衆議院

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第7号 平成26年10月23日(木曜日)

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平成二十六年十月二十三日(木曜日)

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  平成二十六年十月二十三日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(伊吹文明君) 本日は、内閣提出、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国土交通大臣太田昭宏君。

    〔国務大臣太田昭宏君登壇〕

国務大臣(太田昭宏君) 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 平成二十六年八月豪雨により広島市北部で発生した土砂災害においては、住民の避難が迅速かつ的確に行われることが重要であり、そのためには、円滑に避難勧告等を発令し、土砂災害に対する警戒避難体制を強化する必要があることが明らかになったところであります。今後もいつ発生するかわからない土砂災害に備え、国民の命を守るためには、このような課題に適切に対処し、防災・減災対策を強化していくことが必要であります。

 このような趣旨から、このたびこの法律案を提案することとした次第です。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、都道府県に対し、基礎調査の結果を公表することを義務づけるとともに、国土交通大臣は、当該基礎調査が法令の規定に違反し、または科学的知見に基づかない場合には、講ずべき措置の内容を示して是正の要求を行うこととしております。

 第二に、都道府県知事は、土砂災害の急迫した危険が予想されるときは、避難勧告等の判断に資するため、土砂災害警戒情報を関係市町村長に通知するとともに、一般に周知させるために必要な措置を講じなければならないこととしております。

 第三に、土砂災害警戒区域の指定があったときは、当該区域ごとに、市町村地域防災計画において、避難場所及び避難経路に関する事項等を定めることとしております。

 第四に、国土交通大臣は、この法律に基づく事務が適正かつ円滑に行われるよう、都道府県及び市町村に対し、必要な助言、情報の提供その他の援助を行うよう努めなければならないこととしております。

 そのほか、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(伊吹文明君) 国土交通大臣の趣旨の説明に対し質疑の通告がありますので、順次これを行います。まず、河井克行君。

    〔河井克行君登壇〕

河井克行君 自由民主党、河井克行です。

 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案に関連して、太田昭宏国土交通大臣、西川公也農林水産大臣、山谷えり子防災担当大臣に質問いたします。(拍手)

 本年八月二十日、広島市安佐南区、安佐北区で同時多発した大規模土砂災害によりお亡くなりになった七十四名の方々とその御家族に謹んで哀悼の誠をささげますとともに、今この瞬間も避難所や仮住まいで将来への不安を抱えながら身を寄せ合っている被災者皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 自由民主党は、災害が発生した当日、平成二十六年豪雨・台風等災害対策本部を設け、政府と連携して、応急対策、被災地の復旧復興対策などに全力で取り組んできました。八月二十七日には、土砂災害防止法の改正を検討するプロジェクトチームが発足。被災地視察を踏まえ取りまとめたプロジェクトチーム座長提言案は、九月二十五日、党国土交通部会において了承されました。改正案には、座長提言がしっかりと反映されています。

 きょうは、改正案の確実な運用及び被災地の復旧復興について質問をいたします。

 まず、都道府県が実施する基礎調査についてです。

 土砂災害防止法は、死者・行方不明者三十二名を出した十五年前の六・二九広島豪雨災害の悲惨な教訓をもとに制定されましたが、法制定から十四年が経過したにもかかわらず、基礎調査完了率わずか三七%にとどまる広島県など、いまだに土砂災害警戒区域等の指定が終わっていない都道府県が多数存在することは、立法の意図を酌み取らない異常事態だと考えます。

 法の定めに従っていたならば、これほど大きな被害にならなかったのではないか。悔やんでも悔やみ切れません。太田大臣そして山谷大臣の率直な御認識をお聞かせください。

 法律には、基礎調査はおおむね五年ごとと明記されています。今回のような悲惨な土砂災害を繰り返さないためには、基礎調査の進捗を都道府県任せにするのではなく、国が責任を持って調査の進捗状況を把握し、公表する必要があると考えますが、早期完了に向けた太田大臣の御決意をお聞かせください。

 次は、避難体制の充実強化についてであります。

 避難場所及び避難経路の適切な選定を求める声が被災住民の間で高まっています。特に、犠牲者の半数近くを占める高齢者や子供の視点に立った避難体制の構築が強く求められています。安全な避難場所、避難経路の確保や、いち早く避難するための情報伝達体制の整備について、国、都道府県、市町村が連携して取り組む必要があると考えますが、どのような取り組みを行うのか、また、警戒区域内に避難場所が現に多数存在する現状の打開に向けた方策を伺います。

 三点目は、避難訓練の実施についてであります。

 自然災害は時と場所と人を選びません。誰でも被災者になる可能性がある。だからこそ、日ごろの避難訓練が大切なのです。適切な避難が実施されるには、実効性のある避難訓練を国、都道府県、市町村、住民等が連携して行うことが重要であり、毎年必ず一回以上行うことが必要であると考えます。毎年の避難訓練の実施に向けて、どのような具体的な取り組みをお考えになっているのか、お示しください。

 次に、広島市北部被災地における復旧復興対策について伺います。

 国土交通省緊急災害対策派遣隊の緊急点検により、七十七もの渓流が危険判定を受けました。地域住民は、雨が降るたびに、崩れた山を見上げては落ちつかない不安な日々を送っているのです。この地域を国が重点的に対策を行う地域と位置づけ、国が中心となって砂防事業などの安全確保対策を集中かつ緊急に実施するべきです。いつ工事に着手し、いつ完成するのか、被災者の疑問に対し、太田大臣の御決意をお聞かせください。

 また、復旧復興事業の緊急かつ円滑な推進のため、広島市北部の被災地に砂防事務所を新設し、強力な執行体制を構築すべきと考えますが、太田大臣の見解を伺います。

 あわせて、被災地における治山復旧事業も早急な実施が求められています。西川大臣の御決意をお聞かせください。

 あの日から二カ月。なぜ十五年前の悲惨な教訓を生かせなかったのか。自問自答しながら、私は、被災地を歩き続けています。七十四名犠牲者のみたまに報いるため、被災者の皆様がこれからも住み続けたいと思われるため、土砂災害防止法の改正を今国会中になし遂げ、安全で強靱な国土をつくり上げることが私たち国会議員の使命だと考えます。

 皆様のお力添えを心からお願い申し上げ、私の代表質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣太田昭宏君登壇〕

国務大臣(太田昭宏君) 河井克行議員の御質問にお答えします。

 まず、土砂災害警戒区域等の指定が終わっていない都道府県が多数存在することについてお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、土砂災害警戒区域の指定や基礎調査の実施がおくれている都道府県が多く、大きな課題であると認識しています。

 土砂災害の危険性を住民の方に早期にお知らせすることが重要であり、この際、基礎調査をより一層促進させて、土砂災害警戒区域の指定をさらに進めていくことが必要であると考えております。

 次に、基礎調査の早期完了についてお尋ねがございました。

 基礎調査については、基本的に、おおむね五年程度で完了させることを目標にしたいと考えており、各都道府県に要請してまいります。

 また、国においては、これまで都道府県ごとの基礎調査の実施数を把握していましたが、今後は、さらに、実施目標やその進捗状況について把握し、公表することといたします。

 さらに、本法案において、都道府県に対する是正の要求など、今まで以上に国が関与する仕組みを設けており、これらの的確な運用により、基礎調査の早期完了を期する所存であります。

 次に、避難体制の充実強化についてお尋ねがございました。

 本法案では、市町村地域防災計画に、土砂災害に対する避難場所や避難経路、社会福祉施設や学校等に対する情報伝達について定めることとしております。

 さらに、警戒区域外に安全な避難場所を確保することは重要であり、国で策定している避難体制の整備に関するガイドラインを早急に改定し、市町村等に周知する予定であります。

 次に、毎年の避難訓練の実施についてお尋ねがありました。

 いざというときに適切に避難していただくため、避難訓練を行うことは極めて重要であると考えています。

 このため、本法案において、市町村地域防災計画に、避難訓練に関する事項を定めるよう義務づけるとともに、法に基づく基本指針において、毎年実施する旨定めることとしています。

 また、毎年六月の土砂災害防止月間を中心に、各地域で実効性のある避難訓練が行われるよう、国としても支援をしてまいります。

 次に、広島市北部の被災地における安全確保対策についてお尋ねがございました。

 被災地の安全を早期に確保するため、緑井、八木地区を中心に、二十四渓流で国による砂防堰堤の緊急事業に着手したところであり、年内には工事用道路に着手し、できるだけ早期の完成を目指します。

 今後とも、被災地の一日も早い復旧復興のため、土砂災害からの安全確保に全力で取り組んでまいります。

 次に、広島市北部の被災地における復旧復興事業の執行体制の構築についてお尋ねがございました。

 現地での事業の推進体制を強化するため、中国地方整備局の地元の事務所内に、広島豪雨土砂災害対策推進室を設置したところであります。

 今後は、復旧復興に係る事業量等を踏まえ、必要に応じて執行体制の強化を図ってまいる所存であります。(拍手)

    〔国務大臣西川公也君登壇〕

国務大臣(西川公也君) 河井克行議員の御質問にお答えいたします。

 広島市北部被災地における国の治山復旧事業についてのお尋ねがありました。

 広島の土砂災害につきましては、農林水産省として、災害発生直後から、ヘリコプターによる被害調査、専門家の派遣等を実施したところです。

 その結果、緊急に行うべき治山災害復旧事業計画として、安佐北区ほか二地区において十カ所の事業計画を策定したところです。

 今後、地元自治体、関係省庁と連携しながら、速やかに工事に着手するとともに、残りの災害復旧工事についても的確に進めてまいる所存であります。(拍手)

    〔国務大臣山谷えり子君登壇〕

国務大臣(山谷えり子君) 広島での土砂災害についてお尋ねがありました。

 議員御指摘のとおり、土砂災害防止法は、平成十一年の広島の土砂災害を契機に制定されたものです。

 広島県については、土砂災害の危険箇所が多いという事情はあるにしても、法律の制定後十四年が経過している中で、議員御指摘のとおり、法に基づく基礎調査がまだ三七%程度にとどまっていること、さらに、土砂災害警戒区域が指定されていない地域において今回大きな被害が発生したことは、大変残念だと思っております。

 今回、土砂災害防止法の改正により、土砂災害に関する危険箇所の情報を早目に住民に周知徹底することとしており、これにより、迅速かつ的確な避難につなげ、被害を軽減していくことが重要だと考えております。(拍手)

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議長(伊吹文明君) 次の質疑者、泉健太君。

    〔泉健太君登壇〕

泉健太君 民主党の泉健太でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 まず初めに、広島市や礼文島の土砂災害、また御嶽山でお亡くなりになった方々の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、各種災害で被害に遭われた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 まず、本題に入る前に、同僚国会議員である今般の閣僚の不祥事事案に言及しなければなりません。

 安倍内閣の看板人事であった小渕経済産業大臣と松島法務大臣の二閣僚が、政治と金や公職選挙法の問題で同時に辞任するという前代未聞の事態が起きました。しかも、両氏は、政治資金規正法や公職選挙法違反の可能性が指摘される中、いまだ国会には十分な説明がなされていないままの状態であります。

 小渕氏は、観劇会をめぐる後援会の収支の食い違いについて、先日の経済産業委員会で、大きな疑念があると言わざるを得ない、理由はわからないとし、そしてある意味潔く、知らなかったでは済まされない、調査してお示ししたいと答弁されました。

 一方、松島氏は、通常は選挙管理委員会の見解に基づいた製作物をつくるのが政治の世界の常識であるところ、その常識を逸脱し、明らかなうちわを配布、あるいは街頭配布のできない討議資料を街頭配布するという問題行為を行ったにもかかわらず、いまだ、あくまで討議資料と反省の色を見せておりません。

 このような中での両大臣の辞任ですが、この問題は、我々政治家の日常活動への警鐘でもあります。このことを辞任のみで済ませたり、問題の本質の先送りをしてはなりません。

 総理をして、任命責任があると言わせたこの問題に対し、今こそ国会議員は、国会の委員会の場でこれらの事実を確かめ、再発防止に資する実質的な議論を行うことが必要ではないでしょうか。

 また、大臣の任命に当たり当然行われるはずのいわゆる身体検査は、安倍政権で機能しているのでしょうか。疑問を持たざるを得ません。

 両氏の問題は就任以前に起きている問題であります。なぜこのような任命を行ったのか、安倍政権の身体検査には大いに疑問が残ります。もし今後も不祥事が出るようならば、それは安倍政権内の構造的な問題と言え、総理の任命責任はおわびでは済まされません。

 国会審議に影響を与えたことに猛省を求めるとともに、我々民主党はこれからも、政治の透明化と生活者からの政策論争に積極的に臨んでまいります。

 さて、本法は、平成十一年の広島市、呉市の豪雨災害を機に制定され、土砂災害のおそれのある地域の指定、避難体制の整備等の対策を講じたものです。平成二十二年の馬淵大臣時代にも、国による緊急調査等のスキームを盛り込む改正がなされるなど、本法の重要性は常に認識されてきました。今次改正案が機能をさらに発揮し、土砂災害による被害防止に資するよう質問いたします。

 七十四名ものとうとい命を奪った今回の広島市の土砂災害における問題点は、二つであります。一つは、本法に基づく土砂災害警戒区域等の指定が不十分であったこと、二つ目は、自治体による避難指示、勧告がおくれたことです。

 まず、土砂災害警戒区域等の指定について伺います。

 平成十四年の調査による全国の土砂災害危険箇所は約五十二万カ所。その後、土砂災害防止法に基づき行われた基礎調査で警戒区域に指定されたのは、ことし八月末現在で約三十五万カ所。うち、特別警戒区域に指定されたのは二十万カ所となっております。

 実は、実態はより深刻で、既に指定が終了した栃木、福井、山口を例にとると、当初の土砂災害危険箇所数より、指定した警戒区域数が約一・三倍程度多くなっております。ここから推計しますと、全国の災害警戒区域数は六十万から七十万カ所程度になる。となれば、現在の指定の進捗状況は、総数の半分程度にすぎないとも言えます。

 この点について、土砂災害警戒区域の最終的な総数の推計、それに対する現在の区域指定の進捗状況について、大臣の答弁を求めます。

 法制定から十年以上がたった現在でも、基礎調査が終了している都道府県は十三県にとどまります。基礎調査後の区域指定にも長時間を要しているケースが多く、今回の広島でも、被害の大きかった安佐南区の八木、緑井両地区は、平成二十五年度までに完了した基礎調査の結果、警戒区域相当が百三十カ所、うち約百二十カ所が特別警戒区域相当だったことが判明しておりますが、区域指定の住民説明会の準備段階で今回の被災となってしまいました。

 なぜ、各地で基礎調査と区域指定がおくれてきたのか。国交省の説明では、都道府県の予算、人員不足、そして、指定に伴う不動産価値低下への住民の不安が理由として挙がっています。

 まず、予算です。

 区域指定等に係る予算は防災・安全交付金で手当てされています。これは交付金のため、地方公共団体は、みずからが策定する整備計画に基づき、砂防などのハード事業や避難対策などのソフト事業の中から裁量で予算を充当します。国は、県の提出する計画を受け取るだけで、基礎調査にどれぐらい予算を投じているかは把握をしていないとのことでした。

 地域主権とは、地方と国が対等の立場で、ともに協力して住民のために行政執行に当たることであります。改正案三十六条には地方公共団体への援助が明記され、地方公共団体に対する助言、情報提供、その他援助を行うよう努めなければならないとされました。地方の裁量を尊重しながらも、地方による計画策定の段階で、予算面での必要な助言、情報提供等の協力を行うべきと考えます。

 大臣に改めて、基礎調査、区域指定に関する予算上の国の関与のあり方について見解を伺います。

 なお、本法案は、基礎調査が適切に行われていない場合の是正要求を定め、進捗管理に国がかかわるとしています。予算と進捗管理は車の両輪です。国は、予算に関する事前の計画、そして、事後チェックである進捗管理の双方において、地方公共団体との連携を図るべきです。事後と事前の国の関与の必要性及び考えられる方策についてお答えください。

 次に、人員不足への対応について伺います。

 青森県、山梨県、福岡県の三県では、既に警戒・特別警戒区域の指定が完了しています。福岡県では、平成二十一年七月の中国・九州北部豪雨での土砂災害をきっかけに、人員と予算を重点的に措置し、平成二十五年度までの五年間で県内全域の区域指定を完了いたしました。また、山梨県では、早い段階から市町村との連携を図り、区域指定に先立つ住民への説明についても県と市町村が連携したと伺っております。

 これら先進県の人員確保への対応、予算確保の方策などから、区域指定が完了した成功要因が何なのか、これらの成功要因を他の都道府県に広げるにはどのような取り組みが必要か、都道府県と市町村のより早い段階での連携を促すために何が必要と考えているのか、大臣の御認識を伺います。

 次に、不動産価値低下への住民の懸念に関する問題について伺います。

 まず、不動産が危険な箇所に存在することは、あくまで客観的事実であり、災害の危険性に関しては、住民に早期かつ丁寧に説明が行われるべきなのは明白です。重要なのは、少なくとも今後は、住民が新たに不動産を購入する際に土砂災害の危険性について事前説明がなされ、十分な情報のもとに購入するか否かの判断を行える環境を整えることではないでしょうか。

 今回の改正案では、都道府県に基礎調査の結果の公表を義務づけるとされていますが、住宅購入時に直接、購入者へ情報提供を行い、購入検討時にその危険性を認識してもらう仕組みが必要ではないでしょうか。

 宅地建物取引業法及び省令によれば、土地建物の売買に際して、警戒区域か否かは重要事項説明書に記載し、対面での説明を義務づけられております。しかし、今回の広島市のように、区域指定前の段階では、説明は義務づけられておりません。

 私は、省令を改正し、基礎調査の対象区域であること、調査が実施されたかの有無、そして調査結果、土砂災害危険箇所であるかどうかについても重要事項説明の対象にするなど、住宅の売買契約に際し、土砂災害の潜在的危険性を伝える仕組みを提案したいと思いますが、大臣の御認識を伺います。

 次に、円滑な避難勧告等の発令について伺います。

 改正案では、避難勧告等の発令に資するため、都道府県に対して、市町村等への土砂災害警戒情報の提供を義務づけました。しかし、土砂災害警戒情報は、市町村が避難勧告を出すに当たっての参考情報にすぎないと指摘されています。

 市町村が避難勧告を出す基準が、総合的に判断といった曖昧な表現では、現場の混乱を招くままです。気象情報や土砂災害警戒情報を人的被害防止に資するようにするために、事前の予想雨量などの気象情報や、早目の土砂災害警戒情報に重点を置いた予防的避難として機能するよう、避難勧告を行っていくべきと考えますが、これについて、大臣の御認識を伺います。

 今回の広島市の土砂災害は、平穏な日々を過ごしていた多くの方々のとうとい命を奪いました。今回の教訓をしっかりと胸に、そして法律に刻み、民主党自身も、各党とともに、このような悲惨な土砂災害が繰り返されぬよう対策に当たることをお誓い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣太田昭宏君登壇〕

国務大臣(太田昭宏君) 泉健太議員の御質問にお答えいたします。

 まず、土砂災害警戒区域の総数の推計及び指定の進捗状況についてお尋ねがございました。

 現時点までに基礎調査を完了した市町村の実績から推計しますと、土砂災害警戒区域の総数の推計値は約六十四万九千区域、また都道府県からの聞き取りによりますと、約六十七万三千区域と見込まれます。

 今後、基礎調査を進めることで正確な区域数は明らかになりますが、これらを考慮しますと、警戒区域の総数の推計値は約六十五万区域前後になると考えられます。

 また、現在の全国の警戒区域の指定数は約三十五万六千区域となっております。

 次に、基礎調査及び区域指定に関する予算上の国の関与についてお尋ねがございました。

 区域指定がおくれているのは、基礎調査がおくれていることに起因しているのが現状であります。

 このため、都道府県に対し、防災・安全交付金の活用による基礎調査の推進を促すとともに、基礎調査を推進する都道府県に対して、交付金による積極的な支援を行ってまいります。

 また、基礎調査の実施に当たっては詳細な地形データが必要となるために、国が所有する地形データの提供などによって、都道府県の負担軽減を図ってまいります。

 次に、基礎調査に関する事前、事後の国の関与についてお尋ねがございました。

 まず、事前のチェックとしては、防災・安全交付金の実施計画において、毎年度の基礎調査の実施予定を把握するとともに、基礎調査を推進する都道府県に対しましては、交付金による積極的な支援を行ってまいります。

 また、事後のチェックとしては、国において、基礎調査の実施目標に対する進捗状況を把握し、公表することとしております。

 これらの国の関与により、基礎調査の促進を図ってまいります。

 次に、警戒区域、特別警戒区域の指定を完了した三県の成功要因とその周知についてお尋ねがございました。

 御指摘いただきましたように、福岡県では、平成二十一年の中国・九州北部豪雨をきっかけに、基礎調査の予算の増額及び数名の人員増による専任職員の確保などによって、計画的に区域指定を進めたと承知しております。

 また、市町村と連携して、自治会単位でまとめて住民説明会を行うなどの工夫により、円滑に手続を進めている県もあると伺っています。

 こうした先進県の成功事例を他の都道府県に周知することなどによって、警戒区域等の指定の促進を図ってまいります。

 次に、不動産の売買契約に際し、土砂災害の潜在的危険性を伝える仕組みについてお尋ねがございました。

 不動産の購入者に対し、土砂災害の危険性に関する情報を提供していくことは極めて重要と考えております。

 ただし、宅地建物取引業法の重要事項説明の対象は、法令上の制限がかかる区域や法令に基づき指定されている区域などに限定されております。したがって、御指摘のような、基礎調査の対象区域、調査実施の有無や調査結果、土砂災害危険箇所については、重要事項説明の対象とすることになじまないと考えます。

 不動産の購入者に対して、土砂災害の危険性に関する情報を提供していくことは極めて重要だと考えておりまして、今後、その具体的な方法について検討を行ってまいります。(拍手)

    〔国務大臣山谷えり子君登壇〕

国務大臣(山谷えり子君) 土砂災害警戒情報に重点を置いた避難勧告についてお尋ねがありました。

 土砂災害警戒情報は、大雨によって土砂災害の危険性が高くなったときに都道府県と気象台とが共同で発表する情報で、エリアについては市町村単位で発表されます。

 この土砂災害警戒情報は、実際に降った雨量だけでなく、二、三時間先までの予測の雨量も踏まえて発表している情報で、土砂災害の発生前に発表される重要な情報だと考えております。

 四月に改定しました避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドラインでは、土砂災害の避難勧告を、土砂災害警戒情報が発表された場合などに発令するものとし、総合的な判断といった曖昧な基準にならないようにしています。

 このような土砂災害警戒情報の趣旨をよく説明することにより、避難勧告等の発令について適切な運用がなされるよう、関係省庁や都道府県と連携し、市町村への周知徹底を図っていきたいと思っております。(拍手)

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議長(伊吹文明君) 次の質疑者、岩永裕貴君。

    〔岩永裕貴君登壇〕

岩永裕貴君 維新の党、岩永裕貴です。(拍手)

 初めに、地震、火山噴火、水害そして土砂災害など、近年頻発している自然災害によりとうとい命を亡くされた方々の御冥福を心よりお祈り申し上げます。また、もとの生活を取り戻そうと多くの困難に立ち向かわれている被災者の方々にお見舞い申し上げます。

 私の生まれ育った滋賀県甲賀市信楽町多羅尾という山奥の小さな集落は、昭和二十八年、局地的な豪雨に襲われ、当時、山津波と言われた土砂災害により四十四名もの命が奪われ、約四割の家屋が全半壊したという大変悲しい厄災を経験した地域です。約七十年が過ぎた今なお、その爪跡は住民の心に深く残されています。

 また、先月には、広島市の土砂災害現場を訪れ、筆舌に尽くしがたい状況を実際に目の当たりにいたしました。

 我が国は、国土の約七割が山地という特有の地形を持ち、過去に山が崩れてできた平地に多くの国民が住んでいるという事実を直視し、改めてこれからの国土づくりに取り組んでいかなければならないと痛感をいたしました。

 今後も必ず発生するであろう自然災害から、一人でも多くの命を守り抜かなければならないという使命感を持って、以下、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案に関する質問をいたします。

 土砂災害防止法は、一九九九年六月に死者三十一名を出した広島市などで起こった土砂災害の翌年に制定され、二〇〇一年四月一日から施行されました。

 しかし、本年八月の広島市の災害地域は、大半が警戒区域外で、避難勧告も遅かったという結果を鑑みると、十五年前の教訓は、大変残念ながら十分に生かされなかったと言わざるを得ません。

 警戒区域に指定されれば、市は、地域防災計画をつくり、ハザードマップの公表をしなければなりません。しかし、広島市の場合は、特別警戒区域指定予定ではありましたが、住民説明会の前に災害が起こってしまいました。

 そこで、警戒区域の指定を促進し、住民への円滑な情報提供のためにこのたびの法改正となったわけでございますが、今回の法改正では、基礎調査に関する改善しか行われておらず、肝心の土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域の区域指定そのものについては、何ら手だてが講じられておりません。

 基礎調査結果の公表だけでは、その結果をどのように防災に役立てるのかは、最終的に住民任せという中途半端な情報提供に終わってしまう可能性があります。

 区域指定されれば、不動産取引の重要事項説明に含まれるようになりますし、地域住民の意識、認識の醸成や、命を守り切るという観点からは、あくまで区域指定が本筋であると考えますが、大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、警戒区域の指定のおくれについてお尋ねいたします。

 法律施行より十三年が経過いたしましたが、土砂災害警戒区域と特別警戒区域の指定が完了しているのは、わずか三県。土砂災害警戒区域のみの指定を終えた三県を加えても、指定ができているのはわずか六県にとどまっております。

 一方で、区域指定が年間二百件ペースで、大幅におくれている都道府県があるのも明らかであり、これを放置していては、二十八年度末までに区域指定を全国四十六万カ所にするという、社会資本整備重点計画に書かれた国の数値目標は、到底達成することができません。都道府県への是正要求は、基礎調査だけではなく、区域指定のおくれにこそ行うべきではないでしょうか。

 国の目標達成が危ぶまれるペースであることがわかった場合、都道府県の区域指定を加速するために、国として具体的にどのような対策を講じるのか、お伺いいたします。

 平成二十三年の政策レビューの結果を見ると、都道府県の基礎調査が進まない理由として、一地域で約二十万円から四十万円もの費用がかかるとされる予算確保ができないことを挙げる都道府県が最も多く、次いで、マンパワーの不足といった理由が主になっております。

 このたびの法改正で、そうした予算不足、マンパワー不足といった都道府県の現状をどのように改善されていくおつもりなのか、あわせてお伺いいたします。

 警戒区域を指定するには、都道府県の基礎調査が前提となります。基礎調査が既に終わっているのに、警戒区域の指定に至っていないケースが非常に多くあると言われています。

 政策レビューでは、市町村が警戒区域の指定に反対する最も大きな理由として、住民が反対しているが六〇%を占めております。

 法律の附帯決議では、住民との調整をして指定を行うことになっており、住民の方々の理解は、自分たちの住環境にかかわる非常に大切なことだと思います。

 しかし一方で、不動産価値が下がる、風評被害への懸念などの理由から、住民の方々は警戒区域指定を望まれないケースが多々あり、区域指定がなかなか進まないことがうかがえます。

 こうした状況を打開するための方策をどのように考えておられるのか、大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、指定の基準の見直しについてお尋ねいたします。

 広島の災害では、特別警戒区域に指定することを想定していた区域以外でも災害が発生しました。現在は、斜面の勾配や地質などを決められた計算式に当てはめ、機械的に警戒区域に指定する手法で行われておりますが、この基準自体の見直しを広島県は求めておられます。

 より現実に即し、的確に災害の発生に備えることができるように、指定の計算式の見直しは行われているのか、お伺いをいたします。

 また、土砂災害防止法は、土砂崩れなどの自然災害による被害を防止するための法律ですが、近年、地域住民の生命と財産を危険にさらしているのは、自然災害だけではなく、人為的に積み上げられた建設残土が崩落することによっても大きな被害が発生しております。例えば、本年二月に大阪府豊能町で発生した土砂崩れは、民間事業者が積み上げた建設残土が崩壊し、幅約二百メートル、高さ二から三メートルにわたって府道を覆い尽くしました。

 今般の土砂災害防止法改正案や、いわゆる急傾斜地崩壊防止法は、自然の地形を念頭に、土砂災害による被害を最小限にするため制定されておりますが、人為的な土砂の積み上げ等には何らの規制も存在せず、全く法益の異なる砂防法や森林法を援用しながら何とか対処しているのが自治体の現状でございます。国における所管関係も明確ではなく、結果、対応が後手に回りがちな状況になっています。

 人為的な土砂の埋め立てや掘削等一般を規制する法律が存在しない中では、再び同じような人災が起こる蓋然性は小さくないと考えます。特に、リニア中央新幹線の建設や外環道といった大規模土木工事が本格化する前に、積み上げた建設残土が大雨などで崩れる事故を防ぐことは喫緊の課題であると考えます。

 こうした建設残土の埋め立て等を背景とする土砂災害の防止について、大臣の見解を伺います。

 次に、移転勧告制度についてお尋ねいたします。

 特別警戒区域における移転勧告制度について、これまで勧告が行われた実績は一度もなく、勧告の対象となるのかどうかの調査すら行われておりません。今回の法改正では、この課題についての改善が含まれておりません。

 移転をみずから希望する住民に対する補助制度については、これまでのところ六十件の実績がございますが、法律にある勧告を行わなければ、当初の立法趣旨をないがしろにしていることになるのではないでしょうか。特に、移転勧告すべき危険な住居があるかどうかの調査すらしないのは、国民の安全に無責任であるとのそしりを免れないと思います。

 本年八月二十八日に開催された災害対策特別委員会で、この指摘に対して政府は、調査については、その方法がどういうものがあるかということをしっかり検証して進めてまいりたいと答弁をされております。その調査を促進するという答弁が本改正案にはどう反映されているのか、お伺いをいたします。

 続いて、危険地域からの移転と農地転用の関係についてお尋ねいたします。

 私の地元の滋賀県近江八幡市には、県が指定する土砂災害警戒区域と土砂災害特別警戒区域が計百五カ所あります。広島市で発生した土砂災害を受けて、これまでの市の防災の中心は水害と地震だったが、土砂災害も加える必要があると、危険性の高い地域は、市が補助や土地の準備を行って転居を促す条例の検討に入りました。

 法の施行以来十三年、全国で一度も移転勧告が行われてこなかったことを鑑みると、地域住民の命を守り切るんだと覚悟を決められた近江八幡市の行動は、非常に勇気あるものだと考えます。ただ、同市が現在直面している課題は、移転を促す平野部の市街化区域に移転先となる宅地が残されていないという現実であります。

 今後は、農用地区域の転用が必要になってきますが、これまでの経緯を踏まえると、農用地区域の転用については非常に多くの条件を乗り越えなければなりません。国内自給率向上に向けた農地保護の必要性は十分に理解をいたしておりますが、農地を守って命を守らずということにならないよう、こうした移転の必要性がある地域に対しての農地転用の許認可の柔軟性、手続の簡素化、短縮化が必要だと考えます。

 今後も全国的にこのような事例が少なからず出てくる可能性は十分に考えられます。農林水産大臣の御見解をお伺いいたします。

 最後に、災害対策と都市計画の観点から政府の方針をお尋ねいたします。

 広島で大規模な災害地域となった八木地区は、七〇年代に市街化地域に指定され、高度成長の中で住宅化が加速していった背景を持つ地域です。

 こうした地域で、住民の理解のもとに土砂災害の警戒区域に指定するのは、調整上難しい面もあるかと思います。実際に、広島県も、基礎調査に取りかかって九年がたって、やっと住民への説明会のところまで来ていたやさきに、今回の災害が起こってしまいました。

 しかし、今や、高度成長期とは多くの面で状況が異なっております。

 少子高齢化、インフラの老朽化、自治体財政の悪化という社会の変化に加えて、昨今の異常気象のもとでは、今まで安全だからといって今後も安全だという経験則は通じなくなっている状況にある中で、安全を最優先し、危険地域から移り住むことを促し、インフラ強化地域を選択していけるような仕組みもしっかり検討されなくてはなりません。それはまさに、国交省が進めているコンパクトシティーの発想にもつながることではないでしょうか。

 広島市は、このたびの災害を受けて、都市づくり全体を踏まえた復旧復興ができる制度、法律をつくるべきとの要望をされているとお聞きいたします。

 土砂災害特別警戒区域の指定がされると、建築物の移転等の勧告ができるようになりますが、もっとスムーズな方法で、都市計画の見地から移住を促すような措置を検討していけないものか、大臣の御見解を伺います。

 近年の世界的な気候変動は、日本にもこれまで経験したことのない災害をもたらし始めております。今まで何事もなかったから今後も大丈夫といった常識が今や通用しなくなりつつある現実を直視した上で、国民の命を守り抜くために実効力ある法整備に努めるべきであることを改めて申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣太田昭宏君登壇〕

国務大臣(太田昭宏君) 岩永裕貴議員の御質問にお答えいたします。

 まず、基礎調査に関する改善ではなく、土砂災害警戒区域等の指定の促進が本筋ではないかというお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、土砂災害防止対策を進める上で、警戒区域等の指定を促進することは極めて重要であると考えております。

 警戒区域等の指定がおくれているのは、基礎調査のおくれに起因しているのが現状であり、今回、基礎調査の実施を促進し、かつ、それを公表することにより、警戒区域等の指定の促進を図るものであります。

 次に、区域指定を加速するための対策についてお尋ねがございました。

 本法案においては、基礎調査結果の公表を義務づけており、公表により、住民の方が土砂災害の危険性について認識をされ、警戒区域等の指定が行いやすくなると考えます。

 また、基礎調査について、その進捗状況に応じて国が是正の要求を行うことにより、その実施を促進し、警戒区域等の指定を加速してまいります。

 このほか、基礎調査の進捗状況や警戒区域等の指定状況を把握、公表することとしており、これらにより、基礎調査や警戒区域の指定が促進されると考えております。

 次に、基礎調査に係る予算不足やマンパワーの不足の改善についてお尋ねがございました。

 まず、予算不足については、防災・安全交付金による積極的な支援を行ってまいります。

 また、都道府県によって違いはあるものの、マンパワーが不足している都道府県もあると承知しておりまして、必要に応じて専門家を派遣するなどの支援を行ってまいります。

 このほか、本法案で、国が都道府県に対し、助言や情報提供を行うよう努めることとするとともに、国が所有する地形データの提供などの支援を行い、基礎調査の促進を図ってまいります。

 次に、不動産価値が下がること等への懸念から住民が区域指定を望まれない場合への対応策についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、警戒区域等の指定について、住民の方が不動産価値が下がると懸念される面もあると承知しております。

 警戒区域等の指定は、土砂災害の危険性を住民の方に認識していただき、避難体制を充実強化するために必要であると考えております。この趣旨を住民の方に御理解いただけるよう、丁寧に説明していくことが重要であると考えます。

 次に、土砂災害特別警戒区域の指定の計算式の見直しについてお尋ねがございました。

 特別警戒区域の範囲の算出に当たって用いる計算式は、これまでに得られた過去の多くの災害実績の分析などに基づいて作成されたもので、学術的にも認められたものであります。

 広島県からは計算式の見直しについての御要望もありましたが、計算の際に用いる土砂量などの設定条件が重要であり、これらをより的確に設定できるよう助言するなど、区域指定が適切に行われるよう支援してまいります。

 次に、建設残土の崩落による被害の防止策についてお尋ねがございました。

 建設発生土に関しては、国の公共工事や、リニア中央新幹線や外環道といった大規模工事については、発注者が建設発生土の取り扱いについて指定をすることにしております。また、民間工事も含めて、発注者や元請業者などに対して、建設発生土の崩落や流出等により公衆災害が生じないよう、通達により指導しております。さらに、砂防法など、土地の改変に関する規制を行う関係法令に基づいて適切に措置をしていくようにしたところでございます。

 しかしながら、建設発生土の不適正な取り扱いにより、生活環境に影響を及ぼす事案が発生しております。

 このため、このような不適切な取り扱い状況につきまして把握し、既存の法制度の活用のあり方も含め、関係者と調整を図りつつ、適切な対応のあり方について検討してまいります。

 次に、移転勧告についてお尋ねがございました。

 本法案では移転勧告に係る改正事項はありませんが、まずは、特別警戒区域の中で、急傾斜地等の状況変化により特に危険になっている場所について詳細に調査することが重要であります。

 調査方法の基本的な考え方について国として取りまとめ、その考え方を踏まえ、必要な調査が行われるよう、都道府県に対して要請してまいります。

 次に、都市計画の見地から移住を促す措置についてお尋ねがございました。

 急激な人口減少や少子高齢化が進む中で、コンパクト・プラス・ネットワークの考え方に立って町をつくり直していくため、さきの通常国会において都市再生特別措置法を改正していただき、本年八月一日から施行したところであります。

 今後、コンパクトなまちづくりを進めていく中で、土砂災害特別警戒区域等には居住誘導区域を定めないようにするなど、災害の危険のあるエリアにはできるだけ人が住まないようなまちづくりを目指してまいります。

 しかしながら、直ちに移住を実現することは難しいことから、土砂災害の危険性を周知して、いざというときにすぐに避難できる仕組みを構築するなど、土砂災害に対する安全性を確保することが緊要であると考えております。(拍手)

    〔国務大臣西川公也君登壇〕

国務大臣(西川公也君) 岩永裕貴議員の御質問にお答えいたします。

 農地転用についてのお尋ねがありました。

 御指摘のありました近江八幡市のように、土砂災害等の災害に備えて、市町村が、住宅地等の集団的な移転を計画的に推進することが考えられます。

 その際、移転先に農地が含まれる場合の農地転用につきましては、移転先を都市計画の市街化区域に編入するなどにより、適切に対応できるようにしているところです。

 今後とも、農地転用に係る制度の適正かつ円滑な運用に努めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、次に、斉藤鉄夫君。

    〔斉藤鉄夫君登壇〕

斉藤鉄夫君 公明党の斉藤鉄夫です。

 初めに、平成二十六年八月豪雨に伴う土砂災害、御嶽山の噴火、相次ぐ台風被害により亡くなられた方々、御遺族に対して、謹んで哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた方々に対して、心よりお見舞いを申し上げます。

 私は、公明党を代表し、土砂災害防止法改正案について質問をいたします。(拍手)

 この土砂災害防止法は、今から十五年前、平成十一年の広島豪雨による大規模災害を踏まえて制定されました。しかし、今般の八月豪雨では、再び近隣地域において大規模な土砂災害が発生し、死者七十四名という、前回を大きく上回る甚大な被害となりました。せっかくの法律が役立たなかったと言われてもいたし方ない。

 これまでの法律や運用のどこに不備があり、何が足りなかったのか、また、それを本改正案ではどのように転換しようとしているのか、国土交通大臣にまず基本的認識をお伺いします。

 さて、土砂災害防止を考える上で、初めに確認しておかなければならないことがあります。気候変動です。雨の降り方がこれからどこまで激甚化するのか、局地集中化するのか。

 国連のIPCC、気候変動に関する政府間パネルでの科学的知見に基づいて主要国が合意した二度C目標という目標があります。国際的枠組みでCO2排出抑制を行って、その濃度を一定値以下に抑え、地球上の大気の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて二度C以内に抑えようというものです。これは、今後、厳しい温暖化対策をとったとしても、地球上の大気の平均気温の上昇は今や避けられないとの前提に立っています。

 それを認めた上で、産業革命以前に比べて、現時点で平均気温はどれだけ上昇しているのか、二度C上昇するのはいつごろか、二度C上昇すればどのような気象となるのか、雨の降り方、局地集中化はどうなるのかについて、現在の科学的知見を環境大臣にお伺いします。

 また、このような気候変動に伴い、現状でも雨の降り方が変化してきていると感じますが、国土交通大臣に対し、その取り組みについてお尋ねします。

 では、改正案について質問します。

 土砂災害警戒区域を指定する手続の順番は、一、地図上で危険箇所を決める、二、その危険箇所の基礎調査を行う、三、基礎調査の結果をもとにして警戒区域を定める、四、警戒区域の中から特別警戒区域を指定するという四段階になります。

 まず、第一段階の危険箇所ですが、これまで、この危険箇所を地域住民に知らせる、周知するという仕組みになっていなかったところに大きな問題があったのではないでしょうか。

 地域住民の方々に対して、基礎調査を終えていない危険箇所についても、まず公表した上で、きめ細かく周知徹底を図ることは、土砂災害の被害を最小限に抑えることにもつながると考えます。危険箇所の緊急周知を九月から実施していると伺っていますが、その取り組み状況について、現状はどのようになっているか、国土交通大臣にお伺いします。

 次に、第二段階の基礎調査についてです。

 危険箇所のうち、基礎調査が終了していないところが全国に約二十万カ所あります。目標を明確に決めて、一日でも早く基礎調査を完了させなければなりません。

 その際、実施主体である都道府県が、速やかに基礎調査を行い、土砂災害警戒区域の指定ができるように、国による財政的、技術的、人的支援を行う必要があると考えます。法律にどのように規定し、どのように支援するのか、お尋ねします。

 この基礎調査の公表についても、これまで義務づけられておりませんでした。地域イメージが傷つくとの地域住民の心配があったことがその一つの要因であったことも確かです。

 今回、基礎調査の結果の公表を都道府県に義務づけましたが、地域住民の理解を得ることも大切です。このバランスについての国土交通大臣のお考えをお聞かせください。

 次に、土砂災害警戒情報について伺います。

 今回の改正案では、降雨量に基づく土砂災害警戒情報が法律に位置づけられました。市町村による的確な避難勧告の発令の直接的な基準とするとされています。

 一方で、実際に避難勧告を発令する市町村長にとっては、豪雨の中での発令に大きな責任を担わなくてはなりません。また、避難勧告を解除する際の発令にも大きな責任が伴います。

 市町村長の避難勧告及び解除発令の判断に当たっては、国や都道府県がきめ細かな情報提供や助言を行うなど、技術面で十分な支援が必要と考えますが、国土交通大臣の見解を求めます。

 今回の広島の災害で私が痛感したのは、砂防堰堤、砂防ダムの有用性です。

 森林整備が目的の治山ダムとよく混同されますが、砂防ダムの土石流災害防止効果は、今回の広島でも明らかになりました。安佐南区八木地区に建設途上のものでしたが、土石流と土砂をしっかりと食いとめておりました。残念なことに、未完成の部分のすき間から土砂が流れ、多くの家屋に押し寄せましたが、大きな石はこの砂防ダムで食いとめられ、その下に広がる住宅地で死者が出るような大きな破壊はなかったのです。

 今後、人命を守る観点から、優先順位を決めて砂防ダムの整備を着実に行うことが重要と考えますが、国土交通大臣のお考えをお聞きします。

 次に、今回の改正案では、土砂災害に対する避難場所、避難経路などを地域防災計画に定めることとしていますが、実際に、市町村の現場では、防災担当者の人数も少なく、土砂災害に対する知識も不十分なケースも少なくありません。国や都道府県が積極的に技術的支援などを行うべきと考えます。

 また、災害が発生した際、自助、共助、公助が機動的にうまくかみ合うことが非常に重要です。地域の特性に合わせた対策を行うためには、地域防災計画のみならず、より細かに、町内会、マンション組合、社会福祉施設、学校、病院、そして事業者など、地域コミュニティーが自発的に防災活動に参加する地区防災計画制度の普及促進も非常に重要です。防災担当大臣の見解を求めます。

 公明党の土砂災害防止法改正検討プロジェクトチームは、九月二十六日に、土砂災害に関する未然防止策についての提言を政府に提出しました。今回の改正案は、我々の提言を十分踏まえたものと評価しています。

 しかしながら、大規模土砂災害を未然に防止するためには、今回の改正案の円滑な成立と実施だけでなく、国、都道府県、市町村、地域住民がより一層緊密に連携しつつ、ハード、ソフト両面による総合的な防止策が必要と考えます。

 国土交通大臣に見解と決意を伺い、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣太田昭宏君登壇〕

国務大臣(太田昭宏君) 斉藤鉄夫議員の御質問にお答えいたします。

 まず、これまでの法律や運用の課題と、法改正による対応についてお尋ねがございました。

 課題としましては、住民に土砂災害の危険性が十分伝わっていなかったこと、避難勧告の発令が災害発生後となってしまったこと、避難場所や避難経路が危険な区域内に存在するなど、土砂災害からの避難体制が不十分な場合があったことなどが挙げられます。

 これらの課題を踏まえ、本法案では、基礎調査結果の公表の義務づけ、土砂災害警戒情報の法律上への明記と市町村への通知の義務づけ、土砂災害に対する安全な避難場所の確保など避難体制の拡充強化など、自治体や住民が的確な避難を判断できるような仕組みを構築するための措置を講じております。

 次に、気候変動に伴い、雨の降り方が変化している中での国土交通省の取り組みについてお尋ねがございました。

 時間雨量が五十ミリを上回る雨が全国的に増加しているなど、近年、雨の降り方が局地化し、集中化し、激甚化しています。

 ことしの広島では、バックビルディング現象による線状降水帯の豪雨が発生し、また、昨年、フィリピンでは、スーパータイフーンに襲われました。

 こうした現実を直視し、対応することが大事だと考えており、ハード、ソフトの両面から計画的、総合的に対策を講じてまいります。

 具体的には、ハード対策として、河川改修や砂防堰堤等の優先順位をつけた計画的な整備、ソフト対策として、わかりやすい気象情報の提供や、関係機関が事前にとるべき行動を時系列で示すタイムラインの策定、避難体制の充実強化などを総合的に推進してまいります。

 次に、土砂災害危険箇所の緊急周知についてお尋ねがありました。

 広島での土砂災害を踏まえ、九月二日に、危険箇所等の周知を行うよう、都道府県に対し要請を行ったところです。

 これを受けまして、ほとんど全ての市町村において、ホームページや広報誌への掲載、公共施設での掲示などを行い、積極的に周知を行っていただいているところであります。

 次に、基礎調査に対する支援についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、基礎調査の促進のため、国による財政的、技術的、人的支援を早期に行うことは極めて重要と考えます。

 まず、財政面では、防災・安全交付金による積極的な支援を行ってまいります。

 次に、技術面では、本法案で、国が都道府県に対し、助言や情報提供を行うよう努めることとするとともに、国が所有する地形データの提供などの支援を行ってまいります。

 さらに、人的支援については、必要に応じて専門家を派遣するなどの支援を行ってまいります。

 次に、基礎調査の結果の公表についてお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、基礎調査結果の公表について、住民の方が地域イメージが傷つくことを心配される面もあると承知しています。

 基礎調査の結果を公表することは、土砂災害の危険性を住民の方に認識していただき、避難体制を充実強化するために必要であると考えております。この趣旨を住民の方に御理解をいただけるよう、丁寧に説明をしていくことが重要であると考えます。

 次に、市町村の避難勧告等に対する支援についてお尋ねがございました。

 市町村による避難勧告の発令あるいは解除の判断に当たり、国や都道府県が、災害の危険性について正確でわかりやすい情報を市町村に提供することが重要であると考えます。

 このため、土砂災害警戒情報を通知するだけでなく、地盤の水の含みぐあいやきめ細かな雨量の予測について、時系列の情報を伝えるとともに、技術的な説明を加えるなど、市町村に対するきめ細かな情報提供や技術的支援を強化してまいります。

 次に、砂防堰堤の整備についてお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、広島の八木地区では、工事中の砂防堰堤が下流の被害を軽減し、人命を守るなど、効果を発揮いたしました。

 砂防堰堤の整備については、財政制約はありますが、人命を守る効果が高い箇所等の優先順位をつけて、計画的に進めてまいります。

 次に、大規模な土砂災害を未然に防止するための対策についてお尋ねがございました。

 ハード対策については、砂防堰堤の整備などを進めてまいります。

 また、ソフト対策については、災害の危険性についての正確でわかりやすい情報の提供や、安全な避難場所等をあらかじめ定めておくなどによって、住民が的確な避難行動をとれるよう対策を進めてまいります。

 人命を守ることを最優先に、国、都道府県、市町村、地域住民が一層緊密に連携しながら、ハード、ソフト両面による総合的な防災対策をしっかり進めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣望月義夫君登壇〕

国務大臣(望月義夫君) 気候変動に関する現在の科学的知見についてお尋ねがありました。

 平均気温の上昇については、気候変動に関する政府間パネル、IPCCの最新の報告書によると、世界の年平均気温は、一八五〇年から一九〇〇年の期間と一九八六年から二〇〇五年の期間を比較すると、〇・六一度上昇しております。

 また、二度上昇する時期については、厳しい温暖化対策がとられない最も気温が上昇するシナリオでは、二〇八一年から二一〇〇年の期間に、一九八六年から二〇〇五年と比較して二・六度から四・八度気温が上昇すると言われております。

 さらに、気象の変化については、現在、既に我が国においても、一日の降水量が二百ミリ以上である大雨の発生日数が増加傾向にあることが確認されております。

 IPCCの報告書によると、これまでの〇・六一度の上昇に加え、今後さらに一度上昇すると、熱波、極端な降水、沿岸域の氾濫等、極端な気象現象のリスクがさらに高くなることが示されております。

 このような状況から、気候変動問題は科学的な観点から深刻な状況にあると受けとめており、地球温暖化の防止はもとより、影響への対処、いわゆる適応策についても早急に講じるなど、地球温暖化対策に全力で取り組まなければならないものと認識しております。(拍手)

    〔国務大臣山谷えり子君登壇〕

国務大臣(山谷えり子君) 土砂災害からの避難に関し、国や都道府県からの市町村への技術的支援についてお尋ねがありました。

 都道府県は土砂災害警戒区域や特別警戒区域を指定することになっていますが、指定した後、単に区域図、図面を示すだけでは、市町村の担当者や住民の方々にとっては、理解が十分とならず、避難場所や避難経路が適切に選定できない場合があると思われます。

 例えば、土石流のおそれがあるため広範囲に注意しなければならないところなのか、あるいは、崖地のため自宅周辺の狭い範囲だけ注意しておけばよいところなのかなど、区域が設定された意味について、実際に見てみるなり聞いてみるなりしてみないと、どのような危険性があるのか、リアリティーが湧かないことになります。

 したがって、土砂災害警戒区域等の指定や周知に当たっては、それらの意味についても市町村への説明をしっかりとしていく必要があり、都道府県や関係機関と連携して支援していきたいと考えております。

 また、地域の特性に合わせた災害対策を行うための地区防災計画制度の普及促進についてもお尋ねがありました。

 災害対策においては、行政による公助のみならず、住民や多様な主体の自助、共助の精神に基づく防災活動が極めて大切であります。

 このため、本年四月から、災害対策基本法に基づき、市町村の防災計画にコミュニティーレベルでの自発的な防災活動を定める地区防災計画制度を開始したところです。

 現在、地域における地区防災計画の作成支援や優良事例の情報共有のためモデル地区事業を実施しており、今後、本事業を活用し、全国の地域において地区防災計画制度の普及に取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、中丸啓君。

    〔中丸啓君登壇〕

中丸啓君 次世代に胸を張れる日本へ。次世代の党、中丸啓でございます。

 会派を代表して、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 本年八月二十日未明、私の地元でもある広島市安佐南区、安佐北区などを襲った豪雨は、平成最大の土砂災害を引き起こしました。最多雨量は安佐北区上原で二百八十七ミリと、想像を絶するすさまじいものでした。

 行方不明者の捜索は約一カ月間に及び、両区の被災地域での死者は七十四名、重軽傷者は四十四名に上り、広島県全体でも百三十三軒が全壊したのを初め、多くの家屋が損壊や浸水被害を受けました。七十四名の犠牲者とは別に、亡くなられた女性の胎内にいた未来のとうとい命も犠牲になりました。

 犠牲となられた皆様と御家族の皆様に心からお悔やみを申し上げるとともに、被害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げます。

 全国から駆けつけていただいたボランティアの方々、義援金として御協力いただいた皆様を初め、自衛隊、警察、消防、国、県、市など、関係各位の緊密な連携をとりながらの活動は、地域の皆様から感謝の声をいただいておりますので、この場をおかりして御礼を申し上げます。

 救出作業中に、とうとい犠牲がありました。消防士だった政岡さんは、可部東が危ない現場だとわかっていたので、若い隊員に行かせるのは心配だから経験豊富な自分がと、みずから志願をされたそうです。奥様は、もし若い人に行かせて事故に遭遇させたら夫は一生後悔していたはず、本人の顔も、安らかで、達成感に満ちていましたとおっしゃられたそうです。

 二次災害を防ぐためにも、自衛隊、警察、消防の安全確保と連携、迅速な判断、指揮命令実現に向けて、二〇〇四年五月二十日、自由民主党、民主党、公明党の三党合意により早期成立を目指すことが決まっている緊急事態基本法の制定が必要だと思いますが、官房長官の御見解を伺います。

 また、将来的には、個人の財産権、行動の自由に制限をかけなければならない事態に対処するため憲法改正も必要と考えますが、官房長官のお考えをお尋ねします。

 被災者の方の復旧復興が最優先であることは言うまでもありませんが、被害は住宅地だけにとどまりません。安佐北区で開かれた、墓所の被害に対する関係者説明会がありましたが、墓所は山腹にあり、多くの被害を受けました。

 復旧復興には臨機応変な対応が欠かせません。住宅地はもちろん、住宅地以外への対応については、予算権限も含め、規制や監督省庁の役割など、地元自治体対応だけでは及び腰になる部分があることは否めません。

 今回の対応は、行政の前例ありきではなく、被災住民のニーズに合わせて国、県、市が臨機応変に対応されると聞きましたが、防災担当大臣、今後の取り組み姿勢を伺います。

 被害を受けた多くの地域が法律に基づく土砂災害の危険区域に指定されていなかったことから、住民にその危険性が十分に伝わっていませんでした。そこで、改正案で、今後は調査を終えた段階で危険区域を明示、公表することを義務づけています。

 つまり、土砂災害防止法は、危険箇所を住民に知らせることが対策の前提になっています。しかし、広島市で土砂災害が発生した百六十六カ所のうち、警戒区域に指定されていたのは、たった四十カ所でした。全国的に見ても、指定は進んでいるとは言えません。

 改正案は、今後、都道府県が基礎調査を終えた段階で結果を公表することを求めています。これによって、調査が終わった危険箇所の公表は進むと思いますが、残された危険箇所をいつまでに調査を終わらせるのかは、はっきりと決められていません。

 期限を区切って、全ての危険箇所の調査を速やかに進め、公表する必要があると思いますが、国土交通大臣はどのようにお考えでしょうか。

 次に、避難の情報をどう発表し、住民の避難をどう進めるかという問題です。

 改正案は、土砂災害警戒情報を避難勧告に結びつけようとしていますが、ここにも課題があります。一つ一つの危険箇所のリスク評価ができる仕組みをつくったり、土砂災害警戒情報を、基本的な市町村単位ではなく、もっと狭い範囲に発表することを検討すべきです。

 最近は、合併で広い面積の市町村がふえました。土砂災害警戒情報を避難勧告に結びつけるため、気象庁と都道府県は、市町村にとってより使いやすい情報になるように工夫すべきだと思いますが、国土交通大臣はいかがお考えですか。

 多くの人が暮らす住宅地を襲った広島市の土砂災害を見て、同じように山際まで開発が進んだ住宅地を抱えた市町村やそこに暮らす人々など、他人事ではないと感じている人がたくさんいます。

 広島市の土砂災害の教訓を生かした対策を一刻も早く進める必要があります。法改正だけでなく、課題の解消に向けて、実践的な対策を政府に切にお願い申し上げ、次世代の党、中丸啓の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣太田昭宏君登壇〕

国務大臣(太田昭宏君) 中丸啓議員の御質問にお答えいたします。

 まず、基礎調査を速やかに進め、公表することについてお尋ねがございました。

 基礎調査については、基本的には、おおむね五年程度で完了させることを目標にしたいと考えており、各都道府県に要請してまいります。

 また、国においては、これまで都道府県ごとの基礎調査の実施数を把握していましたが、今後は、さらに、実施目標やその進捗状況について把握し、公表することといたします。

 さらに、本法案において、都道府県に対する是正の要求など、今まで以上に国が関与する仕組みを設けており、これらの的確な運用により、基礎調査の早期完了を期する所存です。

 次に、市町村への情報提供のあり方についてお尋ねがございました。

 市町村による避難勧告発令の判断に当たり、国や都道府県が市町村にとって使いやすい情報を提供することは重要であると考えます。

 このため、土砂災害警戒情報を通知するだけでなく、地盤の水の含みぐあいや雨量の予測について時系列の情報を伝える等、きめ細かな情報提供に努めてまいります。

 さらに、現在、市町村単位を基本として発表している土砂災害警戒情報の発表単位については、その細分化を検討してまいります。(拍手)

    〔国務大臣菅義偉君登壇〕

国務大臣(菅義偉君) 緊急事態基本法についてのお尋ねがありました。

 国家の緊急事態への対処に当たっては、国民の生命財産を守るために、政府全体として総合力を発揮することが極めて重要であります。

 このため、さまざまな緊急事態に対処するための制度及び体制の整備充実に努めているところであります。

 政府としては、まずは、さまざまな緊急事態に迅速そして的確に対応するために設けられた既存の法律の規定を最大限活用し、できることは全てやってまいりたいと考えております。

 緊急事態に関する憲法改正についてのお尋ねがありました。

 大規模な災害が発生したような緊急事態において、国民の安全を守るために、国家そして国民みずからがどのような役割を果たすべきかを憲法にどのように位置づけるかについては、極めて重く、大切な課題と考えております。

 憲法の改正については、国民の中での議論がさらに深まっていくことが何より大切であると考えます。その議論の深まりや憲法審査会での検討を踏まえて、改正の方向性が決まっていくものと考えております。

 いずれにせよ、引き続き、国会等における議論も踏まえながら、危機管理のための制度及び体制のさらなる充実に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣山谷えり子君登壇〕

国務大臣(山谷えり子君) 今回の広島市の土砂災害について、今後の復旧復興に向けた取り組み姿勢についてお尋ねがありました。

 広島市の土砂災害の復旧復興に向けて、住宅の確保等を初めとする被災者への生活再建支援、被害を受けたインフラ施設の早期復旧に努めるとともに、二次災害防止のための措置として、砂防堰堤、砂防ダム等の緊急事業を実施していくことが重要であると認識しております。

 このため、被災者への支援については、災害救助法による仮設住宅の供与、被災者生活再建支援法に基づく支援金の支給を行うなど、被災者の生活再建支援に努めるとともに、公共土木施設や農地等の災害復旧事業については既に激甚災害に指定したところであり、復旧復興に向けた支援をしてまいります。

 なお、広島市においては、十月七日に市長を本部長とする復興まちづくり本部を立ち上げ、年内には復興ビジョン案を策定する予定と聞いております。

 広島市の復旧復興に向けた考え方を十分に聞きながら、一日も早い復旧復興に向け、関係省庁とともにしっかりと対応してまいります。(拍手)

議長(伊吹文明君) 以上をもって質疑は終了いたしました。

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議長(伊吹文明君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十四分散会

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 出席国務大臣

       農林水産大臣    西川 公也君

       国土交通大臣    太田 昭宏君

       環境大臣      望月 義夫君

       国務大臣      菅  義偉君

       国務大臣      山谷えり子君

 出席副大臣

       国土交通副大臣  北川イッセイ君


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