第17号 平成13年6月13日(水曜日)
平成十三年六月十三日(水曜日)午前十時開議
出席委員
委員長 横路 孝弘君
理事 逢沢 一郎君 理事 小野 晋也君
理事 古賀 正浩君 理事 島 聡君
理事 中沢 健次君 理事 河合 正智君
理事 塩田 晋君
岩崎 忠夫君 梶山 弘志君
亀井 久興君 川崎 二郎君
倉田 雅年君 阪上 善秀君
実川 幸夫君 谷川 和穗君
近岡理一郎君 福井 照君
三ッ林隆志君 渡辺 具能君
渡辺 博道君 井上 和雄君
石毛えい子君 大畠 章宏君
佐々木秀典君 中川 正春君
平岡 秀夫君 細川 律夫君
山花 郁夫君 山元 勉君
久保 哲司君 松本 善明君
北川れん子君
…………………………………
国務大臣
(内閣官房長官)
(男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
国務大臣
(国家公安委員会委員長) 村井 仁君
国務大臣
(経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
国務大臣
(規制改革担当大臣) 石原 伸晃君
国務大臣
(科学技術政策担当大臣) 尾身 幸次君
内閣府副大臣 仲村 正治君
内閣府副大臣 松下 忠洋君
文部科学副大臣 青山 丘君
内閣府大臣政務官 阪上 善秀君
内閣府大臣政務官 渡辺 博道君
内閣府大臣政務官 仲道 俊哉君
政府特別補佐人
(内閣法制局長官) 津野 修君
政府参考人
(内閣府政策統括官) 小林 勇造君
政府参考人
(内閣府政策統括官) 坂 篤郎君
政府参考人
(警察庁長官) 田中 節夫君
政府参考人
(警察庁長官官房長) 石川 重明君
政府参考人
(警察庁生活安全局長) 黒澤 正和君
政府参考人
(警察庁刑事局長) 五十嵐忠行君
政府参考人
(警察庁交通局長) 坂東 自朗君
政府参考人
(法務省刑事局長) 古田 佑紀君
政府参考人
(文部科学省研究開発局長
) 今村 努君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青
少年局長) 遠藤純一郎君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局
障害保健福祉部長) 今田 寛睦君
政府参考人
(資源エネルギー庁電力・
ガス事業部長) 大井 篤君
内閣委員会専門員 新倉 紀一君
―――――――――――――
委員の異動
六月十三日
辞任 補欠選任
小西 哲君 梶山 弘志君
宮澤 喜一君 福井 照君
大畠 章宏君 中川 正春君
山花 郁夫君 平岡 秀夫君
山元 勉君 佐々木秀典君
太田 昭宏君 久保 哲司君
同日
辞任 補欠選任
梶山 弘志君 倉田 雅年君
福井 照君 宮澤 喜一君
佐々木秀典君 山元 勉君
中川 正春君 大畠 章宏君
平岡 秀夫君 山花 郁夫君
久保 哲司君 太田 昭宏君
同日
辞任 補欠選任
倉田 雅年君 小西 哲君
―――――――――――――
六月十三日
慰安婦問題の戦後責任を果たすための立法措置に関する請願(土井たか子君紹介)(第二五八〇号)
同(土井たか子君紹介)(第二六三一号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八八号)(参議院送付)
内閣の重要政策に関する件
栄典及び公式制度に関する件
男女共同参画社会の形成の促進に関する件
国民生活の安定及び向上に関する件
警察に関する件
――――◇―――――
○横路委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、参議院送付、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官田中節夫君、警察庁長官官房長石川重明君、警察庁生活安全局長黒澤正和君、警察庁刑事局長五十嵐忠行君、法務省刑事局長古田佑紀君、文部科学省スポーツ・青少年局長遠藤純一郎君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長今田寛睦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○横路委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細川律夫君。
○細川委員 おはようございます。民主党の細川でございます。
法案の質疑に入る前に、まず、この六月の八日に大阪教育大学附属の池田小学校で起きました児童殺傷事件について伺います。
全く信じられないような悲惨な事件であり、亡くなったお子さんの御両親の悲しみなどを思いますと、まさに断腸の思いでございます。亡くなられた八名の児童の皆さんに哀悼の意を表するとともに、御遺族の皆さんに心からのお悔やみを申し上げる次第でございます。また、傷害を受けられました児童や先生の一日も早い御回復をも祈るものでございます。
なぜこのような悲惨な惨事が起きたのか、二度とこのような事件が起きないようにするには一体どうしたらいいのか、国を挙げて真剣に考えていかなければならないというふうに思うところでございます。
まず、この事件の概要について簡単に御説明をお願いします。
○五十嵐政府参考人 本件は、平成十三年六月八日、午前十時十分ころから二十分ころまでの間、大阪府池田市内の小学校におきまして、刃物を持った男が教室内に乱入し、児童や教員を刃物で切りつけるなどして、八名が死亡、十五名が負傷したもので、男は現場において同小学校の教員によって逮捕されております。
大阪府警察では、所轄の池田警察署に捜査本部を設置いたしまして、被疑者の取り調べや犯行現場の見分、被害関係者からの事情聴取など、事件の全容解明のため徹底した捜査を現在行っているところであります。
○細川委員 こんな、悲しくもあり、想像を絶するような事件に遭いました子供たち、それから、お子さんを失ったり大けがをさせられたりしました御両親などにとってみれば、大変なショックでもあり、心に深い傷を負っていらっしゃるものだと思います。心的な外傷が大きければ大きいほど、それはいわゆるPTSD、心的外傷後ストレス障害というものにも結びつくわけでございます。
そこで、質問したいと思うんですけれども、この国会でもせんだって、犯罪被害者等給付金支給法が改正をされました。その新しく加わったところで、心のケアも含めて犯罪被害者を援助するという旨が規定をされたところでございます。まだ施行に至ってはおりませんけれども、警察庁あるいは大阪府警は、この事件の被害者などがこうむりました精神的な被害、これに対してどういうような精神的な支援を行うのか、どういう対策をとっているのか、また、捜査の上でもいわゆる二次的な被害を与えることがないよう、どのような配慮をしながらきちんと捜査をされておるのか、そこを説明してください。
○石川政府参考人 お答え申し上げます。
大阪府警察におきましては、事件を認知した後、直ちに警察本部の被害者対策官等が現場に赴きまして、本部の総務部長の指揮のもとに、臨床心理士でございますとかあるいは学校心理士といったような資格を有する警察職員を含みます総勢五十六名体制の特別被害者支援班というものを組織いたしまして、また、被害者の中には兵庫県居住の方もおられるということで、兵庫県警察とも連携をいたしまして、精神的な面を初めとしたさまざまの支援活動を行っているところでございます。この支援班につきましては、児童ということもございますので、女性警察官を過半数以上そこに活動させている、こういうふうに承知をいたしております。
具体的に申しますと、被害児童あるいは御遺族の皆様に対応する被害者支援要員という者を個別に指定いたしまして、要望や困り事の把握に努めるとともに、被害者対策用車両というのがございますが、これを活用して、病院とかあるいは自宅への付き添い、あるいは関係機関等との調整、また葬儀、あるいはマスコミの取材活動に対応するといったようなことで心労もおありのようでございます、そういうものに配慮した自宅等への警察官の配置を行っておりますほか、小学校の中に設置をされましたメンタルサポートチームというものに参加をいたしまして、関係機関、団体と連携のもとに、被害児童等の精神的被害の軽減のための支援活動など、できる限りの支援を今行っているところでございます。
今、二次的な被害のことについても御質問がございましたけれども、今後、児童等からの本格的な事情聴取ということも想定されるわけでございますが、その際には、児童や保護者等の心情に十分配慮した日時とかあるいは場所を選定する、あるいは先ほど申しました被害者支援要員を付き添わせるといったような措置をとって、そういった点についても十分配慮した捜査が行われるものというふうに承知をいたしております。
警察といたしましては、こうした活動を通じまして、関係機関、団体とも連携しながら、被害者、御遺族等に対してできる限りの精神的支援を行っていく所存でございます。
○細川委員 関係機関とも連携をとりながら、いろいろな精神的な支援もしていきたいということでございます。
それでは、文部科学省にお聞きをいたします。これは学校の中で起こった事件でありますけれども、所轄の官庁として対策本部を設けて子供の安全確保に向けて努力をしているというようなことも報道もされておりまして、一生懸命やっておられると思いますけれども、特に子供の心的な問題、心の問題のケア、あるいは遺族といいますか、保護者の方たちの心のケアについてはどういうようなことをしておるんでしょうか。
○遠藤政府参考人 今回の事件の発生を受けまして、文部科学省といたしまして、児童、保護者、教員の心のケアの対応が重要、そういう観点で大阪教育大学に早急にその態勢を整えるよう指導をしたところでございます。
学校の方では、大阪教育大学を中心に、大阪大学、大阪府、兵庫県、大阪府警、厚生労働省、大阪府臨床心理士会などの協力を得ましてメンタルケア支援チームを、これは五十五名で結成されておりますけれども、児童等の心のケアに取り組んでいるところでございます。
また、児童の心の状況を把握するために、事件発生当日の六月八日に、取り急ぎ児童の状況につきまして全家庭に電話で聴取をするとともに、六月十一日からは、カウンセラーと教員が一組となりまして全児童の家庭を訪問いたしまして、児童及び保護者の状況を聴取するとともに、必要なカウンセリングを行っているところでございます。
それから、事件の翌日の六月九日には保護者説明会を開催いたしまして、児童等の心のケアについてのパンフレットを配付し、説明するとともに、緊急の場合にも適切に対応できるように、二十四時間体制のメンタルサポートホットラインを設置しまして相談に応じているということでございます。
このように、これまでも学校側の対応を全面的に支援してきておりますが、今後とも、学校と一体となりまして対応に万全を期してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
○細川委員 ぜひ、大変な精神的なショックを受けておられるお子さんやあるいは保護者の皆さんに、強力な支援のもとにひとつ御努力をお願いしたいと思います。
けさの新聞などによりますと、何か、ある小学校では、一年生のところに突然、警察官が不審者を装って訓練をしたというような報道なども載っておりますけれども、こういうことが児童などに精神的なショックを物すごく与えることをわかってこういうことがされているのか、ちょっと私は疑問に思うのです。
質問通告にないのですけれども、これはどういうことなんですかね、文部省。
○遠藤政府参考人 本日の読売新聞に、岩手県の千厩町立千厩小学校で、不審者に変装した警察署員が一年生の教室に乱入するといったような訓練を行った、こういう記事が掲載されております。
この記事によりますと、訓練は学校側が警察署に依頼して、朝の全校集会で児童に対し、不審者を見たら大声を上げて逃げ出すようにという話を警察署員からしてもらって、その上で教室に侵入し、一分ほどで訓練を終了した、こういうことでございます。
現在、岩手県の教育委員会を通じまして、訓練がどのような状況で行われたのか、今調査をしておるところでございますけれども、大変痛ましい衝撃的な事件の直後であること、しかもその対象が小学校一年生の児童である、こういうことでございますので、十分な配慮がなされて行われたかどうかということにつきまして、十分状況を教育委員会の方から聴取したい、こう考えております。
○細川委員 これは本当に、この事件で全国の児童なども大変ショックを受けて不安に思っていると思うのです。そしてまた父兄といいますか保護者も、これからどういうふうにと非常に心配をしていろいろと悩んでいる。こういうときにこういう訓練をするというのはどうも私は納得いきません。どうぞ、よくこれを検討して、もちろん再発防止はもう絶対にやらなければいけませんけれども、その防止のためにどういう方法がいいのかということを、もっときちんと指導もしながら確実な形でやっていただきたいというふうに思います。
そこで、別の観点からまた質問しますけれども、報道によりますと、この宅間守という被疑者は、この事件を起こす前にも数々の暴行を働いていたという話でございます。二年前にも、技術員をしていた小学校で、精神安定剤を入れたお茶を教員に飲ませて逮捕された後、これは不起訴処分ということになりまして措置入院となっております。そして、その四十日後に措置入院が解かれまして退院したということでございます。
今回の事件が精神障害に起因するものと即断をすることは慎むべきものでありまして、これらの議論が精神障害者の社会参加というものを阻むようなことがあってはなりませんけれども、二度とこういう事件が起こらないためには、現行制度について改善の可能性があれば、これはやはりきちっとその改善を追求しなければいけないというふうに思います。
そこで、厚生労働省に伺いますけれども、措置入院とその解除の要件はどういうふうになっているか、説明してください。
○今田政府参考人 措置入院につきましては、まず、都道府県知事が、精神保健指定医の診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であるということを明確にさせなければなりません。かつ、医療及び保護のために入院をさせなければその精神障害のために自身を傷つけ、または他人に害を及ぼすと認めたときにこれを行うことができる、このようにされております。
したがいまして、その解除につきましても、都道府県知事が、精神保健指定医の診察を経て、入院の継続をしなくてもその障害のために自身を傷つけ、または他人に害を及ぼすおそれがない、こう認められるに至ったとき、このときは直ちにその者を退院させなければならない、このような規定になっております。
○細川委員 今の答弁によりますと、精神障害によりまして犯罪が行われて、心神喪失などで無罪とかあるいは不起訴になったような場合、これは警察官の通報によって措置入院というふうになるわけなんですけれども、最終的には、精神病院などが自傷他害のおそれがないというふうに判断したときは、知事の権限で措置入院を解除しなければならない、こういうことですね。
そうしますと、医師は、先ほど説明があった法律は精神保健・精神障害者福祉法の中なのですけれども、医者の判断というのはあくまでも医学的見地で判断をするものでありまして、犯罪の再発可能性を判断するものではない、こういうことになるわけですね。つまり、措置入院の制度というものは再発防止の視点というものはもともとないというふうに言えると思います。
そこで、医学的な判断で自傷他害のおそれがないという判断で即措置入院が解除され、しかし、その後またこういうような問題が、精神障害者そのものによって犯罪が起こされた場合には、再発防止の観点からは一切検討せずに、医学的な見地から検討する、こういう法律になっていて、そのとおりにやったとしても、社会的には医者の判断が悪かったのではないかというように見られるのではないかなと私は思います。
そこで、今、その制度というのは、精神障害者によって犯罪が行われ、そして例えば不起訴になって検察官が通報する。通報した段階で司法的なところは全部そこで遮断されて一切終わるわけですね。後は医療の世界に入ってしまうわけですね。そこに問題があるのではないかなというふうに私は思います。
そこで、通報した後も例えば司法がもっとかかわっていくとか、そういうような医療以外の分野も含めた別の枠組みをつくる必要があるのではないか。しかし、そこで決して障害者への差別を助長するような制度をやってはいかぬと思いますけれども、司法が入るような形で何らかの仕組みをつくらなきゃいかぬじゃないかというふうに思います。
それから、もう一つの問題は、やはり措置入院を解いた後に、その人が社会復帰できればいいのですけれども、仮に社会復帰がなかなか思うようにいかないような場合、そういう人のためのきちんとしたプログラムというものが用意されているのかどうか。支援のためのプログラムが用意されていなければいけないのじゃないか。それがどうも十分じゃない。そこのあたりが大変重要だというふうに思います。
そこで、法務省に尋ねますけれども、こういう重大な犯罪を犯した精神障害者への対策について、今後どういうような方向で議論をしていくのか、説明をしていただきたいと思います。
○古田政府参考人 ただいまお尋ねの問題につきましては、私どもとしては、まず原点として、精神障害によって犯罪行為に至る、こういうのは、被害者の方にとっても大変お気の毒というか、大変な事態であるとともに、そういう事件を起こすに至った精神障害者の方にとっても不幸なことだと考えているわけです。したがいまして、こういう問題につきましては、精神障害に起因するということであるならば、まずもって精神医療が早期に適切に確保されるということが非常に重要なことであろうと考えているわけです。
ところで、不幸にして御指摘のような行為に至った場合、先ほど厚生御当局からの御説明もありましたけれども、現在、心神喪失等ということであれば、自傷他害、この他害行為の中には当然犯罪行為というのも含むわけですけれども、そのおそれがあるときには、措置入院をしてそこで治療を施すということになっているわけでございます。
しかしながら、一方で、御指摘のように犯罪行為、重大な犯罪行為ということになりますと、これは社会の関心も非常に高いことになりますし、そういうようなことをした方がどういう仕組み、どういうことでその後の処遇が決められ、あるいは実際にどういう処遇を受けるかということについて、大きな関心が寄せられるわけでございます。
そういうことを考えますと、入退院の判断などにつきまして、医療的判断に加えて、やはり何らかの法的な判断、こういうようなものをさらに加えて考えるということを検討すべきものではなかろうかと考えております。
また、いわば退院後どういうふうにするのかという問題も、これも現在、精神医療行政の中で訪問指導でありますとかそういうシステムもありますけれども、そういうことだけで足りるのかというふうな問題もございまして、これはいろいろな角度から検討しなければならない問題をたくさん含んでおりますが、そういうことについて、厚生御当局とも十分相談しながら今実は検討を進めているという最中でございます。
○細川委員 大変難しい問題ではございますけれども、犯罪の再発防止と精神障害者の人権への配慮、これが両立する方向で今後とも議論を深めて、いい形の方向を見出していただきたいというふうに思います。
そこで、最後に大臣にお伺いいたしますけれども、この事件に関して大臣としてどういう御感想をお持ちになったのか、また、今ここでもちょっと議論をしたのですけれども、そういう議論を踏まえながら今後基本的にどういうような対策をとろうとお考えになっておられるのか、お願いいたしたいと思います。
○村井国務大臣 このたびの事件でございますが、先般この委員会でもちょっと発言をさせていただきましたように、白昼、小学校で、本当に常識で考えることのできない悲惨な事件が起きたということでございまして、私も大変衝撃を受けておりますとともに、被害者の御家族、そしてまた被害に遭われた方の無念さ、いろいろ考えますと、本当に改めて犯人に対して強い憤りの念を覚える次第でございます。そして、亡くなられた方の御冥福をお祈り申し上げますとともに、傷を受けられた方々の一日も早い御回復を祈念する次第でございます。
この種の事件、国民に大変大きな衝撃と不安を与えている。これは小学校というだけではございませんで、ある意味では社会全般に非常な不安を与えているという意味で、私ども、警察を管理する立場といたしましては、事件の全容解明ということがまず何よりも大事でございまして、そのために徹底した捜査を行い、かつ、先ほどもちょっと官房長からお答えしましたが、心身に傷を負った被害者の方々への対策にも遺漏なきを期してまいりたい、そんなふうに思っているところでございます。
この種事件の発生の防止を図るために、警らあるいは警戒活動の強化、それから関係機関、団体との緊密な連携、こういったことは当然のことでございますが、しっかりとるように、所轄の警察庁を通じまして各警察本部などに指示をしてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
あわせまして、ただいま委員御指摘の、いわゆる触法精神障害者というような言い方がよろしゅうございましょうか、その問題につきましてどうするかということは、実はこの事案そのものがどういう事案かということ自体、いろいろ報道はされておりますけれども、まだ明らかではない段階でございますから、これと関連させて申し上げることは避けさせていただきますが、ただ、ただいま委員御指摘の、法務省の刑事局長にお尋ねのことでございますが、従来の医療のサイドでのいろいろなアプローチの仕方、それからかつていろいろ問題になりました、議論がございましたような法的な措置等、いろいろ議論があるわけでございます。
この間で、一体どのあたりで国民の合意というものが形成できるか。諸外国のさまざまな事例、あるいは、こう言ってはなんでございますが、心に病をお持ちの人々に対しましてどういうような社会的なアプローチをするのかという大きな問題を含めまして、国会でのさまざまな御議論をもちょうだいしながら、また社会全体で、識者と呼ばれる方々のいろいろな御見解もちょうだいしながら詰めていかなければならない大きな課題だと思っております。と同時に、いろいろな意味で急がなければならない課題だとも考えております。
今後ともよろしく御指導のほどお願い申し上げます。
○細川委員 私、犯罪の再発防止、それから精神障害者への人権の配慮、この二つが両立できるような形でひとつ議論を深めていただきたい、その中の対策をおとりいただきたいと心からお願いをする次第でございます。
そこで、風適法の改正案についてお伺いいたします。参議院の方でも議論がたくさんあったようでございますから、特に重要な事柄について質問したいと思います。
まず最初は、年齢確認の問題でございます。
現行では、特に女性はだれでも簡単にテレホンクラブに電話をすることが可能なために、結果として児童買春の温床になっているわけでございます。したがって、この改正案の成否は、きちんと年齢確認ができるかどうかにかかっていると言ってよいと思います。この改正案が成立をし、施行されれば、業者は、男女を問わず、また有料無料を問わず、本人の年齢確認をしなければならないということになります。
ところが、果たしてこれが実効のある形で行われるのかどうなのかということになりますと、甚だ疑問でありまして、もしこれを警察の方が強引にやろうとすると、事はまた人権侵害に結びつきやすいというようなことで、難しいのではないかと思います。
そこで、年齢が十八歳以上であるという確認について、その具体的な方法とその実効性についてどういうふうに考えておられるか、お聞かせください。
○黒澤政府参考人 年齢確認の問題でございますが、委員おっしゃられるように難しい問題かもわかりません。
これの具体的な方法でございますけれども、今検討いたしておりますのは、対面式と非対面式と両方あるわけでございますけれども、例えば、非対面式の場合ですが、運転免許証でありますとか、そういった身分を証明することができる書類の写しというものをファクシミリにより受信をする。あるいはまた、十八歳未満の者が通常できない方法により料金を支払う旨の同意を受けること。例えばクレジットカード、これは十八歳以上の者が基本的に取得ができますので、そういったクレジットカードなどで料金を支払う旨の同意を受ける。
それから、現在もこういう方法で行われている営業があるわけでございます。電話をかける際に、ID、パスワードを付与しまして、そのID、パスワードというものをプッシュホンで入れないと電話がつながらない、こういう仕組みができておるわけでございますけれども、このID、パスワードを付与する際に、これはテレホンクラブ営業者、それからその委託を受けた者、例えばビデオレンタル店、こういったところが考えられるかと思いますが、相手方が対面しまして十八歳以上であることが一見して明らかだ、そういう場合はそれでいいと思いますけれども、十八歳以上であることを確認する、十八歳以上かどうかわからない、そういう人について確認をする。これも対面と非対面とあるわけなんですが、それで十八歳以上だということが確認できたときにID、パスワードを付与する。そして、電話をかける際にはこのID、パスワードを入れないと取り次ぎをしない、こういったような方法。いろいろな方法を検討いたしておるところでございます。
また、今後の技術の進展によりまして、電子的な方法による技術というものも考えられるかと思いますが、現時点ではそのようなことを考えております。
そして、実効性についてのお尋ねでございますが、このような仕組みをつくることによりまして、やはり、テレホンクラブを利用する、特に興味本位で利用する女子児童に対する相当程度の抑止効果が期待できるのではなかろうかと考えております。
そしてまた、テレホンクラブの業者が年齢確認措置をしっかりやっているかどうか、そういったことを把握することは、私どもの日常の警察活動で比較的容易に把握ができるかと思います。したがいまして、しっかり年齢確認をしていないということであれば、そういった業者に対して年齢確認をするよう指示をする、そしてそれを聞かない場合には営業停止をかける、営業禁止命令をかける、そういった行政処分をかけていく、こういうようなことで機動的かつ実効的に営業方法の是正を促すことが可能であると考えておるところでございます。
このようなことが相まちまして実効性を期せるものと考えておるところでございます。
○細川委員 聞いておりましても、十八歳未満の確認というのはなかなかそう簡単にはいかないんじゃないか。また実効性も、それがきちんと保てるかどうか、何となく御説明も自信がないような、余り自信を持って言っておられるんじゃないんじゃないかというような感じも受けたのですが、私自身はこの実効性について甚だ疑問でございます。しかし、今御説明がありましたような形で、ではしっかり年齢が確認をできたというふうに考えますと、それでは、テレホンクラブの規制の方についてのそういうことでは実効性があって、それがうまくいくというふうに思いますけれども、ところが、今までテレクラを利用していた少女たちが、規制のかかっていない出会い系サイトというものの方に今度はずっと流れていくのではないかという危惧がございます。
そこで、出会い系サイトについてでありますけれども、確かに今は児童買春への契機ということは大きくないようでございますけれども、店舗を持たないテレクラと大変似ているわけですね。そうしますと、出会い系サイトの方がさらに児童買春の契機として大きな意味を持ってくるのではないか。今でも出会い系サイトは、別のいわゆる重要犯罪なんか、大変な犯罪が起こっているわけなんです。
そこでお聞きしますけれども、もちろん、一般的な自由の制限につながりかねない問題だから、拙速にはできないと思いますけれども、今回の法案がうまくいけばいくほどそういう出会い系サイトの方に移っていくのではないか。こういうことについてどういうふうに取り組んでいくかという問題があろうかと思いますけれども、これについてはいかがでしょうか。
○黒澤政府参考人 委員御指摘のような懸念はあろうかと思います。このテレホンクラブ営業につきましては、委員も御承知かと思いますが、平成十二年中でございますけれども、児童買春事件の約五割がテレホンクラブ利用にかかわるものでありまして、児童買春の温床となっている実態が存在をいたしまして、社会的にも、女子少年の援助交際を誘発、助長する悪質な営業であるという認識が定着していると認められるわけですが、いわゆる出会い系サイトにつきましては、それが現時点で児童買春の温床となっているとまでは必ずしも言えない。これはあくまでも事件の検挙件数で申し上げますと、平成十二年中に九百四件の児童買春事件を検挙いたしておりますけれども、出会い系サイトにかかわるものは三十九件でございまして、今回の改正案では対象とはしなかったわけでございます。
今後、出会い系サイトにつきまして、いろいろな問題があるわけでございますけれども、児童買春の温床という点について申しますならば十分こういったことが懸念される、十分にあり得ると考えられますことから、その実態の推移につきましては注視をいたしまして、必要な対策について検討を進めてまいりたいと存じます。
○細川委員 その必要な対策というのをお聞きしたかったんですが、もう時間もございませんので、最後に簡単に質問しておきますが、広告宣伝について伺います。
今までティッシュなどの電話番号が入ったようなテレクラの宣伝に対しては多くの人がちょっとまゆをひそめていたのですが、この法改正で十八歳未満に渡るような宣伝の方法が禁止されることになるのですけれども、駅なんかでティッシュを配っていますね、こういうものを十八歳以上の人たちだけに配るというようなことが本当に守られるのかどうなのか。この実効性を確保するために警察庁はどういうようなことをお考えになっているのか、簡単にお答えいただいて、質問を終わります。
○黒澤政府参考人 広告宣伝、ビラの問題でございますけれども、これは直接罰則を適用していくということではなくて、公安委員会による営業者に対する指示処分により対応することとされているわけですが、やはりこういった指示処分によりまして、タイミングよく、時期を逸することなく、速やかにこうした広告宣伝規制の営業の是正を図ることが可能となると考えます。
また、営業者がこういった指示に従わない場合には営業の停止を命ずることができますので、営業停止命令は、営業者にとりましては一定の期間収入の道を閉ざされるという相当重い処分でありますので、大変効果があるのではなかろうか。また、命令に従わない場合には罰則の対象となります。
それから、無店舗型が大変ふえておるのが昨今の一つの特徴でございますけれども、この無店舗型の宣伝広告違反につきましては、指示処分を行うべき営業者の所在がわからない、そういった事態が生じ得るわけでございますけれども、こういった場合におきまして、一定の場合には警察職員みずからがこの違反広告物を除却することができる、こういうような法制にいたしておるところでございます。
こういった措置の的確な運用によりまして、テレホンクラブ営業者の広告宣伝に対しては十分対処が可能であると考えております。
○細川委員 終わります。ありがとうございました。
○横路委員長 塩田晋君。
○塩田委員 村井国家公安委員長にお伺いいたします。
今回のこの法案を提案されました趣旨でございますけれども、その内容について細かくまたお聞きしたいのですが、大臣にお伺いしたいと思いますのは、既に東京とか京都におきまして条例でできている内容を全国的に法律で規制するというような中身のものが大きい部分でございますね。
実際これを警察が取り締まる場合、やはり都道府県警が行うわけでございますが、また都道府県も、四十七都道府県それぞれ、大都市の東京から六十万ぐらいの人口の小さな県もあるわけで、非常に地域的な差、事情が変わっておるのじゃないかと思うのです。実際事に当たられるのは都道府県警でございますから、条例でそれぞれの地域に見合ったものを適宜適切に制定していったらどうかという考えもあると思うのです。国全体としてこの部分だけは早急に手を打たなければならぬということで今回の法案が出てきたと思うのですが、このことにつきまして村井大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○村井国務大臣 いろいろございますのであれですが、例えばテレクラにつきまして、これは平成七年に、岐阜県で初めて青少年保護育成条例の改正によりまして規制対象とされた。それ以来現在まで、すべての都道府県において一応整備はされているということだと思っております。
ただ、よく見てみますと、青少年に利用されることを抑止する、禁止するということは、東京と京都、この二都府だけにとどまっておりまして、それから、利用者の年齢確認を義務づけているというのは皆無でございましたり、女子児童の利用を防止するという観点からの規制としましては実効性に乏しい。そうなりますと、最近の社会的事象を見ておりますと大変憂慮すべき状況でございまして、また、児童買春の撲滅に向けまして国内外の議論というものが大変高まりを見せているような状況を考えますと、やはりこれは法律レベルで対応した方がいいような環境になってきたのではないか、私どもとしてはそんな認識に基づきまして御提案を申し上げている、このように御理解をいただければありがたいと存じます。
そのほかまだいろいろございますけれども、大づかみなところでそのようなお答えを申し上げさせていただきます。
○塩田委員 ありがとうございました。
村井大臣におかれましても、全国各地で突発的な大変な事件があちこち起こっておりますし、日夜大変御苦労いただいていることと思いますが、なお一層御健闘をお祈りいたします。
そこで、今回出されております風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する改正法案につきまして具体的にお伺いいたします。生活安全局長、お願いします。
テレホンクラブ営業につきまして、性風俗関連特殊営業の届け出の義務づけがなされておりますが、営業禁止区域内での広告宣伝に対する規制につきまして、その区域内では規制がありますけれども、区域を超えての雑誌だとかインターネットを用いたテレホンクラブ営業の広告宣伝につきまして規制が及ばないのではないかと思います。その規制の必要性はどのようにお考えか、お伺いいたします。
○黒澤政府参考人 今回の改正案におきましては、ビラやチラシの頒布、人の住居への差し入れを禁止しているところでございますが、雑誌やインターネットを用いた広告の規制は盛り込んでおりません。
この考え方でございますが、清浄な風俗環境の保持と少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止、これが風適法の二大目的でございますが、この目的の達成と表現の自由等とを比較考量し、今回規制の対象となります少年でありますとか、それからそれを望まない人の目に触れるような方法とは異なりまして、雑誌やインターネットの場合には、見ようとする者の目に触れる、そういう手段でございまして、こういった雑誌やインターネットを用いた広告について、現状における規制の必要性を考慮したものでございます。
しかしながら、委員御指摘のとおり、雑誌やインターネットを用いた広告につきましても、特に少年の健全育成の観点からは問題があると考えておりまして、情勢の推移を見守りつつ、今後の検討課題としてどのような対策が可能であるか勉強してまいりたいと存じます。
なお、広告制限区域以外、県下全域におきまして、十八歳未満の者に対しビラ等を頒布する、それから十八歳未満の者が居住する住居にビラ等を配布する、こういったことは禁止をされておるところでございます。
○塩田委員 次に、十八歳以上と未満、これが規制等の際に出てくるわけでございますが、従来も十八歳の確認をどうしておられるか。具体的に、例えばどんな方法で確認しているのか。本人がうそをついた場合、それはちゃんとその裏づけができるのか。もう現に行われておりますから、そういう経験の上から、どういう事例があるか具体的に御説明を願いたいと思います。
○黒澤政府参考人 先ほども申し上げたわけでございますけれども、例えば、運転免許証その他身分を証明するそういったものを対面式であれば提示をする。あるいは、私ぐらいの年齢であれば、だれが見たって十八以上だと思いますので、それもあるいは要らないのかもしれませんけれども、そういった身分証明書を提示する。非対面で、電話であれば、先ほど申し上げましたようにファクシミリで送信をさせる。それから、先ほども申し上げましたが、十八歳以上でないとクレジットカードが入手できませんので、これは料金を払うということが前提になりますけれども、このクレジットカードでお金を払いますと言えば、それは十八歳以上の者しか持っておりませんので、十八歳以上の者がやっておるということで確認ができるわけでございます。
これまた繰り返しで恐縮でございますけれども、ID、パスワード、これを付与しまして、このID、パスワードをプッシュホンで入れないとテレホンクラブの電話がつながらない、お話ができない、こういう仕組みが現在もう既に行われておりまして、このID、パスワードを付与する際に、先ほど申し上げましたように、直接確認をする、あるいは非対面式であれば先ほど申し上げましたような方法で確認をする、そしてID、パスワードをもらった者が電話をかけない限りは取り次がない、こういったようなことで行われておるということでございまして、現在検討をいたしておりますのもこういったことでございます。
また、映像送信型の性風俗特殊営業、こういった事案の実例なども参考にしながら、現在検討をいたしておるところでございます。
○塩田委員 わかりました。
次に、情報化の進展は余りにも急テンポに進んでおりますから、法規あるいは条例でもって規制すればするほど、その面では規制はききますけれども、アングラ化していくというか、次から次の新しい情報メディアを使ってのその分野にどんどん逃げ込んでいくというか拡大していくというか、そういう傾向が出ております。そういったいわゆるアングラ化という現象が考えられますが、これに対する対策はどのように考えておられますか、お伺いいたします。
○黒澤政府参考人 ただいまお尋ねのアングラ化でございますけれども、テレホンクラブなど性風俗関連特殊営業につきましては、何せ性を売り物にする営業でございます。アングラ化に対しましてどういうふうに対応していくか。
こういった営業が仮に届け出がされずに行われる、そういう場合につきまして、やはりお客さんがいないと商売ができないわけでございますので、広告宣伝行為が必ずどこかで行われておるわけでございまして、そういった実態把握に努める。これは、いろいろな警察活動があろうかと思いますけれども、実態把握に努めまして、もちろん、アングラといいますか、届け出しないでやっている場合には無届け営業ということにもなるでしょうし、さらに、いろいろな法令違反、刑法もそうでしょうし、あるいは売春防止法もあるでしょうし、いろいろな刑罰法令に触れる行為を営業を営む過程で行っている、そういった行為に対しましては、各種法令を積極的に適用いたしまして検挙、取り締まりを進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
なお、テレホンクラブ営業について申し上げますれば、広告宣伝が不可欠でございますので、実態の把握というものは私ども確実にできる、こういうふうに考えておるところでございます。
○塩田委員 出会い系サイトにつきましては、非常に有効な手段であるということで、正常に利用されている場合は非常にいいことだと思うんですが、この問題でも、社会現象として、出会い系サイトの方に規制が今余りないとすれば比重が移っていくんじゃないかという懸念もありますし、また、現に、ある高裁の判事自体がこれを利用して重大な問題になっているということもあるわけですが、今後、そういう出会い系サイトについての対策が必要だと思います。まだまだウエートは少ないと思うんですけれども、今後広がる可能性があります。これについて十分な対策、方策を考えていただきたいと思います。
それから、こういった情報化の急激なテンポでの進展によってグローバル化していると思うんです。諸外国はこの種の規制なり対策はどうしているか、主なところで結構ですから、諸外国の状況。それから、これがインターネット等を通じまして国際化していますから、我が国はそういった国際化の中での対策をどういうふうに今後考えて対策していかれるのか。また、国際的な協力というものが必要だと思うんですが、それについて、情報、わかっている範囲におきまして御説明いただきたいと思います。
○黒澤政府参考人 テレホンクラブに対する諸外国の規制の状況でございますけれども、アジア諸国、少なくとも台湾や韓国におきましては、我が国のテレホンクラブとほぼ同様の営業が存在をいたしますが、これらの営業を規制する法令は存在しないと承知をいたしております。
なお、韓国におきましては、日本と同様に、テレホンクラブを利用した児童買春が問題となっておると聞き及んでおるところでございます。
それから、インターネット上の有害情報等への対策を講じるに当たっては、国際的な協力が不可欠でございます。委員御指摘のとおりでございます。現在、インターネット上のわいせつ物、児童ポルノを初めとする有害情報につきましては、刑法でありますとか児童買春、児童ポルノ法、関係法令の適用による厳正な取り締まりを行っておるところでございますが、こういった取り締まりとともに、やはりインターネット上の有害情報に関する広報啓発等の施策を推進する、そしてまた諸外国の関係機関との協力、これが絶対不可欠でございます。
警察庁におきましては、国際的な協力体制の構築に向けた取り組みを強化いたしておるところでございます。各種の国際会議に職員を派遣いたしまして、関係省庁とも連携をとりながら、国際的な取り組み体制の構築に向けまして、諸外国の政府関係者等との意見交換、情報交換を行うなどしてきておるところでございます。
また、ことしの十二月でございますけれども、横浜において児童の商業的性的搾取に反対する世界会議が開催されることになっておりまして、警察庁といたしましても、主催国の一員として、各国から参加する多数の政府関係者、NGO等との積極的な意見交換を予定いたしておるところでございます。
今後とも、あらゆる機会を通じまして国際的な協力体制の構築に努め、インターネット上の有害情報等に対する総合的かつ実効ある対策の推進に努めてまいりたいと考えております。
○塩田委員 最後に村井大臣にお伺いします。
この種の問題はあちこちに、気がつかないところへどんどん発展していくというか浸透していくわけです。情報化が進展している中で、本当にイタチごっこのような形で、やはり後始末じゃなしにある程度先を見てこれを規制していくということも必要だと思うんですが、今後、この問題につきまして、大臣といたしましてどのような方針、決意で当たられるかお伺いいたしまして、質問を終わります。
○村井国務大臣 まずは、今回、法改正の御審議をお願い申し上げておりますが、お認めいただきまして成立いたしました暁には、私ども、警察に対しましてよくこの趣旨を徹底いたしましてその適正な運用に努めてまいる、これはもう当然のことでございますが、あわせまして、広く国民一般、さらに、いわゆる関係業界と申しましょうか、これにもその周知を図るように努力をしてまいりたい、これがまず第一の点でございます。
さらに、この種の問題でございますけれども、この取り組み、これは私ども強化してまいるということを申し上げなきゃいけないんでございますが、同時に、あわせまして、表現の自由とかいうような問題もかたがたございますので、なかなか難しい問題ではございますけれども、性的情報のはんらんなどの社会環境の悪化、あるいは性の商品化についての、何と申しましょうか、一種の日本という国における規範意識の低下、こういうような問題に一体どう取り組んでいったらいいのか。私は、どちらかというと表現の自由というのは本当に大事なことだと思うんでございますけれども、そういうものを受けとめる社会の仕組みというものが何か少し脆弱になっているような感想が率直に言ってございまして、このあたりのところをどうしていったらいいのか。
これはもう役所といいますか、関係省庁がと申しますより、まさに国会でも御議論をちょうだいしながらいろいろお知恵をいただいてまいりたい。とても警察だけでやれるような話ではないということは十分に自覚しているつもりでございますが、今後ともひとつ、いろいろな意味で当委員会を中心に御指導を賜りたいとお願いを改めて申し上げる次第でございます。
○塩田委員 ありがとうございました。
○横路委員長 松本善明君。
○松本(善)委員 今回の改正は、児童買春の温床になっているテレホンクラブの規制と十八歳未満の利用制限でありますが、児童買春事件検挙数の半分以上がテレホンクラブ利用者という現状から見て必要なものと考えております。
テレホンクラブは全国に約三千百数十の営業所があると言われていますが、最近は全国展開している店もあると言われています。そういう実態をどういうふうに把握しているか、御報告をいただきたいと思います。
○黒澤政府参考人 テレホンクラブ、各県、御案内のとおり条例を制定しておりますが、その条例によりまして営業所等の届け出がございます。
届け出数につきましては、平成十二年末の数字でございますが、店舗を設けて営む店舗型テレホンクラブが八百九十五、店舗を設けないで営む無店舗型テレホンクラブが二千二百五十六軒となっておるところでございます。
これらの条例による規制の内容につきましては都道府県によりばらつきがございますが、おおむね、届け出の義務づけ、営業禁止区域の設定、広告宣伝の方法に関する規制のほか、青少年を営業所へ立ち入らせることの禁止等が規定されておるわけでございます。
平成十二年中にテレホンクラブ規制条例違反により検挙された人員は十九人でございまして、内訳を申し上げますと、無届け営業、これは営業禁止区域における営業を含めましてでございますが、十人、広告宣伝規制違反が四人、利用カードの自動販売機への収納禁止違反が三人などとなっておるところでございます。
○松本(善)委員 テレホンクラブの営業所の数はこの三年で三百件近くふえているけれども、それぞれ競争も激しくなっているようで、私の地元の仙台の商店街なんかでも、テレホンクラブのチラシやポスターで困って、捕まえてもまた出てきてすぐやるという常習犯で手の打ちようがないというようなことであります。
各都道府県には、いわゆるピンクビラなどの広告宣伝物の配布を禁止する条例がありますが、この条例による全国の検挙人員を見ますと、九八年百六人、九九年四十九人、二〇〇〇年十九人と著しく検挙者が減っている。店はふえているけれども検挙は減っているというのは、これはどういうことなんですか。
○黒澤政府参考人 委員御指摘のとおり、店はふえておる、特に無店舗型がふえておるのが昨今の特徴でございますけれども、それに比べまして、検挙状況を見ますと、平成十年は二十人でしたが、十一年五人、十二年は一人と減少いたしております。
いろいろな背景、理由があるかと思いますが、平成七年以降に制定されたこれらの条例がテレホンクラブ営業については相当浸透したことによって、青少年に対する広告宣伝物配布等の違反行為を行わないよう配意するようになってきたためではないかと考えられるわけでございます。
なお、この問題を考えるにつきましては、テレクラ以外の営業のビラといいますか、ありていに言えば派遣型売春でありますとかデートクラブと称して売春を行う、そういったようなビラのたぐいがたくさん町にはんらんをしておる。これは必ずしもテレクラというものではございません。そういった事案につきまして諸活動が行われているわけでございますが、例えば、事案によっては軽犯でありますとか屋外広告物条例でありますとか、そういった法令もあるわけでございますけれども、直ちに、ビラが見た目全然減ってはいないではないかという問題は、そういったこともあわせて考える必要があるのではないかと思いますが、少なくとも、テレクラについては青少年の問題では減ってきておるのかな、こんなふうに考えておるところでございます。
○松本(善)委員 一方で、児童買春、児童ポルノ禁止法が一昨年十一月から施行されましたけれども、これによる昨年末まで一年二カ月間の検挙件数は九百二十二件、五百七十六人となっている。そのうち三百二十八人、五七%がテレホンクラブ利用者による検挙の数です。この検挙は、児童買春、児童ポルノ禁止法第四条の児童買春をした者ということで検挙しているわけですが、この検挙者と、さきに言った宣伝物違反の検挙者数というのは一見矛盾しているように見えるんですが、これはどういうことでこうなっているんでしょうか。
○黒澤政府参考人 女性が電話するのは、必ずしもビラといいますか、ティッシュだけではございませんで、いろいろな雑誌等にもテレホンクラブの宣伝等がたくさんなされておるところでございます。あるいはまた子供たちの口コミ等で伝わる、そういったことが背景にあろうかと考えております。
○松本(善)委員 今回の改正の一つに、十八歳未満のテレホンクラブ使用を禁止する措置があります。つまり、営業者は利用者が十八歳以上であることを確認する必要がある。運転免許証だとかID、パスワードなどで確認するということでありますけれども、実際にはなかなか難しいんじゃないか。店舗型はともかく、無店舗型はほとんど確認ができないんじゃないかと思いますが、こういう点はどういうふうにするつもりでしょうか。
○黒澤政府参考人 委員おっしゃられるように、完璧というのはなかなか難しいかと思います。と申しますのも、確信犯といいますか、何が何でも絶対やるんだということで他人の身分証明書を使うとか、そういったことが考えられますので、確信犯に対しては確かに難しいと考えておりますが、先ほど申し上げましたことの繰り返しになりますけれども、やはりこういう仕組みができることが大変な抑止力を持ちますし、また、私どもの警察活動で、こういった規制がかかりますれば、業者がそれを遵守しているかどうかというものは比較的簡単に把握ができますので、業者がこういう仕組みの中で年齢確認に努めて児童買春の防止に資することができるのではないか、かように考えております。
○松本(善)委員 年齢確認で大事なことは、プライバシー保護の問題だと思います。業者が利用者に年齢を確認するためにプライバシーにかかわるものの提出を求められるわけですから、その人にかかわる情報が業者に集積、管理される可能性がある。これをほかに流されることも想定されます。これに対してどういうふうに対応するつもりか、伺いたいと思います。
○黒澤政府参考人 プライバシーの保護の問題でございますが、必要以上のプライバシーの開示を求めることにならないこととするため、十八歳以上であることの確認措置の運用におきまして、個人情報の保護の観点から、先ほど来申し上げております、身分を証するものをファクシミリで受信する場合には、住所など必要でありませんので、そういったところは墨消しでファクシミリを送る。あるいは、利用者に対し開示を求める情報は、そういったことで年齢確認するための必要最小限のものに限る。それから、年齢を確認するために入手した一定の情報についても、その漏えいや目的外の使用を厳に戒めること。
それから、これまた先ほど申し上げましたが、一見して十八以上であることが確認できる場合には、身分証明書の提示を求める必要は必ずしもありませんし、また一見して確認できない場合であっても、記録を、その写しをとるとかそういったことはしないで、単なる提示で済ませる。
こういったことが運用において配慮がなされるよう努めてまいる所存でございます。
○松本(善)委員 次に、児童に対する捜査や事情聴取への配慮の問題ですが、加害者を罰するためには、被害者であります子供からも事情聴取をしなければならない。その際の警察の対応でありますが、子供を加害者であるかのように扱うことは許されないことは当然ですけれども、もう一度悪夢を思い起こすような取り調べ、つまりセカンドレイプをさせない配慮が大事だと思うのです。これは成人でもそうですけれども、子供は特にそうです。
子供はあくまでも被害者であり、捜査にはその子が信頼するカウンセラーや弁護士などを同席させることとか、被害者が女の子の場合は女性の捜査官が行うこととか、事情聴取も場所を自宅にするなど、子供の人権への配慮を十分にした捜査が必要だと思いますが、こういう点についてはどういうふうに考えているでしょうか。
○黒澤政府参考人 児童買春、児童ポルノ禁止法の施行もございまして、被害児童からの事情聴取に当たりましては、保護者等と連絡を密にすることはもとよりでございますが、少年の特性、犯罪の特性にも十分配意しまして、被害児童からの事情聴取に当たる担当者やその方法、事情聴取の回数、時間や場所等については細心の注意を払っておるところでございます。
○松本(善)委員 今度は国家公安委員長に伺いますが、日本は多くの国際機関や国際会議で、女性に対する性の商品化についての問題に真剣に取り組んでいないと批判をされておりますことは御存じと思います。
例えば、一九九八年十一月の国連の日本政府第四回報告に対する規約人権委員会の日本に対する最終見解では、女性の不法取引及び奴隷類似行為の対象となった女性に対する不十分な保護は規約第八条のもとで深刻な懸念として残っていると指摘をして、不法に女性、子供を国際的に移動させて売春などを行わせるいわゆる女性のトラフィッキング対策を日本に求めております。
また、一九九六年八月のストックホルムで開かれた子供に対する商業的性的搾取に反対する世界会議では、日本はチャイルドポルノグラフィーの中心地であると国際的非難を浴びました。
このように日本は、国際的に見て子供や女性の人権を守る、とりわけ性の商品化をなくすという対策では非常におくれているという現状でありまして、政府は、規制緩和の国際化は強調しますが、女性や子供の人権を守る水準を国際水準に引き上げるようにもっと努力すべきじゃないか。この点の取り組みについて国家公安委員長、どのようにお考えか、御答弁をいただきたいと思います。
○村井国務大臣 私、ただいま松本委員から御教示をちょうだいしまして、そのような形で外国から非難をされている、非常に残念なことだと思いますが、私ども、児童ポルノについては確かに相当ひどい状態であるという認識は持っております。
ただ、いわゆる女性トラフィッキングと呼ばれる外国人女性の性的搾取の問題につきましては、平成十年の風俗営業適正化法の改正によりまして、外国人女性から旅券を取り上げまして、事実上監禁といったらいいんでしょうか、強制的に何らかのことをやるというようなことにつきましては、それを禁止する法的な措置が既にとられております。
それから、一昨年、児童買春、児童ポルノ法の制定が行われておるようなことでございまして、警察といたしましても、こういうある意味では道具立てはちょうだいしたわけでございますので、それをできるだけ活用し、取り締まりを厳しくいたしますとともに、また、広報啓発活動などを通じましてその趣旨も十分に周知をいたしまして取り締まりの効果を上げていきたい、こんなふうに思っているところでございます。
いずれにいたしましても、人の尊厳を侵す児童買春でございますとかあるいは児童ポルノ、あるいはトラフィッキングと呼ばれるようなことにつきましては、海外の捜査機関とも連携をとりまして、そういう不名誉な評判と申しましょうか、これを受けることがないように、国際的な高い評価を受けるように努力をしてまいるというのは、私ども警察にとりまして大変重要なことだと思っております。
ただ、こうした問題というのは、何度か私もこの委員会で申し上げさせていただいておりますけれども、やはり世の中の風潮でございますとか人の心の問題、そういうような、何といいましょうか、社会の風潮というものがやはり相当影響しておりますものでございますから、警察だけではなくて、これもやはり表現の自由の問題でございますとかいろいろな問題も絡んでまいります。そういうところでマスコミや教育関係者などにもいろいろ御努力をいただかなければならない問題ではないか。そういう意味で、当委員会での御指導も賜りながら私ども精いっぱいこれからも努力をしてまいりたい、このように考える次第でございます。よろしくお願い申し上げます。
○松本(善)委員 これは単に警察だけで解決できる問題でないことは当然であります。しかし、日本にとっては大変不名誉なことであることも間違いないので、この点では、いろいろマスコミ対策もあるでしょうが、やはり政府が身を正すというか、それは非常に大事なことじゃないか。汚職事件とかいろいろ、警察官の汚職事件も取り上げたことがありますが、やはりそういう社会全体をきれいにしていくといいますか、そういうことが非常に大事なのではないか、そういう点で閣内でも御努力をいただきたいということを申し上げて、質問を終わります。
○横路委員長 北川れん子さん。
○北川委員 社民党・市民連合の北川れん子といいます。
先ほどの松本委員の見解とも通じるのですけれども、この国というか日本は、女性や子供を性的な対象として見ることに寛容であるということと商品化することに余り問題を持たない国であるというのが、基本的にはいろいろな方面の事象、事件を起こしているのではないかという立場でお伺いをしたいのです。
実は、結婚年齢というのは、女性は十六歳以上、男性が十八歳以上、私は、これは問題がある、男女差別だなと思っている立場なのです。ただ、昨今の性的な行為に対しての自己決定の年齢ですよね、それに関してはさまざまな意見があると思うのですが、私自身はやはり、女性がなぜ十六歳なのかというのはわからないのですけれども、性的に、自分がだれとどういう性的な関係を結ぶかという決定権ですね、子供といいますか、十五、十六、十七、十八というか、それぐらいの年齢には、どういった状況のときに自分は性的な決定権を発動させるか、そして自己責任も含めてやるかということで、自身の性教育の部分なのですが、避妊教育も必要であろうと思うのですが、それが必要であると思っているのですね。
ですから、今回の十八歳未満云々にテレクラを規制するといった発想というのは、逆にテレクラというもの自身が社会に認知されていく方向になるのではないか。というのは、私自身は、テレクラとか出会い系サイトが性的な自分の権限を行使するきっかけになるというのは寂しい状況であろうというふうに思っています。
そして、十八歳未満への規制が、業者が一部根絶えする、根絶するということであれば、もう少し、本当の意味での、テレクラという存在が売買春の温床であり、そこから異常な性的行為を経験させられる場所でもあるとか、警告をやはりきっちりと十八歳未満の児童、子供と言われる年代の人にしていくべきではないか。まずそれが先にあって、規制が先にあるのではなくて、テレクラというものがどういうものであるかということをまず十八歳未満の人たちにすべからく警告をきっちり発するべきではないかというふうに私は思うのです。一問しか村井大臣はこの場にいらっしゃれないということなので、その辺の御見解なのですが、初めにお伺いしたいと思います。
○村井国務大臣 性風俗に関する営業というのはなかなか難しいものでございまして、どういうものを規制するべきかというところは、ある種の社会情勢と申しましょうか、社会の風潮によりましていろいろ動いていく面があるのではないかと私は思っております。
テレクラというものが始まりましたときに、果たしてそれがこういうような形で営業されるものだとは必ずしも思っていなかった。あるいは出会い系サイトというようなものが出てまいっても、それがいわゆる買春の温床になるというようなおそれも出てくるということは当初は考えてもいなかった。そういう意味では、私は、いずれにいたしましても、何か社会的な規範と申しましょうか、そういうものが一つないと、どうも、そういう形式、形だけ、あるいは場所だけ押さえていってもなかなかうまくいかないのではないかというような感じがいたしております。
警察も、もちろんいろいろな意味で規制を、法律で権限を与えられればやっていくことができるわけでございますけれども、これは一方では、個人の自由でございますとか人権でございますとか、あるいは北川委員よく仰せになります個人のプライバシー、情報の問題でございますとか、そういうような問題ともやはりかかわってくることでございまして、もちろん、そういう意味で、法に基づくきちんとした規制は私どもやってまいりますし、またいろいろな啓発運動などもやってまいりますけれども、そこにはおのずから一種の制約があるということは申し上げざるを得ないと思います。
ただ、性を売り物にするようなものに対しまして必要な規制を行い、厳しく取り締まるということは、これが不可欠なことであるということは、これはもうよく私も理解しているところでございます。ただ、その背景には、倫理観ですとか一種の社会規範といいますか、規範意識と申しましょうか、そういうものの向上というものが大切なのだということをもう一度申し上げさせていただきたいと思う次第でございます。
大変申しわけございません。参議院の本会議に陪席しなければならないような次第もございまして失礼をさせていただきますが、あと、政府委員からお答えをさせていただきます。
○北川委員 実は京都と東京ではテレクラというものは全面禁止をしています。ということですから、男社会がリードしている中で女性と子供が商品化されるという、物すごく偏った状況を日本は許してきたというところでは、先ほどの村井大臣のお言葉というのは、どちらかというとやはり今の社会を是認するというか、そういうところに偏っているのではないかという感じが私はしています。
ここ五、六年のテレクラを通しての事件というのを見ていると、当初は、どちらかというと恐喝や強盗、新おやじ狩りという形で表面化していっているわけですが、昨今では、テレクラで知って、殺した、気がついたら首を絞めていたとか。例えばこういうのもありました。農水省の職員が自宅でテレクラ開設、公務員の給料以上に金もうけがしたかったというような形で出てきているのですが、やはりここに、テレクラを認めていっている間に事件が、テレクラで出会った人は物、すぐに首を絞めたり殺したりしてもいい人的なメッセージを与えているということをぜひ気づくべきだと私は思っています。微少な規制をするということではない、統括的に、やはり女性と子供を商品化しない社会をいかにつくるかというところでの議論を集中さすことの方が今は大事ではないかと思っているのです。
先ほどから、一九九六年のストックホルム会議、世界児童のポルノ禁止会議ですね、二回目が二〇〇一年十二月に横浜で行われるということで御宣伝されているわけですけれども、一九九八年に世界十二カ国で一斉に大聖堂作戦というものを行って子供ポルノを一斉に取り締まるというのをやって、子供ポルノに対しての世界的な定義というのは明確ではないのですが、やはり一斉にやると一定程度効果があったということが報道されていますが、日本はこの十二カ国の中に入っていなかったわけですね。これは誘いかけがあって断ったのか、もともと誘いかけがなかったのか、その点はどうなのでしょうか。
○黒澤政府参考人 誘いかけはなかったと承知をいたしております。
○北川委員 こういう深く広がっていく、先ほどの松本委員の御質疑の中にもあったんですが、子供ポルノの世界への供給地と日本はストックホルム会議のときにすごくやゆされているんですね。だけれども、あの会議のときに、出席した日本の政府関係者の方たちはそれに対しての取り繕いの答弁しかしなかったということもNGOから聞いておりますし、あのときに、日本というのはストックホルム会議で世界的に恥をかいているわけですよ。そして、誘いかけがなかったということなんですが、この大聖堂作戦にもし誘われたら今度はどうしようと思っていらっしゃるのか。
そしてまた、日本が特にひどいのは、アジアに対して子供の買春旅行等々もやはり日本人が白人に続いて多いというのも統計的に出ている。
子供ポルノの世界への供給地であるという点と、子供ポルノ、児童買春にアジアに出かけている日本人が多いということは、警察としては認識されているかどうかをお伺いしたいと思います。
○黒澤政府参考人 私ども、一昨年でございますが、女性、子供を守る施策ということで、各方面におきまして女性、子供を守る施策を推進いたしておるところでございます。そして、児童買春・ポルノ禁止法も施行になったところでございます。あるいはまた、ストーカー法も施行になったところでございます。こういった中で児童買春につきましても各種の努力をいたしておる。今度の法改正もそうでございますし、それから児童買春、児童ポルノ事件につきましても鋭意取り締まりを強化いたしておりまして、かなりの検挙をいたしておるところでございます。
また、国際的にも協力関係を構築する中で、外国で行った日本人の事犯、国外犯でございますが、そういった事犯も検挙いたしておるところでございます。今後とも取り締まりをより一層積極的にやってまいりたいと存ずる次第でございまして、また、特に児童ポルノにつきましては、世界各国足並みをそろえやすい問題でもございまして、鋭意積極的に取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
なお、本年十二月に横浜で開催されます会議につきましては、警察庁といたしましても、主催者の一員として積極的に対処してまいりたいと存じております。
○北川委員 供給地であるとか日本男性が買春旅行によく出かけているという面ではお認めにならなかったわけですが、ことし横浜であるという意味ですね。前回がストックホルムだった。あのときに北欧の方たちが日本を視察されて、こんなにポルノがはんらんしている国というのはびっくりしたということを本当に委員の方たちが言っていらっしゃったというのを私も記憶をしておりますので、なぜ二回目が日本なのかというところを踏まえて、ぜひこの横浜会議を成功させていただきたいと思います。
そうしましたら、アメリカの方は、わいせつに関する連邦法、十八USCというのがあるそうで、これは、商業的プロバイダーだけでなくて、何人も、わいせつな、みだらな、扇情的な、卑わいな、下品な論法、要求、示唆、提案をすることを禁止しているわけですね。日本は、営利目的かどうかというところを規制の目安にしていらっしゃるんですが、アメリカ等々の規制のように、何人もというところ、営利であるかどうかというのは、出会い系サイトの問題から、これからインターネットの問題では営利目的でないところがはびこる可能性が高いわけですから、そういう規制の方向へ動こうという動きを研究されているかどうか、お伺いしたいと思います。
○黒澤政府参考人 いろいろな考え方があろうかと思います。御指摘のように、今回の法改正も、風適法という業規制の法律でございまして、業という、営業という観点からの規制として考えておるわけでございまして、御指摘のように、営業の規制ということではなしに、行為規制といいましょうか、そういった面での規制を考えるべきだ、いろいろな意見があろうかと思います。また、この問題は、先ほど大臣も申し上げましたように、表現の自由等の問題もあろうかと思います。いずれにいたしましても、私ども、いろいろな角度から勉強してまいりたい、かように考えております。
○北川委員 勉強に入られるということは研究をしていないということだろうと思うんですが、基本的に個人が性とどういうふうに向き合うかというものがない限り、私は、何かが出てきたから幾ばくかの規制をして、規制と寛容に認める部分とをやりながら性的な行為の売買春の温床であろうと推測すること自体を消してしまうということの方が犯罪的であると思っている立場なので、もう少し女性や子供の視点からということで性風俗の問題、ポルノの問題を警察は取り組んでいただきたいと思います。
そして、どの委員からも言われているんですが、十八歳未満かどうかというのを、プライバシー情報を業者に渡すというところからの心配点の方が、今回の規制では私は心配しているわけです。これは施行令になるので国家公安委員会規則にゆだねられるというふうに聞きましたが、私自身は、個人情報を集積しないというのはもちろんである。じゃそれを具体的にする場合には、一たん確認をした情報は確認をした時点で相手に返すという方法をとることもできます。一たん入手した情報を消却するということも具体的にはできますが、この国家公安委員会規則の中にそういう具体的な項目を盛ろうとされているのかどうかというのをお伺いしたいと思います。
○黒澤政府参考人 国家公安委員会規則につきましては検討中でございますけれども、現在、この規則で定める年齢確認措置の運用におきまして、個人情報保護の観点から、免許証その他本人の年齢を証明することができる書類の写しをファクシミリに受信する場合には、先ほど申し上げましたが、例えば住所等必要ではない部分はいわゆる墨消しができる、あるいはこの写しを廃棄する、こういったことなどへの配慮がなされるよう努めてまいりたいと考えておるところでございます。
○北川委員 法律というのは具体的に書かないことには物すごく解釈の幅が広くなるので、どの委員からも心配されていて、今回は附帯決議も、今議論の俎上に上がっている中に、そこが盛り込まれています。というところでは、どなたも心配を逆にしているわけですね。情報集積が業者側にされていくということでの心配をどう解消するかという提案がないというところでは、私はなかなか本当は厳しい法案だなと思っているものであります。
それともう一つは、これに対してのパブリックコメントをとられたのを読ませていただくと、業者側から、営業ができなくなるとか従業員の仕事場がなくなるというような心配をされているわけですが、この法律ができれば、テレホンクラブは、無店舗型も含めて、何%ぐらい営業し得なくなると予想されているのか。そして、テレホンクラブというのは、だれでも開業が可能であって、無認可というのも多いわけですね。届け出制なわけですから、届けないでも見つかるまでやればその間はもうけられる。この商売というのはどれぐらいの範囲でもうけることが可能なのかというのを、今アンダーグラウンドの財政みたいなことも少しずつ持ち出されてきていますが、その辺ではどういうふうな認識を持たれているのか、最後にお伺いしたいと思います。
○黒澤政府参考人 なかなか難しいお尋ねでございますけれども、あるいは営業をやめてしまう、そういう業者も出てくる可能性はあるであろうと考えておるところでございます。
それから、どのぐらいもうけておるのか、この辺のところも私ども承知はしておりません。しかし、外形的事実として営業がふえておる、無店舗がとりわけふえておるんですが、ふえておるということはやはりもうかっておるのではなかろうか、こんなふうに考えておるところでございます。
○北川委員 何か、もうけている方に対してはすごいやはり緩いというか、今回の法案の規制の中に、逆に言えばテレクラというのが何%かなくなるであろうという可能性を、期待を込めてこういう法案を出されたのかと思ったら、そうではなかったというとこら辺が今わかったということで、とてもやはり私は、十八歳未満に対して買春の温床であるという警告を発する方に力を入れていただきたいということを要望して、質問を終わります。
○横路委員長 岩崎忠夫君。
○岩崎委員 自由民主党の岩崎忠夫でございます。法案の質疑に入ります前に、大阪教育大附属池田小学校多数児童殺傷事件につきまして、亡くなられた児童の御冥福をお祈りし、また、被害者及び被害者の御家族に対し心からお見舞いを申し上げますとともに、あわせて、この事件に関しどのように警察庁長官が受けとめられているのかをお伺いしたいと思います。
事件は、児童にとって最も安全であるべき授業中の教室で、白昼、目を覆うような地獄図絵が展開されたのであります。今回の容疑者は、過去にたびたび事件を起こし、そのうち異物混入事件では刑事責任能力がないとして措置入院とされ、短期の入院を経て退院し、犯行に及んだと伝えられております。事は、犯罪を起こした精神障害者の処遇いかんが問われる事件であります。犯罪防止と精神障害者の人権という微妙な問題に絡みますとはいえ、近年我が国の安全神話が次々と崩れているさなかに起きた事件であります。
私は、日本を、何の罪もないいたいけな児童が不安を感じ、かつその安全が守られないような国にしてはならない、そのように思います。一握りの異常者から社会を防衛する必要性は、近年急速に高まっていると考えられます。安全な社会を守るため、刑事政策も転換を迫られていると思いますが、警察庁長官に、こうした痛ましい事件が二度と起きないよう、再発防止策など、今回の事件をどのように受けとめておられるのか、まずお伺いをしたいと思います。
○田中政府参考人 お答えいたします。
今回の事件は、白昼の小学校におきましてとうとい命が多数奪われるというまことに痛ましい事件でありまして、被害者や御家族の無念とお悲しみを思いますと、犯人に対する強い憤りを禁じ得ないところでございます。改めて、亡くなられました方々の御冥福と、けがをされた方々の一日も早い回復を心からお祈りいたしておるところでございます。
この種の事件は国民に大きな不安感を与えるものでございますので、事件の全容解明のため、現在、大阪府警察におきまして、徹底した捜査を行いますとともに、女性職員三十八名を含みます五十六名体制の特別被害者支援班を設置いたしまして、心身に傷を負った方々への被害者対策に真剣に取り組んでいるというふうに承知をしておるところでございます。
警察におきましては、この種の事案の発生の防止を図るため、警ら、警戒活動の強化、関係機関、団体との緊密な連携などの諸対策に万全を期しているところでございます。
また、委員からお尋ねのございました、重大な犯罪行為をした精神障害者、いわゆる触法精神障害者の処遇の問題でございますけれども、この処遇決定及び処遇システムのあり方につきまして、本年一月以降、法務省及び厚生労働省で、これまでに治療関係者、法律家等の意見を聞きながら議論、検討が進められているというふうに承知をしております。
この触法精神障害者の処遇のあり方につきましては、両省庁間でさらに議論が進められていくものと承知をしておりますけれども、国民の生命、身体の安全確保を任務といたします警察、あるいは現場で一番犯罪に近いところにある警察といたしましては、その議論を見守りながら、要請があれば資料提供などの必要な協力を行っていきたいというふうに考えておるところでございます。
○岩崎委員 ありがとうございました。
触法精神障害者についての御検討を既に始めておられるということでございます。今回の容疑者というのは、過去にたびたび事件を起こした人物であります。ということは、制度及び運用が適切であれば、事前に十分な措置がとられていたならば、今回の事件は十分に防げた事件であります。突然の不幸に見舞われました被害者の無念を思いますとき、また国民一般の不安を思いますとき、今回有効な対応策が講じられず、また同様な事件が起きるようなことのないよう、医療関係者含め司法当局が、一歩前に出た、新たな、実効性のある制度的な枠組みの対応がとられるよう、さらに早急な検討を望みたいと思います。
続きまして、法案の方の質疑に入りたいと思いますが、まず、児童買春の温床としてのテレクラの実情についてお伺いをいたします。
いわゆるテレホンクラブは、ツーショットダイヤル等の新たな形態のテレクラの出現も相まちまして近年急増しつつあり、今や放置できない状況にあります。とりわけ女性は、フリーダイヤルで機械による自動接続となっていることが多いため、好奇心も手伝って、安易な利用に陥りやすい状況がつくられているのでございます。
平成十一年の児童買春、児童ポルノ処罰法の制定、あるいは昨年五月の児童の買春等に係る議定書の採択、あるいは本年十二月の児童の商業的性的搾取に反対する世界会議の横浜開催など、児童買春の撲滅に向けた国内外の議論も高まっているところであります。
テレホンクラブ営業は、児童買春の温床として、女子少年の利用防止のための一日も早い法規制が求められていることは言をまちませんが、ちなみに、こうしたテレクラあるいはテレクラ類似の営業は、韓国、台湾を除いては諸外国に全く例を見ないと聞いております。
今回の風営法改正は、児童、少年の保護の見地からも時宜を得たものと思われますが、まず初めに、今回の法規制に至った児童買春の温床としてのテレクラの実情についてどのように認識しているのか、簡潔にお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
○黒澤政府参考人 委員御指摘のとおり、平成十二年中の児童買春事件のうち、テレホンクラブ利用にかかわるものが約五割を占めておりまして、女子少年を被害者とする児童買春の温床となっていることが認められるわけでございます。
その理由でございますけれども、やはりテレホンクラブ営業におきましては、女性がフリーダイヤルにより無料で利用できるシステムとなっておりまして、機械により自動的に男性客に接続しておることが通常でございますので、利用することに対する抵抗感や羞恥心を生じさせにくい仕組みとなっていることが考えられます。
特に近年は、一部の女子青少年の間で、遊ぶ金欲しさ目的で援助交際その他の性の逸脱行為が安易になされる風潮の中、中高生を含む携帯電話の急速な普及等も手伝いまして、簡便で匿名性を維持できるテレホンクラブの利用が流行し、低年齢層まで浸透してきている、こういったことが挙げられるかと思います。
○岩崎委員 どうもありがとうございました。
次に、条例規制では不十分として、法律による規制が必要とされた点についてお伺いをしたいと思います。
テレホンクラブにつきましては、平成七年に岐阜県で条例制定が行われましたのを皮切りに、現在すべての都道府県で条例規制が行われているわけであります。最近急増している無店舗型の営業の規制については、まだこれらの条例では十分に対応できていないということもありますし、また、年少者の利用禁止を担保するための年齢確認を求めている条例はないということであります。今回、各都道府県による条例規制では十分でないとしまして、法律による規制に踏み切られたわけでありますが、条例規制では対応できない点について明らかにしていただきたいと思います。
○黒澤政府参考人 委員御指摘のとおりでございまして、青少年に利用させること自体を禁止しているものは東京、京都の二条例にとどまっておりますほか、利用者の年齢確認を義務づけているものは皆無であるなど、女子児童の利用を防止する観点からの規制としては実効性に乏しいと考えられる状況にございます。一方、児童買春は、被害者となった児童に精神、肉体の両面におきまして甚大なダメージを与える重大かつ悪質な犯罪でございまして、児童買春の撲滅に向けた国内外の議論が近時一層の高まりを見せていることを踏まえれば、児童買春の温床となっておりますテレホンクラブにつきましては、児童の尊厳の保護を図るという観点から、国として法律による規制を行うことが適切であります。また、特に無店舗型営業でございますけれども、複数の都道府県にまたがって営業を展開するわけでございまして、地域的な効力しか持たない条例による規制の限界が生じているということができるわけでございます。
そこで、女子児童を被害者とする児童買春の防止の観点から、利用者が十八歳以上であることの確認措置の義務づけなどを内容とする法律による実効ある規制を期して今回の法改正を行おうとしたものでございます。
○岩崎委員 どうもありがとうございました。
そこで、十八歳以上であることの年齢確認措置の実効性について、次に伺いたいと思います。
今回の法改正の核心は、テレホンクラブを届け出制とし、利用者が十八歳以上であることの確認を義務づけたことであろうかと思われます。テレホンクラブが児童買春の温床となりますのは、女性からの電話が年齢を問わず機械により自動的に接続されるという、そのシステムにあると言われます。
今回、テレホンクラブは、客が十八歳以上であることを確認した後でなければ通話の機会を提供してはならないこととされたわけでありますが、問題は、利用者が十八歳以上であることの確認方法であります。十八歳以上であることを確認するための措置は国家公安委員会規則で定めることとしておりますが、実際問題として、しり抜けにならない実効性ある確認方法が規定できるかどうか、懸念が少なからず残るところであります。とりわけ、プライバシーとか個人情報の漏えい防止にも配慮するなどいたしまして、結果として確認措置が実効性を持たなくなるようなことがあってはならないと思います。
そのあたりの兼ね合いをどのように考え、実効性ある確認方法をどうとらせるのか、お伺いをしたいと思います。
○黒澤政府参考人 まず、利用者が十八歳以上であることの実効性ある確認方法でございますが、具体的には、先ほど来申し上げておりますように、運転免許証等の身分証明書の書類の写しをファクシミリにより受信する方法、十八歳未満の者が通常利用できない方法により料金を支払うという同意を受ける方法、例えばクレジットカード等でございますが、それからもう一つ、先ほど来申し上げております、ID、パスワードを付与しまして、そのID、パスワードの伝達を伴う電話だけを取り次ぐ方法、こういった方法を考えておるところでございます。
そしてまた、これまた申し上げてきたところでございますけれども、こういった仕組みができることによりまして、興味本位でテレクラを利用する女子少年に対する相当程度の抑止効果が期待できるかと思いますし、また、テレクラ業者が確認措置を講じているのかどうかを把握することは、日常の警察活動等を通じることにより比較的容易でございまして、義務を果たしていない業者に対しましては、まず指示をいたしまして、そしてまた営業停止命令等の行政処分を行うことにより、機動的かつ実効的に営業方法の是正を促すことが可能であると考えておりまして、こういったことが相まちまして効果が期待できるものと考えております。
それから、プライバシーの保護につきましても、十分な配慮をして運用してまいりたいと考えておるところでございます。
○岩崎委員 ありがとうございました。
続きまして、テレクラの広告宣伝規制の実効性についてお伺いをしたいと思います。
テレクラの広告宣伝は、今や町じゅうにあふれております。電話ボックス等には刺激的なテレクラのチラシ、ビラがはんらんし、街頭では電話番号入りのティッシュペーパーがだれ構わず配られております。テレクラ営業は、電話番号がわかればどこからでも利用することができるという特質を持っております。したがって、テレクラの電話番号が少年の目に触れないようにするため、テレクラの広告宣伝方法や場所を効果的に規制することが何より肝要であります。
今回の改正では、こうした広告宣伝の規制として一定の規定がされましたが、こうした規制は、現行の各都道府県条例でも規定されていることであります。今回の法改正によって本当にテレクラの電話番号が少年の目に触れることのないような実効ある広告宣伝の規制ができるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
○黒澤政府参考人 今回の法改正によりましてテレクラの広告宣伝につきまして規制をかけることとなるわけでございますけれども、これらの規制の違反行為に対しましては、直接罰則を適用していくのではなくて、公安委員会による営業者に対する指示処分により対応することといたしておりまして、この指示処分によりまして、時期を逸することなく、速やかに営業の是正を図ることが可能となるわけでございます。
また、この指示に従わない場合には、公安委員会は営業の停止等を命じることができるわけでございまして、この営業停止命令というのは、営業者にとりましては、一定期間収入の道を閉ざされるという相当重い処分でございます。また、この命令に従わない場合には、刑事罰の対象となるわけでございます。さらに、無店舗型のテレホンクラブにつきましては、広告宣伝規制の違反行為に対する指示処分を行うべき営業者の所在がわからない事態が生じ得るため、一定の場合には、警察職員みずから当該違反広告物を除却することができることといたしております。
こういった措置の的確な運用によりまして、テレホンクラブ営業者の広告宣伝に対しまして対処が可能であると考えておるところでございます。
○岩崎委員 いわゆる出会い系サイトの規制について、次にお伺いをいたします。
平成十二年度の児童買春事件検挙件数のうち、五二%、四百六十九件がテレホンクラブ利用によるものとなっております。一方、三十九件が出会い系サイト利用によるものということで、今日の段階では、出会い系サイトによる児童買春事件の件数はまだ多くないようでありますが、最近、インターネット上の出会い系サイトで知り合った男女間で、児童買春、強姦、殺人事件まで発展する事件が目立っているように見受けられます。携帯電話のiモードには、日々大量の出会い情報があふれております。こうして、刺激的な情報が日々児童の耳目をそばだたせております。
出会い系サイトは、不特定多数の男女を仲介する点でテレホンクラブと同様であり、テレホンクラブへの規制強化とも相まって出会い系サイトが児童買春の温床となるのも、今や時間の問題だと考えられます。iモードでの出会い系サイトの既に目に余るはんらんを見ますとき、一日規制がおくれれば、それだけ児童買春の被害者がふえることになります。出会い系サイトに対する早急な法規制が必要と考えられますが、警察庁長官のお考えを伺いたいと思います。
○田中政府参考人 インターネットの爆発的な普及に伴いましていろいろな問題が発生していると本当に認識をしております。特に最近では、御指摘のように、インターネット上で異性間の出会いの場を提供するいわゆる出会い系サイトに関連いたしまして、児童買春等の風俗事犯のみならず、殺人、強姦等の凶悪犯罪も発生しているところでございます。また、御指摘のとおり、出会い系サイトの形態は、今回法改正により規制をお願いしておりますテレホンクラブに近い形態のものもございまして、将来、児童買春の温床となるということも十分にあり得るというふうに考えておるところでございます。
このような情勢を受けまして、私どもは、インターネットを利用した犯罪につきまして、今後とも取り締まりを強化していくとともに、犯罪防止のための広報啓発活動なども推進していきたい、かように考えておりますが、出会い系サイトにつきましても、このような問題点を指摘いたしまして、広報啓発活動を一層推進してまいりたいというふうに思っております。
あわせて、法規制のお話がございました。出会い系サイトに関係いたします児童買春の状況につきまして、その実態の把握に努めながら、また御意見を踏まえながら、必要な対策について検討を進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
○岩崎委員 ありがとうございました。
今回の風営法改正によるテレクラ規制は、社会的な要請でもあり、時宜を得たものと言えます。問題は、テレクラ利用者が十八歳以上であることの確認措置の実効性、また、テレクラの電話番号が少年の目に触れることのないようにするための広告宣伝規制の実効性いかんにあります。
最後に、今回のテレクラ規制の実効性についての警察庁長官の決意をお伺いいたしまして、質問を終えたいと思います。
○田中政府参考人 今回お願いしております法改正によりまして、テレホンクラブ営業者に対し、利用者が十八歳以上であることを確認するための措置を講じることが義務づけられることとなりますけれども、これは女子児童のテレホンクラブ利用の防止に大変効果を発揮するものというふうに考えております。
また、地域限定的な効力しか持たない条例にかわりまして、全国的な効力を持つ法律により規制を行う、さらに、無店舗型の営業者の法令等違反行為に対しまして営業禁止を命ずることができる旨を規定することによりまして、従来に比較してより効果的な指導取り締まりが行えるものというふうに考えておるところでございます。
今後、今回の法改正の趣旨を全国警察に徹底いたしまして、その的確な運用により所期の効果を上げるよう努めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
○岩崎委員 どうもありがとうございました。以上で質問を終わります。
○横路委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時一分休憩
――――◇―――――
午後零時五十七分開議
○横路委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官小林勇造君、内閣府政策統括官坂篤郎君、警察庁交通局長坂東自朗君、文部科学省研究開発局長今村努君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長大井篤君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○横路委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古賀正浩君。
○古賀(正)委員 自由民主党の古賀正浩であります。
質問に先立ち、去る六月八日、大阪府下小学校に発生しました痛ましい小学生殺傷事件の犠牲になられました方々を哀悼し、かかる忌まわしい事件が再度起こらぬようにする努力をお互いに決意することを誓いたいと思います。
質問に入ります。
午前の本委員会におきまして、いわゆるテレクラなど青少年を取り巻く環境をテーマとする風適法審議が進んでいるところでありますが、私が最初にお尋ねしたいと思います暴走族の問題も、青少年に関する問題ということでございます。
いきなり私の地元のことを言って恐縮ですが、私の住む人口二十万の地方都市は、城下町の流れをくむ落ちついた風格を持つ居住的都市であると思っておりますが、近年、夜ごと暴走族に乗っ取られ、その傍若無人の行状に地元住民は、重病人の病院もあらばこそ、耳をつんざく轟音を響かせ、さらに、どこからともなくあらわれる若い女性の嬌声のせいなどもありまして、図に乗りまして、制止の警官もものかは、パトカーを棒でたたく、非常に傍若無人の振る舞いが見られるところであります。いわば、地域住民は、警察のそういう扱われ方に、無法地帯と化した現状を見て、警察の信頼を失っているという状況でございました。
ところで、そういう経過の中で、住民の強い要望にこたえて、警察の徹底した強力な取り締まりを行っていただき、昨年末来、しょうけつをきわめておった惨状も、最近、おかげさまで収束をしたということがございます。警察もできるじゃないか、住民も感謝し、警察への信頼を取り戻したところであります。心から感謝を申し上げます。
この暴走族の問題というのは、全国的にもいろいろなことがあるようでございます。合同暴走あるいは活動範囲の広域化、グループ同士の対立、あるいは強盗、強姦、麻薬、薬物乱用など、さまざまな状況に及んでいるように聞いております。最近におきます暴走族の実態及び政府の対応ぶりについて、まずお尋ね申し上げたいと思います。
○坂東政府参考人 まず、暴走族の実態でございますが、最近、暴走族の構成員は減少してきているものの、深夜の爆音、暴走等により周辺住民に多大な危険と迷惑を及ぼすとともに、殺人等の凶悪事件を引き起こすなど、大きな社会問題となってきているところでございます。
こうした状況に対しまして、警察といたしましては、あらゆる法令を適用した取り締まりを徹底し、現場検挙あるいは車両の押収等によりまして暴走行為や不法行為等の抑止を図っているところでございます。
一方、関係行政機関との取り組みといたしましては、去る二月五日に、暴走族対策に関係いたします八省庁によりまして「暴走族対策の強化について」という申し合わせを行いまして、政府一体となった対策を行ってきているところでございます。また、今月、六月は、国土交通省の不正改造車を排除する運動と連携いたしまして、暴走族取り締まり強化月間を推進しているところでございます。
○古賀(正)委員 この暴走族の問題というのは、一つ始末に負えないところがある。取り締まりの手を緩めますと、また発生するという可能性が非常に強いというふうに思う次第でございます。どうか、現在の強い警察の姿勢を今後ともしっかり継続し、警察の威信にかけて取り締まりの強化を続けていただきたいと心から念じ上げている次第でございます。
一言、大臣の所信をお伺いしたいと思います。
○村井国務大臣 先ほど古賀委員から、福岡県警あるいは久留米警察署が恐らく中心になったものだと思いますけれども、お褒めをいただきましたこと、大変これもありがたいことだと思っております。
私は、一つ余計なことを申し上げさせていただきますが、警察に対する御批判はもちろん謙虚に受けとめますが、同時に、第一線で非常に苦労をしながらやっている警察官に対する、ただいま委員お話しのような御激励も、これまた警察官にとりましてありがたい、組織にとりましても大変ありがたいお励ましだ、このように思う次第でございます。
私ども、ごく簡単に申し上げますが、必要に応じて、例えば、暴走族に対処いたしまして、機動隊員を動員するというような強い手段までとりまして対応しているつもりでございまして、今回は道交法の改正もやっていただきました。こういうことも大いに生かしまして、地域社会とも連携いたしまして、手を緩めず、しっかり対応してまいる決意でございますので、今後ともよろしく御指導のほどをお願い申し上げます。
○古賀(正)委員 ありがとうございました。
次いで、竹中大臣にお伺いいたします。
現在の小泉内閣の高支持率、本当にうれしいですね。これは、小泉さんの御努力もさることながら、竹中大臣のソフトでわかりやすい語り口が大いに貢献されているのじゃないかと思います。今後の御活躍を大いに期待を申し上げる次第でございます。
一昨日、基本方針案が発表されまして、日本経済の再生のシナリオ、私も興味深く読ませていただきました。そこで、本日の委員会で、この再生のシナリオを実現していく上で私が日ごろ気にしている点を質問させていただきたいと思います。
日本経済の再生シナリオでは、経済再生の第一歩として、不良債権問題の解決を挙げておられます。この問題を二、三年以内に解決することを目途として、前向きの構造改革をパッケージで進めることとし、それには、民営化、規制改革、財政構造改革が含まれております。来年度予算では、国債発行を三十兆円以下に抑制する方針となっておるようであります。
私が気になっておりますのは、これらの構造改革を進めていくと、相当なデフレ圧力が生ずることにならないかという点であります。このシナリオの中でも、今後二、三年を日本経済の集中調整期間と位置づけ、短期的には、低い経済成長を甘受しなければならぬと述べておられるところであります。
そこで、質問でありますが、まず第一に、短期的に景気は本当に大丈夫なのかという点であります。
一昨日発表されました本年一―三月期のGDP速報によりますと、我が国の経済は、年率〇・八%のマイナス成長とされました。生産や消費の経済統計を見ましても、景気はますます厳しさを増しておるというところでございます。景気は一層悪化するのではないかという心配が非常に広がっているのではないかというふうに思います。短期的にはどのような政策運営を行っていくお考えか、まず端的にお伺いしたいと思います。
大臣は、大変にこやかな、わかりやすいお話をして、我々も本当に感心をいたしておりますけれども、にっこり笑って人を切るみたいなやり方にならないことを念じながら、御答弁をお願い申し上げます。
○竹中国務大臣 古賀議員の御質問、当面の景気は非常に厳しさを増しているという認識、私も非常に厳しく認識しております。御指摘のとおり、ことしの一―三月期のGDPはマイナス〇・二%の成長、その結果としましては昨年度は実は〇・九%成長にとどまったということで、政府実績見込みの一・二%を下回りました。
いわゆる構造改革で目指しているところは、まず、企業のバランスシートをきれいにしよう、銀行の不良債権問題に決着をつけよう、さらにはさまざまな形で企業、産業の競争力を高めていこうということでありますから、まさに経済の競争力、供給側、サプライサイドを強くしていこうという政策で、これそのものは間違いなく正しい政策だと私は思います。
しかし、中長期的に供給サイドを強くしようとすれば、実は短期的には不良債権処理等々で需要の不足が生じる。それが今まさに議員が懸念されているポイントだと思います。
当面の景気の悪化は、アメリカ経済に影響を受けているところが大きいというふうに考えますが、同時に、需要に対する非常にきめ細かな配慮も必要である。しかし片や、需要を刺激するような財政のフリーハンドというのは、私たちはもう持ち合わせていない。何度も申し上げますように、その意味では、非常に狭い道、ナローパスを注意深く歩まなければいけないという難しい仕事が目の前にあると認識しています。
当面の政策ということになりますと、やはり需要をどのようにうまく運営していくかということでありますから、需要サイドに関しては、やはり私は、金融政策の役割というのが大変重要であるというふうに認識しています。その金融政策の役割をさらに重視した上で、同時に、政府の支出項目を組み替えることによって経済を活性化する仕組みをつくっていく、同時に一方では、いわゆるセーフティーネットをさらに強化することによってその痛みを少なくするというような政策、これをやはりパッケージで考えなければいけない、そういう段階に来ているというふうに思います。
今申し上げたような、狭い道をトータルのパッケージをうまく組み合わせることによって当面の運営をしていきたいというふうに考えています。
○古賀(正)委員 もう時間がございませんので簡単にいたしますが、二、三年の集中調整期間を経て、その後、いい日本経済がやってくるんだ、こういう思いを皆さん心に抱きつつあると思うのです。そういう国民の期待や夢をしっかり実現するために、しっかり頑張っていただきたいと思う次第でございます。
要すれば、今は苦しいが、中長期的には最後のトンネルを抜けてすばらしい日本が来るんだ、そういう気持ちを国民全体が持ち得るように大臣のかじ取りをしっかりお願い申し上げて、私の質疑といたします。ありがとうございました。
○横路委員長 小野晋也君。
○小野委員 それでは、尾身大臣に対して質問をさせていただきたい。
第一点目は、五月十日、経済スパイ容疑で、カンザス大学の助教授芹沢宏明氏、そして理研研究者岡本卓氏、両者がアメリカにおいて起訴されたという問題であります。これは、単に二人の研究者が起訴されたというだけの問題ではなくて、非常に根本的な問題をはらんだものだというような印象を持っております。
第一には、二十一世紀を迎えて、戦略物資と呼ぶべきものが、以前の石油だとか鉄鉱だとかいうものにかわって、今や知的な資産みたいなものが戦略物資になってきている。つまり、国際的な国家間のお互いの権益競争を行う主要舞台が知的財産権の問題になってきているというような課題でございまして、こういう課題をきちんと整理しておく必要が今あるのではなかろうかという点が一点であります。
それから、第二点目の問題は、国家が外国に出ていく日本人に対して何をなし得るかという問題を考えますと、一つは、そういう日本人の活動を容易にする環境整備の問題、もう一つは、何といっても邦人保護の問題ということになろうかと思うんです。
今回の事件は、日本からアメリカに派遣された邦人が向こうで逮捕されるという事態になっているわけでありまして、今後、科学技術研究の交流というものが国際的にどんどん広がってくることを考えますと、同種の事件が次々と起こってきかねない状況があるのではなかろうかということが懸念されます。そういう研究者の保護という問題を日本の国としても積極的に考えていかねばならないのではなかろうかということでございます。
これら問題を考慮してまいりましたときに、今、日本政府がうたっております、このしばらくの間に世界最高水準の科学技術創造立国を目指そうというスローガンが一方にあるとするならば、こういう研究開発の交流の中で研究者がきちんと保護されるというような共通ルールを国際的に設けていって、安心して研究者が外国で仕事ができるというような環境をつくっていくことが必要ではなかろうか、こんな問題意識を持っているところでございます。
大臣は、非常に交渉力をお持ちになられ、また企画力のすぐれた大臣でございますので、ぜひこういうふうな国際的なルールを日本が提唱してつくっていこうではないかということをお呼びかけになられるといかがかと思うわけでございますが、大臣の御所見はいかがでございましょうか。
○尾身国務大臣 知的財産権の問題を含めた研究者の外国における活動、それから外国の特に研究機関等におきまして知識とか研究資材、材料、そういうものが非常に大事な価値を持つようになってきた、そういう実態を踏まえまして、我が国としてもきちっとしたルールづくりをしていかなければならない。それから、外国に行く研究者も、それぞれの人のある意味でいうと責任におきまして、研究機関に入るときの誓約書みたいなものがあるわけでございますけれども、それについても、きちっと自分で理解をし、納得をした上でサインをするということにしていかなければならないと思っております。
日本という国自体が、今おっしゃったような意味の厳しい国内ルールというのができておりません。そういう中で、やはり国際的にある種のグローバルスタンダードをつくりながらお互いに研究者の交流を深めるということが大事であると思いまして、小野委員のお話、大変大事なお話であると思います。今後とも検討していきたいと考えております。
○小野委員 極めて積極的な御答弁をありがとうございました。
研究者が今どういう契約で外国の研究機関に行っているかといえば、それぞれの研究機関と個々の研究者が個別契約によって行く形になっているのです。そうすると、ある研究機関に行くとあるルールだ、別の研究機関に行ったらまた別のルールだ、こういうことでは研究者の皆さんがどういうルールに従って研究をしていいか非常に戸惑う部分が出てくるだろうということで、先ほどグローバルスタンダードという形でのお話をいただきましたが、世界に共通のルールがまずあって、特に研究機関においてそれから外れるルールがあるとするならば、それは特別契約をそこで結ぶ、こういうふうな形に持っていくのが理想的な形だろうというふうに思っておりますので、ぜひこの点、御検討をお願い申し上げたいと思っております。
それから、第二点目の質問でございますけれども、これは、二十一世紀の日本の研究開発の方向性をめぐる問題でございます。
科学技術基本計画におきましても、主要四分野というのを制定いたしまして、その他主要項目というのが数点挙がっているわけでございますけれども、私は、それら問題に加えて、やはりシステムというものをうまく構成し、管理する技術というようなものも日本の将来のためにはぜひ必要な戦略分野だというふうに思えてならないわけでございます。
このしばらくも、科学技術に対して国民の不信の目が向けられた事故というのが幾多ありました。「もんじゅ」の事故もそうでございましょうし、動燃の工場における爆発事故というのもありました。また、ロケットにおきましても、H2が二回続いて失敗するというような問題もあったわけでございますが、これらはすべて、後でチェックを行ってみますと、システム全体がきちんと管理されていなかったという問題があったわけですね。つまり、想定外の事故が起こってしまったんだというわけでありますが、巨大な複雑なシステムを動かすためには、すべて想定内において管理ができるということがなければ危なっかしくてしようがないというのが実態だろうと思うわけであります。ですから、こういう想定外の事故が起こり得ないようなきちんとした、複雑であれ、いかに巨大であったとしても、それらが管理され、運営できるというようなシステム技術というものがこれから非常に大事な問題になってくるというふうに思えてならないわけであります。
加えまして、この問題は、人類社会に対しても非常に大きな英知を提供していただける分野だろうと思うのです。世界じゅうが一つのグローバルな存在になってくる、多くの価値観が競合しながら、文明が対立しながらこれからの二十一世紀社会というのは動いてくることになろうと思いますが、そのような複雑な巨大な人間の生活圏というものをどういう考え方で管理しながら運営していったら平和で豊かで幸せになれる地球社会をつくれるのかというような大きな課題にも、この巨大システム管理技術というものからの英知が生かせるはずだ。そんな面でいくと、この研究というのは、まさに人類のための研究だという意味合いも持ってくることになるに違いないと思っているわけでございます。
今後、システムの構成や管理の技術というものへの取り組みについて、予算などの資源を重点的に投入しながら人類への貢献を図っていくべきではないかという思いを私は持っているわけでございますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○尾身国務大臣 研究開発をしていく上におきまして、技術の進歩が片方にあり、片方に社会の仕組みが非常に複雑になる、そういう中でシステム技術開発というものが大変大事であるという議員の御指摘は、まことにごもっともであると考えております。
ですから、研究開発を各部分的な要素に分解してそれをまとめるというよりも、全体のシステムとしてうまく動くような、そういうことを念頭に置きながらいろいろな問題の研究開発を進めていく、そういう発想を新しい発想として取り込みながらこれからの研究開発を進めてまいりたいと思っている次第でございます。
○小野委員 この分野は大事な分野だと思いますので、ぜひ積極的なお取り組みをお願い申し上げたいと思います。
引き続きまして、第三点目が、ロボフェスタの問題でございます。
西暦二〇〇一年、二十一世紀の始まりの年に、日本の国が世界じゅうに呼びかけて、ロボットを使った総合的な競技大会を開催しようということを決めて、もうこれは四年くらいになりましょうか、文部科学省を中心にしての準備を進めてまいったわけでありますけれども、いよいよこの夏、神奈川県、それから大阪を中心にする近畿圏、この両地域でロボフェスタが開催されるということになってまいりました。
しかしながら、私どもわきから見ておりますと、これだけの創造的な新しい発想を持って世界に呼びかけたイベントであるにもかかわらず、いま一つ国民への浸透ないしは対外的な宣伝というものが少ないのではなかろうかというような気持ちがしているところがございます。
今後、この事業が具体的に開催されるわけでございますけれども、例えば式典への閣僚の参加、また、さらに進んだ広報活動の展開といったことに取り組みを進めていただきたいとお願い申し上げたいと思うわけでございますが、大臣の御所見はいかがでございましょうか。
○尾身国務大臣 実は、そのロボフェスタというのは、私も聞いておりましたし、存じ上げておりましたが、今、小野議員の質問に準備をするために調べてみましたら、七月の二十日からと八月の二十四日から開かれる、こういうことでございますが、そういう日時に開かれているということは、私は実は今まで存じ上げなかったということでございまして、まことにもってまだこのイベントの、私のせいもありますが、PR不足ということも大変あるのじゃないかというふうに思っておりまして、文部科学省が中心でやっておりますけれども、私どももできる限りの協力をして、できるだけ大きい、青少年を全部この問題にかかわらせるようなものにできるだけしていきたいと考えております。そういう趣旨の御質問をいただきまして、ありがとうございました。
○小野委員 もう尾身大臣のとにもかくにも前向きの御答弁を次々といただきまして、感謝感激のきわみでございます。どうか何とぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
ロボットというテーマを出しましたついでにと言うと、これは村井大臣に非常に失礼でございますけれども、実は、ロボットの活用という問題がこれからの日本の非常に大きなテーマになってくると私は考えております。これまでもロボットは、人間の肉体労働において継続的に同じ作業をするというのは、非常にこれは疲れにつながるものでありますから、そういう単純労働の部署には工業用ロボットというのが非常に広く普及をいたしておりまして、間違いなくこの分野は世界一の技術とそれから普及度を持っている、こういうふうに考えております。
その分野を超えてこれからどういうふうにロボットが活用されるかということが、今後日本の国でどのようにロボット産業を育成できるかというかぎになってくるというふうに考えているわけなんですね。一部では、AIBOだとかまたホンダのASIMOだとか、いろいろな取り組みがなされているわけでございますが、すぐに実用という観点から考えますと、私は、災害現場だとか身の危険を覚える犯罪現場、こういうところに投入できるロボットというものが必要なのではなかろうか、こんな気持ちがしてならないわけでございます。
例えば三宅島も、亜硫酸ガスが出てきて人が住めないという話があるわけでございますが、そういうところでも、ロボットならば、どんなガスがやってこようと、どんな暑い環境であろうと寒い環境であろうと、そのためにきちんと設計しておけば動かすことができるわけでございまして、人がそこに行けないという場所で活躍できるロボットを開発してみるということが、今までの工業用ロボットからもう一歩進んだロボットの分野を切り開いていける力になるに違いない、こんなふうに思っているわけでございます。
村井大臣におかれましては、ロボットに以前より非常に強い御関心をお持ちになっておられるということを仄聞もいたしておりますし、ちょうど災害担当、また国家公安委員長として犯罪対応というような部署におられるわけでございますが、この分野でどういうふうにロボットが使えるかということを総合的に研究されてみられることが、新しい可能性を日本社会に開くのではなかろうかと思うわけでございますが、御所見をお伺いしたいと思います。
○村井国務大臣 大変意欲的な小野委員の御提言でございまして、私もかねて、ロボットというのはいろいろな可能性を持っている、そしてまた日本でも大変将来世界をリードできる、そういう素地のある分野だということは感じておりましたし、それから現実問題としまして、例えば警察なんかでも、水中ロボットですとか、あるいは爆発物の処理なんかにロボットを使っておりまして、水中ロボットでは、この四月でございましたか、岩手県で水中に落ちました車を、濁ってしまってよく見えなかった、そこをロボットを遠隔操作いたしまして、その車の所在を確認してこれを引き揚げたというような形でも使われておりまして、既に装備化されております。
さらには、今御指摘の災害でございますけれども、御案内のように、有珠山にしましても、あるいは三宅島にしましても、火山灰が大分滞留しておりまして、これが泥流になりまして流れ出した場合に、またさらなる災害を起こすおそれもある。そういうところへ、今おっしゃった噴煙の問題もございますけれども、危険もございまして、人がなかなか入れない。そういうところでの砂防的な工事でございますね、流路工工事、こういったものにもロボットが使えるのではないかという問題意識は持っておりまして、いろいろな形で、これは実際やりますのは、経済産業省とかあるいは文部科学省等々のお力もいただかなければいけませんし、大きくは科学技術総合担当の尾身大臣の御示唆もちょうだいしながら、何とかこういう将来夢のあるプロジェクトを進めるように、そしてまた、それを使えるニーズというもの、これも組み合わせて推進していくことができればと思っております。ぜひいろいろ御指導をお願い申し上げたいと存じます。
○小野委員 このロボットは、要素技術としてはかなりのものができ上がってきたと私どもも認識しております。ですから、どう使えるのかということをこれからみんなで見つけ出していって、その用途のために力を合わせたら、かなりのロボットが実現できると思うのですね。日本の国の未来産業を切り開く、小泉総理の所信表明でいうならば、潜在する力を引き出して日本の国の次の時代の産業を育てる、こういう観点からもこのロボットというのは非常に大きな可能性を持っているというふうに私は考えております。
どうか、今後ともこの分野の研究をお進めいただきますことを心からお願い申し上げまして、質問を終了したいと思います。どうもありがとうございました。
○横路委員長 中沢健次君。
○中沢委員 民主党の中沢でございます。
先週の八日の質問に続きまして、まず石原大臣に一問だけ。あのときも申し上げました。公務員制度の改革、それは労働基本権と表裏一体である、国内においては関係の労働団体とよく協議をしてやるべきだ、一方、ILOの動向についても注目をすべきであると。
そこで、ILOの動きなんです。実は、午前中から委員会をやっておりまして、私の手元に七ページにわたるILOのホットニュースが届きました。あるいは、同じような内容が石原大臣にも届いていると思います。私の手元に届きました情報の表題は、大事でありますから読み間違えないように申し上げますが、「ILO条約勧告委員会で日本の公務員制度改革等を審査 日本政府は「公務員制度の具体的内容は、職員団体と誠実に交渉・協議する」と表明」、こういう情報です。
時間がありませんから、多くは申し上げません。日本時間でいうとちょうど昨晩夜遅く、この会議が開かれまして、この問題について政府が冒頭陳述を行う。それに対しまして、日本の労働側の関係者から反論と政府批判が出る。六つの国の労働団体からも同様の見解が表明をされて、それを受けて政府側からいろいろお話があった。その内容が今表題として出ている内容です。最後に議長の方からも、いずれにしても日本における労使の積極的な協議を行ってやることを希望する、こういうことで、きのうは、正確に言えばきょう、何時間かの会合が終わっている。
それで、私は、やはりこの問題は、前回もいろいろ議論しましたけれども、問題の重要性の認識は大臣も私も全く共通していると思います。六月の第四週に出す基本設計、それに向けての労使のさまざまな協議はもちろん大事だけれども、それ以上に大事なことはそれから先だ。これはぜひひとつ、国内における問題であると同時に、国際的な問題に今日なっているわけでありますから、そのことを十分踏まえて、恐らくあす十四日、予定どおり労使の話し合いが、私としてはやや本格的に始まるのじゃないかな。ですから、そのことを大事にして、これから先、国内問題とはいいながら、国際的にも相当やはり注目をされている問題でありますから、この問題の担当の大臣としてしっかりその重要性を認識してやっていただきたい。
この間も指摘をしましたように、どちらかというと今までやってきたことは、何回か事務当局ともやっていますが、ちょっと言葉が過ぎるかもしれませんが、やや形式的である。実態が伴っていない。公務員制度の改革をどこまで踏み込むか、それの裏返しで労働基本権の問題についても相当真剣に交渉、協議をしなければいけない、こういうことだと思いますので、単なる話し合いではなくて、国際的に見たら交渉、協議、日本政府も正式にILOの場でそういうことを申し上げているわけでありますから、そういう認識をしっかり改めて持っていただいて事に当たっていただきたい。関係の厚生労働省とも十分連携をとってぜひひとつやっていただきたい。
この一問にしておきたいと思います。いかがでしょうか。
○石原国務大臣 中沢委員の御質問にお答えいたしたいと思います。
中沢委員御指摘の問題点の認識は共有いたしておりますし、前回も内閣委員会だったかと存じますが、私もこれからも、改革を志向する勢力であるならば誠心誠意、とことんおつき合いをさせていただくとこの場で御答弁させていただいたことに何ら変わりはございません。
また、ただいま委員御指摘のILOの条約勧告適用委員会での議論でございますが、きょうの未明にアルゼンチンの議長さんが口頭で集約されたということで、私どもが認識しております問題意識は、今委員御指摘の労働基本権の問題については、従来から条約勧告専門家委員会において審議が行われており、これを受けて今回の総会委員会でこれらの問題について幾つかの国の労働側から指摘があり、これを受けてこれらの問題の解決のため政府に対し労働組合との社会的対話を求めたものという認識を持たせていただいております。ただし、現在進行中の公務員制度改革について言及しているかということについては、今のところ必ずしも明確ではない。そういう、スペイン語の口頭集約を英語に直して、それを日本語に直したものでございまして、厚生労働省を通じてこのような情報を私も把握をさせていただいております。
○中沢委員 いずれにしても、非常に大事な政治課題でありますから、担当大臣としてはそのことを十分念頭に置いてやっていただきたい。
どうぞ、退席されても結構です。
さて、竹中大臣に、あと残った時間いろいろお尋ねをしたいと思います。
まず、前回残りました三問はこの後にしたいと思いますけれども、今古賀委員も指摘がありましたように、十一日に経済見通し、経済成長率の見通しが公表されました。残念ながら、国民にとっても非常にやはり残念ながらだということだと思うのですが、十二年度の一・二%の目標が、結果的に〇・九%にとどまる。
私は野党だから言うわけではありませんが、政治の世界でいうと、その責任はやはり政府・自民党がしょわなければいけない。しかし、政治家として、私ども野党といえども、単に批判をするだけではなくて、これからどうするか、こういう前向きの姿勢で私はやはり事に臨んでいきたい。
さて、問題は十三年度の経済見通しの一・七%ですよ。竹中大臣もいろいろなところで、あるいはテレビでも発言をされていて、率直に言って、私の印象としては一・七%は非常に難しい。さてそれでは、どの程度のことを担当大臣としては自分の胸の中で考えているのか。きょう公表することがいいかどうかは別にして、本音はもうそろそろ、もう六月ですから、やはり一・七%は難しい、しかしこのぐらいは何とか頑張ると。そのためにも今度の、例の基本方針で示された構造改革が大事だ。しかしそうはいっても、先ほどの答弁にもありましたように、フリーハンドの余地は余りない。そうすると、相当重点を絞って十三年度の具体的な対策を打つ、こういう必要性があると思うのですが、その辺についてはどうでしょう。率直にお答えをいただいておきたいと思います。
○竹中国務大臣 今年度の政府経済見通し一・七%の実現は困難なのではないかということは、実は就任の日から私、記者会見で申し上げておりました。先般のQE、一―三月期の数字が出まして、一・二%の実績見込みに対して昨年度は〇・九%であった。一・二を受けての一・七であったわけですから、その一・二が〇・九になって、かつ年度の最後の四半期の成長率がマイナスであったということは、これは議員御承知のように非常に発射台が低いということですから、その意味でも、数字の達成という面からいうと、やはり大変難しくなっているということだと思います。
では、何%かという前半の御質問に対しては、閣議決定された数字を私が勝手に否定するのはなかなか難しいものがあろうかと思いますので、これは実は、経済財政諮問会議の骨太の方針の中でも、シナリオを中期的に描いて、その中で足元の数字がどのぐらいになっていくかを議論するということをかねてから申し上げておりますので、その中でぜひとも議論をさせていただきたいと思います。
御質問の後半にありました、フリーハンドがない中で、ではどのような政策運営をしていくのだというお話ではありますけれども、フリーハンドがないからといって何もしないでいいということではないわけでありまして、先ほど申し上げましたように、やはり、私は金融政策の重要性はますます高まっていると思います。またしかし、これは日本銀行が独立性を持って決めるものでありますが、私はその会議に出席する立場にありますので、明日、明後日とございますけれども、私の考え方は非常に明確に申し上げたいというふうに思っております。
加えて、もう一つ多分重要になってきますのは、とにかく今幾つかの対策本部ができておりまして、これは雇用の本部もできていますし、都市再生の本部もできています。担当の大臣と協議しながら、今幾つか計画されているものがありますから、それを一刻も早く前倒しできるものを探す、そういう努力はまたしなければいけないと思っています。
そういった非常に小さなことの組み合わせになってしまうのでありますけれども、その足元の狭い道を何とかそういう小さなことの組み合わせで守っていきたいというふうに思っています。
○中沢委員 そこで、これからは地方財政問題に限定をして少し議論してみたいと思うのです。
私は、大臣が知っているかどうかは別にいたしまして、北海道の夕張の出身なのです。毎年、地方の財政についてのさまざまな数字が出てまいります。残念ながら、全国三千三百弱の市町村の中で大体ワーストテン、ワーストファイブ、時によってはワーストワン、つまり財政が非常に厳しい。裏返しをするとそれだけ、いい悪いの議論を別にいたしまして、現実的には地方交付税等々に大きく依存をしないと市町村の具体的な事業、住民に対するサービスが全く手不足になる、これが現実です。
今たまたま、額が上がっております奥田さん、亡くなりましたが、自治大臣の折に、私はそういう思いも含めて、ぜひひとつ夕張に一度実態を見に来てくださいと。結果的に、札幌まで公務で来られて、その足で夕張まで来ていただいて、いろいろ現地の生の声などを聞いていただいたのを今思い出しました。
そこで、大臣はついこの間釧路に入られた。テレビで若干その報道を見ました。恐らく二十四日、小泉内閣のセールスポイントと言っていいと思いますタウンミーティング、また札幌にお見えになる。北海道新聞では一面大々的に宣伝していまして、私は民主党の北海道の代表ですから、やや偏っているというか、バイアスがかかっているかもしれないけれども、これはやはり税金を使った小泉さんの、総理大臣としてあるいは自民党の宣伝じゃないかな、こんなに思ったぐらいです。このことは別に答弁の必要はありません。
そこで、第一の質問は、地方交付税の削減問題です。
最近、大分鳴りは潜まってきた、こんな印象ですよ。しかし、最初のうちは、交付税一兆円減額するだとか、あるいは基準財政需要額の一%カットだから、恐らく二十六兆円配っていますから、二千六百億円カットだな。僕の周辺は、今言ったように、表現は乱暴かもしらぬけれども、簡単に言えば貧乏な自治体ばかりなんですよ、産炭地だとか過疎地帯だとか。ですから、そういう自治体の首長や議会の関係者から見ると本当に大混乱、大変な政治不信、今でもそういう余波は残っています。
今度の方針の中にはそのことは具体的に示されていない。それから、本会議もほかの委員会でも、交付税減額というのは実はこういうことなんです、こういう内容の総務大臣の答弁なんかがありますから、比較的この問題についての混乱だとか不安というのはおさまりかけていますが、もともと、私の夕張だけじゃなくて、全国的に見て、やはりいや応なしに交付税には大きく依存せざるを得ないのですよ。これが実態だと思います。
ですから、経済財政諮問会議の担当大臣として、この骨太の方針を最終的にまとめる責任者として、今まだ途中経過でありますが、交付税の減額問題についてどういうことを考えていらっしゃるのか。
まさか交付税の一兆円減額なんということは考えていないとは思いますが、もう少しやはり国民に対して、あるいはそういう自治体に対して、余り混乱と不安をこれ以上助長させないような、そういう政治家としての――学者としての理論はいろいろあると思いますよ。これは論争する場でないから僕は言うつもりはありません。しかし、やはり政治家として、担当の財務大臣だとか総務大臣はいますけれども、この骨太の方針をまとめる担当大臣として、交付税の減額についてどういう具体的な考えを持っているか、少しく明確に示していただきたいと思います。
○竹中国務大臣 私も和歌山という地方都市の出身でありまして、和歌山県も、実にざっと三分の一以上の交付税を受けている、かなりそういう意味では相対的にはやはり貧しい県だと思います。父や母の生活やその周りを見ても、今の地方が現実問題として交付税に頼っているという現実は十分に認識しています。
ぜひ、まず幾つかの事実を述べさせていただきたいのですが、経済財政諮問会議の場において、何兆円交付税を削れとか、そういう議論がされたことは一切ありません。経済財政諮問会議というのは、そういうことを議論する場ではありません。まずやはり構造改革の中身をしっかりと議論して、それが財政の中にどのように反映されていくだろうかという一つの方向を議論するところでありますから、例えばこれを削れ、あれを削れというのは、そういう議論をされた方はいらっしゃいます、だれとは言いませんがいらっしゃいますが、経済財政諮問会議の場でそういう話は一切なかったということは、ぜひ御認識いただきたいと思います。それは私たちの本意ではありません。ただ、そういうものをあおるような新聞記事がたくさん出て、私たちも大変戸惑ったという事実があります。
これは、繰り返し申し上げますけれども、今のシステムそのものをやはり見直すのだ。今のシステム、地方が一様に大きく交付税に頼っているという事実があっても、今のままをそのままにしておいていいということは、多分これは地方の方もやはり思っておられないわけですね。ただ、それを見直しましょう、幾つかの問題点を挙げながらそれを見直しましょうというのは、骨太の方針のまさに中身です。
これをどのように制度設計していくかということは、骨太の方針で、要するに骨太の方針というのは、そういう地方の財政、道路財源だけを議論しているわけではありませんから、非常に幅広いことを議論していますので、まずそこまでしっかりと今月末にやってしまって、その後新しいスタートラインに立って制度設計しようというのが趣旨であります。
今の後半の御質問で、では、おまえはどのように考えているのか、政治的な立場から、政治家としての立場を言えということでありますけれども、しかし、これはやはり逆なのではないのでしょうか。私は、学者だったら幾らでも議論ができるのでありますけれども、それを取りまとめる立場の担当大臣が、私はこう思うということを、やはり政治的に考えて言えないのかなというふうに思います。
一点だけぜひ申し上げておきたいのは、経済の問題というのは比較的、経済的な研究をしてきた人たちの間では、大枠については合意があるのです。私は本当にそう思います。細かいところでみんな違うのですよ。でも、かなり、大枠こうしたらいいかということの合意は比較的あるのです。
ところが、この制度設計、私は道路財源も同じだし交付税もそうだと思いますけれども、これをでは変えるとしたらどう制度設計するかという議論になると、何人か思い当たるようなそうそうたる論者の中でも、これは驚くほど議論が違うのですね。
これを夏以降しっかりとやっていかなきゃいけない、大変大きな作業が待ち受けているというふうに覚悟しておりますけれども、先ほど申し上げましたように、だからこそ、今学者であれば私の意見を喜んで申し上げますが、むしろ政治的に私の立場は、個人的に考えていることはもちろんありますけれども、やはりちょっと発言できないのではないかなというふうに思っております。
○中沢委員 立場はわからないわけでありませんから、きょうのところはやむを得ないと思うのですよ。
ただ、交付税減額先にありき、こういうことはやはり絶対だめですね。地方だって協力しようと思っても、あるいは我々のような片田舎の出身の国会議員が協力しようと思ったって、それは協力できないのですよ。そういうむだな壁はやはり政治家のレベルでつくるべきではない、私はこのことだけは指摘しておきたいと思います。
そのことに関連して、特に私ちょっと気になっていることを一点だけ。
やや専門的な話になるかもしれませんが、交付税制度はいろいろな補正がありますね。段階補正という補正もあるのですよ。きのうの本会議で片山総務大臣は、段階補正は優遇措置だという答弁をされました。私は断じて優遇ではないと思うのですよ。必要な制度だから交付税という制度の中でさまざまな補正をやって全体のレベルをずっと平準化する、そういう意味での段階補正だと思うのですよ。
最初出ました骨太の方針の下書きの段階で、いわゆる段階補正は縮小すると。今度の十一日の内容でいえば、見直しをすると表現が少しトーンダウンをしている。私は、先ほど言いましたように、余り多く地元のことだけは言いませんが、やはりこの段階補正が実態的に平成十二年度もあるいは十一年度も予備的にもう既に少し手がついているのですよ。人口五千や一万ぐらいの小規模な市町村でいうと、今でも大変被害を受けている。そういう実態に照らして考えますと、これから先、段階補正について、縮減という言葉じゃなしに見直しという言葉になってはいるけれども、これがどの程度されるかによって、小さな町村でいえばやはり単年度で千万単位の交付税が右から左へ減るわけですから、これは大変だと思いますね。
もっと政治的な話をすると、今市町村合併という大きなうねりをつくろうとしている。どうしても合併についてのさまざまな問題があって、小さなところは段階補正をもっともっと厳しくやることによって合併を促進したらどうだ。これはある意味では兵糧攻めみたいなものですよ。手段としては極めてこそく、こういう感じがするのです。
大臣としては、この段階補正の問題について、諮問会議の中で余り各論もやらないということはわかりますけれども、御出身は和歌山だし、夕張ほど貧乏はしていないけれども、生まれ育ちや自分の体験からいって、この段階補正問題の重要性についても相当認識をされているのではないかなということを前提にして、さて、竹中さんはこの問題についてどう思うか、率直に聞いておきたいと思います。
○竹中国務大臣 個別の問題については、もう委員御指摘くださったとおり、今まだ議論をしている最中ですので、私の立場でちょっと、こうあるべしということにはならないのでありますけれども、やはり幾つかの議論の観点があるのだと思います。
規模でだけ今のような一種のインセンティブを与えるということがよいのかどうか。確かに、地方の生活を支えるために何らかの補てんのようなものは今後も必要なんだと思いますけれども、それを規模でやるのがいいのかどうか、やはり大きな判断をしなければいけないのだと思います。
同時に、方向として出てくるのは、結果としてはある程度の自治体としてのまとまりが、これが幾つなのかというのは、これは先生方もずっと議論されて、いろいろな議論があるわけですけれども、合併をやらなきゃいけないと総論では皆さん言いながらなかなか進まないという事実に対して、ではどういう政策を我々は用意できるのかという、遠い目標に対してはやはり政策手段の問題もあろうかと思います。これが余り強引なものであって、非常にきついむちになってはいけないということも事実だと私は思いますけれども、しかし、かといって、現実を今までのまま放置して、結局かけ声だけで市町村合併が進まないということをやはり放置することもできない。私は、その意味では、インセンティブをどう与えるということですから、やはりトータルな中で、これも段階補正の見直しというのは一つの手段としては考えなければいけない問題としてあるというふうに私は認識しております。
ただ、繰り返しますが、それはトータルの中での制度設計の話でありますので、小さな自治体の実態も踏まえて、やはり綿密な制度設計がなされなければいけないと思います。
○中沢委員 さて、最後の質問にしたいと思います。
例の国と地方のつまり役割分担の問題。もちろん、それは国と地方の税制、財政の問題ということにダイレクトにつながっていくと思うんですね。我が党としては、やはり本格的な地方分権を目指す、それは権限を移譲するだけではなくて、それに見合った税財源の移譲が必要だ、終始一貫、そういうことをずっと主張して、党の税制調査会だとか、あるいは我々レベルも含めて、いろいろ今具体的な作業を進行中なんですよ。
そこで、今度の骨太の方針の中にも若干触れられておりますが、一方では、総務省所管の地方分権推進委員会、これもこの問題についてほぼ最終的なまとめに入っている。この委員会以外の委員会でも、あるいはきのうの本会議でもいろいろ議論がありました。
具体的に聞いておきたいのは、私はもともとそういう持論であります。やはり、本来的にもっともっと、中央集権の国家ではなくて、地方分権連邦型という表現なんですが、そういう国家像を目指して、そして権限と同様に地方に税財源のそういう権限を移譲すべきだと。言葉としては再配分という言葉でもいいと思うんですよ。
きのう、塩川さんは、国も地方も、どんぶり勘定とは言いませんが、同じトータルの中で国の財源を地方に移譲したら国はそれだけ歳入欠陥になるからだめなんだ、こういう比較的わかりやすいといえばわかりやすい、しかし、本来はそうではないんですね。それは専門家ですから御承知だと思うんです。
ですから、やはり今度の基本方針の最後のまとめの段階で、国と地方の財政あるいは税制の問題については相当メスを入れて改革をしなければならない。その場合の非常に大事なポイントとして、どこまでやるかということもそうだけれども、そういう基本的な考え方に立って、やはりこの際、地方と国の持っている今の約六対四の税財源の配分割合、仕事の量からいったら逆転をしている、そういう状態を変えるような、そういう改革議論の具体的な中身をやはりまとめることが、大方の国民あるいは地方の関係者、非常に熱望をしているのではないか。
同時に、先ほど来指摘をしてきたような内容は、ことごとく、国会レベルの議論もそうですけれども、これはやはり大臣もみずから直接乗り込んでいくような気構えも含めて、そういう現実問題であえいでいる地方の実態をよく、やはり百聞は一見にしかずですから、タウンミーティングで行かれることも結構だけれども、そういう現場にぜひ足を運んで、そして生の声をこの政治の世界の中に持ち込んで担当大臣として今度の改革に反映する、こういう努力も含めて期待をしたいと思いますが、そういうことについてお答えをいただいておきたいと思います。
○竹中国務大臣 まず、一番最後に御指摘のありました、とにかく生の声を聞け、一歩二歩踏み込んでやはり幅広く対話を深めろという御指摘は全く必要なことだと思っておりますので、私なりにぜひ努力をさせていただきたい、これはもう心底思っています。
前半の財源の移譲云々の問題でありますけれども、委員御指摘になったように、やはり税の仕組みそのものを、つまり税源そのものを組み替えなければいけないということに関しては、私は、これはもう経済財政諮問会議の中では幅広い合意があるというふうに認識しています。ですから、これを今後議論するというスタート台には、私はもう間違いなく立っていると思います。
ただ、問題は、その移譲という言葉、移す、譲るという言葉に、恐らく国民から見ればなかなか理解しがたいような反応をやはり幾つかの立場の人たちがしているということなのだと思います。したがって、その移譲という言葉を使うかどうかわかりませんが、その移譲という言葉の中に、今後さらに深まるであろう制度設計に対する一つの思い入れのようなものが皆さんあるんだと思います。
それが、言葉は大事だ、さはさりながら、言葉の問題ばかりやっていても仕方ありませんので、先ほど申し上げましたように、税源の組み替えをやる、見直しをするということに対しては合意がありますので、最終的な文言はともかく、ぜひともそういうようなスタートラインに立って夏以降の制度設計に臨みたいというふうに思います。
○中沢委員 ありがとうございます。
先ほど奥田さんの話をしました。たまたま夕張はこれから非常に、日本一のメロンのおいしい時期ですから、希望があれば夕張まで御案内しますので、これからもまたいろいろ御苦労が多いと思いますが、頑張っていただきたいと思います。ありがとうございます。
○横路委員長 島聡君。
○島委員 民主党の島聡でございます。
きょうは、官房長官と竹中大臣に質問させていただきます。
本当に官房長官、余裕が出てこられたような雰囲気でございまして、こう話していても横を向いて話をしておられますが、極めて記者会見のときでも余裕が出てきているきょうこのごろのようでございます。
きのう、経済財政諮問会議の基本方針を与党に説明をされたんですか、それで、異論続出というような新聞の記事でございました。新聞ですから、どこまで当たっているかどうかは私は存じません。そこには行っておりません。
この経済財政諮問会議で、竹中大臣が、最初の一般質疑のときに、私は実行するためにこの大臣をやる、改革ができなかったらいつでもやめる覚悟だというような趣旨のことをおっしゃっていたと思います。新しいビジネスモデルで政治もやっていかなくちゃいけないというような趣旨の発言をされた。私もそうだと思います。コンセプトリーダーというんですか、大臣の言葉で言いますと。それは、コンセプトを提示してぱっとやるということは随分成功しているような気がします。
ただ、問題はそこから先でありまして、政治というのはシステム、制度がありまして、昔、京都大学、今は亡くなられました高坂正尭先生にお話を聞いたときに、なるほどと思ったんだけれども、政治というのは制度が決定的なものであって、例えば、ウィルソンが国際連盟をやろうと思っても、結局、議会が批准できなかったからできなかったというのがあります。
そういう意味でいきますと、この経済財政諮問会議というのは物すごく使い勝手がいい、改革をしようと思うには使い勝手がいい規則になっているということがよくわかりました。あとはやるかどうかだけでありますし、それを一つ一つとってきょうは確認していきたいと思います。ただ恐らく、それをやっていくに当たって、後で官房長官にお聞きしますが、閣議というのが一つ問題なのかなと思っています。
経済財政諮問会議の運営、どうやってやるのかなというふうに思っていました。かなり異論が出るような、改革というのはスピードでありますから、異論が出てきたり、ある意味で多数決的なことをやらなくちゃいけなくなったりするようなことがあったとき、どうするのかと思って調べてみましたら、平成十二年六月七日に経済財政諮問会議令というのが出て、平成十三年一月六日に経済財政諮問会議運営規則というのが出ています。お手元にあると思います。
経済財政諮問会議運営規則第四条「議事」というのがありまして、「議長」、まあ総理に当たるんでしょうが、「議長は出席議員全員の同意を得るよう努めなければならない。」とありますが、三項は、「前項の規定にかかわらず、全員の同意を得られない場合には、議長が会議の議論を踏まえた上で、議事を決する。」とある。ということは、これは多数決でもない、たとえ少数意見であったとしても、議長が会議の議論を踏まえた上で議事を決することができるというように私は解釈するんですが、それでよろしいですね。
○竹中国務大臣 経済財政諮問会議は、総理のリーダーシップのもとに政策を実施していこうという器であるというふうに認識しています。そのためにこういうふうな書き方がなされている。その意味では、島議員の御質問に対しては、イエス、そのとおりだと思います。
○島委員 あと、第五条というのがあります。例えば、私が抵抗勢力ならいろいろ考えます。いろいろ考えますというのは、何とか議事をさせないようにするためにどうするか考える。例えば、「議員の過半数が出席しなければ、会議を開き、議決することはできない。」と第四条にありますから、では休めばいいんだというふうになるわけであります。私が抵抗勢力だったらですよ。政治家というのはそういうことを考えますから、気をつけてくださいよ、抵抗勢力は。物すごく考えるんだから、そういうことは。特に考える人があそこにいますから。教えていただいた大先輩ですが。
ただ、第五条というのがあります。「緊急時の特例」というのがありまして、「議長は、会議を招集した場合において、議員の過半数が出席することが困難であり、かつ、緊急に会議の審議及び議決を経ることが、会議の目的達成のために必要と認めるときには、」「会議を招集し、会議は審議及び議決を行うことができる。」とあります。つまり、過半数じゃなくても、緊急だ、例えば六月末までにやらなくちゃいけない、もうすぐ六月末だ、しかも経済が非常に厳しい状況である、構造改革なくして景気回復なしだ、何としても貫かなくちゃいけないというふうになるとすると、緊急だというふうに議長が判断した場合に、過半数が出席しない場合でも緊急時でやれるというふうに私は読みますが、それでいいですね。
○竹中国務大臣 ちょっと済みません、手元に文がないんですけれども、諮問会議というのは極めて重要なものでありますので、例えばですけれども、こういう想定をしたら怒られるのかもしれませんけれども、何か事故で参加できないような場合もあるわけでありますから、そういうことも想定して、総理のリーダーシップのもとで機動的に物事が決められるという仕組みになっているというふうに認識しています。
○島委員 つまりこれは、何が言いたいのかといいますと、本当に総理のリーダーシップで決められるんですよ。相当ないろいろな議論があって、もちろん、徹底して議論をすることは必要ですよ。でも、議院内閣制だから、何か、大統領制じゃないから首相が独裁でやっちゃいけないみたいなことを言う人がいますけれども、議院内閣制というのは、いつも言っているように、最終的に国民及び国会に対して連帯して責任を持つというのは首相と内閣なんですから。しかも、今回のいろいろな中央省庁改革基本法等に基づく首相の機能強化というのは、基本的に首相なわけですから、経済財政諮問会議というのは相当なことができるんです。やらなかったら、総理は気合いだけだったということなんです。それで、もしやらなかったら、私たちは徹底して追及しますよ。やれるのにやらなかったというのは大変なことですから。まずそれを申し上げておきます。だから、経済財政諮問会議というのは相当なことができるという話をまずします。それで、とりあえず、大変な議論があった上でまとまりました。
次、経済財政諮問会議の方針、これは閣議にかけるというところまでは新聞報道でされています、真偽のほどは定かではありませんが。竹中大臣は経済戦略会議もやっておられたんで、これは官房長官にお聞きするんでしょうか、経済財政諮問会議の方針が決まりましたらこれは閣議にかけるという新聞報道がありますが、これはそういうことですか。
○福田国務大臣 たしか前回の委員会でもお答えしたんじゃないかと思うんですけれども、その方針であります。
○島委員 私じゃないと思いますけれども、閣議にかけられるということですね。閣議にかけて、首相発議の形でとらえるという形だとしますと、そのときに、官房長官にお尋ねするんですが、首相発議として出されるということは、これは首相の方針ですよね。
前回のときには、あのときも、私も、後で議事録、まだ未定稿ですが読み返してみて、ちょっと自分の若さを反省をしました。ここでうまい答弁をしていらっしゃるんですね。例えば、プロセスの話で、いろいろあるでしょう、では御意見を伺いましょうというようなときに、個々に発言をする、そしてその結果、何対何ですねなんという話もあるかもしれぬとさらっとおっしゃっている。何対何ですねなんという話もあるかもしれぬということは、これは多数決もあるかもしれぬということをさらっとおっしゃったんだろうかなと思ったんですが、そこを私があえて、では多数決でいいんですかと聞いてしまったんで、そうじゃないというふうに後で否定されておりますけれども、ちょっとこれは答弁が随分いわゆる技術があるなというふうに見ました。
それはそれとしまして、質問は、首相が方針を出します、発議をします。発議をして、現在、全会一致制であるとしますと、これは要するに、各閣僚が簡単に言えば拒否権を持ったと同じことを意味します。官房長官にお聞きしていますが、拒否権を持ったと同じことを意味します。拒否権を持ってやったということは、首相が方針として出す、こうだという形で出す、ところが閣僚が拒否権を発動してやる、そうすると内閣としてはそれが動かなくなります。一閣僚でも反対したら、これは拒否権を発動したと同じ意味になりますから。そうすると、動かなくなるということは、これは内閣が行政権を執行できないということになりませんか。
○福田国務大臣 閣議においての話だと思いますけれども、憲法において、内閣は、行政権の行使について、国会に対して連帯して責任を負う、こういうふうに書いてあるわけです。ですから、連帯して責任を負うという意味はどういうことかといえば、これは内閣の構成員すべてが一体として統一的な行動をとる、こういうことであります。ですから、その中で一人でもそうでない行動をとるというようなことがあれば、それはそのときどうするかということでありますけれども、これはもう絶対的に全体が一致してその発議に賛成するということでなければいけないということなんであります。
○島委員 全体が一致して賛成しないといけない、そういうことを聞きましたので、それは多分そのときには罷免をされるのか、あるいはどうされるんでしょうか、ちょっと私もその辺わかりませんが、今の言葉の中では、全員が一致して賛成しなければいけないということだけきちんと聞いていきたいと思っております。
そういう形なんで、閣議はそういうふうになりました。全員が一致して賛成しなければいけないそうでありますから、きっと、賛成しなければいけないようにするんでしょう。そういうふうになったというわけでありますが、ただ、官房長官、ちょっとお聞きしますけれども、行政改革会議の提言、前回も申し上げましたけれども、内閣総理大臣の見解がそういうふうになる場合において、多数決制も考えた方がいいのではないかというようなことを行革会議の方が提言していますという話をしました。
今回、いわゆる中央省庁改革基本法の十四条で、「内閣機能を強化するため、内閣及び内閣官房の運営の改善を図るものとする。」というのがあるのです。そうなってきますと、今申し上げた多数決制というのは、各省庁の割拠性をある意味で助長していることもありますし、閣議にかけた基本方針、特にこれは発議権が出た場合に、かなり荒っぽい話になりますよね。発議権、いわゆる賛成をしなくてはいけないというような話になるわけですから。これは「内閣及び内閣官房の運営の改善を図るものとする。」ということもありますから、再び聞きますけれども、多数決制について検討する考えはありませんか。
○福田国務大臣 最終的な決定を閣議でするという場面において、その場で、今おっしゃられた、これは行政改革会議の最終報告の多数決云々という話ですけれども、これはやはり閣議であるからには、先ほど申しましたように、連帯して責任を負う、これはもう憲法で決まっているわけでありますから、やはりこのことを重く考えなければいけない。したがいまして、いろいろな過程があると思います、その過程、過程において多数決とかいったようなものもあるかもしれぬけれども、最終的に閣議においては連帯責任、こういうことであると思います。
○島委員 ありがとうございました。今の答弁で十分、多数決もあるかもしれないという答弁で結構でございます。
官房長官、これで結構でございますので……(発言する者あり)いや、いいです。もう官房長官が答えたからいい。(福田国務大臣「それはプロセスとして……」と呼ぶ)はい、結構です。わかりました。それで結構です。ありがとうございます。
○横路委員長 答弁はよろしいですか。
○島委員 はい、結構です。答弁は参考人の方は結構です。(発言する者あり)いや、官房長官が言ったら、それはそれで政治責任ですからいいです。私は結構ですと言っています。私はいいと言っています。結構です。ありがとうございました。
ということで、いろいろありますが、プロセスの過程で多数決もあるそうですから、何とか、あともし多数決があって、多数決でどうしても批判する人だったら、罷免すれば何とか閣議も通るでしょう。そういう形になると思います。
経済財政担当大臣というのは、実は大変な権限を持つのですよ。これは行革会議の議論の間には、副総理級だと言われている。これはどういうことかなというふうに私から思いますと、恐らく内閣府設置法十二条だと思うのですけれども、十二条をさらっと言いますと、資料提出及び説明を求めることができる、こんなことはいいのですけれども、その後、特命担当大臣は、事務の遂行のために必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、勧告することができるとあるのです。
ちょっと確認します。この関係行政機関の長というのは各大臣は入りますよね。
○竹中国務大臣 入ります。
○島委員 ということは、とりあえず閣議決定したら、総務省とか国土交通省とか、その経済財政諮問会議の計画に従って、あるいはどういう名前になるか知りませんが、基本方針に従って、それに対して、進めていなかったら、これに従っていないということで、各大臣に対して経済財政担当大臣が勧告することができるのです。結構すごい権限があるのですよ。
さらに、勧告して、うまくいっていないといったら、それを報告を求めることができるというのが第三項です。おまえ、やっているかというプラン・ドゥー・シーのチェックができるわけです。さらに、それでもなかなか動かない場合には、閣議決定がされているという前提でありますが、内閣法六条の規定によって総理大臣に意見具申することができる。内閣法六条というのは、総理大臣の指揮監督なのです。
ということですから、閣議決定を、今プロセスの過程で多数決もあると言いましたから、やってしまったら、これは経済財政担当大臣は各大臣に対して、これをこういう方向性でやりなさい、やっていなかったらそれに対して報告を求めることができて、さらにできなかったら、総理大臣にまで勧告して指揮監督をさせることができるというように私はこれで解釈しておりますが、それでよろしいですね。
○竹中国務大臣 法文的な解釈としてはそれでよろしいかと思います。
○島委員 ですから、法文的な解釈はそうなんで、できるのですよ。これはしっかりやっていただきたいというふうに思う次第でございます。
だから、逆に言うと、六月末までが実は勝負でありまして、そこで閣議で決めてしまえばできるのです。多分そうなってくると、六月末までどういうふうにするか、いかに骨抜きになるか、骨抜きにするかというのですか、そういうことをしっかりなさる方が出てくるかと思います。
ただ、この中でちょっと気になることがあるので、それを私は確認します。気になることです。これは各関係行政機関の長、さっき日銀の話もしておられました。これは日銀総裁も入るのですか、どうですか。
○竹中国務大臣 日銀は独立しておりますので、入りません。
ただし、私は、日銀政策決定会合に参加する立場にありますので、そこで意見を主張するということになります。
○島委員 きのう自民党の山崎幹事長が、これも報道ですからはっきり私は真偽はわからないのですけれども、金融緩和をもっと強調すべきだなんということを発言されたというのがあるのですよ。その辺が物すごく難しいと思うんです。
私は、日銀は独立、新日銀法というのは独立性を重視したものですよね。ただ、日銀法をよく読むと、通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすことを踏まえ、政府の経済政策の基本方針と整合的になるよう、政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならないとありますから、読みようによっては、経済財政諮問会議がある程度やってもいいのかなと思うときもあるのです。
しかし、日銀というのは、ある程度独立性を求めないとこれはゆがむと私は思っているのです。そうなってきたら、自民党の山崎幹事長は、金融緩和をもっと強調すべきだなんという指摘があるわけでありますが、まず、こういう意見があったのかどうか、それから、こういうものにどう対処されるのですか。
○竹中国務大臣 そういう意見があったかどうかというのは、どういう場でという御質問ですか。
○島委員 これは、私は報道で見たものでありますが、与党の説明会でということで報道されております。そのほかにも、公明党の北側一雄政調会長はとかありますから、恐らくその場所だと思うのですが。
○竹中国務大臣 昨日来の会合については、だれがどのようなことを言ったということは、私の立場からは申し上げられないという実は申し合わせになっておりますので、その点は御容赦ください。
日銀云々については、二つのかかわり方を現実にはしているわけです。日銀総裁御自身が経済財政諮問会議の、これは正規のメンバーで今いらっしゃる、委員でいらっしゃる。先ほど申し上げたように、私が向こうに行って意見を申し述べる立場にある。そういう形での議論の整合性をとる、整合的な経済政策全体の運営に努めていけるような立場にあるというふうに思っています。
○島委員 ぜひ、それは日銀の独立性というのは守っていかないと、私は経済政策がゆがむと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思っております。
経済財政諮問会議の予算の話だけ、あと五分ほどしかありませんので、話をしたいと思います。予算と経済財政諮問会議の考え方。
私ども民主党が、政権運営委員会というのがありまして、要するに、政権をとったらどういう政権の運営の仕方をするかという研究をしたのですよ。イギリスへ行ったのです。イギリスへ行きまして、ある議員が、ブレア首相の予算枠はどれぐらいですかと聞いたのですよ。日本だと、首相の予算枠というのが、例えば何千億とかありますね、橋本首相予算枠みたいなもの。そうしたら、向こうはきょとんとしたのです。首相の予算枠はどれぐらいですかと聞いたときに、向こうはきょとんとした。つまり、どういうことかというと、予算枠なんという発想がなくて、予算は首相が全部決めるものだと思っているのです。私もそう思うのです。予算というのは、基本的に首相が決めるものだというふうに私は思っています。
今回は、日本経済再生のシナリオと二〇〇二年度予算編成の考え方について今後細部を詰めていくという話でございますが、この経済財政諮問会議が、予算作成に当たって、どのように、どういう形で今後進めていかれるかについてお尋ねをしたいと思います。
なぜこんなことを聞くかといいますと、ずっと見てみますと、最初の経済財政担当大臣である額賀前長官は、この経済財政諮問会議のことをよく財政諮問会議というふうに略称されたのです、記者会見なんかを聞いていると。意識的かどうかは知りません、財政諮問会議と言われたのです。前の麻生担当大臣は、経済諮問会議とよく言われたのですよ。私、その辺をよく聞いていたのです。
それはどういう意味かというのは、皆さんすぐおわかりかと思いますが、行革会議の動きの中で、経済財政諮問会議と言うときに、財政を取って経済諮問会議にしようなんという動きもありました。つまり、予算というのをなるべく、それこそ聖域にしてしまおうという動きがあったわけであります。
したがって、お尋ねするわけでありますが、内閣府設置法において、経済財政諮問会議、今の所掌事務だけですと、重要事項について調査審議するとありますので、これは財政制度審議会と変わらないのですね。ですから、それをどのように違うというふうに位置づけて、もちろん内閣府に設置されたものでありますから一段上であるということもありますけれども、どのように考えられて、かつ予算の編成に当たってどのようにやっていかれるのか、お尋ねしたいと思います。
○竹中国務大臣 島委員の御質問は、一貫して、総理のリーダーシップとそのもとにおける経済財政諮問会議の役割の重要性を再認識せよというような御趣旨であろうかというふうに理解しております。
先ほどからブレア首相の名前ないしは議院内閣制と大統領の比較等々ありましたけれども、これはまさに釈迦に説法でありますけれども、議院内閣制というのは、そもそも、政治のトップになる人が行政府のトップを占めるということでありますから、非常に強いリーダーシップを発揮できるはずであるという認識があると思います。だからこそ、イギリスなんかを例に見ると、サッチャーもブレアもそのような政策をとった。それを日本の議院内閣制の中でどのように定着させるかという、ある意味で壮大な実験が今行われつつあるというふうに認識しています。
その一つのスキームとしての経済財政諮問会議の役割ということになるわけでありますけれども、御承知のように、六月を目途に、今いわゆる骨太の方針を取りまとめておりまして、これが各省庁の施策の策定等、来年度予算の概算要求に反映されることになっていくわけであります。
その後、さらに予算編成の基本方針を策定していきまして、それに基づいて、そこで会議が作成する答申の内容が閣議決定を経て内閣の重要政策に関する方針となれば、財務省がその閣議決定された予算編成の基本方針に基づいて予算編成を行うということでありますから、まさにそのリーダーシップのもとに枠組みをつくって、決して経済諮問会議ではなくて、経済財政諮問会議として政策の枠組みを決めて、それを予算に反映させる形で運営させていくという、これは新しい試みでありますけれども、その方向をぜひ実現させていきたいと思っています。
○島委員 今までの世界とは違った大変な政治の圧力がたくさんあると思いますけれども、日本の改革のために、いろいろな意味で、言葉は悪いですが、倒れられても、それはまさに男子の本懐ですから、しっかりやっていただきたいと思いますし、それをまた貫かなかったら、私は徹底して追及しますから。六月末までしっかり見ておきますから、しっかりやって、もしやらなかったら徹底して追及することを忘れないでください。
終わります。
○横路委員長 石毛えい子さん。
○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。
引き続き、竹中大臣に質問をさせていただきたいと思います。
この経済財政構造改革に関しましての基本方針、一昨日、目次案から素案というところに変化いたしまして、六月末までに骨太の方針にまとめられるというプログラムだと思いますが、この中で、社会保障に関しましても大変重要な指摘がなされております。制度設計、具体的にどういう方向に進むかによりましては、社会保障の原理が根本的に変わるというようなことすら予測されるのではないかという思いもして、この素案を拝見いたしました。
そこで、きょうは、骨太の方針に至るまで国民、市民も議論に参画していけるように、今諮問会議でどのような視角で議論をされているのかというような点、あるいは大臣はどういうリーダーシップを発揮しておられる、あるいは発揮されていかれたいのかというような点も含めまして、少し答弁いただければというふうに思います。
そこで質問でございますけれども、一番と二番をちょっと入れかえさせていただきたいと思います。単純な入れかえだけでございます。
まず、保険機能強化プログラムの中に社会保障番号制導入という指摘がございますし、後の具体的なところでもそういう指摘がございます。社会保障の番号制というのは、恐らく初めて出てきたテーマではないかというふうに思いますので、なぜ導入するのか、導入の目的、あるいはだれが番号を付されることになるのか、あるいはその番号にリンクされていく内容はどんなことが想定されるのかというようなことについて御答弁いただきたいと思います。あるいは、いつごろまとめるのかというようなこともあわせて答弁をいただけたらと思います。
○竹中国務大臣 私の方から基本的なことを申し上げて、坂統括官から補足をしていただきたいというふうに思います。
どのようなリーダーシップを発揮するのかというような問題意識であろうかと思います。私がこの社会保障の問題で一番考えておりますのは、とにかく、今の制度を国民から見て安心できるものにするということに尽きるのだと思います。安心できるものの幾つかの意味がありますが、特に、持続可能なものにする、サステーナブルなものにしていくというようなこと。
例えば、一部の支出が膨張を続けていて、このままではサステーナブルではない、年金等々で赤字がどのようになるかということに関して、サステーナブルではないのではなかろうかということを思っている人たちが少なからずいる。そういう状況を是正していくということが私たちは一番の基本だと思います。それは、とりもなおさず、まさに社会保障が安心のよりどころであって、その安心のよりどころが安心できないということになると、これは論理矛盾であるというふうに考えるからであります。
社会保障番号云々の問題が直接のお問いかけとしてございましたけれども、これは後ほど御質問に出てくると思うのでありますが、社会保障個人会計という、これは情報開示のためのものを考えておりますので、その関連で、導入に当たっては個人ごとの番号が必要ではないかということで提案させていただいたものであります。
追加の点につきましては、坂統括官の方から少し補足をさせていただきます。
○坂政府参考人 若干補足させていただきます。
社会保障番号、今大臣が御説明になりましたように、個人会計といったこととともに話が出てきているわけでございますが、では、具体的にどうするか。御承知のように、今もう既に、年金番号でございますとか、あるいは医療関係でも大体各健康保険組合ごとに、私どもですと共済組合といった形で番号がそれぞれあります。とりあえず考えられることは、まだこれから詳しいことは厚生省さんや何かでお考えになるということだと思いますが、とりあえず私どもが想定していることは、そういったいろいろな番号をもとに、一人の人間にいろいろな番号がついているわけでございますけれども、例えば私なら私が年金番号でいえば何番、そうするとほかの番号もいろいろあるわけで、それぞれいろいろなコンピューターに入っておりますから、これを例えば年金番号のコンピューターと連結をして、全体としてどういうことをいっているのか、どういう関係にあるのかということがわかるようなシステムをつくってはどうかということでございます。
その場合に、それでは、例えば社会保障番号というのを当然国民一人一人にということになるわけでございますが、例えば何歳以上の人、赤ちゃんからつけるのか、やはり二十歳以上でいいのではないのとか、その辺のことはこれから検討をしていただく。経済財政諮問会議というのはいわば基本的な考え方を考えるところだというふうに理解しておりまして、具体的な制度設計はそれぞれのお役所や何かでやっていただくということだと思います。
もう一つ、税関係との関係はどうかという御質問がございました。これは、経済財政諮問会議では税関係のことを念頭に置いた議論というのはなかったというふうに理解しておりまして、社会保障番号の話は社会保障の関係で出てきているというように私どもは理解をいたしております。
○石毛委員 今の坂政策統括官の御答弁の中で、例えばだれが番号を付されるのか、国民一人一人か、一人一人として、赤ちゃんからなのかあるいは二十歳以上なのかというのは、これは恐らく非常に重要な問題でございます、私が申し上げるまでもないと思いますけれども。まだ社会保障番号なのか社会保険番号なのかということも定かにされておりませんし、社会保障が総括している内容というのは非常にインセンシティブなものですから、センシティブ情報に関しまして保護法も非常に不十分で、個人情報保護法も公的部門の保護に関しては一年後というような、内閣の法案ですらそういう状況ですから、ここのあたりの表現は、本当に骨太のところになるまでにある程度の骨格を出していただかないと、制度設計の中でと言われましても少し情報が不足することになりかねはしないかというようなことがございますので、今、坂政策統括官に御答弁いただきましたけれども、そうしたような議論がどんどん外に出されてくると私どももイメージがわきますし、それに対して判断もできますし、また意見の表明というようなこともできるということを申し上げておきたいと思います。
関連しまして、坂政策統括官は私が四番目にお聞きしようと思った質問を先取りして答弁をされたと私は思うわけでございますけれども、大臣にお尋ねしたいと思います。
五月三十一日付の新聞ですけれども、これは第一次の目次案が出た段階か、あるいはその前後での新聞記者のインタビューにお答えになられた記事ですけれども、ここにとても気になる御答弁がございます。
ちょっと読みますけれども、「歳出削減だけ、増税だけというのは失敗する。財政再建は組み合わせになる。みんなが公正に負担していると、国民が納得できる納税システムを作るため、社会保障番号の導入を正面から議論したい」、こういうまとめになっています。「竹中経財相に聞く」とございます、新聞のですね。この記者の記事の取りまとめは、「国民が納得できる納税システムを作るため、社会保障番号の導入を正面から議論したい」、こういう書きぶりになっております。
確かに、社会保障は社会保険とともに税の投入がありますから、その限りにおいては納税ということもないわけではない、制度上はあるわけですけれども、国民が納得できる納税システムをつくるためということと社会保障の番号の導入ということを正の相関でこういうふうに表現されるというのは、これは大臣の本旨でいらっしゃるのか、そうではないのか、そのあたりをはっきりさせておいていただきたいと私は思います。
もしも納税システムをつくるのであれば、納税者番号制を正面からきちっとやられるべきであって、社会保障番号制から逆転していくというのは、これはやはり非常に問題だし、本末転倒ではないかというふうに私は思っています。そういう意味で何歳からなのかというのも非常に気にかかるという、少しひっくり返した表現になってきますけれども、この点はぜひ確認しておきたいと思います。
○竹中国務大臣 その記事は、恐らくその時点よりかなり前にインタビューされたものではないかと記憶しておりますけれども、私の記憶ではかなりはしょって書いてしまっているというふうに思います。
やはり、納得できる納税システムというのは一方で必要です。これは捕捉の問題等々も幅広くあるでしょうし、いわゆる益税のような問題もあるでしょうし、それはそれで議論しなければいけない。それと、社会保障についても統一的な把握が必要であるという、私は、それを直接結びつけて議論するというのは、それを読む限りもそんなに論理的にコンシステントだとは思えませんし、それはちょっと新聞がはしょって書いてしまっているのではないだろうか、今聞く限りは、私自身はそんなふうに思います。
○石毛委員 大事な点ですからもう一度繰り返しますけれども、「納得できる納税システムを作るため、社会保障番号の導入を正面から議論したい」というこの表現は、大臣の本意ではないというふうに確認させていただいてよろしいですね。
○竹中国務大臣 かなり短絡的な表現だと思います。
○石毛委員 それでは、私の主張は先ほど申し上げましたので繰り返すことはいたしません。納税者番号制をするのだったら、ぜひ正面からそのことを取り組んでいただきたいということだけ再度申し上げます。
社会保障個人会計についてでございますけれども、これも、社会保障というふうに称するのか社会保険なのか、よくわかりませんが、この素案では、「個人レベルで社会保障の負担と給付を認識評価できる「社会保障個人会計」」というふうに記されてございます。これにつきましても少し、導入の意図など、あるいは具体的に検討に入るのであればどこでどのような組織がこれを扱うのかということ、あるいは結論はいつごろの時期を想定されているのかというようなことをお答えいただきたいと思います。
○坂政府参考人 お答えいたします。
この素案の抜粋の三章というところにやや詳しく書いてあるのでございますけれども、ITの活用により、社会保障番号制導入とあわせ、今おっしゃったように、社会保障の負担と給付を個人レベルで認識評価できるようなシステムとして、社会保障個人会計、これは仮称でございますが、構築に向けて検討を進めるということでございます。これはいわば社会保障分野でのeガバメントあるいは電子政府といったものを実現するのだ、そういう認識でございます。
この効果はどうかということは、このことによりまして、国民の一人一人にとって、社会保障制度、いろいろな制度があるわけでございますが、それのいろいろな制度全般を見通して、また、それぞれの人のライフステージの各段階にわたって、自分の生活とのかかわりがわかるようにする、また、そうすることによって社会保障負担に対する国民の合意と納得も形成しやすくなるのではないだろうか。また、電子政府にするということは、社会保障制度の運営コストの削減でございますとか、公的給付と私的給付の効率的な組み合わせによる老後保障、所得保障の充実、要するに、これくらい自分は公的にはあるということがわかれば、それじゃ私的にはどれくらいやるべきだろうかといったようなことをそれぞれの方が設計しやすくなるんじゃないだろうか、あるいはいろいろな組み合わせの多様化といったこともやりやすくなるんではないだろうかといった効果を考えているというふうに記載されてございます。
○石毛委員 記載されてございますというような何かいかにも他人事のような表現で、私は余りなじまないで伺ったんですけれども。
先ほど大臣は、国民にとって社会保障制度の安定、安心ということが大事なことであって、その安心というのは持続可能性ということを思えるかどうかという、そして、国民が思えるかどうかの一つの方法論として個人会計という方法を、IT時代でもあるし、導入していくという、その御答弁を社会保障番号制に関連してしてくださったと思います。
私も持続可能性というのはとても大事なことだと思いますけれども、その持続可能性ということと、それから社会保障ないしは社会保険個人会計をつくるということがそう簡単に相関するんでしょうか。
そのあたり、非常に抽象的な質問ですけれども、個人が、自分が納めた保険料はこれぐらい蓄積された、社会保険あるいは社会保障というのは財源はもちろん保険料と税金とそれからサービスを利用した場合の自己負担という三者で、そのことの財源構成からいっても、自分が拠出したものとそれから給付を受ける、受けた、その関係をライフステージにおいて幾らインプットとアウトプットを記されていたとしても、それが自分自身の社会保障設計、社会保険設計として妥当であるのかどうかというのはなかなか判断しがたいのではないか。見ることによって自分が社会保険制度に対して非常に主体的であるのかどうかというような判断が果たしてできるのだろうかどうだろうか。そのことがわかったとして、持続可能性というものを判断することができるのだろうかどうだろうか。
私は、手段と目的、この点は物すごく社会保障制度の原理原則を変えていく大きな制度的変更につながるのではないか、そういう受けとめ方をしておりますので、今申し上げたような点は非常にこだわるんですけれども、大臣はどんなふうにお思いになりますでしょうか。
○竹中国務大臣 持続可能性、つまりサステーナビリティーというのは、制度のサステーナビリティーですね。社会的な制度のサステーナビリティーの話でありまして、その意味では、御指摘のように、それが個人の情報開示とダイレクトに結びつくかというふうに聞かれれば、それはそんなに簡単ではありませんというふうに申し上げざるを得ないと思います。
ただ、この社会的なシステムの、制度のサステーナビリティーを回復させるためには広い意味での情報開示が必要であって、その情報に基づいて個人がまさに受益と負担を正確に判断して、この制度設計そのものに全面的に責任を負っていただく、問題をシェアしていただくということがやはりその基本になるんだと思うんですね。
私は、その意味では、広い意味での情報開示の一環として、ダイレクトに結びつくものではないけれども、こういうことを広げて国民の参加意識、受益負担意識を持っていただいて、それが社会的な議論となって制度のサステーナビリティーのしっかりとした議論に結びついていってもらいたい、そういう趣旨で申し上げたつもりであります。
○石毛委員 大臣の御趣旨が、広い意味での情報公開、その中の一つの方法あるいは制度として、社会保険に関する簡単に言えば個人会計を設けるみたいな話ですよね。
そのことは、それはテクニックとしてあるだろうと思いますけれども、少し角度を変えまして、社会保障の社会保障たるゆえんは、細部にわたりましてはいろいろ議論はあるんだと思いますけれども、大きな柱は、やはり、所得再分配による生活の安定、自分の、個人の責に帰すことではない生活上の事故に対して保障をしていく、生活の安定を図っていくという所得再分配の機能と、それから、サービスは、選別主義、社会から排除したようなところでサービスを提供するのではなくて、ノーマライゼーションとかインテグレーションとかということが盛んに強調されてくる時代と社会になりましたけれども、選別主義的なサービスを提供するのではなくて普遍主義的なサービスを提供していくという、私は、この二つ、所得再分配による事故に対する社会保障ということとサービスの普遍主義、これは社会保障が社会保障であるゆえんの二つの基本的な柱だと思っているわけです。
これはもう第二次世界大戦後のビバリッジの、イギリスから、今はイギリスが社会保障がどうのこうのとかいろいろ議論はあると思いますけれども、社会保障たるゆえんの基軸というのは、私はその二つは欠かせないことだというふうに思います。
私は、誤解がないようにつけ加えたいと思いますけれども、だから制度にむだがあっていいとか非効率がいいというふうに考えているわけではありません。変えなければならない点はたくさんあるということも私も理解をしております。ですから、所得再分配をどんどんやればいいなんていうふうにだけ申し上げているつもりはないのですが、二つ、その基本的な柱を片方に置きまして、そして個人の会計として負担と給付、このダイレクトな関係だけいきますと、この負担と給付ができない人間、この相関関係を自分でつくっていけない人間がドロップアウトしたときにセーフティーネットとして社会的な網がかけられる、こういう構図になってしまって、これは新保守主義の社会保障論というふうにも言われるわけですけれども、こういう構図になってしまっていて、長らく社会保障の歴史の中でつくってきた普遍的なサービスという原理、こうしたことが毀損されていくのではないか、こういう不安を私は持っているわけでございます。
この辺に関しまして、ぜひ大臣の御認識を伺いたい。
私は、例えば保険料と利用料を徴収化するために一定の年金と医療保険との関係をどうつけるかとかいうようなことは、それはそれで必要だとも思っておりますし、例えばお医者さんに頻繁に行く高齢者の方がいらっしゃることをどう評価するかというような問題も、絶対ないなんて言うつもりはありません。ライドオンしている部分だってないわけではないと思いますけれども、そういうことを解決していくのだったならば、例えば、社会保険における保険者機能を発揮するようにして、保険者が医療機関と契約を結んで一定の社会保険診療の幅を変えていくとか、それから、前回中沢筆頭理事の御質問に対しまして、新しい職業訓練と職業紹介のシステムを民間にゆだねる方法、こういうことによって公私が競争するというようなこともあると思います。
さまざまな方法がある中で、あえて社会保障個人会計ないしは個人勘定が制度設計されてみんながそれを持つようになるということは、生活上の緊張を増すことにはなっても、人間と社会に対する安心感ですとかあるいは信頼感をそぐことになる、そういうおそれがあるというふうに私は受けとめるわけですけれども、大臣はどんな……。
○竹中国務大臣 前半のお話がかなり大きな社会保障論のような観点からで、これはこれで大変重要だと思います。私よりもはるかにこの分野では御専門家でいらっしゃいますけれども、社会保障というのをどの程度狭く広く定義するかという問題にかかってくるんだと私は思います。
議員は今、所得再配分と普遍サービスというふうにおっしゃいました。これは、供給者の立場から見るとそういう立場というのは非常に強いわけですけれども、社会の中から見ると多分もう一つ大きな機能があって、それは、議員もちょっとおっしゃいましたけれども、保険機能、つまりリスクをプールする機能なんだと思うんです。
例えば年金なんかそうですが、人間は必ず死ぬわけです。死ぬというのはわかっているわけです。でも、いつ死ぬかわからないからそのリスクをプールしておかなければいけないというのが年金でありますから、これは所得再配分や普遍サービスというのとやはり違う次元の問題で、そのリスクのプールという部分が、現実の社会保障問題の中では、支出に関する限り実はかなり大きなウエートを占めているのだと私は思います。
そういった例えば年金なんかに関して言うならば、一つの例でありますけれども、これは例えば二つのリスクがあります。一つは人口変動のリスク、もう一つは市場変動のリスクで、人口変動ですから、支える側と支えられる側の、これは変動して、このリスクが今日本は物すごく大きいわけです。市場変動、資産を集めて運用する中で、市場というのは動くわけでありますから、それをどのようにコントロールしていくかということが、議員おっしゃったように、所得再配分と普遍サービスというのをベースにしながらも、現実の制度設計の中では私はやはり大変重要になっているのではないかなというふうに思うんです。
そういうことも踏まえて、人口変動のリスクを管理するためには、やはり年金そのものの賦課の部分と積立の部分を明確にしていかなければいけないということになると思いますし、市場変動のリスクを管理するには、やはりそれはある程度個人で分散型にしてもらう方がいいというようなことにもなる。そういうことを基本的にはこの骨太の方針の中の一つの思想として私は描いたつもりであります。
ちょっと御質問の趣旨が非常に広いものですからこういうお答えになりますけれども、所得再配分、普遍サービスというのはもう言うまでもありません。しかし、例えば残されたリスクの管理、市場変動とかそういう部分は、やはりこれは国民一人一人も負っていかなければいけない部分としてやはり残ってくるのではないのでしょうか。
○石毛委員 社会保険がリスクの分散であり、その制度設計をする上でリスク管理をどういうふうに読むか、あるいはマネジメントしていくかということが大変重要であるというのはおっしゃるとおりだと思います。ただ、私的保険ではなくて社会保険であるというのは、そのリスク管理の制度の中にやはり公的な部門――お出になられるのは伺っておりますから、どうぞ。ぜひこれからも議論を引き受けていただきたいとお願い申し上げます。
それでは、坂政策統括官に続けて御答弁いただきたいと思いますけれども、リスク管理という意味では、私的保険も社会保険もリスク管理という限りにおいて共通しているわけです。社会保険が何で社会保険であるかといえば、これはやはり、租税を投入することも含めて、老齢基礎年金には租税が入っていて、この部分を三分の一か二分の一かということが大きな政策議論になっているわけですから、とても個人の勘定書をつくっただけで済む話ではないわけです。
そこのところはどのように認識されていて、個人勘定、勘定とはおっしゃっていません、会計ですけれども、プログラムされていくのか、大枠はもうわかっているんだと思いますので、お示しいただければと思います。
○坂政府参考人 実は、申し上げていいのかどうかあれなんですが、最初のうち勘定というような名前で議論がされておったのでございますけれども、会計という名前に途中から変わって、最終的に、一昨日公表されたときには会計という名前になっております。
これは、恐らく、先生今御指摘のようなことも、いわば誤解を招いてはいけないということもあって名前を変えたということではないかと私理解しておるんでございますが、御指摘のとおり、社会保障というのはやはり、特に社会保険になっている部分というのは、国民一人一人が自分でもちろん保険料を拠出するわけですから、自助ということでもありますけれども、その自助という形でみんなでいろいろなリスクを分担して支え合う。先ほど大臣が申し上げたように、いつ自分が死ぬかわからないということは当然あるわけですし、あるいはいつ病気になるかわからない、だれだってわからないわけでございます。お互いに支え合うというところ、それから、それぞれに拠出し合ってお互いに支え合う、こういうことなんだと思いますが、したがって、勘定といいますと、何か損得勘定という感じ、勘定という言葉はどうも損得というのがくっつきやすいというようなこともありまして、本当に今度の会計ということで何をしたいかというと、お一人お一人が自分は幾ら出して幾らもらえる、そもそも幾らもらえるというのは実はわからないわけですけれども、どれだけ生きるかわからないわけですから、あるいは病気になるかどうかというのはわからないわけですから、本当に幾らもらえるかなんということはわからないわけですけれども、どうもそっちの方になりやすい。
本旨は、そういうことではなくて、国民お一人お一人がどういうときにはどういうことを自分はカバーされているのかということをちゃんとわかりやすくする、いわば国民に対して、お一人お一人に対して、御自分に関する情報ということになりますけれども、御自分がどういうステータスにあるかということをわかりやすくするためのものというのがもともとの趣旨であろうというふうに思います。
そういうこともあって、名前も変えて、かつ、まだ仮称というのは、これからも適当な名前を考えるということであろうと思います。
○石毛委員 これはやはり、負担と給付のあり方に関して認識評価できるというふうに記述されていますから、坂政策統括官がおっしゃられたその御答弁では私は不十分だということを申し上げたい。
それから、それぐらいだったらば、医療の明細書つきの領収書の発行を義務づけていただいた方が、よほど自己確認はできるということもつけ加えて、時間が参りましたので、質問を終わります。今後とも議論をさせてください。
○横路委員長 午後三時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後二時五十六分休憩
――――◇―――――
午後三時五十七分開議
○横路委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。大畠章宏君。
○大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。
内閣委員会における一般質問をさせていただきたいと思います。
先ほど、竹中大臣等々御出席の中でクエスチョンタイムが行われました。鳩山代表の方から、後半でありますが、経済問題について質問がございました。一月から三月期のGDPの成長率がマイナス〇・二%で、結局、平成十二年度の政府見通しの一・二%には満たず、〇・三%足りなかったということで、株価も一万三千円を割ってしまった。これに対して総理はどう考えるかという話でありますが、余り株価が上がった下がったということには一喜一憂しないでという話がありました。
経済財政担当大臣として、先ほども同僚議員からこの話が出まして、一つの見解というものをお示しいただきましたが、先ほど鳩山さんが一番最後におっしゃいましたけれども、確かにアメリカの経済と連動しているということで一万三千円を割っているのかもしれませんが、何となくこの痛みの伴う改革の中身がわからないということで、私はマーケットがやはり足踏みを始めているんじゃないかと思うんですね。
実は、私ども、小泉総理とそれから田中眞紀子大臣にいろいろ厳しい質問をすると、必ず抗議の電話が来たりファクスが来たりということなんですが、ここに来て何人かの方が小泉構造改革について疑問を呈し始めました。
たまたまきょう新聞を見ましたが、帝国データバンクの情報部長の熊谷さんという方は、政府が言っていることは企業の倒産処理もやむなしということだ、だから直接償却イコール倒産ラッシュを意味する、こういうデフレ不況が進んでいく状況で、さらに強いデフレ圧力をかけることになり、最悪のときに最もやってはいけないことをやろうとしているんじゃないかという指摘。
あるいは、これからこのまま竹中さんがやろうとしていることをやると、私は、バブル崩壊からファンダメンタルズの崩壊の危機等が来ると思っている、もはや製造業は空洞化し、日本経済の基幹産業だった自動車や鉄鋼にも脱落企業が出ている、逆ざやが解消されない生保は構造不況業種だ、建設、不動産は前々から公的な支援依存をしていて生産性が低い、あちこちで経済の基礎構造のほころびが出ている、倒産予備軍は百万社以上あるのではないか、最終的には、小泉構造改革というものが途中で挫折をして、やりかけて途中でほうり出すことがむしろ怖い、国民が痛みを感じ出し、混乱の中で支持率が下がっていったら投げ出すんじゃないかというおそれさえ持っているという指摘が一つ。
もう一つの指摘は、これは森田実さんの指摘でありますが、四つの懸念材料があるというんですね。
その中の全部を紹介していると時間がありませんから、幾つかを御紹介しますと、「二年から三年以内に不良債権の最終処理を目指します。」と小泉さんはおっしゃった、これによって倒産と失業者がふえる、これによりデフレは一層深刻化し、物価はさらに下落する、その結果、不良債権は拡大再生産される、不良債権の増大と最終処理の果てしない追いかけっこが始まるおそれが強いのではないか、こういう疑念。
それから第二に、まあ竹中さんも率先してやっておりますが、「競争的な経済システムをつくる」ということをおっしゃっておられますが、結局、弱者に配慮を欠いた政治を行ってはならないんじゃないかという指摘を森田さんはされています。
さらに、「米百俵の精神こそ、改革を進めようとする今日の我々に必要ではないでしょうか。」と熱っぽく語ったが、痛み論というのは格好のいい議論ではあるが、しかし、政府の役割は、痛みがどのような形で生ずるのかを明らかにして不公正が生じないような対策を講ずることにある、抽象的な痛み論を繰り返すだけで具体的な対策を講じないというのは政府として無責任である、こういうふうな指摘も出てまいりました。乱暴な政府は百害あって一利なしだ、大国を治むる者は云々ということであります。
私は、小泉総理が、総裁選挙、そして竹中平蔵さん等々が仲間に入って痛みの伴う改革というものを断行する、改革断行内閣だという、これまでと違って非常に明確なメッセージを出し始めたことは一つの評価をしますが、今国民が期待していることは何かというと、自民党的な政治を崩してくれるんじゃないか、いわゆる政官業の癒着だとかそういうものを崩してくれるんじゃないか、そこのところに一番期待しているんですね。ところが、出てくるものは痛みを伴う改革ということで、どういう痛みが発生するのかというようなことについては、参議院選挙が終わってからだという話なんですね。
私は、これは竹中大臣、教授といっても、同じ、今も教授をされているというお話を伺っていますが、参議院選挙の前にどんな痛みを発生するのかということも含めて明らかにしないと、単にジェスチャーとパフォーマンスだけで、選挙が終わって、とにかく白紙委任状を出してくれ、判こを押してくれということでは責任ある政府の方針とは言えませんし、ましてや、経済学者としても、真っ白な紙に国民から判こをもらうだけでは私はいけないと思うんですよ。
ここら辺、私は、七月の参議院議員選挙の前にどんな痛みを伴うかということも含めて国民に明らかにして審判を仰ぐべきだと思いますが、その件について最初にお伺いしたいと思います。
○竹中国務大臣 非常に大きな質問をいただいたと思います。
前半の御紹介いただいた幾つかの懸念、これはもう私自身がさらにたくさんの懸念を持って経済運営に当たっているつもりであります。ただ、同時に重要なことは、その懸念は大変重要であり、懸念することは重要なんだけれども、では、そういうことを議論している人たちがかわりにどのようにしたらいいんだという議論をお持ちなのかということなんだと思います。
はっきり言って、日本の経済は非常に手詰まりの中で運営せざるを得ない。そういう厳しいということを理解しながらも、やはり、これまで先送りされてきた不良債権について、これを最後の機会にしてやらざるを得ないのではないだろうか。これを放置すると、後の痛みははるかに、とんでもなく大きくなるということをやはり私はエコノミストとして感じるし、多くの国民も感じているのだと思います。
直接御質問のありました痛み云々のことであります。二点、ぜひ申し上げておきたいと思います。
構造が変わる、構造を変えようとするときに、例えば経済に何が起こるかということを、私たちが持っている社会科学の知識をどれだけ十分に応用しても、正確に予測することはやはり難しいです。いや、難しいというよりは、無理です。それは計画経済じゃない限り、市場経済ではそんなことは不可能です。さはさりながら、これだけメッセージを内閣として送っている以上、どのようなシナリオになるかということは、わかる範囲ではぜひ出したいし、出さなければいけないというふうに考えています。そういう問題はすべて選挙の後だというふうなことは申し上げておりません。
そこで、第二の点になりますけれども、できるだけ正確にそのことをメッセージとして伝えるために、内閣府でマクロモデル等々を使った試算をやっているわけですけれども、これはまだ数カ月間、間に合いません。今度の骨太の方針の中では、そういう厳密な、精緻な議論ではないけれども、しかし、シナリオはこのようになっていくだろうし、このようにしたいというような大まかな経済の姿、ここ何年かの経済の姿、それに伴って発生の予想される労働市場での姿などについては、若干の試算を含んだシナリオというのは、これは骨太の方針の中には私は示すつもりでおります。
○大畠委員 私は、竹中さんという方は、非常に率直な方だし、聡明な方だし、人をだましたりあるいは国民をだますというつもりはないと思うんですね。しかしながら、今、全体的に何となく、痛みを伴う具体論はやめて、とにかく選挙さえ過ぎてしまう、余り痛みを伴うなんというようなことを言うな、もうちょっと耳ざわりのいい、舌ざわりのいい、そういうものにしてくれという話もあると聞いていますが、私は、諮問会議の方から一つの答申案等々が出ようとしていますが、これを、まず与党の方と話をしてコンセンサスを得てもらいたいと思うんですよ。
経済財政に関する諮問会議の中で七つの方針というのを出されましたが、どうも、この方針についても、与党の方の内部ではいろいろ異論があるみたいなんですね。いろいろ異論があるけれども、詳細については黙っていて選挙が終わってからやろうという話になるとしたら、これはまさに無責任な政府と言わざるを得ません。したがって、細かなところの痛みがどう伴うかというのはわからないという話がありますが、しかしそれでも、具体的にこういうところはこうなりますよというところは明らかにしながら、そして、よく与党の方と話し合って与党とのコンセンサスを得てもらいたいと思うんですよ。
そこら辺が、与党の内部ではごちょごちょごちょごちょ、表に出ないところではかなり噴出していますが、表へ出るとぴたっととまってしまう、内閣だけが先行して、何か耳ざわりのいい話だけが表へ出てというのは、私は非常に無責任になってくるんだと思うんです。
ここら辺、与党とのすり合わせを経済財政の担当大臣としてしっかりとしてやって、七月の参議院選挙前に明らかにするということをここでお誓いいただきたいと思うんですが、どうでしょうか。
○竹中国務大臣 耳ざわりのよい議論という御表現がありましたけれども、私は、耳ざわりのよい議論だけをしたら、今世界のマーケットはやはり全く信用してくれないんだと思います。もう陰ひなたなく、非常にリアリスティックに、本音ベースでいいところも悪いところも議論しないと、マーケットはそれを非常に冷静に見ているというのが状況だと思います。私はマーケットの力というのを信じておりますから、マーケットをだませるとは思いません。だから、耳ざわりのよい議論ではなくて、非常に本音の議論をぜひしていきたいと思いますし、現実にそれをやっているつもりであります。
後半の部分でお尋ねになりました、与党とのコンセンサスという言い方を使われましたけれども、これは、ちょっと二点申し上げたいと思います。
まず、原則としては、経済財政諮問会議というのは調査審議するところでありますから、何か交渉事で一種の合意、コンセンサスを得るという場では、建前上はありません。むしろ、同僚の島委員の御指摘にあったように、強い政治のリーダーシップでもってやるべきであって、コンセンサスとかということにこだわらない方がよいのではないかという意見も強く聞かれます。
第二点としては、さはさりながら、これを具体的に議院内閣制のもとでそれこそ法律にしていくときには、やはり議員の皆さんの御協力がなければ、これは政策がまさに絵にかいたもちになるわけで、その意味では、私たちはやはり非常に幅広く議論しなければいけないと考えています。その議論は今やっております。これは、決して与党だけではなくて、野党の皆さんにも御議論をいただきたいと思うし、広く国民から議論を、批判をいただきたいというふうに私は思っているわけです。
繰り返しますが、その意味では、コンセンサスを得るためと言うとちょっと語弊があると思いますが、議論をかなり幅広くやっております。細かな制度設計は骨太ではできませんですから、その方向だけはしっかりと議論して、その点に関しては、しかし、具体的に与党の方々とお話ししても、ここの表現をもっと注意すべきであるとか、そういう立場立場での表現はありますけれども、プランそのものが間違っているとか、これはとんでもないプランだというような、全面否定の議論を私は聞いたことがございません。
その意味では、非常に広い意味での、日本の将来の方向についての、これはコンセンサスと呼んでいいかどうかはわかりませんけれども、日本の経済の進むべき方向はこちらの方向であるというような幅広いサポートといいますか、そういうものは得られつつあるのではないかというふうに私は考えております。
○大畠委員 諮問会議と与党とがコンセンサスをとる必要はないと私も思います。それはそれで、いかにも諮問会議で決まったことが政府の方針のようにマスコミ等では書き始めていますが、それは間違ったメッセージでありまして、だから、政府としては、与党と諮問会議の答申というものをベースに議論をしてすっきりさせてもらいたいんですね。それは、ぜひ政府としてはっきりさせていただきたいと思いますが、その件について御答弁いただきたい。
○竹中国務大臣 私も、実は新聞を読んで非常に驚くことがあります。何か新聞を読むと、私が党のいろいろな部会に行って、物すごくいじめられて、どなりつけられて、そのまま逃げて帰っているようなことを書いている新聞がありますけれども、私は、正直言いまして、そういう部会等々にお邪魔するのは初めてであります。ひょっとして怒られるのかな、どなられるのかなと思って行きましたが、こういう言い方をすると大変語弊があるかもしれませんが、私は、やはり国会に出てきていらっしゃる皆さんというのは大変御立派だと思います。立場によって、その表現とか、微妙な違いはあります。しかし、本当に国のことを思って真摯に議論しようとしているわけでありまして、それを、どちらかというと、はっきり言って、ジャーナリズムが、こういうストーリーだとおもしろいなというようなことを書いているという面が非常にありますので、その意味では、先ほど申し上げましたように、かなりお互いを信頼し合った議論ができつつあるというふうに認識していますし、あと残された時間、ぜひこういうふうにやっていきたいというふうに思っております。
○大畠委員 先ほど、竹中さんの方から絵にかいたもちなんという話が出ましたけれども、確かに一部の経済専門家からは、現在の小泉改革は絵にかいたもちであり、国民に痛みを伴う改革を押しつけようとしているんじゃないかというようなコメントも出始めていますので、そういうものについて、国民の立場というものを十分踏まえて、的確な、間違いのないメッセージを参議院選挙前に出していただきたいということを要望しておきたいと思います。
そこで、次に石原大臣にお伺いしたいと思います。
特殊法人の改革について、先日、特殊法人等改革基本法案が成立をいたしました。この中でもいろいろと論議がされましたが、どうも、この附帯決議にもいろいろつけさせていただきましたけれども、改革の方向というもの、何かやろうというものはわかるけれども、具体的に、例えば廃止とか整理統合、独立行政法人化、民営化、どういう基準でこれを見直していくのか、そういうものはほとんど明らかでない、これはどうなんだろうかという疑問が呈されております。そのことについて、最初に、今どういうことをこの議員立法を受けて内部で検討を開始しているのか、お伺いしたいと思います。
○石原国務大臣 大畠委員にお答えしたいと思います。
どのような手順で民営化するのか、あるいはどのような手順で廃止するのか、あるいはどのような手順で独立行政法人に移管するのかという御指摘だったと思うんですけれども、これは行革大綱にのっとりまして判断をしていこうと考えております。
ちょっと行革大綱を読ませていただきますが、主たる事業が廃止され、またはその他運営主体に移管された法人については、原則、廃止を検討する。事業の採算性が高く、かつ国の関与の必要性が乏しい法人、企業的経営による方が事業をより効率的に継続実施できる法人、または民間でも同種の事業の実施が可能な法人については、原則、民営化を検討する。廃止または民営化される法人以外の法人については、事業及び組織運営の実態を踏まえつつ、独立行政法人通則法に基づく独立行政法人への移行を検討し、通則法を直ちに適用しがたい法人については、法人の性格に応じ、個別法の整備、通則法に準じた共通スキームの整備等所要の法的措置を検討する。
この大綱の措置にのっとって、現在、事務事業の見直しをゼロベースから行わせていただけると御理解いただきたいと思います。
○大畠委員 私は、この法律案、与党三党で提出をされましたが、委員会の中でも論議がありましたが、どうしてこういう法律案については政府の方から出さなかったのかというような議論もありました。いろいろな背景があって与党の方の議員から提出されたと思うのです。
確かに、この七十七の特殊法人等々の内容を見ますと、これはまだこんなのをやっているのかとか、こんなにたくさんあるのかとか、これはもう役割は終わったんじゃないか、確かにそういうふうなものが幾つか見受けられるのはわかりますよ。しかし、そこで一生懸命働いている人もいるわけですね。そういう人々にとっては、これからどうなっちゃうんだろうかと非常に不安が起きているんじゃないかと私は思うんです。
私は企業に勤めたこともございますが、企業とか組織体で一番重要なのは、そこで働いている人の意識なんですね。意識が乱れると、いわゆる内部告発とか何かで内部から崩壊してしまう可能性があるんですよ。最近のいろいろな事例は、内部告発が多い。官庁内でも内部告発がいろいろあるという話は聞いていますが、人心の荒廃というのが一番、その本人にも不幸ですし、組織体としても不幸だと私は思うんです。
こういう五年間で見直しますというときに、この五年間の間、その従業員の人は非常に不安感で毎日過ごすわけです、この基本法が通りましたから。そういう意味では、今この法律の基本方針を読まれましたけれども、石原大臣としても、そういう生身の人を預かっているわけですから、ぜひ、働いている方が不安に思わないように、そういうことを十分説明をして、納得してもらいながら改革を進めることが必要だと思うんです。
そこで、例えば労働組合というものがございますけれども、私は、やはり労働組合の方々とも十分話し合いながら、あるいは従業員の人とも話し合いながら、なぜ改革が必要なのか、なぜこのところを、例えば廃止するのか、あるいは統合するのか、独立行政法人化するのか、民営化するのか、そういうことを、上意下達というのも一つの手段かもしれませんが、やはり十分話し合って改革を進めていくべきだと思いますが、このことについて石原大臣のお考えをお伺いいたします。
○石原国務大臣 大畠委員の御質問にお答えしたいと思うのですが、この議員立法、基本法を審議したときに附帯決議がついております。もう委員も御承知のことだと思いますが、ちょっと確認させていただきます。
附帯決議は、「特殊法人等の改革の推進に当たっては、これまで維持されてきた当該特殊法人等の職員との良好な労働関係に配慮するとともに、関係職員団体の理解を求めつつ、その雇用の安定に配慮すること。」という附帯決議がついておりまして、これにつきまして、政府としても尊重させていただくということを御答弁させていただいておりますし、今改めて大畠委員の御指摘がございましたので、先生御指摘の点につきましては適切な配慮を払ってまいりたいと考えております。
○大畠委員 あと、この特殊法人の中についていろいろ見ますと、先ほど言いましたように、これは政府のつくった特殊法人でありますから、つくったときは何かやろうということで一つの意思があったんですね。そのうちにだんだん肥大化してきて、目的というものがよくわからなくなったりなんかというのも中にはあるでしょう。
しかし、私自身考えますのに、例えば核燃料サイクル機構、これは、私も茨城に住んでいまして、例のジェー・シー・オー事故とかあるいはサイクル機構の爆発事故等々で茨城県民も大変な被害を受けました。これも特殊法人としてやっているんですが、では、ここのところはだれかが民営化でできるかといったら、なかなかできないと思う。確かにいろいろ特殊法人というものがありますが、やはり民営化ではできないような仕事を、例えば原子力のサイクル、プルトニウムのリサイクル利用といいますか、そういうふうなものを一生懸命研究して、多くの研究者があそこで働いているのですが、こういうところも対象に入っておりまして、そこら辺はこれからどうなってしまうんだろうかというような心配をしている方がたくさんいるんですね。
それと同時に、他方には国際協力銀行というのがありますが、これはODAを一手に扱っているところでありまして、あそこら辺も、どんなことをやっているのか、なかなか国民からは見えない。このODAと世界の大使館との関係とか現地の政府とかいろいろあるんですが、ここら辺も、金融は金融で少し整理しようという方針が出されております。この特殊法人の中にも直接そういう金融をやっているところがありますし、そういうところは、この法案の中にもちょっと触れられておりますが、基本的に総見直しをしながら、かつ、国民にわかるような形で対策をとっていかなければならないと思います。
ここら辺、例えば官僚の天下り組織になっているんじゃないかとか何かという疑念もこの基本法の中で述べられておりましたが、いずれにしても、国民の視点に立って、よくわかるような形で、この五年間、特殊法人の改革には取り組むべきだと思いますが、ここら辺についての大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○石原国務大臣 大畠委員が御指摘したとおりでございまして、特殊法人というのは、その当時、民間企業がやれないようなことを、そして行政が実務を担当するのをかわって行って、政策的な意義をこれまで数多く上げてきた法人もあると思います。それが、時間の経過とともに社会的存在意義がなくなったものもあるでしょうし、今委員御指摘の原子力に関する分野におきましては、これからの二十一世紀の日本のエネルギー政策を考える上でやはり必要な分野であって、これが民間企業が代替してなし得るのかなし得ないのかというような点につきましても、今事務事業をゼロベースから見直して、その後、組織形態の議論がこの夏以降行われるというふうに認識をしております。
また、委員御指摘の特殊法人への天下りにつきましても、国民の皆さん方、各界各層から御批判があるということも十分認識しておりますし、今、事業の見直しをやっておりまして、その後、今年度中に整理統合計画みたいなものをつくったときに、新しい組織形態が各特殊法人につきましてあらわになってくる。その中で、それとあわせてこの天下り問題のあるべき姿についての回答もつけるべく、今鋭意検討させていただいているところでございます。
○大畠委員 ぜひ、今御答弁ありましたが、雇用の問題あるいは従業員の方々の精神的な荒廃にならないように、一つの明確な方針を、その対象の方々と、労働組合とか何か等も含めてよく話し合いながら適切な改革を進めていただきたいということを要請しておきたいと思います。
最後に、竹中大臣にお伺いしたいと思いますが、IT問題についてであります。
ブロードバンドというのは大体一メガ以上のスピードを持つということなんですけれども、どうも日本の中ではなかなか普及しない。あるいは、国民からのどういうメリットがあるんだろうか、それもよくわからない。さらには、IT化等々で一番効果的な改革は、公共事業の入札制度だと思うんです。一部の地方自治体は始めました。事業コストが三割ぐらい下がるというのは韓国で聞いてまいりました。もう少し国民にわかる形にすべきです。今度は痛みじゃなくてこれは利便性ですから、出せると思います。大臣として明確に示すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○竹中国務大臣 ITに関しては、御承知のように、五年以内に高速インターネットインフラの普及率を世界最高水準に持っていくんだという目標を立てています。野心的な目標でありますけれども、そのプロセスにおいて、今議員おっしゃったような問題意識は大変重要だと思います。
ブロードバンドがなかなか定着していかない一つの大きな要因は、やはり競争政策の問題であろうというふうに考えておりますし、やはり国民がそれを実際に使ってもらわないと、どのように使えるかということが広がっていかない。その一つのきっかけとして、三番目は、あえて言えば、それによって何がいいことがあるかということだと思うんです。
競争政策と、国民のリテラシーを高めることと、国民に目に見える、ビジブルな形でその成果を出していくということを実は中心にして、今e―Japan二〇〇二プログラムという中間目標をつくっておりますので、今の公共事業入札の話も、重点計画の中に実は目標が出てきているんですが、それをさらに具体的な形で二〇〇二等々に、中間目標に反映させていく方法を私自身もぜひ考えたいというふうに思っております。
○大畠委員 終わります。ありがとうございました。
○横路委員長 塩田晋君。
○塩田委員 自由党の塩田晋でございます。
竹中大臣にお伺いいたします。
大臣は、非常に例えがうまく、国民にわかりやすく説明されるという点で非常に特技を持っておられると、この前の質疑のときにも感心したところでございます。連立三次方程式を解いたら解答が二つ出たというようなことから、あるいは、二兎を追う者一兎を得ず、自分は一兎を追うんだ、必ずつかまえるんだ、こういうお話だったと思うんです。
骨太の素案というものをつくっておられますが、骨太というのは経済の政策その他で余り聞いたことないんですけれども、特に骨太という言葉を冠された理由と、どういうことを示そうとしておられるのか、その点についてお伺いいたします。
○竹中国務大臣 例え話というのは私は余り意識して使っているつもりはありませんで、稲田献一さんという大経済学者が、例え話というのは安易に使うべきではないという教訓を随分昔に垂れたことがありまして、ちょっとその意味で私今反省しているんでありますが、骨太に関しましては、実は私がつけた言葉ではもちろんございません。御承知だと思いますが、これは宮澤前財務大臣がおつくりになった言葉だというふうに私は伺っております。その趣旨は宮澤前財務大臣にお伺いすべきだと思いますが、私の理解では、経済の大枠、それと予算の大枠について、まさにその方向性を明確にしようということではないかと思います。
骨太の英訳は何かというふうに聞いて、私まだちゃんと伺ってませんのですが、アメリカで向こうの人と話すときは、ニューダイレクション・オブ・ポリシーズ、政策の新しい方向性というような説明をしてきましたので、私自身はそのような、方向の問題だというふうに認識しております。
○塩田委員 骨太といいますと、スーパーへ行って、ミルクで骨太とかいうのを見かけます。それ以外に見受けるのは、たびたび国会で、最近、小泉内閣になってから特に強調されるように聞くんですが、骨太というのはいろいろな解し方があるでしょうが、これはそれといたしまして、それでは今までは骨太じゃなかったのか、細い骨格で非常にひ弱い感じの政策だったのかというように受けとめられますけれども、いかがですか。
○竹中国務大臣 今の議員の例えは大変示唆的であろうかと思います。
あえて言えば、やはり今までの政策は、これはちょっと極端な言い方になると思いますけれども、やはり予算編成に集約されるように、個々のピースミールの政策を積み上げていって、結果的に政策のようなものになっていた。予算編成に私はそれが集約されていたと思うんです。しかし、そういうふうに積み上げ型ではなくて、政治のリーダーである総理が大枠を示して、その大枠にのっとった形で予算、資金の配分、アロケーションも決めるし、それに必要なさらに制度設計をしていくということだと思いますので、あえて申し上げれば、やはりその骨太の意味は、少しこれはオーバーステートメントかもしれませんけれども、ボトムアップからトップダウンという形でリーダーシップを発揮させるための一つの表現であるというふうな認識も可能かと思います。
○塩田委員 二兎論と一兎論がありますが、大臣の正確な御認識、これについてはっきりと述べていただきたいと思います。
○竹中国務大臣 構造の改革と景気の回復、それで、景気が先に大事だから公共事業を含めた追加的な経済政策をとれ、その最初のウサギを追ってその後で構造改革をやれというものが二匹のウサギの考え方だったのだと思います。
私は、これは景気というものの定義、考え方の問題だと思います。景気という言葉は非常にあいまいな言葉で、極端に言えば私は二通りの意味で使われると思います。それは、景気というのはまさに目の前の動き、目の前の総需要です。目の前の総需要、消費、投資を積み上げたもの、これを景気ということが結構ある。景気が弱含んでいるというのはまさにこういう使い方であります。ところが、景気回復、景気を回復させてくれというふうに国民が叫ぶときの景気は、それとは違う意味だと思います。それは、経済の持続的な発展、経済が持続的に発展していくような形にしてくれ、経済のまさに健全性を取り戻してくれということなのではないかと思うんです。
目の前の需要を短期間引き上げることは政府にはできます。これは、とにかく公共事業等々、需要を無理やりつけたら、その瞬間需要は高まります。減税についても同じです。しかし、長期的に経済が発展していけるかどうかということは、そういう需要側では決まらない。これは経済の供給側、私たちが一体どれだけの技術水準を持っていて、どれだけの労働人口があって、それがどれだけの教育を受けていてというところで決まるんだと思うんです。
その意味で、景気を持続的に発展させるような形をつくろうと思ったら、経済の供給側の悪い部分をまず取る、これが不良債権の処理です。供給側の技術にしても、人的資源にしても、それを高めていく。だから、結局、それがまさに構造改革でありますから、私は、経済の持続的な発展という意味での景気、それを景気というふうに定義するならば、私はこれは構造改革そのものだ。つまり、これはまさにウサギは一匹しかいないというふうに思うわけであります。
ただし、条件があります。経済が危機的な状況になった場合は目の前の需要は大事です。そのとき、危機になったら、赤い色をした特別なウサギがぴょんとあらわれるというふうな言い方を私はしてもいいと思いますが、そのときはそのウサギは大変大事なのであって、それは今でも私は変わらないと思います。もしも経済が本当に危機的な状況になることがあるならば、これはもう迷うことなく、大胆かつ柔軟に需要側の政策をとらなければいけないというふうに思います。
○塩田委員 景気に対する考え方と構造改革、これとの関係をわかりやすく比喩でもって話をされたと思うんですが、問題は、日本の現在の経済、これをいかに運営し発展させるかという、その一番の責任者が経済担当大臣である竹中大臣なんです。
そこで、今の時点で現在の日本経済をどう認識し、責任を持って担当国務大臣としてどうやるべきかということです。これについてのやはり確たる腹が決まっていないと、見識はおありだということはわかるんです。だけど、この時点で我が国の経済をどうかじ取りするか、どこでどう右に切り左に切っていくかという決断、それは一つや二つじゃないと思うんです、たくさんの選択肢がある、またいろいろな分野がある。そこでどう決断するかということが大臣の一番の責務である、任務である、このように思うわけです。
そこで、考え方につきましては、小泉総理はこの問題については構造改革、不良債権処理なくしては景気の回復はない、こういう発言をされて、その後も強調しておられるわけです。我々も構造改革を主張し、不良債権処理を言ってきたわけですが、やはり景気の回復、景気という意味は、今の長期的な安定的経済成長じゃなくして、トレンドサイクル、割合中期のもの、それを考えて言う景気の回復、これをやはり、景気をよくしあるいは維持しなければ構造改革も不良債権処理もとんざする、挫折する、このように私たちは見ているんですが、この点についてはいかがお考えですか。
○竹中国務大臣 実際のマクロ経済のマネジメントが私の大変重要な仕事であるというふうに認識しています。これがしかし同時に今本当に難しく、大変な時期に大変な仕事を引き受けてしまったものだと朝起きるたびに毎日感じているわけでありますけれども、今、議員聞かれたのは、まさに私はこういうことだと思うんです。
経済というのは一種のトレンドを持っています。このトレンドの上でよくなったり悪くなったりする循環的な、景気というのはサイクルがある。やはり今最大の問題は、このトレンドがもうほとんど寝ているんです。ゼロ成長のような非常に低いところにあるわけです。そうすると、このトレンドの上で経済が若干の変動を繰り返すことを私たちはまだとめることができません。そんな知識は私たちにはありません。トレンドはある程度ついて回る。それが今、このトレンドが低いところに循環が悪くなってきているというのが現状なんだと思います。
だから、やはり、まず私たちのやることは、このトレンドを上に上げることです。これが構造改革にほかならない。トレンドを上に上げることができれば、このように循環が起きても、その循環が下降局面であってもそんなに被害を受けることはない。
一つは、短期的に言うと、この循環を無理やり引き上げるために私たちはどういう政策手段を持っているかということだと思います。これは、数年前まででしたら、補正予算を組んで政府の支出をふやすということをやったわけですけれども、これはもう限界に来てしまったということを、これは私は大きく認識しているんだと思います。税金は安ければ安いほどいいです。政府の公共投資はたくさんやればやるほど国民が使える道路がふえていいに決まっていますけれども、それには私たちには限界があるということです。
その限界を考えるならば、今私たちにできることというのは、とにかくこのトレンドを引き上げるためのいわゆる構造改革をやはり一日も早く進めること、同時に、この循環を少しでも上に上げるための手段としてあるとすれば、先ほども申し上げたやはりこれは金融政策ということになるのだと思います。世界の先進国を見渡しても、こういう短期的なマネジメントというのはことごとく金融政策によって行われている。景気が、いわゆる循環が悪くなったといってすぐ政府の支出をふやそうというような国は、私が認識している限り先進工業国の中には今やありません。
そういう意味では、今申し上げたような金融政策というのが大事だし、同時に、限られた支出を組み替えることによって経済を活性化する、これは効果は限られているかもしれませんけれども、そういう効果もある。こういう手段をやはりもう総動員して苦しい運営をしていかざるを得ないというふうに考えています。
○塩田委員 トレンドの問題でこの前も議論しましたが、日本の経済は、底力というか潜在的な成長力を持っている。二%とか三%、こういう潜在的な力は十分にある。供給の面から見ても十分あるわけですね。そこで、潜在能力があるにもかかわらず、現在停滞をし、また不況、デフレに陥っておるという今の状況、これはやはり今大臣言われたように、トレンドを上げていく。その方法としては、各種の規制を撤廃するとかあるいは緩和するとか、そして各部門における構造改革を思い切ってやるというところが政策だと思うのですね。
そこで、これはちょっと景気の問題で、横道へ入るかもわかりませんけれども、塩川大臣がG7に行かれた後記者会見で、当時どういう考えだったのか、非常に楽観的な現在の景気の見方をされたのですね。六月になると大体底をついて上昇に向かうのだ、こういうことを言われたわけです。
大臣は、今の時点における日本の経済というものは底固めに入って、デフレのどん底になって、これから上昇に行くという塩川大臣の見方、今どうかわかりませんよ、その当時そう言われた、その見方についてどう考えておられるか。
月例経済報告なんかを見ますと、最近は政府の公式見解としては、いや、もう景気停滞に入ったと。今までは数カ月にわたって、回復の基調が生じたとか、あるいは兆しが見られる、そういうことを何カ月も同じような表現でやってきたわけですが、実際はそうでなくして、どんどん落ち込んでいっているという状況ですね。短期間の景気の状況、これをどういうふうに判断され、今後どうなるか、まだまだ落ち込んでいくか、どう見ておられるか、お伺いいたします。
○竹中国務大臣 短期の経済の見方はなかなか厳しいと思います。今週、月例の経済報告を私たちの責任でなさなければいけませんが、まだ詳しいその数字を私自身確認はしておりませんが、やはり、前月、さらに弱含んでいると言ったことを、さらにその下に行くような見方をせざるを得ない状況になりつつあるのかなというふうに思います。
塩川大臣の御発言の引用がありましたが、確かにそういう御発言を塩川大臣は組閣後間もなくの時期はしていらっしゃったと思います。実は、この一月に私も例のダボス会議というところに行きまして世界のエコノミストと議論したときには、ことしの後半からアメリカの経済はかなり早く持ち直すだろうという見方が一般的でした。これはかなり多くの人たちがそういう見方をしていました。その時点では塩川大臣のそういう発言も、若干希望的ではあったかもしれませんけれども、見方としては私はあり得たのだと思います。
しかし、御承知のように、その後アメリカの経済に対する見方が変わってきていて、今の時点で楽観的な人は、ことしの第四・四半期ぐらいからよくなるだろう、やはり年が明けてからではないだろうかということになる。日本の経済そのものが非常に脆弱ですから、先ほど言ったようにトレンドが弱いところにありますから、非常に敏感にアメリカの需要動向に影響されてしまっているということを考えますと、非常に足元、短期、さらに厳しくなっていますが、どの時点でよい兆候が見えてくるかというのは、今の時点ではなかなか予測しがたいところであろうかと思います。あえて言えば、アメリカの経済と同じぐらいのペースで日本の経済の需要動向が短期的には動いていくということを期待しております。
○塩田委員 大臣は、塩川大臣の景気に対する見方と今の時点では違うということは、塩川大臣も変わっておられるかわかりませんけれども、今の時点で前言われたのとは違うということですね。それは組閣直後ですから、ほんの一カ月半ぐらい前ですね。わずかその間にがらっと変わってしまったということですが、大臣、今の日本経済をどう見ておられるか。鉱工業生産は、伸びかけていい調子かなと思っていたところ、ことしに入ってからちょっとおかしくなってきて、最近はむしろ前年をかなり下回ってきているということですね、在庫もふえてきたし。アメリカ経済の影響を言われますけれども、これは輸出あるいは輸入に関係してくるわけです。特に輸出ですね。日本の輸出に関係してくると思うのですが、アメリカ経済のそういった状況から、輸出も好調であったのが今や減ってきているという状況。
それから、国民所得の一番大きいウエートを占めている消費ですね。消費についても、リストラ等でもって雇用が減ってきておるし、また失業者が増大している。これもはっきり、ここ数カ月、完全失業率は最高水準になっているという状況ですね。所定外労働時間等も減ってきている。したがって、賃金所得も伸び悩みである。
それから、企業の利益も、昨年はまだいい方向にかなり行っておったのが、ことしに入って急激に悪くなってきているという状況がある。国民所得の成長力の大きな要因でありますところの設備投資、これも好調であったのが、ことしに入ってから、特に最近になって悪くなってきている。設備投資がどんどんふえていかないと、日本の経済の基本的な成長あるいは景気の回復ということはあり得ないと思うのですね。これが今悪くなりつつある。特に、先行きで見ますと、機械受注にいたしましてもなお悪い状況になってきている。
それやこれや、ずっと各経済ファクターを見ていきますと、いい要素というのはないのですね。物価も弱含みだし、株価だけは少しいいかなと思っていたら、最近また一万三千円を割るような状況。きょうはどうなっているかわかりませんが、いずれにいたしましても、景気の先行きを、何カ月か先行指標になっております株価についてもそんな状況である。これらすべてを見ていきますと、いいものは一つもないのじゃないか、これからますますデフレが深刻化する、そういう状況じゃないか。
経済財政諮問会議で近く本格的な答申を出されると思うのです。これを基礎にして政府は経済政策を決定されると思うのですけれども、どうなんですかね。第一に不良債権を処理する、私は、これはもう冒頭に、一番大事な、真っ先に手がけるべきことである。これは、ある意味ではアメリカにおきましても国際的な約束にもなっているという状況の中で、三年間の受忍期間といいますか、耐え忍ばなければならない期間は三年ということでございますが、その三年の二年ぐらいのうちに、金融関係の大きいところを中心にして、これは二年以内には片づけてしまう。しかし、他の金融機関全部を含めますとなかなか三年でいけるかどうかわからぬような状況とは思いますが、それに政府としては最大、集中努力をされるということでございます。
その場合、現在でも、不良債権を処理すればするほどというか、したのにかかわらず、これは金額的にはいろいろお聞きしたらいいのですけれども、それは別途しまして、相当不良債権を処理してきている、ところが、片や不良債権自体はまだまだふえていっているという状況があるわけですね。これの原因は何かというと、やはり資産デフレ、中でも土地の価格が下がっていっているというところからくると思うのです。
こういう中で、第一の経済政策、不良債権処理、構造改革の意味を含めてもこれをやるとおっしゃいますけれども、本当にそういう状況にあるかどうか。景気が上昇している中でこそそれが有効にいくんだと思いますが、今はなかなかそういう問題は大変だし、しかも今のような状況の中であれば、リストラによって失業がうんと出てくる。そういうことを考えますと、これに集中して経済政策をやられる、本当に大丈夫でしょうか。
○竹中国務大臣 事態の厳しさは認識しております。
短期の経済指標については、今かなり丁寧に解説いただきましたし、私も認識をシェアしています。一―三月期のGDPというのは、実は、よく考えてみると、小泉政権ができる前の数字でありますので、この解説をするのは、本音のところは若干つらいところが私たちにはありますが、その後も、御指摘のように、生産が昨年の暮れあたりから急に落ち込んできて、主要項目で見ると、設備投資がここのところかつての勢いがなくなってきた。その中身を見ると、実は、それ以前設備投資を引っ張ってきたのはIT関連の設備投資で、そのIT関連が、アメリカのシリコンサイクルと歩調を合わせる形で、今、かつての強さがなくなってきているというのが現状であろうかと思います。
消費は、人々は非常に賢くて、長期の生涯所得を見て動いていますから、生涯所得に関して言うならば、先ほど言いましたように、トレンドが横ばいであれば、人々が賢ければ賢いほどそんなに消費できるはずがないということになる。では、このトレンドを上げるにはどうするかというと、一時的な需要追加や減税だけでは無理で、人々は賢いですから、それを見抜いてしまう。赤字がふえるということを見抜いてしまいますから、結局のところ、めぐりめぐって、先ほど言ったトレンドを上げる構造改革をつらいけれどもやらざるを得なくなる。
それで、今委員最後に、今の状況下でやることのリスクの御指摘があったと思います。では、不良債権処理をやらないで、構造改革をやらないで、景気がよくなるのをじっと待っていてそういういい機会が訪れるかというと、しかしこんなことはあり得ないわけですね。不良債権の問題というのは、今いみじくも御指摘になったとおり、今のようなトレンドのもとではまだふえる可能性があるわけです。だからこそ、このマイナスの部分を一刻も早く切り取ってしまって、トレンドとして上げられるような体質に持っていくという、私たちにはその選択しかないのだというふうに思います。
しかし、やるに当たって、幾つかのリスクを覚悟しながら、幾つかの政策を用意していかなければいけない。経済財政諮問会議の骨太の方針の中では、そのためのプログラムを七つ掲げていますが、当面、その中で特に重要になってくるのは、二番目だったですかね、チャレンジャー支援のプログラムということだと思います。イノベーションに向かっていく起業家を支援する税制等々を含む制度づくりが必要だというふうに思いますし、リスクマネーに向かっていくような資本市場を強化するための仕組みが必要だろうと思うし、その過程で、不良債権の再生産をもたらしている地価、具体的には特に東京の地価なんですけれども、それを食いとめるための都市再生の機能が重要だし、今そういうものが少しずつ仕組みとして出ていく中で、少しでもそれを前倒しして、小さな政策を集めてでも狭いマネジメントをやっていくしかないのだと私は思います。
ただ、最後に一点、経済資本に関しては次のような解釈ができるものも若干あると私は思います。
一つは、機械受注に関しては、一部ですけれども、少しよくなる可能性があるものも中には含まれています。さらには、雇用が厳しいという御指摘がありましたけれども、確かに失業率は最近期で〇・一%上がりました。しかし、失業率が上がると同時に、有効求人倍率も上がったのですよ。ということは何かというと、確かに失業者は〇・一%ふえたのだけれども、有効求人倍率、つまり求人は以前よりもふえているのですね。まさに何を意味するかというと、これは労働需給のミスマッチでありますから、ここで労働者の再トレーニングの支援等々をやれば失業率を減らす可能性も実はあるのだということがこの指標の中に、小さい指標だけれども示されている。そういうものを考慮しながら当面の経済運営を注意深くやっていくしかないというふうに私は思います。
○塩田委員 雇用のことも言われましたけれども、雇用のミスマッチ、あるいは流動化を進めると、生産性の低いところから高いところに持っていく、物と金とは違って、訓練をやっても、人というのはそう簡単にいくものじゃない。これは別途しましょう。この構造改革というか、改革対策は大変なことだと思います。
これは別途いたしまして、やはり景気をよくしていく、その方法としては、新規産業、ベンチャー企業、こういうのも活発にしていく、これで日本経済のどん底、デフレから上向きに持っていく方法があると思うのですね。今までそうやってきたわけですよ。輸出がメーンのところがだめになったら、次の新しい製品を開拓して、それを輸出に向けた。燕の食器なんかでよく言われますが、そういう例ですね。
それからもう一つ、規制の緩和。これはよく言われますが、五メガサイクル、ちょっと電波を広げただけで、短期間で二千万、三千万の携帯電話が普及した、これはあるわけですね。おっしゃいますようにシュンペーターのイノベーションですか、そういう経済の、連続的じゃなしに断続的に、急にそういったショックがあればふえるという、あるいは経済が拡大していくという、そういうものがありますね。
その新規産業、ベンチャー企業を抑えている規制とかいろいろな制約がいっぱいまだあるのですね。これを早くどんどん開放していけば、もっともっとそういった新規産業が興ってくる、景気が立ち直ってくるというふうに思いますが、まだまだ具体的に、改革という中には、特殊法人の民営化、これも大改革でありましょうし、大きく経済を活性化するための方法でもあると思いますし、そういった分野はたくさんあるわけです。地方と中央との財政の関係で地方交付税交付金の問題が言われておりますけれども、きょう、小沢一郎党首が党首会談で言いましたように、補助金の一括地方公共団体への交付、これなんかも本当に構造的な改革になると思うのです。
そういった面、思い切って改革に取り組み、しかも、マイナスになっていくことだけでなくして、それは必要なんですね、必要だけれども、それと同時に、それ以上に、新規の産業あるいはベンチャー企業等が活発に興るような、経済が活性化するような改革をどんどんやっていただきたいと思います。
以上で終わります。
○横路委員長 松本善明君。
○松本(善)委員 官房長官、きょうは靖国の問題を伺おうと思います。
小泉首相は、八月十五日に総理大臣として靖国神社を参拝するということを国会答弁で明言していらっしゃいます。御存じと思いますが、五月十四日の衆議院の予算委員会が一番はっきりしています。総理という公的資格で参拝するということは、これは明白な公式参拝なんですね。ということになると、これは内閣としての問題ではないか。休憩前の長官の答弁で、内閣は連帯して国会に責任を負うと。だから、この公式参拝問題というのは内閣としてどういう方針でいるのか、伺いたいと思います。
○福田国務大臣 内閣の方針かどうかということになりますれば、これは内閣の方針ではございません。
小泉総理は、これまでも国会でもって、今日の日本の平和と繁栄というのは戦没者の方々のとうとい犠牲の上に成り立っているものと思いまして、その戦没者に対する心からの敬意と感謝の気持ちを込めて参拝したいと思っていますということと、二度と戦争を起こしてはいけないという気持ちからもこの靖国神社には参拝しなければならない、また参拝したい、今でもその思いには変わりはございませんというような発言をされております。
これは総理御自身が判断をされることでございまして、内閣で決定をするという性格のものではございません。
○松本(善)委員 ということになりますと、これは官房長官の見解では私的な参拝だということですか。これは、総理大臣としてということをはっきり言っている。そしてその肩書を外せないということも言っています。どうですか。
○福田国務大臣 これは公的とか私的とか、そういうことを意識して発言されているものでないと私は思っております。
まず、靖国神社への公式参拝というのは制度化されているものではないということで、あえて公式参拝と呼ぶものとして行われるかどうかということは、総理大臣が、我が国民や遺族の方々の思い及び近隣諸国の国民感情など諸般の事情を総合的に考慮して、慎重かつ自主的に検討した上で判断される、こういうものだと思っております。
○松本(善)委員 公的とか私的とか言わないといったって、総理大臣であることは間違いないんですよ。しかも、御本人も国会で総理大臣として参拝するんだということをはっきり言っているんです。
政府の答弁書では、公式参拝というのは、内閣総理大臣が公的な資格で行う靖国神社への参拝。公的資格であることは明白なんですよ。御本人は、小泉首相はやはり予算委員会で、二十四時間総理大臣は総理大臣なんだと。総理大臣として参拝するというのは、これは明白な公式参拝じゃないですか。幾ら公的とか私的ということは言わないといったって、公的参拝であることは明白じゃないですか。
○福田国務大臣 総理大臣というのは二十四時間総理大臣なんですよ。ですから、どういう立場で行くのかと言われても困るんだけれども、それは総理大臣の小泉純一郎というので行くんですから、そういう意味合いで申したんだと思います。
○松本(善)委員 それを公的資格というんですよ。御本人も、総理大臣として行く、肩書を外せないとはっきり言っているんです。
今も言われましたけれども、首相は、国難に殉じて命を犠牲にした方々に感謝をささげるために行くと。しかし、憲法二十条が信教の自由だとか政教分離を規定しているのは、靖国神社が侵略戦争推進の精神的支柱であった教訓を踏まえて、その誤りを繰り返さないためなんです。
官房長官はどういう戦争体験を持っていられるか、私はよくわかりません。しかし、私は敗戦のときは海軍兵学校の最上級生です。これは文字どおり、戦死前提のことでいたわけですよ。あと半年戦争が続けば、私は恐らく靖国神社でしょう。こんなことはやっていないですよ。そういう体験から見ると、靖国神社に総理大臣が参拝をするということは、そういう戦争について戦死してもいいという気持ちを国民に持たせるため、それが侵略戦争の精神的支柱と私ども言っているんですよ。
総理大臣が総理大臣として参拝されれば、これは靖国神社をほかの宗教とは違う特別な扱いをしているということになりませんか。
○福田国務大臣 それは、海兵隊に行かれて、本当に戦死をするかもしれぬという瀬戸際まで行かれた、そういう御体験があるというのは本当に切実感を持ったお話でございますから、その思いというのは大変重いものがあろうかと思います。
私だってそういう意味では、戦争に行くようなそういう準備をする年ではなかったけれども、しかし、戦争で家を二回焼かれました。そういうこともありますから、それはやはり我々、そういうふうな人たちも、私はまだ子供でしたけれども、戦争の瀬戸際の体験というものも持っているわけです。
それは別としましても、そういうことで、靖国神社ということに特に限っているわけじゃないんですね。八月十五日に小泉総理は靖国、それから千鳥ケ淵、それから武道館の慰霊祭、こういう三カ所に毎年行かれるというような話もされているようでありますけれども、私も千鳥ケ淵には毎年行くようにしております。そんなことで、そういう戦争にまつわることでもって犠牲になった方々をお参りするということ、そのことは靖国神社に限るわけでないわけでございまして、私は、そんなに意識されなくてもよろしいんじゃないかな、こういうふうに思っています。
そういう気持ち、先ほど私、小泉総理の気持ちをちょっと申し上げましたけれども、あれに尽きるんだろうというふうに思いますので、ですから、靖国神社にもそういう思いでもって自然に行かれているんだというように思っております。
○松本(善)委員 千鳥ケ淵とか武道館は、それはいいですよ。靖国神社がいけないんですよ。何でか。これはやはり特別の、戦前は国家神道だったでしょう。それは今は宗教法人ですよね。何でいけないのか。これは、靖国神社に祭られるかどうかという基準は、天皇に忠誠を尽くしたかどうかで決まるわけですよ。だから、西南戦争で賊軍になった西郷隆盛は祭られていない。東条英機など太平洋戦争の戦犯は祭られるわけですよ。だからそれはもうはっきりと別個の問題です。
無宗教の人であろうとキリスト教徒であろうと全部同じように戦没者を追悼するというところへ行くのと靖国神社へ行くのというのは全然違うんですよ。そこは違うと思いませんか、官房長官。
○福田国務大臣 私自身の気持ちを申し上げれば、そんなに違わないんですね。そんな世代だなというふうに言われれば、そうかもしれぬけれども、実際問題、戦争でもってある意味においては犠牲になられた方々、そういう方々に対する気持ちをあらわすということ、そのことを考えていただきたいと思います。
○松本(善)委員 それは、私は、やはり政治家としては大変考えが浅いんじゃないかと思いますよ。だって、これは中国が問題視し、それから韓国が、アジアの諸国、みんな問題にするでしょう。日本だって大きな問題になるでしょう。千鳥ケ淵に行くというのはだれも問題にしていないですよ。何で問題になるのか。それは、天皇の名において行われた中国侵略なんかの美化になるから。
やはりこれは、私は、植民地支配と侵略を反省した村山見解、これは政府の見解、今の小泉内閣の見解でもあると言っていますけれども、これに反するじゃないですか。侵略を美化することになる。中国侵略は明白ですよ。違いますか。
○福田国務大臣 靖国神社に行って戦争を美化するとか、そういう思いは全然ないんですね。先人に対する思い、そういうような機会に亡くなられたというその思いだけでもって我々がお参りをしているということでございますので、考えが浅いというように言われれば、そうなのかな、こう思いますけれども、しかし、幾ら浅いと言われてもそういう気持ちは変わらない、こういうことなんですね。そんなところでいいですね。
○松本(善)委員 私は、やはり違うと思うのは、中国の外務省は、この問題は、日本政府が過去の侵略戦争の歴史をどう認識し、対処するかが問題の本質だと。これは外国に指摘されるまでもなく、そうなんですよ。いや、戦没者を追悼するだけだと言ったって、客観的にそういうことなんです。靖国神社の性格がそうなんだから、そこは否定することは絶対できないと思いますよ。
中曽根元首相は、これは参拝をされて大問題になって、中止をされましたよね。中曽根元首相は、さもなくして、だれが国に命をささげるかと。私がさっき言った気持ちと同じです。そういうことを意識をして総理大臣としてやるわけでしょう。
官房長官は、中曽根さんのそういうふうに言われたことと同じ気持ちですか。
○福田国務大臣 私は、今は日本は平和な時代で、そういうことを考えなくてもいい、大変幸せな状況にあると思います。しかし、長い歴史の中でもって、もしかしたら日本が国難に遭うかもしれぬとかいったようなことも、また、日本が攻められるということがあるがために自衛隊もあるわけでございますので、それは、やはり不断に、日本がどういう状況になるかわからぬということを前提にいろいろ物事を考えていた方が、やはり国家国民のことを考えて安全ではなかろうか。
自衛隊が、だからといって、すぐ戦争をするとか、そういう話じゃないんですよ。ないんだけれども、やはり万が一というときのために自衛隊があるわけですね。ですから、そういうことを考えた場合に、自衛隊だって、あるときには身の危険を感ずるようなところにも行かなければいけないといったようなことも、恐らく自衛隊の隊員というのは考えているんじゃないかな、こう思います。
ですから、やはり日本の国を守る、そして国民を守るという観点から考えて、私は、非常に不幸なときがあってはならぬけれども、ないように努力するんだけれども、そういうことも、もしあったときにどういう心構えを持つかという問題だと思っております。
○松本(善)委員 ガイドラインの法律ができて、私ども戦争法と言っていますけれども、今、世界情勢の中で、日本を攻める、あるいはアメリカを攻めるなんて国はないですよ。そんな国際情勢はありません。やはり今は、二十世紀の二回の世界大戦、あれの教訓を踏まえて、人類の平和を守る、人類や地球を守る、そういう時代だと思うんです。私どもは、平和のために憲法九条の精神を守って、世界の平和をつくり出す、それで戦争をする者に反対する、それに私は命をかけてもいいと思いますよ。逆ですよ、今官房長官の言われたのは。
今通った戦争法というのは、干渉戦争ですよ。それを、今度はまた集団的自衛権でやろうとしているでしょう。だから、そういう場合にも喜び勇んで戦死しようということになる、これは自衛隊の諸君にも。私は、この侵略戦争の反省を本当にしていないということ、それがアジアの諸国に対して非常な脅威になっているんですよ。私は、日本のアジア外交について言うならば、これを根本的に反省するということは、これはもう金銭にかえられない、本当に日本の外交の貴重なものですよ。これは靖国神社に参拝をしていくと言ったら、アジア外交は非常に困難な状況になる。それは私は明白だと思います。
それで、私、長官に伺いたいのは、長官の見解も揺れているように思います。五月十七日に、中国からの要請に対して長官は、参拝はあくまでも戦没者に敬意と感謝をささげたいとの気持ちであり、さきの大戦を美化するものではなく、戦犯が行ったとされる行為を正当化するものではないと理解している、私はこの考えと違いますけれども、そういう見解だった。ところが、五月二十五日の夕方の記者会見では、中国側があのように言うのは当然だ、あちらの立場に立てばやむを得ない、また、まじめに受けとめる必要がある、真摯に対応する、こう発言したことが報道されております。
官房長官の現在の考えを、そして内閣として具体的にどういうことを検討されているのか、真摯に対応するというのですから、お答えをいただきたい。
○福田国務大臣 過去の戦争を反省していないとか歴史認識が足りないだとか、そういうのはやめていただきたいと思うんですね。まず申し上げておきます。十分にしておりますから、その上で私は申し上げているのですから。
外国の反応、今御指摘のは中国、韓国だと思いますけれども、いろいろとそういう懸念が示されているということ、これはもう今おっしゃっているとおりでございまして、私は、それほどぶれているわけではない。人間ですから、多少のぶれはあるかもしれぬけれども、基本線はぶれているつもりはございません。
要するに、靖国に参拝し、二度と戦争を起こしてはならない、こういう気持ち、これは別に、戦没者の方々に対する真心を示す、そういう気持ちであって、これを大戦の美化とかそんなふうに受けとめられては困るんですね。それがそういうふうに受けとめられるというのであれば、その誤解を解く努力をしなければいけない、こういうことでありまして、これは、そういう中国とか韓国とかいう友好諸国と友好関係をさらに深めるという意味からいっても、やはりその理解を得る努力をしなければいけない、こういうように私は思っておりまして、ですから、そういうことでこれからも努力をしてまいりたい、こう思っております。
○松本(善)委員 長官、反省しているんだというふうにおっしゃいますけれども、総理が靖国神社を参拝したら、それはもうアジア諸国からもごうごうたる非難が起こりますよ。
私は、韓国の独立記念館を訪問したことがあります。あの植民地時代の独立運動をやった人たちのあれが、長官もごらんになったかもしれませんが。私は、日本共産党が、その独立運動をやった人たちと同じように、戦前、植民地支配に反対したんだと。一遍に気持ちが通ずる、向こうの館長の目が輝きました。
私はその体験で、これは本当に重要な、日本外交にとってはとても大事なことだと。どんなに理解をしてもらおうといったって理解しないですよ。日本軍のもとに、天皇の名のもとに来た軍隊によって殺された人がいっぱいいるんだから、それは理解してもらうといったって無理ですよ。
何でそんな危険なことをやるんですか。アジアの諸国を敵に回すようなことを何でやる必要があるか。長官、どう思いますか。
○福田国務大臣 御意見は御意見として承っておきます。
○松本(善)委員 御意見を承るでは済まないんですよ。
実際に、我々の歴史の中ではあるでしょう。中曽根元総理が一九八五年に公式参拝を強行した、それに対する内外の強い批判によって翌年は参拝を中止したでしょう。そのときに後藤田官房長官が、我が国が平和国家として国際社会の平和と繁栄のためにいよいよ重い責務を担うべき立場にあることを考えれば、国際関係を重視し、近隣諸国の国民感情にも適切に配慮しなければならない、こういうことを言いました。同じ要請がアジア諸国からあるわけですよ。これを強行するということは、国際関係重視、近隣諸国の国民感情に対する配慮という立場を投げ捨てるということ、後藤田官房長官が言った立場を投げ捨てるということです。違いますか。
○福田国務大臣 後藤田官房長官の談話というのがございますけれども、ここに書いてありますのは、公式参拝の実施を願う国民や遺族の感情を尊重することは政治を行う者の当然の責務であるが、国際関係を重視し、近隣諸国の国民感情にも適切に配慮しなければならない。そういうことですね、大事なところは。
私もこれは大事だと思っております。ですから、そういうこともあわせ考え、判断してまいりたいと思います。
○松本(善)委員 そうしたら、やはりやめないといけないと思いますよ。後藤田談話はこういうことも言っています。過般の戦争への反省とその上に立った平和友好への決意に対する誤解と不信さえ生まれるおそれがある。靖国参拝は、そういうことになるおそれがあるというのです。それは、諸国民との友好増進を念願する我が国の国益にも、そしてまた戦没者の究極の願いにも沿うゆえんではないと、ここまではっきり言っているんですよ、官房長官見解として。これが八五年の教訓なんですよ。
小泉首相の参拝強行は再びこうした事態を招くと思いますよ。小泉内閣は、この八五年の教訓をどう受けとめているのか、国益に反すると思わないのか、官房長官に伺いたいと思います。
○福田国務大臣 御意見として伺っておきます。
○松本(善)委員 御意見として伺うでは済まないんですよ。
といいますのは、小泉首相は、批判があっても八月十五日に首相が行くことでこの問題を外交問題として取り上げるのはやめようという気持ちになるようにしていきたい、こういう答弁をしているんです。これはすさまじい高圧的な答弁ですよ。おごりですね。八〇%、九〇%の支持率があるからといって、こういうことを言っちゃだめだ。こういう態度をとっていくなら、必ず小泉内閣に対する期待は失望と怒りに変わりますよ。それはごうごうたる非難になりますよ。
私はきょうは憲法論をやるつもりはありませんけれども、官房長官はよく御存じと思いますけれども、例えば仙台高裁のあれ。内閣総理大臣等が公的資格において靖国神社に赴いて参拝するということになれば、その行為の態様からして、国またはその機関が靖国神社を公的に特別視、あるいは他の宗教団体にして優越的地位を与えているとの印象を社会一般に生じさせる。容易にこれは推測される。
これが大事なんですよ。これだけ国際的に大問題になっているときに総理大臣が訪問するということになりますと、世間は、靖国神社を特別扱いにしているということは、はっきり感ずるんですよ。だれだってそう思いますよ。それが憲法二十条に反するという根本なんですよ。あるいは、最高裁の愛媛の玉ぐし料訴訟判決も、特定の宗教団体への特別のかかわり合いを厳しく戒めている。だから、靖国神社が他の宗教団体と違って政府によって特別扱いされている、そういうふうに国民や世間、国際社会が見るということがいけないんですよ。それをやめなくちゃならない。
私は、八月十五日までまだ引き下がるだけの時間があると思います。これは絶対やっちゃならぬ。これを私は意見ではなくて、国会というのはそういうことでお互いに対話をするわけでしょう。政府はこれでいいと思っているかもしれない。それは違うぞということを言うのが野党でしょう。その意見を受けとめなければ国会の意味がないじゃないですか。官房長官、どう思いますか。
○福田国務大臣 靖国神社は我が国における戦没者追悼の中心的施設であるとして、靖国神社において国を代表する立場にある者が追悼を行うことを望んでいるという事情を踏まえて、専ら戦没者の追悼という、宗教とは関係のない目的で行うものである、かつ、その際、追悼を目的とする参拝であることを公にするとともに、神道儀式によることなく追悼行為としてふさわしい方式によって追悼の意をあらわすということで、宗教上の目的によるものではないことは外観上からも明らかである。こういう場合をあわせ、憲法第二十条第三項の禁じる国の宗教的活動に当たることはないということになっているんですよ。
いろいろおっしゃいますけれども、やはり不戦の誓いをするということを総理も言っていらっしゃるし、私もそこでもってまた戦争をやるぞなんということを思ったこともないし、本当にそういう純粋な気持ちとして、一国民としてお参りをしても全然問題ないというように考えておりますので、そこら辺は、ちょっと考え方の違いというものがあるんじゃないかというふうに思っております。
○松本(善)委員 幾らそういう気持ちはないと言ったって、客観的にどうかということなんですよ。靖国神社を特別扱いしている。総理大臣は、国際社会でも問題になっている、マスコミでも国会でもこれだけ問題になっている、それを押し切ってやるということになると、ますますこれは特別扱いだということになりますよ。何でそんなことをやらなきゃならないんだ。
私は、内閣としてこれを厳重に反省して、日本の国益を害さないように。日本の外交は非常に困難なことになると思う。私は、そのことを真剣に考えられることを強く要求して、質問を終わります。
○横路委員長 北川れん子さん。
○北川委員 社民党・市民連合の北川れん子といいます。
今の松本委員のお話にもつながるところがあるんですが、今、主体的には、不戦の誓いを立てていらっしゃると言うんですが、でも、客観的に見れば、どうも戦争への道を行こうとしている。五十年たった日本の状況の中で、きょう社民党は党首討論でもテーマにいたしました、在外被爆者の方々への問題をまず初めに取り上げていきたいと思います。
大阪地裁における在外被爆者郭貴勲さんが起こした裁判の判決が六月一日に出たということを受けて、きょうの党首討論の中にもありましたけれども、今回はすごく明快でありまして、一たん法律で被爆者と認められたら、世界じゅうどこに行っても常に被爆者であるということは変わらない。でも、郭さん御自身が言っていらっしゃるように、今六冊もの被爆手帳を持っているという状況のおかしさを明確についた判決だったと思うんです。
そして、きょう提案しましたように、控訴すべきではないという提案を私たちは首相にもしましたし、そして、今お話ししたように、内閣官房長官にも同じように、控訴の期日が十五日、きょうがもしかしたら重要な山場になる、今の段階ではまだ結論を出していらっしゃらないという情報を得たんですが、判決をお読みになっての感想と、そして、控訴すべきではないという意見に対してどのような態度をお持ちなのかということを、まずお伺いしたいと思います。
○福田国務大臣 この問題は、要するに控訴をするかどうかといったことでありますけれども、現在、厚生労働省と法務省、両省が協議をして検討を進めているというところでございまして、もうじき結論を出すと思いますけれども、その最終的取り扱いについては両省に今現在任せておるというところでございます。
○北川委員 両省に任せているといった中で、内閣としての明確な、きょう首相にもお伺いしているわけですから、控訴の期日が迫ってきているわけですから、それを断念するかどうかというポイント、どこを押さえられてされるのかというのを、もう少し明確な、具体的な答弁をいただきたい。
それともう一つは、厚生労働省の方が、控訴すべき理由というのをレクチャーしてそれぞれの大臣の方々に回っているというのを情報として聞いたんですけれども、官房長官の方にはそういうレクチャーというのは来ているんでしょうか。
○福田国務大臣 今申し上げましたけれども、今厚生労働省、法務省、ここで検討を進めているわけでございます。ですから、その検討の結果を見て、我々が関与するべき問題かどうか、これを決めなきゃいけないということであります。要するに、その検討の結果を待っておるという状況にあります。
○北川委員 聞いていただいてないのかなという感じがするんですけれども、私の質問に対するお答えがなかったので。
厚生労働省の人たちが、各大臣に向けて、控訴すべきだというレクチャーを、なぜ控訴することが必要なのかということ、ハンセン氏病のときもありましたよね、なぜ控訴した方がいいのか。もし控訴を断念したら、これぐらいの部分のいろいろなことにまつわってくるんだ、エイズの問題にもずっとつながってくるんだというようなことをされていたという現実があったと同じように、今厚生労働省の官僚の人たちは回っていらっしゃると。だから、そういう働きかけはあったのかどうかというのをお伺いしたんですが。
○福田国務大臣 ですから、そういうことも含めた状況報告は受けていないということです。
○北川委員 ごめんなさい。ちょっとよくわからないんですが、それは働きかけがあったと……(福田国務大臣「働きかけというのは何ですか」と呼ぶ)ですから、厚生労働省の官僚の人たちが、控訴すべき――私たちは、きょうの党首討論でも言いましたが、控訴すべきではない。これは、いかにも物すごく明快な判決であるからですよ、今回の判決が。もう読まれていると思いますけれども。ですから、控訴すべきではないという提案をしているわけですが、控訴すべきだという官僚たちの働きかけが福田大臣にはありましたか。
○福田国務大臣 再三お答えしているように、そういうことを働きかけというんだったら、働きかけはございません。
○北川委員 何かすごく微妙な感じが、そういうことが働きかけだったら働きかけはございませんというのは、何か少しはレクチャーを受けられた形跡があるなというふうに思いますが……(福田国務大臣「ない」と呼ぶ)ないのなら……。でもちょっと微妙に違いましたね。私は受けとめました。
それと、それはもちろん当事者大臣がいろいろと考えていらっしゃるでありましょうけれども、もうここあと一日、二十四時間ぐらいの中で判断をするといったときには、もちろん、官房長官たちのお心のところでは一定程度の結論というのは持っていらっしゃるんじゃないかということを含めてきょうお伺いしているわけですから、もう少し具体的な話をもう出していただいていいのではないかと思います。
それと、控訴するかしないかの前に、今小泉首相の方に原告の方たちが会いたいという申し入れをされているとも聞いておりますが、その点に関してはいかがでしょうか。会っていただけるような方向で、今時間配慮というのを官房長官の方で、スケジュール立てというのはやっていらっしゃるのでしょうか。
○福田国務大臣 何度も同じことを繰り返すのですけれども、誤解のないように。本件について、まだ厚生労働省、法務省から話を聞いておりません。検討している、そういうことだけでございます。その中身については聞いておりません。
それから、今、面会希望、これは、そういう話は一切ございません。
○北川委員 そうしたら、もう一度帰って確認してください。面会希望しているというのを御本人から聞いておりますので、それは確認をしていただきたいと思いますし、ぜひそういう希望に沿って――判断をするときには何かがポイントになるわけですよ、世論か判決の正当性か憲法か。その基準になるものを何にも持たずに、ただ厚生労働大臣か法務大臣が言ってくるのを待っているというような消極的な態度では、小泉内閣の聖域なき構造改革というのはできないんじゃないかということを私は思いますので、ぜひ、その面会の申し込みを、もう一度、再確認をしていただきたいということをお伝えしたいと思います。
では、次になんですけれども、前回も他の委員が聞かれていたんですが、尾身大臣の方に。今回、五月の二十七日、新潟県の刈羽村での住民投票がありました。八八%の投票率で、五三%が反対、プルサーマル計画、軽水炉でMOX燃料を使うことに対しては反対ということを明確に意思表示をしました。それを受けて、この結果を尊重されるのかどうかということをもう一度改めてお伺いしたいと思います。
○尾身国務大臣 住民投票でございますので、その結果はもちろん、ある意味でいいまして尊重しなければならないものと考えております。
ただしかし、このプルサーマル計画というのは、普通の発電所の中においてプルトニウムが出てまいります。このプルトニウムは、もうちょっと詳しく申し上げますと、ウランというのは同位元素でございまして、ウラン238と235があるわけでございまして、235が核分裂を起こす、その過程においてウラン238がプルトニウムに変換をする、そしてその変換をしたプルトニウムが核分裂性物質で核分裂を起こす、こういうことになります。したがいまして、その核分裂を起こす物質になりましたプルトニウムを、核分裂の状態で、つまり原子炉の中で燃やすということをいたしませんと、プルトニウムがどんどんたまってしまう。他方、核分裂性物質のプルトニウムを原子力発電に使うという利用の方にも利用ができない。
そういう意味で、プルトニウムを原子炉の中で燃やす、核反応をさせるようなプルサーマル計画というのは、原子力が、ウラン238としてあった大部分の、九九・三%のものを核分裂性に直して、それをさらに分裂させて燃やして使うという意味において大変大事であるというふうに考えております。
それから他方、プルトニウムは、燃えるという意味は、逆に言いますと核分裂性でございますから、原子爆弾の材料になるということもございまして、やはり長く国内に置くというよりも、プルトニウムのこの分裂性を利用してそれを燃料として使うということが大変大事でございまして、イギリスその他のヨーロッパの国々では、もう三千万キロワットの発電所でいわゆるプルサーマルという形でプルトニウムを燃やしているわけでございまして、日本としても、安全性には十分、一〇〇%の対応をしながらプルトニウムの活用をしていきたい。
そういう意味におきまして、このプルトニウムのプルサーマルの必要性それから安全性についての説明において、私ども、やはり努力が足らなかったのではないかというふうに反省をしております。そういう努力をしっかりした上で御理解をいただいて、このプルサーマルの計画はやはり日本全体としてぜひ進めさせていただきたいというふうに考えております。
○北川委員 今の御答弁は、私からすれば、尊重しないということに聞こえてくるのですよね。かなりの時間、今説明をしてくださいました。そして、住民投票までやろうとした刈羽の人たちは、そういうことをすべて知っているわけですよ、この三年半勉強してきて。同じ地域のたった五千人ぐらいの町が、賛成、反対に分かれて、いろいろ自分の意思表示をしなければいけないという局面に立たされたわけですよね。原子力政策が四十年前に持ち込まれたときには何らそういう意思表示をする機会もなく、原子力発電所をこの四十年間刈羽の人たちは七基受け入れてきたわけですよ。
尾身大臣の先ほどの答弁というのは、もう既に皆さん知っていらっしゃる。私も知っている。なぜプルトニウムがたまったら悪いのですか。プルトニウムの一%のリサイクルしかできないとか。再処理しなければいいのじゃないのですか。そして、核廃棄物を地上管理するというふうに切りかえることだってできることを、たまるから使わなければいけないというのは本末転倒であろうと思うのですが。
もう一度PRをし直すという形で出てくる政府に対しては、刈羽の人たちに対して失礼ではないか。刈羽の人たちは、すべてのことを議論し尽くした上で住民投票を受け入れて、五月二十七日結果を出したわけですよ。しばらくは、あの結果に対してのありようというものを静観すべきではないのか。今からもう一度また理解を求めるようなPRをしなければいけないという立場に立つ政府というのは、住民を尊重していない、上から下を見ている、そうとられても仕方がないと私は思いますが、いかがでしょうか。
○尾身国務大臣 今委員は、しばらくはという言葉を使われました。私どもは、そういう意味で、今すぐやることについてはギブアップをしているわけでございますが、しかし、この問題の我が国のエネルギー政策、日本という国家のエネルギー供給の安定性、つまり供給確保という意味におきまして、このプルサーマル計画というものは極めて大事でございまして、私ども、逆に言えば、その必要性それから安全性についての理解を得る活動が努力が足らなかったという点を反省しているわけでございまして、政府におきましても、古川官房副長官を主宰といたします連絡協議会を設けて、さらに地元の皆様の理解を得るべく体制を整備していくということで、これからも対応していきたいと考えております。
したがいまして、長期的に見て、プルトニウムの活用というのは、原子力発電を本当の意味で実用化するためにどうしても避けて通れない問題である、課題であるというふうに考えております。
○北川委員 それはもう強権発動ですよ。何を言っても、反対をしても進めていくということを明言されたと同じじゃないですか。私がしばらくと言ったのは、住民投票が終わってすぐに皆さんは、PR、広報が足りなかったから、政府の中にそれに対応する部署を持つというようなことを発表されて、また刈羽の人たちは悩んでいるわけですよ。
私は、では、逆に言いますが、プルサーマル計画を受け入れるという自治体を探されたらいいのじゃないですか。お探しになったらいいのじゃないですか。
○尾身国務大臣 この点につきましては、私は議員と全く意見が異なっておりまして、日本の国の将来を考えたときには、そして原子力発電という、石油が足らない日本が原子力によってエネルギー問題を解決するというのが、国民の将来を考えたときにはどうしても必要であるというふうに考えております。
そういう中で、私ども、刈羽村に関しましてやはりPRが足らなかった、PRというか説明が足らなかったという意味で反省をしながら、さらに理解を得るべく努力をしていきたいというふうに考えている次第でございます。
○北川委員 それはもう余計なお世話だということをお伝えしたいのと、それと、日本はいつもウランがないとかという形で資源がないという言い方をしますが、自然エネルギーや代替可能なエネルギーとか持続可能なエネルギーに向けては、エネルギーというか電気を起こすものに関しては、日本の中にはいっぱいあるわけですよ。それを活用するというところに予算を振り分けるという方向に――刈羽の人たちも、七基は受け入れるけれどもそれ以上はもう嫌だ、それ以上怖い計画を持ち込んでもらっては困るということを言っていらっしゃるということで、もう少し私は、尾身大臣は、今の住民の意識というものがどういうふうに変換してきているか、変わってきているのか、政治家ではないですよ、住民ですよ、見詰めていただきたい。
その一つの糧になるアンケートを市民団体が発表したというのが新聞に載りました。四十七都道府県に、高レベル放射性廃棄物の処分場受け入れ、あなたの県は受け入れはしますかというアンケートをとっている。きょう高レベル廃棄物の問題をお伺いすると言っていたのでお伺いしますが、四十七のうち、明確にノーと言っているのが十六あるわけですよね。それで今、高レベル廃棄物の処分場になるかもしれないと言われている青森、岐阜、岡山もノーと言っています。
例えば、今、立候補地であります兵庫県というのは、仮定の質問には回答できない、けれども、住民の安全が第一と言っています。私の兵庫県というのは、原子力防災を原発を持たない地域でありながら初めてつくった県でもあります。あとほかのところを見ると、積極的に引き受けてくれるといった県というのはないわけです、行政の方も。ないのですよね、この結果を見れば。
プルサーマルにしろ原子力発電所にしろ、高レベル廃棄物と原発労働者の方々の被曝という問題はすべて避けては通れないと思うのですが、尾身大臣はこのアンケートの結果をどういうふうにお受けとめになるのでしょうか。
○尾身国務大臣 私は、逆に北川委員に質問をしたいのでございますが、その他エネルギーで問題を解決すればいいではないかとおっしゃいますが、見通し得る将来において相当努力をいたしましても、全体のエネルギーの中の三%が限度というのが今の見通しでございまして、三%のエネルギーをもって全体のエネルギーの供給の問題を解決するということができるような錯覚を起こすような議論は的外れであると考えております。
そして、高レベル廃棄物の問題につきましては、もとより今は、高レベルの放射性廃棄物につきましては、ガラス固化というような絶対に外に漏れない方式によりまして閉じ込めを完全にし、三十年ないし五十年間冷却のための貯蔵を行って、その後で地層に処分をするということを考えているわけでございまして、もとよりまだ相当先のことでございますので、地元の地層処分する場所も将来は必要になるわけでございまして、そのときには十分に地元の皆様の御理解をいただいた上で、そういう場所を探していき、その問題を解決していかなければならない。日本国民全体のエネルギー供給の確保という観点を考えれば、私どもはこういう問題を解決していかなければならないと考えております。
○北川委員 それに対してお答えするならば、何もしなければ三%ぐらいにしかならないかもわからない自然エネルギーとか、燃料電池の問題とか天然ガスとかも、これから考えようというふうにしてやっているわけですから、日本みたいな小さな国土に五十二基もつくったということ自身が世界からびっくりされているわけです。その中で七基も引き受けている。それも、ましてや刈羽の人たちというのは、その電力を享受している身ではないわけです。彼らは、彼女たちは、東京や消費地に電気を送っていらっしゃる。それを営々と七基は引き受ける、でもそれ以上怖いものはだめだという意思表示をなぜ真摯に受けとめないのか。
そして、申しわけないんですが、御理解をといったところに、先ほどの尾身大臣の御答弁の中にもありましたが、やはりそれは強権です。御理解というのは、もう理解した上で、三十年間、四十年間、理解した上で、引き受けてきた上で、これ以上は嫌だという住民投票での結果が出たということに対して、逆に言えば、村民の人たちが政府に向かって理解をしてほしいということを言ったわけでしょう。理解をするのは今度は政府の番ではないですか。
○尾身国務大臣 私どもは、我々が直面しているエネルギー供給の確保という問題を現実に解決しなければならないという責任を持っております。したがいまして、その現実に解決しなければならないための施策を進めていきたいという意味におきまして、北川委員の御意見とは違うということだけ申し上げます。
○北川委員 違うということになれば、地域住民や市民に対してのかなりの影響というものが出るということを……(尾身国務大臣「国民全体のことを考えなきゃいけないんだから」と呼ぶ)では、刈羽の人たちのことは考えなくていいということですか。
そうしましたら、済みません、先ほど、キャニスターの問題を出されました。あの問題自身も、キャニスターを政府は三十年から五十年冷却すればいいと言っています。けれども、学者やそれから綿密に計算をしたいろいろな市民グループや団体からは、百年以上冷やさないとだめなんだと。あの一本のキャニスターは、二百シーベルトという、三十秒そのそばにいれば急性で死ぬと言われるぐらいの高濃度の放射線を出しているわけです。それに対しての見解もまだついてはいないわけです。三十年から五十年でいいと言ったのはただ政府です。
それと、キャニスターを積み上げるときの重力の問題で、あのキャニスターが本当に大丈夫かどうかという問題点も指摘をされていますが、今現在、キャニスター、ガラス固化体、九九年度では六十二体の製造というふうになっているんですが、それ以上ふえているんでしょうか。日本で核燃料サイクル機構が六十二体つくったという報告は聞いておりますが、それ以上ふえているのか。また、海外分が二百七十二体あるというふうに聞いているんですが、それ以上ふえているのかどうか、お伺いしたいと思います。
○尾身国務大臣 細かい数字は私自身は存じません。これは、今は文部科学省の方で担当をしているわけでございますが、出力百万キロワットの発電所を一年間発電いたしますと、ガラスの固化体で百五十リットルのステンレス容器で三十本分高レベル放射性廃棄物が発生をする、こういうことでございまして、今の想定では二〇二〇年までで約四万本できるということでございます。それにつきましては、先ほど申し上げましたような形で処理をし、処分をするというふうに考えております。
○今村政府参考人 今ほど六十二本というサイクル機構のお話がございましたので、その点について御説明申し上げます。
核燃料サイクル機構は、高レベル廃棄物の最終処分に関しまして、ガラス固化の研究開発をいたしております。その関係で、現在、東海再処理工場の高レベル廃液につきましては、ガラス固化体をつくりまして九十七本を保管いたしております。現在、東海再処理工場の運転に従いまして発生する高レベル廃棄物をこういう研究開発の一環としてガラス固化をいたしながらガラス固化技術開発施設で安全に保管をしている、こういう形でございます。
○北川委員 六十二本から三十五本ふえたということなのかなという気がしますけれども。
去年の十月に原子力発電環境整備機構というのが設立されて、特定放射性廃棄物の最終処分に関することに従事する機構だというふうにお伺いしました。この評議員の中に、鈴木篤之さん、原子力安全委員のメンバーです、森嶌昭夫さん、原子力委員会のメンバーが入っているんですが、これというのは、独立した機関として見るにはそういうメンバーが入っているということ自身は多少問題があるのではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○大井政府参考人 お答えいたします。
今御指摘のあった先生方が評議員に入っておりますのは、専門的な知識を持っている学者でございますので、そういった方々の御意見も聞きながら事業を運営していく、そういう趣旨で入っているわけでございます。
○北川委員 専門的な知識を持った方はほかにも在野でたくさんいるわけで、同じメンバーを、原子力安全委員のメンバーである鈴木さんと原子力委員の森嶌さんをこの機構の中に入れるということは私はおかしいと思います。
それと、先ほどプルトニウムが出てくるからプルサーマル計画をやるんだというような形で言われているんですが、政府は再処理で取り出されたプルトニウムについて国際管理を主張していらっしゃいました。その主張は国際舞台の中ですよね、IAEAだろうと思うんですが、実現性があるんでしょうか。
また、国際管理がうまくいくんだったら、住民投票では反対という意見を出した、そういう反対を押し切ってまでプルサーマルを実施する必要がなくなるのではないか。福島県ももちろん凍結しているわけですし、それぞれ意思表示をし出してきている時代においては、反対を押し切ってまでプルサーマル計画を実施する必要がないのではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○尾身国務大臣 このプルトニウムの国際管理は、核兵器に使う、つまり軍事利用をするということを防止するという観点から、どこに何グラムのプルトニウムがあるかということを、例えば日本の場合でいいましても、それを全部記録にとどめ、確認ができる状態に置いてあるということでございまして、平和利用の促進といいますか、軍事利用にしないということを確認するために大変大事な国際的な条約に基づくものでございます。
それはそれとして、同じものを発電に使える、分裂性物質でございますので、それを平和利用という形で使ってエネルギー問題の解決に資する、そして、同じものはまた、核分裂性でございますから、軍事利用にも使えるものでございますので、そういう意味で、平和利用の促進をしながらプルトニウムを消化していくということが、長い目で見て、基本的に我が国の原子力政策のあり方として大変に大事な方向であるというふうに考えておりますので、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。
○北川委員 ぜひ、これ以上プルトニウムを再処理で出さないように、もうフランスの分がすべて終わって、あとイギリスが三分の一残っていると言われているのですが、ぜひ契約量で、プルトニウムを取り出さないように、中断するという方向さえも、日本は今なら決断をできるのではないかという気がしますので、私の方からは、逆に再検討をお願いしたいというふうに思います。
なぜなら、私はやはり事故が起こらない平常時であっても、一九九五年までの日本の原発で被曝をした労働者の総数は三十万人程度ではないかと予測をされています。広島の放射線影響研究所の評価に従っても、がんで死ぬのは二百六十人ということですから、千人に一人の割合ということで、ICRPの一万人に一人よりも十倍高い率で犠牲者が生み出されているわけですよ。
それを紹介した文、これは一九七〇年代に出ていますが、樋口健二さんの「原発」という写真集。私はこれはすごい説得力が、今三十年たってみて、廃棄物の問題、被曝労働者の問題が解決されていないというところでは大きな意味を持つというふうに思っています。そして近年は、ドイツの犠牲者補償請求権をヒントにしまして、一種の損失補償として、もし被曝をした場合の見解、労災がなかなか認められない。原発労働者で労災が認められたのは、本当に少ない人たちですよ。
そこで、お伺いしたいのですが、将来のエネルギーの安定供給の確保という公共の利益のために、原子力産業は国の政策としても推進されているのであり、こうした政策推進の過程で原子力事故が生じた場合には、その被害者は正当な補償を受ける権利があるといってもよいのではないか。原子力事故が起こらない場合でも被曝というのはあるというのが、いろいろな機関が実証していますし、当事者たちがしゃべり出しています、語り出しています。こういう犠牲者補償請求権、一種の損失補償、そういう見解を、かなり強硬に進めていくということをきょう尾身大臣がおっしゃったのでお伺いするわけですが、こういう請求権を認めていこうという立場に立っての原子力推進なのかどうかを最後にお伺いしたいと思います。
○尾身国務大臣 今ちょっと質問の趣旨がよくわかりませんでしたので、その点につきましては、ちょっとお答えをすると危険がありますので、お答えはいたしません。
いずれにいたしましても、安全性をきっちりと守りながら原子力発電の平和利用は進めていくということが大変大事であると考えておりまして、ぜひとも、その点につきましても御理解をいただき、安全性の確保については万全を期すということについては、全く私も同意見でございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
○北川委員 ありがとうございました。
――――◇―――――
○横路委員長 この際、内閣提出、参議院送付、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案に対する質疑は、既に終局いたしております。
これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
内閣提出、参議院送付、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○横路委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○横路委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、小野晋也君外三名から附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。小野晋也君。
○小野委員 ただいま議題となりました自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び自由党の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
まず、案文を朗読いたします。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。
一 本法による規制が、日本国憲法が保障する基本的人権に深く関わるものであることにかんがみ、その保障する通信の秘密、表現の自由、営業の自由等の基本的人権を侵害することのないよう十分に配慮するとともに、その運用に当たっては、職権が濫用されることのないよう厳に慎むこと。
一 電話異性紹介営業を営む者に課する年齢確認義務の実施に当たっては、利用者のプライバシーが侵害されることのないよう十分指導すること。
一 都道府県警察において本法の適正な執行がなされるよう、その運用に関する明確な基準を示すこと。特に、広告及び宣伝に関する規制については、その運用が公正かつ適切に行われるよう、都道府県警察の第一線に至るまで周知徹底を図ること。
一 インターネット上のいわゆる「出会い系サイト」が、児童買春の新たな温床となるおそれがあること等にかんがみ、速やかにその規制のための法的措置を講ずるなど、児童買春の撲滅に向けた更なる取組みに努めること。
一 性風俗関連特殊営業の規制及びその取締りの在り方については、営業の無店舗化やインターネットの発達等時代の変化に対応したものとなるよう、国際的な協力も図りつつ、引き続き検討を行うこと。
本案の趣旨につきましては、当委員会における質疑を通じて既に明らかになっていることと存じますので、説明は省略させていただきます。よろしく御賛同くださいますようお願い申し上げます。
以上でございます。
○横路委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○横路委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。村井国家公安委員会委員長。
○村井国務大臣 政府といたしましては、審議経過における御意見並びにただいまの附帯決議の御趣旨を十分に尊重いたしまして、善良な風俗及び清浄な風俗環境の保持並びに青少年の健全育成に万全の措置を講じてまいる所存であります。
―――――――――――――
○横路委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――
○横路委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後六時六分散会