衆議院

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第14号 平成25年11月26日(火曜日)

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平成二十五年十一月二十六日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十一号

  平成二十五年十一月二十六日

    午後一時開議

 第一 防災・減災等に資する国土強靱化基本法案(第百八十三回国会、二階俊博君外十一名提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 防災・減災等に資する国土強靱化基本法案(第百八十三回国会、二階俊博君外十一名提出)

 特定秘密の保護に関する法律案(内閣提出)


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    午後六時四十七分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 防災・減災等に資する国土強靱化基本法案(第百八十三回国会、二階俊博君外十一名提出)

議長(伊吹文明君) まず、日程第一、防災・減災等に資する国土強靱化基本法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。災害対策特別委員長坂本剛二君。

    ―――――――――――――

 防災・減災等に資する国土強靱化基本法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔坂本剛二君登壇〕

坂本剛二君 ただいま議題となりました法律案につきまして、災害対策特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、国土強靱化に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、国土強靱化基本計画の策定、基本計画の案を作成する際の脆弱性評価その他国土強靱化に関する施策の基本となる事項を定めるとともに、国土強靱化推進本部を設置する等の措置を講ずるものであります。

 本案は、第百八十三回国会に提出され、六月二十四日に本委員会に付託され、翌二十五日に提出者二階俊博君から提案理由の説明を聴取した後、今国会まで継続審査に付されていたものであります。

 今国会におきましては、去る十月十五日本委員会に付託され、十一月十九日に、提案理由の説明の聴取を省略した後、中川正春君外四名提出の国民生活強靱化のための防災・減災対策基本法案と一括して質疑に入り、二十二日に本案について質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、自由民主党、公明党及び生活の党の三会派共同提案により、法律の題名を、強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法に改めるとともに、法律を制定する目的を、前文として加え、基本方針に新たな項目をつけ加えること等を内容とする修正案が提出され、修正案について提出者から趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、討論、採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 討論の通告がありますので、順次これを許します。まず、三日月大造君。

    〔三日月大造君登壇〕

三日月大造君 民主党・無所属クラブを代表して、二階俊博君外十一名提出の防災・減災等に資する国土強靱化基本法案及び同法律案に対する修正案に反対する立場から討論を行います。(拍手)

 本論に入ります前に、一言抗議いたします。

 午前中、国家安全保障に関する特別委員会において、特定秘密保護法案等の審議が打ち切られ、討論も封じられ、強行採決が行われました。

 行政の情報は、国民のためのものであります。これまでの審議や昨日の福島での参考人質疑で、各委員や公述人の皆様方から指摘されておりますとおり、そもそも、この法案に多くの問題点があることに加えまして、審議時間も不十分であります。これでは、国民の理解と納得は到底得られるものではありません。

 四十時間審議したと強弁されますが、情報公開法の改正案、国会法の改正案、また公文書管理法の改正案を含め、我が党が提出した法案の審議は、十分に行われないばかりか、一顧だにされなかった法案もあります。また、修正提出された法案の審議は、本日のみ、たった二時間であったではないですか。

 政府の都合と恣意性だけが優先され、国民の知る権利が侵される、これは、まさに、立法府の敗北であり、民主主義、終わりの始まりであります。絶対に許されるものではありません。強く強く抗議いたします。

 さて、我が国は、東日本大震災を初め、これまで、あまたの災害に見舞われてきました。犠牲になられた方々、御家族を亡くされた方々、住む家、働く場を失われた方々、避難生活を余儀なくされていらっしゃる皆様、自然災害に遭い、苦境にある全ての皆様に、深く静かに心をいたしたいと存じます。

 同時に、自然の恵みに感謝しながら、時に人の命を奪う自然の力や怖さに、畏怖の念を新たにいたします。

 今後も、南海トラフ地震や首都直下地震等の発生が指摘される中、大規模自然災害から国民の命や暮らしを守ること、強くしなやかな国をつくることは、政治の果たすべき究極の使命であります。

 一方で、現下の厳しい財政下、財源に限りがあることも、厳然とした事実であります。災害に対する脆弱性をできる限り科学的かつ客観的に評価し、優先順位を定めて、ソフト、ハード両面の防災・減災対策を講じていくことが肝要です。

 私たち民主党は、東日本大震災発災時に政権を担っていた経験と教訓から、生活者の立場に立ち、未来に責任を果たし、強くてしなやかな、ともに生きる社会をつくると綱領に刻んだ理念に基づき、強靱化すべきは国土ではなく国民生活との思想を具現化する、国民生活強靱化のための防災・減災対策基本法案を提出し、審議に臨んでまいりました。

 坂本剛二委員長の御指導のもと、二階先生、中川正春先生初め、提出者の皆様の御努力、与党筆頭理事の福井照議員の誠実な御対応、各党各会派理事、委員各位の真摯な御協力により、建設的な審議と協議が行われてまいりました。

 その結果、これまでの災害を教訓に、いかに防災・減災対策に取り組むのかが前文に記されましたほか、計画や施策のもととなる脆弱性評価を検証する規定が盛り込まれるなど、私たちの主張も、一部、修正案には反映されております。

 が、以下述べます肝要な部分が入らず、溝が埋まらず、残念ながら、反対せざるを得ません。

 第一の反対の理由は、その理念であります。

 私たちは、強靱化すべきは、国土ではなく、国民生活だと考えます。これまで整備してきた社会資本の老朽化対策も必要です。ハード整備そのものを否定しませんが、高く築いた防潮堤を越えた津波が、過信して逃げなかった多くの人の命を奪ってしまった教訓を、私たちは、刻み、生かさなければなりません。

 発災直後七十二時間以内の人命救助に集中的な措置を講ずること、また、内閣府と消防庁を中核とした組織を設置することも提案いたしましたが、明確な規定に至りませんでした。

 第二の理由は、その対象です。

 修正されてもなお、大規模自然災害等となっております。

 提出者の答弁では、その対象を、笹子トンネル天井板落下事故のような事故も含めているということですが、国民の生命、身体及び財産を保護するためとして、対象となる事態が際限なく広がっていくことが懸念されます。

 国土強靱化とのスローガンを掲げて、その対象範囲を自然災害以外にも広げて、ハード整備偏重で防災・減災対策を進めていくことには、賛同できません。こうした取り組みと選挙の集票や資金集めを連動させているとするならば、言語道断であります。

 第三の理由は、財政規律の観点が欠落していることであります。

 私たちは、自然災害にも直面していますが、財政も、既に危機的状況にあります。このまま、際限もなく、優先順位づけも曖昧かつ恣意的なままに防災、減災に係る事業を実施していけば、まず、多くの方々の懸命の御尽力により進められております被災地の復興がおくれる懸念があります。そして、いずれ、財政は破綻してしまいます。国土が強靱化されても、財政が破綻すれば、一体、誰のための、何のための対策かわかりません。

 第四の理由は、その閉鎖性にあります。

 国土強靱化推進本部が、内閣総理大臣とその他の国務大臣だけで構成されています。これでは、政府の視点により脆弱性評価の指針が作成され、政府の視点により脆弱性評価が行われ、政府の視点により基本計画の案が作成され、政府の視点により基本計画を決定することになります。これまた、一体、誰のための国土強靱化なのでしょうか。

 自治体関係者等からの意見聴取の定めはあるものの、十分な第三者の関与が規定されておりません。防災・減災対策は、国民のために、国民とともに行われるべきものであります。政府だけが旗を振って予算をつけて進むというものではありません。

 脆弱性評価や基本計画に十分な客観性と透明性を担保するため、私たちが提起したように、推進本部に、国務大臣以外の参画を認めるべきであります。

 最後に、繰り返しますが、強靱化すべきは、国土ではなく、国民の生活です。

 来年の四月、納税者に消費税率引き上げをお願いする一方、目的であったはずの社会保障制度改革は、その拡充が不十分なまま、負担増だけを先行させ、抜本改革は先送りされております。高校無償化改悪など、私たちが進めてきた、人への投資、子供たちへの先行投資も、心なく削られ始めております。

 国土強靱化の美名のもとに、客観性や透明性に欠けた評価と計画のもと、財政規律の観点からの歯どめや重点化の仕組みがないまま、ハード整備偏重で事業が推進される法律を、このまま通すことは無責任です。したがって、反対です。

 最後に、改めて議員各位の良識に訴え、討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(伊吹文明君) 次に、宮沢隆仁君。

    〔宮沢隆仁君登壇〕

宮沢隆仁君 日本維新の会、宮沢隆仁であります。

 私は、防災・減災に資する国土強靱化基本法案に反対の立場から討論を行います。(拍手)

 討論に入る前に、与党に対し、一言申し上げます。

 特定秘密保護法案について、我が党は、修正合意とは別に、公聴会開催を含め、慎重審議を主張してまいりました。にもかかわらず、与党は、一方的に、質疑を終局し、委員会において強行採決を行いました。さらに、緊急上程まで行おうとしております。このことに断固抗議いたします。

 さて、国土強靱化基本法案の目的である、大規模災害から国民の生命、身体及び財産を保護し、国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるように事前防災、減災を推進するという基本理念は、理解することができます。

 防災及び減災の観点から、老朽化したトンネルや橋の修繕、学校や病院の耐震性強化など、最低限必要な公共事業は最優先で実施する必要があります。さらに、アベノミクス効果はいまだ地方経済に波及していませんので、防災、減災のための公共事業は、地域建設業の雇用を維持し、地方経済を活性化する観点からも必要です。

 つまり、日本維新の会は、公共事業が要らないとか、悪であると考えているわけではありません。

 しかしながら、過去の公共事業への予算の使い方について、多くの問題点を指摘せざるを得ません。

 例えば、過去の災害復興において、復興のためと言いながら、地方の意見を聞かずに、現場の土地カンがない中央官僚の判断のみで、多くの無駄な予算を被災地に投入し、ピントのずれた公共事業をしていた事例が少なくありません。

 「震災復興 欺瞞の構図」を執筆された原田泰氏によれば、内閣府は、東日本大震災の物的資産毀損額を十六・九兆円と推計し、この金額をもとに、十九兆から二十三兆の復興予算が必要であると推計しました。しかし、原田氏は、東日本大震災の被害額は六兆円にすぎないと述べています。

 問題は、過去に復興予算としてつぎ込んだお金の使い方と金額が妥当であったか否かを、全く検証していないということです。反省も検証もなく、同じ過ちを繰り返すほど、国家の借金がふえ、子孫にそのツケが回り、国力は疲弊していくのです。

 なお、この点については、決算行政監視委員会において厳しく追及していきます。

 次に、本法案には、国際競争力に資するといった抽象的な表現が含まれておりますが、どのような国際競争力を指しているのでしょうか。

 このような抽象的文言から、防災、減災とは関係なく、費用対効果の少ない大規模公共事業が実施されるおそれがあります。つまり、国土強靱化なる言葉が何を意味するかが明らかではありません。対象分野が明確でなく、広範な政策が含まれており、際限なく予算が浪費されるのではないかという不安を感じます。

 地方公共団体との関係についても問題があります。

 法案第四条に、国土強靱化に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する義務を有するとあります。まるで、公共工事の中央集権化が強化されたように感じます。

 地方経済の発展のためには、地方自治体の裁量権を強化し、費用対効果が高い公共事業に限定し、むしろ、規制改革と税制改革などで対応すべきであり、過度に公共事業に依存すべきではありません。

 組織についても疑問があります。

 本法案にうたう国土強靱化基本計画では、内閣に置かれた推進本部と関係行政機関によって運営されます。つまり、国会は関与する余地はなく、我々立法府として、こうした白紙委任は認められません。しかも、公共事業の中央集権化が以前よりも強化されることにより、今後進めるべき地方分権に逆行します。

 本法案は、かつて田中角栄氏が日本列島改造論を打ち出したときの手法と、とてもよく似ております。国土強靱化をてこに新しい公共事業の総合化と体系化を目指そうというものでありますが、この当時の、族議員、陳情合戦、土建国家等の言葉が頭に浮かびます。

 しかし、時代が違います。

 少子高齢化時代に入り、社会保障費が増大する現在の財政危機の中では、公共事業に過剰な予算を投入する余裕はありません。将来、人口が減る中で、私たちは、今後急速にふえてくるインフラの老朽化に合わせて、不必要なものは取り除き、必要なものは修理し、技術革新を進めながら、むしろ、インフラを縮小させていかねばなりません。

 例えば、日常的にほとんど車が通らない、しかも維持保全に膨大な費用を要する道路を、何百年かに一回の災害のために、未来の子孫に借金をさせてまでつくり、抱えていくのかという問題でもあります。さらに、地方のみならず、大都市における空き地や空き家増加による限界集落化を、単なる強靱化思想では解決することはできないのです。

 我々日本維新の会は、防災、減災という理念には賛成します。

 しかし、この厳しい財政状況の中で、財政規律を保ちながら持続的な経済成長を進めることは簡単なことではなく、本法案の中には、財政規律を保つための条文は見受けられません。公共事業を強力に推進するためのアリバイづくりの法案としか思えません。

 公共事業をめぐる過去の歴史と本質を見ると、むしろ、行財政改革を推進すべきではないでしょうか。

 本法案の国会運営上にも問題があります。

 なぜ、このような法案が、議員立法であり、場違いな災害対策特別委員会に提示されるのでしょうか。まさか、南海トラフ地震法案、首都直下地震法案とセットで提示して、国民の恐怖心をあおり、野党の抵抗を抑えて通過させようという意図があるわけではありませんね。このような法案であれば、国土交通委員会のような、もっとふさわしい委員会があるのではないでしょうか。

 さらに、今国会での政府提出法案には、ないよりはましだろうというレベルの、法案としては完成度の高くない法案が目立つように思われます。突っ込みどころ満載の法案を提示し、修正を受け入れてでも急いで通してしまおうという姿勢が見えてしまいます。このようなやり方は、議会制民主主義にそぐわないのではないでしょうか。

 以上より、借金を積み重ね、公共事業に依存する古い自民党体質をほうふつとさせるこの国土強靱化基本法案には、反対せざるを得ません。

 最後に、自由民主党及び公明党の皆様におかれましては、巨大与党の力に溺れず、百年後の子供たちに誇れるような真摯な国会審議を要望し、日本維新の会宮沢隆仁の討論を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(伊吹文明君) 次に、佐藤正夫君。

    〔佐藤正夫君登壇〕

佐藤正夫君 みんなの党の佐藤正夫です。

 私は、みんなの党を代表し、防災・減災等に資する国土強靱化基本法案及びその修正案について、反対の立場から討論いたします。(拍手)

 まず、討論の前に、長年にわたり本法案を準備されてきた二階俊博代議士、そして災害特別委員会などで本法案の御説明などに御尽力された福井照代議士など国会議員の皆様に、敬意を表します。

 本法案の、国民の生命、身体及び財産の保護という理念については賛成です。

 しかし、第一の問題点は、本法案以前に、内閣官房がその役割を果たしていないこと。

 内閣法では、行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整に関する事務が内閣官房の業務とされています。すなわち、各省に横串を刺すのが、内閣官房であり、国土強靱化推進室であります。

 しかし、国土強靱化推進室は、各省の予算や施策をホチキスでとじているにすぎない。職員も、寄せ集めであります。本法案の前に、内閣官房の国土強靱化推進室こそ、脆弱性評価を受けて、強靱化しなければなりません。

 また、総務省の行政評価で指摘されているが、橋や道路やその他の公共施設を調査して長寿命化修繕計画を決めたのは、全国の自治体のわずか二%です。法案をつくる前に、現状の調査や評価を進めるのが先であります。

 本法案を提出するのは、現在の体制で全国の公共施設の調査ができていないと、白旗を上げたことを意味するわけであります。

 また、防災対策の特命大臣は、今こそ政治主導を発揮するチャンスではありませんか。この法案がなければ政治主導、内閣主導ができないというのであるならば、特命大臣も、本来の職務を放棄しているのではありませんか。このような内閣官房や特命大臣のもとで国土強靱化法案を俗に言うアンブレラ法案といって既存の制度の上にかぶせても、意味がありません。

 第二の問題点は、かつての全国総合開発計画と同じく、中央集権型になっていること。

 法案では、政府が脆弱性評価をし、政府が強靱化基本計画をつくり、政府が補助金の補助率を決める。自治体の思いは聞きおかれるだけで、幾ら自治体が国土強靱化地域政策をつくっても、財源も権限もない地方には、国の計画、金太郎あめ的な政策に従うほかない。まさに、中央官僚統制国家への逆戻りではありませんか。

 さらに、地域のことは地域で決めるという考え方が欠けています。

 昨日、私は、消防団百二十年・自治体消防六十五周年記念大会に出席をいたしました。ここでも、消防の精神は、みずからの地域はみずから守ることだとされています。

 東京一極集中のままで首都直下型地震が起きたら、我が国全体はどうなるのか。霞が関の中央集権から多極分散型の道州制に変えることが、究極の災害対策であります。国の財源、権限、人間の三ゲンを地方に移譲して、道州制に変える必要があります。

 けさの新聞では、自民党は、道州制法案の今国会提出を諦めたと報道されています。提案者である自民党も公明党も、道州制を推進する公約を掲げてこられたが、この理念は、一体どこへ行ったのか。

 第三の問題点として、両法案では、財源や年限が明確に示されていない。

 災害対策に名をかりた公共事業ばらまきを助長するおそれがある。いつまで、幾らの予算で国土強靱化を進めるのか法案では明確ではないが、最初に提案された際の、十年間で二百兆円という数字も見え隠れする。

 本法案は、内閣総理大臣を本部長にした組織を水戸黄門の印籠として、財務省から二百兆円のばらまき予算を獲得するための法案であります。

 また、大規模災害等の、等をつけるという霞が関文学も、法案の対象を曖昧にし、公共事業の対象を際限なく膨らませている。国民は、もうだまされない。震災復興対策の名のもとに、被災地とは全く違う地域に予算が使われていた。国民は忘れていない。

 第四に、我が党は、震災被災地の復興が第一と考えている。

議長(伊吹文明君) 佐藤君、佐藤君、申し合わせの時間が過ぎていますから、なるべく簡単にしてください。

佐藤正夫君(続) はい。

 被災地の復興なくして日本の再生なしと安倍首相は述べている。しかし、この法案により、全国あまねく公共工事が推進され、被災地に人や資材が集まらなくなる。

 以上を指摘し、本案及び修正案に反対をいたします。(拍手)

議長(伊吹文明君) 次に、高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました防災・減災等に資する国土強靱化基本法案に反対の討論を行います。(拍手)

 三・一一東日本大震災から二年八カ月余が過ぎました。この間も、甚大な災害が次々と列島を襲い、南海トラフ地震、首都直下地震など、巨大地震が必ず起こると指摘される中で、大規模災害から国民の生命財産を守り抜き、人々の営みを守りたいという思いは、誰しも同じであります。

 しかしながら、本法案は、防災、減災と国際競争力の向上を結びつけたために、方向は、大きく違ってしまいました。民主党の対案も取り入れ、法律の名称に、強くしなやかな国民生活の実現という言葉を加えたものの、その言葉の定義すらないのです。

 そこで、反対する第一の理由は、国際競争力の向上をそのまま基本理念に掲げた結果、国民の命と暮らしを守るための防災・減災対策がないがしろにされるからです。

 質疑では、国際競争力の向上とは、我が国の安全性に対する国際的な理解と評価を高め、その結果、諸外国からの投資を呼び込むことだと説明されました。

 諸外国からの投資を呼び込んで国際競争力を強化することと大規模災害から国民の命や暮らしを守るための防災・減災対策を結びつけなければならない必然性がどこにあるのでしょうか。

 大規模自然災害等からの被害を最小限にし、国民の生命財産を守るためには、建物やライフラインの耐震化、木造建築物密集地域の解消、地すべりや液状化など危険箇所の指定と対策などを思い切って進めるべきです。

 住民に最も身近な地方公共団体には待ったなしの課題ですが、これには財政保障が明確ではありません。地方公共団体がつくる国土強靱化地域計画は、国の定める国土強靱化基本計画との調和が求められます。これでは、国民のための身近できめ細かい対策が、結局、後回しにされかねません。

 第二は、国土強靱化が、巨大開発事業の復活、拡大を進める根拠を与えるものだからです。

 基本方針には、「国家及び社会の重要な機能の代替性の確保」「地域間の連携の強化、国土の利用の在り方の見直し等」という表現が盛り込まれています。

 これまでも、代替性や大規模災害対策といって、外環道や圏央道、新名神高速道路、一万四千キロの高速道路網、九兆円ものリニア新幹線建設が進められてきました。十月には、二〇〇八年に調査が中止された六海峡横断道路の一つ、関門海峡道路について、福岡県が調査再開を表明し、各地からも海峡道路の建設要望が出されており、まさに、四全総の復活を思わせる状況であります。

 提案者は、脆弱性評価が前提だから公共事業促進にはならないと説明していますが、国際競争力が重視される一方、市民や第三者がチェックする手続がないために、不要不急の公共事業促進になりかねません。

 第三に、防災、減災の取り組みは自助、共助、公助の適切な組み合わせとあるものの、国民生活を守るために国のやるべきことが抜け落ちているからです。

 東日本大震災で浮き彫りになったのは、医療、介護の資源の決定的な不足、行革や合併推進による行政機能・体制の低下であり、まさに、こここそ国が正面から取り組むべきであります。

 また、複合的で大規模な被害が予想される石油コンビナートのように、民間企業の敷地、施設については、単に協力を要請するにとどまらず、企業みずから、施設のリスク評価を行い、公表することが不可欠であります。

 終わりに、強くしなやかな国土、国民生活の実現は、政治のあり方そのものです。安倍政権がしゃにむに進める、国民の暮らしと権利を脅かす政治とは、両立をしません。とりわけ、国民の知る権利も表現の自由も奪われ、戦前の暗黒時代に後戻りするような特定秘密保護法案の強行採決は、断じて許せません。

 以上述べて、反対討論を終わります。(拍手)

議長(伊吹文明君) 以上をもって討論は終局といたします。

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 採決をいたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決をいたしました。

     ――――◇―――――

あべ俊子君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、特定秘密の保護に関する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。(退場する者あり)

議長(伊吹文明君) ただいまのあべ俊子君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 特定秘密の保護に関する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) 特定秘密の保護に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国家安全保障に関する特別委員長額賀福志郎君。

    ―――――――――――――

 特定秘密の保護に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔額賀福志郎君登壇〕

額賀福志郎君 ただいま議題となりました特定秘密の保護に関する法律案につきまして、国家安全保障に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、これを的確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、当該情報の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めるものであります。

 本案は、去る十一月七日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。

 本委員会においては、同日森国務大臣から提案理由の説明を聴取し、翌八日から質疑に入りました。十三日及び十九日には参考人から意見を聴取いたしました。二十五日に福島県において地方公聴会を開催いたしました。

 同日、本案に対し、自由民主党、日本維新の会、公明党、みんなの党の四会派共同提案により、安全保障の定義、特定秘密を指定することができる行政機関の限定、指定の有効期間の延長の上限、国立公文書館等への移管、特定秘密の提供の義務、特定秘密の指定等の運用基準の作成、運用状況の報告等、国会への報告等、取得罪の目的犯化、特定秘密の指定、適性評価の実施等を行う行政機関に関する経過措置、指定及び解除の適正の確保、国会に対する特定秘密の提供及び国会におけるその保護措置のあり方、別表に掲げる事項の明確化等に係る修正案が提出をされ、提出者から趣旨の説明を聴取いたしました。

 翌二十六日、安倍内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行い、質疑を終局いたしました。質疑終局後、採決を行った結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) ただいまの報告に関し、討論の通告があります。順次これを許します。まず、長島昭久君。

    〔長島昭久君登壇〕

長島昭久君 民主党の長島昭久です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました、自由民主党、日本維新の会、公明党、みんなの党四党提出の特定秘密の保護に関する法律案に対する修正案に対し、反対の立場から討論を行います。(拍手)

 冒頭に、与党側の修正協議担当者に改めて感謝を申し上げたいと思います。

 筆頭理事の中谷先生、岩屋先生、今津先生、そして公明党の大口先生、上田先生、この一週間余、私たちの対案と真摯に向き合っていただきました。議会人として、その誠意ある姿勢に深く敬意を表するものであります。

 あと二、三週間あれば、あるいは合意にこぎつけることができたかもしれません。まことに残念であります。

 質疑を打ち切り、この修正協議を頓挫させたのは、ひとえに、事を性急に運ぼうとする政府の強引な姿勢にあるのです。

 福島における地方公聴会で慎重審議を求められた翌日の強行採決であります。しかも、共同修正提出政党が欠席をしている。前代未聞であります。こんな異常な環境で、ここまで重要な法案を強行するとは、まさしく、立法府軽視も甚だしい。満腔の怒りを持って抗議を申し上げたいと思います。

 私は、十年前、初めて国政に送っていただいて以来、外交、安全保障に与党も野党もない、あるのは国益のみ、その政治信念に基づき、国家安全保障問題に真剣に取り組んでまいりました。

 したがいまして、さきに本院で審議された国家安全保障会議設置法をめぐっても、日本版NSCがより機能するよう、修正案を提起し、与党との合意を得るために汗をかかせていただきました。

 NSCを創設し、我が国のインテリジェンスを強化していく。インテリジェンスを強化するためにも、必要最小限の秘密を漏えいから防ぐ法制度を整備することは当然であります。

 したがいまして、決して、平成の治安維持法などという極論を振りかざすつもりはありません。

 主権国家である以上、国家の存立と国民の安全を保障するため、一定の情報を秘密にすること、そして一定期間秘匿しておくことの必要性は、十分理解しております。実際、そういった認識に基づいて、民主党政権下で秘密保護法制の立法作業に着手したことも事実であります。

 しかし、私は、今回提出された政府原案を見たとき、残念ながら、私たちが策定しようとした秘密保護法制とは根本的に考え方が異なると感じました。基本的な制度の設計思想が異なるのです。

 民主党の対案のポイントは、ことし六月に公表された国家安全保障と情報への権利に関する国際原則、いわゆるツワネ原則に沿ったものであります。

 それは、公開の規制対象を限定する、秘密指定の期限や公開請求手続を定める、全ての情報にアクセスできる独立監視機関を置く、メディアなど非公務員は処罰の対象外とする等、五十項目にわたる原則を列挙しています。これが、秘密保護法制の国際スタンダードであります。

 本法案担当の森大臣は、このツワネ原則を読んだこともないと答弁し、失笑を買いましたが、私たちは、こういった国際スタンダードを踏まえ、米国初め各国の制度を研究し、今国会の審議を通じて詳細な論点整理を行いながら、国民の皆さんの声にも耳を傾け、民主党として対案を取りまとめ、国会に提出したのが、先週の火曜日であります。

 提出が遅いという声が聞かれますが、たかだか十日余りの国会審議で強引に採決しようという方が拙速なのではないでしょうか。

 世論調査を見ても、明らかに、国民は慎重な審議を求めています。私たちは、大半の国民が納得できるような法制度をつくろうと提案しているにすぎないのです。

 私たちは、条件反射的に反対を叫んでいるわけではありません。安手の引き延ばし戦術を弄しようとも思っていません。

 議論の大前提として、行政の情報は主権者たる国民のものであるという、民主主義の根幹にかかわる認識を、いま一度強調せねばなりません。

 だからこそ、私たちは、情報公開法と公文書管理法の改正案も、あわせて提案させていただきました。

 修正協議に臨んだ与党の交渉担当者の皆さんは、情報公開制度の拡充や公文書管理の重要性を認めつつ、それら改正案を検討するには時間がなさ過ぎると慨嘆されました。これは、時間をかければ、この法案でも折り合える可能性があるということでしょうか。

 一方で秘密保護法案に関する審議時間は十分だと言い、他方で情報公開や公文書管理について検討するには時間が不十分と言うのは、明らかに自己矛盾しているのではないでしょうか。

 民主主義社会においては、情報公開と秘密保護という二つの公益のいずれも重要なのです。時間をかけて、その二つの重大な公益を満たす一致点を見出すというのが筋だと考えます。

 その筋を踏み外して、小手先の修正で妥協してしまったみんなの党の執行部には、失望を禁じ得ません。行政機関の長の長たる内閣総理大臣が第三者機関とは、笑止千万であります。

 みんなの党の中にも、日本維新の会の中にも、慎重審議を求める議員が数多くおられたと仄聞いたします。

 議場の同僚議員の皆さん、国家存立のための秘密の保護と、情報公開や国民の知る権利とのバランスに最大限配慮した私たちの民主党案について、虚心坦懐にもう一度検討していただきたいと思います。その上で、最終的な投票態度を決めていただきたい。

 民主党案は、国民の不安や懸念に十分応えるものとなっていると自負しております。したがって、心ある与党議員からも、有識者やマスメディアからも、一定の評価をいただいております。

 他方、政府原案はもとより、四党修正案でも、依然として、本質的な問題は何ら解決されておりません。

 以下、本質的な相違点につき、ポイントを絞って説明させていただきます。

 第一に、修正案においても、指定される秘密の基準や範囲は、依然として広範で曖昧であり、その他という文言も数多く残されたままで、拡大解釈の懸念は拭えません。

 国連人権高等弁務官事務所は、二十二日、言論の自由を担当する二人の特別報告者が、日本の特定秘密保護法案に重大な懸念を表明したと報道されております。

 これに対し、民主党案では、その他という曖昧な文言を極力排し、防衛秘密、特別防衛秘密は現行制度のままとし、外交と国際テロリズムに関して外国の政府または国際機関との情報を共有する上で必要かつ不可欠な情報に限定して、秘密の範囲を絞り込みました。

 また、違法や行政の瑕疵を隠蔽するなど、政府の秘密指定を禁ずる項目も追加をいたしました。

 第二は、秘密の指定や運用について、政府を監視する第三者機関についてであります。

 政府原案では、有識者の意見は聞くが、あくまで政府が運用基準を定め、行政機関の長が秘密指定することになっていました。

 修正案では、附則に、秘密の指定や解除の基準等を検証し、監察できる新たな機関の検討が書き込まれましたが、いつまでに、どのように検討するのか、設置されるまでどうするのか、本当に設置されるのか、全く保証の限りではありません。

 これでは、実際に行政が決めた秘密が適正に運用管理されているのか、国民の側から客観的に確認する方法がないままに、見切り発車することになりかねません。

 民主党は、独立行政委員会である情報適正管理委員会を設置して、政府が秘密を適正に管理するよう監視するために、秘密の指定や解除、秘密を扱う公務員等の適格性確認など、運用の基準の決定、調査、勧告、苦情の申し出への対応、国会への報告など、その任務と権限を具体的に規定した法律案を提出させていただきました。

 秘密を取り扱う公務員等が不当な秘密指定の存在を知った場合、委員会に通報する義務も定めています。さらに、この委員会の独立性を担保するために、委員は国会が指名することとなっています。

 第三のポイントは、国会の関与であります。

 四党修正案では、民主党の提案を受け入れて、国会への情報提供を義務規定とし、保護措置についても、政府原案では、政令で定めるとなっていたものを、国会で定めると改めたことは、評価に値します。

 しかし、依然として、国会への情報提供について、最終的には行政の裁量に委ねられる余地を残しています。

 これに対し、私たち民主党案は、国会法百四条の改正案を提出し、行政情報の提供を求めるために国会がどういう措置をとるべきかを明記し、最終的な判断を、行政の裁量ではなく、あくまでも国会の自律権に委ねています。

 この点は、恐らく、伊吹議長にも十分御評価いただけるのではないかと考えております。

 第四に、処罰についてであります。

 政府原案では、秘密を扱う公務員等による情報漏えいとともに、情報を取得しようとする者に対しても厳しい罰則を科しています。

 修正案では、二十四条をスパイなどの目的に絞りました。しかし、二十五条では、情報漏えいを共謀し、教唆し、または扇動しただけで処罰の対象となり、二十四条のスパイ目的でも、秘密の管理を害する行為、これは未遂の場合までも処罰されるおそれを残しています。

 このことにより、取材や報道活動が萎縮したり、公務員側が厳しい処罰を恐れて情報提供しなくなれば、国民の知る権利が侵されることになりかねません。

 民主党案では、秘密の取扱者への処罰は懲役五年以下とし、また、不正取得への新たな罰則も全文削除し、処罰の範囲も現行の国家公務員法の規定の範囲内とし、国民の知る権利と報道の自由に最大限配慮しています。

 以上、申し述べた理由により、民主党は四党修正案に反対であります。

 最後に、今や巨大化した政府・与党には、一段と謙虚な議会運営に努めることを改めて求めたいと思います。

 衆議院での審議や民主党案をめぐる修正協議を踏まえて、ぜひ、参議院においても、改めて熟議を重ね、さらなる法案修正に向け努力されんことを求め、私の討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(伊吹文明君) 次に、岩屋毅君。

    〔岩屋毅君登壇〕

岩屋毅君 自民党の岩屋毅でございます。

 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました特定秘密の保護に関する法律案に賛成の立場で討論をいたします。(拍手)

 その前に、一昨日、中国が尖閣諸島を含む東シナ海に防空識別圏を設定した事案について、一言申し上げます。

 かかる行為は、一方的に現状を変更しようとする乱暴なしわざであるばかりではなく、不測の事態を招きかねない極めて危険なものであって、断じて容認することはできません。

 政府は、冷静かつ毅然たる対応をもって、断固これが撤回を求めていくよう、強く要望しておきたいと思います。

 さて、このように、我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しております。急速に我が国周辺の軍事バランスが変容しつつあるだけではなくて、国際テロ、大量破壊兵器の拡散などの新たな課題も生じてきております。

 多様化、複雑化する国際情勢の中で、我が国が的確な政策判断を行っていくためには、安全保障に関する情報の獲得とその保全が、従来とは比較にならぬほどに重要になってきているのであります。

 忘れてならないのは、アルジェリアの邦人人質事件であります。我が国と国民を守るために、安全保障に関する情報がいかに重要な意味を持つのか、この事件を通じて、我々はそのことを痛感させられました。

 このような状況を踏まえた上で、安倍政権は、国家安全保障会議の設置に向けて動き始めたのであります。同会議の設置は、これまで各省庁がばらばらに保有してきた安全保障に関する情報を一元化し、総理の強力なリーダーシップのもとに、山積する諸課題に対して迅速かつ機動的に対応策を見出していくためのものであります。

 そういう意味で、国家安全保障会議の設置は、我が国の安全保障体制を充実強化するための画期的な取り組みであると言うことができます。

 委員会審議においては、各党から、真摯な御議論と建設的な御提案をいただき、最終的に五党共同による修正を行った上で、法案を参議院に送付することができました。この間の各党の真摯なお取り組みに対し、心から敬意を表する次第でございます。

 しかしながら、これだけでは、まだ不十分なのでございます。複雑化する国際情勢の中にあって、国と国民の安全を確保していくためには、機微な情報を関係各国と共有し、グローバルなレベルで対応措置を講じていくことが必要だからでございます。

 それがためには、安全保障に関する情報を的確に保護するための体制が整備されていなければなりません。共有した情報をしっかりと保全し、統合し、分析し、迅速に政策決定部門に提供できる体制が整っていなければ、せっかく立ち上げる国家安全保障会議が効果的に機能することができないからでございます。

 こうした現状に対応するために提出されたのが、特定秘密の保護に関する法律案であります。

 この法律は、大きく三つの柱から成っています。

 第一の柱は、特定秘密の指定であります。

 特定秘密として指定され得る分野は、大きく分けて、外交、防衛、特定有害活動、そしてテロの四分野であり、別表において、計二十三個の事項が明記されております。

 特定秘密として指定するためには、これら二十三事項のいずれかに該当した上で、かつ、特段の秘匿の必要性を要しなければならず、なおかつ、有識者会議がつくる基準に合致していなければなりません。特定秘密の指定は、このような厳格な手続を経る必要があり、したがって、その範囲は、現行の国家公務員法の秘密の範囲と比べて、おのずから限定的なものになると考えております。

 第二の柱は、適性評価制度の導入であります。

 本法案において、特定秘密の取り扱いの業務は、適性評価を経て、特定秘密を漏らすおそれがないと認められた者に限り、行うことができるとしております。

 適性評価は、既に諸外国において導入されている制度であり、機微な情報を取り扱うために必要不可欠な制度であります。特定秘密を厳格に管理するためには、物的管理を強化することはもちろん、このような人的な面でも保護体制を構築する必要があります。法案は、評価対象者のプライバシーの保護の観点から見ても適切なものになっていると考えます。

 第三の柱は、特定秘密の漏えい行為等に対する罰則の整備であります。

 特定秘密は、その性質上、漏えいすることによって我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすものであることから、漏えい行為等に厳罰を科すことによって抑止力を強化する必要があります。

 現在、防衛分野を除いては、国家公務員法の守秘義務によって保護されているにすぎず、その抑止効果は極めて不十分であると言わざるを得ません。

 民間の営業秘密については、不正競争防止法では懲役十年以下、また、米国から供与された装備品等に関する特別防衛秘密については、懲役十年以下を科すこととなっております。

 本法案は、特定秘密の漏えいに対して懲役十年以下の罰則を整備することとしておりますが、これは、今申し上げた他の法律と比べても、決してバランスを失するものではなく、妥当な量刑であると考えております。

 本法案に対しては、特定秘密の恣意的な指定が行われるのではないか、国民の知る権利が制限されるのではないかなど、懸念の声が寄せられてきたことも事実であります。民主主義と秘密のバランスをどうとっていくか、極めて重要な課題であることは論をまちません。

 そこで、我々は、そういった国民の声に耳を傾け、委員会審議を通じて各党から出された修正案並びに対案についても真摯に耳を傾けた上で、政府提出法案を十二項目にわたって修正いたしました。

 三十年を超えて秘密指定の有効期間を延長する際に内閣の承認を要することに加え、さらに、法案に明記した一部の事項を除いて六十年をもって原則公開とすること、有識者会議の意見を聞いた上で、特定秘密の指定や解除等についての統一的な基準を設けることとすることなど、恣意的な運用を防ぐための重層的な仕組みを設けることとしたところであります。

 各党間において紳士的かつ建設的に協議を行った結果、自由民主党、公明党、日本維新の会、みんなの党、四党共同の修正案が提示されることとなりました。

 民主党には、対案を出していただきました。しっかり聞かせていただきました。先ほど長島委員から評価をいただいて、感謝をしているところでございます。内容を吟味した結果、賛成するには至りませんでしたけれども、その御主張の一部には大いに聞くべきところがあり、結果的に、修正案の中にその一部を反映させていただいていると思っております。

 共産党、生活の党からは、審議を通じて、厳しい中にも有益な御指摘をいただき、この重要法案についての考察を深めることができました。

 各党の委員諸兄に心から敬意を表したいと思います。

 他の修正内容については、各党の代表者によって詳しく説明が行われると思いますが、これら十二の項目にわたる修正は、いずれも適切なものであって、これまでの国民の皆さんの御懸念に応えるに十分なものになっていると考えております。

 次なる課題は、行政内部における第三者的な監視機関の創設並びに国会における情報に特化した委員会などの設置となりますが、これらについても、修正案の中で検討と措置の必要性を明記したところであり、今後、政府の努力と各党間の精力的な話し合いによって迅速に答えを出していかなければならないと考えております。

 私は、今回の特別委員会の審議の過程には、しっかりと民主主義が機能していたと感じております。いずれの政党も、国の安全保障体制の再構築の必要性、情報保全の体制を強化する必要性については、認識を共有できていたと思っております。その上で、四十三時間を超える審議時間を確保し、この間、二回の参考人質疑、さらには地方公聴会などによって審議を深めることができました。

 丁寧に審議しつつも、決めるべきときには決める、これこそが、決める政治のあるべき姿ではないでしょうか。

 以上、申し上げましたように、この法案は、我が国と国民の安全を確保するために必要不可欠な法案であります。

 国の安全と国民の安全を確保し、もって世界の平和と安定に積極的に役割を果たしていく、それこそが、安倍総理の掲げる積極的な平和主義であります。その作業は、今始まったばかりです。しっかりやり遂げていこうではありませんか。

 議員諸兄の本法案に対します御賛同を心よりお願い申し上げまして、私の賛成討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(伊吹文明君) 次に、赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表して、秘密保護法案に反対の討論を行います。(拍手)

 本日、安倍内閣と自民、公明、みんなの三党が、国家安全保障特別委員会において秘密保護法案を強行採決したことに、断固抗議するものです。

 本法案は、国民の基本的人権を初め、憲法原理にかかわる重大な法案であるにもかかわらず、わずか二週間余りの審議で、中央公聴会も行わず、質疑を打ち切り、討論さえ認めませんでした。質疑権、発言権を踏みにじる、議会制民主主義じゅうりんの暴挙であり、我が国の議会政治に重大な汚点を残すものであります。

 そもそも、法案の概要が国民に初めて示されたのは九月三日でありました。政府が十五日間に期間を切ったパブリックコメントに九万件の意見が寄せられ、その八割が反対でした。そうした国民の声を踏みにじって、安倍内閣が法案を国会提出して一カ月、法案に対する批判と反対の声は国民の各界各層に急速に広がり、慎重審議を求める国民は八割を超えています。

 自民、公明両党は、審議は尽くされたと言いますが、昨日の福島の地方公聴会で出された意見をどう受けとめるのでしょうか。

 浪江町長を初め、七人の意見陳述者から語られたのは、原発安全神話のもとで、情報が知らされず、取り返しのつかない事故が引き起こされ、生活を奪われたことへの憤りであります。法案の賛成者は誰一人なく、秘密ではなく情報公開をと求めたのであります。こうした意見を無視した与党の責任は極めて重大です。

 秘密保護法案の危険な本質は、短期間の審議でも明らかです。

 基本的人権、国民主権、平和主義という日本国憲法の基本原理を根底から覆す、希代の悪法にほかなりません。

 第一に重大な問題は、特定秘密の指定が政府に委ねられ、政府の恣意的判断で勝手に決められることです。

 国民には、何が秘密かも知らされず、自分が触れた情報が秘密かどうかわからないまま処罰されるのであります。秘密の指定期間は政府の判断で幾らでも更新できることになっており、四党修正によって、原則三十年から六十年に延ばされ、さらに例外まで設けており、永久秘密とされるおそれさえあります。

 第二に、最高刑十年の懲役という重い刑罰で国民を監視し、取り締まる、弾圧立法であります。

 秘密の漏えいだけでなく、その未遂や過失まで処罰し、取材などで秘密を取得する行為、そこには、共謀、教唆、扇動も対象としています。逮捕されれば、裁判でも特定秘密は開示されず、暗黒裁判になりかねません。

 第三に、そもそも、日米安保のもとで、歴代政府は、核密約、沖縄返還密約を隠し続け、今なお、在日米軍の特権や基地の運用にかかわる取り決めを明らかにしていません。密約の存在を認めず、反省もせず、日米安保の秘密を一層拡大するものであります。

 秘密保護法で国民の目、耳、口を塞いで国民の批判を封じ込め、集団的自衛権の行使を容認して、日本を海外で戦争する国につくりかえる安倍政権の策動は、断じて許されません。

 かつて、日本は、軍機保護法制で国民に真実を隠し、アジア侵略の戦争に突き進みました。その痛苦の反省に立って、日本国民は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、日本国憲法を確定し、戦後の出発点としたのであります。

 最後に、日本共産党は、違憲の秘密保護法案の成立を阻止するため、広範な国民と共同し、最後まで闘う決意を表明し、討論を終わります。(拍手)

議長(伊吹文明君) 次に、畠中光成君。

    〔畠中光成君登壇〕

畠中光成君 みんなの党の畠中光成です。

 私は、本日の議題である特定秘密の保護に関する法律案の採決に当たり、みんなの党を代表して、賛成の立場から討論をさせていただきます。(拍手)

 第一に、我が国を取り巻く厳しい国際情勢の中で、国及び国民の利益を守るための安全保障に関する情報の重要性は増しており、これらの情報に対する秘密保全の徹底が必要です。

 従来より、我が国では、外国情報機関の情報収集活動などにより、情報が漏えいし、またはそのおそれが生じた事案が何度も発生しています。

 加えて、IT技術やネットワーク社会の進展に伴い、政府の保有する情報がネットワーク上に流出し、極めて短期間に世界規模で広がるといった事案も発生しています。

 第二に、さきに特別委員会で議論を行った国家安全保障会議などにおいて政策判断が適切に行われるためには、政府部内や諸外国との間において、相互信頼に基づく情報共有の促進が不可欠です。そのためには、秘密保全に関する制度を、法的基盤に基づく確固たるものとすることが重要です。

 一方で、本法律案は、国民の知る権利などの、民主主義社会と情報インテリジェンスの相克の問題を浮き彫りにしています。政府原案については、国民の皆様から不安や疑問の声が多く寄せられました。

 みんなの党は、これらの声を真摯に受けとめ、秘密の範囲が際限なく広がらないようにすることや、内閣総理大臣の関与による省庁間の縦割りの排除、立法府による監視機能の創設による民主的統制の担保、情報にかかわる職員の倫理の保持のために必要な方策の検討などを修正協議の中に盛り込み、今回の法律案に至ったものです。

 みんなの党は、かねてより、激動する国際情勢の中で、戦略的な外交を行うことの必要性を主張しています。その中で、政府全体の情報収集能力や情報漏えい防止策の強化の重要性もお訴えしてきたところです。

 これらのことから、本法律案には賛成の立場を表明しますが、成立後、その運用において、法の趣旨から逸脱した、国民の権利の侵害がされることのないよう注視してまいることを明確に申し上げ、法案賛成の討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(伊吹文明君) それでは、玉城デニー君。

    〔玉城デニー君登壇〕

玉城デニー君 生活の党の玉城デニーです。

 私は、生活の党を代表して、政府提出の特定秘密の保護に関する法律案及び自民党、公明党、日本維新の会、みんなの党提出の秘密の保護に関する法律案の修正案に断固反対の立場から討論を行います。(拍手)

 それにしても、安倍政権と与党の国会運営には、国民の代表による言論の府という矜持のかけらもないことが、図らずも顕著になりました。

 福島県福島市で開かれた地方公聴会は、ついきのうのことです。与党も含めた各党から推薦された七名の意見陳述人からは、地方の意見を、被災地の意見を、もっと多くの国民の声を全国の地方公聴会を開催してぜひ拾ってほしい、拙速な結論を急いで出すべきでは全くないなどの強い要望がありました。

 このことは、これまでの委員会質疑、理事会発言で野党各党が繰り返し求めてきた、国民意見を聴取する機会をできる限り持つべきであるという、必要かつ重要な民主的議論のための手続であります。

 にもかかわらず、国会日程を優先させるがために、慎重な審議を求める国民の願いを振り払い、地方公聴会翌日に、わずか二時間の質疑のみで、討論の機会すら設けずに採決を強行するということは、政府・与党のまさにおごり、高ぶり、横暴ぶりが国権の最高機関の権威をも汚すものと糾弾されるべきものであります。

 なお、陳述人の七名皆さん全員が本法案に反対の立場であったことも報告しておきます。

 そもそも、国が扱うさまざまな情報は、本来、国民の財産であり、当然、国家の主権者たる国民へ公表、公開されるべきものであることは言うまでもありません。

 ところが、この法律案は、行政機関の長が秘密指定できる情報の範囲が広い上に、恣意的に指定される場合もあり得るという懸念が指摘されており、国が保管する情報にアクセスしようとする一般の国民はもちろん、我々国会議員や報道関係者をも、漏えいを防止することが目的であれば、たとえその行為が未遂であろうとも、重罰規定によって牽制しようとするもので、知る権利を著しく侵害するものであります。

 国家にとって漏らしてはならない重要な情報が存在するということは、膨大な情報があふれている現代社会の中で生活する者であれば、誰もが理解できることでしょう。

 他方で、政府がどのようにして外交、安全保障上重要な情報を決定し、政策として具現化していったかということについては、第三者はもちろんのこと、後世が情報を正しく分析し検証をするという手だてがなければなりません。

 誤った情報による外交上の失敗を繰り返さないためには、政府の持っている情報を国民にしっかり知らせて、国の方針が正しいかどうか、国民に判断させることこそが重要なのです。

 ところが、沖縄返還時における密約問題を一例に見ても、当事者である県民にその情報が公にされるどころか、密約が存在したことが証明された後も政府はその存在を否定し続け、隠蔽してきたではありませんか。行政による恣意的な秘密保全が、国民の政治参加意識そのものを拒否するものであっては絶対ならないのです。

 アメリカ合衆国の秘密保全法制は、議会の特別委員会における審査や国立公文書館情報保全監察局長による機密解除請求などの多くの秘密指定を適正化するための制度が設けられています。大統領令によって、機密指定をする際に、その指定を解除する日を特定しなければならないとされており、その期日が到来すれば自動的に機密指定が解除される制度となっているのです。

 他方、そのアメリカとの安全保障における情報の共有体制に恋々とする安倍政権与党のこれまでの法案、修正案は、特定秘密の指定時に五年を超えない期間で指定の有効期間を設定する旨の規定はあるものの、修正案では延長期間が最長六十年まで先延ばしされ、一旦秘密指定を受けた他の特定秘密は、廃棄に関する責任の所在規定が置かれていないことなどから、永久に国民の目にさらされることがない可能性も払拭されておりません。

 もともと問題だらけであった法律案に、びほうにびほうを重ねた、危険と欠陥の継ぎはぎだらけのような法案、修正案では、真に国民の側に立った、国民の望む平和的な安全保障政策など実現できるはずはありません。脅威をあおり、対話を閉ざして集団的自衛権行使にひた走る安倍政権の国民に対する愚策、暴挙そのものであり、断じて許されることではありません。

 以上のことから、この法律案及び修正案について、国民の知る権利や報道、取材活動の制限、プライバシーの侵害などを強めていること、国民主権のもとで本来国民が持つべき権利の行使こそ、最優先されるべき民主主義の根幹であることを強く指摘するとともに、生活の党として、国会法、自衛隊法及び国家公務員法など現行法規の改正で、法案を成立させずとも十分意義をなし得るという政策理念の観点から、本法案及び修正案に断固反対し、討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(伊吹文明君) 以上をもって討論は終局といたします。

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 採決をいたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(伊吹文明君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後八時十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       国務大臣  古屋 圭司君

       国務大臣  森 まさこ君


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