衆議院

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第8号 平成25年11月7日(木曜日)

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平成二十五年十一月七日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第六号

  平成二十五年十一月七日

    午後一時開議

 第一 投資の促進及び保護に関する日本国政府とパプアニューギニア独立国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第二 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とコロンビア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第三 投資の促進及び保護に関する日本国とクウェート国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第四 投資の促進、円滑化及び保護に関する日本国政府、大韓民国政府及び中華人民共和国政府の間の協定の締結について承認を求めるの件

 第五 投資の促進及び保護に関する日本国とイラク共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第六 社会保障に関する日本国とインド共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第七 農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律案(内閣提出)

 第八 特別会計に関する法律等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)

 第九 安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案(第百八十三回国会、内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 投資の促進及び保護に関する日本国政府とパプアニューギニア独立国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第二 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とコロンビア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第三 投資の促進及び保護に関する日本国とクウェート国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第四 投資の促進、円滑化及び保護に関する日本国政府、大韓民国政府及び中華人民共和国政府の間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第五 投資の促進及び保護に関する日本国とイラク共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第六 社会保障に関する日本国とインド共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第七 農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律案(内閣提出)

 日程第八 特別会計に関する法律等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)

 日程第九 安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案(第百八十三回国会、内閣提出)

 特定秘密の保護に関する法律案(内閣提出)及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律等の一部を改正する法律案(枝野幸男君外二名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 投資の促進及び保護に関する日本国政府とパプアニューギニア独立国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第二 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とコロンビア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第三 投資の促進及び保護に関する日本国とクウェート国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第四 投資の促進、円滑化及び保護に関する日本国政府、大韓民国政府及び中華人民共和国政府の間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第五 投資の促進及び保護に関する日本国とイラク共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第六 社会保障に関する日本国とインド共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

議長(伊吹文明君) まず、日程第一、投資の促進及び保護に関する日本国政府とパプアニューギニア独立国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第二、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とコロンビア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第三、投資の促進及び保護に関する日本国とクウェート国との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第四、投資の促進、円滑化及び保護に関する日本国政府、大韓民国政府及び中華人民共和国政府の間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第五、投資の促進及び保護に関する日本国とイラク共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第六、社会保障に関する日本国とインド共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、右、以上六件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長鈴木俊一君。

    ―――――――――――――

 投資の促進及び保護に関する日本国政府とパプアニューギニア独立国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とコロンビア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 投資の促進及び保護に関する日本国とクウェート国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 投資の促進、円滑化及び保護に関する日本国政府、大韓民国政府及び中華人民共和国政府の間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 投資の促進及び保護に関する日本国とイラク共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 社会保障に関する日本国とインド共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔鈴木俊一君登壇〕

鈴木俊一君 ただいま議題となりました六件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、投資協定五件について申し上げます。

 日・パプアニューギニア投資協定は、平成二十三年四月二十六日に、日・コロンビア投資協定は、平成二十三年九月十二日に、日・クウェート投資協定は、平成二十四年三月二十二日に、いずれも東京において署名され、日中韓投資協定は、平成二十四年五月十三日に北京において、日・イラク投資協定は、平成二十四年六月七日にバグダッドにおいて、それぞれ署名されたものであり、投資の拡大により経済関係を一層強化するため、投資の促進、保護等に関する法的枠組みについて定めるものであります。

 次に、日・インド社会保障協定は、平成二十四年十一月十六日に東京において署名されたものであり、インドとの間で、年金制度への加入に関する法令の適用調整及び年金制度の保険期間の通算等について定めるものであります。

 以上六件は、第百八十三回国会で本院承認後、参議院において審査未了となり、今国会に改めて提出されたもので、十月二十五日外務委員会に付託されました。

 委員会におきましては、昨六日、岸田外務大臣から提案理由の説明を聴取し、質疑及び討論の申し出もなく、採決を行いました結果、六件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、以上六件を一括して採決をいたします。

 六件は委員長報告のとおり承認するに御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 全会一致。御異議なしと認めます。したがって、六件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第七 農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) 日程第七に移ります。農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長坂本哲志君。

    ―――――――――――――

 農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔坂本哲志君登壇〕

坂本哲志君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電を促進することにより農山漁村の活性化を図るため、基本理念を定めるとともに、主務大臣による基本方針の策定、市町村による基本計画の作成及び設備整備計画の認定、当該認定を受けた設備整備計画に従って行う事業についての農地法、森林法、漁港漁場整備法等の特例並びに農林地所有権移転等促進計画による権利移転等の一括処理等の所要の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る十月二十九日本委員会に付託され、翌三十日林農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、十一月六日質疑を行いました。質疑終局後、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、採決をいたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 全会一致。御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

 日程第八 特別会計に関する法律等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) 次に、日程第八、特別会計に関する法律等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長林田彪君。

    ―――――――――――――

 特別会計に関する法律等の一部を改正する等の法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔林田彪君登壇〕

林田彪君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、国全体の財政の一層の効率化及び透明化を図るため、特別会計の廃止・統合その他の特別会計の改革のための措置等を講ずるものであります。

 本案は、去る十月三十一日当委員会に付託され、十一月一日麻生財務大臣から提案理由の説明を聴取した後、六日、質疑に入り、質疑を終局いたしました。

 質疑終了後、本案に対し、小池政就君から、みんなの党の提案に係る修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、採決をいたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

 日程第九 安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案(第百八十三回国会、内閣提出)

議長(伊吹文明君) それでは、日程第九に移ります。安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 まず、委員長の報告を求めます。国家安全保障に関する特別委員長額賀福志郎君。

    ―――――――――――――

 安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔額賀福志郎君登壇〕

額賀福志郎君 ただいま議題となりました安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案につきまして、国家安全保障に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、現行の安全保障会議の審査体制等を見直し、もって我が国の国家安全保障に関する機能等を強化するため、現行の安全保障会議の名称を国家安全保障会議に改め、その審議事項を国家安全保障に関する重要事項に拡充し、国家安全保障に関する外交政策及び防衛政策の基本方針等の一定の事項について、内閣総理大臣、外務大臣、防衛大臣及び内閣官房長官により同会議の審議を行うことができることとするほか、内閣官房に国家安全保障局を設置すること等について定めるものであります。

 本案は、去る十月二十二日本委員会に付託され、同月二十五日本会議において趣旨説明及び質疑が行われました。

 本委員会においては、同月二十八日、菅内閣官房長官から提案理由の説明を聴取し、質疑に入りました。同月三十一日には参考人から意見を聴取し、十一月一日、民主党・無所属クラブより、本案に対し、国家安全保障会議の所掌事務、各行政機関による協力義務の明確化、議事録の作成等に係る修正案が提出され、同月五日、修正案の趣旨の説明を聴取し、次いで、原案及び修正案を一括して質疑を行いました。同月六日、安倍内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行い、質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、民主党・無所属クラブ提出の修正案について撤回を許可した後、本案に対し、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党の四会派共同提案により、諮問事項、資料提供等の協力義務の明確化に係る修正案が提出され、修正案の趣旨の説明を聴取した後、討論を行い、採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告を申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 討論の通告がありますので、順次これを許します。まず、反対討論、赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表し、国家安全保障会議設置法案に反対の討論を行います。(拍手)

 本法案は、単に、官邸の司令塔機能の強化にとどまるものではありません。第一次安倍内閣が掲げた戦後レジームからの脱却の一環として、総理のもとに国家のあらゆる情報と権限を集中させて、戦争の司令塔、すなわち、現代版の大本営をつくり、都合の悪い情報は国民に隠して世論を誘導し、日本を海外で戦争する国につくりかえる、重大な一歩を踏み出そうとするものにほかなりません。

 そのために、本法案と一体で秘密保護法を制定し、集団的自衛権の行使をめぐる憲法上の制約を、法解釈の変更によって取り払おうとしているのであります。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という憲法の基本原理を根底から破壊する危険きわまりない動きであり、断じて容認できません。

 新たに策定する国家安全保障戦略、防衛大綱で安倍内閣がやろうとしていることは何か。それは、敵基地攻撃能力や海兵隊の機能の保有であり、武器輸出禁止三原則の撤廃であります。まさに、戦争国家、武器輸出国家への道にほかなりません。

 総理は、十月の自衛隊観閲式で、平素は訓練さえしていればよいとか防衛力はその存在だけで抑止力になるといった従来の発想は、この際完全に捨て去ってもらわねばならない、力による現状変更は許さないとの我が国の確固たる国家意思を示すと述べました。従来の専守防衛の建前さえ完全に捨て去り、自衛隊のあり方の根本的な変容を迫ったのであります。

 今、陸海空三自衛隊の部隊を沖縄と九州に集結させて、沖大東島の米軍射爆撃場を初めて使った艦砲射撃や着上陸訓練、沖縄本島や宮古島、石垣島への地対艦ミサイル部隊の展開訓練が進められています。周辺諸国を軍事的に威嚇し、日本の側から緊張を高めることは絶対にやってはならないことです。直ちに中止すべきです。

 NSCは、国家安全保障を国政の中核に位置づける体制づくりにほかなりません。沖縄では既に日台漁業取り決めの締結によって漁場が奪われ、TPPによる国民生活の切り捨てが国家安全保障の観点から推し進められる危険は重大です。

 NSCでアメリカと機密情報を共有するといいますが、政府は、アメリカのうその情報をうのみにして国際法違反のイラク戦争を支持し、自衛隊を派遣したことを、いまだに反省していません。その情報は、当時のブッシュ政権が、開戦ありきでつくり上げたものでした。アメリカの機密情報に依拠し、国の進路を誤らせるようなことがあってはならないのであります。

 今、アメリカの情報機関が世界じゅうで国際法にも違反した盗聴活動を行っていたことが大問題になっています。日本も例外ではありません。

 このような活動に抗議もせず、アメリカとの情報共有を進める政府の姿勢は、到底納得できるものではありません。

 政府は安全保障環境が厳しさを増していると言いますが、大事なことは、軍事的緊張を高める行動を双方が厳しく戒め、問題の平和的、外交的解決を図る立場に徹することです。米中間でも、中国とASEAN諸国との間でも、意見の違いやもめごとを話し合いで解決する努力が続けられております。

 こうした話し合いの努力こそ政府は共有すべきことを強調して、討論を終わります。(拍手)

議長(伊吹文明君) 次の討論者、中山泰秀君。

    〔中山泰秀君登壇〕

中山泰秀君 自由民主党の中山泰秀です。

 自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました安全保障会議の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 我が国の歴史、日本史に鑑みれば、文永十一年と弘安四年に、中国大陸、朝鮮半島より我が国が攻め入られたという歴史がございます。当時は、海洋国家日本の特徴である海、そして天候によって守られたといいますが、現代においては、もはやこれは通用いたしません。

 今月四日、国連総会第一委員会で、核兵器廃絶に向けた共同行動を呼びかける我が国提出の決議案が、賛成百六十四、反対一、棄権十四で採択をされましたが、英米仏が賛成、中国は棄権、昨年賛成のロシアが棄権をする中で、反対は北朝鮮一国のみでありました。我々は、そのような緊張感のある北東アジア情勢の中において、北朝鮮からたった八分間で飛来する可能性のあるミサイルに対応しなければならないという現実がそこにはあります。

 こうした動きに対して、我が国の同盟国である米国は、引き続き、その安全保障戦略の重点を、よりアジア太平洋地域に置くことを示しております。

 このような安全保障環境におきまして、我が国が豊かで平和な社会を引き続き発展させていくためには、我が国の国益を中長期的観点から判断し、国際社会の中で我が国の進むべき進路を定め、国家安全保障のための方策に政府全体として取り組むべきことが必要です。

 現在、その具体策として、安倍内閣では、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、世界の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していく外交を展開しつつ、国家安全保障戦略や安全保障に関する法制度の検討など、さまざまな取り組みを進めております。

 その中でも、本法律案において実現される国家安全保障会議の設置は、今後の我が国の安全保障政策の決定過程を変える画期的な取り組みであると思います。

 国家安全保障会議では、総理、官房長官、外務大臣、防衛大臣から成る四大臣会合を核として、平素から定例的に議論を行うことにより、強力な政治的リーダーシップのもと、国家安全保障政策の軸となる統一的な柱を示し、山積する安全保障上の諸課題に対して、柔軟かつ一貫した解決策を見出していくことが期待をされます。これは、各省庁が十分な調整を経ず個別におのおのの所掌事務を淡々と実施していた従前の体制を根本的に変えることになります。

 国家安全保障戦略の策定、我が国の領土保全に関する対応策、在日米軍再編問題、国際テロリズムへの対応といった幅広い議題について、闊達な議論と機動的な政策決定がなされることが期待をされます。

 また、国家安全保障会議には、いつ発生するかもわからないさまざまな緊急事態に対する対処についても、意思決定を迅速化し、政治のリーダーシップを示す機能が期待されます。

 地震、津波、原発災害という前代未聞の複合事態となった東日本大震災のような事態、警察組織である海上保安庁から国防組織である自衛隊への対処の切りかえに慎重な考慮を要する我が国島嶼防衛のそういった危険な事態、弾道ミサイルによる攻撃、大規模なテロリズム、今の我が国ではさまざまな事態が起こり得る可能性があります。

 国家安全保障会議に新たに設けられる緊急事態大臣会合においては、高度に政治的な判断を要する事態について、政府として必要のある措置について建議することができるとしています。こうした体制を構築することは、今後、これまで全く想像しなかったような事態への対処を格段に改善することにもなり得るものと考えます。

 このような大臣会合が有する機能の必要性、重要性は、十分納得いただけるものであると考えております。そして、このような大臣会合をしっかりと機能させる仕組みを構築することもまた重要であります。

 四大臣会合等において総理を初めとする関係閣僚が有益な議論を行うためには、適切な議題を設定し、何を論点として、何を決定するのか、会合に、明確な目的意識とプロセスを用意する必要性があります。

 本法律案においては、内閣官房に国家安全保障局を設置することとしています。

 これまでも、安全保障、危機管理を担当する組織はありましたが、発生するさまざまな事態への対処に追われることとなり、必ずしも、中長期的かつ戦略的な安全保障政策の立案までには十分手が回らなかったという現実があります。

 新たな組織では、短期的な課題の調整のみならず、中長期的な観点で我が国として腰を据えて取り組まなければならない政策をしっかり取り上げること、また、これまで、外務省、防衛省に任され、政治レベルまでは取り上げてこられなかった重要課題について、政治の判断に供する材料を提供することが求められます。

 また、特に重要な点は、各省庁に散在する情報を総合することであります。

 もちろん、政策と情報の分離の原則は重要です。特定の政策を実現するために政策機関がみずから恣意的な情報を収集するようなことがあってはなりません。政策決定からは独立した情報機関が収集をし、専門的な観点から分析した情報を国家安全保障局が集約し、我が国として考えられる政策オプションを立案する機能を国家安全保障局が果たすことは、政府が的確な国家安全保障政策を推進する上で必要不可欠であります。

 本法案においては、このような国家安全保障会議、国家安全保障局が機能するために必要な仕組みを設けております。

 国家安全保障局長は、国家安全保障政策の立案等に専従する特別職の公務員であり、総理のスタッフである国家安全保障担当総理補佐官と、従来どおり内閣において危機管理を統理する内閣危機管理監と、緊密に連携をして職務を遂行することとなります。

 先ほど申し上げた情報の集約についても、今回の法改正により、各省庁には、会議に対して情報を提供する義務がより明確に課せられることになります。

 もちろん、本法案が成立すれば全ての国家安全保障上の課題が解決されるということは残念ながらありませんが、現在進めている国家安全保障戦略等の個別案件を強力に推進することと並行をして、この法律に魂を入れていく作業を実施しなければなりません。

 まずは、国家安全保障局が機能する体制を構築するために、局長の人選、職員の構成等を十分検討する必要があります。縦割り行政を打破し、国家的な視点で政策立案に当たる強力なチームを構築する必要があります。

 また、国家安全保障会議、国家安全保障局がしっかりと運営されるかどうか、総理を中心とする各閣僚が、その仕組みを適切に活用していかなくてはなりません。

 さらに、国家安全保障という国家の存亡に直接かかわる件についてどのように意思決定がなされたのか、会議の運営状況について国民への説明責任が果たされるべきであると思います。

 こうした課題については、これからも国会としてしっかりと見守っていく必要がありますが、まずは、この法律案を速やかに成立させ、我が国を取り巻くこの厳しい安全保障環境を生き抜いていくために、国家安全保障政策に政府を挙げて取り組むというこの国家安全保障会議を一刻も早くスタートさせるべきだと思います。

 太古の昔から平和と幽霊という言葉は存在しておりますが、平和と幽霊をつかんだ人はいないと言われます。

 我が国が、総理が推し進める積極的平和主義を基軸にして、いまだかつて誰もつかみ得ていない我が国の真の平和と独立を確保し、国民の生命及び財産を守るという国家として最も重要な責務をともに果たしていくために、国民、同志皆様の本法律案への圧倒的多数の御賛同をいただきますよう強く心からお願いを申し上げて、私の賛成討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(伊吹文明君) 次に、反対討論、玉城デニー君。

    〔玉城デニー君登壇〕

玉城デニー君 私は、生活の党を代表して、政府提出の安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案及び自民党、公明党、民主党、維新の会提出の修正案に対して、反対の立場から討論を行います。(拍手)

 国民の安心、安全を確保することは国家の責務であり、そのために、首相官邸が、省庁縦割りの弊害を排し、外交・安全保障政策立案を一元的に担おうとする基本的な考え方は理解できるものです。

 しかし、安倍政権が進める本法案によってもたらされるのは、国民の安心、安全ではなく、むしろ、最大の同盟国であるアメリカとの情報共有による安全保障偏重の政策判断と実効性を担保させようとするものであります。このことは、総理への権限集中と情報の一元化などを一層強化し、中国や韓国、北朝鮮とのさらなる緊張と平和に対する脅威をあおるものであり、到底賛成できるものではありません。

 この間の委員会における質疑で、これまでも、日本版NSCの名称や制度がなかろうとも、危機管理や外交政策、安全保障政策という実務は内閣として機能していたこと、また、情報の取り扱い是非についての仕分けも、問題はなかったことが確認できています。

 情報の一元化と総理への権限の集中は、総理の絶対的権限をさらに集中させることへつながることは明らかであり、本来、この絶対的権限は、抑制的に使われなければなりません。

 アメリカやイギリスのNSCをモデルとしたというのであれば、例えばイギリスのように、野党党首がNSC会議に参加できるような、国民の生命、安全に直結する外交、安全保障での意思決定には、党派を超えてコンセンサスを図るということが必要であります。

 さらに言えば、集中する情報の正確性への疑問を常に持つことや、外交・安全保障政策立案の決定に至る前の、必要な抑止力の分析も含めた、日本の防衛、外交の全体像をしっかり出し、二度と無駄な戦争をしないことに最大の任務を負うべきだという政策理念を有することが重要なのです。

 総理が、このNSC法案と両輪であると表現された、秘密漏えいの防止と罰則を強化するための特定秘密法案、いわゆる特定秘密保護法案についても、国家の機密保持以上に、国民に保障された知る権利や自由な取材の著しい制限、秘密漏えい防止の厳罰化など、秘密漏えいの防止と罰則を強化するための特定秘密法案への大きな疑念や懸念が、国民はもとより、外交政策で順調に連携と成長路線に進もうとする先のAPEC会合各国からも、安倍政権のタカ派色が突出している外交・安全保障政策に警鐘を鳴らす論調が強くなっていると言われています。

 丁寧に、時間をかけて国民の声を聞き、慎重に審議することこそが尊重されなければなりません。会期の短いこの臨時国会で、本法案や特定秘密法案等の早期成立を急ぐため、たたらを踏まんとするばかりに前のめりになっている安倍政権の外交、安全保障に関する政策姿勢は、国民主権忘却内閣と断ぜざるを得ません。

 なお、自民党、公明党、民主党、維新の会提出の修正案についても、各省庁の情報提供の義務づけが追加明記されたのみであり、内容はまだまだ不十分であることから、反対することを申し添えて、私の反対討論といたします。

 ニフェーデービタン。(拍手)

議長(伊吹文明君) 次に、後藤祐一君。

    〔後藤祐一君登壇〕

後藤祐一君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提出の安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案及び民主党、自民党、公明党、日本維新の会提出の修正案に対し、ともに賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 民主党は、近年の我が国をめぐる安全保障環境が大変厳しくなっていることを踏まえ、かねてより、安全保障に関する情報を集約、分析して、総合的な安全保障戦略を策定する体制の必要性を提起してまいりました。

 与党時代の平成二十二年十二月に閣議決定された防衛大綱においても、南西諸島を守ることに重点を置き、根本的な防衛戦略を転換する、この内容とともに、このNSCの設立についても盛り込んできたところであります。また、ことし夏の参議院選挙のマニフェストにおいても、NSCの設立を明確に約束しているところであります。

 したがって、NSCを設立することについては是とするところでありますが、政府案では十分に機能しないおそれがあり、より機能するNSCをつくる、まさに魂を入れる観点から、民主党は四点の修正案を提出し、特別委員会で審議してまいりました。

 第一に、政府案では、NSCは関係行政機関の長に対して資料または情報の提供及び説明その他必要な協力をするよう求めることができるとされていますが、これでは、どうしても各省が拒んだ場合に、NSCが情報を入手できなくなるおそれがあります。これに対し、我が党が提出した修正案では、関係行政機関の長は情報の提供及び説明その他必要な協力を行わなければならないこととし、協力義務を明確にさせていただきました。

 第二に、政府案では、国防等に関する重要事項は全てNSCに諮らなければならないと解釈できる規定になっています。しかし、これでは、諮問事項を必要以上にふやしかねません。我が党の修正案では、従前どおり、内閣総理大臣が必要と認めるものに限ってNSCに諮らなければならないとし、文民統制の内容は維持しつつ、防衛大臣の迅速な判断を引き続き可能とすることにいたしました。

 以上の二点については、そのままの形で自民党、公明党、日本維新の会とともに再度修正案として共同提案し、みんなの党の賛成も賜り、特別委員会で可決をいただきました。特に、ねじれ国会が解消しているにもかかわらず、与党に御賛同いただいたことについては、自民党の中谷元筆頭理事、公明党の上田勇理事を初め、御努力いただいた皆様の真摯な対応に、感謝申し上げたいと思います。

 当初の民主党修正案の三点目は、NSCの組織のあり方について、政府案では、安全保障担当の内閣総理大臣補佐官を置くこととなっておりますが、民主党案では、情報系統が二重になりかねない総理補佐官ではなく、安全保障危機管理専任の内閣官房副長官を新設するなど、指揮命令系統を一本化する案を提出させていただきました。

 NSCにかかわる組織のあり方については、まずは生んで育てることが大事だと考えますことから、政府案で示された組織がうまく機能するかどうか見守ることとし、今回、附帯決議において、「機動性及び実効性の観点から不断の見直しを行うこと」とされたところであります。

 民主党修正案の四点目は、NSCの議事録作成を義務づける点であります。

 NSCにおいては、機微な内容を議論する場合もあり、すぐに公開すべきでない場合もあると思います。

 しかし、少なくとも、記録は残していくべきです。この点については、特別委員会でも、与野党の各委員から数多くの指摘がなされてまいりました。しかしながら、残念ながら、条文修正には至りませんでした。

 その思いは、附帯決議の中に盛り込まれ、「国家安全保障会議の議事について、」途中は省略しますが、「速やかに会議録その他の議事に関する記録の作成について検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること」とされたところであります。

 これは、通常の附帯決議に見られる、やったふりになりかねない、単なる検討とは違います。今申し上げた「検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること」という文章が暗に示しているのは、閣議の議事録の義務づけとの関係であります。

 これについては、参議院本会議における公明党の山口代表の質問に対し、安倍総理が、閣議の議事録を作成し一定期間経過後に公開するための公文書管理法改正法案については、途中省略しますが、政府部内で必要な調整、検討を行った上で提出することとしたいと答弁しておられます。また、公明党の上田理事も、昨日の特別委員会において、NSCの議事録について、閣議等の記録作成の調整、検討とあわせて御検討していただくものだというふうに考えておりますと御発言されておられます。

 きのうの特別委員会では、同僚の大島敦理事からNSCの議事録作成の意義について問われ、私は、修正案の提出者として、第一に、政府内で事後的に会議の内容を検証できるようにしておく必要があること、第二に、将来において政策判断が妥当であったかどうかを国民が外部から検証できるようにしておくことにより、今の時点において、国民に堂々と説明できる、質の高い政策決定を行っていただく必要があること、このように答弁をさせていただきました。

 これについて感想を求められた安倍総理が、次のような御発言をなさいました。総理の発言です。

 今の答弁を聞いていても、なるほど、もっともというところも確かにあります。あのとき政府は、どういう議論をして、そういう判断をしたのか。それは、後の政府あるいは政治にかかわる人々が、二度とそうした、もし過ちがあったとすれば、同じ過ちをしなくて済むし、意思あるいは政策決定過程、情報の分析が間違っていたかどうかも含めて、検証できることも必要なんだろうと思います。

 これは総理のお言葉です。全く同感であります。

 論語の言葉に、過ちては改むるにはばかることなかれと言います。検証し、反省し、改めることのできる、粘り強い安全保障政策を実現していこうではありませんか。

 ぜひとも、与野党を超えて、閣議の議事録作成の義務づけとあわせて、NSCの議事録についても対象としていくべく、公文書管理法の改正等必要となる措置を講じていただくよう、取り組んでまいりたいと思います。

 最後に、改めて、我が党は、NSCを設立し、官邸主導で安全保障政策に取り組む体制を整えるべきとの観点から、政府案及び修正案に賛成することを申し上げ、討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(伊吹文明君) 次に、山田宏君。

    〔山田宏君登壇〕

山田宏君 日本維新の会の山田宏です。

 私は、日本維新の会を代表して、ただいま上程されました安全保障会議設置法原案と、我が党など、自民党、公明党、民主党が共同提案をいたしました修正案に、賛成の立場から討論いたします。(拍手)

 我が国は、六十八年前の敗戦から長きにわたって、みずからの安全の保持のための防衛や外交を基本的に米国に委ね、ひたすら経済の発展にその国力のほとんどを費やしてきたと言ってもよいと思います。また、これまでは、それが許される国際環境でもありました。

 しかし、一九八九年の冷戦の終結で、当初は米国による一極支配の世界になると言われたこともありましたが、予想に反し、世界の流れは、幾つかの強国が時にエゴを強引に押し通す多極化の時代となり、米国だけに外交や防衛を委ねてさえいれば我が国の平和と繁栄が維持できる国際環境ではなくなってきています。

 特に、我が国を取り巻く東アジアの環境は、その最先端にあると言ってもいいと思います。

 経済発展とともに軍事力の大増強を図り、我が国固有の領土である尖閣諸島を例に挙げるまでもなく、これまでの国際法秩序を力で変えようとする中国。もはや核兵器を保有し、我が国を仮想敵国とみなして恫喝を繰り返す北朝鮮。みずからをアジア太平洋の国として極東進出を図り、北方領土を不法占拠したままのロシア。そして、竹島占拠を強化し、反日一色に走る韓国。

 平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼しているだけでは、我が国の安全と生存を保持することができない、まさに力むき出しの国際環境が我が国の眼前に広がりつつあることに、私たち国民は気づき始めています。

 このような厳しい時代環境の中で、私たちは、これまで築き上げてきた平和と繁栄を維持し、それを次世代の国民に引き継いでいくためには、平和は何もしなければ自然にもたらされるというものではないという当たり前の真実を、今、しっかり受けとめることが大事です。

 そして、まず、私たちの国は私たちみずからの知恵と力で守るという、独立国なら当然の気概に立った、国の安全保障戦略を立てること。その上で、我が国の平和と繁栄の基礎となっている、自由と民主主義、人権尊重と法の支配という価値を共有する国々としっかりした対等の協力関係を築き上げること。そして、それらの価値を力で突き崩そうとするあらゆる邪悪なたくらみに対しては、力を合わせ断固として排除するという決意を示すことです。

 不当な威嚇や恫喝に対して、見て見ぬふりを決め込み、その場しのぎの対応を繰り返せば、必ず、自由や民主主義に基づく真の平和は破られていくでしょう。不当な威嚇や恫喝に対しては、それを断固として排除するという強い国際社会の決意が、真の平和を維持する礎となるのです。

 これまでのように、自国の平和と安全を他国に委ねていられる状況であれば、我が国は今までのやり方でいいかもしれません。しかし、みずからの安全と生存はみずからの手で守り、価値を共有する国々と力を合わせて平和と繁栄を維持しようとするならば、いざというときには、統一した、迅速で賢明な意思決定が必要になるというのは当然のことです。

 この法案で新たに設置しようとする国家安全保障会議は、ともすればばらばらな対応になりがちな縦割り行政を排し、首相のリーダーシップのもとでそれを可能にする仕組みであり、今日の国際環境に照らし、基本的に我が国の平和と安全の保持に寄与するものと考えます。

 いざというときに適切、迅速な対応ができない、各省がばらばらにその場しのぎの対応を繰り返すのは、残念ながら、これまでの我が国の行政の最大の欠点であります。戦前も、外務省、陸軍、海軍が省益に固執しばらばらに対応し、しかも第一線と意思決定機関の意思疎通もまずく、ずるずると状況に流され、結果として、我が国と国民に悲惨な結果をもたらすことになりました。

 今回設置されます国家安全保障会議が、この我が国の欠点を克服し、いざというときに賢明かつ迅速な対応を総理大臣がとれるよう、しっかりと機能するものにしていただきたいと願います。

 そこで、そのために何点か指摘しておきたいと思います。

 第一に、国家安全保障会議の設置後、速やかに、我が国の対外情報の収集・分析体制を充実強化していくべきだという点です。

 国家安全保障会議という政策決定の機関が賢明、迅速な決定を行うためには、できるだけ早く、正しい情報を上げていくことが必須です。そのためには、独自の広範な情報収集体制を築くとともに、その情報を分析する能力の強化を図っていくことです。

 しかし、これは一朝一夕で実現できるものではありません。常に情報というものの価値を国家として重視するという文化を築き上げていくことが重要で、そのためには、今後、情報収集・分析の専門的な教育研究機関の設置や、情報にかかわる部署には行政内部で高い評価を与えていくようにすべきです。

 日露戦争時にロシアでの内部工作に成功した当時の明石元二郎大佐は、後に大将として遇されましたが、明石大将以降は、情報将校の出世は中将どまりで、大将は出ていません。このことが示しているように、日露戦争以後の我が国の情報軽視の風潮が、我が国の道を誤らせた大きな原因の一つと反省する必要があります。

 第二に、今回必置とされた国家安全保障担当総理補佐官というポストですが、これは、必置ではなく、任意で置くことができるようにすべきだったと思います。

 この総理の意思決定を補佐するスタッフには、大物が座れば、国家安全保障局長などのラインとの関係で混乱要因になりかねませんし、小物が座れば、いわば組織の盲腸になりかねません。もちろん、危機に臨んで最後は一人で決断を下さなければならない総理は孤独で、よいアドバイザーがいた方がいい場合もありますが、それは、よいアドバイザーを得た場合であり、必置である必要はないのではないかと思います。

 補佐官の任命に当たっては、当然ですが、この点を十分に注意して当たっていただきたいと思います。

 第三に、会議の議事録作成についてです。

 これは、一長一短があり、なかなか難しい問題ですが、議事録のあり方、残し方等をしっかり研究して進めていただきたいと思います。

 一方で、まずは、NSC白書のような年次報告書を毎年作成し、国会に提出し、報告をしていただき、国会での議論を経るという、民主主義的なチェックを受けるべきです。この点については、官房長官より前向きの御答弁をいただいておりますので、ぜひ実行していただきたいと思います。

 以上をもちまして、日本維新の会を代表しての賛成討論を終わります。(拍手)

議長(伊吹文明君) 最後に、畠中光成君。

    〔畠中光成君登壇〕

畠中光成君 みんなの党の畠中光成です。

 私は、本日の議題である安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案の採決に当たり、みんなの党を代表して、賛成の立場から討論をさせていただきます。(拍手)

 第一に、我が国の平和と独立を確保し、国民の生命及び財産を守ることは、政府の重要な責務の一つであり、その責務を果たすためには、正確かつ総合的な情勢判断に基づき、時代の変化に迅速かつ的確に対応した国家安全保障に関する政策を展開することが不可欠です。

 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している中、国家安全保障の基本方針や対応について、内閣総理大臣を中心に、日常的に綿密な議論を行う場を創設することが必要です。

 また、国内外に対して外交、安全保障の基本政策を示すことで、国際社会における我が国の立ち位置を明確にすることも重要です。

 本法案によって創設される国家安全保障会議は、我が国の頭脳として、これらの課題に対応し、外交・安全保障政策にイノベーションを起こすことが期待されます。

 第二に、従前、我が国の安全保障政策の司令塔であった安全保障会議は、ともすれば形骸化している等の批判を受けていたところですが、本法案においては、総理大臣を議長として開催される四大臣会合において、武力攻撃事態等の緊急に対処が必要な事態等の緊急的な会合が可能となり、政治の強力なリーダーシップの発揮が期待されるものです。

 第三に、国家安全保障会議には、外務省や防衛省などの職員や、研究者などの民間人といった、官民、省庁の垣根を越えた有能な人材が集い、省益にとらわれることなく、オール・ジャパンの精神で職務に精励されることとなると確信しています。このことにより、霞が関の縦割り意識の打破につながり、真の意味での公務員制度改革のすぐれた先例となることが期待されます。

 なお、国家安全保障会議の運用においては、総理がかわった際などに方針のぶれが生じることのないよう、最終的な意思決定に際しては閣議を経ることとするなどの民主的統制に変更のないよう、留意が必要です。

 国家安全保障会議の創設後、特に運用面に注意し、実効的に機能することを御期待申し上げ、法案賛成の討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(伊吹文明君) 以上をもって討論は終局といたします。

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 採決をいたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長の報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。したがって、本案は委員長報告のとおり修正議決することといたします。

     ――――◇―――――

 特定秘密の保護に関する法律案(内閣提出)及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律等の一部を改正する法律案(枝野幸男君外二名提出)の趣旨説明

議長(伊吹文明君) それでは、内閣提出、特定秘密の保護に関する法律案及び枝野幸男君外二名提出、行政機関の保有する情報の公開に関する法律等の一部を改正する法律案二案について、順次趣旨の説明を求めます。まず、国務大臣森まさこ君。

    〔国務大臣森まさこ君登壇〕

国務大臣(森まさこ君) ただいま議題となりました特定秘密の保護に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、国際情勢の複雑化に伴い我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重大性が増大するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される中で、我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、これを的確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、当該情報の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とするものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 第一に、行政機関の長は、当該行政機関の所掌事務に係る別表に掲げる事項に関する情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるものを特定秘密として指定するものとしております。

 第二に、特定秘密を保有する行政機関の長は、他の行政機関が我が国の安全保障に関する事務を遂行するために当該特定秘密を利用する必要があると認めたときは、当該特定秘密を提供することができるものとしております。

 第三に、特定秘密の取り扱いの業務は、原則として、適性評価において特定秘密の取り扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者でなければ行ってはならないものとしております。

 第四に、この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことはあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道または取材の自由に十分に配慮しなければならないとしております。

 第五に、特定秘密の取り扱いの業務に従事する者であって、その業務により知得した特定秘密を漏らしたものや特定秘密を保有する者の管理を害する行為により特定秘密を取得した者等に対する所要の罰則を設けることとしております。

 第六に、自衛隊法の防衛秘密に関する規定を削除するため自衛隊法の一部を改正するとともに、特定秘密の保護に関し、施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整に関する事務を内閣情報官に掌理させるため、内閣法の一部を改正するものとしております。

 以上のほか、所要の規定を整備するものとしております。

 なお、この法律は、一部を除き、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次に、提出者枝野幸男君。

    〔枝野幸男君登壇〕

枝野幸男君 ただいま議題となりました行政機関の保有する情報の公開に関する法律等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、平成十三年に施行された行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行状況を踏まえ、国の行政機関及び独立行政法人等に関する情報公開制度をさらに充実させ、国民の知る権利を保障することにより、オープンガバメントを実現し、民主主義の基盤を強化することを目的として提出するものであります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 まず、情報公開制度が、国民の知る権利を保障する観点から定められたものであることを法律に明記します。

 その上で、制度面では、第一に、不開示情報規定及び部分開示規定を見直し、より多くの情報を開示するようにいたします。具体的には、公にすることにより、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがあるものを不開示の対象から外すなど、開示情報を拡大するとともに、政府による積極的な情報提供制度を創設します。

 第二に、より簡易に情報公開制度を利用できるようにするため、開示請求手数料を原則として廃止します。

 第三に、より早く開示決定等がなされるよう、開示請求から開示決定等までの期間を、現行の三十日から、行政機関の休日を除き十四日に短縮します。また、期限内に開示決定等がされない場合には、開示請求者において不開示決定がされたものとみなすことができることにより、政府による開示決定等の引き延ばしを許さず、直ちに不服申し立てや情報公開訴訟を行うことを可能とします。

 第四に、開示請求された文書を不開示とする場合には、不開示決定の通知に、その根拠条項及び理由をできる限り具体的に記載し、その理由を明確にしなければならないものとします。

 第五に、情報公開がより確実に行われるようにするための手続を整備します。

 不服申し立てについて、情報公開・個人情報保護審査会へ諮問するまでの期間が九十日を超えた場合には、その理由を内閣総理大臣に報告し、公表するものとします。

 また、内閣総理大臣の勧告制度の導入など、内閣総理大臣の権限を強化するとともに、法律の所管を総務省から内閣府に移管します。

 さらに、情報公開訴訟を抜本的に強化します。

 訴訟を提起できる地方裁判所を、現在の八カ所から全国五十カ所に拡大します。

 裁判所が、行政機関の長等に対し、不開示情報と不開示の理由をリストにして整理した書面の提出を求める手続と、裁判所が当事者を立ち会わせずに対象文書について証拠調べを行う、いわゆるインカメラ審理手続を導入します。

 インカメラ審理手続については、政府がこれを拒否する余地を残してはいますが、その要件は、裁判所に提出または提示することにより国の重大な利益を害する場合に限られ、不開示の要件等と比べて圧倒的に限定されるとともに、その立証責任は政府にあることから、十分な効果が期待されます。

 以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 特定秘密の保護を特に徹底しなければならないとしたら、一方で国民の知る権利の確保もさらに徹底されなければ、バランスを欠きます。また、特定秘密の指定が必要以上に広範になされることを防ぐためには、行政機関の内部にとどまらず、外部の機関である裁判所でのチェックを充実させることが不可欠です。

 このため、特定秘密保護法制を整備するに当たっては、これに先行して、少なくとも同時に、この行政機関の保有する情報の公開に関する法律の一部改正を行う必要があります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)

     ――――◇―――――

 特定秘密の保護に関する法律案(内閣提出)及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律等の一部を改正する法律案(枝野幸男君外二名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(伊吹文明君) ただいまの二つの法案の趣旨の説明に対し質疑の通告がありますので、順次これを許可します。まず、城内実君。

    〔城内実君登壇〕

城内実君 自由民主党の城内実でございます。

 自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました特定秘密の保護に関する法律案について質問をいたします。(拍手)

 我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しております。

 こうした厳しい安全保障環境のもと、時々刻々と変化していく国際情勢に我が国が適切に立ち向かっていくためにも、省庁の縦割りを排し、きちんと、政府が一体となって、総合的、戦略的に、外交面、国防面、治安面などの政策判断をしていかなければなりません。

 こうした中、安倍晋三総理が従来よりその必要性を強く訴えてこられた、いわゆる日本版NSCが創設されれば、外交、安全保障に関する諸課題について、総理大臣を中心に、官房長官、外務大臣、防衛大臣等の関係閣僚が、常日ごろから定期的に、戦略的観点を持って審議を行う場ができることとなります。

 その結果、国民の代表である政治家が、強力なリーダーシップを発揮した上で、機動的、戦略的に国家安全保障政策を進めていくことが可能となります。

 日本版NSC、すなわち国家安全保障会議でしっかりとした議論ができるかどうかは、この会議に、全省庁が保有する良質かつ機微な情報がきちんと一元化されるかどうかにかかっております。

 ところが、各省庁において、他の機関に情報を提供することによる情報漏えいを恐れる余り、情報提供にちゅうちょし、情報共有が深まらない結果となれば、大問題であります。

 国家安全保障会議に対して各省庁が安心して情報を提供するためには、情報漏えいを生じさせないための制度的な担保が必要不可欠であります。

 同時に、情報に関しては、諸外国との情報共有及び交換が何よりも大切であります。

 我が国の情報コミュニティーが各国情報機関とやりとりした機密情報が国家安全保障会議に提供される際、その前提として、秘密を確実に保護する法制度が確立されている必要があります。

 欧米先進国においては、秘密保護法制の存在を前提として、情報の共有、交換がなされており、そのような法的担保を有しない国に対しては機密性の高い情報を十分提供しないのが、国際社会の常識、いわゆるグローバルスタンダードであります。

 ここで一つ例を挙げたいと思います。

 外国の情報機関より、某国のテロリストが我が国国内重要施設を某月某日に攻撃する計画を立てているとの具体的情報を得たとします。ところが、この情報が事前に漏えいし、報道されたとします。この情報に接したテロリストが逃走、国内に潜伏し、数カ月後に別の施設を攻撃して、一般市民を巻き込む大惨事をもたらしたとします。こういうことが起こらないという保証はありません。

 こうしたことを未然に防ぎ、国民の生命財産を守るためにも、特定秘密を保護する体制は不可欠であります。

 いずれにしましても、特定秘密保護法の成立は、諸外国から、また、国内各省庁から国家安全保障会議への情報共有を深め、その結果、より質の高い会議の審議が可能となります。まさに、日本を取り戻す第一歩であります。

 こうした観点から、特定秘密保護法案は、NSC法案と表裏一体のものとして、今国会で成立させることが望ましいと考えますが、これに対する総理のお考えをお伺いします。

 一方で、本法律案に対しては、国民の知る権利や取材の自由の観点から、さまざまな懸念が指摘されております。

 私のもとにも、国民の皆様から多数の御意見をいただいております。具体的には、国民の知る権利や報道の自由の侵害への懸念、情報公開の促進、恣意的な特定秘密の指定に対する懸念、適性評価の実施に伴うプライバシーの侵害の懸念、特定秘密の取得行為の処罰化による取材行為等の萎縮に対する懸念などであります。

 そこで、まず、特定秘密の指定に関する規定についてお伺いします。

 本法律案では、特定秘密の対象となる分野は、我が国の安全保障に関する情報、すなわち、一つ、防衛、二つ、外交、三つ、特定有害活動の防止、これは外国の日本に対するスパイ活動防止であります、四つ、テロリズムの防止に関する事項であり、法律に具体的に明記された事項に該当する情報に限定され、このように限定された範囲の情報のうち、現在も公にされておらず、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるとして、特に秘匿する必要がある情報が対象となるものと認識しております。いわゆる、別表該当性、非公知性及び秘匿の必要性という三つの要件、縛りであります。

 他方で、特定秘密の範囲が広範かつ不明確であり、特定秘密の指定が恣意的になされるのではないか、あるいは、特定秘密の指定に関し、その基準づくりに当たっては有識者にも議論してもらうとされておりますが、そもそも、その有識者が秘密の内容を一件一件確認することはできないので、無意味ではないか、そういった声もあります。

 本制度上、政府が秘密にしたいものは全て特定秘密になるということはあり得ないにしても、どのようにして恣意的な指定を回避することができるのかは、大変重要な論点であります。この点について、森まさこ大臣のお考えをお伺いします。

 次に、適性評価に関する規定についてお伺いします。

 特定秘密は、我が国の安全保障にとって真に必要な情報であり、取り扱う者も、秘密を扱う適性を有した者に限定すべきであるのは言うまでもありません。

 他方で、この適性評価を実施するに当たっては、適性評価の対象者について、本人のみならず、その家族として列挙された、父母、子及び兄弟姉妹などや同居人の氏名、生年月日、国籍及び住所、評価対象者の犯歴、薬物、精神疾患、飲酒、信用状態に関する事項など、適性評価に必要な調査を行うことにしております。

 そこで、森大臣にお伺いします。

 この適性評価の実施に必要な調査については、他人に知られたくない個人情報が多く含まれており、プライバシーが侵害されるのではないか、あるいは、個人の政治活動や組合活動、さらには個人の思想、信条にまで踏み込んだ調査がなされる危険性があるのではないかなどの懸念が出されております。

 そもそも、適性評価は、特定秘密の保護という目的を達成するのに必要かつ最小限のものにとどめなければならないのではないでしょうか。この点について、政府の御見解をお伺いします。

 次に、罰則に関する規定についてお伺いします。

 これまで、一般職の国家公務員による秘密の漏えい行為に科せられる罰則は、一年以下の懲役または五十万円以下の罰金であります。

 本法律案では、特定秘密を取り扱うことを業務とする者の漏えい行為には、十年以下の懲役、または情状により十年以下の懲役及び一千万円以下の罰金と、より重い罰則が科せられることになっております。

 そこでお伺いします。

 本法律案について、これまでの罰則は軽過ぎ、漏えいの抑止力にならなかったから問題はないとする意見がある一方で、過失による漏えい、未遂、共謀、教唆、扇動も処罰対象としており、罰則が過重であるとする意見もあります。

 政府は、どのような考え方に基づいて罰則を規定したのでしょうか。また、諸外国と比べて、罰則が重過ぎるということはないのでしょうか。お答えください。

 次に、本法律案の適用と、国民の知る権利との関係についてお伺いします。

 本法律案では、「この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」という注意規定が置かれております。

 しかし、この注意規定をもって、政府による特定秘密の指定、適性評価の実施、罰則の適用などの本法律案の運用が、国民の知る権利、さらに、出版または報道の業務に従事する者の取材行為等に対し、相当の抑制効果をもたらすのではないかといった懸念の声が消えたわけではありません。

 そこで、国民の知る権利の保障に対し、政府は、どのような認識を持ち、特定秘密の保護とのバランスをとりながら本法律案を適用していくのでしょうか。安倍総理にお伺いいたします。

 最後に、以上のような国民の皆様の懸念や不安の声を踏まえ、丁寧かつ説得力ある説明を行い、安全保障に関する重要な情報をきちんと保護することこそが、我が国と国民の安全のために不可欠であります。このことについては、既に多くの政党が理解していると思いますが、さらに、国民の皆さんにもなお一層の御理解をしていただく必要があります。

 今後の国会の審議において、国民の声及び少数会派を含む全ての政党、会派の意見に真摯に耳を傾け、議論を尽くすことによって、必ずや最善の道が見つかるものと、かたく信じております。

 我が自由民主党は、そのために全力で取り組むことをお誓い申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 城内実議員にお答えをいたします。

 本法案の必要性についてお尋ねがありました。

 情報漏えいに関する脅威が高まっている状況や、外国との情報共有は情報が各国において保全されることを前提に行われていることに鑑みると、御指摘のとおり、秘密保全に関する法制を整備することは喫緊の課題であります。

 また、政府部内で情報共有が促進されるためにも、秘密保護に関する共通ルールの確立が必要であり、新たに設置される予定の国家安全保障会議の審議をより効果的に行うためにも、秘密保全に関する法制が整備されていることが重要であると認識しております。

 政府としては、本法案の早期成立に向けて努めてまいります。

 本法案と国民の知る権利との関係についてお尋ねがありました。

 特定秘密は、我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要なものであり、これを保護することは、我が国及び国民の安全の確保のために必要であります。

 他方、国民の知る権利については、憲法第二十一条の保障する表現の自由と結びついたものとして、十分尊重されるべきものと考えます。

 したがって、秘密を保護する必要性と、政府がその活動を国民に説明する責務とのバランスを考慮しつつ、本法律案を適用していくことが必要と認識しております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣森まさこ君登壇〕

国務大臣(森まさこ君) 特定秘密の指定に関する規定についてのお尋ねがありました。

 特定秘密は、法律の別表に限定列挙された事項に該当するものに限って、大臣等の行政機関の長が指定するものであり、かつ、その指定は、外部の有識者の意見を反映させた基準に基づいて行われることになります。

 また、指定の有効期間が満了した際には、そのときの行政機関の長が、指定の要件を満たしているか否か確認することとなっていることに加えて、特定秘密の指定期間が通じて三十年を超える延長をする際には、そのときの内閣の承認を要することとなっております。

 このように、特定秘密の恣意的な指定が行われることがないよう、重層的な仕組みを設けており、本法案の適正な運用が確保されるものと考えております。

 適性評価についてのお尋ねがありました。

 適性評価は、特定秘密を取り扱う行政機関の職員等を対象に、あらかじめ本人の同意を得た上で実施することとしております。

 また、適性評価の調査事項については、評価対象者が特定秘密の取り扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないことを確認するための、必要かつ最低限の事項に限っております。

 罰則についてのお尋ねがありました。

 本法案では、他の法令とのバランスも勘案し、特定秘密の漏えいを抑止する観点から、漏えい行為等についての刑の上限を十年以下としております。また、特定秘密の漏えいは、過失であっても我が国の安全保障に大きな影響を及ぼすこと、未遂、共謀等は、それ自体が漏えいの危険を著しく高める行為であることから、処罰対象としています。

 なお、諸外国では、外国政府への国防情報の漏えい等の最高刑を死刑や無期刑としている国もあり、これらと比較して、本法案の刑が重過ぎるとは考えておりません。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次の質疑者、渡辺周君。

    〔渡辺周君登壇〕

渡辺周君 民主党の渡辺周です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました両法案につきまして質問いたします。(拍手)

 内閣提出のいわゆる特定秘密保護法については、既に国民の各界各層から多くの批判、懸念が寄せられております。

 政府が行ったパブリックコメントにおいては、八割が反対の立場からの意見、また、先月末の共同通信社世論調査では、五〇・六%の人が法案そのものに反対、今国会で成立させるべきという人はわずかに一二・九%、およそ八三%が慎重審議を求めております。

 為政者が、権力側が、主権者たる国民のあずかり知らぬところで意思決定をし、間違った方向に暴走せぬように、国民がしっかりと政府を監視して、成熟した民主主義国家として発展し続けるためには、政治、行政の情報公開、透明化は不可欠であります。

 私どもも、三年三カ月政権を担い、政府が入手し、扱う膨大な情報の中には、我が国の外交、安全保障、国民の生命財産、社会治安を守るという国益から、開示に適さない情報があり、秘密、機密とすべき事項が存在することを十分に認識しております。防衛秘密など、一定の秘密保護の制度は現に存在し、そうした守るべき秘密の保護のあり方についても、検討に着手してまいりました。

 こうした非開示情報、機密といったものは、国民の理解と納得がいく形で、恣意的に拡大せぬよう、明確な基準のもと、限定的に定められ、さらには第三者の客観的判断も聞く仕組みでなければならない、その結果に至りました。

 今回の政府提出法案では、範囲や基準が曖昧、行政府の長が恣意的に指定できるとともに、国民の知る権利や報道、取材の自由さえ脅かされる懸念が払拭できません。だからこそ、世論調査にあらわれているように、大きな懸念があり、国民の理解が得られないわけであります。

 そこで、まず、我々の不安を解消するために明確にお答えをいただきたいと思いますが、政府提出法案について伺います。

 この法案の最たる懸念が、指定される特定秘密とは何を指すのかということであります。

 概念が余りにも曖昧であり、範囲が広過ぎるため、解釈次第で幾らでも拡大できるのではないかという疑問があります。

 例えば、該当する事項を書いた別表に、第一号、防衛に関する事項の十項目、第二号、外交に関する事項の五項目、第三号の、特定有害活動防止事項の四項目、第四号、テロリズム防止の四項目の合わせて二十三項目のうち、「その他の重要な情報」など「その他」という用語が十一項目に書かれています。この「その他」の言葉で、本来国民が知るべき情報までも秘密指定される余地を拡大できることになりはしませんでしょうか。

 法案では、この情報を特定秘密と判断するのは、行政府の長とされています。

 各行政組織が、自分たちに不都合な情報、面倒な情報、さほど重大でない情報までもが、結果、各省の官僚によって特定秘密となり、指定する形になってしまうのではないでしょうか。実務をとり行う過程でどんどん秘密に指定をされ、結果、大臣や事務次官が追認するだけということになってしまいかねません。

 この情報を重大だと判断するための客観基準を、根拠をどこに求めるのでしょうか。また、誰が、いかなる理由で重要と判断したといった記録は残るのでしょうか。すなわち、恣意性を排除する仕組みはあるのか、明確な答弁を求めます。

 次に、特定秘密等の運用基準について伺います。

 法案には、特定秘密の指定等に関して運用基準を定める際には有識者の意見を聞かなければならないとだけ定めてあります。つまり、有識者の意見は聞くものの、実際の運用を点検するすべは担保されておりません。これでは、聞きっ放しになり、不十分と言わざるを得ません。

 そこで伺いますが、法案に言う、すぐれた識見を有する者は、どういう方々であり、また、その方々を誰がどう選ぶのでしょうか。意見が反映されたかどうかを確認する仕組みはあるのでしょうか。特定秘密指定の妥当性について、第三者のチェックを入れる仕組みはこれから盛り込んでいくのでしょうか。

 以上、四点、お答えください。

 また、法案には、ある情報が特定秘密と指定されてから三十年を超える場合、内閣の承認を経れば、ほぼ永遠に秘密であり続けることができる規定になっています。

 一定の期間を経た上で、基本的に情報は公開され、後世の歴史の審判を仰ぐべきではないのでしょうか。内閣の承認ではなく、そこに第三者の客観的な判断を入れる考えはありませんか。一定の期間を経た情報は原則公開するという考え方に立つおつもりかどうか、伺います。

 次に、適性評価制度について伺います。

 法案にある適性評価には、大いなる懸念を持ちます。

 適性評価は、特定秘密を取り扱う行政機関の職員や、民間の契約業者の役職員、または都道府県警察職員に対して行われます。犯罪歴や、信用状態その他の経済的な状況、飲酒についての節度など、七項目が調査事項です。親兄弟、配偶者の父母などまで調査が広がります。たとえ親族でなくとも、恋人や内縁の配偶者など、同居人も調査対象となります。

 本人はもちろんのこと、親族はもちろんのこと、知人その他の関係者に質問をすることができ、ましてや、飲酒についての節度など、どのような形で調べるのでありましょうか。

 こうした調査が過度に進めば、プライバシーの侵害になることが十分懸念されます。それゆえ、この法案には、評価対象者から苦情の申し出を受けたときには、これを誠実に処理し、処理の結果を申し出者に通知すると書き込まれています。もう既に何らかの苦情が出ることが予見されているからこその書き込みだと思いますが、誠実に処理とは、どのような対応を考えているのでしょうか。

 また、評価対象者が同意をしなかった際の不利益、適性と評価されなかった対象者は、今後の人生の生涯の評価になりかねません。救済措置を含めてどうお考えか、明確な答弁を求めます。

 また、得られた評価結果は、いわば個人情報であります。行政組織のどのセクションで、いつまで、どのようにこの個人情報は管理をされていくのか、あわせてお答えをいただきます。

 次に、知る権利、取材、報道の自由についてであります。

 法案に、国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならずとあり、続けて、国民の知る権利の保障に資する報道または取材の自由を十分に配慮とあります。

 不当に侵害されたか否か、十分に配慮がされたか否か、一体、誰が、どのような根拠で判断をするのでしょうか。判断された場合の理由は記録として残るのでしょうか。そして、これらの判断を裁判に委ねるとなれば、白黒つくまでの期間は余りに長く、取材を萎縮させるのではないかと報道機関が大きな懸念を持つのは当然と考えます。具体的な答弁を求めます。

 立法府との関係について伺います。

 国会との関係でも、大きな問題があります。

 立法府が、行政府を監視するとともに、主権者である国民の負託に応えて国政の重要事項を審議する際、行政府から必要な情報が提供されないということになれば、国会の審議そのものが妨げられます。さらに、国会に提供された特定秘密について、国民や国益の観点からなされる議員の判断は民主主義のためにも尊重されるべきであり、こうしたことが万が一、故意にも過失にも議員が漏らした場合、政府が議員を取り締まり、訴追をすることになりませんでしょうか。

 立法府における特定秘密のルールは、立法府で決めるべきではないでしょうか。総理の考えを伺います。

 ここまで申し上げた質問項目は、特定秘密保護法案に対して多くの国民の持っている懸念の一部を代弁したにすぎません。この場での政府の明確な答弁はもちろんのことであります。あわせて、本日から始まる特別委員会の法案審議に当たっては、国民が見守る中、国民の代表者たる国会議員全員が納得する十分かつ丁寧な審議が行われるべきであり、政府には、具体的、明確な答弁を今後も求めてまいります。

 以上申し上げまして、情報公開法への、民主党提案者への質問に入らせていただきます。

 まずは、提出の意義についてであります。

 国民の知る権利を保障し、情報公開制度を強化することが、憲法で保障されている基本的人権や国民主権の原理に関してどのような重要な意味を持つのか、提出者に伺います。

 また、主権者たる国民が行政の監視や国政に参加し、意義ある決定を行うために、政府は、国民が必要とする情報を、より多く、よりアクセスしやすく、より早く提供するべきであります。

 まず、より多くの情報が開示されるように、不開示情報の範囲を厳格化することが肝要であります。本改正案で開示情報が拡大する趣旨の改正にどのようなものがあるのか、提案者に伺います。

 また、時の政権、為政者は、国民への情報提供に消極的になりがちであります。たとえ情報を提供しても、国民にはわかりにくい形のものが多いのも現状であります。

 民主党は、政府の説明責任を明確にし、国民の開示請求を待つことなく、政府みずからが積極的に、わかりやすく国民に情報を提供していくことが大切であると考えますが、政府の情報提供のあり方について、具体的にどういった内容が義務づけられているのか、提案者に伺います。

 また、政府が情報公開を拒否した場合、国民にとって公正な判断の場として最後のとりでになるのが、司法の場での情報公開訴訟であります。今回、特定秘密の保護が検討される中で、最終的にそれが非開示に当たるのかどうか判断できるのは、この情報公開訴訟の場ということになり、この制度の抜本的強化が必要であります。

 そこで、提出者に伺いますが、本法案における改正の趣旨、具体的な内容について、わかりやすく御説明ください。

 情報公開法と特定秘密の関係について、最後に伺います。

 本改正案は、行政の保有する全ての情報が対象であり、たとえ特定秘密として規定されていたとしても、全ての行政情報の開示・非開示決定は、情報公開法の非開示理由に照らし合わせて行われることになると理解をしています。

 特定秘密に指定されていることをもってのみで、自動的にインカメラ審理を拒否する理由にはならないか。情報公開法における非開示事由とインカメラ不同意事由の相違点について、提出者の説明を求めます。

 以上、両法案への誠実かつ明快な答弁を求めて、民主党を代表しての質問とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 渡辺周議員にお答えいたします。

 特定秘密の指定の恣意性を排除するための仕組みについてお尋ねがありました。

 特定秘密は、法律の別表に限定列挙された事項に該当するものに限って、大臣等の行政機関の長が、責任を持って指定することとなります。

 また、その指定は、外部の有識者の意見を反映させた基準に基づいて行われることとするなど、特定秘密の恣意的な指定が行われることがないよう、重層的な仕組みを設けており、本法案の適正な運用が確保されるものと考えております。

 情報を重要だとする判断と、その判断の記録についてのお尋ねがありました。

 ある情報が別表に掲げる重要な情報に該当するか否かは、行政機関の長が、当該行政機関の所掌事務から、専門的、技術的に判断することとなります。

 また、指定に際しては、指定される情報が、別表に掲げる事項に該当することなど、指定の要件を満たしていることを適切に関連文書に記すことを検討しています。

 有識者の選定や特定秘密の指定に対する第三者チェックについてのお尋ねがありました。

 有識者は、私または内閣官房長官が、安全保障に関する情報の保護や情報公開、公文書管理等の幅広い分野の専門家の中から適任者を選任し、お願いすることを考えています。

 また、選任した有識者の氏名については、公表することを検討しています。

 本法案では、特定秘密は、法律の別表に限定列挙された事項に該当するものに限って、大臣等の行政機関の長が、責任を持って指定するものであります。

 また、その指定は、外部の有識者の意見を反映させた基準に基づいて行われることとするなど、特定秘密の恣意的な指定が行われることがないよう、重層的な仕組みを設けており、本法案の適正な運用が確保されるものと考えています。

 なお、個別具体的な特定秘密の指定を行政機関以外の者が行うことについては、専門的、技術的判断を要することから、適当ではないと考えます。

 特定秘密の指定期間についてお尋ねがありました。

 個々の秘密の機密性は異なり、指定の要否を個別具体的に判断する必要があることから、一定期間経過後、一律に秘密指定を解除し、公開することは、困難と考えます。

 また、個別具体的な特定秘密の指定を行政機関以外の者が行うことについては、専門的、技術的判断を要することから、適当ではないと考えています。

 一方、本法案では、特定秘密の指定の際に五年以内の有効期間を定めることとしており、また、特定秘密の指定の有効期間は三十年が原則であるとの基本的考え方のもと、三十年を超える有効期間の延長には内閣の承認を要することとするなど、秘密指定が無期限に続くことを防ぐための重層的な仕組みを設けております。

 国民の基本的人権等への配慮をどのように判断するか、報道機関の懸念についてのお尋ねがありました。

 法律の適用解釈についての本法案第二十一条の規定は、行政機関はもとより、捜査機関や裁判所においても解釈適用の準則となり、当事者全てが国民の基本的人権への不当な侵害がないかどうか、報道の自由等に十分に配慮がされているかどうかを判断し、留意することとなります。

 報道機関による通常の取材行為は、処罰対象となるものではありません。このことは、過去の最高裁決定からも明らかとなっております。

 本法案では、通常の取材行為は、正当な業務行為として、本法案の処罰対象とならない旨を条文上も明確にしているところであります。

 立法府における特定秘密のルールについてのお尋ねがありました。

 本法案では、公益上の必要により、特定秘密の提供を受ける者が漏えいを防止するために講じなければならない措置について、一般的かつ必要最小限のものを政令で定めることとしています。

 国会において講じる保護措置の具体的なあり方については、国会の手続及び規律に関する事柄であり、今後、国会において御議論がなされるものと考えます。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣森まさこ君登壇〕

国務大臣(森まさこ君) 適性評価についてのお尋ねがありました。

 本法案においては、評価対象者は、適性評価について、苦情の申し出をすることができる旨規定し、行政機関の長は、苦情の申し出を受けたときは、これを誠実に処理すること等を定めています。

 誠実に処理するとは、例えば、行政機関の長の判断に影響を与えた情報に誤りがあるのではないかといった疑問等を確認したり、場合によっては、一度行った適性評価の判断について再検討したりすることを意味しています。

 本法案では、特定秘密の保護以外の目的のために、適性評価に関する個人情報を利用または提供することを禁止しており、適性評価の結果を、例えば人事考課等、特定秘密の取り扱いに関係しない不利益な取り扱いに利用することはそもそもできないこととされていることから、今後の人生の評価になってしまうとの議員の御指摘は当たらないと考えております。

 適性評価の結果等は、各行政機関の適性評価を実施する部署で、必要な期間、適切に保管いたします。(拍手)

    〔後藤祐一君登壇〕

後藤祐一君 お答え申し上げます。

 情報公開法改正案と憲法の基本原理の関係についてのお尋ねがございました。

 情報公開法一条の目的規定と憲法の基本原理との関係については、現行規定においては、国民主権にのっとりとされておりますが、今回の改正案では、憲法の基本原理との関係を明確化する観点から、三点ほど追加されております。

 第一に、国民主権の意味内容をより明らかにし、「国民による行政の監視及び国民の行政への参加並びに公正で透明性の高い民主的な行政の推進に資する」とさせていただいたところであります。

 第二に、基本的人権との関係では、国民の知る権利を保障することを新たに明示しております。

 第三に、行政機関の諸活動に関する情報の提供についても目的規定に追加し、重要な情報については、開示請求がなくても、行政機関が自発的に情報提供することを新たに義務づけておりますが、これも国民の知る権利の保障につながるものです。

 以上の改正により、本法案は、基本的人権と国民主権をより強く保障し、もって民主主義の発展に大きく資することとなるものと考えます。

 次に、開示情報を拡大することについてお尋ねがありました。

 本改正法案における開示情報の主な拡大内容は、次の五点であります。

 第一に、個人に関する情報について、行政機関に置かれた審議会や懇談会等において意見表明等を行った者の氏名及びその内容を、原則開示する情報として追加しております。

 第二に、法人等に関する情報について、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、当該法人の正当な利益を害するおそれがないものを開示情報として追加しております。

 第三に、国の安全や他国との信頼関係が損なわれるおそれがある情報及び公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報について、現行法では、これらのおそれがあると行政機関の長が認めることについて相当の理由がある場合に不開示となりますが、改正案では、十分な理由がある場合にのみ不開示になることとし、不開示とするにはさらに厳格な理由を必要とすることとしております。

 第四に、国の機関等の審議、検討に関する情報について、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある情報を開示情報として追加しております。

 第五に、行政文書を部分的に開示する場合に、現行法では、容易に区分して除くことができる場合しか開示されませんが、改正案では、区分して除くことが困難であるときを除き、部分開示することを義務づけております。

 残余の質問については、同僚議員より答弁させていただきます。(拍手)

    〔階猛君登壇〕

階猛君 私からは、渡辺議員の質問、三問についてお答えをさせていただきます。

 まず初めに、具体的にどういった内容の情報提供を政府に義務づけたのかということであります。

 行政機関が保有する一定の情報について、国民からの開示請求を待つことなく、積極的かつ自発的に提供することは重要であり、また、国民の利便性の向上にも資すると考えております。

 その観点から、情報提供の充実化に本改正法案では努めております。すなわち、適時に、国民にわかりやすい形で、かつ、国民が利用しやすい方法により、大きく五つの類型の情報を提供する旨の規定を設けました。

 第一に、組織及び業務に関する基礎的な情報であります。

 第二に、所掌に係る制度に関する基礎的な情報です。これには、所管する法令、告示、通達、その他、国民生活や企業活動に関連する通知等の一覧及び全文などが含まれます。

 第三に、所掌に係る経費及び収入の予算及び決算に関する情報です。

 第四に、組織及び業務並びに所掌に係る制度についての評価並びに所掌に係る経費及び収入の決算の検査に関する情報です。これには、例えば行政事業レビューの結果等も含まれます。

 第五に、当該行政機関の所管に係る法人に関する基礎的な情報。独立行政法人の情報などが、これには含まれます。

 次に、二つ目の質問ですが、情報公開訴訟にいわゆるインカメラ審理を導入する趣旨についてお尋ねがありました。

 情報公開訴訟において、行政文書を対象とする非公開の証拠調べを導入する、その要件を定めて、対象となる行政文書の開示を制限するなど、その手続に関する規定を設けております。これは、行政訴訟である情報公開訴訟の抜本的な強化に資するために設けられたものです。

 具体的には、情報公開訴訟においては、裁判所は、事案の内容、審理の状況等を考慮し、特に必要があると認めるときは、申し立てにより、当事者の同意を得て、口頭弁論の期日外において、当事者を立ち会わせないで、当該情報公開訴訟に係る行政文書を目的とする文書の証拠調べまたは検証をすることができることとしております。

 なお、後にも述べますけれども、当事者の同意については、特に被告である行政機関等が同意を拒むことができる場合を限定的に規定しております。

 最後に、不開示事由とインカメラ不同意事由についてお尋ねがありました。

 まず、不開示事由の一般的なものとして、公にすることにより、国の安全が害されるおそれや、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれなどがあり、国民一般に対する開示に適さない十分な理由があることが規定されております。

 渡辺議員御指摘のとおり、全ての行政情報の開示・非開示決定は、この不開示事由に当たるかどうかによって判断されることになります。

 一方、インカメラ審理への同意を拒むことができる事由としては、裁判所に提出し、または提示することにより、国の重大な利益を害する場合と規定され、裁判官は厳格な守秘義務を負っていること、インカメラ審理の対象となる文書やその写しは裁判所に残ることはない仕組みとなっていることとしても、なお裁判所に対してすら開示することができない、極めて限定された場合となっております。

 これは、不開示事由よりもはるかに厳しい事由とすることで、インカメラ審理を広く行い得るようにし、情報公開訴訟の実効性を担保しようとするものであります。

 議員御懸念の点であります、特定秘密に指定されていることをもってのみで自動的にインカメラ審理を拒否する理由にはならないのかという点については、これは否定されるものと考えております。

 以上です。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 質疑者、丸山穂高君。

    〔丸山穂高君登壇〕

丸山穂高君 日本維新の会の丸山穂高です。

 維新の会を代表して、ただいま議題となりました特定秘密の保護に関する法律案に関連して質問させていただきます。(拍手)

 我が国を取り巻く外交、安全保障上の課題が山積し、また、国際テロリズムなど国境を越える問題が数多く生じている中で、これまで以上に、情報、インテリジェンスが持つ価値は高まっています。

 また、これまで、日本は、機密情報が漏れやすく、スパイ天国だとやゆされてまいりました。

 非常に高度な機密情報について、国際テロ対策等を目的とした他国との情報共有のために、また何より、国民の生命財産、国家主権、領土を守る上で、その漏えいを防ぐための法整備と環境整備について検討することは、非常に大切なことであると考えます。

 本法案につきましては、例えば、政策判断ミスといった都合の悪い情報を特定秘密に指定するなど、時々の政権、役所によって、都合の悪い情報を隠すといった、恣意的な運用がなされる可能性が否定できないとの懸念の声や、法文上、「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」と書かれてはおりますが、これはあくまで努力規定にすぎず、具体性が乏しい中で、どこまでの取材が問題なく、どれほどの報道、取材の自由に対する配慮なのかということがわからないことから、それが、ひいては国民の知る権利に重大な影響を与えるとの声も上がっております。

 このように、本法案は、国民の関心も高く、また、今国会最重要法案の一つでありますから、本会議、委員会の場で、しっかりと議論を行い、論点、不明瞭な点を明確化していくことが不可欠です。

 そこで、以下、具体的に質問させていただきます。

 まずは、本法案で規定されている特定秘密の範囲について伺います。

 特定秘密の範囲は、本法案別表において、防衛に関する事項、外交に関する事項、特定有害活動の防止に関する事項、そしてテロリズムの防止に関する事項の四項目に分類されております。

 このうち、特定有害活動については、条文十二条にて定義がなされており、それによると、特定有害活動とは、一つに、「公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動」二つに、「核兵器、軍用の化学製剤若しくは細菌製剤若しくはこれらの散布のための装置若しくはこれらを運搬することができるロケット若しくは無人航空機又はこれらの開発、製造、使用若しくは貯蔵のために用いられるおそれが特に大きいと認められる物を輸出し、又は輸入するための活動」とともに、その三つ目に、「その他の活動」という書きぶりで、かなり大枠での定義がなされておりますが、このように、その他の活動というのであれば、これに全てが含まれてしまいかねず、非常に不明瞭ではないでしょうか。

 十二条二項一号における、三つ目の、その他の活動については、何を想定されているのですか。事前の内閣官房への問い合わせに対する回答によると、北朝鮮による拉致問題のように、外国の工作機関が日本人の拉致を行う活動や、我が国において反乱団体を組織し、またはこれらの団体に資金、兵器等の援助を行う活動という認識とのことですが、政府見解として、それで相違ありませんか。

 相違ない場合、特に、後者は具体的にどのような団体を指すのでしょうか。また、それ以外に、その他の活動に当たるものはありますか。総理の答弁を求めます。

 また、どういった情報が特定秘密に当たるのかという点については、本当に多くの懸念が上がっております。さらに、森大臣を初め、委員会での御発言や、その後の会見等での政府の方々の発言が大きくぶれているようにも感じられます。

 今後、委員会審議を進めるに当たっては重要な事柄でございますので、これから挙げる具体例において、それぞれ特定秘密に当たるのかどうかを御答弁いただき、当たる場合には、別表のどの項目に該当するのか、御回答ください。

 例えば、いわゆる西山事件で取材対象であった沖縄返還協定の密約や、二〇〇九年、鳩山内閣で調査が行われた核密約、さらに、基地等日本国内への過去の核持ち込みの事実の有無については、特定秘密に当たるのでしょうか。総理の答弁を求めます。

 また、福島第一原子力発電所事故における当時の菅政権時の対応や、原子力発電の核廃棄物最終処分場の交渉について、さらには、原子力発電所の設計図、警備状況については、特定秘密に該当しますか。

 TPP交渉については、さきの国家安全保障委員会において、今後の通商協定、EPA、WTOの議論は全て特定秘密に該当しないのかどうかという質疑に対し、岡田内閣府副大臣より、特定秘密には該当しないとの答弁がありました。

 しかしながら、森大臣の記者会見では、事項に該当すれば、なる可能性もあると、TPPが特定秘密保護法案の規制対象に入るかもしれない旨の発言があるなど、答えにぶれがあります。

 TPP交渉等通商交渉は、特定秘密に当たるのか、当たらないのか、森担当大臣にお伺いします。明確にお答えください。

 最後に、総理が参院本会議で述べられた、過去十五年間の情報漏えい事件五項目、海上自衛官によるロシアへの情報漏出、イージス艦データの情報漏出、内調職員によるロシアへの情報漏出、自衛官による中国潜水艦情報の漏出、中国漁船事件の映像流出について、これらの漏えいされた情報は、特定秘密に当たるのでしょうか。総理の明快な答弁を求めます。

 これまで述べてきたように、特定秘密の範囲について、範囲がとにかく広くとられかねない状況にあります。我が党においては、特定秘密の範囲について、米国の秘密保全に関する罰則において保護される秘密の範囲と同一に修正する修正案を準備しているところではございますが、この点につきまして、総理の見解をお伺いします。

 次に、特定秘密の取得行為について伺います。

 法案の二十一条二項、法令違反、著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とし、報道、取材の自由として認めるとのことですが、例えば、どういったものが、同条における著しく不当な方法や、二十三条における、特定秘密の保有者の管理を侵害する行為に当たるのでしょうか。

 例えば、西山事件のような、男女の情を利用して情報を得る行為は、それに当たるのでしょうか。また、政治家と記者の懇談会等、酒席において情報を得る行為は、これに当たるのでしょうか。さらには、法案担当の首相補佐官のテレビ出演時の発言で、最高裁判所判例を踏襲し、通常の、違法な取材活動でない限り、罰せられないとの発言報道がされておりますが、これは政府の見解ということで間違いないでしょうか。

 また、条文における法令違反に情報提供者の行為も含まれるのでしょうか。

 例えば、違法行為とまではいかないまでも、ある外交案件について、政府が恣意的に情報を隠している旨の内部告発が国家公務員から報道機関にあった場合、この情報が特定秘密に当たるときには、この内部告発を行った公務員は国家公務員法違反や特定秘密保護法違反となりますが、この公務員の各法令違反行為によって情報を受け取った報道機関についても、正当な業務に当たらないことになるのでしょうか。そうなるのであれば、特定秘密について、正当な業務にて取材をすることができなくなってしまいます。政府の見解を伺います。

 また、特定秘密の取得行為に関する罰則についても、とにかく広くなってしまっている中で、手段ではなく、目的による限定が必要ではないかと考えます。この点も、米国の秘密保全に関する罰則の例に合わせた修正案を我が党で準備しておりますが、総理の見解はいかがでしょうか。

 次に、行政機関による内閣や国会への特定秘密の提供について伺います。

 行政機関が内閣に特定秘密を提供する場合には、行政機関の長が、特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で措置を定めるとのことですが、この措置については、具体的に何を想定しているのでしょうか。答弁を求めます。

 また、報道によると、法案担当の首相補佐官が、現行の国会の秘密会は情報管理が不十分なため、国会への特定秘密の提供は困難だと述べたとのことですが、国会より秘密会における特定秘密の提供の要望があった場合でも、行政機関の長がそれを拒否することはあり得るのでしょうか。

 その場合には、憲法四十一条における国会の最高機関性の観点からも、国会法第百四条における国政調査権の観点からも、問題ではないですか。

 国会法百四条では、各議院、委員会が資料などの提出要求を議決した場合、内閣や官公庁などは応じなければならないとしており、提出できないときは、その理由を委員会に説明し、委員会等が、その理由を認められないと判断すれば、内閣に声明の要求ができるとあります。

 本法律案が、この憲法四十一条及び国会法百四条の国政調査権を侵害するものではないのかどうか、お答えください。

 政府による特定情報の指定の恣意性が懸念される中で、その恣意性の排除のために、国立公文書館に情報保全監察局長を置き、その場で機密指定に関する基準の策定等を行わせるとともに、省庁間機密指定審査委員会を置く旨の修正案も準備しております。

 なぜ、政府案である本法律案においては、このような形ではなく、有識者会議において事前の基準の設定のみを諮る形なのでしょうか。有識者会議にした理由と、これらの創設についての総理の御答弁を求めます。

 本法案において、政府による秘密指定の恣意性を排除するために設置するとされている、その有識者会議についてお伺いいたします。

 特定秘密の指定に関しては、統一的な運用を図るための基準を策定するために、有識者の意見を聞く場を設けるとのことですが、この有識者会議は、現時点でどのようなメンバーを考えておりますか。それは、官僚や元官僚ではなく、民間人からの登用でしょうか。

 また、特定秘密を指定する際の統一基準の策定スケジュールについてもお伺いしたいと思います。

 特定秘密の指定の期間については、五年ごとに延長を検討し、三十年を超える場合には内閣の承認が必要とのことですが、何でもかんでも三十年を超えて延長される懸念が出ています。この内閣の承認とは、閣議決定を指すのでしょうか。具体的にはどのような手続を想定しているのか、答弁を求めます。

 また、特定秘密は四十万件ほどになるとの報道がありますが、件数についての政府の見解はいかがでしょうか。

 現在の特別管理秘密や防衛秘密は、そのまま特定秘密に切りかわるという認識でよいのでしょうか。特別管理秘密や防衛秘密の中のどういった内容のものが特定秘密から外れると考えていますか。

 最後に、防衛秘密においては、本法案施行時における、現在の防衛秘密の一斉廃棄の懸念の声が上がっております。施行時の防衛秘密の破棄予防については、具体的にどのような対策を行うのか、防衛大臣の見解をお聞かせください。

 さて、これまで、さまざまな意見や質問を述べさせていただきました。我々日本維新の会の国会対応の方針は、是々非々であり、国家、国民にとって必要な政策、法案であれば、政府に対して協力を惜しみませんが、一方で、問題点が多ければ、修正を求めたり、反対の姿勢を示すこともあります。

 最初に述べたように、本法案は、世の中の関心が非常に高い法案であり、国民の代表として、国会の場で、国民にわかりやすい審議を進めることが必要不可欠です。

 まずは、先ほど来申し上げた疑問点につきまして、総理を初め各大臣の明快な御答弁をお願いするとともに、今後の国家安全保障委員会での審議におきましても誠意を持った対応をお願いいたしまして、私、丸山穂高の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 丸山穂高議員にお答えをいたします。

 特定有害活動についてのお尋ねがありました。

 特定有害活動とは、外国の利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全を著しく害し、または害するおそれのある活動をいいます。

 お尋ねの、その他の活動に係る特定有害活動としては、御指摘の、外国の工作機関が日本人の拉致を行う活動や、外国のために非合法な活動を行う団体に資金等の援助を行う活動等を想定しています。

 過去の個別の事柄が特定秘密に該当するのかについてお尋ねがありました。

 本法案は、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す情勢の中、情報漏えいに関する脅威が高まっている状況等に鑑み、我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要なものの保護を図り、我が国及び国民の安全の確保に資することを目的としています。

 御指摘の、いわゆる密約問題等については、外務省において徹底した調査を行い、その結果及び多数の関連文書を平成二十二年に既に公表済みですが、それぞれの事案は、当時我が国が置かれた状況や我が国を取り巻く国際情勢の中で考えられるべきものであり、現在の情勢を前提として提案された本法案における特定秘密に該当するか否かを明確にお答えするのは困難と考えます。

 今後、本法案が施行されれば、その別表に限定列挙された事項に該当するものに限って特定秘密に指定されることとなり、例えば外交に関する事項であれば、外国の政府との交渉内容のうち、国民の生命及び身体の保護、領域の保全その他の安全保障に関する重要なもの等が特定秘密に指定されることとなります。

 また、お尋ねの、過去十五年間の公務員による主要な情報漏えい事件について、可能な範囲で申し上げますと、中国潜水艦の動向に係る情報漏えい事件については、中国潜水艦の動向に関する情報には防衛秘密に該当する情報が含まれており、本法案の特定秘密に該当するものと考えられますが、中国漁船等、それ以外は特定秘密には該当しないものと考えます。

 特定秘密の範囲及び罰則に関する日本維新の会の修正案についてのお尋ねがありました。

 御提案の詳細が明らかではなく、論評は差し控えますが、政府が提出した特定秘密保護法案の特定秘密の範囲及び罰則の内容は、いずれも適当であると考えております。

 有識者の意見を反映して基準を設定することとした理由と、特定秘密の指定に関する新たな機関の創設についてお尋ねがありました。

 本法案においては、特定秘密の恣意的な指定が行われることがないよう、特定秘密の指定は、外部の有識者の意見を反映させた基準に基づいて行うこととしています。

 一方、個別具体的な特定秘密の指定を行政機関以外の者が行うことについては、専門的、技術的判断を要することから、適当ではないと考えます。

 なお、御提案については、詳細が明らかではなく、論評は差し控えます。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣森まさこ君登壇〕

国務大臣(森まさこ君) 原子力発電所事故に関する情報が特定秘密に該当するかについてのお尋ねがありました。

 原発事故に関する情報や核廃棄物処分場の交渉及び原子力発電所の設計図は、特定秘密の保護に関する法律案の別表のいずれの事項にも該当せず、特定秘密の指定の対象とはなりません。

 他方、例えば警察による原発の警備の実施状況は、別表第四号イに規定する、テロリズムの防止のための措置に当たります。

 TPP交渉等の通商交渉が特定秘密に該当するかについてのお尋ねがありました。

 TPP交渉等の通商交渉は、特定秘密の保護に関する法律案の別表のいずれの事項にも該当せず、特定秘密の指定の対象とはなりません。

 また、丸山議員が御指摘のような発言はしておりません。

 本法案第二十一条第二項の著しく不当な方法、及び第二十三条第一項の、特定秘密の保有者の管理を害する行為についてのお尋ねがありました。

 著しく不当な方法とは、取材対象者の個人としての人格を著しくじゅうりんするような態様のものが該当します。

 また、特定秘密の保有者の管理を害する行為には、例えば、住居侵入に当たらない場合であって、施設の管理者の同意を得ずに、特定秘密を取り扱う会議室に盗聴器を置く行為が考えられます。

 いずれにせよ、単に酒席において情報を得る行為は、これらには当たりません。

 法令違反についてのお尋ねがありました。

 本法案第二十一条第二項における法令違反とは、出版または報道の業務に従事する者の行為であって、情報提供者の行為は含まれません。

 内部告発を受けた報道機関の取り扱いについてのお尋ねがありました。

 報道機関が内部告発を受けることは、通常の取材行為の一環であり、本法案の処罰の対象とはなりません。

 行政機関の長が内閣に特定秘密を提供する際に講じる措置についてのお尋ねがありました。

 本法案第四条第三項に規定する政令で定める措置とは、特定秘密の保管、運搬方法等を想定しております。

 本法案と国会との関係についてのお尋ねがありました。

 国会において保護措置を講ずるなど、本法案第十条第一項第一号に定める一定の条件が満たされるときは、特定秘密を国会に提供いたします。

 ただし、保護措置が講じられないなど、要件を満たさない場合には、現行の国会法においても、国会法第百四条第三項の手続を踏んだ場合には提供する必要がないとされており、憲法との関係でも問題はないものと考えます。

 有識者会議のメンバー及び運用基準の策定スケジュールについてのお尋ねがありました。

 特定秘密の指定等の運用基準の策定に当たっては、有識者会議を開催し、各界の有識者の御意見を反映し、施行までにこれを策定いたします。

 その際、本法案に規定する情報の保護等の専門家に加え、報道や法律の専門家についても有識者会議の構成員とすることを検討しております。その詳細については、統一基準の策定スケジュールも含め、今後検討してまいります。

 内閣の承認についてのお尋ねがありました。

 本法案第四条第三項の内閣の承認は、閣議決定によって行うことを検討しています。

 特定秘密の件数の見通し等についてのお尋ねがありました。

 平成二十四年末現在の特別管理秘密文書等の件数は、防衛省が保有する防衛秘密文書等を含め、約四十二万件、防衛秘密文書等の件数は約三万七千件と承知しております。

 特定秘密は、本法案の別表に該当するもののみが指定されることとなるので、今説明しました特別管理秘密よりもさらに対象範囲を限定しており、特定秘密を記録した文書等の件数についても、特別管理秘密文書等の件数より少なくなるのではないかと考えています。(拍手)

    〔国務大臣小野寺五典君登壇〕

国務大臣(小野寺五典君) 丸山議員にお答えします。

 特定秘密保護法案施行時の防衛秘密の破棄予防についてのお尋ねがありました。

 特定秘密保護法案が成立し、施行された場合は、防衛秘密が記録された文書は、特定秘密の管理方法に従うことになります。

 これを踏まえ、先般、大臣通達を発出し、防衛秘密が記録された文書を原則として廃棄しないよう指示し、不適切な廃棄が行われないよう、既に必要な措置を講じております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、大口善徳君。

    〔大口善徳君登壇〕

大口善徳君 公明党の大口善徳でございます。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました特定秘密の保護に関する法律案について質問いたします。(拍手)

 まず、本法案の必要性についてお伺いします。

 国及び国民の危機とは、国際情勢が複雑化する中、国の内外から、大量破壊兵器の拡散、国際テロ、サイバー攻撃等の安全保障に関する重要事項について、早期に正しい情報が手に入らないことです。重要な情報を迅速に入手し、矛盾する情報をきちんと分析できなければ、国と国民の安全を確保することはできません。

 逆に、正しい情報に基づいて適時適切に政策判断することによって、紛争を未然に防止し、紛争の平和的解決を実現することが可能となります。

 そして、国の内外から正しい情報を入手するためには、受け取った情報を秘密として保護することが不可欠です。情報を受け取る側の保護措置が不十分であれば、情報を提供する側が情報漏れを心配し、その結果、正しい情報を適時適切に入手できなくなるからでございます。その意味で、秘密の保護と情報の入手とは表裏一体の関係です。

 また、本法案は、我が国の安全保障に関する重要な情報について、縦割り行政を克服すべく、初めて省庁横断的な情報提供ルールを法律で明確にした点で、大変意義のあるものと考えます。

 本法案の必要性について、国民にわかりやすい説明を総理に伺います。

 次に、本法案に対する最も強い懸念は、国民の知る権利や報道、取材の自由の侵害にならないかという点です。

 公明党は、計十三回にわたるプロジェクトチームでの議論、審査を経て、本法案がこれらの権利や自由を侵害しないことを条文上明記すべきと政府に強く主張しました。その結果、本法案の第二十一条一項に、「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」ことが規定され、司法も行政も捜査機関も、この規定を解釈の指針として適用、執行することになります。

 さらに、漏えいの独立教唆等が処罰対象であるため、通常の取材行為も処罰されるとの懸念が強いことを踏まえ、「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする」として、通常の取材行為は、刑法第三十五条で違法性を阻却され、犯罪とならないことが明確になりました。

 これらの条文の意義について、総理にお伺いします。

 関連して、二点お伺いします。

 一点目は、取材行為に対する萎縮効果です。

 本法案では、公務員に対し、根気強く執拗に特定秘密の情報提供を説得、要請しても犯罪となりませんが、一部には、通常の取材行為も、漏えいの独立教唆等の構成要件に該当し、捜査対象となるのではないかとの懸念があります。

 そこで、たとえ公務員が漏えい罪の正犯として捜査の対象となっても、通常の取材行為が捜査の対象にならないことについて、総理の明確な答弁を求めます。

 二点目に、本法案では、公務員等が特定秘密を漏えいした場合、十年以下または五年以下の懲役等が科されるため、公務員が処罰を恐れて情報提供を萎縮させるとの懸念があります。

 公務員による情報隠しは、国民主権の観点から、許されません。他方、本法案で処罰されるのは、特定秘密として指定された情報、いわば、国民、国家の安全のため公にしてはならない情報の漏えいであります。

 本法案による処罰と公務員の情報提供の萎縮との関係について、総理の見解を伺います。

 次に、特定秘密の件数についてお伺いします。

 現在、政府は、重要な情報を防衛秘密や特別管理秘密として指定、保護していますが、本法案により、さらに広い範囲が特定秘密として指定されるとの懸念があります。

 そこで、現在の、防衛秘密と特別管理秘密の各件数、特定秘密の件数の見通しと、別表に掲げられている四類型の内訳の各件数の見通しについて、総理にお伺いいたします。

 次に、特定秘密の指定について、行政による恣意的な指定を排除するための仕組みが必要です。

 この点、公明党が主張した結果、第十八条第一項では、「政府は、特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定めるものとする」と規定されています。

 そこで、統一基準の主な内容とは、特定秘密の指定、更新及び解除の各手続、指定の対象となる事項の細目、指定期間の基準、指定、更新、解除等の状況の公表等であることにつき、総理に確認の答弁を求めます。

 さらに、同条第二項では、「政府は、前項の基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、我が国の安全保障に関する情報の保護、行政機関等の保有する情報の公開、公文書等の管理等に関し優れた識見を有する者の意見を聴かなければならない」として、統一基準の作成、変更と、運用が基準に従っているかどうかの政府部内の監督に対する点検を行う有識者会議の設置を条文上明記しました。

 この有識者会議は、統一基準の作成にかかわり、権威あるものにする必要があると考えます。また、誰が会議のメンバーになるかが非常に重要です。公明党の主張により、安全保障情報の保護の専門家に加え、情報公開や公文書管理の専門家がメンバーになることが条文上明確になりましたが、さらに、報道や法律の専門家もメンバーに加えるべきと考えます。

 有識者会議の位置づけとメンバーの構成について、総理の所見をお伺いします。

 加えて、この有識者会議は、専門的な第三者の目から行政をチェックする機関であり、その議論を国民に対し広く知らせるため、会議の透明性を確保することが必要と思われますが、その具体策につき、森担当大臣の所見をお伺いします。

 また、半永久的な指定の更新を防ぐため、与党の主張により、法案の第四条三項では、指定の有効期間が通じて三十年を超える場合には、「情報を公にしないことが現に我が国及び国民の安全を確保するためにやむを得ないものであることについて、その理由を示して、内閣の承認を得なければならない」と規定しています。

 この「やむを得ないもの」というのは、具体的には、どういう場合か。また、この承認の際には、政府がその理由を国民に対ししっかりと説明する責任があると思いますが、総理の見解をお伺いします。

 次に、国会との関係についてお伺いします。

 法案の第十条一項第一号イでは、行政機関の長が衆参各議院及び委員会等に特定秘密を提供する場合、各議院等に対して、秘密会の開催による非公開、政令など行政が定めた運用基準による知得者の範囲の限定や、秘密保護措置等の条件の充足を求めています。しかし、国会は、国権の最高機関として、みずからの自律権に基づき、国会法改正や各議院規則改正等により秘密保護措置等の運用基準を決定すべきとの意見がありますが、総理の見解をお伺いします。

 また、国政調査権に関する規定である国会法第百四条三項では、国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の声明を内閣が出すことで国会からの資料の提出等の要求を拒否できるとされていますが、本法案によって、これまで行政から国会に対して提供されてきた情報が提供されなくなってしまうことはないのか、総理にお伺いします。

 さらに、国会の行政監視、国民の知る権利の観点からは、政府は特定秘密の指定、更新、解除等の状況につき定期的に国会に報告すべきと考えますが、総理の見解をお伺いします。

 最後に、情報公開のさらなる体制整備についてお伺いします。

 国の秘密の保護と同時に重要なのが、国民主権の観点からの国民への情報公開、そして、その前提となる公文書の管理です。公明党は、既に党内にプロジェクトチームを設け、議論を開始しています。

 公文書管理に関しては、一八八五年の内閣制度創設以来作成されなかった閣議等の議事録を作成し、三十年の保存期間を経過後、国立公文書館に移し一般に提供することは、現在及び将来の国民にとって大変歴史的な意義があることです。

 そのための公文書管理法改正案の提出を先般総理が約束されましたが、改正案提出の決意について、総理にお伺いします。

 また、情報公開の一層の推進のためには、情報公開法の目的規定への国民の知る権利の追加、国の重大な利益を害する一定の場合を除き裁判所が当事者を立ち会わせずに対象文書について証拠調べを行ういわゆるインカメラ審理制度の創設等が重要であり、政府においても積極的に検討を進め、必要な改正を行うべきであると考えます。

 情報公開制度の検討、改正について、総理の見解をお伺いします。

 以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 大口善徳議員にお答えをいたします。

 特定秘密保護法案の必要性についてのお尋ねがありました。

 情報漏えいに関する脅威が高まっている状況や、外国との情報共有は情報が各国において保全されることを前提に行われていることに鑑みると、御指摘のとおり、秘密保全に関する法制を整備することは喫緊の課題であります。

 また、政府部内で情報共有が促進されるためにも、秘密保護に関する共通ルールの確立が必要であり、新たに設置される予定の国家安全保障会議の審議をより効果的に行うためにも、秘密保全に関する法制が整備されていることが重要であると認識しております。

 本法案と取材の自由等との関係についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、秘密を保護する必要性とのバランスを考慮しつつ、国民の知る権利や、報道または取材の自由に十分に配慮することは、重要なことであると認識しております。

 本法案では、国民の知る権利に資する報道または取材の自由に十分に配慮しなければならないこと、通常の取材行為は、正当業務行為として、本法案の処罰の対象とならないことを明記しており、これら規定により、取材の自由等に十分に配慮した本法案の運用が確保されるものと認識しております。

 取材行為についてのお尋ねがありました。

 報道機関による通常の取材行為は、処罰対象となるものではありません。このことは、過去の最高裁決定からも明らかとなっており、本法案では、通常の取材行為は、正当な業務行為として、本法案の処罰対象とならない旨を条文上も明確にしております。

 本法案と公務員による情報提供との関係についてのお尋ねがありました。

 政府がその活動を国民に説明する義務を全うすべきことは大変重要ですが、公務員が法律上の守秘義務を遵守することも、当然必要であります。

 本法案では、特定秘密ごとに取り扱う職員の範囲が定められ、また、特定秘密が記録された文書にはその旨が表示されることから、取り扱う公務員にとって何が特定秘密であるかは明確です。また、それ以外の公務員は、そもそも、特定秘密を漏えいする罪の主体とはなりません。

 このようなことから、特定秘密という制度を設けることが公務員の取材への対応に支障を及ぼすことはありません。

 特定秘密の件数の見通し等についてお尋ねがありました。

 平成二十四年末現在の特別管理秘密文書等の総数は約四十二万件、うち、防衛秘密文書等の件数は約三万七千件と承知しています。

 本法案において特定秘密と指定される情報を記録する文書等の件数の見通し及び同法案の別表各号ごとの内訳については、現時点で確たることを申し上げることは困難でありますが、特定秘密は、特別管理秘密よりもさらに対象範囲を限定していることから、特定秘密の対象文書等の件数は、特別管理秘密よりも少なくなるのではないかと考えられます。

 特定秘密の指定等に関する統一的な基準の内容についてお尋ねがありました。

 政府が、特定秘密の指定等に関し、統一的な運用を図るために定める基準については、今後、有識者の意見を反映し、定めることになりますが、御指摘のとおり、特定秘密の指定、更新及び解除の各手続、指定の対象となる事項の細目、指定期間の基準、指定状況の公表等をその内容とするものとなると考えています。

 有識者会議の位置づけとメンバーの構成についてのお尋ねがありました。

 特定秘密の指定等の運用基準の策定に当たっては、有識者会議を開催し、各界の有識者の御意見を反映し、これを策定いたします。

 その際、本法案に規定する専門家に加え、御指摘の、報道や法律の専門家の御意見をいただくことも必要であると考えており、有識者会議の構成員とすることを検討してまいります。

 三十年を超えて特定秘密の指定を延長する際の要件等についてお尋ねがありました。

 三十年を超えて指定を延長する具体例としては、例えば、指定を解除すれば相手国が対抗措置を講ずるおそれがある場合など、三十年を超えてもなお当該情報を特に秘匿することが必要である場合が考えられます。三十年を超えて指定の延長を行う際には、政府としての説明責任をしっかりと果たしてまいります。

 特定秘密の提供と国会の関係についてのお尋ねがありました。

 本法案では、公益上の必要により、特定秘密の提供を受ける者が漏えいを防止するために講じなければならない措置について、一般的かつ必要最小限のものを政令で定めることとしています。

 国会において講じる保護措置の具体的なあり方については、国会の手続及び規律に関する事柄であり、今後、国会において御議論がなされるものと考えます。

 本法案と国政調査権との関係等についてお尋ねがありました。

 本法案には、一定の条件のもと、国会に特定秘密を提供することができる仕組みが盛り込まれており、本法案が実施されれば、国会の求めに応じ、特定秘密を提供することが可能となるものであります。これまで行政から国会に提供されてきた情報が提供されなくなってしまうのではないかとの御懸念は、当たりません。

 特定秘密の指定件数等の本法案の実施状況については、定期的にこれを公表することを検討しております。

 公文書管理法改正についてお尋ねがありました。

 閣議の議事録を作成し一定期間経過後に公開するための公文書管理法改正法案については、先般参議院本会議において答弁したとおり、明治以来議事録を作成してこなかった我が国の閣議のあり方ともかかわる問題であるため、政府部内で必要な調整、検討を行った上で、提出することとしたいと考えています。

 情報公開制度についてお尋ねがありました。

 情報の公開は、行政が国民に対して説明する責務を果たすために重要なものであり、今後とも情報公開が適正かつ円滑に実施されるよう、必要な取り組みを進めてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣森まさこ君登壇〕

国務大臣(森まさこ君) 有識者会議の透明性を図るための具体策についてのお尋ねがありました。

 特定秘密の指定は、有識者会議の意見を反映させた運用基準に基づいて行うこととしており、御指摘のとおり、運用基準について議論される有識者会議の透明性を確保することは、特定秘密の適正な指定を確保する上でも、重要なことであると認識しております。

 具体的には、会議の議事要旨は会議終了後速やかに公開すること、会議における配付資料は原則として公開することといった方策を講じることを検討しております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、井出庸生君。

    〔井出庸生君登壇〕

井出庸生君 みんなの党、信州長野の井出庸生です。

 みんなの党を代表して、議題となりました二案について、特定秘密保護法案から質問をいたします。(拍手)

 先月二十六日の東京新聞によれば、マックス・ウェーバーは、機密という概念は官僚独自の発明物だと百年前に看破した、また、情報が与えられない立法府を無力な議会と呼び、官僚制にとって一層好都合でもあるとも著したとあります。

 本法案は、日本が真の民主主義国家となり得るか否か、我々国会が問われていると言っても過言ではありません。

 みんなの党は、情報漏えい対策が国家にとって大切であることを理解しつつ、日本が一人前の民主主義国家であるための理想の姿を追求し、提案型の議論をするべく、以下、質問をします。

 まず、法案の罰則が、最高、懲役十年という量刑について、量刑設定の理由とその議論の経過を総理に答弁を求めます。

 また、懲役十年は、これまで情報漏えいを禁じてきた国家公務員法の懲役一年、自衛隊法の懲役五年より、はるかに実刑になる確率が高まると指摘をされています。検察関係者や弁護士など刑事裁判関係者に尋ねれば、判決で懲役四年を超えた場合、大体、執行猶予がつかないと。現行の自衛隊法の懲役五年という量刑が、実刑か否か、ぎりぎりの設定だと言われています。

 こうした指摘を御存じの上で量刑設定をしていると思いますが、情報漏えいに厳罰をもって臨むということでよろしいか、総理に伺います。

 この厳罰化によって、政府の不都合な真実を公益のために明らかにしようとする人物を萎縮させ、また、取材の自由に大きな障害となることは明らかです。本法案では、二十一条で、報道または取材の自由に十分配慮するなどと法解釈を規定しておりますが、この厳罰化がある限り、取材の自由を守ることはできません。

 もっと言えば、インターネットが普及した今、全ての人が、マスコミに頼らなくても広く情報を発信することができます。政府が保有している秘密に疑問を感じ、義憤を持って告発する善意の人間を守ることこそが、知る権利を守る本質であります。

 懲役十年という、現行諸法から飛躍した罰則には慎重であるべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 我々みんなの党の小野次郎参議院議員が、先月二十四日、参議院予算委員会の質疑で、森担当大臣に、西山事件、尖閣漁船衝突事件のビデオ映像、そしてスノーデン氏の告発を取り上げ、公表された瞬間に、多くの人は、何でそれを隠していたんだと思うのであって、その人を処罰しろとは思わないわけです、こういうことをどうやって保護するのかと質問をいたしました。これに対し、森担当大臣は、御指摘のような犯罪行為とかいったものはそもそも秘密の対象にはならないんです、一般的に申し上げますと、犯罪行為が公表されたとしても、それは処罰の対象にはなりませんと答弁をしています。特定秘密にやましいものがないと言い切った上で、一般論として、内部告発や公益通報者保護法の重要性を認めておられます。

 特定秘密にやましいことがあった場合に、通報者が果たして守られるのか、きょう、改めて、森大臣に明確な答弁を求めます。

 総理に、実例を挙げて伺います。

 警察が捜査対象者の車にGPS端末を捜査令状をとらず無断で取りつけて監視していた捜査手法が、福岡地裁の公判で争点となっています。同じ事例が、兵庫、愛媛でも確認されています。GPS端末を販売している業者は、第三者への取りつけを禁止しています。

 また、アメリカでは、同じ捜査手法が、プライバシーを侵害して違法だという判決が昨年出ています。この捜査がテロ捜査の一環であるとすれば、今後は特定秘密となる可能性が高いと考えます。

 こうした捜査手法は、少なくとも、手法を採用している事実のみを公表した上で執行するべきだと思いますが、こうしたグレーな問題が現実としてあるわけです。まだ明らかになっていないグレーな問題を勇気を持って告発しようとする人間がいたときに、政府はこれを守ることができるのでしょうか。総理の答弁を求めます。

 刑事裁判について、さらに事例を挙げて伺います。

 イージス艦の情報漏えい事件では、平成二十年の裁判で、秘密の内容が明らかにされないまま、有罪判決が出ています。特定秘密保護法ができれば、被告、弁護側から、特定秘密に指定されることはわかっていたが、その内容は特定秘密に該当しないという主張が出てくることが容易に想像されます。

 疑わしきは被告人の利益にという裁判の原則に照らせば、特定秘密を法廷で開示する責任は、罰則の重い本法案の制定によって格段に高まります。そのとき、政府は、裁判で特定秘密の内容を明らかにできますか。

 研究や教育の分野からも懸念の声が上がっています。

 先月三十日、九名の歴史学者が本法案に反対する声明を出し、声明では、歴史的に重要な文書が行政機関に恣意的に選別化される可能性が高く、歴史学の研究と教育に多大の障害をもたらすことが懸念されると警告をしています。

 この懸念について、私が、今月一日、文部科学委員会で下村文部科学大臣に問うたところ、過去の安全保障における政府の対応の機密文書、これは公開期間というものがあるのですけれども、いつ公表するかによって学問的にどうかという意見があることは承知をしていますが、国家としての安全保障、守るべきはきちっと守ることと学問的な認識とは別次元の話であると思いますという答弁がありました。

 別次元であるとするならば、文部科学大臣が歴史研究、歴史教育を守らないで、一体誰がこれを守るのか。先日の答弁の真意を文部科学大臣に伺います。

 総理にも、重ねて伺います。

 安全保障における政府対応を、将来、歴史として検証することは、一人前の民主国家として当然のことだと思います。

 これまで、私は、過去の日本の外交・安全保障政策がアメリカの公文書で明らかになったとニュースで聞かされるたびに、じくじたる思いを感じてまいりました。歴史と真実の探求を、国家として、自国の公文書で、情報公開で保障するべきだと考えますが、答弁を求めます。

 本法案は、特定秘密の延長について、三十年を超える場合、内閣の承認が必要とあります。原則公開の姿勢を徹底するには、内閣の承認では不十分と考えますが、総理、いかがでしょうか。

 さらに、三十年以降の秘密指定の延長を求める際には理由を示すこととなっておりますが、どのような理由が想定されるのでしょうか。歴史を曲げかねない、いかなる理由があるのか、総理の答弁を求めます。

 さて、本法案で改めてクローズアップされた西山事件は、国家の大きな過ちであったと考えております。密約を入手、報道し、そして国会を通じて問題提起した西山元記者の名誉をさきの民主政権が一定程度保ったことは、政権交代の成果であったと思います。

 そこで、最後に、民主党が提出された情報公開法改正案について、提出者に伺います。

 改正案によって、歴史や真実が明らかにされるのか。また、改正案を特定秘密保護法案に合わせて提出された真意をお答えください。

 西山事件のようなことが今後繰り返されなければ、過ちで済むのかもしれません。しかし、あのような事件が繰り返されるおそれ、可能性を放置するのであれば、西山元記者から国家の犯罪だと断じられていることに反論はできないでしょう。

 日本が世界でも冠たる民主主義国家として後世に評価をされるように、今後の審議を尽くす所存です。

 以上です。よろしくお願いをいたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 井出庸生議員にお答えをいたします。

 特定秘密の漏えいの法定刑についてお尋ねがありました。

 特定秘密の漏えいについては、その罰則を十年以下の懲役とした趣旨は、特別防衛秘密の漏えいや、営業秘密の開示行為等、窃盗罪の法定刑がそれぞれ懲役十年以下とされていることと比べ、国の安全保障に関する特定秘密の漏えいが国家公務員法の守秘義務違反にとどまることは、バランスを失し、特定秘密の漏えいを抑止する観点からも十分ではないと判断したことによるものであります。

 政府は問題を告発する者を守ることができるのかについてのお尋ねがありました。

 違法行為を告発する行為について申し上げれば、そのような行為が本法案の処罰対象となることはありません。

 特定秘密の漏えい事件における裁判手続についてのお尋ねがありました。

 これまでも、秘密漏えい事件の刑事裁判においては、秘密の内容が明らかになることを防止しつつ、立証責任を全うするため、秘密の種類、性質等のほか、秘密にする実質的理由として、当該秘密文書等の立案、作成過程、秘密指定を相当とする具体的理由等を明らかにすることにより、当該秘密の内容そのものを明らかにしないまま秘密性を立証する方法がとられております。

 特定秘密の漏えい事件においても、このような立証方法をとることにより、秘密性を立証することが可能であると考えます。

 公文書の公開についてお尋ねがありました。

 外交・安全保障政策を含む国の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等については、国民共有の知的資源であるとして、その適正な管理及び公開に取り組んでいるところであり、今後とも、現在及び将来の国民に説明する責任が全うされるよう努めてまいります。

 三十年を超える特定秘密の延長についてお尋ねがありました。

 特定秘密の指定は三十年が原則であるとの基本的な考え方のもとで、指定を行った行政機関の長が指定の要件を満たしているか否か確認するだけではなく、内閣として指定を延長することの適否を承認することにより、適切な判断を行います。

 延長の理由としては、例えば、指定を解除すれば相手国が対抗措置を講じるおそれがあるといったことが考えられます。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣森まさこ君登壇〕

国務大臣(森まさこ君) 内部告発についてのお尋ねがありました。

 違法行為を告発する行為や公益通報の通報対象事実を通報する行為が本法案の処罰対象となることはありません。

 また、犯罪行為等、公益通報者保護法の通報対象事実について内部告発が行われた場合には、公益通報者保護法によって、通報者は保護されます。(拍手)

    〔国務大臣下村博文君登壇〕

国務大臣(下村博文君) 井出議員から、歴史研究・教育についてお尋ねがありました。

 歴史学学会の関係者が先ごろ本法案に反対する緊急声明を出したことは承知しております。歴史学等の学術研究においては、史料や情報等の収集が重要でありますが、これまでも法令等に抵触しない範囲で研究活動が行われてきているものと認識をしております。

 今回の法案の趣旨は、国家公務員法上の秘密のうち、安全保障上特に秘匿の必要性の高い情報を本法案の規定と統一基準に基づき指定し、保護するものであり、これにより秘密の範囲が広がるものではないと承知をしております。

 文部科学省としては、大学等の研究機関における研究に対する支援を行ってきており、今後とも、歴史学を含めた学術研究の振興及び教育の支援に努めてまいります。(拍手)

    〔枝野幸男君登壇〕

枝野幸男君 井出議員にお答えをいたします。

 私どもが政権を担っておりましたときの西山事件等に対する情報公開の姿勢について、御評価をいただいたことに感謝を申し上げます。

 これだけにとどまらず、私どもは、情報公開制度をさらに充実させ、国民の知る権利を保障することにより民主主義の基盤を強化することなどを目的として、政権を担っておりました平成二十三年に、本法案と同趣旨の法案を内閣として国会に提出をいたしました。

 もし、こうした制度が確立をいたしますれば、全てについてということになれば、公文書管理制度も重要な意味を持っておりますので全てと申し上げることはできませんけれども、しかし、西山事件については、文書が残っていたものでありますので、残っていた文書について、情報公開制度を徹底させることで、より速やかに公開をされて、そして、例えば西山記者の名誉などについても、より早く回復をすることができたのではないだろうかというふうに思っております。

 一方で、その情報公開法改正と特定秘密保護法との関係でございますが、民主党政権でも、特に機密性の高い情報の保全などについて必要とされる措置につき、平成二十二年、政府における情報保全に関する検討委員会を設置し、平成二十三年には、そのもとに、秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議を設けて、検討を進めておりました。

 ただ、これらの検討は、情報公開法を改正し、情報公開制度をさらに充実させ、国民の知る権利の保障をより確かなものとするための作業が着実に進んでいる中でなされたものであり、情報公開法改正が先行して実現していることを前提として行ったものであります。

 残念ながら、平成二十三年提出の情報公開法改正案は、昨年の衆議院解散によって廃案となり、その後、安倍政権による再提出はなされず、今日に至っております。

 秘密保全のための法制整備を検討するに当たっては、この情報公開法改正が先行していたとしても、その内容や運用いかんによっては、国民の知る権利を侵害し、取材の自由を不当に制限するなどのおそれがあることから、特に慎重さが求められるところであります。

 ところが、今般、情報公開法の改正には手つかずのまま、秘密保護法案のみが政府から国会に提出されました。知る権利の明文化や情報公開訴訟の抜本的強化など、本法案で規定した情報公開制度の充実なしに秘密保護法のみが制定されれば、国民の知る権利を侵害し、取材の自由を不当に制限するなどのおそれを払拭することは到底不可能であると考えます。

 したがって、特定秘密保護法案を審議するに当たっては、情報公開法改正の審議が先行するか、または、少なくとも同時になされるべきであると考え、本法案を提出し、特定秘密保護法案に先立って御可決いただきたいとお願いをしている次第であります。

 こうした意味で、本法案と特定秘密保護法案とはセットと言えるかもしれないと思っております。

 ただ、他方、本法改正が実現をしたとしても、それが政府提出の特定秘密保護法案が抱える問題点の全てを解決するものとは限らず、いわば、十分条件ではなく、必要条件にとどまると考えております。ましてや、本法改正を実現することが必然的に特定秘密保護法制の整備の必要性を導くものではなく、こうした意味では、セットであるとは考えておりません。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、穀田恵二君。

    〔穀田恵二君登壇〕

穀田恵二君 私は、日本共産党を代表して、秘密保護法案について質問します。(拍手)

 本法案は、政府が勝手に秘密を指定し、情報を統制し、国民を監視し取り締まる、弾圧立法にほかなりません。基本的人権、国民主権、平和主義という日本国憲法の基本原理を根底から覆す希代の悪法であり、断固反対であります。

 本法案の概要が九月三日に発表され、十五日間の限られた期間に、政府のパブリックコメントに九万件の意見が寄せられ、その八割が反対の意見でした。日本弁護士連合会、日本新聞協会、日本ペンクラブを初め各界各層から、立場を超えて、反対の声が急速に広がっているのであります。

 安倍総理は、こうした国民の声を無視して法案を提出し、わずか五十三日間の会期の臨時国会で強引に成立させるというのであります。断じて許されません。

 一体、なぜ秘密保護法が必要なのですか。

 総理は、秘密保護法とNSCの創設は一体だと言い、その一方で、集団的自衛権の行使をめぐる憲法上の制約を、法解釈の変更で取り払おうとしています。これらは、二〇一二年七月に自民党が発表した国家安全保障基本法(概要)に位置づけられています。まず秘密保護法を制定し、国民の目、耳、口を塞いで、国民の批判を封じ込め、日本を海外で戦争する国につくりかえようというものではありませんか。

 今回の法案は、アメリカと同等の包括的な秘密保護体制をつくるものであります。それは、米軍再編以来進めてきた日米間の戦略、情報の共有、日米軍事一体化をさらに進め、日本の軍事的役割を拡大、強化しようというものにほかなりません。

 法案は、政府の持つ膨大な情報の中から特定秘密を指定し、最高で懲役十年の重い刑罰で、秘密を漏えいした公務員、知らずに秘密を漏らした者まで処罰することを骨格としています。

 重大なことは、特定秘密の指定が、政府に委ねられ、政府の恣意的判断で勝手に決められるということであります。

 特定秘密の範囲を限定するといいますが、防衛、外交、治安などに関し、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあると政府が判断すれば、秘密に指定できるのであり、際限はないのであります。

 したがって、TPPに関する情報も、原発に関する情報も、秘密指定できることになるのではありませんか。

 しかも、国民には、何が秘密か知らされません。自分が触れた情報が秘密かどうかわからないままに処罰されることさえ起きるのであります。

 最高刑十年の懲役で国民を監視し、秘密の漏えい、その未遂、過失まで処罰し、それだけでなく、取材などで秘密を取得する行為、さらに、共謀、教唆、扇動も対象としています。包括的な厳罰体制で国民を監視する、弾圧立法にほかなりません。

 報道や取材の自由に配慮する規定を盛り込んだといいますが、正当な取材行為かどうか、取材行為の中で人を欺いたかどうか、管理を害したかどうかを、一体誰が判断するのですか。それは警察ではありませんか。

 ジャーナリストの取材の当否を捜査機関の判断に委ねること自体、報道や取材の自由の侵害になることは明白ではありませんか。

 さらに、特定秘密が国会の立法権、調査権を侵害する問題です。

 特定秘密は、政府、行政機関の長が我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがあると判断すれば、国会に提供されないのではありませんか。提供された場合でも、国会議員がその秘密を政党内で議論しようとすれば、漏えいで処罰されるのではありませんか。これは、国民を代表する国会と国会議員が外交、防衛などの国政重要問題で政府を監視しチェックすることを不可能にするものであります。

 これまでも、今も、日米安保のもとで多くの情報が秘密とされてきました。

 幾ら国会で追及しても、歴代政府は、核兵器持ち込み密約、沖縄返還密約を隠し続けてきたのであります。地位協定にかかわる密約、日米合同委員会合意の実質的内容は、いまだにその全容が明らかにされていないではありませんか。そのもとで、住民生活や安全に重大な影響があるオスプレイの配備計画、訓練ルートは隠され、事件、事故を引き起こした米軍の処分結果さえ明らかにされてこなかったのであります。日米安保を揺るがしかねない情報は隠し通すというのが政府の姿勢であり、その実態は、深い秘密の闇に包まれています。

 その上、漏えいから取得行為まで包括的に重罰を科し、二重三重に情報統制をしこうというのが本法案であります。これは、戦前の軍機保護法の再来と言うしかありません。

 かつて、日本は、二重三重の機密法制で、国民の目と耳と口を塞ぐ情報統制のもと、アジア侵略の戦争に国民を動員し、二千万人に及ぶアジア諸国民と三百万人の国民を犠牲にしたのであります。その痛苦の反省に立って、日本国憲法は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意したのであります。憲法前文に込めた日本国民の決意を覆し、秘密保護法体制をつくり、戦争する国への道を突き進むことは、断じて許されません。

 日本共産党は、広範な国民とともに、秘密保護法の成立を阻止するために全力を尽くすことを表明し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 穀田恵二議員にお答えをいたします。

 特定秘密保護法案の成立に向けた政府の姿勢についてお尋ねがありました。

 情報漏えいに関する脅威が高まっている状況や、外国との情報共有は情報が各国において保全されることを前提に行われていることに鑑みると、秘密保全に関する法制を整備することは喫緊の課題であります。

 また、新たに設置される予定の国家安全保障会議の審議をより効果的に行うため、政府部内での情報共有の促進が重要であることから、秘密保護に関する共通ルールの確立が必要であると認識しております。

 政府としては、本法案の早期成立に向けて、努めてまいります。

 本法案の性格や目的についてお尋ねがありました。

 特定秘密の保護に関する法律案は、我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものの保護を図り、我が国及び国民の安全の確保に資することを目的としています。

 本法案により、日本の軍事的役割を拡大し、日本を海外で戦争する国につくりかえようというものではないか、あるいは情報統制を行おうとするものではないかとの議員の御指摘は、全く当たりません。

 TPPや原発に関する情報についてのお尋ねがありました。

 TPPや原発の事故等に関する情報は、特定秘密の保護に関する法律案の別表のいずれの事項にも該当せず、特定秘密の指定の対象とはなりません。

 国民を監視する弾圧立法ではないかとのお尋ねがありました。

 本法案は、特定秘密の漏えいを防止するために必要な罰則を規定するものであり、国民を監視する弾圧立法であるとの御指摘は当たりません。

 本法案と取材の自由との関係についてのお尋ねがありました。

 本法案では、国民の知る権利に資する報道または取材の自由に十分に配慮しなければならないこと、通常の取材行為は、正当業務行為として、本法案の処罰の対象とならないことを明記しております。

 本法案に規定する罰則の適用については、法と証拠に基づき、司法により判断されることになります。また、捜査機関においても、取材の自由等に十分に配慮した本法案の運用が行われるものと認識しております。

 特定秘密と国会の立法権、調査権との関係についてのお尋ねがありました。

 本法案については、一定の条件のもと、国会に特定秘密を提供することができる仕組みが盛り込まれており、本法案が施行されれば、国会の求めに応じ、特定秘密を提供することが可能となるものであります。したがって、本法案は、国会の立法権や国政調査権を侵害するものではありません。

 日米安保体制に関する情報の扱いについてのお尋ねがありました。

 安全保障にかかわるものについては、事柄の性質上、詳細を明らかにできることとできないことがあります。同時に、政府としては、これまでも、国会の場等において、可能な限りの説明に努めてきております。

 日米安保体制についても、例えば、日米地位協定のもとでの日米合同委員会における合意を、可能な限り公表するよう努めてきています。

 また、先般米軍人等が起こした事件について、米側での処分結果を被害者側にお知らせする新たな日米合意を作成したように、政府としては、一層の情報提供に努めています。

 引き続き、政府としては、日米安保体制に関し、でき得る限りの情報提供を行ってまいります。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、村上史好君。

    〔村上史好君登壇〕

村上史好君 生活の党の村上史好でございます。

 私は、生活の党を代表して、ただいま議題となりました特定秘密の保護に関する法律案に対して質問をいたします。(拍手)

 特定秘密保護法は、国民世論の六〇%以上がこの法律に反対をしています。また、法曹界からは憲法違反の疑義が指摘され、報道、出版界からは、報道の自由、取材の自由が侵害されると、抗議の声が上がっています。さらに、与党内からも、国民の知る権利を著しく制約することへの懸念が表明され、自民党内においても、先にやるべきことがあるのに、なぜ安倍総理の趣味をやるのかと発言される、良識ある議員もおられます。

 本来、このような国民の基本的な人権を制約するような法案、世論を二分するような法案は、世論の成熟を待って提案されるべきものであります。

 なぜ、安倍総理は、このような多くの国民の懸念や反対を押してまで、この法案を強引に通そうとされるのか、また、国民世論、この懸念をどのように受けとめておられるのか、伺います。

 本来、国家機密に触れる立場、知り得る立場の者は、政府関係者や関係省庁の官僚です。したがって、秘密を漏えいする可能性があるのは行政側の問題です。要するに、機密漏えい問題は、政権による官僚組織へのガバナンスの問題と言えます。何も、国民の知る権利や報道の自由を制約するような法律をつくらなくても、自衛隊法や国家公務員法などの関係法令の改正、強化で十分であります。

 なぜ、安倍総理は、既存の法令改正ではなく、新法にこだわるのか、民主主義の根幹を揺るがすような多くの危険を含む新法でなければならないその理由は何なのか、お答えください。

 本案の第二十一条、この法律の解釈適用で、国民の知る権利の保障、報道または取材の自由への配慮をわざわざ書き込まなければならないこと自体、この法案が極めて危ういことをみずから示しています。

 国民の知る権利は、憲法が保障する基本的人権であります。特定秘密との関係で、知る権利に軸足を置くのか、特定秘密の保護に軸足を置くのか、その基本的なスタンスが問われます。

 安倍総理はどちらに軸足を置いておられるのか、お答えください。

 あわせて、情報は誰のものかという基本的な認識についてもお伺いをいたします。

 言うまでもなく、国会は国権の最高機関であり、議員は国民の代表です。

 ところが、本法案の第十条によれば、国会が特定秘密の提供を受けられるのは、特定秘密を利用し、または知る者の範囲を制限すること、当該業務以外に当該特定秘密が利用されないようにすることその他の当該特定秘密を利用し、または知る者がこれを保護するために必要なものとして政令で定める措置が講じられ、かつ、行政機関の長が我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときに限られており、しかも、これらの要件を満たした場合でも、提出するかどうかは行政機関の長の裁量に委ねられています。

 このような制度では、国会審議が行政側にコントロールされるおそれがあります。また、国会が講ずべき措置について行政府が規定するのは、越権行為であり、三権分立の観点からも問題があるのは明白であります。

 これは、民主主義、三権分立の基本にかかわる重大な問題です。安倍総理の御見解を伺います。

 安倍総理は、さきの参議院予算委員会で、閣僚は特定秘密の指定と解除の権限がある、政権交代で新閣僚が誕生すれば、改めてその適否を判断することもあり得ると答弁をされました。

 政権交代によって指定と解除が繰り返されるようでは、特定秘密の指定の統一基準があってもないに等しく、特定秘密の範囲、指定が時の権力者によって恣意的になる懸念を裏づけるものではないでしょうか。

 さらには、政治家には、政権交代や内閣改造による異動があります。そこで常に残っているのは官僚です。特定秘密を官僚が独占する危険性もはらんでいる、そのことを指摘したいと思います。

 政権交代時における特定秘密の引き継ぎ、指定の取り消し等について、改めて総理の御認識を伺います。

 国家の安全保障に関する情報を厳重に管理することは、国家の存立にかかわる重要な課題であり、機密が、必要な限りにおいて守られていかなければならないことを否定するものではありません。しかし、国家の安全保障と国民生活の安心、安全のために特定秘密を保護するという名目で、国民の基本的人権を制約し、民主主義の危機を招くような法案であってはなりません。

 特定秘密を初め全ての情報は、時間の経過を含め、公開が原則です。

 本法案は、知る権利、報道の自由の視点だけではなく、情報公開の視点からも余りにも問題が多い法案であるということを指摘し、あわせて、徹底した審議を求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 村上史好議員にお答えいたします。

 本法案の必要性及び国民の懸念等に対する見解についてお尋ねがありました。

 情報漏えいに関する脅威が高まっている状況や、外国との情報共有は情報が各国において保全されることを前提に行われていることに鑑み、我が国及び国民の安全を確保する上で、秘密保全に関する法制を整備することは喫緊の課題であります。

 政府としては、取材の自由や国民の知る権利等に十分に配慮しつつ本法案を取りまとめたところであり、今後の審議等を通じて説明を尽くしてまいります。

 特定秘密保護法案と既存の法令との関係についてお尋ねがありました。

 新たに秘密保全に関する法制を整備し、安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要なものについて、その漏えいを防止し、的確に保護する体制を確立することは、極めて重要と考えております。

 なお、服務上の義務として守秘義務を定める国家公務員法等とは趣旨が異なるため、これらの法を改正することによることは適当ではないと考えております。

 特定秘密の保護と知る権利との関係や、情報は誰のものかとのお尋ねがありました。

 特定秘密は、我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要なものであり、これらの情報を保護することは、我が国及び国民の安全の確保のため必要であります。

 他方、国民の知る権利については、憲法第二十一条の保障する表現の自由と結びついたものとして、十分尊重されるべきものと考えています。

 政府としては、国の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等について、国民共有の知的資源として、その適正な管理及び公開に取り組み、現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるよう努めております。

 政府の保有する特定秘密については、秘密を保護する必要性と、政府がその活動を国民に説明する責務とのバランスを考慮しつつ、これを的確に保護するための方策を検討することが重要と認識しております。

 特定秘密の提供と国会の関係についてのお尋ねがありました。

 本法案には、一定の条件のもと、国会に特定秘密を提供することができる仕組みが盛り込まれており、本法案が施行されれば、国会の求めに応じ、特定秘密を提供することが可能となるものであります。

 また、国会において講じる保護措置の具体的なあり方については、国会の手続及び規律に関する事柄であり、今後、国会において御議論がなされるものと考えています。

 したがって、三権分立の観点から問題があるのではないかとの議員の御指摘は当たりません。

 政権交代時における特定秘密の引き継ぎ等のルールの必要性等についてお尋ねがありました。

 特定秘密の指定は、本法案の規定と外部の有識者の御意見を反映させた基準に従って適正に行われるものと認識しています。

 一方で、大臣は、特定秘密の指定と解除について責任を有しており、新たに大臣に就任した際に、特定秘密の指定状況を改めて確認することはあり得るものと考えます。

 以上であります。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣     麻生 太郎君

       外務大臣     岸田 文雄君

       文部科学大臣   下村 博文君

       農林水産大臣   林  芳正君

       防衛大臣     小野寺五典君

       国務大臣     菅  義偉君

       国務大臣     森 まさこ君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

       内閣府副大臣   岡田  広君


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