衆議院

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第7号 平成22年11月11日(木曜日)

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平成二十二年十一月十一日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第七号

  平成二十二年十一月十一日

    午後一時開議

 第一 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(第百七十四回国会、内閣提出、参議院送付)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(第百七十四回国会、内閣提出、参議院送付)

 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)、特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び国家公務員の育児休業等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(第百七十四回国会、内閣提出、参議院送付)

議長(横路孝弘君) 日程第一、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長古賀一成君。

    ―――――――――――――

 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔古賀一成君登壇〕

古賀一成君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、重大な土砂災害が急迫している場合、市町村長が適切に避難指示を行えるよう、国土交通大臣または都道府県知事による緊急調査などの技術的支援について定めようとするもので、その主な内容は、

 第一に、土砂災害の発生原因に、河道閉塞による湛水を加えること、

 第二に、重大な土砂災害の急迫した危険があるときには、特に高度な専門的知識及び技術が必要である場合は国土交通大臣が、その他の場合は都道府県知事が、緊急調査を行うこと、

 第三に、都道府県知事または国土交通大臣は、市町村長による避難指示の判断に資するため、緊急調査の結果に基づき、土砂災害が想定される土地の区域及び時期に関する情報を、市町村長等に通知するとともに、一般に周知させるため必要な措置を講じなければならないこと

などであります。

 本案は、第百七十四回国会に提出され、去る四月十四日参議院において原案のとおり可決の上、本院に送付され、継続審査となっていたものであります。

 今国会は、本委員会において、去る十月二十九日馬淵国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、十一月五日質疑を行い、質疑終了後、採決いたしました結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)、特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び国家公務員の育児休業等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案、特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び国家公務員の育児休業等に関する法律等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。総務大臣片山善博君。

    〔国務大臣片山善博君登壇〕

国務大臣(片山善博君) 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案、特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び国家公務員の育児休業等に関する法律等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 本年八月十日、一般職の職員の給与の改定に関する人事院勧告が提出されました。政府としては、その内容を検討した結果、勧告どおり実施することが適当であると認め、一般職の国家公務員の俸給月額、期末手当及び勤勉手当等の改定、五十五歳を超える職員に対する俸給月額の支給に当たって当分の間その一定割合を減じる措置等を行うものであります。

 次に、特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法律案は、特別職の職員の給与について、一般職の職員の給与改定にあわせて、必要な改正を行うものであります。

 次に、国家公務員の育児休業等に関する法律等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法律案は、本年八月十日の人事院からの意見の申し出を踏まえ、一般職の国家公務員、地方公務員等のうち一定の常時勤務することを要しない職員について、仕事と生活の両立を図る観点から、育児休業、介護休業等をすることができるものとする等の改正を行うものであります。

 以上が、これらの法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)、特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び国家公務員の育児休業等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。中後淳君。

    〔中後淳君登壇〕

中後淳君 民主党の中後淳です。

 民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提出の国家公務員の給与等に関する三法案について質問いたします。(拍手)

 私は、千葉県房総半島富津市の市議会議員として、二期八年間、行財政改革に取り組んでまいりました。今から十年前、平成十二年、当時の富津市は大変厳しい財政状況にあり、市としては大変異例である財政非常事態宣言を発令しながら、財政再建団体にはなってはならないという強い思いで財政健全化に取り組んでおりました。現在はその財政非常事態宣言も解除し、努力を続けているところでありますが、地方自治体の現場での努力を顧みてみると、まだまだ国には改革の余地がたくさん残されており、無駄の削減の努力はもちろん、人件費を含めた行政コストの節減による効率的な行政運営の仕組みづくりに不断の努力を続けていかなければなりません。

 そうした思いを込め、本会議場での私の初めての質問をさせていただきます。

 本給与法改正案には、八月に示された人事院勧告どおり、国家公務員の給与を平均年収で一・五%削減することが盛り込まれました。先般の人事院勧告は、厳しい経済情勢の中、雇用を維持し、生き残るために給与を削減せざるを得ない民間企業の実態を反映したものと言えます。

 本給与法改正案の国会審議に当たり、国家公務員の雇用条件だけではなく、厳しい競争環境にある民間の雇用実態について思いをいたす必要があると考えます。

 まず、細川厚生労働大臣に、現在の民間の雇用、賃金情勢についてどのように認識しておられるか、また、今後どのような雇用対策が必要であると考えておられるか伺います。

 次に、国家公務員の給与決定のあり方について質問いたします。

 今般の政府の決定のように、公務員の労働基本権が制約される中で、その代償措置である人事院勧告を遵守することは、現在の仕組みの中では当然であると考えます。しかし、国家公務員の労働基本権を回復し、労使交渉によって給与を決定する仕組みに改めることで、国民の納得できる給与水準に改めていかなければなりません。

 十一月一日に閣議決定された「公務員の給与改定に関する取扱いについて」では、「次期通常国会に、自律的労使関係制度を措置するための法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図る」と記されております。公務員の労働基本権回復による給与改定の実現に向けての意気込み及び国家公務員の労働基本権を回復することのメリットについて、さらには、民主党がマニフェストに掲げた国家公務員総人件費二割削減との関連性について、蓮舫公務員制度改革担当大臣及び片山総務大臣に伺います。

 次に、独立行政法人の問題について伺います。

 十一月一日の閣議決定には、独立行政法人の役職員の給与改定に当たって、国家公務員の給与水準も十分考慮して給与水準を厳しく見直すよう要請する、独立行政法人の役職員の給与等の水準を毎年度公表することなどが盛り込まれております。独立行政法人の役職員の給与は国家公務員に比べて高いことが指摘されており、当然の措置と言えます。

 ただし、民主党は、マニフェストで、「天下りの温床となっている各種公法人について、廃止を含めた改革に取り組みます」と提案しており、給与の見直しにとどまらず、独立行政法人を抜本的に改革することが求められております。また、さきの通常国会における独立行政法人通則法の一部改正に当たり、総務委員会においても、独法改革は五月の独法、公益法人の事業仕分けの結果等を踏まえて抜本的に行うと答弁されていたと記憶しております。

 そこで、独立行政法人制度を所管する片山総務大臣に伺います。

 独立行政法人の抜本的改革についてどのように取り組んでいくのか、意気込みも含めてお答えください。

 次に、育児休業法改正案について伺います。

 国家公務員の育児休業法等一部改正案では、平成二十三年四月から非常勤職員に育児休業と育児時間を取得できるようにしていますが、民間より大幅におくれる結果になったことは残念なことでありました。法案では取得要件について明記されていないため、基本的には民間と同様の取得条件にするのかどうか、確認しておきたいと思います。片山総務大臣の答弁を求めます。

 育児休暇や育児休業は、制度を導入するだけでは不十分です。制度を周知したり、取得しやすい職場環境を整備するための意識改革などが必要になってくると考えます。今後、政府全体できめ細やかな取り組みをしていく必要があると考えますが、片山総務大臣の決意を伺いたいと思います。

 最後に、政府、そしてこの本会議場にお集まりの議員の皆様について申し上げたいと思います。

 国民生活を向上させるには、政治家が責任を持って政治主導で政策を決定し、それを支える公務員が意欲を持って職務を遂行できるようにするための環境整備が必須であると考えます。政府は、人事評価に基づいて能力・実績主義をより一層推進し、意欲を持って職務を遂行している公務員にはきちんと報いていく立場で今後の人事行政を進めるべきです。民主党がマニフェストに掲げた、国家公務員総人件費二割削減、天下り根絶を確実に実行する姿勢を国民に伝わる形でしっかりと示し、加えて、こういった観点から、総合的な公務員制度改革を不退転の覚悟を持って実行しなければなりません。

 そして、そのためにも、まず私たち政治家が身を切る。昨日民主党の方針として一割削減が出されました歳費の削減、議員定数の削減、国会運営、政治資金、選挙制度の改革など、私たち国会議員がみずからできることを率先して実行しなければ、覚悟を示さなければ、改革が進むはずもありません。

 政治家が身を切り、覚悟を示す。少なくともこの点に関しては、与野党の枠を超えて国会議員全員で取り組んでまいりたいという思いを、国会議員としてまだ一年二カ月余りの経験しかない若輩一期生の現在の率直な気持ちとして申し述べさせていただいて、私の質問とさせていただきます。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣細川律夫君登壇〕

国務大臣(細川律夫君) 中後議員にお答えをいたします。

 雇用、賃金情勢と雇用対策についてお尋ねがございました。

 最近の雇用失業情勢につきましては、完全失業率が五%台、有効求人倍率が〇・五倍台で推移をしておりまして、新卒者の就職内定率も前年を下回るなど、依然として厳しい状況にあると認識をいたしております。また、賃金情勢も、リーマン・ショック以降の賃金水準の低下、パートタイム労働者の増加などの影響もあり、依然として厳しい状況にあると認識をしております。そこで、厳しい雇用失業情勢に対応するため、予備費を活用して、新卒者支援や地域における雇用創出事業等に取り組んでいるところでございます。

 また、円高など今後の厳しい経済情勢、先行き懸念を踏まえまして、補正予算案に、さらなる新卒者支援、雇用調整助成金の拡充、地域における雇用創出事業の基金の積み増しなど対策を織り込みまして、雇用対策を切れ目なく実施していくといたしております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣蓮舫君登壇〕

国務大臣(蓮舫君) 中後議員にお答えをいたします。

 労働基本権回復の意気込みとメリットについてのお尋ねがございました。

 国民のニーズに合致した効率的で質の高い行政サービスを実現していく上で、公務員がやりがいを持って存分に能力を発揮できる環境をつくることは、公務員制度改革の重要な課題であると考えています。

 その上で、労働基本権のあり方については、このような認識のもと、付与の方向で具体的な制度設計を精力的に進めているところでございます。

 今後、成案を得て、関連法案を次期通常国会に提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図ってまいりたいと考えています。(拍手)

    〔国務大臣片山善博君登壇〕

国務大臣(片山善博君) 中後議員より、私には四点のお尋ねがありました。

 初めに、労働基本権の回復と国家公務員総人件費二割削減との関連性についてであります。

 民主党マニフェストに掲げられました国家公務員の総人件費二割削減につきましては、労使交渉を通じた給与改定のほかに、地方分権推進に伴う地方移管でありますとか、各種手当、退職金等の水準や定員の見直しなど、さまざまな手法によりまして、平成二十五年度までに達成することを目標としております。

 今後の国家公務員の給与改定につきましては、次期通常国会に自律的労使関係制度を措置するための法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図ることにし、さらに、その実現までの間においても、来年度から人件費の削減を可能とするための措置について検討した上、給与法改正法案など必要な法案を次期通常国会から順次提出することとしております。

 したがいまして、こうした政府の方針はマニフェストに沿ったものとなっているものと思います。

 次に、独立行政法人の抜本的改革についてであります。

 独立行政法人の抜本改革につきましては、すべての独立行政法人の業務の全容を例外なく検証し、見直しの基本方針を年内をめどに取りまとめた上で、組織の見直しや独立行政法人全体の制度のあり方についての検討を進めることとなっておりまして、私といたしましても、行政刷新担当大臣と連携をして、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

 また、総務省としましても、これらの取り組みと並行して、独立行政法人が締結します契約の競争性確保や、独立行政法人の事務事業や保有資産に対する厳格な評価などにも、しっかりと取り組んでまいる所存でございます。

 次に、非常勤職員の育児休業及び育児時間についてであります。

 非常勤職員の育児休業及び育児時間の取得要件につきましては、国家公務員、地方公務員ともに、民間の有期契約労働者と同様の要件が定められる予定であります。

 最後に、育児休業等を取得しやすい環境の整備でございます。

 人事院や各省庁等と協力しつつ、新しい制度を非常勤職員や管理職員に対し周知し、育児休業等を取得しやすい職場環境の整備に努めてまいりたいと考えております。

 以上、お答えを申し上げました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 橘慶一郎君。

    〔橘慶一郎君登壇〕

橘慶一郎君 自由民主党の橘慶一郎です。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表し、ただいま趣旨説明がありました一般職職員給与法等三法案について、五項目にわたり質問をいたします。(拍手)

 質問に先立ちまして、一言申し上げます。

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突に関するビデオ映像が流出した件につき、海上保安官が事情聴取を受けております。私どもはかねてよりビデオの全面公開を求めてまいりましたが、結果として、政府側の対応のまずさが事態を深刻にしたものと言わざるを得ません。

 また、今回は、国家の主権にかかわる重要な問題であり、菅内閣の危機管理能力が厳しく問われています。政府は早急に真相を究明し、国会の場において明確に説明するよう、強く求めるものであります。

 また、報道によれば、仙谷官房長官は、海上保安庁長官に重い責任があるとする一方、馬淵国土交通大臣については、政治職と執行職のトップは責任のあり方が違うと擁護するかのような発言をされていますが、政治の責任を回避する姿勢は納得できません。

 小沢前幹事長の証人喚問の要求とあわせ、我々は、この問題についての政府側の責任を徹底して追及してまいります。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 第一に、人事院勧告どおりの改定にとどまった理由について伺います。

 菅総理は、今国会冒頭の所信表明演説で、みずからの内閣を有言実行内閣と位置づけ、公務員制度改革についても、「国家公務員の総人件費の二割削減とあわせ、一体的に取り組んでいきます」と表明しました。有言実行という姿勢は大事なことですが、それだけに、約束された言葉にはいよいよ重みが増します。約束されたことがほごにされたり実行できなかったりすれば、信頼を一気に失う危険があります。それだけの覚悟を持って政権運営に臨まなければならない重大な決意を示したものと受けとめています。

 さて、菅総理は、九月に行われた民主党代表選で、国家公務員人件費について、人事院勧告を超えた削減を目指すと公約されました。勝利をおさめて総理を続けているわけですから、人事院勧告の深掘りは、いわば菅改造内閣の公約と言えます。しかし、今提案されている法案では人事院勧告どおりの引き下げとなっており、公約が実行されておりません。なぜなのでしょうか。

 当初、菅改造内閣では、片山総務大臣は深掘りをも視野に入れた発言をし、蓮舫大臣も人事院勧告を超えた給与削減の意向を示していたわけですが、わずか二カ月で、なぜ勧告どおりという結論に至ったのでしょうか。当初の総理の人事院勧告深掘り発言を軽い言葉にしてまでも勧告どおりという方針をあえて選択した理由を、検討途中の閣内での議論の経過も含めて総務大臣に伺います。

 一方、多くの地方自治体では、地方公務員も国家公務員と同様に協約締結権と争議権を制約されている状況でありながら、不況で税収減が深刻な近年は、厳しい財政事情を考慮して、人事院勧告や人事委員会勧告の水準を上回る独自の給与カットを行っています。知事や市町村長が、苦渋の決断の上、職員人件費を削減するためにみずから労使交渉を行い、職員の理解を求めることも珍しくありません。今や国家財政もこれまでにない厳しい状況であり、国においても真摯な対応が求められる局面ではないでしょうか。

 現行制度下において、国と地方自治体にどのような違いがあるのか、総務大臣に伺います。

 第二に、自律的労使関係制度を措置するための法案について伺います。

 本法案の閣議決定の際、政府は、次期通常国会に自律的労使関係制度を措置するための法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図るとの方針を示しました。これは、労働基本権を含めた国家公務員法の改正案を次期通常国会に提出する趣旨であると考えますが、公務員制度改革を担当する蓮舫大臣に、確認のため伺います。

 また、この閣議決定では、公務員制度改革の全体工程表は明らかにされていません。特に、現在の人事院制度についてはどう考えているのでしょうか。維持をするのか、廃止して、民主党のマニフェストのとおり、民間と同様、労使交渉で給与を決定するのか、いずれの方針であるのか、蓮舫大臣に伺います。

 この問題について、前通常国会での担当大臣は仙谷官房長官でした。内閣委員会での質疑では、私から、担当大臣として腰を落ちつけて、改革が成就するまでやり遂げていただきたいとお願いしました。官房長官からも、歴史的な使命感を持って臨んでいるとの答弁がありました。

 しかるに、六月に菅内閣が発足すると、残念ながら、担当は玄葉大臣となり、わずか三カ月で蓮舫大臣にかわりました。戦後国家公務員制度の大改革を実行しようという、まさに官房長官が日本にとって歴史的な問題ととらえている重要課題の担当大臣をこのように短期間でころころと交代させるのでは、菅内閣に、この問題に本気で取り組む意欲はないのではないかと疑います。

 蓮舫大臣も行政刷新会議の業務だけでも多忙のように見受けますが、前任者からの引き継ぎを含めて本当に問題はないのか、短期交代の理由とあわせて官房長官に伺います。

 また、蓮舫大臣は、担当大臣に就任直後の記者会見では、前任者の玄葉大臣と同様に、人事院勧告をただ遵守するだけで国民の理解が得られるかというとそうではないと発言していました。一方、前々任者の官房長官は、前通常国会の国家公務員法改正案の委員会質疑では、現行制度下での勧告の深掘りには慎重な姿勢を示していました。

 蓮舫大臣は既に前通常国会での議論も把握したことと思いますが、担当して二カ月弱たった現時点において、当初の考えとは合わない勧告どおりという結論をどのような理由で是と判断するに立ち至ったのか、伺います。

 ところで、公務員制度改革の担当については、前任の副大臣、政務官が退任した上、担当副大臣が欠けて、弱体化した体制となっています。多岐にわたる論点がある重要課題であるだけに、担当副大臣の補充の必要性は感じていないのか、蓮舫大臣に伺います。

 第三に、この閣議決定における暫定的な対応の内容について伺います。

 今回の閣議決定では、自律的労使関係制度が実現するまでの間についても、人件費を削減するための措置について検討し、必要な法案を次期通常国会から順次提出するとの方針が示されましたが、具体的にどのような仕組みや工程を考えているのか、正直申し上げて、全体像が理解しづらい文言です。また、いかなる措置をとるにせよ、関係各方面とは相当な調整が必要になるものと考えます。

 まずは、労働基本権に立ち入らずに人件費を削減する措置として、具体的にどのような仕組みを想定しているのか、あわせて、その検討の進め方について総務大臣に伺います。

 そして、有言実行の菅内閣です。次期通常国会までの間には実質的に三カ月程度の準備期間しかないのではないかと危惧しますが、閣議決定の文言どおり次期通常国会に法案を確実に提出することを確認いたしたく、覚悟のほどとあわせて総務大臣に伺います。

 また、順次提出するという文言からは、複数の法案が次々に提案されるものと理解しますが、なぜそのような段階的な手順を予定しなければならないのでしょうか。自律的労使関係制度が実現するまでの期間が数年間にわたることを想定しているのではとも思いますが、総務大臣の見解を伺います。

 第四に、具体的な改定の考え方について伺います。

 今回の改定案では、五十五歳を超える職員のうち、一定程度の職以上についている者のみを対象として一・五%の一律給与削減をかけています。同一年齢で差をつけるこの改定手法に合理的理由があるのか、総務大臣に伺います。

 一方、四十三歳未満の職員については平成二十三年四月に一号俸の回復措置を予定していますが、現下の厳しい財政状況とは矛盾しないのでしょうか。

 政府には、昭和五十七年、当時の鈴木首相が、財政非常事態を宣言し、人事院勧告凍結に踏み切った前例があります。この部分だけでも勧告を深掘りし、回復措置を先送りすれば、菅総理の当初の発言に多少とも沿うこともできるのではないかとも思います。

 回復措置の先送りは検討されなかったのか、この措置を実施しなければならない理由とあわせて、総務大臣に伺います。

 また、育児休業法の改正では、一定の非常勤職員の休暇取得が可能となり、地方公務員についても同趣旨の改正が行われます。片山総務大臣は給与制度についても地方の自主性を重んじる方針を示していますが、本改正について地方の意見をどのように酌み取ったのか、そして、本当に問題はなかったのか、総務大臣に伺います。

 第五に、国家公務員総人件費二割削減について、覚悟のほどを伺います。

 民主党マニフェストは、平成二十二から二十五年度の四年間で、二十一年度比較で国家公務員総人件費の二割、約一兆一千億円を削減するとしています。

 そこで、二十二年度当初予算について、社会保険庁改革で非公務員化された部分を除いて、二十一年度と比較しての総人件費の削減額を財務大臣に伺います。あわせて、二十三年度概算要求において、総人件費の今年度と比較しての増減がどうなっているのか、財務大臣に伺います。

 総人件費は今回の改正案でも五百億円程度の削減にとどまる見込みであり、これで二十三年度予算が事実上決まっていきます。残された予算年度は二年間となり、実質、既に折り返し地点に立っている現状です。そして、二割削減についての進捗度合いは、金額面でも制度面でもせいぜい一、二歩を踏み出したばかりの状況にとどまっており、ゴールはいまだ遠くのかなたにあります。

 このことについて、しばしば、四年間で達成すればよい目標だと安易な発言も耳にしますが、時は刻々と経過しています。公約達成まであと二予算年度しか時間が残されていない、あと二年でなし遂げなければならない難しい課題となっているという認識をしっかりとお持ちであるのか、総務大臣及び蓮舫大臣に確認します。

 また、公約達成の道筋は、現時点でも既に極めて険しいものになっているのではないでしょうか。この点、総務大臣及び蓮舫大臣の率直な見解と、公約達成への覚悟のほどを伺います。

 最後に、民主党マニフェストは、総人件費の削減方法として「地方分権推進に伴う地方移管」を挙げていますが、地方自治体への単なる人員のつけかえによる人件費の減少は、それが国から地方への負担金の支払いを伴うのであれば、その分は当然のことながら二割削減にカウントされないものであることを総務大臣に確認します。

 国家公務員に対する国民の期待と負託は極めて重いものがあります。厳しい財政状況のもと、その給与水準がどうあるべきか、そして、政務三役と職員が真に一体のチームとなって、持てる力を発揮し、国民のためにどのような成果を上げていくのかが国政上の重大な焦点であり、国民の関心の的となっています。また、公務員制度改革の分野においても、菅内閣が本当に有言実行できるのか、厳しく見詰められています。

 我が国が、内政、外交両面にわたり難局と言える事態に立ち至っている現状であるからこそ、菅内閣に対しては、言葉の重みをいま一度指摘したいのであります。一足飛びで安易に目的地に行こうとしたり、思い余って奇策に走ろうとしたりするのではなく、山道を一歩一歩踏み締めるごときしっかりとした心構えで改革の実を着実に上げることこそ課題解決の真の近道であることを申し述べ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣片山善博君登壇〕

国務大臣(片山善博君) 橘議員にお答えを申し上げます。

 初めに、人事院勧告を超えた給与削減についてであります。

 人事院勧告は、国家公務員の労働基本権を制約する上での代償措置の根幹をなしますので、給与改定に当たりましては、これを尊重するのが基本であります。

 他方、現下の社会経済情勢や厳しい財政状況等を踏まえ、勧告を上回る削減を行うべきとの意見もありまして、関係者間でこれまで議論を行ってきたところでありますが、その結果、その実現に向け検討を進めることで一致をいたしました。

 ただし、人事院勧告制度のもとにおきましては、勧告を上回る給与の削減は極めて異例の対応となっておりますので、その場合の法律問題の整理や実現に向けた手順について、一定の検討期間が必要との認識も共有しているところであります。

 こうした事情から、人事院勧告を上回る削減につきましては、今後、これらの点を含め、具体的な検討を開始することとし、ことしの給与改定は、人事院勧告どおりと決定したところであります。

 次に、現行制度上、国と自治体にどのような違いがあるのかということでありますが、基本的には違いはありません。

 もちろん、国の場合は人事院でありますし、自治体の場合は人事委員会という異なった組織であります。それから、地方公務員の場合には、給与の水準を検討するに当たりまして国家公務員の水準をもその一つの考慮要素とするということなど違いはありますけれども、基本的な違い、仕組みの違いはございません。

 次に、人件費削減の内容や工程などについてであります。

 法案の内容につきましては、例えば、給与法、退職手当法、共済組合法、各府省の設置法、これは地方移管がなされる場合でありますけれども、それなどが検討対象として想定されているところであります。

 具体的なスケジュールにつきましてはまだ決まっておりませんけれども、給与法改正法案を二十三年通常国会に提出するべく検討を進めてまいりたいと考えております。また、その他の法案につきましては、現時点で提出する時期を確定することは困難でありますけれども、各法案を所管する府省におけるそれぞれの制度見直しの状況等も踏まえつつ、政府全体として適切に対応してまいりたいと考えております。

 労働基本権に立ち入らずに削減ができるのかということでありますが、これは、かつて、国の場合にもそういうことをしたことがありますし、それから、私も経験ございますけれども、自治体でも、人事委員会の勧告とは異なる給与の決定をしたことがございます。したがって、憲法上も法律上も、それは可能かどうかといえば、可能だと思います。

 次に、五十五歳超の職員の給与減額措置等についてであります。

 五十五歳を超える職員に対する給与抑制措置は、五十歳代後半層の官民給与格差を是正するために導入するものでありますが、行政職(一)の五級相当以下の五十歳代後半層の職員につきましては、民間の五十歳代後半層の給与水準と比較して大きな格差は見られないことから、給与抑制措置の対象とする必要はないものと判断したものであります。

 四十三歳未満の職員につきまして平成二十三年四月に一号俸を回復する措置は、民間の給与水準を下回る傾向が見られる若年・中堅層に対して行うものであります。

 給与構造改革を実施するに際しまして、個々の職員の俸給引き下げは経過措置を設けて段階的に行うこととしたため、必要な原資を確保することを目的として、平成十八年度から平成二十一年度までの四年間にわたり、全職員の昇給を毎年一号俸抑制してきたところであります。そして、この経過措置が段階的に解消されてきたことから、これまで経過措置実施のために抑制されてきておりました昇給分を回復させることとしたものであります。

 なお、人件費削減のための措置については、自律的労使関係制度の施行を待つことなく、必要な法案を二十三年通常国会から順次国会に提出するべく、検討を進めてまいります。

 次に、育児休業法改正によります地方自治体への影響についてであります。

 今回の法改正によって、非常勤職員につきましても、仕事と生活の両立を図ることが可能となります。こうした適切な処遇の改善は、有為な人材の確保等を通じ、結果的に各地方公共団体における良質な公共サービスの提供につながっていくものと考えております。

 なお、自治体との関係でありますが、これらは当然、自治体に関係する法律でありまして、具体的には条例で定めていくことになりますが、このたびの法律改正ができましたら、自治体にその趣旨をよく周知して、自治体において自主的に取り組んでいただくように促していきたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

議長(横路孝弘君) 総務大臣片山善博君。

    〔国務大臣片山善博君登壇〕

国務大臣(片山善博君) 議長、ありがとうございます。

 一つ答弁が漏れておりました。

 国家公務員の総人件費二割削減につきましての達成が厳しいのではないかということでありますが、率直な見解をということでありますので、率直な見解を申し上げます。

 国家公務員の総人件費二割削減につきましては、なかなか容易な課題ではないと認識しておりますけれども、国の事務事業の徹底した見直しによる行政のスリム化、それから、地方分権推進に伴う地方移管、各種手当、退職金等の水準の見直し、労使交渉を通じた給与改定など、さまざまな手法を組み合わせることにより、平成二十五年度までに達成できるよう努めてまいりたいと考えております。

 国の出先機関改革を進めるに当たりましては、出先機関の職員を単純に地方に移管するのではなく、例えば、移管に先立ち、出先機関の無駄な事務事業を徹底的に見直して人員や体制をスリム化するとの方針で臨んでまいりたいと考えております。その上で国の出先機関を地方に移管するというのであれば、国にとってさらに定員のスリム化が図られるという効果もございます。

 こうした観点も踏まえつつ、お尋ねの、地方移管分の人件費削減額の取り扱いにつきましては、今後、具体的に地方移管の方法を検討していく中で整理すべき課題と考えております。

 以上、失礼いたしました。(拍手)

    〔国務大臣蓮舫君登壇〕

国務大臣(蓮舫君) 橘議員にお答え申し上げます。

 労働基本権を含めた国家公務員法の改正や人事院制度の改正についての御質問をいただきました。

 政府としては、労使交渉を通じた国家公務員給与改定を実現するため、次期通常国会に、労働基本権が制約され人事院勧告を踏まえて給与が決定される仕組みを見直し、自律的労使関係制度を措置するための法案を提出する予定でありまして、現在、鋭意検討を進めているところでございます。

 あわせて、人事院制度のあり方につきましては、自律的労使関係制度を含む公務員制度改革全体の中で検討を進めてまいりたいと考えております。

 次に、人事院勧告の取り扱いについての質問をいただきました。

 人事院勧告の取り扱いについては、さらなる深掘りを検討する一方で、人事院勧告が公務員の労働基本権制約の代償措置であることにもかんがみ、熟慮を重ねた結果、本年の給与改定については人事院勧告どおりに実施するとともに、来年度以降の人件費削減の方針についても明らかにすることとしたものであります。

 今後の国家公務員の給与改定については、自律的労使関係制度を措置するための法案を次期通常国会に提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図ることとしておりまして、さらに、その実現までの間においても、来年度から人件費の削減を可能とするための措置について検討し、必要な法案を次期通常国会から順次提出することとしております。

 公務員制度改革担当副大臣の補充についての質問をいただきました。

 公務員制度改革の推進体制につきましては、内閣の重要課題を的確に遂行する観点から適材適所の人事を行った結果であると理解しておりまして、現在の体制で公務員制度改革を推進してまいりたいと考えております。

 総人件費二割削減についての質問をいただきました。

 国家公務員の総人件費二割削減という目標は、大変厳しい数字と認識しております。地方分権推進に伴う地方移管や、各種手当、退職金等の水準や定員の見直し、労使交渉を通じた給与改定など、さまざまな手法によりまして、今後、その内容をさらに具体化させ、平成二十五年度に二割削減を達成するよう努力することとしておりまして、担当府省である総務省、片山大臣とも連携してまいりたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣仙谷由人君登壇〕

国務大臣(仙谷由人君) 橘慶一郎議員から、公務員制度改革の推進体制について、御心配と、公務員制度改革推進についての心情あふれるお励ましも含めた御質問をいただいたと考えております。

 蓮舫大臣からも、適材適所の人事を行った結果であると我々は考えておりまして、そして、現在の体制は、玄葉大臣、蓮舫大臣、私、それから前の、副大臣大島さんや、あるいは政務官の階さんにも御協力をいただきながら、今、強力に、あるいは精力的に作業をしているところでございます。

 御指摘いただいたように、この問題は、まことに歴史的な課題を、私どもの内閣で提案をして、新しい時代の公務員制度改革をつくっていくという大作業でございますので、橘先生初め、与党の議員の皆さん方にも、御協力と真剣な御議論への御参加をお願いいたします。(拍手)

    〔国務大臣海江田万里君登壇〕

国務大臣(海江田万里君) 平成二十二年度予算及び二十三年度概算要求における国家公務員人件費の増減についてお尋ねがございました。

 平成二十二年度予算における国家公務員の人件費は五兆一千七百九十五億円であり、対前年度比一千四百億円の減であります。これから社会保険庁改革による日本年金機構への定員の移行減の部分を除くと、六百五十億円の減であります。

 また、平成二十三年度概算要求における国家公務員人件費は五兆二千百九十六億円であり、二十二年度当初予算と比較して四百一億円の増となっております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 稲津久君。

    〔稲津久君登壇〕

稲津久君 私は、公明党を代表して、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案、特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案、国家公務員の育児休業等に関する法律等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 この法案の質疑に入る前に、官房長官に一点お伺いをいたします。

 今回の中国漁船衝突事件の映像を流出させたと神戸海上保安部の航海士が告白した問題です。

 仙谷官房長官は、昨日の記者会見で、独自の領域の責任者がまず責任を持ってもらわないといけないとし、海上保安庁長官の責任は免れないとの考えを示したとの報道がありました。

 しかし、今回の漁船衝突事件やその後のビデオ公開対応を扱ったのは、官房長官、あなた自身ではないですか。菅総理も、昨日の予算委員会で、管理責任が不十分だったことについて最終的責任は私自身にも当然あると答弁をしております。

 官房長官、あなたは、結局、官僚のトップに責任をなすりつけて決着をつけるつもりですか。あなた御自身がまず責任をとるべきと考えます。明確にお答えください。

 さて、今回の給与法改正法案は、八月十日に人事院が勧告した平均年収マイナス一・五%を勧告どおり国会に提出されたものです。

 そもそも人事院勧告は、労働基本権を制約された公務員の勤務条件を決定するために導入され、代償措置としての役割を果たしてきましたが、その影響範囲は広く、直接的な勧告対象の国家公務員約三十万人だけではなく、国会、裁判所職員、自衛官も人事院勧告に準じた給与改定が行われ、非現業の地方公務員給与もほぼ準拠し、民間部門の一部でも給与決定の参考にされています。

 人事院において、団体交渉による給与決定に代替する基準とされているのが民間準拠です。精緻な官民の給与比較を行った上で勧告を行います。

 しかし、人事院勧告は、財政状況を考慮して出されているものではありません。団体交渉によって給与を決定する場合には、給与の支払い能力として財政事情を勘案しながら交渉が行われますが、人事院勧告作成に当たっては、財政的要素は考慮されません。

 また、人事院勧告は、民間準拠という性格上、給与実態調査を行った後で官民比較を行い出されるものであり、勧告が出される八月時点で既にタイムラグができ、実際に国会で審議を行うこの時期になりますとさらにタイムラグができてしまい、現時点での民間給与との間には少なからず差ができてしまうという性格を持っています。

 さらに、民間給与実態調査の結果は、全国平均的な数値になるため、民間給与の高い首都圏では民間以下、地方では民間以上となる傾向があります。二〇〇五年の地域手当導入により緩和がなされてきているものの、個別化、多様化が進む民間給与に比べれば、まだまだ画一性は残っていると言わざるを得ません。

 そこで、一九四八年に始まったこの人事院勧告制度、これまでさまざまな制度改正を行いながら存続してきたこの制度について、その意義と今後の課題について伺います。

 民主党政権は、昨年、衆議院選のマニフェストで、国家公務員の総人件費二割削減などを国民に約束しました。先般の代表選でも、菅総理は、人事院勧告を超えた削減を目指すと掲げました。

 しかし、結果的には、今回の給与法改正では、人事院勧告を超えた削減は行わず、国家公務員総人件費二割削減の方向性は全く示されていません。なぜ今回、給与改定で、人事院勧告以上のいわゆる深掘りをやらないのか。労働基本権の制約があるからできないとおっしゃるなら、そんなことはあらかじめわかっていた話であり、なぜ政権発足時点から準備を進めてこなかったのか。これでは、問題を先送りしただけとしか言えないのではないでしょうか。

 民主党マニフェストの国家公務員総人件費二割削減を目指す中で、今回の給与法改正はどのような位置づけになるのか、答弁を求めます。また、二割削減への明確なタイムスケジュールを示していただきたい。

 次に、自律的労使関係制度についてであります。

 人事院勧告制度は、労使関係において非常に重要である勤務条件の決定を、両者の参加を限定したまま行う制度とも言えます。確かに人事院は、使用者たる政府の意見も、労働者たる組合の意見も聞いています。

 しかし、それ以外にも、有識者や国民各層とも意見交換を行っており、労使の意見だけで勧告が作成されているわけではありません。これは、単なる労使交渉よりも広い視野で合理的判断に基づいて勧告をつくっていると評価することもできますが、労使の参加、とりわけ労働側の制度的参加という面では、労使交渉より劣るという意見もあります。参加の効用は、労使双方に給与決定当事者としての自覚を促し、労使の給与に対する責任を明確にできるという利点が挙げられます。

 今回の給与改定に関する閣議決定では、「次期通常国会に、自律的労使関係制度を措置するための法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図る」としています。これは、既に平成二十年に全会一致で成立した国家公務員制度改革基本法の第十二条「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とあることから、何ら目新しいものではなくて、政府として当然行わなければならないものであり、あえて閣議決定する必要があるのかと問いたくもなりますが、それをおいておいても、次期通常国会に法案を提出するというのであれば、既に議論を行った上で、ある程度その方向性なり中身が見えてきているからこそ、わざわざ閣議決定までなされたのではないかと理解いたしますが、いかがでしょうか。

 現時点での検討状況及び方向性をまずはお示しいただきたい。その上で、国民に開かれた制度にするためにどのような努力を行っていくのか、また、今後、労使交渉による給与改定が行われることになった場合、どのような効果があるのか、答弁を求めます。

 次に、公務員人件費削減のための措置について伺います。

 同じく、今回の閣議決定には、交渉を通じた給与改定が実現する前においても、人件費を削減するための措置について検討するとして、必要な法案を次期通常国会に順次提出するとしております。この人件費削減のための措置とは、具体的にどういった措置を示すのか、お示しをいただきたい。

 もしその措置の中にさらなる給与法の改正などが含まれているのであれば、そもそも今回の給与法改正が何だったのかが問われることになるのではないでしょうか。今回の改定が人事院勧告どおりに行われたのは、労働基本権が制約されている中でその代償措置としての勧告を無視することはできないから勧告どおりの改正案を出してきたのではないでしょうか。自己矛盾を起こしているとしか思えません。明快な答弁を求めます。

 都道府県や政令市など、人事委員会が置かれている地方公共団体は、人事院勧告の内容と地元企業との給与差を参考に勧告を行います。人事委員会の置かれていない団体は、国の取り扱いや都道府県の勧告を参考に具体的な給与改定方針を決定いたします。

 いずれも議会の議決で給与改正が行われますが、自治体財政が悪化する中、勧告とは別に、何年間で一律何割カット等を行っている地方自治体があると承知をしております。独自カットは、言うまでもなく、官民格差を理由として行われるわけでもなく、その理由は、自治体の財政難にあります。財政難の自治体では、かなり多くの自治体が行っているのではないでしょうか。

 国と自治体では財政の仕組みが違うので一概に比較はできませんが、国の借金は、一自治体の比較にならないほど膨大なのは事実であります。この点、どのように考えているのか伺います。

 最後に、公務員の人事管理について伺います。

 人事院による報告を読みますと、まだまだ超過勤務が広く行われている実態が改善されていないと見受けられます。これまでも、さまざまな指摘、議論がなされ、代休制度をうまく使うなどの工夫で実効性のあるものになるのではないかとの提案等もあったと思いますが、これまで、特にこの一、二年間で、具体的に何に取り組み、どういう成果があったのか、また、これからどのような取り組みを考えているのか伺います。

 また、超過勤務問題とも関連しますが、健康問題、特に心の問題について伺います。

 報告書を見ても、全職員に占める心の健康の問題による一カ月以上の長期休業者の割合が、平成八年度から十八年度にかけて〇・二一%から一・二八%と、約六倍にも増加しています。

 人事院でも、専門家による検討を行い、心の問題に係る「円滑な職場復帰及び再発の防止のための受入方針」を改定しました。ここにある多くの事例を見ても、これは公務員に限られたことではなく、一般の企業などでも十分起こり得ることでもあり、今般の社会情勢から見ても、こういった問題はふえてきているのが実態ではないでしょうか。その意味では、民間で行っている対策、成功事例なども参考にしながら対策を実施していくべきではないかと考えます。

 そこで、この十年間で六倍にも増加している原因は何と考えるのか、また、具体的に今後どのような対策を考えているのか、答弁を求めます。

 いずれにしても、今回の給与法改正は、菅総理みずから公約に掲げた人事院勧告以上の削減を実行することなく、結局、かけ声だけで終わり、勧告どおりの法案提出となりました。これは明らかに公約違反です。違反であれば、そのことを率直に認められて謝罪すべきではないでしょうか。

 みずからマニフェストに掲げた国家公務員の総人件費二割削減への具体的な方向性を全く示さず、今後検討し四年かけて実行するという答弁を繰り返し、問題をどんどん先送りする菅政権には、政権担当能力なしと訴えて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣片山善博君登壇〕

国務大臣(片山善博君) 稲津議員より私にあてられました御質問にお答えを申し上げます。

 最初に、人事院勧告の意義、課題などについてでございます。

 人事院勧告制度は、もう御承知のとおり、国家公務員の労働基本権を制約している現状のもとにおきまして、その代償措置として、国家公務員の適切な処遇を確保する機能を担ってきたものと承知しております。

 これまでもさまざまな改正をしてきておりますが、さらにいろいろ課題はあると思います。例えば、官民比較の対象企業をどういう範囲にするかなど幾つかの課題があると思いますが、政府もそれを検討しますし、人事院におかれましても必要な検討を加えていただきたいと思います。

 それはそれとしまして、今般閣議決定しました中にありますとおり、政府としては、国家公務員制度改革基本法に基づき、労使交渉を通じた国家公務員給与改定を実現させるため、次期通常国会に、労働基本権が制約され人事院勧告を踏まえた給与が決定される仕組みを見直し、自律的労使関係制度を措置するための法案を提出する予定でありまして、現在、そのために鋭意検討を進めているところであります。

 次に、人件費削減のための措置についてであります。

 先ほど触れました十一月一日の閣議決定におきましては、今後の取り組みとして、労使の交渉を通じた給与改定の実現を図る一方で、その実現までの間におきましても、人件費を削減するための措置について検討し、給与法改正法案など必要な法案を次期通常国会から順次提出することと決定したところであります。

 この人件費削減に向けた措置については、広く人件費削減に資する措置を想定しておりまして、具体的には、例えば給与でありますし、それから退職手当、定員、共済年金の見直し、さらには国の事務の地方移管などが考えられるところです。

 かけ声だけではないかという御批判がございましたが、このたびの人勧の完全実施と、それからそれに続きます次期通常国会での人件費の削減措置、これらをあわせて、いわば二段階、三段階の措置というものをあわせて御認識、御理解をいただければと思います。

 次に、国、地方の給与の独自カットについてであります。

 政府としては、今回の閣議決定に沿いまして来年の通常国会に給与法改正法案の提出を目指すこととしておりますけれども、現在の人事院勧告制度のもとにおいて、勧告を上回る給与削減を行うことは、いわば臨時異例の対応となります。そのため、法律的な問題や実施に向けた手順を検討するとともに、職員団体の理解も得られるよう真摯に努力することも必要であります。こうした取り組みを行った上で、来年の通常国会に給与法改正法案を提出するべく検討を進めているところであります。

 地方公務員でありますが、地方公務員の給与は、労働基本権制約の代償措置としての、先ほど申しました人事委員会勧告を踏まえながら、地方公務員法における情勢適応の原則、それから均衡の原則等に基づきまして、最終的には、各地方公共団体の議会の議決を経て条例で定められるものであります。

 独自の給与削減措置につきましては、勧告尊重の基本姿勢に立った上で、それぞれの団体におかれまして、当該団体の厳しい財政状況等を勘案して、人事当局と職員団体との交渉や議会における審議等を経て、条例改正を行い、実施されているものでございます。

 次に、超過勤務に係る取り組みについてであります。

 超過勤務の縮減は、職員の健康、それから士気の向上はもとより、自己研さんや家族との時間の確保のためにとりわけ重要であると考えております。このため、従来から全省庁一斉の超過勤務縮減キャンペーンなどを行っておりますほか、近年の取り組みといたしましては、本年四月から、六十時間を超える超過勤務手当の割り増しでありますとか、超勤代休時間制度の新設などによりまして、コスト意識を持った超過勤務抑制に努める、こういうことをやっております。また、超過勤務縮減を管理職員の人事評価の対象として明確化したところでもあります。

 今後とも、引き続き、政府全体の超過勤務縮減のため、取り組みを進めてまいりたいと考えております。

 最後に、私についての最後でありますが、国家公務員の心の健康の問題についてであります。

 御指摘ありましたとおり、国家公務員の心の健康問題による長期病休者の割合が、平成八年度から十八年度までの間に六倍に増加しております。心の健康問題の原因を特定することは極めて困難でありますけれども、家庭や職場における問題などが複雑に影響している面があるのではないかと考えられます。

 この点に関しまして、民間企業に関する調査では、職場でのコミュニケーションや助け合いの減少といった変化が影響しているとの指摘もなされておりまして、また、公務におきましては、行政課題が複雑化、高度化する中で、仕事の困難度が高まっていることなども一因として想定されているところであります。

 総務省では、国家公務員福利厚生基本計画を策定いたしまして、各省に対し、職員一人一人の心の健康の保持増進、心が不健康な状態になった職員の早期発見、円滑な職場復帰の支援と再発防止などの心の健康づくりを充実させるよう促しておりますほか、総務省において、各府省のメンタルヘルス担当者、管理監督者、カウンセラーを対象にしたセミナーあるいは講演会を開催いたしまして、心の健康づくりに関する教育、情報提供を行っているところであります。

 心の健康づくりは本当に大変重要な課題であると私も認識しておりまして、今後とも、このための施策の充実強化に努めてまいりたいと考えております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣仙谷由人君登壇〕

国務大臣(仙谷由人君) 稲津久議員の質問にお答えいたします。

 まずは、中国漁船衝突事件の映像の流出についての官房長官としての責任いかん、こういう御質問でございました。

 現在、この事案については、御承知のように、海上保安庁から、警視庁及び東京地方検察庁に告発をいたしております。したがって、そこでの徹底的な捜査をしていただき、全容を解明することが最も必要、重要だというふうに考えております。

 ただ、現時点で、もしこの事案が、治安機関に所属する職員が故意に衝突時の映像記録を流出させたということであれば、極めてゆゆしき事態であると、まことに遺憾と感じているところでございます。

 なお、本件情報流出事件を受けまして、政府としても、情報保全対策について、現行の万全を期すとともに、さらなる対策として、法制面とシステム面の両面にわたり鋭意検討を進めてまいりたいと考えております。これが官房長官としての私の責任であると考えておるところでございます。

 人事院勧告の意義及び課題についての質問がございました。

 ほぼ総務大臣と同じ見解でございますが、政府としては、国家公務員制度改革基本法に基づいて、労使交渉を通じた国家公務員給与改定を実現するために、次期通常国会に、労働基本権が制約され人事院勧告を踏まえ給与が決定される現行の仕組みを見直し、自律的労使関係制度を措置するための法案を提出する予定でございまして、現在、鋭意検討を進めているところでございます。

 それから、給与法改正についての御質問もございました。

 国家公務員の給与改定につきましては、現下の社会経済的情勢や厳しい財政状況等を踏まえまして、勧告を上回る削減を行うべきとの意見もあり、関係者間で議論を行った結果、政府の方針としては、本年の給与改定については、人事院勧告がマイナス勧告であったことも踏まえて、勧告どおりに実施するとともに、来年度以降の人件費削減の方針についても明らかにしたところでございます。

 すなわち、今後の国家公務員の給与改定につきましては、次期通常国会に自律的労使関係制度を措置するための法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図ることにし、さらに、その実現までの間においても、来年度から人件費の削減を可能とするための措置について検討して、給与法改正法案など必要な法案を次期通常国会から順次提出することといたしております。

 したがいまして、こうした政府の方針は、マニフェスト、平成二十五年度までに実現することを目標にしたものでございましたが、このマニフェストに沿ったものになっていると考えておりまして、今回の給与法改正もその実現に向けた一歩として位置づけられるものと考えているところでございます。(拍手)

    〔国務大臣蓮舫君登壇〕

国務大臣(蓮舫君) 稲津議員にお答えをいたします。

 国民に開かれた自律的労使関係制度の検討状況及び方向性などについての質問をいただきました。

 国民のニーズに合致した効率的で質の高い行政サービスを実現していく上で、公務員がやりがいを持って存分に能力を発揮できる環境をつくることは、公務員制度改革の重要な課題であると考えております。

 今、仙谷官房長官からも答弁がございましたが、労働基本権のあり方については、このような認識のもと、付与の方向で具体的な制度設計を精力的に進めているところでありまして、今後、成案を得て、関連法案を次期通常国会に提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図ってまいる所存でございます。

 なお、国民に開かれた制度とするためには、労使交渉の透明性の確保についても重要な検討課題と考えております。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣         片山 善博君

       財務大臣臨時代理   

       国務大臣         海江田万里君

       厚生労働大臣      細川 律夫君

       国土交通大臣      馬淵 澄夫君

       国務大臣         仙谷 由人君

       国務大臣         蓮   舫君

 出席副大臣

       総務副大臣       鈴木 克昌君


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