第5号 平成14年11月8日(金曜日)
平成十四年十一月八日(金曜日)午前九時三十分開議
出席委員
委員長 佐々木秀典君
理事 逢沢 一郎君 理事 青山 丘君
理事 小野 晋也君 理事 渡辺 博道君
理事 伊藤 忠治君 理事 細野 豪志君
理事 河合 正智君 理事 西村 眞悟君
大村 秀章君 奥山 茂彦君
嘉数 知賢君 金子 恭之君
亀井 久興君 木村 隆秀君
菅 義偉君 高橋 一郎君
谷川 和穗君 谷本 龍哉君
近岡理一郎君 西野あきら君
林 省之介君 菱田 嘉明君
井上 和雄君 石毛 えい子君
岩國 哲人君 枝野 幸男君
大畠 章宏君 鈴木 康友君
松本 剛明君 横路 孝弘君
太田 昭宏君 児玉 健次君
吉井 英勝君 北川れん子君
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議員 都築 譲君
議員 樋高 剛君
国務大臣
(国家公安委員会委員長) 谷垣 禎一君
国務大臣 鴻池 祥肇君
内閣府副大臣 根本 匠君
内閣府大臣政務官 大村 秀章君
内閣府大臣政務官 木村 隆秀君
文部科学大臣政務官 池坊 保子君
政府参考人
(内閣法制局第二部長) 山本 庸幸君
政府参考人
(内閣府国民生活局長) 永谷 安賢君
政府参考人
(警察庁生活安全局長) 瀬川 勝久君
政府参考人
(警察庁刑事局長) 栗本 英雄君
内閣委員会専門員 小菅 修一君
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委員の異動
十一月八日
辞任 補欠選任
奥山 茂彦君 菱田 嘉明君
高橋 一郎君 西野あきら君
岩國 哲人君 井上 和雄君
大畠 章宏君 鈴木 康友君
山花 郁夫君 松本 剛明君
山元 勉君 枝野 幸男君
吉井 英勝君 児玉 健次君
同日
辞任 補欠選任
西野あきら君 高橋 一郎君
菱田 嘉明君 奥山 茂彦君
井上 和雄君 岩國 哲人君
枝野 幸男君 山元 勉君
鈴木 康友君 大畠 章宏君
松本 剛明君 山花 郁夫君
児玉 健次君 吉井 英勝君
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十一月八日
構造改革特別区域法案(内閣提出第六九号)は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
古物営業法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第六八号)
構造改革特別区域法案(内閣提出第六九号)
特殊法人等及び独立行政法人の整理等に関する法律案(都築譲君外一名提出、第百五十四回国会衆法第二六号)
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○佐々木委員長 これより会議を開きます。
第百五十四回国会、内閣提出、古物営業法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第二部長山本庸幸君、内閣府国民生活局長永谷安賢君、警察庁生活安全局長瀬川勝久君及び警察庁刑事局長栗本英雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○佐々木委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子恭之君。
○金子(恭)委員 おはようございます。自由民主党の金子恭之でございます。
今回議題になっております古物営業法改正につきまして質問をさせていただきます。
この古物営業法につきましては、御案内のとおり、古物営業における盗品等の売買の防止、早期発見等を図るための古物営業について必要な規制等を行い、もって窃盗その他の犯罪の防止を図り、その被害の迅速な回復に資することを目的として昭和二十四年に制定されたわけでございまして、極めて重要な役割を果たしておることは申すまでもありません。
これまで、時代に即してこの改正がなされてきているわけであります。前回は平成七年に主要な改正が行われているわけでございますが、まず最初に、今回の改正につきまして、趣旨につきまして大臣よりお話をお聞かせいただきたいと思います。
○谷垣国務大臣 高度情報通信ネットワーク社会へ移行してまいりまして、インターネットを利用した古物取引というのも随分量的に拡大してまいりました。こういう大きな流れの中で、ホームページを利用した無許可営業というのも出てきている。それから、従来、古物商は取引をするときに相手方を本人確認するようにというのが法の要求するところだったんですが、ネットワーク上、インターネット上、そんなことをするのはとても無理だというので、平成十二年十月には当時の経団連から、電子署名のような仕方で本人確認をすればいいじゃないかというような規制緩和要望も出ている。それだけ広がってきたわけですね。
一方、だれもが手軽に古物取引に参加できるいわゆるインターネットオークションが発達してきている中で、財産犯人がインターネットオークションを利用して盗品等を処分するという事例が随分出てまいりまして、少年による犯行を初め、財産犯が誘発をされているという面があるわけですので、これを防止する必要がやはりあるのではないかというのが一つございます。
それから、財産犯に係る最近の犯罪情勢というのは極めて厳しい状況にありまして、犯罪も広域化しているわけですが、電子メールなどを利用して、品触れ制度、こういうものが盗まれたものですというような、そういう品触れ制度を一層活用することが求められているとか、こんな動きがあるように思います。
こういう古物の取引におけるインターネットの利用の拡大にかんがみまして、古物営業法の目的である盗品等の売買の防止、速やかな発見などが効果的に達成されなければいけないということで、今回の改正では、まず第一に、ホームページを利用して取引を行う古物商の遵守事項について定めますとともに、二番目として、古物商が買い受け等の相手方を確認するための措置に関する規制緩和を実施する。それから三番目として、古物競りあっせん業、いわゆるインターネットオークション等でございますが、これに関しまして、営業の届け出、申告、そのほかの遵守事項、それから競りの中止命令あるいは業務の実施方法の認定に関する規定を新設する。それから四番目として、品触れの発出方法として電子メール等を利用する方法を追加する。こんなことを盛り込みまして現時の情勢に合わせていきたい、こういうことでございます。
○金子(恭)委員 今大臣の方からお話がありましたように、非常に今インターネットの利用人口が急激にふえている、それに伴って電子商取引というのも非常に市場規模が毎年急激に増加しているという中で、だれもが気軽に、手軽に参加できるということで、インターネットオークションというものもここ数年間に非常に急激に伸びている分野であろうと思います。
そういう中で、今大臣の方からもお話がありましたように、今回の改正の中で、古物営業の規制の対象にインターネットオークションを加えるということが言われたわけでありますが、今簡単にお触れになりましたが、もうちょっと深く掘り下げて説明をしていただければありがたいと思います。
○瀬川政府参考人 お答えいたします。
御質問にありましたように、高度情報通信ネットワーク社会への移行に伴いまして、だれもが手軽に古物取引に参加できるインターネットオークションが発達をしてきております。その中で、財産犯がこれを利用して盗品等を処分するという事例が多発をしておるわけでございます。
インターネットオークションは、インターネットを用いるということから取引への参加が容易であります。また、競りの方法を採用しているということで、古物の売買が成立しやすい場であるというふうに認められます。さらに、インターネットオークションには、これはインターネット特有でありますが、高度の匿名性があるというほか、さらに、売却の相手方が古物に関する専門的な知識を有しない消費者であることが通常であります。こういったことから盗品等の処分に利用しやすい場となっているということで、盗品等の処分事例が多発しているというふうに認められます。
したがいまして、インターネットオークションにおける盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るために一定の規制等を導入する必要があるというふうに考えているところであります。
今回、こういった状況に対処するため、古物を取り扱う営業について必要な規制を定めております古物営業法に改正を行いまして、インターネットオークションに係る届け出制、申告その他の遵守事項、認定制度等の必要最小限度の規定を設けることとしたものであります。
○金子(恭)委員 今局長の方から現状の問題点についてお述べいただいたわけでありますが、私もある意味ではこのインターネットオークションを規制に加えることについては賛成でありますが、中には、法規制までしてこれをやる必要があるのかという方々も大勢いらっしゃるわけでありまして、そのことについてもっと犯罪の内容とか件数とか詳しい内容をお聞かせいただいて、そのことについての反論といいますか、御意見をお伺いしたいと思います。
○瀬川政府参考人 最近の治安情勢でございますけれども、刑法犯の認知件数は平成十三年に二百七十三万件を超える、戦後最高を記録しております。中でも窃盗犯の増加が著しいという状況にあります。
インターネットオークションにおける盗品等の処分状況を見ますと、都道府県警察に対して調査をいたしましたところ、平成十二年一月から十四年九月までの二年九カ月の間でございますが、件数にして六百三十件、金額にして二千三百六十六万円に上っております。
これは潜在している事例の一部にすぎないというふうに認められますので、検挙率でありますとか被害届率に基づきましてこれを割り戻すという形で暗数を推計してみますと、インターネットオークションにおける盗品等の処分状況は全体では八千七百件、被害額が三億五千万程度に達しているというふうに見込まれるわけであります。
その状況を若干詳しく申し上げますと、特徴といたしまして、複数回にわたり、要するに何度も反復継続して盗品等を処分している事例が八五%と非常に多い。それから、少年による盗品の処分事例が五一%と約半数を占めている。それから、女子高生の下着ですとか制服とか、いわゆるマニア向けの、ある意味では流通性の低い特殊な物品も処分をされているというようなことで、インターネットオークションには盗品等の処分が容易な環境がある。これが少年や特殊な物品を処分しようとする者にとっては大変好都合な状況になっているというふうに懸念をしておるわけであります。
事例を紹介せよとのお尋ねでございますので申し上げますと、例えば、男子高校生が、インターネットオークションで女子用の制服が高く売れる、こういうことを聞いて女子高生の制服を盗むというような事例でありますとか、少年のグループが、インターネットオークションで小遣い稼ぎをしようと考えて、バイク部品を大量に盗んでインターネットオークションで処分を繰り返している、こういった事例があります。したがいまして、少年によるものは最も懸念をされますが、それ以外にも、財産犯を誘発するという問題点があるのではないかというふうに見ているところであります。
こういった状況を踏まえまして今回の改正をお願いしているところでございます。
○金子(恭)委員 今局長のお話を聞いていますと、ある意味じゃ非常に青少年犯罪の温床になっているというような形で、逆に、だれもが手軽に参加できるということがそういうことにつながっているという意味では、非常に今回の規制というのは当然ではなかろうかなと思っているわけであります。
そういう中で、今回の改正の中でこの規制をすることによりまして、こういう犯罪を防止するとかという中でどういう効果があるのか、お答えいただければと思います。
○瀬川政府参考人 今回の改正におきましては、幾つかの点がございますが、まず、事業者に対しまして、出品された古物に盗品等の疑いを認める場合は、警察官にその旨を申告していただくという義務を課すこととしておりまして、盗品等の速やかな発見を図ることができるのではないかと考えております。
それからさらに、出品された古物につきまして盗品であると疑うに足りる相当な理由がある場合は、警察本部長等は事業者に対して競りの中止を命ずることができることとしております。これによりまして、財産犯による盗品等の売買を間際で阻止して、犯罪被害の回復に資することができると考えております。
さらに、出品者の確認の努力義務を課しておりまして、これにより、インターネット上の取引の匿名性を排除する、これによりまして主として盗品等の売買の防止が図られると思います。
それから、取引記録の作成や保存の努力義務を課しておりまして、盗品等の発見と犯罪被害の回復に資することができるのではないかと考えております。
それから、認定制度を設けることとしております。これは、盗品等の売買防止と速やかな発見に自主的に取り組んでいる事業者を利用者が判別できるようにするということによりまして、財産犯人が容易に盗品等を出品できる場が淘汰されて減少すると同時に、そのような取り組みを自主的に行う事業者が増加することによりましてインターネットオークションにおける盗品等の売買防止に資することができるというふうに考えております。
そのほか、インターネットオークションを通じた取引というのは、見ず知らずの他人と対面しない非対面取引であります。しかも、盗品を買い受けた場合は、民法の規定によりまして、盗難発生から二年間は被害者からの請求に応じて返還をしなければいけないということになっております。そこで、盗品等の売買の防止を図るということは、とりもなおさず消費者の保護と取引の安全が確保されるということにもなるわけでありまして、電子商取引の活性化にもつながり、ひいては国民経済の発展に資する効果も得られると考えているところであります。
○金子(恭)委員 今、効果についてお話をいただいたわけでございますが、規制をすると、必ず一方でそれに反対する方々もいらっしゃるわけで、インターネットの商取引というのは、さっきから何度も言いますけれども、だれもが手軽に参加できるということが一番の利点でございまして、そういう意味で、インターネットを通じたこういう自由な取引が阻害されるのではないかということを言う方がいらっしゃると思います。国民経済に不当な影響を与えることにならないか、そのことについて御見解をお願いいたします。
○瀬川政府参考人 今回の規制が導入されることになりましても、例えば出品者の確認や取引記録の作成、保存を行わない事業者が営業を継続することは可能でございます。
出品者や入札者に具体的に影響が及ぶのは、盗品等であると疑うに足りる相当な理由を警察で認めた場合、古物の競りが中止されるという必要最小限度の場合に限定をされております。このような内容の規制の及ぶのは、社会通念上相当のものではないかというふうに考えておりまして、現に、多くのインターネットオークションの利用規約の中で同様の事項が定められているものというふうに理解をしております。
一方、先ほど申し上げましたとおり、インターネットオークションを通じた見ず知らずの他人との非対面で行う取引というのに対しましては、利用者は大きな不安を抱くということにもなっているわけでありまして、また、盗難品であった場合の民法の二年間の返還期間というような問題もあり、取引の安全上問題であろうというふうに思います。
こういった状況や、現に盗品の処分の事例が多発しているということをあわせて考慮すれば、今回の規制の内容は、インターネットの自由な取引や国民経済を不当に制限するものとは認められず、むしろ、インターネットを利用した古物取引の安全が確保されるということで取引の活性化につながり、国民経済の発展にも資するということではないかと考えているところであります。
○金子(恭)委員 そういう意味で、今局長の方からお話がありましたように、そのことを遵守していただいて、よりよい改正になるように御努力をいただきたいと思うわけであります。
最後の質問になるわけでございますが、今回の改正につきまして、インターネットの利用者数というのは物すごい莫大な数だというふうに聞いておりますし、また商取引の数も物すごい数でありますが、その方々にどうやってこの改正を知らしめるか、これが非常に大きなこれからのお仕事だろうと思うのですね。いい制度、規制がかかったとしても、それが利用されなければ、だれも知らなければ何の意味もないわけでありますので、きちんとその周知徹底について御努力をいただきたいと思いますし、また、周知徹底と同時に、やはり監視体制というのが非常に重要じゃないかと思うのですね。
私が危惧しているのは、きちんとした形で届け出をして、自分のホームページにも情報を得て、そしてまた都道府県の公安委員会の方にも登録した方々というのは、ある意味では非常にみんな安心して取引ができる相手でありますが、ある意味、そこに盗品が行くとは思えないんですね。ある意味では、裏、無登録の業者を選んでそういうのが集中するのではないかなという危惧を私は持っているわけでありますが、そういうことも含めて、周知徹底の仕方、それから今度の改正についての、正直者がばかを見ないように、きちんとした監視体制を、そして違反した者にはきちんとした罰則をしていただくということをお願いする次第でございます。最後にその点についてお聞かせいただきたいと思います。
○瀬川政府参考人 御指摘のとおり、インターネットを利用した古物の取引が大変活発化しておりまして、当然一方で、無許可のインターネットにおける古物の取引というのも多発をしております。
今回の改正では、こういった無許可の営業の淘汰、排除を図るということで、ホームページを利用して古物取引をする古物商に対しましては、ホームページ上にその許可証番号等を掲示するということを義務づけることとしております。一方で、都道府県警察のホームページに、これら古物商の名前でありますとか許可証番号あるいはホームページのURL、こういったものを掲載するということにしております。
また、監視体制という御指摘でございましたが、警察ではサイバーパトロールというものを実施しておりまして、インターネット上の違法行為の発見、検挙に努めているところであります。今回の改正案が成立いたしますれば、一見しただけでその営業者が無許可であるかどうかということを区別することが非常に容易になるということでありまして、こういったサイバーパトロールも効果的に実施できることとなると考えておりまして、引き続き違法行為の摘発に努めてまいりたいと思います。
それから、周知徹底のお話でございますが、こういった今回の改正の仕組みにつきまして、消費者の方、利用者の方がよく御理解をいただいて、取引しようというときは、警察のホームページを見て、これは本当に間違いのない、許可を受けた業者かどうか確認をしていただくというようなことをしていただくということが非常に有効である、重要であると考えておりますので、広報啓発活動につきまして積極的に推進をいたしまして周知徹底を図り、今回の制度が有効に機能するように努めてまいりたいと考えております。
○金子(恭)委員 ありがとうございました。
○佐々木委員長 以上で金子恭之君の質疑は終了いたしました。
次に、枝野幸男君。
○枝野委員 おはようございます。
古物営業法についてお尋ねをさせていただく前に、通告をしておりませんので御答弁は結構なんですが、せっかく国家公安委員長に御質問ができる場ですので、一点だけ、お願いといいますか、申し上げておきたいというふうに思います。
本日夕方にダライ・ラマ法王が日本を訪れられます。トランジットで、一泊されるだけであります。従来からダライ・ラマ法王を政治的にどう位置づけるかということは難しい問題があるかもしれませんが、世界のVIPであることは間違いございませんので、法王が日本に来られた際には警察の方でVIP扱いで警備をされておられた。ところが、先日、実は今回モンゴルに行かれて帰ってくるということなんですが、モンゴルに行かれるときに日本でトランジットされた際には、それまでは千葉県警が公然と警備をつけておられたのが、四日だったと思いますけれども、行かれるときには、その後いろいろ聞いてみますと、見えないところで警備をされていたなどという御説明はあるんですけれども、少なくとも、目に見える形で従来までやっていたような警備をされなかった。
同僚議員が実際現場にもいましたので、心配をしまして警察庁の方にいろいろ問い合わせましたら、きょう来られた際にはきちんと従来どおりの警備をされるということですので結構なんですが、お答えになれないでしょうが、どうもほかの国の大使館あたりから内政干渉でもあったのかなと思わざるを得ないなと思っております。
政治的にダライ・ラマ法王をどう位置づけるかは先ほど申したとおり別問題として、警察がどういう方を警備するかというのは政治問題とかかわりなく、危害を加えられる、ねらわれる可能性がある要人ということであれば、政治的な立場に関係なく警護されるのは当然のことだと思います。その場合、ダライ・ラマ法王というのは世界のVIPであるのは間違いないわけで、日本に滞在されている間、日本の警察の責任で何も起こらないようにされるのは当然だと思いますので、ぜひ今後もきちんと、法王が来日される際には警察の方で警備をしていただきたい、まずそのことを最初に申し上げておきたいと思います。
○谷垣国務大臣 一般的に、どういう方を警備し、あるいは警備しない、どういう手法で警備するということは、手のうちをさらすことになって、表にしないということになっているようでございますので、今の枝野委員の御趣旨はよく承りました。
○枝野委員 それでは本題に入りますけれども、先ほどから、インターネットオークションについて、そこで盗品の売買が行われている、そこに問題を感じて法改正をしたということですが、これは要するに改正案の二条二項三号で書いております古物競りあっせん業、これがインターネットオークションのことである、これでよろしいですね。
○谷垣国務大臣 いわゆるインターネットオークションを古物競りあっせんという、今お引きになった条文でそういう言葉で表現しているわけです。
○枝野委員 だれに聞いたらいいのかなと思ったあげく、文部科学省のところにある文化庁に国語課というのがあるということを知りまして、文部科学省の方から来ていただいたんですが、あっせんという言葉、日本語は通常どういうふうに使われているというお尋ねにどうお答えいただけるでしょうか。
○池坊大臣政務官 文化庁の国語課でお答えするのは大変難しゅうございますので、辞書から引いてお答えさせていただきたいと思います。
大辞泉によりますと、あっせんというのは「間に入って双方をうまく取り持つこと。」二番目に、「労働関係調整法による労働争議の解決方法の一。労働委員会が指名した斡旋員が労使間を取りなして、争議の解決を図ること。」三番目、「行政法上、公益事業用地の取得をめぐる当事者間の紛争を解決するために行われる手続き。」これは広辞苑、大辞林、日本国語大辞典においてもほぼ同じような意味のことが書かれてございます。
○枝野委員 今言っていただいた三つの意味、特に後段二つとも、一つ目の意味について法律的に何かなっている。いずれも、人と人との間の意見が分かれていたり立場が違っているところを間に人が入ってうまく取り持つという意味であるのは、皆さんお聞きになっていても異論ないと思いますし、日本語の意味としても、みんなあっせんと聞いたら間に入ってうまく何か取り持つことだよねというのはある意味常識だと思います。
ところが、この法律で古物競りあっせん業、そして対象にされているインターネットオークションというのは、要するにインターネットの画面にだれか何か売りたいという人がいたら勝手にアクセスしてきて載っけてください、それを見た人が勝手に幾らなら買いますとインターネットにアクセスしてください、それを見た売りたいと思っている人は一番高い人に、じゃ、この人に売ろうか、後は本人同士で物を送ったりお金を渡したりということが行われる話であって、インターネットオークション業者が、こちらでこういう高い物を高く売りたいと思っている人がいる、こちらにできるだけ安く買いたい人がいる、間に入って何か動いたりすることでは全くない。
あえて法律的に定義をするとすれば、古物に関して、その買い受けの申し込みの誘引の広告を行い、それから申し込みの誘引に対する申し込みについて競りを行い、最高価格の申し込みに関する情報を申し込みの誘引者に通知する役務をコンピューターを使って行う。つまり、広告媒体を提供してこっちから来た情報をこっちに渡してあげるというだけであって、今大臣政務官がおっしゃられた普通の意味での日本語のあっせんという言葉の理解の範疇から考えると、どうもインターネットオークションということをあっせんという言葉で扱ってしまうと、常識的な日本語の意味としてのあっせんとここで使われるあっせんということの意味がずれているというふうに思うんですが、国家公安委員長、いかがでしょうか。
○谷垣国務大臣 枝野議員に法律上の言葉の解釈を説くのは釈迦に説法でお恥ずかしいんですが、一般的に言って法律用語は、辞書に書かれているような常識的な意味合いといいますか、一般的な意味合いを踏まえて使うのが当然と申しますか、本来であろうと思います。
ただ、今度は法律ということになりますと、一般に使われている意味合いと全く同じ意味合いで使っているかというと、やはり、それぞれの法の趣旨や何かを加味しましてある程度限定していくとか、限定だけではないかもしれませんが、いろいろなことがあり得るということは枝野委員御承知のとおりだと思います。
それで、今インターネットオークションはどういう機能を果たしているかという御説明がございまして、事業者が利用者と交わしている契約は、今委員がおっしゃいましたように、コンピュータープログラムを利用することの許諾であって、利用者はその契約に基づいて売買しようとする古物の広告を行うことができるという法律構成で当事者はやっておられる、それはもう確かだろうと私は思います。
しかし、他方、インターネットオークション事業者は、古物の売却をしようとする者と買い受けようとする者との間でのオークションが行われるシステムを提供するわけですから、これによって出品物の情報を掲載する、それからオークションへの入札あるいはオークションによる落札、双方の連絡先の通知というようなものが行われるわけですね。それで、競りの方法を用いながら古物を売却しようとする者と買おうとする者を結びつける働きを、この場が、このシステムで行われているわけで、その結果として相互に結びつくという機能があると思うんですね。それをこの法の上ではあっせんという言葉で表現をしている。そういう意味でこのインターネットオークション事業者の実態をあっせんという言葉を使って表現したというふうに私どもは考えているわけです。
○枝野委員 こういうときの大臣が弁護士としての大先輩であってよかったなと思っておりまして、中身の深い議論ができるんじゃないか、よかったなと思っておるんです。
今お話しになった中で、確かに、普通の日本語を法律の言葉で使うときにはそれよりも限定される、もちろんいろいろな要件がつく、それはある意味当たり前だと思うんです。微妙にずれることがあるということはあるかもしれない。だけれども、少なくとも当事者、普通の人たちが受け取る言葉の意味、理解と、法律の言葉で使われていることの意味がずれてしまっているというか、本人たちの意識と全然違う使われ方をしているということがあっていいのかどうかというのは疑問だと思います。
その前にちょっと、法制局に来ていただいていて、一点だけ確認をしておきたいんですが、今大臣の御答弁の中にもありましたとおり、普通に国語辞書的に書いてある日本語の意味と法律上書かれている言葉の意味が食い違う場合がある、これはこれでよろしいですね。法制局として、内閣を代表してお答えいただけますか。
○山本政府参考人 お答え申し上げます。
法令といいましても、要するに、国民がこれを読んで理解できるものでなければなりません。そういう意味で、用語の意味についても、普通は辞書に載っているような、そういう一般的意味で用いることが原則だと思います。
ただ、法令によりまして、一般に法令というのは権利義務の規範でありますから、そういう意味で論理的な正確さ、厳密さというものが要求されることは事実でございます。そうした観点から、いわゆる多義的な用語につきましては、必要に応じて定義規定を置きましてその法令における用語の意味を明らかにするということをしております。その結果として、同じ用語であっても法令ごとに多少定義が異なるということはあり得るものと思います。
さらにまた、法令の趣旨、目的、あるいはその法令が適用されるという場面は、もちろん各法令によって違うわけでございますから、同じ用語を用いたとしても、規定全体の中でその意味を考える場合には、法令の規定によって多少異なる意味合いがあるということも事実でございます。
○枝野委員 法制局、これで結構です。ありがとうございます。
それで、あっせんに似たような話であるということは私も否定はしません。しかし、では、インターネットオークションを利用している人たちがインターネットオークション業者にあっせんをしてもらっているだなんという認識があるかどうか、あるいは、インターネットオークション業者に、自分たちはあっせんをしているんだという認識があるのかどうかということを考えると、普通の日本語の意味、これは人によって常識の範囲が違いますと答えられたらそれまでなんですが、常識的に考えて、利用者は、あっせんをしてもらっているんじゃなくて、業者が提供してくれた場を使っている。
あえて例えて言えば、フリーマーケットにお店を出した、そこで、フリーマーケットで買い物をする。フリーマーケットは主催者がいるわけで、主催者は場所を区切って、それで、出展する人はこの区画、この区画とやっている。そこに並べておくと、買いたい人がやってきて、売り買い自体はそこで本人同士でやる。このフリーマーケットの場を設定している人たちをだれもあっせんとは思わない。
インターネットオークションの場合も、基本的には、売り買いをする、競りをするというプログラムという意味では、単に物理的な空間よりは複雑かもしれませんが、場を提供しているという意味では全く同じではないのか。そう考えると、このインターネットオークションをあっせんという言葉で定義をしてしまったということは、やはり国民の常識とは、ずれるんではないかと思いますが、いかがですか。
○谷垣国務大臣 意識がどこにあるかというのもこれはなかなか難しい議論ですけれども、繰り返しになりますが、私どもは、先ほど申し上げたような、単にフリーマーケットに行くというだけじゃなくて、出品物の情報の掲載、あるいはオークションへの入札、落札、それから参加者の双方の連絡先への通知がまさにそのシステムを利用してその利用契約のもとで行われる、そういうことで結果として結びつける作用が働いている、そこに着目しているわけでして、私は、枝野委員と若干日本語の感覚が違うのかもしれませんが、そのことを目してあっせんという言葉からえらく外れてしまったというふうには私は思わないんです。
ちょっと、こういうあれをすると、何か議論というよりか、感覚が違うよなと言っているようで、私もこういう答弁でいいのかなと思うんですが、実はそういうふうに感じておる次第です。
○枝野委員 実は、これは単にあっせんと書くのかどうかということだけではなくて、後、これから申し上げるとおり、この法律は全く中身がないと思っているんですが、中身がないのに、何か業者に努力義務か何かを課しているということの出発点は、あっせんという言葉に引きずられて、この業者は間に入って何かしているんですよねということを前提にしていろいろな義務を課したりしているというふうなつながりが私はあると思っているんです。単にプログラムを提供しているという理解なのか、それとも間に入って何かしていますという理解なのかで、間に入っている業者にどういう責任を課せるのか、義務を課せるのか変わってくるわけでして、単に言葉遊びではないと思っています。
そうした意味の中で、例えば、確かにインターネットオークションの場合はいろいろとその途中に複雑なプログラムが入りますが、ではフリーマーケットの場合は何もしていないのかといったら、フリーマーケットの場をつくった人は、何月何日にフリーマーケットがありますよだなんてことで人を集めるというようないろいろなことをしてくれているわけですし、私はフリーマーケットに出展したことはありませんから詳細までわかりませんけれども、やはりそのフリーマーケットの中におけるいろいろなルールをつくってあげて、変な人が入ってきて場を混乱させたりとかしないようにという仕組みをきちんとつくってあげるというような一種のプログラムを提供しているんですね。ルールを提供してあげているから、フリーマーケットの場にみんながわあっとやってきてそこで物を売ったり買ったりするということが行われている。それがたまたま電子的プログラムになったのかどうかということにしかすぎなくて、本質的なところはフリーマーケットの場の提供もインターネットのオークションも同じである。
そういうときに、フリーマーケットの業者があっせんだなんということは、これはさすがにだれも思わないんだろうと思いますし、そこまでやっていることについて意味づけを与えるというのは、私はおかしいのではないか。これが何もあっせんという言葉を使わなければ法律が書けないのかというとそうではなくて、例えば、一番あっさりと書くのだったら、競り売りの方式で行う形式を備えた電子広告プログラムの提供の営業というような書き方があるでしょう。
厳密に言うのであれば、私たちは、この法案が提出されてから警察庁の皆さんとディスカッションをする中で、こういうふうに変えられませんかということで院の法制局などとも御相談をして、例えば、先ほどもちらっと申しました。急いで読みますから速記の方に申しわけないんですが、古物に関し、求めに応じ、その買い受けの申し込みの誘引の広告を行い、当該申し込みの誘引に対する申し込みについて競りを行い、及び最高価格の申し込みに関する情報を申し込みの誘引者に通知する役務(コンピューターを使って)を提供する事業、例えば、以下古物ネットオークション事業というというような、日本語としてこれが練れた日本語かどうかは別問題として、一般的に、国民に権利義務を課すような法律で厳密に法律の条文を書きましょうという従来の政府の姿勢からすれば、これぐらい書いてもおかしくなくて、あとは一般に、例えば古物ネットオークション事業と書けば済むだけの話なのに、どうしてこういうあっせんだなんて言葉を使ったのかがさっぱりよくわからないんですが、そのあたりのところは御説明はできますか。
○谷垣国務大臣 確かに、枝野委員を中心としてそういうことを検討されたということは私も承知しておりますが、先ほどの繰り返しになりますが、競りの結果として相互に結びつくという社会機能、そういう機能面も含めてインターネットオークションの定義づけをしたいというのがこの法律の考え方でございます。
それで、今枝野さんがおっしゃった広告という言葉は、早口でおっしゃったんですが、多分広告とおっしゃったわけですよね。それで、それは売り主の意向を広く一般の人に知らせることを意味するにとどまるんじゃないか。そうすると、私が先ほどから申し上げているような機能を十全に敷衍することができないのではないかなというのが私どもの考え方なんです。
○枝野委員 これは通告しなかったので、お答えになれなければ仕方がないんですが、インターネットオークションで買いたいという申し込みがあって、幾らで買いますと言って、最高価格の人がどこの何という人で幾らでというのが売りたいという人に通知をされるわけですけれども、この時点では契約は成立しないと思うんですよね。そういう、幾らで買いたいという人が出てきたけれども、自分が広告的に示した最低売り渡し価格よりは上に行っているけれども、でも、申し込まれたら、やはりこの人には売りたくないなといったら、売らなくて済むんじゃないんでしょうかね、インターネットオークションでは。
そのことに対して何の制裁もかけられないというか、契約を結んだんだから売りなさいということで民法上の権利義務関係は発生しないんじゃないですか。あくまでも、その最高買い受け価格が、だれが申し受けたのかという通知がなされるだけで、その通知に基づいて初めてそこで売り手と買い手の間で売買契約が成立するんではないんでしょうか。
○谷垣国務大臣 ちょっと今の点は、私も裁判所でも通用するような答えにはなるか自信がないんですが、今のお話は、契約は成立していないのかもしれないなとお話を伺いながら思いました。ただ、選定して紹介をしているというところに意味があるのかな。ちょっとここのところは、実は十分な自信があって言っているわけではありませんので、申しわけありません。
○枝野委員 一般の日本語であっせんといった場合には、この人が買い手候補、この人が売り手候補、ぜひ契約しなさいよというようなところで仲裁的に入るからあっせんだと僕は日本語としては思いますので、今のようなことだとすると、これはあっせんという言葉じゃなくて、あくまでも買い受け候補者の紹介にすぎないのであって、やはり、あっせんという日本語とは違うんじゃないかと思いますが、後のこともあるので、文部科学大臣政務官に最後のお尋ねをします。
今の議論をお聞きになっていてどういうふうに受け取られたか。政府のお立場ですから、いや、あっせんという言葉の範囲内だとおっしゃられればそれまでなんですが、やはり、普通の国民が受け取っているあっせんという言葉と、この法律でインターネットオークションまであっせんという言葉に読んでいるということには、私はずれがあると思います。
そのずれがあるということについて、昔つくった法律で普通の日本語と法令上の日本語にずれがあるというのは、昔つくっちゃったからしようがないですが、今、日本語の乱れとかいろいろなことが言われている中で、新たにつくる法律で、国民が普通に使っている国語辞書的な、正しいというかの日本語と法令上出てきた言葉の意味とにずれが出るというようなことは、一つは、文化行政、日本語文化というものを守るという観点から、あるいは国語教育という観点から、私は望ましいことではない、ほかにかえ得るんだから、何もこういう望ましくない法令をつくるべきではないと思いますが、いかがでしょうか。
○池坊大臣政務官 今議題となっております法律内容を十分に私は把握いたしておりませんので、このことに対してはお答えするのは差し控えたいと思いますが、一般的に、私は、やはり日常生活と法律用語とは同じであった方が私どもにはわかりやすいのではないかというふうには考えております。
今、日本語はどうなっていくのか。ただ、少年法のときも、少年というのは、私たち一般は少女と対比して使います。小中高校生のことを少年といいますが、少年法の場合には、成人に比して、少女も含めて少年でございましたし、児童福祉法でも少年というのは定義が別にございましたので、そういうことがあるのではないかしらんというふうには思いますが、一緒である方がいいとは思っております。
加えて、文部科学省から言わせていただくならば、日本語というのは、ただ意思の疎通にとって大切だというだけでなくて、日本人並びに日本人の心の問題だと思っておりますので、これからも次の世代に日本語が正しく使われますように、私どもは力を尽くしていきたいというふうに思っておりますし、文化審議会の国語分科会でも、「これからの時代に求められる国語力について」という審議もいたしております。
ただ、やはり言葉というのは、生まれてきた根底というかよりどころ、規範というものがございますので、それを大切にしながら時代とともに歩んでいくことが大切と思っておりますし、その点を留意しております。
○枝野委員 ありがとうございます。
私も、過去につくった法律でずれが出ている、そのことは現実として存在しているわけで、それをできるだけ直すという努力をすべきかすべきでないか、まあ、いろいろあるんだと思います。だけれども、新しい法律をつくるわけですから、新しい定義を置くわけですから、その場合には、何も疑義のあるようなことはしなくていいんじゃないかというふうに思いますが、いずれにしろ、お忙しい中、大臣政務官、ありがとうございました。
さて、まず入り口のところでこの定義にそういう問題があるんですが、条文、ちょっと逐条的に問題点をやっていきたいというふうに思うんです。届け出のこともあるんですが、ちょっと先に、真偽の努力義務の方から入っていきたいというふうに思います。
二十一条の二、「相手方の真偽を確認するための措置をとるよう努めなければならない。」と書いてあるんですが、まず、前提事実として、現在のインターネットオークションは、その取引件数というべきなのか、取引されている金額というべきなのか、大手の三社が、ほぼ一〇〇%という言い方を警察庁の方はおっしゃっていましたが、シェアを占めている。そして、この大手の三社は、自分たちの自主的な判断で本人確認、真偽を確認するための措置を既にとっています。そうした中でこうした努力義務を法律で書くことの意味は何かあるんでしょうか。
○谷垣国務大臣 確かに、今、枝野さんがおっしゃるように、大手三社でほとんど市場を占めているというふうに私は判断しているわけですが、そういう中で、今おっしゃったように三社として努力をしていることも事実で、私はそれは評価すべきことだなと思っているんです。
ただ、現実問題、新しいものが出てこないという保証もありません。それから、そういうときに、このインターネットオークションを利用した盗品の売買等があるわけですけれども、それに使われる理由というのは、匿名性にあるんだと私は思うんですね。だから、匿名性にあると思いますから、本人確認義務を課す。確かに現状では三社ですけれども、今後出てくる可能性もあるわけですから、そうやって市場を整備していく意味というのは、私はあると思います。
○枝野委員 先ほど来の質疑の中でも本人確認義務とおっしゃっているんですが、もし、本当にこれが本人の確認ということをさせておかないとまずいということであるならば、逆に、何で努力なんでしょうか。法的義務を課さないで、努めなければならないということなんでしょうか。
現実に、ほとんどの取引は本人たちの努力で本人確認をさせている、それで大方のところは問題ない。いや、それでも、ほんの一部でも問題があって困るということであるならば、法的義務にしなければ理屈が通らないと思うんですけれども、いかがですか。
○谷垣国務大臣 そこはなかなか実は難しいところで、枝野委員は先ほど、この法律は実効性がないということをおっしゃったわけです。これは、取り締まって犯罪を摘発していくという立場からすれば、行け行けどんどんというのがいいのかもしれませんが、それはそうはいかないので、やはりできるだけ抑制的にということも私は必要なんじゃないかと思います。
そうしますと、すべて義務といいますか、あるいは背景に、例えば罰則でもってどんどんやっていくより、現実に大手三社で努力義務をしてやっていただいている、それならば、新規参入していただく方もそういうことを課して、匿名性というものを排除して犯罪の可能性を少なくしていくということは、私は十分に意味のあることだ、こう思います。
○枝野委員 私は、この本人の真偽確認ということについては、実はこの法律を離れたところでは、Eコマースの世界で考えなければならない部分なんだろうと思います。つまり、本人の真偽が確認できなければ、取引をする相手方との関係で問題が生じるというのは間違いないわけです。それは、盗品が出るとか出ないとかということにかかわらず、一般的に、取引の相手方としては、インターネットを通じてしか知らない相手が本当にこの人で間違いないのかということを確認しないと安心して取引ができない。それは、インターネットにおける取引を活性化していくという時代の方向性からすると、必要なことなんだろうと私は思っています。
だから、別途、この部分について立法化をして、Eコマースにかかわる部分のところを、関係している業者に、本人確認義務といっても、現状でやれば、クレジットカードなどを使った簡便な方法でいいという流れでありますから、例えば、そういうことであるならば、むしろ、盗品云々という話ではなくて、取引の相手方保護という観点から、恐らくこの場合は内閣府が所管でやるんでしょうけれども、取引の安全という観点から、消費者保護という観点から、真偽確認は法的義務にするというのが一つの考え方ではないかというふうに思っているんですが、しかし、この法律の中で、少なくともインターネットオークションという世界では、実際には本人確認がほぼ一〇〇%なされている。
それから、インターネットオークションは買い手がいなければいけないわけですけれども、買い手の立場からしてみれば、まさに盗品とかが紛れ込むかもしれない、ある意味では危ない部分の取引の世界のところで、本人確認をしているインターネットオークション業者を当然のことながら消費者は優先して使いますから、こんな義務規定を置かなくても、逆に、一〇〇%近いシェアを占めている大手三社が本人確認の義務を課しているところに新しい業者が参入するときに、本人確認ぐらいしていなかったら、そこに買い受け希望者が入ってくるとはとても思えない。そういうことを考えると、ほとんど意味のない規定であるということをまずこの規定については申し上げておきます。
次は、申告義務、これは義務です。二十一条の三で、「盗品等の疑いがあると認めるときは、直ちに、警察官にその旨を申告しなければならない。」趣旨自体は悪いことじゃありません。だけれども、これまでもいわゆる大手三社と言われているところは、警察の皆さんにできる限り任意で協力しましょうとやってきているというふうに聞いていますが、では、今まで盗品がインターネットで取引をされたというケースで、被害者からの連絡とか犯人の検挙とかが端緒でなくて、インターネットオークションに出展されたということ、それに対して事業者が気がついて、それで何か手を打とうとしたというようなことが端緒になって捜査が進んだということはありますか。
○谷垣国務大臣 その点は、残念ながらと言うとちょっと言葉はいけませんが、被害関係者が事業者や警察に通報した事例はございますが、残念ながら、事業者から警察への通報によって盗品等の処分が判明したものは、警察が関与したものではいまだないというふうに聞いております。
○枝野委員 そもそも、インターネットオークション業者が盗品の疑いがあるだなんということを知り得る立場にあるんでしょうか。
どういうことかというと、先ほど来申し上げていますとおり、インターネットオークション業者はインターネットのプログラムを提供して、売りたいという人は、そこに勝手にアクセスしたらコンピュータープログラムで自動的にインターネット上に掲示がされるんです。それも、非常に多数の件数の売りたい、買いたいという情報が掲示をされるんです。
その一件一件の売りたいと掲示をしたという、申し込みの勧誘になるんでしょうか、それ自体をインターネットオークション業者は現実には把握していない。わざわざ検索しない限り、わざわざ調べない限り見ていない。見ようと思っても、膨大な数になってとても見れない。百歩譲って見れたとしても、これは盗品ですと言ってインターネットオークションに売りますといってやるばかはいませんから、どれが盗品でどれが盗品でないかなんというのは、インターネットオークションのインターネットに掲示をされたところを見て、これは盗品だなんて、だれがどうやって気がつくんですか。そもそもこの疑いを持つというのは、どういうプロセスでどういうふうにわかるんですか。
○谷垣国務大臣 今枝野さんがおっしゃったことは、やはりこういう新しい形態の取引の中でそれが犯罪に利用される場合に、我々としてどうそれに対応していくかという悩みそのものをおっしゃったような気もするんです。
だけれども、例えばその場を管理して、競りあっせん業者、インターネットオークション業者は、例えばそこに参加している人から苦情も受けたり、利用者からの情報もあり得る立場です。したがいまして、そういう情報を一番持ち得る立場にあるということは私は言えると思うんです。確かに、枝野さんがおっしゃったように、膨大な中に全部できるかといえば、なかなかできないかもしれません。しかし、被害者から、あなたのところはこういう問題をたびたび扱ってちょっと困るんじゃないかというようなことがあったときに気をつけていただくということはできるんではないかな、私はこういうふうに思います。
○枝野委員 念のため確認をしておきたいんですが、これは平成十四年五月二十四日付で、警察庁のセキュリティシステム対策室がいわゆる大手三社あてに説明をしたペーパーの中に、この申告義務については、盗品の疑いは主観的に認めるときということをおっしゃっています。あくまでも、この疑いがあるかどうかということは主観であって、客観的に疑いがあるというようなものであったとしても、インターネットオークション業者が主観的に疑いがあると思っていなければ義務はない、これでよろしいですね。
○谷垣国務大臣 今おっしゃるように、盗品等の疑いを主観的に認める、こういうことで結構です。
○枝野委員 それで、その前の御答弁の中で、確かに、自分が盗まれた、盗まれたものがインターネットオークションにかかっているというようなことがあれば、それは普通は警察に言うかなと思います。中にはオークション業者におかしいじゃないかと言う人がいるかもしれませんが、それは、いや、うちは盗品かどうか判断できませんから警察に行ってくださいということで全然済んでしまう話であって、何でそこに業者がわざわざそれを取り次いであげなきゃならない責任があるのか。
それから、逆に言えば、あれはおれが盗まれた盗品だと言ってきたものが、本当に被害者が言ってきたものなのか、それとも単にいちゃもんをつけているだけなのかなんということは、業者には判断する材料が全く与えられていないですよね。そうした中でこういう法的義務を課すというのは不可能を課しているのだと僕は思うんですけれども、いかがでしょうか。
○谷垣国務大臣 例えば、先ほどと同じことを申し上げるかもしれませんが、被害関係者から何らかの合理的な内容の通報を受けた場合であるとか、あるいは、そうやって調べてみたら、盗難や横領に遭わなければオークションに出品されるとは考えにくいものが出ていたような場合に、これは盗品ではないかという疑いを持たれることは十分にあり得ることだなと私は思います。それを一概に全部排除してしまう必要はないのではないかなというのが私どもの考え方です。
○枝野委員 きのう質問取りの方といろいろお話をさせていただいたんですが、例えばどこかの美術展のミレだかピカソだか、そういう名画が盗まれて、それがインターネットオークションに出されているというような話であれば、それは業者だって気がついて、これは盗品の疑いがあるかもしれない、こういうふうに思えるのかもしれないですが、例えば、先ほどいわゆるブルセラ商品みたいな話を言っておられましたけれども、これなんかは区別のつきようがないわけですね。盗んできて売りに出しているのか自分のものを売りに出しているのかなんというのは、それはインターネットオークションで掲示上から全く業者には判断のしようのない話であります。
ただ、一般的にこの手のものが出ているときには、危ないというか問題だ、盗品が含まれている可能性が多いということであるならば、警察の中に、インターネットオークションなどについて、どんなものが売りに出されているかだれでもアクセスして見られるわけですから、それをちゃんとチェックして見ていればいいじゃないですか。
私は、警察官の数は、そういう部分のところでふやすのはどんどんふやすべきだという実は立場ですから、これは一貫して前の大臣との議論の中でもさせていただいています。そういうことの監視のために予算をちゃんととって見ているのが一番早いですよ。それで、ああ、こういうところに、今こういう傾向で、こういう盗品の可能性のあるものがどんどん出ているなというようなことで捜査に資するというようなことはできるでしょうし、そこは、警察が見ているんだから、自分たちで持っている被害届とそこで見て得た情報を照らし合わせれば済むことで、なぜ業者に、こんな余り実効性のない義務を課さなければならないのかはよくわからない。
あえてこれが意味を持つとすれば、業者に売りたいという申し込みがあったら、全部一件一件見なさい、一件一件怪しいものがないかどうか見なさいという義務を課すのであれば、それは一件一件見ていれば、その中におかしいかなと疑いを持つものが出てくるかもしれない。しかし、どうも従来のお話の中では、そういう義務を課すわけではないということは間違いないですね。一件一件どういうものを売りたいというのが来ているかということを業者には義務を課さない、そのことは間違いないですね。
○谷垣国務大臣 今の申告義務が調査する義務を伴っておらないというのは、もうおっしゃったとおりです。
ただ、先ほどちょっと事例を申し上げる中で、盗品でなければ出にくいものが出てきた場合というようなことがありますので、具体的な例を申しますと、発売前の人気ゲームソフトがインターネットオークションに出品されていたという例がありまして、この場合はメーカーが発見して、当該ゲームソフトが盗品であると認められる旨を事業者に通報したという事例がございました。
そこで先ほど、そういうのはむしろ警察でやるべきだ、そのための人員はふやせと。ふやせというのは大変応援していただいてありがたいんですが、現実に、主として東京と私の出身である京都府の警察は、インターネットサーフィンというんでしょうか、ああいうものをしながらいろいろな事例の摘発にかなり実績を上げておりますが、では、そういうところで全部解決できるかというと、これはなかなか難しゅうございまして、やはり私どもは、そういう事業者やあるいは民間の協力もいただかないと犯罪を押さえていくということがなかなかできないんだと思うんですね。そういう考え方を私は少なくとも持っております。
○枝野委員 済みません、揚げ足をとるようで申しわけないですが、今、一点目に例示をされたようなケースも業者が気がつくんですか、インターネット業者が。それは、インターネットオークション業者は、まだ売り出されていないプログラムであるというようなこと自体を知らなければそんなこと判断できないわけで、やはり現実には盗まれたゲームソフト会社の方が気がついて通知をするのであって、当然、インターネットオークション業者の方にも、それは盗まれたものだ、困ると言うのと同時に、警察の方にも盗まれたものが出ているといって届け出があるんでしょうし、ということであれば、業者にこの申告義務を課すことの意味は私には余りよくわからないということを申し上げておきたいのです。
それから、確かに、先ほど、警察でチェックすればいいじゃないかと申し上げたのは、逆に言ったら、警察だってどんなに人員を多くしたって全部なんか見られないです、インターネットオークション。逆に言ったら、業者も、自分のところに掲示されたのを全部見ろと言われたら困ります。だから、今、それは見ろという義務は課していないということを確認をとらせていただいたのでいいんですが。
要するに、気持ちはわかるんです。気持ちは非常によくわかるんですよ。疑いがあったら報告をしろという義務を課すということの気持ちはふわっとはわかるんですけれども、では実際に実効性があるのかと言われたときに、この規定が意味を持つとすれば、やはり全部、一件一件チェックしなさいという義務でも後ろにくっついているのかしない限りは、そんなものは現実にはほうり出しているんですから、プログラムだけ提供して、あとはみんな勝手にアクセスしてきて、業者の責任義務としてはサーバーがパンクしたりしなきゃいいわけで、彼らの提供する役務はそうなんですから。そんなところを見ていなくてもいいわけですから。自分のところのインターネットオークションの場でどんなものが売りに出されているのか見ていなくても業者は構わないわけですから。見ていない人が盗品の疑いがあるだなんて気がつくわけがないということを考えると、全く私には意味がわからないということを申し上げさせていただいた上で、今度は二十一条の七、競りの中止。
これも気持ちはよくわかります。盗品であると疑うに足りる相当な理由がある場合には、当該古物に係る競りを中止することを命ずることができる。気持ちはよくわかります。筋としてもそうだろうと思います。盗品が売りに出されているのに気がついたら競りを中止することを命じることができるということが、気持ちはよくわかるんですが、では、例えば、これまでもインターネットオークションについて、こういう法令がなくても、任意捜査というか、あるいは業者の協力によっていろいろ出てきていますが、実際に、法に基づく命令ではないけれども、業者にこれは削除してくれませんかというような要請をしたようなケースはございますか。
○谷垣国務大臣 これまでに事業者に捜査関係事項照会を実施した中で、その対象物について掲載を中止してくれ、こう言った例はありません。
○枝野委員 そうなんですよ。なぜかといったら、犯人を捕まえないと競りに出されている物も押さえられないわけですね。インターネット上に出されているのはこういうものですという情報でしかすぎないわけです。物がほかのところに転売されないように物を押さえる、そして犯人を押さえるということを考えたときに、犯人を特定して犯人のところに物理的に踏み込まない限りは、仮に競りを中止させても物は押さえられませんから、だれかほかのところで売ることは可能なわけです。
ところで、犯人の側に立ってみれば、インターネットオークションに出した、そうしたらある日突然競りを中止させられた、つまり削除された、やばい、警察が気がついたようだ、盗品だと気がついたようだとなるに決まっているじゃないですか。つまり、犯人に逃亡の機会を与えることになるんです、犯人を押さえる前に競りを中止させたら。少なくとも同時じゃなきゃいけないし、同時であったら、基本的には犯人を押さえて物を押さえるんですから、それは、競りを中止だなんという命令を法的根拠を持ってつくらなくたって何の問題もないということになりませんか。
○谷垣国務大臣 今、枝野委員おっしゃったことは、捜査技術上はまさになかなか難しいところだろうと思うんです。私自身が捜査をやるわけじゃありませんからあれですが、多分非常に難しいところだと思います。犯人逮捕の必要性やそういうことを考えますと、そういう中止をせよと言うことがいいのかどうかというのはなかなかデリケートなところがあると思いますが、これは、盗品等の処分を間際で阻止して、そして被害回復を図って被害者が自分の物の追及をできるようにする、取引の安全にもその意味で資することをするという趣旨でできている規定でありまして、今おっしゃった証拠隠滅とか逃亡のおそれとは一応別なところでつくってある制度だということは私も率直に認めなきゃいかぬと思います。ただ、取引の安全と捜査の必要性というのは判断しながらやるのであって、こういう手法も与えていただきたい。
先ほど、私も今まで例がないと申し上げたのは、今までやはりそういう根拠規定も特にない中で、なかなか、任意といえども警察がそういうことを要請していくのはちょっと警察の民事に対する介入のし過ぎじゃないかという配慮もあったんだろうと思います。そういう配慮があったかどうか、私尋ねておりませんが、恐らく過去の捜査担当者がそういうことも判断したのではないかなというふうに思います。
〔委員長退席、細野委員長代理着席〕
○枝野委員 本当にお気持ちはよくわかる。つまり、盗品が出ているといったら、それを売るのをやめろと言う。今までもそうしてきたでしょうし、実際それはよくわかるんです。
それは、要するに、IT時代によって社会がどう変化したかということを本当に理解していたら、IT上の競りを中止させることの意味が、従来、ITではないところで古物を売買していたという時代にそれを売るのをやめろという話と、インターネット上でやっているのをやめろという話とでは全然意味が違っているんだ。
つまり、インターネット上は一種のバーチャルの世界ですから、そこのところを押さえた瞬間に、リアルな世界にいる売り手の方はその情報に基づいて逃げることができてしまう。それはもちろん、インターネットのない時代であったとしても、売っている場と犯人のいる場は物理的に離れているケースはあるかもしれないけれども、ネット上の距離感とは、これは要するに比較、つまり相対的な違いではなくて、質的に違っている。だから、従来の捜査手法でいえば、競りを中止したい、させたいという気持ちは物すごくよくわかるけれども、実際にはこの規定を置いてもほとんど意味がないということを申し上げておきたいというふうに思います。
その上で、今度は二十二条三項、調査という項目にあるんですが、インターネットオークションについては、「盗品等に関し、必要な報告を求めることができる。」ということしか書いてありません。これはどうなんですか、調査は、何を報告させることができるんでしょうか。
それとの兼ね合いで、例えば二十一条の四では、インターネットオークション業者は、「国家公安委員会規則で定めるところにより、書面又は電磁的方法による記録の作成及び保存に努めなければならない。」という記録の保存義務があるわけですね。例えば、何月何日におたくの業者を使って取引をした人、何千人分だか何万人分だかありますね、その通信記録全部出してくださいということも言えちゃうんじゃないですか、この規定で。
○谷垣国務大臣 二十二条三項ですか。
○枝野委員 いやいや、二十一条の四で記録の作成、保存に努めなければならないという努力規定を置き、その上で必要な報告を求めることができるということがあると、盗品が出ていたと思われる日の取引を一括して報告しろ、その日の記録を一括して報告しろ、あるいは、その日の記録ということでは逆にやりにくいとすれば、例えば女子高校生の制服を売りに出していた記録を過去一年分にさかのぼって全部出せというようなこともできてしまうんじゃないですか。
○谷垣国務大臣 これは、報告を求めることができますのは、過去も国会答弁をしているようでありますが、古物営業法の施行のために必要があると認めるときということに限られておりまして、インターネットオークション事業者については、通常、競りの中止の命令に関する報告を求めることになるわけですが、本件の規定を含めて、新たな制度の解釈、運用は、事業者と必要な意見交換等を行った上で文書等により対外的に明らかにしていくこととしているので、そのような行政権限の乱用につながるおそれはないというふうに私どもは考えております。
○枝野委員 そもそも、盗品がインターネットでオークションに出されている。これは盗品だとかあるいは盗品の疑いがあるというようなことがあるときは、犯罪捜査として、当然のことながら、インターネットオークション業者に対し捜査への協力を求めて、その盗品と思われるものをどんな人が売りたいという申し込みをしたのかという情報を下さいと。業者が応じなければ、これは令状をとって押さえることは当然できます。個別に、具体的に窃盗犯罪と結びついているケースについては、現行法で何ら問題なくできるわけです。問題なくできるはずなのに、あえて必要な報告を求めることができるという規定を置いているというのは、まさに行政取り締まり的な観点からです。
とすると、最近、女子高生の制服がわっと売り出されたのはどれぐらいですかとか、自動車の部品が出されたのはどれぐらいですか、これは確かに行政取り締まり的にも、それが結果的に犯罪予防につながるという意味でも意味があるでしょう。意味があるでしょうが、そのときに、トータル件数を出せと言うんだったらまだわかる。だけれども、そのときに、何のだれべえさんが例えば女子高生の制服を売りに出していましたという情報は、それは個人情報ですよね。それをこの規定に基づいて必要な報告を求められてそれに応じなきゃならないということになったら、これは個人情報保護の観点から困りますよね。
ですから、ここはきちんと限定をつけていただかないと。でも、限定をつけて、本当に必要な部分というのは犯罪捜査としてできる。そうするとこの規定は要らないんじゃないですか。
○谷垣国務大臣 先ほど刑事訴訟法上の照会ということをおっしゃいましたけれども、それとはもちろん意味合いが違うので、刑事訴訟法の場合は、あくまで犯罪捜査に関連して行われる。似たような条文でありますけれども、これはあくまでこの古物営業法の行政目的からつくられたあれでありますから、そういう中での限定が当然かかってくるわけです。
それから、今枝野委員がいろいろおっしゃった、保存に努めなければならない、二十一条の四の関係でありますけれども、これは努めなければならないんですが、それで照会をされたとき、ないならないと言えば、それでもうそれ以上の義務は課されていないわけですね。
そういうようなこと、それから、法の必要性をいろいろ考えますと、先ほどの答弁の繰り返しになりますけれども、私は、これが乱用にわたることはないというふうに思いますし、それから、個人情報保護法との、法の関係ですか。(枝野委員「個人情報保護法はまだないわけです、個人情報保護の観点です」と呼ぶ)個人情報保護の観点から、これは運用にもちろんそれなりの限定がかかるのは私は当然だと思いますが、やはりこの全体の古物営業法のもとで、先ほどのようないろいろな問題が生じてくるのを抑える意味で、私はこういう手法は認められてしかるべきではないかと思います。
〔細野委員長代理退席、委員長着席〕
○枝野委員 もう一回、改めて整理して聞き直しますが、犯罪捜査のためには、刑事訴訟法に基づいて照会もできるし、あるいは捜索・差し押さえもできます。普通は、照会をすれば応じるでしょう。それ以外の目的、つまり、行政目的で報告を求める。行政目的で報告を求めるというのは具体的にどういうことを想定しているか、さっぱりわからない。盗まれた物、これが盗まれているとかということについて警察として知りたい、それはよくわかる。だけれども、では、それ以外に報告を求めるというのは何を求めるんですか。
○谷垣国務大臣 主としてここで考えられているのは、競りの中止ということを求めるときにこの報告を求めるということを主として考えている規定であると理解しております。
○枝野委員 まず、競りの中止ということについては、先ほど申し上げましたとおりの理由で、そもそも、全く意味がないんじゃないか。さらに言うと、競りの中止を求めなければならないような状況というのは、盗品であると疑われたり相当な理由がある場合。ですから、そこまでまだ段階として行っていないのかもしれないけれども、少なくとも、盗品であると疑うに足りる理由はあるぐらいの状況ですから、それは結果的に、要するに、競りの中止自体は別の方法で実際犯人を押さえるということはできる。その情報を警察がとるということは刑事訴訟法でも全然できるので、そのこと自体は余り意味がないんじゃないかということを申し上げた上で、今申し上げた部分で使うということの限定はどこについているのか。全くついていない。
一方で、記録は全部とっておきなさいと。法的義務じゃないけれども、皆従うでしょう、少なくとも大手三社は。記録を全部とっておくでしょう。記録をとっている業者に対して、盗品等に関して必要な報告を求める。最近、先ほどせっかく出たから、女子高生の制服とかを盗んで、それをインターネットオークションにかけているケースがたくさんあるようだ、あるいは最近、何か自動車の部品をやたら盗んで売りに出す人がたくさんいるようだ。そしたら、この際、この規定に基づいて過去一年間おたくのインターネットオークションで女子高生の制服が売りに出された件数は何件ですかと報告を求めるんだったら、まだわかる。
だけれども、この法律を読む限りは、そのときに何のだれべえさんが、いつ、どういうふうに売りに出して、だれが幾らで買いましたという情報についても求めることができる。それを限定する規定はどこにもないですね。
○谷垣国務大臣 これは、従来のこの法律の解釈の上、あるいは国会答弁も過去にあるわけですが、古物営業法の施行のために必要があると認めるときに限られているわけです。そこで、今おっしゃったような過去の取引をずるずると引き出すというようなことが一般的に行われるわけではないので、当然限定があるものというふうに理解いたします。
○枝野委員 わかってお答えになっているんでしょうが、実際に、どう運用してきたかということと、この法律ができて当面どう運用するかということについては、それほど心配していません。ただ、法律上の限定がありますかとお尋ねしているんです。
○谷垣国務大臣 それは、全体からそう理解をしていただくということだろうと思います。
○枝野委員 でも、この古物営業法の施行の上で、つまり目的の上でといったときには、インターネットオークションを通じて盗品が売買されるということを防ぎたいからこの法律をつくっているわけですね。防ぐためには有効じゃないですか。最近一年間でやたら盗まれている可能性のある、例えば女子高生の制服とか、要するに、盗品がインターネットオークションで売買されているケースが多いと疑われるものについて、だれが売っていると一覧で出してくださいと言ったら、盗品がこういうもので売られないようにしましょうという行政目的に照らして非常に有効じゃないですか。そのことを抑制的にさせるための根拠はどこにも書いていない。
○谷垣国務大臣 今おっしゃったことは、要するに、このインターネットオークションというようなものがどんどんまだ進歩しておりますので、なかなかそこらあたりの限定も今全部してしまっていいのかどうかという難しいところは、確かにあると思います。ただ、効果的であるから何でもできるというわけではもちろんないのでありまして、それは、当然、法の目的から見ての限定がある。それで、それが、では犯罪の疑いがあるということを勝手に判断してどんどんやっていいかというわけにはいかないのは当たり前であります。そのあたりはきちっと運用させていただきたいと思っております。
○枝野委員 時間がなくなったので、ほかの規定についても一言ずつ申し上げておきたいんです。
届け出制をつくっていますけれども、先ほどおっしゃられたとおり、現実には今大手三社でほぼ一〇〇%のシェアを占めています。いわゆる悪質な業者が出てくるときには、こんな規定があったって届け出なんかしませんよ。普通に参入しようと思っている業者は、大手三社が一応警察の皆さんとも連携しながら自主規制をきちんとやっている中にあって、おれたちだけは知らぬよということでやってくるとは到底思えません。どうせ届け出制をつくったって、それにも応じないような業者がもし出てきたときにどうするかということは考えておかなきゃいけないですけれども、これが今意味を持つとは到底私には思えないということを申し上げておきたい。
それから、先ほどの記録の作成、保存の努力義務というのは、どこまで報告させるのかということの法的限定がないということですし、そもそも、これも努めなければならないという努力義務で、つくらなくても構わないんですねという話なんだから、何のために置くのかよくわからないということを申し上げておいた上で、認定制度、二十一条の五、本当にこれもよくわからないんです。
よくつくりますね、この認定制度というのは。ここはまともな業者ですと認定してあげるということ。現に、ほぼ一〇〇%のシェアは三社で占めていて、その三社がここに書いてあるような努力義務、努力規定に基づくような努力は既にしているということがあって、それでこんな認定制度をつくるということに何の意味があるんですか。
○谷垣国務大臣 現実にほぼ三社で、独占という言葉はいけないのかもしれませんが、やっておられるということは我々も承知しておりますが、現在のところ、いわゆるアダルトグッズを主に扱うサイトとか秘密とかいう文字を掲げるサイトで古物が取り扱われているということは私どもも把握をしております。もちろん、専ら盗品を扱っているサイトなんというのは存在していないことは事実です。
それで、枝野さんがおっしゃったように、こういうものが認定を受けるはずがないじゃないかとおっしゃるが、やはり認定をしていただいて、正しい努力をしていただいている方にそれなりの例えば認定というような資格を取っていただいて、そういうところで全体の市場秩序が向上していくということを私どもは期待したいわけでございます。
○枝野委員 要するに、こういう制度をつくっても、本当に問題のある業者は当然認定を受けないでしょうし、現に大手三社がほぼ適正にやっているという状況の中で、消費者の立場ということをおっしゃられるんだとすると、先ほど申し上げたような本人確認の話について、Eコマースの世界全体についての取引の保護ということは、これは別途やらなきゃならないんですが、何でここでやるのかというと、全く意味がわからないですし、それは古物営業法の趣旨とずれてしまう。
さらに言えば、そもそも、ここは安全ですよという認定をお役所にしてもらわないと取引ができないというのは、私は消費者保護政策、例えば消費者契約法などをつくるのにもかかわってきましたが、それは過保護ではないか。行政が認定してあげないとどれが安全か消費者は判断できないという物の考え方は社会主義的な過保護な消費者行政のやり方であって、ルールだけ明確につくって、後は消費者の皆さんが判断しなさいというのが資本主義、自由主義における消費者保護のやり方だし、だから消費者契約法をつくったんだと思っておるんです。
さらに、そもそも全体としてこれが意味がないということをもう一つ最後に申し上げたいんですが、この種の法律はどこかほかの国にありますか。
○谷垣国務大臣 この種の法律がほかの国にあるというふうには聞いておりません。確かにそれはないわけでございます。
○枝野委員 日本以外のところに所在するインターネットオークション業者がインターネットオークションのページを日本語で開いて、例えば日本のいろいろなインターネットのホームページにこういうインターネットオークションのページがありますよという広告をばんばん出して、日本のものをそのインターネットオークションの場でどんどん売り買いしてください、ただし業者は日本以外にいます、サーバーも日本以外に置いてありますと、この法律は適用できますか。
○谷垣国務大臣 頭のいい方がそういうことをどんどん始められるとまことに困るのでございますが、現在のところ、今まで私どもの網に引っかかってきたものでは、盗品を売買しているのは日本国内のこういうサイトでやっているという例でございます。それからまた、日本人相手に盗品を販売しようとか売買しようという場合に、これから先、将来どうなっていくかは私もよくわからないところがございますが、やはり現在のところ、日本国内に事務所を置いてそういうことをやっているということのようでございますから、今枝野先生のおっしゃったようなことはまだ一般的になっていない。したがって、現在この法律でも相当の実効性が上げられるのではないかと私は思います。
○枝野委員 時間になったのでこれで終わりますが、今はないかもしれません。それは、今規制がないから、別に外国に行く必要は全くない。規制ができた瞬間に、本当に盗品をインターネットでやろうと思う人たちは、今、工場でさえ設備投資をたくさんして日本以外に出ていっているんです。それは、日本以外の方がコストが安かったりする。アメリカの電話会社の日本で言う電話番号案内を、一度インドに回線をつないで、インドの人件費は安いからそこで番号案内をする、英語圏ということもありますから。今ITの世界はそんなことが行われているんですよ。こんなものは、本当に悪質な業者がこれでもうかると思ったら、海外に事務所を置いてそこでやるだなんて簡単にやりますよ。
インターネットの世界はそういう世界なんだということを前提にして何が有効な規制の手段なのかということを考えなければならないのに、これは従来の延長線上で物を考えているから、つくった規制はほとんど役に立たない。だけれども、規制がかかるということで、うるさいなといって海外にわざわざ逃げさせる。善良な業者も、例えば海外から参入とかしようとするときに面倒くさいなということになって、海外からのいい業者の参入にも逆に言うと障壁になったりする。ということで、いろいろな意味でこの法律はよくない、もう一回考え直してつくり直すべきだということを申し上げて、終わりたいと思います。ありがとうございました。
○佐々木委員長 以上で枝野君の質疑は終了いたしました。
次に西村眞悟君。
○西村委員 初めに局長から技術的な概略をお答えいただきまして、大臣から、今も議論にありましたけれども、これからのIT社会における犯罪と社会問題に対するあり方というのをお聞きしたいと思います。
古物商ということの名前でありますが、文字どおり古物蒼然、古色蒼然とした店舗で古物を売っているというイメージでこの法律の名前もつくられておるわけですが、最近はインターネットで古物商を営むという場合が多い。名前と最先端のインターネット利用という実態とは合わないわけでございますけれども、この改正について、ホームページを利用して取引する古物商に対して、そのホームページ上に氏名または名称、許可証番号等を表示することを義務づけておりますが、その理由、また目的は何であるかということをお聞きします。
○瀬川政府参考人 高度情報通信ネットワーク社会へだんだん移行してまいりまして、古物取引の社会実態にも大変大きな変化が生じているわけであります。インターネットを利用した古物営業は、従来からの店舗における営業とは異なりまして大変手軽に古物営業を営むことができるということで、インターネットを利用した形態の営業が量的に拡大しているということだろうと思います。
しかし、一方で、インターネット上では身元を明らかにしないで営業を営むということが可能であります。かつまた、インターネット上には無数のホームページが存在しているということで、例えば無許可営業に対する取り締まりというのも現状では容易ではございません。その意味で、インターネットは無許可営業を助長する危険性を有しているというふうにも認められるところでありまして、大変多くの無許可営業の事例が出現をしております。このため、古物商の業界からも、インターネット上での無許可営業のはんらんを懸念する意見でありますとか排除を求める意見というのが寄せられているところであります。
今回の改正でございますが、例えば、現行法では古物営業の営業所における標識を掲示するということが義務づけられております。それと同様に、ホームページ上でも古物商の氏名、名称、許可証の番号等の表示を義務づけることとするということで、これにより、ネット上での無許可営業者というものが淘汰、排除されるということになるだろうと考えております。
この場合、インターネットでは匿名性の問題がありますので、単に古物商に表示を義務づけるだけでは無許可営業者が正規の業者を装って虚偽の表示をするということも考えられますので、改正案では、都道府県公安委員会のホームページ上に正規の古物商の方の氏名、名称、許可証番号、URLといったものを掲載することとしているわけであります。
これによりまして、古物営業を利用しようとするお客様は、その表示が真正であることをホームページ上で容易に確認ができるということになりますので、無許可営業者との取引は差し控えるという結果となり、無許可業者の淘汰が図られるということであります。また、我が方の取り締まりも非常に効率化されるという効果があります。
○西村委員 おおよそ目的はお伺いいたしましたけれども、問題は、その目的を無視して無許可営業をインターネット上でなす者に対して、検挙する能力がなければ絵にかいたもちになるわけであります。この問題は、極めて高度なITの専門知識の分野にもう既に警察の能力が及んでいかなければ対処できないということになっております。お巡りさんが町の古物商等々の巡回をして現物を見て云々という世界ではなくて、インターネットの画面を検索しながら、これが違反、無許可営業であれば、その者を検挙する能力がなければならない、こういうことでありますから、都道府県警察を含む全体としての警察は、このIT分野における特別な捜査能力体制をいかにして構築しようとしておるのか、また、それは現在十分であるのかということについてのお答えをいただきたいと思います。
○瀬川政府参考人 ハイテク犯罪の捜査は大丈夫か、こういうお尋ねだろうと思います。
都道府県警察におきましては、専門の体制としまして、ハイテク犯罪対策プロジェクトというようなものを設置しております。また、民間へ委託教養をいたしまして捜査員の能力を向上させる。それから、専門知識、技術を有する者をハイテク犯罪捜査官ということで、そういう方たちを中途採用して警察に入ってもらうというようなこと、あるいは装備資機材を充実するなど、捜査体制の充実強化に努めているところでございます。
さらに、これは都道府県警察ではなくて警察庁それから管区警察局でありますが、こういった都道府県警察の捜査を技術的に支援するために、専門知識を有する技官の方によりまして技術対策課というものを設置いたしておりまして、技術の進歩に対応する体制の整備を図っているところであります。
○西村委員 警察官の採用システムを変えるということも含まれて、私の経験では、私は子供と家でゲームをしても確実に負けるという経験をして、これはどうしようもないギャップだなと思っておりますので、今までの、警察官がピストルを撃つ訓練をする、機動隊におって筋力を鍛えるとかいうのと全く違う捜査員というのが要請されるんだろうと思いますね。
次の質問に移ります。
インターネットオークションの問題でありますが、今回、このインターネットオークションの盗品大量流通、また禁制品の流通というものに対して防圧の網をかぶせていこうという姿勢であって、これはしっかりやっていただきたいとは思うわけですが、おおよそどういうふうな法的制度を導入しようとしているのかについては、趣旨説明でもありましたけれども、概略をここでお答えいただけますか。
○瀬川政府参考人 概要でございますけれども、今回の改正は、インターネットを利用した古物取引に関する規定を整備するということと、インターネットオークションにおける盗品等の売買防止、速やかな発見等のための規定を新設するということを内容としております。
インターネットを利用した古物取引に関する規定の整備といたしましては、まず、ホームページを利用して取引を行う古物商に関しまして、URLの届け出、氏名または名称、許可証番号等の表示等の遵守事項を定めますとともに、業界からの規制緩和要望がございます、古物商が古物の買い受け等を行う場合の相手方の確認方法として、相手方による例えば電子署名が行われた電磁的記録の提供を受けるというようなことを追加しようというものであります。
それから、大きい二点目といたしましては、インターネットオークションにおける盗品等の売買防止と速やかな発見のための規定の新設というものであります。
この内容といたしましては、営業の届け出制ですとか遵守事項、出品物について盗品等の疑いを認める場合の申告義務などであります。それから、警察本部長等による競りの中止の命令、それから国家公安委員会が定める基準に業務の実施方法が適合するというものについての認定制度、こういった必要最小限度の規定を設けるものであります。
そのほか、品触れを電子メール等で発出できるようにしたりという所要の規定の整備を内容といたしております。
○西村委員 そこで、また先ほどと同じ問題意識なんですが、そういう予防対策を実効あらしめるのは、それに違反して盗品をオークションにかけている者をインターネット画面で犯罪の捜査の端緒として認識すれば、そこから犯人または贓物故買の犯罪者を検挙できるのか、どういう手順で捜査を進めているのかということでありますが、私の盗まれたものがあの画面にあるんだという通報を受けて警察はいかに捜査を進められるかということについての概略をお答えいただきたい。
○栗本政府参考人 お尋ねのような通報がございました場合には、その物品が盗難品か否かということをまず確認しなきゃいけないわけでありますが、その点につきまして、当該インターネットオークションを主催いたします事業者の協力を得まして、通報されましたものが盗品か否かをまず確認するということ、さらに、それにつきまして、具体的に出品者がだれかということにつきまして所要の捜査を進めた上で、盗品の処分ルートを解明し、窃盗の犯人などを割り出す捜査を進めてまいりたいと考えております。
特に、この際には、証拠の保全また被害回復の観点からも、出品記録などが消去されないよう、迅速な捜査が求められていると解しております。
○西村委員 本当に、昔の、古色蒼然たる古物商を巡回して、これは盗品だとかお巡りさんが足で稼いでくるのではなくて、東京都の画面で、被害者が東京都だからインターネットの画面でここに出ているのだが、これはどこにあるかといえば北海道の倉庫の中にあるとか、こういうことでありまして、この犯罪捜査自体をとってみても、窃盗という小さなものでもこのインターネットの上でそれが故買される現在社会の状況を見れば、都道府県警察の体制というのが維持されたままでは対処が組織的にややこしくなるのではないかなという感じがするんです。
さて、自動車についてちょっとお聞きしますが、現在では、御承知のとおり、すべての犯罪の移動手段が自動車でありまして、その自動車はほぼ盗難品であります。したがって、犯罪の手段、逃走手段の足を押さえる自動車の盗難対策は非常に重要であります。
これは、暴走族はバイクでありますが、暴走族もそうなんです。バイクもそうで、これを軽視しておりましたから、暴走行為の六割を占める窃盗バイク、こういう状態になっているわけですね。バイク窃盗を厳密に問題意識を持って防圧しておれば、暴走族問題は今のようにしょうけつをきわめなかったとも思うんです。
そういう意味でお聞きしますが、インターネットオークションで、今の社会的事例は、盗難に遭った自動車の部品等々が多く処分されているということを聞きますけれども、インターネットを通じた盗難の自動車の売買、部品の売買等の実態はどうであるのかということについてお教えいただきたいと思います。
○瀬川政府参考人 調査結果によりますと、平成十二年の一月から十四年九月までの間のインターネットオークションにおける盗品等の処分状況、件数は六百三十件、金額にして二千三百六十五万余りとなっておりますが、このうち、自動車及びその部品に係るものは六十四件、一千二十五万余となっております。
例えば、インターネットオークションで落札購入したトヨタセルシオが、陸運事務所で登録しようとしたところ、つけられているナンバーが偽造であったということで盗難車両と判明した事例でありますとか、あるいは、駐車中の自動車からアルミホイールつきのタイヤを盗んで、インターネットオークションを利用して売りさばいていたというような事例を把握しているところでございます。
○西村委員 自動車というものが犯罪の前提になっていて、多くは盗難車が犯罪の前提であるということから、当局としては、自動車窃盗対策としてどのような施策を講じているのかということをこの機会にお教えいただきたいと思います。
○瀬川政府参考人 自動車の盗難の防止ということは、御指摘のとおり、ほかの犯罪との関連におきまして大変重要な問題であります。また一方、近年、自動車盗というものあるいは自動車の部品盗というものが大変増大をしてきている、こういう状況にありまして、昨年の八月でありますが、政府で国際組織犯罪等対策推進本部、ここで自動車盗に対する取り組み方針を決定いたしました。鋭意、現在対策を講じているところであります。
具体的に御説明をさせていただきますと、取り締まりの強化は当然でありますが、自動車を盗難に遭いにくくする装置を普及する。イモビライザーとか言われているものがその一つでございますが、こういったものの普及であります。それから、大変盗難自動車が密輸出されている、こういう事例も多うございますので、不正輸出防止対策を強化するということなどが挙げられます。
また、こういった自動車盗の防止の対策を実施するためには民間の協力を得るということが不可欠でありまして、この問題に対処するために、自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチームというものを立ち上げておりまして、まさに官民一体となって取り組んでおります。
その結果、最近では高級車の盗難が減少するという一定の成果を上げているところであります。
○西村委員 ぜひ、自動車についてのきめ細かい盗難対策を実施していただきたいと存じます。
次に、本件法案に関連して、盗品以外の禁制品、覚せい剤等々、インターネットオークションでいろいろ出回っているとは聞きますけれども、このような禁制品が、原始的な取引、密売人と示し合わせて街角で会ってという古典的な取引以外に、インターネットでどのくらいの割合の取引がなされているのか。また、今回のこの改正法は、このような盗品の処分以外の禁制品の防圧についても効果があるのかということについて、いかがですか。
○瀬川政府参考人 インターネットオークションには、児童ポルノ、にせブランド商品、それから銃器といった禁制品の出品も見られておりまして、平成十二年から十四年上半期までの間に、インターネットオークションにおける禁制品の出品事案について我々が検挙しておりますのが三百十二件に上っております。内容を見ますと、児童買春、児童ポルノ法違反が八十四件、わいせつ物の頒布が五十九件、著作権法違反が七十四件、商標法違反が四十四件、銃刀法違反が五十件、麻薬向精神薬取締法違反が一件となっているところであります。
今回の古物営業法の改正は、インターネットオークションにおける盗品等の売買防止、速やかな発見等を図るためのものでありますが、例えば、業務の実施方法につきまして認定を受けたインターネットオークションであれば、出品者の本人確認等が適切な方法で実施されるということになりますので、禁制品の出品事案の防止にも一定の効果がもたらされるものというふうに考えているところでございます。
○西村委員 次に、大臣にお聞きしますが、大臣も私も、この世代の人間から見てインターネットというものは、ある意味では恐ろしい、ある意味では、よくこんな便利なものができるなという認識ですが、国の治安を維持する責任者としてのお立場で、このインターネットというものが日進月歩の世界であり、今予測できないことが起こり得る世界である。
中学生がアメリカ国防省の国家機密の情報に忍び込むことができる。ましてをや、日本の国家情報など朝飯前だと。それも、銀行の利息システムをいじって、国家の公定歩合が上がったのか下がったのかという、そういうふうなとてつもない混乱を起こすことができるんではないか。古典的な刑法では騒擾罪というのがありまして、社会的な不安を起こす、ピストルを撃ちながらその辺を走り回る、それ以上の混乱をもたらすようなインターネットシステムであるなと思います。認識は同じだと思います。
これに対して、我が国は、国家情報をいかにして守るかという体制が今ないわけですな。スパイ防止法もない。この中で、IT利用の犯罪が、今現在予想される範囲にとどまらず、それを超えて広がる可能性を秘めた領域でありますから、大臣としては、将来、いかなる対策、構想のもとにこの問題に取り組まねばならないと考えられておるのかということについて、最後にお聞きします。
○谷垣国務大臣 確かに、技術の発展がどんどん進みまして、私のパソコンも先日、変なウイルスにやられまして、大分必要な情報が壊れてしまったというようなことがございまして、便利な反面、なくなると、私の私生活でも相当不便をいたします。
したがいまして、そういう日進月歩の技術状況を背景としますと、現状はなかなか厳しいものでございまして、特に、先ほどおっしゃいましたように、今までの警察の持っていた能力ではなかなか対応できないものがある。したがいまして、ここを一つの重点目標として体制を確立しなきゃならないと思っております。
まず、犯罪捜査に関しましても、捜査体制の充実強化を図らなければならない。先ほど生活安全局長が申しましたけれども、人員も、そういう専門知識を持った者をつくっていかなきゃならない。
それから、先ほど委員がおっしゃいましたけれども、私もこの間、私の地元の京都府の公安委員会へ行って話を聞きますと、まさにこういうネット上の犯罪というのは、京都で端緒をつかんでやっていってもどこに及んでいくかわからない。鹿児島であったり北海道であったりするというと、今の捜査体制というか仕組みで十分なのかどうかという問題も提起をしているように思えます。
それから、予防面に関しましては、警察庁それから都道府県警察で、ハイテク犯罪の予防に必要な知識等に関する広報啓発とか相談窓口とか、あるいは専門の職員を養成しまして、情報セキュリティアドバイザーの設置、活用等を行っているわけですが、そういう捜査、予防面だけではなくて、先ほど委員がおっしゃった政府機関や重要インフラなどのシステムに対するサイバーテロの脅威ですね、こういうものが現実のものとなりつつあるというふうに認識をしておりまして、警察庁や管区警察局で、機動的な技術部隊であるサイバーフォースの設置、あるいはテロ組織等に関する情報収集活動の強化など、こういうサイバーテロの未然防止や事案発生への対処を図っているところでございます。
こういう強化を全体として考えていかなければいけませんけれども、やはりこういう技術の進展に対応して、それに対応できる的確な人間を育てていく、的確な人間をやはり警察も持っておく、こういうことが一番のかなめになるかな、こんなふうに考えている次第でございます。
○西村委員 ぜひ内閣一丸となって取り組んでいただきたい。それで、特に国家情報をいかにサイバーテロから守るかというのは非常に重要でありますので、よろしくお願いいたします。
質問を終わります。
○佐々木委員長 以上で西村眞悟君の質疑は終了いたしました。
次に、吉井英勝君。
○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
さきに質問された方と若干の重複があるかもしれませんが、最初に、今回の法案で規制対象となっているインターネットオークション市場がネットの普及とともに今急成長をしているときですが、ネットオークションでさまざまなトラブルが現に起きています。
それで、ネットオークション関係の消費者トラブルの相談件数の推移、それからまた相談内容などをどのように把握しておられるか、これは消費者保護を中心にやっておられる内閣府の方から伺っておきたいと思います。
○永谷政府参考人 まず、ネットオークションに関する苦情相談件数の推移でございますが、平成十二年度六百十件、それから平成十三年度千八十二件、それから平成十四年度、これは四月から六月までの三カ月間の数字でありますけれども、四百七十七件ということであります。いずれにしましても、苦情相談件数はふえてきているという状況にあります。
それから、内容についてでありますけれども、これはインターネットを介在した物の売り買いでありますので、売り手の方から、商品を売ったにもかかわらず代金が振り込まれないというのが一つ。それから買い手の方からは、代金を正当に支払ったにもかかわらず物が送られてこない、あるいは物が送られてきてもその商品に欠陥があるとか、あるいはブランド物を買ったつもりでもにせのブランドが送られてきたとか、その種のトラブルが多いという状況にあります。
○吉井委員 そういうトラブルが今非常にふえているときですから、アメリカなどでは、ネットオークションについて、民間の事業者と消費者がきちんとしたルールをつくって、そして苦情や問題が生じたときには第三者機関が紛争処理をする、そういう仕組みをつくったりしているようでありますが、日本でも、ネットオークションについて、やはりまず消費者を保護する立場から総合的な対策をつくる、このことが必要だと思うんです。
これについても、内閣府の方でどのような検討をしておられるのか、伺っておきたいと思います。
○永谷政府参考人 先生も今御指摘のとおり、いろいろなネット関係の、ネットオークションにかかわるトラブルというのが非常にふえてきております。それで私ども、例えば去年の消費者保護会議でありますけれども、そこでは、IT化、電子商取引に対応した市場ルールの整備ということで、重点施策の一つとして挙げているということであります。
具体的な中身でありますけれども、消費者が操作ミスで、錯誤無効制度の特例というのを定めておりますいわゆる電子契約法の施行、これは平成十三年の十二月からでありますけれども、そういうものを施行するとともに、普及啓発に努める。それから二つ目には、インターネット上の広告の法令違反に関するモニタリングというのをやっている。それから三つ目には、オンライン・トラストマーク制度と連動したADR、これは裁判外の紛争解決手段でありますけれども、そういうものへの支援というようなことを講じるということでやっております。
○吉井委員 いろいろ取り組み出しておられることは、今進行形の段階ですかね。本当に総合的な対策というものは結局これからというところのようですが、全国の消費生活センターの方の資料も見せていただきましたが、ネットオークションのトラブルの多くは、さっきもお話ありましたように、商品が届かない、それからブランド品がコピーだったとか品質が悪いという苦情でお金を返してほしい、そういう訴えが大半という状況のようです。
ですから、今必要なのは、やはり消費者保護の立場に立った包括的な対策。もちろん、消費者に盗品がだまされて紛れ込んで、紛れ込んでという表現がいいかどうかわかりませんが、本人は盗品と思っていないのにそんなものを握らされるとか、やはりそういうことがあっては困るわけで、消費者保護の立場からの包括的な対策というものが今必要だと思うんです。それが今、包括的な対策というものは言えば進行形なんですね。ところが、我が国の方では、いきなり盗品防止対策と称しての業者の法的規制ということに今回進んでいこうというわけです。
そこで、私も改めて確認しておきたいんですが、政府案のように、ネットオークションを法的規制している国というものがほかにあるのか。調べてみられて、ほかにあれば、どの国では法的規制をやっているのか、先ほどの答弁と同じになるんでしょうが、伺っておきたいと思います。
○瀬川政府参考人 ネットオークション規制の国際的な事例でございますけれども、私どもがこれまで調査した限りでは、そのような立法例は確認をされておりません。ただ、中古品の取引実態でありますとか財産犯による被害品の処分状況等は、国によりいろいろ異なるのではないかというふうにも思われます。我が国での立法の必要性につきましては、我が国の状況を勘案して判断すべきものではないかと考えております。
○吉井委員 大体、これまでアメリカ型のグローバルスタンダードということで強調してこられたんですが、今度はアメリカとも異なるいわば先駆的なものとして、レクのときはたしか先駆的というふうに自信を持って言っておられたように思うんですが、しかし、これは先駆的というより、国際的に特異な存在ということをやはり見ておかなきゃいけないというふうに思うわけです。
今回の法案の作成、提出過程は、かなり強引で不明朗ではないかというふうにうかがわれます。今回の法案作成について、警察庁の方は、セキュリティシステム研究会の意見を踏まえたものとしているわけですが、私も読みましたが、昨年八月の研究会の結論は、現時点では、ネットオークション業界の動きも一様ではなく、一律の取り組みを行うことを期待できる状況にはないという認識から、業者の理解を求めるとともに、具体的メニューを提示し、事業者の自主的な取り組みを促していくことが妥当であると考えられる、あの八月のはそういうふうに書いてありますね。読ませていただきました。
ところが、それからわずか四カ月足らずの十二月には法案作成を打ち出したわけですが、盗品流通防止のために、出品者の口座番号など本人確認システムをしたり保険を導入したり、業界の自主努力というものがなされているときに、研究会報告の指摘であった業界の自主努力を促すようにしないで、まず法的規制へ、そういう方向へ進んでいったのは一体なぜなのか、伺っておきたいと思います。
○瀬川政府参考人 御指摘のセキュリティシステム研究会でございますが、平成十三年の四月以降御検討いただきまして、十三年の八月に提言をいただいたわけであります。今御質問にありましたような提言内容がございましたが、中のガイドラインの作成等につきましては、これに基づく自主規制を広めていくことを支援するというようなことも言われております。
さらに提言では、今後速やかに警察庁及び関係者とが連携して検討を進め、高度情報通信ネットワーク社会における総合的な盗品等流通防止対策について成案を得て国民に問うべきというふうにもされているわけであります。
これを受けまして、今回の古物営業法の改正では、出品者の確認や取引記録の作成、保存について、事業者の自主的な取り組みを支援するというまさにその観点から、その実施方法の認定制度を設けるというようなこと、また、インターネットオークションにおける盗品等の売買防止や速やかな発見のために遵守されるべき必要最小限度の事項を定めることとしたものであります。
なお、この改正内容の骨子につきましては、この研究会において改めてその後御検討いただきまして、本年の二月には、盗品等の売買防止と速やかな発見等を確保する目的にかなった適切なものと御了承をいただいているところであります。
○吉井委員 いろいろなことを書いてあるんですが、しかし、業界の自主努力を促すということで、八月の段階では明確にその方向を出していたわけです。
ある新聞でこの経過を詳細に報道しております。昨年十二月末に主な委員のもとに警察庁から突然二枚の書類が送付された。次期国会でこんな法改正を行いたいので承認してくれと要請するもので、内容は営業届け出制や盗品報告義務などの施策一覧だった。多くの委員にとっては寝耳に水で、規制緩和の御時世に規制導入などとんでもないと異論を申し立てた委員もいたが、警察庁の熱心な説得に押され、一月下旬に開催された委員会で施策案を了承したという。研究会委員の複数の人が、我々が法案に同意したとされるのは心外だと。これはお読みになられたと思いますが、マスコミでも紹介されております。
こうした経過からも、やはり今回の法案提出が極めて強引であったということを私は問題として指摘しなければならぬと思うんです。今回のように一定の営業規制をかける措置はむしろ慎重に対処するべきだ。昨年八月の業界の自主努力を促すというその立場を受けても、やはり慎重に対処するという姿勢を貫いてくることが必要だったと思うんです。
一方では、内閣府の方で消費者保護を含めた検討もしているときですから、やはり包括的な、どういう形で消費者の保護をするか、どういう形で盗品等が売買されないように、消費者がそういうものをだまされて買うようなことのないようにするか、やはりそういう立場で考えるべきだったと思うんですが、なぜそういう慎重な対処をしてこなかったのか、伺います。
○瀬川政府参考人 今回の法改正に当たりまして、先ほど御答弁申し上げましたとおり、セキュリティシステム研究会を通じましていろいろな御意見を伺ってきたところであります。まさに慎重に検討してきたものというふうに我々は考えております。また、報道等を引用されましたけれども、これにつきましても、いろいろな御意見はございますけれども、この研究会として最終的に今回の改正については適切なものというふうに御了承いただいたものであります。その他、古物営業の事業者の方々等の意見も十分に伺ってきているところであります。
また、その状況といたしまして、インターネットオークションにおける盗品等の処分が多発している、新たな財産犯の被害者が日々発生している、そういう状況がございます。盗品の売買防止あるいは速やかな発見、そしてまたそれが消費者の保護にもつながるという観点で、こういった必要最小限度の制度の導入というのは急務であるというふうに我々は考えております。
○吉井委員 慎重にといって、かなり強引に出してきたという感は否めません。
それで、業者の方たちのお話がありましたが、反対ということを言っておられたのが、かなり警察庁の方の強い圧力といいますか、強い働きかけといいますか、しかし、それにしても懸念をやはり表明しているんですね。ですから、問題がこれで解決したということじゃないままに強引にやってきているということを言わなきゃならぬと思います。
このネットオークション業者を届け出制にすることは、これは、緩やかではあるが、憲法が保障する営業の自由を一定制限することになってきます。警察法第二条二項では、「日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。」と規定しています。警察の権限というのは、その目的を達成するために必要最小限において行使されるべきであり、警察権限の新たな拡大というものは極めて限定的、慎重に行われるべきものであります。ところが、今回の法案作成経過を見ると、そういう慎重な対応というのが見られない。
大臣、やはりそこは、出してしまってから、公安委員長として今さら私は引っ込めますわというわけにいかないという立場かもしれませんけれども、しかし、こういう法案作成経過というものを見たときに、慎重な対応をしてきた、そういうふうに提案者である大臣としては私は言えないんじゃないかと思うんですが、大臣、どうですか。
○谷垣国務大臣 今の点につきましては、事業者とこの案を作成した部局との間で、相当な量の文書のやりとりと申しますか、説明をし、あるいは疑問に答えというようなプロセスが記録に残っておりまして、私も全部詳細に隅々まで目を通したわけではございませんが、そういう意味での了解を取りつける努力というのは手続を踏んだのではないかな、こう思っております。
○吉井委員 警察と、それからヤフーにしても楽天にしても、そういう業界の人たちとの関係でいえば、やはりそれは警察の方は優越的な立場にいらっしゃるということを多くの人たちは感じるわけですから、ですから、それだけに限定的、慎重に臨んでいく、そういうことが必要なわけで、警察刷新会議などが指摘しております警察の閉鎖性、無謬性の発想というものがやはりあるんじゃないか。これは前回私、刷新会議のことを紹介しましたが。
今回の措置というのは盗品防止の実効も極めて乏しいということが予想され、例えば、ネットオークション業者に警察への盗品申告義務を課しているわけですが、ネットオークションの業者の方は、出品者から出品物の写真を画像データで受けてネット上で紹介するだけで、現物を直接手にするというわけじゃないんですね。そこはこれまでの古物営業者の場合と随分違うわけで、そうすると、どうしてそれで盗品だとわかるのか。明確にわかるものもあり得るだろうと私も思うんですよ。しかし、どうして盗品だとわかるのか。盗品を見きわめるというのは極めて難しいということは、まず、警察庁の方もそういうふうに見ておられると思うんですが、どうですか。
○瀬川政府参考人 確かに、インターネット上では直接商品を見たりさわったりということができないわけでありますが、現実に今まであった事例を見ましても、インターネット上にそういった不審点が、例えばシリアルナンバー自体を画像で表示して展示をしているというような物品が出ていたというような場合もございます。それから、先ほど大臣から答弁いたしました発売前のゲームソフトが出品されているということについて、被害に遭った者から事業者へ通報があるというような場合があります。それから、例えば官公庁の身分証明書のような、盗難や横領に遭わなければおよそ出品されるとは考えにくいものというのが出ているということもあります。こういった状況のもとにおいてインターネットオークション事業者が不審点を認識するということはあり得るものというふうに考えております。
○吉井委員 私も、一〇〇%わからないというようなことを言っているんじゃないんです。明確に写真でわかるものもあるでしょうし、現にそういう場合は、これまでの法律の中でも、これは被害者が届け出をして、それで犯人に接近して捕まえることもできたわけでありますし、盗まれた物がきっちり返ってくるかどうかについてはなかなか難しい問題もいろいろあったにしても、そういうことも、今までの法律でもそれは明確にわかるものについてはあるわけなんですね。
盗品の判断というのは、被害届に基づいて警察が行うというのが本来なんですね。現行法では、個人間取引については、刑法で盗品等に関する罪というのがあり、盗品の売買については十年以下の懲役及び五十万円以下の罰金が科せられるということになっていて、本来、個人間取引は自由なんですね。それを、本人確認情報や取引記録が蓄積され、これを警察がたどることが可能になると、単に盗品流通防止という目的を超えた運用の危険、個人情報保護上の問題、基本的人権の問題というものが懸念されるようになりますから、そうならないように、そうならない保証というものは、これは大臣の方で何かちゃんと考えてはるんですか。
○谷垣国務大臣 いろいろな規定を見ていただきますと、先ほど、届け出義務などをなぜ課すのかというお話もありましたけれども、あれも事後に届け出るというようなことになっておりましたり、いろいろなところがかなり抑制的な制度の立て方になっているのではないかと思います。そこをまた逆の立場から見ますと、先ほど枝野議員の御質問にもありましたけれども、実効性が上がらないではないかという御指摘もないわけではない。新しい犯罪類型の中で、捜査手法を、これは捜査ではないんですが、どういうふうに全体を規律していけば、吉井委員の問題意識であられるように、消費者の保護に資することができるか、いろいろ考えた末にこういう形のものができているというふうに御理解をいただきたいと思います。
○吉井委員 法案では、出品者の本人情報や取引記録などが努力義務とされ、個人情報がネットオークション業者に蓄積されていくという、この問題があるわけですね。取引に関する通信記録、ログの保存は、不正アクセス禁止法でも、憲法上の権利である通信の秘密から見て問題があるとして明文化が見送られてきたという経過のある問題だと思うんです。ですから、努力義務とはいえ、取引記録の保存というのは、これはプライバシー保護の立場から問題であるということは、大臣としてもこの点はやはりきちんと考えなきゃいけないと思うんですね。もう一遍伺っておきたいと思います。
○谷垣国務大臣 ですから、この規定も、これが絶対のものであるかどうかはいろいろまだ御議論もあると思いますが、そういう通信の秘密あるいは当事者の負担、それからやはり、全体でこういう匿名性のもとに青少年の犯罪を誘発しているのじゃないかというおそれ、そういうものをいろいろ勘案した結果ああいう形になっているというふうに私は理解しております。
○吉井委員 今言いましたように、不正アクセス禁止法のときも、これは憲法上の権利である通信の秘密から見て問題があるということで明文化が見送られてきたという、やはりプライバシーの問題をどう扱うかということと、それから消費者保護をどうするかということ、そして盗品等が不当に、消費者がそういう盗品をいわばだまされて買うような、そういうことにならないようにする仕組みをどうつくるかということは、ここは非常に大事なところで、ネットオークション市場全体として見れば、個人ネット競売の市場規模は、二〇〇一年で千五百億円、これが今、二〇〇六年で五千五百億円、拡大するというふうに調査会社などでは予測を立てているわけですね。
これだけの市場のイニシアチブ、関係業界への天下り先の確保をめぐって、警察庁、経済産業省、法務省などが省益をめぐって非常に激しい競り合いをやっているということも指摘をされたり、また、実際これだけの額のものになってきて、そして、そのときにだれがどう認定するかとか、認定団体はどうだとかいったところから、非常にこういう問題は、よく言われているような構図というものが実際うかがわれるわけです。
ですから、今大事なことは、盗品売買をどのように規制して犯罪者をとらまえて処罰するかということが一つありますし、インターネット時代の消費者保護をどう進めるのかということ、それからインターネット時代の個人情報保護をどう進めるかとか、通信の秘密をどう守るのかとか、今大事なことは総合的な検討を進めて取り組むということであって、そこから総合的対策を打ち出すということが必要なときだと思うんです。
どうも今回見ておりますと、世界の例から見てもかなり特異なんですが、そういう総合的な打ち出しを行うという中で考えたものにはなっていないと思うんですが、時間が迫ってきたようですので、最後に、総合的な対策を打ち出すことは必要だというこの点についての谷垣大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
○谷垣国務大臣 総合的な対策を打ち出せというお話ですが、確かにコンピューターネットワーク上の取引で、消費者保護という観点から考えますと、盗品を初めとする不正な物品の流通とかあるいは詐欺というようなことが問題となっているわけですが、私は、一番根本は、こうした事案を予防するといいますか、そして被害が起こるような場合にはやはりきちっと検挙するということが警察の立場からすれば一番重要でございます。
そうしますと、先ほどの西村委員の御質問に答えたことにもなるわけですが、ハイテク犯罪についてやはり捜査体制を充実強化を図っていく、それから予防に関しては、ハイテク犯罪の予防に必要な知識等を持った人間を配置して積極的な広報啓発を実施していく、あるいは相談窓口を整備して的確にこたえていく、そういう情報セキュリティアドバイザーの設置、活用というようなことが警察の立場からすれば重要ではないか、こう思っております。
今回の改正も、ネット上、古物の取引に関して、盗品等の流通を防止して被害品の速やかな返還を図るということを一つの目的としているわけであります。ただ、今後とも、今おっしゃった消費者保護の観点、あるいはプライバシー、通信の秘密、こういうものには十分留意をしながら施策を立てていかなければならない、こう思っております。
○吉井委員 時間が参りましたので終わりますけれども、盗品売買の規制は当然のことですし、それから犯罪者をとらまえるのも当然のことだと思うんです。だから、国家公安委員長、警察の立場で大臣がおっしゃったその部分はわかるんですよ。ただ、あなたは同時に内閣の一員なんですね。だから、内閣としてやはり総合的な対策というものを組み立てていくべきだ、それを抜きにして、今回のような作成経過、提出過程、その他内容からしてこれは極めて問題があるということを指摘して、質問を終わりたいと思います。
○佐々木委員長 吉井君の質疑は終了いたしました。
次に、北川れん子君。
○北川委員 社民党・市民連合の北川れん子といいます。
まず最初に、事業者はこの法案を容認したのかという点でお伺いしたいと思います。
本年六月四日、楽天、ディー・エヌ・エーとヤフーの三社が、警察庁生活安全局セキュリティシステム対策室にあてた「古物営業法改正案について」とする文書では、「法案が成立した後の法の運用方法について過剰な規制がなされないような制度的担保が明確にはなっていないことには強い懸念がありますし、定義に「あつせん」という文言が使用されていることは法技術として稚拙であると考えておりますが、」云々と書かれた文書があります。事業者の見解が述べられているわけですが、翌日の新聞では、「ネット競売規制法 ヤフーなど容認」というふうに報じられていますが、警察庁は本法案について事業者の理解を得られたという認識なのでしょうか。
○瀬川政府参考人 当庁としては、これまで事業者から、当庁からこれまで説明したとおりの適正な法運用がなされることが担保されるということを前提として、従来の反対の立場を撤回するという趣旨の御見解をいただいております。報道では、事業者が古物営業法改正案を容認すると発表したというふうになされているということは承知をいたしておりますが、当庁が事業者から受けている説明と大きな相違はないものというふうに考えております。
○北川委員 ですが、反対は撤回する、しかし賛成したとは少なからず言っていらっしゃらないわけで、事業者と貴庁の認識に少なからず相違があるということを理解していただけたと事業者の方は文書の中にも書いているわけで、殊に、この三社がインターネットオークションの定義、そして先ほど議論にもなりましたあっせんの定義についてはかなり何度もいろいろな資料を出されています。
そこに書かれているのがすごく説得力があったわけです。「インターネット・オークションは、オークションのような雰囲気を味わうことができますが、本当の意味でのオークションとは異なる単なる広告媒体にすぎません。したがって、いかなる意味においても「あつせん」は行っておらず、かつ、「あつせん」が行えるような地位にはありません。また、利用者が広告掲載システムを利用しているに過ぎないという認識は国際的なものであると考えます。」ということで、あくまでも事業者は、この問題は広告媒体に関する新たな規制であるというふうな認識が警察庁の方には欠けているのではないかということを言われていると思うんですが、この点に関してはどのようにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
○瀬川政府参考人 インターネットオークションというものが、古物の売却をしようとする者と買い受けようとする者との間でオークションが行われるシステムを提供している、これにより、出品物の情報を掲載する、オークションへ入札する、オークションによる落札が行われる、双方の連絡先の通知が行われるということで、インターネットオークションは、競りの方法が用いられることによって、古物を売却しようとする者と古物を買い受けようとする者とが、提供されるシステムを利用した結果として相互に結びつくという機能が認められるという点につきましては、事業者の方々とも話をし、そして御了解もいただいているというふうに認識をしております。
○北川委員 しかしながら、きょうの議論の中にも、新たにこの法案を、従来のものを改正という形で提案するということにあいまい性が含み込まれたのではないかというふうな議論があったと思うんです。昨年の特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律、この法律で十分ではないかというのが事業者の立場だというふうにお伺いしておりますが、それ以上のものが今回の改正の中に含み込まれているのでしょうか。
○瀬川政府参考人 御指摘のいわゆるISP法と本法はその趣旨を異にしております。今回お願いしております改正法は、あくまでも盗品の流通の防止と速やかな被害回復ということに資するための必要最小限度の規制ということで、これはこういった法目的を有する古物営業法において規定すべきものというふうに考えております。
○北川委員 インターネットオークションは、何も古物に固執しているわけではなくて、新品も受け付けるということを強調されていると思いますし、期せずして、警察庁の方は、非対面性のいいところをつぶさない程度の規制だと。これが本当に改正に当たるのかなというのが私の立場であるわけです。
今おっしゃった盗品についてお伺いしたいと思います。盗品の申告に対する文書を、五月十四日、事業者にあてて出されているわけですが、盗品等の場合の警察への申告は現在でも事業者が自主的に行っていると聞いていますが、これは単なる協力要請なのでしょうか。
○瀬川政府参考人 現状におきましては、おっしゃるとおり、協力を要請し、協力に応じていただける場合があるということでございます。
○北川委員 今回も努力義務で、別に大して、従来も協力してくださっているわけですから、そんなに問題が深まったわけではないと思います。
それで、二十一条の七についてお伺いしたいわけですけれども、インターネットオークション事業者に盗品等であると疑う相当な理由がある場合において、警察本部長は、これが主語になると教えていただいたんですけれども、インターネットオークション事業者に対し、当該古物に係る競りを中止することを命ずることができるわけですよね。二十四時間垂れ流しのインターネットオークションを中止することを命ずるという大きなことができるわけですが、事業者自身は出品者と落札者の間の実際の取引には関与しない、だからあっせんの定義にこだわっているわけですが、関与しない中で、この相当な理由を具体的に示してください。
○瀬川政府参考人 競りの中止命令をかける具体的な場合ということでありますけれども、社会通念上、盗品であるというふうに疑われる理由が客観的に見て合理的に存在するということだろうと思います。先ほど来御答弁申し上げておりますけれども、出品されている古物、その画面等であらわれている古物の特徴と被害届が出されている物品との特徴が、例えばシリアルナンバー等が一致をするというような場合でありますとか、盗品等であると疑う根拠が客観的、合理的に見て存在すると言える場合ということでございます。
○北川委員 そのことも今回の議論の中で、それが盗品かどうかなんて、盗品というラベルが張っていないだけにわからないと。はっきり言ってわからない、被害が起こらない限りわからない事実の方が多いのではないか。そして、盗品であるという件数は、三百六十万件ほどの件数がある中でのほんのわずかではないかという意味においても、無理なことを、結局はできないことを法文に書いてあるということで、有名無実の法文ではないかというふうに私は思います。
そして、私自身もサイバー警察、サイバーパトロールを視察させてほしいとお伝えしているわけですけれども、二十四時間体制でどのように規制をされているのかをぜひ実感としても感じてみたいと思っておりますが、本法案に関して、警察庁は事業者と何回ほど意見交換をされたのでしょうか。
○瀬川政府参考人 何回という具体的な回数はちょっと調べておりませんが、相当の回数、これは先ほど来申し上げております研究会もございますし、その後も、それからまた、事業者の方が法案に対する反対の意向をこの春に表明された、その前後、それ以降も相当の密度、頻度で私どもは事業者の方と話し合いを進めてきたというものでございます。
それから、先ほど、そういった盗品であるというものがインターネットオークションに、そういうものを明示したものが出品されるわけはない、こういうお話でございましたが、現実に、例えばシリアルナンバー等、はっきり盗品と認識といいますか、被害届を受けている側からすればこれはもう盗品であるというふうに明確に認識できるようなものが掲示をされていることはございますし、それから、被害に遭われた方から、自分が盗まれたものが例えば自分にしかわからない特徴があるということでその届け出があるというようなことも実例としてあるわけでございます。
○北川委員 相当な回数というふうに言っていただいたんですが、インターネットオークションの定義さえも乖離があった中で相当な回数やり合ったと言われるんですけれども、現実には法文はそのままなんですよね。どこも変えずにそのまま提案をきょう国会に、そしてこの三時間の審議でやるわけなんですけれども、そこにやはり警察は強引な押しつけというものがあったのではないかという気がぬぐえないわけです。法文は変更されないままであったということは確認させていただいたわけですが、事業者に対して解釈を変えることで対応をされています。国民の権利や義務を制約する警察行政が、こうした裁量を自由主義、資本主義の世の中に存在する事業者に対してやっていいことなのでしょうか。
○瀬川政府参考人 あっせんという法文の問題について御指摘があったと思います。
確かに法文の用語は変わってはいないわけでありますが、これはあっせんという言葉についての理解ということで、事業者の方に対していろいろ説明をし、先ほど申し上げたような内容のものとして事業者の方も御理解をいただいたということでございます。法文の変更ということではなくて、先ほど来申し上げておりますように、事業者の方に対する累次の説明により御理解をいただいてきているものということでございます。
○北川委員 私もきょうはあっせんの定義について二、三お伺いしたいと思っていたんですが、先ほど民主党の枝野議員のところで十分おやりになっていたと思いますので、次の点だけを内閣法制局にお伺いしたいと思います。
ことし五月二十八日、警察庁からヤフーに出した「古物営業法上の「あっせん」の意義について」では、一般的な用語としてのあっせんの意味とは内容を異にするものである、警察庁としては、一般的な用語としてのあっせんと誤解されることがないように解釈を明確にするとともに、周知するように努めていきたいと考えていると書かれているわけですよ。一般的な用語としてのあっせんとは違うということを逆に周知徹底するということをあえて言われているんですが、こうした警察庁の考えを法制局も法律上問題なしというふうにされているのか、お伺いしたいと思います。
○山本政府参考人 ただいま御指摘の五月の文書というのは、私ども実は承知はしておりませんけれども、一般にあっせんという言葉についてどういう意味かと申し上げますと、法令用語としても、ある人とその相手方との間の交渉が円滑に行われるように第三者が世話をすることというふうに理解しておりまして、警察庁が把握されている実態がそういうことであれば、それはあっせんという言葉に適しているかと思います。
○北川委員 私は定義のことを聞いたわけではなくて、警察庁のこういう態度ですよ。だから、あえて一般の用語とは違うんだということを周知徹底するというような二枚舌でやるようなことを、法制局は聞かれてどう思うのかというふうにお伺いしたわけです。あっせんの定義を聞いたわけではないのです。
○山本政府参考人 その点につきましては、いろいろな各業界とのやりとりがあったと思いますけれども、私どもとしては、あくまでも、実際に行われている業の実態が法令用語としてあっせんに適しているということであれば、それはそれでよろしいのかと思います。
○北川委員 やはり、ちょっとそれは違うんじゃないかなというふうに私自身は思います。その点は、ぜひ法制局の方で、あえて誤解を生む要素が多いような法案をつくるべきではないというような提案を警察庁にするべきではないのか。そして、本来、広告媒体の規制として受けとめる範囲の用語をきっちりと使うべきであると事業者自身が提案しているわけですから、その面から今回の法律をもう少し見直していくべきではないかということの御提案ぐらいしてくださったらいいんじゃないかと思うんです。
なぜかというと、ヤフーが自然独占をしているとみずから経済産業省も認められておりましたけれども、ヤフーは、例えば中傷文言とかがあったりしても、ヤフーオークションは一切の責任を負いませんというふうにしています。そして、去年から出展料を取られたということで、お伺いすると、大体二十四億一千六百万円、これは幾ばくかの広告料金も含まれたものだということを留意してくださいということで教えていただいたわけなんですが、出展者に対しては広告料金というような明示ではないのですね、出展料として取っていらっしゃる。
その辺なども、事業者の中での混乱、事業者は、あくまで自分たちは広告ということを国に対しては言っている。けれども、出展する側には出展料だというふうに徴収する。そこのところに、出展する側の意識の改革、インターネットオークションというバーチャルな新しいシステムの非対面性の売買における消費者教育というか、売る側の倫理、商いをする者の倫理というものに関しての徹底というものがこれから必要な時代になってくるのではないかと思うんです。
次に、システムを使用させるけれども料金を取らなければ営業ではなく、この法は課せられないというふうにお伺いしたんですけれども、これは本当でしょうか。これは事実ですか。
○瀬川政府参考人 今回の古物営業法の改正の対象でありますものは、インターネットオークションにつきまして、これを営業として行う者に限られるということでありますので、営利の目的を持って同様の行為を反復継続して行うことが要件となるということだろうと思います。
出品料や落札手数料といった、利用者からインターネットオークションに係る対価を徴収している場合が営業に当たるということと解しておりますので、御指摘のような、無料でインターネットオークションを開くというようなものは営業に該当しないというふうに考えております。
○北川委員 これは届け出制であるわけで、無料か有料かというのをどの時点で警察庁は確認することができるわけですか。
○瀬川政府参考人 この届け出は事後届け出制でありまして、営業者の方が、営業としてこういうことをやるという場合に、みずから判断して届けていただくというものでございます。
○北川委員 だから、事業者みずから届け出るわけなので、サイバー警察ですかでずっと監視をしていらっしゃるとは言うんですけれども、それがその時点で有料のものなのか無料のものなのかをどう警察は見分けることができるんですかということをお伺いしているんです。
○瀬川政府参考人 営業かどうかを見分けるポイントは、先ほど御答弁申し上げたと思いますけれども、営利の目的を持って同種の行為を反復継続して行うということで、例えば、出品料でありますとか落札手数料というような対価を徴収しているかどうかということをメルクマールとして判断することになろうかと考えております。
○北川委員 だから、どうやってそれがわかるんですか。
○瀬川政府参考人 例えば、そのインターネットオークションに参加しようとする場合に出品料を取られるということは、そのサイトを見れば容易に判断できるものと考えております。
○北川委員 サイトに書いてあるからと。サイトに、出品料はどうだ、出展料がどうだということとかが書いてあるからと。
だけれども、こういうことはすごく込み入っていて、私がこれで聞かせていただいてすごくおもしろいなと思ったのは、これはヤフーがやっていることなんですけれども、オークションの落札システムを教えてあげる機会を持っているのがヤフーだからオークションなんだというのが定義の中に入っているらしいんですけれども、そういうこと自身は、使う側、出展する側、買う側というのは余り意識しないで簡単に使っていると思うんですよね。
それから、一つよく問題になっているのは、アンテナショップの一つの部屋に閉じ込めて、そこで何か無料で差し上げますよと。無料で差し上げるんだけれども、本当は羽毛布団のすごく高いセットを買うことを契約させられたり、またもう一つは、高い健康食品を定期的に買うことを契約させられたり、こういういろいろな商法というものの消費者教育といった面の欠落というのは日本はすごく大きくて、学校教育の中に消費者教育の場面はありません。
ですから、私自身は、システムを使用させるが料金を取らなければ営業ではなくこの法は課せられない範囲と課せられる範囲を使う側、特に買う側、消費者側がどう見分けることができるのかという点において、警察庁はどのような配慮を持って事に当たろうとしているかという点でお伺いしたいと思います。
○瀬川政府参考人 今回提出しております改正案につきまして、例えば、ホームページ上で古物営業を行おうとする方については、正規の業者の方は許可証番号等をホームページ上に掲示をする等、その真正性を担保するような仕組みも設けております。また、インターネットオークション業者につきましては、認定制度というものを設けまして、一定の基準に合致する業者につきましては認定されているという表示をすることができるということで、消費者の方にとりましては、こういったホームページ上の表示でありますとかインターネットオークション上の表示等を見ることによりまして、取引の信頼性というものの判断をすることができるようになるという意味で、消費者の保護ということにもつながるものというふうに考えておりますし、一方、悪質な業者につきましては、そういったことにより淘汰をされていくものというふうに考えているところであります。
○北川委員 事業者がなぜあっせんの定義にあくまでこだわったかというと、多分、契約という行為に自分たちは仲介をしていないということを明らかにしてもらいたいという一点において、間違いなく広告として流したよと。あなたが出した商品に、いたずらに傷をつけたりした状況で出すとか、これだけ大きいものをちっちゃくして見せるように出したとか、そういうことはありませんよと。その点において、正常にシステムは機能していたということの担保だけを事業者は負いたいという意味において、あっせんの定義に事業者はこだわられたのだろうというふうに私は想像し得るわけです。
私は、従来の古物商の方にも聞き取りをさせていただきました。従来の古物商というのは、質屋さんとか、もろもろいろいろあるわけなんですけれども、その方たちの意見の中で、自分たちと同じ土俵にしてもらいたい、なぜインターネットオークションだけが届け出制なのか、自分たちと同じ許可制にしてもらいたいというのが一点。そしてもう一点が、出展する側の情報をできるだけ開示するようなシステムをとるべきではないかというふうに、これはきっと検討委員会の中でも、従来の古物関係者の方から出た意見だろうと思うんですけれども、この辺の反映というものはこの法律の中にあるのでしょうか。
○瀬川政府参考人 今回、インターネットオークションにつきましては、先ほども申し上げておりますとおり、事後届け出制というふうにしているわけであります。やはり、古物営業の方とインターネットオークション業者は、今まさに御質問にもあったように、古物といいますか、取引されるものに対するかかわり方に差があるということだろうと思います。
したがいまして、古物営業の方につきましては、営業規制としての許可制が設けられておりますし、インターネットオークション業につきましては、営業の自由というお話もございましたが、そういった点もいろいろ考慮いたしまして、必要最小限度の規制として事後届け出制ということにしたいと考えているものでございます。
○北川委員 ということは、全然反映しなかったというふうに私には聞こえるんですけれども、従来の古物商の方たちの努力ですよね。古物商としてあいまいな人たちがふえて、古物商取引というものに魅力を感じない消費者がふえないような努力というものをそれぞれされてきていることへの配慮と、これから新しく始まるバーチャルなインターネットオークションのような非対面性の売買に関しての法律というものは、私自身は分けてやった方が、どちらにとっても有利に、きっちりとした教育とか消費者保護とか、そういうものが入ったものとして有効に活用できるというふうに思うんですが、分ける必要、反映されなかったというふうに受け取ったからですが、そういうふうには思われませんでしょうか。
○瀬川政府参考人 古物商の方のそういう意見を反映しなかったということでありますが、先ほども申し上げましたとおり、古物そのものに対するかかわりに差があるわけでありまして、実際に物を古物商の方は取り扱われるわけですが、インターネットオークションの営業事業者の方は、みずからが売ろうとする人を対面して見るわけでもなければ、その品物をみずからが取り扱うわけでもないということで、これはやはり差異があるのではないかというふうに思います。
それから、別の法律で取り扱うべきだというお話でございますが、やはりこれは、盗品の流通防止、それから被害の回復という観点から見たときに、この両者は共通してとらえられるべき点があるということで、そういう観点から、今回、古物営業法の改正において対象としていただきたいというふうに考えているものでございます。
○北川委員 時間が来ました。
なかなか議論はかみ合わなかったと思うんですけれども、ぜひ従来の方の御意見なども聞き取りをしていただきたいということを申し添えて、私の質問は終わります。ありがとうございました。
○佐々木委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○佐々木委員長 この際、本案に対し、枝野幸男君から修正案が提案されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。枝野幸男君。
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古物営業法の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○枝野委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました古物営業法の一部を改正する法律案に対する修正案について、その提案理由と内容を御説明申し上げます。
まず、修正案の内容を御説明申し上げます。
修正案は、本法案により新設される古物競りあっせん業者に係るすべての条項を削除するものであります。
以下、主な提案理由を申し上げます。
第一に、この法案の規制などに全く実効性がないことです。
業者の届け出制については、悪質な業者が横行しているという事実はなく、また、所在地を海外に移すことによって、全く空虚な規定になってしまいます。今後の変化に対応する事前規制という発想での過剰な規制であります。
相手方の真偽確認の努力義務は、シェアのほとんどを占める大手三社が既に実行しており、努力義務を法制化する必要はないと考えます。
盗品の申告義務については、事業者の報告による盗品の発見には前例がなく、また、事業者が盗品と判断することの困難性を考えると、現実性のない過剰な義務規定であります。
記録の作成、保存の努力義務については、記録は現状でも当然作成され、一定期間保存されており、義務化の根拠が薄弱であると同時に、通信の秘密あるいは個人情報保護などの観点から問題があり、慎重な検討が必要であると考えます。
認定制度については、現状でも不当行為を野放しにするような悪質業者の存在を警察も認識しておらず、また、大手三社がシェアのほとんどを占める現状を考え、また、海外に所在地を置いた場合にはこの適用にならないということを考えると、実効性はないと考えます。
競りの中止命令については、これまで警察が業者に照会した件で削除の要請の例もなく、また、削除を出品者が気づき、犯人に証拠隠滅や逃亡の機会を提供することにもなりかねません。
盗品等に関する警察の報告要求については、事業者自体の情報では盗品との判断は不可能であり、刑事訴訟法百九十七条二項の照会で十分対応可能です。
以上のように、インターネットオークションに係る本改正案のすべての新たな規制が、実態を踏まえず、実効性に極めて乏しく、他に十分代替措置があるものばかりであります。
以上のように、本改正案は、インターネットに対する発想が根本から間違っていると言わざるを得ません。
私たちは、インターネットオークションを含むインターネットを使ったコミュニケーション、商取引は、今後大きく成長すると考え、この分野をいたずらに規制で縛ることには反対です。一方、犯罪の防止は当然重要であり、自由であるべきインターネットの世界にも、業界による自主的なガイドラインの作成など、今後一定のルールを確立すべきだと考えます。
しかし、本改正案のように旧態依然の法規制をやみくもに行っても、余りに広範なネットワークであるインターネットの世界においては、実効性が全くありません。警察は、まず個別の犯罪を地道に厳格に捜査すべきであって、法による安易な規制は、何かやっているというアリバイにすぎないと考えます。
第二に、法改正の前提となる、盗品売買を放置しようという悪質なインターネットオークション事業者が横行しているという事実がないということです。
この業界は、大手三社がほぼ一〇〇%のシェアを占め、本人確認の導入などさまざまな自主努力を既に行っています。インターネットオークション取引数の大幅な増加にもかかわらず、盗品の摘発件数がほぼ横ばいであることから、盗品の出品率は低下していることが推定されます。二〇〇一年八月の警察庁生活安全局長主宰のセキュリティシステム研究会における、法的措置については、自主規制の効果を踏まえて、なおその必要性があるかどうかを見きわめていくべきとの方針からしても、民間の自主努力の成果を一定期間見きわめるべきで、性急な法による規制強化が必要な状況とは思えません。
その他、取引の場を提供するにすぎないインターネットオークション業者の実態を全く無視して、あっせんという言葉をその定義に使用している点、民間業者に警察の代行を行わせようという発想がある点、通信の秘密との検討が不十分な点など、この法案には多くの本質的な問題点があります。
以上が、古物営業法の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由及びその内容であります。
何とぞ、委員各位の御賛同をいただき、可決していただきますようお願い申し上げます。
○佐々木委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○佐々木委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也君。
○小野委員 私は、自由民主党、公明党、保守党を代表いたしまして、古物営業法の一部を改正する法律案につきまして、政府提出の原案に賛成し、民主党より提出されました修正案に反対する立場から討論を行うものであります。
最近の高度情報通信ネットワーク社会への移行に伴い、だれもが手軽に古物取引に参加できるインターネットオークションが発達してきております。これにより、個人間の古物取引の機会が飛躍的に拡大し、国民生活にメリットを与えているところでありますが、一方では、インターネットオークションを利用して盗品等を処分する事例が多発しており、まことに憂慮すべき状況にあります。
警察庁が行った調査によれば、平成十二年一月から十四年九月までの二年九カ月の間に、インターネットオークションにおきまして、件数にして八千七百二十三件、金額にして三億五千三百十六万円に上る盗品等が処分されていると推計されております。その内容を見て特に憂慮すべきことは、少年グループがインターネットオークションで小遣い稼ぎをしようと考え、オートバイの部品等を盗んで処分を繰り返していた事例など、少年によるものが約半数を占めているということであります。
このような現状に対処するためには、政府提出の原案のとおり、インターネットオークションについて一定の規制等を導入することによって、これを通じた盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図り、もって少年による犯行を初めとする財産犯が誘発されることを未然に防止することがぜひとも必要であります。
また、消費者保護の観点からも、この改正が緊急に必要であります。
このインターネットオークションを通じた取引は、見ず知らずの他人との非対面取引であり、また、限られた情報だけに基づいての取引でもありますため、盗品が取引に紛れ込む可能性も高く、しかも、盗品と知らず買い付けた場合におきましても、民法の規定により、盗難発生から二年間は被害者からの請求に応じて購入したものを返還しなければならないとされているものであります。
したがって、インターネットオークションにおける盗品等の売買の防止を図ることは、消費者の保護と取引の安全が確保されることにもなり、電子商取引の活性化にもつながってくるものであると考えるものであります。
一方、政府提出の原案で定められている遵守事項等は、インターネットオークションの実態を十分に踏まえた、業務を通じて利益を得ている事業者において負担することが相当な必要最小限のものであり、事業者に過重な負担を与えるものではないと考えております。
民主党により提出された修正案は、政府原案のうち「「古物競りあつせん業者」に係る改正規定を削除する」とされておりますが、これは、インターネットオークションにおいて盗品等が処分されている現下の深刻な状況を看過し、少年による犯行を初め財産犯が誘発されることを防止する必要性を軽視するものでありますので、適当ではないと考えているものであります。
以上のとおり、政府提出の原案の内容は、現下の情勢に効果的に対処するために必要不可欠なものであります。本改正によって、国民がインターネットオークションを通じた古物取引を安全に行うことができるようになることを強く期待いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
○佐々木委員長 次に、細野豪志君。
○細野委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府原案の古物営業法の一部を改正する法律案に反対し、民主党が提出した修正案に賛成の立場から討論を行います。
まずは、民主党・無所属クラブは、インターネットを通じた商取引が我々の生活に浸透しているという認識に立ち、インターネットの特性を十分に理解した上で法案を改正すべきであるという基本的な認識に立っていることを明確にしておきたいというふうに思います。
こうした基本認識に立ちますと、政府原案には多くの問題点があります。
まず、インターネットオークションの現状認識と将来性に対するとらえ方が間違っているということであります。
インターネット取引は、我が国だけで完結するものではなく、情報が全世界を駆けめぐるものであるという特性を有しております。他国に同種の規制が存在しない以上、我が国だけを対象とする政府原案は実効性に乏しく、いわゆるざる法になる危険性が十分にあると考えております。
個別の問題点は、先ほど枝野議員の提案理由にもございましたので、ここでは割愛いたします。
確かに、インターネット社会の進展によって、従来想定できなかった犯罪が発生することは否定できません。しかし、政府原案は、インターネット取引に対する警察の過度の介入をもたらす一方で、犯罪防止に実効性がなく、今後の新たな商取引や新たな産業創造に多大なデメリットをもたらします。したがいまして、現段階では、インターネットオークションに係る規定の導入には慎重であるべきというのが我々の考え方でございます。
以上の点から、私は、政府原案に反対して、民主党修正案に賛成の意見を表明して、討論を終了いたします。(拍手)
○佐々木委員長 次に、吉井英勝君。
○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
私は、日本共産党を代表して、政府提出の古物営業法の一部改正案に反対、民主党提出の修正案に賛成する討論を行います。
政府案への反対理由の第一は、ネットオークションの法規制は、これまでの盗品防止対策の検討経過から見て時期尚早ということであります。
ネットオークションの盗品取引、流通の防止対策を検討してきた警察庁生活安全局長の私的諮問機関セキュリティシステム研究会の結論は、業界の自主規制でした。
ところが、警察庁はこれを無視し、法規制を打ち出すという、極めて不可解かつ不透明な法案提出の経過です。法規制は、専門家や業界団体代表も委員に入って合意した諮問機関報告の結論である自主努力を行い、その結果を踏まえた上で改めて検討するということが妥当です。
今回の措置は、緩やかではありますが、憲法が保障する営業の自由を一定制限するものです。こうした事柄への警察の対応は、警察法で言うように、「いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。」との規定の趣旨に沿って慎重な対応が求められていますが、今回の対応は、そうした法の趣旨から逸脱していると言わなければなりません。
反対の第二の理由は、盗難防止の法規制の実効性が乏しいということです。
法案は、ネットオークション業者に対し、盗品について警察への申告義務を課していますが、ネットオークション業者が出品物そのものを直接手にしないシステムでは、盗品かどうかの判断は不可能であり、したがって、法案は盗難防止の実効性に乏しいものであります。
なお、民主党提出の修正案は、ネットオークションの法規制導入をさせない修正であり、賛成することを表明し、討論を終わります。(拍手)
○佐々木委員長 次に、北川れん子君。
○北川委員 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、政府提出の古物営業法の一部を改正する法律案及び民主党提出の修正案につきまして、政府提出法案に反対、民主党提出修正案に賛成の立場から討論を行います。
政府案に反対の第一の理由は、古物営業法改正による規制の妥当性です。
インターネットを活用した商取引のマーケットは急速に拡大しています。本来自由であるべきインターネットの世界ですが、一人一人が安心して商取引に参加できるルールづくりは必要であると考えます。そういう意味で、今回の法改正は、インターネットオークションに対する初めてと言ってもよい規制を設けるものであると言えますが、なぜ法の目的を盗品の流通防止に絞るのかが理解できません。
インターネットオークションは、出品者側で値をつり上げ、不当な高額で買わせる詐欺行為も大きな問題となっています。業者だけではなく個人の行為の規制も視野に入れ、ネット上の物品売買に包括的なルールを設定する法律が必要であるという立場をとります。初めての規制であるからこそ、慎重に、総合的に検討すべきであると考えます。
また、盗品の流用防止など、インターネットを利用した犯罪の防止が重要だとしても、やみくもに法律で規制をすれば、逆に盗品の売買市場がアンダーグラウンド化することや、また海外へ流出することになり、イタチごっこになるだけです。
反対の第二の理由は、インターネットオークションの実態と古物競りあっせん業者という定義の問題です。
政府案では、インターネットオークション業者の行為をあっせんと定義していますが、インターネットオークションの実態を正確にあらわしているとは言えず、あっせんの定義のみにこだわる理由が理解できません。また、規制の範囲についても明確に限定されておらず、政令事項などにゆだねられていることから、不当な行政権限の乱用に拡大されることを危惧いたします。
反対の第三の理由は、消費者教育の視点を欠いていることです。
インターネットオークションは、自由に物を売り買いできることが大きな魅力です。売り手と買い手がみずからの判断で取引を行うための前提が、インターネットを利用した商取引にかかわるリスク情報をオープン化すると同時に、利用者みずからもリスクを判断できるような措置が、健全なインターネットオークション市場の育成のためには不可欠ではないかと考えます。また、規制の強化で自由なネット利用が阻害されないためには、悪質なホームページを利用しないなど、ユーザーの倫理の確立も求められると考えます。
なお、民主党提出の修正案は、以上の懸念の払拭につながるものであり、賛成します。
ドッグイヤーとも言われ、進展の激しいIT社会において、どのようなルールづくりが必要かを慎重に幅広い立場で検討すべきであり、一定期間後必要な見直しを行い、健全なインターネットオークションの確立が図られるべきであるということを最後に申し上げ、反対討論を終わります。(拍手)
○佐々木委員長 これにて討論は終局いたしました。
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○佐々木委員長 これより採決に入ります。
第百五十四回国会、内閣提出、古物営業法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
まず、枝野幸男君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○佐々木委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
次に、原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○佐々木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○佐々木委員長 この際、休憩いたします。
午後零時三十一分休憩
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午後三時二十二分開議
○佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
ただいま付託になりました内閣提出、構造改革特別区域法案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。鴻池構造改革特区担当大臣。
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構造改革特別区域法案
〔本号末尾に掲載〕
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○鴻池国務大臣 このたび政府から提出いたしました構造改革特別区域法案について、その提案理由及び内容の概要の御説明を申し上げます。
我が国が今直面する最重点の課題は、厳しさを増す環境の中にある日本経済の再生です。我が国経済の活力を取り戻すためには、構造改革を加速させる必要があります。
このような現状にかんがみ、日本経済を活性化させる大きな柱として、七月二十六日に閣議決定により、内閣総理大臣を本部長とする構造改革特区推進本部を設置し、構造改革特区制度を推進するため、規制の改革は全国一律の形でなければいけないという従来の発想から、地方の特性に応じてさまざまな規制のあり方があるという発想に転換し、実現するためにはどうすればいいかという方向で検討を重ねてまいりました。十月十一日に開催された第三回同本部において、構造改革特区を推進するための具体的な制度の骨格、構造改革特区において特例措置を講ずることができる規制等について、構造改革特区推進のためのプログラムを決定いたしました。
そこで、このプログラムを実現することにより、構造改革をさらに加速させるための突破口として構造改革特区制度を推進し、我が国経済構造の改革及び地域の活性化を図るため、この法律案を提出する次第であります。
この法律案の概要を申し上げますと、第一に、構造改革特別区域の設定を通じ、経済社会の構造改革を推進するとともに地域の活性化を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の発展に寄与することを目的としております。
第二に、構造改革特別区域を通じた経済社会の構造改革の推進及び地域の活性化に関する構造改革特別区域基本方針を閣議において決定することとしております。
第三に、地方公共団体による構造改革特別区域計画の申請や、内閣総理大臣による計画の認定等の所要の手続を定めております。
第四に、学校教育法の特例など、構造改革特別区域において講ずることができる法令の特例の内容について定めております。
第五に、構造改革の推進等に必要な施策を集中的かつ一体的に実施するため、内閣総理大臣を本部長とする構造改革特別区域推進本部を内閣に設置することとしております。
第六に、法律の施行後も、規制の特例措置について定期的に調査を行い、必要な見直しを行うこととしております。
以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。
何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成いただきますことを心からお願い申し上げます。
○佐々木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
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○佐々木委員長 次に、第百五十四回国会、都築譲君外一名提出、特殊法人等及び独立行政法人の整理等に関する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。都築譲君。
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特殊法人等及び独立行政法人の整理等に関する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○都築議員 ただいま議題となりました特殊法人等及び独立行政法人の整理等に関する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。
戦後、数多くの特殊法人等が民間の活動を補充するために設立され、一定の役割を果たしてきました。
しかし、民間経済が高度に発達した今日においては、特殊法人等が果たしている役割よりも、特殊法人等が民業を圧迫したり、事業が非効率的であるなどの弊害の方がより多く見られるようになりました。また、一部の特殊法人等においては、官僚の天下り先となり、政官業癒着の温床となっています。
このように、異常に肥大化し、硬直化した行政機構は早急に改革し、行政が時代の変化に対応してその役割を効率的に果たすことができるようにしなければなりません。
政府は、今般の特殊法人等改革法案によって、特殊法人等を統合あるいは独立行政法人化することで事実上残そうとしていますが、これでは問題の先送りと看板のかけかえにすぎません。
日本の現状を踏まえると、特殊法人等は早急に原則廃止もしくは民営化すべきであり、本法案はその具体的手順を示したものであります。
本法案の概要を御説明申し上げます。
第一に、政府は、この法律の施行の日から起算して三年を経過する日までに、すべての特殊法人及び日本銀行を除く認可法人を廃止し、または、これらの民営化を実施するための法制上の措置と、その他の必要な措置を講じなければならないことを規定しております。
第二に、政府は、この法律の施行の日から起算して三年を経過する日までに、独立行政法人通則法第二条第一項に規定する独立行政法人について、廃止または民営化を実施することを基本として、その組織形態のあり方を見直し、その結果に基づき、必要な措置を講じなければならないことを規定しております。
第三に、政府は、第一及び第二の措置を講ずるまでの間、特殊法人等及び独立行政法人に対して交付される補助金等の削減を図るとともに、これらの法人の役職員数を削減するために必要な措置を講じなければならないことを規定しております。
第四に、政府は、第一から第三までの措置を講ずる際に、特殊法人等及び独立行政法人の職員の再就職を支援するため、必要な措置を講ずることを規定しております。
なお、この法律は、この法律の施行の日から起算して三年を経過した日限り、その効力を失うことと、特殊法人等改革基本法を廃止することを定めております。
以上が、この法案の提案理由及び概要であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決されるようにお願い申し上げます。
○佐々木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時二十八分散会