衆議院

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第7号 平成13年3月28日(水曜日)

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平成十三年三月二十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 横路 孝弘君

   理事 植竹 繁雄君 理事 小野 晋也君

   理事 阪上 善秀君 理事 横内 正明君

   理事 島   聡君 理事 中沢 健次君

   理事 河合 正智君 理事 塩田  晋君

      岩崎 忠夫君    亀井 久興君

      川崎 二郎君    倉田 雅年君

      古賀 正浩君    佐藤 剛男君

      谷川 和穗君    西川 公也君

      根本  匠君    平沢 勝栄君

      三ッ林隆志君    渡辺 具能君

      井上 和雄君    石毛えい子君

      大畠 章宏君    細川 律夫君

      山花 郁夫君    山元  勉君

      太田 昭宏君    松本 善明君

      阿部 知子君    北川れん子君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)     福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 伊吹 文明君

   国務大臣

   (経済財政政策担当大臣) 麻生 太郎君

   国務大臣         橋本龍太郎君

   内閣府副大臣       坂井 隆憲君

   法務副大臣        長勢 甚遠君

   内閣府大臣政務官     西川 公也君

   内閣府大臣政務官     渡辺 具能君

   内閣府大臣政務官     山崎  力君

   会計検査院事務総局第一局

   長            石野 秀世君

   政府参考人

   (人事院事務総局人材局長

   )            藤原 恒夫君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   岩田 一政君

   政府参考人

   (警察庁長官)      田中 節夫君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    五十嵐忠行君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    坂東 自朗君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   飯村  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局

   長)           真野  章君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  辻  哲夫君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 石本 宏昭君

   内閣委員会専門員     新倉 紀一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十八日

 辞任         補欠選任

  小西  哲君     倉田 雅年君

  近岡理一郎君     佐藤 剛男君

  北川れん子君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  倉田 雅年君     小西  哲君

  佐藤 剛男君     近岡理一郎君

  阿部 知子君     北川れん子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件




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     ――――◇―――――

横路委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局人材局長藤原恒夫君、内閣府政策統括官岩田一政君、警察庁長官田中節夫君、警察庁刑事局長五十嵐忠行君、警察庁生活安全局長黒澤正和君、警察庁交通局長坂東自朗君、法務省刑事局長古田佑紀君、外務省大臣官房長飯村豊君、厚生労働省社会・援護局長真野章君、厚生労働省年金局長辻哲夫君及び厚生労働省政策統括官石本宏昭君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横路委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中沢健次君。

中沢委員 おはようございます。民主党の中沢でございます。

 日本の政治そのものも非常に難しい局面を迎える、しかも、与党の中でも脚光を浴びられている大臣の皆さんもたくさんきょう出席をいただきました。大変御苦労さんでございます。

 まず最初に、福田官房長官、集中的にいろいろお尋ねをしたいと思います。

 内閣の報償費問題でありますが、これは幾つか質問の通告をしておりますが、けさほどの新聞に出ておりました内容について、これは通告をしておりませんが、官房長官の御答弁をぜひいただきたい、こんなことで申し上げたいと思います。新聞報道でありますから恐らくこれは正しいのだろうと思いますが、森総理の行動であります。

 昨晩、ノルウェーの国王が来日中で、公式に向こうの御招待を、当日まで恐らく出席をする、急遽取りやめた。その理由が、総理大臣の政務あるいは党務の重要な日程があるからということであれば私もこれはやむを得ないかなと思う。しかし、この報道によると、事もあろうに、森派の会合に顔を出す。これは、天皇、皇后両陛下も出席をされて、しかも橋本前総理も出席をされている。これはとんでもない話じゃないかと思うのですね。(「前じゃない、元」と呼ぶ者あり)ちょっと興奮しているのかもしれません。これは、私は野党だから指摘するわけじゃありませんよ。日本の国会議員の一人として非常に恥ずかしい、とんでもない。

 これについて、官房長官は総理の日程を一々細かくチェックをしていないと思いますけれども、事前の相談があったのであれば、これは官房長官の判断も大変な間違いだ。事実関係を含めて、官房長官の見解をしっかり聞いておきたいと思います。これはとんでもない話です。

福田国務大臣 私もけさそういう新聞報道を見て知ったことなんですけれども、ノルウェー国王が天皇陛下への答礼のレセプションをされる、一昨晩に天皇陛下が招宴をされたわけでございます、それの陛下への答礼の意味でノルウェーの国王がなされたということでございまして、主賓はもちろん天皇陛下ということになっておりまして、それに総理が出席されるということは、それに陪席をされるという意味合いだったのだろうと思います。

 そんなことで、総理秘書官とも相談をされたと思うのですけれども、これは天皇陛下をお呼びになるということが主ですから、総理は場合によったらというような話が、やりとりがあったのではないかと私は想像しているところでございます。その場合が、総理が実はこの間、先週、土日を使ってロシアへ行ってきた、その前の週は米国に行ったわけでございますね。この八日間で二度ほど、六日間外国に行っておる、こういうようなことがございまして、その間、飛行機の中でうまく休めたのかどうかわかりませんが、腰を痛めました。そういうことがありまして総理秘書官と相談をされたのではないか、こんなふうに思います。これはあくまでも私の想像でございます。

 そういうことで、ああいうふうに新聞に出てしまいますと、それは大変失礼に当たるというようなことに結果的になってしまうということもあるかもしれませんけれども、そういう事情があったのだということでひとつごしんしゃくをいただきたい、そういうように思っております。

中沢委員 今の官房長官のお答えは、普通からいったらやはりこれは非常に問題のあるお答えですよ。たまたま新聞に出たからだと。総理日程なんというのはもう周知の事実なんですよ。この一言をとっても、こんなことは余り言いたくありませんが、やはり森さんの総理大臣としての自覚もその責任もほとんどもうない、直ちにやめるべきだ、僕はこのように申し上げます。

 これは場合によってはほかのところでも大変な問題になると思いますから、官房長官、これから記者会見もあるでしょう、あるいはいろいろなところに出ると思いますけれども、そういう答弁では普通の世の中は通用しませんよ。よく答弁についても、同じ年代ですから価値観も余り違わないと思いますから、あえてそのことを申し上げておきます。

 さて、本題に入ります。

 さきの委員会で大臣所信の質問で、私は、官房の報償費、いわゆる機密費問題を取り上げました。いろいろ官房長官と質疑を行いましたが、残念ながら平行線で終わっています。しかし、平行線で終わるということ自体、私の立場からいえば、もっと言うと国民の多くのこの問題に対する疑惑の解明ということからいうと、極めて不十分だ。ですから、改めて、きょうは時間制限がありますから、簡単に二、三の問題を申し上げたい。特に最後のところで、具体的な、いわゆる官房機密費に対する改革をこういう角度でやったらどうだと率直に申し上げますから、ひとつできるだけ単純明快にお答えをいただきたいと思うのです。

 質問の第一は、報償費についての使途は公表ができない。公表ができない理由は明確でないのですよ。法律にもない。もっと言えば、昔はさかのぼって閣議決定をしたのかもしれませんが、その辺のところもあいまいだ。ですから、公表しないという根拠は官房長官としてはどこにあるかということを改めて聞きたい。

 それに関連をして、例の松尾容疑者の五千四百万円の被害届、結果的に報償費の一部の使途を公表した、そういうことになるんですよ。ですから、使途は公表しないという理屈あるいは理論立て、事実上は破綻をしている。これについてどういう考え方をお持ちですか。

福田国務大臣 これは、何度も申し上げていることなんですけれども、内閣官房の報償費というのは、内政、外交を円滑かつ効果的に遂行するため、その都度の判断で機動的に使用する経費であるということですね。そして、この報償費の使途等の情報公開は、報償費の機動的な運用や内政、外交の円滑な遂行に重大な支障を来すので困難であるというように考えており、この点については御理解をいただかなければいけない、このように思っております。

 なお、内閣官房の報償費については、その経費の性質上、予算に計上されて以来その使途等は公表しないという取り扱いを受けており、また、毎年度会計検査院による検査も受けているものである、こういうことになるわけであります。国家機関がその任務を遂行していく上で公の利益の保護の観点からある事柄を公表しないということは、これは許されることであるというように考えております。そういうことでこの使途については公表させていただいてない、こういうことであります。

 なお、その五千四百万円の分について、なぜそれでは公表したのか、こういう御質問でございますけれども、これは、内閣官房として宿泊費差額として松尾元室長に渡した報償費が九億六千五百万円、こういうことになっていることは既に御説明申し上げておりますけれども、これは公表したのは、この宿泊費差額が犯罪容疑の対象になっている、こういうことなのであえて説明を申し上げた、明らかにしたということであります。

 なお、もう一つ申し上げれば、今回外務省で告発しました五千四百万円、これは外務省の報告書において松尾元室長が私的目的に使用した明白な疑いがあるとされた金額でありまして、その詳細は我々もつかんでいないというのが実情であります。

中沢委員 時間があればもっといろいろ議論もしたいと思いますが、いずれにしても、使途を公表しないという従来のそういう長い間の事実上の慣行にすぎない、しかも、今回犯罪に関連をしたからといって結果的にその使途の一部を公表した。理屈も何にもないと思いますね。そのことだけを指摘しておきます。

 さて、もう一つは、例の古川メモについてであります。

 あの際も、大変な疑惑が持たれている内容だから、官房長官の責任で調査をして、この委員会あるいは国民の前に具体的な事実を説明する必要があるのではないか、調査の責任と説明責任を指摘しました。

 その際は、官房長官としては、もう現在は首席参事官でも何でもない、こういう強弁をして、残念ながら意見は平行線に終わっていますが、その後大分時間もたって、衆参の予算委員会でもさまざまな角度から指摘をされている。今日なお前回と同じような回答をするのか、あるいはもうちょっと違った角度で回答をするのか、きょう現在の官房長官の責任ある答弁を求めておきたいと思います。

福田国務大臣 事古川メモということになりますと、これは書いたとされる本人が、書いたことはない、こういうふうに一貫して否定されておりますので、それ以上追及することはこれは困難であるというふうに思います。

 また、おっしゃられるようなメモに書いてある中身、これを裏づけるような資料というものは一切見当たりません。大体報償費というのは、中身については首席参事官が知り得る立場にないものなのでありまして、ですから、本来あるのがおかしいというのが私どもの見解であります。

中沢委員 いずれにしても、古川官房副長官の当委員会に対する出席の要求、あるいはこのメモを筆跡鑑定を含めてどうやって確認をするか、こういうことにつきましてはこの委員会の理事会で預かっておりまして、与野党でも今ほどもちょっと議論したのでありますが、これは大事な問題でありますから、今の長官の答弁は全く無責任きわまる。調査をする意思もないようだし、その責任のみじんも見られない。国民に対する疑惑解明のそういう責任も見当たらぬ。非常に問題だと思いますから、そのことだけを指摘しておきます。

 さて、もう少し、これから先のことについて具体的にお答えをお願いしたいと思いますが、もともと、この報償費という中身でいうと、正式に言えば使途が公開をされていない、しかし、かなりその内容についてはだんだん真実が知れ渡っているということも一方の事実だと思うのですね。

 私は、もう既に予算が通ってしまったから、覆水盆に返らず、こういう言葉がありますから、今回の予算に直接関係をするという観点ではなしに、官房長官として、これからどういうようなことになるかは別にいたしまして、大事な今までの国会の議論をしっかり受けとめて、少なくとも今の官房の報償費のあり方についてどういう考え方を持っているか。結論からいうと、今のような状態でいいんだという考え方なのか、あるいは、どういう内容かは別にして、この報償費についての改革の必要性があるかどうか、まずそのことを一つの前提にして私の方から幾つか簡単に指摘をしておきたいと思うのです。

 もともとこの報償費、いわゆる国家的な機密に関するということでいうと、報償費全体を使途を公表しろということは私は言いません。しかし、国家的な情報収集活動ということは別にいたしまして、それ以外はほとんど食糧費だとかあるいは交際費だとか会議費のたぐいなんですね。もっと言うと、真相は別にして、せんべつだとかあるいはお土産代だとか、そういうものがほとんどでないか、これは推測しかできませんが。そうしますと、本来的な機密にかかわる関係は仮に公表しなくてもこれはやむを得ない。それ以外はほとんど一般的な事務費でありますから、どうして公表をしないのか、非常に疑問です。

 ですから、この際ですから、そういうことも含めて、もっと言うと、新年度の予算編成はまだこれから先の作業でありますけれども、今後の問題として、内容も含めて報償費全体の金額そのものも削減をする、つまりは、最初言いましたように、報償費の制度を改革する、そういう全体的な決意を含めて、今二つほど指摘をしましたが、こういう内容についてどういうお考え方をお持ちか、聞いておきたいと思います。

福田国務大臣 報償費は、先ほど申し上げましたとおり、内政、外交を円滑かつ効果的に遂行するためにその都度の判断で機動的に使用する、こういう経費でございます。

 委員いろいろおっしゃいましたけれども、報償費の使途について明らかにできないということ、これは再三御説明しているとおりでありますけれども、私は、歴代の官房長官がそんないいかげんな報償費の使い方をしているというように思いませんし、また私自身も、そういうことは一切考えずに厳正な使用に心がける、こういうことに心がけてやっておるわけでございます。

 大体、こういう制度自身が、これは日本だけでない、日本の特殊事情ということではなくて、どの国においても大体認められている制度でございます。その例を挙げることもないと思いますけれども、欧米先進国、そういうところにおいてもしかるべき会計検査の必要のない費用というものは計上されておるわけでございまして、国家的にやはり必要な経費だという御認識というか御理解はいただかなければいけない、また、その努力は我々としてもしていかなければいけないということは反面あるわけでありますけれども、巷間、新聞等々でいろいろ出ておりまして、私もそういうものを見て、こんなことがあるのかなということを、我が目を疑うようなことはしばしばございまして、新聞報道がすべて正しいというふうに私は思っているわけではありませんけれども、もしそういうことがあるのであればこれはとんでもないことだというようには思っておるところでございます。

 今後私どもも、そういうふうな国家的な見地からこの報償費の使用というものを考えていきたいというように思っているところです。

中沢委員 大事な問題ですから、時間があればもっと議論を深めた方がいいと私は思いますが、残念ながら、今の長官のお答えは、いろいろありましたけれども、私の印象としては、積極的に報償費の改革について問題意識を持っていない。問題意識がなければ改革しようという具体的な手法だって出てこないと思うのです。私は、それではこれからの官房の報償費はますます国民から大変な疑惑と批判を浴びる、それは必然だと思いますよ。そんなことで本当にいいのだろうか。そのことだけを指摘して、いずれまた福田さんと、直接かどうかは別にして、この問題は残された重要問題としてこの委員会でもやはり質疑をきちっとやっていかなければならぬな、このことだけを申し上げておきたいと思います。

 さて、今度は橋本行革担当大臣にお尋ねをいたします。

 前回も、総論的なことで若干の質疑をやらせていただきました。昨日、政府の行革本部で公務員制度についてのいわゆる大枠が示される。きのう、きょうのマスコミでもいろいろな論評があります。

 私自身は、労働組合の関係で言いますと、公務員連絡会議の皆さんと、立場上頻繁にいろいろな打ち合わせをやったり情報交換をやったりしておりまして、昨日発表された内容、あるいは先週、自民党の行革本部の幹部の皆さんと公務員連絡会議の皆さんが会った内容についても、相当詳細に情報としては持っております。ですから、時間があればたくさんのことを橋本大臣にも聞いておきたいのでありますが、きょうはもう時間がありませんから、一つに限定をしたいと思うのです。

 きのう示されたこの大枠の最後のところに、人事院制度についても相当踏み込んで改革をする、そうすると、勢い、いや応なしに公務員に対する労働基本権問題、これはやはりさわって検討しなければいけない、こういうことになっています。私は至極当然なことだと思います。橋本大臣はいろいろな大臣をされて、総理大臣もされて、特に各国の公務員労働者に対する労働基本権がどういう実態にあるか、それと比べて日本がどういうことになっているか。しかも今回、国家公務員に対する直接の問題として、長い間、労働基本権を法的にもきちっと保障をしてこなかった。しかし、それは人事院制度をつくったのだ。

 つまり、人事院と労働基本権という両方の、メダルで言えば表と裏の関係。表を相当切り込んで改革をするのであれば、もう一方の労働基本権についてもきちっとした議論をして、表と裏との関係、つまり車の両輪と言ってもいいと思いますが、両方のそういう関係についてやはりバランス感覚、もっと言うと、これから二十一世紀にふさわしい国家像、公務員像ということを視点に置いて考えた場合に、そういう二つの両輪について、バランス感覚を民主的にきちっとよく押さえて六月に向かって基本設計をつくり上げる、場合によっては法制、立法活動につないでいく。

 これは、非常に政治主導で今までやってきた、恐らくこれからもそういうことでおやりになると思いますから、担当大臣としては非常に重要な責任を持っていると思います。ですから、きょうは時間がありませんから、特に人事院制度と労働基本権との兼ね合いについて、担当大臣としてどういう決意でこれから作業を進めるつもりか。自民党の行革本部の皆さんとの会合の中身もあるいは聞いていらっしゃると思いますが、そういうこともひとつよく念頭に入れて、これからのいろいろな作業があると思いますが、きょう現在の大臣の決意、考え方、明確にぜひ聞いておきたいと思います。

橋本国務大臣 昨日、今議員もお触れをいただきましたように、「公務員制度改革の大枠」を、私どもは、政府の新たな内閣府における調整システムを活用し、これを公表することにいたしました。

 そして、その中におきまして、「中央人事行政機関等の役割の転換」という書き出しの部分に、組織や人事管理について各府省が主体的に責任を果たす体制をつくることなどに応じて、中央人事行政機関等の役割を、事前かつ個別詳細にチェックすることから、あらかじめ定めた明確な基準のもとでその遵守をチェックする、こういう方向に変わる。これに伴って、人事院については、人事管理に係る事前承認、協議制度を廃止することを基本とするとともに、組織のあり方も含めて、今後求められる役割について検討を行うということを残しております。

 また、当然、そういう中におきまして、労働基本権の問題も今後検討する必要があることは御指摘のとおりでありますけれども、これは、例えば給与の仕組みとか勤務条件とかいうものの変わりによって当然変化するものでありますから、労働基本権から先に議論をする気は私はありません。そして、これから先、人事院の新しい役割というものも、実は公務員制度をどうするかというところから出てくる問題として、これは当然検討をすることでございます。

 こうした人事院の役割、あるいは給与制度を初めとした労働条件に関する制度を具体的にどのような改革をするか、その方向が明らかになりまして、その時点においては労働基本権の問題も論議をしなければならない、そういう認識を当然持っておりますけれども、あくまでもなすべき議論は、労働基本権が主体でもなければ、人事院が今のままであるべきだとかなくなるべきだとかいうことではない。将来求められる公務員像に向けて公務員制度を議論していくという視点から、その中において必要な論議を避けて通るつもりはございません。

中沢委員 私自身も、別に労働基本権先にありきなんということを言っているつもりではないのです。そこのところは誤解があってはちょっとまずいと思いますけれども、ただ、いずれにしても、新しい公務員像、新しい国家像、これはやはり基本だと思います。そのためには、現在の人事院制度が今のような状態でいいのか、あるいはどこまでメスを入れて改革をするのか、それとやや同時並行的にもう一方の労働基本権問題もしっかり重視をしてやるべきだ、こういう思いでありますから、これから先、いろいろな団体やあるいは国民的なレベルの意見や行政の意見も聞くのでしょうけれども、ぜひひとつ全体の着地ですね、まだこういう委員会がありますからまた議論すると思いますけれども、今後また大いにお互いに議論をして、国民が期待をするようないい国家像や公務員像をつくる、こういうことで私どもも頑張っていきたいと思うのです。

 さて、最後、わずかの時間になりましたが、麻生大臣に、緊急経済対策を中心に一問だけお尋ねをいたします。

 昨日の閣議で、政府としての緊急経済対策、結果的に麻生さんが責任を持って早急にまとめる、こういう指示があったというふうに新聞やテレビで一斉に報道があります。もちろん、森総理が訪米された折に随行されておりました。帰ってきてからいろいろな新聞、テレビで登場されている。私も前から個人的なおつき合いもありますから、比較的その番組は見たのでありますが、具体的に聞きたいのは、新聞その他でも既に予備的な報道がありますけれども、与党と政府のいわゆる緊急経済対策本部、重点課題が三つある。私もそうだとは思うのです。ただ、それだけでいいのか、こういう問題ももちろんあります。

 中でも、私の経験からいうと、特に北海道のいわゆる金融問題、不良債権問題で拓銀がああいう状態で破綻をする、関連して大変な企業が倒産をして雇用不安が物すごく増大をした。その事後の対策に私どもも一生懸命汗をかきましたけれども、なかなか思うように進んでいない。

 つまりは、緊急経済対策のもう一つの柱として雇用対策について重要な柱の一本に立てて、具体的な緊急性の問題から中長期にわたる問題から含めて、ぜひひとつ雇用対策を経済対策の一つの柱に据えてしっかりした方針を立ててやるべきではないか。この一問だけにしたいと思いますが、どうでしょう。

麻生国務大臣 今御指摘がありましたように、中沢先生、お互いさま、石炭で随分似たようなことをやりました。日本経済がばんばん調子のいいころでも、縮小均衡生産を余儀なくされたのは多分米と石炭だと思いますけれども、そういった中にあってやはりこの雇用問題、黒手帳という言葉はもう若い人には通じなくなりましたが、黒手帳なんというものが一番の重要な話だった。島さんの世代なんかでは全然通じなくなってきている単語だと思いますよ。そういうものが昭和三十年代後半からざっと出てきて、筑豊、北海道、いずれもそれが後を引いて、今残るところ、北海道で一つ、九州で一つ、三千あったものがたった二つになったのですから、そういった意味ではえらい変化だったと思います。

 この中でも、炭労、総同盟含めて、やはり雇用問題というのは非常に大きな問題だったと思いますので、これは今回も同じように、生産性の低い、国際競争力がないというような業界、もしくはその業界の中にあっても企業によって格差があるとは思いますが、そういったところでこの種の構造改革を進めていくという状況になってくれば必ず避けて通れない問題だ、私どももそう思っております。

 したがいまして、この点は何らかの形で対策をせねばならぬのは当然のことなのであって、失業手当等々今いろいろあります問題、ほかにも、失業手当に限らず、中高年の人たちが企業に再就職を目指していった場合には、その人たちが、例えば今はやりでいえばIT関係のものを何らかしようとするならば、それに対しての補助金が出るとか、勉強するための補助金が出るとか、それから教育訓練給付金というのがたしか最高額で二十万円出るようなあれになったり、いろいろな形のものが今されております。

 こういったものを含めて、企業では自由競争をやっていますので、放漫経営等々、企業が倒産するのはある程度やむを得ないというところが出てくるとは思いますよ。しかし、その辺、非自発的離職者が出てくるという点に関しての対策というものは全然別個に考えるべきものだと思って、この緊急経済対策の中でもその点は十分に配慮されるべきだと思って努力をしてまいりたいと思っております。

中沢委員 時間が来ましたので、終わります。

横路委員長 島聡君。

島委員 民主党の島聡でございます。今中沢委員から質問があったきのうの森首相の行動につきまして、官房長官にもう一度お聞きしたいと思います。

 両陛下が出席する国賓ノルウェー国王ハラルド五世夫妻主催の行事であります。両陛下が出席する国賓の行事に首相が欠席をする、これは今まで前例があったのか、あるいは、あったとしても極めて少ない行為だと思いますが、いかがですか。

福田国務大臣 私は、後ろに橋本元総理大臣もおられまして、橋本元総理にお尋ねになった方がいいのかな、こうも思いますけれども、私が、きのうのことと関係なしに今まで聞いておりましたことは、そういうときには総理が出席されるということはその都度の判断でされるというようにお聞きしまして、主賓は天皇陛下でございますので、そういう場合に必ずしも総理が同様出席しなければいけないという決まりになっていないというふうに聞いております。

島委員 福田官房長官もたしか外務委員会なんかで御一緒させていただいて外交はお詳しいと思いますが、これは皇室ジャーナリストの方の記事なんですが、外交の場において今まで前例がないようなことを行動として起こすということは、何らかのメッセージ性を持ちます。特に、国賓が来られたときに、ノルウェー国王が来られたときに、今まで両陛下が出席するときには必ず出ていた、あるいはほとんど出ていた、そのときにそういうことがない、まず確認をして、もしもそういうことであるならば早々に手を打つべきで、きょう新聞の見出しを見ました、今そんな発言をされましたけれども、全く緊張感がない。即調べて対応していただきたいということを最初に要請しておきます。

 それで、次にお聞きしますが、官房副長官の問題について、官房機密費の件について、私どもは、事務方の官房副長官も出てきて、質問に答えてここできちんと明快に説明をすべきだという主張をしているのですが、それを断られる理由をお聞かせください。

福田国務大臣 古川副長官のことですね。

 これは前にもここで申し上げたと思うのですけれども、古川副長官は副長官として報償費の業務にかかわっていないのですね。これは官房長官の判断で行っていることでございますので、ですから、そういう意味においてまずここにお呼びするというのは不適当であるというように考えている、これはもう基本でございます。

島委員 官房副長官の地位が、今回の内閣法の改正によりちょっと変わりました。内閣法第十四条、「内閣官房副長官三人を置く。」となっています。「内閣官房副長官の任免は、天皇がこれを認証する。」となっています。これは、国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律の第十一条で「天皇がこれを認証するものとする。」としたわけでありますが、実質上、この認証行為が行われたのは一月六日以降でありました。つまり、全く副大臣と同じであります。政治責任が生じていると私は思います。ちなみに、事務次官及び庁の次長などは、この任免について、天皇はこれを認証いたしません。つまり、極めて政治的責任が発生している。

 ここで政務の官房副長官があいさつをされました。それならば、官房副長官に対して私どもが政治的責任を問うという意味で質問通告した場合に、ここに必ず出てきちんと答えるのが当然かと思いますが、いかがですか。

福田国務大臣 確かに副長官がこのたび認証官になりました。そういう意味においてほかの副大臣と同じではないか、こういうことになるんですけれども、私どもの仕切り方はあくまでも事務担当、こういうような仕切りをしているものですから、こちらに政治的なことでお伺いするというようなことはしないでいい、こういうような理解をしておりました。

 しかし、この辺はまた我々の方も考えなければいけないことかなというように思っておりますので、これは検討させていただきたいと思います。

島委員 検討をさせていただきますという言葉をきちんと把握して、次に進めます。これは随時進めていきますが。

 麻生国務大臣、いわゆる個人情報保護法案についての質問を申し上げます。

 この個人情報保護法案、名前は本当に個人情報保護になっているから、これはいわゆるIT革命の推進によりまして、プライバシー保護というのは、昔はいわゆる有名人のプライバシーをどのように守るかというところから始まりました。十九世紀末のアメリカであったと聞いています。その後、いろいろな個人情報がどんどん蓄積されるようになった。個人情報がどんどん蓄積されることによってその個人情報を利用することがいろいろな意味で有用になってきた、だから個人情報を保護しなくちゃいけない、だからIT担当の麻生大臣が担当しておられる。そこまではよくわかる。

 しかし、実質の内容、内容は実はきのうまで私よくわからなかったわけでありますが、きのう閣議決定された。そうすると、何かこれは、本来は電子政府の保護、政府から国民を守っていく、政府対個人というのが大事な話であるということで、それで今回民間規制だけだというんだけれども、何かメディア規制法的な要素を随分持つようになってきている。

 私は、今回この個人情報保護法案が個人情報保護法案という名のもとにおいて出てくるのが、何か民間業者を取り締まるというだけであって、公的な分野、国の行政機関、行政機関個人情報保護法、もちろんこれはあることは知っていますが、その見直しとか、独立行政法人、特殊法人なんかを公布後一年をめどに出す。これは何か変なんですね。

 どちらかというと、本当に個人情報保護なら、政府対個人、そちらの国の行政機関の個人情報保護法をきちんと見直して、そして独立行政法人をやって、それから民間業者をやる、そういう形にするか、あるいはワンセットで出すべきなのに、この個人情報の保護という名のもとに、メディア規制法、あるいは何かそういう民間業者を規制するだけの法律を出してきた理由は一体何ですか。

麻生国務大臣 私ども基本的に今島先生が言われたような感じじゃないんですけれども、基本的なことを言うと。

 まず最初に、今言われたように、昭和六十三年に行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律というのがもう既にあるというのは御存じのとおりです。これがあるんですが、御存じのように、それ以後情報というものがすさまじい勢いでふえてきて、かつ技術の進歩にもよりまして瞬時にして世界じゅうにそれが全部知れ渡る。しかも、意図的にやると、それを悪意に駅の黒板のごとくどんどん書きかえられて、人の誹謗中傷、選挙でもやられた方も随分いらっしゃるとは思いますが、そういったようなことになってきておりますので、そういったことではいかぬということで、この種のものをきっちりやらないと、いわゆる電子政府とか電子商取引とか、いろいろなことを今後進めていくに当たって、これこそやっておかぬとどうにもならぬと、これはだれでもちょっとこの種のことをわかっていれば皆そう思われたと思うのです。

 そういったことをやりますので、こういう個人情報の取り扱いに関する規律が設けられていないので、これは何とかせにゃいかぬというので、これはたしかEUだったかな、どこかからいろいろ言われたのが最初だったと思いますけれども、そういったもので早急に整備をせにゃいかぬということが大前提で、今度いろいろ進めることになったんだと思います。

 少なくとも、これは初めてやりますので、今までありました、昭和六十三年からあります今の法律とこの新しくやってみた制度と、やってみた結果、これはこんなことも、想像していなかった問題が起きたじゃないかということが多分起きてくるであろうということが私ども想像にかたくないところで、これは大体、役人とか我々六十歳も過ぎたような者が頭で考えるというのと若い人が考えるのと多分全然違うところからハッカー含めて出てくることも覚悟せにゃいかぬと思っております。そういった問題がありましたので、公布後一年をめどにして、やってみた結果、今の六十三年にできた現行法との間にいろいろそごが出てくることが十分に考えられるので、一年後に現行法の見直しに手をつけにゃいかぬということを最初に書いておるところであります。

 それから、今の行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律ということに関しましては、これはきのうたしか総務大臣、片山大臣の方から、これに関しては勉強会を開始するということで、四月からこれを開催されると聞いております。そういった意味では、皆さんその問題意識をお持ちなんだと思いますので、島先生の言われる問題意識というものは担当されておられる方はそれぞれお持ちのように思っております。

 それから、報道に関する件でしたけれども、この件に関しましてはいろいろお話があったことは事実です。特に出版は報道かという話が必ずここに出てくる話でして、出版社が報道かと言われると、そうですと言えば、じゃ漫画も報道かと言われると、ちょっとまた話がいろいろ、どこまでが出版でどこまでが報道かという区別がなかなか難しいところですので、報道とは一般に不特定かつ多数の者に対して事実を事実として知らせることとしておりますので、その種の前提に立っての雑誌の出版は報道というように規定して、これはこの案から除外をしておるというのがこの中で大体御理解をいただいているところだと思っております。

島委員 まず前段に関しては、私はこれは一緒に議論すべきであるということを主張します。

 それから、今ちょうど漫画の話をされました。私は、麻生大臣がずっと若いときに、若手政治家の特集をされていたところで、漫画の「俺の空」というのを愛読していたと書いてあったのを読んでおりましたので、漫画の話というのをちょっと一つします。

 不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること、または客観的事実を知らせるとともに、これに基づいて意見、見解を述べるということで、漫画は報道じゃないというふうになっています。

 橋本総理も読んでおられた「美味しんぼ」という漫画でありますが、ここに第六話「長良川を救え!」というのがあるんです。長良川河口堰の問題について書いてあるものがあります。この長良川河口堰の問題について分析をして、私は長良川河口堰問題に随分取り組んでおりました。月曜日も視察に行ってまいりましたが、これを見ますと、ここの中で、長良川河口堰の説明もきちんとして、こういうことだから長良川河口堰は問題があるということもきちんと書いてある漫画であります。

 この種の漫画は幾つかふえております。今漫画と言いましたけれども、小説、写真集、漫画、実用本等々ある、あるいはファッション雑誌というのもあるが、その中で今政治というものを取り上げてくるものがふえてきたし、そういうきちんとした社会問題を取り上げてくるものもふえてきた。つまり、出版というのもそういうふうに、その他の、これは違うというような、今漫画がそうかという話ですが、一つの媒体ですから、そういうふうにだんだんと進化していくのに、漫画は報道じゃないというような今お話をされたようですが、こんなことをやったらおかしくなると思いませんか。

麻生国務大臣 漫画にお詳しいようなので、同じように、「美味しんぼ」の中に昔グリーンピースの話がありましたでしょう。あれは第八巻だったか、そこまでおれも正確に覚えてないが、グリーンピースの話が出て、あれ以後グリーンピースのあれが随分落ちついたと思いますけれども、ほかに政治の漫画で「加治隆介の議」とか「票田のトラクター」とか、数え上げれば切りがないぐらい、この種の報道に関するものはいっぱいあると思いますよ。

 そういったようなものに関して言わせていただければ、確かにそういった点がないわけではありませんけれども、その量が、ほかのいいかげんな漫画を含めて、漫画もピンからキリまであります。そういった中で、漫画と言いながら、一部あるからこれと言われると、それだけがすべてかと言われるとなかなか難しいところだと思いますので、これは今後検討しなければいかぬところだと思いますが、個別的にはこれはひっかかるのじゃないのかなというところが出てくる可能性はないわけじゃないとは思います。しかし、常識的に言って、今、一般概念、通常概念から、例えば中沢先生とか私どもの世代は、よほどこの種のことに詳しくない限りは、漫画を読んでこれがと思われる方は余りないのだと思うのですね。

 そういった意味では、今言われた点は、確かに一部そういった点がなきにしもあらずとは私も率直に思いますが、しかし、だからといって、漫画すべてと言われると、ちょっとそこらのところは、一概にさようでございますともなかなか言えないと思っております。

島委員 これは今たまたま漫画と言われたので申し上げたわけで、つまり、この定義にも非常にあいまいなものがある、そうすると恣意が働く、恣意が働くことが結局報道の自由というものをなくす、だからきちんとすべきであるし、それだったらば出版の自由ということをきちんと書くべきであると私は思っています。

 出版の自由というのを書くべきだというようなことを主張すると、何か法制局の方は、報道機関の表記で出版を入れているのは余りない、報道の概念で出版を表記しているのは破防法ぐらいだったというようなのが返ってくるそうです。出版という索引で調べると百九十件あるとか八割方が著作権関係であるとか、そういう話が返ってくる、そういうふうにそこに書いてあると思いますが、そんなことは聞くつもりはないですし、政治家同士の議論をしたいのです。

 これはジョン・スチュアート・ミルの「自由論」であります。漫画だけだと漫画だけしか読んでいないと思われるといけませんので、これも言っておきますが、この「自由論」の第二章、「思想および言論の自由について」というのがあります。そこに、「腐敗した政府または暴虐な政府に反対する保障の一つとして、「出版の自由」をなんとか擁護しなければならないであろうという時は、既に過ぎ去った、」つまり、自由の古典であるミルの「自由論」にもう出版の自由というのが入っているんです。それを入れるべきか入れないべきかなんということを言う時代はもう過ぎ去ったという。

 恐らく麻生大臣も、漫画に極めてお詳しいですが、こういう古典にもお詳しいと思います。英文で読まれたかもしれませんけれども、これは出版の自由と書いてある。それならばきちんと出版の自由というのも入れるべきだというふうに政治家として判断されませんか。

麻生国務大臣 これは基本的に今言われたように、ジョン・スチュアート・ミルという人の書いた話というのは、政治学、皆習われる本の一つなんだと思いますけれども、そういう意味で、出版というのは極めて大事なものであります。

 また、旧ソビエト連邦時代にでも、アネクドートという風刺漫画というのが、これにまさるものはなかった、あの体制を揺るがすのにこれは非常に大きな影響を与えた、漫画といえば漫画なんですけれども、そういったものを含めてあれだと思いますけれども、これは公共というものに関してどれぐらいの影響を与えるというのは、なかなか、いろいろな概念とか常識とかいうものが働いてくるところだと思います。

 ただ、今の段階で出版というものが、公序良俗とかいろいろな表現があると思いますけれども、そういったものから判断をされるべきものなのであって、漫画はすべていいとかすべて悪いとかいうような種類で縛るというのは難しさがあるなという感じだと思っています。

島委員 質問は、ここの「放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関」というようなところに出版というのを入れるとすると、それはそういう法律用語になじまないという、法制局がそんなことを言っているということを言っているのじゃなくて、その答えに書いてあるかもしれないけれども、政治家として、政治哲学の「自由論」にもう出版の自由というのがあるんだから、それは法制局じゃなくて、政治家として判断して出版の自由が必要だというのなら、それを入れた方がいいと私は思うのですがどうですかという質問なんです。

麻生国務大臣 出版のとらえ方が、正直言って、昔みたいに、この種のきちんとした本が出てくるだけの時代の出版だと、今の御意見に私もかなり近いのだと思うのですけれども、出版というのは、今、インターネットでばっと送り届けてくるのを含めまして、いろいろいっぱい出てきちゃっているものですから、そこで、なかなか今の話が難しいのだと思っておりますので、私も、今言われたことに関しては、決して基本的なところで反対するものではありません。

島委員 個人情報保護法案に関しては、私は、とにかくまず第一に政府対個人の法律と一緒に審議すべきであると思っていますから、審議はこれぐらいでやめますけれども、この問題について十分、出版の自由も含めて、政治家としていろいろとお考えをいただきたいと思う次第であります。

 同意人事についてお尋ねをしてみます。今度は伊吹さんと官房長官だと思うのです。

 国家公安委員会の同意人事案件がございました。これは「内閣総理大臣が両議院の同意を得て任命する。」となっています。私どもの党は反対をしました。反対の理由は、国家公安委員会、特に国民が注視をしている委員会であります。そういう委員会でありますから、私どもは、人秘と書いてありますから余り言いませんが、これだけの数ページの資料をもらって、これで判断しろというのじゃなくて、国家公安委員会、行政組織法三条、三条委員会であります、そういう委員会にやられる以上、きちんと委員会に出てきて、こういう趣旨でやるということを言ってもらい、そうすべきである。そうして初めて責任を持って国会として、書類だけじゃなくて、実際の本人の見識を聞いて実行するのが同意人事であるという主張をしましたが、それは退けられて、結果、反対をしたわけであります。

 こういう機会ですから、そういうことで、内閣総理大臣が両議院の同意を得て任命することはよく存じ上げておりますが、その委員候補を選出するところというのはよくわかっていません。立証をしていただきたい。私は、これに少し疑問を持っています。

 つまり、今回の新委員になられた方は、たまたまなのかどうかわかりませんが、内閣総理大臣の選挙区に極めて近い会社の代表者でありました。当然、国家公安委員会は中立公正であり、ここにあるように、「警察に対する厳しい批判にもかんがみ、国民各層の幅広い意見を警察業務に反映させるため、高い見識を有し、経済界に長く籍を置く同君を国家公安委員会委員として任命しよう」としている。厳しい批判がある。そこが、たまたまなのか、総理の選挙区に極めて近い会社の経営者がなられた。

 したがって、これが推薦をされていった、委員候補を選出する過程をきちんと御説明を賜りたいと思います。これはどちらですか。

伊吹国務大臣 民主党の御主張は、私、よく伺っております。議院運営委員会での御主張もよく伺っております。

 一般論としては、やはり憲法七条の規定と議院内閣制という本旨からすると、公務員の任免というのは各省の長、つまり内閣総理大臣と各省大臣にあるということは原則だろうと思います。しかし、その例外として、公務員法の二条でしたかに書かれているようないわゆる三条委員会の委員は、公益、先生がまさにおっしゃったように、やや政府と独立をした立場で行政にあずかるという意味では公共性あるいは公平性を担保しなければならないので、その代表である国会の同意を得るという手続になっているわけでございますから、まず形式論としては、国会にその規定に基づいて国家公安委員の承認をお願いしたわけです。

 お願いした委員の承認を各常設の委員会で人物等々いろいろやりとりをされながら、例えばアメリカのような議院内閣制ではないところの統治システムで選ばれる人と、それから日本のような議院内閣制、つまり国会では多数を占めている政党が形成している行政府が任命をするという人を選ぶというのは、おのずから私は性格が違うと思うのですが、常設委員会で面接をしてというのも、私、一つの御意見だと思います。それについては当然立法府の皆さんがお決めになることであって、行政府に属している国務大臣である私が、いや、常設の委員会でやるべきだ、本会議でやるべきだ云々と言うことはちょっと差し控えさせていただきたい。

 そして、具体的な人選について言いますと、私を除いては、今は、弁護士の方とそれから経済界の方と学界の方とそれから外交官出身の方と報道界出身の方、五人、民間から御承認をいただいております。前の国家公安委員でございました那須さんが二期お務めになりましたので、いよいよ御退任の時期が近いというときに、経済界の御出身の方でございましたので、いつも申し上げているように、国民の常識を警察の常識としてもらいたいという意味では、多様なバラエティーを持っている委員構成であってほしい、したがって、経済界の方がおやめになるのだから経済界の方が適当ではないかというふうに私は公安委員長として判断をしました。

 それで、少なくとも、国会に承認をいただくという意味合いからすれば、これは国家公安委員長である私がまず考えるべきことで、総理だとか何かに御相談すべきことではないと私は思ったものですから、当時の経済界のトップの何人かの御推薦をいただきました。そして、御推薦をいただいた中で、年齢等、いろいろな方にお話を伺って、できるだけ率直な物言いをされる方で歯にきぬを着せずに物を言ってくれる方はどなたかということをいろいろ調べた上で、私はこの人にしたいのだけれどもということを、実は内閣官房に手続をとってもらいたいということを申し上げましたが、特段の異議はなく、そのとおりしていただいたということです。

島委員 今の前段のいわゆる議院内閣制と大統領制の関係は十分承知していますが、それがいわゆる説明責任――今回変わってきたのですよ。内閣府というのが。特に、公安委員会もそうですが、内閣府に来て非常に首相のリーダーシップが強くなってきた。そうすると、説明責任ということがあるわけだから、それを強化する意味ではきちんとそれも変えていくべきであるということが私どもの主張でありました。

 今お聞きしたところによると、伊吹公安委員会委員長が御推薦されたということでございますから、それをきちんと確認をしました。それですから、この問題が、もっと掘り下げていった場合に、伊吹委員長のきちんとした責任であるということを確認して、きょうの質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

横路委員長 井上和雄君。

井上(和)委員 おはようございます。民主党の井上和雄です。新人ですけれども、よろしくお願いいたします。

 本日は三人の大臣と長勢副大臣にも御出席をお願いいたしました。お忙しい中、先生方、ありがとうございます。

 質問通告では、福田官房長官に最後に一問だけ質問させていただくというふうに申し上げたのですけれども、いろいろ問題が生じておりますのでお忙しいと存じますから、順番を変えまして、冒頭に官房長官にお尋ねしたいと思います。

 私、この内閣委員会に所属したいという希望を持ちました理由は、我が国の交通事故の問題にちょっと積極的に取り組んでいきたいというふうに考えていたからなのです。先日、交通事故問題を考える超党派の議員の会を再発足させまして、私自身が事務局長につかせていただいたのですけれども、今後、我が国の交通事故を減らすということを目標として頑張っていきたいと思いますので、官房長官、交通事故の対策の責任者でいらっしゃるというふうに考えておりますので、ぜひよろしく御協力をお願いいたします。

 一年間に九千人もの多くの方が交通事故で亡くなられるという現状があるわけです。私が見るに、どうもこれだけ多くの方の命がなくされている割には、国として真剣にこの問題に取り組んでいない。春と秋の交通安全週間、それぞれ一週間くらいずつ、いろいろ各地域で交通安全対策というのをやりますけれども、それが終わってしまうと各住民の方もほとんど無関心になってしまう、それが今の現状ではないかと思うのです。

 そういう意味で、もっと国として国家的に取り組んでいかなければいけないと私は思っているのです。イギリスでもブレア政権が交通事故を国全体で半分に減らそうということを目標とするということを一時打ち出したということも、私、新聞等で読んだこともあります。

 そういった意味で交通事故を減らすということを考えて、必要だというのは、やはり地方公共団体が、とにかく交通事故というのは各地域で起こっているわけですから、市町村が一生懸命取り組むということがまず第一であるし、それがなければ、幾ら国がいろいろなことをやったって、なかなか現実的に交通事故というものが減る事態にならないと思います。

 そういう観点から、私、実は先月、内閣に対して質問主意書を出させていただきまして、つい先日、回答をいただいたのですね。この質問主意書の内容というのは、各地方公共団体において一体どういう交通安全対策を行っているか、どういう取り組みをしているかということに関してお伺いしたのです。回答の内容は、基本的に各地方公共団体は、交通安全に関して国の施策に準じて施策を講じるとともに、実施する責務を有している。

 地方公共団体の責務に関しては交通安全対策基本法にきちっと明記されているわけですね。では具体的に、交通安全対策基本法にもある交通安全対策会議を設置している市町村が一体どのくらいありますか、実際にどの程度そういう対策会議を設置して、この会議が交通安全計画というものをつくるのですけれども、具体的にどの程度の市町村でこういう対策会議を設けていますかということを質問主意書でお伺いしたのですね。そうしたところによると、平成八年の十二月末現在で千二百八十四の市町村で交通安全対策会議を設置している。政令指定都市においてはすべて同会議を設置しているけれども、その他の市町村については特に団体名を把握しているわけじゃない、そういう回答をいただいたんです。

 私、ぜひ官房長官に、まず、この交通安全対策基本法においても、地方公共団体の責務として、「地方公共団体は、住民の生命、身体及び財産を保護するため、その区域における交通の安全に関し、国の施策に準じて施策を講ずるとともに、当該区域の実情に応じた施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。」ということをはっきり述べているわけですね。私、内閣府の方から御説明いただいたんですが、いや、交通安全対策会議というのは設置することができるというふうに法律に書いてあるということを言われたんですが、第四条には地方公共団体の責務というのがはっきりあるわけですから、ぜひ国としても、地方公共団体にしっかりやりなさいよということを、命令はできなくても働きかけていただきたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

福田国務大臣 委員が交通安全対策に大変な御関心をお持ちであり、また心配をされていらっしゃるということについてはよくわかりました。

 実際問題、ただいま御指摘ございましたように、いまだに九千人の死者、負傷者になりますと百十五万人いるというので、本当に私も、こういう数字を見まして、何とかしなければいけない、九千人の方が一年間で亡くなっちゃうということはこれはとんでもないことだ、いまだにそういうことが人為的なことが中心で起こるということが本当に信じられないような思いでございます。そういう意味で、政府としても、この交通安全対策、これは極めて重要な課題であるということをまず申し上げておきます。

 それで、交通安全対策会議というのを交通安全対策基本法で定められておりまして、都道府県につきましては設置が義務づけられておりまして、現在、全都道府県で設置されております。市町村は、交通事故の発生状況などで大きな格差がありますので、義務づけられてはおりません。また、政令指定都市ではすべて設置されておりますけれども、政令指定都市以外の市町村については実情に応じて判断して設置する、こういうようなことになっております。

 条例につきましては、四十七都道府県のうち三道県が制定しております。その制定は各地方公共団体の判断によりますけれども、地方公共団体が交通安全対策基本法の規定に従い諸施策を適切に実施するよう、今後とも助言を政府として行っていきたい、このように思っております。また、実態調査については、都道府県を通じまして速やかに実施をしていきたい、こういうふうに思っております。

 ぜひ、交通安全対策に今後とも御協力よろしくお願いしたいと思います。

井上(和)委員 ぜひ私は官房長官にお願いしたいんです。官房長官の任期もいつまでかおわかりにならないと思うんですけれども、その前に、ぜひぜひ私はお願いしたいんですけれども、市町村に都道府県を通じて、ぜひ交通安全対策、国として今一生懸命やっているんだから協力してやってくださいと。こういう交通安全対策会議というものも別に全部のところでつくったっていいわけですよ、それはどこで交通事故が起こるかわからないわけですからね。やはり、三千三百の自治体で、全部の自治体で交通安全対策会議をつくるということは私は非常に大事なことだと思うので、ぜひ御自身で指示していただけませんか。いかがでしょう。

福田国務大臣 そのような方向で指導助言をしてまいりたいと思います。

井上(和)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 それでは次に、麻生経済財政担当大臣にお伺いしたいと思います。

 今回の日米会談でいろいろな報道がされております。特に不良債権処理の問題に関しては、大臣自身が積極的に発言をなされているということがよく報道されております。日米会談で最も存在感を示したのは麻生大臣じゃないかなというふうに私は思っているんですね。特に銀行の不良債権問題が我が国の本当に一番大きな課題であるということは異論がないわけですから、その問題に関して果敢に取り組むということを明言されたということに関しては、私は心から敬意を表したいと思うんですが、大臣が日米会談後のワシントンで新聞社のインタビューにお答えになっている。それで、「不良債権処理 追いつめられた」「やると決めれば、日本人はやる」ということを新聞社のインタビューでおっしゃっているということなんですが、ぜひやっていただきたいと思うんですね。

 そういった意味では、ちょっと大臣御自身のお言葉で、今回の日米会談、またリンゼー大統領補佐ともいろいろお話しされたようですけれども、ちょっといろいろお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。

麻生国務大臣 僕は余り新聞というのは、読むと間違いますので努めて読まないようにしているので、その新聞というのは朝日新聞、これは特に読まない新聞なのであれなんですが、ちょっとよく読ませてください。済みません。

 不良債権処理を含む構造改革など、米国からかなり厳しい注文がついたと受けとめられていますに対して、全然違うと思う、注文はなかった、何かを要求されたとか、そういう記憶はないと言ったことになっていますが、これは先生、この種の会議というのは、こういうようなところで速記がついてテークノートを全部やるというような状況でする会談じゃありませんから、二人でぱっと座って両方で話し合いが始まるいわゆる会談というものですので、その場で約束がどうしたとかこうしたという話じゃ全くないものなんですね。そういったところでこの経済問題がえひめ丸の次に出たんだと思います。ここのところまでが経済問題が出た最初のところで、順番としては役所の予想よりは早く出たという感じだったとは思いますが、その話に関しては普通の通常の意見が交わされて、日本としてはという話が出たというのが、普通の話だったと思います。

 昼飯になりまして、昼飯のときに経済閣僚がずらっと向こうから、リンゼーとかオニールとか、それからUSTRのあの目つきの悪いのが出てきていましたけれども、あの目つきの悪い方は、たしか今週中に、どこか、余り態度がでかいというので外されると聞いていますけれども、USTRの方も出てきたんですが、名前をちょっと忘れまして済みません。その三人がずらっと出てきて、経済問題の話がもう一回出てきたときに、経済問題で森総理の方から、今日本としては経済財政諮問会議をやって、従来と違った形でいろいろやっていくんだという話を、丁寧な説明があったんです。それで、ぽっと隣を見て、この人は話が詳しいな、これが担当していますのでこれがと言って私に振られたものですから、私の方から話をさせていただいたと記憶しています。

 不良債権が半年とかなんとかいう話がよく新聞なんかに出ていますが、少なくとも、バッドデットという言葉がそんなところに最初から出たことだけはないと私も思うんです。エコノミックリストラクチャリングの話をずっとしているという段階に、当然、経済を再建しようとすればその中に不良債権の話が含まれる。これは、向こうだってこっちだってお互いに経済のわかった同士が話をするわけですから、そういう話が含まれると私も思いましたし、事実、経済の構造改革をやればこれは避けて通れない問題ですし、今、銀行のと言われましたけれども、銀行以外にもこの不良債権というのはいろいろたまっております。その種のものを解決しないといかぬ。

 アメリカの場合と日本の場合と違うのは、日本は長いことずっと地価が上がっていく前提に立っていたものですから、企業としてひっかかったものは、銀行側はそれを引当金で持っておきさえすれば、何年かすると土地が上がったものですから、それできれいに引き当てが落とせたんですね。ところが、逆にこうなったものですから、引き当てじゃできなくなってきたので、それで直接償却という言葉が出てきたと思いますので、これは英語か日本語かはちょっと別にして、オフバランス化という別の言葉が今出てきておりますが、直接償却というのは、法律的にはこれは倒産をしないとできない場合もあると言われていますので、そういった意味で、オフバランス化という、英語と日本語みたいなチャンポンの言葉が今新しい日本語になりつつあるんですが、このオフバランス化というのを始めておるのは御存じのとおりなんです。

 そういった意味でこれを何とかしていかないかぬということだけはっきりしていますので、私どもとしてはこの問題に関して積極的にやってまいりますという話を申し上げておることは間違いありませんので、それは向こうは非常によしとしているところであって、ところが、いつの間にかそれが半年間で公約のごとく、大体この人たちはみんな公約にしたがるものですけれども、昼飯でわんわんしゃべった話が公約なんかになっていたらとてもじゃないので、向こうもおおそうかという話で極めて和やかにいきましたし、その後の、リンゼーという人に関して、私どもの方から申し上げた中にもその種の話がバッドデットとして出たことは、私の記憶ではありません。

 そういったのが、これは少し構造改革の話に入った不良債権を、私ども入っていると思っていますし、向こう側も入っているとは思いますでしょうけれども、それと、この後に出てくる、両国の共同声明の中に出てくる言葉とが一緒になってしまっておられるので、少し混線しておられるのかなというのが率直な実感だと思っております。

井上(和)委員 今お話を伺って、アメリカ側が問題にしているとか、そういう話は私は余り興味がなくて、ただ、要するに、政府として不良債権問題に取り組みますよということをアメリカにはっきりと明言したことは確かですね。

麻生国務大臣 えらく不良債権にこだわりますけれども、これは、共同声明の中に書いてあるこの言葉が多分一番正しいんだと思っております。

井上(和)委員 それで、今大臣からも直接償却というお話が出まして、間接償却から直接償却になってくると、当然倒産ということになってくるわけですね。そうなりますと失業率の増大が避けられない。先ほど中沢先生からも失業のことに関してお話がありました。

 それで、雇用問題なんですけれども、直接償却が進んでいきますとどの程度失業率が上がるかということに関して、私は非常に興味を持っているのですよ。なぜかというと、失業対策、雇用対策をやるということですから、やるというときに失業者がどのくらいになるかということがわからなきゃ、これは対策をとりようもないし、恐らく補正ということも考えていらっしゃると思うのですけれども、では、一体失業者が今の三百二十万人ぐらいからどのくらい、百万ふえるのか二百万ふえるのか、その規模が読めないまま、とても失業対策、雇用対策を組めませんね。

 だから、本当に雇用対策をやるというふうにお考えだったら、マクロ経済の運営に関して責任を持っておられる大臣はどの程度の失業率の増大というものを考えられているのか、ちょっと御意見いただけますでしょうか。

麻生国務大臣 今御指摘の点は、間違いなく私どもとしてこれは担当しなくちゃいけないところなので、いろいろシミュレーションなんというのが出されておるのですが、正直なところを申し上げて、GDPが一%、仮に五兆円ぐらいのものが持続的にずっといきますと、失業率というものは基本的には〇・〇七%減ると言われているのです。これは定量的な話ですよ。GDPの一%、五百兆ですから五兆円がふえれば、失業率は〇・〇七%減ると言われております。

 今定量的なことで申し上げるのはこれぐらいの数字しかないのですが、少なくとも今の段階で、これは外国の事情やら何やらをはめて皆計算しようとするのですが、正直なところを申し上げて、こういう形で物価の下落に伴うデフレ、三月の月例経済報告で、私どもとしてはこれはデフレと言うべきということでデフレという言葉を正式に使わせていただくようにしておりますけれども、戦後初めてデフレーションというのをやるのです。正直なことを言って、二年連続の物価下落、先進国の中で日本だけという極めて珍しい例になっておりますので、これを、五%が一〇%になりますとか、そんな簡単なことを言えるような数字は、極めて影響のでかいことでもありますので、今この段階で、先生、大体私の勘ではこんなものですなんて、ちょっとそこまでは言えぬのです。

 なぜ言えないかといいますと、もう一つは、失業率がふえてくる理由に、女性の労働市場への参入というのはこのところすごく多いのですよ。傍ら、雇用はどんどん、結構ふえております。はっきり申し上げて雇用はふえております。新規有効求人倍率もふえておるわけです。だったら、普通だったらこっちが減らなくちゃいけないのですが、新しく労働市場に参加してきている女性の方々の数が従来に比べて多い。それなものですから四・九という高値で張りついたみたいな形になっていますので、簡単に、片方がふえているにもかかわらずこっちも減らないという状況はどれくらいな形で続くのかというところまで、なかなか定量的には申し上げにくいというのが正直なところです。

井上(和)委員 はっきりした答弁をいただけなかったので、この問題はまた別の機会に追及していきたいと思います。

 それでは、伊吹大臣にお伺いいたします。

 先日、私は、この委員会で奈良県警の不祥事の問題に関して質問させていただきました。残念ながら国家公安委員長が私の質問の時間にいらっしゃらなかったので、本日は国家公安委員長にお伺いしたいのです。

 委員長、今回の奈良県警の問題に関しては、警視正の方の関与も新聞で報道されていたのです。私もいろいろ調べましたら、この警視正の方が佐川急便の関連会社から車を提供された。それが、実際には提供されたのだけれども、自分の車と交換したという形だということを私は監察官から御説明いただいて、特に問題はないんだということも御説明いただいたのですね。

 私は、実際に車の登録事項証明書というものを手に入れまして、佐川の関連会社である大協警備保障株式会社というところから、移転登録という形でこの警視正の方の所有にトヨタの車がなっているという事実は確かですね。

 私は思うのですけれども、警視正というのは奈良県警に四人しかいないそうなんですよ。それで、警視正というはっきり言って県警のトップの方がこういった行為をやる。李下に冠を正さずという言葉もありますね。トップにある人間がどう考えても疑われてもしようがないようなことをやっているということに関して、私は非常に憤慨いたします。

 まして、警察という非常に大事な組織のトップである方が、これは疑われてもしようがないですね。まさに警視正というトップになるべき人は、そういうことをやらない人が原則なんじゃないかと思うのですね。

 国家公安委員会が基本的にはこの方を警視正に昇進させている。私は、国家公安委員会の責任は重大だと思うのですけれども、どうでしょうか。

伊吹国務大臣 この前は失礼しました。先生の御質疑は、私、みんな速記で読ませていただきました。

 平成十一年の四月に国家公安委員会はこの方を警視正に任命しているようです。そのときは今御指摘の事実は把握していなかったということですから、今から考えると私はまことに遺憾なことだと思います。

 マスコミの報道その他いろいろございますので、ちょっと正確を期したいと思いますが、今おっしゃったのは、車を交換したということは一面の事実です。しかし、車を交換して、正確に言いますと、自己所有の昭和六十三年型のローレルを引き渡して、平成六年型の二千ccのクラウンを引き取って、同時に五十万円の金を相手に渡しているわけですね。中古車販売会社その他についてもいろいろ調べさせました。取引としては利益を得たとかというような取引ではないだろうという答えは、私、とっております。

 しかし、本人が、少なくとも交通その他でいろいろ関連のある、取り締まりの対象になるであろう会社のところからこういう行為をするということは、やってはならないことです。

 今、国家公務員法上の調査とそれから刑法上の捜査をやっておりますが、国家公安委員会としては、この前話を聞いたときに、それ以外にも特に週刊誌種でいろいろなあることないこと報道されています、しかし、その中で多数の奈良県警の人が当該会社に就職をしているという記事がある、これはどうなんだという議論がありました。警察が紹介した人はございませんという答えをしたので、これはいかぬと私は思いました。

 というのは、そういう警察が紹介したという服務上の観点でこのことを取り上げるのではなくて、実は、東京から行っている何人かの幹部と地方の大部分の職員の中の幹部と、全く違うヒエラルキーが二つあるのじゃないか、そして後の方のヒエラルキーと当該会社との関係がどうなっているのかを、東京から行った連中は、県警本部が紹介してないとかしているとかというような形で、把握してないということは、これは大問題だぞと。

 したがって、旧内務省型の警察はそれなりの欠点がたくさんありました。特に、政党政治家がいろいろな政党の意図をもって警察を指導するということに対する反省とか、地方自治に対する中央警察の介入とか、いろいろな反省がありますが、同時に、こういう事態が起こると国家公安委員会としてはまことにまだるっこしいシステムになってしまうのですね、今のシステムは。今のシステムを最大限使って、警察庁長官に、奈良県警と奈良国家公安委員会にお願いをして、捜査と調査を引き続き継続をして、それがすべて終わった段階でしかるべき報告を国家公安委員会にしてもらいたい、それに伴って国家公安委員会としてはしかるべき判断をするということを申し渡してあります。

井上(和)委員 時間がないので、一問だけ最後にお願いいたします。

 長勢副大臣にきょう来ていただいているので、私も警察の監察官からいろいろお話を聞いたのですけれども、警察を相手にしたらお話にならないということがわかったので、検察の方、ぜひ、こういう問題が起きたら迅速に取り扱うというふうにしていただきたいのですが、いかがですか。

長勢副大臣 御案内のとおり、検察当局は常に厳正公平、不偏不党の立場から、刑事事件として取り上げるべきものがあれば所要の捜査を遂げ、適正に対処しておるというふうに承知をいたしております。今御指摘の事件も、当然そういう姿勢で臨んでおるわけでございますが、具体的な案件でございますので、私からこれ以上のお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

井上(和)委員 終わります。

横路委員長 佐藤剛男君。

佐藤(剛)委員 自民党の佐藤剛男でございます。本日は、官房長官、お忙しい中御出席でございますので、まず最初に、この国会、開会せられまして、予算委員会を中心としていわゆる報償費流用問題というのがいろいろ議論せられ、私も聞いておりました。私自身、役人生活二十六年のうち六年間は外務省の禄をいただいておりましたので、関心を持っていたものでございます。

 そこで、この内閣委員会というのは、非常に権威のある、今までの経済企画庁長官の消費者問題特別委員会とか昔の物特とか、各委員会が一緒になったところでございますので、この機会に私は、官房長官から国民に対する内閣としてのメッセージといいますか、いろいろな答弁を聞いておりますが、それについて明確にお話というかメッセージをお聞きしたい。要するに、政府として今回の不祥事を受けまして国民の理解を得るためにいかなる対応をこれから行われるのか、国民みんなそれを見ているわけでありますから、それについて内閣の官房長官としての重い御発言をいただきたい。

福田国務大臣 ただいまの委員の御指摘に対しまして、以下申し述べさせていただきます。

 歴代内閣総理大臣の外国出張経費に関して国民の信頼を裏切る不祥事が起きたことは極めて遺憾であり、この事態を厳粛に受けとめ、国民の皆様に改めて深くおわびを申し上げます。

 今回の詐欺事件の対象となった総理外国訪問の際に生ずる宿泊費差額につきましては、在外公館を擁し、現地の実情に精通している外務省と内閣官房とが役割分担するシステムのもとで、内閣官房の報償費から支出していたものでございます。長年続けられましたこのシステムのもとで、結果的には元室長の不正を許してしまったということでございます。今後、内閣官房として、総理の外国訪問を円滑に進めるための内閣官房と外務省との適切な役割分担を再構築し、再発防止に万全を期する考えでございます。

 また、これからの捜査の進展を見ながら、明らかになった被害額については内閣官房として損害賠償を求めてまいる考えでありますと同時に、内閣官房としてのこの報償費に対する考え方、方法を再検討させていただきたい、このように思っております。内閣官房の報償費は、内政、外交を円滑かつ効果的に推進するため、取扱責任者のその都度の判断で機動的に使用する経費であり、国政の運営上不可欠のものでございます。この際、点検を行った上で、より厳正かつ効果的な運用に努め、国民の御理解を得たいと考えております。

 いずれにせよ、報償費という具体的な使途を明らかにすることが適当でない経費でございますので、それだけに責任者である官房長官の責任は重いと考えており、報償費の厳正な使用に今後一層十分注意を用いてまいりたいと思っております。

佐藤(剛)委員 ただいまの福田官房長官の確たる御回答を賜りまして、私は非常にアプリシエートします。高く評価いたします。ありがとうございました。お忙しいですから、どうぞ。

 次に、麻生大臣に御質問させていただきます。御苦労さまでございます。

 私の最も尊敬している政治家というのをアンケートに書くときには、吉田茂と私は書きます。日本国を今日のようにいたした大政治家でありまして、ここでお世辞を言うわけではございませんが、隔世遺伝の遺伝子をお持ちの立派な大臣が、しかも語学におきまして、海外、アメリカで磨きをかけられている大臣が、総理と一緒に行かれて、先ほど来同僚議員の質問を聞いておりましたが、そういうインフォーマルなところでいろいろな意見が出るんですね。そこで本音が出るんですね。公式の、ジョイントコミュニケでは、両国の重要な点は、私もガットの議長をやったりしておりましたけれども、発言しないのです。みんなひそかに、インオフィシャルとかインフォーマルとか言いながら、実際にフォーマルでやっていたりするのが現状であります。

 私は、この日米の共同声明、仮訳も拝見いたしました。そしてその中で、それに関連して、アメリカの報道官、スポークスマンだろうと思いますが、記者会見で彼がはっきりとしゃべっています。別に期間を限って不良債権解決をやると言ったわけではないと。しかし、コミットメントという言葉を使っていますね。ウイ アプリシエート ザ コミットメント ウイッチ ワズ メイトというふうな言い方で、日米の両国間においてこの不良債権問題について、簡単に言えば、民間でいえば債務超過問題ですね、銀行の方でいえば不良債権、こういう問題についてコミットメントをしたということを記者会見で言っております。

 私は、それは非常に重要なことだと思うのですね。そこら辺のことは、恐らく私は、麻生大臣等のいろいろな、バックグラウンドでの会合とかお話とか会話とか、そういうような中からまた生まれてきているのだろうと思いますが、その問題がアドレスされたということ、言及されたことは非常に評価します。

 そこで、私はちょっと気になった部分があるのです。まず一つは、英語で、プライムミニスター・モリが、再度触れるとして、つまりリイタレーテッドというパラグラフがあるのですが、そのときに、コーポレーティブデット、つまり会社でいえば債務ですね、それから、アンド ノンパフォーマンスローンズ、ノンパフォーマンスローンズについて言った。普通はバッドローンと言うのですね。

 だけれども、この意味はどういう意味なのか。非常に範囲が広いのか。私が心配しているのは、例えば分類一、二、三、四の中の四とか三とかだけじゃなくて、第二分類まで含んでいるような話なのかどうか。つまり、ノンパフォーマンスということは利益のないローンだという、私の英語の知識ではそんなものなんですが、そこら辺についてのまず御見解をお聞きしたい。

麻生国務大臣 多分、普通だったらそっちの方もバッドデットで終わっちゃうのだと思うのですが、ノンパフォーマンスローンズという言葉が使われていたのは、多分、その前にコーポレートデットという言葉が使われたので、デットが二つつくのがちょっと何となくと思って、ノンパフォーマンスローンズという言葉を使ったのかなと、その部分を読んだときにはそう思いました。

 その程度の話で、基本的には、日本の共同声明でも、企業債務と不良債権という訳になっている。英訳か和訳かは別にして、企業債務と不良債権という訳になっていると思いますので、そういう意味で、ノンパフォーマンスローンズの意味は余り深く考えられなくて、多分その前のデットと二つ使いたくなかったのでそういう表現になったのだ、私の理解ではそういう理解をいたしております。

佐藤(剛)委員 英語の達人の大臣のお話ですから、私もそういう考え方があると思いますが、これは、書いた外務省にもきちんと確認を求めてやっておいていただきたい。

麻生国務大臣 確認をとられると困るので、ノンパフォーマンスじゃなくて、ノンパフォーミングデットです。どうも失礼しました。

佐藤(剛)委員 済みませんでした。ノンパフォーミングですね。

 それから次に、そのときの共同声明の中で、一番最初のパラグラフ、お経の次に出てくるのが、両首脳は、日本と米国が合わせて世界経済の約四〇%を占めることに留意すると。僕は、四〇%としょっちゅう言っていたのですよ。それは、ある時期には世界のGDPのうち日本が一七%だった、アメリカが二三%、EUも大体二三%だった、こう言っていた。それで、私の試算ですが、世界のGDPを合計しますと、三十兆ドルと見ています。それで、その中でアメリカが二七%を占め、日本が一三%を占める。簡単に言えば、私は、アメリカが八・三兆ドル、日本が三・八兆ドル、EUがやはり八・三兆ドルぐらいなのじゃないかと思うのですが、そこで、この四〇%の根拠は、実は僕はなぜその問題を言うかというと、世界の中に通用されているのが、OECD、これは昔の経済企画庁が常に数字を届けていたわけですね。それから世銀の統計というのがあるのですね。

 それで、内閣府に聞きますが、世銀に対して何兆ドルで報告しているのですか。それから、OECDに対して幾らで出しているのですか。

麻生国務大臣 これは、世界銀行にもOECDにも皆同じ数字で、円で渡しておりますので、世界銀行とOECDとの間の数字に少々の誤差が出るのは、それに掛けますところのドルの交換レートに違いが出てくるためだ、私どもはさように理解をいたしております。

佐藤(剛)委員 私もそういうふうに理解していたのですが、どうも日本のGDPは、ずっと減少してきているのじゃないか、下がってきているのじゃないか。

 それで、日本のGDPの暦年を調べますと、二〇〇〇年というのが五百十二兆ちょっと、約五百十三兆円。それで、ここ五年間のところ、一九九七年、これは五百二十二兆ですよ。だから、約十兆近く減っているのですね。それから、僕が先ほど言いましたように、四〇%のときというのは――この四〇%というのは世銀の統計を見てやっているのだろうと思う。違いますか、大臣。

麻生国務大臣 先ほど言われましたワールド・ディベロプメント・インディケーターズというものの計算で、九八年、日本のシェアは一三・四、アメリカのシェアは二九・二、合わせて四二・六。世銀のものです。

佐藤(剛)委員 ちょっとOECDの二〇〇〇年のものの数字を、ドルで結構ですが、おっしゃってくださいますか。通告してありますから、わかるはずなんです。

麻生国務大臣 円でしかありませんので、ちょっと済みません。五百十五兆八千三百四十八億、九八年です。それで九九年、五百……(佐藤(剛)委員「いや、ドルですよ」と呼ぶ)ちょっとそれがないのです。私ども、円で出したものしかありません。済みません。これは円でしか持っておりませんので、円でしかありません。

佐藤(剛)委員 これ以上入りませんが、私が申し上げたいと思っているのは、それは円を百七円で計算するか、百二十円で計算するか、百三十円で計算するかによって違うのですが、どうも見ていると、IMF――これは詰めませんよ。しかし、僕は通告しているのですから、それをやるのは、GDPがどのぐらいあるかというのは、私は従来の経済企画庁、今度は内閣府のまた重要な仕事だと思いますから、その点について、世銀、OECD、これに対して発行しているものはきちんとあれを出してもらいたい。以上です。

 それで、次に本論に入ります。

 私は、今日本の経済というのはどういう状況になっているかといいますと、抗生物質の効かない肺炎になっていると思っております。抗生物質というのは何なのかというと、今までは財政出動とそれからゼロ金利の金融政策であったわけであります。なぜ効かないのか。効くと思って名医がやっていた。役人がやり、日銀のあれがやり、エコノミストがやっていた。当たらなかった。それから、理論があった。経済理論は、ケインジアンがあった、あるいはマネタリストの理論があった。これは皆単年のフローですよ、簡単に言いますと。ストックの、長年のやった、十年のものについての経済理論というのは世界でないのです。なぜなのかというと、日本はあの一九九〇年代のときに、土地が全体の評価で約二千五百兆近い、二千四百兆円台あったというのですね。それで、それが今、お聞きしてもいいのですが、数字は千六百兆円。それから株が、当時千二百兆円だった。それが半分になっていますね。

 つまり、歴史的にいいますと、関東大震災のときの損失はGDPの何分の一ですよ。それから、第二次大戦で日本が満鉄だの向こうに工場を置いてきたり自分の個人資産を置いてきた。そのときのGDPが、GDPの二倍にはいっていないのですが、大インパクトを受けたわけです。ですから、GDPが、先ほど申し上げた、今のところで五百十兆としますよ。一番多かったのが五百二十兆、今十兆円下がっているのですから、そうすると、それに比べて約二千四百兆が千六百兆になった。八百兆、まあ僕は土地の関係について九百兆ないし一千兆ぐらい飛んで失っていると思いますが、それから株が半分飛んでいった。

 そうしますと、今千二百兆から千三百兆円、いわゆる個人金融資産と同じようなもののバランスシート、BSショックを受けている。ここのところに、世界全体がやったことがない、日本も経験したことがない、これをケインジアンかだれかがやっているが、根本のカルテができていない。肺炎だからですね。抗生物質が効かないものについて薬をやっている。時々輸血をやっている、点滴をやっている、モルヒネをくっつけている。いろいろそういうことをやっているのが全然効かない。時々調子がよくなる。

 しかし、根本的なことについては何なのかというのが、やっと日米の中で出てきたコミットメントなんです。簡単に言えば、これがノンパフォーミングローンズであり、片っ方のコーポラティブデットなのです。そういう民間のデットというのは今どれだけのものがあるかということを、私の書くあれですけれども、金を借りている量を見ますと、四百三十四兆円ぐらい銀行から金を借りていますよ。

 それで、特に今債務超過になっている企業を見ますと、非製造業、つまり百貨店とか流通、これが債務超過。かつて、八〇年代の倍ですよ。これをこれから埋めていこうというのは大変です。いわゆる御三家、不動産、建物、それからゼネコン関係を言います。この三つの問題について今治療をしないと、左は肺、これは抗生物質が効かない。それから片っ方の部分は、第一回目の心筋梗塞というのは一九九五年に受けた。これは御承知のように、兵庫銀行を中心とするああいう問題で、大丈夫かななんと思ってたかをくくっていた。しかし、軽い心筋梗塞、第一回目が出た。

 それから第二回目は、いわゆる三洋証券のものを中心とするデフォルトであり、名前は悪いですが、いわゆる山一証券、北海道拓殖、山拓ショックですね。要するに梗塞を受けているのですよ。それで、そのときに、日本の政治の方が中心になって、優先株をやろう、公的資本をやろうとか、住専のあれを超えて、みんなが、あのときストを起こして座った野党もおりましたが、百八十度転回してやった。

 それで抜けているのは、これからやっていかなきゃいけないのは産業政策なんです。もっとわかりやすく言いますと、どういうことかというと、大臣御存じのように、日本は、バミューダ海峡。魔のバミューダというのがいろいろ小説にあります。魔のバミューダ海峡というのは、そこに行きますと、バミューダ、マイアミ、それからプエルトリコのサンファン、何か知らないけれども、船が行きますと船が沈んでしまう。飛行機が飛ぶと落ちてしまう。その原因についていろいろ言われておりますが、悪魔の三角形ということで、魔のバミューダ海峡とか海難とか、この小説が随分出ています。

 それで、この三つの中の、日本の中の経済というのは、片っ方が、今言った千三百兆円がバランスシートで飛んでいっている。これが一番頂点にある。これはもう全くのデフレ。資産デフレというのをケインジアンのようにフローのものでやっているから間違い。ストックデフレなのです。ストックというのは積み重なったストックですよ。

 それから第二が、お配りしましたけれども、BIS基準、このバーゼルの基準のために日本はとんでもないことをやられているのです。一九八八年、私がスイスにいたときに、これはスイスのバーゼルというところがあるのです、国際決済銀行の本部。そのときは日本が一番調子がよかった。それで、当時ダウが三万八千円だった。五万円になるのではないかと予想されていた。そのときバーゼルでは、国際的な現地法人、海外支店をやるものは、これはしっかりときちんとしたものをやらなければいかぬ、これは、アメリカを中心として日本いじめを始めようとしていた。アメリカの知的集団がヨーロッパと組んで動き出していた。

 ところが、のこのこ出かけていった大蔵官僚がいたのです。これは、どうかお願いしますよと。補完的項目のティア2のところ、土地と書いてあるのは、私、今土地の再評価に関する法律というのを議員立法でやっていますので、これにも使っているのですが、一のところ、その他有価証券の評価益損の四五%、これを入れ込んじゃった。

 その結果、今は一万三千円ですが、二万円で買った人たちは七千円掛ける持ち株数掛ける四五%になります。これが下がってくると、自己資本比率の八%のものが百分の六だ、百分の七とかで、これは金融庁の検査で言われれば、動かなくなっちゃう。ここに株の根本問題が出てきた。株問題が何なのかというのはそこなんです。

 それで、私の提案なんですが、アメリカが株本位主義でずっと今までやってきた。だけれども今度は、アメリカはもう株ショックでこんなになってきているのですから、私はアメリカの株の今後の状況というのもよくないと見ていますから、日本は資産デフレ、向こうは簡単に言えば株本位のインフレであるから、アメリカと一緒に組んで、ばかな大蔵官僚が出かけていって、官僚の名前は言いませんけれども、私は戦後の日本の役人の中で最もばかなやつだと思うが、これのためにやられているわけだから、この際、この四五%を日米で取ったらどうですか。

 それから、八%、これも何で八%で決まったんだと私が聞いたらば、そのバーゼルの会議のところで、窓際に雲が見えた、雲が八という数字に見えたらしい、だから八%とした。ふざけた話であって、これがあるためにどれだけ我々は貸し渋りを初め苦労しているか。

 僕らは分母を小さくして分子を大きくするための対策をやってきているのです。分子を大きくするためというのは、優先株の注入というのはそれなんです。分母を小さくするというのは、五千万円の無担保保証をやったでしょう。国債だとゼロなんだけれども、金を貸すと一〇〇%分母がふえちゃう。それならば、中小公庫融資ならば、無担保ならこれはゼロだ。こういう対策でやってきたわけなんで、自己資本比率を、今後は、二〇〇四年のとき、百分の二十五にしようなんと言っているのですから。これは歴史に残るばかの官僚で、国がこのためにふうふう振り回されていた。

 今の株の問題だってこの問題でしょう。私なんというのは、おやじやおじいさんから株に手を出すなと言われたけれども、この株の問題をやらないとどうしようもない。大臣の御見解をお問いします。

麻生国務大臣 私らも、閣僚やら代議士は株をやっちゃいかぬと言いながら、質問は全部株をどうかしろと言うのですから、これぐらい矛盾した話は、いつも何を言っとるんだろうかなと思いながら、いつも質問に答えながらそう思うときがよくあるのですが、正直なところです。

 今いろいろ御指摘があっておりました中で、このBIS規定によるバンク・フォー・インターナショナル・セツルメントというこの規定が問題になったというのは、実感としては私もそうです。

 これは、大体人間というのは、中沢先生にお金を貸したら必ず返してくれるという評判さえあれば、全然資産がなくたってお金は借りられるわけです。あいつにやったら金が返ってこぬぞというやつは、幾ら資産を持ったって金は絶対に貸してくれぬというものですから、人間の信用というのはそんなものだ、私はそう思っていたのですが、バーゼルでのこの会議のときに、やはりこれは基本的には、いわゆる邦銀と言われた日本の銀行は、世界で当時ベストテンのうち八つぐらい日本の銀行だったと思いますが、これは欧米にとっては甚だ耐えがたい。それで、どこか弱みがないかと思って見つけたのが、自己資本比率が極めて少ないと。給料が安くてもどんどん貸しているからどんどんシェアが伸びてくるというところに目をつけて、この八%というのを多分やられたんだと。私も、それは情況証拠からそう思います。

 確証があるわけではありませんから、これは情況証拠でそうやられたんだろうなと思って、そのときの大蔵省がそれが見えていたか見えていないかはちょっと別の問題として、個人的な見解ですので、そこのところは私は何ともそれ以上は申し上げられないのですが、そこまでやられたなという感じは私も正直します。

 少なくとも、今の八%の中で、これは今八%は皆しようとしているのですが、基本的に貸し渋りやら何やらのお話と、ちょっと出ましたが、一つだけ誤解のないように申し上げておきますが、この八%を今ほとんど大銀行は一二%ぐらいにしていると思います。現実問題として、八%を超えていると思うのです。ところが、国際決済をする必要もないと言うと、差別用語になるとちょっとぐあいが悪いけれども、下の銀行までもう物すごく高くするわけですよ、格好よくしようと思って。それは基本的には貸す原資が減るということを意味しますので、そういった意味では、おたくは別にそんなことをする必要ないんだから四でもいいんじゃないのという話を正直できるかといえば、これが行政の過剰介入と言われると、ちょっとまた難しいところなんだとは思います。

 ただし、自己資本比率に関しては、今はもう国際決済銀行のところに関しましてはほとんどの銀行がクリアをしておりますが、今、株が下がったことによって、一番の問題は、株が高いことによってそれで不良債権の償却の原資になっていた部分が、がたっと安くなったために原資を失いつつあるというところがこの株価下落の最大の影響が出ている、私どもはそう思っております。

 この株の問題につきまして、おかげさまで日米会談以後、また日銀の決定以後、株はいきなり九百十二円上げ、三百円下げ、次にまたおととい六百円上がり、きのう二百円だ、大体一万三千八百幾らまで上がってきていると思いますので、そういった意味では一応の効果が出てきているとは思いますけれども、少なくとも、これに例の、御存じのように昨年の四月の二十四日、前の日経三十銘柄の組みかえというのがなければ今よりさらに三千六百六十円ぐらい高かったと思いますので、そういった意味では随分何か戻ってきている。従来でしたら一万六千円ぐらいにはもう既になっている数字なんだと思います。

 そういった意味では少し効果があったとはいえ、この問題に関しましては、今後とも株価というのが影響を与えるものでもありますので、土地対策、同時に株、この二つは今後の景気対策に資するところが大きいので、私ども注意をしていかねばならぬと思っております。なかんずく、やはり株と土地が上がらぬと景気がよくなったなという気分が乗ってこないところがありますので、その点ではこの二つは大事にしていきたいと思っております。

佐藤(剛)委員 ですから、バミューダの魔の三角形のところの一つがBIS基準ということで、株式の含み損の分岐点というのが一万三千円ぐらい。いいところは一万一千円でもおさまるというところもありますが、そういう面で、日本の資本主義というのは持ち合いをやっておるわけですから、そういう意味でそこが問題なわけであります。つまり、日本型の資本主義社会が今や崩壊するような状況にあるとの危機意識を持っていますので、それについて産業再編成政策をやらなきゃならぬ。それはぜひ御検討願いたいと思います。

 一つの検討は、特定の業種、先ほども申し上げたような非製造業、流通、それから御三家と称するもの、つまり債務超過の大きい業種については、これは大臣のところで、格別な卓越性を持っておる大臣で実力ナンバーワンなんですから、ひとつ本部でもきちんとつくっていただきたい。これは国土交通省とか経済産業省とか、各省にまたがっちゃうんです。百貨店とか流通業というのは経済産業省でいく。建設不動産業は国土交通省になる。そこで、そこのところできちんと大きくやっていく。

 それで、商法の減資手続の特例というのをやらなきゃいかぬのです。減資するためにはどうしても商法の特例法みたいなものをつくらなきゃならぬ。そして、商法の特例で、減資の債権者手続なんて一々要らないような法律をつくる。そうしてから、債務超過が起きている企業で救ってやろうというもの。だめなものはだめでもいいんですよ。もう破産法でやるのは、それはいい。そうじゃない、救ってやるというもの。これはどういうふうなのかというと、民事再生法の六百八十二件の申請が来ているんですよ、ことしの一月から。それから、特定調停法が十九万件ですよ。皆が司法に球を投げているんですよ。産業政策がないんですよ。十九万件をみんな数人の裁判官がやっている。六百件の民事再生法、そごうがやったものですね、やっている。どうしてできますか。

 だから、それならば裁判所の定員だの何だのを増大してやっていく体制をつくる、そういうふうなことを三権分立だといってもやっていかなければならないし、そういう意味で、私は、大臣が中心となって、この産業再生の再編成、営業譲渡だ、要するに銀行だの何だので優先株をやった、何もやらなかったものをやり続けていただきたいと思います。

 時間でございますので、お願い申し上げまして、終わります。

横路委員長 阪上善秀君。

阪上委員 自由民主党の阪上善秀です。

 私は、最近、我が国はもとより世界的にも相当深刻な問題となっております薬物の乱用問題について、伊吹国家公安委員長初め政府に対し、質問をいたしてまいります。

 御承知のように、現在、我が国は戦後三回目の覚せい剤乱用期の到来という非常に重大な局面に立たされておる状況であります。すなわち、平成十一年の一年間における覚せい剤の押収量は約二トンに迫る勢いであり、過去最高の押収量となっております。平成六年から平成十年までの五年間に押収された総合計は約一・八トンですから、これと比べますと、その前の五年間の押収量を一年間で超えるという、まさに記録的な大量押収量となっておるのであります。

 このような大量押収となった背景には、今までの中国ルートに加え、北朝鮮からの密輸ルートが新たに浮上しておるのではないかと言われておるのであります。そして、最近の密輸事犯の大きな特徴として、犯罪手口の巧妙化や事件の大型化、そして国際的な薬物犯罪組織の関与などが挙げられるのではないかと思っておるところでございます。

 そこで、伊吹国家公安委員長にお伺いいたしますが、最近における薬物事犯の現状とその特徴についてお願いをいたします。

黒澤政府参考人 薬物の情勢でございますけれども、ただいま委員御指摘のとおり、大変厳しい情勢にございます。まさに、薬物犯罪組織による覚せい剤の大量密輸入、無差別販売などにより乱用者が大変心配されることでございますけれども、中高生にまで広がっている、あるいは検挙される被疑者の半分以上が初心者というようなことで、大変すそ野の広がり、こういった特徴がございます。

 そしてまた、押収量につきましては先ほど委員が御指摘になられたとおりでございますけれども、このような押収量にもかかわりませず、末端密売価格というものがそう低下をいたしていないといいますか、変動が余り見られません。したがいまして、これをしのぐ相当量の密輸とそれを支える大きな需要が存在しているものと推測されるわけでございます。

 このようなことから、若者も、以前と比べますと、特に第二次乱用期、昭和五十年代の後半でございますけれども、このときも青少年も問題にはなったわけでございますが、その当時と比べますと、現在値段が変わらないといいましても、子供たちも手の出しやすい、そういうような値段でございまして、青少年の薬物汚染というのが大変心配されるわけでございます。

 かような情勢でございまして、さらにまた、冒頭に申し上げました組織犯罪の観点から申し上げますと、暴力団が深くかかわっておるというのが特徴でございます。そしてまた、密売には例えばイラン人が街頭等で密売をしておる、さらにまたインターネット等を利用して薬物が売買されておる、こんな特徴もございまして、これまた青少年ばかりにこだわるようでございますけれども、こういったような情勢が大変薬物を青少年も手に入れやすくなっておる、こういうような状況でございまして、今申し上げましたようなことが特徴として挙げられようかと思います。

 いずれにしましても大変厳しい薬物情勢である、このように認識をいたしておるところでございます。

阪上委員 ただいま御答弁がございましたように、最近における薬物犯罪は相当深刻な状況にあると私も認識をいたしております。

 我が国においては、依然として暴力団が薬物の密輸、密売の中核的な存在となっておることも確かでありますし、薬物が依然として暴力団の資金源として相当なウエートを占めておる状況であります。また最近では、薬物を取り締まる側の警察官による薬物犯罪事件が発生したり、青少年による薬物乱用の増加傾向が見られるなど、薬物乱用が非常に深刻化しており、我が国の安全な社会生活に対する大きな脅威となってきております。したがいまして、まさに国を挙げて薬物撲滅運動を展開し、薬物汚染のない環境づくりを進めることは、我が国の将来にとって極めて重要な課題であると思っております。

 ところが、このような国を挙げて薬物汚染を追放しなければならない危機的状況にあるとき、過日、国会議員の公設第一秘書が覚せい剤所持の疑いで逮捕されるという事件が起きました。

 三月十五日付の産経新聞の報道によりますと、民主党の阿久津幸彦衆議院議員の公設第一秘書が都内西麻布の路上を運転中、ウインカーの点滅が異常であったことから、巡回中の警察官から職務質問を受けました。そして、様子がおかしかったため警察官から所持品の提示を求められたところ、ズボンのポケットから覚せい剤の入った紙包みが出てきたというのであります。このため、同公設秘書は覚せい剤取締法違反の現行犯で逮捕されたという記事であります。私は、薬物汚染がついに国会議員関係者にまで及んだのかという、まことに遺憾な気持ちでいっぱいでございます。

 そして、同じ産経新聞によりますと、阿久津議員の所属する民主党執行部は、同議員に対し監督責任までは問わない方針だと報道されております。常日ごろから与党、総理に対して厳しい態度をとっておる民主党が、所属議員の公設秘書の犯罪については身内に甘いと言われても仕方のない措置をされたことに、私はしっくりいかない気持ちでいっぱいでございます。

 そこで、警察庁にお伺いいたしますが、この公設秘書が覚せい剤取締法違反で逮捕をされるに至った経緯及びその捜査状況についてお伺いをいたします。

黒澤政府参考人 お尋ねの事案でございますけれども、本年三月十四日の夜でございます。東京都内におきまして、警視庁の地域の警察官が不審な運転をする車両に停止を求めまして、職務質問をいたしたわけでございます。その結果、運転者のズボンのポケット内から、約〇・二グラムでございますけれども、覚せい剤が発見をされまして、覚せい剤所持の現行犯人として逮捕したわけでございます。この被疑者が、ただいま委員御指摘の阿久津衆議院議員の公設第一秘書であると承知をいたしております。

 現在、警視庁におきまして、動機でありますとか覚せい剤の入手先等につきまして、真相解明のために鋭意捜査中でございます。

阪上委員 次に、薬物対策についての政府の取り組みについてお伺いをいたします。

 現在、政府におかれましては、平成十年五月、内閣総理大臣を本部長とする薬物乱用対策推進本部が策定されました平成十四年までの五年間の薬物乱用防止五カ年戦略に基づいて、関係行政機関などと連携のもとに、強力に薬物対策に取り組んでこられると承知をいたしておりますが、その進捗状況は今どのようになっておるのですか。また、平成十四年までのできるだけ早い時期に第三次覚せい剤乱用期を終息させることができる見込みであるとお考えかどうか、あわせてお伺いをいたします。

黒澤政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたとおり、薬物情勢は大変厳しい情勢と認識をいたしております。

 委員お尋ねの五カ年戦略でございますが、今まさに折り返し点でございます。毎年レビューをいたしまして、いつも五月の時期でございますけれども、また次の一年について計画を立てまして、その計画にのっとって各種の施策を推進していく、また取り締まりを推進していく、こういう状況でございます。

 いろいろな目標があるわけでございますが、大きな目標として、とにかくこの厳しい第三次乱用期を終息させる。大きな目標でございますが、今後とも、関係機関あるいは世界の各国の取り締まり機関等とも緊密な連携をとりまして、何とか目標を達成すべく最善の努力をいたしたいと考えておるところでございます。

阪上委員 次に、警察の取り組みについてお伺いをいたします。

 言うまでもなく、警察の責務は、警察法に規定されておるように、国民の生命、身体、財産を保護し、公共の安全と秩序の維持に当たることであります。これを薬物に関して言えば、薬物乱用のない健全な社会環境をつくり、国民が安心して生活できるようにすることであると思います。

 そのための警察の取り組みとしては、薬物の流入を水際で阻止するなど薬物の供給の遮断という面からの対策、薬物の需要の断絶という面からの対策、この両面からの対策を総合的に進めることが重要であると思います。

 もちろん、薬物犯罪が国際化しておりますところから、薬物流入の入り口である陸海空のそれぞれの場所において、断固、薬物の流入を阻止する必要があります。このため、外国の取り締まり機関や海上保安庁、税関、入国管理局等の国内関係機関との連携強化を図ることが重要であると思います。

 そこで、警察の取り組みとして、薬物の供給の遮断対策と需要の根絶対策はどのようになされておるのか、伊吹国家公安委員長にお伺いをいたします。

伊吹国務大臣 ただいま先生と参考人の御質疑を伺っておりまして、まず基本的に、薬物問題というのは、それだけが犯罪ではなくて、実は、二次犯罪を誘発する大変大きな社会問題でございますので、ただいまお話がございましたような薬物乱用防止の五カ年戦略にのっとって、政府としては、関係省庁、水際それから厚生労働省その他あらゆるところと連携をしながら取り締まりは一生懸命やりたいと思っておりますが、やはり一番大切なことは、捕らえるよりも使わないということだと思います。そういう意味では、地域のキャンペーン、教育、防犯協会の活用、いろいろな面があると思います。

 先ほど御質問の中にございまして、警察の職員の中にもこれを使って逮捕された人間がおるということを心からおわびを申し上げ、国家公安委員会としては、管下警察に、少なくとも自分が取り締まっているものについてこのようなことのないように、必ず各都道府県公安委員会から伝達をしてもらいたいということを先般お願いしたところであります。

 国会議員の秘書等のお話もございましたが、いずれにしろ、国民全体を安心させるための施策の立案とか執行に携わっている者は、後ろ指を指されないようにできるだけ身を律して、また、使っている、私たちで言えば警察職員の管理について万全を期してまいりたいと思っております。

阪上委員 最後に、御承知のように核兵器については、我が国は、いわゆる非核三原則というものを国是として、世界に向け、宣言をいたしておるところであります。私は、薬物についてもこの三原則、すなわち、つくらず、持たず、持ち込ませずという三原則が適用されてしかるべきではないかと考えておるところでございます。このうち特に持ち込ませずということ、すなわち水際作戦が薬物を根絶する上で非常に重要であると思います。

 最近の薬物犯罪が、夜間、人けのない海岸から上陸するなどの方法で行われたり、またインターネットを用いた薬物取引も行われるなど、その手口が相当巧妙化いたしております。薬物の流入は、陸海空、それぞれの場所において考えられますが、そのそれぞれの入り口において日夜取り締まりをなされておられます警察を初め海上保安庁、税関、入国管理局などの関係機関におかれましては、ぜひともこれら薬物を持ち込ませないための水際作戦を強力に行い、断固薬物の我が国への流入を阻止するよう御要望申し上げ、また、より一層の御尽力を期待し、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。

横路委員長 平沢勝栄君。

平沢委員 自民党の平沢勝栄でございます。

 伊吹委員長はこの後御予定がおありということでございまして、最初に伊吹委員長に一問だけ御質問させていただきたいと思うんですけれども、例の外務省の機密費の問題でございます。

 御案内のとおり、機密費が全くいいかげんに使われていたということで、私も毎日地元でいろいろな方とお会いしますけれども、この問題に対する国民の皆さんの怒りというのは大変に大きなものがありまして、この問題をきちんとしないと、国民の皆さんの納税意欲にもかかわってきますし、行政不信、そして政治不信にもつながるわけでございまして、ぜひともこの辺はきちんとしてもらいたいなと思っております。

 そういう中で、三月の十日ですか、警視庁は元室長を詐欺容疑で逮捕した。私も長年捜査をやってきたからよくわかりますけれども、大変に御苦労の多い捜査だったと思います。したがいまして、捜査員の労を多としたいと思います。

 そこで、今回の捜査で一つ解せないのは、逮捕時に元室長の自宅が捜索されているわけですけれども、外務省本省の支援室という部屋が捜索されていない。これにつきまして、外務省が任意で全面的な協力の申し出があった、したがって外務省本省の捜索はなかったというふうに聞いております。しかし、外務省というのは果たして被害者なのかどうかという問題もありますし、もともと外務省というのは組織的関与というふうなことも言われていたわけでございまして、そういう中で外務省が全面的に協力しますと言ったからといって、はい、わかりましたというのも、長年捜査をやってきた立場からしたら、どうかなという感じがしないでもございません。

 そこで、委員長にお聞きしたいと思うんですけれども、自宅を捜索して外務省の捜索が行われなかった、どうもこの辺がおかしいんじゃないかという感じがします。そして、今国民の皆さんは、この事件については、松尾元室長の個人犯罪なのか、それとも組織的犯罪なのか、その全容をぜひ解明してもらいたい、そのことを強く警察に期待しているわけでございまして、その辺のことについて、委員長の御所見なり御決意などをちょっとお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 警察実務については、もう平沢先生の方がはるかに私より御造詣が深いわけでございますが、お互いに政治家でございますから、私たちが日常対応していらっしゃる方が額に汗して納税をしたものの使途についてこのようなことが起こっているということは看過すべきことではない、これは私は先生と全く同じ気持ちでございます。

 ただ一つ、いろいろな弊害があったればこそ、旧内務省時代の警察ではなく、国家公安委員会組織を今とっております。私は、政党政治家として、例えばこの党の関係者の捜査をどう、この党の関係者の捜査はどうということがあってはならないので、個別の捜査事案については関与できないという仕組みになっておりますので、今、捜査した方がいい悪いということはちょっと差し控えたいと思いますが、少なくとも、厳密に捜査をして、そして法律、刑事訴訟法にのっとって公判の維持ができるかということをきちっと押さえながら必要な捜査は必ずやる、そして全容を解明して、法に違反した者は必ず検察の御判断を仰ぐということだけはしっかりやれよというのが、実は公安委員会での結論でございました。

平沢委員 ありがとうございました。委員長、御予定があるようでございますので、どうぞ。

 では、次の質問に移らせていただきたいと思うんですけれども、今日本は、いろいろな業界について、それを規制する業法というのがあるわけでございますけれども、その業法の全くない、ループホールといいますか、野放しの業界というのもあるわけでございます。

 その中には、例えば調査業、俗に探偵とか興信所と言われておりますけれども、この調査業というのも全く業法がないわけですから、例えば暴力団が電話一本できょうからビジネスを始めようとすれば、これはできるわけでございます。それから、もう一つの全く野放し、全く自由にできる業界というのがかぎ、錠前業でございまして、この業界もだれでもがすぐできるわけでございます。

 この二つの業界については、全く国民の皆さんに被害とか問題がなければ、それはそれでいいんですけれども、現実には、私の知る限り、相当大きな被害が出ている。にもかかわらず、全く当局の規制というか、業法の制定もなされていないということでございます。それはいかがかなということで、二年前に私、地方行政委員会で質問させていただきまして、警察庁の方から、法制化も含めてこれらについては今後検討してまいりたいという答弁をいただいたわけでございまして、その後の取り組み状況について、ぜひきょう答弁をいただきたいと思うんです。

 まずは調査業についてお伺いしたいと思うんですけれども、電話帳というのがありますね、タウンページというかイエローページ。あれを見ますと、五十ページくらい、もうすごいものです、調査業の広告が出ているんです。依頼する人は、どこに依頼していいかわからないから、そういうところを見て恐らく依頼するんでしょう。ところが、いろいろ聞いてみますと、あそこの電話帳は、もちろんいい業者もいるでしょう。ところが、いいかげんな業者も少なからずあるらしいんです。そこに依頼する。

 そうしますと、全然調査もしないで料金を吹っかけられるとか、あるいはなかなか解約に応じないとか、そういったトラブルが絶えない。二年ほど前で、大体推定で最低百億以上の被害はあるだろうと。しかし、依頼する方も依頼内容を隠したいという心理が働きますから、表に出ない被害もいっぱいあるだろうということが言われているわけでございます。

 したがいまして、この業界というのはいろいろ問題があるということで、諸外国の場合にはほとんどの国で規制が立法等でなされているはずでございます。日本の場合にはまだ何ら規制がされていないわけでございまして、諸外国でほとんどの国で立法がなされている。そして日本では、被害とか問題がなければいいんですけれども、日本はいろいろ被害があるにもかかわらず、今なお立法がなかなか進まない。それはどこに事情があるのか、これについてちょっと警察庁の御所見を聞きたいと思います。

黒澤政府参考人 委員御指摘の調査業でございますが、調査業につきましては、調査依頼者あるいは対象者の秘密を利用した恐喝でありますとか、調査依頼を仮装しました恐喝、詐欺、違法な手段による調査等の犯罪の検挙を見ておるところでございます。また、ずさんな調査を原因とする調査依頼者とのトラブル等の問題が発生しておるものと承知をいたしておるところでございます。

 今、諸外国ほとんど立法がなされておる、なぜ日本ではないのか、こういう御指摘がございましたけれども、調査業に対する法規制がある国々につきまして、私ども今調査研究をいたしておるところでございます。完璧にその趣旨を一つ一つ確認したわけではございませんけれども、当方で行った海外事例の文献調査の結果によりますと、調査業に関する立法例は大変多様でございます。やはり、その国その国の調査業の実態なり価値観といったものが反映された結果であるように思われます。そしてまた、すべての国あるいは国におけるすべての州においてこの種の立法がなされておるというわけではございません。

 私どもといたしましては、さまざまな海外の制度を調査しながら、我が国における調査業の実態でありますとか他の法令との整合等に配慮しつつ、法制定をするとすればどのような法制度が我が国にふさわしいものとして考えられるのか、そういったことについてまさに検討をいたしておるところでございまして、検討を一層続けてまいりたい、かように考えておるところでございます。

平沢委員 聞きたいことは山ほどあるんですけれども、時間がありませんので、次に錠前業について聞きたいと思います。

 先ほど申し上げましたように、錠前業も全く規制がないわけでございまして、錠前業を始めようと思ったらだれでもができるわけでございます。この錠前業の中にはスペアキーをつくる業者も含まれるわけでございますけれども、スペアキーをつくる業者、これはだれでもができるわけでございますけれども、同時にスペアキーを頼む方も、身元も確認されないで自由にスペアキーをつくってもらうことができる。

 ちなみに、アメリカでは、ニューヨークあたりでは、業者についても例えば前科者はできないとかそういったきちんとした規制がありますし、例えばスペアキーをつくるときには、要するに身元確認をきちんとして、その上でつくってもらうというような規制がなされているわけでございまして、そういった規制がないがゆえのいろいろな問題、犯罪も日本では発生しているわけでございますけれども、日本は今なお何ら規制がない。

 それから、ついでに言わせていただきますと、日本は、かぎ以外の道具で錠前をあける、それを教えている学校もあるわけでございまして、そういうところを卒業した生徒というか、そういうところで学んだのが犯罪を犯したという例も少なからずあるわけでございます。簡単に言えば、もちろんすべてがそうじゃないですけれども、泥棒目的で入ってくる人もいるわけでございまして、そういった学校についても全く野放しなわけでございます。

 そして、もっと言えば、かぎ以外のもので錠前をあける、その道具を通信販売等で売っている、これも全く野放しでございまして、そうしたものに関連した犯罪というのも少なからず起こっているわけでございまして、これらが全く野放しというのは国民の感覚からしておかしいんじゃないか。

 今、規制緩和、規制緩和と言われていますけれども、規制緩和は大事ですけれども、これは国民の立場で考えなきゃならない。国民の立場からしたら、先ほどの調査業もそうだけれども、こうした錠前業も、やはり本当に安心した生活をするためにはある程度規制してもらった方が国民にとってもプラスになるんじゃないかなということを考えておりますけれども、これについて警察庁はどういうふうにお考えでしょうか。

黒澤政府参考人 錠前の関係でございますけれども、今、業界の団体がございます。比較的新しい組織でございますけれども、日本ロックセキュリティ協同組合、そしてまた日本ロック工業会、こういった業界の団体がございます。そういった団体で例えば職業倫理を高めるための活動あるいは技能者の育成活動等を行っておる。そういうことにつきまして、この団体と私ども警察庁では、一緒にいろいろな点につきまして検討いたしますとともに指導を行っておるところでございます。

 いろいろ御指摘がございましたけれども、私どもといたしましては、被害実態等の把握に努めますとともに、平成十三年度には広範な海外法制に関する関係団体による調査研究も予定されておると承知いたしておりまして、さらに検討を進めてまいる所存でございます。

平沢委員 このかぎの関係でちょっと付随してお聞きしたいと思うんですけれども、最近、車両の盗難が異常にふえているわけでございまして、正直言って、保険会社は万歳しているわけでございます。

 そういう中でEU諸国では、イモビライザーといいますか、電子式始動ロック、これの装置を車両に義務づけることによって盗難車両が極端に減っているということが言われているわけでございますけれども、日本では、このイモビライザー、盗難よけの装置でございますけれども、こうした装置についてどのように今取り組んでおられるか、それをちょっとお聞かせください。

黒澤政府参考人 お尋ねのイモビライザーシステムの関係でございますけれども、ただいま委員が御指摘になりましたが、EU市内では窃盗被害が減っておる、こういうふうに聞いておるところでございます。

 私どもの取り組みでございますけれども、平成十年以降、キーなしによる盗難が増加いたしておるような情勢がございまして、平成十一年の十二月でございますけれども、警察庁の生活安全局長名で、自動車業界等に対しまして、イモビライザーの普及促進などを呼びかける自動車盗の防止対策について要請を行っておるところでございます。

 現在、自動車業界の自主的な取り組みといたしまして高級車を中心に順次搭載が進められておりまして、現在では十数種の車種にこのイモビライザー搭載が及んでおる、かように承知をいたしております。

平沢委員 時間が来ましたので、お忙しい中、田中長官においでいただきましたので、最後に一言お聞きしたいと思うんです。

 先ほど申し上げました調査業それから錠前業、こういったものは社会のすき間産業、先ほども申し上げましたように、電話一本でだれでもがすぐビジネスができる。国民の立場、ユーザーの立場からすれば、相手がだれかさっぱりわからない。その結果としていろいろなトラブルが、起こっていないならともかく、現実にいろいろ起こっているわけです。

 今回、警察庁は、運転代行業という、これもすき間産業だったんですけれども、新たに業法をつくるということで取り組まれたわけでございますけれども、運転代行業も大切ですけれども、こうしたすき間産業の中で、国民の立場からしていろいろとトラブルが発生をしかねない、要するに安心して頼めるようなそういう業界にしていくために、こうした調査業とかあるいは錠前業についてある程度の規制といいますか業法をつくった方がいいんじゃないか。

 ですから、その辺についてぜひ国民の皆さんの御意見も聞いていただいて、二年前にも検討するということを言われたんですけれども、どうも余り検討が進んでいるようにも思えないんです。その辺、警察庁長官の御決意を最後にお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

田中政府参考人 委員御指摘の調査業及び合いかぎ業の法制化につきましては、警察庁といたしましては、国民の生命、身体及び財産を守る立場から、これらの営業活動にかかわる犯罪の状況あるいは不適正事案の発生状況を踏まえながら、先ほど生活安全局長から申し上げましたとおり、法制化するとすればどのような法制化が可能なのかというようなことも含めまして、具体的な対応方策について引き続き検討してまいりたいと考えております。

平沢委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

横路委員長 午後一時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五十分開議

横路委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。石毛えい子さん。

石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。朝から大変長い時間が続くわけでございますが、よろしくお願いいたします。

 私は、本日は、三月十四日に開催されました経済財政諮問会議におきまして、議員でおられる奥田委員、本間委員から「社会保障改革と経済財政に関する論点メモ」が提出され、いよいよこの経済財政諮問会議におきましても社会保障制度に関する論議が開始されたということを情報として知りました。

 社会保障に関しましては、高齢社会の進行あるいは経済財政状況の困難というようなそうした事態のもとで、この間、年金制度、医療保険制度、さまざまに変更が行われてきて、それが多くの国民に不安とも言えるような状況になり、それが大きな理由となりまして消費不況も起こっていると言っても過言ではない、こういう事態に至っていると私は理解をしております。

 この経済財政諮問会議におきましては、六月にも社会保障に関しまして骨太の方針を提示していくというふうに伺っております。ちょうどスタートの時期かと思いますので、ぜひともきょうの委員会で質問をさせていただきたいと思いました。

 それから、ちょっと長くなって恐縮ですが、実は私は、三月十四日の会議に臨時議員として坂口厚生労働大臣も御出席になられておりましたので、きょう厚生労働大臣にも御出席いただけるものと思って質問を準備いたしましたが、何かシステムが変わってきたというようなことですとか、それから、きょうは厚生労働委員会も開催されておりまして御出席いただくのは御無理ということで、急遽厚生省の皆様には御足労をおかけするということになりましたけれども、御了解をいただきたいというふうに最初に申し上げさせてください。

 それではまず、麻生経済財政国務大臣にお尋ねしたい点でございますけれども、この間、例えば旧社会保障制度審議会が社会保障制度について意見を、昨年のたしか九月でしたでしょうか、まとめておられて、それから十月には社会保障構造の在り方について考える有識者会議の報告が出されております。今回は奥田委員、本間委員によりまして論点メモが出されておりまして、それらを拝見しておりますと、微妙にニュアンスが違っているような感じが私はございます。

 もちろん、会議の性格もございますので、違う点があるということが即問題だと言い切るのは言い過ぎだとも思っておりますし、論点はかなりの部分共通しているのも事実でございますけれども、私が読んだ限りでは、例えば有識者会議の報告は、社会保障制度は、個人の自立、自助努力を基礎とするけれども、国民連帯の中心に位置づけられている、そうしたことが論理として据えられて社会保険についての給付と負担のあり方というような、そういう書き方になっているように私は理解をいたしました。

 今回の諮問会議におきます奥田委員、本間委員の論点メモも、もちろん国民の信頼ですとか安定の確保ということは明記されてはおりますけれども、どちらかといいますとそのウエートのかけ方が、給付と負担のあり方ですとか制度自体の効率性ですとか、そうしたことに論点がスライドしているような感を私は受けまして、もう少し幅広くとらえる必要もあるのではないか、そういう思いをいたしております。

 それで、せっかくの機会でございますので、この経済財政諮問会議におきましては、麻生国務大臣、この社会保障のあり方に関しましても大きな役割を果たされるお立場だと理解しておりますので、ちょうどこの折でございますので、大臣御自身は、社会保障像とでもいいましょうか、そうしたことにどういうお考えをお持ちでいらっしゃるか、それから社会保障を改革していく論点として重視すべき点をどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。総論的なことでございますけれども、お尋ねしたいと思います。

麻生国務大臣 私の場合は石毛先生ほどこの問題にそんなに詳しいわけではありませんので、それはあらかじめ最初にお断りしておきます。

 経済財政諮問会議が考えましたときに、一つの与えられております問題は、いわゆる予算編成のあり方を従来みたいな積み上げ方式から変える。これは何としても、今までのように右肩上がりでずっと経済成長して、それに伴いまして税収も伸びておりますという段階ではそれでも十分可能で、ここまでやられてきたのだとは思いますが、どうやらそうではなくなった段階におきまして、この五十年の間、時代も随分変わっておりますので、その意味では予算の配分の仕方等々もあらかじめ考えてみなければならぬ。

 傍ら、従来から予算配分比率は〇・一%も変えないぐらいずっと来たという硬直している面もありますので、これはどうしても政治でやっていく以外、ほかに方法がないとよく言われながら、なかなかここまでいってこなかったのは事実でありますけれども、財政というものの面から見ましても、税収の面から見ましても、また社会の構造の変化から見ましても、これはどう考えてもいよいよさわらなければいかぬということで、この財政諮問会議で予算をやるということになったのですが、同時に、毎年の予算プラス中長期的なものをということになりましたときに、やはりもう一つ出てまいりましたのは、何といっても社会保障の問題は避けて通れないというのが背景だと思います。

 もっと大きくは、今までは確実に子供が生まれて、高齢者の比率というのは大体そうだったのですが、だんだん高齢者の比率が、少子の結果高齢化。ちょっとよく少子と高齢化が一緒になりますけれども、これは基本的には別の問題なのであって、高齢化するのは何も悪いのではないのです。長生きするのは決して悪いことでも何でもないのですが、後から生まれてくる人の数が減っておりますものですから、結果として子供の少ない部分と高齢者の比率が、どんどんこっちの比率が高くなってきて全人口の二五%に達するというような話になってくると、これはとてもじゃないけれども、生まれている数が少ないと、今の状況より二倍も三倍もということになると、単純計算をいたしますと、今の税金を三倍払ってください、今の社会保障を三倍払ってくださいというのは、とてもそれはもちませんということが非常に深刻な問題になってきているのが多分大きな背景だと思います。

 この間の会議におきましては、基本的には幾つかの点が出ておりますが、厚生大臣に御指摘をいただいていろいろ論議をさせていただきました。今御指摘のように、国民の将来の不安を払拭というところが非常に大事なところであって、そのためには社会保障を安心して維持できる、簡単に言えば持続可能なものにするという点が必要、これが一つである。

 それから二つ目は、安定的な経済成長といわゆる今の社会保障の話が両立し得る、両立が可能になるように、給付と負担の両面から中長期的な観点に立って制度を改めるという必要がある。特に医療、年金、介護、制度全体を総合的にとらえながらやっていかないと、とても今のまま単純に伸ばすだけではできないので、そういった意味では、国民の給付と負担のあり方につきまして明確なビジョンを国民に示していかないと、先ほど言われました安心のところにまた入ってまいりますが、払い続けたらおれが受け取るときになったら払う人がいないんじゃないかというような話になりますので、そういったところをビジョンを示していくことが必要。

 三つ目が、今の活力のある経済社会の実現の寄与という観点から、消費とか貯蓄とかありますが、介護をやりますと、これは新たに雇用が発生することになります。雇用というのは、いい意味で新しい職種が生まれる。介護士なんて一つのものかもしれませんけれども、ホームヘルパー含め、そういったものは新しい職種として、今まで出てこなかったものですが、そういったものがありますので、社会保障と経済、財政、その両方を多面的な関係を総合的に評価、分析することが必要なんだということで、社会保障の支え手、ヘルプする方をふやしていくとの観点から、女性の参加、それから高齢者。

 一概に六十五歳といっても、宮澤喜一や中曽根康弘というのが高齢者として扱われていたら、あんな元気なやつが何でということになるでしょう。人によって大分これは違いがありますので、高齢者の中でもぴんしゃんしているのとそうじゃないのと一律に扱うのはどう考えてもという御意見やら、今の具体的な名前はわかりやすい名前で申し上げただけですから、その場で出たというわけではございませんが、そういった意味では一律に扱うのはどうだろうかという点がもう一点。

 もう一つ最後に出ましたのが、いわゆる情報技術の進歩というのが、例えば病院関係の医療費に係りますレセプト、内容でございますね。これは今でも書類で出さなくちゃいかぬことになっておるのですが、基本的にああいったものがコンピューターでできることは十分に可能ですし、うまくいけばカルテも、ある程度決まった風邪みたいなものですと、よほど病状が細かいものでない限りはそういったものもやれるのではないかということなども通じまして、制度の効率化という言葉でつくっておりますが、そういったものを含めまして、給付の適正化、またお医者さんの書いたようなものじゃなくてきちんとそれが出ますと透明化されることにもなりますので、そういったことを推進していくことが必要なのではないか。

 大体四つ申し上げましたけれども、それらの点が主な議論として非常に闘わされたところであります。

 御存じかと思いますが、社会保障のあり方というのは、財政とか経済を運営していきます場合には非常に大きな負担になりつつあることは間違いないところでもありますので、そういった意味では中長期的に見て経済社会全体というものを考えた上でやっていかなきゃいかぬということで、今宮澤財務大臣の方から、私ども旧経企庁、今の内閣府の中に、私どものところに、いわゆる従来の経済モデルとは違って、もっといろいろな社会給付の面とか地方と国の負担の割合とかそういったものを含めた、今までにないようなマクロ経済モデルをつくれという要望が出されて、私どもとしては、これはそんな簡単にできるものではありません、ちょっと半年いただきたいということを申し上げて、いろいろなものを含めまして整合的にやらにゃいかぬということで、かなりな人数をかけて、今新しいマクロ経済モデルを作成中でございます。

 これは大体六月ぐらいまでには出したいと思っておるのです。大体半年ぐらいかかる、なるべく急いで出したいと思っておりますが、少々時間がかかるとは思っておりますが、そういったものを含めまして、たたき台というか、細部にわたる前に至るまでの骨太のものまでを五、六月までには出したいということで今頑張っております。

 同時に、今指摘されませんでしたけれども、政府・与党によります社会保障改革協議会というのも同時にスタートはいたしておりまして、これも過去に二回やったと思いますが、そこらのところも、党の意見も出てきております。いろいろな方々の意見をまとめてひとつきっちりしたものをつくり上げたいということで、今いろいろなところでいろいろな方々が出されております。

 この問題は、本当に御指摘のように、国のあり方とか社会のあり方に関して非常に大事なところだと思いますので、ここらのところは、今すぐこういった意見があるというのを、これがまとまったということを申し上げる段階にはございませんが、おまえ個人の意見はどうかと言われれば、私は、たまたま育った環境がそうなのかもしれませんけれども、私はおやじのおふくろという恐ろしく元気なばあさんがおりましたものですから、親子三世代どころか親子四世代一緒に生活しておりましたので、そういったのを見ておりますと、少なくとも私どもを育てたのは私のおふくろではなくてこのおばあさんだと思っております。私はおふくろの顔を見ずに育ちました。見ずに育ったと言うとちょっと聞こえが悪いですけれども、ほとんどうちにいませんでしたので、このばあさんに育ててもらったんだ。私、自分自身で人様の前でまともに飯が食べられるようになったのはこのおばあさんのおかげだと思っております。

 こういうのを見ておりますと、やはりきちんといろいろなうちで、よほど体がぐあいが悪いとかいうことでもない限り、それぞれ御家庭によってはいろいろ違いがあるとは思いますけれども、若い人が主体というんじゃなくて、高齢者が比率がふえてくるわけですから、何となく年寄りというのは貧しく片隅で体の弱いという従来のイメージというものがありますけれども、元気な老人がこれだけ出てきて、元気な高齢者がこれだけ出てきて、しかもそれが全人口の二〇%だ、二五%だという前提に立って考えていきますと、やはり日本の将来というのは、活力ある高齢化社会というのをもし日本というのが仮に創造するのに成功したら、間違いなく世界は日本を見習うと思っておりますので、そういった意味では、それぞれ高齢者の方々も自分の仕事、自分の生きがいというものが与えられる、そういったものができていく社会が最も望ましい、私自身としてはそう思っております。

石毛委員 大変細部にわたりまして御説明いただきまして、ありがとうございました。

 幾つか、日本の政治の中では、例えば少子高齢社会という場合の少子ということにつきまして、もちろん私は対策会議等あるのは存じておりますけれども、ではそれで起こってくる労働力不足に対して、例えば外国人の方が日本で働いていただくのにどういう政治的あるいは政策的な整理をするのか、そうしたことに関しましても合意形成はまだまだなされていないというふうに思いますし、それから、社会保障には一九二〇年問題という言い方もありますけれども、ちょうど今八十歳前後に達していらっしゃる御高齢の女性の方は、結婚の機会も少なかったというようなことですとかさまざまな要因によりまして、今経済的には必ずしも皆さんが安定しているというよりは、むしろ所得の大変厳しい方もたくさんいらっしゃる。

 それから、今大臣は、支え手の増加ということで女性と高齢者というふうにおっしゃりましたけれども、女性も、例えばこの国会では、私ども民主党は家庭と仕事の両立支援という形で法案を提出させていただく予定になっておりますけれども、これから女性の働き方をきちっとシステムとしても確立していくという、今の女性労働は、このまま推移していけば、高齢期に入ったときに必ずしも安定した経済状態におられる方ばかりとも限らないというふうになりますと、不安定要因をたくさん抱え込んでいるというのは私が申し上げるまでもないと思います。

 一つ、ぜひとも御要望したい点でございますけれども、確かに社会保険の方式をめぐりまして、給付と負担をどう考えるかとか、それから社会保障制度のもっと簡素化ですとか情報公開の問題、制度の透明性とか、さまざまアイテムにかかわっていろいろな課題があるというのは、私もそうだというふうに理解をしております。

 ですから、今のままを守れと言うつもりは全くありませんけれども、ぜひとも大事なのは、やはり、日本に暮らす方々が社会保障制度がこう変わっていくというようなことに関してきっちり理解できるような説明責任をちゃんと果たしていただかないと、今は、ちょっと極論に聞こえるかもしれませんけれども、負担と給付論とかそれからカード化とか、そういう部分部分で流れて、一体、全体として、営々として戦後の日本の歴史の中で築いてきた社会保障の正の部分は、中身こそ再編成していくにしろ、安心して受けとめていけるのだろうか、あるいは、それに対して国民や市民はきちっと発言する、参加する機会を持てていくのだろうか、そういうトータルな意味での不安定感というのがとてもあって、その中で部分だけが論議されてそれが流布されていくことになりますと、そごがとても起こってくるのじゃないか。私は、そういう不安と、それから率直に言えば疑念に近いような思いもございますので、ぜひそのあたりをお受けとめいただければと存じます。

 それでは、次の質問でございますけれども、今の負担と給付のあり方に関しまして質問でございます。

 これは、例えば有識者会議のレポートの中には、給付と負担の連動とか自助の共同化というような表現がございます。私は、自助の共同化という表現は、社会保障とか社会保険の哲学といいましょうか、制度のバックグラウンドになっている思想をあらわす表現として果たして適切な表現なのだろうかというような、そういう思いがいたします。

 例えば、民間の保険でも、そこに民間企業が介在しているから、それはマーケティングな話であって自助の共同化ではない、そういう整理の仕方もできるかもしれませんけれども、リスクに備えて拠出して、ある救済のシステムをつくっているということでは自助の共同化と言えなくもないとか、共同化という概念自体が日本の社会の中で必ずしも定説を持っていないときに、響きのいい自助の共同化というような表現は、ちょっとやはり先走っている、あるいはマッチングしていない部分があるのではないか。

 それよりは、私は、社会保険あるいは社会保障というのは、この国に暮らす人々が協力してリスクに備えてお互いに連帯し合う、そうした社会連帯のシステムであるというこのメッセージをやはり大前提としてきちっとアピールしていく、そのことが今とても重要な時期ではないか。社会保障に関する信頼性それから政治への信頼性を獲得する意味でも、やはり協力して社会連帯のシステムを築き、それを長らえさせていくということに政治と日本の行政の役割もあるというような、そうした大きなメッセージを出していただかないと、ありていに言えば、何か給付と負担の損得論、表現が少し生々し過ぎるかもしれませんけれども、それだけで動いていくと、やはりどうしても外れていく人、出したって結局は少ない金額しか受け取れないのだから入ったってむだでしょうというのと、それから所得の低いところにみんな流れていくのだったらば自分たちは別の集団をつくった方がいいよ、そういう分解作用を促進しかねないのではないか。

 ですから、各論としての給付と負担論というのは必要だと私は思いますけれども、その前段としてといいますか、それを含んでもっと大きなメッセージをきちっと政治も行政も出していく必要がある、いろいろなところで制度が動かされていくわけですから、今その時期だというふうに私は考えておりますけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 御指摘ごもっともだと思っております。

 今おっしゃいましたように、公衆電話でいえば、年金を入れまして年になったらちゃんとそれを受け取れるというと、その機械が確実に作動していたということを意味するのだと思いますが、とまると、中はわかりませんものですから、何となくだんとまずたたく、それで結果的に壊れるということになりますので、そういうときはやはり中がガラスですと、ああ、ここでひっかかっているというのがわかるようにしなくてはいけないということなんだと思います。

 そういう意味では全体の絵を、今一部の、給付と負担の話とか国民負担率という言葉も出てきておりますが、そういったものを含めて国全体として考えていかねばならぬところだと思っております。

 ただ、石毛先生、一つだけ。土光臨調のときに国民負担率というのは大体四五%ということで決めて、実は今日まで曲がりなりにも四五%ぐらいで来ているのでございます、実態の問題としては、ここまでは、国民負担率というものから見ますと。(石毛委員「財政赤字を入れたらもう」と呼ぶ)財政赤字が八・四%ございますので、これは、みんないわゆる払っていただく部分を上げないで、そのままにしたままで赤字の部分は赤字公債で補ってきた分が八・四%ございますので、それを入れまして今四五%、四五・三%というのが現状でございます。

 それを引きますと三六・九%ということで、これがしばらくこのままいきましても、ほっておけばどんどんふえていくことになりますので、そこのところは何とか抑制したいというところなんですが、この赤字公債の部分の八・四%を何とかせないかぬことだけは確かだと思っておりますので、その部分が財政の面からいきますと非常に大きな問題になってくるのだと思っております。

 いずれにしても、今御指摘の点は、いわゆる不安を与えるもとはそれになると思いますし、事実、若い人にしてみれば、私、六十ですけれども、私より上の方はもらうだけもらって、いろいろ問題になるころはほとんどいらっしゃらぬわけですから、その方はいいのでしょうけれども、もっと若い、大畠さんぐらいの方の世代になると、払うだけ払って、いよいよ自分がもらおうというときに払う人がいないという話ですから、これは非常に大きな問題で、では自分のことは自分でというので、ずっと全然これは払わない、年金は払わぬ、そのかわり自分でやるというようなことになると、組織というか制度全体が危機に瀕することにもなっていきます。

 そういった意味では、これは全体としてどう考えるか、それに当たってはその内容の哲学の説明からきちんとそういった説明責任があろうということに関しましては、私もそのように考えておりますので、いろいろ御意見をちょうだいしながらきちんと説明ができるようなものにしていきたいと思っております。

石毛委員 時間がなくなってしまいまして、せっかく厚生省からおいでいただいて大変申しわけないのですが、一つだけぜひともお尋ねしておきたいことでございますけれども、社会保障制度の改革の重要な考え方の一つとして、世帯単位から個人単位への転換ということがございます。

 これは、介護保険とかいろいろな場面でいろいろと論点があると思いますけれども、今最も注目されているところでは、女性の年金権をめぐりましてこの概念をどういうふうに整理されているかというところが注目されているかと思いますけれども、検討状況はいかがでしょうか。あるいは、世帯単位から個人単位へ転換していく場合に、解決しなければならない課題として今どのようなことが上がっておりますでしょうか。その点を御指摘いただきたい。お願いします。

辻政府参考人 御指摘の世帯単位、個人単位の問題でございますが、昨年の社会保障構造の在り方を考える有識者会議、この報告書では、社会保障制度においては、個人の選択に中立的な制度、この方向を目指すべきだという考え方が既に出ております。年金制度におきましては、この考え方というのは、とりもなおさず支え手をふやすという方向でもありますので、重要な問題であると認識しております。

 それで、年金制度における世帯単位から個人単位に改めるということについて、実際はさまざまな考え方が主張されておりまして、整理が必要でございます。

 代表的なものを申しますと、負担面におきましては、個人単位化するという観点からは、被用者本人の被扶養者、この第三号被保険者にも保険料負担を求めるべきではないか、あるいは夫婦の収入というものを合算して分割して夫婦それぞれが保険料負担をする、こういった考え方が出ておりましたり、あるいは給付面におきましては、特に、基礎年金の方は年金権は個人単位で確立しておりますけれども、離婚した際に、被扶養の妻に、上乗せの厚生年金の報酬比例部分、これが行き渡るように分割できないか、こういったような問題提起が、世帯、個人という観点、個人化するべきだということから出ておると理解しております。

 この論点でございますけれども、第三号被保険者の負担につきましては、専業主婦ということでございますから収入がないというのが一般でございまして、どのような形で負担を求めるのか、直接負担を求めるときには、逆に無年金、低年金といったような者も出ないかというような指摘。あるいは、夫婦の収入を合算して二分割して負担するという考え方は、現在の夫婦別産制との関係、あるいは税制での取り扱い、あるいは他の医療保険等の社会保障制度との整合、それが問題でどうにもならないという意味じゃありませんけれども、これはどうしても整理をしなければならない。あるいは、厚生年金の受給権の分割ということにつきましては、今の夫婦別産制あるいはさまざまな離婚原因がある中でどこまで年金制度の方で整理できるか、こういった問題がございまして、これはいずれにしろ、それぞれについて突っ込んだ議論が必要でございます。

 昨年七月に、まさしく今の家族法といいますか、法制的な問題とか税制の問題、そういうことを含めまして、各分野の専門家から成る女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会を設けていただきまして、これまで四回にわたって御議論いただいておりますし、専門家自身から今言ったような論点についてレポートをいただいて、より踏み込み、そして今申し上げた点につきまして整理を行っていただきまして、今後、関連する諸制度を含めた幅広い検討を進めていただくということで作業を進めていただいておるところでございます。

石毛委員 時間が参りましたから終わりますけれども、きょうは本当は、今御指摘いただきましたその先のところを教えていただければ大変ありがたかったというふうに思いました。そしてまた、真野局長、石本統括官におかれましては、本当に申しわけございませんでした。時間が終わってしまいましたので、またの機会にどうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、終わります。

横路委員長 大畠章宏君。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 本来であれば、私も民主党のIT担当大臣をしていますので、麻生大臣と本当は論戦をしたかったのですが、これはちょっとおいておきまして、きょうは警察の問題、いわゆるIT問題の前に、現実の問題として起こっている関係について質問をさせていただきたいと思います。

 委員長、できれば委員の皆さんに関係資料をお配りしていただきたいと思いますが。

横路委員長 理事会で了承しております。どうぞ。

大畠委員 お願いします。

 委員の皆さんにもぜひこれは御理解いただきたいと思いまして、理事会の了解をいただいて新聞の記事をお配りさせていただきます。

 実は、私はきょうは、そういうことで、地元の代議士としてこの問題を取り上げさせていただきたいと思います。

 この問題の話を最初に聞いたのが去年の四月の中旬ごろでございまして、弁護士の方から、ある事案について告訴状を提出しているのだけれども警察が受理してくれない、何とか警察が受理してもらえるように努力していただけないかという話をいただきました。これが発端でありまして、どういう内容かなと思っていろいろ調べてみますと、複雑な絵の売買をめぐるトラブルでございまして、いろいろと聞きますと、何かおかしいなと私自身も感じまして、この問題をいろいろ勉強させていただきました。

 そして、その当時の国家公安委員長にたまたま議員の食堂でお会いしたときに、こんな話があるんだけれども、なぜ警察は、弁護士の、法律の専門家の告訴状まで受け取らないのだろうか、そんな思いを持ちまして話したところ、警察庁の関係の方が見えまして、その後、告訴状が受理されたという話を聞いたのです。

 今回、本来であれば伊吹大臣とお話ししたかったのですが、伊吹大臣がどうしてもこの席に来られないということで、大変恐縮でありますが、言ってみれば森内閣の最高責任者の、ナンバーツーと言われる官房長官に御臨席いただいて、そしてこの問題についての御感想を最後にいただければと思っているところであります。

 最初に、この事件の起こりというものの概要をちょっと申し上げさせていただきたいと思います。このことについて、後ほど警察庁の方のお話もいただきたいと思うのです。

 最初に、石崎さんという六十六歳の女性の方が、だんなさんが亡くなって、借金があったというのですね。それで、だんなさんの残したピカソの絵というものを所有していたのですが、借金もありましたから、何とかこれを処分して借金を返済したいという話だったのでしょう。おいっ子、親戚の四十四歳の方に、どのくらいで売れるのか調べてほしいということで依頼をしました。これは両方とも茨城県の旭村の方なんです。

 そこで、依頼されたおいっ子は、水戸市の美術商のところに行きまして、本当に本物かどうか、そして幾らぐらいで売れるのか、鑑定をしてほしいという依頼をしました。これが平成十年の九月三日ということであります。

 そこで、早速この美術商の方は、自分でもよくわからない、そういう高価なものはわからないというので、次の日、平成十年の九月四日に、前々から知っていた東京のギャラリーきくの代表取締役の画商の山元さんというところに鑑定の依頼をして絵を預けました。そのときの絵の預かり証も受け取っているわけであります。

 要するに、鑑定を依頼したにもかかわらず、その山元さんという方は、即日、同じところにあるギャラリーミューズという会社の草刈さんという方に売ってくれということをどうやら依頼したようでありまして、依頼された方は、即、今度は海外のロンドンのオークションの方にその絵を送った。その後、十二月に、このロンドンのオークションで十二万ポンドで売れてしまったということであります。

 ここら辺からおかしな話になってくるのですが、その売れたという情報を全く茨城県の水戸市の美術商の方に連絡しないのですね。それから約一年間ほっておいたのです。それで、おかしいじゃないかということになったわけであります。

 まずここで、私は、きょうは警察庁の田中長官、五十嵐刑事局長がおいでになっていますが、この経緯からいって、この時点でこれは横領という話にはならないのでしょうか。まず、事実関係をどういうふうに認識されるのか、お伺いしたいと思うのです。

 要するに、鑑定を依頼した、そうしたら依頼された方が依頼主の了解を得ることなく勝手に海外に持っていって売っちゃった、一年間もそれを黙っていた。こういう事象に対してはどう考えますか。

五十嵐政府参考人 今の件ですけれども、本件につきましては、業務上横領で既に告訴がなされまして現在捜査中でございますので、具体的な中身についてはちょっと答弁を差し控えさせていただきたいというふうに思います。

大畠委員 多分そんな話だと思っていました。

 それから、続きがあるのですね。その次に、今度は、この問題がおかしいじゃないかというので、水戸の画商の人と依頼主が何度も、どうなっているんだと言ったら、海外の方に置いてあるからということで、なかなか返事が的を射ない。そういうことで、次の年の平成十一年の十一月二十八日、いろいろ話をしたところ、いろいろなことがあったのですが、とにかく、もう絵は売ってしまったというような話がわかってまいりまして、依頼主は非常に怒りました。おかしいじゃないか、絵の鑑定だけ頼んだのに、何で売っちゃったんだと。そしてまた、売った事実を一年間ずっと隠していた、これは問題ではないかというので非常にもめました。

 それで、買い戻してくれという依頼主の要求を受けて、もうちょっと待ってくれ、ロンドンの方と調整して買い戻すからというような話もあって、十二月になってもなかなか連絡がとれないというのでファクスのやりとりをしたのですが、今忙しいとか奥さんが病気だとかいう話で、次の年の一月まで連絡がとれなかった。

 一月の二十八日、もうらちが明かないので、地元の画商と依頼主が一緒に銀座の画商のところに行った。それで、山元さんという人と会わせてくれと。そうしたら、いないということで、おかしいじゃないかというので押し問答がありました。

 それで、私たちは絵の鑑定だけを頼んだ、したがって絵を取り戻してほしい、取り戻すまでそれに見合う絵を預かりたいということで預かり証を書いて、そしてその絵を自動車に積み込んだんですね。そのときに、びっくりしたのかどうかわかりませんが、従業員が連絡をとったんでしょう、その画商の山元さんという人が警察とともにあらわれた。警官二人、婦人警官二人、四人が来て、そんなことをやったら窃盗罪になりますよという話をしたのですが、いや、そうじゃなくてこうなんですよ、この人が一年前に勝手に絵を売っちゃったんだ、それで私たちはそれを取り戻してほしいという要求をした、そこで担保としてこの絵を持っていく、預かり証も置く、戻してくれたらこの絵は戻すんだという話をしたら、まあよく話をしてやってくださいということで警官は戻った。

 結局、もめましたけれども、その後、そのまま決着がつかなくて、持ち帰るときに築地署の交番に行って、先ほどの件ですが、こういうことで決裂したので持っていきますということで警察にも話をしているわけですよ。そして水戸の画商のところに、この預かり証を書いた五点の絵をお店の中に保管した。

 それから次の日、この山元さんという人は、電話がかかってきて、警察にも話した、そのうちあなた方四人は逮捕されるぞと逆に何かおどすような感じで入ってきた。そこで、水戸の画商さんはびっくりして築地署に電話した。そうしたら、今捜査中ですから答えられませんということで電話を切られた。

 それでその後、一月三十一日にその画商の人が窃盗罪か何かで告発をしたら、一カ月後の二月二十五日、突然、前ぶれもなく逮捕に来た。この画商のところには七、八人の私服警官が来て、五点の絵とそれから画商の人を逮捕した。さらに、一緒に行った旭村の職員の人は、役場の中で執務中に、十時半ごろ、突然四人の警官が来て逮捕した。本人たちはびっくりしたわけですよ、何で逮捕されちゃうんだろうと。

 私は、この事案を聞いて、何か警察の対応というものに問題があるんじゃないかと思いました。

 そこで、幾つかお伺いをしたいと思います。

 まず、疑問点の一つ、横領事件の方で聞きますが、二月二十五日に逮捕されたというので、びっくりして依頼主の女性の方が築地署に行ったのですね。築地署に行って、三月一日、そうじゃないんです、その前に私の絵が勝手に売られちゃったんですといって被害届を出そうとした。ところが、築地署は、ここでは受け取れませんというので突き返した。どこに出したらいいんですかと言ったら、裁判所でしょう、こんな対応をしたというのですね、一つは。

 それから三月二十九日、一カ月後、その話を聞いて、逮捕されて勾留されたんですけれども、その弁護士の方がいわゆる告訴状を警察署に出したんだけれども、告訴状を警察署は受け取らない、受理を拒否したというのですよ。

 私がここで聞きたいのは、どういうときに受理してどういうときに受理しないのか、その話を聞かせてもらいたい。

五十嵐政府参考人 本件につきましては、警視庁において告訴を受理しまして、先ほど言いましたように、現在捜査中ですので、具体的な事柄については答弁を差し控えさせていただきます。

 なお、告訴の受理に関する一般論として申し上げますと、告訴の要件、すなわち犯罪事実の特定と犯人の処罰を求める意思表示がなされているかなどでございますけれども、こういったものが整っているかにつきまして検討を行った上で受理の適否を判断することとしておりまして、告訴によりましては、告訴人から詳細な説明を受けたり資料を提出してもらう等の必要があるため、受理までに時間を要するケースがあるわけでございます。また、被害届につきましても、届け出人から必要な説明を受けたり資料の提出をしてもらう等の必要があるため、告訴と同様に受理までに時間を要するケースもある、こういうことでございます。

 先生が言われるのと私が事実関係を把握しているのと若干違いますけれども、実際受理しなかったとかには若干ニュアンスの違いがあるんじゃないかなと思います。

大畠委員 そういう認識がだめなんですよ。法律の専門家が、弁護士が行って告訴状を出していて、警察が受理されないというので、私のところに相談に来たんですよ。五十嵐さん、局長でしょうけれども、いろいろ事案があったのですけれども、あなた、そういう事実をもうちょっとしっかり見てください。

 私は、警察というのはやはり国民の味方だと思っていたのです。ところが、この事案で言えば弱い者のそういうものは受け付けないんだ。それで、昔からの知り合いかどうかわからないけれども、画商の訴えを聞いてから二十五日間で逮捕ですよ、片方の方は。片方の人は、一生懸命被害届を出しても受け付けない、あるいは弁護士が告訴状を提出しても受け付けない。困って私のところに相談に来たんですよ。私は、築地署の体質かどうかわかりませんが、まさに国民の立場からいえば理解できないですよ、こんなのは。今のように整然と答弁されていますが、実態は違うんじゃないですか。

 私はこの件を聞いて、非常に腹立たしいのですよ。一体、警察というのは強い者の味方なのか弱い者の味方なのか、あるいは犯罪者の味方なのか被害者の味方なのか、この点ではよくわからない。

 それで、次の話は、後日、警視庁の本庁で受理したというのでしょう。これは、築地署というのは受理しないのですか。こういう案件は本庁でしか受理しないのですか。これをちょっと聞かせてください。

五十嵐政府参考人 これは本庁でしか受理できないということではもちろんございませんで、築地でももちろん受理できるわけでございます。ただ、告訴状を受け取る、告訴を受け取るときに、要件を満たしているかどうかというのはおのずと審査するといいますか、チェックするわけでありまして、必要な資料が整っていなければ、この辺は補充してくださいというような話をするわけであります。

 それで、これは警視庁の本庁の方に同じ告訴が行きました。そのときも同じような状態でしたので、この辺は補充してくださいということを言って、その後、本庁の捜査二課の方で受理いたしております。それを築地署の方に移牒したというのですかね、築地署の方で現在捜査中、こういうことでございます。

大畠委員 それで、今の話、七月に受理したわけですよ。そのおばあさんといいますか、六十六歳の女性の方が被害届を出そうとしたのは三月の一日、それは拒否された。三月二十九日に弁護士さん、法律の専門家が告訴状を提出しようとしたら、受理されないのですよ。そして、七月四日にやっと本庁で受理した。三月、四月、五月、六月、四カ月後ですよ、受理したのは。

 それで、その間、この逮捕された人は九十四日間勾留されているのですよ。毎日毎日、窃盗罪を認めろ、認めたら釈放してやると。絶対にこれはおかしい、それはそうじゃないんだ、その前にいわゆる横領事件があったんじゃないか、そっちの方はほっておいて、なぜ我々のだけを詰めるんだということで拒否したわけですよ。それで、九十四日後に釈放されたんですね。

 この間、私はおかしいなと思うのは、本庁が受理して、そして問題を起こしたという、あるいは受理を拒否していた築地署になぜこの問題を担当させたのか。いわゆる築地署が拒否しているわけですよ、受理を。受理を拒否している警察署に、担当管轄だからといって、本庁から、あなた、この横領事件を捜査しなさいというのを出したでしょう。自分のところでそんなものは事件じゃないんじゃないかと言って拒否したところに、調べなさいと本庁から言うこと自体がおかしい。こういう関係しているところとは違うところに本来はやるべきじゃなかったかと思うんですが、どうですか。

五十嵐政府参考人 これも先ほど申し上げましたけれども、告訴について、弁護士さんが告訴状を持ってきて、告訴状を出してきたということで、必要な部分について、この辺について補充してくださいということで言っています。それと同じ状態で本庁の捜査二課にも告訴が上がっているというふうに理解しています。本庁の方でも、やはりそこのところは補充してくださいよということで、補充されてそれで受理をして築地の方に移牒した、こういうことでございまして、築地の方で全くそういう形で拒否したというふうには理解しておりません。

大畠委員 局長の理解も違うんじゃないですか。だって、そうじゃなければ弁護士なんか私のところに来ませんよ。法律家と警察署で、不十分なところがあれば、書類が足りないというのであればそれをやればいいんです。ところが、受理してくれない。それで、その受理をしてくれないという、対応した知能犯捜査第二係長の真下さん、その方に弁護士がこの事案について事情聴取しようとしたら、これもまた拒否されたんですよ。もうちょっと警察はそういう捜査に協力すべきじゃないですか。弁護活動あるいはそういうものに協力すべきじゃないですか。

 警察はどんな権限を持っているか。逮捕権を持っていますよ。それで、村役場の職員の人は、逮捕されたおかげで前科一犯という、それは彼は拒否していますけれども、いわゆる前科者だ。そういうことで子供さんたちや奥さんたちも村内からは非常に白い目で見られ始めていますよ。

 私は、この一連の話を聞いていて、何か警察は単に犯人を、例えば逮捕する前に、一月三十一日に言われたら、築地署は、警察官の立ち会いのもとに、築地署のある交番でこうやって持っていきますよと言っているんですから、警察の人も事情を知っているわけですよ。そうしたら、いや、こういう訴えがあった、これはあなた、よく話し合ったらどうですかと。その五点持っていったものだって、海外から戻ってくれば戻すというんだから、民事の問題に何か刑事事件だけ先行させて市民を逮捕した、そして九十日間拘留した。肝心の銀座の画商、これはどうなっているかというと、のうのうと二年間、いまだいますよ。

 訴えて去年の七月にこれは受理されましたが、今まで何をやっていたんですか。片方の方は九十日間も牢屋に入って、結局役場も懲戒免職になったんです。もしも大岡越前がいたらこんな話はしませんよ。私は何かおかしいんじゃないかと思うんですよ、そのやり方が。

 そして、この案件は、築地署がよくわかっているんですが、この横領事件といわゆる窃盗事件というのは、横領事件があってそれから窃盗事件ということになったかもしれない。その窃盗事件というものだけをまず先行させて、二十五日間で犯人をつかまえて、そして牢屋に入れた。でも、この横領事件というものはずっと放置していたんじゃないですか。

 私は、この事件は両方並行して審理すべき案件だと思いますよ。ここら辺はどういう判断で、窃盗事件というものを先行させて、横領事件はそうやって書類が不備だとかなんかいって、結局その間ずっと彼らは拘束されていたわけですよ。警察のやり方に何かあるものを感ずるんですよ。余りにも不公平だと思いませんか。

五十嵐政府参考人 さっき先生は民事の話と言ったのですけれども、民事の絡んだ刑事事件というのは結構あるわけですね。要するに、この中で刑罰法令に触れるというものについては、法と証拠に基づいて厳正に対処しなければならないというのは……(大畠委員「横領の方はどうするんですか」と呼ぶ)横領の方は、先ほど言いましたように、告訴を受けまして現在捜査中だという……(大畠委員「三カ月間もたなざらしにしていて受け付けないなんというのは、おかしいですよ」と呼ぶ)いやいや、そこは若干認識が違うのですけれども、ただ、いずれにしましても、告訴は受理いたしまして、今、築地署の方で鋭意捜査をやっておるという状況でございます。

大畠委員 築地署で鋭意やっているといったって、片っ方の方は二十五日間で逮捕しているんですよ。片っ方の方は、七月、八月、九月、十月、十一月、十二月、一月、二月、三月、もうすぐ四月、九カ月間も何をやっているんですか。

 余りにも弱き者に対する捜査は厳しくて、権力を持つというか何かわかりませんけれども、そういう者に対する捜査が甘いんじゃないですか。片っ方の方は二十五日間で逮捕、それも事前の調査をしていない。なぜ事前の調査をしなかったんですか。

五十嵐政府参考人 事前の調査という意味、どういう御趣旨で言っているのかちょっとわからないんですけれども……(大畠委員「訴えられてから二十五日間あったわけでしょう。その間に事前の連絡は全くないわけですよ、画商に対してもその当事者の村の役場の人に対しても。突然踏み込んで逮捕です。この逮捕の経緯が私は……」と呼ぶ)

横路委員長 発言者は、委員長の許可を得てから発言してください。

五十嵐政府参考人 これにつきましては、当然、先ほどの窃盗の関係の被害者がいるわけですけれども、被害者の方から被害届が出ております。関係者からの事情聴取等、もちろん所要の捜査を尽くしたわけですけれども、その結果、裁判官から逮捕状を得て、それで逮捕したということでございます。

大畠委員 私は、今、調査したと言ったけれども、偏った調査だと思いますよ、これは。いわゆる画商を中心として調査していて、その当事者といいますか、逮捕される周辺の人の調査を全くやっていない。これほどおかしな捜査というのはないと思いますよ。

 それで、この問題、無断売却に端を発した民事紛争を警察は単なる刑事事件として取り扱い、銀座の画商の言い分だけで一カ月後に三人を逮捕している。ここのところに、初動捜査に問題があったんじゃないかと私は思うんです。余りにも偏った情報で行動した。これは、横領事件については聞く耳を持たなかったと言わなければならないですよ。おばあさんといえども、六十六歳の女性も国民の一人ですよ。主権在民だよ。警察の皆さんがどんな権限を持っているかわかりませんけれども、国民の訴えをなぜ受理しなかったのか、私はわからない。この横領の捜査や裁判が同時に進んでいれば、窃盗事件の裁判というものは違った展開になったんじゃないかと思うんです。

 そこで、田中長官、今いろいろな話をしましたが、警察庁のトップとして、こういう国民からの訴えを私は受けたんですが、どう考えておられるのか、どんな教育をしているのか。先ほどの五十嵐局長の話なんかも、ちょっと偏った話だと私は思いますよ。ですから、田中長官のお話と、それから、福田国務大臣がきょうおいででありますが、政治家として、今の行政を管轄するナンバーツーの国務大臣としての御所見を伺いたいと思います。

田中政府参考人 今、委員から具体的な事案につきまして問題の提起がございました。

 私どもは、御案内のとおり、一昨年来、国民から大変な御批判を浴びるようないろいろな事案が起きまして、そして国民の皆さんの声に真摯に対応するようにということで指導してまいったわけでございます。警察は、国民の生命、身体、財産の保護に任ずるわけでございまして、今のお話のように、それが民事に係るものでありましても国民の要望というものに積極的に対応していく、そして消極的な対応をとることがあってはいけないということで指導してまいったところでございます。

 私どもといたしましては、解決の手段を求めて、警察のハードルは決して低くはなくて高いハードルでございまして、そこを思い余っておみえになるわけでございますので、相談、親告に来られる方に対しましては、訴えそのもののみならず、背景につきましても十分踏み込んで事情を聴取し、刑罰法令に触れる事案があれば、積極的かつ適正に、迅速に捜査権を行使し、刑罰法令に触れない行為でありましても、関係機関の紹介とか、あるいは相手方に対しますところの指導、警告等の的確な対応を行うべきことを指示してまいりました。なお不十分かつ不徹底な面があるかもしれませんけれども、今後とも、そういう面で一線の指導の徹底を期してまいりたいと思っております。

 また、近時、相談等が非常にふえております。一一〇番等もふえておりますので、第一線が大変苦労しておるところも実情ございます。そういう面で今回の予算で増員等を認めていただきました。そういう面での体制の強化というものに努めてまいると同時に、今お話がありましたように、教養といいますか、そういう面につきましてもさらに徹底をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。

福田国務大臣 私は警察の所管は外なんですけれども、御指摘の窃盗そしてまた横領、この事件につきましては、いずれも警察において捜査がされておることはよく承知いたしております。

 警察活動は、警察法の趣旨を十分に踏まえまして、厳正、公平かつ不偏不党に遂行されるものだと承知しておりますけれども、また、そういうことであることを私は期待いたしております。

大畠委員 何か日ごろの福田大臣とは思えないような、余りにも忠実にメモを読み過ぎているんじゃないかと思うのです。

 私は刑事事件というのを質問するのは初めてであります、ずっと商工委員会でやっていましたから。しかし、私は、余りにも今回の事案については警察当局の捜査というものに何か公平性が欠けているという感じを覚えています。

 それで、横領事件について、捜査の段階ですからなかなか言えないというのはわかりますが、五十嵐刑事局長として、私は幾つか申し上げましたけれども、再度、この問題にどういう決意で取り組むのか、ちょっと最後の答弁を求めます。

五十嵐政府参考人 先ほども答弁しておりますけれども、要するに、民事絡みの事件であっても、刑罰法令に触れるものがあれば、法と証拠に基づいて厳正に対処するというのが基本でございます。

 したがいまして、弱い者の味方とか強い者の味方とか、警察はその辺ちょっと偏っているんじゃないか、そういうことは決してないと思いますし、今後もそういう気持ちで公平、公正に取り組むよう、自分も戒めますし、また一線も指導、教養してまいりたい、このように考えております。

大畠委員 これで終わります。

横路委員長 山花郁夫君。

山花委員 民主党の山花郁夫でございます。しばらくおつき合いをお願いいたします。

 福田内閣官房長官にお尋ねをいたします。

 平成七年に地下鉄のサリン事件が起こったわけでありますけれども、平成八年以降、三月二十日の日になりますと、総理大臣であるとかあるいは元総理、また内閣官房長官が、昨年まで、霞ケ関の駅のところで慰霊のための献花を行ってきたと承知いたしております。

 ちょっとこれは事実関係だけ確認をいたしたいのでありますけれども、これは何年にどなたが行かれたかということはおわかりでしょうか。

福田国務大臣 御質問のことにつきましては、平成八年に、このときに事故が起こったわけですね、橋本総理、亀井運輸大臣、そしてまた政務次官、事務次官が出ております。また、当時は運輸省ですか、鉄道局長。

 平成九年、このときには村山前総理、このときはもう総理をおやめになっています。それから古賀運輸大臣、事務次官、鉄道局長。

 平成十年、橋本総理、村山前総理、藤井運輸大臣、黒野事務次官、これは橋本総理に随行したということですね。それから梅崎官房長、小幡鉄道局長。

 それから平成十一年、村山元総理、野中官房長官、鈴木官房副長官、鉄道局長。

 平成十二年、小渕総理、野中官房長官、二階運輸大臣それから事務次官、鉄道局長。

 平成十三年、これは野中元官房長官、国土交通省梅崎顧問、鉄道局長。

 以上でございます。

山花委員 これまでこうやって献花をされてきたということでありますけれども、この献花を行ってきた経緯であるとかあるいは趣旨についてお伺いいたします。これは、どこからかこういう要請があって行かれていたということなのか、あるいは任意にというか自発的にというか、そういう形で行かれていたのかということでありますけれども。

福田国務大臣 それでは、この辺のことを御説明申し上げますけれども、地下鉄サリン事件については、三月二十日に事件が発生してから六年目を迎えました。当日の営団の慰霊の実施の仕方については、昨年まで行われていました営団総裁以下職員による黙祷式や献花式という行事は行わず、原則として、関係駅に献花台を設置し、御遺族、職員、お客様などの関係者の方々の献花を受け付ける形で行うということにいたしました。

 これは、結局、毎年そういうことをする、そうすると、いつまでそういうことをするのか、こういう問題もあるわけですね。それは、営団の方で五年ということにして、六年目からは今までのような形ではやらない、こういうことを決められたわけです。

 その先のことを申し上げれば、私どももそれに従いまして、そのことに、何というのですか、慰霊祭でしょうか、慰霊のそういう形式をとらないということだったのでそれに従った、こういうことであります。

 私も、そういう営団からの御通知がありましたものですから、そういう考え方にのっとりまして献花に参らなかったということでございます。

 なお、総理が参らなかったのは、当日は日米首脳会談があったために行かなかったということであります。

山花委員 要するに、今の御答弁によりますと、ことしは行かれなかったということなんですけれども、ことしは式典のような形でなくて、案内もなかったからだ、そういう理解でよろしいのでしょうか。

福田国務大臣 そういう方式でやるということは、もちろんこれは承知しておったわけです。しかし、営団の方でもって、五年目という一つの節目を昨年経過しまして、そういうふうな形を毎年やっているといつまでやるのかという議論も当然出てくるわけでございますので、そういう議論の中でそういう判断をされたというように理解いたしております。

山花委員 別に私は、未来永劫、いつまでもその日になったら行けと申し上げるつもりはないのでありますけれども、ただ、官房長官、本委員会で先週から今週にかけてでありますけれども、どういう法案の審議をしていたか、御存じでしょうか。

 三月十六日の金曜日に本委員会が開かれております。そのときにかかっていたのは、犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案というものがかかっておりました。今、御出席しておりませんけれども、伊吹国家公安委員長のこの法案の趣旨説明、閣法ですから、これは内閣を代表して出されているものと存じますが、その中でも、「地下鉄サリン事件等の無差別殺傷事件の発生等を契機に、被害者の置かれた悲惨な状況が広く認識されるに伴い、犯罪被害給付制度の拡充を初めとして、被害者に対する支援を求める社会的な機運が急速な高まりを見せております。」こういう趣旨の説明があった法案を審議いたしておりました。

 そしてまた二十一日水曜日、二十日の翌日でありますけれども、衆法で提出されております犯罪被害者基本法案というものが審議されていたわけであります。この犯罪被害者基本法案というものも、地下鉄サリン事件などで亡くなられた方、またいまだに後遺症に苦しむ方たちがたくさんいらっしゃる、そうした中で、欧米諸国ではもうほとんどすべての国が、そしてアジアの国でも多くの国が、犯罪被害者のための基本法というものをつくってその救済などに当たっているということを受けて、我が国でもぜひこういうものをつくろうではないかということで、衆法で今提出されているものであります。

 そういった時期でありましたから、官房長官としてはタイミングが悪かったということになるのかもしれませんけれども、また、この委員会の所属の委員の気持ちとしては、慰霊に行く、あるいは花をささげるというだけでも、お金だけの問題ではなくて、やはり犯罪被害者の立場に立ったときにはそういう精神的なケアというものも必要ではないかと思うわけであります。

 また、さきの委員会のときにも、官房長官はいらっしゃらなかったのですけれども、私ごとで恐縮ですが、連れ合いが地下鉄サリン事件のサリンがまかれた電車に乗っておりまして、たまたま被害には遭わなかっただけでありまして、そんなこともあるのでちょっと個人的には行っていただきたかったなという思いがございます。

 今後のことについて、今確定的な御答弁はいただけないかもしれませんけれども、御所見などございましたら、来年以降どうするのかということについて、感想でも結構ですので、何か一言お願いいたします。

福田国務大臣 私も、正直申しまして、行くべきかなというようなことも思ったのでありますけれども、しかし、営団の方でそういうように考え、そして余り大げさな形にしないということの趣旨のようでございましたので、あえて遠慮した、こういうこともございました。

 犯罪被害者のことを申されましたけれども、まことにその問題は重大なことでございまして、サリン事件にかかわらず、ほかにもたくさんたくさんあるわけですから、この問題について真剣に取り組み、そういう方々に対応する道をつけなければいけない、早くやらなければいけない、そんなふうに思っております。

山花委員 来年以降についても、もし検討できることであれば、今後どうするかということについてお考えいただければと思います。これは要望として申し上げておきます。

 それでは、ちょっと別の論点に入らさせていただきますけれども、警察庁にお伺いをいたします。さきに法務委員会の方でも高村法務大臣から御答弁はいただいているのでありますが、道交法の改正に関係することについてお尋ねいたします。

 ここのところ、悪質な車両の運転に起因しまして死の結果を生ぜしめたような場合、非常に重く罰すべきだという論調が、また多くの声が上がっているものと思います。そして、この通常国会が始まる前に、例えば危険運転致死傷罪のような形で厳罰化の声があり、そういったことについても政府として検討されたということを伺っております。これは、一つは、高速道路でトラックの運転手さんがお酒を飲みながら運転して、幼い子供二人、追突してということですけれども、飲酒運転に起因しましてお子さんが二人焼死をしたという大変悲惨な事件がありまして、それに対する刑が非常に軽いということが新聞などでも報じられたことからそういった声が上がってきたものと思います。

 ところが、本国会ではどうもその点については見送られた上で、今後、まだ出てきておりませんけれども、それを除いた道交法の改正という形になったようであります。それについて、法務省と調整した結果、ちょっと間に合わないということだったと聞いているのですけれども、この危険運転致死罪、致死についての重罰化見送りの経緯について御説明を願います。

坂東政府参考人 昨年の十二月に私ども警察庁では道路交通法改正試案というものを公表いたしまして、その中に、酒酔い運転などの悪質、危険な運転に起因して人を死傷させた運転者に対する罰則規定の創設というものを盛り込んでいたところでございますけれども、この案に対しますパブリックコメントの募集と並行いたしまして法務省と調整を行ったところ、交通事故につきましては現在刑法の業務上過失致死傷罪が適用される、これとの整理を十分に行う必要があるといったようなことなどから、そういった意見が法務省からも出されたということもございまして、こうした整理、検討にはなお時間を要することなどから、この試案の中のこの部分につきましては今国会に提出する道路交通法改正案に盛り込むことは見送ることといたしまして、法務省と連携の上、できるだけ早期に対応を図ることとしたものでございます。

山花委員 要するに、業務上過失致死罪というものは刑法の規定であって、これは法務省の所轄事項であるということだと思います。業務上過失致死ということになりますと、例えば、ビルで工事をしていて、その工事をしている人が何か不注意で下に物を落として、その結果、下にいた人に当たって亡くなられるというケースも業務上過失致死である。一方、ただお酒を飲んで運転しているというだけであれば、これで人をひいたりということも何もなければ、単純な道路交通法違反ということで警察庁の所管となるということで、調整が必要となるのであろうということはわかります。

 つまり、お酒を飲んで車を運転して、そして人の死を生ぜしめたという場合になりますと、今、業務上過失と道交法違反で併合罪になっているのだと思いますけれども、そうすると、二つの省ないし庁にまたがるところで調整が必要ということになるのです。

 そこで、内閣官房長官にお伺いしたいのでありますけれども、本年より省庁再編ということが行われまして、こういった役所と役所との間で調整が必要となる場合には官邸が主導になって何か議論をリードするというような、そういったイメージを私は持っているのでありますけれども、今回の件で法務省と警察庁の間に入って調整を図ったというようなことはあるのでしょうか。事実関係についてお尋ねいたします。

福田国務大臣 今回、道路交通法の新たな罰則規定、これが多少時間がかかっておるということでございまして、今回の改正案に盛り込むことが見送られたこと、これは私も、この辺は早くすべきではないのかな、こんなふうに思っております。

 刑法の業務上過失致死傷罪との関係を十分に整理する必要があるという意見がありまして、こうした場合の刑のあり方についての調査、検討などにもなお時間を要するというので、現在、法務省と警察庁との間で交通関係事犯問題意見交換会を設置して、有識者の意見を聞きながら、この法整備を行うべく、それも早期に所要の法整備を行うべく検討を進めているところでございます。

 我々も全く無関心ではないのでありまして、その辺はよく注視していきたいと思っております。

山花委員 ちょっとよくわからないところがあるのです。それは注視していきたいということでありますけれども、これは官邸が間に入って何か方向性を示すとか、そういうことというのはやらないのでしょうか。

福田国務大臣 特別遅滞するとかそういうことがあれば、私どもの方としても調整をするということをいたしますけれども、現状はその必要はないように思っております。

山花委員 一点、確認をしたいところがあるのであります。

 まだ省庁再編がことしに入って動き出したばかりということで、我々委員の方もちょっとイメージがつかめないところもなきにしもあらずと思うのですけれども、恐らく今回のケースで言えば、何としてでも、例えば今国会、今すぐ、例えばきょうあすじゅうにやらなければいけないということではない、そういった意味でのお答えだったのではないかと思いますけれども、一般論として考えたときに、今回の省庁再編に伴いまして、一般に言われております官邸機能の強化ということに伴って官邸が各省庁の調整機能というものを発揮して、また議論をリードしていくというのは、これはどういう場合に当てはまるのでしょうか。

福田国務大臣 御指摘のとおり、今般の中央省庁の再編によりまして、内閣官房は、内閣及び内閣総理大臣を補佐する機関として、国政に関する基本方針の企画立案、国政上の重要事項について総合調整などに関する機能を持つ、こういうことになっております。これによりまして、内閣官房においては、総合的政策の機動的形成を図るために、必要な場合には、今私これから申し述べますような総合調整を行うことといたしております。

 一つは、政府全体としての政策の方針を示し、戦略的かつ主導的に総合調整を行うこと。二つ目、関係府省からの申し出を受けて必要な総合調整を行うこと。それから三番目として、今申し上げました一、二のほかに、府省間相互の迅速かつ的確な政策調整を促すために、政策の方針の指示や、ハイレベルのもの相互において直接調整を行うことの指示などにより総合調整を行う、ちょっと長くてややこしいのですけれども、大体そんなようなことでございます。

 例えば、今申し上げましたが、ややこしい三番目ですね。これは先般、政府・与党緊急経済対策をやるといったようなときに関係省庁が集まってやるようなことですね、そういうことについての調整機能、中心的調整機能を果たす、こういうことになるわけです。

山花委員 官房長官、本題はこれぐらいなのですが、後でちょっと関連することが出てまいりますので、少々おつき合いを願いたいと思います。

 論点は変わるのですけれども、人事院の方にお伺いをしたいと思います。

 所轄は人事院ではなくて内閣官房行政改革推進事務局というところになるわけでありますけれども、そのことと関連をいたしましてお伺いしたいことがあります。

 私の世代、今私は三十代なのでありますけれども、これぐらいの世代で官庁に一回勤めたのだけれどもやめていくという人が結構身の回りにいたものですから、結構といってもそんな十人、二十人という話ではありませんが、どうも最近そういう人がふえているのかなと思っておりましたところ、きのう「公務員制度改革の大枠」というものが発表されまして、そこの中でもそうしたような文章が出てまいります。

 二ページ目のところでありますけれども、四段落目、「そして、志を疑われるような不祥事の数々に端を発した公務員バッシングが、」から始まる文章でありますけれども、下から四行目です。「最近の中央省庁における若手職員の早期退職の増加は、このようなバッシングなどに加え、」云々とあるわけでありますけれども、これは、過去に比べて相対的に最近若手職員が早期退職するという傾向があるのでしょうか。確認をしたいと思うのです。

藤原政府参考人 退職状況についてのお尋ねでございますけれども、二十歳代全体として見た場合でございますが、一般の行政事務に従事していた職員につきまして、平成四年度から十一年度までの辞職者数を見ますと、平成四年度には千四百五十六人でございましたけれども、平成十一年度には八百八十五人というふうになっております。

 ただ、これはお尋ねの中央省庁ということに限ったものではございませんので、中央省庁に限った話といたしましては、現在、人事院におきまして、今お話のございました若年退職が増加しているという指摘がありました関係上、その退職の状況や退職理由を把握する必要があるということで調査しておりまして、集計、分析に努めているところでございます。

山花委員 そうすると、少々時間がかかるということかと思いますが、その点、今後とも調査をお願いしたいと思います。

 早期退職の話と関連いたしまして、海外研修、留学の制度についてお尋ねをいたします。

 留学の制度、今後もこれを拡充すべきだという意見もある一方で、ちょっと問題があるのではないかと思われるケースがあります。

 それは、若い職員で、昔から個人的につき合っていたときに話した話ですので、こういう公の場で言うのはちょっとルール違反かもしれませんけれども、大変仕事がきつい。このレポートなどの中にも出てまいりますけれども、要するに、帰るのが夜の一時、二時になることもあれば、その分の手当が出るわけでもなくという中で、大変きついと。ただ、海外留学できるチャンスがあるかもしれないから、その留学ができるまで頑張る、留学が終わったらどうしようかななんというような声を聞いておりました。

 そして、実際に若手職員等に対するヒアリングの結果という形で公表された中にも、早期退職者の意見の中でやはりそういう意見がありまして、留学から帰国後すぐに退職する者に対しては、留学費用が税金で賄われていることにかんがみ、一定のペナルティーを科すべきである。ただ、この意見を言った、やめてしまった人ですけれども、自分も帰国後すぐにやめてしまったが、それを許す今の公務員制度は甘いと感じているという、そんなような意見を述べていたようでありますけれども、留学してから帰国後すぐ退職する人というのは、実際はどれぐらいいるのでしょうか。

藤原政府参考人 お答えいたします。

 近年のグローバル化、複雑高度化などの環境の変化に伴いまして、私ども人事院が運営しております留学制度による派遣人員も増加させてきているところでございます。

 ただ、その一方で、お話にございましたように、帰国後早い段階で公務を退職するという例も見られるところでございます。昨年十月時点でございますけれども、過去三年間に帰国した者二百八名のうち十四名が退職しております。

山花委員 二百八名のうち十四名というのは、やはり長い期間から見てということではなくて、ちょっと多いような気がするのであります。これは、昨日大枠というのが出たばかりで、今後検討されるのだと思いますけれども、この点についての歯どめというものを今後も検討していただくようにお願いをしたいと思います。

 さて、その昨日出ました大枠の前に、十二年の十二月一日に行政改革大綱というものが閣議決定をされておりまして、その中で一つ、その中の項目で人事の登用ということに関することだと思うのですが、「企画立案に関わるポストを中心に、」ということで、「司法改革と連動しつつ、隣接領域との人材の流動性を確保するための改革を行う。」という文章が出てまいります。

 司法改革と連動しつつということでありますが、ただ、きのう発表されました「公務員制度改革の大枠」という中には、司法制度改革と連動させつつという話が出てまいりません。恐らく、民間人等も登用するんだという等の中に含まれてしまったのかなという感じがいたします。

 ところで、今司法制度改革の関連で、法曹人口を年間三千人程度増加させようではないかというような話が出てきているわけであります。そういたしますと、現在行われている国家公務員の任官の試験との対比でいいますと、法曹資格を得る人は、現在は司法試験というものを通った人がその対象となっておりまして、国家公務員のいわゆるキャリアと言われる人たちは国家1種の試験を受けられているわけでありますけれども、単純に今までの受験生の感覚で見ますと、キャリアの試験の方が難しくて司法試験の方が簡単になるのかな、そんなような印象も持たざるを得ないわけであります。

 また、司法制度改革の方の議論の中で、法曹人口というものは、比較的、いわゆる弁護士などの資格を持つ人は文系の人で、弁理士などの資格は理系の人という形で分かれていたんだけれども、今後、法曹の中にも理系の知識がある人が必要ではないかというような議論もされております。

 そこで、何が言いたいかといいますと、今後なんですけれども、法曹資格を得るに当たって、国家公務員の試験とリンクさせることはできないのかなという思いがあるわけであります。いわば機構面の改革というのがハードの面であって、人材がソフトの面であるとすると、例えば役所にしばらく、何年かいた人、現在も、例えば法制局に数年、五年でしたか、いれば法曹資格を得られるとか、そういう制度がないではないですけれども、ちょっとその枠を広げるということも検討してもいいのではないかと思います。

 これは私個人の意見でありますけれども、例えば、役所に数年勤めてある程度の知識がある人に関して法曹資格を与えるというようなことを行うことによって、今回の大枠の中でも天下りの問題がちょっと書かれていますけれども、一つは、不明朗な天下りと批判されるようなことになるよりは、法曹資格を得ることによって自分たちでその後競争して生活していくということも考えられていいのではないかと思います。これは意見として聞いていただければ結構なんでありますが。

 最後に、官房長官、通告していないんで何か感想だけでも結構ですが、今申しましたように、行政改革については行政改革担当相というのがいらっしゃって、いろいろその中でも検討されているわけでありますけれども、司法制度改革のところとリンクさせて検討すべきところがあるように思われます。

 去年の十二月に閣議決定されている大綱の中には、「司法改革と連動しつつ、」というような文言もはっきりと出てくるわけであります。こういった人材の交流というものが、まだ検討が始まったばかりということで、これから調整が必要なんでしょうけれども、今後、そういった方向でもし考えることが可能であるとすると、検討に加えることができるとすると、先ほど、全体の方針に従ってであるとか、三つ言われて全部すぐ書きとめられなかったんですけれども、これはそれに当たるかどうかすぐはわかりませんけれども、調整というものがやはり必要になってくるケースなのかなと思ったんですけれども、いかがでしょうか。

福田国務大臣 いろいろと御意見承っておりまして、なかなかいいアイデアもあるな、こんなふうに思いました。

 その中に、国家公務員で、今天下りを五十三歳ぐらいで半分以上しちゃうんですね。そういう方々が弁護士になられるとか、そういう道を開くとか。政治家だってそういう議論はあったわけですね。政治家を何十年やれば、何十年というのは長過ぎるかもしれぬけれども、ある一定期間やりますと弁護士資格が与えられる。しかし、これは法曹界から反対があったがとか、そんなふうなことも聞いておりますけれども、そういうことを含めていろいろ考えていかなきゃいけないなと。

 特に、行政改革で公務員がどういうような立場になっていくか。基本的には競争原理が公務員にも取り入れられるんだというようなことで、今までと違うような事態が生ずるんだろうというように思います。そういうふうな状況の中でそういうお考えもやはり視野に入れてやっていかなければいけない。そういうことを調整する必要がある段階で、またそれはそれで考えさせていただきます。

山花委員 時間が終わりましたので、終わります。どうもありがとうございました。

横路委員長 塩田晋君。

塩田委員 自由党の塩田晋でございます。

 伊吹国家公安委員長にお伺いいたします。

 交通事故による死亡者あるいは負傷者が最近増加しておるという状況のようでございます。かつては死亡は一万数千であったこともありますが、最近は一万人前後で推移しているということでございます。負傷者につきましても百万を現に超えておるという状況のようでございます。

 戦争による死亡あるいは戦傷病者というようなことになりますと、これは大変な問題になると思うんですけれども、交通事故としては、これはもう当たり前と言うとあれですけれども、戦争による死亡あるいは傷病といったことよりもやはり関心が少ないんじゃないかというふうに思うんでございます。しかし、これを考えてみますと、日本国民の貴重な生命、身体に対する損傷であるわけでございますし、これを守るのが警察の役目であるわけでございますが、これはやはり重大な問題であると思います。

 産業災害による死亡その他の傷病、事故はかなり減っております。かつては交通安全戦争と言われ、それと並び産業安全戦争ということが言われておりましたが、労災に係る死亡事故は三千人ベースになってきておるという状況の中で、交通事故による死亡がまだまだ一万人前後ということは、非常に大きな国家的な人的損害であるというふうに考えられますし、本当に御家族を含めて関係者の大変な悲しみの中でそういった事故が起こっておるわけでございますが、これに対しましてどのような基本的態度で臨んでおられるか、これについてお伺いしたいと思います。

 後ほどまた細かく、前回も取り上げましたけれども、タクシー運転手さんの乗車中の殺人事故が、これも最近特にふえてきておるということで、非常にこれに対する対策を望む声が大きいわけですね。

 こういった問題につきまして、国家公安委員長としての基本的態度、方針をお伺いいたします。

伊吹国務大臣 二つお尋ねがあったと思いますが、まず交通事故、それから、このごろ社会面を時々にぎわします特に残忍な手口でのタクシーの強盗、両方の抑止についてのお話であったと思います。

 まず、交通事故の死者数は、先生が御指摘になりましたように一万人をはるかに超えている時期が残念ながらありましたが、このところずっと減少ぎみに来たわけですが、昨年度は残念ながら九千人をやや上回ってしまったという状況になっております。

 そこで、警察としてももちろんしっかりと取り締まらねばならないわけでございますけれども、取り締まるということだけではなくて、交通安全教育ということを徹底する。自動車を利用されて便利に移動されることになればなるほど、やはり危険の確率というのはふえてくるわけでございます。それから、高速道路をつくる、道路を整備するといえばいうほど危険が生ずる場所はふえてくるわけでございますから、便利になることをやめるわけにいかない限りは、便利なものを使うということに対しての権利を主張する限りは、当然の義務を果たしてもらうということを、やはりいろいろな場面を通じてお願いしなければならないと思います。交通安全協会、防犯協会はもちろんでございますが、文部科学省にもお願いして、交通安全教育というものを学校教育の中でやっていただくようにお願いをしているわけです。

 先般、平成十七年度までの第七次の交通安全基本計画というものをつくりまして、この中では、もちろんゼロにするのが一番望ましいわけですが、できれば、交通事故が起こってから二十四時間以内でお亡くなりになる方は八千四百人強以内におさめたいということで、警察はもちろんでございますが、内閣一体となって取り組むという努力をいたしております。

 それから、先般も酒酔い運転等を高速道路で取り締まりをしてもらったわけですが、一斉取り締まりというのは、違反をしていらっしゃらない方、善良な方をもみんなとめていろいろ事情をお伺いしなければなりません。しかし、全体の秩序を維持していくためにやむを得ぬ国民の義務だという形でこれを受けとめていただくということもまた大切なことだと思います。

 タクシーの強盗については、先生のお地元、それから外国人による強盗事件等もございます。これも取り締まりは一層徹底いたしますけれども、私はできればやはり、私も英国にいたことがありますが、全く運転席と客席を遮断するようなタクシー構造もできないものかなと思ったりして、少し検討してみろと言ったわけですが、何分、これは設備が大変高くなります。したがって、事業者の方がこれを嫌うという傾向があるのですけれども、安全な社会というのはそれなりのコストがかかるんだということを国民みんなが自覚をしながら、いいことはやりたいけれども負担は困るのだという社会は、やはり成り立たないと私は思いますので、そういうことも含めながら、事業者にも注意を促し、私たちも取り締まりを強化していきたいと思いますが、国民の皆様の御理解もちょうだいしたいと思っておりますので、先生もぜひよろしく御指導のほどをお願いいたします。

    〔委員長退席、中沢委員長代理着席〕

塩田委員 ありがとうございました。伊吹大臣の大変な意気込みにつきまして期待をするところでございます。

 やはり交通事故による死亡、負傷がないように、これはもう一万人前後、あるいは負傷に至っては百万を超えるような状況です。労働安全・災害対策もどんどん進めて、これはもう三千まで来て、ゼロに向かってやっているところでございますから、難しい状況であると思いますけれども、ぜひとも交通事故をなくするように、死傷者をゼロにするようにやはり目標を定めて、あらゆる手をひとつ尽くしていただきたい。また、警察の果たすべき役割というのは非常に大きいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 また、安全装置あるいは防護壁等につきましても、コストがかかるということはわかりますけれども、やはり人命にかえられないことでございますし、法的規制が必要であれば、死傷者ゼロを目指すためにはぜひとも法的措置を講ずるということも含めて、ひとつこれに取り組んでいただきたい、御検討いただきたい、このことを要望いたします。

 それでは、細かい問題に入りますので、局長から御答弁をお願いいたします。

 タクシー強盗殺人犯罪の防止についてお伺いしたいのでございますが、最近の事件の発生の状況について、現状と推移をまずお伺いいたします。

    〔中沢委員長代理退席、委員長着席〕

黒澤政府参考人 委員御指摘のとおり、最近各地でタクシーをねらった犯罪が目立っております。御案内のとおり、兵庫県でも少年による大変残忍なタクシー強盗殺人事件がございました。そのほかにも、平成十一年一月から私どもに報告がありましたタクシー運転手の死傷事件でございますけれども、約十件に満たないぐらいの数字でございますが、私どもも報告を受けておるところでございます。強盗致傷事件になりますとかなりの数の発生ということになるわけでございます。

 この種の犯罪は、前にも申し上げたかと思いますけれども、やはり閉ざされた空間で敢行される、そしてまた不特定の匿名性を帯びた犯人によって敢行される、こういったような特徴がございますので、一たん発生しました場合には人身に危害が及ぶおそれが大変強い。したがいまして、私どもとしましては、防止に十分意を用いていくことが不可欠だと考えておるところでございます。

 委員御指摘のとおり、昨今のタクシーをねらった凶悪な犯罪の発生状況にかんがみまして、一層この面の取り組みを強めてまいりたいと考えておる次第でございます。

塩田委員 今、殺人事件は十件という御報告でございますが、東京都内だけでも、去年からことしにかけて、ことしはなおふえているというふうに聞いておるのですが、件数は全国的にどうなっていますか。殺人といいましても、三十日以内に亡くなられるとか、そういうこともあるでしょうが、ひとつその件数についてお願いします。

黒澤政府参考人 タクシー運転手が殺害された殺人事件という統計数字はとっておりませんので、今私が申し上げましたのは、私どもが報告を受けた殺人被害の事件ということで申し上げたわけでございます。凶悪事件、強盗事件につきましては近時増加傾向にございますが、タクシー運転手にかかわる殺人事件、この数字自体は継続的に統計はとっておらないということでございまして、御理解を賜りたいと存じます。

塩田委員 これはなおお伺いしたいのですけれども、一年間に十件ですか。そんなんじゃないように見ているのですけれども、これはまた後ほど、業界等からも報告もあろうかと思いますけれども、それはそれとして、なお調べておいていただきたいと思います。

 それから、問題は予防と乗務員の安全対策でございますが、先ほど伊吹大臣からもお話がありました英国の例ですね、これは完全に助手席も含めて運転席と乗客との間は遮断されている。これをつけるのは非常にコストがかかるということですが、最近の話ではかなり安くなっておる。現に、東京では九割が運転手の後ろ側にはガラスの防護壁がつけられておるということも聞いておりますが、全国的にはどういう状況でしょうか。また、日本において、アメリカは別としまして、英国のように完全に防護するというようなことを検討されないのかどうか、お伺いいたします。

黒澤政府参考人 発生実態をよく把握、分析、検討いたしまして、今御指摘の点も検討してまいりたいと考えておりますけれども、今日本で使われております遮へい板でございますけれども、主として後ろからの首絞め、こういったものに対応するということで導入された、そういったものが中心であるわけでございますけれども、最近は刃物を使うような事例が多うございまして、刃物につきましては、遮へい板、今のような形態では対応ができない、そういった面もあろうかと思います。

 したがって、これは例えばの話でございますけれども、今英国の例がございましたけれども、完全遮へいに至らないまでも、例えば刃物を使いにくいような形態の遮へい板というようなものは考えられないのかどうか。また、もちろんコストの問題もございます。それから、その他のもろもろの問題、助手席、後ろの座席の問題、あるいは居住性、乗り心地といいますか、気分の問題とかいろいろな問題があろうかと思いますが、いずれにしましても、私どもは、運転手の安全という観点から、今御指摘いただきました点も踏まえまして、今後検討してまいりたいと考えております。

塩田委員 運転席のいすにはかなり強固な鉄板が入れられておるというふうにも聞いておりますけれども、これは義務化しているのですか。それとも、指導で、業者の判断でつけておられるのか。

 それから、先ほど言われましたように、首絞めとかそういうことには対応できるけれども、刃物、これもナイフなり包丁なりそういうものがあるわけですが、それに対してかなり強化されたガラス等で遮へいするということも考えられるし、その際のお客さんとのコミュニケーションの問題、それから料金を払うときの問題、あるいはおつりを受け渡しする、そういう問題もありますね。それから防犯灯ですか。それから、女性の場合には警察への連絡カードというのがあるのですか。連絡カードか何か持たせるようなことを業界ではやっているところもあるようですね。無線機の使用とかあるいは防犯灯ですか、あるいは後ろがよく見えるようなそういう装置、いろいろな手があると思うのですね。

 いずれにいたしましても、コストはかかっても人命にかえられませんから、必要な措置をぜひとも検討して早く手を打っていただきたい。私がこの前問題にしておる、そのまた後に起こったのですからね、兵庫県の今言われました事件なんかも。本当に早くやらないと、刻々そういう事件が起こりますから、タクシー従業員は本当に不安の中で仕事をしている。しかも、深夜が多いですね。そういったことに対しまして警察として早く有効な手を打っていただきたい。

 それを要望いたしますとともに、諸外国でどんな状況になっておるか。この間もちょっと申し上げましたけれども、今大臣言われましたように、英国は教育を徹底しておる。それでどういう防犯の効果が上がっているか。アメリカあるいはヨーロッパ大陸諸国でどうなっているのか。これは、アタッシェを警察から出しておられるでしょう。これは大使館を通じて調べれば一遍にできることでございますから。せんだっても聞いたら、外国のことはよくわかりませんというようなことだったですけれども、やはり、真剣に取り組むためには、諸外国でどういう手を打っているか、それで効果がどうなのか、そして今どんな問題を抱えてどう検討して進めようとしているのか、そういったことを真剣に外国の例も調べて早急に手を打っていただきたい、このことを要望いたします。

 続きまして、交通違反の取り締まりについてお伺いいたします。

 取り締まりの重点は、時系列的に見ますと、かなり重点は移っていっている、変わってきているというふうに思いますね。例えばスピード違反とかあるいは安全ベルトの着用の問題とか、やはり取り締まりの重点があると思うのですね。これは各都道府県によって事情が違いますから、それぞれ独自に判断してやっておられるのか、あるいは警察庁から全国的に統一して指示をしておられるのか、そのあたりの状況についてお聞きしたいと思います。

坂東政府参考人 ただいまも国家公安委員会委員長の方からも御答弁申し上げましたとおり、やはり、発生している事故の実態、それを防止するためには交通取り締まりというものも一つの重要な手段でございますので、したがいまして、取り締まりの重点というものは、やはり、事故の発生状況、そういったものを勘案しながら、かつまた地域の交通実態、そういったものを勘案しながら重点を決めているということでございます。最近の取り締まりの重点というものは、そういった交通事故に直結する悪質、危険な違反、あるいは暴走族のような取り締まり要望の強い違反というものに重点を置いているところでございます。具体的には、無免許運転、あるいは飲酒運転、あるいは著しい速度超過、あるいは暴走族等の共同危険行為、さらには悪質な駐車違反等、こういったものに重点を置いているということでございます。

 こういった重点につきましては、私ども警察庁の方で一応の取り締まり基準みたいなものを決めまして、それを受けて各都道府県におきましては、地域の交通事故の発生状況とかあるいは住民の取り締まり要望等を踏まえて具体的に取り締まり重点というものを決定いたしまして、効果的な取り締まりを推進していくといったような状況にございます。

塩田委員 交通違反の取り締まりにつきましてはいろいろな問題があると思うのですね。例えばスピード違反の場合、並行して一斉に走っておる中で、捕まるのはその中の運の悪い車だけだということもありますね。これは、技術的にいろいろ、今まで争いがあった問題についてはある程度機械化されてそういう問題は解決しておられるようですけれども、たまたま中の一つの車がひっかかるというようなこと、これからもなお検討すべき問題があろうかと思うのですね。

 それから、今言われなかった中では、信号無視、これが最近、特に都市化したところで多いと思うのですけれども、警察官は最近余り重点的にやっておられないというふうに思うのですが、これは立っておられるだけでも信号無視はとまると思うのですね。こういった問題について重点的にやられないかどうか、お伺いいたします。

坂東政府参考人 交通取り締まりに当たりましては、当然ながら、やはり取り締まられた方も納得のいくような取り締まりをしなきゃいけないということもございまして、先ほど言いましたような形で重点違反というものを定めまして、そういったものの違反に志向したような形で取り締まりを行うようにということで指導しているということでございます。

 それから、信号無視の違反の取り締まりが少ないのではないかというようなお尋ねでもございますけれども、昨年は全国で約六十万件の信号無視の違反というものを取り締まりをしているところでございます。委員御指摘のように、取り締まりはもちろん必要でございますけれども、やはり警察官が街頭で立っているということがまた信号無視の違反をするようなドライバーに対して非常な効果があるということもございますので、取り締まりに加えて、そういった街頭活動というものも今後重点的にやっていきたいというふうに考えております。

塩田委員 ぜひとも交通安全のために違反は取り締まっていただきたい、有効かつ適切に取り締まりを進めていただきたいと思います。

 今度の国会に道交法の改正が出ておるわけですね。これらも違反に対する、悪質なものについての罰則を強化するという内容のようでございますし、それが十分かどうか、足らないところがあるのじゃないかといった問題も含めて、これから法案について審議をさせていただきたいと思っております。

 以上で警察の関係は終わります。

 続きまして、経済関係について、麻生大臣に対しましてお伺いをいたします。

 せんだって森総理とともにアメリカに行かれまして、ブッシュ大統領初めアメリカの要人と重要な会談を持たれました。その成果について期待しておるところでございますけれども、安全保障上の同盟間の問題はいろいろあったと思うのですが、それはそれといたしまして、経済問題につきまして大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

 訪米の際に、日本経済について、我が国の経済は今こうだという現状の認識、状況はどのように説明されたのか、お伺いいたします。

麻生国務大臣 ブッシュ政権というのは、前の民主党の政権とは抱えているスタッフの内容も随分変わっております。財界関係、オニール初めいろいろおりましたし、リンゼーという経済担当補佐官、クライアントに日本の企業なんかを持っている弁護士がおりましたので、前、民主党のクリントン政権の前半の四年間、USTRを担当したミッキー・カンターたちとは、比較の問題ですけれども、日本経済に関する理解が随分あるとは思いましたけれども、行く前に言われておりましたのは、日本の一番の問題はデフレなんだ、これが原因なんだという話を大体よく言われている人だったと思いますが、基本的にそれは間違っています。

 今の日本の問題で、デフレーションというものは結果であって原因ではない。原因は、何といっても、先ほど午前中に話題に出ておりましたように、中沢先生やらいろいろ民主党の方から御案内が出ておった、日本の資産というものが、株で約五百五十兆、土地で約七百四、五十兆、合計一千三百兆前後と思われるものが資産価格の下落を起こしておりますので、これが結果として、個人も企業もバランスシート、貸借対照表上は過剰債務になっておりますので、これをバランスさせるためには、個人は貯金をじっと抱える、消費はしない、したがって消費は落ちる。それから企業の方も同様にバランスシートを回復しなくてはなりませんが、消費が落ちているから伸びない、だから生産物は余る、結果としてデフレーションになるので、そっちが問題なんだという点が一番理解をしてもらわねばならぬところだったのです。

 このリンゼーという人はその種のことが、最初はきょとんとした顔をしていましたけれども、しばらく説明して、ふっと顔を合わせた途端にうんと言ったので、あとは、あれがうんと言ったものだから残りもみんなうんと言わざるを得なくなって、みんなうんと言って、それでその話は、基本的には、そこが一番手間暇かかると覚悟していましたけれども、そこのところは極めてスムーズに理解をされております。

 私ども、実際問題として、バランスシートが崩れている間は少々いろいろなことをしても、企業にしても今、御存じのようにこの三月期は多分企業は極めていい決算が出ます。その決算は出ますけれども、普通それでございますと、雇用に回ってみたり賃金のアップにつながってみたり、そういうのは今まで、よく言われるダム論というのはそれですけれども、今なかなかそういう状況になりませんで、余った利益はすべて借入金の返済に充てるということになっておりまして、一九九〇年代前半、企業で年間約五十兆ぐらいのお金を銀行から借入金で賄っておられた分が、この二、三年間は大体返済超になっております。約二十兆円ぐらいの返済超になっておると思いますので、五十兆プラス二十兆、トータル七十兆、ということは、五百兆のGDPに対して一四%の資金需要が減るという状況になっておるのが今一番の問題と思っております。

 そういったところが、私どもとしてはどうするかといえば、どんどんこうなっていくわけですから、GDPを維持するということが最大の問題で、なぜ維持しなければいかぬかというと、維持しないと給与が下がってみんな売り上げが減りますので、またぞろ後向きな話、回転が悪い方に回りますので、これを維持するのが最大の問題なのであって、この十年間、一千三百兆の資金が落ちたにもかかわらず一%のGDPを維持できたのは、まさに財政が出動した結果なんだというのであって、財政出動の量の話をみんなよくされますけれども、ぜひ質の話もしてもらいたい。質とはいわゆる利回りのことで、金利というものを見てもらったら、アメリカの国債は四・何%、うちは一・何%なので、質からいったらこっちがいいに決まっておる。一%で金を借りるのと四%で金を借りるのは全然違うのだから、そういった意味ではぜひそういった状況も理解をしてもらいたいという話を申し上げた。

 あと、リンゼーと個別の会談のときにも日本の経済に関する質問は一切出ませんでしたので、そういった意味ではそこの理解が得られたのが一番大きかった。経済関係の成果として言わせていただければ、それが一番だと思っております。

塩田委員 麻生大臣におかれましては、得意の英語力を駆使して、かなり向こうの要人とは胸襟を開いて、ひざを交えてのお話し合いだったかと推測するわけでございまして、そうであるならば非常によかったと思うところでございます。

 日本の経済の現状につきましては、毎月の月例経済報告で数カ月、回復の兆しがあるとかよくなってきつつあるということを言いながら、今の時点ではそうではなくて、むしろ停滞して余り芳しくない状況だという認識だと思うのです。

 確かに物価が下がっている状況ですね。インフレの逆の動きだし、それから消費が数カ月以上にわたって低迷している。それから、生産もふえてきておったのが停滞し始めた。そして、消費と並んで大事なGNPを押し上げる設備投資が、割合調子がよかったのが、これまた最近衰え始めている、そういう兆しがある。それから、企業の利益、これも非常に昨年がよかったわけですけれども、これもちょっと陰りが見えてくるという状況の中で、日本経済はデフレ的な状況になっておるということを、アメリカはもちろん知っておるし、我々もそれは自覚して対処しなければならぬ、このように思うわけです。

 そこで、緊急経済対策の不良債権問題とか、これに効果的に対処しなければならぬという、これも日米共同コミュニケで発表されておりますね。そして、構造改革、規制緩和、撤廃等の改革を積極的に精力的に促進しなければならない、そして日本の経済の再生、また金融システムの強化を図らなければならぬ、こういう日米間の合意ができて発表された。これは結構だと思うんです。

 そこで、何か約束をしてこられたか、あるいはアメリカ側から経済についての要請が何かあったのかどうか。もちろん、話し合いの中にはあったと思うんですが、その要点についてお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 共和党の方が、経済というか経営者をやった人が多いせいもあるんだと思いますけれども、言い方は何となく、柄が悪くないという言い方はちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、民主党のときみたいにぎりぎり言ってくるような感じは全くありませんでしたのが、正直、随分違うなというのが前政権と比べての違いだったと思っております。

 それから、我々は前政権と違ってあなたたちに指示をしたり教育をしたりするつもりは全くない、我々は友人としてぜひ自分たちの話をというような言い方でスタートしましたので、最初からそういう感じでしたので、何となく、こういう感じで言ってくるという感じでもありませんでした。

 それから、アメリカ人というのは、景気のいいときはえらく景気がよくなるのですけれども、景気がよくないと途端にしゅんとなるのが大体あの人たちの特徴だと前から思いますけれども、四カ月前にあのオニールという人たちが就任したときのアメリカの景気と今の状況は全然違いますので、よく言えば少し謙虚になってきているなというのが実感だったんです。

 少なくとも今の状況の中で、日本の不良債権の話やら何やらというのがよく新聞に出ていますけれども、これはその前の段階で、ウォールストリート・ジャーナルだか何だかで、アメリカのナスダックの株が落ちている理由は日本の邦銀のせいなんだという意見が随分一部出ていたんです。それの影響で大統領としては言わざるを得なくなってくるだろうなと思っていましたら、その種の話が出たんです。

 しかし、現在、御存じのように、日本はあの翌日から株はいきなり九百円上がって、きょうまた二百幾ら上がっていると思いますが、そういった意味で、上がっているけれどもアメリカの株は下がっているわけですから、全然それは関係なかったということを証明している。数字の上でそうなっておるとは思いますけれども、いずれにしても日本の経済構造改革をということでいろいろ話が向こうから出ておりましたので、それは我々としては当然やらなくちゃいけないと思っておりましたので、当然のこととしてその話をしております。

 ただ、先ほど民主党の先生からのお話にもあっておりましたけれども、少なくともバッドデットという言葉、不良債権という言葉、これをいついつまでにとかそういう話では出てきたわけでは全くありません。

 ただ、私どもとして注意しておかなければいけませんのは、今規制緩和の話をしておられましたけれども、不良債権が直ったら経済はよくなるか。経済はそんな単純なものじゃございませんので、日本としては、不良債権は最低限、いわゆる構造改革をやってまいりますと、やはり今世界じゅうで競争する時代ですので、日本としても競争政策、いわゆる日本の国際競争力というのは一九八〇年代から九〇年代の初めぐらいまでは世界一だったんですけれども、今この二、三年、ほぼ十四位から十七位ぐらいまで国際競争力は落ちていると思います。これは国際的な機関で言われるところですが、この国際競争力が落ちているということがゆゆしき問題なのであって、なぜ落ちているかといえば、そこが多分、日本が今の時代の中にあって、時代に合わない規制があってみたり、そういった問題が多いんだ。例えば税制を含めましてそういった問題も考えなければいかぬところなんであります。

 昨日の閣議でも、緊急経済対策に当たってその取りまとめを総理から命じられておりますので、早急にこの問題を含めて、短期的な問題と中長期的な問題と二つ分けてやらねばならぬとは思っておりますけれども、そういう問題を含めてこの問題に取り組んでいかねばならぬと思っておりまして、アメリカの言ってきておるところは、間違っているところは修正していると思いますけれども、向こうの言っているところと私どもと合っているところに関しては、私ども積極的に対応していかねばならぬと思っております。

塩田委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので、まだ幾つもお尋ねしたいことはあるんですけれども、後ほどにさせていただきたいと思います。

 ただ二つだけ、答えは結構でございますが、申し上げたいと思いますのは、緊急経済対策ですね。これは、予算が通り、関連法案が通っていく中で、それだけでやれない、税制改革を含めましてかなりの思い切ったことを、これはやはり法律なり予算の措置を伴うものだと思うんですね。これについて本当にどうされるのか、これを聞きたかったんですが、これは問題だけ提起しておきます。

 それから財政改革の問題、これも大きい問題なんですが、アメリカから見て、日本はアメリカにかなり債権を持っていますよね。これの動きで、アメリカは本当に、前の橋本総理がちょっと一言言われただけで大騒ぎになったことがありましたね。それほど関係が深い、微妙なところをつかんでいるわけですね。それともう一つは、日本は六百六十六兆円もの国、地方を含めての債務を抱えていると言われますけれども、外国から見ますと、例えば年金関係で二百兆円積んでいる。黒字ですね。それから、郵便貯金にしても二百兆あるとか、ずっと合わせると大体六百ぐらいあるじゃないかというような見方もあるんじゃないかと思うんですね。しかも、それは外国から借りているんじゃなしに、日本国民が持っているわけですからね。だから、そういった問題についてまた改めて議論をさせていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

横路委員長 河合正智君。

河合委員 公明党の河合正智でございます。

 三月十三日、アメリカの株安を受けまして東証は全面安、日経平均株価は十六年ぶりに一万二千円台の割れ。三月十五日、ニューヨーク株式全面安、一万ドル割れ。三月十六日、関係閣僚会議で麻生大臣が日本経済がデフレ状態にあると認定されました。ロンドン為替市場で円は急落しまして、一ドルは百二十三円台に入りました。三月十九日、速水日銀総裁は初の量的緩和を発表されまして、事実上のゼロ金利へ復帰したわけでございます。三月二十日、日米首脳会談、FRBが〇・五%の利下げをその直後に決定したところでございます。三月二十一日、東証全面高、終わり値で一万三千円台を回復いたしました。

 こういう状況のもとで、日米首脳会談に、内閣総理大臣からの御指示によりまして麻生経済財政政策担当大臣が随行されました。この意味はまことに重いと私は受けとめております。

 そこで、日米首脳会談の会談内容についてお伺いさせていただきたいと存じますけれども、まずその前提として、不良債権というのは一体なぜ生じたのか、そしてバブルというのはなぜ日本で生じたのかにつきまして、私の見解を先に申し述べまして、大臣の御所見を賜りたいと思います。

 一九八四年の六月に、円転換規制の撤廃という金融自由化が行われました。その当時、日本は五百六十億ドルという黒字でございましたが、一方アメリカは双子の赤字、財政赤字と貿易赤字を抱えておりました。そうした中、一九八五年九月二十二日にプラザ合意が行われました。中曽根内閣のときでございます。この合意は、実は為替市場への介入と同時に政策協調の合意もなされていたということが後日検証されております。それが内需拡大要求となりまして、具体的には、宮澤大蔵大臣のカウンターパートナーでございましたべーカー財務長官から、円高圧力をてこにしました減税と公共投資、公定歩合の引き下げ要求という強い要求となりました。

 当時の日本の政権が選択しましたのは、史上最低の二・五%という金利下げでございました。これが一気にマネーは有効な投資先である土地と株に向かって日本の国のバブルが生じ、そして崩壊したと私は認識いたしております。この点につきましての大臣の御見解を賜りたいと思います。

 さらに、あわせて、デフレの認識について先ほど大臣お述べになっておりますけれども、景気の現況についての認識、そして日本において不良債権処理がどうしてこのようにおくれてしまったのか、そのことについての御所見を賜れればと存じます。

麻生国務大臣 今のを全部短時間でしゃべるのは物すごくあれなんですが、一九八五年のプラザ合意以後、円が一挙に二百四十円から百二十円にはね上がりまして、ほとんどの企業は海外に対しての輸出が倍かかることになりますので、御自分で国内生産を出して海外に輸出することはほぼ不可能ということになり、輸出立国と言われておりました日本はこれで終わったと、当時ウォールストリート・ジャーナルに書かれたものであります。

 そういう状況の中にあって各企業はどうされたかというと、国際的に見れば資産価値は倍になったわけですから、一斉にその倍になったお金を持って海外に出られて、特に東南アジアで工場をつくり、技術を移転し、そして製品をつくって第三国経由で海外に輸出というのを徹底的にされていったというところまでは、私は方向としては間違っていなかったと思うのです。

 傍ら、前川リポートというのがあったのを御記憶かと思いますが、あのときに内需拡大ということを、アメリカの要求が、先ほど言われましたように猛烈な勢いで赤字が発生しておりましたので、えらい騒ぎということで何とかしてくれということから、今言われたように内需ということになったのですが、なかなか内需の転換というものが、今あのような状況に仮になったとすれば、多分規制の緩和が進んでいろいろな意味で国内でいろいろなものが変わっていったんだと思いますが、当時はまだその種の意識はございませんでしたので、とにかく余った金の行き場所がすぐ出てくるというのは株と土地ということだったと思います。

 そういった意味では、土地を買う、買うから上がる、上がるからまた買うというのでずっと回っていったので、当時いろいろな方々が、この土地を買ってください、金は私が全部貸します、そのかわりおたくで買ってそして三カ月したらその値段に二割つけてまた買いますなんということが、実にどこでもと言っていいぐらいあちこちで行われて、銀行屋さんが地面師、地面師というのは不動産屋みたいなイメージになって、当時の銀行の中でも、名前を出すといかがなものかと思いますが、静岡銀行を初め、うちは不動産をやっているのではないといって断固はねつけた見識のある銀行は今でも極めて健全だと思いますが、そのときそのあれに乗られた方々は多額の不良資産を抱えられたということに結果としてはなっております。

 私は、それはいいときもあれば悪いときもあるのは当たり前の話なので、そこそこの見識が要るんだ、いつも経営者としてはそうあるべきだと思いますが、その当時は、みんなが行くからおれも行くというので多分そうなったんだと思いますが、結果としてはじけた結果今日になった。多分、バブルを一言で物すごく短く申し上げれば、そこが一番大きな理由だったと思っております。

 では、アメリカはどうなったかといえば、それによってその間うまくいったかというと、実はそんな簡単にうまくいきませんで、アメリカのドルは百二十円からもっと下がりまして、一九九四年四月の十九日はたしか一ドル瞬間風速七十九円九十五銭、終わり値が八十円ゼロゼロで、ちょうどそこまでがアメリカが最低に落ち込んだときだと思っております。

 三百六十円から比べて実に四・五分の一におっこったわけですから、これはアメリカにとっては大問題だったと思いますが、しかし、その後約十年間かけてアメリカは、製品をつくる工業社会は勝てない、いわゆる知価社会とかソフトとか情報化社会というものに全部切りかえていったんだと思っております。それを多分現実的に助けたのがいわゆる情報技術というものの進歩でありまして、その結果それができるようになって、いろいろな意味でアメリカというものは全然別の経済をつくり上げて、今そこに至っておるというのが多分今の現状です。

 私は、それがいいか悪いかはまた別問題なんだと思っています。物をつくるということが忘れられて長く経済というのはもつかなというのは、正直私の半分の常識の方は、ちょっとそれはどうかなと思わせているのが一部あるのですが、いずれにいたしましても、今、日本の中で、そういった状況についていって対応し切ったところといけないところがあります。そういった中で対応をうまくし切っていった会社、立派にやっておられる会社も実はいっぱいあるわけで、その結果、経常利益が極めて伸びておられる会社もあるのですが、対応し切れなかった、すなわち生産性が低いままに置いておかれた会社というのが一部にまたあるわけです。

 業界の中でも企業によってまた少し違うのですが、業界ごとに言いますと、生産性の低いところはついていけなくなって、結果としてそこのところは、資金繰りをするに当たりましてお金を土地を担保に借りておられる。いわゆる土地本位制みたいな形に日本の銀行はやっておりますし、銀行はお金を貸すときに、審査能力からいくと、そのプロジェクトとかその企画自体なりやっておられる社長さん、中沢さんなら中沢さんという社長が有能だからとか、その人のやっているプロジェクトはいいからといって貸すより、中沢さんの持っておられる土地に金を貸す、その会社の持っている、中沢工業の持っている土地に金を貸すということを長い間やってきました。

 なぜそれがうまくいったかというと、土地が上がっていたからです。上がっていたから、仮に倒れても、じっと持っておきさえすればその土地が上がるから償却できるということになっていたんですが、御存じのように土地が下がるとこれはなかなかそういうようなわけにいかなくなって、引当金で落として持っていたものがどんどん下がっていくものですから、さらに引当金を出さなきゃいかぬ、そのために中沢さんのところに増し担保を要求する、追い担保を持ってくるということになるとだんだんだんだんというのが多分今の状況で、そのうち土地が上がるさということになった一番大きな背景はこれだと思っております。

 そこのところがなかなかもう一つ踏み切れなかったのは、やはり一九九〇年代後半から、アメリカの景気は九六年からうわっと上がってきたものですから、そのうちまた日本もよくなるんじゃないかなという安易な気持ちがあったことは否めないと思いますが、幸いにして、幸いにしてという言い方がいかがなものかと思いますけれども、アメリカにもそう言ったので幸いにしてと申し上げた。株がパンクしてくれたおかげでうちもやっとおれたちでやらにゃいかぬという気になったので、アメリカの株の暴落に感謝していると言ったら、ほかの人がちょっとおまえ言い過ぎだと言われたんですけれども、言ってしまったら、まことに面と向かってそんなこと言われることは余りないんだと思いますが、向こうはげらげら笑って、終わった後、あれが一番痛かったという表現をしていましたけれども、私どもは率直にそう思っております。

 アメリカがなったおかげで、日本の経営者のほとんどはこれはいよいよやらにゃいかぬという気になられて、僕は、いわゆる構造改革とか不良資産の償却とかいうのが一挙にこのところ話題に上がってきて、皆さんこれは何とかせにゃいかぬという気になってきておられる背景だと思いますので、なかなかやる気になられるまでは日本人は大変なんですけれども、やる気になったら、みんなやる時代になったらおれもやらにゃいかぬという気になる点に関しては私はそうだと思っております。

 アメリカと違って、今言われましたように資産は持っておりますし、対外純資産というものは世界一純資産を持っている国でもありますし、いわゆる経常収支も、アメリカは四千億ドル、四千百億ドルぐらいの赤だと思いますが、日本は一千二百から一千四百ぐらいの黒になりますので、そういった意味ではアメリカに比べれば誇れるところはいっぱいあるんだと思っております。決して悲観をしているわけではありませんけれども、今その気になっていただくところが一番問題だと思いますので、構造改革を一部伴いますので、その分は痛みが出てくるだろうと思っております。

河合委員 大臣のまことに機知に富んだ会談の内容の御報告をお受けいたしました。

 ただ私は、両政府とも、現在の日本の経済状態というのは、戦後最大の危機とさえ言える状況にあるという認識だったのではなかったかと思います。それは、資産デフレのもとで不良債権を完全処理していきますと、それはさらにデフレを加速する、こういう二重のジレンマに今陥っているからでございます。

 そこで、不良債権の抜本的な処理と同時に、日銀が量的緩和を決定しましたことは、デフレ圧力を吸収するという意味においてまことに有効と私は考えております。日銀はさきに公定歩合を〇・二五%へ引き下げましたし、また日米首脳会談直後、ただいま申し上げましたように、米国は、FRBが連邦公開市場委員会で公定歩合を〇・五%引き下げいたしました。これは、日米の政策協調が実現したこととして、私は歓迎したいと思っているわけでございます。

 ところで、日銀の量的緩和によりまして為替レートは円安となります。円安は円ベースの輸出企業の収益を高めます。そして、キャッシュフローの増加に向かうということは、これは設備投資要因となっていくところでございますけれども、この日米の金融緩和という政策協調の中で、これはデフレ圧力吸収という目的のためという限定つきでございますけれども、そのためになされました日本の円安政策というものを米国はどのように受けとめたのか。これは、単に日米二国間の問題ではない。むしろ、日本が日本発の世界恐慌の、金融恐慌の引き金を引かないためになし得る非常に数少ない手段の中の一つであると私は思っておりますけれども、そのことについて米国は理解を示したのかどうか。いかがでございましょうか。

麻生国務大臣 これも、就任直後のオニール財務大臣の発言は円安ということを言っていたのですが、今回の日米首脳会談の中には、共同宣言の中で円安という言葉が削除されておりますのは、円安になったらえらいことになるなという実態があちらもやっとわかったのだと思っておりますので、あれは急遽削除になりました。

 御存じのように、円安になるということは、従来ですと、これは間違いなく貿易格差が、いわゆる向こうの赤がふえることを意味しまして、向こうは今中国に対しても猛烈な赤字で、日本よりはるかに中国の赤字の方が今大きくなっていると思います。そういった意味では、この円安を容認ということは、自分の貿易収支の赤字を容認することになりかねないというのは、これはアメリカの経済にとってはいいことはないということは、ああいう自分で商売した人はわかります。アルコアという会社の社長だか会長だかをしていましたのでよくわかりますので、それはもう断固削除ということになって、結論はそれは外れておりますので、円安を容認したということではない。まず、基本的には、共同宣言に載らないところもそういうところが背景だと思っております。

 加えて、この日銀がやった政策を、リンゼーという人と個別の会談のときに、リンゼーの方からの最初の質問が、前の日、正確にはその日の現地時間の午前四時半に出ましたので、私もその内容を四時半にいただいたのですが、その内容を説明してくれと。これがローレンス・リンゼーの最初の質問であったので、私の方からそれをきちんと説明させていただいた後は、じっと聞いていて、スプレンディッド、すばらしいと言って終わったのです。

 それは何がすばらしいかというと、やはりデフレがとまってゼロに、いわゆる消費者物価がプラス・マイナス・ゼロになるところまで量的に緩和しますと言ったところが一番の影響が出てきたんだと思いますが、結果として翌日九百円株価が上がっておりますのは、そこのところが大きかったとは思います。

 では、それがアメリカにとってどうだったかといえば、あの時点をもってアメリカの株価はそのまま下がりましたけれども、こちらの方は、きょうまた百六十何円上がっていると思いますが、間違いなく株が、ニューヨークの株と東証の株とは、完全にその時点、三月二十一日以降、離れてしまっておりますので、その点は成果が上がったと思っております。

 気がついておられると思いますが、プロがそう見たかといえば、私は、プロはそんなぐあいに甘くないということを知っておりますから、債券の方のあれは全然上がらず、債券の金利は逆に上昇をいたしております。その意味では、量的緩和が直ちによくなるという思いは、トレーダーとかそういったプロの人たちは皆そう思いませんから、御存じのように、会社に金が来ても借り手がないというのが一番問題ですから、その意味では、直ちによくなるはずがないと思っておられるプロの方々はそんな簡単に動かず、じっと債券市場の方が今大事かなと思って、私どもとしてはそう思って見ておりますので、円安が即そのままというわけにはいかないだろうと思っております。

 いずれにいたしましても、これはいろいろなことをやらなければならぬということははっきりいたしておりまして、円安ですべて解決する時代ではないと思っております。

河合委員 ただいまの大臣のお話の中で、直前の日銀の量的緩和について詳しく説明された大臣に対して、ずっと注目した上で、リンゼーさんがスプレンディッドと発言されたということは、非常に私は重く受けとめさせていただきたいと存じます。

 さて、不良債権の直接償却についてお伺いさせていただきたいと思います。

 資産デフレの最大要因であります不良債権の問題でございますが、九二年度以降の処理累計額は六十八兆円、昨年九月期の問題債権は約六十四兆円と公表されております。そこで、不良債権の直接償却について、経済財政担当大臣としましては、ある意味で一国の国家戦略の企画立案に属する部分だと私は思いますけれども、どのような方針で行おうとされているのでしょうか、お伺いさせていただきます。

麻生国務大臣 河合先生、土地の問題というのは非常に根が深い問題だと思いまして、今直接償却という言葉を使われたのですが、これは日本の経済用語というか法律用語では、直接償却というのは、早い話が倒産せぬと直接償却できないのでは、というので、最近オフバランス化という、日本語だか英語だかわからぬ経済用語が今はやっておりますけれども、オフバランス化をさせていくということを今やろうといたしております。

 その内容は何かといえば、少なくとも企業が抱えております不良資産と言われるものにつきましては、簡単に言えば、引当金でやっている部分を、これはさらにまた下がっていくことを考えれば、いいかげんにしてもらいたいというのが向こう側、向こう側というのはアメリカ側の方です。アメリカ側の気持ちなものですから、アメリカも土地の値段が下がるところまで下がったと思っているからそう言ってきているという部分がありますので、それは昔とは随分変わったな、数年前とは全然違ったなと思って、やっとわかったかと言いたくなるときがなきにしもあらずなんですが、そういう感じになってきております。

 ただし、土地というのは、グローバル化される、グローバライゼーション、普遍化という言葉がよく使われますけれども、経済がグローバル化されて垣根がどんどんなくなりますと、結果として土地の値段も、ニューヨークの値段もロンドンの値段も日本の値段も、ビジネス街に関して言わせていただければ、その便利さによって土地の値段が皆同じになってくるというのは当然のことでして、今日本において、例えば東京の値段、土地が下がっている最大の理由は、今いろいろな意味で土地、不良資産の話が出ますけれども、この数年間、東京で大きな国際会議が開かれない最大の理由は成田空港が遠いからだ、私はこれは一番大きな理由だと思っております。そういった意味では、福岡は逆に十五分で市内に入れますものですから、福岡の場合は国際会議がやたら多いのです。

 そういった意味では、明らかにそういったインフラストラクチャーと言われる社会施設の充実というものがむしろ大事なんであって、むしろ東京にそういうようなものを積極的に考えるべきだと思っております。少なくとも今金利がこれだけ安いわけですから、政府として仮に一兆円の金を突っ込んでも、年間払う金利はたったの百億ちょっとでできるわけですから、そういった意味ではむしろ、東京の都市政策とかいったものを含めまして、道路とか空港とか大深度の地下の道路とかいろいろなそういったようなものをつくって東京の都市としての魅力を引き上げていくことの方が大事なのではないか、私は基本的にはそう思っております。

 そういった意味では、政府・与党の緊急経済対策本部でもいろいろな案が出ております中で、容積率の変更とか建ぺい率だとかいろいろなものも含めまして、今これは全体的にもう少し考えていかなければいかぬ問題だと思っておりますが、一部税制をやらにゃいかぬところも出てまいりますので、土地を政府に売っていただくことによって、虫食っているところが仮にきれいになればその土地の値段は上がるわけですから、そういった意味では、極端なことを言えば、協力していただく方々には無税でもいいとか、どうしても売らないのだったら貸してください、そのかわり相続税は要らないとか、やり方はいろいろあるのだと思いますけれども、やはり由緒正しく持っておられる方々とこれと一緒になると、ちょっと話が込み入ります。これというと表現が難しいのですけれども、そういう方々の話と一緒になるとまたちょっと、これはきちんと分けて話をしないとおかしなことになりますので、そういったことでいきますと、強制収用がいろいろな意味できちんとできるとかそういったようなものを考えて、今、都市というものをきちんとしていくのはすごく大事なところだと思っております。

 札幌オリンピックを経た後のあの札幌のきれいになり方というのは、物すごい魅力のある町に変貌したのは事実でありますので、そういった意味では、都市の持っております魅力というものは、今逆にこういうときこそ大いに、大きな絵をかいてやられるべきかな。こんなことを言うと、おまえ、東京の都市圏移転をやろうとしている自民党がおかしいんじゃないかという話になるのだとは思いますけれども、私は、個人的なことを言わせていただければ、そういうことを含めて考えるべきときだと思っております。

河合委員 これは非常に前途に希望の持てる大臣の御発言でございますけれども、ただいまの、虫食いという表現を使われましたということは、これは不良債権の担保不動産の売却等を想定されているわけでございますか。確認させていただきます。

麻生国務大臣 この土地の中にここだけ中沢先生の土地があるとかここに河合さんの土地があるから、これ全体としては開発できないから不良資産、これがなければ、きれいな土地なら一挙に土地の値段は上がるわけです。そういった意味では、そこらのところが公共施設に、例えば道路に全部使えるとか、都市の再生のために、この間広島でも地震等々ございましたけれども、避難する場所が東京は極端に限られているとかそういったものを含めまして、都市としてはきちっとした絵をかいて対応できるというのであれば、そういったことを含めて対策を考えるべきだということを申し上げております。

河合委員 私は、実は一九九八年、バブルが崩壊して六年後でございますか、スウェーデンとオランダを訪問いたしました。スウェーデンは一九九二年のバブル崩壊直後、GDPの四%ですから、日本円に換算しますと二十兆円でしょうか、を投入しまして銀行を国有化して、私が訪れましたときは既に経済は回復基調でございました。

 一方、オランダの方はバブルにも侵されておりませんでした。それは、十七世紀ですか、チューリップのバブルの教訓が数世紀引き継がれたとは考えにくいのですけれども、しかし、オランダの中央銀行でこのようにおっしゃったことが非常に印象に残っております。それは、オランダという国は通商国家、したがって国民性が、もうかることだったら何でもやるという国民性ではありませんということと、それから小学校に入ったときのプレゼントで預金口座を持たせます、リスクというものがあり、それをどのように管理するかということを小学校に入ったときのプレゼントにするということをお聞きしまして、非常に感銘を受けました。そこで、中央銀行は既に一貫して各銀行をモニターしておりまして、是正勧告等も出しております。

 この知恵を学んだときに、私は、失われた十年というものは最後の段階に来ている。そのときのこの国の再生の企画立案を練る立場にいらっしゃるのが麻生大臣だ。その大臣の、日米首脳会談に同席されたという歴史的な事実を踏まえましての御決意をお伺いしまして、終わらせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 バブルという言葉が経済で最初にできましたのが十七世紀のオランダのチューリップ事件、その次は十八世紀のイギリスの南海泡沫事件というのが大体ヨーロッパでは一番有名なバブルだと思います。

 それに学んだというわけでもないのかもしれませんが、少なくともオランダは、あのときに土地も随分関係しましたので、アムステルダムの市内は、今でも土地は一切、個人所有者はあそこはゼロだと思います。全部、五十年契約とか百年契約で今土地は借りるようになっておられるのだと思います。

 いろいろな意味で、日本も土地に関する考え方が随分また変わってくるのだと思いますね。アメリカから日本に、こっちが悪くなったときにわっと入ってきたときに、更地は少なくとも最後まで一坪も売れておりません。アメリカが買ったのは皆、月で建物込みで幾ら、その建物についている、マンションで収益率何%、自分の借りた金を突っ込んで金利プラス幾らもうかるという計算だけでしておりますので、大京観光のマンションを買ったりはいたしましたけれども、更地は全く買っていないと思います。

 確かに、ニューヨークで更地幾らという話は一切聞いたことがありませんから、そういった意味では東京も、坪幾らという発想は時代とともに、土地に建物が建ってくると変わっていって、このビル込みで土地幾らという話に多分なっていくだろう。私どももそうは思っておりますけれども、今言われたように、これまで私どもは長い間一坪幾らというのをやってきておりますので、その身にしみついたものが地すべり的に変わるというのには、これはかなり大きなショックとかそういったものが必要なのだとは思います。

 少なくとも、今回、八五年以降の山が高かった分だけ谷も深かったということになっていると思いますが、どうにか今底を打ちつつあるような感じのところまでは来たと思います。あとは前に進もうという意欲が出てくると、隣も走り始めるとこっちも走り始めるというところまでは来つつあると思いますので、そこらのところを踏まえて経済政策については頑張りたいと思っております。

河合委員 大変ありがとうございました。以上で終わります。

横路委員長 松本善明君。

松本(善)委員 まず、官房長官に報償費の問題を伺います。

 報償費を含めて無修正で二〇〇一年度予算が成立いたしましたけれども、もちろん、これで終わりではありません。むしろこれからが問題だと私は思うぐらいであります。

 松尾室長の逮捕で、全容を解明するという問題はまた一つ大きな問題になります。きょうも与党議員が、やはりこれは組織的な犯罪ではないかという疑問を持ちながら質問されておりましたけれども、全国紙の社説でも、個人の犯罪に終わらせるな、構造的な腐敗だ、疑惑の本質に迫れ、政府は被害者では済まされない、共犯者は流用金を返せ、なかなか厳しいものでありますが、やはり国民の怒りを反映しているのだと思います。

 疑惑につきましては、財政法違反の外務省からの上納とか私的な流用は、松尾個人にとどまらず、恒常的に飲食や生活費に使われたという報道など、これは無数であります。党略的流用は、外遊時の国会議員のせんべつ、国会対策、選挙費用など極めて広範多岐で、しかも長期にわたっている。

 普通なら起こり得ない犯罪が可能だったというその仕組みの解明ということが今やはり国民から求められていると思います。それを解明した上で、減額補正とか、これはそのままで済ますわけには絶対いかない性質のものだと思うのです。それは、国民の血税の使途という政治の根本問題にかかわるからであります。

 私は、この質問について、きょうの官房長官の発言は極めて重大だったと思います。報償費についての使途が言えないという点で、中沢委員が質問しているその答弁で、大体、こういう制度自身が、これは日本だけでない、日本の特殊事情ということではなくて、どの国においても大体認められている制度でございまして、その例を挙げることもないと思いますけれども、欧米先進国、そういうところにおいてもしかるべき会計検査の必要のない費用というものは計上されているわけでございます。

 これは、もう憲法九十条の完全な無視ですよ。そういう考えで官房長官はやってきた、このいわば本心がさらけ出された。

 言うまでもありませんが、憲法九十条、これはすべての会計検査が行われると。「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。」このすべてというところがこの憲法の重要な問題ですよ。戦前の会計検査院法は二十三条で、政府の機密費にかかわる計算は会計検査院において検査を行う限りにあらずとなっていた。

 私は、報償費を扱う官房長官の資格にかかわるような重大な発言だと思いますよ。こういう考え方でずっとやってきたから、使途も言えない、乱脈きわまりないことに血税が使われている、そういう事態じゃないか。官房長官、この発言についてどう思います。(福田国務大臣「私の発言」と呼ぶ)そうです。あなた自身の発言、これでいいと思っているのか。

福田国務大臣 私は、別に悪いことを言ったと思ってはおりません。事実を申し上げたということであります。

 この内閣官房の報償費については、内政、外交を円滑に進めるために機動的に使用するものであり、またその支出の結果、内政、外交に影響を与えるというようなことがあってはいけないので、そもそもこの使途については明らかにしない、こういうようなことであります。このことは官房長官の判断でやるということでございますので、官房長官の判断の根拠、これは大変重大だと思うのですよ。

 そういう意味におきまして、これは厳正に使用するということは当然でありますけれども、また同時に、効率的に、効果的に運用するということを求められているわけでございまして、歴代の官房長官はそういう趣旨にのっとってやってこられたもの、こういうふうに考えております。もちろん、私もそういう趣旨にのっとってやっておるつもりでございます。

松本(善)委員 では、確認しますが、いわゆる報償費というのは会計検査の必要のない費用だ、この発言が当然のことを言った、こういうことですか。はっきり伺います。

福田国務大臣 先ほど申しましたのは、使途について会計検査を受けない、そういうことはある、こういう趣旨で申し上げたわけでありまして、そういうことはほかの国でも認められているということであります。使途ですよ。しかし、報償費そのものについては、会計検査の手続を経ているわけであります。

松本(善)委員 使途とそのものとを区別すると言われるけれども、それは結局同じことですよ。報償費の使途について、これは会計検査が必要がないということならば、それは報償費そのものがそうですよ。それは、あなたは会計検査の必要のない費用とさっきはっきり言ったんだよ。使途とは言わなかった。私は、本当にそれは重大なことだと思いますよ。それを撤回しないで維持していくというなら、これはまたもう一つ重大なことだと思いますよ。もう一回確かめます。

福田国務大臣 先ほど申しました海外の例、それについて検査を受けていないものも認められているということを申し上げたわけでありまして、日本の場合には、先ほどほかの委員の御質問に対して会計検査院からお答えしているのは、日本の報償費については使途についても会計検査を受けている、こういうふうに申し述べております。

松本(善)委員 そうですよ。会計検査院が使途についても検査をしていないということは重大な問題。だけれども、事実上やっていないことも事実です。それは、戦後一度も報償費の使途に異議を唱えたことはないのですよ。報道では、この会計検査院の検査の仕方が今のやり方を保障しているんだと。今度の決算で会計検査院がどういうふうにやるかわかりませんけれども、これはもう会計検査院の存在を問われるものだと思います。

 会計検査院も検査していると言っているじゃないですか。使途についても検査していると言っているじゃないですか。あなたの言っているのは、会計検査の必要のない費用だと言ったのですよ。それでいいと言うのかどうか、もう一回はっきりそのことを、言葉どおり、会計検査の必要のない費用ということを、この制度自体について、外国の制度を紹介しながら言ったのですよ。逃げないではっきり、間違っているなら間違っているで言いなさいよ。

福田国務大臣 先ほどちょっと私の頭にあったのは、フランスの例があったものですから、それで、あそこも金額的にも報償費の金額と似通っているものですからその例が出てしまった、こういうことでございまして、フランスは……(松本(善)委員「フランスじゃない、日本ですよ」と呼ぶ)日本は、ですから、使途については会計検査院の検査も受けているということで、これは先ほど申し上げたとおりです。

松本(善)委員 それじゃ違うじゃないですか。会計検査の必要のない費用と言ったのは、あなたは、日本について、外国のことを言いながらそういう文脈で言っているのですよ。それは違っているなら違うということをちゃんと言ったらどうですか。あなたのさっき言ったのと違いますよ。ちゃんと会計検査が必要なんでしょう、日本の報償費は。

福田国務大臣 私、先ほどその辺、その言い方はどういうふうに言ったかちょっとよく覚えていないのですけれども、繰り返しますけれども、三度目ですけれども、日本では会計検査を受けております。日本では、使途について会計検査を受けております。

松本(善)委員 そうでしょう。では、違っているじゃない。

 だから私は、本音が出たということ、そういう認識でやっているからでたらめなことが起こっているのですよ。このこと自体がこういうような流用が行われている原因の大きな一つです。私は……(福田国務大臣「考え過ぎ」と呼ぶ)いや、それはそうでしょう。だって言ったんだもの。今、事実上訂正したけれども、あなたは言ったのですよ。本心がぽろっと出てしまったのですよ。(福田国務大臣「そんなことはない」と呼ぶ)いや、それはそうだよ。議事録にちゃんと残っているのです。

 それで、私はやはりこの仕組みを解明することが非常に重要なんだと思います。松尾室長が詐欺罪で逮捕されていますけれども、被害者は内閣官房だと思いますね。国民の疑惑は、果たして内閣官房はだまされていたのだろうか、こういうことになります。これは、関係者の暗黙の了解なしには不可能な犯行なんです。官邸が黙認していたという報道は無数にあります。この仕組みについて、やはり官邸が徹底的に調査をして明らかにする責任があるというふうに思いませんか、官房長官。

福田国務大臣 これはそもそも、総理大臣が出張する、外国訪問するというときに、詳細な日程が決まるのが、本当に二、三日前ということが多いんですよ。ほとんどそういうことでございまして、慌ただしい中に、それも随員が何人行くかわからない。これも寸前にならなければわからない。また、差しかえというか入れかえも起こるというような実情がございます。

 そういう実情の中でこういうだれが行くかというような情報については、外務省で全部把握しているわけですね。外務省がすべての一時的な情報を把握して、そしてそこでもって一人一人がどこに行って何泊し、どこに泊まるかということも把握するわけでございますので、そこで外務省にそういう業務をお願いしたということなんですよ。

 結果として、だまされたという言葉、ございましたけれども、詐取されたということはだまされたということなんで、それは、だます方は悪いけれども、だまされる方も悪いというように私は思います、率直に言いまして。ですから、そのことの責任は感じていますけれども、しかし、そういうような外務省にお願いをしないとできないということで行われてきたことでありますので、その外務省を信用してやったということで御理解をいただきたいと思います。

松本(善)委員 外務省を信用してやったといったら、それじゃ、だまされたことじゃないですよ、黙認ですよ、それは。外務省の方がだまされた。

 これは報道ですが、ヨーロッパでも東南アジアでも、ホテル代一泊四百六十ドルで請求していたと。これをチェックできないなんというのは、それは間抜けですよ。そんなことはあり得ない。

 警察庁の松尾逮捕の容疑事実についての説明を受けましたけれども、それによると、平成九年十月下旬ごろと平成十年十二月上旬ごろ及び平成十一年二月中旬ごろ、それぞれ詐取金額の請求を首席内閣参事官に行ったということであります。これは調べればだれかというのはわかりますけれども、このときの首席内閣参事官はだれか、官房長官はだれか、お答えいただきたいと思います。

福田国務大臣 平成九年十月下旬の官房長官は村岡兼造氏、首席内閣参事官は太田義武氏、平成十年十二月上旬及び平成十一年二月中旬の官房長官は野中広務氏、首席内閣参事官は江利川毅氏であります。

松本(善)委員 太田氏は現在の環境省の事務次官ですね。江利川さんは現在の内閣府の官房長ですね。こういう人たちがだまされるということはないですよ。これは黙認ですよ。外務省に任せて、そうして出せばいいんだということも含めて、私は黙認だと思います。

 それで、報償費に関する疑惑についての証言はもう無数にあります。報道されたものだけでも、元官房長官野坂浩賢氏でしょう、それから塩川正十郎氏、元議長秘書として経験した事実を語られた平野貞夫氏。そのほか、証言者を明らかにしない報道というのは無数にあります。

 官房長官は、取材源を明らかにしない限り、これはみんなでたらめだと思っているんですか。お答えいただきたい。

福田国務大臣 でたらめと決めつけるべきかどうかは別として、私の調べた範囲で、思い違いもあったようです。そういうこともありますし、まあ、それぞれにそれぞれの立場でいろいろなことをおっしゃっているな、こんなふうな感じがいたします。

松本(善)委員 そんな程度の考え方でこれに対処をしていたら、それは国民の怒りはもう何倍も広がりますよ。それぞれの立場で勝手なことを言っているということでしょう、あなたの言うのは。

 それは、活字にしているんですよ。すべての新聞報道が間違いが一切ないとか思い違いがないとか言いませんけれども、それはそれぞれ責任を持ってやっている仕事ですよ。これは内部告発なんだから。これはこのまま黙っているわけにいかないということで、みんなしゃべり出してきているんですよ。私は、そういう認識ではとんでもないと思う。

 私的や党略的流用の疑惑というのは無数です。これは、報償費そのものについても問題ありますけれども、今問題になっていることは、この私的な流用、党略的な流用、これは少なくもなくそうじゃないかというのは国民的な世論だし、国会の中でも皆さんの意見だと私は思いますよ。

 新聞の見出しでも、「黒い金庫 税が泣く」ですよ。「機密費 群がる「官」と「政」」「首相外遊の随行団 白い封筒に十万円」「銀座の洋服仕立券 贈り先は野党幹部」「飲食、ゴルフ、外遊の小遣い…群がる官僚」「随行団飲食」「官官接待」。きょうも報道されていますが、「首相地元対策」「水増し宿泊費 土産代の穴埋めに」と松尾は供述したと。

 こういうようなことがまさに私的な流用犯罪ですけれども、公金の流用はもう、これも犯罪的なことですよ。少なくもそういう疑惑にこたえて流用は許さないという前提でなければ、私は国政は成り立たないと思いますよ。

 これは国政の重大な課題だというふうに思いませんか、官房長官。

福田国務大臣 いろいろなことをおっしゃいましたけれども、私どもは、そういうつもりで報償費を使用している、そういう気持ちは全くありません。どこから言われても恥ずかしくない使い方をしている、こういうふうに自信を持っておりますので、今までの官房長官も、私の今申し上げたそのような趣旨にのっとってやってくださっていると思いますよ。私は確信をいたしておりますので、まずそのことをひとつ申し上げておきます。

松本(善)委員 あなたは官房長官になってから短いし、これは大問題になってからのことだから、それはそういう機会もなかったかもしれません。けれども、事実がずっと出ているんですよ。

 それで、私はもう一つ聞いておきたいが、さっき中沢さんも聞かれたわけですが、この使途が言えないという根拠ですね。結局、内閣の答弁書にもありますが、先ほども言われたが、具体的な使途は公にしないことにしていると。国家機関が任務を遂行していく上において、公の利益保護の観点から、ある事柄を公表しないことは許されると考えていると。いわば答弁はそれに尽きているわけです。

 ということは、憲法上、法律上の根拠はないと。使途を言えないということについては憲法上、法律上の根拠はないということだと思いますけれども、それでいいですか。

福田国務大臣 憲法上のこととの関係において私も精査したことはございませんけれども、内閣官房の報償費の使途などの情報公開、これは報償費の機動的な運用や内政、外交の円滑な遂行に重大な支障を来すので困難と考えており、この点については申し上げられないということで、もう再三申し上げているとおりでございます。

 このことは、その経費の性質上、予算に計上されて以来、その使途等を公表しない取り扱いを受けておりまして、毎年、会計検査院による、そういうことを前提とした検査を受けている。

 情報公開との関係で申し上げれば、報償費の具体的な使途の情報公開については、内政、外交の円滑な遂行に重大な支障を来すと考えておりまして、情報公開法上の不開示情報、第五条第六号に該当すると考えております。

松本(善)委員 要するに、私の聞いたのは、憲法上、法律上の根拠がないということではないかということです。

福田国務大臣 その辺、ちょっとまた私もよく考えて、出直してまいります。

松本(善)委員 私は、これはもうとんでもないことだと思いますよ。閣僚は憲法擁護義務があるんですよ。憲法を精査したことがないということ、これ自体問題ですよ。そして、憲法上、法律上の根拠がない、よく考えてみます、これで報償費の運用をやられたら、とんでもないことだと思います。

 私は、委員長、お願いしたいんですが、理事会でも検討することになっていますけれども、こうなってきますと、古川官房副長官やそれから江利川内閣府官房長など出席を求めて審議をする、それから懸案の報償費についての筆跡鑑定、古川氏などの証人喚問など、これはもう不可欠だと思います。国会の存在意義が問われる。やはり、税金がどこへ使われるかという国政の根本問題にかかわる問題、これは国会が素通りをしたら大変なことになる。会計検査院も素通りしてきているからこういうことが問題になっている。この問題について、理事会で国会の責務という観点から十分協議をしていただきたいと思います。

横路委員長 ただいま申し出の件につきましては、理事会で十分協議をいたしたいと思います。

松本(善)委員 警察庁の刑事局長に伺いたいんです。

 今、官房長官、言っていましたが、詐取されたというのは、大体だまされるような人かということになるんですよ、これはどうしても。それは黙認していたんじゃないかということにやはりなっちゃう。私はやはり、告発だとか被害届のとおり、横領というのが本筋だというふうに思います。

 それで、なぜ詐欺で逮捕をしたのか、横領罪で捜査はもうあきらめたのか。この二つの点を簡潔にお答えいただきたい。

五十嵐政府参考人 告発や被害届はあくまでも捜査の端緒でありまして、捜査の対象がその範囲に限定されるものでないということは言うまでもありません。

 警視庁において証拠に基づく事案の解明を進めてきたところでありますが、内閣官房から元室長が公金を受領する段階で詐欺を犯していたということが証拠上明らかになったため、元室長を詐欺容疑で逮捕したものでございます。

 警視庁におきましては、今後の逮捕分以外の公金受領についての容疑を含め、事案の全容を解明すべく、引き続き鋭意捜査を進めているところでありますので、今後横領でも捜査を続けるのかというお尋ねにつきましては、答弁を差し控えさせていただきます。

 いずれにいたしましても、警察は、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づき、厳正に対処する所存であります。

松本(善)委員 まあ、その程度にしておきましょう。

 国家公安委員長に伺いますが、これは問題はちょっと違うんですが、犯罪被害者基本法。

 私は、これは超党派でやはりつくっていかなければならぬ問題だろうというふうに思っています。それで、この間の委員会では、基本法は理念として相入れない、こういうふうに答弁をされたんですが、その真意をもう一回聞きたいんです。

 その後、私は、大臣がおいでにならないときに、国連の犯罪被害者人権宣言を中心に詳しく質疑をして、そして、あなたは犯罪被害者救援支給金法の附帯決議のときに、委員会の審議も参考にして対応するということを述べられたわけですから、審議の状況は知っておられるかもしれませんが、このときに警察庁長官は、基本法を否定する考えはないということを答弁したんですよ。

 改めて聞きますが、あなたが理念として相入れないというのは、民主党、社民党共同提案について言ったのか、それとも国連の犯罪被害者人権宣言の言う被害者の権利を前提とした基本法、これは、制度としても予算面でも一番進んでいると思いますが、アメリカもイギリスも参加をする、百二十数カ国が参加した国連総会での宣言ですよ。日本政府も代表が賛成の立場で発言しているものですよ。これを否定するということになりますと、担当大臣が否定するという状態のもとでは超党派の協議は進まないから、恐らくそういうことではないだろうと思うんだけれども、ちょっとはっきりお答えしておいていただきたいと思います。

伊吹国務大臣 福田長官の御答弁についてもいろいろ御質疑がございました。したがって、私の言いましたこともきちっと速記録をとってきておりますので、それにのっとって率直に申し上げます。

 私の、まず附帯決議のときに、委員会の御審議にもと申し上げましたのは、通していただいた法案の執行についてはということは先生御承知だろうと思いますから、基本法の話とは違います。

 それから、基本法の理念と相入れないということを申し上げたのは、民主党の山花先生が、犯罪被害者対策は、個別法の改正の積み重ねをしていくにも、一定の指針を持って、視点を定めた上でやっていく必要があると考えるが、改めて犯罪被害者基本法に対する所見を伺いたい、こういう御質問に対して、二つの観点を申し上げたいと思いますと。

 一つは、もしこの御提案の犯罪被害者基本法の底を流れる社会システムを考える理念が、加害者にかわって国が代位弁済をするということであれば、私たちはこれに同意をすることはできません、こう申し上げているわけです。

 つまり、私たちの社会は、自助努力と自己責任で資本主義社会というものは成り立っておりますから、基本的には加害者が被害者に対してあらゆる責任を弁済するというのが社会を動かしていく共通のルールなんですよ。しかし、それだけを貫き通していれば、被害者の方が救済を求められたときに、加害者の人がいつまでたっても弁済をしないということでは被害者の人が困るから、見舞金的感覚で、共生社会の一つのやり方としてやっていこうということを申し上げたわけですね。

 そして、今、私ではなく長官、つまりこれは答弁をしておるわけじゃありません。国会改革の後で、参考人として参考意見を述べておるわけですが、これが申しておりますのは、基本法については、法務省からも御答弁がありましたように、いろいろな複雑な問題が絡み合っており、これをどういう形で全体として仕組みとして構築するかということについては、社会保障制度の枠組みなどいろいろな問題がありますので、これは、今、国会に提出されている基本法がありますが、国会で具体的に御論議賜るべきものと思いますと、否定も肯定もしていないんですよ。

 それを肯定しているとおっしゃって私の答弁と違うとおっしゃるのは、敬愛する松本先生ですが、ちょっと無理だと思いますよ。

松本(善)委員 それは、あなたが読まないところにあるんですよ。

 基本法の制定につきましては、政府全体として、さらに国会において御議論をいただく問題だというふうに考えておりまして、現段階におきましてこれを否定するというようなことについては私どもは考えておるところではございませんとはっきり言っているんですよ、あなたの読まなかったところでね。まあいいですよ。改めて聞いてもいい。

 それで、基本的に、国連の犯罪被害者についての人権宣言、それに基づく、これはもちろん加害者にかわって国家が賠償するというようなことを決めているわけじゃないんです。被害者の人権という観点からですよ。それはもう資本主義を前提とする皆さん方がみんな賛成しているんですよ。それを否定することはないでしょうということを私は聞いているだけです。当然のことだろうと思うんです。

伊吹国務大臣 今回の、お願いして御審議をいただいて通していただいた法案は、私は当然その原則の枠の中のものだと思っております。

松本(善)委員 否定していないということになりましたから、それはそれで結構です。

 もう一つ聞いておきたいのは、奈良県警の問題。

 きょうも民主党の議員からも質問がありましたが、今警察官の不祥事が相次いでおりまして、今の時点では、奈良県警問題というのはきわめつけですよ。あなたとやりとりをした後の全国紙の社説も、朝日は「これで幕引きにするな」、毎日は「「警察再生」はかけ声倒れか」、読売は「これで警察改革ができるのか」、産経は「甘い捜査は警察崩壊招く」ですよ。産経の社説の中を紹介すると、奈良県警のことですが、「一体この県警は何を考えているのか。奈良県警には反省のかけらすら感じられない。」

 私は、これについて警察庁長官に、常識外れだ、常識から外れているということを大臣は答弁したけれども、どう反省しているのだと言ったら、いや、大臣に確かめたけれども、これは事件そのものが常識外れだ。これは当たり前ですよ。警察官が収賄して、そして、きょうも問題になりましたけれども、天下り自身もわいろの対象なんですね。これはもう防衛庁の汚職事件で判決が出ているわけですよ。これを逮捕もしないでやっているのは常識外れなんです。

 あなたとの質疑の文脈を言うならば、私は、贈収賄事件で逮捕しないで捜査されるというのは聞いたことがない、逮捕して捜査しなければ捜査したことにならない、これは警察に対する信頼を大きく失墜するのじゃないかということで聞いたら、大臣は、私と同じような印象を持っている、奈良県警の対応は私どもの常識から外れたことだという趣旨の答弁をしたのですよ。私は、文脈上は明白だと思います。

 あなたは、奈良県警の対応はこれで当然だ、こう思っているのですか。もう議事録はいいですから、今どう思っているかということをお答えいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 いや、これは本来議事録をもって、私が奈良県警の刑法及び刑訴法上の対応が常識外と言ったかどうかということははっきりさせねばなりません。

 それは、その後の御党の機関紙、しかし私も買って読ませていただいておりますから、もう政党機関紙というより一般紙の扱いをしてもいいのではないかと思うほどの赤旗に、私が先生の御質問に対して、奈良県警の逮捕せずに対応したことが非常識だと言ったということを断定的に書いてあります。これは私の意図とは必ずしも違います。ただし、私の答弁も、確かにどちらともとれると思います。そのときは、やはり発言者に確かめて活字にしてほしいと私は思います。

 私が申し上げているのは、奈良県警のこの事件を起こした構造的な業界との関係というのは常識外だということです。

松本(善)委員 私は、こういうような常識外の汚職を逮捕もしないでやるということを、これは普通の捜査なんだというふうに警察庁の長官だとかあるいは国家公安委員長が言っているというような状態では、私は、警察の改革は日暮れて道遠し、こういうことになると思います。時間もないから、これで終わります。

 ちょっと国家公安委員長の答弁が長かったもので、経済財政担当相との時間が大分なくなってきたのだけれども、まとめて聞きます。

 きょうも再々、ダム論がそのとおり機能しないという、これは宮澤財務大臣もおっしゃった。かつてない経済危機にあることは、これはどうも共通した認識になっているようであります。私どもは、実体経済が、国民の購買力が落ちている、これがGDPの六〇%を占めている、そこを直接的に刺激するという施策なしに今の日本の経済の危機を立て直すことはできないのじゃないかというふうに考えているわけです。そして、消費税減税など、国民の消費購買力を直接高めるという緊急の経済政策を発表いたしました。麻生大臣が読んでいただいているかどうかわかりませんけれども。

 消費税減税につきまして、これは読んでいらっしゃると思うけれども、日本経済新聞でも、アメリカの財界人や経済の専門家が何人も消費税減税をやるべきだということを言っている。

 バンク・オブ・アメリカのチーフエコノミストのM・レビー氏は、これはIMFのエコノミストなどを経た人ですね。著名な人ですが、「減税による景気刺激策で長期の経済成長をもたらすようにすべきだ。具体的には消費税率の引き下げだろう」。AGランストン副会長のD・ジョーンズ氏、これはFRB、米連邦準備理事会のウオッチャーとして著名で、グリーンスパンFRB議長とも友人関係。「あえて言えば消費税減税に踏み切るべきだ。財政政策に関しては減税だけが残された最後で唯一の選択肢だと思う。(景気回復には)財政支出の拡大ではだめだろう」と言っています。それから、コロンビア大学のパトリック教授、「消費回復のため、消費税率の引き下げを検討してもおかしくない。」ということを言っています。

 一方、宮澤財務大臣は、これは二月の二十日でしたか、参議院の予算委員会で、財政は破局に近い状態ということを答弁し、消費税は上げなければならないという答えになる公算が高いという答弁をしたかと思います。伊吹大臣は、東京で、二十七日の夜に、消費税一〇%を公約しなければだめだ、こういうことを発言されたそうであります。

 この消費税に対する対応というのはこれからの経済対策にとっても決定的に重要だと私は思います。麻生大臣はどういうふうに考えているか、伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今、基本的に、先ほども、ずっと聞いておられたかどうか存じませんけれども、個人も企業もバランスシートが崩れている間は、減税した分は多分借金の返済に回ります。直接的に消費につながるという感じではありません。百五円が百三円になったから即買おうという感じになるだろうかというのは、正直、私は疑問です。

 ただし、今直ちに増税かと言われたら、やはりここは、立て直すためには、増収であって増税ではないのではないか。私は、正しい経済立て直しのやり方としてはそちらの方だと思っております。

松本(善)委員 一言聞きますが、やはり個人消費を刺激する、これを引き上げるということが大きな課題だということは、いろいろ立場の違う人たちも含めて、私は共通しておるように思います。今の政府の施策でどうやって個人消費を回復させられるのか、直接温める政策はほとんどないと言っていいのですよ。消費税の減税については消極的な考えを言われましたけれども、ではどうするのかということをお答えいただいて、終わりにしましょうか。

麻生国務大臣 基本的には、長い間、具体的なことを言った方がおわかりいただけると思いますので、家を仮に二千万なら二千万で買った。キャッシュは五百万、残り千五百万はローンで買った。よくあるケースだと思います。ところが、バブルがはじけた途端に、その二千万の家の値段が一挙に三百万に下がった、五百万に下がった。これもよくあることだと思いますが、土地込みでどんと下がりました。そうすると、借金は千五百万残っているのですが、借金を千五百万払って、得るものは五百万の土地つきの家ということになる。そうすると、その間はずっとローンの返済に当たっておって、これが約十年間ぐらい続いているだろうな、私どもは基本的にそう思っております。

 そういった意味では、千三百兆と申し上げましたけれども、それらの傷は非常に大きかったということでありまして、今ここで直ちにそこらのバランスがある程度しないと、日本人というのは、松本先生の御年代だったら、まさか二宮尊徳という世代とは少し違うのかもしれませんけれども、やはりまじめに働いて金を返すという世代であって、それがまともな話なんであって、借金は返さなくていいからじゃんじゃん使えなんということは私どもはとても言える立場にありません。やはりそこらのところが直るまでの間は、ある程度企業が利益が出てくる、そういった形で借金の返済がある程度バランスするまでの間は、今はまだ数年かかるだろうと思っておりますので、そこらのところ、直ちに今すぐ、六〇%を超す消費が、消費税を仮にゼロにしても直ちに結びつくだろうかなというような感じが率直な実感です。

松本(善)委員 終わりますけれども、それでは回復しないと私は思いますよ。

 朝日の二十四日の世論調査でも、個人消費、なぜ伸びないか、「将来に備えて」が四五%です。「お金がない」が三四%ですよ。それで「買いたいものがない」はわずか一三%です。今の答弁の中で、国民のそのような状態についての憂いというか、そういうものを私は何にも感じませんでした。それではだめだということを申し上げて、終わります。

麻生国務大臣 見解の相違だと思います、はっきり申し上げて。その種のことを考えるから先ほどのような答弁なので、それを感じるか感じないかは個人の見解の相違だと思います。

    ―――――――――――――

横路委員長 この際、お諮りいたします。

 会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横路委員長 阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 委員長のお計らい並びに理事のお計らいで、急遽、会計検査院を追加していただきましたこと、厚く御礼申し上げます。先ほどの松本善明氏と福田官房長官のやりとりの中でも会計検査院に関する業務のことが問題になっておりましたので、私の方からもあわせてお伺いいたしたいと思い、本日、お願いいたしました。

 まず冒頭、今週の月曜日に参議院で予算案が原案どおり、特に官房機密費、外交機密費を含めて成立いたしましたが、実は私は、このことは私個人が納得できないばかりでなく、国民的納得を得ていない事項と思いまして、福田官房長官に三度目の御質問をさせていただきます。私はありとあらゆる場でこのことを福田官房長官に問い詰めてまいりましたので、ぜひとも誠意ある回答そして国民の納得する回答をお願いいたします。

 その前段といたしまして、先ほど福田官房長官の松本善明氏へのお答えの中で、端的に申しまして、言葉がくるくる変わるような表現がございました。例えば、当初は、官房機密費は会計検査が必要ない、次いで、官房機密費は会計検査の必要のない使途もある、そして最後には、一応今会計検査を受けている仕組みになっておると、三回変わられましたので、政治家の言葉というのはとても大事なものと思いますから、あわせてその点、確実なお答えを一言一言お願い申し上げます。

 まず、今般、千葉県で知事選挙がございました。堂本さんという女性が当選なさいましたが、そのことについて福田官房長官が、朝日新聞でございます、新聞報道ですから、必ずしも長官の真意や言葉をそのまま伝えていないかもしれませんので、訂正がございましてもこの場合は結構ですが、確認させていただきます。

 「政策に強い関心持たず投票」、こういう見出しになって官房長官の見解が紹介されておりますが、今般の千葉の選挙戦について、官房長官は、この朝日新聞の報道のとおりのお言葉でよろしゅうございましょうか。一点目です。

福田国務大臣 正確にどういうふうに言ったか覚えていないのですけれども、まあそのような趣旨のことは申し上げました。

 別に、堂本現知事をどうのこうの、そういうつもりはなかったのです。そういうことではなくて、何となく、私の印象として、政策議論というよりか、何かムードでもって選挙が行われたのかな、そういうふうな印象を受けておったものですから、率直にそのことを申し上げたということでございます。

阿部委員 ある意味で御指摘は当たっている部分もあると私も思います。政策論議以前のところで国民がブレーキをかけられている、それだけ政治への不信や不安や不満や言葉への絶望が大きいと私はみなしております。それゆえにこそ、この官房機密費の問題も、きちんとした使途、目的、情報公開、会計監査を経ませんと、ますます政治への信頼が薄れ、その結果として政党政治そのものが危うくなる事態も招聘すると私は思います。

 ですから、何度も繰り返しますが、福田官房長官には、今、国民的絶望の大きな一因であるこの官房機密費の十三億九千二百六十一万円、追加して七千円ですけれども、前年どおりの予算成立ということについて、お答えを伺いたいと思います。

 まず先立って、外交機密費に関しましては、この間、外交機密費改革会議等々で検討がなされておりまして、三つの使途ということが区分けされております。御承知おきと思いますが、一応御紹介いたしますが、一、信頼関係に裏打ちされた人脈を基礎として的確な情報を収集する、二が、外国との交渉、外交関係を円滑、有利に展開する、三、国際会議を有利に導くために関係者に働きかけるとなっております。

 さて、官房機密費については、福田官房長官並びに内閣の責任の各大臣、皆さんはどのようにこの目的、使途、区分けをお考えでしょうか。まず冒頭、お願いいたします。

福田国務大臣 これも何回か申し上げているんじゃないかと思いますけれども、内閣官房の報償費は、内政、外交を円滑に遂行するために責任者である官房長官のその都度の判断で機動的かつ効果的に使用されるものである、その経費の性格からあらかじめ使途を限定することは適当ではない、また、その使途を明らかにすることは報償費の性格上差し控えているところでありまして、そういうような性格のものだという御理解をいただきたいと思います。

阿部委員 そういうふうな性格のものであると国民が理解するためには、その前提として明らかにしなければならない幾つかの現実がございます。例えば、官房機密費が宿泊差額代に用いられたことを中心に次にお尋ね申し上げます。

 そもそも、松尾氏の事件とはかかわりなくでございます、官房機密費から宿泊差額代が出されるようになったのはいつからでございましょう。

福田国務大臣 これはいろいろなことから、この十年ぐらいは間違いなく宿泊費差額の充当が行われていたということはほぼ確認できるのですけれども――今現在はしていませんよ。平成十二年度からはそれはもう廃止しましたということは、これも再三申し上げています。

 その以前どうなのかということになりますと、これがわからないのです。いつから始まったかわかりません。しかし、何のためにこういうふうな形になったのかなということを考えますと、相当古いときから行われていた、二、三十年というふうに申し上げてもいいんじゃないかというふうに思っております。

阿部委員 その御説明一つをとりましても、国民にとりましては全く納得できない。いつからかもよくわからない、二十年か三十年、十年も差がございます。

 これは間違いなく国民の税金を用いたもので、その使途について納得しなさいと言う限りにおいて、経緯を明らかにされなければ、やはりこの不祥事について根本的にどのような仕組みでやり直していくかが出てこないと思います。

 そして二点目、お伺いいたします。

 いわゆるロジ担当者の松尾氏に、丸ごと一括、外遊時の差額代の会計を預けたのはいつからでございましょうか。

福田国務大臣 松尾氏が要人支援室長に就任したときから、平成五年であります。

阿部委員 松尾氏が就任した途端に一括お金の決済をそれで彼に担当してよしと判断されたのはどなたでしょうか。

福田国務大臣 これは、外務省の方のことでございますので、外務省の職制上のことだと思いますので、外務省の方にお尋ねいただいた方がいいと思います。

阿部委員 これは、官房機密費をお渡しになるわけですから、そこで、いや外務省だ、いや官房だと言っている限り、事が解明されません。

 そして、ついでに申し上げれば、私はこの点は質問通告してございます。私は、いつもですが、通告をしてお答えをいただけないことが余りに多うございます。そして、それは意図した無回答なのか、あるいは……(福田国務大臣「入っていないです」と呼ぶ)入っていない。どこかで漏れたのかわかりませんが、不透明な部分になってまいりますので、きちんとこれは、松尾氏が、そうした官房機密費をいただいて、それを首相の外遊の会計処理として一括してよしとされた日時について、次回で結構です、よろしくお願いいたします。

 引き続いて御質問いたします。

 そうした官房機密費からの外遊支援室への金銭の決裁は、最終的には官房長官が判断なさっていたものと思います。これは福田さんではございませんで、その時々の官房長官に聞けとおっしゃるかもしれませんが、政治は責任の歴史でございますから、その限りにおいてお答えくださいませ。

 では、松尾氏以前、各、例えば北米局等々が請求していた場合と松尾氏になってからでは、毎回の外遊に伴う差額費の要求額に差はございましたでしょうか。

福田国務大臣 総理の外国訪問に際して、各訪問ごとに訪問先も違うし、また宿舎も、ホテルも違うし、また日程も違う、時期も違う、いろいろな要因がございますので、請求額について一概に比較するというのはなかなか難しいことであると思います。

阿部委員 では、松尾氏から平成十一年の八月でしたでしょうかに後任になられた室長の請求された額と松尾氏が担当しておられたころと、今福田官房長官のおっしゃるように、行き先によって違いますから、そういう誤差はございますが、この後任の方の請求額と松尾さんの請求額は違いましたでしょうか。

 なぜこのようなことを伺いますかというと、新聞報道で申しわけございませんが、ゼロが一つ違うのではないかと官房の職員からその後任の室長に指摘があったやに報道されておりますが、この点については額が遜色ないかどうか、最終的に福田官房長官が決裁されたものと思いますから、お答えください。

福田国務大臣 お断りしておきますけれども、私はまだそのときはこの仕事をしておりませんでした。

 それで、今お答えしたことなんですけれども、松尾室長のやっていた最後と、それから新任の人がやっていた最初と、これは全然違うのですね、行き先も日数もすべて違うので、ちょっと比較できないということを申し上げます。

阿部委員 では、官房長官の方では比較できないとおっしゃいますので、より詳しいデータをお持ちのはずの会計検査院にお伺いいたします。同じ質問でございます。

 松尾室長より前の方と松尾室長との間で、これは比べればほぼ、東南アジア方面とか米国方面とか方面を比べれば、会計検査院はずっと毎年経年的にやってございますから、金額の差について認識されましたかどうですか、お教えくださいませ。

石野会計検査院当局者 報償費につきましての従来の検査状況ということについてのお尋ねかというふうに思いますので、ちょっと長くなりますが、お答えさせていただきます。

 外務本省につきましては、年二回それぞれ外務本省を検査する中で報償費についても検査してございます。それから、内閣官房につきましては、年一回実地検査をする中で、やはり報償費につきましても検査をしてきておるところでございます。

 その検査の過程におきましては、証明責任者の手元に保管されている領収証等の証拠書類の提示を受けたり、あるいは説明を聴取するなどして、違法、不当な事態がないか、支出目的に従った適切な使用がなされているかなどについて検査してきたところでございます。

 ただ、このように検査してきておりますが、これまで本件の事態を発見できなかったというのはお話しのとおりでございまして、なぜ発見できなかったということだろうと思いますが、これにつきましては、現在本件事態についての事実関係につきまして検査を進めているところでございまして、その検査の過程におきまして、こういった事態がなぜ発生したのか、その原因がどこにあったのかということを十分検討いたしまして、この中で、本院のなぜ発見できなかったかという点についても明らかにしていきたいというふうに思っております。

阿部委員 会計検査院がこれだけの不祥事を発見できないとすると、今後同じ予算額でこの官房機密費を継続すること自体国民にとっては危なくてしようがないわけです。税金を使われてしまうかもしれないわけです。そして、今のような抽象的なお答えではなくて、毎回行く先と会計検査でチェックした金額、決裁書を見れば、これは妥当な額であるか否か判明することでございます。

 この間報道されているところによりますと、七億に及ぶ公金の流用があるということになってございます。差額補てん代でかかった代金は多く見積もってもせいぜい二億であろう。そして、松尾氏に流れたお金は九億六千五百万。七億の差がございます。国民にさらに七億の金に目をつぶれとおっしゃるのは、余りにも業務として不誠実でございます。

 そして、官房長官は残念ながらおわかりにならない。場合場合で違うからという、これはいたし方ないかもしれません、決裁だけをなさっているのですから。そして、何泊、何日、詳しいことも、なかなか目は行き届かないでしょう。

 となれば、実務担当者、会計検査院がきちんとした検査体制の保証を国民に提示しない限り、この予算は凍結すべきだと私は考えますが、きちんとした会計検査のシステムについて、具体的に今挙がっているプロセス等々について、わかればお答えください。

石野会計検査院当局者 本件の事態につきましては、今まさに検査中でございます。お話しの、どういう見積もりが出され、いかほどの金額が松尾元室長に渡されていたのかという点も含めまして、十分な検査をしてまいりたいというふうに思っております。その中で、こういった事態がどうして発生したのか、それを防止するにはどうすればいいのかということもあわせて十分な検査をしてまいりたいというふうに考えております。

阿部委員 何度も申し上げますが、そうした優等生的お答えでは、現実にお金が流用されたことにちっとも痛みがないと思います。

 例えば、福田官房長官が先ほどフランスの官房機密費の例を引き合いに出されましたが、こういうロジ担当者に会計まで一括丸投げしているのは他国に例がない、これは外交機密費をめぐる外務省の改革会議で指摘された点でございます。我が国だけが丸投げし、松尾氏に任せていたことが、そもそもは大きな原因でございます。

 原因はそこにあり、なおかつチェック体制についても同じようなことがあったのではないか。会計検査院は何をしていたのかと国民から問われても、国民の金を預かる立場からすれば、私は至極当然な国民の怒りだと思います。

 それについて、今検査しておるとか、であれば、何度も申し上げますが、予算を凍結すべきです。全く同じ額で予算が計上される根拠がございません。この点について、官房長官、お答えを願います。

福田国務大臣 報償費全部が悪いような、そんなふうな感じになっちゃったのですけれども、今回の事件につきましては、内閣官房は、外国のことについて精通している、そして時間的にも非常にせっぱ詰まったような状況の中でいろいろ作業をしなければいけない、そういう状況にかんがみまして、専門家である外務省に委託をしたわけですね。要するに、外務省を信用してお願いしているわけですよ。しかし、その結果、こういうことが起こってしまったということでございます。起こってしまえば、これは幾ら信用したって、信用したのが悪かったということになるのかもしれぬけれども、しかし、そういうような関係の中で起こったことでございますので、起こったことについて私どもは深く反省をしているわけであります。

 今後、そういうことのないように十分注意をしてやることは当然のことでありますけれども、このことによって報償費が全部とまっちゃったということになりますと、内政、外交に重大なる支障を来す、このように思っております。

阿部委員 私は、何も全部とめろとは実は申しておりません。ただ、これだけ不透明なことが起きた場合に、せめてわかった分だけでも減額なさるのが道理でございます。

 それとあわせて、先ほどから福田官房長官は慌ただしい、慌ただしいとおっしゃいますが、森さんの外遊は慌ただしかったかもしれませんが、その前の外務省の改革会議にかかっている首相外遊の例を引かせていただければ、五月に外遊なさる場合は、前年度の秋から既に調査が入り、計画が立てられるというふうに外務省の改革会議では述べられております。

 慌ただしさがこのお金の不始末の理由になるということは非常に恣意的な答弁になりますので、外務省にそういう専門家を招いた会議で出されたデータあるいはそこで討議されることと福田官房長官の認識が余りに違っていては、これは改革にも何にもなりません。ちゃんと第三回目の会合の議事録をお読みになりまして、決して慌ただしくやられたわけではございません。一回、二回、そういうこともございましょう。今般のロシア訪問あるいはアメリカ訪問等はそうだったかもしれません。しかし、通常、機構改革の中で語られている外遊はそのようなものではございませんので、全部を慌ただしさの中に逃げ込もうとするのは不誠実であると思います。

福田国務大臣 実際にその場になっていただければよくわかることだろうかと思います。

 もちろん、例えばことしのサミットはもう既に決まっているわけですね。随分前から決まっているわけでございまして、そういう意味では日にちは決まりますよ。しかし、その寸前になって、いろいろな案件があって、この問題は早く行って片づけなければいかぬだとか、予備交渉しなければいけないとか、それからその寸前になったらばだれか偉い人が来て部屋をとられちゃっただとか、いろいろなことがあるわけですよ。そういうことを全部確定しないと実際のお金のことにならぬわけですね。

 ですから、慌ただしいというのは、その寸前の事務的な慌ただしさを言ったわけで、予定は、大分前から決まっているのがたくさんございます。おっしゃるとおりでございます。

阿部委員 引き続いて官房長にお伺いいたします。外務省関係のことでございます。

 私は、当初この問題を問題にいたしますときから、いわゆる宿泊差額代だというお答え、これは官房長官も外務大臣もそのようにお答えでございますが、それにしては一泊十万、二十万もの高額な差額代が出ておる、単純に計算しても出てまいります。そして、例えばサウジアラビア等々では迎賓館に泊まった、あるいは宿泊していないヨルダンでも宿泊したことにして請求されている等々、非常に宿泊ということを不透明にしたがゆえに、宿泊差額代での大きな流用が起こっていると思います。

 そして、その宿泊の実態を明らかにしようといたしまして、外務省に資料請求をいたしました。いわゆる後方支援、ロジブックについて資料請求をいたしましたところが、宿泊のホテルと部屋の振り分けと、一切抜けた資料をいただきました。この意味するところについてお答えくださいませ。

飯村政府参考人 今委員御質問のいわゆるロジブックでございますけれども、総理の外国出張時の支援業務を円滑に行うために外務省が作成しております内部資料でございまして、日程とか一行リストあるいは政府専用機の座席表、宿舎部屋割り、連絡先、関係の参考資料等が記載されております。

 これは通常、内部資料でございますので、原則として公開することは考えておりませんけれども、国会との関連で御要望がある場合には、警備上の観点等から公開することが不適当な部分を除きまして、随時その内容を提示させてきていただいております。

阿部委員 やはり外務省の職員の皆さん並びに、きょうは大臣おいでじゃないですが、大臣も、何度も申し上げますが、これが宿泊にまつわる差額代として問題にされており、なおそのことを明らかにしたいがために資料請求したという、これは国民の知る権利でもございますが、その点について非常に自覚がないと思います。

 そしてあわせて、今般の平成十三年の四月から情報公開請求等々で情報公開要求が出されますでしょうが、実は平成十二年の四月から旅費法が変わりましたので、官房職員の差額代等々もこれまでとは違った形で、機密としてではなく出るわけです。私が要求しました森首相の外遊は、既に平成十二年の四月以降のものでございます。ほかの請求方法では出るものをなぜ資料としてお出しになれないか。これは外務省の体制、体質にかかわることですので、いま一度御答弁をお願いいたします。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、主として警備上の観点が理由で公表を差し控えさせていただいているところがございますけれども、具体的に申し上げますれば、例えば、政府の専用機の座席表だとかあるいは空港到着要領とか、基本車列表だとか宿舎の部屋割り表だとか、あるいは連絡先一覧とか、そういったものは遠慮をさせていただいております。

 それから、もう一点つけ加えさせていただきますと、いわゆるロジブックは出発前の段階で作成するものでございまして、最終的な出張者等には種々の変更があり得ますし、また、各出張者によって宿泊日数も往々にして異なっております。したがいまして、このロジブックをベースに被害額なりそういったものを特定することはなかなか難しいかなというふうに考えております。

阿部委員 これも何回もお尋ねしましたが、一泊の差額代が幾らであるか、これは官房長官の方も外務省の方もお答えをいただいておりませんが、そちらからもお答えを出さない、そしてそれが算定されるような資料も出さないとなれば、全くやぶの中になってしまいます。そうしたやぶの中のお金に国民は税金を使われたくはございません。その自覚を再度高めていただきたいと思います。

 そして、そうした外務省のいわゆる隠す、ごまかす姿勢から、やむなく私どもは、この四十六回の首相外遊中、十回は我が社民党の村山内閣のものでしたので、そのときのロジブックを、これは党内の資料として手に入れ、検討をいたしております。検討しようと思えばこうした形でもできますが、ただし、国民が今知りたいことは、何泊幾らで一体差額が持っていかれているかでございますから、私どもが手元に持っている資料ではなくて、やはりこれは外務省が出していただきたいと思います。

 そして、福田官房長官に最後にお尋ねいたします。

 今は外務省への質問でございましたが、官房機密費に戻らせていただきまして、官房機密費でいわゆるお土産等々が買われた事実があると言われております。もちろん、確認はいたしておりません。

 そして、前回、参議院の福島瑞穂が、お土産が官房機密費で買われたことがあったとしたら、それは不適切か否かという質問をいたしました。お答えをもう一度お願いいたします。

福田国務大臣 報償費の使途は、これは明らかにすることは適当でない、こういうように考えておりまして、何回もこれは繰り返させていただきます。報償費は責任者である官房長官のその都度の判断で厳正に使用されている、このように思っております。

阿部委員 参議院での質問へのお答えの方がより踏み込んでございました。もう一度福田官房長官も読んでいただきたいですが、お土産に使うこともあり得るというお答えでした。私もあり得ると思いますが、ただし、それが官房機密費なのかどうかです。財務大臣のお答えでした。こうしたことに閣内不一致はやめていただきたいと思います。

 ちょっと福田官房長官にお見せしたいものがございます。そこにお越しください。

 これはある総理大臣の外遊時のお土産リストでございます。一枚目は私どもの社民党が手に入れましたロジブックの宿泊リストでございます。二枚目は首相外遊時のお土産品の一覧でございます。中には、モンブランの万年筆五十個、ティファニーのウオッチ三個、ダンヒルネクタイ百五十個とございます。

 これは実は私どもがもう既に辻元清美の方から公表いたしましたもので、社民党の首相ではございませんが、こうした使途……(発言する者あり)そうですね。本当だかどうだかわかりません。あり得るとしたらどのように判断されますでしょうか。

福田国務大臣 これはどんな性格の文書かわかりません。わかりませんから何とも言いようがないというところでございますけれども、これが報償費から出たというのですか。(阿部委員「そうです」と呼ぶ)そうですか。それを確認とっているのですか。(阿部委員「とっています」と呼ぶ)どなたから確認とったのですか。(阿部委員「それは申せません」と呼ぶ)それを聞かせてください、それは大事なことですから。

阿部委員 私は大臣から質問を受ける立場ではございませんので。私どもがきちんと入手した資料でございます。

 そしてもう一点、私どもは責任を持って公表できる村山首相時の同様なお土産リストも持っております。その点については、ここに持参してまいりました。村山首相時はろうそくを二百五十個買ってございます。これも官房機密費を用いたものでございます。

 私は、官房機密費を用いるべきかどうか。首相外遊時にある種お土産があり得ることとは思っております。ただ、その場合は国民の了解、納得、同意が必要でございます。その点に関して、例えばそれは首相交際費という形でおりるのがしかるべきでございます。ちっとも官房でも機密でも外交上の問題でもございません。お土産は国内に買ってまいるものでございます。

 そして、福田官房長官が一貫して使途は目的にかなっているから安心しなさいよとおっしゃいますが、そうしたこと以外の使途があるのではないかというのが今の国民の疑惑でございます。その疑惑を一歩でも解明するために、本日ここに資料提供をし、そして私どもの政権が関与したものについては私どもが責任を持って出所を明らかにいたしましたので、これは事実としてございました。そのことも含めて御答弁をお願いいたします。

福田国務大臣 私だったらばろうそく二百五十本は買ってこなかったと思います。それ以上の御答弁はできないですね。

阿部委員 我が村山首相時は、その当地の産物をある意味で経済復興に寄与するということで買ってまいったと思います。イスラエルのろうそく百五十個でございます。

 そして、そこにございますのは私がお示しした他の首相時のものでございますが、当地の産業の復興かどうかはちょっとクエスチョンなものでございますが、いずれにしろ、国民から見ました場合に、この官房機密費が全くやぶの中であるという現状は今もって変わりがないと私は認識しております。

 そこで、改めてお伺いいたします。

 これが、何度も申し上げますが、官房長官のお答えでは宿泊差額代だということになっておりましたが、松尾氏の流用した分は全額宿泊差額代でしょうか。

福田国務大臣 今回の犯罪容疑の対象になったのは、総理大臣の外国訪問に際しての見積もり、支払い、領収書の受領、精算を松尾元室長が一人で一貫して行っていた宿泊費であったと考えております。内閣官房から支払ったのは、訪問団全体の宿泊費差額と内閣官房職員についての規定分の宿泊費であります。

 総理外国訪問に伴うその他の経費については、報償費の使途にかかわるものであり、明らかにすることはできません。

阿部委員 正規の宿泊費が平成七年からの五年間で二千八百万だったと思います。そして、年度ごとの額が、正規の宿泊分はわかってございますが、さて、今福田官房長官のお答えの流用された機密費、宿泊差額分、毎年度幾ら幾ら幾ら幾らでございましたでしょうか。

福田国務大臣 毎年の内訳を言え、こういうお話でございますけれども、現在、捜査当局による捜査の対象になっておりまして、捜査に支障を及ぼすおそれがあるので、公表は差し控えさせていただきます。

阿部委員 では振り返って引きかえりまして、官房職員分の宿泊差額の流用分、四億二千万円はどのように計算されましたでしょうか。

福田国務大臣 この四億二千万円でございますけれども、内閣官房が外務省から提出された見積書、精算書、領収書を点検し、当時の担当者から話を聞くなどいたしまして支払いと精算事務について確認をするとともに、松尾元室長への支払いの実態の把握を行って四億二千万円を算出いたしました。

阿部委員 総額が言えて各年度が言えない理由は何でしょう。

福田国務大臣 繰り返しますけれども、これは捜査にかかわることである、こういうことでございます。

阿部委員 なぜ年度によって捜査に支障が出るのでしょうか。総額が言えて、なぜ各年度が言えないのでしょうか。捜査にかかわるのであれば、総額であれ、かかわると思います、総額は各年度を足したものでございますから。

福田国務大臣 実は、ホテルの宿泊の差額ですね、この金額についても、トータルにしても、これは報償費の使途にかかわることである、こういう趣旨からいきますとこれを公表することはできないのです。ただ、これが犯罪の対象になったということであえて公表をさせていただいておるということで御理解をいただきたいと思います。

阿部委員 それではお答えではないと思います。私が伺っているのは、なぜ単年度ずつが出ないでトータルだけ出るのですか。トータルだけ、ちょっとだけ出しましたということでしょうか。余りにも国民の不信の声が大きいから、トータルは出しました、ただし単年度は出せませんということでしょうか。

福田国務大臣 もちろん、数字の根拠はあるわけですから、それを積み上げれば九億六千万円何がしかになるわけです。ただ、そのブレークダウンについては、これは再三繰り返しますとおりの理由でもってお出しはできない、こういうことを申し上げているわけです。

阿部委員 何度も水かけ論で申しわけありませんが、なぜ、各年度を出すことがそんなに支障でしょうか。単年度ごとに決裁されていると思います。これは会計検査院でも決裁されていると思いますが、なぜ各年度を出すことがそんなに外交機密にかかわるのでしょう。

福田国務大臣 外交機密じゃなくて、捜査の問題であるということです。

阿部委員 それは一切理由になっておりません。なぜ平成七年度と八年度を出したら捜査に支障が出るのですか。全額を出すことだって同じ意味じゃないですか。

福田国務大臣 二年間五千四百万、これを外務省が告発対象にしたわけですね。それは告発するという必要上出てきた数字でありまして、これを出さぬわけにいかぬだろうということであえて出しているわけでありまして、トータルについても同じようにあえて出しているということでございます。

阿部委員 やはり、億というお金は、国会におりますと非常に億とか兆とか飛び交う単位でございますが、国民的には納得できない額でございます。そして、どのように捜査に支障を来すのかを踏み込んでおっしゃっていただかないと、何でもかんでも捜査に支障というのではお答えにならないと思います。

 あわせて、時間ですので締めくくりとさせていただきますが、この流用された分について、減額して予算としてもう一度お考え直しになるおつもりはないのでしょうか。

福田国務大臣 二つ一緒にお答えします。

 要するに、今まで何度も申し上げましたけれども、今捜査している最中ですね。私ども、正直言って、情けないことに、どのぐらいとられたのかわからないんですよ。それは今捜査しているその中からいずれ判明することであるということで、私ども、その金額をもって待っているわけであります。その金額がどういうものになるのか、これも今後明らかになる。そういう段階でもって、もう一つ申し上げれば、どういうことでもってそういうことが起こったかという原因究明をして、その上でこの報償費、また宿泊費差額、そういうことについても考えさせていただきたい、このように思っております。

阿部委員 金額以上に仕組みに問題がございます。外務省の改革会議と同じように、官房の改革会議の開催を考慮してくださいますように申し添えまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

横路委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時二分散会




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