衆議院

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第5号 平成13年3月16日(金曜日)

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平成十三年三月十六日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 横路 孝弘君

   理事 植竹 繁雄君 理事 小野 晋也君

   理事 阪上 善秀君 理事 横内 正明君

   理事 島   聡君 理事 中沢 健次君

   理事 河合 正智君 理事 塩田  晋君

      岩崎 忠夫君    亀井 久興君

      川崎 二郎君    古賀 正浩君

      竹下  亘君    谷川 和穗君

      近岡理一郎君    西川 公也君

      根本  匠君    平沢 勝栄君

      三ッ林隆志君    渡辺 具能君

      井上 和雄君    石毛えい子君

      大畠 章宏君    細川 律夫君

      山花 郁夫君    山元  勉君

      太田 昭宏君    松本 善明君

      北川れん子君

    …………………………………

   議員           細川 律夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 伊吹 文明君

   内閣府大臣政務官     西川 公也君

   内閣府大臣政務官     渡辺 具能君

   政府参考人

   (警察庁長官)      田中 節夫君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   石川 重明君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 上原美都男君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 渡邉 一弘君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君

   内閣委員会専門員     新倉 紀一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  小西  哲君     竹下  亘君

同日

 辞任         補欠選任

  竹下  亘君     小西  哲君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)

 犯罪被害者基本法案(細川律夫君外四名提出、衆法第六号)




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     ――――◇―――――

横路委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案及び細川律夫君外四名提出、犯罪被害者基本法案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官田中節夫君、警察庁長官官房長石川重明君、警察庁長官官房審議官上原美都男君、法務省大臣官房審議官渡邉一弘君及び法務省人権擁護局長吉戒修一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横路委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中沢健次君。

中沢委員 おはようございます。民主党の中沢でございます。

 先般の所信に対する質疑に続きまして、きょうは具体的な内閣の警察関連の法案、さらに予定としては、午後から民主党と社民党共同提案の犯罪被害者基本法案の審議に入るわけであります。

 私は、きょう、わずか三十分でありますが、主として閣法に関連をする幾つかの問題等につきまして、警察庁長官、そして最後の締めとして伊吹公安委員長にもいろいろお尋ねをしたいと思います。

 さて、まず一番最初に、依然として国民的にも関心の高い、あるいは本院としても関心の高い松尾さんの事件の関係につきまして、一つだけお尋ねを申し上げたいと思うのです。

 さきの委員会でも、伊吹大臣の方から、松尾事件の捜査について、国家公安委員長としての決意のほどを聞きました。多くは申し上げませんが、三月に入りまして、三月十日にいよいよ強制捜査に踏み切る。しかも、外務省の告発の案件は公金横領、そういう告発を受けて当初は任意の取り調べを行ってきた。そして、三月十日の強制捜査の場合、新聞報道にありますように、外務省の告発の公金横領ではなしに詐欺容疑、こういうふうに強制捜査が展開をされた。これは事実であると思うのです。

 私は法律家でもありませんし、もちろん警察の仕事をやった経験も持っておりませんから、ごく国民的な目線で考えまして、外務省が公金横領で告発をした、警察が強制捜査の際に詐欺容疑で行う、これはどういうことなんだろうか。あるいは、これからの事件の進展。大変な金額ですね。馬を買ったり、あるいはゴルフの会員権を買ったり株を買ったり、でたらめ放題。一体どうなっているのか。

 こういう問題も含めて、今言いましたように、公金横領という告発を受けて詐欺罪で強制捜査をした理由。それから、これからだんだんとさまざまな案件について、場合によっては別な容疑で再逮捕なんということもあり得るかもしれません。捜査に支障のない限り、そういう捜査の進展について、一体どういうことになるのか、お答えを、これは警察庁長官で結構でありますから。(伊吹国務大臣「ちょっと僕は基本論を」と呼ぶ)それでは、国家公安委員長に。

伊吹国務大臣 私は、中沢先生と全く同じ立場で、警察の専門家でもありませんし、法律家でもありません。しかし、政治家として、先生と同じ気持ちを持っている者としてお答えいたしたいと思います。

 まず、告発という行為は、御承知のように、特段、刑訴法上の罪名を特定したものではありません。したがって、告発を受けた限りは捜査には着手する、そして捜査の中で、証拠に基づき、刑法に照らして、公判の維持がどういう形で確実にできるかということを考えながらやっておると思います。

 当然、国家公安委員というのは国民の常識を持った人が集まっておりますから、国家公安委員会でも今先生がおっしゃったのと同じことが出ておりまして、強制捜査にようやく着手できたわけで、令状がとれたわけでございますから、その中で、これからさらに犯罪の広がり、金額の広がり等がある場合は、これは粛々と進めるんだなという話がございました。警察個別の捜査の内容には立ち入れないけれども、それが国民の常識なんだなと、今先生がおっしゃったのと同じような意見がございまして、警察も当局もそのとおりですということを答えておりましたので、私からも、政治の情勢や政党の動き、その他役人同士のなれ合い等を排除して、粛々と法律にのっとって後ろ指を指されないようにやってくれということを申し上げてございます。

田中政府参考人 委員御指摘の外務省の元室長にかかわりますところの事件でございますが、警視庁は一月二十五日に横領で告発を受けたところでございます。

 警視庁におきましては、その後、証拠に基づく事案の解明を進めてきたところでございますが、内閣官房からこの元室長に対しまして、多年、多数回にわたります公金が交付されております。そのうち、今回の逮捕にかかわる三回分につきましては、元室長が公金を受ける段階で詐欺を犯していたということが証拠上明らかになりましたために、この元室長を詐欺容疑で逮捕したものでございます。

 警視庁におきましては、今回の逮捕分以外の公金受領についての容疑を含め、事案の全容を解明すべく、引き続き鋭意捜査を進めているところでございまして、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づきまして厳正に対処するものと承知をしているところでございます。

中沢委員 今、国家公安委員長からも、前回の御答弁に引き続いて、ある意味で国家公安委員会全体の意見としてのこれからのお話がございました。そういう基本的な立場を踏まえて、現場をぜひひとつ間違いのない方向で指導をお願い申し上げたい。

 なお、長官の方から、法と証拠に基づいてという今までどおりの答弁でありますが、きょう現在はやむを得ないな、このように考えております。

 したがって、国民は非常にこの問題を注目している、本院も私自身も注目をしておりますから、もちろん、担当の長官以下警察の皆さんも同じような思いだと私は思いますから、しっかりそのことを踏まえて万全な捜査を徹底するように、特に指摘をしておきたいと思います。

 さて、話題を変えまして、今度出されました閣法に関連をして幾つかお尋ねを申し上げたいと思います。

 長官、昨年の今ごろはお互いに真剣になって、警察の前代未聞の不祥事が起きた神奈川だとかあるいは新潟だとか、ストーカーの事件を起こした埼玉だとか、警察法の改正をめぐっていろいろ議論をしました。そして、その後、衆議院選挙が終わって、臨時国会でいよいよ警察法の審議をやって、私もまだいろいろなそういう感慨や思い出を持っているのですよ。

 そこで、警察法の議論のときにもいろいろありましたけれども、やはり警察というのは、国民の命あるいは財産、安全を守る、これは至上命題だ、これは与党も野党も問わず、国家公安委員長の当時の保利さんも警察庁も、異口同音で言っていたわけですね。そうすると、勢い、今の警察の全国の体制でいいのかどうか、やはり国民生活に直接関連をする、そういう意味での警察官の増員が必要だ、こういう意見をいろいろやった記憶がございます。これは関係者、もうほとんど問題はない、異論はなかったと思うんです。

 その後、実は臨時国会が終わりまして、当時は地方行政委員会でありましたが、そういう議論を踏まえて、やはり現場を一回見に行こうじゃないかと、埼玉県にも行きました。新潟県にも行きました。知事や県警本部長にも会いました。そして、私の出身地の北海道にも行きまして、同様な調査をやったわけです。

 今度の予算、まだ参議院で上がっておりませんが、新年度予算で全国の警察官がどの程度増員になるか、それから今申し上げました埼玉あるいは新潟、北海道、どの程度の増員が見込まれているのか、まず数字をお示しいただきたいと思います。

田中政府参考人 今委員御指摘のように、警察を取り巻く環境は非常に厳しいところがございまして、国会におきましても、その体制の強化につきまして大変御議論をいただきました。そして、今お話しのように、体制の強化の一環としてしかるべき増員が必要であるというような御意見もございました。それを踏まえまして、私どもといたしましては、もちろん合理化についても努力をすべきでございますけれども、それを前提としながらということで増員をお願いしているわけでございます。

 御承知のとおり、現在、参議院で御審査いただいておりますところの平成十三年度の予算案におきましては、全国で二千五百八十人の増員をお願いしております。もしこれがお認めいただければ全国の十二の県につきまして増員を考えているところでございます。埼玉県につきましては四百人の増員を予定しておるところでございますが、今御案内の新潟県、北海道、この両道県につきましては、平成十三年度の警察官の増員は予定していないところでございます。

 ただ、私どもといたしましては、計画的に増員をしてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございますので、来年度あるいは再来年度を視野に入れながらこういう問題について対応してまいりたい、かように考えているところでございます。

中沢委員 今、埼玉はかなりの増員をする、全国的に十二地域に限定してやる、それ以外はこれから全体的な増員計画を持っているというお答えでございました。

 さてそこで、時間がありませんから、埼玉の問題にやや限定してお尋ねをしたいと思うんです。

 去年も随分議論しました埼玉の桶川のストーカー事件、結果的には今、被害者の御両親が原告になって、埼玉県が被告になって裁判になっています。私の調べでは、既に第一回公判が終わっています。これは恐らく非常にいろいろな問題をはらんだ裁判になるんじゃないでしょうか。

 そこで、具体的に聞きたいのは、同じ埼玉県で、最近新聞にも報道があるし、あるいは埼玉県議会にこの問題が陳情を通して出された。これについて、幾つか具体的にまず事実関係を聞いておきたいと思います。

 いわゆる坂入さんという方が昨年の十一月に行方不明になって、奥さんから捜索願が出て、関係の団体から告発が出されている、あれからずっと時間がたっている、埼玉県の県議会にもことしになりまして陳情が出ている、こういうことであります。警察としては、その事実をもちろん正確に押さえていると思いますが、どういう対処を今までされてきたんでしょうか。

田中政府参考人 委員御指摘の事案につきましては、これは埼玉県吉川市内に居住いたします元JR総連組合員が、昨年の十一月三日、在職時の仲間とハイキングに行くと言って自宅を出たまま、待ち合わせの場所にあらわれず、同日夕方になりましても本人からの連絡がないため、同人の妻が警察に家出人捜索願を届け出た事案でございます。その二週間後に至りまして、この組合員は革マル派に拉致、監禁されているとして、その妻そしてJR総連が監禁容疑で告発を行ったものというふうに承知をしております。

 届け出を受けました埼玉県警察では、妻やJR総連関係者等から事情聴取を行いますほか、関係箇所の捜索を実施するなど、所要の捜査を鋭意推進しているものと承知しておりまして、今後とも、関係者の御協力を得ながら、本件事案の解決と真相の全容解明に努めてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。

中沢委員 現状においてはそういう対応というお答えだとは思うんですけれども、私があえて埼玉の警察官の増員ということも聞いたのは、埼玉というのはそれ以外にさまざまな犯罪が急増をしている。国民にとってはこれはやはり大変な問題だと思うんですよ。

 今質問をしたこの坂入さん問題は、大変複雑な背景があるのかなとは思いますけれども、我が日本国内において法治国家の国内において、こういう問題が発生をした。それからもう四カ月以上たっているわけですね。お宅にはまだ依然として戻っていない。これはいろいろあるとは思いますけれども、やはり事は国民の生命と財産と安全、こういう観点からいうと、やはり人権にかかわる、もっと言うともっと大事な問題にも関係するのではないかと私は大変心配しています。

 ですから、この際ですから、警察庁はもちろんでありますが、地元の埼玉県警、場合によっては広域的な問題ということになってくると、そういうところも含めて今後ひとつ万全な対策を責任を持ってやるべきじゃないか、こう思いますが、いかがでしょうか。

田中政府参考人 委員御指摘のように、警察は国民の生命、身体、財産を守るということを基本的な任務としておりまして、そのためにはいろいろな体制あるいは施策を講じていかなければいけないと思っております。

 今御指摘のように、埼玉県での具体的な事案についての御指摘がございましたけれども、この事案につきましても、埼玉県警は当然でございますけれども、挙げて全国警察協力しながら事案の解明に努めてまいらなければならないと思いますし、今後とも、国民の生命、身体、財産にかかわるような事案につきましては全国組織を挙げて努力してまいらなければいけない、かように考えておるところでございます。

中沢委員 ぜひ、そういう基本的な方針と対応について今後とも万全にやっていただきますように、改めて指摘をしておきます。

 さて、今度は、新潟の関係についてひとつ取り上げたいと思います。提案された法案に直接関係がある問題です。

 言うまでもありませんが、警察の前代未聞の不祥事と言われていたその事件が、実に九年二カ月、相当異常な状態で長期間監禁をされていた被害者がたまたま発見された、そのときにああいう警察の不祥事が露呈をした、こういうことです。新潟に行きましても、私も関係者も大変気になっておりまして、その後、この被害者に対して、警察の責任だけではなしに、地元の県や地元の市や、あるいは福祉関係の団体も含めて、どういう全体的なケアをされているか、あるいは具体的な支援をされているか聞きました。

 そのことはともかくとして、今現在どういうような全体の対策がとられているのか、承知をしている内容で結構でありますから、まずそのことをお答えいただきたいと思います。

田中政府参考人 委員御指摘の新潟におきますところの少女監禁事案につきましては、私ども深く反省し、そこから多くの教訓を学びながら、今日、警察刷新に努めておるところでございますが、今お話しのように、新潟県警察におきまして、この被害女性の保護当初から、県の福祉保健部あるいは医療機関等と連携をとりながら被害女性のケアに当たりますとともに、女性警察官を配置して種々の支援活動を行っておるところでございます。

 また、御家族に対しましても、支援担当者を定めまして、要望の把握等に努め、関係機関等との調整を実施しているほか、マスコミ等の取材も活発なために、これによる心労等に配意して、帰宅等に対する警戒活動など、できる限りの支援を行っておるところでございます。

 ただ、全体的な取り組みはどうかという御指摘がございましたけれども、全体的な取り組みといたしましては、県の方でいろいろやっておられます。私どもといたしましては、社会復帰に向けた精神的、あるいは家庭に対する支援をどのように進めていくかという観点で、専門医による医療行為というのが最優先ではないかと我々は思っておりますが、被害者及び御家族の意向を確認しながら、新潟県被害者支援連絡協議会の構成機関でありますところの県の福祉保健部、これを中心といたしまして、教育長、医療機関、臨床心理士会等の各機関、団体等との連携のもと、御家族の精神的サポート、被害者の教育問題、社会復帰等への支援を引き続き実施していくこととしておるところでございまして、私ども、できる限りこれらに協力をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。

中沢委員 それに関連しまして、今の犯罪被害者に対するこの法に基づくいわゆる給付金、いろいろな方に出されていると思うんですよ。私が事前に対策室の皆さんから聞いた話では、この新潟の被害者に限って言いますと、これは児童生徒の期間でありまして、別な制度の対象になる、したがって、この法の制度の対象にはなっていない。これは事実だと思いますが、確認の意味でお答えをいただきたいと思います。

田中政府参考人 委員御指摘のこの犯罪被害者等給付金支給法は、人の生命または身体を害する犯罪行為により不慮の死を遂げた方の遺族または重障害を受けた方に対し、国が一定の給付金を支給し、その精神的、経済的打撃の緩和を図ろうとするものでございます。

 ところで、委員御指摘のように、本件の問題でございますけれども、被害女性が下校途中において発生したものでございまして、日本体育・学校健康センター法に基づく災害給付が適用されているというふうに承知しているところでございます。

中沢委員 そこで、恐らく同僚議員からも、この問題のケースということじゃなくて、一般論としていろいろな指摘があると思います。私はそこにほとんど譲りたいと思いますが、やはり、実態的にこういう事件というのは極めてまれだとは思いますけれども、しかし、心理的なストレスというのは、僕らの想像できない大変なものを御本人が持っていらっしゃる。しかも、これは結果的には長期にわたって持っていかざるを得ない。これからのあの方の人生にとって、これは大変な問題だと思うんですよ。そうすると、どう考えましても、今の学校の関係の給付があったにしても、これからの将来にわたってこれはもうほとんど関係なくなってくる。

 さて、将来にわたってどうするか。本来でいえば、うちと社民党と共同で基本法を出していますけれども、やはり基本法というものがあって、一般論でありますが、そういうケースも含めて全体的に、将来にわたる被害者の福祉をどうやって守るか、国民の生活をどうやって守るか、こういう観点は私はやはり避けて通れない。もっと言うと、それを積極的に政治の責任で法律としてあるいは制度として導入すべきだ、このように考えています。

 そこで、具体的に聞きたいのは、私自身は内閣委員会に移ってまいりましたのはごく最近でありますから、この法案について、あるいは衆法で出しました基本法について深くは勉強しておりませんが、ついこの間も、日弁連の弁護士に来ていただきましていろいろ勉強してみました。

 初めて知ったのであります。イギリスでは実に、日本のこの種の犯罪被害者に対する支援制度と比べて数段すぐれている。新潟の例でいいますと、給付金と生活、福祉のやや将来にわたる補償を含めて、最低でも四千万ぐらいにイギリスの場合はなるのではないか。日本の場合は残念ながら、この制度、全く対象外、ゼロだ。これは余りにも開きがあり過ぎて、先ほど言った、何とかしなきゃならないな、そんな思いなんです。

 もう時間がありませんから、余り数字的なことはともかくとして、警察の対策室でも資料をお持ちだと思います。今私の指摘をした数字も含めてイギリスの場合はどうなっているか、簡単にお答えをいただきたいと思います。

田中政府参考人 委員御指摘の犯罪被害給付制度に関しますところの制度につきましては、それぞれの国の犯罪の発生状況、あるいは社会保障制度全体のあり方等の社会的背景が大きく違いますので、我が国の犯罪被害給付制度と単純に比較をすることは大変難しいというふうに考えております。

 御指摘のイギリスでございますけれども、イギリスは、国民の医療費も含めまして一般財源から支出されておりまして、国民の負担率も日本を非常に大きく上回っております。そういうことから、社会保障の仕組み自体が日本のそれと非常に大きく異なっておりますので、犯罪被害に対する補償制度、それだけを取り上げて比較をするというのはなかなか難しゅうございまして、今お話しのように、イギリスの犯罪補償制度と日本の補償制度云々ということにつきましては、ここで単純にこうだということはなかなか申し上げにくい、そういう側面があろうかと思っております。

中沢委員 そこで、最後に国家公安委員長に、今のような議論を前提にしてお尋ねをしたいと思うんです。

 私は、今度の改正の法案そのものは一定の評価をしているんですよ。支給範囲を拡大する、金額も拡大する。それ以外に、国の責任で犯罪被害者に対するさまざまな制度的な支援が出てきた。ですから、結論からいうと、我が党は反対しません。

 しかし、やはり基本的に、日本の犯罪被害者に対する法律が本当にこの法律だけでいいんだろうか。今、一つのケースだけ申し上げました、私はこの法律だけでは不十分だと。したがって、もっと全体的に、犯罪被害者に対する人権の保障、あるいは生活の保障、福祉の保障、いろいろな国内的な制度のあることは承知の上ですけれども、私はやはり基本的な法律が必要じゃないか、このように考えます。

 政治家として、国家公安委員長として、どういう感想、あるいは認識と決意をお持ちなのか、最後に聞いておきたいと思います。

伊吹国務大臣 昨日、民主党と社民党の共同提案で細川先生が御提案されましたものを私、読ませていただきました。

 私の率直な政治家としての印象を申し上げますと、今の先生の御質問にそれがお答えすることになると思うんですが、民主党という政党の理念とか御主張からするとこういう御提案になるだろうな。やはり、党の基本的理念を外して常に国民にいいとこ取りをするということは、私は、これは自民党も含めて余り感心したことじゃないと考えているだけに、民主党の御提案としては、あるいは社民党さんの御提案としては一つの考えだ、筋が通ったお考えだと思います。

 我が党自民党も、必ずしも一つの理念で確実に統一されている政党ではございません。しかし、私の考えを率直に申しますと、基本的には、社会の秩序をきちっと守った上で、加害者というものが当然一定の責任を負うということによって社会の秩序というものは成り立つ。しかし、その上で加害者に責任を負わせようとした場合においても、その加害者がその責任を負えない場合には社会の共生としてどの程度のことができるのか、これがやはり私の考えている基本的な社会のあり方だと私は思うのですよ。

 したがって、今先生が御指摘になりましたように、単にこの制度だけではなくて、医療の分野とかあるいは先ほど長官が申しましたような制度とか、あるいは福祉の分野、生活保護等にも立ち至ったいろいろな分野等があると思いますので、結論的にはそれをやはり総合的にまとめて、そして被害者の方に、秩序を守れなかったという責任が警察もやはりある程度あるわけでございますから、この点を十分認識しながら最大限の御協力をしていくというのが筋だと私は思っております。

 この後、細川先生の御質問があるようでございますので、まさに基本的なところだと思います。お出しいただいた法案については、私は、そういう意味では非常に筋が通っていると思って評価させていただいております。

中沢委員 時間が来ました。ありがとうございます。

横路委員長 細川律夫君。

細川委員 民主党の細川でございます。

 私は、社民党さんそして我が民主党共同提案の犯罪被害者基本法の提案者の一人ともなっておりますけれども、きょうは、内閣の方から出されました犯罪被害者等給付金支給法改正案について質問をさせていただきたいと思います。

 今度のこの改正案につきましては、給付金の支給の対象あるいはその増額、そういう面ももちろんでありますけれども、またそのほかにも、いろいろな支援団体、早期の救済というようなことも出ておりまして、全体的にはより進んだ法案だというふうに私も評価をいたしております。

 そこで、私、まず最初にお聞きをしたいと思いますけれども、この犯給法の給付金の性格でございます。

 犯罪の被害者、これは犯罪によって殺されたりあるいは傷つけられたり、犯罪によってそういう損害を受けた、被害を受けたということで大変お気の毒だというようなことで国として見舞金を上げよう、こういうような性格のものであるのか、それとも、被害者が受けた損害賠償を国がかわって支給してあげるのかとか、その性格の問題がいろいろあろうかと思います。

 その点について、これまで政府の方の説明といいますか、この法律ができたときから、見舞金的な性格のものだ、こういうふうにずっと言われてきたのですけれども、私は、この見舞金的な考え方がどうも、額が低かったりあるいは対象が狭かったりとかいうことでいろいろ批判も受けてきたのではないかというふうに思います。

 そういう意味で、この給付金制度を充実させていくためには、この見舞金的な考え方ではちょっと充実していかないのではないかというふうに私は思っておりまして、その点についてどのようにお考えになっているのか、お聞きをしたいと思います。

伊吹国務大臣 昨日、先生が提案者代表となられて議員立法として基本法的性格のものをお出しいただいて、先ほど中沢先生の御質問に対して、私、それをずっと読ませていただいたということを申し上げましたが、まさに今先生がお尋ねのところがその基本的なところだろうと私は思うのです。リベラル政党を標榜しておられる民主党としては、やはり個人の権利というか人権というものを大変強くお考えになっていろいろな構成ができているなと私は思って読みました。

 個人の権利と社会の秩序のどちらを、公益を優先するかというのは、常に政党の理念の置き方によって違ってくるわけですね。私どもは、この社会の基本というのはやはり自己責任原則によって成り立っているというふうに考えております。したがって、基本的には、加害をした者が法律によって当然被害者に対して民事上の賠償を行うというのが原則である、それが社会の秩序なんだ、そしてその秩序を守っていくために警察力を行使したりいろいろなことをやっていく。

 しかしながら、現実問題としては、加害者に賠償請求をしても支払い能力がないというケースがもうほとんどでございます。したがって、私たちがお互いに共生をしていく社会においては、一〇〇%そういう加害者を取り締まってしまえばそれはいいわけですが、そういうことは現実としてはできないわけでございますから、納税者の理解を得ることによって、つまり、額に汗して税を納めておられる方も被害者になられるケースがあるんだ、そういうときに備えてお互いに同意の上でその税金を使わせていただくことによってお互いの、国民としての共同体を形成していこうよという考えに実は出ているわけです。

 したがって、法律的に言うと、立法論としては、国が加害者に代位をしてその被害者の受けた損害を全部肩がわりするというか賠償するんだというのは、私どもの考えている社会秩序のあり方からするとちょっと外れるのかなと。しかし、これは私たちの考えている社会のあり方の哲学であって、民主党や社民党さんの出された法律の根拠にある哲学は、それはそれとして、私は、価値観は違うけれども、十分筋の通った議論だと思って評価をしているということを申し上げたわけです。

細川委員 犯罪によって傷ついた人あるいは殺された人の遺族の人たちの悲しみ、苦しみ、あるいは経済的な損失とか、一般に、犯罪被害者の置かれる立場というのは大変悲惨だ、何とかしてあげなければいけないというのが国民的な世論だろうというふうに思います。

 そういう犯罪によって被害を受けた人あるいはその遺族の人たちも、憲法で言います、十三条のすべて国民は個人として尊重されなければいけない、あるいは二十五条の健康で文化的な生活を営む権利を有する。国はそのために努力しなきゃいかぬわけなんですけれども、そういうときに、犯罪によって被害を受けた者あるいはそういう遺族の人たちが置かれた状況に応じて、その人たちが損害を回復し、そして社会に復帰できるようにするのが国の責任でもあり、またそういうことは個人の、国民の権利だというふうに思って、そういう規定を私どもの基本法にはまずは規定しているわけなんです。

 そのためには、総合的な、あるいは計画的な形で施策をしていかなければいけないだろう。総合的あるいは計画的な施策を積んでやるためには、それにはやはり基本法をつくってやらなければいけないというのが私どもの考え方なわけなんです。

 そこで、今度の改正案につきましては、先ほども申し上げましたように、支給金の拡大とか増額あるいは範囲の拡張というだけではなくて、援助措置あるいは援助団体の指定など、被害の早期軽減に向けての措置を規定いたしておりまして、これは非常にいいことだというふうに評価するわけなんですが、そもそも犯給法、この法律は、給付金を支給する、こういうことでできたわけですね。そこへ、何か今度つけ足しに、そもそも法律の名前も変えて、等というのを一字入れて改正をするという。この改正する部分、支給金だけではなくて、いわゆる援助措置あるいは援助団体の指定などで早期に損害を軽減していく、ここは私は、別に考えなければいけないんじゃないか。何か支給金の法律にちょっとつけ足しをするような形でこういうものを出してきているというふうにどうも考えざるを得ないんです。

 本来は、基本法をつくって、そしてその基本法のもとにこの犯給法を充実させていく、さらに、今度新しく出しているつけ加えられた点については、これは例えば犯罪被害者支援法とかそういう法律をつくって、そこでどういうふうにして被害者を救済していくかという、いわゆる給付法と別につくるのが本来のやり方ではないか、その方がより犯罪被害者の皆さんの救済に十分資していくんじゃないかというふうに私は思っております。警察庁なら警察庁だけでこの問題を解決していこうというのではなくて、各省庁にまたがるような形でこの対策を立てないと少し不十分なところが出てくるのではないか、いわゆる縦割りの弊害も出てくるのではないかというふうに思っております。

 そういう意味で基本法が必要だと私は言っておるんですけれども、そういう意味で、今度のこの法案の改正というのはどうもちょっとつけ足しだというふうに私は思うんです。むしろ、もっと総合的に各省にまたがるような法律の個別法をつくっていくということが大事ではないかというふうに思っておりますけれども、この点についてどのようにお考えでしょうか。

伊吹国務大臣 先生の御質問を二つに分けたいと思いますが、見舞金かどうかという基本的な理念の話は先ほど申し上げたようなことで御理解いただきたいんですが、総合的にやっていくべきだ、そして同時に生活をもう少ししっかりと支えていくべきだというただいまの御主張は、私は全く賛成でございます。

 立法論として、基本法をまずつくって、そして生活保護費だとか医療費だとか教育の分野だとかというものを動かしていくのがいいのか。あるいは、見舞金的なもの、そして今回のような措置を入れさせていただきながら、同時に今回の御相談に応ずるような機能を警察が持って、そこで各省に、こういうスキームがある、こういう政策がある、こういう措置があるということを申し上げながら動かしていく中で、先生がおっしゃっていらっしゃるような方向に積み上げていくという立法政策がいいのか。これは両方のアプローチがあると私は思うんです。

 ただし、将来的には何か、各省が反対する可能性があると思うんですけれどもやらにゃいかぬな、私はこう思っておるのですが、やはりそういうものを警察がまとめながらやっていけるように考えていく方向というのは、お話を聞いていて、それはそうだなという印象は持っております。

細川委員 警察の方でまとめて、まとめにくいところをまとめるためには基本法があるとまとめやすいわけでありまして、ぜひそういう点からも御理解をいただきたいというふうに思います。

 大臣、結構でございます。

 そこで、では、具体的なところでちょっと中身についてお尋ねいたします。

 最近、犯罪被害者の中で心的外傷による障害がよく出てまいります。それをあらわす言葉としてPTSDという言葉が最近よく使われ、我々も耳にするところでございます。これは、先ほどの新潟の事件のようなもの、長い間監禁されるとか、あるいは地下鉄サリン事件、あるいはさまざまな性的な犯罪などの被害者にあって、被害者が長い間精神的に非常に苦しめられるという大変気の毒な事態がございます。

 そこで、こういう人たちに対する治療はもちろんでありますけれども、ほかの障害と同じように経済的な支援も必要じゃないかというふうに思いますけれども、これが長期間にわたって精神的に苦しめられるというところでありますから、症状がなかなか固定をしないというようなこともありまして、この改正案でも適用が困難ではないかというようなことも指摘をされております。

 そこで、そういうことを考えますと、障害等級の内容をきちんと明記をして、心的外傷による障害についても確実に給付が受けられるというような形にすべきではないかというふうに思いますけれども、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。

石川政府参考人 心の傷をどういう形で救済をしていくか、こういったような観点からの御質問だと思います。

 現行の犯罪被害関係の法令、給付法の法令におきましても、労働者災害補償保険法等の災害補償関係法令で定める障害等級一級から四級まで、これは重障害ということで定めておるわけでございますが、そこに精神障害の関係で、例えば「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」といったような認定がなされた場合には、これに対して障害として認定をして給付金が支給をされる、こういう仕組みにはなっておるわけでございますが、今委員御指摘のように、PTSDといったようなものはどういう形で認定をされるのかといった医療の実務といったものについて、今後まだ研究をする課題といったようなものもあるやに聞いております。

 私どもといたしましては、今回の改正におきまして、支給対象となる障害等級が、先ほどの障害等級一級から四級に加えまして十四級まで拡大をされるということでありますから、精神的な障害についても救済される範囲というものが拡大をされるんじゃないか、こういうふうに思っておりますけれども、その取り扱いにつきましては、今申しましたような問題もございますので、他の災害補償制度に倣って、適切な運用というところでカバーをしていくように努めてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

細川委員 PTSDで非常に苦しんでおられる方がたくさんいるわけですから、ぜひそういう方にも給付がなされるような、そういう形でぜひ運用の方をしっかりやっていただきたいというふうに思います。

 それから、次に質問したいのは、今度の改正案で、犯罪被害者や遺族の皆さんを支援するためにNPOなどの非営利団体を指定して連携をしていくということは、私どももかねてから主張しているところでありまして、これは大変賛成でございます。

 しかし、この法案で言っております早期援助団体に対する補助などの、どういう援助をするのかというようなことのあり方がよくわからないわけでございます。

 欧米のNPOなどは、団体としては独立をしつつも、地方公共団体などから補助を得てその運営をしているのが実情でございます。もちろん民間からの寄附も大切ではございますけれども、現存の、今ある支援団体の実情を見ますと、公的な助成で運営をしなければどうもやっていけないんじゃないかというような団体が多くて、公的な助成も、そういう要請も大変強いわけでございます。

 そこで、団体を指定して連携しながら事業をサポートする、そういうことだけではなくて、国とかあるいは自治体が財政面でもそういう団体の支援ができるような、そういう方向に進んでいかなければいけないと思うんですけれども、それについてはどういうふうにお考えでしょうか。

石川政府参考人 今の委員のお話のように、犯罪行為を受けた後、初期の段階における援助という問題につきましては、被害者の方々の緊急のニーズにこたえてきめ細かな援助をしていく必要がある。その中には、日常生活の支援あるいは民間保険の申請の補助といったような、警察としてなかなか直接行うことができないようなものや、あるいは困難なものというものも含まれているわけでございまして、民間の被害者援助団体の協力というものは不可欠である。こういう観点で、今回、民間の団体の活動というものを活性化していくような、そういう措置を法律の規定に入れさせていただいて御審議をいただいているわけでございます。

 今回の法案、御指摘のように、あくまでも被害者等に対する犯罪被害発生直後からの援助も効果的に行われるようにするためということで、民間団体への財政的支援に関する規定は置かれておりません。

 この問題につきましては、地方自治体におきましては、こうした団体に対して補助金を支出しているというところがあるというふうに承っておりますけれども、私どもも、昨年十一月に行いました委託調査の結果によりますと、多くの民間団体が大変厳しい財政状況にあるという実態が明らかになっておるわけでございまして、各団体が財政的基盤を強化するために必要な支援のあり方につきまして、関係機関等と必要な連携を図りつつ、今後とも検討を進めてまいりたい、こういうふうに思っております。例えば税制面でいろいろな措置ができないだろうかとか、あるいは何らかの助成といったようなものができないだろうか、そういったことについては、今後十分検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

細川委員 犯罪被害者あるいは遺族の人たちをどう支援していくか、とりわけ精神的なケアをやっていくにはいろいろな団体の援助というか協力をいただかなければなりませんけれども、その団体が財政的に逼迫をしている。これが今言われたように大変深刻な財政難でもありますから、ぜひそこをきちっと運営できるような何らかの手だてを考えていただきたいというふうに思います。

 そこで、もう一つお聞きをしておきたいと思いますが、被害者とかあるいは遺族のお話を聞きますと、事件のあった直後に経済的に大変お困りになる場合が多いようでございます。一家の中心的な方が亡くなられますと、すぐにでも当面の生活費も困るような場合もあるようですし、葬式そのものも出せないというんですか、お金がかかって大変困ったというような、そういうこともいろいろ聞いております。

 今度の改正では給付金の支給の幅が広がったということについては私どもも評価をいたしますけれども、事件直後なんかに仮払い的に、そういう困ったときにさっと何か手当てができるような、そういう制度というものがどうしても必要ではないかというふうにも思っております。そういう意味では現在の仮払い制度もありますけれども、しかし、どうもこれも時間が大分かかり過ぎるようでありまして、機能が私どもから見たらよく働いていないというふうに思います。

 そういう意味で、今度の改正案で指定する団体などがそういう困った人に対してはすぐに仮払いで対応できるような、そういうようなことを今度は国とか地方公共団体が支援をするというような、そういう仕組みを考えていかなければいけないと思いますけれども、こういう点についてはどういうふうにお考えでしょうか。

石川政府参考人 御指摘のように、現在の給付制度のもとで仮給付金の支給ということがあるわけでございますけれども、これにつきましては、給付金の支給に当たりまして、損害賠償あるいは他の公的給付との調整、あるいは被害者そのものに帰責性があるかどうかといったような判断を行う必要があるわけで、どうしても一定の時間を要するということは御指摘のとおりでございます。

 したがいまして、犯罪被害直後に早期の援助が必要だといったような場合に、その措置として、犯罪被害者の給付制度とは別に、警察とかあるいは関係行政機関、あるいは今御指摘の民間援助団体等による物品の供与とかあるいは貸与といったような現物給付的な援助といったようなことを今後も充実していく必要があるのではないだろうか、そのことについては、私どももいろいろこういった関係向きと十分御相談をしながら知恵を出していく必要があるのではないか、このように考えているところでございます。

細川委員 ぜひその点でも拡充をしていくように、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

 まだいろいろ給付内容などについてもお聞きをしたかったんですけれども、時間が参りましたので、私の質問はこれで終わります。ありがとうございました。

横路委員長 井上和雄君。

井上(和)委員 民主党の井上和雄でございます。

 本日は法案の審議でございますが、その前に、奈良県でことしに入りましてから県議会を揺るがしている警察の汚職事件に関して、ちょっと警察庁にお伺いしたいと思います。

 きょうの新聞、全国紙でも大きく報道されています。二警視を書類送検ということで、交通企画課の課長さんは懲戒免職、しかし逮捕は見送りということなんですね。この事件というのは、奈良県の奈良佐川急便の社長をしていた方が県警のOBである、そして奈良県警の現職の交通企画課長が、給与という名目でこの佐川急便の会社から全部で二千八百万円を受け取っていたということです。それ以外にも、川口さんという警視が同じく二百五十万円を貸し付けられて、うち百五十万円を返していないし、また携帯電話の通話料を肩代わりされた。

 佐川急便のグループと県警との癒着の構造があるということだと思うんですけれども、きょうの新聞の論調を見ても、わいろ性がないということで逮捕を見送ったという警察のコメントも出ています。身内に非常に甘いとしか思えないような、今回の捜査の経過もそうなんですけれども、今回の処分について、また今回の事件に関して、ちょっと警察庁長官の御意見をお伺いしたいと思います。

田中政府参考人 委員御指摘の奈良県警察におきます事案でございますけれども、これは、今もお話がございましたように、奈良県警の幹部職員が、奈良県内の運送会社から給与名目で長期にわたり、かつ多額の振り込み入金を受けていた、あるいは携帯電話料金の代払いを受けたというような事案でございます。

 これは、先ほど中沢委員のお話にもございましたけれども、一昨年来、警察が挙げて、不祥事ということで国民から非常に厳しい批判を受け、そして改革の道を歩んでいかなければならない、そういうような時期にもかかわらずこういうような事案が続いていたということにつきましては、私どもは極めて深刻に受けとめておるところでございます。しかも、これは奈良県警察の幹部警察官でありますので、それだけに私どもの問題意識というのは非常に厳しいものがあるわけでございます。

 今お話しのように、後でまた御質問があれば詳細を御説明申し上げたいと存じますけれども、今申し上げました、給与名目で長期にわたり、かつ多額の振り込み入金を受けたということ、あるいは携帯電話の代払いを受けたというような理由によりまして、昨日、奈良県警におきまして両名を、一名は懲戒免職、一名は停職、そしてそれぞれ贈収賄罪により奈良地方検察庁に送致したものでございます。

井上(和)委員 今のお話にもありましたように、この中野さんという警視、二千八百万円も振り込んでもらっていたわけですね。これは常識で考えれば、よっぽど何か見返りを期待してこういうことをやったというふうにしか考えられないんですけれども、これは何で逮捕できないんですか。

田中政府参考人 本件事案につきましては、本年一月にこのような不正があるというような情報に接しまして、奈良県警におきましては、調査及び捜査両面にわたりまして鋭意調査、捜査を進めてきたところでございます。

 今お話しのように、身内に甘いのではないかという御指摘、あるいは逮捕しなかったことにつきましての御意見がございました。

 私どもといたしましては、これは一般論でございますけれども、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づいて厳正に対処しなければいけないことは当然でございます。特に、本件のように警察の上級幹部が行った事案につきましては、身内に甘いとのそしりを受けないように捜査を遂げることが必要であるというふうに認識をしております。

 それで、逮捕をしなかったのはどうしてかという御質問でございますが、捜査を遂げました結果、この交通企画課長でございますが、お話しのように金銭等の収受は認められたわけでございますけれども、その金銭等のわいろ性というものを証拠上認定することができなかったということで逮捕をすることはなかったということでございます。

 しかしながら、警察官が被疑者の事案でございますことから、犯罪の成否について厳正な判断を求めるという観点で事件を検察庁に送致した、こういうふうな報告を受けているところでございます。

井上(和)委員 きょうの新聞に、警察刷新会議のメンバーだった中坊公平さんのコメントが出ているんですね。「贈収賄が疑われ、証拠隠滅の恐れもあるのに、なぜ逮捕しないのか。身内に甘いと言われても仕方ない。」そういうことを言っているわけですね。「今回の問題は刷新会議の提言を受けて警察法が改正された後も続いていたことになる。一体、提言をどう受けとめていたのか。」と、非常に厳しいコメントをされているんですね。

 この件に関しては、奈良新聞という地元の新聞社がずっといろいろな調査をしてきたわけですが、その奈良新聞の記事の中に、速度違反をもみ消しというのが数回あった、そういうことも報道されているんですよ。

 この中野さんというのは交通企画課長ですから、当然そういう交通関係の担当であったわけですね。現に交通違反の記録を抹消したとかそういうことが既に報道されているのに、それでもわいろ性がなかったというのは私はちょっと信じられないんですけれども、どう思いますか。

田中政府参考人 本件につきましていろいろな報道がなされていることは承知しておりますし、また、奈良県警察におきましては、その報道内容も一つの情報として捜査、調査をしてきたわけでございます。

 昨日送致をいたしましたこの両名につきましては、今お話しのような交通違反のもみ消しというような事案は確認されなかったということの報告を受けているところでございます。

井上(和)委員 実は私は内部の情報をちょっと間接的に入手したんですけれども、それによりますと、この中野警視が、自分がもし逮捕されたらすべてばらすぞということを言っている、だから逮捕できないんだということを言っているんですけれども、どう思いますか。

田中政府参考人 先ほど申し上げましたように、私どもは法と証拠に基づき捜査しているところでございます。また、逮捕の必要性があれば、それは逮捕の必要性があるということで手続を進めるわけでございまして、今お話しのようなことはなかったというふうに思っておるところでございます。

井上(和)委員 この中野警視と川口警視以外にも、その他の県警の幹部が関与しているということも新聞で報道されていますよね。実際に署長をやっておられた警視正クラスの方の関与というのも新聞で言われているんですが、警視正というと、これは国家公務員で、当然国家公安委員会の監督下に入るということになりますが、どうでしょうか。

田中政府参考人 本件につきましては、先ほどお話し申し上げておりますように、本年の一月にこのような不正事案の情報に接したわけでございまして、多数の警察官が本件に関与しているというような報道もございます。そこで、奈良県警におきましては、さまざまな問題点につきまして相当数の職員から事情聴取を行うなど、丹念に調査あるいは捜査を進めてきたところでございます。その結果、昨日に至りまして、この二名の警視にかかわります不適正事案につきまして明らかになり、懲戒処分をし、事件を奈良地方検察庁に送致したところでございます。

 なお、奈良県警におきましては、なお調査を要する点があるという認識は持っておりまして、継続して事実関係の解明を進めておるところと承知をしております。私どもといたしましても、引き続き徹底した調査を行うよう指導してまいる所存でございます。

井上(和)委員 奈良県警が収賄容疑で県警本部を捜索、県警が自分の本部を捜索ということをしたわけですよ。要するに、既に警視正レベルの関与がささやかれているという状態で、県警がみずからの、自分の本部を捜索してちゃんとした結果を出せるんですか。

田中政府参考人 委員御質問の趣旨は、奈良県警察の幹部が関与しているかもしれないというふうに言われる事案につきまして適正な調査あるいは適正な捜査が期待できるのか、こういうような御質問ではなかろうかと思いますけれども、私どもは、残念ながら過去におきまして幹部が関与した事案につきまして、いろいろ国民の批判を浴びた事案もございましたけれども、それはその都度厳正かつ適正な調査、捜査をしてまいっておるところでございまして、奈良県警におきましてもそのような方向で対応してきているものと思います。

井上(和)委員 ちょっと私わからないんですけれども、警視正レベルが関与しているという、まあこれはあくまでも風聞だと思うんですけれども、少なくともそういうことが言われている以上、当然警察庁としても何らかの行動をとるべきなんじゃないですか。それはとってきたんですか。それとも、ただ県警に任せてきたということで、県警のすべての報告をうのみにしているということを今長官はおっしゃっているんでしょうか。

田中政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたように、大勢の者が関与しているのではないかというような報道もございます。また、幹部が関与しているのではないかという報道もございますので、私どもといたしましても、厳正に調査あるいは捜査をするよう指導してきているところでございます。これは警視正が関与しているかどうか関係なく、この種、国民からいろいろ御批判を招くような事案につきましては、私どもは従来からもそういう指導をしてきているところでございますし、今回の事案につきましてもそのような指導をしてきておるところでございます。

井上(和)委員 具体的にどういうふうに指導しているのでしょうか、ちょっと御説明いただきたいと思います。

田中政府参考人 具体的に個別の事案、情報につきましては、これは基本的には奈良県警察の問題でございますので、奈良県警察が人事上の措置あるいは捜査をやることにつきましては、これは警察法上もそういう仕組みになっております。

 ただ、今お話しのように、警視正、国家公務員が関与しているのではないかというような御指摘だとすれば、これは国家公安委員会の任免にかかわる事案でございますので、私ども、国家公安委員会を補佐すべき立場にございますので、警視正にかかわる事案があると報道があれば、それはどういうような内容であるのかということにつきましては、奈良県警察に質問をし、具体的な事情を聞いておるというのは当然でございます。

井上(和)委員 この件に関して国家公安委員会に報告は上がっているんでしょうか。国家公安委員会でどういう決断がされているんでしょうか。

田中政府参考人 国家公安委員会におきましても、最近におきまして、いろいろな報道とかあるいは雑誌等でいろいろな警察官にかかわる事案あるいは警察の具体的な捜査にかかわる事案がございます。それにつきましては、その都度御質問もございますし、私どもからも御報告を申し上げます。この奈良県警の事案につきましても、その都度御報告を申し上げておるところでございます。

井上(和)委員 お答えになっていないんですけれども、国家公安委員会がこの件に関して何か決断されているんですか。ただ長官が国家公安委員会に事実を報告されただけなんですか。それでおしまいなんですか。

 国家公安委員会というのは、非常にいろいろな面で非難されてきましたよね。要するに、それがちゃんと機能を果たしているかどうかということですよ。それがもし、ただただ報告を受けてそれでおしまいになったら、これは機能を果たしていないんじゃないですか。どうでしょう。

田中政府参考人 これは、基本的には都道府県警察が警察の職務の基本であるということは委員御承知のとおりだと思います。この法律の規定に従えば、人事とかあるいは捜査ということにつきましても、これも都道府県警察の本部長が基本的にはやるというのが建前でございます。ただ、今お話しのように、不祥事案とかあるいは具体的に世間の耳目を浴びるような大きな事案につきましては、公安委員会におきましても御議論いただきまして、その都度御指示があったりあるいは考え方をお述べになったりすることもございます。

 今回の問題につきましても、具体的に警視正が関与し、あるいは懲戒処分ということになれば、当然それは国家公安委員会の権限でございますので、それはそういう御判断もございますし、昨日も、新潟県警察で不祥事がございましたけれども、その懲戒処分につきましては、国家公安委員会で御説明をし、決裁をいただき、そして私どもはそれを新潟県警察に示達をしたということでございます。

 今回の奈良県警察の事案につきましても、報道等につきましても御存じでございますので、その事実の解明に全力を挙げろというような御指導はございます。

井上(和)委員 ちょっと私、よくわからないんですよ。結局、警視正クラスの関与が疑われるという余地があるのに、あくまでも県警でまずはやれと。私、今、中沢先生から、特別監察制度というのがあるんだから、それをとにかく警察はやるべきだということをアドバイスいただいたんですが、この件に関して特別監察をやっていただけますか。

田中政府参考人 特別監察ということでございますけれども、それは制度というよりも、むしろ一昨年来の全国の警察の不祥事が続きましたので、具体的に、人事管理のあり方あるいは具体的な捜査上の問題点につきまして、仕組み上どういうようなところに問題があるか、あるいは人事管理上どういう問題があるかということにつきまして、全国一斉に監察をいたしました。それを私どもは特別監察と申しておるわけでございます。

 今お話しのような個別具体的な事案につきましての監察ということにつきましては、これは基本的にあくまでも都道府県警察の問題であるというふうに考えております。また、警察法の改正で、都道府県公安委員会につきましても個別具体的な監察の指示という規定を設けていただきました。恐らく、今回、この具体的な問題につきまして公安委員会としての御判断があるとすれば、奈良県の公安委員会が個別具体的な監察の指示をするというのが、まずそれが先行するのではないかというふうに思っております。

井上(和)委員 私、大変失礼ですけれども、ちょっと長官の認識が甘いんじゃないですか。地元、奈良県の方では、警察が身内をかばっているということはもう公然のように言われているわけですよ。警察の権威が失墜している状況にあるのに、その最高責任者である警察庁長官の認識というのがちょっと甘過ぎるんじゃないかということを私は申し上げたいと思います。

 そこで、きょうは検察庁に来ていただいているので、検察の方にお伺いしたいんですけれども、私、新聞を拝見してやはりこれはちょっとおかしいなと思ったのは、県警が県警本部を捜索するというようなことでいいのか、何で検察は乗り出さないのかというのは、恐らくごく単純な国民の疑問だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

渡邉政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの事件につきましては、先ほど警察庁長官からもお話がございましたように、昨日、三月十五日に奈良県警本部から、収賄罪により被疑者二名、贈賄罪により被疑者二名の各送致を受けて、検察庁で現在捜査中でございます。

 検察当局におきましては、今後厳正に所要の捜査を遂げて適切に対処するものと承知しているところでございます。

井上(和)委員 検察としては特にどういうことをやるんでしょうか。捜査をやるんですか。

渡邉政府参考人 今お答えいたしましたように、昨日事件の送致を受けたわけでございますから、検察庁で厳正に捜査をしまして適切な措置をするということでございます。

井上(和)委員 ぜひ徹底的にやっていただきたいと思うんですね。

 今回の問題なんですが、この件が、一説には四十人近い関与者がいるというふうに言われているし、実際に交通違反のもみ消しというのは、新潟なんかでもありましたけれども、やはりこれは現場の警察官クラスから関与していなければとてもできないような話ですね。そうなると、やはりかなり構造的な問題を抱えているんじゃないかというふうに私は思うんですね。

 三月十九日に奈良県警の警視正以上の、また下旬にそれ以下の人事異動を発令するというふうに私聞いているんです。やはり、こういった人事異動も何か今回の事件のもみ消しにどうも関係しているんじゃないかというふうに私は推測しているんですね。特に幹部クラスに関しては、当然国家公安委員長の権限で人事異動を行うというふうに私は理解しているんですけれども、こういった今の時期での人事異動は私はするべきじゃないと思うんですが、どうでしょうか。長官、お願いします。

田中政府参考人 奈良県警察の人事異動につきましては、奈良県警察の職員につきましては本部長、それから奈良県警察の警視正以上につきましては、委員御承知のとおり、国家公安委員会の人事でございます。人事異動を通じまして事件のもみ消しあるいはもみ消しと受け取られかねないようなことがあっては決していけないわけでございます。今後の奈良県警察の異動に当たりましては、恐らく国家公安委員会でも、そういうことのないようにという御判断のもとでなされるであろうと思いますし、また奈良県警察本部におきましても、奈良県の公安委員会のいろいろ御指導を得ながら適正に対応してまいるものというふうに考えておるところでございます。

 一般には、春は年度もかわりまして、定年の問題とかいろいろございますので、いわゆる異動時期でございますので、退職者が生ずることによる異動とかいうのはやむを得ないところだと思いますけれども、ただ、お話しのように、異動によりましてこの事案の解明にいささかなりとも疑惑を招くようなことがあっては決してならないということで指導してまいりたいと思っております。

井上(和)委員 国家公安委員会がきちっとした役割をこういった問題に果たしていかなきゃ、それこそまた国民の信頼も失ってしまうわけです。今回の幹部の人事案件というのは、当然国家公安委員会の責任なわけですから、よく事情を調査してからやった方がいいと私は思うんですよ。だから、今回の人事異動というものを私はやるべきじゃないと思うんですけれども、国家公安委員会は今どういう見解で、もう既に認められているんでしょうか。

田中政府参考人 国家公安委員会としてということにつきましては、私はお答えする立場にはないわけでございますけれども、当然に今回のこの奈良県警察の事案につきましては、詳細御報告をまた今後申し上げなければいけないと思いますし、また、人事異動につきましては、その内容、時期等につきましても、そういうことを御判断の上で決定されるものというふうに承知をしております。

井上(和)委員 本日、残念ながら国家公安委員長が御出席ないので、ぜひまた次回の機会に国家公安委員長にいろいろお伺いしたいと思うんです。

 今回の問題、佐川急便グループとの癒着の構造があるということなんです。奈良の佐川急便グループにも奈良県警から十何名が天下りしているということです。社長自体が県警のOBであった、そういう構造になっているんですけれども、この佐川急便グループに各都道府県の県警から多くが天下りしているんじゃないでしょうか。私、このことに関してぜひ調査していただきたいと思うんですよ。こういう一つの奈良県警の事例が出てきたわけであるので、私、どうもこういった構造がほかにもあるんじゃないかというふうに思うんですが、この天下りのリストというのを出していただけますか。

田中政府参考人 委員御指摘の、今回の奈良県警察の事案にかかわっております奈良佐川急便株式会社という会社でございますけれども、これは恐らく全国規模の大手運送会社との関係を委員御指摘だと思います。

 実は、奈良佐川急便株式会社は、奈良県内に本店を置きますけれども、全国規模の大手運送会社と業務提携をして運送業を行っておりますけれども、全く独立した株式会社でございます。したがいまして、奈良佐川急便株式会社に警察OBが再就職しているということと今お話しの全国の大手の運送会社との関係は、これは同列にはなかなか議論できない問題だと思っておるところでございます。

井上(和)委員 ただ、各県では、それぞれのところでは会社は独立していても、全体でグループというふうになっているわけですよね。いかがでしょうか。

田中政府参考人 私どもはそれぞれ独立した会社として認識をしておりますけれども、その業務提携あるいはグループということにつきまして、私どもがそれをグループという判断をすることにつきましては、ちょっと私どもからお答えするのは適当ではないと思っております。

井上(和)委員 この件に関してはちょっと調査していただけないようなので、私ども独自に調査させていただくしかないかなというふうに思っています。

 最後に、ちょっと法案のことに関してお伺いしたいんですけれども、犯罪被害者の給付金のことに関して、私の持っていたイメージと実際の内容がちょっと異なっていたということを申し上げたいと思います。

 もし万が一犯罪に遭って自分なり身内が殺されたということがあった場合に、今回のような法案があるからある程度の給付がもらえる、そういう制度が日本にもあって安心だななんというふうに私も思ったんですね。ところが、現実的によくいろいろお話を聞くと、最低額がこれまでは二百二十万円、そして今回それを三百幾らですか、済みません、正確な数字はちょっと失念しましたけれども、三百万円台に上げるということですね。

 しかし、私、それでも、生命の値段というんですか、国民感情的にはちょっと額が少な過ぎるんじゃないかと思うんですよ。先ほど大臣からも、今回のこういった犯罪被害者の給付の概念的なお話がありましたけれども、それでも、お子さんを亡くしたり身内を亡くして国から出たお金が二百万ないし三百万というのではちょっと少ないし、国民感情的にも、今多くの国民が治安に不安を持っているわけですよね。いつ自分自身が犯罪に出会うかわからないという状況になってきている。そういった中で本当に安心して、万が一ということがあっても多少なりとも金銭の支給を受けられるということは非常に大きなことだと思うんですね。そういう国民に安心感を与えるという意味でも、私はこの最低額がちょっと少な過ぎると思っておるんですけれども、どうでしょうか、長官の御意見は。

田中政府参考人 委員の御質問は、犯罪被害給付制度の根幹にかかわる問題でございまして、犯罪被害給付制度をどのように考えるかということに帰着する問題だろうと思います。社会保障全体の問題、あるいは犯罪被害給付制度全体の問題としてどのように考えていくかということの中で今後議論されるべき問題ではなかろうかと思います。

 ただ、お話しのように、命の値段というような考え方からいたしますと、いろいろこれは御議論があろうかというふうに考えているところでございます。

井上(和)委員 もうそろそろ時間がないので質問はこれでやめさせていただきますけれども、私、今国民が本当に治安状況に不安を抱いているということをぜひ長官また幹部の方に御理解いただきたいと思うんです。例えばピッキングとかそういうことはどこでも行われているという状況になっているわけです。ところが、交番を見ればお巡りさんはいない、そういう状況。そういう意味で、警察も本当にこれから国民が安心して暮らせるように頑張っていただかなきゃいけない。そういう中で今回の奈良県警のような汚職の問題が出てきたというわけですね。警察がもう二度とこういう事件が起こらないように自浄作用を出してうみを出す、そして国民の信頼を本当にかち取っていくということが大事だと思いますので、ぜひ長官にも御指導をよろしくお願いしたいと思います。

 以上で質問を終わります。

横路委員長 塩田晋君。

塩田委員 今回の法律改正案でございますが、これは給付と援助の拡大という内容が主たるものでございまして、これについては我々は了とするものでございます。

 故意の犯罪行為によって不慮の死亡または重障害の重大被害を受けられた被害者及び遺族に対します給付金の支給及び援助、こういう現行制度に対しまして新たに拡充、援助を広げられる、ここに至ったその理由、背景、これについてまず簡潔にお答えをいただきたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 この法律は昭和五十六年に施行されたわけでございますが、以来、被害者の方々あるいはその遺族の方々の被害の軽減に役割を果たしてまいりました。しかしながら、平成七年の地下鉄サリン事件といったような無差別殺傷事件に象徴されるような、被害者には全く思いがけないような被害が重ねて発生をするということがあったわけでございます。

 警察といたしましては、平成八年に被害者対策要綱というものをつくりまして、被害者対策の推進を警察なりに図ってまいってきたわけでございますけれども、被害者の方々の置かれた悲惨な状況というものが広く社会に認識をされるに伴いまして、なお一層の被害者の方々に対する支援を求める声が社会的に高まってきている、こういうふうに認識をしておるわけでございます。

 そこで、警察庁といたしまして、有識者による検討会にいろいろな御検討をお願いいたしまして、そこにおける議論やあるいは意識調査によって明らかとなった国民の御意見を踏まえまして、より一層被害者のニーズにきめ細かくこたえるために、今回、犯罪被害者等給付金支給法を改正させていただきたいということを、内容的には委員の御指摘のとおりの内容でございますが、今そういうことをお願いしている、こういう背景、経緯でございます。

塩田委員 それでは、この制度が創設されまして以来の二十年の間におきまして支給対象者が四千五百人、金額として百六億円という実績だそうでございますが、その中身につきまして、障害給付金、遺族給付金の金額、件数等の推移につきまして、また年平均を御説明いただきたいと思います。

石川政府参考人 今御指摘のとおり、この制度創設以来、平成十二年十二月末までの二十年間に、約四千五百名の被害者、御遺族に対して約百六億円の給付金が支給をされております。

 この間の遺族給付金、障害給付金の支給状況でございますけれども、四千四百六十五名の御遺族の方々に対しまして約百一億八千万円の遺族給付金、それから八十六名の被害者の方に対しまして障害給付金四億四千九百万円を支給しておるわけでございます。

 平成十二年中の申請者につきましては四百四十七名でございまして、前年と比べますと二八%の増、こういうふうに増加をしておりまして、制度発足以来最も多い申請者数になっておるわけでございます。

 だんだん増加をしてきておる、こういう理由でございますが、先ほど申しましたような、この犯罪被害救済に関する社会的な関心がやはり高まっているということ、また、犯罪被害給付制度が周知されるようになってこの制度が広く国民の間に定着をしつつある、こういうようなことが要因ではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。

塩田委員 国がこの給付金を支払った後に、加害者側に対しまして当然国が請求するということになるかと思うのですが、その実績、金額、件数等についてお伺いいたします。

石川政府参考人 法律の仕組みは、国が加害者に求償権を行使するということになっているわけでございますが、現実に、現在までにそうした求償権を行使した事案は二件ございます。そのうち一件は平成二年に給付金が支給をされた事案でございまして、約二百二十四万円を求償したということが一つございます。

 このほかに、オウム真理教に係るサリン事件あるいは地下鉄サリン事件等の被害者の方々に対しまして平成七年にこの給付金が支給をされておるわけでございますけれども、警察では、これによりまして国が取得した損害賠償請求権に基づきまして、オウム真理教の破産管財人に対して約五千五百万円の求償手続を行っておるところでございます。ただ、この求償権につきましては、オウム真理教に係る破産手続における国の債権に関する特例に関する法律という法律によりまして劣後化をしておりまして、民間の方々の被害者の権利よりも劣る、こういうような取り扱いになっておるわけでございます。

塩田委員 この給付金の内容でございますが、遺族給付金、障害給付金、それぞれ最高、最低にかなりの差が出ております。この理由は、いろいろな要件がある、あるいは年齢等の関係もあるかと思うのですけれども、どういう要素でこういうふうに最高、最低が大きく違うのでございますか、お伺いいたします。

石川政府参考人 犯罪被害給付金の額の算定でございますけれども、これは、被害者が勤労に基づいて通常得ていた収入日額をもとに算定をする、こういうことになってございまして、被害者の収入の多寡によって差異が生じる、こういうことになります。

 また、この制度におきましては、犯罪行為が行われた当時における被害者の年齢幅に応じましてそれぞれ給付額に最高額と最低額を定めておるということでございまして、委員の御指摘のように、年齢によりましてもその差異が生じてくる、こういうことになるわけでございます。

塩田委員 今の件について、死亡の場合でも、被害者の状況によって差が出るということもありますか。

石川政府参考人 被害者が死亡されたかどうかと……(塩田委員「死亡の原因について事情があった場合に金額が少なくなるとか」と呼ぶ)これは算定要素として、死亡の原因が故意による傷害あるいは殺人ということであれば、それがどういう状況下で行われたかということについて、例えば被害者側に帰責事由がないというようなことが明らかである場合には差は生じません。

塩田委員 続きまして、今回の改正案につきまして、来年度予算額はどのようになっているか、また、その給付の金額、対象者の件数等が増加するという傾向にありまして、それをどのように織り込んでおられるか、お伺いします。

石川政府参考人 今回御審議をお願いしております改正案は、この改正法律の施行後に発生した犯罪行為による被害に適用されるということでございます。実は、この施行前に発生した犯罪行為による被害につきましては施行後に申請をされるということもあるわけでございまして、したがいまして、新制度と現制度が来年度の年度途中から併存するといったようなこともあるわけでございます。

 今のところ、平成十三年度予算におきましては九億一千四百万ほどの予算をお願いしておるわけでございますが、これは、平成十二年度の場合で申しますと五億六千九百万円でございます。

 将来的に、新制度だけが適用になるというふうに定着をした場合の予算額についての見積もりでございますけれども、これはなかなか正確なものは難しいわけでございますけれども、四、五年先においては現在の七倍強の方々が支給対象となるのではないか。そういたしますと、予算規模が四、五年先にはおよそ十五億円程度になるのではないだろうかということを今の時点で推計しているところでございます。

塩田委員 来年度予算の額は九億円ですね。前年が五億円ということです。何倍かになって、平年度、将来的には十五億円というのは、ちょっと伸び方が少ないんじゃないですか。

石川政府参考人 これは将来の犯罪情勢にかかわることでなかなか推計が難しいのでございますが、実は今回の改正でお願いしておりますのは、今まで一級から四級までの重障害であったものを一級から十四級まで幅を広げた。そういたしますと、十四級に該当される方についての給付金というのは当然低額になってまいります。そういうものがどのぐらいあるかという推計のもとで、一応の推計として十五億円程度を見込んでおるということを申し上げたわけでございます。

塩田委員 今回の法改正の措置によるものではないですけれども、給付金の額の増加というのは、これは政令で定められることになっているようでございますが、どの程度単価をふやす考えでおられますか、お伺いします。

石川政府参考人 今のお尋ねに関しまして、遺族給付金についてまず御説明をいたしますが、最高額は、現行が一千七十九万円となっておりますが、これが新制度がお認めいただければ一千五百七十三万円に、それから最低額につきましては、現行二百二十万円でございますけれども、これが三百二十万円となるわけでございます。

 ただし、今回の改正によりましては、重傷病給付金、医療費の自己負担部分が付加をされることがございます。それはさらにこれに足されるということでございますから、最高額についてはさらに高額になるのではないかな、こういうふうに思っております。

 それから次に、障害給付金でございますが、現在、先ほど来申し上げていますように、障害等級一級から四級までは適用されておるわけでございますが、一級の場合、最高額は現行で一千二百七十三万円でございますが、これが一千八百四十九万円になる、最低額は現行の三百三十五万円から四百八十二万円ということになるわけでございます。

 一方で、今回の改正によりまして障害等級が十四級まで拡大することを予定させていただいておるわけでございますが、十四級の場合には、最高額が六十九万円、最低額が十八万円、こういうふうになってございます。

 ただ、障害給付金につきましても、重傷病給付金の対象にもなる方につきましては所要の額がさらに支給をされる、こういうことになるわけでございます。

 この給付額の引き上げにつきましては、算定の基礎となります給付基礎額について、最高額と最低額を引き上げるというふうに今考えていると申し上げたわけでございまして、具体的には、五十六年にこの法律が設定をされて以来、最低額が据え置かれたままであったということでございます。それで、それについて引き上げを行う。それから、最高額については、過去三回改正が加えられておるわけでございますけれども、これにつきましても、現在の賃金センサスを基準として給付基礎額を算定し直すようにしておる、こういうことでございます。

塩田委員 次に、ちょっと細かいことになりますけれども、障害が残らない場合、重傷病給付制度の新設がされましたね。これの要件ですけれども、十四日以上の入院かつ一カ月の加療というのが要件になっておりますね。これについて、その要件はどういう根拠でやられたのか。実際問題起こった場合には、そのボーダーラインのところは非常に微妙になってくると思いますね。これについてお伺いします。

石川政府参考人 これは制度の本旨にかかわる問題でございまして、この給付金の制度、先ほど来、大臣、長官から御答弁申し上げていますように、そのまま放置をしておくと国の法制度全般に対する国民の信頼が失われるような重大な被害というものを対象としてその救済、支援を行っていこう、こういう考え方に立つものでございまして、そういう意味で、犯罪被害の態様の重大性から見て決して看過できないという極めて重大な被害に限定をして考えておるわけでございます。

 一般に、重度の負傷または疾病と言われるときに、社会通念上、全治一カ月以上の傷病を指すというふうに考えられるところでございまして、この重傷病給付金の支給対象というものを、加療一カ月以上を要する傷病に限定したわけでございます。

 ただ、こうしたものの中にもさまざまな態様の傷病があるわけでございまして、通常、極めて重大な傷病については十四日以上病院へ入院することを要するものであるというような専門のお医者さんの御意見とかそういったものを私ども伺いました。そういうことも考慮をいたしましてこういう限定を加えた、こういうことになるわけでございます。例えば、病院に入院をしたという要件だけでございますと、比較的簡易な縫合手術とか、あるいは検査・観察入院といったようなものも含まれるわけでございまして、こういったものを重大というような範疇でとらえていいかどうかということを考えたわけでございます。

 それから、こういう要件でございますから、要件そのものとしては日にちで限っておるわけで、比較的明確なものであるというふうに考えておりますので、この要件の認定をめぐって大きなトラブルは生じないのではないだろうかと今のところ考えておりますけれども、支給の対象となるかならないかというのはいろいろな判断で決まってくるわけでございまして、委員御指摘のようなボーダーラインについては、その要件をあらかじめ国民の皆様方に広く、広報なりあるいは民間団体の活動を通じて啓発をしていただくということも大変大事なことだろうというふうに考えているところでございます。

塩田委員 さらに、医療費の自己負担分、これは三カ月を限度としておりますね。この三カ月で適当かどうかという問題、どういう根拠で三カ月とされたか、お伺いします。

石川政府参考人 この制度による給付は、損害のすべてを補てんするという考え方に立っていないわけでございまして、ほかの公的な給付制度を見ましても、傷病に対する給付について一定の限界が定められている場合があるわけでございます。また、新たな種別の給付であるこの重傷病に対する給付につきましても、こういったものに倣って一定の限界というものは設けられざるを得ないだろうということを考えたわけでございます。

 したがいまして、重傷病を受けた被害者の方がまず一般に負担を余儀なくされる保険診療による医療費の自己負担部分に着目をいたしまして、これに相当する部分について、三カ月を限度として給付金を支給するというふうにいたしました。

 これは、有識者で構成をしていろいろ御検討いただいたと申し上げましたが、その犯罪被害者支援に関する検討会における御議論の中でも、三カ月を限度として重傷病給付金を支給することが相当であるというような御指摘も受けておるわけでございます。

 それから、幾つか理由がございますが、医療保険制度におきましては、三カ月以上にわたり保険診療による医療費の自己負担部分が高額に達した場合には、それ以降の自己負担部分について相当程度軽減が図られることになっておるということが一つございます。それから、警察庁が昨年実施をいたしました実態調査の結果によりますと、重傷病を負って障害が残らなかった被害者のうち、八割近くの方が三カ月未満で治癒をしておる、それから九割近くの方々が三カ月未満で退院をしておられる、こういったような実態もあるわけでございます。

 そういったようなことから三カ月ということで御提案をさせていただいておる、こういうことでございます。

塩田委員 官房長に最後に二問続けてお願いします。

 まず、早期援助団体、これは社団法人三団体がそうですね。これは、具体的に言えましたらお知らせいただきたい。もう一つの御質問は、死亡の場合の遺族給付金ですが、死亡が、被害発生時即死の場合は問題ないと思うんですが、それを原因としてその後に亡くなられる、それを原因として死亡するといった場合の遺族給付金は、何カ月後までの死亡が給付金の対象になるのか。この二点をお願いします。

石川政府参考人 今回お願いをしております改正法の仕組みのもとで指定を受けることが見込まれる団体として三団体あるわけでございますが、これは全国被害者支援ネットワークに加盟をしておる団体のうち社団法人化されております三団体でございまして、東京と愛知と京都に存在をする三団体でございます。一つは被害者支援都民センター、これは東京でございます。それから被害者サポートセンターあいち、これは愛知県、それから京都犯罪被害者支援センター、京都。

 これらの団体が、非営利の法人としてもし申し出があれば、私どもの方として審査をした上で、要件が満たされれば指定をされる可能性のある団体でございます。

塩田委員 死亡の場合の……。

石川政府参考人 犯罪に起因をして即死と、それから傷害でしばらく伏せっておられて亡くなったといった場合でも、これは傷害致死ということになるわけでございますから、期間について特にその制限はないというふうに認識をいたしております。

塩田委員 しばらくして亡くなられた場合という今の御答弁でしたけれども、しばらくというのはどれぐらいの期間かということをお聞きしているんです。

石川政府参考人 犯罪行為と死亡との間に因果関係があれば、それについて期間は問わないということでございます。

塩田委員 わかりました。

 最後に、大臣がお見えになりましたので、これは細かい問題でなくていいんですけれども、政治的答弁をしていただきたいと思うんです。

 諸外国で日本と同じようなこの制度が見受けられるわけですね。これは進んでいるところ、あるいはおくれているところもあると思いますけれども、そういった制度ができている諸外国との相互主義、外交上の相互主義の関係で、これはどういうふうに扱っておられるか、あるいはこれからどうしようとされるか、そのことについてお考えをお聞きしたいと思います。

 それから、外国人の場合でも日本の給付金支給制度は適用される、ただし、一時滞在者とかあるいは不法滞在者とか、こういった者が除かれるのは当然だと思うんですけれども、そういうことで今後ともやっていかれるという方針でよろしゅうございますか、お伺いします。

伊吹国務大臣 けさの答弁でもお答えいたしましたように、これは代位弁済の制度ではなくて、基本的には見舞金ということでございますから、日本国内におられる外国人の方であっても、日本の社会秩序を守っていく中でのほころびから結果的に生じることでございますから、当然それは対象として考えていくべきだと思っておりますし、また、そのようにいたさせます。

塩田委員 先ほど申し上げましたように、不法滞在者とか、あるいはもちろん観光等を目的とした旅行者、一時滞在者、これは除かれるわけですね。それは当然ですね。

 それで、相互主義の関係ですけれども、いかがですか。

伊吹国務大臣 日本は今私が御答弁申し上げたような形で措置すると思いますし、諸外国においても当然そういうことになると思いますが、このことについての条約があるわけではございませんので、少し正確なところは詰めてみなければなりませんけれども、日本人が外国で同じような立場になって、外国にその制度がある場合には、これは当然適用してもらわねば困ると思います。

塩田委員 ありがとうございました。終わります。

横路委員長 松本善明君。

松本(善)委員 きょうは犯罪被害者給付金の法律について質問をいたしますが、その前に、先ほど、国家公安委員長がおいでにならないときに、井上議員から、奈良県警の問題、詳細に警察庁長官との間でやりとりがありました。国家公安委員会にも逐次報告しているということだし、新聞も大きく報道していますから御存じと思いますが、一問お聞きをしたいと思うんです。

 マスコミも身内に甘いんじゃないかといって厳しく指弾をしていますけれども、贈収賄事件で逮捕をしないで捜査をするというのは、私はほとんど聞いたことがない。やはり、贈収賄事件というのは罪証隠滅のおそれが非常に強いですから、逮捕をして罪証隠滅ができないようにして、そして徹底的に捜査をしなければ、それは捜査完了とは絶対言えないです。捜査をしたと言えないです。

 私は細かいことを国家公安委員長にお聞きするつもりはないんですけれども、所信表明で、警察に対する信頼が大きく揺らいでいる、それの回復が非常に重要な仕事なんだということを言われました。私は、これは警察に対する信頼を物すごく失墜する大きな事件ではないか、国家公安委員長としてこの問題についてどう対処されるか、伺っておきたいと思います。

伊吹国務大臣 先ほど参議院の本会議がございまして、失礼いたしました。その間、井上先生からいろいろ御質疑があったようでございます。

 長官から御説明を申し上げましたように、先生は一番よく御存じだと思いますが、国家公安委員会とそれから警察庁との関係、そして自治体警察、つまり昔の内務省ではない自治体警察と警察庁の関係というのは、いろいろ法律上ございまして、これで地方自治、民主警察が守られている部分と、率直に言うと非常に何か靴の上からかいているようにもどかしい部分と、二つあるということは私の印象として申し上げたいと思いますが、国家公安委員会にはこの件の報告はございました。

 私は、この事件については先生と同じような印象を持っておりますし、特に私は近畿の出身でございますから、いろいろな報道も私は関知をいたしております。事件の詳細について私が申し上げるのは適当かどうかわかりませんが、少なくとも部内の、公務員に対する懲戒の措置としてこのことにさわったのではなくて、刑法、刑訴法の事案としてこのことにさわった限りは、後で違うことが出てきたり何かするということがあった場合には重大な問題を生ずるよ、だから、その点については、私どもが持っている警察への管理権と警察庁長官が持っている一般的な指示権の中で奈良県警本部長にしっかりと申し渡してほしいということを一つ言ってあります。

 それからもう一つは、贈収賄罪の立件要件として、請託があったかどうかというのは、これは重要なポイントなんですね。この件については、率直なところ、私どもにはそこのところがよくわかりません。金品の贈与があったということは確認しておるようですが、具体的にどういう請託があったかということが私自身もよくわかりません。また、聞くべき立場にもないと思いますし、いろいろそれとなくうかがっている雰囲気では、具体的な請託の有無についてはなかなか把握が難しそうなことも漏れ聞きます。

 そういうこともございますので、この件には厳正な検察の判断を仰ぐという意味で送検をしたんだと思いますが、いずれにしろ、ちょっと私どもの常識からは外れたことだと私は思いますので、一番最初に申し上げたことを実は国家公安委員会の席上でも国家公安委員長である私の方から申し上げておきました。

松本(善)委員 わかりました。

 一般的なことですが、請託の有無は一般的贈収賄罪に関係ありません。

 それから、この案件でありますが、議題になっております政府提出の本法案の改正は、被害者の救済、援助の点で一定の改善が認められるので、私ども、賛成できるものであると思っております。しかしながら、やはり不十分な点がかなりある。やはりこれは改善をしていかなければならぬ問題だ。その問題点を指摘しながら質問をしたいと思っております。

 最初に、提案理由の説明で国家公安委員長は、「地下鉄サリン事件等の無差別殺傷事件の発生等を契機に、被害者の置かれた悲惨な状況が広く認識されるに伴い、犯罪被害給付制度の拡充を初めとして、被害者に対する支援を求める社会的な機運が急速な高まりを見せております。」と述べて、この状況を踏まえて改正案を提出するというふうにお述べになりました。

 それも一つなんですが、やはり被疑者、被告人の人権というものと比べると、犯罪の被害者の人権というものが日本社会の中では取り残されてきているんではないかというふうに思います。それが今ちょっと表面化をしているんではないかというふうに思うんです。日本弁護士連合会も基本法についての提言をしておりますし、それから国連宣言で、犯罪及びパワー濫用の被害者のための司法の基本原則宣言というのが出ております。これはまあ拘束力のある条約ではありませんけれども、日本政府は参加をして、賛成の立場で合意が一応できたというもののようであります。そういうものも視野に入れてこの提案をされたのかどうか、伺いたいと思います。

伊吹国務大臣 先ほど来御質問の中にたびたび出てくることでございますが、社会を動かしていく基本的な理念というか、政策を判断する尺度というのか、これは党によってやはりしっかりしていないといけないと思います。尺度は違っても、尺度がしっかりしているということに対しては私は敬意を払いますので、民主党さん、社民党さんの出された法案は、これはこれで一つの筋だなと。

 先生がおっしゃっているのも同じような線上のことだろうと思いますが、我々は、基本的に社会というものは自己責任原則で処理されるべきだ。基本的にはですよ。したがって、秩序を乱した者については当然国が刑事罰は下しますけれども、犯罪加害をした者は被害を与えた者に民事上の責任をとるというのは、これは社会の当然の姿、まずそこが原点でなければならない。しかし、その原点が、犯罪の加害者については、理屈としてはいいけれども、現実にはなかなか動かないので、結果的に被害者の方の人権や生活が極めて悲惨な状態になっている。それをどうするかというところについては、先生方と私どもは同じ考えでございます。

 したがって、今、見舞金的な給付以外にも、社会福祉的な施策、あるいはまた医療分野の施策、その他いろいろな施策がございますから、こういうものをやはり私どもは個別に積み上げながら、先ほど来細川先生の御質問にもございましたように、いずれ方向として基本法でまとまるものなのか、あるいは、総合調整的な役割を果たす省庁において被害者に一番プラスになるための援助だとか情報提供だとかということを行う形で持っていく方がいいのか、これはいろいろ立法論上の議論があろうかと思います。

 私どもがこの法律をまとめたのは、私が提案理由に申しましたように、見舞金的給付という基本原則に立っているけれども、地下鉄サリン事件その他犯罪の状況が多様化して、かつ、被害者のお立場を考えるとこれでは薄過ぎる、こういう感じでつくったわけです。それと同時に、事後のカウンセラー機能だとかそういうものを加えて、支援団体への援助とかこういうものを考えながらつくり上げた、こういうことでございます。

松本(善)委員 先ほど、大臣の御答弁をよく聞いておりました。要するに、加害者が一義的に責任を負うべき、それは当然だと思うんですよ。それから保険もあります。だけれども、それで覆い切れない状態というのが起こっているから問題になっているんだと思うんです。

 それで、私は、理念が違うと先ほどから言っておられるんだけれども、国連宣言なんかは、国家公安委員長と理念を共通にしている人たちも含めてできているんだと思うんですよ。だから、私どもは、民主党、社民党の提出した犯罪被害者基本法、これについても共同提案のお話がございましたが、もう少しすり合わせをしてという時間的余裕が十分なかったものだから共同提案にはならなかったんですけれども、基本法が必要だということは同じです。そして、私は、与党も含めて、国家公安委員長も含めて、やはり基本法をつくるべきだというふうに思うんです。既に共通の基盤になり得るものが日弁連だとかあるいは国連宣言だとかあるわけだから、やはりそういう方向に進むべきだというふうに私らは思っているんです。

 それで、理念論争だけやっているんではちょっと具体的ではありませんので、中身について、なぜそういうことが必要なのかということを官房長とやりますから、聞いていていただいて、後でまたもう一回御質問するかもしれません。

 法案の中身について聞きますが、犯罪被害者等給付金制度は、これまでも支給対象の範囲の狭さとともに水準の低さが批判されてきたんですが、警察庁の説明によりますと、今回の改正に伴って政令事項で支給額が改善される。その額は最高でも死亡で千五百七十三万円、障害で千八百四十九万円。自賠責の最高額三千万円と比べますと隔たりが非常に大きいんですよ。この辺は国家公安委員長も認識しておいてほしいんですが、一件当たりの平均の支給額は九九年度で四百五万円にとどまっております。

 例えば、見知らぬ男に路上で刺されて通院を続けているという被害者の場合に、年間百万円近くも医療費がかかるんですね。少なくとも自賠責並みの水準に引き上げるべきではないか。これは官房長でなくてもお答えいただけますかな。

伊吹国務大臣 これは先生よく御存じでおっしゃっていることだから。自賠責というのは基本的に共済制度なんですよ。これは見舞金制度として組み立てているわけですから、その点はよく御認識していただいていると思いますけれども、どうぞよろしくお願いします。

松本(善)委員 それは制度の違いは承知の上なんですよ。承知の上なんですが、現実に犯罪被害者が置かれている状況を見るならば、やはり自賠責の適用を受ける人と同じぐらいのことは国として考えてしかるべきじゃないか。そこまででも私は極めて不十分ではないかと思うんです。

 それでは、仮に自賠責まで引き上げた場合に、予算額はどのぐらいかかるんでしょうか。そのことも含めてお答えをいただきたい。それは官房長でもいいです。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 今国家公安委員会委員長から御答弁がございましたように、自動車賠償責任保険制度で給付の最高額というのは三千万円ぐらいまでいく、こういうふうに承知をいたしておるわけでございますけれども、財源が違う、こういうことでございますし、制度の趣旨も違う。私どもは、今までの犯給法の枠組みの中での給付の基礎額とか最高額、最低額、こういったものについては、国民の期待にこたえ得る水準というのはどのぐらいだろうかということを検討した上で、今回はそういった期待におこたえできるんではないか、こういうことで法案を提出させていただいた、こういうことでございます。

松本(善)委員 国家公安委員長も聞いておってほしいんだが、これは見舞金という考えでは今の状況から実情に合わなくなってきているんですよ。

 答えないから言いますが、現行では支給総額が年間六億四千五百万円、百五十八人ぐらいだそうです、九九年度で。六億四千五百万というと、一流のプロ野球の選手の年俸ぐらいですね。これは非常に貧しいと思うんですよ。やはり考えないといけない。

 警察庁によりますと、二〇〇一年度は九億一千四百万円を見込んでいるという話であります。新しい水準の適用がふえていくともう少しふえていく、十四、五億にもなるだろうという話ですけれども、現行でいいますと、アメリカ、イギリスは一番多くて、日本はアメリカ、イギリスに比べますと一・四%前後です。これは単純に比較はできないけれども、やはり相当低いということを自覚しないと、だからこそ国連宣言なども出るわけで、それに取り組む必要があるんだと私は思うんです。

 時間も限られていますので、全部の一つ一つの点は詰めませんけれども、もう一つ、過失犯の犯罪被害が対象から除かれている。これは制度の発足当初から問題になってまいりました。被害者が被害の回復を求める切実な気持ちに故意犯、過失犯の区別はないんですね。過失犯で死んだからといって、それではその被害者の現状が、悲惨さが変わるのかというと、そんなことはないわけですよ。何で過失犯を除外するのか。先ほど来言われている、加害者から賠償を受けられた場合は給付金を重複して受給できないという規定が犯給法の八条にちゃんとあるんだから、過失犯を対象から除く必要は全くない。

 それで、過失犯の交通事故の場合は自賠責で回復されるわけですけれども、交通事故でない、例えば何かビルの上から物が落ちてきた、そういうようなことで死亡したという場合に、やはりおかしいんじゃないだろうか。過失犯を除くというのでは実情に合わないんじゃないだろうか。国家公安委員長、お答えできればお答えいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 先生の御議論をずっと伺っておりますと、やはり基本的な理念のところにどうしても返っていくんですけれども、故意による身体犯というのは、本来法秩序を破るという意思を持って行われている悪質な犯罪でございますから、これから生じた被害というのは、またこういうものを放置しておくということは、国の治安とか法秩序というものに対する国民全体の不信感を惹起して、社会の秩序とか公益の維持のためにゆゆしい問題を生ずる。

 しかし、過失犯については、基本的には社会のルールとしては原因者負担のルールで動かしていく。今の例で言えば、自動車だって過失があるから強制保険の自賠責というものがあり、その上にさらに心配な方は任意の損害保険を掛けていらっしゃる。加えて、今の例で言えば、上から物が落ちてくるなどということは、普通は作業をしている企業とかビルの人たちが当然、この市場経済、自由社会のもとでは損害保険の範疇においてカバーしている。私は共産主義社会のことはわかりませんけれども、市場経済においてはやはりそういうルールというもので基本的には動くというので、ここは分けているということだと思います。

松本(善)委員 皆、市場経済を認めている方々が先ほど来も質問して、民主党も社民党も基本法を提案している。それで、過失の問題について今御答弁がありましたけれども、やはりその背景には理念の問題があると言われたから、私は、そうだとすれば理念を変えた方がいいと。こんなことさえできないというのが理念の問題だと言うのならば、やはり基本法が必要だということになりはせぬだろうか。ビルのことをおっしゃいましたけれども、それはマンションの上から過失で物を落としてけがをさせたという場合だってありますよ。そういうことについてやはり広く社会で考えようじゃないかというのが今出ている議論なんだと思います。

 次は、支給要件の問題です。今回新たに創設される重傷病給付金の支給要件は、改正案の二条三項で、全治一カ月と政令で定める要件ということになっている。警察庁によりますと、これは入院十四日以上。

 重傷病給付金の支給要件、入院十四日以上ということに政令でするとしますと、心的外傷を除くことになってしまう。例えば労災保険の給付には、入院は要件に含まれていません。入院を要件に含めますと、強姦だとか強制わいせつで、外傷は軽いけれども心的外傷は重いという被害は支給対象から外されてしまいます。これは男性はなかなか理解しない場合が多いんですけれども、私も弁護士として実務をやった経験がありますから、女性の被害者の心的傷害というのは大変なものなんですよ。それは成人女性でもそうです。それから、未成年者ならますます重大なものです。

 そういうのが外されてしまうというのはおかしいんじゃないですか。それもやはり理念ですか。

石川政府参考人 今、委員御指摘は、十四日以上入院という政令要件をつけると精神的な傷害を受けられた方に対する救済というものがそれから外れるんではないだろうか、こういう趣旨の御質問だろうと思うわけでございますが、加療一カ月以上の傷病の中にもさまざまな態様の傷病が考えられるわけでございまして、極めて重大な被害に限定しようと、先ほど御説明したようにこの要件を考えたわけでございます。

 そこで、通常、こういう極めて重大な傷病については十四日以上入院することを要するということでありますから、PTSDといったようなもので、例えば入院をしていろいろな治療を受けるという初期の段階での合意があるという場合には支給対象になるということはあるというふうに思うわけでございます。

松本(善)委員 私の言ったような場合でも適用される場合があるという趣旨の答弁ですね。だとすると、こういう政令で定める要件というのはやめた方がいい。私はやはり、そういう操作ができるようなことはやめた方がいいように思います。全治一カ月以上の重傷という絞りだけでもう十分なんじゃないかというふうに思うんです。

 それから、給付金の支給期間、先ほども塩田先生、御質問がありましたが、これも政令で定めるということで、一律三カ月に限定してしまっている分野。それを超える治療を必要とする被害者を切り捨てることになる。さっきも言いました心的外傷の場合は症状の好転、悪化を繰り返す。三カ月に限定するというのは、どうしても実情に合わないと思うんですよ。やはり、給付期間についてはできる限り被害者の実情に合わせて、現実に医療あるいはカウンセリングに要した期間に応じて給付するということの方が合理的だと思うんです。これもやはり理念になりますかな。どうですか。

石川政府参考人 先ほど塩田委員にもお答えを申し上げたんですが、給付期間を三カ月を限度としたということにつきましては、医療保険制度を見てみますと、三カ月以上にわたって保険診療による医療費の自己負担分が高額に達した場合、いわゆる高額療養費の支給を受けた場合には、それ以降の自己負担部分については相当程度軽減をされるということがまず一つあるということがございます。

 それから、実態調査を私どもが行ったところ、重傷病を負って障害が残らなかった被害者、これは十四日以上入院をされて加療一カ月以上の傷害の方でございますが、このうち八割近くの方が三カ月未満で治っておられる、それから九割近くの方が三カ月未満で退院をしておられる、こういうことがある。

 さらに、先ほど申し落としましたけれども、取り返しがつかない犯罪被害に対して支給をされるという仕組みでございますので、障害給付金による給付とこの重傷病給付金の物の考え方との均衡というものをやはり図らなきゃならないんじゃないだろうかと考えた場合に、具体的には障害給付金の最低額、障害等級の十四級の場合でございますが、これの均衡を失しない範囲で支給をする必要があるんじゃないか。

 こういったいろいろな要素を判断した上で、三カ月というふうに私ども考えた次第でございます。

松本(善)委員 三カ月ではほとんど治るというお話なんだけれども、治らない人もいるわけですよ。だから、やはりそこの実情に合わせた方がいいんじゃないか、それが行き届いた制度ではないかということを言っているわけです。

 時効について、被害を知ってから二年ということなんですが、この制度はやはり一般的に知られていないんですよ。警察による説明も徹底されていないで、実例としては、警察からパンフレットを渡されただけで何の説明もなかったというようなことで時効期間を徒過しているとかいうようなこともあるんです。だから、犯罪被害者の数に比べて受給者の数は極めて少ない。九八年度の犯罪による死亡者は千三百五十人、給付金の支給の裁定を受けたのは百四十七件。これは九九年度犯罪白書です。

 それは、やはり警察が被害者に説明することも十分やられていないという問題がある。だから、警察の被害者への制度の説明を義務づける、そしてさらに、説明を受けてから何年とするのも一つの方法だし、単純に二年という年限を延ばすことも考えなきゃならない。いずれにしてもこの時効問題、改善しなければならぬと思うんだけれども、どう考えているか。

石川政府参考人 殺人事件の発生件数に対して非常に遺族給付金なりなんなりの裁定が少ないじゃないか、それは十分に国民に制度の周知をしていないんではないか、こういった趣旨の御質問だろうと思いますが、一つは、殺人事件につきましては、四割ぐらいが親族間の犯罪として発生をしているといったようなデータがあること。ただ、それにしても少ないんじゃないかということにつきましては、これはやはりこの制度の趣旨を生かすために、御指摘のように、広く国民の皆様にこの制度の存在なり機能というものを知っていただくための広報活動というものをきちっとやっていく必要がある、これは私どももそういう認識でございます。その内容といたしましては、ポスターとかリーフレットとかいろいろあるわけでございますが、今はインターネットというような媒体もあるわけでございますし、そういうホームページで制度の周知に努めております。

 個々の事案につきまして、都度、被害者等に対して担当者から「被害者の手引」というものを交付する、こういうことになっておるわけでございまして、その必要部数をきちっと印刷をして、そして必要な方に、例えば身体犯、性犯罪の被害を受けられた方、交通事故の被害を受けられた方、こういう方々に対して「被害者の手引」を渡していく。交通事故については給付金の対象ではございませんが、やはり被害者に対する救済なり支援という意味では大事な分野だろうということでそういうことをやっておるわけでございます。

 さらに、今回お願いをしております民間援助の団体、こういう方々とも十分協力連携をして、この制度の周知というもの、あるいは広報啓発というものに努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

松本(善)委員 最後に、国家公安委員長に。

 今ずっと問題点、細かく詰め切れはしませんでしたけれども、問題点の指摘はしたと思います。

 私の感じとしては、やはり基本法は要るなというのが結論です。そこに国家公安委員長、すぐ御同意されるかどうかは別としまして、やはり憲法で基本的人権が保障されており、生存権も保障されている、そういうものを持っているわけですから、加害者の責任はもちろんそうなんだけれども、そうならなかった場合の社会的責任というのがやはりあると思うんです。

 それで、基本法についての考えの一致するいかんにかかわらず、私は、現状ではやはり、一歩前進ですよ、前進だから賛成もすると言っているんだけれども、これでとどまっちゃいけないと思う。犯罪被害者の悲惨な状況というのは、もっともっと時間があれば実情をお話しすることができますけれども、やはりその改善をしていく努力をしなければならぬ。それについての国家公安委員長の決意、御所見を伺って、質問を終わろうと思うのです。

伊吹国務大臣 被害者の方が憲法上いろいろ持っていらっしゃる人権とか権利というものを守っていくというのは、これはもう党派を超えて、我々日本国憲法のもとでやっている限り当たり前のことだと思います。それをどういう形で実現をしていくのか。

 そしてまた、一つ一つが納税者の税金でございますから、手厚くすればいいということについてはどなたも異論はないでしょうけれども、その負担をどう求めるかということになるともう各党みんな意見が違うというのでは困りますから、施策が、今、生活保護だとか医療だとか福祉だとかいろいろございます。これも総合的に見まして、基本法がいいかどうかについては先生と意見が違うと思いますが、お困りになっている方を憲法の大きな枠の中でしっかりとお互いに政治家として守っていくということについては、御一緒にやらせていただきたいと思っております。

松本(善)委員 終わります。

横路委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十二分開議

横路委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。太田昭宏君。

太田(昭)委員 きょうは質問の時間をいただきましたが、実は、この犯罪被害給付制度ということについては私は特別な思いがありまして、きょうは質問に立たせていただきました。

 今から二十五年ほど前に、この法律がまだないときに、私は公明新聞の記者でありましたが、公明党がいわゆる犯罪被害補償法の制定に懸命に動いていた時期がありまして、私はそれをお手伝いさせていただいたわけです。なかなか野党で制度をつくるというのは難しかったんですが、五十五年にこれができまして、五十六年の一月一日からこの制度が始まったということについては、大変感激でありました。

 実は、この裏にはいろいろなことがありました。昭和四十一年に、神奈川県の市瀬朝一さんという方がいらっしゃって、二十六歳の一人息子がおりまして、十九歳の少年の通り魔殺人によって大事な息子さんを失うという事件がありました。

 私も当時からその話を聞いたわけですが、この市瀬さんの息子さんは長野県の方と結婚が決まっていたということがありまして、突然の死ということで、一日ベッドの中で格闘しながら命を失ったんですが、遺言がありまして、おやじ、おれのかたきを討ってくれということを言って亡くなったということです。

 市瀬さんは鉄工所をやられていたんですが、それで一生懸命動くということになりまして、かたきを討てというのは相手を殺すんだということで、法廷に行きましてチャンスをうかがうというようなことがあったんです。しかし、それはこうした制度をつくるという運動が大事だということで、全国を駆けめぐったんですが、組織をするということは非常に難しくて、十年がかりでずっと動いておりました。

 この法律の契機となったのは、四十九年の三菱重工爆破事件というのがありました。当時私もこのことに携わっておりましたものですから、窓ガラスが落ちて首をすぱっと切るというような非常に大変な事件でありました。

 市瀬さんは五十二年に亡くなりました。奥さんがそれを継いで一生懸命やられたわけですが、「償いなき死」というような読売の連載が始まりましたり、最後は、ここに本がありますが、木下恵介監督の「息子よ」という、「衝動殺人 息子よ」ということで、木下恵介さんが映画をつくってくださったということで、私にとりましては大変感激でありました。これが五十四年でありまして、その後、新宿の例のバスの事件がありまして、五十六年の一月一日からこの法律が施行されました。

 しかし、この法律ができたときに非常に残念だなと思ったことがあります。それは、運動をつくって一生懸命やってくださった方には何にも報いることができなかった、遡及ができないということがありまして、私財をなげうってずっとつくってきてやっとでき上がったときに、この市瀬さんのところには感謝状が一枚だけで、あとは何もありませんでした。

 しかし、一人の市民が十年余りの年月をかけて命と財産をかけて立法化の実現を獲得したということで、公明党にとりましては、この市瀬さんと一緒にこの法律をつくるということで、当時闘った方で、木下監督も亡くなったようでありますし、それから沖本さんという私たちの先輩が亡くなりましたし、服部信吾さんという伏木さんの秘書で闘った方も、参議院議員でありましたけれども亡くなったんですが、また市瀬さんはもちろん亡くなったわけですが、私はそんな思いがあって、これが今回拡大をされるということについては、一言、これは質問というか、感慨も含めてこの場に立たせていただきたいなというような思いで、きょうはさせていただいたわけです。

 私は、そういう意味で、十分というわけではないけれども、今回ちょうど二十年たちまして大きく前進をしたということは、公明党の先輩にとりましても、また身銭を切ってこの運動を展開したという一人の方の遺志というものがこうして二十一世紀の冒頭に広がって実現をしていくということについて、我々国会議員として大変こたえることができたんではないのかな、このように思っております。

 そこで、市瀬さんなんかも盛んに言っていたんですけれども、やはりどうしても加害者は守られるけれども被害者がということがありました。当時も、いつ裁判があるかわからない、情報すらわからないということをこの運動を展開した市瀬さん御自身がおっしゃっていたわけですが、私は、昨年、被害者保護二法というのができて、今回これができ上がりますと、被害者の側に立った法律が、基本法という考え方もあるでしょうが、かなり総合的に確立されつつあるという実感を持っております。

 そこで、昨年の質問ですが、被害者保護二法の成立の際、附帯決議がされまして、犯罪被害給付制度の拡充とか、民間の被害者支援組織等への援助とか、相談・カウンセリング体制の整備とかということがありました。案外附帯決議というのはそのまま放置されることが多いんですが、私は、先ほどから申し上げましたように、多くの方の悲願というようなことの延長線上で、ぜひとも附帯決議というものを大事にしながら取り組んでいくということが非常に大事だ、このように思っておりますので、ぜひとも附帯決議についてどのようになっているか、またどのようにされているかということについて答弁を願いたい、このように思います。

伊吹国務大臣 まず、御答弁を申し上げる前に、この制度ができるに当たっての歴史的背景、大変感動的なお話をお伺いしました。

 率直に申して、法律のいろいろな法治国家の要件がございますので、遡及等十分なことができ得なかったということには申しわけないと思いますけれども、やはり、高い地位につくことに成功したり、金をもうけたり、たくさんお金を持つことに成功したという人は多いと思いますけれども、人間になるということに本当に成功したという人がどれぐらいいるのかなという昨今の状況を思うときに、この制度をつくり上げるために御努力をいただいた、今お話のあった皆さんに私は心から敬意をあらわしたいと思いますし、その方々のお名前は、きっとこの制度を適用される方のお心の中に残るのではないかと思っております。

 さて、先生のお話にございましたように、犯罪被害者保護のための二法のときには、おっしゃっているとおりの附帯決議がありまして、今回の法律の中には、この被害給付制度の拡充はともかく、いろいろ御意見があるでしょうが、かなり財源の範囲内でやらせていただいている。同時に、警察本部長、警察署長等の被害者への援助のあり方、それからまた民間団体で被害をお受けになった方々に対する援助活動の促進、こういうものは今回の法律に入っておりますので、これをできるだけ真心を持ってしっかりと運用をしていき、そしてまた、事情が許せば次々と改善をしながらいいものにしていく。

 先ほど来のお話を伺って、私は、現実を忘れるとやはり政治というものはできないと思いますが、同時に理想を持っていなければ政治をやっている値打ちがないと思いますので、まことに当を得たお話だと思って伺っておりました。

太田(昭)委員 そこで、今回はこれで前進をしましたが、さらに私は取り組みをしていただきたいと思います。特に取り組みの中では、地下鉄サリン事件等の調査が九九年にありますけれども、その中に、突然事件の光景がよみがえるというようなことをおっしゃっている方が非常にいらっしゃる。また、松本サリンの河野さんと、私のふるさと愛知県豊橋市で実は隣の中学校なものですから、何度かお話をさせていただいたりしているんですが、こうしたものに対しては、精神的なショック、ストレス障害というものにどう対応していくかということが非常に大事だということで、特に昨今は、そうしたデリケートな部分に対しての専門的なフォローというか、そういうことも含めて体制をとっていくということが非常に大事である、このように思っております。

 そうした精神的なショック、ストレス障害ということがこれから大きな課題になると思いますが、この施策をどのように考え、拡充をどのように考え、そしてこの制度以外の対策というのをどのように考えていらっしゃるか、御答弁をいただきたいと思います。

石川政府参考人 今委員御指摘のように、特に精神的被害に遭われた方につきましては、発生直後からいろいろなケアをしていくということは大変重要なことだというふうに私ども認識をしておるわけでございます。

 この法律の改正案、今御審議をいただいておりますが、犯罪被害給付制度の拡充とあわせまして、被害発生直後から援助が効果的に行われるようにするための仕組みといたしまして、警察が情報の提供を行っていろいろな民間団体がいろいろな援助を被害者の方にしていく、そういう活動を促進させていただきたい、こういう仕組みを設けております。

 また、法律以外の問題といたしましては、やはり警察だけでなかなかできない部分がございます。そういうことで、都道府県には被害者支援連絡協議会というものがございまして、そこにいろいろな医療機関等が入っております。そういうところとの連携を強めてまいりたいということがございます。ネットワークをつくって、そこでいろいろな相談なりカウンセリングをやっていただく、こういうことが一つあろうかと思います。

 それから、警察自体といたしましても、今部内でカウンセラーの養成というものを行っておりまして、まだまだ未熟ではありますけれども、そういう体制を整備してまいりたいというふうに思っております。

 特に、体制の整備といたしまして、少年がいろいろな被害を受けたときに心に傷を持つというようなこともございますので、少年が被害を受けた場合はどうだろう、性犯罪で被害を受けた場合はどうだろう、そういう被害類型別に、それに合ったようなカウンセリングなり相談の体制というもの、あるいはそれに対する技量というものについての研修、そういうようなことで体制を強化してまいりたいということで、今努めているところでございます。

太田(昭)委員 ぜひともこれからいろいろな意味で取り組みを強化していただきたいというふうに思いますが、その四十一年から始まった運動がなかなか広がりを見せなかったのはなぜかというふうにいいますと、経済的になかなか運動を持ちこたえられなかったということがあります。先ほど申し上げた市瀬さんというのは、鉄鋼関係をやっていらっしゃったものですからまだ運動が続けられたということだったんですが、経済という問題では、障害の程度とかいうだけでなくて、弁護士費用とかいろいろなものも要るんですね。

 法律扶助制度が昨年できまして、私は、民事ということについて援助できる体制ができたということは非常に画期的なことだというふうに思っておりますが、昨年でき上がったこれが現状どうなっているのか、あるいは諸外国がどのようになっているか、今後どのようにしていくかというようなことについて、法務省がいらっしゃると思うんですが、お聞きをしたいと思います。

吉戒政府参考人 お答え申し上げます。

 民事法律扶助法の施行後の状況でございますが、これは先生御指摘のとおり、昨年の四月に成立させていただきまして、十月から施行という運びになっております。

 昨年の四月から九月までの半年間の扶助の件数でございますけれども、これは実績といたしまして約九千件ございます。法律が施行されました昨年の十月から十二月までの三カ月間、この実績が約五千件でございます。ことしの一月以降の実績につきましては、恐らくさらにこの五千件という数字を上回る形になるのでなかろうかというふうに見込んでおります。

 こういうふうな件数の伸びは、私ども国、それから指定法人でございます財団法人法律扶助協会が、この法律の施行に合わせまして全国的な周知、広報に努めた結果ではないかなというふうに考えております。

 それから、二点目の諸外国の制度の状況でございますが、欧米の先進諸国、これはいずれも民事法律扶助に関する法律を整備いたしております。いずれの国におきましても、国の強い関与と財政的負担のもとに制度が運営されていると承知しています。

 諸外国の民事法律扶助に関する事業規模でございます。ちょっと煩雑になりますけれども、ごく簡単に申し上げますと、例えばイギリスですと一九九四年度で一千六百十億円、フランスが九三年度で百八十二億円、ドイツが三百六十三億円、アメリカが六百五十六億円、それからお隣の韓国が十七億三千万円ということでございます。

 そこで、こういうふうな法律を成立させていただきまして、今後その充実に努めたいと思っておりますけれども、今後の方向性といいましょうか、充実の方向でございますが、これは先生御指摘のとおり非常に重要な制度でございますので、今回の法制定の成果、それから、現在、司法制度改革審議会におきましてこの点につきましても審議がされているというふうに聞いております。そこらあたりの審議の結果を十分踏まえながら、この制度の一層の整備、発展を図ってまいりたいと考えております。

 なお、平成十三年度の扶助関係の予算案でございますけれども、政府予算案の中で約二十五億七千万円が計上されているという状況でございます。

太田(昭)委員 この犯給法というのは、故意の身体犯ということが対象になっていますが、被害者が困窮するとか精神的、経済的な被害、ダメージということについては、過失ということにおいて生じた結果ということでも、私は同じ苦しみであろうというふうに思うのですね。

 こうした点に対して、これはこの法律の範疇ではないのかなというふうに思いますが、過失ということに対して、今後の方向性について何かお考えがあればお答えいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 実は、午前中に、民主党、社民党さんが議員提案として出されている基本法についての関連でもいろいろな御議論がありました。

 基本的には、この法律というものは、日本社会の基本原則である自己責任原則がどうしてもうまく動かない部分について、本来は加害者が当然民事上の責任も被害者に対して負う、しかし、そのことが現実的ではないというときに、社会の共生として国家が国民の税金でもってその人たちを救済していくという基本的な理念に政府提案は立っているわけです。

 したがって、今先生がお話しになったことは今後の検討課題ではあると思いますけれども、基本的には、故意による身体犯というのは、法秩序を破る積極的な意思を持って行われている行為であって、これによって被害を受けられた方がどうしてもその加害者から必要な求償を受けられない場合において、社会全体が社会の秩序の維持あるいは社会の共生という観点からこれを救済していく、こういうことだと思うのですね。そういう被害を放置することは国民全体の中に法秩序に対する不信感を出してしまう。

 ところが、故意の犯罪行為ではない過失犯の場合には、例えば自賠責については、当然そういうことが過失として起こり得るであろうから自賠責制度というものが自己責任原則によってあって、あるいは各種の共済制度というものがあるということとのバランスから考えますと、将来の問題として、犯罪の結果生じた生活の困窮だとか、そういうことに関する生活保護費だとか医療費の補助だとか、すべてを取り込んでしまったというようなものができるときには、今おっしゃっていることはやはり立法政策としては考えていかなければならぬのかな、そんなふうに私は思っております。

太田(昭)委員 あと時間が若干ありますので、せっかく伊吹大臣がいらっしゃるので。

 この間、原潜とえひめ丸のときに、危機管理だ、事故だという立て分けは、あの論議の延長線上では、それはそれで結構。しかし、もう一つ考えなくちゃいけないのは、総理が駆けつけてくるとかこないという以上に、その後に、事故実態ということについて、アメリカの調査をただいたずらに待っているだけのような感じで、もっと英知を結集した危機管理の体制、システムというのをぜひとも伊吹危機管理大臣のもとでつくっていただきたい、私はそういうふうに思ったのです。

 駆けつけてくる、こないじゃなくて、例えば、実は防衛庁の人にも、限られた情報の中で一体これはどうなのか、専門家から見てどう思うかということを私は聞きました。また、いわゆる軍事アナリストというような方たちや、あるいは原子力潜水艦に非常に詳しい人たちにも聞きました。

 そうしましたら、まだ何もそういう報告がないという状況の中で、例えば、ぶくぶくと沈んでいるということを言っていた、こういう報道がある。幾つかのそういうような現状の何げない発言というものの中で、ある人は、えひめ丸がある、原潜が浮上する、そしてぶくぶく沈んだということは、きっと後ろの方の船底が切られている、そのためにそのままずっと沈んでいった、そういうことではないかと。それは、彼が言うには、例えば、その原子力潜水艦の後ろの方の、飛行機に当たるこういうところはどういう構造でどの程度の強さを持っていて、船というのは船底がどのような強さを持っていてというような、これは工学部、理学部系統の理科系の人と私は話をしたんだけれども、かなり分析をするわけですね。

 そうすると、日本が真っ先に行って、捜索も大事、しかし、真っ先に言うことは、情況証拠とか発言からいくときっとそのまますうっと船は沈んだに違いない、まず船を引き揚げろ、あるいはその中に人が閉じ込められているはずだというような認識というものが、ぶくぶくと、すうっと沈んでいってしまったという発言一つにしても、この限られた情報でさえも、日本として、原子力潜水艦に詳しい人、船に詳しい人、海流に詳しい人、いろいろなものの英知を結集して分析をして、何を優先順位としてアメリカならアメリカに要求するかというようなことがあってしかるべきだ、私はそう思ったのです。

 そういう点で、英知を結集して分析作業をしながらという一つの、表面に出た情報自体を分析するというようなことも含めた総合的な作業というもの、あるいはそのシステム、体制というものが強化されていかないといけないんじゃないかなというふうに思います。

 私は、その辺の、危機管理か事故かというのではなくて、リスクコントロール概念とかダメージコントロールというようなものに対処して情報分析したりという、内閣機能は確かに強化されたわけなんですが、その辺の情報分析、あるいは理科系なら理科系の人を取り込んだりいろいろなことをやる、専門家を呼ぶ、そういうことで、今情報はここまでしかないけれども、この中で一体何がどう考えられて日本の外交交渉の中では何を優先順位として言ったらいいのかというような、そこの頭脳とかそういうものの結集がちょっと日本というのは弱いのかな、私はこう思っています。

 ぜひともこれはそういう意味で、もうゴルフだとか何時間かかったのだとか、そういうふうな論議ではありません。もう一遍、リスクコントロール概念、そしてダメージコントロールということの官邸あるいは政府のシステムというものを、英知を結集する体制、これをぜひとも伊吹大臣のもとで踏み込んでいただければな、私はこのように思うのですが、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 大変建設的なお話でございます。

 私の率直な印象を申し上げておきますと、今回初めて、危機管理担当という辞令をもらいまして、この辞令には、内閣官房の所掌する危機管理の事務を委嘱するとだけ書いてあるんですよ。ところが、法律から何から、内閣法から何からみんな、危機管理監は内閣官房長官の指揮を受け、こう書いてあるわけですね。

 ですから、私がこのポストについて最初から考えていたことは、阪神・淡路大震災等のいろいろな反省から、内閣に情報を集中させるというところまではかなりのことができているんですね。ところが、ここへ入ってくる情報には雑多な情報があって、ガセネタから、全然関係のないような情報もあります。それから、各省が対応すべき、例えば、ちょうどあの原潜の一日前には七人の方が福島沖で遭難をして行方不明になっておられますね。そういうときは海上保安庁が対応しておる。

 同時に、今の先生のお話は多分これに当たるんだろうと思うんですが、官房長官が、内閣の総合調整機能の一端として、各省に呼びかけながら、重大な事件、事故の総合オペレーションを行う。それから、内閣法十五条に言っているような極めて大規模な生命財産が失われるとか、国家の秩序が揺らぐとか、あるいは主権が侵されるというようないわゆる国家危機。しかし、現実には、先生がおっしゃっているとおり、情報が入ってまいりますと、行方不明者がいるときに、事件か事故かなんというような議論は全く無意味なんですよ。だれかが決断してやらなければならないんですね。

 それで、私はあのとき、やや越権行為だと何度も申し上げていたのは、これは危機管理か事故かなんというようなことを言っている暇がないと思ったものですから、アメリカに軍事機密として囲い込まれないようにこうしろよ、そして在京大使館を通じて米側にすぐに連絡しろと言ったわけです。

 その後、実は、これはアメリカの主権の中で起こっていることですから、こちらでやることはあくまで推測と日本側の情報しかとれないんですけれども、こういうことを申し上げたのは初めてなんですが、原潜浮上中、船尾が衝突した模様とか、そのときに何名の方が船倉内に残っていたかとか、これは確定的なことはわかりません。しかし、大体そういうことはみんなこちらは把握をいたしていたわけです。それをもって総理がフォーリー大使やアメリカの大統領からお電話があったときにはお話をしておられますし、そして福田官房長官が在京の米公使と話をしたときも話をしておられますから、今回は、先生がよく御存じのとおり、アメリカという国の法のシステムとか軍が関与しているところだと、極めて、意外なほど向こうは素直だったと私は思うんですね。私は、あそこまで素直に出てくるとは実は思わなかったんです。今、もう終わりましたからこんなことを申し上げている。

 ですから、そういうことは、言うならば感性の問題なんですね。だから、制度的に準備をしたからできる、できないというものではございませんので、今後とも、少なくともそういうものが動く仕組みだけは私はつくっておきたいと思っております。

太田(昭)委員 終わります。ありがとうございました。

横路委員長 北川れん子さん。

北川委員 社民党・市民連合の北川れん子といいます。よろしくお願いします。

 きょうの法案の審議なんですが、一九八〇年の三月のこの制定時の議事録を読み返していると、すべて問題点が挙げられていました。遡及の問題、制度の理念の根拠がないという点、なぜ過失を含まないのかという点、そして見舞金的がいいのか、それとも年金型がいいのかという点、そして四級以下の切り捨ての点等々が、その当時、二十年前も追及されていました。

 そこで、今回の改正では、四級以下の切り捨てを拾い上げたという点では、どなたもおっしゃっているように一歩前進であろうと思いますが、二十年前の制定時にも追及されていた点がなぜ今回顧みられなかったのかという点から質問をしていきたいというふうに思います。

 まず、給付金なんですが、この当時でも、一年間には十三億ぐらいを予算額として思っているということを答弁されています。ということは、二十年間で大体二百六十億円というふうに思うんですが、先ほどからも御紹介になっているように、今回、二十年間の間には百八億程度が支払われたという答弁があって、半額ぐらいの支給額であったということが挙げられましたが、なぜそうなったのかという点はどういうふうに今検証されていますでしょうか。

石川政府参考人 この給付金につきましては、申請を待って都道府県公安委員会が障害給付金あるいは遺族給付金として裁定をする、そういう仕組みで給付がなされているわけでございますが、そのときに、一つの問題といたしましては、この制度がどのぐらい周知をしておるかということがあろうかと思います。

 この点につきましては、警察あるいは都道府県公安委員会として今まで努力をしてきておるわけでございますけれども、今後も、この制度改正によって給付制度が拡充をされるわけでございますから、さらに広報啓発といったようなものについては努力をしていく必要があるだろう。

 それから、申請数が、被害当たりで申しますと年間大体百五十人ぐらいの方に対して裁定がなされているということはずっと続いてきておるわけでございまして、これにつきまして、今申し上げましたような周知がなされてこの制度が万全に運用できるといった場合にどのぐらいになるのかといったことは、私どもは数字を持っておりませんけれども、今後は、そういったことについて、今申し上げましたような施策を通じて十分な対応ができるようにやってまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

北川委員 申請主義であるという点が、周知徹底がもしかしたら不十分であったのかもしれないという御答弁だろうと思うんですが、これは約二十年前の一九七八年のときには、初め法務省でこれを検討していたようなんですが、その当時の大体の事件件数から割り出して、故意、これにこの給付金の対象者となる大体の数字、現実の数字から見計らって六百名程度という数字を出しまして、通常、法務省の段階でずっと三級までの方の大体計算したのも出ているんですが、そういうシミュレーションの試案が出ているんですね。その段階では三十一、二億というふうになっていて、施行段階で十三億になっているんですよ。

 先ほど、周知徹底だけがいかにもその原因ではないかというふうにおっしゃるんですが、従来から、ほかの委員の方もおっしゃっていましたが、給付額が少ないのではないか、こういう点には及び至られなかったのかという点と、今回の予算の試案、それの累積の具体的な根拠が今御提示できるのでありましたならば、総額予算に給付金の幅を広げた段階では大体年間どれぐらいになるというふうにお考えになっているのか、二点お伺いしたいと思います。

石川政府参考人 これまでのこの制度の運用につきましては、給付基礎額それから倍数、そういったようなことについてきちっと法令に従って算定をしてきているわけであります。

 当時の推計と現実の運用に人数の点において差があるというお尋ねでございますけれども、一つは、先ほどもちょっと御答弁申し上げたんですが、例えば殺人事件の全件数に占める親族間の行為というものは約四割でございます。それから傷害致死事件、これも死亡された場合の給付金の対象になるわけでございますけれども、これについても全件数の約四割が親族間によって行われている。これについては、支給をしないか、あるいは特別例外的な場合に一部支給をする、こういう仕組みになっている。そういったような形で、当時の推計と今の実態はどう変わっているかということについては、私ども、なぜ違ったかといった検証を確実にやっておりませんけれども、そんなようなことが影響しているんではないだろうか、こういうふうに一つは思っております。

 それから、今回の改正によりまして今後どういうようなことになるのか、こういうお尋ねでございますが、これも午前中に御答弁申し上げましたけれども、平成十二年度は約六億の予算でこれを運用しておる、平成十三年度については九億余りの予算をお願いしておる、これは年度途中から新制度が併存していくことになりますので加算される、こういうことでございます。

 四、五年たちますと新制度によるところの裁定支給というものが平準化していくだろう、こういうことでございまして、その場合には、年間百五十人ぐらいの被害者の方からの申請、裁定というものが七倍ぐらいになるのではないかということが今の時点で見込まれるわけでございまして、そういたしますと千人ということになります。そのときの支給総額として必要な財源というものにつきましては約十五億円ぐらいになるのではないだろうかということを今時点で見込んでいるところでございます。

北川委員 ぜひ検証していただきたい。

 それで、二十年前の試算を出していらっしゃった、一年間に大体十三億ぐらい、ようやく今十五億ということなんですが、多分、給付額が少ないというのと、申請をしてもなかなか認定が自分の思っていたものにいかない点等々があって、やはり初期、かなりの額を一年間につけていたという点と、先ほど御答弁ありましたが、さっき言った六百名ぐらいであったという実績は、親族間とかそういうものは抜いて、この給付対象になる人だけを大体実績から取り上げて出していた数字ということで、抽象的な数字でではなく、具体的な数字で根拠を出していたということですので、百五十人ぐらいであろうというのが根拠とつながる点がちょっと私には見えないということで、この給付額の面をぜひもう一度再考していただきたい。

 それに絡んで、先ほど、御自身からもおっしゃいましたが、周知の徹底が足らないのではないかという点を次にお伺いしたいと思います。

 これは申請主義なんですが、申請主義ではなくて、一律に対象者には、今は警察庁の担当であるわけですが、そうしましたら、各都道府県の国家公安委員会の人が、あなたが対象者であるということを事前通告する、その上で申請するかしないかは個人の自由というところで、ここの周知徹底が明らかにされていないという点を言っていらっしゃるわけですから、申請主義ではない形でやっていくということは検討の中には入っていないかどうかをお伺いしたいと思います。

石川政府参考人 申請を待つことなく、公安委員会において犯給金を支給するような仕組みにできないか、こういう観点からのお尋ねだろうと思います。

 ただ、支給をするサイドがすべての要件を調査、確認するということは、事実上、大変困難を伴うと思います。その方が今どういう状態のところに住んでおられて、そしてどういう親族関係があってというようないろいろな要件があるわけでございますが、そういうものをすべて御本人とかかわりなく支給サイドが調査をするということは、大変実務上困難を伴うだろう。やはり、一つの申請という行為を待って、きちっと確認をして、給付金を受けることを希望される意思が明確になる、そういう状況のもとできちっとした裁定をするというものが適当ではないかというふうに考えるわけでございます。

 それから、本法の運用に際して、本制度を御存じないということで申請する機会を逸しないようにする、これは先ほど来申し上げていますように、大変大事なことだろうというふうに思っております。この点につきましては、給付の対象となり得る被害者に接する警察といたしまして、「被害者の手引」といったような資料を交付いたしまして周知徹底を図っておりますし、今後ともそういう努力は続けていく必要があるだろう、こういうふうに思っておるところでございます。

北川委員 この議論のときに、まず初めに法務省でやっていたのが警察の方に移って、そのことに関して疑問を呈している委員の意見も議事録にちゃんと残っています。第三者機関が認定した方がいいのではないかということを強く主張していた委員もあったわけです。にもかかわらず、警察が把握をするということはより困難だとおっしゃったんですが、一番身近で一番把握をしやすい部署だからということで警察が担当されるというふうになったと思いますので、今のその困難であるという意味が私には理解できないのです。なぜ困難なんでしょうか。

石川政府参考人 困難であると申しましたのは、まず犯罪が発生したときに一番最初に、被害者の側からいえば一番危機的な状況下で警察が被害者の方と接する、そういう機関であるということで、被害者に対するこういった制度を運用するときにいろいろな情報が警察に集まっているだろう、こういうことでこの事務を担任することになったんだろう、こういうふうに思います。

 ただ、この問題と給付金の申請を、公安委員会が申請を待つことなく通知するといったようなことについては、またちょっと側面が違うのではないか。支給の要件等について、やはり調査、確認をしなければならない。そのときに、申請の意思のある方がそこに見えて自分の要件というものをきちっと説明をされるということが一番確実であり、漏れがない形になるのではないだろうかというふうに思っておるわけでございます。

北川委員 この議事録の中にすべてがいろいろ入っているんですが、調査に協力をしなければ申請がしにくいとかいろいろな状況を、前もってやはりいろいろな委員は疑念を呈されていました。申請率が低いということはお認めになっているわけですから、周知徹底がこの二十年間無理で、いろいろな段階でこういうものをつくったとかああいうものをつくったとかというふうに私も教えてはいただいたんですけれども、ただ、その申請が上がってこないということをよきとしているという形にしか、この二十年間数字が上がらなかったということでは、やはりもう少し申請率が上がるような努力を周知徹底以外に考えなければいけないのではないかという点をお伝えしておきたいと思います。

 それから、どなたも次に過失の問題を言われています。それで、過失の問題については議論がきょうもされていました。この当時からも、究極、この過失を含めたからといってどれだけふえるんだということをシミュレートして言っている委員がありますが、今、過失を含めた場合にどこまで広がるというふうに思っていらっしゃるんでしょうか。

石川政府参考人 どこまで広がるという御質問の趣旨がもう一つよくわからないのでございますが、過失にまで持っていくということになりますと、例えば、対象となる犯罪といたしましては、過失傷害罪、過失致死罪、業務上過失致死傷罪といったようなものが考えられると思います。

北川委員 それがふえるとどれぐらいの、逆に言えば給付額がふえるから、この予算の原資の問題から無理だから過失を含めないという論点にお立ちになっているのか、それを一つお聞きしたい。

 次に、もう一つかかわって、この当時も、各政党間の違いはあってもかなりの委員が、やはりなぜ過失を含まないのか。ほかのいろいろな補償がありますということも含めてずっと削っていきますと、当時言われているのも、この当時だからかもわかりませんが、プロパンガスの自殺の巻き添えとか、先ほど出ていましたビルからの飛びおり自殺のあおりを食う、そして自賠責で保険を受けていないバイクとか原付とかモーター付の自転車で当て逃げやひき逃げされるといったぐらいしか思いつかないのではないかというふうにして、具体的な事例を挙げて聞いている委員もいたんですが、今のお答えになった点とあわせてその点はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。

石川政府参考人 それは、過失を含めると財源が大変多くなるとかそういうようなことでこの問題を考えているわけではないわけでございまして、故意による犯罪行為というものは、法秩序を破壊する、破る意思を持って行われる非常に悪質なものである、そうした犯罪による被害というものについては社会全体として手を伸べていかなければならない、こういう認識に立って、そういう被害がどこからも補てんをされない、補償をされないというような状態が放置されるということは法秩序全体についての信頼の問題につながる、こういうことで、社会連帯共助の精神でこの制度が成り立っておるわけであります。

 一方で、今委員からもお話がございましたけれども、過失犯の問題につきましては、性質上、その加害者に賠償の資力をつけさせる責任保険といったような考え方はとりにくいわけでございますし、原因者負担の原則に基づいて責任保険というような形で救済策をとることが可能であり、現実にそういう運用がなされているわけでございます。

 したがいまして、この制度というものは、故意による犯罪行為に限定をしているということについてはそれなりの合理性はあるというふうに考えている次第であります。

北川委員 そうしましたら、加害者側の責任だからということを強調されていると思うんですが、加害者側の弁済能力としまして、損害賠償のお金が一応決まったとしまして、それを支払っている率というのは今どれぐらいだというふうに認識されているんでしょうか。

石川政府参考人 そうした数字は今手元に把握しておりません。

北川委員 二十年前でも九二%は支払われていないという現実の数字があって、いろいろ慰謝料的なものというのが、一応給付額は決まりますが、払う能力に欠ける。今回の犯給法というのは、もうだれからも払われない、見捨てられている被害者に対しての救済制度だということはわかるんですが、それにも増して、故意の中でさえなかなか支払われていかないというのが現実であるということを、ごめんなさい、詰めることができなくて私もきょうは数字を持っていないんですが、支払われているであろうと推測される数字は今余り多く出ていないのではないかと思いますので、そういう点からも、過失を含めるということはぜひこれからの検討課題として、二十年前にも既に議論が尽くされている点もありますので、特に予算の問題ではないのであれば、含めていくということを考えていただきたいというふうに思います。

 それで、論点は少し違うんですが、日本国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊の構成員等による損害賠償法、こういう特別立法も、SACOが九六年、一部改善提案を出しましたが、それでもなおかつ犯罪がとどまらずふえているし、明らかに過失責任が一〇〇%その人であっても、そこもまた、特に海兵隊の皆さんの給料が安いということもあるんですか、なかなか支払い能力に欠けているということ。

 そしてまた、自賠責というのも加入しなければならないとなったんだけれども、来たときにとりあえず三カ月だけの自賠責の期間の保険というのがつくられて、とりあえずそれに入っている、大体事故を起こすときは三カ月の期限がもう切れていて無責任状態であるというふうに言われていまして、大きな問題になっていて、ここも特別立法をつくろうという動きがもう既に出ているのは御承知のとおりだと思うんです。

 先ほど、この被害者に関しては、外国籍の方は一部未資格滞在者とかに対して出ないということで、これも当初の議論の中に、国籍、宗教、信条を問わずだれにでも適用するというふうにしていくべきだということが言われていましたが、未資格滞在者の問題に関しても、やはり状況が困難である人ほど被害に遭ったり加害の側に回らざるを得ない状況に行くと思うんです。

 未資格滞在者に対して、もう既にほかの方には御答弁されているのであれなんですが、あえて、今後ふえる可能性も高いということも含みまして対象者にしてほしいということと、加害者の方に関しましては、この救済法は加害者の国籍は問うてはいないというふうに理解しておいてよろしいんでしょうか。

石川政府参考人 いわゆる短期滞在の外国人が被害に遭われる、あるいは不法入国で不法滞在をしておる外国人の方が被害に遭われる、こういったような場合には、この給付制度の適用はございません。それは、我が国における社会を構成している方々の社会連帯共助の精神ということに、そういった方々に対してまでこの給付金が支給されるということについて国民のコンセンサスが至っているだろうかというようなことがあるのではないかというふうに思います。ですから、住所の問題が一つあるということでございます。

 ただ、そういう外国人の方でも犯罪被害に遭って苦しまれるということは事実でありますから、そのことについていろいろな形で支援の手を伸ばしていくということは、これは給付金の問題とは別に、犯罪被害者対策と申しますか支援ということについては、いろいろな知恵を出していく必要があるだろう、こういうふうには考えております。

北川委員 ほとんどその部分に関しましては、民間のサポートグループが一生懸命頑張っているという点とか、よく赤ひげ先生とかといってお医者さんが本当に無料で診療するということとかで補っている。というのは、自分が被害を受けたけれども、そのことを警察に告知すれば未資格滞在者であるということがわかるということで、なかなか言いにくいという現状があるというのをもう既に御存じだからそういうふうにおっしゃるんであろうと思いますが、それはそれとして、被害を受けたという事実は事実として見るということがとても大事だろうと思います。

 先ほどもう一つ質問したんですね。これは加害者には国籍は問うてはいないということで理解してよろしいんでしょうか。

石川政府参考人 失礼いたしました。

 加害者について国籍は問いません。

北川委員 それで、先ほどのSACOの九六年の改善案の中に、アメリカによる前払い制度の迅速な支払い手続とかというふうなもの、そしてまた日本国による無利子の融資制度の導入とかという三点ほどの改善案があったんです。

 先ほどどなたかもおっしゃられていたと思うんですが、仮払い、それが前払い制度、これは、あえて今回支援グループに対しての早期ということを眼目に挙げていらっしゃるんですが、この救済金、一時的な見舞金が仮払いというのか、前払い制度的なものになっているのかどうかということと、刑事事件の日数ですね、刑が確定するまでの大体の所要期間、刑が確定して、そして障害が固定してからでないと支払われない、給付までの大体の期間というものを教えていただきたいんですが。

石川政府参考人 こうした給付金がなるべく早く必要な方、被害者あるいはその御遺族の方の手に入るということが望ましいことはもちろんでございます。そういう意味で仮給付金という制度もあるわけでございますけれども、これについて早期にそれを認定していく、裁定していくという努力は必要だろうというのが一つございます。

 ただ、先ほど来申し上げておりますけれども、そういう給付金の制度だけでなくて、現物給付というような形で、犯罪の被害の非常に早期の段階で、いろいろな物的なものあるいは施設的なもののニーズというものは被害者の方にある。そういうものに対していろいろ支援という立場で手を差し伸べていく。これは、民間の援助団体の活動に期待するところが多いというのも委員の御指摘のとおりでありますけれども、そういうものに警察としても一緒に手を携えてやっていきたい、こういうふうに考えているところでございます。

 それからもう一つ、刑の確定ということは、これは要件になっていないわけであります。

 それから、どのぐらいの期間で認定をするかということについては、大体申請からの話しか今のところデータを持ち合わせておりませんけれども、約半年ぐらいかけておるというのが実態でございます。

北川委員 ということでしたら、先ほどの周知徹底にまた少し戻るのですが、半年くらいの間であれば、警察の段階で、刑の確定が必要要件ではなければ、被害を受けたこの人がこの給付金の対象者であるということは、より明確にわかる時点として、大体半年間の間にはそれぐらいの動きをつけるということはできないわけでしょうか。ちょっと先ほどの問題に戻るのですけれども、申請主義をとらなくてもやっていくことはできるのではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。

 ここが、多分福祉的な要素として見ていらっしゃるから申請主義をおとりになると思うんですが、従来からおっしゃっている共生的な意味をも持ち合える社会というふうな成熟度の観点からいくと、申請主義でなくてもいいのではないかという点と、先ほどの期間の問題とで、もう一度お答えいただきたいのです。

石川政府参考人 社会連帯共助の精神で、損害賠償も得られない故意の犯罪による身体犯で被害に苦しんでおられる方に、国民の税というものを財源として、一時金的、見舞金的な性格の給付というものが考えられたわけであります。

 それで、今お話しの申請主義にしないという話でございますけれども、例えば損害賠償が仮に得られた場合については調整があるわけであります。それから、他の公的給付があった場合にも調整があるわけでございます。先ほどの話に若干戻るわけでございますけれども、殺人事件の件数あるいは傷害致死事件等の件数に比べて余りにも申請、裁定の数が少ないじゃないか。それは、一つには周知の問題を今後やっていく必要があるということを申し上げたわけですが、こうした損害賠償の問題とかあるいは他の給付、特に労災その他の給付と調整があるということも一つその原因になっているだろう。それらを見きわめませんとしっかりした裁定というものができないという事情があるということも御理解をいただきたいというふうに思います。

北川委員 結局、それらを裁定しているうちに時間がたつということで、申請する側もだんだん、初めに何となく何か渡してもらったような気もするなということがあったとしても、特に家族であったら、このいただいたものを横に置いてしまうという期間になっていくということがあるということも含めて、なぜ申請主義でなければいけないのかという点をもう一度また検討の余地に入れていただきたいと思います。

 次には、これはサポート支援団体のことが大きく今回取り上げられて、中に入っていって情報を提供するだけだというふうにおっしゃいました。一番のニーズが情報であったので、あと金品それから施設の貸与等々の方は今回は見送っているというふうなお話であったのですが、日弁連の方も基本法を出しています。そのときに、それぞれサポートグループ、その日弁連の中にも書いてあるサポートグループと今回の資料の中に入れていただいている警察が認知されているサポートグループと、幾ばくか合致するグループもあるけれども、全然違う。これも申請主義だからということなんだろうと思いますが、日本の中で、こういう形で犯罪被害者に対してサポートするグループの成熟度を何を見ておはかりになっているのかという点をお伺いしたいと思います。

石川政府参考人 なかなか難しい御質問でございます。それぞれの民間の援助団体がさまざまな活動をされておるわけでございますけれども、私どもも犯罪捜査の現場に近い機関としてそういう方々との連携もとっておるわけでございます。そのときに、成熟度と申しますのはちょっと不遜でございますけれども、本当にそういう体制が確保できているだろうかとか、それから犯罪被害者の方に差し伸べておるサービスというものが本当にそのニーズにマッチしたもので十分なものかどうか、そういったようなことを考えておりますし、また、私どもとの連携のあり方といったようなことも考慮に入れながらそのお話し合いをしている、こういうのが実態でございます。

北川委員 時間が来たということなんですが、これは初期に第三者機関がやっていく方がいいのではないかというふうな意見もあったように、今サポート団体の認定まで警察の方でおやりになるという段階に入ってきたということを考え合わせまして、情報が行くということも含めて、私は、この給付の認定、そしてサポート団体からの申請をどう受け付けるかということと情報の流し方は第三者機関に移行していく方がよりベターではないかということをお伝えして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

横路委員長 石毛えい子さん。

石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 先ほど太田委員より、この法律の制定にかかわります大変感銘の深いいきさつを伺わせていただきましてありがたいと思いました。

 そしてまた、今回のこの改正案は、重傷病給付金の新設を初めとしまして、給付金制度の拡充ですとか、あるいは早期援助団体の指定と連携というような、全体としては法律の中身を拡充するという方向になっておりますので、私どもの中沢筆頭理事も午前中触れられておりましたけれども、賛成の方向ということには私も同感でございますけれども、少しこの法案を読ませていただいたり資料を拝見しておりますと、制度は変わったとしても、その実効性という観点からいくとどのような展望を持ち得るのだろうかというようなところで、幾つか気にかかる点がございましたので、そのようなところを少し確かめさせていただきたいという意味で、何点か質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、犯罪被害者の男女別、性別比ということと、それからその被害に対応されます警察署のスタッフの方の男女比というようなところで、実情はどうなっているのかというところをお尋ねしたいと思います。

石川政府参考人 平成十二年中の刑法犯、刑法に触れる犯罪の全体の被害者が二百十四万人余りおられるわけでございますが、この男女の比率を見ますと、男性が六六・八%、百四十三万人余り、女性が三三・二%、七十一万人余り、こういう構成比になってございます。この年の殺人事件の被害者だけをとってみますと、全体で千三百八十五人おられるわけでありますが、この男女の比率は、男性が六一・七%、女性が三八・三%、こういうことになっております。

 そして、こういう状況のもとで捜査なりいろいろな警察活動が実施をされておるわけでございますが、警察におきましては、平成八年以降、被害者対策というものに本格的に取り組んでまいりました。そのときに一番最初に考えましたのは、性犯罪の被害者ということにつきましては、羞恥心等から警察に対する被害親告をためらわれる、またいろいろ悩まれるというような傾向が強いということで、すべての都道府県警察本部に性犯罪捜査指導官というものを置く、また、性犯罪捜査指導係というものを設置いたしました。そして、その係や主な警察署の性犯罪を担当する係へは女性警察官を配置するということを推進しているわけでございます。昨年の八月末の数字でございますが、全国で約三千二百人の女性警察官を性犯罪捜査員として指定をいたしまして、被害女性からの事情聴取等の警察活動に当たらせている、こういうことでございます。

 また、被害女性が被害親告あるいは悩みの相談といったようなことを行いやすいように、それぞれの警察本部に性犯罪被害一一〇番といったような相談窓口を設置いたしておるわけでございますが、その担当には女性の警察官を充てて届け出等の受理に当たらせている、こういう状況でございます。

 このほか、例えば痴漢被害ということであれば、駅の女性相談交番とか女性被害相談所、こういったようなものを開設して、鉄道警察隊等で女性警察官が仕事に当たっている。比率はどうかということについては、ちょっと個別の数字は持ち合わせてございません。

石毛委員 確かに、九六年に制定されました被害者対策要綱を拝見しましても、女性警察官の配置等について触れられておりますし、努力をなさっておられるということは私も肯定するものでございます。

 ただ、先ほどの、人の被害の合計人数が二百十四万人で、男女比三三・二%。これは、内訳が、犯罪の性格がいろいろありますでしょうから、この三三%が一概に三分の一だととらえるつもりは私もございませんけれども、このパーセンテージの割合と、きのうヒアリングの際に教えていただきました全国の警察官数二十三万人のうち、女性警察官が八千五百人で三・七%というふうに伺いました。

 そうしますと、いろいろな意味でまだまだ、性犯罪捜査という面では女性の捜査官を配置するということに努力をされておられるでしょうけれども、例えば御遺族の女性の方に対しての相談にやはり女性が携わる場合がベターな方が多いだろう。絶対じゃなければならないというつもりもありませんけれども、ピアといいますか親近感を持ち得る、信頼性がわきやすいというような意味で同性であるということは一つの大切な条件だというふうに私は考えますし、このことに関して異論はないんだろうと思います。

 そこで、もう一度お尋ねしたいと思いますけれども、今後、性犯罪捜査にかかわりましては今御説明いただきましたけれども、もう少し内部を精査していただきまして、目的的にといいましょうか計画的に女性の配置を積み重ねていく、そういう展望につきましてはいかがでしょうか。

石川政府参考人 全国の女性警察官の数は八千五百人で、約三・七%の構成比を占めておる、これは御指摘のとおりでございます。

 それで、かつては女性警察官は、例えば交通の指導取り締まりとか少年警察活動といったような分野で活躍をしておったわけでございますが、今全般的に、こういう治安情勢のもとで、女性が女性の特性を生かして、また男性と伍して警察官として活動をしていくいわゆる職域と申しますか、そういうものはどんどん拡大をしてきているということでございますので、なかなか数値目標というのも難しいんでございますが、私ども、八千五百名でこれでいいんだというふうには考えておりません。必要なところに、今おっしゃったような目的的に女性が活躍されるような場面においては、女性警察官を登用し、配置をしていくということになっていくだろうというふうに思います。

石毛委員 もう少し確かな御答弁をいただきたいと思います。なっていくだろうではなくて、警察の業務をどういうふうに分析なさって職域をどういうふうに整理をされて、そしてその中で、男性の必要な分野もありますでしょうし、女性の必要な分野もありますでしょうし、ベースは男女共同参画でございますけれども、それを踏まえてそれぞれの役割というのもあろうかと思いますので、もう少し決意を込めた確かな御答弁をいただきたいと思います。

石川政府参考人 私ども、昨年来のいろいろな事態を受けまして、国家公安委員会、警察庁として警察改革要綱というものを取りまとめました。その中に女性警察官の登用の問題について触れておるわけでございまして、今後とも、今御質問の御趣旨のような形で登用が進むように努力をしてまいりたいというふうに思います。

石毛委員 それでは、努力の成果を何年後かにまたお尋ねさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 次の質問でございますけれども、今申し上げましたことと関連する内容でございますけれども、犯罪被害者救済にかかわります教育、研修はどのような内容で行われておりますでしょうか。そのことをお尋ねいたします。

石川政府参考人 警察の教育でございますけれども、警察官として採用された際には採用時教養というのを行います。また、それぞれの階級に昇任をしたときに、各階級に応じた課程を設けまして必要な項目の教育を行うわけでございますけれども、御質問の被害者対策に関しましては、それぞれの課程に入る警察官が実際に警察署あるいは警察本部で警察活動を行うときにどういう役割を担っているかという点に着目をして教育を行っております。

 具体的に申し上げますと、採用時には、地域、交番とか駐在所で勤務をする警察官として必要な被害者に対する対応なり基本的な物の考え方、心構え、こういったようなことを教育いたします。

 巡査部長とか警部補といったいわゆる中級幹部と申しますか、そういう階級に任用された場合には、捜査員として中核を担うわけでありますから、捜査員として必要な適正捜査の中に位置づけられる被害者への適切な対応といったようなことが中心に教育をされます。

 それから、警部とか警視という幹部あるいは指揮官として働く方々、こういう方々については、全体を通して必要な被害者対策の考え方や各種施策の推進方策等について教育を行っておるわけであります。

 今度は、実務担当者がそれぞれ個別におるわけでございますけれども、この方々につきましては、府県の警察学校、管区警察学校、警察大学校におきまして、被害者対策指導あるいは性犯罪捜査、被害者カウンセリング技術といったような被害者対策に関する専門的ないわゆる専科教育というようなものを行っております。

 ちなみに、平成十二年度の例で申し上げますと、こういった教養といたしましては、全国から担当者を集めまして、被害者対策指導専科、犯罪被害給付実務専科、性犯罪捜査専科、被害者カウンセリング技術専科、カウンセリング技術専科、少年といったようなことで実施をしておりまして、これらの受講者は男女ほぼ同数ということになってございます。

石毛委員 今いろいろ御指摘いただきましたけれども、この被害者対策要綱の中の最後の方に出ております「被害者との対応に関する基本原則の組織全体への徹底と教養の実施」というところで、「必要なカリキュラム、資料等の整備を推進する。」という内容につきまして、御答弁の中で後半のところでお教えいただいたんだと思います。

 専科教育というのは、御指摘いただきまして、大変私も重要だと思いますし、それをお進めになっているということもそれなりに理解をさせていただきましたけれども、私が強調したいと思いますのは、警察の役割というのはいろいろあろうかと思いますが、今警察の役割の中で、この分野、犯罪被害者の方への対応ですとか、それから恐らくこの通常国会、参議院の方から提出されることになりますでしょう配偶者からの暴力の防止に関する、それを拡大しますとドメスティック・バイオレンスの問題というようなこと、あるいは昨年の秋にスタートをいたしました児童虐待防止法の施行にかかわりまして、少年担当の方の仕事の質の変化といいましょうか、こういう心理的な対応も含めましてどのような役割を果たしていくかというのが重要になってきている。そのことを私は強調させていただきたいと思いますし、認識されていると思いますけれども、ぜひともここの部分は注目の上にも注目をして進めていただきたいというところを強調したいと思います。

 次の質問でございますけれども、今回の改正法案の中で重傷病給付金支給制度が新設されました。三カ月を限度として医療費の自己負担分を給付するという仕組みでございますけれども、その要件が十四日以上の入院かつ加療一カ月以上というふうになっております。

 午前中の委員の御指摘の中にもございますけれども、私は、この要件は適切とは言い切れないのではないか。ここのあたりは本当にきちっと機能していかないと、先ほどの北川委員の質問にも実績の点が触れられておりましたけれども、この十四日以上の入院と加療一カ月にかかわらないで、ここから外れていくという場合が非常に出てくるのではないか。

 一つ午前中の議論の中で出てまいりましたのは、例えば、心的傷害というような精神的、心理的要因を持つに至ったというようなこと、これは恐らく十四日以上の入院ということにもならないですし、外来で行われる場合も非常に多いのではないかというふうに思います。

 十四日以上の入院かつ加療一カ月以上ということで当てはまります傷病というのは、どういう傷病を想定されてこの法案を立案したということでございましょうか。このどういう傷病かということは質問通告してございませんけれども。

石川政府参考人 加療一カ月、入院十四日以上ということにつきましては、先ほど来御答弁申し上げているとおりでございますけれども、加療一カ月以上を要する代表的な症例としては、通常の重傷病がこれだというふうに私ども考えるわけでございますけれども、例えば、内臓損傷とか開放骨折、脳挫傷を伴う頭部外傷、脊髄損傷といったようなものがあります。それから、通常これは重傷病には該当しないのではないかというふうに考えられる症例といたしましては、筋肉損傷とか捻挫とか多発性外傷、いわゆるすり傷といったようなものが考えられるのではないかというふうに思っております。

石毛委員 今は医療技術が大変発達をしてきているわけですから、重傷病といいましても、必ずしも十四日以上の入院ということに呼応するとは限らないと思います。

 きのうもヒアリングのときに伺いまして、決めた要因として今幾つか教えていただきましたけれども、この警察庁犯罪被害者対策室の実態調査結果を見ますと、そもそも調査をされた対象が十四日以上病院に入院した者というふうに、調査対象を十四日以上と線引きをされたわけですね。十四日未満についてはちゃんとお調べになっていらっしゃるんでしょうか。

石川政府参考人 調べたのは一カ月以上の加療の傷害を負われた方ということで、そのうち入院十四日という要件を重ね合わせた方、その傷害の被害者が三カ月未満で治癒された方が七割を超えていると、先ほどのお話になるわけでございます。

石毛委員 今、私の質問に正確に御答弁いただけなかったと思います。一カ月の前提要件があるというのは私も存じておりますけれども、加療期間一カ月以上、それに対しまして十四日以上を今お調べになられたというふうに答えられましたけれども、私は、十四日未満につきましてもお調べになっていらっしゃるんでしょうか、そういう調査を踏まえてこの十四日以上入院かつ加療一カ月以上、そういうラインを設定されたのでしょうかという質問でございます。

石川政府参考人 今お話し申しましたように、加療に一カ月以上の日数を要する傷害を受けた方二千五百六人について調査をいたしました。そして、調査結果として出てまいりましたのは、加療期間として十四日以上病院に入院した者に限っての数字を私どもの手元に持っているわけでございますけれども、調査そのものとしては、加療一カ月以上の日数を要する傷害を受けたという方について調査をしたということを先ほど申し上げたわけでございます。

石毛委員 余りこれで時間とりたくないのですけれども、要するに、十四日未満の入院した者について調査をされておられるでしょうか。十四日未満の入院でも、加療一カ月以上、十四日未満入院で継続して外来というようなことになれば加療一カ月以上に当てはまるんだと思いますけれども、十四日未満について調査をされた上で十四日と、これは政令規定になるということですけれども、なさっていらっしゃるのでしょうかという、その質問です。

石川政府参考人 手元の資料ではちょっと確認そのものはできないわけでございますが、先ほど申しましたように、調査結果として、加療期間、十四日以上病院に入院した者に限った数字で六百八十八人の方が……

石毛委員 恐縮ですが、質問の時間がなくなってしまうものですから、これはこのデータでいただいたのでわかりますので、繰り返しの御答弁は結構です。後ほどで結構でございますから、十四日未満について調査があるのかないのか、そのことをお教えいただきたいと思いますし、あればいただきたいと思います。

 それから、それに関連しまして、私は、パブリックコメントを求めたのでしょうかとかいろいろとお尋ねしたいことがございます。それから、先ほど午前中来の質疑の中に出ておりました、給付が現金だけかとか、介護サービスとかそういう拡大すべきじゃないか、いろいろな論点がございますので、ぜひそのあたりは実施後見直しが必要ではないかということを申し上げまして、次の質問に移りたいと思いますけれども、委員長、よろしいでしょうか。

石川政府参考人 先ほどのデータについては、委員の御要望に沿いたいと思います。

 それから、いろいろな形でこの制度を拡充していく、そのときに給付金のみならずいろいろなサービスといったもの、これを警察がどうするか、あるいは民間団体の方にどういう活動をお願いするか、そういったことについてもよく研究をしてまいりたいというふうに思っております。

石毛委員 それでは、次の質問でございますけれども、犯罪被害者等早期援助団体の規定が今法案の中では盛り込まれました。この指定は都道府県公安委員会がすることになっておりますけれども、どのような要件をもって公安委員会が指定をするのでしょうか。

 また、もう時間がありませんので、財政の状況その他改善が必要な場合に改善を命じることができるとか指定を取り消すことができるとかというふうに出ておりますけれども、指定の要件、改善命令、取り消し、それぞれにつきましてどのような要件をお考えになっておられるのかということをお教えください。

石川政府参考人 まず指定の要件でございますけれども、この問題につきましては、犯罪行為の発生後速やかに被害者等を援助することによって犯罪被害等の早期の軽減に資することを目的として設立された、民法第三十四条により設立された法人、社団法人、財団法人といった公益法人でございますが、また、特定非営利活動法人、いわゆるNPO法人等の営利を目的としない法人であって、現在御審議をお願いしております改正法の第二十三条二項各号に掲げる事業、第一号から第四号までございます、援助の措置の必要性に関する広報活動及び啓発活動を行うこと、それから相談に応ずること、それから給付金の支給を受けようとする者の裁定の申請の補助、それから物品の供与または貸与、役務の提供その他の方法による被害者等の援助、こういった事業を適正かつ確実に行うことができると認められるということが指定の要件になるわけでございます。

 それから、そのときにどういう判断をするかということになるわけでございますけれども、こういう事業を行うに当たって、被害者等の相談に対応できる人員とか場所といったようなものが適正に確保されているか、それからいろいろなこうした被害者支援業務についての知識を有する方が人的に確保されているか、それから供与物品あるいは貸与物品といったようなものについてしっかり体制が整っているかといったような体制、施設等の面が一つの判断の要素になるのではないかというふうに考えております。

 それから、改善命令とか取り消しの問題でございます。これは、改正法の二十三条第五項に規定があるわけでございますが、改善命令といたしましては、相談者のプライバシーが十分確保できないようなところで相談がなされているといったようなことは困るわけでございまして、安心して被害者が相談することができるように施設を改善すべきであるという点があるならばそういうことを命令する、それから、役務の提供を行う旨を明らかにしている状況のもとで必要な人員や資材が確保されていないという場合には、きちっとした体制を整備するようにといったような改善命令ということが考えられます。

 それから、守秘義務という点についても、プライバシーの保護等で大事な問題でございまして、こういうことに違反があるといったような場合には、被害者に関する情報の管理状況等について調査を行って、あわせて、例えば職員に再教育をするようにといったような措置を求めるといったようなことが想定をされます。

 こうした改善命令に従わないときには指定が取り消されるということになるわけでございます。

石毛委員 指定要件で人員、場所、知識を持っている方がおられるかどうかというようなことを御指摘いただきましたけれども、私は、民間団体の活動が市民社会の中で、そこにお住まいの地域の方々あるいはその関係する方々に賛同を得、共感を得、支援をしていただけるというのは、活動の内容ももちろんでございますけれども、その活動が広く知っていただけている。これは被害者の方のプライバシーの問題は十分にきちっと守るということを前提にしてでございますけれども、そうしますと、この民間団体の財務状況の公開性ですとか、あるいはどのような方が役員、専任スタッフとしておられるかというような意味での組織の透明性ですとか、そうしたことが非常に大事なんだと思います。

 一言つけ加えさせていただければ、将来ここが、財政基盤がきちっとして、ちょっと言いにくいことではございますが、天下りの場所にならないようにするためにも、透明性というのは大変大事なんだというふうに思っております。公開性も大事だというふうに思っております。指定要件は、具体的には規則になっていくようでございますから、ぜひともそこのあたりはきちっと規則の中で明示をしていっていただきたいということを要請申し上げまして、時間が参りましたので終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

横路委員長 山花郁夫君。

山花委員 民主党の山花郁夫でございます。最後のバッターということになりますので、少々法律の細かなところについてお伺いしていきたいと思います。

 本法案によって、今までの障害給付金の支給対象の範囲が拡大されてきているわけでありますが、第二条の第四項によりますと、「この法律において「障害」とは、負傷又は疾病が治つたときにおける身体上の障害で政令で定める程度のもの」とありますけれども、政令で定める程度というのはどの程度のものか、お答え願います。

石川政府参考人 現在の法律では、障害等級一級から四級までを定めておるわけでございますけれども、これを障害等級十四級までの犯罪被害について定めるということを予定しているところでございます。

山花委員 先ほど来もちょっと似たような質問は出ているのでありますけれども、政令で定めている十四級の等級、そして二条三項でありますけれども、重傷病に至らないような比較的軽度の場合であっても支給範囲を拡大すべきではないかというのが私の意見であります。

 類似の質問はもう既に出ておりましたけれども、少し違った観点からお話をさせていただきますと、例えばこれが加害者の場合であったとき、例えば身体を拘束されているような被疑者である場合に、その被疑者がけがをしていたとします。そういたしますと、もともと趣旨の違う法律ですから比べるのはおかしなことかもしれませんけれども、例えば犯給法の支給対象にならない程度の軽傷であったり、そういう場合でも加害者の方は治療をされるわけであります。

 こういったことを考えますと、被害者の感情からするとどうもその点が納得いかないのではないかというふうに思うわけでありますけれども、この点についてどのような御認識か、答弁をお願いいたします。

石川政府参考人 留置されておる被疑者等が負傷したとか疾病にかかったといった場合に治療が実施をされるわけでございますが、これは刑事政策的な観点から、刑罰権を行使する国と被疑者との関係において行われている事柄でございます。

 この犯罪被害給付制度は、先ほど来大変重複して恐縮でございますけれども、故意の犯罪行為によって重大な被害を受けたけれども何ら救済も得られないままに放置をされている方に対して社会連帯共助の精神で見舞金的な性格の給付金を支給しようということでございまして、被疑者に要する経費と被害者に対する給付額という形で並べて比較をするということについてはなじまないものではないだろうか、こういうふうに考えているところでございます。

 給付が少ないのじゃないかということにつきましては、先ほど来御答弁申し上げていますように、現行のものよりも相当程度増額になることになりますし、また、重傷病給付金という今お尋ねのものは創設される給付金でございますので、被害者の救済に十分に対応できるのではないかなというふうに考えているところでございます。

山花委員 本法の趣旨というのが、先ほど来、自己責任に基づく自己責任原則が働かない場合のことであるとか、あるいは故意犯の場合にも求償ができないということになると、刑事司法に対する信頼を損なうというようなお話があったわけであります。

 これとまた少々重複するかもしれませんけれども、故意犯でというところなんでありますけれども、過失犯については除かれているわけであります。この点についても、趣旨は一応わかった上で御質問申し上げるわけですけれども、やはりこれを被害者の立場からすれば、例えば命を落としたとか大変大きなけがを負ったという場合に、相手方の主観的要素が故意だったから、あるいは過失であったからということで差異を設けるのは、やはり感情としてちょっと納得ができないところがあるのではないかと思います。

 また、きょう午前中、午後を通じまして、この過失犯を除くというところの中で、故意の場合に求償できないのはということで、求償の話が出てきておりましたけれども、故意犯であるからお金がなくて、過失犯であればお金があるというわけではもちろんないわけです。そうであるとすると、やはり余り求償のところを強調すべきではないのかなと私は思うわけであります。あくまでも被害者の感覚からすると、過失犯というのが入った方がいいというふうに思うのですけれども、その点について改めてお伺いしたいと思います。

石川政府参考人 私どもも、被害を受けられた方について被害の重みというものは、故意犯であるか過失犯であるかによって結果においてそんな差異はない、大変重いものであろうということは認識をしておるわけでございます。

 ただ、給付制度というものについて考えた場合の基本的な考え方を先ほど来申し上げているわけでありまして、故意による犯罪行為というのは、法秩序を最初から破ろうという意思を持って行われた行為ということで、ある意味で悪質であります。その被害については社会全体として救済すべきだ、そういう認識の上に立ってこの制度は成り立っている。一方、故意の犯罪行為について何か賠償の資力をつけさせるような保険制度が成り立ち得るかというと、そういうものも適当ではないだろうということになりますし、また、過失犯については、その一方で原因者負担の原則に基づく責任保険といったような救済策がとられ得るわけでありまして、そういう制度が現にたくさんございます。

 したがいまして、給付金の制度におきましては故意による犯罪行為に限定しているということについては合理性があるのではないかというふうに考えているところでございます。

山花委員 過失犯の場合は責任保険の対象となり得るということが確かに理論的には言えるわけでありますけれども、実際それに見合った形で保険会社が誠実に対応しているかというと、ちょっと事情も違うような気がするのでありますが、ここで申し上げることではないやもしれません。ですので、それ以上は申し上げません。

 ただ、ちょっと一点、確認したいと思うところがあるわけであります。過失犯を除くということについて、理論的に入れるとおかしいから、要するに、この制度からすると将来的にも全く検討の余地のないという意味で除いているということなのか、そうではなくて、現段階では、悪質な、これは何とかしなきゃいけないというところを拾っているだけであって、まさにこの法案を審議しているときに将来の見通しというのもちょっと厳しいかもしれませんけれども、政策的に限定をしているにすぎないのか、その点について御答弁願います。

伊吹国務大臣 これは先生、非常に本質的な話であって、この自由社会、市場経済の原理原則、つまり自己責任と自助努力型の社会の基本的なルールからいきますと、今のお考えをとことん突き詰めていきますと、民間の損害保険というのは要らなくなっちゃうんですよ、極端なことを言えば。したがって、そこはやはりバランスの問題だと思います。

 したがって、過失犯であっても、どうしてもその人に求償ができないから被害を受けた人が大変困ったというような場合にはこれを例外的に救済していくという措置をやはり考えるべきなんであって、基本的なルールの話になると、今の我々の生きている社会の基本的なシステムを否定するような根本論になっちゃうというのはちょっと困りますので、御趣旨はよくわかります。ですから、被害者と過失によって加害者になった人との関係からどうしても無理な場合については、将来の問題として考えさせていただきましょう。

山花委員 今の御答弁にもありましたけれども、例外的な場合もあり得るというお話でございました。

 例えば、ビルから飛びおりて自殺を図ろうとした人に巻き込まれて亡くなられた方、こういったケースですと、恐らく責任保険の対象としても難しいでしょうし、また故意犯かというと、少々疑問の余地がございます。仮に、飛びおりた方が一命を取りとめられて相手方が亡くなったというケースを考えた場合に、刑事訴訟になった場合には、これは未必の故意というのも難しい話だと思います、過失犯になるかと思いますが、こうした場合には犯給法の対象となり得るのでしょうか。

石川政府参考人 端的に御答弁申し上げます。

 ただいまのような事例、加害者の行為が、外形的に見ました場合、あるいは周囲の状況に照らして、下を通行しておられる方の死傷の結果を生じさせるだろうというふうなことが十分予見し得るといったような客観的な事情があるという場合には、これを犯罪被害給付法に言うところの犯罪被害というふうに認定をする余地があるというふうに思っております。

山花委員 要するに、言葉をかえて言えば、刑事訴訟における故意犯か過失犯かということとは別途に、この法の目的に照らして故意であるか過失であるかということを判断することができるというふうに理解いたしましたけれども、そうした理解でよろしいのでしょうか。

 また、その認定はどこの責任において行われるのでしょうか、故意であるかどうかということについて。

石川政府参考人 本法に言うところの過失による行為というのは、通常で申しますと、刑法上の過失犯というものと重なるだろうと思います。

 ただ、人の生命または身体を害する犯罪行為によって被害を受けた方等に給付金を支給するこの制度と、加害者に対する刑事責任を問題にする刑事司法制度というのは、目的も異なりますし、手続、要件等を異にしておるわけでございまして、本制度に言うところの過失による行為が刑法犯の過失犯と概念的に完全に一致しなければならないというものではないというふうに考えられるわけであります。

 したがいまして、刑事司法手続上は過失犯というふうに評価をされる行為でありましても、先ほど申しましたような状況で行為の外形を周囲の状況等に照らして客観的に見た場合に、人の生命または身体を害するという蓋然性を認識し得るような状況にあるというふうな場合には、例外的に、本法の適用になるような犯罪行為というふうに解して給付の支給対象として考える余地があるということを申し上げたわけでございます。

 この認定は、都道府県公安委員会が実施をするわけでございます。

山花委員 ぜひ弾力的な運用をお願い申し上げる次第でございます。

 さて、条項が少し飛びますけれども、第二十二条の関係についてお伺いしたいと思います。

 第二十二条によりますと、警視総監もしくは道府県本部長または警察署長は、被害者またはその遺族に対して、情報の提供、助言など、こういうことに努めなければならないとありますけれども、ちょっと気になるのは、「犯罪被害等の早期の軽減に資するための措置」とございます。そして、「犯罪被害等」という言葉の定義は第二条のところにありまして、要するにこの犯給法の対象となるようなケースだというふうなわけでありますけれども、これはいささか過重要件ではないかと思う次第なのであります。つまり、犯給法の対象とならないようなケースであってもこのような努力義務というものはあってしかるべきではないかというのが私の考えなんでありますけれども、なぜこのような要件が立てられたのか、要するに、具体的に二十二条の場合はどういうことを対象としようとして立てられた条項なのかについてお伺いいたします。

石川政府参考人 この審議をお願いしております改正法で新たに定められる警察あるいは民間の被害者援助団体による被害者支援に対する規定は、御指摘のとおり、犯罪被害給付制度の対象となり得るような特に深刻な被害を受けた場合に、犯罪被害発生直後から積極的な助言とかそういったような援助を行うことによってその精神的な被害を初めとする犯罪被害の早期の軽減を図るために設けられるものでございます。

 それで、どういうことが必要な措置として考えられるかということでございますが、情報の提供といたしましては、これからどういうふうに刑事手続が進んでいくんだろうかといったような先行きに不安を感じられる被害者の方がおられるということで、そういうことについて教示をする。それから、犯罪被害給付制度について申請はどうしたらいいんだろうかといったようなことについて教示をする。それから、いろいろ被害者の方々には個別のニーズがございますが、そういうニーズに沿った相談窓口がほかの公的機関でどこにあるかといったようなことをお教えする、あるいは民間団体としてこういう活動をしておられますよといったことをお教えをする。それから、被害者にかかわる事件に関して捜査がどうなっているのかというのも被害者の関心事でございます。その状況、概要について通知をするといったようなことがあるわけでございます。それから、被害者に対する防犯指導、二次被害を受けないような防犯指導もありますし、それから一部私どもでやっておりますカウンセリングといったようなこともございます。これが助言及び指導といったようなものの中身でございます。

 それから、被害直後に大変混乱をしておられる状況下で病院に行く必要があるといったような場合に警察職員がそれに付き添うというようなこと。あるいは、私ども、被害者支援要員という制度を持っておりますが、そういう者が被害者の御家庭を訪問して、今どうでしょうかといったようなことでいろいろな御相談にあずかるといったようなことがあります。

 その他必要な援助としては、例えば非常に不安を感じておられるというようなときに、防犯ブザーというのはこういうもので、こういうところにあります、あるいは場合によって警察が持っていればお貸しをしますというようなこと。それから、被害者の居住地域の周辺の警戒を行うといったようなことが一時的に必要なことがございますが、そういう措置をとる、こういったようなことを想定しておるわけでございます。

山花委員 ちょっと今、一点少しわかりづらかったところがあるんです。確認ですけれども、警察官が例えば被害者のところに行っていかがですかみたいな話をする、それが警察職員の派遣という、そこの話だったのでしょうか。最初二十二条の法文を読んだときに警察職員の派遣というのは一体どういう場合かということがわからなかったのですが、今御答弁いただいた中のどの部分か、ちょっともう一度お願いいたします。

石川政府参考人 ちょっと早口で恐縮でございました。

 警察職員の派遣の具体的な内容でございますが、被害直後における病院への付き添いとか、私どもが持っております被害者支援要員制度というのがございまして、こういう被害者支援要員が犯罪の直後にいろいろな形で不安を持っておられる被害者の御家庭を訪問して、いろいろなニーズをお聞きし、相談にあずかるといったような活動を考えておるところでございます。

山花委員 それでは、二十三条の関係、犯罪被害者早期援助団体に関する規定の整備ということに関してお伺いいたします。

 これは、先ほど対象団体について、営利を目的としないということであればよい、いわゆる公益法人であるとか、あるいはNPO法に基づくものでもよいということでございました。確認いたしますけれども、今国会で法務委員会の方に付託になると思われますが、閣法で中間法人法というものが出てきております。仮にこれが成立したという場合、これも当然含まれるということでよろしいでしょうか。

石川政府参考人 中間法人がここで定めるところの事業を行えばなり得るということでございます。

山花委員 それと、先ほど石毛委員からも指摘がございました、また北川委員からもお話があったかと思いますけれども、これは公安委員会が指定を行うということになっております。考え方としては第三者機関が指定をするという考え方もあるのではないかと思いますけれども、この点、公安委員会が指定するという方法がベストだとお考えでしょうか。

石川政府参考人 犯罪被害があった場合、その発生直後に被害者の方に対して援助を行う民間団体を指定する公的機関として、故意の生命・身体犯について犯罪被害発生直後からその捜査を行うのは警察である、その段階からいろいろな対応が警察によって行われているわけでございまして、そうした警察を管理する公的機関である都道府県公安委員会が私どもとしては最もふさわしいのではないかというふうに考えた次第でございます。

山花委員 ここでちょっと、大臣がいらっしゃって役所の方もいらっしゃるところで言うと少々不愉快な思いをさせてしまうかもしれませんけれども、特にNPOなどの団体は、NPO法人というのは比較的、国が余り好きではないところがあったりいたしまして、特に警察などは余り好きでないという方が私の知り合いでもいるわけであります。

 この関係になるような団体が果たしてそういう感情を持っているかどうかはまた別なんですが、ただ、そういうふうに言う方なんかの意見を聞いていますと、要するに、これは例えばNPO法に基づくNPO法人なんかも対象となり得るわけですが、そういった方がちょっと懸念をしているところがあるわけです。つまり、公安委員会が指定を行う、あるいは団体に対して改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができるという形になっているわけであります。

 もちろん、これは当初は申請をしてということになって、申請が要件になっておりますから、嫌ならば申請しなければいいということなんでしょうけれども、どうも公安委員会の監督下に置かれるというような印象を持つ方もいるようであります。したがって、過度な介入にならないような御配慮をいただけるのかどうかということを確認させていただきたいと思います。

伊吹国務大臣 これは国家公安委員会、地方自治体の公安委員会の名誉にかかわることでございますので申し上げておきますが、我々は、警察当局を管理する立場でありますけれども、警察ではございません。私も、国家公安委員長でございますが、旧内務省のように直接警察を指揮しておる国家警察の長ではございません。したがって、NPOの本来の目的のために、それを逸脱せずにしっかりと活動しておられるよきNPOに対して、干渉したりあるいは監督下に置くなどということはございません。

山花委員 つまり、あくまでも本来の活動に対して干渉するのではなくて、その法人が例えば、先ほどの質疑の中にもございましたけれども、プライバシーを侵害するような形で犯罪情報を流すとかいったようなことが行われた場合に、要するに本来の活動を逸脱したような場合に改善命令などがなされるという形での運用だという理解でよろしいでしょうか。

伊吹国務大臣 当然そういうことでございます。しかし同時に、NPOの本来の目的を逸脱した行為をなさるNPOについては、公安委員会は関知をいたしませんが、その他の規制がかかることは当然です。

山花委員 それでは、時間も押してまいりましたけれども、大臣に少々所見を伺いたいところがございます。

 犯罪被害者基本法案というものを同時に私たち民主党と社会民主党とで共同提案をさせていただいているわけであります。午前中の細川委員からの質問に対して御答弁いただきまして、一定の評価はいただいていると思っておりますけれども、締めに入るわけではありませんけれども、きょう一日いろいろ犯給法等について審議がなされてまいりました。犯罪被害者給付金のような、こういった犯給法のような制度、個別の法制度を充実させていくということも確かに重要だと思います。また、昨年の犯罪被害者二法と言われました刑事訴訟法などの改正ということも一歩前進という評価もできるかと思います。

 こういった個別法の積み重ねで行った方がいいのではないかというようなお話があったかと思いますけれども、ただ、個別法の改正を積み重ねていくにしても、やはり一定の指針を持って、大体方策というものを視点を定めた上でやっていく必要があるのではないかと考えるのでありますけれども、改めて犯罪被害者基本法案に対する所見を伺いたいと思います。

伊吹国務大臣 昨日、議員提案の案をいただいて、私も読ませていただきました。そして、きょういろいろ各委員からの御議論を伺っておりまして、二つの観点を申し上げたいと思います。

 一つは、もし御提案の犯罪被害者基本法の一番底に流れる社会システムを考える理念が、加害者にかわって国家が代位弁済をするという観点であるならば、私たちはこれに同意することはできません。しかし、結果的に、非常にお困りの方、被害者の方と加害者との関係において、お互いに共同社会を営んでいく者としてそれを助け合っていく、そして個々のいろいろな、今回の法律もそうですが、生活保護費であるとか、あるいは医療に対する補助であるとか、子供たちの教育の問題とか、そういうものを総合的に考えるような法律に将来つくり上げていこうということであれば、私は大変それはいいなと。

 しかし、一番最初に理念が違うのなら反対だとは申し上げておりますけれども、民主党あるいは社民党という党の理念としては御立派な案だと私は評価しているということです。

山花委員 御立派というお言葉をいただきまして感謝を申し上げますとともに、ぜひともこの法案に御理解もいただきたいと思う次第であります。

 さて、最後になりますけれども、昨日の本会議でも、森内閣総理大臣は、新聞報道ではいろいろ言われているけれどもやめるつもりはない、頑張ると言っておられますから、伊吹大臣もまだまだ頑張っていただけるものと存じております。その伊吹大臣在任中に、犯罪被害者法制などで何か施策として進めるべきものとか、こんなことがあったらぜひ進めていきたいということがもしございましたら、一言御意見を伺いたいと思います。

伊吹国務大臣 森総理がどのような御決断をなさるかは、私にはうかがい知るすべもございませんし、いずれにしろ内閣というものは信任をされたわけですから、あとは党総裁としての御決断をどうされるかということだろうと思いますね。それが政党政治において国会に御判断を仰ぐ機会が来るかどうか、これは私のうかがい知るべきことではありません。私が今、内閣の一員としてなすべきことは、御提案している法案を早急に通していただいて、きょうここでお伺いしたようないろいろな御意見を参考にしながら、できるだけ被害者にプラスになるように運用するように警察を管理していくということだろうと思います。

山花委員 終わります。ありがとうございました。

横路委員長 次回は、来る二十一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十五分散会




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