衆議院

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第9号 平成14年4月24日(水曜日)

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平成十四年四月二十四日(水曜日)
    午前九時六分開議
 出席委員
   委員長 大畠 章宏君
   理事 逢沢 一郎君 理事 渡辺 具能君
   理事 渡辺 博道君 理事 野田 佳彦君
   理事 細野 豪志君 理事 河合 正智君
   理事 工藤堅太郎君
      岩崎 忠夫君    小野 晋也君
      奥山 茂彦君    嘉数 知賢君
      亀井 久興君    北村 直人君
      桜田 義孝君    実川 幸夫君
      谷川 和穗君    近岡理一郎君
      西川 公也君    望月 義夫君
      山本 明彦君    石毛えい子君
      津川 祥吾君    藤村  修君
      山花 郁夫君    山元  勉君
      横路 孝弘君    太田 昭宏君
      佐々木憲昭君    北川れん子君
    …………………………………
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長) 村井  仁君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   国務大臣
   (科学技術政策担当大臣) 尾身 幸次君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   総務副大臣        若松 謙維君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   内閣府大臣政務官     奥山 茂彦君
   内閣府大臣政務官     嘉数 知賢君
   政府参考人
   (人事官)        小澤 治文君
   政府参考人
   (人事院事務総局総務局長
   )            平山 英三君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   江崎 芳雄君
   政府参考人
   (内閣府賞勲局長)    佐藤 正紀君
   政府参考人
   (内閣府原子力安全委員会
   事務局長)        小中 元秀君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君
   政府参考人
   (警察庁交通局長)    属  憲夫君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局参事官
   )            田口 義明君
   政府参考人
   (法務省大臣官房審議官) 原田 晃治君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           玉井日出夫君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           瀬山 賢治君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局主任体育官)    徳重 眞光君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            澤田陽太郎君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房審議
   官)           松原 謙一君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁原子力
   安全・保安院審議官)   佐藤 哲哉君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局次
   長)           伊藤 鎭樹君
   政府参考人
   (国土交通省道路局長)  大石 久和君
   参考人
   (日本道路公団総裁)   藤井 治芳君
   内閣委員会専門員     新倉 紀一君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十四日
 辞任         補欠選任
  古賀 正浩君     北村 直人君
  谷本 龍哉君     山本 明彦君
  仙谷 由人君     津川 祥吾君
  吉井 英勝君     佐々木憲昭君
同日
 辞任         補欠選任
  北村 直人君     桜田 義孝君
  山本 明彦君     谷本 龍哉君
  津川 祥吾君     仙谷 由人君
  佐々木憲昭君     吉井 英勝君
同日
 辞任         補欠選任
  桜田 義孝君     古賀 正浩君
    ―――――――――――――
四月二十四日
 警備業法の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第五五号)(参議院送付)
 内閣の重要政策に関する件
 栄典及び公式制度に関する件
 男女共同参画社会の形成の促進に関する件
 国民生活の安定及び向上に関する件
 警察に関する件


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     ――――◇―――――
大畠委員長 これより会議を開きます。
 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 各件調査のため、本日、政府参考人として人事官小澤治文君、人事院事務総局総務局長平山英三君、内閣府賞勲局長佐藤正紀君、内閣府原子力安全委員会事務局長小中元秀君、警察庁生活安全局長黒澤正和君、金融庁総務企画局参事官田口義明君、法務省大臣官房審議官原田晃治君、法務省刑事局長古田佑紀君、文部科学省大臣官房審議官玉井日出夫君、文部科学省大臣官房審議官瀬山賢治君、文部科学省スポーツ・青少年局主任体育官徳重眞光君及び国土交通省道路局長大石久和君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大畠委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、お諮りいたします。
 各件調査のため、本日、参考人として日本道路公団総裁藤井治芳君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大畠委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
大畠委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横路孝弘君。
横路委員 きょうは、経済問題、それから三月に内閣府が発表された国民生活白書、これを中心に議論をいたしたいと思いますが、今、国会に来る途中で、宿舎からタクシーに乗りましたら、タクシーに三十年乗っているという運転手さんが、ぜひ竹中大臣にこれだけは伝えてほしいと。
 要するに、先の見通しだというんですね。これはもうそのとおりだと思いました。先の見通しが、一年、二年でもいいんですけれども、こうなるよということを国民が納得できる姿で政策が展開されるとかいうようなことになると、みんなもう少し安心してタクシーも利用してくれるということで、それがどうも、どこに向かって、いつ行くのかわからないから、みんな不安で、結局消費を抑えているんだというお話で、全くそのとおりだと思いまして、これはぜひやはり竹中大臣にお伝えしなきゃいけないと。
 ことしの初めの施政方針演説の中では、アメリカの景気回復にかなり依存する形で、後半にはかなりよくなるだろうというようなお話もございました。六月には経済活性化の総体的な政策もまとめるというふうに聞いていますけれども、どうですか、これから先の見通し。このタクシーの運転手さんを納得させるように、ひとつ御説明をいただければと思います。
竹中国務大臣 経済に対する先行きの期待をどのように持つかということが大変重要である、その期待の持ち方によって今の経済も影響を受けるという御指摘は、もう先生御指摘のとおりだというふうに思っております。
 中期的な経済の見通しといいますか、シナリオにつきましては、ことし一月に閣議決定しました「改革と展望」の中で、実は私たちなりにはかなり明示的に示したつもりでございます。
 今後二年間は集中調整期間で、この集中調整期間の二年間には、不良債権の処理、デフレの克服等かなり思い切ったことをやらなければいけない。したがって、この二年間については高い成長は見込めない。しかし、それを克服することによって、民需中心の自律的な回復に向かって、日本が本来持っている二%という成長に近いところに持っていくことができる。そういった中期のシナリオを私たちなりには示しているつもりでございます。ただ、それが余り十分に国民の間に浸透していないという点に関しては、PRを含めて、より積極的な施策を考えたいというふうに思っています。
 もう一点、委員お尋ねの、特にことしの短期的な見通しということになりますが、月例経済報告でも、ここのところ御承知のように上方修正をしておりまして、幾つかの循環的な動きから見る限り、ことし後半に関しては少し今までとは違うよい面も見られてくるのではないだろうかというふうに考えております。前半申し上げました中期の経済の見方に基づいて、短期的にも、在庫、生産等々でそういったよい方向への変化が少しずつ見られつつある、そのように認識をしております。
横路委員 先日G7の会議が開かれたわけですけれども、そこでは、アメリカを中心として世界経済全体については回復してきているという点が非常に明確に打ち出されたというように思います。日本については、名指しはされませんでしたけれども、健全なマクロ経済政策あるいは構造改革を実施する責任ということで、実質的にはこれは日本のことを言われているんだなと思って声明文を見ておりましたけれども、ちょうど直前に、アメリカの格付会社が日本の国債の格付を下げたとか、あるいはIMFの世界経済見通しの中で日本についてなかなか厳しい意見が出されたということもあって、G7の会議自身は日本に対しては随分冷ややかだったというように報道されております。
 そこで、お尋ねしたいのは、このIMFの世界経済見通しの中で日本に言われている点ですね。これはなかなか、このとおりじゃないかなと思って眺めておったわけです。一つは、日本経済は確かに底入れをしたかもしれない、しかし、内需が持続的に回復する兆しというのは少ない、それは大変まだまだ厳しいんだ、二〇〇二年度の実質成長率はマイナス一%、二〇〇三年は〇・八、こういうことを言っていますが、この指摘はまさにこのとおりだと思いますけれども、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 IMFが非常に厳しい見方をしている、そういう報告を出したということは承知をしております。
 委員御指摘のように、経済、底入れを探っているわけでありますけれども、それにもかかわらず民需が大変厳しい、民需の飛躍的な増加はなかなか期待しがたいというふうにも私たちも考えております。しかし、そのIMFの見方というものが、どちらかというとことしの後半にむしろ息切れしてくるというふうな見方をしているというふうに聞いておりますが、その点は私たちはそのようには考えておりません。
 結果としてIMFはマイナスの数字を出しているわけですが、私たちは、政府経済見通しではゼロ%と、厳しいは厳しいんですけれども、後半にはむしろ民需に少しずつであるけれどもつながっていくというシナリオを描いております。非常に強い回復力を持っているというふうには今の時点ではなかなか考えられないわけでありますが、それでも、経済循環的に在庫の調整、生産の調整は進みつつありますので、後半、緩やかに民需が動き出すというふうな見方をしております。
横路委員 内需が持続的に回復する兆しというのは極めて厳しいということは、ある意味では、月例経済報告の中でも、あるいは三月の日銀の短観の中でも指摘されているわけですね。今の状況というのは、輸出が少し動き出して、それに関連する企業の在庫調整が進んできている、したがって、それが将来は生産にも波及していくだろうということがあるのかと思いますが、三月の日銀短観でも、大企業の製造の部分はいいですが、中小企業の非製造業になるとまだまだやはり将来見通しも厳しいということもありますし、問題は、これが経済の六〇%以上を占めている個人消費につながっていくのかどうかということだと思うんですね。
 大企業は、売り上げが伸びませんから、何とか経費を落とすということでリストラをして利益を上げているわけですね。しかし、そのリストラをすることの結果としては、雇用が減少する、あるいは所得が減少するということで、国民経済全体としては、リストラのこの十年間の流れというものがやはりかなり大きなダメージを与えているんだというように思うんですね。
 そこをやはり見ておかなければいけないという点と、企業は利益を上げても、それが設備投資に回らないでむしろ借金を返すことに回っていって、お金自身が要するに世の中に動いていない状況に今あるわけですね。個人も使わないし、企業も設備投資しない、財政投資も抑えられているという状況でございますから、やはりこの先行きについて、厳しい雇用や所得の環境などを見ますと、むしろこれから民間需要というのを下の方に押していく、そういう懸念というのもあるんじゃないだろうか。月例経済報告の中でもそういう点が一つは指摘をされているというように思います。
 そうしますと、全体的な見通しとしては、このIMFの指摘というのは正しく日本経済を見ているんではないか、このように思いますけれども、いかがでしょう。
竹中国務大臣 委員が御懸念される日本経済の問題点、今のお話で、大きくやはり二つあるのかな、二つ御指摘されたのかなというふうに思います。
 一つは、リストラによって企業収益が改善する。これは大変改善しております。大手四百社のアンケート調査によっても、今年度、企業収益は五〇%、六〇%というオーダーで増加するということが見込まれて、それが景気の循環的な引き上げにつながってはくるんだろうけれども、リストラによって生まれたものであるから、それが経済全体を縮小させないだろうかという点。
 それと、何といっても、金融面でお金が回らないというふうに御指摘されましたけれども、マネーサプライが日銀の努力にもかかわらず余りふえないような状況があるという点、この点については私たちも認識はしております。
 ただ、内需に関して言うならば、基本的に生産見通しとか生産見込みとか、わずかだけれどもやはりプラスのものが出てきておりますし、設備投資については厳しいものの、消費についてはかなり比較的安定した動きをこれまでもしてきましたし、今後もそのような動きになるというふうに認識をしております。唯一雇用が厳しいというのを私たちも懸念はしておりますが、今申し上げたような循環的な動きの中では、後半に民需が緩やかながら回復できるというその期待は私たちは持っているわけでございます。
 マネーサプライがなかなかふえないという問題は、これはむしろ構造的な、重要な深刻な問題でありまして、それは銀行部門の金融仲介機能が著しく低下しているという状況が続いているわけでありますので、この点については、特別検査の結果を踏まえて、不良債権の処理というのはそれなりに進捗はしておりますが、さらにこれを進めていくということが必要である、それが現状の課題であるというふうに思っております。
横路委員 一つは個人消費なんですけれども、この間の消費支出でありますとか世帯の収入でありますとか可処分所得というようなものを見ていますと、ずっとやはり減少してきているわけですね。雇用の内容も、後でいろいろと議論しますけれども、不安定になって、そして質的に言うとやはり劣化してきているということも言えるわけであります。
 そういう点を見ますと、確かに寒くなったり暖かくなったりというようなことによって、そんな要素も含めて消費というのはある程度動くわけですけれども、しかし、生活の基本のところ、雇用、家庭、家族というようなその基本のところでやはり悪くなってきていますから、そこが改善されない限り、なかなか厳しさが続いていくんじゃないかと思うんですね。
 経済というのはマクロ的な議論なんですが、後で議論しますが、この国民生活白書を見ますと家庭中心に解析されていて、やはり今の家庭の中に経済社会の動向というのは反映していますから、いわばマクロというよりも、一人一人の状況がどうなっているのかということからまた経済を見る見方というのもあると思うんですね。
 これを見ますと、やはり、今の日本の置かれている社会状況の中で家庭というのはどういう存在になっているのかというのがよくわかる、なかなか興味深い分析を国民生活白書でなされたというように思いますが、やはりその生活の基本のところを押さえていかなくちゃいけないということを御指摘いたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 我々、景気がよい、悪い、経済が成長する云々というふうな形でマクロ的な議論をするわけでありますけれども、経済の基盤は、御指摘のとおり、人間一人一人がどのぐらいの付加価値を市場経済の中で生み出していっているのか、その集合体であるというふうに思います。したがって、その基盤にあるのはやはり個人であって、個人を支える家庭であって、さらには、しかし付加価値を生み出すときの一つのツールとしての企業も重要である、そういう見方を常にしていく必要があるのだと思います。
 そういった観点から、御指摘の国民生活白書での分析にも取りかからせていただいたわけでありますけれども、一点、消費の基盤が非常に脆弱になっているという御指摘は、最近の雇用、所得の環境等々見ても、大変それなりに厳しいということは認識をしております。
 ただ、先ほど、企業収益の話を申し上げましたけれども、企業収益が増加する、拡大することによって、企業がさらに賃上げをするとか、そういった可能性も出てくる。企業がどの程度の付加価値を生み出せるか、その裏には、先ほど申し上げましたように、労働者一人一人がどれだけの付加価値を生み出せるかという問題があるわけでございますから、そういう地道なリストラを含むプロセスを通じて、やはり個人の付加価値を生み出す能力、基盤が高まって、それが消費拡大にもつながっていく。逆に、個人の消費の能力を拡大するような方法は、どこかから別に、天から降ってくるような形では生まれてこないのであろうというふうに思うわけです。
 その意味では、大変地道に生産性を高める努力、そういうことを積み重ねていくことが、やはり経済拡大、消費拡大の本道であろうかというふうに思います。
横路委員 それは、もう一度、後ほど議論します。
 もう一つ、このIMFの中では不良債権についての指摘がありまして、金融庁による一層正確な不良債権の分類や早期処理、銀行の自助努力による資本増強、適切な場合には公的資金の投入などを通じて銀行部門の再構築を促進すべきだ、こういう意見のようでございます。
 金融の特別検査について、まず竹中大臣にお伺いしますが、これで不良債権処理というのは山を越えたと。今まで銀行協会は、この間、何度も山を越えて、十回ぐらい越えてやってきているわけですが、なかなかまだ、山が新たにあらわれるということなんです。経済財政諮問会議の中では、皆さん、評価されているようでございますけれども、IMFの発表は、いまだ十分でないよ、こういう発表でございますが、どのように受けとめておられますか。
竹中国務大臣 山を越えたという表現がどのようなことを意味するかということになるのだと思いますが、私は、やはりこの問題は継続的な努力が必要な非常に難しい問題であるというふうに申し上げるのが正確かと思います。
 経済財政諮問会議の議論においてもそうでありましたし、私自身の考えもそうでありましたけれども、今回の措置によってオフバランス化が促進されたというようなこととか、借り手の企業についても再建の計画が練り直されて基盤が強化された、金融システム安定化への取り組みが進むんだという点については評価をすべきであろうというふうに思います。
 問題は、これまで危機を回避するための政策としてはそれなりの効果を上げたというふうには思いますけれども、構造改革を金融面から促進するためには、より強い、ロバストなといいますか、強い金融システムが必要なのだ。そういった意味で、より強い金融システムを目指すための一層の努力がこの面では必要であるというふうに考えておりまして、その意味で、冒頭で申し上げましたように、不断のたゆまぬ努力を今後とも続けていかなければいけない問題であるというふうに認識をしております。
横路委員 不良債権というのは、そもそもどのぐらいあるのか。バブルの時期の貸し過ぎがどのぐらいあるかというのは、何かある計算を見たんですが、個人に対して五十兆円、それから商業用不動産に百十兆円、その他百兆円で、合計二百六十兆円が大体貸し過ぎ、借り過ぎの状態だということなんですが、では、どれぐらい今まで処理をしてきたかというと、平成四年から十三年度で大体七十二兆円ぐらいということが言われています。バブルのときに貸したお金が全部不良債権化しているわけではもちろんありませんが、しかし、まだ相当あるな。外資系のいろいろな企業の分析ですと、まだまだたくさんの金額を言われております。
 いずれにしても、今回の金融の特別検査が行われたわけでございますが、これによって十分銀行が不良債権処理を進めて、問題企業の整理、再建が片づいたかというと、やはりそうではないというように思うんですね。例えば、対象が少ないんじゃないか、範囲が狭いじゃないか、大半を占める中小企業への融資はどうなんだ、全体の与信の四%という程度で十分なんだろうかということが言われています。この点について、いかがですか。
村田副大臣 今回の特別検査でございますけれども、企業業績とか市場のシグナルをタイムリーに反映した適正な債務者区分と償却、引き当てを確保する、こういうことで特別検査が行われているわけでございますが、そういう観点から、私ども、一定の基準を満たす債務者で大口先のすべてを対象にしてきた、こういうふうに考えております。
 今、先生が少ないというふうにおっしゃいましたけれども、そういう意味では、私ども、特別検査のねらいとするそういう目的を最も効率的に果たす、効果的に果たすことができるように、対象債務者に対して最も多額の与信残高を有しまして、かつ当該債務者について最も詳細な情報を有しているメーン行において検証することとしたわけでありまして、先生が今おっしゃったそういう金額は主要十三行のメーン行についての与信額でございまして、それが十二・九兆円、こういうことでございます。したがって、準メーン行以下も含めた主要行の対象債務者に対する与信額の合計はその二倍程度というふうに考えていいか、こういうふうに思います。
 それから、主要十三行の要管理先債権額は八・五兆円でございますが、そのうち三・二兆円を検証したわけでございまして、これもまた準メーンを含めればこの二倍になるということを考えれば、要管理先の四分の三程度を今回の特別検査によって検証したのではないかというふうに考えております。
 要注意先につきましても、同じく三分の一程度は検証の対象になっているというふうに考えますれば、私どもとしては、その影響はかなり大きなものというふうに考えてよいかと思っております。
横路委員 例えば、議論の中には、要件が株価や外部格付などに著しい変化が生じている大口の債務者というように限定していますから、ある意味では上場企業のみ対象。むしろ、不良債権というのはどこにたまっているか。ためているところがあるわけですね。○○銀行の関連している○○不動産とかですね。そういうところが除外されているということで、私が御指摘したいのは、要するに、これで終わったわけじゃなくて、まだまだやはり問題は片づいてはいないということを指摘したいわけなんですが、いかがでしょうか。
村田副大臣 私どもといたしましては、今回の措置を受けまして、今後、今度の措置でうたわれましたように、実質的な常駐体制の検査ということも整えまして、引き続き不良債権の処理に一層努力をしていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
横路委員 この中で、三十四社が破綻懸念先以下ということで挙げられたわけですが、これはどういう処理をしていくんでしょうか。これから金融機関ときっと話し合いということになるんでしょうが、どのぐらいのスピードでどうするおつもりなのか。いかがでございますか。
村田副大臣 改革先行プログラムにおいても私ども発表いたしましたけれども、特別検査により破綻懸念先に区分された企業につきましては、一つは私的整理ガイドライン等による徹底的な再建計画を策定していく、それから二つ目は法的整理をやる、それから三つ目はRCCへの売却を促進するということでございまして、私ども、そうした再建のための措置にのっとりまして速やかに破綻懸念先以下の不良債権が整理されていくことを期待している、こういうわけであります。
横路委員 昨年の九月に、私的ガイドライン、なかなか立派なものをつくられたわけですが、今まで適用が三社ぐらいですね。どうも、やはり責任をとらされるということとか、全体の合意が必要であるとかいうことがあるようです。特に責任をとらされるというのがやはり嫌で、なかなかこれが活用されていないということのようでございますが、せっかくつくったガイドラインですから、しかし、これは私的な関係で処理するという場合には、それぞれの話し合いですから、金融庁がどうこうという立場にはないかと思いますが、もっと活用されるように指導していただければというように思います。
 それで、最後にもう一点。
 今回の特別措置の結果を受けて、金融機関の合併促進ということを一つの大きな柱にされていますね。これは、従来から一県二行とかいろいろ言われてきたわけであります。確かに、金融の基盤をしっかりするということは大事だというように思いますが、合併促進を中心とした施策を検討するということになりますと、これはどういう手段、方法を使ってやるのか。
 それは、金融庁がやればどんなことでもできると思いますよ。厳しいように検査をばっとやって、この銀行はちょっと危ないからもうちょっといい銀行と合併しなさい、こうやる。そういう手段も含めてやっていくのか。悪くすると、これはやはり金融カルテルになってしまいますからね。金融における競争というのも必要なわけです。これと、また信金、信組などとの関連なども含めて、一体この合併促進というのはどういうことをお考えになっているんでしょう。一体何が、どういうのが目標、一県二行というのは、やはりその辺が目標なんですか。
村田副大臣 まず手段の方からお答えを申し上げたいと思います。合併促進の政策誘導手段でございますが、まだこれから検討していくということでございますけれども、合併のいろいろな手続がございますが、その簡素化を図るとか、あるいは税制によります誘導策ができないかどうかとかいうことを、今の時点で申し上げるとすれば一般論としてお答えをさせていただきたい、こういうふうに考えております。
 いずれにしましても、私ども、こういう方針で金融システムをより強固なものにする、特に、地域の金融機関を念頭に置いているわけでございますが、そうした金融機関の合併を図ることによりまして、金融機関の財務体質、財務経営内容が強化されるということをもって、金融機関がよりスムーズに金融仲介機能を果たしていくということを期待しているわけでございまして、この具体的な誘導策を含めまして、夏ごろまでには私ども成案を得たいというふうに考えて努力をしているところでございます。
横路委員 不良債権の処理を進めていくためには、業務利益を上げなければいけません。地域の中で合併を促進して少数の体制になったときの心配は、預かる方のお金でなくて、今度は、貸し出しする方のお金の方は金利を上げるとかいうようなことは、競争がなくなるとやはりできるようになるわけです、金融の中でも。そんなことにならぬように、しかし、確かに金融の基盤をしっかりと整えていくということは今日大事なことでありますので、これからの政策を見ていきたいというように思います。
 金融関係は結構でございます。
 G7等の会議に出られた塩川財務大臣は、税制の改革、塩川さんは必ず財政規律を考えてとつけ加えて発言されているようでございますが、税制改革や不良債権処理の加速など、経済の活性化策というのを六月までにまとめますよということをあちこちで御説明されたようでございますが、これは国際的に政府として全体として約束したものだというように受けとめてよろしいんでしょうか。
谷口副大臣 横路先生のお尋ねでございますが、G7で塩川大臣が、景気の活性、減税先行について言及をされた発言をしたではないかというようなことなんだろうというふうに思いますが、G7の場における発言は、財政との均衡をとりながら減税に取り組み、減税が先行することもあり得るというような御発言を塩川大臣がなさったわけでございます。
 これは、G7に行かれる前に、経済財政諮問会議におきまして、いわゆる塩川三原則と言われるような三原則をおっしゃったわけでございまして、その一番目のところにございますが、税制改革は財政規律の観点から増減税一体、一定期間、税制中立といったようなことがあるわけでございますが、このことについて塩川大臣が御説明をされたというように認識いたしておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、税制につきましては、小泉総理も抜本的な税制改革を行うべきだということで、一月から、政府税制調査会、また経済財政諮問会議、この六月の取りまとめに向けて現在議論を進めておるところでございます。そういう意味で、例えば減税先行を国際公約をしたというようなことではなくて、まさにこの塩川大臣がおっしゃったことをさらに御説明されたということでございます。
横路委員 時間がなくなってきましたので、国民生活白書について議論いたしたいと思いますが、これを見ますと、まさに家庭、家族というのは今日の日本の社会や経済の中で存在をし、生きているんだなという感じがいたします。議論をしたいポイントというのは幾つもあるんですが、二点だけ、ちょっと気がついた点で、一つは高齢者の所得と資産の問題なんです。
 よく、議論しますと、日本の場合、高齢者はお金を持っている、その高齢者がお金をもっと使うようになれば経済も動いて回っていくんだというような議論があります。世代の資産、金融資産などがどうなっているかというと、確かに高齢者世代というのはほかの世代よりも金融資産を持っているということでございますが、この国民生活白書の分析を見ますと、高齢者の社会でも随分幾つもの変化といいますか、新しい動きもあるなと思って見ていました。
 いずれにしても、六十五歳以上人口が二〇〇〇年で二千二百万、世帯で一千百四十万世帯もあって、しかもその中で、やはりひとり暮らし、夫婦二人だけの暮らしがふえていっているんですね。子供と同居というのがやはりかなり大幅に減ってきているということであります。
 そして、この所得を見てみますと、高齢者単独の女性が平均で百九十三万、男性が二百五十万、高齢者世帯全体で三百二十九万ということなんですが、これをさらに分析した資料、データ、ここでいいますと「平均以下に多く集まる高齢者世帯の所得」ということで、これを見てみますと、三百万以下の所得が全体の六割ですね。所得が二百万以下が、ちょっと別の資料で見ましたら大体四〇%、それから百万以下の方が一五%ということですね。百万以下が一五%、二百万になると四〇%、三百万になると六〇%ということで、少数の物すごくたくさん持っている人がいますので、平均化すると結構高い数字になります。
 こういったことで、ジニ係数を見ると、確かに世代が高くなるほど一に近づいています。一というのは不平等なわけですね。例えば六十歳から六十九で〇・四二五、上に上がって、その上の世代が〇・四四、八十以上になると〇・五四三ということでありまして、やはりそういった格差が所得の中に生まれてきている。
 それから、資産を見ますと、資産はやはり所得と全く同じような状況になっています。資産があれば、所得が低くても資産を崩して生活費に回せばいいという議論が成り立つわけですが、ほとんどこれも同じ状況になっておりまして、資産三百万以下という方がやはり六〇%、これは別のデータを見ましたら、二百万以下がやはり四〇%ぐらいということで、ほとんど所得の分布と同じような資産分布になっております。
 そこで、この状況をどうごらんになるのかということですね。この格差が開いてきているということをどう受けとめるかということなんですが、どのようにお考えでしょうか。
竹中国務大臣 御指摘のとおり、今回の白書におきまして、実は、高齢者の間での所得分配、所得が非常にばらついているということを指摘する、そのファクトを指摘するというのが大変重要なポイントになりました。
 これまでどちらかというと、一般的な認識として、高齢者はお金持ちだと。そういう場合には、家計調査等々で、高齢者が持っている家計は所得が高そうだと。しかし、高齢者が世帯主になってやっているところというのは、高齢者であるにもかかわらず世帯主のままでいるというのは、基本的にやはりお金を持った方なんですね。そういう意味ではバイアスがかかっているのではないだろうかという御指摘が専門家の間からもなされていました。そういった点を幾つか利用可能なデータで補って、今回、高齢者の間でこそばらつきが大きいということを指摘したというのが白書の大変重要なポイントになります。
 では、それを受けて、どのように今後持っていったらよいだろうかということなんですが、分配の問題と絶対的な水準の問題というのを、もう少しその関係を深めていかなければいけないのだと思います。
 ある意味で、長年のいろいろな意味での蓄積がその方その方のいわゆる人材形成になっているわけでありますから、年とともに格差が拡大してくるというのはあり得ることなのだと思います。そのことが所得の絶対水準の問題としてどの程度大きな政策を要する問題になっているのかどうかということまでは今回の白書ではまだ詰め切っておりませんで、そういった今回の事実の指摘を受けてそういった幾つかの問題点を深めていきたいというふうに思っているところでございます。
 そのために、この問題だけではないのですけれども、後から恐らく委員から御指摘が出るのかもしれませんが、今後、高齢者の単身世帯が物すごい数でふえるというような点も、これは私自身にとっても大変ショッキングな発見でございました。そういった人口的な変化を政策的にどのように受けとめたらよいかということを総合的に考えるような、一つのスタディーグループのようなものをつくりたいというふうに今企画しておりますので、そうした中で、委員御指摘のような問題意識をぜひ鮮明に受けとめて議論をしていきたいというふうに思っているところでございます。
横路委員 高齢者を一律に扱って議論できないということだと思うのですね。
 政府税調の方では、例えば年金に対する課税を強化すると。たくさんある人のところはいいわけですが、しかし、今言ったように、三百万以下が六割、二百万以下が四〇%というような中で、これも、そこをよく見て、つまり今の高齢者の生活実態というのをよく見て議論をして制度設計をしていかなければいけない。一般的な、漠然とした議論をベースにして年金の課税強化だという議論に短絡的にはなってほしくないというように思いますけれども、いかがですか。
谷口副大臣 まさに、この一月から開始をいたしております税制論議は、あるべき姿を検討しようということでやっておるわけでございます。
 竹中大臣もおっしゃったような、人口構造の変化だとか、単身者がこれからいろいろな形でふえてくるとか、このようなことも念頭に入れたような議論を今まさにいたしておるわけでございまして、今先生のおっしゃるようなことも、政府税調の中ではそういう議論もあるということでございます。
横路委員 それで、高齢者の所得を見ますと、やはり年金のウエートが高いですね。これは別の資料を見ていましたら、平均でも平成十一年度で六一・四%。この国民生活白書の中でも大体六割ぐらい。所得に占める年金のウエートが高いのですね。
 ですから、やはり年金の持っている重要性といいますか、これから税制、社会保障政策、社会保障政策の中でも年金、医療、介護というものをどういうぐあいに考えていくのか、これから議論になるわけですが、私は、例えば年金、医療、介護というようなことでいうと、年金を強化して、そして医療なり介護の方はそれなりに負担をしていただく、一番まずいのは、年金を下げて医療、介護の負担をふやすというのが一番まずい選択で、それは今までやってきたことなんですけれども、医療、介護を充実して年金をおくというよりも、やはり年金を充実して、あとはそれなりの負担をしていくという制度設計の方がいいのではないかな、私は個人的にそう思っています。
 いずれにしても、やはり年金が所得の非常に大きなウエートを占めているということは十分注視していかなければいけない点だと思いますが、竹中大臣、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 事実の、ファクトの問題といたしまして年金が極めて重要であるというのは、私もそのように思っております。ただ、今後高齢者がふえていく中で、全体の財政のバランスでありますとか、さらには労働市場の問題も含めて、少し踏み込んで立体的に考えていく必要もあるのかと思います。高齢者に対する雇用のシステムをさらに整備することによって、年金以外の、雇用機会、所得機会をふやすということも実はこれは大変重要な問題でありまして、そういったことも含めた、まさに構造的なシステムの改革が必要なのだというふうに思っております。
 今、年金と医療、介護の関係について委員の御意見をお伺いしましたが、医療、介護等につきましては、むしろ歳出を自由に選択できるような形に持っていくというのは、私はそのとおりだと思います。しかし、同時にさらに、高齢者に対する雇用のシステム、雇用機会、そういったことも含めてぜひ構造改革を実現していきたいというふうに考えているところでございます。
横路委員 日本の雇用のところを見ますと、高齢者の人々の労働力率というのは、世界に比べて非常に高いですね。特に今、年金は六十五歳支給開始ということに段階的になっていくわけで、さらにこれは高まっていくのじゃないかというように思いますが、有効求人倍率は大変厳しいということですね。このヨーロッパとの違い、もちろん働くことが好きだというか、やはり何か、ボランティア活動を含めて、自分の生きがいとするという考え方も日本人にはあると思うのですね。
 しかしながら、これほどの大きな、例えばこの白書の中で分析している六十五歳以上の場合、日本は労働力率が二二・六%ですね。アメリカが一二・三、ドイツは二・七、フランスになると一・三ということですから、こういう大きな開きというのはどうして生まれてきているのでしょうか。この白書全体は非常にすばらしいのですが、ただ分析だけしていて、どうするか、どう考えるか、これでいいのか悪いのか、変えていくのか、あるいはさらに進めるのかというところは何も書いていないのがちょっと問題なんです。みんなに考えろということなのかもしれませんが、この辺はどういうぐあいに受けとめておられますか。
竹中国務大臣 今回の白書の目的、性格に関しましては、先ほど申し上げましたように、まず、十分我々自身が認識していないファクトをできるだけ正確に把握しようということを議論の出発点にしております。それを受けて、ではどうするのかということに関しては、先ほども御紹介しましたように、デモグラフィックな変化と経済社会の変化の関係をさらに深めるようなスタディーグループをつくるということで対応していきたいというふうに思っております。
 日本の場合、高齢者の就業率が高いという御指摘。これはなぜか。ちょっと、これは余りに大きな問題で、今すぐ非常に説得的な回答が見つかりませんが、一つの要因は、委員御指摘のように、働くということの価値観。フランス等々ではランティエという言葉がありますが、幸せな人生というのは、一刻も早く利子生活者になって働かなくなることだと。恐らく、日本人は余りそういう考え方を受け入れていないのかなと思います。
 もう一つは、ひょっとしたら、これまで限界税率が非常に高かったですから、若いときに稼ぎだめておいて、例えば非常に高い所得を得てそれをためておいて、その後それを使って暮らすということが、累進構造がきつくて限界税率が高い状況ではそういうのはなかなか難しいわけでありますから、そういった要因も複雑に絡まっていたのかもしれません。
 これは一つの考え方でありますから、今御指摘のような点も踏まえまして、そのスタディーグループで詰めてみたいと思います。
横路委員 この資料の中で、高齢者の人で所得の多い人、例えば二千万以上の金融資産というのは一三%ぐらいおられるのですね。どういう形で金融資産を形成したのかというのは、これはいろいろ見ても余りそういう調査はありません。
 ただ一つちょっと見たのは、一九九七年ですが、JPモルガン証券が、東京都と神奈川と埼玉県を対象に、土地所有者、高額所得者、経営者の金融資産をこういう方法で試算したんですね。まず、固定資産税の評価額が十億円以上の土地を持つ人、それから一億から十億の土地を持つ人、調べてどれほど金融資産を持っているかという調査をしたんですね。
 その結果どうなったかといいますと、十億円以上の土地を持つ人四万四千七百人、大体五万人ですね、この人たちが持っている資産は二百四十三兆円。これは、日本の全体の個人の金融資産が千二百兆円と言っているときですよ。それから、一億から十億までの人も含めると四百兆円。ですから、四百と二百四十三の間が一億から十億持っている人の金融資産だということなんですね。ですから、高い人は大体平均で五十億ぐらいの計算になります、ざっと計算しますと。
 ですから、これはほとんど土地なんですね。まあ土地成金と言うとあれかもしれませんが、多分農地を持っていた方、これが日本の社会の金融資産の上部を形成している。ほかにもいろいろな努力をされてお金をためた方もおられると思いますが。
 ですから、最近、相続税の引き下げの議論が随分ありますが、これは一つのデータで、あと余りないんですね。どうやって皆さん方が財産形成されたかという調査はありませんが、これは非常におもしろい調査だと思います。相続税の議論をするときも十分お考えになってやっていただきたい、私は引き下げには余り賛成できませんが。土地がベースになっているということですね。これは東京と神奈川と埼玉だけですが、多分、全国調べるとほとんど同じ状況があるんじゃないかというように思います。
 そのことをちょっと御指摘をさせていただいて、国民生活白書のもう一つの問題、「夫婦の働き方の現状」というのがありますね。これも全くここで指摘しているとおりだと思うんですよ。夫が外に働いて妻は家庭の中の労働を担うというような状況の中で大体大きい流れとしては生活してきたわけですが、経済環境が変化して夫一人の収入じゃなかなか家計が不安定化する、夫婦ともども働きたいといってもいろいろな問題点がある、その問題点をここで指摘しています。
 これはこのとおりだと思って、例えば男女間の賃金の格差が大きい。日本は外国と違うのはM字型カーブ、出産、子育てでもって一たんリタイアして、今度戻るときはもう正規社員に戻れないでほとんどパートになって戻ってくる。ただその場合も、核家族の場合はパートだけれども、親と同居している場合には親が面倒を見ているからフルタイム労働を継続したり、戻る場合もフルタイムで戻れる人がいる。それから、非常におもしろいと思ったのは、夫の労働時間ですね。残業が多いところは奥さんがパートなんですね。八時間労働で仕事をやっている方の奥さんは割とフルタイム労働だとか、それから、専業主婦と言われる人が非常に急速に減って、もう今は四分の三の人が働きに出ている、専業主婦は四分の一だというような分析があります。
 そこで、きょうちょっと議論したいのはパートタイムなんですけれども、パートタイムの賃金格差というのは、フルタイムに比べると七〇%と大きいわけですね。この中では、それが就労調整といいますか、配偶者手当の問題とかそれから税の負担の問題、社会保険の負担の問題、あの百三万とか百三十万とかというところがあって、そのことがまたパートタイムの賃金そのものを低くしているんじゃないかという指摘がございます。
 いろいろな点があるわけなんですけれども、一つは、骨太方針の中で、私はこれは大いにやってほしいと思うのは、年金や税制度について世帯中心からやはり個人中心に変えていくということですね。これはやはり今までの日本の社会のいろいろな仕組みを変えるという意味では基本になるベースのところだろうというように思います。これはしっかりやっていただきたいと思います。
 こういう日本の状況を踏まえてどのようにお考えなのか、特にこの骨太方針の中の個人へというところというのはどのようにお考えになって、どんなぐあいに進んでいるのか、お答えいただきたいと思います。
竹中国務大臣 御指摘のように、骨太の方針の中では、いろいろな社会保障のシステム、税のシステムを世帯中心じゃなくて個人でというふうに明記いたしました。この考え方は、我々自身が非常に多様なライフスタイルの中で現在生きつつあるし、結局のところ、その多様なライフスタイルを認め合う、そういうシステムをつくるということが、委員少し御指摘になられたパートの労働条件等々を変えていく、それとやはり表裏一体の問題なんだというふうに認識しております。
 個人を中心にやっていくのはいいけれども、具体的にではどうやっていくのかという御質問だと思いますが、これは今議論されている税制等々の中でも、税のシステムそのものを、パターン化された家族構成とか男女の働き方というのを前提にするのではなくて、個人が自由に、まさに個人の選択において働いていってもその生き方、働き方がゆがめられないような形で税制を再構築するということを非常に重要な問題だというふうに認識、位置づけているわけでございます。
 そうしてくると、例えば、さまざまな手当そのものをどのようにするかという議論にもつながっていくわけでありますけれども、今御指摘の問題は、当面はこの税制、さらには社会保障の制度、これも今後続けていかなければいけませんが、そうした中でぜひ制度として実現していきたい、反映させていきたいというふうに思っているところでございます。
横路委員 最近のパート労働というのは、昔はパート労働というと何か単純で易しくて、一時的で補完的だというように言われてきましたが、今はそうじゃなくて、基幹的でかなり専門的で恒常的になっているわけですが、やはり大きいのは賃金格差ですね。
 時間給でいうと正規社員が、これは一九九九年の数字ですか、千三百二十九円、非正規社員が八百八十九円で大体六七%ぐらいということですから、六割から七割ということで、そこにやはり非常に差があります。一九九九年の新入社員の女性を見ると、正規社員が百四十二万で非正規社員が百四十五万ということになっていますし、派遣労働を見ても、東京都の調査ですと八〇%までが二十代、三十代の女性なんですね。年収ベースでいうと、大体三百万のところが一番多い、二百万から三百万というところになっています。
 そうすると、これは悪くすると正規社員の代替労働として使われるということで、よく、本当に働く意欲のある人がその必要性に応じて選択ができて能力が発揮できるような形態としてパートとか派遣労働を言われる方がいますが、実態は決してそうなっていないんですね。
 そこで何が必要かといいますと、やはり同一価値労働同一賃金というか、同じ仕事をしているならば時間当たりの賃金というのは同じにすべきだ。あと、社会保険の適用も同じにすべきだ。まあオランダ・モデルということで議論されています。まあしかし流れとしては、ヨーロッパ諸国、こういう流れですし、この前のアメリカの大統領選挙でブッシュ、ゴアの公約を見ていましたら、ゴアさんの公約の中にこの同一価値労働同一賃金というような政策が入っていました。だんだんみんなやはりそこを認識し始めてきているわけですね。
 企業の方は、世界どこでもそうだと思いますけれども、やはり人件費というのはこのごろですと固定経費扱いじゃなくて、もっと何か柔軟に対応できるようなものにしていこうといういろいろな形の雇用形態ができてきています。それは企業の立場ですが、働く立場からいうとやはりそれでは困るわけでして、ここに同一価値労働同一賃金という原則をしっかりつくってほしいなと思います。
 指摘する人の中には、企業の中に正社員、パート、派遣、アルバイトとかいうような階層ができつつある。もしこの階層が社会の中で固定した階層になってしまったら、これは大変なことになるわけですね。そんな意味も含めて、こうしたパートタイムとの格差をどうなくしていくのか。厚生労働省でもいろいろな議論をして、パートについての中間報告なども出ていますけれども、あの内容は私にとっては必ずしも賛成できるものじゃないんですが、どうでしょうか、この同一価値労働同一賃金、同じ仕事を同じ責任を持ってやるならば同じ給料が払われるというのはごく当然の原則だというように思いますが、どのようにお考えですか。
竹中国務大臣 今のお話の中にも出てきましたが、正規労働という言葉が日本であるわけですね。考えてみたら、正規労働というのはまさにフルタイムで働いてどちらかというと終身雇用的な位置づけの中にいる労働者であって、パートタイムは正規ではないというようなことを言葉自身が意味しているわけですが、そういう言葉があること自体がやはり問題点を象徴しているのだと思います。
 重要な点は、さっき多様な働き方を認めることが重要だというふうに言いましたけれども、パート、契約社員、有期の雇用、そういったものをきちっと社会の中で位置づけていく、社会的な認知をしていくということなのだと思います。
 それをどのように行っていったらよいのか。今の労働慣行そのものが、決して政府が制度を決めたわけではなくて、民間の自由な合意のもとでできたものでありますから、それをどのような形で新しくまさに社会的認知をしていったらよいのか。もちろん、その中で政府がやるべき役割というのは私はあると思います。結果的に、賃金、労働条件等々の面で、パートがいわゆるフルタイムの人たちと遜色ない形で取り扱われて、多様な働き方を社会が認知しているというようなシステムに持っていくことは当然に必要だというふうな問題意識を持っております。
 御指摘のように、厚生労働省等々でもそういった議論がなされているようでありますので、諮問会議の中でも、厚生労働大臣等々とも議論しながら、あるべき姿を探っていくということになると思います。
横路委員 オランダの場合ですと、週休二日労働、三日労働、四日労働がありまして、パートなんですがみんな正規社員なんですね、週休四日労働も含めて。それは御指摘のとおりだろうと思います。
 そこで、だんだん時間がなくなってきましたが、雇用というのは、特に安定した雇用というのは、経済社会の活力だとか、あるいは社会が安定するための一つの大きなかなめなわけです。したがって、産業だとか教育だとかあるいは福祉などの社会政策というのは、やはりパッケージとして遂行していかなければいけませんし、雇用の戦略というのが非常に大事だと思うんですね。
 男性にとっても女性にとっても、職業生活というのは単に生計の維持だけではないわけですね。仕事を通じての能力の発揮とか、社会への貢献とか、社会への連帯感とかいうことが必要なわけで、そういう職業として継続的に営まれる人間の活動の基本だというように思うんですが、経済財政諮問会議の議論を聞いてちょっと気になるのは、サプライサイドの強化がずっと議論をされてきて、どうも一人一人の生きている人間、つまり、国民生活白書の中に、きょうはもう時間がないからやめますが、失業した家庭はどうだとか離婚した母子家庭はどうだとかいう分析がずっとあります。まさに経済というのは、そういういろいろな事情を持っていろいろな活動をしているそれぞれの総体なわけですね。
 ですから、ぜひそこの、まさに生活白書の中で指摘しているような生きた存在というのをやはり見て議論してほしい。単に供給する側をどうするかというだけの話では、決して今の社会の問題というのはないわけなんですね。そこをひとつ大臣に御要望いたしたいと思います。
竹中国務大臣 委員御指摘の点は、私たちも十分に認識しているつもりでございます。経済財政諮問会議で経済と財政の問題を扱うという視点になると、生産性という言葉が出てきたり人材という言葉が出てきたりするのでありますけれども、さきの「改革と展望」では、私たちが目指すのは、結局のところ人を大切にする社会なんだ、その人というのは、経済から見るといわゆるサプライサイドの労働力であるけれども、一人一人が生きがいを持って、この国に生きてよかったと思えるような社会にすることであるということを、今まさに委員が御指摘のような問題意識を踏まえて明記をさせていただいたつもりでございます。
 それでも、経済財政諮問会議の議論というのはどうしても経済に偏るものですから、それで先ほどから何回も申し上げていますように、そのデモグラフィックな変化を踏まえて、構造改革を社会的な人の面からより深めたいということで、今度スタディーグループの立ち上げを考えているわけでございますので、委員御指摘の点は十二分に肝に銘じて、さらに議論を深めたいというふうに思っております。
横路委員 失業者が三百五十万ぐらいですね。それから内閣府の調査ですと、就職したいんだけれどもあきらめちゃった人が大体四百万人ぐらい、フリーターが二百万ぐらい。学校の卒業を見ていますと、やはり毎年毎年大学生で二万五千から三万ぐらい、短大生でやはり二万前後、高校生も二万八千ですか、そういう就職できない人たちがいるわけです。若者の中に失業が広がっていって、潜在的失業率は一〇%ぐらいあるんじゃないかと思うんですね。
 日本の社会というのは今、犯罪がかつてないほどふえています。自殺もふえています。ホームレスもいるということで、フランスでルペンが登場したというのは非常に人ごとでないように私にとっては思えるんですね。社会的にやはり不満や不安というのが非常に中にたまってきている社会じゃないかというように思っております。
 そんな意味で、やはり早く雇用、経済を安定させる、倒産と失業をどうやって減らしていくのかというのは、ある意味では政治の仕事でございますので、経済財政諮問会議もそういう全体のところを見てひとつやっていただきたいというように思います。
 時間がなくなりましたので、最後に石原大臣に一つだけ。
 ちょっと私のところに意見を寄せてきた人がいまして、総合規制改革会議、委員の方、専門委員の方、それからいろいろな事務の仕事をするために人々が集まってやっておられるわけですね。民間から随分たくさんの人が集まってやっています。それはいいと思うんですね。お互いにいろいろと官とも交流しながらやっていくということについては別に異存はありません。
 ただ問題は、企業から来た人がその企業にかかわる規制改革、つまり企業にとってプラスになる規制改革を担当してやられますと、そこでやはり周りの人間というのは何だということになって、規制改革そのものに対する信頼度合いというのはやはり薄れていくんじゃないかというように思います。
 これは三月は三月で閉めて、四月からまた新しく事務局も含めて体制をとってやられるということでございますので、経団連の方から十人ぐらいの人が来ているようでございますが、それはそれで結構なんですが、担当する仕事を、自分の企業を背負って、どうも外から見ていると、何だあれ、企業の代表でやっているじゃないかと思われるような担当のセクションにつけないように、そこはひとつ配慮してやられた方が、いずれにしても改革を進める上ではいいんじゃないんだろうか。具体的には申し上げませんが、おわかりだと思いますので、そこを十分これから、今年度は配慮してやっていただきたいということをお願いを含めて御質問させていただきます。いかがでしょうか。
石原国務大臣 横路委員が御指摘のとおり、総合規制改革会議の事務スタッフは二十八名中十名が企業からおいでいただいております。委員が既に御指摘されましたように、民間の方々の意見を聞く、また経験を聞くということは、規制改革を進めていく上で非常に私も重要だと思っています。
 そこで、委員のような御懸念が提示されたわけですけれども、すべて民間から来ていらっしゃる方は非常勤の一般職国家公務員として起用されておりますので、国家公務員法が適用されます。すなわち、国民全体の奉仕者として、公共の利益に勤務し、服務規程に従事する、そういうふうになっておりますので、委員の御指摘も十分踏まえさせていただきまして、そういう御懸念が出ませんようにこれからも取り組ませていただきたいと考えております。
横路委員 それはもちろん当然のことですが、担当する仕事の分野を誤解を受けないような形でぜひやっていただきたいと思います。
 終わります。
大畠委員長 これにて横路君の質疑は終了いたしました。
 次に、山元勉君。
山元委員 民主党の山元でございます。
 きょうは公務員制度改革についてお尋ねをしたいわけですが、政府が十二月の二十五日に閣議決定をされました。この閣議決定について私どもは幾つかの問題を持っています。それまでの経過、手続の問題が一つ、もう一つはもちろん内容の問題についてです。
 手続については、各府省やあるいは人事院と十分協議されたか、あるいは当事者である職員組合の皆さんと十分な誠意ある協議、交渉をされたか。それが行われなかったと私どもは思っています。自民党の行革本部の方と、そして行革推進事務局の方で密室で決められた、極端に言えばそういう状況が続いた。
 このことについては、前の予算委員会でも我が党の中沢議員やあるいは枝野議員が質問をして指摘をしておりました。私も内容は承知をしておりますけれども、そのことについて、満足できない部分について、別の機会にお尋ねをするとして、きょうは内容の問題についてお尋ねをしていきたいというふうに思っています。
 最初に、この大綱、基本理念といいますか、しっかりとしたスタンスがなしにお手盛りの大綱であったということです。公務員制度というのは、もともと行政のあり方、社会のあり方、ひいては国民生活に大きく影響するものです。この公務員制度について、戦後五十年間ずっと論議をされながら今に至って、この五十年の社会の変化から私も改革は必要だ、そういうふうに認識はしています。
 とりわけ、例を挙げるまでもありませんけれども、例えば鈴木宗男氏のあの政治と行政の癒着の問題だとか、あるいはBSEの問題で行政のあり方あるいは責任のあり方、こういうことについては大変な国民の不信を買っているわけです。そういう今のあり方というのを改革しなければならない、これは当然のことだというふうに思っています。ですから、政治改革だとか行政改革とあわせて公務員制度改革も同様の視点でやはり改革を進めなきゃならぬ、そういうところに至っているんだということについては私も承知をしています。
 しかし、こういう問題ですけれども、この大綱の中には、国民本位の行政だとか、あるいは国民の立場からの公務員制度改革が必要なんだということは、言葉としては何回も出てきているわけですね。しかし、今の公務員制度がどう問題を持っているのか、だからこうするんだというきちっとした改革をすべき必要な現状と、そして改革の視点というものが明確になっていない、いわば理念がない改革案だというふうに私ども思うんです。
 そこで、大臣に、大臣は今の公務員制度についてどういう問題意識を持っておられて、何をこそ変えなければならない、こういうふうにお考えか、まずお尋ねをしたいと思います。
石原国務大臣 山元委員の今の御質問は大変根源的な問題だと思います。
 まず、現在の公務員制度が抱えている問題点、大きく言って二つ三つあると思うんですが、その根本は、時代の変化に対して、時代の変化が急激で、過去に例を見ないことが起こってきていることに対して、それに見合った政策を企画立案することがなかなかうまく機動的にできなくなったという問題が一つあると思います。
 その一方で、国民の皆さん方の大きな批判というものは、過去の五十年間の成長というものにあぐらをかいて、過去の先輩方がやった政策というものを踏襲していくいわゆる前例踏襲主義や、これはもう年度末が来ると必ず苦情あるいは御批判が出ます単年度予算による予算の消化主義、こういうものは時代の要請として改めていかなければならない。その改革が、私どもの大綱の中で示させていただいた、「国民本位の行政を実現する」という言葉で示させていただいたわけでございます。
 また、委員が御指摘のとおり、戦後五十年間、実は大きな、抜本的に改めるような公務員制度の改革というものは行われてこなかった。そして、九〇年の冷戦終結に伴って、好まざると好むとにかかわらず、自由な競争が国境を越えて起こるようになってきた。
 これまでの行政というのは、どちらかというと生産者の方にどこの面でも目が行っていましたけれども、これからはやはり消費者であり、国民全体に目が行き届いたような行政にしていかなければならない。こんな基本的な理念を持ちまして、私どもは、真に国民本位の行政の実現を図るために、公務員の制度も、民間企業では当たり前な能力、業績を反映した制度に改めて、公務員の皆様方自身が意識を変えていただく、あるいは行動自体を大きく改めていただく。そういうことによりまして、今委員御指摘の問題、具体例を出されましたけれども、そのようなことが起こらないように行政のあり方自体を改革するというところが、今回の改革の私どもの考えるところの理念であるわけでございます。
山元委員 いや、大臣、私は、よく言っていた橋本行革という言葉がありました。橋本内閣のときからずっと行革をやってきて、今大臣がおっしゃったような、国民本位の行政だということをおっしゃってきた。国民の皆さんのニーズにこたえる行政だ、こうおっしゃってきた。それが今来て、本当に国民の皆さんがあきれるような、鈴木問題でも、BSE問題、その他の秘書の問題でもそうですが、そういうふうにゆがんできている。
 そういう今の時点で、橋本行革のときからずっと同じ線上での改革というふうに、今の大臣のだったら、前からずっと聞いてきたことです。ですから、今これをやったら今までの路線を転換してきっちりと今おっしゃることができるんだということが見えないと思うんです。もう一遍。
石原国務大臣 橋本行革というものが今回の行革議論の発端にあることは、私は否定するものではございませんし、そして、その継続ということであるならば、政権与党というものが自民党を中心に運営されてきたということで変わりがない。
 では、なぜ今委員御指摘のような問題がこのように出てきたのか。これまで氷山の下に埋もれていたような問題がここに来てなぜこれだけ出てきたかというと、やはりこれも世論が既に指摘をしていますように、政と官の結びつきというものが起こってきた。そして、官の側も政を利用して、政の側も官を利用して、一部の利益を代表していた。すなわちそれが、国民全般に目を向けたものではなくて、自分の所管するところのものにだけ目を向けている。そういうものが山積してきて、私は結果としてあのようないろいろな、委員御指摘のような鈴木問題あるいはBSEの問題が出てきた。
 その根幹にあるのは何かといったら、やはり責任をとらない。責任をとらなくても物事が、政策として判断を間違ったとしても、その人の処遇というものがほぼ改善されることなく違うところに移っていくといったような制度にも一つ起因しているんじゃないか。それを改めていこうということで、そういう公務員の方々、少なくとも、今委員が御指摘の事件にあって公務員の側にも当事者がいたわけですから、そういうものが起こらないためにどうするかということでこの改革がなされていると御理解をいただきたいと思います。
山元委員 今大臣がおっしゃることは、筋としてそうです。戦前からずっと続いてきた公務員の、例えば特権主義だとかあるいは閉鎖的だとか中央集権的だとか、こういうものを壊していって、本当に国民との間に垣根のない公務員制度をつくるということが大事なんだろうというふうに思うんですね。
 しかし、この大綱は逆に、例えば霞が関とキャリア官僚の権限を強める方向を向いているのではないか。キャリア制度を廃止するのではなしに、幹部育成システムを制度化していく、キャリア制度を強化していく。
 あるいは天下りについても、私どもは、これはもう禁止をすべきだ、きつい規制をすべきだ。人事院もそういう努力をしてきた。けれども、これは禁止ではなしに、逆に大臣承認という緩やかなものにしてしまった。現に、あの出たときのマスコミ、新聞論調というのは、これは大臣も十分御承知だというふうに思います。例えば、毎日新聞社説「「お手盛り」にしてはならぬ」という見出しですよ。「国民の願う霞が関改革とはかけ離れたものだ。 天下りがその典型だ。」あるいは、これは産経新聞の「お手盛り運用で道誤るな」と、お手盛りという言葉が社説の見出しにつけてある。そういう改革大綱であったというふうに国民の皆さんは見ているんです。
 ですから、大臣が今おっしゃるようなことが、そうだ、これから公務員制度が変わっていく、公務員の姿勢が変わっていくなということには少しも受けとめていない。キャリアの問題にしても、天下りの問題にしても、まさにお手盛り、お手盛りという言葉を使う新聞の社説が出てくるような、そういう改革案であったというふうに思うんですが、大臣、いかがですか、この社説は。
石原国務大臣 ただいま山元委員が御指摘されたような社説は読ませていただきまして、私は、十分説明が行き届いていないと。なぜかというと、現行の制度でやってきて、現在、さっき委員が言われたような事件が、今氷山の一角としてか、あるいはもともと下に大きなものがあってうみとして出てきたのかはわかりませんけれども、起こっている。今のままで起こっているということは今の制度に問題がある。それが今回の抜本的な改革のスタートラインにあるわけであります。
 ただいま委員は、二件の点についてのお手盛り批判というものを出されました。分けて、若干お時間をちょうだいして所見を述べさせていただきたいんですが、私は、やはりキャリアシステムというものは、先ほど言いましたように、これだけ世の中が複雑、高度化してきて、ボーダーレスの時代になって自由な競争が国境を越えて行われるような中に、ある程度の専門知識を持った集団というものは養成していく必要があると思います。
 しかし、その集団をどうやって養成していくかというところが実は問題なんだと思います。司法制度も変わりますし、大企業の側も、これからのこのボーダーレスの競争に勝つために優秀な人材を確保しようと今必死になっている。そんな中で、国家国民に奉仕するという大方針を持った国民の奉仕者たる公務員の中に優秀な人材をどうやって確保していくかというのは、これから国家の存続にもかかわる重要な問題だと私は思います。
 そんな中で、そういうキャリアシステムというものを集中的に育成をして人材教育を行う。もちろんこの中にも、キャリアが起こしている不祥事というものがあるわけですから、大きな問題がある。
 そこで、やはりこれからは、採用試験によって入ったときの順番で、こいつが部長になるんだ、こいつが局長になるんだとか、あるいは一年年次が違うから次は何年次で次官になるみたいな批判があるということにも十分こたえるように、やはりそういう人たちといえども、課長補佐程度までは出世はハイスピードでいくにしても、しかしながら、そこから先は採用区分にとらわれないで、本当に国家国民に奉仕するといったような人が省庁の中心的な役割を担っていく。イギリスでは、ファーストストリーマーといって、委員既に御存じのことだと思いますけれども、課長補佐ぐらいになる年齢が、早い人は四十歳ぐらいで遅い人は五十三、四歳、そういうような差をつけている。そういうものも入れていこうと考えております。
 もう一点、天下り、これは委員御指摘のことに私もほぼ賛同いたします。私も、わたりなどというものがあるのはこの職につかせていただきまして初めて知りまして、たしか特殊法人から特殊法人への役職の連続は遮断したはずなのにと思っておりましたら、間に民間企業すなわち子会社を入れて、あるいは公益法人を入れて、特殊法人を二つ経験するみたいな方が現実にいらっしゃるというものに直面しまして、十分にここの部分は、委員の御指摘のとおり、この批判にこたえるものにしていかなければならない。
 そこで、情報公開というのが大きな武器になりますし、橋本行革の結果できたこの内閣府というもの、内閣自身が総合調整を行うことによって、委員が御指摘されたような国民の皆さん方の批判にこたえていかなければならない。今までのままでは、結局何も変わらない。ですから、変えようと改革がスタートしたということを御理解いただきたいと思います。
山元委員 順番に質問したいと思いますけれども、社説について、よく説明していないという切りつけ方をされましたけれども、これはやはり、世論というのはしっかりと真摯に受けとめて、もう一遍考える、立ちどまるということが大事なんだろう。少なくとも、今申し上げましたような社説というのは、おもしろ半分に書いているとは私は思わぬです。ですから、そこのところは世論としてしっかりと受けとめていただきたい、立ちどまって考えていただきたいと申し上げておきたいと思います。
 そこで、キャリア制度の問題ですけれども、能力等級制度というのをつくられた。今大臣がおっしゃったように、力ある者はどんどん、こうおっしゃる。けれども、一方で、入り口のところで人数もふやして1種の合格者をつくって幹部候補生をつくろうという制度をつくられるわけでしょう。
 本当に公務員が全体一緒になって、二十一世紀にふさわしい公共サービスはどうなんだ、行政はどうなんだということを考えるような、そういう集団をつくるということでいうと、入り口のところで1種の合格者をふやして幹部候補生だというシステムと能力評価制度というのは矛盾するでしょう。
 今大臣がおっしゃったように、きっちりとそのことについては専門的な知識も持っていただいてというような、そういう人たちを育てていくという意味でいうと、反対のことをやろうとしていらっしゃる。相矛盾することをやろうとしていらっしゃる。だから、私は、どっちが大事だといったら、やはりキャリア制度を廃止すべきだ。基本的に廃止をする方向でなければ、育成制度だとか、あるいは1種の枠をふやすというのは逆行だというふうに思うんですよ。大臣、いかがですか。
石原国務大臣 その点については、冒頭申しましたように、委員のお考えは、廃止すべきであるとお考えのようでございますが、私は、やはりキャリア制度の抱える問題点、先ほど事例を出させていただきましたけれども、採用年次によって決まったり、最初に入った成績によって、あいつが次官になるんだ、局長になるんだといったような長い年月の弊害、悪癖というものは取り払っていかなければなりませんけれども、集中的に教育して、この国を担う、行政を担う方を育てるということはやはり必要なんじゃないか。
 しかし、採用区分によって、いつまでもその特権意識に、これもある種の特権意識があるという批判もありますので、それに乗っかって、自分は審議官に絶対なれるんだ、課長になれるんだというようなことはこれからはやはりだめで、採用区分にとらわれずとも、優秀な人は、そして国家国民に奉仕するという人は部長にも局長にもなれる。局長になったというのがニュースになるような国であってはいけないと考えております。
山元委員 やはりこれは全然意見が違うというふうに思います。
 公務員全体が、皆さんが、それぞれ知識を磨いたりあるいは判断力を磨いたりして本当にいい行政、いい公共サービスをつくり上げていくということでは、入り口での1種枠拡大というのは私はよい効果を生んでこない。採用されたときに、僕は2種だ、3種だという人と、僕は1種だというのとは、意識が違うでしょう。だから、このことはこれから検討していただきたいということで指摘をしておきたいと思います。
 それから次に、もう一つおっしゃいました天下りの問題です。またもう一遍新聞論調を言いますけれども、社説で「天下りが緩和されただけでは? これで真に実効ある改革が実現するだろうか。」というような社説の見出し。「天下り「原則禁止」で改革進めよ」と。
 実際に、今まで最高のときには三百二十人ほど天下りという年度もあった。けれども、ずっと絞ってきて、そして四十一名というのが二〇〇〇年度です。二〇〇一年度は、少しそういう風潮が出てきたら、途端にふえて六十九名ですか、どっとふえているんですね。
 これだと、なおふえるんですよ。今の大臣のおっしゃりよう、あるいはそういう姿勢では、なおふえる。そして、それがきっちりと人事院の承認ではなしに、各大臣が、予算と権限を持っている大臣がどんどんと予算と権限を、背負わせてというのはおかしいかもしれませんけれども、持っていく人、天下りをつくっていくということについては、私はやはり間違っている。ここのところで、ふやしただけだという、あるいは原則禁止で改革をすべきだという世論というのはしっかりと耳を傾ける必要があるだろうというふうに思います。
 そこで、なぜこれだけ天下りが多いのか。私も数年前にこの内閣委員会で主張したことがあった。どうしてもキャリアの人は、五十歳を超すと、超さない人でもしりが浮いてきて、どこへ行くんだと。これは、よく言われるようにピラミッド型ですから、ずっと減っていくわけですね。だから、五十歳前後からもう腰が浮いて天下りを探さぬとならぬような、そういう今の公務員制度というのは間違いだ、大弱点だというふうに私は申し上げたんです。形でいうなら台形だ、ピラミッド型でなしに台形だ、途中で昇給がストップする、カーブが折れ曲がってこようと、やはり長い間のそういう知識や能力を持っている人たちを五十歳前後でしりを浮かさせてしまうようなキャリアの制度というのは間違いだというふうに私は言ってきました。
 このことについて、大臣ばかりじゃなんですが、人事院はどう考えていらっしゃるのか。今のピラミッド型、あるいは私が言う台形型、こういう発想でいうと、今度の天下りについての制度改革を人事院はどういうふうに考えていらっしゃるか、お伺いします。
小澤政府参考人 天下りの問題でありますが、これから、一方では高齢化社会になるというような状況があるわけで、そういう中で天下り問題というのを解決する、これにはやはり在職期間を長期化する必要があるんだろう、公務の中でもって能力をどうやって活用していくかということが重要だろうというふうに考えております。
 こういう基本的な考え方に立ちまして人事院は人事院勧告等で提言しているわけでありまして、具体的な、これをどうやって進めるかというようなことを提言すると同時に、各府省に対しましては、こういうような考え方で取り組んでもらうようにお願いしておるということでございます。
 在職期間の長期化、これを推進するというためには幾つかの条件整備が必要なわけでありまして、先生御指摘のように、ピラミッド型が維持できない、それにかわって、恐らく複線的な昇進管理というような方向に人事システムを再構築していく必要があるだろうということであります。
 これを実現するためにはいろいろな具体的な問題があるわけで、昇進年齢をどういうふうに引き上げるか、それから一つのポストに在職期間をどのぐらいにするか、あるいは行政の複雑高度化に対応するためにスタッフ職を充実していく必要があるだろう、この充実していくためには給与体系も見直さなければならないというような問題もございます。またさらに、各府省ごとにいろいろな事情がありまして、どうやっていくかということについてはそれぞれの事情があるというようなことで、それを解決するためには、人事院として、提言として、まず政府全体で在職期間の長期化というような大方針を決めまして、その大方針のもとに、それぞれの府省がどういうふうな計画を立ててやっていくかというようなことが必要だろうということで、まずもって政府全体でそういうような方針を決めるということが一番重要な点だろうというふうに考えております。
山元委員 よくわからぬ。
 今まで人事院がやってきた仕事を今度は各省の大臣がやる、こういうことになるわけでしょう。そして、私が今言ったような心配がある。
 そのことについて、例えば総務省、おいでいただいているんですが、これは、前に公務員制度調査会があって、そこのところでこのことについては指摘されてもいるわけです。天下りがいいことではない、だから減らしていくためにはどういう仕組みをつくったらいいのかということについては、公務員制度調査会で論議をされて答申が出ている経緯があるんですが、総務省はこのことについてどうお考えですか。
若松副大臣 公務員制度改革については、総務省も今言った研究会をやっておりましたが、もう一つ、人事院の存在そのものでしょうか。いわゆる事前チェックという、例えば組織機構なり人事制度の改革なり、基本的にはほとんど人事院のチェックを受けていた。その結果どうしても人事制度が硬直化してきた。その結果さまざまな公務員の不祥事があった。そのために今回、先ほど石原大臣からも御説明がありましたような、やはり時代の変化に対応する成果、能力主義、また信賞必罰主義、こういったさまざまな議論があるわけでありますが、やはり事の本質は、どんな制度をとっても必ず一長一短あるんですね。
 今回、そうはいいながらも、時代変化というものが本当に重要な要件という認識をもとに、昨年の十二月に閣議決定されました公務員制度改革大綱、やはりここで一つの考え方を示しまして、総務省としても、大綱の考え方をもとに今内閣と一緒にこの公務員制度改革に取り組んでいる、そのような状況でございます。
山元委員 端的に言って、石原大臣、今まで人事院の承認制度であった、今度は大臣承認制度に変わっていく、こういうことなんですね。一体、人事院の今までのやり方にどこに問題があってこうしなきゃならぬ理由というのは、明快に言うと何ですか。
石原国務大臣 それは、ただいま委員が御指摘されたように、二〇〇〇年度は四十人ぐらいまで減ったんですけれども、これは人事院の承認でありますから、各省から出てくるものを客観的に人事院が、基準を満たしていれば認めざるを得ない。その結果、こういう御時世にもかかわらず、現行制度で六十九人と、三十人近く一遍にふえてしまった。こういう問題をどういうふうに是正していくのか。それはやはり内閣全体で責任を持っていかなければならないんじゃないかということで、今回の改革は、人事院の方には承認基準の設定や承認をゆだねる今の制度をやめまして、内閣自身が明確な承認基準を定めて、ですから承認基準を厳しくするわけですね、定めて、内閣自身の総合調整のもとに関係府省庁の大臣が責任を持って再就職の承認を行う。
 では、委員が御指摘のように、部下がこれを認めてくれ認めてくれと言ってきて、大臣がもうしようがないとめくら判を押すような危険をどうやって回避するかというと、やはり情報公開、だれだれ大臣がこれだけの天下りを認めましたよ、こんなに去年に比べてこの大臣になったらお手盛りでふやしましたよ、そういう情報公開をすれば、私は、真っ当な大臣であれば、去年よりもことしが、自分が大臣に就任して天下りの数を、よし、目つぶってお手盛りやというようなことをやる大臣は絶対出てこない。すなわち、責任の所在を明確化する仕組みというものが天下りでは必要なんじゃないか。
 これまでやはり天下りで一番批判が多いのは、後輩に電話して、おい、あの事業頼むぞといったようなことを言ったり、予算がある省庁であったら、事業を一緒に持ってお土産、こういうものは今度は刑事罰の対象にする、こういうふうに二重三重に天下りの批判にこたえようとなっております。
 そして、冒頭委員が御指摘された台形型、これは非常に重要な御指摘だと私は思います。そして、委員が御指摘されたところが、私は非常にやれればいいなと思ったのは、いわゆる給与のピークを六十歳に持っていかないで下げれば台形型というものができるわけですね。どんどん六十まで給料が上がるような仕組みで台形というのはなかなかできない。でも、二〇〇六年に日本の人口のピークを迎えて、その後どんどん人口が減っていって高齢化率が高まっているという段階においては、やはり公務員の方が退職年齢の六十歳にできる限りいられるような仕組みというものを考えていくということは非常に重要じゃないかというような印象を持ちました。
山元委員 台形で、給料を下げるというようなことだけに乗ってもらったら困るわけですけれども。
 実際、そういう必要があるんだろうというふうに思いますし、四月の五日に連合の会長と小泉総理とが会見をされて政労会見をやられた。その中で小泉総理は、六十歳まで勤められるシステムをつくる必要がある、こうおっしゃったというんですね。これはまさにそのとおりだというふうに思います。そこのところは大臣も御承知をいただいているんだろうというふうに思うのですね。
 そうすると、そのことを今小泉総理も言っている、だから事務局は担保するんだということになれば、今のような流れではなしに、天下りは抑えて勤務年数を高くするんだ、こういうのが見えてこなきゃいかぬのですが、この改革大綱では全然見えてこないわけですね。大臣は、各大臣の責任で天下りについては減らしていくんだ、こうおっしゃる。けれども、世間一般はそう思っていない。天下りを甘くしたのと違うか、緩和されただけではないか、そういうふうに世間はとっているのですが、大臣、この総理の発言と今の方向とは矛盾しないかどうか、いかがですか。
石原国務大臣 くどいようですけれども、現行の人事院の基準で、基準を満たしていれば人事院は客観的に公正に判断しなきゃいけないから、現行の制度ではふえちゃうわけですね。
 ですから、内閣で承認基準を厳しくして、さらに関係府省の大臣がそれを認めるわけですから、もっと政治家にとっては身近な問題になるわけですね。何とか大臣が何とか省の大臣になったら前の大臣よりも二十人も省庁の天下りがふえたぞ、そうしたら、その大臣はやはり説明がつかないと思うのです、厳しい基準を内閣でつくって。ですから、今よりも責任が明確になって、もちろん大臣の責任というものは重くなりますけれども、私は抑制されると考えております。
 そして、総理がおっしゃった六十歳まで働くことができる環境をつくるというのは、私もそのとおりだと思う。また、山元委員が御指摘された台形型というものを目指すというのも、方向としては私は正しいんだと思いますけれども、これは両論あると思います。
 高齢化社会ですから、専門的知識を持った人のノウハウというものを、六十まで限りなく国家国民に奉仕するという志を持っている人は公務員として絶対働いていただかなければならない。しかし、先ほど冒頭申しましたように、コンピューターの進歩というのは日進月歩で、もう本当についていくのがなかなか難しい。それぐらい社会の変化が激しい中で、若い人をやはりいい場所に、機動的にそこにつかせて仕事をしてもらうということも必要である。この両面から考えて六十歳まで働ける環境というものをつくっていかなければならない。
 委員は、給与はだめよと言っていましたけれども、私は、やはり全体的な給与がこれから上がっていくような形で定年制で六十歳まで働くようにしますと、また、何で公務員の給与はと。民間ですと、やはり五十六歳ぐらいがピークになって、その後は、六十歳まで会社にいるにしても給与は下がるし、あるいは子会社に出ますと給与は下がるわけですね。そういう方々からの批判というものにもこたえていかなければならない。
 国民の信頼を確保し得るルールを確立すべく、これからも努力をしていきたいと考えております。
山元委員 石原大臣も大臣ですから、大臣が良識を持ってチェックをしていく、こういうふうにおっしゃっているわけですけれども、私は、新聞のマスコミ論調に乗るわけではありませんけれども、心配だというふうに思っています。
 ですから、これからはそのことが本当に、例えば六十九人でしたか、それがどんどんと減るように、あるいは、確かに六十歳から後どうするか知らぬぞということになかなかならぬというふうに思う。けれども、六十歳まで折れ曲がってでも勤務を保障していくというのとあわせて、そこのところは厳しいチェックがないと国民の信頼は得られないというふうに思います。
 その信頼の問題ですけれども、この大綱ができるいきさつについて、申し上げないと言っていたのですが、やはり心配なのは、この大綱がつくられてくる経緯の問題です。
 これは、予算委員会でも我が党の委員も相当、一部の有力議員と一部の官僚との密室での合作だ、こういうことで、雑誌「選択」の記事の問題です。これはもうここでくどくは言いませんけれども、改革ゆがめる鉄面皮云々とか、あるいは言いにくいけれども、行革本部石原は蚊帳の外、こういう記事が出てくる経緯というのは、一部の自民党の有力議員と一部のキャリア官僚との合作であったというふうに指摘されているのです。私は、こういう情報がなかなかないですけれども、この「選択」の雑誌なんかしっかりと書いてある。
 だから、そういう経緯があるとすればゆゆしい問題だというふうに思います。誤った政治主導でこういうことが行われていって、将来そのことが改革に影を落としていくということになってはならないというふうに思うのですけれども、もう一遍、これは大臣、予算委員会でもお答えになっていますが、こういう「選択」の記事、一部の有力議員と一部のキャリア官僚とが自分たちの都合のいい改革案をつくったんだ、そのことは今の天下りも含まれるというこの報道についてどういうふうにお考えか、もう一回。
石原国務大臣 その点につきましては、たしか予算委員会であったと思いますけれども、かなり議論になったと記憶をしております。若松副大臣の名前を出して恐縮なんですが、若松副大臣は、副大臣になられるまでは公明党の行政改革の担当責任者でございまして、若松副大臣にも聞いていただきたいと思うのですけれども、私は、若松さんとかなりいろいろな局面で議論をさせていただきました。
 何が言いたいかと申しますと、与党三党でこの問題も幅広く意見交換を行って取りまとめてまいりましたし、内閣官房の行革推進事務局が中心となって、各府省との合意のもとに閣議の場で決定いたしましたので、もし仮に報道されているようなことがあったとするならば、その担当している省庁あるいはそれに反対する各省庁が、こういうことがあったからおかしいんじゃないか、そういう意見が出ると承知しておりますが、そういう事実は与党間あるいは各府省間でもございませんでした。
山元委員 この公務員制度の大きな改革です。いわば、国家百年の大計にかかわる問題だというふうにも思います。そういう大きな日本のこれからの行政のあり方、公務員のあり方、そういうことについて影を落とすようなことがぼんぼこぼんぼこと出てくる、そういう今の状況というのは不幸な状況だというふうに思いますよ。すっきりと国民の皆さんが信頼できて、公務員制度変わっていくなということではなしに、各社説が大変きつい評価、批判をするという今のありようというのは、何回も言いますけれども、担当大臣としてしっかりと耳を傾けて、そういうことがやはりそうかということにならないように努力をしていただきたいとお願いをしておきたいと思います。
 次に行きますけれども、人事院が今までやってきたこと、人事行政、公正な人事をやる、あるいは今の天下りなんかでもそうですけれども、そういう機能、権限というのを大幅に削って、各省の大臣にその人事管理権を付与するあるいは拡大をしていく、こういうことになるわけですけれども、今までそういう独立、専門の機関として位置づけられてきた人事院がそういうふうに、弱められていくと言うのは語弊がありますけれども、相対的に弱まるわけです。
 そういう状況というのは、私は中立公正な人事の行政あるいは行政のチェックということについては大変危惧を持つのですけれども、大臣、今まで人事院が持ってきたことあるいはやってきたことについて、端的に言って、人事院に何が問題があったのですか、だからこういうことはやらせておけない、こっちがやるんだ、まあ言い方は悪いですけれども、そうなったのですか。
石原国務大臣 人事院は、やはり事前承認が中心であったと思います。今行政改革のポイントは、車検制度がよく例に出されますけれども、事前検査から事後チェックに変わってきた。これからの人事行政というものも、機動的、弾力的に運営していくために、また、ここは委員と意見が分かれるんですが、委員は政治家の大臣を、与党の大臣を信用できないということになっておりますので、大臣がいろいろやる、マネジメントすることに批判的だと思うんですが、やはり私は、これからは内閣が責任を持って承認基準等々を決めて各大臣が責任を分担して行う、人事マネジメントを行うということが不可欠だと思うんです。
 しかしながら、人事行政の企画立案をこれまではどちらかというと、丸投げという言葉が悪いかもしれませんけれども、人事院に大きく依存いたしまして、その運用も頼みますよと。人事院による事前承認制の規制とか人事管理に対する意識が不足していましたので、関係府省庁も十分責任を持って行ってきたとは、私はやはりこのマネジメントに関して言うと言いがたい。
 今回はやはり、さっきから申しているように、関係大臣が、その所管している大臣が責任を適切に果たして人事・組織マネジメントをできるようにして、その結果としてこれまでの人事院による事前承認等の諸規制を見直す。その一方で、委員が御指摘のように、やはり人事院の中立公正性をどうやって担保するのか、ここにも知恵を絞りまして、それはなぜかと申しますと、職員の方々の利益の保護、人事行政の中立性、公正性。
 ですから、人事院の方には、これまでどおり給与等の勤務条件の設定に適切に関与してもらうほか、あらかじめ内閣で定めた基準のもとで人事管理権者に対して、すなわち主任大臣に対して人事行政の改善に関する勧告、こういうものもしていただきますし、事後チェックを行うなどして人事院としての機能を適切に引き続いて発揮していっていただきたい。言ってみるならば、内閣と人事院の機能を今回の改革は再整理しようというものであって、人事行政の公正性というものには配慮させていただいていると考えております。
山元委員 そうすると、人事院が持っていた、公正中立な人事行政とそして労働基本権を剥奪する代償措置としての機能を果たすという二つの機能があったと思うんですけれども、今のように、中立公正な人事について大臣は配慮するとおっしゃったけれども、明らかに人事院のそういう力は落ちている、機能は落ちているというふうに思うんですよ。そうすると、代償措置としての機能も相対的に落ちていくというふうに、だからそこのところはしっかりとやらないと、公務員の皆さんの権利なりあるいは具体的な生活も守れないということになっていくだろうというふうに思うんですね。そこのところはしっかりと。
 私も長い間内閣委員会におって、官房長官からも大臣からも人事院からも何回も何回も、労働基本権剥奪の代償措置として人事院の機能を強化してきちっとしますということについては繰り返し繰り返し聞いた。そういう機能というのが落ちていくということについては、それじゃ、各大臣、移していく大臣との関係についてきちっと担保されなければ、端的に言えば労働基本権にかかわって交渉権も団結権もあるいは争議権、ストライキ権、ここのところまでこのごろ連合の皆さんも余り言わないけれども、しっかりと交渉をして納得して合意するような労働条件をつくっていく、人事をつくっていくということがきちっとされないと、人事院は少しかすんでくるけれども大臣の権能だけは強まるということになりはしないかという心配をするんですが、大臣、いかがですか。
石原国務大臣 これは、先ほども冒頭申しましたように、これまでの人事院の事前承認というシステムから事後チェックの機能に人事院の主たる仕事を変更していただく、すなわち、内閣と人事院の機能の再整理ということが今回の改革の根底にございますので、その再整理を山元委員が人事院の権限の弱体化と言われると、それは見解の相違になってしまうんです。
 くどいようですけれども、人事院が内閣に対して必要な意見を述べていただきますし、政府が定める、内閣が定める明確な基準のもとで、人事管理者すなわち主任各大臣に対して、いろいろな人事マネジメント、組織のいろいろなことをやった大臣が責任を持ってやりますから、その人に対して、おいあんた、ちょっとこれはおかしいぞといったような人事行政の改善に関する勧告や、そのほかのチェック、事後チェックをやっていただく。
 内閣や人事管理者すなわち大臣は、人事院から、これはけしからぬ、あんたそれはちょっとおかしいぞ、やり過ぎやというようなことがあった場合、改善勧告があった場合には、これを最大限尊重して企画立案や人事行政の運用を行うわけでありますので、機能の弱体化あるいは中立公正性がゆがめられるというような御指摘は当たらないんじゃないかと今の段階で私は考えております。
山元委員 いずれにしても大臣がしっかりとしてもらわなければならないけれども、内閣というのはころころころころとかわって、平成になってからでも十回目とかいうことで、そういう状況の中で、私は与党の、自民党の今の大臣を信用しない、そんなことを言っているんじゃなしに、実際、これからずっとそれぞれの省あるいは大臣が私意にわたってゆがめていかないか。そうならないために、労働基本権はきちっとなお一層明確にしておく必要があるんだろうというふうに一方で思うんですよ。
 大臣、このことについては事務局では、労働基本権の付与の問題については後ほどというようなことではなしに、どういうふうにきちっと論議をされたのか、その経緯はどうなんですか。
石原国務大臣 労働基本権の問題は大変大きな問題で、今山元委員が御指摘されましたように、連合はもう最近ここまで言わないというような、そんなところも実はかなり幅広く議論をさせていただいたところでございます。もちろん我が党の中にも、この公務員制度改革、我が党というのは自民党の中の議論の中でも、もうこの時期に及んだんだから交渉権と労働協定の締結権ですか、こんなところは認めてもいいんじゃないか、そういう意見もあったことは確かです。しかし、議論の過程の中で、その結果から言わせていただきますと、現行の制約を維持すると。
 それは、新しい公務員制度においても、人事院が勤務条件に関する給与水準の設定などについて適切に関与しているんだから、人事院の機能がなくなるんであるならば、労働基本権というものがゆがめられる、代償機能としてあるわけですから、それが残る以上はこのままでいいんじゃないか。また、このままの方が、公務というものは、山元委員に私が言うのは口幅ったいんですけれども、やはり安定的でそして政策の継続性というものが担保されなければなりませんし、そのことによって国民生活に大きな影響を与える観点などもありますので、やはり結論として、先ほど冒頭申しましたが、現行の制約を維持するという結論に実は達したわけでございます。
山元委員 時間が余りありませんから、これは総務省にもお願いをしておきたいんですけれども、こういうふうに変わってきたときに、これは内閣官房の一部局だけがどうしようこうしようということではないというふうに私は思っている。公務員の制度の根幹にかかわるような労働基本権の問題は、しっかりと政府全体としてあるいは論議をして結論を出すべきだというふうに思います。
 この大綱の中では、現行のままとして、相応の措置については今後検討しますと、先送りをしてまずこういう変更をしているわけですから、そのことについてはきちっと、相応の措置とは何だ、どのように担保するんだということについては、ぜひ総務省も一緒になって御論議をいただきたいというふうに思います。公務員の皆さんがわかったと言うような措置をとっていただかないと士気にかかわるし、そういう日本の労働のあり方としての姿はやはり世界から笑われるというふうに思います。
 そのことについて少し申し上げておきたいんですが、連合がILOに二月に提訴をいたしました。これは私も驚きましたけれども、一国のナショナルセンター、連合公務員連絡会が提訴をするということも一つ大きなことですし、もう一つは、世界じゅうの六つの大きな団体が一緒に、わしらもそう思う、日本の公務員制度はこうあるべしだということで、例えばICFTU、国際自由労連だとか、PSI、国際公務労連、あるいはEI、教育インターナショナル、こういう団体六つが一緒に提訴しようと。これは今までにないことですよね。これは、いかにも日本の公務員制度というのがひどい、出てくる大綱もひどいという認識で一緒に提訴をしてくれたんだというふうに思える。これは日本の政府として大変恥ずかしい、極めて深刻な事態だというふうに思いますけれども、大臣、この事態をどういうふうに認識していらっしゃいますか。
石原国務大臣 この問題についても、たしか予算委員会でございますか、同僚の委員の方からの御質問がございました。私も御説明を受けましたので、二つの大きな理由から提訴されたとお聞きいたしました。
 一つは、これまで再三再四、委員から意見の御開陳をいただいてまいりました、いわゆる公務員の労働基本権が、これまでも、そしてこれからも制約され続けるのは大きな問題である、この際労働基本権を回復しろ、そういう問題が第一点と、この大綱の策定作業というものに問題がある、こんなものをつくってけしからぬ、以上二つの理由から御提訴をされたと伺っております。
 しかし、委員が後段御指摘されましたような、国際機関が同調してということでございますけれども、公務員は、各国へ行きましても、かなり皆さんいろいろ意識も違いますし、制度というものも各国の生い立ちによって違う。そういうことを踏まえると、私たちは日本のこれまでの事情、今の現状、過去の歴史等々を踏まえて検討して結論を出したものであって、これはナショナルスタンダードなるものがあるとは私は考えておりません。過去の歴史やあるいは労使関係など諸般の事情を考慮して決められるべきものであって、今の日本の判断というものは、労働基本権をめぐっては議論が平行線でありますけれども、私どもの、この引き続いてやるという制約というものにも合理性があると判断させていただいておりますので、現在のような状態になっていると考えております。
山元委員 いや、どうも私は日本の国民として、あるいはこういう場にいる者として、ILOにそういう形で提訴されたということは恥ずかしい思いをしていますよ。
 今、石原大臣、各国に事情があるんだと。例えば予算委員会ではチェックオフの問題でおっしゃったようですけれども、それは各国にそれぞれの事情がありますよ。けれども、世界の良識、常識として、これはひどい、労働基本権を全く剥奪をしてしまうような形になっていくのではないか。あるいは、そういうことについての公務労働者と政府との誠意ある話し合いがなかった、極めて不足していた。そういうことについては世界の皆さんが、自由労連の皆さんも教育インターナショナルの皆さんも公務労連の皆さんも、自分のところのそれぞれの事情はあるということは十分承知の皆さんが一緒になってですから、これは大臣、真摯に受けとめる必要があるだろうというふうに思います。
 余り時間がありません。提訴状では、日本の政府に勧告をしてもらいたいということが申し出てあるわけですが、回答を、いつ、どういうふうに対応される、そういう予定はありますか。今までからもありましたね、ILOに対する回答だとかあるいはその措置、どういうふうに対応をされるか。
石原国務大臣 これは二月に提訴されまして、政府としてもなるべく早く見解をお示ししたいと考えております。
山元委員 ILOの労働関係の問題ですから、厚生労働省、総務省、そういうところが一緒になって、きちっとして日本の労働条件の問題、公務員制度の問題ということで論議をしなきゃならぬというふうに思うんですが、総務省での論議はありますか。
若松副大臣 まずちょっと補足させていただきたいんですが、先ほど石原大臣からも、私も去年までは公務員制度改革の与党の一員として携わっておりまして、そのとき以来、御存じのように、石原大臣のところで公務員制度改革の事務局の皆さんが大綱等をつくっていたわけでありますが、その過程で、まず人事院からも人をいただいて、また総務省からも人を送っておりまして、私も、内閣の事務局の皆さんには、公務員の皆さんと協議をよくするように、そう何度も申し上げておりまして、私自身も数回にわたって、そういった公務員の代表の皆さんとの会談もあったことをぜひ御理解いただきたいと思います。
 その上に立ちまして、ILOの勧告、勧告が出るかどうかというのはこれからの問題でありますが、いずれにしても、私どもは秋ごろかなと予定しております。その際には、当然、厚生労働省や、また私どもの人事・恩給局にも、ちょうどこちらに控えております官僚の皆さん、ILOの経験者も何人かおります。そういう意味で、その出た段階で、当然その勧告の内容をしっかり見て対応していきたいと考えております。
山元委員 それでは最後に、この改革推進事務局は内閣府に置かれているわけです。そして、今までそういう作業をしてこられた。けれども、立法作業、法案提出作業はできないというふうに思うのですね。そういう権能はないはずなんですけれども、これからの実際のスケジュール、手続についてどういうふうに考えていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
若松副大臣 今の国家公務員制度の改革に関する法制化の手続でありますが、何度も出ております、昨年十二月に閣議決定されました公務員制度改革大綱、ここにその手続が明確に記載されておりまして、制度全体の基礎となる国家公務員法の改正案につきましては、内閣官房行政改革推進事務局が中心になって検討を進めておりまして、平成十五年度中を目標に国会に提出するということになっております。また、関係法律案の立案及び政令、各府省令等の下位法令の整備につきましては平成十七年度末までに計画的に行う、このようになっておりまして、総務省といたしましても、公務員制度を所管する立場から、内閣官房とさらに一層緊密な連携協力を図りながら、法制化などの具体的な制度設計に今後も取り組んでまいる所存でございます。
山元委員 公務員の皆さん、連合の皆さんと言ってもいいでしょうけれども、本当にいい公務労働をしたいというか、公務労働者でありたい。例えば、提言をされていますけれども、二十一世紀にふさわしい公共サービスの担い手として、こういうスローガンだったと思いますけれども、そういう気持ちをしっかり受けとめる必要があるんだろうというふうに思うのです。
 今までの大綱あるいは基本設計あるいはその前の大枠、ずっと去年の一月からの経緯を見てみると、そのことが十分受けとめられていない。例えば民間の会社であれば、社長、経営陣とそこで働いている従業員の皆さんが、よしわかったということでなかったら、会社はよくならない、つぶれていきますよ。
 ですから、この問題について、まだきちっと大綱の次のものが見えてこない。近々に出されるそうですけれども、私どもは国会の中でもこれをぜひ論議したい。法案審議だけではなしに、それを固めていく中での国会論議というものをぜひ持っていただきたいというふうに思いますし、もう一つは、やはり今申し上げました、当事者と十分協議をして、わかった、頑張りますということが聞けるような結論をぜひ政府として努力をしてほしい、このことを申し上げて、終わります。ありがとうございました。
大畠委員長 これにて山元君の質疑は終了いたしました。
 次に、津川祥吾君。
津川委員 民主党の津川祥吾でございます。
 安倍副長官、お忙しい中、御出席ありがとうございます。
 私は、先日の十二日になろうかと思いますが、当委員会におきまして、我が党の五十嵐委員の方から指摘のございました、日本道路公団にかかわる幾つかの点につきまして、再度質問をさせていただきます。
 まず冒頭、先日、衆議院の本会議で論議もされましたが、道路関係四公団民営化推進委員会設置法に関連しまして、一言申し上げたいと思います。
 日本道路公団は、確かに日本の物流の根幹を支える高速道路網を整備、管理しており、その意味で大変公益性の高い事業を行ってきたわけでございます。単に多額の税金が投入されているからということだけではなくて、その業務の内容から考えましても、どこにどのような幹線高速道路を整備するか、その整備のされ方によりまして、日本国内の経済活動あるいは地域の開発計画等々に大変大きな影響を与えるものでございます。だからこそ、その整備計画につきましては、国幹審、国幹会議ですとか、最終的には閣議決定がなされる、国が責任を持ってその計画を策定してきたということであろうかと思います。
 自民党の議員の方々とお話をさせていただきますと、常にこの話が出ますが、道路公団方式というものがスピーディーな高速道路整備に大いに貢献をしてきた、これはもう世界に誇っていいものだということをよくおっしゃいます。私もそのとおりだと思います。いわゆる公共事業としてやっただけでは、いまだに東名と名神とそのもう少し向こう側に行く程度までしかできていないであろうというような計算もよくなされます。
 それは同感でございますし、また同様に、よく、管理についてはむだがあったかもしれない。これも、扇国土交通大臣に道路公団について質問いたしますと、まずイの一番にというか、いつもおっしゃることでありますが、いわゆるファミリー企業というものが数十社あって、独占的に事業を行って荒稼ぎをしていた。結果的に道路公団本体の経営の足を引っ張っていた。これは大変な問題であるという指摘がございます。こういった問題があって改革が必要であるというふうに政府の方からの説明としては受け取れるように私どもは受けとめております。
 しかし、私ども民主党は、一昨年からこの道路公団問題については議論をしておりました。つまり、小泉総理が道路公団改革は構造改革の一丁目一番地だと言われる以前から、道路公団はやはり問題ではないかということで、私ども民主党内にチームをつくって検討しておりました。
 最初から民営化ありきで議論したわけではありませんが、いろいろと検討していく中で、やはり民営化というものが避けられないのではないかという結論に私ども民主党も達したわけでありますが、確かに管理に問題があるというのも事実であります。
 ただ、それ以前に、建設路線選定の段階において必要性の議論が必ずしも十分に行われてこなかった。つまり、日本道路公団の問題点として、管理だけではなくて、整備についても問題があるのではないかというのが私どもの問題意識でございます。
 償還主義の道路公団方式というのは、需要の多い路線に関しましては、確かに大いに有効でありますが、需要の少ない路線に関しては、これは用いてはいけない手法でございます。にもかかわらず、全国プール制の償還主義、こういったものをとったがために、全国の高速道路整備を進めて、結果的に道路公団全体の収支が悪化してきていると私どもは見ております。
 今の段階ではまだ間に合うというふうな判断をしておりますが、これ以上今のやり方で整備を続ければ、需要の多いいわゆる黒字路線で需要の少ないいわゆる赤字路線というもののカバーをし切ることができなくなる。ある段階で借金が拡散していくことになるのではないかということを、危機感として大変強く持っているわけであります。ですから、政府が出してきたような、管理だけを効率化すればいいという問題ではないということであります。
 ただ、その管理の問題にしましても、あるいは整備の問題にしても、なぜこのような状況になってしまったのか。最大の原因は、やはり政と官、あるいは公団とファミリー企業の癒着であると指摘せざるを得ないと思います。癒着という言葉が適当ではないという御指摘もあるようでありますが、あえて使わせていただきますが、この癒着を断ち切った上で健全な経営をしなければならないからこそ、民営化という話が出てくるのであろうかと思います。
 今後、政府の方に設置されます第三者委員会、それは粛々とやっていただきたいと思いますが、そこでどういった方がメンバーとして選任されるのかわかりませんが、そういった方々にも、これまでこういった癒着という問題があったということは当然認識をしていただかなければならない、問題意識として持っていただかなければならないと思います。民営化してもやはり癒着の構造が残るのであれば、これは健全な経営には決してなり得ないだろうということであります。
 そこで、きょうこの場で、政と官、あるいは公団とファミリーの癒着がいかに恒常化してきたかという点に絞って、ぜひこの場で明らかにしたいということがございますので、一点指摘をさせていただきます。
 先日の委員会で触れたところでございますが、まず、小泉総理大臣の飯島政務秘書官と小野邦久前国土交通事務次官の関係についてお伺いをいたします。
 十二日の委員会でも触れられておりますが、秘書官が、次期道路公団総裁に適任であるというふうにあちこちで述べていらっしゃると言われる小野邦久氏でありますが、大変優秀な方だとは伺っております。ただ、飯島秘書官の御子息が、この優秀な小野氏のお力で道路公団のファミリー企業に就職をされたのではないかということが指摘をされているわけでございまして、もしそれが事実ならば、これはいわば癒着、あるいは、癒着という言葉を使わなければ、不適切な関係にあると指摘されざるを得ないと思います。
 そもそも、総理の政務秘書官という立場の方が公団の総裁の人事に意見を言うということ自体が不自然であり、不適当ではないかなというふうに思いますが、今申し上げたような関係が事実であったならば、なおさら大きな問題だというふうに見られても仕方がないことだと思います。
 そこでお伺いをいたしますが、飯島政務秘書官の御子息に道路公団のファミリー企業である道路施設サービスに就職された方がいるかどうか、副長官、いるかいないかで結構でございますが、お答えいただけますでしょうか。
安倍内閣官房副長官 飯島秘書官には御子息が二人おられまして、御長男は現在学生であるわけでございますが、実は、これはもう随分前でございますが、事故に遭われまして、以来ずっとリハビリをしておられまして、サラリーマンの経験はございません。つまり、就職をされたことはないということでございます。御次男につきましては、トヨタ系自動車メーカーのカーデザイナーを長年務めておられましたが、最近身を引かれたという話を伺っております。
 ということは、つまり、道路公団のファミリー企業に就職をされた方はおられないということでございます。
 ちなみに、御親族の中にも道路公団の関連企業に就職された方はおられないということでございます。
津川委員 私も内部の方から資料をいただいているわけですが、飯島さんという方、お名前、下の名前は伏せておきますが、秘書官の御子息であると思われるという方がファミリー企業に就職をされたという資料をいただいております。その私どもがいただいた資料によりますと、この方は、小野氏が建設省官房長の時代に道路施設サービスという会社に就職をされているという資料でございます。
 総裁、お見えでございますが、先日の当委員会でこの件につきまして質問させていただいたときには、公団には絶対そういう方はいらっしゃらない、ただ、ファミリー企業についてまでは今はちょっとわからないというお答えでございました。その後、このことを確認されましたでしょうか。秘書官の御子息が道路施設サービスに就職されたことは事実でしょうか、どうでしょうか。
藤井参考人 飯島秘書官の御関係者が私どもの関係の仕事をしていただいているファミリーと称する関連会社に就職したかどうか、これは私どもが知る限りではございません。公団として承知しておりません。
津川委員 今、副長官の方からお二人いらっしゃるという話がございましたが、ちょっと事故の話がございましたので、次男の方か長男の方かはわかりませんが、このお名前のはっきりされた方が、内部の方からの指摘によりますと、御子息であるという指摘がございまして、さらに、小野氏がその御子息の就職に際して仲立ちをされたという指摘が、このいただいた内部からの資料にあるわけであります。それはもちろんいろいろな状況の中でされたわけでしょうから、証人がいるかどうかその場ではわかりませんから、御本人のお答えで、いや、そうではありませんと言われれば、それ以上は言えないということかもしれません。
 ちょっと総裁にお伺いをいたしますが、この件とは別だとしても構わないんですが、役所の方あるいは関係者の方々から、うちの若いのを本体でもファミリーでもどっちでもいいから何とか面倒見てくれないかと言われて何かどこかにほうり込むというようなことは、これまであったんでしょうか、あるいは今あるんでしょうか。お答えいただけますか。
藤井参考人 私はないと思います。少なくとも私に限っては、そのようなことを頼まれたことは一度もございません。
津川委員 総裁はそういったことを頼まれなかったということでありますが、これも実際はよくあることだというふうに指摘をされております。民間企業でも割合によくある話でありまして、別にだれかの紹介であるからよくないということでは決してないと思いますよ。しっかりとしたある推薦人がいるわけでありますから、この方であれば間違いないであろうという採用の仕方も私は別にすべて否定をすることではないと思いますが、ただ、それがやはり仕事上大きく関係のあるところであるならば、これはやはり避けた方がいいであろうということであります。
 ちょっと官房副長官にお伺いをいたします。
 先日の副長官の御答弁では、飯島秘書官は、小野氏が日本道路公団総務部長のときから建設事務次官になっている在職中も含め、電話で接触したことはないというふうにおっしゃいました。
 この御答弁でありますが、これは飯島秘書官と小野氏は全く面識がないという趣旨の御答弁でしょうか。それとも、会って話したことはあるかもしれないけれども、電話はしていないということなんでしょうか。いかがでしょうか。
安倍内閣官房副長官 小野氏が当時の総務部長であったときから、正確に答弁をさせていただきますと、総務部長であったときから事務次官までの間に、電話を含めて接触をした事実はないということでございます。退官された後は、そのあいさつ等に来られる場合もございますから、そこはそういう可能性があったかもしれませんが、事務次官までの間には一切ないということでございます。
 また、もう一度確認をさせていただきたいわけでございますが、これは本人の名誉もあると思うわけでございますが、飯島秘書官の御子息、先ほど御説明申し上げましたように、お二人おられて、お二人とも道路公団の関連の会社に就職したという事実は全くないわけでございます。ですから、その資料は私は間違いである、このように思います。
津川委員 わかりました。
 今、接触したことが電話も含めてないというお話は、これはどなたに伺った話でしょうか。
安倍内閣官房副長官 これは飯島秘書官から直接話を伺いました。
津川委員 ところが、この二月、三月のようでありますが、当の飯島秘書官からこの公団のファミリー企業の関係者の方々に対して、息子のことについては口外しないでほしいとの旨、電話が幾つも入っているそうであります。
 総裁、この話、伺っていますでしょうか。藤井総裁、いかがでしょうか。
藤井参考人 全くございません。
津川委員 これは内部の方々、実際に電話を受けられた方々から伺った話でありますので、その方々がどういう判断をされたのかわかりません。全く関係ない話ででっち上げたのかどうかわかりませんが、そういった話がございます。具体的な名前も挙がっておりますので、調べてももちろんいいわけでありますが、たまたま姓が一緒で全く別の方かもしれませんので、ここで今名前はもちろん挙げません。
 ただ、総裁、この冒頭の話からいくと、飯島秘書官はあちこちでどうも、総裁かわっていただいた方がいいんじゃないか、その後は小野氏がよろしいのではないかということを、まあもちろん公式な場ではないという話でありますが、おっしゃっているようであります。ということは、あなたの首がかかっているという話でございますので、ぜひ調べていただきたいというふうに思います。
 副長官、もう一度お伺いします。
 私どもの調べでは、その秘書官がこのファミリー企業に対して、就職された御子息のことを口外しないように働きかけたという事実があるようであります。つまり、御本人が口外しないでくれと働きかけているわけですから、御本人に伺っても、事実関係について、まさかうそはつかないでしょうけれども、正確にはお答えにならないのかもしれないなというふうに感じますが、もちろん、その御子息がどこに就職されようと御本人の自由でありますから、そこまでどうこう言うつもりもありませんが、先ほど申し上げたように、次官がファミリー企業への就職を仲介していたのだとすれば、やはりこれは問題であろうかと思いますが、もう一度お調べになるつもりはございませんか。
安倍内閣官房副長官 委員の御指摘の大前提でございます、飯島秘書官の御子息がファミリー企業に就職をしていたという前提そのものが全く違うわけでございまして、お二人とも、一人の方は事故に遭われて就職したことがないわけでございます。一人の方は、トヨタ系の会社が道路公団のファミリー企業というのであれば別でございますが、トヨタ系の自動車メーカーのカーデザイナーでございまして、そこでずっと仕事をしていたわけでございまして、道路公団系のファミリー企業に就職をしたことが一度もないということでございます。これは、私、今ここではっきり申し上げておきたい、このように思います。
津川委員 もう一度調べることはないということでありますので、それは御認識としてお伺いいたしました。ありがとうございました。
 ところで、確認をちょっとさせていただきたいんですが、道路公団の総裁のポストでありますけれども、近いうちに人事異動される予定がおありなんでしょうか。藤井総裁は任期は恐らく六月というふうに伺っておりますが、先日の委員会でもお話がありましたとおり、三月いっぱいというお話が随分ございました。それで今伺っているわけであります。
 これは直接的には扇大臣の権限ということであろうかと思いますが、これからまさに道路公団を改革しよう、民営化も含めて改革をしようというところでありますから、今、その間に道路公団が何をするかというのも大変重要なことでありまして、そこの人事についてもこれまでと全く同じようなものではないかと思いますけれども、今これを変えようというまさに改革に向けた状況のときに、総裁を、六月にするか何月にするか知りませんが、かえるのか、あるいはどうこうするのかという議論は今政府の中でなされているのかどうか、官房副長官は御存じでしょうか。
安倍内閣官房副長官 その議論は、私は一切承知をしておりません。
津川委員 別に小野さんが総裁になられてはいけないということを申し上げているわけではなくて、そういう話がいろいろとございました。その裏の方に随分いろいろと情報がございまして、そこについては、もし総裁になられるようであるならば、事前に必ずチェックをしていただきたい。それはなぜならば、これが日本道路公団を改革していく上で大変重要な、政と官、あるいは公団本体とファミリーの癒着の構造を今とにかく断ち切らない限り、民営化にしろ、あるいは民営化は別でも構いませんが、改革というものは進まない。大前提でありますので、ここの点についてぜひともやっていただきたいというふうに思います。
 副長官、お忙しい中、ありがとうございました。
 次の問題に移りたいと思いますが、公団内に設置されましたコンプライアンス本部についてお伺いをいたします。
 先日新聞記事にもなっておりましたのでお伺いをいたしますが、このコンプライアンス本部、法令遵守本部という意味であろうかと思いますが、なぜ今このようなものが必要だと判断されたのか、まただれが設置を求めて判断をされたのか、その目的などについて、またその本部と総裁の立場との関係などについて、総裁、お答えいただけますでしょうか。
藤井参考人 私どもJHといたしましては、国が国家公務員倫理法を制定したのに合わせまして、日本道路公団役職員倫理規程というものを十二年の五月に定めて、職員の規律を守りながら仕事に専念させていただいてきております。
 しかし、やはり世の中の国民の見る目はますます厳しくなり、そして、結果がいいだけではだめで、仕事のやり方一つ一つについても、透明、公平といったいろいろな視点から、身を厳しく処しながらしていかなければならない。こういう状況にかんがみまして、私ども、一層説明責任というのが出てまいります。また、情報公開ということにもなっております。
 そういうことから、我々職員の意識を一層、公平、公正という立場で身を慎むとともに、対外的にいろいろな問題点が出てまいりましたのに対して適切に対応するため、我々だけで見るだけではなくて、高い倫理観を持って活躍されている専門家の方々、いわゆるコンプライアンス、要するに法令遵守という意味合いからの御指導を得ることが重要だろう、こういうふうに考えまして、三月に設置したわけでございます。
 なお、設置するに際しましては、諸外国の例、あるいは日本でいえば日本銀行であるとか、かなりの組織がこういうコンプライアンス体制をお持ちでございます。そういうことも参考にいたしましてつくらせていただきました。
 現在まで、コンプライアンス本部の本部長を含めて三名の方に御委任申し上げておりますが、この本部と、総裁を含めて私ども道路公団との関係におきましては、私どもがこの本部の方々から助言ないしは指導を直接受ける、したがって、道路公団の総裁は、あくまでもコンプライアンス本部の指導助言のもとにあるということで、形は総裁が委嘱をするという形ではございますが、あくまでも助言、そして必要に応じて指導するということにおいて、私ども、身を慎みながら仕事をしているところでございます。
津川委員 国土交通省も来ていただきましたのでお伺いします。この道路公団の改革が大変大きな論点となっている現在でありますが、公団内にこのような本部ができることに対してどのように判断されるか、あと、何か指導をなされたんでしょうか。
大石政府参考人 道路公団のコンプライアンス本部は、今総裁が御説明いたしましたように、道路公団の事業執行上の必要性から公団が設置したものでございます。公団みずからの判断に基づいて行われた措置でございます。その措置に関する事前の国土交通省への報告や、あるいは連絡及び相談等、我々が関与するようなことはございませんでした。
 これが今できていることについてどう思うかという御質問でございますが、道路公団がこれだけ大きな事業を国民に対して責任をしょいながら執行しておるわけでございますので、その公団がその必要性からこのような本部を設置して、公団の責任において運営していくというようなものであると認識をいたしております。
津川委員 時間がないんですが、少し具体的にお伺いをさせていただきたいんですが、ここに資料がございまして、これも公団の方で作成された資料としていただきました。
 委員が、元名古屋高等検察庁検事長、あるいは帝京大学法学部長・元大阪高裁長官、元警察庁刑事局長等々、大変そうそうたるメンバーでございます。これだけの方々に本部長、本部員になっていただいて、どういった形で今後議論を進めていくのか、そしてそこで出てきた議論をどのように生かすのかということでありますが、この資料の後の方についているものに大変おもしろいものがございまして、「参考」として「コンプライアンス本部に図るべき案件の例」というものがございます。横浜新道の産廃業者をめぐる問題、第二東名の用地買収に関する問題、ファミリー企業の問題、邦栄産業の談合をめぐる問題、北関東自動車道の採石場をめぐる問題、道東自動車道における発注や釧路工事事務所準備室の設置問題等々ございまして、種々の記事の事実と異なった報道といったことも入っております。こういったことを見ますと、いわゆる疑惑と言われている部分、随分このコンプライアンス本部も議論の題材に上がるんであろうかと思います。
 そこで、この中にはなぜか入っていないんですが、一つ具体的にお伺いしたいのが、いわゆる仏経山トンネル問題についてですが、これはこれまでこの本部で取り上げられたことがありますでしょうか。お答えいただけますか。
藤井参考人 まず、今先生が例にお引きになられた件は、多分雑誌とか新聞とかで出ていた案件をまとめたものだと思います。
 今の十三件問題を何で諮らないのかという問題につきましては、これは再三御説明をいろいろな委員会でさせていただいておりますが、資金の確保の点から非常に難しい判断を要することから、昨年の十二月に工事の一部見合わせをしました。そして、資金調達を一生懸命やらせていただいたおかげで、財投機関債の六百五十億と民間資金約二千億の確保ができたということから、十三年度工事については、大半のものが計画どおり出すことができた、こういうことでございまして、あくまでも資金調達及び工事の発注契約手続に係るものということの中での問題でございましたので、このコンプライアンス本部にかかる問題ではないという認識をとっております。
 いずれにいたしましても、私ども、このコンプライアンス本部にかかる内容は、私どもがお願いする場合もありましょうけれども、本部の方々がみずから本部員としていろいろと指摘をする、主体的に指摘をされることがやはり中心になろうかと思います。例えば、契約に関する諸問題、あるいは住民運動とかその他いろいろな各種の団体がございますが、これに対するいろいろな行為に対する対応の問題とか、あるいは公団の社会的評価を失墜させる行為がみずからあった場合のこれに対する対応の仕方、これを公団が単独で自分たちで考えるのではなくて、厳しい目でさらにもう一回見てもらって御指導、御助言をいただく、こういう形で対応させていただこうと思っております。
津川委員 時間がなくなりましたので、コンプライアンス本部についてはまた後日、別の我が党の委員から質問させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
大畠委員長 これにて津川君の質疑は終了いたしました。
 次に、北川れん子さん。
北川委員 社民党の北川れん子です。
 きょうは、去年の十一月二十九日、物理2の授業の実験中に、生徒の指にエックス線、全治一カ月という岩手県の黒沢尻北高校の事故がことしの四月十八日に新聞報道されましたので、その点について、低線量被曝と低線量廃棄物の問題についてお伺いをしてみたいと思うのです。
 まず初めに、このエックス線というのは、ガンマ線と同じで電磁波であり、放射線ということになるのですけれども、文科省、旧文部省、旧科技庁の所管の分野で被曝事故というのは過去にあったのかどうか、それぞれ分けて教えていただけますでしょうか。
瀬山政府参考人 お答えいたします。
 放射線障害防止法に基づく安全規制を当省やってございますけれども、法令に基づく、法令に定める線量限度を超えたり、またそのおそれのある被曝を伴うような事故につきましては、これまで、旧科技庁、旧文部省合わせまして七件、被曝の事故がございます。七件の内訳は、大学で二件、旧科学技術庁の所管の研究所で五件でございます。
 放射線障害防止法は、大きく分けまして、放射線発生装置と放射性同位元素、その二種類の規制をしてございますけれども、放射線発生装置にかかわる被曝事故につきましては二件、放射性同位元素にかかわる被曝事故につきましては五件の計七件でございます。
北川委員 これはたまたま、十円硬貨を透視しようとしていた中で、先生が生徒に授業に関心を持ってもらおうと思って、希望者だけを、手をやったらあなたの骨が見えるよということでやっていたときに起きた事故だというふうに書いてあるのですけれども、低圧エックス線の方が皮膚に吸収されやすいため、人体への照射は勧められない。
 きょう、エックス線装置というのはどんなものかなと思いまして、それぞれのメーカーが出しているカタログというのも、三十八万円クラスの分なんですが、見せていただいているのですが、メーカーによれば、身体には使わないというようなこととか、鉛ガラスの眼鏡や鉛ゴムのエプロンを使用してくださいということは書いてあったのですけれども、このケースというのは被曝事故ということでカウントをされるケースなのでしょうか、いかがでしょうか。されないのでしょうか。
瀬山政府参考人 先ほど申し上げましたのは、放射線障害防止法に基づく規制を受けている施設にかかわる事故でございます。本件装置は放射線障害防止法の適用対象外でございますので、先ほど申しました七件とはまた質の違うものでございます。
北川委員 ここの委員会というのは、原子力安全委員会がいらっしゃるところでありますので、今おっしゃった原子炉等規制法とか放射線障害防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律等々で定められた形においての各管轄の研究所とか建物について調査に入る権限をお持ちでいらっしゃると思うのです。
 今の学校、高校にエックス線装置が、へえ、あったんだという人もいましたし、学校にコバルト60も、ガイガーカウンターのそういう授業で使おうということで、最近は簡易放射線源セット、簡易放射能検知器というのも、物理2の理推の関係で指導要綱に載っているので置いてあるということなんですが、今の御説明では対象外ということで、例えば五千軒事業所があるらしいのですが、そういう学校は、高校は対象には入っていないということになるのでしょうか。
瀬山政府参考人 学校が入っているか入っていないかは、保有する放射線発生装置もしくは放射性同位元素の数量に関係いたします。
 ちなみに、今回の装置はいわば小さな放射線発生装置でございますけれども、これにつきましては放射線障害防止法上、一定レベル以上の装置、これはちょっと難しくなりますけれども、電圧が一メガエレクトロンボルト、百万電子ボルトでございますけれども、それ以上の装置を安全上規制する必要があるという判断のもとに規制してございます。本件装置はそれよりもはるかに電圧が低いものでございまして、この障害防止法の対象になっていないということでございます。
北川委員 ということは、五千の事業所の対象にはなっていなかったであろうと。原子力安全委員会もそういうところまでは管轄していなかったということなので、次に、文科省に、お越しですからお聞きしたいのですけれども、今原子力安全委員会はそういうふうにお答えになったのですけれども、そうしますと、これはエックス線の装置を使うということで、労働衛生管理者体制、そういうものはきっちりと置かれた中での理推の授業だったのかどうかをお伺いしたいと思います。
徳重政府参考人 お答えいたします。
 学校におきます労働安全衛生管理体制につきましては、労働安全衛生法等の関連法規、法令に基づき教職員数に応じて学校管理者等必要な体制を整えることとされております。
 今回、生徒の被曝事故が発生しました岩手県立黒沢尻北高等学校におきましては、教職員数が五十人以上ということでございますため、衛生管理者、産業医、衛生委員会を置く必要があり、これらにつきましてはすべて設置をされていたというふうに聞いております。また、これらのうち、労働安全衛生法に基づく施設等の衛生上の管理等を担当する衛生管理者ということで、養護教諭が選任されていたというふうに聞いております。
北川委員 この物理の先生、二人の先生が今回、去年の件はそうだったのですが、毎年やっていたのかなとも想像されるのですけれども、生徒に授業に関心を持ってもらおう、エックス線ってどんなものかな、知ってもらおうと創意工夫をされた一環であったというふうにも聞いているのですけれども、そういうことに対して養護教諭の先生は、自分は自覚をして、衛生管理担当者としての適切なアドバイスということはされたんでしょうか。
徳重政府参考人 この養護教諭、衛生管理者の立場としましては、いわゆる仕事の環境の衛生上の調査あるいは作業条件の施設等の衛生上の改善などについて担当し、また衛生教育、健康相談などを担当しているということでございます。
 かねてから、黒沢尻北高等学校におきましては、職員会議等の席を通じまして労働安全衛生管理全体につきまして徹底を図ってきたというふうに聞いております。
北川委員 多分、全体ということと、授業というのは一人の先生がすべての管理、責任を持つということで、養護教諭というのはなかなか入りにくい場所ですね。
 例えば養護教諭というのは、教室に入れない生徒たちの話を聞くとか、授業中気分が悪くなった生徒が来たらそこにとどまらなければいけないし、もしそこまでおっしゃるのでしたら、この養護教諭の先生に後でお伺いしまして、物理2の実験でエックス線の照射ということ、手に照射をするというようなことをやろうとしている授業を今からやるんだよという報告も多分受けていらっしゃらないし、自分がそれに対して適切なアドバイスをするメンバーだというふうな自覚がなかったというふうに思うんです。今の御答弁というのはそれをまさに裏返しでおっしゃったように聞こえたのですが、そうではなかったのでしょうか。
 本当の意味での被曝に対しての労働衛生管理者体制というのがあったのかどうかということをお伺いしたくて、一般的な話として聞いているのではないので、その辺よろしくお願いします。
徳重政府参考人 具体的に被曝ということについて問題意識はあったかということについては、詳細は聞いておりませんけれども、そこまで報告は受けておりません。
 ただ、この養護教諭という立場でございますけれども、やはり児童生徒あるいは教職員の健康に関して仕事をしておるわけでございまして、職場におきます教職員の安全と健康の確保という観点からは、そういう仕事をしている担当者としては、衛生管理者としての仕事をする上で一定の経験とか知識はお持ちであろうというふうに思っております。
北川委員 被曝に対しては本当に特例な事象ということで、学校で被曝をするというようなことがあり得るというふうにはだれも思わなかったし、私自身はこの報道を受けて、知り合いの幾ばくかのブロック、いろいろな、関西の先生にも聞いたし、関東の先生にも聞いたし、東北の先生にも聞いたんですが、へえとか言って、例えば同じ理科でも化学系の先生は、知らなかった、あえて調べたら置いてあるというのを聞きましたと。大体三十八万円ぐらいの機械が置いてあるというふうに言っていますよみたいな感じで、同じ理科という概念の中でも物理の先生と化学の先生ではそういうふうに違うし、高校の三年生ということで、学校というのは今進学コースをとっているので理数科系、文科系に分かれていきますから、文科系の先生はほとんどこの存在を知らない。学校にコバルト60があるとかも知らないというふうに思うんです。
 文科省としましては、どれぐらいの数値での被曝量だったのかということで報告として上がってきているのか。一カ月後に生徒が自分の指が赤黒くなってきて痛いということがあって初めて報告をされたというふうに聞いていますので、養護教諭はその間一カ月間何も知らずに、生徒への対応、アドバイスもされずに終わっていたのではないかという気もしますが、その辺はいかがかということと、これは岩手、黒沢尻北高校だけではなくてほかの高校にも置いてある、調べたら置いてありましたよと教えていただいたんですが、すべての公立、私立の学校に置いてあるエックス線装置なのでしょうか。その辺の把握は文科省はやっていらっしゃるのかどうか、お伺いしたいと思います。
玉井政府参考人 お答え申し上げます。
 県立黒沢尻北高等学校の場合でございますけれども、これは、昨年の十一月の二十九それから三十日の両日にわたって、二人の教諭が物理2の授業でエックス線発生装置を用いて、封筒に入れたかぎ、それからこれは希望者でございますけれども、全員じゃなくて、二十六名の生徒の手の指に透視撮影実験を行ったわけでございまして、エックス線の照射時間は一人五秒程度であったわけでございますけれども、ある生徒の手の像をスクリーンに投影して全員で見ようとしたときに投影機の調整に手間取って、当該生徒の右手人さし指、中指、薬指にエックス線が三十秒ほど照射され、その後急性放射性皮膚炎と診断されたという報告を受けているわけでございます。そのことは、十二月十八日にそういう痛みが出たために、授業担当者が保護者に状況を説明したというところからまた問題が始まってきたわけでございます。
 それで、先ほどの授業の御指摘でございましたけれども、そもそも高等学校の理科、皆が学ぶのは物理1とか化学1とかでございますけれども、それより発展した物理2というものを理系の生徒が選択をする場合があるわけでございます。その中でエックス線の性質などについて学習するということは指導要領上定められているわけですけれども、それを実験するかどうかは、これはまた学校のいろいろな判断ということになってきているわけでございます。
 ただ、そのときにエックス線装置を使って実験を行うこともあり得るわけですけれども、通常の実験方法から全く想定されないやり方でございまして、人体にエックス線を照射するような実験を行うことはあってはならないことでありまして、極めて遺憾だと思っております。
 それで、全国どれぐらいあるかというのは私ども把握していないわけでございますけれども、今回事件のあった岩手県内の公立高等学校におけるエックス線装置の保有状況につきましては、岩手県で調査したところ、八十五校のうち三十八校においてエックス線装置を保有していたというふうに聞いているわけでございます。
 いずれにせよ、通常考えられない実験方法でございまして、あってはならないことでございますので、私どもとしては、今後このようなことが起こらないように、あらゆる機会を通じて、実験における安全確保と適切な学習指導の実施、そして実験機器の適切な保管管理について、指導の徹底を図ってまいりたいと考えております。
北川委員 今答えていただいたのは、すべて新聞にも報道されていた点を改めてまとめてお答えいただいたんですが、全治一カ月というふうに表記された方は三十秒で、あとほかの方は五秒ということですが、五秒の方の中にも、赤くなってやはりやけどみたいな跡が今でも残っている人もいると聞いていますので、三十秒、五秒の問題は、秒数ではないというふうに思います。
 それで、私が聞いたのは、この一番ひどかった方ので被曝線量がどれぐらいであったかというふうに認識していらっしゃるのかということと、今八十五校のうち三十八だけ置いてあるということで、どうも理数系の特別コースとか進学コースとかがある学校に置いてあったのかなという気も、それは全国的にも、関西ブロックでも関東ブロックでも、聞いたら、置いてありましたよときっちり御報告いただいた学校があったので、岩手だけ置いていたわけではない。御存じないということなんですけれども、この装置を買う買わないというのもそこの学校の特色だろうというお答えなんです。
 これが、英語の先生が担当していたというわけではないというところに根幹的な問題があるというふうに思うんですね。エックス線というものが放射線であり電磁波であるという認識は、もちろん、英語の先生よりは幾ばくか物理の先生は知っていたであろうと予想されるというふうには思うんです。
 文科省は、この事故を聞いて、今のお答えいただけなかった、どれぐらいの被曝量だったのかという点と、低線量被曝についての認識徹底というのは、四月にこれが新聞報道されて、でも去年の十二月にはもう県教委が報告を受けていたということですから、文科省は既に聞いていたと思うんですが、四カ月間、全国の高校でどういう実態になっているのか、どういうふうに使っていたのか。
 人体への照射ということは、生徒の関心を引いて、よりおもしろく楽しんで物理を知ってもらおうと思ったときに使った手法の一つだということであれば、この先生だけではなくて、他の先生もそういう方向に走ったという可能性はあるけれども、事故にならなかったので表面化しなかったということだろうと思うんです。
 その辺は、まさか起こらなかったものが起こったと言っただけでほったらかしにしておいたというのは、ちょっと文科省としては、特に科学技術庁が一緒になって文科省を形成された省庁再編の折からの思想からいってもなじまないというふうに私は思うんですが、今の被曝線量の問題と以下の点について、お答えを再度お願いできますでしょうか。
瀬山政府参考人 今御質問の中で、低線量の被曝について文部科学省としてどういう認識を持っているかという部分があったかと思いますけれども、低線量の被曝も含めまして、放射線防護の基本的な考え方であるとか方策であるとか基準等につきましては、国際放射線防護委員会というものがさまざまな勧告をこれまで出してきてございます。その中で、低線量の被曝につきましても、放射線防護の観点から、すべての被曝は経済的、社会的要因を考慮し、合理的に達成し得る限り低く抑えるべきであるとする基本的な考え方を勧告してございます。この考え方は、あまねく広く国際的に受け入れられているわけでございます。
 したがいまして、当省におきましても、このような考え方に基づいて、たとえ規制限度以下の低線量域であっても、放射線管理、被曝管理はこの基本的な考え方に基づいてやることが適切であるというふうに考えております。
 また、お尋ねの、今回どの程度被曝したのかということにつきましては、我々は直接評価、測定はしてございませんけれども、症状等から見まして、恐らく五、六グレイぐらいの、ちょっと単位が難しくて恐縮でございますけれども、そのぐらいの被曝線量があったのではないかというふうに考えております。
玉井政府参考人 岩手県の事故、県自体は十二月に把握をされたわけでございまして、必要な指導等がなされたわけですが、私どもがこの事件を承知したのは新聞報道でございました。したがって、そのときから県に対して、どういう問題が起きたのか、直ちに私どもとして把握をし、必要な指導を行ってきたわけでございます。
 したがって、先ほどお答えを申し上げたとおり、このことが二度と起こらないように、まさに実験における安全確保、適切な学習指導、そして実験機器の適切な保管管理、大変重要だと認識しておりますので、あらゆる機会を通じてその徹底をこれから図ってまいりたい、かように考えているわけでございます。
北川委員 玉井大臣官房審議官が今お答えいただいたんですけれども、では、四月十八日の新聞報道が出るまで知らなかったということだったわけですか。それと、学校現場の被曝というのは本当にあり得ないと思っていただけに、これはすぐに十二月に県教委に言って、文科省に言っていたと思ったのですが、違っていたということを改めておっしゃったので、本当に新聞報道まで知らなかったのかというのを再度お伺いしたいのと、今、五、六グレイで表記されたんですけれども、シーベルトとかミリシーベルトで直すとどうなるかというのは出ませんか。それをちょっとお伺いしたいのです。
瀬山政府参考人 換算はいろいろな条件によるかと思いますが、おおむねシーベルトというふうに御理解いただいてもいいかと思っております。
玉井政府参考人 先ほどお答えしたとおり、岩手県教委から特段の御報告は受けていなかったわけでございまして、私どもとして、まさに新聞記事を見て、学校教育を担当する部局として直ちに県教委に事実を把握していった、こういう状況でございます。
北川委員 ちょっとよくわからなかったので、でも、シーベルトに直したら五、六シーベルトと思っていただいていいというふうに言われたんですけれども、それはかなり換算係数を間違っていらっしゃるんじゃないかな。子供が生まれるまでに〇・五シーベルトの放射線を浴びると子供に起こる突然変異が倍になるという報告もあったり、一人の人が子供を産み終わるまでに受ける放射線の量は〇・〇〇一五シーベルト以下が望ましいとか、いろいろ数値的には出ていて、ましてや放射線を扱う現場で働く人も年間では〇・〇五シーベルト以上はできるだけ浴びないようにと。ゼロにはならないけれども、浴びないような工夫をしなければ、その人は一秒たりとも仕事をしてはならないというふうにもなっているので、今の五、六シーベルトと換算してもらっていいというのは、本当にそうですか。
瀬山政府参考人 換算については今正確な知識はございませんので、おおむねと申し上げましたけれども、放射線被曝についてはいろいろな形の被曝がございます。今先生がおっしゃったのは、恐らく全身を被曝するというようなことだと思いますが、本件、皮膚の局所被曝ということでございますので、全身被曝等とは被曝の形態が随分異なっておるということだと理解してございます。
北川委員 体外被曝と体内被曝のことをおっしゃったのだろうと思いますけれども、私は一応専門の先生に、大体こういうふうに一カ月後に赤黒くなるとしたら二シーベルトぐらいであったのではないか、その方を見ていないからわからないけれどもという所見も聞いていたので、今の五、六シーベルトという換算はおかしいし、体外被曝でも、皮膚というのはとてもこれから難しい問題を持っていくと思います。
 私は、文科省が今後おとりになる対応というのは、全国的なレベルでもう一度、学校にコバルト60とエックス線装置があり、適切なアドバイスをする担当の職員がいないという現状の中で、どうしていくかということを深く掘り下げていただきたいと思います。
 それと、私は二〇〇一年、去年の四月十七日に質問主意書を出しているのですが、コバルト60を持っていても立入検査をする量ではないので、どういう管理をするかは原子力安全委員会は担当する部署ではないというお答えを初めにいただいてしまったのですけれども、九〇年ぐらいから、事業所とか研究所、そして所外のそういう管轄、放射線を扱うところの現場がずさんになってきている。これはもう質問主意書でもお認めになっているわけです。
 例えば、五千カ所あって、そのうち、九〇年、四百カ所に入ったら、大体五〇%の事業所で法令違反を犯していた。医療現場もそうなんですけれども、犯していた。そして、九九年には、何と、下がってこなくて上がっているわけですよ。三百五十カ所に入ったら、二百八十の事業所、ですから、七九%の事業所で違反をしているというふうにお答えになっています。
 そして、二〇〇〇年九月の科技庁の主催の放射性廃棄物シンポジウムにおきましては、科技庁の廃棄物担当課長が、これは人数が少ないんだ、立入調査に当たる担当官が少なく、現場のモラルに期待するよりほかはないというふうな述べ方をしていて、今人数をこの質問主意書でもお伺いしたら、二〇〇一年には二十一人しかいないんだというふうに言われていて、学校現場での愛用というのがまた一つ特殊な現象を持っていて、そのレベルが以下だからだれも見なくていいんだ、だれも知らなくていいんだということが明らかになったわけです。
 原子力安全委員会にお伺いしたいのですが、かなり年々モラルが低くなってきています。放射線というものをとても危険なものだとして日本が敗戦以降思っていたもの、核というものに対してモラルが低くなっている現実を質問主意書ではお認めになったのですが、その点をどう認識していらっしゃるか。
 そして、予算と人数、これをふやさない限りは法令違反を見つけるのもなかなか摘発をしにくいと思うのですが、その点に対しての充実をどうされようと思っていらっしゃるのか。そして、学校現場、線量が低いから管理対象にはないということなんですが、今事象として挙がった事項なども踏まえて御見解をお聞かせいただきたいと思うのですが、よろしくお願いします。
大畠委員長 質疑者から、内部被曝、外部被曝の話が出ましたから、これははっきりしていただかないといけませんから、そこら辺も含めて答弁してください。
小中政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、内部と外部の件でございますけれども、今回の被曝につきましては、すべて外部被曝ということにしていただければ結構かと思います。外部被曝でございます。体外の方でございます。かつ局所被曝ですから、被曝の線量が割と高くても余り影響はないというふうなことでございます。
 それで、五千カ所ぐらいあるというお話は、学校というより、むしろRI事業所のことかと思いますけれども、そこでのいろいろな調査というのは文科省の方で今やっておりまして、何かそういうことで調査に入りまして、いろいろな問題が起こった場合、安全委員会の方に報告を受けます。それに従って、安全委員会としましては、規制調査という観点で、いわゆる日々のいろいろな調査、保安活動といいますか、そういうものをどうしているかというのを我々も調査いたします。そういう観点から、いわゆる少しダブルチェック的な方向で、日常のそういう放射線の防護の活動も見ているということでございます。
北川委員 多分、今の私の質問には答えていただけなかったというふうに思うんですけれども、文科省の報告を受けて原子力安全委員会は調査に入るわけですね。入ることに対して、モラルが低くなってきているというのが数字であらわれているんですが、それに対してどう思っているのか。そして、それを上げるためには何が必要かということで、私は、近々の問題としては、調査委員の人数をふやすとか、予算をふやすとか、モラルが低下しないように広報に努めるとか、そういうことが必要だというふうには思いませんかと聞いたんですが、そこの部分に関してのお答えが全然なかったので、再度お伺いしたいと思います。それは文科省の担当になるんですか。
瀬山政府参考人 今先生御質問の件は、放射線障害防止法の規制にかかわる問題でございますので、一義的には文部科学省で所管してございます。
 それで、今幾つか例が御指摘あったところでございますけれども、全国で五千事業所ということで、検査官の数からいってなかなか頻繁に回るわけにはいかないということで、重点的に、かつ抜き打ち的なものを入れまして、なるべく多くの事業所に調査に入るようにしておるところでございます。
 ただ、先生御指摘のとおり、法令違反というのか、やはり書類の記載ミス等、そういった問題が、小さな事業所もございますから、数多く見受けられます。そういったこともあって指摘の件数が多くなっているというところでございますけれども、当初に御説明申し上げましたように、例えば被曝につながるような安全上の問題が出ているということでは必ずしもなくて、これにつきましては、一番最初に申し上げましたとおり、文部科学省の所管の施設で七つ、過去四十数年で七つでございますから、それ以外の、かなり軽微な書類等の記載ミス等が多いということでございます。
 ただ、いずれにしても、きちっとした書類をつくるというのも事業者の責務でございますから、引き続き事業者に対して、適切に安全管理もしくは適切な仕事をするように、今後とも指導していきたいというふうに思っております。
 それから、先ほど、五、六と、たまたま答えましたけれども、換算係数等、正確なところをちょっと承知しないまま申し上げましたので、恐らく先生がおっしゃったようなところではないかと思いますけれども、ちょっとそこは、恐縮でございますけれども、五、六というのはちょっと正確でない可能性があるということで、訂正させていただきます。
北川委員 本当に放射線とか放射能の問題というのは専門性が高くて、私自身もこれはなかなか換算するのは難しいわけなので、専門家でいらっしゃるのでお伺いした答えが、余りにも、すぐそれはシーベルトにかえてくれたらいいとおっしゃったのでびっくりしたということがあるんです。
 実は、多分医療の現場でも経営が逼迫してきています。それで、経済の逼迫とともに、今まできちんと管理をしなければいけないと思ったものも、経済の論理からいくとやっていられないというか、そういうふうになってきているということもあって、この件数、法令違反、何かちょっと軽微な書類上の違反ぐらいでありますよというお答えに聞こえたんですが、私はそうではないというふうに思っています。
 医療性の廃棄物というのはとてもずさんな管理が行われておりますし、当該の医者、看護婦、それから放射線技師とか担当者、医院というもの、医療現場を囲む者自身の放射線に対しての認識、それも廃棄物になったときの、捨てたときに意識を持って、どういう捨て方がいいのかということまで徹底教育をされていないというのは、担当の医者、看護婦の皆さんがおっしゃっていたのをお伝えしておきたいと思うんです。
 たまたま今回、岩手県の県立高校でありました。岩手県には、滝沢村のところに医療用放射性廃棄物の処理工場、RMC、ラジオメディカルセンターというのがあって、そこに日本のすべての医療性廃棄物が一極集中で、低線量廃棄物だからということで持ち込まれているわけです。
 きょうは尾身科学技術政策担当大臣にお越しいただいたんですが、この黒沢尻北高校の話の感想というのは担当者ではないので申すことはできないというふうにおっしゃっていましたが、百五十四国会の所信表明でも、日本の再生の命運が科学技術の振興にかかっていると大臣はおっしゃり、また、競争的環境のもとで、産学官連携を進めるための環境整備を進めますというふうにおっしゃっています。ですが、足元で放射線や放射能、そして被曝という問題に関して、割と無自覚になってきているのではないかというのを心配したものですから、この問題を取り上げさせていただきました。
 大臣も、競争的環境のもとでということをおっしゃっていますが、ジェー・シー・オーの九九年九月三十日の事故におきましても、あれは経済性の論理のもとで行われたことだというふうに私自身は認識しておりますし、尾身大臣はきょうのやりとりを幾ばくか聞いていただいた点で、今担当大臣として述べられる範囲で結構でございますので、お答えいただけませんでしょうか。
尾身国務大臣 この黒沢尻北高校の事故につきましては、これは放射線障害防止法の規制の対象外になっている施設の事故でございまして、労働安全衛生法の関係法令に基づきまして衛生管理者等が適切に対応すべきことであったというふうに考えております。
 今回事故がありましたエックス線発生装置のようなエネルギーが低い装置について、新たにこれを放射線障害防止法の対象にするべきであるとは考えていないのでございますが、しかし、放射線を発生する装置を使用する場合には、極力被曝を少なくするということは当然でございまして、今後ともこの種の問題については、安全性についての万全を期するということを基本的なスタンスとして進めていきたい。
 科学技術を振興する必要がございますし、また、いろいろな意味での原子力利用をいたしまして経済の発展は実現していかなければならないと思っておりますが、安全性の確保というのはその前提条件であるという考え方に立って、今後とも施策を進めてまいりたいと考えております。
北川委員 ありがとうございます。
 何が安全かということを知らなければ、自分が被曝をしたという実感もなく被曝をしてしまうということが起こるということの一つの現象としてこの事故があったと思うんです。
 文科省にお伺いしたいんですが、子どもの権利条約を九四年、日本が批准したときに、旧文部省はぜひいろいろな形で子供たちに、子どもの権利条約の批准をした日本、そこにおける教育現場のありようというものを伝えていく方法をいろいろな工夫をしてくださいというふうに私は市民の折からお願いをしていたんですが、なかなかいいパンフレットとか、積極的に生徒に伝えていくとかということがなかったんです。
 それで、これはアムネスティが出していらっしゃる「子どもによる子どものための「子どもの権利条約」」という、子供の言葉というか、中学生の言葉で書いた権利条約の第六条の「いのちのこと。」というところがあるんです。
 ぼくらは、生きてていいんだ。
 ほかの人に殺されていいはずがない。
 苦しんでなきゃいけないとか、
 痛い思いをしなきゃいけない、
 なんてことは、
 絶対ない。
 だから、どんなときも、
 ぼくらが元気に生きて、育っていけるように、
 できることは全部してほしい。
というふうにこの六条、条約文でやるとすごく難しいんですが、中学生が置きかえてくれるとこんなふうになりました。
 今文科省は、子どもの権利条約ですが、批准からもう九年たちましたが、実行に向けてはどのような決意を持っていらっしゃるか、最後にお伺いしたいと思います。
大畠委員長 予定された時間になっていますので、端的に答弁をお願いします。
玉井政府参考人 学校教育において児童生徒がそれぞれの問題をやはりきちんと認識しながら適切に教育を受けていく、大変重要なことだと思っております。そういう趣旨で、私どもとしても努力を続けているということでございます。
北川委員 どうもありがとうございました。
大畠委員長 これにて北川さんの質疑は終了いたしました。
 なお、先ほどの質疑の中で、被曝線量の許容値問題についてちょっとあいまいな答弁がございましたので、後ほどよく整理して、質疑者によく話をしてください。
 午後零時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時四十六分開議
大畠委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。工藤堅太郎君。
工藤委員 自由党の工藤堅太郎でございます。
 午前中の質疑と重複する点があるかもしれませんが、御理解をいただきまして、まず初めに、竹中大臣にお伺いをいたします。
 先日、二十日でありますけれども、IMFの国際通貨金融委員会で、現在の国際金融を取り巻く状況を踏まえて、日本は銀行と企業部門の改革のために断固たる措置とデフレ終結に寄与する金融緩和が重要、このように指摘をして、金融危機に陥っているアルゼンチンと並んで、名指しで早期改革に取り組むように促す声明を発表したわけであります。
 事実上、政府の不良債権処理と景気対策の取り組みに懸念を表明したものでありますが、これに対する大臣の御感想をまずお伺いしておきたいと思います。
竹中国務大臣 日本の金融、不良債権処理、より広く言いましたら、企業を含むバランスシート調整が引き続き大きな問題であるということは十分に認識しております。
 ただ、よく比較されるアルゼンチン等との比較でいいますと、日本が持っている資産の分厚さないしは貯蓄率の高さ、潜在的な生産面での技術力等々を踏まえて、これは同じに扱われるということに関しては、やはり個人的にはかなり抵抗がございます。
 恐らくIMFは、金融面から非常に日本の経済の健全化というものに注視をしておられて、特にデフレの言及がございましたけれども、マネーサプライが順調に伸びるような状況をつくるべきだというような処方せんをかねてから持っている集団であると思いますので、むしろ、アルゼンチンと比べるというよりは、日本に対する非常に高い期待のあらわれでそういう指摘が出てきたのではないかなというふうに思っております。
 冒頭で申し上げましたように、バランスシート調整を進めて、不良債権の処理を進めて、銀行部門がマネーをふやせるような状況をつくり出すということは、これは大変重要な課題であると思いますので、金融庁も大変努力を重ねておりますが、引き続き我々もさらに努力をしたいというふうに思っております。
工藤委員 どうしてこのような見解がIMFあたりから出されるかといいますと、大臣がおっしゃるような反論の理屈は理解できるのでありますけれども、やはり、先般の質問の際でも、ブッシュ大統領の書簡についてお尋ねをしたことがありましたが、海外から見ておりますと、小泉総理の構造改革、特に不良債権処理については何ら進展していないと見ているのではないかと思うのであります。
 十二日の金融庁の特別検査でも、幾ら自己資本率が基準を上回っているとしても、不良債権はさらに膨らんでまいっておりますし、これでは新たな融資など、よほどのことがない限り円滑に進まないであろうと思います。
 改めて、不良債権処理の現状認識と公的資金注入の是非を含めた今後の対策について、お聞かせをいただきたいと思います。
竹中国務大臣 御承知のように、金融庁は特別検査を行いまして、その結果、かなり進展する部門は進展したというふうに認識をしております。
 具体的には、オフバランス化に向けて処理が進んだということは、これは紛れもない事実でございますし、銀行の問題は、その貸付先である企業の問題でもありますが、企業の大手の借入先についても、再建計画の策定等に進展があった、動きが見られたというふうに認識をしています。その意味で、ちまた言われました三月危機というのは杞憂に終わったということで、金融面からこの金融システムを安定化させるというそれなりの効果はあったんだと思っております。
 現状認識ということになりますと、しかしながら、金融というのは、決して危機を起こさないということで満足してはいけないわけで、経済の活動の重要な基盤であり、さらには、我々、構造改革を進めなければいけないわけですから、構造改革をサポートできるような強い金融システムでなければいけない、そういう高い段階に向かって、今一層の努力をしなければいけない状況であるというふうに思っております。
 特に、銀行のガバナンスといいますか、銀行自身がどのような再建の筋道を持って責任ある運営を行っているのかという点が今後さらに問われなければいけない問題であると考えておりますので、金融庁はそれなりの努力を大変重ねておりますけれども、経済財政諮問会議の中でも引き続き議論をしたいというふうに思っているところでございます。
工藤委員 不良債権問題について、財政諮問会議の内部でも、特に民間議員から注文が出されまして、五月上旬には、柳澤金融担当大臣を臨時議員として招いて、銀行の健全性を高める数値目標とか経営のあり方などを検討するというように報じられているわけであります。不良債権処理に関して、竹中大臣と柳澤大臣の認識が相当なずれがあることは明白でありますから、この際、内外ともに評価されるような結論を迅速な行動で出されるように御要望申し上げておきたいと思います。
 次に、景気対策についてお伺いしますが、四月の月例経済報告では、「景気は、依然厳しい状況にあるが、底入れに向けた動きがみられる。」としているわけであります。しかし、国内総生産の六割弱を占める個人消費、あるいは設備投資、雇用環境に関しての指標に著しい変化が見られないわけでありまして、その上、先ほどの不良債権処理の問題とも絡んで、中小企業等に対する金融機関からの融資が、査定が厳しくて、経済のすそ野では依然として景況感は芳しくない状況にあるんだろう、このように思っております。
 こうした背景ながら、三月に引き続いて景気の底入れ感に関して、やや楽観的とも言えるような判断を示されておられるその根拠、これはどういうことなんだろう、こう思いまして、お尋ねをさせていただきたいと思います。
竹中国務大臣 基本的に景気が厳しい状況にあるということは認識をしております。特に、具体的に申し上げますと、設備投資の落ち込み幅がやはり依然として非常に大きいということ、雇用情勢が大変厳しいということ等々、厳しさが極めて顕著に残っているということを認識している次第でございます。
 しかしながら、我々としては、委員御指摘のように、三月、四月と続けて、わずかではありますけれども、判断を上方修正させていただきました。三月には「下げ止まりの兆しがみられる。」というふうに述べて、四月には「底入れに向けた動き」というふうにさせていただいたわけであります。
 その根拠はいかんということでありますが、基本的には三つの指標に注目したつもりでございます。一つは輸出。輸出がやはり下げどまってきている。二つ目は生産。この輸出、生産というのは極めて連動していると思いますが、生産にもはっきりとトレンドとして下げどまりの動きが見られるということ。そして、企業の在庫調整が着実に進展しているということでございます。
 そういった評価が楽観的かどうかというのは多分に判断の問題だと思いますが、これは民間の専門機関がどのように見ているかということを我々検討チームで情報を集めておりますが、民間の中でも、実はかなりもう既に底入れしたというところもありますし、間もなく底入れというところも多い。その意味では、いろいろな専門機関の判断と比べると、私たちは比較的中庸の判断をしているのではないか、楽観的でも悲観的でもない判断をしているのではないかというふうに認識をしております。
 依然厳しい状況にはありますので、油断することなく、状況をチェックしながら、的確な判断をしたいと思っております。
工藤委員 次に、デフレ対策についてお尋ねをいたしますが、二月末のデフレ対策に関して、世論の評価はなかなか厳しいものがあると思っておりまして、大方は景気対策として効果が不十分だというように答えているようであります。先般の質疑の中で竹中大臣みずからが、デフレスパイラルに陥らないための措置である、こういうふうに話されたわけでありまして、当然の帰結だろう、このように思います。
 しかしながら、景気の底入れ感にはさまざまな見方が先ほど来のお話のようにあるわけでありまして、追加的なデフレ対策を講ずるべきだという声が日増しに大きくなっているように私は思っております。
 過般の税制改革に関する論点整理を受けて、六月には具体的な施策を打ち出すようにお聞きをいたしておりますけれども、税制の面からいかなる景気刺激策をとられるのか、また、雇用対策など、財政面からの対応を考えておられるのかどうか、その点をお伺いしておきたいと思います。
竹中国務大臣 デフレ対策、デフレ対応策、景気対策、いろいろなレベルでの、ちょっと言葉が世間ではなかなか広く使われているのではないだろうかと思います。
 基本的には、経済を活性化させることが我々の目標でありまして、そのために、まさに御質問のありましたような税制の改革、規制改革を中心とした活性化策というのを六月に取りまとめるということを目途に、今検討を進めております。我々がデフレ対策と呼びましたのは、その中でこれまで比較的困難性の高かった金融面の政策に焦点を当てて、それを取りまとめたのを我々はデフレ対応策というふうに呼んでいる次第であります。その意味では、景気対策としては不十分だというジャーナリズム等々での論調は存じ上げておりますが、景気対策をやったというつもりはございません。
 そもそも、そういった短期的な景気の微調整というようなものは、本来政策は原則としては行わないんだ、財政の中の自動安定化装置、ビルトインスタビライザーでそれは対応するんだということを財政運営の基本原則として、ことし一月の「改革と展望」の中には明記したつもりでございます。
 したがって、金融である。金融で、先ほど申し上げましたように、マネーサプライがふえるような状況をつくりたい、そのためには不良債権の処理だということになって、そのデフレ対応策の中心はやはり不良債権の処理ということになるわけでございます。この点については、御指摘がありましたように引き続き検討を深めたいと思っております。
 御質問のありました税制でありますが、税制の基本は経済を活性化するためにあるというその中心的な哲学を先般明記させていただきまして、活性化のための税制ということで今議論を進めているところでありますので、具体的な中身はさらに今後詰めていきたいというふうに思っております。
 もう一つ御質問のありました雇用への対応策でございますが、これは今年度の予算の執行を始めたばかりでありますので、その予算を昨年度の第二次補正予算とあわせて切れ目なく実行に移したいというふうに思っているところでございます。
工藤委員 これまでも、私の質問で、竹中大臣は、不況対策はとらない、今もおっしゃったように、前々からそのようにおっしゃっているわけでありますが、景気が本当に大変な状態で、国民はもう十年以上にわたってこの不景気の中で、きょうあすにでも店を閉めなきゃならない、仕事をやめなきゃならない、そういう中小零細企業はたくさんあるわけですよ。それで、景気対策はとらない、構造改革を進めて二、三年も我慢していただければ景気はだんだんに見えてくる、前回質問したときにはそのような御答弁をいただいたと記憶しておりますけれども、私は前々から、構造改革一辺倒でやったってますますひどくなりますよ、税制で何とか景気を上向かせるような、そういうことを手を打たなければだめだということで事例を挙げて、野党ですからただ批判していればいいんですけれども、いわゆる提言を申し上げたこともあったわけなんですよ。
 ですから、税制で何としても景気をよくするような、そういう対策を早急にとられるべきだろう、そう思うんですが、いかがなものでしょうか。
竹中国務大臣 ちょっと言葉が説明不足だったかもしれませんが、いわゆる不況対策をとらないということの意味は、いわゆるマクロ的な財政を使った景気の微調整というものは財政赤字の存在等々を考えてやるべきではないというふうな財政の規律、ディシプリンのことを申し上げているわけでありまして、しかし、経済の実態が厳しいことは承知しておりますから、それを活性化するための政策は、これはとっていかなければならない。これは、例えば中小企業に対する貸し渋り政策しかりでありますし、活性化の中核としての税制の活用というのは私たちも積極的に考えたいと思っているところであります。
 したがって、経済財政諮問会議としては、これまで公平、中立、簡素の三原則を掲げていたのに対して、むしろ中立というのは活力の意味だろうということで、活力を重視した税制に議論をむしろ進めているところなわけであります。
 そのための具体策に関しましては、先ほども申し上げましたように、今まさに山場といいますか、本論にまさに入ろうとしているところでありますので、ちょっと予断を持って私の方から申し上げられませんが、委員の御示唆、御提言も踏まえて、幅広く、税制を活用した経済の活性化というのは、これはしっかりと議論をしていきたいと思っております。
工藤委員 それでは次に、法務省からおいでをいただいておりますのでお尋ねをいたしますが、大阪高検前公安部長の三井環氏が詐欺容疑などで逮捕された経緯について御説明をいただきます。
古田政府参考人 大変お恥ずかしい話で、まことに申しわけないことでございますが、お尋ねの件につきましては、大阪高検の公安部長でございました三井検事が不動産取引に絡んで暴力団関係者から金員の提供や酒食の提供などを受けている、こういうふうな情報が大阪高検に寄せられたわけでございます。そこで、これは看過しがたい問題ということで、大阪高検におきまして慎重に内偵を進めておりましたところ、犯罪に該当する行為があるということが明らかになりまして、今回の捜査ということになったわけでございます。
 その具体的内容につきましては、暴力団関係者が居住しているあるマンション、これが競売に付されておりまして、この三井検事が競落人となったわけでございますが、それの明け渡しあるいは買い戻し等をめぐりまして暴力団関係者と非常に密接な関係になったわけでございます。その過程で、自分及びその暴力団関係者の利益を図るために、実は自分が住んでいるわけでもないのにそこに住んでいるという虚偽の住民登録をして、その上で、自分が、居住用物件ということで登録免許税の支払いを相当程度免れた。
 そういうふうなことのほかに、この暴力団関係者とのいろいろな交渉の過程で、全く職務上必要がないのにその前科を調べさせるなどいたしまして、プレッシャーをかけることに利用していた疑いが極めて強い。
 そういうふうないろいろな事情から、現職の検事として、私的生活の部分について、暴力団関係者とそういうふうな不正行為に及ぶ、さらには、職権を利用して、自分の利益になるようないろいろなプレッシャーを暴力団員にかけようとしているという疑いが極めて強い。そういうことを総合考慮いたしまして、今回、逮捕して強制捜査をするということになった次第でございます。
工藤委員 今の説明で、現職の検察庁高官が資産をふやす、暴力団と関係を持ったといったようなことなわけでありまして、当然、担当大臣を含めて厳しい処置がとられるものと思うのでありますが、この件に関して、別の角度からも問題が提起されているわけであります。
 それは、ある日刊紙が報ずるところなんですが、新聞が書いただけだということになるのかもしれませんけれども、逮捕前に、この三井容疑者は、検察庁には調活、調査活動費と呼ばれる裏金があって情報収集のための活動費としているが、相当部分が検察幹部の飲食費などに流用されている、このように話しておったようであります。こうした話を封じるために逮捕されたのではないかといったような疑いも一部あるわけであります。
 そこで、この調査活動費が予算上ここ数年どの程度計上されてきたのか、こうした疑いを持たれる点について、簡潔にひとつ御説明を願います。
古田政府参考人 検察庁におきます調査活動費の予算額は、この三年で申しますと、平成十二年度で二億二千六百万円、平成十三年度で一億五千九百万円、平成十四年度で八千四百万円となっております。
 この調査活動費につきましては、確かに今御指摘のようないろいろなうわさのようなことが週刊誌等に記載されていることは私も承知しておりますけれども、御指摘のようなことはなく、適正に執行されているものと承知しております。
 そしてまた、今回の逮捕につきましては、先ほど申し上げましたように、三井検事の行ってきたいろいろな暴力団関係者等との間の事柄が犯罪行為に当たることが明らかであり、なおかつ、私的分野に自分の職権を乱用しようとしているというようなところも非常に強くうかがわれる、そういうことから、いずれにしてもこれは当然検察庁としては厳正に対応しなければならない問題、そういうことで今回の措置に至ったものでございまして、御指摘のようなことではないということを御理解いただきたいと思います。
工藤委員 今の御説明で、平成十二年度が二億二千幾ら、それから十四年度が八千四百万というふうにお聞きをしたのでありますけれども、例えば十年は約五億五千万だった、それが、これまで法務・検察当局が情報提供者への謝礼などに使用してきた、このように説明をしておられるわけでありますけれども、年々減ってきたということは、この三井さんは、いわゆる検事正の飲食費とか遊興費などに使った、こういうふうなことを話しているというのでありますが、そして、一回に減らせば、急にゼロにするとばれるからといったようなことも話をしている。
 それで、情報収集のための経費、これに使ったというわけですが、コンピューターの入用費に充てたというふうなことなどもあって、果たしてこの調査活動費というのは、本来要らないものじゃなかったか。そういうのがだんだんに出てきたものだから、例えば毎年毎年どんどん減らして、そしてだんだんにゼロにしよう。それを一回に減らせば、何か今までやってきたのが要らないのをとったからばれてしまうと言っているといいますから、ですから、それを示すように毎年減らしてきているというふうにも思うわけなんですよ。
 コンピューターを買ったという、それも調査活動費として見るのかどうかといったようなことなんでありますけれども、減ってきた、減らしてよくなってきた原因は何なんですか、まずそれをお聞きします。簡単にお答えください。
古田政府参考人 非常に大きな変化といたしまして、実は、この調査活動費によって調査の対象とするそういう範囲が大きく変わってきたということがまずございます。それによりまして、従来のような調査活動ではなくて、むしろコンピューターネットワーク等からのいろいろな情報とか、そういうふうなことが中心になってきたわけでございまして、そこら辺で、検察庁といたしまして、全国的なコンピューターネットワークの整備が大変重要な課題となったわけでございます。これは、当然ながら相当の金額がかかる。
 それからもう一点、御理解をいただきたい点は、検察庁でいろいろな意味での、例えば通訳でございますとかそういうふうな謝金の問題、こういうふうな業務上絶対に不可欠な経費というのがあるわけでございますが、そういうものも年々急増していく。
 そういう状況の中で検察庁全体の予算の配分としてどういうふうにすべきかということで、このように調査活動費の占める割合を減らしてきたということでございます。
工藤委員 コンピューターを買ったり通訳の謝礼を払ったり、そういうのも調査活動費として予算をとる。最初からコンピューターを買うなんていって調査活動費をとっておったのですか。
古田政府参考人 説明が足りなかったかもしれませんが、要するに、コンピューターを買うということで調査活動費の予算をとっていたというわけではなくて、コンピューターネットワーク整備等の予算は措置が必要だということで、これが情報収集上大変重要でありますので、これまで情報収集のための経費として予算措置がとられていた調査活動費の方を減額いたしまして、コンピューターネットワークの整備の方の予算に振りかえていった、そういうことでございます。
工藤委員 さっきも申し上げましたが、法務・検察当局は、いわゆる調査活動費というものは、今御説明がありましたように情報収集のためのものであって、情報の提供者への謝礼のみに使用してきたというように説明をしておられるわけでありますけれども、予算がどんどん減ってきたというのは、余りにも減り方が激しいわけですよ。
 例えば、さっきも申し上げたとおり、平成十年度は五億五千万、十四年度は八千四百万といったような、ですから、どうもこの三井さんという人が言っているような、急にゼロになればばれるからといったような、何か符合するような、恐らく、この調子であれば、平成二十年ごろには二千万ぐらいになっているんじゃないか、そういうふうにも思ったりもするわけです。ですから、何か疑いを持たれてもしようがないようなやり方になってきているんじゃないかな、そういうふうに思ったりもするわけです。
 決してそうだとは言っておりませんけれども、ただ、そういうものを、いわゆる裏金、疑惑は調査しない、もう済んだことだというふうなことを法務大臣も話されておったようですけれども、調査しない、もう済んだことだというのは、これはどういうことなんですか。ちょっと御説明をいただけますか。
古田政府参考人 法務大臣が申し上げましたのは、この問題に関係いたしまして、昨年でございますが、ある告発事件がございました。その告発事件について捜査を遂げて、嫌疑がないということでこれは不起訴になっておりまして、そして検察審査会でも不起訴相当という議決をいただいているところでございまして、これまで具体的にそういう疑惑があるということで問題になった当該告発事件については、これはもう捜査して、そういう事実はないということで決着がついている。そういうことから、その範囲の問題につきましてはあえてこれ以上調査するとかそういうことはないという趣旨でお話しされたものと承知しております。
工藤委員 この問題、私の持ち時間が短いものですから、改めて別な機会にさせていただきたいと思います。
 次に進ませていただきますが、福田官房長官、靖国神社の件でもお聞きしたいことがありますけれども、この問題も相当時間をとってゆっくりお聞きしたいものですから、きょうは質問を取りやめさせていただいて、先般の私の質問の中で、不審船の引き揚げです。
 安倍官房副長官との意見の相違はない、新聞に発表したのはあれはうそだった、事実じゃないというように御答弁されました。引き揚げに反対しておられるのではない。そのように見られているようですがというように私が質問申し上げたら、反対したことは一度もない、ただ万事慎重なたちだからというような御答弁がありました。これは、要するに福田官房長官は、引き揚げることには、絶対に引き揚げはしなければならないけれども、相手の国が国だから慎重に事を運ばなければならない、そのように解釈してよろしいんでしょうか。
福田国務大臣 そういうことで御理解いただければよろしいかと思っております。
工藤委員 では、そこで、その後の状況を踏まえて再度お伺いをしたいのでありますけれども、小泉総理は、十二日の海南島での中国の朱鎔基首相との会談で当然これらの問題を話し合ったと思うのでありますが、しかし、報道された記事を見ますと、不審船引き揚げには大筋で合意したといったようなものもありましたし、何ら進展せずと報道したものもあって、まちまちだったわけであります。引き揚げるか否か、いつまでも結論を出さないわけにはいかないと思うので、現時点で引き揚げるに当たっての問題点があれば御説明をいただきたいと思います。
福田国務大臣 先般、博鰲フォーラムにおける小泉総理と朱鎔基首相の対話では、引き揚げについては今後お互いに対話をして話を進めていこう、こういうようなことを言われたわけでございます。それをもってして見方はいろいろあります。否定的な見方もあるし、肯定的な見方もある。しかし、基本的には、朱鎔基首相も引き揚げの方向というものは御理解を示されているものというように私は理解いたしております。
工藤委員 わかりました。
 次に、北朝鮮の拉致事件について村井国家公安委員長にお尋ねをいたします。
 この問題、過去にさかのぼって経緯を見れば見るほど、北朝鮮に対する我が国の政府の対応に正直腹立たしさを覚えるわけであります。拉致されたと見られる御家族の皆さんが、北朝鮮による拉致事件を国連の人権委員会に救済申し立てをして、結果として調査打ち切りになってしまったわけでありますけれども、果たして、こうした行動に対して政府がどれだけの援助の手を差し伸べてこられたのかということであります。
 日赤が、今月末に北京で行われる日朝赤十字会談で、拉致事件の十一名を含めて四十九名について安否の確認をするとしているわけでありますけれども、ぜひ何らかの成果が上がるように政府としてもバックアップをしていってほしい、このように思うわけであります。
 今月二十一日に警視庁が、北朝鮮に拉致されたとされている有本恵子さんですか、この方の捜査のために欧州に捜査員を派遣したということでありますが、捜査の進展について御説明をいただければと思います。
村井国務大臣 警察におきましては、有本恵子さんの拉致容疑事案につきまして、警視庁が捜査本部を設置いたしまして鋭意捜査を進めているところでございまして、今後とも我が国国内、国外の関係各機関との連携、情報収集等を含め、情報交換、それから関係者からの事情聴取を行いまして、全容解明のために最大限の努力をしているところでございます。
 ただ、これは、仕掛かり中と申しましょうか、こういう案件につきましては、私どもの方からの御答弁、こういう形にならざるを得ないわけでございますが、欧州への捜査員の派遣の目的でございますとか捜査の進展等々、お尋ねをいただきましたけれども、捜査上の秘密の保持という観点から、捜査の具体的内容につきましては、そもそも捜査員の派遣の有無も含めましてお答えを差し控えさせていただきたい、このように存じます。
 しかしながら、私といたしましても、御本人や御家族の御心痛というものを考えますと、本当にこの問題、大変な問題でございます。しっかりと受けとめまして、事案の解決に向けまして警察当局を督励してまいりたい、このように思う次第でございます。
工藤委員 今村井大臣からお答えをいただいたわけですが、いわゆる拉致をされた御家族の心情というのを、例えば村井大臣の御家族とか、官房長官、私の家族とか娘とかがそういう状況になったとしたら、みんな同じことなわけですから、本当にこの心情を考えれば大変なことだと思うんです。
 私はこういうふうに思っているんですが、私も含めてなんですけれども、一般の国民は、北朝鮮とか中国とかというところに、特に北朝鮮なんかに対しては、何か日本の政府は、我が国の政府は弱腰だ、どうもぴしぴしと、例えば本当に自分の国、一国のやり方としてこれでいいのかといったような、そういう思いを多くの国民は持っているような、そういう状況じゃないか。今までの対応の仕方が遠慮してきた、弱腰だ、そういうような気持ちを持っているんじゃないか、そう思えてならないわけでありまして、何でそんなに弱腰にならなきゃならぬのかと不思議でしようがないくらいの、怒りにも似た気持ちを私自身持っているのでありますが、その点をもう少し政府でお考えをいただいて、拉致問題とかこういう問題に対してきちっとした対応をしていただきたいと強く御要望を申し上げておきたいと思います。
 もう時間がなくなりましたので、最後になりますが、栄典制度のあり方について伺います。
 首相の私的諮問機関で栄典制度の在り方に関する懇談会が昨年十月に報告書を出されました。現行制度と報告書の相違点、これを簡単に御説明をいただきたいと思います。
佐藤(正)政府参考人 お答えいたします。
 昨年十月に栄典制度の在り方に関する懇談会から総理に対して報告書が提出されておりますが、その報告書の指摘しております主な事項を申し上げますと、一つは、栄典制度については、歴史と伝統ある勲章等を活用した上で運用を改めろということでございます。
 まず第一点といたしましては、勲章の名称につきまして、一等、二等というような数字で表示しておることを改めまして、各勲章に個別の名称をつけて、それで表示をするようにというようなことが一つ。
 それから、現在、旭日章と瑞宝章を半格ずらしまして非常に勲等が煩雑になっておるということがございますが、功績の質によりまして旭日章と瑞宝章を使い分ける、別系統の勲章とするということによりましてそこを整理合理化しろということ。
 それから、一般の受章者に対しましては、旭日章と瑞宝章を男女共通の勲章として使用すること。
 それからまた、褒章につきましては、現在、五十五歳以上というような年齢の制限がございますが、すぐれた功績がありましたら速やかに顕彰するということで、年齢制限を取り払うようにというような御指摘をいただいたところでございます。
工藤委員 今いろいろ御説明をいただいたわけでありますけれども、等級による区分をなくして、現在の褒章制度のような、より広範な適用といいますか、現在の時代背景に考慮した制度につくりかえる必要があるだろう、このように思うわけでありまして、懇談会の今後の活動方針について改めて説明をしていただきたいと思います。
大畠委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますから、簡潔に答弁をお願いします。
佐藤(正)政府参考人 懇談会におきましては、報告書を取りまとめるに当たりまして、各界の有識者からのヒアリングを行いましたり、あるいは中間で論点整理を行いまして、一般の方々からの意見の募集をいたしたり、さらには有識者三千人に対するアンケート調査を行って取りまとめております。
 報告書をいただきましたところで、内閣府といたしまして現在検討しておるところでございますが、報告書の趣旨を踏まえまして、その具体化に向けて鋭意検討しておるという状況でございます。
工藤委員 終わります。ありがとうございました。
大畠委員長 これにて工藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 不況が長引きまして、倒産、失業も大変深刻であります。こういう中で、サラ金から借金をしたり、あるいは違法なやみ金融にひっかかって多重債務に陥るという事例が多発しております。その結果、自己破産ですとか夜逃げ、あるいはあげくの果てに自殺というような事件もふえております。
 やみ金というのは、出資法の上限金利二九・二%をはるかに超えて、例えばトーサン、十日で三割ですね、あるいはトーゴ、十日で五割、こういう極めて異常な高金利で貸しているわけであります。中には、夜明けの三割、前の日に借りたら次の日の朝までに金利三割そろえて返せ、こういうものもあるわけですね。
 このようなやみ金にひっかかった多重債務を初めとして、破産宣告者数はこの五年間で約三・四倍にふえております。自殺者は九五年ごろからふえ始めまして、九八年からは経済的理由が急増しております。こうして年間の自殺者数は合計三万人を超えるという状況ですね。
 そこで、村井大臣にお伺いをいたしますけれども、このような事態をどのように認識されておられるか、御見解をまずお伺いしたいと思います。
村井国務大臣 この今委員御指摘のような行為というのは、恐らく無登録の貸金業者によって行われているようなケースが多いのだろうと思いますが、景気の低迷でございますとか、あるいは社会情勢を反映しまして、資金繰りに苦しんでいる債務者あるいは中小企業主などを中心に被害が拡大していることは事実だと認識しております。
 こういった事犯でございますが、国民生活に深くかかわるものでございまして、また、弱い者の弱みにつけ込む非常に悪質な行為だと考えておりまして、警察といたしましては、法令に違反する行為につきましては法と事実に基づきましてきちんと対応をしていくべきものだ、このように考えておるところでございます。
佐々木(憲)委員 最近、やみ金融が東京などの大都会を中心に跳梁ばっこしていると言われておりまして、極めてゆゆしき事態であります。
 そこで、金融庁にお聞きをしますけれども、本来、貸金業というのは登録した業者しかやれないはずでありますけれども、いかがでしょうか。もし登録していない業者が金融業を営んだ場合には、どのような罰則があるでしょうか。
田口政府参考人 お答えいたします。
 貸金業規制法によりますと、第三条第一項におきまして、貸金業を営もうとする者は内閣総理大臣または都道府県知事の登録を受けなければならないというふうに規定されております。また、同法第十一条第一項におきまして、登録を受けていない者は貸金業を営んではならないというふうに規定されております。この規定に違反いたしました場合には、同法第四十七条第二号によりまして、「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」というふうに規定されております。
佐々木(憲)委員 つまり、違法な存在なわけですね、やみ金融というものは。
 このやみ金融を取り締まるのは金融庁なんでしょうか、それとも警察庁なんでしょうか。どちらでしょうか。
黒澤政府参考人 警察といたしましては、従来から、無登録の貸金業等法令違反につきましては、法と証拠に基づきまして厳正に取り締まりを行っているところでございます。
 なお、警察といたしましては、金融庁、財務局等の関係機関と密接に連携をいたしまして、取り締まりを推進いたしているところでございます。
佐々木(憲)委員 担当は警察庁だということであります。
 そこで、金融庁にもう一度お聞きしますけれども、登録されていない業者が勝手に登録番号を使って、つまり番号を詐称するということですが、そういう形で貸金業を営むような事例があって一般の方から問い合わせがあった場合、この貸金業のこの番号は登録業者でしょうか、こういうふうに来たときに、金融庁としてはどういう対応をされるんでしょうか。
田口政府参考人 お答えいたします。
 まず、一般の方から、当該業者が登録業者かどうかということにつきまして各財務局あるいは都道府県等に問い合わせがございました場合には、各財務局で登録業者かどうかを確認してお答えをしているということでございます。
 また、無登録で貸金業を営んでいる者の情報をそういう形で得ました場合には、貸金業規制法違反の疑いがあるということで、適宜捜査当局に情報提供を行っているということでございます。
佐々木(憲)委員 それは、横の連絡を密にしているということ、それから、問い合わせがあった当事者に正確に答えると。そうしますと、一般にはどういうふうに周知されるわけでしょうか。
田口政府参考人 金融庁におきましては、財務局登録の全業者のリストを金融庁のホームページに掲載しているところでございまして、それを通じて周知を図っているところでございます。また、東京都などにおきましても、類似の登録業者リストを掲載することによりまして、無登録業者か否かの確認をとるということができる形になってございます。
 また、例えば関東財務局におきましては、無登録業者の中で関東財務局の登録番号を詐称して広告を行っている者につきましては、ホームページで公開いたしまして利用者の方に注意喚起をしているところでございます。
佐々木(憲)委員 関東財務局のホームページ、これを私は印刷して手元にありますが、こういうものですね。「悪質な貸金業者の情報について」ということで、例えば、どこどこは「登録がないにも関わらず、当局の登録番号を詐称した広告により勧誘を行っていることになります。くれぐれも御注意ください。」こういうふうに周知徹底を図っているということでありますが、警察庁に連絡をする件数というのは年に何件ぐらいあるのでしょうか。
田口政府参考人 捜査当局への連絡の件数でございますが、私ども、無登録業者に関するものという区分では集計しておりませんが、無登録業者に関するものも含めまして、貸金業規制法等の法令に違反する疑いがあるとして捜査当局に通報いたしました件数は、平成十年度百八十件、十一年度二百三十七件、十二年度百八十五件というふうになっております。
佐々木(憲)委員 その数は非常に少ないという印象を受けるわけですね。実際に問い合わせをする、あるいは抗議の話が来る、そういう事例というのは全体の中の一部だとは思いますけれども、それにしても非常に少ない、被害者の数は何千何万とあるというふうにお聞きしていますので。
 そこで、通報を受けた捜査当局の警察の側はこれにどう対応しているのか、これをお聞きしたいと思います。
黒澤政府参考人 財務局、財務事務所とは県レベルでも連絡する場がございますし、今答弁が金融庁からございましたように、私ども、情報の連絡を受ける、あるいはその他の方法でいろいろ情報も入手することもあるわけでございまして、関係機関とも連携をいたしまして実態の把握に努めまして、法令に違反する行為につきましては、法と証拠に基づきまして厳正に対処をいたしているところでございます。
佐々木(憲)委員 最近、いろいろな新聞、雑誌など、特に夕刊紙ですとかあるいはスポーツ紙などで、大っぴらに貸金業の広告がこのように出ているわけです。こんなにたくさんあるわけですね。つまり、一日にこういうのが何ページかあるわけです。
 こういう中で、例えば調べてみますと、登録番号を一応全部書いてはあるのです。しかし、この登録番号は実態と違うというのがこの中に含まれております。例えば、「一人でも多く皆様に実行します、十万円なら即オーケー、すぐ貸すお店」なんて書いて、電話番号と登録番号は一応書いてある。ところが、登録番号は全然違うのです。別な数字なんですね。ですから、全く登録番号詐称であります。
 それから、例えばここに、「新店オープン、十万円なら皆様に貸します」というような広告が出ています。これも同じ、調べたら違うというようなことで、つまり、こういう広告がもうあちこちに、いわば虚偽の広告。それで、その実態を知らない人がこれにひっかかるということで、大変被害が広がっているわけですけれども、警察庁は、このような広告の中に無登録者が多数含まれている、こういう実態を把握されているんでしょうか。
黒澤政府参考人 警察といたしましては、そういったスポーツ紙などに広告がなされておる、そういった中には、無登録の貸金業者の広告もあるということは承知をいたしておるところでございます。
佐々木(憲)委員 そうしますと、そういうものがあるという発見をした場合にはどのような対処をされるんですか。
黒澤政府参考人 実態を解明いたしまして、無登録であるということが判明いたしますれば、それは無登録ということで違反になりますし、あるいは、それをきっかけにいろいろ捜査を進めた結果、刑罰法令に触れる、他の法令に触れるということもございますが、そういった場合に検挙等の措置を講ずる、かような対応をいたしておるところでございます。
佐々木(憲)委員 検挙等の事案というのは年に何件ぐらいあるんでしょうか。
黒澤政府参考人 金融事犯といいますと、これは貸金業法でありますとか出資法でありますとか、いろいろな高金利事犯等も含めまして、詐欺も入りますが、昨年の数字で申し上げますと、事件数でございますが、全部で二百十六の事件を検挙いたしておるところでございますが、この中で無登録事犯につきましては、九十九の事件を昨年は一年間で検挙いたしております。
佐々木(憲)委員 本当に極めて少ないと思うんですね。一日でもこういう形で数件、一つの夕刊紙だけで出ているわけです。これはもうともかく年間にしますと大変な数なんですよ。にもかかわらず、その無登録について検挙した件数は九十九だという百にも満たない状況でありまして、これでは本当にしっかりした対応をしているのかどうかというのが疑わしいと思わざるを得ませんね。
 こういうやみ金から借りますとどんなことになるかというと、返済が少しでもおくれた場合、本当に昼も夜もめちゃくちゃな電話での催促、あるいは大声を出して騒ぎ回る、脅迫して車に乗せて引っ張り回すというようなことが頻繁に起きているわけです。
 お配りした資料があると思いますが、この一番最後のところをちょっと見ていただきたいんですが、例えばこういうビラですけれども、こういうものが町の中にばらまかれる、あるいはこれが電柱に張られる。
 これは、真ん中にありますのは、この借りた本人の顔写真なんです。それで、どこどこ営業所に勤務する何々は多額の借り入れを行い遊び回り再三の支払い要求にも応じず云々と書いて、公共的職業につき社会のモラル何とか、よってここに糾弾するとかなんとか書いてあります。
 こういうものをばらまかれますと、これはもう本人はとてもその地域で生活ができない、あるいは家庭が崩壊する、そういう状況になるわけでありまして、こういうおどしというのは当然この取り締まりの対象だと思いますけれども、これはいかがでしょうか。
黒澤政府参考人 事案の態様、個々具体的な事実関係によりますけれども、一般論で申し上げますれば、例えば名誉毀損でありますとか信用毀損、脅迫、いろいろな罰則法令が考えられるかと思いますが、個々具体的な事案に即して、私ども積極的に対応をいたしておるところでございます。
佐々木(憲)委員 積極的に対応していただきたいわけですけれども、例えば、お配りした資料を見ていただきたいのですけれども、こういうことをやっているんですね。
 これは「委任状」というのが一番最初にありまして、私は何々を代理人と定め左の行為をする権限を委任いたしますと。何も書いていないんですよ。つまり、だれだれを代理人と定める、だれだれという名前が空白、左の行為、その行為の中身も空白、そういうふうにして、いわば白紙の委任状に特定の借金をした個人に署名捺印させる。しかも、これをおどしをかけてやるわけです。
 それから、次を見ていただければ、その借金をした人の住宅、その「入居及び鍵引渡承諾書」なんというものも、これに名前を書かせて、それでとる。年月日も何も書いていない。それから、「引渡証明書」というのがそこにある。こういうことで不動産などもお渡しいたしますというようなこと。
 それから、その次をめくっていただきますと、「建物明渡契約書」、これも、実印を本人からとって、それから印鑑証明もとって、そしてその本人に無理やり署名をさせて、あとは何でも書ける。
 それから、その次に「売渡書」。売り渡し書といったって、何を売り渡すのか、物件の表示も何もない。幾らでも書ける。一、何々、二、何々と全部書ける。こういうものをつくって、ともかくおどしをかけて、本人に署名だけさせる。
 こういうものが一体有効なものなのかどうかというまず根本問題があるわけでありまして、これは、配付しましたのは全体の一部でして、私は手元にたくさんこういうのがあるんです。これも個人、一人についてこんなにたくさん、もういろいろな書類をつくって、実印をとって、あちこちに押すわけです。たくさん集めるわけです。これを使って勝手放題をやるということをしているわけです。
 まず、法務省にお聞きをしますが、こういう契約書というのは有効なのかどうなのか。これは契約書まがいのもので無効だと私は思うんですが、いかがでしょうか。
原田政府参考人 無登録の貸金業者が、まず金銭消費貸借契約を結ぶ、それに付随して、今御指摘のございましたような建物明け渡し契約であるとか入居及びかぎ引き渡し承諾のような紙、契約書を取り交わすということでございますが、まず、その最初の金銭消費貸借契約自体は、これは、取り締まり法規に違反する、つまり、登録を受けないで貸し付けを業としていること自体は違法でございますけれども、それによって消費貸借契約自体が直ちに無効ということにはならないと一般には解されております。
 ただ、それに伴いまして、白紙委任状であるとか建物明け渡し契約書という、また別途の契約が結ばれております。これらにつきましては、やはり個別的な事案によって判断せざるを得ないと思いますが、その契約の内容がいわゆる民法に言います公の秩序、公序良俗と言われるものに反するようなことになれば、これは民法九十条の規定に違反して無効になる、このように考えておりますし、さらに、このような契約の締結に際して、仮に強迫的な行為があるということになりますと、民法の取り消しということもできます。
 さらに、合意の範囲を超えてこの契約書の中身を勝手に一方当事者が補充するというようなことになりますと、それは合意を超える部分については、両者の意思の合致がございませんので、その部分について効力を生じないということは当然のことであろう、このように考えております。
佐々木(憲)委員 これは本当に無効なものだと思いますし、こんなことが平然と通っていたら世の中めちゃくちゃになると私は思うんです。
 そこで、本人の意思に反して、脅迫されてこういうものをつくらされた、あるいは、合意をしたとしても、その合意の範囲をはるかに超えて使われるという場合、こういう場合にはどのような罰則があるのか、これをお聞きしたいと思います。
古田政府参考人 実際の行為について何らかの犯罪が成立するかは、それぞれの事実関係によることではございますが、一般的に申し上げますれば、例えば人をおどして財物を提供させる、こういうことになりますと恐喝罪に当たることもございますし、あるいはそこまで至らなくても、強要罪に当たることもまたあろうかと思います。さらに、ただいまお尋ねのような、最初の合意を超えて勝手に合意と違うような内容の文書を他人名義でつくるということになりますれば、これは私文書偽造、それを使えばその行使罪が成立することがあり得ると考えております。
佐々木(憲)委員 こういう違法なことを、本当にかなりこれが無法な形で広がっておりまして、被害者がふえております。登録されていない貸金業を営んでいる町金、やみ金というのはその存在自体がもともと違法なんですから、警察は、それを見つけたら直ちに取り締まって処罰するというのは当たり前のことなんですけれども、ところが、どうも警察に訴えてもなかなか動いてくれないという声が、結構私聞いているんです。
 例えば、神奈川でこういう事例がありました。ある中小企業の社長さんが、やみ金業者に親会社に連れていかれまして、売掛金をやみ金融に譲渡したという念書を、これはおどされて強制的に書かされる。ようやくそれで帰してもらえた。そこですぐ帰るとまたおどされると思って、翌々日に家に入ろうとしますと、かぎがない、かぎがあかない。しかも、中には知らない人がいる。玄関に、賃貸契約書、それからかぎを取りかえても異議申し立てをしないというような承認書とか、これもでっち上げなんですけれども、そういうコピーがべたべた張ってある。これらの契約書も承諾書も本人は何の覚えもないわけです。いわば実印をとられて勝手に押されて偽造されたというものなんですね。
 そういうふうにしてつくられたものがべたべた張られて、工場に行くと工場にもかぎがかかっている。入り口には、中のものは債権担保の回収目的で売買がなされています、こう書かれている。四百坪の工場の中を見ると、がらんとして、事務所の帳簿書類、印鑑、従業員のロッカー、機械、全部持ち去られていた。このことについて警察に訴えますと、それは民事なので介入できないんだといってすぐに対応しないというんですね。しかも三週間も放置された。こういう事例があります。これは私は本当にひどいと思うんです。
 あるいは東京の事例で、やみ金業者が、自分の家に、借金をした本人の家に来まして、家主か隣の人に保証人になってもらえということを言って、ごねて絶対に帰らない。自宅周辺にもうろうろして張り込んでいる。それで逃げられない状態になった。そこで警察署に相談をしましたが、そんなことで警察は動けないよという対応だったと。
 それから、山形の事例を言いますと、出先までつけ回したり、近所にわかるような大声を出して取り立てに回る。困って警察に相談したけれども、警察の方は、借りたものは金利が四割でも五割でも払わなければならないんだ、裁判しても、払うのを払わなければ負けるんだ、こういうふうに言われたというんですね。
 どうも、現場の警察の対応というのがこういうことに対して余りにも冷たいんじゃないだろうか。先ほどの御答弁ですと、こういうものは違法であり、取り締まりの対象であり、処罰しなきゃならぬということなんですけれども、どうも現在の現場の警察官あるいは警察署はそうなっていない。警察というのは大体こんな対応をするものなんでしょうか。
黒澤政府参考人 ただいま御指摘の事案については承知をいたしておらないわけでございまして、一般論になってしまうわけでございますけれども、私ども警察におきましては、犯罪につきまして、犯罪等による被害に遭ったものにつきましては、法と証拠に基づきまして罰則法令の適用をする、事件の検挙をするわけでございますけれども、相談や届け出に国民の方が警察に見えるわけでございますが、たとえその時点で警察にとっては犯罪等によることが明らかでないものでありましても、刑罰法令に仮に抵触しない事案につきましても、個々の事案に応じましていろいろな指導をする、あるいは警告をする、適切な措置を講ずるように第一線を指導いたしておるところでございまして、もちろん、刑罰法令に抵触する事案につきましては、迅速かつ的確な捜査を行うよう指導をいたしておるところでございます。
佐々木(憲)委員 そうすると、今そういうふうな姿勢でなさっているということなんですが、それは現場の方には徹底していないということなんでしょうかね。
黒澤政府参考人 私ども、警察改革の折に民事不介入という問題をいろいろ御指摘いただいたわけでございますけれども、組織を挙げまして、一線にも指導の徹底をいたしておるところでございます。
 今御指摘の事案につきましては、具体的な事案を私承知をいたしておりませんので、ここでコメント申し上げることはできませんが、今、組織を挙げて、今私が答弁したようなことで一線を指導しておるということでございます。
佐々木(憲)委員 確かに答弁は前向きなわけですけれども、現場のところに徹底しているというふうにはどうも思えないんですね、いろいろな話を聞いていますと。しかも、先ほどの実際に検挙して処罰をしたというような件数は非常に少ないんです。実際には被害者は万という単位である。これは、そういう被害の相談を受けている弁護士の方々のお話も聞いております。そういう点でいいますと、被害はふえているんだけれども、対応がなかなか現実に合っていないのではないか。
 無登録者の貸金業を放置しておくということは国民自身に非常に大きな被害を与えるということになるわけで、債務者の家庭が崩壊する、本人はもう生きていけない、生命の危機にも追いやるというような、そういう状況になるわけで、これはやはり直ちに徹底的に対応を改善すべきだと私は思うんです。そうしないと、現場の警察というのは無登録の貸金業をなくす考えがないのか、違法を放置するのかというふうにどうしても思われてしまうわけですね。
 村井大臣にお聞きをしたいんですけれども、こういう状況なものですから、今東京を中心に被害が広がっております。大都市中心にずっと広がっておりますが、だんだん地方の都市にもこれは進出していっておりまして、全国的に広がっているんです。全国の警察に対しまして、やはり本省から、やみ金に対してきちっと取り締まるべきだ、直ちにそういう指示を出していただきたい。いかがでしょうか。
村井国務大臣 今、佐々木委員と政府参考人の皆さんとの間のやりとりをずっと拝聴しておりまして、私も過去、金融の政務次官をやらせていただきましたり、あるいは副大臣をやらせていただきましたり、委員の御指摘になられる御懸念の問題、ある程度土地カンもあるわけでございます。
 一方、警察の立場から申しますと、なかなかこれは事件化が非常に難しい面もまたあるわけでございます。実際に詰めてまいりますと、一体どこまできちんとした裁判にたえる証拠を挙げることができるかというあたりの問題もございます。また、いわゆる被害者とされる方々のおっしゃることをどこまで立証できるかというような問題もございます。
 そういう困難な問題がいろいろございますけれども、しかし警察として、こういう悪質な業者による被害の蔓延と申しましょうか、そういう事態を放置しておくわけにはまいらない、これは当然のことでございまして、これまでもいろいろな形でこういう事犯につきましての関心というものは、私どもとしましても注意喚起をしているところでございますけれども、かりそめにも委員御指摘のような状態がこれからも続くということのないように、私といたしましても警察当局を督励してまいりたい、こんなふうに感じながら今委員の御質疑を拝聴していたところでございます。
佐々木(憲)委員 具体的に指示をきちっと出していただきたいと思うんです。一般的な督励というのはわかりますけれども、そうではなくて、やはり全国の末端の警察の市民に対する対応の姿勢そのものが今問われていると思いますので、具体的に指示をぜひ出していただきたい。いかがでしょうか。
黒澤政府参考人 実は、昨今の諸情勢にかんがみまして、昨年の七月でございますけれども、警察庁から都道府県警察に対しまして、金融事犯に対する取り締まりの推進についてということで具体的に通達も発出をいたしておるところでございます。
 それで、先ほど、事件数で申し上げましたけれども、これはあくまでも一つの事件という数え方でございまして、事件数でもここ数年来検挙が増加をいたしておりまして、検挙人員で見てみますと、例えば昨年は九十九の事件数でありますけれども二百十九人、これが多いか少ないかの議論はあろうかとは思いますけれども、二百十九人を検挙いたしておるところでございまして、金融事犯の検挙につきましては、ここ数年来増加の傾向にございまして、私ども、努力をいたしておるところでございますけれども、今後一層の努力をしてまいりたいと存じます。
佐々木(憲)委員 昨年七月に出したというんですけれども、改めてもう一度きちっと通達ぐらいは出すというのは今のような状況を考えますと当然だと思うんですけれども、大臣、最後にそういう決意をぜひ示していただきたいと思います。
村井国務大臣 委員十分御認識のとおり、警察と私ども国家公安委員会との関係というのもございますので、国家公安委員会におきまして、きょうの御議論など、いつもやっていることでございますが、国会での御議論というのを十分に御披露申し上げ、また御相談をさせていただきました上で適切な対応をとらせていただきたい、このように考える次第でございます。
佐々木(憲)委員 もう時間が終わりますけれども、今回こういう事案がふえているということを私も再確認してびっくりしたんですが、やはり、現在の不況の非常に長期的な深刻な状況が続いているということ、それから、そういう中で銀行の貸し渋りが大変深刻だということがあります。したがって、どうしても、こういうサラ金ですとか、あるいは果ては町金ですとか、そういう違法な業者にひっかかるケースというのは非常にふえているわけです。
 したがいまして、違法を違法としてきちっと取り締まるということをやらないと、やはり国民の生活、国民の営業というものが大変な不安に陥ることになりますので、今後、こういう点できちっとした指導をされるように繰り返し申し上げまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
大畠委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
大畠委員長 次に、内閣提出、参議院送付、障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。福田内閣官房長官。
    ―――――――――――――
 障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
福田国務大臣 ただいま議題となりました障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 平成十一年に政府の障害者施策推進本部において決定された障害者に係る欠格条項の見直しについての方針を踏まえ、障害者の社会活動への参加の促進等を図るため、船員法等において定められている障害者に係る欠格事由の適正化等を図ることを目的として、この法律案を提出することとした次第でございます。
 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、獣医師等の免許、放射性同位元素の使用等の許可等の制度において、免許等を与えないこととされる欠格事由のうち、障害者を特定しているものについて、障害ではなく、業務を行う能力に応じて免許等を与えることができるよう改めることとしております。
 第二に、銃砲または刀剣類の所持許可の基準における障害者に係る欠格事由の規定の厳密化を図ることとしております。
 第三に、通訳案内業等において、免許等を与えないこととする場合の意見聴取のための手続を設けることとしております。
 最後に、この法律の施行期日は、公布の日から起算して二月を超えない範囲内において政令で定める日としております。ただし、銃砲刀剣類所持等取締法及び火薬類取締法の改正に関する規定は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日としております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同賜らんことをお願いいたします。
大畠委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
大畠委員長 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官江崎芳雄君、警察庁生活安全局長黒澤正和君、警察庁交通局長属憲夫君、法務省入国管理局長中尾巧君、文部科学省大臣官房審議官瀬山賢治君、厚生労働省職業安定局長澤田陽太郎君、農林水産省大臣官房審議官松原謙一君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官佐藤哲哉君及び国土交通省総合政策局次長伊藤鎭樹君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大畠委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
大畠委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石毛えい子さん。
石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。
 障害を持つ人の社会参加を妨げる大きな要因になってまいりました障害に係る欠格条項の見直し、適正化、今国会でおおよその整理がついて、終了ということになるのかどうかは後ほどまたお尋ねしたいと思いますけれども、一段落という状態を迎えております。
 その欠格条項、今国会、対象制度が十三提出されておりまして、残すところ検討中三というところまで来ているというのが進捗状況ということでございますが、九九年に出されました「障害者に係る欠格条項の見直しについて」という障害者施策推進本部決定の方針を読みますと、基本的な考え方の中に、「必要性の薄いものについては障害者に係る欠格条項を廃止するものとする。」とございます。
 まず、その廃止された欠格条項についてお尋ねしたいと思います。
 その前に済みません、後先になりましたけれども、きょうは、きょうの審議で欠格条項の見直しにつきましてはひとまず中間点になるのですか、一段落ということで、総括的な質問をさせていただきたいということもございまして、大変多くの省庁から御出席をいただいております。御答弁をいただきましたら適宜お帰りいただいて結構でございますので、どうぞよろしくお計らいください。
 繰り返しになりますけれども、必要性の薄いものについて欠格条項を廃止するとされておりますけれども、廃止された欠格条項についてまずお示しいただきたいと思います。
江崎政府参考人 現在、見直しを完了いたしました制度が四十七制度ございます。この中で、欠格条項を廃止したものといたしましては、人事院規則におきます国家公務員の就業禁止、道路交通法における自動車等の運転免許、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律における風俗営業の許可、同じく同法律におきます風俗営業の営業所の管理者、それから風俗環境浄化協会に関する規則におきます風俗営業の許可基準に係る調査業務、それから検察審査会法における検察審査員、栄養士法における栄養士免許、調理師法における調理師免許、製菓衛生師法における製菓衛生師免許、労働安全衛生法における衛生管理者、同じ法律でございますが、労働安全衛生法における一般労働者の就業禁止、建設業法施行令における建設機械施工技術検定、以上の十二制度であると承知をしております。
石毛委員 今御指摘いただきました中に、運転免許の欠格条項の見直し、適正化についても触れられておりました。この件に関しましては、さきのこの内閣委員会でも検討された事案でございまして、私もそのときに質問をさせていただきました。
 そこで、先ごろ政令が閣議決定されてという状況だと思いますけれども、運転免許の欠格条項見直しにかかわりまして、それについての情報の周知の状況についてまず教えていただきたいと思います。たくさんの方がお知りになるような方向性に行っているかどうかという、その点を確認させてください。
属政府参考人 平成十三年の道路交通法改正によりまして、従来、一律に免許が取得できないとされておりました欠格事由が廃止をされまして、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれの有無によりまして運転免許取得の可否を個別に判断することとなったところであります。この制度改正は、運転免許取得の可否に直接かかわる大変重要なものでありますので、その国民への周知については警察として十分意を用いるべきものと認識をしております。
 具体的には、既に警察庁ホームページや各種講習の機会等を通じて改正内容の広報を行っておりますほか、今後とも、引き続き、制度改正の内容を盛り込んだ広報用のリーフレットを大量につくりまして、運転免許センター等の警察施設や教習所で配布をし、また、同様の内容を警察庁や都道府県警察本部のホームページに掲載するなど、周知徹底に努めてまいる所存であります。
 また、教習所に入所しようとする方に対しましては、教習所の協力を得まして、病気等を理由に免許取得に不安があれば運転適性相談を積極的に受けていただくようお勧めする内容のチラシを配布することも予定をしております。
石毛委員 今、いろいろとホームページですとかリーフレットですとか教習所等々御紹介いただきましたけれども、希望をつけ加えさせていただければ、教習所には障害をお持ちの方で免許を取得したいという方が御相談等に見えるのでしょうけれども、もう少し、障害を持つ方に直接にそういうことを知らせていただく、そういう方法も積極的にとっていただけたらいかがかというふうに思います。障害をお持ちの方が働いていらっしゃる場所ですとか、あるいは学校等々あると思いますので、まさに該当する当事者の方に情報が直接行くような、そういう方策もとっていただけたら周知徹底というのはより進むのではないかというふうに思いましたので、私の方からもつけ加えさせていただきます。
 それから、次でございますけれども、その運転免許のあり方について審議をしているときにも私も随分議論させていただいたところでございますけれども、運転免許が取得できるかどうかという相談窓口、あるいは最終的に免許を交付するかどうかを決定する公安委員会等の担当者の方への研修の内容はどんなふうになっておりますでしょうかということと、それから、研修体制へ障害を持つ当事者の方の参画というのはどんなふうに進めておられるのか、そのあたりについてお伺いいたします。
属政府参考人 まず初めに、障害者の方々に対する周知徹底についてちょっとつけ加えさせていただきます。
 これまでも障害者団体の方々に対しましては、改正の検討段階より御意見をいただく機会をいろいろ設けるなど、そしてまた随時検討状況についてもお話をしてきております。また、改正がこういうふうになりましたという内容についても、既にお伝えをしておるところでございます。
 それから、今回の新しい制度を適切に施行するためには、窓口でいろいろ担当する職員に対しまして、医学や科学技術に関する専門的知識を正確に理解をさせ、また、プライバシーの保護に十分留意をするよう意識づけを図る必要があると思っております。
 このため、担当職員に対する指導、教養には十全を期する必要があると考えておりまして、具体的には、都道府県警察の担当官を警察庁に招致いたしまして研修会を開催し、今回の欠格事由の見直しに係る制度の改正の趣旨や障害をお持ちの方に対する適切な適性相談の実施方策、さらにはプライバシーの保護のための措置等を徹底しております。また、随時必要な事項を指導しているところであります。今後も、必要に応じまして、随時研修の機会を設けるなどいたしまして、交通の安全と障害者の社会参加の両立を図るという今回の法改正の趣旨が、一線に十分浸透するように努力をしてまいりたいというふうに思います。
 なお、担当職員に対する研修会では、限られた時間内に医学上の専門知識を含めた数多くの事項をいろいろ教える必要があります。そういった中で、御指摘のように障害者の方にも直接参画していただくということについては、現状ではちょっと困難であるというように考えておりますが、警察庁としては、従来も多くの障害者の方々からさまざまな意見を伺っておりますし、研修を初めさまざまな機会を通じて、こうした障害者の方々の貴重な声を一線に反映をさせていきたいというふうに思っております。
石毛委員 警察庁の担当の方とは、もう私も随分協議をさせていただいてまいりましたので、中身についても意思疎通はかなりさせていただいたつもりですし、それから、NPO活動をしている障害をお持ちの当事者の方の活動団体、障害者欠格条項をなくす会の皆さんともお話し合いをしていただいたりしておりますので、決して当事者の方と接点を持たれていないということは申し上げるつもりはありません。いろいろとお会いしていただいたり、話し合わせていただいたりしておりましたので。
 私が今申し上げたいのは、現状ではいろいろと研修の日程が詰まっていてなかなか難しいというような属交通局長からの御答弁でございましたけれども、障害を持つ方と出会って、話し合って、一緒に行動してみたりする中で、随分認識と、それから何よりも感性が違ってくるということがあるんだと私は自分の経験からも思うわけなんですね。こんなふうにすればできるんだよと言われれば、ああ、そうかというふうに思いますし、それから、そんなことまでやってもらっちゃ困ると言われれば、ああ、相手の人格に踏み込んでしまったんだなというようなことも思いますし、なかなか言葉の情報交通だけではわからない部分がいっぱいあって、実際に出会ってコミュニケートする、その関係が共感をつくっていきながら、ああ、この方が運転免許を取れるように自分もどうしたらいいか考えてみようという自分の変化になってくる、そういう経験が社会の中にインプットされていくということが、私はノーマライゼーションの社会をつくっていくということの大きなステップだというふうに思うわけです。
 ですから、研修の中に、全くこの件に関しまして内容として盛り込んでいただいていないわけではありませんけれども、より積極的に、例えばワークショップのような形で、一年に一遍ぐらいでも、障害者欠格条項をなくす会を初め、ほかの活動団体の方もおられると思いますし、欠格条項のときにはてんかん協会の皆さんも随分いろいろと要望を出されておられましたし、そうした方々とぜひ積極的にコミュニケートできるような、そうした研修体制をこれから考えて実行に移していただきたい。今御答弁をいただくつもりもありませんけれども、そのことを伝えさせていただきたいと思います。
 次の質問ですけれども、やはり運転免許に関しまして、聴覚障害者に関する欠格条項の見直し、これは規則でございますけれども、適性検査合格基準に関する研究調査につきまして今年度で予算組みをしていただきまして、今の聴力だけを判断基準にしているそのことから一歩踏み出して、聴覚障害をお持ちの方が運転免許を取得する、その方法といいましょうか基準につきまして検討を始めていただいたというふうに受けとめておりますけれども、そのことについて御紹介をいただければというふうに思います。
属政府参考人 聴力に関しましては、欧米諸国におきましては、車両総重量三・五トン未満の普通自動車や自動二輪車の運転に必要な免許を受けようとする場合においては、運転免許の取得に当たって必要とされていないというように承知をしております。しかし一方で、大型免許やバス免許等を受けようとする場合には、一定以上の聴力が必要とされているということが多いと承知をしております。
 ところで、交通事情や道路事情は各国一様ではありませんで、我が国においては特に、見通しの悪いカーブが多いとか、あるいは踏切が比較的多い、そういった事情もあります。そういうために、警音器の音を聞くことができるなど一定以上の聴力を免許の条件にしているところであります。
 したがいまして、直ちにその条件を廃止することは困難であると考えておりますが、この点につきましては、本年度予算で調査研究費を認めていただいております。そういった調査研究の結果を踏まえて、さらに調査研究等を尽くした上で、さまざまな角度から慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
石毛委員 慎重に検討されるのは安全の面から当然のことだとは思いますけれども、一方で、障害をお持ちの方の生活手段の大切な要素として運転免許はあるわけですので、ぜひとも安全に取得できるという方向性で検討をお願いしたいというふうに思います。
 それと、二年間の検討というふうに伺っておりますので、検討過程につきましてはぜひ情報公開を随時お願いしたいということをつけ加えさせていただきます。
 運転免許に関しまして最後の質問になりますけれども、この審議をしているときにも、精神に病気をお持ちの方が通院をする方法として、それこそ交通手段、公共交通機関の乏しい地域では自分で運転できるということが通院に不可欠な方法であって、そして病気をコントロールしていくためにも必要というようなことで、ぜひそういう意味で免許の取得をという要請の声も随分強かったと思います。
 時間もありませんので、ちょっと論理が飛躍しますが、例えばタクシーのように対人サービスをするような、そういう免許に関しては無理でも、自分の生活圏の中での普通運転免許は可能というような、免許に関する限定免許導入というようなお考えにつきましてはどんなふうに考えられていますでしょうか。
属政府参考人 今回の制度改正によりまして、障害をお持ちの方でありましても、自動車等の安全な運転に支障がないと認める場合には運転免許を取得できることになっております。逆に、障害等により自動車等の安全な運転に支障があると認められる方につきましては、仮に、例えば御指摘のような通院に限るとか、あるいは生活圏だけでの運転に限るとか、そういった主観的な運転目的の限定を付したとしても交通の安全への支障が解消されるとは考えられませんので、こうした場合には運転免許取得は困難だろう。これは、公共の交通の安全という観点からはやはりいろいろ難しい問題があろうというふうに考えております。
石毛委員 時間もありませんから、これでまた議論を重ねていきますとすぐ制限時間が来てしまいますので、終わりにいたしますけれども、もう少しやはり個人の生活権を保障するという観点でどのような方策をとっていったらいいかということを御検討いただきたいというふうに思います。
 一方では地方の地域で公共交通がどんどん合理化されていって、他方、個人が免許を持てないということになりますと、これは病気の方の問題だけではなくて、高齢者の方の問題としても大きなテーマになっていることだと思いますけれども、運転免許はそういう課題を持っているということも、当然御認識いただいていることではございますけれども、さらに十分に受けとめていただきたいという要望をして終わります。
 今後とも、聴覚障害の方に関する免許に関しまして、それから当事者の参画に関しましては、私も関心を持ってこれからもかかわらせていただきたいと思いますので、その点、お受けとめいただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、文部科学省から瀬山官房審議官においでいただいております。文部科学省には、厚生労働委員会で、今国会、障害者雇用促進法に関しまして、除外率の見直しですとかそうした改善がなされました。その中には、仕事のアドバイスをしていくような支援員の制度というようなものも新しく位置づけられたわけですけれども、欠格条項の見直しに関しましては、業にかかわることでございますから、免許や資格を取得できるということが前提として大変重要な意味を持ってまいります。
 そこで、障害者雇用促進法の審議の折にも若干質問をさせていただきましたけれども、免許、資格を取得するための大学等の教育機関あるいは専門学校等の養成機関におきまして、この免許、資格を取得するためのサポートをする仕組みについて通知が出されているというのはいただいておりますので、それはもう答弁いただかなくても結構ですので、この欠格条項の見直し、適正化の時期を契機にいたしまして、今後どのように整備拡充をしていくかという、その今後の方策について教えていただきたいと思います。
瀬山政府参考人 お答えいたします。
 障害者の方々が大学等において各種の資格、免許を取得し、職業能力を身につけることは重要なことだと考えております。我が省といたしましても、従前から、このような意欲のある学生を支援するために、教育課程の履修あるいは学生生活全般にわたり特別な配慮を行ってきたところであります。
 具体的には、このような学生を支援するための予算上の措置として、国立大学については、ノートテーカーの配置等、教育上の特別な配慮を行うための予算措置を講じているところであります。また、私立大学におきましても、私立大学等経常費補助金の特別補助におきまして、各大学の障害者の受け入れ人数等に応じて補助金を増額する措置を行っているところであります。
 我が省といたしましては、今後とも、今申し上げましたような措置を通じまして、大学等で学ぶ障害のある学生が円滑な学生生活が送れるよう、学習支援体制の整備を支援していくとともに、大学等に対しまして、教職員、学生の障害者に対する理解を深めるための意識の啓発や、卒業後の就職、進路についての相談、指導、開拓等について積極的な対応をするよう促してまいりたいと考えております。
石毛委員 今御説明いただきました中身につきましては、文部科学省では、どういうセクションがどういう根拠法令に基づいてなさっておられますのでしょうか。
 質問と要望を兼ねさせていただきますと、私は、ぜひ文部科学省の中に、仮称でございますけれども、障害学生就学就労支援課というようなセクションを設けていただいてわかるようにしていただきたい、見えるようにしていただきたい、そういう要望を持ちます。
 時間がないので余りいろいろなことを申し上げたくはないのですけれども、もう四、五年前にカリフォルニア大学のバークレー校に参りましたときに、大学構内の中に車いす修理スペースがあるのに私は本当に驚きました。すてきなドレスを着た女性が車いす修理のそのスペースに来て自分の車いすを修理して、電動車いすでしたけれども、これからダンスパーティーに行くのと言って、アメリカの電動車いすはスピードをかなり出せますから、本当にハイスピードで走り去っていったその姿が何とも格好いいというふうに見えましたし、そのカリフォルニアバークレー校には、ノートテーカーもそうだと思いますし、それからもっと身辺介助をするような方も含めてアテンダントをコーディネートする、そういうコーナーといいますかカウンターもあるわけです。
 私は、日本でも、学生数が少ない大学とか養成校は、すぐにと言っては無理なところもあるかもしれませんけれども、大きな大きな大学はたくさんあるわけですし、それこそ総理がお出になられた大学でもきっかけになって、そうした実践、だから大学の中にも障害学生支援課というようなセクションをつくっていただいて、せっかくこの二〇〇二年、欠格条項の見直し、適正化という、障害者施策の中ではやはりかなり大きなウエートを持つ施策課題だというふうに私は思いますので、世の中にそれがわかる、障害の方にもわかるし、障害ではないというふうな方たちにもそれがよくわかり実感できるという、そうしたことを施策としてぜひ考えていただきたい。
 繰り返しになりますけれども、文部科学省の中にも障害学生のための就学就労支援課というようなこと、大学にもそうしたことを推奨していくということを私は申し上げたいわけです。
 それで、時間が本当に長くなってしまうのですけれども、医師法等の免許のときの、前の国会で参考人においでいただいた東大の医学部附属小児科研修医の熊谷晋一郎さんは、車いすを御利用で、手も不自由な方ですけれども、いろいろな工夫をしながら今小児科の研修医として活動していらっしゃる。
 それで、この熊谷さんが参考人として発言された中で私が非常に心を打たれましたのは、とにかく、夢を持つというか目標をしっかり持つということが何より大事だ、その夢を制限するような条項というのはやはりなくした方がいいし、実際、夢を持つ自由が確保されていなければその次がないというふうに御発言されて、もっといろいろと具体的なことを発言されたわけですけれども、やはり若い方も、それから、これからいろいろな意味でライセンスを取っていこうというような方も、夢を持つ、希望を持つということは非常に重要で、その希望を持つときにどこに自分がアクセスしたらいいかということがわかるというのは、社会のシステムとしてとても重要なことだと思いますので、より、もっと積極的に文部科学省に力を入れていただきたいということで、もう一度簡単に御答弁いただけますか。
瀬山政府参考人 障害者の方々に対するさまざまな配慮、これはまことに重要なことだと思っております。文部科学省におきましては、高等教育であるとか私学部の関係課がいろいろな施策をこれまで打ち出してきたところであります。ただ、その個々の具体的なきめ細かい政策になってまいりますと、やはり個々の大学の問題というところもございますが、大学では学生部であるとか学生課が本件に具体的に取り組んでおるところでございます。
 また、一つ、つくばに筑波技術短期大学というのがございます。障害者の方が来られていろいろな免許等を取られている大学でございますけれども、この筑波技術短期大学の中に支援室というのを設けてございます。この支援室は、同大学だけではなくて全国の大学に対してさまざまな支援をするという趣旨でつくられてございますので、こういった取り組みを通じて、今御指摘になったようなところについての取り組みを強めてまいりたいと思っております。
石毛委員 筑波技術短大が有効な蓄積を積まれているのでしたら、それをぜひ一般の大学に普遍化していくという、その方策をおとりいただきたいという要望をさせてください。
 厚生労働省から澤田職業安定局長においでいただきました。前回も質問させていただきましたが、そのときにあともう少しさせていただきたかったという思いもございましたので、きょう御足労いただきました。
 やはり、厚生労働委員会での医師法等のときの参考人でおいでいただきました社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の理事長の高岡さんが御発言いただいているその御発言に、次のようなくだりがございます。
  障害はあくまでも障害者個々人と社会や周囲との関係で生じるものであり、障害を一般に論じることはできません。障害を持つことは、人はだれでもあり得ることである、障害を持つというだけで能力が否定されるのではなく、どうしたらできるのか、どういう支援が必要なのかという考え方に転換していただきたいと思います。
ということ。
 このときの高岡参考人は、手話通訳とパソコン要約筆記と補聴器で参考人としての質疑に発言をされておられました。
 もう改めて申し上げるまでもありませんけれども、障害をお持ちの方が仕事につく、あるいは学ぶときもそうですけれども、補助者とか補助器具が大変重要な意味を持ってまいります。それから、障害を持つ方が働くときの、その仕事をなさる器具の開発等も非常に重要でございます。
 この欠格条項の見直しを契機に、より一層その補助者、補助具、労働手段としての機器の開発に力を尽くしていただきたいというふうに思いますけれども、今どのような飛躍の方向性をとられようとしているのかということについて御説明いただければと思います。
澤田政府参考人 御指摘の件につきましては、現状を申しますと、私ども、障害者を雇い入れることに伴いまして作業設備、機器の整備をしたり、手話通訳者等の介助者をつける事業主に対しましては、障害者雇用促進法に基づきまして各種助成措置を講じておりますが、この助成措置について、一つは、機器類等に関して申し上げますと、障害者に適した機器開発についての研究開発、日本障害者雇用促進協会等々でやっております。そして、そうした機器開発をベースに、より現場に適した形でそれをどう具体化していくかという点につきましても、いろいろなところでテストをしたりしてやっておりまして、結果、助成金制度に乗せていく場合には、事業主とか学識経験者、あるいは障害関連団体の方々の御意見を聞いて、現行の助成金制度を不断にと申しますか継続的に見直していくという努力をいたしております。
 今回、先ほど委員御指摘のように障害者雇用促進法、本日その一部改正法が成立いたしまして、その中でもジョブコーチ事業を実施するということを明定し、また、障害者の方々の就労支援等々について、各種の関係機関がネットワークを組んでやっていくというようなことも法律上明記いたしましたので、こうしたことを全体的に整合性のとれる形で今後とも引き続いて努力していきたい、こう思っております。
石毛委員 私も、きょうも障害者雇用促進法に関する法律をここに持ってきましたけれども、要するに、補助器具ですとか補助者についての整備の状況というのは障害者雇用促進協会に委託をしているわけですよね。
 それで、その内容につきましては、おっしゃられましたように、評議員制度があったりして、それはそれとして、ある意味での公正性というのは、まあ私から見ればいろいろと問題あるというふうに思いますけれども、維持しているとしましても、この障害者雇用促進法でいきますと十八条になると思いますけれども、この内容をどういうふうに整備していくかということにつきまして、厚生労働省としてはどんな責任を持っているんですか。
澤田政府参考人 障害者雇用促進法の仕組みで言いますと、御指摘のような業務を国が日本障害者雇用促進協会に行わせているということになります。
 ただし、その場合、国としても、障害者のそういう機器整備だとか就業環境整備についての方針を明確に持って、そういう中で日本障害者雇用促進協会にどういうお仕事をしてもらうかということは責任がございますので、常に障害者協会の方でやっていることにつきましては、私どもも連携といいますかウオッチをして、私どもの考え方と協会の考え方が同じベクトルで動くように、そこはよく、いわば監督官庁として指導しておりますし、協会が必要な研究会等々をやる場合には、私どももその企画段階、実施段階において参画をしている。まさに一体的に業務をこなすということで、十分注意を払っているつもりでございます。
石毛委員 御答弁、私にはよく理解できなかったんですけれども、監督官庁として指導していくんですか。それとも、こうした十八条の内容に関しまして、十八条自体は法文規定になっておりまして、どこかに、その業務は雇用促進協会に委託する、こういう法律構成になっていたと思いますから、業務を立案推進していくことの主体は、私は日本雇用促進協会にあるのではなくて国にある、具体的には厚生労働省にあるというふうに理解しておりますけれども、それでよろしいのかということ。
 それから、今回、欠格条項見直し、ひとまず一段落ということになりますので、この際に、厚生労働省として、改めてどのような方針を立てて雇用促進協会との協議に臨んでいくかという、大変僣越ですけれども、厚生労働省としての主体性という表現が僣越かもしれないと思ったわけですけれども、主体性についてお聞かせいただきたいということ。
 それから、時間がありませんので要請をつけ加えさせてください。
 私は、所沢のリハビリテーションセンターかどこか、幕張でもいいと思いますけれども、補助者や補助器具等、障害をお持ちの方が業務を遂行していく上でどのようなマッチングになっているかという情報を集積されるとか障害当事者の方の相談に応じるとかという、情報集積と相談に応じるということ、それから、機器の開発やら普遍化やらというそうしたことが集中的に行われているというような、そうした構造もぜひつくっていただきたいというふうな考えがございますけれども、いかがでしょうか。
 それから、もう一つ要望で、これは本国会の課題にはとても時間的にも間に合いませんけれども、本当は障害者の雇用の促進等に関する法律の、例えばですけれども、基本的理念の第二条の二が、「障害者である労働者は、」「能力を発揮する機会を与えられる」ということ、それから第二条の三は、「障害者である労働者は、」「能力の開発及び向上を図り、有為な職業人として自立するように努めなければならない。」とありますけれども、私は、第二条の四を立てて、能力を発揮するために補助者や補助器具の活用をする権利を享有するというような、そうした新しい理念を立てていただいていい。欠格条項を見直していくというのは、そういう大きな意味を持つことだというふうに受けとめておりますので、このことを申し添えまして、御答弁をいただいて、澤田局長さんに対する質問は終わりたいと思います。
澤田政府参考人 障害者に係ります各種政策の企画立案は私どもが持っておりまして、そうした政策方向の中で、関係団体が与えられた業務について責任を持っていくという関係でありまして、主体性という言葉を使えば、私どもは間違いなく持っておりますし、責任があると思います。
 それから、リハビリセンターについての御要望は御要望として十分承って、今後議論していきたいと思います。
 それから、法律上、二条のところの新しい項を起こしてというお話は、これはいろいろ議論のあるところでございますので、また改めて別の機会で御質問等があればお答えしたいと思いますが、そこは十分議論していきたい、こう思います。
 それから、欠格条項関連で言いますと、欠格条項そのものをどうするかということにつきまして、先ほど答弁ありましたように、安全衛生法とか、そういう所管の法律ではございますが、私ども職業安定局という形でいきますと、むしろ欠格条項が政府全体としてだんだん取っ払われていって、それが障害者の雇用なり就業の促進につながるような環境整備というところで私どもがどう積極的にかかわっていくかという観点で今考えておりますので、御了解いただきたいと思います。
石毛委員 私も、その環境整備を積極的に推進していただきたいという趣旨で申し上げたと考えております。ぜひ積極的な方向性でよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 内閣府にお尋ねいたします。
 限定免許という考え方があると思います。例えば医師免許は普遍的な免許ですけれども、例えば心療内科の免許にするというような、そういう考え方もあると思いますし、それから、事柄によっては、永久の免許で、あることが起こったら免許取り消しというよりは、二年免許なり三年免許なりという、御病気の状態によってはそういう免許の交付の仕方もあろうかと思いますけれども、今後、限定免許という考え方を導入していくお考えなどあるかどうかということをお尋ねします。
江崎政府参考人 各種資格制度におきまして、業務範囲等を限定して限定免許制度を設けるということでございますが、それぞれ制度が異なっております。それぞれの制度の所管省庁においてそれぞれの資格制度が設けられた趣旨がございますので、そういったものに照らしてその適否が検討されるべき問題だ、かように考えてございます。
石毛委員 検討ということを確認されるということを確認させてください。
 それでは、今回の法案の中身に入ってまいりたいと思います。時間もありませんので、大変恐縮ですが、端的に御答弁をいただきたいと思います。
 大体、絶対的欠格条項から相対的欠格条項に変わっているというのが主要な中身ですけれども、船員法で「国土交通省令で定める」という規定の内容と、それから通訳案内業で「国土交通省令で定める」という内容と、それから地域伝統芸能振興法で「国土交通省令で定める」というその内容につきまして、ごく簡単に御説明いただきたいと思います。お願いいたします。
伊藤政府参考人 まず、船員法でございますけれども、船員法につきましては、精神の機能の障害によりまして、認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない船員として医師が就業不適と認めるものというような規定ぶりを念頭に置きまして、現在、船員の就労状況に詳しい精神科医の意見をお伺いしつつ検討を進めているところでございます。
 それから、通訳案内業法及び地域伝統芸能等活用法につきましては、通訳案内業の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通にかかわる能力が備わっているかどうかということを判断要素として規定していくこととしております。
 また、あわせまして、欠格事由に該当すると認められる場合においても、その決定に際しましては、例えば、現に受けている治療等により障害の程度が軽減している状況等を考慮すべきである旨の規定を置くこと等を検討しているところでございます。
 以上でございます。
石毛委員 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、獣医師免許に関しまして、「農林水産省令で定める」とされております。家畜改良増殖法も「農林水産省令で定める」とされております。この内容につきましても、簡単に御説明ください。
松原政府参考人 お答えを申し上げます。
 獣医師法並びに家畜改良増殖法におきましては、精神上の障害等にかかわる相対的欠格条項といたしまして、心身の障害により業務を適正に行うことができない者として農林水産省令で定めるものというふうに規定することといたしてございまして、これを受けまして、農林水産省令におきましては、獣医師の業務または家畜人工授精業務を適正に行う上で必要となる認知、判断、意思疎通を適切に行うことができない者というふうに規定をすることを考えているところでございます。
    〔委員長退席、野田(佳)委員長代理着席〕
石毛委員 放射線障害防止法につきまして、「文部科学省令」ということになっていますが、御説明願います。
瀬山政府参考人 お答え申し上げます。
 文部科学省令におきましては、欠格事由になり得る障害が身体の機能ではなく精神の機能にかかわる障害であること、また、障害を特定せず、かつ対象を厳密に規定するとともに、適切な業務遂行に必要な能力があることを明確化するとの考え方に立って規定することにしてございます。
 具体的には、精神の機能の障害により放射線障害の防止のために必要な措置を適切に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者と規定する予定でございます。
石毛委員 ありがとうございました。
 御説明いただきましたのは、障害をお持ちの方がどのような規定になるかをきっと早くお知りになりたいというふうに思われるだろうと思って御説明いただきましたけれども、本当は、時間があれば議論をして、そしてもっと深めていくべきだと思いますけれども、別にどの法律、どこの省庁というふうに申し上げるつもりはありませんけれども、一番冒頭に欠格条項を廃止した法律ということで御紹介いただきました中に、栄養士法がありました。
 栄養士法は、免許の欠格事由というのは、「第一条に規定する業務」、つまり栄養士にかかわる内容ですが、「に関し犯罪又は不正の行為があつた者」、これが一つと、二番目に、「素行が著しく不良である者」というこの二つだけです、欠格条項は。
 恐らく、栄養士という資格を取るための勉強の過程で、自分が栄養士業務、管理栄養士業務に適切に対応できるかどうかという、経験を積むとか、いろいろなことの要因があって、御病気やら障害があってどうかというような判断が多分されるんでしょうし、それから、免許取得のときの健康診断や何かの条件もあるんだと思いますけれども、法文に規定されているのは、障害ということも健康状態ということも病気ということも全く何にもありません、栄養士法は。
 今回出されました法案、各法全部同じとは申し上げませんけれども、大体の書きぶりが、心身の障害により何々省令で定めるものというふうになっております。私は、法律によって書き方の違いが、全部きちっと精査され尽くしてこの違いになってきたのか、あるいは省庁間、ないしは担当、所管の課ですとか局ですとか、その間でのディスコミュニケーションなのか、そのあたりはぜひとも御論議を伺いたいところであったわけですけれども、私の方からの一方的な表現だけで恐縮な部分もあると思いますけれども、栄養士法の欠格条項は非常にシンプルに書かれている。今回、例えば家畜人工授精師の免許を与えない場合などということを思いますと、私は、栄養士法と同じような書き方でも十分に通用したのではないかという個人的な受けとめ方をしておりますということなどを申し上げさせてください。
 それでは、次の質問に行きますけれども、やはり一括法に関しまして、火薬取締法、銃砲刀剣類所持取締法の政令で定めるという内容につきまして、簡単にお示しください。
    〔野田(佳)委員長代理退席、委員長着席〕
佐藤(哲)政府参考人 火薬類取締法に基づきます政令におきましては、火薬類によります災害を防止し、公共の安全を確保する観点から、火薬類の取り扱いを行わせることが適当でない者を規定する予定でございます。
 具体的には、現行の政令で知的障害者の方について定めておりますけれども、一番目には、火薬類を取り扱う場所で喫煙、火気の取り扱いをしないこと、二番目には、災害発生時に現状変更をしないこと、この二点につきまして、精神の機能の障害により的確に理解、遵守できない者を欠格事由に該当するものとして規定する予定でございます。
黒澤政府参考人 銃砲刀剣類所持等取締法でございますが、政令では、判断能力の著しい低下をもたらす結果、銃砲刀剣類を使用して自身を傷つけたり他人に害を及ぼしたり、銃砲刀剣類の保管、携帯もしくは運搬を適切に行うことができないなど、適正な取り扱いを行うことができないおそれがある病気を具体的に定めることを検討いたしております。
石毛委員 次の質問ですが、内閣府にお尋ねいたします。
 この欠格条項にかかわる法律で、私が大変重要だというふうに受けとめました中身の一つとしまして、法律によっては、欠格条項として成年被後見人、被保佐人が残っている法律がたくさんございます。ある著作では、ある時点ですから、現在時点で幾つになっているかというのとは若干違うかもしれませんけれども、欠格条項の中から成年被後見人、被保佐人という規定が削除されている法令が四十二、残っている法令が百二十六ということです。
 それで、被後見人、被保佐人に該当する方のかなりの多くが障害をお持ちというような実態があるんだと思いますけれども、被後見人、被保佐人は、もともとが主として契約にかかわる問題であって、仕事の遂行能力がどうかということとは必ずしも一〇〇%イコールではない。ですから、障害に関しまして欠格条項を規定したとすれば、成年被後見人、被保佐人というこの規定は欠格条項から外してもよかったのではないか、外していい法律がたくさんあるのではないかというふうに私は考えるわけですけれども、その相関関係について、この欠格条項の見直し、適正化を所管される内閣府としてはどのようにお考えになっておられるのかということについてお尋ねしたいと思います。
江崎政府参考人 民法におきまして成年被後見人と申しますのは、先生よく御存じのように、精神上の障害により判断能力を欠く常況にある者、常なる状態にある者ということになってございます。また、被保佐人でございますが、精神上の障害により判断能力が著しく不十分な者という規定になってございます。また、それぞれの行為能力につきましても、民法上で規定がございます。
 こういった成年被後見人または被保佐人に対しまして、個別制度におきまして欠格事由として規定するのが妥当なのかどうなのかというのは、これら個別制度を所管する関係省庁においてお答えを申し上げるのが適当であろうと考えてございます。
石毛委員 私は必ずしも江崎政策統括官がお答えしていただいたことに納得しているわけではありませんけれども、それでは、推進本部の主体性というのはどういうところにあるのですかというふうにお尋ねしたいと思いますけれども、それはおきまして、済みません、農水省さんに、家畜改良増殖法につきまして、この規定がこの冊子に記されていたというそのこともございまして、簡単にお答えいただきたいと思います。お願いいたします。
松原政府参考人 家畜人工授精師につきまして家畜改良増殖法で規定をされているわけでございますが、家畜人工授精師につきましては、家畜から精液や家畜受精卵の移植等、家畜の体に影響を及ぼす行為を業務としているところでございますことから、最低限の身体的能力や状況判断を行うことができる者でなければ、家畜という他人の財産を害するおそれがあるというふうに考えているところでございます。
 このため、精神上の障害によりまして判断能力を欠くか著しく不十分な者であるとされております成年被後見人あるいは被保佐人に対しましては、従来からこれらの免許を与えないことというふうにしているところでございまして、今回の一括法の改正の対象ということにはいたさなかったところでございます。
石毛委員 御答弁はそのまま受けとめさせていただきます。
 時間がありませんので議論をする余地がありませんけれども、私は、各省庁間、各法律で、この成年被後見人、被保佐人、本当に十分に点検して、それぞれ残す合理性があったのかどうかということの説明を本当はしていただくべきだというふうに思うんですけれども、時間がないのが大変残念です。
 一問飛ばしまして、法務省にお尋ねいたします。
 出入国管理及び難民認定法における外国人の上陸制限に関しまして、今回、法律提出に至らなかったわけですけれども、なぜ至らなかったのでしょうか。その事情について、この件も短く御説明ください。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、現行の入管法では、精神障害者に係る上陸拒否事由が定められております。この点につきましては、障害者施策推進本部決定に基づきまして、鋭意その見直しを検討しておるところでございます。
 具体的には、最近におきます犯罪を犯したいわゆる触法精神障害者に対する世論の状況等を踏まえまして、精神障害者のうち上陸拒否の対象とするものの範囲を真に必要かつ合理的なものに限定する方向で案文の検討をしております。平成十四年度中には入管法の改正を実現すべく、引き続き作業を進めているところでございます。
石毛委員 作業の進行状況ということについては認識させていただきました。
 時間がありませんので、最後の質問。官房長官、長い時間お聞きいただきましてありがとうございます。欠格条項の見直しの進捗状況の評価ということにつきましてお伺いしたいと思います。
 私は、今までの質問の中でも官房長官に御理解いただいたと思いますけれども、補助器具、補助者の整備がきちっと進まなければ、絶対的欠格条項を相対的欠格条項に変えたとしても、実態的には免許資格を取得したりあるいは就業に結びついたりするという相関関係が薄い。したがって、意味とすれば絶対的欠格条項として残るのと同じような状況が続いていくということになります。
 そのほかいろいろ、例えばきょうは、免許を与えない場合の行政不服審査請求から外されているというようなことなどについてもお尋ねしたかったのですけれども、いずれにいたしましても、欠格条項の見直しということが本当に実効性を持っていくということが大事だと思いますので、実効性を持つということに関する評価をどのようにしていかれるお考えかということを一点お聞かせいただきたい。それで、そのことをこれからの障害者プランの中に位置づけていくおつもりはおありになりますでしょうか。ぜひとも位置づけていただきたいという、そのことをまずお答えいただきたいと思います。
福田国務大臣 欠格事由の見直し後の運用について、それぞれの制度の所管省庁におきまして十分かつ適切な対応がこれからなされなければいけないわけでありますけれども、障害者施策推進本部におきましても、障害者施策を推進するという観点から障害のある方の資格の取得状況などを適宜把握はしてまいりたい、こういうふうに思っております。
 そしてまた、平成十五年度からの新しい障害者プランの作成に際しましては、欠格事由の見直しを実効あるものとするための方策、そしてその評価の方法についても検討課題とする考えでございます。
 福祉等公的サービス機関とかバリアフリーなどの分野におきましては、極力数値目標を設定するといったようなこともこの中で考えていきたい、そのように思っておりまして、今後、障害者が社会で活躍できるような施策、機器の問題とかまた設備の問題とか、またそれにも増して、先ほど委員からもお話ございましたように、社会の意識、これの変化ということも大変大事だろう。お互いに理解を深めるということが極めて大事なことだというふうに考えております。
石毛委員 ありがとうございました。
 障害者団体の方の調査では、例えば公共施設の利用制限というようなことも、ある意味では欠格にしているという、資格の欠格ではありませんけれども、社会的に制約しているという意味で欠格というふうにも言えると思います。そうしたことを定めている法令は全部で三百二十九あるというふうに指摘をされております。今回、内閣府として進めておられます件数は六十三件でしょうか。ですから、まだまだ広義、狭義ともに障害に係る方の欠格条項というのは続いているというふうに理解しなければならないと思います。
 ぜひとも、新長期プランにおきましても、欠格条項を本当になくしていくという、その方向で御尽力をいただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
大畠委員長 これにて石毛さんの質疑は終了いたしました。
 次に、渡辺具能君。
渡辺(具)委員 自民党の渡辺具能でございます。
 当該の法律案につきましては、もう参議院でも十分議論が尽くされたのではないかと思います。改めてお尋ねしたい視点というのも特にないわけでございますが、確認の意味で幾つかお尋ねしたいと思います。
 今回の法律案が目指す趣旨は大変結構でありまして、これまでもいろいろなところで、あるいは国際的にもその推進が議論されてきたんだろうと思うのです。そして、常に、総論は賛成だけれどもなかなか各論が進まなかったわけでありますが、ようやく昨年の通常国会でこういう趣旨での法律案の改正が行われたわけであります。
 前回、さきの通常国会で欠格事由の適正化が図られた船舶職員法があるのですが、その船舶職員法の中で小型操縦士の免許についても非常に適正化が行われました。その結果、さっき私はそういう方々とお話しする機会があったので聞いたのですが、新たに十七名の方が免許を取られたんだそうでございます。
 そして、さっき石毛委員からもお話があっておりましたが、こういう免許だけではなくて、ハードの面でもやはりバリアフリーが進まないとなかなか全体の趣旨が進まないということもあるわけでありますが、その小型船舶の操縦士、ヨットに乗られる方々がせっかく免許を取られたので、私はかつて港の専門家でもありましたので、港をそういう方々に使いやすくしようという運動も別途やりまして、今般、蒲郡という港で、そういう方々が使いやすい港が実はできたのです。もう大変喜んでおられまして、もっともっとこういうものを世の中に広げていただきたいということがあって、実はそういう方々が非常に喜んでおられてシンボルマークまでつくられたのですね。これは海の身障者マークというのですが、こういうものをつくったので、ぜひ役所にも見ていただいて、お願いに行きたいということで、私、質問の順番まで変えていただいて、こういうことを言ったんじゃ怒られるかもしれませんが、今さっき行ってきたのですが、大変喜んでおられるわけであります。
 したがって、これから能力の判定についての政省令等々を決められるんだと思いますが、その点についても趣旨を踏まえてやっていただきたい。大変この法律の趣旨には賛成するわけであります。
 改めて、福田官房長官、お見えいただいておりますので、今回こういう法律をつくられた意義をもう一回確認の上で、私が感じておることと同じであろうと思うのですが、そういう意義と、それから、こういう問題はこういった手合いの法律だけではなくて、先ほど言いましたようにいろいろな視点からの推進が必要かと思いますので、そういったことも含めた展開も含めて、もう何度もお答えになった質問かもしれませんが、気持ちよくお答えいただいて、あとはもう結構でございますからお引き取りいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
福田国務大臣 障害者に係る欠格条項の見直しにつきましては、平成五年に策定した障害者対策に関する新長期計画におきまして、障害のある人の社会参加を促進し、平等な社会づくりを目指す観点から、政府は、積極的に取り組むべき課題として取り上げ、平成十一年八月には障害者施策推進本部において見直しに関する対処方針を決定したところであります。
 本法案は、この本部決定を踏まえまして、障害者の社会活動への参加の促進を図るため、船員法など計八本の法律で定められております障害者に係る欠格事由を一括して改正するものでございます。
 本法案を含めまして、今国会に提出した見直しのための関係法案が成立の運びとなると、残る検討中の制度は三制度となりますが、これらの制度につきましても、平成十四年度中には見直しが終了するように努力をしてまいりたいと思います。
 委員の御指摘のとおり、あらゆる角度からこの問題に取り組むという、その視点というのは非常に大事なことであります。海上の、それは車いすですか、いい、大変すばらしい発想だと思います。我々もそういうお知恵をかりながらこれから頑張ってまいりたいと思います。
渡辺(具)委員 ありがとうございました。もうどうぞ、結構でございます。福田官房長官から丁寧な答弁をいただきましてありがとうございました。
 そこで、この法律は、これからの作業、つまり、政省令で障害者の能力をどういうふうに判定していくかというあたり、政省令の書きぶりにも大変この法律の実効性がかかっているというふうに思うんです。そして、どういう書きぶりをしても、やはり抽象的にならざるを得ないだろうというふうに思うんですね。そうなると、法律の運用がやはり最後は決め手になるんだろうと思うんです。
 しかも、今回、八本の法律にまたがるわけでありまして、そういう政省令を書く場合は、法律の趣旨をよく踏まえた上で、そして私は、政令は当然ですが、省令といえども、各省やはり連携をとりながらみんな一緒になって前進するような、そういうつもりで政省令をつくっていただきたいというふうに思うわけでございますが、この辺についてお答えをいただきたいと思います。
江崎政府参考人 今回の改正でございますが、その目的とするところは、心身に障害のある者がその業務の遂行能力に応じて資格等を取得できるようにするというものでございます。
 今後、先生御指摘のように、政省令という作業になるわけでございますが、こういった政省令におきましても、例えばある障害を特定して、その者を一律に排除するというような改正を考えておるわけではございません。また、政省令をつくるに当たりましては、障害当事者の方々も含めまして、各省ともそれぞれ、いろいろな意見を聞きながら慎重に検討していきたい、このように考えてございます。
渡辺(具)委員 いろいろな方の意見を聞いてからというお話がありました。この法律案を考えられ、つくられる段階から、もう既にそういうヒアリングはかなり進んでいるんではないかというふうに思うんです。
 どの程度までやれるかということも頭に置きながらこの法律案をつくられたはずでありますが、今までに障害者、あるいはそういう障害に関する専門家というんですか、そういう方々からいろいろな情報収集がなされていると思いますが、どんな情報が入っていて、そういった情報に対してどういう考えなのかということをお聞かせいただきたいと思うんです。それはなぜかというと、先ほど来私が強調しているように、政省令の書き方あるいはその運用がこの法律の生命線を握っているという意味で、改めてお伺いをするわけであります。
江崎政府参考人 法律を策定いたします段階で、法案の説明会ということで、障害のある方等の団体に対しまして、関係省庁一堂に会しまして説明会を開催しております。この場でいろいろなコメントが寄せられてございまして、そういったものを法律の改正案にいろいろ生かしてきたということがございます。
 さらには、パブリックコメントというものをかけてございます。いろいろ各省の法律にわたるものもございますが、内閣府関係で主なものを御紹介申し上げますと、パブリックコメントでは、欠格条項の見直しの進捗状況を定期的に公表してはどうか、それから、関係団体との意見交換の場を設けてはどうかといった貴重な意見が寄せられてございます。こういった御意見に対しましては、欠格条項の見直しの進捗状況を定期的に調査をして公表するといったことなど、障害者に係る欠格条項の見直しを適切に進めていく上で参考にさせていただきたいというぐあいに考えてございます。
渡辺(具)委員 今初めて、欠格事由に関する情報を伺って定期的に公表するということを考えているという話があって、私は今この場で大変関心を持ったわけでありますが、どういうタイミングでといいますか、どういうものを使ってそういうものの定期的な公表を考えておられるんでしょうか。
江崎政府参考人 まず、各省におきましては、例えばホームページでございますとか、そういうもので進捗状況等、いろいろな情報を公開しておられます。それをまとめてということになりますと障害者施策推進本部がございます。こちらで今までも開催をいたしまして、その段階での欠格条項の進捗状況をまとめて公表をしたりしてございます。今後とも引き続きこういう場で情報の開示に努めてまいりたいと考えてございます。
渡辺(具)委員 私は、役所とそういう障害者との間の情報交換が大変大切だというふうに思うんです。したがって、私は先ほどのお話で大変関心を持ったわけでありまして、そういう努力をぜひ積極的にやっていただきたいということをお願いしておきたいというふうに思います。
 それから、八本のうち、私は、通訳案内業法ですか、この関係について思ったんですが、この仕事においてはそれほどの欠格事由はもう余りないんじゃないか、全部なくしてもいいんじゃないかとすら思うわけでございます。今腹案があれば教えていただきたいんですが、政省令の中でどういう書きぶりをされて、どれぐらいこの社会的参加がふえそうなのか、あるいは今までできなかった人がかなりあったのかなかったのか、よくわかりませんけれども、かなりあったとしたら、そのうちの大半は、あるいは半分はセーフになるとか、その辺の見通しをお聞かせ願いたいと思います。
伊藤政府参考人 通訳案内業法の省令の書きぶり等でございますけれども、私どもとしては、認知とか意思疎通とか判断とか、いわゆるそういう要素だけではなくて、実際にそういうことで欠格条項に該当するような場合でも、例えば医師等の御判断で治療等の状況を見てできるという場合には、そういうことも考慮して免許を出していくような、そういう形の省令の書きぶりといいますか規定ぶりというのを今考えておるところでございまして、基本的に、この通訳案内業法、「外客接遇の向上」という目的でございますけれども、この法律の目的に照らして、社会参加ができるだけ可能になるような、そういう枠組みということについて取り組んでいきたいというふうに思っております。
 それから、これによってどのくらいの方がということでございますが、この通訳案内業の免許を現在受けておられる方が、各都道府県すべてで、英語からいろいろな外国語があるわけでございますけれども、大体八千人ぐらいの方でございます。そもそも数がそんなに多くございませんので、その中で、今後そういう方々がどのぐらいになるかというのは、ちょっと私どもも、必ずしも現在、見通しの数字というのは持っておりませんけれども、いずれにいたしましても、やってまいります場合には、私ども、医師等の専門家の意見も十分聞いて都道府県知事が免許を出していくような、そういう考え方というものを徹底してまいりたいというふうに思っているところでございます。
 以上でございます。
渡辺(具)委員 全体で八千人あるというふうに伺いましたが、これまでの実績で、先に試験をやって、欠格事由に当たって結局は免許がもらえなかったという方々についての情報はありませんか。
伊藤政府参考人 これまで、法律上絶対的な欠格条項になっておりましたので、試験の合格者で免許が出なかったということの実態は実は私ども把握しておりませんけれども、現在の既に免許を持っておられる方が障害等によって取り消されたような事情があるかどうかということについては、この五年間ちょっと当たって調べてみたところでは、そういうケースはございませんでした。
 以上でございます。
渡辺(具)委員 結局は、最後の判断をされるのは都道府県ということになるんだろうと思うんですが、いわゆる障害者と県当局との間で十分な情報交換がなされるよう、あるいは時間をかけて専門家の御意見もお聞きになって、逆に言えば、どういうふうなエイドをすれば、通訳の場合は補助器械とかいうものはないかもしれませんが、何かこういうことをすれば免許がおりるとか、そういう前向きの方向でぜひこの運用が行われるように、国土交通省としても県当局に対しまして指導をされますように改めてお願いをしておきますので、確認の意味でその決意をお聞かせ願いたいと思います。
伊藤政府参考人 免許を付与するというのは都道府県の自治事務になってございますけれども、今委員御指摘のような点については、私ども十分留意してやっていきたいと思っております。
 そのような気持ちも込めまして、例えば先ほども申し上げましたように、省令におきましては、治療等で障害を軽減できている状況というようなことも考慮して判断するような、そういう点についても規定していきたいと思っております。
 それからまた、法律で、都道府県知事が免許しないという判断をした場合には、きちんとその判断理由や、また希望する場合には都道府県の職員等が意見を聴取する機会を設けるというようなことも、きちっと書面にして御通知申し上げるという形をとって、改めてもう一度、再検討等の可能性ということについてもできるような、そういう仕組みというようなことも関係者にもよく徹底していきたいというふうに思っております。
 以上でございます。
渡辺(具)委員 それでは、もう一つ具体的な、いわゆる銃刀法の関係についてお伺いします。
 銃刀法については、従来どおり、病名がそのまま残るというふうに理解いたしております。確かに、いわゆる銃刀法については非常に注意深くやらなきゃいけない理由があるというふうに私も思いますが、しかし、いわゆる書きぶりとして、障害者の能力の問題だ、能力にかかわっているというふうに書けば、心配はやはりないのではないかというふうに私は思うんですね。したがって、相対的欠格条項にできるのではないかというふうに思うんですが、そのところはどうですか。
黒澤政府参考人 銃砲刀剣類でございますけれども、申すまでもなく、殺傷能力の高い危険な道具でございます。銃砲刀剣類を所持する者は、銃砲刀剣類の所持が行われる期間を通じまして、その適正な取り扱いを行う能力を常に具備している必要がございまして、こうした能力が一時的にでも著しく低くなれば、危害予防上重大な支障を生ずることとなるわけでございます。
 そのため、銃砲刀剣類の適正な取り扱いを行うことができないおそれのあります一定の者につきましては、やはり一律に所持許可の対象から除外する必要がございまして、絶対的欠格とすることといたしたものでございます。
渡辺(具)委員 それでは、今回の法律の施行で、多数の障害者の方々が社会参加できるということで大変大きな期待をしておられるんだろうと思います。どうかこの法律の趣旨に即して政省令をつくっていただきたいというふうに思います。
 ところで、今回こういう法律が進むことによりまして、こういう同じような問題について世界と比べた場合どうなのか。これで日本は世界並みになったのか、まだおくれているのか、かなり進んだことになるのか。
 才能というのは案外いろいろな人が持っているわけで、ここではなかなか言いにくい言葉なので申し上げませんが、天才は何とかに近いという言葉もありますし、やはりそういう才能を持った人をなるべく世の中のために活用していくということが大切だと私は思うんですが、世界と比べて、この分野において日本はこの法律が施行されればどういうことになるんでしょうか。
江崎政府参考人 諸外国におきます免許等に係る欠格条項につきましては、必ずしも詳細について把握をされておるわけではございません。
 ただ、例えば幾つかの例を挙げさせていただきますと、鉄砲等の所持につきましては、諸外国においても精神障害に係る欠格事由が定められているというぐあいに承知をしております。また、船員法でございますが、船員法におきます欠格事由は、我が国も批准をしてございますILO条約に基づくものでございます。したがいまして、諸外国も我が国と同様の基準を定めているのではないかと考えられます。
 次に、放射性同位元素の使用基準等の審査基準でございますけれども、海外主要国におきましても、放射性同位元素の取り扱い等に係る専門的能力は厳しく求められてございます。十分な能力を有さずに取り扱い等に支障のある者については許可等の対象から除かれるということになっていると承知をしてございます。
 いずれにいたしましても、我が国と諸外国では制度が非常に異なってございまして、なかなか一概に比較をするというのは難しゅうございますけれども、今回、能力に応じて免許等を与えることとするということで改正をするわけでございますが、諸外国と比較しても適切なものではないか、かように考えてございます。
渡辺(具)委員 諸外国と比較して決しておくれていないということだけは確認できて、私も大変うれしく思うものであります。この法律が施行されることによって、こういう問題の進展というものをいつも見ていただきたいというふうに思うんです。
 そして、このたびの政省令の改正も含めた結果、よく踏み込んだことになるのか、まだ踏み込める、まだ進展できるというか、もっと進めると思うのか、あるいはちょっと踏み込み過ぎだったかなということは、私はお役人のやることだからないと思いますが、そういった常に点検といいますか、そういうことが私は大切だと思うんです。しかも、世の中も進展、発展するわけです。医療も発達するわけであります。
 したがって、先ほどもいろいろな情報をいただいて公開するという話もありましたが、この法律の施行状況について常に点検をしていただいて、必要があれば見直すということがやはりこれから大事だというふうに思いますが、この点についての御見解を賜りたいと思います。
江崎政府参考人 今回の改正でございますけれども、障害のある人の社会参加を促進するという観点から、障害のある人がその業務を行う能力に応じて免許、許可等を取得できるようにするというものでございます。
 このような趣旨を踏まえまして、改正法におきましても、医学でございますとか科学技術の向上、さらには福祉用具等補助的手段の開発、こういったものを考慮した見直しを行うことを含めて適切に対処するということが非常に必要であろう、かように考えてございます。
渡辺(具)委員 最後に、せっかくいい法律ができるわけでございますから、くれぐれも、この法律案の趣旨に従って心ある政省令をつくっていただいて身障者の方々の期待にこたえられるよう、身障者の方が一人でも多く適正に社会に参加できますことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
大畠委員長 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時四十三分散会


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