衆議院

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第2号 平成27年1月27日(火曜日)

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平成二十七年一月二十七日(火曜日)

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 議事日程 第二号

  平成二十七年一月二十七日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(町村信孝君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(町村信孝君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。前原誠司君。

    〔前原誠司君登壇〕

前原誠司君 民主党の前原誠司です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、平成二十六年度補正予算の財政演説に対して質問いたします。(拍手)

 まず、いわゆるイスラム国を自称するテロ集団、ISILへの対応と中東情勢について伺います。

 一月二十日、ISILによって拘束された湯川遥菜さんと後藤健二さんの殺害予告がインターネット動画で配信され、その後、湯川さんが殺害された趣旨の動画が流れました。事実だとすれば、許しがたい暴挙であり、強い憤りを禁じ得ません。

 政府が今、どのような交渉をしているかを問う時期ではありません。人命最優先、そして、テロには屈しない、日本国としての毅然とした態度を示しながら、政府には、あらゆる努力を行った上で、人質の救出に全力を挙げることを強く求めます。

 もとより、人の命がかかわる問題に与野党の違いはありません。政府の懸命の努力に対して、できる限りのサポートをいたします。

 ただし、野党第一党として、日本国民の生命と安全を守るため、今後のために、どうしても伺わなければならない点について伺います。

 湯川さんが拘束されたのは昨年の八月、また、十一月には、ISIL側から後藤さんの御家族に、約二十億円の身の代金を要求するメールが届いたと言われています。

 他国における自国民保護は、国家の大切な仕事の一つであります。湯川さんの拘束が発覚した後、現地対策本部を設置したと承知をしておりますが、ほかに拘束されている日本人はいないのでしょうか。同時に、これまでの数カ月、お二人の解放に向けて、政府は何を行ってきたのか。お答えをください。

 安倍総理は、エジプトで、ISILと闘う周辺各国に総額で二億ドル支援すると発表し、これが結果として犯行声明に引用されました。

 イラクのアルカイダを起源とし、現在ある国境を無視し、テロ、殺りく、略奪を繰り返すことで新たな国家を建設しようとするISILを、到底認めることはあり得ません。しかし、現に二人の日本人が拘束され、パリではイスラム過激派による許しがたい悲惨なテロが新年早々あったばかりで、ISILと対峙する国々は国内治安レベルを引き上げて警戒を強めている状況です。そのタイミングでISILと闘う周辺各国に対して支援表明を行うことのリスクについて、どのように想定していたのか、総理に伺います。

 また、戦闘には加わっていない避難民に対する人道支援である日本の中東支援を、テロ集団はねじ曲げて犯行の理由としていますが、テロ集団の意図をどう分析しているかについてもお答えをください。

 私は、安倍総理の積極的な外遊を否定しません。ただ、今回、残念だと思ったことを率直にお伝えします。

 ことし、六千四百三十四名のとうとい命が失われた阪神・淡路大震災から二十年の節目を迎えました。被災者の方々、特に、大切な方を亡くされた方々にとっての悲しみや悔しさは、二十年の歳月を経ても消えることはありません。

 天皇皇后両陛下が御臨席のもと開催された二十年追悼式典を、総理は欠席されました。中東諸国を訪問されるにしても、日程をやりくりし、式典に出席される選択肢はなかったのか、お答えをください。

 次に、昨年末の解散・総選挙と、選挙制度改革について伺います。

 昨年十二月の総選挙は、まさに大義なき解散でした。私にとって八度目の総選挙でしたが、この選挙に何の意味があるんですかと有権者に問われ続けたのは、初めての経験でした。消費税と解散がどうして論理的につながるのか全く理解できない、こうおっしゃったのは、壇上におられる町村信孝議長であります。まさに正論であります。

 総理、今回の選挙は、一体誰のための、何のための選挙だったのか、お答えください。

 昨年十一月十八日の消費増税延期、衆議院解散に関する記者会見で、総理は、税こそ民主主義と言われました。しかし、史上最低の投票率によって、有権者の二人に一人が投票に行かず、六人のうち一人にしか投票されていない政党が議席の大多数を占めてしまった現状こそ、むしろ民主主義の危機ではないでしょうか。

 今回の史上最低の投票率に対する責任を総理はどうお考えか、答弁を求めます。

 今回の消費増税延期の判断は、わざわざ衆議院を解散しなくても、いわゆる景気弾力条項、税制抜本改革法の附則十八条三項に基づいて粛々とできたはずです。しかも、一項にはこう書かれています、望ましい経済成長率のあり方に近づけるための総合的な施策を講じると。

 平成二十六年度の実質GDP成長率は、大きく下方修正を余儀なくされ、マイナス〇・五%が見込まれています。あれだけ財政出動や金融緩和を行ったにもかかわらずであります。昨年四月の消費増税だけが原因ではありません。安倍政権は、法律に基づき、予定どおり増税できる環境をつくれなかった責任、経済政策が間違っていたということを率直に認めるべきであります。

 そもそもトリクルダウンは成り立たないのに、一部の大企業、株などの資産を持つ者だけを太らせて、普通のサラリーマン、年金生活者の生活をどんどん苦しめています。異次元の金融緩和が行き過ぎた円安をもたらし、賃金の上昇以上に物価の上昇を招き、実質賃金は連続十七カ月減少を続けています。年金は上がるどころか、ことしは二%減る。せっかく原油が安くなって一息つけると思ったら、物価の上昇がとまることを嫌がった日銀が追加緩和でさらに円安を進める。国民の生活をさらに苦しめるような施策をしておいて、何がデフレ脱却でしょうか。この道しかないではなく、この道は危ないと改めて申し上げます。

 しかも、平成二十九年四月の一〇%への再引き上げは、どんな経済状況でも必ずやるとおっしゃっています。経済は生き物だからと今回の増税を延期したにもかかわらず、三年後の経済がどうなっているのかわからないのに必ず増税をする。どう考えても支離滅裂、論理矛盾ではありませんか。日銀の異次元緩和で事実上の財政ファイナンスの色彩が強くなり、必ず消費税を上げるとここで言っておかなければ、国債価格が下落をし、金利の上昇を招くと心配しての発言なのでしょうが、それだけ危ない橋を渡っているということを、総理みずから認識していることにほかならないではありませんか。

 予定どおり消費増税ができなかったことについての法的責任、景気弾力条項に従わなかった意味、その一方で、景気弾力条項を削除しようとする意図、三年後の経済状況に対する責任、以上四点について、それぞれ明快な答弁を求めます。

 さらに、平成二十四年十一月十四日の党首討論において野田前総理そして国民と約束した国会議員の定数削減、選挙制度改革はどうなったんでしょうか。約束不履行のまま解散・総選挙、そして国民には増税の負担を求める。

 自分の過去の発言に対する責任をどう考えているのか、そして定数削減、選挙制度改革はやるのかやらないのか、総理、明確にお答えください。

 次に、平成二十六年度補正予算について伺います。

 今回の補正予算案は、同時期に作成した二十七年度当初予算案の規模を小さく見せるため、本来、毎年度の当初予算で要求、計上すべきものを補正予算に計上しています。港湾の競争力強化、六次産業化、中心市街地再生、捜査力の強化などが、どうして緊急経済対策と言えるのでしょうか。

 今回の予算査定で、緊急性、経済効果をどう判断したのか、総理、お答えください。

 今回の目玉として、地域消費喚起・生活支援型と地方創生先行型という二つの交付金に四千二百億円が計上されています。とりわけ地域消費喚起・生活支援型交付金では、地域限定商品券の発行支援を意図しています。

 一九九九年の地域振興券では、六千億円の予算に対して、個人消費増加は二千二十五億円。二〇〇九年の定額給付金は、二兆円の予算に対して、個人消費増加は六千三百億円。過去の類似事例では、約三分の一の効果しか出なかったことが明らかになっています。

 政策効果が低く、しかも四千二百億円という規模でワンショット、これで地方創生につながると本気で考えておられるのでしょうか。まさに、統一自治体選挙前のばらまきの典型ではありませんか。

 この予算の政策目的、想定される経済効果、その効果の事後の検証方法をそれぞれ示してください。そして、過去の事例で得られた教訓からどのような工夫、改善を行っているのか、それぞれ明快にお答えください。

 また、エネルギー価格対策に三千六百一億円が計上されていますが、去年の夏の価格から半分にまで原油価格が急落する中、もはや緊急性は低くなっているのではないですか。

 そもそも、異次元の金融緩和を行って過度の円安を引き起こし、輸入価格が上昇したからエネルギー価格対策を行うというのもまさにマッチポンプですが、現段階においてもなおこの予算が必要だと考える理由を明確にお示しください。

 最後に、平成二十七年度当初予算案の国会提出は二月十二日だと仄聞しています。耳を疑うのは、与党から年度内成立を期すという言葉が聞こえてくることであります。

 解散・総選挙があったから予算案の提出がおくれたというのは、政府・与党の都合ではありませんか。無理筋の解散・総選挙は、そもそも安倍総理の勝手です。九十六兆円を超える国家予算の審議は、通例どおり、衆参でほぼ一カ月ずつかけて、慎重に審議すべきです。それが国民への責任であります。ゆめゆめ、数を背景にした独善的、強行的な国会運営が行われることがないよう強く申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 前原誠司議員にお答えをいたします。

 ISILが拘束する他の日本人の有無及び邦人テロ事件への政府の対応についてお尋ねがありました。

 ISILによる卑劣なテロは、言語道断の暴挙であり、強く非難します。湯川遥菜さんの御家族の御心痛は察するに余りあり、言葉もありません。

 現在、映像が公開された二人のほかに、人質となっている日本人の情報には接しておりません。

 昨年八月及び十一月にそれぞれの行方不明事案の発生を把握した直後に、官邸に連絡室、外務省に対策室を立ち上げるとともに、ヨルダンにおいて現地対策本部を立ち上げ、あらゆるルートやチャンネルを通じて情報収集や協力要請を行ってまいりました。

 今月二十日に湯川遥菜さん、後藤健二さんの両名が拘束された動画を確認した直後に、官邸に対策室、外務省に緊急対策本部を設置するとともに、中山外務副大臣をヨルダンに派遣し、両名の解放のため最大限の努力を尽くしてまいりました。

 極めて厳しい状況ではありますが、政府としては、後藤健二さんの早期解放に向けて全力を尽くしてまいります。

 ISILと闘う周辺各国への支援を表明するリスクについてのお尋ねがありました。

 中東地域の平和と安定は、我が国にとり、エネルギー安全保障や国際的な課題への貢献等の観点から極めて重要です。私の中東訪問の際に、一千万人以上の避難民の命をつなぐため、周辺国に対する人道支援を表明しましたが、これは、国際社会の一員として当然の責務を果たしたものであります。

 リスクを恐れる余りこのようなテロリストのおどかしに屈すると、周辺国への人道支援はおよそできなくなってしまいます。我が国は、決してテロに屈することはありません。今後とも、日本ならではの人道支援を積極的に実施してまいります。

 テロ集団の意図についてお尋ねがありました。

 そもそも、テロ集団の意図はどうあれ、彼らの行動については全く正当性がありません。その上で、彼らの意図の分析について、この場で申し上げることは適当ではないと考えます。

 私の中東訪問と阪神・淡路大震災二十年追悼式典への出席の可能性についてお尋ねがありました。

 中東地域の平和と安定は、我が国にとり、エネルギー安全保障や国際的な課題への貢献等の観点から極めて重要であります。私の先般の中東訪問については、かかる意義を踏まえ、あらゆる要素を総合的に検討した上で判断いたしました。

 一方、御指摘の阪神・淡路大震災二十年追悼式典については、政府内で日程を調整した結果、十周年追悼式典のときと同様に、防災担当大臣が政府代表として出席いたしました。今後とも、関係自治体と連携しながら、被災地の復旧復興に全力で取り組んでまいります。

 さきの総選挙の意義と投票率についてお尋ねがありました。

 民主党政権時代、マニフェストに書いていない消費税の引き上げを国民に信を問うことなく実行しようとしたのに対し、私たち自民党は、税こそ民主主義であるとの考えから、法案の成立前に国民に信を問うべきだと主張いたしました。今回、私たちは、消費税について、政権交代した二〇一二年の選挙公約に掲げていない重要な政策変更を決定いたしました。そうならば、私たちは、従来からの主張どおり、毅然として国民に信を問う、これこそまさに民主主義の王道であります。

 その機会に、解散に大義がないといった御批判も含め、国民は判断を下すことができます。誰に政権を委ねるかを選択できます。すべからく総選挙とは、国民のための、政権選択のための選挙であります。

 しかし、そのためには、複数の具体的な選択肢が国民に提示されなければなりません。与党だけが具体策を提案し野党はただ批判するということでは、残念ながら、国民にとって選択肢があることにはなりません。その結末は国民の政治に対する無関心であり、それこそが民主主義の危機であります。

 今回、低い投票率となったことは大変残念ではありましたが、国民の政治への関心を高めることに与党も野党もありません。単なる批判の応酬ではなく、具体的な政策の違いを国民の前で明らかにし、正々堂々の論戦を行う。ぜひ、民主党の皆さんとも建設的な議論をさせていただきたいと考えております。

 消費税率引き上げ延期の判断に関し、四つのお尋ねがありました。

 予定どおり消費税率引き上げを行える環境をつくれなかったことが税制抜本改革法附則第十八条第一項に違反するとの御指摘ですが、この規定は、デフレ脱却と経済活性化に向けた総合的な施策を講ずるよう義務づけるものであります。安倍政権においては、三本の矢の政策により経済の好循環が着実に生まれ始めており、御批判は当たりません。

 他方で、昨年四月の消費税率八%への引き上げにより個人消費等に弱さが見られたことから、いわゆる景気判断条項に基づき、引き上げ延期の決断をいたしました。社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、国の信認を確保するため、平成二十九年四月の一〇%への引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。

 そうした経済状況をつくり出すという決意のもと、三本の矢の政策をさらに前に進めてまいります。

 選挙制度改革についてお尋ねがありました。

 議員定数の削減などの選挙制度改革については、議会政治の根幹にかかわる重要な課題であり、各党各会派が真摯に議論を行い、早期に結論を得ることが重要であると考えています。

 その際、大切なことは、御指摘の党首討論において述べたとおり、小さな政党にも配慮しながら議論が進められることであります。現在、議長のもとに設置された第三者機関、これは政権交代後実現したものでありますが、その第三者機関においてさまざまな議論が行われておりますが、私は、各党各会派がその答申に従うことが重要であると考えております。

 経済対策と補正予算の計上事業についてのお尋ねがありました。

 今般の経済対策は、地域の消費など経済の脆弱な部分に的を絞り、かつスピード感を持って対応を行うことで、個人消費のてこ入れと地方経済の底上げを図るものです。

 このため、地域の実情に配慮しつつ消費を喚起する、仕事づくりなど地方が直面する構造的な課題への実効ある取り組みを通じて地方の活性化を促す、災害復旧等の緊急対応や復興を加速化するという三点に重点を置いて取りまとめています。

 御指摘の事業は、今申し述べた、地方の活性化や緊急対応という点にかなうものであり、二十七年度予算の規模を小さく見せるため補正予算に計上したとの御指摘は当たりません。

 地方向け交付金についてお尋ねがありました。

 本交付金は、地方自治体が創意工夫で実施する消費喚起策や生活支援策及び仕事づくりなど構造的課題への対応策に対し、国が支援し、地方経済の活性化等を図るものであります。

 本施策については、過去の施策の検証を行い、効果的な取り組みとなるように工夫を凝らしました。例えば、地域商品券については、これまでの類似施策の検証を踏まえ、補助額以上の消費が喚起されるよう、プレミアムつきの仕組みを推奨することとしました。また、すぐれた取り組みには手厚い支援を行うこととしており、自治体が、より効果の大きい施策を考案するインセンティブを用意しています。

 さらに、事業実施時に成果の客観的指標を明示した上で、結果も公表するといった厳格な効果検証を地方自治体に求めてまいります。

 エネルギーコスト対策の必要性についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、足元の原油価格は下落しておりますが、電力料金は震災前に比べて産業用で約三割上昇しており、依然として高い水準にあります。また、原油価格の下落が、資源開発投資の抑制等を通じて再びエネルギー需給が逼迫する可能性を十分に考慮する必要があります。喉元過ぎて熱さ忘れてはなりません。

 政府としては、こうした事情を踏まえつつ、中小企業における省エネ投資の促進を初め、エネルギーコスト対策について、決して手綱を緩めることなく取り組んでまいります。(拍手)

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議長(町村信孝君) 後藤茂之君。

    〔後藤茂之君登壇〕

後藤茂之君 自由民主党の後藤茂之でございます。

 補正予算についての麻生財務大臣の財政演説に対して、自由民主党を代表して質問させていただきます。(拍手)

 昨年末の総選挙では、自民党は国民から幅広い御支持をいただきました。おごることなく、国民の声に真摯に耳を傾け、与党・政府一体で誠実な国会運営に努めなければなりません。

 まず初めに、ISILによる邦人を人質にとったテロ行為についてお伺いいたします。

 先日、二名の邦人を人質にとり、その殺害を盾に身の代金を要求するといった卑劣な動画がISILにより配信されました。その後、湯川遥菜さんの命が失われたとの報道に、国民の間には深い悲しみと怒りが広がっています。御家族のお気持ちを思えば、言葉もありません。いまだとらわれている後藤健二さんの早期解放に全力で取り組まねばなりません。

 このように人命を盾にとり脅迫することは、いかなる理由があったとしても許しがたいテロ行為であります。

 イスラム研究者の東大の池内恵准教授も、御自身のブログで、万が一我が国がこのようなテロに屈して政策を変更するとすれば、次の日本に対するテロを誘発するのみならず、ただむき出しの暴力を行使する者の意が通る社会になってしまうとの趣旨を述べられています。私も、これは正鵠を射た指摘であると考えます。

 我が国としては、このようなテロに屈することなく、この地域で住むところもなく、日々寒さに震え、飢えや病気に苦しんでいる一千万人以上に及ぶ避難民や子供たちのために人道支援を着実に実施していく国際社会によるテロへの取り組みに一層貢献していくことが重要と考えます。総理の見解を伺います。

 次に、財政演説に対する質問に入らせていただきます。

 第二次安倍内閣は、政権交代以来これまで、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三本の矢から成るアベノミクスを一体的に推し進め、デフレからの脱却と日本経済の再生に全精力を注ぎ込んできました。その結果、就業者数や名目総雇用者所得の増加など、雇用・所得環境は改善傾向が続くとともに、企業部門も高水準の経常利益を実現するなど、景気は緩やかな回復基調となっています。

 デフレ脱却・経済再生に向けた動きをより確実なものにしていくためには、企業収益の拡大が速やかに賃金上昇や雇用拡大につながり、消費の拡大や投資の増加を通じてさらなる企業収益に結びつくという経済の好循環を着実に実現していくことが何よりも重要です。

 安倍総理は、この重要性をしっかりと認識され、賃金の上昇に向けた機運を大いに盛り上げてこられました。一昨年には、政府、労働者、経済界の代表が一堂に会するという画期的な政労使会議を立ち上げ、議論が大きく前に進んできております。

 これまでの政労使における取り組みの成果と、今後経済の好循環を実現していくための取り組みについて、総理にお伺いします。

 また、賃金上昇を実現するためにはその原資が必要であり、企業の稼ぐ力を高めることが必要不可欠です。そのため、まずは経営者のマインドを変革しなければなりません。コーポレートガバナンスの強化は昨年大きく進み、企業、株主の両者が企業の一層の収益性向上に取り組む姿勢が見られ、国際社会からも注目されております。

 稼ぐ力を高めるためのこれまでの取り組みの成果と、総理の今後の決意をお聞かせください。

 日本企業の収益性について、ROEは第二次安倍内閣発足以来二年間で約一・五倍となるなど、全体として上昇傾向にはあるものの、まだまだ欧米諸国に比して高いとは言えません。

 日本企業の生産性、収益性が向上し、世界で戦える競争力を強化していくためには、大胆な事業再編を行い、大規模な海外MアンドAに乗り出すなど、継続的に収益力を高めようとする経営者の積極的な行動が鍵となります。また、企業の収益力の改善に向けた投資や新たな技術開発等への挑戦を経営者が積極的に行えるようにするためには、エクイティー等のリスクマネーの供給拡大も重要な要因となります。

 中長期的な生産性向上に資するような成長資金の供給に積極的に取り組んでいくべきと考えますが、総理のお考えをお伺いします。

 他方、アベノミクスによりデフレからの脱却と景気回復は着実に進んでいますが、個人消費等には弱さが見られ、景気の回復状況にも地方によってばらつきが見られます。特に、地方や中小・小規模事業者ではアベノミクスの成果を十分に実感できていません。昨年末の選挙戦を通じても、アベノミクスの効果が地方や中小・小規模事業者に波及していないのではないかとの声が地方から一斉に上がりました。

 「景気回復、この道しかない。」を掲げ、選挙を戦った自民党としては、アベノミクスによる景気回復の波を地方や中小・小規模事業者に届け、安心して働ける元気な日本経済、地域経済を再生することこそ、国を挙げて取り組むべき最重要課題であると考えます。

 この経済対策等を実行するため、政府から提出された補正予算を早期に成立させ、景気回復の波を全国津々浦々に届けていくことが重要であると考えます。

 そこで、政府の経済対策についてお伺いいたします。

 地方や中小・小規模事業者にもアベノミクスの恩恵を届けるため、経済対策、補正予算においてどのような施策を講じ、その効果が最大限発現されるようどのような工夫を行っているのか、安倍総理に伺います。

 次に、地方創生についてお尋ねします。

 我が国は急速な人口減少局面にあることに加え、地方においては東京圏等への人口流出と地方経済の縮小が進んでいます。そのため、地方の企業において雇用の場を確保し、人材を定着させて東京一極集中を是正しつつ、若い世代の結婚や子育てに関する希望を実現できる環境を整え、地方創生に向けた取り組みを進めていかなければなりません。

 安倍政権においては、地方創生を最重要課題と位置づけています。昨年秋の臨時国会では、地方創生関連法が成立いたしました。さらに、昨年末には、経済対策と同時に、地方創生のための五カ年戦略であるまち・ひと・しごと創生総合戦略が閣議決定されました。

 今後、都道府県や市町村においても、この総合戦略を踏まえて、地方版の総合戦略を策定し、地域の特色を生かした地方の創生に取り組んでいくこととなっております。

 改めて、地方創生に向けた安倍総理の決意を伺います。

 地方創生に向けた取り組みの本格的な実施はこれからではありますが、人口減少の克服や東京一極集中を是正し、地域経済の活性化に道筋をつけるため、魅力あふれる地方の創生のための施策を早期に実行していくことが重要であり、補正予算においても先行的に地方創生に取り組む必要があります。

 補正予算において、昨年末に閣議決定したまち・ひと・しごと総合戦略に基づき、地方創生施策を前倒しして先行的に実施するものが含まれていますが、具体的にどのような施策を盛り込み、今後どのように地方創生に取り組んでいくのか、石破大臣に伺います。

 次に、財政健全化についてお尋ねします。

 安倍内閣においては、経済再生と財政健全化の両立を目指した経済財政運営を行っています。我が国の財政の危機的な状況を踏まえれば、財政健全化は喫緊の課題であります。財政健全化目標を堅持するため、今後、いつまでにどのように取り組んでいくのか、麻生大臣の見解を伺います。

 最後に、近年頻発している災害に対する政府の取り組みについてお尋ねします。

 本年は、六千四百名を超えるとうとい命を奪い、住宅の全壊だけでも十万棟を超える甚大な被害が発生した阪神・淡路大震災から二十年の節目の年に当たります。町のインフラが復旧し、二十年たった今でも被災者の心の傷は癒えておらず、阪神・淡路大震災の記憶を風化させてはなりません。

 これまでも、阪神・淡路大震災から得た教訓、経験を生かし、建築物の耐震化など、災害対策の強化に取り組んでまいりました。しかし、最近でも、地震や土砂災害、大雪など、さまざまな大規模な災害が発生し、災害対策は喫緊の課題であります。災害のリスクを極小化し、どこに住んでいても安心できる日本をつくらなければなりません。

 東日本大震災については、発生から四年がたとうとしています。地震、津波、原子力事故による複合的な災害であり、復興は着実に進展しているものの、今なお被災地では仮設住宅での苦しい生活が強いられています。

 生活の再建のためには、被災地で雇用を確保することが何よりも重要であり、被災地においても有効求人倍率が一倍を超えるなど、着実な持ち直しが進んでいるものの、津波被災地域における産業やなりわいの再建をスピード感を持って進めることが必要です。

 また、原子力事故災害からの復興については、除染、健康不安の払拭、コミュニティーの再建など課題が山積しており、被災者の方々の生活の再建に向けて、今後、政府として着実に施策を講じていくことが求められています。

 ここで、生活再建に向けた具体的な取り組みを含め、東日本大震災からの復興の加速化に向けた安倍総理の決意をお伺いいたします。

 昨年九月二十七日に、私の地元の御嶽山が突然噴火いたしました。山頂付近で多くの登山客が犠牲になられた教訓を踏まえ、噴火の予兆現象を的確に把握するため、火山研究施設の設置など観測体制を強化するとともに、登山者等の安全を確保するため、シェルター等の設置を促進していく必要があります。

 観光産業で生計を立てている地元の山村は、風評被害により客足が遠のき、生活基盤の危機に直面しています。森林を支えるこうした山村を守らねばなりません。

 十一月二十二日には、長野県神城断層地震が発生し、多くの負傷者が出たほか、全壊や半壊など住宅にも被害をもたらしました。さらに、道路が寸断されるなど、インフラにも甚大な影響が出ております。

 被害の大きい地域は、全国でも有数の豪雪地帯であり、降雪の影響による被害の拡大や復旧のおくれが危ぶまれております。一日でも早く被害者の生活を復旧させ、今なお不安にさいなまれている方々に御安心していただくため、迅速かつ的確な対策が重要です。

 御嶽山の噴火や長野県神城断層地震による被害に対する復旧対策について、これまでの政府の取り組み及び今後の加速化策、さらには災害発生後の風評被害に苦しむ観光産業等への対策に向けた総理の決意を伺います。

 さらに、このように、近年大規模化、頻発化している災害を踏まえ、今後見込まれる災害に対する事前防災対策に向けた総理のお考えをお伺いします。

 今国会においては、さきの衆院選でいただいた国民の御期待に応えられるよう、地方や中小・小規模事業者など全国津々浦々までアベノミクスの波を届けるため、二十六年度補正予算について充実した審議を行い、一日も早く成立させる必要があります。与党・政府一体となって、デフレ脱却・経済再生に向けて、着実に経済政策を進めていかなければなりません。

 長らく続いたデフレから脱却するチャンスが、今まさに日本に到来しました。この絶好のチャンスを、アベノミクスを力強く推し進めることによって、確実につかみ取らなければなりません。私は、その責任を深く自覚し、覚悟を持って国政に臨むことを誓い、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 後藤茂之議員にお答えいたします。

 邦人テロ事件への対応及び国際社会のテロに対する取り組みへの貢献についてお尋ねがありました。

 ISILによる卑劣なテロは、言語道断の暴挙であり、強く非難します。

 政府としては、人命第一の立場に立ち、後藤健二さんの早期解放に向けて、引き続き全力を尽くしてまいります。

 議員御指摘のとおり、このようなテロに屈するようなことになれば、日本人に対するさらなるテロを誘発するのみならず、卑劣な暴力を行使する者の意図がまかり通る世界になってしまいます。このようなことは断じてあってはなりません。

 先般、私が中東訪問で発表した人道支援は、この地域で、住むところもなく、日々寒さに震えながら飢えや病気に苦しむ一千万人以上の避難民や子供たちに食料や医療物資などを届けるための、命をつなぐ支援であります。我が国の支援に対し、国際社会からは高い評価が示されました。

 政府としては、このような日本ならではの人道支援を今後とも積極的に実施し、テロに対する国際社会の取り組みに、非軍事的分野で引き続き大きな貢献を行ってまいります。

 政労使の取り組みについてお尋ねがありました。

 一昨年の政労使合意を踏まえた昨年の春闘では、賃上げ率が過去十五年で最高となりました。

 昨年は、総選挙の後、直ちに政労使会議を開催し、私から今春の賃上げをお願いいたしました。経済界の皆さんには、賃上げに向けた最大限の努力と、原材料費高騰に苦しむ下請企業の価格転嫁といった取り組みに合意していただきました。

 賃上げの流れを、ことしの春、来年の春、再来年の春と継続させ、経済の好循環を全国津々浦々にお届けしてまいります。

 企業の稼ぐ力についてお尋ねがありました。

 昨年は、会社法の改正、日本版スチュワードシップ・コードの策定など、コーポレートガバナンスの強化が大きく進みました。

 今後、コーポレートガバナンスのさらなる強化に加え、法人税改革、イノベーションの推進などを一体的に進めます。これにより、企業の稼ぐ力を高め、賃金の上昇などを通じ、経済の好循環の拡大を図ってまいります。

 成長資金の供給への取り組みについてお尋ねがありました。

 安倍内閣の進めている三本の矢の政策により、デフレマインドが払拭され、企業の成長に向けた資金供給の拡大が進んでいくと考えております。

 あわせて、多様なニーズに応じたファンドの組成の検討、ベンチャー企業へ投資する人材の育成、政府系金融機関の民間資金への呼び水効果の発揮なども進めております。こうした取り組みにより、資金の流れを多様化させ、より潤沢な成長資金の供給に努めてまいります。

 経済対策、補正予算についてお尋ねがありました。

 今回の経済対策は、個人消費のてこ入れと地方経済を底上げする力強い経済対策としています。

 具体的には、平成二十六年度補正予算において、交付金を創設し、例えば所得の低い方に向けた灯油等の助成や子供の多い御家庭の支援など、地方自治体の創意工夫で実施する生活支援策を後押しします。

 また、中小・小規模事業者に対しては、地域資源を活用したふるさと名物の開発、販路開拓を応援するとともに、原材料高に苦しむ事業者への支援や、ものづくり・サービス補助金による支援も実施します。

 こうした施策により、全国津々浦々に景気回復の実感を届けてまいります。

 地方創生に向けた決意についてお尋ねがありました。

 若者が将来に夢や希望を持てる個性豊かな地方の創生は、内閣の最重要課題です。

 やる気のある地方の創意工夫を全力で応援する、この方針に基づき、昨年末、国の総合戦略を策定しました。補正予算案にも、仕事づくりなど緊急性の高い施策を盛り込んだところです。

 我が国の直面する人口減少を克服するためにも、活力ある地域づくりに、予算、人材等、あらゆる方策を使って取り組んでまいります。

 東日本大震災からの復興の加速化についてお尋ねがありました。

 東日本大震災からの復興は、引き続き、安倍内閣の最重要課題の一つです。

 被災地での住宅再建は、累次の加速化策により着実に進展し、高台移転が約九割、災害公営住宅が約八割で事業が始まっております。

 また、産業、なりわいの再生についても、被災企業の施設設備の復旧への補助や販路開拓支援など、多岐にわたって取り組んでまいりました。

 被災者の方々が四年目の冬を迎える中、人々の心身のケアにも一層力を入れてまいります。

 被災地の復興なくして日本の再生なし。引き続き、被災者の方々に寄り添いながら、さらに復興を加速させてまいります。

 御嶽山の噴火や長野県北部地震に対する取り組みと今後の防災対策についてのお尋ねがありました。

 御嶽山の噴火や長野県北部地震により、いまだ家に帰れない方々がおられます。政府としては、これらの方々を含む被災者の一日も早い生活再建に関係機関が一体となって取り組んでまいります。

 また、観光産業等への風評被害対策については、あらゆる媒体を活用して、正確な情報を内外の旅行者や旅行予定者に十分に行き渡るよう、対応に万全を期してまいります。

 我が国は、場所を問わず、さまざまな災害が発生しやすい環境にあります。国民の生命と財産を守るため、常に最新の科学的知見を取り入れつつ、ハードの整備とともに、情報伝達や防災訓練などソフトの対策を適切に組み合わせた総合的な防災対策に、今後とも、政府一丸となって取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 財政健全化計画についてのお尋ねがあっております。

 安倍内閣におきましては、経済再生と財政健全化を両立させるといたしております。二〇二〇年度の財政健全化目標につきましても、しっかりとこれを堅持し、本年夏までに、その達成に向けた具体的な財政健全化計画を策定することといたしております。

 その策定に当たりましては、昨年末の経済財政諮問会議において、安倍内閣のこれまでの取り組みをさらに強化し、デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革の三つの柱を軸に検討を進めるとされたところであります。

 また、この計画は平成二十八年以降の五年間の予算編成の指針になるものでありますことから、平成二十八年度の概算要求の基準に間に合うよう、夏までのできるだけ早い時期に策定してまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣石破茂君登壇〕

国務大臣(石破茂君) 後藤議員にお答えをいたします。

 総合戦略に基づく今後の取り組みについてのお尋ねをいただきました。

 昨年末、人口減少を克服し、地方が成長する活力を取り戻すための五カ年の政策をまとめた国の総合戦略を閣議決定いたしました。今後、これを勘案し、各地方公共団体においては、地域の特性を踏まえた地方版総合戦略を遅くとも二十七年度中に策定していただきたいと考えております。

 国は、地方のこうした取り組みを支援する観点から、ビッグデータによる情報支援や自由度の高い交付金などによる財政支援を行うことといたしており、所要の予算を今般の補正予算に計上したところであります。

 人口減少克服、地方創生は、国と地方が危機意識を共有し、手を携えて取り組む課題であります。そのためには、地方版総合戦略が極めて重要であるとの認識のもと、それぞれの地域における住民や産官学金労言、すなわち産業界、行政、大学、金融機関、労働団体、言論界などの関係者の方々に、地方創生をみずからのこととしてお考えいただき、策定に積極的に参画していただきたいと考えております。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(町村信孝君) 柿沢未途君。

    〔柿沢未途君登壇〕

柿沢未途君 維新の党を代表して質問いたします。(拍手)

 昨年十二月の衆議院選挙で、維新の党は、小選挙区十一、比例三十の計四十一議席を獲得し、引き続き野党第二党の重責を担うこととなりました。過去最低の五二%の低投票率の中、議席半減との当初の予想を覆して、これだけ多くの御支持を全国でいただいたのですから、今後の国会論戦でその御期待に応えてまいりたいと考えております。徹底論戦と建設的提案で改革の実行を迫ってまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、いわゆるイスラム国、ISILと称する過激派勢力による日本人人質に対する凶行についてです。

 二人の人質のうち、湯川さんが殺害されたと推認できる映像がインターネットで公開され、手錠をかせられた姿の後藤さんからは、ISIL側からの新たな要求が語られています。

 暴力による脅迫に屈することは、さらなるテロを呼び寄せることとなり、絶対に認めることはできません。その一方で、人質の救出を最優先として、事態の好転に向けたあらゆる策を講じていかなければなりません。極めて難しいかじ取りですが、与野党の別なく、事態打開に向けた政府の取り組みに協力をしてまいりたいと思っております。

 非常に気になっているのは、ISILの支配地域内に入った日本人がこの二人だけなのかという点であります。昨年末には、政府関係者の話として、都内に住んでいた、いずれも二十代の日本人女性とフランス人男性のイスラム教徒の夫妻が、十一月に、ISIL支配地域に向かうと言ってトルコへ向かって出国し、以来、連絡がとれなくなっている、このように報じられています。

 国連安保理は、昨年九月、加盟国に対して、自国民がISIL初め過激派武装組織に参加するために海外に渡航することを禁止し、その処罰を求める決議を採択しておりますが、戦闘目的でないと言われると、憲法が保障する海外渡航の自由の関係から出国の差しとめは難しいとも言われています。

 ISIL支配地域に入った日本人がこのほかにいるのかどうか。他に人質となっていると推認される日本人の情報を政府が把握していないかどうか。今後そのような可能性の芽をどうやって摘んでいくのか。政府の見解と方針をお伺いいたしたいと思います。

 さて、補正予算です。

 補正と翌年度予算を一体化させて十五カ月予算と称している、そうした手法がこのところ常態化しており、安倍政権になってからも、両予算の合計は、三年連続で百兆円規模となっております。

 そもそも、リーマン・ショック後の麻生政権による補正予算で、それまで八十兆円台だった歳出規模が一気に百兆円の大台を突破し、非常事態への対応だったはずの歳出膨張が延々と続けられています。

 五十兆円の税収しかないのに百兆円の予算をばらまく、このような赤字国債漬けの財政が長く続けられるはずがありません。これだけの歳入歳出のギャップを増税だけで埋めるならば、消費税率三〇%にもなってしまいかねません。これでは経済が本当におかしくなってしまいます。

 百兆円規模に膨らんだ歳出の側にメスを入れる、歳出削減が避けられないと考えますが、安倍政権が歳出削減に真剣に取り組む姿勢を持っているようには、補正からも来年度予算からも見てとることができません。

 財政収支の均衡を目指していく上での歳出削減の必要性についての安倍総理の見解を伺います。

 一方、わざわざ景気条項を削除してまで二〇一七年四月の消費税率一〇%への増税を実行しようとするのは、あくまで増税先行で財政再建を目指す安倍政権の意思のあらわれのようにも感じられますが、財務省はそのような考えなんでしょうか。麻生財務大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 安倍総理は、ハーバード大学のアルベルト・アレシナ教授が唱えるアレシナの黄金律をお聞きになったことがおありかと思います。OECD加盟二十カ国について、財政再建に成功した国と失敗した国の要因を分析したところ、成功した国では、財政再建が歳出削減七、増税三の割合で行われており、反対に、まず増税先行で始めた国は、経済の悪化を招き、必ず財政再建に失敗していると指摘されています。

 そして、経済を悪化させずに財政再建を果たした国では、歳出削減として、公務員人件費、公共事業費、社会保障費の削減が行われていたということであります。公務員人件費を含む歳出削減に力を入れた国で財政再建が成功したのは、公の仕事をする者がみずから身を切る姿勢を示したことで、国民にも痛みを求める厳しい政策に信頼と理解が得られたからではないでしょうか。

 我が国では、それとは真逆のことが行われています。昨年四月に消費税が八%に上がりましたが、翌月五月に何を上げられたかといえば、国会議員の歳費が月二十五万円、年額四百二十万円も上がっています。震災後の特例的な二割カットが期間満了したためと説明されていますが、震災復興が終わったわけでも、財政事情が劇的に好転したわけでもありません。これでは、増税したそばから上がってきた税金で自分たちのお給料を上げていると言われても仕方がないではありませんか。

 秋には国家公務員給与も七年ぶりの引き上げ、冬のボーナスは二一%もの増額が決まりました。国に倣って地方も、議員と公務員の給与、ボーナスのアップが決められています。アベノミクスでもなかなか実現しない賃上げを、議員と公務員が真っ先に享受している格好ではありませんか。

 民間の常識では、巨額の赤字を出し続けている会社が給与やボーナスをふやすのは考えられません。赤字を出した会社なら、まず経営者がみずからの役員報酬をカットするのが当たり前です。シャープを見てください。役員報酬五〇%カットです。第三・四半期に三百八十四億円の赤字を出した住友商事では、社長の四〇%以下、全役員の報酬をカットしています。なぜ、こんな中で国会議員のお給料をふやせるんですか。

 維新の党は、衆議院選挙のマニフェストで、身を切る改革として、国会議員の定数三割、歳費三割の削減、領収書不要となっている月百万円の文書通信交通滞在費の使途公開を訴えました。そのための議員立法も国会に提出をいたしております。現在、継続審議になっておりますので、今国会で一歩でも二歩でも前進させたいと思っております。

 安倍総理、国会議員の身を切る改革は、財政再建の第一歩です。まずは各党会派で御議論いただいてと、いつもの紋切り型を繰り返すのではなく、政府・与党の最高指導者として決意を示していただきたいと思います。御答弁を求めます。

 その上で、公務員人件費の二割削減を実行したいと思います。民主党も、二〇〇九年の衆議院選挙のマニフェストで公務員総人件費二割削減を掲げており、党派を超えた幅広い合意が可能と考えております。

 単純な給与カットを言っているつもりはありません。公務員給与の決定に当たっての人事院による官民給与比較の調査対象が大企業に偏っていて、従業員一人以上の中小零細を含めた全企業を比較的満遍なく対象にした国税庁の民間給与実態調査と比べると、人事院調査では年収換算で六百六十万円、国税庁調査は四百十四万円、二百万円以上の開きがあります。民間準拠というなら、給与の高い一部の大企業だけを調べて公務員と比較するのはおかしいのではないでしょうか。

 国家公務員の昇給のベースとなる能力・業績評価もゆがんでいます。年功序列を排するといいながら、一般職の能力・業績評価は、特に優秀のS評価、優秀のA評価、通常のB評価の五段階の上三つで九九・四%を占めており、やや劣る、劣るのC、D評価は、たったの〇・六%しかありません。結果、年功序列で仲よく昇進、給与も上がっていく仕組みが守られています。

 こうした公務員給与の決定構造や公務員制度そのものの改革を通じて、公務員人件費の二割削減を行い、国、地方合わせて五兆円規模の歳出を削減する、これが私たちの政策であります。

 衆議院選挙のテレビ討論で橋下市長がこれを語ったとき、安倍総理も理解を示す、そうした場面があった記憶を持っておりますが、アレシナ教授の研究成果でも有意性が実証されている公務員人件費の削減について、安倍総理の取り組みを伺います。

 こうした人件費の削減を公務員の皆さんにお願いする上でも、繰り返しになりますが、お願いする側の私たち国会議員、政治家が、まず、みずからに厳しい身を切る改革を断行するのでなければ、みずからの身を守るだけの、自分勝手のそしりを免れません。

 橋下大阪市長は、みずからの市長報酬四割カット、四年の任期ごとにもらえる約四千万円の退職金を八割カットし、ついには、次回から退職金ゼロにすると言っています。このようなみずからに厳しい身を切る改革をまず行うからこそ、知事時代には一般職職員給与の最大一四%もの削減を実行できたんだと思います。

 私たち国会議員も、ぜひ本気で、歳出削減の第一歩としての身を切る改革を負けずに実行、取り組もうではありませんか。

 いわゆる大阪都構想について質問します。

 安倍総理は、大阪維新の会並びに維新の党が進める大阪府市統合によるいわゆる大阪都構想について、二重行政をなくし、住民自治を拡大していく意義はあると評価されています。その上で、住民投票で賛成多数となれば、必要な手続は粛々と行っていきたいと話しておられます。

 大阪都構想の実現は、これまで幾度も掲げられながら一度も実現してこなかった統治機構改革を地方自治体の発意で進めていくものとして、画期的かつ歴史的意義を有する取り組みです。

 人、物、金の移動が広域化している中、都市間競争、地方と地方の競争により日本全体の活力を取り戻していくために、広域地方政府である道州制への移行が必要と私たちは考えており、大阪都構想の実現はその一歩ともなると考えております。

 安倍政権も道州制を掲げていたはずですが、道州制推進基本法案の国会提出が何度も何度も先送りにされているうちに、自民党の道州制推進本部長から、法案は棚上げする、県は残す、究極の後ろ向き発言が飛び出すありさまであります。

 大阪都構想の意義とともに、東京と大阪という二極による経済成長を目指し、さらには道州制の実現を進めていく、こうした意思があるのかどうか、安倍総理にお伺いをいたしたいと思います。

 このような大改革を安倍政権として断行する意思があるのでしょうか。

 いわゆる第三の矢についてはどうでしょうか。

 安倍総理は、昨年のまさに今ごろ、一月のダボス会議で、こう高らかに宣言しておられます。今後二年間であらゆる岩盤規制を打ち砕く、いかなる既得権益といえども私のドリルからは無傷でいられない。

 一年たちました。どうなっているでしょうか。

 農業改革、農協改革は、佐賀県知事選挙の敗戦によって、出だしからにわかに暗雲が立ち込めています。

 二〇二〇年には完全に競争的な電力市場になると宣言した電力自由化は、肝心かなめの発送電分離の先送りを求める声が電事連会長から早くも上がっています。

 かつて郵政改革の象徴でもあったクロネコヤマトのメール便は、郵便で送るのは許されても、メールで送ると信書とみなされ、利用者が罪に問われかねないケースが相次いでいると、ついにヤマトはメール便のサービス廃止に追い込まれる状況になりました。

 農業改革、電力改革、こうした改革について、新規参入と競争の推進によって既得権益を打破する改革をやり抜く決意かどうか、所管の大臣に伺いたいと思います。

 その上で、第三の矢の岩盤規制の改革について、既得権益の岩盤を打ち破るドリルの刃になる、安倍総理のこの決意が変わっておられないのかどうか、改めてお伺いをいたしまして、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 柿沢未途議員にお答えをいたします。

 ISILの活動する地域における日本人についてのお尋ねがありました。

 シリア全域及びイラクでISILが活動する地域について、政府は退避勧告を発出しており、いかなる邦人に対しても、この地域に入らないよう勧告しています。

 現在、映像が公開された二人のほかに、人質となっている日本人の情報には接しておりません。

 政府としては、今後とも、退避勧告地域に渡航、滞在しようとする邦人の把握に努め、情報を入手した場合には、可能な限り、個別に渡航の中止を働きかけてまいります。

 さらに、政府としては、安全対策連絡協議会の開催等による在留邦人と在外公館との連携強化、退避勧告などの危険情報や在留邦人に対する注意喚起の適時適切な発出、日本人学校の警備強化等により、海外に滞在する邦人の安全確保に万全を期してまいります。

 歳出削減の必要性についてお尋ねがありました。

 今般の予算編成においては、平成二十六年度補正予算において、財源の一部を公債金の減額に充て財政健全化を図るとともに、平成二十七年度予算について、社会保障の自然増を含め聖域なく見直し、歳出の徹底的な重点化、効率化を行ったところです。こうした取り組みもあり、二〇一五年度の財政健全化目標の達成が見込めます。

 二〇二〇年度財政健全化目標についてもしっかりと堅持し、本年の夏までにその達成に向けた具体的な計画を策定いたします。その際、歳出改革については、歳出全般にわたり聖域なく徹底的な見直しを行ってまいります。

 国会議員の定数削減や歳費削減などについてのお尋ねがありました。

 議員の定数、歳費、政治活動の諸経費に関する問題は、議会政治や議員活動のあり方、すなわち民主主義の根幹にかかわる重要な課題であり、国会において国民の代表たる国会議員が真摯に議論を行い、国民の負託にしっかりと応えてまいるべきものと考えています。

 そのため、まずは、各党各会派において議論を深め、国会において合意を得る努力を行わなければならないと考えています。

 公務員の総人件費についてお尋ねがありました。

 国家公務員については、厳しい財政事情に鑑み、職員構成の高齢化等に伴う構造的な人件費の増加を抑制するとともに、簡素で効率的な行政組織、体制を確立することにより、今後とも総人件費の抑制を図ってまいります。

 なお、国家公務員の給与については、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢のもと、昨年夏の勧告に沿って、地域間、世代間の給与配分を見直す給与制度の総合的見直しに取り組んでいるところであります。

 また、地方公務員についても、この趣旨に沿った対応が行われるものと考えています。

 大阪都構想及び道州制についてお尋ねがありました。

 いわゆる大阪都構想は、二重行政の解消と住民自治の拡充を図ろうとするものであり、その目的は重要であると認識しています。政府としては、住民投票において実施の意思が示された場合には、必要な手続を進めてまいります。

 道州制の導入は、地域経済の活性化などを目指し、国と地方のあり方を根底から見直す大きな改革です。与党において、議論を前に進めるべく精力的に検討が重ねられてきており、政府としても、連携を深め取り組んでまいります。

 規制改革への取り組みについてお尋ねがありました。

 大胆な規制改革を断行し、民間のダイナミックなイノベーションの中から多様性あふれる新たなビジネスが生まれる、これは私の成長戦略の鍵です。

 このため、これまで、できるはずがないとされてきた多くの改革を次々と決断してきました。例えば、約六十年間独占が続いてきた電力小売市場の完全自由化、四十年以上続いたいわゆる減反の廃止、六十年ぶりの農協の抜本改革への着手などであります。

 これからも、国家戦略特区制度も活用し、農業、雇用、医療、エネルギーなど、岩盤のようにかたい規制に対し、強い決意を持って改革してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 消費税率一〇%への引き上げについてのお尋ねがあっております。

 平成二十九年四月の消費税率一〇%への引き上げは、社会保障制度を次世代へ引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会からの信認を高めるという観点から、景気判断条項を付すことなく確実に実施することとしたものであります。

 また、引き続き歳出の徹底的な見直しにも取り組むことといたしておりまして、御指摘のような、増税先行で財政再建を目指すという考え方はございません。(拍手)

    〔国務大臣西川公也君登壇〕

国務大臣(西川公也君) 柿沢未途議員の御質問にお答えいたします。

 農業改革についてのお尋ねがありました。

 私は、農政改革は、農家の所得をふやし、農村のにぎわいを取り戻すために行うものと考えており、農林水産業・地域の活力創造プランに基づき、各般の施策を着実に実行してまいります。

 こうした中で、農協改革につきましても、地域の単位農協が主役となって、農産物の有利販売等、農業者の所得向上に全力投球できるようにするため、農業者の視点に立った農協改革を実行してまいります。

 農林水産省としましては、昨年六月の取りまとめに基づき、関係省庁や与党とよく協議しながら、今国会に関連法案を提出してまいる決意であります。(拍手)

    〔国務大臣宮沢洋一君登壇〕

国務大臣(宮沢洋一君) 電力改革をやり抜く決意についてお尋ねがありました。

 電力システム改革は、電気料金の上昇など、直面するエネルギー制約を克服し、低廉で安定的な電力供給を実現するためのものであり、安倍政権の成長戦略の柱の一つであります。

 一昨年に成立した第一弾の改正電気事業法で定められた改革プログラムに基づき、さきの衆議院選挙の政権公約でも掲げたとおり、三段階の電力システム改革を完遂すべく、今通常国会に第三弾となる改正法案を提出する考えであります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 赤羽一嘉君。

    〔赤羽一嘉君登壇〕

赤羽一嘉君 公明党の赤羽一嘉でございます。

 私は、公明党を代表し、平成二十六年度補正予算案に関し、総理並びに関係閣僚に質問させていただきます。(拍手)

 初めに、シリアにおける邦人拘束事案についてお尋ねします。

 今回の事案は、許しがたい暴挙であり、こうした残忍な行為を繰り返すテロ組織を断じて許すことはできず、強く非難いたします。

 政府においては、あらゆる手段を講じて、国際社会との連携を強め、とらわれた邦人の安否確認と早期解放に全力で取り組んでいただきたい。与党としても、政府の対応を全面的に支援するものであります。

 安倍総理の御決意を伺います。

 昨年十二月に行われた衆議院総選挙では、国民の皆様から公明党への多くの御支持を賜り、自民党、公明党の連立与党に対し、引き続き政権を託していただきました。

 この結果は、自公政権、安倍内閣が進めてきた、デフレ脱却を目指しての経済再生、東日本大震災の復興の加速化、社会保障の充実などへの信任であると同時に、諸施策をさらに前に進めよとの国民の皆様の叱咤激励であると重く受けとめております。

 公明党は、こうした国民の皆様の御期待に応えるべく、責任ある政権与党として、「大衆とともに」の結党精神を胸に、生活者の目線に立った施策を断行し、地方経済の活性化や、厳しい経営環境が続く中小企業、小規模事業者の皆様のところにまで恩恵が行き届く経済の好循環の実現に全力を尽くしてまいります。

 政府がこのたび取りまとめた総額三・五兆円規模の地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策は、一、地方創生、二、消費喚起、三、防災・減災、以上三分野において、公明党議員が全国の現場を回りながら聴取してきた要望に応える形での、思い切った対策が用意されたことを評価いたします。

 以下、この三分野について、それぞれ具体的に質問いたします。

 まず、地方創生について伺います。

 現在、多くの地方では、若年層が東京圏に流出し、人口の減少が地域経済の停滞につながり、その結果、生活に必要なサービスの低下や働く場が失われ、さらなる人口減少を招く悪循環に陥っています。

 この悪循環を断ち切るために、一、地方での安定した雇用の創出、二、東京一極集中の是正、三、若者の結婚、出産、子育ての希望の実現、四、時代に合った地域づくりの四つの柱から成る総合戦略の着実な遂行が重要であります。

 補正予算の目玉の自由度の高い地方創生先行型交付金一千七百億円の円滑な実施で、地方版の総合戦略の策定、UIJターンの促進、若者の定着のための地域しごと支援事業の推進など、地方が主体となって、各地の実情に応じて自由に推進していくべきです。

 地方創生を進める上で重要な視点は、地域で暮らし、地域を担っている人が主役だということです。住民がこの地域に住んでよかったと実感できる、人が生きる地方創生の実現が求められております。

 人が生きる地方創生実現に向けての安倍総理の今後の取り組みと御決意をお伺いいたします。

 また、地域経済を支える中小企業、小規模事業者の潜在力を最大限に生かすことも、地方創生の大きな推進力です。

 そのため、産学官と金融機関が連携し、農林水産品や伝統技術・文化等の全国各地に眠る豊富な地域資源をブランド化し、販路開拓までの支援が重要です。

 これまでも、広島県熊野の化粧筆のように、書道用の毛筆を転用して大成功をおさめた例も少なくありませんが、我が国の地方にはまだまだ大きな可能性を秘めた地域資源がたくさんあると認識いたします。

 例えば、世界で最も有名な神戸ビーフは、実は本格的な輸出は始まったばかりで、輸出量も微々たるものであります。我が国の食肉処理施設の整備を進めて、輸出先国の施設認定を取得するなどの対策を国が主導して講じれば、飛躍的な発展が期待できます。

 地域に眠るジャパン・ブランドの世界ブランド化に向けての取り組みに対する安倍総理の見解を求めます。

 また、観光産業の振興は、地方創生を進める上で、大きな力になります。

 訪日外国人旅行者数は、一昨年、初めて一千万人を突破し、昨年は一千三百万人を超え、着実に日本ファンがふえています。私の地元の有馬温泉にも、香港、台湾、シンガポール、タイなどのアジア各地域からのリピーター客がとみにふえております。

 二〇二〇年に二千万人の高みを目指すためには、全国津々浦々、魅力ある各地域へ観光客を呼び込むための戦略的な取り組みや、各国のビザの緩和、撤廃などが非常に重要と考えます。

 太田国土交通大臣の取り組み方針と御決意をお伺いいたします。

 次に、消費喚起について伺います。

 補正予算にある地域消費喚起・生活支援型交付金二千五百億円は、プレミアムつき商品券の発行支援や寒冷地での灯油の購入補助など、地域や事業者の創意工夫を促し、魅力ある地域の再生、消費喚起にとって重要な施策が盛り込まれております。

 内需の喚起の柱として、経済波及効果の大きい住宅市場活性化策は重要です。

 補正予算に計上された住宅ローンの金利引き下げや、省エネ性能のすぐれた住宅の建設、リフォームに対するエコポイント付与制度、そして平成二十七年度税制改正に盛り込まれております親や祖父母からの住宅資金に係る生前贈与の非課税枠の拡大は、大きな消費喚起が期待をされております。

 一方、消費の喚起には、何より実質賃金の上昇が重要です。

 昨年に引き続き、政労使が一致協力し、企業収益の増加を雇用の拡大、賃金上昇へとつなげ、消費、投資の拡大によりさらに企業収益をふやす、そして、下請企業に対する取引価格の適正化などを通じて、経済の好循環を確実なものにする必要があると考えます。

 とりわけ建設業は、長きにわたる公共投資の削減により業界が疲弊し、就業者数は、ピーク時の六百八十五万人から五百万人を割り込むまでに激減しています。

 担い手の確保、育成に向けて、賃金水準の上昇、社会保険の未加入対策、そして、適正な利潤が確保できるよう、ダンピング対策の強化や、発注、施工時期の平準化等の対策が求められます。

 太田国土交通大臣は、就任以来、額に汗して真面目に働く人が誇りを持てる社会が大事だとのかたい信念に基づき、公共工事設計労務単価を数次にわたって見直し、その結果、建設現場労働者の賃金水準は増加基調となり、労働者数も年齢構成も改善の兆しが顕著となっていることは、高く評価されるべきです。

 さらなる担い手の確保、育成が進むよう、労働条件の向上に向けての太田国土交通大臣の取り組みと御決意を伺います。

 次に、防災、減災について伺います。

 六千四百名を超える犠牲者を出した阪神・淡路大震災から、一月十七日で二十年を迎えました。

 この大震災のつらく悲しい教訓を契機に、我が国の防災、復興支援策は、被災者の目線に立ったものに改善され、自助、共助、公助の役割も明確となり、本格的ボランティア支援活動も誕生いたしました。

 例えば、建築物の耐震基準の見直しや耐震補強支援策が着実に前進し、避難所となる全国の学校の耐震化は、平成十四年、公明党の提案で全国の学校の耐震診断を実施、その後、毎年、耐震化の予算が確実に計上され、公立小中学校の耐震化率は、いよいよ平成二十七年度末にはほぼ一〇〇%となります。

 また、私有財産の再形成につながるという理由で断固として認められなかった被災者への現金支給も、私自身、議員立法に取り組ませていただき、結局、十二年間という歳月を費やしましたが、平成十九年、何にでも使える最大三百万円の生活支援金を所得制限なしで支給することができる改正被災者生活再建支援法を制定することができ、東日本大震災の約二十万の被災世帯に総計三千億円を超える生活再建支援金を支給させていただくことができました。

 しかしながら、防災政策に終わりはありません。

 全国各地で激甚化するさまざまな自然災害が多発し、今後も南海トラフ地震や首都直下地震等の巨大自然災害の発生が予想される今こそ、防災・減災等に資する国土強靱化基本法にのっとり、全国全ての地方自治体で、国、地方、民間が一丸となって、地域の実情に合った、ハード、ソフト両面からの事前防災、減災に万全な対策を講じるべきと考えます。

 安倍総理の御見解を求めます。

 また、東日本大震災復興加速化のための与党の第四次提言にあるように、災害被害を最小限度にすることを目的として、災害が起きてから体制を整えるのではなく、平時にあっても、救助、復旧に関する研究、機材の開発、訓練など、事前の備えとして専門家集団を育成し、災害時には、動員、指揮命令できる権限を有する緊急事態管理庁の創設を至急検討するべきです。

 なお、その際、リスクを分散するために、首都圏以外の地域に設置することが重要と考えます。

 安倍総理の前向きな御発言を求めます。

 最後に、東日本大震災からの復興について伺います。

 間もなく、発災から丸四年が経過します。

 平成二十七年度は、集中復興期間の最終年度を迎えます。平成二十八年度以降の国の取り組み姿勢と財源などについて、被災自治体等が安心して復興に取り組むことができるよう、発災から四年を迎える本年の三月十一日までに大枠の方向性を示すことが、被災者に寄り添う政治であると思います。

 被災自治体からも、安倍総理の決断を求められています。答弁をお願いいたします。

 次に、福島の再生について伺います。

 福島第一原発の廃炉・汚染水対策は、国が前面に立つ体制となって以来、四号建屋の使用済み燃料棒の取り出しも予定より早く無事完了するなど、多少の計画の前後はあるものの、着実に安定化しています。

 昨年四月一日には、事故発生後初めて避難指示区域の指定解除が田村市都路地区で実現し、待望のふるさと帰還が開始されています。

 今後の被災者の円滑なふるさと帰還を促進するために、福島復興再生特別措置法の改正及び新たな帰還のための交付金等の創設は欠かせません。地元の要望も十分に踏まえつつ、早期の成立を期待するものであります。

 安倍総理の御答弁を求めます。

 また、ふるさと帰還の促進には、被災地域での新たな雇用の創出と、ふるさとの将来に対する夢と希望が必要です。浜通り地域の将来を描いた福島イノベーション・コースト構想は、被災地の希望のシンボルであります。

 先日、安倍総理のリーダーシップのもと、ロボット革命会議にて、安全な廃炉のための最先端の遠隔操作ロボットや飛行ロボットの開発導入に資する実証実験フィールドを福島県内に設置すること、また、世界じゅうの最先端のロボットを集結させて競い合うロボットオリンピックを二〇二〇年に開催することを決定されたこと、感謝の思いを持って高く評価いたします。

 福島イノベーション・コースト構想の具体化は、かなりの時間を要する大型のプロジェクトであります。どうか安倍総理の強いリーダーシップで本件を推進していただきたいと熱望いたします。

 安倍総理の御決意を伺わせていただきます。

 本年は、日本経済の好循環を実現し、本物の成長軌道に乗せる正念場であります。

 日本の産業を支える中小企業、小規模事業者が元気になり、安定した雇用が生み出され、誰もが将来に夢と希望を持てる社会、高齢者の皆様が安心して暮らせる社会実現のためのまず第一歩として、平成二十六年度補正予算案を早期執行することが肝要であることを再度強調して、公明党を代表しての私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 赤羽一嘉議員にお答えをいたします。

 シリアにおける邦人テロ事件への対応についてお尋ねがありました。

 ISILによる卑劣なテロは、言語道断の暴挙であり、強く非難します。

 政府としては、人命第一の立場に立ち、これまで培ってきたあらゆるチャンネルを最大限に活用し、人質の安否確認及び早期解放に向けて全力を尽くしているところであります。

 私自身、中東訪問中に、また帰国してからも、関係各国の首脳との間で電話会談を行い、情報収集及び早期解放について最大限の協力を要請いたしました。

 極めて厳しい状況ではありますが、関係各国と一層緊密に連携しつつ、人質の早期解放に向け、全力を尽くしてまいります。

 地方創生に向けた決意についてお尋ねがありました。

 地方創生では、人が生きがいを持って生活し、この地域に住んでよかったと実感できる地域社会を目指すことが必要です。

 このため、地方にやりがいのある仕事をつくり、若者や地域内外の有用な人材の地方への移住、定着を促進することが重要です。

 この理念のもと、昨年末策定した国の総合戦略に盛り込んだ施策を活用しつつ、各地域の自由な発想や創意工夫を生かした、人が主役の地方創生の推進を支援してまいります。

 地域資源のブランド化についてお尋ねがありました。

 今回の経済対策において、地域資源を活用したふるさと名物の開発や国内外の販路開拓に取り組む中小企業、小規模事業者を支援するとともに、ふるさと名物商品・旅行券による消費喚起を行うこととしております。

 これに加え、本国会に中小企業地域資源活用促進法の改正法案を提出し、中小企業、小規模事業者による地域資源のブランド化の取り組みを強力に推進してまいります。

 事前防災、減災の必要性についてお尋ねがありました。

 東日本大震災が発生し、首都直下地震や南海トラフ地震の発生が懸念される中、国土強靱化は、我が国にとって焦眉の急であります。

 政府としては、昨年六月に、地方自治体が国土強靱化地域計画を策定するためのガイドラインを示すなど、さまざまな取り組みを行っているところです。

 今後とも、地方自治体等と協力しつつ、ハードとソフトを組み合わせながら、優先順位をつけて、災害に強い国づくりを計画的に進めてまいります。

 緊急事態への対処に係る組織体制についてお尋ねがありました。

 政府の危機管理体制のあり方については、現在、関係省庁の副大臣等による検討会議において精力的に検討を行っているところであります。

 今後、主要各国における危機管理体制も参考にしながら、政府として最も総合力が発揮できる体制について、本年度内を目途に成案を得るべく検討を進めてまいります。

 集中復興期間後の復興への取り組みについてお尋ねがありました。

 これまで、被災者の方々が一日も早く安心して暮らすことができるよう、住宅再建や産業、なりわいの再生などに全力で取り組んでまいりました。

 平成二十六年度補正予算及び平成二十七年度予算においても、復興の加速化を大きな柱の一つと位置づけ、重点化しており、まずは、これらの成立に全力を尽くします。

 集中復興期間が終わっても、私たちは決してとまりません。平成二十八年度以降についても、被災者の方々の心に寄り添い、しっかり対応してまいります。

 福島復興再生特別措置法の改正についてお尋ねがありました。

 住民の方々の帰還を促進するため、環境整備を加速化することが大変重要であると考えます。

 現在、福島県からの要望も踏まえ、当分の間帰還が困難な市町村に復興拠点を整備するための制度や交付金の創設等を内容とする福島復興再生特別措置法の改正法案の策定に向けて、必要な準備を進めています。早期に国会に提出するよう全力を挙げております。

 福島イノベーション・コースト構想についてお尋ねがありました。

 福島の再生に向けて、地域の再生の道筋を示しながら、雇用を生み出す新しい産業基盤を構築し、産業復興を図っていくため、赤羽議員には、原子力災害現地対策本部長として、福島イノベーション・コースト構想を取りまとめていただきました。

 その一環として、先週取りまとめたロボット新戦略においては、福島浜通りにロボットの実証区域を設けることを明記しました。

 本構想は、地元からの期待も強く、絵に描いた餅にならないよう、実現に向けてしっかりと取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣太田昭宏君登壇〕

国務大臣(太田昭宏君) 赤羽議員から、全国各地域に訪日外国人旅行者を呼び込むための取り組みについてお尋ねがございました。

 二〇一四年の訪日外国人旅行者数は千三百四十一万人となりましたが、二千万人達成のためには、現在、いわゆるゴールデンルートや東京周辺に集中している外国人旅行者を、全国津々浦々、各地域へ呼び込む必要があります。

 そのためには、各地域が連携して広域的なルートを形成し、点から線、線から面へとネットワーク化していくことが重要であります。

 また、地酒や和食など、各地域に豊富にある観光資源を徹底的に磨き上げ、日本ブランドとして戦略的なプロモーションにより世界に発信していくことも重要であります。

 あわせて、地方における免税店の拡大や多言語対応の改善強化、無料WiFi環境の整備など、訪日外国人旅行者の受け入れ環境整備のための取り組みが求められます。

 今後とも、こうした取り組みを政府一丸、官民一体となって深度化し、加速化していくことにより、二千万人の達成を実現してまいります。

 次に、建設業において、担い手の確保、育成に向けた労働条件の向上についてお尋ねがございました。

 近年、建設投資が急激に減少する中、地域の建設企業は赤字受注等により経営環境が悪化をし、その結果、技能者の賃金低下や若年入職者の減少等、構造的な問題に直面をしております。

 建設産業の担い手を確保するためには、まずは処遇等の労働条件の向上が不可欠です。

 これまで二度にわたって公共工事設計労務単価を大幅に引き上げてまいりましたが、引き続き、建設労働市場の実勢を反映するため、先日、労務単価の改定を指示したところであります。

 社会保険への加入促進についても、業界団体とともに取り組んでまいります。

 また、将来にわたる建設事業の安定的な見通しを示すことや、誇りを持って仕事に取り組めるようにすることも必要であります。

 今後とも、昨年成立しました改正品確法等の的確な運用とあわせて、建設業における担い手の確保、育成にしっかり取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 穀田恵二君。

    〔穀田恵二君登壇〕

穀田恵二君 私は、日本共産党を代表し、財政演説に関して質問します。(拍手)

 質問に先立って、いわゆるイスラム国を名乗る過激組織による蛮行についてです。

 湯川遥菜さんが殺害されたとする写真がネット上に投稿されています。残虐非道な蛮行に対して、強い憤りを持って非難するものであります。後藤健二さんを直ちに解放することを強く要求するものです。

 政府は、人命最優先で、人質解放のため、あらゆる努力を尽くすよう求めるものであります。

 今国会は、総選挙を受けて初めての論戦を行う国会です。第三次安倍内閣を組閣した総理が、なぜ所信表明演説を行わないのですか。国政に臨む基本姿勢を示すことは、国会と国民に対する当然の責任ではありませんか。答弁を求めます。

 総理は、今回の総選挙で、引き続きこの道を真っすぐ進んでいけと国民から力強く背中を押していただいたと述べています。総理、あなたは、今回の総選挙で国民から白紙委任を受けたと思っているのですか。

 総選挙での自民・公明政権与党の三百二十六という議席は、第一党に四割台の得票で八割近くの議席を与える小選挙区制がつくり出した虚構の多数にほかなりません。比例代表選挙における自民党の得票率は三三%にすぎないのであります。

 消費税の一〇%増税を初め、集団的自衛権の行使、原発の再稼働、TPP推進など、国民の多数が反対している問題を数の力で強行することは、断じて許されません。答弁を求めます。

 沖縄では、昨年の名護市長選挙での稲嶺市長の再選、県知事選挙での翁長候補の勝利、引き続く総選挙で、新基地建設反対を掲げたオール沖縄の候補が全ての小選挙区で勝利しました。沖縄県民は新基地建設ノーの審判を、疑う余地のない明白な形で示したのです。この審判を一顧だにしない政府の姿勢は、およそ民主主義の国とは言えません。

 そもそも、沖縄の米軍基地は、国際法にも違反して無法な土地強奪によってつくられたものであり、無条件に県民に返還されるべきものであります。

 総理、辺野古への新基地建設は直ちに断念すべきです。昨日、沖縄県は、前知事が行った辺野古埋立承認を検証する第三者委員会の設置を発表し、政府に対し、検証作業中の工事の中止を要求しました。あわせて総理の見解を求めます。

 原発問題では、選挙が終わるや、全国の原発を次々に再稼働する動きを強めています。どの世論調査でも、原発再稼働反対の声は過半数に上っています。未曽有の事故から四年がたつというのに、いまだに東京電力福島第一原発事故の原因は究明されておらず、なお十二万人もの方々が避難生活を強いられています。この深刻な事態をそのままにして、経済再生の名で原発の再稼働や海外輸出を進めることは、決して許されるものではありません。

 次に、総理は、この道しかないとアベノミクスを推進しています。大企業を中心に経常利益は過去最高水準となりましたが、そもそも国民生活の実態や日本経済についてどのように認識しているのか、伺います。

 まず、消費税増税の深刻な影響です。

 内閣府が一月十三日に発表した「日本経済二〇一四―二〇一五」、いわゆるミニ経済白書は、消費税率引き上げによる物価の上昇は実質的な所得の減少をもたらし、将来にわたって個人消費を抑制する効果を持つと書いています。さらに、実質所得の減少を通じて、二〇一四年四―六月期から七―九月期にかけて個人消費を合計で一兆円弱程度、いわゆる実質GDPの〇・二%程度を押し下げていると試算されると指摘しています。

 総理、八%への消費税増税がここまで個人消費を冷やしたことをどのように認識していますか。景気への深刻な影響が明らかであっても、二〇一七年四月には消費税を一〇%に引き上げるのですか。一〇%増税は中止すべきです。あわせて答弁を求めます。

 第二に、労働者の置かれている状態です。

 実質賃金は十七カ月連続でマイナスとなり、非正規雇用労働者は史上初めて二千万人を超えました。ミニ経済白書も、非正規雇用労働者の増加が個人消費を落ち込ませ、非正規と正規の格差が拡大していると指摘しています。

 日本共産党は、厳しい経済状況に置かれた国民生活を打開するため、大企業の内部留保の一部を活用し、大幅賃上げで景気回復を図ることを一貫して提案してきました。政治の責任で、中小企業に対して税、社会保険料の減免などの支援を拡充し、最低賃金の抜本的引き上げを図ることが必要です。この方向こそ、今、求められているのではありませんか。

 生涯派遣を進める労働者派遣法の改悪、残業代ゼロ法案など、さらなる雇用破壊はやめるべきであります。

 第三に、日本経済の根幹、中小零細企業の問題です。

 どこへ行っても、中小企業の皆さんから、好循環というが大企業だけだ、我々には恩恵は全くないという声を聞きます。中小企業団体は、既にアベノミクス不況だとまで言っています。

 製造業を中心に、円安がもたらす原材料とエネルギーコスト上昇の影響をまともに受けています。消費税増税分と物価上昇分を価格に転嫁できず、中小零細企業は困難に追い込まれています。

 大企業の法人税は二年間で一兆六千億円も減税しようとしながら、その穴埋めとして、資本金が小さい中小企業や赤字企業にまで外形標準課税を押しつけようとするのは本末転倒です。

 中小企業の振興なくして日本経済と地域経済の再生はないのではありませんか。見解を伺います。

 第四に、社会保障の問題です。

 政府は、年金給付を物価下落分以上に引き下げることや、後期高齢者医療保険料の軽減措置の廃止、入院給食費値上げ、介護報酬引き下げ、生活保護予算の削減など、手当たり次第に切り下げています。消費税増税は社会保障のためといいながら、国民に際限なく負担増を押しつけ、社会のセーフティーネットを破壊するものです。こうした社会保障の大改悪の中止を求めるものであります。

 国民生活と日本経済のどの問題を見ても、総理が進めようとしている道は、国民が求める方向に逆行するものです。日本経済を国民の暮らし第一に根本から切りかえ、応能負担の原則に立って、富裕層と大企業に応分の負担を求めるなど、消費税に頼らない別の道をとることを強く求めるものであります。

 さらに、政治の姿勢が問われている災害の問題です。

 総理は、東日本大震災について、復興を加速すると言っています。東日本大震災から四年、今なお多くの被災者が避難生活を強いられています。全ての被災者の生活となりわいが再建されるまで、国が責任を果たすべきです。そのためには、生活再建支援法の抜本的拡充は不可欠です。

 ことしは、阪神・淡路大震災から二十年です。借り上げされた復興住宅からの追い出し、災害援護資金の返済で苦しめられている、こうした現実を総理は御存じなのでしょうか。

 被災者が一日も早く自立したもとの生活を取り戻すため、必要な支援を行うことが政治の責任であり、大震災の被災者に新たな苦難を押しつけることは、政治のやるべきことではありません。総理の見解を求めます。

 最後に、ことしは戦後七十年の節目の年であります。あの戦争で三百十万人の日本国民、二千万人を超えるアジア諸国民が犠牲になりました。侵略戦争と植民地支配の反省の上に、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、日本国憲法を確定したのであります。これが、戦後政治の出発点、原点であります。

 この憲法の平和主義を守り抜くことこそ、日本が、アジアと世界で信頼され、真の友好を実現する道であることを強調し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 穀田恵二議員にお答えいたします。

 所信表明演説についてお尋ねがありました。

 経済の再生、復興、社会保障改革、教育の再生、地方創生、女性が輝く社会の実現、そして外交、安全保障の立て直し、私たち自由民主党と公明党は、さきの総選挙において、これらの課題に精いっぱい取り組んでいくことを訴えました。その結果、この道を真っすぐに進んでいけと、国民の皆様から力強く背中を押していただきました。第三次安倍内閣は、その負託に全力で応えていく決意であります。

 こうした基本姿勢のもと、経済最優先で取り組み、アベノミクスの成果を全国津々浦々に届けるため、まずは平成二十六年度補正予算を一刻も早く成立させていただくことを願う次第であります。

 演説も含めた国会の具体的な日程については、こうした政府の考え方を尊重いただき、院において御判断いただいたものと理解しております。

 なお、内閣の施政全般に係る基本方針については、平成二十七年度本予算の提出に際して明らかにしたいと考えております。

 総選挙結果の受けとめと政策実行に係る政治姿勢についてお尋ねがありました。

 今回の総選挙では、再び連立与党で三分の二を上回る議席をいただくことができました。選挙で国民の皆様に訴えた公約を実現していく大きな力をいただくことができたと考えております。

 そもそも、選挙の結果が白紙委任であるはずがありません。それぞれの政党が公約を掲げ、それを踏まえて国民が政権選択をした結果であります。ですから、政権与党には、その国民への約束を一つ一つ実現していく責任があります。

 私たち自民党は、御指摘のあった、消費税、安全保障政策、エネルギー政策、そしてTPPについても、その考え方を公約に明確に掲げております。そして、選挙戦を通じ、報道各社のインタビューやテレビでの党首討論などで説明してまいりました。

 今後も、国会審議などを通じ、国民の皆さんに私たちの考え方を丁寧に説明し、御理解を得るべく最大限の努力を続けながら、一つ一つの政策を確実に実現してまいりたいと考えております。

 沖縄における選挙の結果及び普天間の辺野古への移設についてお尋ねがありました。

 選挙の結果については、いずれも真摯に受けとめたいと思います。

 最も大切なことは、住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間の固定化は絶対に避けなければならないということです。これが大前提であり、かつ政府と地元の皆様との共通認識であると思います。

 辺野古への移設は、米軍の抑止力の維持と普天間の危険性除去を考え合わせたとき、唯一の解決策です。この考え方に変わりはありません。

 これは、現在の普天間を単純に辺野古へと移す計画ではありません。普天間が有する三つの機能のうち、辺野古に移るのはオスプレイなどの運用機能のみです。空中給油機は、既に全機、山口県岩国基地へ移りました。緊急時の航空機受け入れ機能も本土へ移します。また、オスプレイの県外訓練等も着実に進めています。

 埋め立て面積は、全面返還される普天間の三分の一以下です。

 飛行経路は、市街地の上空から海上へと変更されます。これにより、住宅防音が必要な一万以上の世帯数がゼロとなります。

 このように、辺野古への移設は、沖縄の負担軽減に十分資するものであります。負担軽減に取り組む政府の姿勢が民主主義に反するとは考えていません。

 沖縄県による第三者委員会の設置については、詳細を承知していないので、コメントは差し控えたいと思います。

 政府としては、地元の皆様の御理解を得ながら、普天間の一日も早い返還に向け、安全に留意しながら、着実に移設を進めてまいります。

 原発の再稼働と海外輸出についてお尋ねがありました。

 原発については、痛ましい原発事故により、福島を初め多くの方々に多大な御迷惑をおかけしています。復旧復興はいまだ道半ばであり、原発への反対の声があるのは当然のことと思います。

 他方で、原発が全てとまり、これに伴う燃料輸入増により、毎日百億円もの国富が海外に流出しています。電力料金が上昇し、国民や中小・小規模企業の方々への影響は大きなものとなっています。また、温室効果ガスの排出量は震災前に比べて大幅に増加しています。

 こうしたことを考えると、国民生活や産業活動、中小・小規模事業者を守り、責任あるエネルギー政策を実現するためには、原発ゼロというわけにはいきません。

 原子力政策の推進に当たっては、福島第一原発事故を片時も忘れず、事故を真摯に反省し、いかなる事情よりも安全性を最優先させることとしております。

 原子力規制委員会が科学的、技術的に世界で最も厳しいレベルの安全審査基準に適合すると判断した原発について、地元の理解を得ながら再稼働を進めてまいります。

 また、福島第一原発事故の経験から得られた教訓を国際社会と共有することで世界の原子力安全の向上に貢献することは我が国の責務であり、相手国の事情や意向を踏まえつつ、安全性の高い原子力技術を提供してまいります。

 消費税率引き上げについてお尋ねがありました。

 三本の矢の政策により、有効求人倍率は二十二年ぶりの高水準、平成二十六年の賃上げ率は過去十五年間で最高、企業の経常利益は過去最高水準となるなど、経済の好循環は生まれ始めています。

 他方、昨年四月の消費税率引き上げが個人消費に影響を及ぼしたのも事実であり、アベノミクスの成功を確かなものとするため、一〇%への引き上げを十八カ月延期することとしました。

 平成二十九年四月の一〇%への引き上げを確実に実施するため、経済運営に万全を期し、経済再生と財政健全化の両立を目指してまいります。

 賃上げや雇用についてお尋ねがありました。

 政労使会議で賃上げをお願いした結果、昨年の春闘では、賃上げ率が過去十五年で最高となりました。また、昨年の政労使会議では、経済界の皆さんに、賃上げに向けた最大限の努力と、取引企業の仕入れ価格の上昇等を踏まえた価格転嫁といった取り組みに合意していただきました。

 最低賃金についても、この二年、大幅な引き上げを行ってきたところであり、こうした賃上げの流れを継続させ、経済の好循環を全国に届けてまいります。

 また、提出を検討中の労働者派遣法改正案は、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップを支援するものであり、生涯派遣を進めるものでは全くありません。

 労働時間制度の見直しは、ワーク・ライフ・バランスの観点から、働き過ぎを是正するとともに、多様で柔軟な働き方を進めるため検討を進めているものであり、残業代ゼロとは全く異なるものであります。

 法人税改革と中小企業の振興についてお尋ねがありました。

 今回の法人税改革において、御指摘の外形標準課税の拡大は資本金一億円以下の中小企業を対象外としており、大企業の減税を中小企業の増税で穴埋めするとの御指摘は当たりません。

 また、中小・小規模事業者は、地域の経済と雇用を支える重要な存在です。経済の好循環の波を全国津々浦々までお届けし、景気回復を実感していただけるよう、中小・小規模事業者の支援に万全を期してまいります。

 社会保障についてお尋ねがありました。

 消費税率の引き上げは、社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡し、子育て支援を充実していくためのものであります。その増収分は全額社会保障の充実、安定化に充てられ、社会保障給付として国民に給付されます。

 消費税率の八%への引き上げにより、平成二十六年度において、子育て支援や難病対策などの施策を実施しております。平成二十七年度予算案ではさらに、本年四月からの子ども・子育て支援新制度の予定どおりの施行、認知症施策等の推進、国民健康保険の財政基盤の強化などの施策を実施することとしています。

 これらにあわせて、社会保障制度を持続可能なものとしていくため、負担能力に応じて公平に負担いただくとともに、例えば保険料等への影響も考慮して介護報酬を設定するなど、必要な給付が適切に行われるよう制度の重点化、効率化を行うことが必要と考えております。

 社会保障の財源のあり方についてお尋ねがありました。

 世界に誇る社会保障を次の世代に引き渡すため、その安定財源の確保は喫緊の課題です。

 その財源としては、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定していること、勤労世代など特定の者への負担が集中しないことから、消費税がふさわしいと考えております。

 震災被災者への支援についてお尋ねがありました。

 借り上げ期間の終了する阪神・淡路大震災の災害公営住宅に住む被災者の方々や、災害援護資金を借り受けながら経済的事情から返済できていない被災者の方々を含め、被災者の生活支援について、個々の状況を踏まえ、関係自治体と連携しながら全力で取り組んでまいります。

 一方、被災者生活再建支援制度の拡充については、他の制度とのバランス、国や都道府県の財政負担などを勘案して、慎重に検討すべきものと考えます。

 戦後七十年を迎えるに当たっての見解についてお尋ねがありました。

 さきの大戦では、たくさんの先人たちが、祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながらお亡くなりになられました。そのとうとい犠牲の上に、私たちの現在の平和があります。

 戦後七十年の間、日本は、さきの大戦の深い反省とともに、ひたすらに自由で民主的な国家をつくり上げ、アジアや世界の友人たちの平和と発展のために、できる限りの貢献を行ってまいりました。

 この平和国家としての歩みは、これからも決して変わりません。その上に立って、次なる八十年、九十年、そして百年に向けて、日本は、国際協調主義に基づく積極的平和主義のもと、アジアや世界の平和と安定のため、より一層貢献を行っていく所存であります。(拍手)

副議長(川端達夫君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(川端達夫君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣     麻生 太郎君

       総務大臣     高市 早苗君

       法務大臣     上川 陽子君

       外務大臣     岸田 文雄君

       文部科学大臣   下村 博文君

       厚生労働大臣   塩崎 恭久君

       農林水産大臣   西川 公也君

       経済産業大臣   宮沢 洋一君

       国土交通大臣   太田 昭宏君

       環境大臣     望月 義夫君

       防衛大臣     中谷  元君

       国務大臣     甘利  明君

       国務大臣     有村 治子君

       国務大臣     石破  茂君

       国務大臣     菅  義偉君

       国務大臣     竹下  亘君

       国務大臣     山口 俊一君

       国務大臣     山谷えり子君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

       財務副大臣    菅原 一秀君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  横畠 裕介君


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