衆議院

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第27号 平成28年4月22日(金曜日)

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平成二十八年四月二十二日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十七号

  平成二十八年四月二十二日

    午後一時開議

 第一 行政機関等の保有する個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 行政機関等の保有する個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案(細田博之君外四名提出)及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案(今井雅人君外二名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 行政機関等の保有する個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、行政機関等の保有する個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長遠山清彦君。

    ―――――――――――――

 行政機関等の保有する個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するための関係法律の整備に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔遠山清彦君登壇〕

遠山清彦君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることを踏まえ、行政並びに独立行政法人等の事務及び事業の適正かつ円滑な運営並びに個人の権利利益の保護に支障がない範囲内において、行政機関及び独立行政法人等の保有する個人情報を加工して作成する非識別加工情報を事業の用に供しようとする者に提供するための仕組みを設けるほか、所要の規定の整備を行うものであります。

 本案は、去る四月十三日本委員会に付託され、翌十四日高市総務大臣から提案理由の説明を聴取した後、十九日から質疑に入り、同日参考人から意見聴取を行い、二十一日質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対して附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案(細田博之君外四名提出)及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案(今井雅人君外二名提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、細田博之君外四名提出、衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案及び今井雅人君外二名提出、衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案について、順次趣旨の説明を求めます。提出者細田博之君。

    〔細田博之君登壇〕

細田博之君 ただいま議題となりました自由民主党及び公明党提出の衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表いたしまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 まず、本法律案の提案理由について御説明をいたします。

 衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口格差については、近年、平成二十三年、二十五年及び二十七年と三度にわたり違憲状態である旨の最高裁判所大法廷判決が出されており、違憲状態の解消に向けた格差是正措置を講ずることが喫緊の課題となっております。

 また、平成二十六年六月十九日の衆議院議院運営委員会の議決に基づき議長のもとに設置された諮問機関、衆議院選挙制度に関する調査会においては、佐々木毅座長のもと、計十七回に及ぶ会議が開催され、衆議院小選挙区の一票の格差の問題や各選挙制度の比較考量、そして衆議院議員の定数削減等について、精力的かつ真摯に議論を行っていただきました。

 その議論の結果を踏まえ、本年一月十四日に同調査会の答申が議長に提出されました。自由民主党及び公明党は、この答申の内容を尊重する立場からそれぞれ検討を行い、議長の御指導のもと、両党の間で協議を重ねました。

 このような経緯を経て、今般、両党は、最高裁判決及び調査会答申に沿って、衆議院議員の定数を削減するとともに、違憲状態の解消に向けた衆議院小選挙区に係る人口格差の是正措置を講じることとした次第であります。

 以上が、この法律案を提出した理由であります。

 次に、本法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部改正についてであります。

 衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口格差を是正するため、都道府県別定数配分の方式として、いわゆるアダムズ方式を導入するとともに、同方式による都道府県別定数配分は、制度の安定性を勘案し、十年に一度の大規模国勢調査でのみ行うこととしております。

 なお、このアダムズ方式導入に係る改正については、本法律案施行後の直近の大規模国勢調査である平成三十二年国勢調査から適用されることとしております。

 また、大規模国勢調査の中間年に実施される簡易国勢調査に基づく改定案の作成に当たっては、各都道府県の選挙区の数は変更せず、選挙区間の格差が二倍以上となったときに境界の変更で対応することとしております。

 第二に、公職選挙法の一部改正についてであります。

 本法律案では、衆議院議員の定数を四百六十五人とし、小選挙区選出議員を六人、比例代表選出議員を四人、合計して十人削減することとしており、削減後の小選挙区の区割りは、別に法律で定めることといたしております。

 また、比例ブロックの定数配分について、小選挙区と同様、アダムズ方式により行うことを明記いたしております。

 第三に、平成三十二年の国勢調査までの緊急是正措置として行う、平成二十七年の国勢調査の結果に基づく改定案の作成及び勧告についてであります。

 衆議院議員選挙区画定審議会は、平成二十七年の国勢調査の結果に基づき小選挙区の区割り改定案の作成及び勧告を行うものとし、この改定案の作成に当たっては、定数六減の対象となる都道府県を、平成二十七年の国勢調査に基づきアダムズ方式により都道府県別定数を計算した場合に減員対象となる都道府県のうち、議員一人当たり人口の最も少ない都道府県から順に六都道府県とするとともに、各小選挙区の人口に関し、将来見込み人口を踏まえ、次回の見直しまでの五年間を通じて格差二倍未満となるように区割りを行うこととしております。

 また、比例ブロックの定数配分についても、平成二十七年の国勢調査に基づき、小選挙区と同様の基準により、議員一人当たり人口の最も少ないブロックから順に四ブロックを削減の対象とすることとしております。

 このほか、検討条項を設け、本法の施行後においても、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度のあり方については、不断の見直しが行われるものとしております。

 以上が、本法律案の提案理由及び内容の概要であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 提出者今井雅人君。

    〔今井雅人君登壇〕

今井雅人君 ただいま議題となりました民進党・無所属クラブ提出の衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表いたしまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 まず、本法律案の提案理由について御説明をいたします。

 一昨年、議長のもとに設置された諮問機関である衆議院選挙制度に関する調査会におかれては、佐々木毅座長を初め委員の皆様に多大な御尽力をいただき、本年一月に答申を大島議長に提出していただいたところでございます。

 答申においては、「較差是正は喫緊の最重要課題である。」とされております。これは、改めて申し上げるまでもなく、ここ五年余りの間に三度も出された最高裁判所の違憲状態判決を深刻に受けとめ、先送りをすることなく、違憲状態の解消を早急に行わなければならないということを意味いたします。

 また、衆議院議員の定数削減に関しては、答申では、「多くの政党の選挙公約であり、主権者たる国民との約束である。」とされております。

 この定数削減の約束に関しては、私たちが決して忘れてはならない約束がございます。今をさかのぼること三年半近く前の平成二十四年十一月十四日に行われた党首討論において、当時の民主党の野田佳彦総理と自由民主党の安倍晋三総裁との間で、遅くとも平成二十五年の通常国会で定数削減を行うとの約束が交わされました。テレビ中継がなされ、国民注視のもとで交わされたこの約束の政治的な重さは、はかり知れないものがあります。

 この約束に照らせば、答申において示された定数の十人削減は、我々民進党としては満足いくものではありませんが、調査会設置の際に、「各会派は、調査会の答申を尊重するものとする。」と議決したことを踏まえ、今後のさらなる定数削減を視野に入れた一歩前進と評価するとともに、喫緊の最重要課題である格差是正を行うため、この法律案を提出することといたしました。

 以上が、この法律案を提出した理由でございます。

 次に、本法律案の内容の概要について御説明をいたします。

 第一に、衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部改正についてでございます。

 衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口格差を是正するため、都道府県別定数配分の方式として、いわゆるアダムズ方式を導入するとともに、同方式による都道府県別定数配分は、制度の安定性を勘案し、十年に一度の大規模国勢調査でのみ行うこととしております。

 また、大規模国勢調査の中間年に実施される簡易国勢調査に基づく改定案の作成に当たっては、各都道府県の選挙区の数は変更せず、選挙区間の格差が二倍以上となったときに境界の変更で対応することとしております。

 なお、このアダムズ方式の導入の時期については、調査会答申をできる限り忠実に法案化するという観点から、平成二十二年の大規模国勢調査から実施することとしております。具体的には、平成二十二年の国勢調査の結果に基づいて、アダムズ方式により都道府県別定数の配分を行った上で、平成二十七年の国勢調査の結果に基づいて都道府県内の小選挙区の改定案の作成及び勧告を行うものとしております。

 第二に、公職選挙法の一部改正についてであります。

 本法律案では、衆議院議員の定数を四百六十五人とし、小選挙区選出議員を六人、比例代表選出議員を四人、合計して十人削減することとしており、削減後の小選挙区の区割りは、別に法律で定めることとしております。

 また、比例ブロックの定数配分について、アダムズ方式により行うことを明記しており、小選挙区と同様、平成二十二年の国勢調査の結果に基づいて、アダムズ方式によりブロック別の定数を配分しております。

 第三に、見直し条項を設け、本法の施行後においても、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度のあり方については、不断の見直しが行われるものとし、この見直しにおいては、特に人口が急激に減少している地域の民意を適切に反映させることに留意をするとともに、さらなる国会議員の定数削減を図るよう努めるものとしております。

 以上が、本法律案の提案理由及び内容の概要でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案(細田博之君外四名提出)及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案(今井雅人君外二名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。塩谷立君。

    〔塩谷立君登壇〕

塩谷立君 自由民主党の塩谷立でございます。(拍手)

 質疑に入る前に、先週起きました熊本及び大分両県を震源とする地震災害により犠牲となられた多くの方々の御冥福を心からお祈り申し上げるとともに、御遺族の皆様方に心から哀悼の意を表します。また、いまだ続く余震に心を痛めていらっしゃる全ての被災者の方々に心からのお見舞いを申し上げます。我が党は、政府と一体となり、行方不明者の救命救助活動、被災者の皆様に寄り添った支援の取り組み等、全力を挙げることをお誓い申し上げます。

 それでは、質問に移らせていただきます。

 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました、与党共同提出及び民進党提出の衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして質疑を行うものであります。

 平成の時代に入りましてから今日まで、三十年近くの間に、我が国はさまざまな改革を進めてまいりました。選挙制度など政治改革の議論について、平成二年、ちょうど私が初当選の時期でしたが、議員同士の熱い議論が昼夜繰り広げられていたことを今でも鮮明に覚えております。

 その政治改革を皮切りに、行政改革、地方分権改革、税制・金融システム改革、司法制度改革、教育改革、財政構造改革、社会保障と税の一体改革など、我が国の根幹をなすさまざまな改革に続き、現在、安倍内閣において、まさに戦後以来の大改革が断行されようとしています。

 端的に申し上げれば、これらの改革の背景には、従来、中央集権的行政機構を中核として、実に効率的に、効果的に稼働してきた我が国の戦後体制が壁にぶち当たり、国民が多くの面で閉塞感を持つに至ったという時代認識があったのだと考えております。そして、我々は、政治主導の確立と自由主義的な市場原理の活用によって、これまでの体制を抜本的に変革し、我が国を閉塞状況から解放しようとしてきたのであります。

 無論、これらの改革については、今後着手するものは言うに及ばず、全て成就したと言うことはできません。改革は広範にわたり、かつ、今まで経験したことのない手法を取り入れた分野が多かったこともあり、我々は常に、改革後の仕組み、システムの運用状況に目を凝らし、改革が所期の目的を十分に上げられるよう、常に必要な手直しを行いつつ、国民の信頼を確保していかなければなりません。

 このような見地に立つとき、選挙制度は国民が政治に参加するための最も重要なシステムであることから、国民の制度への信頼性を基本にし、入念な検討を加えることが何よりも重要であります。

 今回、与党及び民進党の両案は、衆議院小選挙区における投票価値の平等に反する状態の是正措置を求めた司法の要請に対し、衆議院議長のもとに設置された諮問機関から提示された答申を踏まえ、立法府として、法律案という形でその回答を提示されたものと考えます。

 今回の法律案は、司法の要請に十全に応えられ、国民の信頼にもたえられるものと考えられるのか、与党及び民進党の提案者の見解を承りたいと存じます。

 さて、与党案と民進党案において、第一に明確にしておかなければならないのは、小選挙区に係る都道府県への定数配分、また、比例代表に係る各ブロックへの定数配分の見直しについて、いわゆるアダムズ方式を導入する時期に大きな違いがあることであります。

 言いかえれば、本年一月に提示された衆議院選挙制度に関する調査会の答申について、読解力の違いに起因していると言ってもよいかもしれませんが、両案は実施時期において根本的な隔たりがあるということであります。

 調査会の答申では、小選挙区に関して、都道府県への定数配分の見直しは、十年ごとの大規模国勢調査の結果による人口に基づき行うとされており、素直に読めば、次回の大規模国勢調査の実施年は平成三十二年であり、その時点のデータに基づき実施されるのが自然であると考えます。また、それが、調査会が求める選挙制度の安定性の要請に合致する考えであり、答申の論理構造を正しく理解していることでもあると考えます。

 したがって、与党案が、選挙区の変更が選挙民、有権者に及ぼす影響にも配慮しつつ、制度の安定的な運営を図るためには、平成三十二年の大規模国勢調査の結果を待って実施するべきであるということは、まことに適切な措置であると考えるのであります。この点につきまして、与党提案者の御見解を伺います。

 しかるに、民進党案は、なぜ平成二十二年にさかのぼり、古いデータを使おうとしているのでしょうか。皆目わかりませんが、私なりに解釈すれば、民進党案は、国民へのアピールの姿勢を優先する余り、現実の有権者への影響などは度外視しても一向に構わないとの思惑から提出したものではないかと考えざるを得ないのであります。

 この点、民進党提案者が、なぜ平成二十二年の国勢調査の結果をもとに都道府県別定数の配分を行おうとするのか、その理由をお聞かせ願いたいと思います。

 いずれにしろ、私は、与党案が制度の安定性を踏まえながら定数削減と格差是正を行おうとする案であるにもかかわらず、与党案は答申の先送りである、党利党略で対応したものだとの指摘があるとすれば、それは、与党案の考え方を正しく理解しようとしない、一方的な話であると申し上げておきます。

 第二点は、与党案、民進党案で内容は異なりますが、附則に明記された、望ましい選挙制度のあり方について、不断の見直しが行われるものとする旨の検討条項についてであります。

 私が最近最も衝撃を受けたことは、かねてより予想されていたことではありますが、我が国の総人口が現実に減少したということです。本年二月に公表された平成二十七年国勢調査速報値によると、我が国の総人口は約一億二千七百万であり、大正九年の調査開始以降、初めて減ったということであります。また、出生数と死亡数が今後一定で推移した場合の将来人口は、今から八十四年後の二一〇〇年には約五千万人を切るというショッキングな数値も出されております。

 我々は、こうした変動期にいることを直視しながら、将来を見据え、各般の国民的な取り組みを講じていかなければならないのは言をまちません。

 調査会答申の資料には、定数二百八十九の場合、アダムズ方式による都道府県への議席配分試算として、現行定数から平成四十二年の将来推計人口による各都道府県の配分数の一覧が記載されていますが、定数が十以上、人口五百万人を超える九つの都道府県の定数を、現行と平成四十二年とで比較してみると、百四十から百五十一に増加し、人口集中するその九都道府県だけで全体の定数の五二%を占めることになります。

 このように、格差是正のため、人口のみに依拠した制度を追い求めることによって、地方の声が国政に反映されにくくなるのではないか。これが我が国の民主主義の将来にとって望ましい形なのか。私は、全体の利益の実現を目的として活動する立場の国会議員の一人として、大いに論ずべき課題であると考えるものであります。

 また、同時に、この課題は二院制のあり方にも通ずるものだと思います。

 調査会答申では、現行憲法の二院制の位置づけ、評価について触れていますが、戦後、国民主権主義を基調とした代議制民主主義が誕生して半世紀以上を経た今日、日本の議会制度をさまざまな角度から見詰め直すことが不可欠だと思います。二院制のあり方について、従来から議論されてきましたが、我々が選挙制度を考える際にも重要な視点だと思います。

 選挙制度のあるべき姿を考える上で、二つの院が同じ代表原理で構成されるならば、二院制の存在理由は希薄になります。一つの代表原理に立った議院の行動や意思決定をチェックするという側面を考えれば、もう一つの議院は別の代表原理に基づいて構成されるべきだと思います。

 いずれにせよ、我々は、少子高齢化、人口減少時代を迎える一方で、大都市圏への人口集中が加速しているといった日本の社会の急速な変化に対応しつつ、我が国の議会政治の将来を見据え、国会の機能、役割を考えていかなければなりません。二院制のあり方や衆議院の権限、運用の問題を含め、議員の選出方法、投票制度などについて、絶えず議論を重ねていくことが求められると思います。

 以上述べた点を踏まえ、両案提案者がどのように考え、検討条項を設けられたのか、御説明をお願いいたします。

 以上、大きく二項目について御質問いたしましたが、今回の法律案提出までの間、私自身も多くのことを考えさせられました。

 今、国民の期待は次の言葉に尽きると思います。この歴史的な変革期に機能する国会を、あるいは、国家の進むべき道筋を明確に示す政治をです。

 与党案は、将来にたえ得るものとして十分に吟味の上、提出されたものであると考えます。今国会での与党案の成立に対する支持を強くお訴え申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔細田博之君登壇〕

細田博之君 塩谷議員の御質問にお答えいたします。

 本法律案が司法の要請に応え、国民の信頼にもたえられるものかについて、また、検討条項を設けた趣旨について御質問をいただきました。

 平成二十七年十一月二十五日の最高裁判決では、国会の両議院の議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められているとか、是正の方法についても国会は幅広い裁量権を有しているので、国会が最高裁の判断を踏まえてみずから所要の適切な是正の措置を講ずることが憲法上想定されているものと解される、さらには、合意の形成にさまざまな困難が伴うことを踏まえ、選挙制度の整備については、上記のような漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも国会の裁量に係る現実的な選択として許容されていると解されると述べられているところであります。

 本法律案では、各都道府県への小選挙区定数の配分方式について、平成三十二年の国勢調査からアダムズ方式を導入することを法案の本則に明記しております。

 また、平成二十七年の国勢調査に基づいて小選挙区の区割りを見直すこととしていますが、この区割り改定案の作成については、将来見込み人口を踏まえ、次回の平成三十二年大規模国勢調査に基づく見直しまでの五年間を通じて格差二倍未満となるように行うこととしております。

 さらに、今回は、政治的決断として、平成二十七年の簡易国勢調査の結果に基づいて、衆議院議員の定数十削減を先行して行うこととしていますが、その措置を含め、小選挙区間の一票の格差を二倍未満とするよう、規定を置いております。

 したがって、以上の諸点を総合的に考慮した場合、本法律案は、国会の裁量権の範囲内における適切な立法措置であり、最高裁の判決に十分に応えられるとともに、国民の信頼にもたえられるものとなっているものと考えます。

 次に、検討条項を設けた趣旨についてお答えいたします。

 本法律案は、衆議院選挙制度改革について、衆議院選挙制度に関する調査会の答申を踏まえて提出されています。

 この答申では、一票の格差是正や衆議院議員の定数削減に係る内容のほか、現行憲法下での衆参両議院選挙制度のあり方にも言及されているところであります。

 本法律案では、一票の格差是正や衆議院議員の定数削減に取り組むのはもちろんのこと、この衆参両議院選挙制度のあり方についても、答申が述べるとおり見直しを進めることが重要であるとの立場から、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度のあり方については、民意の集約と反映を基本とし、その間の適正なバランスに配慮しつつ、公正かつ効果的な代表という目的が実現されるよう、不断の見直しが行われるものとする旨の見直し条項を置いた次第であります。(拍手)

    〔逢沢一郎君登壇〕

逢沢一郎君 小選挙区に関する都道府県への定数配分の見直しの時期について、塩谷委員から御質問をいただきました。

 佐々木先生が座長の衆議院選挙制度に関する調査会答申において、議席配分の見直しは、制度の安定性を勘案し、十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づき行うこととされております。一方で、どの大規模国勢調査から見直しを始めるべきか、その開始時点については明らかにされておりません。

 現時点では、次回の直近の大規模国勢調査は平成三十二年のものでありまして、成立した法律をあえて遡及適用することは例外的であることに鑑みますと、アダムズ方式を導入するのは平成三十二年の大規模国勢調査以降とするのが自然です。

 また、こうすることは、制度の安定性を勘案するよう求める、議長が三月二十三日に示されたいわゆる大島議長の「思い」にも沿うものであります。

 一方で、もし仮に平成二十二年の大規模国勢調査からアダムズ方式を導入したならば、次のような問題を生ずると指摘をしておきたいと思います。

 第一に、既に平成二十七年の簡易国勢調査の結果が出ているのに、あえて古い国勢調査の結果である数値を用いる合理性はあるのかという問題であります。

 第二に、平成二十二年の大規模国勢調査の結果が出てから既に二回の総選挙を経ているのにもかかわらず、その国勢調査の結果を用いて今回新たに定数を配分し直すとするならば、それにより従前と異なる定数を配分された都道府県の有権者を中心に、これら二回の総選挙の正当性や選挙された議員の地位に対し疑念を抱かせることになるのではないかという問題を生じてしまう点であります。

 第三に、平成二十二年の大規模国勢調査にさかのぼってアダムズ方式を即時に導入したとしても、四年後には次の大規模国勢調査が控えていることから、結局、立て続けに定数配分の見直しを行うことになってしまい、制度の安定性に欠けるという結果を招いてしまうという問題を生じてしまう点であります。

 以上のことから、本法律案、自公案では、アダムズ方式を平成三十二年の大規模国勢調査以降に導入するとしたものであります。(拍手)

    〔今井雅人君登壇〕

今井雅人君 塩谷議員から、大まかに言って二問、細かく三問御質問いただきましたので、お答えさせていただきたいと思います。

 まず、司法の要請に応え、国民の信頼にたえられる内容のものであるかということとあわせて、平成二十二年国勢調査をもとに都道府県別定数の配分を行う理由は何かというお尋ねがあったと思います。

 衆議院の選挙制度改革については多くの論点があります。特に、いわゆる一票の格差問題をめぐって、長い間、改革の必要性が叫ばれてきました。我が国の民主主義の土台とも言える選挙制度において、有権者の皆様が投ずる一票の価値に、結果として看過できない格差が生じている現状を多くの国民が憂い、問題視をしてまいりました。

 最高裁により三度にわたって違憲状態との指摘を受けるに至り、このことがもはやいっときも先送りできない喫緊の課題であることは自明の理であり、立法府に身を置く我々は、誰よりもその重みを強く認識すべきものであります。そして、我が国の民主主義そのものへの信頼と正当性を根本から揺るがしかねない事態であるとの危機感を持って、改革の実現を迅速になし遂げなければなりません。

 平成二十六年六月、議長の諮問により協議を委ねた衆議院選挙制度に関する調査会が、本年一月に答申を出されました。佐々木毅座長を初め調査会委員の方々に多大な御尽力を賜ったことについて、この場をおかりして、改めて心から敬意を表します。

 その調査会においては、十年ごとの大規模国勢調査に基づくことを前提に、最高裁判所判決で求められた比例性のある配分方式によって都道府県に議席配分する、その具体的な方法についてさまざまな角度から比較検討を重ねられた上で、いわゆるアダムズ方式の導入が提言されたところでございます。

 民進党提出の本法律案は、この調査会答申の内容をまさしく忠実に法案化したものでございます。

 そして、制度改革の重要性と緊急性に鑑みれば、既に確定している直近の大規模国勢調査であるところの平成二十二年調査に基づいてこれを実現すべきとする本法律案は、調査会の答申を正面から受けとめたごく自然な内容のものであります。

 むしろ、自民党の谷垣幹事長がアダムズ方式そのものではないと報道陣に語っていらっしゃるとおり、アダムズ方式を取り入れたとは名ばかりで、本格的な新制度導入は平成三十二年国勢調査を待つとした自公提出の法案の方こそ、真摯な議論を重ねていただいた調査会の答申をつまみ食いしただけの改革先送りであり、結果、司法の要請にも国民の要請にもたえるということには到底値しないものであると言わざるを得ません。

 もし仮に、平成三十二年国勢調査に基づいて初めてアダムズ方式を導入することとし、都道府県別定数を定め、その後に区画審による区割りの検討と国民への周知期間を経るとすれば、新しい制度による選挙が実際に行われるのは一体いつのことになるんでしょうか。それまでの間に、何回の衆議院選挙とそれに対する違憲訴訟が繰り返されるんでしょうか。

 野田佳彦前総理と当時の安倍自民党総裁が国民注視の中で大幅な定数削減を約束した、あの党首討論が行われたのは、平成二十四年十一月のことです。それから十年もたってようやく新しい制度が本格導入されるということでは、お話にならないと考えております。

 塩谷議員から、見直し条項の趣旨についてお尋ねをいただきました。

 民進党案の附則第四条に、特に人口が急激に減少している地域の民意を適切に反映させることに留意した上で、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度のあり方について、両院制のもとで各議院が果たすべき役割を踏まえるとともに、民意の集約と反映の適切なバランスを実現するために、不断の見直しを行うことを明記させていただいております。

 人口の大都市集中と地方の過疎化が進む我が国の現状を捉え、地域の声を埋没させずに、国政にきちんと届けられる制度を検討してまいりたいと考えております。

 議論はまだこれからですけれども、例えば米国の制度のように、上院は地域代表、下院は厳密な人口比で画定した小選挙区制度といった方法も参考になるかもしれません。

 いずれにしても、党の垣根を越えて、衆参両院それぞれが果たすべき役割を議論しつつ、民意を適切に国政に届ける制度、有権者の視点から納得を得られる抜本的な制度改革の議論に取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 笠浩史君。

    〔笠浩史君登壇〕

笠浩史君 民進党の笠浩史です。

 私は、民進党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました民進党提出及び自民党・公明党提出の衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして質問いたします。(拍手)

 質問に先立ち、冒頭、今般の熊本県を中心とする地震で犠牲となられた方々とその御遺族に対しまして、心からお悔やみを申し上げます。また、被災された全ての皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 選挙制度は全ての衆議院議員及び政党の基盤にかかわる問題であり、投票価値の平等が確保されていることは、議会制民主主義のもとで、国家の意思形成の正当性を基礎づける中心的な要素をなすものであることは言うまでもありません。

 しかしながら、最高裁判所は、過去三回の衆議院選挙に対し、一票の格差が著しく、違憲状態と厳しい判断を下しました。そして、これまでに二十九回にも及ぶ政党間協議を重ねても結論が得られなかったがゆえに、衆議院議長が第三者機関である衆議院選挙制度に関する調査会に諮問したという経緯を踏まえるべきであることは当然であります。

 私は、この視点に立って、両案の提案者に質問いたします。

 まず最初に、アダムズ方式の導入時期についてであります。

 衆議院選挙制度に関する調査会の答申では、一票の格差是正のため、現行の一人別枠方式の廃止とアダムズ方式の導入が大きな柱となっています。

 民進党案では、二〇一〇年大規模国勢調査でアダムズ方式を導入することとしていますが、六年前の調査では古過ぎるので、二〇一五年簡易国勢調査をもとにアダムズ方式を導入すべきではないかとの指摘もあります。民進党提案者の説明を求めます。

 他方、自民党・公明党による改正案では、アダムズ方式に基づく選挙が実施できるようになるのは二〇二二年以降になります。これでは、二〇一二年十一月十四日の党首討論で、当時の野田総理と安倍自民党総裁が一票の格差と定数削減を約束してから、十年もの月日が浪費されることとなります。このような先送りは、国民、有権者の理解が得られず、政治不信はますます増大するのではとの懸念を持ちます。この点について、自民・公明提案者の見解を伺います。

 アダムズ方式を先延ばしする理由とは何か。既に結果が出ている二〇一〇年大規模国勢調査をもとに今すぐに区割りを変更しないということに対して、きちんとした説明がなされていません。単に、党利党略のための先延ばしにしか見えないことは多くの報道でも指摘をされていますが、自民・公明提案者の見解をお聞かせください。

 特に、公明党は、山口代表を初めとして党幹部が、二〇一五年簡易国勢調査を使用してアダムズ方式を導入すべきと重ねて表明してきました。これは、もうこれ以上の先送りは許されないという民進党案と基本的には同じ認識だったと思います。一体いつの間に、何ゆえに変節したのか、国民への説明責任を果たすべきであります。この点については、公明党の提案者に説明を求めます。

 自民党の谷垣幹事長は、四月六日の衆議院議長による選挙制度に関する各党からの意見聴取終了後のぶら下がりで、今回の自民党案の小選挙区〇増六減はアダムズ方式そのものではないと率直に認めています。自民・公明案による〇増六減がアダムズ方式そのものではないとすれば、一人別枠方式は撤廃されないこととなりますが、この点について、自民・公明提案者の認識を伺います。

 最高裁からは、既に、衆議院選挙が三回連続して違憲状態と指摘され、一人別枠方式自体の撤廃を求められています。一人別枠方式という根幹の制度を維持したまま議席数をわずかに上下させるというこれまでの対応を、最高裁は明確に指弾しています。

 まさに、びほう策そのものである自民・公明案で選挙を実施することは、選挙の正当性、ひいては国会の正当性を揺るがすことになりかねないとの強い懸念を持ちますが、自民・公明提案者の見解を伺います。

 自民・公明案の〇増六減は、二〇一五年簡易国勢調査の結果を使用してアダムズ方式の計算式を使い、定数減の対象となる十五県のうちで議員当たり人口の少ない順に六県を減員するものであります。これは、途中の計算式だけを部分的に借用することで、あたかもアダムズ方式を用いているかのように偽装するものと指摘せざるを得ません。二〇一五年簡易国勢調査にアダムズ方式を用いるのなら、九増十五減を行うべきであります。なぜこのようなまやかしを行うのか、自民・公明提案者の認識を伺います。

 さらには、この小選挙区六減の選出について、二〇一〇年大規模国勢調査と二〇一五年簡易国勢調査をもとにアダムズ方式で計算してみると、二〇一〇年大規模調査では、人口の少ない順に、鹿児島県、岩手県、熊本県、青森県、三重県、沖縄県ですが、二〇一五年簡易調査では、人口の少ない順に、鹿児島県、岩手県、青森県、熊本県、三重県、奈良県となり、定数削減の対象となる県が沖縄県から奈良県へ入れかわります。

 この計算結果を知った上で恣意的な判断を行ったのでしょうか。沖縄県民、奈良県民にどう説明をするのでしょうか。自民・公明提案者に説明を求めます。

 また、二〇一〇年大規模国勢調査にアダムズ方式を導入する民進党案では、都道府県の定数は七増十三減となります。これに対し、影響を受ける選挙区が多過ぎるので激変緩和措置が必要ではないかとの声も聞こえてきますが、民進党提案者の見解を求めます。

 次に、議員定数の削減について伺います。

 今回の改正案では、両案ともに、小選挙区六人、比例区四人の計十人の定数削減となっています。

 民進党を結成した旧民主党や旧維新の党は、そもそももっと大幅な定数削減を掲げていたのではないでしょうか。今回の答申に基づく法改正は、当時の主張に反するものとなってしまうのではないでしょうか。この点について、民進党提案者に説明を求めます。

 また、民進党案では、その附則第四条第二項でさらなる定数削減に努めることを明記していますが、調査会の答申では、定数削減について、積極的理由や理論的根拠は見出しがたいとかなり否定的であります。さらなる定数削減にこだわるのは答申に反するのではないでしょうか。民進党提案者に、この点についての見解もあわせて求めます。

 一方、自民・公明提案者に対しても、議員定数削減についての基本的な認識を伺います。

 さらに、民進党の附則第四条第二項にある、「特に人口が急激に減少している地域の民意を適切に反映させることに留意」とは具体的にどのようなことなのか、民進党提案者に説明を求めます。

 議員の選び方、議会制民主主義の土台となる選挙制度の改革は、少なくとも与党と主要野党が合意した上で実現させるべきであることは当然であり、これまでの国会の慣習でもあります。

 現行の衆議院比例代表並立制を導入した一九九三年から九四年にかけての政治改革国会でも、細川連立与党と野党自民党が激突をいたしましたが、最終的には、細川・河野会談を受けて連立与党が野党自民党の主張を受け入れる形で合意し、成立をいたしました。

 自民党と公明党は野党に歩み寄り、私ども民進党案を受け入れて成立させるべきと考えますが、最後に、この点について自民・公明提案者の見解を伺い、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔細田博之君登壇〕

細田博之君 笠議員から御質問を多数いただきました。

 アダムズ方式の実施時期や議員定数の削減等について御質問をいただきました。順次答弁いたします。

 まず、自民・公明案は国民の理解が得られないのではないかとのお尋ねがありました。

 衆議院選挙制度調査会の答申において、議席配分の見直しは、制度の安定性を勘案し、十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づき行うこととされております。一方で、どの大規模国勢調査から見直しを始めるべきか、その開始時点は明らかにされておりません。

 現時点では、次回の直近の大規模国勢調査は平成三十二年のものであり、成立した法律をあえて遡及適用することは例外的であることに鑑みると、アダムズ方式を導入するのは平成三十二年の大規模国勢調査以降とするのが自然であります。

 また、こうすることは、制度の安定性を勘案するよう求める、議長が三月二十三日に示された「思い」にも沿うものであります。

 したがって、自公案は、国民や有権者の理解が得られる案であると認識しております。

 続いて、アダムズ方式を先延ばしする理由は何かとのお尋ねがありました。

 繰り返しとなりますが、衆議院選挙制度調査会の答申においては、どの大規模国勢調査から見直しを始めるべきか、その開始時点は明らかにされておりません。

 加えて、先般の最高裁判決でも、国会の両議院の議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められていると述べられているところであり、制度の安定性を勘案し、平成三十二年国勢調査からアダムズ方式を実施するとしている自公案は、最高裁判決の指摘する国会の裁量の範囲内にあるものと考えております。

 したがって、自公案はアダムズ方式の導入を先延ばしにするようなものではございません。

 次に、自公案と一人別枠方式の関係についてのお尋ねがありました。

 平成二十七年十一月二十五日の最高裁判決では、投票価値の格差が生じた主な原因は、いまだ多くの都道府県において、一人別枠方式廃止後の新区割り基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあるというべきとの指摘がなされていることは承知しております。

 他方、判決では、国会の両議院の議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められているとか、是正の方法についても国会は幅広い裁量権を有しているので、国会が最高裁の判断を踏まえてみずから所要の適切な是正の措置を講ずることが憲法上想定されているものと解される、さらには、合意の形成にさまざまな困難が伴うことを踏まえ、選挙制度の整備については、上記のような漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも国会の裁量に係る現実的な選択として許容されていると解されるとも述べられているところであります。

 こうした判決内容を踏まえ、自公案では、各都道府県への小選挙区定数の配分方式について、平成三十二年の国勢調査からアダムズ方式を導入することを法案の本則に明記しております。

 また、平成二十七年の国勢調査に基づいて小選挙区の区割りを見直すこととしておりますが、この区割り改定案の作成については、将来見込み人口を踏まえ、次回の平成三十二年大規模国勢調査に基づく見直しまでの五年間を通じて格差二倍未満となるように行うこととしております。

 すなわち、自公案は、最高裁判決と衆議院選挙制度調査会の答申を踏まえ、平成三十二年には一人別枠方式を完全に解消することを明確にした上で、それに向けて漸次的に措置を講じていくものであります。

 したがって、自公案は司法の要請に応えたものとなっており、本法律案の成立の後、衆議院議員総選挙が実施されたとしても、選挙の正当性、ひいては国会の正当性を揺るがすことにはならないと考えております。

 次に、議員定数削減についての基本認識についてお尋ねがありました。

 今般の改正法案では、衆議院選挙制度に関する調査会の答申を受けて、衆議院議員の定数を十削減して総定数を四百六十五名とすることとしております。この総定数四百六十五名は、大正十四年に男子による普通選挙が実現して以降最も少ない数であります。

 今回は、定数を十削減することとしましたが、議員定数の問題は、全国民の代表たる国会議員及び国権の最高機関たる国会のあり方に直結する問題であると考えております。

 将来的な議員定数のあり方については、民意の集約と反映のバランスに配慮しつつ、行政府との緊張関係の維持、国会の機能の充実といった観点も踏まえ、引き続き検討を行ってまいりたいと考えております。

 最後に、民進党案を受け入れて成立させるべきではないかとの御提案についてお答えいたします。

 選挙制度は、国民が政治に参加するための最も重要なシステムであると認識しており、本来、この改正に当たっては、共通の土俵づくりの問題でもあり、各党の話し合いで合意形成を図り、成案を得ることが望ましいと考えております。

 しかしながら、このたびの改正問題については、与野党の実務者による協議会を、民主党政権時代の平成二十三年十月から平成二十六年三月まで合計二十九回開催し、議論を重ねたにもかかわらず、合意点を見出すことができなかったことを端緒に、衆議院選挙制度に関する調査会の設置、答申の提出、衆議院議長の御尽力等の経緯を受け、与党及び民進党の法案提出に至ったものであります。

 この上は、与野党とも、司法の要請や国民に対して責任を負っていることを十分認識し、対処していくことが肝要であり、国会の場で正々堂々政論を闘わせ、結論を得ていけばよいと考えております。

 したがって、与党と主要野党の合意事項とか、与党は野党案を受け入れて成立させるべきという主張は受け入れられるものではありません。ぜひとも、与党案の成立に御協力いただきたいと思います。(拍手)

    〔北側一雄君登壇〕

北側一雄君 笠議員にお答えを申し上げます。

 まず、公明党が、平成二十七年簡易国勢調査に基づいてアダムズ方式を導入するとの見解を表明していたことについてお尋ねがございました。

 公明党は、一票の格差についての最高裁判決が選挙時における選挙区間格差を基準としている以上、平成二十七年に実施された直近の簡易国勢調査人口の結果に基づき、定数削減とアダムズ方式の導入を行うべきとの考え方を示してまいりました。

 しかし、調査会答申においては、十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づきアダムズ方式を導入することとしているとともに、政党間の合意形成のため御尽力をされました大島議長も、「選挙制度改革についての思い」として、アダムズ方式の導入は、十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づき行う方針を改めて示されました。

 我が党といたしましては、議長のお考えに従って検討を行ったところ、現在の人口分布に最も近い平成二十七年の簡易国勢調査の結果に基づきアダムズ方式を導入すべきであると主張してきた立場からは、それよりも古い平成二十二年の大規模国勢調査を起点にアダムズ方式を導入することへの合理性は乏しいと考えております。

 現に、平成二十二年と平成二十七年の国勢調査をもとにアダムズ方式によって都道府県への定数配分を行った場合、定数配分の結果には違いが生じてまいります。にもかかわらず、あえて古い数値を用いて定数配分を行うことに合理性があるとは思えません。

 また、平成二十二年の大規模国勢調査にさかのぼってアダムズ方式を導入したとしても、四年後の平成三十二年には次の大規模国勢調査が控えており、結局、立て続けに都道府県への定数配分の見直しを行うこととなり、選挙制度の安定性に欠けるのではないかと考えます。

 加えて申し上げますと、与党案は、最高裁判決に応えるためにも、平成三十二年の国勢調査以降アダムズ方式を導入する旨を法案の本則に明記をしております。

 また、調査会答申のもう一つのポイントである定数削減についても、政治的判断として、平成二十七年の簡易国勢調査の結果に基づき、客観的なルールのもとで先行して行うことを法案に明記しており、十分に最高裁判決と調査会答申に応えた法案であると考えます。

 よって、与党案が改革の先送りであるかのような御主張は全く当たらないというふうに考えます。

 次に、平成二十七年簡易国勢調査を用いて〇増六減を行うことについてのお尋ねがありました。

 調査会答申において、都道府県への議席配分の見直しは、制度の安定性を勘案し、十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づき行うこととされております。

 他方、今回の選挙制度の改革に当たっては、政治的決断として、衆議院議員の定数の十削減を平成二十七年の国勢調査の結果に基づいて先行して行うことといたしました。

 今回の小選挙区の定数削減に当たっては、小選挙区の定数を六削減することといたしますが、削減対象となる都道府県については、議長の示された「思い」に沿って、透明性のある方法、すなわち客観的に理解可能な具体的な方式を定めて選定する必要があります。

 このような見地に立って本法律案について見ますと、まず、平成三十二年の国勢調査以降、大規模国勢調査に基づいてアダムズ方式により都道府県別定数配分を見直すことを区画審設置法の本則に明記をしております。そうであれば、今回の定数削減措置を講ずるに当たっても、平成三十二年以降の定数配分方式であるアダムズ方式の考え方と基本的な方向性を同じくし、これと整合性のある方式によることが合理的であります。

 そのように考えると、次のような方式が平成三十二年以降の定数配分方式と整合性があり、合理的ではないかと考えました。

 まず、定数を六減した上で、かつ、平成二十七年の簡易国勢調査の結果に基づいて、仮にアダムズ方式により都道府県別定数を計算した場合に、現行の定数よりも減員となる都道府県について議員一人当たり人口を算定し、次に、この算定の結果得られた各都道府県の議員一人当たり人口の少ないところ、これは一票の価値が重いところでございます、そこから六都道府県を選びます。与党案では、この方式によることを条文上明記をしております。

 また、これらの減員される六都道府県は、仮に今回定数削減をしなかったとしても、平成三十二年の議席配分の見直しの際に減員される都道府県となる蓋然性が極めて高いと考えられることから、見直しに伴う定数の削減幅を小さくするという観点からも合理的であると考えます。

 次に、小選挙区定数六減の対象となる都道府県についてのお尋ねがございました。

 確かに、御指摘のとおり、平成二十七年国勢調査に基づくか、平成二十二年国勢調査に基づくかによって、六減の対象となる都道府県は異なることとなります。そうであれば、自公案のように、現在の人口分布に最も近い直近の国勢調査である平成二十七年国勢調査の結果に基づいて削減対象となる六県を選定するのがむしろ自然な選択でございます。

 つけ加えるならば、平成二十七年の国勢調査に基づいた場合に減員対象となる六都道府県は、平成三十二年の議席配分の見直しの際に減員される都道府県となる蓋然性が高いと考えられることから、見直しに伴う定数の増減幅を小さくするという観点からは合理的であると言えます。

 いずれにしろ、六減の客観的なルールを法案に明記しております。恣意的な判断を入れる余地は全くないことを申し添えておきます。

 以上でございます。(拍手)

    〔落合貴之君登壇〕

落合貴之君 民進党案では二〇一〇年国勢調査でアダムズ方式を導入するというが、六年前の調査では古過ぎるのではないか、二〇一五年簡易国勢調査をもとに導入するべきではないかとの御質問をいただきました。

 先ほど申し上げたとおり、今回の民進党案は、調査会答申をできるだけ忠実に法案化したものです。調査会への諮問に賛同した政党として、まずは当然の責任を果たしたものと御理解いただきたいと思います。

 一方で、二〇一五年簡易国勢調査をもとにアダムズ方式を導入すべきとの御意見は、かねてより公明党が表明していたものと承知しています。我々もかねてより一つの御見識として受けとめるところであります。

 もし、自民党・公明党案のように先送りをせずに、速やかにアダムズ方式を導入することに御賛同いただけるのであれば、二〇一五年簡易国勢調査によるアダムズ方式導入への修正も検討したいと思います。そのような先送りでない補強的な修正は、調査会に御参加いただいた有識者各位の御理解が得られるものと考えます。

 次に、民進党案の二〇一〇年国勢調査でアダムズ方式を導入では、都道府県の定数は七増十三減となり、影響を受ける選挙区が多過ぎるのではないか、激変緩和措置が必要ではないかとの御指摘もありました。

 しかしながら、二〇一二年十一月十四日の党首討論において、当時の野田総理と現在の安倍総理が国民の前で、遅くとも二〇一三年の通常国会で大幅な定数削減を行うと約束してから、既に三年半もたっています。民進党案に基づいて制度改正しても、区割りが画定し実施できるようになるまでは、さらに一年以上が必要となります。また、御指摘のとおり、最高裁からは既に三回連続して違憲状態と指摘され、一人別枠方式の撤廃を求められています。

 これらの状況を踏まえれば、アダムズ方式導入は喫緊の課題であることは明らかであり、民進党案による改正を行っても拙速とは言えず、国民、有権者の理解は得られるものと考えます。

 逆に、自民党・公明党案による改正では、アダムズ方式による選挙が実施できるようになるのは二〇二二年以降となります。これでは、安倍総理が約束してから十年もの月日が浪費されることになります。このような怠慢、意図的な先送りこそ、国民、有権者の理解が得られないものと確信しております。

 次に、民進党案は調査会答申を忠実に法案化したものと思う一方で、旧民主党や旧維新の党は、そもそももっと大幅な定数削減を掲げていたのではないか、答申に基づく法改正は当時の主張に反するのではないかとの御質問をいただきました。

 我々民進党は、定数削減はまだ不十分であるが、格差是正は最高裁も厳しく指摘する喫緊の課題であること、また、政党間協議で結論が得られず衆議院議長が第三者機関に諮問した経緯を踏まえ、まずは答申案を受けた法改正を行うべきとの立場に立って、でき得る限り調査会答申を忠実に法案化し、提出いたしました。

 同時に、附則第四条第二項に記してありますが、本法案成立後に、さらなる国会議員の定数削減へ向けた議論に取り組みたいと考えております。同じ考えを持つ各党各会派との協議も積極的に重ねてまいりたいと思います。

 次に、答申では、定数削減について、積極的理由や理論的根拠は見出しがたいとかなり否定的だが、さらなる定数削減にこだわるのは答申に反するのではないかとの御質問をいただきました。

 御指摘どおり、答申においては、現行の衆議院議員の定数は、国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えないと指摘されていることは承知しております。

 一方で、答申では、衆議院の定数削減に対して、「多くの政党の選挙公約であり、主権者たる国民との約束である。」とも記されています。

 この定数削減の約束に関しては、私たちが決して忘れてはならない約束があります。二〇一二年十一月十四日に行われた党首討論において、当時の民主党の野田佳彦総理と自由民主党の安倍晋三総裁との間で、遅くとも二〇一三年の通常国会で大幅な定数削減を行うとの約束が交わされました。テレビ中継がなされ、国民注視のもとで交わされたこの約束の政治的な重さは、はかり知れないものがあります。

 総理と野党第一党の党首の約束をほごにするようなことがあれば、それこそ国民の政治に対する不信は決定的なものとなるとの大きな懸念を持つことは当然であります。

 次に、附則第四条第二項の、「特に人口が急激に減少している地域の民意を適切に反映させる」とは具体的にどのようなことなのかとの御質問もいただきました。

 民進党は、人口の大都市集中と地方の過疎化が進む我が国の現状を捉え、地域の声を埋没させず、国政にきちんと届けられる制度を検討していきたいと考えています。

 議論はまだこれからですが、例えば米国の制度のように、上院は地域代表、下院は厳密な人口比で画定した小選挙区制度といった方法も参考になるかもしれません。

 いずれにしましても、党の垣根を越え、衆参両院それぞれが果たすべき役割を議論しつつ、民意を適切に国政に届ける制度、有権者の視点から納得を得られる抜本的な制度改革の議論に取り組んでいきたいと考えます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 佐藤茂樹君。

    〔佐藤茂樹君登壇〕

佐藤茂樹君 公明党の佐藤茂樹でございます。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました自由民主党及び公明党提出の衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案、民進党提出の同法案につきまして質問をいたします。(拍手)

 質問に入る前に、このたびの平成二十八年熊本地震におきまして、かけがえのない多くの命が失われました。犠牲となられた全ての方々に対し心から哀悼の意を表しますとともに、御遺族を初め、負傷された方々、避難生活を送っておられる皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 公明党は、発災直後の四月十四日夜、党内に平成二十八年熊本地震対策本部を設置し、国会議員を初め議員が現場に急行し、現場のニーズを直接聞き取りながら、被災者の皆様が少しでも安心できる環境を整えるべく奔走してまいりました。被災者の皆様が一日も早く平穏な生活を取り戻せるよう、政府・与党一丸となって取り組むことをお約束し、質問に入らせていただきます。

 衆議院の選挙制度には、一票の格差是正、定数削減、選挙制度の抜本改革といった重要な課題があります。

 一票の格差について、平成二十三年に最高裁から違憲状態との指摘を受けて以降、選挙制度をめぐる課題の解決に向けて、たび重なる政党間協議を行ってまいりましたが、合意には至らず、一昨年六月、議長のもとに有識者から成る衆議院選挙制度に関する調査会が設置されました。そして、計十七回に及ぶ精力的な御議論の末、本年一月、議長に答申書が提出されました。

 公明党は一貫して、調査会答申に至った経緯、一票の格差に関する最高裁判決を重く受けとめ、答申に沿った法改正を今国会でなし遂げるべきと主張し、本法律案の提出に至りました。

 以下、具体的に質問します。

 まず、与党案について伺います。

 衆議院選挙制度改革に関するこれまでの経緯を踏まえると、最も重視すべきは、両法案が、一票の格差について違憲状態と判断した最高裁の判決に応えたものと言えるのか、また、調査会答申に沿った内容となっているのかという点であります。

 与党案においては、平成三十二年の大規模国勢調査以降に、定数配分のあり方を抜本的に見直すアダムズ方式を導入することとしております。しかし、それまでの間、最高裁が一票の格差を生み出す主要な要因と指摘している一人別枠方式の残滓が解消されていない現行制度が存続することとなり、最高裁判決に応えていないのではないかとの指摘が少なからずあるところであります。

 そこで、改めてお尋ねいたします。

 与党案は最高裁判決に応えたものと言えるのか、また、調査会の答申に沿っているとお考えでしょうか。与党案提案者の答弁を求めます。

 また、与党案に対する批判として、アダムズ方式の本格的な導入を平成三十二年の国勢調査まで行わず、今回、小選挙区において〇増六減、比例代表において〇増四減のみを行うということは、改革の先送りではないのかというものがあります。

 与党案においては、何ゆえ、平成三十二年の大規模国勢調査以降にアダムズ方式を導入することとされたのでしょうか。お答えください。

 続いて、定数削減について伺います。

 与党案においては、アダムズ方式による定数配分の見直しを平成三十二年の国勢調査以降に実施する一方、定数削減については、政治的決断として、平成二十七年の国勢調査結果に基づき、先行して行うこととしております。

 国民の代表である国会議員の定数削減については、大島議長が選挙制度改革について示された「思い」に沿って、透明性のある方法、すなわち客観的に理解可能な具体的な方式を定めて選定することが重要です。この点について、与党案はどのような考え方に基づき定数削減を行おうとされているのか。

 また、平成三十二年以降の定数配分については、アダムズ方式において行うことが本法案に明記されている以上、定数削減についてもアダムズ方式の考え方と整合性のある方法で行うことが合理的と考えますが、与党案はその考え方に基づくものであるとお考えでしょうか。与党案提案者の答弁を求めます。

 続いて、民進党案について伺います。

 与党案と民進党案の最大の相違点は、与党案が平成三十二年の大規模国勢調査の結果に基づきアダムズ方式を導入するとしているのに対し、民進党案が平成二十二年の大規模国勢調査の結果に基づきアダムズ方式を導入するとしている点です。

 公明党は、答申が示された当初、直近の平成二十七年の簡易国勢調査結果に基づき定数削減とアダムズ方式の導入を行うべきとの考え方を示してまいりました。

 しかし、大島議長が、今国会中に必ず立法府としての結論を出すとの御決意のもと、リーダーシップを発揮され、あくまで制度の安定性と答申との整合性を第一に考えられた結果、アダムズ方式の導入は十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づき行う方針が示されました。

 我が党といたしましては、今国会で成案を得ることが最重要であり、議長の御尽力にお応えするためにも、議長のお考えに従って、どの時点の大規模国勢調査の結果に基づきアダムズ方式を導入することがふさわしいのか、つぶさに検討を行ってまいりました。

 その結果、民進党案の平成二十二年の大規模国勢調査の結果に基づく考え方には三点の問題点があり、平成三十二年の大規模国勢調査の結果に基づきアダムズ方式を導入することが妥当であるとの考えに至りました。

 以下、民進党案の問題点を指摘します。

 まず第一は、平成二十二年の大規模国勢調査にさかのぼってアダムズ方式を即時に導入したとしても、四年後の平成三十二年には次の大規模国勢調査が控えていることから、結局、立て続けに定数配分の見直しを行うこととなってしまい、制度の安定性に欠けるのではないかという点です。

 また、平成二十二年の大規模国勢調査に基づきアダムズ方式を導入した場合、都道府県への議席配分が現行定数よりも一議席減となる滋賀県、沖縄県については、国立社会保障・人口問題研究所による平成三十二年の将来推計人口によれば、再びそれぞれ一議席増となるとの試算が示されており、四年後の平成三十二年の大規模国勢調査に基づく定数配分で、少なくともこの二県については、一旦減った定数が再び増員となって、現在の定数に戻る可能性が高いということです。こうした短期間での定数の出戻りは、選挙制度の安定性の観点から問題があると考えます。

 制度の安定性及び短期間での定数の出戻りの問題についてどのようにお考えか、民進党案提案者の答弁を求めます。

 第二点目は、簡易国勢調査とはいえ、我が国人口を正確に把握した直近の平成二十七年簡易国勢調査の結果が出ているにもかかわらず、民進党案があえて古い国勢調査の数値を用いることとしている点については、直近の人口を反映しているとは言えず、合理性があるのかという点です。この点について、民進党案提案者の答弁を求めます。

 そして第三点目は、平成二十二年の大規模国勢調査の結果が出てから、既に平成二十四年、二十六年と二回の総選挙を経ているにもかかわらず、その国勢調査の結果を用いて今回新たに定数を配分し直すとするならば、それにより従前と異なる定数を配分された都道府県の有権者を中心に、これら二回の総選挙の正当性や選挙された議員の地位に対し疑念を抱かせることになるのではないかという点です。この問題は、直近二回の総選挙は誤った定数配分で実施したことを立法府として認めることになるのではないでしょうか。民進党案提案者の答弁を求めます。

 以上のように、民進党案が定める平成二十二年の大規模国勢調査を起点にアダムズ方式を導入した場合、制度の安定性、古い国勢調査の結果を用いることへの合理性、直近二回の総選挙の正当性といった問題点があり、与党案である平成三十二年の国勢調査の結果をもとに、アダムズ方式を導入すべきであると考えます。

 続いて、選挙制度に関する見直し条項について伺います。

 両案には附則で見直し条項が明記されており、与党案においては、本法律案の施行後も、全国民を代表する国会議員を選出する望ましい選挙制度のあり方について、不断の見直しを行うこととする旨の見直し条項が記されております。この見直し条項を設置した趣旨について、与党案提案者にお伺いします。

 民進党案においては、与党と同様の条項に加え、第二項の見直し条項が記されており、第二項の前段部分では、「特に人口が急激に減少している地域の民意を適切に反映させることに留意する」とともに、後段部分においては、「更なる国会議員の定数削減を図るよう努めるもの」とされております。

 この第二項の、人口が急激に減少している地域への配慮とは、具体的にはどういうことなのでしょうか。仮に、現行制度における見直しであるならば、人口が急激に減少している地域の民意を反映させることとさらなる定数削減を図ることとは両立し得ないのではないでしょうか。

 今後の選挙制度のあり方についてどのような方向を目指しておられるのか、民進党案提案者の答弁を求めます。

 最後に、冒頭申し上げたとおり、衆議院選挙制度改革をめぐっては、さまざまな課題がある中、最高裁が三度続けて違憲状態と判断した一票の格差について、速やかに是正措置を講じるとともに、二十九回に及ぶ政党間協議を経ても結論を得られず、衆議院選挙制度に関する調査会の設置に至り、議院運営委員会において調査会の答申を尊重することを議決した経緯を踏まえると、今国会で成案を得ることが最重要であると考えます。

 公明党の主張を踏まえ、与党案は最高裁判決並びに答申に沿った内容となっていると考えており、できるだけ多くの政党の合意のもと、与党案の早期成立に向けて尽力することをお約束し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔北側一雄君登壇〕

北側一雄君 佐藤議員にお答えをいたします。

 与党案につきまして、アダムズ方式の導入時期や定数削減の考え方などのお尋ねがございましたので、順次お答えをいたします。

 まず、与党案は最高裁判決に応えているのか、また、調査会の答申に沿っているのかとのお尋ねがございました。

 最高裁判決において、選挙制度の整備については、漸次的な見直しを重ねることにより実現していくことも許容されている旨、述べられております。

 与党案では、各都道府県への小選挙区定数の配分方式について、平成三十二年の国勢調査から、人口比例的な配分方式でございますアダムズ方式を導入することを法案の本則に明記しています。

 また、平成二十七年の国勢調査に基づいて小選挙区の区割りを見直すこととしておりますが、この区割り改定案の作成については、将来見込み人口を踏まえ、次回の平成三十二年大規模国勢調査に基づく見直しまでの五年間を通じて格差二倍未満となるように行うこととしております。

 今回は、政治的決断といたしまして、平成二十七年の簡易調査の結果に基づいて、衆議院議員の定数十削減を先行して行うこととしております。

 したがって、以上の観点から、与党案は、国会の裁量の範囲内における適切な立法措置であり、最高裁の判決に十分応えられるものとなっていると考えます。

 また、調査会答申においては、定数削減をする場合、衆議院議員の定数を十削減する、小選挙区間の一票の格差を二倍未満とする、都道府県への議席配分の見直しは、制度の安定性を勘案し、十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づきアダムズ方式により行う、比例ブロックへの議席配分の見直しも、都道府県への議席配分の見直しと同様の方式によって行う、全国民を代表する議員を選出するための望ましい選挙制度のあり方等を国会として継続的に考えていく等が求められております。

 繰り返しになりますが、与党案では、都道府県への議席配分の見直しは、制度の安定性を勘案し、十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式により行うことを本則に明記しております。また、平成二十七年簡易国勢調査の結果に基づく〇増六減の措置を含め、小選挙区間の一票の格差を二倍未満とするよう規定を置いております。さらに、比例定数の四減の措置を含め、衆議院議員の定数を十削減しております。これらとは別に、附則五条に、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度のあり方については、不断の見直しが行われるものとするという見直し条項を置いております。

 このような内容から成る与党案については、議長御自身から、四月七日の「要請」において、調査会答申に沿った内容であると御認識をいただいているところであります。

 このように、本法律案は、調査会答申によって求められている事項に対応しており、かつ、それらに沿ったものとなっております。

 次に、平成三十二年の大規模国勢調査以降にアダムズ方式を導入することとした理由についてのお尋ねがありました。

 調査会答申において、議席配分の見直しは、制度の安定性を勘案し、十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づき行うこととされております。

 現時点では、次回の直近の大規模国勢調査は平成三十二年のものであり、アダムズ方式を導入するのは平成三十二年の大規模国勢調査以降とするのが自然であります。また、こうすることは、制度の安定性を勘案するよう求める、議長が三月二十三日に示された「思い」にも沿うものであります。

 平成二十二年の大規模国勢調査を基準にアダムズ方式を導入することには問題点が多いことにつきましては、御指摘のとおりでございます。

 次に、定数削減の考え方についてのお尋ねがありました。

 調査会答申において、都道府県への議席配分の見直しは、制度の安定性を勘案し、十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づき行うこととされております。

 他方、今回の選挙制度改革に当たっては、政治的判断として、衆議院議員の定数の十削減を平成二十七年の国勢調査に基づいて先行して行うことといたしました。

 今回の定数削減に当たっては、小選挙区の定数を六削減することといたしますが、削減対象となる都道府県については、議長の示された「思い」に沿って、透明性のある方法、すなわち客観的に理解可能な具体的な方式を定めて選定する必要があります。

 このような見地に立って本法案について見ますと、まず、平成三十二年の国勢調査以降、大規模国勢調査に基づいてアダムズ方式により都道府県別定数配分を見直すことを法案の本則に明記しております。そうであれば、今回の定数削減措置を講ずるに当たっても、平成三十二年以降の定数配分方式であるアダムズ方式の考え方と基本的な方向性を同じくし、これと整合性のある方式によることが合理的であります。

 そのように考えますと、次のような方式が平成三十二年以降の定数配分方式と整合性があり、合理的ではないかと考えられます。

 まず、定数を六減した上で、かつ、平成二十七年の簡易国勢調査の結果に基づいて、仮にアダムズ方式により都道府県別定数を計算した場合に、現行の定数よりも減員となる都道府県について議員一人当たり人口を算定し、次に、この算定の結果得られた各都道府県の議員一人当たり人口の少ないところから六都道府県を選びます。与党案では、この方式によることを条文上明記しております。

 また、これらの減員される六都道府県は、仮に今回定数削減をしなかったとしても、平成三十二年の議席配分の見直しの際に減員される都道府県となる蓋然性が極めて高いと考えられます。見直しに伴う定数の増減幅を小さくするという観点からも合理的であると言えます。

 比例代表についても、小選挙区と同様に、平成三十二年の国勢調査以降、大規模国勢調査に基づいてアダムズ方式によりブロック別定数配分を見直すことを公選法の本則に明記しております。そのため、小選挙区と同様の方式により減員対象となる四ブロックを選定することが、平成三十二年以降の定数配分方式と整合性があると言えます。与党案では、この方式によることを条文上明記しているところでございます。

 最後に、見直し条項を置いた趣旨についてのお尋ねがございました。

 与党案は、衆議院選挙制度改革について、調査会答申を踏まえて提出されております。この答申では、一票の格差是正や衆議院議員の定数削減に係る内容のほか、現行憲法下での衆参両議院議員選挙の制度のあり方にも言及されているところであります。

 与党案では、一票の格差是正や衆議院議員の定数削減に取り組むのはもちろんのこと、衆参両議院議員選挙制度のあり方についても、答申が述べるとおり見直しを進めることが重要であるとの立場から、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度のあり方については、民意の集約と反映を基本とし、その間の適正なバランスに配慮しつつ、公正かつ効果的な代表という目的が実現されるよう、不断の見直しが行われるものとする旨の見直し条項を置いた次第でございます。

 以上でございます。(拍手)

    〔今井雅人君登壇〕

今井雅人君 佐藤議員から、私どもに四問御質問いただきましたので、お答えさせていただきたいと思います。

 まず、制度の安定性及び短期間での定数の出戻りの問題についてのお尋ねがございました。

 民進党提出の本法律案は、十年ごとの大規模国勢調査に基づいて、アダムズ方式により都道府県に定数配分をするという衆議院選挙制度調査会の答申の内容を忠実に法案化したものでございます。

 そして、制度改革の重要性と緊急性に鑑みれば、既に確定している直近の大規模国勢調査である平成二十二年の調査に基づいて、人口に比例した定数配分を直ちに実現すべきという本法律案は、調査会の答申を正面から受けとめたごく自然な内容だと考えております。

 その上で、人口分布をより的確に反映した定数配分を直ちに実施すべきことの重要性に鑑みれば、制度導入時に、経過的に、人口変動に伴う短期間での定数の増減が生じることはやむを得ないというふうに考えております。

 なお、平成二十二年国勢調査に基づくと、いわゆる七増十三減になりますけれども、その結果、次の大規模国勢調査の際には増減が少なくなるということが見込まれますので、制度の安定性の観点からも適切であるというふうに考えております。

 平成二十七年国勢調査の結果を用いないことの合理性のお尋ねがございました。

 衆議院選挙制度調査会においては、十年ごとの大規模国勢調査に基づくことを前提に、最高裁判決で求められた比例性のある配分方式によって都道府県に議席配分をする、その具体的な方法についてさまざまな角度から比較検討を重ねた上で、いわゆるアダムズ方式の導入が提言されたところでございます。

 民進党提出の本法律案は、この調査会の答申の内容をまさしく忠実に法案化したものでございます。

 そして、制度改革の重要性と緊急性に鑑みれば、先ほど申しましたが、既に確定している直近の大規模国勢調査であるところの平成二十二年の調査に基づいてこれを実現すべきとする本法律案は、調査会の答申を正面から受けとめたごく自然な内容のものであり、合理性があると考えております。

 一方で、二〇一五年簡易国勢調査をもとにアダムズ方式を導入すべきとの御意見は、かねてより公明党が表明していたものと承知しております。旧民主党、旧維新の党両党とも、かねてより一つの御見識として受けとめるところでございました。

 もし、自民党・公明党案のように先送りをせずに、速やかにアダムズ方式を導入するということに御賛同いただけるということであれば、二〇一五年簡易国勢調査によるアダムズ方式の導入への修正ということも検討させていただきたいと考えております。このような先送りでない補強的な修正は、調査会に御参加いただいた有識者各位の御理解が得られるというふうに考えております。

 直近二回の総選挙の正当性や選挙された議員の地位に対し疑念を抱かせるんじゃないかというお尋ねがございました。

 疑念を抱かせることになるのではないかという御指摘でありますけれども、しかし、それは民進党案が実現することによって起きることではありません。この二十四年と二十六年の総選挙に対しては、まさに今既に疑念が抱かれており、二十一年の総選挙から三回連続で違憲状態とまでの判断が司法によって突きつけられているというのが現実であります。

 そうであるがゆえに、遅きに失したとはいえ、調査会答申を正面から受けとめた改革を迅速に導入し、その疑念を抱かせる状況を一刻も早く解消すべきだというのが民進党案であるということをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

 最後に、今後の選挙制度のあり方についてお尋ねがございました。

 民進党案の附則第四条に、特に人口が急激に減少している地域の民意を適切に反映することに留意した上で、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度のあり方について、両院制のもとで各議院が果たすべき役割を踏まえるとともに、民意の集約と反映の適切なバランスを実現するために、不断の見直しを行うことを明記させていただいております。

 人口の大都市集中と地方の過疎化が進む我が国の現状を捉え、地域の声を埋没させずに、国政にきちんと届ける制度をぜひ検討してまいりたいと思います。

 こうした重要な問題は、党の垣根を越えて、衆参両院それぞれが果たすべき役割を議論しつつ、民意を適切に国政に届ける制度、有権者の視点から納得が得られる抜本的な制度改革の議論に、まさにこの国会で真摯に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 穀田恵二君。

    〔穀田恵二君登壇〕

穀田恵二君 質問に先立ち、冒頭、熊本県を中心とする地震で犠牲となられた方々と御遺族に、心からお悔やみを申し上げます。そして、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

 政府は、救命救助に引き続き全力を挙げつつ、緊急の課題として、震災関連死を防ぐことに力を集中することを強く求めるものであります。

 私は、日本共産党を代表して、議題となりました両法案について、各党の提案者に質問します。(拍手)

 まず第一に、選挙制度は民主主義の土台であります。主権者国民の代表の選び方、国民の参政権のあり方を決めるものであり、十分な議論が必要です。

 衆議院選挙制度をめぐっては、二〇一一年十月から、国会を構成する全政党が参加する各党協議会を二十九回行ってきました。ところが、一部の党が、全党協議では結論が出ないとして一方的に協議を打ち切り、政党としての責任を放棄し、第三者機関、選挙制度調査会に丸投げしたのであります。

 調査会への諮問は現行制度維持と定数削減を前提としたもので、本年一月、答申が提出されるや、その内容についての議論を全く行わず、答申尊重の名のもとに、行司役の議長が各党に法案提出を促してきました。前代未聞な異様なやり方と言わなければなりません。

 しかも、両案は、先週金曜日に提出されたばかりです。国民的議論もないまま、本日、本会議での趣旨説明、質疑、来週数日間の委員会質疑で採決し、衆議院通過を図ろうとしています。

 自民、公明両党も民進党も、それぞれ野党時代は、与党が数の力で選挙制度を変えることを憲政史上類を見ない暴挙、与党の暴挙と批判していたではありませんか。今回のこのような横暴なやり方をどう思うのか、自民党、公明党、民進党、各党提案者に答弁を求めます。

 第二に、そもそも選挙制度の根本は、国民の多様な民意を正確に議席に反映することです。ところが、現行制度は、民意の反映が著しくゆがめられています。ここに最大の問題があります。

 今日の民意は、消費税増税反対、TPP批准阻止、辺野古新基地建設ストップ、原発再稼働ノー、憲法違反の安保法制廃止であります。

 この国民多数の声と逆の方向に暴走しているのが安倍政治です。

 なぜ国民多数の声が国会に届かないのか。その原因は、現行の小選挙区比例代表並立制にあります。

 今の自民党安倍政権を支える三百に迫る議席は、絶対有権者比でたかだか一七%の支持で獲得したものであります。このもとで、昨年、安保法制が強行成立させられたのであります。平和主義、立憲主義を破壊する暴挙が、現行の小選挙区制の害悪を明白に示しています。

 各党は、こうした民意と議席の乖離をどう考えているのか、答弁を求めます。

 この二十年間、小選挙区制のもとで七回の総選挙が行われました。小選挙区において第一党は、四割台の得票率にもかかわらず七から八割もの議席を占め、議席に反映しない投票、いわゆる死に票は各小選挙区投票の半数に上っています。まさに、小選挙区制の根本的欠陥を浮き彫りにしたものにほかなりません。

 だから、二十九回にわたる各党協議会でも、自民党も民主党も含め全党が、小選挙区による過度な民意の集約に問題があるという認識で一致したのであります。各党は、この認識に変わりありませんか。答弁を求めます。

 いわゆる政治改革において、政権交代を可能とするため、民意の集約が必要だと小選挙区を導入したことに諸悪の根源があることは明白であります。虚構の多数による強権政治の害悪が明白となった今、政治改革を根本から問い直すべきであります。各党の見解を求めます。

 第三に、なぜ議員定数を削減しなければならないのでしょうか。

 日本国憲法は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」と前文の冒頭に明記しています。主権者国民が国会に意見を反映させるツールが議員であり、その削減は、国民の声を切り捨てるものにほかなりません。

 国会の役割で最も大事なことは、政府を監視し、暴走させないようにすることです。議員が削減されれば、国会の政府監視機能が低下することは明らかであります。

 そもそも、我が国の衆議院議員定数は、男子普通選挙法制定時の一九二五年、四百六十六でスタートしました。当時の人口は現在の半分です。戦後の改正で五百十二となりました。

 今回、定数を四百六十五まで削減しようとしていますが、なぜ我が国の議会政治史上最も少ない水準にしなければならないのですか。

 スタート時の定数は人口十二・八万人に一議席であったのが、今や二十六・八万人に一議席となっています。主要国の下院を見ると、おおよそ十万人に一議席の水準であり、我が国は国際的に見ても極端に議員が少ない国となっています。

 だから、調査会答申は、現行の衆議院議員の定数は国際比較や過去の経緯などからすると多いと言えずと述べ、定数削減について、積極的な理由や理論的根拠は見出しがたいとしたのであります。

 各党は、我が国の衆議院定数が歴史的に見ても国際的に見ても少ない水準にあることをどう思うのか、また、定数削減に根拠はないという調査会の結論をどう捉えているのか、答弁を求めます。

 次に聞きたいのは、定数削減を選挙公約にしている理由であります。

 各党は公約だからと言いますが、定数をどのように考えているのか、定数削減の根拠と理由について説得力ある説明を聞いたことは一度もありません。各党の答弁を求めます。

 今般の定数削減の契機となったのは、民主党野田政権が、国民の皆さんに消費税増税をお願いする以上、政治家も身を切る改革が必要だと言って、比例八十削減を持ち出したことにあります。

 消費税増税を押しつけるために国民の代表である議員定数を削減するというのは、全くのすりかえであり、何の道理もありません。各党の答弁を求めます。

 さらに問題なのは、両案とも、東日本大震災でいまだに苦しむ東北や、今も絶え間ない余震で不安な中にいる熊本、九州を削減対象に含んでいることであります。この点について各党の見解を求めます。

 第四に、定数配分の計算にアダムズ方式を採用する問題です。

 両案提出者は、最高裁判決の要請に応えるためだとしています。最高裁は、小選挙区間の投票権の平等を侵害する違憲状態を生み出している要因が一人別枠方式であると指摘しています。その一人別枠方式と大差ないものがアダムズ方式なのです。それなのに、なぜ採用することにしたのか、明確な説明を求めます。

 その上、両案が、比例代表の定数配分にもアダムズ方式を採用するのはなぜでしょうか。本来の比例配分に近いヘアー式最大剰余法を採用している現行制度をなぜ変更しなければならないのですか。

 重大なことは、両案とも、アダムズ方式を採用するにとどまらず、自動的に定数配分と区割りを行う仕組みを盛り込んでいることであります。このもとで、少なくない有権者が、市町村の行政単位や地域社会を分断する異常な線引きを押しつけられ、毎回、選挙のたびに不自然な選挙区変更を強いられることになるのであります。

 結局は、現行制度の根本的な問題に手をつけず、小選挙区制を温存させようとするものでしかありません。

 各党は、将来にわたって、民意をゆがめる小選挙区制を維持していくおつもりですか。明確な回答を求めます。

 日本共産党は、現行制度が提案されたときから、小選挙区制が民意の公正な議席への反映をゆがめ、比較第一党に虚構の多数を与え、強権政治をつくり出す根本的問題があると反対してまいりました。改めて、小選挙区制を廃止し、民意を反映する選挙制度へ抜本的に改革することを主張するものであります。

 最後に、憲法公布七十年、女性参政権実施七十年、十八歳選挙権施行のこの年に、国民の代表を選ぶ選挙制度とはどうあるべきなのか、国民的議論をすべきであります。このことを強調し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔細田博之君登壇〕

細田博之君 穀田議員にお答えをいたします。

 非常に多岐にわたる御質問を頂戴いたしました。

 穀田議員とは、先ほど出ました全党による協議会、二十九回行われましたが、その全てに穀田議員と私は出席しているわけでございます。そこで、穀田議員の御主張は本当に何遍も何遍も伺ってきております。大変、少数政党といいますか、小選挙区比例代表並立制という制度自体が、支持率の少数の政党にとって著しく不利な制度であるという御批判を常にいただいてきているわけでございます。

 まず、この法案の提出の経緯でございますが、総選挙における区割りについて、選挙区間の人口格差が二倍を超えている、違憲状態という最高裁判決があり、一票の格差の是正をしなければならないということは喫緊の課題であります。

 この格差がふえている主原因は、大都市圏である東京の人口増加、そして、最も人口の少ない鳥取二区の人口減少に起因するわけでございますが、これは構造的な面が含まれているということが非常に大きな問題であります。

 そして、二十九回にわたる各党協議を重ねても、根本的な制度につきまして合意が得られなかったので、衆議院選挙制度に関する調査会が設けられて答申が出たわけでございまして、その答申の中でも、今の制度を維持しながら、アダムズ方式その他、内容を改善、改革せよ、こういう答申が出たわけでございますから、我々はそれを尊重しながら案を作成しているわけでございます。

 議長におかれましては、このような事情、長い間の事情を踏まえられた上でいろいろな御判断をされたということを承知しておりまして、強引に数の力で選挙制度を維持するとか変える、そういうことをしているつもりはございません。

 そして、小選挙区比例代表並立制の問題点については、先ほど申しましたとおり、民意の集約が過度になるのではないか、つまり、支持率がある程度低くても小選挙区で勝てば当選するということから、大変にその乖離が大きくなるのではないか。しかし、これは、政権という観点から見れば、政権交代が大幅に起こるという経験もしたわけでございまして、それは今の制度導入のまた主要な要素であったということは確かでございます。

 ただ、この調査会の答申においても、現行の比例代表並立制を維持するとする一方で、選挙制度は民意の集約と反映を基本として、その間の適正なバランスに配慮しつつ不断に見直していくべきであるという旨が述べられておりますので、この内容を受けて、与党案では附則に見直し条項を置いているということを御理解いただきたいと思います。

 定数削減についてのお尋ねがございました。

 調査会答申においては、衆議院議員の定数を何人とするかについて絶対的基準があるわけではないとか、小選挙区選挙について、大幅に定数を削減すると、選挙区間の一票の格差の縮小は難しくなるなどと言及されておりますし、諸外国の人口との比較をすれば、確かに穀田議員の御指摘のとおり、我が国の国会議員数は多いとは思いません。

 ただし、近年の社会経済状況等を考慮する必要があること、地方では平成の大合併もあり議員数を大幅に減らしていることなどを総合的に勘案すると、議員数を削減すべきであるとの政治決断のもとに、比例定数削減を目指すことを我が党としても選挙公約に掲げたところでありますし、このたびは党の決断として定数の十の削減を提案しているわけでございます。

 立法府としての機能をこれからも十分に発揮する観点から、国会はどうあるべきかという考え方を基本にしまして、議員の選出の方法、投票制度、選挙運動の方法や議員定数のあり方などについて大いに議論を深める必要があるのではないかと考えております。

 また、穀田議員の御指摘のとおり、東北あるいは熊本県の震災のことを思うときに、私も政治家の一人として、地方創生の時代にあって、地方に温かい政策判断があってもよいのではないかという強い思いは持っておりますが、大乗的見地に立って、それらを包含して、今回与党案として提案しているところであります。(拍手)

    〔逢沢一郎君登壇〕

逢沢一郎君 穀田先生より、アダムズ方式の導入に関して質問をいただきました。

 いわゆる佐々木調査会の答申でも述べられておりますように、アダムズ方式には、まず、人口比例的な配分方式であるということ、都道府県間の一票の格差を小さくするものであること、都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと、そして、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であること等の長所があると申し上げたいと存じます。

 アダムズ方式は、各都道府県への小選挙区の定数配分を人口比例的に行う方式の一つであり、各都道府県の人口をある除数で割り、商の小数点以下を切り上げた値を各都道府県の定数とする方式でございます。

 このように、アダムズ方式では、人口比例的に定数を配分する計算過程で行われる切り上げの結果として、各都道府県に定数が少なくとも一ずつ配分されるものであり、最初に一ずつ配分する一人別枠方式とは基本的に考え方が異なるものであると申し上げたいと存じます。

 また、衆議院選挙制度に関する調査会は、平成二十六年六月十九日に議院運営委員会でその設置が議決されたものでありますけれども、その際に、「各会派は、調査会の答申を尊重するものとする。」とされたところでございます。

 こうしたことから、本法律案でもアダムズ方式を採用することといたしました。

 加えて、比例代表の定数配分方式につきましても、小選挙区の定数配分方式などと同様に、調査会の答申を尊重するという立場から、アダムズ方式を導入することといたしました。

 また、結果といたしまして、アダムズ方式で定数を配分いたしますと、最も定数の少ない四国ブロックについて、現行定数の六をかなり長期間にわたり維持することができる見込みであります。比例代表の持ついわゆる民意反映機能が維持されるものとなっていることを申し上げておきたいと存じます。

 アダムズ方式を導入することで小選挙区を維持するつもりかとの趣旨のお尋ねがございました。

 先ほど細田議員の答弁もございましたように、現行制度の導入時からの議論や今回の調査会の答申の内容を踏まえて、現行制度におけるアダムズ方式の導入とともに、今後の選挙制度のあり方につきましては、附則に見直し条項を置いているところであります。

 今後の国会における、また各党間の議論を待ちたいと存じます。

 どうぞよろしくお願いをいたします。(拍手)

    〔逢坂誠二君登壇〕

逢坂誠二君 穀田議員の質問にお答えいたします。

 私も、与党時代、各党の選挙制度の協議会全てに出席をさせていただきました。その際、細田先生、さらにまた穀田先生からもたくさんの御指導をいただきました。そのことに対して厚くお礼申し上げたいと思います。

 その上で、選挙制度に関するこれまでの議論の進め方や今回の国会審議の進め方についてお尋ねがございました。

 穀田議員からは、選挙制度については十分な議論が必要である、そういう指摘をいただいたわけでありますけれども、私も全く同感であります。

 その上で、選挙制度改革、そうした思いのもとで、長きにわたって政党間で協議を重ねてまいりましたけれども、残念ながら結論には至らなかったものであります。

 しかしながら、選挙制度というのは、国の政治のあり方を決めるものでありますから、本来、これは政治家がしっかりと議論をしてその方向を定めるというのが大きな原則だというふうに思いますが、残念ながら結論に至らなかったということ、そうしたことも踏まえまして、今回、第三者機関に諮問をしたものというふうに理解をしております。

 一方で、最高裁から三度にわたって違憲状態との指摘を受けるに至り、このことがもはやいっときも先送りできない喫緊の課題であるのは自明のことでございます。立法府に身を置く我々としては、その重みを強く認識すべきだというふうに思います。

 そうした観点から、今回、できる限り早目にこの選挙制度の改革というのを行うべきだ、そういう趣旨に立ちまして、答申を受けた法改正を行うべき、そういうことで調査会答申を忠実に法案化いたしたという経過でございます。

 二点目でございますけれども、現行の小選挙区制による民意の反映の点についてお尋ねがございました。

 小選挙区比例代表並立制、これは基本的には、政権交代可能な政治の実現、政策本位の政党政治の実現を目指して導入された制度であると承知をいたしております。そうしたことを踏まえまして、振り返ってみますと、ある一定程度の機能を果たしているのではないかと認識をいたしております。

 加えまして、今後の改革の方向性でございますけれども、今回提出をさせていただきました附則の第四条、ここに不断の見直しを行うことを明記させていただいております。この際に、両院制のもとで各議院が果たすべき役割を踏まえるとともに、民意の集約と反映を適正なバランスで実現するといったことも念頭に置く必要があろうかと思います。

 いずれにいたしましても、党の垣根を越えて、衆参両院それぞれが果たすべき役割を議論しつつ、民意を適切に国政に届ける制度、有権者の視点から納得を得られる抜本的な制度改革の議論に取り組んでまいりたいと考えております。

 次に、定数削減の必要性などについてお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、現行の衆議院議員の定数は、国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えないと指摘をされているところでございます。しかしながら、この間、各党それぞれ考え方はあろうとは思いますけれども、定数削減についての一定の議論があったことも事実だというふうに認識をいたしております。

 そして、さらに、先ほど来幾度か紹介がございましたけれども、二〇一二年十一月十四日、この党首討論におきまして、当時の野田総理、そして当時の自民党の安倍総裁との間で、大幅な定数の削減を行うということを国民の前で約束しているということも事実であります。この約束は非常に大きなものであるというふうに私も考えておりまして、我々民進党は、この国民との約束を守り抜く立場にあるということを改めて表明させていただきたいと思います。

 同時に、被災地への言及がございましたけれども、定数や制度改革にかかわりなく、震災、災害に見舞われた皆様の声を真摯に受けとめ、緊急対応に政治の総力を注ぎ、復旧と復興、そして防災対策に全力を注いで取り組んでいくことは当然のことでございます。

 次に、アダムズ方式の導入についてお尋ねがございました。

 衆議院の選挙制度調査会の答申でアダムズ方式により行うことが求められているわけでありますけれども、まずアダムズ方式につきましては、一つ目、人口比例的な配分方式であること、二つ目、都道府県間の一票の格差を小さくするものであること、三つ目、都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと、四つ目、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であることといった長所があると認識をしております。

 そこで、答申の内容をでき得る限り忠実に法案化している民進党案におきまして、小選挙区と比例代表の定数配分にアダムズ方式を導入したものでございます。

 また、現行の小選挙区比例代表並立制に対する評価については、さきにお答えしたとおりでございますけれども、基本的には、政権交代可能な政治の実現、政策本位の政党政治の実現を目指して導入された制度であると承知をしており、一定程度の機能を果たしていると認識をしているところでございます。

 以上でございます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 浦野靖人君。

    〔浦野靖人君登壇〕

浦野靖人君 おおさか維新の会の浦野靖人です。(拍手)

 まず最初に、熊本を中心とした地震でお亡くなりになられた方々と御遺族の方々に哀悼の意を表すとともに、今なお被災地で避難生活を送られている皆様の日常生活を一日でも早く取り戻せるよう、我々のできることにしっかりと取り組んでまいることをお誓いいたします。

 それでは、議題となりました衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案の自公案及び民進案について、両党に質問をいたします。

 ことしで、明治維新から数えて約百五十年、そして戦後七十一年目を迎えます。我が国の政治経済の仕組みについて、あらゆる分野で抜本的改革が求められています。多くの重大な課題のうち、最初にどこから手をつけるのか、そして、言ったことを本当に実行するのか、そこに政党や政治家の本質があらわれると考えます。

 我々おおさか維新の会は、大阪での改革を全国に広げるという理念を訴えて結党されました。八年間にわたる大阪改革で、一番最初に行われたのは、当時の橋下知事自身の報酬カットと、議会がみずから身を切る改革でした。大阪府議会の議員定数を百九から八十八に二割削減し、議員報酬を三割削減しました。

 みずからの身分にも待遇にもこだわらない姿勢を見せることで、住民の信頼と支持を得たのです。その上で公務員改革を行い、公務員の数と給与、外郭団体、天下り等の削減を断行しました。ここでも、まず議員自身が身を切る改革を行ったことで、府、市の職員の皆様からも一定の理解が得られたのです。

 信なくば立たずという言葉のとおり、大阪での改革は、まず議会改革によって政党と政治家が住民の信頼を得ることから始めました。国も同じです。まず政治への信頼を回復すべきで、そのために議員の身を切る改革が必要なのです。

 自公案の提出者にお伺いいたします。

 少子高齢化と人口減少が進む中、増税や歳出削減等の国民負担を求める前に、国でも地方でも、まず最初に議員自身が身を切る改革を行うべきと考えますが、認識をお伺いいたします。

 民進案の提出者にお伺いいたします。

 旧民主党は、平成二十一年の衆議院選挙のマニフェストで、衆議院の比例定数を八十削減するとしていました。政権時代になぜこれを真っ先に取り組まなかったのか、お伺いいたします。

 身を切る改革を実現するため、我が党は、旧党時代から多くの議員立法を提出してきました。議員定数については三割削減、議員報酬についても三割減という法案を提出しました。歳費を自主的に国庫に返納することを可能にするための法案も提出しました。歳費以外でも、旧党時代に文書通信交通滞在費の公開法案を提出し、現在も党所属議員の文通費をホームページ上で公開しています。

 我が党は、身を切る改革を実行することを最優先の課題とし、文通費の公開のように、みずからできることは既に始めております。

 自公案の提出者、民進案の提出者の双方にお伺いいたします。

 今回の法案では、議員定数の削減が不十分で、身を切る改革が足りないと考えます。今回の法案に加えて、議員歳費の削減と文通費の公開を行うべきと考えますが、御認識をお伺いいたします。また、文通費の公開は法改正がなくても直ちに実行できますが、提案者御所属の各党はなぜ行わないのか、お伺いをいたします。

 さらに、今回の熊本での大地震の復興財源の一部として、東北大震災の際と同様、再び議員歳費の二割削減を次回の支給から行うべきではないでしょうか。自公案、民進案の提出者双方にお伺いいたします。

 そもそも、今回の両法案のもととなった衆議院選挙制度調査会の答申は、我が党から見れば、定数削減の点で全く不十分なものです。この答申には、「現行の衆議院議員の定数は、国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えず、これを削減する積極的な理由や理論的根拠は見出し難い。」などと書かれています。多くの国民の意識からかけ離れていると言わざるを得ません。

 我が党は、定数削減の積極的理由は、国民や住民の信頼を得ることであると考えております。また、大阪でのさまざまな改革の成果は、議員定数の大幅削減を正当化するための十分な実証的根拠になると考えています。

 自公案、民進案の提出者双方にお伺いいたします。

 平成二十四年の党首討論の場で、安倍自民党総裁が野田元総理と、国民の前で議員定数の大幅削減を約束されました。今回の答申による両案での削減は十議席のみですが、これで国民への約束は果たされるとお考えなのか、御認識をお伺いいたします。

 今回の調査会の答申も、それを基礎とした二つの法案も、不十分なものではあります。一方で、調査会答申は、衆議院がみずから議院運営委員会で設置を決定し、調査を委嘱した結果出されたものです。院の自律という観点から、結論に納得できなくとも答申は尊重し、まずは一歩でも改革を進めるべきと考えます。

 そこで、定数十減の法案への賛否の検討に当たり、以下の二点を提案します。

 第一に、抜本的な国会改革を行うための第三者機関を設置すべきです。

 大島衆議院議長は、選挙制度改革に関する我が党の意見陳述の際、戦後の立法府のあり方を総決算して考え直すべきとの御発言をされました。これを受け、国会全体の抜本改革へ向けた検討を行う第三者機関を調査会等の形で国会に設置すべきです。我が党としては、こうした第三者機関において、定数の大幅削減の実現や二院制の見直し等を行いたいと考えています。

 第二に、日々の国会運営を改革するための委員会を設置すべきです。

 政府四演説の一本化や、半ば既得権化した特別委員会のスクラップ・アンド・ビルド等、通常の国会運営での改善の余地は数多くあります。一昨日予定されていた党首討論も、イギリスのように定期的に開かれる建前からほど遠い状態で、野党自身も、予算委員会の集中審議等を重視する傾向にあります。党首討論の制度をどうするのか、一度見直すべきです。

 こうした問題を解決するため、議院運営委員会の国会法改正等及び国会改革に関する小委員会を定期的に開催すべきです。

 自公案の提出者にお伺いいたします。

 抜本的な国会改革のための第三者機関の設置及び議運の国会法改正等及び国会改革に関する小委員会の定期化という我が党の提案につき、実現に向けた協議をされる意思がおありか否か、お伺いをいたします。

 我が党にとって、議員の定数と歳費の削減は、全ての改革に先んじて行うべきものです。この問題への態度を見れば、政党や政治家が目指すものが、税金を払う人のための政治か、税金で暮らす議員や公務員のための政治か、はっきりとわかります。おおさか維新の会は、税金を払う人のための政治を実行することを国民の皆様にお約束し、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔逢沢一郎君登壇〕

逢沢一郎君 浦野議員にお答えを申し上げます。

 まず最初に、議員自身が身を切るべきではないか、また、定数削減が十議席のみであることで国民との約束が果たされるのかという趣旨の御質問をいただきました。

 定数の問題は、言うまでもございませんが、議員の身分また立法府のあり方そのものの問題であり、各会派間における議論を踏まえることが重要であると考えます。

 本法律案を提出するまでの過程におきましては、平成二十三年以降、二十九回にわたる各党協議を経てもなお結論を得ることができなかったため、当時の伊吹議長のもとに衆議院選挙制度に関する調査会が設けられ、佐々木先生に座長に就任をいただき、そこで御議論いただくという経緯をたどっております。

 そして、この調査会の答申については、各会派は尊重するものとすることとされているところ、調査会の答申に沿って、調査会の答申に従う形で十削減しようとするものであり、与野党の共同提出に至らなかったことは率直に申し上げて残念であったとも思いますが、各党の議論を経ているというプロセスを踏んでいることを御理解いただきたいと思います。

 率直に申し上げて、確かに議員の御発言にも一理あるとは存じますが、さきに申し上げましたように、立法府のあり方の問題である以上、今後さらに定数の問題を議論するに当たりましては、各党間の、また国会における協議から始めるべきではないかと承知をいたしております。(拍手)

    〔岩屋毅君登壇〕

岩屋毅君 浦野議員から、議員歳費の削減、文書通信交通滞在費の公開、抜本的な国会改革のための第三者機関の設置などについて御質問をいただきました。

 御党独自のお取り組みについては一定の敬意を表させていただきたいというふうに思っておりますが、議員歳費や文書通信交通滞在費の問題は、個々の議員の活動に直結する問題でございます。したがいまして、この種の問題は、まず各会派間での議論が行われることが望ましいというふうに考えているところでございます。

 なお、御指摘の東日本大震災のときの歳費の二割削減の際も、衆議院においては全会一致で行われております。このことを踏まえましても、やはり、まず各党間での協議がしっかりと行われるべきではないかと考えているところでございます。

 また、抜本的な国会改革や国会運営の活性化のための委員会の設置の御提案がございました。

 国会をよりよい姿にしていこうということについては私どもも全く同感でございまして、提案の御趣旨につきましては同意するものでございます。

 しかしながら、この点につきましても、国会機能の強化の問題でございますので、まずは各党間の十分な協議を踏まえた上で行われるべきではないかと考えているところでございます。(拍手)

    〔逢坂誠二君登壇〕

逢坂誠二君 浦野議員から御質問いただきました。

 まず最初に、民主党政権時代の選挙制度改革に対する取り組みについて御質問いただきましたけれども、民主党政権時代に各党に呼びかけまして、定数削減も含んで精力的に選挙制度改革の議論を重ねてまいりましたが、まことに残念ながら合意には至りませんでした。

 この事態を打開するために、当時の野田総理が当時の自民党の安倍総裁と、二〇一二年十一月十四日に行われた党首討論におきまして、大幅な定数の削減を行うとの約束を交わしたわけであります。

 総理と野党第一党の党首との約束、これをほごにするようなことがあれば、それこそ国民の政治に対する不信は決定的なものとなるとの大きな懸念を持つということでございます。そうした意味で今般のようなことになっているということでございます。

 次に、身を切る改革と文書通信交通滞在費の公開についてのお尋ねがございました。

 我々民進党としては、文書通信交通滞在費の位置づけの明確化、また政治活動と政治資金のあり方など、基本的な議論、そして実態の検証を行った上で、透明性を向上させる改革、さらなる身を切る改革に取り組んでいきたいと考えております。

 さらに、今回の熊本での大地震に当たり、議員歳費の二割削減を行って復興財源に充てるべきではないかとのお尋ねをいただきました。

 このたびの熊本地震に当たっては、四十八人の方が命を落とし、九万人以上の方がいまだ困難な避難生活を続けるなど、その被害はまことに甚大でございます。

 民進党としても、発災直後から対策本部を立ち上げて情報収集等に当たるとともに、政府に対して協力を惜しまない姿勢を表明しており、また、四月二十日には、被災者の救助及び支援、激甚災害の指定、被災者生活支援の強化など七項目にわたる緊急申し入れを安倍総理と谷垣幹事長にさせていただいたところであります。

 復興に係る財源が確保されることは当然に必要であり、まずは政府において、自治体と連携しつつ、適切な計画を迅速に行うための財源を十分に確保するための措置をとることが重要であり、その点においても民進党として必要な協力を惜しまないことを申し上げます。

 定数削減と国民への約束についてのお尋ねがありました。

 我々民進党は、定数削減はまだ不十分であるが、格差是正は最高裁も厳しく指摘する喫緊の課題であること、また、政党間協議で結論が得られず、衆議院議長が第三者機関に諮問した経過を踏まえて、まずは答申を受けた法改正を行うべきとの立場に立つものであります。

 今回は、調査会答申に沿った制度改革をまず忠実に実現することが必要と考えますが、民進党案の附則に示すように、本法案成立後にさらなる国会議員の定数削減へ向けた議論に取り組みたいと考えております。各党各会派との協議も積極的に重ねてまいりたいと思います。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 玉城デニー君。

    〔玉城デニー君登壇〕

玉城デニー君 生活の党と山本太郎となかまたちの玉城デニーです。

 私は、会派を代表して、ただいま提案のありました細田博之君外四名提出の自公案、今井雅人君外二名提出の民進案、両案についてそれぞれ質問させていただきます。(拍手)

 冒頭、四月十六日に発生した熊本地震でお亡くなりになられました方々に対しまして心よりお悔やみを申し上げるとともに、御遺族はもとより、被災され、今なお避難を余儀なくされている多くの被災者に対しましてお見舞いを申し上げます。

 政府に対しましては、一日も早く激甚災害に指定いただき、国を挙げてその復旧に努めていただくことを強くお願い申し上げます。

 さて、質問の前に一言申し上げます。

 本来、私ども少数会派はこのような登壇質疑の割り当てがありませんが、四月七日の九党幹部協議において、大島理森衆議院議長から、議運理事、オブザーバー会派以外の会派にも委員会での発言を与える旨の御要請を提案していただきました。

 与野党幹事長・書記局長会談で合意された選挙制度に関する与野党実務者による協議における意見、発言、衆議院議長のもとに設置された衆議院選挙制度に関する調査会での調査における我が党からの意見陳述の機会などなど、この間の選挙制度の取りまとめの経緯におきまして、国民の意思を反映するための重要な制度にかかわること、全ての国民の権利に深くかかわることであることに鑑み、議長を初め議院運営委員会委員長のお取り計らい並びに与野党議運理事を初め実務者委員、各党国対、関係議員諸賢の御理解あって、これらの場面において発言できましたことに、まず深甚なる感謝を申し上げます。

 決して政治は数が全てではない、議会運営の貴重な経験を与えていただきましたことに改めて敬意を表します。

 質問に入ります。

 提案された二つの法案は、一票の格差是正について、どちらも、一、アダムズ方式の採用、二、十年ごとの大規模国調結果に基づく議席配分を行うものとし、その中間年に実施される簡易国調の結果、一票の格差が二倍以上の選挙区が生じたときは、都道府県への議席配分を変更せず、区割り画定で行うものとなっています。

 まず、自公案について提出者に伺います。

 最高裁判決で求められた一票の格差是正、憲法の投票価値の平等の要求において、御提案の〇増六減方式は、一人別枠方式の構造的な問題温存になっていないか伺います。

 議席配分については、平成三十二年大規模国調からアダムズ方式を導入するということ、さらに、平成二十七年簡易国調をもとに、五年間を通じて格差二倍未満となるよう区割りするということとありますが、最高裁の三たびにわたる違憲状態判決の指摘を受け、制度の改正によって解決することが議会に求められる急務であることに立脚するのであれば、なぜ平成二十二年国調による導入をとらないのか、説明をお願いいたします。

 次に、民進案について質問いたします。

 民進案は、平成二十二年大規模国調の結果に基づくアダムズ方式により七増十三減した上で、平成二十七年簡易国調の結果に基づいて区割り画定を行うとしています。それによる地方の議席が削減されることの少なからぬ直接的な影響について、多様な国民の意見を反映するための選挙制度のあり方という観点から説明を求めます。

 さらに、民進案の「その他」二の「見直し」において、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度については不断の見直しが行われるものとし、特に人口が急激に減少している地域の民意を適切に反映させることに留意するとともに、さらなる国会議員の定数削減を図るよう努めるとしています。地方の人口減少は今後もほぼ確実と見られており、都市部への人口流入が続いていく将来社会と、これからの定数削減のさらなる必要性についてどのようにお考えか、御説明をいただきます。

 最後に、二十七年最高裁判決は、国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり、投票価値の平等が憲法上の要請であると述べています。平等な価値のもとでの選挙によって示されるものは、紛れもない国民の多様な意思です。それらの意思をあまねく尊重するための改正であること、平等な民意に選ばれた民主政治を行うことの再認識という経緯でもあるということを肝に銘じなければなりません。

 本年七月予定の参議院選挙から、いよいよ十八歳以上の有権者が選挙へ参加します。私たち議会人の真摯な姿勢と品格が、若い世代への率先垂範となることを強く願いまして、私の質問を終わります。

 イッペーニフェーデービタン。ありがとうございました。(拍手)

    〔岩屋毅君登壇〕

岩屋毅君 玉城議員から、まず、〇増六減は一人別枠方式の温存になっているのではないかというお尋ねがございました。

 今般の改正法案では、各都道府県への小選挙区定数の配分方式について、平成三十二年の国勢調査からアダムズ方式を導入することを法案の本則に明記をしております。

 また、平成二十七年の国勢調査に基づきまして小選挙区の区割りを見直すこととしておりますが、この区割り改定案の作成につきましては、将来見込み人口を踏まえて、次回の平成三十二年国勢調査に基づく見直しまでの五年間を通じて格差二倍未満となるように行うことといたしております。

 すなわち、私どもの案は、最高裁判決と衆議院選挙制度調査会の答申を踏まえまして、平成三十二年には、いわゆる一人別枠方式を完全に解消することを明確にした上で、そこに向かって漸次的に、段階的に措置を講じていくものでございます。

 したがいまして、一人別枠方式の温存になっているのではないかという御指摘は当たらないものと考えております。

 次に、アダムズ方式を平成三十二年国勢調査から導入し、平成二十二年調査からは導入しない理由についてお尋ねがございました。

 衆議院選挙制度調査会の答申は、議席配分の見直しは、制度の安定性を勘案しなければならないとしておりますし、十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づいて行うべしとされております。一方で、それがいつの大規模国勢調査かということについては明らかにされていないわけであります。

 現時点では、次回の大規模調査は平成三十二年のものとなります。成立した法律をあえて遡及して適用することは例外的でございますので、アダムズ方式を導入するのは、次回の平成三十二年の大規模国勢調査以降とするのが自然であると私どもは考えているところでございます。

 また、これは議長が三月二十三日に示された、制度の安定性を勘案するようにしてもらいたい、この思いにも沿うものであると考えております。

 したがいまして、自公案ではアダムズ方式を平成三十二年国調から導入することとしたところでございます。(拍手)

    〔落合貴之君登壇〕

落合貴之君 地方の議席が削減されることの影響と定数削減のさらなる必要性についてのお尋ねがありました。

 定数削減に関しては、二〇一二年十一月十四日に行われた党首討論において、当時の民主党の野田佳彦総理と自由民主党の安倍晋三総裁との間で、遅くとも二〇一三年の通常国会で大幅な定数削減を行うとの約束が交わされました。

 この約束は、社会保障制度改革を進めていくために必要な税負担を初め、国民に負担をお願いする政治の場にある者は、まずみずからの身を切る努力をしなければ国民の理解は得られないとの当然の思いに基づくものです。

 一方で、民進党案の附則第四条に、特に人口が急激に減少している地域の民意を適切に反映させることに留意した上で、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度のあり方について、両院制のもとで各議院が果たすべき役割を踏まえるとともに、民意の集約と反映の適正なバランスを実現するために、不断の見直しを行うことを明記させていただいております。

 大都市への人口集中と地方の過疎化が進む我が国の現状を踏まえ、地域の声を埋没させず、国政にきちんと届けられる制度を検討していきたいと考えています。

 党の垣根を越えて、衆参両院おのおのが果たすべき役割を議論しつつ、民意を適切に国政に届ける制度、有権者の視点から納得を得られる抜本的な制度改革の議論に取り組んでまいりたいと考えます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 吉川元君。

    〔吉川元君登壇〕

吉川元君 社会民主党の吉川元です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表し、衆議院選挙制度改革に関する二法案につき、提出者双方に質問いたします。(拍手)

 本会議での代表質問は私自身初めて、党としても実に三年半ぶりとなります。こうした機会を与えていただいた正副議長、議運、そして各党各会派の皆様に感謝を申し上げます。

 質問に入る前に、今回の熊本、大分で発生した地震によって犠牲になられた方々の御冥福をお祈りし、被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げます。私も、今般被災した大分が地元であり、被災者の救援、一日も早い復旧復興、生活再建に向け、社民党も全力を挙げて取り組む決意です。

 さて、選挙制度は、全党全会派が参加し、議論を尽くし、制度改革を行うのが基本です。二〇一三年六月二十五日、全党で合意が行われ、一票の価値、定数問題、選挙制度について、各党間の協議を再開し、結論を得るとしました。

 そこで、まず、一票の価値について尋ねます。

 「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」、憲法前文はこの一文で始まります。

 最高裁は、過去三回の総選挙のいずれも違憲状態と断じました。まさに選挙の正当性についての疑義が生じています。速やかに一票の格差を是正し、違憲状態を解消することが喫緊の課題です。

 しかし、与党案は、調査会が示したアダムズ方式を、二〇二〇年の国勢調査の結果が出るまで先送りしました。調査会に委ねたのであれば、答申内容を直ちに実行に移すべきであり、与党案は最高裁の要請にも応えていません。この点について与党提出者はどのようにお考えですか。

 次に、定数問題について提出者双方に尋ねます。

 両案ともに、小選挙区六、比例四の総計十議席を削減しています。調査会答申は、現行の定数について、多いとは言えず、これを削減する積極的な理由や理論的根拠は見出しがたいと指摘しています。最高裁判決が求めたのも一票の格差是正であり、定数削減ではありません。

 議員定数は、主権者である国民の政治参加の機会の保障、立法府による行政監視の役割などから検討されるべきものです。ましてや、消費税増税をするから定数を削減するというのは、代表なくして課税なしというアメリカ独立戦争の際のスローガンとは正反対の発想です。主権者たる国民の代表者の数を減らす定数削減は、立法府の力をそぎ、多様な民意が国政の場に届かなくなるおそれがあります。

 定数削減に対する認識及び削減の理由と根拠について明らかにしていただきたい。

 また、現行制度発足時の定数割合により、小選挙区六、比例四を削減するとしていますが、二〇〇〇年に比例定数は既に二十削減されています。

 両案の提出者にお聞きします。

 さらなる比例定数の削減は、民意の反映機能を弱めるとともに、三対二の原則にも反していると考えますが、いかがですか。

 行政区単位の区割りを基本にした小選挙区制度のもとで、定数の削減をしながら格差を解消していくことは至難のわざです。同時に、小選挙区制度による民意と議席数の乖離や膨大な死票の存在も大きな問題です。

 政治思想の古典でもある「ザ・フェデラリスト」第十編で、ジェームズ・マディソンは多数の横暴に警鐘を鳴らしています。また、最高裁は投票価値の平等を判示しています。

 小選挙区制度は、過半数に届かない得票でも圧倒的多数を獲得することが可能であり、投票の半数は死票として国政に反映されない、つまり価値なきものにしてしまいます。

 現行の小選挙区比例代表並立制の問題点の認識と、民意の集約と民意の反映の適正なバランスの必要性を指摘している調査会答申への受けとめについて、双方に尋ねます。

 また、両案の附則には、いずれも不断の見直しがありますが、選挙制度の抜本改革についての双方の見解を尋ね、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔北側一雄君登壇〕

北側一雄君 吉川議員にお答えをいたします。

 まず、自公案は最高裁の要請に応えていないのではないかとのお尋ねがございました。

 最高裁判決において、選挙制度の整備については、漸次的な見直しを重ねることにより実現していくことも許容されている旨述べられていることは、さきに述べたとおりでございます。

 また、自公案では、各都道府県への小選挙区定数の配分方式について、平成三十二年の国勢調査からアダムズ方式を導入することを法案本則に明記しております。

 また、平成二十七年の国勢調査に基づいて小選挙区の区割りを見直すこととしておりますが、この区割り改定案の作成については、将来見込み人口を踏まえ、次回の平成三十二年大規模国勢調査に基づく見直しまでの五年間を通じて格差二倍未満となるように行うこととしております。

 したがって、自公案は、国会の裁量権の範囲内における適切な立法措置であり、最高裁の判決に十分応えられるものとなっていると考えております。

 次に、定数削減に対する認識及び削減の理由と根拠についてお尋ねがございました。

 今般の改正法案では、調査会答申を受けまして、衆議院議員の定数を十削減して総定数を四百六十五名とすることとしております。この総定数四百六十五名は、大正十四年に男子による普通選挙が実現して以降最も少ない数です。

 今回は、定数を十削減することといたしましたが、議員定数の問題は、全国民の代表たる国会議員及び国権の最高機関たる国会のあり方に直結する問題です。

 将来的な議員定数のあり方については、民意の集約と反映のバランスに配慮しつつ、行政府との緊張関係の維持、国会の機能の充実といった観点も踏まえ、引き続き検討を行ってまいりたいと考えております。

 さらなる比例代表の削減は、民意の反映機能を弱めるのではないかとの御質問をいただきました。

 本法律案では、小選挙区の定数を六、比例代表の定数を四削減することとしており、比例代表の定数を殊さらに削減するものではありません。現行制度に比べますと、必ずしも比例代表の持つ民意反映機能が弱まっているとは考えていないというふうに認識をしております。(拍手)

    〔岩屋毅君登壇〕

岩屋毅君 吉川議員から、小選挙区比例代表並立制の問題点、調査会答申の受けとめ及び選挙制度の抜本改革についてのお尋ねがございました。

 この選挙制度改革のときの議論には私も大いに思い入れがあるんですけれども、平成八年の総選挙で初めてこの並立制が適用されました。以来、七回の総選挙が実施されてまいりました。御承知のように、この間、二回の本格的な政権交代が起こったわけでございます。

 一方で、この選挙制度改革が我が国の政治構造にどのような影響を及ぼしたのか、当初よりさまざまな観点から多くの議論がなされてまいりました。また、制度上の問題点や課題も指摘されてまいりました。

 これまでの議論も十分に踏まえながら、制度導入時の理念や目的が本当に実現をしているのか、現実との間にどのような乖離が生じているのか、制度の持つ矛盾や問題がどこにあらわれているのかなど、引き続き活発な議論を行っていくことが重要であるというふうに考えているところでございます。

 調査会の答申では、我が国の民主政治の機能を十全に発揮せしめるために、さまざまな視点から議論が行われるべきだとの認識が示されております。

 選挙制度のあり方は、御指摘のように、民意の集約と反映のバランスを基本にして、不断の見直しが必要であるというふうに考えているところでございます。

 現行制度の現状を踏まえまして、どのような選挙制度が衆議院の制度として望ましいのか。現行制度を維持すべきだという考え方もございましょう、完全小選挙区にすべきだという考え方もある、新たな中選挙区制にすべきだ、あるいは併用制、連用制など、いろいろな考え方が各党の中にあることは承知しておりますが、我が国の民主政治の将来を見据えて、引き続き各党間で活発かつ真摯に議論を重ねていくことが重要であると考えているところでございます。

 以上です。(拍手)

    〔落合貴之君登壇〕

落合貴之君 定数削減に対する認識及び削減の理由と根拠についてのお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、答申においては、現行の衆議院議員の定数は、国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えないと指摘されていることは承知しております。一方で、答申は、衆議院議員の定数削減に関して、「多くの政党の選挙公約であり、主権者たる国民との約束である。」ともしています。

 また、二〇一二年十一月十四日の党首討論においての、当時の民主党、野田佳彦総理と、自由民主党、安倍晋三総裁との間で、遅くとも二〇一三年の通常国会で大幅な定数削減を行うとの約束もあります。

 この約束は、社会保障制度改革を進めていくために必要な税負担を初め、国民に負担をお願いする政治の場にある者は、まずみずからの身を切る努力をしなければ国民の理解は得られないとの思いに基づくものです。

 総理と野党第一党の党首の約束をほごにするようなことがあれば、それこそ国民の政治に対する不信は決定的なものになると大きな懸念を持つものであります。

 次に、さらなる比例代表の削減は、民意の反映機能を弱めるのではないかとの御質問をいただきました。

 本法律案では、小選挙区の定数を六、比例代表を四削減するとしております。比例代表を殊さらに削減するものではなく、現行制度に比べ、比例代表の持つ民意反映機能が弱まっているとは考えておりません。

 加えて、調査会の答申に沿って、比例代表の各ブロックの定数配分についてアダムズ方式にすることにより、最も定数の少ない四国ブロックについて、現行定数の六をかなり長期にわたり維持することができることとし、比例代表の持つ民意反映機能を弱めることがないような工夫をしております。

 なお、民進党案では、不断の見直しの中で定数削減に努める旨明記しておりますが、将来的な定数のあり方についても、民意の集約機能と反映機能の適正なバランスを踏まえて検討していくものと考えております。

 次に、小選挙区比例代表並立制の問題点と調査会答申の受けとめ、選挙制度の抜本改革についての見解のお尋ねがありました。

 小選挙区比例代表並立制は、基本的には、政権交代可能な政治の実現、政策本位の政党政治の実現を目指して導入された制度であると承知しています。振り返れば、一定の機能を果たしていると認識しています。

 それと同時に、民進党案の附則第四条に、特に人口が急激に減少している地域の民意を適切に反映させることに留意した上で、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度のあり方について、両院制のもとで各議院が果たすべき役割を踏まえるとともに、民意の集約と反映の適正なバランスを実現するために、不断の見直しを行うことを明記させていただいております。

 党の垣根を越えて、民意を適切に国政に届ける制度、有権者の視点から納得を得られる抜本的な制度改革の議論に取り組んでまいりたいと考えます。(拍手)

副議長(川端達夫君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(川端達夫君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣  高市 早苗君


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