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第14号 平成13年5月25日(金曜日)

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平成十三年五月二十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 横路 孝弘君

   理事 逢沢 一郎君 理事 小野 晋也君

   理事 古賀 正浩君 理事 西川 公也君

   理事 島   聡君 理事 中沢 健次君

   理事 河合 正智君 理事 塩田  晋君

      岩崎 忠夫君    小渕 優子君

      奥谷  通君    亀井 久興君

      川崎 二郎君    阪上 善秀君

      七条  明君    実川 幸夫君

      竹本 直一君    谷川 和穗君

      近岡理一郎君    三ッ林隆志君

      宮澤 洋一君    望月 義夫君

      渡辺 具能君    渡辺 博道君

      井上 和雄君    石毛えい子君

      大畠 章宏君    今田 保典君

      細川 律夫君    山花 郁夫君

      山元  勉君    太田 昭宏君

      松本 善明君    北川れん子君

      保坂 展人君

    …………………………………

   議員           細川 律夫君

   議員           山花 郁夫君

   議員           若松 謙維君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 村井  仁君

   内閣府大臣政務官     阪上 善秀君

   内閣府大臣政務官     渡辺 博道君

   政府参考人

   (警察庁長官)      田中 節夫君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    坂東 自朗君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局

   長)           真野  章君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局

   長)           高橋 朋敬君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局

   技術安全部長)      宮嵜 拓郎君

   内閣委員会専門員     新倉 紀一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十五日

 辞任         補欠選任

  小西  哲君     小渕 優子君

  谷川 和穗君     七条  明君

  宮澤 喜一君     竹本 直一君

  渡辺 具能君     奥谷  通君

  山元  勉君     今田 保典君

  北川れん子君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  小渕 優子君     小西  哲君

  奥谷  通君     渡辺 具能君

  七条  明君     谷川 和穗君

  竹本 直一君     望月 義夫君

  今田 保典君     山元  勉君

  保坂 展人君     北川れん子君

同日

 辞任         補欠選任

  望月 義夫君     宮澤 洋一君

同日

 辞任         補欠選任

  宮澤 洋一君     宮澤 喜一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 道路交通法の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)

 自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律案(内閣提出第五一号)

 危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案(細川律夫君外二名提出、衆法第一四号)

 特殊法人等改革基本法案(太田誠一君外四名提出、第百五十回国会衆法第一六号)




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     ――――◇―――――

横路委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、道路交通法の一部を改正する法律案、自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律案及び細川律夫君外二名提出、危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官田中節夫君、警察庁交通局長坂東自朗君、法務省刑事局長古田佑紀君、厚生労働省社会・援護局長真野章君、国土交通省自動車交通局長高橋朋敬君及び国土交通省自動車交通局技術安全部長宮嵜拓郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横路委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三ッ林隆志君。

三ッ林委員 おはようございます。自由民主党の三ッ林隆志でございます。

 本日は、道路交通法に関する質問をさせていただきますが、毎日運転をしている者の一人として、非常に関心を持っております。

 そこで、まず私は、悪質、危険な運転をして起こされる交通事故を防止するための罰則の強化についてお尋ねしたいと思います。

 一昨日の参考人質疑におきまして、参考人の方々から貴重な御意見を賜りました。交通事故防止を人、車、道路・環境の三つの要素から総合的に図っていくべきこと、このために、各種の交通安全対策をバランスよくとり、国民の納得が得られる対策を講じていくべきこと、道路交通法は国民の生命を交通事故から守るという点を堅持すべきことを初め、数々の御示唆をいただきました。特に、飲酒運転や無免許運転といった悪質、危険な運転をした者が起こした交通事故で身近な方々を亡くされた御遺族、被害者の皆様のお気持ちを考えますと、こうした悪質、危険な運転を防止するための対策をぜひとも強力に推し進めていく必要があると考えております。

 こうした観点に立って、今回の道路交通法改正により、酒酔い運転、無免許運転、共同危険行為等の悪質、危険な運転行為に対する罰則を引き上げることは、交通事故防止対策の一環として時を得たものと高く評価しております。

 他方、悲惨な交通事故をなくすためには、飲酒運転等の悪質、危険な運転をして交通事故を起こした場合の重罰化についても、方向としてはぜひとも必要なものではないかと考えております。政府としても、こうした法整備にかねてより積極的に取り組んでいるものと聞いております。

 ところで、今回民主党から、危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案が提出されているところでありますが、この法案には重大な問題が含まれているものと考えます。

 そこで、幾つかの質問をさせていただきます。

 一つは、この法案では、危険運転致死傷罪として、例えば無免許運転をし、よって交通事故を起こして人を死傷させた者を処罰することとしております。無免許運転自体が悪質な行為であるのはもう言うまでもありません。しかしながら、無免許運転とは無資格で運転する行為のことであり、この行為をすることによって、すなわち、この行為と因果関係を持って起こされる人の死傷とはいかなることを指すのでしょうか。

 すなわち、こうした無資格で運転した者が交通事故を起こした場合の原因は、無資格で運転することにあるのではなく、例えば、道路交通法令違反を理由に免許を取り消されていながら、無免許で運転して交通事故を起こした者の中に見られるように、遵法意識に欠けていたことにあるという場合があるのではないでしょうか。こうした場合には、この遵法意識の欠如が原因となり、交通ルールに沿った運転をしなかったがゆえに交通事故が起きているのではないでしょうか。

 また、こうした者も一度は免許を取得したことがあるのであり、運転操作そのものは本来できるのであります。こうした者が無免許で運転し、交通事故を起こした場合について、無免許運転によって人を死傷させるというとらえ方ではなく、無免許運転自体に悪質性を見て、無免許運転をしている場合に人を死傷させる行為を重く処罰するということは考えられると思います。

 しかしながら、民主党の法案のように、無免許運転によって人を死傷させるとするのでは、運転操作そのものはできる者が、無免許運転という無資格で運転することが原因となって交通事故が発生するということを想定することになるのであります。これでは、原因である無資格での運転行為と結果として生ずる人の死傷とにいかなる因果関係があるのか明らかではありません。

 このように、無免許運転という無資格運転とこれによって起こされる人の死傷という結果との因果関係がいかなるものか、必ずしも明らかではありません。この点については問題があるのではないかと考えておりますが、提案者のお考えを伺いたいと思います。

細川議員 おはようございます。私の方からお答えをさせていただきます。

 危険運転致死傷罪が成立をするためには、無免許運転を初めといたしまして酒酔い運転など危険かつ悪質な一定の道路交通法違反の罪を犯して、よって交通事故を起こして人を死傷させたということが必要でございます。いわば、道路交通法違反の罪の結果的加重犯的な性格を有しております。したがいまして、危険、悪質な運転という行為と事故の発生という結果の間に相当因果関係があることが必要でございまして、その因果関係が立証できないときには危険運転致死傷罪は成立をしない、したがって、立件することができないというふうに考えております。

 無免許運転におきます人身事故も同じように言えるわけでありまして、無免許運転の場合であっても、結果を回避するために必要な注意義務を怠ったということで人身事故を招いたというようなケースの場合に危険運転致死傷罪が成立をするということになります。

 先生御主張されますような無免許運転について無過失責任を問うということになりますと、例えば、うっかり免許の更新を忘れていた者が全く過失がないような場合にもこの法律によって重く罰せられるというようなことになって、かえって問題を大きくするのではないかというふうに思っております。

 そこで、危険運転行為と先生の言われる因果関係、これを法的に、ではほかにも立法の例があるかといいますと、実はこの道路交通法そのものにもこの因果関係を認める条文がちゃんとございます。例えば道路交通法の百三条の二の一項二号、これは無免許運転の違反行為をして、よって交通事故を起こして人を死亡させ、または傷つけたときは免許の効力を仮に停止をすることができるという、道路交通法そのものにもそういう因果関係を予想する規定がございます。

 それから、他の法律で、例えばダンプ規制法、ここにもやはり無免許運転の違反行為をして、よって交通事故を起こして人を死亡させ、または傷つけたときというように、因果関係があるということを想定した法律の条文があるということで御理解いただきたいと思います。

三ッ林委員 ただいまお答えいただきましたけれども、結果として生じた人の死傷が何を原因とするものなのかを考えれば、仮に無資格で運転するということではなく、やはり例えば遵法意識に欠けていること等に原因があるはずでありまして、民主党の案はこれを看過することであることを指摘しまして、次の質問に移らせていただきます。

 次に、この法案では、危険運転致死傷罪を犯した者について運転免許の欠格期間を最長十年に延長することとしております。

 飲酒運転等の悪質、危険な運転をして交通事故を起こした者について運転免許を再取得することができるようになるまでの期間を今よりも厳しくすること自体は、交通安全対策上考えられるところであります。しかしながら、民主党の法案において、運転免許の欠格期間延長の対象としている危険運転致死傷罪を犯した者には、運転をして故意により人を死傷させた者は含まれておりません。飲酒運転等をして交通事故を起こした者ももちろん悪質ではありますが、故意により人を死傷させた者は、それよりもさらに悪質なのではないでしょうか。

 民主党の法案では、危険運転致死傷罪を犯した者よりも悪質性が高い、故意により人を死傷させた者について、運転免許の欠格期間を現行の最長五年から延長することとしておりません。これでは、より悪質である故意により人を死傷させた者の方が、故意によらずに人を死傷させた者に比べ、運転免許の欠格期間が短くなるという不合理が生じてしまうという問題が起こり得ると考えますが、この点についてどのようにお考えか、提案者にお尋ねします。

細川議員 お答えいたします。

 免許取得の拒否の制度というのは、これは委員も御承知のように、道路におきます危険を防止するために、道交法に違反をした者に対して五年を超えない範囲で公安委員会の方で期限を指定する、こういうことでありまして、前提として道交法の違反が必要とされております。そこで、この危険運転致死傷罪を犯した者につきましては、一定の危険かつ悪質な違反を犯した者でありますから、その者が今後も道路におきましてより危険性が高いということを考慮して、十年間に延長したわけでございます。

 そこで、先生の言われる運転をして故意に人を死傷させた者というのは一体どういう意味か、ちょっとよくわかりませんけれども、先生が言われている故意に人を死傷させるということは、車を手段として人を殺したりあるいは傷害を与える、こういうことではないかというふうに想定をいたしますと、これは明らかに先生の言われるように悪質な故意の行為だというふうに思います。しかし、車を手段として、車を凶器と使って人を殺したりあるいは傷害をさせたり、こういうことでありますと、それは別の観点、例えば刑法にあります殺人罪だとかあるいは傷害罪とか、そういう刑法の観点からその行為を評価すべきだというふうに私は思っております。

 したがって、そういう行為そのものは、道路におきます危険を防止する目的であります道交法とは直接的には関係のない故意の行為ではないかというふうに思っているところでございまして、そういう車を使って人を殺したり傷害を与えたような人に期間の延長というようなことは特に考えなくてもいいのではないかというふうに考えております。

三ッ林委員 余り時間がありませんので、先ほどの点について指摘をさせていただいて、次の質問に移りたいと思います。

 次に、政府側にお尋ねします。

 警察庁は、昨年の十二月に公表した道路交通法改正試案に、危険運転により人を死傷させる罪の創設として、飲酒運転等に起因して人を死傷させた者を重く処罰する新たな罰則規定の創設を盛り込んでいたものと承知しております。これについては、交通事故の遺族、被害者の皆様を初めとして、パブリックコメントでも多くの国民が期待を寄せていたものと思うのであります。

 一昨日の参考人質疑において全国交通事故遺族の会の井手会長のお話にもありましたように、交通事故により命を奪われた方の御遺族、関係者の方々の言葉に尽くせぬほどの無念さを思いますと、制度としての不備のないものであり、また他の刑罰との整合性のあるものであるといったことは不可欠ではあるものの、こうした法整備自体は私もぜひとも必要であると考えております。

 こうした法整備が今回の道路交通法改正では見送られておりますが、このような新たな罰則規定の創設を見送った理由について、警察庁交通局長にお尋ねします。

坂東政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、昨年の十二月に道路交通法改正試案というものを公表いたしましたが、この試案の中におきまして、酒酔い運転等の悪質、危険な運転に起因して人を死傷させた者に対する罰則規定の創設を盛り込んでいたところでございます。そして、この案に対しましてパブリックコメントの募集というものを行うとともに、それと並行いたしまして法務省とも調整を行っていたところでございますが、交通事故につきましては現在は刑法の業務上過失致死傷罪が適用されているということで、これとの調整を十分に行う必要があるといったような意見が出されたというところでございます。

 こうした整理、検討にはなお時間を要することなどから、この試案中のこの部分につきましては、今国会に提出する道路交通法案の中に盛り込むことを見送ることといたしまして、法務省ともよく連携の上、できるだけ早期に対応を図ることとしたものでございます。

三ッ林委員 今回の道路交通法改正においてあえて法整備を見送った事情についてはただいまのお答えで理解するものですが、交通事故の御遺族、関係者等のお気持ちを思うに、また悲惨な交通事故をなくしていくために、できる限り早急に必要な法整備をしなければならないと思います。

 政府においては、飲酒運転等の悪質、危険な運転をして交通事故を起こした者に対する刑罰を現行の刑法の業務上過失致死傷罪によるものよりも重くする法整備について検討しているとのことでありますが、こうした法整備の検討状況と今後の予定について、警察庁の交通局長にお尋ねします。

坂東政府参考人 お答えいたします。

 現在、私ども警察庁におきましても、関係方面の有識者から成る意見交換会というものを法務省と合同で開催しているところでございまして、この会の意見も参考としながら鋭意検討を進めているところでございます。

 今後は、この秋に仮に臨時国会が開催されるということでございましたならば、これを目途に政府として所要の法整備を行いたいというように考えているところでございます。

三ッ林委員 同じくこうした法整備の検討状況と今後の予定について、法務省刑事局長にお尋ねいたします。

古田政府参考人 悪質、危険な交通事故につきましては、これまで業務上過失致死傷罪ということで対応してまいったわけでございますが、その中には、当然事故を起こすのも不思議はないというふうな非常に危険な行為によって事故が起きるというケースも間々あるわけでございます。こういうものにつきましては従来の過失犯という枠組みでとらえるのは適当ではないという御意見も十分理解されるところでありますので、こういう悪質な事件につきまして従来の過失犯の枠組みとは違った対応をするということが適当であると考えて、現在その作業を進めているところでございます。

 ただ、一方で、委員御案内のとおり、今大変な車社会になっております。したがいまして、この罰則というのは、非常にたくさんの国民の方に適用される可能性がある罰則になっていくわけでございます。そういうことを考えますと、やはり、どういう場合が悪質、危険な行為かということにつきましては厳密に考えなければいけない。また、本当に悪質、危険な行為、これはできるだけ漏れなく逮捕しなければいけない、そういうふうな問題が一方でございますので、その辺を含めて、先ほど警察庁の方からも御答弁ありましたように、いろいろな方の御意見なども伺いながら準備を進めております。

 具体的に申し上げますと、この秋の臨時国会がもしありますれば、これにただいま申し上げたような観点からの対応を盛り込んだ法案の提出をすべく、準備を進めているというところでございます。

三ッ林委員 ぜひ秋には提出していただきたいと思います。

 次に、刑事罰についての質問に引き続きまして、悪質、危険な運転をして交通事故を起こした者に対する行政上の措置について質問したいと思います。

 悪質、危険な運転をして交通事故を起こした者から免許を取り上げることは当然のことでありますが、一たん取り消された者も、ある期間を過ぎれば再び免許を取ることが可能になります。民主党の法案の問題点については先ほど指摘したとおりでありますが、悪質、危険な運転の防止が交通安全のために極めて重要であることも、これまた先ほど述べたとおりであります。

 そこで、今回の道路交通法改正において飲酒運転等に対する罰則の強化を行うことは大いに評価すべきものと考えますが、こうした悪質、危険な運転をした者に対する刑事罰の強化とあわせて、免許の取り消し等の行政上の措置についても政府としては検討しているものと思います。その検討の状況について、警察庁交通局長に伺います。

坂東政府参考人 お答えいたします。

 悪質、危険な運転をした者に対する行政処分の検討方針いかんというお尋ねでございますけれども、悪質、危険な運転をした者に対する点数あるいは免許取り消し後の欠格期間というものにつきましては、より厳格にすべきであるといったような意見が警察庁にも寄せられているところでございまして、このような御意見等も踏まえながら、現在、これらに係る基準の厳格化につきまして、有識者等の御意見も賜りながら所要の検討を進めているところでございます。

三ッ林委員 悪質、危険な運転によって起こされる交通事故を防止するための罰則や免許の取り消し等について質問してまいりましたが、こうした事故の防止対策に関する村井国家公安委員会委員長の御所見をお聞かせください。

村井国務大臣 三ッ林議員御指摘のように、交通事故の悲惨さ、それから被害者、御遺族の置かれた状況というものを見ますにつけましても、飲酒運転等の悪質、危険な運転によって起こされる痛ましい交通事故、これを防止していくということは、本当に私どもが真剣に取り組まなければならない重要な課題だ、このように認識をしている次第でございます。警察庁といたしましても、この種の事故に対します刑事罰や運転免許の行政処分の見直し等につきましても、真剣に取り組んでいるものと承知しております。

 このほか、警察として、交通指導取り締まりの強化、交通安全教育、さらには交通安全運動の推進、それから信号その他の交通安全施設等の整備、そういった各種の交通安全対策に、関係機関、関係団体等と連携もとりながら、さらに一層積極的に取り組んでまいるということが大きな課題だろうと考えております。今後とも、よろしく御指導のほどお願い申し上げます。

三ッ林委員 ありがとうございました。

 この法案は、交通事故の遺族、被害者の皆様を初めとして多くの国民が期待を寄せていたものでありますので、ほかの刑罰とのバランス等も考慮しながら制度として不備のない法案を政府として早期に立案され、秋の臨時国会に提出されることを期待しております。

 以上で私の質問を終わります。

横路委員長 中沢健次君。

中沢委員 おはようございます。民主党の中沢でございます。

 幾つか質問を予定しておりますが、特にきょうは、危険運転処罰法を提案されました民主党の提案者として細川さんと山花さん、ふだんはこちらでありますが、きょうは答弁席にお座りでございます。大変御苦労さんです。

 まず最初に、最近余り新聞報道にはなっておりませんが、例の外務省の機密費問題で、現在いろいろ警察を中心にして取り調べが行われております松尾容疑者の関係について、簡単に警察庁の長官にお尋ねをしたいと思うのです。

 以前の委員会でも私は取り上げました。新聞報道などで承知をしておりますが、いずれにしても、再逮捕がされて、依然として事件の全容解明の努力をされている、こういうことだと思うのです。ただ、具体的にどういう状況なのか。それから、いつも、捜査のこれからの展開がどうだという質問については、支障があるから答えができない、こういうことなのでしょうが、ここはひとつ、本人の身柄がもうしっかり押さえられているし、証拠隠滅のおそれもないわけでありますから、国民として、あるいはこの委員会としては極めて関心の高い事項でもある、こういうことを私としては踏まえておりますので、これからの容疑者に対する具体的な捜査といいましょうか、取り調べの進展がどうなるか、日程的なといいましょうか、若干のめども含めて、できれば積極的にお答えをいただきたいと思います。

田中政府参考人 お尋ねの事件につきましては、警視庁におきまして、去る一月二十五日、約五千四百万円の業務上横領の事実で外務省からの告発を受理いたしまして、鋭意捜査を推進してきたところでございます。これまでに、三月十日、四月四日、五月八日の三回にわたりまして外務省の元室長を詐欺の容疑で逮捕したところでございます。

 逮捕容疑につきましては、当時、外務省大臣官房総務課要人訪問支援室長でありました同人が、内閣総理大臣の外国出張に伴い随員等に支給される宿泊料と実際のホテルの利用金額との差額として内閣官房に水増し請求するなどして現金をだまし取ったというものでありまして、現在までの立件総額は約二億六千七百万円でございます。

 だまし取られた現金の使途につきましては、個人的な用途に費消されたものが多いというふうな報告を受けております。

 現在捜査中の事案でございますので、先ほど見通しはというお話でございましたけれども、捜査機関としての判断を申し上げることは今後の捜査に支障を生じさせるおそれがございますので、具体的な答弁を差し控えたいと存じますが、いずれにいたしましても、警視庁におきましては、所要の体制を維持しながら、現在、捜査を継続しております。その過程で刑事事件としてさらに取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づきまして厳正に対処するものというふうに承知をしておるところでございます。

中沢委員 同じような内容で、今度は村井国家公安委員長にお尋ねをいたします。

 いずれにしても大変な時期に重要な大臣としてお仕事をされるわけであります。おめでとうということと同時に、大変御苦労さんです、こういうことを申し上げたいと思うのです。

 それで、国家公安委員長、今長官の方からいわゆる実務的な、しかも警察庁の最高責任者としてのお答えがありました。知ってのとおり、内閣がかわって、外務大臣もかわって、現在中国に行かれている。外務省の機密費については、新しい大臣としてのいろいろな決意のほども幾つか具体的に示されている、特に予算の減額について具体的に言及もされている、こういう状況です。

 したがって、政治家という立場で言うと、やはりこの松尾容疑者に対する詐欺事件、全容解明ということはもちろん大事です。しかし同時に、そのスピードを速めて、国民の関心としては早くあの事件の真相を知りたい、それが外務大臣として、あるいは小泉内閣としてどういう反省も含めてやるか。

 きょうは官房長官の出番がありませんから、官房長官にはまた改めて質問をしたいと思いますが、国家公安委員長として、警察を直接指揮するという立場にはありませんが、一般的に言えば、叱咤激励、督励、こういうお立場でありますから、国民が期待をするこの全容解明、しかも早期に、こういう声について、私も全く同じ思いで今質問に立っておりますので、そういうことに対して、公安委員長として、政治家として、どのようにこれから対処をされるか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

村井国務大臣 この事件は、何と申しましても、国民の血税が報道されているような形で使われたという大変ゆゆしい事案でございまして、現在警視庁でいろいろ捜査を進めているところではございますけれども、警視庁の皆さんの問題意識も全く同様のものがあろうかと思っております。

 中沢委員も十分御案内のとおり、国家公安委員長という立場は大変微妙な立場でございまして、民主的管理とそれから政治的中立ということを警察に求める、警察に対してそういう対応をするという観点から、私自身は国家公安委員会を総理し代表はいたしておりますが、警察に対する管理というのは、これはあくまで国家公安委員会という集団としてやるという立場でございます。直接私がこの件について何かを言うということは、これは当然慎まなければならない問題でございますけれども、しかし、国民の期待が那辺にあるかということは、これは当然いろいろな形でメッセージを伝えることは可能だと考えておりますので、そのような意味合いで、ただいま委員御指摘の点につきましては十分私といたしましても督励をしてまいりたい、こんなふうに思っているところでございます。

 それからもう一点、先ほど長官に対する御質問の中で将来の捜査の見通しというようなことを仰せになられましたが、この点につきましてあえて私見を申させていただきますと、松尾以外にも関係している者がひょっとしたらあるかもしれない、一般論でございますけれども。そうとすれば、見通しを述べることによって、その者にこれ以外広がらないとかなんとかいうような推測を与えることも恐らく避けなければならないことで、さような意味で私は、当委員会に限らず、私ども、いわゆる捜査、こういったことにかかわります人間は、やはりそのあたりのことについては、およそ将来の予測に関することは申し上げるのを避けさせていただく、これはやむを得ざるところだろう。私は、この立場になりましてもあえてそのように思っているということを申し添えさせていただく次第でございます。今後ともよろしく御指導のほどをお願い申し上げます。

中沢委員 いずれにしても、事件の全容解明というのは、松尾容疑者以外に共犯者がいるのかいないのか、こういうことも含めてだと思います。ぜひ、そういう意味での努力もお願いをしたいし、かなりのスタッフでやっていらっしゃいますけれども、できるだけ早く全容解明ということで、国家公安委員長としても努力を改めてお願いを申し上げたいと思います。

 さて、別な問題でありますが、最近、新聞に暴力団絡みの事件がいろいろ報道されている。善良な国民も巻き添えを食らう、こういうケースが幾つか非常に出ております。

 私の記憶では、いわゆる暴力団抗争が非常に激しかった十年ほど前に、これではやはり法的な規制を改めてやる必要がある、こういうことが世論の中にも出てまいりまして、当時は地方行政委員会でいわゆる暴力団新法というのをつくりました。私はたまたま社会党の筆頭理事をやっておりました。当時は、自民党は恐らくこのことが念頭にあったと思いますが、私の後ろに亀井先生がおりますが、別な亀井先生が、非常ににぎやかな亀井先生が自民党の筆頭理事としてちょうちょうはっしやりまして、しかも委員会だけじゃなくて、小委員会でやはり学者や国民の意見もしっかり聞いて、完全かどうかは別にして、十分な法体制を整備しようと随分努力をした記憶があります。別に昔話だけを言うつもりはありません。

 そこで、ことしは恐らく、あの法律が平成四年施行だというふうに記憶をしておりまして、ちょうど十年目。最近の暴力団絡みの事件なんかを考えますと、あれから十年間、いろいろ警察も現場の第一線で努力をされていると思いますが、まず最初に田中長官に、現状の暴力団対策がどうなっているか、重要な課題はどの辺にあるのか、余り時間がありませんから詳細な内容は結構ですけれども、特徴的な内容についてお答えをいただきたい。

 私の関心は、暴力団にもいろいろありますけれども、例の指定暴力団、構成員、準構成員、伝統的な事件のほかに最近は経済分野にも巧妙に進出をしている。やみ金融だとか債権の取り立てだとか、最近は俗に言うボーダーレス化、国際的なさまざまな密入国からけん銃の密輸入から始まって、そういうことが非常に目につくと思うものですから、特にそういうところに重点を置いて、現状と対策、何をやっているか、できるだけ簡単明瞭にお答えをいただきたいと思います。

田中政府参考人 お答えいたします。

 平成十二年十二月末現在の暴力団の構成員及び準構成員の総数は約八万三千六百人でございまして、暴力団対策法が制定された当時と比べますと約七千四百人の減少となっております。この間の特徴といたしましては、山口組、稲川会、住吉会、指定団体の中でもこの三団体の寡占化傾向が指摘できると思います。

 暴力団による事件の現状につきましては、暴力団は依然として、覚せい剤取締法違反、恐喝、賭博等の資金獲得犯罪を主に敢行しているところでございますが、御指摘のように、近年は、不動産競売妨害などの債権回収の妨害や金融機関の融資への介入など、金融・不良債権関連事犯の検挙件数が一貫して増加しているところでございまして、また、来日外国人と結託をしてかようの犯罪を敢行しているという事例も指摘できるところでございます。このほか、一般市民を巻き添えにする銃器発砲を伴う抗争事犯を引き続き強行するなど、暴力団は市民社会にとって大きな脅威となっているところでございます。

 警察といたしましては、暴力団犯罪の徹底した取り締まり、暴力団対策法の効果的な運用、もう一つは暴力団排除活動の推進を三本柱として暴力団総合対策を推進してきたところでございますが、今後とも、組織の総力を挙げてこれら諸対策を強力に推進していく所存でございます。

中沢委員 そこで、村井委員長に同様趣旨でお尋ねをしたいと思うんですよ。

 確かに、いろいろな犯罪があります。しかし、暴力団絡みの犯罪というのは極めて深刻で、しかも巧妙で国際化をしている、そういう特徴をだんだん強めているんじゃないかと思うんですよね。

 国家公安委員会でもいろいろな警察庁の報告を受けて議論をされていると思いますが、私も久しぶりに、「暴力団 情勢と対策」という、こういうパンフレットを見ました。いろいろやっている。しかし、やるべき課題はまだたくさんあるということだと思うんですよ。

 国家公安委員長としてはやはり、例えば、全国の都道府県の県警本部長が年に一回あるいは年に数回会合を持つ、その際には公安委員長としての訓示も行われる、あるいは、長官を通じて、おっしゃるように直接の指揮監督権はないけれども、一般的にはやはり督励をする、そういう責任があるわけですね。

 やはりこれは、暴力団対策でいうと、相当なスタッフの増員はあるようですが、増員を含めて具体的な対策を今まで以上に相当しっかりやっていかないと大変なことになりはしないか、私は率直にそういう危機感を覚えるところなんですよ。ですから、私の思いは余り変わらないと思いますが、委員長として、これから暴力団対策、基本的な見解、あるいは具体的な対応も含めて、少しく決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。

村井国務大臣 ただいま長官から申し上げましたように、暴力団のいろいろな動きというのは、大変知能的な面も出てまいりましたり、あるいは国際化というような様相も呈してまいりましたり、そういう意味では非常に難しい対象になってきていることは事実でございます。さような意味で、私どもといたしましても、十分に警察官の教養を高めましてそういうものに十分対応できるような能力を備えさせる、これも一つの道だろうと思っております。

 それからもう一点、やはり世の中で暴力団を許容しない雰囲気をつくっていただく。これは非常に大事な問題だと思っておりまして、さような意味で、いわゆる企業における暴力団の排除についての関心、これも大いに喚起をしてまいりたいと思っております。

 もう委員十分御認識のとおり、私の立場というのは若干微妙な面がございますけれども、かような議論を通じてちょうだいをいたします国会の問題意識、こういうものは正確に関係の者に伝えまして大いに督励をしてまいりたい、このように考える次第でございます。今後とも、よろしく御指導のほどお願い申し上げます。

中沢委員 これ以上のことは申し上げませんが、いずれにしても、警察庁を中心とした専門家集団の対策、同時に、このパンフレットにもありますように、全国的な暴力団の追放運動推進センター、そういう国民の力ともぜひひとつタイアップして万全を期していただきますように、あえてそのことを申し上げておきたいと思います。

 さて、次には民主党の提案者に幾つかお尋ねをいたします。

 今ほども、自民党の質問者からもそれぞれ質問がございました。若干重複をすると思いますが、まず最初に、危険運転処罰法を民主党として提案をされたその背景、あるいは具体的な立法の経緯、あるいは、なぜこういうことを今の国会で出そうとしているか。もっと言うと、警察の答弁も法務省の答弁も、ことしの秋の臨時国会には改めて、この法案どおりではないけれども、危険運転については相当量刑も含めて厳罰主義でやる、そういう法案を出す予定である。これは一番最後でまた公安委員長にも聞きたいと思いますが、それは別にいたしまして、そういう一つの大きな背景も一方では念頭には入っていると思いますが、しかし、この通常国会で法案を出して成立を努力されている、こういうような決意のほども含めてお答えをいただいておきたいと思います。

細川議員 最近、悪質な交通事犯に対して刑が軽過ぎるのではないかという世論が高まってきております。そのきっかけとなりましたのが、二つの交通事故でございます。

 一つは、平成十一年の十一月か十二月に起こったと思いますが、東名の高速道路で飲酒運転のトラックに乗用車が追突をされまして幼い姉妹が死亡した事件でございます。それからもう一つは、翌年の十二年の四月に、神奈川の座間市におきまして、これは酒気帯び、無保険、無車検、そしてスピード違反、これによって歩道を歩いておりました大学の新入生の男の学生二人が死亡した事件でございます。

 この東名の事件につきましては、ことしの一月に高裁の判決がおりまして、懲役四年という刑が確定をいたしましたけれども、その判決の中で、量刑が軽いというような問題については立法の場で措置すべき問題だというように、傍論で指摘をされたところでございます。また、座間市での事件につきましては、これは昨年の暮れだと思いますが、業務上過失致死と道交法違反、最高の求刑で最高の判決が出まして、これが懲役五年六月ということになりました。

 いずれもこの判決に対しては刑が軽いという世論が起こりまして、また、刑が軽いというだけではなくて、果たして、こういう悪質な交通事犯に対して、業務上過失致死という刑法の行為類型で処罰するのが妥当なのかどうなのか、むしろ故意犯ではないのかというような意見も出されました。そんな中で、この二つの事件の遺族の皆さん方が、もっとこういう事犯に対しては厳罰に処すべきだ、そういう署名を集められまして、短期間に二十六万人の署名が集まりまして、法務大臣の方に法制定をお願いをされたという経緯がございます。

 私どもも、こういう経過の中で、党の方ではワーキングチームをつくりまして、これに対応すべく立法作業を進めてまいりました。政府の方といたしましても、先ほども警察庁あるいは法務省の方から御答弁がありましたように、いろいろ検討をされたようでありますけれども、なぜか先に延びまして、次の臨時国会とかいうようなお話になっているところでございます。

 私どもは、やはり国民の皆さんのこういう高い世論といいますか、早く法制定をしてほしいという要求に対しては、立法府としては早急にこれに対応するのが私ども国会の役目だというふうに思いまして、立法作業を進めて御提案をさせていただいたところでございます。ぜひ御理解をいただきたいと思います。

中沢委員 そこで、具体的に、現行の業務上過失致死罪、それと今回提案をされた法案の量刑の関係について、具体的にはどういう違いがあるのか、まずそれが一つ。それからもう一つは、スピード違反ということが対象から外れて、六つの関係について絞られている、こういう内容についてどういう判断をされて法案としてまとめられたのか。この二つ、あわせてお答えをいただきたいと思います。

細川議員 お答えをいたしたいと思います。

 私どもは、今度、道路交通法の中での改正あるいは刑法におきます業務上過失致死罪で処罰をするというのではなくて、新しい特別法をつくりまして、そして量刑の方も、業務上過失致死が五年以下の懲役ですけれども、これを十年以下の懲役にということで提案をさせていただいているところでございます。

 そこで、委員の御質問は、どういうような対象の行為を厳罰に処すのかという意味も含まれておりますので、そのことについてまず御説明をしたいと思います。

 この法律は、一定の危険かつ悪質な道路交通法違反の罪を犯して、そしてこれによって交通事故を起こして人を死傷に至らしめる、そういう重い結果を生じた場合に厳しく重く処罰しようというものでございます。

 そこで、法律の対象となります危険かつ悪質な道路交通法の違反としてどういうのを決めたかといいますと、酒酔い運転、麻薬等の運転、暴走族などの共同危険行為の禁止違反、無免許運転、酒気帯び運転、そして過労運転、この六つの罪を規定いたしました。

 何を基準として悪質であり、また危険である行為としたのかということにつきましては、今度の道路交通法の改正案につきましては、自由刑というのが八つの段階になっております。これは、五年以下の懲役、三年以下、二年以下、一年以下、六月以下、三月以下の懲役、そして六月以下の禁錮、三月以下の禁錮、こういう八段階になっております。こういう八段階になっているというのは、それぞれ法定刑の違いが罪の重さといいますか危険性の度合いによって定められているというふうに理解をいたしますので、私どもとしましては、懲役一年の罪とそれより以上重いものが上限として定められている違反行為、それらを対象といたしまして六つの罪をこの法案で対象行為として挙げたところでございます。

 そこで、もう一つ質問がありましたいわゆるスピード違反、速度超過の罪につきましては、先ほど申し上げました基準から申し上げますと、この速度超過の違反は道交法では六月以下の懲役ということになっておりまして、その基準から外れるということでございます。スピード違反の場合の上限が懲役六月というこの罪につきましては、過積みの罪とかそのほかにもいろいろ六月以下の道交法違反の罪はありますけれども、速度超過違反だけをとりたてて特にほかの罪よりも重く罰するという理由は見当たらないということで除いたところでございます。

 また、速度超過の罪につきましては、事故が起こった後で速度超過運転をしたという立証がなかなか困難だというようなことも考慮いたしまして、実務上の理由からもこの法律では対象外というふうにしているところでございます。

 以上でございます。

中沢委員 時間があればもっと具体的な内容でいろいろお尋ねをしたいんでありますが、いずれにしても、民主党が遺族会の皆さん方とも非常に頻繁に接触をされてこの法案をまとめる、つい先日も参考人で井手会長にもわざわざお越しをいただいて改めて意見を聞く。私は、別に自画自賛じゃないけれども、やはりこれは国民あるいは関係者が非常に期待をする非常に立派な法案だと思うんです。ただ、残念ながら、理事会ではこの法案の扱いについて各党の意見の発表がそれぞれありました。後ほどまた国家公安委員長にも政治決断を私は求めたいと思いますが、大変丁重な御答弁をいただいてありがとうございます。

 さてそこで、最後の質問になりますが、村井国家公安委員長に、もう時間がありませんから、二つまとめてお尋ねをいたします。

 一つは、道交法そのものの修正案を、我が党を中心にして結果的には共産党、社民党三党の共同提案、こういう運びでこの後具体的な議事運びをしていただきます。

 まず、質問の第一は、修正案の内容はもういろいろとお話を聞いていらっしゃると思いますが、運転免許を付与するに当たって今まではさまざまな欠格条項があった、警察庁と関係団体との間で今までいろいろすり合わせをやって一歩前進をした。そのことは正確に一歩前進であるという評価をしたいと思うんです。しかし、やる以上、もっと、あと一歩、あと二歩ぐらい前進をすべきではないか。特に障害をお持ちの方からさまざまな意見も、ついこの間の参考人の質疑の中でも、関係者から非常に切実な生の声も改めて聞きました。

 やはり小泉内閣というのは改革断行だ、国民にしっかり目線を置いて国民の期待にこたえてやる、私は党派は違いますが、そのこと自体は大歓迎ですよ。ですから、ハンセン病もああいう総理の決断があったと私は思うんですね。それとはもちろん次元が違いますけれども、この三党共同修正は、大体基本的な考え方は、障害者にも優しい、憲法で認めております人権を尊重する、そういうことが背景で修正案で出しました。ですから、この際、私は、政治家として私どもの修正案に基本的に賛同の意を表していただきたい。これは大事ですよ。

 しかしながら、法案処理という技術的な関係からいうと、今のこの委員会ではなかなか難しい。参議院の審議がまだ残るわけでありますから、参議院段階でも私はぜひ、国家公安委員長として、この法案の提出をされた事実上の法案の提案責任者ですから、そのことを含めて、基本的なこの共同提案に対する見解、法案処理に当たってのこれからの努力、ぜひひとつ、改革断行内閣の有力な閣僚であるはずですから、私は決断を持って明快にお答えをいただきたい。これが一つ。

 それからもう一つは、今ほどいろいろ議論をいたしました危険運転処罰法、これも残念ながら、法案としては議事さばきではなかなかうまくいかない模様です。私は大変残念だと思うのですね。これも同様に、遺族会の皆さん、会長初め関係者から、早くこういう法律が必要だ、こういう非常に強い意見が出ている。これは国民の声だ。警察庁も法務省も、その声を受けとめながらも、今国会ではできません、次の秋の臨時国会ではできます、やりましょうと。

 私は、いいことは早くやったらいいのじゃないか。こっちの方は手っ取り早く、もう早急に、できればきょうの委員会の採決に当たって、公安委員長として、非常に大事な法案だから、ぜひ私どもの修正案と同じように、基本的には賛成ですと。いいですか、基本的に賛成ですと。しかし、もうここまで、夕刻に採決をする場面だからこの衆議院では無理かもしらぬけれども、三党の修正案と同じように、やはり参議院の場で十分検討して、結果的に今の国会で決める、これが国民の期待にこたえる改革断行の小泉内閣の真骨頂じゃないか、私はこう思うのですけれども、この二つ、法案としては違いますが、その背景や基本的な政治哲学は共通すると思いますから、ぜひひとつ大胆にお答えをいただきたい。答弁によっては拍手をしたいと思うのです。

村井国務大臣 小泉内閣に大変御激励をいただきまして恐縮をいたしております。

 まず、第一点でございますけれども、修正案でございますが、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるものを呈している者に対して免許の拒否ができる、こういうような形にしよう、こういう御提案でございます。

 私も実は過去、いわゆる法律案の起案に従事したことがしばしばございますけれども、政令にゆだねるというのは、ある意味では政府に非常に大きな授権をするということでございまして、国会が持っておる立法権を通じまして政府にゆだねるときには、やはりそれなりの縛りが要る。相当限定的に政令にゆだねる、政府にゆだねる。そうでないと、国民の権利を著しく侵害し、あるいは義務を加重するという、本来国会が押さえなきゃならないところを大変包括的に授権してしまう危険があるわけでございまして、さればこそ、法律で政令に委任する事項というのはかなり限定的に書くというのが一つのスタイルではないか、私はそのように思っております。

 そういう意味で、ちょっと縛り方が甘い感じになっていはしないだろうかというところが、あるいはいささか包括的に過ぎないだろうかというところが、私も率直に申しまして抱く懸念でございます。そのほかにも法律論としていろいろな議論があるとは思いますけれども、私は、その点が一番本質的な問題ではないか。さような意味では、政府提案でございますけれども、適切な縛りを加えて政府に授権するという形になっているのではないか、こんなふうに思っております。

 それからもう一点のいわゆる危険運転処罰法案でございますけれども、これは確かに御議論として非常によくわかるのでございますが、一方で、従来交通事故につきまして適用しております刑法二百十一条の業務上過失致死傷罪というこの罪でございますが、これが属しておりますのがいわゆる刑法二十八章の「過失傷害の罪」という章に置かれているなにでございまして、それより重いといいましょうか、その前には「傷害の罪」というのがあり、その前に「殺人の罪」という章が置かれている。この刑法典の中でどのあたりにこういう罪を位置づけるかという、より根本的な議論がどうも刑事法制全体の議論としてあるようでございまして、これこそまさに国民の権利にかかわる非常に重要な問題でございますので、少し慎重、広範な議論が要る。交通事故という特定の事象を取り上げましてこの根本的な刑法典のありようというものに特例を設けるということだけで足りるかというあたりのところが、恐らく法務省刑事局あたりでもう少し検討をさせてほしいという議論のポイントであろうかと。

 私は、それなりにこのあたりは、国会というのは本質的に国民の権利を守ることに熱心で、それから義務を加重することに慎重であるべき場所だと思っておりますだけに、国会議員としての立場としても、もう少しここはお時間をちょうだいした方がよろしいのではないか。せっかくの尊敬する中沢先生の御提案でございますけれども、ちょっとそのあたりは慎重な御答弁をさせていただく次第でございます。

中沢委員 残念ながら私の期待をするような勇断を持ったお答えがございません。非常に残念だと思います。これは、党派を超えて、立法論は別にして、国民が非常に強い期待を持っている、こういう観点で私は言ったつもりですから。

 もう時間がありませんからこれ以上は申し上げません。あとは同僚議員の質問にしっかりまたお答えをいただく。そして、くどいようですが、参議院でもこの法案の議論をする場があるわけですから、そこでまた改めて参議院は参議院でしっかり議論をして、私どもとしては、修正案が通るように、そして我が党の衆法が通るようにこれから努力をすることをあえて国民に向かってお約束をして、私の質問を終わります。

村井国務大臣 再度申し上げますが、お気持ちは大変よくわかりますし、そういう方向で私どもも一生懸命努力する、その方向につきましては改めて付言をさせていただく次第でございます。

中沢委員 終わります。

横路委員長 今田保典君。

今田委員 大臣、大変御苦労さまでございます。私は民主党の今田保典でございます。

 かねてから問題になっておりました自動車運転代行業の事業について、警察庁、国土交通省の共管による運転代行業の法制化を提案されたということについては、私もかねてから関係している一人として、大変うれしく思っているところであります。

 この運転代行業については、七〇年代の半ばごろから地方の都市から始まった問題でありまして、大変長い間、今日まで来たわけでございます。その間、違法行為というものを取り締まってやってきた以外には、これといった施策は講じられないままに放置されてきたわけでございます。そういうことを思えば、もっと早い段階でこの運転代行業の問題については取り組むべきではなかったのかなというような思いをいたしておりますが、いずれにしろこういった形で法案を出された、こういうことについて、私も関係する一人としてうれしく思うわけでございます。

 そこで、運転代行業のスタンスについてお伺いをしたいというふうに思うわけでございます。

 この事業に対するスタンスは、これまで二つの見方があったと思うのです。一つは、すき間産業という表現で見方をされてきた。一方で、いやそうではない、いわゆるニューサービス業だというような観点から、新しいサービス事業として肯定的にとらえる見方をしてきた面もあるわけでございます。この二つの見方を、関係する皆さんがはざまで揺れ動いてきたというふうにも私はとらえておるわけでございまして、この基本的なスタンスというものについて、先ほど言ったようなことで、新しいサービス産業としてとらえてこれから育成あるいは発展をさせていくという思いで、今回はこういった形に法を出されたんだろうというふうに私は認識しておるわけでございます。

 この今ほど言ったスタンスについて、これから議論するに極めて重要な問題でありますので、この部分について警察庁と国土交通省の方でどのようにとらえているのか、お聞きをしたいと思います。

村井国務大臣 いわゆる車社会というものが急速に進展をいたしまして、その中でいわゆるマイカーというのが予想以上に急速に普及した。そこで、酔客が、あしたのためには車を持って帰りたい、しかし酔っぱらって運転してとんでもないことになってはいけない、こんなことでできてきたというような、発生においては確かにすき間産業的なものではあったと思うのでございますけれども、これは今田委員も大変お詳しい世界でございますけれども、いずれにいたしましても、私の地元もそうでございますが、完全に車がなければ生活できない社会、そういう社会ではそれなりにすき間産業と言えないだけのものにもはやなってきた、こういうことなんだろうと思っております。飲酒運転の防止という意味では、交通政策上は交通安全に非常に大きく寄与している大変重要な事業の一つ、このように私どもは位置づけている次第でございます。

 交通事故死亡の発生率は非常に高く、運転者による最高速度違反等の下命容認でございますとか暴力団関係者による被害の問題などもこの間に顕在化しているという認識がございまして、そこで、運転代行業の業務の適正な運営、こういうものを確保しまして、かつ交通の安全と利用者の保護を図るということが目的でございまして、この国会でこの法案を提出した次第でございます。

 今回、法制化を機に、私ども、交通安全を確保するという立場から、国土交通省とも緊密な連絡をとりつつ適切な運用をいたしまして、業界の健全な発展あるいは育成、こういうものを図ってまいりたい、こんなふうに考えておる次第でございまして、今後ともよろしく御指導のほどお願い申し上げたいと存じます。

今田委員 私も、実は、以前にバス関係に携わってきて、同時に同じようにタクシー関係もいろいろなところで携わってきたわけでございまして、その際、この運転代行業の違法行為というものが至るところで見られて、その実態調査等々も含めて長い期間にわたって運動してまいりました。運転代行業に携わっている方々を見ますと、いわゆる反社会人的な立場の人がやっているものですから、どうしてもすき間産業的な見方をされてきたというふうに思うんです。しかし、今ほど大臣が言われたように、車社会になって、交通安全の面からいっても非常に重要な産業という位置に私としてはとらえておるところでございまして、そういった意味で、今大臣からお話ありましたような観点から以下質問させていただきたい、このように思っているところでございます。

 一つは、規制の方法についてお尋ねをしたいわけであります。

 運輸事業関係では余り聞きなれない認定ということになっております。警察庁が所管する業務規制法規ですが、これについては、風俗、あるいは古物営業、質屋さん、公衆浴場とか旅館業とか、このすべてについては許可であります。ただ一つ、比較的新しい産業として最近出てきたのは警備業法なんですが、これについては認定というような使い方をしておるわけであります。

 これは、この事業をどのように考えているかによって変わってくるんだろうというふうに思いますけれども、この運転代行業については運輸事業に準じたものと考えることがごく一般的ではないのかなというふうに私は思うわけであります。その方がわかりやすいというふうに思います。また、このほかに、類似のニューサービス、すき間産業と言われるものが数多くあるわけでありますけれども、規制方法として、果たして許可という方がわかりやすいのか、あるいは認定ということが果たしていいのかどうかということになりますと、私はどちらかというと認定よりも許可という方がわかりやすいのではないかなというふうに感じるわけであります。

 これについては警察庁の方でどのようにお考えなのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。

坂東政府参考人 お答えいたします。

 自動車運転代行業は、先ほども大臣から御答弁申し上げましたように、酒を飲んでいるお客さんにかわって自動車を運転するということを目的とする、つまり、そういった役務を提供するという業務でございます。ただ、またさらに、大臣からも御答弁申しましたように、こういった運転代行業というものは、交通の安全等の観点からいろいろな問題があるといったようなことも指摘されているということでございますので、やはり一定の規制を行う必要があるだろうということで本法案の提出に至ったものでございますが、しかし、先ほど申しましたように、役務の提供というようなものの業務でございますから、これを営むに当たって許可を得なければならないという厳しい規制を設けるまでの必要もないだろうというように判断したところでございます。

 そこで、必要最小限度の規制という考え方を基本にしながら、自動車運転代行業を営もうとする者が業務を適正に遂行することができないと認められる事由、そういった事由に該当しないということにつきまして行政側が確認するという認定制を採用するというのがいいだろうと考えまして、今回の法案を提出するということになった次第でございます。

今田委員 わかりました。

 そういうことで、次に、代行と請負の違いというものをちょっと御指導いただきたい、このように思います。

 この事業の定義でありますけれども、運転役務を提供する営業のうち、運転代行業は、主として、夜間の酔客等を対象にする、そして随伴の車をもってするものを代行業だというふうに定義しておるわけでありますが、しかし、余りにも視野が狭いといいますか、細かく限定しているのではないかというふうに思うわけでございます。

 その思っているところをちょっと申し上げますが、この定義の中心であります運転役務の提供ということでは、代行業だけではなくていろいろな形態の事業が今起こっておるわけでございます。例えば、福祉の分野で申し上げますと、派遣とか請負とかそういうものを使っている、あるいはボランティアという形でのいわゆる運転役務という提供を行っているというものがたくさんあるわけであります。

 こういった現状を考えますと、運転代行業はそうした動きの中で社会的な認知のトップバッターになったわけでありますが、この事業だけではなくて、いろいろな運転役務提供事業を行っているものが、先ほど言ったようなことで、ボランティアとかいろいろな形でやっているものがあるわけであります。そういうことを考えますと、請負と言われる運転役務の提供事業、それから代行といういわゆる代行業の産業、ちょっと何か一般的になじまないものが、いろいろなものがあるわけでありまして、この違いが法律的にどのように違っているのか、ちょっと御指導いただきたい、このように思っているところであります。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 その前に、国土交通省のスタンスについて答弁させていただきたいと思います。

 自動車運転代行業につきましては、主に夜間の繁華街における酔客を対象に行われていることでありますので、違法なタクシー類似行為が行われているとか料金が不明朗であるといったような利用者保護の問題点がございまして、いろいろと指摘されてきたわけでございますが、昨年の百四十七国会における道路運送法及びタクシー業務適正化臨時措置法の一部を改正する法律案、この審議の際に、衆参両院におきまして、運転代行業につきまして、「違法行為排除、業務の適正運営及び安全確保等に関し、必要な法規制を早急に検討すること。」こういった旨の全会一致の附帯決議が行われたところでございます。

 国土交通省といたしましては、このような状況にかんがみまして、自動車運転代行事業に生じている言うならば今の社会的な問題に対処し、その業務の適正化を図る、こういったために新たな法規制を講ずる必要があるというふうに考えたところでございます。このようなスタンスに基づきまして法律をお願いしているということでございます。

 それから、今お尋ねの運転代行業に関係するいろいろな定義の問題でございますけれども、まず本法案でございますが、これは現在、特段法規制のない事業につきまして新たに規制を講じるというものでございますために、規制の対象については、規制の必要性を考慮しまして必要最小限のものとする必要があるというふうに考えております。このため、本法案におきましては、他人にかわって自動車を運転する役務を提供する事業のうち、高い交通事故発生率や不透明な料金等の問題が生じておりますもののみを自動車運転代行業として定義したものでございます。

 また、この法律におきます代行という用語でございますが、利用者にかわって自動車を運転するというこの事業の形態に着目いたしまして用いているものでございます。法律上の契約の類型に基づいてとらえているものではございませんけれども、本法案で定義している自動車運転代行業につきましては、その営業の形態から考えますと、基本的には民法の請負に当てはまるかと考えております。

今田委員 いろいろ今お話ありましたけれども、このことについてはこれから申し上げますけれども、いろいろな運転役務の提供事業の一つに自家用自動車管理業というものがあります。自家用車への運転役務の提供を中心に、整備、管理などを含めた、総合的に請け負うという事業でありまして、さきに申し上げましたように、一般的に請負とされる形態であります。これは少し前になりますけれども、道路運送法やあるいは職業安定法の違反ではないのかというようなことがせんだっての運輸委員会で問題になったこともありました。

 この自動車管理業は、運転代行業のように社会的に目立つ存在ではありませんけれども、現在は事業としてかなり大きなものになっております。市場規模といたしましては、年間売り上げを見てみますと、運転代行業が一年間で約六百から七百億円、自動車管理業については、これは平成十二年度でありますけれども、一千百三十五億円というものであります。このようになっておるわけであります。

 この事業も本質は運転役務の提供であり、運転代行業と全く同じような感じがいたすわけでございます。運転代行業法の制定を機会に、自動車管理業についても法的な位置づけを行うべきではないのかというふうに私は思っております。そうでなければ運転代行業とバランスがとれないのではないかというふうに感じるわけであります。そうはいっても、法制化についてはなかなか時間がかかるということであれば、少なくとも二種免許の義務づけを早急に行うべきではないのかというふうに思っておるわけでございますが、これらについて、国土交通省ですか、警察庁さんでも結構ですが、御回答いただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 自家用自動車管理業でございますが、自動車運転代行業と異なりまして、長期的な契約に基づいてサービスが提供されているものでございます。このため、利用者は適正な業務を行う事業者を選んで利用することができるということから、利用者の保護に関する問題が生じているというわけではないと思っております。

 また、自家用自動車管理業におきましては、自動車運転代行業のように、夜間の繁華街という限られた時間あるいは場所で、無理にと申しましょうか、業務の効率を上げるという観点から営業が行われるということもないために、交通の安全についての問題も特段生じているとは考えていないところでございます。

 このため、自家用自動車管理業につきましては今回法的な位置づけを行う必要がないものと考えております。また、警察庁におきましても、交通の安全確保の観点から、道交法におきまして二種免許の対象範囲を検討する際に二種免許を義務づけることとしなかったものと認識しているところでございます。

坂東政府参考人 自家用自動車管理業を行う者について二種免許を義務づけたらいかがかというような御質問でございますけれども、先ほども国土交通省の方からも御答弁ございましたように、この自家用自動車管理業というものは長期的な契約に基づいているといったようなことから、仮に事故があったといったときには、そういった信頼関係の喪失というものが契約解除へつながっていくといったような認識が非常に広く存在しているというようなことから、事故を多発するようなデータがない。そういったような観点から、私ども、現時点におきましては第二種免許というものを義務づける必要はないというように考えているところでございます。

今田委員 そういう観点から次に質問させていただきたいのです。自動車管理業への二種免許の義務づけということを私は今申し上げたのですが、これは、運転役務の提供事業についてはいろいろな形態があるわけでございまして、果たして今のままでいいのかという部分もあるわけでございますので、それらの運転者にはやはり二種免許を義務づけるべきではないのかというふうに思うわけでございます。有償、無償を問わず、自動車をもって他人の需要に応じる旅客運送サービス、これについてはやはりすべて二種免許の義務づけを行うべきであるという立場に立って私は申し上げたい、このように思っております。その中には、現在何かと話題になっておりますボランティア輸送、あるいはせんだって規制緩和で道路運送法の適用除外になりました無償運送というものも含まれておるわけであります。

 このように申し上げるのは、新しいサービス事業を前向きに受けとめるということで、やはりそれには安全や社会的秩序というものをないがしろにしてはならないのだろうというふうに思うわけでございます。したがいまして、お客様を運ぶあるいは人の命を運ぶいわゆる旅客運送もしくはそれに準じたサービス事業、そういった方々に対する二種免許の義務づけが最低限度、私は社会的規制として必要なのではないかというふうに思うわけであります。しかし、そうはいっても、特にボランティア輸送の方はいろいろ、私にも要請が来ておりますけれども、そうなると大変だよというような部分もありますけれども、しかし、人の命を預かる、こういう観点からいえば、社会的規制として私は必要なのではないかというような思いをしておるわけですが、これは警察庁、国土交通省、双方から考え方をお聞かせいただきたいというふうに思います。

坂東政府参考人 二種免許につきましても、現在私どもが二種免の対象としているもの、あるいは今回の改正法で二種免許を義務づけたいというように考えているもの以外にももっと二種免を義務づける必要があるんじゃないかといったようなお尋ねでございます。

 これまで第二種免許を必要としていなかった事業などにおける自動車の運転に対しまして新たに第二種免許を義務づけるかどうかにつきましては、その事業等に係ります事故実態あるいは運行形態、そういったものから見まして運転者に高度な運転能力が要求されるべきである、そのように認められる事情があるかどうかというものを検討する必要があるというように考えているところでございます。今回、自動車運転代行業以外の事業等を二種免許が必要といった形で盛り込まなかったのは、その事故実態等を踏まえますと、現時点では第二種免許を新たに義務づける必要はないというように考えたところでございます。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 一般的に申し上げれば、輸送サービスにおける安全確保を図るための措置として、二種免許の義務づけというのは有効な手段の一つであると思います。一方で、実態から見て過重な負担をもたらすような規制となることも、これまた避けることが必要であると思います。二種免許の義務づけそのものは、今警察庁の交通局長から御答弁がございましたように、道交法において措置されているものではございますけれども、このような観点から二種免許の対象範囲が決められているものと考えております。

今田委員 ちょっと時間がないので先に進めさせていただきたいのですが、今ほど御回答あったものについてちょっと私なりの意見があるわけでありますが、いずれにしろ、いろいろな方々への御負担も含めてというようなお話がありました。そのことを言われれば私もちょっと心痛むところがあるんです。特にボランティアでいろいろやっている方がおるわけでありまして、その方々へ、おまえたち二種免許をきちっと取りなさいと言うのも何か正直言って心痛むところがあるんですが、しかし私は、社会的規制というものを重く見て、今後十分検討していただきたいものだなというふうに思います。

 次に、公安委員長にお尋ねをしたいわけですが、警察庁が管轄する事業、先ほど申し上げましたところでありますが、数多くあるわけですが、その中に自動車教習所事業があります。これから申し上げることについては、いつも私、公安の方にお尋ねをしているわけでありますけれども、この事業には指定という規制方法がとられております。ただ、道路交通法の第九十九条においては指定という手続が記載されているだけであって、事業そのものが法制化されているわけではありません。この事業は、かねてから業界の健全な発展のため必要だとして、事業法の制定を強く私は求めてきたところであります。

 そこで、考えてみますと、このたび法制化されることになった運転代行業は、事業者数が二千七百十五あるそうであります。そこで働いている方は約四万人というふうにお聞きしております。それで、先ほど申し上げましたように、年間の売上高が六百から七百億円あるというふうに聞いておりますけれども、これに対して自動車教習所事業は、事業所数こそ千七百事業所と少ないわけでありますけれども、そこで働いているのが六万人というふうにお聞きしております。それで年間の売上高が六千億ということであります。

 このようなことを考えれば、私は、この自動車教習所事業は立派な産業だというふうにとらえてしかるべきではないかというふうに思います。しかも、この車社会の中で大変重要な役割を果たしているわけでございまして、運転代行事業が法制化されるという時代になってきたわけですから、自動車教習所についても事業法制定について早急に検討すべきではないのかなというふうに思っているわけでありますが、この点についてお伺いをしたいと思います。

村井国務大臣 今田委員かねて御主張の点であることはもう重々承知しておりますが、自動車教習所は確かに、このマイカー時代にありまして運転免許を取得する人にとりまして非常に大切な役割を果たしているものでございますし、また、確かに一つの業と認識できる規模にまで達している、それはもう今御指摘のとおりだと私も思っております。

 地域住民のニーズにこたえましてさまざまな交通安全教育も行っておりまして、地域の交通安全教育センターとしての役割も果たしている。そういう重要性にかんがみまして教習所業というのが私はそれなりにきちんと発展していってほしい、このようには思っておりますが、ただ、そのために業法が要るかどうかということになりますと、私は必ずしもそのような必要はないのではないかと思っております。

 道交法におきまして指定自動車教習所等の制度が既に設けられておりまして、その責務でございますとか指導員の資格でございますとか、明確な位置づけがされておるわけでございますし、さらには、私ども所管庁といたしまして、教習が適切かつ効果的に実施されるような指導監督は十分やってきているつもりでございますし、さらには税制上のそういう優遇措置などもとられておるケースもございまして、さような意味で教習所業の健全な発展も十分に図られているのではないか。

 こういう規制緩和の流れの時期にありまして、私は、やはり国が余り業法をつくって縛っていくというのはいかがなものかという感じがいたしておるということを付言させていただく次第でございます。

今田委員 この問題についてはもっと議論をしたいところなんですが、持ち時間が終わりましたので、改めてまた機会があれば議論をさせていただきたい。どうもありがとうございました。

横路委員長 石毛えい子さん。

石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。

 前回の道路交通法の一部を改正する法律案の審議におきまして、私は、病気や障害を持つ方の運転免許証に関する欠格条項について、改正法案見直し、修正というような視点から質問をいたしました。今回も続いて欠格条項について質問をいたします。

 まず最初でございますけれども、この法案では、第九十条「免許の拒否等」のただし書き、あるいは第百三条「免許の取消し、停止等」を規定した条文で、「次に掲げる病気にかかつている者」という病気を特定しています。さらにイ、ロ、ハと具体的に病気の特定をしているわけですけれども、まず、イの「幻覚の症状を伴う精神病」というのはどのような精神病を意味しているのでしょうか。また、精神病の症状には幻覚のほかにも幻聴、妄想という症状も言われておりますが、法文で幻覚と規定した理由は特別にあるのでしょうか。お尋ねいたします。

坂東政府参考人 まず、お尋ねの第一点でございます。法律で書いております「幻覚の症状を伴う精神病」とはいかなるものかということでございますが、精神分裂病を考えているところでございます。

 もとより、この精神分裂病に該当する者につきましても、一律に免許の拒否等を行うものではございませんでして、一定の寛解状態にあると申しましょうか、そういった方々や、あるいは自動車の安全な運転に支障を及ぼすおそれがない方につきましては、免許を取得することが可能となるような基準というものを定めたいというふうに考えているところでございます。

 また、幻覚でございますけれども、この意味は、対象がない知覚というものを意味するものではないかと考えています。

 そこで、幻覚というものを法律に入れた理由ということでございますけれども、自動車を安全に運転するためには、道路交通状況がいかなるものであるかということを認知し、その後どういうものが起こるかということを予測し、どういう運転行動をとるかということを決断し、そしてその決断に従って操作を適正に行うということが必要だというふうに私どもは考えております。

 そこで、この幻覚でございますけれども、幻覚は、こういったような基本的な運転行動というものをとる場合においては、やはり不正確なものになるのではないかというようなことを考えているところでございまして、本来求められている認知等を行う上で必要な注意力を低下させるものであるというように考えられる。そういうところから、自動車の安全な運転に支障を生じさせる病気というものを法律上明らかにした上で、典型的な症状として幻覚の症状を伴う精神病ということで書いたという次第でございます。

石毛委員 妄想のみの場合というような方も回復の状態によってはあると思いますけれども、その場合はいかがなのでしょうか。

坂東政府参考人 御案内のように、疾病というものは、日本におきましても国際疾病分類、ICD10によって分類しているというように聞いているところでございますが、このICD10によりますと、精神分裂病というものは、幻覚、とりわけ幻聴が普通に見られるというように聞いているところでございます。

石毛委員 それでは次の質問ですけれども、同じく、ロ「発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの」とありますが、具体的に御指摘ください。

坂東政府参考人 御指摘の改正案の法律九十条第一項第一号のロの「発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気」といたしましては、政令ではてんかんあるいは失神あるいは一時的な意識障害をもたらす糖尿病等を考えているところでございます。

石毛委員 今、最後のところで、意識障害を伴う糖尿病等というふうにおっしゃられたとお聞きいたしましたけれども、等という場合には、まだ、それではこれから検討によって病気が広がっていくということを含んでいるという意味でしょうか。確認させてください。

坂東政府参考人 委員御指摘のような意味も含めての等ということでお答えさせていただいているところでございまして、例えば睡眠発作によって一時的な意識障害等があるといったようなものも、やはり安全な運転ということで問題があるのではないかというように考えているところでございます。

石毛委員 それでは次ですけれども、同じくハで、イとロに掲げるもののほかに、「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気」としていますが、具体的にはどのような病気を指していますか。

坂東政府参考人 お答えいたします。

 九十条の第一項第一号のハの「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気」でございますけれども、これは政令で、躁うつ病、それから睡眠時無呼吸症候群、これは睡眠時に呼吸が頻繁に停止する、そういうことで深い睡眠が妨げられることによりまして慢性の眠気を主な症状とする病気というように承知をしておりますけれども、こういった睡眠時無呼吸症候群、さらには、恒常的な常用薬の服用により、先ほど申しましたような正常な認知とか予測とか、あるいは決断とか操作とか、あるいはその前提となる知力あるいは運転機能に支障を及ぼすこととなる場合、そういったことを規定することを考えているところでございます。

石毛委員 最初の方の御答弁では病気を具体的に指摘をしていただいたと思いますけれども、後半の御答弁は、運転との関係で認知に問題があるとかそういう趣旨の御答弁になったかと思います。具体的な病名と、あわせて、運転との関係での症状も規定されるということをおっしゃったということでしょうか。

坂東政府参考人 先ほどは躁うつ病とか、このハに書く規定というものを列記したわけでございますが、これ以外にも書くものがあるだろうということでございますので、知力や運転機能に支障を及ぼすことのある場合というような形で答弁させていただきましたけれども、そういった病気というものを書くということでございます。

石毛委員 では、具体的に病名は特定してない場合もあるということで、運転に支障を及ぼす場合というような理解になると思いますけれども、再度御答弁、必要でしょうか。

坂東政府参考人 若干御説明不足だったところがあるかもわかりませんけれども、先ほども言いましたように、ハというものは、「イ又はロに掲げるもののほか、」ということでございますので、先ほど申しましたように、イ、ロに匹敵するような、やはり運転に危険のあるような病気というものをここのハの政令で書くということでございます。その代表的なものが躁うつ病とかあるいは睡眠時無呼吸症候群だということでございまして、運転に支障を及ぼすことのある場合があるような、そういった病気というものもこのハに書くということでございます。

石毛委員 それでは次の質問ですけれども、今、具体的に御指摘いただきましたイ、ロ、ハにつきましては、それぞれ法文が「政令で定めるもの」としていますけれども、政令で定めるものということは、政令で病名を定めるということでしょうか。あるいは、この九十条等の法文には「政令で定める基準に従い、」というような文言もございます。運転の安全性に関する基準というようなことも含まれるのでしょうか。その辺を少し整理して御説明いただきたいと思います。

坂東政府参考人 改正案の九十条の一項には、柱書きと、一号でイ、ロ、ハというような形がございます。一項一号のイ、ロ、ハに書いている「政令で定めるもの」でございますが、これは病気を定めるということでございます。

 それで、柱書きの「政令で定める基準」というものは、そういった病気に該当した場合において、果たして運転免許を与えていいのかどうかということを判断するための基準というものを定めるというものでございます。

石毛委員 そうしますと、イ、ロ、ハの「政令で定めるもの」は、具体的には病名が、あるいは病気が記載されるというふうに御答弁いただきまして、そして、法文の中の「政令で定める基準に従い、」といいますのは運転免許を付与する基準というふうにおっしゃっていただきましたけれども、ガイドラインも定めるというふうにも伺っておりますけれども、基準とガイドラインの関係を御説明ください。

坂東政府参考人 運転免許を与えるかどうかということを判断する政令の基準とそれからガイドラインとの関係いかんという御質問でございますけれども、政令の基準は、具体的にどのような場合に免許の拒否やあるいは保留といった処分を行うかを定めるものでございます。政令の基準は、政令という枠組みである関係上、ある程度抽象的な表現になることが見込まれるというように考えておりますが、それに対しまして、ガイドラインは、処分の対象となる病気等について、医学的な観点を十分踏まえつつ具体的に記述をしようとするものでございまして、作成されるとすれば、都道府県公安委員会が運転の適否を判断するに当たって参考になるものというように考えております。

 なおまた、このガイドラインで記述した内容が熟するといったような形になりますれば、それをまた政令で定めることもあり得るものというように考えているところでございます。

石毛委員 病名を具体的に御指摘いただきましたので、あわせて、政令で定める基準の内容につきまして幾つか、例えばイ、ロ、ハの代表的なと申しましょうか、基準の今の検討の中身、そういうことをお示しいただけますでしょうか。

坂東政府参考人 先ほども申しましたように、政令の基準では、イ、ロ、ハの政令で書いた病名の方が運転免許を与えるに、つまり運転する上で危険性がないかどうかということを具体的に判断する基準を定めるということでございますので、例えばてんかんという形でロで病名として政令で定められたとしても、てんかんにはいろいろな幅がある、例えば睡眠時にしかてんかん発作が起こらないといったようなてんかんもあるというように聞いていますので、そういったものはこの政令の基準で免許を与えてもいいといったような形に定めたいというように考えているところでございます。

石毛委員 分裂病に関してはいかがでございますか。

坂東政府参考人 従来、現行法では欠格事由ということで、精神病にかかっている方は運転免許も受けられなかったということでございますけれども、今回の改正案によりまして、先ほど申しましたように精神病というものはロで病名として指定はいたしますけれども、先ほどお尋ねの政令の基準で、運転免許を与えていい場合と与えては問題であるといったものを掲げるということでございます。

 それでは、例えば精神分裂病の場合はどうかということでございますけれども、この場合につきましても、一定の寛解の状態にある者、あるいはその他、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがない者、こういった者は政令の基準で拒否対象から除く、すなわち逆に言いますと免許を与えることもあるといったような形にしたいというふうに考えております。

石毛委員 確認をさせていただきたいと思いますけれども、分裂病に関しまして、分裂病までは政令で書くということを御答弁いただきました。今度もう一つ、政令では基準を書くわけですけれども、今の御答弁では、寛解の状態、それから運転に支障がないというふうにお答えになりましたけれども、基準はそういう書き方ですか。それで、ガイドラインはもう少し詳しくなるということですか。そのあたりをもうちょっと整理して御答弁いただきたいと思います。

坂東政府参考人 先ほど申しましたように、イ、ロ、ハの政令では病名を書く、政令の基準では、病名ごとに、それではやはり拒否すべきか、つまり免許を与えるべきか与えるべきではないかという判断基準を書くということでございますので、分裂病の場合におきましても、ある一定の状態というか、運転に支障を及ぼすおそれのないような方に対しましては免許を与える場合があるといったような基準を政令で定めるということでございます。

 ガイドラインというものも、先ほど申しましたような形で、当然ながら、かなり細かく政令で書くということはできませんので、そういった意味で、ガイドラインというものがつくられるとするならば、政令を解釈する上での基準となるようなかなり細かいものを定めるということになると思います。

石毛委員 正直言って、基準がどのような輪郭をもって示されるのかというそのイメージが、御答弁ではなかなか理解できないのですけれども、やはり、考え方によりましては一律に基準というようなラインを引くのはなかなか難しい側面もあるのかな、それが今の局長の御答弁になっているというような思いもして伺いました。

 そこで、次に申し上げたいことなんですけれども、具体的には、免許が拒否されるかあるいは取り消されるかといいますのは、病名をどう規定されるか、あるいは基準をどうつくられるかということが決定的に重要な分岐点になるわけです。当然、病気ですから、医師等の専門家の御判断も大変重要であり、十分に意見も伺うのだと私は思いますけれども、同時に、運転免許を行使して社会的生活を営んでいく、社会生活に積極的に参加していくということは、まさに欠格であるかどうかという判断の対象になっておる障害や病気をお持ちの方でいらっしゃいますから、御経験など、あるいは薬に対する判断ですとか、あるいは精神の病気の方の場合は病識をどのようにお持ちでいらっしゃるかというようなこと、これは十分に意見をお聞きになり、また協議をする、そうした仕組みを据えていくことが大事なんだというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。

村井国務大臣 先日、当委員会で、てんかん協会の方や交通事故遺族の会の方をお招きになられていろいろ意見を御聴取になられた、このように承知しておりますが、私ども、ただいまの政令の基準をつくるに際しましては、こういった皆様から御意見を拝聴する、そしてそれをまた重視してまいる、そういうことも十分に考えてまいりたいと思っております。

 そういうことで、ただいま石毛委員御指摘のような配慮も十分してまいるつもりでございますので、御理解いただきたいと存じます。

石毛委員 十分に意見をお聞きくださる、そういう御答弁をいただきましたので、ぜひともよろしくお願いいたします。

 そして、さらにということでございますけれども、恐らくガイドラインを丁寧につくるという作業が並行して進まなければならないんだと思います。これはある程度の期間を要して、ある意味では恒常的な検討期間になるのだと思いますので、相互の立場できちっと協議をし合える、そうした運営といいましょうか、進め方を要望させていただきたいと存じますので、ぜひ受けとめていただきたいと存じます。

 それでは、次でございますけれども、欠格条項ということで、第九十条もそれから第百三条も「次に掲げる病気」ということで病気を規定してございます。法文を丁寧に読んでいけば理解の仕方は一通りではないといいますか、読み得るという、そうしたこともあり得るわけですけれども、例えば、こういう規定の仕方では、薬などで症状や機能障害が十分にコントロールされていても欠格であるかのような印象を社会的に与えることになりかねない、あるいはなる。まず、法文の「政令で定める基準に従い」ということよりは、幻覚がある精神病とかそういうことの方が印象として表面に出てまいりますから、そういう印象を与えるということ。

 それから、精神病の場合でも、薬の服用や事前に予兆がありコントロールできるというようなことも今実現しているわけですし、それからてんかんをお持ちの方でも例えば就寝時だけの発作というような方もおられて、安全運転には支障のない幻覚や意識障害発作もあることがまた無視されがちになるというような問題もあります。

 法律に病気、病名を記すことは社会的な誤解や偏見を生み出すという問題につながっていると私は考えるわけですけれども、この点どのようにお考えになりますでしょうか。

村井国務大臣 せんだってもてんかん協会の参考人の方からも御意見の陳述がございましたり、そういう御懸念があることは私ども十分承知しておりますが、やはり何らかの形で基準を決めなければならないわけでございます。それを法律よりも下位の命令体系、政令なり省令あるいは国家公安委員会規則というような形で決めるということにいたします場合に、国民の権利を制限することになるわけでございますから、どのような形態のものを制限するのかということはできるだけ正確に書いておかなければいけない。そういう意味でぎりぎりのところが今この法律案としてお出ししている線ではないかと思うわけでございまして、これ以上にあいまいな形にいたしますと、過度に政府に権限を授与してしまうことになるのではないか、そんなふうに私は考えておる次第でございます。

 なお、今は法律で一律に、ある要件に該当しましたら欠格、こういうことにしておりますのを、今度は、病気にかかっていましても危険性が低いと認められる場合には免許を認めるということでございますので、そういう意味では今よりもはるかに改善になっていると私は思うわけでございまして、そういう点につきましては、さまざまの手段で広報に努めて、国民の御理解を得ていくように努力をしたいと思っております。

石毛委員 今回の法案が改善になっているという点につきましては、先ほど私ども民主党の中沢筆頭理事も御発言の中で触れていただいた点でございます。私もそういうふうに思いますし、絶対的欠格から相対的欠格に変わっているということも理解をしております。

 しかし、なおかつ、九九年の旧総理府の障害者施策推進本部決定では、障害者あるいは○○障害を有する者というような規定から心身の故障のため業務に支障があると認められる者等への変更というようなことを提示してございますので、この点、私の方からは申し上げさせていただきたいと思います。

 それからもう一つ、ぜひこれは今後の方向性として受けとめていただきたいと指摘させていただきますけれども、運転免許に関するEC指令ですとか、それからイギリスの医学的運転適性の疾患別ガイドライン、あるいはカナダ医学会の運転適性についての医学的ガイドライン等々については、運転に支障を生ずるそういう症状についての規定をしていることが中心で、病名についての規定はされていないというふうに紹介されていますので、ぜひともこういう点を御検討いただきたいと申し上げます。

 それから、私も修正案につきましてはぜひとも御理解をいただきたいと存じますけれども、先ほどの大臣の御答弁の中で、政令は広く内閣に授権することにという御趣旨の御答弁がございました。私ども民主党、共産党、社民党の提案は、この点につきましては、意見の聴取に関する事項ということで、当該政令で定める症状を呈している者の意見を代表する者の御意見を伺うことという修正条文もあわせての修正案でございますので、私の方からも申し添えさせていただきます。

 最後に、厚生省からおいでいただきましたので、時間の限りで、障害をお持ちの方、生活保護を受給している方が多うございますけれども、自動車所有に関しまして、欠格条項が変わってまいりますと、もっと幅広く認めていっていただく必要があると思いますので、その点についての御答弁をお願いいたします。

真野政府参考人 先生御案内のとおり、生活保護は、資産、能力、その他あらゆるものを活用することを要件に行われておりまして、私ども、自動車につきましては、原則として、活用すべき資産ということで保有は認めていないということでございます。

 ただ、障害の状況によりまして、公共交通機関の利用が著しく困難な場合、障害者の通院、通所などに定期的な利用が明らかな場合等には例外的にその保有を認めております。いわばその世帯の実情と障害の程度、その必要性というものを個々に判断して対応するということで考えておりまして、今後ともそういうことで、都道府県、市を通じまして、この判定を行っております福祉事務所を指導してまいりたいというふうに思っております。

石毛委員 生活保護の「運用の手引」を拝見しますと、この詳細の中では「身体障害者の自動車保有」というふうになっておりますが、免許に関する欠格条項にかかわりましては、当然この「身体」という表現が変わっていくというふうに理解をしてよろしいでしょうか。

真野政府参考人 ひょっとして先日お示ししたのが古い通知であったかもしれませんが、私ども今、身体障害ということだけではございませんで、知的障害、精神障害も含めまして、表現といたしましては障害児者という表現で行っておりまして、当然対象になるというふうに考えております。

石毛委員 わかりました。社会生活上きちっと自己責任を果たし、生活の広がりが持てるような運用をぜひとも要請いたしまして、時間が参りました。ありがとうございました。

横路委員長 井上和雄君。

井上(和)委員 おはようございます。民主党の井上和雄でございます。

 本日は、村井国家公安委員長及び警察庁に道交法の一部改正法案に関してお伺いいたしたいと思います。

 まず、交通犯罪の厳罰化の必要性というもの、私もいろいろ考えてみまして、判例というのも見てみました。その結論を先に申し上げると、やはりこれまでの交通犯罪の判決、求刑も、交通犯罪に関してかなり寛容であるなというのが私の感想でございます。

 幾つか文献を探してみまして、手元にあるのが、前橋の地方裁判所の判事さんが判例タイムズに出されている交通犯罪の量刑に関する論文なんですね。私、これを見ますと、ずっといろいろな判例が出ておりまして、例えば無謀運転による事故の場合、制限速度が四十キロのところを百キロで走行して道路に立っていた歩行者をひき殺した、こういった事故におきましても、禁錮一年六カ月の求刑で、判決もそれと同じだ。そしてまた、もう一つの例を申し上げますと、制限速度が五十キロの道を百二十五キロで暴走していた車が、たまたまUターンをしていたタクシーに衝突して、タクシーの乗客二人が死亡したという事故がありました。これは求刑が懲役二年六カ月で、判決は二年六カ月ですけれども、タクシーにも責任があるということで執行猶予が五年ついているという状況なんですね。

 私が今申し上げたのは本当に一部の例ですけれども、例えば制限速度の二倍以上のスピードで車を運転していれば、事故が起こるのはほとんど当然ですよね。そういった状況にもかかわらず、やはり求刑というのは非常に軽いな、また判決も軽いのではないかと私は思います。

 もちろん、私は法律の専門家ではないので、あくまでも素人の印象なんですけれども、やはり基本的に交通犯罪に社会がちょっと寛容過ぎるのではないかな。つまり、だれもが交通事故の加害者になる。私自身もドライバーで、いつも運転しています。いつ加害者になるかわかりません。そしてまた、ここにいらっしゃる委員の、善良な社会人も、いつ交通事故に遭う、交通犯罪を起こす可能性もあるわけですから、余り重くすべきじゃないというような社会風潮がやはりあるのかなと思うのですね。ただ、悪質な交通違反、例えば制限速度が三十キロの狭い道を六十キロ、七十キロで運転するような方は、当然ここにいる方でそんな方はいないと思うのですよ。そういうものに対してはやはりきちっと厳罰化していく必要があると思うのです。

 最近、交通事故が減っていない。第六次交通安全基本計画のときにも、結局、五年間で目標を達成できなかった。交通事故が減らないというのは、やはり社会全体が交通事故に対して寛容であるということが影響しているのだと私は思うのですね。昨日、委員会でも、全国遺族の会の井手参考人が、社会で何か予期しないことに遭ったら交通事故に遭ったようなものだというふうにみんな交通事故をとらえているということをおっしゃっていました。しかし、交通事故というのは本当に、今一年間で百十五万人が交通事故によって死傷されているわけですから、これはもう大変な数なわけであります。もう少し、交通事故を起こした、特に悪質な違反運転によって起こした場合においては、やはり厳罰化というのを本当に考えるのが必要じゃないかと思います。

 それで、大臣にお伺いしたいのですけれども、今回の政府案の厳罰化という中にスピード違反が入っていませんよね。先ほどの民主党案に関しても、やはりスピード違反が入っていないということで質問がありました。政府案にスピード違反が入っていないということに関して、ちょっと御説明いただけますでしょうか。

村井国務大臣 罰則というのは抑止手段の一つであることは事実だと思うのでございますが、最高速度違反というのは交通事故に結びつくことが少なくないことから、指導取り締まりという別の観点からは非常に重点的に取り組んでいるものだと私も承知しているところでございます。

 最高速度違反というのは、超過速度、どれだけ超過するかという、今委員大変極端なケースを二例お挙げになられましたが、その危険性に非常に差があるわけでございまして、一律に、今度問題にいたしました無免許運転ですとか共同危険行為などと同じような悪性あるいは危険性というものを認めるかどうかというところは少々違うのではないだろうかという感じがございまして、今回の罰則の引き上げの対象からは外した、こんなふうに承知しております。

 ただ、悪質、危険なものに重点を志向した取り締まりを行っています結果、近年、最高速度違反を伴った交通事故というのは減少しているという傾向もございまして、そういうようなところも総合勘案いたしまして、罰則強化の必要はないのではないかという判断に至ったものでございます。

井上(和)委員 警察として総合的に検討した結果という御答弁でございました。しかし、委員長、私は思うのですけれども、例えば、狭い道、制限速度三十キロぐらいのところを六十キロ、七十キロで走っていれば、これは人がちょっと出ればはねてしまうのはほとんど当然ですよね。だから、やはりその辺が少し甘いのではないかと私は思うのですね。これは、以前の委員会でも、警察のそういった特に路地裏なんかでの速度違反の取り締まり、もっとちゃんとやってくれというお話を申し上げたのですけれども、やはりその辺をもう少しきちっとやらないとなかなか交通事故は減らないと思います。ぜひちょっと御検討いただければと思います。

 次に、高齢者の講習に関してお伺いしたいと思います。

 今回の法案でも、高齢者対策ということで、高齢者の講習に関して現在の七十五歳以上から七十歳以上に拡大するということを行うわけですけれども、高齢者の交通事故というのは、現在、年間九千人が交通事故によって亡くなっているわけですけれども、そのうち三千人が六十五歳以上です。つまり、交通事故で亡くなっている方の三分の一が六十五歳以上の高齢者です。これは、やはり高齢者対策というものも本当に充実させなければいけないということで、私も賛成でございます。

 そこで、具体的に、現在、講習というものはどういうことをやっているのか、ちょっと御説明いただけますか。

坂東政府参考人 高齢者講習についてのお尋ねでございますが、この高齢者講習というものは、免許証の更新という機会をとらえまして、加齢に伴う身体的機能の低下というものを高齢者講習の受講者一人一人に御自覚をしていただきまして、さらに、そういった場合の状況に応じた安全運転の方法というものを個別具体的に指導させていただきまして、高齢者による交通事故抑止を図ろうということを目的とした講習でございまして、具体的に申しますと、大きく三つほどに分けられると思います。

 一つは、運転適性検査機、これは反応の速度とかあるいは正確性を判定する機器でございますが、そういった運転適性検査機とか、さらには動態視力検査機、これは、動くものをどのような形で正確に早くとらえられるかといったものを測定するものでございますが、そういった動態視力検査機、こういったものを使いまして、反応の速度とかあるいは正確性、あるいは動態視力等を測定いたしまして、その結果に基づいて個別に高齢者の方々に安全運転指導を行うというのが一つでございます。

 それから、二つ目でございますが、実際に自動車に乗っていただいて運転していただきまして、そして指導員が助手席に座って高齢者が運転する運転行動というものを観察いたしまして、その結果に基づいて個別に安全運転の指導を行うというのが二つ目でございます。

 三つ目、最後でございますが、高齢者に多い交通事故の特徴とかあるいは高齢化に伴って生ずる視力等の身体的機能の低下についての説明、あるいは最近改正された道路交通法令の説明等を行うといったものを内容としているものでございまして、少人数のグループ編成によりまして三時間行っているというのが高齢者講習でございます。

井上(和)委員 それでは、その講習というのは一体だれが実施しているのか、講習料は幾らか、お伺いしたいと思います。

坂東政府参考人 まず、実施主体でございますが、高齢者講習というものは都道府県公安委員会が行うということになっておりますが、講習は委託することもできるということになっておりますので、多くの公安委員会では指定自動車教習所等に委託して実施しているものというように承知しております。

 それから、もう一つのお尋ねの料金でございますけれども、この高齢者講習の講習手数料というものは、高齢者講習に従事する講習指導員の人件費、あるいは先ほど申しましたように高齢者用の運転適性検査機その他の資機材、こういったものを整備するための物件費とかそういったものを総合的に勘案いたしまして、政令で定められた額といたしましては六千三百円ということになっておりますので、これを標準にして各県が条例でその高齢者講習の講習手数料を定めているところでございます。

井上(和)委員 今、高齢者の講習の費用が六千三百円ということをお伺いしました。それ以外にも、免許の更新手数料二千二百五十円が必要ですよね。そうすると、免許の更新のときに合計で八千五百五十円必要なのですね。これは私はちょっと高いのではないかと思いますね。今の世の中、価格破壊の時代です。ユニクロ現象なんかも見られますし、私もよく吉野家で二百五十円の牛どんを食べているのですよね。毎日吉野家の牛どんを食べても七千五百円ぐらいで済むのですよ。それで、高齢者の方が八千五百五十円払わなければいけない。まして、七十歳以上の方になりますと、ほとんど働いている方はいらっしゃいませんから、ほとんどが年金収入の方でしょうね。私は、ちょっとやはり高いと思うのですよ。もちろん、講習自体には賛成です。

 それで、何でこんなに高いのかなと私は考えていたのですよ、きのうも夜に質問を準備しながら。何で警察庁はこんなに高い講習をやるのかなと思いまして。大臣、私は子供のころ、推理小説が好きで、シャーロック・ホームズをよく読んでいたのです。大臣も国家公安委員長ですから、やはり推理小説的なものに恐らく興味がおありかもしれないのですけれども、ぜひ私の推理に関して御意見をいただければと思うのですね。

 殺人事件を推理する場合に、やはりその動機が何か、動機があるのかどうかというのが、その殺人事件の犯人を見つける一番大きなポイントですよね。私は、今回の高齢者の講習料が高いということ、一体どこに動機があるのかなと考えていたのですよ。きのう質問を準備していたのが夜中、コンピューターをたたきながら考えました。そうしたら気がついたのです。よく聞いてください。

 今回、この高齢者の講習というのは、免許証の更新が三年から五年になることとセットになっているなということなのですよ。つまりは、現在、七十五歳の高齢者でこの講習を受けている人が四十五万人、更新料、講習料を合わせて三十八億円入っているのですね。これが、七十歳にしますと、これは私の推測なのですが、大体一年間で百二十万ぐらいになって、収入も百億円ぐらいになるのですね。三倍になるのですよ。さっき言った更新期間が三年から五年になるのとこれは非常に関係があるのですね。

 つまりは、更新期間が五年に延びれば、当然手数料収入というのは非常に減ってきますよね。私は計算したのですよ。そうしますと、一年間で百五十億円ぐらい、七千五百万人の免許保有者が免許期間の更新が三年から五年になることによって払う手数料が減るわけですね。逆に言えば、警察庁の、警察庁と言えば正しくないかもしれません、各県でこういった免許証の更新をやっている機関の収入というものは、日本全国で百五十億ぐらい減ってしまうのですね。そうなのだなと私はわかりましたよ。

 皆さんが行政改革、行政改革、やらなければいけないと。この行革でも、更新期間を延ばせ、延ばせというふうに言っているわけだからやらなければいけないと。警察の方は今回すんなりやられた。私も偉いなと思っていたのですけれども、やはり何か、野党に長くいますと、物事を真っすぐに見ないで斜めに見るのがもう習慣になってしまうのですよね。早く私も与党になりたいと思っているのです。つまりは、免許証更新期間が三年から五年になって手数料収入が百億円以上減る。それはやらなければいけないけれども、では、そうしたら、その免許証更新機関のところで雇っている恐らく何万人もの人をどうやって食わせていくか、そういう話が出てくるわけですね。そこで、恐らくは優秀な警察庁の方が考えた。つまり、高齢者講習を拡大すれば、その分、そのショートフォールというのですか、減った分の収入を何とか埋め合わせできるのだと。なかなか知恵者ですね。

 ところが、大きな問題というのは、免許保有者というのは日本に今七千五百万人いるわけですよね。その方たちの更新期間を延ばしてしまうということ、これは人数が多いから大変ですよね。七十歳以上の高齢者は三百六十五万しかいないのですよ。だから、三百六十五万の人に七千五百万人の更新期間が長くなった分を背負ってもらわなければいけない。背負ってもらうには、人数が少ないから、やはりどうしてもある程度高くしないと背負い切れませんよね。だから、やはり講習料というのは高くなってしまったのだなと私はわかったのですよ。これはあくまでも、私、シャーロック・ホームズの推測なのです。

 それで大臣、私は、私の推理に対してもし御意見があったら、ぜひ国家公安委員長の推理もお話を伺いたいと思うのですよ。

 大臣、私は思うのですけれども、この問題は、三百六十万人の高齢者に影響を与える大変大きな問題なんですよ。選挙が近いからというわけではないのだけれども、三百六十万の高齢者が、若い人たちの更新手数料が三年のかわりに五年になった、その分を自分たちで背負って高い講習料を払わなければいけないのだということがもしわかったら、大反乱が起こりますよ。

 だから、これはあくまでも法案で決めていることではなくて、講習をやること自体は私は大賛成です。しかし、その講習の内容とか講習料、これは相当真剣に政府で考えてやらないと、今のような事態になってしまうかと私は本当に心配しているのです。

 これは質問通告を全然していないので、大臣、急にお伺いして申しわけないけれども、あくまでも大臣の推理か何か、ちょっとお伺いできませんかね。よろしくお願いします。

村井国務大臣 私は、推理小説は嫌いではございませんが、犯人はだれだろうと想像しながら読んでまいりますと、大抵外れるわけでございまして、その方がどちらかというと楽しい。井上先生のように初めから推理小説の終わりの筋がわかってしまうと、楽しみは半減するのではないかという気がいたします。

 講習料の問題につきましては、私の理解するところでは、まさにコストが比較的高くつく、それを反映したものだと考えておりますが、その点につきましては、ちょっと事務方から御説明をさせます。

坂東政府参考人 高齢者講習の手数料についてのお尋ねでございますが、この高齢者講習制度ができましたのは、免許証の有効期間を今回原則三年から五年に延ばそうということで、改正案を国会で御審議いただいておりますけれども、当然ながら、その前に高齢者講習という制度はできまして、そのときに、高齢者講習の手数料六千三百円ということで定めているということでございますので、有効期間を三年から五年に延ばすから手数料を六千三百円に定めたということは、そういった時間的な前後関係からしても、それは毛頭ございませんということでございます。

 それで、手数料の額でございますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、非常に個別具体的に高齢者講習の方々に、いろいろと実車をしていただいたり、あるいはいろいろな検査機を使ったりしているということでございますので、どうしても、それにかかわる人件費とか物件費とかそういった実費を勘案いたしますと、結果としてこういった六千三百円という額になってしまうということでございます。

 それから、高齢者講習、現在対象者としては七十五歳以上でございますが、これを七十歳以上の方まで受講していただきたいというのが今回の改正案でございますけれども、これはまさに、先生御質問の中でお話がございましたように、やはり高齢者の方々の事故に遭われる率というのは非常に高い、あるいはこれから高齢者講習の社会になるということでございますので、やはり事故防止を図っていくためには、やはり高齢者の方々に安全なマインドというものをより心がけていただいて、そして加齢に伴ういろいろな意味での問題点というものを十分に認識していただいて安全運転をしていただく必要があるだろうということで、年齢幅を拡大したいというふうに考えた次第でございます。

井上(和)委員 坂東局長のようなすぐれた警察官が、どうも私の推理は正しくないとおっしゃるのだったらそうかもしれませんが、しかしながら、私は私なりに、シャーロック・ホームズをよく読んでおりましたから、自信は持っておるのですね。特に、額が、高齢者講習で百億円ぐらい取って、恐らく免許の更新で百五十億円ぐらい足りなくなるから、ちょうど三分の二ぐらいはこれで埋め合わせができているのじゃないかなというようなことで、私は、その辺の資料をいろいろ詳しく、個人的に局長にもお願いして出していただいて、さらに私の推理が本当に正しいかどうかというのを検証していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 それで、講習が必要なのは、私は本当にそう思いますよ。やっていいことだと思います。では、どういう講習がいいのか。これはやはり安ければ安いほど更新される方にとってはいいわけですよ、まして高齢者の方ですから。そこで、やはり医学的とか科学的な英知を使ってやっていけば、私はいろいろな工夫ができると思いますよ。本当にそういうことをやられて、もうどうしてもこういうのが一番いい講習で、自信を持って、これをやれば事故が減るからこれをやります、それで多少コストがかかる、出してくださいということであれば私も納得します。その辺、この講習がどうして今のようなものになったのか、もっといい制度にできないのか、例えばもっと安くできないかとか、やはりそういうことをもう少し検討しないと、さっきも言ったけれども、三百六十万人の高齢者が大反乱を起こしますよ。そういうことで、あとは少し私も勉強いたしたいと思うのですね。

 ちょっと視点を変えました問題に移ります。

 高齢者の方がこういった講習を受けて、どうもこれは危なくて運転してもらったら困るとか、そういう方も出てくると思うのですね。現在、そういう場合にはどういうふうにしているのですか。これは局長、お願いいたします。

坂東政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたように、高齢者講習というのはあくまでも講習でございまして、加齢に伴う身体機能の低下ということが高齢者としては往々にあるということで、そういったことを御自覚していただいて、そして今後の安全な運転に生かしていただこうということで行うものでございますので、高齢者講習の性格としては、継続して持っていただくかどうかという受講者の免許保有の可否というものをチェックするものでは決してないということでございます。

 ただ、高齢者講習の結果として、受講者の運転技能とかあるいは適性をある程度把握することは可能であるということは事実だと思いますので、本制度の性格上、そういった意味で御本人が、高齢者の方々が、これから運転を継続するのが無理だろうといったような御判断をするということもあろうかと思います。そういった意味では、免許の返納というのでしょうか、そういった制度も現在設けておりますので、そういった制度があるということを紹介することはあり得るものというふうに考えております。

井上(和)委員 せっかく講習をやっても、何か異常に不安なような方がいても、あくまでも御本人の判断に任せるというようなことなんですね。そうですね。

坂東政府参考人 もちろん、先ほど申しましたように、高齢者講習というものは身体機能の低下があるかどうかを御本人に自覚してもらうということでございますから、そういった機能の低下というものが見られる場合におきましては、私ども公安委員会なりにおいても適正に指導していく、安全運転を行う場合はこういう問題があるのですよということは当然ながらやらなければいけないことだと考えております。そして、当然ながら、高齢者講習というものは近く更新を行うということでございますから、その更新のときに、適性検査の結果、やはり運転免許を継続して与えることが不可能だといった場合におきましては更新をしないことも制度としてはあり得るということは言えると思います。

井上(和)委員 先ほどの推理の話に戻りますけれども、恐らく探偵とか捜査官なんというのは、何かちょっと腑に落ちないなということからだんだん解決に導いていかれると思うのですよ。私も、今の局長のお話を聞いてやはり何かちょっと腑に落ちないなというふうに思ったし、この制度の話を詳しく伺ったときも何かちょっと腑に落ちない。

 つまり、せっかく講習をやって実際に運転してもらう、これほど運転能力を判断する最適なものはないですよね。それをやってもらいながら、あくまでもそれは、よほどの場合、御本人に難しいですよというふうに言うとか、私は現実にそれが実際に行われているかどうかよく知らないのですけれども、検討をするというお話ですけれども、何か講習を行った結果がきちんと使われているという印象を私は受けなかったのですよ。だから、やはり私は何かあるのじゃないかなというふうに考え出したわけですね。

 だから、もし講習で今のような実際的な技能をやるのだったら、やはりその結果というものは最終的にこの方が免許を更新できるかどうかというような判断に使われた方がいいのじゃないかと私は思うのですよね。そうすれば、それだけお金を使った御本人もそうだし、こういうものをやってもらったという意義が出てくるのじゃないかと思うのですよ。運転技能を本当に総合的に判断する上での一つの大きなデータとして使うべきじゃないか。ただ、今私の印象だと、要するに、さっきの話になってしまうけれども、何か講習みたいなのをやらせた方がいいからやっているというような印象があります。

 それで、チャレンジテストという、これを受ければ講習を受けなくて済むというのがまたあるようですね。これまたチャレンジテストも何かお金を取るようなんですけれども、手数料を払ってチャレンジテストを受けておっこちてしまった人はもう一回その講習を受けなきゃいけなくて、八千円払わなきゃいけないというようなことになれば、それはおたくの関係機関にとっては手数料収入がふえていいかもしれない。しかし、受ける方にとっては金銭的な負担がふえてしまうのですよね。

 チャレンジテストに関してちょっと説明していただけますか。

坂東政府参考人 高齢者講習に関しましては、委員御指摘のようなチャレンジテストというのでしょうか、そういったものを導入したいというふうに考えているところでございます。

 チャレンジテストのイメージでございますけれども、特定の事象に対応して運転している方がどういった反応を示すか、そういった反応レベルというものを測定いたしまして、ある一定の水準にあるかどうかというものを見たいというふうに考えているところでございまして、このチャレンジテストといったもので一応ある一定の水準にあるというように判断した場合におきましては、今よりも簡易な高齢者講習というものを受講していただくということにしたいと思います。

 ただ、チャレンジテストを導入したいと考えておりますが、これを受けるかどうかは高齢者講習を受けられる高齢者の方々の御判断ということにしたいというふうに考えております。

井上(和)委員 私はやはりこのチャレンジテストをやった方がいいと思いますよ。だって、高齢者といったって、これは身体機能が非常に差があります。まして七十歳とか七十歳をちょっと超えたぐらいの方ですと、多くの議員の方だって院で活躍されているわけですよね。だから、自分はぴんぴんだという人は、チャレンジテストをぱっと受けていただいて通っていただければ高齢者講習を受けてむだなお金を使う必要ないわけですから。

 だから、制度は、これに関してはやっていただきたいんですけれども、先ほども申し上げたように、では、その手数料がどうなるのか、チャレンジテストを通らなかったらどうなるのか、やはりその辺、新たな負担にならないように、三百六十万の高齢者がいるんだから反乱を起こされないようによく考えて、理想的に言えば、はっきり言ってチャレンジテストはほとんどの人が受けるべきだと私は思いますよ。そして、通らなければ、その人が講習を受ければいい。そうすれば講習も数が少なくて済むでしょう。余計なお金を払う人も数が減るわけですよ。それは、あくまでも国民の目から考えればそういうふうにしていただいた方がいいんじゃないですか。

 恐らく、講習料収入とか手数料収入を考えている方たちにとっては逆の考えだと思うんですけれども、あくまでも小泉政権は国民の視点から、いろいろな観点から今政治を、行政をやっているわけですから、やはりちょっとそこを考えた方が私はいいと思いますよ。

 それで、もう時間がないので、最後にちょっと短い質問をもう一問お伺いしたいんです。

 最近、カーナビゲーションというのがだんだん車についてきましたよね。私は持っていないんですよ、高いですから。いろいろ話に聞くと、十万円以下でだんだん入るようになってきているという話を私も聞いています。

 タクシーに乗っていましたら野球中継をやっていまして、とまっているときでしたけれども見られました。動き出すと見えなくなっちゃったんですね。私は運転手さんに、これ動き出すと見えなくなっちゃうのというふうに聞いたら、いや、何か特別な機械があって、どこでも売っているんだけれども、それを買ってきてつければ動いているときでも見えるんですよなんて言っていました。そんなことを私聞いたんですよ。

 携帯電話もそうなんですけれども、やはりカーナビも、価格が下がってくると当然普及率も爆発的にふえてきますよね。そうしますと、やはりテレビを見ながら運転するという人がふえてくると思います。それによって当然事故もふえると思います。現実に私も、タクシーに乗って以来、きょろきょろ車に乗りながら見ているんですよ。そうすると、やはり何人か、走っているときでもテレビがついている。テレビの画像が見えますよ。つまり、そういう機械を買ってきてつけちゃっているんでしょうね。

 だから、これはやはりしっかりと警察が取り締まっていかないと事故の増加の原因になると思うんです。何か平成十一年には道交法が変わったというふうに伺っていて、この件に関しては新しい法律ができたようですけれども、ちゃんと取り締まりをした方がいいと私は思いますけれども、いかがでしょうか。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、カーナビゲーション等の画像表示装置を注視するということを禁止したというものは、平成十一年の十一月一日から施行されたところでございまして、カーナビゲーションの使用に起因した交通事故の発生状況というものをその施行前後で比較してみますと、施行後はかなり発生件数あるいは負傷者数とも減少しているといったことから、こういった規定の整備の効果というものは一定あったのではないかというように私どもとしては認識しているところでございます。

 ただ、委員御指摘のように、カーナビゲーション等の画像というものを注視して運転するということはやはり危険を伴うということでございますので、今後とも、広報啓発あるいは指導、さらには悪質な場合は取り締まりといったことについても努力していきたいというふうに考えております。

井上(和)委員 ぜひこの点、よくやってください。

 どうも本日はありがとうございました。終わります。

横路委員長 塩田晋君。

塩田委員 国家公安委員長にまずお伺いいたします。

 交通事故の要因は九〇%を超えるものが人的要因である、先日もこういう参考人の意見発表がございました。要するに、運転するのは人でございますから、人の心の持ち方の問題、人の心、これがやはり一番大きく作用するものだと思います。もちろん、身体的な状況というものもございますけれども。

 そこで、やはり、人間教育ということが交通事故をなくするためにも安全を確保するためにもぜひとも必要だと思うんですが、この人間教育、中でも特に遵法精神を涵養するとか、あるいはまた倫理といいますかモラルというもの、やはりこれについての人間改造が日本国民全体として行われなければならないことだと思うんですが、この教育問題につきましてどのようにお考えかをお伺いいたします。

村井国務大臣 私も全く同感でございまして、本当に、やってよいこと、やっていけないこと、そのけじめというものが必ずしもきちんと教育の場でも教えられていないというような側面があるのではないか。それはもちろん家庭でもそうでございましょうし、そういうところが今の日本で非常に大きな問題になっているのではないかというところは全く同感でございます。

塩田委員 交通安全を確保するためには、教育ということ、これが非常に重要だと思いますし、また研修、講習、いろいろな形でやっておられると思いますけれども、これに一層力を入れていただきたいし、実効のある教育、講習をやっていただきたい。受けてよかったなと印象に残って、これじゃやはり心も入れかえてやらなけりゃならぬ、こういう気持ちが本当に起こるような教育を進めていただきたい、このように思います。

 そこで、人の心の問題と運転あるいは事故との関係でございますが、これを科学的に分析をいろいろしておられるかと思うんです。例えば、先日も申し上げたんですけれども、いらいらしているとき事故を起こしやすい、また、そういったたちといいますか、もともと、まあ関西ではいらちというんですけれども、そういう人は本当に心をどう落ちつかせるかというようなこと、これも大いに関係いたしますし、また、のんびりして不注意がどうしても起こる、そういう性格の人もありますね。

 そういった運転者の特性あるいは性格、それから行動変化のメカニズムということを言われておりますが、それと事故との関係を科学的に分析しておられる成果がございましたら、これは局長で結構でございますから、お答えをいただきたいと思います。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、運転者の特性などが交通事故の要因の一つとなるということは、これは一般的に考えられるところでございまして、私ども警察庁の科学警察研究所では、こういったドライバーの性格とそれから事故との関連性についての調査研究を重ねました上で、心理的運転適性検査の開発というものに努めてきたところでございます。

 こうした結果を踏まえまして各人の適性に応じた教育が行われるということは非常に重要なことだというように認識しているところでございますので、自動車教習所における初心運転者教育におきましても、教習生に対しまして、この心理的運転適性テストというものを行った上でその各人の適性に応じた教育を行うというようなことをしているところでございます。

塩田委員 科学的分析、調査といいましてもなかなか難しい問題で、時間もかかることかと思いますが、やはり地道な研究開発成果を上げていただきたい、その上に立って教育なり講習、そういったもののカリキュラムが組み立てられるべき問題だと思います。

 これらの更新時の講習について、先ほど申し上げましたように、魅力あるものにしてもらいたい、印象に残る、心を打つものでなければならないと思います。これは役所側の一方的な、押しつけじゃないですけれども、与えるだけじゃなくして、民間でもそういったことを開発してやっている民間スクールがあるわけでございますが、これを受けた者につきましても同種の講習を受けた者と認定するということはお考えでしょうか。あるいは、この法案の中には盛り込まれていますかどうか、お伺いいたします。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、民間の機関におきましても、ドライバーの安全運転教育が非常に重要だということを認識して、いろいろな形で安全教育というものをやっていただいている企業者というのは非常に多くなっているというふうに認識しているところでございます。

 そこで、高齢者講習につきましては、今回の改正によりまして、政令で定める者は高齢者講習を受ける必要がない旨の規定を設けるというようにしておりまして、そして、この政令で定める者というものは、今先生が御指摘のような形で、一定のレベルのあるような民間の安全運転教育というものを受けた者でもいいというふうな形にしたいというふうに考えております。

 それから、既にもう現在の道路交通法の百一条の三の第一項ただし書きにおきましても、政令で定める者は更新時講習を受ける必要がないというふうに定められているところでございますので、今回はこの政令というものを改正いたしまして、今委員が御指摘のような形の民間の安全運転教育機関で一定のレベル以上のあるものを受けた者につきましては、公安委員会が行う更新時講習を受けなくてもいいというふうな形の制度に政令を改正したいというふうに考えているところでございます。

塩田委員 前向きに取り組んでいただいておることがわかりました。

 いずれにいたしましても、民間の力を活用するという意味では大いに奨励されてしかるべき問題だと思います。それだけにまた、何でもかんでもというわけにいきませんので、一定の基準を設けてそれを認定するということが必要かと思いますが、その点は万遺憾なきを期していただきたいと存じます。

 次に、いわゆる暴走族の問題でございますが、この暴走族の横行によって一般住民は非常に迷惑をしている、何とかしてくれないかという声が我々のところに上がってくるわけでございます。警察も努力はしておられると思いますけれども、有効な決め手というか、なかなかとまらないところを見ると、努力にもかかわらずうまくいっていないという面があるかと思うのですが、これは一体どこに問題があるんでしょうか。お伺いいたします。

坂東政府参考人 暴走族というものが犯す典型的なものは、共同危険行為という道路交通法で違反として規定している、そういった危険な運転行為あるいは迷惑を及ぼす運転行為でございます。

 これはやはりその名のとおり集団で暴走するというようなこともございますので、これを取り締まるというためには、私ども警察としても一定の体制というものをまず整えないと、なかなか安全に検挙というのですか、することもできませんし、あるいは最終的には立証ということもできないというようなこともございますので、一定の体制を整えなければいけないといったところが一つ大きな問題ではないかと思います。

 それからまた、当然ながら、彼らとしては、集団で暴走する場合もあるいは単発で暴走する場合もあるわけでございますけれども、やはり予測できないような形で神出鬼没するといったこともございますから、そういった運転行為に対して、我々としては取り締まりあるいは指導体制というものをなかなか整えられない間に暴走行為が行われてしまうといったような事例もあるということでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、やはり暴走族に対します取り締まりに対する国民の声や、あるいは私ども暴走族に関連いたします一一〇番に寄せられた国民の声というものは非常に多うございますので、私どもとしては、いろいろな法令を駆使しながら、関係機関等の御協力も得ながら、警察内部におきましても必要な体制を整えて、この暴走族対策というものについて今後とも一層推進してまいりたいというふうに考えているところでございます。

塩田委員 これは最初に申し上げましたように、人間のモラル、教育の問題にもかかわってくるわけでございますし、本当に、他人に迷惑をかけない、そしてそういった行為は悪いことだ、悪いことはしないんだ、こういう道徳心が一般化しておればこんな事態は起こらないかと思うのです。

 片や、まあ若い者が少々暴走するのは許してやれよ、生きるあかしとして騒いでいるんだから、そう迷惑ったって、けたたましい音を立ててうるさいだけだ、辛抱してやれよ、若い者はみんなそういう若い時代があるんだから、こういう物わかりのいい見方もあるわけですが、いずれにいたしましても、迷惑をかけられている側からいいますと、夜は眠れない、そして大変な危険も場合によってはある。こういうことで、これを取り締まる方法の一つとして、私は、法的措置でやるべきことがあるのではないか。

 例えば、車の構造自体をそういった音が出ないようにすることだって、今の技術だと不可能じゃないと思うのですね。それから、大抵、車検なり購入のときはない構造を、みずからつくったり、あるいは業者から部品を買って取りつけるとか、あるいは業者がこれに加担をしてというか、そういった取りつけをする、こういった車の改造をやっている。これについては法的措置は考えていいんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

坂東政府参考人 今回、国会に提出しております道交法の改正の中の一つといたしまして罰則の強化というのを打ち出しているところでございますが、この中の一つとして、暴走族の犯す典型でございます共同危険行為の罰則というものを引き上げたいということで、法律改正というものをお願いしているところでございます。

 そのほかに、やはり先ほども申しましたように、いずれにしろ暴走族というものは国民に対して危険なりあるいは大きな迷惑をかけているということでございますから、既存のあらゆる法令等も駆使しながら暴走族の取り締まり強化に当たりたいというふうに考えておりますし、それから、先ほどお尋ねの、違法な改造を行ったような者に対してどう対応しているのかということでございますが、こういった形で暴走行為を助長する者に対しましても積極的に刑罰法令というものを適用して取り締まりを推進していきたいというふうに考えております。

塩田委員 最近は、人権問題に非常に注意をしながら警察行政を推進しておられる、その難しさもあると思うのです。一定の限度があってなかなかそこまで踏み込めないというものもあろうかと思いますが、大変御苦労をしておられることと思います。こういった問題につきまして、法的規制がなお必要であれば、これは検討して措置すべき問題だと思います。

 それから、先ほど申し上げました車の構造を変えてしまうということですね。これに対する罰則なりあるいはそれに加担をした業者の取り締まり、そういったことは、これは国土交通省の関係なりあるいは経済産業省の関係もあろうかと思います。そういったところと連携を密にして、車の構造自体を変えていく、あるいは変えるのを抑える、構造的にそういったことが起こらないような仕組みを最初からつくるとか、いろいろなハードの面からの対処の仕方があるんではないかと思うんですが、これは国土交通省、関係省と連携を密にして、ひとつ総合対策として適切な手を打っていただきたいということを要望いたします。

 次に移ります。

 運転免許の欠格事由、それから拒否等、それから取り消し、停止、これは現行法及び改正案の第八十八条、九十条、百三条に関係するところでございますが、改正原案を見ますと、もちろん政令で定めるものというのがございますけれども、これこれの病気にかかっている者、あるいは何々の病気というのが要素としては主になっているわけですね。

 今回、野党から提出が予定されております修正案の中では、安全な運転に支障を及ぼすおそれのある症状を呈している者、その中には政令で定めるものというのが入っておりますけれども、いずれにいたしましても、症状を呈している者という表現になっていますね。この違いといいますか、具体的にはどういうふうに違ってくるか、例えば手続の上で証明書を出すとかなんとかいう場合にどういうものになるのか、お聞かせいただきたいと思います。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、修正案というものは、免許の拒否事由等につきまして法律に病名等を規定しなくて、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるものを呈している者の場合に免許の拒否等ができる規定に修正しようというような形であるというように承知しているところでございますが、この修正案につきましては、当委員会でもいろいろと御答弁申し上げておりますように、国民にとって非常に大きな問題である運転免許が取得できるかどうかということに関しまして、国会は具体的なことは規定しないことになるということでございますので、私どもとしては、一般国民の権利義務にかかわることはできる限り法律で規定すべきとの基本的な考え方に照らしていかがなものかというように考えているところでございます。

塩田委員 証明書等はどういうふうに変わるんでしょうか。

坂東政府参考人 そこで、私どもの改正案に関連してでございますが、免許の拒否あるいは取り消し等の処分を行う場合におきましては、その人が将来自動車を運転した場合におきまして交通の危険を生じさせるおそれがある場合に行うというものでございます。このために、処分に当たりましては、その方の一時的な状態によって処分の可否を判断するというのではなくて、ある程度長期の期間において危険を生じさせる可能性があるかどうか、そういったことを見定めた上で判断を行う必要があるということで考えておりますので、私どもの改正案では、イ、ロ、ハ、というところで病名あるいは病気というものを定めて、そして政令で定める基準で、今言いましたような形で、ある程度の長期の期間において運転させる危険性があるかどうかというものを見定められるような判断基準を設けたいというものでございます。

塩田委員 わかりましたが、具体的に証明書というのは、お医者さんから、こういった病状であるあるいは病気であるという証明書を必要とするんでしょうか、それとも役所側だけの判断でいいんでしょうか。

坂東政府参考人 もちろん、最終的に免許を拒否するかどうか、与えるかどうかということは、それはやはり公安委員会の権限ということにしておりますので、公安委員会が判断するということになりますけれども、それを判断する上において臨時の適性検査というようなものを受けてもらうということにしております。その適性検査というものは専門医の方々のいろいろな御判断をいただくというような形にしたいと思いますので、そういった意味で、専門医の御判断というものを踏まえた上で、最終的に政令の基準に従って免許を与えるかどうかということを判断するということでございます。

塩田委員 今の点は、役所側としては手続的にはいろいろ準備をしておられるということはわかりました。

 そこで、これはまだ提案されておりませんので、提案者に質問をするわけにいきません。この点、本当は、症状を呈するというのはどういうふうに判断するか、あるいは医師の診断書なり適性検査のときの医師がどういう基準でどう判断したら症状を呈する者と言えるのかどうか、その辺を明らかにしたいところでございますが、今のような状況でございますので、この問題は問題として残して、これで終わりたいと思います。

 次に、先日、当委員会に全国交通事故遺族の会の会長さんがお見えになりまして、参考人として意見を述べられました。遺族の方々が非常に悲惨な気持ちの中で、また、中には生活に苦しんでおられる方もあられるということをお聞きいたしまして胸を打ったところでございますが、このことに関連いたしまして、これも国土交通省の関係の法案ではございますが、関連いたしますので、御要望を申し上げたいと思います。

 自動車損害賠償責任保険の政府再保険の廃止を盛った法案が今国会に出されることになっておるわけでございますが、この再保険をやめることに伴いまして約二兆円の金が出てくるわけです。この二兆円の使い方ですが、一兆一千億は保険料の減額に充てる、あとの九千億につきましては、それを基金として、毎年、百九十億円を予定し、交通被害者の方々に生活支援をする、生活支援といいましても限定されたもので、六十五歳以上であったものを六十五歳未満にも介護費用の一部を援助する、こういう拡大の構想があるようでございます。

 これとの関連におきまして、国土交通省のこの関係で、連携を密にされまして、遺族の会の皆さん方のこの委員会での訴えをもとにいたしまして、被害者の生活支援あるいはまた裁判訴訟に当たっての支援活動等のいろいろな費用に充てるような方策を、関係各省協議の上、やっていただきたい、このように思うわけでございますが、これについて御答弁は要りません。御要望申し上げます。

 危険運転者の交通違反に対する罰則強化、これは別途法案が衆法として提案されておりますけれども、これは、我が党といたしましては、他の関連事犯との総合的な罰則強化、罰則強化の方向は我々は賛成でございますけれども、他のバランスを考えて適正な罰則強化を図っていただきたい。これは、長年かけてやる問題でなくして、緊急を要する問題だと思いますので、早急に法務省を中心として結論を出していただきたい、このように要望いたします。

 それから、運転代行法案につきましてもいろいろ御質問申し上げたいことがありますが、前回もいたしましたので、特にきょうは申し上げませんが、法案の中で、定義の問題だとかあるいは趣旨の問題、法律案の性格が、どっちかというと規制、規制で来ている。これを、業界法として健全な、適正な運営が図られて交通安全が達成できるように、そういう方向で、健全な発展、適正な運営の確保、こういった観点から十分に配慮をしながら行政を進めていただきたい、また、見直しの段階でもそういったことを今後検討して盛り込んでいきたい、このように思う次第でございます。

 以上、質問と要望を終わります。ありがとうございました。

横路委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時五十三分開議

横路委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。松本善明君。

松本(善)委員 きょうの質問は、追及型というよりは、国民に問題を明らかにしたいということでありますので、答弁者の方々はそういうつもりでお答えいただきたいと思います。

 まずは、危険運転死傷処罰法についてであります。

 酒酔い、麻薬、暴走行為などの共同危険行為、無免許、酒気帯び運転などの危険な運転行為の法定刑引き上げは、事故の被害者の心情や国民世論にこたえるものだと考えます。被害者の遺族が進めた署名運動に二十六万人の署名が集まったことに見られるように、法定刑引き上げには大きな国民世論があります。

 署名用紙を見ましたが、そこには、何人死亡させても、飲酒の上に無免許運転であろうとも、最高刑は窃盗罪や詐欺罪の最高刑、懲役十年以下の半分です、交通事故が多発する現代社会の実情を考慮し、車を運転する責任の大きさと人の命のとうとさを刑法に反映するべく、罪の量刑を見直してくださいと遺族の心情が述べられております。

 国家公安委員長に最初に伺いますが、こうした国民世論と遺族の心情をどういうふうに受けとめておられますか。

村井国務大臣 全くそのお気持ちは、私も理解をいたしますに人後に落ちないものがございます。白状いたしますと、私自身、ごく身近な人間がやはり、ひき逃げといいましょうか、結果的にはわかったのでございますけれども、自動車事故で亡くなっておるというようなこともございまして、その関係者のお気持ちというのは、それは大変なものがあろうということはよく理解しているつもりでございます。

松本(善)委員 近年の危険、悪質運転による人を死傷させる事故が非常に多く報道されておりますが、悪質、危険な運転による事故の推移と現状がどういうふうになっているか、警察庁に伺いたいと思います。

坂東政府参考人 最近の悪質運転による交通事故の現状いかん、あるいは推移いかんというお尋ねでございますが、交通事故の死傷者数も含めての全事故の推移についてお答えしたいと思います。

 酒酔い運転に関するものでございますけれども、平成八年が千六百三十五件でございましたものが、平成十二年、昨年は千三百六十四件ということになっております。それから、酒気帯び運転に関するものでございますが、平成八年が一万一千四百九件でありましたものが、昨年、平成十二年が一万二千四百六十三件でございます。それから、麻薬等の運転に関するものが、平成八年が二十六件でございましたものが、平成十二年が三十九件でございます。それから、過労運転に関するものでございますが、平成八年が八百九十三件でございましたが、平成十二年が八百七十一件でございます。それから、共同危険行為等に関するものでございますが、平成八年が三十三件でございましたが、平成十二年が三十九件でございます。それから最後に、無免許運転に関するものでございますけれども、平成八年が五千六百六十七件でございましたが、平成十二年が六千二百五十件、このようになっております。

松本(善)委員 法務省刑事局長に伺いますが、悪質、危険な運転で人を死傷させた者に重罰を科すということは、刑法上から見ても私は合理的な根拠があるように思います。飲酒運転や無免許運転、スピード違反、暴走行為などの危険な運転行為は、人を死傷させることが容易に予見できる行為であります。そうしたことに起因した死傷事故は、未必の故意と紙一重の事犯と言えるのではないか。

 また、処罰の公平性という点でも根拠があるのではないかと思います。運転によって人を死傷させた場合に、現行の法定刑は、業務上過失致死傷罪として五年以下の懲役もしくは禁錮または五十万円以下の罰金、刑法二百十一条でそうなっております。傷害罪、窃盗罪、詐欺罪などの十年以下の懲役よりも軽い。処罰の公平性という観点から見ても法定刑を引き上げる根拠になるのではないかと思いますが、刑事局長の見解を伺いたいと思います。

古田政府参考人 現在の業務上過失致死傷罪の法定刑は、ただいま委員御指摘のとおりでございまして、この法定刑についてちょっと御説明申し上げますと、昭和四十年前後、大変交通事故が多発いたしました。それで、当時も非常に大きな問題となりまして、酒酔いでありますとか無免許あるいは非常に高度の交通違反、当時交通三悪と呼ばれていたこういうような事案に対処するために法定刑を引き上げる必要があるということで、現行の法定刑に昭和四十三年に変えられたわけでございます。

 ただ、当時、この法定刑の引き上げにつきましては、国会における御審議におきましても慎重な御意見もかなりありまして、こういうような御意見を踏まえながら、その後その運用に努めてまいった、こういうことでございます。

 ところで、ただいま委員御指摘のとおり、非常に危険な運転行為、これは事故が起こっても不思議はないというようなケースももちろんあるわけでございまして、こういう事犯につきましては従来の過失犯という構造ではちょっとやはりなじまないのではないか、こういう類型があるというふうに私どもは認識しているわけでございます。

 したがいまして、そういう観点から、非常に危険な運転行為、それが原因となって人を死傷させるというふうな事態になったときにつきまして、これを特別の類型を考えるということは十分考えられることでございますので、ただいまそういう方向で罰則の整備に向けて鋭意検討中でございます。

松本(善)委員 確認ですが、引き上げという方向で法務省として検討しているということですか。

古田政府参考人 業務上過失致死傷罪という枠組みではなくて、やはり危険な運転行為、これは言ってみますと暴行とかそういうようなものにも準ずるような、そういう危険な運転行為という類型というのは十分考えられると思っているわけです。そういうような行為によって人を死傷に至らしめたというふうな行為について、罰則を整備し、新たにより重い法定刑を定めるということを検討中ということでございます。

松本(善)委員 そうすると、今審議をしております衆法の方向で検討しているということになりますか。

古田政府参考人 要するに、危険な運転行為によって人を死傷に至らしめた、そういう行為について重い刑が科せられるようにするということで検討中ということです。

松本(善)委員 ちょっとはっきりしないけれども、しようがないでしょう。

 提出者に伺いますが、この悪質、危険な運転行為の中に過労運転を含めることについてであります。

 確かに過労運転は危険な運転ではありますが、営業車などの場合に、運転手と使用者または荷主との関係が無視できないわけであります。労働条件の問題、それから荷主との請負条件などが過労運転の背景にあるからです。いつまでに届けろ、こういうことで請け負ったために業務命令が出る、それを断ると労働者は首になったりいろいろする、そういう問題があるわけですね。現行道交法でも、使用者や荷主の下命による場合には、使用者、荷主に罰則が科せられることになっております。そうした要素を持つ過労運転の責任を運転手本人だけに課すというのは、どうしても問題があると思うのですね。

 こうした点を考えますと、悪質、危険な運転行為から過労運転は外すべきではないかと思いますが、この点について提出者はいかがお考えになっていらっしゃいますか。

山花議員 御指摘のように、この法律の対象となる道路交通法の違反の罪としては、酒酔い運転、麻薬等運転、共同危険行為等禁止違反、無免許運転、酒気帯び運転と並んで、過労運転の罪というものを規定しております。

 このたびの道交法の改正案に従って見ますと、自由刑の罰則については、五年以下、三年以下、二年以下、一年以下、六月以下、三月以下の懲役というものと、六月以下の禁錮、三月以下の禁錮という形で、八段階に分かれております。このような法定刑の違いというのは、それぞれの違反行為の道路交通における危険性の度合いに応じて定められているものというふうに考えられますので、一年以下の懲役及びこれよりも重い法定刑の上限が定められている違反行為であって直接運転した者に係るものという考え方に基づいて、過労運転の罪というものも対象としたわけであります。つまり、どこかで線を引かなければいけないということで、まず、一年以下の懲役及びこれよりも重い法定刑の上限が定められているというところで一つ線を引かせていただいたということです。

 また、四月十一日に本委員会で行われました委員会の質疑の中でも、塩田委員の質問に対する坂東政府参考人の答弁にもございましたように、正常な運転ができないおそれがあるという面では、これはやはり酒酔い運転等とも共通しております。

 過労運転は、他の法令違反に比べると、先生御指摘の点は、危険性というよりも、悪質性がないケースもあるではないかというお話だったかと思いますが、ただ、他の法令違反に比べると、死亡事故率が大変高くて、道交法違反の中でも最も危険な行為の一つとなっているという指摘もございまして、特にその危険性ということにかんがみましてこの法律の対象とした次第でございます。

 また、使用者の下命の場合にも、これは下命についての罰則というものもございますし、道交法全体で見たときには、個人だけ、実際に運転をした者だけを対象として処罰をしているということにはなっていないわけでありますので、その点については、道交法全体で見ると使用者の側にも責任が生じる場合もあるということであります。

 また、論点が幾つかあるかと思いますけれども、過労運転という語感からいたしますと今お話しされた議論もあろうかと思いますけれども、道交法上の過労運転と申しますのは、日常的な語感よりもかなり厳格に運用されているものと承知いたしております。

 さきの四月十一日に行われました本委員会での質疑の中でも、ここに、過労運転というのは、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転する行為ということであって、この典型がいわゆる居眠り運転だと思いますけれども、ただ、居眠りがあったからといって直ちに過労運転であるというような形で認定はされていないようであります。あくまでも事案ごとに、具体的に、あるいは客観的事実に照らしまして認定を行っているところでございますという坂東政府参考人のお話もございましたので、こうした厳格な認定がなされた上で、それでも過労運転と認定されるようなケースであるとすると、これは運転した個人についても重く責めを帰せしめてもいたし方ないのではないかと考えております。

松本(善)委員 これは過労運転が危険でないということを言っているわけじゃないのですよ。もちろん危険なのですけれども、先ほど申しましたように、雇い主との関係、それから荷主との関係でやはり特別の検討が要るんじゃないか。厳罰だけでは解決をしない。やはり交通事故の問題というのは厳罰主義だけでは解決しないというのは、一般的にもそうですけれども、特にそういう性質のものではないか。そういう意味で、これをただどこかで線を引かなければならぬということで入れるというのはちょっとどうかな。私どもは、そういうことで共同提案には参加をしなかったわけであります。

 やはり、今も申し上げたとおりですけれども、交通事故の根絶のためには、道路や交通体系の再編整備を初め、安全施設の拡充、また、無秩序なモータリゼーションなどの民主的な規制とか、犯罪被害者制度の充実なども重要ですし、交通事故根絶にはこういう国の総合的で抜本的な対策が必要であるということを強調して、次の質問に移ろうかと思いますが、どうぞ、何かあるそうですから。

山花議員 この厳罰化によって根絶につながるのではないという御指摘は、そのとおりであると思います。

 ただ、もう一言申し添えますと、過労運転の禁止という、道交法でいいますと六十六条ですが、過労だけではなくて、要するに「過労、病気、薬物の影響その他の理由により、」ということで「正常な運転ができないおそれがある状態」というところが一つポイントになろうかと思います。

 そこで、実務的にどのような形で解釈されているかといいますと、これは過労のケースではないのですが、正常な運転ができないおそれがある状態ということですけれども、目が悪いというだけではだめであり、例えば目を開くことができないとか、開いていても涙が流れて前方注視ができないような状態が必要である、眼帯をして運転をしているとき、直ちにおそれがある状態に当たるかというと、そうではなく、ほかの目も悪いため前方注視をすることが困難であるとか、眼帯が大きいため著しく視野が妨げられ、正常な運転ができないおそれがある状態であることが必要であるなどと、大変厳格に解釈されております。

 こうした解釈を前提といたしますと、東京地判の三十三年一月十七日ですが、「ねむ気をもよおし安全な自動車運転を期し得ない状態になつた場合は直ちに運転を中止して適当な休養をとり、ねむ気のなくなるのをまつて運転を再開し、事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務がある。」とされております。極めて限定的な場合でありまして、かつそうした状態に陥ったときには、この判例が言いますように運転を中止すべきと考えますし、また先生御指摘のように、使用者の側の業務命令によってどうしても過労の状態で運転を余儀なくされるという事態が起こるケースも想定されないわけではありませんが、しかし、こうした業務命令自体が道交法違反という行為と考えられますし、また、事実上は難しいかもしれませんけれども、法的にいえば、やはり本来そのような業務命令は拒むべきものと考えられます。ただ、個別の事案によっては、量刑の際の情状としてしんしゃくされることもあるのではなかろうかと考えております。

松本(善)委員 私どもは、やはり個人でこの過労運転を判断できる状況と周りの状況からそうなってしまったというようなことは別個に考えるべきだという考えなんですね。そこはどうもちょっと意見は違うようですけれども、次に移りたいと思います。

 自動車運転代行業適正化法についてであります。

 警察庁にまず聞きますが、自動車運転代行業をどう見ているかということであります。運転代行業問題を書いた警察庁交通企画課理事官の個人論文によりますと、諸外国に存在しない我が国特有の産業、飲酒運転防止に寄与しているという意味で交通安全産業と言っております。これはあくまで個人論文でありますが、なかなかよく物を見ているというふうにも思います。警察庁としての見解を伺いたいと思います。

坂東政府参考人 お答えいたします。

 自動車運転代行業は、これは昭和五十年代ごろから公共輸送機関が十分に発達していない地方都市を中心に発展してきた事業でございまして、飲酒運転が重大な交通事故につながるという認識が広く国民に行き渡っていることから、我が国において見られるような業形態となったのではないか、このように認識しているところでございます。

 したがいまして、自動車運転代行業というものは、お酒を飲んだ方にかわって自動車を運転するということから、飲酒運転の防止に一定の役割を果たしてきているところでございまして、この運転代行業の健全化を図ることによりまして、飲酒運転防止事業あるいは交通安全事業としてこの代行業というものを位置づけることもある意味ではできるのではないか、このように考えているところでございます。

松本(善)委員 代行業が交通安全に一定の役割を果たしているというわけでありますが、さきの理事官の個人論文によりますと、「交通安全産業たる運転代行事業の健全な発達を図ることはまさに警察の責務である」とまで言っています。そこまで言わなくても、必要があるなら事業を育成していくという措置があってもいいと思うのですね。しかし、問題がある面についてはきちっと規制していくという、その両面が必要になる。

 今回の法案は、そういうふうに見た場合に、規制的な面についてはかなり明確でありますけれども、事業の育成的な面というのが見えない。育成的な面というのは法案の中にあるのでしょうか。

村井国務大臣 若干本法の根幹にかかわる問題がございますから、私から答弁させていただきます。

 私は、どちらかというと、業というのをとらえまして、それを育成するとかなんとかいうような法律というのは、基本的に余りつくらない方がいいのじゃないかという感覚を持っております。この自動車運転代行業でございますが、これにつきましては、やはりいろいろ見ておりましてさまざま問題が出てまいりましたから、その問題になるところだけとらえて規制を行うということで、私は法律としては今の環境では一番望ましいことなのじゃないかと考えておるわけでございます。

 それで、これは社団法人全国運転代行協会というような団体もできておるわけでございますが、こういったところを通じまして今までも指導監督はしてきたわけでございますが、そのあたりをこれからもこの法律を通していただきましたらしっかり使って、今松本委員御指摘の業としての健全な育成というような面、そのことももちろん警察としてはある程度考えていかなければならない点でございますが、事実行為としてやっていくことはできるのだろうと思っているところでございます。

松本(善)委員 もちろん、必要な規制はすることが必要なんですが、規制だけではやはり交通安全対策や利用者保護が図れないのは言うまでもないと思うのですね。

 法案は、自動車運転代行業の定義を、主としてとか夜間にとか酔客に、車の随伴という、私から見ますと非常に狭くとらえていると思います。これまでの答弁も、聞いておりますと、大半の代行業の形態がそうであること、これらの代行形態にトラブルが多いことをそういう理由として挙げているようですけれども、しかし代行業としての形態は、割合は少ないかもしれないけれども、昼間の冠婚葬祭の営業もあれば、車が随伴しない空港などからの代行などの形態もある。そうした形態も代行業だと思うのですね。そうした各種形態の実態を無視した狭い代行業の定義づけでは、利用者にも事業者にも紛らわしいものになるのじゃないかというふうに思うのですけれども、長官でも、それから警察庁でも、お答えいただきたいと思います。

坂東政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、私どもが今提出しております代行業法という新しい法律は、夜間において行われておりますいわゆる酒酔い代行というものを中心にしたものでございますが、これは、やはり酒酔い代行的なものは、交通事故あるいは交通違反というものがある、あるいは暴力団による不正な威力行使事案というものがある、あるいはタクシー事業の類似行為がある、保険に未加入あるいは料金の不正収受等の事案がある、そういった問題があるということでございますので、そういった問題を解消して業の適正化を図りたいということで、定義としてもこの酒酔い代行を中心にした定義にしたということでございます。

 そこで、もう一方、委員御指摘のように、例えば昼間冠婚葬祭等のために行う事業とか、あるいは空港での送り迎えのような事業を専門に行うものについてはどうかというお尋ねでございますけれども、こういった業務を専門に行うものにつきましては酒酔い代行のような問題点は見受けられない、したがいまして今回規制の必要がないということから、今回提出しております法案の対象からは外しているというところでございます。

松本(善)委員 その必要がないというのですけれども、そのほかの代行形態も、利用者との関係でありますとか交通安全上、問題がないわけじゃないと思うのですね。交通安全対策それから利用者の保護という目的のために、やはり包括的にとらえた方がいいんじゃないか。

 国民の財産だとか健康、命にかかわるような問題で規制をしないというのは私は適切ではないのではないか。不必要な規制や既得権益を図るような規制はしてはなりませんけれども、国民の安全や利用者保護という性格の規制はやはり必要なんじゃないだろうか。そういう点でいえば、これは業として進んでいきますと、今後やはり代行業の実態に即した内容の定義にすることを検討しないといけないんじゃないだろうか。この点は国家公安委員長に伺いたいと思います。

村井国務大臣 やはり必要な範囲で規制をやっていくということだろうと思うんでございます。さような意味で、先ほど交通局長がお答え申しましたように、現在問題になっている部分をとらえて代行業と規定し、それである程度の規制をするという形にしたわけでございますから、今、松本委員御指摘のような分野に仮にそういう問題が将来起きてまいりましたら、それはもとより私どもといたしまして責任を持って検討しなければならない問題だと存じますけれども、現在それを規制しなければならないほどに問題があるという認識は私どもはないということだと存じます。

松本(善)委員 この法律について、代行業者の団体から、タクシー代行には法律が適用されないのは不平等があるということが指摘をされております。タクシー代行と市場が競合してそれぞれの主張があるようでありますが、基本は、双方が共存する方向で、公平の立場で処理することだと思います。何よりも安全と利用者保護の立場から対処すべきだと考えますが、この関係について国家公安委員長はどうお考えになっていますか。

村井国務大臣 いわゆるタクシー代行という業態でございますけれども、こちらの方には既にタクシーとしてのそれなりの規制がかかっているというふうに私どもは認識しているわけでございまして、そういう意味では、道路運送法のタクシー事業としてそれなりにきちんとされている、これはこれでいいんじゃないだろうか。全く今までそういう意味での規制がなかった自動車運転代行業につきまして、今度ある程度の規制を行うということでございますから、私は、それは何ら矛盾もしないし、いわゆるタクシー代行と呼ばれる業態である人たちの側で特段不利を生ずるようなことはないように考えております。

松本(善)委員 それはやはりちょっと矛盾があるんです。

 国土交通省に伺いますが、代行業者に義務づけられていてタクシー代行に義務づけられていないものに損害賠償保険がある。タクシー代行に義務づけていない理由は、顧客がタクシーに乗るからタクシーの保険で大丈夫、こういうことなんですが、問題は、代行中の自動車が交通事故や人身事故を起こすことがある、そういう場合のことであります。

 タクシー代行中の車両が人身事故を起こした場合、ケースにもよるけれども、損害賠償は今日では一億以上になることがあります。タクシー会社に支払い能力があれば問題はありませんけれども、支払い能力がない場合には、自賠法第三条によって、最終的には車の所有者、つまり代行車の顧客が賠償義務を履行しなければならなくなるんじゃないか。そうなりますと、そういう状況ではやはり利用者の保護が図れないんじゃないか。

 ここはやはり残されている一つの矛盾で、だから、これについて、タクシー代行にも同じようにやるべきじゃないかということが代行業者の方から出ているわけなんですが、どうでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 タクシー代行のうち、タクシー車両で利用者を運送する業務は、通常のタクシー業務でございます。事故の際には、タクシー免許の際に義務づけられておりますところの保険によって必要な補償がなされるということでございます。

 また、利用者の自動車を別途回送する部分の業務でございますが、これにつきましては、他人の車をいわば陸送するという陸送業というのがございますが、この陸送業に相当するような行為でありますが、陸送業についてはいわゆる保険を義務づけてはおりません、状況でございますが、これと同様な形態でございますので、タクシー代行の自動車の回送についても保険を義務づけるということは考えていないところでございます。

松本(善)委員 そうすると、結局、今私が例として挙げました、タクシーが代行をやっているその代行車、いわゆる顧客の車、それが事故を起こした場合にはやはり矛盾が起こるでしょう。やはり損害賠償と保険の関係では起こるんではないですか。今の御答弁はそういうふうに伺っていいですか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 その部分につきましては、通常の損害賠償の関係で処理されることになると思います。

 この点なんですけれども、法的に義務づけるということはいかがかなと思いますが、このような利用者の自動車の回送につきまして、適切な補償がなされるということは望ましいことは望ましいとは思います。そういう意味では、タクシー事業を監督していく中で必要な指導もしていきたいというふうに考えているところでございます。

松本(善)委員 国家公安委員長、今お聞きになったことで理解されたかどうかわかりませんが、やはり矛盾がないではないんです。

 将来、こうした状況だと、利用者の保護という、例えば、頼んで、結局利用した本人が一億もの損害賠償をせにゃいかぬということになったら、これはぐあい悪いでしょう。そういう点ではやはり問題が多いので、私どもは育成面ということを言いましたのはそういうことなんです。規制だけじゃなくて、育成。これはやはり交通安全を守るというためにいろいろな点を考えにゃいけない問題だと思うんです。交通安全の確保、利用者の保護で不十分な点が、あるいは今法律が全くないことを考えれば、現在この法律が必要だと思います。しかし、将来、さらに実態に即した法律の運用と修正を図ることがやはり必要なんではないだろうかということについての国家公安委員長の御意見を伺って、質問を終わろうかと思うのです。

村井国務大臣 これはもう、なべて人間のやること、完璧というものはございませんから、やはり、今、私、質疑を伺っておりまして、陸送業について保険が義務づけられていないという国土交通省からの答弁がございました。それとの均衡というものを考えてこのような判断に至ったということだと存じますけれども、今、松本委員御指摘のようなところが本当に問題になってくるようなことになれば、これはまたいずれ考えなければならない一つの問題としてお受け取りさせていただきたいと存じます。

松本(善)委員 質問を終わります。

横路委員長 保坂展人君。

保坂委員 社会民主党の保坂展人です。

 きょうは、同僚の北川委員より時間を分けていただきまして、どうしても委員各位に考えていただきたい交通事故の現状について質疑を行いたいと思います。

 まず第一に、これは昨年の八月四日の法務委員会でただした件なんですが、藤原裕喜子さんという、運輸省初の船の女性教官として注目されていた三十二歳の女性なんですけれども、タイヤの大きさが直径一メートル、車高が二・六五メートルという巨大なRV改造車、これにいわば後ろから、オートバイ運転中当たられまして、そして亡くなったという事件なんですね。

 これについて、当時の運輸省の宮嵜政府参考人に、こんな車は車検が通るのかと。これは捜査に当たった警察官や検事もみんな驚いているのですね。ところが、通るということでございます。これは、通るということでは、もうほとんど前が見えないわけですから、改善をしていただきたいということで求めましたけれども、できるだけ簡潔に、国土交通省の方から、その後どうなっているのか、お願いをしたいと思います。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 一昨年の九月に発生いたしました車高を上げた改造車による死亡事故やRV車などの死角による幼児の死亡事故、これはいずれも大変痛ましい事故であると考えております。国土交通省は、その防止に必要な対策の検討を昨年来進めてまいりました。

 具体的には、産学官の有識者から成る車両安全対策総合検討会というのにおきまして、死角事故の防止に必要な運転視界基準案の検討を進めてきたところでございます。近々にその結果を取りまとめて、パブリックコメントにより基準案を公表する予定としております。

 国土交通省としては、パブリックコメントの結果などを踏まえて、できる限り早急に運転視界の基準を定めて、その基準に基づく自動車の検査によって安全な運転視界を得られない危険な改造車を排除することとしたいと考えております。

保坂委員 それでは、こうした危険な改造車は容易に車検に通らないように改善をされるというように伺いました。

 なお、指摘をしておきたいのは、これら車検が通過をしていたということで、刑事罰も、禁錮二年執行猶予四年ということであったようです。やはり、見るからに危険な車、これが放置されてはならないということを指摘します。

 さらに、今度、九七年三月八日に起きた千葉県の事故なんですが、宮沢陽一さんという二十八歳の、御遺族がこういうしのぶ遺稿集を出されているのですが、外科医の青年医師だったんですね。若いお医者さんだった。ジョギング中にひかれてしまうんですね。そして、そのひかれてしまった車の、最初の車は飲酒運転、ひき逃げで逃走しました。そしてなお不運なことに、もう一度、二回目、その直後にまた飲酒運転の車にひかれてしまう、こういうことが起きた。つまり二重轢過ということですね。どちらの車が命を奪ったのか、遺族の無念も晴れないわけですが、捜査では、一番目の車がその命を奪ったんだということになっていたようです。

 そこで伺いたいのは、行政処分の不思議な点についてなんですが、二番目の車、これは女性の方が運転をしていたようですけれども、相当量の酒を飲んでいたということを取り調べでも証言しているんですね。調書にもそういうふうに明記をされています。そして、倒れている人、そのときに生きていられるかあるいはその命が尽きているのかはまだわかりませんが、しかし、そこをはねて逃げてしまった。

 これに、御遺族が調べてみると、行政処分、これは免許の減点はゼロだというんですね。この不思議について以前伺ったのですが、事故の基礎原因となるその判断がないので、それに付加されるひき逃げということだけでの減点はできないんだ、こういう説明でしたけれども、こんなことでいいのかと率直に思います。いかがでしょうか、警察庁。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、二台目の女性の運転者に対する行政処分、点数がついたかどうかということでございますが、千葉県警によりますと、この事件についての行政処分上の点数の評価は行われていないというように報告を受けているところでございます。

 その理由でございますけれども、これも委員御指摘のように、現在、事故のもととなった交通違反という事実があって、それが認定された場合におきまして、そしてひき逃げとかあるいは事故が起こったといったような場合においては点数を付するということになっておりますけれども、今回の場合は、そのもととなる道路交通法違反の事実が認定されなかったということで点数をつけなかったというように千葉県警から報告を受けているところでございます。

保坂委員 長官、来ていただいていますので、率直に田中長官に伺いたいのですけれども、私、この件を聞いてびっくりしたんですね。確かに酒酔いは現行犯だ。しかし、その後にちゃんと飲んだということも認めている。そして逃げたという事実もある。しかし、減点ゼロ。これはやはり、正直に名乗り出ない方がいいというような大変な誤解を与えるんじゃないでしょうか。御所見を伺います。

田中政府参考人 ただいま交通局長から申し上げたとおりのような経緯、仕組みの中で本件につきましては行政処分の点数が付加されなかったということでございます。今委員お話しのように、今回のこの運転者に関しましては、酒を飲んでいたということでございますけれども、検査の結果、酒気帯び運転には至らない、そういうような状況であったということでございまして、これがやはり自動車の運転に関する違反として問擬できないということで、これに対する付加点数ということでの救護措置義務違反については点数が付加されなかった、こういう報告を受けているところでございます。

保坂委員 それでは、一九九五年、今から六年前の九月十五日の早朝に、三苫剛嗣さん、二十一歳の元気な大学生だったのですが、交通事故で亡くなっている。きょうは御遺族の方にも傍聴に来ていただいているので、大変たくさんの問題、この事故にもあるんですけれども、一点に絞って伺っていきたいと思います。

 これは、早朝、高速道路上の追い越し車線で、何らかの理由で、この三苫さん、二十一歳の青年の運転していた車が停止をした、とまったんですね。そしてその後に後続車に衝突をされ、残念ながら亡くなるということなんですけれども、この事故を検証していくときに、御遺族の指摘、私ども本当にもっともだと思うのですけれども、こういう指摘がございます。

 要するに、高速道路上等で車が停止して運転できなくなったとき、現在の法律では、三角停止板というのがございますね、三角形に組み立てるもの。私も実は一度も組み立てたことがないので、これはなれている方は余りいないのですね。そして、トランクの底の方に積んでありますから、例えば里帰りとかどこかにレジャーに行くとか、荷物を積んだ状態の中で三角停止板を出して組み立てるという、これはちょっと実情、高速道路状況にふさわしくないんじゃないか、こういう点を指摘されているんですね。私、もっともだと思うのです。この点、少し考え直していただけないでしょうか。

 こういう三角停止板以外の、よりスピーディーに表示できるようなものは幾らでもできると思うのです。例えば、電気系統がやられた、そのときに、車のどこか引っ張るとボンネットが直角にあいて、例えば故障中とか、蛍光塗料か何かで夜間も見えるとか、さまざまな工夫はできると思うのですね。けれども、今の法律では、この三角停止板というものを、車からおりて、そしてトランクの中を探して、高速道路上でも組み立てて置く、これは大変危険ですね。これはやはり考え直すべきだと本当に思います。いかがでしょうか。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、高速自動車国道等の本線車道等に事故あるいはその他の事由によりまして停止せざるを得ない場合におきましては、自己の安全やあるいは後続車の安全といったようなものを図るために、いわゆる三角表示板の表示というものが義務づけられているところでございます。

 しかし、委員御指摘のように、法令によって義務づけられましたいわゆる三角表示板にかわるものとして適正な機材が開発されるような場合におきましては、国民の負担等も考慮をしつつ、国土交通省とも連携しながら、導入することも検討することはあり得るものというふうに考えているところでございます。

保坂委員 今、警察庁からそういった答弁がありました。二十一歳の将来ある息子さんの命はもう二度と返ってこない。しかし、この痛ましい事故、その命の重さ、それと引きかえに、これだけ不合理な、あるいは実情に沿わない法律や規則を改正していただくこと、あるいは実情に合わせてもっとより安全な方向に改めていただくことができたらというのが御両親、遺族の方の願いというふうに私は受けとめました。

 国土交通省に伺いたいのですが、実際にこの三苫さん御夫妻は提案されているのですね。三角停止板ではなくて、先ほど私はちょっと言いました、電気系統が壊れていても、例えば引っ張るような形で後ろのトランクが直角にあくとか、あるいはエアバッグと何らか連動して危険を表示するようなシステム。あるいは、発煙筒というのも助手席の方にあるのですね。しかし、それは助手席ではなくてやはり運転席の方にあるべきではないかとか、さまざまな御提案をされているのですが、こういう緊急事態の人命保護に大変関連をする、急がれる改善ですが、国土交通省の方、いかがですか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 高速道路上で故障などによって夜間に車両が停止した場合には、運転者は、非常点滅表示灯、駐車灯、尾灯を点灯するとともに、発煙筒や赤色合図灯などの非常信号用具によって後続車に合図をしながら、車両後方の路上に停止表示器材を置くということにされております。

 こういった車外での作業というのは大変危険でございますので、道路運送車両の保安基準では、停止表示器材が使用に便利な場所に備えられたものであること、及び容易に組み立てられる構造であることということを要件として定めております。

 非常停止用器材はトランクに収納されることが一般的でございますので、ユーザーに対して、常に停止表示器材を取り出しやすい状態にしておくように啓発する必要があると考えております。このため、ユーザーに配付される自動車の取扱説明書にその旨を記述するなどによって注意を喚起するよう、自動車メーカーに対しては指導してまいりたいと思っております。

 また、停止表示器材は、追突防止のために、車両の後方の路上に置くことが必要であるとされております。これは、ヘッドライトによって光がしっかり反射するように、こういうことでございますが、停止表示器材にかわるような装置は、その有効性が停止表示器材と同等であることが必要であると考えられますので、諸外国の状況を調査しながら、また具体的に御提案があればそれを参考にして、警察庁とも調整しながら検討してまいりたいと思っております。

保坂委員 国土交通省の方はちょっとかたい答弁だったのですが、今諸外国という言葉が出ましたよね、ドイツのアウトバーンだとかアメリカのハイウエーだとか。どうでしょう。この三角停止板というのを定めているのは日本だけだと思うのですね。諸外国の例などはどうでしょうか。警察庁の方に聞きたいのですが、いかがですか。それから、三角停止板、実際に高速道路などでとまったときに、どのくらいで設置できますか。御自分で運転されるかどうかわかりませんが、ちょっと参考までに。

坂東政府参考人 いわゆる三角板の諸外国での導入例いかんというお尋ねでございますけれども、私ども日本で採用している三角表示板の基準というものは、自動車の装置ごとの安全性等に係る国際基準に則したものとされているところでございまして、こういった同様の、我が国で採用しているようないわゆる三角表示板というものは、委員御指摘のドイツにおきましても採用されているというふうに我々は承知しているところでございます。さらにはイギリスとかフランスとかスイスとか等々、三十二カ国ぐらいで採用されているのではないか、このように承知しているところでございます。

 それから、三角表示板というものを路上に提示するということは危険ではないかというようなお尋ねでもございますけれども、私ども国家公安委員会の方でも、「交通の教則」というものを定めておりますけれども、その中におきましても、十分に安全に配慮しながらそういった措置をとるようにというような形で指導しているところでございますので、今後ともそういった指導というものをさらに一層進めていきたい、このように考えております。

保坂委員 田中長官、端的にもうきっぱり言っていただきたいのですね、今、長年の晴らされぬ思いを。この三角停止板というのは必要なときがありますよ。これが役に立つことは確かにあるでしょう。しかし、高速道路という、すさまじいスピードで走ってくる、そして数秒の差が命を落とすことにもなりかねない、そういうところで、警察庁もほかの方法をやはり検討してください。いかがでしょうか。人命尊重のために必要な決断です。

田中政府参考人 これは、本件だけではございませんけれども、やはり交通事故に遭われました方の御遺族、被害者のお気持ちを考えますと、私ども交通安全対策に携わる者としては身の引き締まる思いで対策に取り組んでいかなければいけない、かように思っておるところでございます。

 道路交通という場は、国民の全体がかかわる場でございますし、今回の道交法改正におきましても、御遺族、被害者の皆様を初めといたしまして多くの国民からの御意見を踏まえまして、罰則の引き上げ等、いろいろお願いをしておるところでございます。

 今委員御指摘のように、今後とも、御遺族、被害者を初め国民の皆様からの御意見あるいは御提案というのを十分に参考とさせていただきながら交通安全対策を真剣に進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。

保坂委員 大臣に伺います。

 今、長官の方がしっかり、そういう遺族の方の思い、三角停止板が出せなかったことが最愛の息子さんの非であるがごとく言われて大変悔しい思いをされた、それはおわかりだと思います。人命尊重のためにそういう警告装置はやはりあるわけです。命を守るためにある装置。そこは状況に応じていろいろな工夫や、電気系統が故障したときはこう、前に知らせる場合、後ろに知らせる場合、いろいろあります。三角停止板というのは、日本ハイウェイセーフティー研究所の方によると、大体五分くらい平均かかるというのですね。なかなか高速道路上の事故でそれを的確に設置しという図面に書いたようにはならない。やはり人命尊重の原点に立って、これは自動車の機能の整備の面からも、そして警察庁の行政の面からも整備をしていただきたいということの決意を伺いたいと思います。

村井国務大臣 私も、先ほどちょっと申しましたように、自分の非常に身近な人間で交通事故死した者もおりましたりいたしまして、今のお話を大変重く受けとめさせていただきますが、先ほど長官からもお答えを申し上げておりますけれども、私ども、やはり国民の負担の問題もかたがた考え合わせながら対応していかなければならないと存じますので、よく研究をさせていただきたいと存じます。

保坂委員 最後に、大臣にもう一点、これは私も驚いたのです。この三角停止板の事故で息子さんを亡くされた、その加害者の方は、何と四年と数カ月行政処分が忘れられていたそうなんですね。そして、その行政処分が忘れられていたということを指摘されると、そういう行政処分にされたわけですけれども、その間無免許運転などをされて、どうもやはり、私はいたずらに厳罰化、厳罰化と言うつもりはありません。しかし、その加害者の方が本当に反省する仕組み、これは、先ほど三人の若い人たちの例を挙げましたけれども、全部何か血が通っていない。ここのところ、しっかり見直していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

村井国務大臣 私は、交通事故を防ぐための手段としまして、刑罰を重くすることも一つの方法でございましょう。それから、そういった点数等々の行政処分を厳しくしていく、これも一つの方法だろうと思います。それからまた、交通安全のためのさまざまな施設の充実というのも非常に重要な点だと存じます。また、午前中の塩田委員のお話でも出たことではありますけれども、運転者の方々に気持ちの上で本当に落ちついて運転をしていただくというようなマナーを広めていく、これもまた一つの方法だろうと思うわけでございまして、いろいろな方法があるとは存じますけれども、そのうちの一つとして、私はその行政処分の問題も大変重要な要素だと存じます。そういう点で、警察に落ち度がないように、これから十分留意してまいりたいと存じます。

横路委員長 北川れん子さん。

北川委員 北川れん子です。よろしくお願いします。

 私は、IC免許と電磁的記録についてお伺いしたいと思います。

 一九九九年四月の「月刊交通」によりますと、警察の方では、運転免許証の作成の折に、警察で撮影した運転者の顔写真を警察のコンピューターに顔画像データとして光ディスクに集積しているということをその雑誌で見ましたが、これは本当でしょうか。そして、現在どれくらいのデータがそこに集積されているのでしょうか。

坂東政府参考人 お答えいたします。

 各都道府県警察におきましては、免許申請者等の顔写真を含む免許情報というものを電子的に記録するシステム、これをファイリングシステムというふうに私どもは呼んでおりますけれども、このファイリングシステムを導入しているものというように承知しているところでございます。

 従来は、運転免許証を紛失するなどして再交付の申請があった場合に、本人からの申請であるかどうかということを当然ながら確認する必要があるわけでございますので、そういった意味で、申請書に添付された写真をその申請書に貼付して運転免許台帳として保管していたところでございますけれども、これにかえて、免許データとそれから免許証作成機により撮影いたしました顔写真を光ディスク等に登録して保存しようとしているものがこのファイリングシステムでございます。

 このファイリングシステムの導入でございますけれども、平成七年から各都道府県警察において順次導入されているところでございまして、本年になってすべての都道府県で整備されることとなったところでございます。

 なお、現時点で各都道府県警察がどの程度の免許保有者の登録を済ませているかということにつきましては、つまびらかに承知していないところでございます。

北川委員 事実であり、徐々にためていっているということなんですけれども、以前は、免許更新の折には自分が持っている顔写真でもよかったのが、いずれかの時点からそれがそうじゃなくて、行った先で写さないといけないというふうに切りかわったということも聞いております。

 いわゆるIT技術というのはどんどん進んでいまして、顔の各部の特徴とかを数百に分けて分類して、そのデータを別の写真と照合できるというような技術も進んでいるとお伺いしております。こうなってくると、写真というのがただの写真だけではなくて、いろいろな情報が集積されたものというふうにもなります。そして先ほどの御答弁のように、平成七年というのは九六年になるのでしょうか、各都道府県で免許保持者に対して情報を集積されるということですので、そうなりますと、運転者は余り自覚をしておりません、運転者は試験場で写真を撮られるとき、それは免許証にプリントされる、そういう意味づけだけの写真だと思っているはずなんです。

 そこで、お伺いします。個人の情報を集積するのであれば、どのような目的でどのような方法で集積しているのかをまず提示しないといけないのではないでしょうか。そしてもちろん、個人の了解を当然得る必要があると思うのですが、了解は現実に得ていらっしゃるのでしょうか。

坂東政府参考人 ただいま御答弁申しましたように、このファイリングシステムの導入に至る経緯というか理由でございますけれども、免許証を紛失等をされる方がいるといったようなときに、当然ながら再交付申請というのが来るわけでございますけれども、従来の手法で管理する場合におきましてはやはりかなり時間がかかるということでございますけれども、こういった光ディスク等で管理するということになりますと、すぐ検索できて、本人かどうかということが確認できて、そして早く御本人にそういった意味での再交付ができるようになるということでございます。

 それからさらに、ことしになってからでございますけれども、現在、先ほど申しましたように、再交付申請等のときに備えて、免許更新時におきましては写真を添付してもらわなければいけないということになっていたわけでございますけれども、こういったシステムが導入されたことによりまして、こういった申請時における写真の添付ということも省略することが可能になったということでございます。

 そういった意味で、本年四月から、こういったシステムが整備されているところにおきましては、更新時の写真の添付が省略できるような形の制度というものを施行したということでございますので、一にこれは、やはり利用者といいましょうか、あるいは更新者といいましょうか、そういった方々の利便のために導入したものでございます。

北川委員 最後の質問の同意を得ているかということについては今の御答弁の中にはなかったと思いますので、次にまた改めてお伺いしたいと思います。

 それで、写真を持ってくることが省略可能になったということは、それはIC化に向けてのやり方に切りかわったということですから、それを省略というのは適切な言葉ではないというふうに思います。どんな写真か、自分が持っている写真を持っていく方が便利な場合もあるわけですので、個人のそういう了解を得ているかどうかということともあわせまして、そこは問題性が残るのではないかと思います。

 もう一つの質問は、現在ある免許証の記載事項を、今回導入、二、三年後に可能になろうかというお話も聞きましたが、どの部分を電磁記録化することを想定していらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。

坂東政府参考人 委員御指摘の点は、今回の道路交通法の改正法案で改正の一つとしております免許証の電磁的記録、いわゆる免許証のICカード化についてのお尋ねではないかと思います。

 基本的には、改正法案を見ていただくとおわかりになりますように、現在免許証に記載されている、券面に記載されている情報の一部を電磁的なものに記録するということでございますので、現在の券面に記録されているもの以外のものをICカード化してそれに記録しようというものではございません。

北川委員 先ほどの個人の了解については、ちょっと私しつこいかもわかりませんけれども、やはり確認の言葉をいただきたいと思います。

 そうしましたら、今の御答弁からいきますと、道交法の九十三条の規定に挙げられております免許証記載事項の一部というふうに理解していいのか、その一部は、一体、具体的に言えば何を想定していらっしゃるのか、改めてお伺いします。

坂東政府参考人 先ほどのファイリング等の関係で、免許証の更新者等の利用者の了解をとったのかどうかということでございますが、これは、るる御説明、答弁申し上げておりますように、やはり利用者の利便等も考えながら、かつ行政目的を達成するためにということでございますので、利用者の了解をとっているかどうかということに関しましては、そういう行政目的のために導入したものでございますので、とっていないということでございます。

 それから、今回のIC化についてでございますけれども、その一部ということでございますけれども、基本的には今のところは、発給している県公安委員会の公印というのが免許証の券面にございます、それを除いたもの、券面に記載されているもので公印を除いたものをICカード化する予定で考えているところでございます。

北川委員 それは、今の免許証の表の、目で見て確認できる事項というふうに、大まかに言えばそれに当たるのかなという気もします。

 それと先ほどの同意をとっていないという面では、これからの個人情報の保護の問題とプライバシー権の問題ですね。特に電磁的記録、自分が、その中の電磁的記録が何としておさめられているのかを本人確認がどうできるのかという問題とあわせて、同意をとらないという方向でこれからも利便性の追求だという形を押しつけられるとすれば、IC免許の導入に関しては疑念が残るところだろうと思います。

 そこで、今のところは一部を載せるだけだということなんですが、今後、身分証明書、ID機能を持たせるとかクレジット機能を持たせるとか、ISOの方向に、ISOの動向を見てというお答えだったのですけれども、その辺の展望についてはいかがなんでしょうか。

坂東政府参考人 まず、ICカード化する内容といいましょうか、あるいはほかの機能を持たせるのかということでございますけれども、公安委員会といたしましては、今申しましたように、券面に記載している情報、つまり、我々がビジュアルに見られる情報以外のものをIC化するということは、これはもう法律上も、先ほど申しましたように券面情報の一部ということでございますから、それ以外のものをIC化するということは考えていないところでございます。

 それから、本人に開示できるのかどうかということでございますけれども、今回のICカード化を導入しようという一つの理由というものは、御案内のように、年間一千万人からの方が日本から海外に出ていっている。そうなると、いろいろな意味で免許証というものは国際的にいろいろな形で利用されるような局面も出てくるというようなこともございますから、先ほど委員お話がございましたけれども、ISOにおきましても、やはり共通の国際規格をつくるべきではないかということでいろいろ検討がされているということでございます。したがいまして、やはり日本におきましても、将来の国際的な流れというものの展望を見た場合におきましては、今の時点で、そういった国際化の流れに沿えるような形で免許証のIC化ということも準備しておいた方がいいのではないかということでございます。

 ただ、利用者に対して情報開示するかどうかということでございますけれども、ISOの基準の流れというのがどうなるかということにもかかわっているところもございますけれども、その情勢いかんによっては、私どもとしては、ISOの基準にそういうような縛りがないとなれば、それは御本人がオープンにしてもらいたいと言えばオープンにできるようなシステムというものも考えたいというふうに考えているところでございます。

北川委員 今回、法律改正とともに明記されたけれども、具体的なことはこれからだということなので、七千六百万人という膨大な数の保有者がいるわけですから、ぜひ国民に対しても、どういうことを目的としてどうやろうとしているかというのは、ある時点で明確化していただきたいと思います。

 それで、今世界の中でもIC免許を導入している国はまだないということなんですが、導入に当たっては、ICカード免許にするかそれとも現行免許にするかという選択権は保有者側にあるのかどうか。それと、今の顔写真の方ですが、これ以降、同意をとる必要があると私は思いますが、それに対しての検討はいかがお考えなのか。二点あわせてお伺いしたいと思います。

坂東政府参考人 二つのお尋ねでございますけれども、今回IC化を導入したいというように考えているわけでございますけれども、それでは、本人の選択、つまり現在の免許証みたいなものがいい、ICカード化は要らないといったような選択を認めるかどうかということでございますけれども、先ほど申しましたように、いろいろなICカード化の利便性というものを考えまして、やはり公共目的のために私ども導入しようとしているわけでございますから、導入過程においていろいろな免許証が混在する時期というのはあるかもわかりませんけれども、私どもとしては、最終的にはやはり選択を認めない。先ほど申しましたように、そういった公共目的のために導入しようとしているわけでございますから、最終的にはやはり全免許のICカード化というものを図りたいということでございます。

 それからまた、同意の面につきましても、先ほど申しましたように、そういったいろいろな意味での公共目的のためにやっているということでございますから、ICカード化を図るということについての国民の同意といったような意味ではなくて、こういった国会の場におきまして了解をいただければ、やはりICカード化を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

北川委員 そうしますと、公権力が一番有利に情報を収集できる最も早い手段をIC免許の中に盛り込む、今はここまでということでしたが、これ以降、時代の流れとともに、またISOの流れとともにも変わっていくと思いますので、私はやはりもう少し国民議論を待つべきではないか。特に選択権がないのであれば、なお一層IC化に対しての情報を多くの人に分け与えながら、あるべき姿、それと誤認情報が載せられた場合、自分の情報が誤って載せられた場合にどう訂正を求めることができるのか、すべて警察の中でしか検証ができなければ、本人確認がどのシステムでできるのか、その辺もこれから検討の余地のある事項だと思いますが、いかがお考えなんでしょうか。

坂東政府参考人 まず、今回の法改正を国会に提出するに当たりましては、私どもとしては、事前に広く国民からパブリックコメントということで御意見をちょうだいしてあるところでございます。ICカード化の点につきましても、まず、どういう理由でICカード化を導入するかという理由もつけてパブリックコメントにかけたわけでございますけれども、大半の方がICカード化に賛成であるということでございます。

 それからまた、どういった情報が盛り込まれているかということにつきましては、当然ながらそれは本人が確認できるような形にしたいというふうに考えております。

北川委員 では、時間が来ましたので、これからもICカード化に向けては監視をしていきたいと思います。どうもありがとうございました。

横路委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

横路委員長 ただいま議題となっております各案中、まず、内閣提出、道路交通法の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 この際、本案に対し、石毛えい子君外二名から修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。石毛えい子さん。

    ―――――――――――――

 道路交通法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石毛委員 石毛えい子です。

 私は、民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となりました道路交通法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その提案理由と概要を御説明申し上げます。

 今回の法改正では、障害者に係る免許の欠格事由のうち、身体障害及び知的障害については廃止されておりますが、精神病者については幻覚の症状を伴う精神病にかかっている者、てんかん病者については発作により意識障害または運動障害をもたらす病気にかかっている者と言いかえただけにとどまっています。これらの病気にかかっている者であっても、症状の程度や服薬によって運転に支障がない場合が多いにもかかわらず、一律に免許の拒否事由とするような規定は合理性に欠けており、差別的と言わざるを得ません。

 また、欠格事由を具体的に規定する政令を定めるに当たっては、対象となる者を不必要に広く定義して人権を侵害することがないよう、病者、障害者の代表者及び専門家から意見を聴取する手続が必要ですが、そのような規定を欠いています。

 本修正案は、特定の病気を有しているだけで欠格となる不当な規定を症状に着目した合理的な規定に改めることにより、欠格条項の適正化を図るとともに、政令を定める前の意見聴取手続を義務づけるものであります。

 具体的には、第一に、病気を理由として免許の拒否等をすることができる者について規定する第九十条第一項第一号を、「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるものを呈している者」と改め、病気または障害を理由として免許の取り消し、停止等をすることができるときについて規定する第百三条第一項第一号及び第二号について、第一号を「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるものを呈している者であることが判明したとき。」と改め、第二号を削除します。

 第二に、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状を政令で定めるに当たっては、内閣総理大臣は、あらかじめ、当該政令で定める症状を呈している者の意見を代表すると認められる者及び当該症状に関する専門的な知識を有する者の意見を聞かなければならない旨の規定を追加いたします。

 第三に、施行期日その他所要の規定を整備いたします。

 以上が、提案の理由及び内容の概要であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたしまして、趣旨の説明を終わります。(拍手)

横路委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

横路委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也君。

小野委員 私は、自由民主党、公明党を代表して、民主党提出の道路交通法の一部を改正する法律案に対する修正案に反対し、原案に賛成する立場から討論を行います。

 この修正案は、免許の拒否事由等について、法律に病名等を規定せず、「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病状として政令で定めるものを呈している者」である場合に免許の拒否等ができる規定に修正するものでありますが、以下、これに反対する理由を申し上げます。

 この修正を行った場合、国民にとって重大な問題である免許の取得の可否について、国会が具体的な要件を何ら定めないこととなるばかりでなく、知的障害や身体障害といった今回の改正により免許の拒否の対象としないものについても、条文上、その対象に含めることが可能となります。

 また、拒否等の処分を行うのを免許申請等の時点で病状を呈している場合に限るものであれば、交通安全の観点から見て不十分と言わざるを得ません。

 以上から、修正案は適当でないと考え、反対するものであります。

 なお、原案については、運転者の安全対策の推進等、まことに時宜を得たものであって、適正かつ妥当なもので、賛成するものであります。

横路委員長 島聡君。

島委員 私は、民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表し、ただいま議題となりました内閣提出の道路交通法の一部を改正する法律案及び民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合提出の道路交通法の一部を改正する法律案に対する修正案に賛成する立場から討論を行います。

 現行の道路交通法は、精神病者、てんかん病者、知的障害者、視力、聴力、会話能力がない者などに対し、運転免許試験の受験資格すら与えないなど、障害者や病者を不当に差別した規定となっています。

 今回の改正案では、このような問答無用の門前払いは廃止するとともに、知的能力や身体的な能力など試験で見ることのできる能力については、すべて試験で判断するなどの改善が図られており、障害者の社会参加を阻む要因を除くという点で一歩前進していると評価はいたします。

 しかしながら、他方で、運転免許を拒否、取り消し等ができるとする規定を設けて、幻覚の症状を伴う精神病にかかっている者や、発作により意識障害または運動障害をもたらす病気にかかっている者などを挙げていますが、これは事実上、てんかんなどの病名や疾患名を特定するものになっています。

 障害者や病者の社会参加を促進する立場からは、資格、免許の欠格条項を定める場合には、障害や病気を特定するのではなくて、その資格、免許に必要とされる機能に着目して定めなければならないとされています。

 すなわち、運転免許の交付を拒否する場合についても、安全な運転が可能な機能を有しているかどうかで判断するべきでありますが、改正案の規定では、一定の病気にかかっている者は一律に免許を拒否されることになりかねず、病気の症状の程度や服薬によって運転に支障がない者まで不当に拒否される危険が高いと言わざるを得ません。

 この点、民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合提出の道路交通法の一部を改正する法律案に対する修正案は、「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるもの」とすることによってこのような懸念を解消しており、欠格条項の見直しの趣旨に適していると評価をいたします。

 また、政令を定める前の意見聴取手続の創設も、現代社会において自動車免許を拒否された場合の不利益の大きさを考えていただきたい。それを考えれば、当然必要であると考えます。

 以上、内閣提出の道路交通法の一部を改正する法律案及び民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合提出の道路交通法の一部を改正する法律案に対する修正案に賛成する理由を申し述べ、討論を終わります。

横路委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

横路委員長 これより採決に入ります。

 道路交通法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、石毛えい子君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

横路委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

横路委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

横路委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、古賀正浩君外五名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。古賀正浩君。

古賀(正)委員 ただいま議題となりました自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    道路交通法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に配慮すべきである。

 一 障害者等に対する免許の拒否等の基準を定めるに当たっては、交通の安全と障害者等の社会参加が両立されるよう、障害者団体等の意見を十分聴取すること。

 一 酒酔い運転等悪質な違反行為に対する点数や免許の取消しの場合の欠格期間のあり方等についてさらに検討を行うとともに、それにより人を死傷させる行為の厳罰化について、関係行政機関の間において速やかに検討を行い、その法制化に向けて、所要の措置を講じること。

 一 近年ますます凶悪化が進む暴走族に対しては、その根絶に向け、警察による取締りを一層強化するとともに、関係行政機関にあっては、学校や地域社会等との連携を図りつつ、暴走族への加入防止、暴走族からの離脱指導、車両の違法改造の防止等その対策強化に取り組むこと。

 本案の趣旨につきましては、当委員会における質疑を通じて既に明らかになっていることと存じますので、説明は省略させていただきます。

 よろしく御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

横路委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

横路委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。村井国家公安委員会委員長。

村井国務大臣 政府といたしましては、審議経過における御意見並びにただいまの附帯決議の御趣旨を十分尊重いたしまして、交通安全対策の推進に万全の措置を講じてまいる所存でございます。

 今後とも、御指導、御鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

    ―――――――――――――

横路委員長 次に、内閣提出、自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律案について議事を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

横路委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

横路委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、小野晋也君外五名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山花郁夫君。

山花委員 ただいま議題となりました自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項につき適切な措置を講ずべきである。

 一 自動車運転代行業の業務の適正化のための啓発活動、適切な苦情処理等が行えるよう、業界団体の健全な育成を図ること。

 一 自動車運転代行業に係る料金の一層の透明化を図るため、その実態の把握を適切に行うとともに、利用者への周知を徹底するための措置を講ずること。

 一 未認定事業者による自動車運転代行類似行為、自動車運転代行業者によるタクシー類似行為等の違法行為の排除の強化を図ること。

 一 運転者に対する安全教育の充実を図るとともに、関係行政機関等が連携して、適正な運行の管理と労働条件の実現のために必要な指導を行うこと。

 一 本法の見直しに当たっては、社会経済状況や自動車運転代行業の業務の状況を的確に把握し、自動車運転代行業の定義を含め、検討を加えること。

 一 自動車運転代行業に係る第二種免許取得に要する負担を軽減するため経済的助成措置等の支援措置を検討すること。

 一 利用者保護の観点から、事故損害賠償保険引受機関である共済の適正な運営を図るための措置を講ずること。

 本案の趣旨につきましては、当委員会における質疑を通じて既に明らかになっていることと存じますので、説明は省略させていただきます。

 よろしく御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

横路委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

横路委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。村井国家公安委員会委員長。

村井国務大臣 政府といたしましては、審議経過における御意見並びにただいまの附帯決議の御趣旨を十分尊重いたしまして、交通安全対策の推進に万全の措置を講じてまいる所存でございます。

 今後とも、御指導、御鞭撻のほどをよろしくお願い申し上げます。

    ―――――――――――――

横路委員長 次に、細川律夫君外二名提出、危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案について議事を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

横路委員長 起立少数。よって、本案は否決されました。

 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

横路委員長 次に、第百五十回国会、太田誠一君外四名提出、特殊法人等改革基本法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。若松謙維君。

    ―――――――――――――

 特殊法人等改革基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

若松議員 ただいま議題となりました特殊法人等改革基本法案につきまして、提出者を代表し、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 これまで政府におきましては、累次の臨調答申等に基づき、行政改革の一環として、幾度か特殊法人等の整理及び合理化に取り組んでこられたところであると承知しておりますが、必ずしも十分な成果を上げてきたとは言えず、今なお特殊法人等は多くのさまざまな課題を抱えております。また、中央省庁等改革基本法においても、その趣旨を踏まえ、特殊法人の整理及び合理化を進めるべき旨が定められているところであります。

 以上のような状況を踏まえ、与党行財政改革推進協議会において、今般の行政改革の諸課題の一つとして、昨年七月以降、特殊法人等の改革の推進について集中的に検討を重ね、同年十月には「五年以内に集中的かつ抜本的な改革を行うための「特殊法人等改革基本法案(仮称)」を、議員立法により提出する」旨の合意に達し、このたび、その合意内容を具体化した本法律案を取りまとめ、提出するに至ったものであります。

 次に、本法律案の内容の概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、今次の中央省庁等改革の趣旨を踏まえ、特殊法人等の改革に関し、基本理念を定め、国の責務を明らかにし、及び特殊法人等整理合理化計画の策定について定めるとともに、特殊法人等改革推進本部を設置することにより、この法律の施行の日から平成十八年三月三十一日までの集中改革期間における特殊法人等の集中的かつ抜本的な改革を推進することを目的としております。

 この法律案の要点を申し上げますと、第一に、特殊法人七十七法人及び認可法人八十六法人の改革に当たっての基本理念を掲げております。すなわち、これらの特殊法人等の改革は、各特殊法人等の組織及び事業について、その事業の本来の目的の達成の程度、その事業を民間にゆだねることの適否、その事業の便益を直接または間接に受ける国民の範囲及び当該便益の内容の妥当性、その事業に要する費用と当該事業により国民が受ける便益との比較等の観点から、内外の社会経済情勢の変化を踏まえた抜本的な見直しを行い、国の事業との関連において合理的かつ適切な位置づけを与えることを基本として行われるものとしております。

 第二に、特殊法人等改革推進本部は、この法律の施行後一年をめどとして、基本理念にのっとり、各特殊法人等について、その事業及び組織形態のあり方を抜本的に見直し、その結果に基づき、特殊法人等整理合理化計画を定めなければならないこととしております。

 第三に、政府は、できる限り速やかに、遅くとも集中改革期間内に、特殊法人等整理合理化計画を実施するため必要な措置を講じなければならないこととしております。

 第四に、推進体制として、内閣に特殊法人等改革推進本部を設置することとし、内閣総理大臣を本部長とするなど、その組織、所掌事務等を規定しております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

横路委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十九分散会




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