衆議院

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第2号 平成25年1月30日(水曜日)

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平成二十五年一月三十日(水曜日)

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 議事日程 第二号

  平成二十五年一月三十日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(伊吹文明君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。海江田万里君。

    〔海江田万里君登壇〕

海江田万里君 民主党代表の海江田万里です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、安倍晋三内閣総理大臣の所信表明に関連した質問を行います。(拍手)

 まず、冒頭、アルジェリアで起きたイスラム武装勢力による襲撃事件で犠牲になられた方々に衷心より哀悼の意を表し、御家族を初め関係者の方々に心からお悔やみ、お見舞いを申し上げます。

 犠牲者の方々の無念、そして残された方々の悲しみを思うと、まさに心が痛みます。卑劣なテロ行為への怒りを胸に、在外邦人の安全確保に万全を尽くすべく、我々としても責任ある対応をとりたいと考えます。

 さて、安倍晋三総理が第九十六代内閣総理大臣に御就任されました。まずもって、お祝いを申し上げます。おめでとうございます。立場は違いますが、互いに切磋琢磨し、日本の未来を切り開いていきましょう。

 昨年十二月十六日に行われた総選挙で、民主党は歴史的敗北を喫しました。民主党政権の三年三カ月に極めて厳しい民意が示されたことを厳粛に受けとめ、反省すべきは深く反省し、改めるべきは根本から改めていかなければならないと考えています。

 地域の皆様との対話を重ね、国民の声に真摯に耳を傾け、厳しい御批判の全てを真正面から受けとめ、再生のための糧としてまいります。

 また、党再生の取り組みの一環として、民主党の原点を問い直し、立ち位置を改めて明確にするため、新しい党綱領を作成いたします。

 民主党は、全党一丸となって党改革を断行し、信頼いただける国民政党に生まれ変わり、政権に再挑戦する覚悟であります。

 自公両党で三百二十議席を超える巨大与党が誕生した今日、野党第一党である民主党が果たすべき役割は極めて重要であります。政権運営の経験を持つ野党として、決める政治を前進させることも、民主党の重要な役割であります。

 しかし、それだけではありません。

 安倍政権の誕生によって、安易な国債増発による将来世代への負担先送り、族議員が跳梁ばっこする利益誘導政治、弱肉強食社会を生む新自由主義的な経済政策などが復活しようとしています。

 安倍政権に欠落した、未来への責任、人への投資、格差是正などの政策理念を国民に示し、この国の政治を前に進めていける政党は、民主党をおいてほかにありません。

 所信表明では封印されていましたが、安倍総理の持論を聞くと、挑発的、排外的なナショナリズムが想起されます。健全なナショナリズムと国際協調を掲げる民主党の存在は、国際的にもなくてはならないものであります。

 民主党は、与党にすり寄るつもりは毛頭ありません。他の野党とともに、必要に応じて協力しつつ、自公政権のチェック機能を果たしていくことはもちろん、国民が真に必要とし、共感、納得できる政策を積極的に提案してまいります。

 一昨日の総理の所信表明は、総理が就任されて初めての国会の演説であったにもかかわらず、字数でいえばわずか四千七百字で、演説時間も短く、その内容も極めて不十分なものでありました。

 現在の日本が抱える重要課題が無視されていたり、あるいは、問題意識だけ述べて具体的方針は全く示さなかったりするなど、聞く者に失望感を与えるものでありました。

 総理、強い日本をつくる、危機を突破すると言いながら、教育政策の方向性や社会保障、地域主権、エネルギー政策などに触れなかったのはなぜですか。お答えください。

 語るべきを語らず、額に汗して働けば必ず報われる社会をつくろうと言われても、共感は得られないのではないでしょうか。

 これまで、自民党は、政策に財源の裏づけがないと民主党をさんざん批判しましたが、民主党政権下では、四十四兆円の国債発行枠を明示して、財政規律の一線を何とか守ってまいりました。

 安倍内閣の政策メニューには、歳出増加項目がメジロ押しのようです。しかし、その財源をどうするのか、全く見えません。成長率を高く見積もり、税収増で賄おうというつじつま合わせを考えているのであれば、無責任であります。

 安倍内閣は、夏ごろに中期財政フレームの見直しを行うと言われていますが、四十四兆円の枠を今後も堅持するのですか。プライマリーバランスの黒字化はいつまでに達成するのか、総理の答弁を求めます。

 次に、経済政策について質問いたします。

 安倍政権の掲げるデフレ脱却は、民主党政権も目標としていました。しかし、何のためのデフレ脱却なのか。総理と私とでは、デフレ脱却の先に目指すものが違っています。

 私の考えは、デフレが放置されることで最も不利益をこうむるのは、女性や若者、そして将来世代であります。幾ら物価が安くても、職がなく賃金がふえなければ、若者たちは希望を持てません。若い男性、そして女性が、結婚し、家を持ち、子供を産むことにちゅうちょするのも、これは当然であります。

 税収もふえず、国の借金が膨らめば、それを返すのは若い人たちです。未来への責任を果たすためにこそ、デフレは克服されなければならない、私はそのように考えます。

 これに対し、安倍総理のデフレ克服は、将来世代の犠牲の上に、とにかく今が少しでもよくなればいい、一部の企業に一息つかせることができればよいと考えているかのようであります。だからこそ、アベノミクスの三本の矢の一つとして、財政出動が安易に唱えられているのではないでしょうか。

 今回の補正予算では、四兆七千億円の公共事業を行い、五兆二千億円の国債が追加発行されます。

 政府は、財政出動はいつまでも続けるわけにはいかないと言っていますが、財政出動が今回だけの一回限りなら、一種のカンフル剤的な効果はあっても、経済の持続的成長はかないません。

 本予算では、表面上、財政規律に配慮するふりをしていますが、参議院選挙後にまた補正予算を組み、ずるずると財政出動を続ける可能性もあります。

 財政出動と公共事業に偏重した旧来型経済政策が効果に乏しく、財政赤字を膨らませてきたことは、歴史が示すとおりであります。

 今回のような巨額の財政出動を今後も続けるつもりなのかどうか、仮に一回限りのものだとしたら、今後、経済の落ち込みが生じた場合、どのように対応するのか、総理の答弁を求めます。

 アベノミクスのもう一つの矢である金融緩和についても質問いたします。

 日本銀行と政府が連携して金融緩和策をとることは、実は、既に野田政権下においても、一%を目標として実行されてきました。選挙前、当時の安倍総裁が唐突に二%を持ち出したことに、私は今も違和感を持っています。

 二%という目標については、実現可能性の点で、金融緩和派の日銀政策委員の間にも懐疑論があると言われています。

 国民生活への副作用も無視できません。円安により、灯油やガソリン、食品から飼料まで、輸入価格は既に上昇しています。

 他方で、企業が雇用をふやしたり、給与を引き上げたりするのは、景気の先行きに自信を持てるようになってからのことです。

 景気回復が一過性のものなら、雇用や給与はほとんどふえない可能性すらあります。その結果は、実質賃金の引き下げであります。

 また、仮に二%の物価上昇が達成されれば、長期金利の上昇は不可避です。住宅ローン金利は上がります。国債の格下げリスクが高まり、財政はさらに悪化して、機動的な財政出動など絵に描いた餅となるでしょう。

 性急な金融緩和には、海外からも、通貨戦争の可能性や財政規律への悪影響などを懸念する声が上がっています。

 金融緩和について、二%の実現方法、達成時期、実質賃金への影響、長期金利との関係、為替をめぐる国際的反響についてどう考えているのか、総理に伺います。政府と日銀で共同声明まで出しているのですから、日銀が答えることなどと逃げないでお答えをいただきたいと思います。

 今の日本経済に最も必要なことは、民間の成長基盤強化に尽きます。そのために民主党政権が行った取り組みが日本再生戦略でした。アベノミクスの三本目の矢である成長戦略は、この日本再生戦略の焼き直しが基本になります。

 我々の日本再生戦略は、グリーン、ライフ、農林漁業という三つの重点分野を定め、予算を重点的に配分して、成長の種をまくものであります。特に、二〇三〇年代原発稼働ゼロの目標のもと、再生可能エネルギー、省エネルギー分野の予算配分、規制改革などを推進し、関連市場の飛躍的拡大を実現することとしています。

 これに対して、アベノミクスにおける成長戦略の重点分野は一体何なのか。

 事実上の原発存続政策を掲げながらエネルギー分野への大胆な予算配分や規制・制度改革ができるのか、総理の見解をお尋ねします。

 先週、自民、公明両党は、税制改正大綱を決定し、自動車重量税について、道路の維持管理、更新等のための財源として位置づける方向で見直しを行うと決めました。

 これでは、民主党の要求に応えて福田内閣が廃止した道路特定財源の復活ではありませんか。

 道路特定財源は、無駄な道路をつくるための旧態依然たる仕組みです。その復活は、道路族に代表される古い自民党政治、政官業癒着への逆行であり、看過できません。必要な補修費は一般財源から堂々と行えばよいだけの話であります。

 政府は、昨日、平成二十五年度税制改正大綱を閣議決定しました。ベースとなったのは与党の税制改正大綱ですが、道路特定財源の復活と受け取られる箇所は外されています。

 なぜこのようなわかりにくいことをしたのか。政府は、自動車重量税を特定財源にするのか、あるいは一般財源として維持するつもりなのか、総理大臣として、はっきり御答弁ください。

 緊急経済対策等には、これまでのいわば縮小均衡の分配政策から成長と富の分配の好循環を図ると記され、一昨日の所信表明でも、安倍総理は同様の認識を示されました。

 これが、民主党の経済政策が縮小均衡の分配政策だったという指摘であれば、これは見過ごすことはできません。

 言うまでもないことですが、デフレが始まったのは自民党政権の時代です。景気対策の名のもとにばらまきを繰り返し、巨額の財政赤字が蓄積されました。

 こうした負の遺産を背負いながら、民主党政権は、財政規律にも配慮したぎりぎりの経済運営を行い、競争力強化のための日本再生戦略を推進いたしました。その結果、民主党政権下でGDPは増加に転じ、完全失業率も一・三ポイント改善したのであります。

 この政策のどこが縮小均衡なのですか。総理の見解を聞かせていただきたい。

 震災復興、福島の再生は、どの政権であっても最優先の課題と考えます。安倍内閣が被災地の復興と福島再生を加速するという意気込みを表明したことは、率直に評価いたします。

 安倍内閣は、民主党政権が策定した復興予算のフレームワークを見直し、二〇一五年度までで二十五兆円とする方針を決めました。

 二〇一二年度当初予算の段階で復興予算は既に総計十七兆円程度に膨らんでおり、民主党政権も、昨年十月には、復興の基本方針に沿って、一定期間経過後、事業の進捗等を踏まえて十九兆円枠の見直しを行う旨、閣議決定していました。

 ただし、国民に痛みを伴う負担をお願いしている以上、政府・与党は、復興予算を無条件に肥大させるのではなく、事業内容の徹底的な精査を行い、十九兆円枠を撤廃するのであれば、その財源を明確に提示して国民の理解を求めるべきであります。

 復興予算の追加分を六兆円とする根拠とその財源について、総理の説明を求めます。

 私も先日、宮城県と岩手県に伺い、復興の現状を視察してまいりました。その折、聞かせていただいた現地の声の中に、金額よりも人だ、マンパワーが絶対的に不足しているという切実な訴えがありました。もちろん、与野党の垣根を越え、協力すべきは協力するつもりであることを申し添えます。

 次は、教育についてお聞きします。

 総理は、所信表明で教育の危機を指摘しましたが、危機の中身を深く示すでもなければ、いかに対応すべきかという方針について説明することも全くありませんでした。実に不誠実な所信表明です。

 改めて総理に伺います。

 六・三・三・四制の見直し、土曜授業、高校授業料無償化の見直しや三十五人学級の断念など、安倍内閣は教育政策をどう変えようというのか。子供の安心、安全に直結する、いじめや体罰の問題について、民主党は既に議員立法の検討を始めています。政府としてはどう取り組まれるのか、明快な答弁をお願いいたします。

 次に、総理が所信表明で触れられなかったエネルギー政策について質問します。

 民主党政権は、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入することを革新的エネルギー・環境戦略で決めました。また、海洋国家日本の豊富な海洋資源の開発などについても力を入れてきました。

 これに対し、安倍内閣のエネルギー政策は、後退の一語に尽きます。原発の位置づけも曖昧で、選挙時の自民党の公約は、エネルギーのベストミックスを十年間で確立すると、先延ばしを決め込みました。

 総理は、原発の新規増設を認める考えも示しています。安倍内閣として、革新的エネルギー・環境戦略を今後も維持するつもりはあるのですか。総理の明快な答弁を求めます。

 次も、総理が所信表明で触れなかった社会保障についてであります。

 昨年六月、民主、自民、公明の三党協議で、公的年金制度、高齢者医療制度改革については、あらかじめその内容等を協議すると確認しました。ところが、自民党は、与党になった途端、消極姿勢が目立っています。

 去る一月十八日には三党の実務者協議が再開されましたが、民主党側が公的年金制度改革、高齢者医療制度改革の議論を始めるよう求めたのに対し、自公両党は、社会保障制度改革国民会議に検討を委ねるべき、そもそも現行制度が基本と考えていると主張し、制度改革の議論を始めようとしていません。

 国民会議の設置期限は本年八月二十一日と法定されており、改革案取りまとめのスケジュールを逆算すると、三党案は二月中にも取りまとめる必要があるはずです。

 政府は、公的年金制度、高齢者医療体制の抜本改革に着手する必要性についてどう考えているのか、三党協議の成案がなくても国民会議で議論すればよいという立場なのか、総理の答弁を求めます。

 民主党政権においては、自民党時代に続いていた社会保障費の伸びの抑制を見直した結果、医師数の増加や公立病院の黒字化など、国民生活の安心を確保する上で重要な成果を上げました。安倍政権は、こうした取り組みを評価し、続けるつもりはありますか。総理にお尋ねいたします。

 次に、やはり総理が所信表明で触れなかった地域主権について質問いたします。

 民主党政権は、ひもつき補助金を廃止して、基本的に地方が自由に使える一括交付金制度、正式には地域自主戦略交付金を創設しました。

 ところが、安倍政権は、緊急経済対策の中で地域自主戦略交付金の廃止を打ち出し、中央官僚による地方支配、利権政治の根源であるひもつき補助金を復活させ、公共事業を大盤振る舞いしようとしています。また、小泉政権時代の三位一体改革よろしく、地方交付税を削減し、地域の元気を奪おうとする動きも明らかです。

 なぜ、地方からも評価されている一括交付金制度を廃止し、時計の針を戻そうとするのか、総理、お答えください。

 冒頭で触れたアルジェリアの襲撃事件を受け、在外邦人の安全を守るために、国として、国際社会として何をなすべきか、現実的な対応を検討することが重要です。その前提となるのが、テロの目的や背景、政府の対応、我が国の情報収集能力等について、今回の事件を徹底的に検証することであります。

 国会に対する積極的な情報開示を含め、事件の検証に対する政府の方針について総理に伺います。

 我が国の外交、安全保障の基軸である日米同盟は、今後も深化させていく必要があると考えます。日米首脳会談の早期開催に期待しつつ、対米関係に関する基本姿勢を総理に伺います。

 沖縄の基地問題については、嘉手納以南の土地返還の促進に政府として引き続き最大限努力するよう求めるとともに、普天間返還に対する安倍内閣の方針を総理から御説明願います。

 近年の我が国と中国、韓国との関係は、残念ながら、順調とは言いがたいものがあります。このような時期だからこそ、私は総理の所信表明に注目していましたが、隣国である中国や韓国との関係については何も語られませんでした。

 尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持管理のため、警戒監視、警備体制の拡充等に努める一方で、大局的見地に立って隣国との間に信頼関係を構築することは、国益上、不可欠であります。

 新しく習近平体制がスタートしつつある中国、間もなく朴槿恵大統領が誕生する韓国との間で、どのように関係改善を図っていくつもりなのか、総理の考えを伺います。

 拉致、核実験、ミサイル発射など、北朝鮮が地域の平和と安定を脅かす行動を続けていることは、まことに憂慮にたえません。

 核実験が懸念される中、米国や韓国や中国、ロシアを含めた関係国と十分に連携をとり、毅然かつ粘り強い対応をとるように求めます。

 先日、政府は、防衛大綱を見直すことを決定しました。

 民主党政権が二〇一〇年十二月に策定した現大綱は、北朝鮮や中国を含めた地域の安全保障環境の変化を見据え、南西重視や動的防衛力の構築などを積極的に推進する内容となっており、今回政府・与党が挙げている見直しの理由は、必ずしも納得がいきません。

 動的防衛力構想や南西重視のどこに問題があり、どう変える必要があるのでしょうか。総理、お答えください。

 最後に、衆議院の定数削減についてお聞きします。

 昨年十一月の党首討論における野田前総理と安倍総裁の約束に基づき、懸案であった一票の格差是正、そして定数削減までの間の歳費二割削減の法案を成立させることができました。しかし、定数削減という最も大きな宿題は残っています。

 民主党は、今は野党の立場となりましたが、定数削減は必ず実現しなければならないと考えています。自民党も、二〇一〇年の参議院選挙で、衆参の国会議員定数を三年後、すなわちことしの夏までに一割削減することを約束していました。総理も覚えていらっしゃることでしょう。

 そこで、安倍総理にお尋ねします。

 与野党の立場は変わりましたが、定数削減の約束は、解散と引きかえに総理みずからが交わされた重い重い約束です。

 衆議院の定数削減を今国会中に必ず実現する、そのことをこの場で国民の皆様に約束していただきたいと考えます。総理・自民党総裁の覚悟を伺います。

 アメリカ先住民の言葉に、次のようなものがあります。私たちの土地は、先祖から相続したものではなく、子孫から借りているものなのですという言葉であります。

 私たちのこの日本は、今の世代で自由勝手にしていいものではありません。よりよい日本にして次の世代に受け渡す義務が今の世代にあります。

 実は、この精神こそ、民主党の政策の底流に脈々と流れるものであります。(発言する者あり)

議長(伊吹文明君) 静粛に願います。静粛に願います。

海江田万里君(続) それゆえに、我々は、次の世代へ負担を押しつけるのではなく、現在の世代が負担を分かち合う苦渋の判断を下したのであります。

 私たちは、未来への責任を果たす政党として民主党を必ず再生させ、自公両党に対峙します。そして、来るべき東京都議会議員選挙、参議院選挙に勝利し、再び政権を担える党となります。

 新代表として粉骨砕身、この挑戦の先頭に立つことを改めてお誓い申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) まず初めに、このたび、大変困難な状況の中で民主党の代表に就任されました海江田万里代表に対しまして、改めて敬意を表し、私も同世代の者の一人としてエールを送りたいと思います。

 そして、結びにおいて、私たちの世代には、私たちの世代で日本をよりよい国にして次の世代に受け渡す義務がある、そうおっしゃられました。私も全く同感であります。同じ認識を持って、海江田代表との間で建設的な、そして緊張感のある議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 それでは、海江田万里議員の御質問にお答えをいたします。

 所信表明演説で教育、社会保障、地域主権、エネルギー政策などに触れなかった理由についてお尋ねがありました。

 今般の所信表明演説では、今後、施政方針演説が行われることから、経済再生、そして震災復興、外交、安全保障という足元での最重要課題に絞り込み、我が国が直面する危機を突破していく決意を述べました。言及しなかった施策について、決してそれらの重要性を否定するものではありません。

 公債発行額と財政健全化目標についてのお尋ねがありました。

 強い経済の再生を図りながら財政の再建を進めることが極めて重要であります。

 二〇一五年度までに国、地方のプライマリーバランスの赤字の対GDP比を二〇一〇年度の水準から半減し、二〇二〇年度までに国、地方のプライマリーバランスを黒字化するとの財政健全化目標を実現する必要があります。この目標を踏まえ、公債発行額をできる限り抑制することとしており、来年度予算概算では、歳出の必要性等について内容を十分に精査し、公債発行額は四十二・九兆円としております。

 今後、経済財政諮問会議において、御指摘のような財政規律も含め、財政健全化と日本経済再生の双方を実現する道筋について検討を進めてまいります。

 デフレ脱却の目的や経済政策についてのお尋ねがありました。

 私が経済の再生にこだわる理由は、特定の企業のためではもちろんありません。長引くデフレや円高が、頑張る人は報われるという社会の信頼の基盤を根底から揺るがしていると考えるからであります。

 経済再生を推し進め、雇用や所得の拡大等につながるよう、次元を超えた政策パッケージとして、日本銀行との共同声明、大規模な補正予算等を先般取りまとめたところであります。

 他方で、財政出動をいつまでも続けるわけにはいきません。民間の投資と消費が持続的に拡大する成長戦略を策定し実行していくとともに、財政健全化と日本経済再生の双方を実現する道筋を検討してまいります。

 金融政策についてのお尋ねがありました。

 二%の物価安定目標の実現方法、達成時期については、共同声明にあるように、日本銀行が、大胆な金融緩和を推進することにより、できるだけ早期に実現されることを強く期待しております。

 また、賃金への影響、長期金利との関係については、政府として、機動的なマクロ経済政策運営、競争力、成長力の強化や持続可能な財政構造を確立するための取り組みを行っていくことで、賃金の上昇につなげるとともに、長期金利上昇の懸念にも対応してまいります。

 為替をめぐる国際的反響については、今回の政府、日本銀行の取り組みは、あくまでもデフレ脱却と持続的な経済成長の実現を目的とするものであります。

 成長戦略及びエネルギー政策についてのお尋ねがありました。

 成長戦略の策定に当たっては、あるべき社会像を確かな成長戦略に結びつけることによって、強い経済を取り戻すことが重要であります。

 そのようなあるべき社会像を実現するため、健康で長生きできる社会の構築、クリーンかつ経済的なエネルギー需給の実現、安全、便利で経済的な次世代インフラの構築、世界を魅了する地域資源で稼ぐシステムの構築を戦略分野とするとともに、立地競争力強化や雇用の拡大等に取り組んでいきたいと考えています。

 また、できる限り原発依存度を低減させていくという方向に向けて、省エネルギー、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電等の効率化、石油、天然ガス等の資源確保等について、予算の重点配分や、関連する規制・制度改革を最大限進めてまいります。

 自動車重量税についてのお尋ねがありました。

 自動車重量税は一般財源であり、道路特定財源を復活するものでは全くありません。

 なお、車体課税の見直しについては、平成二十六年度税制改正の検討課題とされており、平成二十五年度税制改正の具体的内容となるものではないため、昨日閣議決定した政府税制改正大綱には盛り込まれておりません。

 経済政策についてのお尋ねがございました。

 我が国は、円高、デフレ不況が長引き、名目GDPは三年前の水準とほぼ同程度にとどまっています。また、二〇〇七年から二〇一一年の間に、名目GDPは約四十兆円、名目国民総所得、GNIは約五十兆円減少しました。

 これまでの延長線上にある対応では、デフレや円高から脱却することはできません。大胆な金融政策、そして機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という三本の矢で、経済再生を推し進め、強い経済を取り戻してまいります。

 復興予算の追加分を六兆円とする根拠と、その財源についてのお尋ねがありました。

 復興予算については、二十四年度補正予算までの約十七・五兆円に加えて、二十五年度復興予算及び二十六年度以降確実に実施が見込まれる事業を考慮すると、五年間で少なくとも二十三・五兆円程度の事業規模が見込まれます。

 このため、復興を加速化し、財源確保に関する被災地の不安を払拭する観点から、昨日、復興予算のフレームを見直し、日本郵政の株式売却収入四兆円程度及び二十三年度の決算剰余金等二兆円程度を追加することで、合計二十五兆円程度の財源を確保することとしたところであります。

 教育政策の方向性と、いじめ、体罰の問題についてのお尋ねがありました。

 強い日本を取り戻すためには、日本の将来を担う子供たちの教育を再生することが不可欠であります。

 このため、教育再生実行会議での議論も踏まえ、我が国の教育を取り巻く重要課題に内閣を挙げて取り組み、世界トップレベルの学力と規範意識を身につける機会を保障する教育体制を構築してまいります。

 いじめ、体罰の問題については、教育再生実行会議で速やかに提言をいただき、これを踏まえて、対策の充実や法制化にもつなげてまいります。

 エネルギー政策についてのお尋ねがございました。

 いかなる事態においても国民生活や経済活動に支障がないよう、エネルギー需給の安定に万全を期します。

 前政権が掲げた二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするという方針は、具体的な根拠を伴わないものであります。これまで国のエネルギー政策に対して協力をしてきた原発立地自治体、国際社会や産業界、ひいては国民に対して、不安や不信を与えました。

 このため、前政権のエネルギー・環境戦略についてはゼロベースで見直し、エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築してまいります。

 社会保障制度改革についてお尋ねがございました。

 御指摘の公的年金制度、高齢者医療制度の改革の取り扱いについては、改めて三党の実務者協議が再開されており、社会保障制度改革推進法の枠組みに立脚して協議が進められると承知をしております。こうした三党協議の状況や国民会議での議論等を踏まえ、対応してまいります。

 また、引き続き、国民会議の議論も踏まえ、国民の安心できる医療を実現するための医療提供体制の整備など、暮らしの安心を取り戻すために全力を尽くしてまいります。

 地域自主戦略交付金の廃止についてお尋ねがございました。

 地域自主戦略交付金については、地方から、窓口の一元化や手続の簡素化、総額の確保などの課題が指摘されてきました。

 これらの課題を解消するため、地域自主戦略交付金を廃止し、各省庁の交付金等に移行するとともに、各省庁において交付金のメニューを大くくり化するなど、地方の意見を反映した施策を推進してまいります。

 アルジェリアにおけるテロ事件への対応に関する検証についてのお尋ねがありました。

 海外において邦人が安心して活動できるよう、今般の事件への対応の検証をしっかり行い、政府一丸となって、必要な対策の検討に迅速に取り組んでまいります。

 検証の結果について、公表すべきものについては、適切なタイミングで公表する考えであります。

 対米関係の基本姿勢についてお尋ねがございました。

 日米同盟は、日本外交の基軸であります。これを一層強化し、日米のきずなを取り戻す必要があります。来る日米首脳会談を通じ、緊密な日米同盟の復活を内外に示していく決意であります。

 普天間飛行場の移設を含む在日米軍再編については、現行の日米合意に従って進め、抑止力を維持しつつ、沖縄の負担軽減に全力で取り組んでまいります。

 嘉手納以南の土地返還については、早期の返還に向け、沖縄の施設・区域の統合計画に係る協議を引き続き進めてまいります。

 中国や韓国との関係改善についてお尋ねがありました。

 私は、我が国の領土、領海、領空は断固として守ってまいります。

 同時に、日中関係は、我が国にとり最も重要な二国間関係の一つであります。個別の問題があっても関係全体に影響を及ぼさないようにコントロールしていくとの戦略的互恵関係の原点に立ち戻って、大局的観点から中国との関係を進めてまいります。

 また、韓国は、我が国にとって、基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国であります。日韓間には難しい問題も存在しますが、朴次期大統領と、大局的な観点から、未来志向の日韓関係を構築するべく、ともに努力をしていく考えであります。

 防衛大綱の見直しについてのお尋ねがありました。

 政府としては、現防衛大綱の策定以降、我が国周辺の安全保障環境が一層厳しさを増していることを踏まえ、日米同盟のさらなる強化、現下の状況に即応した我が国の防衛体制の強化という観点から、防衛大綱を見直すことといたしました。

 防衛大綱の見直しの具体的な内容については、今後、政府全体で検討してまいります。

 衆議院の定数削減についてのお尋ねがありました。

 衆議院の定数削減などの選挙制度のあり方は、議会政治の根幹にかかわる重要な課題であります。さきの三党合意においても、定数削減について、制度の抜本的な見直しの検討を行い、今般の国会終了までに結論を得て必要な法改正を行うこととしているところであり、各党各会派において十分御議論をいただき、改革を進めてまいります。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 高村正彦君。

    〔高村正彦君登壇〕

高村正彦君 私は、自由民主党を代表して、安倍総理の所信表明演説に対して質問をいたします。(拍手)

 質問に先立ち、アルジェリア人質事件において亡くなられた方々に対し、謹んで哀悼の意を表します。とうとい人命が奪われたことはまことに残念なことであり、このようなテロ行為を断固として非難いたします。

 この件にかかわる問題については、後ほど質問させていただきます。

 昨年末の衆議院議員総選挙において、自由民主党は二百九十四議席という多くの議席をいただき、自由民主党・公明党連立政権による安倍内閣が発足いたしました。多くの皆様の御支援に、心から御礼を申し上げます。

 しかしながら、このたびの選挙結果は、比例代表の得票などから推測されるように、自民党への積極的な支持によってもたらされたものではなく、政治を安定させるためには、自民党が比較的役に立つのではないか、比較的政策実現力があるのではないかという、あくまで他党との比較の中での評価の結果であったかと思われます。

 したがって、これからの自民党に課せられた役割は、政治を安定させること、選挙でお約束した政策を着実に実現していくことにあります。

 そして、これを踏まえ、安倍総理におかれては、大胆かつ細心に、スピード感を持って政権運営に当たっていただきたく存じます。

 総理は、一昨日の所信表明演説で、過去の反省を教訓として心に刻み、丁寧な対話を心がけながら、真摯に国政運営に当たっていくとの誓いの言葉を述べられました。

 総理に伺います。

 総理は、今回の選挙結果をどのように分析され、何を教訓とした上で、どのような方針で政権運営に当たるのか、お聞かせいただきたいと思います。

 過去の政権、特に民主党政権では、足の引っ張り合いを繰り返し、与党内がまとまらず、決められない政治が展開されました。

 自民党は、自由闊達な議論を尽くし、所定の党内手続に従って決まったことに責任を持ちます。その上で、一丸となって安倍政権を支え、与党としての責任を果たしてまいる所存であります。

 総理が掲げている重要課題について伺ってまいります。

 東日本大震災の発災から二年を迎えようとしています。いまだに、三十万人を超える方々が、仮設住宅などでの避難生活を強いられています。風雪に耐えながら新年を迎えた方々が一日も早くぬくもりのある生活を取り戻していただけるよう、我々は、全身全霊で復興に取り組まなければなりません。

 福島県においては、復興の前提として、除染が速やかに行われなければ、地域社会の再生、産業の振興を実現することはできません。不適切な除染などは、決して許されません。

 総理も一月十日の復興推進会議でその検証と再発防止案を指示されましたが、除染の信頼性を高めるとともに、速やかに実施されるよう、政府に強く要請をいたします。

 自民党は、野党時代から、震災復旧復興については、積極的に政府に提言を行い、議員立法も主導して提出してまいりました。

 我が党は、地域に根差した国民政党であり、震災以降、安倍総理、前自民党総裁である谷垣法務大臣を初め、多くの党所属議員が現場に入り、被災された皆様方や自治体から、直接、丁寧にお話を伺ってまいりました。さきの総選挙で与党となった以上、地域の声をより素早くかつ正確に酌み取り、あらゆる施策を実現してまいります。

 自治体においては、財源の不足、建築土木や土地測量などの専門的知識・技術を持った人材の不足、森林や古くからの農地などの複雑な相続が絡んだ土地の権利関係の問題といったことが共通の課題となっております。

 問題点が明らかになっている以上、もはや実行あるのみであります。根本匠復興大臣のもと、復興庁の機能、権限を強化し、副大臣、政務官、各職員が現場で能力を最大限発揮し、文字どおり、ワンストップサービスの機能を果たしていただくことが必要であります。

 政府・与党のみならず、国を挙げて復興に取り組まなければなりません。総理の復興に向けた覚悟と、震災復興を加速させるために何をなすべきか、その具体策をお聞かせいただきたいと思います。

 経済政策について伺います。

 総理は、経済の再生を最大かつ喫緊の課題として掲げ、早速、その司令塔として、日本経済再生本部を設置し、経済財政諮問会議も再起動させました。その上で、一月十一日には日本経済再生に向けた緊急経済対策を取りまとめ、まさしくロケットスタートを切られたわけであります。

 総理は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という三本の矢で、円高、デフレから脱却し、経済再生を推し進めると宣言されました。この三本の矢について、それぞれ伺います。

 まずは、金融政策についてお聞きします。

 我が党は、政権公約で、明確な物価目標二%を設定、その達成に向け、日銀法の改正も視野に、政府、日銀の連携強化の仕組みをつくり、大胆な金融緩和を行いますと掲げました。総理就任前、あるいは選挙前からの安倍総理の大胆な金融緩和に向けたメッセージに対し、賛否両論巻き起こりましたが、市場が株高、円安という反応を示したのは、まさに論より証拠でありました。

 一月二十二日に政府と日本銀行は共同声明を発表しましたが、日銀は、二%の物価目標率を導入し、その早期実現に向け、平成二十六年から無期限で国債などの金融資産を大量に買い入れる、新たな金融緩和策を決定いたしました。

 総理は、この決定に対し、このたびの共同声明は、デフレ脱却に向けて、まさに金融政策において大胆な見直しを行うものであり、金融政策におけるいわば画期的な文書である、このレジームチェンジとも言える特にこの新しい取り組みによって我々はデフレから脱却していかなければならないと評価されました。

 どういう意味で画期的で、何が新しい取り組みなのか、また、次期日銀総裁にはどういう方がふさわしいと思われるのか、あわせて御教示いただきたいと思います。

 今回の金融緩和によって民間銀行を通じて市中にもお金が行き届くかということが重要であり、そのための有効需要を創出していかなければなりません。

 デフレ不況下においては、経済のメーンプレーヤーたる民間経済主体が守りの姿勢になっている中で、まずは政府が機動的な財政政策によって率先して需要をつくる、いわば本格的な民需の呼び水として今回の緊急経済対策が位置づけられるものと考えます。

 その裏づけである平成二十四年度補正予算についてお聞きいたします。

 今回の補正予算は、平成二十五年度当初予算と合わせた十五カ月予算との考え方で、切れ目なく経済対策を実行するという方針のもとで編成され、一つは、復興・防災対策、二つは、成長による富の創出、三つ目として、暮らしの安心・地域活性化といった三分野に重点が置かれております。

 その中で、被災地の復興に必要なインフラ整備、防災、減災のためのインフラ整備は、早期にやらなければならない公共事業であります。

 公共事業イコール無駄なばらまきイコール古い自民党の復活という、ステレオタイプの批判もあります。しかし、いつかやらなければならない公共事業であるならば、不況の際に思い切って実施することによって、一般論としては、コスト面で安く仕上がり、単年度の財政収支はともかくとして、中長期的に見れば、財政への負担も少なくなるのであります。

 もちろん、公共事業の中身を精査した上で、これは無駄だという指摘があれば、真摯に耳を傾けることは当然であります。前政権下で、復興予算がその趣旨からかけ離れた予算に転用されたこともあり、国民の皆様も厳しく見ておられます。

 今回の補正予算では、ニーズが高く、早期執行が可能な公共事業や早期の市場拡大につながる施策、即効性のある施策を重視しているとのことでありますが、今申し上げた公共事業に対する考え方について、総理の認識をお聞かせいただきたいと思います。

 また、この冬は、寒波の影響で、日本海側を中心に、例年以上の大雪、豪雪です。そのため、我が党では、平成二十四年度豪雪災害対策本部を設置し、除排雪費用などの豪雪対策費用に関し、特別交付税の増額配分及び除排雪経費の市町村への特別補助などの必要な措置を速やかに行うことを決議いたしました。

 政府は、豪雪対策についてどのような措置を講じておられるのか、補正予算で予算措置が講じられているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

 政府による需要喚起はあくまで呼び水であり、厳しい財政状況でもある我が国が、いつまでも需要をつくり続けることは到底できません。大胆な規制緩和や税制改革などを行い、民間の活力を最大限引き出すことによって企業の設備投資や研究開発を促進し、その先にある、個人も含めた民間需要を喚起することが経済成長には欠かせません。

 大企業のみならず、中小企業や農林漁業を中心とした地域経済の隅々にも、その効果や成長の富の恩恵を行き届かせなければなりません。

 一月二十三日に第一回の産業競争力会議が行われ、経済界の第一線で活躍されている方々もお集まりになって、成長戦略について活発な議論がなされたところであります。

 また、今回の補正予算では、民主党政権で仕分けされたiPS細胞等を用いた再生医療研究の加速、ものづくり補助金も復活させました。

 二十五年度の税制改正においても、研究開発税制の拡充や、教育資金の一括贈与に関する非課税措置などが盛り込まれました。

 自戒を込めて申し上げれば、かつての自公政権においても累次にわたって成長戦略が作成されましたが、十分な結果は得られませんでした。

 年央にまとめられる成長戦略においては、これまでのものとどう違うのか、国民の皆様の前で明らかにし、市場にも明確なメッセージを発していただきたいと存じますが、総理の見解を伺います。

 今回の補正予算、平成二十五年度予算においても、引き続き多くの国債を発行せざるを得ない状況であり、財政の持続可能性についての懸念が指摘されております。経済成長による税収増がなければ財政再建が困難なものとなる一方で、将来にわたる財政の健全性が確保されなければ経済成長も阻害されます。

 我が党は野党時代に財政健全化責任法案を提出しましたが、それには、二〇一五年と二〇二〇年の財政健全化目標が明記されております。総理も、所信表明演説において、中長期の財政健全化に向けてプライマリーバランスの黒字化を目指すと述べられましたが、財政健全化目標を守る総理の覚悟をお聞かせください。

 三本の矢を束ねれば折れないという毛利元就の故事を超えて、三本の矢を連射することによってデフレの厚い岩盤を突き崩すことが求められており、金融政策もしくは財政政策一本やりでは、実体経済を好転させ、国民が持続的、安定的に豊かさを享受するには至りません。個別政策の方向性や時間軸が整合性のとれたマクロの経済財政運営がなされるよう、総理の適切なリーダーシップを期待いたします。

 外交、安全保障についてお聞きします。

 民主党政権がもたらした外交敗北によって、我が国の外交は行き詰まり、国益を大きく損ねました。

 かつての自公政権下では、ロシアの大統領や首相が北方領土に上陸したことはありません。韓国の大統領が竹島に上陸したこともありません。尖閣諸島で中国が今のような乱暴な態度に出たこともありませんでした。

 鳩山元総理が、普天間基地の移設先について、当てもないのに最低でも県外と言ったため、アジア太平洋の安定の支柱である日米同盟がぐらつき、ロシアにも韓国にも中国にも軽視される状況に陥りました。早急に日本外交の基軸である日米関係を立て直さなければなりません。

 安倍総理は、来月訪米され、オバマ大統領とも会談されますが、具体的な成果を上げられるよう、総理の意気込みをお聞かせください。

 自民党は、自由貿易体制を志向する政党であり、これまでも、経済連携協定を積極的に推進してまいりました。

 TPPについては、参加のハードルが高く、かつ、国益判断に必要な情報が政府から提供されない中、聖域なき関税撤廃を前提にする限りTPP交渉参加に反対であると、さきの総選挙で公約いたしました。一方、選挙後の自公の連立政権合意においては、国益にかなう最善の道を求めるとされましたが、この二つの整合性を含め、TPPに関する総理のお考えをお示しください。

 先般のアルジェリア人質事件では、多くの邦人、現地スタッフがテロの犠牲となりました。今回の政府の対応は適切なものであったと考えますが、少なからぬ課題が浮き彫りとなりました。

 今後、我が国は、テロとの闘いにどう対応するか、邦人の安全を守るためにどうするのか。また、危機管理に際して、我が党の政権公約に掲げているように、官邸の司令塔機能を強化するため、国家安全保障会議、日本版NSCを設置することも、実行に移す必要があるのではないでしょうか。総理の見解を伺います。

 第一次安倍内閣において総理が最初に訪問した国は中国であり、胡錦濤国家主席との間で戦略的互恵関係を構築したことを、私は高く評価しております。それが、民主党政権下で、私のつくった言葉で言えば戦術的互損関係、お互いに損する関係になってしまったことは、極めて残念であります。

 総理が何とかして良好な日中関係を取り戻したいと考えておられることを、私はよく承知しております。

 尖閣諸島の領有権については譲る余地がないこと、我が国の領土、領海、領空は断固として守り抜くことは、当然であります。一方、引っ越すことのできない隣国である中国と良好な関係を目指すことも、また当然であります。

 戦略的互恵関係を再構築するのだという総理の決意をお聞かせください。

 一月二十三日に、国連安全保障理事会は、北朝鮮によるミサイル発射に対し、制裁を強化する決議を全会一致で採択いたしました。

 総理は、我が国は、拉致、核、ミサイルといった北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的解決に向けて、国際社会と緊密に連携し、引き続き積極的に取り組んでいくとのコメントを発表しました。

 当然ながら、我が党も、北朝鮮による拉致問題対策本部でしっかりと政府を支え、拉致問題の解決に全力を尽くします。

 北朝鮮に対する我が国独自のさらなる制裁措置を講じるのかどうかを含め、総理の見解をお聞かせください。

 安倍総理は、教育再生実行会議を立ち上げ、教育改革を、経済再生と並ぶ最重要課題として位置づけられました。

 第一次安倍内閣では、教育基本法が改正され、自律の精神や公共の精神、みずからが生まれ育った国や地域への愛情など、戦後忘れられがちだった基本的な価値観が盛り込まれました。

 その後、政権交代もあり、残念ながら、その理念が後退した感は否めません。

 大阪の桜宮高校では、体罰を受けていた男子生徒が自殺するという痛ましい事件があったばかりです。いじめや体罰が原因で未来ある学生がその若い命をみずから絶つようなことは、断じてあってはなりません。

 我が党の政権公約においても、いじめ対策について、今すぐできる対策、いじめと犯罪の峻別、道徳教育の徹底、出席停止処分などを断行するとともに、直ちにいじめ防止対策基本法を成立させ、統合的ないじめ対策を行うことを明記しております。

 教育再生にかける総理の強い意思と、いじめ、体罰の問題についての所見を伺います。

 一月二十一日に第三回の社会保障制度改革国民会議が開かれ、安倍政権のもとで社会保障・税一体改革の議論がスタートしたことは、極めて意義深いと考えます。

 この一体改革は、先ほど申し上げた財政健全化目標の達成に不可欠であるばかりでなく、社会保障の充実を行って暮らしの安心を取り戻すために、ぜひともやり遂げなければなりません。

 福田内閣における社会保障国民会議、麻生内閣における安心社会実現会議、そして、自公両党で定めた平成二十一年度税制改正法附則の流れを受けて、昨年の通常国会において民主党の政権下で法案が成立し、そして、今また社会保障制度改革の具体化が我々の手に委ねられていることは、歴史の必然と考えます。

 国民の暮らしを支える社会保障とそのための安定財源の確保が、どの党にとっても避けて通れない国民的課題であり、党利党略を競う対象でないことは、我々は胸に刻まなければなりません。

 安倍総理におかれては、ぜひとも、自民党、公明党、民主党の三党合意に基づく協議体制を堅持していただき、その上で社会保障・税一体改革を早急に具体化させていただきたいと存じますが、その御決意をお伺いいたします。

 社会保障改革の具体的内容としては、まずは、差し迫った消費税率一〇%の引き上げまでにどのような改革がなされるかを国民にお示しすることが急務であります。

 前政権では、消費税増収五%分を全額社会保障財源化し、そのうち一%分、約二・七兆円を社会保障の充実に充てるとして、その具体的メニューが提示されました。

 このうち、昨年の通常国会で年金や子育てに関係する法案が成立していることから、今後は主に医療・介護分野の改革に道筋をつけることになると考えられますが、仮に、見直しを行って新たなメニューを提示していくということであれば、早急に、どこを削ってどこをふやすか、その具体案を示さなければなりません。

 安倍政権として、二・七兆円の枠組みや改革のメニューを基本的に踏襲していくのか、見直していくのか、お考えをお聞かせください。

 私たち日本人は、戦後の焼け野原から立ち上がり、わずか二十数年で我が国を世界第二位の経済大国に押し上げました。

 確かに、現在とは国内の人口構成や周辺環境も大きく異なります。しかしながら、今は、成熟国家としての強みがあるのも、また事実です。

 例えば、あのときとは比べ物にならないほど、金融資産や知的財産の蓄積があります。さらには、アジアの国々は急激な経済成長のさなかにあります。周辺諸国が発展しているということは、我が国の成長にとっても極めて有利とも言えます。

 これらをうまく生かしていけば、危機に強いと言われた日本人の長所、底力とも相まって、必ずや被災地の復興、我が国の経済社会全体の再生も成功できると信じております。

 安倍総理は、所信表明演説において、どうなるかと他人に問いかけるのではなく、我々自身の手によって運命を開拓するほか道はないという芦田元総理の言葉を引かれ、強い日本をつくるのは、ほかの誰でもありません、私たち自身ですと国民に呼びかけられました。

 この呼びかけは、弱冠七十歳の青年、高村正彦の魂をも揺さぶりました。

 私自身はもちろんのこと、我が党一丸となって、総理を支え、日本を取り戻すため全力を尽くすことを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 私の所信表明演説が、弱冠七十歳の高村副総裁の魂と情熱とそして肉体をたぎらせることができたとすれば、これにまさる光栄なことはございません。我が郷土山口県の大先輩である高村副総裁に評価いただけるよう、今後とも頑張ってまいります。

 それでは、高村議員の質問にお答えをいたします。

 選挙結果の受けとめと政権運営の方針についてお尋ねがございました。

 昨年末の衆議院選挙で、自由民主党は多くの議席を得ることができました。そして、多くの新人議員が誕生しました。まさに、我が党にとってホープだと思います。

 しかしながら、これまでの政治の停滞と混乱に終止符を打つべきだとの民意を今回の衆議院選挙の結果は反映したものであり、決して我が党に対する国民の信頼が完全に戻ったものではないと私も認識をしております。

 政権を再び任せていただく以上、謙虚な気持ちで、そして緊張感を持って、政策を前に進め、具体的な結果を出すことによって国民の負託に応えていかなければならないと考えております。

 復興に向けた覚悟と加速化策についてのお尋ねがありました。

 復興は内閣の最重要課題の一つであり、閣僚全員が復興大臣であるとの認識のもと、新しい東北の創造に向けて、全力で取り組む決意であります。

 昨日の復興推進会議で、五年間の復興予算フレームの二十五兆円への見直し、住宅再建工程の明示やマンパワー不足対応の強化、福島と東京のいわゆる二本社体制のもとでの除染を初め、早期帰還、定住施策の強化等を決定しております。

 復興庁を司令塔として、これらを着実に実施することにより、現場主義で、被災地の復興を加速してまいります。

 政府と日本銀行の共同声明及び次期日銀総裁についてのお尋ねがありました。

 共同声明で、日本銀行は、初めて二%の物価安定目標を導入し、できるだけ早期に実現することを目指すという強いコミットメントをしております。また、経済財政諮問会議で金融政策等を検証する仕組みを導入し、説明責任を強化しました。こうした点で、共同声明は、従来の金融政策の枠組みを大きく見直した画期的なものと考えております。

 また、次期日銀総裁については、デフレ脱却に向け、金融政策に関する私の考え方に理解をいただき、確固たる決意と能力でこの課題に取り組んでいく方を人選してまいります。

 公共事業に対する考え方についてのお尋ねがございました。

 まず第一に、公共事業イコール無駄遣いあるいは悪であるという、単純なレッテル張りから卒業しなければならないと思います。我々は、公共事業についても、思慮深い議論を進めていく考えであります。

 公共事業については、経済再生に向けて、老朽化対策や耐震化など国民の生活を守る事業、成長や地域活性化を促す事業に重点化した上で、その中でも、ニーズが高く、早期執行が可能な事業を速やかに実施したいと考えております。

 その際、国民の納得を得ながら事業を進めていくことが重要であり、費用と効果が見えるよう、情報公開を徹底してまいります。

 豪雪対策についてのお尋ねがありました。

 ことしの冬の豪雪については、内閣発足直後に、私から、関係省庁に対し、ライフラインや交通の確保などを指示し、自治体に対する必要な支援を行うなど、その対策に万全を期してまいりました。

 自治体の除排雪経費については、ことしの冬における降雪状況を踏まえ、予算の補正を行うまでもなく、今年度当初予算を用いて、特別交付税や社会資本整備総合交付金により措置するなど、自治体の除排雪に支障を来さないよう、適切に対処してまいります。

 成長戦略についてお尋ねがありました。

 日本経済再生に向けて、成長戦略を年央までに取りまとめたいと考えています。

 成長戦略は、文章をまとめるだけではなく、政府が強力にコミットし、一丸となって実行していくことが、活力ある民間投資の誘発につながると考えます。

 今回は、日本経済再生の司令塔として、全閣僚が一丸となった日本経済再生本部を設置し、そして、取りまとめを待つことなく、私自身が矢継ぎ早に具体策を判断し、次々と実行に移していくことによって、確かな成長戦略を実現してまいります。

 財政健全化目標についてのお尋ねがありました。

 強い経済の再生を図りながら財政の再建を進めることが極めて重要であり、二〇一五年度までに国、地方のプライマリーバランスの赤字の対GDP比を二〇一〇年度の水準から半減し、二〇二〇年度までに国、地方のプライマリーバランスを黒字化するとの財政健全化目標を実現する必要があります。

 財政健全化目標を踏まえ、国債に対する信認を確保するため、来年度予算において公債発行額をできる限り抑制するとともに、社会保障・税一体改革を継続し、中長期的に持続可能な財政の実現を図ってまいります。

 日米首脳会談についてのお尋ねがありました。

 日米同盟は、日本外交の基軸であります。これを一層強化し、日米のきずなを取り戻す必要があります。

 安全保障環境が厳しさを増すアジア太平洋地域の平和と繁栄を確保していくためには、政治、経済、安全保障等、あらゆる面で日米両国が緊密に協力をしていくことが不可欠であります。

 オバマ大統領との会談では、同盟強化の方向性について幅広く議論し、緊密な日米同盟の復活を内外に示していく決意であります。

 TPPについてのお尋ねがありました。

 自由貿易の推進は、我が国の対外通商政策の柱です。力強い経済成長を達成するためには、自由貿易体制を強化し、諸外国の活力を我が国の成長に取り込む必要があります。

 他方、高村副総裁におまとめをいただきました我が党の公約で明記したとおり、聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉には参加しません。

 TPPについては、政府としては、これまでの協議の内容、TPPに参加した場合に生じ得るさまざまな影響等も含め、しっかりと精査、分析した上で、国益にかなう最善の道を求めてまいります。

 アルジェリアにおけるテロ事件についてのお尋ねがありました。

 卑劣なテロ行為を断固として非難し、国際社会と引き続き連携し、テロと闘い続けます。また、海外において邦人が安心して活動できるよう、今般の事件への対応の検証をしっかり行い、政府一丸となって、必要な対策の検討に迅速に取り組んでまいります。

 また、御指摘の国家安全保障会議については、そのあるべき姿について検討の上、設置に向けて積極的に取り組み、官邸の司令塔機能を強化してまいります。

 中国との戦略的互恵関係の再構築についてのお尋ねがありました。

 まず、尖閣諸島をめぐる情勢については、安倍政権として、我が国の領土、領海、領空は断固として守り抜くとの決意で取り組んでまいります。

 同時に、日中関係は、我が国にとり最も重要な二国間関係の一つです。個別の問題があっても関係全体に影響を及ぼさないようにコントロールしていくとの戦略的互恵関係の原点に立ち戻って、大局的な観点から中国との関係を進めてまいります。

 北朝鮮についてお尋ねがございました。

 政府としては、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決に向けて、対話と圧力の方針を貫き、全力で取り組んでまいります。

 北朝鮮が、昨年十二月のミサイル発射に続き、核実験の実施の可能性に言及していることは、極めて遺憾であります。我が国は、北朝鮮が国際社会の声にどう向き合うのかを見きわめながら、関係国と緊密に連携し、そして、御指摘のございました独自のさらなる制裁措置をとることも含め、しっかりと対応してまいります。

 教育再生にかける意思と、いじめ、体罰の問題についてのお尋ねがありました。

 強い日本を取り戻すためには、日本の将来を担う子供たちの教育を再生することが不可欠であります。特に、いじめ、体罰に起因して子供のとうとい命が絶たれるという痛ましい事案は、断じて繰り返してはなりません。

 このため、いじめや体罰の問題を含め、我が国の教育を取り巻く重要課題について、教育再生実行会議や与党の御議論も踏まえて、対策の充実や法制化につなげるなど、内閣を挙げて教育再生の推進に全力で取り組んでまいります。

 社会保障・税一体改革についてのお尋ねがありました。

 少子高齢化が進展する中、安定財源を確保しながら、持続可能な社会保障制度を構築し、暮らしの安心を取り戻すため、自民、公明、民主の三党合意に基づき、社会保障・税一体改革を推進してまいります。

 引き続き、三党間の協議を進めるとともに、社会保障制度改革推進法に基づき、国民会議で精力的に議論するなど、改革の具体化に向け、取り組みを進めてまいります。

 社会保障改革の具体化についてのお尋ねがありました。

 社会保障・税一体改革については、消費税率引き上げによる増収分を社会保障の充実と安定化に向けるという考え方のもと、自民、公明、民主の三党間での協議を通じて進められてきた経緯があり、この考え方を尊重してまいります。

 お尋ねの社会保障の充実については、御指摘のとおり、年金や子育て分野についての関係法案が成立をしております。今後、医療・介護分野を初めとして、国民会議で議論を深めるなど、社会保障改革のさらなる具体化に向けて検討を進めてまいります。

 以上であります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 平沼赳夫君。

    〔平沼赳夫君登壇〕

平沼赳夫君 まず初めに、アルジェリアで不幸なテロによって生命を奪われた被害者の皆様の御冥福をお祈りし、御家族の皆様方に心よりお見舞いを申し上げます。

 私は、日本維新の会を代表して、安倍総理大臣の所信表明演説について質問をいたします。(拍手)

 日本維新の会は、このたびの総選挙において、五十四議席を獲得し、比例で頂戴した票の総数は一千二百二十六万票余でありました。全体の二〇%で、二番目の地位を占めたわけであります。私どもは、国会の第三党としてその責任を自覚し、日本のために、国政の場にあって、是は是、非は非の基本姿勢で今後の政治に責任を持って対処してまいる覚悟であります。

 本題に入る前に、我が岡山が生んだ、幕末、江戸後期の偉人、備中松山藩の山田方谷について触れてみたいと思います。

 彼は、今より二百年ほど前、一八〇五年に現在の岡山の高梁市で生まれました。家は貧しい農商で、菜種油の製造と油の販売を行っていました。幼くして両親を失った方谷は、陽明学を学び、苦学して家業に精を出しました。

 彼は、神童の誉れ高く、その学徳が藩主に認められ、わずか九歳の折、将来は何になりたいか、こう問われたとき、治国平天下と答えたと言います。大学にある修身斉家治国平天下、身を修めて家をととのえ、もって国を治むれば天下は平らかである、この言葉を九歳の少年が堂々と述べたというので、皆びっくりしたそうであります。

 彼は、京都や江戸へ出て学問にいそしみ、武士に取り立てられるまでに至りました。江戸では佐藤一斎の塾に入り、佐久間象山と二傑と称され、彼が塾頭になったわけであります。

 三十二歳で故郷の松山藩に戻った方谷は、藩校の有終館の学頭、教授となりました。方谷は、教育家として学識、経綸に一生懸命邁進し、四十歳で殿様の教育係にもなったわけであります。

 松山藩は、当時、大変な貧乏藩で、石高は五万石でしたが、方谷が調べたところ、実際は一万九千石ほどしかなかった、こういうふうに言われております。そして、借金は膨大で、十万両の借金が大阪の両替商にあり、利息を払うだけでも四苦八苦の状況でした。藩主板倉勝静に請われて、全権を委任されて元締役兼吟味役、今でいえば財務大臣に就任したわけであります。

 方谷は、現在の日本に匹敵する財政難に必死で立ち向かいました。方谷は、節約の大号令を発し、藩札の刷新、産業の振興、藩政改革、文武の奨励、軍政の確立、新田の開発等々、一生懸命それに取り組み、現在の貨幣価値でいうと六百億円にもなる十万両をわずか七年で完済し、その上に十万両の蓄えまで持つことができました。

 彼は、節約でお金を浮かし、大阪の両替商には正直に内情を示し、再建計画書を提出、利息をまけてもらい、この資金で製鉄のためのたたらをつくり、鉄製の三本股の備中ぐわを大量製造して、当時、日本の総人口の八割を占めている農民に向かって、江戸でこれを販売しました。これが羽の生えたように売れ、藩の収入に大変寄与しました。これで、方谷は、街道の整備、港の建設を行い、流通面でも配慮したわけであります。

 当時は、藩の発行した紙幣、藩札が紙くず同然になって、それぞれの家に眠っていました。方谷は、藩札を持ってくれば金貨、銀貨、銅貨にかえると交換を約束いたしました。藩中の人々は半信半疑で藩庁に藩札を持ってきました。約束どおりに金、銀、銅貨に交換してくれ、藩の中心にある河原に旧札がうずたかく積まれました。方谷は、衆人環視の中でこれに火をかけて燃やしまして、新たに藩札を発行しました。新しい藩札には信用があり、瞬く間に流通をし、隣の藩にまで浸透したようです。

 こうして、情報を開示し、資金を創出し、産業を興し、信用ある藩札の発行、金融改革、財政改革を行い、必要な公共事業にも手を伸ばしました。

 また、方谷は、新田の開発にも熱を入れ、新田からの米には年貢をかけませんでした。農民だけでなく、武士にも屯田兵制度で新田を開発させ、これも無税扱いにいたしました。これは税制改革の一つと言え、経済は盛んになりました。

 また、軍備にも着目し、里正隊、武士でない一般人から成る軍隊を創設し、総理の御地元の奇兵隊の十年も前にこの里正隊を設立しました。これを久坂玄瑞もわざわざ見学に来て、多大の影響を与えたものと言えます。

 山田方谷は、七十二歳で没するまで、教育に邁進し、彼の教育の教えを受けた人々が大変活躍をしました。彼の藩政刷新の効果絶大で、板倉勝静は徳川幕府の筆頭老中にまで上り詰めることができました。方谷は勝静の右腕として活躍し、大政奉還の精神も彼が起草したと言われております。

 現在の日本と同じような状態となっていた松山藩を実質一万九千石から二十万石の実力とまで言われるようにした山田方谷のこと、我々は、今、今後の参考に大いになると考えております。

 このことを念頭に置いて、以下、所信にはないことを含めて質問させていただきます。

 まず、皇統の問題です。

 平成十六年十二月、皇室典範に関する有識者会議が突如設置されました。国論を二分することになったわけであります。

 背景には、昭和四十年十一月三十日に礼宮文仁親王、現在の秋篠宮殿下御誕生以降、平成十六年まで四十年間、親王様の御誕生を見ない異常な事態がありました。この四十年間に八方の女子皇族が御誕生になっておられたのに、男子はゼロという状態でした。男女ほぼ五割と見られている確率から見れば、異常な事態が出現しておりました。今上陛下の次の次の世代において皇位を継承すべき男子のお世継ぎがおられないということで、これを一応憂えての有識者会議の設立でした。

 しかし、これをよく吟味してみると、皇室の危機を克服するどころか、この危機に乗じて、皇室の解体の企図につながる皇室典範の改正という手段で、これを間接的に行おうとする意図が明白なものとなりました。

 そして、平成十七年の一月に開始された有識者会議の結論は、女系天皇の出現を可能とするようなものになりました。当時の総理大臣は、よい答申をいただいた、次の通常国会で取り上げるとまで言い切ったのであります。

 しかし、平成十八年二月七日に秋篠宮家の紀子妃殿下御懐妊の兆候が発表され、二月九日には、皇室典範改正法案の国会提出は見送るということになりました。そして、同年の九月六日に悠仁親王の御誕生で、この作業は打ち切られることになったのです。

 しかし、皇室典範の改正をもくろんだ勢力は、決して諦めておりませんでした。平成二十三年十月に、女性宮家の創設という名分を立てて、行動が開始されました。

 私には思い起こすことがあります。有識者会議で国論が二分されたとき、平成十八年の春、武道館で国民大集会を開催いたしました。当時のマスコミの一部は、あんな大会場を満杯にするような人は集まらない、せいぜい半分だ、こうやゆいたしました。当日出席した私は、感激に浸りました。一階のアリーナ席から三階まで人々が参集、一万人を超える全国からの人々の大集会となったわけであります。

 各界より数々の意見が寄せられましたが、イスラエルのヘブライ大学の教授、ベン・アミ・シロニー氏のメッセージに皆感動いたしました。

 自分はユダヤ人であり、ユダヤ教のラビ、お坊さんは男親から男の子に引き継がれる。全世界に十億人を超えるカトリック教徒がおり、イスラエルも、そしてカトリック教徒も、男女同権思想が強いけれども、ローマ法王が男だということに誰も異論を差し挟まない。それは、長い歴史、伝統、文化のなせるわざであり、誰もが当然のことと思っている。日本の皇室は、百二十五代男系で続いた、とうといものである。世界唯一の存在ではないか。何で日本人はそのとうといものを変えようとするのか。日本人しっかりせいというものでした。

 私は、総理にお尋ねします。

 皇室典範の改正により、男系の継承は可能だと思います。本来であれば、皇室の家法である皇室典範のことを我々国民が云々すべきではありませんが、昭和二十二年の連合国の強権によって、十一宮家が断絶、皇室典範は憲法のもとに置かれてしまい、国民の代表たる我々が意見を述べなければならなくなりました。

 皇統の存続について、総理大臣の見解をお聞きしたいと思います。

 次に、日本国憲法の問題です。

 総理も改憲論を展開されており、私どもも、現在の憲法は改めないといけない、こう思っております。

 我が党の石原慎太郎代表は、廃憲論を述べております。それは、現憲法を改正するのではなくて、憲法を新しく制定すべきとの意見です。被占領国に対し、占領した国が憲法の変更を迫ることは、ハーグ陸戦条約の四十三条、大西洋憲章の第三条等に逸脱することになるからであり、違法な手段、不法な条件で意図的に改正された日本国憲法は問題との見解です。

 現在、九十六条改正が憲法改正のかなめのように言われておりますが、総理として、憲法を改めるにはどうしたらよいか、このことをぜひお聞かせいただきたいと存じます。

 次に、経済政策の問題です。

 総理は、三本の矢の政策を掲げ、無期限の金融緩和に踏み込み、二%のインフレターゲットを日銀と歩調を合わせて断行しました。それにつれ、十円以上の円安、株価の上昇、国民の景気マインドの向上と、効果はあらわれつつあり、そのことは私どもも評価いたします。

 しかし、米国国家情報会議のメガトレンド二〇三〇を見ると、覇権的なパワーの分散、人口の動態、食料、水、エネルギーの需給の大問題、危機が起きやすいグローバル経済、米国の役割の低下、格差の増大、米国のエネルギー自給と中東諸国との関係、気候変動、ユーロの崩壊の危機、中国の経済動向、米国の後退等々、大問題が山積しています。

 自由に世界経済をコントロールする覇権国家が存在したのは、歴史上、二度しかありません。ナポレオン戦争の終了から第一次世界大戦までの英国、第二次世界大戦後のアメリカの存在だけです。

 要するに、覇権国家がなくなるということであり、G7、G20と言っていましたが、Gゼロの時代が到来しております。もちろん、アメリカと日本は仲よくしていかなければなりませんが、Gゼロを想定される場合、日本の将来に対してどういう手段が経済政策に必要か、この肝心なことを総理にお聞きしたいと思います。

 最近では、デフレ、インフレの議論の上にスクリューフレーションの危機があり、さらなる中産階級の貧困化を招くと言われております。

 こういった現状にあって、我が国の産業を支える多くの中小企業にきめ細かく対応しつつ、競争原理を導入し、力強い産業を振興して、新たな市場を生み出していく決断が必要です。

 前述の山田方谷の話ではありませんが、ぜひ総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

 次に、外交、安全保障について質問させていただきます。

 北方四島、竹島、そして尖閣諸島をめぐって緊張が高まっています。ロシアとの関係、韓国とのあつれき、中国の覇権主義、どれ一つとっても、我が国にとって喫緊の課題です。

 アルジェリアのテロを見ても、我が国の情報収集力の不足が現実であります。予算の貧しさも嘆きます。我が国の現状を見ると、諸外国では軍事費が増大しておりますが、ただ一つ日本は、小泉内閣以来、実質的に削減をしており、この国の安全と平和を守る上で限界に近づいております。

 国の財政状況を見ると、その厳しさはわかりますが、防衛費を思い切って上げる覚悟が必要です。福祉が叫ばれておりますが、国の平和と安全を担保することは、福祉と同じぐらい、国民の心の安寧を保つためにも必要であります。

 防衛費の確保はお考えのようですが、思い切って防衛費を大幅に上げる決断をしていただきたいと存じます。

 領土問題に関しても、我が国は、正々堂々と国際司法裁判所へ提訴するなど、正しい行動をとるべきだと考えます。

 防衛費増額と領土問題について、総理のお考えを伺いたいと存じます。

 小泉内閣のときに、北朝鮮は初めて拉致を認めて、五名の被害者が帰国し、引き続き家族の方々も帰ってまいりました。そして、昨年で十年もたっております。この間、何の進展もありませんでした。御家族の方々も年をとられ、全国で一千万人になんなんとする署名も集まっており、拉致された方々は必ず生きておられると確信しております。

 総理も拉致の問題でこれまで目覚ましい活躍をされてこられましたが、拉致問題解決のため、総理は、日本政府としてどう対応していくか、六者協議のこともよく考えて、ぜひそのお考えを承りたいと思っております。

 鳩山内閣のときに日米関係にひびが入り、普天間基地問題で米国との関係にきしみが出、沖縄の方々にも不信を与えております。

 日米関係の円滑化のため、総理はどう対処されようとしているか、これも総理のお考えをお聞きいたします。

 先ほども触れましたが、防衛力の整備は我が国にとっても大変重要な課題です。日本独自の防衛力整備に関し、向こう十年は我が国の優位が保たれている今、集団的自衛権の行使を含む集団的安全保障、核攻撃に対するシミュレーションの必要性や我が国の防衛体制のあり方について、御意見をお聞きしたいと考えております。

 最近、TPPについて国論がかまびすしくなっております。最大の同盟国アメリカの提唱ですから、話し合いには参加すべきと考えますが、農業問題を含め、二十四項目全て国益に関する重要な検討項目があります。私どもは、この交渉も、是は是、非は非で、国益を十分考慮して臨むべきと思っております。

 TPP交渉につき、総理のお考えをお尋ねいたします。

 次に、財政制度改革につき、現在の単式簿記、現金主義から、世界標準の複式簿記、発生主義への転換が必要と考えます。東京都や大阪府では既に採用して、大変な効果が上がっています。

 この会計制度の改革につき、御意見をお聞きしたいと存じます。

 私どもは、国の一般会計、特別会計等を連結し、予算ベースで財務諸表を作成、国の財務のコントロールを徹底すべきと思っております。

 なお、昨年十一月十六日、民主、自民、公明三党は、衆議院議員の定数削減について、選挙制度の抜本的な見直しについて検討を行い、次期通常国会終了までに結論を得た上で必要な法改正を行うとする衆議院議員定数削減に関する合意書を取り交わしましたが、今回の総理の所信表明演説では、国会議員みずからが身を切る定数削減等については何ら言及されていません。行政の歳出削減を断行する前には、まず政治家が身を切る覚悟を示すべきです。

 日本維新の会は、議員定数三割から五割削減を公約としてその実現を図りますが、この問題に対する総理の所信を伺います。

 政府と日銀の責任分担を明確化する協定が必要と考えます。政府が日銀に物価目標を指示する場合、その目標を達成するため、日銀は、非伝統的な金融政策に踏み込まざるを得なくなります。その政策実施の責任は政府が負うことを明確化すべきであります。

 政府と日銀の責任分担、日銀のガバナンスのあり方を再定義するための日銀法の改正が必要です。総理の見解をお聞きします。

 次に、社会保障についてお尋ねいたします。

 年金問題は大きな問題です。現役世代、若者世代を応援するために、世代間格差を是正することが必要です。具体的には、年金制度の考え方として、賦課方式から積立方式への移行、世代間格差の是正が必要です。

 年金問題について、今後どうあるべきか、総理のお考えをお聞きいたしたいと存じます。

 医療について、問題が多々あります。自己負担割合の一律化、世代間格差の是正、混合診療の解禁等々、問題が山積しております。今後の医療をどう守っていくかについてお聞きいたします。

副議長(赤松広隆君) 平沼赳夫君に申し上げます。

 申し合わせの時間が過ぎておりますから、なるべく簡潔にお願いをいたします。

平沼赳夫君(続) 生活保護のことを考える人々を対象とすべきなのに、実施の内訳を見ると、その給付が外国人に多くなりつつあり、全体の三兆円の相当な部分を占めるようになっています。真の弱者を支援するという立場に立って、私どもはこのあり方を見直さなければならぬと思っております。

 この現状について、総理のお考えをお聞きします。

 次に、震災の復興です。

 きずなといいながら、各地は瓦れきの処理に非協力的になっています。東北四県を除くと、東京都や大阪市などが率先して受け入れを決断し、現在十一県が受け入れていますが、まだまだ不十分です。残念ながら、瓦れき処理は遅々として進んでおりません。もちろん安全性はしっかり担保しなければなりませんが、各地はもっと協力をすべきです。

副議長(赤松広隆君) 再度、平沼赳夫君に申し上げます。

 申し合わせの時間が過ぎておりますから、なるべく簡潔にお願いをいたします。

平沼赳夫君(続) 千六百二十八万トンのうち、いまだに五〇%以上が未処理であります。被災された方々は、強制移住をされて毎日不便な生活を強いられております。一日も早い完全な復帰が求められており、政府は全力を挙げてこの問題に取り組んでいくべきです。

 復興に関する御意見をお聞きしたく存じます。

 山田方谷は、今の日本の現状と類似した備中松山藩の大改革を、単なる経済復興だけではなく、金融、財政、必要な公共事業、流通、教育体制、軍備改革と、総合的になし遂げました。

 私どもは総理の姿勢に共感を覚えるものでありますが、ぜひ、三本の矢を、総合的な抜本改革によって日本再生のため頑張っていただくことを祈念し、私の代表質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいま平沼赳夫議員から、格調高い、そして示唆に富んだ御質問をいただきました。お答えをさせていただきます。

 皇統の存続についてのお尋ねがございました。

 安定的な皇位の継承を維持することは、国家の基本にかかわる極めて重要な問題であります。

 野田前内閣が検討を進めていたいわゆる女性宮家の問題については、改めて慎重な対応が必要と考えます。

 男系継承が、古来、例外なく維持されてきたことの重みを踏まえつつ、今後、安定的な皇位継承の維持や将来の天皇陛下をどのようにお支えしていくかについて考えていく必要があると考えております。

 憲法改正についてのお尋ねがありました。

 現行憲法の成立過程については種々の議論がありますが、現行憲法は、最終的には帝国議会において議決され、既に六十有余年経過したものであり、有効なものと考えております。

 憲法の改正については、党派ごとに異なる意見があるため、まずは、多くの党派が主張しております憲法第九十六条の改正に取り組んでまいります。

 日本の将来のために必要な経済政策についてのお尋ねがありました。

 大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略という三本の矢で、経済再生を推し進めてまいります。

 このうち、成長戦略については、企業が活動しやすく、雇用と所得が拡大する国を目指した取り組みなどを盛り込んでいます。

 また、日本経済の足腰を強くし、地域経済と地域の雇用を支える中小企業、小規模事業者が躍動するよう、きめ細かな支援を講じてまいります。

 防衛費と領土問題についてのお尋ねがありました。

 防衛費については、厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、国民の生命財産と領土、領海、領空を断固として守り抜くため、しっかりと確保してまいります。

 我が国が抱える領土問題については、竹島問題は、平和的な解決を図るため、粘り強い外交努力を行っていき、北方領土問題は、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するため、粘り強く交渉に取り組んでまいります。

 なお、尖閣諸島については、我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、現に、我が国はこれを有効に支配しております。したがって、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題は、そもそも存在しません。

 拉致問題の解決に向けた取り組みについてお尋ねがありました。

 拉致問題は、我が国の主権及び国民の生命と安全にかかわる重大な問題であります。国の責任において解決すべき喫緊の重要課題であります。

 我が国としては、国際社会とも連携し、北朝鮮に対する対話と圧力の方針を貫き、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引き渡しに向けて、全力を尽くしてまいります。

 普天間飛行場の移設問題についてのお尋ねがありました。

 日米同盟は、日本外交の基軸であります。普天間飛行場の移設を含む在日米軍再編については、現行の日米合意に従って進め、抑止力を維持しつつ、沖縄の負担軽減に全力で取り組んでまいります。

 普天間飛行場の固定化は、あってはなりません。政府としては、沖縄の声によく耳を傾け、信頼関係を構築しつつ、普天間飛行場の移設に取り組んでまいります。

 我が国の安全保障体制についてのお尋ねがありました。

 我が国周辺の安全保障環境が一層厳しさを増していること等を踏まえ、現防衛大綱を見直し、我が国の防衛体制を強化してまいります。

 また、集団的自衛権等については、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会の報告書を踏まえつつ、新たな安全保障環境にふさわしい対応を改めて検討してまいります。

 TPPについてお尋ねがありました。

 自由貿易の推進は、我が国の対外通商政策の柱です。力強い経済成長を達成するためには、自由貿易体制を強化し、諸外国の活力を我が国の成長に取り込む必要があります。

 他方、我が党の公約で明記したとおり、聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉には参加しません。

 TPPについては、政府としては、これまでの協議の内容、TPPに参加した場合に生じ得るさまざまな影響等も含め、しっかりと精査、分析した上で、国益にかなう最善の道を求めてまいります。

 国の会計制度改革についてお尋ねがありました。

 東京都や大阪府の取り組みと同様に、国においても、平成十五年度決算分より、毎年、複式簿記、発生主義といった企業会計の考え方及び手法を参考として、国の財務書類を作成、公表しているところであります。

 こうした企業会計と同様の手法で国の財政状況を把握し、また、わかりやすく開示することは、重要であると考えております。引き続き、その有効活用等に取り組んでまいります。

 衆議院の定数削減等についてお尋ねがありました。

 衆議院の定数削減などの選挙制度のあり方は、議会政治の根幹にかかわる重要な課題であります。

 さきの三党合意においても、定数削減について、制度の抜本的な見直しの検討を行い、今般の国会終了までに結論を得て必要な法改正を行うこととしているところであります。各党各会派において十分御議論をいただき、改革を進めてまいります。

 日銀法改正についてお尋ねがありました。

 政府としては、まずは、今般取りまとめた共同声明に基づき、日本銀行がみずから設定した二%の物価安定目標について、責任を持ってできるだけ早期に実現することを期待しております。

 なお、日本銀行法の改正については、将来の選択肢として、引き続き視野に入れてまいります。

 年金制度のあり方についてのお尋ねがありました。

 御指摘の積立方式への切りかえについては、いわゆる二重の負担の問題が生じること、より市場変動リスクにさらされることとなることなど、さまざまな問題があると考えております。

 現在の年金制度については、平成十六年の改正により、中長期的に持続可能な仕組みとなっていると考えておりますが、経済情勢の変化に対応し、より世代間で公平な制度にする観点等から、さらに、残された課題について検討してまいります。

 今後の医療についてのお尋ねがありました。

 日本が世界に誇る国民皆保険制度を堅持するため、社会保障制度改革推進法に基づき、現在、社会保障制度改革国民会議において、世代間の負担の公平化を図る措置その他必要な改革について、真剣に御議論をいただいております。

 政府としては、国民会議の議論を踏まえ、持続可能な医療保険制度の構築に向けた検討を進めてまいります。

 外国人に対する生活保護についてのお尋ねがございました。

 生活保護法は、日本国民のみを対象としており、外国の人は対象とはなっておりませんが、永住者、定住者等の在留資格を有する外国人の方については、人道上の観点から、予算措置として生活保護を支給しています。

 しかしながら、日本人、外国人を問わず、不正受給には厳正に対処していくことが重要であり、こうした取り組みを通じて、広く国民の信頼に足る制度の確立に努めてまいります。

 瓦れきの処理についてお尋ねがありました。

 被災三県の復興を果たすため、瓦れきの処理をさらに加速化する必要があります。

 政府としては、広域処理の受け入れ地域の今年度内の確定、仮設焼却炉の施設整備や再生利用の推進を通じ、瓦れきの処理の加速化に全力で取り組んでまいります。

 以上でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

越智隆雄君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明三十一日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(赤松広隆君) 越智隆雄君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(赤松広隆君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣     麻生 太郎君

       総務大臣     新藤 義孝君

       法務大臣     谷垣 禎一君

       外務大臣     岸田 文雄君

       文部科学大臣   下村 博文君

       厚生労働大臣   田村 憲久君

       農林水産大臣   林  芳正君

       経済産業大臣   茂木 敏充君

       国土交通大臣   太田 昭宏君

       環境大臣     石原 伸晃君

       防衛大臣     小野寺五典君

       国務大臣     甘利  明君

       国務大臣     稲田 朋美君

       国務大臣     菅  義偉君

       国務大臣     根本  匠君

       国務大臣     古屋 圭司君

       国務大臣     森 まさこ君

       国務大臣     山本 一太君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  山本 庸幸君


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