衆議院

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第2号 平成22年10月6日(水曜日)

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平成二十二年十月六日(水曜日)

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 議事日程 第二号

  平成二十二年十月六日

    午後一時開議

  一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。

 第六十九番、北海道選挙区選出議員、今津寛君。

    〔今津寛君起立、拍手〕

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑

議長(横路孝弘君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。谷垣禎一君。

    〔谷垣禎一君登壇〕

谷垣禎一君 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、先般、一日に行われました菅総理の所信表明演説について質問いたします。(拍手)

 一昨日、民主党小沢元幹事長の政治資金規正法違反の疑惑に関して、起訴すべきとの検察審査会の議決がなされました。国民による二度にわたっての議決は極めて重いものがあります。

 菅総理、あなたが代表選で、クリーンでオープンな政治ということを徹底して掲げたことを国民の多くは明確に記憶しております。

 これまでの民主党においては政治と金をめぐる事件が頻出してきたのが実態ですが、今こそ有言実行のときです。総理は十分に指導力を発揮し、まずは小沢元幹事長が証人喚問に応じて国会で説明責任を果たすこと、あわせて、鳩山前総理が国会へ資料を提出することなど、国民が納得のいく決着に向けて全力を尽くすことが当然の責務かと考えますが、その覚悟のほどを伺います。

 さて、菅総理は、先般の民主党代表選により再選されました。この代表選においては、親小沢か、反小沢、脱小沢かが最大の焦点であり、代表候補としての菅総理からは、総理の座への執念、執着こそ感じましたが、この国をどう導きたいのかという裂帛の気合いや揺るぎない信念というようなものは一切感じられませんでした。

 政策的にも、受け売りが多く、研ぎ澄まされた内政、外交の基本方針が示されることはありませんでした。そうした菅総理の特徴は、現下の課題の論点メモともいうべき所信表明演説でも遺憾なく発揮されております。

 そもそも、菅総理は、参院選の前に、為政者として苦渋の選択の最たるものであるべき国民への負担増のお願いを、自民党が消費税率一〇%と言っているので、それを参考にしたいという極めて安直な思いつき、抱きつきによって済ませようとし、国民の信頼を失う結果となりましたが、そのとき見せた定見のなさこそが、菅内閣の唯一一貫した姿勢であります。

 今回起きた尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をめぐる一連の経緯は、まさにこうした菅政権の根本的な欠陥が外交面であらわれたものにすぎません。すなわち、菅政権には、日本の安全保障の根本がどういうことなのか、どういう形で国民の生命財産を守るのかという点について確固たる信念が欠けており、このことこそが、今回、政府が、無責任で筋の通らない対応に終始していることの背景にあります。

 信念のかわりに存在するものは、自民党政権の内政、外交、政治手法までのすべてを否定すればそれでよしという民主党政権の考え方であり、無責任に他者に責任転嫁すればすべて済むという万年野党体質であります。これらの幼児性こそが、国政の混乱、停滞、後退をもたらしております。

 菅改造内閣は、代表選直後こそ、反小沢の達成感、高揚感も手伝って、高い内閣支持率を記録されました。しかし、中身がなく、雰囲気だけでつくられた内閣やその支持率が持続可能なはずはなく、既に崩壊の序曲が始まっております。

 そもそも、菅政権の政権としての正統性は既に崩壊しております。代表選において、昨年国民の負託を受けて政権を獲得したマニフェストを、その党の代表者たる菅総理みずからが全力で否定するともとれる言動をされていたことが、その何よりの証左であります。

 それに加え、我々は、国の主権や国民の生命財産をきちんと守る意思と能力のない者が為政者の座に居座り続けることほど国民にとって不幸なことはないと考え、今国会を通じて、菅総理の総理としての資質、菅改造内閣の内政、外交両面にわたる政権担当能力を厳しく問うてまいります。

 まず、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件についてお伺いいたします。

 那覇地検は、去る九月二十四日、海上保安庁の巡視船に衝突したとして公務執行妨害で逮捕、勾留していた中国人船長を、処分保留のまま釈放を決定いたしました。那覇地検次席検事は、国民への影響や今後の日中関係を考慮したとその理由を説明しておりますが、こうした日中関係への配慮については那覇地検が判断できる能力も判断すべき権限もないことは明らかであり、この発言は、むしろ地検として、政治判断が背景にあったことを暗に示唆したものと受けとめる方が自然であります。

 しかし、政府は、釈放の際に行われた今後の日中関係への考慮という判断は、あくまで那覇地検なり上級庁である最高検の責任において行われたものであり、そこに政治介入は一切なかったとの欺瞞的説明をされています。これが事実であるとすれば、検察官僚が、重大な外交関係を含む総合的な国益の判断を、政治を排除して独自に行ったということになります。

 菅政権から透けて見える態度は、検察への責任転嫁という無責任きわまりない姿勢です。我々は、政治介入があったら、それ自体が直ちに問題だと言うつもりはありません。むしろ、政治判断を行わなかったという説明それ自体が、責任回避そのものではありませんか。

 もう一度申し上げますが、検察当局に判断、責任を本当に丸投げしたということであれば、今回、日中関係の危機回避に向けて、泥をかぶってまでぎりぎりの思案をめぐらせたのは那覇地検や最高検であるということになります。政治主導をふだんはあれほど呼号する菅内閣において、国益全体にかかわる本件について検察当局に判断、責任を丸投げしたこと、あるいは丸投げしたという説明をすること自体、全くもって無責任と考えますが、御見解を求めます。

 菅総理は、所信表明演説において、内閣として取り組む重要政策課題の一つとして主体的な外交を掲げておりますが、我が国としての外交の主体性を論ずる以前に、政府部内で政治家が主体性なく外交を検察に丸投げしているのではお話になりません。

 そもそも菅政権には、先ほどの消費税率一〇%発言にとどまらず、定見なく相手に抱きついて責任を押しつけてくる悪癖があります。今回は、郵便不正事件で大阪地検特捜部の主任検事が証拠隠滅容疑で逮捕され、検察当局の威信が失墜したことを奇貨として、検察当局に抱きついて責任を押しつけたのだという見方も成り立ちます。税制や外交という重要案件において、このような責任転嫁や保身的な取り繕いが存在するところがこの政権の限界であり、信をおけぬゆえんであります。

 いずれにせよ、真相を明らかにすることが重要であり、那覇地検次席検事及び検事総長の証人喚問を求めます。もちろん、一般論としての検察捜査の独立性に十分配慮した上で、外交案件が密接に絡んだゆえの特例扱いとしてこれを要求いたします。総理の前向きなお答えを求めます。

 また、漁船衝突時の海上保安庁のビデオについて、なぜ最初の段階で公開しなかったのでしょうか。国際世論を喚起し、中国における反日感情のヒートアップの歯どめとするために、初期の段階で公開するという必要があったはずです。公開がおくれた結果、国際社会に対して中国の不当性を明確に訴えることができていません。

 もちろん、刑事訴訟手続上、公開には公益上の必要性が求められるわけですが、政府として、みずからの責任をもって公益性を判断し、捜査当局に公開を要請する道はあったはずであります。そのような政治的な判断をひたすら先送りし、時宜を逸してきたとすれば、それもまた問題であります。

 そうした不作為を含めて、これまでの非公開という対応について政府部内でどなたが責任を持っておられるのか、明らかにしていただきたく存じます。

 なお、遅きに失した感はありますが、今からでも公開すべきと考えますので、早急なる対応を求めます。

 ついでながら、総理はこれをごらんになっていないとのことですが、これほどの重大事件の証憑をまだ吟味しておられないとは、驚くほかはないと申し添えておきます。

 次いで、米国に対する外交上の努力がどのように行われたかが問題であります。結局は、鳩山前内閣の普天間基地移設問題をめぐるダッチロールの結果、日米の信頼関係が大きく毀損されたことが、今回の事件において、米国、ひいては国際世論の十分なサポートを得られなかった原因の一つとなっております。

 より深刻な疑問は、中国が最近の日米関係の希薄化を見て、一段と攻勢をかけてきたのではないかということであります。沖縄県民の理解をどう求めていくのか等、普天間問題の早期解決への具体策と決意とあわせ、この点に関する総理の見解を求めます。

 また、仲井真知事は既に県外移設を求めていると承知しますが、この点についても総理のお考えを示してください。

 また、十一月のオバマ大統領の来日直後から、米国海軍と海上自衛隊を中心に大規模の統合演習を行うとの報道があります。尖閣諸島の事案を想定したものとされておりますが、我が国がどういった形でこれにかかわるのか、総理としてはこの件をどう御認識か、お聞かせください。

 中国との関係のあり方についても大いに疑問を禁じ得ません。昨年十二月には、鳩山前政権のもとで、当時の小沢幹事長が約百四十人の訪中団を率いて胡錦濤国家主席と面会したり、従来の慣行を破る強引なやり方で習近平国家副主席の天皇陛下との会見が設定されたという出来事がありました。あれは、一体全体、何だったんでしょうか。そこまで構築したはずの中国との関係が、今回の事件で生かされた形跡は全くありません。むしろ、中国には、日本という国は圧力をかければ最後には屈服するという間違った教訓を与えたということではなかったでしょうか。

 小沢元幹事長が代表選で戦った相手であることは言いわけにはなりません。外交とは、政府・与党のあらゆるルートを使って働きかけるものであり、国益をかけた外交上の駆け引きの場面ですら一致団結できないというのでは、政党の体をなしているとは言えません。その意味では、鳩山前総理が、私だったら事件直後に中国の温家宝首相と腹を割って話し合えたなどと語っているのは、まさに噴飯物であります。

 訪中団の一員として胡錦濤主席と写真におさまった与党議員の方々は、今回の国家的危機においてどのような役割を果たされたのでしょうか。昨年来の経緯にかんがみ、政府のみならず、党全体で責任を負うべきと考えますが、総理の御見解を伺います。

 それにしても、菅総理が所信表明演説で掲げた、主体的な外交、日米同盟、日中関係、いずれもおぼつかないようでは、政権を担う資格はありません。中国海軍が著しい近代化を進め、南シナ海における権益を核心的利益と位置づけている様子も見られる中、これを脅威として顕在化させないためにも、強固な日米同盟を維持していくことこそ、我が国の外交戦略の根幹と考えます。

 民主党政権はその文脈を読み誤り、国内政治と東アジアを重視する余りに米国との信頼関係を損ねてしまいましたが、今度は中国との関係もこじれにこじれました。そして、何より、国家の外交の判断、説明、責任を、政治が逃げて他者に押しつける。余りの外交音痴のために、我が国の国際社会における立ち位置は危うくなるばかりであります。

 これはひとえに政権の構造的問題と考えます。政治主導の美名のもとに、各省庁に蓄積された情報やノウハウ等を活用しなかったアマチュア外交によって、確たる展望もないまま場当たり的な対応に終始したことが、今回の失態を招いた要因ではないでしょうか。普天間問題の迷走による日米同盟の弱体化も同様であり、それが今回の中国の行動や、それに続く北方領土に対するロシアの動きまで誘発することにもなっており、我が国の外交上の損失ははかり知れません。

 また、突然のASEM出席に当たって、多数国の理解と支持を得て中国と対峙するという自国の外交意図を事前に明らかにしてしまっていたように思われますが、これも外交感覚の欠如を物語っております。国会日程を動かしてまで出席されたのですから、いかなる成果があったのですか。フジタ社員の残る一名の釈放についても中国側に毅然として臨むべきでありましたが、ASEMの立ち話において、温家宝首相に当然強く働きかけたのでしょうか。総理の具体的な説明を求めます。

 もはやこれ以上、国民の生命財産、我が国の国土、これを危機にさらすことは許されません。自民党は、政権の座こそ失いましたが、建設的な日米関係、日中関係の構築に日夜心血を注いだ先人たちの知恵と人脈が脈々と受け継がれており、高い見識を持った同僚諸君がさまざまなレベルで交流を続け、次代を担う研さんを着実に積んでおります。

 政権を担う場合には、国民の皆様に今回のような釈然としない思いを抱かせず、仮に国民にそうした思いを強いることが起きても、きちんと説明責任を果たす姿を国民にお示しすることが最低限必要と考えます。我が党としては、いつでも我が国の主権外交を担う用意も覚悟もあることをここに申し上げ、本件に関する質問を終わります。

 次に、経済対策、補正予算についてお伺いします。

 政府・与党は、補正予算について、野党との意見交換を重視する姿勢を示されています。しかしながら、中国漁船衝突事件における検察当局への抱きつき同様に、補正予算の編成まで抱きつき、責任を野党に負わせようということであれば、拒否をいたします。

 より端的に申し上げます。

 自民党は、中長期の財政健全化目標を盛り込んだ財政責任法を三月に提出いたしましたが、その具体的手段である税制抜本改革についても、我々が政府・与党であった時代に、二十三年度までに法案を提出するというスケジュールまで盛り込んだ二十一年度税制改正法附則第百四条を成立させております。これらの事情を前提として我が党が主張する補正予算案の規模、財源は、いわば財政責任に裏打ちされたものと自負しております。

 他方、政府の方は、お得意の抱きつき戦術で、財政運営戦略において我が党と同様の財政健全化目標を示しはしたものの、拘束力の程度に疑問があるほか、消費税を含む税制抜本改革に対するスタンスがあいまいであるがゆえに、達成手段のない目標に堕している印象が否めません。そうした状況のままでは、仮に政府・与党が我々の提案する補正予算の内容、規模、財源を丸のみしていただいたとしても、政府で実行される段階では財政規律に欠けたばらまきと言わざるを得ず、しかも、我々がそのばらまきの片棒を担がされた格好になり、到底耐えがたいことであります。

 そこで、我々は、補正予算の協議の大前提として、まず財政について共通の認識に立つ必要があると考えており、前国会でたなざらしにされた財政責任法の速やかな成立を求めたいと思います。この点に関する菅総理のお考えをお聞かせください。

 次いで、二十一年度税制改正附則第百四条についてお伺いします。

 私が本年六月の代表質問でそのスケジュールを遵守されるか伺った際には、二十三年度末の期限ぎりぎりになって扱いをどうするか検討するようなことを述べられましたが、既にこの法律の規定が政府を拘束している中で、その誠実な執行の義務を負うべき内閣の総理大臣の答弁としては不適切であると考えます。

 この規定にのっとって政府が対応するべきだということは、我が党の財政責任法の中核的内容でもあり、今後の財政運営について協議していく際の信頼関係の大前提であると考えます。改めて、この規定にのっとって対応するか否かを明確に御答弁ください。

 さらに必要なことは、さきの総選挙における民主党マニフェスト及びその後の二十二年度予算編成を初めとする、これまでの民主党の財政運営に対する総括であると考えます。

 まず、民主党には、いまだに、政治主導で無駄遣いの根絶に取り組めば、必要な財源が何兆円も捻出できるという幻想が存在しているようですが、民主党政権になってから一年たったのですから、できるのであれば、実行できる立場にある以上おやりになればよいし、できなければできないと認めるべきだということに尽きます。財源捻出も順調だと参院選では言っていたのに、なぜ急に、財源なき場合などと言葉をすりかえるのでしょうか。まずは国民に謝罪すべきでありませんか。総理の見解を求めます。

 具体的に申し上げます。

 総理の所信表明演説では、いまだに、強力に無駄の削減を徹底などと記されていますが、民主党は、そもそも、さきの総選挙のマニフェストで、「国の総予算二百七兆円を全面組み替え」と称して、十六・八兆円の財源を生み出す、そのうち九・一兆円は無駄遣いの根絶で生み出すと主張されました。ところが、あの事業仕分けでさえ、達成された歳出削減はわずかに一兆円程度であり、国の総予算二百七兆円なるものは、二十二年度予算編成で逆に二百十五兆円に膨れ上がったのが実情であります。

 こうした経験を経て、さすがの民主党の諸君も、無駄遣いの根絶、総予算の組み替えといった議論の限界と現実に気づいたのではないかと期待していたのですが、さきの代表選になって、小沢元幹事長が、政治主導で予算を組めば無駄は大いに削れるという趣旨の御主張を再びなさり、小沢元幹事長を支持する議員の多くが地元や公共の電波で同様の主張を繰り広げたことは、正直、驚かされ、かつ、あきれました。

 そこで、御提案申し上げます。

 それは、菅総理が四百十二人内閣とおっしゃるからには、概算要求からみずからつくった二十三年度予算編成を言いわけ無用のラストチャンスとして、民主党の総力を結集して、挙党体制で無駄遣いの根絶、総予算の組み替えに取り組んでいただき、そのプロセス、結果、さらには結果に対する責任を全員で共有していただきたいということであります。与党である民主党議員全員が財政の現実を知ることこそが、地に足がついた議論を行うための前提となると考えます。

 ただし、チャンスが一度きりであることは申し上げるまでもありません。我々は、その先にあるのは、民主党マニフェストの総括、撤回でしかないと思っておりますが、ここでは三点をお伺いしておくにとどめたいと存じます。

 まず、今回の代表選で小沢元幹事長の陣営が主張した、無駄排除により何兆円もの財源を捻出できるという主張に対する総理の改めての御見解と、そうした主張にくみする議員が多数存在する民主党の現状について、財政に対する理解度という観点からの評価をお聞かせください。例えるなら、無駄排除による財源捻出という、いわば攘夷論の限界を内心悟ったと思われる菅総理はこの攘夷派の主張をいかにお考えか、伺いたく存じます。

 次に、特会仕分けを初めとするこの秋の行政刷新会議の事業仕分けではどれだけの歳出削減を見込み、二十三年度予算ではトータルでどれだけの歳出削減を見込んでいるのか、現段階でのお考えをお聞かせください。あわせて、来年度から予定されている基礎年金の国庫負担の二分の一への引き上げを先送りすることや、国の会計間の資金移転や赤字のつけかえ等の邪道に頼ることなく、新規公債発行額を二十二年度の四十四・三兆円以下に抑えることも改めて約束されますでしょうか。

 最後に、私の提案のとおり、二十三年度予算編成では四百十二人内閣の総力を挙げて無駄排除に取り組んでいただくかわりに、二十三年度予算編成におけるその成果をもって、無駄遣いの根絶による財源捻出という民主党のマニフェストのシナリオそのものに区切りをつけ、実現できなかった部分があれば、潔く謝罪、撤回するという作業に入っていただきたい。これは解散・総選挙に値することでもありますが、そうしたプロセスを設けることを約束いただきたいのですが、いかがでしょうか。

 なお、代表選で、マニフェストの着実な履行を求める小沢元幹事長の陣営を菅総理の陣営が打ち破ったことを契機にして、なし崩し的にマニフェストの見直し、修正が図られていくとすれば、国民との契約を破棄する際の取り扱いとしては余りにもぞんざいであります。国民との約束である以上、その総括、見直しこそ、目に見える公開のプロセスで、第三者を交えて大いに議論を行う必要があると考えます。マニフェスト施策こそ事業仕分けや政策コンテストの対象にして、その是非を検証すべきではないでしょうか。総理の見解を伺います。

 また、これに関連して、地方向けの補助金改革について伺います。

 民主党政権になって国の総予算は膨らみましたが、これを検証していくと、マニフェストでは歳出削減の主力分野とも言える補助金が、それとは逆に、二十一年度の四十九兆円から二十二年度の五十三・七兆円へと、四・七兆円も膨れ上がっていることが目立ちます。

 小沢元幹事長は、さきの代表選ではこの分野の改革を強く主張し、ひもつき補助金の一括交付金化により三割から四割の削減を期待できると言われていました。菅総理も、減額すべきとの指示を閣僚に出されたと伺っております。

 節約すると言ったものが逆にふえたのですから、マニフェストの関係では、もとに戻す以上の削減が必要となるのでしょうが、総理としては、二十三年度にどの程度削減することをお考えなのでしょうか。また、地方団体は削減の方針に必ずしも前向きではないと聞いていますが、どのように説得されていかれるのでしょうか。明確な答弁を求めます。

 最後に、所信表明演説では、公務員制度改革にも言及されております。民主党マニフェストでは、公務員人件費については二割削減で一・一兆円を節約とされておりましたが、相変わらず達成の道筋が見えません。菅総理は、代表選で、国家公務員人件費の二割削減に向け、人事院勧告を超えた削減を目指すと主張され、片山総務大臣もこうした深掘りに前向きと伺っております。

 問題としたいのは、その際の地方公務員の取り扱いです。

 我が党は、政権担当時も、地方公務員の人件費の削減の方針を示し、地方財政措置への国民負担の軽減を通じて、広く国民に還元してまいりました。さきの参院選で、民主党に対しては、自治労などから支援を受ける民主党では、その既得権益を一掃する行革はできないと批判いたしました。

 今回の深掘りは、民主党が、支援労組の意向にかかわらず、国家公務員、ひいては地方公務員の人件費削減に踏み切れるかの試金石であると考えます。改めて、今回の国家公務員人件費の深掘りと、その地方公務員人件費への反映について方針を伺います。

 イタリアの政治思想家ニコロ・マキャベリは、その著書「政略論」においてこう述べております。宗教でも国家でも、それを長く維持していくには、多くの場合、本来の姿に回帰することが必要である。それは、その創設期には必ず何かすぐれたところが存在したはずだからである。そのような長所があったからこそ今日の隆盛を達成できたと。しかしながら、時がたつにつれて、当初にはあった長所も次第にあせてくるものである、こういうふうにも述べております。

 日本が今後、世界の中でどう生き抜いていくのか。そのためには、戦後、不死鳥のごとくよみがえった我が国の原点を考える必要があるのでしょう。ひいては、我が国の長い歴史を見詰め、その根源的な長所や美徳を把握し、それを礎として裏づけられたものこそ、今後の我が国の進むべき道ではないでしょうか。

 衆参の与野党逆転が生じた今、この国を導く国会のあり方が問われております。与党、野党、お互いの果たすべき役割は何なのか。国民のために何をなすべきか。議員各位はなぜ国会議員になったのか。みずからの原点に立ち返り、そのときに抱いた志に恥じることがないよう全力で職責を果たし合う。それこそが、まさしく今、国民から必要とされている国会のあり方だと考えます。

 そのためには、総理、まずあなたが、司法や、あるいは官房長官などの他の閣僚、あるいは野党に責任を押しつけるのではなく、一国の総理、官邸のあるじとして指導力を発揮し、真実を国民に伝えなければ、協力のしようもありません。不毛な責任転嫁や、あるいは権謀術数は無用であります。

 私は、正々堂々、みずからの信念に殉じ、本来みずからに与えられた責務を果たすことによってのみ国民の負託にこたえてまいることをここに誓い、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 谷垣総裁から多くの点について御質問をいただきました。私としては、真摯にお答えをしてまいりたいと思っております。

 まず最初に、小沢元幹事長の説明責任、また、鳩山前総理の資料提出に関する質問についてお答えを申し上げます。

 御質問をいただいた小沢元幹事長の国会における説明の件につきましては、まずは、国会に関することでありますので、国会で御議論、御決定をいただくべきものと考えます。

 なお、小沢氏本人も説明責任を果たしていくと表明されておりますので、司法手続に入っていることなどを踏まえつつ、説明の場、方法を含めて、御本人がみずから判断され、対応することが望ましいと考えております。

 また、鳩山前総理に関しては、検察処分、検察審査会の審査、裁判ともすべて終了し、かつ、鳩山前総理御自身が総理辞任という形で、大変重い形で政治責任をとられた、このように認識をいたしております。

 次に、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件に関連をして、検察当局に判断、責任を丸投げしたのではないかという御質問についてお答えを申し上げます。

 本件については、検察当局が、事件の性質等を総合的に考慮した上で、国内法に基づき粛々と判断を行われた結果だと承知をいたしております。

 検察当局の判断は適切であったというふうに認識をいたしております。(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

内閣総理大臣(菅直人君)(続) 次に、那覇地検次席検事及び検事総長の証人喚問に関する御質問にお答えします。

 証人喚問は、国会において検討されるべき問題であると承知をいたしております。

 なお、検察は、御指摘のように検察捜査の独立性の保障が要請されており、検察官の証人喚問はその独立性に悪影響を及ぼすおそれがあるというふうにも認識をいたしております。

 次に、衝突時のビデオの公開についてお答えを申し上げます。

 尖閣諸島が歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であることは全く疑いのないところであり、現に我が国が有効に支配をいたしております。

 今回の事案についても、必要な場面において、国際社会に対ししっかりと我が国の立場を説明してきたところであり、今後もその方針に変わりはありません。ビデオの扱いを含め、今回の事案については、捜査当局において適切に対応してきたところと承知をいたしております。

 今後のビデオの公開については、現在の捜査の状況及び国会等からの要望を踏まえて、捜査当局において適切な判断がなされるものと考えております。

 次に、普天間飛行場移設問題など日米関係と、尖閣諸島周辺領海での衝突事件についての御質問にお答えをいたします。

 私の内閣が発足して以来、G8、G20の際の日米首脳会談、さらに、先日、国連総会の際の首脳会談において、オバマ大統領と私との間の信頼関係は次第に深まってきているものと認識をいたしております。また、外相同士も緊密に連携して話をいたしております。日米関係が希薄化しているとの御指摘は全く当たらないと思っております。

 こういった首脳同士、外相同士の強固な信頼関係のもと、日米両国は、二国間、地域及びグローバルな課題につき、十分な信頼関係に基づく緊密な対話、協力を行っているところであります。

 なお、所信表明演説でも述べましたように、中国の動向については、透明性を欠いた国防力の強化や海洋活動の活発化などを懸念して、注視をしているところであります。

 いずれにしても、日米同盟を二十一世紀にふさわしい形でさらに深化、発展させていきたい、このように考えているところであります。

 次に、普天間問題の早期解決への決意と、知事が求められている県外移設に関する御質問にお答えいたします。

 普天間飛行場の移設問題については、本年五月の日米合意を踏まえて取り組むと同時に、沖縄に集中している基地負担の軽減にも全力を挙げて取り組んでいるところであります。沖縄の方々の御理解を求め、誠心誠意話し合ってまいりたいと考えております。

 日米共同訓練についての御質問がありました。

 御指摘の報道にあるような、尖閣諸島の事案を想定した日米共同統合演習を実施するとの計画はないものと承知をいたしております。

 なお、日米間において引き続き共同訓練を行っていくことには変わりはありません。

 次に、対中外交について御質問をいただきました。

 日中間の政党間外交は、日中関係のすそ野を拡大し、相互理解を促進するとの観点から、意義があるものと認識をいたしております。今回の件は、国内法に基づいて適切に対応、処理した結果であり、中国に対して間違った教訓を与えたとの指摘は全く当たらないと考えております。

 いずれにせよ、日中双方が大局的観点から戦略的互恵関係の充実を図っていくことが重要であります。先日、ASEMの際の私と温家宝総理との懇談においても、戦略的互恵関係を推進していくことについて、改めて確認をしたところであります。

 各省庁の知見の活用について御質問をいただきました。

 二度にわたる日米首脳会談において、日米関係は着実に深化をしていると認識しております。日中関係についても、先日のASEMの際の私と温家宝総理との懇談において、戦略的互恵関係を推進していくことを改めて確認いたしました。

 こういった首脳外交を展開する上で、私は、外務省を初めとする関係省庁に蓄積された情報やノウハウを活用しており、御指摘の懸念には及ばないと思っております。

 ASEM首脳会議及び邦人拘束事案について御質問をいただきました。

 温家宝総理との懇談においては、まず、尖閣諸島は我が国固有の領土であって、領土問題は存在しないという原則的な立場を私から申し上げた上で、日中関係の今の現状は望ましくないという認識、さらには、六月の私と胡錦濤国家主席との会談で一致したように、戦略的互恵関係を進展させるという原点に戻るべきであるということ、さらには、ハイレベルの交流、民間交流を行っていくということについて意見が一致をいたしました。

 また、邦人拘束事案については、私と温家宝総理との懇談に並行して、引き続き中国側に対し、いまだ釈放されていない一名の方の身柄の安全確保とともに、人道的観点からの迅速な処理を求めているところであります。

 さらに、ASEMの全体会議では、世界経済のガバナンスにつき有益な議論を行ったところであります。二国間会談では、日中関係は、アジア太平洋地域、ひいては世界にとって非常に重要な両国関係であるということ、また、我が国としては大局的な観点から冷静に対処している旨を申し上げ、各国から御理解をいただいたところであります。

 自民党の財政健全化責任法についての御質問をいただきました。

 財政健全化を進め、財政に対する内外の信認を確保するという本法案を提出された基本的考え方については、問題意識を我が党とも共有し、政府としても、類似の内容を財政運営戦略として既に閣議決定していることは御承知のとおりであります。この財政運営戦略と貴党が出された財政健全化責任法案との内容は共通する部分も多く、改めて貴党がこの法案を国会に提出された際には、しっかりと受けとめて議論をしていきたい、このように考えているところであります。

 平成二十一年度税制改正法附則百四条についての御質問をいただきました。

 御指摘の附則百四条の規定は、平成二十三年度、つまり二十四年の三月末までに税制抜本改革法案を提出するということを政府に義務づけているものであることを承知いたしております。

 政府としては、社会保障改革の全体像について、必要とされるサービスの水準、内容を含め、国民の皆さんにわかりやすい選択肢を提示した上で、その財源をどう確保するか、消費税を含む税制全体の議論を一体的に行ってまいりたいと考えております。

 御党が、附則百四条の取り扱いを含め、今後の財政運営について真剣に論議をしようという趣旨だと思います。財政運営について協議をしていく際の大前提という言葉も谷垣総裁からいただきました。私たちも、今後の財政運営について真剣に議論するということであれば、この附則百四条の取り扱いについても、ぜひ、ともに真剣に議論をしていきたい、このように思っているところであります。

 予算編成における財源捻出についての御質問をいただきました。

 二〇〇九のマニフェストについては、従来から、無駄の削減や予算の見直しにより財源を捻出し、マニフェスト実現に誠実に取り組むと同時に、財源の制約などで実現が困難な場合には、国民の皆さんに率直に説明をし、理解を求めてきているところであります。

 二十二年度予算でも、無駄削減等により三兆円の財源を生み出し、それを財源としてマニフェストのかなりの部分を実現したところであります。今後とも、この方針に変わりはありません。

 小沢元幹事長の主張された財源論についての御質問をいただきました。

 長きにわたる行財政における無駄遣いを根絶すべきという基本的姿勢は、民主党議員全員が変わりなく共有している大方針であります。

 そもそも、財政がいかなる状況にあろうと無駄は許されず、二十三年度予算においては、引き続き、無駄の削減や事務事業の大胆な見直しを徹底し、予算の組み替えのための財源を捻出したいと考えております。税金の無駄遣いの根絶に向け不断の努力を積み重ねていく姿は、多くの国民から御支持をいただけるものと確信いたしております。

 事業仕分け等による歳出削減の見込みについて御質問をいただきました。

 事業仕分けによる歳出削減額は仕分けを行った結果として出てくるものであり、あらかじめ歳出見直しの目標額を設定して実施するものではありません。事業仕分け第三弾の特別会計仕分けでも、無駄削減のみならず、制度そのものの透明性の向上や見直しを進めてまいります。

 いずれにしても、予算の無駄は許されるものではなく、引き続き強力に無駄の削減を徹底してまいります。

 二十三年度予算における国債発行額などについての御質問をいただきました。

 二十三年度予算における国債発行額については、財政運営戦略で、平成二十二年度当初予算の発行額約四十四兆円を上回らないように全力を挙げることとしており、今後の予算編成の過程において、歳入歳出両面にわたる最大限の努力を重ねてまいりたいと考えております。

 無駄遣い根絶に関する御質問にお答えします。

 民主党は、昨年の総選挙で訴えた、無駄遣い根絶、総予算組み替えを実現するため、政権交代直後、速やかに事業仕分けを実施いたしました。その後も引き続き、独法、公益法人仕分けや行政事業レビューなどに取り組んでいるところです。さらに、この秋実施を予定している特別会計などの仕分けに向けて、政府・与党が一体となって現在取り組んでおります。

 無駄遣い根絶は、民主党の、国民の皆さんに対する約束であります。今後もぎりぎりの努力を続けていくことをこの場で改めてお約束したいと思います。

 マニフェスト施策を事業仕分けや政策コンテストの対象にすることについて御指摘をいただきました。

 事業仕分けは、これまで行ってきた事業の見直しを行うものでありまして、今のところ、マニフェストに掲げられた新規事業は対象としていないところです。しかし、二十三年度予算編成に当たり、予算の重点配分を行う仕組みとして設けた、元気な日本復活特別枠の要望事項については、マニフェスト施策も含め、政策コンテストの対象にしております。

 マニフェスト施策については、こうした政策コンテストにおける議論も含め、国民に対してその取り扱いを丁寧に説明してまいりたいと考えております。

 地方向けの補助金改革について御質問をいただきました。

 地方向けの補助金、交付金のうち、投資に係るものについては、平成二十三年度以降、段階的に一括交付金化を実施してまいります。

 総額については、地方の安定的な財政運営に十分配慮するとともに、地方の自由度を高めることにより財源を効率的、効果的に活用するとの観点を踏まえ、地域主権戦略会議を中心に関係府省とともに検討し、予算編成過程を通じて決定する予定であります。その際、国と地方の協議の場などを通じて、地方の意見も伺いながら、その理解を得てまいる所存であります。

 最後に、公務員人件費削減について御質問をいただきました。

 国家公務員の総人件費二割削減については、まず、地方分権推進に伴う地方移管、第二に、各種手当、退職金等の水準や定員の見直し、第三に、労使交渉を通じた給与改定など、さまざまな手法により、四年間かけて、平成二十五年度までに達成することを目標といたしております。

 本年の人事院勧告の取り扱いについては、現下の社会経済情勢や厳しい財政事情、他方で、国家公務員の労働基本権制約の代償措置としての性格などを勘案し、政府において、現在、鋭意検討を行っているところであります。

 なお、地方公務員人件費については、各地方公共団体において既に人件費削減の取り組みを実施しており、引き続き自主的に改革に取り組むことが肝要である、このように考えているところです。

 以上、谷垣総裁の御質問にお答えをいたしました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 稲田朋美さん。

    〔稲田朋美君登壇〕

稲田朋美君 自由民主党の稲田朋美です。

 自由民主党・無所属の会を代表して、総理の所信に対する質問をいたします。(拍手)

 冒頭、小沢元幹事長の事案について、先ほどの総理のお答えはお答えになっていません。いま一度、総理として、民主党代表として、小沢氏の説明責任及び政治的道義的責任について明確にお答えください。国会任せ、本人次第と逃げずに、いま一度、責任のあるお答えを求めます。

 民主党政権になって一年、民主党政権には、日本の主権を守る意思がない、領土を守る意思がない、家族と地域社会を守る意思がない、そして何よりも、国家観がない、この国がどんな国を目指すのかという理念もない。つまり、意思も国家観も理念もない空っぽの政党なのです。

 まず、民主党には党の綱領がありません。一体民主党はどんな党なのか、わかりません。本来、政党は、理念や政治信条のもとに集まります。ところが、民主党は、綱領のない、世界でもまれに見る寄せ集めの政党なのです。

 我が党には、昭和三十年に立党したときの立党の精神、党の綱領があります。昨年、下野し、もう一度立党の精神という旗のもとに一致結集することを誓い、谷垣総裁を先頭に再出発しました。我が党こそ我が国唯一の保守政党であり、国民政党として、名実ともに主権国家となり、単に経済大国だけでなく、社会正義の貫かれた道義大国を目指して、政権奪還をかけて、この臨時国会の論戦に臨んでいきます。

 まず、所信表明の中に教育、農業という言葉がありません。国家の大計である教育、そして、日本の文化の原点であり、食料安全保障であり、ふるさとの原風景である農業について語らずに国家観は語れません。国民に対してみずからの国家観をきちんと説明する、これが総理としてまず果たすべき責務ではないでしょうか。

 総理は、六月の所信では強い経済、強い財政、強い社会保障の一体的実現と言い、参議院選では最小不幸社会と言い、今回の所信表明では有言実行内閣と、ころころと言葉だけが変わっています。しかし、総理の国家観は全く見えてきません。真実味がないのです。

 かつて、総理は、重大な人権侵害であり国家主権の侵害である拉致実行犯の辛光洙の釈放嘆願に署名しました。辛光洙は、横田めぐみさん、福井の地村さん夫妻、原敕晁さんの拉致犯であり、それにより北朝鮮より、トップクラスの勲章をもらいました。総理は知らずに署名をしたと言っていますが、その間抜けぶりを挽回するために、この十年間、拉致問題解決のために一体具体的に何をやってきたのか、お答えください。

 また、日本の総理大臣として、改めて国民に謝罪するとともに、拉致問題に取り組む決意を、お決まりの官僚の作文でなく、あなた自身の真実味のある言葉で表明してください。

 さらに、総理は、国旗・国歌法に反対をした我が国で最初の総理大臣です。日本の国旗は日の丸で、日本の国歌は君が代です。国旗・国歌を認めることができない人を日本の総理大臣として私は認めることはできません。

 今回の所信表明で全く触れられていない教育についてですが、安倍内閣で教育基本法改正案が六十年ぶりに国会に提出され、総理初め民主党の反対の中、可決、成立しました。議論のあった愛国心教育について菅総理は一体どのように考えておられるのか、お伺いをいたします。

 また、国旗・国歌法に反対をされましたが、学校現場において国旗・国歌を尊重することの重要性についてどのように認識しているのか、北教組問題に見られるような教育現場の堕落についてどのように考えておられるのか、お伺いをいたします。

 このように、国家の根本ともいうべき教育について、代表質問で聞かなければ総理の考えが出てこないこと自体、とても悲しいことです。

 伸子夫人の著書によれば、総理は特定の思想とか主義への思い入れはないそうですが、その場対応でどうにかやっていくのが政治だという考え方について、私は反対です。人は、苦しくても目標があれば頑張れます。国も同じです。どんな国を目指して頑張るのか、その理想を国のトップである総理大臣が語らずして、国民は前向きになれない、国の発展はありません。

 次に、外交、安全保障についてお伺いいたします。

 言うまでもなく、外交・安全保障政策は国家運営の中核です。国民の生命、身体、財産、領土、そして国家の名誉を守ることが国益であり、内閣の最大の責務は、国益を守るための外交・安全保障政策に最終責任を持つことです。ところが、菅政権は、外交・安全保障政策に対し、余りにも無責任かつ無策です。そのあらわれが尖閣問題におけるぶざまな外交的敗北なのです。

 この問題は、先月の七日、民主党が、総理になる資格のない小沢さんと総理を続ける能力のない菅さんが、国民生活も国益も犠牲にして、十四日間もの間、コップの中の醜い権力闘争を繰り広げていた、その政治空白期に起きました。

 領海侵犯した中国漁船が日本の巡視船に二度も体当たりしてくるという悪質な事案だったので、船長の起訴は当然だとだれもが思ったときに、突如、処分保留で釈放したのです。国民は、あきれ、怒りました。

 残念なことに、この国では、国民の怒りを共有することができない政治家が、総理をし、官房長官をし、外務大臣をしているのです。今回の釈放は、中国の不当な圧力に屈して国内法の適用をねじ曲げた、主権国家の名に値しない恥ずべき政治判断でした。

 総理は衝突時のビデオを見ていないとおっしゃっていますが、信じられません。総理は、一国の宰相として国家国民を守る責務、そして行政府の長として、命がけで任務に当たった海上保安庁の職員の安全を守る責務を負っています。ビデオを見ないで何を判断できたというのでしょうか。

 総理は、一部新聞報道があったように、とにもかくにも早く処理して、なかったことにしてほしい、それが本音だったのではありませんか。なぜビデオを見なかったのか、国民が納得するお答えをお願いいたします。

 総理及び菅内閣の閣僚は、釈放は那覇地検の独自の判断であったと言い、検察当局も同じことを言っています。だれも信じない、ひきょうな責任逃れです。

 そもそも、外交問題を理由に釈放を決めることは検察の越権行為になると考えますが、その点の総理の御見解を伺います。

 また、本件のように極めて高度な政治判断を必要とする外交問題について検察当局にゆだねたとすれば、菅総理及びその内閣には、重大な外交上の局面において、政治判断をする意思も能力もないことをみずからが認めたことになります。

 総理にお伺いいたします。今回の釈放において、日中関係、国民への影響という、まさしく国益そのものであり、外交の目的そのものの判断を検察当局にゆだねたことは、あなたが理想とし、政権交代の大義である政治主導の自殺行為ではありませんか。

 さらに総理にお伺いいたします。行政機関に属する検察の判断が間違っていたときに、最終責任をとるのは、言うまでもなく内閣です。今回の釈放は、準司法的判断としても外交判断としても間違っています。準司法的判断としては、国内法に日中関係という外交問題を持ち込んだことが間違っている。検察当局は、刑訴法二百四十八条の起訴便宜主義の「犯罪後の情況により訴追を必要としないとき」に該当すると苦しい解釈をいたしていますが、ここに外交判断は入りません。

 さらに、外交判断、政治判断としても、中国の不当な圧力とおどしに屈し、日本の主権を放棄するかのようにして中国に治外法権を認めたこと、日本がやすやすと外国の圧力に屈して国内法をゆがめて処理をする国であると世界に示したこと、さらに、日中間に尖閣をめぐる領有問題が存在するかのような誤ったメッセージを中国及び世界に向けて発信したことなど、多くの禍根を残す結果を招いたことで、間違った政治判断です。この責任を内閣としてとらなければなりません。あなたの内閣は、この責任をどのようにしてとられるのですか。

 政治は、結果です。もちろん、事実関係を明らかにすることは重要です。菅内閣が、腰砕け、ぶれたという国民の批判を恐れ、検察に政治責任と説明責任を押しつけるひきょう者内閣であること、国益を守るという政治意思を示すことのできない意思のない内閣であることを国民に知ってもらうために、逮捕、勾留、釈放に至る事実関係は明らかにしなければなりません。

 しかし、事実関係を明らかにすることとは別に、今回の釈放という判断が検察独自のものであれ、政府の判断であれ、それにより国益を著しく侵害したことの責任をとるのは、菅総理、あなたとあなたの内閣以外にはありません。そのことについて、覚悟を総理にお伺いいたします。

 総理は、かつて「救国的自立外交私案」を出され、その中で、「まずは議論の前提となる外交や安全保障の根幹の情報を国民にガラス張りにして、日本の国益に関する国民の共通認識を醸成し、いざという時に自国の安全を守るための覚悟を国民の側に作り上げる」と提言しておられます。そうであるなら、早く衝突時のビデオと捜査資料をすべて公開し、国民の共通認識にすべきではありませんか。なぜ公開しないのですか。総理にお伺いをいたします。

 そもそも、この問題は、民主党政権の外交姿勢そのものの甘さにあるのです。

 鳩山前総理は、全国知事会で、石原都知事から尖閣諸島に日米安全保障条約が発動されるかと聞かれ、確かめる必要がある、帰属問題に関しては日本と中国の当事者同士でしっかりと議論して結論を見出してもらいたいということだと理解していると、信じがたい不見識な発言をし、物議を醸しました。そんな甘い認識だから、友愛の海などと寝とぼけたことを言っていたのです。

 総理にお伺いしますが、我が国にとって今世紀最大の外交課題である対中問題について、どのような認識ですか。中国を脅威と認識するのか、それとも、総理も東シナ海を友愛の海と認識しているのか、お伺いいたします。

 次に、この問題がもたらした影響について。

 中国は、船長逮捕の後、東シナ海のガス田に関しての国際交渉を一方的に延期し、白樺にドリルを持ち込み、掘削を始めたと見られます。政府としてどのような対抗手段をとるつもりなのか、総理にお伺いをいたします。

 次に、尖閣の領有関係についてお伺いいたします。

 総理は、所信で、尖閣諸島は歴史的にも国際法的にも我が国固有の領土であり、領土問題は存在しませんと言われました。そのとおりですよ。しかし、一方で中国は、尖閣諸島は中国固有の領土であり、主権と領土を断固防衛すると主張し、今回の逮捕について謝罪と賠償を求めています。

 たとえ大うそでも、国の主権の及ぶ固有の領土という原則から出発して、最後まで妥協せず、釈放後も謝罪と賠償を求めている中国は一貫しており、反対に、正しいにもかかわらず、最後になって中国の不当な圧力に屈し、ぶれたのは我が国です。

 総理にお伺いします。中国が一貫した態度を貫き、我が国がぶれたことで、日中間に領土問題が存在するかのような誤解を世界に発信したことになりますが、総理にその自覚があるのか、お答えください。

 中国の温家宝首相は、国連で演説し、国家主権と領土保全については一切妥協しないと述べましたが、総理は国連で何を主張してきたのですか。報道によりますと、国連演説で、国のリーダーがまず果たすべき役目は不幸の原因をできる限り小さくすることだと訴えたそうですが、国家主権と領土が侵害されようとしているときに、そんな演説で中国の主張にとても対抗できるはずはありません。

 また、今回、尖閣の日本の立場を国際社会に訴えるという理由で国会日程を変更して出席したASEMで温家宝首相と立ち話の会談をされたといいますが、日本側には中国語通訳はいなかったとお聞きしています。本当でしょうか。通訳がいなくて、あなたが言うように、尖閣は日本固有の領土だと主張してきたことになるのですか。

 また、日本の総理大臣として真っ先に主張すべき我が同胞のフジタの社員の解放について、あなたは温家宝首相に要求をしたのですか。また、今回の中国人船長の公務執行妨害罪について抗議したのですか。抗議も要求もしなくて、一体、二十五分間、何を話していたのですか。具体的にお伺いをしたいと思います。

 結局、あなたが総理である限り、国際舞台において、日本は不当なことをされても黙っている国という発信しかできていないということではありませんか。

 総理は、日中関係全般について、大局的観点から戦略的互恵関係を深める日中双方の努力とおっしゃっているのですが、領土は主権の問題であり、お互い一歩も引けない問題ですから、他の問題では戦略的互恵ということはあり得ても、事領土に関してはあり得ません。領土にかかわる問題について、中国が努力するとか譲歩するということはあり得ません。なぜなら、中国は、尖閣諸島を、間違って自国の領土と思ってしまったのではなく、日本の領土と知りながら実効支配しようとしているからです。

 政府は、我が国固有の領土である尖閣諸島を守るために、どのような戦略を考えているのですか。具体的な策をお答えください。

 さて、国内の安全を内閣でつかさどるのは国家公安委員長です。そして、任命権者は、総理、あなたです。

 今回、その国民の安全を守るポストに、韓国で、いわゆる従軍慰安婦問題で日本の政府を糾弾するために、ソウルの日本大使館に向けて反日デモをし、我が国の国旗をおとしめた岡崎氏を任命されました。信じられない愚挙です。

 総理にお伺いします。総理は、岡崎氏の愚かな反日行為をどのように理解されていますか。今回、なぜ岡崎氏を我が国の治安の最高責任者に任命したのですか。不適格者を任命した責任についてどのように考えておられますか。

 次に、所信に、国を思い切って開くというフレーズがありますが、意味がわかりません。

 このことに関連して、二つのことを連想しました。一つが外国人地方参政権であり、もう一つが農業の自由化の問題です。

 鳩山前総理は、日本列島は日本人だけのものじゃない、日本を開かなければならないというおかしな信念の持ち主でした。

 国を思い切って開くという中に、鳩山さん的な地球市民的発想が含まれているのですか。その延長線上に外国人地方参政権を置くと、まさしく、自国のことは自国で決めるという主権国家の中核が失われてしまいます。また、外国人地方参政権付与については、地方議会から反対の意見書が、県議会だけでも三十五と、多数出されています。

 総理は、今まで一貫して、外国人に地方参政権を与えるべきである、しかも、特別永住者だけでなく一般永住者にも与えるべきだと発言をされています。

 私は、国であれ地方であれ、外国人に参政権を与えることは、日本が主権国家をやめることになると考えています。憲法十五条に公務員の選定罷免権は国民固有の権利であると書かれていますが、その意味するところは、国家の行く末を決めるのは日本人だけであるという国民主権、そして、日本が主権国家であることの当然の要請なのです。

 改めて、外国人に地方参政権を与えることについての総理の見解、特に、憲法に違反しないか、主権国家として、外国人に地方参政権を与えることが、対馬や国境の島の存在を考えてみても、安全保障上問題ではないかについて見解を伺います。

 さらに、民主党は、党員、サポーターの資格に国籍を問いません。今回の代表選においても、外国籍の党員、サポーターも投票権を持っていました。野党時代ならともかく、与党になっての代表選は、実質上、この国の総理大臣を決める選挙です。ということは、この国の総理大臣を決める選挙に外国人が投票権を持つことになり、明らかに憲法違反だと断ぜざるを得ませんが、その点についての総理の御見解を伺います。

 総理は、EPA、FTAを推進する立場であり、所信の中にも、TPPへの参加を検討と述べ、全く農業への言及がありませんでした。昨年の衆議院選の民主党マニフェストでも、米国との間で自由貿易協定を締結すると書かれており、そのことに農業者が猛反発をして、書きぶりを変更したということがありました。要するに、民主党は、農業を犠牲にしてでも貿易自由化を進めるということなのです。

 しかし、農業は、単なる産業ではありません。地域を守る、文化を守る、伝統を守る極めて重要な役割を担っています。お米は日本人の主食であり、米づくりは日本の文化であり、水田は日本の美の象徴です。農業を守ることは、すなわち、日本を守ることなのです。

 仮に我が国がすべての国境措置、関税を撤廃すれば、農産物の生産額が三・六兆円、GDPが九兆円、雇用が三百七十五万人減少し、食料自給率は一二%まで落ち込むと試算されています。

 民主党は、平成十九年の参議院選挙のとき、米の生産調整をやめて戸別補償をするというまやかしを言って、農村の票をとり、勝利しましたが、結局、生産調整はやめていません。戸別補償は自由貿易推進のために実施するのでしょうか。一体何のための戸別補償なのか、総理にお伺いをいたします。

 また、総理は、自由貿易によってこうむる日本の農業の打撃についてどうするつもりなのか、お伺いいたします。

 さて、昨年我が党が惨敗した総選挙で民主党が掲げたマニフェストは、うそだらけの、詐欺とも言うべきマニフェストでした。詐欺とも言うべきマニフェストで政権をかすめ取ったのが民主党です。そのような民主党に政権をかすめ取られた我が党も情けない。

 まず、最も大きなうそが、財源のうそです。

 民主党は、子ども手当、農家の戸別補償、ガソリン値下げ、高速道路無料化など、選挙目当ての不道徳かつ政策的に間違ったばらまきをするための財源十六・八兆円について、国の予算を組み替えれば、二十兆、四十兆すぐ出せると言っていました。

 当時の代表であった鳩山前総理は、財源については心配していただくに及びませんとまで言われたのです。選挙後も、財務大臣が、民間企業でも経営者がかわれば一割、二割すぐ削減できる、それと同じだと豪語されました。一体、その二十兆、四十兆の財源はどこへ行ってしまったんですか。

 昨年の事業仕分けで削減できた無駄はわずか七千億、これぐらいのものは、自民党政権下でも毎年削っていました。消えた年金ならぬ、消えた財源ではありませんか。

 二十兆、四十兆の財源が予算の組み替えでできるとおっしゃったことについて、今もその考えに変わりはありませんか。総理にお伺いをいたします。

 また、総理は、著書「大臣」の中で、「国家予算が、たとえば総額九十兆円になるとしたら、マニフェストで国民と約束した、七兆一千億を最初に計上する。そして残った額から、必要なものを充てていけばいいのである」と述べられておりますが、真っ赤なうそじゃありませんか。それが本当なら、マニフェストに従って、二十二年度は予算の最初に七・一兆円を、二十三年度は十二・六兆円を真っ先に計上することにしなければなりませんが、そうはなっていません。結局、財源がなくて、できなかったのです。だから詐欺のようと言われるのではありませんか。

 所信では、子ども手当は、現金給付と保育所の整備などの現物支給のバランスをとって拡充する方針ですというごまかしを述べられていますが、個々の家庭に配るから子ども手当だったのではないですか。

 結局、政権をとってみたら、財源がないということを認めざるを得ないので、マニフェストをほごにするということなのです。

 消費税については、六月の国会を閉じてから、いきなり我が党の案を参考に一〇%とおっしゃいました。昨年の選挙では、四年間は消費税を上げないと約束をされていたはずですが、財源がないとわかり、いきなり増税を提案されたのです。民主党政権になってから民主党内でも国会でも消費税が議論されたことを私は知りません。

 さらに、我が党の消費税の議論と総理の言う消費税とは全く前提が違います。

 我が党は、長年党内で真剣に議論をし、財源については、二十兆、四十兆などといったうそをつかず、骨太二〇〇六などでまじめに歳出削減をし、所得制限なしの子ども手当のようなばかげたばらまきをせず、使途を少子高齢化に限定し、最小限の増税が必要として、昨年の一月に税法附則に明記したのです。

 総理の提案された消費税増税は、全く議論もなく、しかも、昨年の総選挙のマニフェスト違反の増税です。

 与野党協議を言う前に、無駄排除で九・一兆円、天下り禁止で十二・一兆円、予算組み替えで二十兆、四十兆の財源のうそについて国民に謝罪をし、ばらまきを悔い改めることが先決だと思いますが、総理の見解をお伺いいたします。

 小沢元幹事長が検察審査会から二度目の起訴相当の議決を受けました。今度こそ、国内法にのっとり、厳正に対処していただきたいと思います。

 ただ、この問題で本当に国民が知りたいのは、政治資金収支報告書に虚偽の記載をしたことに小沢氏が関与していたかだけでなく、世田谷の土地を含む十億もの不動産を政治資金管理団体が保有する必要性がどこにあったのか、また、その不動産の原資はどこから来たのかという点にあります。

 いずれにしても、全く説明責任を果たさず、強制起訴となった小沢氏は議員辞職すべきだし、民主党に議会制民主主義を語る資格はありません。

 さらに、鳩山前総理の政治と金について、鳩山氏は、ことし、参議院の予算委員会で西田昌司議員に裁判資料の提出を約束しておきながら、いまだに出しておりません。これは、国会で当時の総理大臣がお約束になったことをいまだに履行していないということです。このような不道徳なうそが神聖な国会で横行するようでは、国民のモラルも民主主義も地に落ちてしまいます。早急に裁判資料の提出をされるよう求めますが、総理の御見解をお伺いいたします。

 なお、私の質問は、すべて総理に答弁を求めています。官僚の用意した原稿を読まず、総理自身の、政治家としての識見ある御自身のお言葉でお答えください。

 最後に、今回の尖閣問題は、日本国民と政治家にさまざまな教訓を残しました。政治の究極の目的は国家国民の安全保障にあるということ、そして、領土を守るためには国民の覚悟が必要ということです。

 その意味で、総理が、六月の所信表明演説で、相手国に受動的に対応するだけでは外交は築かれない、時には自国のために代償を払う覚悟ができるか、国民一人一人がこうした責任を自覚し、それを背景に行われるのが外交であると言われたのは、まさしく言葉としては正しいと思います。しかし、総理は行動が伴っていません。有言不実行なのです。

 我が国の尖閣諸島の領有権を守るためには国民が自国のために代償を払わなきゃならないこともある、その覚悟なくして領土は守れません。たとえ尖閣は日米安保の対象でも、自主防衛の気概なくして日米安保は意味がないということです。

 ことしの八月十五日、菅総理及び菅内閣の閣僚は、ただ一人も靖国神社参拝をしませんでしたが、いかなる歴史観に立とうとも、国のために命をささげた人々に感謝と敬意を表することができない国に、モラルも安全保障もありません。

 要は、言葉ではなく、守る意思と覚悟の問題です。その意思も覚悟もない菅内閣にこの国の主権も領土も国民の生活も国家の名誉も守ることができないことが明らかになった今、総理がなすべきことは、内閣を総辞職するか、一刻も早く衆議院を解散し、国民に信を問うことであることを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 稲田朋美議員にお答えを申し上げます。

 まず冒頭、大変厳しい言葉が並んでおりましたが、私も野党時代、かなり厳しい言葉を使っておりました。しかし、これほど汚い言葉は使わなかったつもりであります。

 まず、小沢元幹事長の説明責任に関する質問にお答えをいたします。稲田議員の質問にお答えを申し上げます。

 御質問をいただいた小沢元幹事長の国会における説明の件につきましては、国会に関することですので、国会で御議論、御決定をいただきたいと思います。

 なお、小沢氏本人も説明責任を果たしていくと表明されていますので、司法手続に入っていることなどを踏まえつつ、説明の場、方法を含めて、本人がみずから判断し、対応することが望ましいと考えます。

 また、政治的道義的責任につきましては、政治家本人がみずから判断すべきことと考えております。

 次に、国家観、理念についての御質問をいただきました。

 私の基本的な政治理念については、さきの通常国会における所信で、国民が政治に参加する真の国民主権の実現という表現でも申し上げました。もちろん、国会内閣制さらには最小不幸社会ということも私の政治理念の一つでありまして、私の理念は、読むべきもの、聞くべき耳を持っていただければ、少なくとも御理解がいただけるのではないかと思っております。

 その上で、さきの所信表明演説では、二十年にもわたって、長きにわたって先送りされてきた五つの重要政策課題を具体的に申し上げて、それを今こそ着手し、その解決を実現することが有言実行内閣のやるべきことだと、その覚悟を申し上げたところであります。

 次に、拉致問題に取り組む決意についての御質問をいただきました。

 私が民主党の代表を務めていた二〇〇三年十一月には、民主党の拉致問題対策本部を設置し、御家族との意見交換や対策の検討なども行ってまいりました。

 拉致問題については、国の責任において、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国に向けて全力を尽くしてまいりたいと思っております。総理大臣就任直後にも拉致被害者の御家族の代表の方々と面談をし、一層その意を強くしたところであります。

 なお、要望書に辛光洙という名前が入っていたものに署名したという御指摘、過去にもいろいろな委員会で他の委員からもそうした指摘を受けました。

 その要望書に辛光洙という名前が入っていたかについて、私は自分の中では認識をいたしておりませんが、しかし、よく確かめることなく署名をしたことについて、従来から、そのことは不用意であったと謝っておりますし、この場でも、不用意であったことを反省し、おわびを申し上げたいと思います。

 拉致被害者の皆さんの帰国を実現するために、政府としてやれることは何でもやるという覚悟で臨んでまいりたいと思っております。

 次に、安倍内閣が教育基本法改正案を提出した中での愛国心教育等についての御質問がありました。

 御質問では、我が党がこの法律に反対をしたという表現で指摘がありました。法案そのものには確かに反対をいたしました。しかし、しかし、聞いてください。我が党が教育基本法案に対して修正を出しております。その修正の中に、日本を愛する心を涵養するという言葉が入っております。そのことを承知で御質問されたのかどうかわかりませんが、私たちは、愛国心、日本を愛する心を涵養するということは大変重要なことである、このように認識をいたしております。

 現行の教育基本法においては、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」が教育の目標と定められております。

 この表現の中には愛国心という直接的な表現は入っておりません。これは、皆さん方がいわゆる安倍内閣のときに出された法案で成立したものには直接的に愛国心という言葉が入っていないこともわかった上で質問されたんだと思いますが、その矛盾については、また機会を改めてお聞きしたいと思います。

 この目標を踏まえ、学校において学習指導要領の定めるところに基づき適切に指導することが必要だ、このように考えております。

 中国のいわゆる漁船の船長釈放の件について、衝突時の映像を見なかったことについての御質問をいただきました。

 私は、この衝突事案については、海上保安庁からのビデオ等により説明を受けていた国土交通大臣また官房長官などから随時報告を受けておりまして、必要な出来事については私として把握をいたしておりました。

 外交問題を理由として釈放したことの適否についての御質問をいただきました。

 本件の被疑者の釈放については、検察当局が、被害が軽微であること、犯行の計画性がないこと、初犯であることなどの事件の性質に加え、我が国国民への影響、今後の日中関係など、その他の諸般の事情等を総合的に考慮した上で、国内法に基づき粛々と判断を行った結果と承知をいたしております。

 稲田議員も弁護士でありますので、そうした刑事訴訟法は私よりは詳しいと思いますが、総合的に判断することもその中で認められていることは、御承知のとおりであります。

 外交問題を検察当局にゆだねたことの適否についてという御質問がありました。

 今も申し上げましたように、中国人船長の釈放については、検察当局が国内法に基づき事件の性質等を総合的に考慮して最終的な判断を行ったところであり、その判断は適切なものであったと認識をいたしております。

 なお、外交の目的そのものの判断、つまり、日本外交の目的そのものの判断を検察当局にゆだねたという認識は全くありません。

 外交判断の誤りの責任についての御質問をいただきました。

 中国人船長の釈放につきましては、検察当局が国内法に基づき事件の性質等を総合的に考慮して最終的な判断を行ったところであり、その判断は適切なるものであったと認識をいたしております。

 また、尖閣諸島が我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いないところであり、現に我が国は、これを有効に支配しております。尖閣諸島をめぐって解決すべき領有権の問題は、そもそも存在をいたしておりません。

 我が国のかかる立場については、国内外で正しい理解が得られるよう今後とも努力をしてまいりたいと考えております。

 この件について、本件の処理によって国益を著しく侵害したという御主張がありました。

 外交に関する最終責任についてのお尋ねもありましたが、当然でありますけれども、最終責任は、内閣の責任者である私にあるものと認識をいたしております。

 中国人船長の釈放については、先ほど来申し上げておりますように、検察当局が国内法に基づき事件の性質等を総合的に考慮して最終的な判断を行ったところであり、その判断は適切なものであったと認識をいたしております。

 衝突時の映像の公開についての質問について、ビデオの公開については、現在の捜査の状況及び国会などからの要望を踏まえて、捜査当局において適切な判断がなされるものと考えております。

 対中外交の基本的姿勢についての御質問がありました。

 所信表明でも申し上げたとおり、日中両国は一衣帯水のお互いに重要な隣国であり、両国の関係は、アジア太平洋地域、ひいては世界にとっても重要な関係だと認識をいたしております。

 近年の中国の台頭については著しいものがあるが、その国防力の強化、海洋活動などの活発化については、透明性を欠いた部分もあり、懸念を所信表明でも表明いたしたところであります。

 中国には、国際社会の責任ある一員として、適切な役割と言動を期待いたしております。日中両国間にさまざまな問題が生じたとしても、隣国同士として冷静に対処することが重要だと考えております。

 日中関係全般につきましては、アジア太平洋地域の平和と繁栄、経済分野での協力関係の進展を含め、大局的観点から戦略的互恵関係を深める日中双方の努力が不可欠だと考えております。東シナ海を平和・協力・友好の海にしていくことが肝要だと考えております。

 東シナ海油田について御質問をいただきました。

 国際約束締結交渉の一方的な延期の発表は遺憾であります。我が国としては、二〇〇八年六月の日中合意を実施すべく、交渉の早期再開を働きかけてまいります。

 白樺については、引き続き、一方的な活動を控えるよう求めていくとともに、事実関係の確認を要求してまいる所存であります。

 尖閣諸島に関する誤解の有無についての御質問についてお答えします。

 今般の事件は、検察が事件の性質等を総合的に考慮した上で、国内法に基づいて適切に対応、処理した結果だと認識をしております。

 いずれにせよ、尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、先ほど来繰り返して申し上げているように、歴史的にも国際法上も疑いないところであり、現に我が国は、これを有効に支配しております。尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題は、そもそも存在しておりません。

 我が国のかかる立場は一貫しておりまして、国内外で正しい理解が得られるよう、今後とも努力をいたしてまいりたいと思います。

 ASEMの際の温家宝首相との懇談についての御質問をいただきました。

 先ほど申し上げましたように、ASEMにおきまして、温家宝首相との間で、まず、私を含め、日本の基本的な立場、先ほど来申し上げておりますように、尖閣諸島が我が国固有の領土であって、それは歴史的にも国際的にも認められたところで、領土問題は存在しないということを申し上げ、また、温家宝首相の方からも、首相としての立場が表明された後に、現在の状況について、好ましい状況ではないという認識、さらには、六月に私が総理に就任した折に主席ともお会いをしたときに、戦略的互恵関係について進展させるというその原点に戻ってこれからの両国関係をさらに進めていこうという点、また、ハイレベルの政治的な政治家の交渉あるいは民間の交流についても、そうしたことについて意見の一致を見たということは、既に申し上げたとおりであります。

 また、フジタの社員の問題については、私と温家宝総理との話と並行して、我が国として、この一名の身柄の安全確保と早急な釈放を求めて現在も交渉を進めているところであることを申し上げておきます。

 次に、尖閣諸島に関する戦略についての御質問をいただきました。

 尖閣諸島が日本固有の領土であることについては、もう既に繰り返し申し上げたとおりであります。政府としては、尖閣諸島に関する我が国の一貫した態度に基づき、従来から尖閣諸島付近海域において厳正かつ適切な警備を実施しており、引き続き万全の体制で警備に当たる考えであります。

 また、政府としては、このような我が国の立場に対する正しい理解が国内外で得られるよう、引き続き適切に取り組んでいく考えであります。

 次に、岡崎国家公安委員長任命に関する御質問をいただきました。

 岡崎大臣の任命に関する御質問にお答えを申し上げますと、まず、二〇〇三年の岡崎議員の行動については、本人も、過去の言動に配慮に欠けた面があり、誤解を招いたことについて深く反省し、以後注意しており、内閣の方針に従って職務に邁進していくという旨を表明されております。

 なお、閣僚の任命については、任命権者として適材適所を心がけ、任命に当たっては、各閣僚にその職務遂行に当たっての指示を与え、職務専念を心がけるよう促しているところであります。

 外国人地方参政権付与について御質問をいただきました。

 永住外国人に地方選挙権を付与することについては、平成七年二月二十八日最高裁判決において、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当であるとこの判決で述べており、専ら国の立法政策にかかわる事項であるとなっていることを承知いたしております。

 いずれにせよ、地方選挙権付与の問題については、御指摘の安全保障上の問題も含め、さまざまな意見があることは承知しており、各党各会派においてしっかり議論をしていくことが必要であると考えております。そのような議論の中でその取り扱いも決めていくことになると考えております。

 また、我が党の党員、サポーターの国籍についての御質問もいただきました。

 在日外国人が党員となることについては、我が党だけが採用しているものではないと認識しておりますが、議論があることも承知しており、今後、党内で検討していきたいと考えているところであります。

 また、自由貿易と農業についての御質問をいただきました。

 農業は、地域の中核産業として極めて重要な産業であり、国民全体の安全、安心な生活に重要な役割を果たしているものと認識しております。

 EPA、FTAについては、積極的に進めていく必要はありますけれども、その際、我が国の食の安全と安定供給、食料の自給率の向上、そして国内の農業、農村の振興、こういったこととの調和にしっかりと配慮をしていくことが必要であると考えております。

 なお、戸別所得補償制度は、意欲のある農家が安心して農業を継続できる環境を整え、食と地域の再生と食料自給率の向上を図ることを目的とするものであり、貿易自由化のために実施するものではないということを申し上げておきたいと思います。

 次に、予算の組み替えによる財源捻出についての質問をいただきました。

 二十二年度予算では、事業仕分けによって削減できた無駄はわずか七千億という御指摘をいただきましたが、この数字は、私には理解できません。私たちが申し上げているのは、約三兆円の財源を確保してマニフェストの施策の実現に充てたところであります。うそとかいう言葉もたくさん使われておりますが、ぜひとも、七千億の根拠がもしあるならば、しっかりとお示しをいただいた上で質問をいただきたかったと思っております。

 二十三年度予算編成でも、無駄削減や予算組み替えを進め、できる限り財源を生み出してまいりたいと思っております。

 子ども手当など、マニフェストの財源についての御質問をいただきました。

 二〇〇九マニフェストについては、従来から、無駄の削減や予算の見直しにより財源を捻出し、マニフェスト実現に誠実に取り組んでまいりましたが、財源の制約などで実現が困難な場合には、国民の皆さんに率直に説明し、理解を求めてきておりますし、今後もそういう姿勢で臨みたいと思っております。

 なお、子ども手当の上積み部分については、子育て世代の親御さんから、保育所定員増、保育料軽減など、現金ではなく現物サービスにかえてほしいという意見もたくさんいただいているところであります。地域の実情に応じて現物サービスにもかえられるようにするという参議院選挙のマニフェストは、国民の声に真摯に耳を傾けた結果だと思っております。

 平成二十三年度以降の子ども手当については、上積みの部分の具体的内容について、現物サービスへの代替も含めて、予算編成過程で検討し、結論を得たいと考えております。

 与野党協議の前に、ばらまきを見直すべきとの御質問もいただきました。

 そもそも、いかなる財政状況のもとでも無駄は許されません。来年度予算においても、強力に無駄の削減を徹底してまいります。

 他方、所信でも述べさせていただいたとおり、現在、政府として解決すべき重要政策課題は、経済成長、財政健全化、社会保障の一体的な実現、それに加えて、地域主権の確立と、さらに、主体的な外交という五本柱を申し上げたところであります。

 こうした観点から、社会保障改革の全体像を提示した上で、消費税を含む税制全体の議論を一体的に行う必要があると考えており、その際には野党の皆さんとも十分意見交換をしてまいりたい、このように思っているところであります。

 最後に、鳩山前総理の資料の提出に関する御質問もたしかいただいたと思いますが、鳩山前総理に関する御質問ですが、鳩山前総理に関しては、検察処分、検察審査会審査、裁判ともすべて終了し、かつ、鳩山前総理御自身が総理の辞任という大変重い形で政治責任をとられたというふうに認識をいたしております。

 なお、原稿を読まないで答弁をしろという御指摘もありました。それなら、まず原稿を読まないで御質問をされるのが筋じゃないでしょうか。また、多くの質問に対して答弁漏れを防ぐためにも、ある程度のメモを用意することは当然なことだと思っております。

 以上、稲田さんの質問にお答えしました。(拍手)

議長(横路孝弘君) 内閣総理大臣から、答弁を補足したいとのことであります。これを許します。内閣総理大臣菅直人君。

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 二、三の答弁漏れがありましたので、追加でお答えを申し上げます。

 まず、安倍内閣の教育基本法改正案について、修正と申し上げましたが、修正ではなくて対案を出しておりましたので、対案と変えさせていただきます。

 また、その流れの中で、国歌・国旗の尊重についての御質問について、我が国のみならず他国も含めた国旗・国歌の意義を理解し、それらを尊重する態度を育てることは大変重要だと考えております。

 学校教育では、学習指導要領の定めるところに基づき、入学式などで国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう指導することが必要だと考えております。

 また、北教組問題についての質問をいただきました。

 子供たちに対する教育の場である学校において、法令にのっとり適切に教育が行われるべきことは言うまでもありません。学校において違法な活動があれば、毅然と対処すべきものと考えております。

 以上、答弁の漏れを答弁いたします。(拍手)

     ――――◇―――――

小宮山泰子君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明七日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

議長(横路孝弘君) 小宮山泰子さんの動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  菅  直人君

       総務大臣  片山 善博君

       法務大臣  柳田  稔君

       外務大臣  前原 誠司君

       財務大臣  野田 佳彦君

       文部科学大臣  高木 義明君

       厚生労働大臣  細川 律夫君

       農林水産大臣  鹿野 道彦君

       経済産業大臣  大畠 章宏君

       国土交通大臣  馬淵 澄夫君

       環境大臣  松本  龍君

       防衛大臣  北澤 俊美君

       国務大臣  岡崎トミ子君

       国務大臣  海江田万里君

       国務大臣  玄葉光一郎君

       国務大臣  自見庄三郎君

       国務大臣  仙谷 由人君

       国務大臣  蓮   舫君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  古川 元久君


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