衆議院

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第28号 平成25年5月28日(火曜日)

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平成二十五年五月二十八日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十一号

  平成二十五年五月二十八日

    午後一時開議

 第一 災害対策基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 大規模災害からの復興に関する法律案(内閣提出)

 第三 総合特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第五 民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律案(内閣提出)

 第六 大気汚染防止法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第七 放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 第八 株式会社海外需要開拓支援機構法案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 災害対策基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 大規模災害からの復興に関する法律案(内閣提出)

 日程第三 総合特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律案(内閣提出)

 日程第六 大気汚染防止法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第七 放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 日程第八 株式会社海外需要開拓支援機構法案(内閣提出)

 電気事業法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 災害対策基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 大規模災害からの復興に関する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) まず、日程第一、災害対策基本法等の一部を改正する法律案、日程第二、大規模災害からの復興に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。災害対策特別委員長坂本剛二君。

    ―――――――――――――

 災害対策基本法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 大規模災害からの復興に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔坂本剛二君登壇〕

坂本剛二君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、災害対策特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、災害対策基本法等の一部を改正する法律案は、東日本大震災の教訓を生かし、災害対策の充実強化を図ろうとするもので、その主な内容は、

 災害緊急事態における対処基本方針の作成など、大規模広域な災害に対する即応力を強化すること、

 避難行動要支援者名簿の作成など、住民等の円滑かつ安全な避難を確保すること、

 避難所の安全性、居住性の確保など、被災者保護対策を改善すること

等であります。

 次に、大規模災害からの復興に関する法律案は、災害からの円滑かつ迅速な復興を図ろうとするもので、その主な内容は、

 特定大規模災害発生時において復興対策本部を設置すること、

 復興計画による特別の措置を設けること、

 災害復旧事業に係る工事を国等が代行できること

などであります。

 災害対策基本法等改正案につきましては、去る五月九日本会議で趣旨説明及び質疑が行われました。

 同日、両案は本委員会に付託され、古屋防災担当大臣から提案理由の説明を聴取し、翌十日に質疑に入り、二十一日には参考人から意見を聴取するなど審査を行い、二十三日に質疑を終了いたしました。質疑終了後、採決の結果、両案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 なお、両案に対して附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 全会一致。御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 総合特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) 次に、日程第三、総合特別区域法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長平井たくや君。

    ―――――――――――――

 総合特別区域法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔平井たくや君登壇〕

平井たくや君 ただいま議題となりました総合特別区域法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、産業の国際競争力の強化及び地域の活性化に関する施策の総合的かつ集中的な推進を図るため、先端的な研究開発を推進するために必要な施設を整備する事業に係る国有財産法の特例措置その他の総合特別区域に係る法律の特例に関する措置を追加すること等を定めるものであります。

 本案は、去る五月十六日本委員会に付託され、十七日新藤国務大臣から提案理由の説明を聴取しました。

 同月二十二日、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党及びみんなの党の五会派共同提案により、構造改革特別区域法に規定する特定事業、規制の特例措置の内容等を記載した国際戦略総合特別区域計画について認定を受けた場合は、構造改革特別区域法に規定する認定とみなして同法に規定する規制の特例措置を適用すること、地域活性化総合特別区域計画に関し国際戦略総合特別区域計画の修正と同様の改正を行うこと、構造改革特別区域法と重複する規制の特例措置の一部を削除すること等を内容とする修正案が提出され、修正案の趣旨の説明を聴取し、次いで、原案及び修正案を一括して質疑を行い、二十四日に質疑を終局いたしました。質疑終局後、討論を行い、採決いたしましたところ、総合特別区域法の一部を改正する法律案の修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 採決をいたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決をいたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) 次に、日程第四、金融商品取引法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長金田勝年君。

    ―――――――――――――

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔金田勝年君登壇〕

金田勝年君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、金融システムの信頼性及び安定性を高めるため、情報伝達行為に対する規制の導入等のインサイダー取引規制の強化、投資一任業者等による運用報告書等の虚偽記載等に係る制裁の強化、投資法人の資本政策手段の多様化、金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理に関する措置の整備、銀行等の議決権保有規制、いわゆる五%ルールの見直し等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る五月十五日当委員会に付託され、十七日麻生国務大臣から提案理由の説明を聴取した後、二十一日から質疑に入り、二十二日には参考人から意見を聴取し、二十四日質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決をいたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告を申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 採決をいたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

 日程第五 民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) 次に、日程第五、民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長金子恭之君。

    ―――――――――――――

 民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔金子恭之君登壇〕

金子恭之君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、地域の実情を踏まえつつ民間の能力を活用した効率的な空港運営を図るための措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、国土交通大臣は、地域の実情を踏まえ、民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する基本方針を定めること、

 第二に、国管理空港の運営等を民間事業者に委託する場合において、国土交通大臣は、空港法に規定する協議会の意見を聞くこととするとともに、安全及び利用者利便の確保のために必要な航空法、空港法の特例等について定めること、

 第三に、地方管理空港についても、運営等を民間事業者に委託する場合における必要な措置について定めること

などであります。

 本案は、去る五月二十一日本委員会に付託され、翌二十二日太田国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、二十四日、質疑を行い、質疑終了後、討論を行い、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 採決をいたします。

 起立採決ですから、議席へ戻ってください。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

 日程第六 大気汚染防止法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第七 放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) 次に、日程第六、大気汚染防止法の一部を改正する法律案、日程第七、放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。環境委員長吉野正芳君。

    ―――――――――――――

 大気汚染防止法の一部を改正する法律案及び同報告書

 放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔吉野正芳君登壇〕

吉野正芳君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、大気汚染防止法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、石綿の飛散等による人の健康に係る被害を防止するため、石綿の排出等作業を伴う建設工事の実施の届け出義務者を、請負契約によらないでみずから施工する者を除き、当該建設工事の発注者に変更する等、所要の措置を講じようとするものであります。

 次に、放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律案について申し上げます。

 本案は、放射性物質による環境の汚染を防止するため、放射性物質による大気の汚染並びに公共用水域及び地下水の水質の汚濁の状況を常時監視することとするとともに、放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染についても環境影響評価を行うこととする等、大気汚染防止法その他の関係法律の規定の整備を行おうとするものであります。

 両案は、去る十七日本委員会に付託されました。

 委員会におきましては、二十一日石原環境大臣から両案について提案理由の説明を聴取し、二十四日に質疑を行い、質疑終局後、直ちに採決いたしましたところ、両案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 全会一致。御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

 日程第八 株式会社海外需要開拓支援機構法案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) 次に、日程第八、株式会社海外需要開拓支援機構法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長富田茂之君。

    ―――――――――――――

 株式会社海外需要開拓支援機構法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔富田茂之君登壇〕

富田茂之君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、我が国の生活文化の特色を生かした魅力ある商品または役務の海外における需要の開拓を行う事業活動及びそれを支援する活動を促進させるため、資金供給その他の支援等を行うことを目的とする株式会社海外需要開拓支援機構を設立しようとするものであります。

 本案は、去る五月十七日本会議において趣旨の説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、二十二日に茂木経済産業大臣から提案理由の説明を聴取し、二十四日に質疑を行った後、討論、採決を行った結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 採決をいたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

 電気事業法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(伊吹文明君) この際、内閣提出、電気事業法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。経済産業大臣茂木敏充君。

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 電気事業法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 低廉で安定的な電力供給は、国民生活を支える基盤であります。しかしながら、東日本大震災とこれに伴う東京電力福島第一原子力発電所事故を契機として、一般電気事業者各社による電気料金の値上げが相次いでいることに加え、電力需給の逼迫時における需給調整の機能の強化や電気事業への多様な事業者の新規参入の必要性が増すなど、従来の電力システムが抱えるさまざまな課題が明らかとなりました。

 こういった現状に鑑み、電気の安定供給の確保、電力料金の最大限の抑制、需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大を目的とする電力システム改革を着実に実施していくことが、喫緊の課題となっております。

 電力システム改革の柱は、広域系統運用の拡大、小売及び発電の全面自由化、法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保でありますが、本年四月二日に閣議決定をいたしました電力システムに関する改革方針においては、改革は大胆に、スケジュールは現実的にという基本的な考え方のもと、政府として、二〇二〇年までに実現すべき新たな電力システムの全体像に加え、その具体的な実施時期やこれを実現するための法案提出時期をパッケージでお示ししたところであります。

 こうした中、東日本大震災の影響による昨今の電力需給の逼迫状況を踏まえ、電力システム改革の三本柱の一つである広域系統運用の拡大等を実現することによって電気の安定供給の確保に万全を期すとともに、具体的な実施時期を含む電力システム改革の全体像を法律に明らかにするため、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、電力需給の逼迫時において、電気事業者に対して、従来の一般電気事業者の供給区域を越えた電力融通を指示することなどをその業務とする広域的運営推進機関を創設することにより、電気の安定供給の確保に万全を期すことといたします。

 また、経済産業大臣による電気事業者に対する供給命令制度について、その発動要件を拡充するとともに、自家発設置者に対する供給勧告制度などを新たに創設することにより、電力需給の逼迫時に、電気事業者以外の者が保有する発電設備を有効に活用し得る環境を整備いたします。

 第二に、自家発設置者が保有する発電設備の有効活用を図るため、自家発設置者が他の場所にある自社の工場等に電気を供給する場合において、当該自家発設置者が一般電気事業者の送配電ネットワークを利用するためのルールの整備を行います。

 第三に、現在は罰則つきの命令しか規定されていない経済産業大臣による電気の使用制限措置を見直し、需要家に過度な負担を強いることがないよう、より緩やかな措置として、経済産業大臣による勧告制度を新たに創設いたします。

 第四に、電力システムに関する改革方針を踏まえ、本法律案の附則において、小売及び発電の全面自由化、法的分離方式による送配電部門の中立性の一層の確保などの実施時期やこれを実現するための法案提出時期を規定するとともに、電力システム改革を進める上での留意事項などを規定いたしております。

 以上が、本法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 電気事業法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(伊吹文明君) 法律案の趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。まず、近藤洋介君。

    〔近藤洋介君登壇〕

近藤洋介君 民主党の近藤洋介です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました電気事業法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 国民の生活に不可欠な電力を供給する仕組み、電力システムは、インフラの中のインフラであります。大規模停電が起きれば、鉄道、空港の管制機能、道路の信号機はストップし、公共交通機関は機能を停止します。通信、銀行の決済機能も失われ、水道、ガスの供給もとまります。病院の医療機器もとまります。国民の命に直結するインフラが、電力システムであります。

 電力システムの歴史は、戦後日本の発展の歴史でもありました。ふえ続ける需要に対し、世界で最も停電が少なく、安定した電力を供給し続けた世界最高水準の電力システムなくして、日本の経済社会の発展は不可能でありました。高い信頼性を持つ電力関連の技術は、日本人の英知の象徴でもありました。

 東日本大震災、そして東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、我が国の電力システムをめぐる環境は一変いたしました。原発停止による電源喪失、そして首都圏での計画停電、全国規模での大規模節電は、日本社会全体の危機でありました。奇跡的な復旧作業をなし遂げた現場の方々の姿が世界から称賛された一方で、我が国のシステム全体の弱さと課題も浮き彫りにいたしました。

 民主党政権は、この危機の反省に立ち、電力改革の検討に着手、一九五一年以来続いてきた電力会社による発電・送電部門の一貫体制を六十年ぶりに見直すことで、より柔軟で強い電力システムに再構築する改革を打ち出したのであります。

 今般、安倍政権において、民主党政権で示した改革の方向を引き継ぎ、本法案を提出したこと自体は、評価したいと思います。電力を融通させるための広域的運営機関を設けることを手始めに、段階的に改革を進め、最終的には送配電部門を発電部門から分離させ、料金の全面自由化を実施する改革プログラムの骨格は、民主党政権で検討してきた内容であります。

 問題は、安倍政権が、我が国のエネルギーの全体像を何も示さずに、この大改革を行おうとしている点にあります。

 民主党政権は、昨年秋に閣議決定したエネルギー・環境戦略の中で、二〇三〇年に向けた中長期ビジョンを示しました。二〇%程度の省エネルギーを実現するとともに、原子力発電については、二〇三〇年代を目途に原発稼働ゼロを目指し、あらゆる政策資源を投入するといたしました。再生可能エネルギーの導入目標も示しました。

 震災前に策定した政府のエネルギー計画を大幅に変更したものであり、この方針を前提に、我々民主党は大改革に踏み切ったのであります。

 自民党は、昨年の総選挙で、民主党政権のエネルギー戦略を白紙から見直すと主張して選挙戦を戦い、政権に復帰しました。しかし、政権獲得から六カ月が経過した今も、我が国のエネルギー戦略について、何ら具体的な計画を示しておりません。特に、原子力発電の位置づけが不明確なままです。

 エネルギー全体の中身を示さずに、発送電の分離と自由化という器だけを示すのは、極めて無責任であります。

 経済産業大臣に伺います。

 エネルギー基本計画を示さず、電力システム改革法案を提案するのは、なぜですか。参議院選挙を意識して難しい課題を先送りする姿勢は、国民に対して不誠実と考えますが、いかがですか。

 本法案では、附則で、電力システム改革について、次期通常国会以降に具体的な法案が提出される旨を明記しています。こうした法案は、当然、政府が今後に示す長期エネルギー計画と整合性のとれたものとなるべきと考えますが、いかがですか。経産大臣、お答えください。

 我が国の原子力の基本政策は、これまで、原子力委員会による原子力政策大綱で定められてきました。

 民主党政権では、原発事故を踏まえ、政府内を調整し、そして、原子力委員会のあり方を見直す方針を決めました。ところが、安倍政権では、原子力委員会の見直し作業は中断したまま、開店休業状態が続いています。

 山本大臣、原子力委員会を見直す考えはありますか、いつまでに新体制をスタートするのですか、基本政策となる原子力政策大綱はいつまでに示すのか、明確にお答えください。

 原子力に関する先送り姿勢は、改革の行方を不透明にさせています。

 代表例は、原発の廃炉問題であります。原子力規制委員会による活断層の調査や安全基準の審査の結果、安全基準から外れた発電所が出てくる可能性があります。

 ところが、政府の基準変更に伴う廃炉手法が確立されておりません。現行法は、建設後に危険性が判明した場合を想定していないからであります。

 経済産業大臣に伺います。

 規制委員会の基準から外れた原子力発電所について、廃炉を決める責任を持つのは、事業者ですか、国ですか。また、何千億円も投資した発電所の廃炉を決断した場合、現行の会計法では、その時点で巨額な損失が発生し、企業として存続できなくなるケースが考えられますが、政府として想定していますか。また、廃炉コストを事業者が負担した場合、その地域の電気料金が大幅に引き上がる可能性がありますが、いかがですか。お答えください。

 麻生副総理・財務大臣に伺います。

 麻生財務大臣は、二月の経済財政諮問会議で、間違いなく、電力会社に対して、国として原発政策をやらせたわけであると発言されています。すなわち、原子力発電は国と民間の共同責任であるとの主張であります。全くそのとおりであります。

 麻生大臣、この考えは現在も変わりありませんか。

 であるならば、国の制度変更、基準変更によって生じる廃炉コスト、回収不能なコストについて、国が一定程度の責任を持つべきと考えますが、いかがですか。お答えください。

 また、経済産業大臣、発送電分離を進める本法案を提出する以上、現時点で、政府として、この廃炉コストについての国の関与の方針を明確にし、その仕組みを早急に構築する必要があると考えますが、いかがですか。また、原子力事故の官民負担のあり方について、原子力賠償責任法を含め、改めて整理し、見直す必要があると考えますが、いかがですか。お答えください。

 政府内には、システム改革法案が成立することで原発の再稼働の環境が整うと外部に説明されている方もいると聞いております。本法案の成立と原発の再稼働がどのような理由で結びつくのか、甚だ疑問であります。本法案の成立と原発の再稼働がどのように関係するのか、お答えください。

 使用済み燃料を再利用する核燃料サイクルの行方も不透明です。

 現在の核燃料サイクル事業は、国の方針に沿って、電力九社による共同出資会社が運営をしております。今後も、巨額な投資が必要になる核燃料サイクル事業について、発電会社として規模の小さくなった民間発電会社が担うことができるでありましょうか。国のエネルギー安全保障上も重要な核燃料サイクル事業の責任主体について、電力システム改革と同時に再検討すべきと考えますが、経済産業大臣、お答えください。

 山本大臣に伺います。

 国内の原子力発電所の維持、撤退にかかわらず、我が国の原子力関連の人材と技術は、今後も維持すべきであります。福島復興の鍵となる廃炉技術を開発するためにも、原子力に関する世界最高水準の知見が求められているからであります。これまで以上に、国が原子力技術の開発と人材育成を先導することが一層求められていると考えますが、いかがですか。山本大臣、お答えください。

 成長戦略の実現のためには、停電がなく、かつ低廉な電力の安定供給が大前提となります。どんな戦略を打ち上げても、電力システムの安定なくして、それは机上の空論となります。

 今こそ、エネルギー分野への投資拡大が必要です。我慢の節電から脱却するための供給力の確保に加え、太陽光や風力といった再生可能エネルギーを受け入れる送電・変電網の強化も、喫緊の課題であります。

 戦後、電力分野への投資は、規制料金と電力会社の地域独占による護送船団のもとで、政府の意向を反映しながら大規模な投資が行われてきました。今回の改革の本来の目的は、従来の護送船団方式にかわる新たな投資拡大サイクルの構築にあるはずです。

 経済産業大臣、本法案が示した電力システム改革の結果、電力・エネルギー投資が拡大するのか、すなわち安定供給が強化されるのか、お答えください。

 また、発送電の分離後は、供給責任は送配電会社が担うとされています。需給が逼迫した場合、緊急時に、みずから発電設備を持たない送配電会社がどのように供給責任を果たすことができるのか、お答えください。

 経済財政担当の甘利大臣に伺います。

 日本は、今、エネルギー価格の急上昇に直面をしております。ほとんどの原子力発電所が停止する中で、アベノミクスによる急激な円安により、電気料金が相次いで引き上げられる見通しです。

 経済産業省の試算によると、電力分野の燃料費コストは、昨年度の三・一兆から、ことしはさらに拡大し、三・八兆円となります。巨額な貿易赤字であり、国富の流出であります。エネルギーコストの上昇、国富の流出は、日本経済にとって危機的な状況を招くと考えますが、いかがですか。お答えください。

 原油高、電気料金の上昇は、生活者はもとより、あらゆる中小企業、農林漁業者の経営を直撃しています。安倍政権は、民間設備投資を三年間で現在より七兆円ふやして年間七十兆円とする方針をとりあえず打ち出しました。しかし、電気料金の上昇は、設備投資拡大の最大の障壁となります。政府として、エネルギー価格の上昇に対応するため、設備投資対策を含む緊急経済対策を早急に講ずるべきです。甘利大臣、対策の是非についてお答えください。

 最後に、財務大臣に伺います。

 貿易赤字の拡大は、経常収支の赤字に直結します。経常収支が赤字に転落した場合、我が国の財政に与える影響について、どのように認識されていますか。とりわけ、国債の国内引き受け余力が低下し、長期金利の上昇リスクがさらに一段と高まる危機感を持つべきと考えますが、財務大臣、いかがですか。お答えください。

 電力は社会の血液です。電力システムの改革の方向は、日本の経済社会の行方を大きく左右します。そして、エネルギーをめぐる危機は、今なお続いております。

 民主党は、責任政党として、精神論、感情論を排し、地に足のついた冷静な政策議論を深めることをお約束して、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手、発言する者あり)

議長(伊吹文明君) 静粛に願います。

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 近藤議員にお答えをいたします。

 最初に、エネルギー基本計画と原子力の位置づけ、改革プログラムの関係についてでありますが、中長期的なエネルギー政策の方針となるエネルギー基本計画については、特に、安定供給、コスト低減に重点を置いて、政策の軸、方向性を明確に示す必要があります。

 原発の位置づけも含めて、総合資源エネルギー調査会において、現在、幅広く多面的に御議論いただいておりまして、年内をめどに、新たなエネルギー基本計画を取りまとめたいと考えております。その際には、本法律案の附則に定めている改革プログラムを踏まえながら、整合性を持って検討を進めてまいります。

 次に、廃炉の決断やコスト負担のあり方等についてでありますが、個別の原子力発電所の廃炉については、原子炉等規制法に基づく規制のもとで、事業者が個別に判断をすることになっております。

 電力会社が廃炉の判断を行った場合、積み立ててある解体引当金で対応することとなりますが、会計上、一定の特別損失が計上される場合も考えられます。廃炉が企業の経営や財務状況に与える影響は、個々のケースによって異なると考えられますが、基本的には、企業経営者によって判断されるべきものと認識をいたしております。

 なお、廃炉コストと電力料金の関係については、廃炉に伴う特別損失は料金原価には含まれないということになっております。

 次に、原賠法等の本格的な見直しについてでありますが、福島の一日も早い復興のために、賠償、廃炉、生活再建の問題を全て事業者に押しつけるのではなく、国がしっかりと前面に出て、果たすべき責任を果たしてまいります。

 また、原賠法や原賠機構法の見直しについては、我が国エネルギー政策における原子力の位置づけ等の検討や、現在進行中の福島の賠償の実情等を踏まえながら、事故収束や賠償の加速化に向けどのような対応が必要か、検討を進めてまいります。

 次に、原発再稼働と電力システム改革の関係についてでありますが、新規参入の促進や競争環境の整備により、電力の低廉かつ安定的な供給を一層進め、エネルギー制約の克服に向けた改革の中心をなす今回の電力システム改革は、必要不可欠な、まさに待ったなしの取り組みであります。原発の位置づけいかんにかかわらず、事業者にも需要家にもメリットのある電力システム改革に、しっかりと取り組んでまいります。

 原発の再稼働につきましては、原子力規制委員会により安全と認められない限り、再稼働はありません。一方、安全と認められた場合には、その判断を尊重し、再稼働を進めてまいります。

 発送電分離後の核燃料サイクルの責任についてでありますが、これまで、核燃料サイクル施設の運営自体は民間事業者が行い、国は、適切な事業運営を確保すべく、制度の整備や規制の実施、また、政策の方向性の決定等の役割を担ってきており、今後とも、このような考え方のもと、核燃料サイクル政策に継続して取り組んでまいります。

 次に、省エネルギー、新エネルギーや、電力・エネルギー投資との関係についてでありますが、今回の電力システム改革により、家庭も含めた全ての需要家が電力会社や料金メニューを選べるようになるなど、ピーク時の需要が無理なく抑えられ、スマートな省エネが進むと考えております。

 また、広域系統運用の拡大や配送電部門の一層の中立化は、再生可能エネルギーの導入の拡大にも資するものと考えております。

 電力供給への投資については、総括原価方式等により投資回収を制度的に保障することで、配送電網への必要な投資が行われる、また、小売事業者に対する供給力確保のための空売り規制を通じて、発電所の建設への必要な投資が行われるものと考えております。

 最後に、送配電会社が供給責任を果たす方法についてでありますが、本法律案においては、送配電事業者に対して、日々の電力需給の調整により高品質な電力供給に責任を果たすことや、離島への安定供給、小売事業者の破綻に備えた最終的な供給保障についても責任を負うことなどを求めることとしております。

 これらの責任を果たすため、送配電事業者は一定の供給力を保有する必要がありますが、自社で発電所を持たない場合、他の発電事業者との契約で供給力を確保することが想定をされます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) エネルギー政策に関する認識と廃炉コストについてのお尋ねがあっております。

 御指摘のありました経済財政諮問会議におけます私の発言は、具体的な原発事業は電力会社の責任において進めてきたが、一方で、大きなエネルギー政策の方向性は国が示してきたという趣旨で述べたものであります。こうした認識については、現在も変わっておりません。

 また、その上で、こうした、今申し述べた観点も踏まえつつ、例えば、福島第一原発の廃炉につきましては、東京電力による取り組みがまずは重要でありますが、世界でも例のない作業でありますため、廃炉に関する基礎的な研究開発については、積極的に支援していく必要があるのではないかと考えております。

 他方、国の制度変更、基準変更によって生じます電力会社に係る廃炉費用、廃炉に係る費用等の負担のあり方につきましては、まずは関係者で検討していただくべきものであろうと考えております。

 次に、経常収支の赤字化が財政に与える影響などについてのお尋ねもあっております。

 日本の経常収支につきましては、東日本大震災を契機にして燃料等の輸入量が増加したことなどにもより、貿易収支が赤字基調に転じたことから、経常収支が縮小傾向にあります。

 今後の経常収支の動向については、確たることを申し上げることは困難であります。仮に、今後、経常収支が赤字化した場合は、国債の海外保有比率が高まる可能性があります。そのような場合に、国債金利に対して、ひいては財政に対してどのような影響があるかは、これは一概に申し上げることは難しいと存じます。

 いずれにいたしましても、政府としては、国債市場の動向を注視しつつ、国債管理政策を適切に実施してまいります。同時に、財政健全化の取り組みを着実に推進することによって、国債に対する市場の信認を確保していかねばならないと考えております。(拍手)

    〔国務大臣山本一太君登壇〕

国務大臣(山本一太君) 近藤議員から、原子力委員会の見直し及び原子力政策大綱についてお尋ねがありました。

 原子力委員会については、時代に応じてその役割が見直され、変遷してきました。このたび、福島原発事故により、原子力をめぐる環境が大きく変化したことを踏まえ、関係省庁とも連携して、改めて見直しの検討を行うこととしています。

 現在、鋭意準備を進めており、近藤議員の御指摘も踏まえて、できるだけ速やかに検討の場を立ち上げ、秋の臨時国会くらいまでには法案をまとめて、提出したいと考えています。

 また、御承知のとおり、昨年十月に、新大綱策定会議の審議を中止し、同会議を廃止したところでございますが、原子力政策の今後のあり方については、エネルギー政策の基本的な方向性の議論も踏まえ、関係省庁等とも連携して対応してまいります。

 次に、原子力関連の人材と技術についてお尋ねがありました。

 現在、政府は、原発依存度を含むエネルギー政策について検討を進めているところと理解しています。この原発依存度にかかわらず、原子力発電所等が存在し、医療等の分野で原子力利用が深まる中において、近藤議員御指摘のとおり、今後も原子力に係る人材育成や研究開発を進め、人材と技術を維持していくことは重要と認識しています。

 原子力委員会では、昨年十一月と十二月に、原子力人材の確保、育成と、原子力研究開発に関する見解を取りまとめました。その中で、原子力委員会は、廃炉、廃棄物管理、除染といった今後ニーズの増加が予想される分野を挙げるなど、人材育成や研究開発の課題を提示し、関係者の取り組みを促しております。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) まず、原発停止による燃料費増加についてのお尋ねであります。

 原子力発電施設の稼働率低下に伴いまして、火力発電施設の稼働率が上昇し、鉱物性燃料の輸入金額の増加等をもたらしました。鉱物性燃料の輸入金額の増加は、その後も、為替レートの動向を反映した輸入価格上昇を通じまして、貿易収支の赤字の要因となっております。

 エネルギーの低廉かつ安定的な供給の確保は、活発な産業活動や豊かな国民生活の生命線であり、危機感を持って取り組む必要があるものと認識をいたしております。

 次に、エネルギー価格上昇に伴う日本経済への影響に対する対応についてのお尋ねであります。

 最近の為替相場の動向は、全体としては景気にプラスの影響をもたらすものの、現下のエネルギー価格上昇による中小企業、小規模事業者等への影響については、引き続き注視する必要があります。

 また、引き続き、国内設備投資を促進するための税制措置を含めた緊急経済対策の効果の早期発現に努め、デフレ脱却の波が地方や中小企業、小規模事業者の隅々まで早く伝わるようにしてまいります。

 さらに、輸入原材料等の価格は、為替相場の動向に加え、地政学的リスクや、新興国の成長による需要等による国際的な商品市況の変動など、さまざまな要因で大きく動くものと承知をいたしております。

 このため、中長期的には、高付加価値商品へのシフトやエネルギー効率の向上などにより競争力を強化し、為替相場や国際市況などの変動に強い体質をつくり、中小企業、小規模事業者や国民生活への影響を緩和することが重要であります。

 政府といたしましては、今後三年間を集中投資促進期間と位置づけ、国内投資を促進するために、税制、予算、金融、規制緩和、規制改革、制度整備といった、あらゆる施策を総動員してまいります。

 こうした観点から、成長戦略を矢継ぎ早に実行し、生産性の向上や国際競争力の強化を図り、雇用や所得の増加を伴う民需主導の持続的な経済成長を目指してまいります。

 なお、追加的な経済対策につきましては、時々の経済情勢を踏まえて判断するものであります。急激な経済の落ち込みが見込まれるような場合など、必要に応じ、柔軟かつ機動的に対応するものの、現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思っております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次の質疑者、今井雅人君。

    〔今井雅人君登壇〕

今井雅人君 私は、日本維新の会を代表いたしまして、ただいま議題となりました電気事業法の一部を改正する法律案につきまして質問いたします。(拍手)

 電力の自由化は、古くて新しいテーマであります。一九九〇年に、イギリスにおいて、国営の中央電力公社が、発電三社と送電会社に分離の上、民営化されたことを皮切りに、世界的に電力の自由化が進みました。

 こうした流れを受けて、日本でも、電力自由化の議論が盛んになり、一九九五年以降、四次にわたる制度改革を行い、発電部門において競争原理を導入するとともに、小売部門の一部自由化を実施してまいりました。

 しかし、既存電力会社の抵抗もあり、自由化が中途半端な状態であったため、効果は極めて限定的なまま、現在に至っております。

 そうした中、一昨年に発生した東日本大震災により、再びこの議論が本格化してまいりました。福島の原子力発電所事故で、政府は計画停電を余儀なくされ、首都圏に大きなダメージを与えました。

 電力に関しましては、二つの問題が顕在化しました。

 一つは、集中型電源のリスクであります。

 三・一一前の東京電力の総発電設備容量は六千四百五十万キロワットでありましたが、福島と茨城の太平洋岸に並んでいる集中型電力の総容量は、その二八・四%を占めていたことが供給不足の原因となりました。

 二つ目は、地域独占の弊害であります。

 大震災後、東京電力の営業地域内で供給力が不足しましたが、全国的には十分な供給力があったにもかかわらず、西日本からは百万キロワット、北海道電力からは六十万キロワットしか電力を融通できませんでした。

 それまで、電力会社は、安定的に供給するために、集中型電源と地域独占の必要性を主張してきたわけでありますが、そのことが結果的に裏目に出たわけです。また、電気料金が画一的であることで、ピークカットのためのデマンドレスポンスの促進を阻害していることも露呈しました。

 こうした教訓を受けて、電力の自由化の必要性への認識が高まってきたわけでありますが、それを踏まえて、何点かお伺いいたします。

 初めに、エネルギー政策についてです。

 自民党は、昨年の衆議院選選挙公約で、中長期的エネルギー政策については、遅くとも十年以内には将来にわたって持続可能な電源構成のベストミックスを確立すること、原発の再稼働の可否については、順次判断し、全ての原発について三年以内に結論を出すことを目指すこととしております。

 このように、我が国としてのエネルギー政策が長期間にわたり定まらない中、電力システム改革だけが先行するというのは、政策的なバランスを欠いていると言わざるを得ません。この点について、政府の見解をお聞きいたします。

 さらに、長年の懸案である使用済み核燃料の最終処分場について、何ら解決策を見出せていないにもかかわらず、政府は、本年七月以降、原子力規制委員会において安全性が確認された原子力発電所について、再稼働を進めていく方針です。

 本来、最終処分場が決定されてから原子力発電所の稼働を認めるというのが筋であり、これでは、困難な問題は先送りする、今までの政府の姿勢と何ら変わっておりません。この点について、政府の見解を伺います。

 次に、電力事業者間の競争活性策についてお聞きいたします。

 現在、既に大口需要家については自由化されており、事業者間の競争が行われております。しかし、平成二十三年度の電力自由化部門における特定規模電気事業者の販売電力量は、全体の三・五六%と、極めて小さいままです。

 今般の電力システム改革において、小売業への参入を自由化することとしておりますが、既に自由化されている部門はなぜ競争が進まなかったのか、その原因を総括した上で解決策を考えていかなければ、改革を行っても、再び同じことを繰り返しかねません。この原因と解決策について、政府の御見解をお聞かせください。

 続きまして、電力会社間の地域を越えた競争について質問いたします。

 電気事業制度改革によって、自由化された部門については電力会社間の競争が認められていますが、現在までに、供給区域を越えたいわゆる越境供給を行っている事例は、平成十七年に広島県内の需要者が九州電力と契約した、わずか一件しかありません。各電力会社間での、他人の庭には入らないという暗黙の合意が、そこにはあるのではないでしょうか。

 こうした現状を踏まえ、今回の電力システム改革では、地域を越えた競争を促すためにどのような対策を講じるのか、答弁を求めます。

 また、法令上の独占を撤廃しただけでは、競争が生じるか疑問が残ります。幾ら市場を開放したとしても、当初は、技術の優位性もあり、顧客との信頼もある、また、規模のメリットも享受している既存企業の圧倒的優位は変わらないからです。これに対して、国も、ある程度の競争政策を講じる必要があるのではないでしょうか。

 その方法の一つとして、卸電力取引所の活用が考えられます。

 二〇〇三年に一般社団法人日本卸電力取引所が創設されました。しかし、平成二十三年度の卸電力取引所の取引量は四十七億キロワットアワーと、小売販売電力量に占める比率は、わずか〇・五%にとどまっております。欧州の主要取引所では、アイルランドの九九%を最高に、平均で四〇%程度となっており、この市場がさまざまな企業の電力事業への参入を促進しております。

 現行の一般電気事業者からも、一定程度の取引所への電力の供給を義務づけるなどの誘導政策を講じる必要があると思いますが、政府の見解をお伺いします。

 次に、発送電分離についてお伺いいたします。

 今般の電力システム改革では、平成三十年から平成三十二年までの間を目途に、法的分離を前提として発送電分離を行うとされています。法的分離は、同じ者が発電事業と送配電事業を行うことは禁止するものの、同じ持ち株会社の傘下になります。持ち株会社には、株主利益のため、傘下の発電会社を優先させるよう、送配電会社に要請するインセンティブが働きかねません。これでは、発送電分離を行う意味がありませんので、中立性を確保するための対策が必要となります。

 この点について、どのような対策を講じるおつもりなのでしょうか。また、そもそも、機能分離や所有権分離ではなく、法的分離一本に絞った発送電分離を行おうとする理由は何でしょうか。答弁を求めます。

 次に、今回の改正法案の内容について、何点かお伺いいたします。

 まず、電気料金の全面自由化についてお伺いいたします。

 電気事業につきましては、これまで、大規模電力会社が地域独占制によって手厚く保護され、電気料金についても、総括原価方式による規制料金が採用されてきた結果、電力会社における高コスト体質が維持されておりました。

 電力システム改革では、競争原理の導入による電力料金の全面自由化が目指されておりますが、その第一段階である今回の改正法案においては、そのための具体的な措置は規定されておらず、改革プログラムの第三段階として、電気の小売に係る料金の全面自由化は、平成三十年から平成三十二年を目指すとされております。つまり、最長では今後七年間もの間、自由競争による電気料金の低下という成果を国民が甘受することができないわけであります。

 なぜ、このように長期間をかける必要があるのでしょうか。政府の見解を伺います。

 また、本法案では、最長で平成三十二年とされる電気料金の全面自由化さえも、適正な競争関係が確保されていないこと等の事由があり、電気の使用者の利益を阻害するおそれがあると認められる場合には、さらに先送りされる可能性が示唆されております。

 確かに、附則では、電力システム改革の今後の進め方に関するプログラム規定が示されているにすぎないとはいえ、送配電等部門の中立を確保するための法的分離の前提について、今後の方針転換の可能性が示されているのと同じであり、今回の法案にこのような見直し条項を置いている時点で、現在の電力システム改革の構想を不退転の決意でなし遂げるという決意を感じ取ることができません。

 そこで、この電力料金の全面自由化の実施時期の見直し規定を法案に置いた趣旨はどのようなものなのか、また、どのような事情がある場合に見送ることとしているのか、政府の見解をお伺いいたします。

 次に、電力市場への新規参入者に対する規制についてお伺いいたします。

 現在、事業を開始する際、一般電気事業者が許可制であるのに対して、特定規模電気事業者は、届け出制という簡便な手続が採用されています。その規制についても、特定規模電気事業者は、原則として自由に電気事業を営めるものとしつつ、緊急時における供給命令等の必要最低限の規制が設けられているにとどまっております。

 しかし、今回の法改正により、新たに、広域的運営推進機関への加入が義務づけられ、その統制を受けるとともに、経済産業大臣に対する供給計画等の提出の義務づけや、大臣による監督命令の対象とされる等の負荷を課せられることとなります。

 電力システム改革においては、多くの特定規模電気事業者の積極的な市場参入による電力市場の活性化は、極めて大きな意義を有すると思われますが、今回の改正事項におきまして、新規参入への事実上の制約要件となる規制事項が多く置かれ、実質的に規制当局の権限強化が図られている趣旨について、政府の見解をお伺いいたします。

 また、改正法案では、電気事業の遂行に当たっての広域的な運営を推進することを目的として、新たに、広域的運営推進機関を認可法人として設立することとされております。

 現行法では、送配電等業務の円滑な実施においては、民間の専門性、自主性を尊重する趣旨により、適格性を満たした法人を送配電等業務支援機関として指定する制度となっており、現在は、一般社団法人電力系統利用協議会がその指定を受け、支援業務等に従事しております。

 そこで、お伺いいたしますが、現在の送配電等業務支援機関の制度では、どういう点が不十分であり、なぜ、民間の自主性の尊重という指定法人制度の趣旨を覆してまで新たな認可法人を設置する必要性があるのか、政府の見解をお伺いいたします。

 最後の質問になりますが、改正法案では、電気事業の規制に関する事務をつかさどる組織について、「平成二十七年を目途に、独立性及び高度の専門性を有する新たな行政組織に移行させるもの」とされております。

 電気事業の規制に関しては、電力システム改革の第一段階である今回の改正法案によって、全電気事業者に加入が義務づけられている広域的運営推進機関の設立及び供給等に関する幅広い指示等が規定され、また、さきにも述べましたような経済産業大臣の権限の強化が図られており、改正法案の施行結果も検証せずに、これ以上、電気事業者に対する規制の強化につながる新たな規制組織を設ける必要があるとは、現状では考えられません。

 電力システム改革の推進を口実として、行政官庁がこれまで以上に肥大し、市場への規制を強めるようなことがあれば、まさに本末転倒と言わざるを得ません。

 この点につきまして、政府の見解をお伺いいたします。

 今国会でこれまでに経済産業委員会へ付託された、いわゆる消費税転嫁法案とクール・ジャパン推進機構法案には、日本維新の会は反対をいたしました。市場原理に任せ、国は市場環境を整えることに徹するという我が党の考え方に逆行する法案であったからであります。

 しかし、電力の自由化に関しましては、まさに既得権益を打破し、競争の原理を市場に持ち込むという、我が党の原点のような政策であり、昨年の衆議院選挙においても選挙公約に掲げました。

 電力自由化により、これまでの集中型電力供給から分散型電源にシフトすることは、ドイツのように、再生可能エネルギーを初め、さまざまな発電方法を活用して、地方の活性化に寄与することも期待できます。また、アジアを結ぶスーパーグリッド構想の夢も広がってまいります。

 政府が本気で取り組む姿勢を貫く限り、最大限の協力を惜しまないことを申し添えまして、私の代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 最大限の御協力をいただけるという維新の会の今井議員にお答えをいたします。

 最初に、エネルギー政策全体と電力システム改革の関係についてでありますが、東日本大震災とこれに伴う原子力事故を契機に、従来の電力システムの抱えるさまざまな限界が明らかになりました。

 新規参入の促進や競争環境の整備により、電力の低廉かつ安定的な供給を一層進め、エネルギー制約の克服に向けた改革の中心をなす今回の電力システム改革は、必要不可欠な、まさに待ったなしの取り組みであります。

 他方、議員御指摘の電力構成のベストミックスについては、電力システム改革により電力需要がどのように低減をしていくか、変化をしていくか、また、再生可能エネルギーの導入がどこまで可能か、見きわめる必要があります。さらに、原発の再稼働についても、原子力規制委員会が新たな安全基準のもとで行っていく安全性の判断を見きわめていく必要があり、責任あるエネルギーミックスの確立には一定の期間を要します。

 その上で、エネルギーベストミックスのいかんにかかわらず、新規参入の促進と競争環境の整備を行う電力システムの改革は、今すぐ、しっかりと進めていく必要があると考えております。

 次に、原発再稼働と使用済み核燃料の最終処分場についてでありますが、原発の安全性については原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、安全と認められない限りは、再稼働はありません。一方、安全と認められた場合には、その判断を尊重し、再稼働を進めます。

 他方、高レベル放射性廃棄物の最終処分については、既に約一万七千トンの使用済み燃料を保管中であり、原発が稼働するか否かにかかわらず、しっかりと取り組まなきゃならない、次世代に先送りできないもう一つの課題であります。

 最終処分場の調査に着手できていない現状を真摯に受けとめ、処分地選定に向け、国が責任を持って、新たな検討の場も設け、国民の理解の向上、地元負担の軽減方法なども含めた取り組みを抜本的に強化してまいります。

 次に、電力市場で競争が進んでいないとの御指摘でありますが、この要因としては、一般電気事業者が他の地域への進出に積極的に取り組んでこなかったことに加え、新規参入者が発電所を建設する場合にも環境アセスメント等で時間がかかること、広域系統運用のためのインフラや仕組みが不十分であること、送配電部門の中立性確保が不十分であったことなど、さまざまなものが考えられます。

 このため、既に着手している環境アセスメントの見直しに加え、広域系統運用の拡大、発電や小売の全面自由化、法的分離の方式による送配電部門の一層の中立化などにより、広域的に競争が進む環境を整えてまいります。

 次に、卸電力取引所を活用した競争促進についてでありますが、議員御指摘のとおり、卸電力取引の活性化は、電力市場の競争促進という観点からも、極めて重要な課題であります。

 このため、新規参入者も含めたさまざまな事業者による活発な競争の促進に向けて、既にこの三月より、既存の電力会社が余剰電力を卸電力取引所へ売電することとしており、その状況についてのモニタリングを行うこと等により、卸電力取引の活性化をしっかりと進めてまいります。

 次に、送配電部門の法的分離について御質問がありました。

 法的分離において送配電部門の中立性を確保するため、人事や予算等に係る行為規制が必要であり、また、グループ内の発電・小売会社を優遇しないよう、行政が監視していくことも重要であります。

 なお、法的分離の方式は、機能分離の方式と比較した場合、送配電設備が一体的に開発、保守、運用でき、安定供給や保安の面で優位であることなど、メリットが多いと考えております。また、所有権分離の方式と比較した場合、グループ一体としての資金調達を行うことができるなどのメリットが考えられます。このため、法的分離を実施する前提で改革を進めることとしております。

 次に、料金規制の撤廃についてでありますが、競争が十分に行われていない状況で電力料金の自由化を進めると、既存の事業者が交渉上優位な立場となり、価格決定権を握ることになるおそれがあります。

 そのため、まず、小売の参入の全面自由化を行い、消費者の選択肢を広げる一方、既存の電力事業者の料金規制の撤廃については、適正な競争環境が確保されているかなどを確認した上で、五年後から七年後をめどに行うこととしております。

 ただし、料金規制を撤廃するまでの間も、三年後をめどに行う小売参入の自由化で競争が強まること、既存の電力会社も、規制料金は残すものの、自由な料金メニューもつくれるようにすること等によって、経過措置の期間においても、電気料金の抑制効果は期待できるものと考えております。

 また、規制料金の撤廃時期の見直しについては、例えば、規制料金ではなく自由料金を選択している需要家の割合、供給者を切りかえた比率、既存電力会社の供給区域外への供給量などの進捗等を踏まえて、検討してまいりたいと考えております。

 次に、新規参入者に対する規制や、広域的運営推進機関の必要性についてであります。

 東日本大震災と、その後の電力需給の逼迫の経験を踏まえると、広域的な系統運用を拡大するとともに、一般電気事業者以外の事業者が保有する発電設備も活用することは、極めて重要であります。

 こういった観点から、本法案においては、電力需給の状況の監視等を行う広域的運営推進機関を設立し、安定供給確保に必要な措置として、新電力も含め、電気事業者に広域的運営推進機関への加入義務を課し、需給逼迫時には推進機関がたき増しの指示などを行うことができる仕組みとしております。

 なお、現在の既存の電力会社の送配電業務の支援を行う一般社団法人である送配電等業務支援機関は、各電気事業者に対し指示を行う権限を持つ機関ではないため、より主体的に広域系統運用を進めていく機関として、新たに法人を設立することとしたものであります。

 最後に、新たな規制組織についてでありますが、今回の一連の電力システム改革を進める中で、新規参入を促し、競争的な市場をつくっていくためには、政府が電力市場の監視、監督等を適切に行えるよう、その機能を一層高めることが必要であります。

 例えば、自由化された市場における電力取引の監視や、送配電事業に関する行為規制の厳格な実施などの国の規制業務に万全を期すことが必要であり、独立性と高度な専門性を有する規制組織をつくっていくこととしております。

 その際、行政の肥大化を避けることは当然のことであります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次の質疑者は、小池政就君。

    〔小池政就君登壇〕

小池政就君 みんなの党の小池政就です。

 国会にようやく提出されました電気事業法の一部を改正する法律案について、みんなの党を代表して質問いたします。(拍手)

 この法案、国会の終盤に提出され、ばたばたと審議されるには、余りにも重要な法案であります。六十年続いた国の電力市場を改める、まさしく戦後レジームからの脱却につながる大改革であります。だからこそ、私も既に、関連する質問主意書で計十九問の内容を確認させていただいておりますが、本日は、さらに直接お伺いいたします。

 まずは、本法案の本則で規定されている広域的運営推進機関についてであります。

 当機関の役員または職員は、新旧の電力会社の人員で構成されます。ただ、系統関係の人材は電力会社に限定されていることから、当機関でも旧電力会社の支配が想定されます。そのため、人事において、厳格なノーリターンルール制度等、中立性確保の基準を導入すべきです。そうでなければ、中立な接続はもとより、苦情処理及び紛争の解決という役割を身内でどう解決できるか甚だ疑問でありますが、回答を求めます。

 本則において兆しがあるとすれば、送配電網を利用してみずからの施設へ電力供給を行う、いわゆる自己託送を制度化する点でありますが、これは、グループ企業にとどまらず同業の組合等に拡大するとともに、優遇、優先的に接続すべきと考えますが、大臣の所見を伺います。

 今回の法案が異常なのは、電力の全面自由化、発送電分離という重大な項目が、本則でなく附則にあることです。また、関連法案の提出時期の表現の後退からも、妥協の結果がうかがい知れます。

 しかし、より注視すべきは、設計の中身です。緻密さが求められる電力市場の設計を誤れば、消費者の選択肢が減り、電力価格も高くなる可能性もあり得ます。

 三年後の小売業の全面自由化では、大口市場への参入が進まない現状を踏まえた多様な取り組みが必要となります。新規参入を促す競争政策について、具体的な回答を求めます。

 また、新規参入者への料金規制の是非もお答えください。

 発送電分離についても、より中立性を確保する所有権分離について、専門委員会報告書では将来的課題とするとされていますが、法案では法的分離とし、機能分離への後退をも示唆しています。なぜ、設計を開始する現段階で所有権分離の選択を排除するのか、政府の見解を伺います。

 また、自由化の際には、原子力村の原資となってきた電源開発促進税の見直しが当然必要と考えますが、方針を示してください。

 そして、附則の最後にひっそりとある電力市場の独立規制組織。この組織のあり方こそが電力自由化の成否を占う一方、本則に詳細にある広域的運営推進機関と同時期の設立を予定しながら、内容が全く明示されていないのは驚きであり、その理由と今後の方針の説明を願います。

 次に、国外にかじをとった原発政策について伺います。

 みんなの党の渡辺代表が初めての外遊でドイツ、デンマークで新エネルギーのあり方を探っていたとき、安倍総理は、地震大国トルコで原発輸出を決定しました。

 国内でも原発の新規制基準が定まらない中、特に地震の影響が未検証な中で、地震被害の可能性がある地域にまで輸出を急ぐ理由が、果たしてあるのでしょうか。

 我が国の国民負担の増大も懸念されます。事故の賠償を民間業者が一義的に負担するといっても、その後に国の負担になり得ることは、今回の事故を見ても明らかではありませんか。

 まず、これまでの原発の輸出契約で、日本側の事故の賠償責任の有無と内容を示してください。

 また、今後、特に自由化市場において、電力事業者として日本企業が参入する際の責任はどうなりますか。責任が付される際、国会への報告と承認の手続をとるべきではないでしょうか。

 安倍総理は、明日、インドのシン首相と会談し、日本から原発輸出を進める原子力協定の交渉再開を予定しています。過去に核実験を行い、原発にも製造物責任を問うことのできる法律を持つインドにも原発を輸出するのでしょうか。

 日本は、現在、原子力損害賠償に関するいずれの国際条約にも加盟していません。原発事故の賠償額が想定以上に膨らんだこの期に及んでも、安全神話を踏襲し、将来の賠償問題に正面から取り組もうとされないのでしょうか。今後の方針を求めます。

 今回の人災をもたらしたのは、政官業の癒着と、そこで涵養された安全神話です。

 いまだ各電力会社の顧問、取締役には経産省OBが残り、役所の現役職員の出向も変わらず、電力会社の票と金に依存する議員も後を絶ちません。これら人災を起こした体制を改革できない日本がどうして、日本同様もしくはそれ以上の政官業の癒着もあり得る新興国に原発を輸出することができるのでしょうか。

 そもそも、将来の世界の市場規模でも原発を優に凌駕する新エネルギーや蓄電池等を組み合わせたスマートシティーの確立に、日本は、まずは国内の電力改革を通して取り組むべきではないでしょうか。

 私は、エネルギー問題に取り組んできた研究者として、そして世界で最も危険な浜岡原発を抱える地域の代表として、人災を超え、新たなエネルギー・電力体系を確立すべく、既得権益とは一切のつながりを断って、この場に参りました。

 議場の皆様、ともに真の改革をなし遂げようではありませんか。そして、何より、みずから選択の余地なく原発にふるさとを追われた人々に、土地を侵され、風評被害に悩む人々に、また未来の子供たちに、みずから電力を選ぶ権利を、本当の安全と発展をお渡ししようではありませんか。

 そのためにも、以上の指摘の改善を求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 小池議員から、四月の十二日に国会に提出をさせていただきました電気事業法の改正案につきまして御質問いただきました。

 最初に、広域的運営推進機関の中立性の確保についてでありますが、広域的運営推進機関は、定款や役員の選任、解任等を国の認可事項とするなど、国の監督のもとで公平中立に運営することを担保する予定であります。

 今後の詳細な制度設計においても、例えば、人事の交流の一定の制限も含め、人事面での中立性確保など、公平中立な運営がなされるよう設計をしてまいります。

 次に、自己託送についてでありますが、今回、送配電網を保有する一般電気事業者に対して自己託送に応ずる義務を課すことにより、自家発の有効活用を図ることとしておりますが、送配電網の容量に制約がある場合に、自己託送を優先することは、通常の送配電網利用の制約になりかねないといった課題もあるわけであります。

 具体的にどのような範囲で自己託送を利用可能とするかにつきましては、引き続き、詳細に検討を進めてまいります。

 次に、新規参入の促進と、新規参入者への料金規制についてでありますが、今後、発電事業や小売事業への新規参入も含めたさまざまな事業者による活発な競争の促進に向けて、法案附則の改革プログラムを踏まえ、広域系統運用の拡大により、区域を越えた電気の供給を一層行いやすくすること、発電に係る新規参入や料金規制の撤廃、新規参入者の送配電網へのアクセスを容易にするための送配電部門の一層の中立化、既存の電力会社の発電余力を卸電力取引所で売電するといった卸電力市場の活性化策といった取り組みを順次進めてまいります。

 なお、新規参入者に対して新たに料金規制を課すことは、全く考えておりません。

 次に、所有権分離についてでありますが、小池議員御指摘の電力システム改革専門委員会の報告書を正確に引用させていただきますと、「中立性を実現する最もわかりやすい形態として所有権分離があり得るが、これについては改革の効果を見極め、それが不十分な場合の将来的検討課題とする」とされており、専門家委員会の結論として、まず法的分離の方式で中立性確保をしっかり進めていくこととされております。

 また、法的分離の方式は、所有権分離の方式と比較した場合、グループ一体としての資金調達を行うことができる点などのメリットが考えられます。

 このため、法的分離を実施することを前提で、改革をしっかりと進めてまいります。

 また、電源開発促進税の見直しについて御質問をいただきました。

 電源開発促進税は、原子力のみならず、水力発電、地熱発電等の設置の促進などにも充てられています。電力自由化の推進と原子力政策の今後のあり方は、いずれにせよ別途の課題であり、電源開発促進税を初めとする特定の電源の設置等に対する国としての支援のあり方を見直すことに直結するものではありません。

 いずれにせよ、電源開発促進税のあり方については、必要に応じて、しっかりと検証を行ってまいります。

 次に、新たな規制組織についてでありますが、新たな規制組織は、自由化された電力市場における電力取引の監視、モニタリング、さらに、送配電部門への行為規制の監視等も行うため、第二段階以降の小売の全面自由化の制度設計などとあわせて検討していくことが必要であると考えております。

 今後、電力システム改革の目的がしっかりと果たされるよう、具体的な業務内容、権限等について、さらに精査をしてまいります。

 次に、原子力損害の賠償責任や国会への報告、承認についてでありますが、我が国企業が原発を輸出する場合、もしくは、海外の原子力発電事業に参入する場合の原子力損害の賠償責任は、個々の契約内容や各国の法制度ごとにその範囲が規定されると考えられますが、一般的には、原発事業者が責任を負うものと承知をいたしております。

 いずれにせよ、日本企業がみずからの判断として海外での原発事業に参画することをもって、日本政府が賠償に係る何らかの財務負担を負うものではないと考えております。

 次に、インドへの原発輸出についてでありますが、インドとの原子力協力の協議を進めるに当たっては、インド側が、核実験一時停止の継続や原子力施設の軍民分離など、過去に行った約束を堅持することが当然の前提であると考えております。これによって、核兵器不拡散条約に加盟していないインドを、国際的な核不拡散体制に関与させ、実体的に取り込むことが重要であると認識をいたしております。

 なお、輸出した原発の製造者としての責任は、各国それぞれの法制度や契約関係によって決定されるものであり、輸出するメーカーが適切に判断すべき事項であると考えております。

 最後に、我が国の原子力に係る体制の改革と途上国への原発輸出に関する質問でありますが、我が国においては、福島第一原発事故の反省に基づいた国会の判断により、原子力安全を原子力規制委員会の専門的、独立的な判断に委ねるという規制体系に移行し、過酷事故対策も含めた新たな規制基準が策定されつつあることなど、改革が着実に進んでいると認識をいたしております。

 また、事故の経験と教訓を生かし、世界の原子力安全の向上に貢献していくことは、我が国の責務だと考えております。

 原発輸出については、相手国の事情や意向を踏まえつつ、世界最高水準の安全性を有する我が国の技術を提供するとともに、規制組織のあり方も含めた原発に関する制度整備等への支援も実施してまいります。(拍手)

    〔国務大臣岸田文雄君登壇〕

国務大臣(岸田文雄君) 小池議員の方から、原子力損害賠償に関する国際条約についてのお尋ねがありました。

 我が国としては、効率的かつ安定的な原子力損害賠償スキームを国際的に構築することの意義を十分認識し、我が国の原子力損害賠償制度も踏まえて、関係条約について、関係省庁間で検討を進めております。

 こうした中で、原子力損害賠償関連条約としては、パリ条約、そしてウィーン条約、さらには原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)、この三つの系統が存在いたしますが、被害者の救済、我が国法制度との整合性等の観点から、現在、このCSCを最も有力な候補として検討を進めております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次に、塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、電気事業法改正案について質問します。(拍手)

 本法案で問われているのは、地域独占、発送電一貫体制という戦後の九電力体制を変革し、発送電分離などの電力システム改革を実現するか否かであります。

 この改革の直接の契機となった三・一一東電福島第一原発事故からの教訓を踏まえ、三つの角度から伺います。

 第一に、原発との関係です。

 事故を起こした福島第一原発一号機から四号機は、ゼネラル・エレクトリック(GE)社及び東芝製のマーク1型です。国会事故調の指摘を含め、いまだ未解明な事故原因を究明し、製造者責任こそ問うべきではありませんか。

 また、原発の再稼働など論外だと思いますが、これを認めるのですか。

 そのGE、日立、東芝、ウェスチングハウス及び三菱重工業の原子炉メーカー五社を中核とするいわば日米原発利益共同体は、世界の原発市場のおよそ四割を占めています。日米同盟を基礎とした原発輸出によってさらなる市場の獲得を目指すことは、福島事故の教訓を無視し、その被害者の願いに対する許しがたい背信行為であり、人類の未来に対する挑戦と言わざるを得ないものです。

 あすの日印首脳会談において、NPT、核不拡散体制の未加盟国で核兵器保有国のインドに対し、唯一の被爆国で福島事故を経験した日本が原発輸出を約束するなど、もってのほかであります。答弁を求めます。

 第二に、東電改革との関係です。

 私は、先週、その福島第一原発の調査に行きましたが、事故は収束しておりません。

 放射能汚染水事故は、仮設設備などコストを優先させ東電任せにしてきた政府の無責任な対応から生まれたもので、三・一一以来、福島原発は最大の危機に直面しているのではありませんか。

 事故から二年以上たっても、十五万人を超える避難者の方々を初め被害者の生活と権利は回復していません。財物賠償を含め、被害の全面賠償、生活再建にこそ尽力すべきではありませんか。

 これらの問題の根本には、国の責任を曖昧にしたまま、東電を絶対潰さないとして国費で支え、全国の原発の再稼働と電気代値上げで原資を賄う原子力損害賠償支援機構のスキームがあります。

 しかし、東電は、昨年十一月七日、賠償、除染等について、一企業のみの努力では限界があるとして白旗を上げました。既に実質国有化されている東電の事実上の破綻、原発の不良債権化は明らかです。

 であるならば、原賠機構法を見直し、東電を特別な公的管理下に置き、その経営責任、株主責任、貸し手責任を問い、メガバンクの債権放棄、利害関係者に対する負担を求める東電改革が、電力システム改革の出発点でなければなりません。答弁を求めます。

 第三に、電力システム改革は、原発のような大規模集中型から再生可能エネルギーの爆発的普及、小規模分散・地域経済循環型システムへの転換でなければなりません。

 福島事故は、安全神話とともに、原発が安い、クリーン、安定供給という神話も崩壊させました。

 ドイツのバーデンビュルテンブルク州では、四大電力の支配から抜け出し、優先接続義務などの電力改革によって、再生可能エネルギー事業者が十四万社も生まれています。

 本法案は、持ち株会社グループによる発送電の法的分離をするといいますが、発送電一貫体制を実質的に維持したい電事連の要求どおりにならない保証がどこにありますか。

 また、本法案の基底をなすいわゆる電力自由化は、二〇〇〇年代初頭の米国エンロン破綻事件、北米、カリフォルニア州の大停電を招いた市場原理主義、規制緩和の失敗とどう違うのか、明快な答弁を求めます。

 今求められているのは、こうした諸外国の経験を教訓にして、電力独占への民主的規制と国民的監視を強める電力民主化です。

 今こそ、原発ゼロへ向かう電力改革を強く求め、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 塩川議員にお答えいたします。

 まず、事故原因の究明と事故の責任についてでありますが、国会事故調、政府事故調等により、事故の原因分析について主要なポイントが整理されており、また、原子力規制委員会に設置された事故分析に係る検討会で、今後、現地調査を含めたさらなる原因分析が行われるものと認識をいたしております。

 また、メーカーの責任に関しては、原子力損害賠償法は、被害者に対する損害賠償責任を原子力事業者に負わせることとしており、製造物責任法の適用除外とすることが定められております。

 次に、原発の再稼働についてでありますが、原発については、いかなる事情よりも安全性を最優先し、その安全性については原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、安全と認められない限り、原発の再稼働はありません。一方、安全と認められた場合には、その判断を尊重し、再稼働を進めます。

 今後、原子力規制委員会によって安全性が確認された段階で、立地自治体等関係者の理解と協力を得るため、事業者任せにするのではなく、国も前面に出て誠実に説明していくことが必要と考えております。

 次に、福島事故の教訓とインドへの原発輸出についてでありますが、東電福島第一原発事故の経験と教訓を世界と共有することにより、世界の原子力安全の向上や核不拡散に貢献していくことは、我が国の責務であると考えております。

 インドとの原子力協力の協議を進めるに当たっては、インド側が、核実験一時休止の継続や原子力施設の軍民分離など、過去に行った約束を堅持することが当然の前提であると考えております。これによって、核兵器不拡散条約に加盟していないインドを、国際的な核不拡散体制に関与させ、実体的に取り込むことが重要であると認識をいたしております。

 次に、汚染水処理対策についてでありますが、単に事業者任せにするのではなく、国も前面に立って汚染水処理対策に取り組むため、私が議長を務める廃炉対策推進会議のもとに汚染水処理対策委員会を設置し、汚染水処理への対応を検討しております。

 その中で、これまでの取り組みを検証し、地下水の流入抑制策や、汚染水に含まれる放射性物質処理対策、万が一にも汚染水が海上に流出しないための対策等、汚染水問題を抜本的に解決するための方策を打ち出すこととしており、今週中をめどに、そのうちの、地下水流入抑制に関する事項について、今後の対応の方向を取りまとめる予定であります。

 次に、被害者に対する賠償についてでありますが、迅速かつ適切な賠償のため、政府は、原子力損害賠償支援機構を設立し、これを通じた東京電力への資金援助を実施しております。

 また、迅速かつ適切な賠償に万全を期すため、昨年九月から、精神的損害に係る賠償について、将来分を含めた一括での支払いを開始しております。さらに、本年三月には、避難指示区域内における被害者の方の宅地建物を含む財物への賠償も開始をいたしました。

 今後、それぞれ異なる状況に置かれている被害者の皆様の立場に立ったこれらの賠償が適切かつ円滑に進むよう、東電を強く指導してまいります。

 次に、原賠機構法の見直しと東電改革についてでありますが、仮に、法的整理等により利害関係者にさらなる負担を求める場合、債権債務関係の確定などの調整に相当の時間がかかり、賠償、廃炉、電力の安定供給という原賠機構法の三つの目的を同時に達成することが困難となり、適切ではないと考えております。

 他方、原賠機構法の枠組みのもと、東京電力の特別事業計画を認定するに当たっては、経営責任の明確化、東京電力による株主、金融機関を含む関係者に対する協力の要請等、東電の改革が適切かつ十分なものであるか確認することといたしております。

 次に、法的分離についてでありますが、法的分離の方式では、送配電部門の一層の中立性を確保するため、人事や予算等に係る行為を規制する、いわゆる行為規制が必要であり、また、他の発電・小売会社に比べグループ内の発電・小売会社を優遇しないよう、行政が監視していくことも重要であると考えております。

 今後、法的分離を行う第三段階の改正の実施に向け、行為規制の具体的な検討を進めてまいります。

 最後に、海外の電力自由化の教訓についてでありますが、電力自由化で先行する海外での教訓も踏まえることは重要であり、御指摘の米国カリフォルニア州では、供給力が不足する状況下で小売料金を凍結する規制を実施したために、発電事業への投資が進まず、停電を引き起こしました。こうした海外での教訓を踏まえ、今回の電力システム改革では、発電事業への投資がしっかり行われる仕組みとしております。

 また、今回の改革では、単に全てを市場原理に委ねるのではなく、安定供給の責任を負う送配電事業者には料金規制や行為規制を行い、小売事業者には供給力確保を求め、そのための空売り規制を行い、既存の電力会社の料金規制は競争の状況を見きわめた上で撤廃するなど、海外での教訓も踏まえた制度設計といたしております。(拍手)

    〔国務大臣岸田文雄君登壇〕

国務大臣(岸田文雄君) 塩川議員にお答えいたします。

 まず、福島第一原子力発電所事故の原因の究明と製造者責任についてお尋ねがありました。

 お尋ねの点につきましては、必ずしも外務省の所掌事項ではないと考えておりますが、東京電力福島第一原子力発電所事故の原因究明については、国として継続的に取り組むことが重要です。これまで、政府や国会の事故調査委員会の調査に加え、そこで引き続き検証が必要とされた点も含め、原子力規制委員会において技術的な観点から原因究明にしっかりと取り組んでいると承知をしております。

 そして、製造者責任に関しましては、原子力損害賠償法においては、故意ある第三者により損害が生じた場合等についてのみ原子力事業者から製造者に対する求償権が認められていると承知しておりますが、現時点において、福島第一原子力発電所事故において製造者の故意は示されていないと承知をしております。

 そして、原子力関連資機材の輸出についてお尋ねがありました。

 福島第一原発事故の経験と教訓を世界に共有することにより、世界の原子力安全の向上に貢献していくことが我が国の責務であると考えております。

 我が国の原子力技術に対しては、今月総理が訪問した中東諸国を初め、各国から高い期待が示されてきています。原子炉等の原子力関連資機材の輸出については、相手国の意向や事情を踏まえつつ、世界最高水準の安全性を有する技術を提供していく考えであります。

 そして、インドへの原子力関連資機材の輸出についてお尋ねがありました。

 インドとの原子力協力については、二十九日の日に予定されております日・インド首脳会談でどのような議論が行われるかは予断することはできませんが、我が国として、このインドとの原子力協力を行うに当たっては、インド側が、核実験モラトリアムの継続や原子力施設の軍民分離など、過去に行った約束を堅持することが当然の前提であると考えております。これによって、核兵器不拡散条約(NPT)の外側にいるインドを、国際的な核不拡散体制に関与させ、実体的に取り込む契機となり得るものと認識をしております。

 加えて、インドとの原子力の平和的利用に関する協力は、インドとの戦略的グローバルパートナーシップの強化に資するものです。

 いずれにしましても、交渉を進めるに際しては、核軍縮・不拡散に十分配慮していくことは当然のことであります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、玉城デニー君。

    〔玉城デニー君登壇〕

玉城デニー君 生活の党の玉城デニーです。

 ただいま議題となりました電気事業法の一部を改正する法律案について、生活の党を代表して質問いたします。(拍手)

 今回の電気事業法の一部を改正する法律案の政府提案については、未曽有の被害をもたらした東日本大震災と、これに伴う福島第一原子力発電所の重大事故を契機とする原発安全神話の崩壊に目覚めた多くの国民から、我が国の現在と未来にわたって責任あるエネルギー政策への大転換を求められたことに大きく起因することは間違いありません。

 本法案提出に先立って、四月二日に閣議決定された電力システムに関する改革方針では、エネルギーの安定供給とエネルギーコストの低減の観点も含め、これまでのエネルギー政策をゼロベースで見直し、責任あるエネルギー政策を構築していく一環として再生可能エネルギーの導入を進めると明記され、安定供給の確保、電気料金を最大限抑制する、そして、需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大する等を、電力システムに関する改革の目的に位置づけています。

 平成二十七年、二〇一五年を目途に行う広域系統運用機関(仮称)の設立の第一段階から、平成二十八年、二〇一六年実施目標の電気の小売、発電への全面自由化とする第二段階、そして、平成三十年から平成三十二年、二〇一八年から二〇二〇年実施を目途とする、法的分離による送配電部門の中立性の確保並びに電気の小売料金全面自由化の第三段階までつながっていく大きな改革のその内容については、国会での十分、十二分な審議をもって、国民の要請に対して真摯に応えていかねばなりません。

 以下について質問させていただきます。

 安定供給の確保について、電力需給の逼迫や出力変動のある再生可能エネルギーの導入拡大に対応するため、国の監督のもとで電気の安定供給強化や全国大の需給調整機能等を調整するための広域系統運用機関(仮称)を設置することについて、具体的に説明ください。

 二〇〇〇年以降、二〇〇四年、二〇〇五年と、電気の小売分野の自由化を段階的に実施してきた経緯がありますが、自由化されずに現在まで規制がかかっている部門が自由化される場合、電力の供給力の安定的な確保、料金規制の自由化についてどのような対応を想定しているか、お聞かせください。

 送配電事業者に対し、送電設備の建設、保守の実施を確実に義務づける一方で、総括原価方式による料金規制を保持して投資回収を制度的に担保することは、その部分において、国民が低廉な価格で自由な発電や料金体系を選択することと矛盾しないか、お答えいただきたいと思います。

 今回の電力システムの改革によって、一般事業者の資金調達環境も著しい変化を伴うことが思料されますが、事業者間の公平な競争や電力の安定供給を確保しつつ、着実に改革を進めるために、事業者に対してどのような金融措置を講じようとするものか、御説明ください。

 離島などにおける電源の安定供給についてどのように保障するか、お尋ねします。あわせて、他地域の電力系統と連系されていない上、広大な海域に有人島が点在している沖縄などについて、これまで検討された経緯など、お聞かせください。

 最後に、電力システムの改革において取り組むべき大切な課題は、先端技術の積極的な開発や、世界的知見の結集による次世代エネルギー革命へのステップアップもさることながら、電力の自由化による再生可能エネルギーの地産地消など、地域における自立型の経済振興や雇用対策に資することであり、国の発展のためのエネルギー政策で、これまでのようなあつれきや犠牲を地域の住民へ強いないという、極めて民主的で明確な政治理念です。

 今法案提出によるエネルギー政策の到達点の一つが、我々生活の党が政策に掲げている、二〇二二年までの原子力発電ゼロに向かうベクトルであることは明白であります。

 原発事故の悲劇を二度と繰り返さないためにも、原発の再稼働や新規増設を一切必要としない二〇二二年原発電力ゼロの実現を可能にし、もって諸外国からの信頼を得るべく、さらに早急な関係法令の整備とともに、廃炉やバックエンド対策の技術を確立していく人道的なエネルギー政策について大臣の見解をお伺いし、質問を終わります。

 ニフェーデービタン。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 玉城議員にお答えをいたします。

 最初に、広域的運営推進機関についてでありますが、広域的運営推進機関の行う主な業務は、全国レベルで、発電所の建設計画や需要の見通しなど、需給の状況を取りまとめること、そして、五十ヘルツと六十ヘルツの東西の周波数を変換する設備など、広域的な送電インフラの増強のための計画を取りまとめること、さらに、需給逼迫時に、個別の発電所へのたき増しの指示や、区域を越えた広域的な電力融通の指示をすることなどであります。

 広域的運営推進機関が中心となって、これまでの電力会社のエリアを越えた広域的な電力系統の運用を推進してまいります。

 次に、電力の安定供給確保と料金規制についてでありますが、本法案の附則の改革プログラムでは、送配電事業者が高品質の電気の安定的な供給に責任を持つことを基本とすること、そして、小売事業者の破綻といった事態にも備えた最終的な供給保障サービスや、離島への安定供給についても送配電事業者が責任を負うことといった内容を盛り込んでおります。

 また、改革プログラムにおきましては、料金規制の完全撤廃は五年後から七年後をめどとしており、その間に、料金の全面自由化に向けた準備をしっかりと進め、競争環境が整ったかを見きわめた上で、料金規制の撤廃を行ってまいります。

 次に、送配電事業者に対する料金規制について御質問をいただきました。

 今回の電力システム改革では、安定供給の責任を競争が見込まれない送配電事業者が負う仕組みとしており、その役割を果たすのに必要なコストについては精査しつつも、総括原価方式等により、必要な送配電設備の投資回収を可能としております。

 他方、発電事業や小売事業においては、料金規制を撤廃し、競争を促進することで、低廉な電気料金や料金等の選択肢拡大を目指すこととしており、これらは矛盾するものではありません。

 次に、事業者に対する金融面での措置でありますが、電力システム改革の実施には相応の時間を要するため、それまでの間に、エネルギー源の多様化やシェールガス等の調達先の多様化による燃料調達コストの低下といった環境変化により、一般電気事業者の資金調達環境は現在よりも改善すると期待されております。

 ただし、万が一、発送電分離の際に資金調達環境が改善しない場合は、例えば、一般担保を含めた金融債務の取り扱いや行為規制に関して、必要な経過措置を講じることといたしております。

 次に、離島や沖縄の安定供給でありますが、離島への安定供給については、送配電事業者が責任を負うこととし、他の地域と遜色のない料金水準で電力供給がなされるような措置を講じる予定であります。

 また、議員御指摘のとおり、沖縄は、他地域と電力系統が連系されていない等、地域固有の特殊性を有しており、例えば、広域系統運用が難しいといった特殊性を踏まえた制度を柔軟に検討してまいります。

 最後に、原発ゼロに向けたエネルギー政策や、関係法令の整備、廃炉、バックエンド対策についてでありますが、エネルギー政策については、いかなる事態においても国民生活や経済活動に支障がないよう、エネルギー需給の安定に万全を期すことが大前提であります。このためにも、本法案の早期成立を通じて、電力システム改革に係る関係法令の整備を行ってまいります。

 また、原発については、安全性をいかなる事情よりも最優先し、その安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ねることとしております。

 さらに、廃炉やバックエンド対策についても、単に事業者任せにするのではなく、研究開発の推進や最終処分地選定など、国が責任を持って取り組みを強化してまいります。

 こうした取り組みを通じて、エネルギーの安定供給、エネルギーコストの低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築してまいります。(拍手)

議長(伊吹文明君) 以上をもって質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(伊吹文明君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       財務大臣  

       国務大臣     麻生 太郎君

       外務大臣     岸田 文雄君

       経済産業大臣  

       国務大臣     茂木 敏充君

       国土交通大臣   太田 昭宏君

       環境大臣     石原 伸晃君

       国務大臣     甘利  明君

       国務大臣     新藤 義孝君

       国務大臣     古屋 圭司君

       国務大臣     山本 一太君

 出席副大臣

       経済産業副大臣  菅原 一秀君


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