか。普天間基地の危険性の除去と地元の皆様方の信頼を回復するために、総理はどのような努力をされるのでしょうか。今や、普天間協議会という地元と緊密に協議を重ねてきた受け皿も、事実上機能停止しております。沖縄県民の頭越しではなく、丁寧な協議が不可欠です。

 総理はこの問題へどのように対処されるのですか。所信表明では具体的な言及が全くありませんでした。お答えください。

 一方、総理は、かつて、民主党の幹事長であった二〇〇一年の参議院選挙の際、応援に訪れた沖縄で、沖縄駐留の米海兵隊について、即座にアメリカの領域内に戻ってもらっていいんじゃないか、民主党が政権をとったときはアメリカに提示すると、海兵隊不要論の発言をされました。この考えを今も堅持されているのですか。それとも、鳩山前総理と同じように、最近抑止力の必要を学ばれて方針を変えたのですか。お答えください。

 景気・経済政策に関して質問をいたします。

 菅総理は、鳩山前内閣の経済政策のかなめにおられました。しかし、九カ月間にわたり、鳩山前総理のリーダーシップはおろか、経済政策の司令塔も不在の中で、成長戦略も財政再建への道筋も何も進まないまま、時間だけ空費してしまったと言っても過言ではありません。

 まずは、平成二十二年度予算。歳出を抜本的に組み替えるという意気込みもむなしく、事業仕分けで生み出せた財源はごくわずか。また、一時的な財源である、いわゆる埋蔵金をかき集めても、マニフェスト至上主義で大幅に膨らんだ歳出の財源を十分に確保できず、結局は、国の税収を大きく上回る、四十四兆円を超える巨額の借金をつくる結果になりました。

 国民との約束を裏切ったマニフェスト違反の数々も問題です。

 ガソリン税などの暫定税率の廃止。当時の小沢幹事長のツルの一声で、あっさり撤回されました。

 高校生の特定扶養控除。マニフェストで維持すると明言したものの、縮減されました。十五歳以下の年少扶養控除も、国税だけのはずが地方税も廃止。いずれも明白な公約違反です。

 さらには、高速道路の無料化についても、これまた小沢前幹事長のツルの一声で、その財源の一部が高速道路建設に充てられることとなり、方針も大幅に後退。一律二千円という多くの国民にとって負担増となる案も、民主党内からの反乱に遭って、これまた頓挫。余りにもぶざまな混乱ぶりではありませんか。

 数え上げれば切りがありません。その原因は、突き詰めれば、選挙目当ての無責任な民主党マニフェストそのものにあるのではありませんか。私は、鳩山前内閣は、国民だまし政権であったと総括するものであります。

 菅総理、鳩山前総理の後を引き継いだあなたがまずなすべきことは、これらの公約違反について総括をし、その上で、国民に対し、その事実を率直におわびすることなのではありませんか。民主党政権における数々の公約違反について、総理の認識を伺います。

 以下、総理の経済政策の基本的な考え方について、端的に質問いたします。

 初めに、当面の景気、経済についてです。

 足元の景気は、昨年の私たちの政権によって実施、継続されたエコカー減税・補助金、家電エコポイントなどの景気対策の効果、及び中国など新興国向けの輸出に支えられ、最悪期は脱したものと認識をしております。

 しかし、雇用情勢は依然として厳しく、地方では、仕事がないという声が充満しております。

 ギリシャの財政危機に端を発した国際金融の混乱も続いており、なお景気には十分な目配りが必要と考えます。

 ところで、連立パートナーである国民新党は十一兆円規模の補正予算の編成を提案していますが、総理はどう評価しておられますか。今後、追加的な景気対策を打つことの必要性を含め、総理の考えをお聞かせ願いたい。

 民主党は、コンクリートから人へとして、公共投資を大幅に削減しました。しかし、公共事業は、すべて悪なのでしょうか。

 私は、そうは考えません。学校など公共施設の耐震化や太陽光発電装置の設置、さらには介護施設の拡充などは緊急の課題です。また、橋梁やトンネル、上下水道など、老朽化した施設の計画的な更新、大規模な修繕も生活の安全に欠かせません。

 私は、真に必要とされる二十一世紀型の公共投資は着実に整備していくべきであり、人に優しいコンクリートという考え方こそが目指すべき方向であると考えますが、総理はいかがですか。

 あわせて、報道によれば、コンクリートから人へのフレーズは民主党のマニフェストから削除されるとのことですが、事実かどうかも含め、総理の答弁を求めます。

 公明党は、鳩山前総理に対し、二十二年度当初予算で大幅に削減された学校の耐震化など、子供の命を守るための予算の復活を求めてきました。そして、鳩山前総理から、予備費を活用して、国会閉会後に着実に支出、執行する旨の確約を得ました。菅内閣も当然この方針を受け継ぎ、速やかに執行されると確信していますが、総理の明快な答弁を求めます。

 所信表明演説で、菅総理は、経済、財政、社会保障の一体的立て直しを強調されました。

 私たち公明党も、雇用の安定確保を基軸とした安心の社会保障・福祉の確立こそが日本の経済成長の基盤である、あわせて成長戦略による民需主導の経済成長の達成、そして財政健全化が重要であると考えております。

 何よりも大事なことは、スローガンにおぼれることなく、その具体化こそが重要です。しかし、残念ながら、演説では、強い社会保障と高らかにうたい上げる割には、年金改革をどうするのか、医療も介護もどう立て直すのか、全くその具体的中身が示されていないではありませんか。

 当面の景気回復をどうするのか、それを成長戦略にどうつなげていくのか、その上で、財政や社会保障の立て直しをどう進めていくのか、さらには一体的立て直しの考え方と具体的な工程表、道筋を示すべきです。総理の答弁を求めます。

 さて、近々、政府は、新成長戦略、中期財政フレーム、さらには中長期の財政健全化の道筋を示す財政運営戦略などを取りまとめるとのことですが、今の段階でこれらの具体的な内容について質問できないことは、まことに残念であります。

 その上で、三点指摘したい。

 そもそも取りまとめが遅過ぎます。これが第一の問題です。

 約九カ月間にわたり、政権内で真剣な議論がなされてきた形跡が見えません。これまで民主党が強く批判してきた、官僚主導の作文になってしまうのではないかとの懸念があります。これが第二の問題。

 さらには、民主党と国民新党との間で合意がつくれるのかどうか。これが第三の問題であります。

 いずれにしても、脱官僚、政治主導による整合性、説得性、そして実現性のある将来ビジョンが示されるのかどうか。具体性に乏しい場合には、国内だけでなく国外を含め、市場からレッドカードを突きつけられる可能性も否定できません。総理の答弁を求めます。

 総理は、マクロ経済運営の基本的な認識として、増税しても使い道を間違わなければ景気はよくなるとの考え方を述べられています。そして、就任直後の会見では、かつての政権は無駄な空港や公共投資など使い道が間違っていたのだと言われました。歳出の無駄をなくすことは重要です。しかし、それは、増税しても使い道を間違わなければ景気はよくなることの説明にはなっておりません。

 一般的に、増税は短期的に景気の下押し圧力につながるというのが、私の理解するところであります。また、間違いのない使い道、すなわち賢い使い道を政府ができるという担保はどこにあるのでしょうか。総理の言われる第三の道との関係などを含めて、総理の経済理論を具体的に説明してください。

 関連して、無駄な空港と指摘された地方空港はどうされるつもりか。廃港も考えているのでしょうか。さらに、八ツ場ダムの中止方針は変わりませんか。総理の見解を求めます。

 そもそも総理は、消費税について、逆立ちしても鼻血が出ないほど無駄をなくしてから議論をすると言われておりました。さらに言えば、民主党は、予算全体を見直せば十兆円単位で財源が生み出せるとしていたことからすれば、何たる豹変ぶりでしょうか。

 総理、あなたは、完全に消費税増税にかじを切ったと認識してよろしいのでしょうか。さらに、鳩山前総理の方針は間違いであったということなのでしょうか。また、消費税は、衆議院の任期、すなわち、今後三年間の間に増税をするのですか。そして、間もなく取りまとめられる財政運営戦略には、消費税についてどう明記されるのか。答弁を求めます。

 さて、わずか一日、しかも、野党の質問を打ち切って行った前代未聞の異常な強行採決により無理やり衆議院を通過させた郵政改革逆行法案は、廃案と決まりました。数におごった政府・与党の横暴のきわみであり、当然の結果であります。

 そもそも、この郵政改革逆行法案なるものは、全くのでたらめ、噴飯物であります。政府関与を残したままでの郵貯の貯金限度額の引き上げや、永久に政府が関与し続ける余地を残した簡保の存続など、まさに民業圧迫、中小企業いじめそのものではありませんか。到底認めることはできません。

 四年前の郵政改革論議の際、郵貯の預金限度額を五百万円まで引き下げ、簡保も廃止することで資金を官から民へ流すとしていたのは、一体どこの党でしょうか。あなた方民主党ではありませんか。

 この法案に対しては、国内にとどまらず、アメリカやEUなどからも懸念が寄せられています。当たり前です。経済のイロハがわかっていれば、市場経済を無視して民業を圧迫する、こんな、平成の世を明治に戻すような、余りにも愚かな法案をごり押しできるはずはありません。

 みずからの主張を百八十度ねじ曲げてまでこの法案を押し通そうとした本当の意図は、連立維持、選挙目当てそのものではないですか。

 公明党は、今後も、民意を無視し、海外からも笑われるような経済音痴の郵政改革逆行法案を断じて通すわけにはまいりません。総理、郵政改革逆行法案の成立を今こそきっぱりと断念すべきです。答弁を求めます。

 次に、口蹄疫対策について。

 まずは、日夜、不眠不休で対策に当たられている畜産農家を初め関係者の皆様に、心よりの敬意とお見舞いを申し上げます。

 宮崎県における口蹄疫は、終息の願いをよそに、川南町から約五十キロも離れた都城市に拡大し、隣接する鹿児島県も不安にさらされています。防疫体制に甘さがあったと指摘せざるを得ません。まだまだ予断を許さぬ状況が続いています。いま一度、危機管理体制の見直しをすべきではないでしょうか。飼料の運搬など関係車両の消毒を徹底するとともに、感染経路の究明に総力を挙げ、根本的な防疫対策をとるべきです。

 口蹄疫の感染例が確認されてから七週間、史上最悪の被害をもたらしている原因は、対策が後手後手になった政府の責任であると言わざるを得ません。しかも、政府は、公明党と自民党がさらなる対策強化に向け特別措置法を作成している間、傍観していただけで、現場の悲痛な叫びを受けとめ、迅速に行動しなかったことは周知の事実です。

 公明党は、今回の口蹄疫対策では、直ちに対策本部を党本部並びに宮崎県本部に設置をし、国会議員を派遣し、地方議員と連携して繰り返し視察、調査を行い、現場からの要請に基づいて特別措置法を提案し、各党の協力を得て、わずか二日で成立をさせました。これが政治に求められるスピードです。さらに、いち早く一千億円規模の支援を訴え、特別措置法にも反映させました。

 今回の口蹄疫対策について当時の菅副総理は一体何をされたのでしょうか。宮崎県は補正予算を直ちに組みました。また、経済損失が八百億円を超えるという試算があった状況の中で当時の菅財務大臣が対応したのは、わずか九十六億円の予備費だけでありました。しかも、発生から六週間もたってのことであり、全くの期待外れでした。政治主導と言いながら、実質何もしなかった政府の責任は重大です。

 この国家の危機とも言える口蹄疫問題の影響は、畜産関連業界だけでなく、運送業など多業種にも及んでいることから、畜産農家を初め、食肉加工業、飲食業、サービス業、製造業などあらゆる産業への影響を考え、フォローアップを急ぐべきです。総理の答弁を求めます。

 民主党が公約した、年金制度の一元化、最低保障年金、後期高齢者医療制度や障害者自立支援法の廃止は一体どうなったのでしょうか。この九カ月間、何ら進展がありません。結局、実行できない、でたらめな公約であったことが白日のもとにさらされました。

 一方で、高齢化に伴う年金、医療、介護費用の増大、不安定な就労の増加、都市化や核家族化の進行など、国民生活を取り巻く環境は大きく変化し、これまでの社会保障制度や、企業、地域、家族の力が十分に機能しなくなっております。

 こうした問題に加え、うつ病等の精神疾患、児童虐待やDV、不登校や引きこもり、さらには自殺や高齢者の孤独死など、新たなリスクが次々とあらわれ、その対策が求められています。

 そこで、公明党は、これらの新しいリスクにも対応できる、従来の枠組みを超えた新しい福祉を提案しております。

 第一の柱は、新しい生活保障です。

 年金、医療、介護の拡充に加え、生活の基盤である住宅の確保、子育て支援など、新しい生活保障で安定した生活の実現を目指しています。低年金対策では、年金加算制度の創設や受給資格期間の短縮、高額療養費制度については、上限額の引き下げや二つ以上の医療機関にかかっても合算できるよう見直すべきです。救命率向上への救急医療体制の強化が必要です。

 我が党が介護総点検をもとに取りまとめた、施設の整備拡充や在宅支援を柱とする新・介護公明ビジョンの実現を政府に強く求めます。特に、ビジョンでは、三年間介護保険を使わなかった高齢者に介護保険料などを軽減するポイントシステムが注目されています。さらに、住宅困窮者に低家賃の住宅を提供するセーフティーネット住宅百万戸の整備、生活・子育て支援策として給付つき税額控除の導入を提案しています。

 第二の柱は、新しい雇用保障です。

 安定した生活を実現するには、雇用を軸とした大胆な施策の展開が重要です。雇用保険の対象とならない失業者への職業訓練とその間の生活を保障する第二のセーフティーネットの構築や、正規雇用を推進する中小企業への支援など、新しい雇用保障システムで安定した雇用実現を目指しています。

 新卒の未就職者対策も急務です。卒業後三年間は新卒扱いとして就職活動に挑めるよう条件緩和すべきです。中長期的な取り組みとしては、学校教育の中で職業教育に力を注ぐことを提案します。

 第三の柱は、新しいヒューマンケアです。

 急増するうつ病や不安障害、DVなど、心の病を克服し、社会復帰できる体制を強化すべきです。また、独居老人、介護、子育てなどを地域で支える体制の確立など、新しいヒューマンケアで人に優しい政治を目指しています。

 具体的には、行政と民間が連携し、独居老人への買い物支援や宅配、見守りサービス、介護支援ボランティアの普及、児童虐待やDVの対策強化として、家庭訪問方式での相談支援事業や民間シェルターの拡充など、きめ細かな支援体制を充実すべきであります。

 以上、公明党が提案する新しい福祉の考え方と、ただいま提示をした具体的な政策について、総理の見解を伺います。

 私たちは、今、地球温暖化の危機、資源枯渇の危機、そして生態系崩壊の危機への対応が迫られています。農業、林業、水産業の再生は、地球環境の保全に貢献するとともに、地域経済を活性化させ、雇用を生み出します。このような観点からの施策の展開が重要だと考えます。

 まず、農業について伺います。

 戸別所得補償制度については、担い手対策や地域の自主性が担保されていないなどの問題点が指摘されていますが、対応策は示されないままです。生産現場からは、政策に安定感がなく何を信用していいかわからないとの切実な声が聞こえてきます。さらに、各地から、全国一律の助成体系では地域の農業振興と一体となった推進ができないなどの声が多く上がっています。

 農業政策については、担い手像を明確にし、地域の主体的判断を尊重した対策へと見直すべきです。総理の見解を求めます。

 公明党は、水田農業について、三階建ての経営セーフティーネットを提案します。つまり、再生産を下支えする直接支払いと農の多面的機能を評価した環境直接支払いの拡充、加えて、認定農業者等への経営安定対策の強化であります。特に経営安定対策については、生産費の算定基準を地域ごとの再生産価格に見直すことです。環境支払いを中核に据えた持続可能な農業を展開すべきです。

 さらに、ことしは冷害の発生が懸念されていますが、地球温暖化を起因とした予期せぬ気候変動による農作物への被害は今後も頻発するおそれがあります。農業経営を安定させるために、公明党は野菜、果樹等について積み立て方式の収入保険制度の創設を提案していますが、総理はどのような対策を講じるのか、具体的に示していただきたい。

 次に、水産業の再生について伺います。

 日本の周辺水域は世界有数の豊かな漁場であり、海洋資源、水産資源を適切に管理し、持続的な利用が求められています。

副議長(衛藤征士郎君) 井上義久君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡潔に願います。

井上義久君(続) 特に、漁業の発展は、新たな産業や雇用を生み出す可能性を秘めており、水産資源の回復と生産力の向上を促進するために、魚の産卵場所を確保するフロンティア漁場の整備が急務です。

 一方、海洋資源を生かす総合的な政策を進め、海洋立国日本を目指すことが重要です。資源の利用促進やエネルギー開発を含めた政府としての中長期の展望を示すべきです。これらの点について、総理の答弁を求めます。

 最後に、林業について伺います。

 我が国の木材自給率は二四%。輸入量に輸送距離を掛け合わせたウッドマイレージは、群を抜いて世界ワースト一位です。国産材ニーズを単なるムードに終わらせないためにも、木材産業、住宅産業など川下対策を重視し、生産地や生産者が明らかな国産木材や、森林認証の普及と認証を受けた木材の利用を確実に拡大していくべきです。総理の答弁を求めます。

 以上、当面する重要政策課題及び我が党の政策提案を中心に言及してまいりました。

 公明党は、我が国の、日本の希望ある未来を切り開くために全力を挙げてまいることをお誓いし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 井上公明党幹事長から多くの御質問をいただきました。できるだけ丁寧にお答えしたいと思います。

 まず、鳩山政権の副総理として成長戦略や財政健全化の道筋を示すことができなかった責任等についての御指摘であります。

 私は、成長戦略、さらには財政健全化の幾つかの提案について、かなり副総理の段階でも取り組みまして、近く、新成長戦略や財政運営戦略が今月中にも最終的に取りまとめて発表されることになっております。

 二十二年度予算編成においては、財政規律に配慮しながらマニフェストの財源を確保し、さらに、デフレ克服にもこの間努めてきたところでありまして、一定の効果は出てきているというふうに認識をいたしております。

 また、普天間移設問題や政治と金の問題で鳩山政権を支え切れなかったことについては、前内閣の一員として責任を痛感いたしております。

 次に、菅内閣は、前内閣が行き詰まった結果、看板をかけかえたにすぎないという御指摘であります。それは、これから実際に何が実行されるかをよく見ていただきたい、このように思っております。

 私は、鳩山内閣が取り組んだ多くのことが道半ばであったことは確かでありますが、その道を、まさに、ある意味では挫折を乗り越えてそれを進めていくのが鳩山総理から引き継いだ私たちの責任だ、このように考えているところであります。

 参議院選挙において、選挙のことについても、衆議院と、それと同時というようなことも言われているような御質問ですが、まず、目の前に定期的に決まっている参議院の選挙があるわけでありますから、この参議院の選挙でしっかりとこれからの方向性をお示しして国民に信を問うのがすべての政党にとって必要なことだ、このように思っております。

 次に、私が副総理だったときに、鳩山、小沢両氏に政治と金のことについて十分助言ができなかったのではないかという御質問であります。

 個人的に多少の話はしておりましたけれども、基本的には、この問題、それぞれの政治家がみずから自分のことについて説明される問題でありますし、そして最終的に、鳩山総理と小沢幹事長がこれらの問題に責任をとる形で辞任をされたことは、政治的には非常に大きなけじめであった、このように考えております。

 鳩山総理の資金の使い道に関する御質問であります。

 検察当局がすべて調べて、鳩山前総理の関与はないとし、支出、使い道については法令違反の指摘はありませんで、起訴、立件は行われましたが、こういったことはすべて司法的にも明らかになったと思っております。

 国会の答弁について、当時の鳩山総理がいろいろなお答えをされたことはあると思いますが、答弁内容も質問の仕方によっていろいろ異なるわけでありまして、いずれにしても、鳩山前総理はみずから知り得る限りの説明を果たしておられる、このように理解をいたしております。

 また、小沢前幹事長についても、いろいろと御質問がありました。

 私が、少なくともしばらくは静かにしていただいた方がいいということを申し上げたのは、先ほど他の議員の御質問にもお答えしましたが、特別変わったことを申し上げたつもりではなくて、一たん責任をとって辞任されたときには、しばらくの間はいわば謹慎をしているという意味で静かにされた方がいいのではないかということを申し上げたわけであります。

 小沢幹事長についても、現在、一回目の検察審査会では起訴相当と判断されましたが、その後、みずから幹事長を辞任されて、政治的には一定のけじめをつけられたものと理解しております。国会での扱いについては、国会で議論をお願いしたいと思います。

 検察審査会での二度目の議論がされている最中でありまして、これ以上のことを踏み込んで総理として申し上げるのは差し控えたい、このように思っております。

 石川議員、小林千代美議員の辞職勧告決議案等について、いろいろと御指摘をいただきました。両決議案とも議院運営委員会の理事会で議論されていると聞いておりまして、理事会での結論を出すべき事項と認識しております。

 なお、民主党所属の小林千代美議員については、御本人が今国会の後に辞任をするという表明がなされたということも聞いているところであります。

 また、政治資金改正法についてでありますけれども、公明党の提案は承知をいたしており、各党各会派で建設的な議論を進め、制度論は制度論として、速やかに成案を得るべきと考えております。そのための各党協議機関については、鳩山前総理もその設置を提唱されたわけですが、各党の中に消極的な声もあり、実現していないのは残念に思っております。

 荒井大臣の事務所費についての御質問をいただきました。

 荒井大臣の事務所費問題については、党として調査し、領収書等を公開して、架空計上などの疑惑はないことが明らかになったと承知をいたしております。ただ、その支出の中には、違法ではないけれども政治資金の使い方としては不適切な部分があり、訂正願を出すと聞いております。

 なお、本日午前、官房長官が荒井大臣を呼び、厳重に注意をされたと承知をいたしております。

 予算委員会についての御質問をいただきました。

 現下の重要課題にどう取り組むかについては、さきの所信表明で述べさせていただき、本日は代表質問を受けているところであります。

 国会の運営については、各党各会派で御議論をいただくべき、このように考えております。

 普天間基地移設問題に係る工法の検討及び地元との協議に関する御質問をいただきました。

 本年五月二十八日の日米合意を踏まえるという、この原則はしっかり守っていきたいと思っております。同時に、同日の閣議決定でも強調されたように、沖縄の負担軽減についても全力を挙げて尽力する覚悟であります。

 このような原則のもと、本年八月末までに、代替施設の位置、配置及び工法に関して、日米の専門家の間での検討を終えることになっていると承知をいたしております。さらに、これと並行して、移設計画や負担軽減の具体策について、沖縄県を初め地元の方々に誠心誠意説明し、理解を求めてまいりたい、このように思っております。

 抑止力と在沖海兵隊についての御質問であります。

 我が国周辺の東アジア安全保障環境には、最近の朝鮮半島情勢等に見られるとおり、不安定性、不確実性が残っております。したがって、海兵隊を含む在日米軍の抑止力は、安全保障上の観点から極めて重要だと認識をいたしております。

 私が二〇〇一年の参院選の際にいろいろ発言をしたという御指摘をいただきました。

 確かに、いろいろな時代に私も、例えば、冷戦が終了した時点で米ソの対立がなくなって、いろいろと、平和の配当と言われた時代もありました。また、その後、九・一一の国際的なテロが発生したこともありました。そして、今日、先ほど申し上げたように、この東アジア、東北アジアの状況は、決して安定した平和な状況だとは言えないわけでありまして、そういう意味で、私が過去に発言したこと、そのことを否定するつもりはありませんが、そうした時代の変化も踏まえて、今日においての総理大臣としての考え方は明確に申し上げたところであります。(発言する者あり)

副議長(衛藤征士郎君) 諸君、静粛に願います。

内閣総理大臣(菅直人君)(続) マニフェストの実現についての御質問をいただきました。

 総じて言えば、二十二年度予算では、子ども手当や高校無償化など、さきの総選挙でお示ししたマニフェストに盛り込んだ施策を実行すべく、かなりのものは措置できたと考えております。

 ただ、御指摘のように、ガソリン税の暫定税率の維持など、これなどは必ずしもマニフェストどおりには実行できなかったことは、さきの鳩山総理もおわびをされましたが、私も同様におわびを申し上げたいと思います。国民世論や厳しい財政事情を踏まえて、熟慮を重ねた結果、マニフェストと異なることを行ったことも事実であることは、今おわびを申し上げたとおりです。

 来る参議院議員選挙においても、民主党として新たな政策公約をお示しすることになるわけであります。もちろん、これまでのマニフェストを踏襲するもの、一部修正するものも入りますけれども、今後とも、国民の皆さんと真摯に向き合い、議論しながら、国民の生活が第一という政治の原点に立って、全力を挙げて進んでまいりたいと思っております。

 今後の追加的な景気対策についての御質問をいただきました。

 連立与党の国民新党が十一兆円規模の補正予算の編成を提案されていることは承知をいたしておりますが、まだ与党間でのすり合わせたものにはなっていないところだと承知をいたしております。

 政府としては、まずは、景気回復を確かなものとし、デフレを克服するため、緊急経済対策及び二十二年度予算に盛り込まれた施策を着実に実行することが重要だと考えております。また、新成長戦略の最終的取りまとめを今月中に発表し、その実現を図ってまいりたいと思います。

 なお、二十二年度予算においては、景気への対応に万全を期すために、経済危機対応・地域活性化予備費を一兆円計上しており、現時点で使用について具体的に決まっているわけではありませんが、我が国経済や地域の動向を注視し、必要に応じて機動的に対応してまいりたいと考えております。

 公共事業のあり方について御質問をいただきました。

 コンクリートから人へとは、公共事業がすべて悪いということでないという趣旨は、私たちも同じように考えております。大規模な公共事業が本当に国民にとって必要なものであるかないか、このことを見きわめて、本当に必要なものについての整備はこれからもやっていかなければならないと思っております。

 御指摘のように、国民の安全、安心を確保するための社会資本や、ハブ空港の整備などアジア市場の新たな需要をとらえるためのインフラ整備など、地域の活性化に向け、真に必要な社会資本整備について、選択と集中を行いつつ、民間の知恵と資金を活用して戦略的に進めてまいりたいと考えております。

 学校の耐震化に予備費を活用することについての御質問をいただきました。

 四月十六日に、鳩山前総理から文部科学大臣に対し、地方公共団体のニーズや検討状況を踏まえ、早急に対応できるよう、予備費の活用も視野に入れた検討を始めていただきたいとの指示が既になされているところであります。

 現内閣においても、この指示を踏襲し、文部科学省において、平成二十二年度の予算の効果的、効率的な執行に努めるとともに、予備費の活用について準備を進めていただいているところであります。

 当面の景気回復及び成長戦略についてであります。

 当面は、デフレからの脱却を喫緊の課題と位置づけ、日本銀行と一体となって、強力かつ総合的な政策努力を行うとともに、日本経済を自律的な回復軌道に乗せてまいりたいと考えております。

 また、持続可能な財政、社会保障制度の構築や生活のセーフティーネットの充実を図ることが、雇用を創出するとともに、国民の将来不安を払拭することで消費を拡大し、経済成長の礎となると考えております。

 経済の活性化、財政の健全化、そしてセーフティーネットの確立は、いわば一体の関係にあり、強い経済、強い財政、強い社会保障の確保が互いに好影響を与えるウイン・ウインの関係にあるととらえるべきだと思っております。

 こうした観点を踏まえ、今月中には、中期財政フレーム、財政運営戦略及び新成長戦略の全体像と工程表を取りまとめ、現在の経済社会の課題に正面から向き合う処方せんを提示し、新たな需要や雇用の創造と供給力の強化の好循環による第三の道の成長を実現してまいりたい、このように考えております。

 新成長戦略、中期財政フレーム、財政運営戦略の取りまとめに関する御質問をさらにいただいております。

 これらについては、昨年来、私が責任者となり、あるいは私も参画をしながら、内閣を挙げて政治主導で精力的に検討を進めてきたところであります。いずれも、強い経済、強い財政、強い社会保障を実現するに当たって十分な具体策が盛り込まれたものとすべく、現在、最終的な調整を行っており、今月中にその全体像をお示しができると考えております。

 増税の景気への影響を含めて、私の経済論についていろいろと御指摘をいただいております。

 税と財政出動により、お金の潤沢で安定した循環をもたらし、仕事と雇用を生み出すことが、デフレを解消し景気回復につなげる道だと考えております。

 多少申し上げると、デフレというのは、いろいろな見方がありますけれども、個人がお金を持っていても、物を買うよりお金で持っていたい、企業がお金があっても、投資するよりもお金のままで持っていたい、いわゆる流動性を選好する度合いが強い状況がデフレ状況の一つの背景というか原因だと思っております。

 それだけに、ある場面においては国債を発行してそれを有効に使う、しかし、国債発行が本当にこれ以上マーケットの信認が得られないときにどうするか、財政というものもあわせて、税制度と含めて考えなければならない段階まで来ているのではないか、こういう趣旨のことを財務大臣としても申し上げてまいりましたけれども、ぜひ、こういったことも含めて、先日御提案をさせていただきました超党派における財政再建の検討会に公明党の皆さんにも積極的に参加をいただいて議論させていただきたい、このこともあわせてお願いを申し上げておきたいと思います。

 地方空港及び八ツ場ダムについての御質問をいただきました。

 地方空港については、基本的には、空港経営の透明化を図りつつ、既存の施設をいかに有効に活用するかが今日的な課題であり、一義的には空港設置管理者である地方公共団体の判断ということになりますが、地域の活性化のために、地域における利用促進活動などを通じて、既存の地方空港を徹底的に活用することが重要だと考えております。

 八ツ場ダムについては、できるだけダムに頼らない治水への政策転換の端緒として、前原国土交通大臣が中止の方向性を示してきておられるところでありまして、全国のほかのダムと同様、予断を持たず検証を行うことといたしております。

 政府として、この方針に変わりはなく、着実に政策転換を進めてまいりたいと考えております。

 消費税についての御質問がありました。

 先ほど申し上げたこととも一部重なりますけれども、我が国財政は、長期債務残高がGDPの一八〇%に及ぶとともに、近年、税収が大幅に落ち込むなど、危機的状況にあるわけでありまして、また、先般のギリシャの財政危機なども踏まえると、財政健全化が喫緊の課題となっております。

 消費税については、二十二年度税制改正大綱でも、社会保障制度の抜本的改革の検討とあわせて検討していくことと既にされておりまして、これを踏まえて検討しているところであります。

 今後とも、この大綱を踏まえて、税制の抜本的改革について、消費税のみならず、個人の所得課税、法人課税等も含めた具体的な全体像をお示しできるよう、議論を進めてまいりたいと考えております。国民の皆様に、税制の抜本改革の具体的な全体像をお示しする中で、改革の実施時期についてもお示しいたしたいと思っております。

 先ほど申し上げたところですが、ぜひとも、こういった問題を超党派で議論できる場ができればありがたいと思っております。

 郵政改革法案について御質問いただきました。

 郵政民営化の結果、郵政事業の経営基盤が脆弱となっていること、その役務を郵便局で一体的に利用することが困難となっていること、あまねく全国において公平に利用できることについての懸念が生じていることといった問題が生じており、これらの問題に対処するためには、郵政改革法案の成立が必要だと考えております。この法案が連立維持、選挙目当てのものとの御指摘は当たらないと思います。

 また、本法案は、同種の業務を行う事業者との競争条件の公平性に配慮する規定を設けるなど、経営の自主性と競争条件の公平性のバランスをとった設計としているところであります。

 政府・与党としては、参議院選挙後の臨時国会において、郵政改革法案を再提出し、早期に成立させていただけるよう、お願い申し上げているところであります。

 口蹄疫の防疫体制及び感染経路についての御質問をいただきました。

 まさに口蹄疫の問題は国家的危機との認識のもと、私も、先週末、宮崎県を訪問し、畜産農家の方や、知事初め自治体の長の方々と意見交換をし、対応について協議をしてきたところであります。

 防疫対応については、新たな地域で発生が確認されたことを受け、遺伝子検査の結果を待たず、写真判定に基づいて、口蹄疫である可能性が高いと判定した場合には、直ちに殺処分を行い、迅速に対応することとしております。

 車両消毒については、宮崎県及び隣接県で、一般車両を対象とする消毒を実施しております。また、今回の発生を受け、都城市での消毒ポイントを追加するなど、消毒をさらに徹底いたしました。

 感染経路の究明は、感染拡大防止や防疫措置の的確な実施を図る上で極めて重要であり、専門家により迅速に調査を進めているところであります。

 この感染経路というのは、私、かつてO157の問題などでも取り組みましたが、なかなかある意味で大変な作業でありまして、そういった意味で、この問題には、厚生省を含む専門家に力をかりて全力を挙げていかなければならないと、現場に行ってみて改めて強く感じて、指示をいたしたところであります。

 口蹄疫については、危機管理上の重要な課題として、内閣として、やるべきことはすべてやるとの考えのもとで、総力を挙げて取り組み、感染拡大の防止に全力を期する考えであります。

 既に、自衛隊に三百人近い人を送っていただいたり、警察関係に同じ規模の人を送っていただいたりしておりますが、さらなる増強も考えております。現地の人たちは本当に疲れ切っておられますので、ある意味で、外からの応援で、そうした人たちに対して、しっかりと、かわり得る仕事はかわって、地元でなければできない、例えば埋設地の交渉といったような仕事は地元の市町村の皆さんにお願いするといった、そういう役割分担などについても、私、伺ったときに話を聞きましたので、現地にさらに、副大臣だけではなく、あるいは総理大臣補佐官だけではなく、政府の官房の事務方も送ることになっておりまして、全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。

 口蹄疫対策の政府の対応について、さらに御質問をいただきました。

 政府は、四月二十日の口蹄疫発生の確認を受け、直ちに農林水産省に対策本部を設け、殺処分や消毒等の防疫措置を推進いたしました。五月十七日には、当時の鳩山総理を本部長とする口蹄疫対策本部において、現地対策本部をあわせて設置することといたしました。

 私自身、副総理として、鳩山総理とともに、口蹄疫の防疫、経営対策等に万全を期すよう指示をし、政府として必要な対策はこれまでも行ってきているところですが、先ほど申し上げたように、さらにそれの強化を図るべく、連日のように対策本部を開いているところであります。

 九十六億円の予備費については、畜産農家の資金繰りを支援するため、家畜伝染病予防法に基づく手当金の一部を速やかに交付するため措置したものであります。これは、今の法律で、財務大臣として判断すればすぐ出せるということでありましたので、私、財務大臣として、それはすぐ出すようにという指示をいたしました。今後は、予備費や特別交付税など、さらに必要なものについては、内閣としてきちんと対応していきたいと考えているところであります。

 口蹄疫の埋却地の国による買い上げ、あるいは関連産業のフォローアップについても御質問をいただきました。

 先ほど申し上げましたように、埋却地の問題は、費用の問題と同時に、その地域での受け入れといった問題もありますので、ぜひとも、資金としては、国の資金を使った農地保有合理化事業などを活用して、埋却地をみずから確保した生産者に財政支援を実施することといたしております。

 政府として、感染拡大の阻止に総力を挙げるとともに、影響を受けた方々の生活支援・経営再建対策に万全を期してまいりたいと考えております。

 公明党が御提案をされております新しい福祉について御質問いただきました。

 少子高齢化が進行する中で、従来の枠組みを超えた対策が必要になるという考え方は十分理解ができるところであります。

 私としては、これまで社会保障は、経済成長の足を引っ張る負担とみなされる傾向があったわけでありますが、経済、財政、社会保障を相互に対立するものととらえる考え方を転換し、強い経済、強い財政と同時に、強い社会保障の実現を目指すことが可能であると考えております。

 また、孤立化という新たな社会のリスクに対して、雇用、福祉、人権擁護、自殺対策などの分野で、さまざまな関係機関や社会資源を結びつけ、支え合いのネットワークからだれ一人として排除されることのない、一人一人を包摂する社会の実現を目指していきたいと思っております。

 こうした考え方は、公明党提案の新しい福祉とも極めて共通している。ぜひとも、協力し合って実現を目指してまいりたい、このように思っております。

 戸別所得補償制度についての御質問をいただきました。

 この制度の一つの柱である米のモデル事業では、全国一律の交付単価としたことにより、生産を効率化させてコストダウンを図ったり、品質を向上させ高価格で販売するなど、努力した農業者の所得が向上する仕組みとなっており、担い手の育成に資するものと認識しております。

 もう一つの柱の、水田における麦、大豆等の戦略作物の生産を振興する事業については、原則として全国一律の交付単価で助成する仕組みとしたが、野菜や雑穀など、各地域でさまざまな作物が生産されていることから、都道府県の実情に応じて柔軟に助成対象作物や単価を設定できる仕組みも設けているところであります。

 次に、水田農業についての御質問をいただきました。

 本年度実施している米のモデル事業は、シンプルでわかりやすい全国一律の交付単価としたことから、農業者がより効率的な経営を行う努力をすれば所得が向上する仕組みになっております。

 生産費の算定基準など制度設計については、本格実施に向け、本年度のモデル対策の実施状況を踏まえて検討いたしたいと思います。

 環境支払いのあり方については、他の生産・経営関係施策や地域資源、環境の保全のための施策等との関係を整理しつつ、戸別所得補償制度の検討とあわせて検討をしてまいりたいと思います。

 また、野菜や果樹については、消費者ニーズに即した商品の安定的な供給や経営安定の確保を図る観点から、モデル対策の実施状況等も踏まえ、新たな支援策を検討いたしたいと考えております。

 水産業の再生、フロンティア漁場の整備促進と海洋資源の総合的な政策の中期的展望の提示について御質問いただきました。

 我が国沖合域における水産資源の回復と生産力の向上を促進することは大変重要であり、国直轄で沖合域における水産資源の回復を図るフロンティア漁場整備事業を推進してまいる所存です。

 我が国は、四方を海に囲まれた海洋国家であり、海洋に関する施策の総合的かつ計画的な推進のため、超党派により海洋基本法が平成十九年四月に成立、同法に基づき、平成二十年に海洋基本計画を、平成二十一年に海洋エネルギー・鉱物資源開発計画を策定し、政府全体として、海洋資源を生かす総合的な政策の推進に当たっているところであります。

 これらの計画も踏まえ、我が国の海洋権益、資源のポテンシャルを十分に活用し、我が国の成長につなげてまいりたいと考えております。

 国産材の利用拡大について御質問いただきました。

 国産材の利用拡大を図るためには、地域で生産された木材を地域で利用する取り組みを推進するとともに、森林認証材など、合法性や持続可能性が証明された木材の利用を拡大することが重要だと考えております。このため、グリーン購入法に基づき、森林認証材を含む、合法性、持続可能性が証明された木材の調達を推進しているところであります。

 さらに、先般成立した公共建築物木材利用促進法の運用に当たっても、これらの木材の利用促進に努め、その普及を図る考えであります。

 今後、昨年十二月に公表した森林・林業再生プランに基づき、十年後の木材自給率を五〇%以上とすることを目指し、森林における路網の整備や施業の集約化、林業を担う人材の育成などを集中的に進めていきたいと思っております。

 先日は、ドイツから三人のフォレスターという方をお招きして、各地に行っていただき、私もお目にかかりました。ドイツは工業国でありながらほとんど材木も自給しているという現場にも、数年前、行ってまいりました。

 今、戦後植林した樹木がかなり成長している、今こそが林業再生の好機だ、このように考えて、力を尽くしてまいりたいと思います。

 新たな食料・農業・農村基本計画では、従来のように、一部農業者に支援を集中するのではなく、地域の実情に応じて、意欲のある多様な担い手を育てる政策に転換したところであり、戸別所得補償制度の本格実施に当たっても、このような意欲ある農業者が農業を継続できるような制度となるよう、検討を進めてまいりたいと思います。

 あわせて、農山漁村の六次産業化の施策を積極的に推進し、我が国の農村地域の振興を図ってまいりたいと考えております。

 以上、井上幹事長に対する答弁とさせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣荒井聰君登壇〕

国務大臣(荒井聰君) 私の事務所費問題でありますが、先ほども申し上げたとおり、現在、法律事務所や監査法人など第三者による調査を行わせていただいてございます。客観的に御判断いただいた上、必要があれば速やかに訂正をいたします。

 ところで、当該政治団体は、昨年の秋、解散をしておりまして、政治資金管理団体と統合をいたしました。(発言する者あり)

副議長(衛藤征士郎君) 諸君、静粛にお願いいたします。

国務大臣(荒井聰君)(続) これは、徹底したクリーンな会計処理を行うためには、もはや事務所の秘書が片手間に会計処理をできる限界を超えたと判断したからでありまして、北海道の専門的な知識を持った職員を雇用し、そしてさらに、登録した公認会計士の監査を受けているところでございます。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、菅総理に質問いたします。(拍手)

 まず冒頭に、宮崎県の口蹄疫問題について質問します。

 事態は極めて深刻であり、被害のさらなる拡大を許せば、日本の畜産に壊滅的な打撃を与えることになります。被害拡大の防止は、感染家畜の殺処分と埋却をいかに迅速に行うか、ウイルス拡散を防ぐ消毒措置をどれだけ徹底して行うかにかかっています。これまでの数倍の取り組みが必要であり、国の責任であらゆるマンパワーを集め、対策を行うべきです。手塩にかけて育ててきた家畜が殺処分される被害畜産農家の苦悩は筆舌に尽くせないものがあります。被害農家の経営と生活を守るために、政府はあらゆる施策を尽くすべきです。総理の答弁を求めます。

 さて、総理、あなたの前任者、鳩山前総理は、わずか八カ月余で退陣に追い込まれました。政治を変えてほしいという国民の期待と、みずから掲げた公約を裏切ったことに対する国民の大きな怒りが政治を動かしました。鳩山政権を引き継いだ菅政権は、国民の怒りをきちんと受けとめ、反省すべきは反省するという姿勢で出発すべきです。

 ところが、総理の姿勢はどうでしょう。総理は、所信表明演説で、鳩山前総理の辞任によって、普天間基地問題、政治と金の問題はけじめがついたと述べました。総理は、この二つの問題は首相が交代したことで一件落着と考えているのでしょうか。もしそうだとすると、とんでもない認識違いと言わなければなりません。

 まず、政治と金の問題です。

 民主党の小沢前幹事長の疑惑は、政治資金収支報告書へのうその記載の問題にとどまりません。ゼネコンからやみ献金を受け取っていたのではないか、公共事業という国民の税金で行われる事業を食い物にしていたのではないかという、それが刑事訴追の対象となるかいかんにかかわらず、決して看過してはならない政治的道義にかかわる疑惑が問われているのです。

 ところが、小沢氏は、証人喚問にも参考人招致にも応じず、国会の場でただの一度も説明をしていません。これだけの重大な金権疑惑が持ち上がったときには、自民党政権のもとでも、証人喚問や参考人招致など何らかの対応がとられてきたものでした。ところが、民主党政権のもとでは、それらの対応は何一つ行われていないのです。

 総理に端的に伺います。

 総理は、小沢前幹事長の巨額の政治資金をめぐるさまざまな疑惑は一点の曇りもなく晴らされたという認識なのですか。そうでないというのなら、国民への説明責任を果たすために、小沢氏に対して、みずから進んで証人喚問に応ずるよう指示するなど、民主党代表としてのリーダーシップを発揮すべきではありませんか。その覚悟、意思はありますか。答弁を求めます。

 次に、沖縄・普天間基地の問題について質問します。

 総理は所信表明演説で、日米合意に基づく普天間基地の県内移設、名護市辺野古の美しいサンゴの海を埋め立てての巨大基地の建設を、何としても実現しなければなりませんと宣言しました。総理は沖縄の負担軽減に尽力すると述べましたが、巨大基地の建設を押しつけながら負担軽減を言ってもむなしいだけです。

 日米合意では、鹿児島県徳之島と日本本土に米軍の訓練を分散するとしていますが、これは沖縄の負担軽減には全くならず、基地被害を全国に拡大するだけです。そのことは、二〇〇六年の日米合意で、米軍機の訓練を本土に分散移転するとされた嘉手納基地に世界各地から米軍機が多数飛来するようになり、基地被害がかえって深刻になったという事実からも明らかです。

 民主党政権が移設先探しの果てに米国と合意した方針は、自公政権時代の方針に戻ったというだけでなく、基地被害の分散、拡大という点でより悪い方針になったと言わなければなりません。

 私がまずただしたいのは、こんな方針が沖縄県民の合意を得ることができると総理が本気で考えているのかということです。

 沖縄では、四月二十五日に、九万人が集った県民大会が開かれ、沖縄県知事、県内四十一自治体のすべての市町村長が参加し、普天間基地の閉鎖、撤去、県内移設反対が、文字どおり県民の総意として確認されました。私もこの県民大会に参加して、米軍基地への怒りが沸騰点を超えたと肌身で感じました。

 基地に隣接する普天間高校で学ぶ女子生徒の次の訴えは、ひときわ胸を打つものでした。

 学校までの通学路は、どこまでも長い基地のフェンスが続きます。基地から上がる星条旗が見えます。一体フェンスで囲まれているのは基地なの、それとも私たちなの。

 米軍は自由であり、沖縄の人々は自分たちの島に住みながら不自由を余儀なくされていることを、痛切に告発した言葉でした。

 五月二十八日、政府が名護市辺野古への県内移設の日米合意を沖縄県民の頭越しに交わしたことは、沖縄県民の怒りの火に油を注ぎ、島ぐるみの団結を一層強固なものとする結果となりました。日米合意の直後に琉球新報と毎日新聞が合同で行った県民世論調査では、辺野古移設に反対が八四%と圧倒的多数となりました。さらに、日米安保条約について「維持すべき」と答えたのはわずか七%にまで落ち込み、「平和友好条約に改めるべきだ」「破棄すべきだ」は合計で六八%となりました。「民意無視へ失望顕著」「安保の根幹に矛先」、琉球新報は大きな見出しでこの結果を報じました。

 沖縄のこの怒りは、決して一過性のものではありません。そこには、凄惨な地上戦を体験し、占領下で民有地を無法に強奪され、戦後六十五年にわたる基地の重圧が忍耐の限界を超えているという歴史の累積があります。

 沖縄県民の心には、共通して刻まれている痛ましい事件、事故があります。

 一九五五年には、六歳の少女が強姦され、殺されて、海岸に打ち捨てられました。一九五九年には、小学校に米軍ジェット機が墜落、炎上して、児童十一人を含む十七人が亡くなりました。一九六五年には、米軍機から落下傘で落とされたトレーラーが民家を直撃し、少女が自宅の庭で押しつぶされて死亡しました。一九九五年には、少女への暴行事件が島ぐるみの怒りを呼び起こしました。二〇〇四年には、普天間基地に隣接する沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落し、あわや大惨事という事故が起こりました。

 これらは、沖縄県民ならばだれもが知る、忘れることができない、共通して心に刻み込まれた悲劇です。この長年の基地の重圧、悲劇の累積が、今抑えようもなく噴き出しているのであります。

 総理、沖縄の情勢は決して後戻りすることはない限界点を超えた、県民の総意に逆らう県内移設という方針では絶対に解決は得られない、県民の合意を得ることは絶対に不可能な方針だ、この事実を直視すべきではありませんか。訓練の移設先とされた徳之島も、島ぐるみで反対の意思を表明しています。これらの事実を直視するならば、普天間基地の問題の解決の道は、移設条件なしの撤去、無条件撤去しかないことは明らかではありませんか。

 私は、四月末から五月上旬にかけて米国を訪問し、米国政府に対して、沖縄県民の声を伝え、沖縄の苦難の歴史を伝え、普天間問題の解決の道は無条件撤去しかないということを率直に伝えました。先方とは意見の厳しい対立がありましたが、沖縄県民の声を米国にありのままに伝える、これこそが問題解決の出発点ではないでしょうか。

 私は、総理が、辺野古移設を決めた日米合意を白紙撤回するとともに、沖縄県民の苦難、沖縄県民の声を米国政府に率直に伝え、普天間基地の無条件撤去を求めて米国と本腰の交渉を行うことを強く要求します。総理の答弁を求めます。

 私がさらにただしたいのは、総理みずからがこれまで沖縄県民に対して述べてきた言明に照らして、日米合意をどう説明するのかということです。

 総理は、民主党幹事長だった二〇〇一年七月、沖縄での記者会見や演説で、海兵隊は即座に米国内に戻ってもらっていい、民主党が政権をとれば、しっかりと米国に提示することを約束するなどと明言しています。

 さらに、総理は、民主党代表代行だった二〇〇六年六月一日の講演で次のように述べています。

 よく、あそこ、沖縄から海兵隊がいなくなると抑止力が落ちると言う人がいますが、海兵隊は守る部隊ではありません。地球の裏側まで飛んでいって攻める部隊なのです。沖縄に海兵隊がいるかいないかは、日本にとっての抑止力と余り関係がないことなのです。米軍再編では、沖縄の海兵隊は思い切って全部移ってくださいと言うべきでした。

 この発言は真実を述べています。四年前に総理が述べたように、海兵隊とは日本の平和を守る抑止力ではありません。その展開先がイラクやアフガニスタンであるという事実が示すように、世界に攻め込む侵略力なのであります。

 総理に問いたい。

 あなたが実行を誓った日米合意には、沖縄の海兵隊について、「日本を防衛し、地域の安定を維持するために必要な抑止力」と明記しています。なぜ総理は、四年前にみずから否定していた海兵隊は抑止力という立場に立つことになったのですか。民主党が政権をとったら沖縄の海兵隊は米国内に戻ってもらうという県民への約束はどうなったのですか。沖縄県民が納得できる説明を求めます。それができなければ、総理は、ただ米国の言いなりに、みずからの主張さえ投げ捨てたというそしりを免れることができないということを厳しく指摘しなければなりません。

 次に、国民生活と日本経済について質問します。

 総理は、所信表明演説で、強い経済、強い財政、強い社会保障の一体的実現を図ることを強調されました。問題は、だれにとって強いのか、これが問われます。

 まず、経済のあり方です。

 この十年間、日本経済は長期の低迷と後退から抜け出せずにいます。日本は、主要先進国でただ一つ、GDPが伸びない、成長のとまった国となり、ただ一つ、雇用者報酬が減った、国民が貧しくなった国になってしまいました。十年間に、大企業の利益は二倍以上に急増したにもかかわらず、働く人の賃金は一割も減り、大企業の内部留保が百四十二兆円から二百二十九兆円へと膨れ上がりました。

 このゆがみは、民主党政権のもとで一層ひどくなっています。大企業は、ことしの三月期決算で軒並み黒字決算を計上し、V字回復を達成しました。不況の影響で売上高は大幅に減少しましたが、派遣切り、下請切りなどの徹底したコスト削減によって黒字を回復したのです。空前の大リストラによって得た大企業の利益はまたもや内部留保としてため込まれ、現金、預金などの手元資金だけでも過去最高の六十三兆円も積み上がり、大企業は空前の金余り状態です。その一方で、失業、倒産、賃下げはますます深刻です。

 総理は強い経済と言いますが、大企業をもっと強くする、そうすればその利益がいずれは国民の暮らしに回り、経済も成長する、こうした経済政策の破綻は今や明らかです。大企業を応援する経済政策から国民生活を応援する経済政策への大もとからの転換が必要だと考えますが、総理にその意思がありますか。

 そのためには、人間を物のように使い捨てにする労働をなくし、雇用は正社員が当たり前の社会をつくることは、最優先の課題です。

 ところが、政府が国会に提出した労働者派遣法改正案は、製造業派遣、登録型派遣の原則禁止と言いながら、常用型派遣や専門業務を禁止の例外にするなど、抜け穴だらけのざる法となっています。財界の圧力に屈した結果です。派遣法は、抜け穴なしの抜本改正案を次の国会に出し直すべきだと考えますが、いかがですか。

 中小企業は、雇用の七割を支える、日本経済の根幹です。ところが、仕事がない、単価の切り下げなど、多くの企業が倒産、廃業に追い込まれています。下請中小企業に対する買いたたき、一方的な発注打ち切りなど、現行下請法をも踏みにじった大企業の無法を一掃するために、政治が強いイニシアチブを発揮すべきです。下請法、独占禁止法を改正、強化し、大企業と中小企業の公正な取引のルールをつくるべきです。

 東京大田区、東大阪市など、日本を代表する町工場の集積地が危機的状況にあります。高い技術力を持ち、日本の産業を土台から支えている町工場は日本の宝であり、その灯を決して消してはなりません。家賃、機械のリース代など固定費への直接補助に踏み出すべきです。総理の答弁を求めます。

 次に、社会保障についてです。

 総理の言う強い社会保障が、自公政権が進めた社会保障費削減路線によって弱体化された社会保障を立て直すという意味であるならば、自公政権が社会保障制度に残した傷跡を直すことが第一の仕事となるはずです。

 ところが、自公政権が残した最も大きな傷跡の一つである後期高齢者医療制度について、所信表明演説では一言も触れられませんでした。

 総理には、鳩山前総理を退陣にまで追い込んだ国民の怒りの大もとに、差別医療制度は直ちに廃止という公約をほごにし、四年後まで先送りにするとした裏切りがあったという反省はないのですか。

 しかも、民主党政権のもとで、後期医療制度にかわる新しい制度として、六十五歳以上の高齢者は全員国保に加入させた上で別勘定にするという制度が検討されていることは重大です。

 特定の年齢以上の高齢者を別勘定にして、重い負担と給付削減を押しつける。ここに、うば捨て山との批判が集中したのではありませんか。うば捨て山の入山年齢を七十五歳から六十五歳に引き下げるとんでもない新制度に、国民の理解が得られると考えているのですか。

 日本共産党は、後期高齢者医療制度は直ちに廃止し、七十五歳以上の高齢者の医療費を無料にすることを強く求めるものです。

 医療費の窓口負担を三割に引き上げたことも、自公政権が残した重大な傷跡です。重過ぎる窓口負担に多くの国民が悲鳴を上げ、深刻な受診抑制が起きています。

 欧州諸国など多くの先進国では、窓口負担は無料または少額の定額制であり、入通院とも三割負担は日本だけです。

 民主党は、小泉内閣が進めた三割負担への引き上げに反対し、日本共産党とともに、三割負担撤回法案を提出しました。総理が民主党の代表を務めていたときです。

 あなたがつくった二〇〇三年総選挙マニフェスト、菅マニフェストでは、「受診抑制を解消し、早期発見、早期治療を促進するためにも、」「健保本人の医療費自己負担は二割に引き戻す」と書いてあります。総理、この公約を実行する意思はありませんか。

 緊急課題として、いま一つ提起したい。B型肝炎問題です。

 二〇〇六年六月十六日に最高裁において、集団予防接種における注射器の回し打ちによる感染被害として国の責任が断罪されてから、四年を迎えます。この間、政府の謝罪さえ聞くことができないまま、十人の原告が亡くなっています。全面解決は、文字どおり、待ったなしです。

 政府が、裁判所の勧告を受けて、和解協議に応じる態度を表明しながら、具体的な解決策を何一つ示していないことに、強い批判が集中しています。国の責任をはっきりと認め、政府として患者の皆さんに謝罪するとともに、早期全面解決のために具体的な解決策を示し、誠実に協議を開始すべきです。総理にその意思はありますか。

 最後に、財政についてです。

 日本経団連は、ことし四月に発表した経団連成長戦略二〇一〇で、財政再建のための税制改革として、消費税を一刻も早く引き上げることを求める一方で、法人税の引き下げを求めています。

 しかし、そもそも、消費税という税金を払っているのは、販売価格に転嫁し切れずに身銭を切って税金を納めている中小業者と消費者、国民であって、価格に転嫁する力を持つ大企業は一円も負担しない税金なのです。財政再建のツケはすべて国民が払え、大企業は一円も出さない、もっと税金をまけろ、総理、これは余りに身勝手な要求だと思いませんか。

 一昨日、民主党の参院選公約には、法人税率引き下げとともに、消費税を含む税制の抜本改革を行うことが明記されるとの報道がなされました。総理、あなたの言う強い財政とは、大企業減税の穴埋めに消費税増税を行うという、財界の身勝手につき従うということなのでしょうか。しかと答弁をいただきたい。

 財政再建、社会保障財源を真剣に考えるならば、まず年間五兆円に上る軍事費にこそ削減のメスを入れるべきです。米軍への思いやり予算やグアム移転費用など、過去最大の三千三百七十億円に膨れ上がった米軍関係予算は撤廃すべきであります。行き過ぎた大企業と大資産家への減税を見直し、応分の負担を求めるべきであります。大企業の過剰な内部留保と利益を雇用と中小企業に還元し、内需を活発にすることで日本経済を健全な発展の軌道に乗せ、税収を確保する経済政策をとるべきであります。

 大企業減税の穴埋めに消費税増税という道は、財政再建にも社会保障財源にも役立たず、庶民の暮らしを破壊し、景気を破壊し、日本経済の危機を一層深刻にするものとして、日本共産党は断固として反対することを表明して、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 志位和夫委員長の御質問にお答えをいたします。

 まず、口蹄疫の防疫対策についてであります。

 口蹄疫の問題については、国家的な危機との認識のもと、私も、先週、宮崎県を訪問し、畜産農家の方や知事初め関係自治体の長の方々と意見交換をし、対応策について協議をしたところであります。

 新内閣としては、口蹄疫対策本部を連日開催し、迅速に殺処分、埋却を行い、その発生を抑え込むようにさらなる指示を行ったところであります。

 消毒措置については、宮崎県及び隣接県の全域において、国の負担で消毒薬の散布を行うとともに、国からは自衛隊を、他県からは警察を派遣し、一般車両も含めた車両消毒を徹底するように指示しております。都城市等の新たな発生を受け、消毒ポイントを増加するなど、消毒体制を強化いたしております。本日も、埋却の促進のため、自衛隊のさらなる増派を決定いたしました。

 口蹄疫については、危機管理上の重要な課題として、内閣としてやるべきことはすべてやるとの考えのもと、総力を挙げて取り組んでおりまして、感染拡大の防止にこれからも全力を期してまいりたいと考えております。

 被害農家への施策についての御質問です。

 農家の皆様にとって、我が子のように大切に育ててこられた牛や豚を殺処分せざるを得なくなることは、本当に言葉にはあらわせないつらい話と私もお話を聞いて感じたところであります。

 去る十二日に、口蹄疫対策本部の本部長として宮崎県を訪問して、直接お話をお伺いいたしました。政府として、感染拡大の阻止に総力を挙げるとともに、農家の方々の生活支援、そして、この拡大がおさまった後における経営再建対策について万全を期す所存であります。

 鳩山前総理の辞任によるけじめについての御質問をいただきました。

 鳩山前総理は、率直に政治と金あるいは普天間問題についての政治責任を認められ、退陣という総理として最も重い決断をされ、政治的にけじめをつけられたものと私は理解をいたしております。

 もちろん、それによって普天間基地問題が解決したわけではなく、新内閣においても、日米合意を踏まえつつ、普天間基地の危険性の除去と沖縄の負担軽減に全力を挙げてまいる覚悟であります。

 また、クリーンな民主党を取り戻すために退陣をされた鳩山前総理の英断を踏まえ、この間の政治と金の問題を真摯に教訓として政治資金規正法の改正、強化などに取り組みたいと考えております。

 小沢前幹事長の政治資金問題についても御質問をいただきました。

 小沢前幹事長は、検察が一年がかりで調べて不起訴とされております。そして、本人も本人なりに説明をされてきたわけですが、一回目の検察審査会では起訴相当と判断がされ、国民の納得を得られない中で、みずから決断して幹事長を辞任されました。私は、幹事長の辞任というのは政治的には一つの大きなけじめだと理解をいたしております。

 小沢氏の問題について、検察審査会でさらなる議論がされている最中であり、総理としてこれ以上の発言は慎むべきと考えております。

 小沢氏の国会招致に向けてのリーダーシップということでありますが、今申し上げましたように、小沢前幹事長は検察が一年がかりで調べて不起訴とされ、また、本人は本人なりに説明をされてきたところで、一定のけじめをつけられていると理解をいたしております。国会のことについてはぜひ国会でお決めいただきたい、総理としてはこの程度にとどめたいと考えております。

 小沢氏の問題について、検察審査会で議論をされている最中でありますので、これ以上の発言は総理としては慎みたい、このように思っております。

 普天間飛行場の移設について、現在の案では沖縄県民の合意を得られないのではないかという御質問であります。

 本年五月二十八日の日米合意を踏まえつつ、同時に閣議決定でも強調されたとおり、沖縄の負担軽減に尽力をする覚悟であります。他方、沖縄において、これらの日米合意や閣議決定に対する厳しい声があることは理解をいたしております。したがって、今後、移設計画や負担軽減の具体化について、沖縄県を初め地元の方々に誠心誠意説明し、理解を求めていく所存であります。

 普天間飛行場の無条件撤去についての御質問であります。

 先般の日米合意では、米軍の活動の沖縄県外への移転を拡充することとの関連で、適切な施設が整備されることを条件として、徳之島の活用が検討されることといたしました。これは、沖縄の方々に米軍のプレゼンスに関連して過重な負担を負っていただいており、その懸念にこたえることの重要性等を日米双方が認識いたしたものであります。

 普天間飛行場の移設については、先般の日米合意を踏まえつつ、同時に、閣議決定でも強調されたように、沖縄の負担軽減に尽力する覚悟であります。

 日米合意の白紙撤回と普天間飛行場の無条件撤去を求める対米交渉をすべきという御意見、さらには抑止力と沖縄の海兵隊との関係、さらにその沖縄県民に対する説明についての御質問をいただきました。

 我が国周辺の東アジアの安全保障環境には、最近の朝鮮半島の情勢に見られるとおり、不安定性、不確実性が残っております。したがって、海兵隊を含む在日米軍の抑止力は、安全保障上の観点から極めて重要だと考えております。

 私の過去の発言についていろいろと御指摘をいただきました。

 私も、いろいろな時期にいろいろな方と話をして、いろいろな発言をしていることは、そのことを否定するものではありません。ただ、先ほど申し上げましたように、この問題は、沖縄の皆さんの負担の問題、さらには、日本自身がどのような形で安全保障を、みずからの力でどの範囲までやるかといったような問題、さらにはアジア全体、特に東北アジアの状況など、やはり国際的な状況をも踏まえながら物事を考えていかなければならないのは、政治家として当然のことだと考えております。

 そういった意味で、先ほど申し上げましたように、今日、我が国周辺の東アジアの安全保障環境は決して安定だという状況にはありません。そういった意味で、私が総理大臣に就任した現時点において、私が考え、また内閣総理大臣として取り組むべきスタンスとして、今申し上げましたように、海兵隊を含む在日米軍の抑止力は、安全保障上の観点から極めて重要だということを申し上げたところであります。沖縄の負担軽減及び普天間飛行場の危険性除去について最大限努力をしていること等について、沖縄県を初め地元の方々に誠心誠意説明し、理解を求めてまいる所存です。

 いずれにせよ、普天間飛行場の移設問題については、先般の日米合意を踏まえ、しっかりと取り組んでいきます。同時に、沖縄の負担軽減に尽力をする覚悟であります。

 経済政策についていろいろと御質問をいただきました。

 この十年間は、行き過ぎた市場原理主義に基づき、供給サイドに偏った生産性重視の経済政策が進められてきて、私の言葉で言う第二の道がとられてまいりました。企業は大胆なリストラを断行し、業績が回復をした企業も多くあるわけですが、一方で、国民全体を見れば、失業がふえたり非正規労働者がふえたりするということで、決してこの第二の道で経済が立ち直ったわけではありません。

 そういった意味で、こうした反省を踏まえながら、経済社会が抱える課題の解決を新たな需要や雇用創出のきっかけとして、これを成長につなげる政策として、強い経済をつくっていくということを申し上げているところであります。

 労働者派遣法改正案について御質問をいただきました。

 行き過ぎた規制緩和を適正化し、労働者の生活の安定を図ることは重要だと考えております。現在審議をお願いしている労働者派遣法の改正案は、派遣労働者の保護をするための内容であり、抜本的な改正を考えているものであります。

 この法案は、民主党と社民党と国民新党の間で合意をして出させていただいているわけですが、労働者の生活安定と雇用の確保を考慮し、労使合意を踏まえたものでもありまして、内容を変更して提出し直す考えはありません。ぜひ、この法案について十分に御議論をいただき、早期の成立をお願いいたしたいと思います。

 大企業による下請中小企業に対する違法な行為の規制についての御質問であります。

 政府として、例えば平成二十一年度においては、下請法に基づき、約四十七万事業者に対する書面調査を実施し、その結果として、下請代金の減額等の行為に対する十五件の勧告、約八・八億円の返還請求等、大企業による違法な買いたたき等を排除するために執行強化に取り組んできているところであります。

 今後とも、下請法違反行為に対しては厳正に対処していく所存であります。

 大企業と中小企業の公正な取引のルールの整備についての御質問であります。

 本年一月に施行された改正独占禁止法により、優越的地位の濫用に対する課徴金制度が導入され、違反行為に対する抑止力は格段に強化されたところであります。

 大企業による違法な買いたたき等を排除するためには、まず、施行されたばかりの改正独占禁止法や下請法の厳正な執行に取り組んでいくことが重要だと考えているところであります。

 町工場への固定費直接補助についての御質問をいただきました。

 企業の固定費を政府が直接補助することは、中小企業の健全な発展のために、果たしてそれが適切なのか、いろいろ考え方のあるところであります。

 政府としては、中小企業のリース料の支払い猶予に関するリース事業者団体への協力要請や、工場アパート建設費用の低利融資の提供など、間接的に支援を行ってまいりたい、このように考えております。

 後期高齢者医療制度の廃止についての御質問をいただきました。

 高齢者の方々を年齢で差別する後期高齢者医療制度については、マニフェストによって、この四年間の間で廃止するということでありまして、それに沿って進めてまいりたいと考えております。

 現在、厚生労働大臣のもとで新たな制度の検討を進めており、八月末をめどにその骨格を中間的に明らかにした上で、来年の通常国会に関連法案を提出いたしたいと考えております。

 新たな高齢者医療制度についての御質問をいただきました。

 新たな制度の検討に当たっては、後期高齢者の医療制度の年齢で区分するという問題を解消する制度とすることを基本として進めております。

 今後、国民の納得と信頼の得られる新たな制度の創設に向けて、引き続き議論を進めてまいります。

 七十五歳以上の高齢者の医療費無料化などについての御質問をいただきました。

 マニフェストによれば、後期高齢者医療制度については、これから四年間の中で廃止することとなっております。

 医療保険制度を将来にわたり持続可能なものとするためには、廃止後の新たな制度においても、高齢者の方々には無理のない応分の御負担をお願いすることが必要だ、そのように考えております。

 医療費の窓口負担の軽減についての御質問です。

 現在の厳しい医療保険財政を考えれば、国民皆保険制度を維持していくため、ある程度の窓口負担をお願いせざるを得ず、二〇〇九年のマニフェストには、窓口負担を二割にするということは今回盛り込んではおりません。

 むしろ、高額療養費制度について、この制度を活用して患者負担に一定の歯どめをかけておりますけれども、患者負担の現状や医療保険財政への影響等を勘案しつつ、そのあり方を検討いたしてまいりたいと考えております。

 B型肝炎訴訟についての御質問をいただきました。

 B型肝炎訴訟については、五月十四日に和解協議の席に着く旨を表明したところであります。

 今後、和解協議の場において、裁判所の仲介のもと、誠実に話し合いを進め、広く国民の理解と協力が得られる解決を目指してまいりたいと考えております。

 日本経団連の主張に関する御質問をいただきました。

 今後の税制のあり方について、各方面においてさまざまな議論がなされていることは承知をいたしております。

 いずれにせよ、今後、各方面の御意見に耳を傾けながら、強い経済、強い財政、強い社会保障を一体的に実現するために必要な財源を国民でどのように分担していくかという議論をしっかりと行って、税制の抜本改革の全体像を描く必要があると思っております。

 法人税については、単に負担という問題だけでなく、国際的な競争という観点からもいろいろな御意見をいただいておりまして、成長ということを考えた中でそういったことも必要ですし、公平性とか、あるいはいろいろ御指摘をされておりますように、そういった内部留保あるいは外国での留保等をどのような形で日本の国の経済や社会にプラスになる形ができるか、そういったことも含めて税制抜本改革の中で検討してまいりたい、このように思っております。

 強い財政に関する質問をいただきました。

 私の申し上げている強い財政とは、財政健全化の取り組みを通じて、社会保障の安定的な提供を確保し、国民に安心を約束することにより経済の持続的な成長を導くものであり、強い経済及び強い社会保障と一体的に実現されるものであります。

 さらに言えば、社会保障の分野の中には、従来は、社会保障というと、何か経済の足を引っ張る負担という概念が強かったわけですが、必ずしもそうではなくて、この社会保障の分野にこそ成長のいわば種がたくさんある、こういったところにも注目をして、この二つの要素をともにウイン・ウインの関係で進めていきたい、このように思っております。

 財界の身勝手なことにつき従うのではないかという御指摘ですが、全くそういう発想を持ってはおりません。

 日本の国全体のことを考えたときに、もちろん、大企業にも応分の負担をいただかなければなりませんけれども、それは大企業として、やはり大いに技術力を高め、日本の経済の発展にも資する役割を果たしていただかなければなりませんので、何か、この人のことだけを考えて、ほかの人のことは考えないなんという発想で提案をいたしているわけではないということを最後に申し上げて、答弁とさせていただきます。(拍手)

    〔副議長退席、議長着席〕

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 重野安正君。

    〔重野安正君登壇〕

重野安正君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、菅直人新総理の所信表明演説に対し、質問をいたします。(拍手)

 質問に入る前に、まず、国会運営について一言申し上げます。

 先週末の与野党国会対策委員長会議で与党側から提案のあった、残り会期での予算委員会を開催するその方針が、本日、突如として白紙撤回されました。みずからの提案をわずか数日で撤回することは、公党間の信義に反します。これが、荒井国家戦略大臣を初めとした閣僚や民主党議員などの相次ぐ事務所費問題にふたをすることを目的としたものであれば、許されない暴挙であります。選挙目当ての疑惑隠しと言わざるを得ません。厳重に抗議します。

 この問題についての総理の見解を尋ねます。

 それでは、質問に入ります。

 冒頭、口蹄疫問題で被害を受けておられる皆様にお見舞いを申し上げますとともに、防疫に当たっておられる関係者の皆様に心から謝意を表します。

 政府としても関連して発生している雇用問題など諸問題に適宜適切に万全を期すことを改めて要請するとともに、社民党も全力を挙げて取り組む決意であることを申し上げておきます。

 さて、社民党は、この八カ月間、連立与党の一翼を担い、生活再建、命を大切にする政治の実現のために奮闘してまいりました。沖縄問題についても、国外、最低でも県外という鳩山総理の言葉を支持し、政権発足に当たって結んだ三党合意に基づき、沖縄県民の負担軽減の立場で全力を傾けてまいりました。

 しかし、地元の合意も三党の合意もないままに日米合意を先行させ、しかも、その日米合意及び閣議決定には、またもや、辺野古に新たな基地を建設すると明記しました。問題の解決に大きな期待を寄せていた沖縄県民を裏切り、公約違反の閣議決定への署名を拒否した我が党の福島党首は鳩山首相により罷免されました。

 社民党は、生活再建道半ばであり、これから本格的に取り組む課題も多く残っておりましたが、沖縄県民、政権三党、アメリカという三つの合意を前提とする鳩山首相の国民への約束を裏切ることはできないとの思いから、政権離脱を決定いたしました。今後は、政治の品質保証役として、菅新政権のよい政策は応援するし、悪い政策にはブレーキをかける立場で、厳しく政治をチェックしていくことをまずもって表明いたします。

 菅総理は、民主党代表選の立候補に当たり、国民の生活が第一という立場を継続する考えを強調しています。また、連立政権発足時、社民党、民主党、国民新党の三党で合意した、憲法の遵守を含む十テーマ三十三項目の政策は、向こう四年かけた国民への公約であり、我が党はこれらの政策を実現するためには引き続き努力を重ねてまいりますが、新内閣としてもこれを実現させるために取り組む責務があると考えます。

 昨年九月の三党合意の内容についての菅総理の認識はいかがか、お尋ねをいたします。

 次に、労働者派遣法改正案について伺います。

 労働者の失業不安を払拭し、雇用の安定を取り戻すためには、何よりもまず派遣法の改正を行うことが必要であります。私たちは、それこそ政権交代前から、菅総理と一緒に、労働者を保護する観点から、日雇い派遣、スポット派遣の廃止のみならず、登録型派遣の原則禁止、製造業派遣の原則禁止を内容とする派遣法改正案づくりに努力してまいりました。今回の改正案を抜本改正の第一歩として、早期成立が求められております。派遣法改正案の早期成立についての決意をお伺いいたします。

 社民党の一丁目一番地である、普天間基地問題についてお伺いいたします。

 鳩山前総理は、普天間基地の問題と政治と金の問題を辞任の理由に挙げました。いわば普天間基地問題での公約違反が総理辞任の大きな要因であります。私たちは鳩山総理に五月末決着にこだわるべきではないと再三求めてまいりましたにもかかわらず、米軍普天間飛行場問題を米国の意向に沿った形で決着させ、みずからは辞任しましたが、沖縄切り捨てに加担した三人の担当閣僚が再任されています。前総理とともに、大きな責任があるはずであります。なぜ再任されたのか、お伺いいたします。

 さて、総理は、政治学者である松下圭一先生に学んだ市民自治の思想が原点であると言われています。市民自治とは、市民が公共社会の主体であり、公共社会を管理するために政府をつくるという意味であります。平和的生存権をうたい、また、地方自治を重視する憲法の規定を踏まえれば、たとえ防衛や安全保障などの重要問題であっても、住民がみずから意思表示できることは憲法の地方自治の本旨に合致するものであることは言うまでもありません。

 市民自治が原点であるならば、また、地域主権と言われるのであれば、アメリカとの合意ではなく、まず、沖縄県民の意思、地元の合意が尊重されるべきではないですか。総理の明快な答弁を求めます。

 また、総理自身も、過去、一九九八年、海兵隊は沖縄に駐留する必要はない、装備だけ沖縄に置き、兵員はグアム、ハワイ、米本国など後方にあってもアジア安保の空白にはならない、二〇〇一年、海兵隊をなくし、訓練を米領域内に戻す、日本は米国の五十一番目の州、小泉首相は米国の五十一人目の州知事になろうとしていると発言。二〇〇三年、第三海兵遠征軍のかなりの部分を、国内、国外を問わず、沖縄から移転すべきだ、二〇〇六年、沖縄には基地をなくしていこうという長年の思いがある、普天間飛行場を含め、海兵隊をグアムなどの米国に移転するチャンスだなどと、一貫して基地の海外移転を訴えております。

 総理は、その場の思いつきでもリップサービスでもない、政治家として私の責任で述べたものであるとまでホームページに書いておられます。

 海兵隊が沖縄にいなければならない理由は特別にはない、アメリカ国内に戻ってもらうべき、北朝鮮の状況や日米の財政状況が変わってきている中で、沖縄にとって重い負担になっている沖縄海兵隊の日本国外移転について真剣な検討が必要とおっしゃっておられました。

 普天間基地移設問題で、辺野古に新基地をつくる日米合意、閣議決定を踏襲するのではなく、沖縄に新たな基地は要らないという沖縄県民の願いを真摯に受けとめ、もう一度真正面からアメリカと交渉し直すべきであると考えます。にもかかわらず、あなたは総理に就任するや、間髪を入れずオバマ大統領に電話を入れ、日米合意に基づき実現を図ることで一致したとのことであります。過去の発言と違和感を感じます。

 古い政治との決別には、金権体質や利益誘導型政治の一掃に加え、対米追従外交からの大胆な転換が含まれているはずであります。最低限、日米協議のやり直しと閣議決定の見直しを強く求めます。総理自身、沖縄県民の声に謙虚に耳を傾け、改めて、国外、県外の可能性を検討するお考えはありませんか。

 まさか、あとは実行できるかどうかにかかっていますというのは、地元の合意もないまま日米共同声明及び閣議決定の内容を実行することではないと思いますが、総理、いかがですか。

 総理の演説を聞いておりますと、鳩山前総理とのトーンの違いをひしひしと感じます。理念的、抽象的な訴えに対し、現実的、具体的な訴えに変わったというのはスタイルの問題ですからいいのですが、問題は中身です。

 去年の政権交代の原点は、古い自民党政治からの決別、国民を切り捨てる小泉構造改革路線からの決別だったはずであります。経済政策についても、家計に対する支援を最重点と位置づけ、国民の可処分所得をふやし、消費の拡大につなげるなどして、日本経済を内需主導の経済へと転換を図り、安定した経済成長を実現し、国民生活の立て直しを図っていくことを目指していました。

 他方、総理は、強い経済、強い財政、強い社会保障の実現を訴え、中期財政フレームと財政運営戦略を強調されていますが、行き着く先は、消費税率引き上げへの道筋をつけるだけではなく、財政健全化ありきで、社会保障削減や地方財政抑制の方向に大きくかじを切るのではないかという不安が否めません。

 小泉改革に逆戻りであってはならないと考えますが、総理の見解はいかがですか。

 総理、鳩山前総理は、施政方針演説で命を強調されていました。私たちも、その姿勢には本当に共感を覚えたのであります。そこで、菅政権も命を守る姿勢を継承されるのかどうか、答弁を求めます。

 あわせて、アスベスト訴訟やB型肝炎訴訟といった、まさに当事者の命にかかわる問題について、切り捨てるのではなく、何とか早期の和解に向けた道筋を探るべきだと考えます。薬害エイズ問題に取り組んでこられた、厚生大臣の経験もある総理の決意を伺います。

 次に、菅政権として反貧困問題にどのように取り組もうとされているのか、お伺いいたします。

 二〇〇九年度に全国で生活保護を受給した世帯は、推計で、前年度より十二万世帯ふえ、約百二十七万世帯に上り、過去最多を更新する見込みとなっています。十七年連続の増加であり、貧困問題への対応が大きな課題となっています。また、連合総合生活開発研究所の調査によりますと、世帯収支が赤字の世帯が四割近くに上っている。年収四百万円未満になると、その六割の世帯が赤字です。

 企業が競争力を高めている背景に、赤字を抱えてきゅうきゅうとしている国民の暮らしがあることに目を閉ざしてはなりません。私たちは、一人一人がそれぞれの幸せの形を追求できるように応援することが政治の役割であると思っております。与野党を超えて、積極的にその実現に協力していきたいと考えます。

 湯浅誠さんが事務局長を務めております反貧困ネットワークは、貧困削減目標を立てるとともに、貧困問題対策本部を設置し、貧困対策一括法を制定することを各党に呼びかけています。反貧困の課題にどう取り組むつもりなのか、総理の御所見を伺います。

 最後に、政治と金の問題についてお尋ねします。

 総理は、国民に対して信頼を求めていらっしゃいます。しかし、信なくば立たずです。残念ながら、総理の所信には、前内閣の失政や問題点の総括と具体的改善策は示されておりません。

 政治と金の問題についても、鳩山前総理の辞任の弁にある、とことんクリーンな民主党になれるかどうか、新内閣がどう対処するかについて、全く説明がないままです。前総理の辞任でけじめがついたと終わらせるのではなく、前政権の歩みを真剣に検証し、国民に対してきちんと説明すべきではないですか。

 荒井大臣を初め、またぞろ事務所費問題かとの思いでいっぱいです。かつて、民主党の事務所費問題の追及で、自民党の大臣は何人も辞任に追い込まれています。今回の事務所費問題にどう対応するのか、また、政党に対する企業・団体献金の禁止についてどのように取り組もうとされるおつもりなのか、総理の明快な答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 重野議員にお答えを申し上げます。

 まず、国会日程については、与野党の協議が調わなかったので、日程どおり、決められた会期で終了されるだろう、このように聞いております。いずれにせよ、国会運営については、与野党の協議で決められるべきものと承知をいたしております。

 三党合意についての御質問をいただきました。

 社会民主党の皆さんとは、昨年の総選挙を政権交代に向けてともに戦い、そして、三党連立合意に基づき、多くの政策を実行してまいりました。

 三党の政策合意については、今後も誠実に実現を目指していく所存であり、社会民主党の皆さんには、政策合意の実現に向けた協力を要請するとともに、一致する政策分野で連携してまいりたいと希望をいたしております。

 労働者派遣法改正案の早期成立についての御質問をいただきました。

 本当にこの法案については、私自身も大変関与をさせていただきましてつくり上げた法案で、大変ある意味で思い入れを持っております。

 行き過ぎた規制緩和を適正化し、労働者の生活の安定を図ることは大変重要であります。現在御審議をお願いしている労働者派遣法改正案は、派遣労働者の保護をするための内容であり、抜本的な改正を行うものでありまして、ぜひ社民党とも協力して、早期の成立をお願い申し上げたいと思っております。

 普天間問題を担当した閣僚の再任について御質問がありました。

 先月の日米安全保障協議委員会における合意との関係で関係閣僚をそのまま再任したということについてでありますけれども、他の議員の方にも申し上げましたように、私は、この三閣僚を含めて、適材適所を基本にして任命をさせていただきました。この日米安全保障協議委員会における合意は、普天間飛行場の移設、返還と一部海兵隊のグアム移転等を実現し、沖縄の負担軽減を前進させるため、日米両国間政府で合意したものであると認識しております。

 残念ながら、沖縄県民の皆様方の御理解を得られたとは言えませんけれども、今後、真摯な対話を通じて、地元の御理解を得られるよう尽力したいと考えております。

 米国との合意ではなく地元との合意を尊重すべきとの御質問であります。

 本年五月二十八日の日米合意を踏まえるという原則については、これは政府と政府、国と国の合意でありますので、しっかりと守っていきたいと思っております。また、同日の閣議決定でも強調されたように、沖縄の負担軽減に尽力することも、あわせて頑張っていきたいと思っております。

 このような原則のもと、今後、移設計画や負担軽減の具体策について、沖縄県を初め地元の方々に誠心誠意説明し、理解を求めてまいる所存であります。

 県外、国外移設の可能性について御質問をいただきました。

 我が国周辺の東アジア安全保障環境には、最近の朝鮮半島情勢などに見られるとおり、不安定性、不確実性が残っております。したがって、海兵隊を含む在日米軍の抑止力は、安全保障上の観点から極めて重要だと認識をいたしております。

 他の議員の方からの御質問にもありましたが、私がいろいろな時期にいろいろな発言をしていること、その発言があったことそのものを否定するつもりではありません。と同時に、この国際状況の変化というものをあわせて考える中で、内閣総理大臣として就任し、責任を持った立場で今の状況を考えた中で、ただいま申し上げましたように、在日米軍の抑止力は、安全保障上の観点から極めて重要だという認識を持っていることを改めて申し上げたい、このように思っております。

 したがって、米国との再交渉や閣議決定の見直しを行うつもりはありません。

 すべてを対米追従外交からの脱却というふうにおっしゃるんですけれども、私は、この対米追従外交からの脱却ということを考えるときには、自分たち自身がこの国をどういう国でありたいのか、自分たち自身がこの国に対してどういうところまで責任を持つのか、私があえて所信表明で、亡くなられた永井陽之助先生の「平和の代償」という本を挙げたのは、そういうことについてしっかりした国内の状況がなければ、なかなか他国に対してしっかりとした物が言えなくなるということを私自身が長年感じておりましたので、そのことを申し上げたこともここで改めて申し上げておきたい、このように思います。(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

内閣総理大臣(菅直人君)(続) 財政健全化に関する御質問をいただきました。

 現在の、国民が抱いている閉塞感の主たる原因は、低迷する経済、拡大する財政赤字、信頼感が低下した社会保障にあると思います。新内閣は、経済、財政、社会保障の一体的な立て直しを行い、国民が未来に対し希望を持てる社会を築くことが必要です。

 その中で、財政健全化の取り組みは、財政の機能を通じて、社会保障サービスの安定的な提供を確保し、経済成長を促し、日本に安心を約束することにより、持続的な成長を導くものであります。

 小泉改革に逆戻りするのではという御心配ですが、いつも申し上げていますように、小泉改革というのは、デフレ状態の中でデフレ政策を実行し、その結果、格差が拡大するだけでなく、経済をも停滞させたと考えておりまして、その第二の道の小泉改革に戻ることは全く考えておりません。

 国民の命を守る姿勢について御質問いただきました。

 新内閣においても、人の命を大切にし、国民の生活を守る政治を実施することは当然と考えております。このためにも、強い経済、強い財政と同時に、強い社会保障の実現を目指してまいります。

 アスベスト訴訟やB型肝炎訴訟については、被害者の方々を切り捨てるというつもりは全くありません。裁判や和解協議の過程を通じて、公正で広く国民の理解と協力が得られるような解決を目指したいと思っております。

 特に申し上げたいのは、裁判をしておられる方だけでなく、その背景にたくさんの被害者が存在しているケースが多いわけでありますので、そういう皆さんも含めて、最終的にどのような形で、国としてどういう形でそういう皆さんに対して役に立つことができるか、そういうことを考えて対応していただいている、あるいはしているつもりでありまして、切り捨てるという考えは全くないことを重ねて申し上げておきたいと思います。

 貧困問題への対応について御質問いただきました。

 御質問の重野さんからも湯浅さんの名前が出ましたが、私も、一昨年、派遣村などで、その現場でいろいろな方と御一緒して、貧困問題の重大性というものを改めて認識いたしました。

 平成二十二年度予算においては、雇用調整助成金の大幅増額や母子家庭への児童扶養手当の支給などの対策を盛り込んでおりますが、引き続き、雇用対策や家計を支援する政策を推進していきたいと思っております。

 特に、ワンストップサービスを社民党の皆さんとも一緒に進めたわけでありますが、それを一歩進めて、パーソナルサポートサービスの導入ということを湯浅さんたちが提唱されておりまして、これを実現すべく今雇用対策本部で取り組みを始めているところでありまして、一人一人を包摂する社会の実現を目指していきたいと思いますし、特にこの分野では社民党の皆さんとも協力ができていけるのではないかと期待をいたしております。

 政治と金の問題の検証と事務所費問題について御質問いただきました。

 鳩山前総理については、検察がすべて解明し、本人の関与なしとし、それを司法も認定しました。また、説明責任も尽くして、努力をされている、このように思っております。

 しかし、鳩山前総理は、みずからの資金管理団体でそうした問題が起きたこと、さらに小沢前幹事長の問題も含めて、政治責任をとってみずから辞任をされたわけであります。そういった意味で、私は、政治的には大変大きなけじめをつけられたものと理解をいたしております。

 閣僚の事務所費問題について、党として調査し、領収書等を公開して、架空計上などの疑惑はないことが明らかになったと承知をいたしております。

 なお、荒井大臣の事務所費については、違法ではないが政治資金の使い道として不適切な部分があり、訂正願を出すと聞いております。なお、本日午前、官房長官が荒井大臣に対して厳重注意をされたと承知をいたしております。

 政党に対する企業・団体献金についての御質問をいただきました。

 民主党のマニフェストにおいては、政治不信を解消するため、企業・団体献金の禁止を掲げているところであります。政治資金の規制については、各政党、各政治団体の政治活動のあり方にかかわることから、各党各会派で十分に御議論いただく必要があると考えております。

 以上、御質問に対する答弁とさせていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 渡辺喜美君。

    〔渡辺喜美君登壇〕

渡辺喜美君 みんなの党、渡辺喜美であります。(拍手)

 まず冒頭、国会運営の仕方に厳重抗議をいたします。サッカーでもロスタイムは延長されるんです。国会のロスタイムは何で延長されないんですか。選挙第一の民主党政権の強引なやり方は議会主義を破壊します。

 口蹄疫問題で御苦労されておられる皆様に心からお見舞いを申し上げます。みんなの党も、既に五月十八日、川田龍平議員による現地視察を行い、全力でこの問題に取り組んでおります。

 まずは、これ以上の感染拡大を食いとめる措置に万全を期さなければなりません。そして、危機収束の後、ここまでの被害をもたらした原因究明を徹底してやる必要があります。エイズ薬害に取り組んだ御経験をお持ちの菅総理は、なぜこの大流行が起きたと感じられたでしょうか。初動態勢のおくれに構造的な問題はなかったのか、御所見をお伺いいたします。

 さて、昨年夏、あれだけ国民の期待を負って発足した鳩山内閣は、なぜ、ダッチロールを重ね、わずか九カ月足らずで退陣に追い込まれたのでありましょうか。

 政治と金、普天間問題に加えて、鳩山前総理は退任後、国家戦略局の未整備が原因と述べたそうであります。内政面でも、予算の全面組み替えは全くできず、検討が全く不十分な子ども手当は見切り発車。こうした大混乱は、すべて司令塔不在が大きな原因でしょう。ということは、鳩山内閣の初代国家戦略担当大臣であった菅総理の責任が重大と言わざるを得ません。責任はないとお考えでしょうか。

 今回の所信では、本来、鳩山内閣が迷走を重ねた原因をどう反省し、どう正そうとしているのかを明確に示されませんでした。結局、同じ失政を繰り返し、再び大迷走の中で菅内閣が退陣に追い込まれるのが目に浮かぶようです。

 永井陽之助先生の政治学に、無為の蓄積という言葉が出てきます。鳩山内閣当時、菅副総理は、何もしないことが総理になるための戦略ともやゆされました。普天間問題にもノータッチ、責任逃れに終始されました。

 鳩山政権崩壊に関するみずからの責任についてどうお考えか。副総理、国家戦略担当大臣として何をすべきだったとの反省をされているのか。そして、総理になられた今、その反省に基づき、どう菅内閣を運営しようとしているのか。御所見をお伺いいたします。

 あるいは、菅総理は、既に解決策を提示されたのかもしれません。脱官僚を放棄し、官僚依存に戻ることであります。

 鳩山前総理は、官僚依存から国民への大政奉還を唱えましたが、現実には、財務省依存の政権運営に終始されました。菅総理は、前内閣の失敗に学んだのか、もはや、口先で脱官僚を唱えることすらやめてしまいました。内閣発足の初日、官僚との融和路線への転換を閣議決定する始末ですよ。総理、あなたを見損ないました。

 しかも、菅総理は、総理就任時の会見で、官僚こそが政策のプロフェッショナルと発言されました。とんでもない暴言であります。それでは、閣僚や国会議員は政策のプロじゃないんですか。皆さんはアマチュアなんですか。もし御自身がアマチュアだと思っているのなら、直ちに総理をやめてください。アマチュアの総理に日本国の経営をゆだねるわけにはまいりません。

 その上で、菅総理に伺います。

 脱官僚をなぜあきらめたんですか。官僚統制、中央集権という生態系の秩序に立つ天下りはどうするんですか。所信では、天下りの禁止などの取り組みも本格化と言われました。取り組みを本格化とは、すぐに根絶しないという意味でしょうか。

 鳩山内閣で横行した裏下りにはどう対応するんですか。鳩山内閣では、千二百二十一人の職員に肩たたきを行い、拒絶したのはたったの二名。水面下で天下りあっせんが行われている疑いが非常に濃厚です。

 現行の国家公務員法では、内閣総理大臣が立入検査などの調査をすることができます。本来は、現行法のもとで再就職等監視委員会を立ち上げ、調査をしてもらうこともできます。現行法に基づき、今すぐ裏下りの実態解明を行ったらいかがですか。

 また、無駄遣いの一掃はどうしますか。昨年のマニフェストでは、来年度には十二・六兆円の無駄を削減、財源を捻出することになっていたでしょう。昨年の事業仕分けでは、せいぜい六千億円の無駄しか出てこなかったじゃありませんか。来年度までに幾らの無駄を削減するのか、金額を明確に示してください。

 人件費の削減はどうしますか。仙谷大臣は、給与を下げればいいじゃないかみたいな議論は慎むべきだなどと国会で言われました。言語道断です。だけれども、給与を下げずに、どうやって人件費を下げるんですか。人員のリストラを行うんですか。増税の議論をする前に、リストラをやるのかやらないのか、答えてください。

 財政健全化を訴えるなら、まず政治家や官僚が身を切るべきです。

 みんなの党は、官僚の給与体系の抜本改革について既に法案を提出してあります。さらに、国会議員の歳費を三割削減、ボーナスを五割削減する法案も準備しています。ぜひ他党の皆さんにも御賛同いただき、今国会で提出をしたいと考えております。

 また、民間企業であれば、事業仕分けの前に、真っ先にやるのが資産のスリム化であります。

 我が国の場合、政府は資産七百兆円であります。そのうち五百二十兆円が金融資産なんです。このうち三分の二を証券化すれば、独立行政法人の全部廃止と同じ効果があります。借金を返済して、民間にはビジネスチャンスをつくることができる、一石二鳥のプランとして御提案をしておきます。

 結局、菅内閣は自民党同様、消費税を増税し、たくさん集めてたくさん配る、こういう大きな路線に転換をいたしました。

 菅総理は、かねてより、増税しても景気がよくなるという怪しげな主張をされていました。その根拠と試算を、乗数効果を用いてこの場でお示しください。乗数効果一一の事業があるはずだと言われたことがありましたが、その具体例も示してください。

 郵政改悪については、国民新党との合意に基づき、法案の速やかな成立を期すというのであれば、郵政を再国有化し、郵貯、簡保の受け入れ限度額を引き上げる理由を総理の言葉で説明してください。

 菅総理は、みずからの言葉に責任を持つべきです。その観点で、政治と金の問題を解消し、クリーンな政権になるという言葉を実行してください。

 まず、小沢前幹事長、鳩山前総理の証人喚問を今国会で実現すること。そして、荒井大臣の事務所費問題につき、なぜキャミソールや少女漫画が必要なのか、大臣自身がこの場で答えてください。

 総理の任命責任も問われます。自民党時代でさえ、このような大臣は即刻首ですよ。総理、予算委員会も開かずに逃げるのは、高杉晋作ですか。逃げの小五郎ですよ。総理の見解を伺います。

 また、菅総理は、著書「大臣」の中で、与党の党首が交代したときは、「衆議院を解散し、総選挙で国民に誰を総理にするかを問うべき」と書いておられました。この言葉を守らない答弁を繰り返しておられますが、それができないのなら、うそをついてごめんなさいと謝るべきです。

 最後に、故永井陽之助教授は、かねて、日本に政治的リアリズムが定着をしたときは憲法第九条の改正を行うべきだと言っておられました。私は、国会議員になりたての一九九八年ごろ、青山学院の大学院に永井先生を訪ね、今、日本は憲法改正をすべきでしょうかとお尋ねいたしました。永井先生は明快に、改正すべきですとお答えになりました。菅総理は、この永井陽之助先生のお考えをどう思われますか。

 以上、官僚のつくった答弁を読むのではなく、菅総理らしく、みずからの言葉で明快に御答弁いただくことをお願い申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 渡辺議員に、余り挑発に乗らないようにお答えをいたしたいと思います。

 まず、口蹄疫の感染の拡大。

 これは、感染経路等々あるいは初動等々についていろいろな議論がありますし、現在でも、感染経路の疫学的調査はできる範囲でやるように指示をいたしております。

 いろいろ議論はありますけれども、現時点で、何か過去のいろいろな原因を今の段階で大議論をするというよりは、今まずやるべきことをやらなければいけない、そしてその後に、もし必要であればその原因についても検証するということがあっていいのではないか、このように考えております。

 鳩山内閣の失敗が私の国家戦略室等にあったのではないかという御指摘であります。

 率直に申し上げて、私は、九月の段階から、雇用の問題あるいは環境の問題、さらには成長の問題、一月からは、財務大臣としてずっと予算委員会に約三カ月間座って、三月二十四日に、戦後五番目の速さで、皆さんの力で予算を成立させていただきました。それに対して、私が何か内閣として仕事をやっていなかったというような趣旨であったとすれば、それは全く違うということを申し上げ、私なりに精いっぱい責任を果たしておりましたが、十二分には支えることができなかったことは大変責任を感じているところであります。

 脱官僚をあきらめたのかと言われますが、全く違います。私が申し上げている国民主権の考え方というのは、官僚を何か排除しようというんじゃないんです。

 渡辺さんも御存じだと思いますが、イギリスでは、官僚は官僚としてしっかりした仕事をしているけれども、その官僚はあくまで大臣や政治家をちゃんと支えるという、その役割がはっきりしているんですよ。そういった意味で、我々政治家、そして大臣、副大臣は、国民から選んでいただいた国会議員が選んだ総理大臣が選ぶわけでありますから、立脚点が国民にあるんです。官僚は、必ずしも立脚点が国民にあるのではなくて、試験を通ってそれによって選ばれるんですから、それが根本から違うんです。

 ですから、その役割分担をしっかりすることがまさに脱官僚であって、単に官僚をはねのけたから脱官僚だというふうには、私は当初から全く思っておりません。

 天下りの根絶について、前内閣においても取り組みを進めたところでありますが、現内閣も継承して本格化させてまいりたいと思っております。

 具体的には、府省庁による公務員の再就職あっせんを引き続き内閣の方針として禁止し、国家公務員出身者が役員等に在籍する公益法人の徹底見直し、独立行政法人の役職ポストの公募、独法自体の抜本的見直し等を通じた公務員の再就職の適正化を行います。公務員制度の改革を進める中で、再就職あっせん規制違反行為等に対する監視機能の強化を図るなどのことを講じていきたいと思います。

 裏下りへの対応については、一般的に定義されているものではありませんが、天下り根絶の取り組みの中で適正化を進めていきます。

 そのために、同一府省庁出身者が何代にもわたって特定の団体等のポストに再就職している実態については、総務省において、四月からいわゆる三代連続ポスト等の調査を開始しており、これにより実態を明らかにしてまいります。

 無駄の一掃への取り組みでありますが、鳩山前政権は、戦後行政の大掃除として、昨年とことしの二回にわたって事業仕分けを実施し、これまで国民に見えなかった予算編成の過程を明らかにし、独立行政法人等の政府関連法人の事業の内容を検証することにより、行政の透明性を飛躍的に高めるとともに、大幅な無駄の削減を実現してきたところであります。

 また、事業仕分けの内生化、定常化である行政事業レビューを新たに実施し、各府省に自律的な改革プロセスが定着する取り組みを推進しているところであります。

 今後も、これまで推進してきた無駄遣いの根絶を一層徹底することとし、限られた人材、予算を有効に活用するため、こうした取り組みを続行する所存です。

 国家公務員の人件費削減についての御質問です。

 民主党のマニフェストに示された、国家公務員の総人件費を二割、一・一兆円削減という目標については、地方分権の推進に伴う地方移管、各種手当、退職金等の水準や定員の見直し、労使交渉を通じた給与改定など、さまざまな手法により、四年間かけて達成するよう努力することとしており、給与の見直しや定員の見直しについても適切に取り組んでまいります。

 増税の景気への影響に対する質問であります。

 税と財政出動により、お金の潤沢で安定な循環をもたらし、仕事と雇用を生み出すことが、デフレを解消し、景気回復につなげる道だと考えております。そのため、課題解決型の国家戦略によって需要を創出し、経済成長や雇用創出への寄与度を基準に優先順位をつけた予算を編成してまいりたいと思っております。(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

内閣総理大臣(菅直人君)(続) 試算については、経済成長、財政健全化、安心できる社会保障制度の構築の相互関連を明らかにする試算がまだ現状ではできていないので、そう遠くない時期にきちっとした形で打ち出せるよう検討してまいりたいと思います。

 乗数効果について、私もいろいろな委員会でこのことを言われまして、大分勉強させていただきました。

 余り細かいことを言う時間がありませんけれども、いわゆる単年度とか数年度の乗数効果による景気刺激と、根本的に生産性を高めるような、東京―大阪の新幹線をつくったときのような生産性の向上とは若干概念が違っておりまして、私は、八〇年代から後半の公共事業は、たとえ乗数効果が多少高いとしても、決してそれが本質的な経済の成長にはつながらなかったということで、否定をいたしているところであります。

 そういった意味で、課題解決型の戦略として、グリーンイノベーション、ライフイノベーション、アジア経済等について、全体の工程表を取りまとめる予定となっております。

 郵政再国有化改革についてであります。

 私たちは、郵政については株式会社形態を前提として組織を再編するものであり、公社や国営に戻すことを考えているものではありません。郵政改革に関連する諸事項について、亀井前郵政改革担当大臣と原口総務大臣の談話において方針が示されておりますので、その線に沿ってやっていきたいと考えております。

 小沢前幹事長、鳩山前総理の証人喚問等についてでありますが、こういったことについては、ぜひ国会の審議で、国会の中で御議論をいただきたいと思います。

 あわせて、荒井大臣の事務所費についても、先ほど来申し上げておりますように、不適切な支出があったとは思いますし、また官房長官が注意もされましたが、違法性は特にない、このように認識をいたしているところであります。

 衆議院の解散についての御質問でありますが、参議院でまず国民の信を問う、その自信がないから衆議院の解散ということを言っているんじゃないですか。ぜひとも、まず参議院でもって国民の信を問う、そのことを、各党とも全力を挙げることを、やるべきだということを申し上げて、私の答弁とさせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣荒井聰君登壇〕

国務大臣(荒井聰君) 私の事務所費問題でございます。

 さきに既に御説明を申し上げましたように、現在、法律事務所及び監査事務所でその内容をチェックしているところでございます。その結果を待って、必要な場合は修正をすることとしてございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 田中康夫君。

    〔田中康夫君登壇〕

田中康夫君 衆議院における新しい与党会派、国民新党・新党日本の田中康夫です。

 混迷する日本社会の乗数効果と国民生活の消費性向を高めるべく、代表質問を行います。(拍手)

 菅直人さん、二〇〇三年五月十日、民主党代表として諫早湾干拓事業の現場を当時長野県知事だった私と一緒に視察したあなたが、税金の無駄遣い、役人天下りのための事業、小泉首相はこれが変えられなくて何が構造改革かと一刀両断された当時の新聞記事を、昨夜、懐かしく読み返しました。

 私の脱ダム宣言を引き合いに出され、首相と農水大臣がやめると言えばとめることは可能だとシンポジウムで断言されたあなたは、諫早湾干拓潮受け堤防排水門開門調査の開始をこの場で改めて厳命されますね。イエス、ノーでお答えください。

 「財政健全化に向けた抜本的な改革に今から着手」「無駄遣いの根絶を一層徹底」とおっしゃる菅直人さん。ならば、先月二十七日、スペインで可決した財政緊縮法をどのようにとらえていますか。

 私は不思議でなりません、国家公務員制度の見直しを声高に語る民主党は、なぜ地方公務員制度の見直しをマニフェストのどこにも明記しないのかと。あなたが所信表明演説で述べられた、個々の団体の利益を代表する政治との決別は本当だろうかと。

 ホセ・ルイス・サパテーロ首相は、スペイン社会労働党の書記長。が、支持母体の労働組合が公立学校等で大規模ストライキを実施してもいささかもひるまず、この六月から即時、公務員給与平均五%削減へとかじを切りました。

 六十歳の定年まで解雇も倒産も無縁な日本の地方公務員の月額給料は、諸手当を除き、控え目に見積もっても、民間事業所の平均賃金の一・五倍余りも恵まれています。

 二百八十六万人の地方公務員、六十四万人の国家公務員、合わせて三百五十万人の公務員給与を一〇%削減するだけでも二・五兆円、消費税一%分の財源が生み出せます。

 財政破綻寸前の長野県で、私は、四十七都道府県で最も低い知事給与へと減額した上で、計五十時間に及ぶ徹夜交渉の最前線に立ち、給与一〇%の削減合意を取りつけ、さらに、就任初年度から退任まで七年度連続、プライマリーバランス、基礎的財政収支を黒字化しました。

 プライマリーバランスの黒字化は十年後と、計画経済のごとき悠長な目標を設定する菅直人さん、我が敬愛する経済学者の野口悠紀雄氏が増税で経済成長は語るに落ちた理屈と慨嘆する安易な増税へ逃げ込む前に、隗より始めよ、泣いて馬謖を切ってこそ、あなたが述べる課題解決型の国家戦略です。第二のギリシャに陥るまじ。その覚悟を抱いてサパテーロ首相も、労働貴族な官公労の既得権益にメスを入れたのです。

 菅直人さん、辞意表明から所信表明に至るまで丸々十日、問題山積にもかかわらず、あなたの判断で、首班指名の本会議以外、政策論争も法案採決も開店休業の政治空白に陥りました。その十日間、少なく見積もっても、企業の倒産は三百五十件、口蹄疫の殺処分対象家畜は十九万頭、自殺者は九百人を超え、日本の借金は一兆円以上も増加。政権交代応援団を自任していた週刊金曜日でも、今度の政権には心が躍らない、現実的と言われて喜ぶ元左翼みたいな菅氏が首相だからとやゆされています。

 この田中康夫め、無礼千万と叫びたい衝動に駆られていますか。でも、聡明なあなたは、煙たい存在が周囲に必要とおっしゃっていますね。

 私どもの会派には、後藤田かみそり正晴さん同様、警察官僚出身、心優しき亀井静香代表もおります。県知事時代の二〇〇三年、民由合併直後のあなた、小沢一郎さんと三人で民主党の政見放送に出演、全国各地、六十名近い候補者の応援に自腹で伺わせていただいた不肖私もおります。

 総選挙中に拝命したネクスト内閣の地方分権担当大臣を、選挙後に、ほどなく、事前連絡もなく、マスコミ辞令であなたから罷免された私です。その能力はともかく、煙たさでは有資格者でありましょう。

 代々木ゼミナールのうたい文句を拝借すれば、「親身の指導」「日々是決戦」。

 以上、リーダーシップを持った内閣総理大臣としての真摯な答弁を期待して、地域に根差し、向上心にあふれる日本の中流家庭を共創すべく、国民の悲しみや不安を取り除き、誇りと希望を抱ける切磋琢磨の日本社会の再興を目指す統一会派、国民新党・新党日本の代表質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 一つ、渡辺議員に答弁漏れがありましたので、答弁をさせていただきます。

 永井陽之助先生の憲法観についての御質問をいただきました。

 私は、ちょうど大学にいたときに永井陽之助先生が北大から移ってこられまして、またその後、いろいろな経緯で、長く親しくさせていただきました。

 いろいろな議論をさせていただく中で、憲法九条について、今、渡辺さんが言われたようなお考え方をお持ちであったかもしれません。ただ、私が議論した中では、そうした憲法九条そのものを題材にした議論はしておりませんでしたので、いわゆる現実主義者という形で論陣を張っておられましたので、そのことについていろいろと話を聞かせていただいたということであります。

 田中康夫議員に、御質問にお答えをいたします。

 諫早干拓事業の開門調査についてであります。

 現在、政府・与党の関係者で構成された諫早湾干拓事業検討委員会の座長報告において、環境影響評価を行った上で開門調査を実施することが適当と判断されたことを踏まえて、農林水産大臣として今後の方向を示すことを検討中と聞いております。まずは、大臣からの検討の内容を聞くことといたしたいと考えております。

 公務員給与の削減についての質問をいただきました。

 民主党はマニフェストにおいて、国家公務員の総人件費を二割、一・一兆円削減という目標を掲げているところです。これについては、地方分権推進に伴う地方移管、各種手当、退職金等の水準や定員の見直し、労使交渉を通じた給与改定など、さまざまな手法により四年間かけて達成する努力をするように指摘をし、給与の見直しについても適切に取り組んでいく所存であります。

 地方公務員給与の削減の意思についての御質問であります。

 各地方公共団体においては、人件費改革の取り組みを既に実施しておられます。給与構造見直し、給与水準を平均四・八%引き下げ、効果額は試算として年間約六千億となっております。地域民間給与水準を一層反映したものとする方向です。全地方公共団体の六割が独自の給与削減措置を実施いたしております。地方公共団体においては、引き続き自主的に改革に取り組むことが肝要だと思っております。

 党としていろいろなことを提案することはあると思いますが、内閣総理大臣として直接地方の給与をどうこうというのは、それこそ地方分権の考え方にやや問題がありますので、そういった意味では、党として議論を進めてまいりたい、このように思っているところであります。

 増税の景気への影響に関する質問であります。

 税と財政出動により、お金の潤沢で安定した循環をもたらし、仕事と雇用を生み出すことがデフレを解消し、景気回復につなげる道だと考えております。

 第三の道は、我が国財政は危機的状況にあると認識しつつ、少子高齢化など経済社会が抱える課題の解決を新たな需要や雇用創出のきっかけとして、それを成長につなげる政策であります。これにより、強い経済、強い財政、強い社会保障の一体的な実現を目指してまいります。

 政権の引き継ぎ期間についての御質問がありました。

 確かに、前総理の辞意表明から所信表明に至るまで十日間の期間がかかりまして、その間も、少なくとも、前内閣が事務取扱という形で緊急時には対応できる態勢をとっておりました。十日間の政治的空白については申しわけなく思っておりますが、各党とも、自民党も何度か途中で総理がやめられましたが、比較的これより長い期間を、空白をもたらされまして、今回、民主党としては、できるだけ短い期間でこの空白をおさめた、このように思っているところであります。

 最後に、田中議員の方から、煙たい存在の方の、これは登用についてということになるんでしょうか、確かに二〇〇三年に、民由合併後の衆議院の選挙で、田中康夫さんに、政権担当のときには、今で言う総務大臣に就任をいただきたいということを、いわば選挙中に公約として出させていただきました。残念ながら、政権交代にまで立ち入りませんでしたので、確かにきちっと申し上げなければいけませんでしたが、結果として、大臣就任のお願いはできなかったということであります。

 いずれにいたしましても、私は、この内閣で、官房長官を軸とした一体性が必要でありまして、いろいろ個性豊かな議員の方が、それぞれの役割を担って、政権運営に御協力していただけることを期待を申し上げて、私からの答弁とさせていただきます。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後六時七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  菅  直人君

       総務大臣  原口 一博君

       法務大臣  千葉 景子君

       外務大臣  岡田 克也君

       財務大臣  野田 佳彦君

       文部科学大臣  川端 達夫君

       厚生労働大臣  長妻  昭君

       農林水産大臣  山田 正彦君

       経済産業大臣  直嶋 正行君

       国土交通大臣  前原 誠司君

       環境大臣  小沢 鋭仁君

       防衛大臣  北澤 俊美君

       国務大臣  荒井  聰君

       国務大臣  玄葉光一郎君

       国務大臣  自見庄三郎君

       国務大臣  仙谷 由人君

       国務大臣  中井  洽君

       国務大臣  蓮   舫君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  古川 元久君


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