衆議院

メインへスキップ



第4号 平成14年4月5日(金曜日)

会議録本文へ
平成十四年四月五日(金曜日)
    午前九時三十三分開議
 出席委員
   委員長 大畠 章宏君
   理事 逢沢 一郎君 理事 阪上 善秀君
   理事 渡辺 具能君 理事 渡辺 博道君
   理事 野田 佳彦君 理事 藤村  修君
   理事 細野 豪志君 理事 河合 正智君
   理事 工藤堅太郎君
      岩崎 忠夫君    小野 晋也君
      奥山 茂彦君    嘉数 知賢君
      亀井 久興君    小泉 龍司君
      古賀 正浩君    実川 幸夫君
      谷川 和穗君    谷本 龍哉君
      近岡理一郎君    西川 公也君
      望月 義夫君    石毛えい子君
      仙谷 由人君    前原 誠司君
      山花 郁夫君    横路 孝弘君
      太田 昭宏君    吉井 英勝君
      北川れん子君
    …………………………………
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長) 村井  仁君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   国務大臣
   (科学技術政策担当大臣) 尾身 幸次君
   内閣府副大臣       熊代 昭彦君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   国土交通副大臣      佐藤 静雄君
   内閣府大臣政務官     奥山 茂彦君
   内閣府大臣政務官     嘉数 知賢君
   政府参考人
   (内閣官房道路関係四公団
   民営化推進委員会設立準備
   室長)          坂野 泰治君
   政府参考人
   (内閣府賞勲局長)    佐藤 正紀君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君
   政府参考人
   (総務省大臣官房長)   畠中誠二郎君
   政府参考人
   (総務省行政管理局長)  松田 隆利君
   政府参考人
   (総務省行政評価局長)  塚本 壽雄君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 佐藤 重和君
   政府参考人
   (国土交通省道路局長)  大石 久和君
   参考人
   (日本道路公団総裁)   藤井 治芳君
   参考人
   (本州四国連絡橋公団総裁
   )            藤川 寛之君
   内閣委員会専門員     新倉 紀一君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月五日
 辞任         補欠選任
  谷本 龍哉君     小泉 龍司君
  山元  勉君     前原 誠司君
同日
 辞任         補欠選任
  小泉 龍司君     谷本 龍哉君
  前原 誠司君     山元  勉君
同日
 理事藤村修君同日理事辞任につき、その補欠として野田佳彦君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
四月四日
 道路関係四公団民営化推進委員会設置法案(内閣提出第一六号)
三月六日
 慰安婦問題の戦後責任を果たすための立法措置に関する請願(中林よし子君紹介)(第五四四号)
 同(藤木洋子君紹介)(第五四五号)
同月十四日
 慰安婦問題の戦後責任を果たすための立法措置に関する請願(石井郁子君紹介)(第七九二号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第七九三号)
同月二十日
 内閣官房機密費疑惑の徹底究明に関する請願(吉井英勝君紹介)(第九五八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の辞任及び補欠選任
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 道路関係四公団民営化推進委員会設置法案(内閣提出第一六号)
 内閣の重要政策に関する件
 栄典及び公式制度に関する件
 男女共同参画社会の形成の促進に関する件
 国民生活の安定及び向上に関する件
 警察に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
大畠委員長 これより会議を開きます。
 この際、理事の辞任についてお諮りいたします。
 理事藤村修君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大畠委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 ただいまの理事の辞任に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大畠委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 それでは、理事に野田佳彦君を指名いたします。
     ――――◇―――――
大畠委員長 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府賞勲局長佐藤正紀君、警察庁生活安全局長黒澤正和君、総務省大臣官房長畠中誠二郎君、総務省行政管理局長松田隆利君、総務省行政評価局長塚本壽雄君、外務省大臣官房長北島信一君及び外務省大臣官房審議官佐藤重和君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大畠委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
大畠委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田昭宏君。
太田(昭)委員 公明党の太田でございます。
 昨年、小泉政権が誕生しまして、私は何が一番大事かというと、不良債権処理を初めとするさまざまなものがあったと思いますが、この数年の論議を予算委員会等でも私聞いておりましたが、景気対策という言葉、そして財政再建という言葉、そして経済構造改革という言葉、そして財政構造改革、この四つの言葉が定義なしで結構ばらばらで使われているなと思っておりまして、一番大事なのは経済構造改革であるという主張をいろいろなところでしてまいりました。
 小泉政権が誕生して以来、加えて行政改革ということがかなり表に出てきましたし、社会保障の構造改革ということも前面に出てきたと思います。幅を広げるというのは大変結構なんですが、私は、一番の緊急事態というのは、景気、経済というところをしっかりするということが今我が国にとって一番大事なことだという認識をしております。そういう意味では、集中すべきは経済構造改革。循環的にはちょっと景気がよくなってきているということもありますから、今こそ、経済構造改革という本来のところに集中していくというのが小泉内閣として大事な点であろうというふうに思っております。
 いろいろな論議の立て方、デフレ対策等でもありましたが、金融の仲介機能の回復と需給ギャップの解消、私はこの二つのくくり方がいいのかな、こう思ったり、あるいは、Y=C+I+G、そういう基本的なことから、Cをどういうふうに拡大していくかというようなことも非常に大事だし、あるいはIということで、規制緩和ということはまた非常に大事だ、Gはなかなか難しいかもしれませんからということを考えたりしてきましたが、ぜひとも、経済構造改革というところの一点に集中してやるんだということを、竹中大臣また尾身大臣から答弁をいただきたいというふうに思います。
 それはそれで結構ということなんですが、これについて後からお答えいただきたいんですが、もう一つ、構造改革というけれども、構造改革を政府でやるということも、イシューも大事なんですが、現実的には、既に構造改革というのは、一つは、グローバリゼーションという角度からもう社会全体が大きく構造改革を来している。もう一つは、少子高齢化ということが大変な構造改革がされているので、それにどう政府、国が対応するかという観点も大事だし、もう一点は、あえて言うならば、これからは環境という制約があるということもまた、対応ということでは大事な観点ではないかというふうに思っております。
 日本という国家がこれから二十一世紀どう進むかというときに、これは冒頭の小泉内閣、これからの戦いということになるわけですが、国家論として、いわゆる日本のナショナルアイデンティティーというものをどう確立するかという精神的な問題、私はこれは共同性の回復ということを思っているんです。これが一つ。
 もう一つは、経済としては、いわゆる競争万能というか至上主義的なものではなくて、セーフティーネットが制度としてビルトインされている、競争原理があってセーフティーネットがあるのではない、そのセーフティーネット自体が社会の構造の中にビルトインされている社会というものを私はこれから想定をしているし、ポジティブな福祉国家という表現をされた人もいますが、私はそれは非常に結構だと思っています。
 また、国家論からいくと、きょう午後から始まると思うんですが、私は、国土の開発、この国土をどうするかという国家論というものももう一遍見直すべきであろう。そういうことからいきますと、今までは、国土の均衡ある発展、こういうことを言ってきたけれども、そろそろはっきりと、道路も、あるいは港も空港も、めり張りをつけるという時代がやってきたというふうに思えてならないわけです。競争主義的な、国家戦略的なそうした道路あるいは空港、そして世界と競争できるそうした空港とかあるいは港湾とか、道路も同じようなもので、ある意味では金融もそうかもしれません。そういうものと、ライフラインとして全国に張りめぐらされる道路とか、さまざまなそうしたインフラ整備というような国家のめり張りということも非常に大事だ、グランドデザインとしてのめり張りが大事だと思います。
 もう一つ。私は、これからの日本というのがどういうふうに生きていくかという産業国家イメージというか、物づくりが大事だとかいろいろなことが言われますが、中国とかさまざまなところが追い上げながら来ているという中で、日本はどういう産業国家イメージをつくり上げていくかということを骨太に提示するということも極めて大事なことだというふうに思います。
 そういう意味で、まず、尾身大臣とそれから竹中大臣、先に竹中大臣にお願いをしたいと思いますが、二人の大臣に、経済活性化の戦略、経済構造改革が今一番大事だという観点と、それからどういう産業国家イメージという国家論というものを提示できるかということについて、お二人のお考えをお聞きしたいと思います。
竹中国務大臣 太田委員からたくさんの御指摘をいただきました。どれも基本的に私たちが構造改革の中で取り組みたいと思っております重要事項を御指摘いただいたというふうに思っております。
 まず、構造改革が必要であり、それをどのように進めるかということに関しましては、これはもう委員がまさに御指摘くださいましたとおり、後ほど、景気の認識についてもいろいろお尋ねがあるかと思いますが、厳しいながらも下げどまりの兆しが見えつつありまして、循環的には少しよい方向が期待される今において、まさにこの構造改革をさらに加速しなければいけないという非常に重要な局面にあるというふうに考えております。
 日本の経済は悪いというふうによく言われるわけでありますけれども、経済実態が悪いというのはさまざまな指標からもちろん把握しておりますが、その原因は、私はよく申し上げるんですが、これは経済が弱いからである。そういった意味ででの広い意味での競争力の低下、生産性の低下という背景が日本の経済には八〇年代から既に見られてきた。これを強くして、しっかりとした、経済社会の足腰を強くすることがまさに構造改革でありますから、やはりこれなくしてさまざまな私たちの生活の向上もないということなのだと思います。
 まず第一の御指摘に関しましては、こういった時期にこそ、手綱を緩めることなく、一気にさらにこれを強化して構造改革を果敢に進めていきたいという強い決意を持っております。
 第二の、いかなる産業国家のビジョンを描くのかということ、これは実は非常に重い問いかけでございます。
 先般、一月に、いわゆる中期展望、「構造改革と経済財政の中期展望」を発表させていただきまして、日本の経済が今後五年間程度、五年ないし十年、どのような姿になっていくのかというマクロ経済的なスケルトンを明確にさせていただきました。その中で、国家の一つの運営のあり方としては、やはり人を重視する国である、人、人材、人間という資源を最大限活用して経済を発展させていくし、その中で、個々人がやはり自分の生きがい、人生を築いていけるようなそういう産業社会を築いていきたいんだということを示させていただきました。今必要なのは、具体的なその肉づけの問題であるというふうに認識をしています。
 具体的に、そういった中で産業構造がどのように変化していくのか。Y=C+I+Gという私にとっては大変懐かしい表現も御紹介いただきましたが、そういった中で、貯蓄・投資バランスがどのようになっていって、日本はどういう産業で外貨を稼いで、その中で人口の変化も踏まえながらどういう就業構造になっていくのだろうか、そういう肉づけの部分をまさに今諮問会議の産業活性化戦略の中で描かせていただいております。
 加えて、それに必要な手段としての、経済的な基盤としての税制の改革も議論をしているところでありますので、そうした議論を通して、より明確にそうした姿を描いていきたいというふうに思っております。
尾身国務大臣 大変総合的かつ立体的に日本という国の現状についてのお話をいただきました。
 私は、今の経済の状況、非常に厳しい状況にありますが、三つの要因があると考えております。一つは、いわゆる景気循環的な要因。二つ目が、バブルの後遺症。土地の価格が下がったり株の値段が下がったりしている、不良債権の処理が進んでいない、そのバブルの後遺症がまだおさまっていないという点が二つ目であります。それから三つ目は、中国を中心とする国々との関係で産業の空洞化という問題がすさまじい勢いで起こっている。この三つであるというふうに考えております。
 前の二つは、関係者にいろいろ御努力をいただいております。いずれ時間が来れば解決をする問題であるというふうに考えますが、あとの一つ、つまり産業空洞化という問題は日本経済の構造に関する問題でございまして、時間が来ても自動的に解決する問題ではない。したがって、これを抜本的に解決するための構造改革というのが現在の日本という国にとって最も求められている極めて大事なことであるというふうに考えております。
 将来の産業国家論、いわゆる国家論というお話がございましたが、私は、明治の維新を経て日本の勃興期にずっと日本が上り調子で来て、太平洋戦争に突入してまた負けて、それから敗戦の廃墟からもう一度立ち上がった、二度大きな上り坂を経験しているわけでございますが、逆に言うと、太平洋戦争という大きな挫折を経験し、それからまたこのたびのバブルの崩壊という経済の面でございますが、大きな挫折だったと思います。
 その二つ目の挫折をどうやって乗り越えていくか。日本全体が自信を喪失している中で、日本の経済力を強くする、強い国家にする。軍事面ではございません。特に科学技術面また経済の面で強い国家にするということが極めて大事な国としての方向づけであるべきでありまして、そのために、経済構造改革を進め、インフラ整備を進め、あるいは規制緩和を進めといういろいろな政策をとらなければいけないと思いますが、私は科学技術の担当でございますから、科学技術を軸として日本という国家を強い国家にする、そのことが実は日本という国に現在求められている最大の課題であるというふうに考えております。
太田(昭)委員 人を大事にしながらそれを大きく産業に結びつけていくという御指摘や、あるいは強い国家、科学技術というものを媒介にしながらということについて、私も非常に賛成なんですが、経済活性化の戦略ということからいきますと、昨年から都市再生本部というのができまして、これは、私たちも大いに主張して、これからは、産業活性化のため、一つは都市の再生ということ、もう一点は産業再生、新産業育成ということで、今小泉内閣がやろうとし始めてきているんですが、特区をつくって一気に規制を緩和しながら持っていくということも含めて、都市を再生するということの場所を設定した。その設定した上に新しい産業、新産業というものをどういうふうにやるかという組み合わせの中で、日本は、二十一世紀のこの劈頭の産業というもので経済を引っ張っていかなくちゃいけない、私はこういうふうに思っております。
 そういう意味では、都市の再生、産業競争力をその上に向上させて新しい成長メカニズムをつくっていくということが非常に大事だというふうに思っていますが、その中で、やはり、産官学連携による技術開発を起爆力として、前向きの構造改革というものを進めていくべきだというふうに思います。そういう意味では、具体的には、このような需要を創出して供給面を強化することを通じて経済再生への展望を開くとともに、地球環境ということの制約も含めて社会問題を一気に解決するというような戦略が非常に大事だと思いますが、この辺の、都市再生やあるいはその上に築くべき新しい産業ということについて、また科学技術のそこでの働きということについて、両大臣からお伺いしたいと思います。
竹中国務大臣 産官学の協力による技術開発は、まさに尾身大臣が今最も力を入れていらっしゃることでありますので、尾身大臣がいろいろとお話ししてくださると思います。
 私の方からは、ぜひ、その都市再生の意味づけというようなものと構造改革での位置づけについて若干お話をさせていただきますが、基本的に、新しい付加価値を生み出す源泉として、都市の重要性というのは、これは世界的に高まっているということなのだと思います。二十一世紀型の新しい産業は、気がついてみると、非常に知的な集約度の高い、集積を利用した都市型の労働集約産業であるというような発見が実は世界各国で今あるのだと私は思います。その意味では、日本の都市機能を、これは決して大都市ばかりではなく、地方の都市も含めた都市の機能の再生というのが日本経済の再生の中で極めて重要な位置づけを持っているというふうに考えております。
 骨太の方針以来、そういった都市再生の重要性、しかし、都市の問題を考えることは同時に、一方で地方の役割というものがむしろ重要な役割として浮かび上がってくるわけで、これは都市と地方の共生にも結びつく問題だと思います。そうした中で、骨太の方針でもそのことを重点的に主張させていただきましたし、予算の重点項目としても都市の問題を私たちは取り上げているつもりでございます。
 加えて、技術の問題からいいましても、どちらかといいますと二十世紀は軍事の技術から多くのものがスピルオーバーしてきたのに対しまして、今後は都市関連の技術、環境関連の技術、こうした点からのスピルオーバーが大変期待されるというのが専門家の一致した意見ではないかと思います。
 この点は尾身大臣が御専門でございますが、いずれにしても、先生御指摘のように、都市再生というのは大変重要な構造改革の位置づけを与えておりまして、いわゆる特区の話も出ましたが、そういった方向も新しい法案では今模索しているところでございますし、こういった手法をほかの分野にもぜひ当てはめていくということも踏まえまして、引き続き重要な位置づけがあるというふうに認識をしているつもりであります。
尾身国務大臣 都市再生、大変大事だと私も思っておりますが、その一つのかぎは、例えば容積率とか建ぺい率とかいうことに対する規制が実は日本は厳し過ぎておりまして、この狭い国土で、都市の中心部で日照権の問題を殊さら主張するというようなことは、全体としての多数の幸せにはならないのではないかというふうに私は考えております。
 したがいまして、そういうものについての規制を緩和して都市再生をするときに、できるだけ民間の力が十二分に発揮できるような自由な体制をつくる、大きな枠組みを国の方針として決める、そういう方向に行くことが実は大変大事なんで、私は、都市再生もいろいろな考え方があると思いますが、その一つは規制の緩和ということが実は都市再生の大きなかぎではないかというふうに考えております。
太田(昭)委員 制度とか法律ができ上がると、その後それがどういうふうに使われているかということを見ていくというのが行政の非常に大事なことであろうと思いますが、産学官の連携ということからいきますと、例えば大学の研究成果の民間への技術移転というTLOというもの、私も商工委員会のときにこれにはかかわったわけですが、これがまだまだ大きく使われていないというか、もっとこれを拡大していかなくてはいけない。アメリカと比較をしますと大体百分の一程度といいますか、TLOの数におきましても出願件数においてもライセンス件数にしてもそうしたことがあって、なかなか大学発ベンチャーをめぐる状況というのが厳しくて、これをもっともっと推進をしていかなくてはいけない。
 産学官連携サミット等を尾身大臣は昨年来開催されて全国を回っているわけでありますが、このTLOを含めて、もっとこれを大きく広げていくという努力をぜひともしていただきたいと思いますが、現状とその辺の認識をお伺いしたいと思います。
尾身国務大臣 実は日本経済は、戦後ずっと、外国から技術を導入してそれを改良し、その改良した製品がもともと輸出をした国よりもいい品物をつくり、それを外国に売って外貨を稼いで、それで経済成長をしてきたという、いわゆるキャッチアップ時代の経済、そういう形でございました。しかし、日本が、マラソンでいいますと、一人抜き、二人抜き、三人抜きして、戦後、びりからスタートをしてトップ数人の集団に入ってきた、いわばフロントランナーの時代に入ってきたわけでございますが、そういう状況になりますと、新しい技術も、外国から輸入するべき技術はない。自分で道のないところに道をつくっていかなければならないという状況になりました。
 この段階において、企業が自前で技術開発をするということが現実にはなかなか難しい。したがって、大学の頭脳を活用して新しい商品を生み出し、新しい産業を生み出し、ベンチャーをつくり上げる、創設するということが大変大事でございます。
 しかし、現状、日本という国は国立大学が主体でございまして、そのために企業と協力をするという風土がなかなかございませんで、先ほどのお話のTLO等につきましても、昨今、ようやく各地でできかかりつつあるという状況でございます。したがって、この面においては大変おくれているわけでございますが、大学発ベンチャーにつきましてはここのところ急速に増大をしておりまして、筑波大学の調べでございますが、平成十二年の八月末に百二十八社でございましたのが、一年後の十三年八月末には二百五十一社と、ほぼ倍増しているということでございまして、この間、一年間で百二十三社の増大があったわけであります。
 しかし、アメリカで見ますと、アメリカは今いわゆる大学発ベンチャーが二千三百社と言われておりまして、一年間で四百五十社くらいの大学発ベンチャーがあるということでございまして、科学技術の面で進んでいて競争力の強いアメリカの方が、なおかつ産学官連携も日本よりも進んでいるということでございます。
 私どもとしては、大学発ベンチャー、三年間に千社という目標を立てておりますが、これをあらゆる機会を通じてPRをし、また、予算面におきましても産学官連携の予算をふやすなどいたしまして強力に進めていきたい。そして、大学の頭脳を活用した経済の活性化、産業の再生を図っていき、それによって日本経済を強い経済に、競争力のある経済にしていかなければならないと考えている次第でございます。
太田(昭)委員 基礎研究があって、それが産業として展開されて市場投入する。ところが、二つ大きなネックがあるように思うんです。
 一つは、中小企業というものに対してもっと実用化技術開発支援というものを重点的に行うということが非常に大事なことであろうというふうに私は思うんです。
 もう一つは、基礎研究があって、開発、スケールアップがあって、そして市場投入ということになるんですが、OECDのワークショップにおけるNIST発表資料というのがありまして、バレー・オブ・デス、死の谷というか、そういうことで、基礎研究はいい、しかし、実用化のプロジェクトというような開発の段階に至ると、なかなかそこのところが、採算が合わないとかいろいろなことがあったりして、目ききの問題もあるでしょう。そこに予算がきちっと投入されるかどうかというのが実は勝負で、大学に、頑張ってください、中小企業との連携をとってくださいと言うだけでなくて、また、具体化される実用化のところに、中小企業をもっとバックアップしながらも、そこのところに、実用化の段階に予算をつけるということが非常に大事なところだと私は思います。
 私たちも頑張りますので、そこの予算ということについては、大きな、科学技術関係の予算がふえてきているといっても、そういう角度をつけてぜひとも努力をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
尾身国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、基礎的な研究である程度の成果が出た、しかし、それを商品化し、マーケティングができる段階まで持っていくためには、バレー・オブ・デス、死の谷があるというふうに言われておりまして、この谷をどうやって乗り越えさせるかというのが大きな政策課題でもございます。
 私ども、これについてはいろいろな意味での国の補助とか委託費とか、そういうものを通じて、特に中小企業の場合に、この死の谷を乗り越えることができない可能性があるわけでございまして、これを乗り越えて本当の意味のベンチャーになるように手を打っていきたいと考えている次第でございます。
 それからもう一つ、そのことのために、実は、ベンチャー企業は担保力がないために、いわゆる間接金融、銀行からお金を借りることが非常に難しい。しかし、当たれば大きいという意味でハイリスク・ハイリターンでございます。ですから、そういうハイリスク・ハイリターンのビジネスに対する資金供給というメカニズムをつくらなきゃならない。別な言い方をすると、間接金融から直接金融へ、融資から投資へという大きな流れをつくっていかなければならないと思いまして、そういう点についても、いろいろな政策によってそういう資金確保ができるような枠組みを、税制あるいは金融的な支援、あるいは直接投資の拡充のための政策などを行っていただくことが大変大事でございまして、私どももその方向を進めてまいりたいと考えております。
太田(昭)委員 昨年の補正予算、第一次補正で、経済産業省の産業クラスター計画というようなことの中で技術開発支援で百七十七億あって、そして、何を展開するかということで公募をしたところ、応募状況、申請件数が二千七百件あって競争率は七倍だということを聞きまして、私は、随分シーズはあるなという感じがしたわけなんです。予算として百七十七億ということではなくて、もっとこれがふえていけば、やる気はあるし技術力もあるし項目もあるということで、この産業クラスター計画というものへのまだまだシーズがあるということで、大きく展開をすべきだということ、これが一つ。
 と同時にもう一つは、文部科学省でも知的クラスター創成事業ということがあって、どうも、文部科学省の知的クラスターと経済産業省の産業クラスター、そこの縦割りの境目があるとかいうことがいろいろある。バレー・オブ・デスというのもあるんですが、省庁間の間にもそこに大きな障壁がある。そして今度は、大学とそれから中小企業といっても、先ほど尾身大臣指摘されたように、やはり中小企業の側から見ると、大学の偉い先生に相談に行くというのはなかなか敷居が高い。今度は大学側も、中小企業のおじさんに聞くということには、プライドということじゃないんでしょうが、何となくそういう交流が少ない。実は、そこの結び目が非常に大事な気がするんです。
 さまざま私申し上げましたが、この文部科学省の知的クラスター創成事業というものと経済産業省の産業クラスター計画を、合体というか連携というか、そういうこと、それから中小企業経営者等と大学との間の障壁、そういうことについて御意見をいただき、御努力をいただきたい、こう思います。
尾身国務大臣 文部科学省の知的クラスター創成事業、大変意欲的なものでございまして、実は全国に三十地区、今候補地を決めております。これを各地の候補地の競争によって十地区にまで絞る。その十地区をいわゆるシリコンバレーのような形で育てていくということでございまして、今各地の要望がしのぎを削って殺到しているという状況でございます。近く、十日前後のうちにその十地区の指定が決まると思っております。
 経済産業省の産業クラスター計画は、地域経済産業局が中心となりまして、地方自治体とも相談をして、特に技術オリエンテッドな中小企業を糾合するネットワークを結ぶ、そこにいろいろな支援をして地域中小企業を糾合するネットワークづくりをするということで、今、日本じゅうで十九の地域プロジェクトがネットワークとして進んでいるわけでございます。これを産業クラスターとしております。
 経済産業省の産業クラスター十九地区とこれからの文部科学省のいわゆる知的クラスターの十地区の、あるいは三十の候補地もありますが、実を言うと、もちろん中小企業、ほとんどダブっているわけでございまして、それを相互に連携協力しながら、各地で意欲ある企業、意欲ある地域を育てていく、協力をして育てていくということで連携をしていくことが大変大事であるというふうに考えておりまして、両方の役所ともこの点についてははっきりと意識をして、お互いに協力をしながら、一昔前のように権限争いをしているという雰囲気はございませんで、実はかなり協力をする気持ちで進めております。
 しかし、気持ちは気持ちなんですが、手足の方がそうなっているかどうかという問題点はございますので、私ども、この辺をしっかりと協力連携をするような方向で進めて、本当に各地域ですばらしい企業が起こり、また地域の発展が現実に実現するようにしていきたいと考えている次第でございます。
太田(昭)委員 終わります。
大畠委員長 これにて太田君の質疑は終了いたしました。
 次に、工藤堅太郎君。
工藤委員 まず初めに、経済の現状認識について、竹中担当大臣にお伺いをいたします。
 月日がたつのは大変早いもので、昨年四月小泉内閣が発足をしてもう一年たとうとしているわけであります。ついこの前まで、小泉内閣の掲げた聖域なき構造改革、また、改革なくして景気回復なしの一見わかりやすいスローガンが国民に受けたのでありましょう、高い支持率を保ってきたわけでありますけれども、ここに来て、田中外務大臣の更迭問題あるいは鈴木宗男、加藤紘一両議員の疑惑に関する対処等々、指導力等々、これを見て国民の皆さんの熱気もだんだんに冷めてきたような感を持つわけであります。
 経済対策について厳しい評価になっているわけでありますけれども、確かに、小泉内閣発足以来、すべての経済指標が悪化の一途をたどってきている。ようやく先月の月例経済報告で、景気は悪化を続けているとしたこれまでの見方から、依然厳しい状況にあるが、一部に下げどまりの兆しが見られるとして、景気判断を一年九カ月ぶりに上方修正されたわけであります。アメリカの景気を初めとして対外経済環境の改善による輸出や在庫調整が進んできている、こういうものが根拠になったと思うわけでありますが、雇用情勢は依然として極めて厳しい状況にありますし、完全失業者数も企業倒産もふえ続けているような現状であります。個人消費も芳しくございません。
 竹中大臣は記者会見で、景気の底入れの時期はもう少し様子を見なければならないけれども、ことしの後半にはプラスの動きが出てくる、このように話しておられました。これはいかなる根拠でこのような説明になるのか、その辺をまずお伺いいたしておきたいと思います。
竹中国務大臣 経済が厳しい中で、しかし、淡々と、かつ強い決意で構造改革を進めなければいけないというふうに考えております。
 足元の景気でございますけれども、先月の月例経済報告では、御指摘のように、景気は依然厳しいが一部に下げどまりの兆しというふうに評価をさせていただきました。来週、また今月の月例報告をしなければいけませんが、各経済指標を総合的に、しかし冷静に、客観的に見て判断しなければいけない問題だと思っております。
 先月、判断を、若干ではありますけれども上方修正させた根拠でありますけれども、基本的には三つの要因に着目をいたしました。
 一つは生産でございます。やはり、経済活動の中心にあるこの生産に下げどまりの兆しが見られるということが第一点。第二に輸出でございます。生産自身も輸出に影響されているところが多いと思われますが、アメリカや一部アジア地域経済の回復基調に支えられる形で、輸出はやはりはっきりと下げどまってきた、これが第二点でございます。第三点が、国内的に在庫の調整がかなりはっきりと進んでいる姿が見えてきているということであります。
 こうした三点に着目して、依然として厳しい、特に雇用が大変厳しいということは認識をしております。設備投資も厳しい状況にございますが、一部に下げどまりの兆しが見られる、そういった点を判断させていただいたわけであります。
工藤委員 大臣の御認識はわかったんでありますが、しかし、とても楽観できるような状況にはない、このように思いますし、平成十四年度の予算の執行と相まって次の手当てを考えておく必要があるんじゃないか、このように思うわけであります。
 そこで、経済の活性化に向けての税制改革についてお尋ねをしたいんでありますが、先週末に経済財政諮問会議が改革の論点を整理して公表いたしました。また、私は、昨年秋の臨時国会で、土地税制等について私なりの意見を申し述べたわけでありますけれども、今回の論点の中で今年度中に実施できるものがあるのかないのか、大臣が今後の税制改革を進めるに当たりまして最も腐心されている点がどういうところにあるのか、その辺をお伺いいたします。
竹中国務大臣 先般の諮問会議で論点について議論をいたしました。これは、決して諮問会議でその論点を決定したとかということではございませんで、民間の有識者議員からの論点整理ということで問題を提起していただいたものでございまして、それに基づいて議論を行ったというのが現状でございます。
 今年度でこれをできるものがあるのかという非常に直接的なお尋ねでございますが、あくまでも今議論しておりますのは論点でございます。論点ですから、個別の税目とかそういったことの議論にはとても至っておりません。今年度どのような対応をとるかということに関しましては、これは、経済の情勢を見ながら、税制の改革論議の進行を見ながら、やはりじっくりと判断すべき問題であろうかというふうに思っております。
 それと、最後のお尋ねの、一体今回の税制改革でどの点に一番主眼を置くつもりなのかという御趣旨だと思いますが、これは、先ほどの尾身大臣のお話にもございましたが、やはり経済を強くしなければいけない。その意味では、税制は今まで非常に特別な議論のされ方がなされてきたように思いますが、税制といえども経済システム全体の中の一部なんだ、税制も経済のサブシステムであるという観点から、やはり経済全体をよくする、経済全体を強くする、そういうことに役立つ税制でなければいけない。したがって、活力ということを前面に押し出して税制を考え直そうではないかという議論を民間の有識者からもしていただいております。その活性化、そのためにどういう税制をつくるべきか。長期の変動に耐え得るような税制をつくるというのが重要なポイントであるというふうに思っております。
工藤委員 今、今年度中に実施できるもの等々、これはゆっくり考えるといったようなお話なんでありますけれども、確かに、経済を強くする、それは大事なわけでありますが、税制をきちっとやっていく、それに対応していく、これは経済を強くするためにやるんであって、僕は、それと切り離して考えるといったようなことではない。やはり、構造改革を進めていくためには、これはもうばちばちやっていく。それと、あとは減税とかいろいろなそういうふうなことで税制をやっていくことでいわば経済が強くなる、景気が回復してくる、僕はそのように見ているわけでありますから、そんなにゆっくりゆっくりみたいな話ではどうかな、こう思うんでありますが、今の税制改革論議に関連して、証券税制についてちょっとお伺いをいたします。
 証券税制については、改革プログラムの中で、貯蓄優遇から投資優遇へ移行させるとうたっているわけでありますが、昨年秋の臨時国会で成立した、譲渡損失の繰越控除制度や、一定の要件のもとで一千万円までの購入額に係る譲渡益を非課税にするといったような、こういうことを打ち出したわけでありますが、これで対策が十分であるかということなんであります。
 先般の臨時国会で成立した証券税制改正関連法でも、従来の利子課税にとらわれる余りに配当課税の面で優遇措置が中途半端になってきたんではないか、このように思うわけでありまして、これでは長期にわたって株式を保有しようとする人が少ないだろうと思うんであります。
 国民の金融資産、千四百兆あるということでありますが、これを活用するためにも、我が党はこれまで、ドイツの証券税制改革に例を挙げて、日本と同じように企業の資金調達が銀行からの借り入れが中心だったものが、株式の流通、売却、配当等の税負担を思い切って軽減した結果、ドイツでは、過去十年間で金融資産に占める株式の割合が六%から一三%、七%アップしたということを紹介してまいりましたけれども、過去の経緯にとらわれないで、現在のドイツのように思い切った税制にシフトをすべきではないか、このように考えますが、いかがなものでしょうか。
竹中国務大臣 日本の税制改革を考えるに当たって、間接金融から直接金融へ、いや、さらには貯蓄から投資へといった観点から、証券市場を中心とした税制の改革が大変重要であるというふうに私も認識をしております。その点で現状の制度が十分であるかどうかということに関しては、これはかなり踏み込んだ議論を私もぜひしたいと思っております。ドイツはそこの中で非常にユニークな税制をとっている国というふうに私も認識をしています。
 ただし、一方で、税制はやはりシンプルでなければいけない、簡素でなければいけないという点も大変重要だと思います。全体の中で継ぎはぎのような税制になってはいけない。
 そういった観点から、論点整理では、貯蓄から投資へという流れの中で、二元的所得税という考え方を実は一つの議論すべき問題として提示をさせていただいているわけであります。これは、むしろ勤労所得と資本・金融所得を分けて、資本・金融所得を一体として扱おうということでございますので、私は、やはりそうした大きな流れの中で証券の税制についても議論をされるべき問題だと思います。
 何らかの措置は必要だというふうに思われますが、余りに複雑にならないような、二元的所得税というような大きな枠組みの中で考えていきたい、こう思っております。
工藤委員 次に、石原行政改革・規制改革担当大臣にお伺いをいたしますが、我が自由党はこれまで行政改革の断行を強く主張してまいりました。昨年十二月に閣議決定された特殊法人等整理合理化計画では百六十三の特殊・認可法人改革に手をつけたということでありますけれども、その結果につきましては甚だ疑問を呈さざるを得ないというところであろうと思っております。
 そこで、後で法案審議のある道路公団関係を除きまして二、三お尋ねをしてみたいんであります。
 初めに空港公団関係についてでありますけれども、民営化に向けて、上下分離方式を含め、二〇〇二年中に結論を出すというようにされているわけであります。
 仄聞するところでは、大変大きな赤字を抱えている、また第二期計画を抱えている関西国際空港公団、これと、黒字の成田空港を抱えている新東京国際空港公団、この統合がささやかれているわけであります。関西、関東の出身議員間で、統合賛成あるいは反対といったようないろいろな話が飛び交っているようでありますけれども、内閣の基本方針としては民営化は既定路線で、その上でさらなる検討をする、このように理解してよろしいのかどうか、その点を伺います。
石原国務大臣 工藤委員にお答え申し上げます。
 委員が御指摘されましたように、二つの空港、また名古屋に建設されます空港、国際ハブ三空港の経営形態のあり方については、従来の航空行政を厳密に検討した上で、上下分離方式を含め、民営化に向け、平成十四年中、二〇〇二年中に政府において結論を得るという方針を示させていただいたところでございます。
 この整理合理化計画に基づきまして、両法人の民営化に向けて、上下分離方式も含めて具体的な経営形態のあり方について検討し、今年中に結論を得ることとしておりますが、この上下分離方式を含めましてもメリット、デメリットありますので、幅広い検討というものをさせていただけるものと考えているところでございます。
工藤委員 次に、政府系金融機関八法人の改革についてお伺いをいたします。
 これは竹中大臣にお伺いしますが、昨年末の取りまとめに際して、自民党内の、企業等に対する金融機関としての役割が現下の経済情勢では重要であるというような声に押されて、整理合理化計画には経済情勢を見きわめつつという文言が入った、このように聞いておりますけれども、これは二、三日前、四月二日ですか、与党三党が、デフレ対策として政府系金融機関改革論議を凍結するとの提言をまとめたということを新聞報道で見たわけであります。
 これら政府関係金融機関について、前々から、小泉総理御自身が、整理統合して一つあればいい、再三こう言われておったというように記憶しておりますけれども、この点を含め、今後の取り組みについて伺っておきたいと思います。
竹中国務大臣 政府系金融機関のあり方に関しましては、経済財政諮問会議で議論をするようにという総理からの御指示をいただいて、議論を開始したところでございます。与党三党の御意見も承知をいたしております。
 与党の政策責任者の皆さん方が御懸念していらっしゃるのは、やはり、こういう厳しい情勢下で政府系金融機関の現実に果たしている役割は極めて大きいという御認識だと認識しております。私たちも、そのような、現状では政府系金融機関が重要な役割を果たしているという認識を持っております。
 しかしながら、議論そのものはぜひ続けさせていただかなければいけないと思っておりまして、そもそも、政策金融というのは一体どうあるべきなのか。諸外国にも、政府部門が金融活動を行っているという例はたくさんあるわけでございまして、そもそもどこまでを政府が行うべきなのか、政府が行う場合はどのような手段が適切なのか。御指示をいただきました、民業補完、政策コストの最小化、組織の整理統合、そういった方向に沿って、そもそものあるべき論から、現状の金融には十分な配慮をしながらぜひ議論をさせていただきたいというふうに思っております。
工藤委員 時間がどんどん過ぎていくわけでありますが、次に、石原大臣に、公益法人への補助金等の改革に関してお尋ねをいたします。
 第三者配分型補助金の改善としていろいろうたっているわけでありますが、要するに、むだを省いて効率の向上を図るといったようなことなわけでありますけれども、結果として、今回俎上にのせた補助金の徹底した合理化でも、ましてや第三者配分型等という建設業界で言われるような丸投げに等しいものを含めても、十二年度決算ベースで、国からの所管公益法人に対する補助金及び委託費を合わせた交付額ですが、約六千億のうち約三千九百億円が対象だ、なおかつ、そのうちの千百億円程度しか削減の効果がない、このように聞いているわけであります。
 千百億円程度しかと考えるのか、千百億円もと考えているのか、その辺はわからないわけでありますが、石原大臣は、公益法人改革がこれで十分行われた、このようにお考えかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
石原国務大臣 ただいま委員御指摘されましたようないわゆる補助金等の改革については、建設でもよく言われておりますと御指摘されたようないわゆる丸投げや丸抱えというものを解消すべく、補助金の交付の仕組みそのものの改善ということを今回の改革の主眼に置いて取り組んでまいりました。その結果、相当数の改革がなされるものと考えております。
 そして、委員御指摘の、一千百億を一千百億もと見るのか、しかと見るのかという御質問でございますけれども、三千九百億のおよそ三割近くを削減するということで、一定の成果は上げることができたと私、思っております。
 しかし、これからも、委員御指摘のいわゆる丸投げや丸抱えみたいなものが生ずることのないような防止策や、あるいはもっと厳しくしていくためには、予算の要求ベース、そして執行ベースの段階で厳格な措置をとっていく形で一千百億しかというような批判にこたえていきたいと思っておりますし、これからは情報化社会でございますので、補助金等が交付される先や、あるいはどのように使われたかみたいなものをあわせてインターネットを通じて情報公開して、透明性を図って世間に十分に監視していただく、私どもも十分にフォローアップをしていくという形で批判にこたえてまいりたいと考えております。
工藤委員 次に、我が国の治安及び犯罪の増加に関して、村井国家公安委員長にお伺いをいたします。
 申し上げるまでもなく、我が国は、世界の中でも治安が極めて安定している国家として高い評価を得てまいりましたが、それが近年、徐々にその評価が何か下がりつつあるように思われてならないわけであります。不法滞在等の来日外国人による犯罪が急増している。今や、夜の東京、あちこちで、思わず、ここは日本かと錯覚するような、そういう光景に出会うことがあるわけであります。別に私がそういうところを徘回しているというわけでもないのですけれども、よくそういうことが言われるわけであります。
 過般、ある新聞に、警察庁刑事企画課長の広畑さんという方が書いてあるのを読ませていただきました。最近の治安、犯罪について言及をされた記事が載っておったわけでありますけれども、これは、昨年の刑法犯の検挙率が一九・八%に落ちた。戦後初めて二〇%を割ったわけであります。刑法犯罪の件数がここ二、三年で急増した。これが昨年二百七十三万件に達したことなども書いてありましたし、都市部の留置場はもう満杯のことなどを挙げておられて、これらの問題解決のためには、三年間で一万人程度警察官を増員するといったようなことや、予算の増額で対処をされる旨話したのを書いてあったわけであります。
 そこで、まず第一に、不法滞在者等の来日外国人による犯罪の状況とその対策、また第二に、警察官を三年間で一万人増員することによって検挙率がどの程度上がると考えておられるのか、また第三に、犯罪全体の検挙率を上げるための施策について、お答えをいただきたいと思います。
 また、来月に迫りましたサッカーのワールドカップ大会のフーリガン対策についても万全を期されていると思うわけでありますけれども、これについても、またあわせて御説明をいただきたいと思います。
村井国務大臣 大変広範な問題につきまして御質問ございました。順次申し上げてまいりたいと存じます。
 まず第一の不法滞在者等の来日外国人による犯罪でございますが、過去十年間、平成三年から十三年というところで比較してまいりますと、検挙件数で約二・七倍、検挙人員で二倍という増加ぶりでございまして、特に昨年の検挙人員は過去最多を記録しているということでございます。
 特徴的には、凶悪化、組織化、それから全国への拡散等の傾向も見られるなど、大変憂慮すべき状況にございまして、我が国治安上の最重要課題だと思っているわけでございます。
 不法滞在者でございますが、これは来日外国人の刑法犯検挙人員の約二割、それから凶悪犯の検挙人員の五割近いものを占めておりまして、その存在が来日外国人犯罪の温床となっているというのは一つの現実だと認識しております。
 こういう問題に対しまして、昨年の七月でございますが、官房長官を本部長にいたしまして、私、副本部長をさせていただき、国際組織犯罪等対策推進本部というものを内閣に設置いたしまして、政府全体として、不法入国でございますとか不法滞在対策、組織的な窃盗犯対策等につきまして強化を図っているところでございます。
 それから、警察のみならず、入国管理局、それから海上保安庁、税関等の関係機関とも連携を密にする、これも非常に重要な手法だと思っておりますし、それから外国の捜査機関との連携、これも非常に重要でございます。さような意味で、この一月でございますが、私自身中国へ参りまして、中国の治安責任者と協議をいたしまして、両国間の協力を強めるというような体制を整えつつあるところでございます。
 第二のお尋ねの、警察官一万人を三年間で増員するということで、平成十四年度は、とりあえず四千五百人の増員を予算でお認めいただくということになったわけでございますが、これで検挙率がどれだけ上がるかというお話でございます。
 大変難しい御質問でございますが、確かに、十三年中の刑法犯認知件数に対します検挙件数というのを比較いたしますと一九・八%ということでございまして、過去最低の水準にまで落ちてしまった。非常に憂慮しているわけでございますが、ただ、この検挙率と申しますのは、実は、余罪を解明することができれば上げることができるわけであります。
 そういう意味で、そのほかいろいろな要因があって、例えば、一つ一つの事件が非常に手間がかかる。例えば、外国人の犯罪でございますと通訳を介しなければならない、一件を解決するのに大変な時間がかかるというような問題がございまして、こういったところが検挙率の低下に結びついていることは事実であろうかと存じます。
 いずれにいたしましても、さまざまな手法を講じておりますけれども、警察官の増員だけで何かができるとは私ども考えておりませんで、今後、さまざまな体制を整えるとともに、警察官の訓練を十分いたしまして対応していくのが非常に重要な要素じゃないか、こんなふうに思っているところでございます。
 検挙率を向上させるためには、やはり社会が非常に多様化し、価値観も多元化しているという状況でございますから、この中で悪にきちんと対決する強固な意志を持つ警察官を育てる、さらに、専門的な技能を備えさせていく、あるいは最近の科学技術ですとか通訳ですとかそういう能力をちゃんと備えさせなきゃいけませんし、また、先ほど申しましたような関係機関との協力も非常に重要だろうと思っております。
 それからさらには、非常に大切な問題は、社会全体として犯罪に対決する雰囲気というものもこれは大事でございまして、学校でございますとかあるいは職場でございますとか家庭、こういったところとの連携も大事な点だと思っているところでございます。
 四番目に、ワールドカップの問題でフーリガンのことをお尋ねでございました。
 これにつきましては、特に、フーリガンを出させないように関係国に御協力をお願い申し上げるということを努力しておりますし、また、入国管理局におきましてきちんと水際のチェックをするという体制も整えておりますが、同時に、それでも入ってきました場合には、スポッターと申しますフーリガン専門の警察官を外国から招致いたしまして、これに協力をしてもらうということで万全を期したい、こんなふうに考えているところでございます。
 ただ、ついこの間も、デナムさんというイギリスの内務閣外大臣が日本を訪問されまして、そのとき私もお目にかかりましていろいろお話ししたんでございますが、熱心なサッカーファンとフーリガンとを混同してもらっては困るというようなお話もございまして、やはり私どもとしましては、このワールドカップが極東で行われる楽しいイベントになりますように、警戒は厳重にしながらも対応をきちっとしてまいる決意でございます。
工藤委員 頑張っていただきたいと思います。
 次に、北朝鮮による日本人拉致事件について、福田官房長官並びに村井大臣に若干お伺いをいたしたいと思います。
 この問題は国会で再三取り上げられてまいりました。しかし、何ら具体的な進展を見ずに今日に至っているというように思います。拉致された方々の御家族、これはもう耐えがたい日々を送られておるだろうと思いますし、これがもし我が身だったらと、我々はもちろん国民全体で、どなたもこのように考えた場合、心から御同情を申し上げるわけでありまして、政治にかかわる者の一人として責任を痛感していかなければならない大きな問題だ、このように考えるわけであります。
 さて、先月十三日の、よど号犯の妻、赤木恵美子被告の公判で、八尾恵さんですか、元スナック店主と書いてありましたが、有本恵子さんの拉致に関与したと証言したことによりまして、改めて北朝鮮の行為であることが明らかにされたわけであります。
 有本さんを含め、政府の見解では、拉致事件は八件十一名である、こういうことにしておるわけでありますが、拉致事件にかかわると思われる行方不明者はまだまだ多数おられるという説もありますけれども、この際は、政府見解に沿ってお尋ねをいたします。
 拉致事件は七七年、昭和五十二年から数年間に集中的に起こっておるわけでありますが、この時期の北朝鮮のねらいは一体何であったのか、政府がどのようにその辺を考えておられるのか、とらえておられるのか、まずお伺いをしたいと思います。
村井国務大臣 御指摘のように、この拉致事件でございますが、私どもが拉致事件と考えておるものにつきまして昭和五十二年から数年間に集中している、御指摘のとおりでございます。北朝鮮のねらいにつきましては必ずしも明らかでございませんが、何らかの北朝鮮の国家的意思が確認されるところでございまして、警察としては、今後ともこうした点も含めまして全容解明のために最大限の努力をしてまいりたい、こんなふうに考えているところでございまして、私としましても警察に対しまして精いっぱい督励もしてまいりたいと存じます。
工藤委員 これまで我が国は、九一年一月に日朝国交正常化交渉が始まって以来、大韓航空機爆破事件、テポドンミサイル発射の問題、あるいはたび重なる工作船の領海侵犯事件など、明らかに我が国の安全保障にかかわる出来事にも、まさに両国の友好を図る観点から、世界の常識ではとても考えられないほど寛容に対応、対処してきたんではないか、このように思うわけであります。食糧支援として九五年から六回、計百二十万トンにも及ぶ米を提供した。そのほかの支援を含めると、我が国ほど国交もない北朝鮮に援助の手を差し伸べた国はないのではないかと思うわけであります。
 こうした我が国の対応に北朝鮮はどのような姿勢をとってきたか、今さら申し上げるまでもございません。拉致問題を取り上げるたびに調査すると約束をしておきながら、自分の意に沿わないようなことが出たり、それもほとんどひとりよがりの理由で調査を打ち切ると一方的に通告をしてくる、こういうありさまでありまして、到底私などから見れば尋常な国だとは思えないわけであります。
 先月三十日にシンガポールで行う予定だった坂口厚生大臣と北朝鮮の金保健相の閣僚会談が、突然、定かではない理由で一方的に中止通告が出たわけでありまして、有本さんらの拉致問題を取り上げては困るといったようなことだろうと思うのでありますが、相変わらずの姿勢に怒りを覚えるわけであります。
 そこで、現時点での政府の拉致事件への対応策、そして今後の方針について、福田官房長官にお伺いをいたします。
福田国務大臣 拉致問題は国民の生命にかかわる重要な問題である、こういう認識を政府として有しておるわけでございまして、従来から、日朝国交正常化交渉などの場においては、北朝鮮に対しまして、日朝関係を改善していくに当たりまして拉致問題を決して避けて通ることはできない、そういう問題だということを繰り返し説明し、その解決を強く求めてきておるところでございます。
 しかしながら、北朝鮮は、国交もない、そしてまた国家体制も異なる国家でございます。そういうようなことで、この交渉には大変困難も伴うわけでございますが、政府としては、今後、日朝国交正常化交渉の進展に粘り強く取り組みながら、拉致問題を初めとする人道上の問題や安全保障上の問題の解決を目指す方針でございます。
工藤委員 質問の通告をたくさんしておったのですが、時間が参りましたので、あとはやめまして、一つだけ最後に質問させていただきます。
 福田官房長官にお伺いをいたします。
 北朝鮮の工作船と思われる不審船が海上保安庁の巡視船と銃撃戦の末、中国の排他的経済水域で沈没をしたわけであります。既に国会でたびたび取り上げられて、国際法上の問題や中国の姿勢についても報道されているわけでありますが、不審船を引き揚げるか否かの一点に絞ってお尋ねをします。
 過般、ある新聞に、不審船の引き揚げをめぐって福田官房長官と安倍副長官の意見が真っ向から対立しているというように報じられておりました。既に船体の調査も進み、船体の内部には遺体も見られるといったようなこと、技術的には引き揚げが可能と聞いているわけでありますが、私は、先ほどの拉致事件を考えても、これまでの我が国の外交の転換を図る意味合いからも、今回の不審船の引き揚げは断固行うべきである、このように思うわけであります。
 面倒な事件には手を出さずに、かつて金正男氏の不法入国でも問題を先送りの姿勢をとったわけでありまして、政府のこれまでの態度は国家として恥ずべき行為と言わなければならない、私はこのように思うわけでありますが、内閣の中での議論はさておいて、福田官房長官の明確なこの問題に対する御答弁をお伺いいたしておきたいと思います。
福田国務大臣 この不審船の問題につきましては、これは犯罪捜査という観点から、関係当局において鋭意捜査を進めております。引き続きまして事実解明に向けて全力を尽くしているものと承知いたしております。
 その一環として、二月二十五日から三月一日までの間に、沈没している不審船につきまして、沈没位置の特定などのための水中カメラによる調査を行いました。また、今後、そのカメラの調査の結果などを見ましてダイバーによる船体調査を実施しまして、引き揚げが物理的に可能かどうかなどなど、船の状況をより詳しく調べたいと考えております。時期は、天候の状況にもよりますけれども、四月、今月の半ば以降というように考えておるところでございます。
 そういうような調査の結果が判明した状況、そしてまた現場海域の天候状況も見ながら次の段階を判断する、こういうことになるわけでありまして、粛々と手続は進めている、こういう状況であります。
 しかしながら、現場海域が、我が国が事実上中国の排他的経済水域として扱っている、そういう地域であるから、中国とも調整を図りながら適切に対処してまいりたい、こう思っております。
 もう一つつけ加えますけれども、私と官房副長官の間に意見の相違はございません。あるというような報道がありましたら、それは誤りでございます。
工藤委員 この不審船の引き揚げについてでありますけれども、官房長官は引き揚げに反対だというような、そうじゃないかといったような考えがよく聞かれるのであります。官房長官はそういうようなうわさを聞いたこともあると思うんですが、反対かどうか、反対じゃないとはっきりおっしゃっていただくのか、その辺、ひとつ御答弁ください。
福田国務大臣 時間がないようですから手短に申し上げますけれども、私、反対したことは一度もございません。ただ、私、性格が慎重な性格でございますから、ですから、慎重に物を言っているということで御理解ください。
工藤委員 終わります。ありがとうございました。
大畠委員長 これにて工藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 私はきょうは、最初に特殊法人改革、そしてその中での原研と核燃サイクル機構の統合問題などについて質問したいと思います。
 日本の原子力の中で特に原発など、今、国民の中で信頼されていないという状況にあります。これは、やはり大きな事故を繰り返し起こしてきたこととか、事故が起こったときに事故隠しをやってきたこととか、うその報告や発表がなされたこととか、原発や核燃サイクル開発機構は非常に信頼されていない、信頼が薄い。そのことは、原発には賛成だという方を含めて、総理府の世論調査などでも原発に不安を感じるという方が九割台になっていることなどを見ても示されていると思うのですね。
 ただ、その中で、日本の原子力の中で唯一信頼されているのは日本原子力研究所じゃないかというふうに私は思っております。ですから、原発で事故が発生したら、原研が中心になって事故の徹底究明をやるとか、そういう調査研究をやっていくこととか、それから、そういう事故のときに、これまではどちらかといいますと、事故を発生させた電力会社とかあるいは原発メーカーなどが再現実験をやったり事故原因究明調査をやっても、これはなかなか信頼は得られない、信頼は薄い。
 だから、そういう点でも、これからの原子力研究所というのは、原発等にかかわる安全研究の問題とか、それから今直面しております高レベル放射性廃棄物の消滅処理などの研究ですね。これは、消滅処理をやらなかったら、プルトニウムなどは二万四千年という非常に長い半減期のものですから、今、原発の時代に生きている我々の現役世代の間に高レベル放射性廃棄物の処理を責任を持って進めるということはできないわけですね。大体、二万四千年の先までだれも責任をとれないわけですから。
 それから、廃炉とか老朽化した原発などのさまざまな問題の研究などの分野で、やはり基礎から応用まで、広い研究分野で日本原子力研究所というのは非常に大きな役割というものが期待されていると思うのですが、この点、最初に尾身大臣に伺っておきたいと思います。
尾身国務大臣 原子力研究所は、基盤的、基礎的研究開発を進めるということで、私は、原子力の研究開発に大きな役割を果たしてきているというふうに考えております。そういう中で、安全研究の問題や高レベル廃棄物の処理の問題等々について、しっかりとした研究を進めてまいりました。
 私どもは、この日本のエネルギー事情等を考えまして、安全確保は大前提でございますが、同時に原子力の開発は進めなければならない、こういう考え方に基づきましていろいろな施策をやっているわけでございますが、そういう意味で、今まで原子力研究所の果たしてきた役割というものは大変大きいものであると考えております。
吉井委員 この点では、核燃料サイクル開発機構、旧動燃、これは「もんじゅ」の事故であるとか、それから再処理工場の事故で事故隠しをやったり、すっかり信用を失ってしまうということになってきたわけですが、ただ、それだけにとどまらないで、今国際的に見て、プルトニウム循環方式というものが果たしていいのか。このプルトニウム循環方式の上に立った再処理、そして危険な高速増殖炉に取り組んでいくというこの道からは、世界の大勢は撤退していくという方向にあります。
 これが世界の流れであるわけですが、こうしたときに、原子力研究所が、基礎研究から安全研究から、今直面している高レベル放射性廃棄物の処理とか消滅処理だとか、あるいは廃炉についての研究とか、直面している問題についての研究、それからまた、原研でかつてはなかなかおもしろいこともやっていたんですが、それは溶融塩炉というタイプのものとか、つまり、今日本がやっている軽水炉という方式に必ずしもこだわらないで、本当は広い角度からの研究というものが必要なんですが、そういうものをやってきたというその原子力研究所と、世界が撤退していっているこのプルトニウム循環方式、ひたすらそこにしがみついてといいますか、やっていくという、性格の違うものを機械的に結びつける、こういう発想というものについてはいろいろな角度からよく吟味される必要があると思うんですね。
 こういう点では、やはりこれからの日本の原子力研究のあるべき姿、その方向性という根本問題というものを国会でよく議論する、統合云々の前に、やはりそういう議論、検討が本当は一番大事だと思うんですが、この点についても尾身大臣の考えを聞いておきたいと思います。
尾身国務大臣 資源の乏しい日本が原子力開発を進めなければならないと考えていることは先ほどお話を申し上げたとおりでございますが、その中で、やはりウラン235は〇・七%しかないわけでございまして、238を活用するためにはどうしても核燃料サイクルの確立というのが必要でございます。プルトニウムの平和利用、有効利用ということが大変大事でございまして、今の核燃料サイクル機構は、そういう面の研究開発も進めている、我が国の原子力開発において大変大事な分野を担っていることであると考えております。
 私どもは、そういう中で、原子力利用を効率的に進めるためにはどうしても核燃料サイクルの確立が必要であり、いわゆるプルトニウムの循環方式を何らかの形で確立することはこれのかぎになるものと考えているわけでございまして、そういう意味で、核燃料サイクル開発機構の果たしてきた役割というものも極めて大きいものがあると考えております。
吉井委員 まず、ウラン235あるいは238、それらについてどう考えていくかということについても、増殖しない高速炉の方式とか、いろいろな考え方が実はあるわけなんです。そういうのは実は研究が十分なされていないんですね。ですから、大事なことは、基礎研究、そういうのをきっちりやっていくということが大事なのであって、それを、世界が撤退している中で高速増殖炉にしがみついて、資源がないからこれだ、その発想というのは、そもそも十分な吟味がなされていないまま行われておりますから、そこが問題だということを申し上げておきたいと思うんです。
 それで、日本原子力研究所の皆さんもそうなんですが、日本の原子力研究者、あるいは当初文部科学省が言ってきた問題、それは、私が最初に質問の中で取り上げましたような、大体、研究の方向というものについては、やはりそこをきちっととらえて深めて考えるべきだという見解で議論されていたということを私は承知しているんですが、その点は尾身大臣も御存じですね。
尾身国務大臣 私どもといたしましては、増殖しない高速炉というようなお話もございましたが、日本は基本的に原子力資源が非常に乏しい、そういう中で、やはり核燃料をできるだけ効率的にというか、フルに活用する。ウラン238もプルトニウムに転換させて、それをまた平和的に活用するということも非常に大事でございまして、これは、世界の中における日本の資源の乏しいという実情も考えますと、こういうものを開発していって、むしろこれを世界の原子力利用に貢献する、そういうことも将来は考えられるわけでございまして、私どもとしては、核燃料サイクルの確立ということは極めて日本として大事な課題であると考えて、今後ともこれを進めていきたいと考えている次第でございます。
吉井委員 大臣御存じかどうか、そこはわからないんですが、238というのは原子炉の中で239に変わっていきますから、自動的に増殖という形は生まれるわけなんです。それを、使用済み燃料を取り出して再処理してやるようないわゆる高速増殖炉方式なのか、そうじゃなくて使い切りの、そういう危険な処理をしない、増殖しないといったって自動的に実態としては増殖しているわけなんですが、そういう高速炉方式が合理的なのかとか、実はいろいろな研究分野がまだまだあるわけなんです。
 それをすっ飛ばして、ひたすら、今言われている高速増殖炉方式と決めつけてやっていく、そういうところに実のところ、基礎研究の分野でも問題があるわけでして、それは、原発をどう見るかとかその議論とは別に、原子力の研究開発というものについては、やはりそういう点はさめた目で考えていかなきゃいけない問題なんです。
 そのときに、原子力研究をやってきた皆さん方は、やはりそういう基礎を大事にすることとか、さまざまな形の可能性というものを研究することについてはよくお考えであるわけですが、それを、全く性格の違うもの二つをドッキングさせるというふうなことで、単なる数合わせということは問題があるじゃないかということが、これまでから議論されてきたところであります。
 次に、石原大臣の方に伺いたいと思います。
 採算性という面で見れば、いろいろ採算をとるのは難しいとかあっても、しかし、国民の安全にとって大事な研究というのは、たくさんそういう分野があるわけなんです。これは国公立でやるということを考えないと、企業利益に合うものは民間研究所で取り組むとか、商業化して民間が取り組めばいいわけですが、その仕切りをよく考えておかないと、独立行政法人化したらいいとか民営化すればいいとか、余り簡単な発想になってしまうと、これはやはり問題が生まれてくるわけですね。
 ですから、この統合の是非を考える前に、国民の安全とか健康とか基礎科学の発展など、非常に時間がかかっても、長期的に見て人類社会の発展に貢献する大事な分野というのはたくさんありますから、目前の営利に直結するかどうかということだけじゃなしに、企業的な意味での採算は乗らなくても、必要なものは国が責任を持って実施していく。これをやらなかったら日本の将来は危うくなりますから、私は、そのことをきちっと進めるということは当然のことだと思うんです。
 まず、石原大臣がそういう考え方というものを持っておられるかどうか、これを最初に伺っておきたいと思います。
石原国務大臣 これまでの御議論を聞かせていただきまして、今の部分は私もそのように思いますが、その一方で、旧動燃が起こした事故、お役所日の丸的な体質が事故の原因の一つの要因になっているというようなことを考えますと、やはり、限られた財源で限られた開発をやり、国民の皆様方、人類に喜んでもらえるものを、この核燃料に関する、核開発に関する、原子力開発に関する分野では行われていかなければならない。
 そんな中で、独立行政法人という、独立性があり、かつ社会的分野として民間が立ち入ることのできない分野を、厳しい国民の皆さん方の目、批判にたえられるような形で組織をつくっていこうということで、今回、このような統合案というものを取りまとめたというふうに御理解をいただければと思っております。
吉井委員 今の動燃の話ですけれども、これはさまざまな問題を起こして核燃サイクル開発機構に変わっていったわけですが、ただ、動燃の実態をよく見ますと、現実には、国からおりた予算を、その動燃の中に入っているいろいろな企業が研究費の分捕り合戦をやっているというのが、実態としてこれまでからあったわけです。基礎研究中心にやってきた原研と相当性格の違うものですね。
 原研の場合も、かなり民間が予算を当て込んで入ってくるという分捕り合戦の面もありますが、民営化しても、独立行政法人のままの巨大化を目指す合併をやっても、やはり、一番そこで問題になってくるのは、官僚の天下りとか、渡り鳥退職金とか、独立行政法人の内部で国の予算の民間企業による分捕り合戦とか、こういうものが横行してしまったら、これは行革の名に値しない、そのことはきちっとさせておかなきゃいけないと思うんです。
 むしろ、そのやり方では、現場の士気を低下させ、研究者の研究意欲を喪失させることになりますから、やはりこの官僚の天下りや渡り鳥退職金の禁止、国の予算の民間企業による、独立行政法人として大きいずうたいのものができるわけですから、三千億なら三千億規模のものになるわけですね。そこに入っていく民間企業が研究費の分捕り合戦をやっているような、そういう実態というものについてはきちんとそこにメスを入れて、そして、民間企業への研究費のいわば事実上の横流しのような形をどう防いでいくのか。
 本当は、統合だ何だという前に、そのことを動燃なら動燃についてやはりきちっと見た上で、よくそこを吟味してかかるということは今一番大事なことだと思うんですが、この点についても石原大臣に伺っておきたいと思います。
石原国務大臣 今の点は私も同意をせざるを得ないと思うんですが、やはり、一義的には文科省の方で所管しておりますので、今吉井委員の御指摘されたようなことに十分にこたえるような改革、そして、何といいましても効率性を高めてこの開発を進めていくというふうに、今、文科省の方でも取り組まれていると承知をしております。
吉井委員 私は、最近の議論の中の効率という言葉が、人を削るということとかなり同義語になってきているということを非常に懸念しているんです。
 実は私も、もう三十年余り前になりますが、大学を出てから、田無にあります東大の原子核研究所で研究をしたりしたことがありました。まだ武者修行の時代ですが、その時代というのは、研究者をサポートするサポーティングスタッフが随分充実していました。
 研究者自身も、さまざまな研究を展開するために自分でもいろいろなことをしていくわけですが、例えば特殊な金属パイプとガラスとをくっつけるような、実験装置をつくるためにそういうことをやっていくとか、研究者はもちろんそれをやるのですけれども、しかし、核研の加速器のようなずうたいの大きな装置は、一度運転し出しますと、定常状態になるのに物すごく時間がかかるわけですね。幾ら真空に引っ張っていったところで、いつも壁面からガスがどんどん出てきますから。そういうことをかつてはサポーティングスタッフの人がやることができたわけなんです。それから、装置が一部壊れたときには、非常に優秀な、名人わざを持った旋盤工とか溶接工の方も核研の中にいらっしゃって、装置を本当に支えていく。
 しかし、今は、効率の名においてどんどん人が切られていくんですよ。切られていった結果はどうなってくるか。研究者が本来の自分の研究よりもサービス分野のところに随分時間をとらないと装置がうまく起動しないとか、あるいは文部科学省向けの書類の作成を一生懸命みずから手を動かしてやらなきゃいけないとか、そういうサポートをしてくれる事務職員がどんどん減ってくる。日本の科学技術の将来、これでいいのかと、本当に懸念される状態に今なってきていますよ。
 行革の議論にしても、独立行政法人化という議論をされるにしても、やはりそこのところをきちんと見据えておかないと、私は、科学技術の分野においては道を誤らせてしまうというおそれを非常に懸念しているんです。
 財団法人から特殊法人にするときに、雇用の継承条項というのがかつてあったわけですね。今度の法律ではこれは抜けているわけですね。
 今も言いましたように、研究というのは、研究者とサポートする技術者やカバーする事務職員のチームプレーで成り立つんですよ。研究者が装置の立ち上げとか定常運転の領域で安定したデータを得られるところまで準備作業に時間をかけたり、手続処理に忙殺されているような状態では、幾ら科学技術立国だなどとスローガンを掲げてみたって、それは本当にうまくいくものじゃありませんよ。やはりそれは、科学技術の研究というものを知らないまま数合わせをやるということになってしまうと、私は、国家百年の計を誤らせることになるというぐらい心配しているんです。
 ですから、こうした研究者とかサポートする人々、かつてのように雇用の継承条項等、雇用の面からも研究が支えられるような、それを保障するということについてやはりきちんと考えていくということが大事だと思うんですが、石原大臣にこの点を重ねて伺っておきます。
石原国務大臣 今の点は、若干、私の立場からするとすべて賛成と言いがたい。
 と申しますのは、やはり、すばらしい研究をやるのにはお金がかかるということも同意できますし、サポーティングスタッフが必要であるとわかりますが、後から後から限りなく財源を入れて、限りないサポーティングスタッフですばらしい結果をやって、その結果、どれだけ国民にリターンがあるのか。行革の観点からいうと、やはりそこはコンビネーションで、優秀な学者と限られたサポーティングスタッフでどれだけのものができるかというような観点も吟味していきませんと、必要であるということの名のもとに財源が無尽蔵にそこに費やされるということになる。
 これは、政府部内でも尾身大臣ともいつも論争になるところでございまして、そこのところは、行革というものをつかさどる者の立場としては、やはり、限られた財源の中でどれだけ有効な研究というものがなされていくかということをトータルに見させていただきたい、こんなふうに考えております。
吉井委員 原研の場合でいいますと、限られた財源どころか、十五年ほど前の一千百億円余りの予算が今や九百億円余と、どんどん予算そのものは減っているんですね。ですから、限られた財源どころか、財源は既にもう削られている中での議論なんですよ。
 それで、私が心配しておりますのは、科学技術のあり方とかそういうものについての本当に深い理念、哲学的な検討等も抜きに、ただ数合わせの議論が先行してはとんでもないことになる、このことだけ申し上げて、次に、警察問題に移りたいと思います。
 三月四日午前三時ごろに発生した神戸の大学院生の暴行死事件について伺いたいと思うんですが、私は、被害者浦中さんの御冥福を祈り、遺族の方にはお悔やみ申し上げたいと思います。
 この事件は、現場からわずか五十メートルの距離にある交番にいる二人の警察官が仮眠中のために、四キロほど離れた別の交番の警官を出動させ、その出動のおくれた間に浦中さんという大学院生は非常にひどい暴行等を受けたわけでありますが、現場に行った警察官の方は、この大学院生の知人から拉致の可能性を聞きながら、現場から立ち去ったと勝手に決めつけて、捜査の手を十分打っていないんですね。
 さらに、傷害容疑で任意同行した山口組系暴力団員を交番で簡単に問い詰めただけで帰らせてしまった。そうすると、この暴力団員は、事情聴取を受けた後解放されたわけですから、拉致した仲間と合流して、さらに浦中さんに暴行を続けて殺害したわけですね。組長の指示で生き埋めにして殺害することまではかられていたわけでありますが、警察官が現場に到着した時刻には、近くに被害者が連れ込まれた車がまだとまっていたということが目撃されております。救出できたのに、みすみす救出の機会を逃してしまった。本当に被害者の御家族の悲しみや悔しさというもの、これは大臣、わかりますか。
 山口組があるから、全国で唯一、兵庫県警には暴力団対策二課が置かれていますね。現場で暴力団員とわかっていながら、警察の失態で被害者が殺害されたということになった事件でありますが、国家公安委員長はこの警察の失態とその責任をどのように考えておられるか、これを伺いたいと思います。
村井国務大臣 この事案でございますけれども、初動措置につきまして、現在、兵庫県警察で種々検証をしているところでございますけれども、実態は、多くの一一〇番通報がございまして、二十名近くの警察官が現場に臨場しているわけでございます。それにもかかわらず、今委員御指摘のように、被害者が連れ去られたこと等につきましてその事案の把握が十分できず、また、組織的かつ積極的な対応がとられなかった、これは非常に残念なことだと私も思っている一人でございます。
 三月四日の朝になりまして、神戸西署にございましては、宿直報告を受けまして、一たん帰宅させた暴力団員を逮捕し、それから、行方不明になっている大学院生の方の所在の確認をするということで捜査を始めたわけでございます。夕刻には組員は逮捕しましたけれども、被害者の所在確認はできず、結果的に、翌三月五日の夕刻になりまして御遺体で発見するというような事態になったわけでございまして、現在までに殺人等の容疑で暴力団員八名を含む九名を逮捕し、いずれにいたしましても、現在、引き続き事案の全容解明に向けて徹底した捜査を継続中ということでございます。
 私といたしましては、この事案の処理に当たりまして、それぞれの警察官が多分大丈夫だろうというような感じで対応をしたような面もあったという意味では、本当に残念だと思っておりまして、本当に大丈夫かということで一歩踏み込む姿勢というものが大変大事だと考えております。
 また、ちょっと言葉をかえて申しますと、この種の事案につきまして、本部それから警察署、さらには各勤務員が組織的かつ積極的に対応することが何よりも肝要でございまして、今後、こういう認識を全国にきちんと伝えまして、このような本当に残念な事件が繰り返されることのないように十分に指導、督励をしてまいりたい、このように思っているところでございます。
 なお、一言つけ加えさせていただきますと、暴力団員を現場で尋問しましたときに、任意か強制かというようなことを問われて、任意である、こう答えざるを得なかった。このあたりは、警察官の教養の課程で、いわゆる人権問題につきましての教養というのが非常に重点を置いて行われている、捜査に当たりまして人権を害しないようにということを教育されている結果、強制かと聞かれると、これは確かに一一〇番通報を受けて駆けつけた次第でありますから、任意であると答えざるを得なかった。そのあたりのところで一種の気勢が鈍った面がある、これは非常に残念なことだということもひとつ感じているところでございます。
吉井委員 私、十年ほど前に、当時、地方行政委員会にかかりました暴力団対策法ですね、警察の皆さんからも我々要請も受けて成立させたわけですね。組織暴力団に対する対策の法律としてつくったあの暴力団対策新法とは一体何だったのかと本当に思わざるを得ませんね。
 兵庫県警は明石市の花火大会の事件に続く失態なんですが、警察は加害者が山口組系暴力団員であることを確認していたんですね、免許証を見て、すぐに連絡とって暴力団リストとつき合わせして。加害者全員を同行しないで、そこで解放しているわけですよ。一人は任意同行ということで連れていったんですが、これも解放している。解放した暴力団員が被害者を拉致して、そして全員でさらに暴行を加えて殺害したわけですね。だから、住民の皆さんからすれば、警察は暴力団の殺人を幇助したんじゃないかと思われても仕方のない本当に深刻な問題だと思っているんです。
 重ねて伺いますが、そういう深刻な事件だったという、この自覚はお持ちですね。
村井国務大臣 私は、この事件は本当にもう残念としか言いようがない。亡くなられた方に本当に心からお悔やみ申し上げ、そして警察としてももう一歩踏み込んでやってもらえればよかったという意味合いにおきましても、残念だという思いを非常に強くしているものでございまして、そういう意味でも、先ほども申し上げましたように、このような事案の発生を二度と繰り返してはいけないということで、ともかく事案の解明に向けまして全力をまず尽くさせるという努力を今させているところでございます。
吉井委員 住民の命と財産を守るのが警察の任務だと思うんですね。刷新会議や改革要綱では、住民のための警察ということを強調してきました。そのために地方警察官の増員も大幅に実施しているんですが、この一人一人の警官が警察本来の任務に立たなかったら、幾ら増員したって、住民の生命財産を守るという警察になってこないわけですね。
 そこで次に、刷新会議でも提言されたことに触れて少し伺いますが、警察を民主的に管理する立場にある国家公安委員会の活性化の問題です。
 国家公安委員会の活動状況を、刷新会議提言前の九九年と提言後の二〇〇一年を比較してみますと、基本的に公安委員会の活動状況は変わっていませんね。例えば、九九年の定例会議四十六日、臨時会議一回、定例会議の平均時間一時間三十分、一委員の平均行事参加十六・八日で、年間勤務日数六十四日。これが二〇〇一年に、定例会議が四十九日、臨時会二回、定例会議の平均時間二時間十分で、一委員の平均行事参加十九・二日、年間勤務日数七十日ということですから、基本的に、この二年間、ほとんど変わっていないんですね。国家公安委員会は新たに、具体的、個別的な監察指示を国家委員会が行うということで、監察担当委員が監察の遂行状況を機動的に点検するよう、権限が強化されましたね。しかし、権限と機能を体制的に強化を保障する国家公安委員会の勤務体制はそうなっているのかといったら、今見たように旧態依然なんです。つまり、週一回ぐらい、短時間のパートタイマーの状況で、権限機能を保障する体制ということになっていない。
 国家公安委員会は国家行政組織法三条に基づく行政委員会ですから、委員の給与というのは特別職の国家公務員として、常勤の職員としての給与が支給されていると思うんですね。週に一回ぐらいのパート的な出勤でなぜ常勤扱いになっているのか。そして、この給与が年間で見れば幾らかといえば、月百三十四万六千円、年額約二千六百二十四万円ということで、これは本来、緊急事態が起こっても、警察の事務が緊急事務であるから、それに対応できるようにということで給与も保障すれば、そういう位置づけになっていると思うんですが、実態はパートタイマー同然。これで国家公安委員会の役割が果たせるというふうにお考えなのかどうか、村井大臣に伺っておきたいと思います。
村井国務大臣 細かい勤務の日数でございますとか、それにつきましてはちょっと私の手持ちの資料との相違もございますが、そこは余り本質ではございませんからあえて申し上げませんで、私の考え方だけ申し上げたいと存じます。
 今の国家公安委員会が警察を管理するという体制は、そもそも戦前の内務大臣のもとに警察があって……(吉井委員「そこはよくわかっていますので」と呼ぶ)よく御案内のとおりの経過から、警察の民主的な管理と政治的中立という観点からつくられた制度でございます。
 そこで問題は、それに当たる国家公安委員というのがそのような処遇を受けるべき勤務をしているかどうかという御質問かと存じますけれども、私は、それは質の問題であって、単に時間的な量の問題ではかられるべきことではないと思っております。それぞれの分野における識見のおありになる方が非常に重要な決定につきまして合議をもって警察を管理するという体制を維持するには、私は現在の勤務の態様なりあるいは処遇なりはそれなりに適正なものだと認識をしておりますし、私、ちょうど一年間になりますが、いろいろ議論を拝聴させていただいておりまして、大変傾聴すべき御議論を多々していただいていると感じております。
吉井委員 今のお話を伺っていますと、週一回二時間程度のパートタイマー的な出勤で会議に出て、あとは電話を一本か二本日常的にやっておれば、常勤ということで年収二千六百万の収入が入ってくる。本当に責任も果たせないし、そして、そういうあり方そのものに今国民の批判が高まっているときなんです。実は、これは総務省の方の行政監察でも見直しを勧告されているんですよ。だから、大臣として、やはりこの勧告にきちっと耳を傾け、そのあり方を是正していくということをやっていただきたいと思うんです。
 時間が参りましたので、最後に一点だけ。
 警察犯罪が引き続いて起きているわけですが、警察刷新と言ってきたことが今問われていると思うんですね。もみ消し事件の発覚の多くは、内部監察によるものではなくて、実は警官の内部告発、法廷での被告証言などによるものであります。このことは、警察が組織として自浄能力を持っているかといったら、やはり身内でやっちゃだめだ。警察刷新会議は外部監察制の導入を拒否しましたが、警察の外部監察制の必要性というものを改めて今示していると思うんですよ。
 そこで、国家公安委員長に伺いますが、国民の強い要求となっている外部監察制度の導入を検討するべきだと思います。この点を最後に伺って、終わりにしたいと思います。
村井国務大臣 最近の不祥事案につきましての処理でございますけれども、私、非常に感じておりますことは、内部で隠し立てすることなく、ともかく不祥事案につきましてはきちんと国家公安委員会なり各都道府県公安委員会なりに報告をして、それできちんと処理をするという体制は定着してきていると思っておりますし、さような意味で、さらに外部のチェック制度、監察制度というものまでつくる必要は私はない、公安委員会制度というものがまさにそういう役割を果たし得るものだと思っております。
 最近の不祥事案について、ついでながら申し上げますと、平成十二年、五百四十六人の懲戒処分をしているのに対しまして、平成十三年、四百八十六人ということでございますけれども、この十三年のうちの三分の一が平成十二年以前の事案の処分にかかわるものでございまして、そういう意味では、私は組織としては引き締まってきている、このような認識を持っておるところでございます。
吉井委員 では、時間が参りましたので終わります。
 それで最後に、やはり行政監察の指摘、それから外部監察導入についての意見、これはきちっと踏まえて考えなきゃならぬ、このことだけ最後に申し上げて、質問を終わります。
大畠委員長 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。
 次に、北川れん子さん。
北川委員 社民党・市民連合の北川れん子といいます。
 きょうは、ちょうど去年施行から一年になりました国の情報公開制度について、この一年間がどうであったかという点でお伺いしたいと思います。
 まず、六カ月と九カ月の報告が出まして、それに基づいての質問だというふうに理解していただければ幸いです。
 それで、私は、三つの問題があるというふうに思っています。一つ目が、不服申し立て事案というのが七五%以上諮問されないまま終わっていて、また、諮問されても、答申まで最高で五、六カ月かかっているものがあるという点です。それからもう一つが、受け付けてから通常は三十日以内に回答を出すこととなっているんですが、どうしてもそれができない場合は三十日延長して、合計六十日以内で何らかの決定を下さないとならないとなっているんですが、その数字が一九%あるわけですね。かなりの割合を占めています。そして最後が、受け付け件数から開示決定まで引いた残りが、九カ月の累計では二千三百二十八件、受け付けてから何にもされないまま終わっているというのが数千件あるわけですね。二千件ほどある。こういう三つの点をそれぞれちょっとお伺いしてみたいと思っています。
 それで、滞留という言葉で新聞では書いてあったんですが、政府の方としては、これをどういうふうに思っていらっしゃるのか。情報公開審査会の方にかけられる寸前なのか、かけられてからなのかというのがちょっと微妙なところなんですが、この待ち期間をどういうふうに見ていらっしゃるか。それから、どこの部署が滞留期間の不服申し立て事案を抱えているのか。それは情報公開審査会なのか、もしくは管轄官庁なのか。その点をまずお伺いしたいと思います。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 情報公開法が施行されましてから一年がたっているわけでございますが、私どもの方で把握している数字は昨年末までの数字でございまして、開示請求件数が三万七千九百件でございました。そのうち開示決定が行われておりますものが三万五千六百件ございまして、うち、開示あるいは部分開示が行われておりますものが三万一千件ということで、八七%、九〇%近い開示が行われているわけでございます。
 それから、処理期間の話がちょっと御質問に出ましたが、期間内、三十日以内でまず処理するということになっておるわけでございますけれども、この三十日以内で行われておりますものが二万九千六百件ということでございまして、八割強は期間内になされているわけでございます。
 今お尋ねの不服申し立て件数がございまして、まあ開示が拒否されたりする場合に不服申し立てが行われるわけでございますが、それが千百三十六件ございます。そのうち、情報公開審査会に諮問をするということになっております、それが二百六十五件。これは昨年末の段階でございますが、そういう状況でございまして、先生がお尋ねのように、四分の三ぐらいはまだ諮問もなされないでいる、そういう状況があるわけでございます。これにつきましては、つまり各省でまだ諮問の準備の段階にあるということでございまして、一般的には、できるだけ速やかに審査会に諮問をしていただくということになろうかと存じます。
 ただ、この数字でございますけれども、千百三十六件、二百六十五件というこの不服申し立て件数、諮問件数につきましては、複数の不服申し立てを併合して諮問しているケース等々がございますし、それから不服申し立てのとおり開示している場合もございますので、必ずしも残っている数字が、差し引きがそのまま各省に滞留しているということではございません。
 いずれにしましても、この法律に基づきまして全体の施行状況を私どもの方で調査をするということになっておりますので、今それを行っているところでございまして、詳しい施行状況につきましては調査結果をできるだけ早くお示しをしていきたい、こう思っております。
北川委員 だから、全然答えていただけなかったというか、私は、どちらかというと、出た資料に基づいてマイナスの面から前振り三分しゃべらせていただいたら、いい面を前振り三分しゃべっていただいたので、その後答えが出るのかなと思ったら答えが出なかったんですよね。
 ですから、私がお伺いしたのは、新聞では滞留と書かれたその不服申し立て事案の滞留部分は、情報公開審査会のところのデスクに置いてあるのか、管轄官庁のところに置いてあるのかというのをお伺いしましたので、まずそれに答えていただきたいと思います。
松田政府参考人 諮問が行われてないわけでございますから、不服申し立てを受けた官庁にあるということになります。
北川委員 では、管轄官庁が八百、ただ、この三カ月でもう四万件超えたというふうに四月一日の新聞では報道されていたので、私たちが持っている数字は古いわけですね。三万七千件のときですから古いのですが、管轄官庁が抱えているということです。
 先ほどの松田局長のお話の中に併合というのが出ましたが、以前に外務省にお伺いしたとき、外務省は併合しないというようなことを公表されていたんですが、併合する省と併合をしない省があるのか、そして、併合はパーセンテージ的に、統計的にとっていらっしゃるのかどうかもあわせてお伺いしたいと思います。
松田政府参考人 審査会にどのような方式で諮問をするかというのは、それはまさに不服申し立てを受けた官庁が御判断をされることでございます。
 あともう一点は……(北川委員「併合」と呼ぶ)その状況ですね。申しわけございません。そういう詳しい状況につきましては、まさに今施行状況として調査中でございます。
北川委員 ということで、きょう外務省の方にもお越しいただいているんですが、公には併合というのを余りしていないというような省庁もあるというふうに聞いているので、その辺、どうなんでしょうか、併合というのをやっていらっしゃるのかやっていらっしゃらないのか。そして、残念ながら、外務省が一番不開示が多い省庁です。受け付け件数も三番目に多い省庁ではあったんですが、不開示もトップランクで多いんです。その点をどう考えていらっしゃるか、外務省の方にお伺いしたいと思います。
北島政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、併合の件でございますが、当然のことながら、外務省として併合という考え方を受け付けないという立場はとっておりません。これまでも併合ということで扱ったというケースがございます。
 それから第二に、そもそも外務省において情報の公開が遅いのではないかという御指摘でございますけれども、御案内のとおり、外務省の仕事は、どうしても外国とのやりとり、そういったことが多いわけで、第五条の不開示事由の中にも入ってまいりますけれども、公開することによって相手国との関係で問題を生じ得る場合というようなことがございます。その結果、場合によっては、委員におかれては、よその役所と比べて情報公開について熱心に取り組んでないのではないかという懸念を持たれるということだと思いますけれども、当然、私どもとして、情報公開法の趣旨を十分に踏まえて最大限の努力をしてきているということでございます。この点、御理解をちょうだいしたいと思います。
北川委員 多分、政治の焦点が今は秘書問題というふうに移っています。たまたまなんでしょうけれども、この情報公開制度が施行になるときには機密費が問題になりました。四月から機密費問題の情報請求が多かったわけですね。そのうち、BSEに移ります。それから、鈴木宗男氏という議員の方の外務省への圧力という問題に移ってきて現在に至るということで、本当に、この一年の間だけでも、トータル的に三カ月ごとに案件が、視点が変わって、どんどんいろいろな情報の、あっ、この分野だというものがあるもので、今外務省は全般的に、外交だから、国外相手なので慎重にしたいというお言葉で、いつも説得力を持って今まで国民の方も感じていたわけですが、事ここに至っては、逆に言うと、国内の外務省という問題が浮かび上がったと思うんですね。
 その一つには、これも新聞情報ですけれども、NPO法人で情報公開市民センターの方が、米国など四カ国の日本大使館が、渡航した国会議員らに酒食を提供するなど、便宜供与した支出をまとめたファイルの開示を請求した。外務省は当初は、可能な部分は去年の九月四日までには開示を決定します、残りは十月四日までに開示するかどうか決定すると言っていたのに、十月四日になると、何らかの事情の変化によって、期限までにはできなくなりましたと。その後、ナシのつぶてになった。
 この十月四日と九月四日の間に何かがあったんだろうということになると、今問題になっている鈴木宗男氏の問題等々の絡みで、これは、出していいのか出してよくないのかが九月四日の時点の判断と十月四日では変わったということなのかどうかというふうに推論できるんですけれども、この方は、この問題を違法だということで裁判の方に持ち込んだということですよね。一月の九日に東京地裁に提訴した。
 では、裁判で今これが提訴になっているという事実をお認めになっているのかといった点と、ある事象をもとにして情報を公開するかどうかの判断を日時によって変えるというのは、すごく暗示的であり、情報公開制度の本来の目的に合わないというか、より複雑に問題を曲解していくことになると思うんですが、この点はどういうふうに外務省はお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
北島政府参考人 今議員が御指摘になった訴訟でございますけれども、これは、便宜供与ファイルの開示請求に対して、開示、不開示の決定を通知した期限内に行わなかったことの違法性の確認を求める訴訟ということで、おっしゃいましたとおり、一月九日に東京地裁で提起されたわけでございます。
 私ども、その期限内に決定を行うことができなかったということについては、そもそも予測し得ない事務の繁忙等いろいろな事情の変化によって、個々の案件につき通知した期限を結果として守れなかったということはどうしてもあり得る。他方、それによってそのことが直ちに違法にはならないというふうに理解を求めてきております。
 この個別の訴訟に関することは、いずれにしても公判において主張していますので、この場では差し控えたいと思いますけれども、もう一つの点、委員の御指摘のあった、そもそも情報公開の基準をその都度その都度の判断で曲げているのではないかという点につきましては、それはそのようなことはないと思います。情報開示、情報公開についての考え方というのは法によってきちっと定められておりまして、不開示する場合もその場合の基準というのが定められておるわけですから、それをきちっと見ながら判断しているということで、この点もぜひ御理解をちょうだいしたいと思います。
北川委員 では、総務省の方にお伺いしたいと思うんですけれども、この情報公開制度というのは、地方の方がリーダーシップをとって、国がもう渋々やったというのが現実だろうと思うんです。「詳解 情報公開法」の中には、今まさに局長が違法じゃないんだという態度をお示しになったんですけれども、「応答の不作為は違法とはならない」というふうになっている。これは「詳解 情報公開法」の中に説明されているんですが、ここというのがもう一年もしないうちにいろいろ露呈してきているということに関して、総務省側は、これをおつくりになった省庁として今どういうお考えをお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
松田政府参考人 開示決定等につきまして、遅延ということの問題であるわけでございますが、私どもとしましては、情報公開法の規定上、開示決定というのは各行政機関の長が行うわけでございまして、その各行政機関の長の監督のもとに、法律の規定に基づいて適正に処理をしていただきたいというのが基本でございます。
 応答の不作為といいますか、開示決定等の期限が過ぎたようなそういう場合に、期限の延長等の手続がとられることもなく請求が長期にわたって放置されるというような場合につきましては、行政不服審査法に基づく不作為の不服申し立てとか、それから行政事件訴訟法に基づく不作為の違法確認訴訟とか、そういう手段もあるわけでございます。
 いずれにしましても、行政機関としては情報公開法の趣旨にのっとって適切に運用を行うということを私どもとしては期待いたしております。
北川委員 裁判とかに持ち込まない、ここにも、それぞれのリストですね、どういうものが答申を受け付けたかという、この二百六十五件のリストを私はいただいたんですけれども、それぞれ見ていると、まさにいろいろ、自分の問題も含めて、それから国の問題等々に皆さん大きな関心を持っていらっしゃるんだなというのが、一つ一つの件数が本当に多岐にわたっているというので思うんですよね。
 それで、もう一年もしない間に提訴をされるという問題も抱えまして、先ほど、国家公安委員会の開催日数を問題視されて提起されていた議員もいらっしゃったんですけれども、この情報公開法というのは罰則がないんですよね。努力義務というはっきりしたものもあるのかないのかわからないようなところにあるんですが、去年一年間、十二月まででいいか、もしくはことしもやっていらっしゃるんだったらその数字を教えていただきたいんです。情報公開審査会の開催状況、延べ開催日数と延べ時間、どれぐらいこの処理に当たっていらっしゃったんでしょうか。
松田政府参考人 恐縮でございますが、情報公開審査会の運営状況につきましては内閣府の所管のもとにございますので、ちょっと私どもの方で具体的な開催状況というのは把握いたしておりません。
北川委員 ということは、情報公開審査会というのは、所管官庁が内閣府ということになるんでしょうか。
松田政府参考人 内閣府に置かれる、いわゆる国家行政組織法としてではないんですが、それを援用した八条機関でございます。
北川委員 そうしたら、きょうは担当の内閣府の方というのでは応答者の中に入れなかったんですけれども、福田官房長官の方にお伺いをしていきたいと思います。
 ちょうど小泉首相は二月二十二日に記者会見をされまして、鈴木宗男氏の問題に関しまして、今後、どういう議員が何を言ってきたかメモをとっていけば、情報公開法の対象になるから国民もはっきりする、そういう体制を全省庁に広げるべきだと考えている、外務省にはとどまらないという構想をお述べになっています。その前には、二月九日には、もう既に、当該外務省の大臣である川口外務大臣は、自分の方からそれを積極的におっしゃっていました。
 この二月の二十二日に首相がこういう御発言をされて、今、情報公開法の対象に不存在というものは存在しないのかどうかといった点と、先ほど、ごめんなさい、担当部局の方をお呼びするのを忘れた私の方が悪いんですが、情報公開審査会の運営状況等々、もし何かかいま見られる、仄聞されている点があれば教えていただきたいんです。
福田国務大臣 最初の方ですけれども、これは、情報公開法を適用するというか、それを請求できるような情報となるためには、情報がなきゃいかぬわけですね。情報としてどういうものを残すか、文書として残すのか、もしくはその他の方法があるのか、そういうような資料がなければ公開できません。その資料をどういう場合につくるかということは、これは各省庁の事情もございましょう。いろいろなケースがあるんだろうと思います。
 各省庁が判断し、また適正なる判断をするということは必要なんでありますけれども、小泉総理が言われたのは、政官関係という観点から、この問題を政と官の関係ということで取り上げたということでございます。その政官関係をもっと適正な状況にしたい、そういう意味で申し上げたということでありますので、適正な政官関係を構築する、その中でつくられる情報についての情報開示、こういうことでございますよね。ですから、まあ小泉総理が言われているのと関係あるけれども、この情報公開の問題そのものとはちょっと論点が違うんじゃないかというように思います。
 内閣府の後段のことにつきましては、私もちょっと調べていなかったのでお答えできません。申しわけありません。
北川委員 この情報公開審査会が、今度、今ちょっと問題になっています個人情報保護法と合体して審査会になるというのを聞いて、えっとかいう感じなんですよね。今、九名いらっしゃるということで三分科会あるんですけれども、それがどれほど機能しているかという問題は大きくこれから問われていくので、この数字と延べ時間というのにはこだわっていきたいと思います。
 それから、福田官房長官が御発言になった、何か首相の言葉を取り消したみたいなふうに今聞こえてしまったんですが、首相は、情報公開制度が二〇〇一年にできたんだから、その情報公開法の対象にそういう個人のメモも入れるべきだ、外務省の人がだれだれ議員に、例えば何々議員に言われたことを書いて、そしてそのことをもとに自分のそれぞれの部署の内部に指示したこと、もしくは外部者、接待する相手のホテルか何かに指示したことも含めて、そのことが起因して起こったことというものに関しては、メモをとっているんだったらそれをすべて情報公開法の対象とするべきだと。
 そして、私は、今お答えの中に、政と官の関係が適正ということであろうからという話だったんですが、それを客観的に見ている国民がどう判断するかという材料の中に情報が必要なので情報公開法ができたと思うので、ちょっと福田官房長官のお答えというのは逆転したのではないかという気がするんですが、再度いかがかというのと、それから、じゃ福田官房長官は、不存在、よくあるんですよ、あなたが申請しているようなそういう簿冊というものは各省庁に存在しない、不存在だということで一片の回答が来るケースがあるものですから、不存在だということになるケースを当たり前だというふうに思われるのかどうかもあわせてお伺いしたいと思います。
松田政府参考人 情報公開法の解釈の問題にかかわりますので、私の方から御説明させていただきたいと思います。
 政治家からの要請等にかかわる問題でございますが、情報公開法におきまして請求の対象になっておりますものは行政文書ということになっております。行政文書とは、職員が組織的に用いるものとして行政機関が保有している文書というふうに規定されているところでございます。
 これは、当該文書を作成、または取得した職員個人の段階のものではなくて、組織としての共用の文書としての実質を備えた状態、すなわち、当該行政機関の組織において業務上必要なものとして利用、保存されている、そういう状態のものを意味しておりまして、したがいまして、政治家からの要請等を文書化した場合、その文書が、組織的に用いるものとして行政機関が保有している、そういう状態にあれば、その文書は情報公開法の対象文書として開示請求の対象になる。したがいまして、個人として利用しているメモの段階、その程度にとどまるものでございましたら本法の対象にはならないと解されております。
 ただし、開示請求の対象になりましても、個人に関する情報ですとかあるいは国の安全等に関する情報は不開示になるということでございます。
 それから、先ほど不存在のお話がございましたが、不存在を理由として開示しないということは情報公開法からも許されておりませんので、不存在を理由としての不開示というのはできないわけでございます。
北川委員 今のをずっと聞いていまして、外務省から内閣官房への機密費、俗称機密費ですけれども、それの上納問題のときの部分でふと思い出したんですが、メモかどうかというのが手書きなのかワープロなのかという意味になるのかどうか。
 そして、まさにあのときも、組織的に行政が保有していた情報ということで、古川貞二郎さんのが筆跡まで鑑定されて、存在していると表現したにもかかわらず、出所がわからないので今なおあやふやなままになっていますが、あれは、あの方ただ一人のメモではなく、あれにのっとって組織は動いていたと類推することが可能である範囲が広かったわけですね。ですから、あんなに長い期間、多くの問題点をさまざまなところで論じられたと思うんです。
 では、ああいうメモ、手書きのメモというのは、情報公開制度で請求した場合に対応していただけるのかどうかといった点と、先ほどの小泉首相の二月二十二日の記者会見というもの。これはまさに、アフガニスタンの空爆が十月八日から始まったときに、小泉さんは、避難民を支援しますとかということを記者会見では言われる、ですけれども、実際にどういう支援なのかといえば、少し次元が違う支援になってしまったということも含めて、言ったこととやっていることの乖離というふうに受け取っていいのか。
 首相ですから、すべての仕組みというものをわかった上で、あえて、二月二十二日、こういう記者会見を、メモもとっていけば情報公開法の対象になるからと踏み込んで言われているわけです。松田局長は、総務省の担当部署の方として、これも入るんだ、今後、二〇〇二年からはこのことも含めて各公開審査会の方には付加していかなければいけない問題だ、つけ加えていかなければいけないんだというふうに逆に言えばやっていかなければいけないのではないかというふうに思うんですが、一番初めの話の議論に戻ってしまって、できるだけ公開をしないような状況に戻すような御発言のように受けたんです。すごく首相は前向きで、担当省庁が後ろ向きというのはどうなっていくのかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
福田国務大臣 メモの意味についてちょっと考え方の違いがあるような感じがしますので、私から申し上げます。
 小泉総理がメモと言ったのは、メモでも、大事なメモと取るに足らないようなメモといろいろあるわけですね。ですから、小泉総理が言われたメモは、それは大事な記録として行政上残すべきものであるという内容であるということを含んだメモであるという意味において言われたことだと思います。
 日常、いろいろ、いろいろな紙にメモをつけるわけでありますけれども、そういうものを一々すべて記録に残すということはしない。また、そんなことをしていたら、そういうことを記録に残したら、またそれを一々後で見なきゃいかぬというようなことになれば大変なことでありますから、日常のささいなことについて、また行政上重要でないと思われるようなことについてのものはこれは残さなくてもいい、そういうことで今局長が答弁したと私は理解しております。
 小泉総理のメモというのは、重要なメモという意味ですよ。その点は誤解しないでいただきたいと思います。
北川委員 そこが多分いつも福田官房長官と、機密費の問題で委員会で質問させていただいたときの違いなんですが、それを大事か大事でないかをだれが判断するかということなんですね。だから、私はすべて、情報を公開するといったときには、国民が判断したいから情報を積極的に出してくれという制度がやっと二〇〇一年、日本という国でもできたということであったのでありまして、大事か大事でないかを、小泉さんはそこまで問うて言っていないわけですよ。あの時点の流れ、鈴木宗男さんという方の問題の流れの中で彼が二月二十二日に言ったときには、大事とか大事でないとかということは言っていなくて、それを持ち込むことはとても情報公開制度に危険なわけです。ある人にとっては大事であっても、ある人にとっては大事でない、すべての人にとって、情報というのはその人にとっては大事な情報なわけですから、そのメモに関して二段階論法をとられるのは私は納得がいかないんですが、いかがでしょうか。
福田国務大臣 メモというのは、仕事をする上で、忘れてはいけないとか、ちょっと数字をメモするとかいったような、そんなこともあるんですね。しかし、それは、その時間を過ぎれば重要でなくなってしまうというような備忘録的なメモというか記録、そういうことはあり得るわけですけれども、そういうものが重要かどうかということを判断するのは、一義的には当事者ですよ。当事者が判断するんです、これは重要でないかどうかということをね。それは、国家公務員でしょう。国家公務員というのはやはり国と国民の利益のことを考えてやるわけでありまして、そういう気持ちで業務に携わっている公務員が一義的には判断すべきであるということだと思います、そのメモを残している。それで、その内容の程度によってその上の職員の人が判断するということもあるでしょう。一義的には担当者だというふうに私は思っております。
北川委員 そうなると、いかがでしょうか、担当の総括局長としてはかなりしんどいんではないでしょうかね。当事者が判断されて、先ほど一番初めにお伺いした、諮問にかかる前はどこに滞留しているかといったら、各省庁になると。省庁のばらつき、確かにもう数字の上でも出ています。それを総務省は積極的にどうしなさい、ああしなさいと言える権限がないわけで、そして国民の方からはまだかまだかという声が上がってきている現実ですよね、一年でも。
 では、この一年の中で、次の二年目を迎えて、ここに何が一番必要だと。私は、今の福田官房長官のように言われると、担当部局としてはとても大変なことがまた覆いかぶさってきたというふうに判断したんですが、担当局長としては福田官房長官のお答えをどうおとりになったかというのと、それから、今後に向けて、人手が不足しているのか、公開審査会のメンバーの人数が足らないのか、各省庁の対応が一律でないからこういう結果になっているのか、何が必要だというふうに思いますか。
 それと、これは罰則規定がないという点があるんですけれども、その点などはいかがでしょうか。それは国民の立場に立って御答弁いただければ幸いです。
松田政府参考人 いろいろなお尋ねが一遍にありましたので、全部お答えできるかどうかあれですが、冒頭申し上げましたように、これまで情報公開法の施行状況、昨年末の段階までを見ますと、かなり積極的に各省運用していただいているなという感じを持っているところでございます。
 先ほどの官房長官の御説明のように、行政文書の公開、これは実務的には当該担当者の判断ということになるわけですが、形式的にはその行政機関の長が判断されることになるわけです。その上でさらに不服があれば、不服審査会、情報公開審査会の方で審査をされるということになるわけでございますし、さらに裁判になれば、裁判でその判断は下される、そういう重層的な仕組みでもってこの情報の公開性を担保していくということになっているわけでございます。
 今後の課題でございますけれども、今まさに施行状況の調査をやっているところでございまして、その結果も見ながら、必要な対応をとる事柄があればまた対応をとっていきたいと考えておりますが、今のところは施行状況の調査を行っているという状況でございます。
北川委員 時間が来たので、ありがとうございます。
 ただ、今の罰則の点にお答えいただけなかった点とか等々、やはり人材の不足の点とか頭を悩ませているというのが、現実にも担当者の声として上がっていました。ぜひその点なども、人々の視点に立ってこれから進めていただけるようにお願いいたします。きょうはどうもありがとうございました。
大畠委員長 これにて北川さんの質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
大畠委員長 次に、内閣提出、道路関係四公団民営化推進委員会設置法案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。石原国務大臣。
    ―――――――――――――
 道路関係四公団民営化推進委員会設置法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
石原国務大臣 ただいま議題となりました道路関係四公団民営化推進委員会設置法案の提案理由につきまして御説明申し上げます。
 平成十三年十二月に閣議決定された特殊法人等整理合理化計画において、日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団及び本州四国連絡橋公団は廃止することとし、これらの道路関係四公団にかわる新たな組織及びその採算性の確保については、第三者機関において検討し、その具体的な内容を平成十四年中にまとめることとされたところでございます。
 この特殊法人等整理合理化計画に基づき、第三者機関として道路関係四公団民営化推進委員会を設置するため、この法律案を提案することとした次第であります。
 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 第一に、道路関係四公団民営化推進委員会は、内閣府に置くこととしております。
 第二に、委員会は、特殊法人等整理合理化計画に基づき、道路関係四公団にかわる民営化を前提とした新たな組織及びその採算性の確保に関する事項について調査審議し、その結果に基づき、平成十四年中に内閣総理大臣に意見を述べることとするほか、この意見を受けて講ぜられる施策の実施状況を監視し、必要があると認めるときは、内閣総理大臣等に勧告することとしております。
 第三に、委員会は、すぐれた識見を有する者のうちから内閣総理大臣が任命する委員七人以内をもって組織することとし、委員の互選により委員長を定めることとしております。
 第四に、委員会は、関係行政機関及び道路関係四公団に対し、資料の提出その他必要な協力を求めることができることとするほか、道路関係四公団の業務の運営状況を調査し、または委員にこれを調査させることができることとしております。
 第五に、委員会に事務局を置くこととしております。
 第六に、この法律は、平成十八年三月三十一日限り、その効力を失うこととし、その日より前に委員会の意見を受けて講ぜられる施策に係る法律が施行されるに至ったときは、当該法律の施行にあわせて廃止することとしております。
 以上が、この法律案を提案する理由でございます。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
大畠委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 この際、休憩いたします。
    午後零時五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十三分開議
大畠委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 午前に引き続き、内閣提出、道路関係四公団民営化推進委員会設置法案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房道路関係四公団民営化推進委員会設立準備室長坂野泰治君及び国土交通省道路局長大石久和君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大畠委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、参考人として日本道路公団総裁藤井治芳君及び本州四国連絡橋公団総裁藤川寛之君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大畠委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
大畠委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺博道君。
渡辺(博)委員 自由民主党の渡辺博道でございます。
 私は、昨年の小泉内閣が発足したときに、石原大臣のもとで大臣政務官を八カ月間させていただきました。そのときに私は大臣のいろいろなお姿を見させていただいて、本当に頑張っているな、そんな気持ちを持ったわけであります。大変大臣は打たれ強い人である、そういったことも私自身も体験として思っております。そういった中で今回大臣に質問できるというのは、私自身も大変うれしく思っております。
 その間、小泉内閣で進められております聖域なき構造改革というこの改革を進めていくための基本的な考え方が、ポイントとして二つあるんではないかというふうに思っております。それは、経済を活性化するためにどのようにしたらいいのか、そしてまた、さらには地方をどのように考えていくか、こういった問題が大きく分けて二つあるというふうに思います。それは、小泉内閣のもとで常に言われておりますが、民間でできるものは民間で、そして地方にできることは地方でという二つの考え方だというふうに思っております。
 こうした中で、今回の道路関係四公団の民営化推進委員会の設置法、こういったものが一つの形として出されてきたわけだというふうに思っております。
 この法案の質疑に入る前に、道路についての考え方をちょっと述べさせていただきたい、そのように思っております。
 戦後、日本の国土が焼け野原から今日のように大きく発展したその背景の中には、やはり、社会資本の整備というものに尽力してきた、その一つの結果ではないかな、そのように思っております。道路行政がいろいろな形で全国津々浦々に張りめぐらされ、そして人との交流がさらに進められ、物流がさらに促進される、こういった社会資本の整備こそが経済のまさに発展の基盤ではなかったかなというふうに思うわけであります。
 特に、これからの時代を考えていったときに、まさに二十一世紀はIT社会の国になっていくだろうということで、小泉内閣においても五年以内に世界一のIT国家を目指していくんだという一つの方針があると同時に、私は、やはり地方においても地方の役割というものが大変重要ではないかな、そのように思っております。特に、地方を結ぶのはやはり道路ではないかな、その道路のネットワークがこれから本当に必要ではないかというふうに思います。
 道路は、それぞれぶつぶつにあっては、途切れ途切れになってはそれぞれの交流ができませんので、やはりそこにはしっかりとしたネットワークを結んでいくこと。まさにIT社会においては、端末のパソコンが一つ一つ独立しては何の意味もないというのと同じように、社会資本の大変重要なものであります道路についても、地域をしっかりと結びつけるネットワークが大変重要だというふうに思っているわけであります。
 そうした中で、特にこれからの考え方として、道路のあり方というものを、単に公共事業だということの位置づけではなく、地域の町づくり、こういった視点から道路を見詰め直していくこともまた重要ではないかな、そのように思っております。
 特に、二十一世紀は地方分権の時代というふうに言われておりますが、地方分権の時代だからこそ、さらに広域的にその受け皿として分権化が進められなければならない、そういうふうに思っております。そういうふうに考えますと、当然のことながら、地域と地域を結ぶものは道路でありますから、この道路の役割というのはまさにこれからさらに必要になってくるんではないかな、そのように思っております。
 小泉内閣において、ことしの一月、「構造改革と経済財政の中期展望」、いわゆる「改革と展望」というものが出されました。その中に述べておるのが、地方の問題について、地方が人材、自然、歴史、文化といった多様な資源を生かし、地域の魅力、個性を発揮する社会を目指していくんだ、そしてまた、これからの日本は、人を何よりも重視する社会をつくっていくと、構造改革の後に目指す日本の姿を示しているわけであります。このような視点から考えますと、まさに日本という国を有機的に結びつけていくためには道路がなくてはならない、そのような位置づけをしていかなければならないというふうに私は思います。
 そこで、お伺いします。
 かつて、昭和三十一年、日本道路公団、そしてまた三十四年が首都高速道路公団、三十七年が阪神高速道路公団、そして四十五年、本州四国連絡橋公団という公団がそれぞれ設立されたわけでありますが、このそれぞれの公団の果たしてきた役割とその評価、並びにこの四公団に関する民営化に対する基本的な考え方というものをまず初めにお伺いをしたいと思います。
石原国務大臣 渡辺委員にお答え申し上げたいと思います。
 渡辺委員におかれましては、小泉内閣の発足に伴いまして、内閣府の大臣政務官といたしまして規制改革の面等々で大変お世話になってまいりましたし、また、小泉改革の目指すところは大変熟知をされていると思います。そんな中で、ただいま委員の御発言の中にございましたように、一つの哲学として、民間にゆだねられるところは民間にというお話が開陳されたわけでございますけれども、特殊法人改革に当たりましては、この民間にゆだねられるものは民間にということで議論がスタートしたところであるわけでございます。
 そして、この道路四公団の廃止、民営化につきましては、総理のリーダーシップにのっとりまして決定されたわけでございますが、これはやはり、目標として民営化するのではなくて、手段として民営化をして、それによって国民の皆様方が今よりもよりよいサービスを受ける、あるいは効率性、あるいは民間会社としての責任追及によって経営が引き締まる、こういうことを目指した改革であると私は考えておりますし、また、渡辺委員におかれましても、十分この点については御承知のことだと思います。
 また、これまで、地域の発展、戦後の荒廃の中からこの道路網というものが経済に資する意味を持っていたということは、今るる御発言をされましたとおりであると私も同感に考えているところでございます。
渡辺(博)委員 それでは、具体的に法案の方に入らせていただきます。
 実は、昨日、本日与党筆頭であります野田佳彦議員の質問もありましたし、我が党の岡下信子議員を初めとして各党の議員の皆さんから代表質問があったわけですが、今回の法案については、結構その代表質問の段階で議論がほとんど出ているなという感じがしております。
 そこで、具体的に、私の方からは法文に沿って御質問をさせていただきたいな、そのように思っております。
 第一条に、内閣府に委員会を設置するというふうになっております。本来、道路行政については、国土交通省が所管する省であります。そうした中でいろいろと議論されていったのではないかなというふうに思いますが、今回内閣府に設置したその理由をまずお伺いしたいと思います。
石原国務大臣 この点につきましては、大変基本的な問題でございまして、昨日も本会議で御質問がございました。重複をお許しいただきたいと思うんですが、やはり、この道路四公団の改革というものは、総理の強いリーダーシップのもとに決定されたものでございます。そして、この内閣総理大臣の強いリーダーシップのもとに政府を挙げて取り組むべき重要課題という認識のもと、その結果、内閣総理大臣を長とする行政機関である内閣府に設置をさせていただくものとしたものでございます。
 そしてまた、委員は内閣府の大臣政務官もお務めでございましたから、そんなところにまた一つ委員会がふえていいのかといったような疑問もお持ちかなと思うのでございますけれども、その点につきましては、しっかりと法律の中で委員会の廃止ということも明記させていただいておりますし、行革の観点からも、この省庁を横断する大きな問題を総合調整する内閣府に置いたということが必然の流れではないかと認識をさせていただいているところでもございます。
渡辺(博)委員 さすが、何か以心伝心という感じでして、これから私が質問しようとすることの答えを先にしていただきました。
 実は、この第三者機関を設置するということは、まさに行革を推進している担当大臣としては逆行するのではないかというお話を私はしたいなと思ったんですが、まさにこの第三者機関の設置そのものは時限立法で定められているということなんで、これは改めて大臣の答弁は必要ございませんが、設置した以上は、ぜひともこれを有意義に運営していただきたいというふうに思うわけであります。
 そこで、第二条に移りますが、ここが基本的に一番、「所掌事務」というところで大変重要なところだというふうに思っております。
 この第二条の中には、特殊法人等の整理合理化計画に基づき、この四公団にかわる民営化を前提とした新たな組織及びその採算性の確保に関する事項について調査審議しというふうになっております。
 極めて表現は簡単に述べられておるわけでありますが、この民営化を前提とした新たな組織、この点について、一体具体的にどのようなものを調査して審議するんであろうかと思うんです。その二としまして、その採算性の確保についての調査審議、この点についても、どのようにお考えなのか具体的に述べていただきたい、そのように思っております。
石原国務大臣 二条につきまして二点の御質問であったと思います。
 新たな組織につきましては、その新たな組織が行います業務、一体どんな仕事をするのかといったような問題、そしてまた、重要なところはやはり財務のあり方ですね。この点につきましても昨日も同僚の議員の方から御質問がございましたが、この財務のあり方、その具体的な内容等について、この第三者機関が御意見を総理の方にちょうだいいただけるものと考えております。
 二点目の御質問は採算性についてであったと思いますが、この採算性についてというものは、やはり一つ一番重要になってまいりますのは、道路交通の需要の見通し。どうもこれまでの見通しというもので、当たる当たらないというのは表現が適切かどうかは別といたしましても、なかなか需要見通しのとおり交通量が十分でないケースがよく拝見されるわけでございますので、その点につきましても、十分な採算性の確保の観点から需給状況というものを見ていただきたいですし、あるいは、現在は大変低金利でございますけれども、この低金利、一九九五年から続いておりますが、九〇年代の前半はやはり六、七%の金利が当然であったわけでございますので、この金利が一%変わるだけでその新しい組織の負担というものも大きく変わってまいりますので、この金利の見通し。
 さらには、委員の冒頭の意見の開陳の中にありましたように、経済に資するために道路というものはあるべきなんですけれども、そんなような観点からの費用対効果分析の考え方等について御検討いただける。新たな組織による事業の前提となる、今申し上げましたような、るる、採算性の確保に関する基準などについて明確なものをお示しいただけるものと期待をしているところでもございます。
渡辺(博)委員 これから審議の内容ということは設置をされた後の問題としてあるわけですが、やはり基本的に、設置された以上は、その具体的な内容についてきちんと審議していける体制づくりが大変重要だと思います。それはとりもなおさず、大臣のお考え方、こういったものもしっかりとお伝えすることも大事ではないかなというふうに思っております。
 さらに、次の第三項においては、平成十四年十二月三十一日までに意見を述べるものとするというふうになっておりますね。ということは、この法案が、まあ少なくとも今月いっぱいで通ったと仮にします。仮の話でございます。そうしますと、約八カ月間ですね。この期間、大変効率的に運営をしていかない限り、なかなか私は一つの意見として集約できないんじゃないかなというふうに思っております。
 といいますのは、少なくとも、道路公団の歴史は、先ほど申し上げたとおり、長い長い歴史の中にあるわけです。その歴史の中にいろいろな権利関係やいろいろなものが、しがらみが入っているわけですね。これを八カ月間で方向性を見出すというのはかなりのハードスケジュールではないかなというふうに思うわけであります。そのためにはかなり効率的に審議をしていく必要があるというふうに思うわけでありますが、この点について御答弁をお願いしたいと思います。
坂野政府参考人 委員会の具体的な審議スケジュールにつきましては、委員会発足後に委員の方々で御検討いただくことになるというのが基本でございますけれども、御指摘のように限られた期間で結論をまとめなければならないということから考えますと、相当濃密な審議を重ねる必要があるというふうに考えておるわけでございます。
 また、結論に至る過程におきましても、例えば、これまでの他の類似の審議会の例から見ますと、必要がある場合は、論点整理とかあるいは中間的な整理、そういうものも逐次行いながら結論を導く必要がある、そんなようなことも考えておるわけでございますが、いずれにしましても、御指摘のとおり、期間内に結論をまとめるためには、相当効率的かつ濃密な審議を重ねるということで委員の方々に御検討をいただきたいというふうに考えておるわけでございます。
渡辺(博)委員 次に、組織及び委員の関係について御質問させていただきます。
 特に、委員の人選についてはいろいろなところから大変注目をされている、そのように思っておりますが、この人選のあり方であります。
 本来、こういった民営化を前提とした審議をしていくのであれば、まずは公正であることが大前提だというふうに思います。そしてまた、豊富な知識を持った人、こういった人たちが委員になることが必要だというふうに思うわけでありますが、この人選についてどのようにお考えなのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
 特に、今回、国会の同意人事にならない。要するに、総理のリーダーシップのもとでやっていくんだということで、同意人事案件ではないという形をとってございます。この考え方は、その背景として一体何があるのか、その辺もはっきりとお答えいただければな、そのように思っております。
石原国務大臣 まず一点目の御質問でございます。
 第四条にどういう方を委員にするかということを簡潔に書かせていただいておりますが、これは、委員が御指摘されましたように、「優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。」もちろん、この法律案が当委員会で御審議をいただきまして参議院の方でも御決議をいただかなければ、この委員の人選というのは実際にはスタートしないわけでございますけれども、総理も昨日の答弁の中で、改革意欲に富んだ人にやってもらいたい、そして、一党一派に属さないで、特定の分野の利害に偏らない、国家国民的視点に立った公正な判断をできる方を任命したい、そういうふうに申されておりましたので、まさに総理が任命をされるわけでございますので、総理のこのような判断のもとに委員の方々が人選されていくものと考えておるところでございます。
 二点目は、同意人事となぜしないのかということでございます。
 これも昨日御答弁をさせていただきまして、重複を御勘弁願いたいのですが、当委員会はいわゆる八条機関でございます。その委員の任命について、他の八条機関で両議院の同意を得るというものは、政治基盤に関することを扱うものやあるいは不服申し立てについての調査審議など、どちらかと申しますと国民の権利義務に直接かかわるものなどに限定されていると思います。
 本委員会は、昨年の整理合理化計画に沿ってその具体的な検討を図るために設けられる委員会でございますので、今回は同意人事の必要性はないと考えておる、このような整理をさせていただいたところでございます。
渡辺(博)委員 条文としてはちょっと逆転しますが、第三条のところに、委員会は七名以内をもって組織するというふうになっております。
 審議会や委員会の委員のメンバーとして、いろいろな委員会があります。例えば、五人の委員会は、原子力委員会、原子力安全委員会とか地方財政審議会、七名では、防衛施設中央審議会、土地鑑定委員会等々ございます。九名のところもございまして、情報公開審査会、それから民間資金等活用事業推進委員会、労働保険審査会。このようにそれぞれの委員の数がばらばら、五人もあれば七名もある、そして九名もあるということでありますが、今回、委員七名をもって組織する。
 何名でもいいじゃないかというお話もあるかもしれませんが、少なくとも私は、できるだけ多くの人の意見を聞くことも大事じゃないかな、そのような観点から、七名以内とした意味をちょっとお聞かせいただきたいというふうに思っております。
石原国務大臣 ただいま委員が御指摘の点は第三条に関する件だと思いますが、先ほど事務当局からも御答弁させていただきましたように、今法律案が成立した後は、かなり限られた時間にかなり濃密な議論を行っていかざるを得ません。そうしますと、やはり効率性、効率的に審議を進めていくということが重要になってまいります。
 そのような観点から適切な規模というものを検討していった結果、この七名、十名とか十二名とか十五名とか多い方がいいという意見もございましたけれども、やはり効率的に審議を進めていく上では七名が適正規模ではないかという判断のもとに、このような法案をつくらせていただいたところでもございます。
渡辺(博)委員 条文の上では四条まで来たわけですけれども、私は、人数それからその人選、この部分はやはり多くの国民の皆さん方も大変注目しているところでございますので、人選については、国会同意人事でありませんが、やはり決めたときの判断基準、こういった人を人選しましたということはきちんと公表していただきたいというふうに思います。
 そういった関係におきまして、条文をずっと見てきたのですが、八条という大変短い条文しかありません。その中で、今の御時世、情報公開というものが大変叫ばれております。この情報公開というものを考えたときに、法律の条文上に、その文言がこの中には載っておりません。この推進委員会がしっかりと議論している内容、これをやはり国民の皆様方にも理解していただくためにも情報公開を進めていくことが大変重要ではないかな、そのように思っております。
 そういった観点に立ちまして、この委員会の情報公開のあり方、この問題につきまして御質問をさせていただきたいと思います。
石原国務大臣 ただいま委員の御指摘されました点は、先ほど冒頭お話ししましたように、民営化ということが目標ではなくて手段である、その結果、国民の皆さん方の利便が向上する、あるいは経営主体の効率化が図られ、コストの削減につながるといったようなものを目指していくわけでございますので、情報公開というものが非常に重要になってまいります。
 法案の中には情報公開について規定は設けておりませんけれども、これは他の審議会等と同等でございまして、税制調査会等はオープンで議論をされております。経済財政諮問会議も議事録が公開されております。会議または議事録を公開することが原則としておりますので、当委員会が発足しましたら、委員会においていずれか決定される。
 いずれにいたしましても、委員の方々が自由濶達に議論を交わせられますように、その部分の配慮というものも大切だと思いますが、配慮しつつ、委員御指摘のとおり、インターネット等を使って情報公開等と、先ほど委員は、この委員会の任命される委員の公正性みたいな点についても御言及されましたが、この委員会の運営の透明性というものもそういう情報公開によって担保して、あるいは確保していかなければならないと認識しているところでございます。
渡辺(博)委員 今大臣から御答弁をいただきましたが、経済財政諮問会議の結果については、終わった段階で座長の竹中平蔵大臣が記者会見をしているということであります。そして、個々の委員のメンバーの発言要旨については三日後に公表しているという実態があります。
 大臣は、今頭の中で描いているのはどの程度の公開を考えていらっしゃるのか、それをちょっと再度お伺いしたいと思います。
石原国務大臣 先ほども答弁の中で申し述べたんですが、委員会でその委員会の趣旨にのっとって委員の方々がどういう形で公開するかということはお決めになると思うんですけれども、やはり大切なことは、すべてをライブで、すなわち全部を公開して審議をするという方法が本当にこの会議になじむのか。あるいは、今委員が御指摘されたように、その日の模様については、これから委員の間で委員長が互選されますから、委員長が、こんな話があったという話を記者会見で当日の模様をブリーフしていただいて、詳細については議事録等々を出す、いろいろな方法があると思います。
 そのようなことを委員会の方で御判断いただくことになると思いますけれども、やはり大切なことは、委員が冒頭御指摘されましたように、国民の皆さん方に、審議の過程でどういうふうになってどういうふうになるんだということが伝わるということに留意をして、この情報公開というものを積極的に進めてまいりたいと考えているところでございます。
渡辺(博)委員 今大臣からのお話、ぜひともそのような形で進めていっていただきたいなと思うわけであります。
 この法案が通過し、一つの受け皿として委員会が立ち上がります。そうした中で、委員会を運営していくためには、しっかりとした、先ほどの坂野室長のお話ではないですけれども、濃密な、そして効率的なものをやっていくんだということをおっしゃっておりましたが、私は、事務局体制というのもやはり大変重要ではないかなと思います。
 今申し上げたとおり、効率的にやっていくためには、それをフォローする部分としての事務局は一体どうなっているのかな。ここに一応、条文上は「事務局を置く。」というふうになっております。現在の想定で結構ですが、事務局の体制についてお知らせいただければなというふうに思います。
坂野政府参考人 御指摘のとおり、この委員会を支える事務体制というものは私どもも重要だと考えておりまして、この法案の中でも特に、独立した事務局を設けるということにいたしておるわけでございます。他の省庁が兼務をして事務をとるのではなく、これは専らこの事務に当たる独立した事務局を設ける、まずそういう位置づけをきちんとつくったというのが一点でございます。
 それから、事務局の体制でございますけれども、これもやはり、行革の中で、少数精鋭という形で、各省の人員の効率化、簡素化を進めていただいている中でございますので、そういう中で可能な限り充実した体制をつくるという努力をこれからしていかなきゃならぬと思っておるわけでございます。
 現在、私ども準備室は、各省から併任を含めて十名以上の職員で今準備室をつくっておるわけでございますけれども、この準備室の体制をかなり拡充した形で事務体制をつくる必要があるのではないかというようなことは私ども内々考えておるわけでございますけれども、この法案が成立した暁には、私ども内閣官房の中で十分相談をさせていただいて、できるだけ期待にこたえられるような事務体制をつくり上げたいというふうに考えておるわけでございます。
渡辺(博)委員 時間が来ましたので終わりにしますが、大臣ぜひとも、この法案が通った後、運営についてしっかりと進めていただくよう御期待を申し上げまして、私の質問とさせていただきます。ありがとうございました。
大畠委員長 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。
 次に、実川幸夫君。
実川委員 今、四階の方で国土交通委員会の理事会がございまして、やはり道路四公団法案につきまして大変長引いてしまって、ようやくこちらの委員会に間に合いました。
 今、渡辺議員からもいろいろと細かにお話があったと思いますけれども、多少重複する点があろうかと思いますので、御了承のほどお願い申し上げたいというふうに思います。
 今回提案されました道路関係四公団民営化の推進委員会設置法案でありますけれども、ほかの特殊法人に先行して改革の方向が示されたということは、まさに時宜を得た法案提出ではないかというふうに思いますし、私も高く評価したいというふうに思っております。
 昨年の十二月に閣議決定された特殊法人整理合理化計画を受けまして、道路四公団の民営化を前提とした新たな組織、その採算性の確保を調査また審議する第三者機関であります道路関係四公団の民営化推進委員会の設置を内容とするものでありまして、これは極めて重要な法案であるというふうに思っております。
 今回設置されます民営化推進委員会におきまして調査審議される事項、これは国家また国民にとりましても極めて重要なものであるということから、以下何点か、政府の見解を確認する趣旨で質問をいたしたいというふうに思っております。
 まず、佐藤副大臣にお伺いをしたいんですけれども、高速自動車国道の整備の必要性。
 高速自動車国道は、言うまでもなく、国土を縦貫あるいは横断して高速道路ネットワークを形成するものでありまして、これは法律で予定路線が定められているわけであります。我が国経済の発展また国民生活の利便性向上を図る上で、これは極めて重要な、根幹的な基盤施設でもありまして、ネットワークとしてつながって初めて最大限の効果がもたらされるという性格のインフラでもあるというふうに思います。
 また、国際的に見ましても、我が国よりも高速道路を先行的に整備しておりました欧米諸国におきましても、現在も我が国以上に、また同等以上のペースで高速道路を整備いたしております。特に、御承知のように、最近中国では、十年間で約一万六千キロメートルの高速道路の整備を進めております。
 さらには、我が国経済、諸外国との大変激しい競争の中に置かれております。物流スピードをさらに高めて物流コストを削減し、国際経済の中で我が国の競争力を高めることが現在の景気回復を高めるためにも大変重要ではないかなというふうに思います。
 したがいまして、採算性あるいは費用対効果だけではなくして、さまざまな整備効果を踏まえて高速交通ネットワークの早期の整備を図らなければならないというふうに思います。
 そこで、佐藤副大臣にお伺いをしたいんです。この高速自動車国道の全体計画でありますいわゆる一万一千五百二十キロメートルにつきましては着実に整備を進めていく必要があると思いますけれども、この点について国土交通省はどのようにお考えになっているか、お尋ねをいたします。
佐藤副大臣 先生おっしゃったように、一万一千五百二十キロというこの整備の目標というのは、なぜこういうふうに決められているかと申しますと、インターチェンジまでのアクセス時間が一時間以内圏をつくる。これは今六九%でありますけれども、八五%の全国を網羅する面積まで持っていこう。さらに、各県庁所在都市の市役所からインターチェンジまでのアクセス時間を三十分以内にする。これは今実現できているのが四十五都市でありますけれども、これを四十七都市にする。もう一つは、各市の市役所からインターチェンジまでのアクセス時間を三十分以内にする。これは人口五万人以上の都市でありますけれども、今六十一都市で未達成。これを二十九都市にしなければなりません。それをするとなると一万一千五百二十キロ必要だということであります。
 今後のこの整備については、道路関係四公団民営化推進委員会の意見を踏まえまして、国土交通大臣が国幹会議の議を経て最終的に決定することになると思います。その際、先生おっしゃったように、採算性や費用対効果だけではなくして、高速自動車道路というのは、ネットワーク化されなかったら本当の効果は出てこないわけであります。いかにしてネットワーク化するか、相当いろいろ知恵を出して私たちも考えなくちゃならぬと思っております。
 今申し上げましたそれぞれの都市のアクセス、空港や港湾とのアクセス、経済効果、地域に与える影響、いろいろなことを考えながら最大限の努力をしていきたい、そう思っております。
実川委員 今大臣のお答えの中で、高速道路ネットワーク、これは我が国の根幹的な施設であるというふうにお答えをいただいたと思いますし、また、その整備は道路政策の根幹でもあろうかと思いますので、よりよい知恵を出して今後の対応をしていただきたいというふうに思います。
 次に移りたいと思いますけれども、都市再生の必要性についてお尋ねをいたします。
 我が国の構造改革の一環といたしまして、都市再生、これは強力に推進する必要があると思います。国土交通委員会で先般この法案が成立をいたしました。これは、まさに国を挙げて都市再生に取り組んでいる証拠ではないかなというふうに思います。
 都市再生を進めていくためには、前提となります基盤整備は公共側でしっかりと実施しなければならないと思いますし、大都市圏の環境、道路等の整備は何としてでもやり遂げなければならないのではないかというふうに思います。
 特に東京におきましては、首都高速道路の渋滞、これは末期的な状況にあります。これを抜本的に改善するための延長約四十六キロメートルの中央環状線の整備につきまして、約二十キロメートルが現在供用中でありまして、約十七キロメートルが事業中であります。いまだ整備途上になっております。特に、唯一の未事業化区間であります品川線がございますけれども、これがまさに画竜点睛ということを欠くものでありまして、その整備効果も半減してしまいます。
 そこで、副大臣にお伺いしたいんですけれども、首都高速道路公団が民営化された場合にも、首都高速道路の中央環状線、今申し上げました品川線等の重要路線、これは都市再生の観点からもぜひ整備が必要と考えますけれども、これについて、副大臣、どのようなお考えを持っているか、お伺いをさせていただきます。
佐藤副大臣 東京や大阪の大都市が交通渋滞によって非常に経済的な影響も与えておりますし、沿道の環境にも大変大きな影響を与えております。これらを解消するために環状道路の整備が緊急の課題でありますけれども、先生おっしゃった首都高速道路中央環状線は、三環状線の一つとして、池袋、新宿、渋谷を直接連結する副都心環状道路と呼ぶべきものであります。都市再生プロジェクトにおいても、その整備を積極的に推進するということに決められております。これを受けまして、都市計画決定と計画の具体化を都市再生プロジェクトにおいてやろうということになっております。
 唯一未着工で残されている区間でありますけれども、これを早くしなければなりませんし、東京都におきましても、今、都市計画決定や環境影響評価に既に入っております。これも、道路関係四公団民営化推進委員会の新たな組織、さらにその採算性の確保について調査審議することとされておりますけれども、その組織形態にかかわらず、これは都市再生に不可欠な重要な路線でありますから、いろいろな工夫をしながらできるだけ早くでき上がるように努力をしてまいりたい、そう考えております。
実川委員 都市再生の観点からも道路の整備は必ず必要でございますので、より一層のいい知恵を出して御協力のほどをお願い申し上げたいというふうに思います。
 次に、高速道路の建設の凍結論についてまた副大臣にお伺いしたいんですけれども、これにつきましては、昨年、特殊法人等整理合理化計画が閣議決定されるまでの間、大変さまざまな議論が行われたことは、もう御承知のとおりだというふうに思います。その中で、事業中のものも含めて高速道路の建設を凍結すべきとの意見も出されました。これは、各地域におかれましては相当不安を与えたというふうに思います。
 整備計画区間は、内閣総理大臣が会長であります国幹審で決定され、国民にその整備を約束した区間でもあろうかと思います。また、都市計画あるいは環境アセスメントの手続の中で地域住民に細かな計画を説明しているとともに、地権者への用地買収の手続が現に行われているところもあるわけであります。さらには、地方公共団体あるいは地域の経済界におきましても、高速道路の整備を前提とした各種プロジェクトも進行いたしております。
 事業中の区間につきましては、地域が不安を抱くことがないように、継続して、さらに円滑かつ効率的に事業を行うべきだ、このように思いますけれども、副大臣のお考えはどのように思っているか、お伝えいただきたいと思います。
佐藤副大臣 この九三四二というのは、十一年十二月の国幹審を経て決められたものであります。その策定に当たりましては、環境影響評価をやり、その際、評価書等の説明会の開催や公告縦覧を行ってきております。六割の区間で都市計画決定がなされており、権原が制限されております。そうして、その高速道路ができることを想定しながら、各地においてたくさんのプロジェクトも行われております。ですから、もしもこれができないとなりますと、そういうような計画に大きな影響を与えることになります。
 さらに、既に、その残された部分に今五兆円の投資をしているということもありまして、それらのものがそのまま残ってしまうということをできるだけ避けなければならないと考えております。それらが放置されますとかえって危険なことになってしまいますし、先生御承知のことと思いますけれども、相当な工事があちこちでされております。ですから、そういう面でそういうものが放置されないようにいろいろなことを考えなくちゃならぬ、そう思っております。もちろん、今大きな制限があるわけでありますけれども、それをこれからの第三者機関の方々のいろいろ御意見もお伺いしながら、どうするか、最大の努力をしなければならぬ、そう思っております。
実川委員 この点につきましては、地域の住民の皆さんも大変不安が多いと思います。特に、我々の手元にも全国の四十四都道府県の知事さんからも緊急アピールあるいはまたいろいろな形で陳情が来ておりますので、今後も地域住民の皆さんの意見というものを十二分に反映していただきたい、このように要望しておきたいと思います。
 次に、石原大臣にお尋ねをいたします。先ほど渡辺委員からも恐らく質問があったと思いますけれども、推進委員会の委員の選定についてお尋ねをいたします。
 これから推進委員会におきまして調査また審議を行うこととされております道路関係四公団にかわる新しい組織及びその採算性は、国民の関心が極めて高いものというふうに私は思っております。したがいまして、その審議については客観性あるいは公平性が確保される必要があり、委員については、国家あるいは国民的視野に立ち、特定の分野あるいは利害に偏することなく公正な判断をなし得る者を選定することがまず必要であるというふうに考えます。
 道路四公団民営化推進委員会の委員の任命について、大臣、どのようにお考えになっているか、お尋ねをいたします。
石原国務大臣 ただいま委員御質問の委員の人選につきましては、先ほども同僚の渡辺議員より御質問がありますように、当委員会の設置法案の中で一番関心が高いですし、また、ここが重要なポイントであると私も認識しております。
 第四条に「優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。」とはっきりと明示をさせていただいておりますし、昨日も、総理の御答弁の中で、改革意欲に富んで公正、公平な、国家国民的視点に立って判断をしてもらう人間を私が選んでいくんだとはっきり申されておりますし、その点においては、ただいまの委員の御発言とまさに一にしているのではないかと思っております。
実川委員 この点につきましては、昨日の本会議の質問の中にも、国会同意人事ということもお話がございました。このように、国民の皆さんも大変高い関心を持っておるわけでありますけれども、公正な判断の中で人選をしていただきたい、このように思っておるところでございます。
 それから、これも大臣にお尋ねをしたいんですが、地域の意見、これについてお尋ねをいたします。
 高速道路の整備は、地域の経済発展あるいは住民の利便性向上にとって極めて重要な課題であるというふうに思います。民営化推進委員会の審議を進める上で、地域の意見は十分聞くべきだというふうに考えております。その委員会の調査また審議を進めるに当たって地域の意見というものをどのようにお聞きになっていくか、この点についてお尋ねをいたします。
石原国務大臣 ただいまの委員の御指摘のところは、私もまさに地方を何カ所かタウンミーティング等で回りまして、地方の皆様方の道路に関する関心の高さというものは十分に承知しておりますし、また、委員が再三再四今申し述べられておりますような、公正な審議を当委員会が行っていく上で、やはり地方の皆様方、言葉を平たい言い方で言いますと、幅広く各界各層の御意見を伺うということは重要になってくると思っております。
 もちろん、まだ委員会が発足したわけではございませんので、発足した委員会においてお決めいただくことになると思いますが、例えば、今委員が御指摘されておりますような地域関係者の方々のヒアリングや、また、私も介護保険の導入のときに地方公聴会というのに何度も出席いたしましたけれども、地方公聴会の開催なども必要とあらば考えていかなければならない重要な点であると認識しております。
実川委員 ぜひ、今大臣が申されましたように、地方での声を積極的に取り入れていただきたい、このように要望いたしておきます。
 個別路線の扱い、これにつきましても大臣にお尋ねをさせていただきます。
 民営化推進委員会、これは新組織とその採算性を検討することとされておりますけれども、一方で、例えば個別路線の整備計画についてでありますけれども、国土交通省が国土開発幹線自動車道建設会議の議を経て決定するとされております。今後の議論を混乱なく進めていくためには、個別路線の扱いと民営化推進委員会の関係を明確にしておくべきだというふうに考えますけれども、個別路線の整備、そしてまた民営化推進委員会の関係、これについて大臣、どのようにお考えになっているか、お尋ねをいたします。
石原国務大臣 これはもう実川委員御承知のことだと思いますが、昨年取りまとめました特殊法人等整理合理化計画の中で大原則を明示させていただいております。すなわち、もう国費は投入しない、償還期限は五十年を上限としてその短縮を目指す。そして、当委員会が、先ほどもお話をさせていただきましたが、交通需要の見通し、あるいは金利の見通し、また費用対効果分析の考え方について十分に御検討いただいて、新たな組織による高速自動車国道の整備の前提となる採算性の確保に関する基準というものの意見具申をちょうだいいたしまして、最終的な個別路線の整備については、この委員会の意見具申を尊重していただきました上で、高速自動車国道法に基づき、国土交通大臣が、国幹会議の議を経て、そして政府で最終的に決定する。これは現行の法律にのっとって適正に処理されていくものだと認識をしているところでございます。
実川委員 通告した質問内容、ほとんど終わってしまったんですけれども、少し時間がございますので、副大臣に一点だけ。
 ちょっと通告していなかったと思いますが、今大臣にお尋ねしたのと大体同じなんですけれども、今、整備手法とかあるいはまた採算性、これの分析、これは今後になると思いますけれども、これにつきまして、国土交通省におきましては、責任、あるいは早急に整備の見直しということも関係してくると思います。国土交通省というよりも佐藤副大臣のお考え、個人的なお考えで結構ですので、お尋ねさせていただきます。
佐藤副大臣 先ほどから先生の御質問にありますように、整備路線九三四二、さらに予定路線の一一五二〇、これは法で決められている問題でありますから、それに沿って各地区でいろいろな開発計画を立てております。また、来ることを想定して地域の開発ということをみんな考えて、既に計画がスタートしております。
 ですから、今でき上がる委員会においていろいろな議論がされると思います。その議論を受けながら、私たちはどうやったら多くの皆さんの期待にこたえていけるのか、全国の皆さんの期待にこたえていけるのか、そのことを考えていかなければならないと思っております。そのためには、規格を下げることも必要でしょうし、また、直轄でやる部分を相当ふやさなくちゃならぬと思います。また、それぞれの都道府県にお手伝いをしてもらわなくちゃならぬこともたくさんふえると思っておりますけれども、そういうようなものを、いろいろなことを考えながらやっていかなければならぬ、そう思っております。
実川委員 少し時間が残りましたけれども、これで質問を終わります。ありがとうございました。
大畠委員長 これにて実川君の質疑は終了いたしました。
 次に、前原誠司君。
前原委員 民主党の前原でございます。長丁場でございますが、おつき合いをいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 私は、この質問をする前提として、まず四公団の現状認識について、石原大臣を中心に議論をさせていただきたいと思います。そこのまず一つの大きなポイント、議論をしたいポイントというのは、四公団の償還計画というのは順調なのかどうなのかということであります。
 まず、日本道路公団から話を進めていきたいわけでありますけれども、日本道路公団から出ている「JH決算ファイル」というものを見ておりますと、収支率、つまりは百円もうけるのに幾らお金がかかっているかという意味の数字が平成十二年度においては五〇ということで、ここにも、「ここ十年間の高速道路の収支状況をみると、借入金等の返済は順調に進んでいます。」こういうふうに書かれています。
 私は、これには幾つかのからくりがあって、実際、道路公団の償還状況というものはここに書かれているものではないというふうに思っております。まず、それをいろいろな観点から明らかにしていきたいというふうに思っています。
 まず、このJHもそうですし、本四、阪神、首都高、すべてでありますけれども、貸借対照表の持つ意味というのは一体何なんだということを思わざるを得ません。つまりは、固定資産というものの中に、今までお金のかかったもの、工事で積み上がっていったものを全部固定資産として計上していっているわけですね。つまりは、一遍引っぺがしたアスファルトや、あるいはだめになった、あるいは変更した掲示板等々すべて、がらくた、産業廃棄物になっているにもかかわらず、今でも固定資産として計上され続けるような貸借対照表になっている。
 果たしてこれはどういう意味があるのかということでありますけれども、大臣は、今のこの道路公団の貸借対照表、これについてどういう意味があって、これをとり続けることがいいのかどうか、その点についてまず御答弁ください。
石原国務大臣 今の部分は非常に、実に根元的な問題でございまして、特殊法人とは何なのか、いわゆるパブリックカンパニーの仕事というのは何なのかということを、決算あるいは貸借対照表の世界で言っているものが示されているものだと思います。
 ですから、私どもの考えは、それですとやはり、民間企業であるならばどうかというようなところは正直言ってわかりません。というのは、減価償却費も計上されておりませんし、それは当然、パブリックカンパニーでありますから、そんなものを計上する必要は、ある意味ではないわけであります。
 しかし、今初めてこれを廃止して民営化をしていこうということが議論の俎上にのってきた結果、今委員が御指摘されましたような問題をどういうふうにとらえるのかということが重要なポイントになってきていると思うわけでございます。例えば、貸借対照表の資産の部分に、減価償却や除却を行わない投資資金である資産を計上して借入金等総額を表現して、これを比較する、何というんでしょうか、償還額の累計を償還準備金として負債の部に計上しているということに、端的に私はその持つ意味があらわれているんではないか。
 ですから、財務省の方で仮定のPL、BSというようなものをつくっていただきましたけれども、これもあくまで仮に民間法人であればということでございまして、必ずしもその数字も本当のところをあらわしていない。すなわち、特殊法人というものは、公益に資するというような観点から、我々の、民間企業とは違う概念で運営されてきたということを語っているのではないかと認識しております。
前原委員 お答えがいまいちよくわからないんですが、一つは、確かにパブリックカンパニーという言い方をされました、されましたが、建前はこれは独立採算制ですよね。しかも、三公社五現業の三公社の一つであった国鉄でさえ減価償却は計上していたんです。
 今おっしゃったところで二つ指摘をして御答弁をいただきたいんですが、パブリックカンパニーだから一般企業と同じような企業会計制度はとる必要はないとおっしゃいましたけれども、果たして、独立採算制、しかもこれは財投機関債で、市場に資金をゆだねる形で、市場に判断してもらってお金を調達している。それが果たして、パブリックカンパニーだというエクスキューズで、このような貸借対照表でいいのかという理由にはなっていないと思います、今の御指摘は。それが一つ。
 それから、償還準備金の中に減価償却が入っているというのはそのとおりですか。私の認識は違いますよ。二つ答えてください。
石原国務大臣 前段の質問はちょっと誤解をされているんだと思いまして、お答えいたしますが、実は、そういう考え、いわゆるパブリックカンパニーだからこれでいいんだと言っているところに問題があるということで、仮に民間企業であるならばということで、仮定計算ではありますけれども、PL、BSをつくらなきゃならないというふうに私も考えているというふうに申し述べたところでございます。
 減価償却の点についてでございますけれども、これは、有料道路は要するにお金を取って営業しておりますけれども、もうけようとはしていないんですね、この企業は。営利目的じゃありません、パブリックカンパニーですから。ですから、当然法人税も納めていない。また、配当利益や課税所得を算出する、計算する必要性がありませんから減価償却費を計上していない。そういうふうに制度上なっているんですね。
 ただ、私の問題意識としては、それでは実態がわからない。ですから、民間企業であったならどうであるのかということを財務省にお願いしてつくっていただいた。しかし、それも、つくっていただいたものを私も、公認会計士の方に見せて分析していただいても、それでも、民間企業と完全に対比ができないから、実態というものは、私どもが持っているセグメント情報では本当はどうなっているのかということはわからない。
 ですから、きょう総裁もおいででございますので、総裁の方に十分聞いていただきたいと思います。
前原委員 要は、もっと赤裸々に言うと、この貸借対照表というのは、道路公団のいわゆるプール制も、それから償還主義もあわせてですけれども、隠ぺいの構図そのものなんですよ。つまりは、実態を明らかにしないことに意味がある。だから国民にわかりにくいような貸借対照表を使っている。そこをどう変えていくかというところに問題意識を持っておられるというところは一緒だと思うんですけれども、しかしながら、民営化の議論が出てきたらそう変えましょうというのは、私は違うと思うんです。
 つまりは、道路公団のままであったとしても、その貸借対照表がきっちりと実態の経営状況を示すものでなければいけないのにかかわらず、そうなっていないところに大きな問題があるんじゃないかということを申し上げているわけです。私は、そのポイントをぜひまずは前提として押さえないとこの民営化の議論の組み立てにならないというふうに思います。
 そこで、さらにフレームワークを明らかにするために申し上げますが、税金も納めてない、もちろん資本金もない、あるいは配当もない、そういうことですから減価償却は要らないかということになれば、私はそうじゃないと思うんですね。さっき国鉄の例でも申し上げました。要は、いろいろな工作物をつくっていくわけですから、通常の維持管理費だけで永遠に、半永久的にその工作物を使い続けるのかどうかといえば、そうじゃないと思うんですね。となれば、必ずその部分については、営利目的でなくても、減価償却を組み入れた形に会計制度をしておかないと、いつか朽ちたときにかなり大きなお金をどっと使わなくてはいけない、こういうことになると思います。
 そうすると、今の償還期限というものも全く意味をなさない話になるわけでして、先ほど大臣のおっしゃったところというのは、私はその部分が大きく欠落していると思いますよ。したがって、この減価償却を計上していないことのエクスキューズに、税金を納めていない、あるいは資本金も配当金も入れていない、だから減価償却しないでいいんだという議論はおかしいと思います。
石原国務大臣 確認をさせていただきたいんですが、私がこのような減価償却を計上しない会計制度で決算を出すということを決めている担当者ではございません。現状でこのようになっていて、こういう問題があるから、仮定ではありますけれども、PL、BSというものを新たにつくっていただいたと御理解をいただきたいと思います。
前原委員 その結果、この道路公団が出しているように、収支率が五〇、返済は順調に進んでいるということを大臣はお認めになるんですか。
石原国務大臣 現在のところは支障を来していないと認識をしております。
前原委員 それだったら、実態をつかむために新たにお願いをされて調査をされた結果というものが全く生きてきていないと思うんですね。
 つまりは、道路公団であろうと、民営化をしようが、問題意識として持っておかなくてはいけないのは、工作物で営業をしている、事業を遂行している。工作物というのは未来永劫使えるものではない。その点についてのいわゆる取り組みというものがこの中に書かれていないというところに大きな問題があって、そこを含めて考えた場合、つまりは、もっと厳密に言うと、減価償却費と除却費を含めて考えないと本当の意味でのこの実態はわからないんじゃないですか。
 それを踏まえた上で、本当に大臣ですら、大臣ですらという意味は、国土交通省に聞いたら、あるいは道路公団に聞いたらこの文言のとおりでしょう。聞いても仕方がないから聞きません。サンドバッグになれと小泉さんから言われた行革大臣ですら同じような答弁をされるんですかということを聞いているんです。それだったら民営化する意味ないでしょう。
石原国務大臣 国交省あるいは公団側が何と御答弁されるか、ぜひ聞いていただきたいんですが、私はそれで、セグメント情報の不足から本当のところがわからないと明確に御答弁をさせていただいているところでございます。
前原委員 質問者は私が選定しますので、大臣からは指示をされないようにしてください。
 私は、この道路公団が出している決算ファイルでは、明らかな情報というのは全く出てこない、そして、やはり減価償却、除却というものを踏まえた上で明らかにするというのが本来の姿であるべきだというふうに思います。問題意識として、まずこの点、明らかにしておかなくてはなりません。
 一つ確認なんですが、これは道路公団総裁にお伺いします。新たな道路建設というのは、ほぼ借金で賄われていると言ってもよろしいんですか。
藤井参考人 お答えします。
 新たな建設というのは、今現在から新たにということでしょうか、今までの中の新たにということでしょうか。それによって、十四年度から国費の投入がなくなりますので、今までの新たなものでしたら国費は入っておりますし、十四年度からは入っておりません。そういうふうにお答えしたいと思います。
 それから、まことに僣越でございますが、先生の先ほど……(前原委員「借金でつくったのかどうか、その点を答えてください」と呼ぶ)そのとおりでございます。借入金でつくっております。
前原委員 つまりは、この道路建設というのは、今道路公団総裁がお答えになったように、今までは国費も含めてでありますし、これからは国費を入れないということでは借金で賄う、それがいわゆる損益計算書に書かれているわけであります。つまりは、この新たな道路建設というのは、今までは国費プラス債券等による借金で賄ってきたし、これからも賄い続けるという前提になっていて、業務収入というものについては、今までの借金の返済、維持管理費に使うということになっているわけです。
 そこで、先ほど申し上げたように、減価償却、除却の費用というものが計上されていない。その中身というものを突き詰めていった場合に、果たしてこのJHが出しているようなものになっているかということは大きな問題点として残るわけです。
 総裁、お答えになりたいようですから、議論のためにどうぞ。私の理論にどういう御感想を持っておられるか、御答弁ください、減価償却、除却について。
藤井参考人 実は、高速道路を有料道路でつくると決めたときの考え方は、国費と地方費だけでなくて、今先生がおっしゃった借入金でつくると。借りたからには返す。その借りた金を返す計画として、今決算ファイルにございますように、投下した資金をいわゆる償還準備金としてためてそして返していった、こういう仕組みになる。ですから、資金の事業として見た形でなっております。
 というのは、石原大臣がお話しになりましたように、収益がゼロだからでございます。収益がないという前提ですから、借りた金を返す。本来、借りなければ、国費と地方費でいただければそれでつくってきた。こういう事業面からの見方で、わかりやすいように、そういう形でずうっと今まで公表をさせていただきました。
 現在、先生が御指摘になり、昨年から私どももやりましたのは、企業会計。今度は、組織としてそういう資金をどう展開させながらやるかという、組織面に沿って事業というのを見たときの会計ということが今問題になっている。
 そこで、ですからそこを分けておかないと、あくまでも道路公団はそういう事業の代行者、国にかわる代行者として存在しているものですから、先生に今御説明したように、事業費が、どう借りてきてどう返すかということが重要だという視点に立ってつくってまいった。これだけ御説明させていただきたい。
前原委員 それはそのとおりだと思います。道路公団は、いわゆる全総とか、あるいはさっき副大臣が前の方の質問に御答弁されたように、九千三百四十二キロメートル、あるいは一万一千五百二十キロメートル、これは法律で決まったことでありますから、その計画をもとに道路公団としては、下請と言っては失礼かもしれませんが、そういう形でやっているという中でどういう形態をとるかという御説明はよくわかります。
 ただ、私が申し上げているのは、道路公団の実態というものを正確に把握をするためには、極めてわかりにくい、隠ぺいをしようとしているとしか思えない。うがった見方かもしれませんよ。うがった見方かもしれないけれども、隠ぺいをしているようにしか見えないし、減価償却、除却というものを計上すれば五〇なんということにならないし、また償還準備金にしたって、良心的にこの決算ファイルにも書いてあるけれども、「工事中の道路の借入金残高が三兆九千八百九十五億円あります。」ということで、償還準備金が九兆四千二百億円。かなりまだ工事中の借入金残高がありますよね。これがどんどんふえていくわけですよ、これから。そうなると、償還準備金というものが果たして順調なペースでふえ続けるかどうかというのは、これは大きな疑問になるわけです。
 私が先ほど総裁に御答弁をしてくださいと申し上げたのは、今の御説明でもわかりましたけれども、独立採算の組織として、本来ならば除却あるいは減価償却という概念を入れないと本当の経営実態というのは見えてこないんじゃないんですかということを申し上げたんです。それについてはどう思われるかということを御答弁いただきたいと思います。
藤井参考人 今回の行革の精神が、組織論としてむだのない組織ということでございますから、先生が今御指摘のように、大臣からの御答弁にございますように、企業会計という視点から今の事業の運営の状態を表現していくということを、これから私どもも、去年試験的にやらせていただきましたけれども、今後やらせていただこうと思っております。
 そのときに、先生がどんどん借金がふえていくじゃないかとおっしゃいましたので、その一点だけ申し上げますと、この十四年度の予算の概算要求及び十二月の原案策定に当たっては、今後の借入金の残高を以後もうふやさないようにしていこうということを基本に、何で基本と言ったかといいますと、債務の事業がずっと、四年債務とかありますから、どうしても支払い高が後半に残ってまいります。そういう意味で、十四年度とか十五年度からぴたりと一切ふやさないということはできませんが、基本的にはもうほとんどふえないようにしていけば、今まで借りてきたお金を借りかえながら、借りかえるという意味では借入金が必要ですが、新たな建設を行うには収入を前提としてやっていく、こういうふうな物の考え方がいわゆる企業会計からいってふさわしいじゃないかということで、私ども、そういう主張をさせていただいて、今回の十四年度の予算はそのような物の考え方ででき上がっておるというふうに理解をいたしております。(前原委員「質問に答えてないんです」と呼ぶ)
大畠委員長 前原さん、よくわかるように、再度質問してください。
前原委員 減価償却、除却というものを企業会計に基づくんだったら入れなきゃいけないんじゃないですかという答弁を、イエスかノーかでいいですから、答えてください。
藤井参考人 企業会計では、そのとおりでございます。
前原委員 だから、それが入っていないわけですよ。入っていないということは、このままで、この道路公団のやり方、今までのものも含めていうと、つまりは、どんどんつくった工作物が朽ちていっているわけです。朽ちていったものが、それは何十年か何年かはわかりませんけれども、その分のいわゆる減価償却というものが、実際には行われているんだけれども、今までの会計制度ではそれは含まれていなかったということになれば、その分のお金というものが、別の、隠れ借金のような形で存在をするんですよ。
 だから、私は、この道路公団が出している決算ファイルというものは、事実あるいは道路公団の今後のあり方というものを明確にあらわしていないということを申し上げているわけです。それを認めるかどうかですよ。
藤井参考人 先生のお言葉でございますが、隠れ借金ではございません。いわゆる減価償却と除却というのは、現実にお金を借りているわけでございますから、それは償還準備金として必ず返すお金の中に入っているわけでございますから、隠れ借金ということではございません。
前原委員 償還準備金というのは、要は返していくお金のことでしょう。私の言っているのは、減価償却、除却というのは、つくった工作物についての価値が減っていっている、そして、つくりかえるときにそのお金が発生する。企業会計制度では、その部分について、毎年毎年積み立てるような形で、もちろんそれは使ってもいいけれども、そういうものを計上しているけれども、今まで計上してこなかったということだと、ある時期にどんと費用が発生をする隠れ借金的なものではないかと言っているわけですよ。
藤井参考人 それは、今までの仕分けの問題でございまして、借りたお金はどんな形にしても全部新たな負債になる。ですから、それを減価償却というところに置くか、あるいは除却費のところに置くか、それは会計の仕組みとしてそのとおりでございますが、負債であることは変わりませんので、それを返すという意味では、先生、おわかりでおっしゃっていると思いますが、言ってみれば全部償還準備金の中に入っているということだけは御理解いただきたいと思うんです。
前原委員 わかりました。私も頭の整理が今できたんですけれども、今までのストックの話をされているんです。私は、収支率というのは、単年度ごとのフローの話をしているんです。フローの話の中で収支率が五〇というのは、実際問題違うんじゃないですかと。そういうものも、借りた金は返さなきゃいけない、そのとおりですよ。だけれども、フローで考えた場合に五〇ということはないでしょうと。つまりは、減価償却、除却というものをフローの概念で企業会計制度で入れた場合、五〇なんというものじゃないでしょうということを言っているわけですよ。それをお認めになるかどうか。
藤井参考人 私どもは、言ってみれば、事業を五十年という期間でもって全額お返しするという形でございますから、全体事業の中でそれがどういうふうに進んでいるかということを国民にお示しすることが一番大事だという視点に立って現行のやり方をしております。
 ただ、先生が御指摘のように、フローにおいて毎年度のものもあわせて明確にする必要があるじゃないかという御指摘については、十分私どもこれから、会計上、専門家とも相談しなきゃいけませんけれども、勉強すべき問題だと認識しております。
前原委員 いや、もう勉強してもらわなくていいんですよ、民営化するんですから。要らないんです。要らないし、これから、天下りで総裁を選ぶんじゃない、社長を選ぶんじゃなくて、本当に民間人が企業感覚で物事をやっていかないと、論理はわかるけれども、国民には全然わからない。
 つまりは、下請でやっていて、そして何とかうまくいっているということを見せなきゃいけないのはわかるけれども、先ほど申し上げたように、道路公団のフローの部分は収支率が五〇%じゃない、それは今お認めになったとおりですよ。つまりは、今後考えていかなきゃいけないことだということをおっしゃったということは、フローに減価償却や除却の概念を入れると収支率五〇ということじゃないということをお認めになったことなんですよ。
 それで、別の観点からちょっと質問をしたいと思います。
 今は、公団の償還計画、現在の整備計画区間九三四二を全線建設した場合、二十年後には未償還残高が三十四兆円のピークに達し、その後減少に転じて、五十年後の二〇五一年に返済を終える予定、こういうことですね。しかし、先ほど石原大臣が答弁をされたように、国費投入約三千億というものがなくなりました。これがないという前提で償還計画がどのように変更されますか、お答えください。いつが未償還残高のピークで、何年後に返済を終えるのか、国費投入がない場合。
藤井参考人 まだ現時点で正確な、五十年に当たる償還計画は今検討中でございますが、十四年度は、おかげさまで低金利であるということもございますので、今の事業の全体の償還計画上は、今までお示しした償還計画ががらっと変わるということではございません。
前原委員 そんなわけないです。そんないいかげんな答弁してだまされると思ったら大きな間違いですよ。
 つまりは、国費三千百億円というのは物すごく大きな額なんですよ。それがなくなって償還計画が変わらないということになったら、何のために国費を入れていたんですか。幾ら低金利だといって、三千百億円が利払いのいわゆる金利差で相殺されるなんということはあり得ない。むちゃくちゃな答弁ですよ、そんな話は。つまりは、国費三千億円余りがなくなったということになれば、償還計画がごろっと変わるんです。皆さん方の前提に立ったとしてでもですよ。
 委員長、要望させてもらいますが、早急に、国費三千億がなくなったという前提のもとでの償還計画を、内閣委員会の理事会に提出をしてもらいたいと要望させてもらいます。
大畠委員長 今の件については、理事会でお諮りします。
前原委員 国費がなくなれば相当変わるわけです。後でまた資金調達のところでもお話をしますけれども、道路公団の今のむちゃくちゃさというものを幾つかの点で私は申し上げたいと思うわけでありますが、まずは需要予測であります。これはどなたに御質問していいのかわかりませんが、まず実態から申し上げましょう。
 八一年度以降に整備された六十六区間、交通量はいわゆる需要予測の七割程度しかない、予測の七〇・六三%にとどまっていたということが明らかになっています。つまりは、この償還計画というのは、極めて大事なものは何かといいますと、建設費用とそれから交通量予測、これというのは極めて重要であります。しかも、後で御質問しますけれども、交通量の伸び、これも極めて重要でありますけれども、八一年度以降の整備されたもので見ると、六十六区間、七〇・六三%にとどまっていた。これは償還計画、これだけでも狂うのじゃないですか。国費がなくなることもそうですし、この七〇・六三%にとどまってきたということで、大きくこれまた償還計画が狂うのじゃないですか。道路公団総裁、お答えください。
藤井参考人 先生、もう百も御承知でございますが、償還計画のまず第一のベースは、御指摘の交通量の推計、いわゆる収入の推計でございます。それから、それ以外にも、金利の動向であるとか、いろいろな条件がございます。そういうものの組み合わせの中で全体の償還計画というのができております。そういう意味では、現在の交通量、一番ベースになる交通量の推計は、私ども、いわゆる二〇〇七年以降、人口が減少するということは当然あるわけでございますが、そういう中で国全体として推計をいたします。そして、それで自動車保有台数がどういうふうに変わっていくか、走行台キロがどう変わっていくか、こういったそれぞれのものを推計いたしまして、その結果、どういうふうな交通需要が生まれるか、これを推計するわけです。
 そのときに、もうこれから一切ふえないよという、そのふえることの考え方がおかしいじゃないかという点の一点だけつけ加えさせていただきますと、我が国は、御承知のように、車は七千二百万台ほどございますが、乗用車は五千二百万台でございます。ヨーロッパはほとんど九対一で乗用車でございます。我が国は今までトラックが非常に多かった。したがって、まだまだ、乗用車の保有台数という意味では、ヨーロッパのいわゆる生活利用実態にまでは至っておりません。そういうようなもろもろのケースを考慮に入れて将来推計をして、それでそれを収入に置きかえて採算計算をする、こういう仕組みになっております。
前原委員 そんなことは百も承知なんですよ。百も承知だけれども、では、道路公団から出してもらった一つの資料をちょっとお示ししましょう。
 取り上げられて嫌な道路ですけれども、東京湾アクアライン、これは平成九年の推定交通量、一日ですよ、二万五千四百六十八台。実際の交通量、一万一千八百七十六、つまりは推定交通量の四六・六%。平成十年、一日の推定交通量、今おっしゃったようにふえて二万八千七百二台。しかし、実際に通った交通量、九千九百九十六、三四・八%。それで平成十一年、また推定交通量はふえて三万一千五百八十一台。実際に通った数、九千六百四十七、三〇・五%ですよ。むちゃくちゃな需要予測でこれをつくっているということですよ。
 これを一度質問したときに道路公団からどんな答えがあったか。これは、皆さんどぎもを抜かれると思うのですが、平成二十二年度には東京湾アクアラインの計画交通量が三万五千台にふえます、平成三十二年度には四万一千台通りますと。こんなむちゃくちゃな、つじつま合わせ、単に、そのころは自分たちが生きてないと思ったのかもしれないけれども、絶対に達成不可能な数字で、今はそうだけれども、将来これだけふえるんだから大丈夫だ、こんな話でつじつまを合わせようとしているわけですよ。すべてが、まあ、東京湾アクアラインは極端な例ではありますけれども、しかし先ほど申し上げたように、計画量の七〇・六三%しかないわけですよ、需要予測の。
 石原大臣、今後の議論というのは後半の一時間でやりたいと思っていたのですが、実際問題、需要予測がこれほど大きく狂っている、しかもそれを問い詰めると実現不可能なような数字を出してくる、それによってトータルとしてカバーできている。こういうことを許していては、今回新たな民営化を議論する組織ができたとしても、こんな需要予測に基づいてやっていたんじゃ全く意味がないと思うのですね。
 需要予測については、相当シビアに、日本の人口動向それから自動車保有の見込み、そして今申し上げたように交通量が需要予測よりも極端に少ない、こういうものを配慮して、本当にどのぐらいの車が通るのか、その前提でなければ私はむちゃくちゃな議論になると思うのですね。そのことについて大臣から御答弁をいただきたいと思います。
石原国務大臣 今、委員の御指摘されましたことは、私どものこの法律案をつくるときも同じ認識を持っておりますので、二条の中で、採算性の確保、具体的にはというと、今委員が御指摘されました将来交通量、あるいは金利が実はばかにならなくて、三・五にするのか一・五にするのか五にするのかによって全然償還計画というのは変わります。金利の動向、あるいは料金や償還期限の問題、これも試算をさせたのですけれども、三十年でいくと、現在予定されております二十兆円の残存事業、九四三二でしたっけ、計画道路の方の部分には全然できなくなる。そういうものも全部この民営化の推進委員会の方でシビアにやってもらう。そのためにやはり法律の中にわざわざ明記させていただいたのですけれども、第六条で、「関係行政機関及び日本道路公団等に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。」とわざわざ書き込ませていただいたわけでございます。
前原委員 だって、道路公団から資料を出させたら、この資料が出てきますよ、むちゃくちゃな資料が。需要予測がむちゃくちゃな資料が出てきますよ。お答えください。
石原国務大臣 今申しましたように、採算性の確保の事項について調査審議するということで、今言ったように、具体的なポイントとなるのは金利動向であるし需要見通しでありますから、それを、過去のデータを見れば、道路公団がこれまでやってきた需要見通しというものが何%の率で適正であるのか適正でないのか。あるいは、専門家が調査をすれば、これからつくるであろう道路の人口動向と物流の量をはかれば、道路公団でなくても、第三者機関が需要見通しというものを自分でつくるわけです。それによって、より客観性、公正性を保たせようというのがこの法律の仕組みでございます。
前原委員 その中身については後半でやりますので、この需要予測というものを本当にしっかりしないと、金利の動向も大きな変動要因ではありますけれども、全く前提が異なってくるし、私は、今までの道路公団の予測がいかにいいかげんだったかということについては指摘をしておきたいと思います。
 それからもう一つ問題なのは、建設費なんですね。九四年度の計画時の建設予定費は十一兆五千四百八十億円、これに対して九九年度時点の建設費は十六兆三千四百四十六億円。つまりは、四兆七千九百六十六億円増加しているわけです。これは、計画の四一・五%の増加であります。
 つまりは、二つの方向からずるしているわけです。つまりは、需要予測でずるをする、高目に見積もっている。建設費を低目に見積もっている。二つの面でずるをして、交通量で三割ずるして、建設費で四割ずるしているわけですよ。
 調査に当たった政府関係者の言葉が載っておりますが、この五年間で建設コスト自体はほとんど変わっていない、四〇%の増加は意図的としか理解できない、計画にできるだけ多くの新規路線を取り込むため、わざと少ない建設費を盛り込んだんではないか、こういうことを政府関係者が述べているということなんですね。
 これは、建設費も、とにかく道路をつくることありき。下請機関と、先ほど下請機関とは申し上げられませんでしたけれども、我々は実質的にはその国の計画に従ってやる実施機関ですということをおっしゃいましたけれども、まさにこの建設費もずるをして計画が大きく狂っているわけです。この点についてもシビアに見ていかないと、全く議論の前提が崩れる。
 この点についても大臣、しっかりと現実、計画を入れ込ませるために過小に見積もるんではなくて、実際はどれぐらいかかるかというところでしっかりと前提に立つということがなければいけないと思いますが、御答弁いただきたいと思います。
石原国務大臣 詳細は藤井総裁にお尋ね願いたいと思うんですが、建設費の計上の仕方に私は問題があるような気がいたします。
 すなわち、幾らかかるということを発注側に出させます。そうすると、幾らという公示で工事が始まります。しかし、そこの変動要因、景気の変動要因あるいは人件費の変動要因、資材の変動要因で、要するに、一年とか短い時間で道路というのはできませんから、かなりの期間がかかりますので、変動要因のバイアスがかかって、トータルというと、今委員御指摘されましたように、当初の見積もりより多くの工事費がかかるという例があるという話は、私は聞かせていただいたことがございます。
 ですから、そういうものにそういう変動要因をしっかりと含んで、何年間で幾らになるんだというものも正式にもう一回洗い直していかないと、委員御指摘のような問題が発生するということを私は否定するものではございません。
 立ったついでに、恐縮でございますが、さっき九四三二と申しましたが、九三四二の誤りでございますので、訂正させていただきます。
前原委員 道路公団もど素人じゃないわけですから、しかも、この数年でできた組織じゃないわけですから、どのぐらい工事が長引くとかかかるとか、そんなものは今までの経験でわかっているわけです。そういうものを取り込まないということ自体がおかしい話であって、しかも、それで四割も高くなるというのは、これは首ですよ、道路公団総裁。
 これは、何でこんなに建設費が四割も計画よりも高いんですか。低目に見積もっているんじゃないですか。
藤井参考人 今、アクアラインを例にとって御指摘でございますが……(前原委員「建設費はアクアラインを例にとっていないです」と呼ぶ)失礼しました。今トータルとしておっしゃったわけですか、高速道路全体。
前原委員 道路公団が九四年度段階で計画した高速道の建設費用の話をしています。アクアラインではありません。
藤井参考人 取り違えて申しわけありません。
 九四年時点では、その時点でのいろいろな計画がありますが、九四年といいますと、正直言いまして、今から八年前でございます。環境に対する問題等々、いろいろ新たな問題があります。それから、一番大きいのは、今、東海北陸自動車道で、例えば大きな、十一キロのトンネルを掘っておりますが、湧水で非常に四苦八苦をしております。調査の段階とは全然違ったものが出てまいります。といったような、できるだけ事前の調査をして精度を高める努力はいたすわけですが、十分な調査には至りません。そういうことのものも中に入っておりますし、それから、その他、地域住民との関係から、地域の利用計画とあわせて、高速道路を使いやすくするためのいろいろな新たな投資もあります。
 というようなことで、私ども、先生御指摘のように、過小なものを出すなんという気持ちはさらさらございません。ただ、時代の要請と、せっかくつくるものでございますから、地域に喜ばれるように考えていきますとどうしてもそういう修正をせざるを得ないということから、結果として事業費がかかってくることは現実にございます。
前原委員 幾らでも理由はつけられる、余り意地悪な言い方はしたくないんですが、そういう気が聞いていていたしました。
 委員長、先ほどの要望でございますが、償還計画、国費を除いてとだけ申し上げましたけれども、需要予測というものが実際に七割しかない、しかも建設費用は四割アップだ、こういうものを含めて償還計画というものを是正したものをこの委員会の理事会に提出していただきたいということを改めて要望したいと思います。
大畠委員長 理事会でお諮りいたします。
前原委員 それをどのような資料を道路公団が出してくるかということを見なければ、私は新たなこの組織の議論というのはできないと思います。しかも、東京湾アクアラインで私に示したような極めていいかげんな需要予測をするのではなくて、本当に議論にたえ得るようなものを出してもらわないと、本当に道路公団そのものが、今も信用されていないのかもしれませんが、とんでもないということを私は申し上げておきたいと思いますし、その総裁は、任期が近いと言われていますけれども、本当にこれは首ものですよ、藤井さん。いや、本当に。
 だって、建設予定も四割アップ、需要予測なんというのは七割しかない。そして、償還計画を立てて、堂々とこのJHの決算ファイルには、収支率は五〇%、償還計画は順調に進んでいますと、国民にうそっぱちを言っていることになるじゃないですか。そんなことを許していては絶対にいけないので、今委員長にお願いをしたように、ぜひ理事会に今申し上げたようなことを前提にした資料を出していただきたい。その資料が前提でないと私は議論ができないというふうに思っております。
 さて、先ほど道路公団総裁から御答弁のあったところで改めて伺いたいと思うわけでありますが、この決算ファイルには、国費がもう入りませんので、新しい道路建設、高速道路、一般有料道路建設については借金で賄うということになっています。
 平成十三年度、借金でどういうものがあるかというと、財投機関債それから政府保証外債、大まかに言ってこの二つがあるわけでありますが、財投機関債は予定が千五百億円、しかし、実際に調達できたのは六百五十億円。そして、政府保証外債千二百億円、これはゼロなんですね。しかも、平成十四年度の計画を見ると、財投機関債が四千億円、政府保証外債が七百億円。これは本当に調達できるんですか。調達した上で計画どおりの新規道路建設が本当にできるんですか。御答弁をください。
藤井参考人 昨年末では非常に見通しが暗うございましたけれども、一月になりましてこの合理化計画が出て、直後に機関投資家に御説明会もさせていただきました。その結果、六百五十億円というのを一月二十四日に出させていただいたわけでございます。残り八百五十億円を年度内に出そうというつもりで、いろいろな市場の関係者といろいろと当たってまいりました。
 その間、スプレッドといいまして、財投機関債の金利動向が、非常に高い金利で発行する機関も出てまいりました。そういうことから、私ども、規模が百億とか五十億とか少ないのじゃなくて、八百五十と非常に大きいですから、ちょっとした金利の差が後で大きな利息として払わざるを得ませんので、私どもとしては、一番有利な条件を市場関係者と御相談しておりました。その中で、社債のマーケットが非常に各民間企業が集中いたしまして厳しくなりました。そういうことから、私ども、結果として民間借入金、これは十年債でございますが、比較的財投機関債と同程度の、ほとんど変わらない程度の金利で確保する見通しが立ちましたので、財投機関債八百五十億を民間借入金に切りかえて十三年度発行いたしました。
 ただ、十四年度になりましたら、マーケットにおける金利の動向が、社債マーケットの金利の動向と一般の銀行における借入金の金利の動向というのがまだ不透明でございますので、今後ともそういう関係者と連絡を密にしながら、私どもとしては、一番金利が安く、そして量的に確保できることを確保するべく、今から市場関係者とも打ち合わせを始めている最中でございます。
前原委員 私も何人かお話を伺いましたけれども、十年の機関債では非常に心もとない、五年あるいは三年という言葉さえ出てきているという話を聞きました。それぐらい、道路公団、もちろん、先ほどスプレッドとおっしゃった。阪神高速道路公団なんかのスプレッドは大きくなっているというのを私も伺っておりますが、私は、この財投機関債四千億、政府保証外債七百億円、新たに調達するというのは、市場関係者から話を伺ってもどう見ても厳しい、そういう思いを持っています。
 そこで、大臣にお答えをいただきたいわけでありますが、民営化をどのような形にするかという議論を行う組織をつくって、そして平成十四年の十二月三十一日までに一つの結論を得るということでありますけれども、結果的に、この一年間の資金の調達というものは道路公団が行うということになるわけでありますが、この四千億、七百億、四千七百億、本当に調達できると思われますか。また、その前提に立って、さっき九三四二とおっしゃいましたけれども、そういうものがこれからできるのかどうなのかというところの見通しを大臣にお答えいただきたいと思います。
石原国務大臣 四千億円の十四年度中の起債を検討されているということは承知しております。そして、それが売れるか売れないのかというのは、金利を幾らに設定するのかといって、スプレッドを乗っけたものを出せば買う人は私はいると思いますが、財投プラスこれまでのような金利でいうならば買う人は少ないというのは間違いない事実だと思います。
 ただ、一方で、総裁が御答弁されましたように、大変今貸出金利が低いわけですね。起債を起こさなくても、ダイレクトに貸してくれる民間金融機関があれば、かなり低い金利で、今の金利動向が続けば、資金をある程度調達するということは可能だと考えております。
前原委員 この財投機関債と政府保証外債を合わせた四千七百億円というのは、私はもう正直言って無理だと思います。違う方法での借り入れということをおっしゃっておりますけれども、それにしてもかなり頼み込んでの話だということを私は伺っています。
 つまりは、それを前提にした場合、本当にこの道路というものがつくり続けられるかどうなのかといったところは、私はかなり大きな疑問に思います。ことし一年ではなくて、借金で道路をつくり続ける。しかも、まずは整備計画だ、その次は一一五二〇だ、こういう話でありますけれども、今の形でいうと資金調達は完全に無理だと思うのですね。しかも、民営化をしていくということになれば、逆に金利リスクというものは上がらざるを得ない。スプレッドは大きくなって、その分乗せざるを得ないと私は思います。そうなったときに、私は資金調達自体ができないとは思いますけれども、借金返済に振り回されるということになろうかと思うのです。
 つまりは、先ほど委員長に、償還計画というものについてもいろいろな要件を出してほしいということをお願いしましたけれども、私は、そこはなかなか見通しがないので、そのことについてはお願いはいたしませんが、金利というものも、日本経済の金利の動向も含めてでありますけれども、相当金利を乗せなければ資金調達は難しい。したがって、とてもじゃないけれども、これは小泉さんもおっしゃっていましたけれども、九千三百四十二キロなんて無理でしょう、私はそのように思います。
 もう一度石原大臣にお尋ねいたしますが、今も私が申し上げた今後の民営化の議論、あるいは先ほどの道路公団の経営実態、そして実績交通量と推定交通量のギャップ、建設費用の落差、そういうものが出ている中で、本当に、民営化をされた後でも資金調達できて、九千三百四十二、その前提で、国費を入れるというのは別ですよ、借金で道路をつくり続けられるとお思いになるかどうか、その点について御答弁をいただきたいと思います。
石原国務大臣 国に財政的な余裕があって、すべてを一般会計予算で高速道路等を整備していくことができれば、これは無料の高速道路ができるということはアメリカでもドイツでも事実だと思います。
 そんな中においても、やはりこれから到来するであろうモータリゼーションの発達を前に、要するに借入金で道路をつくって、当時はいわゆる財投でございますけれども、財投を使って道路をつくって高速道路を整備するというこの方法は、これまでは、これまでというのはいつまでということは明確には申しませんが、私は総じてそう間違った政策ではなかったと思いますし、それによって多くの高速道路が整備できたんだと思います。
 しかし、これから先、これまでと同じように、さっき申しましたように、債券が売れなければ金利を上げていくしかないわけでございます。すなわち、スプレッドを乗せていくと買う人は出るでしょうけれども、それによって調達コストが上がることによって事業量が減ってしまうという負の面。
 また、先ほど佐藤副大臣が御答弁されましたように、これから、道路のつくり方、すなわち、今四車線、フル規格、平らなところも盛り土をしてつくっていますけれども、これを平面に落としかえるだけで建設コストというものは下がります。すなわち、工事費を削減する努力をすることによって、限られた財源で道路を整備するという可能性も私は否定できないと思います。
 そのようなもろもろのことを考え合わせて、これからの高速道路網、一体、どれだけ、どこのところにこれから必要なのか。再三再四委員が御議論をされておりますいわゆる採算性の問題を本当にシビアにこの第三者機関に見ていただいて、第三者でございますので客観的に物を見るのが仕事でございますので、委員が道路公団に対して抱いたような疑念というものを払拭していくような需要見通し、そして金利動向見通しによってこれからの高速道路建設というものが邁進していくように私は期待するものであります。
前原委員 その議論は後でやりましょう。つまりは、公平な第三者になるかという議論は後でしたいと思います。
 道路公団総裁にもう一度御答弁いただきたいのですが、平成十四年度財投機関債、計画四千億、政府保証外債七百億、違う資金調達も含めて、あるいはその可能性ももちろん責任あるお立場として模索はされるんでしょうが、四千七百億確保して道路整備計画というものをやっていくというふうにお考えですか。
藤井参考人 私どもは、今回の予算としてそれが認められた以上、それをきちっとそれぞれのマーケットで確保するように最大限の努力をするということが、今現在私が申し上げる姿勢でございます。
 ただし、資金にはいろいろな組み合わせがございますから、単に硬直化した考え方じゃなくて、マーケットの動向を見ながら、いろいろな組み合わせというものは今後とも考えていかざるを得ないかもしれません。
前原委員 厳密に言えば、予算書には財投機関債四千億円、政府保証外債七百億円と出して、それが認められたわけですから、今から組み合わせというまぜたあるいはごまかした議論をするんではなくて、それで調達をするというのがまず筋じゃないですか。
 私は、申し上げたいのは、さっき国費の話で、国費がなくても償還計画は変わらないんだというとんでもない答弁をされましたけれども、道路公団総裁の言葉の重みというものをもう少し委員会でかみしめてもらいたいと思うんですね。そういう意味で、自分自身は社長なんですよ、道路公団の。社長の大きな役割の一つは資金調達なんです。それができなければ、六月にかわるかかわらないかわかりませんけれども、自分の職を賭してでも政府の予算計画書で認められたこの資金調達をやるんだということをここで御宣言をいただきたいと思います。
藤井参考人 今先生が御指摘のように、当然、予算としてお認めいただいた内容で私どもやってまいりますが、利息の高い債券というのはなるべく後半で出したいと思っております、少しでもそれだけ金利の差が得しますから。
 したがって、年度の上半期は、その中でも私ども、資金としては、政府借入金、民間借入金、財投機関債、政府保証外債、およそこの四項目の組み合わせで資金を確保するように予算で認められましたが、結果として利息負担が最小限になるには、こういう中から、私どもの努力のもう一つの努力としては、金利の安いものは早く、年度の初めにはいただいて、金利の高いものは後半で確保していくということで、年度を通じてトータルとしての利息が可能な限り安くなるように考えながら、また、それぞれのお認めいただいた枠を確保するべく最大限の努力をするというのが私どもの務めだと思っております。(前原委員「責任を持ってやるかどうかということを聞いているわけです」と呼ぶ)今最大限にやることが私の務めであるというふうに思っております。
前原委員 やはり、こういうものは自分自身逃げ場をつくっちゃいけないと思うんですよ、総裁。平成十三年度でも予算計画書にもうそぐわない形になったわけですよ。それだけでも、あなたはみずから辞表を提出して、予算計画書で認められたことをできませんでしたということを言うべきなんです。
 それなのに、まだ、平成十四年度できるのかどうかということで、最大限を尽くすということでみずから逃げ場をつくっている。私は、トップの姿勢としては甚だ疑わしいし、何度も申し上げるけれども、余りにもあなたの答弁は今までいいかげん過ぎる。国費投入の問題もしかり、需要予測の問題もしかり、問題先送りの典型のような答弁ばかり繰り返されている。若築の問題もあったけれども、私は、即刻あなたは辞任をされるべきだと思うし、これから道路公団民営化の議論をされていく中で、トップは絶対に天下りの人がなっちゃいかぬ、私はそう思います。
 民間会社のお話は後ですると申し上げましたが、理念の問題として、石原大臣、トップは、もちろん第三者機関で議論されることだと思いますが、私は、絶対に天下りではいけない、企業経営感覚のある民間の人、一般の方、そういう方になってもらうべきだと思いますが、その辺について御意見ください。
石原国務大臣 個別の民営化される事業体についてどの方が適切かという発言は慎ませていただきたいですが、私は、民間の方々が民間企業の新たなトップになられるのがベストだと考えております。
前原委員 本四架橋公団の総裁にも来ていただいています。一つ簡単に質問したいと思います。
 今五兆円近い要償還額がございますけれども、私どもの試算によりますと、これをチャラにしても、民営化して、そして減価償却、除却というものを計上していけば、それでも、つまりは借金を棒引きにしても本四架橋は今の交通量それからいわゆる通行料金体系では賄えないということを我々として試算を出しています。減価償却、除却というものを概念として入れた場合、企業会計ですね、道路公団もこれからそれを入れて考えるとおっしゃいましたけれども、それを入れた場合、それでももうからないというのが我々の今の見方でありますが、総裁、どのように見ておられますか、御自身のその三本の線。
藤川参考人 減価償却については、橋の資産がどういう形で評価されるかというのでかなり額が変わってくるわけでございますけれども、私どもが現在試算しております資産の額を前提にして考えますと、収入が平成十二年度で八百六十九億あるんですけれども、いわゆる管理費が二百四十八億ですから、これに減価償却、今の試算でやると五百四十億ぐらいだと思うんですけれども、とんとんというような感じじゃないかと思います。
 ですから、当然、収入の増というのをこれから努力していかなきゃいけませんし、それから管理費等の節減等もやっていかなきゃいけません。そういうものをやっていけば、債務をチャラにすればぎりぎり何とかいけるんではないかなというようなところではないかと考えております。
前原委員 かなり正直なお答えだと思うんですね。我々の試算でも、もちろん、民営化された場合にはいろいろなコスト削減努力がされるんだと思います。それでもとんとん。減価償却、除却というものを入れていけばとんとん。私のいろいろ聞いた中では、それでも借金が累積をしていくということでありまして、それほど本四架橋の経営状況は私は厳しいというふうに思っています。これを後の議論の前提にさせていただきたいというふうに思います。
 さて、いよいよ、では民営化された場合の議論に移らせていただきたいと思うわけでございますけれども、まず、この民営化の議論がなぜ出てきたのかというそもそもの議論をしたいと思うんですね。
 私は、先ほど石原大臣がお答えになったように、時代の要請もあって、償還主義というものあるいはプール制というものがうまくいった時代もなかったとは言いません。しかし、これからはそれは違うんだろうと思います。もっと極端な意見を言うと、国民の理解が得られれば、一〇〇%国費で高速道路をつくるという選択肢があってもいいわけです。
 では、そういう道筋を選ばずに、この道路四公団を民営化するということになって、そしてその前提であり方を議論する組織をつくるという法律がここに出されている。なぜ民営化するのか。民営化する理由、あるいは民営化する際の哲学、それが明確でなければこの議論はできないと思いますが、その理由また哲学について御答弁をいただきたいと思います。
石原国務大臣 これは総理がかねがね申されていることでございますけれども、先ほど私パブリックカンパニーと申しましたけれども、もちろん、時代の要請があってこの特殊法人というものができたことは確かだと思います。しかし、時代の変遷とともに、民間企業として成り立つことが可能なものは民間にゆだねるという一つの哲学に基づいて、昨年十二月に取りまとめた整理合理化計画というものを閣議決定したわけであります。
 では、なぜ民営化なのか。一言で言えば、先ほど来決算書あるいは貸借対照表の議論の中にありますように、コスト意識という感覚は官の側にはありません。前例踏襲主義という言葉にも見られるように、採算性を重視した経営が行われてきたかというと、私は、委員が再三再四御指摘されたように、採算性というものは実は度外視されていた。また、それが度外視されて道路をつくるのが仕事であったということも否めない事実だと思います。
 こういうものを変更していかない限り、借金ばかり残って、先ほど来議論のある償還計画自体に疑義が生じてくる。償還計画に疑義が生じた場合、その負担をだれがするのかというと、パブリックカンパニーでありますから、国、すなわち国民に負担がかかってくる。そのような事態を回避していかなければならないというのが第一点。
 そして第二点は、やはり、国鉄の民営化に見られますように、民営化することによって利用者の利便が向上する、すなわち、ユーザーである国民の皆さん方に利益が還元される、これを二つ目の大きな理由に定めたところでございます。
 私が申したいのは、民営化というものは目的ではない、一つの手段だ、この手段によってより利便性、採算性が向上する、そういう組織体にこれからの時代、変更していくというのが今回の哲学であると認識をしております。
前原委員 その議論は少し後でしたいと思います。少し、私がどうしても聞きたいことについて、二点ばかし伺いたいと思います。
 きょうの新聞に、この七名の第三者機関の人選というのは、総理は道路族に、人選は事前調整する、こういう約束をされているということでありますが、こういうことになれば、何のための客観性を持たせた第三者機関なのかということが、全く空文化、形骸化するわけです。
 しかも、本来、総理が国会の同意人事にしないとおっしゃったのは、道路族の介入を排して、本当に、今おっしゃったような理念というものを実現するためにしっかりと議論をしてくれる人を選ぼうというのが総理の考え方であったはずであります。それならばということで、国会同意人事でなくてもいいという考え方を持った識者の方も多くおられた。
 しかし、この新聞によると、道路族と妥協し、人選は事前調整だと。これは国民をばかにした話だし、こんなことがあるんであれば、小泉改革は全くのにせものだというふうに思わざるを得ません。
 このことについて石原大臣はお聞きになっていますか、人選について。
石原国務大臣 紙面は私もきょう読みましたけれども、このような事実は承知しておりませんし、総理大臣は、この法律案をつくるときに、すぐれた識見を有し、改革意欲に富んだ方を任命すると昨日も本会議場で明言されておりますので、この法律にのっとって、第四条の内閣総理大臣が任命するという形で、この法律案が可決いただいた暁には、すぐれた識見を持った方々が、今前原委員が疑念を持たれたようなことのないような形で人事がなされるものと確信をしております。
前原委員 これからこの委員会でも少し議論になろうかと思いますが、総理大臣が出てこられるケースがあるかどうかわかりませんが、総理大臣に石原大臣の方からこの報道についての真偽を聞いていただいて、そして、ぜひこの委員会、我が党の同僚議員の質問のときにお答えをいただきたいと思います。お約束をいただけますか。
石原国務大臣 善処させていただきたいと思います。
前原委員 その前提でありますけれども、国会同意がない理由、なぜ国会同意人事じゃないのかということについて、仮に総理のお考えが性善説に立ったといういい解釈をしたとしても、やはりこの問題というのは避けて通れないと思います。
 なぜ国会同意人事でないのか。きのうの本会議でもいろいろ議論されましたが、もう一度、この点についてお答えをいただきたいと思います。
石原国務大臣 先ほど、御同僚の二人の委員の方にもお答えいたしましたので、重複することはお許しいただきたいと思うんですが、当委員会は八条委員会でございます。そして、委員の任命について両議院の同意を得ることとされているその他の八条委員会を拾ってみますと、政治基盤に関するもの、あるいは国民の権利義務に影響を及ぼすもの、あるいは原子力、専門的な、技術的な知識に基づく検査、調査と、非常に実は限定的でございます。
 そして、申しましたように、もう整理合理化計画で今回は廃止、民営化というような方向性を示してはいます。そのプロセスを御議論いただく、そして客観的な採算性の基準というものをおつくりいただくということでございますので、今回は国会同意人事ではなくてよろしいんじゃないかというふうに今回の法律案をつくる過程で取りまとめさせていただいたと御理解をいただきたいと思います。
前原委員 御説明では私は理解できないわけでありますが、水かけ論になると思いますので、違う観点から質問したいと思います。
 事務局を置くことができるとされていますが、この事務局はだれを置くんですか。どういう人を事務局として置くんですか。
坂野政府参考人 内閣府に事務局を置くことといたしておりますので、内閣府の職員にふさわしい職員を人選して事務局の職員とするという形で、現在申し上げられるのはそこまでだと思っております。
前原委員 私が聞きたいのは、国土交通省の役人、そういう人が内閣府に出向して事務局を構成することがあるかどうかということを一番聞きたいわけです。その点、いかがですか。
坂野政府参考人 事務局職員の人選については、この法律案が成立した上で内閣府において行われるということでございますので、具体的なことを今私から申し上げるわけにはいかないということでございます。
前原委員 大臣、私、この第三者機関、七名の人選も非常に重要ですが、事務局の選定というものはもっと重要だと実は思っています。事務局の選び方でこの方向性が決まると言っても過言ではない。つまりは、道路局が全員事務局を構成する、そんなことはあり得ないと思いますけれども、そんなことになれば、全く、この委員会というものは初めから方向性が決まって、七人も言いたいことは言えないということになってしまうと私は思います。
 諸井委員会の文章の変更があったこと、これはまた同僚の五十嵐議員が多分再度質問されると思いますので言いませんけれども、この事務局に道路関係の、少なくとも国土交通省から出向させて入れるなんということは絶対にしてはいかぬ、あるいは道路公団初め四公団から出向させて入れるということが決してあってはいけないというふうに私は思いますが、大臣、御見解をお聞かせください。
石原国務大臣 まだ委員会が設立するためのこの法律案が通っておりませんので、予断を持ってお話しすることはできませんが、国鉄再建監理委員会も、すべて国鉄の方あるいは運輸省の方が事務局を務めたことではございませんでした。こういうものを十分参考にして、ただいま委員の御懸念に当たらないような形で人選がなされるものと今は申すところにとどめさせていただきたいと思います。
前原委員 方向性を聞いているんです。つまりは、委員会が、小泉さんの言葉どおり七名の委員も客観的に選ばれて、本当にあるべき民営化、さっきおっしゃったように、採算性を含めて、今後の、三つ四つを統合するかどうかはまた議論の過程に入ってくるんでありましょうが、そういう人選もされることは当然でありますけれども、それ以上に、事務局がどういう人がなるかというのは極めて重要で、そこが支配をされると絶対にまともな議論にはならない。
 そこを私は大臣に、もう一度、恐縮でありますけれども、御自身の思いとしてで結構でございますし、客観性を国民に見られるという観点からも私はそうあるべきだと思いますが、大臣のお考え、もう一度お聞かせください。
石原国務大臣 御理解いただきたいのは、本来であるならば、建設会議というものが国交省にありまして、そこで議論をするということが本来のことだと思いますが、総理が廃止、民営化ということを強いリーダーシップを持って、そしてまた、委員が御懸念を再三再四償還のところでお示しになられたと同じような認識を持って内閣府に事務局を置くということ。そしてまた、国鉄再建監理委員会のときは、私、実は記者で取材をしておりました。そのときのヘッドの事務局長は運輸省からおいでになっておりましたけれども、今回どなたが事務局長になられるかわかりませんが、少なくとも現在、準備室の室長は旧総務庁の坂野さんにお願いしているということで御理解をいただきたいと思います。
前原委員 この点も私は非常に重要な部分だと思いますし、厳しくその点については国民の目がある、本気かどうかが問われているということについては指摘をしておきたいと思います。
 次に、民営化のあり方について、もちろん第三者機関で議論をされるということになるのでありましょうが、一つの重要なポイントについて、大臣の御意見、それから藤井総裁の御意見をお伺いしたいと思います。
 いわゆる上下一体か上下分離かという議論がなされております。ここは極めて重要な話だと私は思うんですね。私は、上下一体でない限りはこの民営化計画は必ずとんざをするというふうに思っています。
 幾つかの例を申し上げたいので、ぜひ聞いておいていただきたいわけでありますが、国鉄の民営化のときの記事も含めて資料として入手をいたしました。国鉄の民営化のときの議論も、当時の小坂運輸大臣は、下を日本鉄道保有公団、そして上を日本鉄道運営会社ということで上下分離をして下を公団として残そう、こういう考え方をなさいました。しかし、当時の臨調が地域分割案というものを出して、六地域プラス貨物ということで七つの会社に分ける、こういう話になりました。
 また、戦後のいわゆる日本発送電社という、つまりは、戦時の電力国家管理法、国家総動員法による会社から電力の民営化というものが議論をされておりましたけれども、これも大きく二つの議論があったと聞いております。一つは上下分離方式で、下を日本発送電社を温存して、上を分割した配電会社にするということでありましたけれども、電力の鬼と言われた松永安左エ門さんが九分割案というものを出して、地域に分割した会社にするという形になったというふうに聞いております。
 そこで、この上下分離と上下一体のそれぞれメリット、デメリットがあると思うんですね。それと、大臣と道路公団総裁の、どちらが望ましいのかという意見をそれぞれお伺いしたいと思います。上下分離それから上下一体のメリット、デメリットについては石原大臣、そして、御自身としてどういう形態がいいと思っておられるかはお二人にお伺いをします。
石原国務大臣 これは本当に両方ともメリット、デメリットがあります。私はずっと税を専門にやってきましたので、税の観点からいうと、一体論は固定資産税等々の租税負担がかなりの大きなボリュームになってくると思います。その一方で、上下分離であるならばそういうものはない。しかしその一方で、では、経営という観点から見たら、上下一体の方が民間主体、すなわち、先ほど私も民間の社長がベストであるという話をいたしましたけれども、民間主体がリスクをとって、責任を持って経営する、ここはすばらしいことになると思います。そういうものをどう判断するかということに結論が出てくると思います。
 もう一点、先ほど委員の議論の中で資金調達の話がございました。これは、これまでの道路公団がつくってきた道路の償還計画の話が先ほど議論に出たように、有償でお金を借りておりますので、かなりのボリュームがあります。これを民間会社、一体で返す、分割、どうなるかわかりませんけれども、返すということを考えると、新たな資金調達は上下一体型の方が難しくなる、こういうふうにいろいろ整理ができると思います。
 私は、海外の例をいろいろ見てまいりまして、日本の道路事情に合っているのはやはりコンセッション契約あるいはリース方式の方がいいと思いますけれども、いずれにいたしましても、第三者機関で予断なく御議論をいただきたい、こんなふうに考えております。
藤井参考人 基本的には今石原大臣がおっしゃるとおりだと思いますが、私どもが今まで道路公団として高速道路をつくらせていただいたということは、高速道路が国の所有物であるということでつくってきた、こういうふうに思います。そういう意味では、高速道路の性格は、今後とも財産としては国のものだという前提に立ちますと、公租公課とかいろいろな問題がありますが、それなりのいろいろな考え方が出てくると思います。
 そういう意味で、せっかく新しい方式を今後つくる、生み出すということでは、経営判断が広くて効率性や創意工夫が最大限に発揮できる形態が一番望ましいということを申したいと思います。(前原委員「その形態というのはどういう形態ですか」と呼ぶ)あえてここで上下分離とか一体とかいうことを言いませんけれども、収入から支出まで至るトータルとして、経営判断の範囲が広くて効率的であり、最大限のいろいろな工夫ができるような形態が望ましい、こういうふうに申し上げたいと思います。
前原委員 要は、一体ということですね、望ましいのは。そこでうなずいてもらって結構ですよ。今の言葉でいったら、一体しかないじゃないですか。分離じゃないでしょう。そこまで言っておいてちゅうちょしないでください。さっきはけなしましたけれども、もうけなしませんから。一体ですね。しっかり答えてください。
藤井参考人 これから第三者機関が始まりますので、私は国の機関の一担当でございますので、あえて先生に、そういう御質問を受けて申すべき立場ではありますけれども、御容赦いただきまして、そういうつらい立場だということでよろしくお願いします。
前原委員 いや、答えてもらっていいんですよ。だから、総裁が悪いんじゃなくて、聞いた私が悪いということにすればいいわけです、これから議論するのに。
 しかし、今の文章をとらえて考えれば、一体としかとらえられないでしょう。答えたら楽になりますから。しつこく聞きますよ。どっちですか。
藤井参考人 国土省でいろいろと研究されたいわゆる諸井委員会という委員会の結論が一つの提案として出されております。そういうものは極めて傾聴に値する、私どもはそういうふうに思っております。
前原委員 道路局が削除する前の諸井委員会の答申と考えてよろしいんですね。イエス、ノー、どちらですか。
藤井参考人 今申し上げたとおりで、ひとつ今までの答弁で御理解いただきたいと思います。
前原委員 質問時間がなくなるので、では、もうやめておきましょう。
 要は、一体ということですね。知っているんですよ。総裁が一体論者だというのを私は知っているんです。ちゃんと私の調査網ではそういうふうに色分けはしておりますので、御答弁いただいたとおりのお考えを持っておられるというのはわかっております。
 石原大臣がおっしゃったことで、私は幾つか反論したいと思います。
 税の話をされましたが、一体でもいろいろな民営化の仕方があると思うんですね。私、先ほど本四架橋公団総裁に申し上げましたけれども、試算をしていただきました。道路公団だけを民営化する際の試算、それから四公団すべてをまとめて民営化する際の試算、これをやらせてもらいました。それには、減価償却、除却も入れる、そして資本金、配当金というものも考える。その際に、どうしてもやはり二つの特例がなければいけないという結論に落ちつきました。
 一つは固定資産税の減免なんですね。これは、固定資産税、そのままかけちゃ、とてもじゃないけれども民営化できません、上下一体の場合。それが一つ。
 あとは金利の安定化の問題です。つまりは、金利負担を、いわば金利リスクをヘッジしてやる。つまりは、ある一定以上の金利になった場合においては、その分は国が負担をするという前提に立ってやらなければ、とてもじゃないけれども民営化を一体ですることはできないと思います。
 したがって、税の問題があるから上下分離だということにはならない。もちろん、その一つの例だけで揚げ足をとるつもりはありませんが、税についてはいろいろ知恵が絞れるんじゃないですか。特に、初めはJRのように一〇〇%国が株を持たないと、初めから上場するのは無理ですよ。となれば、国の優遇措置というものは経過措置をとることができる。その場合に、私は税というものを考えられると思います。そういう部分を含めて、上下分離でなければいけないというのはなぜですか。
石原国務大臣 私、微妙な言い方を実はさせていただいたのは、これから第三者機関をつくっていただくという法律の審議案で、できた委員会に対して、担当大臣がどう考えているというようなことを、バイアスがかかるのは好ましくないということで、個人的に海外を見てきた事例から参照して、リース契約あるいはコンセッション契約というものが民営化の一つの手法で、私は、その手法は非常に参考になるし、よいものであるというような趣旨で御答弁をさせていただいたと御理解をいただきたいと思います。
前原委員 海外の例とおっしゃいましたけれども、日本でも上下分離をして失敗した例があるのを大臣は御存じですか。これは新幹線保有機構なんですよ。新幹線保有機構というのは、これは、新幹線保有機構という別組織に東海、山陽、東北、上越の四新幹線を保有させて、そしてJR東海、西日本、東日本というのは保有機構から設備のリースを受ける形で使用するという形をやったんです。この結論についてはもう御存じですよね。失敗した。したがって、新幹線保有機構は四年半後に解体をされたんです。そして、JR東海、西、東が買い取る形にして再スタートをした。日本でもこういう失敗例があります。
 イギリスの例は御存じですか。私、この間、四日間、ある国際会議に行かせていただきまして、日本というものもまんざら悪い国じゃないなということを改めて感じてきたわけであります。例えば、ナショナル・ヘルス・サービス、これはただなんですね、向こうは。ただ、ただでも受けたくない。質が悪い、待ち時間が長い。だから、金を払ってでも、質のいい、そしてしっかり受けられるところに流れていって、ナショナル・ヘルス・サービスが実態的に破綻をしている。
 それから、警察、検挙率一〇%。おもしろい話を聞いたのは、泥棒が入った、泥棒が入って警察にその捜査を頼んだ、盗まれたものがあるのかと聞かれて、ないと答えたら、ではよかったじゃないかということで捜査してもらえなかった。検挙率一〇%。非常にひどい状況。
 ほかにもいろいろ国内問題はありましたけれども、驚いたのは鉄道なんですよ。時間どおりにまず来ない。向こうの人から話を聞いたのは、時間どおりにまず列車が来るためしがない。始発から終電まで、時間どおりに到着する比率というのを折れ線グラフで見せてもらったんですけれども、非常に悲惨な状況。つまりは、ラッシュアワーじゃないときでも七、八割なんです。ラッシュアワーだったらもう一〇%、そんなぐらい。ひどい状況なんですね。
 それで、イギリスの状況というのは多分御存じだと思いますけれども、イギリスというのは、旧英国鉄道、これを民営化していわゆる上下分離方式をやったわけです。そして、下の部門、つまりは線路など鉄道施設を管理するレールトラックというものと、実際に列車を運行させる会社二十五社とに分割をしたわけです。それで、非常に大きな事故が起きました。
 上下分離方式でも二つの種類があるわけです。つまりは、下を全くの国が持つ形にするか、あるいは下の方もかなり民間に任せるような形にするか、両方あると思うんですけれども、イギリスの場合は後者でした。後者にしたと言った方が適切であります。後者にして、そして採算性を追求するために補修、点検に力を入れずに大事故を起こした、そして下の保有会社、いわゆるレールトラックが破綻をした、こういう話なんですね。つまり、上下分離方式で失敗をしたイギリスの例というのがあります。
 幾つも例を挙げていると切りがありませんが、ドイツも、どうするかという議論をしていたときに、日本のJRの例を見て、上下分離でなくて上下一体でやろう、地域分割方式でやろうということでドイツはスタートをしているという話を聞きました。
 私は、こういういろいろな例をひもといて考えた場合も、民営化は、私はもし大臣の立場だったら、そういう組織の七人に怒られるかもしれないけれども、自分は絶対に上下一体が適切であると思うということを断言すると思います。
 これは、なぜそういうふうに言うかと申し上げると、分離方式は問題が幾つかあるわけです。必要な投資がされない。その一方で、いわゆる我田引鉄じゃありませんし、我田引道じゃありませんが、むだな投資がなされる上に、上の会社にもうける気が起きない、したがって負債の返済も進まない。すべての道路を公的機関から借りなければ経営できないので、会社に自主性がない。要はやる気が起こらないわけですよ。
 道路公団総裁は、自分自身が今道路公団におられるからそのお気持ちがよくわかっておられるわけです。だから、ああいう言い回しながら、一体の方がいいということをおっしゃっているわけです。つまりは、この上下分離方式というのはいろいろ問題があるというふうに私は思います。
 お立場では言えないということでありましょうけれども、今私が申し上げた新幹線保有機構の失敗、そしてイギリスの失敗、ドイツの選択、こういうものも例に挙げながら、参考事例にしながらしっかりと議論をするということをぜひお約束いただきたいと思います。御答弁ください。
石原国務大臣 これからどのような場があるかは存じませんけれども、今言ったような事例は私も参考になる一つの事例であると思っておりますが、一言つけ加えさせていただきますと、イギリスのヒースローと市内を結ぶ鉄道もナショナルレールウエーで、その後分割されてうまくいっていなかったそうでございますが、そこを借り受けた会社が運営し出したらもうかるようになったと。
 ですから、上下分離のリース契約というものも、成功しているものもあるし失敗しているものもある、そういうふうに考えておりますので、予断なく、委員の意見を参考とさせていただきながら、いろいろな場で議論をしていきたいと考えております。
前原委員 とにかくここは非常に大きなポイントで、私は、ここのポイントが小泉内閣のいわゆる本気さのバロメーター、リトマス試験紙と言っても過言ではない。ここで上下分離方式をとって、そして下を今までどおりつくり続けられるような方式をとるのであれば、全くのにせものだということがわかると私は思います。しっかりとその辺は見させてもらいたいし、国土交通省、あるいはさっき佐藤副大臣の答弁を聞いていれば、まさしくそれをやりたくて仕方がない、こういう御答弁でありましたけれども、そうすれば、国の債務の話、先ほど、JHの報告では償還は順調に進んでいるということでありましたけれども、除却、減価償却、先ほど申し上げた需要予測、そして建設費等々、あるいは将来の金利リスク、こういうものを考えた場合には、もし上下分離で下をつくり続けるようなことがあれば、私は、この国は破綻をしてしまう、道路によって国が滅ぶということをはっきりと申し上げさせていただきたいと思います。
 その流れの中で、もう一点、大臣にお答えをしていただきたいと思うわけであります。
 今回の小泉内閣の目玉の一つが、いわゆる道路特定財源の一般財源化ということでありました。かけ声はよかった、総論はよかったけれども、各論になるとかなり骨抜きになってきている。今でも一部しか一般財源化をされていません。
 日本が道路をつくり続けるという悪弊から逃れるためには、私は、この上下分離の問題と同時に、その前提となる部分というものを変えなくてはいけないと思います。
 その一つは、一万一千五百二十、九千三百四十二キロ、法律で決めたこと、このこと、それから道路五カ年計画、五年間で七十八兆円、これを使うという目安、そして残された多くの道路特定財源、これの一般財源化、こういうものをしっかりと今後取り組んでいかない中では本当の改革とは言えないし、行革担当大臣としてサンドバッグになれと言われた総理の気持ちはそういうところにあったと私は思うのでありますが、今申し上げたところについての大臣の今後の取り組みの姿勢、意欲について御答弁をいただきたいと思います。
石原国務大臣 先ほども御答弁させていただきましたが、私は、この十二年間の政治キャリアの中で税制に力点を置いて取り組んでまいりました。その中で現在言えますことは、目的税というものは財政を非常に硬直化させるという一点でございます。
 今委員御指摘の目的税、特に道路特定財源につきましては、経済財政諮問会議そして税制調査会で今年度濶達な御議論がされ、十五年度予算に反映されるものと理解をしているところでございます。
前原委員 特定財源についてはそういう御見解、つまりはもっと一般財源化した方がいい、そういうことですね。
石原国務大臣 道路特定財源については、先ほど申しましたように、経済財政諮問会議あるいは税制調査会で今年度積極的な御議論がなされ、十五年度にその答申が反映されるというふうに理解をしておりますし、私は、道路特定財源に限らず、さまざまな目的税、その他にもございますけれども、目的税の比率が税収の中でウエートを占めてくると、財政の硬直化、すなわち、一つのものだけはうまくいくけれども、あとのものがだめになるといったような弊害があるということを申し述べさせていただいたところでございます。
前原委員 私は幾つか質問したわけです。一つは、国幹審で決めた一一五二〇、そして九三四二、これについてどう考えるのかということ、これをお答えいただきたいのと、もう一つは、道路の五カ年計画、五年間で七十八兆円、これはもちろん特定財源に極めて密接に結びついている話でありますが、これはあった方がいいのか、見直した方がいいのか、簡単にお答えください。
石原国務大臣 まず、冒頭の九三四二の方からお話をさせていただこうと思いますが、九三四二という計画は生きております。しかし、道路四公団の廃止、民営化を行うことによりましてこの九三四二が変化をする可能性は、私は今否定するものではございません。
 後段の道路五計についてでございますが、国土をどういうふうに整備していこうかという観点で五カ年計画というものは必要だと思います。しかし、五カ年計画の計画当初と、経済状況の変化によって大きな変化が起こる。ちょうど五カ年計画は十四年度で切れて、新五カ年計画がセットされるわけでございますので、そのとき、これからの国土整備はどうあるべきかということを議論していくのが私はベストだと思っております。
 そしてもう一言、先ほどちょっと言い足りなかったのでお話をさせていただきますと、私は実は、市道とか県道とか国道とか都道とかと道路が、実施主体が、管理主体というのですか、分かれているのはいかがなものかという意見を持っている者の一人でございますので、先ほどのようなリースあるいはコンセッション契約がいいのではないかというところになっていると御理解をいただきたいと思います。
前原委員 さっき大臣が御答弁されたことは矛盾があるんです。つまりは、今後第三者機関で議論をされることで、担当大臣である自分が主観的な意見を申し上げて、そしてその議論に影響を及ぼすのはいかがなものかとおっしゃいましたけれども、リース方式、コンセッション方式ということになれば、自分自身の意見を言われているわけじゃないですか。そのことは、今、聞いてもいないことをまたすぐおっしゃったわけでしょう。ということは、自分自身の意見を色濃くおっしゃっているということじゃないですか。さっきおっしゃったことと違うじゃないですか。
石原国務大臣 政治家のやりとりでございますので、そこのところをお含み取りいただきたいと思います。(前原委員「意味わかりません」と呼ぶ)
 実は、正確に申しまして、もう一度繰り返すのは大変恐縮なんでございますが、当委員会は、民営化推進の検討委員会を設立するための委員会で御審議をいただいているところでございます。この委員会が完成したわけではございません。この委員会にどういう方が人選されるかということも決まっておりません。そんな中で、担当大臣として、上下分離方式がいいのか、あるいは上下一体方式がいいのかという意見は申し述べる立場には今の段階ではないというふうな趣旨で先ほど御発言をさせていただきましたけれども、私が海外を見てきた事例、また、今付言させていただきましたように、道路がかねがね、国道、県道、都道、市道と分かれていることに対する基本的な疑問、こういうものを兼ね合わせて、コンセッション契約あるいはリース契約という、見てきたものは大変すばらしいものではないかというふうな意見を申し述べたので、何ら矛盾はしていないと御理解をいただきたいと思います。
前原委員 矛盾していると思いますよ。もしその組織をつくって客観的議論をされるんなら、私ども委員が質問しても、そういうことも含めて答弁されない方がいい、それだったら。あるいは、今まで長い間議論してきたことについて、民営化のあり方について、何も、第三者機関ですることだからということで答弁差し控えますと言ったらいいんじゃないですか。だから、矛盾していると言っているんです。取り消してください。
石原国務大臣 前原委員の貴重なアドバイスに敬意を表する次第でございます。(前原委員「ふざけている。どういう意味ですか」と呼ぶ)
大畠委員長 前原君、もう一回質問してください。
前原委員 どういう意味ですか、それ。茶化さないでください。
石原国務大臣 前原委員のただいまの御発言はアドバイスとして聞かせていただいたというふうに御理解をいただきたいと思います。
前原委員 残念な議論はしたくないんです。本当に政治家としてお互い、この国のあり方、またこの問題についてどういうあり方がいいのかということを真剣に議論しているわけですから、茶化さないでしっかり答えてもらいたいと思います。茶化しているでしょう、答弁が。そのことについて私は言っているんだ。アドバイスを聞くというんだったら、初めからそう言えばいい。真剣にやらなきゃだめだよ、あなた。だから、魂を売ったと言われるんだ、道路族に。
 次の質問に行きます。
 私がこの民営化の議論で一つ大きく解せないのは、民営化の議論をするのであれば、予断を与えずに組織にそのあり方の議論をゆだねたらいいのに、この議論の一つの中身で極めて矛盾をしている文言が入っています。
 それはなぜかというと、現行料金を前提とする償還期間は五十年を上限に短縮を目指すと。現行料金を前提とする償還期間、つまりは償還主義を温存させるのかということと、五十年というのは、なぜあらかじめ数字として与えなくてはいけないのか。このことについては極めて浮いた言葉になっています。
 つまりは、償還主義でいくのかどうかということも、本来、民営化されるその組織、あるべき組織で議論すべきじゃないですか。それと同時に、五十年というものについても、民間会社ができれば、どれだけで借金を返そうかどうかというのはそこに任せるべきじゃないですか。それなのに、償還主義と五十年上限と入っているのはおかしいし、これだったら、先ほどの話じゃないけれども、予断を持ってこの組織に議論をさせるという前提に立っているんじゃないですか。
石原国務大臣 冒頭、前原委員に申したいんですが、私は、委員会を茶化すようなことは一度もございませんし、ぜひ発言を訂正していただきたいんですけれども、私がいつ道路族に魂を売ったというようなことを、この委員会で個人を侮辱するようなことを言われるのか、私は理解に苦しむ。信頼関係を持って議論をしている者に対してそのようなことを言われるのならば、私はこれからは何もお答えすることができませんと答弁する、それで意見ができるのかできないのか、御議論をいただきたいと思います。
前原委員 子供のけんかじゃないんだから。まともに答えてくれと言っているわけで、それに答えないから、私の客観的な意見、あるいは報道されている、あなたは道路族に魂を売ったと言って何が悪いんだ。それが気に入らなくて答弁しないなら答弁しなくていいよ。帰ったらいいよ。そのかわり、この委員会、この法律の審議、あなたが担当大臣でしょう。やめるんだったら帰ったらいいよ。
大畠委員長 委員長から申し上げますが、質問者並びに答弁者の方に、この委員会は法律案について審議しているわけでありまして、感情論は少し抑えていただいて、ひとつ冷静に委員会の審議を進めていただきたいと、委員長の方から両者に要請いたします。
前原委員 じゃ、前の発言を撤回してください、答弁しないと言ったんだから。
 委員長、私のありのままの感想を言って、それが侮辱で、それに答えられないというなら帰ったらいいと言ったんです。別にそれは感情で言っているんじゃない。担当者として責任のない発言をしたから、それを撤回してもらわなければ私質問しませんよ、さらに。
大畠委員長 ちょっととめていただいて。
    〔速記中止〕
大畠委員長 速記を起こしてください。
 今の前原委員と大臣のやりとりの状況については、後ほど議事録を理事会でよく精査しまして、理事会として整理をし、委員長として後日また質問者の方にも大臣の方にも申し上げますが、そういうことで、その件については委員長に預からせていただきたいと思います。
 したがって、あと残り時間五分ほどございますので、委員におきましては、その残りの時間を使ってこの法律案に関連する質疑を続けていただきたい。
 これを質問者と大臣の方、両者に要請いたしますので、よろしくお願いいたします。
 前原君。
前原委員 必要であれば、今までの大臣の発言、道路公団の民営化、改革についての発言、全部時系列的にどういう発言をされてきたのかということを見て、先ほどの私の発言が侮辱するものかどうなのか、幾らでも証明しろと言われれば証明をさせていただきます。
 私の質問に答えてください。なぜ償還という言葉が入って、償還主義というものを前提にして予断を与えているのか。また、なぜ五十年という上限を入れているのか。この文章だけ突出して浮いているんですよ。本来なら、そういうものを入れずに、民営化を議論する組織に議論させるべきじゃないんですか。
石原国務大臣 冒頭、前原委員に、感情的になりましたことを心からおわび申し上げたいと思います。また、委員長にも御迷惑をおかけいたしました。委員の皆様にも大変御迷惑をおかけいたしました。
 質問に答えさせていただきたいと思います。
 償還主義については、もうこれも御存じのことだと思いますが、特殊法人整理合理化計画に示された基本方針において、現行料金を前提とする償還期限は、五十年を上限としてコスト引き下げ効果などを反映させ、その短縮を目指すと明記させていただいたわけでございます。一定期間内に債務を償還することを前提として議論がなされることと考えておりますので、このような言葉を整理合理化計画の中に入れさせていただいたわけでございます。
 それともう一点、なぜ五十年かということでございますが、現行が五十年となっているからでございます。
前原委員 そんな子供だましみたいな答弁をしないでもらいたい。つまり、償還主義というのはどういう定義かというと、決められた期限までに借入金を返済するということなんですよ。これは、だから償還主義というんです。では、民営化された例えばJRとかそういうものが償還主義をとっていますか。とっていないでしょう。どういう料金体系、あるいはどういうサービスを提供すればお客さんが喜んでくれるのか、また、どうすればもうかるような仕組みなのか、それを考えることであって、償還主義を前提とするということはおかしいじゃないですか。
 しかも、三十年、五十年という議論があったのはわかっていますよ。そのぐらいわかっている。今のものが五十年だから五十年というような、そんな子供だましな答弁はやめてください。特に、昔は三十年だったのを三十年、四十年、五十年と延ばしてきた経緯があるわけでしょう。それだったら、年数をここに書くのもおかしいじゃないですか。
石原国務大臣 お言葉でございますが、ただいま委員が申されましたように、この償還期限というのは長くなってまいりましたが、先ほども議論の中でお示ししましたように、いろいろな試算をさせました。交通量の見通し、あるいは金利の動向、それによって三十年、四十年、五十年と三つのケースでどれだけの高速道路を建設することができるのか。その結果、三十年の償還ということではこれから二十兆六千億の道路計画ができない。
 全く道路をつくらなくていいということになるわけには実はいかないわけであります。建設工事中のものもございます。あと数キロでネットワークが完成するものもございます。そういうことを考え合わせてこの五十年という数字が出てきたと御理解をいただきたいと思いますし、決して子供だましの答弁をしているわけじゃなくて、事実を客観的に申し述べさせていただいているところでございます。
前原委員 それでしたら、五十年と決めた、今おっしゃった交通量、金利の動向、そういうものを調査の上とおっしゃったんだったら、そういう資料、もとになる資料を委員会に提出していただきたいということを委員長にお願いをしたいと思います。理事会に提出をしてください。
大畠委員長 理事会でお諮りいたします。
前原委員 そういうものが本当になかったら、今の話というのは子供だましになるんですよ、大臣。聞いていますか。ですから、償還主義というのは、私は、民営化の考え方にはそぐわないというふうに思っています。
 つまりは、決められた期限までに借入金を返済するように料金水準を決めるということなんです。したがって、その料金水準を決めて、しかも五十年を上限ということになれば、民間会社のいわゆる裁量権というものの手足を縛る話になるじゃないですか、償還主義をとるということは。違いますか。
石原国務大臣 真っさらのところから新しいものをつくるのであるならば委員の議論というものは成り立つと思いますけれども、現行のシステムは、償還主義のもとに道路公団が運営され、また高速道路ができてきたと御理解をいただきたいと思います。
前原委員 そんなことは百も承知なわけですよ。しかし、形態を変えるんでしょう。道路公団の今までの運営が償還主義だったわけでしょう。プール制、償還主義一体でやってきたわけでしょう。それが、いわゆる事実の隠ぺい、そして借金の先延ばし、そういう問題になって、さっき私も言ったし、大臣も答弁されたけれども、初めは三十年だったものが四十年、五十年と延びていって、本当に返せるかどうかわからない。
 しかも、もし自分自身が交通量の見通しをしたということであれば、先ほどの道路公団の交通量の見通しとどれだけ乖離があるか示してくださいよ。そういうものが調査結果としてあるのであれば、どれだけ乖離しているか。それが道路公団と同じだったらお笑いものですよ。
大畠委員長 今のは大臣に対する質問ですね。もうちょっと大臣がよく理解して答弁できるように質問してください。
前原委員 つまりは、形態を変えるわけでしょう。だから、今までは償還主義だったのはよくわかっています、その議論でずっと今まで議論してきたんですから。民間会社になっても償還主義を続けるというのは理論的におかしいじゃないですか。違う形態にしようというのに償還主義をとるという前提を決めることが、民間会社の手足を縛り、しかも、五十年を上限とするということを決めていることについてもおかしいんじゃないですかということを言っているわけです。
石原国務大臣 今ある有利子負債をすべて切り離せば、償還主義はなくなると思います。
前原委員 その議論はおかしいと思いますよ。国鉄からJRになって、JR各社が償還主義をとっていますか。とっていないでしょう。しかも、債務は引き継いでいますよ。債務をすべてほかのところに引き継いでいくなら償還主義から解放されるというのは、事実関係からしてもおかしいじゃないですか。だから、私はそれを言っているわけですよ。
石原国務大臣 国鉄改革のときを思い出していただきたいのでございますが、旧国鉄は、新しい路線は、整備新幹線を除いて建設はございません。そして、整備新幹線の計画は凍結されました。一方で、赤字ローカル線、採算性の悪い路線を廃止していく、そういう議論がなされておりました。
 一方の道路は、先ほども申しましたように、あと数キロ工事をすることによってネットワークが完成するもの、あるいは工事途中のものがありますので、ここで工事をすべてゼロにするということは、物理的にも、地元の要望あるいはネットワーク形成の上からも不可能であるということで、償還主義という文言が入っていると御理解をいただきたいと思います。
前原委員 今までの言葉と最後の償還主義が、言葉ではつながっていても内容では全然つながっていないわけです。償還主義を本当に理解されているんですか。
 つまりは、新たな道路をつくらなきゃいけないというのは、わかりますよ、理解しますよ。それは、でも、国費でやるか何でやるかわからないじゃないですか。まさにそこは第三者機関で議論するという話で、償還主義を継続するかどうかということとは全く別個じゃないですか。言葉はつながっていても、意味としてはつながっていないんですよ。なぜ償還ということがここに書かれているかという答弁になっていません。答弁をいただきたいと思います。
石原国務大臣 非常に私頭が悪いので理解できないんですが、償還主義であるということを否定されているというふうに聞けるんですが、償還主義であったらいけないと言っているのに、そこにこれが書いてあるのはなぜかということでございましょうか。
前原委員 償還主義は、つまりは終わる期限を決めるわけですよ。決めた期限までに返すということを前提とするわけです。そして、料金体系なんかをすべて決めるわけですよ。民営化する会社がそういうものに手足を縛られるのであればおかしいじゃないですかという話をしているわけです。
 つまりは、そういうことも含めて、決められた民間会社が償還主義をとるかもしれませんよ、それがいいというのであれば。しかし、そうじゃなくて、とにかく初めは、借金を返すスピードは遅くても、顧客の理解を得て、しっかりと民間会社として根づく、定着するということのために償還主義を放棄したいという会社があるかもしれない。そういうふうに考えるかもしれないのに、なぜここには償還主義という足かせをかませて五十年としているのかということを聞いているわけです。答弁になっていないんですよ。
大畠委員長 石原大臣、質疑時間がオーバーし始めていますので、答弁もそれなりに考えて答弁してください。
石原国務大臣 再三再四申しますように、委員も実は仮定を置いていらっしゃるんですよね、こういうふうになった会社がそれをとらないかもしれないじゃないかと。分割するかしないかも実はまだ議論がなされていません。さまざまな議論がなされてきたことは承知しておりますし、プール制の問題あるいは償還主義についての是非というものも議論されていることは、私は否定するものじゃございません。
 今委員会では、特殊法人の整理合理化計画に、「現行料金を前提とする償還期間は、五十年を上限としてコスト引下げ効果などを反映させ、その短縮を目指す。」と実は明記をしてありますので、この特殊法人整理合理化計画にのっとってこの償還主義ということを前提に議論がされると考えているのであって、償還主義のありようあるいはプール制の是非、こういうものが検討委員会で議論されるということを私は全く否定しているものではございません。
前原委員 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、償還主義というのはそもそも、何度も言いますけれども、支払う期限を決めて、そして料金体系を設定するというのが償還主義なんですよ。そんなものは、初めから足かせを決めるのではなくて、しっかりと民間会社に、償還主義をとるかとらないかも含めて決めさせるのが筋であるのに、なぜ、ここに償還というものを前提として組み込ませて、そして五十年というものを設けているかということを聞いているわけです。
 これは、私の後の同僚に質問を譲りたいと思いますけれども、結論は、道路をつくり続けたい、それだけの妥協の産物で償還主義、五十年というものを入れているだけなんです。それをお答えになっていない。そこを指摘して、私の質問を終わります。
大畠委員長 これにて前原君の質疑は終了いたしました。
 次回は、来る十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.