衆議院

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第22号 平成27年5月12日(火曜日)

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平成二十七年五月十二日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十六号

  平成二十七年五月十二日

    午後一時開議

 第一 水銀に関する水俣条約の締結について承認を求めるの件

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 水銀に関する水俣条約の締結について承認を求めるの件

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 水銀に関する水俣条約の締結について承認を求めるの件

議長(大島理森君) 日程第一、水銀に関する水俣条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長土屋品子君。

    ―――――――――――――

 水銀に関する水俣条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔土屋品子君登壇〕

土屋品子君 ただいま議題となりました水銀に関する水俣条約につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本条約は、平成二十五年十月に熊本で開催された外交会議において採択されたもので、水銀の人為的な排出等から人の健康及び環境を保護することを目的として、水銀の規制等について定めるものであります。

 その主な内容は、

 締約国は、本条約が自国について効力を生じた日以降、新規鉱山からの水銀の一次採掘を許可してはならないこと、

 締約国は、原則として、水銀の輸出を許可してはならないこと、

 締約国は、金採掘における水銀の使用及び排出等を削減し、実行可能な場合には廃絶するための措置をとること

等であります。

 本件は、去る四月二十二日に外務委員会に付託され、二十四日に岸田外務大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。次いで、五月八日に質疑を行い、質疑終局後、採決を行った結果、全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣塩崎恭久君。

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 労働者派遣制度は、我が国の労働市場の中で、労働力の迅速かつ的確な需給調整を行うという重要な役割を果たしています。

 一方で、業務単位で期間制限を設けている現在の制度はわかりにくいとの指摘もなされており、労使双方にとってわかりやすい制度とするとともに、派遣労働が雇用と使用の分離した形態であることに伴う弊害を防止する必要があります。

 このため、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方のもとに新たな期間制限を設けることとするほか、労働者派遣事業の質の向上を図り、派遣労働者の正社員化を含むキャリア形成を支援する等の仕組みを設けることで、派遣労働者のより一層の雇用の安定、保護等を図ることとし、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の主な内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の区別を廃止し、労働者派遣事業を全て許可制とすることとしております。

 第二に、厚生労働大臣は、労働者派遣法の規定の運用に当たり、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方を考慮しなければならないものとするとともに、業務単位の期間制限を廃止し、同一の派遣労働者に係る期間制限及び派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの期間制限の二つの期間制限を設けることとしています。また、派遣元事業主は、同一の派遣労働者に係る期間制限の上限に達する見込みがある派遣労働者に対して、派遣先への直接雇用の依頼等の雇用の安定を図るための措置を講じなければならないこととしております。

 第三に、派遣元事業主は派遣労働者に対し、計画的な教育訓練等の実施や均衡待遇を確保するために考慮した内容について説明をしなければならないこととするとともに、派遣先は、賃金の情報提供、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用に関して配慮しなければならないこととしております。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、平成二十七年九月一日としております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。高鳥修一君。

    〔高鳥修一君登壇〕

高鳥修一君 自由民主党の高鳥修一でございます。

 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、質問をいたします。(拍手)

 二年前に安倍政権が発足して以来、三本の矢の経済政策は確実に成果を積み重ね、我が国の経済は復活の兆しを見せ始めております。

 安倍政権の成長戦略の柱の一つに、雇用制度改革があります。

 日本が再び力強く成長するためにも、若者、女性、高齢者、障害者等の活躍の機会を確保し、あらゆる人が、働くことで生きがいを感じられる、柔軟かつ多様な働き方のできる社会の実現が求められています。

 今回の労働者派遣法改正案も、この取り組みと合致するものであり、何としても今国会において成立させるべき重要な法案であると認識をいたしております。

 まず、改正の経緯についてお伺いいたします。

 今回の改正案については、労働者派遣の受け入れ期間に関する上限規制、いわゆる期間制限を撤廃するものであり、派遣の固定化が進むという批判がされています。

 しかし、そもそも、この改正は何のためにやっているのでしょうか。

 今回の改正案は、平成二十四年、民主党政権による前回の改正案成立時に、民自公三党の共同提案による附帯決議、念のため申し上げますと、いわゆる専門二十六業務に該当するかどうかによって派遣期間の取り扱いが大きく変わる現行制度について、派遣労働者や派遣元、派遣先事業主にわかりやすい制度となるよう、速やかに見直しの検討を開始することとの決議に忠実に従い、業務区分による期間制限を廃止し、全ての業務について一律に期間制限を課すというわかりやすい制度に見直そうとするものであります。

 このように、今回の改正案の根本は、与野党間で幅広いコンセンサスを得て付された前回改正時の附帯決議に導かれたものであり、それ以上でも以下でもない、至極当然なものだと考えますが、改正経緯について、このような理解でよろしいか、厚生労働大臣の御答弁をお願いいたします。

 次に、今国会で改正法案が成立しない場合の問題点について伺います。

 本年十月から、派遣先が一定の違法派遣を受け入れた時点で、派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申し込みをしたものとみなす労働契約申し込みみなし制度が施行されます。

 現在の期間制限は、違法派遣に該当するかどうかがわかりにくく、現行制度のまま労働契約申し込みみなし制度が施行されると、例えば、速記者に、速記ではなくテープ起こしを三年を超えてさせていた場合などは期間制限違反になりますが、そのことを認識していない派遣先に対して労働契約申し込みみなし制度が適用されるリスクがあります。このリスクを回避するために、派遣労働者の受け入れを十月一日より前に停止する雇いどめが生じる可能性も否定できません。

 雇用の現場にこのような混乱が生じることのないよう、労働契約申し込みみなし制度が施行される前に、期間制限をわかりやすく整理することが必要だと考えます。この点について、改正内容と大臣の認識をお伺いいたします。

 次に、生涯派遣という批判について伺います。

 このような改正経緯にもかかわらず、今回の改正案については、あたかも期間制限が撤廃され、それにより個人が派遣という働き方に固定化されるかのような批判がなされています。

 しかし、今回の改正案は、現行制度と比較して、果たして本当にそのようなものなのか。一方的にレッテルを張るのではなく、まず内容を冷静に分析し、虚心坦懐に議論することこそが、私たち国会議員に求められているのではないでしょうか。

 現行制度では、いわゆる専門二十六業務に従事する約四割の方は期間制限の対象外となっており、既に、今でも、一定の派遣労働者はずっと派遣で働くことになります。

 加えて、専門二十六業務以外の業務に従事する方についても、課がかわればどころか、所属する係さえかわれば、同じ派遣先で引き続き派遣が可能であり、今でも実質的に上限なく派遣することが可能なのです。つまり、生涯派遣という懸念は以前からあったのです。

 現行制度を冷静に分析すれば、今回の改正により生涯派遣に道を開くわけではなく、現行制度の懸念を踏まえた上で、期間制限を改善することにより、派遣という働き方への固定化を防止することを目的としたものであることがわかります。

 現行の問題点を踏まえ、今回の改正案がどのように対応しているのか、厚生労働大臣の御答弁を求めます。

 最後に、派遣労働者の保護、処遇改善について伺います。

 政府がなすべきことは、派遣労働者の保護を進めるとともに、希望に応じた働き方の実現を支援することだと思います。

 今国会への提出に当たっては、派遣就業が臨時的、一時的なものであるという原則的な考え方を法を運用する際の考慮事項として求めるほか、派遣労働者の雇用安定措置についても、派遣先への直接雇用の依頼を法律に格上げするなど、より一層の配慮がなされたものと理解しております。

 今回の改正案は、派遣労働者の雇用の安定、保護の観点から、必要な規制の強化を図り、正社員を希望する方にはその道を開いていくものと理解しておりますが、そのような理解でよろしいか、総理の御答弁を求めます。

 派遣で働く人々が、それぞれ希望する働き方で働くことにより、生きがいを持って活躍できる社会を築いていくため、引き続き、我が党としても全力を尽くしてまいります。

 政府においても、今回の改正案の意義や狙いを、よりわかりやすく国民に語りかけ、御理解をいただくようお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 高鳥修一議員にお答えをいたします。

 派遣労働者の雇用の安定、保護等についてのお尋ねがありました。

 一般に、派遣という働き方は、賃金水準が正社員に比べ低い傾向にあり、雇用の安定やキャリア形成が図られにくい面があります。

 このため、今回の改正案では、正社員を希望する派遣労働者について、その道が開けるようにするため、派遣元の責任を強化し、派遣期間が満了した場合、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置や、派遣期間を通じた計画的な教育訓練を新たに義務づけるなど、派遣就労への固定化を防ぐ措置を強化することとしています。

 また、みずからの働き方として派遣を積極的に選択している方については、賃金等の面で派遣先の責任を強化するなど、待遇の改善を図ることとしています。

 さらに、一部届け出制となっている労働者派遣事業を全て許可制とするなど、派遣労働者の保護の観点から必要な規制の強化を図ってまいります。

 安倍内閣としては、こうした仕組みを通じ、働く方それぞれの選択がしっかり実現できるような環境を整備してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 高鳥修一議員から、三点お尋ねを頂戴いたしました。

 まず、今回の改正案の経緯についてのお尋ねがございました。

 議員御指摘のとおり、今回の労働者派遣法改正案は、平成二十四年改正法に係る民自公三党共同提案によります附帯決議を踏まえ、公労使の代表から成る労働政策審議会における議論を経て提出したものでございます。

 具体的には、平成二十四年改正の際の附帯決議を踏まえ、わかりにくいとの指摘がある現行の期間制限について、労使双方にとってわかりやすい制度となるよう見直しすることとしております。

 労働契約申し込みみなし制度について、混乱のおそれと今回の改正法との関係等についてお尋ねがございました。

 議員御指摘のように、労働契約申し込みみなし制度については、業務単位で分かれている現行の期間制限のあり方がわかりにくいため、意図せずにこの制度が適用されるのではないかといった懸念が関係者の間にあることを承知しております。

 政府としては、雇用の現場の混乱を避けるためにも、今回の労働者派遣法の改正法案により、期間制限をよりわかりやすい制度に見直し、労働契約申し込みみなし制度を円滑に施行したいと考えております。

 生涯派遣との批判と今回の改正案の趣旨についてのお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、現行の期間制限では、いわゆる二十六業務については期間制限がなく、いわゆる二十六業務以外についても、事業所全体では規制がないことから、派遣で働く方の所属する係を変更することにより、期間制限の上限に達した後でも引き続き派遣で働く同じ方を同じ事務所で受け入れることが可能となっております。

 これに対して、今回の改正法案では、派遣の受け入れを事業所単位で原則三年とするとともに、派遣で働く方が望まずに派遣という働き方に固定されるのを防ぐため、同じ派遣労働者の同じ職場への派遣について、三年を上限とする個人単位の期間制限を新たに課すこととしております。

 派遣で働く方個人に着目した場合、改正案は、少なくとも課を変更しなければならず、現行より厳しいものとなるため、生涯派遣に道を開く法案であるとの指摘は当たりません。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 大西健介君。

    〔大西健介君登壇〕

大西健介君 民主党の大西健介でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました労働者派遣法について質問いたします。(拍手)

 冒頭、先月二十五日にネパールで起きた地震では、死者が八千人を超えるなど甚大な被害が出ています。心からお見舞いを申し上げますとともに、東日本大震災で世界各国から支援を受けた我が国としても、できる限りの支援を行うことを皆様とともに確認したいと思います。

 また、この連休中、多くの閣僚が海外出張を行いましたが、訪米中の安倍総理は、アメリカ議会での演説の中で、安全保障関連法案をこの夏までに成立させると表明をしました。法案提出すらされていない段階で成立時期を外国で約束するなど前代未聞であり、国会軽視です。改めて総理の説明を求めます。

 安倍政権は、世論の強い反対や条文ミスなどで二度も廃案となり、呪われた法案と言われている労働者派遣法改悪法案を性懲りもなく再提出するだけでなく、過労死促進法案ともいうべき内容の残業代ゼロ法案、さらには、金さえ払えば不当解雇が合法化されてしまう解雇の金銭解決制度導入という悪の三点セットを強行しようとしています。

 また、このうち、残業代ゼロ制度の年収要件について、塩崎大臣は四月二十日の経営者の朝食会で、あたかも小さく産んで大きく育てるかのように、ぐっと我慢していただいて、とりあえず通すことだと発言したことが明らかになりました。

 法案が通れば対象を拡大するので、経済界にはそれまで静かにしておいてほしいというのは、国民を欺こうとする発言であり、そのような発言を行う大臣のもとでは、派遣法を初めとする今後の労働法制に関する審議を行うことはできません。大臣に発言の正式な撤回と謝罪を求めます。

 このたびの法改正によって、人さえかえればどんな業種でも無期限に派遣労働者の受け入れが可能となれば、これまで正社員が行っていた仕事も派遣社員に切りかえられ、生涯派遣で低賃金の派遣労働者がふえることは間違いありません。

 総理は、これまで、国会で繰り返し、派遣労働者をふやすべきではないと答弁されています。

 一方で、今回、法案には、正社員が減り、派遣労働者がふえた場合の見直し規定が追加されました。とりあえずやってみて、実際に正社員が減り、派遣労働者がふえた場合には見直しを行うというのでは、余りにも無責任ではないでしょうか。疑念がある以上、法案を撤回すべきであります。

 また、追加で検討規定を加えたということは、やはり政府自身が、本音では、今回の法改正で派遣労働者がふえることを認めている証左ではないでしょうか。改めて、総理の明確な答弁を求めます。

 また、派遣労働者は、年齢が上がっても賃金が上がらないどころか下がる場合も多く、四十代、五十代では同年代の全労働者の賃金の約半分の水準となっていること、その結果、派遣労働者と正社員の既婚率を比較すると、倍以上の開きがあることがわかっています。さらに、派遣労働者の育児休業の取得率は、正社員の十分の一にとどまっています。

 この点、派遣労働者をふやすことは、明らかに少子化対策に逆行します。総理の見解を求めます。

 連合総研の調査によれば、非正規労働者の三人に一人が、自分の賃金収入が世帯収入の約半分以上を占める主たる稼ぎ手という実態があります。この現実を重く受けとめ、均等待遇については、調査研究するなどとお茶を濁している場合ではなく、今すぐ法制化をすべきです。

 この点、私たちは、昨年、維新の党などと野党四党で、同一労働同一賃金法案を衆議院に提出いたしました。

 EU指令には均等待遇が明記をされており、派遣労働は一時的、臨時的な働き方であるという原則とともに、派遣法制における国際標準となっています。

 しかし、本改正案はそのどちらも確保されておらず、国際的にも恥ずかしい内容のものとなっています。

 均等待遇が徹底されていれば、正社員と同じ賃金に派遣会社へのマージンが加わり、本来、派遣先が派遣労働者を使うことは割高になるはずです。その結果、派遣労働者を安価な労働力として利用することの抑制にもなります。

 厚生労働省は、EUと日本では賃金事情が異なり、均等待遇は困難としていますが、実は、韓国や中国でさえ、均等待遇を法律で定めています。韓国や中国でできていることがなぜ我が国にできないのか、総理の明確な答弁を求めます。

 リーマン・ショック後の派遣切りや年越し派遣村が大きな社会問題になったことを反省し、労働者保護のための法改正を行ったはずなのに、なぜ派遣労働者をふやそうとするのか。今、法改正を行う必要性、緊急性はないはずであります。

 ところが、厚生労働省は、十・一問題という説明ペーパーまで作成し、本法案を十月一日までに成立させないと大変なことになると吹聴して回っています。

 十月一日になると、二〇一二年の法改正で創設された労働契約申し込みみなし制度が施行されます。現行制度のままこの制度が適用されると、各派遣社員の業務が専門二十六業務に該当する適法な派遣かどうかについて、派遣社員と派遣先で争いが起きて訴訟が乱発されるという、経済界等の懸念があるというのです。

 また、この説明ペーパーでは、このままでは派遣先が派遣の受け入れをやめ、全体の四二%、約五十万人の大量の失業者が出ると不安をあおっています。

 しかし、実際には、明確な専門二十六業務に従事している派遣労働者が多数で、問題になり得る業務についても、ほとんどの企業はこの三年間の猶予期間に対応を済ませており、大量の失業者が出る事態は起こり得ません。内容は虚偽であり、悪質なプロパガンダです。

 問題のペーパーの作成責任者は誰なのか、厚労省の正式な文書なのか、また、全体の四二%、約五十万人の受け入れを派遣先がやめる結果、大量の派遣労働者が失業する可能性があるという記述は厚労省の公式見解なのか、以上三点について明確な答弁を求めます。

 もし、答えられない、あるいは公式見解でないとすれば、この文書は虚偽の内容の怪文書ということになります。国会での法案審議入り前に、虚偽の内容の怪文書を厚労省が配付して根回しを行っていたとすれば、前代未聞であります。その場合どう責任をとるつもりか、大臣の明確な答弁を求めます。

 さらに、違法派遣を合法化してほしいという経済界の不純な要望に応えるのが本改正案の目的だとすれば、盗人たけだけしいというのはこのことであります。総理の見解を求めます。

 私は、そもそも、法案の提出に至る過程に大きな疑問を抱いています。

 二〇一三年八月に出された厚労省の研究会報告書は、その直前に日本人材派遣協会がまとめた報告書の内容どおりとなっています。

 また、派遣業界代表者二名がオブザーバーとして労働力需給制度部会の議論に参加をしていました。当事者の意見を聞くだけならヒアリングを行えば済むはずなのに、直接の利害関係者を議論に参加させる必要があったのでしょうか。

 一方で、田村前厚生労働大臣は、派遣業界からの政治献金を受けていました。

 労政審の建議の中には、当部会の運営について、直接の利害関係を有する派遣元事業主が非常に多くの発言を行う等、委員以外の構成員と委員の発言機会のバランスに懸念があったと、異例の記述が残っています。

 さらに、私は、厚生労働委員会において、労働者保護ルールの改悪を推進する産業競争力会議の議員が会長を務めている大手人材派遣会社の接待施設に、当時、派遣会社を指導監督する立場の厚労省の現職大臣だった田村前大臣が行っていたことも明らかにしました。

 業務区分に関係なく、三年ごとに人を入れかえれば、どんなに長期間であっても派遣受け入れを可能にし、特定派遣の規制強化で中小派遣事業者の淘汰と大手人材派遣事業者への寡占化を進める改正案の内容は、労働移動支援助成金の大幅な拡充と相まって、大手人材ビジネス産業の利益のためではないかと疑念を抱かざるを得ません。この点、総理から、反論があればいただきたいと思います。

 ことし一月、厚労省の派遣法担当課長が、人材派遣業界の新年賀詞交歓会で、派遣労働は物扱いだったと挨拶をいたしました。

 派遣労働者を物扱いするような制度をつくり、これまで三十年以上運用してきたのはどこの誰なのか。担当課長の他人事のような発言には強い怒りを禁じ得ません。

 派遣労働者を物扱いすることは、今回の法改正によっても何も変わらないどころか、さらに物扱いを固定化し、一生派遣の労働者はむしろふえると思いますが、総理、いかがでしょうか。

 一方で、この発言は、ある意味、労働者派遣制度の本質的な問題を言いあらわしていると思います。会社によっては、正社員の人件費は人事部で管理し、固定費とみなしていますが、派遣費用は物件費として扱い、購買部で管理をしています。つまり、人件費ではなく物件費であり、それゆえに削減の対象となりやすいのです。

 また、派遣労働が非正規雇用の中でもとりわけ問題なのは、間接雇用という解雇しやすい雇用形態だからです。

 舛添都知事は、厚労大臣当時に衆議院の予算委員会で、他人に首切りさせる、それが派遣業なわけですと答弁しました。つまり、派遣とは、人にやめてもらうという一番嫌な仕事をアウトソーシングしているわけです。

 一定期間一緒に仕事をしてきた人間に直接やめてほしいと言うことは、心理的な抵抗があります。しかし、派遣なら、派遣元に一本電話をすれば済んでしまいます。この点、間接雇用である派遣労働者は、非正規雇用の中でも解雇されやすく、特に問題が多いことを総理はお認めになりますでしょうか。

 派遣労働者は解雇されやすいからこそ、本法案では雇用安定化措置が定められています。

 しかし、このうち、派遣先での正社員登用は、クライアントである派遣先に派遣元が強く物を言えないため期待できず、全く実効性がありません。

 次に、みずからのコストとなる派遣元での無期雇用の可能性も低く、結局は、新たな派遣先の紹介くらいしかできないと思われます。

 派遣先の紹介は派遣業の本来業務であり、これが果たして雇用安定化措置と言えるのか。法改正は、政府の言うように派遣労働者の正社員化や待遇改善につながるどころか、ますます正社員になりにくくなる法改正と考えますが、総理、いかがでしょうか。

 前回、本法案が廃案となったのは、塩崎大臣が法案の内容を十分に理解しておらず、五回も誤った答弁を繰り返したためでした。

 法案では、三年を超えて同一の事業者で派遣労働者を受け入れる場合に、過半数労働組合等からの意見聴取を行い、意見があった場合には対応方針等を説明しなければなりませんが、了解が得られなくても、説明さえすればよいという仕組みになっています。

 しかし、大臣は、厚労委員会で、過半数組合の了解を得なければならないと間違った答弁をしました。大臣も本音では、過半数組合が大反対でも、それを無視して派遣期間を延長できるという法案はおかしいと考えているのではないでしょうか。答弁を求めます。

 本法案を含め、安倍政権では、労政審での労使の合意のないまま一方的に法案を提出する手法が横行しています。

 ワークルールの変更は公労使三者構成の審議会での合意を前提とするというILOの基本原則を安倍政権が無視していることに対する総理の答弁を求めます。

 働く者や若者を犠牲にして、企業が一番活動しやすい国をつくろうとすることが、どうして成長戦略なのでしょうか。

 皆さん、御自身のお子さんやお孫さんが正社員になりたくてもなれない世の中をつくってよいのでしょうか。若者に安定雇用を与えることが政治の責任であるはずなのに、正社員になれず一生派遣で働く若者をふやす法改正は間違っています。

 私たちは、そのような派遣法改悪は断固として阻止することを申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 議員諸君に申し上げたいと思います。

 活発な議論は議長も望むところでございますが、答弁者に発言が聞こえないような不規則な発言は厳に注意をしていただきたいと思います。

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 大西健介議員にお答えをいたします。

 米議会での私の演説における、平和安全法制の成立時期に関する発言についてお尋ねがありました。

 今般、米国上下両院の合同会議における演説で、平和安全法制の成立をこの夏までにと申し上げ、私の決意をお示しいたしました。これは初めて申し上げたのではなく、昨年来、記者会見や国会答弁の中で、今通常国会での成立を図るとの私の決意を繰り返し申し上げてきております。

 そもそも、平和安全法制は、平成二十四年の総選挙以来、これまで三回の選挙で常に公約に掲げ、一貫して訴えてきた課題であります。特に、さきの総選挙では、昨年七月一日の閣議決定に基づき、平和安全法制を速やかに整備することを明確に公約として掲げ、国民の皆様の審判を受けました。

 法整備の方針を閣議決定した上で、選挙において速やかに整備することを公約した以上、選挙直後の今通常国会においてその実現を図ることは、当然のことであります。

 このため、昨年十二月二十四日、総選挙の結果を受けて発足した第三次安倍内閣の組閣に当たっての記者会見において、平和安全法制は通常国会において成立を図る旨申し上げ、国民の皆様に私の決意をお示しいたしました。

 そして、さらに、本年二月の衆議院本会議において、二度にわたり、今国会における成立を図る旨答弁をいたしております。

 米議会での演説においても、改めてこのような私の決意を申し上げたものであり、国会軽視との御指摘は全く当たらないものと考えています。

 派遣労働者数の動向等を踏まえた検討規定についてのお尋ねがありました。

 今回の改正案では、派遣元に対し、計画的な教育訓練を新たに義務づけるなど、希望する派遣労働者の正社員化を進めることとしています。

 しかしながら、派遣労働者数の変動については、景気や雇用失業情勢のほか、多様な働き方を希望する労働者の意向など、さまざまな要因の影響を受けるものであり、予想することは困難です。このため、施行後のいかなる状況にも対応できるよう、必要に応じて検討を行うこととしたものであります。

 改正案と少子化対策の関係についてお尋ねがありました。

 若い世代の結婚、子育ての希望をかなえるためには、安定的な経済的基盤の確保が必要です。

 このため、今回の改正案では、派遣元の責任を強化し、派遣期間が満了した場合、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置や、派遣期間を通じた計画的な教育訓練を新たに義務づけるなど、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップを支援することとしています。

 これらを通じ、働き方にかかわらず、安心して家庭を持つことのできる環境の整備に取り組んでまいります。

 均等待遇についてのお尋ねがありました。

 同一労働に対し同一賃金が支払われるという仕組みは、一つの重要な考え方と認識しています。

 しかし、ある時点で仕事が同じであったとしても、さまざまな仕事を経験し責任を負っている労働者と経験の浅い労働者との間で賃金を同一にすることについて、我が国で直ちに広い理解を得ることは難しいものと考えています。

 このため、改正案では、賃金、教育訓練及び福利厚生の面で派遣先の責任を強化するなど、まずは派遣先の労働者との均衡待遇を進めることとしています。

 また、諸外国における均等待遇の制度や運用状況等については不明な点も多いことから、均等・均衡待遇の確保のあり方について検討するため、EU諸国のほか韓国などを含め、調査研究に取り組んでまいります。

 経済界の要望等についてお尋ねがありました。

 平成二十四年の法改正により、派遣先において、派遣受け入れ期間の制限に反するなど違法な派遣の受け入れがある場合に、その派遣労働者に直接雇用の契約を申し込んだものとみなす制度が設けられ、本年十月からの施行が予定されています。

 他方、現行制度では、専門二十六業務について派遣受け入れ期間の制限対象から除外していますが、対象業務に該当するかどうかわかりにくい等の課題があるため、改正案では、現行の期間制限を廃止し、全ての業務に適用されるわかりやすい仕組みを設けることとしています。

 これは、平成二十四年改正の際の自公民三党の合意を踏まえたものであり、違法派遣を合法化してほしいという要望に応えるとの御指摘は当たりません。

 大手人材ビジネス産業との関係についてお尋ねがありました。

 今回の改正案は、業務単位の期間制限を廃止し、全ての業務に適用されるわかりやすい仕組みを設けるとともに、一部届け出制となっている労働者派遣事業を全て許可制とするなど、派遣労働者の保護の観点から必要な規制の強化を図るものです。

 また、労働移動支援助成金は、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者の再就職を支援するため、拡充したところです。

 こうした仕組みを通じ、働く方の選択がしっかり実現できる環境を整備することとしており、大手人材ビジネス産業の利益のための改正との御指摘は、これも全く当たりません。

 一生派遣の労働者がふえるのではないかとのお尋ねがありました。

 現行制度では、期間制限の上限に達した派遣労働者への対応策がなく、雇用が不安定になっているという課題があることから、今回の改正案では、派遣元の責任を強化し、派遣期間が満了した場合、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置や、派遣期間を通じた計画的な教育訓練を新たに義務づけるなど、派遣就労への固定化を防ぐ措置を強化することとしています。

 したがって、物扱いを固定化し、一生派遣の労働者がふえるとの御指摘は不適切であり、全く当たっていません。

 派遣労働者の解雇の問題についてのお尋ねがありました。

 一般に、派遣という働き方は、派遣期間が終了すればそのまま職を失うこともあるなど、雇用の安定が図られにくい面があります。

 このため、今回の改正案では、派遣元の責任を強化し、派遣期間が満了した場合、派遣先に直接雇用を依頼するなど、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする雇用安定措置を新たに義務づけることとしています。

 また、平成二十四年の法改正において、派遣先の都合による労働者派遣契約の中途解除に当たっては、派遣先に対し、新たな就業機会を確保する等の義務を設けたところであります。

 雇用安定措置についてのお尋ねがありました。

 一般に、派遣という働き方は、派遣期間が終了すればそのまま職を失うこともあるなど、雇用の安定やキャリア形成が図られにくい面があります。

 このため、今回の改正案では、派遣元の責任を強化し、派遣期間が満了した場合、派遣先に直接雇用を依頼するなど、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする雇用安定措置を新たに義務づけることとしています。

 また、派遣先についても、直接雇用の依頼があった派遣労働者に対し、労働者の募集に関する情報を提供するなど、新たな義務を課すこととしています。

 さらに、一部届け出制となっている労働者派遣事業を全て許可制とし、雇用安定措置を講じない派遣元に対しては厳正な指導等を行い、義務の履行をしっかりと確保していくこととしています。

 労働政策審議会での合意についてのお尋ねがありました。

 政府としては、公労使から成る労働政策審議会の審議を経て雇用政策に関する法案を提出しており、ILOの三者構成の原則を無視しているとの御指摘は当たりません。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 大西健介議員から、三点お尋ねを頂戴いたしました。

 朝食会での発言についてのお尋ねでございます。

 四月二十日の日本経済研究センター主催の朝食会では、私は原稿なしで話したものでございまして、また、記録を残していない会合であって、具体的な発言内容の一字一句までは記憶をしておりません。

 ただ、御指摘のような内容は私の真意とは異なっており、私が申し上げたかったことは、企業経営者の中には、高度プロフェッショナル制度を小さく産んで大きく育てたいとお考えの向きもあるかもしれないが、そうした発想は変えていただきたい、法案の国会審議を控え、高度プロフェッショナル制度の対象範囲が狭過ぎる、対象を拡大すべき等の声が経営者側から上がれば、審議にも影響しかねないので自制していただきたいということでありました。

 このため、私の発言について、撤回も謝罪も行うつもりはございません。

 法案施行日の補足説明用に担当課が作成をしたペーパーについてのお尋ねがございました。

 このペーパーは、法案担当課において、法案の施行日の説明を行う際の補足資料として作成されたものであり、議員から個別に施行日に関する御質問があった場合などに、必要に応じて使用されたと聞いております。

 あくまで補足的な説明を行うために使用すること自体は問題がないと考えておりますけれども、説明に必要がない表現や客観性を欠いた表現が散見されることから、私の責任により、これらを見直し、省として改めて法案の早期成立の必要性を整理し、省としての正式なペーパーを作成させたところでございます。

 過半数組合等への意見聴取についてのお尋ねがございました。

 今回の改正案では、派遣先で正社員が派遣で働く方に代替されることを防ぐため、派遣先に対し、事業所単位の期間制限を課し、三年を超えて派遣で働く方を受け入れようとする場合には、過半数労働組合等からの意見聴取を新たに法的に義務づけることとしております。

 さらに、意見聴取の際の反対意見に対する対応方針の説明、意見聴取等の記録の事業所内での周知を新たに法的に義務づけるなど、実質的な労使間の話し合いを担保する仕組みを設けることとしており、派遣先が労働者側の意見を尊重することが期待されるため、歯どめ効果があるものと考えてございます。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 井坂信彦君。

    〔井坂信彦君登壇〕

井坂信彦君 維新の党の井坂信彦です。

 維新の党を代表して、派遣法に関して質疑をいたします。(拍手)

 今回の法改正には、さまざまな規制緩和と規制強化がまざっています。許可制の一般労働者派遣事業と届け出制の特定労働者派遣事業を許可制に一本化したり、専門二十六業務と自由化業務を一本化するなど、継ぎはぎだらけだった複雑な制度をシンプルにまとめた、評価できる点もあります。

 それでは、なぜ派遣法改正が後半国会の対決法案と呼ばれるのか。

 その理由は、今回の法改正を経ても、派遣法には三つの懸念が残るからであります。

 一つ目は、望まない派遣労働者の雇用枠がふえるのではないかという懸念、常用代替防止の問題です。二つ目は、派遣労働者の低賃金、低待遇が続くのではないかという懸念、同一労働同一賃金の問題です。三つ目は、派遣労働者の雇用は極めて不安定なままではないのかという懸念、雇用安定化措置の問題です。

 本日は、まず、労働法制に関する政府の基本的な考え方から伺います。

 総理は常々、多様な働き方を求める労働者のニーズに応えると答弁をしておられます。しかし、非正規も含めた多様な働き方が存在するだけでは、ライフスタイルに合わせて労働者が働き方を自由に選べることにはなりません。

 会社をやめる人が一定数存在して、やめた社員の穴を埋めるために正社員の求人も非正規の求人も常に一定数あるという状況でなければ、働き方の選択肢は事実上ないに等しいわけであります。

 労働市場の流動性を高めることについては、賛否両論あります。流動か安定かの二者択一ではなく、会社に人生を縛られないための流動性という考え方もあります。

 一方で、人生の途中で働き方を選び直すということは、一時的に失業することでもあり、手厚い失業給付と、そして短期間で次の仕事につける強力な再就職支援をセットで考えなければいけません。

 政府は、労働市場の流動性を高めるべきだと考えているのか否か、総理に伺います。

 衰退産業から成長産業への労働移動という業界をまたいだ流動性だけでなく、業界内の正社員同士の流動性、また正社員から非正規、非正規から正社員への双方向の流動性についても、それぞれ答弁を求めます。

 次に、派遣を含めた非正規労働がふえる理由について伺います。

 日本では、非正規労働がふえている理由は、労働者が望んでいるからではなく、企業側が正社員より非正規を好んで雇いたがるからであります。非正規労働者は正社員に比べて安く雇えて解雇もしやすいとなれば、企業側の経営判断が非正規をふやす方向に傾くのは避けられません。

 正社員と非正規の賃金格差については、後ほど質問をいたします。

 企業が派遣を初めとする非正規を雇いたがることと、日本の労働法制における正社員の解雇規制との関係について、総理の見解を伺います。

 一方で、非正規を望んで続けている労働者も一定数存在します。

 その理由は、働く時間や場所が限定されている、自分の専門業務だけができるなどとされ、残業や転勤が多く、業務範囲が際限なく広がる正社員の問題と裏表の関係にあります。

 職務やポストにひもづけられるいわゆるジョブ型雇用ではなく、とにかく会社に所属して何でもやるというメンバーシップ型雇用、無限定正社員とも呼ばれる日本の正社員のあり方について、総理の問題意識を伺います。

 続いて、今回の法改正における三つの懸念の一つ目、望まない派遣労働者の雇用枠がふえるのではないか、常用代替防止の問題に入ります。

 これまで、専門二十六業務を除き、派遣先企業が、ある業務に三年間派遣労働者を配置したら、その業務には四年目以降は派遣労働者を配置してはいけないという期間制限がありました。

 今回の法改正で、派遣先企業は、労働組合や従業員代表の意見さえ聞けば、同じ業務に六年でも九年でも派遣労働者の配置を延長できるようになります。反対意見があっても対応方針さえ説明すれば延長可能、従業員代表の選び方の問題や、派遣業者に無期雇用されている派遣労働者は対象外になるなど、期間制限の事実上の撤廃と言える法改正です。

 一方で、改正案は昨年秋から修正され、新たに、派遣は臨時的、一時的なものであるという原則が明記されました。これは、派遣先企業から見て派遣労働者の使い方が臨時的、一時的という意味も含むと、既に厚生労働大臣から答弁を得ています。

 この仕組みでなぜ、派遣先企業による派遣労働者の利用が臨時的、一時的と言えるのか、期間制限の緩和と今回新たに追加された原則の矛盾について、総理の答弁を求めます。

 派遣先企業から見た期間制限は緩和されましたが、新たに設けられた個人単位の期間制限により、有期雇用の派遣労働者は三年ごとに必ず職場をかわらなければならなくなりました。これまで期間制限のなかったソフトウエア開発技術者やアナウンサーでも、三年で別の部署か別の会社に再度派遣されることになります。

 派遣労働者を一つの派遣先に固定しない方がキャリアアップにつながるんだと大臣は説明をされます。しかし、三年で必ずいなくなる派遣労働者に、派遣先企業が業務の本質的な技能を教えることはなく、派遣先が三年ごとにころころかわると、かえって派遣労働者の技能が向上しないおそれがあります。

 個人単位の期間制限があっても、派遣先企業は三年ごとにAさん、Bさん、Cさんと人をかえて、同じ業務に派遣労働者を配置し続けることができるので、常用代替防止の役には立ちません。

 個人単位の期間制限は、こうして考えると、一体誰にどのようなメリットがあるのか。派遣先企業、派遣業者、そして派遣労働者のそれぞれのメリットについて、大臣に伺います。

 懸念の二つ目は、派遣労働者の低賃金、低待遇が続くのではないかという同一労働同一賃金の問題です。

 政府や派遣業者が正社員化を進めても、同一労働同一賃金が実現しないまま派遣先企業が派遣の雇用枠をふやし続ける限り、望まない派遣労働者はふえます。今回の法改正は、一生派遣の若者がふえると批判をされています。

 そこで総理に伺いますが、今回の法改正を経て、仮に一生派遣でも、結婚して、一家の大黒柱として家計を支え、子供を育てることができるようになるのか、それとも、一生派遣では結婚も子育ても経済的に難しいので、一生派遣はあってはならないと考えているのか、それぞれ答弁を求めます。

 派遣労働者も正社員と同じ業務なら同等の賃金が得られるという同一労働同一賃金について、維新の党は昨年秋に議員立法を提出し、本会議でも委員会でも再三質疑をしてまいりました。しかし、答弁はいつも、重要な考え方だが、日本の雇用慣行など乗り越えるべき課題があり難しいでとまっております。

 難しい課題を乗り越えて、同一労働同一賃金の実現を目指すとはっきり言っていただけませんでしょうか。総理の明快な答弁を求めます。

 ことしの予算委員会で、維新の党代表の江田憲司議員に対する答弁で、同一労働同一賃金について諸外国の制度を調査すると約束してくださったのは、一歩前進と評価をしております。

 一方で、職務で賃金が決まるジョブ雇用ではなく、能力、経験、勤続年数で賃金が決まるメンバーシップ型雇用である日本の雇用慣行に課題があることは、政府も答弁で認めているところであります。

 調査だけでなく、既に明らかなこれらの課題に対して、例えば職務定義に基づくジョブ型雇用契約を推進するなど、具体的な解決策を実行すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 また、派遣業者が派遣先企業に余りにも安過ぎる派遣料を提示すると、それに連動して派遣労働者の賃金も下がってしまい、同一労働同一賃金に逆行することになります。

 派遣業者による過剰な値下げ競争の問題点について、総理の見解を伺います。

 今回の法改正における三つ目の懸念は、派遣労働者の雇用は極めて不安定なままではないのかという雇用安定化措置の問題です。

 派遣業者は、まず、派遣労働者を派遣先企業に直接雇ってもらえるように依頼することが義務づけられます。しかし、この仕組みの実効性には疑問があります。派遣業者にとっては、優秀な派遣労働者を手放すのはビジネス上の大きな損失です。派遣労働者が派遣先企業に直接雇用されるとき、派遣業者も得をする明快なインセンティブ、動機づけが必要です。

 派遣業者が職業紹介の許可を受ける以外にどのような工夫が考えられるのか、大臣の答弁を求めます。

 派遣業の特徴は、複数の派遣先企業とジョブ型雇用の契約を結び、企業を超えて職務そのものに値段をつける機能があることです。さらに、派遣先企業に直接雇用を求める機能が十分に発揮されれば、派遣労働者と正社員の賃金も徐々に近づいていきます。

 派遣業が媒介となって、同一労働同一賃金を意識した企業横断型のジョブ型賃金体系をつくるビジョンはあるか、総理の見解を伺います。

 労働法制の改革に当たっては、派遣労働者も含め、一人一人がしっかり稼いで豊かな人生を送れる国を目指さなければいけません。

 維新の党は、イデオロギーにとらわれず、新しい社会制度を提案し、その実現に向けて行動し続けることをお誓い申し上げ、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 井坂信彦議員にお答えをいたします。

 労働市場の流動性についてお尋ねがありました。

 安倍内閣においては、働く方の自発的な意思に基づく労働移動を支援するとともに、成熟産業から成長産業に円滑に人材が移動する、失業なき労働移動の実現を基本方針としております。その上で、異業種間か同業種内かにかかわらず、労働移動を円滑化する取り組みを進めてきたところです。

 非正規雇用の方については、勤務時間の自由度が高いなどのメリットがある一方、正規雇用に比べて雇用が不安定、賃金が低いといった課題があるため、今回の改正案やキャリアアップ助成金などにより、希望する方の正社員化に向けて取り組みを促進してまいります。

 非正規雇用についてのお尋ねがありました。

 非正規労働については、ワーク・ライフ・バランスの観点等から、みずからの働き方として選択する方がある一方、企業でも必要な労働力を迅速に確保できるなど、労使双方のニーズにより増加してきた側面があります。

 また、最近では、高齢層の雇用確保措置や、景気回復に伴いパートで働き始める方の増加といった要因も考えられます。

 なお、解雇については、労働契約法において、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上ふさわしいと認められない場合は無効とすると定められており、このルールは、非正規雇用労働者にもひとしく適用されるものです。

 仮に解雇をめぐる紛争が生じれば、このルールのもとで、働き方の実態に即して司法判断されることとなりますが、いずれにしても、雇用の安定に課題のある非正規雇用労働者については、キャリアアップ助成金の活用などにより、しっかりと対応してまいります。

 正社員のあり方についてのお尋ねがありました。

 我が国の労働市場が抱える課題の一つに、雇用が安定し賃金も高いが、働き方の拘束度が高いなどの課題がある正社員と、柔軟な働き方ではあるが、雇用が不安定で賃金が低いといった課題のある非正規雇用労働者という、働き方の二極化があると認識しています。

 この二極化を解消し、雇用形態にかかわらず安心して働くことのできる環境を整備するためには、勤務地や職務を限定した正社員など、多元的な働き方の普及を図っていくことが重要な方策の一つであり、このため、多様な正社員制度を導入する企業への助成等を実施しています。

 また、働き過ぎの防止も重要な課題であり、過重労働等が疑われる企業への監督指導の強化を図っているところです。

 期間制限の見直しについてお尋ねがありました。

 今回の改正案では、業務により異なる現行の期間制限を廃止し、全ての業務を対象として、派遣労働者ごとの個人単位で、同じ職場への派遣は三年を上限とし、延長できない、ただし、派遣先の事業所単位で、受け入れ期間の上限を三年とした上で、延長する場合には、現場の実態をよく知る過半数労働組合等からの意見聴取を義務づけるといった、二つの期間制限を設けることとしています。

 また、意見聴取について、反対意見があったときには、事前に対応方針を説明するなど、労使間で実質的な話し合いができる仕組みをつくることとしています。

 このように、派遣の受け入れは、原則、臨時的、一時的なものに限ることとしています。

 派遣労働者の家計についてのお尋ねがありました。

 まず、今回の改正案は、派遣就労への固定化を防ぎ、正社員を希望する派遣労働者についてその道が開けるようにするものであり、御指摘のような一生派遣をふやそうとするものではありません。

 また、ワーク・ライフ・バランスなどの観点から、派遣という働き方をみずから選択する方については、賃金、教育訓練及び福利厚生の面で派遣先の責任を強化するなど、待遇改善を図ってまいります。

 このように、働く方それぞれの選択がしっかり実現できるような環境を整備してまいります。

 同一労働同一賃金を目指すべきとのお尋ねがありました。

 同一労働に対し同一賃金が支払われるという仕組みは、一つの重要な考え方と認識しています。

 しかし、ある時点で仕事が同じであったとしても、さまざまな仕事を経験し責任を負っている労働者と経験の浅い労働者との間で賃金を同一にすることについて、直ちに広い理解を得ることは難しいものと考えています。

 このため、改正案では、賃金、教育訓練及び福利厚生の面で派遣先の責任を強化するなど、まずは派遣先の労働者との均衡待遇を進めることとしています。

 また、均等・均衡待遇の確保のあり方について検討するため、均等待遇の原則が適用されている諸外国の制度や運用状況等に関し、調査研究に取り組むこととしています。

 同一労働同一賃金の実現に向けた解決策やビジョンについてお尋ねがありました。

 労働者派遣は、仕事の内容が派遣契約等で明確になっており、賃金等も通常それに対応するものであることから、均等待遇の前提となる職務給に適した面もあると考えられます。

 しかしながら、我が国では、能力や経験など、さまざまな要素を考慮して働く方の処遇が決定される職能給が採用されていることが多く、直ちにそうした派遣先の労働者との間で賃金を同一にしていくことは困難であると考えます。このため、今回の改正案では、賃金、教育訓練及び福利厚生の面で派遣先の責任を強化するなど、まずは均衡待遇を進めることとしています。

 同一労働同一賃金への課題の解決に向けて今後具体的な検討を行っていくためにも、諸外国において均等待遇の前提となる職務給が広く普及している背景を含め、まずは詳細な調査研究を進めていく必要があると考えています。

 派遣会社の競争と派遣労働者の賃金についてのお尋ねがありました。

 契約自由の原則のもと、派遣料金は基本的に派遣会社と派遣先との間で決定されるべきものですが、それによって派遣労働者の待遇が低く固定されるようなことがあってはなりません。

 このため、今回の改正案では、賃金等の面で派遣先の責任を強化するなど、派遣労働者の待遇改善を図るとともに、派遣会社による計画的な教育訓練を新たに義務づけるなど、キャリアアップを支援することとしています。

 こうした取り組みを通じ、派遣会社の競争によって派遣労働者の待遇が犠牲になることがないよう取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 井坂信彦議員から二点頂戴をいたしました。

 今回の個人単位の期間制限を設ける目的についてのお尋ねがございました。

 今回の改正案では、派遣で働く方の同じ職場への派遣は、三年を上限として、節目節目でキャリアを見詰め直す機会を設けることとしており、派遣元が実施する計画的な教育訓練等と相まって、派遣で働く方のキャリアアップの契機としていただくこととしております。

 また、わかりにくいとの指摘がある現行の期間制限について、わかりやすい制度となるよう見直すことは、派遣元、派遣先の双方にとってメリットがあると考えております。

 派遣労働者の直接雇用に関する派遣元への動機づけについてのお尋ねがございました。

 今回の改正案では、派遣元に対し、同じ職場で三年派遣で働いた方が引き続き就業することを希望する場合の派遣先への直接雇用の依頼を含む雇用安定措置を新たに法的に義務づけております。

 政府としては、今回の措置に加え、予算措置として、派遣で働く方を正社員として雇用した場合のキャリアアップ助成金の拡充、派遣契約に、派遣先が派遣終了時に直接雇用する場合に派遣元に紹介手数料を支払う旨の規定等を盛り込むことの義務づけを通じて、派遣先及び派遣元に対して直接雇用の動機づけを行い、派遣で働く方の派遣先における正社員採用や直接雇用を後押ししていきたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 伊佐進一君。

    〔伊佐進一君登壇〕

伊佐進一君 公明党の伊佐進一です。

 公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 派遣労働者の方々が、正社員を望むなら、キャリアアップ支援などの措置によって正社員への道を開き、また、もし派遣という形態を選択するのであれば、労働者としてその権利が十分に守られるようにする、これが重要なポイントです。また、そのためには派遣業界の健全化も求められており、本法案においては、派遣事業を全て許可制にし、許可取り消しを含めた厳格な制度に変わります。

 こうした点において、今回の法改正は、派遣労働者の雇用安定と正社員化に向けた大きな一歩であると思います。まず、改めて、本法案の目的と意義について総理に伺います。

 一方で、本法案が一生涯派遣となる生涯派遣法だとの批判もあります。

 正社員を望む派遣労働者にとって最も不安定な状況の一つは、有期の雇用が繰り返される状況です。契約期限が近づくたびに、次は契約が更新されるのか、さらに次は大丈夫かと、常に不安の中で働いています。この不安定な状態に固定される有期雇用への固定化では、全く将来が見えません。こうした現状こそが、生涯派遣という批判に当たるものと思われます。

 正社員を目指す派遣労働者においては、まずは、少なくとも、この有期雇用の反復という状態から抜け出すための支援が必要です。

 労働契約法においては、有期契約から無期契約への転換が規定されています。また、我々公明党も、有期労働契約から、より雇用の安定した、期間の定めのない労働契約に転換していくことを目指しています。

 そこで、厚生労働大臣に伺います。

 生涯派遣という批判もありますが、今回の法改正は、正社員を希望する人にとっては、有期から無期への転換というステップも含めて、ゴールとしての正社員化を目指すものと理解していますが、いかがでしょうか。

 次に、派遣期間について伺います。

 現行制度においては、派遣として同じ仕事に携われるのは、原則一年、最長でも三年です。しかし、これまでは、係さえかえれば、同じ職場、同じ個人でも、派遣を繰り返すことが認められておりました。しかも、その場合、過半数組合等への意見の聴取すら必要ありませんでした。また、三年の派遣期間の途中で交代した場合、新たに雇われた派遣労働者は、その残りの期間しか働けないという制度になっておりました。

 しかし、今回の法改正では、初めて派遣労働者個人に焦点が当たり、個人単位の期間制限が設けられることになりました。同じ個人が同じ課の中で異動しても、延長は認められません。事業所内で課を超えて大きく異動したとしても、過半数労働組合等への意見聴取の義務が課されています。

 このように、派遣労働者個人に着目し、個人単位の期間制限など、派遣労働者個人の固定化を避けるために一歩進んだものとなっていると思われますが、厚生労働大臣の明快な答弁を求めます。

 現在、専門的業務である二十六業務には、派遣の期間制限が設けられておりません。改正案においては、専門的業務という判断基準が曖昧であったため、この二十六業務を廃して、全ての業種に一律に期間制限を設けることとしています。これに対して、安定的な二十六業務の雇用を不安定にするものだという批判がございます。

 しかし、そもそも、この二十六業務の見直しについては、平成二十四年、派遣法改正時における附帯決議に基づいて行われるものであり、その附帯決議は、当時の与党民主党を初め、自民党、公明党ほか、多くの会派の賛成を得て、衆参両院で付されたものです。

 派遣労働者の観点からいえば、現在の二十六業務に該当し、派遣の期間制限を受けない労働者は、全体の四割です。しかし、制限がないからといって、実際に無期雇用されている労働者は一七%しかおりません。期間制限がないにもかかわらず有期雇用が繰り返されている方々に対して、きちんとした措置を設けることが求められています。

 そこで、厚生労働大臣に伺います。

 今回の二十六業務の撤廃は、企業にとってわかりやすいだけではなく、こうした派遣労働者にとってもメリットがあるものと言えるのか、見解を伺います。

 派遣労働が臨時的かつ一時的な働き方だということは、これまでの派遣法の原則でもありました。今回の法改正でもその原則は変わるものではなく、むしろ、前回提出の法案に書き加えられる形で、派遣就業が臨時的かつ一時的なものであるとの規定が初めて法文上に明記されました。

 改めて、派遣労働が臨時的かつ一時的なものであることを原則として初めて明記した趣旨について、厚生労働大臣に所見を伺います。

 均等待遇、均衡待遇について伺います。

 均等待遇への考え方については、これまでの法案審議において、政府側から累次示されてきております。総理の答弁においては、同一労働同一賃金が保障される仕組みをつくることは重要な考え方とした上で、均等待遇の実現には、我が国の労働市場においては乗り越えていくべき課題があると述べられ、まずは均衡待遇を目指すとしています。

 今回の法案の附則においては、前回から修正が加えられ、均等・均衡待遇について検討するため、調査研究その他の必要な措置を講ずると明記されました。

 均等待遇、すなわち同一価値労働において同一賃金が保障されるとの考え方は、派遣労働者かどうかだけではなく、正規か非正規かも含めて、雇用形態によって左右されないことが重要であり、これが目指すべき雇用の形であると考えます。

 今後、均等・均衡待遇についてもしっかりと調査研究を進めていただき、我が国が目指すべき労働市場、雇用制度を議論していただきたいと思いますが、総理にその決意を伺います。

 公明党青年委員会は、これまでも、現場を走り、働く若者の声に耳を傾けてまいりました。二十八万六千人へのアンケート調査をもとにしたワーク・ライフ・バランスに関する提言、また、全国で青年市民相談会を五十回以上開催し、多くの若者の声を聞いて青年政策アクションプランを作成するなど、現場の声を予算編成や制度の拡充、法改正につなげています。

 これからも、地域社会の中で働く一人一人の声を大切にしながら、そこに寄り添い、着実に雇用環境の改善に取り組んでいく決意を申し述べ、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 伊佐進一議員にお答えをいたします。

 法案の目的と意義についてお尋ねがありました。

 一般に、派遣という働き方は、賃金水準が正社員に比べ低い傾向にあり、雇用の安定やキャリア形成が図られにくい面があります。

 このため、今回の改正案では、正社員を希望する派遣労働者について、その道が開けるようにするため、派遣元の責任を強化し、派遣期間が満了した場合、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置や、派遣期間を通じた計画的な教育訓練を新たに義務づけるなど、派遣就労への固定化を防ぐ措置を強化することとしています。

 また、みずからの働き方として派遣を積極的に選択している方については、賃金等の面で派遣先の責任を強化するなど、待遇の改善を図っていきます。

 安倍内閣としては、こうした仕組みを通じ、働く方それぞれの選択がしっかり実現できるような環境を整備してまいります。

 均等・均衡待遇についてお尋ねがありました。

 同一労働に対し同じ賃金が支払われるという仕組みは、一つの重要な考え方と認識しています。

 しかし、ある時点で仕事が同じであったとしても、さまざまな仕事を経験し責任を負っている労働者と経験の浅い労働者との間で賃金を同一にすることについて、直ちに広い理解を得ることは難しいものと考えています。

 このため、今回の改正案では、賃金、教育訓練及び福利厚生の面で派遣先の責任を強化するなど、まずは派遣先の労働者との均衡待遇を進めることとしており、これらを通じ、派遣で働く方の待遇改善を図ってまいります。

 また、均等・均衡待遇の確保のあり方について検討するため、均等待遇の原則が適用されている諸外国の制度や運用状況等に関し、調査研究に取り組んでいくこととしており、この旨を法案に規定しています。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 伊佐進一議員から、四点質問を頂戴いたしました。

 今回の法改正の目的についてが第一番目でございます。

 今回の法改正は、派遣で働く方の一層の雇用の安定、保護等を図り、正社員を希望する方にはその道を開いていくものでございます。

 具体的には、派遣会社に対して計画的な教育訓練やキャリアコンサルティングの実施を、派遣先に対して正社員の募集情報の提供をそれぞれ義務づけ、正社員を希望する方が正社員となれるような環境を整備してまいります。

 また、委員御指摘のとおり、正社員化へのステップの一つとして、派遣で働く方の無期雇用化を進めるため、無期雇用派遣を期間制限の例外とすることで、そのインセンティブを高めることとしております。

 労働者派遣法改正案における期間制限等についてのお尋ねがございました。

 今回の改正案では、派遣労働への固定化を防ぐため、派遣で働く方について、同じ職場への派遣は三年を上限とする個人単位の期間制限を新たに課すこととしております。

 このため、同じ派遣先において引き続き同じ派遣で働く方を受け入れるためには、少なくとも、派遣で働く方の所属する課を変更しなければならなくなることから、現行より厳しいものとなっております。

 さらに、派遣元には、希望に応じたキャリアコンサルティングや、計画的な教育訓練の実施が義務づけられているほか、派遣先も正社員化推進措置を講ずることとされており、こうした取り組みを通じて、派遣労働への固定化を防ぎ、正社員を希望する派遣労働者について、その道を開いてまいります。

 いわゆる二十六業務の撤廃についてのお尋ねがございました。

 現行の労働者派遣法では、派遣先での受け入れについて、専門的な業務であるいわゆる二十六業務を除き、最長三年という期間制限を設けていますが、いわゆる二十六業務の専門性が時代により変化する、対象業務に該当するかどうかわかりにくいといった課題が指摘をされております。

 このため、今回の改正案では、業務による期間制限の区分を見直し、派遣労働者個人単位と派遣先事業所単位の二つの期間制限に見直し、労使双方にとってわかりやすい制度としております。

 こうした見直しにより、派遣で働く方についても、節目節目で自身のキャリアを見詰め直していただき、キャリアアップの契機としていただくとともに、派遣労働への固定化を防止していくこととしております。

 派遣労働を臨時的かつ一時的と明記したことについてのお尋ねがございました。

 平成二十六年一月の労働政策審議会の建議では、派遣労働を臨時的、一時的な働き方と位置づけることを原則とするとともに、派遣労働の利用を臨時的、一時的なものに限ることを原則とすることが適当とされました。

 法律上の規定の有無によらず、建議を踏まえた改正後の法律の運用に当たっては、派遣は臨時的、一時的という考え方を踏まえた運用を行うことが求められているものと理解をしておりますが、今回、法律に派遣は臨時的、一時的という文言を規定することにより、その趣旨がより明確になるものと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 堀内照文君。

    〔堀内照文君登壇〕

堀内照文君 私は、日本共産党を代表して、労働者派遣法改正案について質問します。(拍手)

 安倍総理は、戦後以来の大改革などと称して、正社員ゼロ、労働者の使い捨て、長時間労働の押しつけとさらなる過労死を生み出す残業代ゼロ制度など、雇用の破壊を進めようとしています。その最初の具体化がこの派遣法改悪です。

 昨年秋の臨時国会で、総理は、派遣法改正案の質疑の際、我が党の高橋千鶴子議員の質問に答えて、全ての人々が生きがいを持って働くことができる環境をつくっていくと述べました。

 ならば、なぜ、労働法制を、打破すべき岩盤規制と呼ぶのですか。労働法制とは、本来、人間らしく働ける環境をつくるためにあるのであって、拡充こそすれ、規制打破の対象とはなり得ないではありませんか。総理の基本的な認識を伺います。

 ことしは戦後七十年です。軍国主義を一掃し、日本国憲法のもとで新しい歩みを始めた国会は、戦前にはなかった労働者を保護する法整備を進めてきました。その一つ、労働基準法は、その第六条で中間搾取を排除し、また、職業安定法は、第四十四条において労働者供給事業を禁止し、直接雇用を大原則とすることを打ち立てたのであります。

 ですから、一九八五年、労働者派遣法審議の際、我が党は、これは直接雇用の原則に風穴をあけ、労働者の人間としての尊厳をも奪うものだと厳しく批判をしました。

 この派遣法制定から三十年がたちました。この間、一九九九年の派遣労働の原則自由化、二〇〇三年の製造業への解禁などの規制緩和が次々進められました。結果、非正規雇用が広がり、働く貧困層がふえ続けました。

 総務省の労働力調査では、一九九五年から昨年にかけて、正規の職員、従業員が五百万人減る一方で、パート、アルバイトや派遣など非正規雇用がおよそ一千万人ふえています。この間の労働法制の規制緩和が不安定な非正規雇用をふやしてきた一因であるとの認識が、総理にはないのですか。お答えください。

 リーマン・ショック後、大量の派遣切りが行われ、派遣村が各地にできるなど、社会問題となりました。登録型派遣や製造業への派遣の禁止など規制強化の世論が高まり、民主党政権に託されました。しかし、二〇一二年改正までにそれらはほとんど骨抜きにされ、唯一残ったのが、期間制限違反などを犯した派遣先企業が労働者に労働契約を申し込んだとみなす規定でした。それさえも、施行はことしの十月一日へと先送りされました。

 本法案が施行日を九月一日にしているのも、このみなし規定を実質発動させないためではありませんか。答弁を求めます。

 次に、法案について具体的に伺います。

 派遣労働は、あくまで臨時的、一時的な雇用が原則であって、常用代替であってはならないと政府は説明してきました。しかし、本法案は、これを担保する派遣期間制限を効力なきものにしようとしています。

 法案では、派遣労働者が派遣元に無期雇用されていれば、期間制限がかかりません。有期雇用に比べたら身分が安定しているというのがその理由ですが、無期雇用の派遣労働者も、派遣先の仕事がなくなれば契約を解除され、解雇されてしまいます。

 リーマン・ショック後の派遣切りでも、常用型無期雇用の派遣労働者のうち雇用が継続したのは二割強にすぎず、離職者のうち、解雇は九四・三%にも上っています。これでどうして雇用が安定していると言えるのですか。お答えください。

 この法案では、新たに事業所単位及び個人単位で期間制限を設けます。

 事業所単位では、同一事業所での派遣労働者の受け入れは三年を上限とするとしています。しかし、過半数労働組合等から意見を聴取し、仮に異議があっても対応方針等の説明をすれば、三年を超えての受け入れが可能になります。意見聴取と説明を義務づけただけで、どうして規制が強化されると言えるのですか。派遣先企業の都合で、歯どめなく派遣労働を使えることになるではありませんか。答弁を求めます。

 個人単位の期間制限は三年を上限とするというものの、部署さえかえれば、同じ派遣労働者をずっと使い続けることが可能となるではありませんか。

 これがまさに生涯派遣と言われるゆえんです。そればかりか、正社員から派遣への置きかえがますます進むことになりませんか。そうでないというなら、その根拠を明確にお示しください。

 法案は、いわゆる専門二十六業種を廃止するとしています。その理由として、専門二十六業種と一般業務との区別がわかりにくいといいます。しかし、そもそも、期間制限のない専門業務といいながら、一般業務と変わらない仕事に従事させてきたことが問題です。

 現状を追認するのではなく、専門業務をより厳密化するとともに、専門業務で三年を超えて働いてきた派遣労働者を派遣先に優先的に雇用させるべきではありませんか。答弁を求めます。

 法案では、派遣労働者の正社員化を含む雇用の安定のためとして、キャリアアップやキャリアコンサルティングを定めています。教育訓練や情報提供、相談活動を幾ら進めるといっても、それだけでは正社員への登用が保証されるものではないではありませんか。

 また、派遣期間終了時に雇用安定化措置を派遣元企業に義務づけるとしていますが、派遣先企業へは何も義務を課さないのですか。派遣先がかかわるのは、派遣元から直接雇用の依頼を受けるという点だけです。派遣元に対して圧倒的に力の強い派遣先企業が断れば、正社員の道は断たれてしまいます。安定した雇用というなら、派遣先企業に雇用責任を果たさせるべきではありませんか。答弁を求めます。

 この法案は、第百八十八回臨時国会での審議開始時に公明党が示した修正案を取り込んで提出されています。この修正について、三点伺います。

 第一は、派遣労働が臨時的、一時的なものであることを原則とする旨を明記していますが、その原則を担保する保障はどこにもありません。しかも、条文は、第二十五条、運用上の配慮の条項に盛り込まれました。原則といいながら、どうして配慮という位置づけなのですか。

 第二に、施行後の動向を踏まえ、日本の雇用慣行が損なわれるおそれがある場合は速やかに検討する旨を附則に規定しています。日本の雇用慣行が損なわれるとは、どういう事態を想定されているのですか。これは政府自身が本法案によって派遣労働が拡大することを危惧しているということではありませんか。総理の答弁を求めます。

 第三に、均衡・均等待遇のあり方を検討するため、調査研究等を行う旨を附則に規定しています。これまで政府はあれこれ理由をつけて均等待遇に背を向けてきましたが、これまでの姿勢を改めるべきではありませんか。お答えください。

 修正の手続も問題です。

 今回の修正は、労働政策審議会では一切審議されていません。これまで、労働法制を決める際には、ILO原則にのっとり、政府、労働者、使用者の三者が会する労政審での審議を通じて法案が閣議決定され、国会で審議してきたのに、なぜですか。形だけの修正で取り繕っても、法案のほころびは隠しようもありません。塩崎厚生労働大臣の答弁を求めます。

 そもそも、この間の産業競争力会議や規制改革会議などの議論を政府の方針とし、厚生労働省の頭越しに法改正を迫るやり方は、極めて異常です。総理の見解を求めます。

 最後に、本法案は、これまで、国民の反対の前に二度も廃案に追い込まれました。経済界の言うままに労働者に生涯派遣を押しつけるような法案は廃案以外にありません。

 以上を強調し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 堀内照文議員にお答えいたします。

 雇用制度改革についてお尋ねがありました。

 労働法制については、経済産業構造の変化に応じ、雇用の安定を図りつつ、働く方々の多様なニーズに対応した働き方を実現する観点から、今後より一層の改革を推し進める必要があることから、岩盤規制という表現を用いたところであります。

 こうした観点から、正社員化の道を開くための派遣法の改正、高度専門職が創造性を存分に発揮できるようにする新たな制度の創設などの改革を進めています。

 こうした取り組みにより、あらゆる人が生きがいを持って活躍の場を見出すことのできる社会を目指していく、そのような考え方に変わりはありません。

 これまでの労働法制改正についてお尋ねがありました。

 労働法制については、経済産業構造の変化に応じ、雇用の安定を図りつつ、働く方々の多様なニーズに対応した働き方の実現を目指し、逐次改正を行ってきたところであります。こうした改正は、雇用の場の確保にも寄与するなど、一定の成果があったものと考えています。

 一方、非正規雇用労働者数は、産業構造の変化、女性や高齢者の就労の増加などにより長期的に増加し、また、景気、雇用失業情勢の影響等を受けて増減するものであります。したがって、個別の制度改革がどの程度非正規雇用労働者数の増減に寄与したかをお答えすることは困難と考えています。

 労働契約申し込みみなし制度についてのお尋ねがありました。

 平成二十四年の法改正により、派遣先において、派遣受け入れ期間の制限に反するなど違法な派遣の受け入れがある場合に、その派遣労働者に直接雇用の契約を申し込んだものとみなす制度が設けられ、本年十月からの施行が予定されています。

 他方、改正案では、わかりにくい等の課題がある業務単位の期間制限を廃止し、全ての業務に適用されるわかりやすい仕組みを設けることとしています。

 施行日については、円滑に施行するため、周知期間等を踏まえたものであり、みなし規定を実質発動させないためとの御指摘は当たりません。

 無期雇用の派遣労働者についてのお尋ねがありました。

 無期雇用派遣労働者は、有期雇用のように雇いどめの対象とならないことから、一般に、有期雇用に比べて雇用が安定していると言えます。

 今回の改正案では、無期雇用の派遣労働者について、長期的なキャリア形成を視野に入れた計画的な教育訓練等を義務づけるほか、派遣会社が派遣契約の終了のみをもって解雇することがないよう、許可基準に示すこととし、これらにより雇用の安定を図ることとしています。

 なお、御指摘の調査は、中途解除された派遣契約に限った調査であり、無期雇用の派遣労働者の全体の状況を示すものではないと承知しています。

 期間制限の見直しについてお尋ねがありました。

 今回の改正案では、業務により異なる現行の期間制限を廃止し、全ての業務を対象とし、派遣労働者ごとの個人単位で、同じ職場への派遣は三年を上限とし、延長できない、ただし、派遣先の事業所単位で、受け入れ期間の上限を三年とした上で、延長する場合には、現場の実態をよく知る過半数労働組合等からの意見聴取を義務づけるといった、二つの期間制限を設けることとしています。

 これにより、職場をかえて同じ派遣労働者を受け入れる場合を含め、事業所単位の期間制限が課せられることとなり、また、意見聴取について、反対意見があったときには事前に対応方針を説明するなど、労使間で実質的な話し合いができる仕組みをつくることとしています。

 このように、生涯派遣や、正社員から派遣への置きかえを進めるものではありません。

 専門業務の位置づけについてお尋ねがありました。

 現行は、派遣先での受け入れについて、専門的な二十六業務を除き期間制限を設けていますが、専門性が時代とともに変化し、また、わかりにくいといった課題があります。

 このため、今回の改正案では、現行の期間制限を廃止し、全ての業務を対象とし、派遣労働者ごとの個人単位で、同じ職場への派遣は三年を上限とするなどの期間制限を新たに課すこととしています。

 これにより、二十六業務は新たに制限対象となりますが、個々の労働者の雇用が途切れないよう、派遣元に雇用安定措置を義務づけることとしています。

 さらに、今後、期間制限に違反して派遣労働者を受け入れた派遣先については、派遣労働者に労働契約の申し込みをしたものとみなすこととしており、派遣労働者の保護がより強化されることとなります。

 派遣労働者の正社員化についてのお尋ねがありました。

 今回の改正案では、正社員を希望する派遣労働者について、その道が開けるようにするため、派遣元の責任を強化し、派遣期間が満了した場合、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置や、派遣期間を通じた計画的な教育訓練を新たに義務づけることとしています。

 また、派遣先に対しても、派遣労働者への正社員募集に関する情報提供の義務づけなどを進めることとしています。

 これらは、これまでになかった仕組みであり、キャリアアップ助成金の活用とあわせ、働く方の選択がしっかり実現できるような環境を整備してまいります。

 雇用安定措置に関する派遣先の役割についてのお尋ねがありました。

 派遣労働者のキャリア形成については、雇用契約の当事者である派遣会社が一義的な責任を負うべきものと考えております。

 今回の改正案では、この派遣会社の責任を強化し、派遣期間が満了した場合に、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置を新たに義務づけることとしています。

 また、派遣先についても、直接雇用の依頼があった派遣労働者に対し、労働者の募集に関する情報を提供するなど、新たな義務を課すこととしています。

 派遣労働が臨時的、一時的なものであるとの原則についてのお尋ねがありました。

 今回の改正案では、派遣就業は臨時的かつ一時的であるという原則のもと、派遣の受け入れ期間について、派遣労働者の個人単位と派遣先の事業所単位の二つの制限を設けることとしています。

 厚生労働大臣による運用上の配慮についての規定に盛り込むことにより、この原則がより明確化されるとともに、厚生労働大臣が期間制限の規定を運用するに当たり、考慮することとなります。

 派遣労働者数の動向等を踏まえた検討規定についてお尋ねがありました。

 日本の雇用慣行が損なわれるとは、現在の我が国においては、例えば、正社員が派遣労働者に置きかわる常用代替が常態化するような状況が考えられます。

 今回の改正案では、希望する派遣労働者の正社員化を進めることとしていますが、派遣労働者数は、景気や雇用失業情勢のほか、多様な働き方を希望する労働者の意向など、さまざまな要因に影響を受けるものであります。

 このため、施行後のいかなる状況にも対応できるよう、必要に応じて検討を行うこととしたものであります。

 均衡・均等待遇のあり方についてお尋ねがありました。

 同一労働に対し同一賃金が支払われるという仕組みは、一つの重要な考え方と認識しています。

 しかし、ある時点で仕事が同じであったとしても、さまざまな仕事を経験し責任を負っている労働者と責任の浅い労働者との間で賃金を同一にするということについて、直ちに広い理解を得ることは難しいものと考えています。

 このため、改正案では、賃金、教育訓練及び福利厚生の面で派遣先の責任を強化するなど、まずは派遣先の労働者との均衡待遇を進めることとしています。

 また、均等・均衡待遇の確保のあり方を検討するため、均等待遇の原則が適用されている諸外国の制度や運用状況等に関し、調査研究に取り組んでいくこととしており、この旨を法案に規定しています。

 産業競争力会議等の議論についてお尋ねがありました。

 産業競争力会議や規制改革会議では、設置目的に従い、さまざまな有識者から広く御意見をいただき、関係省庁とも十分に議論を行っております。

 一方で、派遣法を初めとする労働関係法制の見直しについては、現場を熟知した労使の参画を得て議論されるべきものであり、公労使の三者で構成される労働政策審議会においても十分に議論した上で対応しているところです。

 安倍内閣としては、派遣法の改正等を含め、あらゆる人が生きがいを持って活躍できる場を見出すことができる社会を目指してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 堀内照文議員から、一点お尋ねを頂戴いたしました。

 派遣法改正案の修正手続についてのお尋ねがございました。

 今回の労働者派遣法改正案については、公労使から成る労働政策審議会の建議を踏まえたものです。また、さきの臨時国会からの修正に関しては、労働政策審議会の建議の内容の範囲内のものであると認識しているため、改めて諮問しなかったものでございます。

 政府としては、今後も労働政策審議会の建議を十分に尊重して対応してまいります。

 以上でございます。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       外務大臣     岸田 文雄君

       厚生労働大臣   塩崎 恭久君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

       厚生労働副大臣  山本 香苗君


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