衆議院

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第13号 平成14年5月29日(水曜日)

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五月二十三日
 次の委員会開会要求書が提出された。
   衆議院内閣委員会開催に関する要求書
 現在、内閣委員会では、今国会の重要広範議案である「個人情報の保護に関する法律案」「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案」「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案」「情報公開・個人情報保護審査会設置法案」「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」の法案審議に向け鋭意努力しているところである。この法案は、わが国の個人情報保護の基盤となる法制度を確立するものであるとともに、国民のプライバシー保護に対する不安を払拭する観点からも速やかな法案審議が求められる。五月二十四日の内閣委員会定例日では小泉総理大臣の出席についても内諾を頂いていることもあり、直ちに内閣委員会を開会し、早急なる法案審議が行われるよう要求致します。
  平成十四年五月二十三日
 衆議院内閣委員長
   大畠 章宏殿
    理事・委員 逢沢 一郎  河合 正智
          小島 敏男  渡辺 具能
          渡辺 博道  太田 昭宏
          岩崎 忠夫  小野 晋也
          奥山 茂彦  嘉数 知賢
          亀井 久興  古賀 正浩
          実川 幸夫  谷川 和穗
          谷本 龍哉  近岡理一郎
          西川 公也  望月 義夫
平成十四年五月二十九日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 大畠 章宏君
   理事 逢沢 一郎君 理事 小島 敏男君
   理事 渡辺 具能君 理事 渡辺 博道君
   理事 野田 佳彦君 理事 細野 豪志君
   理事 河合 正智君 理事 工藤堅太郎君
      岩崎 忠夫君    小野 晋也君
      奥山 茂彦君    嘉数 知賢君
      亀井 久興君    実川 幸夫君
      谷川 和穗君    谷本 龍哉君
      近岡理一郎君    西川 公也君
      望月 義夫君    石毛えい子君
      河村たかし君    藤村  修君
      山元  勉君    横路 孝弘君
      太田 昭宏君    吉井 英勝君
      北川れん子君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣         竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   総務副大臣        若松 謙維君
   内閣府大臣政務官     奥山 茂彦君
   内閣府大臣政務官     嘉数 知賢君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    津野  修君
   政府参考人
   (内閣官房副長官補)   竹島 一彦君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  藤井 昭夫君
   政府参考人
   (防衛庁長官官房長)   柳澤 協二君
   政府参考人
   (総務省行政管理局長)  松田 隆利君
   政府参考人
   (総務省自治行政局長)  芳山 達郎君
   政府参考人
   (住宅金融公庫理事)   井上  順君
   内閣委員会専門員     新倉 紀一君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十九日
 辞任         補欠選任
  山花 郁夫君     河村たかし君
同日
 辞任         補欠選任
  河村たかし君     山花 郁夫君
    ―――――――――――――
五月二十九日
 二十四時間制法令実施に関する請願(保岡興治君紹介)(第三四八五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 個人情報の保護に関する法律案(内閣提出、第百五十一回国会閣法第九〇号)
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出第七〇号)
 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出第七一号)
 情報公開・個人情報保護審査会設置法案(内閣提出第七二号)
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――
大畠委員長 これより会議を開きます。
 第百五十一回国会、内閣提出、個人情報の保護に関する法律案並びに内閣提出、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案及び行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房副長官補竹島一彦君、内閣官房内閣審議官藤井昭夫君、防衛庁長官官房長柳澤協二君、総務省行政管理局長松田隆利君、総務省自治行政局長芳山達郎君及び住宅金融公庫理事井上順君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大畠委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
大畠委員長 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。福田内閣官房長官。
福田国務大臣 個人情報保護法案の成立と住民基本台帳ネットワークシステムの実施との関係について、政府としての考えを御説明させていただきます。
 平成十一年の改正住民基本台帳法案の国会審議の過程において、十分な個人情報保護措置が講じられているものの、なおプライバシー保護に対する漠然とした不安、懸念が残っていることを踏まえ、議員修正により、附則第一条第二項において、「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする。」との規定がなされたところであります。
 また、この際の国会審議において、当時の小渕総理から、住民基本台帳ネットワークシステムの実施に当たり、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提であると認識との答弁がなされました。
 この答弁は、行政府の長として、個人情報保護の必要性についての認識を示したものであり、これを踏まえ、政府としては、個人情報保護法案を昨年三月に国会に提出し、その早期成立に向け全力を挙げて努力しているところであります。
 しかし、改正住民基本台帳法それ自体は、同法附則第一条第一項の規定により、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日、すなわち平成十四年八月五日から施行することとされており、法律上、個人情報保護法案が成立すると否とにかかわらず、法令で定められている日に施行することが義務づけられております。
 また、改正住民基本台帳法附則第一条第二項は、政府は速やかに所要の措置を講ずるものとしておりますが、個人情報の保護に関する法律の整備について言えば、政府は、立法機関でなく、みずから法律を制定することはできないものであるため、所要の措置とは、法律案の検討、作成、国会への提出を意味し、政府としては、平成十三年三月に個人情報保護法案を国会に提出したことにより、所要の措置を講じたことになるものであります。
 したがいまして、個人情報保護法案が成立すると否とにかかわらず、政府として、改正住民基本台帳法附則第一条第一項に定めるところにより施行することが義務づけられているものでありますが、小渕総理の答弁の趣旨を踏まえ、引き続き、個人情報保護法案の早期成立に向けて、全力を挙げて努力してまいる考えであります。
 以上であります。
    ―――――――――――――
大畠委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。工藤堅太郎君。
工藤委員 自由党の工藤堅太郎でございます。
 個人情報保護法案並びに関連法案の審議を行うに際しまして、小泉総理に直接お尋ねをしたいことがございまして御出席をお願いしておったわけでありますけれども、このたび、お聞き届けをいただきましたことに対しまして、まずもって多としたいと存じます。
 去る十四日でありますけれども、報道各紙が朝刊で一斉に、小泉総理がきのうの自民党の役員会で、読売新聞に個人情報保護法案の修正案が載っていたが、それも一つの考え方だ、修正を検討してほしいとの発言をされまして、そして担当の竹中大臣に指示をした模様だというように報じられたわけであります。
 私は、それを見てびっくりしました。と申しますのも、当委員会でまだ一回も審議をしておらないうちに修正というような言葉が総理から出されたということでありますから、それはもうびっくりするわけであります。何を考えておられるのか、このように実は思ったわけでありまして、このことについて、総理、報道のとおり修正を指示されたのかどうか、まずお伺いをしたいと存じます。
小泉内閣総理大臣 私は、修正を指示したということは言っておりません。よく検討するように、いい意見については謙虚に耳を傾けるべきだなと。というのは、私は本来、報道、言論の自由と個人情報、プライバシー、両立できると思っております。そういう点についてなかなか理解されていない向きもあるものですから、読売新聞の試案については、報道の自由と個人情報、プライバシー、両立させるべきだという点を重視しております。そういう点についてよく勉強する必要があるんじゃないか、国民の理解を求めるためにも、いい意見には謙虚に耳を傾けて、答弁等よく考えてもらいたいという意味において検討、勉強を指示いたしましたけれども、修正してくれと言ったことは一度もございません。
工藤委員 当委員会で他の質問者の方の質問の中で、竹中大臣も、総理の発言を、よく勉強しておくように、今総理がおっしゃったようなことでありますけれども、このように指示をされた、修正というようなことではないというように答弁をされておられました。
 しかし、それならなぜ報道機関が一斉にあのような報道をしたんでありましょうか。しかも、自民党の山崎幹事長が当日の記者会見で、法案修正を検討すると表明しておられるわけであります。総理は先ほどあのように言われたわけでありますけれども、しかし、少なくとも山崎幹事長まで総理が修正に言及されたと思うほど、それらしいことを言われたのではないか、私はそのように理解をするわけであります。そうでなければ、山崎幹事長のこの表明はどうもつじつまが合わない。このように、余り疑うなと言うかもしれませんが、どうしてもその辺がわからないものですから、しつこいようですけれども、もう一度、どうぞお願いします。
小泉内閣総理大臣 私は、いかなる法案であっても、国会の審議の状況によって、一切修正まかりならぬという態度はとっておりません。審議の結果、これは修正した方がいいという結論に導けば、それは修正もあり得る。しかし、それは審議の状況次第であります。私は、政府案がいいと思っておりますけれども、審議の結果によって、場合によっては国会の判断に政府は従わなきゃなりませんので、国会の意思として修正すべきだというような意見があり、また大方の皆さんがそういう修正の意見を受け入れるならば、法案というのは修正も可能であります。これは、原則論を言っているわけでございます。
工藤委員 と言われますことは、このいわゆる報道は誤解だというようなことなんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 報道なり多くの方はすぐ結論を考えますからね。だから、私の発言も、よく勉強しておくように、検討しておくようにと言うと、結論は修正もあり得るのじゃないかというふうにとったのではないかと思っております。現に、数々の法案の中においては、政府が出した法案も、幾たびかいろいろな意見を入れて修正して成立した法案もたくさんあるわけであります。そういうことから、よく検討、勉強しておくようにというのが、最終的には修正可能ではないかというようにとった方もあるのではないかと私は理解しております。
工藤委員 しかし、総理、あの時点で検討しろとかよく勉強しろとかということをおっしゃれば、それはメディアでなくても、修正を示唆したとか指示したとかというようなことにだれでもなるんだろう。何であの時点でそういうようなことを発言されたかということを、軽く言ったというようなことかもしれませんし、何かわかりませんけれども、私は、どうもその辺が解せないなというような、そういう気持ちがしてなりません。
 これは私の推測なんでありますけれども、メディアが連日反対のキャンペーンを張っている。それに総理が嫌気が差しておられた。そういうときに読売試案が出た。この修正案を検討することによってメディアが少しこれに同調してくるような、そういう方向に行くんじゃないかと考えられたんではないか。そして、あのような発言をされた。山崎幹事長がそれこそ誤解するような発言をされた。ところが、意に反して、メディアはますます反対を強めてきた。そこで急遽、そんなことを言っていないんだ、勉強しろと言ったんだ、そういうようなことに変わってきたんではないかというような気がしてならないわけであります。
 まさか読売新聞と総理の近くにおられる方が打ち合わせをしてやったなどと、私はそこまでは申し上げません。申し上げませんけれども、どうしても理解できないので、再度お尋ねをさせていただきます。
小泉内閣総理大臣 読売新聞の試案は修正してほしいという意見だと思いますが、それをどう報道するかというのは報道の自由ですから、私の意図をどうとろうか、これは各人各様、見方はさまざまあると思います。現に法案以外のことでも、一つの発言について全く相反する解釈というのは人によって成り立つわけですよね。そういう点から見れば、修正してほしいという方から見れば、修正も考えているんじゃないかととられても無理はありません。
 また、我々としてもできるだけ国民に理解してほしいという気持ちがあります。最初から、審議しない前から反対、廃案、こういう運動が展開している中で、できるだけ理解と協力を求める方策も必要ではないかと考えております。
 急に出した法案でもありませんし、現に個人情報保護法案なんというのは昨年から提出しておるわけですから、そういうことから見れば、まだまだ理解してもらうような努力もしなきゃならないなと思っておりますし、せっかく、基本的な趣旨としては言論、報道の自由と個人情報、プライバシーの保護という両立を目指す法案でありますので、建設的な意見についてはよく勉強をし、検討し、国会の審議に建設的な議論を深めていくような材料にしていただければなというような気持ちから出た発言であるということを御理解いただければありがたいと思っております。
工藤委員 この法案は昨年から出しているというようなことなんでありますが、私が議運におりましたときからずっとつるしたままで、そして、与党自民党もこれを委員会に付託するというような動きも一切ありませんでした。つるしたままで来て、ここへ来てぎりぎり、八月の住基ネットの問題もあって出されたというようなことだろうと思うんでありますが、こういう重要な法案を何でもっと早く、去年から出しておったらそれを委員会に付託しなかったかというようなことを、私はどうもその辺も、小泉総理の責任じゃないのかもしれませんし、どうかわかりませんけれども、そう思ったりします。
 それで、小泉内閣の重要法案の提出が少々乱暴じゃないかと私は思えてなりません。一度に何しろどっと出す。あれもこれも、三つも四つも五つもどっと出す。それで、私は事態特の理事もやっておるわけですけれども、事態特と内閣の理事をやっておりまして、両方で答弁者のとり合いなんですよ。日程を調整して、そしてもう本当に苦労しながらやっている。そのために十分審議をとれるような時間がない。ですから、どれもこれも生煮えのような、そういう状態で進んできているといったようなのが現状だ、私はこのように認識をしているわけであります。
 そういう意味で、私はこの個人情報保護法案と有事法案しか担当でありませんからよくはわからないのでありますけれども、国民の声をよく聞いたり、また国会で十分審議を尽くす意味で、優先順位をつけて、これらの法案、これまでのわずかな審議でも、何をどうすればいいのか、修正という話が、柔軟にというようなことで話をされたわけですけれども、出し直して、もう一回仕切り直しをしてやった方がいいんじゃないか。生煮えのまま、それで、国民に不安を与えたり不満を与えたりしないような方法でやられるのも小泉さんらしい解決の方法だ、運営の方法だと私は思うんでありますけれども、その点、いかがなものでしょう。
小泉内閣総理大臣 これは、私の立場からいえば、提出している法案は全部成立を期して努力するというのが当然ではないかと私は思っております。
 そういう中で、審議の時間、あるいは答弁者の問題、いろいろ国会運営の中でそれぞれ問題があると思いますが、できるだけその点は各委員会とも調整しまして、また、大臣のみならず副大臣等、政府委員もおられるわけですので、そういう点については配慮をしていただきまして、十分審議の時間も確保しながら議論が深められるような運営を私は期待しております。
 今の時点でこれが一番大事であとはどうでもいいというようなことは総理大臣としても言うべきものではありませんし、政府として提出している法案は、国会議員の皆さん方が十分審議の上、成立に向けて努力していただきたいというのが私の切なる希望であります。
工藤委員 総理にいろいろお聞きしたいことばかりたくさんあって、考えることはたくさんあるのですけれども、何しろ時間がないものですから、与えられた時間が少ないものですから、あと一つぐらいかなというような感じがします。
 私は、個人情報保護法案もそれから有事法案も大事な法案で必要だと。丸々だめだと言っているようなことではないのですね。これはどうしてもなければならない。ただ、余りにも抜け穴というか、例えば個人情報保護法案、官には甘く民には厳しくといったような、それからメディアの問題等もあります。
 例えば、福田官房長官も、行政側は悪いことをしないんだ、そういう建前だ、そういうふうになっているということを、記者会見でそういう趣旨のことを話をされたのを聞いたことがありますけれども、しかし、例えば今回の防衛庁のリストの問題とか、あるいは、防衛庁の練習機の購入に際して、会計検査院の公文書を偽造して、会計検査院のあれを得ないままスイスにそれを送ったといったような問題とか、外務省の問題とか、どんどん出てきているわけであります。
 これはもう、官はそういうことをしないんだ、悪いことをしないんだ、もちろん、公僕としてやってはならないことですから当然そうだと私は思うのでありますけれども、そういうのを、責任を明確化するようなきちっとしたものがないとこういうことが出てくるんじゃないかというようにも思いますし、そういう点で随分まだまだ検討していかなければならない、そういう状況にあるだろう、このように思っておるわけでありまして、防衛庁のリストの問題に対して、今々のことでありますから、これについて総理の御見解を賜っておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 情報開示というものも必要でありますが、同時に、どのような情報を保護し、どのような情報を開示するか、この判断も大変大事だと思っております。
 すべての情報をどのように収集し、また開示するかというような点で、目的外とか必要以外の情報を集めるという場合においては、行き過ぎという面もありますから、その点は私はよく配慮しなきゃならない問題だと思っていますし、行政側にしましても、必要不可欠なものとそうでないものというのはよく判断しなきゃならない問題だと思いまして、今回の防衛庁の情報開示の問題については、よく事実を調査して不安や混乱が起きないような対応をすべきだというふうに既に私も指示しておりますので、その点につきましては今後の調査の結果を待ちたいと思っております。
工藤委員 まだまだ質問申し上げたいのですが、次の方に迷惑をかけてもだめですから、この辺でやめさせていただきます。ありがとうございました。
大畠委員長 これにて工藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、細野豪志君。
細野委員 おはようございます。民主党の細野豪志でございます。
 早速ですが、質問に入らせていただきます。
 ただいまの小泉総理の御答弁を伺っておりまして、私は二つ、やはり冒頭申し上げておく必要があるなというふうに思っております。
 一つは、法案ですので、これは当然国会で審議するわけです。国会の中でよかれと思う修正が出てくるのは、これは、立法機関ですので、当然国民の負託を受けた我々の仕事であると考えます。しかし一方で、行政のトップである小泉総理は、政府として責任を持ってベストの案を国会に出してくる必要がある。政府の内部で、小泉総理が竹中大臣に修正を検討するようにと、修正案、読売案を検討するように言ったという話と、国会で修正論議があればそれは議論を見据えてということは、全く性質が違うということをまず小泉総理にしっかりと押さえていただきたいと思います。これは前提でございますので、これ以上申しません。
 小泉総理に伺いたいのは、私は、先ほどの工藤委員の質問についての答弁を聞いていてもよくわからないのは、読売案を検討しておくようにという指示をされた。これは竹中大臣にされたわけですね。読売案というのは修正案なんです。読売案という修正案を検討するようにという指示と修正を検討しておくようにという指示がどう違うのですか、お答えください。
小泉内閣総理大臣 報道の自由と個人情報、プライバシーの保護というものは、私は両立させなきゃいけないものと思っております。また、国民に理解と協力を求める際にも、政府として、国会の議論の末に修正すべき点があれば修正すべきという点も排除すべきではないという考えから、建設的な意見については常に検討、勉強しておく必要があるということであって、私は、そのようないろいろな建設的な意見については、審議の前からよく勉強、検討して、理解と協力を得られるような答弁を用意しておくのは必要ではないかということでありまして、検討、勉強と結果的に修正を受け入れるということとは全く矛盾しない点だと思っております。
細野委員 正直言いまして、総理とこの部分に関しては、これ以上詰めて議論してもいま一つかみ合わないような気がいたしますので、最後に私の見解を述べさせていただくとして、それではもう少し具体的に伺います。
 竹中大臣の先日の答弁、そして記者会見の資料などを見ておりますと、読売案に関して総理はこうおっしゃったというふうになっています、非常に前向きに熱心に議論していただいている案だなと。読売案を当然総理はごらんになったわけですよね。読売案のどこを見て前向きだというふうにお考えになったのか、お聞かせください。
小泉内閣総理大臣 読売案については、いろいろ各項にわたって詳細に出ておりました。
 私も一読いたしまして、まず、人権、プライバシーと報道を両立させるための趣旨であるということは、これを読めばわかると思います。そして、透明性の確保の原則は報道分野への運用を除外する、あるいは表現の自由に対する配慮義務を明確化するという点についても、我々の政府案と趣旨を一にしているというふうに考えております。
 また、具体的に申し上げますれば、政府案としては、全部は読み上げませんし、省略いたしますが、「表現の自由、学問の自由、信教の自由及び政治活動の自由を妨げることがないよう配慮しなければならない。」と規定しているところを、読売新聞の修正試案は、「妨げることがないよう配慮しなければならない。」という点を「妨げてはならない。」というふうに規定しております。この点については、趣旨としては同一だと思っています。政府案も、信教の自由とか表現の自由とか政治活動の自由を妨げてはならないという趣旨で、「妨げることがないよう配慮しなければならない。」と規定しているんですが、そこら辺について、若干、反対している方々の中には危惧を持っているということから、読売新聞の修正案というのは、「配慮しなければならない。」ということを「妨げてはならない。」と言った方がいいんじゃないかというような規定を設けております。こういう点については、趣旨としては私は一にしているのではないかというふうに考えております。
 そのほか、いろいろ具体的に提案をされておりますが、ともかく、ただ反対反対、廃案廃案という報道が多い中で、報道機関として、言論、報道の自由と人権、プライバシーの保護というのは両立できるんだということを真正面から取り上げた点というのは私は評価すべきだと思いまして、よく検討、勉強する必要があるのではないかというふうに指示したわけであります。
細野委員 総理、そのほかにもたくさんあるとおっしゃいましたが、読売の修正案はその総理が評価をされる二点だけであります。この二点は、両方、メディアに対する規制の懸念を読売新聞が感じて、修正すべきだという提案をしている。
 いいですか、総理、本会議場で総理は、この法案はメディアの活動を規制する意図は全くありませんという答弁をしている。今総理は、メディアの部分に関して配慮をするこの読売の案を、この部分に関して評価するとおっしゃるのであれば、この原案にメディアの規制の懸念があるということをお認めになるということですね。そうじゃないと評価しようがないじゃないですか、読売案を。これははっきり御答弁いただきたい。
小泉内閣総理大臣 私は、メディアを規制するということではなくて、誤解が生じているから、そういう誤解を解くためには、「妨げることがないよう配慮しなければならない。」というのを「妨げてはならない。」という方がいいというんだったら、それも一つの検討項目ではないかなというふうに考えているのでありまして、私の答弁とは全く矛盾するとは思っておりません。
細野委員 誤解というのはごまかしですよ。読売案を、この部分二点しかないのに、総理は評価されるわけですよね。メディアからの懸念を、まさに私から見ればつまみ食いですけれども、それを反映した案を評価されるということは、何度も言いますけれども、この政府原案にメディア規制の懸念があるということを意味しているとしか考えられません。それは総理の答弁で私ははっきりしたというふうに思います。
 この点はこれ以上議論しても恐らく水かけ論になりますのでやりませんが、私自身は、実はこの読売修正案に関してはさまざまな疑念があると思っております。工藤議員は否定をされましたけれども、明らかに、読売の修正案が出てきているこのタイミングというのは余りによ過ぎるんじゃないか。
 その辺のことについて少し伺いたいと思いまして、無理を言いまして、本日は与党の理事の皆さんに本当に御配慮いただきまして、竹島内閣官房副長官補に来ていただいております。
 まず初めに、竹島政府委員にお伺いします。
 個人情報保護法案をめぐって、読売の役員の皆さんと竹島さんはお会いになりましたね。その事実と日時を教えてください。
竹島政府参考人 読売新聞だけではなくて、ほかの新聞社、それから放送関係の民放の会社その他、私ども、マンパワーに限りございますけれども、この法案についての御説明ということで、呼ばれたり、こちらからお願いしに行ったりということで、複数、御説明の機会を能動的、受動的に設けさせていただいております。
 それで、読売新聞社につきましては、連休前に日本新聞協会が緊急声明を出されました。その中で、私どもいろいろ説明を申し上げてきたんですけれども、まだ十分に御理解いただけないという一つの象徴的な話として、報道機関にこの個人情報保護法が主務大臣を置くという前提で、前提というかそういう法律になっておるという御認識でいろいろ言っておられる。緊急声明にもそういうくだりがあるわけでございます。
 その点は、この法律は報道機関に関して主務大臣はおりません、置いておりませんということを御説明しなけりゃならぬと思いまして、読売新聞社の方に行って、その他のこともございますけれども、御説明をさせていただいた。これは読売新聞だけではございません。ほかの新聞社にも、私の時間のある限り、そういうことで御説明の機会を設けさせていただいたということでございます。
細野委員 朝日新聞にも行かれたという話も私は聞いております。ほかの新聞は、詳しくは申し上げませんけれども、竹島さんが新聞社へ行かれる前も後も論調は変わっていないんですね。しかし、はっきり言えるのは、読売新聞だけはゴールデンウイーク前にあなたが訪問した後と前で論調が変わっているんです。
 具体的に指摘したいと思います。
 新聞協会の緊急声明が出されたときには、「大臣や官庁が取材協力者の側を通じて報道機関を監督し、取材・報道活動に介入し得る仕組みになっている。」という批判がある。そして、本会議で趣旨説明がされて、それに対して質問がなされた次の日、四月の二十六日の朝刊を見ると、「報道機関が政治家の不正を取材しようとした場合、政治家の個人情報を目的外に提供した者が罰則の対象になるため、実際上、報道機関の取材活動が難しくなる。」そういう極めてこの個人情報保護法案に関して厳しいコメントが読売新聞に載っています。
 新聞協会の関係者に私はある話を聞きました。読売試案が登場する数日前に、読売新聞のこの部分に関して検討されてきた責任者が、突然、政府案もよく見るとよくできていると発言をして、関係者が大変驚いた、そして数日後にこの読売修正案が出てきた。そして、その次の日に、小泉総理、総理が、よく前向きに検討していただいている案だ、しっかり検討するようにと御発言をされている。読売の論調は変わって、修正案が出てきて、総理がそれに呼応した。しかも、竹島さんが行かれた前後に読売の論調が、皆さん見ていただければわかる、明らかに変わっているんです。
 竹島さん、読売に行かれたときに修正案に対する話は出なかったんですか。
竹島政府参考人 読売新聞社を含めて修正のお話はもちろん一切しておりません。また、私どもは、これは二年以上かけて、専門家の有識者の御意見、御尽力もいただきながら練り上げてきたものでございまして、最善と思っております。そういう意味で修正ということをこちらからお話しするわけもありませんし、読売新聞社との話し合いでそういう話は一切出ておりません。
 それから、今論調が変わったというお話がございましたけれども、それは私どものまさに関係するところじゃございません。あらゆる機会でいろいろな記者の方々からも質問を受けますし、機会を設けていただいて説明する機会も各党にもございますが、私どもはこの法律で規定していることをまさに客観的に御理解いただきたいということを説明させていただいているわけでございます。
 その中の一つの大きな話は、これはあくまでも個人情報の保護が必要である、日本はおくれておるということでこういうことになってきているわけであって、メディア規制という趣旨ではありません。ただ、実際問題として、メディアにおいては個人情報をたくさん持っておりますから、こういう包括法になってくるとそこの調整が必要になる。それについてはむしろ報道の自由を阻害することのないように最大限の配慮をしているんですということを御説明申し上げているわけです。
 そのときの一つの基本的考え方として、報道の自由というのは非常に大事である。これは言われるまでもなく大変大事なことでありまして、民主主義社会を支える大変大きなものでございます。ただ、その報道の自由というその本質は何だろうかということは、これは人権とかほかのあらゆる自由、権利に絶えず超越するものではない、これは公権力からの自由ということが報道の自由の眼目であります。
 一方、この法律は、最初に申し上げましたように、個人情報の保護が必要であるということをこの法律で規定しているわけでございまして、その関係で個人情報の保護、プライバシーの重要性と報道の自由との調整の問題があって、そこは公権力が出ていかないように全部第五章では義務規定を排除してありますし、かてて加えて、取材先に対する主務大臣の関与がないように四十条で配慮義務規定も置いて、そういう形で公権力からの自由ということについては担保しております。
 こういう御説明をあらゆるところでしているわけでございまして、そういう意味からいって、読売新聞社は、先ほど何遍も総理が御答弁ありましたように、その両方を両立し得る、させなきゃならぬという前提で話しておられるということを私どもは評価しているということでございまして、個別具体的な修正の話について評価いたしているわけではございません。
細野委員 今の竹島さんの御答弁を聞いていまして、よくわかったことがあります。それは、あなたが一番この法案にこだわっている。ずっと過去の経緯も含めてよく御存じで、今早口で物すごい勢いで法案のポイントを言われた。一番こだわって、新聞社との交渉にも前面に立ってやったのがあなたなんです。
 これは周知の事実ですので申し上げますが、あなたは公正取引委員会の委員長に内定されている。これ以上言いませんが、仮にこの部分で何らかのメディアと取引があったら、本当にこれは大変なことですよ。日本経済の番人が、公正な取引をしようという、その機関の長になられる方がもしそういうことをやっていたら大変なことである、そのことだけ申し上げて、私がなぜきょう竹島さんに来ていただきたいと最後まで粘ったのか、そのことを最後に言わせていただいて、一言御答弁をいただきたいと思います。
 昨日の毎日新聞にこういう記事があります。写真つきで、竹島さん、こうおっしゃっている。「読売新聞が出した修正案は、表現の自由と個人情報保護の両立を考えられており、ありがたい。方向性が政府提案と同じで評価できる。」
 あなた、この委員会で、政府の中で読売案の修正を検討しているということについてさんざん議論があるのを御存じなんでしょう。まさに政府の中枢にいる官房の方が、今まさに総理が、検討はしていない、いろいろな意見を聞くんだ、竹中大臣がそうおっしゃっている。国会で議論になってから、だれも大臣、そういう発言されていないんですよ。新聞で堂々と読売案を評価して、これは疑惑持たれてもしようがないでしょう。読売案がありがたいということですよ。こういう発言を国会の外でされることについて、私はこれは国会軽視だと思う。竹島さんの御答弁をお伺いします。
竹島政府参考人 毎日新聞のインタビューは、これはインタビューでございまして、毎日新聞の方からお申し出がありまして、どうしようかと思いましたのですけれども、ぜひということでありましたのでインタビューに応じたということでございます。
 したがって、インタビューは一問一答でございますので、一問一答で記事にしていただければ本当はありがたいんですけれども、ああいうふうに要約しておられる、見出しもつけておられる。私が一問一答で答弁したとおりではないのでございます。
 ただ、先ほど申し上げましたように、私が毎日新聞の方の質問に対しても、読売についてどう考えますかという御質問がございましたから、先ほど少し早口で申し上げましたけれども、そういう内容を申し上げたのであって、個別具体的に、そういう見出しでもって整理されるような、ニュアンスがちょっと十分に伝わらないような感じになっているということでございまして、先ほど御答弁申し上げましたとおり、修正の話を私はしているわけではございません。あくまでも、この法律の中に規定されている規定ぶりなりについて、物の考え方を御説明しているということに尽きるわけでございます。
細野委員 これ以上この問題については答弁は求めませんが、じゃ、総理、再確認いたします。
 国会での議論を通じて修正の余地はあるけれども、読売案は修正のたたき台にはなっていないという理解でよろしいですね。
小泉内閣総理大臣 どの案をたたき台にするしないの問題じゃないんです。建設的な報道の自由と人権の擁護、個人情報の保護、両立できる意見については謙虚に耳を傾けるべきだなというのが私の趣旨であります。
細野委員 この問題についてはこれ以上聞きません。しかし、重大な疑惑があるということは、私はこの委員会できちっと指摘をしておきたいと思います。
 続きまして、防衛庁の漏えい問題、これについて、残った時間十分程度でございますけれども、質問をさせていただきたいと思います。防衛庁の方、いらしていますね。伺います。
 事件の詳細については昨日も記者発表されていますし、私も、新聞紙上、また直接さまざまな形で聞いておりますので、概要はすべて伺いません。
 聞いている方のために若干申し上げますと、海上幕僚監部の情報公開室の担当の方が、昨年四月からことしの三月にかけて、情報公開法上で請求をされた方のリストをつくった。その中には反戦自衛官という思想にかかわるような記述があり、また病歴に対する記述まであった。データは逐次更新され、担当中に一回から五回にわたり更新をされていた。しかも、七人の方にこの情報が渡っていたという事実。簡潔で結構ですが、これは間違いありませんね。
 プラス、もう一つ伺いたいのは、その七人に渡っていた中に、一人の人物に、中央調査隊というのがある。簡潔で結構ですので、これはどういう組織か、お答えください。
柳澤政府参考人 現在も含めまして、鋭意調査を進めております。
 昨日までに判明したところを私から記者発表させていただきましたが、今御指摘の点にございましたように、その請求書に記載されている以外の個人情報、これは本人は、インターネットですとか、あるいは情報公開窓口の人間とのやりとりの中で整理したということで言っておりますが、中には、今御指摘の反戦自衛官でありますとか受験者の親とか、そういった表現もあったわけでございます。
 これは担当レベルで七人、とりあえず今確認できておるのは七人でございますが、これも三佐、二佐といった担当レベルでございましたが、参考までにといって持っていったということでありますが、それぞれの者は破棄したかあるいは全く使用はしていない、こういうことを確認しております。
 それから、中央調査隊でございますか、これは、いわゆる秘密保全といいましょうか、情報保全の担当を主な担当とする組織でございます。
 恐らく、今本人も呼んで調べておりますが、彼と昔から知り合っていた同僚がいたということで、参考までに渡したという程度のことは今聞いておりますが、さらにその動機等については確認をしているところでございます。
 いずれにしても、昨日も申し上げましたけれども、情報公開の趣旨、それから行政機関の持っている個人情報保護の趣旨からいたしましても極めて不適切であると認識しておりまして、さらに調査を徹底して、必要な処分と再発防止策を今後検討していくということを考えておるわけでございます。
細野委員 中央調査隊は情報保全をするとおっしゃいました。わかりやすく言うと、この中央調査隊というのは、防衛庁の内部及びかかわる人間の諜報機関でしょう。どういう思想を持っている人間がいるのか、防衛庁の中に反戦主義者はいないか、そういうことをやってきた機関ですよね。これは結構です。もう明らかです。
 片山総務大臣に聞きますが、これは現行の行政機関の個人情報保護法に明らかに抵触していませんか。これは、この時点でこの機関の人間に情報が行っているということ自体、情報公開法を明らかに逸脱していないか。片山大臣の明快な御答弁をお願いします。
片山国務大臣 現在、防衛庁長官の方で事実確認をやっておりますけれども、伝えられるところによりますれば、大変不適切だと私は考えておりますが、いずれにせよ、事実を確認して、防衛庁の方で適切なこれまた対応をしてもらえるものだと考えております。
細野委員 では伺いますが、個人情報保護法、行政機関のもの、今これは罰則規定はありませんね。仮にこれが事実だとすると、どういう罰則が適用される可能性がありますか。
片山国務大臣 ストレートな罰則適用じゃなくて、国家公務員法等になるわけでありまして、もし犯罪ということになれば、これは告発の義務がありますし、法令遵守義務違反なり信用失墜行為になれば、これは懲戒処分その他、罰則相当の処分が行われることになるわけであります。
細野委員 いいですか。個人情報保護法、本法は、民間の事業者に関しては六カ月以下の懲役を規定しているんですよ。国家公務員法には、懲戒はあるけれども、懲役なんかないですよね。しかも、民間でこんなことをすれば即首ですよ。懲戒なんて当たり前。プラス政府から懲戒処分にもなる。このアンバランスが明らかにあるわけですよ。もうこれ以上聞きません。
 しかし、官房長官に一言伺いたい。私、昨日の官房長官の記者会見を見て唖然といたしました。行政機関に罰則がないということですが、もう行政機関、そもそもそういうことをしないことになっているんですねと。もう一つ非常に問題があることを言っている。だけれども、マスメディアもないでしょうと。マスメディアと行政機関を同一に論じてどうするんですか。まさに行政機関の情報の流用がこれだけ明らかになっているのに、内閣官房の中枢のあなたがこんなことを言う。私、この法案の前途に本当に暗たんたる気持ちを正直、この発言を聞いて感じました。
 福田官房長官、これからどうされるおつもりなのか、お答えください。
福田国務大臣 昨日の記者会見で、この防衛庁の事件がどういう内容のものか、まだ私もよく承知していない段階でもって記者から聞かれまして、そして、とっさのやりとりだったということで、その辺深く考えていなかったということは、これはもう率直に認めます。
 その上で、私も、防衛庁のことはその時点においてわからなかったということでございますので、それはそれとして、今回の防衛庁の事件というものは、内容はすべて私、承知しているわけではありませんけれども、これは決して看過できない重大な問題だろうというように思っておりますし、それに対しては相当な対応をすべきだろうというふうに考えております。
 また、マスメディアとの関連について申し上げれば、それは、この個人情報保護法案においていろいろな、適用除外と申しますか、報道の自由というようなものについての考え方というものは明確に出ておりますので、その考え方は全くそのとおり、私自身もそう思っているところでございます。
細野委員 最後に一点だけ伺います。
 総理、今この法案が議論されようとしているんです、行政機関の個人情報保護法。現行法とほぼ形は一緒です。罰則規定はないんです。この個人情報の極めて誤った流用事態にダイレクトに、民間と同様、もしくはそれ以上に厳しい罰則を科す必要性は絶対あるんですよ。今、国民みんなそう思っている。個人情報の扱いが今一番ずさんなのは官である、みんなそう思っている。それを立証したのが今回の事件ですよ。
 総理、この部分に関してはお考えを変えるおつもりはありませんか。
小泉内閣総理大臣 この防衛庁の問題は、情報公開といいますか情報開示の問題と個人情報を保護する問題、これについて不安や混乱が起こらないように厳正な対応が必要ではないかと思っておりますが、今回の個人情報保護法案等は、言論の自由、報道の自由と、個人情報の保護あるいは人権、プライバシーの保護ということを目指したものでありまして、私は、この法案の成立に向けて全力を尽くしていくということと、今回の防衛庁の問題についてきちんとした対応をすべきだということは、並行してやっていかなきゃならない問題だと思っております。
細野委員 時間が来ましたので終わりますが、大変失望いたしました。お考えをぜひ変えていただきたい。
 それで、最後に一点、委員長に、防衛庁の長官をぜひこの場に呼んでこの問題を集中的に議論していただきたい。もう基礎の基礎の問題です。そのことを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
大畠委員長 これにて細野君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 私は、順番を少し変えまして、今防衛庁リストのことが出ておりましたので、その問題から最初に質問したいというふうに思います。
 情報公開法というのは、言うまでもなく、憲法の基本的人権に基づく国民の知る権利の保障として生まれました。国民がこの権利を行使したら、防衛庁の方は情報公開申請者の思想、信条、病歴の調査リストを作成していたということですから、これは危なくて情報公開の請求はできない、こういうことになってきます。
 そこで、総理に、内閣として考えてみてもこれは極めて重大で深刻な問題だというふうに私は思うんですが、まずその点、最初に伺っておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 個人情報の保護といわゆる情報公開という面について、今後、情報開示を請求する人々に対しまして不安と混乱が起こらないような厳正な措置が必要であるということを私は強く認識しております。
吉井委員 厳正な措置が必要なのは当然なんですが、このこと自体が、もともと憲法の基本的人権の保障というところから生まれたのが情報公開法なんですよ。それを申請したら思想調査リストをつくられてしまうとなりますと、情報公開法に基づいて情報公開を求めること自体にブレーキがかかってしまう。日本の民主主義という点で考えてみても、知る権利の保障、いろいろなことを考えてみても、これは本当に極めて重大で深刻な問題なんだという、この受けとめがまず出発点において必要だと思うんです。
 私は、その総理の認識を最初に伺っておきたいと思っているんです。
小泉内閣総理大臣 今も答弁いたしましたとおり、情報公開と個人情報の保護ということについて誤解のないように、混乱のないような対応、そして、国民に対して、この情報公開の趣旨と個人情報の保護というものについて、行政に不信感を招かないような対応が必要であるということを申し上げているつもりでございます。
吉井委員 これは、行政への不信感とかそういうレベルの話じゃないんですね。国民の知る権利、基本的人権、憲法にかかわってくる極めて深刻でゆゆしい事態が起こったという、この認識を出発点においてまず持ってもらわなきゃ困るということを私は言っておかなきゃならぬと思うんです。
 報道を見ましたり、防衛庁からのレクも聞きましたが、一人の担当者、そういうことで、当初かなり責任逃れに走っておりました。
 防衛庁の言い分では、三佐は転勤した三月にリストを配付したというんですね。リストの配付先は、海幕の情報公開室長、内局の情報公開担当、空幕の情報公開担当、陸幕の情報公開担当、海幕の保全室、海自の中央調査隊、そして、陸幕の情報公開担当者から陸幕総務課のリストの情報公開担当者に渡したと。つまり、この部署は、言うなれば自衛隊の情報を扱う中枢部署に当たるわけなんです。ところが、配付されてから二カ月間たって、しかるべきところにだれからもこのリストが問題だという報告もなかった。レクチャーを受けておりまして、これが事実としてわかりました。
 これは、こうした情報に結局防衛庁の方がなれ切ってしまっている何よりの証拠だというふうに思うんですね。ですから、新聞などで報道されてから個人の責任だ何だと言っても通用しない話で、これは個人の問題じゃなしに、何人かの関係者の処分だ何だというレベルじゃなしに、やはり防衛庁の体質あるいは組織的に行ってきた問題として、きちんとそこにメスを入れていくということを総理として、そういう角度で防衛庁の組織問題として対応していく、その取り組みが私は必要だと思うんですが、総理大臣に伺っておきたいと思うんです。――私、政府参考人にお聞きするときはちゃんと指名しますから。あなたが総理大臣になられてから答弁されるのはいいけれども、私は今総理に聞いていますから。
小泉内閣総理大臣 よく調査し、そして国民に不安と混乱を来さないような対応が必要であると思っております。
吉井委員 実は、このリストに百四十二人を超えるぐらいの氏名、住所、七百件以上の請求内容が記載されていたという膨大なものですが、しかも、このリストの中には、海幕だけでなくて、陸幕、空幕など他の部局の分も入っているわけです。ですから、部局の違う情報公開担当同士が交流しているということも伺っておりますが、とても一人じゃ集められないものです。
 報道によれば、防衛庁幹部の話として、どんな人が請求し、開示資料がどのように使われる可能性があるか知る目的でリストの作成が始まったと聞いていると。組織的に情報を収集、管理し、一部幹部の間で閲覧しているということも報道されております。ですから、組織的にやっているという疑いは極めて濃厚なんですね。ですから私は、個々の人の問題とか担当者のレベルの話じゃなくて、やはり、組織的にやってきたという視点できちんと調査をする、このことは総理としてやってもらわなきゃならぬと思うんですが、この点、総理に伺っておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今どういう報道がなされているか、私は各新聞、詳細に読んでいるわけではありませんので承知しておりませんが、ともかくこの問題というのは、まず防衛庁がよく調査することが必要ではないかと思っております。
吉井委員 まず、組織的な問題として全面的な調査をやってもらいたいというふうに思いますし、その調査の結果は当然報告をいただきたい。
 この三佐の行為を、現行の行政電算機法はもちろんのこと、今審議している行政機関個人情報保護法案で処罰できないわけですね。行政機関ではこうしたことは起きないという前提でつくっているからこうなるわけなんですが、現実にはこういう問題が出てきたわけです。一種の思想調査であり、明白な憲法違反の問題が起こっているんですが、これが処罰できないような法律では意味がないわけです。
 ですから、この機会に、防衛庁だけじゃなしに、やはり国の全省庁にわたって、今は全省庁にわたって情報公開をやっているんですから、こういうことがあるのかないのか総点検を行って、その調査結果を公表してもらいたいと思いますが、総理、これは全省庁にわたってやってもらえますね。
片山国務大臣 先ほども答弁いたしましたが、現在、防衛庁が調査中でございますので、事実が明らかになれば、罰則の適用はないと言いましたが、守秘義務違反は一年以下の懲役になるんですよ。だから、調査で確認した行為を見て任命権者がどういう判断をされるかということですから、罰則がないわけじゃありません。
 それから、先ほども言いましたが、仮に犯罪に該当するとすれば、それはそっちの方でやられるわけですから、それ以外に懲戒処分があるということを申し上げたわけであります。
吉井委員 私、聞いていますのは、ちょっとあなたは全然別なところへ、動転しておっしゃったのかもしれないが、これは防衛庁だけじゃないんです。国の機関すべてについて情報公開法に基づいて情報公開を求めるわけですから、それは片山さんのところだけの話じゃないから、それで私は総理大臣に、これは国の全省庁について総点検を行って結果を公表する、この取り組みが必要だということを、総理の基本的な考え方というものを伺っているんです。総理の答弁を求めます。
片山国務大臣 情報公開法なり、今回御審議いただいている行政機関の個人情報保護法は総務省の所管ですから、情報公開法につきましては、施行状況の調査というのを私どもの方でやっておりまして、今委員御指摘の点も含めて調査するということは、我々の方でも検討いたしております。
吉井委員 全省庁にわたってこれはやってもらわなきゃいけないし、当然のことながら、そのすべてを公表してもらいたい。現在審議されております個人情報保護の関連法案では、結局今回のような事件を防止できるのかどうかということが今深刻に問われているときであります。行政機関に対しては、目的外使用、第三者提供についての罰則もなく、センシティブ情報の収集も禁止していない。こういう点では、ざる状況、ざる法案であるということが今回の問題を通じても明らかになってきたと思うんです。
 私は、こういう点では、目的外使用、第三者提供についてきちんとした罰則を明らかにすることとか、センシティブ情報の収集禁止とかこういうことを考える上で、やはりこれは撤回して、根本的にこういうものをきちんと研究して出し直しを考えていくということが筋だと思うんですが、総理にこの点についても伺っておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 現在の法案の審議の中で、いろいろな御提案、御議論をしていただくことが私はまず必要ではないかと思っております。
吉井委員 次に、私は、表現、報道の自由にかかわる問題について伺っておきたいと思うんですが、政府は、この法案は表現、報道の規制ではないということを繰り返し述べてきました。しかし、実際にはそれを担保するものはないわけです。
 憲法二十一条で保障された国民の基本的人権であり、国民主権、民主主義の中核をなす権利、これが表現、報道の自由なんですが、これは、戦前の苦い教訓から生まれてきております。戦前の明治憲法にも、言論、著作、印行及び結社の自由を明記しておりましたが、法の範囲内での自由という制約がありました。出版法、新聞紙法、治安維持法などで弾圧を受けてきましたが、作家の小林多喜二、この人は、一九三三年二月の二十日に、真冬の東京で、治安維持法違反で特高警察に捕らえられ、築地警察署ですさまじい拷問を受けて、数時間の後に警察の手で虐殺されました。言論、表現の自由の抑圧というのは、最初は少しずつ少しずつ侵害していって、それを拡大して最後は白色テロになっていったというのが日本の歴史の教訓です。
 小泉総理にこの際、治安維持法というものについてどういう認識を持っておられるか、伺っておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 治安を維持するということは、政府としては国民の最も基本的人権を守るという意味からも大変重要なものだと認識しております。しかしながら、その治安維持が言論の自由なり報道の自由を阻害することのないように、また人権を侵害しないようなものであるべきだということは当然のことだと思います。
吉井委員 治安維持法というのは、戦前の国体維持のために、それに反する考え方、戦争反対だとか基本的人権だとか主権在民とか、こういう物の考え方、思想、信条、出版、結社、集会、あらゆるものを徹底的に抑圧していったのが治安維持法ですから、治安を維持するために必要なものなんというようなことはとんでもない考え方だということを、まずその認識そのものを改めていかれないと、今日の日本国憲法のもとでの民主主義社会には全くなじまない考え方だということを申し上げておきたい。
 戦争の拡大も、朝鮮半島や中国大陸での軍部の侵略、あるいは植民地化した地域での住民抑圧など、非道な実態が正確に国民に知らされないなど、報道の自由が抑圧され、さらに、報道機関が軍部の発表をうそであってもそのまま国民に知らせる役割を果たしたことが、戦争拡大の大きな要因にもなりました。そして、それは治安維持法と結びついたものでもありました。
 だから、戦後、大新聞が、大本営発表のオウム返しで道を誤らせ、アジアの人々と日本の国民に多大の災厄をもたらしたという痛苦の教訓から、反省の弁を明らかにして、表現の自由、報道の自由を守るために敏感に対応してきたというのがこれまでの戦後の歴史的な経過だと思います。雑誌やフリーのジャーナリストの方を含めて、この立場で頑張っておられるわけです。
 私は、この点で戦後どういうことが述べられたかということについて、一つ紹介しておきたいと思うんです。読売新聞の社説ですね。読売報知の一九四五年十月二十五日、太平洋戦争が終わって約二カ月後になりますが、こういう社説を掲げました。
 戦争の前後を通じてこの新聞がたとへ弾圧の下にあつたとはいへ、軍閥、財閥、官僚等の特権階級の手先となり、戦争への国民の駆立て、戦争の拡大に果した罪は限りなく大きい。而に度を超えて進んで彼等に阿附するの醜態をさへ演じたのである。ことに真実を伝へざるのみならず、事実と全く反対の報道を臆面もなく散じて国民を瞞し、国民の戦争についての認識を誤らせ、その眼を眩ませた罪に至つては正に万死に価する。
これは、読売新聞が、戦後、十月二十五日に出した社説の中の一節であります。
 ですから、戦前の治安維持法などという、そういう体系を否定して今日の憲法ができているというだけじゃなしに、この表現、報道の自由については本当に厳格に守っていかなきゃいけないし、そのために、それをいささかでも規制に導くような、あるいは報道活動を萎縮させるような、そういうものはつくっちゃならないということが歴史の教訓だと私は思いますが、この点についても総理の考え方というものを伺っておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 まず、戦前と戦後は違うということを理解していただかなきゃならないと思っております。戦前とは、憲法も違いますし、国民の基本的人権意識というものも違いますし、また、言論の自由、報道の自由、この重要性をよく国民も我々も認識しております。私は、そういう点を考えて、戦後規定された憲法に沿って、言論の自由、報道の自由、そして個人情報の保護、人権、プライバシーの保護ということをいかに両立させていくかということが今回の法案の趣旨であるということを御理解いただきたいと思います。
吉井委員 表現、報道の自由とか、今日の憲法を深く身につけて取り組んでいく上でも、この点では、私は、戦前の日本の歴史というものをどれだけきちんと認識し、理解し、取り組むかということが決定的なかぎになる。簡単に、戦前と今日の歴史が違うと言うだけじゃなしに、やはり、今日の憲法がどういう歴史的経過を経て生み出されてきたのかという、そのことの深い理解が必要であるということを申し上げまして、時間があと二分ほどになってまいりましたので、最後に、修正問題について私も聞いておきたいと思います。
 委員会で法案の審議が始まる前に、総理は読売の修正試案を見て、修正を指示、あるいは、その後検討を指示とか勉強しておくように言ったというふうに伺っておりますが、いずれにしても、提案している法案がそのままではまずい、欠陥法案であると政府自身が認めたことになると思うんです。
 そこで、総理に伺いますが、読売の修正試案を読まれて、透明性の確保、すなわち、本人関与の削除ということが提案にあったわけですが、その部分さえ取れば報道機関に対する規制にはならないとお考えになったのはどうしてなのか。
 基本原則の「適正な取得」に言う適正適法な方法で取得というのは、仮に、疑惑政治家が名誉毀損だとして民事裁判に訴えたときに、裁判官の解釈基準になりますと、報道機関はもとより、フリーのジャーナリスト、作家の取材活動も規制されることになりますが、適正な取得など、こちらの方は残しておいて、透明性の確保、すなわち、本人が適切に関与できるよう配慮をする、この部分さえ削除すれば報道機関に対する規制にならないと考えておられるその根拠はどこにあるのか。これを最後に総理に伺っておきたいと思うんです。
小泉内閣総理大臣 私は、この今回提案した法案に対しまして、まず、各報道機関が、反対、廃案を目指していろいろ運動を展開している、そういう中にあって、言論の自由、報道の自由、人権、プライバシーの保護は両立できるんだという建設的な提案を読売新聞がされたということに対して評価をしているわけであります。
 そういう点を含めて、これから国会で審議がある、いろいろな議論が出てくるだろうが、国民に理解と協力を求めるために、反対者の意見についても耳を傾けながら、多くの国民から理解を得られるような形でこの法案を成立させてほしいということの表現が、よく検討し、勉強してほしいということにつながったということを御理解いただきたいと思います。
吉井委員 もう時間が参りましたので終わりますが、お疲れかもしれないが、私の質問したのは、同じ趣旨のことを後で二回繰り返してよくわかってもらえるように御説明しました。質問の趣旨をよくつかんで御答弁をいただきたい、このことを求めまして、時間が参りましたので終わります。
大畠委員長 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。
 次に、北川れん子さん。
北川委員 社会民主党・市民連合の北川れん子といいます。
 きょう、小泉総理の答弁をずっと聞いておりまして一番の問題点、それは、報道機関にのみ目と頭と耳が向いているというか、この政府提案の個人情報保護法が、百五十一から出されておりまして、いわゆる業界用語でつるしがおりなかった。そして、この百五十四でおりて、今、六月十九日の会期を目前にして、まだ内容の審議にさえ入れないという状況ですよね。報道機関だけに目を向けていらっしゃる小泉首相の心理というものが一番の問題点であります。
 この法案が持つ、一年間たなざらしにされていた一番の眼目は、報道のことだけではなくて、報道の自由、表現の自由の問題が、全国民、といいますのは、国民が個人情報取扱事業者とあしたからこの法律が施行されたらなるわけですから、小泉純一郎さんという方の親族の皆さんもすべて、ある幾ばくかの量、質が問われる。今言っているのは、質ではなく量だと言っておりますから、量がかさめば、あなたはあしたから個人情報取扱事業者ですよと。このことが本当にどういう意味を持つのかということを国民に知らせていない、そのことが問題であるということで、私自身は、去年ですが、二〇〇一年の六月五日と二十五日に質問主意書、再質問主意書を出させていただきました。答弁もいただいております。
 それで、問題点は、行政の個人情報保護法、八八年のざる法がずっと十三年間整備をされずに取り置きされてそのままにされていた点、官に甘く、民にはきつい、だけれども、民間の業態の一番きつく規制をしなければいけないところには緩いという問題等々、いろいろあるわけなんですね。
 修正の指示を否定という新聞が五月の十七日に出ました。一面肯定をされたということがあったから否定しないといけないという場面に立たされたと思うんですが、肯定したことはなかったわけですね。報道機関に対してのことだけを何か論ずれば、解決すれば、この個人情報保護法は万々歳で与野党通る、通過すると思っていらっしゃるのかどうか、まずその点をお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 よく質問の趣旨が理解しがたい面もあるんですが、質問者の方がどのようにとられようとも御自由ですが、私は、国民生活に関係があるからこそ国会に提出しているわけであります。報道機関だけを対象にしているわけじゃないんです。国会で審議していただくということは、国民生活全般に関係あるという点を私はよく認識しているつもりであります。
北川委員 では、あしたからあなたも個人情報取扱事業者になりますよということを、小泉首相、総理はどういうふうに国民に御説明をされて、この政府提案の個人情報保護法、ぜひ理解をいただきたいとどの場面で小泉首相はおっしゃったのか、総理はおっしゃったのか。五月十二日に出された読売の修正試案には、そんなことは全然書いていない。そういう面ではないわけですよ。その点をもう一度お伺いしたいのと、もう修正論議には乗らない、修正はしないということなのかどうか、あわせてお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 私は、報道の自由、言論の自由と、個人情報の保護、人権、プライバシーの保護を両立させなければいけないと思っております。そういう点から、この法案が今委員会で議論され、いろいろな意見に耳をかしながら、最終的に国会の意思として修正すべきだという意見が出てきた場合には、そういう意見にも謙虚に耳を傾けるべきだ、検討、勉強しなさいという中で真に修正すべき点があれば、修正するということについて柔軟に考えてもいいということは今でも思っております。
 政府の提案は一切修正してはいけないというんだったらば、国会の議論も成り立ちがたい点がありますので、その点については、建設的ないい議論については十分検討する価値があるのではないかということは現在でも思っております。
北川委員 前半の答弁に関しては答弁になっていないわけですよ。
 報道の自由とか報道に対する規制の問題のみではなくて、この持っている本当の本質的な意味の怖さ、それは全国民にかかわってくる。全国民が自分が報道する側だという立場に立って、今回、報道の方たちのこの一年間の強い反対がどういう意味か。市民のあなたにもかかわる、個人情報取扱事業者となることの可能性を秘めたあなたに対してこの個人情報保護法がどんなに重たい意味を持つかということを、どれだけの多くの国民にあなたは周知徹底をされたのかという意味で私はお伺いしたんですが、その御答弁はなく、修正は柔軟に応じましょうと。
 まず、審議にもこの一年間入られなかったものに対して修正は応じようということは、とりもなおさずこの法案の欠陥性というものをやはり今でもみずから認めていらっしゃるというふうにしかならないわけです。
 それで、いろいろな意見があることを知らなければ国会審議はできないというふうにおっしゃっています。国会審議ができないのは当たり前です、政府案は最大限の努力を講じたが、修正も柔軟に考えようと今しているということをおっしゃったと思うんですけれども、いろいろな意見があるということ。
 我が社民党なんですけれども、私が質問主意書を出しました、そして再質問主意書を出しました。そして、この一年間、いろいろなことを考えてきました。この法案の持つ本当の意味はどこにねらいがあるのか。私は、報道のみではなくてすべての人にかかわってくる問題であるということを抜け落として議論をさそうとして、逆に言えば報道のところだけに幾ばくかの修正をかければという方向へ持ってこようとしている、そこに問題があるというふうに思っているんです。
 社民党は対案を出しました。社民党が対案を出したことを、インターネットでも紹介していますし、記者会見もしました。あらゆる情報を知らなければいい審議はできないんだとおっしゃった小泉総理、私どもの社民党案というものに対して御存じかどうか、そして、御存じであるならば、どういうふうにお受けとめになったのか、お伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 見ておりませんが、委員会の中でよく議論をしていただきたいと思います。
北川委員 見ていないということの中には、読売試案をどれほど検討的に読まれたのか。いろいろな議論が必要だとおっしゃる小泉首相、あなたは森首相から交代されて小泉首相になったときに一年間、この法案はとても大事な法案だということで出してこなかった。出してこなかったゆえの中の一年間の中に、社民党が出した案に対して見てもいなかった、それで議論してもらいましょう、そういう言い方はないと思うんですよね。
 見ていないという今の御議論の中に、ちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、小泉首相のおひざ元、神奈川県の横須賀ということでいらっしゃると思うんですね。そこで五月二十六日の日に、今月の日曜日ですけれども、多くの方々が、個人情報保護法も、そして今特別委員会の方もいろいろな波風が立っていて紛糾をしている有事法制関連三法の問題も含めまして、市民の人たちに訴える。地元の皆さん、あなたたちが首相にしている小泉さんというのはこういう法案を出してきているんだと。ここには、五百人がデモをされた、パレードをされたというふうに書いていらっしゃいます。
 そして、四月二十九日には、お隣にお座りになっている福田官房長官のおひざ元、群馬県の高崎市でもパレードが行われていて、その日、両方とも晴天で、多くの沿道の市民の人たちに、あ、ちょっとこれって問題なのかな、個人情報保護法、案外、報道機関だけの問題かと思っていたらそうじゃなくて、この法案の持っている底知れぬ深さ、このことの方が大きいのではないかと。だんだん、でも、気づくというほどではないわけですよ。
 何らかの形で市民にアピールをしてくださっているこういうパレードがあったんですが、こういう報道を目にされたのか、また、御自身はそういうことを耳にお入れになったことがありましたか。五月二十六日のおひざ元、横須賀で行われたパレードについての認識をお伺いしたい。
小泉内閣総理大臣 そういう行動があったということは耳にしております。
北川委員 耳にして目にはしなかったということなんですけれども、神奈川新聞には載っているので読んでいただいてということですが、こういう形で市民に訴える皆さんがいらっしゃる。報道機関の人が、報道機関だけの問題じゃなくて、あなた、市民、皆さんがこれから個人情報保護法で表現の自由や言論の自由が事前規制されていくんだよということを訴えていらっしゃる。これを聞いてどう思われているのか。今、笑われたわけですが、どう思っていらっしゃるのか。その辺、この法案が本当にいいと思っていらっしゃる小泉首相が見えないわけですよ。見えたら修正試案のことなんかに敏感に反応するようなことはないわけで、見えない。
 この個人情報保護法をあなたがいいと思っていらっしゃるという。どこをいいと思っていらっしゃるか、そういう真っ当な姿勢が見えないというところでお伺いしたいんですが、こういうことを聞かれてどう思われていたのか、それも次にお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 この法案に対して反対論があるということも、私はよく承知しております。だからこそ、議論を深めて、この法案は、言論の自由、報道の自由と、個人情報保護、人権、プライバシーの保護を両立する法案ですよという理解をいただくために審議をしていただきたい、そして成立を図っていきたいという趣旨で提案しているわけでありまして、私は、報道機関だけではなくて国民全体の問題であるということを理解しているつもりであります。
北川委員 じゃ、報道機関の修正というところだけが問題ではなくて、この個人情報保護法の中に官と民が二階建てになっていて、基本法という性格のことが、緩く官に当たり、民には、業態別に定めた場合は、業態によっては緩いというような問題。そして、一番の根幹的な問題が、言論の自由や表現の自由のすべての多くの人たちへの規制であるということ。そういう点に問題があるということまで御自身で深められたという形跡が今御返答の中にあったのかなかったのかちょっとわからないんですけれども、これには物すごい問題がある、報道だけの問題ではないということを、ぜひこの場面で、委員会で御認識を改めていただいて、もう一度御自身でこの法案が持っている意味を感じてください。
 そして、社民党の対案は、官と民は別々にせざるを得ないという結論に達しました。官と民を二階建てにしている段階ではどこかでそごが出てくる。
 そして、八八年、あなたたちは、たなざらしにされた十三年間というものの間に、行政の保有するものがマニュアル情報から電子情報に変わってきたということで、そこに関して、これはコンピューター化の治安維持法だという御意見を出してくださっている弁護士さんもいらっしゃるわけですから、ぜひ深めていただきたい。深めていただかない限りは、私たちは委員会で審議できないですよね。
 そして、きょう竹島一彦官房副長官補がお越しいただいて、私、この二カ月、四月、五月、「小泉首相の一日を観察しよう」、コンテンツトップというので見ましたら、一応これは公情報にしていらっしゃる分で、四月二日、九日、五月十四日、五月二十日と竹島一彦さん、そのときには竹中平蔵大臣もいらっしゃったり、坂内閣府統括官がいらっしゃるとか、竹中さんと対になっている竹島さんだというのがよくわかりました。三位一体なのかもわかりません。竹島一彦さん、竹中大臣、そして小泉首相と段階を経て、首相ですから、ちっちゃな、この法案の持っている意味すべて――ただ、一年間あったということでは、私たちと同じぐらいお勉強する時間はあったというふうに思うわけですね。形ができた法案が一年間たなざらしになっていたわけですから、一年間の勉強の度合いがどうなのか。報道機関の管制の問題だけではないということをぜひ改めて御認識の中に入れていただきたいと思います。
 そして、日本が独特であるということを次にちょっと聞いてみたいのですが、日本には戸籍制度がありますよね。住民基本台帳法があります。戸籍制度は、日本、日本が植民地にしていた韓国、台湾ですよね。住民基本台帳法も、世界の中では比類なき日本、韓国という形で、日本というのはプライバシーの点においてすごく独特な国だというふうに私は思っています。
 それで、私、女性の立場からなんですが、戸籍制度に関して、女性は戸籍を汚すなとかよく言われるわけですよ。それは離婚をするなということを暗に言って、戻ってくるなということの戒めのために戦前はよく使われて、戦後も、今のこの二十一世紀に入る扉の中でもそのことで悩んでいる女性は多いわけです。戸籍制度にからめ捕られている人たちも多いわけです。
 小泉首相は、この日本が独特に、世界にも比類ない戸籍制度と住民基本台帳法を持っている国として、この個人情報保護法というもの、そして情報公開制度というものに関してのプライバシーというところなんですが、戸籍に関して一番の問題点、昨今はもう戸籍に関しての話し合いということもタブーではありません。このことをタブー視するということはないと思うんですが、戸籍制度で、首相が、デメリット、メリットというのか、いいところ、悪いところと思っていらっしゃるのか、戸籍制度の持っている根幹の意味の中で、御自身の経験と照らし合わせても結構ですし、今、この持つ意味を、ちょっと思うところがあれば教えてください。
小泉内閣総理大臣 戸籍制度に限らず、私は、言論の自由、報道の自由は民主主義の中で最も重要なものだと思っております。同時に、知る権利と、国民個人個人にとっては知られたくないプライバシーもあると思います。その点をいかに両立させるかということが重要でありまして、だからこそ国会でこの法案を議論しているんであって、審議することによって、この両方、重要な問題というものをよく国民に理解してもらうような努力も必要でしょうし、基本的な人権、言論の自由、報道の自由、人権擁護、プライバシーの擁護、ともに基本的な人権でありますので、これを両立させるために私は十分な議論、審議が必要だと思っております。
北川委員 私たちの国は、やはり世界に比類ない独特のシステムを持ってきて百数十年運用されてきた中で、まだ解決のできていないプライバシーの面というのがあるわけですよ。まだ国民一人一人が自分の本当の意味でのプライバシーを享受したことはないということで、今いみじくも、知られたくないプライバシーがあるだろうと。でも、戸籍制度というのは公開が原則なんですよね。原則のもと公開なんですよ。基本的には公開なんですよ。
 そして、法目的が定められていない。この台帳自身が法目的に定められていないわけですが、個人情報保護法に戸籍というものも入れていくというお考えはないのかあるのか、最後にお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 戸籍法は、これは法務省の所管でございまして、身分関係の公証、私どもの方の住民基本台帳の方は居住関係の公証、こういうことになっておりまして、今回出している行政機関個人情報保護法は、戸籍の関係は対象外にいたしております。(発言する者あり)
 将来は、あらゆることを含めていろいろなことを検討していく、こういうことであります。
北川委員 今、将来の点においては、他の委員の質問にもあえて御答弁いただくほど、積極的に、将来は政令、省令から落とさないで戸籍制度を入れていくんだ、戸籍というものを根幹的に個人情報保護法に入れていくんだということを片山大臣はおっしゃったというふうに、今回――いや、おっしゃったんでしょう。おっしゃったじゃないですか、今。私の質疑じゃないものにも答えておっしゃったじゃないですか。
片山国務大臣 戸籍法は法務省の所管でございます。最初に申し上げました。そのことを踏まえて今回は対象にしていない、こういうことを申し上げたわけで、将来どうするんだ、法務省が中心に検討すべきことであります。
大畠委員長 北川さん、時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。
北川委員 最後に、法務省と総務省、今権益のいろいろな争いをされていらっしゃるところだということで、最後、将来に向けてのことは逃げられましたけれども、小泉総理、根幹的に、日本の国というのが個人情報保護法を論ずる以前に、戸籍のことを個人情報保護法に入れないという問題は本当に重大な問題であるということを御指摘して、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
大畠委員長 これにて北川さんの質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
大畠委員長 引き続き質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。先ほどに続いて質問をいたします。
 先ほど、防衛庁の方の思想リストのことを取り上げましたが、今度は、私は、金融機関の分野での個人情報にかかわるリストが悪用されているという、この問題について最初に伺っておきたいと思うんです。
 ことしの四月十二日に、住宅金融公庫が受託金融機関あてに「住宅金融公庫債権の自らのローンへの借換えを勧誘する行為について」という文書を送りつけました。これは、一九九五年にも九九年にも二〇〇〇年にも、そしてことし四月にも同趣旨の文書を送りつけているということでありますから、幾ら送っても大手都銀の方はさっぱり態度を改めていこうとしていないということがあらわれていると思うんです。
 これは、公庫業務上知り得た公庫債務者の情報を債務者の同意なく借りかえのシミュレーション等に利用して、ダイレクトメールによる借りかえの勧誘を行っており、その結果、公庫が債務者からクレームを受けるケースが散見されるというふうに抗議をしています。大手都銀が、住宅金融公庫の客の信用情報をもとに、住公ローンの融資先のお客さんに、その住宅金融公庫ローンを自分の銀行ローンに切りかえさせるという行為を行っているわけです。
 これはたまたま住宅金融公庫と大手都銀の例ですが、Aという都銀の住宅ローンのお客さんの情報、いろいろな個人の、この人はかなり金利の高いときに借りていらっしゃるとか、そして債務残高がこれぐらいで返済状況はきちんとしているとか、いわば優良債権かどうかという情報などがBという銀行に行って、Bという銀行がダイレクトメールを送って、あなたのA銀行での住宅ローンをうちに切りかえなさい、こういうことをやるのと結局同じ内容だと思うんですが、住宅金融公庫としてどういう抗議の文書を発出されたのか、この点を伺っておきたいと思います。政府参考人にお願いします。
井上政府参考人 先生御指摘いただいたとおり、私どもと公庫の受託金融機関との間には業務委託契約書というのがございまして、その中に秘密保持義務に関する事項がございます。この中には、おっしゃったとおりに、公庫業務を通じて知り得た秘密を利用して自己の利益のために使ってはいけないというふうな条項がございます。また、先生おっしゃったとおりに、幾人かの公庫を利用していただくお客様から、そういったことに関してどういったことかという問い合わせもございましたことなので、そういった文書を出したわけでございます。
 それで、これはちょっと公庫の業務を通じて知り得た秘密を使ってやっているなというふうなことが明らかになったときに、公庫がどういったことをやるかというふうなことでございますけれども、これにつきましては、私どもといたしましては、新たな業務取り扱い、つまり業務の受け付けでございますけれども、これを数カ月例えば停止していただく、あるいは新たな業務取扱店の指定を禁止する、あるいは是正措置を文書で出していただくなどの措置を講じているようなところでございます。
吉井委員 この問題というのは、私は驚いたんですが、過去に四回抗議の文書を発出された。しかし、さっぱり効き目がないから四回発出したわけですが、ことしの四月十二日に住宅金融公庫が都銀あてに出した後、例えばUFJの方ではその十日後、四月二十二日に、「地区リテール営業部長殿、リテール業務責任者殿」ということで一般通達を出しているんです、「住宅ローン肩がわりダイレクトメールの実施について」と。
 だから、住宅金融公庫から抗議を受けても、個人情報の取り扱いをきちんとしろと言われても、それを聞くどころか、全店に対して住宅ローンの肩がわりリスト、これはつまり住宅金融公庫のローンの返済等をUFJが扱っている分ですね。UFJからしますと、このお客さんは毎月きちんきちんと納めているかとか、何年ごろ借りられたものだから利率が何ぼぐらいかとか、みんなわかるわけですね。
 これを見ていますと、ダイレクトメール発送対象先ということで、住宅ローン肩がわりリストに載るのはちゃんと取捨選択するわけですが、残高六百万円以上、利率三・九%以上、年齢六十歳以上、こういうふうにやってどんどんダイレクトメールを発送して、そして我が社に切りかえなさいと。そうすると、それは商売としてはいいかもしれないけれども、住宅金融公庫に残ってくる方は、大体不良債権、延滞債権とか最近借りた利率の低いもので、銀行からすると余りうまみのないものだけが残ってくる。
 そういうふうな形で、商売は商売なのかもしれないが、しかし、そんな形で個人の信用情報というものが軽々しく扱われていいのかということがある。私は、これは非常に大きな問題だというふうに思っているんです。
 これは、今度の法案作成の過程においても、旧大蔵省や旧通産省なども含めて、個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会をつくって検討をしたりとか、政府としてもいろいろ取り組んできていると思うんですが、現実に、今度の個人情報保護法が審議になる前からもこんな問題は繰り返しあったわけですから、この問題について政府としてどういう対策なり対応をとってこられたのか、どういう指導をなさってこられたのか。個人信用情報の問題、これを伺っておきたいと思います。
竹中国務大臣 今のお尋ねの金融機関の件は、これは金融庁が所管していることでありますので、私は詳細を知る立場にはございませんが、まさにそういった情報の漏えいがさまざまな形で個人生活に影響を及ぼしているという強い懸念を持っております。
 今のお話を伺います限り、もしそういうことが本当に起こっているのでありましたら、基本原則の中の利用目的の制限や安全性の管理等々にこれは明らかに反しているわけで、こういう状況があるからこそ、この個人情報保護法というのがぜひとも必要であるということになってくるかなというふうに理解をいたします。特に、クレジットに関する情報については、これはまた非常に個別の対応が必要になると思います。
 その個別の話は、繰り返し申し上げますが、財務省なり金融庁なりで当然のことながら議論が続けられているというふうに思いますが、今回の措置は、まずそのアンブレラになる基本法の部分と、一般的に民間部門が守るべき原則についてこの法案で規定をしているわけで、それに基づいて、さらに必要な分野については個別法の整備が進んでいくものというふうに認識をしております。
吉井委員 まず、これは事実であればという話、これは事実だから住宅金融公庫の方がきちんと四回にわたって文書を発出しておられるわけです。
 それで、個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会などの議論とか、さまざまな各部門ごとの議論を踏まえて、個人情報保護法の法体系をどうつくるかとか、これを検討してこられたと思うんですね。ですから、今後はこれでということだけじゃなしに、私は、それぞれの問題についてやはり一つ一つきちんと対応してみて、しかし、ここは不十分だからこういう法案にしていかなきゃいけない、そういう作業というものが必要であったと思うんです。これは現実には、何度こういう文書を出しても大手都銀の方はきちんとしてこなかったからこそ何度も何度も出してきたという、これが現実だし、ことし四月十二日に出されても、十日後に相変わらず同じように、また全店にこういう形で、ダイレクトメールを発送してしっかりもうけなさいということを通知しているわけですから。
 この問題の詳細はこれでとどめておきますし、またテラネットその他の問題については次の機会にというふうに考えておりますから、置いておきますが、ただ、こういう現実を踏まえて個人情報保護法案を見ると、個人情報保護法として、やはり全銀協とか経団連などの要求もあって事業者の負担増にならないように配慮してきたり、事業者、企業の利益を優先する、そういう考え方というものが盛り込まれているというふうに見ざるを得ないと思うんです。
 例外や適用除外の中には、「個人情報取扱事業者の権利又は正当な利益を害するおそれがある場合」とか、「ただし、当該保有個人データの利用停止等に多額の費用を要する場合」とか、あるいは「当該保有個人データの第三者への提供の停止に多額の費用を要する場合」とか、いろいろ実際に、個人情報保護を最優先するということが大原則である中で、全銀協などの要望を受けて随分適用が外されていく、抜け道を残されていっている。やはりこのやり方では、個人情報を保護するという角度から見てもこれは極めて不十分さを持っているんじゃないかと思いますが、これは竹中大臣に伺っておきます。
竹中国務大臣 一方で、非常に厳しい枠組みをはめることによって情報の不正な利用に歯どめをかけろという議論がございます。しかし一方で、けさほどから議論になりましたように、我々の社会が持っている本来の自由、特に表現の自由、それを保障するための報道の自由等々、これを死なせてしまっては元も子もない。その狭い道をどのように探るかというところで非常に法案の作成上の苦労があったということになるわけであります。
 今回の法律というのは、その意味では、非常にある意味で柔軟なシステムをつくっていこう、とにかく基本原則等々を頂点にしたアンブレラのようなものをつくって、個別の、これは金融機関、さらに、やがて話題になるかもしれませんけれども、それこそ遺伝子の情報とか、それぞれ非常に詳細に、繊細に事情を考えながらまた個別法をつくらなきゃいけないというものも当然のことながら出てくるのだと私は思います。しかし、今回のはその枠組みになる部分でありまして、一方で、個別法も含めた包括的な体系をつくっていく重要な一歩にしたい、その中で御指摘のような問題を解決していきたいというふうに考えているわけであります。
吉井委員 個人情報の保護というのは、これは憲法原則からも導かれてくるものでありますし、まずそれが大原則であるわけです。個々の問題というのは、個々の具体的事例に対応してどういうふうに規制をやっていくかということをやらないと、これは簡単に物事が解決できるものじゃない。
 この議論は今後の議論の中で深めたいと思いますから、きょうは、先ほどの修正問題にかかわって伺っておきたいのです。
 五月十四日の九時四十分からの竹中大臣の記者会見の中で、「昨日、総理にお目にかかりましたときに、非常に前向きに熱心に議論をいただいている案だな、よく検討しておくようにというふうな話を総理からいただいております。」ということを、これはインターネットで見ればあなたの発言がそのまま出てくるわけですから、見ました。
 検討であれ勉強であれ、読売の修正試案の何をどう検討するのか、あるいは何をどう検討していこうと大臣は考えておられるか、その辺、具体的に少し伺っておきたいと思います。
竹中国務大臣 よく熱心に議論いただいていると。先ほど総理の答弁でもありましたけれども、要するに、人格権を守るということと我々の表現の自由を守るというその狭い道を両立させなければいけない、そういうことに対して前向きに熱心に議論をしていただいている、そういう立場で総理からお話があったわけでございます。
 まさにそういう狭い道を探るという立場で法律をつくったつもりである。それを国会で審議を深めるに当たってさまざまな御議論が出てくるであろうから、それに備えてよく勉強をしておきなさい、そういう趣旨だったわけであります。
 検討というのは、よく調べることというふうに辞書には出ておりますけれども、その意味では、これがまさに今御議論いただいておりますが、そういう点に関して私なりにいろいろさまざまな角度からこの法案について、私たちはベストだと思って出しておりますが、いろいろな議論が出てくるであろうからそれに備えて勉強をしておく、そういう趣旨であります。
吉井委員 それでは、担当大臣として伺っておきますが、基本原則の「適正な取得」に言う適正、適法な方法で取得が、仮に疑惑政治家が名誉毀損だとして損害賠償を求める民事訴訟を起こしたときに裁判官の解釈基準になっても、報道機関はもとより、フリーのジャーナリストの皆さんにしても作家の取材活動にしても、規制されることにはならないというふうにお考えであるのかどうか、この辺伺いたいと思います。
竹中国務大臣 御承知のように、もう何度か議論されておりますけれども、この基本原則は、これに基づいて具体的な義務が課されるものでもなく、また公権力の関与や罰則も一切ないということであります。その意味では、さまざまなそういった意味での制限が出ることはないというふうに考えております。
吉井委員 そこは、これまでから、義務が課されるものではない、要するに、これはあくまで努力の世界と。それを努力義務と見るかどうかということはあるんですが、この基本原則は努力義務だから守らなくてもよいということなのか、それとも、この努力義務というのは守らなければならないというふうに考えておられるのか、それを竹中大臣に伺っておきたいと思います。
竹中国務大臣 まさに努力義務でありますから、努力をしていただきたいということです。
吉井委員 つまり、単なる努力義務ということになりますと、怠ったときも当然違法にならないわけです。これは裁判規範にもならない。しかし、単なる努力義務じゃなくて、努力義務を守ってもらわなければならないものと考えていくのかどうかとか、ここのところは、努力義務ということであっても少し違ってくるんじゃないか。まさに努力義務だから、努力義務は努力義務で守ってもらわなくてもよいということか、それとも、守ってもらわなければならないという努力義務なのか、これはどっちなんですか。
竹中国務大臣 この法律の考え方といいますのは、全体として非常に包括的な個人情報保護の体系を今後整備していきたい。そのためには、基本原則を中心に包括的なものをつくり、さらに個別法を重ねていく。その全体の非常に重要な、まさに努力義務といいますか、包括的なことをこの基本原則で求めているわけであります。
 その基本原則の委員お尋ねの点について申し上げますと、個人情報の適正な取り扱いにみずから努力することを要請しているというのがこの法律の立場だと思います。
吉井委員 これは要請しているという要請の段階なので必ずしも守らなくてもいいという立場なのか、守らなければならないという立場なのかというのは、これは別に個人情報を守らなくてもいいというそんな立場で聞いているわけじゃないんですけれどもね。
 しかし、ここは、小早川東大教授、個人情報保護法制化専門委員は、この努力義務ということはやはり法的義務という考え方も述べておられます。そうすると、一応その基本原則の部分を法的な義務として根拠になり得ると考えられる、これもできるわけなんですね。そうすると、これを使ってすぐ裁判をやりやすくなるかというと必ずしもそうはいかないと思いますが、ただ、裁判を起こしやすくなってくるということは確かなことだと思うんですが、この点はどういうふうにお考えですか。
竹中国務大臣 これはちょっと何度もお答えしていることなんですけれども、これに基づいて具体的な義務が課されるものではなく、公権力の関与や罰則も一切ない。それによって裁判が起こしやすくなるかどうかというのは、これはさまざまなケースがありますので、一概に申し上げることはできない問題だと思います。
吉井委員 これは、法的義務の根拠になり得る、裁判が起こしやすくなる、こういうふうになりますと、取材する側には努力義務以上に、裁判になっても大丈夫なように考えて取材するということになってきます。
 それから、単なる努力義務なんだ、要請なんだということでおっしゃっておられるんですが、しかし、疑惑政治家の側が、この基本原則に基づいて名誉毀損なり損害賠償なりを訴えたとき、争いになったときに、裁判所の方は基本原則を解釈基準ということにして使ってくるとなりますと、そうすると、裁判になっても大丈夫であるかどうかというのは、そんな簡単な話じゃなくなってくるわけですね。やはり取材する側が、基本原則に沿って努力し、取材源、取材目的を明らかにする、そういうことを考えながらの取材ということになってきます。
 これは、報道の自由を萎縮させるという効果が生まれてきますし、取材を受ける側、そちらの側も、この基本原則の問題が裁判の解釈基準となってまいりますと、やはりそこを考えて報道側に対する取材協力についても萎縮効果が生まれてきます。その点についてはどのように考えておられるのか。
竹中国務大臣 例えばプライバシー侵害等を原因とする民事、刑事の裁判が別途行われて、取材方法の違法性が例えば争点になっているような場合、この基本原則がその解釈原理として働く可能性はあるということなのかもしれません。しかし、この基本原則が努力義務であって、適正取材が報道目的とプライバシー保護等の利益考量概念であることは、これはもう明確でありますから、報道の必要性が不当に損なわれる判断が示されるおそれは私はないと思います。裁判においては、報道を行う公益と本人の権利利益の間での適正な比較が行われる、そういうふうに当然のことながらなるのだと思います。
 もちろん、それと、取材をされる側のお話を最後にお尋ねがございましたけれども、これは、取材する側の、今までも例えば内部告発のようなことが念頭にあるのかと思いますが、それはその人々の正義感とか報道機関に対する信頼感とか、これまでもやはりそういう基準で行われてきたのだと思いますし、今後ともそういうことが基準になるのだと思います。この法律としましては、基本的には、さまざまな問題が起きたときの主務大臣の表現の自由への配慮義務とか、幾つかの観点で、そういった表現の自由に支障を来さないような法律上の仕組みが考えられているというふうに思っております。
吉井委員 裁判における解釈基準になる、これは裁判規範になってまいりますから、やはり取材に対する制約をする、そういう力を持ってくるというふうに思います。
 それで、取材を受ける側についての正義感の問題その他も挙げられました。これは、取材する側にも取材を受ける側にも、これまでから不正追及といった点は、みんな正義感を持ってやってきていると思うんです。しかし、正義感を持ってやってきていても、実際にはそれは、萎縮効果というものが取材する側にも受ける側にも生まれてくると、本来の表現、報道の自由という角度から見たときに大変な問題になってくるということを申し上げて、この点で、福田官房長官にも関係して聞いておきたかったんですが、ちょっとまた次回にということにして、片山大臣の方に住基ネットの問題について伺っておきたいんです。
 住民基本台帳ネットワーク稼働を前にして、今国会で提出予定とされている行政手続整備法案、ネットワーク稼働前に、本人確認情報を利用可能な事務を、九九年の住基台帳法改正案審議時の九十三件から二百数十件まで拡大しようとしているわけですね。これはまだ法案は提出されていないんですが、法律施行前に用途を拡大するというのは、結局、なし崩し的に国民総背番号制に道を開くと言われても仕方がない問題だと思うんですが、どういうふうに考えておられるのかを伺っておきたいと思います。
片山国務大臣 御承知のように、IT基本法ができまして、それに基づくe―Japan戦略というのが決まりまして、アクションプランが決まり、その中で、二年以内に、平成十五年度中に、電子政府、電子自治体を実現したい。申請、届け出については、国も都道府県も市町村も、インターネットによるオンライン化しよう。それぞれのところに行って本人確認の添付書類を出すというようなことはできるだけなくして、自宅や職場からやろう。こういうことのために本人確認を住基ネットのシステムを使おう、こういうことでございまして、二カ年でやるためには、事務を拡大して本人確認を省略する、こういうことのために、今回の行政手続オンライン化法の附則で住基に載せる事務の拡大を考えているところでございます。
吉井委員 実は、この議論のあった当時、拡大は慎重にやるべきだというのは、当時の野田自治大臣の答弁でした。国会の附帯決議もそうです。
 世界最大規模のデータベースネットワークであり、うまく機能するかという危惧がある中で、日弁連のアンケートでも、過半数の自治体が準備が十分でないと言っておりますし、セキュリティーの問題も含めて十分な担保がされるのかなど、これは推進される立場に立ったとしても十分な検証は必要だと思うんですよね。にもかかわらず、施行前に用途拡大を行うというのは、これは行政効率化を個人情報保護に優先する、そういう立場のあらわれとしか思えないんですよね。この点についても伺っておきたいと思います。
片山国務大臣 改正住基法を見ていただければいいですが、目的外利用はさせない、あのシステムの中でセキュリティーは万全の対策をとる、そういうことの上での今度の事務の追加でございまして、施行前といいますけれども、これはまだ法律は国会に提出されていない段階でございますので、我々としては、十分政府内で検討の上の結論でございます。
吉井委員 これは、いろいろな規定を設けてあるから大丈夫と。それは大丈夫でないという実例を既にこの国会でも幾つも出されてまいりましたし、私も、防衛庁のリスト問題その他、これがほかのものと結合されると大変な問題になるということで、セキュリティーの問題その他で、そんな簡単な話ではない。やはり非常に厳しい検証が今必要なんだ。どんどん穴だらけで事故がいっぱいあるわけですから、そのことを申し上げているときでありますから、残念ながら時間が来てしまったので、時間を守ってきょうは終わりますが、この議論は引き続いてまた行っていきたいと思います。
 以上で終わります。
大畠委員長 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。
 次に、河村たかし君。
河村(た)委員 河村たかしでございます。
 きょうの九時にお話を聞いておりましたけれども、正直言ってもうがっくりしましたね、これは悪いけれども、福田さん。これはお立場もあると思うんだけれども、やはり国会と内閣というのは厳しい対立関係にないといかぬ、本当に。与党の皆さんにもお願いしたいんだけれども、憲法の六十六条三項で、さっきまで暗記しておったけれども、ちょっと書きましたが、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」連帯して責任を負うと。
 議院内閣制というのは、どっちかというと、そんな国会と内閣が、行政府が、いわゆるずぶずぶの関係ではいかぬのですよ、これは。より厳しい対立関係をかえってとらなければいかぬ、特に与党の方は。そういうことですよ。反対に、内閣の人たちは、自分たちが、国会という国民の代表が全部来ておるところで、この法律をどう施行していくか、どう解釈すべきかということに物すごい緊張関係を持って答弁せにゃいかぬ、約束せにゃいかぬ。約束したことは自分の責任で守らにゃいかぬ。もし変えるんだったら、それは政権交代が起こったのか、それとも、きちっと政治責任をとって、こういうふうに変えますというのが連帯責任の趣旨なんですよ。本当に情けない。
 何で情けないかを今から言いますよ。
 きょうの朝の話の中のポイントは、いわゆる小渕さんの答弁について、これは必要性についての認識を示したものであるということですね、必要性についての。
 もう一回、ちょっと速記録の関係上言っておきますと、当時の小渕総理から、住民基本台帳ネットワークシステムの実施に当たり、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提であると認識との答弁がなされました。この答弁は、行政府の長として、個人情報保護の必要性についての認識を示したものである、こうなっておるんですけれども、必要性についての認識って、何を内閣としてそんなたわけたことを言っておるんですか、本当に。これは厳しい責任がありますよ、皆さん、連帯責任として。立法府に対してどういうことを約束したかということを。私ら、当然のことだけれども、一億二千七百万人の帰趨を握ってここに来ておるわけでしょう、国会に。そこで政府として、これはどうすべきだということを、きちっと言ったことを、解釈を変えるなら政権交代か責任をとることですよ、ちゃんと。
 では、それがどんなにひどいことか、ちょっと言いましょう。これは、地方行政委員会会議録、平成十一年六月十日、ここでちょっと事実を、幾つかありますから、言っていきますね。
 ここで、まず古賀民主党の委員の方から、いろいろありまして、「今般、修正案ということで「速やかに、所要の措置を講ずる」という一文が入ること、それを総理がしっかりとオーソライズをされる、こういう趣旨でお見えになったと理解しまして、質問をさせていただきたいと思います。」その後に、「まず、ちょっときつい言い方かもしれませんが、内閣のトップにおられる総理大臣が、本委員会で、修正案に対していわば保証するというか、中身を答えられるというのは、ある面では、この政府案がそれだけやはり今後所要の措置を講じなければならぬということを総理みずからが認めることに等しいのではないか。」まず、こういうふうに言っております。
 それから二番。これは、今与党になりました公明党の富田さん。富田さんは、私も仲いいんだけれども、プライバシーに非常に理解のある方で、こんなのはだめだと言っておった、人間に番号をつけるというのは。彼が、「自治大臣として、この所要の措置について現在どのような認識でいらっしゃるか、ぜひ明確な御答弁をいただきたいと思います。」これに対して野田国務大臣が、「附則第一条第二項の「所要の措置」とは、第一に、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えること、」こういうふうにきちっと答弁されております。
 それから、やはり富田さんが、「そして修正案の所要の措置、これをどのように現在認識して今後取り組まれていくのか、ぜひ総理のお言葉で、御自分の、御自身の言葉で明確な回答をいただきたいと思います。よろしくお願いします。」これに対して総理大臣が先ほどのことを言っておるわけですよ。「特に住民基本台帳ネットワークのシステムの実施に当たりましては、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提であると認識をいたしております。」こういうふうに答えておるわけです。これね。
 それから、まだ物すごいありますよ。富田さんがここで、その総理の答弁を聞いて、答弁というより約束なんですよ、これははっきり言って。聞いていてどう言っておるかというと、「特に、今総理の御答弁の中で、住民基本台帳ネットワークシステムの実施に当たっては、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提だ、こういうふうに御答弁いただきました。」こういうふうに富田氏が確認しているんだよ、さらに。
 まだたくさんありますので、これは大変ですけれども、それからもう一つ。まだこれもかなりあるんですけれども、共産党の方の質問に対して、小渕さんは当初こう言っております。「包括的な個人情報保護法の制定を要するものでないとの認識を持っており、その旨、去る四月十三日の本会議で述べたところであります。 が、しかしながら、改正法案の審議の中で、」いろいろ云々があって、「こうした状況の中で、」「民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提であるとの認識に至ったところでございまして、」こうやって小渕さんは言っておるんだよ、これは。
 国会に対して、何か質問通告をせずに総理大臣に突然にだれかが聞いて、それに総理がぱっと答えた、それについてこれほどまでに私は言いませんよ。しかし、こういう状況ですよ。
 もう一つあるのが、これは、まだ、社民党の知久馬委員に対してもはっきり答えております。「前提である」と。
 それから、三党合意というのがありますね、実は。この覚書があります。これはちょっと読みますと、「個人情報保護に関する法律については、自由民主党、自由党及び公明党・改革クラブ間で今国会中に検討会を設置の上、法制化の検討に着手し、年内に基本的枠組の取りまとめを行い、三年以内に法制化を図る。」こういうことです。三年以内というのは、ちょうど今の八月五日ということですね。この辺のことになっております。
 それからもう一つ。これは、今、与党の公明党さん、見えるかな。河合さんおるな。公明新聞というのがありますね。一九九九年、平成十一年六月四日金曜日、公明新聞、一面トップですよ、一面トップ。これは、坂口さんが出てみえて、坂口さんは、私、かつて新進党だったものですから、ようお話をしておりまして、あの人もさすがに、医者をやっておった方ですから、非常にプライバシーに対しては理解が進んだ方です。ですから、実は反対しておられた。それで、一番最後のところにこう出ていますよ。ちょっと読みます。
 「これに対して本日(三日)、政府側からは(1)付則に「この法律の施行にあたっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、所要の措置を講ずる」と加える(2)「所要の措置」が、包括的な個人情報保護法の制定であり、この保護法ができるまで、ネットワークシステムは運用しない、という趣旨を審議している地方行政委員会で首相、自治相が確認する――という提案がありました。」こういうことで賛成に回ったんだよ。
 これは、官房長官、悪いですけれども、きょうの話じゃとても私承服できないし、個人じゃなくて、もっと国会に対して内閣が本当に責任とってくれよ、きちっと、皆さん言われたことは。どうですか、こうやってはっきりやらないと言っているんだから、約束を。施行しない、両方セットだとはっきり言っているんですよ。そのとおり答えたらどうですか。突然これが、何ですか、必要性の認識とか政治姿勢を示したもの。国会と内閣のこんな緊張関係のないことじゃ話にならぬよ、これは。
 特に、テレビで見ておる限りですけれども、非常にまじめな印象を受けます福田官房長官からすれば、こういうところはやはりはっきり、それは間違っておった、前の内閣総理大臣がそう言ったんだからそのようにしますと言うのが当たり前じゃないですか。どうですか。
福田国務大臣 今いろいろと御説明を伺いました。また、小渕総理の発言もございます。政府において、小渕総理の答弁は、そのときの政府ですね、みずから情報の保護を制定することはできない、しかし、その成立に向けて努力する、そういう意味で述べられたものというように考えます。
 しかし、一般論として申し上げれば、もとの内閣の総理大臣の国会答弁がその後の内閣の行為を、これは法律論ですけれども、法的に拘束することはないわけですね。しかし、当時の小渕総理の答弁というのは、今申しましたように、住民基本台帳法改正の国会審議に際しまして、個人情報保護の必要性についての認識を示したものでございます。ですから、これは政治的には重く受けとめなければいけないと考えております。
 したがいまして、政府といたしましては、小渕総理の答弁を踏まえまして、個人情報保護法案を昨年三月に国会に提出して、その早期成立に向けて今現在全力を挙げている、こういうことでございます。
河村(た)委員 法的にはと言われましたけれども、「所要の措置」とは何かという解釈として、例えば野田さんも、「民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えること、」こういうふうにはっきり言っているんですよ。要するに、行政府がきちっと法律の、第一義的にはいわゆる有権解釈ですよね、これを示しているんですよ。そんなの法律的にも全く間違っておるじゃないですか、まずこれは。
片山国務大臣 議会の修正で、国会の修正でその附則が入りましたよね、「所要の措置」。「政府は、」と書いてあります。政府は所要の措置を講ずるものとすると書いてありまして、政府としては、法案を練って、つくって、国会に出して、国会で御審議の際、誠実に答弁して通していただくということで、通すか通さないかは国会の権限ですからね。だから、法制局的にいえば、法案を出すところまでが内閣の責任で、政府としての「所要の措置」は国会提出までだ。それで、去年の三月にそういう意味では個人情報保護法を出させていただいている次第でございます。
河村(た)委員 よう言ってくれますね、こんなめちゃくちゃな話を。何だと思っておるんですか。出すだけが責任ですか、出すだけが。冗談じゃありませんよ。それは通さなきゃ、両方セットで、今回の防衛庁の問題でもそうじゃないですか。要するに、背番号がつけられると、ああいういろいろな情報がどうしても今よりもっと簡単に集めるようになるんだよ、当然のことながら。データマッチングが容易になるわけですよ。そのためにつけるんだよ、番号というのは。
 だから、そういうものをやるためにはこういう個人情報保護の法整備が必要である。努力目標じゃない。そういうものが両方セットして、公明新聞にはっきり書いてあるじゃないか、坂口さんが。もう一回読もうか。この保護法ができるまでネットワークシステムは運用しないという趣旨を、審議している地方行政委員会で首相、自治相が確認するという提案があった、こういうことですよ。こんなことだったらやめてもらおうじゃないか。じゃ、みんな提案をすればいいのかね、いろいろな約束は、努力すれば。
片山国務大臣 もちろん提案をする以上、それを通すというのが政府の責任で、全力を挙げているわけであります。したがいまして、住基の改正法の施行は八月五日でございますから、まだ期間がありますから、政府は今全力を挙げて、国会での御審議に応じて御理解を求めているわけでございます。その努力を買っていただく。
河村(た)委員 まあ、どっちにしろ、こんなむちゃくちゃな法案を出すものだから、これはもう全然理解されていないじゃないですか、悪いけれども。これは考え方があるかわかりませんよ。あるかわからぬけれども、こういうような、僕らからすれば、旧通産省が言ってきたような、いわゆるセグメント方式で、民民規制でやっていけばええやつを、こんな投網をかけたようなことをやるから、健全な自由主義者である自民党の人も怒っている人ようけおるよ。
 こんな変な法案だから通らぬのであって、だから、ここは素直に、自分らは責任があるなら、約束したんだ、皆さん国会で。出直すんだよ、これ。出直す。それで、少なくとも住基については、それはもし何だったら改正案を出せばいいじゃないか、附則なんかでも。附則は簡単に出せるじゃないか。それがあなたたちの国会に対する責任だよ。当たり前だよ、こんなの。どうなんです。官房長官、どうですか。
福田国務大臣 先ほど来御説明しているとおりであります。ですから、今審議をしていただいておるこの法案について、極力早期成立に向けて御協力をいただきたいということを再三お願い申し上げている次第でございます。
河村(た)委員 悪いけれども、おれは別にもうあれなんだけれども、こんなことだったら、本当に、議会としてこんなことを質問しておったってしようがないじゃないか。
 今、いろいろな約束をしておると思いますよ、いろいろな答弁を。この間言ったのは、例えば報道機関にフリージャーナリストは入るかと。竹中さんが、それは入るだろうと。総理大臣も言いましたわね、入る。あれも希望になっちゃうのかね、みんな、一つずつが。そうでしょう。皆さんが言ったことというのは、憲法六十六条三項で連帯責任を負うと。すさまじい緊張関係があるんですよ、実はこの間で、与党であっても。いや、与党だからこそあるんだ、議院内閣制というのは。大統領制よりももっと緊張関係があるんですよ、皆さんが入っていくから。そういうことなんです。
 おれは、悪いけれども質問できぬよ、これ、本当に。ちゃんと誠意ある回答を示してくださいよ。それか、政権交代が起きたのか。なぜ前の内閣総理大臣の答弁がそんなふうになるんですか、希望に。
片山国務大臣 御承知のように、もう河村委員には釈迦に説法ですが、住基のシステム、あの改正基本法の中で、我々は万全の情報保護とセキュリティーをとっているんですよ。ただ、あのときの議論は、全般の、民間を含めての個人情報の仕組みが要るな、こういう議論なんですよ。万全の上にもさらに万々全を期そうということでああいう取り決めをしたわけでありまして、私はその方がいいと思いますよ。いいと思いまして、政府は努力をして去年の三月に法案を提出したわけでありますけれども、いろいろな御都合で現在になっている。
 だから、まだ時間がありますから、最大限の努力をして御理解を得てこの法案を通したい、こういうことでございまして、それじゃ、住基のシステムそのものでどこに問題がありますか、セキュリティー、どこのところで。どこにどういう問題があるかという具体的な議論をやっていただかないかぬので、我々は改正住基法の中で万全の対応をとっていると思いますけれども、さらにその上に、誤りなきを期すために全般の個人情報の保護の仕組みをつくろう、民間も入れよう、こういうことでございまして、この個人情報保護法が直ちに住基の何かに関係あるということじゃないんですよ、法的には。
河村(た)委員 むちゃくちゃだよ、これ。何を言っているんだ。小渕さん、はっきり言ったじゃないか。冗談じゃありませんよ。住基の内容というのはあのときもうわかっておったんじゃないのか。それに加えて、わざわざ委員会へ出てきて、私、そのときちゃんとおった。わざわざ委員会に出てきて、小渕さんは、こういうような保護システムをつくることが施行の前提であると言ったんだよ。あなた、むちゃくちゃだよ、こんなの。連帯して責任とってくれ。やめてくれよ。
片山国務大臣 前提だから、法案を去年、十三年三月に出して国会での御審議をお願いしているわけです。現在も一生懸命我々は議論しているわけですよ。皆さんの御質問に答えているわけでありまして、だから、前提としての政治的な姿勢を明らかに小渕さんが示しまして、我々もそれに従って現在最大限の努力をしていると。
河村(た)委員 そんなもの、通らなくても施行すると言っているじゃないですか、あなた。通らなくても施行するとはっきり言っているじゃないですか。全然違うことを言っているじゃないですか。書いてあるじゃないですか、ここに。書いてあります。何を言っているんですか、あなた。四番か。政府としては所要の措置を講じたことになるものでありますということで、施行するということじゃないですか。これもそうだけれども、その前に答弁しているじゃないですか、そう言うて。全然違うじゃないか、これは。何を言っておるんですか。通らないから……(片山国務大臣「今、成立のための最大限の努力を我々はしているのでありまして、通らないことを決めていただくのはいかがかと思いますよ」と呼ぶ)
大畠委員長 片山総務大臣、指名をしてから答弁するようにしてください。
河村(た)委員 努力するだけじゃなくて、この四の「法律上、個人情報保護法案が成立すると否とにかかわらず、法令で定められている日に施行することが義務づけられております。」とはっきり言っておるじゃないですか、成立するか否とにかかわらずと。だから、この附則は、この附則をつくる前提として小渕さんがわざわざ出てきて、それで皆さん、三党合意までして、全委員が、これ、今読んだじゃないですか。今、与党の委員も施行が前提なんだなということを確認しているんだから。そういう委員会をやったんですよ、国会で、ここで。だめだよ、こんなもの、全部やめてくれよ、本当に。本当、だめですよ、こんなもの。それじゃ、連帯して責任とってくれよ。答弁変えたのかね、これ。変えたなら変えたで言ってくださいよ。
片山国務大臣 だから、この個人情報保護法を通すために現在審議をやっているわけでありまして、政府としても最大限の努力――四に書いてあるのは、法的には、改正住基法の施行は法律上決まっているので、八月五日に施行しないと法律違反になる。だから、これは法律上そういうことになる、こういうことを言っておるわけでありますけれども、政治としての小渕総理の答弁は大変重いわけでありますから、今最大限の努力をしているということを再三申し上げているわけであります。
河村(た)委員 法律的にはということは、では、政治的にとめるんですね、今の話の中で。今の聞いた話だと、法律的にはそう決まっているが、やはり政治責任はあるわけでしょう。重い重いということは政治責任のことでしょう。
 それでは、もし法律が、法律的にはこうなっておるけれども、しかしやはり小渕さんの答弁の政治責任を感じにゃいかぬから、その場合は施行しない、そうするんですね。
片山国務大臣 だから、一生懸命努力して法案の成立を期す、こういうことでございまして、まだ結論が出たわけでも何でもないので、国会は審議中でございますから、最大限の努力をする、こういうことでございます。
河村(た)委員 とにかく、こういうところははっきりしていってもらわないと、とにかく前のこの小渕総理のときの内閣との解釈の姿勢を、はっきりこの前提ということを言ってもらわにゃいかぬ。もし、今言ったようなふうで希望だというんだったら、単なる希望だというなら、それは、正式に答弁を変えます、小渕さんのときの姿勢と変えます、そうやって言わにゃいかぬ。そうじゃないとこんな審議しておれぬじゃないか。言ってください。ちょっとこれはどっちかしか質問できぬね、悪いけれども。できませんな、これは。(発言する者あり)
大畠委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
大畠委員長 それでは、速記を起こしてください。
 そこで、今河村委員の質疑の最中でありますが、先ほど、この委員会の冒頭に官房長官から政府としての統一見解が五点示されました。この問題について質疑を行っているさなかに、いろいろと質疑者と答弁者の間の、何といいますか、行き違いといいますか、かみ合ってないという部分がございますので、そこで、今各党の理事に集まっていただきまして、ちょっと整理をさせていただきたいと思います。
 一言で言いますと、法律論と政治論と二つがありまして、法律論の整理と政治論の整理と二つ必要だろうということで、政府の先ほどの公式の発言の五点は法律論であろうと思いますが、改めて、きょう政府特別補佐人として津野内閣法制局長官においでいただいておるわけでありますが、まず、津野内閣法制局長官の方から法律論に的を絞った形の見解を求めようということになりましたので、津野内閣法制局長官から法律論に関する見解を求めます。
 津野内閣法制局長官。
津野政府特別補佐人 御指名でございますので、住民基本台帳法の一部を改正する法律附則第一条第二項の関係につきましての法的な考え方というものについて、御説明いたしたいと存じます。
 まず、平成十一年の住民基本台帳法の一部を改正する法律案の国会審議の過程におきまして、自由民主党、自由党及び公明党・改革クラブの議員修正によりまして、同法附則第一条第二項に、「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする。」との規定が追加されたところでございます。
 この附則第一条第二項の趣旨と申しますのは、同法を施行するに当たっては、民間部門をも対象とした個人情報の保護に関する法律の整備を含めたシステムを整えるなどのために速やかに所要の措置を講ずるという、一種の要請が政府に対してなされたものと解されるところでございます。
 しかしながら、個人情報の保護に関する法律の整備について申し上げますと、所要の措置を講ずる主体である政府につきましては、これは立法機関ではございませんで、みずから法律を制定することはできないわけでございます。したがいまして、所要の措置として政府としてできることは、法律案の検討、作成、それから国会への提出、そういったことを意味するものと私どもは解しているわけでございます。
 政府といたしましては、その附則第一条第二項の規定を踏まえて平成十三年三月に個人情報保護法案を提出しているところでございまして、その早期成立に向けて全力を挙げて努力しているところでございまして、個人情報の保護に関する法律の整備に関しましては、同項、先ほど言いました住民基本台帳法の一部を改正する法律附則第一条第二項との関係で問題が生じることはないというふうに考えているわけであります。
 なお、住民基本台帳法の一部を改正する法律の審議の際に、当時の小渕総理大臣からいろいろございましたけれども、これは、私どもの方からはとりあえず法律論ということでございますので、以上の見解を申し述べたいと存じます。
大畠委員長 今、津野内閣法制局長官から法律論に基づく見解を求めました。基本的には、先ほど官房長官がお示しいただいた五項目の内容でありますが、法律的にはこのような解釈なのかもしれませんが、そこで、政治論としてそれでいいのかということが河村委員からの御指摘でありました。法律論は法律論、しかし、小渕総理がそういう、前提とすることを認識しているという発言もされておられましたので、この問題について単に法律論だけでいいんだろうかという御質問が河村委員からあったように受けとめます。
 したがって、官房長官の方から改めて政治論としての考え方を少しいただきたいと思うわけでありますが、あるいは河村さんの方から改めて質問されますか。
河村(た)委員 要するに、小渕さんは、セットである、個人情報保護法の制定と住基ネットの施行はセットである、こういうふうに言われて、その前提でもってこの法律はできたんですよ。国会は、その前提を解釈してできたんですよ。そういうことでしょう。では、そのとおりやってくださいよ。そういうことですよ。
 ただ、もし変えられるなら、皆さんは憲法によって連帯して責任を負うんだから、当然、こちら側に対して説明責任があるわけです。そのとおりやってくだされば、それでいいんです。もし変えるなら、それはちゃんと責任をとって変えてもらうということ。ですから、セットなんでしょう。努力しているだけじゃだめですよ。努力していることと小渕さんの言ったことと、全然違うじゃないですか。
福田国務大臣 ただいまのいわゆる政治論、これは先ほど申し上げたとおりでございます。それ以上ございません。
 ただ、住基ネットの方は、これはもう法律で決まっているんですよ。法律で決まって日にちが決定されているわけでございますから、その中において、今提案申し上げている個人情報に関するこの法案について、できるだけ早く、間に合うようにということが我々の願いなんです。再三申し上げているとおりです。
河村(た)委員 いや、もう前提も、こんな防衛庁の問題等で、さらにもっとデリケートにやらないかぬようになってきたんだ。だから、政治論として、今の状況だったらもうこれはだめですよ、本当に。こんなものはだめだよ。
大畠委員長 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
大畠委員長 速記を起こしてください。
 河村委員の質疑時間があと一分残っております。それで、先ほど理事間で協議しましたが、河村さんの方から再度質問していただいて、政府の答弁を求めます。そして、その問題については、もしも問題等があれば理事会で引き取るということで進めさせていただきます。
 では、河村委員からの質疑をお願いします。
河村(た)委員 時間、だから残しておいてくれないか、今のそういう条件で質問しているんだから。
 要するに、法的には今法制局の方が言われましたけれども、では、政治的にも、前回の、小渕さんは、セットである、前提であるというような、条件であるとはっきり答えられて、そういう前提でもってこの法案が当時通ったということは事実です。それに対して、官房長官も、その発言の意味は重い、これは、そういうことは政治的に重いということですね、言われた。
 では、内閣として当然、これは前回の答弁でありますけれども、内閣は、前内閣、前々になるかな、姿勢を引き継ぐと言っておられるということだから、小渕さんの姿勢を引き継ぐために、もしそういうことだったら、これが通らなければ、その施行をしないための法的な措置をとられますね、政治的な責任を感じられ、政治的な意味が大きいと言うんだったら。
福田国務大臣 まず前提として申し上げるのは、小渕総理が答弁されたその中身で、その認識をされたということです。しかし、諸般の事情で、小渕総理の発言というもの、これは政治的に重く受けとめなければいけない、こういうふうに前から申し上げているわけですね。そういうことでもって、この法案を準備して、間に合うようにひとつお願いしますということで御審議をお願いしているということであります。
 今、それでは、法律が仮にできなかったら施行を延ばすのかどうか、住基の方ですね、ということ。これは、だって、立法府の方でもって決めてくだすった法律に基づいて行政府が、これが八月五日ということでございますので、これはもう私どもとしてもそれ以上どうしようもない、御返事を申し上げることはできないということを申し上げておきます。(発言する者あり)
大畠委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
大畠委員長 速記を起こしてください。
 河村委員の質疑時間は終了したわけでありますが、ただし、河村委員の質疑に対する政府の答弁については、河村委員が十分御納得いくような内容ではないということは理事会の中でも確認しておりますので、今の質疑のやりとりの問題点については理事会で協議させていただきます。
 次に、北川れん子さん。
北川委員 今の河村委員の指摘、この間ずっと、前回、今回引き続いておやりになった点について、私自身は、河村委員のおっしゃっていることの真っ当性という面と、政治的な国会と内閣との先ほどもおっしゃった緊張感の点において、今の御答弁では、もし包括的個人情報保護法が成立しなくても八月五日の住基ネットは施行するということを、片山大臣は以前、総務省大臣としてそういうふうな答弁をされた。
 けれども、内閣の官房長官でいらっしゃる福田官房長官の答弁があいまいでした。速やかに成立するのを希望するというような形のことでしかおっしゃらずに、そのことを避けた。そこを私たちはずっとこの間問題にしてきて、きょうに至って、先ほどの河村委員への御答弁に対して、明確な法律的な、もし――どうなるかわからないんです。成立するかしないかしかないわけですから。
 九九年をもう一度思い出してくださいよ。あのときの国会がどれだけ混乱していたか。そして、各地域から、拙速にやろうとしていることに関して気づいた、住民基本台帳ネットワークのあの改正というのは、総背番号制に限りなく近くなることを決めていこうとしているんだと気がついた人たちが徐々にふえていた、そういうときだったんですよ、タイミング的には。そして、廃案寸前に追い込まれる土俵際だった。そのときの小渕首相の発言であったがゆえに、重きを、なお一層高まったのではないかということで、三年後の今のこの委員会で問題にしているわけです。
 先ほどの河村委員のというのを理事会預けにもなりましたけれども、成立するかしないかなわけですから、する場合は簡単ですよ。八月五日に施行するわけですよ。しない場合、簡単なことは、もう委員会で質疑するのはやめようということで、もししなかった場合に、法的根拠の措置をとるのは幾ばくでも簡単にできるわけですよ。政令、省令に落として、八月五日の延期ということを、施行の凍結ということを一時的にやられるということだって、一番簡単な方法としてできるわけですよ。
 大きな法的解釈として変えるというような、法律根拠を根幹から変えるようなことをしてくださいというような意味で河村委員はお述べになった点もありましたけれども、私は、一番目先、一番簡単な方法で御提案したいと思うんです。もしこの包括的個人情報保護法が成立しなければ、福田内閣官房長官にお伺いいたしますが、八月五日の施行というものを凍結するというような、一番簡単な附則の改正ぐらいでできるようなことをするおつもりがあるのかないのか、続きまして明確な御答弁をいただきたいと思います。
大畠委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
大畠委員長 速記を起こしてください。
 それでは、北川さん、質疑の続行をお願いします。
北川委員 済みません。すごい緊張感を持っていたのに、後ろを向いたら委員の皆さんが本当にまばらにしかいてくださらなかったと気がついてびっくりしましたが、今私がお伺いしたかったのは、そういうふうに、八月五日の凍結、延期ということは、大きな意味での法解釈を変えるということではないわけで、そういうことならまずできるのではないですかという質問なんですが、福田官房長官、いかがお答えいただけますでしょうか。
福田国務大臣 住基ネットワークの方は、日にちは決まっているわけですね。それは法律によって決まっているわけでございますから、これはやはりそれを優先して考えるべきだろうと思います。ですから、それを前提にして、あと個人情報のこの法案についても審議をしていただきたい。そして、早く成立をさせて、この住基ネットワークの施行に間に合えばいいけれども、しかし、その個人情報の中身について、その形式論ばかりおっしゃって、中身についての議論をされないというのはいかがなものかな、私は先ほどからそういうふうに拝聴しております。
北川委員 それはちょっと、こちらはこちらで、この法案に対して、もう閣外というか、表の世界で、外の世界で、この法案がいかに欠陥法案でだめな法案であるかということの検証は一つ一つ押さえてやってきているわけですよ。やっているんですよ。ですから、国会質疑に百五十一にようおろさなかったわけでしょう、小泉首相は。そして、今の福田官房長官のお話では、八月五日が法で決まっているからやらなければいけないと。
 では、なぜ八月五日なんですか。四月一日とか三月三十一日、八月五日、八月六日、いろいろありますよ。八月五日ということに関しての凍結ぐらいを今できないということは、小渕首相の答弁を政治的に重きを置かないということと、先ほどから言っていらっしゃいますけれども、連帯責任性を問わない、問われないという立場をとるということを明言されたに近いというふうに思うんですけれども、八月五日の施行ぐらいを凍結、延期ということは幾ばくでも簡単なことなわけですよ。
 それは私は前提は、この包括的個人情報保護法案が通らなければということでお伺いしているわけですから。通らないには通らない理由があるわけですよ。あった前提をいっぱい言っているわけですから、私たちの方は。そのことを抜きにしておっしゃられることに関しては、とても心外ですし、やはり、九九年がどんなに混乱していたかということ。委員会採決を省略したんですよ。委員会採決を省略して、強硬に本会議で立てられたということ、その前段で、何とか合意をとれる、一番の本当のすれすれのところが小渕首相のあの発言であったということを、みんなまだ、三年前ですから覚えているわけですよ。私は普通の市民でした。覚えていますよ。そのことは今、国会の中でとても政治的に浮かび上がっていて、もし小渕前首相がここに御存命でいらっしゃるならば、本当に出てきていただいて聞くというようなこともさせていただきたい。それぐらい大きなことであったことに関して、答弁を逃げようとされている。
 だって、片山大臣は、個人情報保護法案が通らなくても八月五日の施行はやりますよと、総務省大臣として、管轄大臣としておっしゃったわけですから、福田官房長官がこの間ずっと答弁をあいまいにされていることは、とても私は納得できない。そのことが河村委員の中にもずっとあって、きょう答弁台に立たれたわけで、政治的な面に関してお伺いをしているんですから。答弁をお願いいたします。(片山国務大臣「ちょっとその前に、委員長」と呼ぶ)いや、私は福田官房長官にお伺いしているんですよ。(片山国務大臣「ちょっと待って」と呼ぶ)いやいや、いいです。福田官房長官に。
大畠委員長 お二人の方に答弁を求めましょう。
北川委員 いやいや、私だって時間があるわけですから。
片山国務大臣 何で八月五日かということは、改正住基法が通った、公布の日から三年以内に施行と法律でこれは明定されているからであります。
 それから、誤解が恐らく委員にあると思うんですが、これは国のネットワークじゃないんですよ。全部の地方団体の共同のネットワークなんですよ。全地方団体がこの八月から施行してくれと言っているんですよ。国の意思でそれをとめるなんということは、それはとってもできない。全地方団体の共同ネットワークですよ。そこが基本なんですよ。だから、皆さんはやや誤解があるんです、その点は。
福田国務大臣 政府が個人情報法案の成立をお願いしているところなんですね、今。委員の話を伺っていると、この法案がもう通らないから延ばせ、こういうふうな話に聞こえますけれども、通らないことを前提にこの住基法の施行をおくらせよ、そういう法案を出せというのは、これはちょっとむちゃな話じゃないんでしょうか。まずは、この法案の審議をぜひお願いしたいということであります。小渕総理の趣旨にもそれが沿っているものだというふうに私は思っております。
北川委員 とんでもないです。今のは答弁じゃないです、私に対しての。答弁ではないですし、百五十一国会が今じゃないわけですよ。一年たっちゃったわけですよ。一年たって、三年目めどの八月五日がもう目前に迫っている。それをお互い共通の事実認識として共有できた。共有できたその時点から私たちは話をさせていただいているわけですから、福田官房長官が今おっしゃったことは、百五十一国会で審議をしているこの場面であったら、通るか通らないかそれはわからない、そういう御答弁も返ってくるのはいたし方ないかなと思いますが、私たち、百五十一に出されたまま、政府の方が強くおろしてこなかった。そのことを受けて、百五十四、ぎりぎりのこの国会になって、六月十九日が閉会になって、おっしゃる今、まだ審議の内容にも入れていないわけですよ、現実的に。
 そして、今の御答弁は、限りなく小渕内閣との連続性についてということにおいて、先ほど河村議員もずっと言われておりますが、政治的に責任をとらないということをあからさまに言われていることに関して、私たちが本当に道理を尽くして、信義を尽くして議論をしたって意味がないということになりますし、信用できないですよ。不信任に近いですよ。そして、地方……(発言する者あり)それはそうですよ。
大畠委員長 静かにお願いいたします。
北川委員 それと、今、片山大臣の方が御答弁いただきました、なぜ八月五日か。それに対して、今、地方自治体や、さまざまな問題点というのがもう一度洗い出されたり、国の方の説明の不十分さ、先ほどもどなたかおっしゃいましたが、十一省庁になって百五十三事務に広げたら、九十三事務から百五十三になったらどうですかとかいうのを、聞いたら、ことしの二月二十四日にやったりしているじゃないですか。もう、あたかも八月五日に施行ということを踏まえた上での前もった話というものを各地方自治体に投げられたりして、それで困惑している自治体がありました。私はそれを決算委員会の方でも御質問させていただいた経緯もあるわけですけれども、福田官房長官、下向いて、ずっとそういうふうにおっしゃるけれども、連続性の意味から、そして、先ほどのを使わせていただくなら、日本国憲法の遵守の面からいっても、今の御答弁というのは私に対しての答弁になっておりませんし、不信任以外の何物でもありません。
 私自身は、きょう、この問題で質問しようと思っていたわけではないですが、この問題の重要性にかんがみて、連続性の中で、河村委員の部分を引き継がせていただいて今御質問させていただいているわけですが、これは、委員長、一番簡単な方法での法的に八月五日を凍結ということさえも、もうしないんだよということをおっしゃる。(発言する者あり)当たり前じゃないですよ。それだったら信任できませんよ。不信任です。答弁になっていないです。
片山国務大臣 住基法に今度の事務を追加するというのは、地方団体と各省庁の意見を聞いて調整した上でございまして、ぜひこれを追加してくれということなんで、私どもの方がこれを追加するなんということはないんです。
 何度も言いますけれども、このシステムは全部の地方団体の共同のネットワークシステムでございまして、全部賛成しているから、全部入って、全部経費も負担しているわけであります。国が出しているわけじゃありません。(発言する者あり)
大畠委員長 北川さん。(北川委員「できないです」と呼ぶ)速記をちょっととめてください。
    〔速記中止〕
大畠委員長 速記を起こしてください。
 北川さんの質疑の最中でございますが、北川さんの質問趣旨と、それから政府側の答弁とが食い違うといいますか、合っておりませんで、北川さんの方から、そのようなことでは質問を続行することはできないということで、今、理事の皆さんに集まっていただいて協議をいたしました。
 このことについては、河村さんの質疑のときにも、理事会でこの問題を協議するということにさせていただいたわけでありまして、この問題は協議させていただきたいと思いますが、そのほかの質疑について北川さんに質問をしていただきたいと委員長としては思いましたが、北川さんの方は、今、理事を通してお話を伺いますと、この問題が解決しないと次の質問に入れないというお話がございました。
 したがって、今、理事間で協議をさせていただきましたが、きょうは、この委員会は散会とさせていただきまして、そして後日、理事会でこの問題について十分協議をしてまいりたいと思います。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十八分散会


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