衆議院

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第5号 平成23年11月1日(火曜日)

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平成二十三年十一月一日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第四号

  平成二十三年十一月一日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 東京電力福島原子力発電所事故に係る両議院の議院運営委員会の合同協議会規程案(議院運営委員長提出)

 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)


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    午後二時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

太田和美君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 議院運営委員長提出、東京電力福島原子力発電所事故に係る両議院の議院運営委員会の合同協議会規程案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(横路孝弘君) 太田和美さんの動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、日程に先立ち追加されました。

    ―――――――――――――

 東京電力福島原子力発電所事故に係る両議院の議院運営委員会の合同協議会規程案(議院運営委員長提出)

議長(横路孝弘君) 東京電力福島原子力発電所事故に係る両議院の議院運営委員会の合同協議会規程案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。議院運営委員長小平忠正君。

    ―――――――――――――

 東京電力福島原子力発電所事故に係る両議院の議院運営委員会の合同協議会規程案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔小平忠正君登壇〕

小平忠正君 ただいま議題となりました東京電力福島原子力発電所事故に係る両議院の議院運営委員会の合同協議会規程案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。

 本規程案は、去る九月三十日に成立いたしました国会法の一部を改正する法律により設置されることとなった東京電力福島原子力発電所事故に係る両議院の議院運営委員会の合同協議会に関する事項を定めるために制定しようとするもので、その主な内容は、次のとおりであります。

 第一に、委員数は、衆議院議員及び参議院議員のそれぞれ十五人としております。

 第二に、両院合同協議会の委員を割り当てられない会派の所属議員のうちから、両院合同協議会に出席することができる委員外議員を選任することができることとしております。

 第三に、両院合同協議会に、会長及び会長代理一人を置くほか、衆議院議員及び参議院議員のそれぞれ七人ずつ、合計十四人の幹事を置くこととしております。

 第四に、その他所要の規定を整備することとしております。

 以上、何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

 東京電力福島原子力発電所事故に係る両議院の議院運営委員会の合同協議会委員の選任につきましては、両院合同協議会規程第三条により、議長において、各会派から申し出のとおり指名いたします。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

議長(横路孝弘君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。斉藤鉄夫君。

    〔斉藤鉄夫君登壇〕

斉藤鉄夫君 私は、公明党を代表して、野田総理の所信表明演説に対し、質問を行います。(拍手)

 東日本大震災から八カ月が経過しようとしております。被災者の方々に改めて、心からお見舞いを申し上げます。

 また、洪水、震災被害に遭遇したタイ並びにトルコ両国に対し、お見舞いを申し上げるとともに、日本政府として最大限の支援を行うべきであると、冒頭、総理に要請いたします。

 この百七十九回国会は、言うまでもなく、本格的な復興を決定づける第三次補正予算案の審議が最重要課題です。余りにも遅過ぎたこの予算案の提出に対して、政府に強い憤りを感じながらも、公明党は、復旧復興を加速するため、速やかに予算執行ができるよう、十分な審議と早期成立を求めるものであります。

 さて、総理、野田内閣発足より約二カ月、まず申し上げなければならないのは、あなたの顔が見えてこないということであります。

 最初の所信表明演説は、正心誠意という四文字熟語が印象的でしたが、今回は、決意すれども具体策なし、いんぎんだが熱意なしの所信表明だったと言わざるを得ません。内閣発足以来の各委員会などの答弁も、おおむね所管の大臣任せで、御自分の考えを言わない。まさにあなたは、物言わぬ総理ですね。

 就任直後、余計なことは言わない、派手なことをしない、突出しないと閣内に徹底した三ない内閣とマスコミにやゆされていましたが、それを実践されているのか、何を考え、何に取り組もうとしているのか、全く伝わってきません。

 歴代総理が応じてきたぶら下がり取材も拒み、総理の生の声で国民に情報発信する場面もほぼ皆無。かつてない危機に直面しているこの国のリーダーとして、総理は、国民の皆様に、被災者の方々に発信すべきことがないのでしょうか。責任あるリーダーならば、言うべきことが、日々、行動の中から生まれてくるはずです。しかし、日本の総理大臣からの発信が全くないのです。

 また、総理の所信表明を聞くにつけ、政治家として違和感を覚える表現が多いことが残念でなりません。

 政治家の覚悟、器量が問われる、各党各会派の共同作業、国会の決断を担うのは国会議員の皆様、今の私たちにしかできない国家国民のための大仕事をともになどなど。勢いのある言葉に聞こえますが、すべて、国会議員や、私たちや、各党とともにと、複数の人称を主語にして、周りに呼びかける言葉と表現を多用し、私という、あなた自身が主体となる言葉を避けているのです。

 さらに、根拠ない風評が被災地の復興を阻むことのないよう、私たち政治家が率先して国民の皆様の心ある対応を促していこうと呼びかけていますが、根拠なき風評という表現で初動態勢や情報開示のおくれという政府の責任を隠ぺいし、私たち政治家と称して政府の責任をぼかし、国民の皆様の心ある対応を促すという美辞麗句で政府の責任を国民に転嫁するものにほかなりません。

 私はこうするという強い主体性と責任感ある言葉を避ける姿に、あなたの覚悟の度合いがあらわれていると言わざるを得ません。どこまでも被災者の心に寄り添って、徹底的に情報を開示して、正しい対応を率先して具体的に示すことがあなたの役割であり、真の覚悟ではないでしょうか。

 いま一度、あなた自身の政治信念と、この国をどうやって希望あふれる国に復興していくのか、主体的で責任ある決意を、自身の言葉で国民に表明すべきです。総理の答弁を求めます。

 第三次補正予算案について伺います。

 この予算案がようやく国会に提出されたのは、先月二十八日のことです。これほどまでに提出がおくれてしまった原因は何か。それは、菅前総理の政権延命のために本格的な復興予算を先送りし、極めて部分的な第二次補正予算の編成を行ったこと、すなわち、自己都合優先、被災者無視の党内の権力闘争ゆえではないですか。

 さらに、その後、菅政権の後を継いだ野田政権も、速やかに第三次補正予算案の編成、国会提出と思いきや、その期待も裏切られました。一体どれだけの時間が政権与党内での議論に費やされてしまったのか。

 総理、あなたを初め幾人かの閣僚は、前政権でも重要閣僚だったはずです。また、初入閣した大臣も、入閣以前に復旧復興について熟慮してこなかったのでしょうか。私は、民主党の政権与党としての自覚、責任感、スピード感の圧倒的な欠如について、心からの憤りを感じております。

 被災地では、雇用保険も間もなく切れる、義援金も支援金も底をついた、でも仕事はいまだに見つからないという声や、仮設住宅に入居されている方からは、冬を前にして、雪と寒さを乗り越えられるか不安だなど、切実な声が聞こえてきます。

 総理、所信表明で主体性のない決意を開陳する前に、あなたが表明すべきは、本格復興のための予算執行が冬の季節にずれ込んだことへの率直なおわびであるべきです。答弁を求めます。

 さて、第三次補正予算に関しては、公明党として、既に八月十八日には円高対策に関する提言を、九月八日には震災復興及び経済対策に必要な予算に関する提言を発表しました。

 特に、瓦れきの撤去や放射能の除染の本格的な実施、被災地における住宅の確保を初めとする生活支援、さらには、福島における原発事故に対する賠償、仮払いの支払いなどは、緊急を要する課題です。また、二重ローン問題の解消を含め、農林水産業を初めとする産業基盤の再構築も欠かせません。

 こうした、いわば復旧の課題への対応と並行して、本格的な被災地における復興、未来に向けた取り組みについて、国が全面的にバックアップすべきは当然です。そのためには、地域の特性を生かしつつ地域の復興が円滑に進められるよう、自由度の高い一括交付金や基金の創設は不可欠です。被災地の方々の思いに立った予算の執行ができるよう、復興庁の設置、復興特区の創設も含め、最大限の支援が必要です。

 今回の予算案には、これら公明党の提案が多く盛り込まれている点は一定の評価をするものです。しかし、今般の第三次補正予算案をもって、復興対策や原発事故の収束、除染対策などのすべてが終了するものではありません。被災地の方々の戦いはまだまだ続きます。

 したがって、総理自身が、被災地の方々に対して、復旧復興は国が全責任を負う、今後追加的に必要となる財政上の手当ては国が責任を持って行う旨と、その国の責任の具体的な中身を明確に語るべきです。総理の答弁を求めます。

 そのほか、復旧復興対策にとどまらず、地域における防災機能の強化や、学校等の公共施設の耐震化の前倒し実施など、全国的な防災、震災対策も極めて重要であります。

 また、日本経済を取り巻くマクロ経済にも目を向ける必要があります。ギリシャ財政危機を発端とするヨーロッパの債務危機についても、EU首脳会議における合意がなされるなど、一定の進捗が見られるものの、なお予断を許しません。

 特に、本年夏以降続いている歴史的な円高の中で、製造業を初め民間企業は生き残りをかけて懸命な努力をされていますが、それも限界があり、産業空洞化対策や雇用対策にも万全を期すべきです。総理の答弁を求めます。

 復興特区、復興庁について伺います。

 規制緩和や税制上の特例等を認める復興特区、そして、被災地の復興をワンストップで推進する復興庁の設置は、東日本大震災からの復興のかなめとして、公明党が一貫して訴えてきた政策です。

 復興特区法案のポイントは、一、企業誘致を促進するために法人税の強力な特例措置を講ずること、二、被災自治体での土地利用の手続を一元化すること、三、復興特区ごとに国と地方の協議の場を設置すること、四、法律上の規制を条例により上書きできるようにすることの四点です。

 この中で、政府の復興特区法案に全く盛り込まれていないのが、四の、条例による法律の上書きについてです。

 これは、国会を唯一の立法機関とする憲法上の規定との兼ね合いが懸念されることは承知しており、国会の事後チェックの実施を提案しております。これにより、国会との関係の懸念は解消できるはずです。かつてない制度ですが、ぜひ実現していただきたいと思います。総理、いかがでしょうか。

 さて、この復興特区法案が成立、施行されれば、被災した各自治体は、復興計画をもとに復興特区として申請し、認定を受けることになるわけですが、この復興特区制度をどのように生かし、どのような復興計画が作成し得るのか、今まさに、各自治体は復興計画を懸命に作成しているところです。その各自治体に対しては、政府により、現時点での最大の情報提供、アドバイスが行われるべきです。

 ところが、現地では、復興の推進を後押しする立場にある各省庁の担当者などが、事業全体の総額などについて上限を設けるかのような発言がされるなど、逆にその推進を妨げているとの声も聞こえてきます。

 現在、復興計画の作成について、政府ではどのように被災自治体に支援を行い、また、それは適切に実行されているのでしょうか。総理、お答えください。

 復興特区と並行し、被災地の復興を強力に推し進めるのが、復興庁です。

 公明党は、復興庁については、復興に係る施策の計画立案、総合調整から実施に至るまでを一貫して行う、強力な権限を持つ機関として提案してきました。復興基本法に盛り込まれた際の立法趣旨も、そのようになっていると認識しております。

 しかし、政府の復興庁設置法案では、このうち、復興に関する施策の企画立案、総合調整だけを復興庁の行う事務として定めており、実施が入っていません。各省庁の所管する事業については、従来どおり、各省庁が実施することになります。

 この点については、多少の差異に見えるかもしれませんが、細部にこそ戦略は宿るのです。当初の復興基本法に定める復興庁の立法趣旨と大きな相違があると指摘せざるを得ません。いかがお考えでしょうか。総理の所見を伺います。

 復興庁には、被災自治体からの相談、要望などに対してワンストップでの対応が期待されるところです。まさに、被災地の要請に迅速かつ着実にこたえていく政府の本気度と実行力が問われることになります。

 所信表明演説で、総理は、復興庁に霞が関の縦割りを排する強い調整・実施権限を持たせると表明しました。各省庁への勧告権などの総合調整能力や復興交付金制度の実施などで、どの程度まで霞が関の縦割りを排することができるとお考えでしょうか。総理の認識を伺います。

 環太平洋経済連携協定、TPP交渉参加について伺います。

 総理は、前臨時国会の所信表明の中で、「しっかりと議論し、できるだけ早期に結論を」と言い、今回は、引き続きしっかりと議論し、できるだけ早期に結論をと、全く同じことを繰り返しただけです。一体、五十日もの間、何をやっていたのかと、情けなさを通り越して、怒りすら覚えます。

 その一方で、先月二十九日には、「野田首相、TPP交渉参加の意向固める」という報道が流れました。これは事実ですか。一体どうなっているのか、さっぱりわかりません。議論もなければ、情報開示もない。何より、拙速過ぎます。これでは、国民が不安を強くするのはいたし方ないことです。

 今月のAPEC首脳会議で参加表明をするのなら、その前に、国内への影響を国民に明らかにすべきです。TPP交渉参加問題に関する衆参両院予算委員会での集中審議を要求します。総理のTPPに関しての基本的な考え方を含めて、明確な答弁を求めます。

 次に、社会保障と税の一体改革について伺います。

 政府は、本年六月、消費税一〇%への引き上げを含む一体改革案をまとめ、これをもとに与野党協議を呼びかけていますが、さきの国会でも指摘したとおり、そもそもこの改革案は、制度の根幹部分が不明確であり、議論の前提を欠いています。

 具体的に、年金制度の改革について、民主党の言うところの抜本改革、すなわち、最低保障年金の創設とすべての制度の一元化を含む新たな年金制度をつくるのかつくらないのか。政府は、ここをあいまいにしたまま、逃げ続けています。さきの国会で、我々の質問に対し、総理は、「今後、政府内でも検討を進めていきたい」と答弁していますが、検討した結果、新制度はつくらないという選択肢もあるのでしょうか。

 総理、そろそろ逃げるのはやめて、誠実に答えてください。消費税一〇%で対応できる今後の年金改革の姿とは、民主党が言うところの抜本改革を前提としているのか、それとも平成十六年改革を前提とした機能強化なのか、最低限、これだけは明確に答弁してください。

 関連して、消費税の引き上げについて確認します。

 民主党は、二〇〇九年の衆院選以降、任期中の引き上げは行わず、行う場合は国民に信を問う考えを明らかにしています。一方で、来年の通常国会には消費税引き上げのための法案を提出し、早ければ二〇一三年中に段階的な引き上げを開始するとの報道があります。

 さらに、安住財務大臣は、二十カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議において、消費税引き上げについて言及し、関連法案を来年の通常国会に提出すると宣言、期限を示し消費税の増税を国際的に公約しました。総理、これは閣内や与党内で了承されたものでしょうか。

 そうだとするならば、国民的議論の前に国際的に約束することは、全く順番が逆で、民主的手続をないがしろにするものです。

 改めて総理に伺います。

 民主党は、引き上げ時期が衆院任期後であれば、その前に法案が成立しても、これまで述べてきたことと矛盾しないというお考えのようですが、それでは国民は納得しないのではないでしょうか。徹底した無駄の削減努力や、消費税率引き上げ後の使い方の明確化を含め、法案を提出した段階で信を問うのが筋であると公明党は強く主張します。それでも引き上げを実行しようとするのなら、国民に対して、公約撤回の謝罪と説明が必要と考えますが、総理の御見解を伺います。

 次に、年金の支給開始年齢引き上げについてお伺いします。

 現在、年金の支給開始年齢は段階的な引き上げの途上であり、公明党は、現行制度の財政状況からいって、政府内で検討されているような、さらなる支給開始年齢の引き上げや、引き上げスケジュールの前倒しは必要ないと考えます。また、高齢者の雇用環境の改善なくして、支給開始年齢の引き上げはあり得ません。

 総理に率直に伺いますが、今、年金の支給開始年齢の引き上げが必要な状況ですか。それとも、民主党が公約した新たな年金制度を実現するための財政的な理由から、支給開始年齢を引き上げなければならないのでしょうか。国民に対し、明確な説明を求めます。

 高額療養費制度の見直しについて伺います。

 公明党は、現行制度の問題点をいち早く指摘し、自己負担限度額の引き下げなどを政府に求めてきました。

 その後、政府内における検討が進み、具体的な自己負担限度額の引き下げ案が提示される一方で、そのための財源として、一般の外来患者から診察ごとに百円の追加負担を設ける、受診時定額負担があわせて検討されています。

 受診時定額負担については、高齢者を初め患者の受診抑制につながるおそれがあるため、導入すべきではありません。高額な医療費負担に苦しんでいる方々の救済のための高額療養費制度の見直しは急ぐべきですが、そのことと患者の窓口負担の追加を結びつけるべきではないと考えます。総理の見解を伺います。

 選挙制度について質問します。

 二〇一〇年実施の国勢調査の確定値に基づく衆参両院の選挙区別人口で、一票の格差は、前回調査に比べ、衆議院では格差二倍を超える選挙区が九十七選挙区と倍増しており、違憲状態が拡大しています。このままでは、最高裁が、いずれ、選挙は無効という判決を出さざるを得ないような事態も想定されます。

 他方、国会議員の定数削減も喫緊の課題です。

 この一票の格差と定数削減の二つについては、選挙制度の抜本改革の中で同時に実現すべきです。一票の格差は、何増何減という小手先の改革で解消できるレベルではなく、また、その後定数削減を議論するという二段階論では、両方ともできないと断ぜざるを得ません。一体で議論して初めて可能な改革です。

 所信表明では、定数の削減と選挙制度のあり方について与野党の議論を強く期待すると述べられましたが、民主党の代表でもある総理の、より一歩深い見解を伺います。

 普天間問題について伺います。

 玄葉外務大臣が、衆議院外務委員会で、最低でも県外との鳩山元総理発言を誤りだったと答弁したことについて、総理が、間違いだ、申しわけないと鳩山氏に陳謝したと報じられました。

 県外移設は誤りと認めた外務大臣の答弁を間違いと発言する総理は、今でも、普天間飛行場は県外に移すべきと御認識なのでしょうか。鳩山氏の県外移設発言は正しかったのか誤っていたのか、総理御自身の見解をお答えください。

 最低でも県外と鳩山元総理が約束して以来、何カ月もの迷走の末に、辺野古案に回帰しました。継いだ菅前総理は、普天間問題に真剣に向き合おうともせず、二年もの時間がむなしく過ぎ去りました。

 党内抗争に明け暮れ、熱意を持って普天間問題に取り組もうともしない不誠実さ、そして、沖縄県民の感情とのずれを酌み取ろうともしない鈍感さ、この問題の迷走は、すべて民主党政権が招いた失政です。

 にもかかわらず、総理は、就任して以来、一度も沖縄を訪問していません。政権交代以降の経緯を考えると、日米首脳会談でオバマ米大統領と普天間問題について話し合うより先に、沖縄を訪問するのが筋ではないでしょうか。

 総理は、所信表明演説で、沖縄の皆様の声に真摯に耳を傾け、誠実に説明し、理解を求めると述べましたが、民主党政権の今日までやってきたことは、沖縄の頭越しに辺野古回帰を決定し、その後の十分な説明もなく、不誠実きわまる対応でした。

 日米防衛大臣会談を前にした短期間の相次ぐ閣僚の沖縄訪問、一括交付金制度の創設、辺野古移設へ向けた環境影響評価の評価書提出の伝達など、政府の今の対応は、所信表明演説とはほど遠い、沖縄の皆様の声に真摯に耳を傾けようとも、誠実に説明し理解を求めようともしない、アメリカ向けに普天間問題の進展を演出するパフォーマンスと映ります。沖縄県民にもアメリカにも不誠実な結果を招来するとは想像できないのでしょうか。

 総理、沖縄県側が日米合意に理解を示さなくても、評価書の年内提出は強行されるおつもりか、明確な答弁を求めます。

 普天間問題の出発点は、世界一と言われる危険の除去であります。そして、解決の糸口となるのは、総理みずからの行動による信頼関係の回復です。総理が職を賭して取り組む覚悟なくして解決はありません。総理の覚悟を伺います。

 藤村官房長官が、記者会見で、いわゆる武器輸出三原則等の見直しについて、政府として検討に入っているのは事実だと明らかにしました。今月行われる見通しの日米首脳会談で、いわゆる武器輸出三原則の緩和を表明する意向を固めたとの報道もありますが、総理の所見を伺います。

 武器輸出三原則は、非核三原則とともに、日本の平和外交の基盤であり、日本がつくり上げてきた平和国家のあり方を示す施策であります。また、衆参両院それぞれで決議されたものであり、日米首脳会談での表明に間に合わせるために政府が独断で見直すなど、許されません。

 見直しについては国会での議論が必要と考えますが、総理の見解を伺います。

 国連の南スーダン共和国ミッションへの自衛隊施設部隊の派遣について伺います。

 本日午前の閣議で派遣の方針を確認したとの報道が流れましたが、これは実質的な派遣決定なのでしょうか。

 総理が国会答弁で述べられたとおり、今の法の枠内での派遣、すなわちPKO参加五原則を踏まえた上での派遣か否か、改めて明確な答弁を求めます。

 十月二十三日、政府の第二次調査団が帰国しました。遠いアフリカに自衛隊を派遣するかどうかは、PKO参加五原則を満たさなくてはならないことは当然として、その上で、南スーダンや周辺国の治安やインフラの状況、部隊が安全に活動を継続し、本来の目的どおりの成果を出せるかどうかなど、現場で働く人たちのことを十分に考慮する必要があります。そういう意味から、調査結果を精査し、慎重に判断することを改めて求め、総理の見解を伺います。

 政権交代から二年間、民主党からは政治と金の問題が相次いでいます。

 例えば、鳩山元総理の実母からの資金提供問題、菅前総理を初め民主党側から市民の会と称する政治団体に対して行われた巨額の渡し切り献金問題、そして、その底流にあるかのように、小沢元代表の西松建設、陸山会をめぐる献金等、数え上げれば切りがありません。

 そして、そのどれ一つとして、国民への誠実な説明がありません。あるときは党の役職をやめ、あるときは総理の座を退くなどして、けじめをつけたように立ち回ってきましたが、いずれの問題についても明確な説明がなされていないではありませんか。

 小沢元代表の説明責任について問われると、総理は、司法の判断に影響があるなどと繰り返すばかりです。しかし、公判開始を理由に、三権分立を持ち出し、逃げるのは、筋が通りません。三権分立だからこそ、裁判所と国会は役割が違い、裁判所は刑事責任を判断し、国会では、裁判所で論議されることのない道義的政治的責任について説明を求めるのは当然でしょう。それとも、総理は御自身のことを、三権分立を超えて司法に影響を与える存在であるとでもお考えなのですか。であるとすれば、憲法の精神をないがしろにするものであります。

 また、総理は、証人喚問をするかどうかということは国会の中でお決めいただくことと言いますが、野党が要求しても民主党が反対すれば実現できないことを見越した発言なのでしょう。かぎを握っているのは民主党であり、総理、あなたの判断です。国会に判断をゆだねているかのような建前答弁は、従来の民主党政治に一石を投じてくれるだろうという国民の期待を裏切るものです。

 民主党の代表として、小沢元代表に説明責任を果たすよう指示し、証人喚問にも応じるよう促すべきではありませんか。答弁を求めます。

 さらに、政治と金の問題は再発防止策が重要です。

 公明党が提出している政治家の監督責任を強化する政治資金規正法の改正案に対して、総理は、九月二十七日の衆議院予算委員会において、「十分に検討する余地のある法律だ」と答弁されました。ぜひとも今国会で成立させようではありませんか。民主党代表として、イエスかノーか、明確にお答えください。

 結びに、総理は、所信表明の中で、被災地の愛唱歌として歌われている詩を紹介され、希望の種をまきましょうと言われましたが、希望という文字の力は、人々が口ずさむ音声となって発せられ、人の心に届き、人の心を響かせ、人々に伝わっていくものです。希望というその言葉の意味を伝える声と行動が事をなすのです。物言わぬ総理、発信なき総理では、事をなすことはできないのではないかと申し上げます。

 公明党は、どこまでも被災者の心に寄り添った復興と国民生活の窮状の打開、また、日本の未来を切り開くために、全力で声を上げ、具体的な率先垂範の行動を示すことをお誓い申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 公明党の斉藤議員からは、私に対して厳しい御指摘も含めて、また、建設的な御提言もいただきまして、ありがとうございました。

 まず、私の政治信念と復興への決意についてのお尋ねがございました。

 私の政治的信念は、去る九月の所信表明演説で述べたとおり、正心誠意の四文字であります。意を誠にして心を正す。私は、国民の皆様の声に耳を傾けながら、みずからの心を正し、政治家としての良心に忠実に、大震災がもたらした国難に立ち向かう重責を全力で果たしていく決意であります。

 この国を希望あふれる国につくり上げ、大震災から立ち直ろうとする新しい日本があすへ向かって大きな一歩を踏み出すために必要なこと、それが、第三次補正とその関連法であります。

 これまで、公明党初め各党から、震災復興のための貴重な御提言をちょうだいしています。そのことに感謝の意を表した上で、私は、今、正心誠意の姿勢で、ここにいらっしゃる各党会派の議員の皆様の声に耳を傾け、共同作業を進め、困難を乗り切っていきたいと考えております。

 三次補正予算の提出がおくれた原因についてのお尋ねがございました。

 当面の復旧復興施策については、一次、二次合わせて六兆円規模の補正予算を編成し、これを着実に執行しているところであります。また、予備費や、二次補正に盛り込まれた復旧・復興予備費八千億円の活用により、機動的な対応をあわせて行ってまいりました。

 他方、本格的な復旧復興を総合的かつ計画的に進めるためには、復興構想会議での議論やそれを取りまとめた提言を踏まえた上で、必要となる復興施策、復興事業に係る財源確保など、国による復興のための取り組みの全体像を明らかにすることが必要であり、こうした観点から、七月末に復興の基本方針を策定いたしました。

 今般、この基本方針に沿って、真に復興に資する施策を重点的に措置した三次補正予算を国会に提出したところでございますが、必要な対応を適時適切に行ってきたと考えております。

 復興に関する国の責任についてのお尋ねがございました。

 東日本大震災からの復旧復興は、この内閣が取り組むべき最大かつ最優先の課題であります。国は、我が国社会経済や産業が受けた影響を克服し、被災地域の住民に未来への明るい希望と勇気を与えるとともに、豊かで活力ある日本全体の再生を実現することについて、大きな責任を負っていると認識しています。

 このため、政府としては、被災地の方々の声に真摯に耳を傾け、与野党でも御議論いただきながら、具体策を着実かつスピード感を持って実行していかなければならないと考えております。

 次に、産業空洞化対策と雇用対策についてのお尋ねがございました。

 現下の歴史的な円高に伴い、産業空洞化の危機が続いております。大企業が海外に拠点を移せば、その取引先である中小企業も後を追い、本来この国に残すべき貴重な雇用の場が失われかねません。

 そうした事態を防ぐため、昨日、為替介入を実施したほか、先般の円高への総合的対応策に基づき、日本銀行とも連携し、円高自体への対応を含め、あらゆる政策手段を講じます。

 まず、産業空洞化を阻止する国の決意を行動で示すべく、これまで措置した累計額の約三倍となる五千億円の立地補助金を用意いたします。また、二千億円規模の節電エコ補助金によって最先端技術の先行需要を生み出し、日本のすぐれた環境エネルギー技術力をさらに高めます。さらに、円高で苦しみながらも、それを乗り越えようとする企業には、雇用調整助成金の要件を緩和するとともに、金融支援の拡充を中心とした、総額約七千億円に上る中小企業対策を実行いたします。

 この三次補正を実行し、日本での操業にこだわり続ける経営者と、現場を支える労働者の方々に、確かな希望を示してまいります。

 復興特区法案についてのお尋ねがございました。

 復興特区制度については、おおむね公明党の提言に沿った制度になっていると思います。

 ただし、条例による法律の上書きについては、国会に対して地方公共団体に立法権限の一部の移譲を求めるものであり、事後チェックを導入したとしても、政府提案として国会に提出するべきではないと考えます。

 復興計画の作成についてのお尋ねがございました。

 被災市町村における復興計画策定に関しては、国土交通省職員を中心として国の職員が市町村に頻繁に出向き、計画策定を支援しているところであります。

 具体的には、被災状況、都市特性に応じた市街地復興のパターンの検討調査を、市町村の要望に応じ四十三市町村で実施しており、そのうちの八割を超える市町村が年内に復興計画を策定する予定となっています。

 今後も、一日も早い復興が可能となるよう、被災者や被災市町村の立場に立って、総力を挙げて支援をしてまいります。

 復興庁の権限及び縦割りの排除についてのお尋ねがございました。

 復興庁設置法案においては、復興庁は、勧告権や各省の復興関係予算要求の調整権を含む強い総合調整権限のみならず、実施事務として、道路、病院、学校施設、港湾建設等の復興のために各省が行う補助を横断的に一括する復興交付金、各省が担う規制、制度や税制等に切り込み、その特例を実現する復興特区制度などを担い、強力な権限や予算を担うこととしています。

 また、組織面でも、内閣総理大臣を復興庁の長とし、事務を統括する大臣として復興大臣を置くことで、私みずから復興庁の長としてリーダーシップを発揮できる体制となっており、省庁の縦割りを排除して被災自治体の要望等にワンストップで対応し、復興を力強く推進してまいります。

 TPPに関する考え方についての御質問をいただきました。

 御指摘の報道については承知をしていますが、TPP交渉参加に関しては、現在、鋭意検討しているところであります。

 TPPに関しては、随時、関係国との間で情報収集や協議を行ってきています。その結果得られた情報については、国内への影響を含め、国益を確保する観点からさまざまな検討、分析を行うとともに、国民の理解を深めるため可能な限り説明に努めてきたところであり、関係団体への説明も順次行っているところであります。今後とも、説明や情報提供にしっかりと努めていく考えであります。

 TPPについては、世界の成長エンジンであるアジア太平洋地域の成長力を取り込むという視点や農業再生との両立を図るという視点などを踏まえ、国益を最大限追求していくべく、八月十五日に閣議決定した政策推進の全体像にあるような広範な視点から、協定への交渉参加について、引き続きしっかりと議論し、できるだけ早期に結論を出します。

 なお、御指摘のあった集中審議については、与野党の国対間での協議を踏まえて対応したいと思います。

 社会保障と税の一体改革における年金制度についての御質問をいただきました。

 民主党のマニフェストでは、所得比例年金と最低保障年金の組み合わせから成る一つの年金制度にすべての人が加入することを目指しております。この新しい年金制度の創設には国民的な合意が不可欠であり、一体改革成案では、その方向性と骨格を示し、国民的な議論や環境整備を進めて実現に取り組むこととしております。

 今後、民主党における議論を踏まえ、政府としても引き続き検討を進めてまいります。

 また、成案では、新しい年金制度の目指すべき方向性に沿って、まずは、最低保障機能の強化など現行制度の改善に取り組むこととしております。成案においては、二〇一〇年代半ばまでに実施する税制改革により得られる財源を、こうした現行制度の改善に伴う機能強化や基礎年金国庫負担の財源に充てることとしており、政府としては、一体改革の実現に向けて取り組んでまいります。

 消費税の引き上げについて、国際的に公約しているのかなどや、引き上げ時期と衆議院選挙との関係についての一連の御質問がございました。

 さきの第百七十八臨時国会の私の所信表明演説では、「本年六月に、政府・与党の社会保障・税一体改革成案が熟議の末にまとめられました。これを土台とし、真摯に与野党での協議を積み重ね、次期通常国会への関連法案の提出を目指します」と申し上げました。

 この一体改革成案では、消費税率を二〇一〇年代半ばまでに段階的に一〇%まで引き上げる、平成二十一年度税制改正法附則第百四条に示された道筋に従って、消費税を含む税制抜本改革法案を本年度中に提出するといった方針が示されており、さきのG20における財務大臣の発言は、一体改革成案におけるこうした従来からの方針を説明したものと考えております。

 消費税の具体的な税率の引き上げ時期等については、今後、政府・与党内の議論及び与野党協議等を踏まえ、改革の具体化を図る中で決定したいと考えており、実施する前には総選挙で民意を問うべきものと考えております。

 年金の支給開始年齢引き上げについてのお尋ねがございました。

 支給開始年齢については、諸外国では六十五歳を超えて引き上げが決定される中、我が国が世界最長寿国であることを踏まえて、一体改革成案において年金制度をめぐる検討課題の一つに挙げられ、厚生労働省の審議会で議論を開始したところであります。

 政府としては、引き上げることを決定したものではなく、また、年金の財源対策として議論を開始したわけでもありません。この問題については、高齢期の雇用や働き方や、高齢者世帯の約六割が年金だけで暮らしているという現実を踏まえて、年金制度への信頼確保のため、中長期的な観点から考えてまいります。もとより、拙速に議論を進めることは考えておりません。

 高額医療費制度の見直しについての御質問をいただきました。

 受診時定額負担は、厳しい医療保険財政の中で、長期に高額な医療費がかかっている患者の負担を軽減し、セーフティーネット機能を強化するための財源として、給付の重点化の観点から、一体改革成案に盛り込まれたものであります。

 高額療養費の見直しと受診時定額負担については、現在、厚生労働大臣のもとで議論していますが、必要な医療にかかることができなくならないよう、低所得の方には定額負担の軽減を行うことをあわせて検討しています。

 引き続き、成案に盛り込まれた社会保障の機能強化の具体化へ向けて、関係者の意見をよく聞きながら取り組んでまいります。

 一票の格差是正と定数削減についての御質問をいただきました。

 この国会において、憲法違反の状態となっている一票の格差を是正するための措置を図ることや、定数の削減と選挙制度のあり方についても、与野党の議論が進むことを強く期待しています。

 この問題に関しては、既に各政党による協議が開始をされており、斉藤議員が言われる議論の仕方、方法論についても各党間で議論されていると伺っております。

 しかし、違憲状態からの脱却は喫緊の課題と言えます。また、区割り審設置法で定める勧告期限の延長も現実に必要と認識しております。

 したがって、段階論とは言わず、切れ目なき議論によって結論が出たものから改正するということも、一つの方法論であると認識をしております。

 続いて、普天間飛行場の移設問題について、県外移設に関する認識、私の沖縄訪問、移設問題等に係る政府の対応、環境影響評価書の提出、移設問題の解決に向けた覚悟などについて、一連の御質問をいただきました。

 普天間飛行場の移設問題については、政権交代以来、何とか県外移設ができないかという考えのもと、さまざまな案を検証しましたが、結果的には現在の日米合意に至りました。民主党政権としては、この過程で沖縄の皆様に大変な御迷惑をおかけしたことについては、深くおわびしなければならないと認識をしています。

 普天間飛行場の移設問題については、日米合意を踏まえつつ、普天間飛行場の危険性の一刻も早い除去を目指し、沖縄の負担軽減を図ることがこの内閣の基本的な姿勢であります。この問題については、沖縄の皆様の声に真摯に耳を傾け、誠実に説明し、理解を求めながら取り組むことが重要と考えており、私自身も、諸事情を勘案しながら、適切なタイミングで沖縄を訪問したいと考えています。

 また、普天間飛行場代替施設に関する環境影響評価書については、本年六月の2プラス2で代替施設の位置、形状等を合意したことを受け、年内には環境影響評価書を提出できるよう準備を進めているところであります。

 沖縄においては県外移設を求める声があることは承知していますが、現在の日米合意は、全体として、少なくとも現状に比べると、沖縄の大きな負担軽減につながると考えております。政府としては、引き続き、沖縄の皆様の声に真摯に耳を傾け、政府の考えを誠実に説明し、沖縄の皆様の御理解を得るべく、一歩一歩努力していく決意であります。

 武器輸出三原則等の見直しについての御質問をいただきました。

 日米首脳会談で武器輸出三原則等の緩和を表明する意向を固めたという報道につきましては、御指摘のような事実はありません。

 武器輸出三原則等は、国際紛争等を助長することを回避するという平和国家としての基本理念に基づくものであり、この基本理念は堅持してまいる所存であります。その上で、防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策については、幅広い視点から検討を行っているところであります。

 南スーダンでの国連平和維持活動についての御質問をいただきました。

 南スーダンへの自衛隊施設部隊の派遣については、政府調査団の調査報告に基づき、隊員の安全確保に十分留意し、部隊が効果的な活動を実施できることを確認するため、兵たん支援、衛生環境等を含め、さまざまな角度から検討いたしました。その結果、国連の要請に応ずることが望ましいと判断し、本日午前中の閣議において、官房長官から、要員の派遣に係る準備を開始したい旨の発言を行いました。

 なお、今回の派遣が、PKO参加五原則を含む国際平和協力法にのっとって行われるべきものであることは、言うまでもありません。

 小沢議員の国会招致及び政治資金規正法改正についての御質問をいただきました。

 小沢議員の国会招致の問題については各党会派で御議論いただきたいと考えますが、司法府と立法府の役割の違い、三権分立の議論は議論として、現実には既に本人の公判も進行中であり、本人が無実を主張しているとき、説明責任については、本人が法廷において当然にして果たすべきものと考えております。

 したがって、現時点においては裁判を冷静に見守るべきと申し上げております。

 また、公明党提案の議員の監督責任の強化については、本当に検討の余地があると考えております。

 政治資金規正法改正については、民主党も企業・団体献金の禁止を提案しており、具体的に協議を進めれば、よりよい成案が得られると考えます。私も、党に協議に入るよう指示いたしますので、御党におかれても、現場に協議を指示していただければと存じます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、野田総理に質問いたします。(拍手)

 まず、東日本大震災と原発事故の復興財源について伺います。

 大震災から八カ月近くが経過し、被災地では復興に向けて懸命の努力が続けられていますが、生活となりわいの再建は遅々として進んでいません。原発事故はなお収束の見通しが立たず、放射能被害は拡大し、賠償と除染のおくれが被災者をさらに苦しめています。

 復興を進める上で、その財源をどう確保するかが最大の問題となっています。

 今回の大震災は、かつてない地震・津波災害に原発災害が加わるという未曾有の規模の大災害です。すべての被災者の生活となりわいの基盤を回復し、原発災害への全面賠償と除染を進め、地域社会全体の復興を進めるという大仕事は、これまでの古い政治の枠組みのもとで、財源枠をあらかじめ決め、その範囲内で施策を行うという小手先の姿勢では、到底なし遂げることはできません。

 総理に伺います。

 復興を本格的に前進させようとすれば、住宅再建への支援額、支援対象の抜本的拡大、店舗、工場の復旧のための直接支援の創設を初め、従来の枠組みを超えた新しい対策がどうしても必要です。加えて、原発対策には特別の財源が必要となります。

 あらかじめ決めた財源枠の範囲の中でという姿勢でなく、必要なことは何でもやる、そのために、これまでの古い枠組みを聖域なく見直し、大胆に財源を確保するという姿勢が強く求められると考えますが、いかがですか。

 この点で、政府・与党の姿勢はどうでしょうか。

 政府・与党は、復興財源として、十五年間で、八・八兆円の所得税、住民税の増税など、庶民増税を中心に十一・二兆円の増税を行おうとしています。ところが、その一方で、法人税減税は、この大震災のもとでも、財界に言われるまま予定どおり実施し、政府が行うとしている課税ベースの拡大を含めても、法人税減税による税収減は、十五年間で総額十二兆円に上ります。

 総理、十五年間で庶民増税を中心に十一・二兆円の増税を行っても、総額十二兆円の法人税減税を行えば、差し引きでマイナス八千億円。庶民増税は、すべて、法人税減税で消えてしまうではありませんか。これでは、復興のための財源は一円も生まれず、借金がふえるだけではありませんか。

 庶民増税は大企業減税の財源づくりが目的ではありませんか。答弁を求めます。

 日本共産党は、財源問題を解決する上で、地震・津波災害の復興財源、一般の復興財源と、原発災害の賠償、除染などのための財源、原発災害対策財源をそれぞれ確保する、その抜本的方策として、次の提案をするものです。

 第一に、一般の復興財源は、古い政治の枠組みに切り込む歳出歳入の見直しで確保すべきです。

 歴代政権が聖域としてきた米軍への思いやり予算や米軍基地関連予算、政党助成金を廃止するだけでも、十五年間に五兆円の財源が生まれます。歳入では、法人税減税と証券優遇税制の延長、大企業と大資産家への減税のばらまきをやめれば、年間一・七兆円、十五年間で二十五兆円を超える財源が生まれます。

 これらを実行すれば、庶民増税なしに復興財源を確保することは可能です。政府が被災地の復興に責任を持って取り組むというのならば、歴代政権が聖域にしてきたこれらの分野にメスを入れることは避けて通れないと考えますが、いかがですか。

 第二に、原発災害対策の財源をどう確保するか。

 賠償と除染に係る費用は巨額のものとなることが予想されます。環境省の試算でさえ、今後除染が進められることになる年間追加被曝線量一ミリシーベルト以上の地域は、一万一千六百平方キロ、国土の三%に及ぶとされています。ところが、政府が提出した第三次補正予算案で計上された除染予算はわずかに二千四百億円、来年度予算と合わせても一・二兆円です。これでは、余りに少ない、本腰を入れて除染に取り組む姿勢とはほど遠いと考えますが、いかがですか。

 賠償と除染に係る費用は、第一義的には、事故を引き起こした加害者である東京電力が負担すべきです。同時に、東電を初め電力業界は、核燃料サイクル計画などのために使用済み核燃料再処理等引当金を初め約十九兆円の積み立てを計画的に行っており、既に四・八兆円の積立残高があります。

 しかし、使用済み核燃料の再処理と核燃料サイクルは、原発以上に危険きわまりないものであり、中止すべきものであります。

 そこで、この積立金を、つまり原発埋蔵金を、国が一括して管理する基金に移して、原発賠償・除染・廃炉基金を創設し、原発災害対策の財源として活用することを提案するものであります。

 電力業界だけでなく、原子炉メーカー、大手ゼネコン、鉄鋼・セメントメーカー、大銀行など、原発ビジネスを推進し巨額の利益を上げてきた原発利益共同体に所属する大企業にも、基金への応分の拠出を求めるべきであります。

 原発を推進してきた日本原子力産業協会に属する主要百社の内部留保の合計は八十兆円にも上ります。これらの大企業には、資金を拠出する社会的責任とともに、十分な体力もあります。

 総理は、十月七日の党首会談で私がこの提案を行った際、御指摘の原発関係のお金については、今後、エネルギー政策全般を見直す中で洗い出し、洗い出したお金は可能な限りそちらの方向、賠償と除染に使っていくとお答えになりました。私は、総理が、この言明を直ちに具体化、実行し、原発災害対策のための巨額の財源を賄う抜本的方策をとることを強く要求します。答弁を求めます。

 次に、TPP交渉参加問題について質問いたします。

 政府・与党が十一月中旬のAPEC首脳会議でTPP交渉への参加表明を行うことを念頭に検討を進めていることに、広範な国民の不安と怒りが広がっています。TPP参加がもたらすものは何か。私は、四つの大問題について総理の見解をただすものです。

 第一は、これが大震災からの復興への最大の妨げになるという問題です。

 今、被災地では、大震災によって破壊された農地を復旧するための懸命の作業が続けられています。しかし、岩手県、宮城県、福島県の三県で来年度までに営農が再開できると見込まれている農地の面積は、農林水産省の試算で、わずか三七%にとどまっています。

 農地を復旧してもTPPによる米価の暴落で地域農業はつぶされてしまう。TPPへの参加を検討していると聞いただけで復興への気持ちがくじかれてしまう。総理は、被災地からのこの痛切な声にどうこたえますか。被災地の主要産業である農林水産業への打撃をどう考えているのですか。

 総理は、大震災からの復興を最優先課題と言いました。その言葉が真実であるならば、今なすべきはTPP参加ではありません。壊された農地の復旧に全力を挙げ、生産、加工、流通一体で農林水産業のインフラ復旧に全力を挙げることではありませんか。答弁を求めます。

 第二は、国民への食料の安定供給を土台から壊すという問題です。

 TPPとは、農産物も含めて、すべての品目の関税をゼロにする協定です。関税ゼロとなったら、農水省の試算によりますと、食料自給率は四〇%から一三%に急落し、米生産の九〇%は破壊され、農林水産物の生産は四兆五千億円も減少します。

 一方、政府は、昨年三月に、食料自給率を五〇%に引き上げる食料・農業・農村基本計画を閣議決定しています。自給率五〇%と関税ゼロがどうやって両立できるのか、総理、国民にわかるように具体的に説明していただきたい。

 政府は、十月、現在一戸当たり平均二ヘクタールの耕地面積を、今後五年で十倍まで拡大し、二十から三十ヘクタールにするという大規模化の方針を打ち出しました。この方針自体が、中小農家、兼業農家を切り捨てるという大問題をはらんだものですが、たとえ二十から三十ヘクタールにしたところで、平均耕地面積が二百ヘクタールのアメリカ、三千ヘクタールのオーストラリアとどうやって競争せよというのか。

 既に一戸当たり平均耕地面積が二十二ヘクタールとなっている北海道でも、TPPに参加したら、農業と関連産業、地域経済が二・一兆円もの損失をこうむることが道の試算で明らかにされています。どんなに大規模化したところで、アメリカやオーストラリアとの競争が不可能であることは、火を見るより明瞭ではありませんか。

 どの国でも、自国の主要な農産物を関税で守ることは、当たり前に行われています。

 既に日本の輸入農産物の平均関税率は一二%まで下がり、EUの二〇%、メキシコの四三%、韓国の六二%、インドの一二四%と比較しても、日本は世界で最も農業が開かれた国になってしまっています。

 地球的規模での食料危機と飢餓の広がりの中で、自給できる力を持ちながら、自国の農業を破壊し、外国からの食料に頼る道を選ぶことは、世界にも顔向けできない行為だと考えますが、答弁を求めます。

 第三は、TPPでは、農業と食料だけでなく、暮らしと経済のあらゆる分野が交渉対象とされ、米国の対日要求が強要されるという問題です。

 TPPとは、関税撤廃だけでなく、関税以外の貿易障壁、非関税障壁の撤廃を大原則とした協定です。そして、これまで、米国の通商代表部の報告書などでは、次のような対日要求が列挙されてきました。

 食の安全にかかわっては、牛肉のBSE対策で日本が行っている月齢制限などの規制の緩和、残留農薬や食品添加物の規制の緩和、遺伝子組み換え食品の表示義務の撤廃など、日本国民の食の安全を脅かす要求が列挙されています。

 医療にかかわっては、混合診療の全面解禁、株式会社の病院経営への参入、血液製剤の輸入規制の緩和などの要求が並んでいます。

 保険のきかない医療が拡大し、お金持ちしかよい医療を受けられなくなる、医療に利益第一が持ち込まれるもので、不採算部門の切り捨てや地域からの医療機関の撤退が進むことなどが強く危惧されております。

 政府調達にかかわっては、米国は、政府や地方自治体の官公需、物品購入や公共事業にアメリカ企業を参入させることを要求しています。

 それぞれの地方自治体が行っている中小企業、地元企業への優先発注などが非関税障壁として排除されれば、地域経済は深刻な打撃を受けることになります。

 農業以外のこれらの懸念に対し、政府は、TPPの交渉対象になっていないと弁明しています。TPPお化けなどと中傷する議論もあります。確かに、これらの対日要求の中には、TPPのこれまでの交渉では議論されていないものもあります。しかし、日本が参加すれば、交渉対象となる可能性が大いにあります。

 総理に、二点伺いたい。

 第一、今例示したアメリカによる対日要求の諸項目がTPPの交渉対象にならないという合意あるいは保証がありますか。

 第二、これらの諸項目がTPPの交渉対象になったとき、一つでもノーと言えるものがありますか。あるならば、具体的に明示していただきたい。答弁を求めます。

 第四に、総理は、TPPに参加すれば世界経済の成長を取り込むことができると述べていますが、そんな保証がどこにあるかという問題であります。

 仮に日本が交渉に参加してTPPが十カ国の枠組みになったとしますと、日米だけで十カ国のGDPの九一%を占めることになります。つまり、日本にとってのTPP参加とは、事実上の日米FTA締結となる。より正確に言えば、例外なしの関税撤廃を原則とする日米FTAの締結と同じことではありませんか。

 それでは、TPP参加によってアメリカへの輸出がふえるでしょうか。

 アメリカへの輸出の最大の障害となっているのは、関税ではありません、円高とドル安です。TPP参加による関税撤廃と円高・ドル安によってもたらされるのは、アメリカからの一方的な輸入拡大ではないですか。そして、それがもたらすのは三百五十万人もの失業者だということは、農水省の試算でも示されているとおりであります。失業者が町にあふれれば、労働者の賃下げ、家計と内需の縮小が一層深刻になるでしょう。

 総理、TPP参加によって、世界経済の成長を取り込むどころか、アメリカの対日輸出戦略に日本が取り込まれる、これが真実の姿ではありませんか。それは、日本経済を成長させるどころか、内需縮小と衰退への道ではありませんか。

 日本共産党は、アメリカに日本を丸ごと売り渡す、このような亡国の政治には断固として反対を貫きます。従属の論理ではなく、お互いの経済主権、食料主権を尊重した平等互恵の経済関係の確立にこそ日本の未来があるということが私たちの確信であります。

 次に、沖縄の米軍基地問題について質問します。

 この間、日米防衛相会談が行われ、日本側は、辺野古移設の日米合意の強行に向けた第一歩として、年内に環境影響評価書を沖縄県に提出することを確約しました。米側は、これを歓迎し、環境影響評価が終了したら、直ちに沖縄県に対して埋立申請を行うよう要求しました。

 私は、県内移設反対、普天間基地の閉鎖、撤去という沖縄県民の総意を無視し、県民の頭越しに事を進めようという政府の強権的姿勢に強く抗議いたします。

 沖縄タイムスは、社説で「民主主義が泣いている」と書きました。琉球新報は、社説で「多くの県民の目には「日米同盟」のためなら手段を選ばぬ「強権国家」としか映らないだろう」と書きました。

 総理は、民主主義が泣いている、強権国家という沖縄の批判にどうこたえますか。

 稲嶺名護市長がオール沖縄で県内移設を受け入れる状況にないと断言しているように、県内移設反対は、もはや、揺らぐことのない沖縄県民の総意であります。私が総理に問いたいのは、沖縄で形づくられたこの総意、噴き出している怒りの根源に何があると認識しているのかという根本問題です。

 私は、沖縄県民の総意の根源には、戦後六十六年にわたる異常な基地の重圧が忍耐の限界を超えているという、重い歴史の累積があると考えます。

 なぜ、沖縄本島の一八%も占める基地が存在するのか。もともと、沖縄の米軍基地は、太平洋戦争の末期、凄惨な地上戦を経て米軍が占領した際に、住民を十二の収容所に強制的に囲い込み、広大な民有地を強奪して建設されたものでした。

 普天間基地がつくられた場所には、民家も、役所も、郵便局も、墓地も、サトウキビ畑もあったんです。さらに、一九五一年以降、米軍は、銃剣とブルドーザーで民家と農地を押しつぶして基地を拡張しました。ハーグ陸戦法規は、占領下の略奪や私有財産の没収を禁じています。沖縄の基地は、生まれながらにして国際法違反の基地なのであります。総理にはそういう認識がありますか。答弁を願いたい。

 こうしてつくられた米軍基地によって、戦後六十六年間、沖縄県民は耐えがたい苦しみを背負わされてきました。

 沖縄県民の心に共通して刻まれている痛ましい事件、事故があります。

 六歳の少女が、強姦され、殺されて、海岸に打ち捨てられた由美子ちゃん事件。小学校に米軍機が墜落して、たくさんの児童が亡くなった宮森小学校の惨事。米軍機から落下傘で降下されたトレーラーに少女が自宅の庭で押しつぶされて亡くなった隆子ちゃん事件。島ぐるみの怒りが噴き上がった、一九九五年の少女暴行事件。沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した、あわや大惨事というあの事故。これらは、沖縄県民ならばだれもが知る、忘れようにも忘れることができない、心に深く刻み込まれた悲劇であります。

 県内移設反対、二十一世紀の今になって新しい海兵隊の基地をつくることは絶対に許さないという県民の総意は、こうした歴史の痛みと苦しみの累積の上につくられたものなのであります。総理にはそういう認識がありますか。そういう認識が少しでもあるならば、アメリカに命じられるまま、使い走りのように、県民の頭越しに力ずくで新基地建設を押しつけるなどという愚かな行動はとれないはずであります。

 沖縄問題を解決する道は一つしかありません。それは、辺野古移設の日米合意を白紙に戻し、普天間基地の無条件撤去を求めて、米国政府と本腰の交渉を行うことです。

 そのことを総理に強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 共産党志位委員長の御質問に順次お答えをしてまいります。

 まず、被災者生活再建支援、店舗、工場の復旧支援及び復興財源についての御質問をいただきました。

 被災者生活再建支援金の円滑な支給を確保するため、第一次補正で五百二十億円を、第二次補正で三千億円を計上するとともに、東日本大震災の特別措置として、国の負担割合を八割に引き上げる措置を講じたところであります。

 他方、支給額や支援対象の拡大については、他の災害との公平性などに配意する必要があると考えております。

 店舗、工場の復旧支援については、中小企業等グループ補助金として、一次補正予算では百五十五億円を、二次補正予算では百億円をそれぞれ計上するとともに、十月十四日には、三次補正予算を待たず、前倒しで約千二百五十億円の予備費使用を閣議決定したところであります。

 復興財源については、できるだけ時限的な税制措置の幅を縮小していくことが重要と考えており、歳出削減や税外収入の確保といったさまざまな財源確保策に努めることとしております。

 復旧復興のための税制措置についてのお尋ねがございました。

 復旧復興のための時限的な税制措置と、経済、財政、税制全体を考えた上での恒久的な税制措置は、分けてとらえるべきものと考えています。

 復旧復興のための時限的な税制措置については、今を生きる世代全体で連帯して負担を分かち合うことを基本とし、個人にも企業にも過大な負担とならないよう配慮した上で、時限的に一定の御負担をお願いするものであります。

 法人税については、産業空洞化防止等により雇用を確保する観点から、平成二十三年度税制改正における実効税率の引き下げや課税ベースの拡大を実施した上で付加税を課すことになっており、これにより、三年間で約二・四兆円の復興財源を確保することとしています。

 このほか、所得税やたばこ税などを含め、時限的な税制措置によって、合計十一・二兆円の財源を確保することとしています。

 復興財源確保と、思いやり予算、米軍基地関連予算、政党助成金、法人税減税や証券優遇税制の延長等の減税措置の廃止との関係について御質問をいただきました。

 在日米軍関係経費については、在日米軍の円滑かつ効果的な運用を安定的に支えるために必要な経費と認識しています。同時に、我が国の厳しい財政状況の中で、在日米軍駐留経費負担のあり方については包括的な見直しを行ったところであり、引き続き、同負担を含む在日米軍関係経費を、効率的で効果的なものとするよう努めてまいります。

 また、政党助成制度は、政党の政治活動の経費を国民全体で負担していただくものであり、民主主義の発展に重要な意義を持つ制度であると考えています。

 御指摘の点については、各党各会派において議論をしていただくべき問題と考えています。

 平成二十三年度税制改正法案に盛り込まれた法人実効税率五%引き下げについては、我が国企業の国際競争力強化等の改善の観点から、これを実施した上で三年間の時限措置として一〇%の付加税を課すこととし、三年後には企業の税負担軽減を実現することとしています。

 証券優遇税制については、景気回復に万全を期すため、六月に成立した分離税制改正法において、平成二十五年末まで延長することとしています。

 除染予算に関する御質問をいただきました。

 除染実施に係る費用については、既に平成二十三年度復旧・復興予備費で約二千百八十億円を確保し、第三次補正予算案、平成二十四年度予算要求と合わせ、土壌等の除染、汚染廃棄物の処理など、総額一兆一千億円程度の財政措置を講じることを検討しています。

 第三次補正予算案、平成二十四年度予算要求については、例えば、生活圏における除染事業、仮置き場の設置、汚染土壌等の管理、地方公共団体における除染活動等の支援、汚染廃棄物の処理等のための当面の費用が含まれています。

 しかしながら、高濃度汚染地域の対策費用については、モデル実証事業等を通じて今後の対策手法が明らかになった時点で、また、中間貯蔵施設の整備費用については、発生土壌等の量がある程度明らかになった時点で、必要な予算を確保してまいります。

 いずれにしても、除染等の実施に係る費用については、国が責任を持って必要な予算を確保していく所存であります。

 使用済み燃料の再処理等のための積立金等の流用についての御質問をいただきました。

 核燃料サイクルについては、エネルギー・環境会議において「原子力政策の徹底検証を行い、新たな姿を追求する」と整理されており、今後の原子力政策の見直しを議論していく中で、原子力委員会の新大綱策定会議とも連携し、しっかりと議論を行ってまいります。

 御指摘の積立金については、その意義、法的位置づけ等を踏まえて活用の是非を判断すべきであると思います。

 また、原子力損害賠償法は、被害者の迅速かつ適切な保護を図る観点から、原子力事業者に賠償責任を集中させることとしています。

 他方で、原子炉メーカーなど産業界を含めた関係者が一丸となって、東京電力福島第一原子力発電所事故の早期収束や除染といった今後の課題に対し、積極的な協力を続けていただきたいと考えております。

 積立金の、原発賠償・除染・廃炉基金への流用についてのお尋ねがございました。

 先ほどお答えしたとおり、御指摘の積立金については、その意義、法的位置づけ等を踏まえて活用の是非を判断すべきであると考えます。

 原子力関係の予算については、今後の原子力政策の議論なども踏まえつつ、年末の予算案の作成に向けて、不断の検証に努めてまいります。

 なお、原子力発電所事故に係る賠償や除染のために早急に必要となる予算については、二次補正予算及び三次補正予算において必要な額を計上しており、これらの予算を活用し、被災者に対する損害賠償への対応や各地の除染を進めてまいります。

 震災復興とTPPとの関係についての御質問をいただきました。

 東日本大震災からの復旧復興は、この内閣が取り組むべき最大かつ最優先の課題であります。東北の被災地の基幹産業である農林漁業の再生に向け、農地の復旧、農林水産インフラの復旧に全力で取り組んでいきます。

 農林漁業の再生はTPP協定交渉への参加判断にかかわらず進めていくべき課題であるとの認識のもと、十月二十五日、我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画を、私を本部長とする食と農林漁業の再生推進本部で決定しました。二十一世紀の成長産業となり得る農林漁業の再生に向けて、次世代を担う農林漁業者が安心して取り組めるよう、この基本方針・行動計画を、政府全体の責任をもって、着実に実行してまいります。

 TPPと自給率の両立についてのお尋ねがございました。

 食料の安定供給を将来にわたって確保していくことは国民に対する国の基本的な責務であり、国内の農業生産の増大を通じて食料自給率の向上を図っていくことが必要であります。

 昨年三月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画において、カロリーベースで五〇%、生産額ベースで七〇%という意欲的な目標を設定しており、十月二十五日に政府決定した我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針においても、基本計画に基づく食料自給率目標五〇%の達成を目指していくと明記されているところであります。

 今後とも、TPP協定交渉への参加の判断いかんにかかわらず、戸別所得補償制度の本格実施、食の安全、安心の確保、六次産業化による活力ある農山漁村の再生を大きな柱として、農林漁業の競争力・体質強化、地域振興等に全力で取り組むことにより、高いレベルの経済連携と、農林漁業の再生や食料自給率の向上との両立を実現すること等が重要と考えています。

 農業の大規模化とTPPとの関係についての御質問をいただきました。

 農業再生はTPP協定交渉への参加判断いかんにかかわらず進めていくべき課題との考え方のもと、我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画を政府決定し、この中で、土地利用型農業については、平地で二十から三十ヘクタールの規模の経営体が大宗を占める構造を目指すとしたところであります。

 日本の農業の経営規模は米豪に比べて小規模でありますが、十月二十五日に政府決定した基本方針・行動計画に基づき農地の集積を進めるとともに、あわせて、戸別所得補償制度を適切に推進することや、野菜等を組み合わせた複合経営の導入や六次産業化による農業の高付加価値化などの方策を地域の特徴に応じて組み合わせていくこと、国産農産物の食の安全、安心を確保し、国民の理解を得ていくこと等が重要と考えています。

 食料自給とTPPとの関係について、さらに御質問をいただきました。

 世界人口の増加等を背景に農産物の需要が増大する一方、地球温暖化による水資源の不足、世界の穀物単収の伸びの鈍化等による農産物の供給面での懸念が生じており、世界の食料需給の逼迫が予想されております。

 このため、国民に対する国家の最も基本的な責務として、食料の安定供給を将来にわたって確保していく、今後の農政において食料自給率を最大限向上させていくことが必要であります。

 農業再生はTPP協定交渉への参加判断いかんにかかわらず進めていく課題との考え方のもと、十月二十五日に政府決定した我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画に基づき、食料自給率、カロリーベース五〇%、生産額ベース七〇%を目指し、競争力・体質強化、地域振興のための施策等を五年間で集中展開いたします。

 TPPにおける交渉対象項目についての御質問をいただいております。

 今後、仮に交渉参加国との間で我が国の交渉参加に向けた協議を進めることとなる場合、その中で、交渉参加国から個別の二国間懸案事項への対応が求められる可能性は完全には否定できませんが、その場合でも、我が国としては、何が対応可能で何が対応困難かを明確にし、二国間の懸案には、TPP協定交渉とは別に、あくまでも二国間の協議において個別に対応することになると思います。

 TPP参加による経済面での影響に関する御質問をいただきました。

 TPP協定については、米国だけでなく、幅広い国々が参加するものであり、世界の成長エンジンであるアジア太平洋地域の成長力を取り込むことができる枠組みであると考えています。

 日米間について見ても、例えば、米国の関税撤廃を通じて対米輸出の拡大につながるという指摘もあるほか、既に米韓FTAが締結されていることを考えれば、TPP協定への参加を通じて、日本の産業が競争上不利になることを回避できるという指摘もあります。他方、農業再生との両立が課題になるという指摘もあります。

 いずれにせよ、TPP協定への交渉参加について、経済の成長など国益を追求する観点から、引き続きしっかりと議論し、できるだけ早期に結論を出します。

 普天間飛行場の移設問題に関する沖縄の批判についての御質問をいただきました。

 普天間飛行場の移設問題については、日米合意を踏まえつつ、同飛行場の危険性を一刻も早く除去するとともに、沖縄の負担軽減を図ることがこの内閣の基本的な姿勢であります。

 沖縄において県外移設を求める声があることは承知していますが、現在の日米合意は、全体として、少なくとも現状に比べると、沖縄の大きな負担軽減につながると考えています。

 政府としては、引き続き、沖縄の皆様の声に真摯に耳を傾け、政府の考えを誠実に説明し、沖縄の皆様の御理解を得るべく、一歩一歩努力していく考えであります。

 沖縄の米軍施設・区域の経緯及び普天間飛行場の移設についての御質問をいただきました。

 沖縄の米軍施設・区域の形成過程についてはさまざまな議論があることは承知をしていますが、いずれにしても、これらの施設・区域は、一九七二年の沖縄の本土復帰以後、米国が、日米地位協定のもとで、我が国から適法に提供を受け、使用しているものであります。

 普天間飛行場の移設問題については、既に申し上げましたが、日米合意を踏まえながら、普天間飛行場の危険性の一刻も早い除去を目指し、沖縄の負担軽減を図ることがこの内閣の基本姿勢であり、政府としては、引き続き丁寧に御説明をさせていただきたいというふうに思っております。

 以上です。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 重野安正君。

    〔重野安正君登壇〕

重野安正君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、野田総理の所信表明演説に対し、質問します。(拍手)

 九月の所信表明から二カ月もたっていない中、改めて総理から所信を伺いました。率直に言って、清新さに欠け、情緒的で具体性に欠ける内容であり、国会に協力を催促しながら、みずからは一かけらの自戒もなく、失望を禁じ得ません。

 総理は、希望の種をまこうと呼びかけられました。まかれているのは、増税やTPPといった不幸の種ばかり。社民党は、生活再建の実現や、脱原発を推進し再生可能エネルギーを基盤に置く新しい社会を築く立場から、以下、質問を行います。

 まず、継続となっている重要法案について総理の決意を伺います。

 二〇〇九年九月九日の民主、社民、国民新党三党の連立政権に当たっての政策合意を受けて提出されました、労働者派遣法改正案、郵政改革関連三法案について、今国会における成立に全力を挙げるよう、強く求めるものであります。あわせて、旧政権下で民主党と二度にわたり共同提案してきた交通基本法案についても成立に全力で取り組むべきであると考えますが、総理の決意を伺います。

 未曾有の大震災に巻き込まれた被災者は、生活再建を初め、被災地での本格的なまちづくりを望んでいます。総理の決意を伺います。

 次に、復興特区法案に関連してお尋ねします。

 被災地の負担軽減や被災地のハンディをカバーするための特別の仕組みやルールは必要ですが、被災者が望んだものとなるのかの視点が大事だと考えます。総理はどのようにお考えでしょうか。

 先般の復興基本方針では、地元の漁業者を雇う法人が漁業権を取得でき、民間資本の参入をしやすくするという特区制度の創設が盛り込まれています。しかし、大規模化、集約化を図り、企業に漁業権を集中させることになれば、漁業者による復旧を困難にさせ、離職や漁協との混乱、漁場のコミュニティーの破壊につながるおそれがあります。

 水産漁業の復旧復興にかけては、二重ローン対策の強化、多様な地域漁業の共同性や生産者の意欲の回復、生活補償、水産資源の維持のために、国の公的支援をふやしていくことが優先されるべきであります。総理の見解をお聞かせください。

 また、被災地の雇用情勢は急速に悪化しています。政府としてどのように対応していくのか、明らかにしていただきたい。

 大震災で冷え込んだ景気をさらに低迷させてしまう安易な増税に走るべきではありません。

 今回の大震災で被災した港湾や道路、橋などは、復旧した暁には、将来世代も利用することになります。こうした社会的なインフラについては、建設国債を活用すべきではありませんか。阪神・淡路大震災も建設国債が柱となっていました。なぜ建設国債の活用を考えないのでしょうか。

 また、所得税は十年間の増税となる一方、法人税の臨時増税は、実効税率の引き下げの実施とセットで行われ、しかも、三年間にすぎません。全国民が負担を分かち合おうというときに、企業だけが負担を免れることが許されるのでしょうか。

 徹底した行財政の無駄の排除や税外収入の拡大、不公平税制の徹底是正などで財源確保を図るべきではないですか。総理の答弁を求めます。

 次に、福島第一原発事故と原子力について尋ねます。

 総理は、いわゆるストレステスト後に原発を再稼働すると表明されています。原発事故が収束せず、事故原因の解明もないままの再稼働は、断じて認めることはできません。

 そもそも、ストレステストなるものの内実は、極めてあいまいであります。電力事業者が行い、保安院が評価し、原子力安全委員会が判断することになっています。事故の責めを負うべき当事者による安全性評価を、どうやって信用しろというのでしょうか。

 国民の信頼を得られる新たな安全基準と原子力規制組織の設立を優先させるべきではありませんか。少なくとも、原子力安全委員会について、制度変更までの間は、人的構成を根本から変更し、国民の信頼が得られる体制に変えて事故の処理に当たるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 野田総理は、TPP交渉への参加について、日本にとってプラスと発言し、前のめりの姿勢を示しています。十月三十日の新聞の報ずるところでは、総理は、TPP交渉に参加する意向を固め、APECで表明するとの報道でございました。

 しかし、TPP参加は、日本の農林漁業に壊滅的な打撃を与えるだけでなく、公的医療制度や労働、投資など社会的規制を緩和し、国民生活に大きな影響を与えるもので、小泉改革を上回る規制緩和が社会のあらゆる分野に襲いかかるものであります。政府は、国民に対し、正確な説明を回避していると言わざるを得ません。

 現在、一千百万人以上の反対の請願署名が集められ、賛同する国会議員は三百五十名を超えたと言われています。被災地の農村でも不安と怒りが渦巻いています。

 総理が言う日本にとってプラスになるとは、どのような検討の結果なのか、根拠があるのか。そして、総理の結論は、いつ、どこで、どのような形で表明するのでありましょうか。

 政府は、交渉を通じて国益は守ると言うかもしれません。しかし、沖縄問題を見てもわかるように、日本の外交は、国民の利益に立たず、アメリカの御機嫌伺いに終始していると言わなければなりません。このような外交姿勢で、本当に国民の利益のための交渉ができるのでしょうか。

 また、TPP交渉に当たって、国益にそぐわなければ撤退もあり得ると前原政調会長は述べていますが、本当にそんなことができるのか。外交的信頼を損なうものです。総理の見解を尋ねます。

 また、TPP参加のいかんにかかわらず農業の再生を図ると言われますが、米価の下落も予想され、そもそも、現在の戸別所得補償制度をどう安定させるのか。その財源はどのくらい必要となり、どのような予算措置を図るのか。総理の答弁を求めます。

 原発事故による放射性物質の飛散は森林環境にも広く及んでいますが、政府の森林除染対策はあいまいです。森林にたまった放射性物質は、拡散するおそれがあります。放置すれば、汚染源となってしまいます。

 政府として、福島県内や近県の森林の汚染状況をどう見ているのか。除染方法はいつ示すことができるのか。また、国有林、民有林における放射能の除染をどこが中心となって作業していくのか。さらに、問題となる汚染物質の置き場の確保、移動、保管管理体制、そのための費用や人員をどう手当てしていくのでしょうか。総理の見解を求めます。

 また、継続審議となっている十一年度税制改正法案に盛り込まれ、今回政府修正された地球温暖化対策のための税については、使途面においては、森林の吸収源対策としての整備や木材利用の促進に向けた施策にも活用すべきと考えますが、総理の見解をお尋ねいたします。

 次に、沖縄問題についてお尋ねいたします。

 まず、沖縄の振興策については、一括交付金制度の創設は明記されていますが、沖縄県が要望している予算規模や軍用地跡利用促進法などへの言及はありませんでした。これらの課題についての見解を尋ねます。

 さて、基地問題の解決へ向けては、相も変わらず、日米同盟の深化重視、日米合意に基づく辺野古移設の実現に取り組むとの姿勢であります。

 先日、総理は、仲井真沖縄県知事、稲嶺名護市長と会い、環境アセスの評価書を年内に同県に提出する方針を伝えました。これに先立って、総理は、来日したパネッタ米国防長官と、評価書の提出を約束しています。どうして、沖縄の合意を得る前に米国と先に約束をするのでしょうか。評価書の提出について、なぜ、沖縄や名護市との合意を優先しないのか、お尋ねいたします。

 どんなに沖縄もうでを繰り返しても、辺野古への新基地建設を認めないという沖縄県民の意思は揺るぎません。現行の日米合意と沖縄県民の意思は、どうやっても両立できません。総理が率直に沖縄の声に耳を傾けるならば、結論は、日米合意の白紙撤回と辺野古移設断念しかないのであります。総理の答弁を求めます。

 また、沖縄の声に真摯に耳を傾け、誠実に説明し、理解を求めると言いながら、問答無用で高江のヘリパッド建設を強行し、普天間基地へのオスプレー配備など、米国の要求を一方的に沖縄に押しつけているだけではありませんか。答弁を求めます。

 九月末に人事院勧告が出されましたが、労働基本権が制約されている現状においては、代償措置の根幹をなす人事院勧告に沿った対応が求められます。現在、給与削減臨時特例法案が継続審議となっていますが、協約締結権を回復するための関連法案の成立なくして給与の特例減額を行うことは、脱法行為のそしりを免れません。

 国家公務員制度関連法案の今国会での成立に向けた努力と決意をお尋ねいたします。

 次に、社会保障と税の一体改革について、なぜ所信では言及がないのでしょうか。来年三月までに関連法案を国会提出する決意であるのならば、説明すべきだったのではないですか。よもや、国民に対して説明がないまま、今週末のG20で消費税率引き上げを表明するようなことはないと思いますが、そのようなことがないことをこの場で約束していただきたい。

 七月一日に閣議報告された社会保障・税一体改革成案は、消費税の引き上げが目的化されているように感じられるのであります。また、具体的な施策を見ると、患者負担の上乗せ、病院の入院日数基準の短縮化、年金支給開始年齢の先延ばしなど、抑制策そのものの羅列ではありませんか。答弁を求めます。

 政府は、南スーダンでの国連平和維持活動に、インフラ整備を担う陸上自衛隊の施設部隊を派遣しようとしています。しかし、南スーダンとその周辺地域は、独立後も情勢が不安定であり、派遣された自衛隊員の安全確保が懸念されるなど、この地域に武装した自衛隊を派遣することには、極めて重大な疑問があります。

 医療、教育、福祉、雇用から、法制整備、行政機能の育成など、民生支援こそが必要とされているのではありませんか。非軍事、民生支援の道を探るべきだと考えますが、総理の見解をお聞かせください。

 総理、九月十七日、ニューヨークのウォール街でデモが始まり、その後、全米の大都市だけでなく、ヨーロッパやアジアに拡大しています。その背景には、格差の拡大や富の偏りに対する憤りがあります。総理は、この運動をどう思われていますか。

 私は、危機に陥るたびに、金融機関や大企業を救済し、国民に責任と負担を押しつけてきたことへの抗議の行動だと受けとめています。ナオミ・クラインがショックドクトリンと名づけたように、今また、東日本大震災という未曾有の惨禍に便乗して、本来なら容易に受け入れられない大企業・富裕層優遇策が再び強行されようとしているように感じてなりません。

 長期にわたる不況をこの国にもたらした新自由主義的な構造改革路線から転換を目指した政権交代の原点に立ち戻り、野田政権には、何としても、九九%の側に立って、国民生活が第一の政治を貫くよう求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 社民党の重野議員の御質問に順次お答えしてまいります。

 まず、労働者派遣法改正案、郵政改革関連三法案、そして交通基本法の成立に向けての御質問をいただきました。

 御指摘のあった三つの法案は、いずれも重要な法案であることから、政府としては、速やかな成立を目指してまいります。

 被災地のまちづくり及び復興特区法案についての御質問をいただきました。

 現在、被災市町村では復興計画の策定が進んできております。政府としても、三次補正予算において、東日本大震災関係経費として九・二兆円を計上しているほか、復興特区制度、復興交付金等を復興の全体パッケージとして、被災市町村を強力に支援していく所存であります。

 復興特区制度については、被災地の要望を踏まえ、復興に必要な規制、手続の特例、税、財政、金融上の支援措置を盛り込んでおり、さらに、地方からの要望に基づき、国と地方の協議会での協議により、特例を追加、充実する仕組みを導入したところであり、地域の創意工夫を生かした取り組みを支援してまいる所存でございます。

 水産業の復旧復興に関するお尋ねがございました。

 復興基本方針に盛り込まれた漁業権に係る特区は、被災地のうち、地元漁業者のみでは養殖業の再開が困難な区域に限り、地元漁業者が主体の法人に知事が直接免許を付与できるようにするものであり、企業に漁業権を集中させるものではございません。

 水産業の復旧復興については、生産者が強い意欲を持って取り組めるよう、漁業、養殖業の経営再開への支援、水産種苗の放流、漁業者による瓦れき撤去への支援等を第三次補正予算案に盛り込んでおり、今後とも、地域の方々の意見を踏まえ、全力で取り組んでまいります。

 被災地の雇用対策についてのお尋ねがございました。

 被災地の雇用情勢は、夏以降、求人が増加し、毎月一万三千件程度の就職件数が続くなど持ち直しの動きも一部見られるものの、依然として厳しい情勢にあることから、雇用なくして被災地の再生はないと強く考えております。

 今後、本格的な安定雇用を生み出すため、第三次補正予算を踏まえた「日本はひとつ」しごとプロジェクトフェーズ3に基づき、産業政策と一体となった雇用面での支援や、若者、女性、高齢者、障害者の雇用機会の確保に取り組み、被災者のこれからの暮らしの安心を支えてまいります。

 復興財源と関連して、建設国債の活用や、行財政の無駄の排除等を行うことについての御質問をいただきました。

 与野党の合意により成立した復興基本法においては、東日本大震災からの復興に必要な資金を確保するため、つなぎ財源として復興債を発行することとしており、また、これを、その他の公債、つまり建設公債や特例公債と区分して管理するとともに、あらかじめ償還の道筋を明らかにすることとされています。

 この復興債の償還期間については、次の世代に負担を先送りせず、今を生きる世代全体で連帯して負担を分かち合うとの復興の基本方針における考え方に立って、その期間を設定しております。

 また、政府としては、復興財源の捻出のため、歳出削減や税外収入の確保に最大限努めてまいりますが、それでもなお足らざる部分については、個人にも企業にも過大な負担とならないよう配慮した上で、時限的に一定の御負担をお願いすることとしております。

 ストレステストと原子力安全規制体制についてのお尋ねがございました。

 定期検査で停止中の原子力発電所については、事業者が行ったテストを保安院が評価し、さらに、その妥当性を原子力安全委員会が確認した上で、地元の理解や国民の信頼が得られているかどうかという点も含め、政治レベルで総合的な判断を行ってまいります。

 原子力安全規制体制の見直しについては、来年四月の原子力安全庁(仮称)の新設を目指して対応していきますが、新組織の設置を待たずとも、過去の問題点を抜本的に解決し、原子力安全・保安院が、その仕事ぶりを通じて、信頼される組織となるよう努力していくことも重要であります。また、原子力安全委員会においても、制度上、体制を直ちに変えることは困難でありますが、徹底的に情報開示を行い、信頼回復に努めていくべきであると思います。

 また、原子力発電所に対する国民の安心、信頼を確保するためには、今般の事故から徹底的に教訓を抽出し、それをもとに法体系や基準の見直し等に着実に取り組むことが極めて重要であり、引き続き、これらにしっかり取り組んでまいります。

 TPP参加のメリット、参加判断、米国との関係、交渉からの撤退の可否について、一連の御質問をいただきました。

 アジア太平洋地域に位置する貿易立国である我が国にとって、世界の成長エンジンであるアジア太平洋地域の成長力を高いレベルの経済連携を通じて取り込むことはプラスであると考えます。他方、農業再生との両立といった課題もございます。

 こうした点なども踏まえ、TPP協定への交渉参加については、引き続きしっかりと議論し、できるだけ早期に結論を出してまいります。

 また、TPP協定については、我が国として、国益を確保する観点からさまざまな検討、分析を主体的に行ってきているところであり、特定の国の御機嫌伺いとの御指摘は当たりません。

 なお、交渉からの離脱に関するお尋ねがありましたが、一般論としては、交渉の中で国益を最大限追求することは当然のことであり、国益に合致するよう、全力を尽くして交渉に臨むべきものであると考えております。

 貿易自由化を進めた場合の戸別所得補償制度のあり方についての御質問をいただきました。

 戸別所得補償制度は、農業が食料の安定供給や多面的機能の維持という重要な役割を担っていることを評価し、意欲ある農業者が農業を持続できる環境を整えることを目的とする政策であります。

 TPP協定への交渉参加については、現在議論を行っているところであり、今の段階で、参加を前提とした本制度のあり方についてコメントすることは差し控えたいと考えております。

 いずれにせよ、さきに決定した我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画においても戸別所得補償制度を適切に推進することとされており、引き続き取り組みを進めてまいります。

 森林の除染に関する御質問をいただきました。

 これまでに実施してきた航空機モニタリングの結果等から、福島県内には追加被曝線量が年間五ミリシーベルト以上相当の森林があり、また、追加被曝線量が年間一ミリシーベルト以上相当の森林は、さらに、宮城県、栃木県、群馬県等に広がっていると認識をしています。

 森林の除染方法については、森林内の放射性物質についての調査等を踏まえ、九月三十日に、原子力災害対策本部において、森林の除染の適切な方法等を公表したところであります。今後とも、知見の集積に伴い、随時見直しをしてまいります。

 除染を推進するための体制については、環境省が中心となって、関係府省が連携して、政府が一体となって取り組むための体制準備等を進めているところであり、汚染物質の置き場の確保、移動、保管管理を含め、大規模な除染を、自治体の協力を仰ぎつつ、国の責任として、全力で取り組んでまいります。

 地球温暖化対策のための税についての御質問をいただきました。

 継続審議となっている税制改正法案に盛り込まれている地球温暖化対策のための税については、税制による地球温暖化対策を強化するとともに、エネルギー起源のCO2排出抑制のための諸施策を実施していくことを目的としているものであります。

 また、森林吸収源対策を含めた諸施策の着実な推進に資するよう、国全体としての財源確保も引き続き検討してまいります。

 沖縄振興について御質問をいただきました。

 沖縄は、成長するアジアへの玄関口として高い潜在力を持っており、来年は、新たな沖縄振興のスタートを切る重要な年であります。

 このため、使い道を限定しない、自由度の高い一括交付金の創設を含め、地元の御意見も伺いながら、沖縄の経済の真の自立と持続可能な発展を実現できるよう、新たな振興策に真剣に取り組んでまいります。

 また、新たな沖縄振興特別措置法案と跡地利用に関する関係規定を一元化した法案を来年の通常国会に提出する予定でありますが、地元の意見、要望をお聞きしながら作業を進めてまいりたいと考えております。

 普天間飛行場の移設に関する沖縄の理解、日米合意の見直し等についての御質問をいただきました。

 普天間飛行場代替施設に関する環境影響評価書については、本年六月の2プラス2で代替施設の位置、形状等を合意したことを受け、年内には環境影響評価書を提出できるよう準備を進めているところであります。

 このことは、まず、先月、十月十七日、一川防衛大臣より仲井真知事及び稲嶺名護市長へお伝えし、先週二十五日にパネッタ米国防長官にお伝えをいたしました。

 沖縄において県外移設を求める声があることは十分承知しておりますが、現在の日米合意は、全体として、少なくとも現状に比べると、沖縄の大きな負担軽減につながると考えております。

 政府としては、日米合意を踏まえつつ沖縄の負担軽減を図るのが基本的な姿勢でありますが、引き続き、沖縄の皆様の声に真摯に耳を傾け、政府の考えを誠実に説明し、沖縄の皆様の御理解を得るべく、一歩一歩努力していく考えであります。

 なお、オスプレーの沖縄配備について、安全性や騒音等に対する御懸念があることも承知をしております。地元の方々が安心できるよう、本件に関しても、丁寧に、誠意を持って御説明してまいりたいと思います。

 国家公務員制度改革関連四法案等についての御質問をいただきました。

 国家公務員制度改革関連四法案は、効率的で質の高い行政サービスを実現するためのものであり、早期成立に向け、最大限の努力を行ってまいります。

 社会保障と税の一体改革についての御質問をいただきました。

 今回の所信表明演説は、今臨時国会期間に取り組むべき課題を中心に私の所信を申し上げたものであり、一体改革についての私の考え方は、新内閣発足後、さきの所信表明演説やその後の国会審議において、既に申し上げているところでございます。

 G20では、カンヌ・サミットに向け、政策協調を通じて、強固で持続可能かつ均衡ある成長を確保するためのアクションプランを策定することとしていますが、その中で各国の取り組みの具体化が求められており、我が国としては、一体改革成案で示された従来からの方針を踏まえつつ対応していくつもりであります。

 いずれにせよ、その具体的な内容については、現在、関係各国で最終的な調整をしているところでございます。

 一体改革は、安定財源を確保しながら、社会保障の充実と重点化、効率化にあわせて取り組むことにより、その機能強化を図るものであります。今後、与野党協議をも踏まえ、改革案の具体化を早急に進め、次期通常国会への関連法案の提出を目指してまいります。

 南スーダンでの国連平和維持活動についての御質問をいただきました。

 南スーダンでは、長年の南北スーダン間の内戦、和平合意の履行、独立を経て、国づくりの重要な時期を迎えています。

 国連南スーダン共和国ミッションは、平和と安全の定着及び南スーダンにおける発展のための環境の構築を支援するために設立されました。

 同ミッションへの自衛隊施設部隊の派遣については、政府調査団の調査報告に基づき、隊員の安全確保に十分留意し、兵たん支援、衛生環境等を含め、さまざまな角度から検討いたしました。その結果、国連の要請に応ずることが望ましいと判断し、本日午前中の閣議において、官房長官から、要員の派遣に係る準備を開始したい旨の発言を行いました。

 こうした自衛隊施設部隊の派遣のほか、国際社会と協力しつつ、政府開発援助を活用して、インフラの整備、基礎生活分野の強化、農業基盤の整備、行政能力の強化といった支援を行っていく方針でございます。

 最後に、ウォール街で始まったデモについてのお尋ねがございました。

 御指摘のデモは、格差の拡大や拝金主義への批判が草の根的に広がっている運動と承知をしています。グローバリゼーションには光と影があり、その光の部分を伸ばしつつ、影の部分をいかに制御するかといった課題に世界じゅうの国々が格闘している、それが今日の国際社会の一つの断面であろうと思います。

 この問題は、我が国とて例外ではなく、持続的な成長、雇用の確保と処遇の公正性、所得の再分配機能、セーフティーネットの整備、そして居場所と出番の確保など、政策運営に心して当たるべきことを強く肝に銘じる次第であります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 渡辺喜美君。

    〔渡辺喜美君登壇〕

渡辺喜美君 みんなの党、渡辺喜美であります。(拍手)

 震災、原発、台風の被害に遭われた皆様、また、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナムの洪水、トルコの地震で被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。

 一刻も早く、大胆かつ迅速な支援を行うことが政治の務めであります。

 総理、一票の価値は一人一票でなくてもいいんでしょうか。選挙権に住所差別があっていいんですか。

 衆議院の選挙制度について、みんなの党は、一人一票、これこそが真の民主主義の実現であります。その近道は、投票区割りはどうあれ、全国集計の比例代表選挙を実施することであります。

 総理は、投票価値の一人一票を実現するおつもりはありますか。もしあるなら、どうしたら実現できるか、聞かせてください。

 民主、自民の選挙制度改革案は、一票対〇・六票の住所差別を残すものであります。総理は、自分さえ当選すれば、船橋の有権者の投票価値が一人一票を下回ってもよろしいんですか。

 民主党政権になって、覚悟と戦略なき内閣が続きます。総理は、九月分の給料は丸取り。今やっと、復興のため、三割カットであります。でも、安倍内閣、安倍総理のときだって三割カットをやっているんですよ。今、もっと非常時なのに、何で三割なんですか。

 野田内閣は、大臣、副大臣二割、政務官一割の給与カット。政務官は、一般職の課長と同じカット率じゃありませんか。野田内閣には、国家の経営陣としての自覚はないんですか。

 総理は、議員がみずから身を削る覚悟なくしては、大きな改革、国民負担を語ることはできないと言っていました。震災特例の国会議員給与カットは期限切れで終わり。今国会中に給与、歳費カットをする気があるのか、ないのか、どっちですか。

 議員がみずから身を削らず、国民に負担を押しつけるやり方は、総理の言っていることとは逆、「秋霜を以て人に接し、春風を以て自らに接す」ということじゃありませんか。

 みんなの党は、議員歳費三割、ボーナス五割カット、今回で五度目の提出をいたしました。ぜひ御賛同ください。

 総理がすりかえ答弁で持ち出した定数削減も、みんなの党は、衆議院百八十削減を提案しております。賛成、お願いいたします。

 国家公務員人件費二割削減をやれば、年間一兆円、十年で十兆円生まれるじゃありませんか。増税なんか必要ないですよ。ならば、なぜ七・八%の削減なんですか。地方公務員の給与カットはやらないんですか。

 総理は、増税プランが固まらなければ本格予算を組めないという路線に乗って、復興をおくらせました。この責任をどう考えるんですか。

 みんなの党は、増税なき復興財源案約百兆円を提案しております。公務員給与のほか、政府資産売却で十五兆円、特会へそくり捻出で十五兆円、国債の日銀引き受けで三十兆円、民主党のばらまき四Kを廃止すれば十年で三十五兆円などです。このうちどれだけ復興財源に回すか、お答えください。

 復興庁は、陳情先をふやすだけの組織にはしてほしくない。復興にかかわる制度の企画立案、運用、事業実施権限について、各省庁の権限の復興庁への一元化をこの場で明言してください。既に各省庁で事業を始めているからなんていう言いわけはだめですよ。

 東電の賠償は、地方において、誠意がないとの声が大半です。一方で、第三次補正予算案では、東電を債務超過にさせないためか、交付国債の発行限度額を五兆円に引き上げています。東電が賠償を抑制しないよう、また、雪だるま式に財政支援を膨らませる前に、東京電力を破綻処理すべきですが、いかがでしょう。

 放射能除染事業は、なぜ、原子力研究開発機構に一度委託をして、再委託するんですか。これをやると、機構に三十数億円のお金が落ちるんです。これは、民主党がかつて批判していた中抜き、ピンはねそのものじゃありませんか。これまで除染事業を実際に行ってきた児玉龍彦先生たちのような民間の実績が、もう既にあるんです。機構が間に入って差配してもらうことに、何の意味があるんですか。

 みんなの党は、放射線の正確な汚染マップの策定、民間の力を生かした住民主導の除染、食品安全検査の徹底を図る、子どもと妊婦を守る法案を作成し、超党派で呼びかけています。ぜひ御賛同ください。

 原子力委員会及び原子力安全委員会は、本来の使命を果たしていませんでした。委員を全員首にして、過去の失敗にとらわれない清新なメンバーにかえるべきであります。委員の罷免が現行法上できないというのであれば、法改正してでもやるべきじゃありませんか。なぜ罷免しないんですか。

 除染のピンはねをやろうとしている原子力研究開発機構の役員には、天下り四名、現役出向一名。公募の結果と称して、この十月には天下りの監事も着任しています。これ以外の発令された独法人事は、理事の半分以上が天下りですよ。

 以前から、特殊法人や独法の理事は天下りは半分以下というルールがあるんです。今は昔よりもひどい。野田内閣は天下りを拡大させるんですか。

 総理は、再就職等監視委員会の同意人事案を今後改めて国会に提出すると語りましたが、いつですか。

 総理が増税路線を走る中、史上最高の円高が続きました。介入の効果は一時的です。円高の要因をどう認識しているんですか。

 円がドルに比べて量的に少なければ、円高になるに決まっているじゃありませんか。どのくらい政府、日銀の無策のおかげで民のかまどが疲弊しているか、わかっていますか。円高になると、どれくらいGDPが落ちるんですか。

 介入によって膨大な含み損を抱えた外為特会を膨らませるよりも、日銀のバランスシートを増強して大きくした方が、はるかに円安政策にとって効果が高いのであります。

 総理は、日銀の国債引き受けについて、財政法において禁止と答弁しましたが、これは毎年行われているじゃありませんか。御存じですか。知っているのなら、なぜ、禁じ手であるかのような答弁をなさるんですか。

 日銀がお金を出し渋っている背景には、デフレが終わると税収増で増税が不要になっちゃうという財務省への配慮がありありですよ。日銀総裁などを罷免できる日銀法改正が必要です。なぜ反対なんですか。やはり増税優先だからですか。

 次に、年金の支給開始年齢の引き上げは、もう取り下げたと理解してよろしいですか。

 こういう話をする前に、なぜ歳入庁を創設しないんですか。歳入庁を設置する方向で検討を進めると総理は言われましたが、では、一体いつ創設なさるんですか。

 所得税法等改正法附則百四条では、増税の前提として、経済状況を好転させることが規定されています。現状ではこの前提を満たしていないと考えますが、いかがでしょう。

 野田内閣の特徴は、何でもブラックボックス。記者のぶら下がり取材も拒否。総理が設置した国家戦略会議は、法律上の位置づけを持たせるとともに、会議を公開されたらいかがでしょうか。

 財務省の国家公務員宿舎の削減のあり方についての検討会も非公開です。なぜ会議を公開しないんですか。

 公務員宿舎を売却すれば、約二兆円の財源が生まれるんです。朝霞の公務員宿舎は真に必要とおっしゃいましたね。でも、再び凍結。また解除するんですか。この場で中止と明言をなさったらいかがですか。

 野田総理は、出先機関改革を進めると言われました。でも、出先機関用の庁舎の建設は今年度から再開されたじゃありませんか。本気でやるつもりなら、庁舎建設を中止すべきじゃありませんか。

 今、大阪では、大阪都構想、独自の職員条例、教育改革条例といった争点を橋下徹氏が提起いたしました。これらは、国に任せていると先に進まない、だったら地域主権改革、公務員制度改革、教育改革を地域から先に進めてしまおうという話であります。かつて地域主権を唱えていた民主党は、こうした動きになぜ反対をするんですか。

 やはり、自治労や日教組という抵抗勢力の支援を受ける民主党には限界がある。それを象徴するのが大阪であることを指摘して、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 渡辺議員から、二十三問、御質問をいただきました。

 まず、一票の格差是正についてのお尋ねがございました。

 この国会において、憲法違反の状態となっている一票の格差を是正するための措置を図ることや、定数の削減と選挙制度のあり方についても、与野党の議論が進むことを強く期待しています。

 選挙制度は、民主主義の根幹である議会の構成と政権を選択することに対する国民の理解と納得が必要であり、一票の価値、地域の代表、そして国民が求める政策の安定的な遂行などを勘案し、国民の支持の度合いに応じた議席で構成される議会における多数の賛成によって築かれるものと理解をしています。

 みんなの党が新しい選挙制度に関する提案を行っていることは承知しており、現在、各党による協議会が開催されていることも承知をしています。あるべき姿に関する各政党の主張を乗り越えて、まずは、区割り審設置法の今国会中の改正が実現することを期待しています。

 閣僚等の報酬の一部自主返納及び国会議員の歳費カットについてのお尋ねがございました。

 このたび、総理、政務三役の報酬の一部自主返納に関しては、私の判断で実施することとし、政務三役の御理解をいただきました。

 今回、自主返納の割合を、総理三割、大臣、副大臣二割、政務官一割としたのは、現在国会に提出中の給与臨時特例法案に規定する減額分を、同法案の成立を待たずに、率先して返納しようと考えたためであります。

 政務官は一般職の課長と同じ下げ幅であるとの指摘がありましたが、この一割の自主返納により、給与総額から議員歳費分を除いた行政府支給分はほとんどなくなります。

 また、国会議員の歳費に関しては、国会において、各党会派の議論で決定されるべき問題と考えます。ただし、御案内のとおり、国家公務員の給与の引き下げは、これは国会の判断ではありますが、過去においては、国会関係の特別職にも波及した場合がございます。今回そのような御判断をなされるか否かは、これは国会の御判断であります。

 国会議員定数の削減に関する御質問をいただきました。

 一票の格差を是正するための措置を図ることとともに、定数の削減と選挙制度のあり方については、各政党間の協議が開始され、各党がそれぞれ提案を持ち寄り、自民党からは小選挙区定数の削減、民主党からは比例定数削減が提案され、今後、各党のさまざまな提案が協議の対象となると理解をしています。

 私も、議員の定数については、削減してしかるべしとの考えを持ち、御提起させていただいておりますが、この実現については、議員自身、政党自身がみずから身を切るという観点から、多くの政党の賛同が必要となります。実りある協議が進むことを期待しております。

 国家公務員人件費二割削減と地方公務員の給与カットについての御質問をいただきました。

 国家公務員総人件費の削減については、地方分権推進に伴う地方移管、各種手当、退職金等の水準や定員の見直し、労使交渉を通じた給与改定など、さまざまな手法を組み合わせることにより平成二十五年度までにめどをつけることとし、二割削減という目標の達成に向けて取り組んでまいります。

 特に国家公務員の給与については、そのおおむね八%を減額する法案を国会に提出しているところであり、まずは、この法案の早期成立に御協力をお願いいたします。

 地方公務員の給与改定については、各地方公共団体において、地方公務員法の趣旨に沿って適切な措置を講じられるよう期待しています。

 三次補正予算のタイミングと復興財源についての御質問をいただきました。

 本格的な復旧復興を総合的、計画的に進めるために、必要となる復興施策、復興事業に係る財源確保等、国による復興のための取り組みの全体像を明らかにすることが必要であり、こうした観点から、七月末に復興の基本方針を策定いたしました。

 今般、この基本方針に沿って三次補正予算案を国会に提出したところでありますが、それまでの間に必要となる復旧復興施策については、予備費の活用や、一次、二次それぞれ補正予算合わせて六兆円規模の補正予算の執行等、迅速かつ間断なく対応を図ってきたところであります。

 復興財源については、JT株式等の政府資産売却による税外収入の確保、エネルギー特会への繰り入れの減、子ども手当の見直しによる復興歳出への優先的振りかえなど、みんなの党の御主張と共通する項目を通じた財源確保に努めることとしています。これらの取り組みにより、十年間でトータルの税外収入等は、段階を経て七兆円になると見込んでおります。

 復興庁の権限に関する御質問をいただきました。

 復興庁設置法案においては、復興庁は、勧告権や各省の復興関係予算要求の調整権を含む強い総合調整権限のみならず、道路、病院、学校施設、港湾建設等の復興のために各省からの補助を横断的に一括する復興交付金、各省の規制、制度や税制等に切り込み、その特例を実現する復興特区制度など、強力な権限を担うこととしています。これらの仕組みを活用し、出先機関である復興局において、被災自治体の要望等にワンストップで対応します。

 東京電力の破綻処理についてのお尋ねがございました。

 現在、東京電力は、迅速かつ適切に損害賠償を実施するとともに、一刻も早く福島第一原子力発電所を安定化させることが求められています。このような中で東京電力の破綻処理が行われる場合、電気事業法によって社債に優先権が付されているため、被害者の方々の賠償債権や事故処理に当たる事業者の取引債権の完全な履行が不確実になるおそれがあり、適切ではないと考えます。

 原子力研究開発機構の委託に関する御質問をいただきました。

 本事業は除染に係るモデル事業であり、自治体や事業者等とも連携を図りつつ、比較的線量の高い地域について、除染作業の実施、除染効果の評価等を行っていく必要があります。また、新たな除染技術を発掘するための実証試験や、除染計画策定のための詳細モニタリングなども行うこととしております。

 本事業の実施主体は、各市町村における除染作業の主体の選定や管理を効率的に行う必要があることから、放射線モニタリング、除染技術、放射線防護、放射性廃棄物の管理等を含む、原子力に関する高度な知見を集積している独立行政法人日本原子力研究開発機構を、公募により選定、委託することとしたものであります。

 当該事業の予算は、現時点では支出されておらず、事業実施後に、仕様書等に基づく経費であって当該事業に使用されたことが帳票等で確認できるものに限り、国が必要額を支出することとなっています。そのため、事業に要した経費以外の費用を他の用途に使うことはできませんし、また、御指摘のような金額を日本原子力研究開発機構が最終的に受け取ることは、確定した経費に限り必要額を支出するという事業の性質上、ありません。

 子どもと妊婦を守る法案についてのお尋ねがございました。

 政府としては、総合モニタリング計画に沿って放射線量等に関するマップを作成、公表しているところであります。

 除染については、除染に関する緊急実施基本方針及び放射性物質汚染対処特措法に基づく枠組みのもとで、国が責任を持って取り組んでまいります。

 食品中の放射性物質については、自治体からの依頼に基づく政府機関での検査等を行うとともに、子供等への影響に十分配慮した新たな規制値の設定に取り組んでまいります。

 議員御指摘の法案については、各党に呼びかけが行われているところとのことでございますが、いずれにしても、政府としては、引き続き、発電所周辺地域の環境回復、子供の健康や国民の安全、安心の確保に全力を挙げてまいります。

 原子力委員会及び原子力安全委員会の委員についての御質問をいただきました。

 原子力委員会及び原子力安全委員会は、高い知見、識見を持った人材から、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法に基づき、両議院の同意を経て、内閣総理大臣が任命してきています。

 両委員会の位置づけの重要性にかんがみれば、両委員会委員には高い知見、識見を持った方になっていただくことが必要です。このため、委員の任期満了の際には、そうした観点から最適の人材の確保を図ってまいります。

 独立行政法人の役員人事についての御質問をいただきました。

 公務員の天下りに対する国民の厳しい批判等を踏まえ、政権交代後、独立行政法人等の役員人事については、公務員OBポストの後任者を任命する場合等には公募を行うこととし、これまで七回にわたり実施したところであります。これにより、独立行政法人の常勤役員についている公務員OBの数は大幅に減少しております。

 今後とも、独立行政法人の役員公募を厳正に実施し、透明性、公平性を十分確保しつつ、すぐれた人材を得られるよう努めてまいりたいと思います。

 再就職等監視委員会の同意人事案の提出についての御質問をいただきました。

 同委員会の同意人事案については、極力早く提示したいと考えております。

 円高の要因とGDPの押し下げ効果についてお尋ねがございました。

 最近の急速な円高進行の背景には欧州の政府債務危機や欧米経済の停滞懸念等があるとの見方もありますが、日本経済が震災からようやく復興に立ち向かいつつある中、一方向に偏った円高の動きによる景気下振れリスクを十分警戒する必要があります。

 内閣府の短期日本経済マクロ計量モデルによる試算では、対ドルで一〇%の円高が一年間続く場合は、輸出の減少等により、実質GDP比が〇・一九%程度押し下げられる可能性があります。

 日銀による国債の直接引き受けについての御質問をいただきました。

 日銀の直接引き受けについては、戦前、戦中に直接引き受けによって急激なインフレが生じたことの反省に立ち、他の主要国と同様、現行財政法において原則として禁止をされています。仮に中央銀行による公債の直接引き受けが行われた場合、財政規律が失われ、金利の上昇や為替の減価、急激なインフレを招くおそれがあり、慎重に考える必要があります。

 なお、日銀が現に保有している公債の満期到来に伴う借換債の直接引き受けについては、通貨膨張の要因となるものではないことから、財政法第五条ただし書きに基づき、毎年度、予算総則に明記し、国会の議決をいただいた上で、実施しているところであります。

 日銀法改正についての御質問をいただきました。

 現行の日銀法では、日銀の自主性を担保し、金融政策に対するマーケットからの信頼性を高めるため、旧法で定められていた政府の広範な業務命令権が撤廃されるとともに、政府による日銀役員の解任を一定の欠格事由に該当する場合等に限るなどの措置を講じています。

 御提案のような改正については、マーケットが日銀の金融政策が圧力を受けやすくなるのではないか等の懸念を持ち、金融政策に対する信認が得られなくなるおそれがあることから、慎重に考える必要があります。

 年金の支給開始年齢引き上げについての御質問をいただきました。

 支給開始年齢については、社会保障・税一体改革成案において年金制度をめぐる検討課題の一つに挙げられ、厚生労働省の審議会で議論を開始したところであります。

 この問題については、高齢期の雇用、働き方や、高齢者世帯の約六割が年金だけで暮らしているという現実を踏まえて、年金制度への信頼確保のため、中長期的な観点から考えてまいります。

 歳入庁の創設についての御質問をいただきました。

 歳入庁の創設については、平成二十二年度、二十三年度の税制改正大綱でも設置する方向で検討を進めるとしており、今後の年金制度改革や、社会保障・税にかかわる番号制度の議論などを踏まえつつ、国民の皆様の視点に立った徴収体制を構築する観点から検討してまいります。

 平成二十一年度税制改正法附則百四条についてのお尋ねがございました。

 附則百四条第一項においては、経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ段階的に消費税を含む税制の抜本改革を行うとされており、そのための法案を平成二十三年度までに国会に提出することを政府に義務づけています。

 一方で、税制抜本改革の実施時期、すなわち法案の施行期日については、同条第二項において、景気回復過程の状況等を見きわめつつ定めることとされており、一体改革成案においても、種々の経済指標の数値の改善状況等を確認しつつ、総合的に判断することとしています。

 いずれにしても、税制抜本改革の実施時期等については、附則百四条や一体改革成案にのっとって、改革の具体化を図る中で検討していくこととしています。

 国家戦略会議についてのお尋ねがございました。

 国家戦略会議は、閣議決定において設置された会議体ですが、私がリーダーシップをしっかり発揮して、その役割を十分に果たしていきたいと考えております。また、会議の透明性を高める観点からは、会議の終了後、速やかに、詳細な議事要旨を公開することとしております。

 公務員宿舎についてのお尋ねがございました。

 朝霞宿舎を含めた今後の公務員宿舎のあり方については、財務省において、国家公務員宿舎の削減のあり方についての検討会を設置し、今月末の取りまとめを目指して検討会が随時開催されているところであります。また、同検討会終了後、座長である藤田財務副大臣が記者会見を行うとともに、速やかに資料及び議事要旨を公表していると承知しています。

 朝霞宿舎の取り扱いについては、中止を含めて判断を同検討会にゆだねたいと考えております。

 出先機関の改革と庁舎の建設についての御質問をいただきました。

 国の出先機関が入居予定の合同庁舎の整備については、国の出先機関改革に関する議論を踏まえ、政権交代後の平成二十一年十月に、整備の緊急性が真に高いものであって、無駄を生じさせないよう対応できるものという二つの要件を設け、これまでも要求の一部を見送るなどの対応を行ってきました。

 合同庁舎の整備については、引き続き、出先機関改革の議論を踏まえるとともに、大震災後の政策の優先順位に照らして、平成二十四年度予算編成のプロセスにおいて精査してまいります。

 大阪における都構想等の取り組みについての御質問をいただきました。

 昨今、大阪において提起されている都構想、職員条例、教育条例といった取り組みについては、それぞれ、大都市制度、公務員制度及び教育制度に係る自治体からの事実上の問題提起であると受けとめております。

 政府としても、統治の基本要素である大都市のあり方や公務員制度のあり方、国民の共通財産である教育のあり方について、地方の意見と実情を真摯に受けとめてまいります。

 以上で御答弁とさせていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 田中康夫君。

    〔田中康夫君登壇〕

田中康夫君 国民新党・新党日本、田中康夫です。(拍手)

 大増税、TPP、放射能。我が日本は、焦燥感、閉塞感に包まれています。

 先月パリで開催のG20で、財務大臣安住淳さんは、消費税率を一〇%に引き上げる増税法案を来年の通常国会に提出と国際公約。日本経団連会長米倉弘昌さんにも明言。野田佳彦さん、そして安住さん、この発言は首相の指示に基づくものですね。

 他方、内閣総理大臣所信表明演説には、今回、消費税のショの字もありません。TPP同様、国権の最高機関での提起も議論もないまま、国際公約と称し、突き進むのはなぜですか。

 古今東西、増税で景気浮揚した国家はどこにも存在せず。与党統一会派国民新党・新党日本は、終始一貫、警鐘を鳴らしてきました。

 九月二十八日の政府・与党合意は、「一、政府は、日本郵政株式の売却をはじめとする税外収入等による財源確保に努め」と明記。税外収入の確保に断固たる決意で臨む野田さんの、郵政改革関連法案を今国会で成立させる覚悟と器量を明確にお示しください。

 社会的公正と経済的自由を同時に達成し、成熟したパステルカラーに彩られた一億総中流社会の復権を目指す。国民新党・新党日本の基本哲学です。とりわけ、税制改革には、社会的公正、フェアな仕組みづくりが不可欠。が、日本の税制は極めて不公正。

 二点、指摘します。

 一つは、輸出戻し税。

 海外への商品輸出に際し、その生産にかかった国内での消費税額を還付する制度。還付総額は年間三兆円。輸出上位十社のみで年間一兆円です。

 輸出戻し税自体は、諸外国でも導入済み。問題は、製造、流通の中間段階で、それぞれの業者がどれだけ消費税を納付したか、証明する上で不可欠なインボイスと呼ばれる取引明細書を日本だけが導入していない点。

 国内で消費税を納付するのは、最終販売業者だけではありません。材料納入業者も、部品製造業者も納付しています。なのに、日本では取引明細書、インボイス未導入のため、輸出戻し税は全額、最終販売業者である自動車、家電、電機、電子機器等の超大企業に還付され、材料や部品の中小納入業者には戻ってきません。仮に消費税率が一〇%になれば、大企業へ還付される輸出戻し税は二倍の六兆円に膨らみます。

 こうした不公正を防ぐべく、中曽根康弘内閣で検討された売上税制度には、インボイス方式が明記されていました。これぞ日本の物づくり産業を支える方々への希望の種。先日、こうべを垂れて中曽根さんに教えを請うた野田さん、即時導入を決断されますね。

 二点目は、外形標準化。

 法人税を一円も払っていない企業はどのくらいの割合に上るか。ことし二月八日、予算委員会で私の質問に対し、当時財務大臣の野田さんは、「全体の七割でございます」と答弁しました。その状況は今も変わりませんね。

 資本金が一億円を超えるいわゆる大手企業でも、法人税を納めていない企業が六割近く。連結法人の超大企業に至っては、何と六六%に上ります。

 こうした度しがたい状況が生まれるのは、利益に課税する税制だから。

 例えば、債務超過に陥った会社を、好業績な大手企業が戦略的に買収。連結決算上、赤字転落すると、翌年黒字回復しても、自動的に最大七年間、国税の法人税に加え、地方税の法人事業税も納付を全額免除され、払うのは企業の住民税に当たる年間わずか八十万円の法人都道府県民税のみ。

 増殖し続ける大企業、衰弱する中小企業。行き過ぎた市場原理主義経済の天国と地獄が放置されていませんか。

 三割の企業が過重な負担にあえぎ、残り七割が左うちわ。この理不尽を解決するには、企業の利益でなく、企業の支出に対し広く薄く課税する公正、フェアな外形標準課税を導入すべき。やみくもな消費増税の前に決断すべき覚悟と器量を伺います。

 昨年から、本会議、予算委員会の場で繰り返し提言の、たんす預金を市中で活性化させる無利子非課税国債発行。年間一千億円もの金融機関の不労所得と化している休眠預貯金口座の公的活用も、覚悟と器量をお示しください。

 果たして、TPPにメリットは存在するのですか。

 TPPは、トロイの木馬、羊の皮をかぶったオオカミ、自由貿易でなく保護貿易。それも、アメリカひとり勝ちの時代錯誤なブロック経済。日本にとっては、貿易自由化協定ならぬ貿易阻害協定です。

 昨年十一月八日の予算委員会を皮切りに、警告を国会の場で発し続けてきました。

 TPP、環太平洋戦略的経済連携協定と邦訳されているのに、その環太平洋の一員のカナダもメキシコも、中国も韓国も台湾も、さらにはインドネシアもフィリピンもタイも、参加しません。いいえ、参加すらアメリカから求められていません。

 だから、環太平洋の環、いわゆる輪っかを意味するパン・パシフィック、PPPでなく、太平洋の向こう側のトランス・パシフィック、TPPなのです。つまり、環太平洋は羊頭狗肉。日本政府の意図的誤訳ではありませんか。

 来年から、日中韓三カ国でFTA、自由貿易協定交渉を始めたいとおっしゃる野田さん、そして経済産業大臣の枝野幸男さん。あり得ませんが、二百歩譲って、TPPがバラ色の未来をもたらすなら、赤信号みんなで渡れば青信号、TPPに参加しましょうと、中国を初め他国にも、友愛の情でなぜ呼びかけないのですか。

 TPPは日米連携の中国包囲網だと、したり顔で語る向きがいます。勘違いも甚だしい。TPPは、アジアと日本を分断し、日本の国力劣化をもたらす毒薬ではないですか。

 なぜなら、日本にとって、十五年前は対米輸出の六分の一にすぎなかった中国が、今やアメリカを追い越し、最大輸出先国なのです。

 その中国市場で、日本はドイツと競っています。機械等の中間財が中心。TPPで蚊帳の外に置かれた中国が対抗手段でEUとFTAを締結したなら、中国への中間財供給はドイツに独占され、自動車や高速鉄道の分野で日本は大敗します。

 TPPは、いわゆる農業の問題にとどまりません。医療、金融、保険。暴露メディア王のルパート・マードック氏が日本のテレビ局に君臨しかねぬ電波、情報通信の開放。何よりも、日本経済を支える製造業に甚大な影響を与えると思いませんか。

 世界銀行が発表した日本の平均関税率は、既にEUよりもアメリカよりも低いのです。他方、日本で製造した自動車の輸入関税率は、アメリカの二・五%に対し、EUは四倍の一〇%。日本が取り組むべき脱関税障壁の優先順位を間違えていませんか。

 しかも、政府発表では、TPP参加の経済効果は十年間で二・七兆円。一年間で二千七百億円。日本のGDPのわずか〇・〇五四%。今年度の農業者戸別所得補償予算の半分すら賄えません。いかがお考えですか。

 TPP参加予定九カ国中、既に六カ国と日本はFTA締結関係。今後、中国、韓国、EUとも交渉入り。日本は、地道に各国とFTAを締結してこそ、突出しない、派手なことをしないとみずからおっしゃる野田政権らしさではありませんか。

 バスに乗りおくれて焦っているのは、むしろアメリカです。なのに、慌てふためく日本。交渉途中でも離脱可能だなんて、破談にするかもしれないけれども、とりあえずは結納の打ち合わせをと持ちかけて許されると思い込んでいるKYな男性と一緒。祖国の信用を失い、相手国の名誉を傷つける、そんな甘ちゃんな外交交渉は、希望の種ならぬ、物笑いの種です。

 野田さんの周囲のTPPマンセーな学者や経営者と異なり、ノーベル経済学賞候補の宇沢弘文氏、さらに、自由主義経済を信奉する榊原英資、中谷巌、野口悠紀雄、浜矩子の各氏も、TPPは日本の製造業やサービス分野に深刻な悪影響を与えると、交渉協議への参加表明に反対しています。いかがですか。

 徳島県議会では、官房長官の秘書を務めた民主党所属議員、みんなの党所属議員を含む四十一名全議員の発議でTPP交渉参加反対決議を可決。既に全国四十四道府県議会で、なし崩し的TPP参加への反対・慎重決議が行われています。

 議場の諸兄諸姉、今こそ国会を機能させねばなりません。

 「しっかりと議論」と所信表明された野田さん、一体、いつ、しっかりと議論するのですか。民主党内の議論すらまとまっていないではありませんか。

 日本から社会的公正と経済的自由を同時に失わせ、一億総中流社会の夢をついえさせる、羊の皮をかぶったオオカミ、TPP。

 アメリカよりもEUよりも平均関税率が低い日本は、とうの昔に開国済み。至らぬ点を改める国、改国ならいざ知らず、小村寿太郎翁の努力の末、関税自主権回復からちょうど百年のことし、国家の根幹たるその関税自主権を放棄し、壊す国、壊国への猪突猛進など、後世の日本人に顔向けできません。

 議場に集う皆さん、国民のために、日本のために、TPP交渉協議への参加表明を是が非でも阻止しようではありませんか。

 夫婦でも親子でも恋人でも、アメリカでも中国でも、そして政府・与党内であっても、相方が歩むべき道を見失っているとき、正心誠意に道理を説いてこそ、真のパートナーです。

 わけても、連立与党の民主党の諸君、国民の生活が第一と訴えた初心忘るべからず。

 良識ある議場の皆さん、信じられる日本の再構築に向け、真っ当なる国民の皆さんとともに立ち上がろうではありませんか。

 以上、国民新党・新党日本、私の代表質問を終わります。

 ありがとうございます。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) みんなの党田中議員の御質問にお答えいたします。

 失礼しました。国民新党田中議員の御質問にお答えをいたします。大変御無礼をいたしました。

 消費税に関する財務大臣の発言等についての御質問をいただきました。

 お尋ねの財務大臣の発言については、本年六月に取りまとめられた社会保障・税一体改革成案で示された従来からの方針を説明したものと考えております。

 また、新内閣発足後、最初の所信表明演説やその後の国会審議において、既に一体改革についての私の考え方は申し上げているところでございます。

 G20では、カンヌ・サミットに向け、政策協調を通じて、強固で持続可能かつ均衡ある成長を確保するためのアクションプランを策定することとしていますが、その中で各国の取り組みの具体化が求められており、我が国としては、一体改革成案で示された従来からの方針を踏まえつつ対応していくつもりであります。

 いずれにせよ、その具体的な内容については、現在、関係各国で最終的な調整をしているところであります。

 郵政改革関連法案の早期成立に向けた決意についてお尋ねがございました。

 郵政改革関連法案は、郵政民営化によって生じた諸問題を克服し、郵政事業サービスが利用者の立場に立って郵便局で一体的に提供され、将来にわたりあまねく公平に利用できることを確保するためのものであります。

 同法案が成立すれば、郵政株式処分凍結法による処分の停止が解除され、結果として、株式の処分が可能となります。

 同法案については、去る八月三十日、国民新党の亀井代表と、最優先課題として取り組み、各党修正協議での合意を図り、次期臨時国会において成立を期す旨の合意をしており、内閣を挙げて法案の早期成立を図ってまいる所存でございます。

 続いて、インボイス制度の導入についての御質問をいただきました。

 いわゆるインボイス制度の導入については、その課税の適正化に資するという面と、事業者の事務負担等への配慮とのバランスを踏まえた検討が必要と考えております。

 いずれにせよ、消費税を含む税制全般のあり方については、今後、税制調査会等において幅広く議論をしていきたいと考えております。

 法人税についての御質問をいただきました。

 最新の統計によれば、平成二十一年度の欠損法人の割合は、全体の七割程度でございました。

 法人税は、法人の活動から生み出される利益に着目して課税を行っており、こうした課税方法は諸外国においても一般的であると承知をしております。

 御指摘のように法人税を外形標準化する場合、法人の利益に関係なく事業規模等に応じて課税する新たな仕組みを設けることになりますが、一般論として申し上げれば、新たな課税を行う際には、その目的や影響等を含め、慎重な検討が必要と考えております。

 続いて、無利子非課税国債の発行及び休眠預貯金口座の活用についてのお尋ねがございました。

 相続税を減免する無利子非課税国債については、無利子ゆえに失われる利子収入よりも軽減される税額の方が大きい方が主として購入するものと想定され、国の財政収支はその分悪化することになります。現在、国債の発行、消化が総じて円滑に行われている中、こうした特別な国債が必要があるのか、また、税の公平性や市場、経済への影響等の観点から、慎重に検討する必要がございます。

 休眠預貯金口座については、会計上、一たんは金融機関の収益として認識しているものの、実務上、預金者は、権利を失うことなく、いつでも払い戻しを受けられることとなっています。

 このような預金者の信頼感や利便性の問題のほか、休眠預貯金口座の活用については、休眠預貯金口座の管理等のコストの負担、請求が来た場合の払い戻し資金の確保など多くの論点があり、慎重な議論が必要であると考えています。

 TPP参加のメリットについてのお尋ねがございました。

 アジア太平洋地域に位置する貿易立国である我が国にとって、世界の成長エンジンであるアジア太平洋地域の成長力を高いレベルの経済連携を通じて取り込むことはメリットであると考えます。他方で、農業再生との両立といった課題などがあることも指摘をされております。

 TPPの邦訳についての御質問をいただきました。

 TPP協定は、東南アジア、大洋州から北米、南米まで、アジア太平洋地域の諸国が参加する広域経済連携協定を目指しているものであります。

 昨年十一月の横浜APECで採択された横浜ビジョンにおいても、TPP協定は、アジア太平洋自由貿易圏を追求していく上で基礎となる取り組みと位置づけられており、APEC参加メンバーに開放されております。

 政府としては、このような点も踏まえ、TPP協定については、包括的経済連携に関する基本方針等において、環太平洋パートナーシップ協定との名称を用いているところであります。

 TPPの他国への参加呼びかけや参加の意義等に関する質問がございました。

 TPP協定は、中国などのアジア諸国を含むAPEC参加国メンバーすべてに開かれたものであります。仮に我が国がTPP協定に参加することになる場合には、経済的には、産業空洞化を防止すると同時に、世界の成長センターであるこの地域において、製造業も含めた我が国企業が円滑に活動できる市場が広がり、地域の成長を取り込むことが期待されます。

 いずれにせよ、TPP協定への交渉参加については、引き続きしっかりと議論し、できるだけ早急に結論を出します。

 経済連携の優先順位とTPPの経済効果についての御質問をいただきました。

 世界経済の成長を取り込み、産業空洞化を防止していくためには、国と国との結びつきを経済面で強化する経済連携の取り組みは欠かせません。

 具体的には、政策推進の全体像に基づき、御指摘のEUなどとのEPAについて早期交渉開始を目指すとともに、TPP協定交渉への参加についても、引き続きしっかり議論し、できるだけ早期に結論を出します。

 なお、内閣官房が広く国際機関によって活用されているモデルを使用して行った試算では、TPP協定に参加し、物品貿易について一〇〇%自由化した場合、日本の実質GDPが二・七兆円増加するとの結果が得られております。これは、将来にわたってその状態が継続すると解釈すべき数値であるため、単純に一年当たり二千七百億円の経済効果と解釈すべきではありません。

 また、これは、関税引き下げに限られた試算であり、サービスや投資、非関税分野、貿易円滑化などの分野も含めれば、さらに追加的な効果があると考えられます。

 TPPと二国間EPAとの関係につきましては、二国間では得られていないアジア太平洋地域におけるルールづくりへの関与という観点もあり、また、幅広い国々からの参加により、成長著しいアジア太平洋地域の成長力を取り込むことができるとの指摘もあります。

 なお、交渉からの離脱に関するお尋ねがありましたが、一般論としては、交渉の中で国益を最大限追求することは当然のことであり、国益に合致するよう、全力を尽くして交渉に臨むべきものと考えております。

 TPPに関する有識者の御意見についての御質問がございました。

 田中議員の御質問にあった宇沢弘文氏は、日本を代表する経済学者の一人であると承知しております。TPPに関しては、経済学者を含め、さまざまな有識者や産業界の関係者などから、それぞれの専門分野の知見や産業の視点などに基づき、TPP交渉参加について、賛成と反対の両面から多様な意見が表明されているものと承知をしています。

 私としては、このような多様な意見を踏まえつつ、国益を追求する観点から、しっかりと議論を行い、できるだけ早期に結論を出していきたいと考えております。

 TPPに関する参加判断への議論についての御質問をいただきました。

 TPPについては、随時、関係国との間で情報収集や協議を行ってきています。その結果得られた情報については、国益を確保する観点からさまざまな検討、分析を行うとともに、国民の理解を深めるため可能な限り説明に努めてきており、関係団体への説明も順次行っているところであります。

 また、民主党のプロジェクトチームにおいても、十月初旬以来、関係団体からのヒアリングを含め、連日精力的に議論がなされているほか、今国会においても活発に御議論をいただいていると承知しております。

 こうした議論を通じて、TPP協定への交渉参加について、できるだけ早期に結論を出してまいりたいと思います。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣安住淳君登壇〕

国務大臣(安住淳君) 先般のG20や日本経団連との懇談会において、私から、財政健全化に関する取り組みに関しては、我が国の従来からの方針を説明したところです。

 具体的には、本年六月に取りまとめられた社会保障・税一体改革成案に示された、消費税率を二〇一〇年代半ばまでに段階的に一〇%に引き上げる、平成二十一年度税制改正法附則第百四条に示された道筋に従って、消費税を含む税制抜本改革法案を本年度中に提出するといった方針を説明したものであります。(拍手)

    〔国務大臣枝野幸男君登壇〕

国務大臣(枝野幸男君) 環太平洋経済連携協定についてのお尋ねがございました。

 この協定の問題に限らず、複雑化した国際経済の社会において、一つの政策が単独でバラ色の未来をもたらすとは私は考えておりません。さまざまな経済状況、さまざまな他の施策との総合的な判断の中で結論が導かれるものと思っております。

 この交渉参加については、現在、政府・与党内で、今申し上げた点も含めたさまざまな観点からの検討、分析を行っているところでございます。

 中国を初め他国の交渉参加につきましては注視してまいりますが、まずは我が国として交渉参加についてしっかりと議論し、できるだけ早期に結論を出す必要があると考えております。(拍手)

副議長(衛藤征士郎君) 内閣総理大臣から、発言をしたいとのことであります。これを許します。内閣総理大臣野田佳彦君。

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 先ほど、冒頭、私、政党名を間違えてしまいました。大変御無礼しました。

 正確に申し上げますと、国民新党・新党日本を代表しての田中康夫議員への御答弁をさせていただきました。

 御無礼をいたしました。済みません。

副議長(衛藤征士郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(衛藤征士郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   野田 佳彦君

       総務大臣     川端 達夫君

       法務大臣     平岡 秀夫君

       外務大臣     玄葉光一郎君

       財務大臣     安住  淳君

       文部科学大臣   中川 正春君

       厚生労働大臣   小宮山洋子君

       農林水産大臣   鹿野 道彦君

       経済産業大臣   枝野 幸男君

       国土交通大臣   前田 武志君

       環境大臣     細野 豪志君

       防衛大臣     一川 保夫君

       国務大臣     自見庄三郎君

       国務大臣     平野 達男君

       国務大臣     藤村  修君

       国務大臣     古川 元久君

       国務大臣     山岡 賢次君

       国務大臣     蓮   舫君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  齋藤  勁君

       財務副大臣    五十嵐文彦君


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