衆議院

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第3号 平成24年11月1日(木曜日)

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平成二十四年十一月一日(木曜日)

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 議事日程 第三号

  平成二十四年十一月一日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)


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    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

議長(横路孝弘君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。井上義久君。

    〔井上義久君登壇〕

井上義久君 公明党の井上義久です。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました野田総理の所信表明演説に対し、質問をします。(拍手)

 総理、臨時国会は異例の幕あけとなりました。参議院で総理の所信表明演説を拒否されるという前代未聞の事態です。それも、さきの通常国会で総理の問責決議が可決されたにもかかわらず、あなたが円満な審議ができる環境を整えずに開会を強行した結果であり、憲政史上に重大な汚点を残しました。

 衆議院で行った所信表明演説も、言葉の羅列で、政権を担う目標も覚悟もうかがえません。総理が訴える決断する政治の最初になすべきは、近いうちに国民に信を問う約束を実行することであると、まず冒頭、申し上げたいと思います。

 総理、あなたが就任してから一年二カ月、今回で実に四回の組閣、改造が行われました。民主党みずからが言ってきた一内閣一閣僚は、全くのうそでした。

 民主党は、野党時代、閣僚がかわるたびに、ポストのたらい回しと批判してきました。また、総選挙を経ずに三人の総理が誕生したことも、徹底的に攻撃をしてきました。

 しかし、政権につくや否や、それを上回るポストのたらい回しが常態化しているではありませんか。

 その象徴が、国会に一度も出席せず、答弁にも立たなかった田中けいしゅう前法務大臣です。田中前大臣は、外国人からの献金や暴力団関係者との交際もあった。そのような人物を、なぜ、よりにもよって法務大臣に任命したのか。総理の任命責任は極めて重い。

 また、田中前大臣の辞任により、民主党政権下の拉致問題担当大臣は八人目になりました。こんなことで腰を据えた交渉ができますか。もうどうでもいいという投げやり人事としか思えません。

 そればかりか、今回の改造は、これ以上の離党者を出さないための配慮が働いたとも指摘されています。適材適所とはほど遠い、能力や資質より党内事情を優先した、全くの内向き人事ではありませんか。

 ほかにも、民主党の看板政策であった少子化対策担当大臣は、この三年間で十人目、消費者担当大臣も九人目です。猫の目のようにくるくると閣僚がかわる。マニフェストの総崩れと同様、政治主導も総崩れ、もはや政権の体をなしていません。

 先月十九日、民主、自民、公明三党の党首会談が行われました。三党の党首選から実に三週間以上が無為に経過した後の党首会談でした。

 総理、あなたは、八月八日、当時の自民党谷垣総裁と我が党の山口代表に対して、近いうちに国民に信を問うと約束をしました。そして、今回の党首会談に先立って、三党幹事長会談で民主党の輿石幹事長は、解散に関して総理から具体的で新しい提案があると確約をしました。

 ところが、ふたをあけてみると、あなたは、責任を十分自覚している、条件が整えばきちっと自分で判断をしたいと述べただけで、具体的で新しい提案は全くありませんでした。そして、その条件整備として、特例公債法案の成立や衆議院の一票の格差是正、社会保障国民会議の早期設置の三点を求めました。

 しかし、総理、それらの課題の解決を先延ばししてきたのは、むしろ政府・与党ではありませんか。それにもかかわらず責任を野党に転嫁するのは、本末転倒であり、政府・与党としての自覚もなく、責任も放棄していると言わざるを得ません。

 加えて、近いうちに国民に信を問うと約束した時点で、野田内閣は既にレームダック、死に体であり、諸外国から外交交渉や合意の相手とみなされていません。いたずらに時を過ごすことは、外交課題の解決をおくらせ、国益を損ないます。

 しかも、年度を通じて執行に責任を負えない平成二十五年度予算の編成に着手しようとしている。もはや、政権の延命、時間稼ぎと断ぜざるを得ません。

 八月の三党合意で、近いうちに国民に信を問うとした近いうちとは、少なくとも、年内が常識です。

 総理、今こそ、あなたの勇気ある決断で政治を大きく前に進めるときではありませんか。その覚悟を示せ、このように強く申し上げたい。総理の答弁を求めます。

 民主党が政権交代を果たしてから三年、振り返れば、国民の期待もむなしく、数々の失政を繰り返し、国民を裏切り続けた三年間でした。

 第一に、マニフェストの崩壊です。

 民主党は、衆議院選挙マニフェストで、子ども手当、月額七万円の最低保障年金、暫定税率の廃止、高速道路無料化など、華々しい政策を掲げました。しかも、これらに必要な十六・八兆円の財源は、消費増税をしなくても無駄の削減や予算の組み替えなどで十分確保できるとしながら、民主党自身が実現可能性について検討、検証が不十分な部分があったと認めているように、結局、財源を調達できず、看板倒れに終わりました。

 マニフェストの総崩れで国民の政治不信を増大させた責任は極めて重大です。

 第二に、外交、安全保障の迷走による国益の喪失です。

 鳩山政権での普天間基地問題の迷走に始まり、菅政権での尖閣沖漁船衝突事件をめぐる弱腰外交、そして野田政権での領土をめぐる問題と、日中、日韓関係の悪化など、国益を損失し続けています。これ以上、民主党政権にこの国の外交、安全保障を任せておくわけにはいきません。

 第三に、東日本大震災からの復旧復興のおくれと原発事故対応の混乱です。

 民主党は、震災直後から、遅い、鈍い、心がない対応を繰り返し、被災地の復旧復興の足かせとなりました。今に至っても、到底、被災地の思いに即した対応とはなっておりません。

 例えば、あなたが所信で触れた、仮設住宅の追いだき機能の追加も、公明党が二回にわたる仮設住宅総点検の結果から再三再四設置を求め、ようやく実現をしたものです。余りにも対応が遅い。これ以上の復興のおくれは許されません。

 また、東京電力福島第一原発事故の対応についても、政府、国会、民間、東電のそれぞれの事故調報告は、菅元総理ら官邸の強引な介入が混乱をもたらしたとの見解でおおむね一致しています。民主党の政治主導が誤っていたことはもはや客観的評価となっており、この政治による人災の責任は逃れられるものではありません。

 第四に、経済無策による日本経済の悪化です。

 経済問題は後ほど触れますが、民主党政権は、円高、デフレに対し何ら効果のある対策を打てず、日本経済は低迷をしております。民主党政権には、もはや日本経済を再生する知恵も実行力もありません。

 第五に、水膨れ予算による財政の悪化です。

 事業仕分けもかけ声倒れに終わり、歳出削減の努力も中途半端で、予算の水膨れも是正できていない。これでは、国債市場からの信用も失われかねません。

 以上、民主党政権三年間の失政は明白であり、国民の生活が第一どころか、国民生活を台なしにし、国益を損ねた責任は極めて大きいことを強く指摘しておきます。

 政治と金の問題もあります。

 鳩山元代表の、母親からの巨額の資金提供、菅前代表の、市民の会と称する政治団体側への献金、小沢元代表の資金管理団体陸山会の土地取引をめぐる政治資金規正法違反事件、これら政権交代後の民主党の歴代代表に関する政治と金の疑惑に対し、証人喚問はおろか、参考人招致、政治倫理審査会の開催さえも一度も行われておらず、国民に対する説明責任は全く果たされておりません。

 加えて、野田総理自身にも外国人からの献金問題、さらには、現職閣僚である前原国家戦略担当大臣の事務所費問題も指摘をされています。

 公明党は、これまで、クリーンな政治を実現するために、秘書など会計責任者に対する政治家の監督責任を強化する政治資金規正法の改正や、企業・団体献金の禁止を実現すべきと、一貫して主張してきました。

 これに対して、民主党の歴代代表は、また野田総理自身も、再三再四、国会答弁等で、実現に前向きな発言を繰り返してきました。

 しかし、結局、政権交代三年間、民主党は、実現のための努力を全くしてこなかったではありませんか。

 一方、自公政権下では、与党が主導して、資金管理団体に対する企業・団体献金の禁止、政治団体間における寄附の制限、資金管理団体による不動産取引の禁止、一円以上の支出についての領収書の公開など、数多くの法改正を実現してきました。この差は歴然です。

 与党でありながら、クリーンな政治の実現に背を向け、法改正を積極的に行うことなく、むしろ国民の政治不信を増大させた民主党は、もはや政治と金の問題にけじめをつけられない政党であると断じざるを得ません。

 東日本大震災から一年七カ月がたち、被災した方々は震災から二度目の冬を迎えようとしています。改めて、被災された皆様、今なお原発事故に苦しんでおられる皆様に対し、心よりのお見舞いを申し上げるものであります。

 復興に向けた課題は、被災地の実情により、刻一刻と変化していきます。政治は、こうした状況変化を敏感にキャッチし、被災者に寄り添い、迅速かつ的確にそのニーズに応えていかなければいけません。

 その一つが住宅再建です。

 被災された方々の多くは、生活再建のかなめとなる住宅再建の希望を持ちながらも、二重ローン問題など経済的な理由などで、具体的な一歩を踏み出せていないのが現状です。被災者の状況に即した、よりきめ細やかな支援が求められています。

 今般、復興予算が本来の趣旨に沿わない事業に流用されていたことが明らかになりました。被災地のみならず、増税による負担をお願いした国民に対しても、言い逃れのできない、復興事業の信頼を損ねる許しがたい事態です。

 この問題について、与党の側から、民主、自民、公明三党の協議でまとめた東日本大震災復興基本法に原因があるかのような責任逃れの発言がありますが、筋違いも甚だしい。復興基本法に基づき政府が決定した復興の基本方針の本来の趣旨を都合よく解釈し、流用を認めた政府・与党の予算執行にこそ原因があります。

 調査捕鯨妨害対策事業や受刑者の職業訓練事業などがこの基本方針に合致するのか否か、確認するまでもありません。問題の本質は政府の予算執行能力の欠如にあると、厳しく指摘しておきます。

 流用された事業の予算の組み替えや執行停止を求めます。

 復興を加速させるためには、早急な瓦れき処理が欠かせません。

 岩手と宮城で発生した約二千四百万トンの瓦れきのうち、処理されたのは、九月末現在で、わずか二二・六%にとどまっています。政府は、二県の瓦れき処理を今年度末までに五三%終える中間目標を掲げていますが、その実現のためには、焼却施設の増強や作業の加速化が求められます。

 一方、福島においては、今なお十六万人、そのうち六万人の方々が県外に避難生活を余儀なくされています。一日も早く、ふるさとに戻り、安心して暮らせるようにするためには、着実な除染が必要です。

 特措法に基づき各自治体で除染が進められていますが、中間貯蔵施設や最終処分場の建設先が決定しておらず、このことが除染のおくれにつながっています。建設地の選定を急ぐべきですが、候補地として挙げられた自治体の住民理解を第一に、丁寧かつ迅速に進めるべきです。

 被災地では、今、復興事業の実施そのものが困難になっています。

 工事量の急増によって、作業員や土木技術者は慢性的に不足し、作業員の宿舎も足りない。建設資材の価格も上昇し、調達さえも困難になっています。これらの要因が重なり、各地で入札の不調がたびたび発生しています。復興事業が、国や自治体、民間でそれぞればらばらに進められている上、発注が短期間に集中していることも、その要因の一つです。こうした事態が放置されれば、復興は遠のくばかりです。

 復興を着実に進めるためには、復興庁が主導し、自治体も含めて、計画的に発注する仕組みをつくるべきであります。工事価格についても、資材や労務単価などの実勢価格を予定価格へ柔軟に反映できる仕組みを導入することが必要です。総理の見解を求めます。

 次に、景気・経済対策です。

 ヨーロッパの債務問題は解決がいまだ見通せず、その影響は中国を初めとする新興国にも波及し、世界経済の減速傾向が明らかになっています。

 一方、我が国も、復興需要による効果があるとはいえ、世界経済の減速を反映し輸出や生産が大きく減少するなど、景気後退の傾向が顕著になっています。雇用情勢も依然厳しいままです。さらには、日中関係の悪化が、輸出や観光の不振となって、実体経済に影を落としています。

 特に、中小企業は極めて厳しい状況にあります。昨年は円高倒産が過去最高を記録しましたが、ことしも、年度末に向けて予断を許しません。中小企業の資金繰りの安定化はもちろん、経営改善、事業再生支援などを一層強化しなければなりません。

 こうした中で、金融円滑化法が来年三月で期限を迎えます。出口戦略を加速的に実行に移すとともに、円滑化法の再延長の必要性を含めた検討が必要と考えます。

 先般、日銀は、追加の金融緩和策を決定し、あわせて、デフレ脱却に向けた政府と連名の共同文書が出されました。この点は、現下の経済状況に対応するものとして一定の評価をしますが、金融政策だけではなく、本格的な需要創出策を含めた取り組みを強化する必要があります。

 そうした観点から、日本経済再生へ向け、早急に、本格的な補正予算の編成、執行を含む切れ目のない景気・経済対策を講ずることが必要であることは、明々白々です。

 それにもかかわらず、総理は、十一月中の経済対策の策定を指示する一方で、本格的な補正予算の編成を先送り。その上で、本臨時国会召集直前のどさくさの中で、小手先だけの予備費活用の決定をしました。

 しかし、予備費の歳出化は、当初の歳出予算に組み込まれた枠内での実施にとどまるもので、新しい真水が追加投入されるわけではありません。景気刺激効果は極めて限定的です。

 こうした中途半端で逐次投入のようなやり方ではなく、堂々と補正予算を編成すべきだったのではないでしょうか、総理。

 そもそも、民主党政権になって三年、デフレ脱却はおろか、為替も円高水準が高どまりのまま放置され、国民は、景気が回復したという実感を一度たりとも持てませんでした。これ以上、民主党による政治不況によって国民の生活が壊されるのを見過ごすわけにはいきません。

 総理、あなたが今唯一できること、すべきこと、それは、一日も早く解散し、総選挙を行うことです。そして、国民の民意を得た新しい政権が経済対策や予算編成を実行に移す。これに尽きるのではありませんか。感想があれば、総理、お答えください。

 山中伸弥京都大学教授のノーベル医学・生理学賞受賞が決定しました。科学技術振興、特に再生医療研究への支援拡充を訴え続けてきた公明党にとりましても、今回の受賞はひときわ感慨深く、心から祝福申し上げます。

 山中教授が研究を進めているiPS細胞技術は、世界じゅうの人々が期待してやまない、夢の再生医療実現への弾みとなるばかりか、日本発の画期的な技術が日本再建の大きな力になることが期待をされます。

 世界に先駆けて、iPS細胞による再生医療の実用化と新産業を創成するために、国家を挙げた支援体制を構築すべきです。予算の拡充はもちろんですが、加えて、研究者、スタッフ、事務員がチームとして研究に集中できる仕組みが必要です。そのため、継続的な雇用が可能となるよう、スタッフの雇用環境の整備や、人件費等に係る研究資金の使途の柔軟化などの対策を積極的に講ずるべきです。

 今、世界では、iPS細胞を再生医療や薬の開発に応用するための研究が急速に進んでいます。このiPS細胞のすぐれたもと、リソースとなるのが、公明党が推進してきた臍帯血です。我が党が主導し、九月六日に成立した造血幹細胞移植推進法により、移植に適さない臍帯血を研究目的で利用できるようになりました。

 iPS細胞の研究では我が国は世界のトップを走っていますが、世界じゅうで激しい競争が続いています。何としても、移植可能なレベルのiPS細胞第一号をつくり出すために、そして、何よりも、治療を待ち望んでいる患者さんたちのために、一刻も早く臍帯血をiPS細胞の研究に利用できるようにすべきと考えます。総理の見解を求めます。

 外交、安全保障について見解を求めます。

 日本政府による尖閣諸島の国有化に端を発し、中国各地で反日デモが広がり、日本の接続水域では中国艦艇が航行を繰り返すなど、日中関係は極めて厳しい状況にあります。

 尖閣諸島は、日本が今日まで実効支配を続けてきており、これを安定的に継続するためには、同海域での海上保安庁の人員増や監視警戒態勢の整備、強化が必要です。また、日本の領土である根拠を国際的に知らしめる広報が重要であり、政府の対応はいずれも後手に回っていると言わざるを得ません。

 一方、日中関係は、アジアの平和と安定のために最も重要な二国関係であり、あらゆるパイプを通して関係の改善を図る努力が必要です。

 竹島問題は、国際法にのっとり、冷静に、平和的な解決を目指すべきです。その意味から、国際司法裁判所への単独提訴を初め、あらゆる手段を講じて国際世論に訴えていくべきです。

 普天間移設問題をめぐる政府の対応やオスプレイの配置問題などにより、沖縄県民の不信はますます高まっています。

 沖縄防衛局長の不適切発言や、手続を強行した辺野古移設に関する環境影響評価書の提出、そしてオスプレイの配備の強行など、民主党政権は、沖縄県民の不安と不信を増幅し、普天間の解決を一層困難なものにしました。

 オスプレイについて、公明党は、安全面で地元の理解が得られない限り、配備、運用すべきではないと主張してきました。こうした声に耳を傾けず、県民の不信を決定的にした責任は、民主党政権にあります。

 さらに、沖縄でまた、米兵による卑劣で悪質な犯罪が起きました。沖縄県議会は、先月二十二日、日米両政府に抗議をし、日米地位協定の見直しなどを求める決議と意見書を全会一致で採択しました。

 基地負担の軽減を求める声が無視され続けてきた沖縄の怒りに対し、日本政府の対応が厳しく問われています。

 以上、外交、安全保障の課題について、総理の見解を求めます。

 さて、さきの国会で、民主、自民、公明の三党合意により社会保障と税の一体改革関連法が成立した意義は、まことに大きいものがあります。引き続き、一体改革の完結に向け、低所得者対策の具体化や社会保障制度改革国民会議における具体像の明確化など、残された課題に三党は責任を持って取り組まなければなりません。

 一体改革は、今後も三党合意に基づいて着実に進めるべきです。

 以下、具体的な三点について申し上げます。

 一点目は、景気条項です。

 消費税率引き上げに当たり、経済状況の好転について種々の経済指標を確認し、あわせて、政策目標として実質二%程度の成長を目指すこととしています。そのためにも、日本経済の再生に向けた対策を断行し、経済状況の好転に全力を挙げるべきです。

 二点目は、社会保障制度改革国民会議の設置です。

 社会保障制度改革推進法では、有識者から成る国民会議を設置し、一体改革関連法で具体化されなかった医療や介護制度等を含め、社会保障制度改革について議論し、来年八月二十一日までに結論を出すこととなっております。

 公明党は、さらなる医療・介護制度の充実を目指し、特に、がん対策の強化や難病対策の抜本的拡充、高額療養費制度の見直しなどを通じた負担の軽減を図ることが重要と考えます。また、訪問介護・看護サービスの大幅拡充や、介護従事者の待遇改善による介護サービス基盤の整備充実にも取り組みます。

 なお、今後の公的年金制度や高齢者医療制度の改革については、三党合意にあるとおり、あらかじめその内容等について三党間で合意に向けて協議をするということを改めて確認しておきます。

 会議の設置に当たっては、有識者の人選を含め、三党が責任を持って協議、合意した上で議論を開始すべきであり、政府・与党はその環境整備に努力すべきです。

 三点目は、消費税率引き上げに当たっての低所得者への配慮です。

 税率の引き上げに際しては、低所得者ほど負担が重くなる逆進性への対応が不可欠です。当初の政府案で検討されていた給付つき税額控除と簡素な給付措置に加え、公明党が三党協議で強く主張して盛り込まれた軽減税率の具体的な制度設計が求められます。

 十月十六日、公明党は、政府に対し、軽減税率や被災地への特例措置の導入、中小企業の価格転嫁対策を求め、署名簿を添えて申し入れを行いました。各地から集まった署名の数は実に六百万人に上り、軽減税率の導入を求める声が日増しに高まっております。政府は、多くの国民が実現を望んでいるという事実を真摯に受けとめ、具体的な検討作業を急ぐべきです。

 以上、一体改革の完結に向けた取り組みについて、総理の見解を求めます。

 民主党が政権を担当して三年、内政、外交にわたる数々の失政、稚拙な政権運営、任命した途端に辞任する閣僚、離党者の続出など、民主党に政権担当能力がないことは、もはや誰の目にも明らかです。

 総理が約束した近いうちに行われる総選挙は、民主党に政権の座から退場してもらい、日本再建のスタートを切る選挙にしなければなりません。

 公明党は、日本再建のために、特に次の三点が重要と考えます。

 その第一は、東日本大震災からの復興と福島の再生、そして、命を守る防災・減災対策です。

 老朽化した社会インフラの再構築などハードの対策と、防災教育、防災訓練の推進などソフトの対策を組み合わせた防災・減災ニューディールを推進します。

 具体的には、首都直下地震や南海トラフ巨大地震、豪雨、竜巻などの大規模自然災害から国民の生命と財産を守る防災・減災対策に、十年間で百兆円規模の事業を創出する集中投資を行います。

 公明党は、既に、防災・減災ニューディールを推進するための推進基本法案を国会に提出しております。

 第二は、地域主権型道州制の導入です。

 我が国の閉塞状況を打破するには、全国で一律、画一的な政策を進めてきた中央集権的な統治機構を変え、地域が直面する課題に柔軟に対応できる新しい統治機構を築く必要があります。

 国民的な議論を踏まえ、国、道州、基礎自治体の三層から成る道州制に移行し、住民本位の行政サービスを充実させるとともに、地域の潜在力を存分に引き出すことが不可欠です。

 第三に、原発に依存しない新しいエネルギー社会の創造です。

 原発の新規着工を認めず、可能な限り速やかに原発ゼロを目指します。再稼働に関しては、国民が納得できる新しい安全基準に照らして、厳格に判断すべきです。

 原発依存から脱却するため、持続可能性をキーワードに、省エネルギーの促進と再生可能エネルギーの開発普及、そして、火力発電の高効率化を柱とする新しい産業社会の構築を急がなければなりません。

 省エネ、再エネを軸にした経済成長戦略の明確化を初め、原発廃炉に伴う立地地域の雇用や振興策、家庭や事業所の電気料金の上昇の抑制策といった課題に全力で取り組みます。

 公明党は、どこまでも、大衆とともにという立党精神に立脚をし、地域に根差し、国民生活に根差した政党として、これらの課題に真っ正面から挑戦し、日本再建を担う決意です。

 最後に、野田総理、あなたが今下すべき決断は、国民との約束である、近いうちに信を問うことです。速やかに衆議院を解散し、国民の信を問う、それが日本再建への第一歩であることを強く訴え、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 公明党の井上議員の御質問にお答えをしてまいります。

 まず最初に、閣僚の任命に関するお尋ねがございました。

 今回の内閣改造における閣僚任命とその任命に至るプロセスについては、人事でありますので、さまざまな総合的な検討と判断の結果であると申し上げます。

 これまでの閣僚交代人事において、任命した閣僚が職務を全うできない例があったことは遺憾であり、また、拉致事件が解決に至っていないことは、政府として真摯におわびを申し上げます。

 任命権者としての責任を自覚しつつ、後任の閣僚を含め、内閣全体としてその職務を果たすことにより、政権としての責任を果たしてまいりたいと考えております。

 続いて、三党党首会談での環境整備についての御質問をいただきました。

 十月十九日の三党党首会談において、近いうちに国民の信を問うと申し上げた意味は大きい、自分も責任を重く受けとめておりますし、それを踏まえて環境整備をした上で判断をしたい、そこは自分を信じてほしいというお話をさせていただきました。これは、特定の時期を明示しない中でのぎりぎりの言及だと思っております。

 そして、環境整備の中でもとりわけ急がなければいけないテーマとして、特例公債法案、一票の格差、定数削減の問題、社会保障国民会議のことを挙げさせていただいております。条件が整えば、きちっと自分で判断をしていきたいと考えております。

 続いて、政治資金規正法改正についてのお尋ねがございました。

 政治改革、政治資金規制の問題については、井上議員が御指摘のとおり、民主、公明のみならず、各政党の主張が必ずしも一致しておらず、結果として何も議論が進まずという膠着状態が続いていることは残念であります。

 この、議論ができず決められずという状況を打開するためには、まず、さきの国会で決めることができず、今回の臨時国会喫緊の課題となっております一票の格差是正、議員定数削減を実現させ、政治改革の議論が進むきっかけをつくることが大事だと考えます。お互いに、まず、一つのことを解決する努力を行うことを提案いたします。

 次に、復興に向けた課題の変化に対する対応及びその一つでもある住宅再建についての御質問をいただきました。

 被災地の復興を加速するためには、広範で多岐にわたる被災地のニーズを的確に把握し、きめ細やかに対応していくことが極めて重要であると考えております。そのため、復興庁や復興局の職員は現場主義で復興施策の推進に取り組んでおり、私自身も、被災地を幾度も訪問して、被災者の声に耳を傾けてまいりました。

 こうした中、被災地においては、復旧から本格的な復興の段階に移りつつあり、本格的な生活再建に向け、御指摘の住宅の再建が重要な課題となってきております。

 このため、災害公営住宅の供給を進めるとともに、二重ローン問題への対応について、私的整理による債務免除が可能となるようガイドラインを策定し、その運営を支援してまいります。

 今後とも、被災自治体の要望には丁寧に対応するなど、被災地に寄り添いながら、政府一丸となって取り組んでまいります。

 次に、復興予算の流用という問題についてのお尋ねがございました。

 平成二十三年度第三次補正予算や平成二十四年度予算に計上された復興関連予算は、復興基本法に定められた復興の基本理念に沿った施策に対して予算措置を講じたものであり、現在、各事業の所管大臣が責任を持って執行に当たっておりますが、個別の事業につきましては、種々の御指摘、御批判を受けていることも事実でございます。

 今後、この国会での議論や行政刷新会議の新仕分けにおける議論などを踏まえつつ、それらの執行は国民に誤解を招くことのないよう慎重に対応すべきものと考えておりますし、また、平成二十五年度予算の編成に当たっては、被災地が真に必要とする予算はしっかりと手当てしつつ、それ以外については厳しく絞り込んでまいります。

 次に、災害廃棄物処理の中間目標達成方策に関するお尋ねがございました。

 災害廃棄物の処理は着実に進んでおりますが、平成二十四年度末の中間目標を達成するためには、さらに処理の取り組みをスピードアップする必要があります。

 このため、被災地において、仮設焼却炉と破砕・選別施設の処理能力のさらなる増強、広域処理の受け入れの確定や、国の直轄工事における再生資材の活用に取り組んでまいります。

 今後とも、災害廃棄物の一日も早い処理に向け、政府一丸となって全力で取り組んでまいります。

 続いて、福島の除染における中間貯蔵施設等についての御質問をいただきました。

 中間貯蔵施設は、福島県内の除染により発生する土壌等を安全に保管するために、必要不可欠な施設であります。中間貯蔵施設について、現地の実情を踏まえて議論を深めるため、八月十九日に開催された協議会で、事前の調査の実施についてお願いをし、双葉地方町村に個別に御説明を進めてきたところでございます。

 今後とも、福島県を初めとする関係自治体とよく相談しつつ、地元の関係者の皆様に丁寧な説明を行って御理解をいただきながら、まずはできるだけ早く事前の調査に入らせていただきたいと考えております。

 なお、最終処分場については、政府としては、中間貯蔵開始後三十年以内に福島県外で最終処分する方針であり、そのために必要な減容化技術や安全な運搬方法のあり方などについて、丁寧に検討を行っていく所存でございます。

 続いて、復興事業の施工確保、実勢価格の予定価格への反映についての御質問がございました。

 被災地では復興事業における入札不調が発生をしており、被災地の一日も早い復旧復興に向けて、復興事業の円滑な推進は重要な課題と認識をしています。

 このため、国土交通省を中心に、関係省庁、自治体、業界団体による連絡協議会での情報共有や、需給が逼迫している建設資材について、地域ごとに、関係者による安定的な供給策の協議を進めております。

 また、復興庁において、引き続き、関係省庁と連携しながら、公共インフラに係る地方自治体ごとの事業計画などを公表することで、計画的に復興に取り組んでまいります。

 他方、工事価格については、労賃や資材の実勢価格の機動的な改定を行い、予定価格に反映させるとともに、契約後も必要に応じて契約変更を行うなど、市場の実勢が適切に反映されるよう努めてまいります。

 続いて、中小企業支援及び金融円滑化法についての御質問をいただきました。

 円高等の影響を受ける中小企業の資金繰りについては、全都道府県において相談窓口を設置してきめ細かく相談に応じるなど、対応に万全を期しております。引き続き、中小企業の資金繰りの安定化に向け、しっかりとした対応を行ってまいります。

 また、金融機関における貸し付け条件の変更等の取り組みが定着している現状等に鑑み、中小企業金融円滑化法は予定どおり来年三月末に終了しますが、引き続き、貸し付け条件の変更等に努めるよう促してまいります。

 さらに、中小企業金融円滑化法の終了を見据えた対応として、中小企業の経営改善、事業再生支援に向けた取り組みを徹底支援することが重要と認識しております。

 現在、内閣府、金融庁、中小企業庁において、本年四月に策定した政策パッケージを実施に移し、中小企業再生支援協議会の機能強化等に取り組んでいるところであります。

 さらに、先般私が行った経済対策の指示において、金融円滑化法の期限到来後を見据えた中小企業再生支援の強化という対応策を講じることとしており、今後とも、中小企業の経営改善、事業再生支援をより一層後押ししてまいります。

 続いて、経済対策と補正予算の編成についてのお尋ねがございました。

 井上議員御指摘のとおり、我が国経済の再生に向けて切れ目のない政策対応を行うことは喫緊の課題であります。

 このため、十月二十六日に、経済対策の第一弾として、緊要性の高い施策について、経済危機対応・地域活性化予備費などの使用を閣議決定したところであり、引き続き、遅くとも今月中をめどに経済対策を決定することとしております。

 御指摘の補正予算については、特例公債法案の審議状況や経済対策の内容を踏まえた上で、その時期や内容などについて検討してまいりますが、その実現のため、ぜひとも御党にもお知恵をおかりしたいと考えております。

 デフレからの早期脱却と経済活性化に向け、特例公債法案を含む我が国の諸課題について、与野党間で胸襟を開いて議論を進めていただきたいと考えております。

 経済対策、予算編成と解散についての御質問をいただきました。

 我が国の経済は、欧州、新興国の減速などを背景に、状況が変化しつつあります。政府としても三カ月連続で景気認識を下方修正したことは、御承知のとおりであります。

 このような事態に際して、先ほど申し上げたとおり、財政の活用を含めて適時適切に切れ目のない経済対策を講じることが必要と判断し、今般、予備費の活用を決定したところであり、引き続き、遅くとも今月中を目途に経済対策を策定することとしております。

 予算編成については、内閣の責任として、年間のそれぞれの時期に必要な手順と準備を進めることが必要であり、これは、過去のどの政権、内閣においても同じことであります。

 政治不況を起こさぬためにも、特例公債法の一日も早い成立、間断のない経済対策の実施、着実な予算編成準備が必要と考えます。

 民意を問うということについては、これまで申し上げてきたとおりであります。

 次に、臍帯血をiPS細胞の研究に利用することについての御質問をいただきました。

 臍帯血はiPS細胞の作成に有用ですが、研究のために利用する際には、臍帯血の品質と提供者の同意を得ることが重要です。

 このため、京都大学iPS細胞研究所や臍帯血バンクなど、現在、関係機関と進めている調整を加速させ、御指摘のように、少しでも早期に適切な臍帯血の提供が行われるように、政府としても努力をいたします。

 なお、明日、山中教授を総合科学技術会議にお招きし、教授の御意見をお聞きしつつ、研究環境の改善に向けた政府の取り組みを示す所存でございます。

 続いて、尖閣諸島をめぐる警備、広報や日中関係についての御質問をいただきました。

 尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、現に我が国はこれを有効に支配しています。

 このような尖閣諸島に関する我が国の一貫した立場については、国内外で正しい理解を得るべく、情報発信を強化しています。

 また、尖閣諸島付近海域においては、従来から厳正かつ適切な警戒監視及び警備を実施してきています。

 今般も、平成二十四年度予備費により、海上保安庁の巡視船艇七隻を緊急に整備するなどの対応をとったところですが、今後とも、さまざまな情勢を踏まえながら、海上保安体制の充実強化を図り、領海警備に万全を期してまいります。

 同時に、日中関係は我が国にとって最も重要な二国間関係の一つであり、日中両国は、アジア太平洋地域及び世界の平和と発展に大きな責任を負っています。我が国としては、日中関係の大局を見失うことなく、冷静に対応していく考えであり、中国との間で、さまざまな形で意思疎通を維持強化してまいります。

 竹島問題への取り組みについてのお尋ねがございました。

 竹島は、歴史的にも国際法上も我が国固有の領土です。

 政府は、竹島問題について、法にのっとり、冷静かつ平和的に紛争を解決する考えであり、国際司法裁判所への合意付託及び日韓紛争解決交換公文に基づく調停についての提案並びに国際的な広報の強化などの措置を講じてきているところであります。

 今後とも、情勢を総合的に判断して、御指摘の単独提訴も含め、適切な措置を検討してまいります。

 続いて、普天間移設問題、オスプレイの配備、沖縄県議会の抗議決議などについて御質問をいただきました。

 普天間飛行場の固定化は絶対にあってはならず、日米両政府は、辺野古への移設が、引き続き、唯一有効な解決策であると考えています。

 同時に、国土面積の〇・六%しかない沖縄県内に、全国の約七四%の在日米軍専用施設・区域が集中していることを踏まえ、沖縄の基地負担を少しでも軽減することが最優先の課題であると認識をしています。

 また、オスプレイの配備は我が国の安全保障にとって大きな意味がありますが、その運用に際しては、安全性はもとより、地元の皆様の生活への最大限の配慮をすることが大前提であります。

 今後とも、地元の方々の不安を払拭できるよう、丁寧に御説明をしていく考えです。

 一方、先般沖縄で発生した許しがたい事件については、決してあってはならない極めて遺憾なものであり、米側も既に夜間外出禁止等の措置を講じています。

 政府としては、引き続き、この種の事件の根絶をすべく、綱紀粛正と再発防止について、米側に強く申し入れてまいります。

 政府としては、沖縄県議会の抗議決議を重く受けとめながら、今後とも、事件、不祥事の再発防止はもちろん、普天間飛行場の移設を初めとする沖縄の基地負担の軽減に向け、全力で取り組んでまいります。

 続いて、経済政策についてのお尋ねがございました。

 日本経済の再生に道筋をつけ、雇用と暮らしに安心感をもたらすことは、私の内閣が取り組むべき現下の最大の課題であります。

 このため、フロンティアの開拓により力強い成長を導く日本再生戦略を、国家戦略会議において議論を重ねた上で、この七月に閣議決定をいたしました。戦略に描いた道筋を着実にたどっていけるよう、日本再生を担う人材の育成やイノベーションの創出に力を入れるとともに、グリーン、ライフ、農林漁業の重点三分野と中小企業の活用に政策資源を重点投入してまいります。

 その先駆けとなる新たな経済対策の策定を指示し、先般、その第一弾として、緊要性の高い施策について、予備費の使用を決定いたしました。引き続き、遅くとも今月中をめどとして経済対策の決定に向けた作業を進め、デフレからの早期脱却と日本経済の活性化に向けた取り組みを加速させてまいります。

 また、先日、政府と日本銀行で、デフレ脱却に向けた取り組みについて、共通理解という形で取りまとめ、共同して表明、発表いたしました。デフレからの早期脱却に向けた、さらに大きな一歩となるものであります。井上議員からも一定の評価をいただいたことは、感謝を申し上げます。

 このように、経済再生への取り組みを進め、経済状況の好転に全力を挙げてまいります。

 次に、国民会議の設置を含めた今後の社会保障改革についてのお尋ねがございました。

 まず、御党がこれまで訴えてこられた幾つかの事項を挙げて、さらなる医療・介護制度の充実について御指摘をいただきました。

 それら事項を含め、政府の社会保障・税一体改革大綱においても、医療・介護分野については、医療サービスの供給体制の機能強化、地域包括ケアシステムの構築、難病対策の検討など、改革の方向性を示しています。

 いずれにせよ、御指摘のあった医療、介護、年金などを含めた社会保障制度の残された課題については、公明党も含めた三党の合意や、そのもとで成立した社会保障制度改革推進法に示された考え方に沿って議論を深め、取り組んでいく必要があります。

 国民会議は来年八月二十一日までの期限となっており、既にカウントダウンは始まっています。与野党を問わず、政治の責任として、社会保障に対する揺るぎない安心感を示すためにも、国民会議を早急に立ち上げることが必要であり、委員の人選を含めて、重ねて御協力をお願いいたします。

 最後に、消費税の低所得者対策についての御質問をいただきました。

 消費税率の引き上げに当たっての所得の低い方々への配慮については、さまざまな角度から総合的に検討することが三党間で合意されており、税制抜本改革法に示された諸課題を含め、幅広い観点から、早急に三党間で議論を行ってまいりたいと考えております。

 公党間で建設的な議論が行えるよう、政府・与党として最大限の努力をしてまいりますので、御党にも御協力を改めてよろしくお願いを申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、野田総理に質問します。(拍手)

 野田内閣が、消費税大増税を初め国政のあらゆる問題で、民意に背き、公約を裏切ってきた責任は極めて重大であり、不信任に値します。参議院での問責決議可決という事態を重く受けとめるべきであります。

 日本共産党は、国政の基本問題について、国民の前で議論し、争点を明確にした上で、速やかな解散・総選挙で国民の審判を仰ぐことを強く要求するものです。そうした立場から、以下、質問を行います。

 まず、東日本大震災からの復興問題についてです。

 震災復興を口実として、被災地と関係ない事業に復興予算が流用されていることが明らかとなり、国民の厳しい批判が広がっています。国内立地補助金の名目で、被災地とは関係のないトヨタ、キヤノン、三菱電機、京セラ、東芝など大企業が、二千三百五十六億円もの補助金を復興予算から受け取っています。

 その一方で、被災地の中小企業の再建を支援するグループ補助金は、申請した事業者の六割がふるい落とされています。国が医療、介護の負担減免措置を九月末で打ち切ったことも、大問題になっています。

 国民に、被災地復興のためと言って、二十五年間にわたる所得税、住民税の増税を求めておきながら、被災地と関係ない大企業に莫大な補助金をばらまき、被災地が切実に求めている施策を切り捨てる。総理、これは余りに理不尽だと考えませんか。

 なぜこのような流用がまかり通るのか。

 その大もとには、昨年六月に復興基本法が制定されたときに、民主、自民、公明三党の談合で法案が書きかえられ、被災地域の復興という当初案を東日本大震災からの復興と書きかえて、被災地域という限定を外した上で、当初案になかった活力ある日本の再生という文言を目的に追加したという問題があります。これを受けて、十一月に編成された第三次補正予算で、国内立地補助金を初め、被災地と関係ない予算が多数計上されたのであります。

 復興予算の流用の第一の責任が政府にあることは明らかですが、一体になって進めた自民党、公明党などにも厳しい反省が求められます。

 政府は、国民の強い批判を真摯に受けとめ、復興予算の流用を直ちにストップすべきです。そして、この流用の大もととなった復興基本法を改めるべきであります。

 さらに、個人財産の形成になるなどといって住宅、商店、工場、医療機関などの復旧を支援しないという態度を根本から改め、住宅となりわいの再建に必要な公的支援を行うことを復興の基本原則に据えることを強く求めます。総理の答弁を求めます。

 次に、消費税大増税と日本経済について質問します。

 増税法案が強行されましたが、国民との矛盾はいよいよ深刻になっています。

 九月、国税庁が発表した二〇一一年の民間平均給与は、ピークだった一九九七年と比較して、年間五十八万円、一二%も落ち込みました。国民の所得が減り、消費が落ち込み、内需が冷え込むデフレ不況の悪循環が進行しています。消費税は中小企業にとってもともと過酷な税制ですが、デフレ下で、価格への転嫁は一層困難になっています。

 こんな大不況のもとで消費税大増税を強行したらどうなるか。

 八月に発表された帝国データバンクの調査では、税率引き上げ後に国内消費が縮小すると考えている企業は、何と九割近くに上っています。

 総理は、日本経済への甚大な打撃をどう認識しているのですか。大不況のさなかの大増税など論外であり、実施を中止すべきではありませんか。答弁を求めます。

 電機情報産業の大企業、パナソニック、ソニー、NEC、IBMなどが十三万人もの首切り、リストラを強行しようとしていることは極めて重大です。

 この大リストラは、繰り返しの面談による退職強要によって強行されています。

 NECでは、一人の労働者に十一回も面談し、退職を強要したという訴えが寄せられました。会話が外に漏れないように通気口を鉄板で塞いだ面談室で、繰り返し繰り返し退職を迫りました。疲れ果てた男性は病気になりましたが、退職強要は続きました。十一回目の面談で、上役に、残れると思う、残れないよと追い詰められた男性は、思わず涙があふれ、病気にまでさせておいて、さらに追い打ちをかけるんですか、もう自殺するしかないと叫んだとのことであります。

 労働者をここまで追い詰める退職強要が横行しているのであります。繰り返しの面談による退職強要は違法行為です。

 総理、直ちに違法行為の実態をつかみ、それを根絶するために断固たる措置をとるべきではありませんか。

 日本IBMでは、ある日突然、正当な理由なく解雇を通告し、そのまま労働者を職場から締め出すロックアウト解雇というやり方がとられています。

 ある男性の労働者は、ある日、終業時刻のわずか十五分前に人事担当者からいきなり解雇通告が読み上げられ、きょうの終業時刻までに私物をまとめて帰れ、あすからは出社禁止だと告げられ、同僚がまだ仕事を続ける中、上司の監視を受けながら私物の整理をさせられ、それ以来、一歩も職場に入れない状態となりました。解雇通知書には業績不良が理由として書かれていましたが、その根拠を会社に求めても、何の説明もされていません。

 労働者に考えるいとまさえ与えず、有無を言わさず解雇に追い込む。これは、明らかに解雇権の濫用であり、絶対に認められるものではありません。

 総理は、このような非道な解雇が許されると考えますか。生きた人間を人間扱いせず、力ずくで解雇に追い込む。このような恐るべき無法の横行を放置していて、日本経済の再生などはあり得ないと考えますが、いかがですか。

 電機情報産業の大企業の内部留保は二十六兆円にも及びます。

 雇用や地域経済に責任を負わない身勝手なリストラに際しては、政府が乗り出して、リストラをやめさせ、企業に社会的責任を果たさせる。これは、ヨーロッパでは当たり前に行われていることです。政府は、そうした姿勢で臨むべきではありませんか。総理の答弁を求めます。

 日本共産党は、二月に経済提言を発表し、消費税増税に反対するとともに、消費税に頼らない別の道があることを提案しています。

 一つは、無駄遣いの一掃と、応能負担の原則、負担能力に応じた負担の原則に立った税制改革を進めることです。

 行き過ぎた富裕層減税のために、所得一億円を超えますと所得税の負担率が下がるという逆転現象が生じています。行き過ぎた大企業優遇税制のために、法人税の実質負担率が、中小企業が二六%に対して大企業が一九%という逆転現象が生じています。

 これらの異常な不公平税制を正し、まず、富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革を行うべきだと考えますが、いかがですか。

 二つは、国民の所得をふやす経済政策への転換です。

 大企業にため込まれている二百六十兆円に及ぶ内部留保を、賃上げ、非正規社員の正社員化、中小企業への適正な単価の保障などによって、社会に還元するための社会的ルールをつくるべきです。それは、日本経済を内需主導の健全な成長の軌道に乗せ、税金の自然増収をもたらし、社会保障充実と財政危機打開の道を開くものともなるでしょう。

 我が党の経済提言についての総理の見解を問うものであります。

 次に、原発問題について質問します。

 この間、原発ゼロの日本を願う世論と運動が広がり、政府も、過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいると認めざるを得なくなりました。

 ところが、政府は、原発の再稼働を推進し、青森県大間原発の建設を再開し、使用済み核燃料の再処理を続けるとしています。二〇三〇年代に稼働原発ゼロを可能にするという極めて不十分な方針すら、日本経団連やアメリカに批判されると、閣議決定を見送りました。

 結局、政府の姿勢は、口先では原発ゼロと言いながら、原発推進政策を続けるというものではありませんか。

 日本共産党は、九月、「「即時原発ゼロ」の実現を」と題する提言を発表し、総理に届けました。

 これは、福島原発事故の被害が拡大し続けていること、原発稼働を続ける限り、処理方法のない核のごみがふえ続けること、原発再稼働の条件も必要性も存在しないこと、政府が行ったパブリックコメントでも八割が即時原発ゼロを求めたことなどを踏まえ、全ての原発から直ちに撤退する政治決断を行い、即時原発ゼロの実現を図ることを提起したものであります。

 さらに、提言では、政府が無責任な収束宣言を撤回し、福島の被災者支援と復興に総力を挙げて取り組むことを提起しています。

 総理に、我が党の提言についての見解を問うものです。

 即時原発ゼロは可能です。

 政府は、電力不足になるというおどしで大飯原発の再稼働を強行しましたが、関西電力は、再稼働をしなくても猛暑の夏を乗り切れたことを認めたではありませんか。政府は、原発ゼロで電力料金が二倍になるなどとおどしていますが、政府が根拠とした試算でさえ、原発ゼロでも、全原発を稼働させても、電気料金はほとんど変わらないという結果が出ているではありませんか。

 再生可能エネルギーの導入可能量は、全原発の発電能力の約四十倍であり、この大きな可能性を現実にする本格的取り組みを開始すべきです。そのためにも、原発への未練をきっぱり断ち切り、即時原発ゼロの政治決断を行うことを強く求めるものです。総理の見解を求めます。

 尖閣諸島をめぐって、日中の緊張と対立が深刻になっています。

 私は、九月、「外交交渉による尖閣諸島問題の解決を」と題する提言を発表し、日本政府及び中国政府に我が党の立場を提起しました。

 日本共産党は、尖閣諸島について、日本の領有は歴史的にも国際法上も正当であるという突っ込んだ見解を明らかにしています。

 第一に、日本は、一八九五年一月に尖閣諸島の領有を宣言しましたが、これは、無主の地の先占、持ち主のない土地を先に占有するという、国際法上全く正当な行為でありました。

 第二に、中国側は尖閣諸島の領有権を主張していますが、その最大の問題点は、中国が、一八九五年から一九七〇年までの七十五年間、一度も日本の領有に対して異議も抗議も行っていないということにあります。

 第三に、尖閣諸島に関する中国側の主張の中心点は、日本が日清戦争に乗じてかすめ取ったというものです。

 しかし、日清戦争によって日本が不当に奪取したのは台湾とその附属島嶼及び澎湖列島であり、尖閣諸島はその中に含まれておらず、中国側の主張は成り立ちません。日本による尖閣諸島の領有は、日清戦争による台湾、澎湖の割譲という侵略主義、領土拡張主義とは性格が全く異なる、正当な行為でありました。

 まず、以上の諸点について、政府の見解を問うものです。

 問題は、歴代日本政府が、中国政府に対して、日本の領有の正当性について、理を尽くして説いたことがただの一度もないということです。

 一九七二年の日中国交正常化、七八年の日中平和友好条約締結の際に、日本政府は、尖閣諸島の領有問題について、事実上棚上げにするという立場をとりました。これは、だらしのない外交態度だったと言わなければなりません。

 にもかかわらず、その後、日本政府は、領土問題は存在しないという立場だけをかたくなに繰り返してきました。そのことによって、日本は、中国に対して領有の正当性の主張もできず、中国の非難に対して、反論もできない、主張も反論もできないという自縄自縛に陥ってきました。そのことは、先日の党首会談で、総理も、これまで思考停止になっていたことは反省しなければならないと認めたとおりであります。

 私は、領土問題は存在しないという立場を改め、領土にかかわる紛争問題が存在しているということを正面から認め、冷静で理性的な外交交渉によって、日本の領有の正当性を堂々と主張し、解決を図る立場に立つことを提起するものであります。この提案は、尖閣問題での、外交不在から外交攻勢に転じることを求めるものであります。

 同時に、物理的対応の強化や軍事的対応論は、理性的な解決の道を閉ざす危険な道であり、日中双方が厳しく自制することが必要であります。冷静な外交交渉による解決に徹する必要があります。

 さらに、尖閣問題で日本が領有の正当性を説得力を持って主張するためには、過去の侵略戦争に対する真剣な反省が不可欠です。

 総理は、日清戦争に始まる五十年戦争が、領土拡張を目的とした侵略戦争であったことを認めますか。それを認めてこそ、台湾、澎湖のように侵略で不当に奪取した領域と、尖閣のように正当な手続で領有した領土とをはっきり区別し、日本の領有の正当性を堂々と主張することができるということを私は強調したいのであります。

 以上の諸点について、総理の見解を求めます。

 最後に、こんなアメリカ言いなりの政治でいいのかと多くの国民が感じている二つの問題について質問します。

 一つは、TPP参加問題です。

 この問題について、総理は、所信表明演説で、守るべきものは守りながら推進すると言われました。

 そこで、伺います。

 総理の言う、守るべきものとは何か、具体的に答弁されたい。

 TPPは、例外なき関税撤廃を原則としており、これに参加すれば、日本農業は壊滅的打撃を受けます。また、非関税障壁の撤廃を原則としており、医療を壊し、雇用を壊し、食の安全を危険にさらし、日本の主権を丸ごとアメリカに売り渡すことになることは、既に明らかです。

 日本共産党は、TPP交渉参加を断念することを強く求めるものであります。

 いま一つは、米軍基地問題です。

 米海兵隊のオスプレイ配備強行と、米兵による集団女性暴行事件に対して、激しい怒りの声が噴き出しています。

 沖縄における米兵犯罪は、本土復帰以降、警察が発表しているだけでも五千七百九十件、このうち、性的暴行事件は百二十七件にも上ります。しかも、これらは氷山の一角であり、被害者が声を上げられず、泣き寝入りを強いられたケースも多数あります。

 米軍基地がある限り悲惨な事件はなくならない、沖縄ではこうした声が高まっています。

 沖縄県議会が全会一致で採択した抗議決議には、「県民の我慢の限界をはるかに越え、県民からは米軍基地の全面撤去を求める声も出始めている」と明記されました。全会一致の県議会決議に米軍基地の全面撤去という言葉が明記されたのは、これが初めてのことであります。総理は、沖縄のこの声をどう受けとめますか。

 オスプレイ配備にかかわって、日米両政府が、飛行は人口密集地を避けることなどの安全対策なるものに合意したにもかかわらず、それすら無視した飛行が行われていることも極めて重大であります。

 沖縄では、人口密集地、住宅地上空での飛行が常態化しています。伊江島では、重いコンクリートブロックをつり下げて集落上空を飛んでいたことが、目撃証言でわかっています。

 総理は、日米合意さえ踏みにじられているという認識はありますか。米軍の横暴勝手を野放しにするつもりですか。しかとお答え願いたい。

 事は沖縄だけの問題ではありません。七つの低空飛行訓練ルートなど、日本全土でオスプレイの低空訓練が計画されていることに対して、全国二十六都道府県の百三十九自治体で、配備や訓練に反対する意見書、決議が可決されています。

 沖縄県民のみならず、日本国民の命を危険にさらす。総理は、全国の自治体のこうした声にどう応えますか。

 日米両政府は、日米安保条約を盾に、オスプレイの配備を押しつけようとしています。しかし、そうすればするほど、それならば日米安保条約をなくせという声は高まらざるを得ないでありましょう。

 日本共産党は、オスプレイ配備の撤回、普天間基地の無条件撤去を求めます。米軍基地の全面撤去を求めるとともに、アメリカ言いなりの根源にある日米安保条約を廃棄して、日米友好条約にかえることを強く要求します。

 総理の見解を求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 日本共産党志位議員の御質問にお答えいたします。

 まず、国内立地補助金、グループ補助金、医療、介護の負担減免措置についてのお尋ねがございました。

 復興予算については、被災地の声をしっかり踏まえた上で、昨年、数度にわたり編成した補正予算等において必要な支援策を措置し、着実に成果も上げてきているところであります。

 御指摘の被災地における企業向けの支援策としては、被災された中小企業を支援するグループ補助金や、福島県やその周辺地域に特化した立地補助金を合わせて五千億円程度措置することに加え、中小企業の資金繰り支援策等も措置し、活用していただいています。

 特に、グループ補助金や福島立地補助金については、被災地の強い要望等を踏まえ、今般、予備費の使用を閣議決定し、約一千二百億円の追加措置を盛り込んだところであります。

 こうした施策に加え、大震災を契機に、産業空洞化が復興の妨げになることに対する強い懸念が生じていたことから、日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はないという復興基本方針の考え方に基づき、日本全体のサプライチェーンの維持強化を通じて被災地の復興を進めていくため、国内立地補助金を措置してきたところであります。

 また、国民健康保険、介護保険等の保険料減免、窓口負担免除については、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う国による避難指示等が行われた区域以外の被災者は、本年、平成二十四年十月以降は被災後の所得に応じた窓口負担等を負担していただくこととし、これまでの国による全額の財政支援措置は延長しないことにしました。

 しかしながら、保険者の判断により、引き続き窓口負担等の減免措置を行うことは可能であり、減免措置による財政負担が著しい場合には、減免額の十分の八以内の額を財政支援することにしています。

 続いて、復興予算の使途を根本から改めるべきとの御質問をいただきました。

 復興予算につきましては、種々の御指摘や御批判を受けていることも事実であり、被災地の復興に最優先で使ってほしいという声に真摯に耳を傾けなければなりません。被災地が真に必要とする予算はしっかりと手当てしつつ、それ以外については厳しく絞り込んでまいります。

 その上で、御指摘を受けている事業への対応については、多くの政党に御尽力をいただいて成立した復興基本法の改正というよりも、復興増税を含む財源の性格なども踏まえながら、これを使用することがふさわしい事業なのかなど、まずは各事業の内容や必要性を見て、個別に判断していくべきものと考えております。

 また、復興に当たっては、暮らしや産業、雇用の再生が重要課題であり、引き続き、住宅再建のための合意形成の推進や中小企業グループ化補助金の拡充など、被災地のニーズにきめ細やかに対応してまいります。

 続いて、デフレ不況下での消費税率引き上げについてのお尋ねがございました。

 社会保障を持続可能なものとするためにも、社会保障・税一体改革を前に進めていかなければなりません。財政規律を守る国であることを行動で示すことが、財政に対する市場の信認を確保し、安定的な経済成長を実現する基礎になるものと考えています。

 また、消費税の引き上げ分は全額社会保障財源として国民に還元することとしており、転嫁対策などの具体化も進めてまいります。

 他方で、日本経済の再生に道筋をつけ、雇用と暮らしに安心感をもたらすことは、私の内閣の最重要課題であり、日本経済の失速を避けるため、切れ目ない経済対策を講じつつ、デフレからの早期脱却と日本経済の活性化に向けた取り組みを加速させてまいります。

 次に、電機情報産業での退職勧奨等についての御質問をいただきました。

 これまで、大規模な退職勧奨や解雇の動きに対しては、必要に応じて都道府県労働局が事実関係を確認した上で、企業に雇用の維持や再就職援助を要請し、関係法令や裁判例に基づく啓発指導などを実施しています。さらに、個別の労使紛争には、解決のためのあっせん等、紛争解決を援助しています。

 もとより、企業は安易に雇用調整すべきではありませんが、政府としては、個別の事案に応じて離職者の受け皿確保に取り組むなど、地域経済、雇用への影響にも十分配慮し、雇用の維持や再就職援助に取り組んでまいります。

 次に、無駄遣いの一掃及び富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革についてのお尋ねがございました。

 政権交代以降、事業仕分けの活用などの取り組みを進めてきており、今後も、無駄遣いの根絶に不断に取り組んでまいります。

 消費税率の引き上げによって国民全体に幅広く負担をお願いする中、格差是正の観点から、所得課税や資産課税において税率構造の見直し等を進めていかなければならないと考えており、税制抜本改革法附則の規定に基づき、平成二十五年度改正においてしっかりと検討してまいります。

 また、御指摘の、所得一億円を超えると所得税の負担率が下がるという点については、証券優遇税制が原因の一つにあると考えています。これについても、税制抜本改革法の規定を踏まえ、平成二十六年一月から確実に二〇%の本則税率とする方針であります。

 一方で、法人税の実質負担率が中小企業よりも大企業の方が低いとの御指摘については、二重課税回避のための措置などを大企業の税負担の減少のための措置と位置づけているのであれば、その論拠は妥当でないものと考えます。

 なお、平成二十三年度改正における中小企業の軽減税率の引き下げなど、中小企業には特段の配慮をしているところであります。

 次に、経済政策についての御質問をいただきました。

 日本経済の再生に道筋をつけ、雇用と暮らしに安心感をもたらすことは、私の内閣が取り組むべき現下の最大の課題であります。

 このため、フロンティアの開拓により力強い成長を導く日本再生戦略を、国家戦略会議において議論を重ねた上で、この七月に閣議決定をいたしました。

 また、雇用を守り、格差をなくし、分厚い中間層に支えられた公正な社会を取り戻すことが重要であります。

 賃金等の労働条件については、各企業の労使関係において、経営状況や経済情勢等を踏まえて決定されるべきものであり、関係労使間において真摯な話し合いが行われることを期待します。

 非正規雇用の労働者については、労働契約法、労働者派遣法の改正や助成金の支給などにより、雇用の安定や処遇の改善に取り組んでいるところであります。

 大企業による中小企業に対する違法な行為の排除については、引き続き、独占禁止法や下請法の厳正な執行に取り組んでいきます。

 こうした取り組みによって力強い成長と財政健全化を両立することが、社会保障制度の持続可能性を高めることになると考えます。

 続いて、原発政策についてのお尋ねがございました。

 原発事故を経験し、国民の多くが、原発に依存しない社会の実現を望むようになりました。一方で、その実現に向けたスピード感については意見が分かれています。

 こうした国民の声を踏まえ、原発の再稼働については、革新的エネルギー・環境戦略において、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするようあらゆる政策資源を投入する、その過程において安全性が確認された原発は、これを重要電源として活用することとしています。

 また、再処理事業についても、国内外における取り決め等を踏まえ、従来の方針に従い取り組むこととしています。

 大間原発については、既に原子炉の設置許可及び工事計画認可が行われており、それを前提に事業者が建設再開を判断したものであります。今後は、原子力規制委員会が独立の立場から安全性を確認していくことになります。

 長年続けられてきた原発推進政策を変えることは、決して容易なことではありません。それでも、困難な課題から逃げずに、原発に依存しない社会の実現に向けて、大きく政策を転換し、果敢に挑戦をしてまいります。

 こうした方針については、今後の政策の具体化のプロセスを含め、しっかりと閣議決定をされています。

 次に、共産党の御提言についてのお尋ねがございました。

 革新的エネルギー・環境戦略では、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、グリーンエネルギー拡大等に向けてあらゆる政策資源を投入することとしました。

 この戦略は、一日も早く原発に依存しない社会を目指しながら、再生可能エネルギーの導入と省エネルギーの推進のために現実的に必要な時間を勘案し、また、その間の国民生活や産業への負担を可能な限り抑制するという観点を踏まえて示したものであります。

 これに対して、御指摘の提言における即時原発ゼロについては、現実的には、十分な時間が必要ではないかと考えております。

 東京電力福島第一原発においては、昨年十二月、専門家による緻密な検証作業を経て、原子力災害対策本部にて、事故対応における一つの区切りとして、冷温停止状態を達成し、ステップ2が完了したことを確認しています。

 また、政府として、福島の復興再生に向けて、福島復興再生特別措置法や福島復興再生基本方針に基づき、政府を挙げて、各種の取り組みを幅広く実施しているところであります。

 福島復興再生基本方針で掲げた、安全で安心して暮らすことのできる生活環境の実現、地域経済の再生、地域社会の再生に向けて、引き続き、責任を持って取り組んでまいります。

 続いて、今夏の電力需給と電気料金の試算、即時原発ゼロへの見解について御質問をいただきました。

 ことしの夏の電力需給については、需要面では、家庭や企業の皆様の思い切った節電努力等により、事前の想定よりも需要が抑制をされたほか、供給面では、大飯原発の再稼働があったことや火力発電所等のトラブルが少なかったことなどにより、事前の想定よりも供給力が確保されるなど、需給両面における最大限の努力により、今夏の厳しい電力需給を乗り切ることができました。

 電気料金の試算については、本年六月に提示したエネルギー、環境に関する三つの選択肢について、原発依存度が低いシナリオになるほど電気料金が上昇する傾向が示されており、特定の試算結果のみを主張したものではありません。

 一日も早く原発に依存しない社会を目指すという政策転換を実現するためにも、再生可能エネルギーの導入拡大を初めとするグリーン政策大綱を年末までに策定し、日本から世界へと広がるグリーンエネルギー革命を思い切って加速させてまいります。

 再生可能エネルギーの導入や省エネルギーの推進のためには、コストや安定性の確保など、乗り越えるべき課題が多くあります。

 こうした政策転換を行うためには、現実的に必要な時間を確保するとともに、その間の国民生活や産業への負担を可能な限り抑制することが必要です。

 したがって、即時原発ゼロの政治判断を行うべきとの御指摘でありますが、現実的には十分な時間が必要ではないかと考えております。

 次に、我が国の尖閣諸島の領有権の歴史的、国際法上の正当性についての御質問をいただきました。

 尖閣諸島は、日本政府が再三にわたり現地調査を行い、尖閣諸島が、無人島であるだけではなくて、清国の支配が及んでいる痕跡がないことを慎重に確認した上で、一八九五年一月に、閣議決定により、正式に日本の領土に編入をいたしました。この行為は、先占の法理に基づくもので、国際法にも合致しています。

 また、中国政府が尖閣諸島に関する独自の主張を始めたのは、東シナ海に石油埋蔵の可能性があるとして尖閣諸島に注目が集まった一九七〇年代以降からであり、それ以前に、中国側は何ら異議を唱えていません。

 加えて、尖閣諸島は、一八九五年四月に締結された下関条約第二条に基づいて日本が清国から割譲を受けた台湾及び澎湖諸島には含まれておらず、日清戦争に乗じて尖閣諸島をかすめ取ったとの中国側の主張は当たりません。

 以上のとおり、我が国が国際法に合致した正当な方法で尖閣諸島を領有し、これを有効に支配しているという点は、御指摘のとおりであります。

 続いて、尖閣諸島をめぐる状況への対応及び過去の戦争に対する認識についてお尋ねがございました。

 尖閣諸島が日本固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いなく、現に、我が国はこれを有効に支配しており、尖閣諸島をめぐって解決すべき領有権の問題は存在しません。

 御指摘のように、これを領土問題として捉えることは、領土の帰属が今後の交渉や第三者の判断により現状と変わる可能性があることを認めることであり、我が国の立場とは相入れません。

 ただし、我が国としては、日中関係の大局を見失うことなく冷静に対応していく考えであり、さまざまな形で緊密な意思疎通を行ってまいります。

 また、現在の日中関係の厳しい局面が平和的に処理されるべきということは、言うまでもありません。

 御指摘の、過去の戦争も含め歴史的な事象に関する評価については、専門家等により議論されるべきものと考えますが、いずれにせよ、さきの大戦に関する政府の認識は、平成七年の内閣総理大臣談話等により示されてきているとおりであります。

 続いて、TPP参加問題についてのお尋ねがございました。

 FTAAPの実現は既に内外で共有された目標であり、政府としては、高いレベルの経済連携を引き続き推進し、貿易・投資に関する新たなルールづくりを主導する方針です。

 このため、国益の確保を大前提として、守るべきものは守りながら、TPPと日中韓FTA、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を同時並行的に推進します。

 TPPについては、関係国との協議を通じ、情報収集に努め、十分な国民的な議論を経た上で、あくまで国益の視点に立って結論を得ていくことにしています。

 私は、昨年十一月の記者会見において、世界に誇る日本の医療制度、日本の伝統文化、美しい農村、そうしたものは断固として守り抜く旨述べました。

 いずれにせよ、仮にTPP協定交渉に参加する場合には、守るべきものは守り抜き、そして、かち取るものはかち取るべく、国益を最大限に実現するために全力を尽くします。

 次に、沖縄県議会の抗議決議についてのお尋ねがございました。

 先般沖縄で発生した許しがたい事件は、決してあってはならない極めて遺憾なものであり、米側も夜間外出禁止等の措置を講じていますが、政府としては、引き続き、この種の事件を根絶すべく、綱紀粛正と再発防止について米側に強く申し入れてまいります。

 また、国土面積の〇・六%しかない沖縄県内に全国の約七四%の在日米軍専用施設・区域が集中しており、沖縄の基地負担を少しでも軽減することが、政府として最優先で取り組むべき課題であると認識をしています。

 政府としては、沖縄県議会の抗議決議を重く受けとめながら、今後とも、事件、事故の再発防止はもちろん、普天間飛行場の移設を初めとする沖縄の基地負担の軽減に向け、全力で取り組んでまいります。

 オスプレイの運用に関する日米合意、及び地元の懸念にどう応えるかについてのお尋ねがございました。

 オスプレイの運用に際しては、安全性はもとより、地域住民の皆様の生活への最大限の配慮が大前提であります。

 そのために、米国は、オスプレイに関する合同委員会合意を遵守し、安全性等に最大限配慮していると認識していますが、政府としても、この合意が遵守されるようフォローしていく考えであり、今後も引き続き、米側との間で必要な協議を行ってまいります。

 また、オスプレイの訓練等について、本土を含む地元自治体の皆様に御懸念、御不安があることは十分認識しております。

 これまでも政府全体としてさまざまな努力をしてきたところですが、今後とも、地元の皆様の声に真摯に耳を傾けつつ、オスプレイの運用について御理解がいただけるよう、丁寧に御説明をしてまいります。

 最後に、オスプレイ配備及び普天間飛行場を含む日米安保体制について御質問をいただきました。

 我が国周辺地域の安全保障環境は厳しさを増しています。こうした中、日米安保条約のもと、米軍の前方展開を確保し、その抑止力をもって日本の安全を確保していくことが最も現実的かつ適切と考えています。

 また、オスプレイは米海兵隊の能力の中核を担うすぐれた装備であり、その日本への配備は、我が国の安全保障にとって大変大きな意味があります。

 同時に、先ほど申し上げたとおり、その運用に際しては、最大限の安全性を確保し、地元に与える影響を最小限にとどめる観点から、日米間の合意が遵守されるようフォローしてまいります。

 普天間飛行場については、その固定化は絶対に避けなければならず、政府として、一日も早い移設、返還の実現に向け、全力で取り組んでまいる所存でございます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 阿部知子君。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党・市民連合を代表して、野田内閣総理大臣所信表明演説に対し、質問をいたします。(拍手)

 まず、冒頭に指摘をいたしますが、十月二十九日の所信、さらに各党質疑への御答弁を拝聴しながら、現下の社会経済情勢に対する野田総理の危機感の乏しさ、加えて、政権交代後三年を経た初心の後退、さらには、進むべき方向性への具体策のなさ等を感じたのは、私のみではないと思います。二十回以上繰り返されたあすへの責任も、むなしく響きます。

 昨年三月十一日の東日本大震災から数えて二度目の冬を迎えようとする今日、復興のためと称して打たれた数々の経済政策は早くもその効果が薄れ、月例経済報告もこの三カ月間連続で弱含み、生産や雇用にも陰りが見えています。

 世界経済という外的要因のみならず、日中関係の悪化という政治リスクの中で、対中貿易の落ち込みや観光分野に与える影響も極めて大きな懸念材料です。

 このような状況下で、総理は、なぜ、もっと胸襟を開いて、早急に大胆な補正予算を組むことの必要性と協力を野党に呼びかけないのでしょうか。総理の見解を伺います。

 さきに決定された予備費等を用いた四千二百二十六億円の経済対策は、誰が考えても余りにも場当たり的で、かつ、本格的な経済対策が先送りされることによって、戦略性の乏しいものになっています。おまけに、二〇一四年四月に消費税増税が予定されるとあれば、中小企業の皆さんは、身をすくめるような思いで先行きに不安を持っておられます。

 二カ月連続で日銀の金融緩和が行われても、実体経済を立て直す産業政策、経済対策が伴わなければ、その効果もありません。

 今こそ、政権交代の当初に構想した国家戦略室の機能を十分に発揮させて、まず、私ども社民党からも強く主張した、低炭素社会の実現と再生可能エネルギーの普及に全力を挙げて取り組むべきだと考えます。これまで歴代六人の大臣が国家戦略を担当されましたが、そうした力強いメッセージが実現されることは、今日までありませんでした。

 ちなみに、省エネを初めとする低炭素社会の実現や再生可能エネルギーの普及は、家庭やオフィス、そして産業界を含めた国民各層の参加のもとに、すぐれて地方分散型のエネルギー・産業構造への転換を可能とするものであり、地域活性化と雇用にも直結するものと考えます。総理に、実効性のある取り組みについてお尋ねをいたします。

 次に、冒頭で指摘いたしました初心の後退、すなわち、野田総理が述べられた、雇用を守り、格差をなくし、分厚い中間層に支えられた公正な社会への道筋がどうなったのかを伺います。

 確かに、政権交代以降、リーマン・ショックで五・四%まで上昇していた完全失業率は、景気の持ち直しに伴い、つい最近まで低下傾向を示しておりました。しかし、そうした中にあっても、いわゆる非正規労働者の比率は上昇する一方であり、去る十月三十日に発表された労働力調査によれば、この種のデータがとられた平成十四年以降、男女ともに最も高い非正規雇用率となっています。

 平成二十三年、男女計では三五・一%を非正規労働者が占め、男性では一九・九%、そして女性では何と五四・四%と、働く女性の二人に一人以上が非正規であるという現実です。

 労働力人口が減少する中で、女性たちの就労は、社会にとっても、また一人一人の女性にとっても極めて重要な人生の支えであるにもかかわらず、低い賃金かつ不安定な身分に置かれているということを、総理は一体どうお考えでしょうか。

 政権交代の当初に連立三党の共通政策として掲げた労働者派遣法改正はもちろんのこと、労働契約法の改正も抜本的とはほど遠いものとなっており、このままでは、不安定就労が生涯にわたる格差を生み続けることは必定です。

 野田総理が政治生命をかけると言って民自公の三党合意のもとに成立させた消費税増税法は、果たして、社会の安心や活力を生むことにつながるでしょうか。

 消費増税が、低所得者層や中小企業に与える重い負担はもちろんのこと、子育て世代も含めた年収三百万円から八百万円の幅広い世帯であっても、社会保険料負担の増大とも相まって生活を圧迫することは、各種調査の指摘するところであります。

 景気低迷、家計の収入減の続く中での消費増税によって、総理の言うところの、まさに分厚い中間層が崩壊しかねないわけですが、総理は、このことをどうお考えですか。

 政権交代後の出来事の中で、三月十一日の東日本大震災とそれに続く東京電力福島第一原発事故への対応は、政権として最優先の課題であったと思います。そのおのおのに、政府はどう取り組んだでしょうか。

 東日本大震災からの復興のために、二〇一一年度、一二年度予算で組まれた十七・五兆円の予算の中に、その使途が必ずしも被災地の復旧や復興を第一に考えたとは到底思われない事業が多数指摘されました。

 中でも、二千九百五十億円に上る国内立地推進事業費補助金は、その大半が、被災地以外の全国の企業に対して、サプライチェーンを支えるという名目で支出され、一方で、被災地での中小企業等グループ補助金は、五度にわたる公募を実施し、被災地からの要望が高いにもかかわらず、なかなか採択されないという事態が起こっております。

 これは、全国展開の資金力もある大企業よりも、被災地に密着して復旧復興の核となる企業の支援を優先すべきであるという、国民の思いにも反しております。

 復興の基本方針が日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はないとしていることが、こうした歯どめのない全国補助を可能にしたわけですが、総理は、そもそも、復興構想会議等でうたわれた復興の基本理念をどうお考えなのでしょうか。

 かつて、大正十二年に十万人以上の死者を出した関東大震災直後に約一万三百世帯の被災者からの聞き取り調査を行った経済学者の福田徳三は、その著書「復興経済の原理及若干問題」の中で、人間の復興という概念を繰り返し提唱し、それを具体化するものとして、生活本拠地である住宅の確保と、生を営む権利としての失業の防止を強く打ち出したと言われます。

 住居や仕事の見通しもなく苦しむ被災者の現実より重いものはなく、まず、その方々にこそ支援が届けられるべきであります。

 経済産業省としてもこうした被災地の中小企業や商店の実情を聞く作業を改めて行うことを提案いたしますが、枝野産業経済担当大臣はいかがお考えですか。

 今回の東京電力福島第一原発事故を経験して、多くの国民は、原発事故の被害は事故後も長きにわたって続き、また、放射能に占領された故郷には帰ることもかなわないという現実を知りました。野田政権は昨年十二月十六日に事故収束宣言を出しましたが、それはせいぜい原発サイト内に限られたものであり、拡散した放射能は今も川や湖、海、大地、大気を汚し続け、健康被害の懸念も絶えません。

 原子力の安全規制をつかさどるとして去る九月十九日に発足した原子力規制委員会の委員は、今もって国会同意人事を経ておらず、総理が国会閉会中に任命したのみという変則的な状況にあります。

 その原子力規制委員会は、十月二十六日に、十六ある原発サイトで福島並みの事故が起きた場合の放射能の拡散予測を公表いたしましたが、今般決定された原子力災害対策指針で緊急時防護区域(UPZ)とされる三十キロメートル圏を超える放射能の拡散があり得ることを多くの箇所で示しました。

 そのデータに一部誤りがあったとして周辺自治体からは不信の声が上がっておりますが、今後策定されることになる事故発生時の避難対策をも含む地域防災計画は、果たして、事故後に、再びふるさとに、居住地に戻れない事態をも想定したものになるのでしょうか。長浜原子力防災担当大臣に見解を伺います。

 さらに、さきに建設工事が再開された青森県大間原発にあっては、東京電力福島第一原発事故以前の設置基準に基づくものですから、事故を踏まえて再考されるべきと考えます。

 大間原発には、あわせて活断層の指摘もあり、また、津軽海峡を隔てて函館市まではわずか二十三キロメートルの距離で、その間、何も遮るものがありません。世界に前例のないフルMOXの原子炉ということで、プルトニウム飛散の可能性も含めて、極めて危険性が高いと考えますが、バックフィットの適用も踏まえての枝野経済産業担当大臣のお考えを伺います。

 大飯原発の再稼働判断も、いわば暫定安全基準に基づくものです。活断層の再調査も近く行われますが、みずからの責任で再稼働を判断された野田総理は、これをまず停止させるべきではありませんか。

 今後の原発の再稼働も新規立地も、全て原子力規制委員会の安全評価の上に成り立つという昨日の御答弁でしたが、一方で、原子力規制委員会は最終判断には関与しないということも表明しておられます。

 一体、誰が最後に国民に対しての責任をとるのでしょうか。総理の認識を明確にしてください。

 あわせて、総理は、繰り返し現実的な原発ゼロへの道に言及されましたが、その一方で、原発輸出に関しては、今回の復興予算の中にちゃっかりとベトナムでの事業化可能性調査に五億円を計上しております。到底、復興と関係あるものとも思われません。

 また、自国では事故が起こって原発を卒業するということを表明しているのに他国には輸出するという矛盾を、総理はどうお考えですか。

 冒頭で指摘したように、今、我が国は、尖閣諸島をめぐる中国との確執によって、経済までも冷え込む事態となっています。韓国との竹島問題、ロシアとの北方領土問題においても緊張関係が生まれています。

 日本の直面するこうした問題について、米国の歴史家であるジョン・ダワー氏は、一昨日の朝日新聞に掲載されたインタビューの中で、全ては一九五一年のサンフランシスコ講和条約の中で取り残された課題であり、その後のアメリカの政策との関係であるという指摘をされていますが、これはまことに的を射ていると思います。

 東アジアの中に位置する我が国が、同時に日米関係を見据えながら、今後どのように行動していくのか。いたずらに中国との対立をあおるのではない、粘り強い働きかけも必要になります。総理はいかにお考えか、お伺いいたします。

 また、そうした意味では、総理が熱心に進められる通商交渉も、平和構築の大きな手段ではあると思います。ただし、現在、日中韓FTA交渉は、冷え込んだ外交関係ゆえ、なかなか進展を見せておりません。

 その一方で、TPP、環太平洋パートナーシップには、国内からも強く懸念の声が上がり、十分な情報開示も、国民的議論もありません。こうした状況下でTPP協定交渉への参加表明をされることはよもやないと思いますが、総理、いかがですか。

 日米関係にあっても、沖縄の普天間基地の移設問題が解決せぬまま、沖縄県民が強く反対するオスプレイ配備の強行や米兵により繰り返される性的暴行事件によって、沖縄の怒りは今や極限に達しています。

 単に一時的な、米兵の夜間外出を禁ずるだけでなく、まず、早急に日米地位協定の改定に着手し、犯罪に対しての具体的かつ実効性のある再発防止策を確実にすべきです。玄葉外務大臣のお考えを伺います。

 最後に、野田総理が消費増税法案の成立を図ろうとしたときから、既にその選択は主権者である国民に委ねられるべきでありました。その後に発覚した復興予算の不適切な執行状況も、この間の民主党政権の空洞化した政治の帰結だと思います。

 一日も早い衆議院解散・総選挙こそが政治に対する国民の信頼を取り戻す唯一の方策であることを申し述べ、私の質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 社民党の阿部議員の御質問にお答えをしてまいります。

 まず最初に、補正予算と経済対策についてのお尋ねがございました。

 十月二十六日に閣議決定した予備費の使用については、現下の経済情勢を踏まえ、切れ目のない政策対応を行うため、経済対策の第一弾として緊要性の高い施策を措置したものでありますが、引き続き、遅くとも今月中をめどに経済対策を決定することとしています。

 補正予算の編成については、特例公債法案の審議状況や経済対策の内容を踏まえた上で、その時期や内容について検討してまいりますが、デフレからの早期脱却と経済活性化に向け、特例公債法案を含む我が国の諸課題について、与野党間で胸襟を開いて議論を進めていただきたいと考えております。

 次に、低炭素社会の実現と再生可能エネルギーの普及についてのお尋ねがございました。

 徹底した省エネルギー社会の実現と再生可能エネルギーの導入拡大は、グリーンエネルギー革命の柱であり、あらゆる政策資源を投入して取り組んでまいります。

 この取り組みの中で、家庭や地域が、受け身でエネルギーを消費する立場から転換し、省エネルギーの担い手となり、さらに、地域の分散型発電所になっていくことが重要です。

 このため、電力消費の見える化やピーク時の消費コントロールなどを通じた省エネルギーを地域で行う仕組みの確立や、家庭の太陽光発電や燃料電池の導入促進、固定価格買い取り制度の着実な運用などを実行してまいります。

 これらは、低炭素社会の実現に寄与するだけでなく、新しいビジネスや雇用の創出を通じた地域活性化にも大きく寄与するものと考えており、年末までに策定するグリーン政策大綱においてこうした政策を取りまとめ、グリーンエネルギー革命を加速させてまいる所存であります。

 続いて、分厚い中間層に関して、雇用についての御質問がございました。

 分厚い中間層を復活させるためには、女性、高齢者、若者、障害者、全てを念頭に全員参加型社会を目指すとともに、ディーセントワークを実現しなければなりません。

 さきの国会では、労働者派遣法、労働契約法等を改正し、働く人を一層元気にする仕組みができつつあります。

 今後とも、女性の活躍促進による経済活性化を図るため、働く「なでしこ」大作戦を実施するとともに、労働者派遣法については、必要な検討を進めてまいります。

 また、非正規雇用で働く労働者の雇用の安定や処遇の改善に向けて、望ましい働き方ビジョンを踏まえて取り組んでまいります。

 次は、一体改革の意義と分厚い中間層についてのお尋ねがございました。

 消費税率の引き上げは、その負担の面だけを取り出して見るべきではありません。

 今回の改革では、引き上げ分が全額社会保障財源として国民に還元されること、社会保障の所得再分配により低所得者には負担を上回る受益があることをあわせて考える必要があります。

 また、一体改革は、社会保障の充実、安定化を図るものであり、貧困、格差の解消を図るためのきめ細やかな施策を講ずることとしています。

 あわせて、消費税率の引き上げに伴う低所得者対策の具体化も検討してまいります。

 分厚い中間層に支えられた公正な社会を取り戻すため、必要な人に必要なサービス、給付が適切に行われ、社会保障制度を持続可能なものとするための一体改革を前に進めてまいる決意でございます。

 次に、復興の基本理念に関する御質問をいただきました。

 政府としては、多くの政党の御尽力によって成立した復興基本法に定める基本理念、そして復興構想会議による提言を踏まえ、復興の全体像を明らかにする復興の基本方針を決定し、これに従って復興施策を進めてまいりました。

 御指摘の中小企業等グループ補助金については、被災地の方々からの要望に対してきめ細かく支援や協力を行ってきたところですが、今般、共同事業の熟度が高まった案件が増してきたことから、予備費による増額も決めたところであります。

 ただし、個別の事業については、種々の御指摘、御批判を受けていることも事実であり、被災地の復興に最優先で使ってほしいという声に真摯に耳を傾けていかなければなりません。被災地が真に必要とする予算はしっかりと手当てしつつ、それ以外については厳しく絞り込んでまいります。

 続いて、原発再稼働の判断についてのお尋ねがございました。

 大飯原発三、四号機の再起動に当たっては、安全性の確認を大前提として、今回の事故のような地震、津波に襲われても炉心損傷に至らない十分な安全性が確保されていることを確認いたしました。

 今般設立された原子力規制委員会は、原子力利用の推進と規制を分離し、専門的な知見に基づき、中立公正な立場から原子力安全規制に関する職務を担うものであり、大飯原発も含め、原発の安全性については、同委員会が独立した立場から評価を行い、必要な判断を行うものと考えています。

 その上で、原発の再稼働や新増設を含むエネルギー政策上の判断については、革新的エネルギー・環境戦略において、安全性が確認された原発は、これを重要電源として活用することを決定しています。

 政府としては、革新的エネルギー・環境戦略の決定方針について、しっかりと責任を果たしてまいりたいと思います。

 次に、国際的な原子力協力についてのお尋ねがございました。

 昨年の原発事故を踏まえ、事故の経験と教訓を世界と共有することが重要であり、これにより国際的な原子力安全の向上に貢献していくことは、我が国が果たすべき責務と考えます。

 この観点から、諸外国が希望する場合には、相手国の事情などを見きわめながら、高い水準の安全性を有する技術を提供し、原子力協力を行っていくことには、基本的な意義があるものと考えます。

 御指摘のベトナムにおける事業化調査についても、そのような原子力協力の一環として実施するものであります。

 なお、我が国が原子力協力を進めるに当たっては、相手国の事情等を踏まえて、それぞれのケースに応じて判断をしており、無制限に原発輸出を進めているわけではありません。

 次に、東アジアにおける我が国の外交姿勢についてのお尋ねがございました。

 東アジアの安全保障環境は厳しさを増しており、領土や主権をめぐるさまざまな出来事も生じています。

 我が国の主権にかかわる問題については、国際法にのっとって、不退転の決意でしっかりと対応します。

 同時に、我が国は、大局観を持って、中国、韓国、ロシアを初めとする周辺諸国と安定した信頼関係を取り結んでいくべきと考えます。

 また、我が国外交の基軸となるのは日米同盟であり、その一層の深化、発展に努めながら、周辺諸国との互恵関係のさらなる充実に取り組んでまいります。

 特に、御指摘の中国との関係は、我が国にとって最も重要な二国間関係の一つです。尖閣をめぐる事態が、日中関係の大局、ひいてはアジア太平洋地域の安定に影響を及ぼすことは望んでおらず、そのような状況とならないよう、中国とは引き続きさまざまな形で意思疎通を維持強化しながら、冷静に対応していく考えであります。

 次に、日中韓FTAやTPPへの参加についての御質問をいただきました。

 FTAAPの実現は既に内外で共有された目標であり、政府としては、高いレベルの経済連携を引き続き推進し、貿易・投資に関する新たなルールづくりを主導する方針です。

 このため、国益の確保を大前提として、守るべきものは守りながら、TPPと日中韓FTA、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を同時並行的に推進します。

 日中韓FTAについては、本年五月の日中韓サミットにおいて、年内に交渉を開始することで一致し、九月に実務的な協議を終えたところであります。

 TPPについては、関係国との協議を通じ、情報収集に努め、十分な国民的な議論を経た上で、あくまで国益の視点に立って結論を得ていくこととしています。

 我が国のTPP交渉への参加については、我が国国内における議論や関係国との協議が煮詰まっていく段階で判断をしてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣玄葉光一郎君登壇〕

国務大臣(玄葉光一郎君) 私には、日米地位協定についてのお尋ねがございました。

 先月、沖縄におきまして発生した悪質で卑劣な事件、これは絶対に許せるものではございません。

 単なる再発防止あるいは綱紀粛正、こういった言葉を繰り返すのではなくて、実効性の担保を伴った防止策がとられるように、日本側としても具体的な申し入れをしているところでございます。

 日米地位協定につきましては、昨年末、その根幹をなす刑事分野におきまして、二つの改善措置に合意をしたところでございます。

 米国と他国との間の地位協定と比較をしても、刑事分野で接受国の側に配慮した内容になっていると考えておりますが、さらに、事件、事故、騒音、環境、こういった問題について、引き続き、具体的に一つ一つの問題を解決すべく、改善を積み重ねていく考えであります。

 その上で、日米地位協定について、今後とも、日米同盟をさらに深化させるよう努めていく中で、普天間飛行場の移設問題、在沖縄米海兵隊の移転など、他の喫緊の課題の進展を踏まえつつ、その対応について検討していきたいと考えております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣枝野幸男君登壇〕

国務大臣(枝野幸男君) 阿部さんから、私には二問いただきました。

 まず、被災中小企業の実情等をしっかり聞くようにという御指摘でございます。

 御指摘のとおり、被災地の中小企業を支援する政策を講じていくに当たっては、そうした企業の方々の生声をしっかりと聞いて、実情や実態を踏まえることが基本であると考えます。

 例えば、被災地から強いニーズのある中小企業等グループ補助金については、職員が被災地に赴き、地元の中小企業や商店の声などを聞きながら、制度の趣旨に照らして熟度の高い事業となるよう、県と協力して支援、協力を行ってきているところでございますが、御指摘を踏まえ、さらに、被災地の声やニーズを十分に把握して、被災中小企業の復旧復興に資するよう努力をしてまいりたいというふうに思っております。

 次に、大間原発に関する質問をいただきました。

 御指摘いただいた原子力発電所の安全性については、東京電力原発事故の反省を踏まえ、原子力規制委員会が、その権限において、独立の立場から安全性を確認していくことになりました。

 このため、原子力規制委員会の判断に予断を与えるようなことがあってはならず、安全性に関連する問題については、私の立場から申し上げるべきではないと思っております。

 大間原発については、既に原子炉の設置許可及び工事計画認可が行われており、それを前提に事業者が建設再開を判断したものであると承知をしています。

 仮に完成をした場合の安全性の判断、そして、これらの許認可に関する権限などについては、今の趣旨のように、原子力規制委員会に属するものであり、同委員会において独立して判断されるものと認識をしております。(拍手)

    〔国務大臣長浜博行君登壇〕

国務大臣(長浜博行君) 私には、地域防災計画についての御質問をいただきました。

 地域防災計画の作成に当たっては、その作成に必要な技術的事項を原子力規制委員会が定めた原子力災害対策指針に基づくことが必要でございます。

 この指針は、今般の東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえて、これと同様の事故が起きた場合に備えた防災対策を講ずることを想定したものでございます。

 したがいまして、今後各自治体で策定される地域防災計画は、今般の福島事故と同様の事故が起きたとしても住民の安全を確保できることが必要と考えており、住民が帰還できるよう、発災後の除染や復旧計画についても考慮したものでなければならない、このように承知をしております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 渡辺喜美君。

    〔渡辺喜美君登壇〕

渡辺喜美君 みんなの党渡辺喜美であります。(拍手)

 国家の本来業務は、国民の生命、自由、財産を守ること。この任務をおろそかにして、官僚統制、中央集権を続けていると、日本の衰退はとまりません。経済危機が迫っているとき、マクロ経済政策を財務官僚、日銀官僚に丸投げをしてきたツケが顕著になってきています。日本経済の先行きについて、昨日の答弁を聞くと、総理の認識は大甘です。

 政府、日銀が「デフレ脱却に向けた取組について」という共同文書を発表しましたが、これは、政府、日銀の政策協定として義務づけたものなのでしょうか。それとも、単なる現状の理解、決意を示したものなんでしょうか。

 日銀の展望レポートでは、一四年度の物価上昇率見通しが〇・八%で、一%のめどを達成するどころか、逆に遠ざかっております。共同文書は、これまでの日銀の政策に間違いはなく、現状路線を続けるというメッセージです。

 総理は、デフレの原因をどうお考えになっているんでしょう。

 政府、日銀が一体的な行動にならず、デフレ状態が続くのは、日銀法に問題があるからです。

 日銀法を改正して、雇用の安定や物価目標を加え、日銀の責任も明確にすべきではありませんか。

 政府は、日銀の親会社的存在であるにもかかわらず、日銀に期待、要請するばかりで、ガバナンスがきいていないんです。政府が目標を日銀に示し、その目標達成に関する義務違反があれば、日銀総裁を解任できるようにすべきであります。

 曖昧な共同文書を出すことで、かえって、政府側から日銀法改正をしないという宣言になっていませんか。

 景気後退が顕著になってきている今、予備費で経済対策というのは本末転倒ですよ。本気でデフレ脱却に取り組むなら、しっかりと補正予算を編成し、大胆なマクロ政策、財政金融一体政策を打ち出すべきであります。

 なぜ補正予算の編成を先送りしたんですか。財務省が拒んだんですか。

 総理の言うグリーンエネルギー革命、再生医療の推進、農林漁業の六次産業化は、いずれも自公政権の時代から、成長戦略の重点分野として示し続けてきたテーマであります。

 潜在的に成長の可能性が高いのに、いまだ成長のエンジンになり切れていないのはなぜか。この分野の制度や規制に問題があり、がんじがらめの既得権構造があるからではありませんか。

 電力、医療、農林漁業などの分野について、既得権構造にまで踏み込んだ制度、規制の抜本改革に取り組む覚悟はありますか。覚悟なくして、成長エンジンとすることなど、夢のまた夢であります。

 みんなの党は、特例公債法案にやみくもに反対しているわけではありません。まず減額補正をやるべきです。

 例えば、国債費の定率繰り入れ分十兆円を減額すれば、赤字国債三十八兆円を二十八兆円まで減額できます。なぜしないんですか。

 また、本年度予算総則で規定されているように、一時的な資金繰りは、二十兆円を限度に短期国債も発行できるというのが国会の議決であります。

 それにもかかわらず、政府は、閣議決定で、国会が認めたつなぎ国債二十兆円を出せないようにしてしまいました。なぜ、経済危機が迫っているときに、みずからの手足を縛るんですか。

 総理、そもそも、国会が決めたルールを行政府が都合よく解釈し、覆すことを、変だと思いませんか。

 しきりに、特例公債法が成立しないと十一月末には財源が枯渇する、国民生活や地域に影響を及ぼし大混乱が起きるなどとあおっている。もはや自己実現的予言というもので、ハルマゲドンが来るぞと言って自作自演をするのと同じですよ。

 不毛な党派対立とは、財務省の敷いたレールの上で、民自公のチキンレースが展開をされていることです。

 政府として、財務省の解釈を改め、資金繰り債二十兆円を発行して、当面、しのげばいいじゃありませんか。そうした政治決断こそが、政治主導というものじゃないんですか。

 原発事故との戦いは続いています。福島第一原発の事故の収束は、日本の国際的な信頼性をかけた重要な安全保障問題でもあります。

 国家の本来業務は、国民の生命、自由、財産を守ること。

 総理は、昨年暮れ、冷温停止を宣言しました。しかし、それ以降もたびたび使用済み核燃料プールや圧力容器の温度は上昇し、原子力緊急事態宣言もいまだ発令中であります。

 冷温停止宣言は今でも正しかったと、自信を持って言えますか。

 原発の事故収束プログラムを管理するためにも、政府は、国内外のさまざまな専門家を集め、政府から独立した調査チームを早急に立ち上げるべきですが、いかがでしょう。

 規制当局と東京電力との力の逆転関係をつくらないためにも、独立の調査チームからセカンドオピニオンをとっておくべきであります。

 二年から三年の間に福島沖近辺で震度七程度の地震が起きる可能性も指摘されています。そのとき、四号機のプールが破損する心配があるんです。再び、より大きな放射性物質の放出が生じて、東京を含む広大なエリアが汚染される可能性も指摘されています。

 東京電力の言うように、本当に二年以内に四号機から千五百本もの核燃料の取り出しができるんですか。その根拠についても明らかにしていただきたい。

 また、大規模災害に直面したとき、どのような対策を講ずるかについて、用意ができているんでしょうか。

 チェルノブイリ原発事故の収束では、軍人が多数駆り出されました。旧ソ連では、事故収束は軍隊以外が行うのは不可能だったからであります。

 日本では、東京電力を破綻処理もせず、このまま東京電力に任せていたのでは、再び重大な問題につながりかねません。国家の存亡にかかわることだけに、国として前面に立ち、自衛隊を投入することも含め、国の責任で確実に収束を実現すべきではないでしょうか。

 みんなの党は、昨年、子どもと妊婦を放射能被害から守る法案を取りまとめ、各党に呼びかけ、参議院に全会派一致で提出、今年六月に子ども・被災者支援法が成立をいたしました。同法には、はっきりと、原子力災害から国民の生命、身体及び財産を保護すべき国の責任が明記されています。

 しかし、現状は、広域にわたって放射能による健康被害の可能性があるのに、被害者の健康調査は福島県のみに任せっ切り。原発事故の初期に放出された大量の沃素により、今後三年、五年、十五年の間に小児甲状腺がんの問題が生じる可能性も指摘されているのです。

 なぜ国が責任を持って国民の健康管理をしないのですか。日本の原子力災害の被害対策を根本的に見直す観点から、子ども・被災者支援法の基本方針をつくろうではありませんか。

 原発事故から一年半を過ぎた今、政府の務めは、汚染によって自分の家や土地から引き離された無辜の市民に対して、最優先でその資産価値を保障することではありませんか。

 みんなの党は、汚染地域の資産を借り上げ、買い上げて、自然エネルギーの生産拠点や除染の実験施設等に活用する法案を国会に提出しています。

 帰れない地域の方々に、みんなの党は選択わざを提案いたします。除染を待って帰るか、移転して新生活を始めるか、選択できる経済的条件を保障する仕組みを直ちにつくる考えは総理にありますか。

 高濃度の放射性セシウムを含む指定廃棄物最終処理場の建設に当たり、国が突然かつ一方的に候補地を決めたことに、栃木県矢板市と茨城県高萩市が猛反発をしています。一連の候補地選定作業は、決断する政治を履き違えた、上意下達、住民不在そのものです。このままでは、処分場建設が進まない上、他県での候補地提示も一層困難になることは間違いありません。

 既に行った候補地提示を白紙撤回し、地方自治体や住民の意向を十分に踏まえた選定手順に改めるべきと考えますが、いかがですか。

 みんなの党は、電力再生アジェンダを提案します。

 徹底した電力自由化、発送電分離により、消費者が電源、電力会社を選べる抜本改革を行えば、新たな成長産業が生まれます。高くて危険な電源である原発を選ぶ人はいなくなります。

 地域独占電力会社の原発は、官僚統制、中央集権システムのゆがみの象徴です。一九四〇年につくられた国家統制の電力供給体制を転換すれば、原発を自然淘汰し、ゼロにすることが可能になります。

 総理は、原発をゼロにするのかしないのか、どっちですか。

 みんなの党は、原発ゼロで成り立つ経済に確かな回答を持っています。原発でやられた日本を、電力自由化で元気にしていきましょう。

 以上、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) みんなの党渡辺議員の御質問にお答えいたします。

 最初に、政府、日銀の共同文書と、デフレの原因についてお尋ねがございました。

 デフレの原因としては、需要が供給能力を下回る需給ギャップの存在、企業や消費者の成長期待の低下、デフレ予想の固定化があると考えています。

 デフレからの早期脱却は、政府によるマクロ経済政策及び構造改革と、日銀による金融政策が相まって実現されるものであります。

 一昨日、政府と日銀が共同して表明、発表した「デフレ脱却に向けた取組について」は、デフレからの早期脱却を政府、日銀の共通の課題とし、両者が一体となってそれぞれの役割を果たすべく最大限の努力を傾注する決意を示すとともに、両者の政策の整合性を高め、政策運営の効果を高めることを目指したものであります。

 次に、日銀法改正についてのお尋ねがございました。

 総裁の解任など、政府の関与をこれまで以上に強める日銀法改正については、日銀の独立性の観点から、慎重に考える必要があると思います。

 日銀においては、これまでも適切かつ積極的な措置を講じてきたと考えておりますが、引き続き、先ほど申し上げた政府と日銀が共同して表明、発表した決意のもと、デフレからの早期脱却に向け、その役割を果たすことを強く期待しております。

 次に、経済対策と補正予算の編成についてのお尋ねがございました。

 政府としては、経済対策の第一弾として、先日、緊要性の高い施策について予備費の使用を決定しましたが、これに続き、遅くとも今月中をめどに経済対策を決定することとしています。

 補正予算については、特例公債法案の審議状況や経済対策の内容を踏まえた上で、その内容や時期について検討してまいります。

 三分野の規制、制度の抜本改革についての御質問をいただきました。

 日本経済の再生は野田内閣の最重要課題であり、日本再生戦略に基づき、今後の成長が見込まれるグリーン、ライフ、農林漁業の三分野に政策資源を重点投入することとしています。

 その実現のため、規制・制度改革に聖域なく取り組み、この三分野を含め、民主党政権として、これまでに五百四項目の閣議決定を行ってまいりました。

 規制・制度改革は、市場における競争や新領域の創出を促し社会経済構造を変革していくために、最も重要な取り組みの一つです。引き続き、大胆かつ速やかな改革を、聖域なく強力に推進してまいります。

 次に、特例公債法案の成立遅延に伴う対応に関する御質問をいただきました。

 定率繰り入れについては、特例公債法案が成立しない状況を踏まえ、既に本年度当初から繰り入れを延期してきております。ただし、御指摘のように、定率繰り入れを停止して歳出予算を減額すれば、将来の国債償還への備えが不足することから、適切ではないと考えております。

 また、特例公債法案の成立が見込めない場合に、特例公債金収入を償還財源とする財務省証券を発行することは、財政法という法律に照らして、許容されないものと考えております。

 次に、東京電力福島第一原子力発電所の事故収束に関するお尋ねがございました。

 東京電力福島第一原子力発電所については、昨年十二月、専門家による緻密な検証作業を経て、原子力災害対策本部にて、事故対応における一つの区切りとして、冷温停止状態を達成し、ステップ2が完了したことを確認いたしました。

 その後も、原子炉の温度、圧力、格納容器からの追加的な放出量などもモニタリングをし、総合的に冷温停止状態が継続していることを確認しており、温度の低下した状態が着実に維持されております。

 また、廃炉に向けたプロセスについては、政府・東京電力中長期対策会議において、国内外の英知を活用した研究開発の実施も含め、しっかり管理していくこととしています。

 さらに、東京電力福島第一原子力発電所の安全確保については、まさに、政府から独立した機関として先般発足した原子力規制委員会において、専門的な知見に基づき、中立公正な立場から確認がなされていくものと承知をしています。

 次に、四号機使用済み燃料プールについてのお尋ねがございました。

 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた中長期ロードマップでは、昨年十二月の策定時点から二年後の平成二十五年末を目標に四号機からの使用済み燃料の取り出しに着手し、その後、二年程度で燃料を取り出す作業を完了するとしています。

 具体的には、千五百三十三体の燃料について、通常の燃料取り出しペースをもとに、通常時よりも低い作業効率や取扱設備の点検に要する期間等も考慮して、二年程度で取り出しが可能と考えられています。

 四号機の原子炉建屋、使用済み燃料プールの健全性については、東日本大震災と同程度の震度六強の地震に対しても十分な耐震性があることが確認をされています。さらに、使用済み燃料プール底部には鋼製の支柱を設置し、コンクリートで固めるなどの補強工事を既に実施しています。

 また、万が一建屋が損傷してプール水が漏えいした場合にも対応できるよう、代替注水手段としてコンクリートポンプ車等を配備するなど、多層的な対応が講じられています。

 次に、東京電力福島第一原子力発電所の事故収束についてのお尋ねがございました。

 東京電力福島第一原発の廃炉に向けた取り組みについては、中長期ロードマップに従って、政府と東京電力が一体となって取り組んでいます。

 また、廃炉に向けた取り組みは、これまで経験のない困難を伴うことから、国が主導的な役割を果たし、内外の英知を結集して進めてまいります。

 今後とも、中長期ロードマップに沿って、発電所の安全維持に万全を期しながら、廃炉に至るまで全力を挙げて取り組む所存であります。

 なお、東京電力福島第一原子力発電所における自衛隊の原子力災害派遣は昨年十二月に終結をしていますが、万が一の場合には、再派遣の要請を行うことができます。

 次に、健康調査の実施主体及び子ども・被災者支援法の基本方針についてのお尋ねがありました。

 今般の東京電力福島第一原子力発電所の事故に係る住民の方々の健康管理調査は、政府としても大変重要であると認識をしております。

 福島県民の健康管理については、県知事から、県が主体となって中長期的に実施するべきものであるとのお考えが示されたことを踏まえ、県が健康管理を自治事務として行い、国は、健康管理調査が円滑に行われるよう財政的、技術的な支援を行うという役割分担のもとで、国としての責任を果たすべく取り組んでいるところであります。

 政府としては、子ども・被災者支援法に基づく基本方針については、真に支援を必要とされる方に適切な支援が行われることとなるよう、積極的に検討してまいります。

 次に、資産価値の保障に関する御質問をいただきました。

 今回の原発事故により避難を余儀なくされた方々の土地や建物については、原子力損害賠償法に基づき、東京電力が、その価値の喪失または減少に応じて賠償することとしています。

 その具体的な賠償基準については、被害を受けた自治体及び住民の方々の意見を踏まえた国の考え方に基づき、東京電力がことし七月に策定したところであり、速やかに賠償を行っていくこととしています。

 また、被害者の方々の中には、帰還して生活再建を希望する方や、あるいは移住を選択する方など、さまざまな立場の方が存在することを踏まえ、それぞれの選択に資するよう、賠償金の一括払いを可能としました。

 政府としては、引き続き、原子力損害賠償支援機構の枠組みなどを活用しつつ、東京電力による迅速かつ適切な賠償に万全を期してまいります。

 次に、指定廃棄物の最終処分場候補地に関する御質問がございました。

 栃木県及び茨城県の最終処分場候補地の選定手順に関しては、県の御意見を伺い、県内の全市町村を対象とした公開の説明会で説明し、その手順に従って候補地を選定し、県及び関係市に提示いたしました。

 候補地の提示は、御理解をいただくためのスタートラインと考えており、今後は、地域の皆様に対して、選定手順やその結果、施設の安全性についてしっかりと説明を行い、御理解を求めてまいります。

 次に、電力自由化と原発ゼロに関する御質問がございました。

 原発に依存しない社会の実現に向けて、これまでの政策を大きく転換し、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入するとした革新的エネルギー・環境戦略を踏まえて、今後のエネルギー政策を遂行してまいります。

 その中で、国民に開かれた電力供給体制の実現に向けて、エネルギー需給の仕組みを抜本的に転換するべく、小売の全面自由化による地域独占の撤廃や発送電の分離による電力システム改革を断行してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣城島光力君登壇〕

国務大臣(城島光力君) 渡辺議員から、私には三問御質問いただいたと思います。

 まず、補正予算の編成についての御質問をいただきました。

 十月二十六日に、現下の経済情勢を踏まえ、切れ目のない政策対応を行うため、経済対策の第一弾といたしまして、今後需要や雇用の伸びが期待される分野における先導的な事業を後押しするもの、さらに、早期に需要、雇用の創出が見込まれるものについて、予備費の使用を決定いたしました。

 これに引き続き、経済対策に向けて、財務省としても全力を挙げてまいります。

 その上で、補正予算については、総理からも答弁されたとおり、特例公債法案の審議状況や経済対策の内容を踏まえた上で、財源を含めて検討することとしており、補正予算の編成を先送りしたとの御批判は当たらないものと考えております。

 特例公債法案と定率繰り入れについての御質問をいただきました。

 特例公債法案が成立しない状況を踏まえ、法案成立後には再開することを前提として、既に、本年度当初から、一般会計から国債整理基金特別会計への定率繰り入れを延期してきております。

 仮に、御指摘のように、本年度の特例公債の減額のため、法案成立後においても定率繰り入れを一切停止すれば、国債整理基金残高が減少し、将来の国債償還への備えが不足することとなり、オペレーショナルリスクへの備えもなくなることから、適当でないと考えております。

 特例公債法案と財務省証券についての御質問をいただきました。

 財政法七条二項では、財務省証券については、その年度の歳入をもって償還しなければならないと定めており、総理からも答弁されたとおり、特例公債法案の成立が見込めない場合において、政府独自の判断により特例公債金を償還財源とする財務省証券を発行することは、許容されていないものと考えております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣平野達男君登壇〕

国務大臣(平野達男君) 私には二問質問をいただいております。

 まず、原発事故に係る健康調査と、子ども・被災者支援法の基本方針の策定について御質問をいただきました。

 原発事故で被災した子供を初めとする住民の生活を守り支えていくことは、大変重要な課題であります。

 子ども・被災者支援法では、第十三条において、原発事故に係る放射線による健康への影響に関する調査について、必要な施策を講ずるものとされております。

 現在、この法律に基づく基本方針の策定を進めておりまして、被災者の健康管理調査についても、環境大臣と連携して検討を進めてまいります。

 次に、避難されている方々への対応について御質問をいただきました。

 避難されている方々におかれましては、放射線量との関係で、一定の期間戻れない方、あるいは移住を決断される方など、さまざまな状況が考えられまして、政府といたしましては、そうした状況に応じた対応をすることが重要であると考えております。

 まずは、国、県、市町村の共催によりまして、八月から順次、住民に対する意向調査を実施しているところであります。

 また、長期避難者の帰還までの間における町外の生活拠点の確保、整備の方針を協議するため、国、県、被災自治体、避難者受け入れ自治体による協議の場を設置したところであります。今後、この場を活用いたしまして、受け入れ自治体との協議を進めながら、災害公営住宅等の建設も進めてまいります。

 帰還に向けましては、居住環境の整備を初め、就労支援、コミュニティー支援、心のケア、放射線に係る健康管理、福祉、教育等々の行政サービスなど、さまざまな課題があります。避難指示解除準備区域を指定した地域から、インフラの復旧、除染等を鋭意進めているところであります。

 また、やむを得ず移住を決意された方々に対しても、新しい生活を始めるための支援に努めてまいる所存でございます。

 いずれにせよ、避難されている方々に対しましては、きめ細かな対応をすることが大切であると考えております。(拍手)

    〔国務大臣長浜博行君登壇〕

国務大臣(長浜博行君) 私にも、複数問、御通告をいただいておりますので、御説明を申し上げます。

 原発の事故収束を管理するために、独立した組織を立ち上げるべきだということに関してでございます。

 総理から御答弁がありましたとおり、先般発足した原子力規制委員会において、専門的な知見に基づき、中立公正な立場から確認がなされていくものと承知をしております。

 次に、四号機からの使用済み燃料の取り出しを二年程度で完了するとしている根拠につきまして、こういう御質問であります。

 まず、千五百三十三体の燃料について、通常の燃料取り出しペースであれば、一週間当たり二十二体のペースで共用プールに輸送する設備能力があることから、単純に計算すると、約七十週と見込まれます。一年四カ月です。

 これに加え、四号機の使用済み燃料取り出しにおいては、より慎重な作業等が求められ、作業効率が低いこと、長期にわたる作業であり、燃料取扱設備、輸送容器の点検が必要であることを踏まえ、二年程度で取り出しが可能、こういう想定をしているところでございます。

 この作業においては、補強工事や代替注水手段の確保など多層的な対応を講じており、今後とも、安全に万全を期しながら燃料取り出しを進めてまいる所存でございます。

 なお、お尋ねの廃炉に向けた取り組みについては、私と経産大臣が共同議長を務めております政府・東京電力中長期対策会議のもとで、政府が主体的にかかわりながら、東京電力と一体となって取り組んでまいる所存でございます。

 次に、健康管理の点でございます。

 政府としては、福島県の主体性を尊重しながら、当該調査が円滑に行われるよう財政的、技術的な支援を行っており、例えば環境省からは、福島県の「県民健康管理調査」検討委員会に、委員として環境保健部長が出席をしているところでございます。

 次に、避難されている住民の方々への対応について。

 汚染によって自分の家や土地から引き離された方々が一刻も早く故郷に帰ることが可能になるよう、国会でお決めいただいた放射性物質汚染対処特措法に基づいて、除染に全力を尽くしてまいる所存でございます。

 指定廃棄物の最終処分場の候補地の提示に当たり、地元の皆様には大変御心配をおかけしております。

 指定廃棄物は、栃木県、茨城県などで増加してきており、既に保管場所が逼迫し、保管スペースの確保が厳しいという声も県内各地から寄せられているところでございます。地域住民の皆様の生活環境を保全する上で、できるだけ早く最終処分をすることが必要であると考えております。

 御指摘の候補地提示については、処分場候補地の選定手順に関して、県の御意見を伺い、県内の全市町村を対象とした公開の説明会を開催し、環境省の公開の災害廃棄物安全評価検討会において、有識者の方々に御議論をいただいたところでございます。

 最終処分場は県内のどこかに確保をしなければなりませんので、県ともよく相談をしながら、地域の皆様に対して、選定手順やその結果、施設の安全性について、今後、しっかりと説明を行い、御理解を求めていきたいと考えております。

 よろしくお願いします。(拍手)

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副議長(衛藤征士郎君) 松野頼久君。

    〔松野頼久君登壇〕

松野頼久君 日本維新の会の松野頼久であります。

 私は、日本維新の会を代表して、野田内閣総理大臣の所信表明に対して質問をいたします。(拍手)

 我が国は、今、明治維新、終戦に次ぐ、時代の大きな転換点に立っています。

 三年前の政権交代を思い出していただきたい。あのとき国民が民主党に期待をしたのは、百四十年も続いた中央集権と官僚統制の仕組みを抜本的に変え、肥大化した行政組織、存在することだけが目的化した天下り法人、そこに流れ込む税金の無駄遣いに切り込むことだったはずです。

 当時、国民は、それまで政権を担ってきた自民党に対して、戦後復興と高度成長に導いた功績と、平時の政権担当能力については疑いを持っていなかったと思います。

 しかし、中央集権体制のもと、長年政権与党として官僚組織と寄り添ってきた自民党には、統治機構改革や徹底した行政改革はできない、だからこそ、政権担当能力に不安は残るが、少なくともしがらみだけはない民主党に一度やらせてみようと、国民は託したのです。

 政権交代時における民主党の政党支持率は四〇%を超えていました。それが、先週の調査ではわずか九%に落ち込んでおり、政権運営に対する国民の不信は目を覆うばかりであります。

 なぜ民主党政権は失敗したのか。

 既得権益を擁護する勢力や官僚機構を説得し、抑え込む迫力に決定的に欠けていたためであります。

 国民が期待していながら、いまだ実現できていない統治機構の改革、それを通じた徹底した行財政改革の実現には、これまでの既成政党にはないリーダーシップがどうしても必要であります。

 日本維新の会が結党した原点は、代表の橋下徹が大阪府知事だったとき、大阪府と大阪市の二重行政を解消する、そのために、みずからが市長選に出馬し、勝利し、無駄な事業を削り、財政の立て直しに取り組んだところであります。

 日本はまさに瀬戸際まで来ています。この日本を覆う閉塞感を克服し、国民の希望を取り戻すためには、日本再生のためのグレートリセットが必要であります。

 総理は、所信表明で、極論の先には解決はありません、中庸を旨として対立を乗り越えていくとおっしゃいました。しかし、今大切なのは、過去の常識と決別することであります。時代を振り返れば、局面局面における大胆な改革の着手が時代を切り開いてきたのであります。

 日本維新の会は、自立する個人、自立する地域、自立する国家の実現を目指します。自立する地域が、自立する国家を支え、自立する個人を育てます。

 国からの上意下達ではなく、地域や個人の創意工夫によって社会全体を活性化し、グローバルな競争力を持つ経済を復興します。

 自助、共助、公助を明確にすること、公助から既得権を排し、真の弱者支援に徹すること、そして、現役世代を元気にし、世代間の協力関係を再構築します。

 また、決定でき責任を負う民主主義、決定でき責任を負う統治機構を確立します。

 そのような維新の理念を実現するために、維新八策を既に明らかにしています。

 日本の現状は、企業に例えれば、債務超過状態にあります。これを再生させるためには、不採算部門である肥大化した行政、すなわち、天下りの温床となっている独立行政法人、特殊法人、外郭団体、特別会計にまず切り込むことは当然であり、そのことがグレートリセットへの第一歩であります。

 次に、政策論について幾つか総理の見解をただします。

 まず、税と社会保障の一体改革について伺います。

 総理は、三党合意を基礎に、残された課題について議論を進めるべきとおっしゃいますが、そもそも消費税の値上げの目的は、社会保障の安心を確保し、破綻しつつある財政の健全化に一定のめどをつけるためだったのではないですか。

 三党合意の一員である自民党の主張などを見ていると、国土強靱化を名目に、結局、無駄な公共事業に貴重な財源が使われてしまい、結果的に社会保障の安定化も財政の健全化も達成できないという結果になってしまうのではないでしょうか。

 次に、道州制について伺います。

 道州制の実現は、我々の目指す統治機構改革そのものであります。

 野田総理は、所信表明において、地域主権改革が政権にとっての一丁目一番地とおっしゃいました。しかし、我々が政策のセンターピンと位置づける道州制については、何ら見解を示しておりません。

 さらに、この三年間で出先機関の改革の法案一本すらまとめられない状態であり、真面目に取り組んでいるとは到底思えない。

 日本維新の会は、徹底した道州制国家を目指します。

 自民党と公明党は、既に道州制基本法の骨子について党内手続を進めていると仄聞いたしますが、総理の道州制に対する見解と、地域主権改革に向けた意気込みを改めて伺いたい。

 三番目に、議員定数の削減について伺います。

 現在、選挙制度については、最高裁が違憲判決を出した一票の格差是正、いわゆる五減案のみが議論されています。国会議員の定数削減問題は、脇に追いやられています。

 日本維新の会は、道州制の導入により、現在の国の仕事の多くを地方に移すなど、統治機構改革を進めながら、衆議院の議員定数を思い切って二百四十に半減する方針を示しています。

 さきの国会で国民の負担を求める増税を決めたわけですから、不十分でありますが、せめて四十五議席の削減ぐらいはするべきではないでしょうか。

 国会議員みずから身を切る姿勢を見せなければ、国民の皆さんの納得は得られません。議会の問題であることはもちろんわかっていますが、今国会で定数削減の法案を可決するべきか、総理の見解を伺います。

 最後に、日本維新の会として、国会運営に対するスタンスについて申し上げます。

 国会のごたごたで議会運営が滞り、特例公債法案がいまだに成立しておりません。毎年の予算編成で当たり前のように国債発行するあしき慣習は改めなければなりませんが、都道府県初め国民生活に悪影響が出始めていることは、大変な問題であります。

 この場で申し上げます。

 日本維新の会は、特例公債法案に賛成します。ですから、一刻も早く成立させる努力をし、国民生活に迷惑のかかる状態をなくしていただきたい。

 日本維新の会は、法案を人質にとって政局にする、解散に追い込もうとするやり方はとりません。国会は、十分に案件を審議する、審議したら賛否を明確にして物を決めていく、決められる国会の実現に努力していくことを申し上げ、日本維新の会の代表質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 松野議員の御質問にお答えをしてまいります。

 まずは、特例公債法案への御協力の意思表明をしていただいたことを感謝申し上げます。

 それから、私への質問は三問でございました。ありがとうございました。

 まず、社会保障・税一体改革の意義などについての御質問をいただきました。

 まず、今回の一体改革では、消費税率の引き上げ分は、全額社会保障財源化し、全て国民に還元することとしており、御指摘のような無駄な公共事業に充てることはないということは明確に申し上げておきます。

 その上で、財政規律を堅持しつつ、真に必要な社会インフラの整備については効率的に資金を充てていくという考え方は、自民党を含む三党の実務者協議等において共有されているものと考えております。

 今回の改革により、二〇一五年度における基礎的財政収支半減目標の達成が見込まれるなど、社会保障の安定財源の確保と財政健全化の同時達成に向けた第一歩を踏み出すことになると考えております。

 次に、道州制及び地域主権改革に向けた取り組みについてのお尋ねがございました。

 地域主権改革においては、まず、受益と負担の相関関係が一番見える基礎自治体、つまり、市町村に権限と財源を集中するべきと考えます。その上で、基礎自治体だけでできない部分を広域自治体が補っていくこととし、広域自治体については、当分の間、現行の都道府県の枠組みを基本と考えています。

 ただし、地域の自主的な判断として、基礎自治体の足りないところを補完するための道州制については、将来的に検討していくことはあり得ると考えます。

 地域主権改革は、地域のことは地域に住む住民みずからが責任を持って決められるようにするための重要な改革であり、義務づけ、枠づけの見直し、地域自主戦略交付金の創設、国と地方の協議の場の法制化など、これまで、着実にその推進に取り組んでまいりました。

 今後とも、関係者の意見を踏まえながら、出先機関の原則廃止の取り組みも含め、改革を進めてまいりたいと考えております。

 最後に、一票の格差是正と定数削減についてのお尋ねがございました。

 選挙制度に関しては、国会において各党各会派で議論、成案を得るべき事項ではありますが、違憲、違法の状態にある一票の格差是正は喫緊の課題であり、また一方、議員、政治家の身を切るという意味で、定数削減も国民の強い要請と認識をしております。

 松野議員が御指摘のとおり、この二つの課題のいずれもが、さきの国会で成案を得ることができなかったことはまことに残念であり、今臨時国会において法改正が実現することを強く期待をしています。

 党利党略を超えて、違憲、違法状態からの脱却が最優先課題であることは言うまでもありませんが、政治改革の推進、議員定数削減という国民の要請にいかに応えるか、各党が真剣に議論し、今国会で結論を得ていただくように、切にお願いをいたします。(拍手)

副議長(衛藤征士郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(衛藤征士郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時散会

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 出席国務大臣

       内閣総理大臣   野田 佳彦君

       総務大臣     樽床 伸二君

       法務大臣     滝   実君

       外務大臣     玄葉光一郎君

       財務大臣     城島 光力君

       文部科学大臣   田中眞紀子君

       厚生労働大臣   三井 辨雄君

       農林水産大臣   郡司  彰君

       経済産業大臣   枝野 幸男君

       国土交通大臣   羽田雄一郎君

       環境大臣

       国務大臣     長浜 博行君

       防衛大臣     森本  敏君

       国務大臣     岡田 克也君

       国務大臣     小平 忠正君

       国務大臣     下地 幹郎君

       国務大臣     中塚 一宏君

       国務大臣     平野 達男君

       国務大臣     藤村  修君

       国務大臣     前原 誠司君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  齋藤  勁君


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