衆議院

メインへスキップ



第21号 平成25年5月10日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十五年五月十日(金曜日)

    ―――――――――――――

  平成二十五年五月十日

    午後一時 本会議

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 麻薬及び向精神薬取締法及び薬事法の一部を改正する法律案(参議院提出)

 公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


このページのトップに戻る

    午後一時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

越智隆雄君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 参議院提出、麻薬及び向精神薬取締法及び薬事法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(伊吹文明君) 越智隆雄君の動議に御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 麻薬及び向精神薬取締法及び薬事法の一部を改正する法律案(参議院提出)

議長(伊吹文明君) 麻薬及び向精神薬取締法及び薬事法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長松本純君。

    ―――――――――――――

 麻薬及び向精神薬取締法及び薬事法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔松本純君登壇〕

松本純君 ただいま議題となりました麻薬及び向精神薬取締法及び薬事法の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、指定薬物の製造、輸入、販売等の現状に鑑み、これに適切に対処するため、麻薬取締官及び麻薬取締員に指定薬物に係る司法警察員としての職務並びに指定薬物に係る廃棄その他の処分及び立入検査等に関する職権を行わせるとともに、指定薬物またはその疑いがある物品の試験のための収去等について定めようとするものであります。

 本案は、参議院提出に係るもので、去る四月二十六日本委員会に付託され、本日、参議院議員藤井基之君から提案理由の説明を聴取し、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 全会一致。異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

 公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(伊吹文明君) 次に、内閣提出、公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣田村憲久君。

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) このたび政府から提出させていただきました公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 公的年金の一部を代行する厚生年金基金制度は、近年では、代行給付に必要な資産に不足が生じている、いわゆる代行割れ基金が多数存在し、公的年金の財政や厚生年金基金に加入する中小企業の経営に影響を与えかねない状況となっております。

 また、国民年金の第三号被保険者の中には、配偶者の離職などにより第一号被保険者となったにもかかわらず、必要な届け出を行わなかったために、第三号被保険者として記録された期間のある者が多数存在することが明らかになっております。

 このため、厚生年金基金制度については、代行割れ基金の解散が進むよう、現在の特例的な解散制度を見直すとともに、今後の代行割れを防ぐための制度的な対応を講ずる必要があります。

 また、第三号被保険者の記録で不整合となっているものについては、早期の把握と正しい記録への訂正を行う必要があります。

 このような状況を踏まえ、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容について、その概要を御説明いたします。

 第一に、厚生年金基金については、今後、新設は認めないこととし、その自主的な解散を促進するため、施行日から五年間の時限措置として、解散時に政府に返還する代行給付に必要な資産の分割納付の期限を十五年から三十年に延長するとともに、事業所間の連帯債務とならないよう措置を講じます。

 また、施行日から五年後以降に存続する厚生年金基金については、その積み立て状況が一定の基準に該当しなくなった場合に、厚生労働大臣が社会保障審議会の意見を聞いて解散を命ずることができることとしております。

 なお、解散する厚生年金基金の事業所が他の企業年金制度等に移行できるよう、必要な措置を講じます。

 第二に、第三号被保険者の記録不整合への対応については、第三号被保険者でなくなったことを事業主を経由して届け出なければならないことにするほか、記録が訂正された者は、一定の範囲内で、国民年金保険料を追納することを可能とする等の措置を講じます。

 最後に、この法律案の施行期日については、厚生年金基金制度の見直しについては、公布の日から一年を超えない範囲内で政令で定める日、第三号被保険者の記録不整合への対応については、一部を除き、公布の日から一月を超えない範囲内で政令で定める日、その他の事項については、公布の日としております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(伊吹文明君) ただいまの厚生労働大臣の趣旨の説明に対し、質疑の通告があります。順次これを許します。上川陽子君。

    〔上川陽子君登壇〕

上川陽子君 自由民主党の上川陽子です。

 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案につきまして質問をいたします。(拍手)

 まず、厚生年金基金についてお伺いします。

 この制度は、昭和四十一年に、経済界からの要望を踏まえて創設されました。企業が任意に設立する私的年金でありながら、公的年金の一部を代行するという、公私両方の性格を持つ仕組みでございます。

 制度創設当初は、折からの高度成長を背景に、スケールメリットを生かした運用などの代行メリットが推進力となり、任意設立の制度ではありましたけれども、多くの基金が設立されました。最盛期には、基金数は二千近くに上り、厚生年金の被保険者の三人に一人が加入しておりました。

 このように、厚生年金基金は、退職一時金が主流であった我が国において、企業年金という仕組みを普及させることに大きな役割を果たしてきました。

 しかし、いわゆる平成バブルの崩壊以降の金融市場の悪化により、運用のスケールメリットが逆にデメリットになるようになりました。このため、厚生年金基金は平成十年度以降新設されておりません。

 また、上場企業に対する企業会計基準の見直しも相まって、平成十五年から十六年にかけて、大企業を中心に八百基金程度が代行返上を行い、新しく導入された確定給付企業年金や確定拠出年金に移行をしました。また、同じ時期に四百基金程度が解散し、厚生年金基金は、ピーク時に比べると、三分の一に減少をしました。

 このように、代行を柱とする厚生年金基金は、企業年金の普及という役割を新しい企業年金制度に譲り、時代の流れの中で緩やかにフェードアウトしていくという段階に入っております。

 しかし、中小企業が設立する総合型基金につきましては、多数の企業の合意形成が難しいこともあり、こうした環境変化への対応がおくれました。また、産業構造の変化や金融環境の激変により、解散するときに国に返還しなければならない代行部分の資産もない、いわゆる代行割れが増加しました。現在では、全体で約五百六十弱ある基金のうち五百弱が総合型基金で、その四割が代行割れになっております。

 こうした代行割れ基金が解散する場合、不足額は母体企業が一括で埋めるのが原則です。しかし、母体企業の多くは、繊維、建設、タクシー、トラック、ガソリンスタンドなど、経営が厳しい業種です。解散したくともこうした不足分が払えず前に進めないという状況が続いていました。昨年のいわゆるAIJ事件は、こうした厚生年金基金をめぐる構造的な財政問題を表面化させる契機となりました。

 この代行割れ問題の早期解決に当たっては、企業年金を持たない厚生年金の被保険者の方々にツケ回しをしないという観点から、不足分については、基本的には母体企業で責任を持って負担していただく必要がございます。

 一方で、地域経済を支える中小企業が年金倒産をしてしまっては、地域の発展、雇用の確保という観点から、大きな社会問題になりかねません。

 今回の厚生年金基金の改正案では、この二つの観点にどのような配慮をした改革案となっているのでしょうか。総理にお伺いをします。

 また、既に代行割れとなっている基金の早期解散を進めるとともに、代行割れが中小企業に与える影響や、基金と関係のない企業やその従業員に与える影響を考えれば、この代行割れを再び起こさないよう、制度改革もあわせて行っていく必要があります。

 この点について、本案はどのような内容になっているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

 さて、厚生年金基金という制度は見直しが不可欠ですが、企業が従業員の福利厚生のため企業年金を実施することは、国として推奨する必要があると思います。厚生年金基金の多くは、企業年金を継続するための上乗せの資産を欠いてはおりますが、上乗せの資産のある基金については、継続して企業年金を実施できるよう、特段の配慮が必要ではないでしょうか。

 本案でどのような措置を盛り込んだのか、厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

 最後に、私は今回の厚生年金基金制度改革は必要と考えますが、大胆な改革は、内容ばかりではなく、時期について国民の理解を得ることが必要です。

 なぜ今を逃さずやることが必要なのか、その点について、わかりやすく、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 次に、この法案のもう一つの柱である、三号不整合問題への対応についてお伺いをします。

 年金制度については、社会保険制度によって運営するということが我が党の基本的な考えです。また、昨年の社会保障・税一体改革の一環として成立した社会保障制度改革推進法の中でも、年金制度は社会保険制度を基本とすることが明確に示されております。すなわち、現役期に保険料を納付する義務を果たしていただき、その納付実績に対応する年金を権利として受け取ることで成り立っているのが、年金という仕組みであります。

 三号不整合問題は、一部の方が、納付実績に対応した年金よりも高い年金を受給している問題です。具体的には、サラリーマンの配偶者である第三号被保険者が第一号被保険者に変わるときに、届け出をしなかったために、第三号被保険者のまま記録されてしまったケースであります。その間違った記録に基づいて、本来よりも高い年金を受給してしまっている方がいます。

 この問題は民主党政権期に発覚したものでありますが、当初は、不整合であってもその記録に基づいて年金を支給することを、制度改正ではなく、運用によって処理する方針が決められ、実行されてきました。いわゆる運用三号と言われているものであります。この運用三号については、自民党からも他の党からも批判を浴び、およそ二カ月で廃止されることになりました。

 田村大臣も当時はこの対応について強く批判をされておられたとお聞きしております。厚生労働大臣として、改めて、この運用三号の問題点をどう整理されておられるのか、お伺いしたいと思います。

 運用三号の廃止後は、この問題には、社会保険の原則に沿って法律で対処するという方針が打ち出されました。平成二十三年十一月末に法案が提出されましたが、審議時間がとれないまま、昨年の衆議院解散により、廃案になりました。

 今回、厚生年金基金の見直しとあわせて、この三号不整合問題の解決のための法律改正案が国会に提出されるに当たって、我が党の中でもさまざまな意見がありました。具体的には、この法案では、将来的には納付実績に見合った給付が実現されるわけでありますが、では、これまでに給付された年金についての不公平は残るのではないかという意見もありました。

 そのような中で、廃案となった法案と基本的には同じ枠組みで問題解決を図るという御判断をされた理由につきまして、厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

 厚生年金基金の見直しにつきましても、三号不整合問題の対応につきましても、対応がおくれると傷口が広がっていく問題であり、いち早く解決に向けて取り組まなければいけないと考えております。今国会で法案の速やかな成立を図ることがぜひとも必要であるということを申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 上川陽子議員にお答えをいたします。

 代行割れ問題の早期解決と母体企業の経営への配慮についてお尋ねがありました。

 今回の法案は、厚生年金本体との財政中立を基本としており、基金が解散するときの不足金は、税や保険料による補填は行わず、母体企業が責任を持って国に返還することにしています。

 他方、こうした返還に際して、中小企業の経営に配慮するため、分割納付による返還期限を延長するとともに、事業所間の連帯債務を外すこととするなどの見直しを行うこととしております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 上川議員からは、五問質問をいただきました。

 まず、厚生年金基金の代行割れの早期解決と再発防止についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、代行割れ基金の早期解散を促すため、施行日から五年間の時限措置として、分割納付による返済期限を十五年から三十年に延長する、また、事業所間の連帯債務を外すこと、さらには、利息を金利固定とするなどのほか、解散認可基準の緩和等を行います。

 一方で、代行割れを再び起こさないようにするため、施行日から五年後以降は、代行保全の観点から設けた一定の積立基準を下回る基金には、厚生労働大臣が第三者委員会の意見を聞いて解散命令を発動することといたしております。

 次に、厚生年金基金解散後の企業年金の継続についてのお尋ねがありました。

 今回の法案では、上乗せ資産のある基金が他の企業年金制度へ移行できるよう、厚生年金基金解散後に事業所単位で既存の確定給付企業年金や中小企業退職金共済に残余財産を移換できる税制上の特例措置を講じております。

 また、中小企業が移行しやすい企業年金の選択肢をふやす観点から、今後、政省令におきまして、より簡易な手続等で設立できる確定給付企業年金の導入、確定拠出年金に移行する場合の規制緩和などを行う予定でございます。

 次に、厚生年金基金の改革をなぜ今行うのかとのお尋ねがございました。

 代行割れ問題を放置することは、公的年金である厚生年金の財政リスクを高めることから、一刻も早い対応が必要であります。また、代行割れの不足分を負担する母体企業の経営にとっても、問題の先送りは事態を悪化させるだけでありまして、さらには、現在、市場環境の改善により、一時的に厚生年金基金の積み立て不足は縮小しており、母体企業の負担という観点から、今、まさに改革の好機であると考えております。

 次に、運用三号の問題点についてのお尋ねがございました。

 運用三号には、二つの大きな問題点があったというふうに考えております。一つは、年金保険料の納付や年金の受給といった国民の権利義務にかかわることを、法律によらず、課長通知という運用で対応した点です。もう一つは、不整合期間を全て保険料を納付した期間とみなすことは、きちんと届け出をして保険料を納めてきた人との公平性の観点からは不適切であるという点であります。

 最後に、廃案となった法案と基本的に同じ枠組みで問題解決を図ることとした理由についてのお尋ねがございました。

 第三号被保険者の記録不整合問題は、現在の受給者の生活への配慮や保険料を納めてきた人との公平性についてどう考えるかという点で、いろいろな考えがありますが、早く処理しなければ、いつまでも不公平が継続するという問題があります。

 既に、この問題が提起されてから二年以上が経過しており、この問題の早期の解決が必要との判断から、各党にも御理解をいただけるような内容で法案を取りまとめてきたところであり、この法案の早期成立に御理解をいただきたいというふうに考えております。

 以上でございます。(拍手、発言する者あり)

議長(伊吹文明君) 静粛にしてください。

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次に、長妻昭君。

    〔長妻昭君登壇〕

長妻昭君 民主党の長妻昭でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、議題となりました厚生年金保険法等の改正案について質問をいたします。(拍手)

 答弁が不十分な場合は、再質問をさせていただきます。

 民主党政権当時、我々は、厚生年金基金制度を一定の期間後に廃止すべきといたしました。今回、民主党は、基金を十年以内に全廃する修正案を提出する予定でございます。この問題を放置すれば、新たな年金運用の失敗をもたらしかねないからです。

 基金は、厚生年金の一部を国にかわって支給していますが、代行割れ基金が約四割、代行割れ予備軍が約五割も占めております。このままでは、最終的に年金全体の財政に影響を及ぼすことになってしまいます。新たな企業負担を求めることによる制度改善は現実的ではありません。

 しかし、安倍政権は、本法案において、一定の要件を満たした基金が存続し得ることとしました。それは、不十分な対応です。なぜ、民主党政権で出した廃止の方針を覆し、一部の基金の存続を認めることにしたのか、総理に理由を説明いただきたい。

 次に、本法案に規定されている、いわゆる主婦年金問題について伺います。

 民主党政権は、これまで長年にわたって放置されてきた主婦年金問題を明らかにした上で、不公正を是正するため、平成二十三年十一月に主婦年金追納法案を提出しました。

 しかし、自民党は審議を拒み、昨年十一月に解散するまで、一年間もこの法案をたなざらしにしました。それによって、本来の年金支給額より年間約五億円も多く支払われることになってしまいました。

 自民党は、政権につくや否や、自分たちが拒み続けた法案とほぼ同様の本法案を提出いたしました。

 そこで、安倍総理に伺います。

 野党時代になぜ法案審議を拒んだのか、総理・総裁としての説明を求めます。

 次に、本法案の源流にある社会保障制度改革についてお尋ねをいたします。

 まず、自民党、公明党に申し上げます。

 消費税は上げるが、社会保障制度改革はしない、これでは筋が通りません。

 自公との三党協議によって、社会保障制度改革国民会議が設置されました。政局抜きで、国家百年の計に立って社会保障制度改革を決定するということで始まりました。年金や高齢者医療の制度改革の具体案は、三党協議の議論を踏まえて、社会保障国民会議で審議することになっています。国民会議の設置期限は、ことし八月に迫っております。

 にもかかわらず、残念ながら、三党協議において、自民党からは、やる気が全く感じられません。制度改革どころか、必ずしも法改正は必要でない、既に改革のための法改正は済んでいるといった驚く発言が飛び出しています。

 さらに、毎週開催を約束し、政局抜きであるはずの三党協議の場が、国会不正常という政局や多忙との理由で、自民党から一方的な通告によって、四月の四日から開催されておりません。制度改革の優先度が下がったのでありましょうか。

 審議拒否の理由を、総理・総裁として、お答えください。

 民主党は、年金と高齢者医療の制度改革案を提示していますが、自民党も、三党協議を再開して、年金や高齢者医療の制度改革案を提示して議論するおつもりはあるのか、総理、明確に御答弁願います。

 昨年結んだ三党合意があります。ここには、今後の公的年金制度、今後の高齢者医療制度に係る改革については、あらかじめその内容等について三党間で合意に向けて協議するとあります。協議すら拒む状態では、この確認書は破棄されたということですか。総理に答弁を求めます。

 また、同日の合意文書には、消費税率の引き上げに当たっては、社会保障と税の一体改革を行うため、社会保障制度改革国民会議の議を経た社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進することを確認するとあります。つまり、消費税の引き上げに当たって、社会保障制度改革が前提条件になっているのです。

 さらに、社会保障制度改革推進法第四条には、こうあります。社会保障制度改革を行うものとし、このために必要な法制上の措置については、施行後一年以内に国民会議における審議の結果等を踏まえて講ずるものとする。これは、施行後一年であることし八月が期限になっています。

 総理に伺います。

 ことし八月までに、年金制度改革及び高齢者医療制度改革の法制上の措置を講ずることは間違いありませんか。

 国民会議は、社会保障の三党協議を踏まえて議論することになっています。三党協議をないがしろにし、改革の姿勢に後ろ向きで、ことし八月までに年金や高齢者医療の制度改革の法制上の措置が講じられなければ、消費増税の前提が崩れることになるのではないでしょうか。総理、いかがでございますか。明確にお答えください。

 まさか、三党合意は、自公政権になって無効とでも総理は考えているのでしょうか。お答えください。

 私は、将来のためにも消費増税は間違いなく必要であるとの立場でありますが、消費増税を国民により御理解いただくためにも、約束どおり、年金や高齢者医療の制度改革の青写真を示して、社会保障と税の一体改革という看板に偽りなしとしなければなりません。総理の決意をお聞かせください。

 総理は、今でも、現行の年金制度の微修正で、高齢者数が最大になる二〇四二年以降も役割を果たすことができるとお考えになっておられるのでしょうか。明確な答弁を求めます。

 現行年金制度の問題の一つは、年金がより給付されるべき層に給付が薄い一方で、手厚過ぎる給付を生んでいることであります。

 現行制度は、受給額の多い順に十分類すると、受給額が最も多い層と最も少ない層の受給格差は七倍になります。民主党が提唱する年金一元化、最低保障年金制度では、税金を低年金者に集中させるため、受給格差は二倍におさまります。

 年金制度を変えないとすれば、低年金や未納の構造的問題はどうやって解決するんですか。現行制度では、高額受給者にまで基礎年金の半額に税の補助が入っていますが、今後とも問題なしと考えておられるのですか。総理に御答弁願います。

 生活保護受給者は、日本では、諸外国に比べてもともと高齢者の比率が高く、それがさらに増加しております。年金制度が脆弱であることも、大きな理由の一つです。

 将来の年金制度は、少なくとも、以下の三つを満たさなければなりません。職業やライフスタイルが変わっても不公平のない同じ制度、低所得者でも無理なく保険料を払える持続可能な制度、最低保障機能がある制度です。

 総理は、将来の年金制度に必要な要件は何であるとお考えでありますか。

 まず、年金について、制度は一切変えないという自民党のかたくなな態度を変えていただきたい。総理の指示で、年金制度改革案について、少なくとも自民党のたたき台を出して議論してみるという姿勢に転換していただくよう強くお願いします。総理、お答え願います。

 また、国保の保険者を都道府県にする案は、ぜひ推し進めるべきと考えますが、総理、いかがですか。

 日本は、今から三十年後の二〇四二年には、六十五歳以上の人口数が三千八百七十八万人と最大になる見込みです。私がもし生きていれば、八十二歳です。そのとき、国民負担率や給付費はどうあるべきか、北欧型か、ドイツ、フランス等大陸ヨーロッパ型か、将来像の共有が重要です。

 大和総研の興味深い試算があります。全ての現役世代の家計所得と年金、医療、介護の六十五歳以上の給付費の比率を広義の所得代替率と呼べば、二〇一一年度で八二パーとなります。この所得代替率を将来も維持し、プライマリーバランスを均衡させるとすれば、二〇五〇年に国民負担率は、現在の三八パーから七〇パーにまで上昇します。一方、この所得代替率を三割削減すれば、二〇五〇年の国民負担率は五七パーとなります。

 現在の各国の国民負担率と消費税率を並べてみれば、デンマーク、六八パーと二五パー、スウェーデンが五九パーと二五パー、フランスが六〇パーと二〇パー、ドイツが五一パーと一九パーとなります。

 総理は、将来、日本は、負担と給付について、どの国のレベルに達するとお考えですか。また、国民会議で二〇四二年前後を見越した負担と給付の議論をすることが重要と考えますが、総理、いかがでございますか。

 私は、現役が高齢者を支える構造から、支える余力のある人がそうでない人を支える構造へ、さらに思い切った転換が必要と考えます。総理の、負担と給付の将来ビジョンもお聞かせください。

 民主党政権時代、少子高齢社会を克服する日本モデルとして、福祉の地縁を中学校区を単位としてつくり、地域包括ケアを拡充して、医療、介護、保育、学校、町会、商店会、民生委員、ボランティア等が連携する見守りのネットワークをつくるとした政策を進めてまいりました。この政策を継続して推進することを強くお願いいたします。総理、いかがですか。

 最後に、いわゆる消えた年金問題でございます。

 かつて、安倍総理が、予算委員会の私の質問に、年金そのものに対する不安をあおると答弁された記録問題は、現在、一千三百二十四万人、生涯年金額で一・八兆円が回復されました。記録数でいえば、二千八百九十五万件が解明されました。紙台帳の全件照合も、公約どおり、今年度中に七千九百万人分が終了いたします。

 かつて、総理は、国会で、最後の一人に至るまで徹底的にチェックをし、そして全てお支払いをするということはお約束したいと思いますと答弁されました。総理、その方針は今も変わっていませんか。全てお支払いするというのは、いつまでに、最終的に何人、幾らを想定していますか、お答えください。

 一方で、年金記録確認第三者委員会が総務省から厚労省に移り、大幅縮小されるのではないかという話や、年金記録回復委員会が審議会の孫委員会に格下げされたことなどが聞こえてきますが、政府は記録問題にやる気があるのでしょうか。この両委員会の扱いについて、総理の見解をお願いします。

 いまだ残された広がりの可能性のある記録問題に、毎月四百円の保険料をプラスすると将来の受給額がふえる付加保険料の納付記録が混乱している案件、本来は時効で年金事務所が受領してはならない未納分の保険料や付加保険料を受領していた案件などが漏れ聞こえていますが、事実関係をお示しいただきたい。また、いまだ公表されていない年金問題が残っていれば、全てお教え願いたい。総理、いかがですか。

 国家百年の計に立った社会保障制度改革の実現に向けた力の結集を呼びかけ、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 長妻昭議員にお答えをいたします。

 一部の厚生年金基金存続の理由についてお尋ねがありました。

 厚生年金基金は国の法律に基づき創設された制度であり、十分な積立金を持って適切に運用している基金まで強制的に廃止することは、問題が大きいものと考えます。このため、これらの基金については、自主的な移行を促しつつ、存続という選択肢を残したものであります。

 一方、施行日から五年以降は、十分な積立金を持たない基金には、代行資産の保全の観点から、解散命令を出すこととするなど、厚生年金財政に影響を与えないよう措置をしていきます。

 第三号被保険者の記録不整合問題への対応についてお尋ねがありました。

 この問題については、自民党は、野党時代から一貫して、立法による早期の解決が必要との認識で臨んでおりました。一昨年の十一月に民主党政権下で法案が提出されましたが、社会保障・税一体改革関連法案の審議もあり、結果的に、昨年、衆議院解散で廃案になったものと承知しております。自民党として、法案審議を拒んでいたということではありません。

 今般、政府・与党として法案を提出するに当たり、一刻も早く問題を解決するとの観点から、各党にも御理解いただける内容としつつ、施行のスケジュールを可能な限り早めることとしたものであります。

 三党実務者協議についてお尋ねがありました。

 三党実務者協議が四月四日以降開催されていないことについては、公党間の協議であり、その具体的な日程調整や議論の進め方についてお答えする立場にはありませんが、自民党として、社会保障制度改革の優先度が下がったということではありません。

 社会保障制度改革については、改革推進法に基づき、国民会議の審議の結果等を踏まえて法制上の措置を講じることになっており、その具体的内容については、改革推進法の趣旨に沿うよう、国民会議の審議結果に加えて、三党協議の状況など、さまざまな状況を踏まえて検討してまいります。

 三党合意を破棄したのかとのお尋ねがありました。

 先ほど答弁したとおり、三党実務者協議については、公党間の協議であり、その具体的な日程調整についてお答えする立場にはありません。

 また、昨年六月の確認書に基づき、三党実務者協議は本年一月以降十一回にわたり開催されてきており、確認書が破棄されているという認識もございません。

 社会保障制度改革の法制上の措置についてお尋ねがありました。

 三党で取りまとめられた改革推進法においては、改革に当たっての基本的な考え方や社会保障四分野の改革の基本方針が規定されており、政府としては、この改革推進法に基づき、八月二十一日の設置期限に向けて国民会議で議論を深めるなど、社会保障改革のさらなる具体化に向け、検討を進めていきます。

 御指摘の法制上の措置の内容や時期については、改革推進法の趣旨に沿うよう、国民会議における審議結果に加え、三党協議の状況など、さまざまな状況を踏まえて検討してまいります。

 社会保障・税一体改革は、これまでも自民、公明、民主の三党間での協議を通じて進めてきた経緯があり、三党合意が無効となったとは考えておりません。

 なお、昨年六月の三党合意においては、消費税率の引き上げに当たっては、国民会議の議を経た社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進することを確認することとされておりますが、必ずしも公的年金制度や高齢者医療制度の抜本改革を前提としたものではないと理解しております。

 いずれにしても、三党協議の状況や国民会議での議論を踏まえ、対応してまいります。

 二〇四二年以降の年金制度についてお尋ねがありました。

 年金制度については、今後の人口や社会経済状況について一定の前提を置いた上で、おおむね百年間で収支が均衡するように制度の設計を行っており、その上で、経済社会の変化に対応するため、定期的に財政検証を行うことで、長期的に持続可能な運営を担保しています。

 今後、御指摘のとおり、高齢者人口の増加と少子高齢化の進行が見込まれますが、社会保障・税一体改革の過程では、これまでの累次の改革により年金制度が長期的に運営できる仕組みとなっているとの認識を三党で共有しております。そのことは、当時の国会審議の中で、野田総理、岡田副総理からも答弁をしていただいております。

 低年金の問題についてお尋ねがありました。

 これまでの社会保障・税一体改革の経緯を踏まえれば、最初から抜本的な改革が必要と決めてかかるのではなく、現実の政策として実行可能な解決策を積み上げていくアプローチが重要であると考えます。

 その上で、御指摘の論点に関しては、三党間で協議を行った結果、低年金の問題については、年金制度の枠外で低所得、低年金の高齢者に対する給付金制度を創設することで対応することとなり、また、高所得者の基礎年金の調整は行わないということで、合意して改革を取りまとめており、この到達点を踏まえた議論を進めていくべきと考えております。

 年金制度に必要な要件と三党協議への姿勢についてお尋ねがありました。

 年金制度は、自助自立を基本とする考え方に立脚した社会保険方式による制度設計であること、予測できない経済社会の変化に対応し、将来にわたって持続可能な制度であること、公平かつ実現可能な形で国民皆年金を実現することといったことが必要と考えています。

 私どもは、このような基本的考え方に基づいて年金制度を構築し、御指摘の課題も念頭に置きながら改革してきており、このことは、三党実務者協議で、自民党を代表して参加している議員から御説明させていただいているものと承知をしております。

 また、自民党は、かたくなな態度をとっているわけではなく、三党で共有できる課題を整理した上で、これからの課題に対する方策の協議を進めてはどうかと提案したと承知をしております。

 なお、具体的な協議の進め方については、公党間の協議でありますので、基本的に政府から指示を出すべきようなものではないと考えております。

 国民健康保険の保険者のあり方についてお尋ねがありました。

 国民健康保険制度については、小規模の市町村があることや、市町村ごとの保険料に格差があるといった課題があり、財政運営の都道府県単位化を推進してきたところです。社会保障制度改革国民会議においても、国保の広域化をめぐり活発な議論が行われているところでありますが、全国知事会を初め地方団体の御意見を十分聞きながら、しっかりと検討していきます。

 社会保障の給付と負担の将来の水準についてのお尋ねがありました。

 給付と負担の水準については、あらかじめ特定の水準を設定するというよりも、社会保障制度の持続可能性を確保する等の観点から、まず、その均衡を図っていくことが必要です。国民会議においても、そういった観点を踏まえた議論が行われていると承知をしています。

 今後、二〇四〇年過ぎに高齢者の数が最大になるなど、世界で類を見ない少子高齢化という難題を乗り越えるため、社会保障制度改革を鋭意進め、我が国独自の社会保障制度を確立したいと考えています。

 少子高齢社会に対応した見守りネットワークについてお尋ねがありました。

 住みなれた地域で自分らしい暮らしを続けられる仕組みを構築するため、医療、介護、生活支援等が日常生活の場で一体的に提供される地域包括ケアシステムの実現を推進しております。その中で、地域の多様な分野の関係者が協働することにより、高齢者や子供などを見守る新たな地域づくりを引き続き進めてまいります。

 消えた年金問題についてのお尋ねがありました。

 年金記録問題については、平成十九年七月に政府・与党で決定した方針に基づき、さまざまな取り組みを行い、国民の方々の信頼回復に取り組んでまいりました。民主党政権においても、引き続きこの問題に取り組み、成果を上げてこられたものと承知をしております。

 今後、さらに、一人でも多くの方の記録の回復につなげていきたいと考えており、これに向けては、国民の皆様が御自身の年金記録を再確認していただく必要があることから、国民の皆様にぜひとも御協力をお願いしたいと考えております。

 現時点において、いつまでに、何人、幾らになるかを想定することは困難ですが、今後とも、紙台帳とコンピューター記録の全件突き合わせの実施や、ねんきんネットを活用した国民への記録確認の呼びかけなどを進め、年金記録問題にしっかりと取り組んでまいります。

 年金記録確認第三者委員会と年金記録回復委員会の取り扱いについてお尋ねがありました。

 総務省の年金記録確認第三者委員会の取り扱いについては、平成二十三年六月の年金記録確認中央第三者委員会からの提言を受けて、総務省と厚生労働省において検討しているところであります。

 年金記録回復委員会については、その根拠や所掌を明確にするため、法に基づく厚生労働省の審議会に有識者による新たな委員会を設置したものであり、格下げという指摘は当たりません。

 この委員会は、来年三月をめどに再発防止の提言などをまとめるため、毎月審議を予定しており、精力的に活動しているところであると聞いております。

 国民年金の付加保険料の取り扱いの事務処理誤りなどについてお尋ねがありました。

 御指摘の事案については、これまでに、問題を把握するための調査やその結果の公表などを行うなど、不適正な事務処理の是正に向けて取り組んできたところであります。

 政府としては、今後とも、適正な年金業務の実施に努めるとともに、仮に年金業務に関して問題があったときは、速やかに事実関係を調査、公表するなど、厳正に対処してまいります。

 以上であります。(拍手)

議長(伊吹文明君) 議場内の交渉係が協議中ですので、急がせますから、そのまましばらくお待ちください。

 協議がやっと調ったようですので。

 長妻昭君から再質疑の申し出があります。残り時間は二分です。残り時間の範囲内でごく簡潔にお願いをいたします。長妻昭君。

    〔長妻昭君登壇〕

長妻昭君 再質問をさせていただきますけれども、総理にお伺いしたいのは、やはり年金制度改革、我々民主党も改革案を出しております。ただ、我々は今野党になりましたので、民主党の改革案が一〇〇%通るとは思っておりませんけれども、今の年金制度を全く変えずに、今の年金制度を変えずに、今後本当にやっていけるのかどうか。

 未納の問題や、あるいは低年金の問題、税金が高額受給者にも入る問題などありますので、私は、総理にさっき質問した中でお答えをいただいていないのが、抜本か抜本じゃないかは別にして、年金の制度改革については、自民党からも、こういう改革案があるというたたき台をお出しいただきたい。

 つまり、制度は一切変えないという態度をずっと貫いておられますけれども、それは、三党協議、三党合意、国民会議のこの法律に反するのではないのかということを申し上げているので、もう一度お答えいただきたいのが、年金制度については、自民党の改革のたたき台をぜひ出していただきたいということについてお答えをいただきたい。(発言する者あり)

議長(伊吹文明君) 静粛にしてください。

長妻昭君(続) そして、二問目といたしましては、では、法制上の措置には年金の制度改革は入らないということも可能性としてあるのかないのか、明確にお答えください。

 以上です。(拍手、発言する者あり)

議長(伊吹文明君) ちょっと静かにして。静かにしなさい。

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 年金制度につきましては、先ほど答弁させていただきましたように、今後の人口や社会経済状況について一定の前提を置いた上で、おおむね百年間で収支が均衡するように制度の設計を行っており、その上で、経済社会の変化に対応するため、定期的に財政検証を行うことで、長期的に持続可能な運営を担保しているところであります。

 同時に、変えるべき点等については、不断の努力をしていくことは当然なことでございます。そうしたことにつきまして、国民会議でしっかりと議論を行っていくことが必要である、このように考えております。

 そして、もう一点の御質問につきましてでございますが、昨年六月の三党合意においては、消費税率の引き上げに当たっては、国民会議の議を経た社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進することを確認するとされておりますが、必ずしも公的年金制度や高齢者医療制度の抜本改革を前提としたものではないと理解をしております。

 いずれにせよ、三党協議の状況や国民会議での議論を踏まえて対応してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次に、伊東信久君。

    〔伊東信久君登壇〕

伊東信久君 三党合意の三党には含まれていない日本維新の会の伊東信久です。

 日本維新の会を代表して、ただいま議題となりました厚生年金保険法等改正案に関して質問をさせていただきます。(拍手)

 日本維新の会の社会保障制度改革に対する理念として、真の弱者を徹底的に支援することが第一義で、そのためには、自立する個人をふやし、そのことによって支える側をふやすということが、社会保障制度改革を実現させるための大きな枠組みとなっています。

 ここで大事なことは、第一に、社会保障制度を持続可能な制度とし、第二に、世代間の不公平を解消させることです。

 しかしながら、現実は、平成二十五年度一般会計予算において、社会保障給付に一般財源が二十三兆円以上も投入されております。このうち、年金には十兆六千億円が予算として組み込まれておりますが、この大半を働き盛り世代と若者世代に負担させているのです。

 いたずらに世代間の対立をあおっても、この問題の解決にはなりません。しかしながら、世代間格差をこのまま放置すれば、働き盛り世代は労働意欲をなくし、若者世代は高齢者世代への実質の所得移転にきゅうきゅうとし、将来世代は自分の将来に対し絶望してしまう結果となってしまうのです。

 そして、さらに今度は、年月の経過とともにこの関係が移行し、今の若者世代と将来世代が、現代の高齢者世代と若者世代と同じような関係に陥ってしまうおそれもあり、まさに、逃れることのできない負のスパイラルです。

 今こそ、受益と負担を明確化させた積立方式による公的年金制度への移行など、抜本的な社会保障制度改革が必要だと考えます。

 昨年の六月の三党合意に基づき、社会保障と税の一体改革関連法案が可決、成立いたしましたが、社会保障制度の抜本改革は、全て社会保障制度改革国民会議に先送りされた感が否めません。例えて言うなら、病気の患者を治療せずに様子だけ見て悪化させ、手術が必要な患者にその場しのぎの対処療法をしている医療のようなものです。

 厚生年金保険法等の改正案の各法案の内容を質問するに先立って、社会保障制度改革国民会議の結論に先送りするのではなく、社会保障制度を持続可能な安定的なものにする政策が必要だと考えますが、安倍総理の見解をお伺いいたします。

 次に、一昨日の新聞報道で、日本年金機構が、性同一性障害で性別を変更した人を判別するために、昨年十月から、基礎年金番号十桁のうち前半四桁の共通する固定番号の割り当てを始めていたことがわかりました。また、この四桁の番号は、一時インターネットで確認できる状態でもありました。このことは、勤務先などに性別変更を知られるおそれがあり、プライバシーの侵害に当たるという指摘もあります。

 日本年金機構は、昨年十月以降、性別を変更した人に新番号を割り当て、もとの基礎年金番号とあわせて二つの番号を持つ制度へと変更いたしました。変更前は、性別変更しても、それ以前と同じ番号を利用できました。性別を変更した人が持つ二つの年金記録を誤って一本化しないため、共通番号を割り振ったと日本年金機構は説明しています。

 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律は、平成十五年に発令され、最終改正は平成二十三年ですが、この認定には、二人以上の医師の診断が必要とされています。

 その診断項目の中に、生殖腺がないこと、または生殖腺の機能を永続的に欠く状態であること、加えて、その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていることが必要とされています。

 すなわち、今回の問題は、法に基づき手続した患者の病名に起因する医療情報が漏えいしたこととなります。マイナンバー法案への医療保険の導入に向けて、このことは非常なるディスアドバンテージになりますが、政府の見解をお伺いいたします。

 さて、厚生年金基金制度は、今から四十七年前に、前提として、経済界の要望を踏まえ、創設された制度であります。しかしながら、そもそも厚生年金基金は、その制度自体、十分に国民の理解を得ているとは言いがたいと思われます。

 なぜならば、厚生年金基金制度は、公的な厚生年金と私的企業年金を合体した制度で、極めて日本独特の、希有の制度であります。例えて言うなら、上半身は人間で体は馬であるケンタウルスのような制度であります。ケンタウルスはギリシャ神話でありますが、遺伝子レベルでは、これはキメラといい、奇妙なものの代名詞となっております。

 この制度の将来的な破綻は数年来学者からも指摘され、二〇一二年のAIJ事件でさまざまな問題が発覚いたしましたが、この事件後も、厚生年金と厚生年金基金の違いを完全に理解している国民は決して多くはありません。例えば、代行割れの用語など、わかりにくさが不透明さを物語っています。

 しかも、厚生年金基金には、厚生労働省、社会保険庁、都道府県の社会保険担当部局の職員の天下り先という指摘がありました。

 今回の厚生年金制度の見直しに関する法案で、新たなる厚生年金基金の新設を認めないことや、特例解散制度や他の企業年金への積立年金移行など、厚生年金基金の問題はその解散に向け改善傾向にありますが、遅過ぎた感は否めません。

 そもそも、代行制度に関し、制度創設から約半世紀が経過したわけで、代行制度を取り巻く環境も大きな変化が生じております。

 バブルの崩壊後、利差益が利差損に転じ、代行メリットが失われていきました。バブル崩壊後の失われた二十年において、厚生年金基金の廃止に関する議論をするタイミングはあったはずです。国の政策として、天下りが絡むと国民が二の次になる感が否めませんが、安倍総理の見解をお伺いいたします。

 また、年金制度が国民に理解されにくい原因に、その制度の複雑さがあります。

 厚生年金基金は三階建ての三階の部分であり、一階である国民年金、二階である厚生年金や共済年金など、極めて複雑な制度であるのが公的年金制度の体系であると言えましょう。長期的な移行が必要ですが、公的年金の一元化という、より国民に理解しやすい制度を考慮するのは今のこのタイミングがベストであると考えますが、政府の見解を求めます。

 さて、代行割れ基金の解散に当たって、施行日から五年間の時限措置として、特例解散制度を見直し、分割納付における事業所間の連帯債務を外すなど、基金の解散時に国に納付する最低責任準備金の納付期限、納付方法の特例を設ける措置に関して、十年の分割納付期限から十五年、三十年と、今回の法案で納付期限を延長する措置も、対処療法的な政策の結果でありましょう。天下りではない、年金清算事業団方式による過去の債務整理を委託する案はいかがでしょうか。

 いずれにしても、この法案による措置は、厚生年金本体から見れば、改正することにより、現行制度以上に財政のリスクを高めることにつながる可能性がありますけれども、この点に関して、政府の見解を求めます。

 厚生年金基金から確定給付企業年金や確定拠出年金への移行は理解できますが、一部の健全なる運用や経営をしている厚生年金基金を残す措置には疑問が生じます。

 なぜならば、第一に、さきに指摘したように、基金そのものに天下りの温床が残存してしまうからです。悪性腫瘍の細胞も、完全に取り切らなければ、再発となり、転移し、悪化の経過をたどります。そして第二に、現在健全なる運用をしていても今後の経済に過度の期待を持たないことが、過去の教訓ではないでしょうか。

 この質問は、政策により経済成長を促し、かつ景気の回復を期待することとは矛盾いたしておりませんが、政府の見解を求めます。

 次に、第三号被保険者の記録不整合問題への対応についてお尋ねいたします。

 その中に、不整合期間を空期間扱いとし、無年金となることを防止し、過去十年間の不整合期間の特例返納を可能とし、年金額を回復する機会を提供するという改正案が出されておりますが、そもそも、平成二十一年に実施された旧保険庁職員に対するアンケート結果において、不整合な記録は多数存在していることが判明いたしました。今回の法案も、これらのいわゆる運用三号問題に対する救済策でありますが、きちんと種別変更をして保険料を納めてきた人たちなどと比べて、救済策に不公平性を指摘する意見もあります。また、マイナンバー法案によりこういった問題は解決されるわけではありますが、そもそもの政府のずさんな体制及びこういった不公平さに対する指摘に関して、政府の見解をお尋ねいたします。

 また、第三号被保険者の記録不整合問題に対する議論では、当然のごとく、制度自体の見直しを求めることが出てきておりますが、この制度の見直しには、1、二号が納めた保険料の半分は三号が負担したものとして年金を分割する、2、三号に別途の保険料負担を求める、3、二号に別途の保険料負担を求める、4、三号の基礎年金を減額するというのが、平成二十三年度の九月、第三回社会保障審議会年金部会で出た案ですが、いずれにしても、共働き世帯から見た不公平感だけでなく、女性就労に対する影響も指摘しなければなりません。

 少子高齢化が進行し、労働人口が減少していく中で、今後さらに女性の就労が必要となっていく一方、少子化に対する子育てという観点から、第三号被保険者制度を考慮しなければなりません。いずれにしても、可能な限り男性と同等の就労機会を実現することが肝要と考えますが、政府の見解をお尋ねいたします。

 日本維新の会の国会対応の方針は、もちろん是々非々であります。厚生年金保険法等改正案に関する今回の質問も、是になる部分は大いに賛成いたし、政府に対する協力は惜しみません。しかしながら、非の部分に関しては、修正を求めたり、反対の姿勢を示すこともあります。

 確かに、お金というものは、再生医療で使われるiPS細胞を初めとする幹細胞のように、自己で分裂してふえてはいきません。しかしながら、厚生年金基金の資産活用という、ややもすれば安定性を欠く方法に問題があったということを、この際に指摘しておきます。

 また、年金制度のわかりにくさ、不透明さを解決する方向に政策のベクトルを向けなければ、社会保障制度の改善はあり得ないと考えますし、国民の理解を得ることは不可能です。

 人間は、未知なるものに恐怖を感じます。幼いころ暗闇を怖がるのは、そこが見えないからです。人間が死を恐れるのは、その後の世界がわからないからです。国民が、より安心して暮らし、政治に対して理解を示し、協力をしてもらえるのは、国民にわかりやすい国会運営と、政治家として明快な答弁と説明が不可欠であると考えます。

 高齢者世代、若い世代、そして次世代のために、それぞれが自立する個人であることこそが、自立した地域、自立した国家につながり、ひいては、真の弱者を徹底的に支援することにつながります。このことは、私が二十五年間続けているラグビーの、ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワンの精神につながり、ひいては維新の精神であることを結びとして、私、伊東信久の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 伊東信久議員にお答えをいたします。

 社会保障制度を持続可能なものとすることについてお尋ねがありました。

 政府としては、改革推進法に基づき、安定した財源を確保しつつ、持続可能な社会保障制度の確立を図るため、八月二十一日の設置期限に向けて国民会議で議論を深めるなど、社会保障改革のさらなる具体化に向け、検討を進めていきます。

 改革を進めるに当たっては、少子高齢化の進展や社会保障費の急速な増大など、社会経済の変化への対応が迫られていることから、給付の充実とともに、重点化、効率化についても検討を進め、受益と負担の均衡がとれた持続可能な制度の構築を目指します。

 厚生年金基金制度の改革に関するこれまでの取り組みについてお尋ねがありました。

 厚生年金基金制度については、代行割れ基金の増加など、基金の財政状況の悪化に対応し、二〇〇〇年代初頭から、財政悪化基金の指定制度や、代行部分のない企業年金制度の創設など、さまざまな見直しを行ってきています。

 今回の改正では、厚生年金基金制度全体を縮小させ、他制度への移行を促していくこととしており、その施行を着実に行っていくことにより、国民の老後の所得保障の基盤を揺るぎないものにしていきたいと考えています。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 伊東議員からは、六問質問をいただきました。

 まず、性同一性障害者の方への特定の基礎年金番号の付番と、医療情報に関する番号制度についてのお尋ねがございました。

 御指摘の事案については、特定の個人情報そのものの漏えいではないものの、機微に触れる情報を不開示としなかったことにより御批判を受けていることは、まことに遺憾であり、深くおわびを申し上げます。

 現在、日本年金機構においては、当面の対応として、本年四月より、新たな基礎年金番号への切りかえを実施する一方で、御本人のプライバシーに配慮した上で、特定の番号を付番しない対応が可能かどうか、システム改修も含めて検討するよう、日本年金機構に対して指示をしております。

 なお、医療情報に関する番号制度については、現在提出されている社会保障・税番号法案とは別に検討することとされていますが、プライバシー保護が十分に図られる仕組みにしてまいりたいと思っております。

 次に、公的年金一元化についてのお尋ねがありました。

 現在の公的年金制度は、被用者が加入する厚生年金、共済年金と、主に自営業者が加入する国民年金の制度の組み合わせとなっており、給付については、基礎年金の仕組みにより、二階建ての構造となっております。

 この仕組みは、資産を有し緩やかに引退していく自営業者と、退職すると収入の道がなくなる被用者の違いや、公平な所得捕捉の問題等の制約のある中で、実現可能な形で国民皆年金を実現するために形づくられてきたものであります。

 社会保障・税一体改革では、被用者年金の一元化を行いました。今後については、現在、三党実務者協議が進められておりますが、現実的に実行可能な形で、課題を解決しながら、改革を積み重ねていくことが基本と考えております。

 続きまして、厚生年金本体に与える財政リスクについてのお尋ねがございました。

 代行割れ問題を放置することは厚生年金本体の財政リスクを高めることになることから、今般の法案では、母体企業の自己責任を原則としつつ、企業経営への影響にも配慮して、分割納付による返済期限を延長し、事業所間の連帯債務を外すことなどにより、代行割れ問題を早期に解決することといたしております。

 また、施行日から五年後以降は、代行割れの再発を防止するため、代行保全の観点から設けた一定の積立水準を満たさない基金には解散命令を発動することといたしております。

 このように、今回の改正は、全体として見れば、厚生年金本体の財政リスクを逓減させることにつながると考えております。

 次に、厚生年金基金の一部の存続についてのお尋ねがございました。

 厚生年金基金は国の法律に基づく制度であり、法律に従って適切に運用している基金まで強制的に廃止することは、問題が大きいものと考えます。このため、これらの基金については、自主的な移行を促しつつ、存続という選択肢を残したものであります。

 一方で、今回の法案により、基金の新設は停止し、また、将来代行割れを起こさないための措置として、一定の積立基準を下回る基金には、代行資産の保全の観点から解散命令を発動できることとするなど、基金の財政状況に応じた適切な対応を行うことといたしております。

 三号不整合問題を発生させた政府の体制と、今回の法案における措置の公平性についてのお尋ねがございました。

 この問題が生じた理由については、届け出勧奨を行う範囲が限定的であったこと、また、職権適用の導入が遅く、統一手順が示されていなかったことなど、必要な届け出がなかった場合の行政の対応が十分ではなかったこと等に起因していると考えられます。

 今回の法案では、第三号被保険者でなくなった旨の情報を、配偶者の事業主を経由して届け出ることを義務づけるなどの対応を行っております。

 また、不整合期間が未訂正で本来より高い年金額となっている受給者については、記録を訂正した上で追納する機会を与え、保険料が納付されればその分を納付済みとして年金を給付し、納付されなければ本来の年金額に訂正することで、納付実績に応じた年金額を実現し、公平性を確保することといたしております。

 その上で、現在受けている年金を糧として日々の生活を送っている受給者の方々に配慮する必要もあるため、過去にさかのぼっての年金額の返還は求めない等の措置を講じているところであります。

 最後に、第三号被保険者制度の見直しと、男女平等の就労機会の実現についてのお尋ねがございました。

 今後、少子高齢化が急速に進行する中で、経済社会の活力を維持する観点から、男性も女性も、働く意欲を持つ者の労働市場参加を実現することは、極めて重要な課題と考えております。

 このため、子ども・子育て関連三法案の着実な実現や、ワーク・ライフ・バランスの推進などの環境整備を進めてまいります。

 第三号被保険者制度については、国民の間に多様な意見があることを踏まえ、一体改革の残された課題として検討をしてまいりたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 古屋範子さん。

    〔古屋範子君登壇〕

古屋範子君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案に関して、安倍総理並びに関係大臣に質問いたします。(拍手)

 世界に類を見ない高齢化が進展する我が国において、持続可能な安定した社会保障制度をどのように構築していくのかという待ったなしの課題に対して、公明党はこれまで、懸命に取り組んでまいりました。

 特に、昨年の社会保障と税の一体改革においては、当時の政権党である民主党、そして自民党と協議を積み重ね、この重要な課題を前に進めてきました。

 公明党は、今後も、社会保障は国民にとって重要なインフラであり、政局には利用しない、国民にとって欠かすことのできないセーフティーネットである社会保障を盤石なものにする、この視点に立って、改革に力を注ぐ決意であります。

 さて、その一体改革ですが、昨年八月に施行された社会保障制度改革推進法の中で、年金、医療、介護、子育ての課題は、社会保障制度改革国民会議を設置し、その議論を経て、施行後一年以内に、必要な法制上の措置を講ずるものとしております。逆に言えば、このことが担保されることが、消費税引き上げの前提になっています。

 法律に基づく国民会議の期限は、八月二十一日まで、残り三カ月余りとなりました。

 消費税の引き上げという新たな負担を国民にお願いする以上、社会保障の充実あるいは機能強化の具体像を明確に示す必要があります。

 そこで、まず初めに、安倍総理に質問いたします。

 国民会議での議論も大詰めですが、社会保障に関する国民の期待に対しどのように応えるのか、また、必要な法制上の措置は、どのような形で対応しようとしているのか、御見解をお伺いいたします。

 その国民会議においては、昨年の一体改革の議論では具体的な改革内容が明らかになっていない医療・介護分野を、まずは優先的に議論すべきと考えます。

 国民会議における議論を見守る必要がありますが、医療、介護については、地域の実情を踏まえ、地域に根差した効果的、効率的なサービス提供体制の整備、医療と介護の連携システムの確立といった視点が重要であると考えます。総理の認識を伺います。

 年金制度に関して、何点か確認をさせていただきます。

 改めて申し上げるまでもありませんが、現行の年金制度については、平成十六年改正において、基礎年金国庫負担割合二分の一やマクロ経済スライドなど、制度の持続可能性を高める仕組みが導入されました。特に、昨年の一体改革において、二分の一の安定財源が確保されるなど、いわゆる平成十六年財政フレームが完成し、この結果、長期的に給付と負担の均衡を図りながら持続的に運営をしていくことのできる仕組みになったと認識しております。

 この点については、昨年の一体改革の質疑で、当時の野田総理も同様の認識を示されており、自民、公明、民主の三党間で共有された認識となっていると考えますが、安倍総理に、この点を再度確認させていただきたいと思います。

 また、社会保障制度改革推進法では、年金、医療及び介護においては、社会保険制度を基本とするとしており、公明党としても、この趣旨に沿って、制度改革を積極的に進めていくべきであると認識をしております。安倍総理の認識をお聞かせください。

 このように、年金制度は、制度上は安定的な仕組みになりました。しかし、他方で、財政検証上の積立金の見積もりと実績において乖離があり、年金財政は悪化をしているのではないか、あるいは、国民年金の保険料の納付率はなお低下し、年金制度は破綻をするのではないかという不安があることも事実であります。田村厚生労働大臣に、これらの現状をどう認識し、どのように対応しているのか、答弁を求めます。

 特に、保険料徴収対策として、いわゆる歳入庁を設置するという議論がありますが、私は実務的にも極めて難しいのではないかと考えますが、歳入庁設置についてどのようにお考えか、政府内での議論の経過も含め、甘利社会保障・税一体改革担当大臣並びに田村厚生労働大臣の答弁を求めます。

 厚生年金基金制度の見直しについて、質問いたします。

 今般の法律案の大きな柱の一つは、昭和四十一年に始まった厚生年金基金を抜本的に改革しようとするものでありますが、その大きなきっかけは、昨年二月に発覚したAIJ投資顧問による詐欺事件、すなわち、同業同種の中小企業が集まって設立した総合型を中心とした多くの厚生年金基金が、同社に資金の運用委託をしていたものの、詐欺により多大な損失をこうむったという事件であると認識しております。

 AIJ事件に関し、運用受託サイド、運用委託サイドの問題がございましたが、もう一つ重要な点は、制度設計をし、また監督する立場にある厚生労働省に問題がなかったのかどうかであります。

 そもそも、厚生年金基金は企業年金の一つでありますが、本来は国が運用を担うべき厚生年金などの公的年金の一部を、基金が代行して管理し、独自の企業年金部分と組み合わせて運用する仕組みであります。

 こうした国際的にも類を見ない我が国独自の代行制度が、設立当時の昭和四十年ごろの企業にとって、運用規模を拡大でき、さらに、利回りが高ければ運用益が膨らみ、結果、退職者への年金給付をふやせるというメリットになっており、一定の役割を果たしてきました。

 しかし、バブルの崩壊、そして低金利の時代を迎え、予定利率である五・五%を下回ることとなり、大企業を中心とする厚生年金基金の大半は、相次いで代行返上し、代行部分を持たない確定給付企業年金などへの移行を加速化させました。

 他方で、残った基金は、代行割れの常態化、上乗せ給付の積み立て不足を生じさせ、また、解散しようにもできないという基金も総合型を中心に少なからず見られます。こうした事態が続くことは、結果として、公的年金の財政や厚生年金基金に加入する中小企業の経営に影響を与えかねないものであり、早急な対応が必要となったわけであります。

 そこで、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 少なくとも十年前くらいから、総合型を含め基金の制度的な限界が見え始めてきたわけであり、もっと早く抜本的な対策を講じることができなかったのか、厚生労働省はこうした課題を把握していながら見て見ぬふりをしてきたのではないかという指摘があります。この指摘についてどう認識をされているのか、年金行政のトップとしての明快な答弁を求めます。

 今般の法案では、既に代行割れが生じている基金を法律施行後から五年以内に解散させること、また、代行割れではないものの積み立て状況が一定の基準に該当しない基金、いわゆる代行割れ予備軍である基金を、同じく五年以内に、他の企業年金等へ移行させる、もしくは解散させることとしております。

 また、施行後五年以降に存続する厚生年金基金については、積み立て状況が一定の基準に該当しなくなった場合には、厚生労働大臣が第三者委員会の意見を聞いて解散命令を発動できることとなっております。

 その一方で、それ以外の健全な基金については、存続が可能な仕組みとなっております。

 そこで、お伺いいたします。

 前民主党政権下で検討された案では、厚生年金基金は一定の期間をかけて廃止するというものであったと承知しておりますが、今般、健全な基金は存続を可能とすることとした理由について、田村厚生労働大臣にお伺いいたします。

 また、健全な基金であっても、将来的な代行割れリスクは常につきまとうものであり、そうしたリスクを遮断し、厚生年金本体に影響を及ぼさないようにすることが重要であると考えますが、どのような対策を講じようとしているのか、あわせてお伺いいたします。

 代行割れ問題については、代行割れを放置したままで基金を解散し、厚生年金本体に救済を求めるようなことになれば、基金に加入していない厚生年金の被保険者との不公平を招くこととなり、早急な措置が必要であると考えます。

 今般、いわゆる代行割れ基金が早期に解散できるよう、施行後五年に限り事業所間の連帯債務を外すことなど、特例解散制度の見直し措置を講じておりますが、これまで実施された二回の制度と比べ、どのような点が改善されているのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 また、事業所間の連帯債務を外す措置については、既に特例解散制度を利用して解散した基金の扱いはどうなるのか、あわせて答弁を求めます。

 いずれにしても、今般の厚生年金基金の見直しは極めて重要な改革であり、公的年金を守りつつ、いわゆる企業年金や個人年金などの私的年金との関係、役割分担をどうするのかという大きな制度設計の見直しという課題が突きつけられたのではないかと考えます。この点について、総理の答弁を求めます。

 次に、第三号被保険者の記録不整合問題への対応について質問いたします。

 第三号被保険者の年金記録不整合問題は、第三号から第一号への変更の届け出を行わなかったために、年金記録上、その間は第三号のままで、例えば、受給者の中には不整合記録に基づく本来より高い年金額を受給している方が出てしまっているという問題であります。

 この問題に関しては、二年前の三月に、当時の民主党政権が、突如、運用三号取り扱いの方針を決定し、同年十二月に課長通知を発出、翌一月に実施に移したものの、こうした重要な課題に対して、その方針内容もさることながら、課長通知によって済ませようとした手法に大きな批判が集まり、国会はもちろん、国民からも大きな反発が起き、最終的に、三月に通知が廃止されたのであります。

 このような混乱の結果、制度に対する不信が生じたものと考えますが、その原因についてどのように整理をしているのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 他方、不整合記録問題の解決を図るに当たっては、真面目に保険料を納めてきた人などとの公平の観点が最も重視すべき点であります。年金は信頼性が必要不可欠であるからであります。

 とともに、不整合記録がまだ訂正されていない受給者が、現在受けている年金を生活の貴重な糧として暮らしているという実情も踏まえた生活への配慮も、一方では欠かせないものと考えます。

 このように、ある意味では矛盾ともとれるこれらの要請に、法案ではどのように対応しているのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 いずれにしても、今後は二度とこのような記録不整合が起きないようにしなければなりません。改めて、記録不整合が生じた原因をどのように分析し、今後、同じような問題が発生しないようにどのような対策を講じようとしているのか、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 関連して、最近、年金記録訂正に関して、日本年金機構内部における業務処理の不統一などによって、一部の方の時効特例給付の支給が漏れていたことが明らかになっています。

 年金記録問題の解決は極めて困難な作業でありますが、年金受給者から見て不公平な処理は決して許されません。今後、機構における処理の基準の整備、明確化など、再発防止に努めるとともに、厚生労働省との連携のあり方を含め、責任の所在を明らかにすべきです。厚生労働大臣の答弁を求めます。

 社会保障制度は、国民にとっての最重要のインフラであります。その制度を生かすのも殺すのも、全ては国民の、制度に対する信頼と理解にかかわってくるものと考えます。

 そうした観点から、私は、年金に限らず、社会保障制度について、給付と負担の構造がどうなっているのか、特に、教育現場において、将来を担う子供たちが理解できるわかりやすいパンフレットを作成するなど、社会保障に関する教育の推進を含め、社会保障制度の意義を広く国民に十分に理解してもらうための取り組みを強化すべきであると考えます。

 この点、総理の認識、決意をお伺いし、私の代表質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 古屋範子議員にお答えをいたします。

 社会保障改革に関する国民の期待と、必要な法制上の措置についてお尋ねがありました。

 社会保障・税一体改革は、社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指す観点から取り組む改革です。受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度を構築し、暮らしの安心を取り戻すことで国民の期待に応えたいと考えております。

 このため、八月二十一日の設置期限に向けて国民会議で議論を深めるなど、社会保障改革のさらなる具体化に向け、取り組んでいきます。

 また、法制上の措置については、改革推進法の趣旨に沿うよう、国民会議における審議結果に加え、三党協議の状況など、さまざまな状況を踏まえて検討してまいります。

 医療、介護の制度改革についてお尋ねがありました。

 医療、介護の制度改革については、先月二十二日の国民会議において、これまでの議論を一定程度整理した上で、今後、八月の取りまとめに向けてさらに議論することとされたと承知をしています。

 いずれにせよ、地域の実情を踏まえたサービス提供体制の確立が必要と考えています。

 このため、都道府県や市町村がそれぞれの地域のあるべき医療・介護サービスの提供体制の姿を計画として描くとともに、それに応じた入院医療の機能分化、強化や、医療、介護の連携等を図ることができるよう、国民会議における議論等を踏まえ、改革を具体化してまいります。

 現行の年金制度に対する認識についてのお尋ねがありました。

 社会保障・税一体改革の過程においては、これまでの累次の改革により、年金制度が長期的に持続して運営できる仕組みとなっているとの認識を、自民、公明、民主の三党で共有しております。そのことは、当時の国会審議の中で、当時の民主党代表でもある野田総理大臣、岡田副総理からも明確に答弁をいただいております。

 さきの国会では、三党でこの認識を共有した上で、現行の年金制度が抱える課題について三党間での具体的な改革案がまとめられており、年金制度の議論は、この到達点を踏まえて行うべきものと考えています。

 社会保障改革についてお尋ねがありました。

 社会保険方式は、負担の見返りとして受給権を保障することにより、国民の参加意識や権利意識を確保できる仕組みです。

 社会保障制度は、国民が病気や老後といった人生のリスクに対するセーフティーネットであり、社会保障制度改革を進めるに当たっては、改革推進法の規定も踏まえ、社会保障制度の中核として国民の生活を支えてきたこの社会保険制度を基本として、改革を進めてまいります。

 今後の公的年金と私的年金の役割分担等についてお尋ねがありました。

 少子高齢化が進展する中で、国民の老後の所得保障を充実していくためには、公的年金に加え、企業や個人の自助努力による私的年金を充実させていくことは、重要な課題と認識しています。

 このため、企業年金制度については、柔軟で多様な設計ができるよう規制緩和を行うとともに、公的年金と私的年金の役割分担のあり方についても、厚生労働省を中心に検討を行うなど、取り組みを進めていきたいと考えています。

 社会保障に関する教育の推進等についてお尋ねがありました。

 社会保険料や税を負担し、社会保障制度を支え、守っていくのは、全て国民です。その意味で、将来の社会を担う子供たちに制度の意義を教育することは、大変重要であると考えています。

 このため、厚生労働省の有識者検討会において、教育現場で活用する教材のあり方など、社会保障教育の推進について議論を行っております。

 こうした議論の成果を含め、さまざまな形で社会保障制度の意義について国民的理解が深まるよう、引き続き努めてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) お答えをさせていただきます。

 歳入庁の設置についてのお尋ねであります。

 歳入庁につきましては、昨年成立をしました税制抜本改革法におきまして、自民、公明、民主の三党合意に基づき、「年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施すること」とされておりまして、政府といたしましては、内閣官房副長官を座長とする関係省庁政務官による検討チームにおきまして、税制抜本改革法の規定に基づきまして、幅広い観点から検討しているところであります。

 なお、議員御指摘のとおり、歳入庁の設置につきましては、国税の徴収対象と年金保険料の徴収対象が異なっている上に、社会保険料と税とでは、負担と給付の連動の有無という基本的な性格の違いはもとより、消滅時効や優先徴収権等の制度上の違いがあり、職員に求められる専門性も異なっているといった実務面の課題が指摘をされていることも踏まえつつ、検討しなければならないというふうに考えております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 古屋議員からは、九問御質問をいただきました。

 年金積立金の乖離と国民年金の保険料納付率についてのお尋ねがございました。

 平成二十三年度末の年金積立金の状況は、百五十一・九兆円と見込んでいたものが、実績では百四十八・八兆円と、見込みより約三兆円下回っております。これは、物価や賃金が見通しよりも低迷するなど厳しい経済状況が続いていることなどによるものですが、その後の株価の回復もあり、現時点で年金財政が悪化しているとは考えておりません。

 国民年金保険料の納付率の低下は、未納者の将来の年金給付の減少につながることから、長期的に見れば、年金財政の持続性に大きな影響を与えることはありません。

 しかしながら、保険料の未納は、本人の老後の所得保障を失わせるものであり、また、制度に対する信頼性を失うことにつながることから、国民年金の収納対策の一層の徹底、強化に取り組んでまいりたいと思います。

 続きまして、歳入庁の設置についてお尋ねがございました。

 税制抜本改革法では、「年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施すること」とされています。

 これを踏まえ、政府として、内閣官房副長官を座長とする関係省庁政務官による検討チームを立ち上げ、幅広い観点から検討をいただいているところであり、厚生労働省としても、検討チームでの議論を踏まえつつ、年金保険料の徴収体制の強化等を図ってまいります。

 次に、厚生年金基金の監督省庁としての厚生労働省の責任についてのお尋ねがございました。

 厚生労働省としては、二〇〇〇年代初頭から、財政悪化基金の指定制度の導入や特例解散制度の創設など、さまざまな見直しを行ってまいりました。

 今回の改正も、こうした過去の制度改正の延長線上に立って制度の改善を行うものであり、その施行を着実に行っていくことにより、行政としての責任を果たしてまいりたいというふうに考えております。

 次に、厚生年金基金の一部存続の理由と、将来の制度のあり方についてのお尋ねがございました。

 厚生年金基金は国がつくった制度であり、十分な積立金を持って適切に運用している基金まで強制的に廃止することは、問題が大きいものと考えております。このため、これらの基金については、自主的な移行を促しつつ、存続という選択肢を残したものであります。

 一方、今回の法案により、基金の新設は停止する、施行日より五年以降は、代行資産の保全の観点から、十分な積立金を持たない基金には解散命令を出すこととするなど、厚生年金基金制度は、全体としては縮小させ、他の企業年金への移行を促していくこととしております。

 続きまして、厚生年金基金の特例的な解散制度の見直しについてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、特例解散において、分割納付につき、事業所間の連帯債務を外すこと、利息を固定金利とすること、最長納付期間を従来の十五年から三十年に延長することなどの改正を行うことといたしております。

 また、既に現行の特例解散により解散し、分割納付を行っている基金から施行日より一年以内に申請があった場合に、厚生労働大臣が第三者委員会の意見を聞いて、こうした特例を遡及適用できる仕組みも盛り込んでおります。

 運用三号が問題となった原因についてのお尋ねがございました。

 年金は、現役期に保険料を納付する義務を果たしていただき、その納付実績に対応する金額を権利として受け取ることを基本に組み立てられている制度であります。このルールが貫徹されていることが、年金制度の信頼の基礎であるというふうに考えております。

 課長通知に基づくいわゆる運用三号は、このルールに反して、納付実績がないにもかかわらず給付を行うという内容であったことから、御批判を受けたものと考えております。

 続きまして、三号不整合問題への対応についてのお尋ねがございました。

 この問題の解決に当たっては、保険料納付実績に応じて年金を給付するという社会保険の原則に従って対応することが重要であります。

 この趣旨にのっとって、不整合期間が未訂正で本来より高い年金額となっている受給者については、記録を訂正した上で追納をする機会を与え、保険料が追納されればその分を納付済みとして年金を給付し、納付されなければ本来の年金額に訂正することで、納付実績に応じた年金額を実現し、公平性を確保することといたしております。

 他方で、受給者の生活にも配慮して、過去にさかのぼっての年金額の返還は求めない、不整合期間のために無年金とならないようにする、年金額の減額は訂正前年金額の一〇%を上限とするなどの措置を講じております。

 次に、第三号被保険者の不整合記録問題が生じた原因や、今後の対策についてのお尋ねがございました。

 この問題が生じた理由については、届け出勧奨を行う範囲が限定的であったこと、職権適用の導入が遅く、統一手順が示されていなかったことなど、必要な届け出がなかった場合における行政の対応が十分でなかった等に起因していると考えられます。

 今回の法案では、第三号被保険者でなくなった旨の情報を、配偶者の事業主を経由して届け出ることを義務づけております。また、不整合記録を持つ者を特定するためのシステム開発を行い、今後、届け出勧奨や職権適用をさらに進めていくことといたしております。

 最後に、時効特例給付の問題についてのお尋ねがございました。

 時効特例法に基づく支給業務の処理の一部に不統一があったことについては、大変遺憾なことと考えており、深くおわびを申し上げます。

 既に、年金機構に対し、不統一な処理の是正や今後の再発防止に速やかに取り組むとともに、機構の業務全般について、緊張感を持って国民の方々の目線で取り組むように指示したところでございます。

 現在、今回の事案について検証を進めているところであり、その結果も踏まえ、機構と厚生労働省との連携のあり方を含め、責任の所在を明らかにするとともに、年金事業運営の適正化にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 中島克仁君。

    〔中島克仁君登壇〕

中島克仁君 みんなの党の中島克仁です。

 私は、みんなの党を代表いたしまして、ただいま議題となりました、政府提出の公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 厚生年金基金等の企業年金においては、昨今の経済金融情勢の悪化などにより、厳しい財政状況が続いております。特に、厚生年金基金については、代行割れ基金が全体の五割を占める状況となっております。また、平成二十四年にはAIJ投資顧問の資金消失問題が明らかとなり、これを機に、厚生年金基金をめぐる諸課題が顕在化いたしました。

 そのような背景のもとに、基金制度の見直しのため、本法案において、財政状況の健全な基金の存続を認めつつ、五年間の時限措置として特例解散制度の見直しを行うこととされておりますが、前政権下においては、基金制度を一律廃止する方針で検討がなされておりました。しかし、今回の改正案では、確定給付年金や中小企業退職金共済制度への移行支援策も講じております。

 そもそも、本法律案は、受給権保護のため、残された基金を健全化させるためのものなのか、それとも、全て解散させて財政的な整理をすることが最終目的なのか。今後の企業年金制度全体のあるべき姿をどう描かれているのか、安倍総理大臣のお考えをお聞きいたします。

 さらに、自主的に解散決議をしない基金に対しては、第三者委員会による勧告をし、従わない場合は解散命令を出すとされていますが、これには二つの要件が挙げられております。どのような状況であっても、この二要件を満たせば解散勧告されるのか。解散命令に当たり、その基準をもっと明確に示すべきだと考えますが、厚生労働大臣の見解をお伺いいたします。

 厚生年金基金は、現在も七百万世帯の生活を担っております。厚生労働省は、基金制度の普及、育成のために、平成に入ってから、設立認可基準を緩和して、設立を奨励してきた経緯があります。これは、超高齢化の進展を予測し、厚生年金本体の保険料の急騰を緩和させるために、事前積立制度である基金制度の拡充を図ったもので、現在まさに超高齢化時代に入り、さらに進行することが予測される時期に、本当にその役割が終わったと言えるのでしょうか。厚生労働大臣にお尋ねいたします。

 また、昨年八月に、公務員共済年金が厚生年金本体に統合する法案が成立しました。この法案では、全体の積立金四十四兆円のうち、二十四兆円を厚生年金本体に持ち込み、二十兆円は公務員らの新たな年金積立金の原資とするとされております。

 共済年金が厚生年金本体に影響しない形で統合すれば、基金制度を維持することが可能となるのではないでしょうか。今回、厚生年金基金で負えない不足額に対して、共済組合の救済で使った尺度が適用されないのはなぜなのでしょうか。公務員共済組合の支援には農業共済組合の救済の前例がありますが、厚生年金基金にはこのような前例がないからなのでしょうか。厚生労働大臣にお尋ねいたします。

 次に、第三号被保険者の記録不整合問題への対応についてですが、本法案の救済措置は、種別変更の届け出を行って真面目に国民年金の保険料を納めてきた方々との公平性を考え、政府には本法律案の救済措置の必要性について十分かつ明確な説明が必要だと思いますが、厚生労働大臣のお考えをお聞かせください。

 また、不整合期間の届け出漏れ対策について、制度がよく理解できない一部の高齢者や届け出を行うことが困難な方々なども想定されます。不整合記録に関する対象者への通知などについて、確実に救済が図られるよう、きめ細やかな対応が求められます。具体的な対応策について、厚生労働大臣にお尋ねいたします。

 総理、六年前の参議院選挙を覚えていらっしゃるでしょうか。消えた年金問題で、与党自民党は大惨敗、第一次安倍内閣が退陣することを余儀なくされた参議院選挙です。

 総理は、参議院選挙前の二〇〇七年五月二十五日の衆議院厚生労働委員会に出席され、持ち主を特定できない年金記録五千万件全件の照合作業について、全ての方々に対して突合するという努力をさせますと答弁をされました。その結果は、今どうなっているんでしょうか。

 今また、年金問題を前面に押し出して、与党にとってよいことはないと総理は考えているのではないですか。

 総理と年金問題は、切っても切れない関係です。

 日本が超少子高齢化社会に突入し、失われた二十年間のデフレ不況、労働力分配率低下、それに基づく非正規労働者の急増、国民年金納付率の恒常的悪化などにより、国民皆年金は急速に崩壊しつつある現状です。それは、公平性、透明性、効率性の確立、この原則を軽視した政策ミスが非常に大きい要因と考えられます。

 私は、在宅医療を中心とする地域医療に、医師として長年従事してまいりました。

 言うまでもなく、年金、医療を含む社会保障の充実は、国民生活の基盤です。

 厚生労働省は、年金の運用が二〇二〇年以降ずっと年四・一%の高利で推移するのを百年の安心の前提にしています。アベノミクスが二%の物価上昇を目標にしているからといって、年金にもそのまま適用するのは、やはり危険ではないでしょうか。年金制度初め今後の社会保障施策のあり方を国民会議に委ねずに、総理みずからの考えを示し、先頭に立って指導力を発揮するべきだと考えます。

 今までこの国をつくり上げてきた世代の方々や障害を抱えた方々が不安の中で生活を送ったり、子供たちが夢を描けない、そんな日本には絶対にしてはなりません。

 日本社会における最重要課題ともいえる社会保障問題。活力ある日本に、健康なみんなの日本に再建するために、総理御自身の御決意をお聞かせください。

 以上をもちまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 中島克仁議員にお答えをいたします。

 法案の目的と企業年金制度の将来像についてのお尋ねがありました。

 今回の法案では、特例解散制度の見直しにより代行割れ問題の早期解決を図るとともに、施行日から五年以降は、十分な積立金を持たない基金には、代行資産の保全の観点から、解散命令を出すこととするなど、厚生年金基金制度を全体として縮小していくこととしています。

 一方、代行部分のない他の企業年金制度については、企業や個人の自助努力による私的年金を充実させる観点から、柔軟で多様な設計ができるよう、規制緩和などを進めていきたいと考えています。

 消えた年金問題についてお尋ねがありました。

 第一次安倍内閣において明らかになった五千万件の未統合記録については、全ての年金受給者及び加入者の方々のコンピューターの記録との突合を平成二十年三月までに完了しております。その結果、記録が結びつくと思われる方に対し、ねんきん特別便を送付するなどの取り組みにより、平成二十四年十二月現在で、約二千九百万件の記録が解明されています。

 今後、さらに、一人でも多くの方の記録の回復につなげるためには、国民の皆様が御自身の年金記録を再確認していただく必要があることから、本年一月末より、国民の皆様に幅広い呼びかけを行っているところです。

 引き続き、国民の皆様の御理解と御協力を得られるよう、政府として、年金記録問題にしっかりと取り組んでまいります。

 年金の財政検証における運用利回りの前提と、社会保障改革についてのお尋ねがありました。

 年金に関する平成二十一年財政検証の経済前提については、金融、経済の専門家による検討の場で、長期的な観点から御議論をいただき、客観的に設定されたものと考えています。次期財政検証に向けた議論も、現在、専門家に行っていただいているところであり、これも踏まえて適切に対応したいと考えています。

 社会保障制度改革については、改革推進法に基づき、八月二十一日の設置期限に向けて国民会議で議論を深めるなど、そのさらなる具体化に向け、しっかりと検討を進めていきます。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 中島議員からは、全部で五問御質問をいただきました。

 解散命令の基準についてのお尋ねがございました。

 施行日から五年後以降は、代行資産を保全する観点から、代行部分の一・五倍以上の資産を保有している、代行部分のみならず上乗せ部分を含めて積み立て不足が生じていないという基準のいずれも満たさない基金については、厚生労働大臣が社会保障審議会の意見を聞いた上で解散命令を発動できることといたしております。

 これまでと比較すると、解散命令の発動要件を法律上明確にしており、こうした要件に該当する基金には、解散命令を発動していくことになると考えます。

 なお、具体的な発動の手続については、今後、政省令において定めてまいりたいと考えております。

 次に、厚生年金基金制度の役割についてのお尋ねがございました。

 厚生年金基金は、かつては企業年金の中核でありましたが、二〇〇一年に新たな企業年金制度が創設されてからは、代行返上による移行や解散が進み、残った基金については、代行割れによる財政悪化が深刻化をいたしております。

 厚生労働省といたしましては、二〇〇〇年代初頭以降、財政悪化基金の指定制度や特例解散制度を導入するとともに、二〇〇五年度からは設立認可基準を厳格化するなど、全体としては、財政規律を強化する方向で見直しを行ってまいってきております。

 今回の見直しも、こうした過去の制度改革の延長線上にあり、基金の新設を停止するとともに、代行割れ基金の早期解散を促すことなどにより、制度全体を縮小させつつ、他の企業年金制度への移行を促すことといたしております。

 厚生年金基金の積立金返還ルールと公務員共済の統合ルールの関係についてのお尋ねがございました。

 厚生年金基金は、厚生年金の一部を代行する制度であり、このために必要な資産を積み立てておくべきこと、また、解散時には、積立金を厚生年金本体に返還することが法定されております。

 共済年金の厚生年金への一元化は、それぞれ賦課方式で独立して運営してきた制度を統合するものであるので、各制度が、保険料で賄うべき一階、二階部分の給付総額に対して何年分を保有しているかということに着目して、年数をそろえて拠出し合うこととしたものであります。

 このように、制度的な違いから、基金の積立金返還ルールと共済年金の統合ルールは異なっており、それぞれ適切であると考えております。

 次に、三号不整合問題への対応における配慮措置の必要性に対する十分な説明が必要とのお尋ねがございました。

 問題解決に当たっては、保険料納付実績に応じた年金の給付という社会保険の原則に従った対応が重要であります。

 この趣旨に従って、不整合期間が未訂正で本来より高い年金額となっている受給者については、記録を訂正した上で追納する機会を与え、保険料が納付されればその分を納付済みとして年金を給付し、納付されなければ本来の年金額に訂正することで、納付実績に応じた年金額を実現し、公平性を確保することといたしております。

 その上で、現在受けている年金を糧として日々の生活を送っている受給者の方々に配慮する必要もあるため、過去にさかのぼっての年金額の返還は求めない等の措置を講じているところであります。

 最後に、不整合記録に関する対象者への通知など、きめ細かな対応についてのお尋ねがございました。

 法案の内容については、日本年金機構が把握できる対象者の方々全てに個別にお知らせを送付するほか、厚生労働省、日本年金機構のホームページへ掲載し、市町村などの関係団体に周知への協力を依頼するなど、十分な周知広報に努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 鈴木克昌君。

    〔鈴木克昌君登壇〕

鈴木克昌君 私は、生活の党を代表して、ただいま議題となりました厚生年金保険法等の改正案について質問をいたします。(拍手)

 昭和四十一年に創設された厚生年金基金制度は、高度成長のもとで、代行メリットを享受しながら、我が国の企業年金の中心として発展してきた経緯があります。しかし、バブル経済崩壊後、我が国の経済は低迷を続け、基金の運用環境を悪化させました。現在では、多くの基金が代行割れの状態となっており、代行を行う厚生年金基金制度自体が、厚生年金本体の将来にとって大きなリスクになっていると言えます。

 この間、基金運営に係る規制の緩和や、確定給付企業年金、確定拠出年金の創設等、企業年金制度の改革に取り組んではきましたが、厚生年金基金制度が抱える問題は、解消されたとは言えない状態であります。昨年明らかになったいわゆるAIJ問題により、問題の深刻さがかえって顕在化しました。

 結果として、全ての対応が後手後手に回ってしまったことを重く受けとめ、政府は深く反省する必要があると思います。

 厚生年金基金のあり方について、民主党政権下では、全廃することを前提に議論が進められてまいりましたが、自公政権のもとで今回提出された法案は、基金の解散を促すさまざまな措置を講ずる一方で、財政状況のよい厚生年金基金については、その存続を認める内容となっております。代行割れによる厚生年金本体へのリスクを避ける点に重きを置くのであれば、基金は全廃する方が筋が通ると思われます。

 今回、一部の基金を存続させることにした理由は何か。また、存続させた少数の基金に対しても、引き続き解散を促していくのか。将来の厚生年金基金のあり方に対してどのような認識に立ち、今回の措置をとろうとしたのかお伺いをいたします。

 基金の解散が進むと、多くの基金職員が職を失うことになると思われますが、政府としてこうした方々の雇用の確保についてどのように考えているか、お伺いいたします。

 今回の厚生年金基金制度の見直しの発端となったと言ってもよいAIJ問題は、基金の資産運用におけるさまざまな課題を浮き彫りにしました。

 今国会には資産運用規制の見直しを盛り込んだ金融商品取引法等改正案も提出されていますが、AIJ問題のような事案の再発防止に向け、政府はどのような取り組みを考えておられるのか、お伺いをいたします。

 また、企業年金は、公的年金を補完する制度として大きな役割を果たしており、今後もますます重要になると思われます。政府として、企業年金の充実、安定に向けてどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

 次に、第三号被保険者の不整合記録問題についてお伺いいたします。

 本法律案には、第三号被保険者の不整合記録問題に対する対応策も盛り込まれていますが、その内容は、民主党政権が一昨年に提出した主婦年金追納法案とほぼ同じであります。この問題は速やかな法的対応が求められておりましたが、主婦年金追納法案に対して、野党時代の自民党はその成立に協力的ではなく、昨年の衆議院解散により廃案となってしまいました。そのため、何ら措置が講じられないまま、年金の過払いが長引く状況となってしまっています。

 政府として、第三号被保険者の不整合記録への対応がおくれていることの責任をどのように認識しているのか、政権交代後も前回と同じ内容の法案を今回提出した理由とあわせてお伺いいたします。

 今回の法案は、公的年金制度の健全性、信頼性を確保することを目的としていますが、その目的を本当に果たすためには、今回のような現行制度のびほう策的な見直しではなく、最低保障年金の創設などの年金制度の抜本改革が必要不可欠であることを申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 鈴木克昌議員にお答えをいたします。

 一部の厚生年金基金存続の理由と将来の制度のあり方についてのお尋ねがありました。

 厚生年金基金は国の法律に基づく制度であり、法律に沿って適切に運用している基金まで強制的に廃止することは、問題が大きいものと考えます。このため、こうした基金について、他制度への自主的な移行を促しつつ、存続という選択肢を残したものであります。

 一方、今回の法案により、基金の新設は停止し、施行日から五年以降は、十分な積立金を持たない基金には、代行資産の保全の観点から、解散命令を出すこととするなど、厚生年金基金制度は、今後、全体として縮小させ、他制度への移行を促していくこととしています。

 厚生年金基金の解散に伴う職員の雇用の確保についてお尋ねがありました。

 今回の法案では、財政が悪化した基金については、自主解散を基本に、早期の解散を促すこととしていますが、五年間の移行期間を設けております。

 解散後の職員の雇用についても、この期間の中で、従来と同様、各基金や母体企業において対応していただけるものと考えております。

 AIJ問題のような事案の再発防止についてのお尋ねがありました。

 AIJ事案については、金融庁において、昨年九月に再発防止策を公表し、順次実施に移すとともに、今国会に、投資一任業者等の不正行為に対する罰則の強化等を含む金融商品取引法等改正法案を提出しております。

 また、厚生労働省において、有識者会議の議論等を踏まえて、昨年九月に基金の資産運用規制を見直し、さらに、昨年十一月からは、社会保障審議会の専門委員会において制度全般の改革の議論を行い、厚生年金保険法等改正法案を提出いたしました。

 政府としては、こうしたことを着実に実施していくことにより、的確に再発防止を図ってまいります。

 今後の企業年金制度のあり方についてお尋ねがありました。

 少子高齢化が進展する中、国民の老後の所得保障を充実していくためには、公的年金に加え、企業や個人の自助努力による私的年金を充実させていくことは重要な課題です。

 このため、確定給付企業年金や確定拠出年金などの既存の制度について規制緩和を行い、各企業の実態に応じて、より柔軟で多様な設計ができる仕組みとしていきたいと考えています。

 第三号被保険者の記録不整合問題への対応についてのお尋ねがありました。

 この問題については、自民党は野党時代から、一貫して、立法による早期の解決が必要との認識で臨んでおりました。一昨年の十一月に民主党政権下で法案が提出されましたが、社会保障・税一体改革関連法案の審議もあり、審議時間がとれないまま、昨年、衆議院解散で廃案になったものと承知しております。

 今般、政府・与党として法案を提出するに当たり、各党にも御理解のいただける内容としつつ、施行のスケジュールを可能な限り早めることとしております。これにより、一刻も早く問題を解決することで責任を果たしていきたいと考えています。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       厚生労働大臣   田村 憲久君

       国務大臣     甘利  明君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

       厚生労働副大臣  桝屋 敬悟君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.