衆議院

メインへスキップ



第18号 平成24年5月8日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十四年五月八日(火曜日)

    ―――――――――――――

  平成二十四年五月八日

    午後一時 本会議

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 郵政改革に関する特別委員会を廃止するの件(議長発議)

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


このページのトップに戻る

    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 特別委員会廃止の件

議長(横路孝弘君) お諮りいたします。

 さきに設置いたしました郵政改革に関する特別委員会は、廃止いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。

     ――――◇―――――

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案及び被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣小宮山洋子さん。

    〔国務大臣小宮山洋子君登壇〕

国務大臣(小宮山洋子君) 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案と被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を説明いたします。

 まず、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案について説明いたします。

 国民年金制度の創設から五十年が経過し、少子高齢化の進展、産業構造の変化、近年の非正規労働者の増加等、公的年金制度を取り巻く社会や経済の状況が大きく異なってきています。

 このような変化に対応し、公的年金制度を、信頼され、将来にわたって持続可能なものとしていくためには、年金の最低保障機能の強化を図るとともに、働く意欲を抑制しない、働き方に中立的な制度としていく必要があり、こうした観点に立って現在の公的年金制度の見直しを行うことが必要です。

 特に、公的年金制度を将来にわたって持続可能なものとしていくためには、基礎年金の国庫負担割合二分の一の維持と恒久化が不可欠であり、税制の抜本的な改革により、安定した財源を確保して基礎年金の国庫負担割合を二分の一とする必要があります。

 このような状況を踏まえ、現在の公的年金制度の機能強化等を図るため、この法律案を提出しました。

 以下、この法律案の主な内容について説明いたします。

 第一に、公的年金制度の最低保障機能の強化を図るため、老齢基礎年金、老齢厚生年金等の受給資格期間を二十五年から十年に短縮するとともに、所得に関する一定の基準に該当する受給権者は、老齢基礎年金、障害基礎年金等の額の加算を請求できるようにすることにしています。

 この措置の導入とあわせて、所得が一定の基準を上回る受給権者の老齢基礎年金について、その額の二分の一を上限に、支給を停止する措置を設けることにしています。

 また、遺族基礎年金について、父子家庭にも支給することにしています。

 第二に、公的年金制度を将来にわたって持続可能なものとしていくため、安定した財源を確保して基礎年金の国庫負担割合を二分の一とする年度を平成二十六年度と定めるとともに、平成二十四年度の基礎年金の国庫負担割合を二分の一とするための差額分等として発行される国債の償還期間や手続等を定めることにしています。

 第三に、厚生年金保険と健康保険の被保険者の範囲を拡大することにし、一週間の所定労働時間が二十時間以上であり、かつ、報酬の月額が七万八千円以上である等の一定の要件に該当する短時間労働者についても、従業員が常時五百人以下の事業主に使用される者を除き、その被保険者とすることにしています。

 第四に、産前産後休業を取得する被保険者については、申し出により、厚生年金保険と健康保険の保険料を免除する等の措置を講ずることにしています。

 第五に、こうした見直しについて、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法等についても同様の改正をすることにしています。

 最後に、この法律の施行期日は、一部を除き、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律による消費税の第二段階目の引き上げの日に当たる、平成二十七年十月一日としています。

 以上が、この法律案の趣旨です。

 次に、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案について説明いたします。

 被用者年金制度の一元化について、多様な生き方や働き方に公平な社会保障制度を目指す平成二十四年二月十七日の閣議決定、社会保障・税一体改革大綱に基づき、公的年金制度の一元化を展望しつつ、年金財政の範囲を拡大して制度の安定性を高めるとともに、民間被用者、公務員を通じ、将来に向けて、同一の報酬であれば同一の保険料を負担し、同一の公的年金給付を受けるという公平性を確保するため、厚生年金と三つの共済年金に分かれていた被用者年金各制度を厚生年金制度に統一することを柱とし、所要の措置を講ずるため、この法律案を提出しました。

 以下、この法律案の主な内容について説明いたします。

 第一に、厚生年金の被保険者の範囲を拡大して公務員と私学教職員を適用対象とし、各共済組合法で、共済年金に関する規定の削除等の所要の規定の整備を行うことにしています。また、共済年金にあった遺族年金の転給制度を廃止する等の官民格差の解消を行い、加えて、加給年金等について、民間企業の期間と公務員等の期間を通算して加算することにしています。

 第二に、保険料率について、平成二十七年から公務員と私学教職員の保険料率の段階的引き上げを法律に位置づけた上で、公務員については平成三十年、私学教職員については平成三十九年に、厚生年金の保険料率の上限である一八・三%に統一することにしています。

 また、民間被用者や公務員等を含む厚生年金制度全体の負担と給付の状況を、年金特別会計厚生年金勘定に取りまとめて計上することにしています。

 第三に、事務処理を効率的に行うため、共済組合等や私学事業団も厚生年金事務の実施機関として活用することにしています。

 また、共通財源である積立金に関する管理運用の基本的な指針の策定や、運用状況の公表、評価等は、厚生労働大臣が案を作成し、各大臣と協力して行うことにしています。

 第四に、共済年金にある公的年金としての職域部分は、この法律案により、廃止することにしています。一方、附則で、廃止後の新たな年金については、平成二十四年中に検討を行い、その結果に基づいて、別に法律で定めるところにより、職域部分の廃止と同時に設けることにしています。

 第五に、国民負担を抑制する観点から、税負担による追加費用を減額するため、恩給期間に係る給付について、二七%引き下げることにしています。ただし、財産権への配慮から、給付額に対する引き下げ割合の上限を一割とし、二百三十万円を下回る減額はしないといった措置を講ずることにしています。

 以上のほか、関係する法律の改正について所要の措置を行うことにしています。

 最後に、この法律の施行期日は、平成二十七年十月一日としています。また、追加費用等の減額については、公布の日から起算して一年を超えない範囲で、政令で定める日としています。

 以上、二つの法案の趣旨について説明いたしました。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。(拍手)

     ――――◇―――――

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。長妻昭君。

    〔長妻昭君登壇〕

長妻昭君 民主党の長妻昭でございます。

 さきの日曜日、茨城県、栃木県で発生した竜巻や突風で被害を受け、お亡くなりになられた方には心よりお悔やみを申し上げ、けがをされた方には心よりお見舞いを申し上げます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました公的年金の財政基盤と最低保障機能強化及び被用者年金一元化を図る年金二法案について質問します。(拍手)

 日本社会が激変しています。一億総中流は、もはや過去のものとなりました。

 日本は、このままでは、二〇五〇年前後に人口一億人を切ります。急激な人口減少社会となります。二〇〇五年から人口減少に転じ、現在、一日当たり三百四十四人の人口が減っております。

 十五歳から六十四歳の生産年齢人口、いわゆる現役世代も、二〇一〇年の八千百七十三万人から、五十年後の二〇六〇年には四千四百十八万人となり、半減します。支え手が激減し、肩車社会と言われる、現役一人が六十五歳以上の高齢者約一人を支える時代となったとき、現在の社会システムや働き方のままでは、現役世代は潰れてしまいます。

 現在、日本では、百歳以上の方は四万八千人いらっしゃいます。平均余命で見ると、現在五十歳の方は、男性八十一・五歳、女性八十七・六歳まで寿命があります。人生九十年時代に社会システムが十分対応できておりません。

 地縁、血縁、社縁が薄れ、孤立化も進展をしております。

 現在のまま推移すると、二十年後には、男性の三人に一人は生涯結婚をいたしません。家族が当たり前でない時代がやってまいります。二〇一〇年には、ひとり暮らし世帯が三割を超え、最も多い世帯となり、これまで最も多かった家族連れ世帯は三割を切りました。現在、離婚は三組に一組で、このままでは、二十年後には、子供のいる世帯のうち三世帯に一世帯は一人親になる見込みです。

 格差も拡大をしております。

 所得の格差を示す指標の一つである相対的貧困率は、OECDが統計をとり始めた一九八五年に日本は一二%だったものが、最新統計の二〇〇九年では一六%に上昇し、G7では、米国に次いで高い国となっています。

 非正規雇用が被用者の中で四割近くまで上昇し、厚生労働省の調査では、六年以内の結婚率も、倍、正規雇用者の方が高いという結婚格差を示す結果も出ています。

 少子高齢化のみならず、孤立、格差が日本社会に重くのしかかっています。

 社会保障は、現時点でも既に年間給付費が百兆円を超えました。サービス水準を現行のままでも、高齢者の増加に伴って、国の税金だけで毎年約一兆円ずつ支出がふえていくという、自然増という重荷も背負っております。

 日本の中位数年齢は四十五歳で、先進国で最も高齢です。熟年国家日本として、さらに強く押し寄せるグローバリゼーションの波と相まった社会の激変に対応するためには、あらゆる社会システムを大きく変革する必要があります。先進国最速で少子高齢社会が進む日本が、世界の手本にもなる持続可能な新しい社会システム、少子高齢社会の日本モデルを打ち立てることが必要です。

 残念ながら、日本は、これまで、少子化対策は先進国の中でも後手後手に回っていました。政権交代後、保育サービスの定員を毎年五万人ずつふやす五カ年計画や、中学生までの手当創設などを始めました。これら少子化対策については、後日の趣旨説明、質疑に譲ります。

 新しい日本モデルでは、地域におおむね中学校区単位で新しい地縁とでもいうべきネットワークをつくり、行政メニューを住民が選び、参加も可能とするいわゆる共助倍増や、社会的起業も含めた徹底したベンチャー支援を進める起業倍増もポイントとなると考えます。

 政府は、どのような社会システムの変革を目指していますか。野田総理より御説明を願います。

 また、高齢化に合わせて社会システムを再構築するための学問、ジェロントロジーを積極的に取り入れる必要があると考えますが、小宮山厚生労働大臣、いかがでございますか。

 EUは、ことし二〇一二年をアクティブエージング元年として、高齢化社会への対応を見直し、若者が高齢者を支えるという従来型から脱し、ともに支え合う社会へのパラダイムシフトを目指すとしています。日本でも、同様の文脈に今回の社会保障と税の一体改革は位置づけられます。

 社会保障と税の一体改革における一連の社会保障改革は、三つの狙いがあると考えております。一つは、子育て支援を初めとする人生前半の社会保障、もう一つは、格差是正、最後に、中学校区ごとに見守りの新しい地縁を構築する、在宅福祉の強化です。

 この三つごとそれぞれに、今回の社会保障改革の内容を小宮山大臣より御説明願います。

 今回議題となっている年金二法案は、年金格差是正法とでも呼ぶべき内容です。

 格差対策は日本にとって大きな課題です。米国、中国を初めとする主要国も格差の拡大を国家のリスク要因として捉えるようになっており、格差を一定以内に抑えることが社会全体のリスクとコストを下げるという実証研究も発表されております。

 例えば、イギリスで研究結果の書籍がベストセラーになった、疫学者であるリチャード・ウィルキンソン氏の格差研究では、格差拡大と、犯罪増加、子供の学力低下、精神疾患増加などは相関関係があるとされています。

 私は、民主党政権は、格差対策は社会全体の利益になるという考えのもと、格差対策に正面から取り組んでいる政権であると自負をしております。

 これまで、社会保障は経済成長のお荷物であり、経済成長と社会保障は一方を重視すれば他方が犠牲になるトレードオフの関係にあるとの考え方もありました。しかし、私は、適正な社会保障の整備は、むしろ経済成長の基盤をつくるものであると考えております。

 この考え方に対する野田総理の御所見をお伺いします。

 また、政権交代後の社会保障の具体的実績について、小宮山大臣にお伺いをいたします。

 政権交代後、社会保障でもマニフェストが実現できていない部分があり、次期総選挙前にきちっと総括をして、国民の皆様に謝罪すべきところは謝罪しなければなりません。

 ただ、これまでの実績については説明をする必要があります。

 例えば、医療崩壊を食いとめ、非正規雇用者推計二百二十一万人を雇用保険に加入させ、最低賃金を大幅に増加させ、年金記録を一千二百七十四万人回復し、生涯額で一・六兆円の年金を取り戻し、母子加算、父子手当を実現したなどなどです。

 これらも含む実績について、わかりやすく説明を願います。

 EUでは、向こう十年間の経済成長戦略を定めたヨーロッパ二〇二〇の中で、二〇二〇年に達成すべき貧困、格差対策の数値目標をEU各国が定めています。イギリスは子供がいる世帯の相対的貧困率一〇%未満の達成、イタリアは貧困者二百二十万人減少、ドイツは長期失業者二〇%減少などです。

 しかし、日本には格差対策の数値目標がありません。日本でも実現可能性のある数値目標を定めるべきと考えますが、岡田大臣、いかがでございますか。

 格差の年金、今回の議題となっている年金二法案は、三つの老後格差を是正するものであります。三つの老後格差とは、所得格差、官民格差、非正規格差です。

 生活保護受給者に占める六十歳以上の比率は高まり、二〇〇六年には初めて半数を超え、二〇〇九年には八十七万人となり、この十年間で倍増いたしました。生活保護受給者の急激な高齢化です。

 年金受給年齢に達する六十五歳以上の生活保護受給者を見ると、無年金者が三十七万人、年金受給者三十二万人です。

 これは、年金の最低保障機能が弱く、無年金者や低年金者など大きな年金格差が存在することも要因であると考えますが、小宮山大臣の御所見をお伺いします。

 また、本法案にある三つの老後格差を是正するポイントを、三つの格差それぞれごとに、小宮山大臣より説明願います。

 私は、年金の最低保障機能を強化しなければ、将来、高齢者の生活保護受給者が急増するのではないかとの強い危機感を持っております。生活保護は、職についていただき、自立を促す制度であるため、新しい職につくのが困難な高齢者は、本来は年金でしっかり支えることが重要であります。

 高齢者が生活保護から脱却することが困難なことについて、実証数字を年代別の生活保護脱却率として、小宮山大臣よりお示しください。

 総合研究開発機構の調査によると、現在三十五歳から四十四歳である就職氷河期世代が六十五歳になると、十年前の世代より生活保護を受ける人が七十七万人ふえ、その世代が亡くなるまでに受ける生活保護費は最大十九・三兆円必要になるとあります。

 政府自身も詳細な生活保護の将来推計を出すべきと考えますが、小宮山大臣、いかがですか。

 さらに、最低保障機能の強化を狙いとする民主党の新しい年金制度についてお尋ねいたします。

 最低月額七万円を保障する最低保障年金創設、どんな職業についても変わらない一つの年金制度を実現する年金の一元化、それぞれの実現についての野田総理の決意と、今回の議題となっている法案との関係についてお聞かせください。

 政府は、年金制度改革検討調査として、国民年金も含む年金一元化の実現に資する、自営業も含む大規模所得調査を実施しております。その調査の概要と発表見込み時期を、小宮山大臣よりお教えください。

 二〇〇九年はおおむね五年ごとに実施される公的年金の財政検証がありましたが、財政検証の就業率や賃金上昇率、運用利回りなどが過大ではないのかとの批判があります。政府として、新しい年金制度の議論と同時に、かたい前提を置いた上で年金財政の検証をする必要があると考えますが、小宮山大臣、いかがですか。

 また、運用収入を除けば、予想を上回る積立金の取り崩しが続いていますが、前回の財政検証からの予想を上回った取り崩しの原因と、予想との差額をお教えください。

 日本国民が惨めな老後を過ごさないためにも、今後の年金のあり方や年金財政の検証方法を与野党で協議することの必要性は、多くの国民や議員も共有することだと考えております。年金制度改革をなし遂げたスウェーデンでは、超党派の年金協議会を設置して、途中、政権交代を経て、七年かかって法案を成立させました。

 日本でも、政権交代可能な政治体制ができた以上、政局抜きで、与野党の年金協議会を設置して、年金財政の検証方法も含めた議論を進め、合意を図っていかなければなりません。政権交代のたびに年金制度が変わることは許されないからです。これまでも野党の皆様にお願いしてまいりましたが、実現には至っておりません。

 この協議会設置について、野田総理の御所見をお聞かせください。

 年金は、国家百年の計であります。日本国民の生き方にも、日本の経済にも大きな影響を与える年金百年の計を、与野党でしっかりと協議しなければなりません。改めて、野党の皆様に年金の協議を強く強くお願い申し上げます。

 最後に、行政改革について岡田大臣にお尋ねいたします。

 消費増税を国民にお願いするには、徹底した行革が必要です。

 政権交代後に始めた独立行政法人の役員公募によって、国家公務員OBが百八十九人から四十五人に減少しました。独法数を百二から六十五に減らす法案も提出予定です。また、政権交代後、国家公務員人件費は平年度約五千億円が削減され、これでまずは人件費一割削減となりました。ことし三月には、公共事業の特別会計を廃止する法案を国会に提出しています。

 これらの事実関係の確認と、このほか行政改革全般について、具体的進捗を数字などでお示しください。

 また、政権交代後、事業仕分けや埋蔵金等によって幾らの新規財源が生み出せたのか、新規財源と、新規財源をフローとストックそれぞれに分けて金額をお教えください。

 今後とも、政府・与党一体となって行革を進めてまいります。

 国、地方合わせて借金は一千兆円を超えました。二〇一二年度予算では、国の利払いだけで十兆円になります。世界に類を見ない借金を続けている、より重い責任は、政権与党にあります。政権交代前は自公政権に、政権交代後は我が民主党政権にです。

 お互いに、この大きな責任を分かち合うためにも、一丸となって、少子、高齢、格差、孤立という歴史的な激変に対応できる社会システムを構築しなければなりません。何とぞ皆様の御協力を伏してお願い申し上げます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 民主党を代表しての長妻昭議員の御質問にお答えをいたします。

 まずは、少子高齢社会の日本モデルについてのお尋ねがございました。

 世界最速の超高齢化に対応した新たな社会保障制度に変えていくため、一体改革では、全世代対応型の社会保障制度としていくことや、地域での医療、介護、子育てなどの支援を充実していくことを大きな柱にしています。

 具体的には、医療、介護、生活や住まいの支援などが一体的に提供される地域包括ケアシステムを、おおむね人口一万人程度の中学校区を単位として実現し、介護や医療が必要となっても、住みなれた地域で自分らしい暮らしを続けることができるようにすることとしています。

 さらに、NPOなど社会的企業については、地域の身近な問題に市民の目線で取り組むという強みを生かし、子育て支援、障害者福祉、介護や、貧困、格差対策など多様な分野で大きな役割を果たしていただくとともに、こうした社会的企業自体が地域における新たな雇用の担い手になっていただくことを期待しています。

 このため、多様な主体が参入できる仕組みとするなど、今後とも、新しい公共の考え方に立って、NPOなどと協働した社会保障施策を推進し、少子高齢化時代における新たな社会システムを構築していきたいと考えております。

 次に、社会保障と経済成長の関係についての御質問をいただきました。

 長妻議員御指摘のとおり、社会保障の充実と安定化を図り、全世代を通じた国民生活の安心を確保する今回の一体改革を通じて、社会保障が需要、供給両面で経済成長に寄与していくことが期待されます。

 具体的には、医療、介護、保育サービスの充実により、大きな潜在需要に応えていくことで雇用が創出されるとともに、社会保障の充実、制度の持続性確保により、老後の安心が確保されて過剰貯蓄が消費に回るなど経済活動を拡大させることができ、さらに、ライフイノベーションを通じて健康分野を成長産業として位置づけることで経済成長に結びつくといった効果が見込まれるところであります。

 次に、新しい年金制度への決意と、年金二法案との関係についての御質問をいただきました。

 新しい年金制度は、我が国の人口構成や産業構造が大きく変化する中で、現行制度が抱える課題に対応するため、全ての者が同じ年金制度に加入する所得比例年金を創設し、制度を一元化するとともに、消費税を財源とする最低保障年金を創設し、高齢期に少なくともこれ以上は受給できるという年金額を明示することで、国民が高齢期の生活設計を立てられるようにすることなどを提案しているものです。

 また、新たな制度の創設までに一定の時間を要することや、制度発足後も当分の間は現行制度からも年金が支給されることになるため、年金制度の目指す方向性に沿って、できる限り早期に現行制度の改善を図るべく、所要の法案を提出いたしました。

 今回の法案では、働き方やライフコースの選択に影響を与えないような制度とする観点から、短時間労働者への厚生年金の適用拡大や被用者年金制度の一元化などの対策を、また、ひとり暮らしや低所得の高齢者の増加に対応して年金の最低保障機能を強化する観点から、低所得者への年金額加算や受給資格期間の短縮などの対策を、さらに、国民から信頼され、財政的にも安定した制度とする観点から、基礎年金国庫負担二分の一の恒久化を、それぞれ講じることにしています。

 政府としては、まず、これらの法案の早期成立のために全力を尽くすとともに、新しい年金制度に関する法案を平成二十五年に提出することを目指し、党とともに検討を深めてまいります。

 次に、与野党の年金協議会についてのお尋ねがございました。

 長妻議員御指摘のとおり、年金制度は、長期にわたり多くの国民の生活にかかわる制度であり、政権交代のたびに変更されるべきものではありません。国民的な合意、与野党の多数の合意を得て、制度をどのようなものにしていくのかを決めていくことが不可欠であります。

 したがって、現行の年金制度の改善と新しい年金制度の創設の双方について与野党が議論していく中で、国民が信頼できる持続可能な年金制度を確立していくべきと考えております。

 年金協議会という御提案も一方策かと思いますが、与野党による議論の場をどのようにしていくかを含め、国民の立場に立って、ぜひ野党の皆さんに協議に応じていただくよう、重ねてお願いをいたします。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣岡田克也君登壇〕

国務大臣(岡田克也君) まず、貧困削減に向けた数値目標についてお尋ねがありました。

 民主党政権では、ハローワークによるフリーターの正社員化への支援や求職者支援制度の創設などの非正規雇用や貧困、格差対策の充実を行ってまいりました。また、民主党政権になってから厚生労働省で相対的貧困率を公表したことも、大きな成果であるというふうに考えております。

 貧困、格差の実態を総合的、継続的に把握するため、各国の指標を参考としながら、客観的な貧困、格差指数を開発するための検討を進めることとしており、貧困、格差の削減の数値目標についても今後の検討課題と認識しているところでございます。

 今回の一体改革では、全員参加型社会を目指して就労促進策を図るとともに、低所得者対策の強化、重層的なセーフティーネットワークの構築などによる貧困、格差対策の強化を行うこととしております。引き続き、貧困の実態を把握しながら、雇用対策、さまざまな社会保障施策を通じて、貧困、格差の状況が改善するよう総合的に取り組んでまいります。

 行政改革の進捗状況についてお尋ねがありました。

 本年一月に、政府一体となって総合的かつ強力に改革を実行するために、行政改革実行本部を内閣に設置したところであります。また、今般、行政改革に関する重要課題を大所高所から御議論いただくため、行政改革に関する懇談会を設け、昨日、その第一回会合を開催したところです。

 具体的な進捗について申し上げます。

 まず、独立行政法人については、その大胆な統廃合により、法人数を委員御指摘のように百二法人から六十五法人へと四割弱削減するなど、制度、組織の抜本的な見直しを進めることについて閣議決定し、今国会での法案提出に向け、作業を行っているところです。

 また、これまでに約二兆円の不要資産が国庫納付されたほか、国からの財政支出も、独立行政法人に対して、政権交代前と比較して約一割削減、すなわち、二十一年度三兆四千億円を、二十四年度三兆一千億円としたところであります。

 さらに、独法等の役員人事については、公務員OBポストの後任者を任命する場合には公募を行うこととした結果、役員についている公務員OBの人数は、自民党政権時代百八十九人から、現在四十五人に大幅に減少したところであります。

 公務員人件費の削減につきましては、国の業務のスリム化等による定員純減、あるいは人事院勧告に基づく給与改定などを着実に進めてきたことに加え、国家公務員給与の平均七・八%削減を内容とする法案が成立したことで、委員御指摘のように、五千億円以上、約一割の削減となっているところです。また、総人件費削減の一環として、平成二十五年度の国家公務員の新規採用者数について、二十一年度比で五六%減という厳しい抑制を実施することとしたところであります。

 特別会計改革については、特別会計数を十七会計から十一会計、勘定数を五十一から二十六とする特別会計改革の基本方針を本年一月に閣議決定するとともに、社会資本整備事業特別会計の廃止や、租税収入は一般会計に計上して国全体の財政状況の総覧性を向上させることなどを基本理念とする特別会計に関する法律の一部を改正する法律案を、本年三月に国会に提出したところであります。

 このように、政権交代以降、さまざまな見直しを進めてまいりました。しかし、行政改革の取り組みはまだ道半ばであり、社会保障と税の一体改革とあわせて、車の両輪として強力に進めていかなければなりません。引き続き、政府一体となって行政改革に全力で取り組んでまいります。

 財源確保の状況についてのお尋ねがございました。

 政権交代以降、例えば二十四年度予算で確保した恒久財源については、歳出削減について、事業仕分け等の結果なども活用し、対二十一年度比で二・九兆円程度、税制改正について一・一兆円程度、税外収入については三・七兆円程度となっております。

 また、二十二年度、二十三年度、二十四年度の三年間の合計で見ますと、対二十一年度比で、歳出削減については七・八兆円程度、税制改正については三・三兆円程度、税外収入については二十一・五兆円程度となっているところでございます。(拍手)

    〔国務大臣小宮山洋子君登壇〕

国務大臣(小宮山洋子君) 長妻議員から、私には九問、御質問いただきました。

 まず、ジェロントロジー、いわゆる老年学の活用等についてですが、高齢化が世界一のスピードで進み、二〇五〇年には国民の四割が六十五歳以上となる肩車型社会で、社会保障も含めた社会システムをどのように変えていくかについては、日本の大きな課題の一つだと考えています。

 今回の一体改革では、高齢者を、単に支えられる存在ではなく、その能力が十分に発揮される社会を目指すという考え方に立ち、高齢者も含め広く負担する消費税を社会保障財源化し、全世代対応型の社会保障制度に変えていきます。

 また、政府では、現在、高齢社会対策大綱の見直しを進めています。厚生労働省としても、御指摘のジェロントロジーの成果なども活用しながら、高齢者が住みなれた地域で自分らしく年を重ねることができる地域づくりなど、高齢社会への対応を進めていきます。

 今回の社会保障改革の内容についてですが、現在、社会保障制度を取り巻く社会経済情勢は、少子高齢化といった人口構成の大きな変化、非正規労働者の増大など雇用基盤の変化、家族形態、地域基盤の変化など、大きな変化が生じています。また、毎年一兆円規模の社会保障の自然増が不可避となっている中で、給付に見合った負担を確保できていない状況です。

 今回の社会保障改革では、まず、子供や子育てへの支援を強化するなど人生前半の社会保障を手厚くすること、年金の低所得者への加算や国民健康保険の保険料軽減の拡充など社会保険制度の低所得者対策の強化、就労促進や生活支援戦略の策定に取り組み、分厚い中間層の復活を目指すこと、できる限り住みなれた地域で在宅を基本とした生活の継続を目指す地域包括ケアシステムの構築に取り組むことなど、社会保障の充実や安定化を図ることにしています。

 こうした改革を進め、高齢化が一層進んだ社会でも、より受益感覚が得られ、納得感のある社会保障を実現していきたいと考えています。

 政権交代後の社会保障の実績ですが、この政権では、政権交代後、国民の生活が第一という基本理念のもと、社会保障の充実に取り組んできました。

 具体的には、政権交代後、社会保障費の毎年二千二百億円削減は行わず、自然増も含め、必要な社会保障費を確保しています。

 診療報酬のプラス改定を実現するとともに、医学部定員をふやすなど、医療従事者の確保に取り組んでいます。

 年金記録の訂正により、少なくとも総額およそ一・六兆円の年金を回復しています。

 また、雇用保険の適用範囲を、六カ月以上雇用見込みから三十一日以上雇用見込みへ拡大しています。

 最低賃金については、新成長戦略で掲げた目標に向けて、着実な引き上げに取り組んでいます。

 このように、着実に実績を上げてきています。

 今後は、社会保障・税一体改革に政府を挙げて取り組み、社会経済情勢の変化に対応した全世代対応型の社会保障を構築するとともに、制度の持続可能性を確保していきます。

 生活保護受給者の高齢化の要因と、御指摘の三つの老後格差の是正についてですが、生活保護受給者のうち六十歳以上の高齢者の占める割合は、平成二十一年でおよそ五二%、受給者の数はおよそ八十七万人となっています。十年前と比較すると、その数は二倍に増加しています。

 このような高齢の生活保護受給者の増加の要因はさまざまあると考えられますが、高齢化の進展に加え、御指摘のように、無年金者や低年金者の増加もその要因の一つであると考えられます。

 御指摘の三つの老後格差について、今回の年金二法案では、まず一つ目の所得格差に関しては、無年金者、低年金者対策として受給資格期間の短縮と低所得者への加算を行うとともに、高所得者の年金額の調整を行うことによって年金制度の最低保障機能を高め、また、高齢世代内と世代間での公平を図ることにしています。

 次に、官民格差に関しては、公務員も私立学校の教職員も厚生年金に加入し、同じ保険料で同じ給付にそろえていく被用者年金制度の一元化を実現することにしています。

 さらに、非正規格差に関しては、労働時間が週二十時間以上で一定の条件を満たす短時間労働者に厚生年金の適用を拡大することで、被用者としての年金、医療保険の対象にして、セーフティーネットの拡充を図ることにしています。

 このように、年金二法案では、御指摘の三つの老後格差を是正するための措置を講じています。

 年代別の保護脱却に関する実証数字についてですが、生活保護の廃止に至った件数のうち、死亡、失踪以外の理由で保護廃止に至った世帯の割合は、二十九歳以下はおよそ二二%、三十から三十九歳はおよそ一五%、四十から四十九歳はおよそ一三%、五十から六十四歳はおよそ八%、六十五歳以上はおよそ四%となっています。

 このように、高齢者は、働き盛りの世代に比べると、就労等による生活保護からの脱却の割合は低くなっています。

 生活保護の将来推計についてですが、生活保護受給者の数は、制度を取り巻く失業率等の社会経済情勢の影響を受けるため、将来見通しを正確に推計することは難しいと考えています。

 一方、生活保護受給者の自立を助長することや給付の適正化は重要です。そうした観点から、ことしの秋をめどに策定することにしている生活支援戦略に基づき、生活保護制度の見直しについて計画的に取り組んでいきます。

 年金制度改革検討調査についてですが、この調査は、新しい年金制度を検討するに当たって、自営業者、被用者を通じた横断的な所得、就業状況等に関する実態を総合的に把握するため、全国のおよそ六万世帯を対象に実施したもので、現在、調査結果の取りまとめ作業を行っています。

 今後、結果の精査をしつつ、調査結果を活用して新しい年金制度を検討していく中で、必要に応じ公表していきたいと考えています。

 財政検証の前提についてですが、年金制度は長期的なものであることから、公的年金の財政検証に用いる物価上昇率や賃金上昇率等の経済前提は、長期的な観点から設定されるべきものです。

 現在、社会保障審議会年金部会のもとに、経済、金融の専門家から成る専門委員会を設置し、次の財政検証に向けた経済前提のあり方について、さまざまな角度から御議論いただいています。経済前提については、従来からもさまざまなケースを想定し、一定の幅を持って設定してきましたが、今回も、足元の経済状況等に基づきつつ、十分な検討を進めていきたいと考えています。

 運用収入を除いた上での厚生年金と国民年金の積立金の取り崩し額についてですが、実績が確定している平成二十二年度まででいうと、平成二十一年度は三兆円の見込みが五・六兆円、平成二十二年度は四・三兆円の見込みが六・七兆円で、差額はそれぞれ、二・六兆円、二・四兆円となります。

 また、平成二十三年度以降の数値は、まだ決算数値が確定していないことなどから、見込みとの単純な比較はできませんが、金額の大小はあるとしても、取り崩しが見込みを上回る可能性が高いと考えられます。

 このように見込みに比べて差が生じている要因としては、さまざまなものが考えられますが、例えば、財政検証で見込んだ賃金上昇率に比べて実際の賃金が伸びていないため、見込みどおりの保険料収入が入っていないことがあります。

 しかし、平成二十一年以降の財政状況について、運用収入を含めた積立金の残高で二年間の実績を見ると、財政検証と比べて、平成二十一年度はプラス四兆円、平成二十二年度はマイナス二・二兆円で、プラス方向に乖離している年もあれば、マイナス方向に乖離している年もあり、現時点で年金財政が大幅に悪化しているわけではありません。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 大島理森君。

    〔大島理森君登壇〕

大島理森君 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、野田総理が政治生命をかけるとまで言われました社会保障と税の一体改革に関して質問いたします。(拍手)

 冒頭、このたびの北関東における竜巻被害に関し、被災された方々に心よりお悔やみとお見舞いを申し上げるとともに、政府におかれましては万全の措置を講ずるよう強く求めます。

 今、我々は、衆議院と参議院の多数派が異なるいわゆるねじれ国会の中で責任を果たさねばなりません。それは国民の選択の結果でありますが、一方、国民は、政府・与党の責任第一とはいえ、決められない政治の現状にいら立ちを感じておられるのも事実でしょう。

 しかし、昨年の三月十一日、東日本大震災という国家的危機に対して、我が党は、谷垣総裁の決断のもと、与野党の壁を乗り越え、国民のために各党と協力してその対応に当たりました。私は、このことを思い起こしつつ、万機公論に決すべしという言葉に思いをはせるものであります。

 野田総理、今、私たちは、万機公論し、すなわち、議論を尽くした上で、決めるべきときに物事を決め、事をなし遂げるための政治の筋道をつくり上げ、信頼を守らなければなりません。我々は、あなた方民主党が野党時代に行ってきたことを殊さらあげつらうことはいたしません。ただし、結論を導くための実のある議論を行い、協議し、そして、事をなすに当たっては、必要不可欠な政治上の要件があるのです。それは、何よりも、主権者たる国民に、うそをつかず、誠実であり、責任を持つことなんです。

 野田総理は社会保障と税の一体改革について政治生命をかけるとまで明言されておりますが、自民党は、我が国の累積する財政赤字に責任を感ずるからこそ、累次の選挙公約や税制改正において、財政再建や消費税を含む税制抜本改革の実現を訴えてまいりました。総理が待ったなしと言うのであれば、総理及び民主党に不退転の決意を持ってこの問題を解決するための責任感が本当にあるのか、また、さきの総選挙の際の公約や党幹部の言動が厳しく問われなければなりません。

 第一に、約束に対する責任について伺いましょう。

 与党民主党によって構成される野田内閣が一体改革に取り組むことは、民主党と国民との約束に反しているのです。そのことについて、この議場におられる民主党の議員の皆様は、胸に手を当てて、何も恥ずべきものはないのでしょうか。

 まず、民主党に政権としての正統性を付与した二年八カ月前の衆議院選挙におけるマニフェストにおいて、社会保障のばらまきメニューは誇らしげに羅列されたものの、そこに消費税増税という言葉は全く見受けられません。また、当時の党代表や幹事長、野田総理も含めた民主党を代表する方々の言動は、全て、今任期中に消費税の引き上げを決めること、まさにこの決めることすら否定して集票されたことを、よもやお忘れではないでしょうね。

 いかなる詭弁を弄そうとも、消費税増税という国民との契約はなく、これを推し進めることは国民との約束違反にほかならないのであります。

 次に、二年前の参議院選挙を思い出してください。菅前総理は消費税の論議を唐突に持ち出し、民主党は敗れました。つまり、民意は、このときも、民主党の手による国民との約束違反の消費税増税を否定したんです。

 これらの民意に反することを、総理、あなたは、今、政治生命をかけると言って取り組んでいますが、約束違反の増税に対して真摯な反省と謝罪を行った上で、このマニフェストを大胆に見直し、いま一度国民に信を問うことが必要であると存じます。総理、いかがでしょうか。

 これに関してさらに言えば、マニフェストで国民と約束した最低保障年金を含む新年金制度の創設、後期高齢者医療制度の廃止について、その扱いはどこへ行ったのでしょうか。これらが実現不可能なことは明白なんです。撤回するのか、それとも、旗をおろさないつもりなのでしょうか。

 なお、これらは、それぞれ、閣議決定された一体改革大綱にも明記されていますが、一体改革に含まれると理解してよいのでしょうか。今の提案では、一体改革たり得ず、ばらまき、かつ増税のみとの感は否めません。総理の見解を問います。

 第二に、政治家としての倫理への責任について伺います。

 政治家は、結果責任を問われるとはいえ、そのプロセス、手法において、やはりモラルに対する緊張感がなければなりません。

 二年八カ月にわたる民主党政権において、余りにもその弛緩が散見されることによって、今や国民は、総理の言葉を信じ、民主党を信頼し、国の政治を信頼することができなくなり、その信用は失墜しております。これでは、国家の政策の遂行に支障を来すことは必至なんです。総理の訴える一体改革が国民の理解を得られないのも当然の帰結です。

 すなわち、民信なくば立たずなのであります。あなたの発する言葉に国民の信をおかせるためには、倫理における責任というものについて、総理の姿勢を明確にする必要があります。

 一体改革に取り組む野田内閣及び与党民主党の資質について伺いましょう。

 野田総理は、参議院で問責決議を受けた田中防衛大臣と前田国土交通大臣の二閣僚は、今もって適格であるとの認識でしょうか。国民世論も二人の続投は望んでおりません。このままでいくならば、総理が最大の政治課題と位置づける一体改革について、国民の理解を得て実現していくことの足かせとなることは明らかだとお考えにならないのでしょうか。

 参議院において野党全党が賛成し、その参議院の意思として議決した事実を総理はどのように受けとめておられるのか、そして、このまま続投させるのか。総理の任命責任も問われる問題ですが、明快な答弁を求めます。

 小沢元代表の政治資金問題についても伺います。

 民主党の党員資格停止の解除等についてはあなた方の問題でありましょうが、国民は民主党の倫理観を厳しく見ているのです。今回の判決文を読む限り、元代表の主張のほとんどが裁判所に認められておらず、現行の政治資金規正法のあり方も踏まえれば、国会で説明責任を果たす必要があります。

 総理は、我々が要求する証人喚問に小沢元代表が応じ、国会でその説明責任を果たすべきと考えますか。国会で判断するべきものとの答弁は不要です。

 野田総理、あなた自身と民主党の倫理観が問われているのです。もし総理が小沢元代表の立場であれば、みずから国会に出席し、説明するのでしょうか。お答えください。

 冒頭申し上げた責任について、さらに伺います。

 約束に対する責任、倫理観への責任、加えて、政治にとって最も問われているものは結果責任です。

 今日に至るまで、民主党政権において、普天間基地の移設問題、瓦れき処理等を含む東日本大震災からの復旧復興、原子力発電をめぐる諸問題、TPPなど、多くの内政、外交上の重要課題について、何一つ明快な結論を出しておりません。責任を果たしているとは言えないんです。言葉だけが躍るばかりで、結果責任を全くとらない政治はもうたくさんなんです。

 私は、野田総理が一体改革に政治生命をかけると言った言葉はどれほどの覚悟を伴ったものなのか、改めて総理のその言葉の具体的な内容を伺いましょう。

 今国会は、会期は六月二十一日までとなっています。新設された特別委員会においては社会保障と税の一体改革の審議が始まりますが、そこには計七本の法律案が付託されます。

 総理は、この会期末までに、具体的にどのようにこれらの関連法案を成立させ、そのうちどの法案に政治生命をかけるのでしょうか。野党に協力を求めるとの他力本願ばかりではなく、政府・与党が、そのみずからの力と責任において、予定された会期末までに衆参で結論を出す手法と覚悟を有しているのでしょうか。

 また、総理の言葉の意味するところは、まさにこの六月二十一日までにやり通すこと、そこに政治生命をかけるということではないでしょうか。そのことに、明確な結果責任を負い、政治生命をかけるわけであります。

 六月の会期末までにできなければ会期を延長する、場合によっては大幅に延長する、もしくは国会を閉じて継続審査、いずれにせよ、結論を先送ることなど、よもやお考えではないでしょうね。もしそのようであれば、これは政治生命をかけるという言葉に値しません。政治生命をかけると言った真意は何たるかを、国会、国民に明確にその決意のほどをお示しください。

 民主党の中には、依然として法案への反対姿勢を崩さない多くの造反予備軍がおられると聞いております。その方々は、どうぞ、委員会の場で質問の場に立って主張をぶつけてください。総理におかれては、それを受けて立ち、ねじ伏せるほどの気概を示されることを期待するのであります。

 なお、最高裁に違憲状態と指摘され、かつ違法状態となっている一票の格差の問題についても、与党は何ら責任を果たさず、解決の目途がついていないのが現状です。総理は、かつて党首討論において、違憲状態を脱することが最優先と明言されましたが、その方針は変わらないのか、今後どのように取り運ぶのか、具体的にお答えください。

 以上、私は、政党、政治家にとって最も重要な責任というものについて、覚悟を総理に問うてまいりました。

 今や、ねじれ国会という国民が選択した国会状況の中で、万機公論に決しとしつつも、議論と結論の間に横たわる、物事を決するまでの協議というプロセスが重要であることは理解しております。しかし、それらを認識しながら、政党政治の英知として、政党間協議のルールを確立し、新たな政策決定プロセスを構築することこそが、ねじれ国会が常態化した現下の政治状況においては、今求められていることではないでしょうか。

 ただし、各党それぞれが、この政党間協議という新たな表舞台に立つに当たっては、その資格が問われます。すなわち、先ほど申し上げたような責任感や倫理観をまず与党の当然の責務として示し、その上で、各党がこれらを共有する状態にならなければなりません。私は、震災直後の復旧復興に当たった際、自公民の三党の幹事長、政調会長、委員会の現場の働きによってその萌芽を見た感がありましたが、残念ながら、今回の件については、何ら見出すことはできません。

 我が党は、社会保障についても、税制についても、我が党の基本的な考え方を既に示してあります。特別委員会においても、我々は、税を納め、保険料を払う者の立場に立脚し、自立自助、共助、公助という理念に基づいた社会保障等のあり方を堂々と提示してまいります。国会論戦を通じ、政府案の問題点を指摘するとともに、国民に対して我々の考えの正しさを訴え、政府・与党に対峙してまいる所存です。

 民主党内の混乱の原因は、国民との約束を破り、そのけじめもつけないまま一体改革を進めようとしているところにあるのです。これが、決められない政治の元凶なんです。総理、ここは基本に立ち返りなさい。政治生命をかけて説得するのは、まずは足元の与党民主党であり、さらに、主権者である国民との関係を踏まえた政治の原点に返ってこの案件に取り組むことを最後に求め、私の質問を終わります。もし時間内であれば、再質問をさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 自由民主党を代表しての大島副総裁の御質問にお答えをしてまいります。

 まず第一問は、国民との約束についてのお尋ねがございました。

 消費税率の引き上げについては、マニフェストには記載しておりませんが、政権交代後に税収の大幅な落ち込みが明らかになり、東日本大震災などが重なってその早急な回復が見込めないこと、社会保障費の自然増や基礎年金国庫負担問題、欧州の金融危機が波及しかねないことなどから、消費税の問題をもはや先送りする時間はないと判断をいたしました。

 民主党が前回総選挙時に国民に約束したことは、衆議院の任期中には消費税の引き上げは行わない、税率引き上げを実施する際には国民に信を問いますということであります。したがって、提出法案に明記してあるとおり、現在の政権任期中において消費税率の引き上げは行いません。当然、引き上げの前には総選挙で民意を問うことになります。

 参議院選挙における反省と教訓を踏まえつつ今回の社会保障・税一体改革を御提案しており、やり抜くべきことをやり抜いた上で、しかるべきときに国民の判断を仰ぎたいと考えております。

 次に、一体改革における新年金制度や高齢者医療制度の取り扱い、ばらまき、増税のみとの批判についての御質問をいただきました。

 民主党の新しい年金制度の提案は、年金一元化や最低保障年金の創設を通じ、現行制度が抱えるさまざまな課題に応えようとするものであります。これまでも種々の課題を指摘されておりますが、平成二十五年の法案提出に向けて党内で具体的な制度設計を検討する中で対応の可否を判断していくべきと考えております。

 政府としては、まずは最低保障機能の強化など現行年金制度の改善を図ることとし、これに必要な費用を消費税引き上げにより得られる財源の用途に含めるとともに、所要の法案を提出したところであります。

 また、高齢者医療制度の見直しについては、一体改革大綱では、関係者の理解を得た上で平成二十四年通常国会に法案を提出するとしており、地方団体を初めとする関係者の理解を得られるよう、引き続き検討、調整を行っているところであります。

 新年金制度、高齢者医療制度の見直しのいずれも、一体改革大綱の中で示した社会保障制度全般にわたる改革項目であり、政府・与党としては、工程表に沿って取り組んでまいります。

 一方、この二項目に対して実現不可能との御主張でございますが、年金制度については、最低保障機能の強化など現行制度の改善が必要であるとの問題意識は与野党で共有されていると承知をしており、また、高齢者医療についても、支える国民健康保険など現役制度も大変厳しい状況にあることについては認識を一致できるのではないかと考えております。

 ぜひ、各制度の向かうべき方向について、それぞれの認識、提案を持って、胸襟を開き、国民の立場に立って御協議に応じていただくよう、重ねてお願いをいたします。

 なお、一体改革における社会保障改革は、大綱において全体像をお示しした上で、三・八兆円程度の充実を行う一方で、一・二兆円程度の重点化、効率化を行うことにしています。消費税引き上げによる財源確保と密接にかかわる社会保障の改革法案については、税制抜本改革関連法案とあわせ、国会に提出しておりますので、ばらまき、かつ増税のみとの御指摘は当たらないと考えております。

 次に、国土交通大臣、防衛大臣についての御質問をいただきました。

 二閣僚に対する問責決議が参議院で多数で可決されたことは、事実として受けとめており、残念なことだと考えております。

 しかし、全ての閣僚が緊張感を持って職責を果たすことが責任の果たし方であり、総理として、全閣僚にそのように指示をしております。国土交通大臣、防衛大臣とも、大いに反省すべき点は反省し、かつ、職務を全うすることが国民に対する責任であると考えております。

 同時に、この問題と、社会保障・税一体改革、あるいは経済や国民生活にとって必要な法案の審議は切り離して考えることが国民利益につながると考えております。どうか大局的視点に立っていただき、法案の審議において建設的な御提案をいただき、物事を決める政治をともに実現させていきたいと考えております。

 次に、小沢議員の説明責任についての御質問をいただきました。

 小沢議員については、一審裁判においてさまざまな観点から審理が行われ、また、代理人も小沢議員みずからも法廷において説明を行ってきたと考えています。

 また、小沢議員の今後の説明責任の果たし方は、政治家としてみずから判断して行うべきものであると考えております。

 さらに、私が小沢議員の立場であったならとのことでありますが、国会招致に関しては各党各会派で御議論されるべき問題という基本原則に立ちつつ、私個人の考えをあえて問われれば、やはり政治家本人がその状況においてみずから判断する問題であり、仮定の議論は成り立たないと考えております。

 次に、法案の今国会での成立についてのお尋ねがございました。

 御指摘の発言は、不退転の決意で社会保障・税一体改革関連法案を今国会中に成立させなければならないとの決意を申し上げました。特別委員会で御審議いただく関連法案はまさに一体のものであるとの認識に立ち、いずれの法案も御可決いただくことを前提として考えております。

 政治家が政治生命をかけるとは、文字どおりの意味であり、その解説は行いませんし、これから国会で本格的に御審議いただくに際して、あらかじめ成案を得られない場合のことを申し上げるのは、国会に対しても御無礼かと存じます。

 与野党ともに改革の必要性は一致していると認識をしております。政府・与党として、建設的かつ実りある審議を進めていただくよう努力をいたします。ぜひ御協力をお願いいたします。

 次に、一票の格差是正についてのお尋ねがございました。

 衆議院の選挙制度については各党協議会において議論されてきており、一票の格差是正、定数削減、選挙制度改革の三つの課題について同時決着することを課題としていると承知しています。

 同時に、さきに各党協議会において、樽床座長から第二次の座長取りまとめ私案が提示されるも、各党の賛同が得られず、各党幹事長会談に対して状況報告が行われることで各党が合意したとも聞いております。

 私としては、違憲、違法状態からの一刻も早い脱却が最優先ということを念頭に置きつつ、国民の要請にいかに応えるかを各党幹事長間で協議し、三つの事項について成案を得られるよう努力していただくことを強く期待しております。

 最後に、民主党のマニフェスト、意思決定に関する御質問をいただきました。

 昨年の夏、民主党においてマニフェストの中間検証を実施いたしました。政権交代の結果、高校授業料無償化や農家戸別所得補償などが実現をしています。一方で、約束実現に至っていないものがあることも率直に認め、国民の皆様に反省とおわびを申し上げたと承知しています。

 消費税についても、衆議院の任期中には消費税の引き上げは行わない、引き上げを行う際には国民に信を問いますというお約束を守り、野田内閣は、現在の政権任期中において消費税率の引き上げは行いません。また、行政改革、政治改革など身を切る改革もあわせて包括的に実施をしてまいります。

 与党内の意見に関しては、昨年来、丁寧な議論を重ね、党のルールに従った決定をしてまいりました。最終的には、所属議員一人一人が与党としての責任を自覚し、政府・与党一致結束して改革の実現に邁進すると確信をしております。

 きょうから始まる御審議において、自由民主党からも建設的な対案の御提示があると伺っております。審議を通じて、建設的な立場で物事を決める政治の実現に協力いただけるものと確信をしておりますし、そうしたお互いの努力こそが、一貫して大島先生からは責任というキーワードのもとで御質問をいただきましたが、お互いに国民のために、特に未来の世代のために責任を果たしてまいりましょう。(拍手)

議長(横路孝弘君) 大島理森君から再質疑の申し出があります。残り時間が極めてわずかでございますから、ごく簡単にお願いをいたします。大島理森君。

    〔大島理森君登壇〕

大島理森君 今ここで再質問の権利について皆さんに説明することは、私はいたしません。

 伺います。

 総理、マニフェストのときに、決めることすらやらないんだということをおっしゃったんだ。それを、あのような答弁は詭弁だと思います。

 したがって、もう一度伺います。

 あなた方は、マニフェストで違反したんです。その認識をいま一度聞きましょう。

 第二点。会期は六月の二十一日まで。したがって、その中にあなたの政治生命をかけるんですね、このことに対して、あなたは、今、国会がどう判断するかわからないことに私が言うのはおかしいということ自体、逃げの答弁なんです、これは。そのことについても改めて聞きましょう。

 さらに申し上げましょう。

 私は三つの責任を申し上げました。何でもかんでも協議、協議とおっしゃるが、協議の前提は、この責任に野田総理が政治生命をかけることなんです。

 以上、終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 大島副総裁の再質問にお答えをいたします。

 私は両方とも第一問でお答えをしたつもりなんですが、あえて御質問ですので、お答えいたします。

 まず、消費税のことについてだと思いますけれども、マニフェスト違反ではないかという御指摘であります。

 確かに、マニフェストに書いてあること、書いていないこと、できたこと、できないこと、ありますけれども、消費税については記載をしていないと申し上げました。その上で、任期中には引き上げをしないということ、そして、引き上げを実施する際には国民に信を問うということを申し上げました。それを副総裁は詭弁と言っていますけれども、これは私どもの立場であって、これは答弁をしているということであります。

 それからもう一つは、この会期中に法案が通らなかったらというお話なんですね。

 これは、きょうから本格審議が始まったところで、会期の中で議論がおさまるのか、おさまらないのか等々を含めて、これから真摯な議論が始まる前に、極めて悲観的な、たらればのお話をする立場ではないと私は思っています。

 政治生命をかけると言った言葉には掛け値はありません。そのことは重ねて申し上げておきます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 鴨下一郎君。

    〔鴨下一郎君登壇〕

鴨下一郎君 自由民主党・無所属の会を代表して、ただいま議題となっています年金関連二法案を中心に、社会保障制度全般に関して質問させていただきます。(拍手)

 我が党は、平成二十一年の選挙で敗退し、政権を離れました。国民からの御批判に真摯に耳を傾け、その反省に立ち、我々は、新しい党の綱領を制定し、再出発をいたしました。その大きな柱の一つが、自助、共助、公助の考え方であります。まずは自分で頑張り、また、お互いに助け合う、そして、最後に足らざるところを国や自治体の公が支える。この理念を我が党は明確に掲げながら政策を立案していくことになりました。

 社会保障制度こそ、自立を基本とした考え方に立脚しなければならないと考えております。総理はどうお考えですか。

 私は、社会保障政策の中でも、とりわけ年金制度は、現在年金を受けている人々と、現役世代で今まさに保険料を納めている人たちの権利をしっかりと守ることこそ、政治の一義的な責任だと考えます。

 実際には、年金世代が約四千万人、現役世代が六千万人、実に一億人が年金にかかわる当事者でございます。これらの人たちは、現行制度が持続されることを期待し、保険料を納めています。しかし、民主党の心ない年金批判で、自分の年金はどうなってしまうんだろうかとみんな心配しています。

 民主党の一部の議員が言うように、現行年金制度は本当にぼろぼろなんでしょうか。私は決してそうは思いませんが、総理の認識を聞かせてください。

 政府提案の社会保障と税の一体改革は、消費税の増税は明記されていますが、年金、医療などの社会保障の一体的な改革についてはほとんど示されておりません。民主党のマニフェストで廃止と言っていた高齢者医療制度はどうしようと考えているんですか。医療、介護の効率化策などは何も示されていません。これでは、幾ら増税しても財源は足りません。もっと責任感を持って対処すべきと考えますが、総理の社会保障の効率化策について尋ねます。

 例えば、これは私の考えですが、年金、医療、介護を、サービスを受ける個人に着目して、利用者が最も必要とするサービスについてはより手厚く、しかし、他のサービスについては総合的に併給調整ができるようにすべきと考えますが、いかがでございましょうか。

 既に企業において、福利厚生についてはカフェテリアプランとして成功例もあり、また、自治体の中には、介護にならない元気なお年寄りには首長が祝い金を出すなど、いろいろと知恵を出しているところもあります。国の制度としても新しい考え方の導入ができないか、検討することを求めたいと思います。どうでしょうか。

 内容に入りたいと思います。

 今回、大綱から前進して、具体的な法律案が提示されたわけであります。しかし、出てきた法律案は、民主党が主張してきた改革とはほど遠く、一体的、総合的な改革とはとても言えるものではありません。ほとんどがこれまでの延長線上のものであります。

 例えば年金。民主党が選挙において大声で言ってきたことは、全ての年金の一元化、そして、最低保障年金七万円の支給だったはずです。閣議決定された一体改革大綱には、全ての年金を一元化し、七万円の最低保障年金を支給する法案を平成二十五年の国会に提出するとされています。我々が資料から推測すると、民主党の目指す年金制度とは、所得比例年金と最低保障年金の組み合わせから成る一つの公的年金に無理やりに全ての人たちを加入させるということのようであります。

 所得比例年金の保険料は一五%程度とありますので、サラリーマンの方は労使折半でありますが、農業や商店などを営む自営業者の方には一律に収入の一五%の保険料負担が求められます。例えば、年収四百万円の自営業の方で、現在一万五千円程度の保険料が民主党案になると実に五万円になってしまうとも言われています。とても現実的なものではありません。

 また、財源の問題があります。最低保障年金の実施に必要な財源は、民主党の試算でも、今回の五%消費税増税に加え、さらに七・一%の増税が必要との報道がありました。財源はどうするおつもりですか。

 我々には、年金制度の見直しに当たって留意すべき前提が二つあります。まず、過去、現在、将来において、額に汗して働き、税金や社会保険料などを納め、また、納めようと努力している人々が報われること。そして、正直者が損をしないようにすることを原点とする自助自立を第一とし、共助、さらには公助の順に従って政策を組み合わせ、安易なばらまきは排し、現役世代に過重な負担とならないよう、真に必要とされる社会保障の提供を目指すべきであるということです。

 民主党の主張する最低保障年金は、誰にでも七万円をばらまく、自助を否定し公助ありきの、極めて社会主義的色彩の強い政策と私は考えます。総理の御所見をお聞かせください。

 また、来年法案を提出するからには、現在、新しい制度について相当に議論が進んでいるはずです。民主党の年金制度の仕組みとスケジュールについて、具体的に、わかりやすく答えてください。

 最低保障年金七万円は、いつから、どの程度の所得の人がもらえるのでしょうか。保険料は、いつから、幾ら上がるのでしょうか。完成まで四十年かかるとも言われている民主党案ですが、移行期には現行制度と民主党案の二つの制度が同時に進行するという理解でよろしいですか。

 次に、具体的な法案について質問したいと思います。

 今回、年金一元化については、被用者年金制度の一元化を図るための厚生年金保険法等の改正案が提出されました。この法案はサラリーマンの厚生年金と公務員の共済年金を一元化するものでありますが、これは、平成十九年、自公政権のときに提出し、民主党の大反対で廃案となったものとほぼ同様のものであります。国民年金を含め制度を一元化する法案を来年に提出するならば、なぜ、ことし、被用者年金制度だけを統合する必要があるのか、私には理解できません。大風呂敷を広げて全ての一元化を来年やると言いながら、我々のかつての案を持ち出してきて、これがことしの一元化法案だと言われても、納得できません。

 そこで、総理にお伺いします。

 以前自公で出した法案と今回提出の法案との違いは何か。また、以前の自公案にはなぜ反対したのか。また、今回似たような法案を出してきた理由は一体何か。さらに、国民年金との一元化はいつまでに行うのか。明確にお答えをいただきたいと思います。

 今回、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部改正案も提出されました。主なポイントは、短時間労働者に対する厚生年金、健康保険の適用拡大、そして受給資格期間の短縮、二十五年から十年へ、そして低所得者への年金額の加算などであります。これらは、低年金・無年金者の問題、あるいは、約三百三十万人と言われている未納・未加入者の問題に対応するものであり、我が党としても議論を重ねてきたものばかりであります。

 この法案は、未納、未加入対策になると考えられますが、逆に、経営者側は雇いづらくなり、雇用機会が減少する可能性があります。経営や経済への影響を予想して、複合的、大局に立った対応が重要であります。総理の考えをお聞きします。

 受給資格の期間の短縮については、我が党も参議院選挙の公約に明記していますが、受給権の問題だけでなく、年金額との関連など、今後さらに検討すべき点もありますが、総理は現在どうお考えになっていますか。

 また、最低保障機能の強化は、真面目に保険料を納めていた人との間に不公平が生じることも指摘されておりまして、モラルハザードにつながる制度の欠陥があります。どう是正するつもりですか。総理、お答えください。

 ここで私が強調したいことは、政府・民主党が社会保障と税の一体改革として今回打ち出してきたものは、現行法の手直しばかりであるということです。これまで、現行法を基本として必要な見直しを行ってきた我々の主張と、いろいろ考えた末に結局は同じになってしまった、そういうことじゃないんですか。我々は、年金の現行制度の基本を守っていくことが、今保険料を払っている人たち、そして年金生活の皆さんに迷惑や心配をかけず、その持続的安定性につながると確信しています。

 さらに、少子高齢社会に対応するためには、保険料負担の範囲内で給付水準を自動的に調節する仕組み、いわゆるマクロ経済スライドといいますが、これの発動により支給水準が調整されることによって、年金制度は現行制度の改革で十分に持続可能と考えられます。

 ところが、民主党は、年金に対する不安感をいたずらにあおって、最低保障年金という幻想をいまだに振りまいております。さらには、この民主党案も、少子高齢社会への解決策には残念ながらならないんです。また、財源問題が大きなネックとなる最低保障年金や、被用者年金と国民年金の統合などの問題点が多く、さらに、実現には四十年かかるということもあり、民主党案は、現実的な選択肢とは到底考えられません。

 そこで、総理にお伺いします。

 現行制度の見直しを行えば、年金制度は十分持続可能な制度じゃないんですか。到底実現できない最低保障年金の支給を含めた民主党案の旗はこの際おろし、我々の提唱する現実的な改革を協力し合って一緒に進めようじゃありませんか。今、総理に必要な決断は、マニフェストの呪縛から逃れることです。総理のお考えを伺います。

 年金は、医療や介護のような単年度のこととは違って、一クールが約八十年の制度であります。すなわち、二十歳から保険料を払い始めて、四十年間払って満額の受給権を得て、その後九十歳まで受け取れば、当然、百年の安定した制度が必要であります。

 今、日本は、二〇二五年から二〇五〇年の高齢化のピークに向かいつつあります。社会保障のまさに胸突き八丁と言えるんです。このときに、現行制度と、移行に四十年もかかる民主党案が併存するということは、社会保障制度全体が極めて不安定になる危機と言えます。いわば、国民を巻き込んで、まるで、嵐の海の中で船を乗りかえるようなものであります。

 総理、政治は現実をしっかり見なければなりません。現行制度を、与野党協力して、国民の立場になって、より安心な持続可能な制度にしていくことこそ、政治全体の責務であり、唯一の道であると思います。

 最後に、民主党の、到底実現できない矛盾いっぱいの年金案の旗はきっぱりとおろすよう改めて申し上げ、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 自民党鴨下議員の御質問にお答えをしたいと思います。

 まず最初に、社会保障における自立についてのお尋ねがございました。

 議員御指摘のとおり、国民の安心や生活の安定を支えていくためには、国民一人一人がみずからの努力によって営む自助、自助では対応できないリスクに相互に連帯して生活を保障する共助、公的扶助など必要な生活保障を実施する公助をバランスよく適切に組み合わせていくことが必要であると考えております。

 今回の一体改革においても、就労や生活支援などによる自立支援といった自助を念頭に置いた上で、年金や医療保険、介護保険など、共助によるセーフティーネット機能の強化を提案しているところであります。

 次に、現行年金制度に対する認識についてのお尋ねがございました。

 現行の年金制度については、自公政権のもとで、基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引き上げやマクロ経済スライド導入といった、制度の持続可能性を高めるための御努力をされてきたことについては、私も否定しているわけではありません。

 また、現在の年金制度は、平成二十一年の財政検証でも、将来にわたり年金財政の給付と負担の均衡が図られていることが確認をされているところでございます。

 しかし、現行制度は、終身雇用や専業主婦というモデルを前提につくられていること、国民年金において非正規雇用の増大や未納・未加入者の問題が大きくなってきていることなどの問題を抱えており、将来の見通しについて国民の信頼が得られているとは必ずしも言えません。

 こうした認識に基づき、新しい年金制度を提案するとともに、新たな年金制度が創設、実施されるまでの間においても、最低保障機能の強化など現行制度を改善するために関係法案を提出したところであります。

 次に、社会保障改革の全体像や高齢者医療制度改革、社会保障の効率化策についてのお尋ねがございました。

 一体改革大綱では、医療、介護、年金、子ども・子育てなど社会保障制度全般にわたり、改革の項目や実施時期などを含め改革の全体像を示しており、その上で、必要な法案も順次国会に提出し、御審議いただくこととしております。

 このうち高齢者医療制度の見直しについては、大綱では、関係者の理解を得た上で平成二十四年通常国会に法案を提出するとされており、地方団体を初めとする関係者の御理解を得られるよう、引き続き検討、調整を行っているところであります。

 また、一体改革では、社会保障について、三・八兆円程度の充実を行う一方で、一・二兆円程度の重点化、効率化をあわせて行うことにしております。医療、介護分野においても、サービス提供体制の効率化、重点化や、七十歳以上七十五歳未満の医療保険の患者負担の平成二十五年度予算編成過程での見直し、介護保険の給付の重点化、効率化、自立支援型のケアマネジメントの実現などを検討します。

 議員が御提案をされている年金、医療、介護を総合調整する仕組みにつきましては、高齢者が自分に合ったメニューを選択でき、多様なニーズに応えられることや、自助努力を促すことができるといった利点が挙げられる一方で、個々の高齢者の医療や介護の必要性に応じた給付を行うという公的社会保障の考え方とどう整合させるかなどの論点があると思われます。

 社会保障の重点化、効率化を進めることは重要な課題であり、ぜひ、与野党での協議を通じて、さまざまな御提言をいただきながら議論を深めていきたいと考えております。

 次に、新しい年金制度に関し、その財源を含む制度設計や今後のスケジュールなどについて、数点のお尋ねがございました。

 民主党の新しい年金制度では、社会保険方式の所得比例年金を基本として、所得比例年金の受給額が少ない方に対して補足的に税を財源とする最低保障年金を給付することを提案しております。最低保障年金に必要な財源については、支給範囲や支給額といった具体的な制度設計によってその規模が変わり得るものであり、財源をどのように手当てするかについてとあわせて、今後の重要な検討課題であると認識をしています。

 また、所得比例年金における具体的な保険料負担については、一体改革大綱では、老齢年金に関する部分の保険料率として一五%程度とお示しをしています。自営業者の方々の保険料負担の具体的なあり方などについては、今後検討を進めていくべき事項であると認識をしております。

 なお、新制度への移行には一定の時間を要することから、新制度発足後も、当分の間は、新制度だけではなく現行制度からも年金が支給されることになるものと考えております。

 こうした最低保障年金や全ての年金一元化などの給付、負担関係を含め、新年金制度の具体的な姿や実施スケジュールは、まずは民主党において検討されるものでありますが、与野党間でも真摯に議論をいただき、平成二十五年の法案提出を目指してまいります。

 民主党が掲げる新しい年金制度は、高齢期に少なくともこれ以上は受給できるという年金額を明らかにすることで、国民が高齢期の生活設計を立てられるようにするものであります。新制度では、保険料を支払えるのに支払わなかった方にまで最低保障年金を支給することは想定しておらず、ばらまきとの御批判は当たらないものと考えております。

 次に、被用者年金一元化法案についてのお尋ねがございました。

 今回の被用者年金一元化については、平成十九年当時とは異なり、一体改革大綱において、新しい年金制度の創設を掲げた上で、新制度の創設までには一定の時間を要することから、その方向性に沿って、被用者年金一元化も含めた現行制度の改善にも取り組むという改革の全体像をお示しした上で提案しているものであります。

 その意味で、被用者年金一元化法案は、全国民が一つの年金制度に加入する形が完成するまでの間にも、できるだけ早く働き方に中立的な制度となるよう、この国会に提出したものであります。

 また、平成十九年の法案については、我が党所属の議員から個別の問題点を指摘したことはありますが、同法案は、衆議院の解散に伴い審議未了で廃案となったものであり、民主党として反対していたということではございません。

 なお、国民年金との一元化時期については、先ほど答弁したとおりであり、新年金制度の実施スケジュールとして、まずは党において検討を行うべきものであります。

 次に、国民年金法等改正案のうち、適用拡大、受給資格期間短縮、年金額加算の三点についての御質問をいただきました。

 今回の法案における社会保険の適用拡大は、非正規労働者へのセーフティーネットの拡充などの観点から、適用範囲をできる限り広く設定すべきという要請とともに、現下の厳しい経済情勢の中で、中小企業に負担を求めることによる企業経営への影響に配慮する意見の両方の立場を踏まえて、従業員数が五百一人以上の企業から適用を拡大するとともに、施行を二十八年四月として十分な準備期間を設けるなど、総合的な観点から、現実的なスタートラインとして設定をしたものであります。

 また、受給資格期間の短縮については、現に生じている無年金者をできるだけ救済すると同時に、納付した保険料をできるだけ給付に結びつける観点から実施するものであります。

 一方で、年金制度は、四十年間保険料を納付することを前提に設計しており、法律上の義務ともなっているところであります。この点については十分周知をしていくことが重要と考えております。

 第三に、低所得者への年金額の加算については、低所得者に対する加算の効果を出すことが必要である一方で、御指摘のとおり、保険料の納付意欲をできるだけ損なわない仕組みとすることが必要であります。

 このような観点から、法案では、加算の対象者を限定した上で、加算の仕組みについて、真面目に納付している人の納付意欲にできるだけ悪い影響を与えることのないように配慮しています。

 最後に、民主党案の旗をおろすべきではないかというお尋ねがございました。

 民主党の新しい年金制度の提案は、年金一元化や最低保障年金の創設を通じ、現行制度が抱えるさまざまな課題に応えようとするためのものであります。新制度に対しては、これまでも種々の課題を指摘はされておりますが、平成二十五年の法案提出に向けて民主党内で具体的な制度設計を検討する中で対応の可否を判断していくべきと考えております。

 また、政府としては、まずは最低保障機能の強化など現行制度の改善を図ることとし、これに必要な費用を消費税引き上げにより得られる財源の用途に含めるとともに、所要の法案を提出したところであります。

 最低保障機能の強化などの改善が必要であるとの問題意識は与野党で共有されていることを踏まえれば、民主党案の旗をおろす、おろさないの議論ではなく、胸襟を開いて、国民の立場に立って協議をしていくことが重要と考えております。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 石井啓一君。

    〔石井啓一君登壇〕

石井啓一君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました年金関連二法案に対し、野田総理並びに関係大臣に質問いたします。(拍手)

 冒頭、去る四月二十九日に関越自動車道藤岡ジャンクション付近で発生しましたバス事故で亡くなられた方々に衷心より哀悼の意を表しますとともに、けがをされた方々に心からお見舞い申し上げます。政府にあっては、事故の原因究明と再発防止に万全を期していただきたいと思います。

 また、一昨日の五月六日に茨城県つくば市や栃木県真岡市などで発生した竜巻、突風による災害で亡くなられた方の御冥福を心からお祈り申し上げます。また、けがをされた方々、被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。政府には、災害復旧復興に万全の支援を行うよう要請いたします。

 具体的な質問に入る前に、野田総理に申し上げたい。

 去る四月二十日、参議院において、田中防衛大臣及び前田国土交通大臣に対する問責決議が可決されました。二院制をとる我が国において、一方の院が示された意思表示として重く受けとめるべきであります。

 両大臣は、これまでの言動等から見て、閣僚として不適格であり、問責に値することは明白です。任命権者たる野田総理は速やかに問責二大臣を交代させるべきです。総理の明確な答弁を求めます。

 さて、ようやく、社会保障と税の一体改革に関し、本格的な国会論議がスタートをいたします。しかし、各論に入る前に、私は、改めて民主党の衆議院選挙公約を問わなければなりません。

 民主党は、二〇〇九年の衆議院選挙で、四年間消費税を上げないと公言したにもかかわらず、それを実行しようとしております。野田総理は、この点、消費税率引き上げの実施は衆議院任期終了後であるから、その前に国民に信を問えば問題ないと強弁をしております。しかし、こじつけ以外の何物でもありません。

 野田総理に伺います。

 二〇〇九年の衆議院選挙の際、多くの有権者が、本当に総理が言うような解釈をして民主党に一票を投じたとお考えでしょうか。消費税率引き上げは衆議院選挙の公約には全く反していない、それを理解しなかった有権者が悪いとでもおっしゃるのでしょうか。お答えをください。

 また、野田総理は、社会保障と税の一体改革を正当化する理由として、二〇〇九年所得税法改正の附則第百四条の「平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずる」とする条文を挙げます。しかし、そもそも民主党は、野党時代に、二〇〇九年所得税法改正に反対をし、さらに、附則第百四条についても、二〇〇九年三月二十七日の本会議での討論で、「不安や憶測をあおるだけで、有害無益」として大反対していたではありませんか。総理、なぜ賛成に変わったのでしょうか。明確にお答えをください。

 さて、野田内閣は、三月三十日に消費税増税法案を提出、前後して、関連する法案も一部を除いて国会に提出しました。

 しかし、野田総理が政治生命をかけるとまで断言された社会保障と税の一体改革の国会での議論は、ようやく本日スタートするに至りました。この間一カ月以上、政府・与党は一体何をしていたのでしょうか。民主党内で、国会における議論の進め方、方針がなかなか定まらず、結果として時間を空費してしまった。この対応一つ見ても、政府・与党の法案成立への覚悟を疑わざるを得ません。

 本通常国会の会期も残りわずか一カ月半となりました。総理は、これほどの重要法案を本当に今国会で成立させる目途があるのか、また、政治生命をかけるとまで言われた以上、今国会で成立しない場合にはどのように政治的なけじめをつけるのか、明確にお答えをください。

 一方、総理の足元を見れば、民主党内には消費税増税法案に対して公然と反対している議員が多数いるようです。仮に法案採決に際して造反した議員が出た場合に、総理はどう対処するつもりですか。答弁を求めます。

 公明党は、社会保障と税の一体改革については、前提条件として五条件を申し上げてきました。第一に、社会保障の機能強化の具体化、第二に、景気の回復、第三に、行政改革及び行政の無駄排除の徹底、第四に、消費税の使途は社会保障に限定、第五に、消費税のみならず税制全体の改革であります。

 まず、社会保障については、改革の全体像が示されておりません。

 公明党は、国民一人一人がそれぞれのライフステージの中でどのような社会保障のサービスが受けられるかについて、まずは国民的な合意を得る、その上で、それらに必要な費用を、税、保険料あるいは自己負担でどう賄うのかという議論の順序で進めるべきと一貫して主張してきました。

 しかし、本日の議題となっている年金一つとっても、最低保障年金の創設を初めとする民主党の年金抜本改革の具体案は、結局、明らかにされることなく、来年の通常国会に法案を提出するとの一点張りです。高齢者医療制度の見直しに関する法案も、いまだ国会に提出されていません。社会保障の柱の将来像が全く示されていない。これで国民的な合意が得られるでしょうか。社会保障と税の一体改革と言いながら、社会保障の議論が不十分で、完全に増税先行の議論となっております。

 経済状況を見ても、依然としてデフレ、円高に苦しむ我が国の景気、経済状況を改善しない限り、国民に負担増を求めるわけにはいきません。

 行政改革を初め無駄の排除も、目に見える成果は上がっておりません。

 税制全体の見直しも、所得税の再分配機能の強化は極めて不十分です。

 このように、現状の政府・与党の対応では、一体改革、消費税増税を国民に求める大前提が整っていない、また、整える努力を民主党政権は怠ってきたと言わざるを得ません。以上の指摘について、総理の見解を伺います。

 次に、年金関連法案の質問に移ります。

 今般の一体改革で政府が提案する年金関連の法案は、自公政権時代に既に提案されていた被用者年金の一元化や、短時間労働者の厚生年金の適用拡大、公明党が主張してきた低所得者に対する基礎年金加算制度、受給資格期間の短縮など、現行制度の改善が主な柱となっております。

 民主党は、野党時代、現行制度は破綻しているとさんざん批判し、抜本改革を声高に叫んできたわけですから、本来、現行制度をベースにした機能強化という選択肢はなかったはずです。それにもかかわらず、抜本改革を先送りして現行制度の改善を行おうとするということは、民主党が訴えてきた年金制度の抜本改革は、あの普天間基地移設問題のように全く具体案のない幻想だったということであり、年金改革は、結局、現行制度をベースに改善を進めていくという進め方しかないということを政府みずからが認めたことにほかなりません。

 まずは、現行年金制度に対する認識について、野党時代の破綻しているという認識の是非を含め、総理の答弁を求めます。

 年金機能強化法案について伺います。

 本法案には最低保障の強化策として受給資格期間の短縮や低所得者等への基礎年金加算が盛り込まれておりますが、そもそもこれは公明党がかねてより提案していた改善案です。低所得者等への年金額の加算方法については、定額加算は月額六千円とし、その上でさらに免除期間加算を行う仕組みにしております。

 制度への信頼を高めるためには、保険料をきちんと納めてきた方との公平性の確保や保険料の納付意欲を阻害しない仕組みが重要です。どのような検討を経て金額と加算方法を決めたのか、厚生労働大臣に伺います。

 続いて、短時間労働者に対する厚生年金、健康保険の適用拡大について伺います。

 民主党は、当初、対象者を三百七十万人に広げる案を検討しておりましたが、関係者からの反発を受け、党内からも批判が噴出し、結局、四十五万人という当初の八分の一以下に規模は縮小されました。また、三年以内に対象者数をさらに拡大するとしておりますが、結局は先送りにすぎず、どの程度拡大できるかは全く不明です。厚生年金の適用拡大がこのように進まないありさまでは、民主党が目指す、さらにハードルが高い全ての年金制度の一元化など、到底できるはずがないと考えます。厚生労働大臣の答弁を求めます。

 次に、産休期間中の保険料免除措置について伺います。

 次世代育成支援の観点から、現行の育児休業期間中の保険料免除措置を産休期間中にも拡大することについて異論はありませんが、一方で、国民年金の方への対応は置き去りにされたままです。

 公明党は、国民年金についても、まずは育児休業期間中について、夫婦どちらか一方の保険料を免除するなどの措置を検討すべきと考えます。全ての制度の一元化を目指す民主党政権ならば、なおさら国民年金についても対応策を検討すべきではないでしょうか。厚生労働大臣、お答えください。

 次に、被用者年金一元化法案について伺います。

 本法案の中身は、平成十九年に自公政権で提出した法案とほぼ同様の内容です。しかし、当時、野党第一党であった民主党が、国民年金を含めた年金制度全体の一元化を主張し、猛反発していた中で、当時の政府案は、法案審議に至らないまま、審議未了、廃案となりました。当時、民主党が賛成していれば、被用者年金の一元化は平成二十二年の四月から実施できていたはずです。

 官民格差の是正をおくらせてきた責任をどのように認識しているのか、なぜ今になって当時反対していたと同様の内容の法案を提出するのか、総理の説明を求めます。

 また、今般の法案では、共済年金の保険料を将来的に厚生年金の水準にそろえるため一八・三%まで徐々に引き上げていくとしておりますが、仮に民主党が目指す全ての年金制度の一元化を行った場合、事業主負担のない国民年金の保険料を含め、保険料率は統一されます。今般の共済年金の保険料引き上げスケジュールとの整合性がとれないのではありませんか。

 官民格差の是正が進まない点では、職域加算の扱いについても政府の対応は腰が引けております。

 人事院が公表した退職給付水準に関する官民格差の比較調査では、二〇一〇年度に退職した国家公務員が受け取る、職域加算年金に退職金を加えた一人当たりの退職給付の合計額は民間を約四百万円上回っているとの結果が出ております。

 退職給付についても官民格差を是正すべきであり、退職手当と職域加算廃止後の新たな年金を加えた退職給付の水準は民間とそろえるという前提で検討するのが当然と考えますが、いかがでしょうか。

 さらに、一元化に当たり、給付に充てる積立金の統合が中途半端であるとの指摘があります。

 公務員共済の約四十五兆円の積立金のうち、厚生年金に統合するのは約二十四兆円にとどまり、残りは既に退職した公務員や現役の公務員に対する職域加算の財源に充てるとしておりますが、その使途について、試算を含め、明確に説明すべきです。

 これら被用者年金一元化法案のさまざまな問題点について、岡田副総理の答弁を求めます。

 以上述べてまいりましたように、今般政府が提出した年金関連二法案は、民主党が訴えてきた最低保障年金を初めとする年金抜本改革の具体案を全く示すことができないまま現行制度をベースに改善を加えたものであり、短時間労働者の厚生年金等の適用拡大や被用者年金一元化等の内容を見ても、民主党が目指す抜本改革との整合性において、ますます説明がつかないものとなっております。

 民主党は、一体改革の大綱の中に「新しい年金制度の創設」という文言を入れ、マニフェストに対する面目を保とうとしておりますが、本年二月に公表された試算でもわかるように、最低保障年金の創設に多額の財源が必要となるなど、民主党の新年金制度は実現性が乏しいことは明白です。この期に及んでなぜ年金制度についてマニフェストに固執するのか、全く理解ができません。

 政権交代後、一向に進まない具体案づくりを見ても、年金抜本改革など、初めからやる気がなかったと言わざるを得ません。あわせて、これまで、抜本改革の幻想を振りまき、真っ当な年金改革の議論をおくらせてきたその責任は極めて重いと指摘せざるを得ません。潔く、民主党が掲げる新年金制度の創設は断念すべきです。

 最後に総理の明快な答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 公明党の石井政調会長の御質問に順次お答えをしてまいります。

 まず、国土交通大臣、防衛大臣についての御質問をいただきました。

 二人の閣僚に対する問責決議が参議院で多数で可決されたことは、事実として受けとめており、残念なことだと考えております。

 しかし、全ての閣僚が緊張感を持って職責を果たすことが責任の果たし方であり、総理として、全閣僚にそのように指示をしております。国土交通大臣、防衛大臣とも、大いに反省すべき点は反省し、かつ、職務を全うすることが国民に対する責任であると考えております。

 次に、消費税引き上げについてのお尋ねがございました。

 消費税について民主党が前回総選挙時に国民に約束したことは、衆議院の任期中には消費税の引き上げは行わない、税率引き上げを実施する際には国民に信を問いますということであります。

 一方で、民主党政権として、消費税の議論まで否定してきたわけではありません。〇九年の総選挙の際にも、当時の鳩山代表は、消費税に関する議論の必要性は指摘をされております。同時に、政権交代以降の税収の落ち込みや大震災の発生、欧州を中心とした金融危機などの状況も勘案して判断をいたしました。

 この間の経過の中で、私たちの真意が国民の皆様に十分に御理解いただいていない点については、真摯に受けとめ、反省をいたします。社会保障と税の一体改革の意義、必要性をこれまで以上に丁寧に国民に御説明し理解を得ていくとともに、何としても今国会での関連法案の成立をお願いしたいと考えております。

 附則第百四条についての御質問をいただきました。

 人口構造の急速な少子高齢化の中で、社会保障の持続可能性をしっかり担保することが基本でありますが、加えて、リーマン・ショック後の我が国を取り巻く社会経済財政状況の大きな変化、さらには、最近の欧州の政府債務危機問題に見られるグローバルな市場の動向を踏まえれば、社会保障と税の一体改革は、どの政権であっても先送りできない、待ったなしの課題であると認識をしております。

 一体改革については、一昨年十月に政府・与党社会保障改革検討本部を設置して検討を開始して以来、政府・与党内における丁寧な議論の積み重ねを経て、昨年六月に成案、本年一月に素案を取りまとめ、二月に大綱を閣議決定したところであります。

 これらの成案、素案、大綱のいずれにおいても、附則第百四条に従って、平成二十三年度中に税制抜本改革法案を国会に提出する旨を盛り込んでおります。

 政府としては、法律を尊重する義務を負っており、これらの大綱等に示されたとおり、税制抜本改革法案を三月三十日に閣議決定し、国会に提出したものであります。

 法案の今国会での成立についてのお尋ねがございました。

 御指摘の発言は、不退転の決意で社会保障・税一体改革関連法案を今国会中に成立させなければいけないとの決意を申し上げました。

 政治家が政治生命をかけるとは、文字どおりの意味であり、その解説は行いませんし、これから国会で本格的に御審議いただくに際して、あらかじめ成案を得られない場合のことを申し上げるのは、国会に対しても失礼かと存じます。

 また、与党内の意見に関しては、昨年来、丁寧な議論を重ね、党のルールに従った決定をしてまいりました。最終的には、所属議員一人一人が与党としての責任を自覚し、政府・与党一致結束して改革の実現に邁進すると確信をしております。

 与野党ともに改革の必要性については一致していると認識をしており、建設的かつ実りある審議を進めていただき、ぜひ改革を実現させるよう御協力をお願いいたします。

 次に、消費税率引き上げを含めた一体改革を国民に求める前提が整っていないとの御質問をいただきました。

 本年二月の社会保障・税一体改革大綱では、新しい年金制度の創設や高齢者医療制度の見直しを含め、社会保障制度全般にわたり改革の項目や実施時期などを示しており、三月三十日には工程表を閣議決定しております。

 このように、社会保障改革の全体像をお示しするとともに、消費税引き上げによる財源確保と密接にかかわる法案については、税制抜本改革関連法案とあわせ、国会に提出しており、増税先行との御指摘は当たらないと考えております。

 経済状況については、景気の持ち直し傾向が確かなものとなるよう、日本銀行との一層の連携強化を図り、切れ目ない経済財政運営を行ってきております。

 新成長戦略の加速や日本再生戦略の策定、実行を初め、デフレ脱却と経済活性化に向けた取り組みを全力で進めてまいります。

 行政改革や無駄排除については、政権交代以降、行政刷新会議を中心に大いに取り組んできたところであり、最近でも、国家公務員の給与引き下げの実施、新規採用抑制の決定などを行っておりますし、独法改革、特会改革なども進めております。全閣僚をメンバーとする行政改革実行本部を中心に、また、昨日初会合を開催した、民間有識者を集めた行政改革に関する懇談会の議論の成果も反映させて、引き続き、行政の無駄や非効率を排除し、総人件費改革を初めとする行政改革を推進してまいります。

 税制改革については、今回提出している法案において、所得税について、特に高い所得階層に一定の負担増を求めることによりその累進性を高めるとともに、資産課税についても相続税の基礎控除の見直しなどを行うこととしており、税制全体としての再分配機能の回復を図っております。

 なお、消費税収については、現行分の地方消費税を除き、全額社会保障財源化することとしております。

 このように、御党が一体改革の条件とされている諸課題については、政府としても全力で取り組んでおります。

 一体改革は、どの内閣であっても先送りできない課題でありますので、建設的な御議論を改めてよろしくお願いいたします。

 次に、現行年金制度に対する認識についての御質問をいただきました。

 現行の年金制度について、自公政権のもとで、基礎年金の国庫負担割合二分の一への引き上げやマクロ経済スライド導入といった、制度の持続可能性を高めるための御努力をされてきたことについては、私は正当に評価しなければならないと考えております。

 また、平成二十一年の財政検証でも、将来にわたり年金財政の給付と負担の均衡が図られていることが確認をされているところであります。

 しかし、現行制度は、終身雇用や専業主婦というモデルを前提につくられている、国民年金において非正規雇用の増大や未納・未加入者の問題が大きくなっているなどの問題を抱えており、将来の見通しについて国民の信頼が得られているとは必ずしも言えないところもございます。私のこの認識は、総理になる前からも変わっておりません。

 次に、被用者年金一元化法案についてのお尋ねがございました。

 平成十九年の被用者年金一元化法案については、我が党所属の議員から個別の問題点を指摘したことはありますが、同法案は、衆議院の解散に伴い審議未了で廃案となったものであり、民主党として反対していたということではありません。

 今回の被用者年金一元化については、平成十九年当時とは異なり、一体改革大綱において、新しい年金制度の創設を掲げた上で、新制度の創設までには一定の時間を要することから、その方向性に沿って、被用者年金一元化も含めた現行制度の改善にも取り組むという、改革の全体像をお示しした上で提案しているものであります。

 被用者年金制度の一元化が必要であるとの問題意識は与野党で共有をされており、その先の抜本改革のあり方も含めまして、与野党間の協議の中で、胸襟を開いて、国民の立場に立って議論をしていくことが重要と考えております。

 新制度の創設を断念すべきとの指摘への見解についての御質問をいただきました。

 民主党の新しい年金制度の提案は、年金一元化や最低保障年金の創設を通じ、現行制度が抱えるさまざまな課題に応えようとするものであります。新制度に対しては、これまでも種々の問題を御指摘いただいておりますが、平成二十五年の法案提出に向けて民主党内で具体的な制度設計を検討する中で対応の可否を判断していくべきと考えます。

 また、政府としては、まずは最低保障機能の強化など現行制度の改善を図ることとし、これらに必要な費用を消費税引き上げにより得られる財源の用途に含めるとともに、所要の法案を提出したところであります。

 最低保障機能の強化などの改善が必要であるとの問題意識は与野党で共有されていることを踏まえれば、新年金制度の提案を撤回する、しないの議論ではなくて、胸襟を開いて、国民の立場に立って協議をしていくことが重要であると考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣小宮山洋子君登壇〕

国務大臣(小宮山洋子君) 石井議員からの低所得者への年金加算についての御質問ですが、低年金、無年金問題に対応することは年金制度上の大きな課題であり、平成二十年の社会保障国民会議や社会保障審議会年金部会で基礎年金の最低保障機能の強化が提案されたほか、昨年の社会保障・税一体改革の議論でも各団体や報道各社等からさまざまな提案をいただきました。これを受けて、今回、年金制度の中で最低保障機能の強化を図るため、一定の低所得の人に基礎年金額の加算を行うことにしています。

 加算を行う場合には、低所得者に対する加算の効果を出すことが必要である一方で、御指摘のとおり、保険料の納付意欲をできるだけ損なわない仕組みとすることが必要です。社会保障審議会年金部会等の場で、そうした視点を示しながら、具体的な案をもとに検討を行ってきました。

 この結果、具体的な低所得者の範囲として、介護保険や後期高齢者医療制度など、ほかの社会保障制度で用いられている低所得者の範囲を基本として、市町村民税が家族全員非課税、かつ、年金その他の収入が老齢基礎年金満額以下の人としました。

 このように、年金の加算の対象者を限定した上で、対象者に対し一律月額六千円の加算と、免除を受けた期間については割り増しの加算を行うことで、真面目に納付している人の納付意欲にできるだけ悪い影響を与えることのないよう配慮しています。

 短時間労働者に対する社会保険の適用拡大についてですが、今回の適用拡大案は、非正規労働者へのセーフティーネットの拡充や働き方に中立的な制度を確立する観点と、中小企業などの経営への影響に配慮する観点の両方の立場に基づいて、総合的な観点から、現実的なスタートラインとして設定したものです。

 さらに、今回の法案では、第一段階の施行から三年以内という期限を置いた上で、社会保険の適用範囲をさらに拡大するための法制上の措置を講ずるとして、将来のさらなる拡大を明確にしています。

 短時間労働者への適用拡大については、全ての国民が一つの年金制度に加入する形が完成するまでの間も、非正規労働者のセーフティーネットの拡充や働き方に中立的な制度にするという観点から早急な改善が求められている事項であり、この法案の御審議をお願いしたいと考えています。

 国民年金での育児休業期間中の保険料免除の導入についてですが、今回の法案では、現在、次世代育成支援の観点から行われている育休期間中の保険料免除をさらに進め、厚生年金で産休期間中の保険料免除を行い女性が就業を継続しやすいようにするとともに、負担の軽減を行うことにしています。また、被用者であるのに現在厚生年金に加入していない人たちについて厚生年金の適用拡大を行うことで、こうした産休育休期間中の保険料免除を受けられるようにしています。

 一方、産休育休という仕組み自体は被用者を対象とした制度であるので、その期間中の保険料免除を自営業者や無業者など被用者以外のさまざまな就業形態の人にも、そういう人も入っている国民年金の加入者全体に広げられるのかという問題があります。

 いずれにしましても、今後、新しい年金制度について民主党内で具体的な制度設計を検討する中では、育休や産休期間中の保険料免除を含めた次世代育成支援の観点からの御指摘についても対応の可否を判断していくことになると認識しています。(拍手)

    〔国務大臣岡田克也君登壇〕

国務大臣(岡田克也君) 被用者年金一元化法案に関して、三点、お尋ねがございました。

 まず第一に、新しい年金制度との整合性についてです。

 民主党の主張する新しい年金制度をいつから施行するかについては、新制度の設計に関する議論の中で総合的に検討することになるものと考えております。一方で、被用者年金一元化法案については、現行制度の課題に対応し、働き方に中立的な制度となるよう、この国会に提出したものであります。この中で、保険料率の引き上げについても、平成十九年に自公政権が提案した法案と同様のスケジュールを定めております。

 新しい年金制度の具体的な開始までの間にも現行制度の改善を図ろうとする今回の被用者年金一元化法案が新制度と整合性がとれていないということはないと考えております。

 第二に、退職給付の水準についてであります。

 今般の人事院調査では、御指摘のように、公務員の退職給付全体、すなわち一時金、年金の合計が民間を約四百万円上回っているという結果が示されたところです。

 まず、この四百万円の官民格差については、是正すべきものであると考えております。

 この調整をどのように行うかについては、退職手当、被用者年金一元化後の職域部分のあり方をあわせて検討する必要があるため、現在、私のもとに設けられた有識者会議において御議論をいただいているところであります。

 第三に、共済に残る積立金の使途についてであります。

 一、二階部分の共通財源の仕分けについては、賦課方式を基本とする公的年金制度においては、各制度が保険料で賄うべき一、二階部分の給付総額に対して何年分保有しているかということに着目して、年数をそろえて拠出し合うことが最も公平であると整理したものであります。この考え方は、平成十九年法案と同様であります。現時点のごく粗い試算では、公務員共済の積立金のうち、一、二階部分の共通財源として仕分けた後に残る積立金は約二十・七兆円となっております。

 一方、旧三階部分の処理に必要な費用は、利回り四・一%など、平成二十一年財政再計算をもとに試算した場合の現在価値で十八から十九兆円程度となると見込まれております。ただし、旧三階部分の処理費用は、利回りが低下した場合にはさらに必要額が増加するものであることに留意が必要です。

 今回の積立金の仕分けは、一、二階部分の共通財源としての仕分けの公平性を確保するものでありますが、結果として旧三階部分の処理の必要性にも応えるものになっていると考えております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、年金機能強化法案並びに被用者年金一元化法案に対する質問を行います。(拍手)

 両法案を含む七つの法案が、社会保障と税の一体改革の名のもとに、特別委員会で一括審議されようとしています。しかし、民主党の新しい年金制度はおろか、医療や介護保険制度についても法案はまだ提出されておらず、今は序章にすぎないのです。これを皮切りに、さらなる増税と社会保障改悪へ国民を引きずり込もうというものにほかなりません。

 日本共産党は、一体改革という名の社会保障切り捨てと消費税増税に断固反対です。今やるべきことは、小泉構造改革のもとで福祉も自己責任として壊されてきた社会保障を再構築することだと考えます。

 まず、法案の前提となる社会保障と税の一体改革について、基本的認識を三点伺います。

 第一は、消費税増税が被災地の復興を妨げるという点です。

 帝国データバンクによると、東日本大震災による企業倒産は、二月末で六百三十件となっています。被災三県の沿岸部では、津波被害が特に大きかった地域と原発事故による避難区域などに本社のあった企業のうち、休廃業など営業不能状態が約三割の千五百社に及びます。

 岩手県宮古市で靴屋を営む男性は、サンダル十二足、ポケットの全財産九千円で店を再開しました。消費税が上がったら、あおりをもろに食う、増税なんてとんでもないと訴えています。

 大船渡市の漁師さんは、津波で自宅も養殖棚も流されましたが、自力で作業場をつくり、ワカメ漁を再開しました。作業場に通う女性たちは、踏ん張る土台として自宅を再建したいと口々に訴え、集団移転の候補地もみずから探しました。そんなときに増税なんてと憤っています。

 既に多くのものを失い、また、多くをしょい込んでも再起を目指そうとしている被災者に、増税を負わせるべきではありません。総理の見解を求めます。

 第二に、後世にツケを回さないことを最大の眼目としている点です。

 高齢者を厄介者扱いですか。九九年の厚生白書を見れば、「高齢者は社会を支えていく主体」と書いています。日本の高齢者の労働力人口比率は、男女とも欧米諸国よりも高く、特に六十五歳以上七十五歳未満の前期高齢者の労働力人口比率は男女とも三〇%を超えていると指摘し、「こうした高齢者の労働意欲は、少子高齢社会に対する悲観的な見方を変えていくだけの力があるであろう」と明言しているのです。こうした視点を総理はお持ちですか。

 事実、九九年当時の六十五歳以上の労働力人口は四百七十五万人、二〇一〇年は五百八十五万人にふえています。この労働力人口に着目すると、総理がよく言う騎馬戦から肩車型、これはまやかしにすぎないことがわかります。単純に、二十から六十四歳までを生産年齢人口として高齢者人口で割っているからです。しかし、本来、一人の働き手は、高齢者だけではなく自分と子供なども支えています。労働力人口を総人口で割ると一人が約二人を支えるという構図になり、この割合は今後も大きな変動はないはずです。お答えください。

 後世にツケ回しをしないというなら、支え手をふやすことが最大の鍵です。政府・与党は、労働者派遣法を骨抜き成立させ、さらに、今準備をしている有期雇用についての労働契約法改正案では、期待されていた入り口規制を外しました。これでは、不安定雇用をふやすだけではありませんか。

 また、パート労働者への厚生年金適用は当然です。でも、そのために必要なことは、職場の中で一番ベテランになっても一円も昇給なしなど、パート労働者の実態を直視し、均等待遇を確立すべきです。答弁を求めます。

 第三に、そもそも、社会保障や社会保険とは何でしょうか。一体改革の枠で議論される社会保障は、なぜ、年金、医療、介護、子育ての四経費に限られているのですか。

 社会保険は、単なる民間保険とは違って、憲法二十五条の生存権を国が保障するという社会保障の役割を備えているはずです。だからこそ、保険料や利用料を払えない人に減免制度などがあります。国民年金法が、憲法二十五条第二項に規定する理念に基づきと明記しているのも、そのためです。総理に確認します。

 ところが、二〇一〇年十月の第一回政府・与党社会保障改革本部会合に厚労省が提出した「社会保障の現状と課題」によれば、社会保障制度の基本的考え方は、みずから働いてみずからの生活を支え、みずからの健康はみずから維持するという自助を基本とし、これを補完する共助と公助が位置づけられています。共助のシステムについては、負担の見返りとしての受給権を保障する仕組みとして社会保険が基本とあります。

 つまりは、四経費を一くくりにするのは、払わない人には給付がない、単なる保険制度にしてしまうということではありませんか。

 また、経団連は、消費税を少なくとも一〇%と、早くから消費税増税の旗振りをする一方で、基礎年金は全額税方式を主張し、社会保険料の事業主負担をなくすことを求めています。

 社会保険料の企業負担は諸外国から見ても高いとは言えず、むしろ応分の負担を求めていくべきと思いますが、総理の考えを伺います。

 次に、年金法案について質問します。

 年金の支給要件を現行二十五年から十年間にすることは、私たちもかねてより提案してきました。あわせて、無年金、低年金の解消へ思い切った取り組みが必要です。

 年金給付の特例水準の解消として、三年間で二・五%の引き下げなどはとんでもありません。

 そもそも特例措置は、二〇〇〇年以降、厳しい経済状況や高齢者の生活に配慮してとられてきたものです。物価指数の上昇により解消することが見込まれていましたが、その後も賃金、物価の下落傾向は続いています。これは、正規労働から非正規労働への置きかえが進み賃金が減少するなど、デフレ経済を続けてきたからです。また、介護保険料は今回も平均で千円近く値上げとなりましたが、こうした社会保険料等は物価指数に反映しません。物価が下がっているといっても、年金生活者の生活実感とはかけ離れているのです。

 二・五%引き下げはやめるべきです。また、給付抑制策としてのマクロ経済スライドは廃止すべきではありませんか。答弁を求めます。

 政府は、低年金者対策として六千円を上乗せすると言います。基礎年金満額受給者であれば合計で七万円になり、民主党の最低保障年金制度に近づくという、単なる数合わせです。しかし、基礎年金のみ、旧国民年金受給者数は二〇一〇年度末で八百三十二万人になりますが、その平均受給額は四万九千円にすぎません。七万円満額を受け取れる人がどのくらいいるのですか。

 我が党は、基礎年金の二分の一は国庫負担という現行制度を発展させて、保険料の納付実績にかかわりなく、基礎年金満額の半分を国が保障し、最低保障年金制度を目指していく、このことを提案しています。総理のお考えをお聞かせください。

 終わりに、消費税増税以外に道がないという社会保障の将来に対して、若い世代が希望を託せるはずもありません。安心できる年金制度を初め社会保障の充実を目指しながら、無駄遣いを見直し、大企業や富裕層に応分の負担を求めて新たな財源を確保すること、人間らしく働けるルールづくりを確立していくことこそ急がれることを求めて、質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 共産党の高橋議員の御質問に順次お答えをしてまいります。

 まず最初に、消費税増税と被災地の復興についてのお尋ねがございました。

 大震災からの復興はこの内閣の最優先課題であり、復興庁が中心となって、復興交付金、復興特区制度の活用などを通じて、被災地の復興を加速してまいります。

 一方で、人口構造の急速な少子高齢化、社会経済状況の変化、欧州の政府債務問題に見られるグローバルな市場の動向を踏まえれば、社会保障と税の一体改革は、国民の皆様に御負担をお願いするものではありますが、先送りのできない課題であると考えております。

 また、今回の一体改革では、消費税収については、現行分の地方消費税を除いて全額を社会保障財源化し、国民に還元するとともに、きめ細かな低所得者対策を実施していくこととしております。

 次に、高齢者の労働意欲と労働力人口の見通しについてのお尋ねがございました。

 少子高齢化の進展による労働力人口の減少が見込まれる中、今後とも、経済社会の活力を維持し、その持続可能性を高めていくためには、高い就業意欲を持つ高齢者が可能な限り社会の支え手として活躍できるよう、年齢にかかわりなく働ける全員参加型社会を実現するための環境整備を進めることが必要であります。

 一方、高齢者は、一般的に、年金の給付対象となり、医療費の負担も高くなる一方で、多くの高齢者が定年を迎え退職することから、社会保障で支える必要がある者として捉えて、その現役世代に対する割合を騎馬戦型から肩車型と表現をしているところであります。

 今後の人口構成が騎馬戦型から肩車型となる見通しがある中で、御指摘のような高齢者雇用対策等の社会の支え手をふやす取り組みの重要性は十分認識しており、引き続き、取り組みを着実に実施してまいります。

 社会保障四経費と社会保険制度についてのお尋ねがございました。

 一体改革大綱では、子ども・子育て、医療、介護、年金など社会保障四経費分野だけでなく、雇用や障害者施策等社会保障全般にわたり、改革の項目や実施時期など改革の全体像を示しており、四経費分野に限った議論をしているわけではありません。

 また、国民の安心や生活の安定を支えていくため、社会保障制度は自助、共助、公助を適切に組み合わせていくことが必要であると考えており、今回の改革でも、年金の低所得者への加算や国民健康保険の保険料軽減の拡充など、社会保険の仕組みの中でも税財源による支援を強化する仕組みを盛り込んでいるところであります。

 したがって、御指摘のような、払わない人には給付がない、単なる保険制度にしてしまうことを考えているわけではありません。

 次に、社会保険料の事業主負担についてのお尋ねがございました。

 我が国では、年金、医療、介護などの社会保障については、共助の考え方を基本に、国民の参加意識、権利意識を確保する観点から、給付に応じた保険料負担を行う社会保険方式を基本としています。このため、事業主に対しても、厚生年金や健康保険などの被用者保険については、雇い主の責任として、一定のルールのもと、被用者の保険料負担をお願いしています。

 なお、現在の事業主の社会保険料負担の国際水準については、対GDP比で見た場合、おおむね、アメリカより高く、英、独、仏よりも低い水準ですが、法人税などの他の企業負担なども含めて判断する必要があると考えます。

 今回の一体改革は、少子高齢化が進展する中で、個人負担、事業主負担、公費を適切に組み合わせることによって社会保障制度の持続可能性を確保しようとするものであり、企業にも、今後の負担も含め理解を得ていきたいと考えております。

 次に、共産党提案の最低保障年金に関する御質問をいただきました。

 御提案のように、所得が高く、保険料負担能力があるにもかかわらず、保険料を納付しなくても税金で基礎年金の半分を保障する仕組みは、税金の公平な配分や保険料納付意欲の観点から問題があると考えます。

 なお、現行においても、所得が低く、国民年金保険料を支払えない方が保険料免除を受ければ、免除期間中については国庫負担分相当分である二分の一相当の基礎年金を受けることができる制度になっております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣小宮山洋子君登壇〕

国務大臣(小宮山洋子君) 高橋議員からの改正労働者派遣法と労働契約法改正案についての御質問ですが、労働法の規制緩和については、行き過ぎた規制緩和が非正規雇用の拡大等につながった面があります。このため、派遣労働者の保護と雇用の安定等を目指し、このたび成立した改正労働者派遣法の円滑な施行に万全を期していきたいと考えています。

 また、この国会に提出している労働契約法改正案は、有期労働契約を長期にわたり反復更新した場合の無期労働契約への転換などを盛り込んでいます。これにより、労働者が安心して働き続けることが可能な社会の実現を目指していきたいと考えています。

 パートタイム労働者の均等待遇についてですが、パートタイム労働者の均等待遇を目指していくことは重要であると認識しています。現在、労働政策審議会で御議論いただいている今後のパートタイム対策についての取りまとめに基づき、パートタイム労働者の公正な待遇をより一層確保するよう、対策を講じていきたいと考えています。

 特例水準の解消とマクロ経済スライドについてですが、現在支給されている年金額は、過去の物価下落時に特例的に年金額を据え置いたことから、法律上、本来想定している年金額と比べ、二・五%高い水準になっています。

 二月十日に提出した法案には、年金財政を安定させるとともに、現役世代の過重な負担を緩和して世代間の公平を図るため、特例水準の計画的な解消に取り組む措置を盛り込んでいます。具体的には、年金額を一度に引き下げるのでは高齢者の生活に影響が大きいことから、三年かけて徐々に解消することにし、初年度の平成二十四年度については十月分から始めることにしています。

 また、マクロ経済スライドの発動には、特例水準の解消が前提となっています。この仕組みは年金財政の安定と世代間の公平を図るために不可欠であり、社会保障・税一体改革の中では、デフレ経済でもマクロ経済スライドを発動することを検討しています。

 公的年金制度は、老後の生活を支える柱であり、長期的、安定的に運営することが不可欠です。こうした特例水準の解消やマクロ経済スライドの意義を御理解いただきたいと思います。

 低所得者への加算ですが、低年金、無年金問題に対応することは、年金制度上の大きな課題です。各方面からの御提言ももとに、年金の最低保障機能を強化する観点から、低所得者への年金額加算などを提案しています。

 今回の仕組みでは、具体的な低所得者の範囲として、介護保険や後期高齢者医療制度など、ほかの社会保障制度で用いられている低所得者の範囲を基本として対象者を限定しつつ、対象者に対し一律月額六千円の加算と、免除を受けた期間に応じた割り増しの加算を行うことで、真面目に納付している人の保険料の納付意欲にできるだけ悪い影響を与えることのないよう配慮しています。

 なお、加算額の六千円は、老後の基礎的な消費支出を賄う水準と特例水準解消後の老齢基礎年金満額の差額などから設定したものですが、加算によって七万円となる人の数については、現在持っているデータからは把握していません。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 斎藤やすのり君。

    〔斎藤やすのり君登壇〕

斎藤やすのり君 新党きづなの斎藤やすのりでございます。(拍手)

 私は、被災地仙台の選出議員です。今、仙台の町中は復興バブルでにぎわっています。夜の繁華街は、復旧を担う県外の業者の方がたくさん来ておりまして、まるでもう、毎晩お祭り騒ぎのようになっています。

 一方で、海に近い津波被災地の被災者の方に聞きますと、それとは対照的に、多くの方が不安を口にしております。瓦れきの仕分け作業など短期の仕事はあっても、長期の仕事はありません。いつかは仮設住宅を出なければいけない、ついの住みかのめども立っていない。仮に、この後、アパートを借りる、住宅を再建する、不動産取引にもあまねく消費税がかかります。

 この春、ある報道機関がアンケートをとりました。消費税には賛成ですか、反対ですか、東京都心と被災地石巻でとったアンケートです。東京都心は消費税に賛成五七%、石巻は賛成二五%、反対七五%。被災地の方は、復興が先だろう、総理、増税、増税と言うのはやめてくれと叫んでいるんです。

 質問です。

 基礎年金の国庫負担割合三兆円分について、今年度分は年金交付国債で約三兆円を捻出するとしています。これは、平成二十六年度からの消費税増税、国民の六割が反対している消費増税分で返していくと想定されています。まさに、今後議論されるであろう消費税増税の設計内容をよりどころにしています。増税ありき、増税しなければ年金はなくなる、国民をおどしているようにしか私には見えません。

 さらに、今後も基礎年金、医療、介護の財源不足分を消費税で賄うとした場合に、この三つの経費の伸び率は消費税の伸び率より格段に高くなるわけです。つまり、将来も、その際は消費税を再増税するほか道はなくなるわけですが、野田総理はどうするおつもりでしょうか。打ち出の小づちのように消費税を利用するつもりなんでしょうか。

 私は、二年前に事業仕分けの仕分け人をやらせていただきました。やらなくてもいい仕事をわざわざつくって、その仕事をさせるために法人をつくり、スタッフを天下りさせる。国民の血税がこんな使われ方をしているのかと思い、愕然といたしました。私が担当したのは氷山の一角です。こんなのが星の数ほど無数に、それこそ野田総理がおっしゃったように、シロアリのごとく群がっているのを目の当たりにしたわけです。

 しかし、今年度の予算編成においても、この事業仕分けのマインドはすっかり冷え切ってしまっていると言わざるを得ません。多くの事業や独法等にメスを入れるはずでしたが、結局、中途半端にしか切り込むことができず、うやむやとなり、何も進んでおりません。すっかりミイラ取りがミイラになった野田政権がここにあります。

 総理は、増税することが未来への責任だということを言いますけれども、財源がないから消費税で賄うというのは、政治の責任放棄、無責任以外の何物でもありません。これでは、政権交代をした意味がないんです。消費税からの税収を当てにするのではなく、まず、無駄予算の徹底的な切り込みをした上で、これらを年金の財源としていく仕組みが必要だと考えます。

 ゼロベースで予算を組む、全事業仕分けを遂行するという国民との約束を実行する気は、総理、あるんでしょうか。

 もう一つ、増税にかわる財源の捻出として、保険料を支払っていない事業所対策がございます。

 日本年金機構が把握している未納事業者数は十万八千社。しかし、財務省の法人企業統計調査によれば、営利企業約二百八十万社のうち、厚生年金適用事業所数が百七十三万社ですから、数十万社が未加入という見方もできます。

 こういった未加入の事業者もきちんと把握できていない現実があって、この未納事業所対策を優先すべきだと私は考えます。日本年金機構と国税庁を統合し歳入庁を創設すれば、税金と保険料の一括納付が可能になります。十兆円の財源を確保できるという専門家もいます。

 しかし、政府が二十七日に出した歳入庁構想の中間報告によると、国税庁と日本年金機構を統合しない、歳入庁見送り案も含まれていまして、財務省への配慮がうかがわれます。

 総理、歳入庁設置はマニフェストにしっかり書き込んであります。歳入庁設置について、今の総理の見解、前向きで具体的な、曖昧でない答弁をお聞かせください。

 官僚機構への配慮というのは、年金一元化法案にもにじみ出ております。

 共済年金の三階部分である職域加算は、今回の一元法案により廃止することにしています。職域加算は、税金を投入した上で、民間の企業年金に比べて手厚く有利な制度になっています。今回の措置により廃止とのことですが、その後の制度設計が明らかにされておりません。官民格差をなくすためにも、一刻も早くこの職域加算と税の投入をなくすべきだと考えますが、いかがお考えでしょうか。

 社会保障の維持だといって国民から血税を吸い取り、それらを公務員の年金に注ぐというのは、とてもじゃありませんが、国民の理解は得られません。

 正直者がばかを見るという言葉があります。日本国民全員が、年金保険料を納めて、老後資金の柱として運用を国に委ねてきました。というより、委ねざるを得ない制度に従ってきたと言った方が正しいと思います。そんな正直な国民の負託に応えなければいけないのに、政府は見事に裏切りました。

 専門家によると、国民が払った公的年金の積立金の累積額が八百兆円という試算があります。ところが、二〇〇六年、それが百五十兆円。一体、六百五十兆円はどこに消えてしまったのでしょうか。さらに、二〇〇六年百五十兆円あったお金は、二〇一一年には百十兆円。わずか五年で四十兆円の損失というありさまです。

 年金にたかったシロアリは、公金であることをいいことに、株式投資とグリーンピア事業に無責任にばんばん投資をして、多額の損失を出しても、きょうまで誰一人責任をとっておりません。官僚の運用責任についてどのような方針で臨まれるのか、総理の見解を伺います。

 私は、この連休中、仙台市内のシイタケ農家に伺いました。この農家の方は、農林水産大臣賞を受賞したこともある、大変腕のよい農家の方です。

 仙台は、空間線量は低いんですが、風評被害と、四月からセシウムの基準が厳格化されたこともありまして、春の収穫分の出荷がほとんどできなくなりました。東電からの賠償金が出るのは秋です。つまり、秋まで収入はゼロ。三万五千本のほだ木は、ほとんど廃棄しなければいけません。来年から息子さんを後継ぎにと考えていましたが、継がせるのをやめたそうです。シイタケ農家は絶望のふちを今さまよっています。

 今、政治が出すべきことは、被災地の皆さん、原発事故の補償は早急に手当てしますよ、安全なほだ木も融通できるように全力でバックアップします、そして津波被災地には、デフレを脱却し、景気をよくしていきますよ、働ける場所を確保します、増税は最後の最後の手段ですよというメッセージなのではないでしょうか。

 優先すべきは、震災復興とデフレ脱却による経済成長であり、消費増税、TPPではありません。デフレ脱却なくして増税なし、日本の統治機構改革なくして増税なし、グレートリセットなくして増税なしということを最後に訴えて、質問を終わりにします。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 斎藤議員から、五問の御質問をいただきました。

 まず最初に、今後の再増税についてのお尋ねがございました。

 大綱で述べているとおり、今回の一体改革は、社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成への第一歩を踏み出すものであり、まずは、この実現に向けて取り組んでいくことが重要であります。

 一方で、我が国の高齢化のピークがまだ先であることを考慮すれば、社会保障の持続可能性を確保する観点から、さらなる検討、議論を行っていくべきと考えております。

 財源確保のため、予算の無駄の徹底的な切り込みをすべきであるという御質問をいただきました。

 御指摘の歳出削減については、政権交代以降、事業仕分けも活用し、公共事業関係費の大幅な削減など、大いに取り組みを進めてまいりました。平成二十四年度予算においても、無駄や非効率を徹底して排除するため、提言型政策仕分けの提言を適切に反映させ、既存予算を見直すとともに、公務部門における定員や庁舎建てかえなどには特に厳しく対応しているところであります。

 また、事業仕分けの考え方を各府省の予算編成プロセスにビルトインする観点から、原則全ての事業について、各府省みずからが自律的に事業の内容や効果の点検を行い、その結果を概算要求や執行等に反映させる、行政事業レビューの取り組みを推進しているところであります。

 今後も、無駄遣いの根絶、歳出削減に不断に取り組むとともに、公務員人件費削減、独法改革、特会改革などのみずから身を切る行政改革を進めることにより、国民の皆様の納得と信頼を得るよう、全力で取り組んでまいります。

 しかしながら、こうした取り組みだけでは、必要な社会保障の充実や、毎年一兆円規模になる社会保障費の自然増への対応を図ることは困難であり、消費税率引き上げを含む社会保障・税一体改革に取り組むことが必要であると考えております。

 次に、歳入庁の設置についての御質問をいただきました。

 歳入庁については、副総理のもとに立ち上げた作業チームにおいて、先般、中間報告を取りまとめたところであります。この中間報告において示されている徴収体制のイメージについては、何らかの結論を先取りするものではなく、今後具体的な検討を深めていくために示したものと承知をしています。

 引き続き、国民の視点に立った徴収体制を構築する観点から、精力的に検討を進めてまいります。

 次に、職域加算廃止後の新たな年金への税の投入についてのお尋ねがございました。

 被用者年金一元化法案において、公的年金としての職域部分廃止後の新たな年金のあり方については、別に法律を定め、必要な措置を講ずるものとされています。一方で、三月に公表された官民の退職給付に関する人事院の調査結果及び見解では、官民格差が約四百万円あり、官民均衡の観点から、この格差を調整する措置が必要とされているところであります。

 この官民格差の調整に当たっては、国家公務員の退職手当の見直しと、職域部分廃止後の新たな年金のあり方とをあわせて検討する必要があることから、副総理のもとに有識者会議を設け、議論を進めているところであります。

 有識者会議では、職域部分廃止後の新たな年金について、事業主である国の負担をどうすべきかなどの点も含めて議論されるものと考えており、今後の議論を踏まえて、そのあり方を検討してまいります。

 最後に、年金積立金についてのお尋ねがございました。

 年金積立金の残高については、平成十七年度末が約百五十兆円、平成二十二年度末が百二十二兆円となっております。この差額は、この間の運用損一兆円を除き、当該年度の給付費が保険料収入を超えたため、年金積立金を給付に充てたことによるものであり、これは、年金財政上予定をされていたものであります。

 議員御指摘の八百兆円あるいは六百五十兆円という金額については承知しておりませんが、過去に納付された保険料は、おおむね高齢者の給付に充てられております。

 グリーンピア事業については、過去に約三千七百億円の費用がかかっていますが、厚生労働省に設置された検証会議の報告を踏まえ、グリーンピア等の施設はつくらないことを法律上も明らかにし、無駄遣いの排除を徹底いたしました。

 さらに、年金積立金は国民の皆様からお預かりした大切な預かり金であることから、年金制度に対する国民の安心を確保するため、長期的な観点から安全かつ効率的な運用をすることが重要と考えており、この方針に沿った運用が行われております。

 その結果、厚生労働大臣による自主運用が行われた平成十三年度から平成二十二年度までの年金積立金全体の運用益は約二十三兆円であり、多額の損失を出しているとの御指摘は当たりません。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 阿部知子君。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党の阿部知子です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、年金機能強化法案並びに被用者年金一元化法案について質問をいたします。(拍手)

 冒頭、野田総理に、原発再稼働に関してお尋ねしたいと思います。

 三月十一日の東京電力福島第一原発事故以降、政府は脱原発依存を掲げてこられましたが、その具体策についてはほとんど手つかずの状態です。

 五月五日夜半をもって、我が国で稼働する原子力発電所はゼロとなりましたが、なぜか政府は、福井県の関西電力大飯原発三、四号機の再稼働に著しく前のめりとなっています。しかし、福島の事故の検証も途上である上に、安全性についても多方面から疑義が上がり、周辺自治体も大きな懸念を抱いています。

 果たして政府は、再稼働について、主権者である国民の六割以上の反対を無視して、電力不足のみを盾に、強引に事を進めるおつもりなのでしょうか。野田総理の見解を伺います。

 次いで、法案に対しての質疑に入ります。

 そもそも、国民の老後の生活の最大の支えである年金問題は、政権交代前後の大きなテーマでありました。拡大する非正規雇用によってその多くが厚生年金や健康保険に加入できない結果、国民年金や国民健康保険の対象者となり、いわゆる未納、未加入問題が将来の社会保障を危うくするとの認識が与野党で共有されていたと思います。そうした社会状況に対して、果たして、年金、とりわけ老後の生活保障機能をどう担保していくのかに関して、税か社会保険方式かという大きな分岐があったはずでもあります。

 まず、税と社会保障一体改革担当の岡田副総理に、基本となるお考えを伺います。

 今回提出された年金機能強化法案には、その点について明確な方向性が示されておりません。

 例えば、一定所得以上の高齢者の給付を削減する一方で低所得者への年金加算を行うことは、保険の原理から逸脱しております。これは、税による最低保障年金の導入に踏み込まれたということでしょうか。

 他方、受給資格期間の十年間への短縮を行えば、新たな低年金受給者が生まれ、また、結果として福祉的加算に頼るというモラルハザードが保険方式を危うくしかねない等の混乱を、どうお考えでしょうか。小宮山厚生労働大臣に伺います。

 加えて、提出された年金機能強化法案では、何をもって最低保障機能と考えるのかが全く明らかではありません。現金給付を幾らとするのか、住宅や医療、介護、移動の自由などの生活保障施策とあわせ考えて、国民に具体像を示す必要があるのではないですか。

 また、そうした施策の充実は、当然、地方の独自財源の必要性ともつながりますが、今回の一体改革では、消費税を福祉目的とした結果、地方の裁量権は極めて限られたものになりました。むしろ、地方消費税の充実により、自主財源として広く活用を図るべきと考えますが、岡田副総理に伺います。

 また、短時間労働者への社会保険の適用拡大への歩みを進めることは賛成ですが、今回の法改正による適用対象は五百一人以上の企業です。非正規社員に社会保険を拡大しようとする中小企業の保険料負担を軽減する方が、企業に対するインセンティブともなると考えられますが、いかがでしょうか。厚生労働大臣に伺います。

 さらに、被用者年金一元化法案は、実は真の一元化とはほど遠く、従来のおのおのの年金管理組織はそのままにして、表向きの一体化を図るだけのものとなっています。いわゆる歳入庁構想を大胆に推し進め、地方自治体と協力して所得把握を行い、漏れのない社会保険料の徴収を図り、所得に比例した公平公正な年金制度とすべきと考えますが、岡田副総理に御見解を伺います。

 年金をめぐっては、世界に例のないスピードで少子高齢化が進む我が国にあっては、一、高齢期の安心できる生活のイメージを国民と共有すること、二、働く世代、とりわけ非正規雇用に置かれる女性、若者への積極的支援、三、年金の持続可能性の根本にかかわるデフレ脱却のいずれもが不可欠です。

 このままのデフレ状態が続けば年金積立金は二〇三一年に枯渇すると政権交代当時言われていましたが、さらに早まったのではないですか。

 野田総理は、デフレ期にあっての消費増税が経済を悪化させ、年金の持続可能性すら危うくすることを一体どうお考えなのかを最後に伺って、私の質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 社民党の阿部議員の御質問にお答えいたします。

 まず最初に、エネルギー政策及び原子力発電所の再稼働についてのお尋ねがございました。

 中長期的には原子力への依存度を最大限引き下げていくという方向を目指すべきと考えており、これを実現するためには、徹底的な省エネに加えて、思い切った再生可能エネルギーの普及拡大が重要であります。

 政府としては、今後、国民が安心できる中長期的なエネルギー構成を目指し、幅広く国民各層の御意見をお伺いしながら、ことしの夏をめどに、新しい戦略と計画を取りまとめてまいります。

 また、大飯原子力発電所三、四号機の再起動については、事業者の実施したストレステストの結果を原子力安全・保安院が確認し、その妥当性を原子力安全委員会が確認いたしました。その上で、これまで約一年間で政府として積み重ねてきた対策や知見をわかりやすく整理した、原子力発電所の再起動に当たっての安全性の判断基準を、先般の四大臣会合で取りまとめた次第であります。

 大飯原子力発電所三、四号機については、この判断基準に基づき、安全性を確認した上で、電力需給の見通しや電力コスト増の影響を検証した結果、再起動の必要があると判断したところであります。

 こうした政府の判断について、立地自治体を初めとする国民の皆様の一定の理解が得られるよう、丁寧に説明を行ってまいります。

 次に、消費税率引き上げが経済成長等に与える影響について御質問いただきました。

 デフレ脱却や経済活性化に向けた取り組みは重要であり、これらと社会保障と税の一体改革は同時に進めていかなければなりません。

 デフレから脱却すべきという認識のもと、税制抜本改革法案では、平成二十三年度から平成三十二年度までの十年間の平均において、名目成長率三%程度、実質成長率二%程度の経済成長を目指すという政策努力の目標を示し、デフレ脱却や経済活性化に向けて、こうした望ましい経済成長のあり方に早期に近づけるための総合的な施策を実施することを明記したところであります。

 年金を初めとする社会保障の安定財源を確保し、その持続可能性を確保する観点からも、社会保障と税の一体改革は待ったなしであり、不退転の決意で臨みますが、それとともに、新成長戦略の加速や日本再生戦略の策定、実行を初め、デフレ脱却や経済活性化に向けた取り組みを全力で進めていく決意であります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣岡田克也君登壇〕

国務大臣(岡田克也君) まず、年金財源についてお尋ねがありました。

 現在の基礎年金は、現役時代に拠出した保険料の実績に応じて年金額が決まる、社会保険方式の仕組みとなっております。ただし、基礎年金の半分は税金で賄われており、財源面で見ると、社会保険方式と税金との組み合わせになっていることになります。

 今後の年金改革に当たっては、私としては、大きく言えば、最低保障機能については税を中心に、それを超える部分については社会保険方式を中心にというふうに整理をしているところでございます。

 次に、最低保障機能の具体像と、消費税を地方の自主財源とすることについてのお尋ねがありました。

 まず、最低保障機能の具体像についてであります。

 今回の一体改革では、子ども・子育て、医療、介護、年金など社会保障制度全般にわたり、改革の項目や実施時期などの改革の全体像を示すとともに、低所得者対策の強化や重層的なセーフティーネットの構築などによる貧困、格差対策の強化を行うこととしております。

 低所得者の方への支援につきましては、金銭的な支援のみでなく、その方の状況に応じ、必要な医療、介護の提供、働く意欲に応じた就労の機会や就労支援の提供、住まいの確保、社会参加の機会の提供など総合的な支援や取り組みが必要であり、可処分所得を幾らにするのかということが必ずしも対策の基準や目安となるわけではないと考えております。

 次に、消費税を地方の自主財源とすることについては、少子高齢化の進展に伴い、社会保障費は急速に増大しております。こうした中で、社会保障は、子育て、医療、介護など、多くが地方自治体を通じて国民に提供されており、地方自治体の役割も極めて大きいことから、地方単独事業も含め、国とともに地方が負担する社会保障給付に対する安定財源を確保することが重要な課題となっております。

 このため、今回の一体改革においては、地方団体にも御理解をいただいた上で、社会保障四経費にのっとった範囲の社会保障給付における国と地方の役割分担に応じて引き上げ分の消費税収を配分するとともに、現行分の地方消費税を除き、地方分の消費税収については、現行の基本的枠組みを変更しないことを前提として、全額社会保障財源化することとしたところでございます。

 消費税引き上げに対する国民の理解を得るためにも、今回の引き上げ分について、全額社会保障に使うということが国民の理解の増進につながるものだというふうに考えているところでございます。

 被用者年金一元化法案の実施機関と、公平公正な年金制度についてのお尋ねがありました。

 被用者年金の一元化後も、共済組合や私学事業団は引き続き医療保険のための保険料徴収や給付などを行うことから、保険料の徴収その他の年金関係事務についても、これらの共済組合等を引き続き活用することとしたものであります。

 また、被用者年金一元化法案において、公務員等の保険料率を引き上げ、厚生年金の保険料率に統一し、民間サラリーマン等との同一保険料、同一給付を実現することにしております。

 なお、御指摘の歳入庁について、年金に対する信頼回復の観点からも、年金保険料の納付率向上等を図ることは重要な課題であり、そのための徴収体制の構築について精力的に検討を進めているところでございます。(拍手)

    〔国務大臣小宮山洋子君登壇〕

国務大臣(小宮山洋子君) 阿部議員からの、低所得者への年金加算と受給資格期間の短縮についてですが、低年金、無年金問題に対応することは現在の年金制度上の大きな課題であり、今回の社会保障・税一体改革では、最低保障機能の強化を図るため、一定の低所得の人に基礎年金額を加算する低年金対策や、受給資格期間を短縮する無年金対策を行うことにしています。

 加算を行う場合には、低所得者に対する加算の効果を出すことが必要である一方で、保険料の納付意欲をできるだけ損なわない仕組みとすることが必要です。

 社会保障審議会年金部会等の場で、そうした視点をもとに検討を進め、社会保険方式である現行制度の中で、低所得者に対し、税財源によって福祉的な加算を行うことにしました。対象者に対し一律月額六千円の加算と、免除を受けた期間については割り増しの加算を行うことで、真面目に納付している人の納付意欲にできるだけ悪い影響を与えることのないよう配慮しています。

 また、受給資格期間の短縮については、現に生まれている無年金者をできるだけ救済すると同時に、納付した保険料をできるだけ給付に結びつけるため、実施するものです。

 一方で、年金制度は、四十年間保険料を納付することを前提に、法律上の義務ともなっています。この点については十分周知していくことが重要だと考えています。

 短時間労働者に対する社会保険の適用拡大についてですが、今回の適用拡大案では、非正規労働者へのセーフティーネットの拡充や働き方に中立的な制度を確立するという観点と、中小企業などの経営への影響に配慮する観点の両方の立場に基づいて、総合的な観点から、現実的なスタートラインとして設定をしています。

 さらに、今回の法案では、第一段階の施行から三年以内という期限を置いた上で、社会保険の適用範囲をさらに拡大するための法制上の措置を講ずるとして、将来のさらなる拡大を明確にしています。

 お尋ねのように、適用拡大を行うために企業の保険料負担を減免することにすると、保険料の減免に応じて年金給付も引き下げることにすれば、セーフティーネットの強化にならず、適用拡大の意義が失われてしまいます。また、仮に保険料負担を減免しつつ年金給付を維持することにすると、減免した保険料に相当する費用負担をその他の企業や労働者にお願いすることになり、こうした企業の理解を得られないといった課題があります。

 短時間労働者への社会保険の適用拡大については、非正規労働者のセーフティーネットの拡充や働き方に中立的な制度にするという観点から早急な改善が求められることから、この法案の御審議をお願いしたいと考えています。(拍手)

副議長(衛藤征士郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(衛藤征士郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   野田 佳彦君

       厚生労働大臣   小宮山洋子君

       国務大臣     岡田 克也君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  齋藤  勁君

       厚生労働副大臣  辻  泰弘君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.