衆議院

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第3号 平成14年11月1日(金曜日)

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平成十四年十一月一日(金曜日)
    午前十時三分開議
 出席委員
   委員長 佐々木秀典君
   理事 逢沢 一郎君 理事 青山  丘君
   理事 小野 晋也君 理事 渡辺 博道君
   理事 伊藤 忠治君 理事 細野 豪志君
   理事 河合 正智君
      岩屋  毅君    大村 秀章君
      奥山 茂彦君    金子 恭之君
      木村 隆秀君    実川 幸夫君
      菅  義偉君    谷川 和穗君
      谷本 龍哉君    近岡理一郎君
      林 省之介君    松野 博一君
      石毛えい子君    大畠 章宏君
      永田 寿康君    肥田美代子君
      山花 郁夫君    横路 孝弘君
      太田 昭宏君    佐藤 公治君
      吉井 英勝君    北川れん子君
    …………………………………
   国務大臣               
   (国家公安委員会委員長) 谷垣 禎一君
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  瀬川 勝久君
   政府参考人
   (警察庁刑事局長)    栗本 英雄君
   政府参考人
   (警察庁刑事局暴力団対策
   部長)          近石 康宏君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局高
   齢・障害者雇用対策部長) 太田 俊明君
   内閣委員会専門員     小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月一日
 辞任         補欠選任
  嘉数 知賢君     松野 博一君
  亀井 久興君     岩屋  毅君
  高橋 一郎君     実川 幸夫君
  岩國 哲人君     永田 寿康君
  山元  勉君     肥田美代子君
  西村 眞悟君     佐藤 公治君
同日
 辞任         補欠選任
  岩屋  毅君     亀井 久興君
  実川 幸夫君     高橋 一郎君
  松野 博一君     嘉数 知賢君
  永田 寿康君     岩國 哲人君
  肥田美代子君     山元  勉君
  佐藤 公治君     西村 眞悟君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 警備業法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第三五号)


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     ――――◇―――――
佐々木委員長 これより会議を開きます。
 第百五十四回国会、内閣提出、警備業法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長瀬川勝久君、警察庁刑事局長栗本英雄君、警察庁刑事局暴力団対策部長近石康宏君及び厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長太田俊明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石毛えい子さん。
石毛委員 おはようございます。民主党の石毛えい子でございます。よろしくお願いします。
 本日は、警備業法の一部を改正する法律案についての質問をさせていただくわけでございますけれども、この法案の内容は欠格事由を見直すということでございますが、せっかくの機会でございますので、警備業について、前半で二、三お尋ねしたいと思います。
 まず最初でございますが、警備業は、業者数ですとか警備員数、売上高、どの面を見ましても、この十数年の間にともにかなりの勢いで伸びていて、成長サービス業種に属するというふうに言ってもよろしいのではないかと思います。その一方、警備業による警備とそれから警察による警備、その関係をどのように考えるかということも論点の一つとしてあるかと思います。
 昨今、警察官の不足ということが盛んに課題視されているというふうに私は認識しておりますけれども、それぞれの人数で対比してみますと、警備業が法制化された一九七二年には、警備員数約四万人に対して警察官は約十八万人で、四・五倍という関係でした。ところが、最近の二〇〇〇年末のデータによりますと、警備員の方が約四十万人に対して警察官はその半分というふうに、逆に二分の一になっている。
 警備員の業務というのは、民間人の自主防犯の支援というふうに伺っておりまして、必ずしも警察官の業務を代行するものではないということはそのとおりだといたしましても、しかしながら、警備という側面で隣接しているという関係性もまた否めないところかと思います。
 こういった点からしますと、警察官が昨今大変不足をしているというようなことも勘案しまして、広く治安の観点から見て、警備業務の警備とそれから警察業務の警備との関係を国家公安委員長としてどのように御認識なさっていらっしゃいますか。その点をまず最初にお尋ねいたします。
谷垣国務大臣 今石毛委員が御指摘されましたように、警備業というのは発足当時から比べまして随分大きく成長してまいりまして、平成十三年末現在においては、業者数は九千数百、警備員数も四十四万人余りに達して、今いろいろな産業の、どちらかといえば元気のない中でも、少しずつ成長を続けている産業と言ってよいのかなと思っております。
 そして、その業の性格は、今もお話がありましたけれども、国民の自主防犯行動を補完して、あるいはまた代行して行っていく生活安全産業だ、私ども警察の方からもそういうとらえ方をしておりまして、国民生活の安全の向上のために大きな役割を担っているというふうに考えているわけです。
 そこで、従来は警備業務を適正に実施させるという観点から警備業者を指導監督してきたところですが、今後どうしていくか。最近の治安情勢も、今おっしゃられましたようにいろいろ厳しさを増しておりまして、治安を守る、あるいは国民生活の安全を守るという観点から、警備業を警察が立案する犯罪対策の体系全体の中でどう位置づけていくのかということ、もう少し積極的に位置づけていかれないかというのは、これからの大事な検討課題だ、こんなふうにとらえております。
石毛委員 今後という御答弁でございますから、その討論の内容、あるいはどのような方向性をお出しになるのかということを注目させていただきたいと思いますけれども、私が申し上げるまでもなく、警察業務を代行するものではないわけですし、捜査とかという意味では全く違うわけですので、そのあたりの相互の役割といいましょうか、そこはきちっとしていただくことであろうというふうに申し上げさせていただきたいと思います。
 関連して次の質問でございますが、やはり警備業といいますとすぐ思い起こしますのが、一昨年でしたでしょうか、明石市で起こりました花火見物の際の大きな事故でございまして、そのときに、報道等によりますと、警備とそれから警察業務の関係が問われたというふうに記憶をしております。こうしたそのときに認識されました課題がどのように今総括されて生かされているのかということ、その点について簡単に御答弁をお願いいたします。
瀬川政府参考人 明石市民夏祭りにおける雑踏事故でありますが、亡くなられた方やその御遺族の方に対しまして、改めてお悔やみを申し上げたいというふうに思います。
 この事故におきましては、主催者であります明石市、それからその委託を受けた警備会社、そして明石警察署という関係の三者が、いずれも雑踏事故の危険性に対する認識が甘かったというふうに言わざるを得ないと考えております。そしてまた、警備計画や警備措置、それからこれら三者の間の連携がそれぞれ不十分であったということであろう、こういうふうに思います。
 総括ということでございますが、兵庫県警察におきましては、捜査の結果、明石市、警備業者、それから明石警察署、この三者の関係者合計十二名を業務上過失致死傷罪で事件送致をしておりますし、兵庫県警察におきましては、警察関係者について懲戒処分等を行うとともに、国家公安委員会においても、前明石警察署長について懲戒処分を行っているというところでございます。
 事故後の関係の対策でございますが、この関係者の事件送致や処分を機に、一つは、雑踏事故防止上の基本的な認識、留意事項、それから警備体制の確立というような点、そしてまた、的確に雑踏警備業務を行うという点につきまして、警備業者に対する指導というものを適切に行わなきゃいけないというような点について、全国警察に対し、通達等も発しまして指導を徹底しているところでございます。また、警備業者につきましても、警備業の関係団体に適正な雑踏警備業務の実施ということにつきまして要請を行っており、警備業者にこの旨が徹底されているものというふうに承知をしております。
 今後とも、警察といたしましては、やはり、こういった行事の主催者、それからその委託を受けた警備業者と計画の段階から十分に連携をして、この種の事故を二度と起こさないという対策を十分に講じてまいりたいというふうに考えております。
石毛委員 今後とも、二度とあのような事故が起こらないよう、思い返してみますと、かなり以前ですけれども、たしか新潟の弥彦神社でも起こって、やはり時を経て忘れたころに起こっているという感もいたしますので、ぜひ強く御認識をいただきたいというふうに申し上げたいと思います。
 次の質問でございますけれども、最初にも申し上げましたとおり、警備業の拡大ということには、私は率直に言ってかなりの驚きという感もいたしますけれども、その拡大に応じて社会的な意味も大きくなっているというふうに認識すれば、警備サービスの質をどのように担保するかということが大変重要な課題であるというふうに考えます。
 そこで、サービスの質の担保ということに関係しまして、細かくなりますけれども、何点かお尋ねをいたします。
 いろいろと法律やら規則を拝見しますと、警備業に従事する警備員には、業務に従事する以前に教育を行うということが義務づけられていて、さらに一級、二級の検定の仕組みも設けられているというふうに存じております。
 そこで、この教育と一級、二級の検定の関係がどのような質的な展開をするものなのかということと、それから、データを拝見しますと、四十五万人に近い警備員の中で一級、二級検定の取得者は約一七%。私の実感からするとこれは少ないというふうに受けとめるわけでございますけれども、その辺はどのように評価をされるのでしょうか。また、少ないという認識がそれでよろしいとすれば、今後どのような方向をとっていかれるのかという点をお尋ねします。
瀬川政府参考人 まず、警備業者に義務づけられております警備員に対する教育でございますが、これは警備業法の十一条の二項で義務づけがなされているわけでありますが、いわば警備業務を行う上での最低限の必要な事項について、必要な知識について行われるものであります。
 検定という制度でございますが、これは警備業務にもいろいろ種類がございます。空港保安警備、常駐警備、交通誘導警備、それから核燃料物質等運搬警備、貴重品運搬警備などございますが、こういった種別ごとに一級、二級に区分して検定を行うということになっております。二級といいますのは、適正に業務を行うために通常必要とされる知識や能力を十分に修得しているかどうかということ、また一級は、警備業務を遂行する過程におけるさまざまな状況において必要なより高度の水準、それから能力、さらに、管理的な立場にある者が保持すべき知識、能力を修得している者について一級を与えるということでございます。
 この一七%という検定取得についてどのように考えるかということでございますが、先ほど来お話ございますように、平成十三年末で四十四万人あたりの警備員が警備業務に従事している、これまで検定を取得している者は七万七千人、こういう数字でございます。警備業がやはり国民の自主防犯活動を補完する、または代行するという大変重要な役割を担っているということを踏まえて考えてみますと、御指摘のように、一定水準以上の知識、技能を身につけて検定を取得した警備員がより一層ふえることが望ましいというふうに考えておりまして、私どもとしては、この一七%という数字でよしというふうには考えておりません。
 今後とも、警備業者に対しましては、警備員に検定を取得させることに努めるよう十分指導をしてまいりたいと考えているところであります。
石毛委員 続きまして、今の御指摘の中にも含まれておりましたが、警備業務の分類がさまざまされておりますけれども、その中で、常駐警備と核燃料物質等運搬業務の警備に関しましては一級検定取得者がいないというふうに伺いました。
 私は、警備業務の現場を実際に存じているわけではございませんけれども、とりわけ一市民の立場として思いますときにも、今御指摘いただきました一級というのは管理的な立場、それを遂行できるという中身があるわけですから、危機管理という意味でも、特に核燃料物質運搬業務に一級取得者がいないということは、これはとても、市民の立場から、もしこういうことを知ったとすれば、大体みんな知らないでいるのが実情かと思いますけれども、知ったとすれば大変な不安を持つと思いますけれども、その辺はどのように御認識でしょうか。
瀬川政府参考人 常駐警備と核燃料物質運搬警備の一級検定についてのお尋ねでございますが、常駐警備検定につきましては、実は、検定制度が創設されましたのは平成十年でございます。十三年までに、七千六百六十七名が二級の検定に合格をしております。一級については、今まで実施されてきていなかったわけでありますが、本年中に一級検定も行うようにするということとしております。
 それから、核燃料物質等運搬警備につきましては、昭和六十一年に検定制度が創設をされましたが、今まで二級の検定合格が二百八十八人ということでございます。この業務に従事する警備員の数自体がほかの警備業務に比べて非常に少ないということでありまして、一級の検定の対象になる者の絶対数といいますか、それが非常に少ないということで、今まで一級検定を実施してきていなかったというものであります。一級の力を持っている者がいないということではなくて、検定ということ自体、実は運用をされていなかったということだろうと思います。
 御指摘のように、国民の安全にかかわる非常に重要な業務でございますので、今後、この核燃料運搬警備における一級検定の実施についてはしっかり検討してまいりたいというふうに思います。
石毛委員 次に移ります。
 警備員の雇用形態の約四分の一が臨時雇用です。警備業は、機械警備ですとか、あるいは道路工事のような場所での警備とか、さまざまな警備の場面があって、そうした多様性とも関係していると思いますけれども、臨時雇用が非常に多い。それは決していいこととは言えないんだと思いますが、現に四分の一ぐらいが臨時雇用。この方たちにも教育が義務づけられているかということを確認させてください。
瀬川政府参考人 平成十三年末の警備員数四十四万人余りのうち、臨時警備員は十万五千人以上いるというふうに承知をしております。
 警備業者は、常時雇用であれ臨時雇用であれ、雇用している警備員に対しては教育が義務づけられておりますので、こういった臨時雇用の者につきましても、当然、警備業者は教育する義務を負うということでございます。
石毛委員 次ですが、同じく警備業を規模別で見ますと、五十人未満の警備員の方という事業者数が約八割ということで、規模からいえば小さな規模の警備業者の方が大変多いというふうに言ってもよろしいかと思いますけれども、そうした業界の特徴がある中で、業界自体が業界を自主コントロールしていくような機能を持つ団体をつくっていらっしゃるのかどうか。もしつくっているとすれば、どんな機能を果たしていらっしゃるのかということをお尋ねします。
瀬川政府参考人 お答えいたします。
 警備業者につきましては、これは具体的な加入率等はあれでございますけれども、ほとんどの業者が、全国警備業協会という団体がございまして、こちらに加入をしております。
 この団体におきまして、警備業者に対するいろいろな実態の把握でございますとか、あるいは警察からの、先ほどの雑踏事故防止のためのいろいろな要請もそうでございますが、この全国警備業協会を通じまして要請をし、そこから各警備業者に対して指導するというような仕組みもございます。
 したがいまして、それぞれの警備業者は、都道府県警察からいろいろ具体的な指導を受けると同時に、この全国組織を通じて各種の指導を受けている、こういう状況にございます。
石毛委員 警備業といいますのは、このいただきました資料から、これは法律で規定されていることですけれども、どのような場面で警備をされているかということですが、デパートですとか商店街というような不特定多数の方が出入りするような場所ですとか、工事現場、あるいは交通誘導、雑踏警備、それから現金輸送車等の警備、身辺のガードというようにして分類されております。
 主なユーザーの方は事業者の方かと思いますけれども、デパートですとか商店街ですとか、あるいは空港などもそうかと思いますけれども、警備業務を需要するクライアントは事業者の方であっても、そこにたくさんの方が集われる、集まられるといいますと、三者の関係があるということ、それから、最近では、個人が機械警備というような形で警備の機能を求めているというような広がりも今の社会の中で注目される事態だというふうに思います。
 そこで、私は、やはり警備業者とそれを求める事業者さんとの関係もそうですし、それから、個人や事業者さんとの関係を持つ一般消費者と申しましょうか、その関係の中でも、その警備が信頼してもいいものなのかどうなのかという、サービスの質を担保するような、あるいはサービスを選択するときのメルクマールになるような、何らかの意味で表示のシステムというようなものがもうあっていい時代になってきているのではないか。
 例えば、この事業者さんには一級検定の取得者、二級検定の取得者が全体の警備員の何割を占めていますとか、それから、もともと警備業自体の認可は、後ほど質問いたします警備業の要件、警備員の要件等を満たして認可になるわけですけれども、その要件を満たしていますということ自体のアピールというようなことですとか、さまざまな意味で、もう少し警備業自体の社会性といいましょうか、生活化と言ったらいいんでしょうか、市民化というような抽象的な表現も可能かと思いますけれども、もう少し世の中が警備業自体を判断できる、サービスの質を判断できるメルクマールというようなことを考える時代に来ているのではないかというふうに考えますけれども、そうしたことに関してはどのような御認識をお持ちでしょうか。
谷垣国務大臣 警備業に限りませんけれども、もちろん警備業の場合もそうなんですが、一体どういうサービスを提供していて、そのサービスの質はどういうものなのかということを開示していくといいますか、そういうことによってクライアントといいますか消費者の選択に資するというのは、何の業においても私は必要なことだろうと思います。それで、警備業においても、そういうことを考えていくというのは大事なことではないかなというふうに思っております。
 そういう意味合いにおきまして、まず警備業の方で自主的にいろいろなそういう表示ということになるのか、それぞれ自分たちの抱えているサービス、提供できるサービスの質を、こうこうですというようなことで積極的に表示していただくようなことは、私は望ましいことではないかなと思っております。
石毛委員 ぜひとも業界団体がそういうリーダーシップをとっていただけますように、これは警察に要請することかどうかというのはあるかと思います、直接に業界団体の方にお目にかかってというそうしたルートも当然あり得るわけですけれども、しかし、そういう要望を申し上げておきたいと思います。
 さて、いよいよといいますか、この法律の改正内容でございます欠格事由でございますけれども、第三条の「警備業の要件」におきまして、五号、十号、十一号に新しく暴力団関係者を欠格事由として追加しております。その追加をしているという理由、背景についてお尋ねいたします。
 こうした危険な実態が既に進行しているということを意味してこうした追加が行われているのでしょうか、あるいは、そのほかにもさまざまな見解がおありなのでしょうか、お聞かせください。
瀬川政府参考人 お答えいたします。
 まずその前に、申しわけありません、先ほど、警備業協会への加入につきまして、ほとんどの業者がと申し上げましたけれども、年々増加しつつはありますけれども、具体的な数字を今取り寄せてみますと、昨年末現在で約五七%という数字になっております。今後とも、こういった組織化といいますか、警備業協会への加入を促進するように私どもとしても働きかけ、そこを通じてまた十分な指導もするようにしてまいりたいというふうに思っております。訂正させていただきます。
 今、第三条の五号、十号、十一号の改正の趣旨についてのお尋ねでございますが、これは、現行法上でも暴力団員は警備業の欠格事由になっておりまして、個人で警備業を営むことはできませんし、暴力団員が役員である法人も警備業を営むことはできません。しかし、本人が暴力団員でなくても、暴力団員と一定の密接な関係を有する者が警備業を営んだ場合には、結果的に暴力団が警備業に関与するというおそれが大きく、暴力団員を欠格事由としている法の趣旨を没却してしまうということになるわけであります。
 具体的に幾つか事例もございまして、一、二御紹介させていただきますと、例えば、暴力団の組長が自分の親族を警備会社の役員につけて、その会社に警備業務を請け負わせるように他人に強要して恐喝未遂の疑いで逮捕される。さらに、その警備会社も、先ほど来御指摘のありますような警備員の教育、これも大事なことでございますが、これを懈怠する、あるいは備えつけなければいけない書類に虚偽の記載をするというような、警備業法自体を無視したような運営を行っているということで、事件として送致をし、廃業させたというような事例もございます。
 そのほか、例えば、暴力団員ではありませんけれども、暴力団と密接な関係を持つ右翼団体の構成員が取締役となっている警備会社がある。これが暴力団の名刺を使って強引に警備契約の獲得をはかったというようなことで相談が寄せられて、これも、こういった会社ですので警備員に対する教育もしっかりやっていない等々のことで、警備業法違反で検挙いたしまして警備業の認定を取り消す、こういうような事案もございます。
 こういった実態があり、また、暴力団員を欠格事由としている趣旨が没却されてしまうというようなことが懸念されるということで、今回、この三条の五号、十号、十一号の規定を改正あるいは追加するということで、こういった暴力団員と密接な関係にある者を新たに欠格事由として追加しようとしたものでございます。
石毛委員 それでは、生活安全局長が戻って御答弁くださいましたことに関連して、私の方もちょっと戻ってもう一度質問させていただきたいと思います。
 五十人未満の事業者さんが約八割。今、御答弁ですと、業界の自主的な団体に御加入になっていらっしゃる事業者の方が五七%、六割弱。そうしますと、零細な事業者さんがたくさんいらっしゃる。そういう中で、確かに法的には教育も義務づけられておりますし、一級、二級というような検定の仕組みもございますけれども、すそ野はかなり不明といいましょうか、実態不明というのが実情ではないかしら、そういう思いがいたします。
 そのこととあわせまして、警備業は認定によって事業を始めるという仕組みで、認定は要件を満たしていればいいという書類であって、本当にそれが守られているかどうかというのは、立入検査等の結果で行政処分、そういう一連の仕組みになっているというふうにヒアリングでも教えていただいたわけですけれども、うまく回るんだろうか。結局、認定のときには、例えば暴力団の関係であったかどうかというようなことがきちっとサーベイされるんだろうか、水際のところで防がれるのだろうか。
 もちろん、この欠格事由がここに追加されたことは私は評価をするものでございますけれども、では、それの実効性というようなことから考えますと、認定は書類で行って、立ち入りによって何か問題があって、そのときに認定要件の中にこうしたことが含まれていれば認定を取り消される。こういう仕組みであると、何か抜け落ちてしまって入り込んでくるのではないかとか、あるいは、先ほどの教育ですとかさまざまな事柄にしましても、かなり抜け落ちている部分が出てきてしまうのではないか、そういう不安を持つわけでございますけれども、いかがでしょうか。
瀬川政府参考人 大変警備業者の数も多く、零細なものも多いということは御指摘のとおりでございますけれども、各都道府県警察におきましては積極的に立入検査を実施しております。
 例えば、全国で、警備業の営業所の数でございますが、平成十三年で見ますと一万四千二百三十九ございます。これに対しまして、延べでございますが、立入検査の実施数が一万三千五十五ということでございまして、一営業所当たりで見ますと〇・九二ということで、一〇〇%近く、営業所に対する立ち入りを少なくとも年一回はやって業務の実施状況等をしっかりチェックしている、こういう状況でございます。
 零細も多くということでございますが、すべてこれは認定の業者でございますし、こういった積極的な立ち入りを通じて、警備業法に定められた各種の要件等がきちっと遵守されるように今後とも指導を進めてまいりたいと思いますし、規模が大きいからあるいは小さいからというようなことで提供されるサービスの質に差異が生じることがないように、今後とも十分指導してまいりたいと考えております。
石毛委員 それでは、次の質問でございます。
 もう一つ、欠格事由の見直しということに関しまして、現行の法律では精神病者を絶対的欠格事由として含めていたということ、このことを変えまして、改正法案の中では、七号で「心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの」というふうに、相対的欠格事由と言われる規定の仕方に変更になっております。
 そこで、まず第一点、お伺いいたしますのは、この国家公安委員会規則で定める中身はどのように想定しているかということをお尋ねいたします。
瀬川政府参考人 国家公安委員会規則でどのように定めるかということでございますが、現在検討している段階でございますが、現時点では、私どもとしましては、精神機能の障害により、警備業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者というふうにしてはどうかということで検討しているところでございます。
 このような規定ぶりは、例えば医師法の施行規則でありますとか、歯科医師法の施行規則、あるいは理容師法の施行規則等に類似の規定例が見られるところでございます。
石毛委員 同じ警察庁が所管する風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律では、従前の法律が精神病者を欠格事由としていたものを、そのこと自体を削除するということで、絶対的欠格も相対的欠格も置かないというふうに変わっております。つまり、風俗営業等のというその法律では、精神病に関しましては欠格事由にしていないという、当事者の皆さんからは大変歓迎された法改正がなされた経緯がございます。
 警察庁が同様に所管しているこの警備業法では、相対的欠格事由という形で欠格事由を残しているわけですけれども、これを残さなければならないという理由はどんなところにあるのでしょうか。
瀬川政府参考人 お答えいたします。
 風俗営業適正化法との違いでございますが、風俗営業も、もともとこういった欠格要件を設けていたわけでありますが、これは他の業種に比べて種々問題が生じやすい業種である、一般的に判断力や自制力に欠けるところがある者が責任ある立場につくことは好ましくないという考え方がございました。
 しかし、翻って考えてみますと、風俗営業は直ちに人の生命等に具体的な危険を生じさせるという業務ではない、風俗営業を営もうとする者に対する措置としては、事後的な指示やあるいは営業の停止ということによっても一定の効果を上げることができる面があるということで、今回、障害者の社会活動への参加を促進するという観点から、平成十三年の改正で、精神病者に関する欠格事由を廃止したというものであります。
 この警備業法でございますが、これは警備業者、警備員及び機械警備業務管理者についてでございますが、人の生命、身体または財産を守る業務に直接携わる、または直接携わる者を指揮監督するというものでありますことから、一定の欠格事由は国民生活の安全を守るためにやはり必要ではないかと考えております。精神病者を一律に排除するという規定はやめることにしよう、しかし、一定の欠格事由というのはやはり必要だろう、こういう考え方でございます。
 なお、警備員指導教育責任者、警備員の教育に当たる者でございますけれども、これにつきましては同様に欠格事由が規定されていたわけでございますが、これは、人の生命、身体または財産を守るという業務に直接携わるわけではない、または直接携わる者を指揮監督するわけでもないということでございますので、この警備員指導教育責任者につきましては、風適法と同様に、精神病者にかかわるこの欠格事由を廃止するということとしたいと考えているものでございます。
石毛委員 一般的には納得のいくような御説明をいただいたかというふうにも言えるかもしれません。
 これは医師法等の改正のときにもいろいろなところで議論になったことなんですけれども、医師法の省令の中で、視覚とか聴覚とかそういう障害の部分を除いて、精神の機能をという以下は大体医師法の省令と同じというふうに今おっしゃられたと思いますけれども、それでは、精神の機能の障害により、認知、判断、意思疎通等々が適切にできるかできないかということ自体は、やはり医師の判断を得る、あるいは健康診断を受ける、そうした媒介が必要なわけですよね、業者さんが判断できるわけではないですから。そこで必ずそういう媒介行為が必要になる。
 一般的には、事業者さんが警備員さんを採用する場合に健康状況を何らかの内容で聞くというのは、これは当然あることだと思います。働きたいといらした方をそのまま採用するということはないでしょう。身体の健康か、あるいはどこまで聞くかということはあるかと思いますけれども、健康状態は聞くんだと思います。
 そうしますと、どっちにしたって、健康状態、業務遂行能力というのは伺うということで、だから、これは医師法等々に関しても私は同じ見解を持っているわけですけれども、今回の場合も、あえて国家公安委員会規則で定めなくても、実際に現実に働くときには、健康診断というようなことをして、そこで評価をされるわけだから、何も規則で精神機能の障害を持つ者というラベリングをする必要はないのではないか、私はそういう認識をしております。
 現に、警備員業務はシフト制でされている場合が多くて、実態として、これは今絶対的欠格条項ですから、データはありませんけれども、事実として、経験的には精神の病気を持っていらっしゃる方が働いておられるという事実もあるわけで、むしろ、精神機能の障害によりというこの規則が設けられますと、それ自体が新しい機能をし始めて、現に働いている方が排除されていくかもしれない、そうしたことが大変当事者の方からは危惧されているということを、もう質疑時間終了ということですので、これは私の方の考え方として申し上げたいと思います。
 一点だけお尋ねしたいと思いますけれども、パブリックコメントを求められますでしょうかということと、それから、大臣、こうしたことをさらに見直していくということの方向性につきまして、御見解を承れるようでしたらお願いをしたいと思います。
 以上でございます。
佐々木委員長 大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
谷垣国務大臣 はい。
 パブリックコメントは、その方向でやらせていただくつもりでおります。
 それから、冒頭の御発言がございましたように、この業務は、こういう中でありながら成長も続けているところでございまして、それぞれの進展に伴っていろいろなものを見直していくというのはこれからもあることだと思っております。
石毛委員 ありがとうございました。
佐々木委員長 石毛えい子君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 今回の欠格事由の見直し問題についてまず伺いますが、現行法は精神病者を一律に警備業から排除しているのを、改正案では、この欠格条項を、業務を適正に行うことができるかどうかを基準にするというもので、精神病者の社会参加の拡大に道を開くものであるというふうに考えております。
 しかし、精神病患者や障害者団体の皆さんからの不安の声も聞かれます。それは、法案第三条で、「心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの」と規定されているように、具体的には国家公安委員会の規則で定められるということになっておりますから、その規則に精神分裂病、今は統合失調症というふうに言うべきかもしれません、躁うつ病、てんかんなどの病名を挙げて規制を行うのではないか、あるいは、病名が特定できるような症状を明記するのではないかという懸念の声を聞いています。これは、障害者施策推進本部決定の絶対的欠格から相対的欠格への改正の趣旨からも、そこのところは非常によく注意を払わなきゃいけないところだと思うんです。
 そこで、公安委員会規則では病名や病名が特定できるような症状を明記すべきではないというふうに思うんですが、この点、まず最初に谷垣国家公安委員長のお考えを伺っておきたいと思います。
谷垣国務大臣 国家公安委員会規則をどうするか今検討中でございますが、おおよその方向としては、精神機能の障害によって、警備業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者といったようなたぐいではどうかという検討をしておりまして、今吉井委員が懸念されましたような、病名が特定できるような症状を明記するということは考えておりません。
吉井委員 それから、国家公安委員会規則の作成の際に、やはり障害者団体や専門家の意見をよく求めるなど、当事者の参加を求めて意見をよく聞いて定めるということを検討していくべきだというふうに思うわけです。これも確認的に大臣に伺っておきたいと思います。
谷垣国務大臣 先ほど石毛委員にもちょっと申し上げたところでありますが、実際に国家公安委員会規則をつくるときには、改めてパブリックコメント等も実施して、障害者団体からもその辺の御意見も伺いながら進めたい、こう考えております。
吉井委員 ここで厚生労働省の方の政府参考人に伺っておきますが、昨年、障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案を審議した際にも、附帯決議が採択されています。その中で、
  現在の厳しい雇用環境にかんがみ、障害者に対する差別・偏見を除去するための啓蒙・啓発を更に進め障害者雇用の促進を図るとともに、障害を理由とする解雇を無くすよう厳しく指導すること。さらに、とりわけ立ち遅れている精神障害者雇用の進展のため、障害者雇用促進法における雇用率の制度の在り方も含め、雇用支援策の充実について早急に検討を進めること。
と決議がなされたわけです。
 欠格条項の見直しが雇用などに実効性が伴うようにする必要があると思うんですが、どうも現実には、例えば特殊法人では、〇〇年度から〇一年度にかけて二・〇八%から一・九七%に逆に雇用率が低下したりとか、民間でも今横ばいの状態というところですね。
 そういう点で、この決議を受けての取り組みを具体的にどのように進めてきたのか、障害者雇用率が伸びる方向に今向かっていこうとしているのかどうか、これを伺いたいと思います。
太田政府参考人 障害者の雇用につきましては、今先生お話ございましたように、近年の厳しい雇用情勢を反映しまして改善のテンポが鈍化しておりまして、雇用率につきましても、平成十三年度、一・四九%ということで、横ばいというような状況にございます。
 私どもとしましては、こういう状況を踏まえまして、ハローワークによる雇用率達成指導を強化するとか、あるいは、求人開拓、職業相談、職業紹介を実施するとともに、企業に対しましては、各種の助成金制度でございますとかトライアル雇用を活用して障害者雇用の促進を図っているところでございます。それからまた、さきの通常国会で障害者雇用促進法を改正していただきまして、新たにジョブコーチ事業でございますとか、あるいは障害者就業・生活支援センター事業が創設されたところでございます。こういった事業によります職場定着の支援でございますとか、身近な地域における日常的な就業・生活支援等を通じまして、障害者の雇用の促進を図っているところでございます。
 それから、特に障害者の中でも雇用のおくれております精神障害者につきましては、現在、研究会を重ねまして、その障害者雇用促進につきまして、さらに前へ進むように努力しているところでございます。
 いずれにいたしましても、今後とも障害者の雇用の促進に全力で取り組んでまいりたいというふうに考えております。
吉井委員 大臣にも今お聞きいただきましたように、いろいろ取り組んでいますというお話はあるんですが、実際には具体的には進んでいないんですよ。そして、国のかかわってくる特殊法人でも、実は二・〇八%から一・九七%に低下してくる。非常に厳しい雇用情勢というお話もありましたように、厳しいんですよ。こういう中で、いろいろ取り組んでいるんだ、取り組んでいるんだと言っても、具体的に進まないことには、これはやはり問題があると思うんです。
 日本障害者協議会は、昨年十一月、警察庁のヒアリングのときに、障害にかかわる欠格条項の見直しに対する意見というのを出しておられますが、その中で、警備業の性格上、最低限の規制は必要であるが、欠格事由を廃止しても事業の信頼性を揺るがすものではない、精神障害を持つ者の雇用先として警備業は重要であると訴えています。警備業の中にもいろいろな分野がありますから。警察庁は、警備業者任せにしないで、改定の実効性が上がるような取り組みをぜひやるべきだと思いますし、そうしないと、何のための今回の改正かということになってしまいます。
 それで、まずこの法案についての実効性が上がるように努力するという点については、これは谷垣大臣自身の責任範囲で頑張ってもらうことと、今、厚生労働省の方にも聞きましたが、やはり国全体として、内閣全体として、具体的に進んでいくようにどう取り組むかというところが非常に大事だと思うんですね。
 この点は大臣の方に、決意を含めて、これからの取り組みというものを伺っておきたいというふうに思います。
谷垣国務大臣 今、法律改正をお願いしておりますけれども、これは、ノーマライゼーションというものをこの業法にどう取り入れられるかという観点から検討されたものでございまして、その実効性が上がるよう、新しい法の精神を踏まえて、我々もできることは努力していかなきゃならない、こう思っております。
吉井委員 次に、九月に公表されました警察白書についても、この機会に少し伺っておきたいと思います。
 ことしの警察白書の特徴は、検挙率の低下の深刻な問題を前面に出しているということが一つあったというふうに思います。白書には、検挙率低下の背景として、事件の増加と警察官の業務負担の増加ということが挙げられております。
 そこで、警察官の一人当たりの検挙率と一人当たりの事件数の推移を最初に御説明いただきたいと思います。
栗本政府参考人 今お尋ねの、警察官一人当たりの検挙率とお話がありましたが、検挙状況ということでお話し申し上げます。
 これは、犯罪捜査業務以外にもかかわっておる警察官がたくさんおりますけれども、一応、刑法犯の検挙件数と検挙人員を単純に全国の都道府県警察官で割りますと、平成四年には、一人当たり検挙件数で二・八件、検挙人員で一・三人になっております。また、昨年、平成十三年には、一人当たり検挙件数が二・三件、検挙人員につきましては一・四人となっております。
 一人当たりの刑法犯検挙件数につきましては減少しているものの、刑法犯の検挙人員につきましてはほぼ横ばいになっておる状況でございます。
吉井委員 日弁連の方が十月に開いた第四十五回人権擁護大会のシンポジウムで、警察官の一人当たり事件数は、一九八〇年十八・八件が、一九九〇年で十五・六件、〇〇年で十四・九件と、むしろ警察官一人当たりの件数は減少しているということをシンポジウムの中でも紹介されておりました。
 白書に言うように、警察官が少ないことが検挙率の低下の原因ということになるのか、その点、どういうふうに考えておられるのかを次に伺っておきたいと思います。
栗本政府参考人 先ほど御報告申し上げました検挙件数の話と、それから事件件数という形では、一人当たり認知件数、これは、例えば先ほどと同じ分母で割りますと、平成四年には七・八件、平成十三年には十一・七件と、警察官一人当たりの事件数が大変ふえておるわけでございます。
 それからまた先ほどの、検挙率が大変残念ながら減ってきているということも客観的事実でございます。これにつきましては、私ども、その原因といたしまして、残念ながら捜査環境が大変悪化しておりまして、従来の聞き込み捜査や物からの捜査などの手法を用いました捜査が困難化しておることに加えまして、最近では、大きな要因として、犯罪の増加に検挙が追いつかないということ。それからまた、新たに発生した犯罪の増加に伴いまして、現場への臨場や被害者の方からの事情聴取など、犯罪発生時の対応に追われまして、検挙した被疑者の取り調べに時間をかけることができず、したがいまして余罪の解明ができていないということ。また、先生も御承知のように、昨今、来日外国人犯罪が大変増加しておりまして、この種の事件処理には言葉の壁があるなど困難な捜査が余儀なくされまして、捜査への負担が大変大きくなっておる。こういうことなどが一応、私ども、検挙率が残念ながら低下している原因かと見ております。
 いずれにいたしましても、今申し上げましたように、刑事を含めた警察官の数が足りない、犯罪に追われているということは明らかな状況かと考えておるところでございます。
吉井委員 事件の増加と警察官業務負担の増加ということを挙げておられて、しかし、日弁連などが指摘しているように一人当たり事件数は、これは、もちろん統計数字の扱い方というのは計算の仕方によっていろいろなとり方があります。そこは私もわかった上で言っているんです。別に、日弁連の方の計算の仕方が間違っているとかあなたの方が間違っているとか、その議論を今やっているんじゃないんですよ。警察官一人当たりの事件数は一九八〇年、九〇年、〇〇年でむしろ減少しているということを挙げて、警察官が少ないということが検挙率の低下の原因と、その点で言うことは必ずしも当たらないということが指摘されているわけです。
 さらには、白書の方で、検挙率の低下を、国民の警察活動への協力を得られにくくなっているということを挙げています。なぜ協力が得られにくくなったのかというこの分析、ここがないのではないかというふうに思うんです。
 それで、検挙率の方と、それから免職、停職、減給、戒告の懲戒処分件数、いわゆる不祥事件数、これを一九九七年から二〇〇一年までの五年間毎年の分を、いただいている資料で見せていただきました。九七年に刑法犯の検挙率四〇・〇%が、毎年、三八・〇、三三・八、二三・六、一九・八というように、二分の一に急減しているんですね。逆に、警察官の懲戒処分を受けた不祥事件数は、百三十三件から四百八十六件へと四倍にふえているんですね。
 この数年を見て、検挙率と不祥事件数との間に相関関係、つまり、不祥事がふえるということは、国民の警察活動への協力が得られにくくなっているという、まさに国民の皆さんが協力をするときの基本は信頼ということだと思うんですが、その相関関係にあると見ることができるんじゃないか。ここは、大臣としてもきちんとその点に着目して、協力の得られない重要な原因の一つは多発している警察不祥事が不信の根底にある、この点をどうするのかということをやはり考えていかれる必要があると思うんですが、この点は大臣の方のお考えを伺っておきます。
栗本政府参考人 先ほど委員の、捜査活動など警察活動への国民の協力が、残念ながら発生しております警察官の不祥事と関係があるのではないかと、その辺は厳密に私どもが承知しておるところではございませんが、国民の方に、捜査活動が難しくなっている原因等につきましていろいろアンケートをしておりますが、やはりその一番多くは、社会全体の連帯意識が欠如してきていることとか、それは、私ども捜査の中で聞き込みなどをいたしましても、隣近所のことについて余りよく知らない、そういう意味におきます、防犯機能を果たしてきましたコミュニティーが非常に崩壊してきておるということがあろうかと思います。
 それからまた、不祥事がありますと、現場の私ども警察職員が国民のために真剣に取り組みをするという面において士気が阻喪するようなことがあってはならないという点では、この問題を大変重視しておりますが、私どもは、不祥事をなくすとともに、職員が士気を上げて懸命な捜査をするべきだと考えているところでございます。
吉井委員 大臣に質問したときは、委員会のルールとして、大臣にお答えいただく、私の方から政府参考人に質問を求めたときはお答えいただく。政府参考人の今の話ですが、政府参考人も大臣になられたときにお答えいただくというふうにしてもらわぬと、委員会ルールがおかしくなりますので。
 それで、今の問題は、私も警察白書で今おっしゃったデータは皆見ているのですよ。現場で努力している人はたくさんいらっしゃるわけです。私、それを非難したり、そんなことを言っているんじゃないんです。しかし、そういう努力があるにしても、やはりこのデータの中にも載っているわけですから。ですから、協力の得られない重要な原因の一つ、それはやはり多発している警察不祥事が不信の根底にある、このことをきちんと見ておく必要があると思うんです。
 例えばことしに入ってからでも、マスコミに出た分だけの若干例を見ても、一月二十四日に出ましたが、神奈川県警の留置管理巡査長が拘留中の女性と性的関係とか、少女売春担当警部の事件もみ消し、犯人隠匿だとか、銃器対策課巡査部長の暴力団への捜査情報漏らしと現金収受とか。二月九日付に出たのでは、防犯課長らの覚せい剤使用事件もみ消し、捜査放置問題で埼玉県警本部長を処分したとか。千葉県警の巡査部長が車の証明書を入手して業者に渡して現金、飲食接待を受けたとか。それから、これは四月二日付に出ましたが、富山県警本部長、覚せい剤おとり捜査で虚偽の事件指揮簿を作成して有罪判決を受けたとか、さっきおっしゃった外国人関係でも、静岡県警巡査部長の外国人不法就労見逃し収賄事件で有罪判決とか、次々とやはり出ているわけで、実は警察改革要綱を読ませていただいても、そのことはちゃんと出ているわけですね。神奈川、新潟、埼玉、栃木の各県警の問題で、「警察組織の秘密性・閉鎖性、無謬性へのこだわり」とか「キャリアのおごり」とか、第一線現場の人たちが努力していても、やはりそういう問題が非常に深刻な問題だということを指摘しているわけです。
 警察白書の発表時にも、マスコミの社説でこういうのがありました。九月二十八日付に載った分ですが、「相変わらず不祥事も多い。最近は家宅捜索に行った先で捜査員が盗みを働く、といった悪質極まる事件も相次ぐ。」「警察の及び腰が犯罪につながり、福岡の事件では少女を見殺しにする結果となった。この体たらくでは、市民は警察を信頼できない。警察の不祥事や不始末が、市民の不安をあおっている面も否定できまい。」「人を増やせば状況が好転するとは思えない。」という、これは大手新聞社の社説で指摘していましたが、問題は、国民の協力を得られない原因を、警察不祥事なども非常に重要な問題だというふうにとらえないで、国民意識のさま変わりとかいろいろな他の要因に帰している、やはりそういう感覚の方が私は重大じゃないか。
 いろいろな要素がありますから、私もこれがすべてとそんな決めつけたことを言っているんじゃないんです。やはりこういう点は、国民の協力を得られるということを考えたときには、それだけ、不祥事などを生じない、そういうものにきちっと取り組んでいくという、それは国家公安委員長としてやはりやってもらわなきゃいけないことだと思うんです。この点を大臣に伺っておきたいと思います。
谷垣国務大臣 先ほどから委員が議論を展開していただいておりますように、検挙率が下がっている、あるいは国民の協力が得にくくなっているとかいう、これは多面的に原因があると思います。多面的に対応していかなければいけませんけれども、今御指摘のように、警察としての綱紀の粛正というのは、私は極めて大事なものだと思っております。
 その関係で、警察刷新会議から平成十二年七月に警察刷新に関する緊急提言をいただきまして、その後、警察改革要綱に基づいて、今その辺の立て直しと申しますか、綱紀の粛正を進めているところでございます。それで、この施策についてどう推進しているかというようなことについてもいろいろまたフォローアップをしていただいておりますが、改革を実行する段階から、成果も出さなければならない段階に来ているなというふうに思っております。
 それから、そういう点で私も警察を督励していかなければならないと思っておりますが、国家公安委員会も、一連の不祥事のありました後の警察法の改正で監察に関する権限を従来よりも非常に強化をいたしまして、毎週一回、定例の会合がございますが、その中でも、この監察事案についてはかなりのウエートを置いて点検し、議論をして、今おっしゃったような綱紀の粛正というものが現場にまで徹底していくように督励をしながら議論をしているところでございます。
吉井委員 それで、私、国民の警察に対する信頼を取り戻す取り組みが次の課題だというふうに思っております。
 警察の閉鎖的体質ということが、さっきのこの中でも冒頭のところに秘密性、閉鎖性ということを挙げているわけですが、これがやはり問題の大事な一つでもあると思うんです。
 日弁連が行った各県弁護士会調査によれば、県弁護士会の人権擁護委員会が県警本部や警察署にさまざまな人権擁護に関する勧告書、警告書などを持っていくと、中にはこれを受け取らないというところがあるんですね。それを受け取らない事例というのが紹介されておりますが、人権擁護大会などでも、県の名前もちゃんと紹介されているんです。
 それで、問題は、この勧告や警告というのは、一弁護士とか一法律事務所がやったというんじゃなくて、県の弁護士会にある人権擁護委員会が事実に基づいて調査してやっているんですが、そういうものさえ受け付けない、拒否をしてしまう。名古屋弁護士会が出したのを愛知県警が返送した例とか、それから兵庫県警が兵庫県の弁護士会に警告書を返送するとか、和歌山県弁護士会が出した分を和歌山県警が受領を拒否してしまうとか、やはりこういうことが続いているんです。この勧告や警告などをやはり受けとめるということが大事なのであって、刷新会議の緊急提言でも「苦情を言いやすい警察に」と言っているんですね。ところが、弁護士会が行っても受け付けない。
 谷垣大臣も弁護士さんとして人権擁護に努力されてきたと思うんですが、弁護士会の勧告書や警告書を受け付けない、こういう閉鎖的体質はまだ変わっていないという面があって指摘されておりますから、これはやはり公安委員会できちんと指導して、国民の苦情、日弁連などの勧告書、要請書などを受け取って真摯に対応していくようなものに改めていくという、その取り組みが大事だと思うんです。
 最後にこの点についての大臣のお考えというのを伺って、時間が参りましたので終わりにしたいと思います。
谷垣国務大臣 御指摘のように、私も日弁連のメンバーでございまして、二枚看板でございますが、国家公安委員会にも随分いろいろな勧告なり決議なり、そういうようなものがたくさん寄せられておりまして、そういうものは全部国家公安委員会にも報告をされまして、適切に対処するように、議論をしながらやっておりますので、今後、開かれていないというようなそしりを受けないように督励してまいりたいと思っております。
吉井委員 突き返すようなことがないように。
 時間が参りましたので、終わります。
佐々木委員長 以上で吉井英勝君の質疑は終了いたしました。
 次に、北川れん子君。
北川委員 社民党・市民連合の北川れん子といいます。
 欠格条項の多くは、憲法十三条や十四条、また国連のさまざまな宣言や基本法の理念に反するという立場で、以下の質問をしていきたいと思います。また、よく引き合いに出される、アメリカでの身体的、精神的な障害を理由とした差別を禁止した、障害を持つアメリカ人法、よくADA法と言われていますけれども、こういう法律が日本にあればなという思いで、そしてまた、この法律が機能している監視システムとして雇用機会平等委員会等が多くの働きをしているというアメリカでの実態を受けながら、質問にかえていきたいと思っております。
 先ほどの皆さんの話の中にもありましたが、警備業は夜の仕事が主で、事件、事故というのは夜起こりやすいというのが人間の社会の鉄則でもあるようです。ですから、昼間、通院をしやすかったということがあって、一時期、精神障害者の方がつきやすい職業、また他面で、なりたい職業、また、昨今の若い方は人と接することが余りない仕事を持ちたいということで、人気の高い現場であったというふうにも聞いております。現に、精神障害者の警備員の方が多かったと言われてもきています。
 国が「障害者対策に関する長期計画」を策定し、障害を持つ人の社会参加を推進することを政策課題とした年が一九八二年の改正で、精神病者を欠格条項にこのとき入れたのはなぜなのかなということと、そしてまた、一九七二年に警備業法ができて、それから十年の間に、この八二年までの間に何か大きな事故や事件、そういうものがあった背景を受けてそうなったのかどうか等を御質問したいと思います。
瀬川政府参考人 御質問にありましたように、昭和五十七年、一九八二年の法改正で、現行の警備業法でございますが、精神病者またはアルコール、麻薬、大麻、アヘンもしくは覚せい剤の中毒者につきまして、これは、他人の生命、身体または財産を侵害することも考えられ、警備業法の目的とする適正な業務運営が期待できないという判断で欠格要件としたという経緯でございます。
 このときの法改正におきましては、この精神病者等だけではなくて、暴力団員ではないこととか、あるいは重大な不正をした者でないことといったことも欠格要件として追加をするということで、同時に行われたものでありますが、御質問にもありましたとおり、昭和四十七年、一九七二年に警備業法が施行されました。実は、それ以降、警備員の非行が急増をいたしました。例えば、その中に、アルコール中毒で入院歴のある者が三人に暴行を働き死傷させるというような事件等もありました。殺人事件等もありまして、大変大きくマスコミ等でも取り上げられたというようなこともあります。
 そういったことで、警備員の資質について、一定の社会的信頼が求められるという状況がございまして、このような改正が行われたものというふうに承知をしております。
北川委員 よく、治安がいい日本と言われてきたと思うんですけれども、内実的には、一九七〇年代ぐらいから、ある面どこかで崩れていっているというのが、警備業法的な仕事というものが需要されるときに来て供給体制が賄われていなかったからということであって、現実に精神病の病を抱えた人を雇うことに是か非かというような事件ではなかったというふうに今の御発言を聞いていても思うわけであります。
 ぜひ、精神障害、昨今では名前のつけ方自身にも尊厳を持った言い方をしようというふうにも変わってきておりますので、精神障害を持つ人の社会参加を阻害するようなこととくっつけて言わないでいただきたいという思いが、今の御答弁を聞いていて特に思いました。
 それで、次に移りますけれども、一九八七年に精神保健福祉法が改正された際に、警備業法の見直しをしなかった。七二年にできてから十五年たっているんですけれども、見直しをしなかったのはなぜですか。また、精神障害の方が警備員になりたいのになれないという要望がなかったからなのか、そういう声が行政には届かなかったから見えなかったということなのか、その点をお伺いしたいと思います。
瀬川政府参考人 お答えいたします。
 我が国の障害者対策でありますが、昭和五十七年三月の「障害者対策に関する長期計画」、それから昭和六十二年六月の「「障害者対策に関する長期計画」後期重点施策」などを経まして、平成五年三月に「障害者対策に関する新長期計画」が策定されてその推進が図られているというふうに承知をしております。
 障害者に係る欠格事由の見直しにつきましては、この「障害者対策に関する新長期計画」に基づきまして平成十一年八月の障害者施策推進本部決定というものがあり、これにより、現在、政府全体として取り組んでいるものと理解をしております。警備業法におきましても、この政府全体の取り組みの一環として、精神病者に係る欠格事由を定めることについての必要性の再検討を行いまして、今回の改正によりましてその見直しを行おうということとしたものでございます。
 また、その当時、精神障害の方が警備員になりたいのになれないという強い要望が届いていたかということでございますが、そういった要望があったかどうかにつきましては、現在ちょっと承知しておりません。
北川委員 ビルのメンテナンスが割と一兆円産業とか言われたり、警備業法が今だからこそ見直されたというか、需要が高い業種として挙げられ、光が当てられてきたので、法律というものが改正されていくということになっていくんだろうと思います。
 ですから、一九八〇年代後半ぐらいでは、まだまだ警備業法があること自身を多くの人は知らなかったというか、ある分野の方だけにしか共有できなかった問題だろうと思いますので、ぜひ私は、今回の警備業法の改正、一部評価するところはあるんですが、現在の需要が多くなってからの問題点を、もっと条項を見直して、私自身はするべきではなかったのか。今回の、ほかの法律と照らし合わせて欠格条項の部分だけに焦点を当てた改正というのは、また弊害をもたらしていくんじゃないかと思って、法律の方が後手後手になっているという気はしておりますので、ぜひその点なども、できれば警備業法の全体の見直しに着手していただきたいということを要望しておきたいと思います。
 これが、制定時が届け出制で、八二年に認定制になったということで、認定団体というのが、財団法人空港保安事業センター、そして社団法人全国警備業協会という二つの団体がこれを請け負う。都道府県の公安委員会の委託でもって請け負うというふうになっていると聞きましたけれども、ここへの天下りですね。今、天下り問題が大きくクローズアップされているんですけれども、こういう認定団体と警察当事者との天下りの状況等が今の段階でおわかりになる数字がありましたら、ぜひ御紹介いただきたいと思います。
 そして、私自身は、通院も昼間しよう、そして生活の糧も自分で得ようという、いろいろな病は持っていたとしても自立してこの社会で生きていこうという人を雇うか雇わないかは、雇用主がその方の人間性を見抜くというか、その人との出会いをどう感受するかということに重きが置かれる方がいいと思うわけですね。
 そのことを、あらかじめ、この人が適性があるかないかとかということを資格試験とかいろいろなことでランクづけをしていくというのが社会のシステムなんですけれども、私自身は、どういう状況であれ、働こうという人を雇う側が決めればいいことだというふうに思うんです。今回、欠格条項の廃止ではなく見直しにとどまった理由がなぜなのか、私はそこをお伺いしたいと思っています。なぜなんでしょうか。
 二つお願いします。
瀬川政府参考人 お答えいたします。
 一問目の、警備業の関係の団体に対する警察を退職された方々の就職状況ということだろうと思いますが、数字は、申しわけありません、現在持ち合わせておりませんが、警察のOBの方がその在職中の経験なり能力なりを買われてそういった団体に就職をなさっているという例はございます。
 それから二つ目の、欠格条項の廃止ではなく見直しにとどまった理由でございますけれども、今回の改正案では、警備業者、警備員及び機械警備業務管理者という、これは、いわば人の生命、身体、財産を守る業務に直接携わる、あるいは直接携わる者を指揮監督するという立場にあるということで、国民生活の安全ということで、一定の欠格事由は必要だろうというふうに考えました。
 そして、障害者施策推進本部決定の見直しに基づきまして、私どもとしては、従来のように精神病者を一律に排除するということではなくて、業務を適正に行うことができるかどうかという能力に着目して、そういった内容の欠格事由ということに変えることとしたものであります。
 また、警備員指導教育責任者につきましては、直接そういった人の生命、身体、財産に関する業務に携わらない、あるいはそういった業務に携わる者を指揮監督するわけではないということで、こういったものにつきましては、従来は同じように欠格要件が適用になっていたわけでございますが、その部分につきましては欠格要件を廃止するということにしたものでございますので、御理解をいただきたいと思います。
北川委員 やはりそこがひっかかるというか、精神病の発症というのは思春期に多いと言われるし、また中高年の働き盛りの男性が発症する場合も多いというふうに聞いていますし、私自身、あす自分が何らかの状況の筒がいっぱいになるか、何らかの状況の範囲の中で発症するという可能性があると、人間として私はいつも自分のことを思っているわけなので、今の局長の御答弁は、やはり精神障害者の方にランクをつけることをよしとするという、そういう社会風潮をつくっていくことに加担することになるのではないかというふうに思います。
 そして、さらに、以前から言われていた、「精神病者は一般的に判断力、自制力に欠けるところがあり、さらには、他人の生命、身体及び財産を侵害するおそれもあり、適正な警備業務の管理運営、実施を期待し得ないと認められるため」という、これは当時、やはり時代というのはこんなに、昔のこの言葉を読むと、えっというふうに今思うわけです。これはさらに差別を助長したいからお話ししたわけではなくて、当時の政府の認識がこうであったということの御紹介のために使わせていただいたわけですが、警察は残念ながらこの考え方がまだ抜けていないのではないかというのを今の御答弁からも感じたんですけれども、いかがでしょうか。
瀬川政府参考人 お答えいたします。
 今回の見直しによりまして、繰り返しになって恐縮でございますが、警備員指導教育責任者につきましては一切そういった欠格条項はなくなるわけでございますし、それから、そのほかのものにつきましても、いわば一律排除していたものを、業務を適正に行うことができるかどうか、これは具体的には医師の診断書等に基づいて判断をするということになりますけれども、その能力に着目をしているわけでございます。
 ランクづけというお話もございましたけれども、やはり国民生活の安全を守るという業務でございますので、その業務が適正にできるかどうかということについては、やはりこれはちゃんと確認をする必要があるのではないかというふうに思います。
 しかし、そういった規定ぶりを改めることによりまして、一律排除ではございませんので、そういった障害をお持ちの方でも、例えば軽度のうつ病とか、そういった病気の程度が軽度な方については、十分警備員として雇用されていくという道がむしろ今回の改正によってできるということだろうというふうに思います。
 したがいまして、今御指摘にありましたように、精神病者一般につきましては、適正な警備業務の管理運営、実施を期待し得ないというような考えにつきましては、現在私どもは全く有しておらないということを申し上げたいというふうに思います。あくまでも個別具体的なケースに応じまして能力を判断していくべきものというふうに考えております。
北川委員 ぜひ、過去の政府が出す見解においても、なかなか、自分の中でそう思っていたことがすぐに、一両日中に変わるとかということはもちろんないし、具体的な事例に出会って、あっとわかっていくということもよくありますので、先ほど申し述べた当時の政府の認識というものは、警察というところであるがゆえに変えていただきたい。
 というのは、やはり誤認逮捕とか冤罪とか、この人はきっとこんな人だろうとか、そういうふうな思い込み捜査というのがいろいろと弊害を生むということもありますので、人はそのときそのときで変わっていくという、やり直すことができるということに重きを置いた警察行政をぜひしていただきたいというふうに思います。
 それと、気になるのは、アルコール依存症や覚せい剤依存症、依存症の問題と精神的な障害の問題とが割と同じような空気で言われることに関しても、当事者たちも傷ついているというふうに思いますので、殊に依存症に対する日本の社会的救済システムは立ちおくれているという点も踏まえて、交通事故の場合もそうですが、車が多過ぎるのか多過ぎないのか、そしてアルコールを売ることに関しての無分別さが日本にはあり過ぎるのではないかというような点にも踏み込んで、警察は社会のありようというものの提言を的確にやっていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 先ほど、天下りのパーセンテージは教えていただけなかったんですけれども、あることは間違いないとおっしゃいました。私自身は、一九七〇年代、日本の治安が悪くなっていく陰りのあったときに、特別な訓練が要るわけですよね、警察官になるにしても、人のことを救済したり守るということを身につけるのには訓練が要るので、当初はそういう人材が、警察を退職されたり、中途で退職された方がぴったりだろうというのはそうだと思うんですけれども、昨今はまた様子も変わってきておりますし、なりたいという職業の一つであるがゆえに、ぜひ天下りに関しては厳しい視線、監視体制をとっていただきたいというのと、やはり数字は公に公表をしていただきたいというふうに思うんですが、大臣、この点はいかがお考えでいらっしゃいますでしょうか。
谷垣国務大臣 私も、数字をどのぐらい把握しているのか、突然のあれですので、ちょっときょうは用意がございません。
 ただ、今おっしゃいましたように、国民の生命、財産、安全を守っていくというのはそれなりの経験、技能というようなものが必要だろうと思います。それで、警備業も随分業として発展してまいりましたけれども、そういうノウハウを、かなりといいますか、やはり一番持っているところが警察でありますし、また、そうでなければならないと思いますので、そういうノウハウをどう活用していくかという観点も欠くことはできないのかなというふうに私は思っております。
北川委員 あえて言わせていただくとというか、こういう、失業率が高く、仕事場が少なく狭められてきているときにおいては、人材投入という形での関与ではなくて、教育システムを民間にゆだねる形で、民間の人がなりやすいような状況を社会的につくっていくということに警察は御貢献いただいた方が、職場の確保という意味においても貢献できるのではないかと思いますので、ぜひ御検討ください。
 次に、厚労省の方にお伺いしたいわけですけれども、近々の現場の厚労省でいらっしゃるという意味においてお伺いするわけですけれども、精神分裂病の人が精神科医になったという事例が、先ほど紹介しましたADA法等々を導入しているアメリカにはあると言われています。当事者が自分の経験をもとに相手のことを見ることはより一層効果が上がるというふうに言われていて、アルコール依存症を経験した方が、克服して、アルコール依存症の人たちのセラピーになるとか、性暴力を受けた女性が自分のサバイバーとしての経験を、次のその当事者たちにセラピーやカウンセリング当事者として成り立っていくとかということからいくと、私は、このことは案外本質的な面を持っているというふうに思っているわけですけれども、一般的には、精神障害はそのまま変わらない、固定化するものと見られがちなので、症状が軽くなったり何年も症状が出ないということがありながら、日本の社会の中ではADA法もないわけで、精神科の前歴があるということだけで罰せられる風潮がやはり少なからずあると思うんですね。
 そこで、厚労省は、こういうことに関して、どう立ち向かっていこう、啓蒙啓発をしていこうか、ADA法たるものをつくろうとされているのかという点などを御紹介いただけたらと思います。
太田政府参考人 今先生からお話がございましたように、障害を持つアメリカ人法、ADA法におきましては、幅広い分野で障害者を差別することを禁じておりまして、特に雇用に関しても、雇用主が障害者を差別してはならない、そういうような規定になっております。
 我が国におきましても、こういうアメリカのADA法制定の動きを踏まえまして障害者基本法が制定されているところでございまして、御案内のとおり、社会連帯の理念に基づきまして、障害者の雇用に関しまして、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるよう努めなければならない、こういうふうに規定しているところでございまして、障害を持つことによって差別があってはならないというふうに考えているところでございます。
 私どもとしましても、こういう障害者基本法の理念を具体化するために、障害者雇用促進法等に基づきまして障害者に対する各般の施策を着実に実施しまして、障害者の雇用の促進、障害者の雇用の場の拡大に努めてまいりたいと考えております。
北川委員 先ほどの他の委員からの御提言、御指摘にもありましたが、そのパーセンテージが上がらない、すごく上がらないというのが如実に報告されていますので、何らかの施策が必要だろうと思います。薬の方も開発されてきてかなりいろいろな症状を抑えることができるというふうにもなってきているので、ぜひ本来の意味で、法務省とか内閣府とかといろいろな協議が必要だろうということがわかりましたけれども、ぜひ厚労省がリーダーシップをとっていただきたいと思います。
 それで、次にお伺いしますのが、この法律の中にある手続の簡素化というものが……
佐々木委員長 北川さん、時間が来ていますから、なるべく簡潔に。
北川委員 では、最後、大臣に。
 現在、警備員は、アルバイトやフリーター、リストラの受け皿となっており、多種多様な人材が警備員になっていらっしゃいます。素行不良や、教育が追いつかないとも聞いておりますが、警備員の質の向上について警察庁はどのように考えているのか。
 また、人材の給与というものの切り捨てというのが昨今の風潮であります。やはり給与を上げるということがポイントではないかというふうに思いますが、大臣のお考えを最後にお伺いしたいと思います。
谷垣国務大臣 先ほどからの御議論のように、警備業というのは、国民の自主的防犯活動を補完したりあるいは代行したりするという、生活安全産業と申しますかそういうものですから、それに対するニーズにこたえられるだけの質というものがなきゃならないわけですよね。ですから、警備員に対して一定水準以上の教育を行うことが警備業法上も義務づけられている、それから臨時雇用の者であってもきちっと教育をしろということが義務づけられているわけでございますが、現実には、義務懈怠の違反もございます。警察では、行政指導とか行政処分により対応しているわけですが、今後とも引き続き、警備業者に対して教育をきちっとしていくような指導監督は行わなければいけないと思います。
 それから、給与の点は、これはやはり民間の給与水準の問題でございますから、私の口からこうせよ、ああせよということは、ちょっと申し上げにくいことでございます。
北川委員 では、どうもありがとうございました。
佐々木委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 第百五十四回国会、内閣提出、警備業法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
佐々木委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
佐々木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時四十五分散会


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