衆議院

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第3号 平成25年10月17日(木曜日)

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平成二十五年十月十七日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第三号

  平成二十五年十月十七日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国家安全保障に関連する諸法案を審査するため委員四十人よりなる国家安全保障に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)


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    午後二時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 特別委員会設置の件

議長(伊吹文明君) まず、特別委員会の設置についてお諮りをいたします。

 国家安全保障に関連する諸法案を審査するため委員四十人よりなる国家安全保障に関する特別委員会を設置したいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。

 ただいま議決をされました特別委員会の委員は追って指名をいたします。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

議長(伊吹文明君) それでは、昨日に引き続き、これより国務大臣の演説に対する質疑を行います。まず、井上義久君。

    〔井上義久君登壇〕

井上義久君 公明党の井上義久です。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました安倍総理の所信表明演説に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 質問に入る前に、十五日から十六日にかけて日本列島を襲った台風二十六号により、甚大な被害がもたらされました。災害により亡くなられた方々に心から哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。

 伊豆大島では、今なお懸命な救出活動が続いており、一刻も早い救出と無事を心より祈念いたします。政府においても、関係者と協力をして救出に全力を挙げるよう、改めて要請をいたします。

 さて、自民党、公明党の連立政権が発足してから、間もなく十カ月が経過いたします。安倍内閣は、発足した瞬間から、経済の再生を初めとする諸課題に果敢に挑戦し、まさにロケットスタートで政治を前に進めてきました。スピードと責任、そして結果を出す、これが自公連立政権です。

 そして、本年七月の連立政権に対する中間評価ともいうべき参議院選挙、公明党は、特に連立政権合意の最優先課題である、東日本大震災からの復興と万全な防災・減災対策、景気・経済対策、そして社会保障と税の一体改革についての取り組みと政策を強く国民に訴えました。

 その結果、参議院でも自民、公明で過半数の議席をいただき、衆参のねじれは解消、政治の安定を求める民意が明確に示されました。

 私は、ことし一月の本会議代表質問において、再び連立政権を担うに当たっての政治姿勢として、国民の中にある多様な民意を重く受けとめる謙虚な姿勢を貫かなければならないと申し上げ、今般の参議院選挙の結果を受けて、一層その思いを強くしております。

 政治は、信なくば立たずです。政権運営に当たっては、民意を十分に踏まえつつ、丁寧に議論を進め、国民の理解、コンセンサスを得ていく、このプロセスを大切にしていくことが肝要です。

 改めて、今後の政権運営に当たっての総理の基本認識を伺います。

 経済再生への取り組みについて質問します。

 我が国は、人口減社会に突入し、さらには地球規模での環境問題への対応などの課題がある中で、長期にわたる閉塞状況を打破し、日本経済の持続的成長と財政健全化を同時に実現させるという難しいかじ取りが求められています。その突破口を開くのが、三本の矢の経済政策であり、社会保障と税の一体改革です。

 安倍内閣は、政権発足直後から、矢継ぎ早に経済対策を打ち出し、実行してきました。その結果、過度な円高は是正され、成長率だけでなく有効求人倍率などの経済指標は大きく改善をしており、日本経済は明らかに好転し始めています。

 しかし、これからが重要です。デフレ脱却と経済再生の道筋を確かなものにしつつ、経済の好循環を生み出すためには、景気回復の恩恵を家計へ、中小企業へ、地方へとつなげていくことが不可欠であり、最重要課題です。

 まずは、消費を支える家計の賃金、所得をふやすことです。でなければ、消費は伸びず、経済の好循環は生まれません。

 公明党は、生産性向上による企業収益を確実に賃金上昇に反映させるため、政労使による賃金の配分に関するルール策定の必要性を主張してきました。経済の好循環実現に向けた政労使会議が設置され、議論が開始されたことは大きな前進です。

 今般決定した所得拡大促進税制の拡充だけではなく、政労使の連携によって賃金の上昇につながっていくよう、総理の力強いリーダーシップに期待をします。

 次は、日本経済を支える中小企業、地域経済の活性化が、成長力強化、経済の好循環への重要な鍵であるという点です。

 特に、未来への経済成長の芽を育てることに焦点を当て、起業、創業を促進するとともに、日本が誇る中小企業が持っている技術力、人材力などが遺憾なく発揮できるよう、支援策を強化すべきです。

 また、地域経済の活性化に向けて、例えば観光資源や地場の産業、産品など、地域の特色を生かした、地域発の成長戦略の策定とその実行が極めて重要です。

 経済の好循環実現に向けた今後の取り組みについて、総理の見解を伺います。

 消費税について質問します。

 総理は、十月一日、経済状況を確認した上で、国の信認を維持し、社会保障制度を次世代にしっかりと引き継ぐことをみずからの責任として、来年四月から、予定どおり、消費税率を八%へ引き上げるという大きな決断をされました。

 社会保障と税の一体改革における消費税率引き上げの重要な目的は、現行の地方消費税を除いた消費税収全てを年金、医療、介護、子ども・子育て支援の四分野に充てることにより、社会保障制度の安定、充実を図ることです。

 しかし、十月一日に方針を決定した五兆円規模の経済対策に関連し、さも消費税が社会保障以外の目的で使われるかのような誤解も見受けられます。

 そこで、総理に、改めて、消費税は社会保障にしか使わないことを確認するとともに、社会保障の充実分の内訳を含め、社会保障改革に取り組む決意を伺います。

 消費税率引き上げによる負担増を緩和するための低所得者対策として、八%段階においては、簡素な給付措置を実施することとしています。

 住宅取得については、税率引き上げによって負担増とならないよう、住宅ローン減税の拡充に加え、給付措置を講じることにしています。また、東日本大震災の被災者の住宅再建についても、負担増とならないよう、給付措置を創設します。

 あわせて、公明党は、消費税率引き上げの影響を緩和するという観点からは、支援を低所得者に限るのではなく、子育て世帯など、中堅所得層にも配慮した措置を年末の経済対策の中で講ずるべきであると考えます。総理の見解を伺います。

 経済政策パッケージでは、約一兆円規模の投資減税などの税制措置も盛り込まれ、特に、公明党の強い主張で、中小企業投資促進税制、所得拡大促進税制などが大きく拡充をされました。年末の税制改正を待たずに前倒しで税制改正の内容を決定することで、企業などに予見可能性を与え、投資拡大や賃金上昇につながる効果が期待をされます。

 一方で、復興特別法人税の一年前倒しの廃止については、国民の間に強い反対意見があることも率直に受けとめなければなりません。

 したがって、その廃止についての検討に当たっては、復興特別法人税にかわる復興財源を確保すること、国民の理解、中でも被災地の方々の十分な理解を得ること、復興特別法人税の廃止を確実に賃金上昇につなげられる方策と見通しを確認することが前提であることを、改めて総理に確認いたします。

 自民党と公明党は、平成二十五年度税制改正大綱で、消費税一〇%への引き上げ時に軽減税率制度を導入することを目指すとし、本年十二月までに結論を得ることで合意しており、この方針、目標に向かって、さらに議論を加速させていきたいと思います。

 軽減税率については、国民の期待も大きく、各種世論調査でも約七割が導入を望んでいます。中低所得者への配慮、国民の消費税に対する理解を深めるためにも、必要な制度であると考えます。

 政府においても、軽減税率の導入に向けて制度設計を急ぐべきです。総理の答弁を求めます。

 社会保障制度改革について質問をします。

 社会保障制度改革については、社会保障制度改革国民会議がことし八月にまとめた報告書をベースにしつつ、進めるべき改革の方向と工程を明確にした、いわゆるプログラム法案が国会に提出されました。これにより、昨年の一体改革では積み残しとなっていた医療、介護に係る改革が進むことになりますが、制度設計に当たっては、安心で持続可能な制度の構築に力を尽くす決意です。

 医療については、現在、政府内で高額療養費の自己負担限度額の見直しが検討されていますが、現在の所得区分上、対象範囲が広い一般所得者の区分を見直し、所得の低い方の限度額を引き下げるべきと考えます。また、年間上限額の新設や世帯合算要件の見直しの検討も重要です。

 また、国民健康保険、後期高齢者医療制度の低所得者の保険料負担の軽減措置は、早急に実施すべきと考えます。

 介護保険の見直しに向けては、介護が必要になっても住みなれた地域で暮らせるよう、介護、医療、予防、生活支援、住まいが一体的に提供される地域包括システムの構築が重要です。

 今後、地方自治体等関係者の意見も十分に聞きながら進めていくべきです。あわせて、介護サービスを担う介護・看護従事者の確保、処遇改善に向けたさらなる取り組みが必要と考えます。

 医療、介護の課題について、総理の見解を伺います。

 未来の宝を社会全体で支える、社会保障の重要な柱に位置づけられた子ども・子育て支援に万全を期さなければなりません。

 特に、女性が輝く社会の構築に向けても、待機児童の解消は急務です。まずは、待機児童解消加速化プランを着実に実行に移すべきです。

 あわせて、子ども・子育て新制度の本格施行が予定されている平成二十七年四月に向けて、準備に万全を期すべきであり、特に、必要とされる一兆円を超える追加財源の確保は重要な課題です。

 子ども・子育て新制度の本格施行及び財源の確保について、総理の見解を伺います。

 さきの通常国会では、生活保護法の改正案と生活困窮者自立支援法案が、与野党協議の上、衆議院で修正可決されたにもかかわらず、残念ながら廃案となりました。現役世代を含む保護受給者や生活困窮者が増加する中で、両法案をしっかりと手当てすることが、重層的なセーフティーネットの構築に不可欠と考えます。

 地域において、既に二法案の実施を見据えた事業も始まっていますが、生活困窮者支援などに活用する補助金が不足しているとの声も聞こえます。

 財源確保も含め、重層的なセーフティーネットの構築について、総理の見解を伺います。

 東日本大震災からの復興の加速化について質問します。

 東日本大震災、原発事故から二年七カ月余り、今なお二十九万人近くの方が避難生活を強いられ、福島県では五万人を超える方が県外での生活を余儀なくされています。

 改めて、被災された皆様、原発事故に苦しんでおられる皆様に、心からお見舞いを申し上げます。公明党は、引き続き、被災者の皆様が一日も早く当たり前の日常生活を取り戻せるよう、復興の加速に全力で取り組むことをお誓いいたします。

 安倍内閣発足以降、復興庁による省庁横断的な取り組みや復興予算の拡充、福島ふるさと復活プロジェクトを初めとした新たな復興策の実施などにより、被災地からは、ようやく復興の歯車が回り始めたとの評価も聞こえてきました。

 一方で、災害公営住宅の確保やまちづくり、除染のおくれなどの問題が立ちはだかり、被災者の住宅再建、生活再建は思うように進んでいません。加えて、被災状況や自治体の財政力により、復旧復興の進捗に格差が生じてきています。被災者や被災地の実情が刻一刻と変化していることを機敏に捉え、よりきめ細かな支援策を講じていく必要があります。

 被災地の現状認識と復興加速にかける総理の決意を伺います。

 先月二十日、私は、発災以降二度目となる東京電力福島第一原発内の視察を行いました。現場で作業に従事しておられる方々の懸命な努力に敬意の念を抱くとともに、事故の収束と廃炉に向けた過酷な作業に追い打ちをかける汚染水問題の深刻さを目の当たりにし、国が前面に出て、総力を挙げて対策を講じる必要性を再認識いたしました。

 政府は、汚染水問題で想定されるリスクについて、国内外の英知を結集し、年内を目途に総合的な対策を取りまとめる方針を決定しました。

 しかし、一日約四百トンの地下水が建屋に流入して汚染水としてふえ続けており、また、昨日のように大雨による危険性もあり、速やかな対応が必要です。

 地下水流入に対する抜本策の検討、汚染水貯蔵タンクの信頼性向上、放射性物質の除去技術など、最新の知見を生かした対策によって一日も早く抜本解決につなげるよう強く求めます。

 また、人為的なミスを再発させないためにも、現場の指揮系統を明確化するとともに、作業員の安全管理の強化と人材確保に万全を期すべきです。

 汚染水の環境への影響についても、国内外の信頼が得られるよう、情報をわかりやすく丁寧に発信するとともに、漁業関係者や周辺住民の方々の不安解消と風評被害防止に努めるべきです。

 汚染水問題の解決に向けた総理の決意を伺います。

 被災地では、防潮堤復旧や高台への集団移転、災害公営住宅建設などを進めるに当たって、事業用地に当たる土地の地権者が行方不明であったり、相続未登記であったりして、早期の用地取得が難航し、事業が遅延するケースが生じています。

 政府は、民法の不在者財産管理制度の活用や土地収用制度の運用改善による収用手続の迅速化などの対策を講じてきていますが、現場においては、その効果は限定的との声が上がっています。

 今後、実効性をどう確保するのか、場合によっては特例制度の創設も検討すべきではないかと考えますが、総理の見解を求めます。

 二〇一五年三月、第三回国連防災世界会議が被災地仙台で開催されることが決まりました。

 防災投資の重要性が国際的に共有されつつある中で、日本が防災先進国として、大震災で得た教訓や知見を世界に発信し、防災を各国の主要な政治課題に取り入れる絶好の機会となります。それは、人間の安全保障という概念に防災を位置づけることにもつながります。

 また、国際会議の場で、被災者がみずから震災からの復旧復興過程で得た経験や思いを国際社会に発信することにより、被災地、また被災者にとっても未来への希望につながるきっかけになると考えます。

 仙台国連防災世界会議に向けた取り組みについて、総理の見解を伺います。

 防災・減災対策について質問します。

 冒頭申し上げました台風二十六号にとどまらず、ことしは、台風や活発な前線等による記録的な豪雨や竜巻の猛威により、日本各地が深刻な被害に見舞われました。国、自治体における被害想定などの情報共有のあり方、避難指示を含めた情報提供のあり方など、災害対策に関して多くの課題を残しました。

 政府においては、引き続き、関係自治体と協力しながら、被災された方々の住宅再建など災害復旧に全力を挙げるとともに、災害対策のあり方を検証し、改善していくよう、強く要望いたします。

 被災者生活再建支援制度について伺います。

 先月二日に発生した竜巻被害では、埼玉県越谷市が本制度の適用対象となった一方で、隣接し同じ被害を受けた埼玉県松伏町や千葉県野田市は、同一市町村で全壊家屋が十世帯以上などの要件を満たさず、適用が認められませんでした。結局、これらの自治体は独自で支援策を講じましたが、同じ竜巻で被災したにもかかわらず、住んでいる地域により支援対象から外れるのは、被災者の立場からすれば、余りにも不公平です。

 支援制度については、規模要件を撤廃して全ての災害を支援対象とすることや、今回の竜巻のように、一部自治体が適用を受ける場合には、同一の災害で被災した他の自治体も対象となるようにするなど、被災者の立場に立って見直すべきと考えます。総理の見解を伺います。

 昨年末、痛ましい中央自動車道笹子トンネル事故が起きました。また、最近では高速道路の跨道橋の安全性について問題点が指摘されるなど、国民の命を守るための道路や橋などの社会インフラの老朽化対策、防災・減災への取り組みは待ったなしです。

 東日本大震災の教訓を踏まえ、また、今後予想される首都直下地震や東海・東南海・南海地震などの各種大規模災害も想定しつつ、社会インフラの総点検と地域の防災計画の見直しを進めるとともに、老朽化対策の前倒し実施を含め、計画的かつ集中的な投資を進めていくべきです。

 また、ハードだけでなく、防災教育の充実など、ソフトにも力を注ぐべきです。

 こうした対策を着実に推進していくためにも、現在、自民党と共同提出をしている防災・減災に資する国土強靱化基本法案を、各党各会派の協力も得て、一日も早く成立させたいと考えています。

 太田国土交通大臣は、本年をメンテナンス元年と位置づけ、その技術を世界にも発信すると述べられましたが、改めて、防災・減災に取り組む決意を伺います。

 環太平洋パートナーシップ協定について質問します。

 我が国が本年七月にTPP協定交渉に参加以降、交渉参加国との協議等が進められていますが、今月八日には首脳会合が開かれ、年内に妥結することを目的に、残された困難な課題の解決に取り組むべきことで合意をいたしました。

 年末に向けて交渉が加速することが予測されますが、今後の交渉に当たっては、総理が参加決断された際の、我が国として守るべきものは守る、攻めるものは攻める、国益にかなう最善の道を追求していくとの基本方針、さらには、衆参の農林水産委員会における決議を断固守るよう、改めて強く求めます。総理の答弁を求めます。

 農林水産業について質問します。

 人の生命を支える農林水産業は、国の基ともいうべき極めて重要な産業です。

 地域に根差した農業、水産業、そして林業を元気にし、地域経済の活力、ひいては日本経済全体の活力へと結びつけていかなければなりません。地域の実情を踏まえた農林水産業の振興に力を入れるべきです。

 とりわけ農業の未来に向けては、攻めと守り両面にわたる戦略的展開が重要です。

 まずは、高付加価値化や輸出促進、農地集積など、攻めの農政の本格的挑戦です。特に、農地中間管理機構、いわゆる農地集積バンクは、耕作放棄地の解消や担い手への農地集積を同時に進める意欲的な政策です。より有効に耕作放棄地を解消し、迅速かつ適切に担い手へと農地を貸し付けることができるよう、効率的な機構の構築を強く望むものです。

 いま一つは、中山間地や家族経営、兼業などの多様な農家の持続を支えるための重層的な政策展開で、広く農山漁村の振興を図ることです。

 多様な農業のあり方を持続可能とする、いわば社会政策として、中山間地域等直接支払い制度の拡充など、農業の多面的機能の維持や地域の発展につながる仕組みの構築が求められます。

 旧戸別所得補償制度については、固定部分は存続させ、変動部分は農家からの拠出を伴う制度へと見直し、法制化すべきと考えます。早期に道筋をつけ、農家の不安を解消すべきです。

 以上、攻めの農林水産業への挑戦と持続可能な農業に向けた施策について、総理の見解を伺います。

 次に、再生可能エネルギーの導入について質問します。

 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度において、ことし六月末までに認定された設備量は二千二百九十一万キロワットとなり、二月末からは一千万キロワット近く上乗せをしています。

 その一方で、発電に至っているのは約一六%にすぎず、今後、認定設備量全てを確実に稼働させるためには、送電網の増強、大型蓄電池の導入、さらには地域間連系設備の増強などのインフラ整備を進めていく必要があります。

 その実現のためには、国がもっと前面に出て、戦略性を持って進めていく必要があります。まず、我が国の導入目標を定め、その上で、工程表を作成し、送電線などのインフラ整備、規制緩和、技術開発などを行い、着実に導入拡大を図っていくべきです。

 また、地域経済活性化の観点からは、地域主導で、中小水力、バイオマス、地熱といった多様なエネルギー源を開発していくことが必要です。政府は既にさまざまな施策を打ってきていますが、改めて地域の視点で現状を検証し、再生可能エネルギー開発を加速して、地域発展にも寄与していくべきと考えます。総理の答弁を求めます。

 最後に、一言申し上げます。

 徹底した現場第一主義、そして、庶民に寄り添いながら、課題の解決に向けて果敢に挑戦をする、これが公明党の原点であり、誇りであります。

 被災地を初め、現場に足を運べば、私たち公明党、そして連立政権に対する叱咤と期待の声をたくさんいただきます。中には、霞が関には届かないような小さな声、小さな叫びもたくさんあります。

 こうした小さな声、叫びに真摯に耳を傾け、真剣に受けとめる、そして、それを政治に届け、政策につなげる、公明党は、これからもこの姿勢を貫き、与党の一員として、山積する課題に真っ正面から取り組み、国民的な合意をつくりつつ、結果を出していく決意です。

 このことを最後にお誓い申し上げ、私の代表質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 井上義久議員にお答えいたします。

 今後の政権運営に当たっての基本認識についてお尋ねがありました。

 六年前の参院選の大敗、そして四年前の総選挙での歴史的惨敗による野党転落、あのときの挫折は、私の胸に今も深く刻み込まれています。

 だからこそ、私たち自由民主党は、政治は国民のものとの立党の原点に立ち戻り、公明党との強固な連立のもと、丁寧な政権運営に努めてまいりました。その思いは、これからも決して変わることはありません。

 今後とも、公明党の皆様とともに、国民と丁寧な議論を積み重ねながら、スピードと責任、そして結果を出す政治を進めていく決意であります。井上議員を初め、友党たる公明党の皆様の御理解と御協力を改めてお願いする次第であります。

 中小企業、地域経済の活性化についてのお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、景気回復の実感を全国津々浦々までお届けするためには、中小企業、小規模事業者の皆さんや地域経済が元気になることが不可欠です。

 このため、産業競争力強化法案等を通じた創業支援体制の抜本的強化、投資補助金などの設備投資支援や物づくり人材の育成、そして地域資源を生かした新商品、新サービスの開発等、中小企業、小規模事業者の支援に万全を期します。

 また、地域ごとに地方産業競争力協議会を開催することにより、全国各地の生の声を日本再興戦略の実行に反映させ、国と地方が一体となって地域経済を活性化し、全国隅々に成長の成果を行き渡らせてまいります。

 消費税収の使途と社会保障改革に取り組む決意についてお尋ねがありました。

 今回決定した三%の引き上げ分の消費税収は、全額社会保障財源化することとしており、これを経済対策の財源に充てることはありません。経済対策の財源については、経済成長による税収の自然増や二十四年度決算の剰余金などを最大限活用してまいります。

 社会保障制度改革については、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度を確立するため、改革の全体像、進め方を明らかにする法律案を今国会に提出したところであり、着実に改革を実施してまいります。

 子育て世代など、中堅所得者にも配慮した経済対策に関するお尋ねがありました。

 私の内閣の経済政策では、若者、女性を初め、頑張る人たちの雇用を拡大し、収入をふやすことを目指しております。

 このため、今般決定した経済政策パッケージでは、賃金上昇や雇用拡大を伴う経済の好循環の実現に向けた取り組みとして、政労使の連携を深めるとともに、所得拡大促進税制の拡充により、企業による賃金引き上げの取り組みを強力に促進することとしております。

 また、新たな経済対策においては、女性、若者向け施策として子育て支援などを盛り込むこととしており、これらの施策により、消費税引き上げによる負担の影響に対して十分な対応を図ってまいります。

 復興特別法人税に関するお尋ねがありました。

 復興特別法人税の前倒し廃止については、足元の経済成長を賃金上昇につなげることを前提に検討するものであり、企業収益の拡大により、日本全体で賃金上昇を含む経済の好循環を実現することを目的としています。

 このため、廃止を検討する趣旨を経済界などに明確に説明し、賃金の引き上げ等に積極的に取り組むことを要請するとともに、各団体や企業の取り組みについて積極的に情報発信するよう協力を求め、あわせて、賃金の動向を調査し、効果を検証し、その結果を適切な形で公表します。

 また、復興は、内閣の最重要課題の一つです。復興特別法人税の廃止を行う場合であっても、現在二十五兆円程度の集中復興期間における復興財源を確実に確保するとともに、今後も全力で復旧復興の加速に取り組むこととしております。

 こうしたことについて、被災地の方々を初め国民の皆様の理解を得られるよう、丁寧に説明してまいります。

 消費税の軽減税率についてお尋ねがありました。

 軽減税率については、対象、財源、中小事業者の事務負担等の課題が挙げられており、与党において、関係者ヒアリングなどを通じて精力的に議論が続けられているものと承知しております。

 与党においては、一〇%引き上げの対応について、関係者の理解を得た上で、本年十二月の税制改正大綱決定時までに結論を得るとされており、今後の議論を見守っていきたいと考えております。

 医療、介護の課題についてのお尋ねがありました。

 少子高齢化が進展する中で、安心して医療や介護サービスを受けられる体制を整備しながら、これを支える医療・介護保険制度の持続可能性を高めていくことは重要な課題です。このため、改革の全体像、進め方を明らかにする法律案を今国会に提出したところです。

 御指摘のあった、高額療養費制度の見直し、低所得者の保険料負担のさらなる軽減、介護保険制度の見直しなどの具体的な課題についても、今後、関係審議会における議論の状況も踏まえつつ、着実に改革を進めてまいります。

 子ども・子育て支援新制度の本格施行及び財源確保についてのお尋ねがありました。

 昨年八月に成立した子ども・子育て関連三法に基づき、早ければ平成二十七年四月からの本格施行に向けて、現在、新制度の実施に必要な各種基準などについて、鋭意検討、準備を進めております。

 また、待機児童の解消に向けて、新制度の施行を待たず、待機児童解消加速化プランの取り組みを推進してまいります。

 これらに必要な財源については、消費税財源などを活用し、しっかりと確保してまいります。

 生活保護関連法案と財源確保についてのお尋ねがありました。

 生活保護関連二法案は、生活保護受給者の就労等を支援するとともに、生活保護に至る前の段階からの相談や自立支援を強化することで、重層的なセーフティーネットを構築していくために必要不可欠なものであり、今国会における速やかな御審議と成立をお願いしたいと考えております。

 また、御指摘の生活困窮者支援などに活用する補助金についても、円滑な実施に向けた具体策を各自治体と御相談しつつ、必要な財源の確保に努めてまいります。

 被災地の現状に対する認識と復興加速にかける決意についてお尋ねがありました。

 震災から二年半がたち、高台移転等は順次着工の段階に移っているほか、福島についても避難指示区域の見直しを完了するなど、復興は新たなステージに移行しつつあります。

 一方、五万人の福島県の県外避難者の方も含め、今も二十九万人の方々が避難生活を送られています。

 このため、現場で復興に取り組んでいる自治体を支援するため、復興交付金を初めとした財政措置や職員応援のほか、手続の簡素化などを講じているところであります。

 今後とも、復興の加速化に向け、被災地の声に耳を傾けながら、現場主義のもと、きめ細かく、かつ迅速に取り組んでまいります。

 汚染水問題の解決に向けた取り組みについてのお尋ねがありました。

 汚染水問題については、東電任せではなく、国が前面に出て取り組んでまいります。

 今後の対応については、先般決定した汚染水問題に関する基本方針に基づき、地下水を汚染源に近づけない、汚染源を取り除く、汚染水を漏らさないという三つの基本方針のもと、地下水流入を防ぐための陸側遮水壁の設置や、汚染水の放射能リスクを下げるための高性能な多核種除去設備の整備、信頼性の向上に向けたタンクの取りかえなどの対策を実施してまいります。

 また、人為的なミスと関連したトラブルを防止するため、国の廃炉・汚染水対策現地事務所を設置するとともに、汚染水対策現地調整会議において、現場体制の強化や作業員の安全管理の徹底を図ってまいります。

 さらに、漁業関係者を初めとした地元の皆様に積極的に情報提供を行っていくとともに、風評被害の防止に向け、国内外に正確な情報を発信してまいります。

 これらの汚染水対策を確実に実施していくとともに、世界の英知を活用しつつ、予防的かつ重層的な対策を講じていくことにより、汚染水問題の解決に向けた取り組みをしっかりと進めてまいります。

 土地取得の課題についてお尋ねがありました。

 政府としては、関係機関と協力しながら、これまでも、財産管理制度や土地収用制度の手続の簡素化等により、用地取得の迅速化に効果を上げてきました。他方で、残された課題もあるものと承知しています。

 現場の声を聞きながら、用地取得のさらなる加速化を図るため、鋭意検討を進め、迅速に対応してまいります。

 国連防災世界会議についてのお尋ねがありました。

 第三回国連防災世界会議を仙台市で開催することは、東日本大震災の被災地の復興を世界に発信する重要な機会であると考えています。防災に関する我が国の経験と知見を国際社会と共有し、国際的な防災の取り組み指針を策定することなどにより、人間の安全保障の理念に基づいた国際貢献を行うことができるよう、関係省庁一体となって、同会議の成功に向けて取り組みを進めてまいります。

 被災者生活再建支援制度の見直しについてのお尋ねがありました。

 被災者支援のあり方については、このほど、有識者による検討会を立ち上げ、国と地方の連携など、さまざまな課題を幅広く検討することとしたところです。

 被災者の立場に立った制度のあり方をしっかりと検討し、被災者への支援を行ってまいります。

 TPPについてお尋ねがありました。

 交渉はこれから本格化します。守るべきものは守り、攻めるべきものは攻め、国益を追求するという政府の方針に何ら変更はありません。また、御指摘のありました衆参の農林水産委員会における決議もしっかりと受けとめて交渉してまいります。

 攻めの農林漁業への挑戦と、持続可能な農業に向けた施策についてお尋ねがありました。

 安倍内閣においては、あらゆる努力を傾け、強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村を実現していく決意です。

 このため、六次産業化の推進と農林水産物の輸出促進による高付加価値化を図るとともに、農地集積バンクによる農業の構造改革をしっかりと進め、コストの削減、生産性の向上をあわせて図ってまいります。

 旧戸別所得補償制度については、今後、将来に向けて安定的な新たな取り組みとなるよう、適切に見直しを行ってまいります。

 あわせて、我が国の美しいふるさとを守り、国土を保全する農業の多面的機能の発揮を図る取り組みを進め、新たな直接支払いの創設を検討してまいります。

 国内の農林水産業の活性化を図っていくことは待ったなしの課題となっており、農林水産業・地域の活力創造本部での検討を初め、今後、政府全体で全力を挙げて対応していきたいと考えております。

 再生可能エネルギーの取り組みについてお尋ねがありました。

 政府としては、今後三年程度の間に、再生可能エネルギーの普及を最大限加速させていきます。

 再生可能エネルギーの導入目標については、その導入状況等を見きわめながら検討してまいりますが、まずは、固定価格買い取り制度の着実な運用に加え、送電インフラの整備や規制改革、技術開発などに取り組んでまいります。

 また、再生可能エネルギーの地域主導での開発は地域経済の活性化に大きく寄与するものであり、その観点からも、再生可能エネルギーの導入の促進に全力を注いでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣太田昭宏君登壇〕

国務大臣(太田昭宏君) まず初めに、このたびの台風二十六号によりお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方々に対し、心からお見舞い申し上げます。被災者の救命救助、救出活動に全力を尽くします。

 防災・減災対策の取り組みについてお尋ねがありました。

 我が国は、集中豪雨が多発し、地震、津波などの災害が多い脆弱な国土であります。南海トラフ巨大地震や首都直下地震の切迫性も指摘されており、災害による被害を軽減するために、十分な対策を講じていく必要があります。

 その際、御指摘のとおり、ハードによる対策だけでなく、訓練や防災教育などのソフト対策も組み合わせながら、総合的に対策を講じていくことが重要と考えます。

 また、我が国では、高度成長期以降に整備したインフラが今後急速に老朽化していくため、インフラの維持管理、更新に重点的に取り組む必要があります。

 このため、本年を社会資本メンテナンス元年と位置づけ、総点検や修繕の取り組みを総合的に進めているところであります。

 その際、世界最先端の技術力の構築や長寿命化による更新費の平準化等、工夫を凝らしながら計画的、効率的に進めていくことが重要であると考えています。

 今後とも、防災・減災、老朽化対策、メンテナンス、耐震化、これらに重点を置いて、しっかり取り組んでまいります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 続いて、次の質疑者、渡辺喜美君。

    〔渡辺喜美君登壇〕

渡辺喜美君 みんなの党代表渡辺喜美であります。(拍手)

 初めに、台風二十六号による被害で亡くなられた方々に心からお悔やみを申し上げるとともに、行方不明の方々の一刻も早い救出をお祈りし、被災された皆様に対し、お見舞いを申し上げます。

 安倍内閣が誕生し、十カ月近くが経過をいたしました。外から見ておりますと、世論の支持率も高く、絶好調の一語に尽きる感じがいたします。

 その背景には、長引くデフレから脱却していく光が見えてきたことであります。安倍内閣は日本を衰退国家から再び右肩上がりの成長国家にしてくれるのではないかと、国民の多くが期待をしているからでありましょう。

 みんなの党が結党以来訴えてきた、二年でマイナスの物価をプラス二%以上に持っていく物価安定目標とそのための大胆な金融緩和は、安倍総理登場まで、どの内閣にも採用されませんでした。安倍総理の目のつけどころのよさに、以前、私は、長期政権の予感がすると申し上げましたが、現にそうなりつつあるような気がいたします。

 政治家の関心がなさ過ぎて、日銀官僚に任せ切りにしておいた金融政策ですが、安倍総理は、立派に、日銀官僚と闘い、マクロ経済政策という、国家経営の新たな扉を開きました。ぜひとも、デフレ脱却に向けた総理の不退転の決意をお聞かせください。

 ところが、今月一日、総理は、アベノミクスと全く異質の、消費増税を発表されました。

 民主党政権時代、増税官僚の口車に乗せられてつくられた増税スケジュールは、デフレ脱却という政策課題にとっては、百害あって一利なしであります。

 私が自民党にいた五年前までは山のように存在をした自民党内反増税派は、今や絶滅希少種になったようであります。これでもし総理が増税凍結を決断していたら、政局になっていたかもしれません。でも、増税官僚や党内抵抗勢力と闘う安倍総理の支持率は、株価とともに、さらに上がっていったでありましょう。

 しかし、総理は、ここで勝負をかけるのはまだ早いと考えられたのでしょうか、安全コースを選ばれました。

 お尋ねいたしますが、総理が増税の決断をされたのは、いつごろだったのでありましょうか。

 世界経済は、さまざまなリスクを抱えています。当面、アメリカの危機はひとまず回避されますが、万々が一、来年にでもアメリカ国債がデフォルトしたら、大混乱が起きるでありましょう。同じように、政治リスクを抱える中国経済が大変調を来しても、日本への影響ははかり知れないでありましょう。

 経済は生き物でありますから、来年四月までに何が起きるかわかりません。こうした経済非常事態が発生をしても、消費増税は予定どおり行うのでありましょうか。

 みんなの党は、消費税増税の前にやるべきことがある、このことを一貫して申し上げてまいりました。まず第一に、デフレ脱却が先、第二に、不公平の是正が先、第三に、無駄の削減、行政改革が先であります。

 総理もおっしゃるように、デフレ脱却は道半ば。アベノミクスの金融政策の効果は、二年かかって物価指数が二%以上になるんです。そのとき失業率は一%程度下がっているというのが、マクロ経済学の常識です。

 生産性向上と相まって、賃金は二年で三%から四%上昇する。規制改革、税制改革等による成長戦略も行って、企業の業績を改善させ、年率四%以上の名目成長率を達成できれば、税収はそれ以上に増加をしてまいります。プライマリー収支が改善し、財政再建にめどがつき、消費税率を上げる必要がなくなります。

 また、歳入庁の設置を通じ、税や保険料の取りはぐれを解消すれば、増税しなくとも増収は十分可能であります。

 さきの通常国会で成立したマイナンバー関連法は、その取りはぐれの解消にもつながるものであります。税、保険料の不公平を是正するための具体策として、歳入庁や消費税のインボイスの導入というのは、先進国では当たり前の話であります。

 さらに、国債整理基金特別会計への定率繰り入れといった無駄をやめるとともに、労働保険特会等の、その他の特別会計の積立金も取り崩して活用すべきであります。

 JT、NTTなど政府保有の上場株式の売却、日本郵政の株式売却、公務員宿舎等の売却、議員定数の削減、議員報酬の恒常的なカット、公務員人件費の削減も、増税の前にやるべきことであります。

 しかし、無駄の削減は不徹底、不公平是正の取りはぐれの解消にも着手しないで増税を行うというのでは、国民の理解は得られません。

 総理は、こうした、増税の前にやるべきことに真剣に取り組まれるお考えはおありでしょうか。

 みんなの党は、増税の前にやるべきことと増税凍結をセットにした法案を準備しております。御賛同される方々は、ぜひ一緒にやりましょう。

 総理は、消費税増税が景気の腰折れにつながることを懸念し、本年度の補正予算で五兆円規模の経済対策を実施するのでありますが、増税で景気が腰折れすることがわかっているのであれば、なぜ増税をされるのでありましょうか。経済対策と言われますが、増税しなければ、その必要もないではありませんか。

 しかも、消費税率三%引き上げによる負担増が、年間で八兆円、向こう五年で四十兆円になります。この経済対策は、一回限りの五兆円、つまり八分の一しか還元されないことになり、お話になりません。

 復興特別法人税の前倒しの廃止についても同様であります。これは一年限りの措置で、八千億円から九千億円の減税効果しかありません。

 みんなの党は増税には賛成いたしませんが、もし、増税し、景気後退回避が必要であるというのであれば、増税分と同額の減税をすべきであります。

 具体的には、所得税の税率引き下げと給付つき税額控除、法人税率の引き下げであります。法人実効税率引き下げは、国際競争力を高め、構造改革につながります。これら所得税及び法人税減税と給付つき税額控除で八兆円規模の対策にすることが、理論的には、増税のマイナス回避策としては一番正しいのであります。

 総理、一時しのぎの五兆円規模の経済対策ではなく、こうした恒久減税案を採用されてはいかがでありましょうか。御見解をお伺いいたします。

 福島第一の汚染水漏れは、大自然との闘いです。対応が大幅におくれてしまった原因は、東京電力を、破綻処理せずに、資本注入で中途半端な国有化をしてしまったところにあります。

 総理がおっしゃるように、東電任せにすることなく、国が前面に立って責任を果たすのであれば、株主や債権者に責任をとってもらう、東京電力の法的整理まで行うべきであります。五兆円に及ぶ送配電網を売却し、発送電分離を行えば、電力システム改革が一気に進んでいくではありませんか。総理の御決意をお伺いいたします。

 大飯、柏崎と、次々に原発再稼働申請が行われています。東海地震の震源域の真上に位置し、最も危ない原発と呼ばれる浜岡原発の再稼働申請も、年内に行われると言われております。

 原子力規制委員会の新規制基準は、問題があり過ぎです。例えば、施設の一部対策に対し猶予期間を認めていますが、なぜ、五年の猶予期間を設けても安全だと言えるのか。

 そもそも、福島原発事故の総括もいまだ行われておりません。このような状況で原発の再稼働など、あり得ないはずであります。総理の御見解を伺います。

 先日、小泉純一郎元総理のお話をお伺いする機会がありました。

 小泉元総理は、フィンランドの核廃棄物最終処分場オンカロを視察され、我が国の最終処分場が確保できない状況下での原発推進は無責任であり、原発ゼロしかないと決意をしたとのことでありました。極めて真っ当な御見解です。

 自民党政権の総理経験者で日米同盟重視を実践してこられた方がこうした発言を行うことの意味は極めて大きい。多くの国民も、原発推進が無責任であることに気がついているのではないでしょうか。

 そもそも、ほとんど地震のないフィンランドの、しかも永久凍土下の処分場ですら完全な安全は担保できないのに、どうして、荒ぶる列島、地震国の日本で処分場が設置できるというのでしょうか。これは、処分場候補地の選定が難しいという社会的な問題ではなく、技術的に困難をきわめるという、根本的な問題です。

 要するに、原発を推進するということは、トイレなきマンションに例えられるとおり、処分場がないままごみを出し続けるという行為であり、無責任以外の何物でもありません。

 小泉総理は、総理大臣が決断すればできるとおっしゃっておられますが、安倍総理の御所見をお伺いいたします。

 みんなの党は、原発ゼロと経済成長を両立させるため、経済的アプローチを重視しております。つまり、電力自由化を徹底することにより原発を市場淘汰していくという戦略であります。

 みんなの党がさきの通常国会に提出をした電力自由化推進法案では、法的分離については、平成二十八年までに措置するとし、所有権分離については、法的分離の措置後二年以内に、実施可能なものからできる限り早期に実現するとしています。また、電力小売事業参入の全面自由化についても、平成二十八年までに可能にするとしています。

 総理も、ベンチャー意欲の高い皆さんに自由なエネルギー市場に参入してほしいと述べられているのでありますから、中途半端な政府案ではなく、徹底した電力自由化を目指すみんなの党案を、一部でも採用されてはいかがでしょうか。総理の御見解を伺います。

 小泉元総理は、自然エネルギーについても熱く語っておられました。

 私が地元で農業用水を利用した小水力発電を行っていることを申し上げると、風力、太陽光、バイオマス、牛豚ふん尿のバイオガス発電等、堰を切ったように話し始められました。

 地産地消の再生可能エネルギーの世界では、農林業がエネルギー産業と隣接領域にあることに気がつかされます。発電と熱供給のコジェネを行えば、お金も資源も地域で循環するシステムと地域の成長産業を創出できるようになります。

 台風や竜巻被害の拡大を見てもわかるように、気候変動問題は全人類共通の課題です。

 しかし、残念ながら、総理の所信には、こうした政策が含まれていませんでした。改めて、総理に、再生可能エネルギーへの取り組みについて、御見解をお伺いいたします。

 安倍総理の成長戦略にかける熱い思いは、所信を聞いてよくわかりました。ただ、総理のチャレンジ精神を大事にする理念と提案されている政策との間には、相当のギャップがあるように思えてなりません。

 規制改革推進の具体的な仕組みである企業実証特例制度は、下手をすると、特定企業にだけ規制のお目こぼしをする、前代未聞の特定利益付与政策と言われそうな危うさがございます。要するに、天下りを受け入れているような特定企業に恩典を与えるための制度になりかねません。

 役所が支援企業を決めるような極端なターゲティング規制改革ではなく、既得権益と闘い、岩盤規制を打ち砕くべきであります。総理の御所見を伺います。

 成長戦略は、民間企業の自由な活動を担保し、これを後押しすればいいのであって、国が主導してしまえば、かえって民間企業の自由な活動を阻害することにつながります。

 みんなの党は、国主導の従来型産業政策には反対の立場です。投資を促進するのであれば、旧態依然としたターゲティングポリシーではなく、みんなの党がかねてより提案をしている、企業が自由に償却期間を選択できる自由償却税制を採用されてはいかがでしょうか。利益調整に使われるからだめなどという役人の理屈ではない、総理の御見解をお伺いいたします。

 規制改革を進めるには、官僚制度改革が必要です。総理は、国家公務員制度改革を推進していくとおっしゃいました。

 まず、幹部公務員について、政府案では、幹部公務員も、一般職のまま下位職員と全く同等の身分保障を受けることになっています。これでは、若手官僚や民間人の柔軟な抜てき登用が制約をされ、閉鎖的で年功序列の人事の温床がそのまま残されてしまいます。

 幹部公務員については、通常の一般職とは別制度であることを明確にし、若手、民間人の柔軟な抜てき登用を可能にすべきであります。

 野党時代、自民党は、みんなの党と一緒に幹部公務員法案を提出いたしました。これを再度提出するのがベストでありますが、自民党内守旧派が多過ぎて無理であれば、せめて、その精神だけでも今回の改正案に盛り込むべきであります。総理の御見解をお伺いいたします。

 次に、幹部職員の公募は、国家公務員制度改革基本法で規定をされた重要な事項です。しかし、政府案では、国家公務員法に基づく採用昇任等基本方針に定めるとされているだけで、これでは、民間からの公募ができなくなる可能性もあります。

 幹部の公募は、いわゆる甘利法案においても規定されていたところであり、しっかりと法律において規定をすべきであります。総理の御所見を伺います。

 官民人材交流の推進について、人事交流対象法人の拡大は、かつて民主党政権当時に進められた、実質的な天下りの拡大につながる可能性があります。総理、そのようなことにはならないと断言していただきたいと思います。いかがでしょうか。

 国家戦略スタッフ及び政務スタッフは、基本法において、内閣の重要政策ないし政策の企画立案を補佐するためのスタッフとされています。しかし、政府案では、国家戦略スタッフについて総理補佐官に置きかえようとしていますが、総理補佐官は、総理に対する企画立案ではなく、進言、意見具申を行うものであり、役割が異なります。これでは、基本法で予定していた内閣機能強化はできません。政務スタッフについても、同様に、企画立案機能の補佐を担わせることが必要です。

 政治家を政権内部にたくさん送り込んでも意味はありません。官僚のレトリックのわかる側近ブレーンを持っていることが極めて大事なことなのであります。総理の御見解を伺います。

 みんなの党は、当たり前の自由社会と一人前の国家を目指す政党です。戦時体制下の国家社会主義の残滓を一掃し、新しきよき時代の輝ける日本をつくっていきたいと願っております。

 安倍総理が闘う改革を進めていくのであれば、みんなの党は、真摯に協力をいたします。安倍総理は、御健康も回復され、体力、気力ともに充実しているとお見受けをいたします。ぜひとも、岩盤のような官僚主導体制に風穴をあけるような改革マインドを持ち続けて、国家経営を行っていただきたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 渡辺喜美議員にお答えをいたします。

 デフレ脱却に向けた決意についてお尋ねがありました。

 日本銀行におけるこれまでとは次元の違う量的・質的金融緩和の導入など、三本の矢の効果もあって、景気は緩やかに回復しつつあり、デフレ状況ではなくなりつつあります。しかし、日本の隅々までこびりついたデフレマインドを払拭することは容易ではなく、デフレ脱却に至るまでは、いまだ道半ばです。

 今後とも、三本の矢を着実に進めるとともに、経済政策パッケージを果断に実行することで、長引くデフレからの早期脱却を必ずや実現してまいります。

 消費税率引き上げの決断時期についてのお尋ねがありました。

 消費税率引き上げの判断に当たっては、安倍政権の最重要課題である、デフレ脱却・経済再生と財政再建の両立という道筋が確かなものか、最後の最後まで考え抜きました。

 熟慮の結果、賃金上昇と雇用拡大などを実現するための未来への投資として経済政策パッケージを果断に実行することによりその両立は可能であると判断し、十月一日に、予定どおりの引き上げを決断いたしました。

 経済非常事態が発生した場合の消費税率引き上げの判断についてお尋ねがありました。

 例えば、リーマン・ショックのような予見しがたい事態が発生し、著しく経済状況が悪化するようなことがあれば、その時点で、税制抜本改革法附則第十八条等に基づき、改めて、必要な対応を検討することとなります。

 経済成長と財政再建についてお尋ねがありました。

 今回の消費税率引き上げは、急速な少子高齢化が進む中、世界に誇る我が国の社会保障制度について次世代に安定的に引き渡していくために、予定どおり実施することとしました。

 あわせて、経済政策パッケージを実施することにより、消費税率の引き上げによる景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の成長力の底上げを図り、賃金上昇と雇用拡大などの実現を図ることとしました。これにより、デフレ脱却・経済再生と財政再建の両立を目指します。

 歳入庁等についてのお尋ねがありました。

 年金保険料の徴収体制強化等については、昨年成立した税制抜本改革法を受け、内閣官房副長官及び関係省庁政務官による検討が進められ、先般、論点整理が取りまとめられたところです。

 この論点整理においては、歳入庁に関するさまざまな問題点が指摘されるとともに、年金保険料の徴収の現状分析として、例えば国民年金については、一部の滞納者に対してしか督促を実施せず、多くの保険料債権を時効により消滅させていることが示されています。したがって、国民年金保険料の納付率向上等のためには、保険料徴収の基本的な考え方を整理し、督促の促進等の対策を行うことが重要であり、組織を統合して歳入庁を創設すれば問題が解決するものではないと指摘されたと承知しております。

 現在、論点整理に示した方向性に沿って、例えば、厚生労働省において、年金保険料の徴収体制強化等に関する専門委員会を立ち上げて議論を行うなど、担当省庁においてさらに検討が進められており、可能なものから速やかに実施してまいります。

 また、さきの通常国会で関連法案が成立した社会保障・税番号制度が導入されれば、社会保障・税分野全体を通じて、一定の限界があるものの、より正確な所得把握が可能となるものと考えております。

 なお、インボイスを導入するべきとの議論については、現行の請求書等保存方式も取引の把握の面で一定の効果があることにも留意しつつ、中小企業者等の事務負担の増加等も含め、幅広い観点から検討を行う必要があると考えております。

 消費税率引き上げの前にやるべきことに取り組む考えはあるかというお尋ねがありました。

 国民の皆様に御負担をいただく中で、各分野の歳出において、無駄があったり、優先順位の低いものに予算措置が行われているといった批判を招くようなことがあってはなりません。

 そうした考えのもと、引き続き、特別会計改革、独立行政法人の改革、政府資産の売却などに積極的に取り組むことで、行政機能や政策効果を向上させ、国民に信頼される、質の高い行政を実現してまいります。

 また、予算編成に当たっては、歳入面での努力とともに、聖域なき見直しを行っていき、歳出の重点化、効率化を図ってまいります。

 こうした取り組みを強力に進め、消費税率引き上げについて国民の皆様の御理解をいただきたいと考えております。

 消費税率引き上げの理由と、これに伴う経済対策についてお尋ねをいただきました。

 急速な少子高齢化が進む中、財源を確保し、世界に誇る我が国の社会保障制度について次世代に安定的に引き渡していくため、消費税率を、法律で定められたとおり、現行の五%から八%に、三%上げる決断をいたしました。

 この決断と同時に、消費税率の引き上げによる反動減を緩和して景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の経済の成長力の底上げと好循環の実現を図るため、経済政策パッケージを決定いたしました。この中で、来年度四―六月期に見込まれる反動減を大きく上回る、五兆円規模の大きな経済対策を策定することとしております。

 経済政策パッケージを果断に実行していくことで、デフレ脱却と経済再生に向けた道筋を確かなものとし、経済再生と財政健全化を同時に達成してまいります。

 なお、消費税増収分と同規模の恒久減税を行うことは、社会保障の安定財源の確保につながらず、また、財政健全化の達成も困難とするものであり、適切ではありません。

 東電の法的整理、電力システム改革についてのお尋ねがありました。

 現下の優先順位は何かと考えれば、今一番必要なことは、廃炉・汚染水対策を確実に実施し、同時に、電力需給の安定に万全を期すことと考えております。

 汚染水対策を初めとして、関係者が総力を挙げて取り組まなければならない中、緊張感を持続して対応に当たることが重要です。

 仮に、御指摘のように、会社更生法に沿って東京電力の法的整理を行うこととした場合、被害者の方々の賠償や、現場で困難な事故収束作業に必死に当たっている関係企業の取引債権が十分支払いできないおそれ、そして、直ちに東電と同等の電力供給を行える体制を確保できなくなるおそれ、そして、海外からの燃料調達や権益確保に支障が生じるおそれがあります。

 以上を総合的に勘案して、国民に悪影響や負担が及ばないよう、東電は、引き続き民間企業として、損害賠償、廃炉・汚染水対策、そして電力安定供給などを確実に実施していくべきだと考えています。

 国は、こうした東電の事業に対し、原子力損害賠償支援機構法の枠組みや技術的難易度の高い取り組みへの予算措置によって支援していきます。

 政府としては、今後とも、福島の一日も早い復興のため、東電任せにせず、国として、しっかりと前面に出て、果たすべき責任を果たしてまいります。

 さらに、電力システム改革により、ダイナミックなエネルギー市場をつくってまいります。電気事業法の改正を通じて、発送電の分離等も行っていく予定であります。

 電気事業者の今後の経営のあり方については、これらの事業環境の変化も踏まえ、各事業者において適切に判断していくべきものと考えております。

 新規制基準と再稼働についてのお尋ねがありました。

 原子力規制委員会において、国会事故調査委員会報告書などでこれまでに明らかにされた情報を踏まえ、海外の規制基準も確認しながら、世界で最も厳しい新規制基準を策定したところであります。

 新基準では、東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、地震や津波に耐える性能の強化に加え、巨大地震や大津波により万一過酷事故が発生した場合に対する十分な準備を取り入れています。そのために必要な機能は、全て整えていることを求めています。

 必要な機能の基準は直ちに適用した上で、さらに、信頼性を向上するためのバックアップ対策について、五年間のリードタイムを設けています。

 原発については、安全が最優先。その安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、事故の教訓を踏まえた、世界で最も厳しい規制基準を満たさない限り、再稼働はありません。

 使用済み燃料の最終処分場についてのお尋ねがありました。

 最終処分方法としての地層処分については、二十年以上の調査研究の結果、我が国においても、技術的に実現可能であると評価されています。

 もちろん、処分制度を創設して以降十年以上を経た現在も処分地選定調査に着手できていない現状を、真摯に受けとめなければなりません。国として、処分地選定に向けた取り組みの強化を、責任を持って検討してまいります。

 原発を含むエネルギー政策については、いかなる事態においても国民生活や経済活動に支障がないよう、エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含め、国として、責任あるエネルギー政策を構築してまいります。この際、原子力比率は、可能な限り引き下げてまいります。

 電力自由化についてのお尋ねがありました。

 みんなの党の法案の基本的理念にも掲げられている、競争環境の整備、市場原理の活用、電気料金の低廉化などについて、問題意識を共有できるところもあると考えております。

 一方、みんなの党の法案の、改革の内容や実施スケジュールについては、現実的でないと考えられる部分もあります。

 いずれにせよ、政府として、電力システム改革を断行する決意であり、ダイナミックなエネルギー市場をつくってまいります。

 再生可能エネルギーの取り組みについてお尋ねがありました。

 再生可能エネルギーの普及は、エネルギー安全保障の強化、低炭素社会の創出に加え、新しいエネルギー関連の産業創出、雇用拡大、地域の活性化の観点からも重要です。

 そのため、固定価格買い取り制度の着実な運用に加え、予算、税制措置、規制改革などにより、今後、三年程度の間に、再生可能エネルギーの普及を最大限加速させていきます。

 企業実証特例制度と規制改革についてのお尋ねがありました。

 産業競争力強化法案で創設する企業実証特例制度は、高い技術力を有する企業の提案を受け、安全性等を確保する措置が講じられていることを条件として、新たな規制緩和により、フロンティアへの挑戦を後押しするものです。この制度は、その挑戦の結果を踏まえて、あらゆる企業を対象とする仕組みとしており、広く産業競争力の強化に資するものです。

 こうした企業単位の改革とともに、国家戦略特区の創設、規制改革会議での検討などにより、地域単位、全国単位の三層構造で規制・制度改革を進めます。また、岩盤と言われる電力、医療、農業といった個別分野についても、改革を断行します。

 民間投資の促進のための税制についてお尋ねがありました。

 税務上の償却期間を企業の自由に任せるとの御提案は、恣意的な利益調整が可能にもなることから、公平公正な課税の観点から、慎重な検討が必要と考えます。

 投資を後押しする税制としては、今般の経済政策パッケージでは、設備投資減税など大胆な措置を講ずることとしており、経済の成長力の底上げを図ってまいります。

 幹部公務員についてのお尋ねがありました。

 国家公務員制度改革基本法は、必ずしも幹部職員を一般職とは別制度とするところまでは求めていないと考えております。

 幹部職員の任用等については、基本法に、「その職務の特性並びに能力及び実績に応じた弾力的なものとする」とされており、今回の改革においては、これを踏まえた法案を今国会に提出したいと考えております。

 幹部職員の公募についてのお尋ねがありました。

 幹部職員等の任用に当たっては、国家公務員制度改革基本法において、「国の行政機関の内外から多様かつ高度な能力及び経験を有する人材の登用に努めるもの」とされております。

 今国会に提出する法案においては、幹部職員の公募に関して、こうした基本法の趣旨を踏まえ、適切な措置を講じてまいります。

 官民人材交流の推進についてお尋ねがありました。

 国家公務員制度改革基本法では、「官民の人材交流を推進するとともに、官民の人材の流動性を高めること」を基本理念の一つとしています。

 今般、このような基本法の規定を踏まえ、官民人事交流法の交流対象となる法人の拡大を図ることも検討していますが、同法の目的に沿って、いわゆる天下りではなく、職員に民間の経営感覚等を体得させる仕組みとして活用することを念頭に置いております。

 国家戦略スタッフ及び政務スタッフの措置についてお尋ねがありました。

 国家戦略スタッフ及び政務スタッフについては、名称は、内閣総理大臣補佐官及び大臣補佐官としますが、所掌事務については、国家公務員制度改革基本法の規定に沿って、企画立案の補佐を担うものとし、国会議員や有識者を含め、行政機関の内外から適任者を登用できる仕組みとすることを検討しています。

 以上であります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問いたします。(拍手)

 初めに、台風二十六号がもたらした大災害によって犠牲になった方々への深い哀悼とともに、被災者の方々に、心からお見舞いを申し上げます。

 政府として、救助、救援に全力を尽くすとともに、速やかな激甚災害指定、被災者の生活再建への支援、自治体への財政支援など、万全の措置をとることを強く求めます。

 福島第一原発の放射能汚染水の問題は、極めて深刻な事態に立ち至っています。総理は、所信表明演説で、汚染水問題について、国が前面に立って責任を果たすと述べました。

 私は、国が全責任を持つというなら、政府の姿勢を、次の四つの点で根本的に転換することが必要だと考えます。

 第一は、放射能で海を汚さないことを基本原則として確立することであります。

 この間の東京電力のずさんきわまる対応の根本には、汚染水はいずれ海に流せばよいとする安易な考え方があります。原子力規制委員長までが、放射性トリチウムは希釈して放出することになるなどと公言しております。

 これらの考え方を一掃することが必要だと考えますが、いかがでしょうか。

 第二は、放射能汚染水の現状を徹底的に調査、公表し、収束宣言を撤回するとともに、非常事態という認識の共有を図ることです。

 この点で、総理が、状況はコントロールされている、完全にブロックされているなどと事実をねじ曲げる発言を行ったことは、有害きわまりないものであります。

 事実に反する発言は撤回し、政府の責任で、国内外の専門的知見を総結集した調査を行い、国民に情報を公表すべきではありませんか。

 第三に、政府が原発の再稼働に前のめりになっていることが、汚染水問題の解決にとって重大な障害となっております。

 東電は、再稼働を狙う柏崎刈羽原発の職員は千二百人体制を維持しながら、福島第一原発では千三百人から千人まで減らしました。再稼働最優先の姿勢によって、事故現場は疲弊し、深刻なトラブルが相次いでいます。

 再稼働のための活動は中止し、放射能汚染水問題の解決のために、持てる人的、物的資源を集中すべきではありませんか。

 第四に、東電に事故対策の主体を任せておいてよいのかが根本的に問われています。

 安易な仮設タンクに頼って汚染水を漏出させたのも、地下水の遮蔽壁の建設を先延ばしにしてきたのも、全て、コスト優先の東電の姿勢が原因でありました。もはや東電に当事者能力がないことは、誰の目にも明らかであります。

 既に債務超過に陥っている東電は破綻処理し、国が直接に収束、賠償、除染に全責任を果たす体制を構築すべきではありませんか。

 以上四点について、総理の見解を問うものです。

 総理は、一日、来年四月から消費税を八%に増税する方針を表明しました。八%への引き上げで史上最大の八兆円もの大増税を押しつける方針に、とても暮らしが成り立たない、商売が続けられないという、不安と批判の声が噴き出しています。

 今回の消費税大増税には、道理のかけらもありません。

 総理は、消費税増税が深刻な景気悪化をもたらすことを認め、それへの対応として、年末に決定する復興特別法人税の廃止を含めると六兆円という経済対策を打ち出しました。しかし、その中身は、大型公共事業の追加に二兆円、復興特別法人税の廃止や投資減税など大企業減税に二兆円というものです。

 所得が減り続けている国民から八兆円も吸い上げて、二百七十兆円もの内部留保を抱える大企業に減税をばらまく、これは、余りに不当な大企業優遇の政治ではありませんか。

 とりわけ、復興特別税について、国民には二十五年間の税負担を求めながら、企業だけは、三年間の期限を一年前倒しで廃止し、社会的責任を免除するというのはどういうわけか、国民に納得のいく説明をしていただきたい。

 総理は、消費税増税は財政再建のためと言いますが、増税をすれば財政がよくなるという前提自体が間違っています。

 一九九七年に消費税を五%に増税した際には、増税を引き金にした大不況による税収の落ち込みに加えて、景気対策の名による大企業減税や大型公共事業に巨額のばらまきを行った結果、増税後のわずか三年間で、国と地方の借金は四百四十九兆円から六百兆円へと拡大し、財政危機は加速しました。

 総理が今やろうとしていることも、同じではないですか。庶民増税で景気を悪化させ、景気対策の名で大企業減税と公共事業をばらまき、借金を積み上げるという古い自民党政治のやり方で、九七年の大失政を繰り返すつもりですか。総理の答弁を求めます。

 総理は、消費税増税は社会保障のためと言いますが、政府が現実にやっていることは何か。

 生活保護基準の引き下げに続き、困窮者を生活保護から締め出す法律の大改悪は、許すわけにいきません。

 政府が閣議決定した社会保障制度改革プログラム法案は、政府は自助自立のための環境整備等に努めると明記した上で、医療では、七十から七十四歳の窓口負担の二倍化、介護では、要支援の人を介護保険から外す、年金では、恒久的な支給削減、将来的な年金支給開始年齢の引き上げの検討など、手当たり次第の負担増と給付減が盛り込まれております。

 政府の言う自助自立のための環境整備とは、憲法二十五条に基づく社会保障を解体して、公的支えをなくし、国民を自助に追い込むということではありませんか。

 このような法案を提出しながら、消費税増税は社会保障のためと言うなど、厚顔無恥と言うほかないではありませんか。(発言する者あり)

副議長(赤松広隆君) 静粛に願います。

志位和夫君(続) 日本共産党は、国民の暮らし、経済、財政を壊し、一かけらの道理もない消費税大増税を中止することを強く求めるものであります。

 働く人の賃金を引き上げることは、デフレ不況から抜け出す最大の決め手であります。

 総理は、法人税を減税すれば賃上げにつながると述べています。しかし、その保証は一体どこにあるというのでしょうか。

 一九九七年から二〇一二年までに、法人税の税率は、三七・五%から三〇%へと引き下げられました。ところが、同じ時期に、働く人の賃金は下がり続け、平均年収は七十万円も落ち込みました。大企業の内部留保は、百四十兆円から二百七十兆円へと、百三十兆円も膨らみました。法人税を減税しても賃金は下がり続けたこの歴然たる事実を、総理はどう説明されますか。

 本気で賃上げを目指すというなら、これまでの姿勢の根本的転換が必要です。

 私は、総理に二つのことを提起するものです。

 第一は、政府として、経済界に、内部留保の活用で賃上げをということを正面から提起することであります。

 大企業の二百七十兆円の内部留保の一%を活用しただけで、八割の企業で月一万円の賃上げが可能になります。賃金を決めるのは労使の交渉ですが、政府として、経済界に、内部留保の活用を正面から提起し、賃上げの実行を迫ることは、賃上げの世論を広げる大きな力となります。総理にその意思があるかどうか、しかとお答えいただきたい。

 第二は、雇用のルールを強化し、非正規社員の正社員化を図り、人間らしい雇用を保障することです。

 政府が進めている、派遣労働の完全自由化や解雇自由の雇用特区、いわばブラック企業特区などは、直ちに中止、撤回すべきであります。労働者派遣法を抜本改正し、均等待遇のルールを確立し、正社員化の流れを推進するべきです。中小企業への手当てをしっかり行いながら、最低賃金を時給千円以上に引き上げるべきです。総理の答弁を求めます。(発言する者あり)

副議長(赤松広隆君) 静粛に願います。

志位和夫君(続) 若者を初め働く人を過酷な労働に追い立て、物のように使い捨てるブラック企業が社会問題になっています。

 日本共産党は、一昨日、違法行為へのペナルティーの強化、長時間労働の規制、ブラック企業の実態の情報公開などによってブラック企業を規制する法案を国会に提出いたしました。各党の賛同を得て成立を目指したいと考えますが、我が党の法案についての総理の見解を求めるものであります。

 総理は、国民の反対を押し切ってTPP交渉参加を決めたとき、二つのことを約束しました。

 一つは、国民への丁寧な情報提供です。

 総理は、交渉に参加すれば情報を入手しやすくなるとまで言いました。ところが、交渉初参加のマレーシア会合で政府代表が最初にやった仕事は、秘密保持契約への署名でした。その後、政府は、交渉経過は一切公開できないとして、日本政府がどういう提案をしているのかさえ、全く明らかにしておりません。

 総理、丁寧な情報提供という約束は、一体どうなったのでしょうか。明確な答弁を求めます。

 いま一つの約束は、強い交渉力で、守るべきものは守るでした。

 ところが、最近、自民党の西川TPP対策委員長は、農産物の重要五項目を関税撤廃の例外から抜けるか抜けないか、検討はさせてもらわなければならないと発言しました。

 自民党は、参院選公約で、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖などの農産物の重要五項目を聖域とし、それが確保できない場合はTPP交渉からの脱退も辞さないと国民に約束しております。重要五項目の関税撤廃の検討に踏み込むという自民党の姿勢は、みずからの公約を裏切るものであることは明瞭だと考えますが、いかがでしょうか。

 国民への二つの約束は、もはや完全にほごにされております。農業、医療、食の安全、国民生活を土台から壊し、経済主権をアメリカに売り渡すTPP交渉からの即時撤退を決断すべきであります。総理の答弁を求めます。

 最後に、政府が国会提出を企てている特定秘密保護法案は、憲法が保障する基本的人権をじゅうりんし、戦前のような軍事国家に逆行させようという希代の悪法であります。(発言する者あり)

副議長(赤松広隆君) 静粛に願います。

志位和夫君(続) とりわけ、秘密の範囲が政府行政当局の判断次第で際限なく広げられること、秘密を漏らした人だけでなく、秘密にアクセスしたり取材したりする国民やメディアの活動が重罪とされること、国会による秘密に対する調査権も制限されることなど、法案の内容は、民主主義の根幹である、国民の知る権利、言論・表現の自由を侵害し、憲法の基本原理を根底から覆すものとなっております。

 日本共産党は、国民の目、耳、口を塞ぐ悪法の国会提出を断念することを強く求めるものであります。

 総理の答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 志位和夫議員にお答えいたします。

 汚染水の海への放出についてのお尋ねがありました。

 汚染水による放射能の海への影響を福島第一原発の港湾内にとどめ、国民の健康を守っていくことが極めて重要であると考えています。

 汚染水への対応については、地下水流入量抑制による汚染水の増加の防止、汚染水処理施設の整備による汚染源の除去、タンクの増設による汚染水の管理といった手当てを講じることで、海への安易な放出は行わない方針です。

 収束宣言の撤回と汚染水の調査についてのお尋ねがありました。

 福島第一原発については、原子炉等の状態を継続的に監視しており、原子炉が安定的に冷却され、追加的な放射性物質の放出も大幅に抑制されていることが、客観的データで確認されています。

 他方、今なお厳しい避難生活を強いられている被災者の方々のことを思うと、私は、以前の政権が言った収束という気にはなれません。実際、私の政権で、収束と言ったことはありません。

 汚染水問題については、東電任せにせず、国が前面に出て対応してまいります。

 このため、地下水等の専門家を集めた汚染水処理対策委員会において検討を行うとともに、国際廃炉研究開発機構に内外の専門家を集め、さらには、汚染水問題に関する技術を広く内外から募集するなど、国内外の専門的知見を総結集して対応しています。

 また、汚染水対策の状況については、その都度公表しています。

 今後も、世界の英知を活用しつつ、汚染水問題の解決に向けた取り組みをしっかりと進めてまいります。

 汚染水問題に係る東京電力の姿勢についてのお尋ねがありました。

 福島第一原発の廃炉・汚染水問題への対応がおろそかになるようなことがあってはなりません。現場でトラブルが続いていることは大変遺憾です。

 東電においては、タンクからの汚染水の漏えい防止のためのパトロールの強化やタンクの取りかえの加速化等、廃炉・汚染水対策に取り組んでおり、人員面でも二百人増員を図ることとしています。

 原子力規制庁長官からは、東電の広瀬社長に対して、早急に現場管理が正常に行われるように手当てをすることなどをさらに求めております。

 柏崎刈羽原発の新規制基準への適合性申請に関しても、福島第一原発の廃炉・汚染水対策に万全を期すよう、東電を指導しております。

 東電の破綻処理についてのお尋ねがありました。

 現下の優先順位は何かと考えれば、今一番必要なことは、廃炉・汚染水対策を確実に実施し、同時に、電力需給の安定に万全を期すことと考えています。汚染水対策を初めとして、関係者が総力を挙げて取り組まなければならない中、緊張感を持続して対応に当たることが重要です。

 仮に、御指摘のように、会社更生法に沿って東京電力の法的整理を行うこととした場合、被害者の方々の賠償や、現場で困難な事故収束作業に必死で当たっている関係企業の取引債権が十分支払いできないおそれ、そして、直ちに東電と同等の電力供給を行える体制を確保できなくなるおそれ、海外からの燃料調達や権益確保に支障が生じるおそれがあります。

 以上を総合的に勘案して、国民に悪影響、負担が及ばないよう、東電は、引き続き民間企業として、損害賠償、廃炉・汚染水対策、そして電力安定供給などを確実に実施していくべきと考えています。

 国は、こうした東電の事業に対し、原子力損害賠償支援機構法の枠組みや技術的難易度の高い取り組みへの予算措置によって支援していきます。

 政府としては、今後とも、福島の一日も早い復興のため、東電任せにせず、国としてしっかりと前面に出て、果たすべき責任を果たしてまいります。

 消費増税及び法人減税の関係についてお尋ねがありました。

 消費税率引き上げによる財源は、全て社会保障の充実、安定化に充てることとしています。

 また、今般の経済政策パッケージでは、簡素な給付措置、住宅ローン減税の拡充などにより、個人の負担を緩和します。

 投資減税等についても、将来にわたって、経済成長を通じて、賃金上昇、雇用拡大を実現し、国民を豊かにするためのものであります。

 したがって、国民に負担を強い、大企業に減税をばらまくとの御指摘は、妥当ではないと考えます。

 復興特別法人税の前倒し廃止の検討についてのお尋ねがありました。

 復興特別法人税の廃止は、足元の経済成長を賃金上昇につなげることを前提に検討するものであり、企業収益の改善が、個人の所得の拡大、そして消費の拡大につながっていく好循環を実現することを目的としています。

 また、個人に対しては、簡素な給付措置、住宅ローン減税の拡充なども講じることとしています。

 今般の経済政策パッケージでは、これらにより、社会保障の充実や安定などのためにお願いする個人の負担を緩和しながら、同時に、将来にわたって賃金上昇、雇用拡大を実現するための、未来への投資を行うこととしたものであります。

 消費税率引き上げと経済政策についてのお尋ねがありました。

 今般の社会保障・税一体改革においては、一九九七年と異なり、消費税率引き上げ分は、全額、社会保障の充実、安定化に充てられます。

 加えて、今回決定した経済政策パッケージでは、簡素な給付措置や住宅ローン減税の拡充などにより、個人の負担を緩和することとしております。

 さらに、企業に対する投資減税や所得拡大促進税制の拡充などにより、将来にわたって、賃金上昇、雇用拡大を実現し、経済の好循環を生み出すことを目指しており、御指摘は当たらないものと考えております。

 生活保護関連法案についてお尋ねがありました。

 御指摘の法案は、必要な人には確実に保護を実施するという生活保護の基本的な考え方を維持しつつ、就労による自立の促進や、不正受給対策の強化、医療扶助の適正化を図るとともに、生活保護に至る前の段階の包括的な相談支援や、子供に対する学習支援などの取り組みを強化するものです。

 これらにより、国民に信頼される生活保護制度とするとともに、生活保護に至る前の段階における自立支援を強化し、重層的なセーフティーネットを構築してまいります。

 消費税の増税と社会保障改革についてお尋ねがありました。

 御指摘の法案は、急速な少子高齢化が進む中、財源を確保し、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度を確立するために、改革の全体像、進め方を明らかにするものです。

 改革に当たっては、自助自立を第一に、共助と公助を組み合わせ、弱い立場の人にはしっかりと援助の手を差し伸べることとしており、社会保障を解体するといったものでは全くありません。

 なお、消費税率引き上げによる財源は、全て社会保障の充実、安定化に充てることとしております。

 法人税と賃上げに関するお尋ねがありました。

 これまで、法人税減税等がなかなか賃金につながらなかったのは、先の見えないデフレ状況にあったことが最も大きな要因であったと考えます。デフレが続く環境では、企業は、設備投資や賃上げといった未来の投資を控えて、内部留保を優先しがちであったと認識しています。

 次元の異なる三本の矢の政策を一体的に進める中で、景気は緩やかに回復しつつあります。デフレ状況ではなくなりつつある今こそ、企業収益の向上が設備投資の増加や賃金上昇、雇用拡大につながり、消費を押し上げることを通じてさらなる企業収益につながっていく好循環を実現する絶好のチャンスであります。

 このため、今回の経済政策パッケージに、大胆な投資減税や賃上げを促進する税制、さらには、復興特別法人税の一年前倒しでの廃止の検討を盛り込みました。政労使の間で、経済の好循環実現に向けた共通認識を醸成するための政労使会議も立ち上げました。

 こうした取り組みを通じて、企業収益の拡大を賃金上昇や雇用拡大につなげていく好循環を全力で実現してまいります。

 労働者派遣制度や雇用特区、最低賃金についてのお尋ねがありました。

 現在検討中の労働者派遣制度の見直しや雇用特区については、安倍政権が掲げる、多様な働き方の実現と失業なき労働移動を目的としたものであります。したがって、賃下げ政策などというレッテル張りは、事実誤認であり、全く不適切であります。

 労働者派遣制度の見直しについては、派遣労働者の保護や雇用の安定を図るとともに、労使双方にとってわかりやすい制度とする観点から、関係審議会での議論をお願いしているところであります。

 最低賃金については、本年度、全国平均で十五円の引き上げが行われたところですが、今後とも、中小企業への支援を実施しつつ、その引き上げに向けて努めてまいります。

 日本共産党提出の労働基準法等の一部を改正する法律案についてのお尋ねがありました。

 御党が提出された法案については、国会において御議論がなされるものと考えております。

 政府としては、若者の使い捨てが疑われる企業は社会的に大きな問題だと考えており、相談体制、情報発信、監督指導等の対応策を強化するなど、現行の労働基準法等の遵守について、しっかりと取り組んでまいります。

 また、若者応援企業宣言事業を活用するなど、企業の魅力発信や就職関連情報の開示を進めること等により、若者が適切な職業選択ができるように努めてまいります。

 TPPと情報提供についてお尋ねがありました。

 対外交渉なのでお話しできることとできないことがありますが、これまでも、私自身が、TPP交渉に臨む安倍政権の基本的な考え方等について国会や記者会見等の場で御説明し、国民にTPP交渉の理解を深めてもらうよう努力をしてまいりました。

 また、交渉会合の前後に関係団体や地方公共団体等に対し随時説明会を開くなど、できるだけ、情報を提供し、御意見をいただく機会を設けてきています。

 今後も、できる限り国民への情報提供に努めるとともに、国民の声をしっかりと踏まえ、交渉を通じて国益を実現してまいります。

 TPPと重要五品目についてのお尋ねがありました。

 我々が選挙でお示しした公約は、たがえてはならないと考えています。政府としては、与党の立場を体し、全力を挙げて交渉に臨んでおります。

 交渉は、これから本格化します。守るべきものを守り、攻めるべきものを攻め、国益を追求するという政府の方針に、何ら変更はありません。

 TPP交渉からの撤退についてのお尋ねがありました。

 TPPは、アジア太平洋地域において、普遍的価値を共有する国々と二十一世紀型の新たな経済統合ルールを構築する野心的な試みであり、この地域の成長の起爆剤になるものと考えています。我が国の成長戦略にとっても不可欠であります。

 他方、我が国には、息をのむほど美しい田園風景、農村の伝統文化、その中から生まれた世界に誇る国民皆保険制度など、世界に誇るべき国柄があり、これらの国柄を、私は、断固として守ってまいります。

 我が国は、交渉参加はおくれましたが、交渉の中で今や中核的な役割を担っています。これから交渉が本格化する段階において、交渉からの撤退についてお話しすることは、国益の観点からも、不適切と考えております。

 特定秘密保護法案についてのお尋ねがありました。

 情報漏えいに関する脅威が高まっている状況や、外国との情報共有は情報が各国において保全されることを前提に行われていることに鑑みると、秘密保全に関する法制を整備することは、喫緊の課題であります。

 新たに設置される予定の国家安全保障会議の審議をより効果的に行うためにも、秘密保全に関する法制が整備されていることが重要であると認識しております。

 一方で、国民の知る権利や報道の自由についての配慮も重要なことであると認識しており、さまざまな御意見を伺いながら、適切に対応してまいります。

 その上で、政府としては、特定秘密の保護に関する法律案を早急に国会に提出できるよう努めてまいります。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、鈴木克昌君。

    〔鈴木克昌君登壇〕

鈴木克昌君 私は、生活の党を代表し、安倍総理の所信表明演説に対し、生活の党の政治方針及び重要政策についての私の所信を申し上げながら、総理の御意見を伺います。(拍手)

 総理の答弁の内容によっては、再質問をさせていただきます。

 まず、冒頭、台風二十六号によりお亡くなりになられました方々の御冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、被災された方々に対しまして、心からお見舞いを申し上げたいと存じます。

 さて、私は、現在の日本の政治のあり方に対し、かつてない強い危機意識を持っております。自民党に対抗できる政権担当能力がある政治勢力を結集できないままに次の総選挙を迎え、一強体制が継続するようなことになれば、日本の社会は一層混迷を深めます。

 国内外の歴史が示すとおり、一党支配は、政治から健全な競争を排除し、国民不在の政治をもたらし、その結果として、国民を不幸な目に遭わせてきました。今またその方向へ日本丸のかじが切られつつあります。

 こうした事態を避けることができるのが民主主義の力であります。時の与党が国民との約束を破れば、もう一方の政治勢力が取ってかわり、国民の力で政治を変える、これが民主主義の真髄であります。

 しかしながら、日本では、戦後半世紀以上にわたり、一党支配体制が継続しました。中選挙区制のもとで、野党は単なる批判勢力にとどまり、政権を担う意思も用意もありませんでした。だからこそ、私たちは、二十年前、政権交代可能な民主主義へ、また、その扉を開くために、小選挙区制導入に奔走をしたわけであります。

 民主党に対する信頼を深めた国民は、二〇〇九年夏の総選挙で政権を託すことを選択しました。これで国民主導の政治が進むと期待されましたが、公約の実現が後退していく中、ついには、国民との約束を守ろうとする議員を排除し、自民党、公明党と消費税増税法を成立させてしまいました。これは、国民の政治への信頼を大きく傷つけ、政権交代ある民主主義を台なしにする政治行動でありました。

 今、自民党政権は、国民生活を危険にさらす政治をどんどんと推し進めています。非正規雇用の拡大、消費税増税、原発再稼働、TPP推進など、国民の生命や財産、基本的人権よりも国家、いわば政官業の既得権益者の論理を第一にしています。

 これに対し、雇用の安定化と消費税の増税の凍結、新エネルギーへの大転換、TPPと異なる自由貿易の推進など、国民の生活を中心に据えた政策を実現しようとする政治勢力の結集が不可欠であります。

 次の選挙での政権交代を目指し、国民に対して責任を持つことができる、批判するだけでない野党、私たちは、責任ある健全野党ともいうべきこの新しい器を構築するために全力を尽くす強い意思があることを、ここに改めて国民の皆様に対して宣言いたします。(発言する者あり)

副議長(赤松広隆君) 静粛に願います。

鈴木克昌君(続) さて、政府は、十月一日、消費税率を来年四月に八%に引き上げることを決定しました。

 本来、増大する社会保障費に充てるための増税であったにもかかわらず、消費税率が上がるから経済対策が必要だと主張し、法人税率の引き下げ、旧来型の公共事業、また、一万円のばらまきを計画しています。これでは、何のために増税するのか、現政権の論理矛盾は甚だしいとしか言いようがありません。

 安倍総理は、所信表明演説の中で、消費税増税は社会保障制度を次世代に引き渡していく財源を確保するためであると述べてみえますが、今後どのように社会保障費を確保していくのか、明確な答弁を求めます。

 さらに、今、消費税増税を行える経済環境にあると言えるのでしょうか。政府は声高に景気回復を強調しますが、実態が全く伴っていません。

 安倍総理は、所信表明演説の中で、二四半期連続で年率三%以上の成長となったなどと各種指標の改善を主張されますが、それらは補正予算や老朽化した設備の更新投資の影響であり、現実は、力強い回復とはほど遠い状況にあります。民間の基本給は十四カ月連続で減少し、消費者マインドも三カ月連続で悪化しています。ここで消費税率を上げれば、確実に景気は失速し、逆に税収全体が大きく減少することになりかねません。

 安倍総理、本当に今、消費税増税を行える経済環境にあると言えるのでしょうか。具体的なデータを示してお答えください。

 現在、政府と日銀は物価上昇に血眼になって取り組んでいますが、そうした中、確実に悪い物価上昇の足音が聞こえています。円安による電力・ガス料金や一部食料品等の価格の上昇は、徐々に生活を苦しめつつあります。

 今のように非正規雇用が増大し、低所得者がふえる中で消費税率を引き上げれば、このような悪い物価上昇も相まって、中小零細企業や農林漁業だけでなく、広く国民生活全体に深刻な影響を及ぼすことが確実であります。

 安倍総理は、物価上昇が国民の日々の生活に及ぼす影響をどのように考えてみえるのですか。率直な認識をお聞かせください。

 ところで、総理、消費税増税の前提であるべき社会保障制度の改革は進んでいるのでしょうか。答えは明らかにノーであります。医療も介護も年金も、削減の話だけがひたすら先行しています。政治や行政の身を切る努力もどこへ行ってしまったのでしょうか。

 残念ながら、安倍総理の所信表明演説からは、社会保障制度改革や政治・行政改革の情熱が伝わってきません。本当にやり遂げる決意があるのでしょうか。お答えください。

 安倍総理は、消費税増税とあわせて景気対策を行うと言われています。ブレーキとアクセルを一緒に踏んで、果たして車がうまく進みますか。結局、増税分が従来の政策の延長に使われてしまいませんか。我々としては、貴重な税金が垂れ流されることを大変憂慮します。

 私たち生活の党は、性急な消費税率引き上げに反対であります。

 消費税増税は最後の手段でなければなりません。まず、政治と行政は身を切る努力を最大限行い、地方分権で無駄な事業を廃し、社会保障制度改革に結論を出し、非正規雇用から正規への転換を進め、金融政策頼みではない、家計収入をふやす経済政策に取り組むべきであります。今求められているのは、そうした姿勢ではないでしょうか。安倍総理の答弁を求めます。

 さて、安倍総理、福島第一原発の汚染水問題はコントロールされていると強弁されましたが、私は、福島第一原発事故は有事であり、人類の存亡にもかかわる危機であると認識しています。このような深刻な問題を放置していたら、日本だけでなく、世界じゅうの国々の将来にとって取り返しのつかないことになるのではないでしょうか。

 ですから、今日本が最優先でやるべきことは、何十兆円かかろうが、何十年かかろうとも、一致団結して放射能を封じ込めることであります。当面の利益、利害のために、国家百年の大計を誤ってはいけません。

 汚染水は海に本当にじゃぶじゃぶ漏れていると思いますし、地下水にも入ってきており、国内外ともに被害が広がってきています。

 安倍総理は、所信表明演説の中で、基準値を大幅に下回っていると述べるのみで、汚染水問題の深刻さを全く理解していないと言わざるを得ません。安倍総理の認識を改めてお伺いいたします。

 総理、原発事故を封じ込めるためには、東電を矢面に立て、国が後ろから支援する今のシステムではだめです。政府主導に転換して、政府が責任を持って全力で封じ込めないと無理です。

 震災に伴って復興庁ができましたが、実態は、役人のポストがふえ、ただ余計に手続がふえただけであります。私どもがそういう組織をつくるとしたら、まず、全権限と予算を与え、復興庁が地方に予算を交付し支援しながら、地方が自主的に復興ができるようにします。

 原発事故についても、政府が現場の事業主体となって徹底的に放射能を封じ込める、そういうやり方にすべきだと思いますが、総理はどのようにお考えでしょうか。答弁を求めます。

 チェルノブイリ原発事故の二、三年後から子供たちのがんが多くなりましたが、福島の子供のがん発症もふえています。また、事故現場周辺は、もはや住民が戻ることができません。これほど残酷なことはありません。(発言する者あり)

副議長(赤松広隆君) 静粛に願います。

鈴木克昌君(続) 安倍総理は、所信表明演説の中で、ふるさとの福島に帰ろうとしている若いお母さんの手紙を引用しました。

 今、政府がなすべきことは、ふるさとを破壊したことを率直にわび、第二のふるさとと再出発の支援をして、前向きな人生設計を構築できるようにしていくことではないでしょうか。安倍総理の答弁を求めます。

 次に、TPPについて、十月八日の環太平洋パートナーシップ首脳声明に、TPP交渉参加国の首脳はTPP交渉が完了に向かっていることを公表できて喜ばしく思うとあるが、総理は、TPP交渉の現状は日本にとって順調と言い切れますか。このことをお聞きいたします。

 さて、話はかわりますが、最後に、被災地の復旧復興に支障を出さないことが前提ですが、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を我が国経済の発展の大きなチャンスとするため、二〇二七年開業予定の東京―名古屋間リニア中央新幹線を前倒しして、二〇二〇年までに国家プロジェクトとして開業させることで、宿泊、交通等が分散でき、首都圏、中部圏が一体となった開催が望めると思いますが、よい公共事業の例として、総理の所見をお聞かせください。

 今日、一強他弱の政治状況が現出しましたが、これは決して大多数の国民が望んでいる姿ではありません。全国各地で、新しい政権をつくってほしいという国民の声を聞いております。

 私たちは、その期待に応えられるよう、何としても、国民の生活を第一とする受け皿をつくり上げたいと思います。それによって、日本の議会制民主主義を緒につけ、今度こそ定着させて、日本の本当の民主化を実現するつもりです。

 国民の皆様、どうか、一回の失敗に懲りずに、もう一つの政治勢力結集にお力を賜りますようお願い申し上げます。

 以上で私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 鈴木克昌議員にお答えをいたします。

 消費税率引き上げの目的と社会保障費の財源確保についてお尋ねがありました。

 今般の消費税率引き上げは、社会保障と税の一体改革を進め、社会保障の安定財源確保と財政健全化を同時達成していくためのものです。また、経済政策パッケージは、消費税率の引き上げによる反動減を緩和して景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の経済の成長力の底上げと好循環の実現を図るためのものです。

 財源確保のための消費税率引き上げと同時に、保険料収入や税収の基盤である強い経済を取り戻すことによって、社会保障制度を次世代に安定的に引き渡してまいります。

 消費税率引き上げに係る経済状況に関するお尋ねがありました。

 足元の経済指標を確認すると、実質GDP成長率は二四半期連続で三%以上のプラスとなり、先進国では最も高い成長であります。また、雇用情勢は、有効求人倍率が、昨年末の〇・八三倍から、ことしの八月、〇・九五倍、このように改善をしております。リーマン・ショック直前の水準となるなど、このように改善をしております。

 さらに、物価の動向を総合して見ますと、デフレ状況ではなくなりつつあるわけでありまして、八月のコアでありますが、前年比〇・七%の上昇となっているわけであります。景気は緩やかに回復しつつあると認識しております。

 こうした中で、我が国経済の縮みマインドは変化しつつあり、今後、大胆な経済対策を果断に実行し、景気回復のチャンスをさらに確実なものとすることにより、経済再生と財政健全化は両立し得ると考え、今般の判断に至ったところであります。

 物価上昇が国民生活に及ぼす影響についてお尋ねがありました。

 私の内閣が目指す経済再生は、物価だけが上がるということではなく、企業収益の拡大が賃金の上昇や雇用の拡大につながり、消費の拡大や投資の増加を通じてさらなる企業収益の拡大に結びつくという好循環の実現を目指しています。

 このため、政府としては、三本の矢を着実に推進するとともに、経済政策パッケージを策定し、所得拡大促進税制の拡充などを盛り込んだところであります。

 また、先般立ち上げた政労使会議において、経済の好循環実現に向けた共通認識の醸成を政労使間で図ってまいります。

 雇用、賃金の改善を伴う望ましい物価上昇を実現し、全国津々浦々まで景気回復の実感を届けられるよう、全力で取り組んでまいります。

 社会保障改革と政治・行政改革に対する決意についてのお尋ねがありました。

 社会保障制度改革については、社会保障制度の充実と重点化、効率化を図り、持続可能な制度を確立するため、改革の全体像、進め方を明らかにする法律案を今国会に提出したところであり、着実に改革を実施してまいります。

 また、選挙制度改革等の政治改革については、与党がリーダーシップをとって、建設的な議論を行い、早期に結論を得てまいりたいと考えております。

 行政改革についても、行政事業レビューの取り組みを徹底し、無駄の撲滅を進めることで、毎年度の予算編成において、可能な限りの歳出削減・抑制に努めるなど、着実に前に進めてまいります。

 先般の演説では、成長戦略の実行などの課題について重点的に所信を述べさせていただいたところですが、社会保障制度改革や政治・行政改革についても大変重要な課題であると認識しており、しっかり取り組んでまいります。

 消費税率引き上げは最後の手段であるべきではないかとのお尋ねがありました。

 政治・行政改革や地方分権改革、社会保障制度改革、さらには雇用のあり方の見直しなど、いずれも大変重要な課題であると考えており、着実に前に進めてまいります。

 例えば、行政改革については、行政事業レビューの取り組みを徹底し、無駄の撲滅を進めることで、毎年度の予算編成において、可能な限りの歳出削減・抑制に努めてまいります。

 また、社会保障制度改革については、その全体像、進め方を明らかにする法律案を今国会に提出したところであります。着実に改革を実施してまいります。

 さらに、今般の経済政策パッケージでは、家計の負担を緩和するため、簡素な給付措置や住宅ローン減税などを行うとともに、経済の好循環を目指し、所得拡大促進税制を拡充するなど、雇用拡大、賃上げ促進のための措置も講ずることとしております。

 今回の消費税引き上げは、性急に行うものではなく、こうした政策の実行とあわせて行うものであります。

 汚染水問題についてお尋ねがありました。

 福島第一原発の汚染水問題については、福島の復興再生を加速するため、一刻も早く解決しなくてはならない、最優先で取り組むべきものと考えています。

 私が所信表明で食品や水への影響は基準値を大幅に下回っているという事実を述べたのは、漁業者の方々が事実と異なる風評に悩んでいる現実を踏まえて申し上げたものであります。

 私は、この問題の重要性と深刻さを踏まえて、所信表明で、福島第一原発の廃炉・汚染水対策を全力でやり抜いてまいります、東京電力任せにすることなく、国が前面に立って責任を果たしてまいりますとも申し上げました。

 この認識に基づき、先般決定した汚染水問題に関する基本方針で示した対策を確実に実施していくとともに、国内外の英知を活用しつつ、予防的かつ重層的な対策を講じていくことにより、汚染水問題の解決に向けた取り組みをしっかりと進めてまいります。

 地方が自主的な復興ができるようにすべきとの、また、原発事故の対応についてのお尋ねがありました。

 東日本大震災からの復興については、復興庁が司令塔としての役割を果たし、復興交付金など自由度の高い財源や特区制度などを用意して、自治体が主体的に復興に取り組めるような仕組みとしております。

 一方、福島第一原発の廃炉に向けた取り組みにおいては、炉の設置者で、現場に精通した東京電力が実施主体としての責任を引き続きしっかりと果たすべきものと考えていますが、世界にも前例のない困難な事業であり、民間事業者だけで実施することは困難であるため、特に技術的難易度の高い事業については、国が財政措置を講じて取り組んでいます。

 原発被災者の人生設計についてお尋ねがありました。

 福島第一原子力発電所の事故という深刻な事故が起こり、多くの方々に大変な被害を与えていることについて、真摯に受けとめなければならないと考えています。

 被災者の方々が故郷に帰還されるかどうかの判断は、地元自治体及び個々人の意思を尊重すべきと考えます。政府としては、自治体とも十分に相談、協力しながら、個々人が前向きな人生設計を構築するために必要な、線量の見通しや地域の将来像等をしっかりと示していくことが重要であると考えます。

 なお、新しい生活を選択する方々には、賠償金の支払いのほか、住宅再建のための融資や職業訓練など、被災者向けの支援を行っており、引き続き、被災者に寄り添いつつ、福島の復興と再生を全力で進めてまいります。

 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会及びリニア中央新幹線についてお尋ねがありました。

 リニア中央新幹線を二〇二〇年東京大会までに開業させることについては、JR東海が技術的な観点からなかなか難しいとの考えを示しているものと承知をしておりますが、御指摘のように、東京大会は、これまでの縮み志向の経済を払拭する大きなチャンスとなるものと考えております。

 政府としては、二〇二〇年の大会が、東京のみならず、首都圏や中部圏も含め、日本全体が活力を取り戻す弾みとなるよう、しっかりと取り組んでまいります。

 TPPについてもお尋ねがありました。

 先日バリで行われたTPP首脳会合では、首脳間の率直な意見交換を通じて、年内妥結に向けた大きな流れができました。難しい交渉分野が残されていることは事実ですが、今後、政治決断をしなければならない課題について、首脳間で認識を共有し、年内妥結に向けて政治的指示を出すことに合意したことは、大変大きな成果であります。

 日本は、今や交渉の中核的な役割を担っており、交渉の年内妥結に向けて、引き続き積極的な役割を果たしていきたいと考えています。

 TPP交渉では、守るべきは守り、攻めるべきは攻めていくことによって、国益にかなう最善の結果を追求してまいります。

 以上であります。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣     麻生 太郎君

       総務大臣     新藤 義孝君

       法務大臣     谷垣 禎一君

       外務大臣     岸田 文雄君

       文部科学大臣   下村 博文君

       厚生労働大臣   田村 憲久君

       農林水産大臣   林  芳正君

       経済産業大臣   茂木 敏充君

       国土交通大臣   太田 昭宏君

       環境大臣     石原 伸晃君

       防衛大臣     小野寺五典君

       国務大臣     甘利  明君

       国務大臣     稲田 朋美君

       国務大臣     菅  義偉君

       国務大臣     根本  匠君

       国務大臣     古屋 圭司君

       国務大臣     森 まさこ君

       国務大臣     山本 一太君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  小松 一郎君


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