衆議院

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第1号 平成23年9月13日(火曜日)

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平成二十三年九月十三日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第一号

  平成二十三年九月十三日

    午前十時開議

 第一 議席の指定

 第二 会期の件

 第三 常任委員長の選挙

    …………………………………

  一 国務大臣の演説

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 議席の指定

 日程第二 会期の件

 文部科学、農林水産、経済産業、国土交通及び  環境の各常任委員長辞任の件

 議院運営委員長外十一常任委員長の選挙

 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる災害対策特別委員会、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会、沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会、青少年問題の総合的な対策を確立するため委員二十五人よりなる青少年問題に関する特別委員会、北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会、消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる消費者問題に関する特別委員会、科学技術、イノベーション推進の総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる科学技術・イノベーション推進特別委員会、郵政改革に関連する諸法案を審査するため委員四十五人よりなる郵政改革に関する特別委員会及び東日本大震災からの復興に当たり、その総合的対策を樹立するため委員四十五人よりなる東日本大震災復興特別委員会を設置するの件(議長発議)

 海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等の諸問題を調査するため委員四十五人よりなる海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)

 野田内閣総理大臣の所信についての演説


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    午後零時二分開議

議長(横路孝弘君) 諸君、第百七十八回国会は本日召集されました。

 これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 議席の指定

議長(横路孝弘君) 日程第一、議席の指定を行います。

 衆議院規則第十四条によりまして、諸君の議席は、議長において、ただいまの仮議席のとおりに指定いたします。

     ――――◇―――――

 日程第二 会期の件

議長(横路孝弘君) 日程第二、会期の件につきお諮りいたします。

 今回の臨時会の会期は、九月十六日まで四日間といたしたいと存じ、これを発議いたします。

 本件につき討論の通告があります。これを許します。馳浩君。

    〔馳浩君登壇〕

馳浩君 自由民主党の馳浩です。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表し、今国会の会期を四日間で閉じることに対し、断固反対の討論をいたします。(拍手)

 政権交代から二年、選挙もしないで三人目の野田総理が誕生し、九月二日にドジョウ内閣が発足いたしました。この政権の正統性はありません。

 ばらまきマニフェストは、財源の見通しが甘かったと菅前総理が参議院の予算委員会で答弁し、岡田克也前幹事長も既に文書で謝罪いたしました。

 そして、三党合意のもとに新たに誕生したのが野田政権です。衆参ねじれ国会において、野田総理は、三党合意に従って、合意を求めて決断する政権運営をしなければなりません。

 選挙もせずに三人目の民主党総理を私たち野党は認めているわけではありませんが、被災地支援と超円高対策の必要なこの非常時に、せめて協力すべきは三党合意に従って協力しようとしているのです。

 野田政権のすべきことは、十二月三十一日まで臨時国会を開会し、台風被害も含め、被災地復興対策、原発事故処理、放射能汚染対策、二重ローン対策、超円高・産業空洞化対策、経済成長戦略、社会保障と税の一体改革の方針を決めることであります。やるべきことは山積しています。

 とりわけ、超円高の現状は、地方の中小企業を疲弊させ、海外逃避を助長しています。第三次補正予算では、被災地支援とともに経済成長戦略を実行しなければ国内の雇用を守れないことは、皆様御承知のとおりであります。増税増税の刀を振りかざしてばかりいてはだめなんです。そのために、私たち野党は、国会で論戦をし、熟議をし、結論を出したいのです。

 三・一一の震災後、自由民主党は、補正予算や瓦れき処理対策や放射性物質対処法案など、重要な国会運営に協力してきたではありませんか。にもかかわらず、せっかくの臨時国会をわずか四日間で閉会してしまうとは、言語道断、民主主義の崩壊を意味するものでしかありません。

 とりわけ、被災地に休みはありません。新政権が誕生したら、本会議での所信表明と代表質問、予算委員会での一問一答の論戦、そして、常任委員会や特別委員会での大臣所信あいさつと所信質疑が必要です。これらの論戦を行うことは、憲政の常道であります。その過程において、与野党の国会議員や国民は、新総理や新大臣の国政運営方針を理解し、協力をし、ただすべきはただしていくのです。国会の一番大切な論戦をわずか四日間で封じるとは、信じられない暴挙であります。

 今からでも遅くはありません。野田総理、いや、民主党の野田代表、臨時国会は年末まで続けましょう。

 幾ら平野国対委員長が不完全内閣と言おうと、予算委員会は閉会中審査でお茶を濁そうと、一川防衛大臣が自分のことを素人のシビリアンコントロールと卑下しようと、就任した以上は、あなた方は日本国の代表です。鉢呂前経済産業大臣が、死の町、放射能つけちゃうぞなど無神経な発言で辞任しようと、逃げてはなりません。しっぽを巻いて隠れているいとまはありません。

 逃げるな、民主党。答弁を怖がるな。論戦もできないようなへなちょこ内閣ならば、とっとと千葉にお帰りください。そして、駅前街頭演説でもしていてください。それとも、ドジョウのように泥の中に潜ってお休みください。三党合意を守るという自分でした約束を守りなさい。言っていることとやっていることがまるで違う、発言に信頼の置けない鳩山さんや菅さんの轍を踏んではなりません。

 ここで一句申し上げたいと思います。

  民主党ドジョウが出てきてどこへ行く

議長(横路孝弘君) 馳浩君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。

馳浩君(続) あなた方民主党は、どこへ行こうとしているのですか。野田総理の道しるべは三党合意しかありません。決して、野田総理の道先案内人は松下政経塾ではありません。

 私は、船出したばかりの野田政権が、わずか四日間、代表質問だけで会期を閉じることに対し、断固反対を申し上げて、反対討論を終わります。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 採決いたします。

 会期を九月十六日まで四日間とするに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(横路孝弘君) 起立多数。よって、会期は四日間とすることに決まりました。

     ――――◇―――――

 常任委員長辞任の件

議長(横路孝弘君) 常任委員長辞任の件につきお諮りいたします。

 文部科学委員長田中眞紀子さん、農林水産委員長山田正彦君、経済産業委員長田中けいしゅう君、国土交通委員長古賀一成君及び環境委員長小沢鋭仁君から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 常任委員長の選挙

議長(横路孝弘君) つきましては、文部科学委員長外四常任委員長の選挙を行うのでありますが、既に議院運営委員長、法務委員長、外務委員長、財務金融委員長、厚生労働委員長、安全保障委員長及び国家基本政策委員長が欠員となっておりますので、この際、議院運営委員長外十一常任委員長の選挙を行います。

太田和美君 各常任委員長の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(横路孝弘君) 太田和美さんの動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、各常任委員長を指名いたします。

        議院運営委員長 小平 忠正君

           〔拍手〕

          法務委員長 小林 興起君

           〔拍手〕

         外務委員長 田中眞紀子さん

           〔拍手〕

        財務金融委員長 海江田万里君

           〔拍手〕

       文部科学委員長 石毛えい子さん

           〔拍手〕

        厚生労働委員長 池田 元久君

           〔拍手〕

        農林水産委員長 吉田 公一君

           〔拍手〕

        経済産業委員長 吉田おさむ君

           〔拍手〕

        国土交通委員長 伴野  豊君

           〔拍手〕

          環境委員長 生方 幸夫君

           〔拍手〕

        安全保障委員長 東  祥三君

           〔拍手〕

    国家基本政策委員長 田中けいしゅう君

           〔拍手〕

     ――――◇―――――

 特別委員会設置の件

議長(横路孝弘君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。

 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる災害対策特別委員会

 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会

 沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会

 青少年問題の総合的な対策を確立するため委員二十五人よりなる青少年問題に関する特別委員会

 北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会

 消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる消費者問題に関する特別委員会

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる科学技術・イノベーション推進特別委員会

 郵政改革に関連する諸法案を審査するため委員四十五人よりなる郵政改革に関する特別委員会

及び

 東日本大震災からの復興に当たり、その総合的対策を樹立するため委員四十五人よりなる東日本大震災復興特別委員会

を設置いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。

 次に、海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等の諸問題を調査するため委員四十五人よりなる海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(横路孝弘君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。

 ただいま議決されました十特別委員会の委員は追って指名いたします。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二分開議

議長(横路孝弘君) 休憩前に引き続き会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説

議長(横路孝弘君) 内閣総理大臣から所信について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣野田佳彦君。

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 第百七十八回国会の開会に当たり、東日本大震災、そして、その後も相次いだ集中豪雨や台風の災害によって亡くなられた方々の御冥福をお祈りします。また、被害に遭われ不自由な暮らしを余儀なくされている被災者の方々に、改めてお見舞い申し上げます。

 このたび、私は、内閣総理大臣に任命されました。政治に求められるのは、いつの世も、正心誠意の四文字があるのみです。意を誠にして心を正す。私は、国民の皆様の声に耳を傾けながら、みずからの心を正し、政治家としての良心に忠実に、大震災がもたらした国難に立ち向かう重責を全力で果たしていく決意です。まずは、連立与党である国民新党初め各党各会派、そして国民の皆様の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)

 あの三月十一日から、はや半年の歳月を経ました。多くの命と穏やかな故郷での暮らしを奪った大震災のつめ跡は、いまだ深く被災地に刻まれたままです。そして、大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故は、被災地のみならず、日本全国に甚大な影響を与えています。日本の経済社会が長年抱えてきた課題は残されたまま、大震災により、新たに解決が迫られる課題が重くのしかかっています。

 この国難のただ中を生きる私たちが、決して忘れてはならないものがあります。それは、大震災の絶望の中で示された日本人の気高き精神です。

 南三陸町の防災職員として、住民に高台への避難を呼びかけ続けた遠藤未希さん。防災庁舎の無線機から流れる彼女の声に、勇気づけられ、救われた命が数多くありました。恐怖に声を震わせながらも最後まで呼びかけをやめなかった彼女は、津波にのまれ、帰らぬ人となりました。生きておられれば、今月結婚式を迎えるはずでした。

 被災地の至るところで、みずからの命さえ顧みず、使命感を貫き、他者をいたわる人間同士の深いきずながありました。彼女たちが身をもって示した、危機の中で公に尽くす覚悟。そして、互いに助け合いながら、寡黙に困難を耐えた数多くの被災者の方々。日本人として生きていく誇りとあすへの希望が、ここに見出せるのではないでしょうか。

 忘れてはならないものがあります。それは、原発事故や被災者支援の最前線で格闘する人々の姿です。(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

内閣総理大臣(野田佳彦君)(続) 先週、私は、原子力災害対策本部長として、福島第一原発の敷地内に入りました。二千人を超える方々が、マスクと防護服に身を包み、被曝と熱中症の危険にさらされながら、事故収束のために黙々と作業を続けています。

 そして、大震災や豪雨の被災地では、みずからが被災者の立場にありながらも、人命救助や復旧、除染活動の先頭に立ち、住民に向き合い続ける自治体職員の方々がいます。御家族を亡くされた痛みを抱きながら、豪雨対策の陣頭指揮をとり続ける那智勝浦町の寺本眞一町長も、その一人です。

 今この瞬間にも、原発事故や災害との闘いは続いています。さまざまな現場の献身的な作業の積み重ねによって、日本の今と未来は支えられています。私たちは、激励と感謝の念とともに、こうした人々にもっと思いをいたす必要があるのではないでしょうか。

 忘れてはならないものがあります。それは、被災者、とりわけ福島の方々の抱く故郷への思いです。

 多くの被災地が復興に向けた歩みを始める中、依然として先行きが見えず、見えない放射線の不安と格闘している原発周辺地域の方々の思いを、福島の高校生たちが教えてくれています。

 福島に生まれて、福島で育って、福島で働く。福島で結婚して、福島で子供を産んで、福島で子供を育てる。福島で孫を見て、福島でひ孫を見て、福島で最期を過ごす。それが私の夢です。これは、先月、福島で開催された全国高校総合文化祭で、福島の高校生たちが演じた創作劇の中の言葉です。(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

内閣総理大臣(野田佳彦君)(続) 悲しみや怒り、不安やいら立ち、あきらめや無力感といった感情を乗り越えて、あすに向かって一歩を踏み出す力強さがあふれています。こうした若い情熱の中に、被災地と福島の復興を確信できるのではないでしょうか。

 今般、被災者の心情に配慮を欠いた不適切な言動によって辞任した閣僚が出たことは、まことに残念でなりません。失われた信頼を取り戻すためにも、内閣が一丸となって、原発事故の収束と被災者支援に邁進することを改めてお誓いいたします。

 大震災後も、世界は歩みをとめていません。そして、日本への視線も日に日に厳しく変化しています。日本人の気高い精神を賞賛する声は、この国の政治に向けられる厳しい見方にかき消されつつあります。政治が指導力を発揮せず物事を先送りすることを、日本化すると表現して、やゆする海外の論調があります。これまで積み上げてきた国家の信用が、今、危機に瀕しています。

 私たちは、厳しい現実を受けとめなければなりません。そして、克服しなければなりません。目の前の危機を乗り越え、国民の生活を守り、希望と誇りある日本を再生するために、今こそ行政府も立法府も、それぞれの役割を果たすべきときです。

 言うまでもなく、東日本大震災からの復旧復興は、この内閣が取り組むべき最大かつ最優先の課題です。

 これまでにも政府は、地元自治体と協力をして、仮設住宅の建設、瓦れき撤去、被災者の生活支援などの復旧作業に全力を挙げてきました。発災当初から比べれば、かなり進展してきていることも事実ですが、迅速さに欠け、必要な方々に支援の手が行き届いていないという御指摘もいただいています。

 この内閣がなすべきことは明らかです。復興基本方針に基づき、一つ一つの具体策を、着実に、確実に実行していくことです。

 そのために、第三次補正予算の準備作業を速やかに進めます。自治体にとって使い勝手のよい交付金や復興特区制度なども早急に具体化してまいります。

 復旧復興のための財源は、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担を分かち合うことが基本です。

 まずは、歳出の削減、国有財産の売却、公務員人件費の見直しなどで財源を捻出する努力を行います。その上で、時限的な税制措置について、現下の経済状況を十分に見きわめつつ、具体的な税目や期間、年度ごとの規模などについての複数の選択肢を多角的に検討します。

 省庁の枠組みを超えて、被災自治体の要望にワンストップで対応する復興庁を設置するための法案を早急に国会に提出します。被災地の復興を加速するため、与野党が一致協力して対処いただくようお願いをいたします。

 原発事故の収束は、国家の挑戦です。福島の再生なくして日本の信頼回復はありません。

 大気や土壌、海水への放射性物質の放出を確実に食いとめることに全力を注ぎ、作業員の方々の安全確保に最大限努めつつ、事故収束に向けた工程表の着実な実現を図ります。世界の英知を集め、技術的な課題も乗り越えます。原発事故が再発することのないよう、国際的な視点に立って事故原因を究明し、情報公開と予防策を徹底します。

 被害者の方々への賠償と仮払いも急務です。

 長期にわたって不自由な避難生活を余儀なくされている住民の方々、家畜を断腸の思いで処分された畜産業者の方々、農作物を廃棄しなければならなかった農家の方々、風評被害によって、ゆえなく廃業に追い込まれた中小企業の方々。厳しい状況に置かれた被害者の方々に対して、迅速、公平かつ適切な賠償や仮払いを進めます。

 住民の方々の不安を取り除くとともに、復興の取り組みを加速するためにも、既に飛散してしまった放射性物質の除去や周辺住民の方々の健康管理の徹底が欠かせません。特に、子供や妊婦の方を対象とした健康管理に優先的に取り組みます。毎日の暮らしで口にする食品の安全、安心を確立するため、農作物や牛肉等の検査体制のさらなる充実を図ります。

 福島第一原発の周辺地域を中心に、依然として放射線量の大変高い地域があります。

 先祖代々の土地を離れざるを得ない無念さと悲しみをしっかりと胸に刻み、生活空間にある放射性物質を取り除く大規模な除染を、自治体の協力も仰ぎつつ、国の責任として全力で取り組みます。

 また、大規模な自然災害や事件、事故など国民の生命身体を脅かす危機への対応に万全を期すとともに、大震災の教訓も踏まえて、防災に関する政府の取り組みを再点検し、災害に強い持続可能な国土づくりを目指します。

 大震災からの復旧復興に加え、この内閣が取り組むべきもう一つの最優先課題は、日本経済の立て直しです。

 大震災以降、急激な円高、電力需給の逼迫、国際金融市場の不安定化などが複合的に生じています。産業の空洞化と財政の悪化によって、国家の信用が大きく損なわれる瀬戸際にあります。

 日本経済の立て直しの第一歩となるのは、エネルギー政策の再構築です。

 原発事故を受けて、電力の需給が逼迫する状況が続いています。経済社会の血液ともいうべき電気の安定的な供給がなければ、豊かな国民生活の基盤が揺るぎ、国内での産業活動を支えることができません。

 ことしの夏は、国民の皆様による節電のおかげで、計画停電を行う事態には至りませんでした。多大な御理解と御協力、ありがとうございました。(拍手)

 我慢の節電を強いられる状況から脱却できるよう、ここ一、二年にかけての需給対策を実行します。同時に、二〇三〇年までをにらんだエネルギー基本計画を白紙から見直し、来年の夏を目途に、新しい戦略と計画を打ち出します。その際、エネルギー安全保障の観点や費用分析などを踏まえ、国民が安心できる中長期的なエネルギー構成のあり方を、幅広く国民各層の御意見をお伺いしながら、冷静に検討してまいります。

 原子力発電について、脱原発と推進という二項対立でとらえるのは不毛です。中長期的には原発への依存度を可能な限り引き下げていくという方向性を目指すべきです。同時に、安全性を徹底的に検証、確認された原発については、地元自治体との信頼関係を構築することを大前提として、定期検査後の再稼働を進めます。

 原子力安全規制の組織体制については、環境省の外局として原子力安全庁を創設して、規制体系の一元化を断行します。

 人類の歴史は、新しいエネルギー開発に向けた挑戦の歴史でもあります。化石燃料に乏しい我が国は、世界に率先して、新たなエネルギー社会を築いていかなければなりません。我が国の誇る高い技術力を生かし、規制改革や普及促進策を組み合わせ、省エネルギーや再生可能エネルギーの最先端のモデルを世界に発信します。

 歴史的な水準の円高は、新興国の追い上げなども相まって、空前の産業空洞化の危機を招いています。我が国の産業を牽引してきた輸出企業や中小企業がまさに悲鳴を上げています。このままでは、国内産業が衰退し、雇用の場が失われていくおそれがあります。そうなれば、デフレからの脱却も、被災地の復興も、ままなりません。

 欧米やアジア各国は、国を挙げて自国に企業を誘致する立地競争を展開しています。我が国が、産業の空洞化を防ぎ、国内雇用を維持していくためには、金融政策を行う日本銀行と連携し、あらゆる政策手段を講じていく必要があります。

 まずは、予備費や第三次補正予算を活用し、思い切って立地補助金を拡充するなどの緊急経済対策を実施します。さらに、円高メリットを活用して、日本企業による海外企業の買収や資源権益の獲得を支援します。

 大震災前から、日本の財政は、国の歳入の半分を国債に依存し、国の総債務残高は一千兆円に迫る危機的な状況にありました。大震災の発生により、こうした財政の危機レベルはさらに高まり、主要先進国の中で最悪の水準にあります。

 国家の信用が厳しく問われる今、雪だるまのように債務が債務を呼ぶ財政運営をいつまでも続けることはできません。声なき未来の世代にこれ以上の借金を押しつけてよいのでしょうか。今を生きる政治家の責任が問われています。

 財政再建は、決して一直線に実現できるような単純な問題ではありません。政治と行政が襟を正す歳出削減の道、経済活性化と豊かな国民生活がもたらす増収の道、そうした努力を尽くすとともに、将来世代に迷惑をかけないためにさらなる国民負担をお願いする歳入改革の道、こうした三つの道を同時に展望しながら歩む、厳しい道のりです。

 経済成長と財政健全化は、車の両輪として同時に進めていかなければなりません。そのため、昨年策定された新成長戦略の実現を加速するとともに、大震災後の状況を踏まえた戦略の再強化を行い、年内に日本再生の戦略をまとめます。

 こうした戦略の具体化も含め、国家として重要な政策を統括する司令塔の機能を担うため、産官学の英知を集め、既存の会議体を集約して、私が主宰する新たな会議体を創設します。

 経済成長を担うのは、中小企業を初めとする民間企業の活力です。

 地球温暖化問題の解決にもつながる環境エネルギー分野、長寿社会で求められる医療関連の分野を中心に、新たな産業と雇用が次々と生み出されていく環境を整備します。また、海外の成長市場とのつながりを深めるため、経済連携の戦略的な推進、官民一体となった市場開拓を進めるとともに、海外からの知恵と資金の呼び込みも強化します。

 農業は国のもとなりとの発想は今も生きています。

 食は、命をつなぎ、命をはぐくみます。消費者から高い水準の安全、安心を求められるからこそ、農林漁業は、新たな時代を担う成長産業となり得ます。東北の被災地の基幹産業である農業の再生を図ることを突破口として、食と農林漁業の再生実現会議の中間提言に沿って、早急に農林漁業の再生のための具体策をまとめます。

 農山漁村の地域社会を支える社会基盤の柱に、郵便局があります。地域のきずなを結ぶ拠点として郵便局が三事業の基本的なサービスを一体的に提供できるよう、郵政改革関連法案の早期成立を図ります。

 また、地域主権改革を引き続き推進します。

 東日本大震災と世界経済危機という二つの危機を克服することとあわせ、将来への希望にあふれ、国民一人一人が誇りを持ち、この国に生まれてよかったと実感できるよう、この国の未来に向けた投資を進めていかなければなりません。

 かつて、我が国は、一億総中流の国と呼ばれ、世界に冠たる社会保障制度にも支えられながら、分厚い中間層の存在が経済発展と社会の安定の基礎となってきました。しかしながら、少子高齢化が急速に進み、これまでの雇用や家族のあり方が大きく変わり、人生の安全網であるべき社会保障制度にもほころびが見られるようになりました。かつて中間層にあって、今は生活に困窮している人たちも増加しています。

 あきらめはやがて失望に、そして怒りへと変わり、日本社会の安定が根底から崩れかねません。失望や怒りではなく、ぬくもりある日本を取り戻さなければ、希望と誇りは生まれません。

 社会保障制度については、全世代対応型へと転換し、世代間の公平性を実感できるものにしなければなりません。

 具体的には、民主党、自由民主党、公明党の三党が合意した子供に対する手当の支給や幼保一体化の仕組みづくりなど、総合的な子ども・子育て支援を進め、若者世代への支援策の強化を図ることが必要です。

 医療や介護の制度面での不安を解消し、地域の実情に応じた質の高いサービスを効率的に提供することも大きな課題です。

 さらに、労働力人口の減少が見込まれる中で、若者、女性、高齢者、障害者の就業率の向上を図り、意欲あるすべての人が働くことができる全員参加型社会の実現を進めるとともに、貧困の連鎖に陥る者が生まれないよう、確かな安全網を張らなければなりません。

 本年六月に、政府・与党の社会保障・税一体改革成案が熟議の末にまとめられました。これを土台とし、真摯に与野党での協議を積み重ね、次期通常国会への関連法案の提出を目指します。

 与野党が胸襟を開いて話し合い、法案成立に向け合意形成できるよう、社会保障・税一体改革に関する政策協議に各党各会派の皆様に御参加いただきますよう、心よりお願いいたします。

 日本人が希望と誇りを取り戻すために、もう一つ大事なことがあります。それは、決して内向きに陥らず、世界に雄飛する志を抱くことです。

 明治維新以来、先人たちは、果敢に世界に挑戦することにより繁栄の道を切り開いてきました。国際社会の抱える課題を解決し、人類全体の未来に貢献するために、私たち日本人にしかできないことが必ずあるはずです。新たな時代の開拓者たらんという若者の大きな志を引き出すべく、グローバル人材の育成や、みずから学び考える力をはぐくむ教育など、人材の開発を進めます。

 また、豊かなふるさとを目指した新たな地域発展モデルの構築や、海洋資源の宝庫と言われる周辺海域の開発、宇宙空間の開発利用の戦略的な推進体制の構築など、新しい日本のフロンティアを開拓するための方策を検討していきます。

 国民の皆様の、政治、行政への信頼なくして国は成り立ちません。行政改革と政治改革の具体的な成果を出すことを通じて、信頼の回復に努めます。

 既に、終戦直後の昭和二十一年、国民の信頼を高めるため、行政の運営を徹底的に刷新する旨の閣議決定がありました。六十年以上を経たにもかかわらず、行政刷新は道半ばです。行政に含まれる無駄や非効率を根絶し、真に必要な行政機能の強化に取り組む、こうした行政刷新は、不断に継続、強化しなければなりません。

 政権交代後に取り組んできた仕分けの手法を深化させ、政府・与党が一体となって、国民の生活が第一の原点に立ち返り、既得権と闘い、あらゆる行政分野の改革に取り組みます。

 真に国民の奉仕者として、能力を発揮し、効率的で質の高い行政サービスを実現できるよう、国家公務員制度改革関連法案の早期成立を図り、国家公務員の人件費削減とあわせて、公務員制度改革の具体化を進めます。

 政治改革で最優先すべき課題は、憲法違反の状態となっている一票の格差の是正です。

 議員定数の問題を含めた選挙制度のあり方について、与野党で真剣な議論が行われることを期待します。

 我が国を取り巻く世界の情勢は、大震災後も日々変動し続けています。新興国の存在感が増し、多極化が進行する新たな時代の呼びかけに対して、我が国の外交もしっかりとこたえていかなければなりません。

 我が国を取り巻く安全保障環境も不透明性を増しています。そうした中で、地域の平和や安定を図り、国民の安全を確保すべく、平時からいかなる危機にも迅速に対応する体制をつくることは、国として当然に果たすべき責務です。

 昨年末に策定した新防衛大綱に従い、即応性、機動性等を備えた動的防衛力を構築し、新たな安全保障環境に対応していきます。

 日米同盟は、我が国の外交、安全保障の基軸であり、アジア太平洋地域のみならず、世界の安定と繁栄のための公共財であることに変わりはありません。

 半世紀を超える長きにわたり深められてきた日米同盟関係は、大震災でのトモダチ作戦を初め、改めてその意義を確認することができました。首脳同士の信頼関係を早期に構築するとともに、安全保障、経済、文化、人材交流を中心にさまざまなレベルでの協力を強化し、二十一世紀にふさわしい同盟関係に深化、発展させていきます。

 普天間飛行場の移設問題については、日米合意を踏まえつつ、普天間飛行場の固定化を回避し沖縄の負担軽減を図るべく、沖縄の皆様に誠実に説明し、理解を求めながら、全力で取り組みます。また、沖縄の振興についても積極的に取り組みます。

 今後とも世界の成長センターとして期待できるアジア太平洋地域とは、引き続き政治経済面での関係を強化することはもちろん、文化面での交流も深め、同じ地域に生きる者同士として、信頼を醸成し、関係強化に努めます。

 日中関係では、来年の国交正常化四十周年を見据えて、幅広い分野で具体的な協力を推進し、中国が国際社会の責任ある一員として、より一層の透明性を持って適切な役割を果たすよう求めながら、戦略的互恵関係を深めます。

 日韓関係については、未来志向の新たな百年に向けて、一層の関係強化を図ります。

 北朝鮮との関係では、関係国と連携しつつ、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決を図り、不幸な過去を清算して、国交正常化を追求します。

 拉致問題については、我が国の主権にかかわる重大な問題であり、国の責任において、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国に向けて全力を尽くします。

 日ロ関係については、最大の懸案である北方領土問題を解決すべく精力的に取り組むとともに、アジア太平洋地域のパートナーとしてふさわしい関係の構築に努めます。

 多極化する世界において、各国との確かなきずなをはぐくんでいくためには、世界共通の課題の解決にともに挑戦する大きな志が必要です。こうした志あるきずなの輪を、官民のさまざまな主体が複層的に広げていかなければなりません。

 大震災からの復旧復興も、そうした取り組みの一例です。被災地には、世界各国から温かい支援が数限りなく寄せられました。これは、戦後の我が国による国際社会への貢献と信頼の大きな果実とも言えるものです。

 我が国は、唯一の被爆国であり、未曾有の大震災の被災国でもあります。各国の先頭に立って核軍縮、核不拡散を訴え続けるとともに、原子力安全や防災分野における教訓や知見を他国と共有し、世界への恩返しをしていかなければなりません。

 国と国との結びつきを経済面で強化する取り組みが経済連携です。これは、世界経済の成長を取り込み、産業空洞化を防止していくためにも欠かせない課題です。

 包括的経済連携に関する基本方針に基づき、高いレベルの経済連携協定の締結を戦略的に追求します。具体的には、日韓、日豪交渉を推進し、日・EU、日中韓の早期交渉開始を目指すとともに、TPP、環太平洋パートナーシップ協定への交渉参加について、しっかりと議論し、できるだけ早期に結論を出します。

 資源、エネルギーや食料の安定供給の確保などの面でも、経済外交を積極的に進めます。また、途上国支援、気候変動に関する国際交渉への対応、中東、北アフリカ情勢への対応や脆弱国家対策といった諸課題にも、我が国として積極的に貢献していきます。

 政治とは、相反する利害や価値観を調整しながら、粘り強く現実的な解決策を導き出す営みです。議会制民主主義の要諦は、対話と理解を丁寧に重ねた合意形成にあります。

 私たちは、既に、前政権のもとで、対話の積み重ねによって解決策を見出してきました。ねじれ国会の制約は、議論を通じて合意を目指すという、立法府が本来あるべき姿に立ち返る好機でもあります。

 ここにお集まりの国民を代表する国会議員の皆様、そして国民の皆様、改めて申し上げます。

 この歴史的な国難から日本を再生していくため、この国の持てる力のすべてを結集しようではありませんか。閣僚は一丸となって職責を果たす。官僚は専門家として持てる力を最大限に発揮する。与野党は徹底的な議論と対話によって懸命に一致点を見出す。政府も、企業も、個人も、すべての国民が心を合わせて、力を合わせて、この危機に立ち向かおうではありませんか。

 私は、この内閣の先頭に立ち、一人一人の国民の声に、心の叫びに、真摯に耳を澄まします。正心誠意、行動します。ただ国民のためを思い、目の前の危機の克服と宿年の課題の解決のために、愚直に、一歩一歩、粘り強く、全力で取り組んでいく覚悟です。

 皆様の御理解と御協力を改めてお願いして、私の所信の表明といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

太田和美君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、明十四日午後一時から本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されることを望みます。

議長(横路孝弘君) 太田和美さんの動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  野田 佳彦君

       総務大臣    川端 達夫君

       法務大臣    平岡 秀夫君

       外務大臣    玄葉光一郎君

       財務大臣    安住  淳君

       文部科学大臣  中川 正春君

       厚生労働大臣  小宮山洋子君

       農林水産大臣  鹿野 道彦君

       経済産業大臣  枝野 幸男君

       国土交通大臣  前田 武志君

       環境大臣    細野 豪志君

       防衛大臣    一川 保夫君

       国務大臣    自見庄三郎君

       国務大臣    平野 達男君

       国務大臣    藤村  修君

       国務大臣    古川 元久君

       国務大臣    山岡 賢次君

       国務大臣    蓮   舫君


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