衆議院

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第3号 平成13年2月28日(水曜日)

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平成十三年二月二十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 横路 孝弘君

   理事 植竹 繁雄君 理事 小野 晋也君

   理事 阪上 善秀君 理事 横内 正明君

   理事 島   聡君 理事 中沢 健次君

   理事 河合 正智君 理事 塩田  晋君

      岩崎 忠夫君    亀井 久興君

      川崎 二郎君    古賀 正浩君

      谷川 和穗君    谷田 武彦君

      近岡理一郎君    西川 公也君

      根本  匠君    平沢 勝栄君

      三ッ林隆志君    渡辺 具能君

      井上 和雄君    石毛えい子君

      大畠 章宏君    細川 律夫君

      山花 郁夫君    山元  勉君

      太田 昭宏君    松本 善明君

      北川れん子君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 伊吹 文明君

   国務大臣

   (経済財政政策担当大臣) 麻生 太郎君

   国務大臣

   (科学技術政策担当大臣) 笹川  堯君

   国務大臣         橋本龍太郎君

   内閣官房副長官      安倍 晋三君

   内閣府副大臣       坂井 隆憲君

   内閣府大臣政務官     西川 公也君

   内閣府大臣政務官     渡辺 具能君

   内閣府大臣政務官     山崎  力君

   会計検査院事務総局第一局

   長            石野 秀世君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    五十嵐忠行君

   内閣委員会専門員     新倉 紀一君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  小西  哲君     谷田 武彦君

同日

 辞任         補欠選任

  谷田 武彦君     小西  哲君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件




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     ――――◇―――――

横路委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長黒澤正和君及び警察庁刑事局長五十嵐忠行君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横路委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中沢健次君。

中沢委員 おはようございます。民主党の中沢でございます。

 内閣委員会も、行政改革で、特にその当時の総理あるいは関係大臣の橋本さんを中心にして省庁の再編あるいは官邸機能の強化、そういうことが背景になりまして、国会でも、改めて与野党を含めていろいろの議論をいたしまして、極めて重要な委員会であると。したがって、関係大臣も、総理は別にいたしまして五名、大物ばかり、こういう状況で、きょうから本格的に内閣委員会がスタートをするわけであります。

 まず最初に、五大臣のそれぞれの大臣就任、私は野党でありますが、心からお祝いを申し上げます。

 我が党は、きょうは四名の質問者を予定しておりまして、私は、五名の皆さんにそれぞれ質問をすれば礼儀としてはいいんでしょうけれども、三名の大臣に限定をしてこれからお尋ねを申し上げたいと思います。

 まず最初に、総理大臣経験者であるということではありませんが、いろいろな意味で敬意を表しまして、まず、行政改革担当大臣の橋本さんに二つほどお尋ねをしたいと思います。

 私も、四年前、橋本さんが総理のときに予算委員会の理事をやっておりまして、あのときにもいろいろお手合わせをいただきました。私は剣道は一切やっていませんが、やはり剣道の達人はさすがにすごいな、こういう印象を今でも持っております。

 さて、まず最初に、所信のあいさつでも触れられております、あるいは本会議で与党の代表質問でも触れられておりますが、行政改革、いろいろありますけれども、基本的には、これから五年間かけて、いわゆる日本の国の形をどうするか、極めて大事な、国民から見ても非常に関心の深い、あるいは政治家としては本当に大事なテーマ、これをこれから本格的に議論をしなければならないと思うのですよ。

 そこで、橋本大臣に、この国の形ということの中身について、もう少し基本的な見解についてお尋ねをしたい。

 私も含めて、我が党は、国の形の議論もいろいろやっております。多くは申し上げません。しかし、今、我が国の将来像として、分権型連邦国家、こういう言葉を党内的にはほぼ合意をしております。その内容についてどうするか。つまり、分権ということを重視して、今の中央集権的な国家じゃなくて連邦国家にしてはどうか、こういう中身で今議論をしている最中です。

 これ以上のことはきょうは申し上げませんが、いずれにしても、相当な決意あるいは覚悟で行政改革の担当大臣ということで今度大事な役割を担うわけでありまして、そういう点も含めて橋本大臣の方から基本的な見解についてお尋ねを申し上げたいと思います。

橋本国務大臣 こちらこそ、どうぞお手やわらかによろしくお願いいたします。

 今、この国の形というものをおまえはどう考えているのかというお尋ねをいただいたわけですが、まさに、その御質問に対して、総理のときに私はこのようにお答えをさせていただきました。

 本当に、自立的な個人が自分の持つ夢というものに対して、それを実現させるために挑戦するチャンスがある、そしてそれが成功する機会がある。そうした創造性やチャレンジ精神をただ単に発揮するだけではなく、成功の可能性があるということが非常に大事なことだと考えております。そして、内外のさまざまな変動に機敏に柔軟に対応できるようにしなければいけない。同時に、年長者を敬う、親から子に心の大切さを伝える。私は日本の伝統的なよい部分だったと思いますが、その我が国のよい部分、あるいは豊かな自然や伝統、文化というものを守っていく。ただ単に守るだけではなく、伸ばしていける、そんな社会をつくることができれば、そう心から願っておりますというお答えを申し上げました。

 そして、今、中央省庁改革が一応スタートをいたしました中で、これから一層、この国の形という中で、自立的な個人を中心とした、より自由で公正な社会の実現を目指していく必要があると考えております。そして、その土台に、官から民へ、国から地方へという観点に立って事務事業を見直していく必要性があることは言うまでもありません。そして、そういう点では、今日までの規制の緩和あるいは地方分権、官民の役割分担の見直しの徹底というものに対して配慮し、努力をしてまいりました。

 これから先、いわば行政改革の始まりの終わりに近づいております。これを真に効果あらしめるものとして考えなければならないことは公務員制度の改革であり、そして、その中で正すべき点は正しながら、公務員が本当に全力を挙げてその役割に飛び込んでいける、誇りを取り戻せるような仕組みを考えなければなりませんし、特殊法人の改革あるいは公益法人の改革、さまざまな課題がございます。

 ただ、今議員が述べられた中で、私もきょうこれを議論するつもりはございませんけれども、分権型の連邦国家という問題の御提起があったわけですが、今、少子社会に入りまして、日本の人口もある時点からは減少に向かうと言われております中で、既に大都市部に集中し過ぎている状況の日本の現状を考えますときに、その大都市に集中している人口がバランスのとれた形でそれぞれのふるさとに戻るかといえば、私は必ずしもそうではないような気がいたします。

 となりますと、連邦制という言葉はございますけれども、非常に過疎と過密の状態を固定する結果に終わりはしないか、そうした懸念を持っていることは申し添えさせていただきます。

中沢委員 非常に基本的でさまざまな難しい問題がありますから、きょうは時間の制約がありますので、いずれまたじっくり、橋本大臣とこの問題につきましても、議論の場をぜひ私どもとしては積極的につくってやりたいと思っております。

 そこで、やや各論で言いますと、一つだけ、大臣が就任されましてから、いわゆる事務局に対しまして意欲満々の具体的な指示をされている、あるいは対外的にも記者クラブで講演をされたりいろいろな方と会っている。私もそれなりにさまざまな情報は集めてきたつもりです。

 当面の緊急課題で、三つ大臣は考えていらっしゃる。特殊法人の問題、公益法人の問題、それから国、地方の公務員の制度をどうするか、制度設計を抜本的にやろう、こういう内容だと思いますね。意欲はよくわかります、急いでやらなきゃならぬ、私はそのことはよくわかりますけれども、ただ一方、拙速であってはならないのではないか、急いで、結果的に悪い制度設計をしてしまったのじゃ大変なことになるわけでありますから。内容は多く申し上げません。

 特に公務員制度というのは、戦後、国家公務員法、地方公務員法ができてさまざまな改正がありましたけれども、抜本的というのはどういうところまで指しているのか。本当に、この一年くらいの間に、内容も含めて十分吟味して新しい制度設計が果たしてできるかどうか。私は、大事な問題だけれども、必要な時間をかけて、もっと言うと、公務員制度調査会という、これは橋本大臣よく知ってのああいう調査会も一方であるわけでありますから、そういうところとも、あるいは関係者、関係団体とも十分連携をとって、ひとつ抜かりなくやっていただきたい、拙速は避けてほしい、このように考えておりますが、いかがでしょう。

橋本国務大臣 私自身、総理在任中にも、またそれ以前にも、公務員の起こしました問題で世間から大変厳しい御批判を受けた時期がございました。しかし、まだ私にとりまして救いでありましたのは、そのころは単発で、公務員全体に転嫁しての御批判をいただくということは余りなかったように思います。しかし、今日、さまざまな公務員に係る問題が世上に伝えられ、世間から、公務員制度そのもの、公務員自身に対して極めて厳しい風当たりがありますことは、議員御承知のとおりであります。

 そうした中で、私どもは、正すべきものは正しながら、公務員が時代の要請に積極的にこたえながら、伸び伸びと誇りを持って働けるような公務員制度を実現しなければなりません。そうした観点から、私は、全面的に公務員制度というものを見直す必要があると考えております。

 そして、公務員制度調査会を初めさまざまな関係の機関があることも存じておりますし、労働組合を初め御関心を持たれる方々が多くあることも存じております。しかし、そうした方々が今まで懸念を持ちながら、よかれと思っていろいろなことを改革してこられながら、今日、公務員に対する信頼が国民の中から本当に大きく欠如してしまうような状況になりました。

 それだけに、本当にある程度、根こそぎと言っては言い方が悪いかもしれませんけれども、一番根元の部分から見直さなければならないと私は思っておりますし、それほど長い時間を国民が与えてくださるとも考えておりません。そして、民間の雇用情勢の中で、一層公務員に対する風当たりが強くなっておることも否定できません。

 そうした中で、私は、三月末までには大枠を皆さんにお示ししたい。ただし、議員も御指摘になりましたように、これは非常に時間を急ぎますから、恐らく内容的にバッティングしているものもあるだろう。それでよろしい。その大枠はそれで示す。その上で、六月いっぱいぐらいまでをかけましてそうした問題点を整理していき、秋になりましたら法制化にかかれるような、それぐらいのつもりでこの作業は進めていきたいと考えております。

 もとより、いろいろな方々から御意見を伺う、その必要性があることは承知をいたしておりますし、あすの行政を担う若手の公務員の諸君から私も話を聞きました。今後とも、各方面からお話を伺いながら検討を進めていくことは当然のことでありますが、私は、国民がそれほど長い時間を与えてくだすっているようには思っておらない、この点はどうぞ御理解をいただきたいと思います。

中沢委員 私自身も、いわゆる言葉だけじゃなくて、国民の目線で、公務員制度の改革の必要性は否定はいたしません。担当大臣としては非常にピッチを上げてやろう、こういう思いもわからぬわけじゃありませんが、くどいようですが、拙速はぜひ避けるように。特にこの委員会で、法案の出てくるのはずっと先だと思いますが、作業そのものも非常に大事だと思いますから、必要に応じましてお互いに率直な意見交換ができるように、私どもの方もいろいろ努力をしますけれども、ぜひ対応の方をお願い申し上げたいと思います。

 次に、伊吹国家公安委員長にお尋ねをいたします。

 労働大臣在任中にも大変お世話になりました。質問は一つだけです。

 きょうは、午後から参議院で村上さんの証人喚問がある。世間を相当騒がせて、国会の中でもいろいろなことがありましたが、私の印象としては、地検を中心にして関係者が努力をされて、いわゆるKSDの政界工作の全容はほぼ解明されつつある。十七億を超える、関係者もたくさんいる、まだ全部とは言いませんが、解明されつつある。それに比べて残念ながら、外務省官房の機密費、松尾被疑者をめぐるこの問題についての捜査が極めてまだ霧の中、こういう状況だと思います。

 捜査の状況だとか捜査の見通しを聞けば、恐らく、そのお答えはどういう答えであるかは私も百も承知していますから、具体的には聞きません。しかし、これは大事な問題です。言うまでもありません。

 もっと言いますと、一昨年から昨年にかけまして全国的に警察の不祥事は大変な状態でした。私は当時地方行政委員会で、当時の保利さんから始まって国家公安委員長や警察庁の長官ともいろいろやり合いましたが、答弁する側も、前代未聞の不祥事だ、とんでもない、なんとかしなきゃならぬ。結果的に、昨年警察法の議論をやった折にも、折り合いはつきませんでしたけれども、ああいう状態で、今では、やや散発的に不祥事は起きておりますが、かつてのように構造的な、前代未聞という状態ではない。しかし、国民は、まだまだ警察に対するしっかりした信頼は昔ほど回復していない。

 ですから、この問題は、いろいろありますよ。ただいま任意捜査中だというふうに私は思う。いつ強制捜査に踏み切るか、こういう問題もある。いずれにしても、この真相をしっかり解明して、そして国民の警察に対する信頼をしっかり回復する、そういう観点でいえば絶好のチャンスだと私は思うのですよ。

 ですから、国家公安委員長として、公安委員会全体、あるいは警察庁長官以下現場を叱咤激励する立場でありますから、この問題についての公安委員長の決意のほどを、この委員会もそうでありますが、国民に向けて堂々と態度を表明していただきたいと私は思うのです。

伊吹国務大臣 どうぞよろしくお願い申し上げます。

 ただいまの御質問でございますが、警察法改正の際にも先生に大変な御議論をいただき、御厄介になってきた経緯があるわけでございます。

 よく御承知のように、私は、旧内務省時代の大臣ではございませんので、直接警察に対する指揮権はございません。管理権はございますが、指揮権はございません。したがって、特定の事案について政党政治家の立場から、有利になる、不利になるということはございますので、これはやってはいけないという自制を持ちつつも、ただいまおっしゃいましたように、粛々と、あらゆる政治情勢その他に関係なく厳正にやってくれということは申し上げてございます。

 ただ、これはもう中沢先生一番御存じでございますが、殺人とか強盗とかあるいは収賄とかという事案の場合には比較的捜査は簡単でございますが、事横領ということになりますと、お金がぐるぐる各口座を通じて回っているようでございます。個別のことは私よくわかりませんが、回っておるようでございます。

 そうすると、最終的にどれだけの金額がどうだということを確定しなければなりませんので、大変な人数を今投入いたしまして、告発を受けた後、鋭意やっておりますので、警察が信頼を回復するために捜査を急いだりどうだということではなくて、国民の負託にこたえて、公正な法が守られるように万全の努力をさせていただきます。

中沢委員 最後の結びの万全なということが決意だと思います。これ以上のことはきょうは言いません。

 ただ、いずれにしても、外務省が告発をする、しかも官邸も被害届を出している、あれから約一カ月もたっておるわけでありますから。御本人がどこにいるのかはわからぬ。恐らくそれを聞いても答弁ができない、いつどうなるかということも答弁は恐らくできないと思いますが、しかし、国民は、私どももそうですけれども、やはりこの問題の間口、底の広がり、大変なものがある。ですから、国家公安委員長として全体の、国家公安委員会ということもそうでありますが、おっしゃるように警察庁の長官以下は昔と違って直接指揮監督はできないのでしょうが、私の言葉で言えば叱咤激励できるわけでありますから、そういう立場でひとつしっかり国民の期待にこたえて頑張っていただきたいと思います。

 さて、そこで、官房長官にこれから幾つかお尋ねをいたします。

 報償費問題は別にいたしまして、まず最初に、危機管理にやや関連をするのでありますが、官邸の中で緊急事態発生時における情報を一番早くつかまえるという内閣情報集約センター、この問題に限定して具体的にお尋ねをします。

 私は残念ながら、このセンターがどうなっているか、現場はまだ見ておりません。しかし、いろいろ関係者から聞きますと、ほぼ想像はつきます。私は、官邸が見る見るうちに建ち上がって、来年の四月からはそちらに引っ越しをされる。内閣の危機管理あるいはこのセンターも、恐らく人的にも機材的にも、あるいは仕組みも含めて、相当改革することを考えていらっしゃると思うのですよ。しかし、これは新官邸に移ってからということではなしに、今でもできることがあるのではないか。

 例えば、テレビのモニターを見て情報を集める、それはそれで大事だと思いますよ。もっと言うと、テレビのテロップだとかいろいろなことがどんと出る以前に、テレビ会社あるいは放送会社はニュースの素材をいち早くキャッチできるわけですから、そのためにやはり大変なお金を使って大変な取材能力を持っているわけですから、テレビに映る以前の情報として、つまり生情報としてたくさん持っていると思うのですよ。それが、一体このセンターにどういうルートでいち早く来るか。

 もっと言うと、今回のえひめ丸についても、情報の集約が、結局その集め方もおくれて、その伝達も含めて非常におくれをとった、こういうことがいろいろ批判されていますよ。

 ですから、私は、逓信委員長をやったから言うわけではありませんが、例えば、NHKの海老沢会長に官房長官が直接頼んで、つまり、NHKで集めるその種の緊急事態についての生情報を、テレビあるいはラジオで放送する以前に、うまい方法で特別契約でもしてこのセンターでしっかりと受け取る、そして直ちに伝達をする。そういうことについて、人的、機材的なことも含めて、早く緊急事態の情報をとる、そういう具体的な仕組みの見直し、その辺、どのようにお考えでしょうか。

福田国務大臣 委員御指摘の情報集約、これは、官邸内に情報集約センターというものを今設けております。委員の御指摘のとおりでございます。

 ここは最低四人、二十四時間体制ということで勤務をいたしておりまして、どういう時間であろうともいち早く情報を入手できるという体制、また、それに対応して連絡をとれるという体制はとっておるわけでございます。その上で、今、どうして早く情報をとれないかというような御指摘がございました。

 ああいう事件が起こりまして、私は、集約センターに入ってきた情報というのは、えひめ丸というときを考えましても、やはり一番早かったというふうに思っておりますけれども、その後いろいろな事態の変化でもっていろいろな情報が入ってくる、このことについては、時としては通信社とかそういったようなものが早いというようなことがあります。

 ただ、通信社の情報というのは、内容を吟味しないで発信するというようなことがございますので、正確度という点につきまして、私どもはそれをそのとおり信用するわけにはいかないという事情もあるということは御理解をいただきたいと思っております。

 また、今、公共放送、特にNHKの点について御指摘ございましたけれども、NHKは公共機関という立場でございますので、これは常時よく連絡がとれるという体制になっておりまして、NHKが発信するときには直ちにこちらに連絡が来るというようなことがあります。また、事前に来るというようなこともあるのではなかろうか、こういうように思っております。

 一般の民間放送機関とか通信社とかに事前にということになりますと、これは民間会社の編成権という問題がございまして、事前検閲とかいったようなことにも触れてくるということがございますので、これを強力にお願いするというのは難しい、こういう事情もあるということでございます。

 いずれにしましても、そういうような公共的な機関、これはNHKだけでなくて、電力会社とかガス会社、そういう全国にネットワークを張りめぐらせているようなところからは情報が即刻とれるようにということで、随時連絡会議を開くというようなこともさせていただいておるわけであります。

 それから、もう一つ申し上げますと、やはりスペースの問題がございます。

 御案内のとおり官邸は非常に狭いところでございまして、この集約センターも官邸のすぐ隣りに、まあ仮住まいみたいな格好でもっておるという実情がございます。来年から新官邸ができまして、その辺は十分整備されるということであろうかと思いますので、私どもは、その新しい官邸の中で十分な機能の発揮できるセンターをつくりたい、このように思って、平成十三年度、ただいま御審議いただいております予算の中にもその計上をさせていただいておるということでございます。

中沢委員 趣旨は、緊急事態の情報について、今の制度の見直しも含めて、もっと早く、民放は私は承知していますからあえて言いませんでした。しかし、NHKというのはやはり別な公共性があるわけでありますから、そういうことも含めて、さらに専門家でも、官房長官が指示していただいて具体的な検討をぜひ急いでやるべきではないか、そのことだけを申し上げます。

 さて、以下、残っている時間は、いわゆるお役所の言葉で言えば官房の報償費問題、俗に言う機密費問題、官房長官に的を絞って具体的に幾つかお尋ねをします。

 まず、官房の報償費の支出の仕組み、私もいろいろ聞きました。官房長官の方から請求が会計課長に来る、会計課長は支出官として請求に基づいて日銀の小切手をお渡しする、渡された官房長官がどうなるかは、その先は幾ら聞いても答えてくれていません。そこで、それから先の話を少しく具体的に聞きたいと思うのですよ。

 会計課長の方から、直接かあるいはだれかを通じて官房長官に小切手が来る。小切手をそっくりしかるべき人に渡す場合もあるでしょうし、あるいはその小切手を幾つかに分けて小切手で渡す場合もあるでしょうし、あるいは新聞やテレビでも盛んに報道されておりますように、どんな金庫か私は見たことがありませんが、金庫の中に現金として、現金で渡すということもあると思うのです。

 小切手で渡すということと現金で渡すということ、渡し方は二通りだと思いますが、間違いありませんか。

福田国務大臣 報償費というのは、官房長官が責任を持って執行しておるということでございまして、事務的に起案をして、そして順次決裁というような方法はとっていないのであります。官房長官が指示をするということに従いまして、事務方、これは通常は現在の内閣総務官室ということになりますけれども、そこが請求書を内閣府の会計課に提出して、そして支出する、こういうふうなことになっております。

 小切手を使うかどうかということですか。それはすべて現金であります。

中沢委員 関連はまた後で質問します。

 それから、例の外遊の費用の支出の仕組み、お答えになるよりも質問した方が簡単だと思いますが、そうであるかどうかだけお答えをいただきたい。

 外務省のいわゆる要人外国訪問支援室長の方から総理大臣秘書官あるいは首席内閣参事官を経由して官房長官に来る、そして官房長官が必要な資金を調達して、今で言うとすべて現金で同じようなルートで外務省に渡す、この仕組みはそういうことで間違いありませんか。

福田国務大臣 おおむねそういうことでよろしゅうございます。

中沢委員 そうしますと、今まで予算委員会あるいは関係の委員会でも随分議論していますから多くは申し上げませんが、外遊の費用でいいますと、平成五年から十一年、つまり松尾室長在任時代、総額にして約九億六千万、回数にして四十六回、単純に計算すると一年間約一億五千万、一回当たり二千万、こういうことになりますが、これは客観的な事実ですから、そうだということだと思いますが、どうでしょう。

福田国務大臣 内閣官房の報償費として支出した総額九億五千万、これはそのとおりでございます。その平均とかそういうことは、ただ数字を割っただけですから、私からお答えする必要はないと思います。

中沢委員 さて、ちょっと角度を変えまして、これも予算委員会で若干議論があったようですが、この委員会では初めてだと思いますから。

 平成五年、いや平成元年の五月当時の文書問題、まだ固有名詞はこの段階で私は言いません。これを中心に幾つかお尋ねしたいと思うのです。

 当時の首席参事官は今の古川官房副長官が在任中だと思いますが、間違いありませんか。

福田国務大臣 ただいま委員、平成五年とおっしゃいましたけれども、平成元年ですね。

 このときの首席内閣参事官は古川副長官であります。

中沢委員 そこで、古川さんの在任は昭和六十一年の六月から平成元年の六月まで、これはもう天下に公表していることですから間違いがないと思うのです。

 当時のいわゆる官房の報償費、現在の報償費、つまり報償費は、予算額は若干変動がありますけれども、その目的と使われ方はほぼ同じだということで理解をしていいのでしょうか。中身はまた別に質問いたします。

福田国務大臣 御案内のとおりと思いますけれども、この内閣官房の報償費というのは、内政、外交を円滑かつ効果的に遂行するため、こういう大きな目的を持っております。ですから、そのような趣旨に使われるべきものであるというように考えております。

中沢委員 そうしますと、平成元年当時の、これは真偽のほどということはいろいろあると思いますが、私が入手をした資料によりますと、こういうことが書かれています。

 報償費の性格は、今官房長官が申し上げた、ほぼ同じようなことが書かれていますね。具体的ないわゆる支出目的、支出先でいいますと、余り限定をしていませんが、例えば、総理、長官などの諸経費、官邸会議費、慶弔、国の公賓接遇費、総理、長官主催接宴費等、あるいは別項では内政、外交対策費、さらに別項では自民党外交対策費、夏季、年末経費、総理外遊経費その他、こういう資料を私は入手いたしました。

 聞きたいことは、先ほど福田長官は、目的、使われ方はほとんど変わっていないと。ほとんどですよ。平成元年がそうで、仮にこれがそうであった場合に、今でもそのように使われているか。

 私が特に問題にしたいのは、官房の報償費が自民党外交対策費に使われていたんだ、今でも使われている、これが本当であればこれは大問題ですよ。どうでしょう。

福田国務大臣 私、ただいま申しましたように、内政、外交を円滑かつ効果的に遂行するということがこの趣旨でございまして、その趣旨に反するようなこと、それに沿わないことということ、これは起こることはない、こう思っております。もちろん、ただいまもそのように考えております。

中沢委員 委員長に要請しますが、これは大切な問題ですから、この報償費、官房のいわゆる機密費、どういう使われ方をしているか。文字どおり機密の問題もあると思いますが、それ以外に、一般的に言うと旅費だとか食糧費だとかあるいは交際費だとか、あるいはここで言っている、本当に自民党の外交関係に出ているかどうか、極めて大事だと思いますから、改めて資料要求をいたしますので、理事会で検討してください。

横路委員長 理事会で協議いたします。

中沢委員 そこで、関連をいたしまして、テレビ朝日のニュースステーション、あるいはその前後の新聞報道、もっと言いますと塩川元官房長官のインタビュー記事、恐らくそのときに見ていないかもしれませんが、お立場から言うと、その後ビデオを見たりいろいろ新聞の切り抜きをずっと見て、よく御承知だと思うんです。

 これは、マスコミが取り上げるということは、やはり国民がそこまで重大な関心、もっと言えば興味を抱いている、だからさまざまな報道をすると思うんですよ。そうしますと、内閣の首席参事官というのは、この報償費に限定して言うと大切な、行政の中ではキーマン的な仕事をやっている、私はそう思います。ですから、テレビ朝日のニュースステーションや関係の記事を見ましても、その当時は古川官房副長官が首席参事官であったことはもう間違いがない。

 それで、ここに私も文書を持ってきていますが、入手した資料、これが古川さんの書いた文書であれば、やはり立場からいえば、あるいは参事官の先代からの引き継ぎだとかあるいは新しい人に対する引き継ぎ、申し送りというのは、それはお役人でいえば当たり前な話ですから、内容はともかくとして、大変な問題であると思うんですよ。

 私は、きょう段階で官房長官に改めて指摘をしておきたいのは、予算委員会でも随分議論はありましたから、余り蒸し返しはしません。この段階で、この事実関係、この文書の真偽のほど、あるいは内閣参事官が報償費にどういう責任を行政官として持っているか、全貌とこの個別の案件について官房長官として責任を持って調査をすべきだ、そして国民に向かって、あるいは当委員会に向かってその内容について説明をする責任があると思います。いかがでしょうか。

福田国務大臣 まず、この報償費の支出の全責任は官房長官にあるんです。また、もう一つ官房長官の立場として申し上げれば、その報償費の使途については、これも官房長官が全責任を持っている、こういうことでありまして、当時の内閣首席参事官がその使途についてどの程度のことを承知しているかということは、私は正直言ってわかりません。部分部分で承知をしているところはあるかもしれませんけれども、その全体を把握しているというふうには私は思っておりません。

 それから、委員おっしゃられますその文書ですね。今ちらりとお示しいただきましたけれども、その文書はこの間の予算委員会で出た文書でございますか。ちょっと見せていただきましょうか。

 この文書は、大分以前から何度か、雑誌だとかそういうものに出たことがあるものではないかと思います。予算委員会でお示しいただいたというか、お配りいただいたものと同じであるように思います。そのものについては、既に古川現官房副長官が、これは私の承知しないものである、このようにお答えをしておるというように私は承知しておりますので、そういうものの中に書いてあることが真実性があるのかないのか、私にはお答えすることはできないということを申し上げたいと思います。

中沢委員 いや、官房長官の責任で事実を改めて調査をして国民や当委員会に説明責任があるというふうに私は言いました。それについては返事がないんですよ。どうなんですか。

福田国務大臣 私は、予算委員会でもお答えしたんですけれども、どこからそれを入手されたのか、そのぐらいお話しいただいてもよろしいんじゃないか、こういうように思います。それが信憑性のあるような文書であるなら、私ども、当然のことながら調べるという手続を踏まなければいかぬと思いますけれども、今の段階で、何だかよくわからない、どこから出てきたかわからない文書についてコメントするのはなかなか難しいというように思っております。

中沢委員 いずれにしても、今のお答えは私は納得できませんよ。これは大事な問題ですよ。もっと言うと、官房長官というのは在任せいぜい何年かでしょう。お役人というのは、このポストでいうと大体三年ぐらいなんですよ。つまり、報償費の取り扱いの継続性からいうと、彼らが専門家なんですよ。権限は官房長官が持っている、それは私もよく知っている。しかし、すべてあなたが会計課長から小切手をもらって、あなたが銀行に行って現金化するんですか。そして、それを一々いろいろな関係者に渡すんですか。権限としては持っているけれども、実態としてはそうでないということも含めて、古川さんのこの文書問題も含めて、私は、やはり改めて官房長官として、くどいようですけれども、責任者なんだから、この事実関係について本当かどうかということも含めて調査をして、この委員会であなたはやはり説明する責任があるんじゃないですか。そういうことも含めて責任感をお持ちになっていないんですか。

福田国務大臣 私も何度かお答えしているところなんですけれども、その文書が何の文書なのか、どこから出てきているのか、その信憑性があるかどうか、少しでもお聞かせ願えれば、それは私どもとしても調べなければいけない、そういうこともあろうかと思いますけれども、何度お尋ねしてもその辺は明らかにしていただけない、こういうことでございます。ですから、もし委員のおっしゃるとおりやらなければいけないということになりますと、そういう文書をどこかでつくって、そしてこれでもって調べろというようなことも起こり得るわけでございますから、せめて出所を明らかにしていただきたいということを申し上げたいと思います。

中沢委員 私の持ち時間はもう過ぎましたが、同僚の議員にはあらかじめ了解いただいていますから。

 最後にしたいと思いますが、しかし、いずれにしても、私は今の官房長官の答弁は納得できません。責任回避だと思いますよ。したがって、委員長、この案件については相当時間をかけて真相をしっかり究明をする。報償費は一体どういう目的でどういう使われ方を今日もされているか、率直に言えば極めて不透明、黒い霧の中。これじゃやはり、党派を超えて、私も含めて多くの内閣委員の皆さんも納得しないと思いますよ。そして、古川官房副長官の当時のこの文書も含めて、事実関係をもっと明確にしなきゃならぬ、その責任は当委員会に私はあると思うんです。

 ですから、委員長に要請しますが、ぜひひとつこの問題について、当委員会としては集中審議の必要性がある。そして、国会法に基づいて、内閣官房副長官もこの委員会に出席をするということになっているんです。ですから、この際ですから正式に委員長に要請しますが、集中審議に際して、あるいは委員会審議に際して、古川内閣官房副長官の出席をぜひ私は求めたいと思います。理事会で検討していただきたいと思います。

横路委員長 ただいまのお申し出の件は、後ほど理事会で十分協議をいたしたいと思います。

福田国務大臣 今、官房副長官の出席云々というお話がございましたので、一言申し上げたいんですけれども、古川副長官は、副長官として報償費の業務にかかわっていないということであります。報償費に関する質問がございますれば、現在これに責任を持っておりますのは官房長官でございますので、どうか私にお尋ねを願いたい、このように思っております。

中沢委員 今の長官の答弁は私は納得ができません。できませんので、先ほど言いましたように、理事会で検討をするように改めて求めて、終わります。

横路委員長 島聡君。

島委員 民主党の島聡でございます。

 新生内閣委員会の初の質問で、きょうは五人の大臣がお越しで、橋本大臣のお得意な剣道では最初は蹲踞から始める、礼から始めなくちゃいけないそうでありますが、そういう質問をしたいんですが、どうもそういう状況じゃないので、堂々たる議論をしていきたいと思っております。

 五大臣お越しでございます。理事会でも合意したことでありますので五大臣でスタートしたわけでありますが、やはり、内閣府の長というのは第六条で内閣総理大臣とするとなっているわけでありますので、当然、これからの審議の中には、本来ならば総理大臣が答えていただくことも多々あると思いますので、これも理事会で議論されたことでございますけれども、その際には総理大臣もきちんと出席して、国民に対して、委員会に対して、国会に対して説明責任を果たしていただきたいと思っている次第でございます。

 本日は、まず、えひめ丸事件について質問を申し上げたいと思っております。

 きのう、我が党の鳩山代表が愛媛県を訪れました。宇和島水産高校を初めいろいろな関係者のところに伺いました。とにかく一刻も早い船体の引き揚げをしてほしいというのが御意見であったそうです。また、なかなか言えないような本音の部分も聞いてきたという話でございます。

 二月十日八時四十五分、えひめ丸の事件が起きました。第一報が福田官房長官、そして安倍官房副長官のところに入ったのは十時四十分だと聞いております。今九時五十五分ですから、今から四十五分後ぐらいに入ったという話であります。その後、官邸に着かれたのが一時四十分だとかそういう問題はありますけれども、きょうはその問題は余りやりません。

 宇和島水産高校のホームページというのがあります。きのう見てみました。宇和島水産高校のホームページを見ますと、そこにえひめ丸の写真が載っています。誇らしげに載っています。あのえひめ丸、四代目だそうであります。総トン数四百九十九トン、全長五十八・一八メートル、このえひめ丸がアメリカ軍、軍という国家そのもののその潜水艦に衝突され、撃沈された、これがこの事件の本質であります。

 当然、日米同盟というのは我が外交関係の基軸でありますから、それは重視はしなくてはいけません。ただ、そのホームページの中に掲示板というのがありまして、いろいろな人が意見を言うところがあります。そこにこんなことが書いてありました。日本の政府も弱腰になるだけでなく、アメリカの言い分にはしっかりと耳を傾け、こちら側からもしっかりとした説明、要望などを毅然とした態度で表明するのが大切だと思います。私も、日米関係の重要性を知りながらも、そういうときだからこそ毅然とした態度をして主張することが真の同盟関係をつくるものであると思っています。

 軍が民間のものを撃沈した、撃墜した、これと同じような事件が一九八三年九月一日に起きています。当時のソ連軍がミグ23によって大韓機を撃墜しました。日本人乗客が、そのときは二十八人の方がお亡くなりになりました。

 一刻も早く船体の引き揚げをして行方不明者の方々を救出していただきたいと思う次第でございますが、えひめ丸自身は撃沈をされました。

 きのう、ファロン特使が森総理に会われて、そのとき、森総理は補償問題についても言及されたと聞いております。福田官房長官もきょうお会いになったんですね。そういうことを聞いております。

 きょうの福田官房長官にお聞きすることは、私はインターネットが得意ですので、その掲示板に、こう聞いたらこのように答えてきたというふうに書きたいと思っていますから、宇和島水産高校の皆さんが聞いていると思ってお答えをいただきたいと思います。

 ソ連のミグ23、当時のソ連軍のミグ23によって撃墜された大韓航空機の事件と今回の事件とを考えると、先ほどの言葉をかりると、どうも日本の政府は弱腰に見える、きちんと主張していないように見えるわけであります。

 もう二月十日から十八日たちました。前回の大韓航空機の事件のときには、九月十三日に、外務省、当時の外務大臣は安倍大臣でありました、ソ連に対し大韓航空機事件に関して補償を要求する方針を固め、十三日の閣議に諮ったと書いてあります。今回の補償を要求した、えひめ丸の船体自身は当然補償問題の対象になると思うわけでありますが、それに対して、補償問題について言及されたというんですが、これは閣議にかけるんですか。

 内閣総理大臣の行政指揮権は、内閣法六条によって、「閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」とあります。前回のときには、国家の意思としてやるために、九月十三日に外務省がソ連に対して大韓航空機事件に関して補償を要求する方針を固め、十三日の閣議に諮る予定、これは予定と書いてあるだけですが、今回はきちんと閣議までかけて、国家の意思としてアメリカにする方針であるのかないのか、もしないとするならばどうしてなのか、それを宇和島水産高校の人にもわかるようにお答えください。

福田国務大臣 実は、きょう、謝罪をすることを目的としてファロン特使が来られたわけであります。この委員会開催前にお会いしました。いろいろお話を伺い、こちらからもかなり厳しいお話をさせていただきました。実は、この委員会がございますので、それを途中で切り上げてこなければいけなかったということもあったのでありますけれども、その席でも、ファロン特使から、補償の問題につきましては、今後詳細を詰めて、適切な時期に決めたい、こういうことを言われておるわけであります。

 この補償問題は、もう既にブレア太平洋軍司令官が加戸愛媛県知事に対しましても、今後、審問委員会の結果を受けて、責任者の処分、再発防止策と並んで補償問題に取り組む、こういうことを述べているわけでありまして、米側も補償については誠意ある対応を示すということを行っておるという段階でございます。もちろん政府としても、今後、米国政府に十分な働きかけをするということでございます。

 実は、大韓航空機の撃墜事件とどう違うのか、こういうことでありますけれども、あのときは、これは一九八三年でございますけれども、非武装そして無抵抗な民間航空機を撃墜する、こういう挙に出たわけですね。ですから、これは今回の衝突事故、衝突事故といっても、重過失なのでしょうか、向こう側の責任が非常に重いというように思われる、そういう衝突事故でありますけれども、その衝突事故に対して向こうも誠意ある対応をしているということでございますから、民間機を撃墜したという事故とは対応の仕方が違うのではないか、このように私は思っております。

 今後、この補償の問題、極めて大事なことでございますので、政府としてもしっかりと対応したい、このように思っております。もちろん、閣議でも報告する事項であるというふうに考えております。

島委員 違うという点もあります。でも、共通項もたくさんあります。今無抵抗とおっしゃったけれども、まさに無抵抗、非武装、全く武装していませんよ。例えば、この前の海上警備行動が発令されたような不審船、そのような国、あれは特定国として特定されていないと聞いていますけれども、そういうようなものが起きたときにどうするか、そういうことも考えておかなくちゃいけない問題であると私は思っています。非常に共通点があるということだけはここで指摘します。

 今の補償の件について、私は、きちんと国家の意思としてやる必要がある。前のときは閣議で出して、今、閣議では決定するかどうかはお話しされていませんから。本来であるならば、今回の内閣法で内閣総理大臣の発議権というのが明快になってきたわけであります。内閣総理大臣は、今までは閣議にかけて決定した方針に基づいてやるだけであったわけでありますが、内閣の重要政策に関してはみずからが発議してやることができるということになってきた。今回、内閣総理大臣は、いわゆる補償に対しても誠意ある回答をと言った。

 これからお話しするのは外交保護権という話であります。

 外交保護というのは、自国民が外国の領域やこれに準ずる場所において身体や財産を侵害された場合、本国が外交手段を通じて当該自国民の救済その他を外国に対して請求することである。向こうの当該国が国内的な救済手段を尽くすのは当然であります。その上でしかるべき救済が与えられない場合があります。そのときには自国民に生じた損害に関し救済が与えられるような必要な措置をとるよう相手国に要求することができるという、国家としての国際法上の権利があるのです。それを外交保護権といいます。

 だから、これだけの重要な事件でありますから、できるならば、内閣総理大臣が閣議においてこの外交保護権までも行使する用意があるという基本方針を示して、そして行政各部に、そのつもりでこの態勢に臨め、そういうことまで言うことがしかるべきであると私は思いますが、いかがですか。

福田国務大臣 外交保護権、これはあるわけでございまして、経緯的に申しましても、現在、米国は、補償の問題を含めて、あらゆるチャネルを使って真摯な対応をするという姿勢を示しているわけでございますね。政府も、被害者に対して直接誠意ある対応を行うように引き続き米国政府に対して働きかけをしていきたい、こういうふうに考えて、それを実行しておるところでございます。

 また、そのために、実は昨日、このえひめ丸対策の官邸調整室というものを設けまして、補償問題を含め、またサルベージ、これも大事なことでございますので、そういうことも含め、この問題全体を総括的に取り扱っていこうということで調整室というものを立ち上げた、そういう段階でございます。

 このことについては、おっしゃるとおり大変大事な問題であるということでございますので、御家族の方々の御意向なども体しながらしっかりと交渉してまいりたい、そのように思っております。

島委員 今、えひめ丸事故対策官邸調整室、正式名称はこれでよろしいですね、これをつくられたという話は聞きました。新聞で読みました。

 前回の大韓航空機事件のときには大韓航空機関係閣僚会議というのをつくっていますね。つまり、前のときには関係閣僚会議をつくって内閣としてきちんとやる。今回は、福田官房長官を長として、外務省、防衛庁等々入ったと聞いておりますが、えひめ丸事故対策官邸調整室。前は関係閣僚会議でやる。今、一生懸命やる、国を挙げてきちんとやると。でも、形としてあらわれないと、これはわからないのですね。

 こちらが官邸調整室で前は関係閣僚会議、これはどういうことですか。

福田国務大臣 前回と申しますか、大韓航空機のときは、もう本当に連絡するルートも限られておったというようなことで、また向こうの対応も非常に遅い、またほとんど連絡してこないとか、誠意が当初なかったわけですね。そういうような事情があるのですけれども、今回はそうじゃない。全く逆に、向こうの方からいろいろと問題提起もしてくださるというようなこともありますし、私は、そういうようないろいろなチャネルでもって向こうも働きかけをする、こちらもするという状況の中で、今の体制で十分やっていけるというふうに思っております。前回のとき、大韓航空機のときとはもう根本的に状況は違っているのじゃないかな、こう思っております。

島委員 多分、根本的に違うというところ、私は、全部一緒とは言いませんが、根本的に違うとは思っていません。国と国との関係です。国と国との関係において政府がどのようにするか、自国民が、日本国民が被害に遭ったときに政府がどのように対処するか、それが問われている。私は、全部が一緒とは言いませんが、同じ部分が多い。そちらは恐らく違う部分が多いという認識だと思います。それをどういうふうにとらえるかはこれからの国民が決めていくことだというふうに私は思っております。

 と言っておりましたら、あと少ししかなくなりましたので、官邸の危機管理問題についてお話をお聞きします。伊吹危機管理担当大臣。

 私は、今回の伊吹大臣の行動を新聞でしか拝見しておりませんが、今回の担当される方の中では極めていい対応をされたと実は思っています。

 なぜか。伊吹危機管理担当大臣は、自分の権限外だと思ったけれども、外務省と防衛庁に対し、最優先で人命救助に当たるように米側に要求することを指示したと新聞に書いてあります。こういう危機管理のときにそこまで踏み込んでやられるということは必要だと私は思いますから、本来、権限外であると意識しながらやった、意識していないと問題ですけれども、意識しながらやられたということは重要だと思っています。

 ただ、この権限外だということに対して、私は違和感を感じた。名前は危機管理担当大臣、もちろん、内閣法十五条で防衛に関するものを除くと書いてあるから、そういうことかと思いますが、そうじゃないのですか。ちょっとその辺、どうして権限外と感じたかということをお話ししていただきたいと思います。

伊吹国務大臣 危機管理という言葉は、私たち使って、今先生も御質問の中でございましたが、法律に書かれているのは、今先生がお引きになりました内閣法十五条に言う、国民の生命、身体もしくは財産に重大な被害が生じということがあります。この重大なというのをどのように解釈するかということだと思うのですね。当時、国民の生命ということからいえば、六人の方が行方不明で、一名の方が福島沖でその前日に実はお亡くなりになっておりました。私は、これは、日本の国民感情を逆なでして、外交、安全保障に重大な影響をもたらすであろう事故だと思ったわけです、国民の生命財産という観点からは。

 つまり、阪神・淡路大震災であるとか、サリン事件だとか、国籍不明の船が来て日本の主権が侵されたとか、こういうことが本来国家危機ではないかと私は思ったのですが、しかし、行方不明者がいるという前提では、官房長官が内閣調整機能の上で対応すべき重大な事故なのか、私が所掌すべき国家的な危機なのかということを言っている暇がないなと実は私は思いました。特に相手が原子力潜水艦ですから、防衛機密ということで囲い込まれてしまって、そして行方不明の救助だとか何かがおくれると困ると思いましたので、防衛庁、外務省に、おのおののルートを通じてまず最善を期せということを言った、そういう趣旨でございます。

島委員 その趣旨はわかりました。わかりましたというのは、おっしゃることに納得したではなくて、とりあえず理解をしました。

 今回は、私は、伊吹危機管理担当大臣、警察庁も所管しておられますが、この問題はかなり広範囲にわたる議論です。最初に連絡が入ったのはたしか海上保安庁と聞いています。これは国土交通省の指揮下ですよね。防衛庁、海上自衛隊、今潜水艦の話をされましたから、それはもう完全に防衛庁長官の指揮下。えひめ丸は、あれは愛媛県の所有だと聞いておりますが、水産高校の実習船ですから文部科学省の所管。日米安保条約と日米外交問題がありますから、これは外務省の所管ですよね。そうなったら、ほとんどこれは多岐にわたるから、内閣法十二条、総合調整に当たる担当官庁として、完全にこの責任者というのは内閣官房であり、そしてこの事件の責任者は内閣官房長官だと私は思っています。

 別に森総理を助けるために言っているわけじゃないのだけれども、総理自身がなすべき危機管理というのはかなり限定されていると思う。侵略に対する防衛出動、自衛隊法七十六条とか、それから緊急事態の布告と全警察官の指揮、警察法の七十一条、七十二条、及び災害対策基本法、これが緊急災害対策本部の設置、二十八条でありますが、そういうようなものは総理がやっていると思う。あとは実は内閣官房と内閣官房長官、そして内閣官房副長官の責任であると私は思っております。ですから、本来はこれはもっともっと内閣官房長官と副長官の責任を問わなければいけないと私は思っているのです。

 ちょっと聞きたいのは、これは危機管理に関する内閣官房、内閣府の組織図でありますね。よく見なれた、そちらからもらったのでもらえると思いますが。これは、内閣官房長官と危機管理担当大臣があって、その下に二つ内閣官房副長官にぴっと線が来ていて、そしてその下に内閣危機管理監ですね。見たことがありますか。「内閣官房長官は内閣総理大臣を直接補佐する立場から全体をカバーする。」「初動においては危機管理担当大臣が中心となって対応する。」これは何が言いたいかというと、危機管理のときに一番問題になる双頭の鷲、双頭のイーグルになっている。二つから指示が来る。そして、今回も、何か休日は三人の出勤体制があったからという。だれが本当の責任者かよくわかっていなかった。

 これも新聞で見ただけですが、一月十九日の閣僚懇談会で、情報の一元化と指揮命令系統の統一をきちんとするように福田官房長官と伊吹文明大臣に森総理が指示したというのがありました。そのときはどのように対処し、本来、私の目から見ると何か双頭の鷲になっているような気がするのだけれども、どのようにするというふうに一元化をされましたか。総理を直接補佐する立場から全体をカバーしている官房長官にお聞きします。

福田国務大臣 おっしゃるとおり、今言われた分について、官房長官がその責任者である、まさにそうだというふうに思っております。ですから、私もそういう意識を持って常々対処しているということでございます。極力、すぐ駆けつけられる体制というものは常時とっておる、こういうふうに思っております。たまたまあのときに私がいなかったということでありますけれども、本当にたまたまでございまして、その分は安倍官房副長官にお願いするというような体制でやったわけです。

 今のこの図ですか。防災の問題ですよ。(島委員「質問は、一月十九日の閣僚懇談会……」と呼ぶ)だから、防災のときということであります。

伊吹国務大臣 先生今御指摘の情報の一元化を図れと森総理がおっしゃったのは、その前に中央防災会議がございまして、その際に、地方自治体等の持っている防災情報が大変充実している、災害も大きなものは当然国家危機に結びつきます、そういう意味では危機管理と言ってもいいと思うのですが、したがって、防災情報の一元化を図れと総理から御指示を受けまして、私はその措置はとっております。

島委員 時間がなくなってきましたので、あともう一つだけ、危機管理関係について。

 新聞等で言われたいわゆる三十分ルール、それはもうないという話は説明で聞きました。いわゆる一般的に見ると、三十分以内に集まれるところに待機しておれという話だと思うのですが、そういうものはない、ないから問題ない。これも新聞だけなので私が誤解しているかもしれませんが、精神的なもので、決めているのじゃないのだとか、これは自然災害のときだとかいうような答弁があったというようなことを新聞では報道されていました。直接聞いたわけじゃありません。

 それで、福田官房長官が今言われました、安倍官房副長官が当日は責任者であったと。これは、危機管理的にいえば、安倍さんが指揮の継承を受けているのですよ。これも新聞だけですから、私は直接お聞きしたわけじゃないですが、総理から、何かのときは頼むと言われた、電話をした、ゴルフに出かけるからということを言ったということを、これは新聞だけで、直接聞いていませんから誤解があるかもしれません。これは、一般的に言うと指揮継承です。

 その人が、十時四十分に報告を受けて、都内にいながら三時間後しか来なかった。いろいろ聞いていると、うちに防災無線があるからいいのだとかいう話だけれども、ゴルフ場にいたことは、場所が悪いのだという答弁をされましたけれども、問題は、危機が起きたときに、指揮監督、情報が収集するところにぱっと移動することなのですね、重要なことは。それも果たしていないわけです。

 これは、ここまでは、ないと言われたらそれまでですが、ただ問題は、まず一点は、三十分ルール、今はないのだけれども、これから先はまだつくるつもりはないのかどうか、三十分で待機していくということをつくるつもりはないのかというのが一点。

 それから、先ほど官房長官、自分の責任であるとおっしゃるならば、このときにたまたまいなかったということは、たまたまでは済まないと思いますから、十分国民に対してきちんと謝罪をすべきと思いますが、いかがですか。

福田国務大臣 最後のことを申し上げますと、今申しましたとおり、私もそのことは常に意識しております。

 でありますので、私は、実際問題言って、官房長官になりまして東京を離れたのは二回しかないのです。当日も群馬県で会がございまして、どうしても行かなければいけないということだったんであります。運が悪いといえば運が悪いんだけれども、しかし、たまたまそういう日にぶつかってしまったということでございます。しかし、その分、そういうときには官房副長官にお願いするというルールをつくっておりますので、そういうルールに従ってやったということでありまして、決してそこをおろそかにしたというようには思っておりません。

 また、官房副長官が三十分以内に来なかったじゃないか、すぐ来なかったじゃないかというお話がございましたけれども、それはケース・バイ・ケースだと思うんですね。自然災害ですとやはり、もう何しろ全員集まってから仕事を始めようみたいなところがあるかもしれぬけれども、しかし、この場合は、十分自宅から連絡をとれたし、またその方が便利だったということも言えるんではないかな、私はこう思います。私も実情を聞きましたら、そういうようなことがあったようでございますので、そのようにしたというように思っております。決して、間違いをしたというふうには思っておりませんし、私も間違いをしたとは思っていないんです。運が悪かったと言うとまた怒られちゃうけれども。

 今後、努力をしてまいりたいというように思っております。

島委員 今、運が悪かったというのが、もしテレビでやっていたら、どんどん流すといいんですけれども、どういうふうに国民が思われるかという話はね。

 それはともかくとしまして、時間がありませんので、今回の中央省庁再編、そして内閣府の流れの中において私が最も重視する経済財政諮問会議についてお聞きをしたいと思っております。

 今まさに、日本の経済がきちんとこれから再生をしなくてはいけないというところになっています。今回、経済財政諮問会議がつくられて、そしてその経済財政政策担当大臣として麻生大臣が担当されます。経済企画庁長官のころ、私、まだ新人議員でありましたが、何度か質問させていただいたことがありまして、また改めてここで議論ができることをうれしく思っております。

 今回のこの経済財政諮問会議に似たものに、クリントン政権が誕生したころの国家経済会議というのがあります。これも全部一緒だとは思いませんけれども、そのときにルービン大統領補佐官が言った言葉は、かぎを握るのは情報だと言ったといいます。

 いろいろな判断をするときに、正しい情報がなければ判断できない。ところが、各省庁というのは情報を隠しがちである。例えばこれは産経新聞の記事ですが、ある財務省幹部は、予算編成権が一番重要だと思うんですが、予算編成は、税収見積もりや財源不足を穴埋めする国債をどれぐらい発行できるかなどを予測する必要がある、諮問会議でどこまで把握できるのかと言っています。これも新聞報道だけだから、確認はしていません。

 これは、内閣府設置法十二条、特命担当大臣は、関係行政機関の長に対し、事務遂行に必要があると認めるときは必要な資料の提出及び説明を求めることができるとあります。だから当然、こういうようなものは財務省に対して、予算編成をこれから新しい予算決定システムでやっていくならば提出要求をできると大臣はお考えでいるのか、そして、各省庁が必要な資料を拒んだ場合、どのような措置をとるおつもりなのかをお尋ねしたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘のとおり、内閣府設置法の十二条と、もう一つ、二十四条というのがありますので、その二十四条の方もあわせて参考にしていただくといいんだと思います。諮問会議自体において、その掌握する事務を遂行するために必要があるときは、関係する審議会その他の関係行政機関の長に対し資料の提出を求めることができるとされている、これが二十四条で、両方になりますので。

 御指摘のとおり、予算編成というものの大綱とか、まあ、予算編成の大綱という言葉は税制大綱と同じような感じと間違えられると困りますが、今度は、財政諮問会議というのが予算編成をやって、査定を財務がやるという形が基本的な区分の仕方になっておりますので、それに当たりまして税収見積もり等々、いろいろな必要なものにつきましては、当然のこととして関係省庁に対してその資料の提出を求めることにいたしておりますし、現実問題として、資料の提出を求めて拒まれたことは、現在のところまで四回やっておりますけれども、一回もありません。

島委員 経済財政諮問会議で、今、官庁からきちんと情報をとるというのと、それから民間の委員の意見を聞いて、民間の意見を吸い上げていって、そして経済のあり方を考えるというところが必要だと私は思っています。

 これは二月二日の経済財政諮問会議議事要旨でありますが、そこで牛尾議員が、「今回の改革に伴う新しい予算編成のシステムにおいて、民間議員がどのような仕組みに関わって議論するかについては、政治と行政の問題であり、担当大臣のところで二月中にも検討願いたい。」というふうになっています。経済財政諮問会議で提起されたことがどのように議論されて、もう二月も終わりますので、どのように民間議員がかかわって新しい予算編成のシステムになっていくのか。これは麻生大臣が言っていることですが、予算編成の手続は、根本的な議論が必要だが、かなり抵抗が出ることも覚悟した方がいい、決定するプロセスが今までとは全然違うということをはっきり示す必要があると。そのとおりだと思います。どのようになるのか、御説明いただきたいと思います。

麻生国務大臣 先ほどの議事録の件ですが、まず牛尾議員からの御質問の点につきましては、昨日、第四回目の財政諮問会議を開催させていただいておりますが、民間委員の四人の方々につきましては、社会資本整備、社会保障、国と地方の役割の分担などなどいろいろ、経済の活性化を含めて分担をしていただくことにいたしております。それだけでは手が足りませんので、専門調査会などを設置する、もしくはサポートチームを結成するなどというのも、いずれもその段取りを終わっておりまして、現在、御指摘にありました点の方向について進んでおります。

 それから、抵抗があるのは、これは今までずっとやってきたやり方とは全く違うやり方をしますので抵抗があるのは当然のことだと思いますので、それをどうやってやっていくかは、担当しております各省の大臣の方々はもちろんのこと、いろいろな政治家の方々の力に負うところは多いと思いますけれども、法律で決められたところもありますので、きちんとやってまいりたいと思っております。

島委員 経済財政諮問会議、本当に期待をいたしておりますので、経済再生のために頑張っていただきたいと思いますし、説明責任という意味でも、この内閣委員会で堂々と議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。終わります。

横路委員長 石毛えい子さん。

石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。

 国の戦略をリードする知恵の府というふうに位置づけられております内閣府、ここにおきまして、経済財政諮問会議等と並びまして男女共同参画会議が位置づけられましたことは、まさに男女平等、男女共同参画をこの国のメーンストリームに位置づけていくというその国の意思のあらわれであると私は理解をして、このことに関しては歓迎するものでございます。

 そこで、私はきょう、男女共同参画会議を所管されます官房長官に、主としてこの男女共同参画をめぐりまして質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初でございますけれども、二月九日、衆議院予算委員会の開催中に女性議員に対する誹謗中傷の文書が配付されました。官房長官、この事実を御存じだと思いますけれども、その文書をごらんになっていらっしゃいますでしょうか。まず、その点をお尋ねします。

福田国務大臣 拝見しておりません。

石毛委員 男女共同参画担当の大臣といたしましては、私は、やはり感性がお疲れになっているのではないかというふうに思います。

 本当にひどい文書ですが、こういう文書が、問題として予算委員会の方で取り上げた時間的なところが少しおくれたということで、懲罰委員会にというようなことの議論もあったようですが、そうはならずに、厳重注意にとどまっているというふうに聞いております。

 ごらんになっていないので、どんなふうにお考えになられますかということについてもちょっとお答えいただきにくいかと思いますが、とにかくすごい内容で、見ると、これを国会議員が衆議院の予算委員会で配付したということに、驚きを超えて怒りを禁じ得ないということでございますけれども、御感想を伺いたいと思います。

福田国務大臣 内容は拝見していないのですけれども、相当ひどいという話は聞いております。ひどい話だということで、何か想像がつくような感じがいたしまして、余り見たくないな、こういう気持ちもあったことも事実でございます。

 ただ、これは今月、二月十九日、予算委員会で委員長から、委員長として林君に、今後このようなことのないよう厳重に注意をいたしました、本人からも深く反省している旨の発言がありました、こういう説明があったということでございまして、このこと自体、大変に遺憾な出来事であると考えております。委員長からそういう厳重注意があったということは、それほどひどいものだというふうに考えております。

石毛委員 官房長官、ちょっとごらんになられますか。職責として、ごらんになる責任がおありになるのではないでしょうか。大見出しだけで結構でございます。(福田国務大臣「これはひどいですな」と呼ぶ)ひどいですという官房長官のつぶやきを、ぜひ私は記録にとどめていただきたいと思います。

 私は、まさにこの内容はセクシュアルハラスメントであり、そして女性差別そのものであり、人権侵害の内容だというふうに思います。という意味もありましてこの内閣委員会で取り上げたいと考えたわけですけれども、官房長官、こういうことが起こっているということに対して、ひどい内容だという御指摘はいただきましたけれども、これからどんなふうに対処されるお考えでございましょうか。

福田国務大臣 これは、国会議員といえどもやはり国民の一人でございますから、国民の一人として課せられた義務は果たさなければいけない、そういうことは厳重に考えていかなければいけない問題だと思っております。

 男女共同参画社会基本法十条でもって、これは職域、地域、家庭、そういうことにかかわらず、あらゆる社会において、また分野において、そういう今申し上げましたような基本理念にのっとってやらなければいけないということでございますので、今後ともそういうことは頭の真ん中に置いてやらせていただきたいと思います。

石毛委員 真ん中とおっしゃっていただきましたので、ぜひとも真ん中に据えていただきたいのですが、この男女共同参画の基本計画がつくられております。この中で十一の分野につきまして、それぞれ二〇一〇年を目指しました長期的な方向性と二〇〇五年までの具体的施策を挙げてございます。大変網羅的な内容で、重要なテーマも含み、私は、本当に苦労してよくつくられている、そういう評価も一方でいたしますけれども、実はこの中で、教育・学習の充実というところには、今官房長官がお答えくださいましたそのことに関しまして、例えば教職員の男女共同参画に関する理解の促進、教職員の男女共同参画というようなことは出ているのです、それから、社会教育関係者の意識啓発というのは出ているのですけれども、例えば、人権の実現に重大なかかわり合いを持つ議員というような指摘はこの中にはございません。

 そこで、もう少しこの件に関連しまして申し上げたいのです。これも内閣府の所管になると思いますけれども、実は、国連人権教育の十年、これは二〇〇四年を最終年として現在進行中でございます。この件に関しましては細かいことを官房長官にはお伝えしてございませんので、私が申し上げますからお考えをお聞かせいただければと思います。もう一方で、前内閣内政審議室が所管をいたしまして、「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画というのをつくっております。

 いろいろと国連の人権教育の十年と日本の十年との間に落差があると言ってよろしいかと思いますけれども、きょうの主題に関しましてその落差を指摘させていただきますと、国連人権教育の十年には、人権教育をすべき対象となる集団といたしまして、実は、法律家、裁判官等々々と並びまして、人権の実現に影響力を持つ特別な立場にある職業人としまして、先ほど申し上げました並びの中に議員というのも入っております。司法関係者、議員が入っておりますのが国連人権教育の十年のプログラムなのですが、日本のこの国内行動計画には見事に司法関係と議員は落ちております。つまり、人権に関する自己啓発、自己開発と申しましょうか、そういうことを必要とされる職業群の中から司法関係者それから議員が抜けているのが日本の計画でございます。

 私は今回、予算委員会でかくも、あえて卑劣なと言わせていただきたいと思いますけれども、悪質なこういう文書が出されますというのは、これを配付した個人の議員の人権感覚の問題も問われなければなりませんけれども、それを例外とすることなく、やはり私も含めまして人権の実現にかかわりを深く持つ議員も、きちっと人権に関する教育・啓発の機会を持つべきだというふうに考えるものでございます。

 今申し述べました件に関しまして官房長官の御所見を承りたいということと、もう一点、昨年の十一月に人権教育・啓発基本法が成立いたしました。この人権教育・啓発基本法の中にも基本計画を立案するということがございます。それは現在進行形だというふうに私は思うところですけれども、ぜひ確かめていただきまして、国がリードをする、それは所管は法務省でございますから、調整、まさに戦略のリードをする内閣府の官房長官といたしまして、ぜひとも、この人権教育について学ぶべき職業群をただいま申し上げましたところまで広めるという御意思を持ってリードをしていただきたいというふうに要請したいと思います。いかがでございましょうか。

福田国務大臣 第一の御質問でございますけれども、国連の人権教育のための十年、この行動計画でございますね、立法府に属する国会議員についてはこの施策の対象には含めていない、こういうことでございますね。

 国務大臣とか副大臣、大臣政務官規範、こういうのを実はつくったわけなんです。今、それにのっとって我々律せられているということでございまして、これは、営利企業との兼職規制とか、関係業者との接触規制とか、国務大臣等としての立場にある者が守るべき服務規律等について定めたものである。

 我々はそういうふうな規範ができたわけなんでございますけれども、国会議員一人一人について、やはり今私が申しましたこういうような規範というものは、これは考えてもいいのではないかな。また、当然そのような心づもりでやっているはずなんですね。けれども、今指摘されましたようなことがありますと、そういう必要性を感じられるということも私もよくわかりますので、これはまた今後考えていかなければいけないことかなというふうに思っております。

 それから、今の人権教育・啓発基本法ですか、これはおっしゃるとおり法務省の所管でございます。私、ちょっとその進行状況を確認していないので、法務省と相談をいたしまして先生のおっしゃる趣旨を生かしてまいりたい、こう思っております。

石毛委員 ぜひともその方向で力強く推進していただきますように要請をさせてください。

 男女共同参画社会の実現はこの内閣府にかかっている。日本じゅうの、そして広げて言えばやはり世界の女性たち、多くの人たちが期待をし、注目をしているところでございますので、ぜひとも頑張っていただきたいと思います。

 それでは次の質問でございますけれども、男女共同参画基本計画を推進するに当たりまして、もう一つ、昨年十二月に出されております男女共同参画影響調査研究会報告書、これは「男女共同参画の視点に立った政策過程の再構築」という副題がついております。

 実は私は、この基本計画を推進していくに際しましては、この影響調査報告書で指摘をしております視点と、それから調査をどのように実践していくかということが大変重要だというふうに認識するものでございますけれども、この報告書に対する官房長官の評価と、それから具体的にどのような点に注目をなさっておられるかという点をお尋ねしたいと思います。

福田国務大臣 男女共同参画基本計画で、この調査は、共同参画社会の形成の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な方策の一つとして位置づけられているところである、これはもう御案内のとおりでございますが、専門家の知見を活用しつつ、各府省と緊密な連携を持って調査を実施することといたしております。

 具体的には、今後、男女共同参画会議の場などで検討をされるものというふうに考えておりますけれども、私といたしましては、この会議の議長でもございますので、この男女共同参画社会の形成の一層の促進のために調査の機能を十分に発揮するように努めてまいりたい。具体的には、今、子育て支援とかそういったような議論を始めているところでございます。

石毛委員 官房長官御自身が議長をお務めになられているというふうに申されました。議長の立場というのは非常に重要であるというのは私が申し上げるまでもないことでございます。

 子育て両立支援は今国会で審議されます大変重要な法案でございますけれども、例えば、この中に指摘をされておりますどのような施策を対象とするかというところでは、政府の重点施策、性別による偏りが大きいと予想される施策、それから資源投入量が多い施策、こういうような施策の対象の設定の視点について、概念といいますか、とらえ方を整理しております。

 それからまた、この報告書の視点というところで、これは私は非常に重要だと思いますけれども、政策過程自体を男女共同参画の視点に立って再構築する、それから男女平等の視点を反映させてジェンダー主流化、メーンストリーミング化していくということ、ですから、男女平等の視点を反映させて、ジェンダー、つまり社会的、文化的につくられた性差を解決していくという、その大きな柱といいますか基軸を置きながら影響調査等々をする施策を設定していく、こういうことをこの報告書は述べているんだというふうに思います。

 長官もぜひこうした点をお踏まえいただいて、会議の中で決めていきます政策の優先順位ですとか、あるいはその優先順位を整理していくための調査をどう設定していくかというところで、民主主義の議論を尽くさなければならないのは当然のことでございますが、同時にやはりリーダーシップを発揮していただくことも重要でございます。もう一度、お考えを伺わせていただければと存じます。

福田国務大臣 大変この問題にお詳しい先生の御示唆をいただきまして、まさに男女共同参画会議、ここでもって十分な議論をさせていただきたい、このように思っております。

石毛委員 大臣、十分な議論をしていただきたいと存じますけれども、私を詳しいなどというふうに言うことは、私はいかがなものかというふうに思います。大臣が詳しくならなければいけないのであります。

 それこそ、繰り返しますけれども、経済財政諮問会議と並んで男女共同参画会議は等置されている位置づけになっているわけです。そこが、冒頭に、この男女平等、男女共同参画はメーンストリームになっていますということを申し上げました一番最初のゆえんでございます。

 ともすれば、女性の課題といいますのは、残された課題を解決していくというフリンジのような枠組み、あるいはそういう感性でとらえられることが間々あるかと思いますが、メーンストリーム化していくということが大事ですので、官房長官の頭の中はいつも半分は男女共同参画で占めていただかなければならないと存じますけれども、ぜひとも御覚悟のほどをお伺いしたいと思います。

福田国務大臣 日本のこれからの社会を展望した場合に、少子高齢化とかさまざまな問題がございますけれども、この問題は、男女共同参画社会の形成を進めるということと、それから高齢少子化対策、また経済全体を俯瞰した場合に極めて大事な問題になってきている。このことは単に男女共同参画社会というだけでない、そういう意味合いを持っているんだというふうに私は思っておりますので、そのことを含めまして、中心課題と考えてやらせていただきたいと思います。

石毛委員 それでは、これからよろしくおつき合いくださいますようお願いして、終わります。ありがとうございました。

横路委員長 大畠章宏君。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 私は、民主党のいわゆるネクストキャビネットのIT担当大臣を拝命しておりまして、そういうことから、きょうは、麻生太郎IT担当大臣、そしてまた、原子力問題について幾つか、私自身もこれまで勉強してまいりましたので、笹川科学技術政策担当大臣に御質問をさせていただきたいと思います。

 先ほどから非常にさまざまな論議がされておりますが、私どもの中沢委員、島委員、そして石毛委員からもお話がありましたが、どうも内閣委員会というものの所掌範囲というのが私自身よくわかりませんでした。それは、初めてこの内閣委員に任命をいただいて質問に立たせていただいたところでありますが、前半のお話をずっと聞いておりましたが、まあ言ってみますと、非常に暗い話題がたくさんございました。

 本来、この内閣委員会等で論議することは、国民に対するメッセージとして、こういう国を目指すんだ、そういう一つの指針というものを示すべきだと思うのです。例えば、私の裏にテレビカメラが今一台ありますが、先ほど、中沢委員、島委員が質問するときには四、五台のカメラがありました。そして、注目すべき課題が論議をされたところでありますが、なぜこんな雰囲気の内閣委員会になってしまうのだろうか。ちょっと私自身、暗い雰囲気になりました。

 新聞をずっと見ますと、暗い話ばかりなんですね。きょうの新聞を見ますと、もはや自民に政権は重荷じゃないか、瀕死の政治という記事が出ていたり、あるいは、もう官房長官は退席されましたけれども、自民党幹部が解党的出直しというものを口にし、四半世紀以上も前、森喜朗総理の師匠の福田赳夫氏が田中角栄内閣を飛び出すときに、既に出直し的改革を唱えていた。来月十三日に党大会で「自民党が変わる、自民党から変わる」をキャッチフレーズにするらしい、ほんまかいなと疑っている国民諸君に、より、論より証拠を見せてほしいというような話がありました。

 私自身も、国会議員の一人として、最近の政治のあり方についてはまさにふんまんやる方ないという感じで今見ておりまして、地元に行っても明るい話がない。経済問題についても中小企業対策や金融問題についても、いろいろとお話を伺うのですが、市民の皆さんももう疲れ果ててきているのですね。政治に対して期待してもだめか、何とか自分たちでやらなければだめなのかな、そんな雰囲気も満ちておるのです。

 私は、過日の麻生太郎大臣の所信表明演説を聞かせていただきました。希望の世紀のかぎとなるIT革命の推進、これが麻生太郎大臣の一つの所信表明でございます。

 考えてみますと、私自身、去年の九月にIT担当大臣を拝命いたしましたが、中川官房長官と、その当時IT担当大臣でしたから、論戦をしなければいかぬなと思っていましたら、中川さんが辞職をされた。それから堺屋太一さんが出てきまして、私も堺屋さんはよく存じ上げていまして、昨年の臨時国会のときにIT基本法の論戦を戦わせました。そして、堺屋さんは、いや、私はもうやめますというので政界を去ったわけであります。今度は額賀さんがIT担当大臣になったというので、茨城の仲ですから、私も茨城県選出ですから、今度は額賀さんと論戦を戦わせなければいかぬと思いましたら、今度は額賀さんがやはりIT担当大臣を辞任された。

 そして出てきたのが麻生太郎大臣だということで、麻生太郎大臣にはしばらく我慢していただいて、IT担当大臣ですから、このIT問題について、今ここにありますように、希望の世紀のかぎとなるIT革命の推進、これが実際に動き出すまでは大臣をやめないでひとつ頑張ってもらわないといけないなという感じを持っておりますが、政府の目指すIT革命の目標というものを麻生太郎大臣はどう考えておられるのか、このことについて最初にお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 二度あることは三度ないようにいたしたいと思っております。

 最初に、去年、「おっはー」は御存じだと思いますが、「おっはー」とITが二つ、流行語大賞をとるほどまでに、情報技術という言葉、インフォメーションテクノロジーなりITという言葉がこれだけ普及したんだと思いますけれども、この問題は、何が目標というのかというと、ちょっと基本的なことだけ。

 大畠さんは日立におられましたし、この種のことにお詳しいんだと思いますが、今もし仮にヘンリー・フォードという自動車を大衆化させるのに成功した人が今の時代に生まれ変わったとして、今の自動車を見て驚くだろうかといったら、僕は余り驚かぬと思うのですね。車は相変わらずタイヤは四つだし、ハンドルは丸いし、ワイパーなんか全然進歩ないし、ヘッドライトも相変わらず前に二つだし、全然昔と変わらないものだと思うと思うのですが、しかし、車というものが大衆化し、高速化し、大型化したことによって起きた車社会というものには驚愕するだろうと思うのです。

 情報に関しましても同じように、IT、インフォメーションテクノロジーというものの技術自体は、前に比べて確かに小さくもなったし、いろいろになりましたけれども、御存じのとおり速くなったとか軽くなったとか小さくなったとかいうことであって、基本は全然変わっておらぬと思いますが、これによって起こされるであろう社会というものは、先ほどの車と同じで、これはちょっと我々六十歳になった者の想像をはるかに超えたようなものがあと五年、十年で起きるであろうという予測だけは、何となくぼんやりながらするのです。

 少なくともそういうときに、日本としては、五年以内に世界において最先端と言われるようなIT国家を目指したいというのをまず大目標に掲げております。そのために目指すべき国家として、国民すべてが、山の中とか都会とかいうことは関係なく、また能力は、身体障害者を含めて、健常者というよりは、むしろ、端末が扱えない、キーボードを見たら手が出ないとかいうようなことじゃなくて、もしくは経済的な制約で買えないとか高過ぎるとかいうようなことがなくて、だれでも自由かつ安全にそういった情報が交換できるようなことでやる必要がある。

 そして二つ目が、いわゆる自由競争の原理に基づいて常にいろいろな効率性のある経済構造に向けた改革ができるように、自由競争、自由参入ができるようにせないかぬ。

 そして、世界じゅうから知識が、また才能が日本に集まって、地球全体規模での発展に向けたようなものにできるように、国際貢献ができるようなものにしなくてはいかぬ。大体、大まかに分けたらその三つだと思います。

 先ほどの五年以内の世界最先端のIT国家を目指して、今申し上げたようなことを戦術としていわゆるe―Japan戦略というのを設定し、今度の三月末に重点計画をきちんとしたものに立ち上げたいと思っておりますので、今いろいろ各省庁やられております。

 かなり強引なことをいたしておるとは思います。何月までにやってもらいますという期日を切っておりますので、言われている各役所側はかなりきついと思います。何年何月までにこれをしてください、何年何月までにこれと、全部決め切って押し込んでおりますので、それに合わせて各省庁は結構頑張って、これまでのところ、私どもが得ているところでは、それなりにやっていただいておるというので、この世界、結構、二十年ぐらいになりますけれども、今までの対応に比べればはるかに速いし、民間の企業の方がおくれているんじゃないのと言いたくなるところもある。すべてじゃありませんよ。一部そういったところも出てくるぐらいまでになりつつあるというので、もうちょっと時間をいただければと思っております。

大畠委員 先ほど私が、IT担当大臣としてしっかりとこれが終わるまでやってほしいと言ったのは、決して森政権が長く続いてほしいということではない。今ちょっと中沢委員の方から、それは森政権続けということかというつぶやきが聞こえましたけれども、政権を失うところまでは政治家として目いっぱいやってもらいたい、こういうことであります。近々、政権交代のときが来るかもしれませんが、それまでは、とにかくITというものに対する国民の期待もありますし、全力でやってほしいということですから、誤解のないように、ちょっと話しておきたいと思います。

 さて、その中で、今担当大臣としてお話をいただきました。私も、昨年の年末の臨時国会の中でIT基本法について堺屋大臣ともいろいろ論議をしてきた経緯がありますが、今のIT担当大臣のお話では国民の方にはメッセージとしては伝わらない、そんなにいいことなのかというメッセージは伝わらない。

 私は、昨年の基本法のときに政府原案について申し上げたことは、どんな社会になるのか明確じゃないということが一つ。とにかく基本法をつくっちゃおうという、一カ月間でつくった法律ですからそういうものかなという感じがしますが、しかし、それではやはり困るのですね。どんな社会になるのだろうという大まかな目標というものをまずつくってもらわなきゃならない。

 二つ目には、IT社会が進むにつれて、いわゆる中抜き現象、いわゆる雇用問題が発生するのですね。その雇用問題はどういうふうに解決してくれるのだろうかという、その問題についても考えていただかなければならないわけであります。

 さらには、今度は、情報通信社会になりますと非常に競争が激しくなって、生き馬の目を抜く江戸と言われていましたが、それ以上の激しい競争が起こるだろう。それに対してはきちっとしたいわゆる監視機関がなければならない。そういうことから、公正取引委員会もありますが、私どもは、情報通信の競争監視委員会というものをつくってやるべきじゃないか。

 現在も公正取引委員会、いろいろ、情報管理室というものをつくってやっているかもしれませんが、まだまだ一般のいわゆる商取引上の公正取引を取り締まるので精いっぱいで、とても今の、世界じゅうから情報が押し寄せ、また新しい企業が生まれている、この中でコントロールすることはなかなか難しいということで私はそういうことを提案したのですが、そこら辺について十分な対応がとれているとは思えないわけであります。

 そこで、具体的な幾つかの質問をさせていただきますが、一つは、私は過日シンガポールに行ってまいりました。そこの、IT社会が進展するとこんな社会になるのかな、こういうふうに思ったことがございます。それは、郵便局へ行けば免許証の更新もできる、あるいは、ちょうど二月十五日から三月十五日まで税金の確定申告の時期でありますが、納税もできる、あるいは罰金の督促状も郵便局から発送する、それも受ける。六十種類ぐらいの行政のサービスというものを集約して、いわゆるIT社会を推進した場合にはこんなに国民の皆さんにとって利便性が高まるのですよというものを実際に見させていただきました。

 私は、まさにIT社会というものは、決して経済や産業界のためのものではなくて、国民のものであるということがまず主眼でなければならないと思うのですね。ここら辺、ワンストップサービスの課題、あるいは公正競争監視委員会、今の体制で、私は公正取引委員会のメンバー表を見ましたが、一つの課があるだけなのですよ、情報通信に関する管理室というのが。

 そんなもので、私は正直言って、今情報通信をどうやったら低価格にするかということでかなり論議していますが、ガリバー対ちいちゃな企業の戦いになっているというのですが、アメリカの方にはガリバー以上に、今度はゴジラみたいに大きな企業があるわけですね。そういうものを通して、では公正な競争というのはどこが裁定するのか、これが明らかではないのですね。

 そういうことから、このワンストップサービス、要するに国民の生活を中心としてIT社会を進めていけばそういうことになるのですよというものを私は目指すべきだと思うのですが、この二つについて、ちょっと大臣の御所見を伺いたい。

麻生国務大臣 最初に、ワンストップサービスの点につきましては、これはもうシンガポールに行っていただいたら確かに御指摘のとおりのところがいっぱい起きております。

 具体的に、日本で今いろいろなことをやっておりますけれども、西新橋にあります日立のサービス、例のその種のショールームがありますので、これは私ども、今地元から議員が来ると、帰りがけ、国会見学なんてせんでいいからそこへ行って見てこいと言って、あれが理解できないやつはもう町会議員やめた方がいい、あれがわからなかったら国民のニーズがわからないからあそこへ行ってこいと言ってみんな回すようにしているのです。最初、やはり若い町会議員の方は直ちにすっと対応できるのですが、御年配の方になると途端に拒否反応みたいなことになりますが、現実問題としてそういったものになっていくだろうと思っております。

 問題は、本人確認等々の難しいところがありますので、日本の場合は、例えば役所に一番よく行くとすれば、住民登録とかいろいろなものなのだと思いますが、そういったものは特定郵便局でできるようになる。もしくは、もうそこに行かなければとれないというふうにすれば、嫌でもみんな、好き嫌い言わずにそこに行かなければいかぬということになる。あめと同時にむちも必要なのだと思います。

 そんなこと、おれたちに対する差別だと言われることになるかもしらぬが、それは郵便局に行って手数料をそれだけ払えばいいのであって、行政書士が代書してくれるのと同じような感覚になられればそれでよろしいのではないかと思うのです。本人確認が、例えば指紋、まあ指紋の場合は強制的に押させられることがありますので、その意味では、サインと証明のカードといったようなものを幾つか組み合わせて、本人確認ができた上でやっていくというのが大事なのではないかなと思いますので、基本的には、直ちに五十幾つのものが全部できるとは思いませんけれども、いろいろなもので、これも時間を切って、今幾つか各役所に、これはそういったサービスに乗せられる分野の話ならやれということで、ずっと回しつつあります。

 それから、FCCの問題というのが出ました。これは実にいろいろ御意見のいっぱいあったところなので、例の三条委員会という、日本で言えば公正取引委員会みたいな委員会にするのか、そうではないのかというのは、これは随分議論がなされたところで、実は私が就任する前にこれがなされて、既に一応の結論を得ておりまして、これは取り急ぎ八条でやるということになっております。八条でやることになって、電気通信紛争処理委員会(仮称)となっておりますけれども、これを国家行政組織法の第八条に基づく機関として新たに設置するということが決まっておりまして、この中で中立的な紛争処理をやっていこうということが今一応きちんとした形で決まって、これに基づいて制度的枠組みの検討をしております。

 これが三条委員会と比べてどうの、いろいろ御意見がその当時も闘わされたそうです。しかし、そのような行政委員会が、三条の方がこっちになじむかなじまないかというところが一番の問題だと思いますけれども、私どもとしては、少なくとも全閣僚が本部員になっておりますIT戦略本部で推進する体制というものをまず第一にやっていかなければいかぬと思っているのであって、そういった意味では、専門的な知識とか経験を有しております総務省の中に一応形を置いてやらせていただくというのできちんとスタートさせていただいて、その上で、もしいろいろ問題がある、実際、もっとすべきではないかということになった場合は、その段階でまた改めて考えなければいかぬことになるかとは思いますけれども、しかし、私どもとしては、決められたことでありますので、この法律に基づいて八条の方でやらせていただきますということで、御指摘の問題につきましてはその方法で対応させていただきます。

大畠委員 まだ機会はたくさんあると思いますので、この問題についてはまたいろいろ論議をさせていただきたいと思います。

 雇用の問題等々についてもきょう論議しようと思ったのですが、時間の配分上、また次の機会にさせていただきます。

 いずれにしても、IT社会が進むと、雇用問題というものを非常に心配している人がたくさんいますので、ここについても、いわゆるいいものなんだ、いいものなんだと言うだけではなくて、そういうところに対しても大臣としてきちっと目配りをしながら進めていただきたいということを申し上げ、また時間を見て御質問させていただきたいと思います。

 次に、原子力問題について質問させていただきます。

 実はこの十四委員室に入ってきまして一番最初に目についたのは、梶山先生のお写真なのですね。私は、梶山先生がおられたらどういう政治をやっていたかなという、晩年の梶山先生は、自民党の政治家というよりも、今でも覚えていますよ、最近の自民党はおかしくなった、これでは日本が沈没してしまう、そういうふうな話をされていましたよ。原子力問題についても梶山先生は非常に熱心にされていましたので、梶山先生の写真がある十四委員室で初めて質問するのも何かのあれかなという感じがします。

 そこで、私がお伺いしたいのは、まず、科学技術担当大臣の所信というものを見せていただきましたが、正直言って、科学技術担当大臣というものの所掌というのがよくわからなくなりました。きのう、事務方といろいろ話をしたのですが、これは文部科学省、これは経済産業省ですとかなんとかいって、じゃ科学技術大臣というのは何をやるんだと言ったら、こういう内容が書いてあることですと言うのです。

 私は、一言で言いますと、全省庁にまたがる科学技術に関しては全部やる、要するに、ちゃんと経済産業大臣が仕事をしているのか、それから文部科学省の技術関係はきちっとやっているのか、全部にまたがるのじゃないかという話をしたのですが、原子力安全委員会と原子力委員会とあとは総合科学技術会議とか、こういうふうなものを所管するのですと言うのです。

 そこで、私は大臣に、一言で言いますと、どういうお考えでこの大臣をお受けされたのかということと、特に、ジェー・シー・オー事故の教訓というものを踏まえてどういう原子力に関する対策をとろうとしているのか、大臣としての御意見を賜りたいと思います。

笹川国務大臣 今大畠先生から、梶山先生の写真の前でというお話がありました。私も、梶山先生の部屋の筋でありますので、例のジェー・シー・オーの事故のときには大変立腹されておりまして、廊下でしかられたことを実は思い出しました。

 御案内のように、ジェー・シー・オーの事故は大変国民の皆さん方に信頼の点で大きく損ないまして、また大変大きな損害をかけ、原子力行政そのものに大変大きな汚点を残したという点につきましては、特に先生も茨城県が地元でございますし、その後の対応につきましては、いろいろな面で対応の仕方を今鋭意こしらえさせていただきました。

 私も、実はあの事故のときに、よもやこういう立場に立つというふうに思っておりませんでしたから、大変立腹をいたしました。いかに経済優先であっても人命より重いものはないんだし、どんなに科学技術が発展しましても、最終的には人間が決断するわけですから、人間が基準に従って行動しなければつくった人にも迷惑がかかる。そういう意味で私も国民の一人として大変立腹いたしまして、当時私の知り合いが警察にもおりましたので、厳重に取り締まって処分しろということを言ったんですが、残念ながら、処分する側が例の新潟のマージャン事件で責任をとってやめたということがありまして、それで、その後のことは聞いておりません。

 御案内のように、私、今回、内閣府の総合科学技術担当ということになりました。今先生がおっしゃるように、所掌がどこまでいっているのかよくわかりにくいよという国民のお話があることも事実でありますが、昨年十二月二十六日に科学技術会議の答申が内閣に出ましたが、私は、一月六日から、日本全国の各省庁にわたる科学技術に関することを所掌しろということで辞令をいただきました。その後、精力的に総合科学技術会議を招集しながら、委員の皆さんと、三月末日までにこれから二十一世紀、五カ年の計画を出したいということで、鋭意毎日行っております。

 特に、先生の地元のジェー・シー・オーの事故の教訓をどういうふうに生かしているかということがありましたので、ちょっと細かくなりますが、お答えをさせていただきたいと思います。

 ジェー・シー・オーの事故を踏まえまして、政府では、原子炉等規制法の改正による規制を強化いたしました。これは平成十一年十二月に改正したものでありますが、原子力災害対策特別措置法制定によりまして防災体制の強化等を実施し、着実にその実効性を高める努力を行っているところであります。また、原子力安全委員会では、ウラン加工工場臨界事故調査委員会及び健康管理検討委員会を設置し、事故の再発防止、そして住民への健康に対する影響についての検討を行い、報告を取りまとめたところでございます。

 また、これを受けまして、平成十二年一月十七日に「原子力安全委員会の当面の施策の基本方針について」を委員会決定し、濃縮度五%を超えるウランを取り扱う施設のための安全審査指針を策定いたしました。行政庁が実施する安全規制活動に対する調査などを鋭意実施いたしております。

 また、安全面、安全行政の体制面では、事務局の機能が、今までは科学技術庁に依存をしておりまして独立性が非常に不十分だった。この点は反省いたしておりますし、また、委員会の活動を補佐する体制が不十分であったという皆様方の御批判も踏まえまして、昨年四月に省庁再編を前倒しして原子力安全委員会の独立性と機能の強化を図ったわけであります。

 今回、省庁再編に伴いまして経済産業省には、原子力のエネルギーとしての利用に関する安全規制を担う原子力安全・保安院を実はつくったわけでありますが、御案内のように、一時的な審査は経済産業省の方でやる、それからダブルチェックという形で原子力委員会あるいはまた安全委員会の方で論議をさせていただくというふうになりましたし、また、原子力安全委員会も内閣府という一段と高い地位に置いていただきましたので、各省庁と横並びということじゃありませんから、各省庁の科学技術、特に原子力につきましては、私自身も、これから国にとって一番必要なんだ、けれども、これはちょっとでも事故を起こすと全国に波及しますから、慎重の上にも慎重に。

 それからもう一つは、やはり原子力委員会も今までのように中にこもらないで、安全委員会もそうですが、国民のところへどんどん出かけていって、いつでもどこでもだれとでも話し合いができるんだという体制で、地元の皆さんの信頼なくして原子力行政はできないということでありますので、二度とこういう事故を起こさないように、私も微力ではありますが、最大の努力をさせていただきます。

大畠委員 今お話がございました。微力ではありますが一生懸命やりたいという話でありますが、昨年の十二月の補正予算で一千三百億という予算が通りました。それで、防衛庁とか各関係省庁がこのジェー・シー・オー事故対策で予算をとって動き始めました。本当にこれが実効ある形でやっているのかどうか、こんなことも笹川大臣が監視するべきだと思いますし、また地元の方からは、防災対策、特に避難道の整備というものが目に見える形で動いていないんですね。私は、これは建設省だとかなんかといろいろありますが、やはり科学技術を進めるためには住民の理解がなければならない。そういう意味では、この避難道の整備というのはどこまで行っているのか。

 あるいは、もう一つ、東海村であるのは、高レベル液体廃棄物がどういうふうに処理されるのか。これもまだ担当局からお話が来ていないということで、ここら辺の問題が解決の道筋が立たないとなかなか地元の理解は得られないと思うんですね。

 ここら辺について大臣としてのお考えを伺って、質問を終わりたいと思います。

笹川国務大臣 今、大畠先生から、地元の理解を得るためにはいろいろなことをやれという御指摘をいただきました。

 御案内のように、ジェー・シー・オー事故、約一千三百億円の原子力防災にかかわる補正予算を計上させていただきました。まだ一部は年度内でございまして実施ができない部分もございますが、御案内のように、この予算によりまして、原子力災害時に、全国の原子力発電所及び関連施設の近くに国、地方公共団体及び原子力事業者が一堂に会するオフサイトセンターをつくろうということで、これは鋭意準備をさせていただいております。

 それから、平時でも、何か事故が起きたときには必ず消防だとか地元のお医者さんにお世話になるわけでありますから、そういう方々にも、日常的に訓練をし、また情報提供しながら、いざというときには防災の実効性が上がるように最大の努力をできるように、今最善の努力を払っておるところであります。

 それから、一千三百億の補正予算を組んだんです。今先生が言われるように、防災道路の話でありますが、さきに文部科学大臣が御地を訪問しましたときに、村長さんあるいはまたそのほか議会の皆さんとお話しになったことも読ませていただきましたので、私の方といたしましても、村あるいは県の合意ができまして、県の方からそういう御希望が来れば最大の努力をいたしますし、それは必要なものだというふうに考えておりますので、文部科学大臣はもちろん、経済産業大臣、それと国土交通大臣、相協力しまして、先生の地元の御要望に沿えるように最大の努力をさせていただきたいと思います。

大畠委員 時間でございますから、終わります。

横路委員長 塩田晋君。

塩田委員 自由党の塩田晋でございます。

 伊吹国家公安委員長に対しましてお伺いいたします。

 伊吹大臣におかれましては、警察の関係、特に、指揮命令権はないとしても、国の治安、防犯、いろいろな事故に対する対策、その最高責任者であられるわけでございまして、それこそ一日二十四時間、本当に神経をとがらせて毎日務めておられることと思います。また、危機管理の担当大臣としても大変御苦労いただいておるところでございまして、惨たんたる森内閣におきましては、伊吹大臣は、先ほど同僚委員からもお話ありましたように、非常にさっそうとさわやかにやっておられるということに対しまして敬意を表したいと思います。

 警察の問題でございますが、我が国は非常に治安のいい国、安心して暮らせる国、そして、人々は道義が高く、また非常に協調性があり、本当にすばらしい国だと徳川時代からも世界的に評価されておるということでございますけれども、特に警察関係につきましては、明治維新の後、近代国家をつくるために非常に先人たちが苦労された中で、いわゆる交番あるいは派出所、駐在所といった世界でもまれなそういう制度をつくって、非常に治安の関係はよくなっておるということが言われておるわけでございます。

 警官の皆さん、本当にそれこそ命がけで、命を的にして公のために家族を挙げて一生懸命職務に精進をしておられる、その姿に対しまして感謝をしたいと思います。物言わぬ中におきまして大変な御苦労をなさっておる、本当に命がけでやっておられるということについて、本当に認識をし、感謝をしたいと思います。

 ただ、最近、警察関係につきましては非常に不祥事が起こっておりますし、また、それを契機にして、マスコミまた一般世論も警察に対する風当たりがかなり強いものがあるし、従来の信頼も一時失われるというような事態も起こっておるわけでございます。

 これはまことに遺憾なことでございまして、本当にごく少数の、一部の不心得者がそういった事件を起こして警察全体の信用を傷つけるというようなこと、また、綱紀の弛緩があるのではないかということも反省をし、点検をして引き締めていかなければ、やはり国民の警察に対する信頼が基本でございますので、そういった信頼をなくするような事態が起こらないように十分に反省をし、引き締めてやっていただきたい、このように思います。

 非常に治安のいいと言われた日本でございますが、最近やはり凶悪犯罪が多発をしておりますし、また、最近の犯罪の傾向としましても、本当にむごたらしいというか、常識では考えられないような犯罪が多発しておるわけでございまして、まことに憂慮すべき事態であると思います。

 私は、その一つといたしましてここにお伺いしたいわけでございますが、タクシー乗務員が各地における強盗殺人の被害者になっておられるわけですね。そういった事件も多発しておるということでございますが、それのみならず、先ほど申し上げました警察行政の最高責任者として、また危機管理担当の大臣として、どのような気持ち、お考えで対処しようとしておられるか、これについての所信をお伺いいたします。

伊吹国務大臣 大変広範囲な、実は深い、日本の根に絡んでくる問題を含んでいる御質問だと思います。

 まず最初に、下積みで黙々と国の治安と国民の生命財産を守るために努力してくれている第一線の警察官に対して先生が温かいお言葉をかけていただいたことに対して、心から御礼を申し上げたいと思います。

 日本は、先生が御指摘になりましたように、世界で最も礼儀正しく、かつ、清潔な国だと言われておりまして、明治維新に日本を訪れた、あるいは開国前に日本を訪れた人たちの書き物の中にもそういうことは残っております。教育の問題もあると思いますし、豊かな中にいろいろなことが行き届いたということもございますが、家族のきずな、地域の連帯感、そういうことの中から目に見えない中で醸し出されてきた社会の規律といいますか、よき慣習というものが徐々に損なわれてきている。そういう中で、かつては考えられなかったような今御指摘の犯罪がいろいろ起こってきております。

 同時にまた、日本が国際化をしている中で外国人の人たちも多数入ってくる。同時に、先ほど来ITの御議論もありましたが、便利になればなったで、それを使うカードの犯罪とかサイバーの犯罪とかいろいろなものが起こってまいります。

 そういう状況の中で、国民の生命財産を守り、秩序を維持していくために、まず警察といたしましては、従来の人員の配置が本当に現実に合うだろうかということを昨年の暮れの予算編成で大きく見直しをいたしました。予算を通していただいたら、四月から人員の再配置が行われていくと思います。それでもなお足らざるところを、実は地方自治体と総務省の御協力をいただいてかなりの増員をいたしております。

 これらの人たちが、今先生がおっしゃっていただいたような生きがいを持って働けるために、国民の常識をやはり警察の常識として、そしてトップに立つ者も第一線の警察官も同じ使命感と国民に対する義務感を持ってやってもらう、そういうことを私は実は所信の中で、国民の治安を守っていく頼られる警察であると同時に、先生がおっしゃったように、昔の駐在さんあるいは派出所の巡査さんという地域での親しまれる警察官でもあってもらいたい、そういう気持ちで今私どもは全国の警察を同僚の公安委員とともに管理いたしているということでございます。

塩田委員 ありがとうございました。ぜひともそういった気持ちでこの警察行政を管理監督していただきたいと思います。

 今、派出所、駐在所等の話に及びましたので、若干申し上げますと、最近、地方、特に田舎の方は、駐在所とか派出所、交番がどんどん減ってきている。そして、あってもそれは巡回でやってくる。必要なときに飛び込んでもいない。電気はついておって中は明るく、入り込めるんですけれども、警官はおられないということで、非常にそういった面で不満が住民の方にあるわけです。

 こういった問題は人員の問題だと思いますが、今言われましたように、予算でも措置をしていただいて、これもしかし、わずか二千人とかそれぐらいで、毎年ふやしていっても十年たって二万人ぐらいのものでしょう。各地域にはどれぐらいこれが配置されるか、非常に問題だと思います。

 片や、これは余り言いたくないのですけれども、警察本署へ行きますと、以前と比べて何百人とおられて、忙しくはしておられますけれども、地域では空っぽになり、本署、警察署ではたくさんの人がおられるというアンバランス。事情はそれぞれあると思うのですけれども、やはり第一線をもっと重視した警察行政があってしかるべきではないか、このように思います。

 そこで、具体的な問題についてお伺いをいたします。

 先ほどちょっと触れました、タクシーの運転手が強盗殺人の被害者になっているケースですが、昨年もこのケースがあちこちで全国発生しているわけですね。

 私、タクシーの運転関係者から、これに対する対策をぜひとも早く手を打ってもらいたいという要請があったのを、関係者といろいろ話をして、どういう対策があるかということで話をしているときに、昨年の十月には、北海道札幌市内で殺人という事件が起こっておるわけですし、これは大変だと言っておりましたら、また私の郷里の兵庫県でも、姫路の近辺にあります御津町というところで、十六歳の少年少女がタクシー運転手を殺して現金を強奪している、こういう事件が起こりましたし、そう思っていましたら、また先週も、北海道の稚内でロシア人のタクシーの強盗事件が起こっておる。こういったことは今までに具体的にはたくさん各地にあると思うのですね。

 このタクシーの運転手の安全防護のためにどういう対策をしたらいいか。各国の状況を見て有効な手段を早くとっていただきたいと思うのです。もちろん、防護壁をつくるとか、そういう国もありますね。それから、防護壁をつくると今度はコミュニケーションができないということで、どうやれば運転手とお客さんの間で話ができるか、そういう問題。それから、タクシーで警報の装置もつけてあるところもあるようですね。しかし、いきなり刺されて殺されるということでは、これはもうずっとブザーが鳴っておったというままで殺されて、犯人はいなくなっている、こういうことも北海道の札幌の場合はあったわけですね。

 いろいろな手は尽くしておられる、またいろいろ考えてはおられると思うのですが、こういう事件が多発していることからいいまして、有効な手段をぜひとも考えていただきたい。業界とも、また運転手さんたちとも相談しながら、防護壁をつくるにしましても、ガラスが弱ければすぐ割られるし、また、料金を渡すあるいはつり銭を受け渡しする、そのためには窓をあけないといけない、窓をあけて、それが大きければまた手を引っ張られて犯行に及ぶというようなことが起こり得るわけでございますが、そういったいろいろな問題、まだまだなかなか結論は出ないことではあることと思いますけれども、何とかタクシーの運転手の安全を図るために有効な手段をぜひともとっていただきたい。このことについて、生活安全局長でございますか、お尋ねします。

黒澤政府参考人 委員御指摘のとおり、最近、タクシーをねらいました凶悪な犯罪が相次いで発生をいたしております。

 この種犯罪でございますけれども、閉ざされた空間で敢行されるものでございます。したがいまして、一たん発生しますと人身に危害を及ぼすおそれが強く、その防止には十分私ども意を用いていかなければならないと考えておるところでございます。

 そこで、警察といたしましては、業界団体に対しまして、従来から注意を喚起いたしますとともに、ハード、ソフトの両面から防止対策をきめ細かく指導しているところでございます。

 具体的には、今委員からいろいろ諸問題も含めて御指摘がございましたけれども、ハード面の問題でございます、乗務員後部の防犯仕切り板の設置促進、これもいろいろ工夫をしていかなければならないかと存じますが、そのほかに、車外表示防犯灯、赤の点滅がする防犯灯でございますが、あるいは無線機、暗号などを使って連絡をする、一大事態が生じたようなときにそのようなことで無線機などを使用する場合もあるわけでございますが、そういった無線機の点検整備、ハード面ではこういったことなどを要請、指導しているところでございます。

 また一方、ソフト面といたしましては、今問題点の御指摘がございましたけれども、やはりタクシー乗務員の方々に対しまして、不審者の発見のポイント、あるいは事態が発生しました際の措置、もういきなり発生するという問題もございますので、不審者発見のポイント、こういったことなどを過去の事例などを踏まえまして指導を行っておるところでございます。

 今後とも、関係業界、団体と防犯対策について協議を重ねてまいりまして、より一層効果的な防犯指導を行ってまいりたいと考えております。

塩田委員 御津町で起こった事件につきましても、十六歳の少年少女は、一般に言われておりますのは、非常にまじめな普通の子供だった、一人は受験校として名高い高校の生徒でもあった、こういったことですね。タクシーの運転手も、全然そういうことは考えもしない、普通のお客さんとして乗せた。ところが、いきなりナイフで、窓越しというか運転手の後ろから突き刺されて死亡し、今言われました防犯の点滅もしたままで亡くなって、犯人はいなくなっている。これは逮捕されましたけれども、札幌の場合はまだ逮捕されていないんですかね。わからないままになっていますか。非常に犯人逮捕が難しい、放置されたままで後で発見される、運転手は亡くなっていた、こういう悲惨な事態ですね。

 今ハード面とソフト面の話がありましたが、ハード面で隔離壁という形にするか、相当強力なガラスがあるかと思うんですが、それをどういう検討をされているか。今、日本ではほとんどそれがないですよね。英国あたりはほとんど隔離のガラスがありますよね。窓もあいている。アメリカは今、日本と同じような形じゃないかと思いますけれども。

 各国もいろいろな対策をやっていると思うんですが、ハードの隔離壁の問題、コミュニケーションの問題で話ができるようにすることも必要でしょうし、また、後ろの状況が運転手がわかるように、監視カメラというとあれですけれども、何らかの形のものが必要じゃないかと思いますが、そういった検討はどこまで進めておられるか。法律改正が必要なら、それは思い切ってしなければならぬじゃないかというふうに思いますが、いかがですか。

黒澤政府参考人 この種のものをつくっております業者もございまして、いろいろ改良等も重ねておるわけでございますが、今後とも、私どもも業界と一緒になりまして、いろいろな観点から、この種の防犯のための遮へい板、こういったものをどういう形にすればいいのか、どのようなものが一番いいのか、研究もしてまいりたいと考えておるところでございます。

 それから、ハウツーといいますかソフト面としても、今御指摘ございました事件のように、どうしてもなかなか事前にはわからないわけでございますが、先ほどちょっと申し上げましたように、例えば不審者として、動作に落ちつきがない、そわそわしている、あるいは行き先が不明確だ、たびたび行き先を変更する、こういったポイント等もございまして、こういったポイントに基づいて不審と認めた場合には、例えば、理由を設けて交番、駐在所、警察署に立ち寄るでありますとか、あるいは、先ほども申し上げましたが、無線機を利用して合い言葉等により連絡をする。

 こういったソフト面も含めまして、ハード面、両面にわたってさらに研究、検討を重ねてまいりまして、犯罪の防止に努めてまいりたいと存じます。

塩田委員 ぜひとも有効な対策を早急にひとつ講じていただきたい。このような事件はまだまだ起こると思いますので、ぜひともひとつ、ハード、ソフト両面にわたりまして関係者と十分に話し合って早急に手を打っていただきたいということを要望いたします。法律改正が必要であれば、それも早急に手を打つべきだと思います。

 次に、外国人の犯罪でございますが、これも非常に多発をしておる。特に新聞、テレビ等はこれを報道しますので、これに対する国民の関心も非常に高まっておるということでございます。

 特に、ピッキングだとかいろいろな形で巧妙に何人組かが押し入っていく、時には居直りをして強盗、殺人に及ぶというようなこともあるわけでございますが、そういったことについて刑事面でどういうふうに特に対策をしておられるか、そのことについてお伺いしたいのと、その外国人の犯罪が、七十万人とも言われるような不法滞在者が多いと言われておりますし、これはまた、いろいろな犯罪組織あるいは暴力団等との関連も言われております。

 この間、私はある警察官と話をしておりましたら、ピッキング等をやって強盗で捕まえた外国人、これは強制送還で送り帰したというんです。ところが、つい最近、また犯人を捕まえたら、強制送還で帰したその本人がまた同じ犯罪を起こしているんですね。いつの間にか帰ってきている。そんなに簡単に出入りができるのか。

 そしてまた、七十万人と言われる不法滞在者、これは何としても取り締まることはできないんですか。警察はもうお手上げなんでしょうか、七十万となると。これはこのままほうっておいていいんですか。どこに問題があるんでしょうか。

伊吹国務大臣 外国人犯罪の取り締まりの実態等については、必要でございましたら参考人から答弁をさせますが、まず、先生御指摘のとおり、国際化が非常に進んでいる中、また、日本がある意味では消費社会になっているということも影響があるんだと私は思うんですが、外国人の方が非常に日本に大勢おられます。

 そして、その方たちが犯される犯罪も、先生がおっしゃったように、やはり非常に手口が荒い、そして危険なものが非常に多いというので、我々も憂慮をして、実はこの前、率直に言って、こういう国際化、共生社会においては、やや行き過ぎたことがあって、私はおしかりを受けて、○○人を見ればすぐに交番へ届け出てくれというようなビラをつくったり、ちょっと行き過ぎたこともあったわけです。

 これは何としても取り締まらにゃいかぬのですが、今御指摘がございましたように、事案として、逮捕をした外国人の半数が不法滞在者なんですね。もちろん、入ってこないようにするということが一つ。これは、海上保安庁、法務省、それから税関等々、みんな関係してまいります。同時に、不法滞在をしているということがわかった場合に、これを送り帰すためには一応どこかの施設に入れなければなりません。その施設等が、法務省において御努力をいただいているんですが、非常に不足しているというような状況が相まって、今おしかりを受けているような状態だと思います。

 法務大臣等ともお話をしておりますが、やはりこういうところはお役人の通常ベースの予算でやるのではなくて、私たちが少し政治主導ということまで考えなければいけないところだな、そう思っておりますので、御趣旨に沿ってしっかりと対応はさせていただきたいと思っております。

五十嵐政府参考人 ピッキング用具使用による窃盗事件等の状況について、あるいは対策について御説明申し上げます。

 近年、不法滞在外国人を初めとする来日外国人等によりますピッキング用具を使用した空き巣ねらいとか金庫破り、あるいは事務所荒らし、こういった侵入盗事件が関東圏の都市部を中心に非常に増加しておりまして、全国に波及しているというような状況にございます。また、この種の事件は、犯行途中で家人に発見されたりなんかすると、先生がおっしゃられたように居直るというようなことで、凶悪事件に発展するケースが非常に多いというふうに見られるわけであります。

 平成十二年中に全国で認知したピッキング用具を使用した侵入盗事件でございますが、二万九千二百十一件、強盗事件につきましては八十五件に上っておりまして、非常に憂慮すべき状況にございます。なお、平成十二年中にピッキング用具を使用した侵入盗事件で検挙された五百二十四人の被疑者のうち四百十三人、約七九%でございますけれども、また強盗事件では検挙した四十六人のうち四十人、こちらは約八七%、これは外国人という状況になっております。

 警察庁におきましては、このような現状を踏まえまして、昨年の八月に全国警察に対しまして、取り締まりと防犯両面の緊急の取り組みを指示しているところでございます。

 具体的には、取り締まりに当たる警察官をふやし、被疑者の発見、検挙を図るとともに、ねらわれやすいアパートとかマンション、あるいは会社、事務所などの管理者に実態を伝えて、どのようにすれば被害に遭わないようにできるかというようなことの指導を積極的に行っているというところでございます。また、さらには、ピッキングに強い錠の開発と普及促進を図るよう関係各方面に働きかけを行っているところでありまして、これらの効果を見きわめつつ、今後とも有効な対策を講じてまいりたい、このように考えております。

塩田委員 ピッキングの例ですけれども、私の田舎の方でも、軒並み、国道の会社、事務所、百メートル、二百メートル置きに続けてやられているのですね。これは深夜の場合もあるし夕方の場合もあるのですね。警察に言いましても、窃盗で人身被害がなければまあ仕方がないというような感じで、仕方がないといってあきらめるというケースなんですね。そういうことでいいんだろうかと思いますね。

 それから、先ほど、外国人の不法滞在者に対して国外退去を命ずる、それを協力してもらいたいと外国に対して言った場合でも、例えば中国へ行ったときに私はそういう話を出したのですけれども、それは日本国内の問題だから煮て食おうと焼いて食おうとどうとでもしてくれ、警察があるんだからやったらいいじゃないか、そんな冷たい態度で、協力を完全にやりましょうというような態度じゃなかったのですね。

 なかなか難しい国際的な問題があると思いますけれども、ただ、不法滞在者がそれだけいて犯罪率も高い、そういう中でほうっておく手はないですね。不法滞在者はちゃんと日本から出てもらうということを、警察がやらなければだれがやるかです。入管の問題、法務省その他ありますけれども、やはり、これは挙げて取り組まないといけないことではないかと思います。この点はひとつこれからも問題にしたいと思いますので、これくらいにとどめておきます。

 最後に、内閣官房副長官にお願いします。

 さきの国会でIT基本法が成立いたしまして、そのときに、森総理も出られまして内閣委員会で私も質問したわけでございますが、その中で、いわゆるサイバーテロ、ハッカーあるいはウイルス等の問題について、よほど国を挙げて対策をしなければならぬということを申し上げたところ、早速その対策をしていただいたということでございます。

 その内容を見ますと、民間と官庁が連絡を密にして協力し連携をとり合うということ、そして研修をしたり訓練をする、こういうことが中心であって、私はあのとき申し上げたのですが、官民ともに必要な研究、研究施設、これはイタチごっこであるし、非常に緊急を要する問題なんですね。本当に、すぐにイタチごっこのようにやっていかないと追いつかないという問題でありますし、それに対する民間、公共の共通の問題として、基礎研究というか、具体的にはまた研究対策というもの、そういう研究施設が必要ではないかということを申し上げたのですが、その点について官房副長官のお考えをお伺いいたします。

安倍内閣官房副長官 昨年の委員会におきまして、委員から、大変先見性に富んだ重要な御指摘があったわけでございます。

 このIT基本法におきましても、ネットワークの信頼性と安全性の確保が基本方針として定められているわけでありまして、その観点からも、いわゆるサイバーテロというのはこうしたネットワークに対する大変な脅威である、その対策は大変重要な課題であるというのは政府の認識でございます。

 その認識のもとに、昨年の十二月に、官民の連絡連携体制の構築、そして緊急対処体制の強化等を内容とする重要インフラのサイバーテロ対策に係る特別行動計画を策定いたしまして、ただいま委員の御指摘のように、官民一体となって対策を推進しているところでございます。

 そしてまた、具体的には、本年一月に、IT戦略本部のもとに、民間の有識者及び重要インフラ代表者から成る情報セキュリティ専門調査会を設置いたしまして、いわゆるサイバーテロからの重要インフラの防護等、情報セキュリティーに関する専門の調査を行うことといたしております。本年中を目標といたしまして、サイバーテロに対する官民の連絡連携体制を構築していく予定でございます。

 いずれにいたしましても、国民にとって安心のできるIT社会を実現していくためには、サイバーテロというのは、システムまた国の行政あるいは安全保障にとりましても大変重大な脅威になるわけでございますから、委員の御指摘のようにこうした課題に対して対処していきたい、このように考えているところでございます。

塩田委員 そのように十分に対策、手を打っていただきたいと思いますが、防衛関係、安全保障については別建てで、大丈夫だというお話もあるようだし、今度の対策の中には防衛関係が入ってないですね。これも非常に重要なことであるし、国民の生命財産に直接関係する重大な危機的な問題になるわけでございますから、ぜひとも万遺憾なきを期して対策をしていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

横路委員長 松本善明君。

松本(善)委員 きょうは、官房長官と国家公安委員長に質問をさせていただきたいと思います。

 他の三大臣の担当分野についても、非常に重要な問題だと思っておりますので、機会を改めて十分に質疑をさせていただきたい、決して軽視をしているわけではないということを最初に申し上げておきたいと思います。

 今この委員会でも質疑がありました内閣官房報償費の問題、政治不信の最大の原因の一つになっていると思います。自民党古賀幹事長の今国会本会議の代表質問の中でも、外務省職員による公金横領事件について、外務省の調査結果と処分が発表されたが、国民の怒りは増幅された印象があるということを言って質問をされました。この問題の徹底的な解明が必要です。これは官房報償費として出ておるわけですから、内閣官房がよそごとのように考えることは絶対できない。

 私は、どうも予算委員会以来の福田官房長官の御答弁を聞いておりますと、この問題の徹底的解明の重要性の認識がないか、極めて軽視していらっしゃるのではないかという感じがするのです。そして、この委員会での所信表明も伺いましたが、この点についての一言の言明もない。私は大変驚いた次第でございます。

 この問題の徹底的な解明について、官房長官は本当に大事な問題だと考えているのかどうか、最初に伺います。

福田国務大臣 歴代内閣総理大臣の外国出張経費、このことについて、外務省職員による国民の信頼を裏切る不祥事が起きたということでございまして、私ども極めて遺憾でございまして、この事態を厳粛に受けとめておりまして、国民の皆様にまず深くおわびをしなければいけない、こういうように思っております。

 外務省職員の不祥事の原資が内閣官房の報償費だったということにおきまして、これはもう大変我々としても深刻に受けとめておりまして、これに対して、今まで捜査が続けられておるということの中でもって捜査当局にはでき得る限りの協力をしておる、こういう状況でございます。

 私ども、別に、おっしゃるような人ごとというように考えておりません。ですから、この問題、発生しましてからいろいろな角度から点検をいたしました。ただ、これの犯罪事実を証明するような、そういう書類がすべて外務省にあるというようなことがございますので、我々はもちろん我々のできる範囲でやりましたけれども、主たる資料が外務省にある、そういうようなことでございますので、私どももやらなければいかぬというように思いながらも、なかなかできないという実情がございます。

 また、現在は、そういう資料は本来ならば、報償費ということ、報償費の使途というものに関することでございますので、捜査当局にもお出ししたくないというような資料もあるわけでございますけれども、それをあえて提出をさせて協力をしておる、こういう状況でございます。

松本(善)委員 捜査にできるだけ協力をしていくということでございますが、捜査というのは松尾室長の刑事責任に関して行われるものなのですね。したがって、やはり内閣官房としての解明だとか国会が解明するというのはちょっと別の事件の問題で、刑事事件だけの問題にはとどまりません。

 宮澤財務大臣は予算委員会で、官房長官に渡った途端に会計法上の公金ではなくなる、しかしながら目的外で使用すれば刑法その他の責任を負うということの答弁をされました。刑法の責任というのは、松尾室長の横領罪のような問題ですね。けれども、その他の責任、やはりこれの使用については、内閣官房としての解明を国会や国民に対して報告する政治的道義的責任があるのだと思う。その責任を痛感しておられるかどうか。内閣官房としてこの調査をしているのかどうか。

 外務省は調査を報告いたしました。私は、内閣官房としても当然、資料が必要ならば外務省から取り寄せる、あるいはもし警察に任意提出しているならば一たん還付をしてもらって見る、そういうことは当然できるわけですから、内閣官房としてのきちっとした調査をして国会に報告すべきだ、国民に報告すべきだと思うのですが、官房長官、どう考えていますか。

福田国務大臣 内閣官房におきまして、もう少し具体的に申しますと、外務省から提出された見積書、精算書、領収書を点検しまして、当時の担当者から話を聞くとか、支払いと精算事務について確認するということもいたしまして、そして松尾元室長への支払いの実態の把握を行ってきた、こういうことでございます。

 今回の件につきましては、既に告発とか被害届の提出がなされておりまして、捜査が進められているところでございまして、内閣官房としては一日も早く真相が解明されるよう、捜査に全面的に協力をしている、こういう段階でございます。

松本(善)委員 捜査に全面的に協力する、それはいいですよ。けれども、官房として、外務省と同じようにちゃんと調査をした結果を報告する責任があるのじゃないか。そして、捜査をしている最中ですけれども、捜査に支障のない範囲で、外務省だってやったのだから、やるのは当然じゃないですか。そのことを聞いている。

福田国務大臣 繰り返しますけれども、現在捜査が進められているということでありまして、内閣官房として損害の実態を独自の調査で明らかにするというのは今現在困難なのであります。捜査による真相解明に協力をする、こういう立場であります。

 私どもとしましても、報償費の使途については明らかにしないということを、今回の事件ということにかんがみ、旅費の差額ということでもってその金額まで提示しているということでございまして、報償費の使途は公開しないという規則でございますので、これ以上のことを申し上げるのは非常に難しい、こういうことであり、また我々としては独自調査でもってすべきことはした、こういうように思っております。

松本(善)委員 そうすると、外務省のようにきちっとした調査報告をするという考えはないということですか。

福田国務大臣 今申しましたように、我々としては独自調査をして、そして公開というか、予算委員会でも申し上げることのできる範囲で申し上げた、こういうことでございます。被害額を申し上げたということでございます。

松本(善)委員 いろいろきょうも答弁をされましたけれども、それである程度わかりますけれども、しかし、極めて不十分だと私は思います。これをそういう態度で処理されるというのは内閣官房として非常に無責任だ。今、国民の政治不信の最大原因の一つにみんな挙げられていますよ。私はそう思います。

 この問題に関しては、我が党の志位委員長の予算委員会での質問の中で示した、いわゆる「報償費について」という文書がございます。きょうも本委員会で取り上げられた、同一のものだと思いますけれども、これが大きな波紋を広げておりまして、中でもテレビ朝日系のニュースステーションでほぼ断定的に、筆者は現官房副長官古川貞二郎氏のものと報じました。

 きょうもございましたけれども、他党も含めて、この点について予算委員会の質疑が行われました。志位質問に続く我が党の山口議員の予算委員会での質問は、この問題の解明をさらに一歩進めたと思います。

 山口議員が指摘をいたしましたように、内閣組織令によれば、機密に関することは内閣参事官室の事務であり、首席参事官はその事務を総括整理する立場にある。福田官房長官は、このことと、古川官房副長官が当時の担当者である首席内閣参事官だったことをきょうも認められました。首席内閣参事官と機密費の関係については、部分部分として内容を知り得る立場にあったこと、それから機密費の引き継ぎについては口頭と文書の双方があったこと、八九年、平成元年五月当時、引き継ぎ文書を作成し得る当事者は古川氏以外にないということを認められました。

 きょう、新しいことをちょっと申し上げますと、その文書の形式は決裁文書の形式、二行書いて一行あける、これは一般的に、役所に勤められた、決裁文書を書かれた方、みんな知っていることでございます、このやり方でありますし、文書の下に書いてあります、私は内閣の答弁書と比べてみたのですが、下の方に、「B5 上質五十五キログラム(五十枚天のり)」これはこのころのものです。六十一年五月十三日の中曽根総理の出された答弁書、それとほぼ同じであります。

 それらの点から見ますと、これはもう極めて古川さんのものだということに、これだけでも近いと思いますが、十九日放映のテレビ朝日系のニュースステーションは、筆跡鑑定で四人の専門家が古川氏の筆跡と同一だと述べていることを報道している。千葉県警科学捜査研究所の文書鑑定課長だった石井利明氏は、特徴点を抽出して、類似箇所が七〇%以上ということで本人の筆跡であるという判断がつくと思いますと述べ、所見書では類似率が八二から九五%と報道されました。この筆者が古川貞二郎氏だという疑いは限りなく濃いものになったというふうに言えると思うのですね。

 官房長官のこれについての答弁は、きょうもそうですけれども、本人が否定をしている、出所が不明だ、この二つだけなんですよ。それで答弁が通ると思っているところが問題なんです。

 朝日新聞の十八日付社説は、「すでに「裸の王様」だ」という表題の社説を出しました。官房長官、お読みいただいているかどうかわかりませんが、内容は、KSD、機密費、正確には報償費ですね、米原潜事故等の重大問題について、「首相はもとより政府全体がまともに対応できていない。」と述べている社説であります、全文は紹介しませんけれども。

 本人が否定をしている、出所が不明だ、私は、そういう答弁で通ると思っているのは文字どおり裸の王様だと思うのですよ。世間はみんな、ニュースステーションのああいう報道を見、そして委員会で各野党の委員が質問をされ、官房長官もそれが根拠がないということは言えないのですね。本人が否定している、出所が不明だ、その二つしか言えない。これは、世間は、ニュースステーションを見た皆さんももちろんのこと、それからその他の報道も、みんな古川さん前提だ、古川さんは焦点の人だ、こういうことで報道していますよ。

 私は、これだけ世間がそういうふうに見られているということになりますと、官房長官のその答弁だけでは絶対通らない。少なくも反証が必要です。例えば、この筆跡は古川氏のものでないという鑑定書がもし出るのなら、それをちゃんと何人も何人も、四人もう既に出ているというのだから、あるいは八人とか十人とか出すとか、そういうことをしなければ国民は絶対納得しないですよ。

 この問題について、古川氏の筆跡鑑定を含めて、内閣官房長官として徹底的な解明をするという考えがあるかどうか、聞きたいと思います。

福田国務大臣 繰り返しになるのですけれども、繰り返すしかないので繰り返しますけれども、出所不明で何かわからぬ怪文書、それを一々反証せいとかいうふうに言われても困るんですよ。もう少し、せっかく入手されたのですから、そのルートを教えていただきたい。せめてそのぐらい教えていただきたい。そうすれば、私どもも調べる必要があるかどうかということを考える一つのよすがになると思いますので、それをお願いしたいと思います。

松本(善)委員 私は、怪文書なんというような認識は、もうそれこそ紛れもない裸の王様ですよ。だれもそう思っていない。

 それは今、いろいろな形で内部告発が起こっています。氏名は言わないですけれども、外務省におられた方、官房におられた方、あるいは官房長官の秘書をやっておられた方とか、いろいろな形で内部告発がある。これはおかしい、これは徹底的に解明すべきだという国民の世論の中での動きなんですよ。

 私は、出所がどうのこうのと言われる前に、筆跡鑑定で四人の専門家がこれは同一人だと言っているんだ。そうしたら、これは本当かどうかというのを調べるのが当たり前じゃないですか。何で内閣官房が筆跡鑑定をやらないのか。やったらいいじゃないですか。

福田国務大臣 筆跡鑑定、筆跡鑑定とおっしゃいますけれども、それはテレビ朝日のやられたものですか。委員の方でやられたらいかがでしょうか。マスコミ頼りにならないで、御自身でやられたらいかがでしょうか。

松本(善)委員 それを言われるならば、私は国会でやってもいいと思いますよ。

 私は、今の答弁なんかを見ると、本当に徹底解明をするという気がない、最初に申し上げたとおり、これについて本当に軽視をしているということの何よりの証拠ですよ。

 古川氏はこの問題の担当者を務め、官房事務については最高の責任者で、あなた以上によく知っていられると私は思いますよ、何回もの内閣のもとでそれをやられたわけですから。国会で真実を明らかにする責任もあれば、最も適任者であります。

 そして、私はこの委員会で出席を求めたのですが、与党の反対で、結局、今回は出席をすることができない。引き続いて協議をするということになりましたけれども、これは国会法ではちゃんと出席を求めることができるようになっていますし、その根拠はやはり憲法六十三条からきているというふうに思います。

 きょう実現しなかったことは極めて遺憾でありますけれども、国会としても解明をするために、きょう中沢委員も言われました、官房副長官が出席をして集中審議をする、私も賛成で、これを要望いたします。同時に、予算委員会でも古川氏の証人喚問が要求されましたが、私も、やはり証人として出てきてもらって聞く必要があるのじゃないかというふうに思います。

 この要望を委員長にする前に、官房長官、古川さんが国会へ出てきて証言をされる、あの人は今そうでないと言っておられますけれども、証言をされるということに賛成ですか、どうですか。

福田国務大臣 古川副長官は副長官として報償費の業務にはかかわっていないということでありまして、報償費に関する質問でございますれば、現在この責任を持っております私、官房長官にお尋ねをいただきたい、このように思っております。

松本(善)委員 今はそうでないけれども、かつて担当者であったわけですよ。その知り得る範囲のことを国会で証言することに反対かどうかということを聞いているのです。

福田国務大臣 要するに、私、ただいま申し上げました趣旨に基づきまして、古川副長官をここに招致するということには反対でございます。私が答弁させていただきます。

松本(善)委員 何でですか。国民の前に真実を語る。内閣としても解明をするのに、内閣としては証言を求めることができません。国会で証言をしてもらって、やはり国民の前に真実を語ってもらう。私は、ここまで疑惑が来ていれば、古川さんはその責任があると思いますよ。何で反対なんですか。何で国民の前で真実を語ることに反対なんですか。

福田国務大臣 ですから、私は、真実を語ることに反対しているわけじゃなくて、官房長官の私が責任を持って答弁をする、こういうことで本人にも事実確認はいたしております。

松本(善)委員 本人は記者会見でも否定していますけれども、否定をしても違うということはいっぱいあります。ロッキード事件なんか、みんな証人が否定をしたけれども、後から捜査によってこれは違うということになりました。

 これはやはり、国民の前に本当に真実を語る責任のある問題ですよ。これに反対だということ自体がますます疑惑をふやす。堂々と国民の前で決着をつけるべき性質のものですよ。

 私は、委員長にお願いしたいのですが、先ほどは、集中審議と、それから国会法に基づいて答弁をするということについても中沢さんと同じように要求をいたしますが、同時に、予算委員会でも要求をしておりますけれども、本委員会、やはり担当の委員会、証人喚問、そして必要ならば筆跡鑑定、これを含めてこの問題についての徹底的な解明をしていただきたい。これは、中央紙の社説で国会の存在意義が問われるとまで書かれている性質の問題でありますので、お取り計らいを願いたいと思います。

横路委員長 ただいまお申し出の件につきましては、理事会で協議をいたします。

松本(善)委員 官房長官、今私が申しましたのは日経の二十二日の社説ですよ。「予算案の成立を急ぐあまり、KSD事件や機密費流用疑惑の究明がおろそかになっていいということにはならない。」「予算案が無傷で成立するようなことがあってはなるまい。国会の存在意義が問われる問題である。」私は、日本経済新聞がこういう社説を出すまでに至っているということをやはり真剣に受けとめないといけない、そのことを申し上げ、そして、別の機会にこの改善措置の問題とか予算削減の問題で官房長官に伺いたいと思います。

 これは、内閣官房として被害届を出しているのですけれども、官房長官は、予算委員会では、いろいろと証拠と思われるような資料が添付されているような事情がありまして、捜査の支障になる可能性があるということで提出は差し控えるという答弁をされました。では、証拠書類は除いて被害届だけ出したらいいじゃないですか。これは、内閣官房が基本的に判断すべきことです。何で出せないのですか。

福田国務大臣 おっしゃるとおり、捜査上、支障を及ぼすということでありますけれども、今回の被害届には、本来公開しない情報、先ほどちょっと御説明しましたけれども、そういうものも入っておりまして、そういうものを出したということは、捜査が開始されて、真相解明に不可欠であるということでありまして捜査当局にあえて提出した、こういうような情報が含まれているということでございまして、こちらにお持ちするというのにはふさわしくないものでございます。

松本(善)委員 証拠書類がついているからという答弁では今はないように思いましたが、答弁の訂正ですか。

福田国務大臣 被害届は、届け自身とそしてその証拠書類とかいうものが全部一緒になっているわけです。ですから、分けてというわけにはいかないということでございます。

松本(善)委員 そんなことは全くないですよ。証拠書類を除いて出せばいいじゃないですか。それは出せるものなんですよ。私は、この点でも、やはり官房長官がこの点について非常に軽視をしている答弁だと思いますよ。

 何でかというと、ちょっと国家公安委員長にお聞きしましょう。伊吹国家公安委員長は、予算委員会で提出できない理由について、被害届、告発状はかなり詳細なことが書いてあるということを述べておられました。いわば微妙な違いがあるのですね。私は、証拠書類を除いて出せばいいと。それはいわばできないという趣旨の答弁ですよ。詳細のことが書いてあるからというのが伊吹さんの答弁。

 私は、そういう点についても官房長官は非常に軽視しているということを言った上で、伊吹国家公安委員長に伺いたいことは、やはり答弁で、これを開示することと捜査によって守られる公益の比較考量によって決定される、いわばこれは刑事訴訟法四十七条と国会法百四条との関係でおっしゃったと思います。しかしながら、告発から既に一カ月たっているのです。もう被害届や告発状ぐらいは国民の前に出していい時期になっているのじゃないだろうか。あるいは、どうしてもそれが詳細だからできないということならば、その部分は除いた告発や被害届の概要について国民の前に明らかにする、少なくもそのぐらいの責任はあるのじゃないだろうか、あなたの言われる公益の比較考量という観点からいっても。

 これは時期だとか内容だとかによって変わると思うのですよ、やはり、内容をこの程度にするとか、あるいは時期がもう一カ月もたっているということによって。告発状が出たすぐのときと今とは違うと思います。国家公安委員長、どうお考えですか。

伊吹国務大臣 まず大前提として申し上げておきますが、民主党の中沢先生から御質問がございましたときに申し上げたように、事国民の血税に関することでございますから、粛々と、いかなることにもとらわれず、迅速に捜査をするようにということは指示してございます。

 その上で、先生は御経験がお深いですからよくおわかりのように、憲法六十二条、そして今おっしゃった国会法百四条の国政調査権、それから憲法六十五条による行政の民主的な執行権、この執行権にはいろいろな法律が実はくっついております。その中で、刑訴法の四十七条が、先生がおっしゃいましたとおり、「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」こう書いてあるわけですね。

 ですから、私があのとき申し上げたのは、捜査当局の立場からすると、被害届あるいは告発状その他それに絡まるもろもろの捜査上の情報が、今後、この事案にかかわらず、何か漏れるということがあれば、刑訴法第一条に言っている「事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。」という、この大きな公益との間にどちらを優先するかという大きな問題がありますと。ただし、これは事国会に関することでございますから、過去も理事会がいろいろなお知恵をお出しになったのですよ。だから、理事会の御判断にまたねばなりませんと私は申し上げたわけです。

松本(善)委員 それは理事会でも相談するわけですが、私が申し上げたことは、公益の比較考量という問題は出てきますけれども、例えば告発状、被害届のすべてでなくても、こういう事実について被害届が出た、あるいは告発がなされたということをまとめて国会に報告することは当然できると思うのです。時間の関係で、まとめて後で御答弁を。

 そしてもう一つは、一カ月たっているのに何で強制捜査に踏み切らないのだろう、逮捕、捜索はしないのだろう、これは国民が非常に疑問に思っていることであります。外務省が告発し、内閣官房が被害届を出しているわけですから、犯罪の容疑は問題ないと思います。問題ないというか、すべてが確定的ではないけれども、少なくも犯罪を犯していないというようなことはあり得ない、私はそう思います。世間もそう思っていると思います。事実、全く無罪になるような、無実のような者を外務省が告発するとか内閣官房が被害届を出すのは異例のことですから、そんなことはあり得ないと思っていると思いますよ。

 それから、ただ問題は、これは盛んに言われていること、松尾個人の犯罪にしてしまおうとしているのではないかということが世間で言われているというのです。やはり、罪証隠滅のおそれは極めて大きい事件だと思うのですよ。それで、個人の問題ではなくて、あるいは数人の犯罪ということになるかもしれぬという報道もされております。私は、このまま強制捜査をずっとしないと、罪証隠滅、野放しになるのではないかという危惧を持つ国民もいっぱいいると思います。現に、筑波大学の名誉教授の青木彰氏が東京新聞に書いておられることですが、役所ぐるみの疑惑隠しのおそれが十分考えられる状況下で、捜査当局の腰が引けたと国民に受け取られても仕方がない、こういう論説を出しています。

 私は、それも全く関係がないというふうにも言えないと思うのですよ。例えば、福岡の高裁で裁判官とそれから検察官とのかばい合いのような事件が起こっているでしょう。国民が、外務省や内閣官房をかばうために捜査当局が腰が引けているのじゃないかということを、この青木さんはそういうことを言っているわけですよ。それを紹介しているわけだけれども、そういう疑惑が起こる危険性のあるものなのです。

 だから、私は、国家公安委員長がすべて答えられればそれで結構ですが、刑事局長もそのために呼んだわけですが、何で強制捜査をしないのか。これは、それに対する批判もありますから、それについての反批判といいますか、どういうつもりでいるかということの中身、それから先ほど言いました被害届の問題について、国家公安委員長の答弁を求めたいと思います。

伊吹国務大臣 まず、日本の法制度あるいは捜査は極めて公平になさねばなりません。したがって、例えばある公安事件について、政党人である私が、このことを一生懸命やれ、こちらはやるなというようなことは言ってはならないことです。

 したがって、本件についても、告発が出た、被害届が出たからこれは確実に有罪であるということを立法府の場で論ずるのは私はいかがかと思います。これは、やはりきちっとした捜査の手続を踏まれた上で司法の場で最終的に判断されるべきことです。したがって、おくれているかどうかは、誠心誠意これはきちっとやれということだけは私は指示してございますので、先ほど中沢先生がおまえの言ったその心を十分理解しているとおっしゃっていただいたことで、私はすべてが尽きていると思うのです。

 あえて先生は御承知の上で言っておられると思いますが、一部で強制捜査をするということになりますと、勾留は二度しかできませんよ。そういう中ですべてが詰め切れない間に本人の勾留ができないなどということは、かえっていろいろな面での公平さを損なう、そういうありとあらゆることを考えて、日本の捜査を極めて公平に、かつ税金を納められた方のお気持ちに沿うようにきちっとやっておるということだけは理解してやってください。

松本(善)委員 終わりますが、今有罪になるということを決めつけているわけじゃないのですよ。私の経験からいえば、逮捕状や捜索令状を出す程度の容疑事実というのは十分あり得ると私は思います。それから、いいかどうかは別として、一たん勾留期限が切れても、それを新しい犯罪として逮捕するというのは幾らでもやっているのです。

 それから、所信表明で、伊吹国家公安委員長は、警察に対する信頼が揺らいでいるということについても述べておられます。先ほどもその回復のためにやっているのじゃないということを言われましたけれども、私は、この処理のいかんによっては、やはり警察に対する信頼は疑われると思いますよ。そういうことを指摘をして、私は質問を終わります。

横路委員長 北川れん子さん。

北川委員 社民党・市民連合の北川れん子といいます。よろしくお願いします。

 きょうは、今も続いていらっしゃったのですけれども、報償費、いわゆる俗称で機密費と言われているものについて、まず幾ばくかお伺いをしていきたいと思っています。

 先ほども緊迫した御質問が続いていたのですけれども、政府が報償費、機密費についての正式な見解として述べられるのは、大蔵財務協会発行の「予算事務提要」にある言葉を引用されて常にお答えになっています。その報償費がどうしてすぐに、戦前使われていた機密費、今はもうそういう機密費というものがないにもかかわらず俗称として機密費になっていき、そして短絡的に非公開でいいのだというふうに決められてきた過程が私にはどうもわからない。そこら辺から、御質問の視点を今までとは少し変えてお伺いをしたいと思います。

 国の方の報償費というのが具体的には余りよくわからなかったので、地方の報償費の方を幾ばくか調べてみました。

 そうしましたら、役務の提供、施設の利用等に対する謝礼、または行事に伴う賞金及び奨励的意味を持つ褒賞金等を支給する場合とあります。そして、例えば講演会、研究会等の講師の謝礼、市税の前納報奨金とか人命救助に対する謝金、善行者に対する表彰金、卒業生、優勝者の表彰金、そしてこれは余り国では該当しないかもわかりませんが、例えばネズミ、イノシシ等の有害動物の買い上げとか有害昆虫の買い上げとかというふうになって、諸謝金と言われるものが割と多く含まれているわけなのですね。これが地方で使われている報償費というものの概念であります。それで、幾ばくかの予算が税金から使われてつくわけです。

 この間、ずっと報道が一カ月続いている中で、では、政府の官房報償費というものが何に使われていたのかというので、探るのはもう私たちもマスコミに頼るしかないわけですが、それは与野党の外遊の折のせんべつとかお土産代とか宿泊費等々とか、そういう話になってきているわけです。

 とりあえずは、先ほど申し上げました地方での報償費の概念プラス、この間マスコミから出ております接待費も含めた上での幅の広い使われ方というふうに概念をみなしてよろしいかどうか、まずお伺いしたいと思います。

福田国務大臣 内閣官房の報償費というのは、内政、外交を円滑かつ効果的に遂行するためにその都度の判断で機動的に使用する経費である、国政の運営上必要不可欠なものである、こういうことでございまして、このことにつきましては、使途等につきまして、報償費の支出に当たりましては、会計法令に基づいて他の経費と同様に所定の手続を経て適正に支出しており、毎年度会計検査院による検査も受けております。

 今、その中身がわからぬというお話でございますけれども、冒頭申し上げました趣旨で使用するものでございまして、その使途の公開は、報償費の機動的な運用や内政、外交の円滑な遂行に重大な支障を来すので困難と考えておる、こういうことでございます。

 また、付言申し上げれば、こういうものはほかの先進諸国にもございまして、それは国によって違いますけれども、大方会計検査を受けないとかいったようなことで遂行されるというふうに承知しております。

北川委員 それでしたら、せんべつやお土産代等々が内政が円滑に遂行するために使われていたということはお認めになったというふうに見ていってよろしいのでしょうか。

 といいますのは、今言われました外政と内政、外政につきましては、私は地方を持ち上げましたのは、殊に地方というのは、外交が密着して何らかの関与をするということは場面としては少ないわけですから、報償費の中に入っていない、国政ですから、外交が近々の問題として入ってくる、そこを非公開にするという考え方は、幾ばくかは納税者として理解し得る範囲だろうと思うのですが、内政を円滑にとり行うために使われるお金もなぜ非公開にしなければいけないかという問題をもう一度明確にしていただきたいと思うのです。

福田国務大臣 また繰り返すことになりますけれども、これは内政、外交を円滑かつ効果的に遂行するということでもって、その使途について明らかにするということはそういう行為の障害になる、こういうことでございますので非公開にしておる、こういうことでございます。

北川委員 それがもう説得力がないという感じがするわけで、外政に関して非公開であるという部分で幾ばくかのベールに包まれた部分を持ったとしても、内政に関しての部分にどうしてそういうふうにベールを張られて、そしていわゆるこの機密費、報償費に対しましては、戦後も四百件ほどの質問がいろいろな段階で国会でされているわけですが、答弁をずっと見ていますと、割と無視したといいますか、余りそう重きを置かなくて、これは円滑に遂行するために必要だから、余りこのことは表に出さなくていいのだという回答の繰り返しなんです。

 その繰り返しの中で、九七年には、二億円の着服等々の話が橋本元内閣総理大臣の折にも出ました。外務省の方で出た問題が週刊ポストに出ましたね。そういう問題があって、そのときも小渕国務大臣は、これはモラルの問題だから、こういうことがないように見ていきたい等々の話をされていて、今回、九三年から九九年まで室長であった方が、九億とも言われるお金に膨らんで一人で操作をすることができたという事実があるわけで、結構、内政の方に関するお金の使われ方が、水増し請求や幾ばくかのトリックの中で着服することが可能であったという事実が表に出ているわけですから、今、そこに関しまして、これから以降も非公開にせざるを得ないのだというのは説得力がないというふうに思うわけですが、いかがでしょうか。

福田国務大臣 これは歴代官房長官が、随分何回もだと思いますけれども、同様趣旨の答弁をしているわけでございまして、報償費というのはその後そういう性格のものであるということで御理解をいただきたい、こう思っております。

北川委員 福田官房長官はどうもマスコミで流されているものを引用するとお嫌いかもわかりませんが、自民党の現職の議員さんが、機密費で、外遊の折に担当者が私にお金を持ってきたけれどもたたき返したという意見、主張、やったことが堂々と載っていましたが、これ以降、与党ベースでは、機密費をそういうものには使わないというふうな方針を幾ばくか検証し直しているとか、そういうことはないのでしょうか。

福田国務大臣 具体的に使途について申し上げるわけにいきませんけれども、報償費の性格から、その使途の責任はすべて官房長官にあるのですね。ですから、歴代官房長官がそういう趣旨をわきまえた上で厳正な使用をしているというように私は理解をいたしております。私も全くそういうような趣旨でもって今官房長官としての職を果たしておるというようにお考えいただきたいと思います。

北川委員 与党の議員がたたき返すようなお金、もらったものでもたたき返すようなお金は適正な遂行には当たらないというふうに私は思いますので、いま一度その辺等も含んでお考えいただきたいと思います。

 それから、会計検査院の方にお伺いしたいと思うのですが、先ほどから、機密費というのは、大日本帝国憲法下、旧会計検査院法で二十三条に載っているものなのですが、検査を除外したというふうに流れていって、幾ばくかこの傾向が、日本国憲法、現行憲法下になっても機密費は除外してもいいものだというふうな風紀といいますか土壌といいますか、そういうものが会計検査院の中にあるのではないかというふうな気がするわけですが、いかがでしょうか。

石野会計検査院当局者 会計検査院は国の収入支出を検査しておりまして、報償費につきましても、検査に当たりましては、それが使用目的に従って適宜適切に支出されたかどうかについて確認する必要があるということでございまして、検査をしてきておるところでございます。これにつきましては、他の経費と同様に書面検査あるいは実地検査等を行いまして、違法、不当なものがないかということで検査してきておるところでございます。

北川委員 報償費は簡易検査の範疇にあるというふうにお伺いしたのですが、そうですか。

石野会計検査院当局者 今申し上げましたように、国の収入支出を検査しておるということでございまして、報償費につきましても検査の対象としておるところでございます。

北川委員 私の質問に答えていただけていないと思うのですが、報償費は簡易検査でやっていらっしゃるのでしょうか。

石野会計検査院当局者 失礼いたしました。

 報償費につきましては、計算証明の手続の中で一部証拠書類等を手元保管にするという扱いを認めておるというところがございますが、それ以外につきましては他の経費と同様の検査をしておるということでございます。

北川委員 それは簡易検査をしているということになるのかどうかが、ちょっと私素人ですのでわからないのですが。ほかの答弁では答えていらっしゃいますよね、以前の答弁では。

石野会計検査院当局者 簡易な検査と言われるのはどういう意味なのか、ちょっと定かでないのですが、検査院といたしましては、証拠書類というものを計算証明規則により提出することとなってございますが、報償費につきましては、その性質上といいますか、各省庁等からの承認の申し出がございまして、それに従いまして、特別の事情のある場合の計算証明として、役務提供者等の領収書等の証拠書類の手元保管を認めておるということはしてございます。

北川委員 手元保管を認めていらっしゃるので実地検査に入る。その実地検査に入ったときに、通常は持って出ることができるけれども、報償費に関しては実地でいかなければいけないというのと、メモをとってもいけない、コピーもいけないというのを簡易検査だというふうに私は説明を受けて理解したのですが、これをやっているというのかどうか、再度お伺いしたいのです。

石野会計検査院当局者 報償費の持つ性格ということに配慮いたしまして、現実の検査においてはそういう形の場合もあろうかと思いますが、これは場合によることでございまして、すべての場合、そういうコピー、メモをとらないということではございませんで、必要に応じて検査で対処しておるということでございます。

北川委員 会計検査院としては、配慮をするという立場でされる部署ではない、それが本当に適切に内実が使われていたかどうかという検証と、着服、横領等々が出ないということを第三者機関として調べる独立機関であると思います。その配慮をする配慮の重ね方が、九億まで私的に着服することも可能であり、なおかつ使う方も無造作に使っていいものだという気風を醸し出したのではないかという気がするのです。

 その辺、何度かこういう問題が表に出てきているわけですが、今回が初めてではないし、そのたびに会計検査院の方も聞かれている答弁には、これから善処してまいりますとか調査してまいりますとかいろいろおっしゃっているわけですから、今回のこの単年度ではなくて経年にわたった中での事象に対して、配慮が必要だという立場で今後も会計検査院という職を遂行されるのでしょうか。

石野会計検査院当局者 本件の事態につきましては、どういった経緯でこういう事態が生じたのかという事実関係を十分調査しますとともに、その発生原因がどこにあるか、それを防止するための体制というのはどうあるべきかというふうなことで、十分な検査をしてまいりたいというふうに考えております。

北川委員 司法が解明する前に、まず会計検査院という部署があって、ちゃんとしたお仕事が遂行できる立場で独立性があるわけですし、今、簡易検査の問題について幾ばくか言葉をずらしてお答えになったのですが、現場の人たちは、コピーもとってはいけない、メモもとってはいけないとかいろいろな足かせをさせられているわけですよ。その実態も知っていらっしゃってあの答弁というのはいかほどのものかというのをお伝えしておきたいと思います。

 今後も、この報償費が、外交にかかわる問題の機密という部分が必要だという精査もしないまま、無造作に内政の方の形でも使われていくならば、今の立場で会計検査院が今後同じような事象を起こさないような歯どめになる部署になっていくというふうには、今の御答弁では思えなかったということをお伝えしておきたいと思います。

 それと、ここに支出負担行為決議書というのがあるのですが、ここに債主という欄がありますね。この松尾さんというのは内閣官房の方のお金も引き出すことができる担当者であったということなのですが、その債主という欄に松尾さんのお名前が載るというふうに思っていいのでしょうか。

石野会計検査院当局者 具体的な使途の状況ということでございますので、検査院から申し上げるのはどうかというふうに思います。支出のそれぞれの省庁にお聞き願いたいというふうに思います。

北川委員 他部署の人が、ですから、外務省の職員が、他の機関、内閣だったら内閣の方のお金を引き出すという、この支出負担行為決議書というのを出さないといけない。そこには、債主というのはだれの名前が載るのでしょうか。

福田国務大臣 それは、内閣官房長官が決裁しておるものでございます。したがいまして、外務省側にはないのですね。そういう必要はないというように考えていただければよろしいと思います。

北川委員 いやいや、お金を引き出す場合には、どの部署であれ、支出負担行為決議書というのが必要なわけですよね。そして、この債主の欄に官房長官のお名前が載るというふうになるわけですか。それとも、引き出す当人、松尾さんという人になるのか。それを教えていただきたい。内閣府のお金をおろす場合ですが。

福田国務大臣 その行為は官房長官だろうと思います。

北川委員 ということで、松尾さんのしたこともすべて官房長官のお名前で支出負担行為決議書が出されていくということで、すべての行為の責任者は、松尾さんというよりは官房長官にあったということが一つ明らかになったと思うのです。

 ここで、一九八〇年四月一日の決算委員会で、庄司委員というのが一つ疑問を呈されている議事録があったのですね。そこでは、一たん引き出したお金を私金というふうにみなしていくのはいかがなものかという見解を述べていらっしゃるのですが、それに国はどう答えているかといいますと、「調査室長等取扱責任者が債権者である、その債権者に対して所要資金を支出するということで国の歳出としては終わっている」「国の経費として消費されたものと解される」「保管ということが行われているものとは考えられない」、私金である、保管もしていない、私金というふうにみなしていいというふうに答えているのです。

 ここにいろいろなものが含められて刑事事件なり事件性を持つものに発展していくかぎがあるのではないかと思うのですが、二十年前の質問ですが、いかがでしょうか。

福田国務大臣 官房長官が決裁やって、そして公金を預かっているわけですね。その公金を向こうに渡した、こういう形になると思います。(発言する者あり)

北川委員 そうなんですよ。今おっしゃいました私金になった横領なんてあり得ない、だからやりたい放題なんだということ。

 でも、やはりこれは庄司委員が疑問を呈されていて、いや、これはこれでいいんだ、保管をしていることはあり得ないし、私金であるんだということで、今福田長官は、だれが受け取ったというふうに言われたんですか。

福田国務大臣 今回のものについてということですか。

 一般的に言えば、官房長官が保管している、管理責任のある公金だ、こういうことになりますね。

北川委員 では、二十年前に聞かれている私金であるという見解は間違えていて、公金であるという見解に政府としては直していくというふうに考えてよろしいでしょうか。

福田国務大臣 会計法上は、官房長官が保管する公金――会計法上と違うんですね。しかし、実態的には官房長官が保管する公金である、こういうことですね。

北川委員 官房長官が保管した公金をある担当の公務員に私金として渡す可能性というのはあるわけですか。

福田国務大臣 そもそも公金だと思いますから、私金で渡すということはあり得ないと思いますね。

北川委員 どこまでいっても、私金からは範疇はのいて公金の扱いということが、幾ばくか保管をする中で公金をどう見ていくかということも今回の問題にかかわってくると思いますので、以降また精査をしていただければと思います。

 次は、橋本龍太郎行革・沖縄北方担当大臣、長くいろいろな大臣をお引き受けになっている橋本大臣にお伺いしたいと思います。

 先ほどもちょっと出したのですが、橋本内閣時代にも外交機密費問題について疑惑が報じられたことがありました。その件について、当時の池田行彦外務大臣は何らかの指示をしたとか報告を受け取ったということがあったのでしょうか。首相当時、いわゆる報償費、機密費についてはどのような処理をしていたかということは、御存じのことをお述べいただきたいと思います。

橋本国務大臣 私は、報償費というものを歴代の総理でみずからお扱いになった方はないと思います。これは、従来から官房長官の専管事項でありました。ですから、私は全く存じません。

北川委員 村山首相もそんなふうにおっしゃっているのが載っておりましたので、多分そうなんだろうと思うのですね。

 でも、歴代、やはり官房長官と首相というのは二人三脚といいますか、一心同体というか、二心同体というかという立場で、扱うのが官房長官であって、首相というのは何らかの示唆なり指示なりをその折々与えていたのではないですか。

橋本国務大臣 官房長官の専管というのは、まさに文字どおり専管です。そして、あるいは村山総理が私の前任者として何をお話しになったか、私は存じませんけれども、指示などいたしませんし、また、する性格のものではございません。

北川委員 首相、総理大臣の座というのは、議員を経てからしかならないわけですが、では、橋本大臣が議員の折に、官房長官から幾ばくかの報償費、機密費というものをお受け取りになった、そういう御記憶というのはおありになるのでしょうか。

橋本国務大臣 内閣の指示を受けて、あるいは要請を受けて海外出張に参りましたときに、それは公の出張としてその旅費あるいは宿泊費は支弁されます。それがどこから出されているかまで私は知りません。

北川委員 それは議会費というものがあろうと思いますし、それが幾ばくかのせんべつというお金のことを今言われたのか、では、自分でチケットを買ってということで現金を受け取ったことがあるというふうにみなしてよろしいのでしょうか。

橋本国務大臣 少なくとも、自分の費用で自分の用事で海外に出るとき、お人様のお世話にはなりません。今、内閣の指示または内閣の要請によってと私はきちんと申し上げました。その場合には、内閣の要請を受けたために公的な性格を持ちますので、自分で切符を買わなくてもきちんと切符は買っていただけますし、宿舎の手配もしていただけます。その上でその費用は支弁されます。

 ですから、きちんと分けて今申し上げましたように、内閣の要請または指示を受けて海外に出ます場合には、確かにその費用というものは弁済をされておりますが、それがどこから出ているかを私は存じません。

北川委員 私は経験が浅いものですから、そういう指示を受けたことがないのであれなんですが、一議員に内閣が外遊する等々の指示、どのようなものをお受けになった御記憶がありますでしょうか。

橋本国務大臣 例えば、昨年二月にワシントンにおきまして、国際連合薬物対策、国連薬物統制計画及びアメリカ下院共催のいわゆる薬物対策サミット、これに私は出席をいたしました。あるいは、マカオの返還式典に政府の要請を受けて私は代表として出席をいたしました。

 一つずつ拾いますとまだございますけれども、列記いたしますか。

北川委員 いえ、申しわけありません。

 そういうものがあって、それが内閣の指示または要請の折にはそういうものがあったけれども、ほかのことでは一切お金を受け取った記憶がないというふうにみなしてよろしいでしょうか。

橋本国務大臣 例えば、私は山が好きですから、山登りに海外に出ることがあります。山登りに公金をちょうだいすることはありません。

北川委員 いえ、それは私的な、プライベートの範囲のことだろうと思いますので、そこにまで触れたくはありませんが。

 きょう午後から参議院の方で村上正邦氏の証人喚問というのが行われていくわけですが、そこで、またもう一度橋本大臣にお伺いしたいと思います。

 私どもの社民党の辻元議員が二十六日の予算委員会でも少し触れたのですが、「沙羅双樹」の四月号に、九八年の二月一日に東京ドームで行われた中小企業の決起大会、これに当時首相であった橋本氏が参加をされてお言葉を述べていらっしゃいます。

 そのお言葉の中に、その折もいろいろな大変な行政に対する不信が募った出来事が起こって、きょうここへ来るのをどうしようかと迷いました、参議院自由民主党の村上幹事長に率直に御相談を申し上げましたところというくだりがあるわけです。その折、金融不祥事の責任をとって三塚大蔵大臣とか小村大蔵省事務次官、いずれも当時の方ですが、辞職をした直後であったということもあって、村上正邦氏にどうしたものだろうと相談をしたということを述べられたと思うのです。

 そうしますと、この大会への出席は、村上正邦氏からの要請があって御出席しようと思われたのでしょうか。

橋本国務大臣 私は、中小企業の決起大会としてその席上に出席をいたしました。そして、その席上で述べましたことは、議員が御引用になりましたことが含まれておりますことはそのとおりでありますが、むしろ御紹介をいただきますならば、私は全文を御紹介いただきたいという思いがいたします。

 なぜなら、私は、昔から職人天国、職人国家論ということをよく申しておりました。明治維新の改革を乗り切れた、近代経済に乗り移れた最大の原因の一つは、江戸時代からの寺子屋教育の普及と職人の腕であった、これが近代工業に乗り移る上で基礎的な部分を支える最大の要因だったと私は思っております。今もそうです。あるいは、敗戦後の日本が今日をなすその基盤というのは、まさに中小零細と言われる方々の職人の腕でした。ですから、私は、職人の腕というものを高く評価しますし、その伝統が切れることを非常に懸念しております。そして、そういうこともそこには書かれておるはずであります。

 一部だけを御引用になりましたが、確かに当時、大蔵省を初め幾つかの役所で問題が起き、非常に厳しい政治批判の声がございましたときだけに、お招きをいただいて、私が参加をすることが果たしていいかどうかは確かに私は迷いました。そして、中小企業の問題に詳しいと思っておりましたし、村上さんに相談をかけましたところ、村上さんは、それは行かれたらいいじゃないですかということでしたから、私は行きました。その事情を素直にそのとおり申しております。

北川委員 ということは、橋本大臣もすごく職人、手づくり、わざというものに関して御関心があって、首相の立場で、御自分がみずから進んで、そういう中小企業の問題やまたそれに派生する問題に取り組んでいる場所であるということで行かれたということで、村上正邦さんからのお誘いがあったから行ったということではないという御答弁だったろうとお受け取りいたしますが。

橋本国務大臣 村上さんから指示を受けたこともないと思いますし、御要請を受けたこともありません。むしろ、中小企業総決起大会としての御案内を受け、私は出席をいたしております。

北川委員 そこまで熱意を持った形でこのKSDという企業体に関して、公益法人なんですが、関心を持っていらっしゃって、今現実にこの午後から証人喚問が始まるという時間になってくるわけですが、政策が一定程度理解を示せるものであったにもかかわらず、自民党という党の体質も問われているところでありますが、なぜ今の問題がその辺で出てきたというふうに思われますでしょうか。

橋本国務大臣 私は、今の質問は、大変失礼でありますが、多少過ぎた御質問ではないかと思います。

 その時点にカレンダーを返していただきたい。中小企業総決起大会、その主催団体がどうかということよりも、ここに集まっておりました中小企業者の声というものは本当に真剣なものでありました。そして、お尋ねになります前に私の方から申し上げておきますけれども、私はその前にも、通産大臣として中小企業を主管する立場でこの大会に参加をしたこともありますし、党の政務調査会長の立場で出席をしたこともございます。

 そして、その当時、だれがこの団体に今のような懸念をお持ちであり、批判をしておられたでしょうか。歴史をもとに戻してお考えをいただきたい。その時点、何らこの団体に懸念を抱く方はなかっただろうと私は思います。メディアもその広告を流しておられましたし、私どもは、そこに集まっておられる方々の真剣さ、これは今でも評価をいたしております。

北川委員 時間を戻してほしいと言われた。私もこの経緯を見ていまして、所信の、KSDが持っていたものに関しては共感し得るところがあるわけです。そこになぜ政治家、政党、官僚というものがいろいろと長年の中で積み上げてきたものがきょう午後からの問題に発展する経緯になったのか、それはなぜなのかということを真剣に考えていらっしゃるというふうにお受け取りしてよろしいんでしょうか。

橋本国務大臣 現在、司法の手がこの問題を立件しつつある、既に収監をされた方もある、そういう中で、私にそれは知り得ることではございません。そして、恐らく、本院あるいは参議院の大半の国会議員が、今あなたが私になさったのと同じような御質問をいただけば答えに窮するでありましょう。そのような状況を知っておったなら、それは問題です。知らない人間に、なぜそのころいいと思ったものが悪くなったんだとお聞きをいただきましても、悪くなった理由を知る立場にございません。

横路委員長 北川さん、もう時間が過ぎております。

北川委員 時間が来たから申し上げますが、これが初めてではなくて、リクルートもそうでした。ロッキードもそうでした。何度も同じような経過をたどりながら志とは違ったところへゆがめられていく、それがなぜなのかというのを今は国民が一緒に考えたいというふうに思っている時代だということをお伝えして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

横路委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後一時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十一分開議

横路委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。太田昭宏君。

太田(昭)委員 公明党の太田昭宏です。

 きょうは質問通告を橋本大臣と麻生大臣にさせていただきましたので、ほかの方は結構でございます。

 この内閣委員会がことしから大変重要な委員会になるということで、それも踏まえて質問をさせていただきたいと思いますが、まず経済運営の基本的な考え方についてお尋ねしたいと思います。

 この十年、失われた十年、こう言われるわけですが、確かに今、政治の迷走ということについては、私たち自身も含めて、数々指摘されていることについて反省しなくてはならない面があろうと思いますが、これが、経済面というものを冷静に見ますと、必ずしも私は、十年間全部不景気であったとか失われた十年であったということは断言できないというふうに思います。

 国内需要を見ましても、確かにバブル崩壊後の三年間、九二年、九三年、九四年は悪かった。しかし、その後三年間は回復を見せた。特に九六年は三・五%と先進国でもナンバーワンの成長率等を示したというわけでありますが、しかし、翌年の九七年から一気に悪くなり、九七年、九八年と二年連続のマイナス成長を記録した。この原因が、私も予算委員会で当時の総理にもかなり厳しい追及をさせていただいたりすることがあったわけですが、多くの方が、九兆円の負担増ということにかなりシフトして話がされたのだというふうに思います。しかし、私は当時から、この底流に実は金融不安を背景にして起こった消費者の将来不安とか雇用不安というものがあったのだということを指摘してきました。

 九七年四月に消費税が増税され、四―六は確かに駆け込み需要の反動で消費は下がった、しかし七―九は上がった。私の記憶では、あの財革法が閣議決定されたのが六月三日ごろだったと思いますし、七月とか東南アジアに激震が走って、私、当時一般質問をした記憶がありまして、十月の終わりごろに香港株の下落とかいろいろなことがあったことを覚えておりますが、七―九は需要が上がった。ところが、十―十二で一気にどんと下がった。十一月が三洋、山一、北拓の金融破綻ということになるわけですが、コール市場の麻痺ということがありました。この十一月から個人消費が一気に落ちる、十二月にはマイナスになる、設備投資も下がる。

 この九七年十一月から、実は消費者の不安といいますと、またどこかの機会で消費ということについても質問したいというふうに思っているのですが、きょうはできませんけれども、将来の不安というのは一体何か、こういうふうになりますと、年金の不安だとかなんとかというのですが、私は、そのときからの一番の不安というのは、むしろ、年金とかそういうものよりも、大丈夫だと思われていた大企業とか銀行、こういうものがつぶれるということで、足元の大丈夫というのが崩落するという、ある意味では雇用不安というようなことに象徴されるかもしれません。特に四十代などの働き盛りの世代にこの不安というものが起きた。よく言われる年金というのではなくて、既存の大丈夫と思われていたものが崩れたという不安が、その後の消費低迷、物価下落をもたらした。この価値観の幅広い揺らぎというものが明確にあった、この認識が大事だというふうに思っているわけです。

 そういう意味では、私は、この消費というものの背景、九兆円負担増というもの以上に金融不安、そしてそれが銀行等をなぎ倒したという中で、深刻な既存の価値観の揺らぎという中にこの不安というものが起きたと。これはなぜかといいますと、私は、これから財政再建とかこれからの経済戦略を考える場合に、あの九七年の分析というものは絶対に必要だということもありまして質問させていただきたいのですが、この認識についてどういうふうにお考えか、お答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 九兆円の負担増というのは、大体七兆円ぐらいと思われておりましたものが九兆円ということで、約二兆違ったというのも大きかったとは思います。が、基本的には、今言われましたように、大丈夫と言われておった既存の権威とか、何となく政治家は信用できない、財界も何だか危なくなってきた中で、銀行はと思っていた、その銀行がばったりいったのが大きかったと思います。

 これは、ビッグバンというのに象徴されるように、北海道拓殖銀行等々、幾つかの銀行がいった中で、都市銀行がいったあの北海道の話は、北海道地区に限らず、都市銀行の倒産というのはやはり非常に大きな不安というのを与えて、何となく、自分が預けているお金は大丈夫だろうかというような、極めて基本的なところに至るまで心理的に与えた不安は、やはりあの銀行、金融関係の倒産というものの与えた影響は極めて大きかったという認識は私も同じであります。

太田(昭)委員 そしてもう一つ、金融そのものの問題。

 九〇年代の不況というのは、やはり消費不況とか資産デフレ、金融不況というのですが、私は、金融不況という面は非常に底流をなす一番大きな問題であったというふうに思うのです。

 九兆円負担増というときに、このパネルも一回予算委員会で使ったことがあるのですが、実は今まで、国内総支出と国内銀行の貸出残高というものが非常に影響を与えているということで、最初にどんと落ちて、九七年の四月からというよりも、景気の動向というものをよく見ますと、貸出残高というものと景気動向、そして一番最初に危ないなという兆しがあったのが、ここでは九六年の五月ぐらいから貸出残高の低下というものが始まっていまして、九六年の九月、早期是正措置検討委設置というのがありますけれども、実はこの時期、中小企業の生産性が急落しているという時期があります。

 この中小企業の生産性が急落したという九六年九月ごろの現状というのはどういうものであったかということで、私はそこの早期是正措置検討委員会の設置ということに思いが至ったわけですが、ここが第一回目の貸出残高の低下。そして中小企業が、既にその九六年の九月というか八月というか、そのあたりから貸し渋りというものを受けて大変に困って、中小企業先行型の不況というのが第一の波としてまず一回目がある。二回目が、そこに矢印がありますが、九七年の十一月、北拓、山一の破綻というところからまた一気に貸出残高が低下をしていく。三発目が、九八年の七月から、金融システム不安定という中で一気に貸出残高というものが減っている。この三連発による貸し渋りというのが特に中小企業にダメージを与え、中小企業先行型の不況が九六年から金融収縮を背景に始まった。私は、この認識が非常に大事だというふうに思っているわけです。

 九七年の九兆円負担増が元凶であるというふうに言われますが、しかし、実態をデータで追ってみると、むしろその一年前から始まる金融収縮があった。九〇年代全体が金融不況というものを底流にしていること、そして九六年、九七年でも見られると思いますが、こうした状況というので、まさに貸出残高ということと景気の問題というのが九七年の現象を説明できるのではないかというふうに思っておりますが、この辺はいかがでありましょうか。

麻生国務大臣 今そこにお示しになりました数字は、このとおりの形になっていると思いますが、基本的には、その後ずっと続くのですが、九九年の八月には全国銀行ベース、マイナス六・五%まで低下するので、銀行貸し出しというのは九六年以降間違いなく減少いたしております。これはもうおっしゃるとおりの数字になっているので、これに対応していろいろな対策が打たれたのは御存じのとおりです。例の中小企業金融安定化特別保証枠なんというのは、約二十兆でしたか、九八年の十月ぐらいからいろいろな対策が打たれたのは御存じのとおりです。

 その背景をと言われれば、いわゆる資産デフレと言われる土地の価格の低落、土地の価格さえ安くなれば世の中すべてよくなるみたいな風潮が、バブルの壊れた後、一時あったのですけれども、そういった後、今言われたような背景になっていると思います。

 資産の価値が下落したために、企業というものに関しては、企業側の資金の需要に対して、銀行としては追い担保、いわゆる増し担保を要求して、今まで仮に百万円の土地であれば約七十万円ぐらいで金を貸していたものが、いきなりその土地の値段が五十万円とか三十万円に下がったものですから、それの七割ということになると二十万ぐらいにしかならぬ、すると、五十万の差があるからさらに担保を出せという話で、追い担保の話等々が非常に銀行と中小企業の間にはっきりしてきて、金を借りるための担保がないということが資金の貸し出し減に結果的につながっていった。

 銀行の方は銀行の方でいろいろ、銀行の内容がいかがなものかということで銀行の資産内容を問われたものですから、銀行の方としても、持っておりました担保価値ががたんと下がっていますから、それに伴って銀行の内容がと言われて、そちらの方も追われたという、両々相まって結果的にそうなっていったのだと思っております。

 ただ、では今の状況はどうかというと、多分そういうことになるのだと思いますが、その状況が、後半になりますと、今度は企業の方は猛烈な勢いで、そのときの痛みというのが残っているものですから、なるべく間接金融によって金を借りるのはやめよう、二度とああいった、銀行に嫌な顔なりおもしろくない、そういうのは嫌だという気持ちが非常に強まったものですから、銀行から金を借りない。それで、企業で利益が出たときは、新しく設備投資をするとか雇用にそれを割り振るということはしないで、結果的に利益は全部借金の返済に充てた。結果として、資金需要は激減しております。

 今は、逆に金融の方は金がある程度余る。ずっと預貯金の比率は八%から九%で一致ですから、それがどんどん銀行に入ってくる。銀行は貸出先を探さなければいかぬ、借り手がなくなってきているということになっているところも、この時代とはまた別の状況が今出てきておって、結果として銀行の貸出先がなくなっておるというようなところもありまして、今度は貸し出しが減っているというのと借り手がないという状況とが両方重なってきているのが昨今の状況だと理解をいたしております。

太田(昭)委員 株価との関連につきましても、私は金融政策というのは非常に大事だというふうに思っております。TOPIXとマネタリーベースの推移というものを見ますと、これが連動しているのではないかというふうに思っております。

 つまり、株は金融商品ですから、マネタリーベース、すなわち金融の量によって株価が影響される。だから、金融政策における量的緩和の問題というのはかなり影響があるのではないかというふうに思っております。

 我が国では、景気対策といいますと、よく表面に出る財政政策ということにかなり目が行きがちなんです。特に最近はそんな気がしてならないわけでありますけれども、財政政策は既に限界で、金融政策をやるしかないという指摘もありまして、世界の専門家もそうした指摘をしているわけです。その金融政策のコアが、私は、金融の量的緩和というのは見逃してはならないことであろうというふうに思っていまして、ゼロ金利というのもある意味ではその範疇にある。

 そういう意味では、金融政策、量的緩和の問題、これをどうとらえるか、そしてまた今の経済状況をどう見るかという問題になるわけですが、三年連続のマイナスの物価、これらについてどう考えているのかということをお聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 確かに御指摘のとおりに、先進諸国の中で、消費者物価、卸売物価が前年度比マイナスになっている国は、日本以外ありません。その意味ではこれは大きな問題だと思っております。加えて、戦後五十年間で、物価が下がった中での不況対策というのをやった経験は我々にはありません。戦後は一貫してインフレ傾向を示しておりましたので、そういった意味では、過去に例がない、経験したことのない新たな形での不況という形になっておると認識をいたしております。

 そういう中にあって、今、金融政策というものが非常に影響があるという御指摘については、私も基本的に賛成です。インフレ対策は日銀の仕事なので、デフレ対策も同様だと思っておりますので、非常に大きな役割だと思っております。

 私どもとしても、その点に関しましては、日本銀行に対してということを、財政諮問会議なども含めましていろいろ申し上げてきているところではありますし、きょう行われました日銀の政策会議においても、私どもから、前に比べたらかなり踏み込んだ言い方で日銀に対してお願いをさせていただいております。

 日銀法の変更に伴いまして従来とは少し違った形になっておりますのは御存じのとおりなので、なかなか言いにくいところではありますけれども、資金の買いオペレーションを出して、今は月々四千億円ぐらいだと思いますね、買いオペをやっておられると思うのですが、そういったものをふやしていくなどというものを含めまして、いろいろ手口がないわけではないと思っております。法律が変わっておりますので、なかなか言いにくいところだとは思いますけれども、上品に、品よくお願いをさせていただいておるというのが正直な言い方だと思います。

 昔とはちょっと違いますので、日銀の方は独立をしておられる形になっておりますので、なかなかそこは言いにくいところだとは思いますが、私どもとしては、感じておるところを率直に申し述べさせていただいておるという状況でして、財政だけではなくて、金融の面からも景気対策というのは積極的に取り組まれるべきものだ、私どももそう思っております。

太田(昭)委員 通告をしておりませんが、私の今質問した点、九七年とかその辺のことについて、金融というものが、前年の九六年あたりからかなり影響があった、そして九〇年代不況というものはそこがかなり大きな底流としての要素であった、したがって、九八年の秋口の金融二法というものは、非常にそれを波を静かにしたということで効果があったのだ、私はそういうような認識をしながら、なおかつ、ゼロ金利とかその辺についても非常に大事な点であるということをきょうは指摘をさせていただいたのですが、差し支えなければ橋本大臣の感想をお聞きしたいというふうに思います。

橋本国務大臣 今、御両所でかわされておりました論議を、言い方がちょっと失礼かもしれませんけれども、大変興味深く拝聴しておりました。

 そして、基本的に私は、今統計を示されたその数字から見ましても、御議論の方向というものは間違った方向に向いているものではないと思います。その上で、金融機関に対する問題点として、今も私自身が心に残ってしまっておりますもの、それは、不良債権、不良資産というものの取り扱いについてでありました。

 当時、我々の考え方の浅かったことを私は否定をいたしませんけれども、きちんとその不良資産が帳簿上に残り、それに対してそれだけの資金が用意され、貸借対照表の上でそれがバランスしていれば、不良債権に対する手当てはそれなりにできていくというのが一般的な判断であったと思います。

 しかし、今日になりますと、これを消しておかなかったということに問題点の一つがあった。そして、これを消しますことに本当に勇気がなかったわけでありますけれども、今、麻生大臣からも触れられましたように、担保の価値が下落して追加の担保の提供を求められるという状況の中で、不良債権化しております資産を帳簿上から消すために、連鎖しての倒産というものに必要以上のおそれを持ち過ぎたかという悔いが残っておることも事実でありまして、この辺のハンドリングを誤ったと言われれば私は弁解の言葉がない、そんな思いもしながら今の御意見を拝聴しておりました。

太田(昭)委員 行革について、一つの角度だけお聞きをしたいと思っております。

 イギリスにおける中央省庁の事務次官の専攻分野というのをある人から聞きまして、その人は、日本はいわゆる東大法学部というもので占められているけれども、しかし、今の時代というのはもう少し幅広い見識といいますか、私は今の人たちが見識がないと言っているのでは全くありません。立派な方が行政を担当しているということを認めた上で申し上げるわけですが、イギリスの中央省庁の事務次官、全部で十五名、一九九九年のデータによりますと、法律職からなっている方が二名、一番多いのが歴史とか哲学ということを専攻した人が多いということで、私はこれは極めて大事なことではないのかなというふうに思っております。

 そうしたことも踏まえて、昨今のいろいろな事件とか事を考えますと、日本社会全体の問題なんでしょうが、もう少し幅広い見識とか哲学とかを持って拝金主義的な傾向を打破していくというようなことに日本は腐心をしないといけないし、ノーブレスオブリージュと言いますが、やはりその役柄に立った人はそれなりの高貴な精神を持たなくちゃいけないということも言えるのだというふうに思っております。

 そこで、こうしたイギリスに比して、日本の省庁再編ということが行われてきたわけですが、この十二名の今の新省庁の事務次官を見ますと、十名が東大、二名が京大出身者で、私立大学出身者は一名もいないし女性もいない、こういう状況にあります。

 ところが、閣僚というのも、一人一人見てみますと、そんな事務次官のメンバーとは全く違いで、その出身あるいは専攻した分野というのがまさに多士済々のメンバーが閣僚に座っている。

 今度は、会社は一体どうなっているかというふうに調べまして、役員四季報というのを二〇〇〇年度版で見ますと、上場企業二千百十名について出身学部を調べた結果によりますと、経済学部出身者が四分の一、法学系と工学系がそれぞれ約五分の一、商学部及び経営学部で約八分の一というふうに、いろいろな学部の出身者がいるようでございます。

 これは、厳しい民間の競争条件を勝ち抜いた結果ということも言えるわけですが、私は、イギリスの例とか大臣の布陣とか、そして会社の役員等々、社長さんのものを見ますと、行革担当大臣として、民間や政治の世界と明らかに異なる現在の中央省庁のトップの構成についてどういうお考えを持っているかということをお聞きしたいと思います。

橋本国務大臣 議員から御指摘を受けまして、改めて私も現在の出身学部を見直してみました。そして、副長官まで、あるいは法制局長官まで含めて考えまして、本当に、東大十二名、京大三名、九州大学一名、非常に構成が偏っている。それは印象は同じくいたします。

 ただ、省庁再編後の事務次官を初めとする各府省の幹部人事、これは、中央省庁等改革基本法に基づきまして新たに導入をいたしました内閣承認制度のもとで、昨年末の閣議で承認をいたしました。

 そして、この原因というものはやはり、振り返ってみますと、採用時から東大法学部というものに偏り過ぎて人材を集めていたのではないか。これは、率直にそういう感じを私は持っております。

 そして、現在、国家公務員の採用におきまして、一種の事務系区分における東大出身者の割合はおおむね五割以下、同時に女性の採用、登用の促進に努めていると承知をいたしておりまして、将来は当然変わっていかなければなりません。

 と同時に、公務員制度全体を見直していく中で、あるいは本当に民間から有能な人材を割愛していただけるのか、あるいは学界から人材を供給していただけるのか。そうした方々を任用していきます中から将来国を背負うような人材が育ってくれればという願いも持っておりますが、現状として考えますと、まだこのイギリスの例に倣うところまでには、我が国の場合には時間がかかりそうだ。

 そのために、それを変えようとするなら、特例任用の制度を考えていく、あるいは公務員制度改革の中でそうした道を工夫していくといったことに尽きるのではなかろうか、そのような感じを持ちました。

太田(昭)委員 公務員制度の改革という中で、昨年の十二月一日の閣議決定、そこで、「人事評価システムの整備を進めるとともに、採用区分・試験区分に基づく硬直的な人材登用を改める。」ということが書いてございます。現在でも、各省においては何らかの評価システムのもとで人事が検討されていると思いますが、その結果が先ほどのような形にあらわれているということで、ある意味では自由競争という中での今の結果が出ているというふうに思います。

 そういう意味では、この行革大綱に言う人事評価システムの整備というものの内容が効力あるものというか、どういう基準に基づくものかということが非常に大事で、精力的にこの中身について検討していただくことが非常に大事なことではないかというふうに私は思っております。それが私立大学出身者や女性を初めとして多様な人材を登用、配置するということになると思いますが、基本的な人事評価システムの整備ということについて、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

橋本国務大臣 この点については、実はさまざまな御議論があることを承知の上で、私は、公務員制度改革の大きな方向づけ、大枠を三月いっぱいまでに示せるようにということで、今事務局の諸君に苦労をかけながら作業を進めてまいりました。

 そして、その中には、若い公務員の諸君、あるいは民間の方々、あるいは若い公務員から実力の世界へということで民間に去っていきました諸君の意見も聞きました。今、それらの意見を取りまとめておりますが、この中には、能力主義あるいは成果主義、もっと言葉をかえますなら信賞必罰といった民間であれば当然のことが行われていない今の公務員制度というものに対する不満が非常に強くあらわれております。

 そうした中で、白地から公務員制度というものを再設計しなければならない、人事システムというものも変えていかなければならない、そこには民間の知恵も借りなければならないということで、事務局にヒアリングを実施させました。三月の末までに、私は、中身はまだバッティングする部分があったり非常に粗いものになると思いますけれども、その大枠の方向はお示しをし、その上で細部を整理していき、六月いっぱいぐらいをかけてその方向づけを終わりたい、今そのようなつもりで事務局の諸君を督励いたしております。

 そうした中におきまして、先ほどの御質問にお答えするような、今の公務員制度ではなかなかなじみがたい官と民との間の人材の交流のシステムでありますとか、あるいは途中から公務員になっていただく方々の処遇の方向づけでありますとか、そうした分野にもウイングを広げていきたい、そのように考えております。

太田(昭)委員 ぜひとも、非常に大事なことでもありますし、優秀な方が採用され、登用されていくということで、今の評価システムを含めて整備を精力的に行っていただきたいことを重ねて要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

横路委員長 植竹繁雄君。

植竹委員 自由民主党を代表いたしまして、植竹繁雄でございます。

 今回新制度となりましたこの省庁再編成でございますが、その前に、先般起きましたえひめ丸の被災された方々に対し、心からお見舞い申し上げる次第でございます。それとともに、今、陳謝のために来日されているアメリカの方々に対しましては、いろいろと補償問題等で日米協力体制にひびが入らないように十分配慮されるとともに、今後二度とこのような事故が起こらないように、再発防止策を日米協議のもとに推進していただきたいと思うのでございます。

 それから、今回の一月六日からの再編に伴いまして、特に今回、内閣機能の強化ということで内閣あるいは内閣府の重要性につきまして特命大臣をつくられた、そういうことにつきまして、私は特命担当大臣の所管事項について本委員会の目的と考えますので、この点についてお伺いいたしたいと思います。

 まず、福田官房長官にお伺いいたしますのは、福田長官には男女共同参画が担当ということでございますので、それに関係いたしまして、男女共同参画社会の実現につきまして、今国連において女性に対する暴力撤廃宣言が採択され、世界においても、英国、カナダ、アメリカ、シンガポール、マレーシア、台湾、香港、韓国等におきましては、相次いでドメスティック・バイオレンス防止法が制定されております。この点につきまして、内閣といたしましては、このドメスティック・バイオレンス防止法を提出するという考えはないか、お伺いしたいと思います。

福田国務大臣 冒頭、えひめ丸のことを言及されましたけれども、これはもとより政府全体一丸となってこの対応を行い、そして万全を尽くしてまいりたい、このように思っておりますので、一言つけ加えさせていただきます。

 それから、男女共同参画社会におきまして、このドメスティック・バイオレンスということでございます。

 女性に対する暴力、これは女性の人権を著しく侵害する社会的問題であるということでございまして、構造的な問題であり、男女共同参画社会を形成していく上で克服すべき重要課題であるというふうに認識をいたしております。また、委員御指摘のように、女性に対する暴力の撤廃に関する宣言も含め、多くの国際会議の場などにおいて、女性に対する暴力の問題は重要な課題として取り上げておるところでございます。

 このようなことから、平成十二年十二月に策定した男女共同参画基本計画においても、女性に対するあらゆる暴力の根絶、これは重点課題の目標の一つとして掲げておるところでございます。政府はこの基本計画に基づいて、社会的認識の徹底など、女性に対する暴力を根絶するための基盤整備を行うとともに、暴力の形態に応じた幅広い取り組みを総合的に推進していきたい、こんなふうに思っております。

 また現在、参議院の方において、女性に対する暴力に関するプロジェクトチーム、こういうものをつくっていろいろと新規立法に向けて御検討いただいておる、こういうようなことでございまして、大変熱心にやっていただいておりますので、ありがたく思っておるわけでございます。

 政府もこういうふうな動きを注視しながら、内閣府に新たに設置されました男女共同参画会議の場などを活用しながら、女性に対する暴力の根絶に向けて積極的な取り組みをしてまいりたい、このように思っておるところでございます。

植竹委員 ありがとうございました。

 どうぞ福田長官、お引き取りいただいて結構でございます。

 続きまして橋本大臣にお伺いいたしますが、行政改革という幅広い論議が行われておりますが、その中で特殊法人等の改革は、まさにこれは重要な問題でございます。先般、所信におきましていろいろお話ございましたが、与党三党が提出しております特殊法人等改革基本法案との整合性について、私は大臣と政府の中では一致していると思っておりますが、その点につきまして大臣の御所見を伺いたいと思います。

 それからなお、現在の特殊法人等を廃止するとか民営化するとか、あるいは独立行政法人に移行するに当たって、その判断基準をどのようにするか、お伺いしたいと思います。

橋本国務大臣 二つのお問いかけをいただきましたが、順序を逆さにして、特殊法人の改革についての方向づけ、方針といったものから先にお答えをさせていただきたいと思います。

 当然のことながら、今私どもは、内外の社会経済情勢の変化でありますとか、それぞれの特殊法人の本来の目標に対する達成状況などを勘案しながら、具体的な事業の仕組みでありますとか実施の方法、手段などの見直しを行う、その上で、廃止や整理縮小あるいは合理化、あるいは民間、国その他の運営団体への移管といったことまで視野に入れて作業をいたしております。

 その際の判断基準として、主たる事業が廃止されたりあるいはその他の運営主体に移管された法人については、これは原則廃止でいくべきじゃないだろうか。あるいは、事業の採算性が高い、そして国の関与の必要性が乏しい法人とか、あるいは企業的な経営によった方が事業をより効率的に継続できるんじゃないかと思われるような法人、あるいは民間でも同種の事業の実施が可能な法人、これは原則民営化を検討していきたいと思います。そして、廃止または民営化されます法人以外の法人につきましては、事業あるいは組織運営の実態を踏まえながら、独立行政法人通則法に基づいて独立行政法人への移行を検討する。通則法を直ちに適用しがたい法人につきましては、その性格に応じて個別法を整備したり、通則法に準じた共通スキームを整備するなど、そうした法的な措置を検討するという方針のもとに現在作業に取り組んでおります。

 それだけに、与党三党から御提案をいただきました新法、特殊法人等改革基本法案、この考え方というものは、私どもが考えております方向と基本的に一致しているものだと考えております。それは、その改革の方向、趣旨、いずれをとりましても基本的に私は一致していると思っておりまして、私どもがこの作業を進めてまいりますためにも、今国会におきましてこの法案をできるだけ早期に成立をさせていただきたい、そういう願いの気持ちを持っておることをこの際申し上げておきたいと存じます。

植竹委員 ありがとうございました。

 それでは、どうぞ大臣はお引き取りくださって結構でございます。

 次に、麻生経済財政政策担当大臣にお伺いいたします。

 御承知のように、今日本経済は非常に厳しい状況にございますが、その中で物価下落は、グローバル化、技術革新ということだけでは説明ができなくなり、デフレ的な傾向が非常に厳しい、これが現状でございます。さらには、不良債権処理が、またこれも完全に実施の半ばであるということで、株価の急落ということは、金融システムの危機の再燃ということも危惧されるところであります。あるいは三つ目には、いわゆる六百六十六兆円という公的債務残高につきまして、この財政危機の不安から将来の増税を懸念いたしまして、先般、財務大臣もちょっとそういうようなことをお触れになったということを考えますと、消費者というものは一層慎重になり、そして消費が低迷し、景気後退になるという悪循環に陥るんじゃないかということが非常に懸念されておるわけであります。

 そこで、こういう状況の中にありまして大切なことは、日本経済自身がそうした強気の対策をとることができるかどうか、それを脱することが可能かということが重要な課題だと思っているわけでございます。その場しのぎの危機回避策というか、増税や安易な歳出削減に動いたりするということでは、本当に日本経済をさらに縮小させることになるんじゃなかろうかと危惧されるわけでありまして、そこで、大臣に二点についてお伺いしたいと思います。

 まず、先ほど太田先生からもお話ございました、金融の量的緩和の必要性ということについてであります。

 まず、最近の物価下落が景気回復を妨げている、そういう点からも、既存国債の買い切りなど、金融の量的緩和によってデフレをとめる、それが一つの重要なことではないかと私は考えるところでございます。

 さらに、不良債権の最終処理など金融システム強化が重要な課題でありますけれども、不良債権処理問題は完全に行われませんと、最近の株価の不安ということでありますので、この量的緩和というものが最も自然な株価対策というふうにつながらないかということでございます。

 さらに、物価水準に一定の目標を設定いたしまして、いわゆるインフレターゲットというような有効性についても検討する必要があるかと思います。もちろん、こういう場合におきまして、日本銀行の独立性というものは十分に考えなくちゃならないことでございますが、担当大臣といたしましてその点についてはどうか、御所見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 今言われておりますのは非常に幅広い問題なんで、端的に短くしゃべると何となく危なっかしい話になるのかもしれませんので、言葉を選ばないかぬところだとは思いますが、基本的に、例えばデパートの売り上げなんかを見ましても、物の数からいきましたら、ほぼかつてのところまで行っているのです。一つ当たりの単価が安いものですから、売上高比でいきますと前年度比マイナスになるとか前年同期比マイナスになるということなんですが、数からいきましたら、いわゆるほとんど一致している、もしくは少し上に出ている。一〇〇売れたものが一〇一とか一〇二ぐらい売れているのですが、単価が下がっているから九六とか七になっているという形になっておるという状況なんです。これはすべてじゃありませんよ、一つの例を申し上げましたけれども。

 そういう意味では、戦後初めてのいわゆる価格の下落というものが起き、加えて資産価格というものが下がっております。いわゆる土地です。日本の場合、土地本位制みたいな部分が非常に強いところですので、土地の価格が下がっておりますので、先ほど太田議員からの御質問にもありましたように、追い担保、増し担保を企業の方は要求される。銀行の方は、持っている担保の価値が下がっておりますので、それを従来は引当金で持っておりました。ところが、引当金で普通は持っていると、土地の値段が上がるものですから、大体、土地を持って押さえておきさえすれば、ずっと上がっていって何となくチャラになるという形だったのですが、逆に土地の価格が下がりましたために、銀行の持っておりますものも引当金じゃおかしいんじゃないか、そしてそれは償却せいということをいろいろ言われるようになってきている状況というのは、これはいずれも、戦後五十年間一回もなかった現象が起きてきておるというのが、最近の経済というものが従来の経験則ではなかなか解消できないという状況になっておるという大前提に立ちまして、今、インフレターゲットという話が出ましたけれども、これも今までやったことのないことを一つやるわけですが、それなりの目標を設定しますので、責任分担がある程度はっきりしますので、いいところが出てこないわけではありません。

 先ほど島議員のところのお話にもありましたように、買いオペレーションの話やら含めまして、例えば四千億円のものを八千億にするの一兆にするのというのは、国債発行即買いオペじゃなくて、一回市中に出回っていたものをというのは一つの方法だということは私どももわからぬわけではございませんが、これは正直、余りやったことがありませんので、やったことがないというか、これほど大量にやったことがありませんので、そういった意味ではかなり問題かとは思っております。

 インフレターゲットというのをやった場合、これはうまく抑えればいいのですが、これまた逆にどれくらいで抑えるかというのは、ちょっと一回火がつくとどうにもならなくなる。確かにデフレーション下でインフレは起きませんから、そこは間違いないところだと思いますが、どこでとめるかというところが、その何年か先になると今度はまた逆の問題が起きることになりかねないという気もいたしますので、私どもとしては非常に慎重にならざるを得ないところではありますが、少なくとも目下のデフレ、これはデフレという定義は非常に難しいのですが、今価格が下落している中におきまして、経済対策の振興策としては考えられるべき一つの対策だと思っております。

植竹委員 それから財政政策なんですが、この点は、景気回復重視型かあるいは財政改革重視型か、この二者択一の議論をしても今意味がないのじゃないかと私は思っておるところでございます。

 例えばアメリカでも、巨額の財政赤字が黒字になったその中には、歳出抑制というよりも、大幅な経済活性化のため、税収増のために減税したり、あるいは規制撤廃、さらにはクリントン政権におきましてITというものの積極的な登用ということから、いわゆる雇用増、所得増、そして税収増ということによって今日の黒字へ乗り切ったということを考えますと、まさに今回のIT革命というものを起爆剤といたしまして、いわゆる規制緩和、競争原理というものを導入して、構造改革を軸として潜在成長率を上げていく、そして財政改革に結びつけるというような総合戦略が必要ではないかと私は思っておるところであります。

 したがいまして、現実問題としまして、日本経済においては、今申し上げました次元が異なる改革の方向ではありますけれども、一方では成長戦略と財政改革を結合させました、そういうような総合的な、戦略的な経済再生のビジョンを出すということも必要じゃないかと考えておるところであります。

 したがいまして、経済政策の最高意思決定機関であります経済財政諮問会議の果たすべき使命というものはそういうところにあるのではないかと思いますので、この点について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘のとおり、景気を減速させないということと財政構造改革をきちんと立て直していくということは、これは二律背反するものでも二者択一のものでもないと思っております。

 アメリカの例を引かれましたけれども、レーガノミックスと言われて当時は評判が悪かったのです。双子の赤字と言われたような状況にありましたけれども、御記憶かと思いますが、あの状況下で、今ではルービンなんという人は、ドル高の、強いドルのチャンピオンのごとく、その当時のことを覚えていない人はみんな言いますけれども、あの人が就任したころからドルはどんどん下がって、一九九四年四月十九日には瞬間風速七十九円九十五銭、終わり値で八十円ちょうどまでドルは全く落ちに落ちて、三百六十円だったわけですが、四・五分の一にドルは成り下がったという時期まで行きました。そういったところまで行かせておいてから、翌年、九五年からずっと上がってくるのです。かわりに日本の方はその辺から非常にはっきり景気が悪くなってきたという形だと思いますが。だんだん状況が変わってきたのだと思っております。

 そういった中で、やはりアメリカというものは景気の立て直しに成功して、結果としてそれを財政赤字の解消につなげていったという点は、彼らのやり方として、一つの参考として私ども大いに勉強しておかなければいかぬところだと思っております。

 ただ、同じような手口が日本もとれたであろうかと言われますと、やはり日本の持っております巨大ないわゆる個人貯蓄等々の金、外貨準備の金、アジアの中に与える影響で、日本もこういうようなどんというようなやり方をした場合は、多分波及効果はアジアの国々においては物すごい痛いことになっておったと思います。それは、かなりな部分は日本が財政赤字を出して賄ってきたことによって緩やかだったがために、痛みは、他の国に与える影響も少なかった点は、他国、アジアの国々では、その種のことがわかっている人には評価をされているところだと思います。

 かつて中南米の危機が起きましたときに、アメリカも、メキシコ等々に貸してあった金を回収するのはやめて、もっと貸せと言って、結果的に太らせておいてからまた取り返したというのも、かつてアメリカがやった手口でもありますけれども、いろいろな意味で私どもとしてはここはなかなかハンドルの難しいところだと思いますが、基本的には経済回復、景気回復というのに軸足を置いて、まずはそこからスタートさせなければいかぬのだ、私どももそう思っております。

 ただ、財政の立て直しを放棄するというわけでは全くありませんので、私どもとしては、幸いにして貿易収支がアメリカのように赤字ではありません。アメリカは多分去年が三千億ドル、おととしが二千二百億ドルなど、ずっと赤字だと思います。そのまま一千四百億ドルぐらい赤字だと思いますが、その間、日本は千億ドルから千四百億ドル、ずっと黒字でありますので、そういうような経常収支の黒というものを見た場合においては、むちゃくちゃに悲観ばかりするような状況ではないのであって、私どもとしては、今申し上げたようなことをやっておけばきちんとしたものになり得るのだ、将来に対してそのように、希望というか、そういった考え方で進んでいくべきだと思っております。

植竹委員 大臣にはまだまだ、千三百八十兆のこの資産の使い方というものについてもお伺いしたいところでございますが、時間がありませんので、質問というよりも、要望をひとつ申し上げたいと思います。

 例の個人情報の保護の問題でございますが、取材活動に伴う個人情報の取り扱い方につきましては、憲法に保障された表現の自由における報道の自由に密接にかかわるものであります。学術研究の分野における個人情報の取り扱いについても、学問の自由と関係するものであります。したがいまして、個人情報保護法案の立案過程につきまして、こういうような自由な表現活動や学術活動に対し、行政が事前に介入する、あるいは不当な制限を課すことのないように要望をいたすところでございます。

 大臣につきましては、要望をもって終わらせていただきます。どうぞお帰りください。

 続きましては、伊吹公安委員会委員長にお伺いいたしますが、危機管理につきまして、警察機能から見た危機管理としまして、内閣官房の総合調整の行使に対応する場合と、先ほど言われました内閣法十五条の国民の生命あるいは財産が重大な被害を受けるような危機に対して、内閣の指揮調整のもとに対応する場合が考えられているわけであります。

 したがいまして、当該緊急事態等がいずれの場合に当たるかの選択につきましても、これも非常に難しいところだと思いますが、いずれにしましても的確に、速やかになさねばならないと思われますが、この点について、一言で結構でございますから、大臣の御所見を伺いたいと思います。

伊吹国務大臣 なかなか一言というわけにはいかないと思うのですが、簡単に申し上げたいと思います。

 阪神・淡路大震災のときには、実はいろいろな情報が各省にばらばらにございまして、官邸に集中しておりませんでした。その反省がございましたので、官邸に情報集約センターというのがございます。そこへ緊急事態情報というのはたくさん入ってまいります。それは今先生が御指摘のように、内閣法十五条に言う、大規模に国民の生命財産が損なわれるもの、国の主権が損なわれる場合、国の秩序が大きく揺らぐ場合、これが多分私が担当する国家危機の管理だと思います。それ以外に、そこまでは至らないけれども、官房長官が総合調整機能を発揮して各省を指導してやる、それは今御指摘のとおり。それから第三番目に、いや、そこまではいかない、海上保安庁だけで救難活動を行う、警察だけでいろいろ対処する。三つのケースがあります。

 実は、情報をたくさん集中させるところまでいったのですが、その振り分け作業ですね、これが一番今大切なポイントだなというのが私、よくわかっております。

 ただし、緊急事態に対応して、生命が危険にさらされた場合に、これは危機管理だ、いやこれは重大な事故だ、いやこれは一般の省庁で対応する、これはできません、国民の命を預かっている限りは。ですから、官房長官と私と副長官が混然一体となってともかく対処しよう、これが現実でございますが、少し私はその辺を整理してみたいと思っております。

植竹委員 もう時間が大分少なくなってまいりましたので、最後に笹川大臣にお伺いいたしたいと思います。

 先般、科学技術基本計画というものにつきまして、第一次基本計画におきましては、技術関係経費の総額規模を十七兆円とする目標が達成されましたが、この点につきましては、いろいろ内容的に論議されている点があるかと思います。

 つきまして、この五カ年間における計画の実施状況も再度振り返りまして、第二次の計画をどのような分野を重点的にやっていくかということをお伺いしたいと思います。

 それからもう一つ、あわせ申し上げますが、クローンの問題がございます。この点につきましては、家畜等につきましてはそれなりの効果というものを上げております。しかし、人間に関して、各国でもいろいろな論議があります。我が国においても、昨年の十一月ですか、人間に関しては禁止法を制定いたしました。しかし、例えば不妊問題とか、あるいは生命倫理、人間の尊厳の問題として医療関係では惹起しておるところでありますが、研究者の間については、各国と連絡をとりながらこれに参加するということが現実に行われている状況でございます。こういう点について何か対応していかなくてはいけないと思っておるところでございます。

 その三つの点について、時間が迫っておりますがお答えいただいて、私の質問を終わらせていただきます。

笹川国務大臣 質問は三つでありますか、大変内容のたくさんあることを実は御質問いただきましたので、はしょってはちょっとお答えしにくいので、お許しをいただきたいと思います。

 第一の質問の、五カ年の十七兆円について、投資がされたけれども内容的にどうだ、こういうお尋ねでありますが、御案内のように、十七兆円は基本計画に盛り込まれた施策の実現に多く寄与いたしました。

 内容につきましては、競争的かつ流動性のある研究開発環境の整備については、競争的資金の倍増、平成七年度は千二百五十億円でございますが、平成十二年度には三千二百八十億円に倍増されておりますので、そういう意味では、科学者が一生懸命やればそれだけの費用は出しましょう、評価をきっちりやりましょう、こういうふうに御理解いただいたらよろしいかと思います。

 また、ポストドクター等につきましては、一万人の支援計画を実現しました。それからまた、任期つき任用制度、一般の会社から四年なら四年の期間を定めまして役人になっていただく、こういう制度もやっておりますし、私どもの中にもそういう人が何人も今来ていただいておりますので、必ずいい成果が上げられると思います。

 それから、研究開発評価の本格的導入。日本は、評価が非常にどうも、やってはいるけれども余りはっきりしない。これは、やはり評価をきっちりしないと、これから二十一世紀の科学技術の進歩発展というのは難しいんじゃないか、もう少しシビアにやったらどうだ、こういうことであろうと思います。

 また、産学官の連携の推進。これは常に言われるんですけれども、これはもうやっていかないと外国になかなか太刀打ちができなくなるのではないか。まさに今は乾坤一てき、やらなければならないという時期であろうと思います。

 また、研究開発の現場は大変活性化もされておりますし、日本の科学技術は世界最高水準に行っているとは思うんですが、御案内のように、世界の科学雑誌というのは「サイエンス」というのと「ネイチャー」と二つありますけれども、結構今日本の学者が、論文の掲載が相当ふえてまいりました。これは、「ネイチャー」の場合は五・七%だったものが現在七%になっていますし、「サイエンス」という本については三・五%が五・〇、どんどんふえております。やはり、そういうところで評価を受けませんと国際的な評価というものはない、私はこういうふうに思っております。

 また、学校あるいはまた官の方で研究費を投じて特許だとか、そういう製品がありますが、これをどんどん売って民間で活用しなければ、研究だけしておけばいいんだというような態度ではやはりこれからは乗り切っていけない、こういうふうに考えております。

 ただ、やはり批判の点も十分にございます。人材の流動性が必ずしも十分ではないというような御批判もいただいておりますし、評価のプロセスがまだまだ不透明だ、もっと透明性を持てというような御批判もあります。国立大学の施設だとか研究支援がまだやはりよくない、こういう御批判もありますので、私も先般、一番施設の整っているところと一番悪いところと両方を視察させていただきました。現場百回ということで、私もいろいろなところへ今御訪問をさせていただいております。

 また、第一次基本計画では、国家として重点的に取り組むべき目標がどうも余り明確じゃなかったという点はありますので、今度の第二次につきましては、明確にどういう点、どういう点というところを国民の皆さんにお示しをし、それは三月の十五日までに総合科学技術会議の結果を総理の方に答申して、そして総理の方から改めてまた私どもの方に返ってきて、そして最終的には内閣の決定とする。

 時間の関係で大分はしょってお答えして大変申しわけありませんけれども、また時間がありましたら、詳しく聞いていただければ幾らでも御説明はさせていただきたいと思っております。

 今度の第二次科学技術計画では、御案内のように、ライフサイエンスの分野とか高度情報通信社会の構築、あるいはハイテク産業の拡大に直結する情報通信分野とか、それから人の命の話ですから、人の健康、生活環境というものを考えないと、科学技術だけ進歩させていればいいんだというわけにはいきませんから、やはり地球を傷めない、我々の環境を悪くしないということを前提に置いて科学技術を進歩発展させていこうじゃないか、こういうところに大変配慮をさせていただいておりますし、ナノテクノロジー、人間もそうですが、イネだとかいろいろなことがありますので、ぜひその点も力を入れていきたい。

 特にエネルギーにつきましては、我々は原子力その他で大変お世話になっておりますし、このことを念頭から離すわけにはいきませんが、これは何といっても地元の方々の御理解がないと到底完成しませんので、その点につきましても十分理解がいただけるようにしてまいりたいと思います。

 最後になりましたが、昨年十一月にクローン人間の産生を禁止する法律ができました。私どもの方といたしましては、総理から直接御指示もありましたので、私と文部科学大臣の連名で、国内の医療機関あるいは学校、研究者、もとよりこういう法律の趣旨をわきまえてぜひ協力をしていただきたい。

 それから、海外につきましても、外務省を通じまして既にそういう文書を発信いたしまして、各国から既にもう返事を何国からもいただいておりますので、そういう趣旨をぜひ御理解いただきたい、こういうふうに思っております。

 私どもとしては、人間の倫理という問題を考えまして、クローンの産生だけだめだ、これだけははっきり明確に打ち出しておりますので、そのほかの不妊だとかそういう研究についてはまた別途、学者の皆さん方と議論をさせていただいて一つのセーフガードをこしらえていきたい、こういうふうに考えております。

 まだまだございますが、時間があれでございますので、これで答弁を終わらせていただきます。

植竹委員 以上で質問を終わります。

横路委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十五分散会




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