衆議院

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第2号 平成24年10月31日(水曜日)

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平成二十四年十月三十一日(水曜日)

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 議事日程 第二号

  平成二十四年十月三十一日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。

 第二百五十五番、鹿児島県第三区選出議員、宮路和明君。

    〔宮路和明君起立、拍手〕

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(横路孝弘君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。安倍晋三君。

    〔安倍晋三君登壇〕

安倍晋三君 自由民主党の安倍晋三であります。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、野田総理の所信表明演説について質問をいたします。(拍手)

 質問に入る前に、一言申し上げます。

 私は、五年前、この壇上において所信表明演説を行い、その後、病のため、突然総理の職を辞する結果となりました。この壇上から、国民の皆様に、そして全ての議員の皆様に、心からおわびを申し上げます。

 私は、その日以来、この責任のとり方について、日々考え続けてまいりました。

 事の失敗に屈すべからず、失敗すれば失敗を償うだけの工夫を凝らすべきとは、不平等条約の改正をなし遂げた陸奥宗光の言葉です。

 挫折を含め、政権を担った経験を生かし、私の全身全霊を傾けて国民のために今の日本を立て直すほかに責任を果たす道はないと決意いたしました。

 民主党政権による、失望の三年間。

 政治主導の看板のもとに、裁量権を取り上げられた役人が責任を伴う判断を行わず、そして政治家も責任をとらない結果、政府は無責任体制に陥り、国家運営の著しい停滞を招きました。

 また、野田総理が、さきの総選挙において、書いてあることは命がけで実行する、書いていないことはやらないんです、それがルールですとまで断言したマニフェストについては、今や、総理が、書いていることはやらずに、書いていないことに命をかけることとなり、政治に対する信頼を大きく失わせました。

 民主党政権の誕生により、我々自民党は、立ちどまり、過去を振り返り、政治家とは何かを問いただす貴重な機会を与えられました。

 国民との信頼関係の上にある国家運営。国民との信頼関係が最大の武器となる外交力。日本の経済力が日本の外交力を後押しし、そして、その外交力が経済力を後押しする。その結果、日本国民一人一人が力を取り戻す、日本が再び、経済大国として、グローバル社会のリーダーとしてよみがえる。このシンプルに聞こえる構造こそ、与党としての国民との契約です。

 この契約を履行するという覚悟を持ち続けることは、政治家として決して簡単なことではありません。しかし、それをやり抜く意思の力こそ、与党になることの条件であります。

 この三年間、政治とは、自民党とは何か、国家とは何か、日本の未来はどうあるべきか、我々は、この三つの質問をみずからに問いただしてきました。そして、今、私も、我が自由民主党の同志たちも、その答えを見出し、再びこの国難に全力で立ち向かう覚悟であります。

 野田総理におかれては、いま一度、政権与党としての矜持をお考えいただきたい。党の分裂、党内の離反におびえ、国家としてなすべき課題に集中できない政権の姿を、もうこれ以上国民にさらすべきではありません。

 今こそ、この混乱に終止符を打ち、もう一度強い日本を取り戻すことこそ、我々自由民主党に課せられた使命であります。

 私は、その覚悟の上で、野田総理に、基本的な政治姿勢について質問をいたします。

 野田総理は、八月八日、我が党の谷垣前総裁、そして国民の皆様に対して、一体改革関連法案が成立をした暁には近いうちに国民の信を問うと約束されました。

 さきの総選挙における消費税は上げないとの約束を百八十度転換するわけでありますから、当然、その前に信を問わなければなりません。しかし、我々は、政局よりも政策、増大する社会保障費に対する責任ある姿勢を示すべきとの観点から、野党である立場を超えて法案に賛成し、成立するに至りました。

 皆さん、胸に手を当てて、もう一度真面目に考えてください。

 総理、あれからもう三カ月もたったわけであります。この近いうち解散について、さきの三党幹事長会談において、総理が具体的な新しい提案をすると輿石幹事長が約束したにもかかわらず、総理からは、いまだ何の提案もいただいておりません。与党幹事長の言葉も、鴻毛より軽い。総理は、平然と国民との約束から逃げる。

 総理は、自衛隊の観艦式の訓示において、至誠にもとるなかりしか、言行に恥ずるなかりしかと述べられました。国民のために命をかける自衛官に対して発せられた最高指揮官としての言葉は重い。その言葉に対し責任を持たねばなりません。

 総理、総理は、自衛隊の諸君に対し、みずからの言行を省みて、恥ずかしくないのですか。

 総理は、近いうちに解散すると、確かに、間違いなくおっしゃった。前原大臣は、総理は誠実な人、約束を絶対に守る人であるから年内に解散をすると述べました。つまり、年内に解散をしなければ、前原大臣にとっても不誠実な人となるわけであります。

 さらには、総理は、参議院におけるみずからへの問責決議を重く受けとめるともおっしゃっています。

 改めて国民の前でお聞きします。総理は、年内に解散する約束を果たすお気持ちがおありですか。至誠にもとるなかりしか。誠実にお答えください。

 我が党は、特例公債法案、一票の格差是正、社会保障制度改革国民会議の三点について、その重要性を十分に認識しております。これまでも、さまざまな提案を行い、誠実に対応してまいりました。

 特例公債法案に対しては、二十四年度予算の組み替え動議等で具体的な是正案を示してきました。一票の格差是正については、〇増五減法案は我が党の提出法案です。野田総理も、優先的にこれをやると言っておられた。国民会議の設置に至っては、我々が提案したものであります。

 これらの課題に積極的に取り組まず、むしろ、これらを盾にとり、その責任を野党に押しつけて、解散先延ばしと政権の延命に励む。いわば、やみくもに政治空白をつくったのはあなた方です。そこには、一片の責任感もなく、ただただ権力にしがみつく惨めな姿があるのみであります。

 谷垣総裁は、総理の言葉を信じて約束を果たし、一体改革関連法案は成立に至りました。次は、野田総理、あなたの番です。この臨時国会において、近いうちに国民に信を問うというみずからの国民との約束を果たさなければなりません。

 私は、十月三日、自由民主党総裁就任後直ちに福島県を訪問しました。そこで耳にしたことは、前面に出てこようとしない政府への憤りであり、縦割りのまま現場の声に応えられていない復興庁への不信であり、責任を被災地の市町村に押しつける民主党の無責任な姿勢に対する失望でした。

 福島第一原発を訪れた際には、双葉郡の方々から、政府の収束宣言にもかかわらず、みずからの生活は一向に行く先が見えないという痛切なお気持ちを承りました。

 私は、我々が安全神話の中に立って原子力政策を推進してきた責任を痛感するとともに、政治が強い指導力を発揮し、断固たる覚悟と責任を持って地域の皆様方の希望を取り戻さなければならない、それが我々の使命であるとの決意を新たにいたしました。

 野田総理、被災者の皆様は、百万遍の美辞麗句より、ふるさとでの生活を取り戻すという結果を求めているのです。

 今もまだ、三十二万人の方々が避難生活を強いられています。新生活へと踏み出すための集団移転は、いまだ五割以上が着工すらできていません。農地も漁港も、いまだ三割程度しか復旧していません。新たな生活への見通しが立たないまま、被災地の皆さんは、総理がおっしゃったように、二度目の冬を迎えます。

 総理、あなたは一月に、この場で、復興を力強く進めていく道具立てがそろいましたと語りました。しかし、どの道具もあなたは使いこなしていません。予算があっても、現場では人が足りず、使い切れない。復興庁があっても、査定庁などと呼ばれ、自治体が案をつくり国の復興庁は査定するという、お役所的な丸投げの発想が蔓延しています。

 我々ならば、まず、復興庁の役人の意識を根本的に改めます。そして、受け身ではなく、国の職員たちがみずから被災地に入り込み、被災地の皆さんと一緒になって復興プランを練り、着実に実行していきます。

 復興庁が発足してからほぼ九カ月、総理のリーダーシップで何が変わったのでしょうか。自民党が政権を回復した暁には、現場主義で、現場に入り込み、被災地の皆さんとともに真の復興を実行する決意があることを宣言いたします。

 なお、政府・与党は、復興予算を流用し、なおかつそれを我が党のせいにするなど、言語道断であり、強く抗議をいたします。

 次に、外交、安全保障について伺います。

 この民主党政権下の三年間は、まさに外交敗北の三年間であり、ひたすら国益を損ねてきました。

 抑止力の意味も理解できずに、最低でも県外という元総理の無責任な発言に端を発した普天間基地移設問題の迷走は、地元沖縄県民の気持ちを大きく傷つけたのみならず、日米同盟の信頼関係に致命的な亀裂を生じさせました。

 日中韓首脳会議においても、今までややもすると米国に依存し過ぎていた、アジアの一員としてアジアをもっと重視する政策をつくり上げていきたいと発言され、米国からは、日米中の正三角形の関係を形成し、日米同盟を見直すものと受けとめられました。

 当時、米国の知日派の元政府高官は、この人物は日米同盟の意味がわかっていない、私たちにとって驚くべき発言だと私に述べました。日米同盟とは、日本が侵略されれば日本のために米国の若い兵士たちが命をかけるということであります。彼は、そのことを理解していない人物がリーダーを務める国のために命をかけねばならない兵士はどう思うでしょうかと述べ、中国の指導者は日米同盟の重要性を理解していない人物が総理になったことを驚きと歓迎をもって迎えたのではないかとまで指摘をしました。

 尖閣諸島の漁船衝突事件における政権の対応は、目を覆うばかりでありました。おおよそ国家安全保障の考えが理解されていない。

 外交無策の足元を見透かされる中で、韓国の李明博大統領やロシアのメドベージェフ大統領の我が国領土への不法上陸を許しました。

 これ以上、日本が諸外国から軽視され、国益を損なうことを見過ごす時間的余裕は、日本国民には残されてはいないんです。

 日本外交の再建のためには、まずは、日米同盟を再構築し、その揺るぎない信頼関係を内外に示すことが第一であります。

 そのため、集団的自衛権の行使を認めるべく、解釈を変更する必要があります。その上に立って、我が党は、国家安全保障基本法を策定し、党議決定いたしました。

 公海上において、日本のシーレーンを守るため米海軍の艦船と海上自衛艦が航行している際、米艦船が攻撃を受けて、それを自衛艦が救助しなくとも日米同盟は傷つかないとでも野田総理はお考えでしょうか。助けなければ、その瞬間に日米同盟は危機的な状況になる可能性があります。

 集団的自衛権の行使を可能とすることによって、日米同盟は、より対等となり、強化されます。結果として、東アジア地域は安定した地域となります。

 日米間の信頼を回復し、同盟を強化した上において、我々自民党は、インド、豪州、ASEAN諸国との安全保障、経済、エネルギー、各分野の関係をより緊密化し、さらに、中国、韓国との関係改善を図ってまいります。

 同時に、我が国の美しい領土、領海は断固として我々が守るとの決意を、国民に、世界に示さなければなりません。我が党が政権につけば、海上保安庁そして防衛力を、より充実強化させてまいります。

 なお、TPP交渉においても、外交力も戦略もなく、対等な交渉力を欠いた現政権では、とるべきものもとれず、守るべきものも守れません。我が党では、既に、聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対することを決定しております。

 総理は、十一月十八日から始まる東アジア・サミットにおいてTPPへの参加表明を行うのかどうか、明確な答弁を求めます。

 総理、総理は、まさに日米同盟を傷つけた元総理を、事もあろうに外交担当の党の最高顧問に任命されました。原発事故対応を誤り混乱させた前総理も、新エネルギー政策担当の最高顧問です。皆さん、これはブラックジョークでしょうか。そして、このたびの内閣においては、暴力団との関係がかねてからうわさされていた田中けいしゅう議員をあえて法務大臣に任命する。

 総理は、一体何を意図してこうした人事をなさるのか、お伺いをいたします。

 田中前大臣は拉致の担当でもありました。このことは、総理がいかに拉致問題を軽視しているかの証左であります。

 十年前、私は小泉総理とともに北朝鮮を訪問しました。私が忘れることができないのは、金正日総書記との握手ではありません。それは、五人の拉致被害者の方々が羽田空港におり立った、二〇〇二年十月十五日のあの秋の日のことであります。

 被害者の方々は、家族の皆さんと涙の対面を果たされました。そこには、家族会会長の責任感から、横田滋さん、早紀江さんが来ておられた。そこにめぐみさんがいないことは、どんなにつらかったことか。お二人がみずからの手でめぐみさんを、そして、全ての拉致被害者の家族の方々がその子供たちをしっかりと自分の手で抱き締めることができる日がやってくるまで、私は闘い続けると決意をいたしました。

 私は、それは、与野党を超え、日本の政治家、そして総理の使命だと信じます。

 安倍政権において、拉致問題の解決とは、被害者の帰国、真相の究明、犯人の引き渡しの三点であると政府方針として決定しました。民主党政権は、なぜこの基本方針を変えたのでしょうか。お伺いをいたします。

 我々自民党は、国際社会との連携を進め、そして、この問題を解決しなければ北朝鮮に未来はないのだと北朝鮮みずからに判断させるため、圧力に重点を置いた、対話と圧力の姿勢によって問題の解決を図ってまいります。

 強い外交力は強い経済力の裏打ちを要します。中国を初めとする昨今の我が国領土に対する挑発行為の頻発は、我が国経済の脆弱化の結果とも考えられます。

 この三年間、民主党政権の経済政策には、確固たる針路も戦略も欠如していました。

 株価は低迷を続け、歴史的水準で推移する円高状況はもはや企業の努力を超えており、それを放置する中で企業の海外移転を看過し続けてきました。中小企業も苦しんでいます。

 また、原発ゼロと温室効果ガス一九九〇年比マイナス二五%といった、実現不可能かつ整合性のとれない、夢だけを先行させたエネルギー政策を掲げ、安定的なエネルギー供給の確保に何ら具体策を示さずに経済成長を唱えるという、大いなる矛盾を抱え続けてきました。

 デフレ脱却に向けた明確な処方箋を示すこともできず、むしろ、デフレの加速を招き続けています。

 昨日も、日銀の政策決定会合において、さらなる金融緩和の推進や、政府、日銀の共同文書の発表等がなされましたが、市場にとってはほぼ想定の範囲内であり、強いメッセージを与えるには至っておりません。

 額に汗し、精いっぱい仕事に励んだところで、経済成長なき国民生活のままでは、その努力の先にある未来を実感することはできません。

 デフレは日本経済低迷の根源であり、我々は、あらゆる政策を総動員し、その脱却を果たしてまいります。

 そのために、まず、政府と日銀が政策協調をする中で大胆な金融緩和を行い、着実にデフレ脱却を図るべきと考えます。また、円高を是正し、あらゆる手段を尽くして、競争力ある日本の輸出企業を守っていかなければなりません。その上で、新たなビジネスアイデアやイノベーションに国家資源を投資し、経済成長を実現させる新たな成長戦略を推し進めていかなければなりません。

 そして、国民の信を得た確かな政権の手でつくられた成長戦略、市場が評価できる政権基盤の上にこそ、世界の金融市場は反応し、現実の成長軌道をもたらすのです。

 野田総理、予備費使用のびほう策に無駄な時間と労力を空費するのではなく、潔く、みずからの限界を悟り、国家国民のために一刻も早く信を問うことこそが今や最大の経済対策と考えますが、いかがでしょうか。

 社会保障と税の一体改革に関して伺います。

 我々は、一体改革に関する三党合意を行いましたが、今後もこれを進めていくことは当然です。

 しかしながら、強い社会保障制度とは、できもしない給付のばらまきを約束することではありません。みずからの生活はみずからによって支える自助自立を基本とし、これをお互いが助け合う共助によって補完し、それでも対応できない者に対しては公助によって支えるという順序によって図られるべきです。

 税や保険料を納める者の立場に立ち、この自助、共助、公助の基本理念を基礎として強い経済、社会をつくることこそ、強い社会保障制度の構築につながり、その給付は確かなものとなります。

 年金制度については、保険料の納付に応じて年金が支給される現行制度を基本として、給付と負担のバランスの一層の確保を図る必要があります。医療、介護については、給付の重点化、効率化や負担の公平化が避けられません。生活保護については、額に汗する正直な働き者が報われるよう、不正受給への対策、給付水準の適正化が急務であり、直ちに取り組むべきです。

 こうした我が党の社会保障政策における基本的な考え方について、総理の見解をお伺いします。

 なお、三党合意によって、民主党政権の正統性と政権基盤は崩壊しました。

 社会保障制度改革は、国民に信を問い直し、その民意を受けた正統性と安定した基盤を備えた新たな政治体制のもとで、腰を据えて進めるべき問題と考えます。

 国民会議についても、単独で設置を強行しようとしたり、民主党の選挙対策のために新年金制度の議論を先行させたりすることがあれば、これは三党合意を踏みにじるものと付言させていただきます。

 次に、教育再生について伺います。

 現在、教育は危機に直面しております。陰湿ないじめ、親による虐待、育児放棄といった凄惨な事件が起こる中で、家庭教育、そして学校教育に対する国民の自信と信頼が大きく揺らいでおります。

 私は、品格ある国家、社会をつくり、世界から信頼され、敬愛される国をつくりたいと思います。誰もが日本に生まれたことを喜び、誇りに思うことができる国づくりを目指してまいります。

 しかし、それは、日本に生まれてきた子供たち全員が、それぞれの夢を実現する力と機会を与えられた結果でしか実現しません。その目標は、全ての子供たちに高い学力と規範意識を身につける機会を保障することであり、五年前に制定された新しい教育基本法には、公共の精神、道徳心、国や郷土を愛する心、職業教育、環境教育、家庭教育などが盛り込まれています。

 民主党は、教員免許更新制の抜本的見直しをマニフェストに掲げるとともに、教員の指導力強化と、学力、体力の向上を図るための全国統一学力テスト等を廃止するなど、教員の質の監視、教育の評価の機会をみずから摘み取り、教育の再生に向けた歩みを徹底的にとめようとしています。

 教員が違法な選挙活動を行い、裏金を民主党の候補者に渡すという信じがたい出来事も起きております。そして、その多くは、日本の歴史、伝統、文化を否定し、国旗・国歌に反対する日教組との関係によるものと言っても過言ではありません。

 高い道徳力と学習意欲の構築は、国家発展の基盤であります。

 公平中立、そして正義感と子供への愛情にあふれる教師の背中で、子供たちは、伸び伸びと失敗を恐れず挑戦し、そしてみずから学んでいくのです。そして、オリンピックのときだけでなく、自然に国歌を奏で、歌う、そんな教育現場の実現に向けて、我々自民党は、もう一度全身全霊をささげる用意があります。

 野田総理、総理みずからの教育観は余り聞いたことがありませんが、教育再生についての私の所見についてのお考えをお伺いいたします。

 最後に、野田総理、私は、あえて申し上げたい。

 総理は、所信表明演説の中で、あしたやあすという言葉を何回も用いて、責任を果たすと述べられました。政治空白をつくって政策に停滞をもたらしてはいけないとも述べられました。

 しかし、一度解散を約束した政権は、その存在自体が政治空白だということを肝に銘じていただきたい。もう、これ以上、日本人の美徳と品格を傷つけないでいただきたい。それが、野田総理、あなたの責任です。

 日本はたそがれを迎えていると評論する人たちがいます。それは間違いです。未来は、私たちが何をするかにかかっています。総理が所信で述べられたように、沈む夕日のセンチメンタリズムに浸っているいとまはありません。今、求めるべきは、人々に活力をもたらす光り輝く朝日です。

 私たち自由民主党には、成長戦略があります。地に足のついた、未来を見据えたエネルギー政策があります。私たちは、働く人たちのために、日々の生活に不安を抱く人たちのために、子供たちのために、力強い経済を取り戻すことができます。

 日本が主権を回復して、ことしの四月二十八日で六十年目を迎えました。本来であれば、六十年前、七年間の占領時代につくられた仕組みを見直すべきでした。しかし、それをしなかったがために、今、さまざまな問題が私たちの前に立ち塞がっています。

 国民の生命財産と日本の誇りを守るため、今こそ、憲法改正を含め、戦後体制の鎖を断ち切らなければなりません。我々の伝統と文化の上にみずみずしい新しい日本をつくることができるのは、私たち自由民主党です。あなたたちではありません。

 野田総理、野田総理……(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

安倍晋三君(続) 皆さん、選挙が近くて議席が危ないという恐怖はわかりますが、しばらく静かに聞いていただきたいと思います。

 野田総理、一日の仕事を終えて仰ぐ夕日の美しさに感動するときを迎えているのは、総理、あなた自身であります。

 解散・総選挙を行い、その結果国民の信を得た政権によってこそ強力な経済外交政策を推進することができます。そして、日本は輝ける新しい朝を迎えるのです。

 そのために、総理の決断を求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 自由民主党の安倍総裁から御質問をいただきました。順次お答えをしてまいりたいと思います。

 まず最初に、解散についての御質問をいただきました。

 十月十九日の三党党首会談のときに、近いうちに国民の信を問うと申し上げた意味は大きい、自分も責任を重く受けとめているし、それを踏まえて、環境整備をした上で判断をしたい、そこは自分を信じてほしいというお話をさせていただきました。これは、特定の時期を明示しない中でのぎりぎりの言及だというふうに思います。

 そして、環境整備の中でも、とりわけ急がなければいけないテーマとして、特例公債法案、一票の格差、定数削減の問題、社会保障国民会議のことを挙げさせていただいております。

 条件が整えば、きちっと自分の判断をしていきたいと考えております。

 また、参議院において問責決議が可決されたことは、深く肝に銘じ、重く受けとめております。そのことも念頭に置きつつ、さきに党首会談におきまして、るる、ぎりぎりの線でのお話をさせていただいたと考えております。環境整備をした上で判断したいと申し上げた含意を、もう一度かみしめていただきたいと存じます。

 また、前原大臣の発言については、政治家個人としての感想を言われたものと理解をしております。

 続いて、復興庁が発足してからの総理のリーダーシップについてというお尋ねがございました。

 本年二月の復興庁発足後、私を長とする復興庁を司令塔として、被災者の生活支援やインフラの復旧等に取り組んでまいりました。

 復興庁職員、さらには被災地に設置された復興局等の職員は、現地に足しげく通い、地域の実情を把握するとともに、被災自治体等との連絡を密にして、現場主義で復興施策の推進に取り組んでおります。また、私自身も、被災地を幾度も訪問して、被災者の声に耳を傾けてまいりました。

 この結果、高台移転の事業に着工する地域が順次出ているなど、復旧から本格的な復興の段階に移りつつありますが、政府の取り組みには、まだまだ不十分な点、至らぬ点があることも事実であります。

 政府としては、こうした点を真摯に受けとめ、被災地の復興をさらに加速していくため、被災自治体の職員確保や、国の職員から成る復興連携チームによる復興事業の促進支援など、さまざまな施策に取り組んできており、先日も、復興庁を中心に各大臣がしっかり対応していくよう、私から指示をしたところであります。

 今後とも、被災自治体の要望には丁寧に対応するなど、被災地に寄り添いながら、継続的な人的支援、復興特区、復興交付金等により、被災地の努力を政府一丸となって支えてまいります。

 次に、集団的自衛権及び日米関係についての御質問をいただきました。

 従来から、政府としては、集団的自衛権の行使は憲法上許されないと解してきていると承知をしているところであり、野田内閣として、現時点で、その解釈を変えるということはありません。

 その上で申し上げれば、御指摘の公海における米艦防護については、平成二十年に発表された安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会の報告書においても、集団的自衛権の行使を認めるべきだとの提言がなされたものと承知していますが、もとより、この問題については、さまざまな議論があってしかるべきであろうと考えております。

 いずれにせよ、日米同盟については、引き続き、安全保障分野のみならず、経済、文化・人的交流における協力を含む包括的な日米同盟の深化、発展を一層推進していきたいと考えております。

 この点については、オバマ米大統領とも一致しており、四月の私の訪米時には、日米共同声明を発表し、日米同盟の今日的意義や今後長期にわたる日米関係のあり方を確認したところでございます。

 続いて、TPPへの参加表明についての御質問をいただきました。

 FTAAPの実現は既に内外で共有された目標であり、政府としては、高いレベルの経済連携を引き続き推進し、貿易・投資に関する新たなルールづくりを主導する方針です。

 このため、国益の確保を大前提として、守るべきものは守りながら、TPPと日中韓FTA、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を同時並行的に推進いたします。

 我が国のTPP交渉への参加については、我が国国内における議論や関係国との協議が煮詰まっていく段階で判断をしてまいります。

 政府としては、特定の時期にTPP交渉参加を正式決定する方針を固めたという事実はありません。

 次に、閣僚、党役員人事に関するお尋ねがございました。

 鳩山元総理と菅前総理に党最高顧問をお願いしていることは事実でございます。いずれも総理経験者であり、その経験を踏まえて大所高所から党の活動について御意見をいただくべく、お願いをしたものでございます。他党においても、総理経験者は、同様、類似の扱いをされているものと承知をしています。

 田中前大臣の任命と、その任命に至るプロセスについては、人事でありますので、さまざまな総合的な検討と判断の結果であると申し上げます。

 任命した閣僚が職務を全うできなかったという意味で、責任は自覚をしています。新たに滝大臣を任命し、内閣全体で職務に邁進することによって、その責任を果たしてまいりたいと考えます。

 次に、拉致問題の基本方針についてのお尋ねがございました。

 拉致問題は、我が国の主権及び国民の生命と安全にかかわる重大な問題であり、私の内閣にとっても、その解決は最優先の課題です。

 政府としては、生存者の即時帰国に向けた施策及び安否不明の拉致被害者に関する真相究明を最重要項目として確認するとともに、それを踏まえた八項目にわたる拉致問題対策本部長指示において拉致実行犯に係る国際捜査を含む捜査等の継続を掲げており、拉致実行犯の引き渡しを求めていく方針に変わりはありません。

 今後とも、全ての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現するため、全力を尽くしてまいります。

 次に、予備費を活用した経済対策と、解散に関するお尋ねがございました。

 我が国の経済は、欧州、新興国などの減速などを背景に状況が変化しつつありますが、政府としても三カ月連続で景気認識を下方修正したことは、御承知のとおりであります。

 このような事態に際して、財政の活用も含めて適時適切に切れ目のない経済対策を講じることが必要と判断し、今般、予備費を活用した経済対策を、先週二十六日に決定をいたしました。さらに、遅くとも来月中をめどに、日本再生戦略の実現や復旧復興に資する第二弾の経済対策をまとめるよう指示を出しているところであり、民需回復につなげるよう、間断なく対策を講じていきたいと考えます。

 近いうちに国民の信を問うことについては、このような経済状況への対応も含め、やるべきことをやり抜き、また、環境整備を行った上で判断をしていきたいと考えております。

 次に、社会保障政策の基本的な考え方についてのお尋ねがございました。

 社会保障制度については、自助、共助、公助が最も適切に組み合わされることが必要であります。

 その上で、昨今においては、核家族の増加などの家族形態の変化、非正規労働者の増加など、自助を支える社会的基盤が弱体化していることに着目し、共助や公助によるセーフティーネット機能を強化する必要があると考え、社会保障・税一体改革では、自助、共助、公助の好循環を目指しているところであります。

 また、さきの国会で、自民党も含めた三党の合意のもとで成立した社会保障制度改革推進法の基本的な考え方は、社会保障の機能の充実と給付の重点化、効率化を同時に行い、負担の増大を抑制しつつ、持続可能な制度を実現するということであります。

 年金、医療、介護、生活保護、それぞれについて御指摘をいただきましたが、まずは、さきの国会から継続審議となっている年金二法案を早期に成立させることで将来の給付と負担のバランスや年金財政の安定を確保した上で、生活保護の見直しを進めるとともに、医療、介護を含めた社会保障制度の残された課題について、三党合意や改革推進法に示された考え方に沿って、議論を深め、取り組んでいく必要があります。

 与野党を問わず、政治の責任として、社会保障に対する揺るぎない安心感を示すためにも、国民会議を早急に立ち上げることが必要であり、重ねて御協力をお願いいたします。

 最後に、教育再生についての御質問をいただきました。

 私は、将来の希望にあふれ、国民一人一人が誇りを持って、この国に生まれてよかったと実感できる社会を築いていく上で、教育が果たすべき役割は極めて大きいと考えており、教育や人材育成の重要性については、議員と認識を同じくするものであります。

 政府としては、意思ある全ての子供たちに教育を受ける機会が与えられ、知徳体の調和のとれた成長が図られるよう、政権交代以降、人への投資を重視するという考え方のもと、高校授業料実質無償化、小学校一、二年生の三十五人以下学級の実現、新学習指導要領の着実な実施を初め、教育費の負担の軽減や教育の質の向上などに積極的に取り組んできたところであります。

 今後とも、日本再生戦略を踏まえ、社会の期待に応える教育を目指し、改革の推進に全力で取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 仙谷由人君。

    〔仙谷由人君登壇〕

仙谷由人君 私は、民主党・無所属クラブ・国民新党を代表し、総理の所信表明演説に関連して質問を行います。(拍手)

 今月八日、山中伸弥教授がiPS細胞研究でノーベル賞を受賞されることが発表されました。また、昨日は、文化勲章を受章されるとのことであります。心から敬意を表し、お祝い申し上げます。

 同時に、私が思い起こしましたのは、一九四九年に湯川秀樹教授が日本人初のノーベル賞を受賞され、焼け跡、闇市の中で日本の復興に向けて雄々しく立ち上がっていた日本人に大きな希望と勇気を与えたという歴史的事実であります。

 大変な危機のただ中にある今日の我が国において、この山中チームの快挙は、日本と日本人に大きな希望と勇気を与え、日本人のありようと特質に自信を取り戻させてくれたと存じます。山中教授を初め、京都大学iPS細胞研究所の皆様方の御尽力と御労苦に改めて感謝申し上げます。

 今日の日本は、四重五重の大変な構造危機にあります。

 昨年三月十一日に起きました東日本大震災と原発事故が、目の前の最も大きな危機として存在しております。

 加えて、日本は、バブル崩壊以降、失われた二十年と呼ばれるゼロ成長、低成長の時代が続き、この十五年間、国民の可処分所得と貯蓄率は下がり続けています。今日の世界経済も、欧州政府債務危機から始まった景気後退がアメリカ、欧州、新興国へと伝播をし、同時減速しかねない状況であります。

 人口減少と少子高齢化の進展は、日本経済から活力を奪い、日本の虎の子である社会保障制度の持続可能性を危うくしております。

 他方、閉塞状況がナショナリズムを激しくさせ、その発散はとんでもない事態を招きかねないことも、私どもは真剣に捉えるべきでありましょう。

 そしてもう一つ、我々国会議員自身一人一人の問題として、政治の危機、政治主体の危機が存在すると自覚する必要があります。我々政治家、国会議員と政党のレーゾンデートル、存在理由が問われています。

 この政治の危機は、この国会で喫緊の二つの課題を解決することによって、克服する方向に向かうと信じます。そして、新たな政治文化、熟議の民主主義をつくり出すことができます。

 一つ目の課題は、特例公債法を成立させることであります。

 今の財政状況から見て、これは日本版財政の崖であります。四月に成立した予算、その財源確保のために必要な特例公債法が成立していません。これは、国民生活、地方財政を苦しめ、そして、世界経済に対するクラッシュの引き金を引くことにもなりかねません。

 もちろん、予算執行の一次責任は政府・与党にあります。しかし、ねじれ国会では、野党は予算執行について実質上の拒否権を持っているわけでありますから、野党の皆様方にも、責任野党とは何なのかをお考えいただきたいのであります。

 国民生活目線で、大局的な観点で、政局的思考を超えて、前提条件なしで、特例公債法を速やかに成立させていただきたいのであります。(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

仙谷由人君(続) 毎年毎年、歳入法案が政局の思惑で成立せずに円滑な予算執行が妨げられるという制度的な欠陥を正すために、さきの党首会談で野田総理は、予算と特例公債を一体処理するルールづくりを提案しました。新しい仕組みやルールは、どの政党が政権を担おうとも必要不可欠だと考えておりますが、総理がこのような提案を行った理由を御説明いただきたいと思います。

 二つ目の緊急課題は、一票の格差是正であります。

 これは、最高裁が違憲状態と厳しく指摘しているとおり、まさに待ったなし。その解決に与党も野党もありません。政党の大小も関係ありません。内閣総理大臣の解散権が制約を受けないことはもとよりでありますけれども、根幹は、国民主権の問題であります。一票の価値を平等に近づけなければならないとの要請は、議会制民主主義、とりわけ議院内閣制の根本にかかわる問題であります。

 衆議院は、選ばれた議員が政治権力、内閣をつくり上げるのがその使命でありますから、違憲状態の定数で選ばれた首班の内閣では、その権力の正統性、レジティマシーに疑いを生じさせます。違憲の衆議院のそしりを受けかねません。

 与野党は直ちに精力的に協議を行い、この国会で区割り審設置法と公職選挙法改正を実現するよう、御努力、御協力を切にお願いいたします。

 特例公債法と一票の格差是正、この二つの課題の解決にかける野田総理の意気込みをお聞かせください。

 一昨日、野田総理は、この衆議院において所信を表明されました。これに対して、参議院では、自民党を中心とした野党が、先例となっている総理大臣の所信表明演説の衆参同日聴取を拒否したのであります。

 確かに、いわゆる両院独立活動の原則からすれば、衆議院と参議院の議事は、それぞれ別個に進められるものなのかもしれません。しかし、所信表明演説の衆参同日聴取の先例、この慣例は、参議院の地位を高らしめ、ひいては内閣に対する国会の行政監視機能をより十全たらしめようとする、そのような先人たちの知恵があらわれているものだったはずであります。

 このような趣旨を理解せず、総理に何らの対抗措置もない問責決議を口実に、総理に所信表明演説をさせないなどというのは、参議院にとって、みずからの地位をおとしめることにつながりかねません。

 この動きを主導したのが、かつては参議院の地位向上に熱心に取り組んでいた参議院自民党であります。彼らは、問責決議という強力な武器を振り回して、これが手に余るようになってしまい、かえって自縄自縛に陥っていると言わざるを得ません。議会人としての冷静な対応を期待するばかりであります。

 また、このような参議院自民党の行動を許した自民党総裁のガバナンスには、重大な疑問を呈せざるを得ないのであります。

 東日本大震災が発生してから一年半が過ぎました。被災地は、いまだ厳しい状況にあります。

 政府・与党は、野党の協力もいただいて、復興基本法、復興財源確保法、復興特区法、復興庁設置法、福島復興再生特別措置法などを整備し、三次にわたる補正予算を組んで、迅速な復興に向けて取り組んでまいりました。引き続き、国の総力を挙げて取り組む必要があります。

 ところで、本来なら一般会計で行うべき事業が、東日本大震災復興特別会計の各省所管分及び全国防災対策費四千八百二十七億円という区分の中に計上されていると指摘されております。被災地の復旧復興に真に直結するものを最優先すべきことは当然でありましょう。

 そもそも、どのような経緯で、どのような理由で、被災地の復旧復興に直結しないと言われる事業が、全国防災対策費、東日本震災対策費として計上されたのか。全てが否定されるべきものなのか。与野党協議の反映として計上されることになったものがあるのか、それとも、省庁の悪乗り分があるのか。復興担当大臣と財務大臣の見解を聞きます。

 民主党は、これまで、福島と東日本の復興再生と日本全体の防災、減災に向けて、地元の方々の御意見、御要望を受けとめ、予算の確保や制度の改正につなげてまいりました。今後も、新たに設置した民主党の福島復興再生プロジェクトチームを中心に、その取り組みを強化していきます。

 特に、民主党が主導して成立させた原発事故子ども・被災者支援法にのっとり、避難者支援、住宅支援、健康管理調査などの具体化が重要であります。その基本方針や予算の確保について、総理の御見解を伺います。

 冒頭で述べましたとおり、今、日本経済を取り巻く状況は、かつてなく深刻です。日本の貿易構造も、中国、ASEAN、NIES向けが米国向けをはるかに上回るなど、劇的な変化の中にあります。

 歴史的な社会保障と税の一体改革関連法の成立をなし遂げた野田内閣の次の使命は、新しい成長戦略、すなわち日本再生戦略を自信を持って強力に実行、推進することであります。

 日本再生戦略は、グリーン、ライフ、農業の六次産業化、そして中小企業を重視した成長戦略であります。私流に申し上げれば、特に重要なのは、グリーンイノベーション、ライフイノベーション、とりわけ医療イノベーション、そして、アジアを中心とした外需の内需化の三つであります。

 脱原発依存という新しい国是のもと、政策を総動員してグリーンエネルギー革命を起こし、同時に新しい需要と新しい雇用を生み出すことは、経済政策、産業政策、雇用政策としても有効であります。

 世界経済の低迷が見込まれる今、太陽光、地熱、風力、小水力などの再生エネルギー、エネファームや省エネルギーの促進、スマートシティーづくりの拡大を政策誘導して、日本国内に新しい需要と雇用の場をつくるのです。

 例えば、エネファーム、太陽光パネル、蓄電池という、私流に言わせれば新三種の神器とスマートメーターを各御家庭に普及させて、一人一人の国民が電気の消費者であると同時に生産者であり管理者であるというプロシューマーの考え方を普遍化、常識化していく必要があります。

 このことが、化石燃料を多大に使うことによる交易損失を減少させて、日本のGDI、GNIを増大させることにつながります。そして、このことが、可処分所得の減少を防ぎ、賃金デフレを反転させてデフレ脱却につなげることができ、国民一人一人を豊かにすることになります。

 発電部門に競争原理を導入するためには、送電部門の中立化も避けては通れません。国際的に高値で購入している天然ガス価格も引き下げていく戦略が重要であります。

 脱原発依存とグリーンエネルギー革命推進に対する総理の決意、電力システム改革に関する基本的考え方について質問をいたします。あわせて、先般の予備費を使った経済対策の狙い、特に新エネ、省エネ促進への取り組みについても御説明ください。

 山中教授のノーベル賞受賞で一躍脚光を浴びている医療イノベーション分野でも、民主党政権は重点的に取り組んでまいりました。新しい産業をつくり出すため、新薬、創薬開発や医療機器、再生医療の分野へ各省庁の垣根を越えて重点的に資源を投入し、大胆な規制改革と人材育成を推進する必要があります。

 民主党政権は、医療イノベーション分野にどのように取り組んできたのか、今後どのように取り組むのか、総理に伺います。

 アジア、中東地域のインフラ建設へ日本のシステムをパッケージとして売り込み、アジア、中東の旺盛な需要を日本の内需とするという戦略は、鳩山内閣のときに検討を開始し、菅内閣の新成長戦略、野田内閣の日本再生戦略へと進化、発展をしてまいりました。その一例がパッケージ型インフラの海外展開であり、日本勢受注の実績も着々と上がっています。

 政府は、民間と二人三脚で相手国のニーズに応え、日本企業のビジネスチャンスを広げるべく、積極的な経済外交をさらに加速すべきであります。その際、官民ファンドをつくって、企業のバランスシートの限界を超えた投資を進めることも必要です。

 官民連携による外需の内需化について、総理の力強い抱負をお聞かせください。あわせて、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、インド等におけるこの間の展開と実績についても御紹介ください。

 我々はどのような社会をつくり、生き抜いていくのか、今、多くの日本人が自問しています。民主党政権が理想とする社会像ははっきりしています。目指すのは、野田総理が言う、分厚い中間層を守り育てること、人々に居場所と出番が保障される社会であります。

 米国の経済学者でノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツは、今日のアメリカを評して、一%の上位所得者が九九%の下位から富を吸い上げるグリード資本主義、そういう社会だと述べております。社会保障や雇用保険を含むセーフティーネットが貧弱なために不平等が進んで、中間層が搾取され、社会が分断化され、ひいては経済の足を引っ張っていると言っているわけであります。もって他山の石とすべしであります。

 分厚い中間層復活の基盤は社会保障制度であります。

 二〇一二年六月三十日付のロンドン・エコノミストの記事によれば、国連の調査報告でも、失われた二十年の日本がまだ国連報告でも世界ナンバーワンの一人当たり国富を持っていると評価されています。これは、国民皆保険制度に裏打ちされた医療ケアサービス、戦後に構築した社会保障制度のおかげだと私は思います。だからこそ、社会保障制度を維持させるため、我々は、大きな犠牲を払ってまで社会保障と税の一体改革関連法を成立させたのであります。

 一体改革では、コンクリートから人へ、チルドレンファーストの理念に基づき、それまで軽視されてきた現役世代と将来世代を社会保障の対象として明確に位置づけました。子ども・子育ての分野を初め、この一体改革を具現化するために、三党合意に従って国民会議を早急に立ち上げ、一刻も早く議論を開始することが必要です。それは、与野党を問わず政治の責任でもあり、また、政府の責任でもあります。

 国民会議の始動について、総理の意気込みと方針を伺います。

 中間層を守り抜くためには、経済戦略の遂行によって雇用をつくり出すのと同時に、雇用のセーフティーネットを充実することも不可欠です。

 知識経済化するこれからの経済社会に対応する人材育成、職業訓練の視点を含め、民主党政権が行ってきた、そして行おうとしている雇用対策、積極的な労働市場政策について、総理から御説明ください。消費者が安心して暮らせる社会を構築するため、消費者行政についての抱負もぜひお聞かせ願います。

 中間層を守るためには、コミュニティーの再生も重要であります。その際、家族、御近所、地域、行政の役割はもちろん大事でありますが、それだけでは対応できないこの現代社会の現実を直視する必要があります。

 民主党は、新しい公共という考えのもと、NPOを含めたさまざまなセクターが公を支える新しい社会づくりに取り組んでまいりました。

 総理、過去三年間、民主党政権が新しい公共を促進してきた公益認定の簡素化や税額控除制度など、この取り組みと成果を述べていただきたい。あわせて、深刻化しているいじめ、そして児童虐待の問題について、内閣としてどのように取り組むおつもりか、お聞かせ願います。

 総理が所信で述べられた外交、防衛に関する姿勢は、極めてバランスがとれております。高く評価できるものでした。

 尖閣諸島の一部の所有権を国に移転したことも、その平穏かつ安定的な維持管理と大局的な日中関係を視野に入れ、熟慮に熟慮を重ねた上で行われた重い決断であったと言えます。

 その上で言えば、中国や韓国など近隣諸国との関係で意思疎通チャンネルを確立することが、日本外交の積年の課題だと考えます。

 野田総理には、いかに首脳レベルで信頼関係を再構築し、率直に物を言い合える関係をつくろうと考えているのか、セカンドトラックを含めた重層的取り組みについてもお聞かせ願います。

 一般にはまだ人口に膾炙しておりませんが、日本の安全保障政策は、民主党政権下で大きく進化しております。

 例えば、野田総理も財務大臣としてその作成過程に参加し、平成二十二年十二月十七日に菅内閣でまとめました防衛大綱は、それまでの自民党政権では何十年もできなかった、北重視を南西重視、基盤的防衛力の整備を動的防衛力の整備、陸重視を海空重視に大転換をいたしたのであります。昨今の地域情勢を見るにつけ、極めて時宜を得た対応でありました。

 総理、あなたの国を守る覚悟と今次の防衛大綱のもとでの具体的な施策について、ストレートにお聞かせください。あわせて、役割を充実拡大させた国連PKOへの派遣人数について、政権交代前と今日との比較を含め、野田内閣の実績を御説明ください。

 政府の行政改革について、特別会計の数を十七から十一に減らす、独立行政法人制度を廃止する、法人数を四割弱削減する改革案を国会に提出してございます。

 総理に、行政改革の断行にかける決意を伺います。

 また、一票の格差是正に加え、定数削減を実現することこそ、国会の身を切る政治改革であります。自民党、公明党を初め定数削減を公約に掲げた各政党は、我が党の比例定数八十削減に反対するのみならず、この国会で具体的な削減案を示すべきであります。

 政治改革に取り組む総理の姿勢をお聞かせください。

 今、政治家一人一人が、そして政党が、その立ち位置を問われています。

 民主党は、一九九八年四月二十七日につくりました「私たちの基本理念」という綱領的文書において、民主中道の道を創造すると高らかにうたっています。

 総理が所信で表明された方針、すなわち、強欲資本主義に陥ることのない分厚い中間層の確保、脱原発依存とグリーンエネルギー革命、チルドレンファーストに力点を置いた社会保障像の再構築、そして日米同盟の深化と新防衛大綱に基づく現実的な防衛政策、この方針は、民主党が今後も推進しようとする改革志向の民主中道路線をまさに具現化したものと考えます。

 最後の質問として、日本を導く立場にある野田総理から、みずからの立ち位置、民主党の立ち位置と進む道を国民にわかりやすく説明していただくようお願いいたします。

 総理には、ど真ん中の中道をどこまでも突き進んでいただきたい。そして、日本の改革に邁進していただきたい。そうエールを送り、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 民主党を代表しての仙谷議員の御質問にお答えをしてまいります。

 まずは、予算と特例公債を一体処理するルールづくりに関する御質問をいただきました。

 現下の厳しい財政事情にあっては、いかなる政権であっても、特例公債なしで今の財政を運営することはできません。ねじれ国会の制約があっても、国家国民のため、政策本位で論戦を闘わせ、やらなければならないことにきちんと結論を出すことが政治の使命であり、そのための最大の試金石と考えられるのが特例公債法案であると考えております。

 先般の私の提案は、毎年の特例公債法案を政治的駆け引きの材料にしてしまう悪弊を断ち切るものであり、与野党間で胸襟を開いて議論を進め、解決策を見出さなければならないと考えております。

 次に、一票の格差是正と、後段で定数削減の御質問もありましたので、あわせてお答えをさせていただきたいというふうに思います。

 選挙制度に関しては、国会において各党各会派で議論、成案を得るべき事項ではありますが、違憲、違法の状態にある一票の格差是正は喫緊の課題であり、また一方、議員、政治家の身を切るという意味で、定数削減も国民の強い要請と認識をしております。

 この二つの課題のいずれもがさきの国会で成案を得ることができなかったことはまことに残念であり、今臨時国会において法改正が実現することを強く期待しております。党利党略を超えて、違憲、違法状態からの脱却が最優先課題であることは言うまでもありませんが、政治改革の推進という国民の要請にいかに応えるか、各党が真剣に議論し、今臨時国会で結論を得ていただくよう、切にお願いをいたします。

 続いて、子ども・被災者支援法の基本方針についてのお尋ねがございました。

 福島の再生なくして日本の再生はありません。原発事故で被災した子供を初めとする住民の生活を守り支えていくことは、大変重要な課題であります。

 政府としては、子ども・被災者支援法に基づき、現在、避難者支援、住宅支援、健康管理調査などについて、具体的な対象地域や施策を含む基本方針の策定や必要な予算の確保に向け、検討を行っているところであります。

 今後、民主党の中に設けられた子ども・被災者支援ワーキングチームと密接に連携しつつ、真に支援を必要とされる方に適切な支援が行われることとなるよう、積極的に検討をしてまいります。

 続いて、エネルギー政策についてのお尋ねがございました。

 原発に依存しない社会の実現に向けて、これまでの原発推進政策を大きく転換し、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入するとした革新的エネルギー・環境戦略を踏まえて、エネルギー政策を遂行してまいります。

 また、こうした政策転換を可能とするためにも、グリーン政策大綱を年末までに策定し、日本から世界へと広がるグリーンエネルギー革命を思い切って加速させます。

 電力システム改革については、需要家による電力供給元の選択の自由を確保すること、送配電網を広域的かつ公平中立に使えるようにすることなどを通じ、競争的で国民に開かれた電力システムを構築し、低廉で安定的な電力供給を実現してまいります。

 現下の経済情勢を踏まえ、切れ目ない政策対応を行うため、経済対策の第一弾として、先般、日本再生戦略におけるグリーン、ライフ、農林漁業の重点三分野を初めとする施策の前倒しなど、緊要性の高い施策について、予備費の使用を決定いたしました。

 徹底した省エネルギー社会の実現と再生可能エネルギーの導入拡大は、グリーンエネルギー革命の柱であり、七月にスタートした固定価格買い取り制度の着実な運用や、今回予備費で措置した家庭用燃料電池の導入支援など、あらゆる政策資源を投入して取り組んでまいります。

 次に、医療イノベーションの推進についてのお尋ねがございました。

 政府は、医療イノベーションの実現に官民挙げて強力に取り組むため、平成二十二年十一月に医療イノベーション会議の開催を決定し、翌年一月に医療イノベーション推進室を設置しました。

 医療イノベーション会議は、本年六月、医療イノベーション五カ年戦略を取りまとめ、その内容は日本再生戦略に盛り込み、七月に閣議決定しました。

 これらを踏まえ、政府といたしましては、革新的な医薬品や医療機器の創出、再生医療や個別化医療の実現に向けた施策を一体的に推進しております。

 具体的には、医療イノベーション推進室を中心として、来年度予算の概算要求段階から、府省の垣根を越えた横串調整を実施しております。

 また、薬事法につきましては、医療機器の特性を踏まえた制度改正について、次期通常国会に改正法案を提出することを目指して取り組んでいるところであります。

 続いて、経済外交についてのお尋ねがございました。

 アジア太平洋地域を初めとするグローバル需要の取り込みは、我が国が経済成長を維持し、そして増進をしていくためにも不可欠でございます。

 このため、ことし七月に作成した日本再生戦略にあるとおり、幅広い国々と戦略的かつ多角的に経済連携を進めるとともに、円高メリットを活用した海外MアンドAの促進などの施策を推進していきます。

 また、日本の技術や豊富な経験、ノウハウを集約し、官民連携によるインフラ分野での海外展開を推進していきます。

 昨年十一月の日・ASEAN首脳会議やことし四月の日・メコン地域諸国首脳会議では、主要なインフラ案件リストを提示いたしました。

 インドネシアでは高効率石炭火力発電所の整備、ベトナムではハノイの外港の港湾開発、インドではデリーとムンバイを結ぶ貨物専用鉄道の建設、ミャンマーではティラワ地区を含むヤンゴン大都市圏のインフラ整備など、ASEAN諸国を中心に、精力的にインフラ整備と関係システムの輸出に取り組んでいるところであります。

 次に、国民会議の早期の立ち上げについての御質問をいただきました。

 さきの国会では、チルドレンファーストの理念に立脚した子ども・子育て支援の拡充や、現行の年金制度の改善といった社会保障改革と、その安定した財源を確保するための税制改革を内容とする一体改革関連法が成立しました。しかしながら、いまだ道半ばであり、今後とも、公党間の約束である三党合意を基礎に、社会保障の残された課題について、さらに議論を進める必要があります。

 国民会議は来年八月二十一日までの期限となっており、既にカウントダウンは始まっています。

 このため、まずは速やかに会議を立ち上げて議論を始めることが、議員御指摘のとおり、与野党問わず政治の責任であり、政府の責任であると考えますので、引き続き、御協力を呼びかけていきたいと思います。

 次に、民主党政権の雇用対策についてのお尋ねがございました。

 分厚い中間層を復活させるためには、高齢者、女性、若者、障害者、全てを念頭に全員参加型社会を目指すとともに、ディーセントワークを実現しなければなりません。

 二〇〇九年の政権交代以降、これまで、求職者の訓練機会を確保するための求職者支援制度を創設し、第二のセーフティーネットとするとともに、医療、介護といった成長分野での雇用創出や人材育成を進めるなど、累次の雇用対策を講じてきたところであります。

 また、東日本大震災の発生を受け、産業政策と一体となって雇用を創出するなど、「日本はひとつ」しごとプロジェクトとして、被災地の雇用情勢に応じた対策に取り組んでまいりました。

 さらに、少子高齢化が進み、非正規雇用の労働者が全労働者の三分の一を超える中で、さきの国会では、労働者派遣法、労働契約法、高年齢者雇用安定法をそれぞれ改正し、働く人を一層元気にする仕組みができつつあります。

 今後は、日本再生戦略に基づき、分厚い中間層の復活という社会ビジョンの実現に向けて、若者雇用対策など、さらに力を入れてまいります。

 続いて、消費者行政についてのお尋ねがございました。

 消費者が安心して暮らせる社会の構築は、日本経済の六割を占める個人消費の回復の重要な前提でもあり、野田内閣として重要な課題であります。

 このため、本年七月に消費者政策会議を開催し、食品と放射能に関するコミュニケーションの強化と高齢者の消費者トラブル防止のための消費者安心アクションプランを策定いたしました。特に、食品の安全と放射性物質に関して消費者の皆様に御理解を深めていただくことによって、全国民が消費者として福島を応援していくことが可能となります。

 今後は、誰でも、どこに住んでいても、トラブルに遭った際に十分相談を受けられる体制の整備が重要であり、引き続き、地方自治体の取り組みをしっかりと支援してまいります。

 続いて、民主党政権が推進してきた新しい公共の取り組みと成果についてのお尋ねがございました。

 政権交代以降、全ての人に居場所と出番のある社会をつくるため、新しい公共の推進に逐次取り組んでおります。

 具体的には、認定NPO法人の要件を緩和するとともに、認定事務の迅速化を図りました。

 とりわけ、認定NPO法人等への寄附については、平成二十三年分所得から、所得税の税額控除を導入し、住民税の税額控除の適用下限額を引き下げるといった優遇税制を抜本的に拡充しました。これにより、新しい公共の担い手を支援するだけではなく、我が国における草の根での寄附文化の発展を促していきます。

 この結果、二十一年度以降三年間で、認定NPO法人数は、百七から二百七十六法人に約二・五倍に増加をしておりますが、引き続き、拡充された寄附税制の活用促進などに取り組み、新しい公共の広がりを後押ししてまいります。

 続いて、いじめや児童虐待の問題への取り組みについてのお尋ねがございました。

 御指摘のように、いじめや児童虐待は、子供の心や体に大きな傷を残すばかりか、その生命をも脅かす深刻な問題であります。

 このため、いじめについては、早期発見、早期対応を基本に、学校や教育委員会、家庭、地域も含めた社会全体が一体となって取り組む必要があり、政府としても、学校における指導の充実、相談体制の整備などに努めているところであります。

 また、児童虐待については、発生予防から早期発見、早期対応、子供の適切な保護と自立支援、保護者の指導といった切れ目ない対策を進めるため、子育て支援事業の推進、児童相談所、市町村の体制強化や社会的養護体制の整備などを進めています。

 なお、十一月は、児童虐待防止推進月間であります。さまざまな機会を活用して、虐待の防止に向けた広報啓発にも努めてまいります。

 政府としては、次代を担う大切な子供一人一人の身体、生命の安全を守るため、今後とも、関係機関の連携を強めて、いじめや児童虐待の対策に全力を挙げて取り組んでまいります。

 続いて、首脳レベルでの信頼関係の構築を初めとする外交方針についてのお尋ねがございました。

 我が国をめぐる安全保障環境が厳しさを増す中で、周辺諸国と安定した関係を取り結ぶことは、我が国の平和と繁栄を守り、国益を増進する外交を進めていく上でも極めて重要であります。各国首脳との個人的な信頼関係を構築し、忌憚のない意見交換を重ねていくことは、そうした取り組みを下支えする重要な要素の一つと考えます。

 このような考え方に立って、私は、総理大臣に就任以来、十四回の外国訪問の機会などを通じ、中国、韓国も含め、積極的な首脳外交を進めてまいりました。

 同時に、外交は、幅広い国民の参加があってこそ、具体的な成果を上げることができるものと考えます。政府間の協議や交渉に加えて、議員交流や民間の有識者の力を活用したセカンドトラックによる相互理解の促進や信頼醸成も重要な役割を果たしています。

 今後とも、こうした重層的な取り組みを続けていく中で、私自身も最大限努力してまいります。特に、御指摘のあった中国や韓国との間でも、大局観を持って、さまざまなレベルでの信頼関係の構築に努めてまいります。

 続いて、国を守る覚悟と具体的な施策についてのお尋ねがございました。

 我が国をめぐる安全保障環境はかつてなく厳しさを増す中、政府としては、今私が財務大臣当時という御指摘ございましたが、仙谷官房長官当時でもございましたけれども、防衛大綱に基づき、動的防衛力の考え方のもと、南西地域も含め、周辺海空域の安全確保や島嶼部における対応能力の充実などを図る防衛力の整備を進めております。

 さらに、本年夏以降の我が国の領海警備に関する情勢変化に鑑み、領海侵入等の事案に適切に対応するため、平成二十五年度概算要求に盛り込んでいた海上保安庁の巡視船艇七隻を平成二十四年度予備費によって緊急に整備するなど、周辺海域の警備体制の強化に努めております。

 このような施策を通じ、政府としては、我が国の平和と安全を守り、領土、領海を守るという国家としての当然の責務を不退転の決意で果たす所存であります。

 また、現在、政権交代前と比べて約十四倍の要員を国連PKOに派遣するなど、国際平和協力活動にも積極的に取り組んできており、外交面の努力とあわせて、国際的な安全保障環境の改善にも力を注いでおります。

 続いて、行政改革の取り組みに関する御質問をいただきました。

 行政改革は、政権の重要課題であり、これまで不退転の覚悟で取り組んでまいりました。

 特別会計改革については、区分経理の必要性が乏しくなった特会について、一般会計化や業務そのものの廃止などにより、会計の大幅な減少と勘定数の半減などの改革を行うこととしており、関連法案を前国会に提出しております。

 独立行政法人改革については、現行の制度、組織の抜本的な見直しを閣議決定し、前国会に関連法案を提出したほか、大胆な統廃合により、法人数を四割弱削減することとしております。また、御指摘のとおり、行政改革を推進する上でも情報公開は重要であり、昨年の通常国会に提出された情報公開制度の充実を図る改正法案について、引き続き、審議をお願いしているところであります。

 政府としては、これら改革関連法案の早期成立を期するとともに、引き続き、不断に行政改革を推進してまいります。

 次に、野田内閣、民主党の立ち位置と進む道についてお尋ねがございました。

 仙谷議員が御指摘のとおり、確かに、民主党は、結党以来、民主中道を掲げ、改革路線に邁進してきたと認識をしています。そして、今日において立ち位置が、改革志向の民主中道にあるべきとの議員の御主張にも共鳴をいたします。それは、私なりの言葉で言えば、所信において表明した、中庸の姿勢であすへの責任を果たすということであると考えます。

 議員が述べられた経済、社会保障、外交の基本姿勢は、その一つ一つを申し上げませんが、まさに野田内閣が目指し、これからも追求する政策理念と同路線であると考えております。

 今を生きる人にあしたの安心をもたらし、未来を生きる人に向けてあすへの責任を果たす。それは、極論を排し、現実と課題を冷静かつ客観的に見据え、明確な目標に向かって改革を一歩一歩着実に進めることであります。

 立ち位置と進むべき道との御質問ですが、まさに、行き過ぎず、偏らず、改革のど真ん中の道を着実に進むことであると考えております。そのために、今と未来に誠実でありたい、そう決意をしているところであります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣城島光力君登壇〕

国務大臣(城島光力君) 仙谷議員の復興予算についての御質問にお答えしたいと思います。

 お尋ねの全国防災事業等は、与野党協議の結果昨年六月に成立した東日本大震災復興基本法や、同法に基づいて策定された復興の基本方針及び復興特会に係る特別会計法の規定に基づく復興事業として同特会に予算計上されているものと認識しております。

 他方、個別の事業につきましては、種々の御指摘も見られるところであり、平成二十五年度予算においては、国会や行政刷新会議における議論等も踏まえつつ、被災地以外の事業は厳しく絞り込みたいというふうに考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣平野達男君登壇〕

国務大臣(平野達男君) 私にも、全国防災事業などが東日本大震災復興特別会計に計上されていることなどにつきまして御質問をいただきました。

 全国防災事業につきましては、三党協議を踏まえた復興基本法におきまして、地震その他の天変地変による災害の防止効果が高く、何人も将来にわたって安心して暮らすことができる安全な地域づくりを進めるための施策を推進すべきとされております。また、その費用を捻出するための地方税の臨時的な増税措置に係る法案を昨年秋の臨時国会で成立していただいております。

 こうしたことから、政府としましては、東日本大震災からの教訓、緊急性、即効性の三要件を満たした事業に限って、全国防災事業として実施をしているところでございます。

 また、サプライチェーンの寸断への対応などにつきましては、日本経済の底割れを防ぐことによって被災地の支援にもつながるという観点から緊急性が高いと考えられた事業であり、予算化されたものであります。

 一方で、これまでの復興予算についてさまざまな議論があることにつきましては、真摯に受けとめなければならないと考えております。復興予算が国民から幅広い理解を得るため、大震災直後から今日に至る復旧復興の進捗状況や今後の課題を踏まえ、被災地の復旧復興に真に直結するものを最優先し、復興増税を含む財源の性格によりふさわしい予算にしていかなければならないと考えております。

 このため、復興庁としましても、国会における議論や、現在復興庁との連携のもとに財務省が中心となって行っている平成二十三年度補正予算及び二十四年度予算についての精査、今後開催される行政刷新会議等における議論なども踏まえつつ、予算執行や平成二十五年度予算編成に取り組んでいく所存でございます。

 以上であります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 甘利明君。

    〔甘利明君登壇〕

甘利明君 自由民主党政務調査会長の甘利明でございます。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表し、安倍総裁の質問に続いて、野田総理大臣に質問をさせていただきます。(拍手)

 野田総理は、所信表明演説で、きょうよりあしたは必ずよくなる、そう信じてもらえる社会をつくりたい、そのようにおっしゃいました。総理のその言葉に、そして今の民主党政権に対して、それを信じる国民が果たしてどれほどいるのでしょうか。

 政権が交代して三年、民主党政権の三年間で我が国は混迷をきわめました。

 その原因を挙げれば、履き違えた政治主導、受け狙いのポピュリズム政治、百害あって一利なしの事業仕分けなど、枚挙にいとまがありません。民主党政権が国を迷走させるその大きな原因は、政治主導を曲解し、履き違えているところにあります。

 政治主導の本質は、官僚機構という最大のシンクタンク、統治機構を使いこなすことであり、政治家が国益に向かって的確にコントロールすることであるはずです。

 それが、民主党政権では、官僚と隔絶し、接触を図ろうとせず、政治家だけで相談し、物事を決める。履き違えた政治主導、これが全ての間違いの始まりであります。素人の政治家が、少ない知識と経験だけで判断し、受け狙いのその場しのぎの瞬間芸で政策を決定するから、後々破綻をするのであります。

 外交政策でいえば、政府が下した結論、判断に反して起こる驚愕の現実、その事実を想定外であったといってあたふたとする政府、その繰り返しではなかったでしょうか。本来ならば、さまざまなシミュレーションを綿密に行った上での判断でなくてはならないのに、民主党政権は、その場しのぎの思いつきによる判断ばかりではなかったでしょうか。

 民主党政権が推し進めた政治主導に関する総理の考えをお伺いいたします。

 ばらまき四K施策に代表される民主党のマニフェストはほぼ破綻し、マニフェストという言葉は、今や詐欺の代名詞とやゆされています。しかし、現在も民主党の体質は少しも変わっていません。

 最近のポピュリズム政治の最たるものが、エネルギー政策であります。

 二〇三〇年代までに原発稼働ゼロを目指すと言いながら、二〇五〇年代まで稼働する大間原発の工事再開を了解するなど、明らかな政策の矛盾ではないでしょうか。

 また、二〇三〇年代原発稼働ゼロを目指しながら再処理を続けるとなると、利用する当てのないプルトニウムをつくり続けることになります。米国を初めとする国際社会が懸念をしているのは、利用する当てのないプルトニウムをつくり続けるという我が国の政策を認めてしまうと、米国によるイランに対する圧力を減殺してしまうのではないかということであります。

 さらに、韓国は、核保有国以外で唯一日本に認められている再処理を韓国にも認めるよう、かねてから求めています。言うまでもなく、隣国は北朝鮮であり、プルトニウムの管理は特に重要な問題となります。

 思いつきのような受け狙いの政策、選択が、国内のみならず世界じゅうにさまざまな不安をまき散らしています。それに対してどういう責任をとるのかということを総理にお伺いいたします。

 看板政策の事業仕分けでは、スーパーコンピューターの「京」が、二位じゃだめなんでしょうかとの発言で有名になりましたが、探査機「はやぶさ」の後継機の予算が六十分の一に削られながら、世間から批判を浴びると、すぐさま予算を復活させる始末でありました。

 我が国が主導した東アジアへの戦略的な取り組みである東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)の予算も削減をしましたが、問題を指摘されると予算をふやすという始末でありました。

 きわめつけは、日本の底力となる最先端研究費のカットであります。

 自民党が政権を担っていたときは、聖域なく予算を削減する決断の中でも、研究開発費だけは毎年二%ふやすという姿勢は、ぶれることなく堅持をしてきました。

 麻生内閣の終盤、私は行革大臣をしておりましたが、日本の将来を担う科学技術研究の基金化を提言いたしました。平成二十一年度の第一次補正予算で、厳選した三十の研究に合計約二千七百億円をつけ、最先端研究支援プログラムを策定いたしました。

 役人の前例主義や積み上げ方式を打ち破る大胆なプロジェクトとして、大学を初め研究者のやる気を奮い立たせ、関係者に大変評価され、成果も期待されておりました。ところが、政権交代と同時に、約一千億円に、三分の一に減額されてしまいました。

 ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授の研究には、当初百億円前後の予算がつくはずでしたが、事業仕分けで半分に削られたのであります。

 山中教授がノーベル賞の受賞報告を行った際、野田総理はこれからも支援、応援する旨を述べられましたが、研究を支援するのですか、それとも事業仕分けを支援するのですか、どちらなんでしょうか。総理にお伺いいたします。

 野田総理は、我が国の経済をどう進めていくおつもりでしょうか。

 我が党の安倍総裁は、就任後直ちに、党内に新たに日本経済再生本部を設置し、日本経済再生の具体的かつ抜本的なプランづくりに着手しているところであります。

 昨年、三十一年ぶりの貿易赤字に陥りました。ことしの経済指標はさらに深刻な状況が報告されており、手をこまねいていれば数年後には経常赤字に陥ると警鐘が鳴らされています。

 経常赤字に陥れば、必要な財政資金をフローでは国内で調達できない事態となります。そうなれば、日本国債の信用性が市場で厳しい評価にさらされ、つまりは、償還可能性が厳しく問われることとなるのです。

 ここで重要なことは、財政再建への道筋が政府によって責任を持って示されるか否かです。それは、すなわち、消費税引き上げへの経済的環境づくりがしっかりとできるか否かにかかっているわけであります。

 では、なぜ貿易赤字に陥ったのでありましょうか。それは、原発稼働停止により石油や天然ガスの輸入が大幅にふえ、年ベースで三兆一千億もの国富が流出したことが直接の要因です。

 加えて、構造的な要因もあります。産業競争力が落ちています。十年から十五年後の競争力の源泉となるような研究費の予算を事業仕分けでカットし、さらには税制面でも研究開発減税を縮小してしまいました。それらを法人税減税の財源に充てているのであります。

 日本の競争力を犠牲にして、競争力と無縁なものにまで配る。予算、税制ともに、我が国競争力とは反対の方向を向いているのであります。競争力を培う事業に使わず、目先のばらまき政策にばかり予算を使っているのであります。

 本年八月三十一日に、我が党は日本経済再生プランを発表いたしました。私が責任者として取りまとめたプランであり、高い評価をいただきました。

 我が国経済再生の鍵は、実質三%、名目四%の経済成長を目指し、財政の健全化を進めつつ、円高・デフレ・空洞化対策に最優先で取り組むことです。

 さらに、当面の円高・デフレ・空洞化対策のみならず、中長期的に日本経済の設計図を書きかえる提言をいたしております。

 貿易立国を通じてGDPを拡大していく設計図から、貿易立国プラス産業投資立国の双発エンジンにより我が国の経済を牽引していく。そして、二つのエンジンが互いにシナジー効果を発揮する。内外の資本還流を通じて日本の産業競争力を強化する。我が国を価値の創造拠点とし、科学技術の司令塔機能を再構築する。このような絵図をお示しいたしました。

 さて、予算規模に目を移すと、自民党時代は八十兆円台であった予算が、民主党政権になって九十兆円台に増加をいたしました。予算を拡大しておきながら、景気が低迷する、需要が生まれない、競争力が落ちるということは、どういうことなのでしょうか。政治無策にほかならないのではないでしょうか。

 民主党は、自公政権時代の経済財政諮問会議を非難し、国家戦略会議をつくりましたが、その開催頻度、透明性、内容、どれをとっても両者を比較することすらおこがましいものになりました。

 政府・与党たるものは、金融当局たる日本銀行を含め、関係閣僚がその時々の経済の状況と将来見通しに関する認識を共有し、時期を失することなく、大胆な経済対策を打っていくのが王道です。

 経済財政諮問会議はしっかりとした役割を担ってきたと思いますが、今、国家戦略会議は何をしているのでしょうか。

 また、先週、約四千億円の予備費を財源とする経済対策が決定され、さらに、総理は、十一月末にももう一度対策をまとめる可能性を示唆されたとのことでありますが、場当たり的な経済対策は市場に雑音を与えるだけです。

 経済政策に関して、総理の考えをお伺いいたします。

 民主党政権になって、事業仕分けという近視眼的な予算削減が行われた結果、各省庁は自分の予算を守ることを第一に考えるようになり、省庁間の連携が減り、縦割りの溝はむしろ深まったとの指摘があります。

 日本の将来を真剣に考えるならば、我が国を競争力と付加価値の創造拠点とする設計が必要であり、その司令塔たる総合科学技術会議の抜本的再構築がかなめとなります。

 前任の古川国家戦略担当大臣が策定した総合科学技術会議の再構築プランは、企画権限は文部科学省、予算権限は財務省が握ったままの評価に値しないプランでありますが、それすらも、法案の閣議決定もされず、日の目を見ていない状態であります。

 民主党がマニフェストで強調した、総合科学技術会議の科学技術の司令塔としての再構築はどうなってしまったんですか。総理にお伺いをいたします。

 次に、教育政策についてお伺いいたします。

 安倍内閣時には、六十年ぶりに教育基本法を改正し、教育の理念、哲学、目標を明確にし、日本の未来を担う人材をこのようにつくりたいという方針を明確に示しました。しかし、それが教育現場までおりていないのが現状であります。

 例えば、教科書検定の問題であります。日教組の影響下にある方が教科書選定委員となり、理念とかけ離れた教科書が採択されている現状があります。

 さらに、野田政権になって、政治主導を発揮すべき文部科学政務官に現役の日教組役員が就任されています。監督する側と監督される側が同じという、前代未聞の事態が生じているのです。自民党政権ではとても考えられない人事であります。

 組閣時の身体検査はどうなっているんでしょうか。これが、頻繁に大臣が辞任する原因になっているんじゃないですか。

 教育、人材育成こそ、我が国の将来にとって必要不可欠な政策であります。

 このため、我が党は、安倍総裁直属の教育再生実行本部を設置し、いじめ問題対策、教科書検定・採択改革、大学教育の強化、教育委員会制度改革など、それぞれの分科会において徹底的に議論をしているところであります。

 野田内閣においては、日教組におもんぱかってか、教育改革が一向に進んでいません。我が党の目指す教育再生をどのように受け取っておられますか。総理のお考えをお伺いいたします。

 エネルギー政策についてお伺いいたします。

 九月十四日に革新的エネルギー・環境戦略が取りまとめられ、そこでは、二〇三〇年代原発稼働ゼロを目指すことが高らかにうたわれています。

 しかし、二〇三〇年代に原発稼働ゼロが可能か否かという実現可能性の検証、さらには、今後のスケジュールが全く描けていません。民主党政権お得意の、その場しのぎの、思いつきの目標としか思えません。

 しかも、この二〇三〇年代原発稼働ゼロという文言は、閣議決定されておりません。なぜ閣議決定されなかったのでしょうか。さらに、この基本方針すら閣議決定できなかったのに、一体、政府のエネルギー基本計画は、いつ、どのような内容のものを策定するのでしょうか。あわせて総理にお伺いをいたします。

 我々は、原発依存比率を下げるということにトライしていきます。

 ただ、民主党政権のように、受けを狙って、二〇三〇年代までに原発稼働ゼロと、拙速に思いつきの目標を掲げることや、その間のシナリオをつくらないというのではありません。

 具体的なプランがあります。

 当面の最優先課題として、再生可能エネルギーの最大限の導入、省エネの最大限の推進を図るため、今後三年間を集中開発期間として徹底的に取り組んでいきます。集中的に取り組むことで、技術開発はどこまで進むのか、コストはどこまで安くなるのかなど、見通しが立ってきます。

 まずは、仕組みのシミュレーションから始めて、安定供給に支障がないレベルまで精度を高めます。それを時間軸に落として、原発依存比率をどこまで下げられるのかということにトライをしていきます。

 そして、中長期的エネルギー政策として、将来の国民生活に責任の持てるエネルギー戦略の確立に向け、十年以内には、将来にわたって持続可能な電源構成のベストミックスを確立します。

 我々は、民主党政権のような無責任なトライではなく、現実的で、かつ責任を持ったトライをしていきます。

 原発再稼働についても、野田政権は迷走しております。

 野田総理は、再稼働は原子力規制委員会が安全基準に基づいて判断するのがルールと発言されています。さらに、原子力規制委員会が安全性を判断すれば国としての判断は完結すると枝野経産大臣も述べられております。個々の再稼働判断に政府が関与しない方針を明確に示しています。

 そもそも、原子力規制委員会の設立趣旨は、技術的な専門家集団が政府から独立して安全規制を担うというものではなかったのですか。原子力規制委員会は、原発が安全か否かを判断する機関です。再稼働の判断を原子力規制委員会に委ねる野田総理初め政府の認識が誤っているのではないですか。

 野田総理がおっしゃっているように、原子力規制委員会が原発再稼働の判断をするのでしょうか。明確にお答えください。

 そもそも、エネルギーは、国民生活にとって欠かすことのできないインフラであると同時に、産業活動にとっても大動脈であります。エネルギーを安定的に適正な価格で供給するのは政治の使命であると考えますが、民主党政権にはその認識が全く感じられません。エネルギー政策に関する野田総理のお考えをお伺いいたします。

 東日本大震災からの復興についてお伺いいたします。

 十七兆の復興予算の使い道についてさまざまな指摘がなされておりますが、きょうは個別の話を取り上げるつもりはありません。むしろ、個別の話から入ると、復興に際し民主党が犯した失敗の本質を見誤るおそれがあります。

 私は、このたびの災害に関し、民主党は三つの決定的な誤りを犯したと思っています。

 一つは、復興庁創設の決定的なおくれです。

 三月に災害及び原子力事故が発生したのに、復興庁ができたのは翌年の二月と、約一年もかかりました。この間、高台移転や瓦れき処理など、すぐに方針を出し、一気にやればできたはずの利害調整も、時間がたつにつれ、どんどん複雑化し、今や泥沼状態に入らんとしております。

 災害直後に復興庁をつくり、そこに権限が集中し、自治体と直接問題解決に当たらせていれば、いろいろな問題がとっくに解決したことは間違いありません。

 二つ目は、復興庁ができる前もその後も、予算要求、執行権限を各省に丸投げ状態にしたことです。

 霞が関の机に踏ん反り返っていては、被災地の本当のニーズがわかるはずはありません。その結果、使えない予算が積み上がり、仕分けで削られた予算を復興予算の中から取り戻すという事態が横行することとなったのは、ある意味、予想し得る事態であり、構造的な問題でもあります。

 一般会計を縮減した形に見せたい財務省と、財源は何であれ予算を維持したい各省庁が復興予算を食い物にする構造を放置してきた民主党政権の責任は、極めて重いと言わざるを得ません。

 三つ目は、福島の原子力災害対策への対応です。

 総理は、就任直後の所信表明で、福島の再生なくして日本の再生なし、除染に最優先に取り組むことを高らかに宣言いたしました。

 今の福島はどうなっているのでしょうか。避難指示区域の住民は引き続き厳しい避難生活を強いられ、除染は全くと言っていいほど進んでいません。最近になってやっと復興庁が福島問題に統一的に取り組んでいくことが決まったようですが、ここに至るまで一年半を要しています。あきれるほかありません。福島の避難区域の皆さんは、こうした政府の対応の遅さに失望し、ふるさとに戻るのを諦める人がふえていると聞きます。

 まずは、復興庁に権限も予算も人員も集中し、被災地のニーズに直接応えていく体制を構築した上で、地元自治体を信用して、予算施行権限や規制緩和権限を移譲していくという方針を再確認、実行すべきと考えますが、総理の考えをお伺いいたします。

 振り返ってみれば、この三年間は、我が国にとって非常に重要な三年間でありました。我々の不徳からでありますが、この大事な三年間をアマチュアの政治に委ねてしまいました。その三年間に外交・安全保障政策はぶれまくり、経済大国日本は見る影もありません。

 かつて民主党は、国民の生活が第一と連呼されておりました。民主党政権の三年間で、国民の生活が台なしになったのではないでしょうか。

 一刻も早く立ち上がらなければ、再生しなければ、一流国には戻れません。使命感と責任感を持ったプロフェッショナルが一刻も早く政権を担当しないと、日本は取り返しのつかないことになります。

 言うまでもなく、政権奪還は、我が党のためではありません。我が国のために、民主党には政権から退いていただかなければならないのであります。

 あすへの責任を連発される総理に、解散という形でその矜持を示していただくことを強く要求し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 自由民主党甘利議員の御質問にお答えをしてまいりたいと思います。

 まず、政治主導に関する御質問をいただきました。

 政治主導とは、政策決定について政治家が責任を持つことと理解をしています。

 民主党政権においては、政治主導のもとで、政務三役と官僚がそれぞれの役割分担と責任を明確にし、相互に緊密な情報共有と意思疎通を図りつつ、政府全体が一体となって政策運営に取り組んでまいりました。

 政策の立案、遂行に当たっては、さまざまな想定を検討しておくことは民主党政権においても当然でありますが、例えば、福島における原発事故などを見ても、かつての自民党政権下での想定を超える事態が起こり得ることは、御承知のとおりであります。

 外交に関しても、さまざまな事態において政務三役と官僚が一体となって国益のために努力しているということを、ぜひ御理解いただきたいと存じます。

 続いて、二〇三〇年代に原発ゼロを目指す方針と大間原発の建設再開、国際社会との関係等についてのお尋ねがございました。

 御指摘の大間原発については、既に原子炉の設置許可及び工事計画認可が行われており、それを前提に事業者が建設再開を判断したものであります。今後は、原子力規制委員会が独立の立場から安全性を確認していくことになります。

 これに対し、革新的エネルギー・環境戦略における、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするとは、グリーンエネルギー拡大等の政策資源投入についての目標であります。まずは、これを実現するために全力を挙げるということであります。

 その上で、そうした目標の実現が可能になったときに、あるいは、可能になりそうだということがかなり確実性を持って見通されたときに、そこから先のことについて具体的な議論ができるものと理解をしております。

 また、プルトニウム利用を含めた核燃料サイクルについては、革新的エネルギー・環境戦略においても、従来の方針に従うこととしています。

 我が国は、これまでと同様、厳格な保障措置制度のもとで原子力の平和的利用を進めるとともに、我が国の原子力利用が平和目的に限られることを国際社会に対し説明し、理解を求めてまいります。

 続いて、山中伸弥教授の研究支援についてのお尋ねがございました。

 政府の実施する事業については、研究の支援を含め不断に見直しを行う一方で、真に必要な研究については、これまでも重点的に支援をしてきたところであります。

 政府としては、再生医療の早期実現に向けた研究が必要であると考えており、今回の山中教授のノーベル賞受賞も踏まえ、再生医療のいち早い実現に向けて、関係省庁が一丸となって、iPS細胞研究を重点的かつ着実に支援してまいります。

 また、今週の金曜日には、山中教授を総合科学技術会議にお招きし、同教授の御意見をお聞きしつつ、研究環境の改善に向けた政府の取り組みを示す所存であります。

 続いて、経済政策についてのお尋ねがございました。

 日本経済の再生に道筋をつけ、雇用と暮らしに安心感をもたらすことは、私の内閣が取り組むべき現下の最大の課題であります。

 このため、フロンティアの開拓により力強い成長を導く日本再生戦略を、国家戦略会議において議論を重ねた上で、この七月に閣議決定いたしました。戦略に描いた道筋を着実にたどっていけるよう、日本再生を担う人材の育成やイノベーションの創出に力を入れるとともに、グリーン、ライフ、農林漁業の重点三分野と中小企業の活用に政策資源を重点投入してまいります。

 その先駆けとなる新たな経済対策の策定を指示し、先般、その第一弾として、緊要性の高い施策について、予備費の使用を決定いたしました。

 引き続き、遅くとも来月中をめどとして経済対策の決定に向けた作業を進め、デフレからの早期脱却と日本経済の活性化に向けた取り組みを加速させてまいります。

 また、昨日、政府と日本銀行で、デフレ脱却に向けた取り組みについて、共通理解という形で取りまとめ、共同して表明、発表いたしました。デフレからの早期脱却に向けた、さらに大きな一歩となるものであります。

 このように、エネルギー・環境政策の再構築や経済外交の展開とあわせ、経済再生を推し進めているところであり、場当たり的等の御指摘は当たらないものと考えます。

 続いて、科学技術の司令塔としての総合科学技術会議の再構築についてのお尋ねがございました。

 現在、政府においては、内閣府の総合科学技術会議を改組し、科学技術・イノベーション政策を一体的に推進するための法案の提出に向けた準備を進めているところであります。

 現在検討している法案は、予算等の資源配分だけでなく、規制改革や需要創出といった、研究開発の成果を発展、活用するための方策を推進するため、内閣府の総合調整機能等を強化するものであります。これにより、関係府省が連携し、イノベーション推進に向けて政府の施策を総動員できる体制を実現したいと考えております。

 次に、政務三役の任命に関するお尋ねがございました。

 閣僚を含む政務三役の任命は、その任命に至るプロセスについては、人事でありますので、さまざまな総合的な検討と判断の結果であると申し上げます。

 また、甘利議員の政務三役の出身に関する御指摘は、御意見としては承りますが、議員は国民に選ばれた選良であります。また、さまざまな職業に従事した経験は政治家にとりましてそれぞれに貴重なものであり、医師が厚生行政に、弁護士が法務行政にかかわる等々と同様に、教師が教育行政にかかわること自体において、あらかじめの不都合はないと考えております。

 続いて、自民党の教育再生に関する見解についてのお尋ねがございました。

 御党におかれては、教育委員会制度やいじめ問題など、教育に関する広範な課題について真摯に御議論されていると承知をしており、教育や人材育成の重要性については、御党とも認識を共有するものと考えております。

 政府としては、意思ある全ての子供たちに教育を受ける機会が与えられ、知徳体の調和のとれた成長が図られるよう、政権交代以降、人への投資を重視するという考え方のもと、高校授業料実質無償化、小学校一、二年生の三十五人以下学級の実現、新学習指導要領の着実な実施を初め、教育費の負担の軽減や教育の質の向上などに積極的に取り組んできたところであります。

 今後とも、日本再生戦略を踏まえ、社会の期待に応える教育を目指し、改革の推進に全力で取り組んでまいります。

 次に、エネルギー政策についてのお尋ねがございました。

 原発に依存しない社会を一日でも早く実現してほしいという多くの国民の声を踏まえ、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするようあらゆる政策資源を投入するということは、政府として決めた、ぶれない基本的な方針です。

 九月十九日には、今後の政策の具体化のプロセスを含め、こうした方針を政府として閣議決定いたしました。

 エネルギー基本計画については、十月十九日のエネルギー・環境会議で決定された革新的エネルギー・環境戦略の進め方を踏まえ、総合資源エネルギー調査会において、今後の進め方も含め、議論をしてまいります。

 次に、原発再稼働の判断及びエネルギー安定供給等についての御質問をいただきました。

 御指摘のとおり、原子力規制委員会は、東電福島第一原発事故を踏まえ、原子力利用の推進と規制を分離し、原子力安全に関する規制を一元化した上で、専門的な知見に基づき、中立公正な立場から原子力安全規制に関する職務を担うために設立をされた機関であります。

 また、原発の再稼働については、安全性の確認が大前提であります。これについては、原子力規制委員会に、独立した立場から安全性を確認していただきます。

 その上で、エネルギー政策上の判断については、政府として、革新的エネルギー・環境戦略において、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするようあらゆる政策資源を投入する、その過程において安全性が確認された原発は、これを重要電源として活用することを決定しています。

 このように、原発の再稼働についての考え方は政府が示しているところであり、原子力規制委員会は、あくまでも独立した立場から安全性の確認を行うというのがその役割であります。

 さらに、エネルギーは国民生活と経済の根幹を支えるものであり、その低廉で安定的な供給は極めて重要であります。革新的エネルギー・環境戦略においても、その三本柱の一つの柱としてエネルギーの安定供給を掲げており、引き続き、その安定的かつ安価なエネルギーの確保に努めてまいります。

 最後に、被災地のニーズに応える体制についてのお尋ねがございました。

 復興庁は、本年二月に、私自身を長として、それまでの復興本部事務局を大幅に上回る体制で発足したものであり、各府省に対する総合調整機能や各府省の復興事業予算の一括計上などの権限、予算により、復興に向けた取り組みを強力に進めてまいりました。

 また、被災地の三復興局、六支所、二事務所を活用しつつ、被災者や被災自治体に寄り添いながら、被災地のニーズにワンストップで対応しているところであります。

 加えて、復興庁発足以前より、地域が主体となった復興を強力に支援するため、地方自治体の使い勝手がよい復興交付金や、規制緩和に係る被災地の提案を実現するための復興特区制度を設けており、現在は復興庁において積極的に活用を進めております。

 今後とも、復興庁を中心に、原発事故と戦う福島の再生を具体化していくなど、復興に向けて政府一丸となって取り組んでまいります。

 以上、答弁を終わります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 東祥三君。

    〔東祥三君登壇〕

東祥三君 私は、国民の生活が第一・新党きづなを代表して、先般の野田総理の所信表明演説について質問いたします。(拍手)

 まず初めに、東日本大震災の地震、津波、そして福島第一原発事故によって故郷を離れ、いまだ不自由な避難生活を余儀なくされている皆様方に、心からお見舞いを申し上げます。そして、被災地で再起して懸命に頑張っておられる皆様に、心からエールを送らせていただきます。

 野田総理大臣、私は、私人としての野田佳彦氏に対し、何の不満も批判も意見もありません。それどころか、若きころから政治家を志し、短期間にして日本国の宰相に上り詰めたことに対しては、率直に敬意を表したいと思います。

 しかしながら、総理大臣としての野田佳彦氏に対しては、大いなる怒り、不満、不安を感じております。

 言うまでもなく、日本国総理大臣には強大な権限が与えられています。そして、その権限の行使に対して、これまた大きな責任が付与されているわけです。

 おとといの総理の所信表明を、国民の代表が集うこの本会議場で、緊張感を持って聞かせていただきました。

 私の素直な感想は、日本国総理大臣に対してまことに僣越ではありますが、空虚の二語に尽きます。

 総理、三十分もの長い演説を誰に訴えていたのですか。総理の心はどこにあったのですか。

 きれいな文章、一見力強い言葉、はっきりした滑舌。しかし、残念ながら、聞いている者には何の感動も与えません。なぜなんでしょうか。

 それは、総理大臣自身が一番感じていることとは思いますが、元同僚議員の立場から申し上げれば、民主党を支持した国民を裏切ったからです。民主党を支持した国民との約束を守らなかったからです。民主党を支持した国民にうそをついたからです。そして、そのことに何ら責任をとらないからです。

 一度裏切りをしてしまうと、けじめがない限り、二度三度と繰り返すのが世の常です。これを人は無責任と言うのです。美辞麗句では無責任は隠せないのです。

 したがって、あしたの安心、あしたの責任を総理が幾ら語っても、きょうの不安、きょうの責任はどうするんだということになります。きょうの不安、きょうの責任はどうするのですか。

 ここからは、私たちの掲げる政策を座標軸に置き、質問させていただきます。

 私たち国民の生活が第一・新党きづなのメンバーは、民主党を国民との約束の原点に戻らせようとさまざまな努力を重ねてきました。しかしながら、その力及ばず、今の民主党内では再建、再生の道はないと、新党を結成し、新たな船出をしました。そして、自立と共生の理念と、国民の生活が第一の原則に基づいた綱領をつくりました。

 今、我が国は、TPP、領土問題を含む外交、安全保障、安心な社会保障制度の確立など、数多くの課題に直面しています。

 その中でも、私たち国民の生活が第一では、以下に述べる三つを喫緊の課題として掲げました。その課題とは、一、命を守る、原発ゼロへ、二、生活を直撃する消費税増税は廃止へ、三、地域のことは地域で決める、地域が主役の社会をです。

 本日は、この角度から、以下、総理の所信演説について質問をさせていただきます。

 まず、エネルギー・環境政策についてお伺いします。

 総理の所信表明演説の本文二百二十二行中、エネルギー・環境については、全体の一割未満の十八行の言及しかありません。総理がしきりに言及したあしたへの責任を考えるならば、まずは、命を大切にする政策、まだ見ぬ将来世代へと命をつないでいくことに、もっともっと重きを置く必要があるはずです。

 私は、総理が語ったわずか十八行の言葉を確認することで問題点を指摘してまいりたいと思います。

 総理は、所信表明で、国民生活と経済の根幹を支えるエネルギー・環境政策は、大震災後の日本の現実に合わせて再構築しなければなりませんと言われました。

 まず最初にお尋ねします。

 総理の現状認識で、合わせるべき現実とは何を言おうとしているのか、その認識を明らかにしなければ、具体的な政策の議論はできません。

 続いて、総理は、東京電力福島第一原発の事故は、これまで進めてきたエネルギー政策のあり方に無数の反省をもたらしましたと述べられました。反省が無数にあるということは、原発の存在そのものを否定することではないのですか、無数なのですから。

 そうであれば、私たちの原発ゼロへと同じになりますが、総理はどうなんですか。それとも、総理が得意とされる言葉遊びなのですか。そして、反省をもたらしたとは、誰が反省しているのですか。

 事故の発生以来、多くの指摘がなされているのは事実ですが、それを単に無数の反省と表現するだけでは、一億総ざんげと同じで、政策転換の議論にはなりません。

 総理の認識として、無数でなくて結構ですから、最も重要な反省すべき項目を最低十カ条、ここに提示していただければと思います。それがエネルギー政策の大転換の建設的議論の基礎になるからであります。

 九月十四日、エネルギー・環境会議は、いわゆる革新的エネルギー・環境戦略を決定しました。これは、前日の深夜まで総理自身が閣議決定すると言われていたものを、一夜明けたら、閣議決定を見送り、参考文書にとどめられたものです。

 なぜ閣議決定をしなかったのですか。何があったのか。誰に働きかけられたのか。一晩のうちに心変わりした理由を率直にお答えいただきたいと思います。

 このエネルギー・環境戦略は、参考文書にとどめられたものの、所信表明では、この文書を踏まえて遂行してまいりますとされました。また、不断の検証と見直しは、従来の政策についてのことではなく、文書の原文に従えば、原発に依存しない社会への道筋に関して検証を行い、不断に見直すと読むのが正しいと思いますが、期待して誤解している人も多いので、この点を確認させていただきたいと思います。

 あわせて、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするということは、言いかえれば、目標は二〇三九年まで、稼働ゼロが可能になっても稼働させたままもあり得るという意味であると思いますが、そうならそう、違うなら違うとお答えいただきたいと思います。

 おととい、総理は、原子力に依存しない社会を一日でも早く実現するためにはもちろんのこと、日本経済が元気を取り戻すためにも、徹底した省エネ社会の実現と再生可能エネルギーの導入拡大が鍵を握っていますと述べられました。

 私たち国民の生活が第一は、去る十月十六日から二十一日まで、二〇二二年までの脱原発を決めているドイツに脱原発視察団を派遣し、環境大臣や連邦議会関係者、経済界、業界、地方自治体等と意見交換をしてきており、その結果、我が党は、この総理の認識に加えて、天然ガスを利用した高効率な発電方式の拡充や地域独占の解消と発送電分離なども、脱原発と切り離せない政策だと考えています。

 実は、この点はエネルギー・環境戦略にも明記されているのに、所信表明では、電力系統の強化や安定化にのみ触れられただけでした。この変化に関係業界からの抗議や要望が原因しているのか、総理の御見解をお伺いしたいと思います。

 おとといの所信表明が、原発推進政策を変えることは容易でないが逃げないという趣旨で述べられ、政策として貫こうとしているのなら、私たちはその方針に反対ではありません。しかし、現実の政府の決定や閣僚の言動がその点で一致しているとは言いがたいので、あえて疑問を呈し、確認をする必要があるのです。

 第百八十回通常国会の最終盤、九月七日に、我が党初め衆議院の五会派六グループは、脱原発基本法案を提出し、継続審議になっています。

 総理が述べられた、困難な課題から目をそらしたり、逃げたり、諦めたりするのではなく、原発に依存しない社会の実現に向けて大きく政策を転換し、果敢に挑戦をしていこうとするのがまことの心から出たものならば、まず、この脱原発基本法案に民主党を挙げて賛成し、成立させるのが筋だと思いますが、いかがでしょうか。総理の御見解をお伺いいたします。

 次に、現下の日本経済の状況、そして消費税増税問題に関して質問します。

 総理は、三年前の総選挙で、マニフェストにはルールがある、書いたことは命がけで実行する、書いていないことはやらないんです、消費税五%分に天下り法人がぶら下がってシロアリがたかっている、シロアリを退治しないで今度は消費税を上げるんですかと、かの有名なシロアリ演説をなされました。

 にもかかわらず、総理になった途端、いや、それ以前から、その思いはどこへ行ってしまったんでしょうか。国民との約束をほごにし、社会保障と税の一体改革の名のもと、財務省主導の消費税増税に突き進んだのです。

 しかも、東日本大震災が起き、復旧復興もままならない時期からその議論は始まりました。

 増税の前にやるべきことがある、被災地の復旧復興に注力すべきだ、シロアリも退治しなければいけないし、デフレ脱却、景気回復にも全力投球すべきだ、そうした私たち党内の反対の声には全く耳を傾けず、増税ありきで議論を主導。最後は、私たち反対派を切り捨て、あの政権交代時さんざん批判をしていた自民党、公明党と談合してまで消費税増税を強行に議決してしまいました。

 しかも、社会保障と一体とは口ばかりで、これで安心できると国民が感じられるものは何一つありません。低所得者対策も価格転嫁対策も先送りで、大多数の国民が消費税増税に不安を抱いております。

 総理は、日本経済の再生に道筋をつけ、雇用と暮らしに安心感をもたらすことが、野田内閣が取り組むべき最大の課題とおっしゃいました。しかし、増税が経済にマイナスの影響を与えることは、誰もが認めるところです。

 そして、現下の日本経済を分析してみますと、九月、十月の月例報告でも明らかになっているとおり、復興需要による景気回復は既に中折れ状態、日本経済は踊り場に差しかかっております。

 ユーロ通貨圏の金融危機による中国の景気の減速、さらに、その後の日中関係の悪化を踏まえると、日本経済の見通しは決して明るいものではなく、消費税増税議論の前提とされていた内閣府試算の慎重シナリオである二〇一二年度実質GDP二・二%、名目GDP二%の成長すら危ういのではないかとも言われ始めております。

 私たちは、このような経済状況下で、たとえ一年五カ月後とはいえ、消費税増税を強行することは、余りにナンセンスであり、自殺行為に等しいと確信を深めております。できるだけ早く消費税増税廃止法案を通し、消費税増税を白紙に戻さなければならない、そう強く思うのであります。

 総理は、現時点で、日本経済の先行きをどのように見通されているのでしょうか。経済再生を最大課題とおっしゃられるのなら、今こそ政治主導で消費税増税を凍結すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

 また、今のような経済状況が仮に続いた場合、本当に二〇一四年四月に消費税増税を実施しても構わないとお考えでしょうか。総理の御見解をお伺いいたします。

 いずれにせよ、日本経済が大変厳しい状況に陥っているのは間違いなく、経済再生に政治が全力を注がなければなりません。しかし、総理の所信には、意気込みとは裏腹に、その具体的な中身がほとんど明らかにされておりません。

 鳴り物入りで策定された日本再生戦略も、応援歌と位置づけてしまい、これから日本経済は成長できるんだ、これから日本経済は強くなるんだと自信を持てるはずがないのです。

 そもそも、私たち政治家が日本再生戦略のプレーヤーそのものです。政治家が戦略の応援歌を歌ってどうするのですか。総理の政治の主導者たる自覚を疑わざるを得ません。

 今必要なことは、まだ財政に若干の余力があるうちに、積極的かつ継続的な財政政策で、需給ギャップを埋め、内需を拡大する、そして確実にデフレ脱却、景気回復を図ることだと私たちは考えています。

 総理は、所信で、約半世紀ぶりに東京で開催したIMF・世界銀行総会にも触れられましたが、そのIMFですら、緊縮、増税一辺倒では、経済に予想以上の悪影響を与え、財政健全化につながらないリスクがあると、その考えを修正し始めているようです。

 政府は、先日、七千五百億円規模の緊急経済対策を閣議決定したそうですが、景気浮揚に効果が出る直接的な財政負担は、予備費を財源とする、たった四千億円程度にすぎません。

 しかも、中身を見ると、尖閣諸島周辺での領海警備を強化するための予算百七十億円が計上されておりますが、これは、本来、経済対策の名目で予算をつける事業ではなく、防衛予算として計上すべきものです。

 なぜこのようなこそくな手段をとるのですか。こういうところに、物事をごまかしながら政治を行おうとする政権の本質、本当の姿があらわれています。

 私たちは、緊急経済対策としては、規模も中身も余りにもパワー不足だと考えますし、実際、この経済対策を発表しても、株価は上がらず、市場は全く評価していません。

 この緊急経済対策に対する総理の思い、そして、その効果をどの程度見込んでいるのか、総理の御見解をお伺いいたします。

 私たちは、経済対策を行うのであれば、もっと大胆で、かつ中身の濃いものを要求します。日銀による金融緩和だけではその効果は限定的で、大胆な財政出動も合わせなければ、景気回復につながらないのは明白です。景気が踊り場に差しかかった今こそやらねばならない問題だと考えています。

 民主党代表選挙の公開討論会で、総理は、円高・デフレ対策、中小企業支援、大規模災害の防災、減災に振り向けるとして、大型の補正予算への意欲を示されておりました。その意欲は一体どこに行ってしまったのでしょうか。

 この臨時国会でやらなければ、来年の通常国会でということになるのでしょうか。それで間に合うと判断されているのでしょうか。また、今の日本の景気を下支えするために、どの程度の規模の補正予算が必要とされているのでしょうか。総理の御見解をお伺いいたします。

 さて、経済対策として補正予算を組むにせよ、それには財源が必要です。また、復興予算の流用問題で批判が高まっているとおり、官僚に好き勝手に使われるようなものであってはなりません。

 私たちは、経済再生を確実にするためには、今の基礎的財政収支均衡策に縛られるのではなく、大きな政策転換で、当面は国債発行を財源に大胆な財政政策を打つべきときではと考えます。

 景気をよくして税収を上げる、消費税率を上げて税収が下がった過去を考えると、これこそが財政再建の近道であると考えています。三年から五年の時間はかかるかもしれませんが、消費税の税率を上げても、経済が再生せず、税収が落ち込むのでは、元も子もありません。

 今のようなデフレ下で、増税と経済再生を両輪で行うのはやはり無理なのではないか。総理の御見解を伺います。

 また、復興予算の流用問題の本質は、何の責任もとらなくていい官僚に予算の用途を任せてしまっていることにあるのだと私たちは考えています。政治主導を放棄してしまった政権の真実の姿が浮き彫りになっている問題です。官僚任せというあなたの政権の実態が百八十度変わらなければ、幾ら行政刷新会議で新仕分けなるものをやっても、同じことが繰り返されます。

 今のままでは、補正予算を組んだとしても、官僚に好き放題やられてしまうのではないでしょうか。したがって、質問しても余り意味がないと思いつつ、あえて質問します。

 復興予算流用問題に対する総理の御見解と、このような過ちを起こさないために、どのような解決策を考えられているのか、総理の御見解をお聞かせください。

 次に、特例公債法の問題です。

 法案が可決できなければ特例公債が発行できず、このままでは、地方財政、地域経済、そして国民生活に重大な悪影響を与えることは必至です。野田総理は、このことの責任は全て政府・与党にあると認識すべきです。

 私たちは、今の政府案は、将来の消費税増税を担保とする年金つなぎ国債の発行が含まれており、消費税増税廃止を求める私たちは賛成することができません。

 そもそも、経済状況次第で実際に消費税が増税できるか不透明だというのに、それを担保とすることはあり得ず、国民も市場も理解してくれないのではないでしょうか。

 私たちは、特例公債法案の原案から、増税を担保とする年金つなぎ国債の発行に関する条文の削除を強く求めます。本当に地方の財政、地域の経済を憂うのであれば、こうした知恵を出していただきたいのです。総理の御見解を伺います。

 経済対策分野の最後に、中小企業支援について言及しておきます。

 中小企業金融円滑法が来年三月で期限を迎えますが、来年三月以降、銀行による貸し渋りや貸し剥がしが起こり、企業倒産が激増するのではないかとの不安が、中小企業を中心に日々高まってきております。金融円滑法がなくなっても、銀行が企業の資金需要にきちんと対応するのは当然であり、倒産の増加を引き起こすようなことは絶対にあってはなりません。

 また、中小企業資金繰りだけではなく、中小企業が真に再生し、地域が活力を取り戻すような中小企業の再生支援策の抜本的な強化を、政治の判断と責任において直ちに行うべきです。

 次に、地域主権について質問いたします。

 総理は、地域主権改革は民主党を中心とする政権にとって改革の一丁目一番地です、関係者の意見を踏まえながら、義務づけ、枠づけのさらなる見直しや出先機関の原則廃止などを引き続き進めますと述べています。総理は、地域主権改革に関して、改革の一丁目一番地と位置づけながら、所信表明で、たったこれだけしか触れられませんでした。

 現政権の地域主権改革に対する姿勢、現在の霞が関を中心とした中央集権の統治機構に野田政権がすっかりのみ込まれた実態がよくあらわれています。

 政権交代以降、地域主権改革は、地域主権改革大綱の策定、国と地方の協議の場の法制化、一括交付金や出先機関改革、義務づけ、枠づけの見直しと自治体への権限移譲など、もろもろ進められてきたものの、鳩山内閣から菅内閣、野田内閣へと移行する過程で、当初求められていた、政治主導により国の統治機構を抜本から改めるという本来の目的はすっかり忘れ去られ、霞が関の、権限を維持しようとする力にのみ込まれてしまい、官僚主導の統治機構を維持するための枝葉の改革に成り下がってしまいました。

 もはや、民主党を中心とする政権では、地域主権改革、国の統治機構を抜本的に改める改革は望むべくもありません。また、この体制を長きにわたりつくり上げてきた自民、公明の両党にも同じことが言えるでしょう。

 これが、民主、自民、公明以外のいわゆる第三極と呼ばれる勢力が、国の統治機構を抜本的に改革することを共通の旗印にしている理由でもあります。

 私たち国民の生活が第一は、三つの緊急課題の一つとして、地域のことは地域で決める、地域が主役の社会をと銘打ち、国家統治機構の抜本改革である地域主権改革を掲げています。

 中央が全てを決めて地方に押しつける中央集権体制は、東日本大震災の復興のおくれに象徴されるように、もはや国民の声に応えられなくなっています。生活の現場に一番近い基礎自治体を主にして、地方に権限と財源、そして人材を大胆に移し、地域が主役の社会を実現することこそが、閉塞感漂う日本経済を根本から活性化し、デフレ脱却を促進する道筋であると私たちは考えます。

 また、首都圏、大都市に本社を構え、国際展開、全国展開できる大資本が地方の経済を中央に一方的に吸い上げる仕組みから、地方で経済が循環する仕組みへの転換、地域経済活性化を図るための一里塚であるとも考えます。

 ここで、野田総理に改めてお伺いします。

 総理が改革の一丁目一番地とおっしゃった地域主権改革は、何のために行うのでしょうか。目的は何なんですか。現在進められている改革により、国家の統治機構はどのように変わるのですか。地域主権改革により国民が得られる恩恵は何なんですか。現在進められている施策の実態を踏まえてお答えいただきたいと思います。

 東日本大震災から間もなく一年八カ月、復興のおくれや復興予算の流用が大きく取り上げられています。震災復興とは直接関係のない事業に対して、霞が関文学にのっとり、とても常識では考えられない理屈を駆使して予算が使われる。復興に向けて必死に現場で立ち上がろうと奮闘している中小零細企業にはなかなか予算が回らない現状がある一方、全国展開できる大企業に復興予算が使われています。

 発災当初の、被災地の復興なくして日本再生はないという文言は、いつの間にか、日本経済の再生なくして被災地域の復興はないという文言にすりかえられ、予算が、全国にはつくけれども被災地にはつかない、大企業にはつくけれども中小零細企業にはつかない、権力者や権力者の周りにはつくけれども被災市民にはつかないというゆがんだ状況を生み出しています。

 これは、全て、野田総理、あなたの責任です。その自覚があるのですか。

 復興財源は、大きな議論を経た中で、所得税の二・一%、個人住民税千円の増税により賄っている目的税であり、納税者の理解、常識から逸脱した予算執行は、たとえ合法な運用であったとしても、許されるものではありません。

 ここでも、官僚任せで、霞が関の暴走を許してしまった現政権の実態が明らかであります。

 復興庁を被災地に設置し、被災地の現場の状況を最も把握している地方に財源と権限を渡して、被災地主導で国、地方が一体となって復興を進めていれば、このような状況にはならなかったはずです。地方に任せればよかったのです。

 しかし、実態は、中央官庁が霞が関で財源、権限ともグリップし、復興庁は設置したものの、現場では各省庁縦割りの弊害が依然として存在しています。

 官僚主導の中央集権体制が、予算の流用や復興のおくれを引き起こす、復興の足かせになっていると考えますが、総理の見解をお伺いします。

 また、先日十月二十七日に行われた超党派の復興予算奪還プロジェクトによる立地補助金、グループ補助金の宮城県現地調査の際、東北経済産業局からのヒアリングを要請したところ、前日に経済産業副大臣から連絡が入り、東北経済産業局は事業には関与していない、ヒアリングは東京で聞くという趣旨で、出席を断られたと聞いています。

 立地補助金、グループ補助金とも現場の東北経済局が関与していないということはあり得ないと思いますが、出席要請を断った理由についての事実確認を経済産業大臣にお伺いします。

 総理、私は、ここまで、私たちが掲げる三つの喫緊の課題である、原発ゼロ、反消費税増税、地方主権改革に即して質問をしてまいりました。総理、この三つの課題に共通するものがおわかりですか。

 どれも、赤ちゃんからお年寄りまで、全ての国民の命と暮らしを左右する問題です。一部の企業、団体や経済界にだけ関係する話ではないのです。

 原子力事故がもたらす放射能も、全ての国民に降り注ぐんです。家畜も植物もみんな被曝するのです。そして、原発の使用済み燃料を最終的に無害なものに処理するすべを私たち人類は持たないのです。処理できないものを生み出す原子力発電を一刻も早く終わらせることこそ政治の責任ではないですか。

 総理、消費税は、赤ちゃんのおしめを買っても払うのです。小学生がノートやガムを買っても払うのです。働く人は言うに及ばず、寝たきりのお年寄りでも払うんです。所得のない子供やお年寄りも払うんです。

 このような税金は消費税しかないのです。だから、消費税増税の前にあらゆる努力をし尽くすべきなのです。まだその努力が終わっていないじゃありませんか。政治の責任放棄じゃないですか。

 地方のことは地方が決める地方主権は、まさに、赤ちゃん、子供から働き手、お年寄りまで、全ての住民に目が届く地方の行政に多くの権限と財源を委ねることです。これこそ、政治の未来への責任ではないですか。

 どの課題についても、官僚を実務者として使いこなすのではなく、官僚のシナリオに安易に乗っている総理は、未来の責任どころか、現在の責任をも放棄しているのです。

 総理、総理が乗るみこしの担ぎ手は、国民の代表たる議員、そして国民のはずです。総理には、一刻も早く官僚の担ぐみこしから飛びおりていただき、この国会に国民によるみこしをつくり直す場を与えることを要請します。

 それは、総理、あなたの退陣です。それこそが、あなたが日本の現実に合わせるべきことなのです。総理、あなたの退陣こそ、求められている政治決断です。

 終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 東祥三議員の御質問にお答えをいたします。

 まず、所信表明で申し上げた、あしたの安心、あすへの責任についての御質問をいただきました。

 御指摘のように、私は、先日の所信表明において、今を生きる私たちにあしたの安心をもたらし、未来に生きる者たちに向けたあすへの責任を果たすことを訴えました。

 その具体的な内容として、被災地の復興と福島の再生、日本経済の再生、社会保障、外交などについて所信を申し上げ、また、臨時国会で処理するべき喫緊の課題解決への御協力をお願いいたしました。

 私の所信に対する東議員の御感想は謹んで承りましたが、きょうの責任を果たし、あしたの不安を解消するためにも、内閣はもちろんのこと、国会は、目の前の課題に向き合い、国民のために解決しなければなりません。

 ぜひとも、各党、各議員の皆様の御協力を得て、国民に対する責任を果たしていきたいと考えております。

 続いて、エネルギー・環境政策が合わせるべき現実についての質問がございました。

 東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故は、これまでのエネルギー政策のあり方に大きな疑問を投げかけ、その抜本的な変革を求めるものでありました。

 まず何より、事故を経験し、国民の多くが原発に依存しない社会の実現を望むようになりました。一方で、その実現に向けたスピード感については意見が分かれています。

 また、徹底した省エネルギー社会の実現と再生可能エネルギーの導入拡大を図るグリーンエネルギー革命に対し、かつてなく期待が高まっております。しかしながら、当面、火力発電に頼らざるを得ない状況にあることから、化石燃料等の安定的かつ安価な供給確保が重要となっております。

 さらに、電力システムについては、分割された区域ごとに需給を調整したり、需要に応じて幾らでも供給するというこれまでの仕組みの限界が明らかになりました。全国規模で電力需給を最適化するとともに、需要抑制で需給を調整するといった新しい電力システムが求められております。

 このような現実を踏まえ、先般、革新的エネルギー・環境戦略を決定した次第であります。

 続いて、エネルギー政策見直しの基礎となる反省についての御質問をいただきました。

 エネルギー政策の見直しに当たって、政府は、戦略策定に向けた中間整理を取りまとめた際に、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、浮き彫りになった課題を挙げました。

 具体的には、我が国のエネルギー構造がリスクに対して脆弱であることや、大規模集中を旨とした電力システムの有効性等をこれまで所与の前提としてきたことなどを挙げています。

 また、国会事故調や政府事故調からも指摘されているとおり、複合災害という視点が欠如していたことや規制組織の独立性が十分でなかったことも、反省すべき点として挙げられます。

 これらの反省を踏まえ、本年九月には、革新的エネルギー・環境戦略を取りまとめたほか、原子力規制委員会を新たに設置し、原子力安全規制の抜本的な見直しが進められているところであります。

 なお、原子力発電については、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する過程において、安全性が確認された原発はこれを重要電源として活用することとしており、原発の存在そのものを否定するものではありません。

 次に、エネルギー・環境戦略と閣議決定についてのお尋ねがございました。

 原発に依存しない社会を一日でも早く実現してほしいという多くの国民の声を踏まえ、エネルギー・環境会議において、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入するとの方針を示した革新的エネルギー・環境戦略を決定いたしました。これは、政府として決めた、ぶれない基本的な方針です。九月十九日には、今後の政策の具体化のプロセスを含め、こうした方針を政府として閣議決定いたしました。

 革新的エネルギー・環境戦略については、御指摘のような参考文書にとどまるものではなく、その方針がしっかりと閣議決定なされている、このように御理解をいただきたいというふうに思います。

 次に、エネルギー・環境戦略についてのお尋ねがありました。

 原発に依存しない社会の実現に向けた道筋は、必ずしも一本道ではなく、長い道のりでもあります。我が国のエネルギー構成に影響を与える内外の情勢を将来にわたって正確に見通すことは極めて困難であるとの現実を踏まえると、こうした道筋に関しても、国際的なエネルギー情勢や、国民生活、経済活動に与える影響などを常に注視しながら、検証を行い、不断に見直しをしていく必要があります。

 また、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするとは、一日も早く原発に依存しない社会を実現するため、あらゆる政策資源を投入するという考え方を示したものであり、御指摘の、稼働ゼロが可能になっても稼働させたままもあり得るという意味ではありません。

 続いて、高効率な発電や電力システム改革についてのお尋ねがございました。

 火力発電の中でもCO2排出量が少ないLNG火力は、ベース電源として引き続き重要な役割を果たす高効率な石炭火力とともに重要な電源であり、導入を促進してまいります。

 御指摘のあった電力系統の強化や安定化は、革新的エネルギー・環境戦略のグリーンエネルギー革命の実現のための具体的な取り組みとして例示をしたものであります。

 同時に、エネルギー需給の仕組みを抜本的に改める電力システム改革も不可欠であり、小売の全面自由化による地域独占の撤廃や発送電の分離により、国民に開かれた電力システムを実現するため、改革を断行してまいります。

 脱原発基本法案についてのお尋ねがございました。

 革新的エネルギー・環境戦略では、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、グリーンエネルギー拡大等に向けてあらゆる政策資源を投入することとしました。

 この戦略は、一日も早く原発に依存しない社会を目指しながら、再生可能エネルギーの導入と省エネルギーの推進のために現実的に必要な時間を勘案し、また、その間の国民生活や産業への負担を可能な限り抑制するという観点を踏まえて示したものであります。

 これに対して、脱原発基本法案では、基本理念として、遅くとも二〇二五年までのできる限り早い三月十一日までに脱原発を実現することが掲げられておりますが、現実的には、十分な時間が必要ではないのかと考えております。

 また、エネルギー情勢の変化を踏まえれば、政策の不断の検証と見直しを行うことが必要であり、いかなる変化が生じても柔軟に対応できるようにすることが、我が国のエネルギー政策を進めていく上で重要であると考えております。

 次に、日本経済の先行きと消費税率の引き上げについてのお尋ねがございました。

 日本経済の先行きについては、世界景気の減速等を背景として、当面は弱目の動きが続くと見込まれますが、その後、復興施策の着実な推進等が景気を下支えする中で、来年にかけて海外経済の状況が改善するにつれ、景気回復に向かうことが期待をされます。

 ただし、対外経済環境をめぐる不確実性は高いと考えられることから、世界景気のさらなる下振れや金融資本市場の変動等のリスクに注意しつつ、内外の経済動向を注意してまいります。

 その上で、消費税率引き上げの実施については、経済状況の好転について、種々の経済指標を確認し、諸要素を総合的に勘案した上で、最終的にはそのときの内閣が判断するものと考えております。

 社会保障と税の一体改革は待ったなしの課題であり、しっかりと前に進めてまいりますが、同時に、野田内閣の最重要課題である日本経済の再生に向け、日本再生戦略を具体的に実行に移すなど、全力で取り組んでまいります。

 次に、予備費の使用決定と経済対策についてのお尋ねがございました。

 十月二十六日に閣議決定した経済危機対応・地域活性化予備費等の使用については、現下の経済情勢を踏まえ、切れ目ない政策対応を行うため、経済対策の第一弾として、今後需要や雇用の伸びが期待される分野における先導的な事業を後押しするものや、早期に需要、雇用の創出が見込まれるものについて、緊要性の高い施策を予備費により措置したものであり、実質GDPを押し上げる効果は〇・一%強と見込んでおります。

 これに引き続き、デフレからの早期脱却と経済活性化に向け、さらに切れ目のない政策対応を講じるため、遅くとも来月中をめどに経済対策を決定し、速やかに実施に移すこととしております。

 なお、御指摘の領海警備を強化するための予算百七十億円については、本年夏以降の我が国の領海警備に関する情勢の変化に鑑み、領海侵入等の事案に適切に対応するため、予備費の使用により海上保安庁の船艇や航空機等を緊急に整備することとしたものであり、何もこれはこそくな手段ではありません。

 続いて、景気を下支えするための補正予算についてのお尋ねがございました。

 我が国の景気下押しリスクに対応し、デフレからの早期脱却と経済活性化に向けた取り組みを加速させることは喫緊の課題であると考えております。

 このため、日本再生戦略の施策の前倒し、東日本大震災からの早期の復旧復興及び大規模災害に備えた防災・減災対策、規制改革や民間の融資、出資の促進策などを柱立てとする経済対策を遅くとも来月中をめどとして決定し、速やかに実施に移すこととしております。

 その上で、補正予算の編成については、年金特例公債に係る当初予算の補正を含めて年度内にいずれにせよ行う必要がありますが、その時期や具体的内容、規模については、特例公債法案の審議状況や経済対策の内容を踏まえた上で、財源を含めて検討してまいります。

 続いて、経済再生のための税財政政策に関する御質問をいただきました。

 過去の例を踏まえれば、財政出動の効果に過度の期待を寄せることについては慎重であるべきであり、また、極めて厳しい我が国の財政状況のもとで、仮に、財政健全化目標を放棄し、公債発行への依存をさらに拡大すれば、市場や国際社会の信認維持が困難になりかねません。

 加えて、我が国の財政状況のもとでは、経済成長による増収等を期待するのみでは、財政の持続可能性を確保することは困難であります。

 このため、社会保障と税の一体改革を前に進めていかなければなりません。財政規律を守る国であることを行動で示すことが、財政に対する市場の信認を確保し、安定的な経済成長を実現する基礎となると考えております。

 あわせて、内閣の最重要課題である日本経済の再生に向け、日本再生戦略を具体的に実行に移すなど、全力で取り組んでまいります。

 次に、復興予算の流用問題についてのお尋ねがございました。

 復興事業は、全国防災事業等を含め、与野党協議を経て議員立法で制定された復興基本法及び復興構想会議の提言を踏まえ、与党プロセスを経て、全閣僚を構成員とする東日本大震災復興対策本部で決定された復興基本方針に沿って実施しているものであり、当時、防災の副大臣であられたので、事情はよく御存じではないかと思いますが、官僚任せとの御批判は当たらないものと考えております。

 ただし、個別の事業につきましては、種々の御指摘、御批判を受けていることも事実であり、被災地の復興に最優先で使ってほしいという声に真摯に耳を傾けなければなりません。

 被災地が真に必要とする予算はしっかりと手当てしつつ、それ以外については厳しく絞り込んでいくという方針のもと、外部有識者も参加する新仕分けも活用しつつ、政治のリーダーシップのもとで平成二十五年度予算編成に当たってまいりたいと考えております。

 次に、特例公債法案における年金特例公債の規定に関する御質問をいただきました。

 社会保障のための安定財源である消費税率の引き上げを行うためにも経済の再生に全力を尽くしてまいりますが、年金財政の安定のためには、消費税率引き上げにより財源が確保されるまでの間も、基礎年金国庫負担割合を二分の一とする必要があります。

 一方で、その財源を赤字国債に依存し、将来世代に負担の先送りをすることはできません。

 このため、さきの通常国会における野党の御提案も踏まえ、消費税率引き上げ分を償還財源とする年金特例公債を発行することとし、特例公債法案に所要の規定を整備しているものであります。

 続いて、地域主権改革についてのお尋ねがありました。

 地域主権改革は、地域のことは地域に住む住民みずからが責任を持って決められるようにするための重要な改革であり、これまで着実にその推進に取り組んでまいりました。

 これにより、国と地方の関係を、上下の関係から対等なパートナーシップの関係へ転換させてまいりました。

 具体的には、義務づけ、枠づけの見直しにより、道路の構造や公営住宅の入居基準等について、地域の特色を生かした基準を定める条例が全国各地で制定されてきています。また、地域自主戦略交付金の創設により、地方が、府省の枠を超えて、対象事業から自由に事業を選択できるようになりました。

 このように、住民がより地域の実情に応じた行政サービスを受けることが可能となるよう、今後とも、私が議長を務める地域主権戦略会議を中心に、改革を着実に推進してまいります。

 最後に、被災地主導で復興を進めるべきことに関する御質問がありました。

 復興庁の本庁は、各府省に対する総合調整を強力に行うため東京に置きましたが、他方、被災地に三復興局、六支所、二事務所を設置し、被災地のニーズにワンストップで対応するとともに、地域が主体となった復興を強力に支援するため、復興交付金や復興特区の制度を積極的に活用しております。

 また、各府省に対する総合調整機能を有し、復興事業予算を一括計上している復興庁が中心となって、各府省の縦割りを排し、被災地に寄り添いながら復興への取り組みを進めてきたところであります。

 一方で、政府の取り組みについてさまざまな指摘や批判が寄せられているのも事実であります。

 こうした声に真摯に耳を傾け、改善すべきは改善しながら、復興の加速に政府一丸となって取り組むとともに、先ほど申し上げたとおり、復興予算については、被災地が真に必要とする予算をしっかりと手当てしつつ、それ以外は厳しく絞り込んでまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣枝野幸男君登壇〕

国務大臣(枝野幸男君) お尋ねのございました国内立地補助金でございますが、東北経済産業局は、事前の御相談などに応じる等の業務には関与いたしておりますが、案件の審査、採択、あるいは補助金の執行等の主要な業務については携わっておりません。

 また、中小企業等グループ補助金については、これは県に対する補助金で、県がそれぞれの事業者に補助金をお渡しするという制度でございます。県に対する補助金交付の手続等は行っておりますが、案件の採択には直接携わってはおりません。

 したがいまして、両補助金の執行状況等については、東北経済産業局から御説明するよりも、東京においてヒアリングの場が別途設けられるというふうに聞いておりましたので、この東京におけるヒアリングの場で、それぞれの補助金制度全体の執行をつかさどっております経済産業省本省から御説明申し上げることが、正確かつ適切な御説明を行う観点から望ましいと考え、経済産業副大臣からお伝えしたものと承知をいたしております。(拍手)

     ――――◇―――――

早川久美子君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明十一月一日午後一時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(衛藤征士郎君) 早川久美子君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(衛藤征士郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   野田 佳彦君

       総務大臣     樽床 伸二君

       法務大臣     滝   実君

       外務大臣     玄葉光一郎君

       財務大臣     城島 光力君

       文部科学大臣   田中眞紀子君

       厚生労働大臣   三井 辨雄君

       農林水産大臣   郡司  彰君

       経済産業大臣   枝野 幸男君

       国土交通大臣   羽田雄一郎君

       環境大臣     長浜 博行君

       防衛大臣     森本  敏君

       国務大臣     岡田 克也君

       国務大臣     小平 忠正君

       国務大臣     下地 幹郎君

       国務大臣     中塚 一宏君

       国務大臣     平野 達男君

       国務大臣     藤村  修君

       国務大臣     前原 誠司君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  齋藤  勁君


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