衆議院

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第5号 平成25年10月29日(火曜日)

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平成二十五年十月二十九日(火曜日)

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  平成二十五年十月二十九日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 産業競争力強化法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 産業競争力強化法案(内閣提出)の趣旨説明

議長(伊吹文明君) この際、内閣より提出されております産業競争力強化法案について、趣旨の説明を求めます。経済産業大臣茂木敏充君。

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 産業競争力強化法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 長引くデフレによって低迷してきた我が国経済を再興するためには、大胆な政策により、民間主導の持続的な経済成長を実現していくことが必要です。このため、アベノミクスの三本目の矢である、民間投資を喚起する成長戦略を着実かつ早急に実行に移すことにより、日本経済の三つのゆがみ、すなわち、過剰規制、過少投資、過当競争を是正していきます。

 このため、政府一丸となって計画的に取り組みを進める実行体制を確立するとともに、過剰規制を打破するための規制改革の推進や、過少投資、過当競争の是正につながる産業の新陳代謝の促進などにより、我が国の産業競争力を強化すべく、本法案を提出した次第であります。

 次に、本法案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、成長戦略を政府一体となって強力に実行するための仕組みを創設いたします。

 具体的には、平成二十五年度以降の五年間を集中実施期間として、産業競争力の強化に関する施策を集中的かつ計画的に実施する期間と位置づけるとともに、集中実施期間において政府が重点的に講ずべき施策の内容等を定めた実行計画を策定し、産業競争力の強化に関する施策の総合的な推進及び迅速かつ着実な実施を図ります。

 第二に、規制改革を強力に推進するための制度を新たに創設します。

 新たな事業活動を実施する企業に、安全性等を確保する措置を講じることを前提に、規制の特例措置を認める制度を創設し、また、現行の規制の適用範囲が不明確な部分においても、企業がちゅうちょすることなく新分野進出等の取り組みを行い得るよう、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度を創設することにより、意欲ある民間企業の創意工夫や挑戦を支援します。

 第三に、産業活動における新陳代謝の活性化の促進を図るための業種横断的な支援策を講じます。

 ベンチャー企業に対する資金供給を円滑化し、その成長を後押しするとともに、世界に通用する競争力の高い事業の創出や新たな事業への挑戦等の事業革新を強力に推進するために、企業が取り組む事業再編を促進してまいります。

 さらに、設備投資を通じた企業内での新陳代謝の活性化のため、リスクの高い先端設備投資を促進するための措置を講じます。

 第四に、中小企業の活力を再生する措置を講じます。

 地域における創業を支援するため、市区町村が民間の創業支援事業者と連携して創業支援体制を構築する取り組みに対して国が全面的に支援するとともに、中小企業の事業再生の支援を強化します。

 さらに、産業競争力の強化に資するその他の措置として、国立大学法人等によるベンチャー出資の特例や、中小・ベンチャー企業等を対象とした特許料の減免措置等を図るとともに、株式会社産業革新機構によるオープンイノベーションの促進や早期事業再生の円滑化等、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法に盛り込まれた措置のうち、成長戦略の実行及び加速化に必要なものについて、所要の見直しを行った上で本法案に位置づけます。

 以上が、本法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 産業競争力強化法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(伊吹文明君) ただいまの法案の趣旨の説明に対し質疑の通告がありますので、順次これを許します。まず、山際大志郎君。

    〔山際大志郎君登壇〕

山際大志郎君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました産業競争力強化法案について質問いたします。(拍手)

 昨年暮れの政権交代以降、日本経済の再生を最大の使命として、いわゆるアベノミクスの三本の矢、すなわち、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を切れ目なく連続して放った結果、長いデフレの間に日本社会、そして我々日本人に蔓延していた閉塞感も、このごろでは、ようやく払拭の兆しが見られるようになってまいりました。

 この景気回復の流れを確実なものにするためには、アベノミクス第三の矢である、民間投資を喚起する成長戦略が極めて重要であることは言うまでもありません。

 政府は、六月に、日本再興戦略を取りまとめました。私も内閣府大臣政務官として戦略作成に携わりましたが、日本再興戦略を実行に移すには、それを裏打ちする法整備が必須であると感じておりました。

 そのような流れの中で、安倍総理も所信表明で述べられたように、日本再興戦略を、ただの作文にせず、実行に移すために、産業競争力強化法案が提出されたと認識しています。

 そこで、まずは茂木大臣に、アベノミクスの実現による日本再興への強い思いを述べていただき、次に、産業競争力強化法案に基づき、具体的にはどのように成長戦略に盛り込まれた諸施策を実行に移していくのかを伺います。

 次に、本法案全体の理念、狙いについてです。

 日本経済は、長期にわたる停滞とデフレ進行の結果、企業は設備投資や賃金を抑制し、消費者は将来不安や所得減少から消費を抑制し、結果、デフレがますます加速するという悪循環に陥っていました。

 この悪循環を断ち切るため、本法案に盛り込まれた施策により、企業の収益が改善され、新たな投資が喚起されると同時に、それが雇用の増大や従業員の給与増につながり、消費がふえることでさらに企業収益が上がるという、好循環を生み出さなければなりません。

 この好循環を生み出し、日本経済をさらなる高みへと飛躍させるために何が必要か。新たな分野への挑戦や新たな投資を促すことが第一であると思いますが、本法案は、どのような現状認識に基づき、どのような効果を狙っているのでしょうか。お聞かせください。

 続いて、本法案に盛り込まれた施策の中身について伺います。

 まずは、規制改革の推進についてです。

 通称企業実証特例制度と名づけられている新しい制度は、あらゆる分野において、新しいことへの挑戦意欲を持った企業を応援する試みであると思います。

 日本企業の中には、安全、安心の確保を着実に実行しながらも、おのおのの自由な発想で新事業に挑戦する高い意欲と技術力を持った企業が多数あります。本制度によって、そのような企業を後押しすることもできますし、切磋琢磨する同業他社の創意工夫や新たな挑戦を促す波及効果も期待できると思います。

 しかし、せっかくの新制度も、ただの絵に描いた餅になっては意味がありません。いかに実行していくか、その仕組みが重要です。

 例えば、私も小さな企業を経営してまいりましたが、中小企業にとっては、新たな制度ができたと言われても、どのように活用してよいのかわからないことがあります。また、技術力を持っていたとしても、それをどのように安全性確保等の措置の具体案につなげてよいかわからないというケースもあろうと思います。

 本制度を真に実行していくために、どのように周知、運用を行っていくのか、お聞かせください。

 産業の新陳代謝について伺います。

 まず、新陳代謝の「新」の部分についてです。

 去る十月一日、自由民主党、公明党で、民間投資活性化等のための税制改正大綱をまとめました。

 大綱においては、先端設備への投資を促す設備投資減税を盛り込んでおりますが、高付加価値の物やサービスを生み出す最新鋭の設備に対する投資は、イノベーションの源泉に対する投資であり、成長に対する投資です。

 本法案でも、リース手法を用いた制度など、民間設備投資の活性化策が盛り込まれていますが、安倍政権は、結果を出すことが国民からの宿題です。本法案に関連した諸施策により、民間設備投資がどの程度拡大すると見込んでいるのか、目標を伺います。

 また、ベンチャー企業へのリスクマネー供給の拡大も重要な課題です。

 どんなにすばらしいアイデアや旺盛なチャレンジ精神を持っていても、事業化するための資金がなければ実現しません。日本のベンチャー企業への投資金額は、米国の約十八分の一程度との調査もありますし、特にリーマン・ショック後は資金供給が細っていると聞きます。

 次世代に台頭する可能性を秘めたベンチャー企業を創出するため、本法案のベンチャー投資促進策によりどのような効果が見込まれるのか、伺います。

 次に、新陳代謝の「陳」の部分に移ります。

 技術革新やグローバル化、経済環境の変化などで事業の収益性は大きく変化します。これから、伸びる事業もあれば、収益が頭打ちになる事業も出てきます。

 このような、将来性が見込めず、本来であれば市場で淘汰されるべき事業が残り、停滞すれば、その事業の資金や設備や人材を成長分野に振り向けることができず、日本経済の成長にマイナス要因となります。環境にそぐわなくなったビジネスモデルからの転換が重要です。

 解決策として、不採算事業を廃業するという手段もあるでしょう。また、一企業内では十分に成長できない事業であっても、他企業の同じ事業と統合するなど戦略的、抜本的に再編を行うことで国際競争力を獲得できる事業もあります。これを有効活用しない手はありません。

 本法案での事業再編の促進は、まさにそのような事業を生み出すべく経営者の判断を後押しするための施策と理解しておりますが、茂木大臣のお考えはいかがでしょうか。本法案を活用して事業再編を図ることでどのような企業が育つことを期待されているか、展望をお聞かせください。

 最後に、中小企業の創業支援について伺います。

 日本企業の圧倒的多数は中小企業、小規模事業者であり、元気な中小企業、小規模事業者がふえることは、日本の競争力の強化に直結することと思います。地域の技術や資源には大きなポテンシャルがあり、意欲ある企業の新たなる事業化を支援することは極めて重要です。

 本法案では、新たな試みとして、市区町村が民間の創業支援事業者と連携し、創業者の抱えるさまざまな課題をワンストップで解決する体制の構築が盛り込まれています。

 創業者にとって身近である市区町村を中心として、創業にまつわる煩雑な手続へのサポートや創業に役立つ情報提供が一元的に行われれば、創業を考える方々にとって使い勝手のよい制度になるのではないかと考えます。

 日本再興戦略には、開業率を米国、英国レベルになることを目指すという野心的な目標が記載されています。創業支援の取り組みとして、これまでもさまざまな支援が行われてきたと思いますが、日本再興戦略に掲げられた目標を実現するためにも、そして、地域の活性化を図るためにも、今回盛り込まれたこの制度をいかに実効性のあるものにしていくかということが非常に重要です。

 そこで伺います。市区町村の中には、創業支援を行おうとしても十分な体制を構築することが難しい自治体もあると思われますが、市区町村を中心に据えた今回の創業支援をどのように実行していくのでしょうか。御説明願います。

 以上、本法案に対する基本的な事項について質問いたしました。

 産業競争力強化法が有効活用され、日本経済が力強く前進することを願い、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 山際議員にお答えいたします。

 最初に、アベノミクスの実現による日本再興への思いと成長戦略の実行についてお尋ねがありました。

 現政権に対し国民が最も期待していることの一つは、長引くデフレからの脱却と経済再生であります。このため、三本の矢の政策を一体的に推進することにより、日本経済は、マイナスからプラスに転換しつつあります。こうした明るい兆しを確実なものとするためにも、今まさに、アベノミクスの三本目の矢、成長戦略の実行が重要になっております。

 成長戦略により、企業が投資し、収益を向上させ、それが個人の賃金や所得の向上につながり、消費が拡大し、再び企業の投資を呼び起こす、経済の好循環を必ず実現してまいりたいと考えております。

 また、産業競争力強化法案においては、成長戦略を確実に実行するための仕組みを新たに創設いたしました。

 具体的には、当面三年間の実行計画を策定し、施策ごとに担当大臣や実施期限を明確化した上で、各施策の進捗状況を毎年点検してまいります。

 こうした仕組みも活用しつつ、引き続き、政府一丸となって、成長戦略を確実に実現、実行してまいりたいと考えております。

 次に、現状認識と本法案による効果についてでありますが、日本経済の再生には、日本経済の持つ三つのゆがみ、すなわち、過剰規制、過少投資、過当競争を是正していくことが重要であり、そのキードライバーとなるのが産業競争力強化法案であります。

 本法案は、この三つのゆがみを是正する仕組みを整えるべく、過剰規制を打破するための規制改革の推進や、過少投資、過当競争の是正につながる産業の新陳代謝の促進などにより、我が国の産業競争力を強化することを目的としております。

 本法案により、我が国の産業競争力が強化され、企業が投資し、収益を拡大させ、それが個人の賃金や所得の向上につながり、消費が拡大し、再び企業の投資を呼び起こすという、経済の好循環を実現していくことを期待いたしております。

 企業実証特例制度についてでありますが、本法案では、企業実証特例制度を創設することによって、意欲ある民間企業の創意工夫や挑戦を支援し、産業競争力の強化を図ることとしております。

 全国四百二十万の中小企業を含め、できるだけ多くの事業者に制度を活用していただき、規制の特例措置について意欲的な提案をいただくことが重要であります。

 経済産業省では、本省及び地方経済産業局に、事業者からの相談に対応する体制を整備する予定であります。それぞれの事業者の立場に立ち、ニーズに応じて、きめ細かい指導、助言を行います。そして、他の事業所管省庁にも、そうした対応を講じるよう、働きかけをしてまいります。

 また、企業にとって利便性の高い手続の整備、申請書類の簡素化を図るとともに、全国の中小企業に対する積極的なPRを含め、これらの周知に努めてまいります。

 次に、民間投資の拡大についてでありますが、本法案においては、御指摘のように、リース手法を活用して、企業の初期費用負担を抑え、先端設備の投資を促進する仕組みを設けております。

 また、本法案と並行して、税制面でも、これまでにない大胆な支援策を導入いたします。

 具体的には、生産性の高い先端の機械装置等への設備投資に対して、即時償却や税額控除を認めるとともに、中小企業については、よりインセンティブが高く、より多くの中小企業をカバーするものに拡大するなどの措置を決定いたしました。

 このように、これまでと次元の異なる画期的な設備投資の支援策を講じることで、今後三年間で、現在六十三兆円の年間設備投資額を、リーマン・ショック前の水準である九十兆円以上に戻してまいりたいと考えております。

 次に、ベンチャー投資促進策による効果についてでありますが、現在の我が国は、ベンチャー企業への資金供給面で、米国等と比較すると、質、量ともに見劣りする状況にあります。この背景には、ベンチャー企業に対する経営支援能力の高いベンチャーファンドが少なく、こうしたファンド自身でも十分な資金調達ができていないなどの課題があります。

 そのため、今回は、異次元の措置という観点から、経営支援能力の高いベンチャーファンドを認定し、あわせて、認定ベンチャーファンドに対する企業からの投資を促進する新たな税制措置も設けることとしております。

 このようなハンズオン支援能力のあるベンチャーファンドを通じた資金供給の仕組みを構築することで、特に起業や事業拡大期のベンチャー企業への投資は、質、量ともに大きく高まると考えております。

 また、本法案においては、産業革新機構からの出資につき、一定額以下のベンチャー案件への支援につき、手続の簡素化を盛り込んでおります。認定ベンチャーファンドに加え、産業革新機構を通じての、ベンチャー企業に対する投資の促進につなげてまいります。

 事業再編の促進についてでありますが、本法案では、事業の切り出し、組みかえ、統合等により既存の経営資源を有効に活用することでグローバル市場に打って出る事業再編に取り組む企業に対し、資金的支援策を講じるとともに、あわせて、税制上の優遇策により、企業の思い切った事業再編を後押ししてまいります。

 こうした事業再編によって、競争力や収益力を飛躍的に向上させた企業が果敢に海外展開を進め、世界市場で大きなシェアを獲得する企業や、特定分野にすぐれ、世界で存在感を示す企業などの、グローバルトップ企業がたくさん生まれることを期待いたしております。

 最後に、中小企業、小規模事業者とも関連した、市区町村の創業支援体制の構築についてお答えをいたします。

 本法案では、創業者に身近な市区町村を中心とした創業支援体制の構築を支援することとしておりますが、議員御指摘のように、現状では十分な支援体制を構築することが難しい市区町村も存在すると考えられます。

 そのため、本法案では、複数の市区町村が共同で計画を策定することや、都道府県による援助を受けることを可能としております。

 また、中小企業基盤整備機構が、創業支援の専門家や成功事例の紹介等、創業支援に関する情報提供などの支援を行ってまいります。

 こうした取り組みを通じて、創業支援を行おうとしても十分な体制を構築することが難しい市区町村に対しても、国としてしっかりとしたサポートを行い、実効的な創業支援体制の構築に万全を期してまいります。(拍手)

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議長(伊吹文明君) 次の質疑者、田嶋要君。

    〔田嶋要君登壇〕

田嶋要君 田嶋要でございます。

 まず、冒頭、台風二十六号で犠牲になられた方々に心からお悔やみを申し上げると同時に、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました産業競争力強化法案につきまして質問いたします。(拍手)

 安倍総理、安倍総理がいません。成長戦略のまさにかなめの法案だと言いながら、きょう安倍総理がここにおいででないのは、大変残念であります。法案審議は部下任せ、そして第三の矢は風任せ、こういうことにならないように、ぜひお願いをしたいと思います。

 バブル崩壊後の日本経済は低成長を続け、失われた二十年と言われています。また、リーマン・ショックが発生をした二〇〇八年以降では、名目GDPは、実額ベースで見て、五百兆円を割り込んだ状態が続いています。長引くデフレ、生産年齢人口の減少による国内需要減、新興国の急速な経済成長と相対的な産業競争力の低下など、日本の低成長の要因はさまざまあります。

 近年の日本の産業政策は、そうした時代背景との闘いでありました。選択と集中により、生産性の低い部門から高い部門への経営資源のシフトを図ろうとし、歴代政権は、さまざまな成長戦略を提起してきました。

 我々民主党政権においても、日本再生戦略を策定し、グリーン、ライフ、農業の六次産業化の三分野など、新たな成長を目指す重点分野について、日本経済を支える中小企業の活力を最大限活用しつつ、限られた政策資源を優先的に配分することを提起してきました。

 そして、今回の第二次安倍内閣、その第一の矢は、異次元の金融緩和だと喧伝されました。今までとは次元が違う点が売りだというわけです。

 そこで、甘利経済再生担当大臣にお伺いします。

 今回の成長戦略、これも異次元の成長戦略ですか。前の自民党政権、あるいは第一次安倍内閣、そして民主党政権時代の成長戦略とは何が違うのでしょうか。

 もちろん、民主党時代の再生戦略という言葉は、再興戦略という言葉にきちんと置きかわっていますし、私たちが掲げたグリーン、ライフといったキーワードはどこにも見当たらないという違いは確認できます。しかし、言葉は違えど、民主党政権がいわば縦切りにしていたようかんを、安倍内閣では横切りにしてお皿に載せている、そんなふうにも見えるのですが、いかがですか。

 そうではないというのであれば、一体、何がどう違う、どう次元が異なるのかをお示しください。

 また、私たち民主党が打ち出した成長戦略の柱の一つであるグリーンイノベーションでは、地域の特性に応じた、いわば地産地消の多様なエネルギー産業の創出と推進、さらには、地域間競争の促進が眼目でした。

 これからの成長戦略では、このような地域の自主性と切磋琢磨とを重んじる姿勢が必要不可欠と考えます。その認識、視点は安倍内閣では共有されているのでしょうか。甘利大臣にお伺いします。

 本法案についてお尋ねします。

 まず、この法案は、本則百五十六条、附則四十五条から構成される新法でありますが、部分的には既存のいわゆる産活法を取り込み、その産活法自体は、今回、廃止するということとしています。

 一九九九年の成立以後、産活法は、事業の再構築や経営資源の再活用、経営資源の融合など、過剰供給、過剰債務の解消や、迅速な組織再編を担ってきました。

 今回、これまでの同法による施策では何が欠けていたと考えたのでしょうか。そして、なぜ、今回、その産活法の改正によって対応しないのか。あわせて茂木大臣の御答弁を求めます。

 次に、産業競争力の強化に関する実行計画についてお尋ねします。

 政府は、平成二十五年度から三十年度の集中実施期間のうち、当面三年間で確実に実行すべき実行計画を策定することとしています。それは、内閣総理大臣の主導のもとに作成され、閣議決定を経て、国民に公表するとともに、実行すべき制度改革ごとに担当大臣と実施期限を定め、おくれや不足が生じた場合は、担当大臣が理由を説明し、追加的な措置を講じる義務を負うこととなっています。

 規制改革や構造改革は、これまでもさまざまな試みが行われてまいりましたが、たとえ総理が主導しても、各省の間の見解の相違など、なかなか前に進みにくいことは歴史が証明しています。今回、それを具体的にどのように解決しようとしているのか、茂木大臣にお尋ねします。

 また、実行すべき制度改革を高らかに並べたとしても、仮に実行できなかった場合、実行計画の改定ごとに担当大臣が理由を述べて代替案を示すだけでは、単にお題目を並べたにすぎず、改革の先送りと同じです。

 目標を着実に実行させるために、先送りされない歯どめをどのようにかけるお考えかを、茂木大臣にお尋ねします。

 次に、規制改革の具体的施策についてお尋ねします。

 今回、個別企業の提案や申請を端緒とする二つの制度、すなわち、企業実証特例制度とグレーゾーン解消制度が提案されています。

 両制度とも、事業所管大臣と規制所管大臣との連携が前提となっていますが、容易に想像できる両大臣の規制に対する意識の違いをどのように埋めていくお考えでしょうか。また、両制度それぞれ、全国で年間どれほどの件数が政府に寄せられる想定をしているのか。また、意欲のある企業が待たされない、政府の迅速な対応を担保する体制整備についても、現時点での構想を、茂木大臣、お示しください。

 また、グレーゾーン解消制度は、企業が新規分野における事業計画の適法性の確認をあらかじめ所管大臣に申請し、規制上の白か黒かの回答をあらかじめ受けるものと理解しますが、例えば、企業が申請をして、グレーゾーン解消制度によって規制にひっかかることが判明した場合、それを今度は、もう一つの新政策、企業実証特例制度の申請に切りかえて規制緩和につなげることは想定されているのか、茂木大臣にお尋ねします。

 次に、事業再編の促進を初めとする産業新陳代謝についてお尋ねします。

 この法案との関係では、安倍政権は、産業の新陳代謝という言葉を好んで使われます。新陳代謝とは、定義によれば、古いものが新しいものに次々と入れかわることです。

 安倍内閣は、産業の新陳代謝の促進と言いながら、一方の、新しい産業を生み出すことのみを政策的に支援する考えのようにも見えますが、そういうことなのか、あるいは、言葉の定義どおり、古い産業を交代させる政策も具体的に実行するお考えか、茂木大臣にお尋ねします。

 個別企業についても関連のお尋ねをいたします。

 我が国と先進他国の創業率、廃業率を比較すると、我が国の近年の創業率は、例えば、米国、英国の半分以下で、かつ、創業率が廃業率を下回る年も少なくありません。この根本的な原因は何だとお考えか、茂木大臣、お答えください。

 そして、法案の中にも示される、創業率を高めるための取り組みはともかく、廃業率の方はどうするおつもりですか。他の先進国は、我が国よりも創業率が大きく上回りますが、実は、廃業率も我が国より高いのです。我が国企業の九九・七%を占める中小企業、小規模企業の中での廃業を促進することが新たな創業を促進する、そういう前提に立った支援策、誘導策を政府は具体的に実行するのか、茂木大臣の御答弁を求めます。

 ベンチャー企業の成長支援に関しては、経済産業大臣が認定するベンチャーファンドに出資する企業に税制上の支援措置などを講じることによってファンドの資金的な厚みを持たせることや、技術、経営などの総合的なハンズオン支援を提供する仕組みを構築するとしています。

 これについて、ベンチャー企業への直接的な支援ではなく、ベンチャーファンドを通じた間接的な支援によって、起業や事業拡張期のベンチャー企業の成長実現はどの程度促進されると見ているのでしょうか。また、技術、経営などのハンズオン支援については、具体的にはどのような仕組みを構築しようとお考えでしょうか。茂木大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、国立大学法人等によるベンチャーファンドへの出資についてもお尋ねします。

 今回の法案の中には、大学発のベンチャー支援策も含まれています。過去の大学発ベンチャーの設立数の推移を見てみると、いわゆるTLO法の施行から五年後の二〇〇三年、年間六十社強をピークとして、近年では二十社以下と、じり貧状態が続きます。また、既存の大学発ベンチャーの約七割が、売り上げ一億円以下とも言われます。

 茂木大臣、第三の矢を放つに当たって、こうした大学発ベンチャー低迷の原因は明らかになっているのですか。今回の法案に含まれる施策がこの低迷している現状を打破できるという自信はどの程度おありか、そして、その理由もあわせてお答えください。

 最後に。

 私の地元千葉市は、かつて、川鉄城下町と呼ばれ、重厚長大の雄、製鉄業で栄えた地域です。高度経済成長の初期のころ、当時の一万田尚登日銀総裁が、千葉製鉄所の建設に反対し、製鉄所にペンペン草を生やしてみせると言ったことは有名です。また、その同じ総裁は、国際分業の中では日本が自動車工業を育成することは無意味であると、当時、自動車工業不要論を唱えたとされます。

 安倍内閣には、ぜひ、こうしたエピソードも頭の隅に置き、成長戦略の王道は、あくまで規制改革であって、政府介入ではないということを肝に銘じ、ゆめゆめ我が国将来の飯の種を見誤ることがなきようお願い申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 答弁をさせていただきます。

 まず、田嶋議員への答弁の前に、先ほどの山際議員の質問に対しまして、設備投資の目標額、今後三年間で九十兆円と答弁をいたしましたが、さすがに、そこまでいきません。正しくは七十兆円であります。訂正をさせていただきます。

 さて、まず、田嶋議員からの、産活法の総括と、産活法改正で対応できなかった理由についてでありますが、現行の産活法では、再編の形や目的ごとに四つの類型に細分化された定型的な事業再編を支援してきたため、必ずしも使い勝手のよいものとは言えない面がありました。

 こうした観点から、本法案では、事業者の前向きかつ自由な取り組みを広く支援するべく、事業再編の類型を大ぐくり化した上で事業を切り出し、他社と再編統合するなどの取り組みについては、より思い切った支援策を用意しています。

 さらに、本法案には、事業再編以外にも、日本再興戦略の確実な実行を図るための体制整備や規制改革の推進等、現在の産活法にはない、新たな制度、措置を多数盛り込んでおります。

 このように、新たな制度、措置を設け、日本経済の三つのゆがみである過剰規制、過少投資、過当競争を一体的かつ抜本的に改正するものとして、改正法ではなく、新法として提出をさせていただいた次第であります。

 これまでなかなか進まなかった規制改革の進め方、及び、改革の先送りとならない歯どめ策についてでありますが、現政権においては、総理のリーダーシップのもと、例えば、大胆な金融緩和、TPP交渉への参加決断など、これまでなかなか進まなかった課題を一つ一つ確実に前に進めてきております。

 今後とも、政府一丸となって成長戦略実現のための実行計画を着実に実施していくことで、産業競争力強化のための改革を進めてまいります。

 規制改革にも確実に取り組むスキームを導入しております。

 具体的には、施策ごとに担当大臣や実施時期を明確にし、仮に期限までに実施できなかった場合には、担当大臣の責任のもと、その原因、代替措置について公表し、その実施に至るまでしっかりフォローする仕組みを創設することなどにより、先送りすることなく、実行計画を実施してまいります。

 事業所管大臣と規制所管大臣の意識の違いをどのように埋めていくかについてでありますが、企業実証特例制度は、企業から提案される規制の緩和の実現に向け、事業所管省庁が積極的に関与する仕組みとしております。

 具体的には、事業所管省庁が、意欲ある民間企業の新たなチャレンジを支援する立場から、規制所管省庁に対し、規制緩和の必要性、緩和に当たって安全性等を確保する措置について十分な説明を行うなど、積極的な働きかけを行うこととしております。

 規制所管省庁には、産業競争力の強化という法案の目的を踏まえ、前向きに対応していただくことが期待されております。しかしながら、そうした働きかけを行ってもなお規制所管省庁と事業所管省庁の意見が一致しない場合も考えられ、この際に、不要に長い議論が続くことは望ましくありません。

 企業実証特例制度の実施に当たっては、このような場合、必要に応じて、総合調整を行う権限を有する内閣官房が各省庁の意見の調整を行うことで解決を目指し、最終的には、総理がリーダーシップを最大限発揮して、しっかりと結論を出すことを想定いたしております。

 年間の想定申請件数や政府の体制整備についてでありますが、企業実証特例制度やグレーゾーン解消制度は、企業の創意工夫に基づき活用していただくものであり、年間何件といった件数にとらわれることなく、全国四百二十万の中小企業も含め、できるだけ多くの企業に活用していただくことを期待いたしております。

 このため、法案の成立、施行後には、関係省庁が速やかに対応し、企業にとって利便性の高い手続の整備、申請書類の簡素化などを図るとともに、これらの周知に努めてまいります。

 グレーゾーン解消制度で規制に該当することが判明した場合、企業実証特例制度の申請に切りかえることについてでありますが、グレーゾーン解消制度を活用した結果、企業の事業計画が規制の適用を受けると判断された場合であって、企業がその規制の緩和を求める意向を示した場合には、田嶋議員御指摘のように、企業実証制度を活用することが可能となります。

 このため、事業所管省庁からも、グレーゾーン解消制度を活用した企業に対して、企業実証特例制度などを通じてその規制の緩和を求めることが可能であることを紹介するなど、できる限りきめ細かい指導、助言を行っていく予定であります。

 こうした運用の考え方については、今後、運用通達などにおいて明らかにし、企業に対して、しっかりと周知をしてまいりたいと考えております。

 産業の新陳代謝について、古い産業を交代させる政策も実行するのかについてでありますが、本法案によります産業活動における新陳代謝とは、事業再編等による新たな事業の開拓や、収益性の低い事業からの転換等を意味しております。産業の歴史が長く、いわば古い産業であっても、高い収益性や国際競争力を誇る産業があるように、本法案では、産業を、新しい、古いだけで捉えることはしておりません。

 本法案により、時代の変化に適応できず、収益性が低いまま温存されている事業については、撤退を促すとともに、その中にある有効な経営資源を新たに事業の開拓や成長のために活用することを促進することで、産業競争力の強化を図ってまいりたいと考えております。

 我が国の開業率や廃業率が英米の半分以下である根本的な原因についてでありますが、開業率や廃業率は、米国やイギリスにおいて一〇から一二%程度でありますが、日本では、御指摘のように、四%程度で、主要国を大きく下回っております。

 これには、経済的にも社会的にもさまざまな要因が絡んでいると思われますが、特に開業率の低さについてよく指摘される主な原因を申し上げれば、我が国においては、そもそも起業に挑戦する人材が少ない、リスクの評価や目ききができる人材が乏しい、投資家が投資判断をするための十分な情報が提供されていない、投資家に対し、開業に必要となる資金や経営ノウハウが提供される環境が整っていないなどの課題が考えられると思います。

 中小企業、小規模企業の廃業促進を前提とした支援策、誘導策についてでありますが、日本再興戦略においては、開業率、廃業率一〇%台を目指すという野心的な目標を掲げていますが、これは、もちろん、一方的に廃業率の向上を目指すのではなく、開業率と廃業率の両方を向上する事業の新陳代謝を促進することを目指しております。

 具体的には、事業の継続が困難で廃業も視野に入れている経営者と創業希望者など事業の引き受けを希望する者とのマッチングを支援する事業引継ぎ支援センターの整備、平成二十四年度補正予算で措置した第二創業等への補助金二百億円や、平成二十五年度税制改正で拡充した事業承継税制といった、事業引き継ぎのための支援措置を講じております。

 これらの取り組みにより、中小企業、小規模事業者の新陳代謝を促進してまいります。

 本法案におけるベンチャーファンドを通じた支援策による効果や、ハンズオン支援の仕組みについてでありますが、現在の我が国は、ベンチャー企業への資金供給面で、米国等と比較すると、質、量ともに見劣りする状況にあります。この背景には、ベンチャー企業に対する技術面や経営面のハンズオン支援能力が高いベンチャーファンドが少なく、こうしたファンド自身でも十分な資金調達ができていないなどの課題があるわけであります。

 このため、今回は、異次元の措置という観点から、経営面や技術面で高いハンズオン支援能力を有するベンチャーファンドを認定し、あわせて、認定ベンチャーファンドに対する企業からの投資を促進する新たな税制措置も設けることとしております。

 このようなハンズオン支援能力のあるベンチャーファンドを通じた資金供給の仕組みを構築することで、特に、起業や事業拡大期のベンチャー企業への投資を質、量ともに大きく高め、ベンチャー企業の成長につなげてまいります。

 最後に、大学発ベンチャー低迷の原因や、本法案における対応についてでありますが、大学発ベンチャーが低迷している原因としては、技術シーズをベースとしたベンチャーが多く、技術の開発に特化する余り、人材やノウハウの不足、資金面での手当てが不十分なケースが多いためと考えられております。

 今回の法案は、高い技術力を有する国立大学法人等と密接に連携しながら、大学発ベンチャーに対して経営上の助言を行うとともに、必要な資金も一体的に提供するベンチャーキャピタルに対して、国立大学法人等からの出資を可能とするものであります。

 経済産業省としては、今回の制度改正による支援措置などを活用することにより、大学発ベンチャーを取り巻く課題の解決を図っていく所存であります。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) 二点の質問がありました。

 まず、今回の成長戦略と過去の成長戦略との違いについてのお尋ねであります。

 今回の成長戦略の特徴は、いろいろな切り口があるとは思いますが、主に次の二点と考えております。

 まず第一に、我が国の社会的な課題を逆手にとって成長戦略につなげているということであります。

 安倍政権の成長戦略は、少子高齢化や社会インフラの老朽化などの重要な社会課題に対しまして解決策を見出し、それを新たなフロンティアとして経済の成長につなげていくというコンセプトで策定をいたしました。

 第二に、今回の成長戦略は、策定してからがスタートであるということであります。

 過去の成長戦略は、一年ごとに新たなものが策定をされ、十分に実行することができませんでした。一方で、安倍政権の成長戦略は、産業競争力会議等の場を通じまして、その進捗状況をチェックし、おくれが生じていれば、改善策を検討して、修正し、確実に政策を実行することといたしております。

 実行なくして成長なし。やるべきことは明確でありまして、重要なことは、新たなフロンティアを見出し、工程表をつくり、実施体制をつくり、確実に実行につなげていくことであります。今国会において結果を出していけるように、政府としてもしっかりと取り組んでまいります。

 次に、地域の自主性と切磋琢磨を重んずる姿勢についてのお尋ねがありました。

 地方の元気なくして、国の元気はありません。日本再興戦略を実行していく上では、地域経済が元気になることが不可欠であります。

 まずは、地域ごとに地方産業競争力協議会を開催することによりまして、全国各地の生の声を日本再興戦略の実行に反映させ、国と地方とが一体となって、地域経済を活性化し、全国隅々に成長の成果を行き渡らせてまいります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次の質疑者、木下智彦君。

    〔木下智彦君登壇〕

木下智彦君 日本維新の会、木下智彦です。

 私は、日本維新の会を代表して、政府提出の産業競争力強化法案について質問いたします。(拍手)

 まず初めに、先ほどの質疑にもありましたが、本法案にかかわる質疑が行われる本日の本会議に総理が御出席いただけていないことは、非常に残念であります。

 我々日本維新の会は、いわゆる維新八策の中で、「首相が年に百日は海外に行ける国会運営」とうたうとおり、真の国益に資するため、総理が外交日程を確保することについては異論はありません。

 しかしながら、総理みずからが本臨時国会を成長戦略実現国会と言われている中、成長戦略のかなめとなるであろう本法案の趣旨説明、質疑に御出席いただけないことは、総理の意気込みが本当であるのか、疑問を示さざるを得ません。

 そもそも、本法案以外にも重要案件が多数ある今回の臨時国会の会期がわずか五十日余りであり、尽くすべき議論の時間に制限があることは残念でなりません。

 本臨時国会期間中に審議される予定の国家戦略特区法案は、同じく成長戦略実現国会における重要な法案という位置づけでありましょうから、その審議の際には、ぜひとも総理御自身の本会議への御出席を賜りたいとお願い申し上げます。

 我が党は、綱領に、「政府の過剰な関与を見直し、自助、共助、公助の範囲と役割を明確にする」「既得権益と闘う成長戦略により、産業構造の転換と労働市場の流動化を図る」を理念として掲げています。

 今回の産業競争力強化法案の趣旨には、規制改革の推進のための新たな制度と産業の新陳代謝の促進を図るための制度の創設とあり、我々と基本的な思いを同じくすると信じ得る安倍内閣が、過去の政権が本格的に取り組めずにいた、思い切った改革を実行しようとする意欲を感じる取り組みであり、また、総理が掲げた三本の矢の三本目である成長戦略の中核となる規制改革と産業の新陳代謝を具現化し、先般の所信表明で言及された、景気回復の実感はいまだ全国津々浦々まで行き届いていないという状態をいち早く脱することを目的としているものとして、非常に期待感を持っておりました。

 しかしながら、本法案を見るにつけ、ここで掲げられたそれぞれの施策が、我が国の発展を妨げてきた規制の早期改革への突破口となり得るかは、疑問が残ります。まさに、上がったときには華やかだが、一瞬で消えてしまう打ち上げ花火になりはしないかと危惧するものであります。

 今求められていることは、この状況からいち早く脱するために、あり得る手段を積極的に講じていき、改革を加速化させることであるとともに、産業の発展の妨げになることが明らかな規制を広範囲かつ恒久的に緩和、撤廃することで我が国の繁栄につなげていくことを目指すべきではありませんか。

 本法案では、五年間という年限を区切って実行計画を集中的に実施していくこととなっていますが、この五年間をもって特例的にさまざまな規制改革を断行したとしても、抜本的な規制改革とは言えません。

 本法案で掲げられている施策である企業実証特例制度、グレーゾーン解消制度といった規制緩和策や、産業の新陳代謝を目指す事業再編の促進、民間設備投資の促進、ベンチャー投資の促進などについては、今まで課題として挙げられていたが、本法案で総合的に施策として取り組むことで加速化を狙うことは評価できます。

 であるからこそ、まとめて法案化されることにより雑にならないように、それぞれの施策が実効的に機能し、地に足のついた、実のある施策として実現していくべきではないでしょうか。

 それぞれを一本ずつ法案化して審議せよという意見がある中、総合的な取り組みとしてまとめて法案化する以上、我が国の発展、国民の豊かで安定した生活に資する重要な案件については、集中的かつ丁寧に、迅速な審議が必要です。

 与党が安定多数を確保している今こそ、本格的な論戦が行われ、我々全国会議員の本来の役割をしっかりと果たせる環境をつくっていただきたいと切に願うものです。

 以上の提案をもとに、本法案が、総理の言う成長戦略を具現化するための規制改革、産業の新陳代謝の促進として実効性があることを期待し、以下の質問をさせていただきます。

 まずは、企業実証特例制度の創設に関して質問いたします。

 この制度は、企業みずからが安全性などを確保する措置を講ずることを前提に、企業単位での規制の特例措置を適用するとしています。

 全国一律の規制改革に先駆けて特例を認め、その特例を呼び水に一律の規制改革につなげていこうという政府の意図は理解できますが、さきにも述べたとおり、五年間の集中実施期間の後の規制改革のグランドデザインが描かれていなければ、規制緩和、撤廃が一時的なものとなり、広く経済全体に浸透することはなく、特別措置が講じられた企業だけにとどまってしまうのではないかという懸念があります。

 五年間の集中期間後も続く抜本的な規制改革を実現するための施策について政府に具体策があるのか、お答えください。

 次に、グレーゾーン解消制度の創設について質問いたします。

 企業が、現行の規制の適用範囲が不明確な分野においても安心して新分野進出等の取り組みを行えるよう、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制適用の有無を確認できる制度を創設するとのことですが、本法案で特例的な措置として行うのではなく、初めから恒久的な制度とするべきことではないでしょうか。

 また、そもそも、企業が規制の有無を確認しなければいけないほど規制そのものが複雑化していること自体が問題であり、たとえ特例的に行うとする理由があるとするならば、企業が問い合わせする必要がなくなるほど、国が行う規制がシンプルでわかりやすく、合理的な体系に見直されることを目指し、それまでの一定期間を特例としているということなのでしょうか。実際にこのような規制緩和の抜本改革を目指そうとされているのか、その具体的な予定がないならば、どのような将来像が考えられているのか、政府の御見解をお聞かせください。

 続いて、事業再編の促進についてお伺いいたします。

 本法案では、一定企業内では十分に成長できない事業の再編統合と新たな市場への挑戦を優遇措置で支援することを規定しております。

 私も、一般企業にて約二十年間勤めてきた中、自社単独ではこれ以上の成長性の望めない事業領域と、他社の事業領域を切り出して合併させることで、業界シェアを高めて成功した事例を幾度か見ており、吟味を重ねながらの再編統合によって効果を発するものと考えております。

 ここで一定の事業領域を切り出し、再編統合するということは、それに伴い、従業員とその技術、経験も再編統合するということにほかなりません。異なる企業から、異なる勤労形態と雇用条件で働いてきた従業員が参集して新しい事業体を形成することが現実であり、実際には、新事業体での雇用条件などの調整は一筋縄ではいかないものです。

 合併などにより企業統合が行われる際、それぞれの従業員が持つ技術や経験の結集が期待効果となる場合が多く、衰退産業分野から成長産業分野への円滑で空白期間のない雇用の流動化は、成長戦略の一つの大きな鍵であると思われますが、政府は本法案でそのあたりをどのように手当てしようと考えられているのか、具体的にお示しください。

 地域中小企業の創業、事業再生の支援強化についてお尋ねします。

 本法案では、中小企業の活力の再生として、中小企業の事業再生の支援強化を盛り込み、再生支援体制の強化とともに、それらの支援による再生計画に基づき、経営改善、事業再生に取り組む中小企業者に対する特例として、計画実行段階の資金調達を円滑化するとしております。

 片や、さきにも述べた、産業の新陳代謝を目指そうとする中、衰退する事業分野の改善、撤退なども含めた、事業再編による経済活性化を目指しており、それを本格的に実現することは、雇用の流動化が促進されることも想像させます。

 これら二つの施策のそれぞれは、もっともらしいことではありますが、中小企業対策として、資金調達を容易にすることで、衰退していく産業分野に従事する人たちをその分野に縛りつけてしまう可能性があり得る一方、本法案の主たる目的である事業再編では、雇用流動化を目的の一つとしていると言わざるを得ず、これら二つの制度には大きな矛盾をはらむおそれがあるのではないでしょうか。

 また、たとえ、それら中小企業の再生可能性が十分に検討された上での支援がなされるとしても、これらの施策が、規制改革、産業の新陳代謝を目指す、いわば大きな産業の構造転換を促すことを目指している本法案において、包括的に項目として盛り込まれていることは、違和感を感じるものであります。

 そこで、本法案において、わざわざ、中小企業や小規模事業者のみを対象とした支援策を含むこれらの項目を盛り込む必要があるのかという点について、政府の御見解をお示しください。

 今回の質疑を行うに当たり、これらの制度を利用する側の企業の立場から本法案をどのように受けとめようとしているのかという観点で関係者の聴取や各種調査を行ったところ、一つのコメントに出くわしました。それは、ダーウィンが言ったと言われる、強いものが生き残ったのではない、賢いものが生き残ったのでもない、変化に対応したものが生き残ったのだという言葉を引用し、経営者の心構えを説くものでした。

 また、英米におけるMBA、経営学修士の取得カリキュラムで、初めに修得する項目には、経営においてとるべき戦略について学ぶ項目があります。そこには、政府などの機関からの規制、制度が自社事業の強みとなるのか弱みとなるのかを分析するというものがあります。

 すぐれた経営者は、常に世の中の変化に敏感で、自社の事業分野における制度や規制にうまく対応していくものです。健全な競争市場を喚起するには、国の制度や規制で彼らを惑わすような複雑なものや、障壁であることは避けるべきです。

 ましてや、それらの制度や規制の改革を行っても、それが一時的な変化でしかなかったり、実効性が低い場合や、政府からの干渉の度合いが強過ぎることで、余計に、経営者や自然に伸びようとする産業分野の発展を妨げることがあってはならないのです。

 真に実のある規制・制度改革が実行されることを切に願い、私の質疑を終了させていただきます。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 木下議員にお答えをいたします。

 最初に、企業実証特例制度及び五年間の集中期間後の抜本的な規制改革についてでありますが、企業実証特例制度は、最先端の技術を有する企業の提案を受け、安全性等を確保する措置が実施されていることを条件として、企業単位で規制の特例措置を講じるものであります。

 この制度による企業単位の改革を入り口として制度のあり方を検証し、最終的には全国単位の規制改革につなげていくことを目指してまいりたいと思っております。

 また、規制改革会議での検討や、国家戦略特区などの特区制度の取り組みといった、全国単位、地域単位の改革との連携を図り、政府全体として規制改革を強力に推進してまいります。

 法案では、附則において、五年後の平成二十九年度末までに諸施策の実施状況について検討を行うこととしており、企業実証特例制度やグレーゾーン解消制度についても、その中で必要な見直しを行うなど、集中実施期間経過後も抜本的な規制改革に継続的に取り組んでまいります。

 規制改革そのものをシンプルにわかりやすくするような規制緩和の抜本改革が必要ではないかとのお尋ねでありますが、経済社会情勢が日々変化する中で生まれる新しいビジネスについては、一定の時点で制定された法令との関係で、規制の適用対象となるか否かが不明確となる場合が出てまいります。

 グレーゾーン解消制度は、こうした事態に対応し、企業の具体的な新規事業計画に即して規制の適用の有無を明らかにすることを通じて、その企業がちゅうちょなく新たな挑戦を行えるよう後押しをするものであります。

 なお、経済社会情勢の変化という不確定要因があるにせよ、規制そのものがユーザー目線に立ったわかりやすいものであるべきことは言うまでもなく、政府としては、規制の透明性確保や不断の見直しに取り組んでまいります。

 空白期間のない雇用の流動化策についてでありますが、本法案においては、一企業の内部では十分に成長できないが潜在力がある事業をスピンオフ、カーブアウトの形で外に切り出す、さらに、他社と再編統合して競争力をつけグローバル市場に打って出るなど、思い切った事業再編に取り組む企業を税制などの政策面で後押しすることといたしております。その際、新事業、成長分野への労働者の移動が円滑に行われることが必要であることは、御指摘のとおりであります。

 そこで、本法案では、国、都道府県、認定事業者等に、計画認定及びその実施に当たり、失業の予防、労働者への就職のあっせん、労働者の職業訓練の実施等を図るために必要な措置を講じるよう努める義務を法律上明確にしております。

 なお、日本再興戦略においても、失業なき労働移動の実現のため、労働移動支援助成金の抜本的拡充等を位置づけているところであり、引き続き、厚生労働省とも連携しつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。

 最後に、中小企業、小規模事業者の事業再生支援についてでありますが、全国四百二十万の中小企業、中でも、その九割を占める小規模事業者は、地域経済と雇用を支える重要な存在であります。

 私はMBAではありませんが、今回の中小企業、小規模事業者の再生支援策は、有効な経営資源を有しながら、過剰な債務を抱えているためその活用が十分にできていない事業者に対し、事業の見直し、債務の整理等を通じ、再度、経営資源の有効活用が可能となるよう実施するものであります。そのような取り組みを通じ、より高い生産性や収益性を実現することは、産業の競争力強化という法目的に合致するものと考えております。

 こうした再生支援に当たっては、再生の対象となる事業者に関し、収益性や将来性などの事業価値や、関係者の支援の可能性等を十分見きわめることが重要と考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次の質疑者、江田康幸君。

    〔江田康幸君登壇〕

江田康幸君 公明党の江田康幸です。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました産業競争力強化法案について質問をさせていただきます。(拍手)

 我が国経済を長期にわたるデフレから脱却させ、成長軌道に乗せていくため、現政権では、アベノミクスによる経済政策を大きく推進してまいりました。大胆な金融緩和と機動的な財政政策という二つの矢により、GDP成長率が改善するなど、日本経済は息を吹き返してきております。

 しかしながら、デフレ脱却は道半ばであります。景気回復の恩恵を、大企業だけでなく中小企業へ、そして地方や家庭の隅々にまで行き渡らせることが重要であります。そのためにも、民間主導の成長を促す三つ目の矢、成長戦略の着実な実行が必要不可欠であります。

 一方、日本経済の持続的成長と財政健全化を同時に実現させるという難しいかじ取りが求められる中、総理は、社会保障と税の一体改革法に基づき、消費税率を予定どおり引き上げることを決断されました。同時に、消費税率引き上げに伴う景気への反動を抑え、持続的な経済成長へとつなげる経済政策パッケージが閣議決定され、我が党も支持をいたしました。

 かかる状況下、成長戦略や経済政策パッケージの実行を初め、今後の経済再生に向けた取り組みをどのように進めていかれるのか、経済再生担当大臣のお考えを伺います。

 また、産業競争力強化法案は、成長戦略の柱となる法案であります。日本経済再生に向けた施策として本法案が果たす役割をどのようにお考えか、経済産業大臣に伺います。

 次に、成長戦略の実行計画について質問します。

 アベノミクスの第三の矢として、成長戦略が六月に閣議決定されましたが、これまでも政府は、経済成長のための戦略を繰り返し作文をしてきました。それにもかかわらず、日本経済の再生に至らなかったのは、実行が伴わなかったことが大きいのではないでしょうか。

 安倍総理も、所信表明の中で、成長戦略に実行が伴うかどうか、作文に意味はないと発言しておられます。

 本法案の実行計画が、戦略の実行を担保する上で鍵となりますが、実行計画の位置づけと、どのような事項を定めるのか、経済産業大臣にお伺いします。

 続いて、新たな規制改革について質問します。

 やる気のある企業やフロンティアに挑戦する企業には、チャンスが広がるような事業環境を整えることが重要です。

 過剰な規制は、企業の自由な発想やチャレンジ精神をくじいてしまうことがしばしばあります。

 これまで、政府は、地域単位での規制改革である特区制度を初め試行錯誤をしてきましたが、まだ規制改革の余地は大いに残されています。次なる一手として、新たな活動にチャレンジしようとする企業に対し、企業単位で規制改革が行えるようなアイデアは斬新であります。

 国家戦略特区や規制改革会議と連動して、本法案に盛り込まれた企業実証特例制度などの企業単位の規制改革がどのような効果をもたらすとお考えでしょうか。経済産業大臣の御所見をお聞かせください。

 次に、産業の新陳代謝の加速について質問をいたします。

 経済の活性化には、企業が、収益性の高い事業には十分な経営資源を注ぎ、将来性のない事業は速やかに処理することが重要です。

 本法案は、収益性の低い事業の再編を促進するものでなければなりませんが、事業再編を行うのはあくまで民間企業であって、官主導による事業再編は、必ずしもよい成果が上がるものではありません。

 したがって、国の関与のあるべき姿は、事業者の行う事業再編を後押しすることであると考えますが、本法案ではそのような考え方に立っているのか、経済産業大臣のお考えを伺います。

 また、再興戦略で目標としているとおり、民間設備投資の水準を二〇一五年までに七十兆円に回復するため、本年十月に策定した与党の税制改正大綱では、事業者の生産性を向上させるための設備投資の促進税制のほか、ベンチャー投資の促進や事業再編の推進のための税制を掲げました。

 これに加えて、公明党は、中小企業にとっても使いやすい制度とすることの重要性を強く主張し、その結果、中小企業の設備投資促進税制が大幅に拡充されました。

 設備投資の回復を確実なものとするためには、本法案と税制等が連携し、事業者、とりわけ中小企業者にとって使いやすく、効果が最大限発揮されるように運用面でも万全を期すべきでありますが、この点について、経済産業大臣のお考えを伺います。

 さらに、日本経済の屋台骨である中小企業の創業、再生支援について質問します。

 現政権が発足して約十カ月が経過いたしましたが、これまでの対策によって、中小企業、小規模事業者の業況感は改善傾向にあると言われております。

 その一方で、地域の中小企業の方々からは、まだまだアベノミクスによる成果を実感することができないという生の声をいただくことがございます。

 先日、我が党の経済産業部会として、中小企業の経営改善や創業支援で成果を上げている静岡県富士市を視察し、中小企業の方々と意見交換を行ってまいりました。技術や人材に誇りを持ち、小さいながらも光る会社にしたいという言葉が非常に印象に残っています。

 創業は、産業の活性化に欠かせません。光り輝く中小企業を一つでも多く生み出していくためにも、本法案に盛り込んだ創業のワンストップ支援体制が実効性の高いものとなるように万全を期すべきと考えますが、経済産業大臣のお考えをお伺いします。

 あわせて、創業後五年程度は赤字であることが多く、税制の恩恵を受けにくい創業期の中小企業、小規模事業者に対しては、政策金融などの資金繰り支援や補助金で支える必要性があると考えますが、これに対する経済産業大臣の認識を伺います。

 一方で、中小企業の事業再生も非常に重要です。

 本年三月に中小企業金融円滑化法の期限が到来し、半年以上が経過をいたしましたが、依然として、中小企業、小規模事業者をめぐる事業環境は厳しい状況にあります。

 中小企業、小規模事業者の方々が今後も安心して継続的に事業を営んでいくためにも、個々の事業者の実態に即した相談に応じるなど、きめ細かな支援が不可欠であると考えます。

 本法案も活用し、中小企業、小規模事業者の方々の事業再生、経営改善に向けてどのように取り組んでいくのでしょうか。経済産業大臣のお考えをお伺いいたします。

 最後に、所得拡大による経済の好循環について質問します。

 我が国経済の再生には、産業競争力を強化することは重要でありますが、企業の収益が改善し、それによって賃金上昇や所得拡大がもたらされ、消費が拡大するという好循環により、国民生活の向上へとつながらなければなりません。

 安倍総理は、所信表明の中で、若者、女性を初め、頑張る人たちの雇用を拡大し、収入をふやし、その実感を全国津々浦々にまで届けるとおっしゃいました。

 政府では、経済の好循環実現に向けた政労使会議を本年九月から開催しており、精力的に関係者との間で議論が重ねられていると聞きますが、所得拡大促進税制の拡充も含め、実際に賃金の引き上げをどのように実現するのか、経済産業大臣のお考えをお伺いし、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 江田議員にお答えいたします。

 最初に、日本経済再生に向けた産業競争力強化法案の役割について御質問がございました。

 日本経済の再生には、日本経済の三つのゆがみ、すなわち、過剰規制、過少投資、過当競争を是正していくことが重要であり、そのキードライバーとなるものが、この産業競争力強化法案であります。

 具体的には、本法案に大きく三つの措置を盛り込みます。

 まず、過剰規制の改革であります。

 企業単位で規制の緩和措置を講ずる企業実証特例制度や、企業が新事業を行う際に事前にその事業が適法かどうか確認できるグレーゾーン解消制度を新たに創設いたします。

 次に、過少投資の是正です。

 今後三年間で、年間の設備投資額を、現在の六十三兆円から一割以上増加させ、リーマン・ショック前の水準、七十兆円以上とすべく、大胆な支援措置を実現してまいります。

 そして、過当競争の解消であります。

 税でのインセンティブも含め、大胆な産業再編や事業再編を促し、経営者の決断を後押ししてまいりたいと考えております。

 次に、実行計画の位置づけと、実行計画に定められる内容についてでありますが、江田議員御指摘のように、成長戦略は、スピード感を持って実現、実行できるかが鍵になります。

 このため、産業競争力強化法案において、日本再興戦略の確実な実行に向けた仕組みを新たに構築いたします。

 具体的には、日本再興戦略に盛り込まれた施策について、当面三年間の実行計画を策定し、施策ごとに担当大臣や実施期限を明確にいたします。また、毎年度進捗状況を評価し、見直しも行っていきます。

 こうした取り組みを活用し、安倍総理を中心に内閣全体の強いリーダーシップで、日本再興戦略の実現、実行に向け、しっかりと取り組んでまいります。

 企業実証特例制度と規制改革会議等の連携についてでありますが、規制改革を推進するに当たっては、企業の具体的なニーズに応じた企業単位の改革の仕組みとともに、国家戦略特区などの特区制度や規制改革会議での検討など、地域単位、全国単位の改革の仕組みを有効に活用し、三層構造で規制改革を推し進めていくことが重要であります。

 例えば、安全性等を確保する措置を確実に実施できる最先端の技術を有する企業に対し先行的に規制の特例措置を認める案件の場合、本制度の活用が考えられます。

 一方で、安全性等を確保するための措置が広く多くの企業において実施できるものであれば、規制改革会議での検討を経て、速やかに全国単位での改革につなげられるケースもあるわけであります。

 規制改革会議を所管する内閣府、特区制度を所管する内閣官房を含め、関係省庁間の連携を密にし、政府が一体となって、規制改革を強力に推進してまいります。

 事業再編における国の関与のあるべき姿についてでありますが、再編は、あくまで民間の自発的な判断によるべきものであり、政府の役割は、基本的に、それを促すための環境整備を行うことにあります。

 本法案でも、このような考え方に基づき、政府が資金的支援策や税制措置等により新たな事業環境を整え、企業がそれをうまく活用して積極的な事業再編の取り組みを進めることにより、我が国産業全体の競争力が向上することを期待したものであります。

 次に、民間設備投資の回復のために運用面でも万全を期すべきとの御質問でありますが、民間設備投資の回復のためには、本法案と並行して、税制面でも、これまでにない大胆な支援策を導入いたします。

 具体的には、生産性の高い先端の機械装置等への設備投資に対し、即時償却や税額控除を認めるとともに、中小企業については、公明党よりも御指摘をいただき、よりインセンティブが高く、より多くの中小企業をカバーするものに拡充するなどの措置を決定いたしました。

 これらの措置について、法律に基づく計画認定のような複雑な手続を必要とせずに、簡素な手続により税制支援措置を受けることができるようにすることとしております。

 このように、これまでと次元の異なる画期的な設備投資の支援策を講じることで、今後三年間で、年間設備投資額を、リーマン・ショック前の水準である七十兆円以上に戻してまいります。

 創業のワンストップ支援体制についてでありますが、本法案の市区町村による創業支援は、議員御指摘の富士市のような先端的な取り組みの全国展開を目指すものであり、市区町村が創業支援事業者と連携してワンストップで創業を支援する体制の整備を国が全力で支援するものであります。

 具体的には、まず、市区町村が、民間の創業支援事業者と連携して行う創業支援事業の計画を作成し、国が認定をいたします。その上で、この計画に基づく支援を受ける創業者に対し、国が信用保証や登録免許税の軽減等の支援を行います。また、創業支援事業者に対しても、信用保証等の支援を行ってまいります。

 こういった取り組みを通じて、ワンストップの創業支援体制の構築に万全を期してまいりたいと考えております。

 創業に関する金融支援についてでありますが、創業期の中小企業、小規模事業者にとって、資金調達は大きな課題となっており、中小企業白書の分析によると、創業して間もない企業の五七%が、これを課題として取り上げております。

 このため、創業間もない中小企業、小規模事業者に対して、無担保無保証で日本政策金融公庫の借り入れが可能となる新創業融資制度を実施しており、平成十三年から平成二十五年九月まで、約十万件、貸付金額三千六百億円の融資を実行してまいりました。

 また、平成二十四年度補正予算で措置した創業補助金二百億円により、既に二千四百五十九件の創業を支援しております。

 今後とも、税制だけでなく、政策金融や補助金等を総動員して、創業期の中小企業、小規模事業者の資金調達を支援してまいりたいと考えております。

 中小企業、小規模事業者の経営改善、事業再生支援についてでありますが、本年三月の金融円滑化法の期限到来後においても、中小企業による条件変更の申込件数が昨年と同程度で推移しており、引き続き経営改善や事業再生の取り組みを支援していくことが必要な状況にあるわけであります。

 このため、本法案においては、全国四十七都道府県の中小企業再生支援協議会に対して助言等の支援を実施している中小企業再生支援全国本部の機能を強化するとともに、経営改善、事業再生に関する事業計画の実行を支援するため、信用保証協会による新たな保証制度を創設いたします。

 これらの措置により、引き続き、中小企業、小規模事業者の経営改善や事業再生の取り組みを着実に支援していきます。

 最後に、賃上げの実現についてでありますが、アベノミクスを通じ、企業が投資し、収益を向上させ、これが個人の賃金や所得の向上につながり、消費が拡大し、再び企業の投資を呼び起こすという、経済の好循環を実現させていきます。

 このため、この秋に設けた政労使会議等の場も活用して、経済界に対して、賃上げを初め、前向きな行動の働きかけを行ってきており、十月十日には経済界の代表、先週十月二十五日には中小企業関係団体の代表に、私から直接、要請もさせていただいたところであります。

 これからも、政府を挙げて業界団体や企業に対して我々の成長戦略をしっかりと説明するとともに、賃上げ等を通じた経済の好循環の実現に対し、積極的な対応を要請していきます。また、地方経済産業局を通じて、地方企業の代表の皆さんに対してもきちんと説明をし、同様の要請を進めてまいります。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) 今後の経済再生に向けた取り組みについてのお尋ねがありました。

 消費税率引き上げによる経済への影響を乗り越え、日本経済の再生を図るためには、消費税率の引き上げによる反動減を緩和し、景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の経済の成長力の底上げと好循環の実現を図り、持続的な経済成長につなげることが重要であります。

 このために、十月一日に五兆円規模の新たな経済対策を含む経済政策パッケージを策定するとともに、その一部として、成長戦略の当面の実行方針を決定し、成長戦略について、特に当面実行していくべき施策について方針を明らかにしたところであります。

 成長戦略につきましては、同実行方針に基づき、産業競争力強化法案に盛り込まれている企業実証特例制度による企業単位での規制改革や、収益力の飛躍的な向上に向けた事業再編、起業の促進など、果敢にチャレンジする企業を応援してまいります。

 また、大胆な規制改革の突破口となる国家戦略特区を創設するなど、必要な施策の具体化を進めてまいります。

 実行なくして成長なし。

 御指摘のとおり、重要なことは、実行が伴うかどうかであります。今国会において結果を出していけるよう、政府としてもしっかり取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、産業競争力強化法案について質問します。(拍手)

 本法案は、アベノミクス第三の矢である成長戦略の具体化として、安倍総理が、世界で一番企業が活動しやすい国に日本を変えると称して出してきたものです。

 成長戦略は、全国単位、戦略地域単位、企業単位の三層構造で、企業が求める規制緩和を進めるものですが、なぜ、規制緩和で企業を強くすれば国民生活が向上するというのでしょうか。

 バブル経済の崩壊後、実行された規制緩和と構造改革は、一体何をもたらしたか。

 自動車、電機など、我が国大企業は、海外生産比率を高めて世界的な多国籍企業となり、逆に、国内産業と雇用の空洞化をもたらしました。派遣、請負など非正規雇用が激増し、リストラ、雇用破壊、賃金の引き下げが消費を冷やし続けているのであります。

 他方で、上場大企業の外資比率が急増し、金融投機が横行する中で、金融大資産家が生まれております。

 結局、貧困と格差の拡大をもたらしただけだったではありませんか。

 アメリカの対日規制改革要望書による一連の規制緩和政策と小泉構造改革の結果、既に日本は、世界で最も規制の緩い国になっているのではありませんか。

 中でも、一九九九年のリストラ支援の産業活力再生法、産活法と労働者派遣法の原則自由化は、極めて重大な悪影響を及ぼしました。甘利経済再生大臣は、当時の関係大臣として、その反省はありませんか。明瞭な答弁を求めます。

 そこで、法案に関連して伺います。

 第一は、企業実証特例制度の問題です。

 そもそも、個別企業が希望する規制緩和を法律で担保するようなことが許されるのでしょうか。また、それがなぜ産業全体の競争力の向上をもたらすのでしょうか。経団連が要求するような、企業ごとの労使協議による労働法制の緩和など、論外であります。

 かつての本田技研工業の例を挙げるまでもなく、厳しい環境規制、安全規制を乗り越える企業努力の中にこそ、新たなビジネスチャンスの創造的な発展があるのではないでしょうか。

 第二は、産活法との関連です。

 法案では、産業活動のリストラとMアンドAなどの再編計画で、産活法を継承し、「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」と定めています。

 ところが、産活法のもとで、十八万人もの電機リストラが強行され、産業革新機構が出資するルネサスエレクトロニクスでは退職勧奨が強要されています。労働者の権利と地位が不当に害されているではありませんか。

 産活法の認定企業六百七社について、どのような検証と総括を行ったのでしょうか。労働者の権利と地位を守る監督、指導こそ行うべきではありませんか。

 第三は、ファンド活用の問題です。

 この間、外資ファンドによる企業支配とリストラは野放しにされ、昭和ゴム、アデランス事件やサーベラスの西武鉄道TOBなど、我が国は、世界最高の、規制なきファンド天国とさえ言われています。今必要なのは、野放し状態の是正ではありませんか。

 我が国における内外ファンドの実態、摘発事件数及び規制の強化策について答弁を求めます。

 第四は、税負担の問題です。

 九月のG20でも大きなテーマとなった、ファンドやシャドーバンキング、あるいはアップルなど多国籍企業のタックスヘイブンを利用した税金逃れに対する規制強化策について、日本政府はどのような国際的イニシアチブをとるのですか。

 国際展開している多国籍企業に幾ら税金をまけてやっても、グローバル資本としての彼らが、当該国の投資や雇用に振り向ける企業行動をとる保証はありません。OECDの報告にあるように、多国籍企業による有害な税の引き下げ競争にくみせず、これ以上の法人税率引き下げの検討は行うべきではありません。答弁を求めます。

 多国籍企業化が進めば、企業利益と国民の利益が一致しなくなることは、既に一九九二年の通商白書が指摘したところであります。多国籍企業に成長した我が国大企業を応援し、産業競争力を幾ら強くしても、国民生活の向上につながりません。

 今こそ、国民生活を最優先させた日本経済発展の道に根本的に政策を切りかえることを求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 塩川議員にお答えをいたします。

 まず、失われた二十年と規制緩和等の関係についてでありますが、失われた二十年の原因についてはさまざまな評価があると承知をいたしておりますが、バブル崩壊以降、長年にわたるデフレの中で、莫大な国民所得と産業の競争力が失われたことは事実であると考えております。

 そこで、現政権では、長引くデフレから脱却し、経済を再生させることを最優先課題として、三本の矢の政策を一体的に進めてきており、この結果、日本経済は、マイナスからプラスに転換しつつあります。

 このプラスへの動きを確実なものとするためには、企業の創意工夫を生かして新事業の創出や投資の増大を図り、雇用の拡大につなげていくという観点も重要と考えており、その障害となっているような規制の緩和も、重要な施策、課題であると考えております。

 日本は規制の緩い国になったのではないか、こういう御指摘をいただきましたが、一九九〇年代以降、我が国においては、経済活性化等の観点から、流通分野や労働分野を含めたさまざまな分野で規制改革を進めてまいりました。これらの取り組みは経済活性化等に一定の成果を上げてきたと認識をいたしております。

 しかし、多くの分野でさらなる取り組みの余地が残されており、日本経済の再生に向けて、国際的に見て規制が世界最先端の経済環境を目指し、医療や農業を初めとする幅広い分野の規制改革に引き続き取り組むことが必要であります。

 その一環として、今回、特に産業競争力強化の観点から、企業実証特例制度などの規制緩和スキームを盛り込んだ産業競争力強化法案を国会に提出し、まさに今御審議をいただいているところであります。

 その企業実証特例制度についてでありますが、企業実証特例制度は、最先端の技術を有し新事業に進出しようとする企業が直面する課題解決の提案を受け、企業単位で規制を緩和する新たな仕組みであり、意欲あふれる民間企業の新たなチャレンジを支援するものであります。

 この制度では、安全性等を確保する措置が実施されていることなどを条件として、先行して技術開発、製品開発を行おうとする企業に対し先行的に規制の特例措置を講じた上で、最終的には、全国単位の規制改革につなげることによって、産業競争力の強化を図っていくものであります。

 なお、法案の成立、施行後、仮に企業から、企業実証特例制度を活用し、労働規制に関する規制緩和の提案があった場合には、事業所管省庁が、その内容、必要性などを精査した上で、規制所管官庁である厚生労働省と協議、調整を行っていくことが想定をされております。

 次に、産活法の総括と労働者の権利と地位についてでありますが、過去、産活法に基づく認定事業者の大半においては、計画期間中に生産性の改善等に一定の成果が出ておりますが、他方、雇用者数を減らした例があることも事実であります。

 したがって、本法案においても、認定事業者に雇用の安定に一定の配慮を求めるとともに、国等に雇用の安定等必要な措置を講じる責務を条文上明確にいたしております。

 また、日本再興戦略においても、失業なき労働移動の実現のための各種の施策を講じることとされており、厚生労働大臣とも連携しつつ、適切に対応してまいります。

 最後に、多国籍企業支援と国民経済の関係についてでありますが、多国籍企業の利益と一国の利益が一致しないケースは、多国籍企業の性格からして、当然出てくるものと考えられます。ただし、本法案では、あくまで我が国で事業活動を行う企業が裨益するよう制度を設けております。

 我々は、世界で一番企業が活動しやすい国を目指しており、我が国で事業活動を行う企業の収益性が高まれば、そこで働く従業員の賃金の上昇や雇用の拡大を生み、国民経済の発展につながるものと考えております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) 二点の御質問です。

 まず、規制緩和の意義についてお尋ねがありました。

 規制改革は、民間投資を喚起し、生産性を高めるとともに、潜在的な需要を顕在化させるなど、豊かな国民生活を実現するために不可欠な政策ツールと考えております。

 なお、いわゆるバブル崩壊後の九〇年代には、資産価格が急落するとともに、企業や金融機関のバランスシートが悪化をし、こうした中で国内需要が低迷したことなどにより、我が国の経済は低迷が続きました。

 その後、小泉内閣は、経済を強くし、自助と自律を第一に、能力のある者が努力すれば報われる社会を目指し、構造改革に取り組んだ結果、金融機関の不良債権処理が進むなど、バブル崩壊の後遺症が次第に緩和に向かい、二〇〇二年から二〇〇七年の間は、緩やかながらの息の長い景気回復となったと認識しております。

 ただし、デフレから脱却することはできず、デフレが長年継続する中で、莫大な国民の所得と産業の競争力が失われていったと考えております。

 政府としては、引き続き、三本の矢を一体として強力に推進することにより、デフレからの脱却を図るとともに、経済政策パッケージを果断に実行し、経済の成長力の底上げを図り、日本経済を持続的に成長させてまいります。

 次に、産業活力再生法の制定と労働者派遣法の改正についてのお尋ねであります。

 産業活力再生法は、選択と集中により、低生産性部門から高生産性部門への経営資源のシフトを図り、我が国の生産性を向上させることを目的に、平成十一年に制定をされました。

 また、平成十一年の労働者派遣法の改正は、社会経済情勢の変化を背景とした労働者の就業形態、就業意識の多様化や、当時の厳しい雇用情勢のもとでの労使双方の多様な働き方に対するニーズ等に対応するため、労働者派遣事業を行うことができる業務の範囲の拡大等を行ったものであります。

 これらはともに累次の改正を行い、一定の役割を果たしてきたものと認識をしております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 塩川先生から三問いただいております。

 日本における内外ファンドの実態、摘発件数及び規制の強化策についてのお尋ねがあっております。

 金融庁の調査結果によれば、日本で販売された内外ファンドの運用財産額は、平成二十五年の三月末で二百十一兆円となっております。

 また、証券取引等監視委員会は、ファンドの運用業者に対する検査等を踏まえ、二十三件の行政処分の勧告を行っております。

 また、金融商品取引法では、ファンドを含め、投資家に対し、株式等を大量に保有する場合の情報開示の義務づけ、支配権の移動を伴う企業買収を行う場合のTOB、公開買い付けの義務づけ、並びに相場操縦等の不公正取引の禁止などの規制を課しているところでもあります。

 これに加え、グローバルに活動するファンドに対応するため、国際的な連携が必要であり、リーマン・ショック以降、G20などにおける議論に、これまで日本としても積極的に参加をしてきたところでもあります。

 次に、ファンドやシャドーバンキング、また、多国籍企業の租税回避についてのお尋ねがありました。

 シャドーバンキングにつきましては、成長資金の円滑な供給につながるというような面も存在しているのは確かです。他方、複雑な取引を行うヘッジファンドなど、金融システムに対するリスクとなるものも存在しております。

 九月に行われましたG20のサミットにおいても、特に後者のシステミックリスクを有するものについては、その監視、規制に向けた作業のロードマップが合意されたところでもあります。

 また、多国籍企業の租税回避については、税源獲得を目指した各国による税負担の軽減競争を避け、各国協調してそれぞれ税制の調整、調和を図ることが必要と考えております。

 こうした問題意識に立ちまして、OECDでは、G20合同のプロジェクトとして、いわゆるBEPS、税源侵食と利益移転行動計画が七月に発表され、それで、九月のG20などにおいて全面的な支持を受けたところでもあります。

 日本としては、引き続き、シャドーバンキングや国際課税に関する国際的な議論を積極的にリードしつつ、金融システムの安定や適正な課税の確保に努めてまいります。

 最後になりましたが、法人税率の引き下げについてのお尋ねがありました。

 法人実効税率につきましては、これまでも与党においてさまざまな議論がなされてきたところであります。

 そのあり方につきましては、まずは、与党において、雇用、賃金などの経済効果の観点を含め、成長戦略としてどのように考えるのか、また、税制のあり方としてどのように考えるのかなどの論点について、引き続き議論をいただきたいものだと考えております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 塩川議員からは、三問ほど質問をいただいております。

 まず、企業実証特例制度として、企業ごとの労使協議による労働法制の緩和を行うことについてお尋ねをいただきました。

 産業競争力強化法案においては、企業実証特例制度として、御指摘のように、企業ごとの労使協議による労働法制の緩和は盛り込まれていないものと承知をいたしております。

 一般的ではありますけれども、労働基準法等に定めるルールは、労働者が人たるに値する生活を営むための最低基準であり、企業によって差をつけることは困難であると考えております。

 続きまして、産活法の認定企業における退職勧奨の強要についてお尋ねがございました。

 個別企業に対する指導状況についてはお答えを差し控えさせていただきますが、大規模な退職勧奨や解雇の動きに対しては、都道府県労働局が、必要な事実関係を確認した上で、企業に対して雇用の維持や再就職援助を要請し、関係法令や裁判例に関する啓発指導などを実施しております。

 さらに、個別の労働関係紛争については、あっせん等による迅速な紛争解決を援助しております。

 また、今般の産業競争力強化法案においては、産活法と同様、雇用に係る措置として、事業再編計画の認定には従業員の地位を不当に害するものでないことが要件とされ、また、認定を受けた事業者に対しては、労働者の失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずる努力義務が設けられているものと承知をしており、今後とも、関係省庁と連携のもと、個別の事案に応じて適切に対応してまいります。

 最後に、外資系ファンドによるリストラへの対応についてお尋ねがありました。

 先ほども申し上げましたとおり、大規模な退職勧奨や、また解雇の動きに対しては、都道府県労働局が、必要な事実関係を確認した上で、企業に対して雇用の維持や再就職援助を要請し、関係法令や裁判例に関する啓発指導などを実施しております。

 このように、企業による雇用の安定に向けた取り組みを促した上で、政府といたしましては、個別の事案に応じて離職者の受け皿確保に取り組むなど、地域経済、雇用への影響にも十分配慮し、雇用の維持や再就職援助に取り組んでまいります。

 また、個別の労働関係紛争については、あっせん等による迅速な紛争解決の援助を行うなど、きめの細かい対応に努めてまいります。

 以上でございます。(拍手)

議長(伊吹文明君) 予定をされておりました質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(伊吹文明君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       財務大臣

       国務大臣     麻生 太郎君

       厚生労働大臣   田村 憲久君

       経済産業大臣   茂木 敏充君

       国務大臣     甘利  明君

 出席副大臣

       経済産業副大臣  赤羽 一嘉君


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