衆議院

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第13号 平成28年3月1日(火曜日)

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平成二十八年三月一日(火曜日)

    ―――――――――――――

  平成二十八年三月一日

    午後四時 本会議

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本日の会議に付した案件

 平成二十八年度一般会計予算

 平成二十八年度特別会計予算

 平成二十八年度政府関係機関予算

 地方税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)

 地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)


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    午後四時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

伊藤忠彦君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 平成二十八年度一般会計予算、平成二十八年度特別会計予算、平成二十八年度政府関係機関予算、右三案を一括議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(大島理森君) 伊藤忠彦君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 平成二十八年度一般会計予算

 平成二十八年度特別会計予算

 平成二十八年度政府関係機関予算

議長(大島理森君) 平成二十八年度一般会計予算、平成二十八年度特別会計予算、平成二十八年度政府関係機関予算、右三案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。予算委員長竹下亘君。

    ―――――――――――――

 平成二十八年度一般会計予算及び同報告書

 平成二十八年度特別会計予算及び同報告書

 平成二十八年度政府関係機関予算及び同報告書

    〔本号(二)に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔竹下亘君登壇〕

竹下亘君 ただいま議題となりました平成二十八年度一般会計予算外二案につきまして、予算委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、予算三案の概要について申し上げます。

 平成二十八年度一般会計予算の規模は九十六兆七千二百十八億円であり、前年度当初予算に対して〇・四%の増加となっております。

 歳出のうち、国債費を除いた基礎的財政収支対象経費の規模は七十三兆千九十七億円であり、前年度当初予算に対して〇・三%の増加となっております。

 歳入のうち、公債金は三十四兆四千三百二十億円で、公債依存度は三五・六%となっております。

 特別会計予算については、十四の特別会計があり、会計間の取引額などの重複額等を控除した歳出純計額は二百一兆四千七百三十八億円となっております。

 政府関係機関予算については、沖縄振興開発金融公庫など四機関の予算を計上いたしております。

 なお、財政投融資計画でありますが、その規模は十三兆四千八百十一億円で、前年度当初計画に対して七・八%の減少となっております。

 この予算三案は、去る一月二十二日本委員会に付託され、二月二日麻生財務大臣から提案理由の説明を聴取し、二月三日から質疑に入り、基本的質疑、一般的質疑、集中審議、福島県と香川県における現地視察及び地方公聴会、中央公聴会、分科会を行うなど、慎重に審査を重ね、本日締めくくり質疑を行いました。

 審査においては、経済財政政策、消費税率一〇%への引き上げ時の軽減税率の導入、マイナス金利つき量的・質的金融緩和、一億総活躍社会の実現、TPP協定の国内への影響、社会保障・雇用政策、格差問題、外交・安全保障政策、衆議院議員の定数削減問題、政治資金をめぐる諸問題など、国政の各般にわたって熱心に質疑が行われました。その詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。

 かくして、本日、質疑を終局いたしましたところ、民主・維新・無所属クラブ、日本共産党及びおおさか維新の会から、それぞれ、平成二十八年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出され、趣旨の説明がありました。

 次いで、予算三案及び各動議について討論、採決を行いました結果、各動議はいずれも否決され、平成二十八年度予算三案は賛成多数をもっていずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 平成二十八年度一般会計予算外二案に対しては、山井和則君外二名から、三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。

 この際、その趣旨弁明を許します。井出庸生君。

    ―――――――――――――

 平成二十八年度一般会計予算、平成二十八年度特別会計予算及び平成二十八年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議

    〔本号(二)に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔井出庸生君登壇〕

井出庸生君 民主・維新・無所属クラブ、信州長野の井出庸生です。

 会派を代表して、ただいま議題となりました政府提案の平成二十八年度予算三案を撤回のうえ編成替えを求めるの動議に関して、その趣旨を説明いたします。(拍手)

 実質賃金の低下、消費の低迷など、日本経済は厳しい状況にあると言わざるを得ません。アベノミクスの頼みの綱であった金融緩和の矢は折れ、もはや尽きたのではないか。公共事業や補助金に頼った財政出動の効果は薄く、そして、第三の矢と言われた成長戦略は一体本当に飛んだのか。

 日銀の黒田総裁は、きのうの予算委員会で、我が会派の議員の質問に対し、あくまでも民間の経済主体の前向きな動きを引き出して我が国の経済の成長力を強化するということが極めて重要でありまして、そうした意味で、第三の矢、構造改革、規制緩和などが極めて重要であるというのは全く同じ意見ですと答えております。

 今やるべきことは、経済政策を転換し、実体経済に響く成長戦略を推し進めることではないでしょうか。

 持続的な経済成長に不可欠なのは人材です。人々が持つ能力を最大限発揮できるよう、政府案よりも人への投資に予算を振り向けることを提案します。

 また、当初予算の財政的なつじつま合わせのために、補正予算に問題の多い事業が押し込まれる傾向が強く、一体的に見ていく必要が高まっていることも指摘しておかなければなりません。我が会派は、平成二十七年度補正予算については、我が国財政の現状等も勘案し、約八千億円の国債発行減額を求めたところです。政府案のうち、水膨れと思われる予算の減額を提案します。

 さらに、地方分権の観点から交付金、補助金について、そして農業についても提案をいたします。

 以下、編成替えの概要を御説明いたします。

 第一に、人への投資に予算を振り向けること。

 具体的には、中小企業正規雇用促進のための社会保険料負担の軽減、年収の低い世帯の若者に対する奨学金の拡充、返済不要の給付型奨学金の創設、児童扶養手当の支給対象年齢の引き上げ、多子加算の一律一万円への増額、三十五人以下学級の拡充、介護・障害福祉従事者、保育士等の給与の引き上げを実施するための費用を計上いたします。

 第二に、水膨れ予算の減額です。

 農林水産省の農業農村整備事業を初め、平成二十七年度補正予算額と平成二十八年度当初予算額の合計が平成二十八年度概算要求額を超える事業が数多く存在をします。現下の厳しい財政状況の中で、不要不急と思われる事業に過度な予算配分を行うことは不適当であり、災害復旧復興関係予算を除き、精査の上、原則、概算要求額まで減額をすべきです。

 第三に、一括交付金を復活させ、見合いの交付金、補助金を廃止、縮減します。

 霞が関支配、政官業の癒着の温床と指摘をされてきたひもつき補助金から地方自治体にとって自由度が高い交付金にかえ、地域の知恵を最大限に発揮できる仕組みを導入したのが、民主党政権の一括交付金でした。

 しかし、安倍政権になると、一括交付金は廃止され、省庁はみずからの予算と仕事を確保する一方で、役所と縁の薄い中小事業者、地方にとっては非常に使い勝手の悪いひもつき補助金に逆戻りしたままとなっています。

 平成二十四年度の一括交付金の財源となっていた事業に関係する補助金、交付金を廃止、縮減し、地方から今なお要望の多い一括交付金を復活させます。

 第四に、農業者戸別所得補償制度を復活させるとともに、その財源として交付金等を廃止します。

 農業者戸別所得補償制度は、再生産可能な農家所得を保障し、農業経営の安定を図り、営農が継続されることを通じて、多面的な機能の維持を図るものでした。

 しかし、安倍政権は、農業者戸別所得補償制度を縮減、廃止し、農業土木復活にかじを切りました。日本の農業の将来像が大きく揺らいでおります。農業土木の復活は、我が会派のみならず、ほかの会派からも強い批判が出ており、そうした声と真摯に向き合うべきです。

 そこで、大規模農業に偏った平成二十八年度予算の交付金等を廃止し、頑張る農家を支える農業者戸別所得補償制度を復活させます。

 以上が、民主・維新・無所属クラブの編成替えの概要であります。

 一人でも多くの人が力を発揮できるように格差を是正し、政治が縁の下の力持ちとなって国民を支えることこそが、まことの国民の活躍、日本の成長につながるとの思いからの提案です。

 何とぞ私どもの動議に各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げまして、提案理由説明といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより、予算三案に対する討論と、動議に対する討論とを一括して行います。順次これを許します。金田勝年君。

    〔金田勝年君登壇〕

金田勝年君 自由民主党の金田勝年でございます。

 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となっております平成二十八年度一般会計予算、平成二十八年度特別会計予算及び平成二十八年度政府関係機関予算、以上三案につきまして、賛成の討論を行います。(拍手)

 安倍内閣は、二〇一二年の政権交代以降、経済再生と財政健全化に同時に取り組んできました。

 アベノミクス三本の矢の取り組みにより、名目GDPは二〇一二年十―十二月期から二〇一五年十―十二月期までに二十七兆円増加をいたし、二〇一四年度の企業収益は過去最高となっております。有効求人倍率は二〇一六年一月に一・二八となり、これは一九九一年十二月以来二十四年ぶりの高水準、二〇一五年の賃金上昇率は二・二%と、一九九八年以来十七年ぶりの高水準となっております。

 足元の経済状況には注視が必要であるものの、経済のファンダメンタルズはしっかりしております。

 この経済再生や消費増税による税収増と同時に、歳出改革にも一体となって取り組むことで、かつては困難と言われておりました二〇一五年度における基礎的財政収支赤字半減の目標も達成できる見込みであり、財政健全化に向けての努力も着実に進めておるところであります。

 平成二十八年度予算は、こうした成果の上に、今後も経済再生と財政健全化を両立させていくとの安倍政権の方針をしっかりと体現したものになっておるものと考えております。

 以下、平成二十八年度予算三案に賛成する主な理由を申し述べます。

 賛成する第一の理由は、政府が我が国の重要課題に対応し、国家国民のために実行すべき施策をしっかりと盛り込んでいるという点であります。

 まず、昨年新たに掲げました一億総活躍社会の実現という大きな目標に向かって、少子高齢化、人口減少という構造的課題に真っ正面から挑戦していかなければなりません。

 平成二十八年度予算においては、先般成立しました平成二十七年度補正予算に引き続いて、保育や介護の受け皿の整備、人材の確保、低所得の一人親家庭や多子世帯の支援など、希望出生率一・八、介護離職ゼロに資する施策に重点的、効果的に予算措置をしております。

 また、将来の大災害に備えて国民の命を守っていくことや、間もなく五周年を迎える東日本大震災からの復興の促進も大変重要な課題であります。

 強くしなやかな国土づくりに向けて、公共事業関係費を事前防災・減災対策の充実や老朽化対策に重点化してしっかり措置いたしますとともに、今なお被災地が抱える課題に的確に対応していくための措置を講じております。

 さらに、この一年は、日本が世界の中で大きな役割を果たしていくべき一年であります。

 我が国は、ことしの一月から安保理の非常任理事国に就任をしており、また、五月には、二〇〇八年の北海道洞爺湖サミット以来八年ぶりのサミットが伊勢志摩にて開催される予定であります。

 このため、地球儀を俯瞰する外交を一層積極的に展開するため、外交予算を充実しており、また、防衛関係費についても、中期防に基づき必要な手当てを行っております。

 このほか、地方創生の本格展開、攻めの農林水産業転換への支援、教育の質の向上に向けた取り組みなど、平成二十八年度予算においては、さまざまな分野で日本の重要課題への対応に重点化しており、十分評価できる内容となっております。

 賛成する第二の理由は、必要な施策を講じつつも、財政再建を両立させる予算となっている点であります。

 現役世代だけではなく、将来世代への責任を果たしていくため、経済再生を進めながら、二〇二〇年度の基礎的財政収支黒字化目標に向けてしっかりと取り組んでいかなければなりません。

 政府は、昨年六月三十日に経済・財政再生計画を策定しましたが、平成二十八年度予算においては、これに基づいて各般にわたる効率的な歳出改革にも取り組み、一般歳出の伸びは四千七百億円の増にとどまり、公債発行額についても前年度から二・四兆円減額するなど、経済・財政再生計画の初年度にふさわしい予算に仕上がっており、二〇二〇年度の目標に向けた重要な一歩を踏み出すものと考えております。

 以上、本予算案に賛成する理由を申し述べました。

 昨今の経済状況を見ると、海外要因を主因として、世界的にリスク回避の動きが金融市場で広がる中、日本の市場でも変動が見られております。

 実体経済において日本経済のファンダメンタルズはしっかりとしていますが、経済下振れリスクにしっかりと対応し、デフレ脱却・経済再生をさらに前進させるためには、最大の景気対策であります平成二十八年度予算を早期に成立させ、その施策を全国津々浦々、国民一人一人にしっかりとお届けしていくことが、何にも増して今政治に求められています。

 議員各位の御賛同を賜りますことを強くお願い申し上げる次第であります。

 なお、民主・維新・無所属クラブ提出の編成替え動議につきましては、見解を異にするため反対することを申し述べまして、私の賛成の討論とさせていただきます。(拍手)

議長(大島理森君) 本村賢太郎君。

    〔本村賢太郎君登壇〕

本村賢太郎君 民主党の本村賢太郎でございます。

 私は、民主・維新・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました政府提出の平成二十八年度予算三案について反対、民主・維新・無所属クラブ提出の編成替えを求めるの動議に賛成の立場から討論いたします。(拍手)

 先日、二〇一五年国勢調査の速報値が公表され、国勢調査が始まって以来、初めて人口減となりました。東京圏に人口が集中する一方、三十九の道府県で人口が減っており、地域再生は待ったなしの状況です。この状況を打破するには、生まれたところで学び、働き、産み、育てるサイクルが重要です。しかし、今の政策では東京圏に富が集約される一方、地方が疲弊していくのではないでしょうか。

 ことしは十八歳選挙元年です。私もこの機会に、地元相模原で多くの若者、子供、子育て世代の皆さんと意見交換をいたしました。

 国会見学に来た小学生から、なぜ憲法九条を改正せずに武力行使可能な状態になったのかと聞かれました。総理は子供に説明できるでしょうか。

 民主党と維新の党は、安保関連法廃止法を提出し、それに先立ち、領域警備法案、PKO改正案、周辺事態法改正案を提出いたしました。専守防衛に徹し、近くは現実的に、遠くは抑制的に、人道支援は積極的にの考えにのっとり、子供にも胸を張って説明できる安全保障政策に取り組みます。

 また、間もなく東日本大震災から五年がたち、復興再生期間に入ります。

 街頭で声をかけてくれた中学生からは、なぜ三・一一からの福島を見て原発を再稼働できるのかと聞かれました。

 川内原発に続き、高浜原発も再稼働しましたが、直後にトラブルが起きています。福島の皆さんの気持ちを置き去りにしたままで、プルトニウムの処理問題などを先送りし、とても世界最高とは言えない基準で、避難ルートも確定しないまま再稼働を行ったことは、断じて認められません。

 農業を学ぶ高校生からは、なぜ断固反対と言ったのにTPPは合意されたのかと聞かれました。総理、私にもわかりません。

 JA組合長の九割が国会決議違反と言っています。国会審議を通じても、いまだ十分な説明がなされたとは言えません。国民生活にも多大な影響を及ぼすものです。国会の同意を得る前には丁寧な説明と徹底した情報開示を求めます。

 地元の大学生からは、なぜ政治家は身を切らないのかと聞かれました。

 国民の皆様の前で約束した議員定数の大幅削減は、三年間も放置されました。それにもかかわらず、野田前総理が予算委員会に立つ直前になって急に、安倍総理は十削減の前倒しを言い出し、得意げにする器量の狭さに愕然とします。

 また、大島議長の諮問機関の答申どおりアダムズ方式を導入することについて、与党である公明党も前向きであるにもかかわらず、自民党が一歩踏み出さないことは、ただただ残念であります。

 子育て中のお母さんからは、なぜ政治と金の問題がなくならないんだろうと聞かれました。

 過去三十年に政治と金で辞任した大臣は十八人。そのうち八名、何と四四%が安倍内閣です。総理の任命責任を問わざるを得ません。

 甘利前経済産業大臣の口きき疑惑について、国民の約六割が対応を不十分だと答えています。関係者の証人喚問を改めて強く求めます。

 政治と金以外にも、資質について疑問のある大臣がいることが明らかになりました。

 国の除染基準を何の根拠もないと言い放つなど、環境行政への無知をさらけ出した丸川環境大臣。理解不能な答弁を繰り返し、審議を停滞させた岩城法務大臣。北方領土の島の名前を読めなかった島尻沖縄北方担当大臣。放送法違反で電波停止はあり得るとした高市総務大臣。本当に情けない限りです。

 しかし、指導力を発揮すべき当の総理大臣は、聞いてもいないことを長々と答え、鋭い質問には逆切れをし、笑ってごまかし、対案を求めながら、示された対案には無視を決め込まれます。野田前総理は、民主党を酷評して自画自賛する総理の悪い癖を指摘しています。野党は批判ばかりとおっしゃいますが、総理こそ批判ばかりなのではありませんか。責任の押しつけ合いではない、建設的な議論をしていきませんか。

 国民生活への無理解ぶりも顕著です。実質賃金は、何と二年も連続でマイナスを記録し、低迷を続けています。物価が上がり、賃金は上がらないのですから、生活は苦しくなる一方。消費が振るわないのも当然です。それを、もはやデフレではないと得意げに語る総理には憤りを感じます。

 消費税の軽減税率についても同様です。高所得者に恩恵が大きい制度が、なぜ低所得者対策として導入されるのでしょうか。また、線引きの曖昧さに、現場から悲鳴が殺到しています。

 さて、平成二十八年度予算は、経済再生と財政健全化の両立を図る予算だそうで、本予算は九十六・七兆円と過去最大規模を記録しています。ちなみに、昨年も一昨年も同じことを言っていました。しかし、直近の実質成長率は年間換算でマイナス一・四%です。政治は結果責任です。経済再生どころか、アベノミクスの失敗はもはや明らかであります。事実、各紙世論調査では、五〇%から六〇%が、アベノミクスは評価しないまたは期待しないと答えています。

 この巨額の予算を陰で支えるのは日本銀行です。国債を大規模に買い入れて財政赤字の穴埋めに直接協力するという、財政ファイナンスに実質的に手を出してしまっていると言っても過言ではありません。

 破綻寸前の中、今度はマイナス金利にまで手を出し始めました。マイナス金利は、預金者か金融機関が負担を負うことになります。銀行手数料の値上げなどにより、預金者にしわ寄せが行く可能性は大いに高まっています。また、資金の大半を国内で運用する地域金融機関には大打撃であり、地域経済をさらなる苦境に追い込みかねません。

 さらには、GPIFに株の運用比率を変更させ、目先の株価のために虎の子の年金までつぎ込むアベノミクスは、もはや経済政策と呼べるようなものではありません。

 以下、本予算に反対する理由を具体的に申し述べます。

 第一に、格差是正の問題です。

 給与所得者のうち、年収二百万円以下の人は全体の四分の一を占めています。相対的貧困率は近年急上昇して過去最悪に達し、非正規労働者はふえ続け、雇用者全体に占める割合は三五・七%にも及ぶなど、格差は拡大する一方です。子供の貧困も深刻であり、一人親家庭の子供の貧困率はOECD諸国の中で最低です。しかし、政府予算案は、こうした格差問題をいかに是正するかという視点に欠けており、問題解決に遠く及びません。

 持続的な経済成長に不可欠なものは人材です。人々の持つ能力を最大限発揮できるようにするため、格差是正、人への投資にできる限り予算を振り向けるべきです。

 民主・維新・無所属クラブの組み替え動議は、中小企業正規雇用促進のための社会保険料負担軽減、年収の低い世帯の若者に対する奨学金拡充、返済不要の給付型奨学金の創設、児童扶養手当支給対象年齢の二十歳までの引き上げ、多子加算の一律一万円への増額、三十五人学級の拡充、介護・障害福祉従事者、保育士等の給与の引き上げに係る費用を含み、格差是正の第一歩となるものです。

 第二に、地域再生の問題です。

 地域再生はこれからの経済政策の肝になると考えます。アベノミクスの地方波及に現実味がないことは明らかです。加えて、ひもつき補助金とそれに類する交付金は、地域の実情がわからない霞が関主導の枠組みにすぎません。このような補助金、交付金だらけの予算では、地方創生など絵に描いた餅、夢のまた夢にすぎません。

 その点、民主・維新・無所属クラブの組み替え動議は、七千億円規模の補助金、交付金等を、地方自治体にとって自由度が高く創意工夫しやすい一括交付金に転換するとしており、地域の知恵を最大限に発揮できるようにする点で、地域再生の起爆剤となるものです。

 第三に、農政についてです。

 自民党は、農家の所得倍増をさきの総選挙でうたったものの、現実は、農家の方々は米価の大幅下落に苦しんでおり、所得倍増どころか、廃業を検討せざるを得ない状況に追い込まれています。

 それもそのはず、安倍政権は、農業者戸別所得補償制度を縮減、廃止し、農業土木復活の方向にかじを切り、日本の農業の根幹を崩し始めています。

 その点、民主・維新・無所属クラブの組み替え動議は、再生産可能な農家所得を保障し、農業経営の安定を図り、営農が継続されることを通じて、多面的な機能の維持を図る農業者戸別所得補償制度を復活させるとしています。こうしたセーフティーネットをつくることは、各地の農家を競争力と魅力あるものに変えていく一里塚になるはずです。

 以上、政府提案の予算のままでは、経済再生と財政健全化の両立どころか、共倒れになることは必至です。

 私は、ゼロ歳から、母一人子一人の環境で育ちました。父がいなくて悔しいこともありましたが、母は必死に女手一つで私を育ててくれました。その経験からも、子供の貧困や格差是正の観点が欠けている予算には賛成できません。

 世の中の全ての子供たちが、必要とされて生まれてきたと私は思います。その子供たちが、この日本で、どんな環境に生まれても、夢を語り、夢を追いかけていく姿を支えていくことが私たち政治家の本来の使命ではありませんか。

 昨年、カナダ、台湾で政権交代が起こりました。その原動力となったのは中間層の復活です。今、世の中は、格差是正、分厚い中間層の復活を望んでおり、それを目指すのはまさに我々民主党と維新の党なのです。

 官房長官が、消費税の一〇%へ引き上げを再び見送ることを言い出しました。まさにアベノミクスが失敗したことを認めたに等しいわけです。今こそ、経済政策の転換が必要です。

 我々は、成長戦略の実行、再分配や雇用の安定化により底上げを図る経済政策への転換を着実に図るとともに、強権的な安倍政権に対抗していくため、野党勢力の結集を図り、来る参議院選挙で勝ち抜くことを国民の皆様方にお誓い申し上げ、私の反対討論とさせていただきます。(拍手)

議長(大島理森君) 浮島智子君。

    〔浮島智子君登壇〕

浮島智子君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました平成二十八年度予算三案に対し、賛成の立場から討論いたします。(拍手)

 自民党と公明党の連立与党による安倍内閣が発足して三年が経過し、政権発足時と比べて、日本経済は大きく改善しました。

 例えば、雇用面では、失業者が約五十万人も減少し、有効求人倍率は全都道府県で上昇しています。特に、昨年は八年ぶりに正社員数が増加に転じ、増加数で二十一年ぶりに非正規を上回りました。

 世界経済の先行きは見えにくい状況もありますが、内需主導による自律的な経済成長を促し、経済の好循環を確実なものとし、果実の適切な分配に取り組むべきです。

 本予算案には、こうした成長と分配の好循環につながる施策が盛り込まれており、一日も早い成立、執行が不可欠と考えます。

 以下、平成二十八年度予算案の主な賛成理由を申し述べます。

 第一に、一億総活躍社会や地方創生を実現するための予算となっている点です。

 本予算案は、希望出生率一・八、介護離職ゼロという目標に向けて、公明党の主張も踏まえ、必要な施策に重点的に予算が配分されています。

 夢を紡ぐ子育て支援として、子育て世代包括支援センターの全国展開を進めるほか、不妊治療への助成を拡充するなど、妊娠から出産、子育てまでを切れ目なく支援します。

 昨年四月からは、子ども・子育て支援新制度がスタートしました。本予算案には、さらなる量的拡充と質の改善のため、多様な保育サービスの充実や保育人材を確保する予算が計上されています。

 幼児教育には、一人親世帯や多子世帯の負担軽減など、無償化に向けた取り組みも一歩前進します。

 また、家庭の経済状況に左右されることなく、希望する教育を受けられるように、高校生等奨学給付金の拡充、無利子奨学金の対象の拡大のほか、公明党がかねてより主張してきた児童扶養手当の拡充が盛り込まれていることは、子供の貧困対策としても高く評価をいたします。

 さらに、非正規雇用の正社員転換や待遇改善など、安倍政権が進める若者や女性の活躍の支援策が拡充されています。

 介護離職ゼロに向けては、介護のサービスを利用する側のニーズに立って取り組むことが重要です。本予算案は、介護施設や住宅サービスの整備、介護人材の確保への支援が盛り込まれているほか、複数回の介護休業取得や、給付率を六七%まで引き上げることとしています。

 このほか、介護する家族の不安や悩みに応えるため相談機能を強化するほか、特に認知症については、早期診断、早期対応を進めるために、認知症初期集中支援チームの設置が拡大されます。

 地方創生については、各地域の事業を本格的に推進するため、新型交付金が計上されており、平成二十七年度補正予算と合わせれば、交付金は二千億円にも上ります。地方の自主的、先駆的な取り組みを支援し、優良事例を各地で展開することにより、地方創生の実現を助けるものと考えます。

 第二に、安倍政権が目指す経済の好循環の実現を後押しする予算となっていることです。

 我が国は、デフレ脱却までもう一息というところまで来ました。日本経済はまさに今が正念場です。経済の好循環を確かなものとし、地域へ、家計へと行き渡らせる対策が求められています。

 そのために、本予算案は、ロボットや人工知能等による産業の革新、中小企業の生産性向上や海外展開、農林水産業の成長産業化等に向けた予算を重点的に配分しています。

 成長戦略の柱として、IoTやロボット、人工知能などの技術開発を加速化する予算を計上しており、官民による未来への投資が促進されます。

 日本経済を支える中小企業への対策については、生産性の向上に向け、相談体制の充実や革新的な研究開発を支援するほか、税制改正により、新たな機械装置の固定資産税が減税されます。

 こうした施策により、賃金や最低賃金の引き上げに向けた環境を整備し、働く人の所得が向上することを強く期待いたします。

 また、TPP協定を最大限に生かすことも重要です。中小企業の海外展開を支援するほか、農商工連携や地域産品のブランド化を推進し、農林水産物の輸出が促進されます。TPP協定の承認及び関連法案の早期成立を望みます。

 農林水産業については、成長産業化への取り組みを着実に進め、担い手への農地集積や、機械、施設の整備を支援し、所得の向上を図るべきです。

 第三に、間もなく発災から五年を迎える東日本大震災からの復興を加速化する予算となっている点です。

 私たち公明党は、人間の復興を目指し、現場主義に徹して取り組み、被災地の復興は着実に前進しています。しかし、いまだ十七万四千人もの方が避難生活を余儀なくされている事実を真摯に受けとめ、被災地の復興を一段と加速化しなければなりません。

 新たな復興・創生期間において、財源をしっかりと確保しつつ、復興のステージの進展に合わせ、住宅、生活の再建や心の復興、まちづくり、産業、なりわいの復興、再生を進めます。

 特に、原子力災害からの復興、再生を目指す福島県については、一番御苦労された地域が一番幸せになる権利があるという信念のもと、浜通り地域を、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催時に、世界じゅうの人々が瞠目するような地域再生を目指した福島イノベーション・コースト構想の具体化に向け、ロボットテストフィールドの設置や国際産学官共同利用施設の整備・運営費が盛り込まれています。

 加えて、なりわいの再生のため、百七十五名で成る相双官民合同チームによる八千事業者への個別訪問支援、除染や中間貯蔵施設の整備、長期避難者への支援や風評被害対策などを着実に進めるための予算も計上されており、評価できるものであります。

 以上、賛成する主な理由を申し述べました。

 一方、本予算案は、経済再生と財政健全化を両立する予算となっていることを申し添えます。

 本予算案は、経済再生・財政健全化計画の初年度に当たります。経済再生と財政健全化を両立すべく、必要な施策には重点的に予算を配分しつつ、めり張りをつけることで、国債発行額は前年度から二・四兆円の減額となり、公債依存度は三五・六%と、リーマン・ショック以前の水準まで回復する見込みとなっております。

 一億総活躍社会の実現、そして経済の好循環のためには、本予算案の早期成立、早期執行が不可欠です。また、企業の収益を、さらなる投資や働く人の所得、下請企業との取引に反映することが重要であり、政府におかれては、未来投資に向けた官民対話などを通じ、企業への働きかけを強めていただきたい。

 なお、民主・維新・無所属クラブ提出の撤回のうえ編成替えを求めるの動議については、見解を異にするものであり、反対いたします。

 公明党は、一人一人に光を当て、家庭で、職場で、地域で、一人一人が輝き活躍できる社会の実現に全力で取り組むことをお約束し、私の賛成討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 畠山和也君。

    〔畠山和也君登壇〕

畠山和也君 私は、日本共産党を代表して、二〇一六年度一般会計予算外二案に反対する討論を行います。(拍手)

 予算案の審議を前に、内閣を代表して経済演説を行った閣僚が口きき疑惑で辞任したことは極めて重大でした。いまだ疑惑は解明されていません。問題の根本にある、パーティー券を含む企業、団体からの献金を全面禁止することを求めます。

 以下、予算案に反対する理由を述べます。

 第一に、本予算案は、国民の中に広がる貧困と格差の是正どころか、大増税を押しつけ、財界、大企業の利益優先へ大盤振る舞いとなっている点です。

 総務省の家計調査で、二人以上世帯のうち勤労者世帯の実質可処分所得が、三十年前以下の水準に落ち込んでいることが明らかになりました。消費税率八%への引き上げで、消費者物価指数が二〇一五年に一〇四・六まではね上がり、物価上昇は過去最高の水準となりました。

 同じく、総務省の労働力調査では、安倍政権の三年間で、正社員が二十三万人減った一方、非正規雇用の労働者は百七十二万人ふえています。

 ミニ経済白書では、パート労働者だけでなく、一般労働者も実質賃金が低下していることを認めています。

 安倍首相が言う経済の好循環どころか、国民にとっては悪循環が続いているのではありませんか。

 消費税一〇%となれば、政府試算でさえ、国民一人当たり年間二万七千円、一世帯当たり六万二千円もの大増税が押しつけられます。将来の引き上げも政府は否定せず、与党幹部からもインフラ整備ができたなどの発言があり、軽減税率は、さらなる増税の布石となっています。暮らしと経済に取り返しのつかない打撃を与える消費税一〇%は、きっぱり中止するべきです。

 政府は、決まって、消費税増税分は社会保障の充実へ回すと述べますが、予算案に盛り込まれているのは、診療報酬の実質減、高齢者医療の窓口負担増、介護保険利用料の倍化、生活保護の加算、扶助減額見直しなど、負担増と給付減の徹底というべく、全面改悪です。政府が昨年出した改革工程表に基づき、社会保障自然増を半減以下にばっさり削減したためです。どこに社会保障の充実があるのですか。

 国民には負担増を求めながら、法人実効税率を二〇一八年度まで二・三七%引き下げるなど、史上最高の利益を上げている黒字大企業へ一・六兆円もの大減税を行い、その穴埋めとして、外形標準課税の拡大で中堅企業への増税を行うなど、言語道断です。この間の優遇税制によって、結局は、大企業の内部留保が大膨張しただけではありませんか。

 今、政府がなすべきは、長時間・低賃金労働の是正など、安心して働ける環境をつくることです。元請大企業と下請企業の公正取引へ、国が監視と指導を強めることが必要です。

 社会保障充実の財源は消費税増税に頼らず、応能負担の原則に基づく税制改正によってつくり出すべきです。家計に重い負担となっている教育費の軽減へ踏み出すときです。

 この際、民主・維新・無所属クラブによる編成替え動議について触れておきます。

 貧困と格差を是正する点で、部分的ではありますが、返済不要の給付型奨学金の創設、介護・障害福祉従事者、保育士等の給与の引き上げなどは必要なことであり、賛成を表明するものです。

 反対理由の第二は、地方創生と口にしながら、一層地方の疲弊を加速させる点です。

 予算委員会の地方公聴会では、その懸念の声が相次ぎました。香川県高松会場では、地域経済の落ち込みやTPPへの痛烈な批判が出されました。福島県郡山会場では、今の内閣は被災地に寄り添っていないとの表明もありました。

 そもそも、地方創生を言うのなら、農林漁業に大打撃を与えるTPP批准などやめるべきです。各県やJAの試算では、政府試算を超える農業被害が示され、不満と不安が広がっています。予算案には、TPPへの対応として、規模拡大や輸出促進に重きが置かれていますが、農家が切実に求める価格安定対策や、三九%まで下がった食料自給率の向上こそ、急がれるものではありませんか。

 安倍首相は有効求人倍率がふえたと盛んに言いましたが、では、なぜ若者が都市圏へ仕事を求めて来るのでしょう。最低賃金に大きな格差があるからです。中小企業への支援強化とあわせ、全国一律時給千円以上の最低賃金制度の確立に今こそ足を踏み出すときです。

 五年目を迎える東日本大震災の被災者が、なお十七万人も避難生活を強いられている中、暮らしとなりわいの再建は急務です。住宅再建へ被災者生活再建支援金を五百万円まで引き上げることや、被災自治体の独自支援策を応援する立場こそ、求められます。

 福島第一原発事故の被害の実態に応じた、支援と賠償へ国が責任を果たすときにもかかわらず、福島の願いに背を向けて、全国で次々と原発を再稼働するなど、到底許すことはできません。

 反対理由の第三は、安保法制、戦争法を強行成立させたもとで、五兆円を超える軍事費を盛り込み、アメリカの戦争支援体制を強化している点です。

 新型ステルス戦闘機F35や新型空中給油機、イージス艦、オスプレイ等の軍備拡大は、周辺諸国との緊張関係を高め、東アジアの平和環境づくりに逆行するものです。後年度負担が膨れ上がり、中期防衛力整備計画をも大きく上回るペースです。

 新たな日米合意に基づき、思いやり予算を百三十三億円も増額し、米軍への施設提供整備に、最低でも毎年二百六億円を積算根拠も示さないまま支出するとしています。米軍が配備を進めるF35戦闘機についても、日本政府による財政負担で新たな重整備拠点を置くとしています。対米従属もきわまれりではありませんか。

 沖縄の民意を無視して、代執行訴訟にまで踏み切り、辺野古への新基地建設を強行するなど、とんでもありません。普天間基地は、移設条件なしの閉鎖、撤去こそ要求するべきです。

 民意を無視した安保法制、戦争法の強行採決から間もなく半年がたつ中、国民の怒りはおさまるどころか拡大し、安倍政権をかえようとのうねりが全国に広がっています。この三月に戦争法は施行されようとしていますが、日本の自衛隊が戦後初めて外国人を殺し、戦死者を出すという現実的な危険が生まれています。

 改定PKO法において、自衛隊は新たに任務が拡大し、任務執行のための武器使用も認められました。国連PKO自身が交戦主体となっている現実のもと、内戦状態に陥っている南スーダンで自衛隊が武力行使する可能性について、政府は明確に否定しませんでした。また、駆けつけ警護の一部として、狙撃、射殺前提の作戦があることについても、政府は検討していることを認めました。重大です。戦闘の当事者になるのは避けられないではありませんか。

 我が党は、先月十九日、他の四野党とともに安保法制を廃止する法案を提出しました。日本共産党は、国民との共同をさらに強め、憲法違反の安保法制、戦争法を廃止し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回し、安倍政権打倒と、日本の政治に立憲主義と民主主義を取り戻すため全力を挙げる決意を表明して、私の反対討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) 井上英孝君。

    〔井上英孝君登壇〕

井上英孝君 おおさか維新の会の井上英孝です。

 私は、我が党を代表して、平成二十八年度予算案に反対の立場から討論をいたします。(拍手)

 我が党は、税金を使う人のための政治ではなく、税金を払う人のための政治を行うべきであるとの哲学のもとに、身を切る改革を最優先の政治課題としてまいりました。その立場からいえば、公務員人件費の総額を平成二十六年度から三年連続で上げている政府の態度には、到底賛成できません。

 また、この予算案では、経済成長の実現にも将来の財政再建にも道筋が見えません。身を切る改革も無駄の削減もなしに、歳出の規模ばかり大きくして、それを将来の消費増税で賄おうという姿勢がはっきりしているからであります。

 この三年間、政府予算の歳出は九十六兆円を超えており、補正予算も三兆円を超えています。つまり、合計で百兆円規模の予算が組まれてまいりました。

 しかし、実質GDPの伸び率は、平成二十五年に一・四%となった後は、平成二十六年には〇%、二十七年は〇・四%です。

 景気対策と称して財政支出をふやせば、それだけで成長するという時代はとっくに終わっています。我々おおさか維新の会は、民間の経済を生き生きと発展させるためには、むしろ予算の無駄を省き、民間でできることは民間に、地方でできることは地方に任せていくことを大原則とすべきと考えています。

 財政再建のためにも、増税の前に身を切る改革を行い、無駄な歳出の削減を最優先させるべきです。諸外国での財政再建の成功例を見ても、増税よりも歳出削減を先行させています。安倍政権は、歳出削減の努力もなしに、安易に消費増税に頼り過ぎていると言わざるを得ない現状であります。

 平成三十二年度のプライマリーバランス均衡の道筋はいまだに見えません。名目三%、実質二%という内閣府の極めて楽観的な成長シナリオによっても、平成三十二年度のプライマリーバランスはマイナス六・五兆円であります。やはり歳出削減は必要であり、今から準備が必要と考えます。

 消費増税は、景気にも悪影響を与えます。前回の八%への税率引き上げは、日本経済に大きな打撃を与えました。財政再建のためにまず増税という財政運営をやめて、歳出削減を最優先すべきと考えます。そのため、我が党は、消費税増税延期法案もつくりました。また、今国会での質疑でも、消費増税を延期すべきことを繰り返し主張してまいりました。

 以上のような考え方のもとに、我が党は、予算委員会に予算の編成替え動議を提出いたしました。経済成長と財政再建の両面から歳出削減を行うべきと考え、各府省の個別事業の精査に基づき、削減可能額を積み上げ、総額一兆二千七十六億円につき、予算化の必要はないと判断をいたしました。そこで、これら支出を削減の上、その全てを来年度国債発行の減額に充てる形の動議といたしました。

 この編成替え動議には、我が党が本当に行いたい政策である、将来世代や真の弱者への徹底的な支援は、あえて盛り込んでおりません。我が党が最重視する公務員人件費の削減さえ、あえて盛り込んでおりません。歳出削減についても、個別事業の精査に基づき、総理がその気になれば削ることができるような現実的な項目を並べています。

 歳出削減の中身は、例えば、生活保護費の不正受給などを正し、生活保護の医療扶助費の適正化を行ったり、看板に偽りのある三世代同居推進のための事業を取りやめたり、農業再生に何ら効果の望めない農業農村整備事業費を削減するなど、穏当な内容ばかりであります。これにより一兆二千億円を削減し、全額を来年度国債発行額の減額に充てるとしております。

 我々は、提案型責任政党として、予算案についても、ただ形だけ編成替え動議を出して反対するという従来型のやり方ではなく、実現可能な案の提示で、来年度予算を少しでもよいものにしたいと本気で考えて、このような動議としたわけであります。しかし、残念ながら、総理からは賛成のお答えは得られず、動議も委員会で否決されました。

 このため、我が党は、平成二十八年度政府予算案に反対いたします。

 衆議院での予算審議は本日をもって終結いたしますが、我が党は、引き続き、身を切る改革と公務員の人件費の削減に向けて全力で邁進していくことを国民の皆様にお約束して、私の反対討論を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、山井和則君外二名提出、平成二十八年度一般会計予算外二案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。

 山井和則君外二名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立少数。よって、山井和則君外二名提出の動議は否決されました。

 次に、平成二十八年度一般会計予算外二案を一括して採決いたします。

 この採決は記名投票をもって行います。

 三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されることを望みます。――議場閉鎖。

 氏名点呼を命じます。

    〔参事氏名を点呼〕

    〔各員投票〕

議長(大島理森君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開票。――議場開鎖。

 投票を計算させます。

    〔参事投票を計算〕

議長(大島理森君) 投票の結果を事務総長から報告させます。

    〔事務総長報告〕

 投票総数 四百六十二

  可とする者(白票)      三百二十六

  否とする者(青票)       百三十六

議長(大島理森君) 右の結果、平成二十八年度一般会計予算外二案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)

    ―――――――――――――

平成二十八年度一般会計予算外二案を委員長報告のとおり決するを可とする議員の氏名

あかま 二郎君   あべ  俊子君   安倍  晋三君   逢沢  一郎君

青山  周平君   赤枝  恒雄君   赤澤  亮正君   秋葉  賢也君

秋元   司君   秋本  真利君   麻生  太郎君   穴見  陽一君

安藤   裕君   井野  俊郎君   井上  貴博君   井林  辰憲君

伊東  良孝君   伊藤 信太郎君   伊藤  忠彦君   伊藤  達也君

伊吹  文明君   池田  道孝君   池田  佳隆君   石川  昭政君

石崎   徹君   石田  真敏君   石破   茂君   石原  伸晃君

石原  宏高君   稲田  朋美君   今枝 宗一郎君   今津   寛君

今村  雅弘君   岩田  和親君   岩屋   毅君   うえの賢一郎君

江崎  鐵磨君   江渡  聡徳君   江藤   拓君   衛藤 征士郎君

遠藤  利明君   小倉  將信君   小此木 八郎君   小里  泰弘君

小田原  潔君   小野寺 五典君   小渕  優子君   尾身  朝子君

越智  隆雄君   大岡  敏孝君   大串  正樹君   大隈  和英君

大塚  高司君   大塚   拓君   大西  英男君   大西  宏幸君

大野 敬太郎君   大見   正君   岡下  昌平君   奥野  信亮君

鬼木   誠君   加藤  鮎子君   加藤  勝信君   加藤  寛治君

梶山  弘志君   勝沼  栄明君   勝俣  孝明君   門   博文君

門山  宏哲君   金子  一義君   金子 万寿夫君   金子  恭之君

金田  勝年君   上川  陽子君   神谷   昇君   神山  佐市君

亀岡  偉民君   鴨下  一郎君   川崎  二郎君   河井  克行君

河村  建夫君   神田  憲次君   菅家  一郎君   木内   均君

木原  誠二君   木原   稔君   木村  太郎君   木村  弥生君

城内   実君   黄川田 仁志君   岸   信夫君   岸田  文雄君

北川  知克君   北村  茂男君   北村  誠吾君   工藤  彰三君

熊田  裕通君   小池 百合子君   小泉 進次郎君   小島  敏文君

小林  鷹之君   小林  史明君   小松   裕君   古賀   篤君

後藤  茂之君   後藤田 正純君   河野  太郎君   高村  正彦君

國場 幸之助君   今野  智博君   左藤   章君   佐々木  紀君

佐田 玄一郎君   佐藤   勉君   佐藤 ゆかり君   齋藤   健君

斎藤  洋明君   坂井   学君   坂本  哲志君   櫻田  義孝君

笹川  博義君   塩崎  恭久君   塩谷   立君   柴山  昌彦君

島田  佳和君   下村  博文君   白石   徹君   白須賀 貴樹君

新谷  正義君   新藤  義孝君   菅   義偉君   菅原  一秀君

助田  重義君   鈴木  馨祐君   鈴木  俊一君   鈴木  淳司君

鈴木  憲和君   鈴木  隼人君   瀬戸  隆一君   関   芳弘君

園田  博之君   薗浦 健太郎君   田所  嘉徳君   田中  和徳君

田中  英之君   田中  良生君   田野瀬 太道君   田畑  裕明君

田村  憲久君   平   将明君   高市  早苗君   高木   毅君

高木  宏壽君   高鳥  修一君   高橋 ひなこ君   竹下   亘君

竹本  直一君   武井  俊輔君   武田  良太君   武部   新君

武村  展英君   橘  慶一郎君   棚橋  泰文君   谷   公一君

谷垣  禎一君   谷川  とむ君   谷川  弥一君   津島   淳君

辻   清人君   土屋  品子君   土屋  正忠君   寺田   稔君

とかしきなおみ君   土井   亨君   冨樫  博之君   渡海 紀三朗君

冨岡   勉君   豊田 真由子君   中川  俊直君   中川  郁子君

中谷   元君   中谷  真一君   中根  一幸君   中村  裕之君

中山  展宏君   中山  泰秀君   永岡  桂子君   長尾   敬君

長坂  康正君   長島  忠美君   二階  俊博君   丹羽  秀樹君

丹羽  雄哉君   西川  公也君   西村  明宏君   西村  康稔君

西銘 恒三郎君   額賀 福志郎君   根本   匠君   根本  幸典君

野田  聖子君   野田   毅君   野中   厚君   葉梨  康弘君

萩生田 光一君   橋本   岳君   橋本  英教君   馳    浩君

鳩山  邦夫君   浜田  靖一君   林   幹雄君   原田  憲治君

原田  義昭君   比嘉 奈津美君   平井 たくや君   平口   洋君

平沢  勝栄君   ふくだ 峰之君   福井   照君   福田  達夫君

福山   守君   藤井 比早之君   藤丸   敏君   藤原   崇君

船田   元君   古川   康君   古川  禎久君   古田  圭一君

古屋  圭司君   星野  剛士君   細田  健一君   細田  博之君

堀井   学君   堀内  詔子君   前川   恵君   前田  一男君

牧島 かれん君   牧原  秀樹君   松島 みどり君   松野  博一君

松本   純君   松本  文明君   松本  洋平君   三ッ林 裕巳君

三ッ矢 憲生君   三原  朝彦君   御法川 信英君   宮内  秀樹君

宮川  典子君   宮腰  光寛君   宮崎  政久君   宮澤  博行君

宮路  拓馬君   宮下  一郎君   武藤  容治君   務台  俊介君

宗清  皇一君   村井  英樹君   村上 誠一郎君   望月  義夫君

茂木  敏充君   盛山  正仁君   森   英介君   森山   裕君

八木  哲也君   保岡  興治君   簗   和生君   山際 大志郎君

山口  俊一君   山口  泰明君   山口   壯君   山下  貴司君

山田  賢司君   山田  美樹君   山本  公一君   山本  幸三君

山本   拓君   山本ともひろ君   山本  有二君   吉川  貴盛君

吉野  正芳君   義家  弘介君   若狭   勝君   若宮  健嗣君

渡辺  博道君   赤羽  一嘉君   井上  義久君   伊佐  進一君

伊藤   渉君   石井  啓一君   石田  祝稔君   稲津   久君

上田   勇君   浮島  智子君   漆原  良夫君   江田  康幸君

大口  善徳君   太田  昭宏君   岡本  三成君   北側  一雄君

國重   徹君   輿水  恵一君   佐藤  茂樹君   佐藤  英道君

斉藤  鉄夫君   高木 美智代君   高木  陽介君   竹内   譲君

角田  秀穂君   遠山  清彦君   富田  茂之君   中川  康洋君

中野  洋昌君   浜地  雅一君   濱村   進君   樋口  尚也君

古屋  範子君   真山  祐一君   桝屋  敬悟君   吉田  宣弘君

浅尾 慶一郎君   小泉  龍司君   鈴木  貴子君   長崎 幸太郎君

松本  剛明君   武藤  貴也君

否とする議員の氏名

安住   淳君   阿部  知子君   青柳 陽一郎君   赤松  広隆君

荒井   聰君   井坂  信彦君   井出  庸生君   石関  貴史君

今井  雅人君   江田  憲司君   枝野  幸男君   緒方 林太郎君

大串  博志君   大島   敦君   大西  健介君   大畠  章宏君

太田  和美君   逢坂  誠二君   岡田  克也君   岡本  充功君

奥野 総一郎君   落合  貴之君   柿沢  未途君   金子  恵美君

神山  洋介君   菅   直人君   木内  孝胤君   黄川田  徹君

菊田 真紀子君   岸本  周平君   黒岩  宇洋君   玄葉 光一郎君

小宮山 泰子君   小山  展弘君   後藤  祐一君   郡   和子君

近藤  昭一君   近藤  洋介君   佐々木 隆博君   坂本 祐之輔君

階    猛君   篠原   豪君   篠原   孝君   鈴木  克昌君

田島  一成君   田嶋   要君   高井  崇志君   高木  義明君

武正  公一君   玉木 雄一郎君   津村  啓介君   辻元  清美君

寺田   学君   中川  正春君   中島  克仁君   中根  康浩君

長島  昭久君   長妻   昭君   西村 智奈美君   野田  佳彦君

初鹿  明博君   原口  一博君   伴野   豊君   平野  博文君

福島  伸享君   福田  昭夫君   古川  元久君   古本 伸一郎君

細野  豪志君   馬淵  澄夫君   前原  誠司君   牧   義夫君

升田 世喜男君   松木けんこう君   松田  直久君   松野  頼久君

松原   仁君   水戸  将史君   宮崎  岳志君   本村 賢太郎君

山尾 志桜里君   山井  和則君   柚木  道義君   横路  孝弘君

横山  博幸君   笠   浩史君   鷲尾 英一郎君   渡辺   周君

赤嶺  政賢君   池内 さおり君   梅村 さえこ君   大平  喜信君

笠井   亮君   穀田  恵二君   斉藤  和子君   志位  和夫君

清水  忠史君   塩川  鉄也君   島津  幸広君   田村  貴昭君

高橋 千鶴子君   畑野  君枝君   畠山  和也君   藤野  保史君

堀内  照文君   真島  省三君   宮本  岳志君   宮本   徹君

本村  伸子君   足立  康史君   井上  英孝君   伊東  信久君

浦野  靖人君   遠藤   敬君   河野  正美君   木下  智彦君

椎木   保君   下地  幹郎君   谷畑   孝君   馬場  伸幸君

松浪  健太君   丸山  穂高君   小熊  慎司君   小沢  鋭仁君

重徳  和彦君   鈴木  義弘君   村岡  敏英君   小沢  一郎君

玉城 デニー君   照屋  寛徳君   吉川   元君   上西 小百合君

亀井  静香君   川端  達夫君   仲里  利信君   吉田  豊史君

     ――――◇―――――

伊藤忠彦君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、地方税法等の一部を改正する等の法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案、右両案を一括議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(大島理森君) 伊藤忠彦君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 地方税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)

 地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 地方税法等の一部を改正する等の法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長遠山清彦君。

    ―――――――――――――

 地方税法等の一部を改正する等の法律案及び同報告書

 地方交付税法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号(二)に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔遠山清彦君登壇〕

遠山清彦君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 初めに、地方税法等の一部を改正する等の法律案は、法人税改革の一環として法人事業税の所得割の税率の引き下げと外形標準課税の拡大等を行い、地方創生の推進に向けて、税源の偏在性を是正するための法人住民税の法人税割の税率の引き下げ及び地方法人特別税等に関する暫定措置法の廃止並びに認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人住民税の法人税割と法人事業税の税額控除制度の創設を行うとともに、自動車取得税の廃止、自動車税及び軽自動車税における環境性能割の導入等、また、遊休農地等に係る固定資産税と都市計画税の価格の特例及び課税標準の特例の創設等を行うほか、税負担軽減措置等の整理合理化等所要の措置を講ずることとしております。

 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案は、地方財政の収支が引き続き著しく不均衡な状況にあること等に鑑み、平成二十八年度分の地方交付税の総額の特例措置を講ずるほか、地方交付税の単位費用等の改正、震災復興特別交付税の確保、普通交付税と特別交付税の割合を維持するための本則の改正及び震災復興特別交付税の返還等に係る規定の整備を行うこととしております。

 また、地方債の協議不要対象団体の要件の緩和等及び退職手当債の特例期限の延長を行うほか、将来負担比率に算入する項目を追加することとしております。

 両案は、去る二月十八日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、本委員会に付託されました。

 委員会におきましては、同月二十三日両案について高市総務大臣から提案理由の説明を聴取した後、翌二十四日から質疑に入り、二十六日には安倍内閣総理大臣に対する質疑を行いました。本日、質疑を終局し、討論を行い、採決いたしましたところ、両案は賛成多数をもっていずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、委員会において、地方税財政基盤の早期確立及び東日本大震災への対応に関する件について決議を行いました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 両案につき討論の通告があります。順次これを許します。逢坂誠二君。

    〔逢坂誠二君登壇〕

逢坂誠二君 北海道函館から参りました逢坂誠二でございます。

 民主・維新・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました件について討論を行います。(拍手)

 昨日と本日、実は北海道は大吹雪であります。この東京の青空のもとにおりますと、その吹雪の様子はまるで想像もつかないといったようなことではないかと思います。

 しかしながら、政治家に必要なのは、違った立場の人たちの声に耳を傾けて真摯に共感を得ていくこと、この姿勢が非常に大事であります。しかしながら、昨今の国会答弁を聞いておりますと、そういう姿勢、必ずしも十分ではないのではないかと危惧をいたしているところでございます。

 想像力を働かせて、国会議員がしっかり仕事をしていく、そのことを私自身も肝に銘じてまいりたい、そのように思っております。

 さて、私は、二十二年間、自治体の現場で仕事をさせていただきました。そしてさらに、国会に初登院してから、早いものでもう十一年の月日が流れました。その経験から、今回のこの法案を、真に地方に寄り添ったものであるのかどうか、あるいは地方財政の安定に寄与するものであるかどうか、それらの観点から点検をいたしますと、国の都合が余りにも前面に出て、自治の自主性、自立性を抑え込むような内容もあり、反対せざるを得ない、それがとても残念であります。

 安倍政権になってから、自治体に対する中央集権的な対応が数多く見られ、物言わぬ自治、国に隷属する自治になる危機を感じております。これは最終的に、日本の国民主権と民主主義を危うくするものであり、政府の中央集権的な体質をぜひとも改めていただきますよう強く念願をいたします。

 自治の自主性、自立性を尊重することで、自治の現場でのつまずき、あるいは悩みといったものもふえてくるでしょう。しかし、これが自治を強化し、最終的には日本の民主主義を進化させるものであることを認識しなければなりません。

 それでは、まず最初に、地方税法改正案について申し述べます。

 民主党、維新の党統一会派は、格差是正と経済成長のため、格差是正等税制措置法案を提出いたしました。

 安倍内閣は、外形標準課税の拡大等を財源として法人実効税率を引き下げることを提案しました。しかし、この手法では、地方の税収は変わりませんが、外形標準課税により負担増となる法人がふえることは確実であり、成長戦略に反する形となることは間違いがございません。

 また、今回の地方税法改正案で盛り込まれている農地に対する課税強化については、遊休農地の中には、もともと収益性が低いなど、通常の農地より条件の悪い資産もございます。それにペナルティー的に課税をすることには疑問があります。

 そもそも、安倍政権が始めた農地中間管理機構に対し、現場の実態を知らなさ過ぎるなど、各地で批判的な声を数多く聞いており、農地政策の不備を安易に地方税制で取り繕うべきではありません。機能していない農地中間管理機構制度の見直しこそが、政策本来のあり方であることを指摘させていただきます。

 そして、消費税の軽減税率導入は、地方消費税収にも交付税原資にも大きな穴をあけることになりますが、代替財源についてはいまだに明示されておりません。地方税財政の根幹にかかわることでもあり、到底容認できません。

 さらに、今回の改正案に盛り込まれた法人住民税の交付税原資化により地方税の偏在是正を行うことは、複雑で入り組んだ税制の中で、一定の理解はいたします。しかしながら、それにより、一部の自治体では、財政運営上、大きな影響が生じることになるのも事実であります。そうした影響を受ける自治体に対して、政府からの丁寧な説明、また丁寧な激変緩和措置を引き続き求めてまいります。

 次に、地方交付税法等の改正案の反対理由について申し上げます。

 地方財政計画上、一般財源総額は、二十七年度に比べ約一千三百億円の増額を確保しつつ、臨時財政対策債の発行額を圧縮したことを率直に評価いたします。

 しかしながら、地方交付税額は五百四十六億円の純減であり、自治体の皆さんのことを思うと、容認しがたいものがあります。それは、近年、国の政策などによる自治体負担の多くが、地財措置と称して地方交付税の算定に入れられ、あたかも必要財源が確保されているかのように説明されます。しかしながら、現実には交付税額が目減りしており、多くの自治体では、こうした地財措置では確実な財源確保にはつながらないという多数の批判が出ております。政府には、こうした批判を真摯に受けとめ、確実な財源の確保を求めます。

 次に、まち・ひと・しごと創生事業費一兆円のうち、地域の元気創造事業費三千九百億円の算定は、地方交付税の道理を踏み外しており、断固反対であります。

 具体的には、各自治体の職員数削減率や人件費削減率といった行革努力に応じた項目に加え、民間委託や指定管理者制度の導入、庶務業務の集約化といった業務改革も算定項目に含まれております。

 これらの事項は、地方歳出の減額要因であります。こうした減額要因は、そもそも地方交付税の需要額の算定とは相入れないものであります。こうした地方交付税の論理に外れる誤った手法を用いて、交付税というお金の配分を人質にしながら地方行革を強要するのは、中央集権的な手法の中でも最も邪悪なものであります。こんな手法を継続すれば、自治体の自主性、自立性を損ない、国への依存体質を高める可能性があります。交付税と行革努力、この二つは明確に切り離し、それぞれ別のものとして実施することを求めます。

 最後に、地方と国の仕組みの違いについて言及します。

 国も地方も歳入の基本は税収であります。しかしながら、国には、地方財政にはないその他の手法、すなわち赤字国債の発行、あるいは金融政策、あるいは為替政策などもあわせつつ財政運営をすることが可能であります。しかし、地方には、国に認められた範囲でしか赤字地方債の発行ができませんし、金融政策、為替政策も行うことはできません。歳入面では、まさに地方税制と交付税が地方財政の大きな柱になります。

 それに関して、自治体と十分な相談もなく、国の都合で地方の懐に、毎年度、一方的に手が入ることになりますと、地方財政の安定性を損なってしまいます。

 地方税制や地方交付税の変更に関しては、国と地方の協議の場、民主党政権のときにつくらせていただきました国と地方の協議の場を活用し、事前に地方と十分な協議を行う必要があります。そのプロセスを経て、予見可能性のある安定的な地方税財政制度を確立する必要があることを指摘して、私の反対討論とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございます。(拍手)

議長(大島理森君) 大平喜信君。

    〔大平喜信君登壇〕

大平喜信君 私は、日本共産党を代表して、地方税法改正案並びに地方交付税法改正案に対する反対討論を行います。(拍手)

 地域の再生が重要な課題となる今、地方自治体の役割は、憲法と地方自治法に基づき、住民の福祉の増進を進めていくことであります。そのためには、地方が必要とする財政基盤を国が保障することが重要です。

 全国の地方自治体が安定的に住民サービスを行うためには、地方交付税制度の二つの役割、財源保障機能と財政調整機能の拡充が必要です。同時に、地方の自主財源を豊かにすることが必要です。

 ところが、今、安倍内閣は、地方交付税制度を変質させようとしています。

 その一つが、地方交付税の算定へのトップランナー方式の導入であります。学校給食や公園管理などの自治体業務で、民間委託などで削減した経費水準を標準として、単位費用に反映するものであります。

 地方交付税を使って、自治体に一層のアウトソーシングを押しつけることは許されません。しかも、対象となる業務の単位費用が縮減されれば、地方交付税そのものが削減されることになるのであります。

 この方式を地方税の徴収率にも導入することも重大です。徴収率の向上が主な目的となれば、強引な徴収のやり方が一層広がることになります。トップランナー方式の導入はきっぱりとやめるべきであります。

 地方の財源不足は二十一年連続です。地方交付税法は、財源不足が続く場合、法定率の引き上げ等で対処すると定めています。国がやるべきことは、この規定に基づき、法定率を抜本的に引き上げることであります。不足分を、臨時財政対策債の発行や国と地方の折半ルールによって、地方に負担を押しつけるやり方はやめるべきです。

 次に、外形標準課税の拡大は、地域の活性化にも雇用の確保にも逆行するものであり、絶対に行うべきではありません。

 外形標準課税の拡大は、大企業の法人実効税率を引き下げるための財源づくりにほかなりません。黒字企業の負担は軽減される一方、赤字の企業や、どうにかやっと黒字で頑張っている所得の少ない企業に負担を強いることに、まともな道理はありません。

 政府税制大綱は、今後、資本金一億円以下の中小企業への外形標準課税の拡大を検討するとしています。中小企業への拡大は行うべきではありません。

 本法案は、中小企業への外形標準課税の拡大への流れをつくるものであり、断固反対するものです。

 政府は、消費税を八%に増税したことで自治体間の税収格差が広がったとして、法人事業税を国税化したのであります。今度は、消費税を一〇%にするからと、法人住民税を地方から召し上げるのは本末転倒であり、二重三重に許すことはできません。

 最後に、高市総務大臣の放送番組への介入発言です。

 高市総務大臣は、一つの番組のみでも、政府が、放送法第四条の政治的公平性を判断できるとしています。

 そもそも放送法は、戦争遂行に協力した戦前の反省に立ち、放送の自由、番組編成の自由を定め、憲法が保障する言論、表現の自由に基づいて、政府の放送番組への介入を遮断して、放送の権力からの独立を担保するものであります。

 このもとで、放送法第四条は、政治的公平性などを放送事業者がみずから守るべき規範としているのであって、政府が判断し、介入することなど絶対に許されないのであります。

 憲法と放送法に基づく、言論、表現の自由、権力からの独立を踏みにじることは、断じて許されません。

 以上述べて、反対討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、地方税法等の一部を改正する等の法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

伊藤忠彦君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案、所得税法等の一部を改正する法律案、右両案を一括議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(大島理森君) 伊藤忠彦君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案、所得税法等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長宮下一郎君。

    ―――――――――――――

 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

 所得税法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号(二)に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔宮下一郎君登壇〕

宮下一郎君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案は、東日本大震災からの復興のために実施する施策に必要な財源を確保するため、復興債の発行期間を平成三十二年度まで延長する等の措置を講ずるとともに、最近における国の財政収支が著しく不均衡な状況にあることに鑑み、平成二十八年度から平成三十二年度までの間の財政運営に必要な財源の確保を図るため、これらの年度における公債発行の特例措置を講ずるものであります。

 次に、所得税法等の一部を改正する法律案は、経済の好循環の確立、消費税率引き上げに伴う低所得者への配慮、少子化対策・教育再生、地方創生の推進、国際課税の枠組みの再構築、震災からの復興支援等の観点から、国税に関し、所要の改正を行うものであります。

 復興財源確保法及び特例公債法改正案は去る二月九日、また所得税法等改正案は十六日、それぞれ当委員会に付託され、同日麻生財務大臣から両案について提案理由の説明を聴取し、翌十七日から質疑に入り、二十四日には安倍内閣総理大臣に対する質疑、二十九日には参考人からの意見聴取、本日、再度、安倍内閣総理大臣に対する質疑を行い、質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、復興財源確保法及び特例公債法改正案に対し、民主・維新・無所属クラブから修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、両案及び修正案を一括して討論を行い、順次採決いたしましたところ、修正案は賛成少数をもって否決され、両案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、所得税法等改正案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 討論の通告があります。順次これを許します。落合貴之君。

    〔落合貴之君登壇〕

落合貴之君 維新の党、落合貴之でございます。

 民主・維新・無所属クラブを代表し、まず私の段では、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案に反対の立場で討論をさせていただきます。(拍手)

 反対の理由の第一は、期間の問題です。

 従来、赤字国債を発行するための法案、この特例国債法案は、一年ごとに出され、審議が行われていました。しかし、今回の法案は期間が五年。この法案が通れば、平成三十二年度まで、特例国債発行が適正かどうかの審議がされません。

 本来、財政法四条において、公債発行は原則的に禁止をされております。したがって、毎年毎年、特例公債の発行には、慎重な審議が国会にて行われてまいりました。

 しかし、民主党政権時代の平成二十四年、与野党の衆参の議席のねじれから、秋になっても特例公債法案が通らず、復興債の発行もできず、ぎりぎりの期限を迎え、民主、自民、公明の三党により、復興が政局により滞らないよう、例外的に平成二十七年度まで特例公債発行を認めるとする委員会修正を経て、十一月に法案が成立いたしました。

 今、衆参の与野党の議席はねじれているわけではありません。せめて、復興債の発行は別の法案にし、特例公債法案の審議は一年ごとにするのが、真っ当なあるべき姿ではないでしょうか。

 復興債の発行法案と抱き合わせにして、復興を滞らせてはいけないといって、ほかの赤字国債の発行も五年間審議しなくてもいいようにする、国会の財政へのチェック機能を弱まらせる、国民のチェック機能を弱まらせる、このような憲政の常道にもとる暴挙を我々は許すことはできません。

 第二に、政府保有資産の売却が計画どおりに進んでいないことです。

 政府も、平成二十八年度以降五年間の復興・創生期間における復興財源については、平成二十七年六月三十日の閣議決定で、最大三・二兆円程度を確保するとされ、その財源に、財政投融資特別会計からの受け入れなど、国の保有する資産の有効活用等の税外収入により、〇・八兆円程度を確保するとしています。

 今、JT、日本郵政、NTTなど上場企業のものも含め、政府保有株は、二十四社十二兆円に及んでおります。また、売却方針が決まっていても、なかなか進んでいない政府資産がまだまだたくさんあります。

 例えば、完全民営化が決まっている政策投資銀行、商工中金はどうなったんでしょうか。完全民営化の法案が通って何年たっても、いろいろな理由がつけられ、保有株の売却は頓挫しております。プライマリーバランスを回復しているならまだしも、巨額の赤字国債を発行し続けている以上、政府保有資産のあり方は極めて厳しく見直さなければなりません。今の安倍政権の姿勢では不十分です。

 第三に、特別会計のあり方です。

 例えば、東日本大震災の復興のために復興特別会計が設けられています。これは、復興のために大変重要な役割を果たしています。

 しかし、私が財務金融委員会にて、復興特別会計の役割が終わって、万が一お金が余っていた場合は一般会計に戻すのかということを念のため確認したところ、余った資金は、別の特別会計に入れる選択肢もあり得るとの答弁でした。

 特別な目的でつくった、しかも、震災復興のためにつくった特別会計の役割が終わったら、一旦一般会計に繰り入れるという基本中の基本も行わない、国民の税金を、国民の負っている借金を、政治家や官僚が自分たちの都合で予算の使い方を決めてしまう、こんないいかげんなことを続けていていいのでしょうか。

 外国為替特別会計には百五十兆ものお金が、労働保険特別会計などにも膨大なお金がため込まれています。

 もう二十年近く、特別会計のあり方については、国会で議論がされてまいりました。野党議員が指摘するだけでなく、時の財務大臣が特別会計のあり方について疑問を呈したこともありました。それなのに、まだこんな議論をしていなければならない。こんな次元の国会審議をこれ以上続けていてはなりません。

 また、赤字国債を大量に発行し続けている限りは、我々国会議員の歳費、文書通信交通滞在費のあり方、公務員制度のあり方も本格的に議論を進めていかなければなりません。

 安倍政権は、改革、改革と叫びながら、実際には、未来のために既得権に切り込む改革は、発表だけで、実行していないことが多いのではないでしょうか。

 最後に、負担のあり方についてです。

 財政法四条で国債の発行が禁止されているにもかかわらず、五十年前、公共事業に使う建設国債は、慎重な審議を経て、将来に資産を残すという理由をつけ、発行が認められました。

 一方、赤字国債の発行は、オイルショックの中での厳しい財政状況の中で、いわば危機回避的に発行が認められました。当時の議事録を拝見しましたが、かなり慎重な審議がされていました。しかし、今も赤字国債は大量に発行し続けられています。

 建設国債が資産を残すのであれば、赤字国債は後世に何を残すのでしょうか。

 赤字国債を発行するのであれば、将来世代に負担を求めるのであれば、若者への投資、教育への投資、これから生まれてくる子供たちへの投資を行わなければなりません。将来に借金と貧しい国だけを残してはなりません。

 我が国の教育への公的支出の割合は、OECD加盟国の中で最低レベル。このような歳出の仕方をしている状態で、赤字国債の発行を、五年間、毎年審議することなく決める今回の法案は、この国の将来のためにも、そして、国会の財政に対するチェック機能、国民の財政に対するチェック機能を失わせないためにも、断じて認めることはできません。

 我々は、将来世代のために、この国の健全性を守るために安倍政権と戦う、このことを宣言して、この法案の反対討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 大塚高司君。

    〔大塚高司君登壇〕

大塚高司君 自由民主党の大塚高司です。

 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました内閣提出の東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案に賛成する立場から討論を行うものであります。(拍手)

 まず、復興財源確保法及び特例公債法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 復興財源確保法の改正については、復興債の発行期限の延長等、被災地の復興事業のための財源の確保に必要な法制上の措置を講ずるものです。

 東日本大震災の発生から五年がたとうとしておりますが、この法改正を速やかに行った上で、必要な復興財源を確保し、平成三十二年度までの復興・創生期間において復興を加速化していく必要があります。

 また、特例公債法の改正については、少なくとも二〇二〇年度までの間は、引き続き特例公債を発行せざるを得ないと見込まれる財政状況の中、現行の枠組みを引き継ぎ、二〇二〇年度プライマリーバランス黒字化目標を踏まえ、安定的な財政運営を確保する観点から、特例公債の発行を二〇二〇年度までの五年間とするものであります。適切な対応だと考えます。

 財政規律の点についても、現内閣では、特例公債の発行を複数年度化した現行の特例公債法のもとであっても、財政健全化を着実に進めてきた実績もあります。また、二〇二〇年度プライマリーバランス黒字化目標に向けて、財政健全化を進めていく方針を堅持していることを踏まえれば、何ら問題はないと考えております。

 所得税法等の一部を改正する法律案については、経済の好循環の確立、消費税率引き上げに伴う低所得者への配慮、少子化対策・教育再生、地方創生の推進、国際課税の枠組みの再構築、災害からの復興支援等に取り組むための所要の改正を一体として行うものであります。

 具体的には、まず、経済の好循環を確実なものとするため、成長志向の法人税改革を行うこととしております。

 安倍政権は、総理の強いリーダーシップのもと、三本の矢から成る経済政策を一体的に推進し、常に経済最優先で取り組んできました。その結果、デフレ脱却までもう一息のところまで来ております。

 成長志向の法人税改革は、デフレ脱却・経済再生を着実に実現するためにも、ぜひとも必要な取り組みであると考えます。

 また、社会保障と税の一体改革を実現するため、消費税率一〇%への引き上げを平成二十九年四月に確実に実施する必要があります。その際、低所得者への配慮として、消費税の軽減税率制度を導入することとしています。

 軽減税率制度には、ほとんどの方々が毎日購入している飲食料品などを軽減税率の対象とすることで、消費税の逆進性を緩和しながら、買い物の都度、痛税感の緩和を実感していただけるという利点があり、ぜひとも必要な措置であります。

 さらに、少子化対策・教育再生のために、三世代同居に対応した住宅のリフォームを支援するための税額控除の導入、国立大学法人等の行う修学支援事業に充てられる個人寄附に係る税額控除の導入といった改正を行うとともに、地方創生を推進するために、企業版ふるさと納税に係る法人税の特別控除制度の創設、外国人旅行者向けの消費税免税制度の拡充といった取り組みを進めるなど、本法案は、我が国が直面するさまざまな重要課題に対応する上で必要不可欠なものであると考えます。

 以上、内閣提出の両法案に賛成の立場を表明いたしまして、私の討論を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 鈴木克昌君。

    〔鈴木克昌君登壇〕

鈴木克昌君 民主党の鈴木克昌です。

 私は、民主・維新・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました、政府提出、所得税法等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。(拍手)

 社会保障の充実、安定化を図り、将来世代に借金を押しつけないため、一〇%への消費税引き上げを含めた社会保障と税の一体改革を推進することの重要性、必要性は全く変わりありません。それどころか、社会保障も財政健全化も軽視する安倍政権の登場により、その重要性はますます高まっているわけであります。

 しかし、引き上げの前提の一つであった社会保障の充実は、総合合算制度の取りやめという形でないがしろにされ、議員定数の大幅削減を含む身を切る改革もいまだに実施されていません。安倍政権により、社会保障と税の一体改革の三党合意は事実上ほごにされてしまったのであります。

 また、消費税には所得の少ない家計ほど消費税負担率が高くなるという逆進性が存在し、その影響をいかに取り除くかが最重要課題の一つでありました。いわゆる複数税率については、ヨーロッパで生じているさまざまな問題を踏まえれば、逆進性対策として適切ではなく、真に国のため、国民のためにならないことは火を見るより明らかであります。

 具体的に問題点を申し述べれば、購買力の高い高額所得者の方が負担軽減額が大きくなり、格差是正効果が極めて薄い点がまず挙げられます。

 次に、高額所得者まで軽減対象となる結果、今回の政府案のように、酒、外食を除く食料品を八%に据え置くだけでも、一兆円もの巨額な財源が必要となることであります。この財源の手当ては、今後の税制改正の議論に先送ると安倍政権はしています。参議院選が終わったら、財源確保のためにさらなる増税などといったことになりかねません。

 また、対象品目の選定が利権に結びつきやすいとか、事業者の事務負担が大幅にふえるだけでなく現場が混乱するという問題もあります。予算委員会の審議では、麻生財務大臣から、現場で混乱はある程度起きるとか、事務負担のふえる中小企業が廃業に追い込まれる可能性について、百あったとか千あったとか、いろいろ例が出てくるなど、驚くべき無責任な発言もありました。

 最も効果的な逆進性対策は、言うまでもありません、給付つき税額控除です。民主・維新・無所属クラブは、対案として給付つき税額控除法案を既に国会に提出しておりますが、いまだ審議に付されていないことはまことに残念であります。

 給付つき税額控除は、必要な世帯にだけ消費税の負担を払い戻すことで、格差是正効果にすぐれるだけではなく、対象品目の線引きも必要なく、事業者の負担も生じず、所要財源もはるかに少なくて済むわけであります。そのことは数多くの有識者が指摘するところであります。

 しかし、安倍自民党は、複数税率の問題点を把握しておきながら、党利党略の観点から、実態は据え置き税率にすぎない複数税率を軽減税率に名前をかえ、今まさに国会で押し通そうとしています。このようなやり方は、国を誤った方向に導くものであり、賛成できません。

 本法律案には、ほかにも問題点があります。以下、軽減税率以外の点で、本法律案に反対する理由を具体的に申し述べます。

 第一に、成長戦略に反する法人実効税率引き下げです。

 国際競争力、財政健全化などの観点から、適切な代替財源を確保できるのであれば、法人実効税率は引き下げるべきと考えます。

 しかし、今回の改正には、成長戦略に反する不適切な代替財源の確保が含まれています。それは、外形標準課税の付加価値割に対する税率引き上げであります。付加価値割の大半は賃金であり、付加価値割の税率を重くするということは、すなわち雇用を抱えた企業への増税を意味するのであります。企業収益の増加を賃金上昇につなげる経済の好循環という政権の掲げる目標とは真逆の措置であり、理解に苦しみます。

 第二に、格差是正に対する視点が欠けていることであります。

 生まれた環境により将来が大きく左右されるような状況を放置すれば、格差の固定の進行は必至であります。将来を担う若者の多くが頑張りようもない、頑張っても報われないと感じる社会には、安定も活力も望めません。

 第三に、我が国の基幹産業、地方の生活の足を守る観点から、自動車関連諸税の抜本見直しを行うべきにもかかわらず、何ら措置が講じられていないことであります。

 第四に、医療、介護等の控除対象外消費税の問題についても、国民に良質な医療を提供する観点などから早急に解決策の提示を求めてまいりましたが、いまだ解決策が示されていないことであります。

 民主党は、格差是正及び経済成長のため、自動車取得税廃止、自動車重量税の特例税率の廃止等、また、個人所得課税改革、資産課税改革の検討、実施、そして、法人実効税率引き下げの見送りと効果の検証、また、医療、介護等の控除対象外消費税問題に係る措置の検討、実施等を定める格差是正等税制措置法案を既に国会に提出しております。しかし、まことに残念ながら、給付つき税額控除法案と同様、審議がなされておりません。本当に残念であります。

 以上のように、民主・維新・無所属クラブは、対案を示し、建設的な議論を進めようとしてきましたが、安倍自民党は聞く耳を持ちません。問題の多い法案を修正することなく推し進めることには到底賛同できないわけであります。

 最後に、広く野党勢力を結集し、こうした国民生活無視の安倍政権に対抗していくことを国民の皆様にお約束し、私の討論を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 角田秀穂君。

    〔角田秀穂君登壇〕

角田秀穂君 公明党の角田秀穂です。

 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案、所得税法等の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 初めに、いわゆる特例公債法案について、主な賛成理由を述べます。

 間もなく東日本大震災の発災から丸五年を迎えます。しかしながら、五年たった今なお、十七万人を超える方々が避難生活を余儀なくされているという現実を私たちは重く受けとめなければなりません。政府・与党が一丸となり、被災者の声をしっかりと受けとめ、引き続き、生活の再建、人間の復興に重点的に取り組んでいく必要があります。

 そのため、本法案では、復興財源を確保するための復興債の発行期間を五年延長し、新たに平成二十八年度からスタートする復興・創生期間を起点に復興を加速化させ、避難生活をしている方々に、もとの暮らしができるように取り組んでいくこととしております。これからも被災者に寄り添いながら必要な施策を講じていくことが極めて重要です。

 また、平成二十八年度から三十二年度までの五年間、特例公債を発行できるようにし、民主党政権以来、目標としてきた二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成を目指しております。

 もちろん、むやみに国の借金をふやすことは許されません。財政法の特例という基本はしっかりと踏まえた上で、特例公債の発行を抑制し、プライマリーバランス黒字化目標や経済財政健全化計画を推進していくことが重要です。

 その点、本法案では、各年度において特例公債の発行額の抑制に努めることとしており、無駄な発行をしないための措置が講じられていることも評価をいたします。

 政府が掲げている経済再生なくして財政健全化なしとの方針のとおり、まずは経済の底上げに力を入れることが重要であると考えます。

 次に、所得税法等の一部を改正する法律案について主な賛成理由を述べます。

 今般の税制改正では、公明党がかねてより一貫して導入を主張してきた消費税の軽減税率制度について、消費税の引き上げ時から実施することが盛り込まれました。

 軽減税率制度は、社会保障の財源確保に留意しつつ、消費税率の引き上げに伴う痛税感の緩和を図るものであり、何よりも、毎日の生活に必要な食料品や飲料品だけでも税率を軽くしてほしいという庶民の切実な願いに応える重要な制度であります。

 また、低所得者ほど税負担が重くなる消費税の逆進性の緩和の観点から見ても、負担軽減割合は所得の低い人ほど大きくなる、すなわち逆進性緩和に効果があることはこれまでの議論でも明らかになっております。

 平成二十四年に民主、自民、公明の三党で合意した社会保障と税の一体改革では、合意に基づいて修正された税制抜本改革法により、低所得者に配慮する観点から、総合合算制度、給付つき税額控除、複数税率すなわち軽減税率制度の導入について総合的に検討することとされました。

 この三党合意に基づいて、政府・与党として丁寧な議論を積み重ねてきました。その結果、給付つき税額控除では痛税感の緩和につながらず、制度の前提となる所得や資産の正確な把握が可能となる見通しも立っていないことなど、大きな課題があり、軽減税率制度が唯一現実的かつ適切な制度との判断に至ったものです。

 これに対して、軽減税率制度も含めて検討することで同意したその当事者である民主党が軽減税率制度を批判していることについては、国民に対しても極めて不誠実な態度と言わざるを得ません。

 次に、軽減税率の対象品目については、酒類、外食を除く食料品全般及び一定の新聞の定期購読料とされました。

 生鮮食料品だけでなく加工食品も対象となったことにより、国民の痛税感をさらに緩和することができ、逆進性対策としても効果的な制度となっております。

 また、外食を除くとしたことで、その線引きは極めて重要です。定義が揺らいでは恣意性が入る余地が出てしまい、租税法定主義の根幹が揺らぎかねません。定義をしっかりと踏まえながら、税務当局においては滞りなく円滑な導入に万全を期すよう強く求めます。

 また、事業者等の事務負担を軽減するため、区分経理や事務負担については、インボイス制度の導入までの間、これまでの帳簿方式を基準にした簡易な制度で対応を行うこととしております。

 特に、中小企業、小規模事業者の負担軽減のために、今年度の予備費から九百九十六億円を確保して、レジの購入額の三分の二または四分の三を補助するほか、電子受発注システムの改修についても三分の二を補助し、補助金を超える分についても低利融資を利用できるようにしています。

 また、今年度補正予算において、商工会議所などの中小企業団体が実施する講習会や相談窓口の設置などの事業者へのサポート体制整備のため、百七十億円が計上されております。

 来年四月の円滑な導入に向け、政府一体となって取り組み、事業者の負担軽減に努めていくことが何よりも重要です。

 次に、本法案で、国、地方を合わせた法人実効税率を二〇%台に引き下げるとしている点は、企業の体質改善を促し、日本経済の再生を加速化させるものと考えます。企業の収益や税率引き下げにより生まれる資源が、内部留保にとどまらず、設備投資の拡大や賃上げなどにつながることが重要です。政府においては、法人税改革の効果が十分に得られるよう、さらなる取り組みを求めます。

 財源については、外形標準課税の拡大などで確保しますが、日本経済の屋台骨である資本金一億円以下の中小企業には適用されないこと、また、事業規模が一定以下の中堅企業で負担増となる場合の負担軽減措置を拡充している点は、実情を踏まえた適切な対応と評価をいたします。

 他方、国民生活に対する税制上の配慮もなされております。

 三世代で同居するために自宅をリフォームした場合には、所得税額を最大で二十五万円減税することや、ローンを組んでリフォームする際は、最大六十二万五千円分を五年に分けて所得税額から控除する仕組みが盛り込まれております。

 三世代同居は、子育てしやすい環境を整備する観点からも重要であり、希望出生率の向上にも資するものと考えます。

 また、現在、相続等によって発生する、使われる見込みのない古い空き家の数は、毎年、平均六・四万戸増加し、そのうちの約七五%が旧耐震基準のもとで建築をされております。この現状を踏まえ、空き家対策としての税制上の措置も講じております。

 具体的には、相続した空き家については、三年以内の空き家または除去後の土地を譲渡した場合、譲渡所得から三千万円を非課税にすることとしており、政策的な効果が期待されます。

 以上、主な賛成理由を述べさせていただきました。

 財政健全化は我が国の最大の課題です。二〇二〇年プライマリーバランス黒字化という目標を堅持しつつ、国民の理解を得ながら、丁寧にこの問題に取り組まなければなりません。

 また、経済成長の成果を速やかに地域や家計へと循環させることも重要です。公明党は、国民の皆様に景気の改善を実感できる政策の推進にこれからも全力で取り組んでいきます。このことをお約束し、私の賛成討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 池内さおり君。

    〔池内さおり君登壇〕

池内さおり君 私は、日本共産党を代表して、所得税法改正案、特例公債法等改正案に対して反対の討論を行います。(拍手)

 安倍総理は、この三年間、国民の暮らしや日本経済はよくなっているとの認識を強調されました。しかし、国民のほとんどの生活実感は正反対のものです。

 この三年間、実質賃金は、パート労働者も一般労働者もともに下がりました。三年間で、正社員が二十三万人減った一方、非正規雇用の労働者は百七十二万人ふえています。圧倒的に非正規化が進みました。

 日本経済の六割を支えている個人消費も三年間下がり続け、アベノミクスは、多くの国民に将来不安を押しつけ、個人消費を冷え込ませています。これが実態であり、既に大失敗は明らかです。

 今国会では、格差と貧困の問題に論戦が集中しました。一人親世帯の貧困率は五四%、家計は赤字です。非正規雇用の二割以上の方々が、食事の回数をこの一年間減らしている実態があります。高齢者、奨学金債務に苦しむ若者など、全ての階層で格差と貧困が深刻化しています。

 にもかかわらず、消費税を一〇%に引き上げる、こんなことをしたら、政治が格差と貧困をさらに拡大することになることは明白ではありませんか。

 増税の痛みを小さく見せようとしていた政府の試算でさえ、一〇%への引き上げによって総額四・五兆円、国民一人当たり二万七千円、一世帯当たりでは年間六万二千円もの負担を国民に押しつけることが明らかになりました。

 政府が決めた軽減税率は百害あって一利なし、国民に対する大増税の露払いそのものです。

 政府は、軽減などと負担が軽くなるような言いぶりをされますが、事実は、食料品と新聞が税率八%に据え置かれるだけ、結局は差し引き増税、これが正体ではないですか。

 負担増の痛みはとどまるところを知りません。

 社会保険料の自己負担に加えて、消費税の負担が低所得者ほど重い税の逆進性を一層高めることになります。さらに、簡素な給付措置の廃止によって、低所得層にはダブルの増税となるではありませんか。

 軽減税率の導入によって中小零細事業者に納税事務の負担増を押しつけて、インボイスの導入で中小零細業者を廃業に追い込むことなど、断じて許されません。

 私が怒りを感じるのは、与党幹部から、軽減税率の導入を好機とばかりに、消費税増税のインフラ整備ができた、将来、消費税率が一五%、二〇%に引き上げられたとき、軽減税率を一桁の八%に据え置いたことの意味がわかるなどという発言が相次いでいることです。

 政府・与党がやろうとしていることは、税負担の軽減どころか、さらなる増税への条件づくりではありませんか。

 アベノミクスが一部の人々への恩恵を広げたのは紛れもない事実です。それは、株高と円安で資産を大きく膨らませた富裕層と、史上空前の収益を上げた輸出業を中心とする大企業です。

 所得税法改正案は、企業がもうからなければ雇用も投資もふえないとする税制改正大綱のもと、過去最高の収益を上げている大企業にさらに恩恵を与えて、法人実効税率二〇%台への引き下げを前倒しで実施する大企業減税案を盛り込みました。

 既に二〇一三年度以降行われた三兆円の減税に加えて、一六年度以降、さらに一兆円もの巨額の減税となります。これこそまさに大企業優遇税制にほかなりません。

 株主への配当や内部留保をため込むだけの大企業に、これ以上の減税は必要ありません。まして、法人税減税の税収分を埋めるために赤字企業にも税負担を課す外形標準課税の拡大など、言語道断です。

 賃金部分を含む付加価値割の増税は、中堅企業の雇用への意欲を奪い、賃下げの要因ともなり、中堅企業の経営に大きな打撃を与えるだけでなく、これらの企業が多く立地している地域経済をも冷え込ませることになります。このような増税には断固反対です。

 税制は、担税力に応じた負担を求める応能負担や生計費非課税の原則が基礎とならなければなりません。

 こうした原則を投げ捨てて、財界が言うがままの大企業優遇を露骨に進め、国民には大負担を求めるなどということは、到底認められません。

 次に、特例公債法は、二〇一六年度から五年間、赤字国債の発行を自動的に認めるものとなっています。これは、憲法と財政法の定める財政民主主義を幾重にも踏みにじるものです。

 憲法八十三条は、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」としています。どこから財力を調達するかも含めて、主権者である国民を代表する国会の議決に基づく、このことを定めたものです。

 また、憲法八十六条は、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」と予算の単年度主義を規定しています。

 その上で、財政法四条は、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」としています。公債や借入金を財政法は認めていません。財政法が辛うじて認めているのは、公共事業等のための公債発行と借入金だけであります。

 このもとで、従来、特例公債法は、赤字国債の発行が必要な年に、国会の議決が必要な法案として政府から提出をされ、その都度審議をしてきました。財政規律を保つために、その最低限の措置として、単年度に限定をしてきたのです。

 ところが、二〇一二年に、消費税増税を前提にして、自民、公明、民主の三党合意によって、赤字国債の発行を四年間政府の自由に委ねる法律を成立させてしまいました。

 国会のチェックを外した四年間、国と地方の借金はどうなったでしょうか。二〇一一年度末に八百九十五兆円だった借金は、二〇一五年度末の見込みでは一千四十一兆円とウナギ登りにふえました。

 本法案によって、さらに五年、赤字国債の発行を政府の自由に委ねるなら、国と地方の借金が一層累積していくことは政府の試算でも明らかです。将来世代に大きなツケを回す、極めて無責任な政治だと言わなければなりません。

 政府は、特例公債の発行限度額を予算総則に書くなどと弁明しています。しかし、今後五年間は、どのような予算がどのような規模で組まれるかは、時の政権にしかわかりません。

 衆議院議員の四年間の任期をも超えて、五年間も赤字国債の発行を政府の自由裁量に委ねることは、政府が国会の予算審議権を奪うことに等しいものであって、断じて許されません。

 そもそも、財政法が、なぜ赤字公債の発行を禁止したのでしょうか。それは、過去の戦争で、戦費調達のために膨大な戦時国債を発行し、国家財政と国民生活を破綻させた痛苦の反省があったからです。

 財政法の制定当時の議論を見ますと、この財政法四条は、健全財政を堅持していくと同時に、財政を通じて、戦争危険の防止を狙いとしている規定であると説明がされています。公債なくして戦争の遂行は不可能であったという反省の上に、本条は憲法の戦争放棄の規定を裏書き保証するためのものだと明確に述べています。

 安倍内閣が、今、憲法違反の戦争法を強行成立させ、海外で戦争する国づくりを進めようとしていることと連動し、戦争を財政的に支えた仕組みを否定した財政法の根本をないがしろにする本法案は、極めて重大であり、到底認めることはできない暴挙であると言わなければなりません。

 以上、指摘をして、反対討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) 伊東信久君。

    〔伊東信久君登壇〕

伊東信久君 おおさか維新の会の伊東信久です。

 私は、我が党を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案に反対し、復興財源確保法の一部を改正する法律案及び特例公債法の一部を改正する法律案には賛成の立場で討論をいたします。(拍手)

 まず、所得税法等の改正法案についてです。

 本法案は、法人税率の引き下げ等成長重視の法人税制改正について、評価できる点はあります。しかし、所得税法については、政府自身が行おうとしてきた配偶者控除や年金控除等の見直しがなされておらず、女性の活躍促進や世代間の公平の点で、なすべき改革がまた先送りされた内容となっています。

 最大の問題点は、消費税に関するものです。我が党は、消費税増税前に、国会も政府もまずやるべきことがあると考えています。

 国会については、衆議院議員定数の削減を求めた選挙制度調査会答申の内容を直ちに実現すべきです。この答申で示された衆議院定数の十減という内容は、我が党の考え方からは不十分なものです。しかし、国会議員がみずからの定数を削減することの難しさを考えれば、第三者機関である調査会の答申は、当然、最大限尊重されるべきです。

 二月四日の予算委員会で、総理御自身も、答申の尊重は当然と答弁されました。また、さきの総選挙の公約にも定数削減を掲げられています。

 ところが、自民党は、今国会提出を目指す公職選挙法などの改正案では、二〇二〇年国勢調査をもとに定数配分を見直す方針とのことです。

 今回提出された法案は、総理と自民党がみずから国民に約束してきた身を切る改革、定数削減を先送りしたままに消費増税を行うことを前提としており、我が党は到底賛成できません。

 さらに、消費税率引き上げに伴って導入される軽減税率制度は極めて大きな問題をはらんでおり、我が党はその導入に反対します。

 対象品目の線引きは、どう工夫しても国民の間に不公平感を残します。痛税感の緩和や低所得者対策といった点でも効果が薄いものです。

 また、この制度は、業界との新たな癒着や利権も生み出します。電気やガスは一〇%の税率になるのに、新聞の税率は八%のままなのは何ゆえなのか、国民に納得のいく説明は、いまだ全くなされておりません。

 一旦軽減税率制度を導入すれば、新聞に限らず、あらゆる業界団体が適用を求めて陳情合戦を繰り広げることは目に見えています。結果として、消費税制度はヨーロッパの一部の国のように複雑きわまりないものとなり、財源の穴埋めのために、標準税率もヨーロッパ並みの二〇%程度になりかねません。我が党は、消費税の単一税率制度を維持することが国民の生活のために望ましいと考えます。

 次に、復興財源確保法の改正案及び特例公債法の改正案についてであります。

 今後五年間の復興財源確保のための法案が必要であることは当然であります。我が党としては、復興財源には特別会計の剰余金をさらに利用すべきと考えますが、この法案自体には賛成できます。

 特例公債法案については、政府が国民生活に責任を持った財政運営をするために、ある程度の必要性は認められます。

 かつて、三年間にわたって特例公債の自由な発行を認めたのは、赤字国債の発行を人質にとった政局によって財政運営に支障を来しかねない事態が生じたからです。国民生活に直結する予算の執行を混乱させてでも、政府・与党を困らせよう、支持率を下げようなどというやり方は、やはり問題があると考えます。

 ただし、その運用に当たっては、財政規律の点で、本気で取り組む必要があると考えます。五年間にわたる自由な国債発行を認める以上、政府にも、これまでとは異なる厳しい財政規律が求められます。

 これにつき、予算委員会で、総理は、行政改革の断行と財政再建を責任を持って行うと明言されました。総理が予算審議の終局で述べた言葉は重たいものであります。総理の言葉をもって、我が党の馬場幹事長は特例公債法案に賛成と述べ、これにより、我が党全体の態度も賛成と決しました。

 我々おおさか維新の会が、財政規律上は大きな問題を生みかねない特例公債法案に賛成したのは、この総理の言葉を信じたからです。公務員人件費の削減を初めとする行政改革を安倍政権が本気で断行するなら協力する、しかしながら、行わないなら安倍政権と戦う。もちろん、公務員人件費の削減に反対するあらゆる野党とも戦い、必ずこれを実現する。以上を国民の皆さんにお約束申し上げ、私の討論を終わります。

 御清聴ありがとうございます。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、所得税法等の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後六時四十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  安倍 晋三君

       財務大臣    麻生 太郎君

       総務大臣    高市 早苗君

       法務大臣    岩城 光英君

       外務大臣    岸田 文雄君

       文部科学大臣  馳   浩君

       厚生労働大臣  塩崎 恭久君

       農林水産大臣  森山  裕君

       経済産業大臣  林  幹雄君

       国土交通大臣  石井 啓一君

       環境大臣    丸川 珠代君

       防衛大臣    中谷  元君

       国務大臣    石破  茂君

       国務大臣    石原 伸晃君

       国務大臣    遠藤 利明君

       国務大臣    加藤 勝信君

       国務大臣    河野 太郎君

       国務大臣    島尻安伊子君

       国務大臣    菅  義偉君

       国務大臣    高木  毅君


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