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第7号 平成14年11月15日(金曜日)

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平成十四年十一月十五日(金曜日)
    午前九時三十五分開議
 出席委員
   委員長 佐々木秀典君
   理事 逢沢 一郎君 理事 青山  丘君
   理事 小野 晋也君 理事 渡辺 博道君
   理事 伊藤 忠治君 理事 細野 豪志君
   理事 河合 正智君 理事 西村 眞悟君
      大村 秀章君    奥山 茂彦君
      金子 恭之君    亀井 久興君
      木村 隆秀君    小西  理君
      菅  義偉君    高木  毅君
      高橋 一郎君    谷川 和穗君
      林 省之介君    山本 明彦君
      吉川 貴盛君    石毛えい子君
      岩國 哲人君    大畠 章宏君
      鮫島 宗明君    武正 公一君
      山谷えり子君    山花 郁夫君
      山元  勉君    横路 孝弘君
      太田 昭宏君    斉藤 鉄夫君
      吉井 英勝君    北川れん子君
    …………………………………
   国務大臣         鴻池 祥肇君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   総務副大臣        若松 謙維君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君
   政府参考人
   (人事官)        佐藤 壮郎君
   政府参考人
   (内閣府男女共同参画局長
   )            坂東眞理子君
   政府参考人
   (総務省自治行政局長)  芳山 達郎君
   政府参考人
   (法務省大臣官房審議官) 四宮 信隆君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房長) 結城 章夫君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局私
   学部長)         玉井日出夫君
   政府参考人
   (文部科学省研究振興局長
   )            石川  明君
   政府参考人
   (文部科学省国際統括官) 永野  博君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           青木  豊君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           渡辺 芳樹君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局次
   長)           三沢  孝君
   政府参考人
   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君
   政府参考人
   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局次
   長)           北原 悦男君
   政府参考人
   (国土交通省国土計画局長
   )            薦田 隆成君
   内閣委員会専門員     小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月十五日
 辞任         補欠選任
  嘉数 知賢君     山本 明彦君
  谷本 龍哉君     小西  理君
  近岡理一郎君     吉川 貴盛君
  大畠 章宏君     武正 公一君
  山花 郁夫君     鮫島 宗明君
  山元  勉君     山谷えり子君
  太田 昭宏君     斉藤 鉄夫君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     谷本 龍哉君
  山本 明彦君     高木  毅君
  吉川 貴盛君     近岡理一郎君
  鮫島 宗明君     山花 郁夫君
  武正 公一君     大畠 章宏君
  山谷えり子君     山元  勉君
  斉藤 鉄夫君     太田 昭宏君
同日
 辞任         補欠選任
  高木  毅君     嘉数 知賢君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 構造改革特別区域法案(内閣提出第六九号)


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     ――――◇―――――
佐々木委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、構造改革特別区域法案を議題といたします。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本案審査のため、来る十九日火曜日午前九時から、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官中城吉郎君、人事官佐藤壮郎君、内閣府男女共同参画局長坂東眞理子君、総務省自治行政局長芳山達郎君、法務省大臣官房審議官四宮信隆君、法務省入国管理局長増田暢也君、文部科学省大臣官房長結城章夫君、文部科学省生涯学習政策局長近藤信司君、文部科学省初等中等教育局長矢野重典君、文部科学省高等教育局長工藤智規君、文部科学省高等教育局私学部長玉井日出夫君、文部科学省研究振興局長石川明君、文部科学省国際統括官永野博君、厚生労働省大臣官房審議官青木豊君、厚生労働省大臣官房審議官渡辺芳樹君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君、厚生労働省職業安定局次長三沢孝君、厚生労働省老健局長中村秀一君、農林水産省経営局長川村秀三郎君、農林水産省農村振興局次長北原悦男君及び国土交通省国土計画局長薦田隆成君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林省之介君。
林(省)委員 皆様、おはようございます。前回に引き続きましてお時間をちょうだいいたしました。
 今まさに、日本じゅうが閉塞状況の中で、新たなる構造、日本のあり方、構造システムのあり方、あるいは規制改革のあり方を模索している時代だと思います。そんな中にあって、このたびの特区構想、これをまさに大きな起爆剤として日本の将来を切り開いていこう、そういうお考えがあってのことであろうと私は思っている次第でございます。
 そして、そのような中で、教育の問題についても柔軟に考えていってはどうかという御示唆をいただいた。このことに力を得まして、私は、教育改革について特にこの席で議論を深めてまいりたい、皆様方の御意見も賜りながら日本の教育のあり方を模索してまいりたい、きょうもそんなためにお時間をちょうだいしたわけでございます。
 前回の質問の中で、いささか私も十分に言葉が出なかった部分がございますし、時間の制約もある中で、株式会社が学校教育に参入をしてくるということについては、これは、まさに極端なことを申し上げるならば、今土木建設業がどうももう一つ業績がよくない、教育の世界に入ってひとつやっていこうじゃないか、そんなことにもなりかねないような状況であろうと思いますので、少なくともある一定のノウハウを持っていなければ学校教育にかかわっていけないことはもう事実でございますから、これはちょっと横に置かせていただくとしまして、少なくとも、これからの教育のあり方を模索する中で、私が前回申し上げたのは、教育の世界の中にやはりある一定の競争の原理を導入しなければいけないのではないかということでございます。
 どんな教育をしておろうが、この地域に生まれた人たちは小学校はここですよ、中学校はここですよというふうに決まること自体、こんな時代に果たしていかがであろうかということでございます。
 一例で申し上げるならば、私学の場合には大きな問題を起こしますと明らかに、はっきり言って経営が成り立たないというふうな状況が、この間も酒田短期大学のお話がございました。そういう状況がもう必ずやすぐに出てくるわけであります。例えば、いじめが原因で自殺者が出たというようなことが仮に私学でありますと、恐らく翌年の入学志望者はがたっと減ってまいります。私も、自分のおった学校でそういうことを一度経験しております。
 したがいまして、きちっと責任を持って大事な人様のお子さんをお預かりして、そしてやはり親と子のニーズにこたえる教育を実施していく、そんな中で、これははっきり申し上げて、口コミで生徒というのはふえていくものだと私は思っております。
 今、少子高齢化の中で、私学がこぞってまさに私学の広告をするといいますか、宣伝をするといいますか、そういう時代を迎えているわけでありますけれども、かつてはほうっておいても生徒、学生が集まったものでございます。それは何かというと、私学が、まさに世の、いわゆる世間の人々の教育に対する要望におこたえをするような実績を上げてきたからではないかと思っているわけです。
 そんな中で、例えば、個性豊かな教育をということを盛んにいろいろな教育改革の議論の中で出しながら、我々はどういう教育をしてきたのかというと、画一的な、あえて言えば知徳体の中の知の部分に重点を置いた教育をしてきたという反省に立たなければいけないのではないか。中には、徳を重んじる、三つの中でも特に徳を大事にして我が校は教育を行いますよ、いや、もう徳や体は少しおいておいて、知の部分だけで鍛えていきますよ、知の部分で鍛える学校教育機関の最たるものは私は予備校であろうと思っております。予備校がなぜそれなりの生徒あるいは親の要望にこたえられるかというのは、彼らは目標を持って予備校に来て、自分は何としても学力をつけてこの大学に行きたい、そういう目標を持っているからであろうと私は思っております。
 したがいまして、生徒やあるいは親たちが、ぜひこういう目標を持ってうちの子供を育ててほしい、あるいはこういう目標の学校があればそういうところに行ってうちの子供の教育を任せたい、そういう学校を目指して、そういう学校をつくっていっても、私は、十分に、生徒や親があの学校というふうに選んで来てくれる学校ができるであろうと思っているわけであります。
 そこで、一つお伺いをしたいんでございますが、前回の質問のときに、いわゆる公設民営化で、それぞれが教育目標を掲げて、私学には建学の精神というのがございます。私学は、その建学の精神を大切にしながら、そこに一つのバックボーンをしっかりと持って、そんな中から、建学の精神を実行するために、追求するために何をどうすればいいかということをお互いに考えながら学校教育の運営を行ってきていると私は思っております。
 したがいまして、公設民営化の中で、例えば、既にある校舎を使って、その中で、今まで地域にたくさんの学校があって、そして先生方がそれぞれの学校で一つの文部省の指針に従って教育をしてこられたわけでございますから、そんな中でも、特に、例えば、今までだったら何とか市立第一中学校と言っていたこの中学校は、徳を特に大事にしてこういう教育目標を掲げてやりましょう、あるいは第二中学校は、ひとつ体の方を一番の重点に置いて、もちろん知やあるいは徳をおろそかにするわけではないけれども、体を大切にしながらこういう教育目標を掲げてやります、どうぞ来てくださいというような形を仮に市町村の中で模索をするところが出てきて、そういうことをやってみたいという特区構想の中での考えが出た場合に、文部科学省として、これに対してどのような御対応をなさるのか、どういう御指導をいただけるのか、その件についてまずお伺いをしたいと思います。
矢野政府参考人 先生御指摘のように、これからの学校教育におきましては、一人一人の子供の個性を伸長し、そして地域住民の要請にこたえるために、それぞれの学校が競い合って、創意工夫によって特色ある教育を行うことが大変重要であると私どもも考えているところでございます。
 そのため、今、私どもがやっております一つの新しい試みと申しましょうか、対応といたしまして、今年度からでございますけれども、地域の住民が学校運営に積極的に参画をして、学校と地域の連携、あるいは学校の裁量権の拡大といったようなことについて研究を行います新しいタイプの学校運営のあり方に関する実践研究というのを開始いたしたところでございます。多くの希望がございましたけれども、その中で、今年度、七件、九校を指定いたしまして、今申し上げたような趣旨での実践的な研究に着手をいたしたところでございます。
 そこで、御指摘のいわゆる公設民営化についてでございますけれども、これは、現行制度におきましても、例えば、地方自治体が建設をいたしました学校施設を学校法人に貸与して、当該学校法人が私立学校を開設したりするといったようないろいろな工夫によりまして、そうした公と民が協力して学校運営をする方式、それが現在でも可能であるわけでございまして、現に、そういういわゆる公設民営によって設置された小学校の例もあるわけでございます。
 そこで、今回の構造改革特区でございますけれども、今回の特区におきましては、例えば、不登校の児童生徒を対象とした学校などで特定の種類の学校を設置する場合の学校法人の設立要件を大幅に緩和するといったようなことを考えているわけでございます。そういうことを通じまして、公的セクター、地方自治体との協力によるいわゆる公設民営型の学校の設置というものもさまざまな形で進んでいくものというふうに期待をいたしているところでございます。
林(省)委員 現に私も、もう三年ぐらい前でしょうか、広島県の小さな町でございますが、町長さんが何度も私のところに来られて、そして、いわゆる少子化の中であいた学校をどうぞ使ってください、そして一度皆さん方の考える教育をしてくださいと、いわゆる公設民営化的な運営をなさる学校が現にあるのを知っております。
 そして、これがなかなかまだ皆さん方、住民の理解が得られない、しかも公的な助成がやはりどうしても出しにくい部分があって、町としても十分に補助金が出せない、そういう中で運営をなさっておられて、ちょっとこの一年ばかり町長とお目にかかっていないんですけれども、うまくいっているんだろうな、知らせのないのはいい便りだろうなと思いながら、その後の状況をまた一度お伺いしようと思っておるんですけれども。
 ということは、そういう形で仮に市町村がやりたいということが今度の特区の計画の中に出てきた場合に、文部省としては、それじゃどうぞ一度その形でやってみてくださいと。今実験的にやっているというのはお聞きしましたけれども、実際にその町にそういうきちっとしたルールにのっとって、もちろん、学校教育でありますから、何をやってもいいというようなものじゃありません。当然一定の規律は必要でありますし、やはり、学校教育というのは、特に対生徒あるいは対学生に対して一定の規律と強制がなければ僕は成り立たないと思っております。
 例えば、算数の時間に、九九なんてどうでもええですよ、覚えようが覚えまいがいいですよというようなことで、これは算数の次の段階には入っていけないわけでありますから、少なくとも九九は覚えなさい、もちろん、生徒の発達段階、あるいはその子供たちの持っている個々人の能力の違いというのは十分に配慮をしながら、やはり求めるものは求めていく、その強制がなければ僕は成り立っていかないと思っているわけです。
 したがいまして、いろいろな形でそういう学校教育の場面が展開されるときに、それは当然、国が定める、あるいは文部省としてお決めになっている、そういうルールは守るけれども、守る中で最大限の自由裁量が許される範囲での学校運営というのが実際に可能な部分というのはたくさんあると思っていますが、仮にそういう形で市町村単位で、では我が市についてはこういう形で全部一遍公設民営化をやります、ひょっとして、そこまでの決断ができない場合には、いわゆる一つの自治体の中に一つ今おっしゃるようなモデルケースをつくってみて、そしてそれについて、いろいろな経験を踏まえて新たなる展開を模索するために、では一度こういう形でやらせてみてくださいという市町村独自のものが出てきた場合に、これは許可をいただけるんでしょうか、どうでしょうか。
矢野政府参考人 今回の構造改革特区においての試みとして私どもが想定し、考えております一つには、もちろん、その地域の特性、特別な事情があるということが大前提であるわけでございますけれども、そういう地域の特別の事情を踏まえながら、通常、学校でございますれば、公立であれ私立であれ、学習指導要領という国の基準があるわけでございまして、その基準に従った教育活動を展開しなきゃならないわけでございますけれども、今申し上げたような特別なそういう事情を踏まえて、学習指導要領によらない教育活動をやる必要があるということで、そういうお申し出があるならば、私どもとしては、それはぜひそういうものとして検討をいたしたいと思ってございますし、それから、先ほど申し上げましたように、その中には、そういう学習指導要領の教育内容についての特別の必要性ということと、例えば不登校の児童生徒を対象にした特別な事情があるといったようなケースも含んで考えたいと思うわけでございます。
 それからもう一つは、先ほどちょっと触れましたけれども、特定の種類の学校を設置する場合の学校法人の設立要件を大幅に緩和いたしたいと思っておるわけでございます。具体的に申しますと、校地、校舎というのは基本的には自己所有というのが原則であるわけでございますが、今回、特区におきましては、校地、校舎につきましては自己所有の原則を撤廃する、そういう形で学校法人の設立要件を緩和いたしたいと思ってございます。そういうことを通じて、従来にない新しいタイプの学校としての教育活動も展開されるということが期待できると思うわけでございます。
 ただ、いずれにしても、先ほど先生がおっしゃいましたように、いろいろな取り組みを私どもとしてはできる限り起用いたしたいと思ってございますけれども、おのずと、憲法とか教育基本法とかということを踏まえながら、教育活動としてのきちんとした取り組みということがやはり前提になるわけでございますし、あわせて申し上げますれば、設置主体につきましては、やはり教育の高い公共性ということにかんがみますれば、学校教育の実施主体が責任を持って公教育をやれる、そういう条件ということは、これはどうしても必要であろうかと思っております。
林(省)委員 いろいろ、法を遵守しながらやることは可能である、英知を絞ることもまたそれなりの結果を出せることにつながっていくという解釈をさせていただいていいんだろうなと思います。
 今までいろいろな方法があったんですよ。あったんだけれども、例えば学習指導要領はありました。しかし、学習指導要領から外れた指導を平気でやっている教師集団が幾らだっていたわけです。あえて申し上げるならば、一部の教師がそれこそ反日教育すらやっていたわけです。日本はけしからぬ国だということを一生懸命教えている、そういう教師も現にあったわけです。あるいは、教科書裁判に見られるような、あるいは、いわゆる偏向教育によってやはり懲戒免職処分になるような教師が現にいたわけです。
 そんなことを考えれば、ある一定の法を遵守しながら、一遍、新たなる展開で新たな教育のあり方を模索していくということについては、非常に私は、教育の世界については夢も希望も開けることだろうと思いますし、まして、国家百年の計はまさに人間にあるわけでございますから、人を育てる教育というものを、我々、英知を集めて新たなものを模索していきたい。また、今後もいろいろと御指導賜りながら、一緒になって、優秀な日本の子供たちをつくる教育に私も邁進してまいる覚悟でございます。どうぞこれからも御指導をよろしくお願い申し上げます。
 終わります。ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で林君の質疑は終了いたしました。
 次に、武正公一君。
武正委員 おはようございます。民主党の武正公一でございます。
 きょうは、この内閣委員会で構造改革特区について質疑を行わせていただきます。答弁は政治家の皆さんにお願いするということで、ことし、通常国会からそれぞれ皆様にお願いをしておりまして、きょうも、それぞれ各担当の大臣、副大臣、政務官の皆様にお力をしっかり御発揮いただくよう、よろしくお願いいたします。
 さて、まず冒頭でございますが、規制改革三カ年計画の進捗状況、また、なぜこのたびこうした特区法案が出てきたのか、御説明をいただけますでしょうか。
大村大臣政務官 武正委員の御質問にお答え申し上げます。
 政府といたしましては、行政の各般の分野につきまして計画的に規制改革を積極的かつ抜本的に推進をするということで、御案内のように、平成十三年の三月に規制改革推進三カ年計画というものを策定させていただきました。その後、本計画の進捗管理の一環といたしまして、毎年度、この計画の改定を行うということとさせていただいております。
 第一回の改定といたしまして、ことしの三月に、昨年十二月の総合規制改革会議の答申を踏まえまして、そしてまた内外からの意見、要望等を踏まえまして改定を行ったところでございます。加えまして、本年の改定に際しましては、小泉総理からも、景気刺激効果の高いものを重点とした計画を実現する、そしてまた、その前倒しをしてもらいたいということを各閣僚に要請されました。これを踏まえまして、本年九月にこの計画の前倒しの状況を私どものところで取りまとめさせていただいたところでございます。
 その結果、平成十四年度以降措置することが必要な五百九十九事項のうち、本年度の上半期に二百五件の事項が実行に移されるということで、本計画の積極的な推進が図られているということでございます。
 また、ことしも七月二十三日に総合規制改革会議で中間取りまとめも行われまして、また、来月でございますが、十二月に向けまして、その第二次答申というものを今作業を進めているところでございまして、これをできるだけ深堀りをして進めていきたいと思っております。
 そういう中で、今回、幾つかの規制改革事項につきまして、ずっとやってきたわけでありますけれども、いろいろな事情によりまして規制改革の早期実現というのが妨げられているというものでありますとか、なかなか入れられないというものがあるのも事実でございまして、そういう意味で、制度的な工夫といたしまして、全国一律の規制じゃなくて、やはり地域の実情に合わせた規制があってもいいんではないかという発想の転換を含めて、制度的な突破口として、今回、この規制改革特区の構想が出てきたということでございますので、御理解を賜りたいと存じます。
武正委員 規制改革は、当初、やはり日米のそういった通商摩擦等からもアメリカからの強い要望もあり、あるいはまた日本の国民の皆さんの生活の質の向上といったテーマもあり、そして最近は、特に経済活性化に力点が移っていったのではないかなというふうに考えるところでございます。
 そういった意味では、昨年の三月、三カ年計画では持続的な経済成長がうたわれ、その中でも、当然、指定検査機関から第三者認証あるいは見直し条項というものを法律に明記しよう、あるいはADRというような法整備、こういったところがうたわれていく中で、昨年十二月、総理諮問、経済の停滞、個別の規制の改革おくれ目立つ。システム全体でやろうという昨年の十二月で、ことし三月改定、そして四月の経済財政諮問会議民間委員の中でも構造改革特区がうたわれ、そして七月、中間取りまとめ、全国一律にこだわる、規制改革特区の実現に向けて、こういった流れを見てくると、やはり日本全国での一律の規制改革がなかなか進まない。これがために個別の特区というような形に移っていったというふうに見ざるを得ないわけでございます。
 規制改革の特例措置のばらまきではないか。また、補助金というのは今回はつけませんよ、財政措置はうたいませんよと言っておりますが、経済財政諮問会議の民間委員では、産業集積など、地域の活性化のために、これら規制改革に加えて、それぞれの地域に応じた支援措置を行うことということも指摘をしておりまして、今回はないかもしれないけれども、構造改革特区法案ではないかもしれないけれども、そういったものがあるんだよということが、名乗りを上げている各自治体には期待感が強いんではないかということも考えるわけでございます。
 これについてはもう一度、大村政務官、よろしいですか。私の指摘は、やはり全体の規制改革がうまくいかない、だから個別突破なんだけれども、ある面、規制改革のばらまきじゃないか、そして自治体にはやはり財政支援、これへの期待感があるんではないかというふうに考えているんですけれども、これについて御所見を。
大村大臣政務官 確かに、各自治体でいろいろな要望を上げておられるところには、中にはそういった財政的な支援の期待があるというのは事実だろうと思いますが、先ほど申し上げましたように、これまでの全国一律の規制というのを、発想を転換して、地域から実情に合ったやりやすい規制の改革をしてその地域の活性化を、まず一歩を踏み出してみようという趣旨でございますので、財政の議論は、自分もいろいろな思いがありますが、それはまた別といたしまして、とにかくこれはまず一歩を踏み出していこうということでございます。
 そういう意味で、今回のこの特区は、ある意味で、規制改革のばらまきということではなくて、むしろ地域の実情に合った創意工夫を生かしていく、その第一歩だということで御理解を賜れればというふうに思います。
武正委員 今、地域からの改革というようなお話もあったわけでございますが、過日発表になりました地方分権改革推進会議最終報告書、これについて、総務副大臣もお見えでございます。
 総務副大臣にお伺いいたしますが、最終報告書、これについては地方六団体も不満の声を上げている。この報告書を見ますと、基本方針二〇〇二あるいは総理の諮問の三位一体改革、これに基づいてやろうということが最初にぼんと打ち出されまして、ただ、中にはやはり、各省庁と合意できなかったんだ、そういった事項が書かれている。
 あるいは、今回特区法案でも出てきている幼保一元化等。これはパイロット的に取り組むのは問題だということもこの地方分権改革推進会議では指摘をしております。個別にやっちゃだめだよ、補助負担金を一般財源化してやはり全国的にこの幼保一元化も取り組むべきではないかというような指摘。
 また、後で経済産業政務官にお尋ねをいたしますが、産業振興についても、国は真に戦略的に考える分野に集中、できるだけ地方自治体の自主性を重視すべきだということもやはり地方分権改革推進会議最終報告書で述べております。
 こういったところの中で、ただ残念ながら、焦点だった補助金の廃止、縮減は、義務教育費の教員退職金など限定的なものにとどまり、国から地方への税源移譲など代替措置への言及も避けた。また、教員給与の半額補助である義務教育費国庫負担金三兆円のうち、教員退職金、年金に当たる共済費長期給付を先行して廃止、縮減と。これは十六年後には三倍に膨らむとされているわけでございます。
 こういったところを特に六団体は不満の声を上げているわけですが、総務副大臣、この最終報告についてどのようにお考えになるか、お聞かせをいただきたいと思います。
若松副大臣 この最終報告についてでありますが、今委員が御指摘になりました六月二十五日の総理指示、すなわち三位一体の改革につながる国と地方の事務事業のあり方、国庫補助負担金の廃止等の原案を作成してほしい、これが要請でありまして、取りまとめられたものと理解しているわけでありますが、三位一体の改革の入り口であり、また、そのかぎとなる国庫補助負担金の見直しの原案としては、不十分であると理解しております。
 その理由として四点挙げさせていただきますと、まず一点目は、個別分野の国庫補助負担金について、具体的方向が示されているものはわずかでありまして、数兆円規模の削減につながるかどうかイメージがわいてきません。二点目はまた、数兆円規模の削減をするためには、全体を通じる見直しの考え方が明確にされ、今後各省が具体的検討を進めるための指針となり得るものであることが必要と思いますが、その点が不明確であります。三点目が、個別分野では、特に義務教育費国庫負担金の見直しについて、地方分権の理念という根本のところから疑問を持っております。四点目は、国庫補助負担金の削減に伴う税財源措置が明確ではありません。
 そういったことから、地方団体からも、今委員が御指摘になりましたように強い批判が出ておりまして、特に十月の三十日に全国知事会を初めとする六団体から、まことに残念である、到底受け入れることはできない、このようなもう異例ともいうべき強い批判が出ております。
 今後、政府といたしましては、さらに検討を進めるわけでありますが、国庫補助負担金削減並びに地方への税財源移譲の考え方を明確にしていかなければいけないと強い決意をしておりまして、地方議員経験の武正委員からもぜひ御指導いただきたいと思っております。
武正委員 今、政務官、副大臣とそれぞれやりとりをさせていただきましたが、次は大臣の方にお答えをいただきたいと思うんです。経済産業は後で伺います。
 私、今回のこの法案、第一条の「目的」を読んでも、やはり「地域の活性化」というのがぼんと目に飛び込んでまいります。「経済社会の構造改革を推進するとともに地域の活性化を図り、」といったところでございまして、ある面、やはり規制改革プラス地方分権。それぞれの地方から改革をと、先ほど政務官も言われました。地方から規制改革をと。地方分権で、ある面、そこは規制の特例措置をと、規制の特例措置を地方に分権したような、地方分権プラス規制改革というふうに私は見ておるんですが、この私の見方について御所見をお伺いします。
鴻池国務大臣 先ほどの委員と大村政務官の御議論に特につけ加えることもないと思うんですけれども、ただいまの委員の御主張につきましては、やはりそのような状況ではないかと思っております。
 この特区を推進することによりまして地域の特性というものが顕在化して、その特性に応じた産業の集積や新しい産業の創出によって地域が活性化されるということを期待いたしておるところでございますし、また、この特区につきましては、規制の改革は全国一律でなければならないという従来の発想というものを、地方の特性に応じてさまざまな規制のあり方があるんだという発想に転換したという意味で、地方の自主・自発性を最大限尊重して地域の特性に応じた規制を導入するという考え方でございます。
武正委員 大臣から私の考えについても同意というか、そのような考え、うなずけるということでお話がございました。
 総務副大臣、どうぞ、時間ですから、お引き取りください。
 過去いろいろと、地方振興の諸施策、法律もございました。新産都市についてもいろいろと御論議がありました。結局は、都市の指定も県から上げることになったものですから、ある面、新産都市がもう全国にたくさんふえてしまった、こんな反省もあったり、あるいはパイロット自治体、これについても、事務手続の簡素化、迅速化という特例措置であって、権限、財源の移譲に踏み切れなかったということでございます。
 掛川市の鈴木さんという主任さんがこんなふうに言っております。「「試験的にやらせてみて成功したら、全国の市町村に波及しかねない、中央集権体制崩壊のアリの一穴になりかねない」と、この制度に非常に危険なものを感じた中央官庁側が、指定のメリットが感じられないように、制度を骨抜きにしてしまったからであるといわれている。」と。これは、パイロット自治体がなかなか実を上げなかった、総論賛成、各論反対で進まなかった理由ということで挙げております。「パイロット自治体指定に向けた市町村の申請気運は、盛り上がりに欠けたもの」となったということでございます。
 今回はこの特区については権限、財源の移譲はない、これについて再度御確認をいただきたいと思います。
鴻池国務大臣 ただいま確認をしたいというお話でございました。
 九月の二十日に構造改革特区推進本部で決定いたしました基本方針におきましても、構造改革特区におきましては従来型の財政措置は講じないものとしておるところでございます。
武正委員 ただ、先ほど言ったように、経済財政諮問会議では、四人の民間委員さんが、産業集積など地域の活性化のために、これら規制改革に加えて、それぞれの地域に応じた支援措置を行うことというふうに言っているんですけれども、これとの整合性はどのようになりますでしょうか。
鴻池国務大臣 自由民主党の中に本件に関しての特命委員会というのがございまして、野呂田先生が委員長でやっておられます。そこの御議論を拝聴いたしておりましても、今回はこれで一度やってみるけれども、近いか遠いかは別にして、将来についてはそういう財政措置といったものも考えてみる必要がある時期が来るのではないか、こういう御議論を得ているということは拝聴しておるところでございまして、今のところはどうしても、従来型の財政措置は講じないということでございますけれども、今後のこの特区というものが、四月以降、進み得てから、もう一押しすればなお一層地域の活性化あるいは地方の自主性というものが出てくる、こういうことになりますれば、地方自治体の中でそういう応援、支援というものが考えられるかもしれないという考え方は、私個人的にも持っておりますし、今申し上げました自由民主党の中の財政措置は将来的に考えるべきではないかということにも大変大きな興味を持っておるところでございます。
武正委員 従来型の財政措置というのは、いわゆる補助金等ということでございましょうか。
鴻池国務大臣 そのように考えております。
武正委員 それでは私はやはり今までの繰り返しではないかなというふうに思うのですね。やはり、権限、財源の移譲、先ほど総務副大臣が、やはり今回の最終報告、不満、各省庁の強い抵抗というような形で、権限、財源を地方自治体に移譲することは各省庁反対がある、今回は構造改革特区法案、財政措置、従来型のものはやりませんよと。
 ただ、今の大臣あるいは自民党の野呂田委員長のもとのお話を含めますと、将来的には従来型の財政措置では、これまでの新産都市、あるいはこれまでの地方のいろいろな個別の特例ですね、これのまた繰り返しになってしまうんではないか。既に聞くところでは、八十一ほどの地域が内定しているやに聞いておりますし、また、第二次の申請でさらにまた多くの特区が名乗りを上げてくる。今回は従来型の財政措置はないけれども、将来はあるんだよ、そういう期待を政府・与党に強く各自治体が持っている。本当はやはり、先ほど最終報告でも出ておりました、幼保一元化のときに最終報告で指摘しているように、補助負担金ではなくて一般財源化して、その財源は地方に移すんだ、地方で使い方は決めてくれと。これは既に片山試案でも五・五兆円の税源の移譲ということを言っておりますが、これをやるべきであって、従来型の財政措置を期待する自治体には、もう方向性は九月に出しているわけですから、将来については、やはり政府・与党として、これまでの地方への税財源の移譲といったことはあったとしても、従来型の財政措置はないんだよと、やはりここはきっちり言明をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
鴻池国務大臣 まさにそのとおりだと言明を申し上げたいと思います。これにつきましてはもう既に何度も申し上げておりますように、自助と自立の精神を生かすために、国としての従来型の財政措置は行わないというところでございます。
 一方、先ほど私も一部触れさせていただきましたように、地方公共団体が自発的に各省庁の予算を効率的に活用する、そういうことによりまして地域の活性化というものが高まってくる、そういう効果というものは否定するものではございません。
 しかし、なお、これまで地方公共団体等から出された提案においても、従来型の財政措置を講じることなく、規制の特例のみで地域の活性化につながるんだというアイデアがあるということも申し添えたいと思います。
武正委員 最後の点は、規制改革だけでは地域の活性化につながらないという懸念が地方からあるというふうに最後大臣が述べたということを確認させていただきます。
 さて、この特区でございますが、政令市、中核市、特例市、その下と言ってはなんですが、そのような形である面いろいろな権限が地方に分権をされる。その権限の分権度合いに応じて政令市、中核市、特例市とあるんですが、先ほどの地方分権プラス構造改革ということでいえば、その下に個別の特区があるような感じを私は受けるんですが、この私の印象についてどのようにお考えになりますか。
鴻池国務大臣 私も委員と同じように、政令都市、大きな都市が随分立派で市町村が立派でないという思いは全くございません。
 そういった中で、今回も五十九の町、十一の村から提案が出されてきております。それぞれの地方公共団体の中においてきらりと光るものを模索していくという姿勢につきましては、大変評価をさせていただいているところでございます。
武正委員 経済産業政務官、お待たせをいたしました。先ほどの、産業振興は、国は戦略的に考える分野に集中して、できるだけ地方自治体の自主性を重視すべしという地方分権の最終報告もございましたが、私、イタリアの産業政策に興味を持っておりまして、イタリアの奇跡と呼ばれるような経済復興の理由というものもいろいろ調べてみたんですね。そうしましたら、ちょっとこれは発音が非常に難しいんですが、スィビルッポ・イタリアという、これは、中小企業に対する金融支援、コンサル、あるいは地方政府、地方自治体への地域計画の作成支援など、こういったところは先ほどの最終報告でいえば戦略的に考える分野。
 あるいは、これは多分沖縄も、私もいろいろと担当で沖北の方も理事をさせていただいておりまして、ことし、やはり沖縄の公庫の重要性というのは随分沖縄県から指摘をされました。今、地方の金融機関が大変苦しい中で、確かに組織的に、機能的に、いろいろ問題はあるんですが、政策金融として、やはり、地方への支援ということの重要性をこのスィビルッポ・イタリアは言っているのかなというふうに思うんですが。
 ただ、商工業政策はイタリアは各州に分権をしたということでございます。これは商工業政策だけではございませんが、一九七〇年代半ば、七五年、州確立・分権化法、それから七七年の権限委譲令、こういったところで特に産業政策の大部分は州及び基礎自治体に移管をされたわけでございます。
 私は、こういったところも踏まえて、特に産業政策は、先ほどの地方分権最終報告に見られるように、地方自治体にゆだねられるものはその自主性を重視して分権をすべきではないかというふうに思うんですが、御所見を伺います。
西川大臣政務官 今、イタリアの例をお示しになりながら御質問いただきました。確かに、地方のことを地方に任せた方が、地方のことを一番よく知っている、こういうことで効率的に行政ができると私は思うんです。私も、県庁職員と県議会議員と合わせて三十年やってきました。その中で、経済政策の分権化というのは何だろう、こういうことを考えますとなかなか難しい、こう思います。
 先生から御提言、御質問をいただきましたので、私も県庁の職務分担をもう一度開いていろいろ検討しましたが、やはり国の補完的な仕事が大体県庁の商工行政だ、こういう状況に今なっています。それで、先ほど言われましたように、金融の、例えば保証協会等、これも確かに商工労働部で指導はやっておりますけれども、実態的には県の方針どおりだ、こういうことになっていると思います。
 それから、地方分権の問題で、機関委任事務を廃止しよう、こういうことで自治事務と法定受託事務にした。これも全部整理は終わりましたけれども、果たして産業政策の分権化というのはどうやったらできるのかな、こう私も考えているところであります。
 分権化はした、今後また協議をしながら、何と何を地方にお任せすれば効率的な運営ができるかということは前向きでやっていきたい、こう思っています。
 先ほどのイタリアの話、大変成功されておると私どもは受けとめております。イタリアで中央は何をやるんだといったら、宗教の問題、国防、通貨、選挙法、度量衡、基本的なもの、確かにそれだけであとは地方に任せてきた、こういうことでありますけれども、分権がまだ緒についたばかりで、本当に経済政策というのはどうやっていけばいいのかということを私ども前向きでやっていきたいと思います。
 ただ、商工行政でも、産業というのは振興をすることに対しては私は規制は行うべきではない、基本的には、規制なしの中でお互いに知恵を出し合って商業活動、工業活動、産業活動をやってもらう、こういうことでありますので、規制のないところで自由な競争ができる、こういう社会を築いていければ、こう思っております。
 以上です。
武正委員 政務官、ありがとうございました。どうぞ、時間ですので、お引き取りください。
 加えて、やはりイタリアには手工業法というのがあるんですね。イタリアは、十人以下の従業員数は日本の三倍なんだそうです。手工業をやはり大事にしようという、そういう法律があるんですよ。私は、日本でもこれは必要だなと。守るところはきっちり守っているという、それがやはり地域の力になる。
 大臣、政務官おいでですが、産業政策のことを特に経済産業政務官に来てお話をしたのは、今回の特区法案が、あるいは三カ年計画が経済活性化で仕切られている。特に昨年十二月の見直しということは、特にここを重点にやれという総理の諮問もあったからということでございますので、今、具体的な産業政策の地方分権は何かということは検討してみるというお話でございましたが、特に、今回の構造改革特区法案、そしてそれは地方分権も合わさっているんだという先ほど来のやりとり、特に経済活性化ということでの産業政策の分権ということをあわせて御検討いただきたいと思います。ありがとうございました。
 さて、憲法九十五条の地方自治特別法に当たると。そうしますと住民投票の必要性があるわけであります。この九十五条は、申すまでもなく、「一の」というんですかね、一つということではない、あるというふうに読み込むということですが、「地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票において」という条文でございますが、この構造改革特区法案はこの九十五条の地方自治特別法に当たると言えないのかどうか。あるいはまた、法文にその都市の、名前を挙げるかどうかわかりませんが、ある面のやはり絞り込みのようなことが書かれていた場合にはどうか。あわせてお答えをいただきたいと思います。
鴻池国務大臣 今回のこの法案につきましては、憲法第九十五条に規定する一つの地方公共団体のみに適用される特別法には当たらないと考えております。また、特区の認定が行われた場合でも、そのことにより憲法第九十五条に定める特別法に当たることにはならないものと考えております。
 なお、詳しい御説明は、必要でございましたら、事務方、室長の方からいたさせます。
武正委員 ありがとうございました。
 続いて、構造改革特区でございますが、これは指定をされた地域は規制改革の恩恵を受けるということでございますが、その構造改革特区の隣の市町村とか周辺でございますが、ここに経済効果が及んでいけばもうすばらしいんですが、もしかすると、特区のみが経済効果を生んで、その周辺、境の市町村が不利益を生じるということも場合によっては考えられるのではないか。
 いろいろな形での経済効果があれば、当然、小売、物を買うあるいは医療を含めていろいろな形でその特区に集中する、人の流れが集中する、それによって周辺部が疲弊するといったことも当然起こる可能性があるわけですが、こういったことについてどのような対応が可能なのか、その辺についてどのようにお考えになるか、お答えいただけますか。
鴻池国務大臣 これは何度も申し上げておりますように、特区地域の活性化のために、地域から提案をいただいて、これを可能な限りその活性化のために規制を緩和しよう、外していこうというものでございます。
 そういう過程において、ただいま委員の御心配のようなところも出てくるやもしれません。しかし、その周辺も、これは負けてはならない、隣の市町村が頑張っておるならば同じように頑張っていこうと、同じことでも申請を受け付けることができるわけでございますので、そういう中において、まさに私が絶えず申し上げております飛び火していっていただく、あるいは、それがすべてよりよき方向に進むならば燎原の火のごとく広がっていただくことを期待いたしておるところでございます。
武正委員 先ほど沖縄の話を申しました。八月二十六日に、民主党では沖縄ビジョンという政策を那覇市で発表してまいりました。記者発表のときには、当時岡田政調会長以下、かりゆしウエアというんですか、あの沖縄独特の服を着て記者会見に臨む。やはり沖縄ビジョンであれば東京で発表する必要はない、那覇でと、それで洋服もそんな洋服でやってまいりました。
 一時、一国二制度ということが当時大田前知事のときにぶち上げられたことがございます。あるいは、沖縄全県のフリートレードゾーン、全県をフリートレードにしたらどうかということもございました。ただ、ことごとくそういった一国二制度的なものはだめだということでポシャった経緯がございます。
 今回、沖縄ビジョンで我々が取り上げた中で、例えば介護保険料、来年度見直しでございますが、沖縄は月五千円以上の全国一多額の介護保険料になるだろうというふうに言われております。下手をすれば六千円と言われている理由は、要は、離島が多いものですから、各島に施設をそれぞれつくっているんですね。これでやはり保険料が上がらざるを得なかったというようなところがありまして、やはりこういったところに対する補完措置として、あそこでは非常に、ユイマールとか門中とか、その一族郎党のすごいネットワークがあるんですね。これまで厚労省は家族介護はサービスの対価としては考えないということですが、そういったところも対価として認めてサービス提供者の一つとして考えてもいいんじゃないか、そういういろいろなネットワークですね。こういうようなことも、一国二制度的なものあるいは入管の緩和等、提起をいたしました。
 今の特区の周辺部との摩擦あるいは外部不経済の問題、不利益ですね、これは、今大臣は、その特区を見て隣がいいと思ったら申請すればいいというようなお話だった。であれば、もっと対象範囲を広く考えていいんじゃないかな。例えば、沖縄県なら沖縄県、ぼんと、これは構造改革特区だよと指定をする。ある面、都道府県単位、もしかしたら、例えば関東とか近畿圏とか四国四県全部ぼんと、そのぐらいで考えていかないと、経済というのは人も物も金も移動するわけですよね。その特区に壁をつくって、入っちゃいけないとか出ちゃいけないとかはできないわけですよ。私はエリアとしては小さ過ぎるのではないかというように思うわけでございますが、これについて御所見をお伺いします。
鴻池国務大臣 委員の思いというものは、私は大変理解ができます。
 しかし、今回のこの特区構想というのは、国からこうしようじゃないかということではなく、それぞれの地方公共団体あるいは民間からこうしたいんだという構想、提案を受けて、これをできる限り可能な要望を聞こう、そういうシステムになっておるわけでございますので、今回の特区につきましては、地方公共団体からの、あるいは民間からの御提案、また、一月十五日締め切りで第二次募集をいたしておるところでございますので、これを待ちたい、このように考えておるところであります。
武正委員 地方からということでございました。
 本来、それであってしかるべきなのですが、先ほどお話があったように、去年十二月の総理諮問、そしてことし三月の改定、そして経済財政諮問会議民間四委員の話、一連の流れは、国として、経済は活性化しなければいけない、その必要なもので今回構造改革特区ということが出ているわけですから、地方からといったところはやはり私はちょっと違うのではないかなというふうに思っております。
 であるからこそ、エリアはもっと広域で、やはりもう原則は全国で規制改革をやるんだ、これが本当でありますので、大臣、そのとおりというふうに言っておられますが、これを特に内閣で、特に各省庁を督励していただいて、規制改革を、同時並行で進めるというようなことは言っておられるようですが、同時並行以上にさらに加速をしていただきたいというふうに思うわけでございます。
 それで、具体的にこの法案でございますが、基本方針を閣議決定もするというふうに書いてありますが、今のお話ですが、それぞれの特区を進めて以降、具体的にどういうふうに構造改革、規制改革が全国的に進むのか。やはりこのアクションプランも法案にちゃんと、つくるんだよという条文があっていいと思うのですよね。これについてはどうでしょうか。
鴻池国務大臣 委員御指摘のアクションプランとは、法案第三条に定める構造改革特区基本方針がそれに該当するということを御承知をちょうだいしたいと思います。
 基本方針では、定期的な特区に関する提案募集など、政府が講ずべき施策の基本的方針、次に、内閣総理大臣が計画を認定する際の基準、次に、特区において講じられる規制の特例措置の具体的内容と関係行政機関の同意の要件、特区において講じられる規制の特例措置の具体的な評価方法等、構造改革の推進に関し政府が講ずべき措置についての計画のようなことについて定める予定でございます。
武正委員 第三条二の四で「構造改革の推進等に関し政府が講ずべき措置についての計画」、五、「必要な事項」というような形がありますので、ここに盛り込まれていくのかなと思うのですが、特区がそれぞれ頑張るということではなくて、目的は全国一律の規制改革なんだということであれば、当然、そのためのアクションプランがここにちゃんと入っているんだよということで、これはもう一度御確認をしたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
中城政府参考人 お答え申し上げます。
 先生の言われるようなアクションプランのような内容につきましては、法案第三条に定める基本方針の中に盛り込んでいく方針でございます。
武正委員 また、これは試験的なもの、あるいは質疑の中でも実験的なものというのも時々出てくるんですよね。この試験や実験がうまくいかなかったら、じゃ、もう規制改革はだめだな、試験、実験がうまくいかなかったからとなってしまっては、これはもう本末転倒だというふうに思うのです。そういった意味では、それぞれの規制の改革について複数の特区を指定すべきではないかというふうに考えるのですが、これはいかがでしょうか。
鴻池国務大臣 これはそのとおり、複数の特区というものを認定していく可能性というのは十分ございます。
武正委員 ぜひそうしていただきたいと思う。一つだけある種の規制改革の特区があって、それがだめだったからこの種類の規制改革はだめですよというふうになってはやはり困るわけでございますので、複数の特区を指定していただきたいというふうに思います。
 さて、指定が受けられなかったときの苦情処理、あるいは特区でさまざまな規制改革を受けて進行中、いろいろな形で仕事を進める、雇用活性化、頑張っておられるときの苦情処理、これは機関や仕組みがどのようなものになるのか、お答えいただけますか。
鴻池国務大臣 仮に認定が得られなかった場合につきましては、地方自治法第二百五十条の四の規定によって、内閣総理大臣から申請を行った地方公共団体に、理由を付して通知が行われることに相なっております。
 さらに、内閣総理大臣の認定や関係行政機関の長の同意を得られなかったことに対する不服がある場合には、地方公共団体は、地方自治法の規定に基づく紛争処理の仕組みを活用することができるということに相なっております。
 いずれにしましても、地方公共団体の御意見をよく聞きながら、認定に関するプロセスを、公正で、かつ透明なものとして、認定後も地方公共団体の計画実施をしっかりとフォローアップしてまいりたいと思っております。
武正委員 紛争処理の仕組みがあるんだよということでございますが、これは、総務省が、規制の設定または改変にかかわる意見提出手続に従いフォローアップ、公表。あるいは行政機関による法令適用事前確認手続の導入。これは閣議決定、いわゆるノーアクションレター。これは今回の法文にも出ております。
 それから総務省、これは評価の方ですね、規制改革について調査研究。内閣府は、経済効果の公表。各府省は、規制のコスト及び効果の分析、公表。総務省及び各府省の政策評価機能。それから総務省は行政評価監視機能。
 もろもろ、特に総務省、内閣府が中心でありますが、一応そういうチェック体制はある。
 ただ、やはり中央省庁からの規制改革について地方自治体が異議ありと言ったときに、中央省庁がそれをチェックをする、裁定を下すというのは、お手盛りになる可能性があるという危険があるんですね。そこで、やはりADRのような苦情紛争処理システムの整備、こういったもの、あるいは独立行政委員会、戦後二十二ありました。今七つしかありません。今の政府・与党は、行政改革の視点から、例の原子力安全委員会、もろもろ、三条委員会への格上げはノーということを言い続けておられますが、やはりこういった独立性、中立性のある紛争処理の仕組みがこの特区に関しても必要ではないかというふうに考えるのですが、再度お答えいただけますか。
鴻池国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、内閣総理大臣の認定や関係行政機関の長の同意を得られなかった、ただいま委員が御指摘のことでございますが、そういう場合に不服があった場合には、地方公共団体は、地方自治法の規定に基づく紛争処理の仕組みを活用していただきたい、このように考えております。
武正委員 具体的にちょっと今のことを御説明いただけますか。
中城政府参考人 大臣が申し上げましたのは、国地方係争処理委員会というものを経由いたしまして、国の関与について不服のある地方公共団体からの審査の申し出に基づきまして審査を行い、国の関与が違法というような場合には、国の行政庁に対して必要な措置を行う旨の勧告を行うことができるということについての御説明でございます。
武正委員 そういった仕組みが機能していないということで、ADR、この法制度、これも規制改革三カ年計画でうたわれていますね。平成十四年度中に法整備というふうに出ております。これをやはり速やかに法整備を進めていただくということが必要だと思います。
 この法文の中に、先ほど出ていました、法令の解釈について確認を求めることができるというのがあるんですが、ということは、今までできなかったというふうに読み込んでいいのかどうか、これをお聞かせいただきたいと思います。
鴻池国務大臣 個別法令においてこのような規定を置き、また、関係省庁に回答義務を課したのは初めてでございます。
武正委員 今までできなかったということですね。各地方自治体が口頭では各省庁に確認を求めても、口頭では返事はあっても、文書によるやりとりは、閣議決定を経て今回法文に盛り込まれたのは初めてというふうに理解をいたしました。ありがとうございます。
 さて、規制改革三カ年計画で、その対象として、進捗状況を先ほど政務官からもお話がありました。ただ逆に、規制改革三カ年計画の対象外で規制改革が後退しているとすれば、それについてはどのようにチェックをされているのか。一方で規制改革を進めながら、別なところで規制が強められたり、あるいは規制改革が後退していたりしたら、これは元も子もないわけでありますが、そのチェック体制についてお伺いしたいと思います。
大村大臣政務官 このチェック体制は大変大事な点だと思います。
 まず、総合規制改革会議で、各団体、企業などから、毎年新たに規制改革要望というのをまた随時受け付けさせていただいておりまして、それを踏まえて十二月に答申という形で盛り込ませていただいているわけでございます。
 また、あわせまして、総合規制改革会議の事務局に各団体等から受けた要望すべてを、一年に一回、ことしはこの六月にこんなもので、千六百八十八件、こういう形で公表をさせていただいているところでございまして、そういう形でチェックをしていきたいと思っております。
 また、今回の構造改革の特区法案におきましても、地方公共団体からの要望を内閣官房を通じて一元的に調整をする仕組みでございますとか、また、民間企業も地方公共団体に対しまして規制改革の提案が認められておりまして、これに対しまして、採用されなければ自治体がその理由を述べなければならないということになっております。
 いずれにいたしましても、総合規制改革会議の持つ機能と今回の特区法案の機能、これをあわせて活用いたしまして、委員御指摘のような規制改革全体をおくらせるといったことにならないように、しっかりとチェックをしていきたいというふうに思っております。
武正委員 今大村政務官にお見せいただいた千六百八十八の分類でございますが、措置済み、措置予定が二七・七%、検討中が二三・六%、措置困難二八・六%、そのほか二〇・一%。ですから、四分の三はなかなか難しいですよということでございまして、やはりこの難しいですよに積極的に取り組む必要があると思っております。
 時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で武正君の質疑は終了いたしました。
 次に、山谷えり子君。
山谷委員 民主党、山谷えり子でございます。
 特定の地域に限り、自発性を尊重、規制を緩やかにし、成功例を全国に波及させていくという構造改革特区プログラム、方向としてはいいわけでございますが、しかし、構造改革特区プログラムの推進法について、あるいはまたいろいろな事例を見ていきますと、規制緩和の切り売り、中途半端さ、理念の欠如を感じるわけでございます。
 私は、特に教育分野について質問したいというふうに思います。
 まず、幼稚園入園年齢制限の満三歳に対する年度への緩和、これは対象地域が、幼児の数が減少しまたはともに活動する機会が減少したことなどにより幼稚園における教育の目的を達成することが困難な地域ということになっておりますが、定義があいまいでよくわからないんです。一体現実にはどういうところを特区としてやっていくんでしょうか。
矢野政府参考人 今御指摘のように、本特例の要件といたしましては、少子化や過疎化等によりまして児童数が減少し、または幼児が同年齢帯の幼児とともに活動する機会が減少しており、幼児が社会性を涵養することが困難となっている、そういう地域であることが本特例の対象地域であるわけでございます。
 具体的に特区として認定するかどうか、そういう判断をする際には、該当年齢人口の減少の状況あるいは今後の見通しなど、幼児の成長に影響を与えますさまざまな社会的要因を勘案することになるわけでございますけれども、私どもといたしましては、できるだけ地方公共団体の自主性、意向を尊重いたしたい、尊重して認定をいたしたいと考えているところでございます。
山谷委員 そうしますと、手を挙げた地方自治体は全面的にほぼ認定されるということでございますか。
矢野政府参考人 先ほど申しました基本的な要件として、幼児児童数が減少している、あるいは幼児が同年齢帯の幼児とともに活動する機会が減少している、そういう大きな条件を満たしておれば、できる限り私どもとしては地方公共団体の意向を尊重したいと思っております。
山谷委員 ともに活動する機会が減少するというのをどういうふうに数値的にとらえるのかというのが非常に疑問でございますので、今の矢野局長のお答えはほぼ認めるというふうに私は受け取りましたけれども、それでよろしいわけですね。
 次に進みます。
 少子化対策子育て特区、北海道の留萌市が出しておりますが、これは、幼保一元化に向けて幼児教育の環境整備ということで、幼稚園と保育所の子供を同時に一人の教員が指導することも可能になっていくわけでございまして、免許の問題などもあると思います。また、幼稚園児と保育所児童が一緒に教育、保育活動を行う一体運用ということを考えると、幼保一元化というようなことへの前進だというふうに思うんですけれども、これは厚生労働省としては、保育に欠けるという児童福祉法の改正を、保育を必要としているというような形に変えていく必要は感じておられませんか。
渡辺政府参考人 お答え申し上げます。
 幼保一元化についての考えを申し上げたいと思います。
 これまでのことを若干申し上げることになりますが、保育所と幼稚園というものが基本的なところで機能や役割を異にするものであるという認識に立ちまして、他方、多様なニーズがございますので、保育所と幼稚園はそれぞれのニーズに対応できるよう各制度の中で整備充実を図ってきたわけでございますが、御承知のように、平成十一年の関係閣僚会議で定められました基本方針というものもございまして、そこでは両施設の連携ということがうたわれておりますので、そういう点も踏まえまして、地域における子供や家庭のニーズに応じる観点から、地域の実情に応じた設置、運営が可能となるように、文部科学省と共同して両施設の共用化などを可能としてきたところでございます。現在も、さらにいかなる形での具体的な連携を進めることができるか、両省で協議を続けているところでございます。
 なお、先生御指摘の制度的な面ということでございます。制度上の保育所と幼稚園とを一元化してしまうということにつきましてでございますが、制度的統一を図った後の施設やサービスの性格というものをどういうふうに考えるか、あるいは待機児童ゼロ作戦の推進という観点からどう考えるか、あるいは保育に欠ける児童の保育サービスに対する現行の公費負担水準を維持することが困難となる点をどう考えるかなど、さまざまな問題があると考えております。
 そうした一環といたしまして、御指摘いただきました保育所の保育の要件といたしまして、法律上、保育に欠ける児童と書いてございます点でございますが、保育を必要とするというふうに改めることの意味によるわけでございます。同一の意味であるということであれば改正の要はないわけでございますが、保育に欠けるという事柄は、やはり市町村が児童福祉の観点から保育という一種の児童の保護を必要とするという判断を行う、こういうことを意味しておるわけでございますので、保育に欠けない児童に対していかなる理由で児童福祉体系にきちっと位置づけていくのかというのはなかなか難しい問題を含んでおります。
 そういった意味で、現時点で児童福祉法における保育に欠けるという要件を見直すということまでは考えておりません。現場においてそれぞれの両制度の特色を活用しながら一体的な連携のとれた運用がなされるよう、これからも努力していきたい、こういう考え方でございます。
山谷委員 さまざまな視点からの問題をおっしゃってくださったわけですけれども、一番のポイントは、これは児童福祉法、措置費との絡みで、結局は、厚生労働省としてはお金を削られるのが嫌だから、今のようなさまざまな説明で一番大事なポイントのところをおっしゃらなかったように思いますけれども、それも乗り越えて、財政支援の重複等々、縦割り問題を乗り越えて、やはり国民のニーズに合ったような形の前進をさせなければこの特区プログラムの意味がないんじゃないでしょうか。もう一度お願いします。
渡辺政府参考人 お答え申し上げます。
 財政的な枠組みの問題も大変重要で難しい点を含んでいるという点は御指摘のとおりだと思いますけれども、やはり、それぞれの学校教育法上の趣旨、目的、児童福祉法上の趣旨、目的というものをしっかり踏まえた対応が基本的には必要だと思っております。決して、単なる予算の問題としての考え方ということを申し述べているつもりではございません。
 ただ、そうではございますけれども、やはり福祉という観点から、国、地方公共団体がどのような公費負担政策でもって保護を必要とする児童あるいは家庭に対する手を差し伸べるのかという、ここの基本哲学にもかかわる点でございますので、慎重な検討が必要であると考えております。
山谷委員 慎重な検討をずっとずっとここのところ長く長くやってくださいまして、国民のニーズとかけ離れているというのが現実だというふうに思いますので、ぜひともこれを風穴にして、国民の多様なニーズにこたえるための、子供たちの幸せを考えるためのシステムづくりをしていただきたいのです。
 今、文科省はなぜか余り主体的じゃないようなイメージを受けたのですけれども、一元化、あるいはそのサービスのあり方、免許制度、いろいろなことも含むわけでございますけれども、これは厚生労働省と文科省とどのような形で今後やっていらっしゃいますか。
河村副大臣 私も、基本的には幼保一元化という一つの方向だろう、こう考えております。ずばり政治家として申し上げるなら、これはまさに縦割り行政もありまして、この壁がなかなか乗り越えるのは大変だ。しかし、まさに地域の皆さん、国民のニーズもございますから、それに近づける努力を今しているわけです。
 それで、もちろん、先ほどの厚生省の説明のように、よって来る法律も違います。学校教育法と児童福祉法というそこも違っているということでございますが、しかしできるだけ連携してやろうということで、施設の共用化はもう既にやっているところもございます。それをちゃんとしよう。それから、教育内容、保育内容、そういうものの整合性をとっていかなきゃなりません。それから、要するに幼稚園教諭といわゆる保育士、これを合同で研修しながらその整合性をつくっていくということ。それから、既にもう幼稚園と保育所を同じ経営者がやっておられるケースもございます。そういう連携でやっておられる事例集もつくって取り組みをやってきているわけでございまして、私は、これはそういう意味では幼稚園と保育所を一体的に運用することは可能であるというふうに思っておるわけです。
 今、これから特に特区では、そういうことで自治体からの御要望もございます。まずは幼稚園教諭と保育士の資格の併用について検討するということになっていますが、これをよく調べてみると、既に幼稚園教諭の七二%は保育士の資格を持っておられる、保育士資格証明書。それから、保育士三万二千人のうちの二万七千の方々、いわゆる八四%の方は幼稚園教諭の免許状を持っておられるという現実があるわけです。最近の若い方はほとんど両方の免許を持ってこられますから、私はこれはひとつ乗り越えられる道だ、こう思っております。
 ただ、さっき予算の話をされましたが、私学助成といわゆる厚生省の持っている児童福祉の考え方の措置費というは十倍ぐらい違う。私学助成は五百四億、これに対して児童福祉法から出ている措置費というのは四千七百八十億という大きな違いもございます。これを本格的に一元化する、我々も積極的に考えてまいりますが、やろうとしたら、これは厚生労働省と文部科学省が持っている壁を取り払う、新しい組織をつくる考え方、そういうものに進めていかなきゃいけないのではないか、私はこのように考えております。
山谷委員 ぜひそのような方向性で積極的に進めていただきたいというふうに思います。
 続きまして、市町村立学校職員給与負担法の特例ということでございますが、これは市町村で財源がないところは現実問題としてできない、教育の機会均等の点から問題があるのではないかというふうに感じます。また、対象地域の定義も、周辺の地域に比べ教育上特に配慮が必要な地域という、また何かわけのわからない定義がここに出てきております。
 今、GDP比で比べますと、教育予算の水準というのは日本は欧米に比べて非常に低うございまして、欧米並みにしようと思ったらあとプラス七・五兆円という金額を持ってこなければ欧米の水準並みにならないというぐらい、教育に対しては非常に貧しい状態でございます。
 こういう中に風穴をあけるということはわかるのですけれども、現実問題として財源がない、本当に回るのだろうか、むしろこれは全国でやるべきことであって特区プログラムのマターではないのではないかというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
矢野政府参考人 お尋ねの点について、少し制度に立ち入る形で御説明をさせていただきたいのでございますが、今回制度化する特区におきます市町村が採用する教職員、市町村費負担教職員でございますが、これはあくまでも、現在ございます義務標準法という法律があるわけでございますが、そうした法令の規定に基づいて都道府県が定めた教職員定数、これは当然のことながら都道府県が負担する教職員でございますが、その都道府県が負担する教職員定数にさらに加えて、その地域の特性に応じた特色ある教育を実施するために市町村が常勤の教職員を任用することを認めようとするものであるわけでございます。
 したがいまして、今回の制度化後も引き続き、先ほど申しました義務標準法でございますとか県費負担教職員制度などによりまして全国的な教育水準は維持されるところであるわけでございます。その上で、全国的に教育水準あるいは教育の機会均等といういわばナショナルミニマムは維持された上で、特区と認定された市町村において、それぞれの地域の実情や必要性を踏まえて特色ある教育を実施するための独自の取り組みができるようになる、そういうものであるわけでございます。
 そういう意味で、ありていに言いますならば、義務標準法あるいは県費負担教職員制度に基づいて、全国的に一定の、国としてのナショナルミニマムとしての教職員配置を前提として、その上で、その地域の独自性なり必要性なりを踏まえていわば上乗せ分としてやりたいというところについてはそういうことを認めよう、そういう独自の取り組みを認めよう、こういう趣旨であるわけでございます。
 なお、このことについて全国的な制度化ということについての御質問があるわけでございますけれども、このことにつきましては、私どもも、一つの今後検討しなきゃならない課題であるというふうに認識をいたしておるわけでございますが、その場合には、今回認めます市町村負担教職員の処遇のあり方の問題でございますとか、現在制度化されて置かれております県費負担教職員と市町村費負担教職員がこういう制度によって混在することになるわけで、両方の、県費の負担する教職員と市町村が負担する教職員が一つの学校に混在するといったことになる学校運営のあり方といったような問題もあるわけでございます。
 そうしたいろいろ課題があるわけでございますので、私どもとしては、全国的な制度ということにつきましては、今回特区制度で実施することになる市町村のこれからの実施の状況も踏まえながら、当面は、都道府県、市町村、教育関係者等の意見も聞きながら今後検討をしてまいりたい、そういう意味での今後の検討課題であるという認識をいたしております。
山谷委員 教育の地方分権、それからまたナショナルミニマムのあり方がこれでいいのかというのが、非常に大きな国民からの問題提起なのではないかというふうに思います。教育現場の現状、荒廃を見ると、今の状況でいいとはだれもきっと思っていないと思うんですね。ですから、もう少し積極的な発想でこれを前向きに全国でやるべきであり、そしてまた、実験的制度を使わないで、財源をきちんと裏打ちさせて、それから権限も十分じゃないですね。市町村立の学校の先生を雇うだけの権限しかないというのは、非常に十分ではない。その辺もぜひ進めて御検討いただきたいというふうに思います。
 次に、国立大学等の試験研究施設の廉価使用の要件、手続の緩和についてでございますけれども、産学連携のあり方、これを本気で取り組んでいかなければ、欧米に比べて非常に競争力が落ちてきているという非常に今心配な状況でございますが、これによって期待される効果というのをどういうふうにお考えでございましょうか。
石川政府参考人 大学における産学連携についてのお尋ねでございますけれども、産学官の連携の推進ということは、我が国の経済の活性化のみならず、大学の教育研究の活性化を図るというような観点からも極めて重要であるというふうに考えておりまして、我が文部科学省といたしましては、このためのさまざまな施策等をこれまでも展開しております。
 今回、こういった基本的な考え方のもとにこういった取り組みをさらに促進するということで、今回の構造改革特別地域におきましても、これまでの民間企業との大学における共同研究あるいは産学官連携のそういった試みについてさまざまな要件を緩和しよう、こういう姿勢で臨んでいるところでございます。
    〔委員長退席、細野委員長代理着席〕
山谷委員 これは、対象地域が、地域特性を反映し、交流実績が相当程度あって、研究推進に相当程度寄与するもので、周辺に相当程度集積見込みがあるものという、相当程度、相当程度という、これも非常にどうにでもできるような定義でございまして、この辺にも問題を大きく感じるわけですが、これはもう本当に、全国で産学連携を進めていかなければいけないに決まっているわけでございまして、認定をどうしていくのかという問題を今感じております。
 それと、今後の、例えば特許の数とか、それによってどのような豊かな成果が上がったかということを、定期的に効果分析なさろうと考えていらっしゃるのか、どのような方法で、どういう機関でなさろうとなさっていらっしゃるのか、お教えください。
石川政府参考人 まず、前段の、交流の実績が相当程度あることというようなことについてのお尋ねでございますけれども、具体的には、当該措置を実施する予定の国立大学等の研究機関におきまして、これまで当該研究に関する共同研究でありますとか、あるいは受託研究の件数や、研究に係る人的交流等の実績を評価いたしまして判断をしていこうというふうに考えているところでございます。
 それから、後段のお尋ねでございますけれども、評価とか今回の試みについての分析というようなことは、私ども大変重要なことだと思っております。例えば、分析、評価につきましては、今回の構造改革特区推進のためのプログラムにおきましても、特区法案成立後、一年以内に構造改革特区において実施される規制の特例措置の効果あるいは影響等を評価するための体制を定めるというふうにされているところでございまして、私ども、今先生からお話がございましたような共同研究の件数ですとか、あるいは特許出願件数、あるいはベンチャー企業の数、そういった要素に着目しながらその分析、評価を行いまして、その実効性について検討していきたいというふうに思っております。
山谷委員 大臣に今、幼稚園入園年齢制限の問題、それから市町村立学校職員給与負担の問題、産学連携のあり方、いろいろ聞いてきたわけでございますけれども、印象としましては、問題の本質が先送りされているということと、それから、こんなことはもう当然全国で一斉にやっていいプログラムではないか、文科省の細か過ぎる規制に関して、時代に合った形、それから地方分権、多様化への必要性に十分にこたえていないのではないかというふうに私などは考えるものでございますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。
鴻池国務大臣 委員御指摘のように、大きな問題、国家の将来にかかわる問題というものは、やはり、例えば教育基本法でありますとか、我が国全体の社会保障制度の問題でありますとか、国家のあり方としてまずは大いに議論をしていかなければならない問題であると私も認識をいたしているところでございます。
 一方、現在、地方公共団体から提案をされております、例えば小学校から英語教育をしたい、あるいは先端医療の拠点をぜひつくりたい、こういった地域のニーズというもの、また住民の利益につながるであろうと首肯できるものにつきましては、委員の政治信条でもございます生活者の声を聞くということからまさに合致している部分ではないか、知恵と工夫による競争でもって活性化を図っていくということは極めて大切なものであると認識もいたしているところでございます。
 そういう意味で、さまざまな規制、過去の歴史や現在のいろいろな問題点も含めながら、全国的にこれを一挙に規制緩和をしていくということが難しい部分につきましては、今回の特区構想におきまして、いわゆる突破口としてこれを推進していく、できれば、よりよきものは飛び火していっていただきたい、なおよりよきものは燎原の火のごとく全国に広がっていただきたい、このように考えておるところであります。
山谷委員 今大臣がおっしゃいました英語重視型教育などのことなんですけれども、小中高一貫教育、不登校児向け教育、英語重視型教育などは、特に地方自治体から株式会社参入を求めているわけですね。
 太田市などでは、国語以外は英語で、算数とか理科も英語で授業をするという小中高一貫教育、具体的に七百二十人ぐらいで始めたいと清水市長は考えていらっしゃるわけですが、市長も、本当は学校法人ではなくて株式会社の形でやりたかったと。用地も予算も人も、すべて自分たちの責任で調達していくわけで、行政の長がそのようなことをおっしゃっていらっしゃる。また、地方自治体からたくさんの声があるという。
 鴻池大臣は、この問題について、株式会社参入について、十一月十三日にも引き続き検討というふうにおっしゃっていらっしゃいますけれども、今おっしゃったことをやろうとするならば、やはり株式会社参入ということをきちんと考えていかなければいけないと思いますが、どのようにお考えでございましょうか。
鴻池国務大臣 河村文部副大臣というのは私の親友でございますが、意見の違うところを御披露しなきゃいかぬというのは大変つらいところでございます。
 私は、実は、国立の附属小学校、中学校、県立、公立の高校、私立の大学、それを出まして、極めて零細中小企業に就職いたしました。そういうことで、大体すべての形というものを自分自身で経験してきたなという気持ちがあるわけでございますが、やはり私立というもののよさというものを何か我が身をもって考えております。
 そういう観点ではございませんけれども、後ほど河村副大臣がおっしゃるかもしれませんけれども、教育の中に営利を目的とするものはなじまない、まさにそういう考え方はあるかもしれませんけれども、それならば、過去にそういう営利をもくろんで失敗した学校教育はなかったか、教育の中にそういうものがなかったかといえば、これはノーと言わざるを得ないわけであります。
 そういう意味で、何度も申し上げますように、供給者側ということのみの観点からではなく、教育を受ける側あるいは教育を受けさせる父兄の側から考えて、よりよきものの選択肢の中に株式会社というものが一つ入っておってもおかしくはない、このように今なお考えておりますので、文部科学省に対しまして、なお一層御検討いただきたいということをお願いいたしておるところでございます。
山谷委員 今の答弁で元気づけられた思いでございますけれども、文科省が安定性、継続性の点から非常に懸念があるということをおっしゃっていらっしゃるわけですが、参入の是非は官僚でなくて利用者が判断すべきで、授業内容のチェックを事後規制で対応できる部分というのがあると思いますし、これから評価をしていけばずさんな経営もできなくなるわけで、むしろ安定するのではないか、資金調達の多様化も非常にいいのではないかというような意見もあるわけでございます。
 これこそまさに特区プログラムとしてやるべきことではないかというふうに思いますが、文科省は安定性、継続性に問題があるという。これはデータの裏づけがあるんでしょうか。
河村副大臣 株式会社といいますか、そういうものの性悪説に立つ理由は何らないという指摘もございます。現実にやってないわけですから、そういうデータがあるわけでもありません。
 ただ、私も先日ここでその話をいたしまして、ただ一回だけのやりとりでしたから十分なことも言えなかったんですが、それをもって副大臣は文科省の官僚の作文だけにそのまま乗っかっているような言い方をされましたが、これは極めて遺憾なことで、政治家として考えたときも、私も株式会社のメリットというものを否定するものではありません。
 また、こういうことが起きるというのは、やはり教育におけるいわゆる教育サービスが十分でない、そういう一つの不満といいますか、そういうものも根底にあるんだろう。もっと自由にやれるじゃないかという御意見がある。だから、株式会社でもきちっとやっていただいてもっと立派にやっていただければ、私はそれを否定するものじゃありません。
 しかし、資金が集めやすいということは、株式会社は配当をするという一つの使命があるわけです。だから資金が出ていくわけで、何もただでどんどんというわけにいきません。したがって、私は、では、なぜ学校法人でやる場合にはできないんですかということを逆にまた聞きたいわけなんですね。
 それで、いわゆる英会話学校とかちょっとした塾とかなんとかのように、お金は幾ら取ったってだれも文句は言わない、成績が上がればいい、そういう観点からいくと、今度はやはり教育の機会均等という問題にもなっていくでしょう。授業料はどうなるんだというような問題になっていくでしょう。そういうことを考えると、これはやはり、私もこれを全部頭からという気持ちはございませんが、では、株式会社がやったらさらにどういう問題があるのかということは、文科省の方にも、ではどういう規制がかかるのかと。しかし、株式会社に規制をかけるというのはおかしいので、株式会社でありながら私学の助成を求めるんですか、こういう問題にもなってまいりますものですから、私どもも慎重にならざるを得ない、こういうことなんです。
    〔細野委員長代理退席、委員長着席〕
山谷委員 いかに競争的な環境をつくり出していくか、あるいはまた教育者としてサービスマインドをつくっていくか、評価をどうしていくか、それから公設民営というような形も、いろいろなテーマがあると思いますので、ぜひこれは前向きに考えて、具体的な事実、あるいは欧米ではもうそういうのが始まっていたりもするわけでございますし、考えていただきたいというふうに思います。
 多様なカリキュラムを構造改革特区研究開発学校制度、仮称ですけれども、それで認めていく、教育の自由化ということでは大変大事だというふうに思いますけれども、学習指導要領によらない多様なカリキュラム編成を柔軟に認めていくということがどういうことなのか。
 例えば、太田市の英語で授業をする。英語力の欠如から学習がおくれるおそれがある場合は、途中で、これは問題だと定期調査に入って関係行政機関の長が何か必要な措置をとるのか、どういう措置があるのか。あるいはまた、実施状況が基準に適合しなくなった場合、総理大臣が認定を取り消す、そうすると、その学校はその後どうなっていくのか。子供たちが転校せざるを得なくなるのか、多様なカリキュラムの中で育った子供たちは、そのいろいろなでこぼこを、また個人教師でもつけてくれるのか、一体責任をどういうふうにとられるのか。紛争処理もいろいろあると思いますが、これは多様なカリキュラムをどのように担保しようというふうにお考えでございましょうか。
矢野政府参考人 今回、構造改革特区におきまして学習指導要領によらないで弾力的な教育課程を編成する取り組みを可能といたしますために、文部科学省といたしましては、学校教育法施行規則を改正いたしまして、その改正した規定に基づきまして、新たに、これは仮称でございますけれども、構造改革特区研究開発学校制度というものを設けることにいたしたいと考えておるわけでございます。
 この構造改革特区の研究開発学校制度のもとでの取り組みにつきましては、これは、構造改革特区制度の趣旨にかんがみまして、憲法、教育基本法等に基づく学校教育の取り組みとして適切なものである限り、私どもとしては、各地方公共団体の自発性、自主性を最大限に尊重することが必要であるというふうに考えているわけでございます。
 これまで、例えば、先ほどお話がございましたけれども、英語による授業の実施でございますとか小中一貫したカリキュラムの編成等が提案をされているところでございますけれども、現実にどのような取り組みが実現できるかにつきましては、これは、今後、地方公共団体から提出される具体の計画に基づいて判断をいたしたいと思うわけでございます。
 その際、先ほど御指摘もございましたけれども、私どもとしては、創意工夫はとにかく、あるいはアイデアはとにかくといたしましても、学校教育の取り組みとして必要なものである、そういう基本的な条件、要件というのはきちんと押さえていかなければならないというふうに考えているところでございます。
 また、評価の話でございますけれども、評価につきましては、構造改革特区推進のためのプログラムにおきまして、「特区法案成立後、一年以内に構造改革特区において実施される規制の特例措置の効果、影響等を評価するための体制を定める。」とされているわけでございますので、文部科学省といたしましては、今後、これを踏まえながら、構造改革特区における取り組みの評価のあり方、またその成果の発信につきましても検討をしてまいりたい、かように考えているところでございます。
山谷委員 今、非常にこの対象地域の定義もあいまいでございますし、それから、基準に適合しなくなった場合というのが、教育分野ではこの基準あるいは調査のあり方、なかなかどれがどうということを非常に決めにくいわけでございまして、そうすると、鴻池大臣、裁量的に、有力議員がいるところだけどんどんうまくいったり、あるいはちょっと問題があってもごまかして続けられたりとか、そういうことは起きませんか。
鴻池国務大臣 あり得ないことを心から望んでおります。
山谷委員 今の大臣の発言に命をかけていただきたいと思います。
 さまざまな、要するに走りながら今まだまだ考えて、想定していないことも非常に項目的に多いという印象を受けておりますので、施行までに詰めなければいけないことを、情報公開も含めて精力的にやっていただきたいというふうに思います。
 そのほか、地方公共団体の提案に対する文部科学省の対応状況の中に、インターナショナルスクールに関する項目が幾つか出てきております。グローバリゼーション、国際人材育成の視点で国が一定の支援を考えていくべきではないか、時代に合った位置づけを考えるときだというふうに思いますけれども、大検を受けなくても大学入試ができる、あるいはまた、中学卒業程度の認定試験、現在十六歳でございますが、これを十五歳にというような考え方、これはいつまでに実施されるのでしょうか。
永野政府参考人 お答えさせていただきます。
 インターナショナルスクール卒業者の進学機会の拡大につきましては、本年三月に閣議決定されました規制改革推進三カ年計画におきまして、「インターナショナルスクールにおいて一定水準の教育を受けて卒業した生徒が希望する場合には、我が国の大学や高等学校に入学する機会を拡大する。」とされていることを踏まえまして、現在、平成十四年度中の措置を目指して、その具体的内容につきまして検討を進めさせていただいております。
山谷委員 そうしますと、これは省令でやるわけですね。結局、来年の入学者からオーケーという、そうですね。
永野政府参考人 申しわけございません。今年度中に改正いたしますので、それがいつというのは、今検討しているところでございます。
山谷委員 改正がなされましたら速やかに実行に移していただきたいというふうに思います。
 この中学卒業程度の認定試験を、現在十六歳を十五歳にと、これは今まで一種のペナルティーというような形だったというふうに思うんですけれども、日本のインターナショナルスクールの多くは、欧米第一級の認定団体、例えばWASCとかNEASCなどの認定を受けているわけでございまして、非常にクオリティー、品質が保証されている。
 日本もこれを相互認定して、卒業資格イコール認定という形にしていいのではないかと思いますが、その辺はいかがでございましょうか。
矢野政府参考人 インターナショナルスクールの卒業者の高校入学機会の拡大でございますが、具体的内容につきましては、先ほど統括官から御説明申し上げましたとおり検討中でございますけれども、具体的なあり方の、例えばでございますが、先ほど御指摘がございました中学校卒業程度認定試験の受験資格の緩和といったようなことによりまして、インターナショナルスクール卒業者の高校入学機会の拡大を図るということを検討いたしているところでございます。
山谷委員 年齢の緩和ではなくて、欧米の第一級の認定団体の認定を受けているものであるものに限っては、もう相互認定してよろしいんじゃないでしょうか。
矢野政府参考人 失礼しました。
 今申し上げましたように、インターナショナルスクール卒業者についての高校入学資格の拡大の方途でございますが、今御指摘のような点もあろうかと思いますけれども、私どもとしては、今、認定の年齢ということではなくて、中学校卒業程度認定試験の受験資格の緩和といったことを一つの検討のテーマとして入学機会の拡大の方途を検討いたしているところでございます。
山谷委員 受験資格の年齢の緩和ということで、要するに、それをもっと踏み込んでやるためには、恐らく義務教育の意味とかさまざまなことを議論しないといけないということで今のような答弁になっているというふうに思いますけれども、九九年、経企庁の対日投資会議の報告では、本当にインターナショナルスクールの学費も高くて、駐在員を抱える会社は負担を感じて、日本じゃない別の国に会社を置くという事例があるとか、あるいは、二〇〇二年四月三日、小泉総理が議長になられまして、遠山大臣も出席なさった経済財政諮問会議、「外国人子弟向けの教育制度を拡充する」とか、あるいはまた「インターナショナルスクールでも一定条件を満せば、私立校と同等の助成制度の対象とする」。この五月にも、経団連が、グローバル化時代に対応した教育基盤の整備に向けて提言しているわけでございまして、このようなさまざまなニーズ、グローバリゼーションの中でいかにあるべきかということを考えますと、学校教育法第一条の学校に準ずるとみなしていいのではないか、本気で検討していただきたいというふうに思っております。
 国際社会で、よいインターナショナルスクールのない国はよい人材が出てこないわけでございまして、質も、それからさまざまな助成等々、いろいろ問題は絡んでくるわけでございますが、学校教育法第一条の学校に準ずるというふうにみなすということはできないんでしょうか。
永野政府参考人 お答えさせていただきます。
 今委員おっしゃられましたようなその一条校の話と先ほどの入学機会の話、これはちょっと別に考えてございまして、一条校云々ということにつきましては、やはり次のような考え方から余りなじまないのではないかなというふうに考えております。
 それは、学校教育法第一条に定める学校は、委員御承知のとおり、国民の育成を期して行う公の性質を有するものでありますので、組織、運営、教職員、教育目標、教育内容等につきまして、法令に基づきまして一定の枠組みが設けられているわけでございます。とりわけ、義務教育段階の小中学校では、国民として共通に身につけるべき基礎、基本を習得させるものでございますので、保護者にこれらの学校への就学義務というものが課されているところでございます。
 他方、インターナショナルスクールは、自由な教育内容などを特色としておりまして、学校教育法第一条に定める学校とはその性格を異にしてございますので、一条校とすることにはなじまないと考えてございます。
 ただし、このお話と入学機会等のお話とは別の問題として検討していくということでございます。
山谷委員 第一条の学校に当てはまらないというのはわかります。ですから、今、準ずるという形で位置づけてはどうかということを言っているわけでございます。
 それにつながる問題として、例えば、公的助成の確立、寄附金等をどうするか、免税措置を与えるかどうか。今本当に入学者は希望者が急増しておりまして、受け入れ能力が限界に来ております。国際教育の拠点として、交流の場としても非常に日本の子供たちにとってもさまざまなメリットがあるというふうに思います。閉鎖、廃校になった公立校の転用を自治体に働きかける等々、もう少し前向きにやっていかなければいけないというふうに考えているわけでございますけれども、免税措置、あるいはまた、閉鎖、廃校になった公立校の転用を自治体に働きかける必要をどのようにお考えでございますか。
河村副大臣 インターナショナルスクールのお話、今お話を聞きながら、確かに、国際化がこれだけ進んでまいりまして、このインターナショナルスクールの問題はやはり前向きにとらえて文部省内でももっと検討する必要があると思いますね。十四年度にということで、特に今おっしゃったような寄附金の問題、これについては十五年度の税制改正でぜひ実現をしてもらいたいということで、文部科学省としても要請をいたしておるところでございます、税制上の特増の追加の中に入れていただいて。
 そういうことも考えておりまして、一条校に準ずるということと、それから、さっき山谷委員御指摘のように、一定の条件を満たせば、こういうこともございますから、そういうことも含めて大いに検討いたしたい、このように思っております。
山谷委員 閉鎖、廃校になった公立校の転用の問題はいかがでございましょうか。
矢野政府参考人 廃校となりました学校施設をどのような用途に活用するか、これは財産権を有する自治体の主体的な判断にゆだねられているわけでございますが、廃校となった公立学校施設をインターナショナルスクール等を設置する法人等へ設置者である自治体が無償で貸与する場合には、通常必要となります補助金相当額の国庫への納付を不要とする旨の取り扱いを講じたところであるわけでございます。
 私どもといたしましては、こうした取り組みを通じて、各自治体におきまして、廃校となった学校施設が地域の実情やニーズに応じて適切に活用されることが大事であるというふうに考えているところでございます。
山谷委員 大使館それから外資系の企業、それからそれぞれのインターナショナルスクールあるいは外国人学校など、ぜひ意見を広く聞いていただいて必要な措置を前向きに進めていただきたいというふうに思います。
 今回の提案の中で、港区が区立インターナショナルスクールを設立したいと。港区は六十七大使館があって、外国の企業も多い。一万六千五百人、在住の外国人の方がいらっしゃる。特別なことなので義務教育段階でも費用を取る、経営は民営でというようなことを出してきているわけですが、これに対してはどういうふうに考えているわけですか。
永野政府参考人 お答えさせていただきます。
 先ほど申し上げましたように、いろいろな御希望が出ているというのをいろいろ検討した上で、今のような特区関係のこういうことでいこうというふうにさせていただいたということでございます。
山谷委員 本当にニーズは高まっているわけでございますし、また、国際化に対する国家戦略の確立の中での位置づけというような視点から、前向きにさまざまな問題点を洗い直してみる必要が今ここであるのではないかというふうに考えております。
 最後に、不登校とか引きこもりの子にもさまざまな教育サービスが受けられるようなプログラムが特例措置で出ておりますけれども、これは、特区に住んでいる子はいいけれども、例えば引っ越したらその先になかったとか、非常にアンフェアで、継ぎはぎ、めちゃくちゃのシステムなんですが、その辺はどういうふうに責任あるいは対処の方法を考えていらっしゃいますか。
河村副大臣 不登校の児童生徒を集めて、特区でそういう方々のための学校といいますか、学校に準ずるもので再教育できないだろうかという提案がかつてございまして、私もそれにヒントを得て、今回、特区制度でとりあえずそういうことができないだろうかと。特に過疎のところで、学校がもう今さっき言った廃校みたいなところを再活用したいというような御意見もあったものですから、そういうものを認めてあげたらどうだろうか、それが地域の活性化にもつながるであろうというような考え方もあったわけでございますが、そういうことになりますと今おっしゃったような問題も起きる可能性がありますね。だから、転校した先にそういうものがなかったということになると、これは実際に特例措置が受けられないという問題が出てくることは事実でございます。
 これをどうするかということになると、これはもう各自治体間で、そこを持った特区のところがそのお話をいただいてそういう受け入れをしていただくとかという方法、今現時点ではそれしかありません。
 特に、引きこもり状態にある方々はなかなか出にくいということもありますから、ITを活用して、少しこういうもので学習活動を可能にしたらどうかとかということも考えていただいたらどうであろうかということで今回の特区になっておるわけでありますが、外から入ってこられる場合には、これは受け入れはいいんですが、出る場合の問題は、確かにそういう問題は起きる可能性としては否定できません。しかし、これはあくまでも特区の一つの特性として今のところ、お願いというか、地方自治体の発意によってできないだろうかということで、この特区の中にこういう考え方を取り入れていただいて、今考えていただいておるようなわけでございます。
山谷委員 本当に教育に関しては、これは特区プログラムではなくて、すべて、全国につながる、全国でやる仕組みを今つくるべきプログラムばかりだというふうに思いますので、そのような国民そして地方自治体の意見を重く受けとめて改革をさらに前進させていただきたいというふうに思います。
 質問は以上です。ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で山谷えり子君の質疑は終わりました。
 次に、西村眞悟君。
西村委員 西村でございます。
 特区の問題、特別区の問題は、つまり規制を我々はどうするのかという問題でありまして、もちろん規制を担当するのは、先ほどの質問でも、極めて細かいことも含めて答弁を担当しておるのは行政機関であったという点から、行政機関の問題であります。
 さて、その行政機関の実態とは何かということを端的に示す事例が二つありまして、それを挙げて冒頭質問させていただきますが、この行政機関が、やることはやらずに、やらなくてもいいことで頑張っていれば、規制を緩和するとか緩和しないとかいう議論以前に、我が国は少々いびつな国になるわけであります。
 さて、李登輝前台湾総統が日本に入国するか入国しないかの問題になれば、その担当する行政機関においては、アメリカやイギリスという我が国と同じ自由主義を当然の前提とする国と共通の行動がとれなくなる、まるでマインドコントロールにかけられておるようなものでございまして、こそくな動きをするのですな。
 前回は、李登輝さんがビザの申請をしたのに、現場では申請がなかったかのようなうそを強弁して申請をサボタージュした。結局、政治的判断によって入国していただいた。
 今回は、申請の前提である慶応大学における講演会が、我々から見ても、あるのか、予定どおり実行されるのか実行されないのかわからない状態にしておる。そして、申請の前提を外した、申請を取り下げた。取り下げれば行政当局はビザの認定はしないというようなことをマスコミに報道されておるように、火のないところに煙は立たないんですから、そうどこかで言ったんでしょう。こういうことであります。
 この際、その実態はいろいろ報道されております、私は今私なりに理解して申し上げましたが、外務省はどういうふうに説明するのか、これを一度お聞きしたいと思います。
茂木副大臣 まず、事実関係ということでありますので、簡単に経過を説明させていただきたいと思うんです。
 今週の月曜日、十一日、たしか午後の十二時五十分だと記憶しておりますが、李登輝氏から、慶応大学三田祭における講演のため、これを主な目的とした訪日にかかわる査証の申請が行われたわけであります。通常の査証手続の過程といたしまして、慶応側に確認をとり、我が方から先方に対し、同講演は三田祭の行事としては行われないとの慶応大学側の立場を李登輝氏側に伝達するとともに、事実関係の確認をとりましたところ、李登輝氏側から査証申請を取り下げた、このように承知をいたしております。
 その後、二日後、十三日に、李登輝氏側から、交流協会の台北事務所を通じまして、慶応大学の三田祭にかわって都内のホテルで講演を行うことを目的として改めて査証申請を行いたいとの意向が伝えられてきたわけであります。
 我が方といたしましては、本件講演をめぐる一連の混乱等を踏まえまして、仮に改めて査証申請がある場合、今般の李登輝氏の訪日を、私人による私的な目的のための訪日と評価することは極めて困難であるとの現時点での基本的な考え方を先方に伝えさせていただいたところであります。
 もちろん、これは再申請前に発給の拒否を伝えたというものではございません。現時点におきまして、李登輝氏側から新たな査証申請は行われておりません。仮に、今後同氏から改めて査証申請があれば、その時点で適切な判断を行う、これが政府の立場であります。
西村委員 困難との認識を示せれば、査証申請が今後あればとおっしゃるが、むだなことではありませんか、困難との認識を示したのなら。
 困難との認識を示した根拠は何か、こういうことになるわけですが、学生が李登輝さんから物を聞きたいと。古来日本の学ぶということの中には、九州に広瀬淡窓あり、行って学ぼうではないか、大阪に緒方洪庵あり、行って学ぼうではないか、会って話を聞こうではないか、そういうことが我々の青少年の学習の伝統でありますが、ここは大学であって、そして彼らが李登輝さんに話を聞きたいという。どういうわけか三田祭における講演がないというのは、私の聞くところ、政府及びその周辺からの働きかけによって、あったのをなくしてしまったんだと。ないんじゃない、なくしてしまったんだ。
 それで、米田青少年健全育成担当副大臣、すばらしい名前の担当副大臣が来ておるので、学生諸君が、学ぶ伝統に則して、学園で、それがだめなら都内ホテルで、李登輝さんという、ある意味では指導者、もう引退しておりますが、その人の意見を聞いて学びたいというものに、今外務副大臣が、ビザ、査証は、つまり入国は極めて困難であるという認識を持って我が青少年が学ぶ機会を奪っておる。
 これは、規制かどうかの問題じゃなくて、我が行政機関がなすべきことをなさずして、なすべからざることをなして、もって我が国の青少年から学ぶ機会を奪い、我が国の品位をアメリカ、イギリスと比べて極めておとしめておる。我が国は中国の奴隷国家か。我が国の中には、外務省は中国外務省日本支部か、こういうことである。極めて国威をおとしめること甚だしいものがある。青少年健全育成担当副大臣としてはいかにお考えか、このようにお聞きします。
米田副大臣 お答えをいたします。
 ビザの発給問題に関しては、直接の担当ではございません。また、報道を上回る特別な知識があるわけではありませんが、青少年健全育成担当としてどう思うかという御質問でありますので、お答えをしたいと思います。
 報道によりますと、この慶応の学生さんの慶応経済新人会というのは、五十六年の伝統を持つ、慶応大学の学生サークルにおいても最大規模の、そういうサークルであるというふうに聞いております。
 その皆さんが、三田祭であれ、あるいは三田祭でなくなって自主開催であれ、学問を追求する学生がどなたかのお話を聞きたいということを企画する、そして、言論の自由、学問の自由が保障されている我が日本国のような民主主義国家においては、特に格別の理由がない限り、そういう催しが拒否されるべきではないというふうに基本的には考えております。
 三田祭での李登輝氏の講演が中止になった背景について委員はお触れになりましたが、私もそういう話については報道で存じております。もしそれが事実だとしたならば、自由人福沢諭吉翁が創立された建学の精神にももとることであるわけでありますから、何かわけがあったのではないかなと推察する以外ないわけであります。
 また、先ほど申し上げたとおり、三田祭がノーであっても、学生諸君が講演会を自主開催をされ、李登輝氏に再び日本訪問の要請をされた、これについて外務省の意向があらかじめ伝えられたという、これまた報道で存じております。
 一般的に言いまして、私人となった前総統が、テロリストでもなく、犯罪者でもない、これはもう自明の理でありまして、こういう方に日本国がビザ発給を拒否する法的な理由は民主主義国家としてはなかろう、一般的な基本原則として私はそういうことであろうというふうに思います。
 英国は李氏が退任直後にビザを発給いたしましたし、チェコも国際会議に出席する李氏にビザを発給し、アメリカ合衆国に至っては五年間有効のマルチビザまで発給をしておるわけであります。にもかかわらずこういう流れになったということは、直接担当者ではございませんので、推測の域は出ませんが、よほどの理由があったんだろうというふうに思います。
 一般論としては、民主主義国家の原則を踏み外しているのではなかろうかという先生のような御意見をお持ちになる方がいるのも、報道だけで推察するならば大いにあり得ることであって、そういうリスクを冒してまで外務省が決断をしたにはやはり外務省なりの判断があったんだろう。そういう判断について、さらに今後外務省もわかりやすい御説明をする努力をお続けいただくと同時に、先ほどの茂木副大臣の御答弁をちょっと伺っておりますと、今後についてもすべてノーであるということを前提にしているのではない、今回の経緯の中で事実関係の把握についての、言ってみればボタンのかけ違いとかいろいろなこともあったんだ、そういう御認識もあるのかなというふうに私は拝察をした次第であります。
 以上です。
西村委員 極めて長い答弁で、ありがとう。
 それで、今どういう力学が動いておるのか。この法案で個別的に言っていろいろ御高説を行政機関から聞く前に、行政機関がいびつではないかという問題を私は今しゃべっておるわけです。
 北朝鮮が日本人拉致を認めて、これは破綻した朝鮮銀行に公的資金は投入できないぞという中で、表にあらわれないけれども、日本の行政機関に対して、北朝鮮の意向を受けて、投入しろ、投入しろ、投入しろという要求を激しくしている国会議員がかなりいる。朝鮮総連は日本人を拉致した組織と極めて親密な関係にあって、そこに強制捜査が入った。その直後に、朝鮮総連の幹部とともに警察を訪れて、強制捜査はけしからぬ、民族差別だ民族差別だと抗議に押しかける日本の国会議員がおる。
 片や、本年は北京に、スズメが群れるように、何人の国会議員が行って飯を食わせてもらっておったのか。買収、供応とは何をもって買収、供応と言うのか。北朝鮮のマスゲームではありませんが、戦前の判例では、芸者の踊りを見せてもらうことをもってわいろと認定して罰した判例がある。そのことからするならば、いかなる買収、供応を我が数百名の国会議員が北京から受けておるのか。これが、米田副大臣が触れなかった、しかし疑問を留保された部分における我が政治のやみの部分である。したがって、その政治のやみに応じて我が行政機関も汚れておるということであろうかと私は思います。
 李登輝さんが奥の細道を御夫婦で探索したい、そういうことは本当に全く私人のことであり、人と会うことをもって李登輝氏が私人ではなくて政治的行為、これは悪いという前提には、我が自由主義の国家である日本は立っていない。むしろ、とうといものだ、これがなければ独裁国家、閉鎖国家になるから、とうといものだという前提なんですが、都内のホテルで学生諸君に会うことを目的とする入国は困難との認識を示した外務当局は、極めて低劣な意識しか持ち合わせていない、真の外交を担うエリートの集団がそこまで堕したかというふうに思います。
 さて、次の問題に進みますが、これも、行政機関とは何だ、私どもの持っている規制をそこで緩和しますとか云々の資格はあるのかという問題ですが、正田邸保存問題についてであります。
 これは国有財産でございますから、国有財産は、公用また公益を最優先してその処理を決めるというのが鉄則であります。これを解体するという話が持ち上がって、その理由として、解体すれば更地になって価格が上がるからいいという不動産屋みたいなことを言っておる。
 そうではないだろう、憲法第一条を見ろと。天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴である。この地位にあられる方のお母さんの生まれ育てられたところだろう、この憲法体制にある官僚がまるで不動産屋のように言うなというふうに言ったのが私なんですが、ここに説得に来るのが外務省のお役人で、皇后陛下御自身が解体していただいた方がいいとおっしゃっていると私に説得に来る。片や宮内庁は、皇后陛下御自身が解体を望んでおられるというかのごとくマスコミに公表する。
 これはいかなる事態なのか。純然たる国有財産に関して、官僚が君側の奸のように、みずからは皇后陛下の御意向を知り得るんだという、そのことを議員説得の材料、国有財産をいかに処分するかという説得の材料に使ってくる。そうなれば、我々国会の者としては、皇后陛下に参考人としてここで御意見を言っていただかなければいけなくなるではないか。つまり、官僚組織は皇室を政治利用しておる。そうでしょう。
 そこで、こういう事態を閣僚のお一人としてどう思っておるのかということを鴻池大臣にお伺いしたいと思います。
鴻池国務大臣 私自身も西村委員に劣らぬ、日本の国柄というものを大事にしなければならない、そのために天皇また御皇室を敬愛申し上げなければならない、日の丸・君が代は極めて大事である、このように思う者の一人でございます。
 ただいまの問題につきましては、西村委員が御主張なさいましたように、役所が皇后陛下の御意向を伝えて、こうである、ああであると言うことについては、私自身も納得しかねる部分がございます。
 しかしながら、それが事実として受けとめて、皇后様がそのような御意向ならば、那須の御用邸にお移しになる、あるいはそのまま財務省の言うとおりにしてよい、こういう御意向ならばいたし方がないのではないかと考えておるところであります。
西村委員 前も御誕生日のときに拉致問題に触れられて、無念であります、なぜ我々の共同体が一部の人たちの不在にかくも無関心であったのかという思いを消すことができない、このような思いを述べられるということは、大臣おっしゃるとおりなんです。
 ただ、財務省の役人と宮内庁の役人が議員説得の材料としてそのことを語るのは、私どもは直接そういう御意向を伺うというのは、まさにみずからそういうことをしないというふうなけじめは持っておりますが、我が国の行政機関はそれを平気でやる、これを放置してはだめだという意味から御質問させていただきました。
 次に移ります。担当副大臣にお聞きしますが、これは何だということなんですな。男女共同参画社会とは何を目指しておるんですか。我々は男女共同参画社会であるからここに生まれてきておる。
 我々の神話は、まさに女性が神であって、そして、何ら西洋社会の人権原理主義的なものを生む土壌はない。関東御成敗式目では既に女性の家督相続を認め、そして時効制度を確立して、二十年、十年という、近代ヨーロッパで生まれた民法と同じような考え方を判例法として持っておった。江戸時代の古典落語を見れば、長屋の熊さん、八つぁんは例外なくかかあ天下。稼いだ金はみんな女房に渡して管理してもらっている。
 その中で男女共同参画社会推進を内閣の中の一つの柱に入れて、一体我々は何を目指しておるのかということを担当副大臣にお聞きしたい。
米田副大臣 教養ある西村先生らしく歴史もひもとかれまして、まさにお説のとおり、例えば鎌倉時代等を振り返ると、女性も地頭職の相続が許されていたというふうな事実もあるわけでありますし、男女の関係というものは時代によっても、また階層によっても異なるわけでありまして、一律単純に男対女の抗争で人類の歴史が彩られてきたわけではない。そういう意味で私も同じ思いを持っているわけであります。
 しからば、今日の政府の男女共同参画社会形成に向けての基本的な考え方は何かといいますと、これはあくまでも男女が互いにお互いの人権を尊重しつつ、責任も分かち合い、性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮できる社会を目指す、これが基本的な考え方であります。
 しかしながら一方で、画一的で、そしてまた機械的に男女の違いを認めないというふうな主張をされる方も一部におり、また、そういう誤った方向での議論も一部にこれまであったということも承知をしております。地方条例の制定等の議論の過程でも、若干の混乱があったという話もまた聞いているわけであります。
 しかしながら、政府の立場としましては、十二日の参議院の内閣委員会で、官房長官答弁、そして私の答弁で明確にしております。画一的に、そして機械的に男女の違いを認めないというものではないということを実は強調した答弁をさせていただいているわけでありまして、その明確にされたところの政府の立場をさらにはっきりするために、十二日の参議院内閣委員会における質疑応答を刷り物にいたしまして、近日中に全国の都道府県に送付することを決定しております。
西村委員 それで、男女共同参画社会というのは何をするんやということがわからぬ。やり過ぎて男女の性差を機械的に消し去ってしまうということは弊害だというのはわかる。それじゃ国家は何をするんだということがイメージとしてわからぬ。ということは、各現場では混乱が起こっていると今おっしゃったけれども、おひな祭りは女の子の祭りだからしない、また、人形を壇の上に乗せて並べている、等級をつけておるので、差別につながるからしない。こいのぼりを上げるのは、ヒゴイにマゴイに池のコイ、大きい順になっているので男女の性差を強調しているんだ、だからこれをしない。
 大臣、現実にこういうことが起こっておるんですよ、ほんまに、各教育現場、保育園で。こういう原理主義的な運用の中にあって、それが漫然と、ジェンダーフリーだとか、私もつい最近その言葉を聞いたけれども、男女共同参画社会だとか言われている。これを言えばもうにしきの御旗だということですな。だから、私も聞いてようわかりません。
 鴻池大臣もおられるから言いますが、本当に政府が、男女共同参画社会やったら男女共同参画社会特別区つくったらどうですか。わからない、何をしたいのか。特別区つくって、それがよかったら全国に及ぼしたらよろしい。どうですか、大臣。
鴻池国務大臣 今の西村委員のおひな祭りやこいのぼりの話を初めて聞いて驚いております。
 それじゃ、テレビの水戸黄門なんかも大変な問題になっているのかなというふうに思うんですけれども、どうですか。
西村委員 水戸黄門て何ですか。
鴻池国務大臣 葵の御紋を見せて、ははあとやる。
西村委員 あれは差別なんですな。だから、「兵隊やくざ」とか、勝新のすばらしい映画、「座頭市」、みんなだめなんです。
 これはともかく、私が聞いておるのは、男女共同参画社会というて、私はわからぬ。副大臣の答弁聞いてもようわからぬ。行き過ぎの部分は言われる。それで、私も、行き過ぎは、大臣、こういうことが具体的にあるんですよと言っておる。
 そこで、政府が本当にそういうものをつくって、担当大臣も置いてやっているならば、国民に、ああ、これが男女共同参画社会か、おれたちの今までの神話以来続いてきたこの日本の社会はいびつだったのだなとわかるような特別区をつくって、よかったら全国に広めましょう、悪かったらやめましょう、これでええのじゃないですかというのを大臣に御質問している。
鴻池国務大臣 男女平等とか男女共同参画社会に何らかの規制が邪魔になる、これが阻害している原因であるということであれば、その地域から特区の御申請をいただければ、それにできる限り対応できるように努力をしたいと思っております。
西村委員 それで、男女共同参画社会とともに、米田副大臣は北方領土対策も担当しておるんですね。北方領土というのはソビエトが不法占拠する我が国の領土だと思いますが、そうであれば、なぜあなたは竹島担当にはならぬのですか。
米田副大臣 要するに、委員の御指摘は、不法に占拠されている北方領土について特別対策室があるが、同じく不法占拠されておる竹島になぜないのだ、端的に言うとこういうことでございましょうか。
 御案内のとおり、ロシアによる不法占拠と同様に、竹島につきましても、たしか一九五二年のいわゆる李承晩ラインの設定の中で竹島が含められたわけでありますが、我が国政府は一貫して、国際法上もまた歴史的にも竹島は我が国の領土であるというふうに主張をしてまいったわけであります。
 伯耆藩、鳥取県でありますが、大谷、村川という両家が、現在の竹島を幕府からかつて拝領をしたという記録もございます。また、その経営もしておりました。一九〇五年の二月に、閣議決定及びそれに続く島根県告示によりまして、日本政府は近代国家として竹島の領有意思を天下に明らかにしたわけであります。
 韓国側の主張は、十五、六世紀ごろの古文献に、竹島について于山島あるいは三峰島という名で記述があるというようなこと、あるいは、戦後、日本占領及び戦後処理のためのGHQ覚書等を根拠に、竹島が韓国の領土である旨主張をしておりますが、しかしながら、我が国としては一貫して、韓国側の挙げている文献からはその于山島あるいは三峰島が竹島に該当している根拠はない、むしろその文献は竹島ではないことを示しておるという主張をしております。それから、GHQ覚書等につきましても、かかる措置が日本国の領土の最終決定に関するものではないということも明記をされておるわけでありますので、我が国は一貫して韓国側の主張は全く根拠がないということを申してまいりました。
 しかるに、李承晩ライン設定以来、武装官憲を常駐せしめ、実効支配を恐らくねらっておると思われますが、さまざまな施設の建設も行っております。ある意味では北方領土と同じかそれ以上の明確な不法占拠でございますが、北方対策室があってなぜ竹島はないのか、私もまことに不思議に思いましたので、その同じ疑問を持ちながら、政府の内部でそのことは議論、検討をさせていただく、その努力をしたいと思っております。
西村委員 はい、わかりました。
 それで、私も同様の疑問を持っておりますからお尋ねしたわけで、日韓紛争処理に関する交換公文の次元で推移しておりましたところ、金泳三大統領は竹島に突如要塞化工事をなしてきた、そこで次元が変わったのだから、橋本総理大臣は周辺海域を封鎖し、領空を封鎖して、要塞化工事の資材を運ぶ韓国の船を近づけずに、強硬なる、相手が次元を変えればこちらも次元を変えるという姿勢を示すべきであったにもかかわらず、漫然と見過ごして、完全なる相手の実効支配を放任してしまった、まことに痛恨のきわみであります。
 北は北方領土から法と正義をどぶに捨て、鈴木宗男等々が出る土壌をつくり、日本海においては竹島を放置し、東シナ海においては尖閣諸島を中国の言われるままに放置しておった。これはすべて橋本内閣のときに放置された問題でありました。このことを申し上げて、この質問を終えます。ありがとうございます。
米田副大臣 北方対策室と申し上げましたが、北方対策本部であります。竹島対策本部はございません。
西村委員 竹島対策本部をつくらねばならないなというのは副大臣の意向であるということですな。まさに欠けておるということですな。考え方が同じのが与党にも野党にもいるというのは便利なことですな。ありがとうございます。
 次に、本法のことに入っていくわけでありますが、これは、どういうふうに本法のイメージを大臣に申し上げたらいいんだろうか。本法は、規制を担当する官僚組織に検討させたから、結局はできないのではないか、こういうことですね。そのものを担当する行政組織に特区を担当させれば、極めてこんがらがった議論がなされる割には効率性がよくない、こういうふうな感じがします。
 我々国民から見れば、そこで歩くなり、店を持つなり、そして座ってサークルになって語らうなりなんなりとしなさい、そのときは私に申告して許可を求めなさいと言われれば、申告して許可を求めて散歩する人もそれはもちろん出てくるでしょう。しかし、何で散歩するのにおまえにそこまで断らなだめなんだ、考え方がおかしいんじゃないか、私はそう思う立場なんですね。だから、散歩したり自由な領域に何で一々お伺いを立てるのかと。先ほどの質疑応答でも、本来自由な領域であるにもかかわらずお伺いを立てねばならないという前提で、いろいろ込み入った討論があったと私は思います。
 例えば、中国は人民服であった。しかし、人民服がなくなったら、色とりどりの服装を着て娘さんが歩くようになった。その色が緑であればいい、赤は派手だとか、そんなことは当局の申すことではない。ただ、人民服である必要はない、つまり、この規制を取っ払っただけだ。また、日本の例においては電話でありまして、今となっては黒のだるま型の電話が懐かしくて仕方がないほど、いろいろバラエティーのある電話が出てきた。これは別に当局が、黒の電話以外の電話を用いたければ写真をつけて申告しろと言ったからではない。
 こういう例を二つ挙げて本法を見ますと、本法は、当局が、黒から赤の電話にするのはだめだ、黄色の電話ならいい、そして、黄色の電話でよければ、それを成功したと判断するのならば、それは赤でもいいことにしよう、何かこう言っているみたいな感じがしますな。随分むだな議論を我々はしているのではないか、茶の木畑に入っていっておるのではないかというふうな感じであります。
 先ほども出ておりました幼稚園入園制限の問題。これは、地域の問題であるという前提で、地域の特区ということで、そこだけ申請があったらいろいろ考えて外しましょうと言っているが、実は、夫婦と子供の問題は、地域、属地的な問題ではなくて属人的な問題だと私は思います。
 属地的な問題と属人的な問題を混同して、特別区という、さもいいようなものに押し込めようとするから、不平等だという議論も生まれてくるし、本来、こういうことは全国一律、日本人は全国におるんだから属人的な問題だ、この御夫婦とお子さんにとっては、幼稚園は、今政府が一律やっているよりももっと入る機会を広げた方がいいんだとか、こういう問題だと思うんですな。
 もう一度、大臣、また担当の方でもよろしいが、私の今の疑問。幼稚園入園制限は、属地的な規制解除の問題ではなくて、属人的な問題であって、その御夫婦とその子供にある問題だ。したがって、全国に散らばる属人的な問題に関しては、全国一律の規制緩和でいいではないか、それ以外に道はないではないか。なぜ官僚が出しゃばるのか。
 矢野局長ですか。
矢野政府参考人 今回の特別区について、幼稚園にかかわるお尋ねでございますが、幼稚園教育は、これはもう御案内のとおり、制度上、まず三歳を入園年齢としているわけでございますが、今回の特別措置というのは、各地域による特別な事情、この特別な事情の中には、委員がおっしゃいましたが、私ども、例えば、その地域の少子化の傾向あるいは都市化の傾向、あるいは、属人的とおっしゃいましたけれども、例えば核家族化といったような傾向等々、幼児教育をめぐるさまざまなそうした社会的要因、そういう社会的要因について特別な事情がある、そういうふうに考えられる地域について、そういう地域に限って特例措置を設けようというものでございます。
 そういう意味で、特別な事情という事情の中には、今回の私どものケースでいうならば、いわゆる属地的な要素、つまり、少子化であるとかあるいは都市化であるとかといったような属地的な要素プラス、例えば、これも言われるところの属人的な核家族化の傾向といったような、そういうさまざまな社会的要因を総合的に判断して特別な事情ありということで特例を設けようというものでございます。
 そういう意味で、今回、またそれを全国一律にならないのかねというお話でございましたが、それを全国一律の制度に広げようとするためには、この問題をめぐってということに限りますれば、例えば専門的、教育的な見地からの検討も必要でありましょうし、また、そうした幼児教育への保護者のニーズが全国的にあるかどうかといったような、そういうことも考えなければならないわけでございます。
 そうしたさまざまな課題を十分検討した上で、全国的な制度とするかどうかということについては慎重に検討していく必要があろうかと思うわけでございます。
西村委員 江戸時代なら、山一つ越したら犬の形も変わるという、余り交通のない時代ですけれども、まあ、御承知のとおりですよ。交通網が発達し、地域がいろいろ変動はあるんですよ。
 したがって、地域の個性に応じた地方自治が地方自治の本旨をもって運営するという前提に我が国があるわけですから、この特別区がうまいこといくならば全国に広げようという趣旨からするならば、初めから全国に広げられるものは初めから全国に広げたらどうだ。当然のことであるとは思うんですがね。前、大臣のお答えを聞きましたから、これはこれとして。
 それから、社会保険労務士の業務範囲、これも前聞きまして、大臣もお答えになったんですが、どう考えてもこれはおかしい。これは国家が付す資格でしょう。それを、特別区に限って代理の業務を付与する。これはどう考えてもおかしいな。
 先ほどのように、日本は共産主義社会で、特別区をつくって、ここだけが商業活動しておるんだ、労働者はここだけにおるんだ、資本家はここだけにおるんだという社会ではないでしょう。むしろ、国家の政策として、いわゆる地方と都市というものの偏在をなくすという方向で、あらゆる日本の国土の中に雇用機会はあるんですよ、そして、生まれた家、生まれたふるさとから通ってください、昔の、中学を卒業して夜行列車で東京に出稼ぎに来る、こういう国土ではありませんよと言っておるのに、何でこの代理の業務は、特区では与えて特区でなければ与えないのか、同じ試験を受けて通っておるのに。これはどうですか。大臣には前お聞きしたとは思いますが、担当行政機関はどうですか。
青木政府参考人 今回の特例措置につきましては、労働関係法令だとか労務管理の実務に専門的な知識を持っている社会保険労務士が、求職者でありますとか労働者を代理して、労働契約の締結とか変更、あるいは解除、そういったことを行うことができるようにするものであります。
 この業務は、当然のことながら、今、社会保険労務士はできないということでありますので、これまでに経験したことがない業務でありますし、労働者にとっては極めて重要な、基本的な事項でありますので、これを代理させる、こういう形態のものであります。
 したがって、今回の特例措置を講ずることによって大きな効果が期待できるような、そういうような一定の地域特性を持っている、そういう地域に限ってまず行ってみるということが適切だというふうに考えた次第であります。
西村委員 答弁を聞いて納得できるわけはないけれども、答弁を聞いていたら時間が過ぎていって、そうやなと、毎度繰り返される我が国の風景でありますが、どう考えてもおかしい。同じ試験を受けて、一方は代理権を持っていて、一方は代理権がない。共産主義社会ではあるまいし、資本家を囲ってそこに住まわせているわけではあるまいし、どう考えてもおかしい。
 時間がないですから、規制緩和のことばかりの方向でありましたけれども、大臣、特別区をつくる、ここがよければ全国に広げるんだ、同じところはあるだろうという発想であれば、むしろ規制強化の観点から眺めてみた方がいい場合はありますよというのが私の意見です。
 史跡であるとか歴史的町並みであるとか、これを保存することによってどれだけの経済効果があるかといえば、倉敷という小さな町、小樽という小さな町に、運河があることによって毎年百万以上の観光客が来る。こういうことを考えましたら、歴史的町並み保存のための規制強化の区域、内容は、例えば相続税は免除だと、そういうふうなところ。
 また、歴史的な地場産業育成。和紙を山間部でつくっている村がある。また、京都の西陣、私の堺の刃物、鉄砲。今や、この包丁などは、堺が中国につくり方を教えましたから、百円ショップで売っておる。堺の地場産業はそれで壊滅。しかしながら、一振り四十万から五十万の包丁は昔の刀の練り方でつくる。それは堺でしかできないから今やっておるという状態なんですな。それには規制強化が必要だ。法人税、所得税、相続税は免除するんだ、これは規制緩和の方ですけれども。
 町並み保存、地場産業育成のために特別な工夫をする区域を実験的に設定する、こういう発想は、大臣、どうですか。
鴻池国務大臣 先ほど、皇室、日本の国柄というのも大事だと私が申し上げましたように、同じことで、日本の歴史、文化、伝統、それにかかわる町並みというのは極めて大事なことだと存じております。
 ただ、今回の特区の構想につきましては、まずは、地域のいわゆる活性化のために規制を緩和するという大前提がございます。ただし、この制度におきましても、規制の強化というもの、あるいは規制の新設というものにつきましてもできるという可能性はあるということは申し添えたいと思います。
 いずれにしましても、ただいま私が申し上げました町の歴史、伝統というものの保存につきましては、大変重要なものでございますので、住民一人一人が認識をして、行政一体となって守るものは守っていかなければならないと改めて考えさせられております。
西村委員 質問を終わります。ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で西村君の質疑は終了しました。
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。
 早速、具体的な項目について質問をしていきたいと思いますが、私、党で文部科学部会長を仰せつかっておりまして、教育関係、また科学技術関係のことについてお聞きをいたします。
 まず、この教育特区ということについては、教育改革の一つの大きな起爆剤になり得ると思っております。きのう、中教審の教育基本法に関する中間報告が出ましたけれども、こういう具体的な項目について議論をしていくことが今後教育改革にとっては大事ではないか、私はそのように思っております。まず、教育特区ということに対しての文部省の基本的な考え方をお聞きいたします。
 今回、この教育関係の提案も非常に多かったと聞いておりますし、それに対して文部科学省も、マスコミによりますと抵抗勢力の代表のような書かれ方をしておりましたけれども、この特区ということについての基本的な考え方をまずお聞きいたします。
結城政府参考人 文部科学省といたしましても、所管しております教育の分野、それから科学技術の分野におきまして、思い切った規制改革を進める必要があると考えております。
 この特区の問題につきましても、我が省では、地方公共団体からの提案をどうすれば実現できるかという観点から、前向きに検討、対応してきたところでございます。
 今回御審議いただいておりますこの構造改革特区法案におきましては、十四の法律にかかわる規制についての特例措置が講じられておりますけれども、このうちの三つが文部科学省関連の特例措置でございます。また、特区推進プログラムにおきまして、全省庁で八十項目の特例措置が掲げられておるわけでございますが、このうちの十五項目は文部科学省関連の特例措置でございます。各省庁の中で、数の上からいえば二番目の数になっておるということでございます。
 私どもといたしましても、抵抗省庁というようなことを言われないように、今後とも国民の期待や要望、社会のニーズに適切に対応していくという視点に立って、特区を初めとする規制改革に積極的に取り組んでいきたいと思っております。
斉藤(鉄)委員 結城官房長にもう一度お伺いしますが、対象地域というところを見ますと、教育上特に配慮が必要な事情のある地域とか、どうも対象地域として理解するのが困難といいましょうか、余り妥当性がないなと思うような対象地域になっているわけですが、つまり、これは全国に適用してもいいのではないかと思われるような提案が今回いっぱいございます。今回、特区でこれがすばらしいということになれば、これを全国に広げていく、そのイニシアチブを文部科学省はとる、こういうことでしょうか。
結城政府参考人 はい。そのとおりでございまして、特区でやりまして、いい成果が出れば、それをぜひ全国に広げていきたいというふうに思っております。
斉藤(鉄)委員 地方自治体に聞きましても、文部科学省が非常にかたいという声もよく聞きますので、よく頑迷固陋な文部省というような声も聞きますが、どうかその汚名を返上するように頑張っていただきたいと思います。
 それから、いわゆる民間企業の知恵をどうこの教育改革に結びつけていくかということでございます。
 今回、株式会社の教育分野への参入ということが議論されておりますが、一番大切な視点は、子供たちにそれぞれ合わせた教育カリキュラム編成、また、子供たちに対するきめ細やかな教育、また教員採用ということが必要で、子供たちの側に立った教育改革でなくてはならない、このように考えるわけですけれども、今回の特区の活用により、その子供たちの側に立った教育改革ということが可能になるのか。また、そういう面では、企業、株式会社の参入云々ということと関連するかもしれませんけれども、いわゆる企業の知恵というのは非常に大切になってくるのではないか、企業との協力関係ということも私は必要だ、このように思います。
 現場では、例えば不登校児対策等におきましては、そういう企業が一生懸命取り組んでいるところもございますし、その民間の知恵、いわゆる私立の学校法人ということではない、企業、民間の知恵を活用することが今後非常に大事になってくると思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
矢野政府参考人 構造改革特区において、学習指導要領によらないで弾力的な教育課程を編成する取り組みを可能といたしますために、文部科学省といたしましては今回、トータルの措置として、学校教育法施行規則を改正いたしまして、これに基づき新たに構造改革特区研究開発学校制度、これは仮称でございますが、そういう新しい制度を設けることといたしているところでございます。この構造改革特区研究開発学校制度のもとでの地域や学校、また児童生徒の実態に応じた取り組みにつきましては、構造改革特区制度の趣旨にかんがみまして、憲法、教育基本法等に基づく学校教育の取り組みとして適切なものである限り、私どもといたしましては、各地方公共団体の自発性を最大限に尊重する必要があると考えているところでございます。
 また、教職員の配置、採用につきましては、これは既に平成十三年度からの第七次の改善計画を進めているところでございますが、今回の構造改革特別区域法案におきましては、現行の一般的な制度でございます県費負担教職員に加えて、地域の特色、特性に応じて、市町村教育委員会が独自に教職員を任用することができる特例を盛り込んでおりまして、市町村独自の取り組みとしてきめ細かな指導を行うことも可能となると考えているところでございます。
 また、地域や社会との共同連携、民間企業も含めてでございますが、民間企業も含めて社会との連携協力ということにつきましては、これは、子供たちに学ぶことの意義や楽しさを体験させ、学習意欲を高める上で、学校教育において、実社会での生きた知識あるいは経験を持つ社会人を活用すること、また、企業を含めた学校外での施設設備を活用することは大変大きな意義があるというふうに私ども考えているところでございまして、このため、文部科学省といたしましても、例えば、平成十六年度までの三年間で約五万人を目標に、全国の学校に社会人を導入する学校いきいきプランというのを推進しているわけでございますが、そのほかに、職場体験、インターンシップを推進する観点から、産業界の関係者にも御参加をいただきまして一堂に会した全国フォーラムを開催するなどの施策を講じているところでございまして、引き続き、そうした意味での学校教育における社会人の活用、また、民間企業を含めた社会との連携協力を今後とも推進してまいりたい、かように考えているところでございます。
斉藤(鉄)委員 社会体験活動、自然体験活動の効用はもう既に証明されているということでございます。この民間の知恵の導入、民間との協力ということについては、特区に限らず、できるだけ幅広く今後実施されていくことを望みます。
 次に、不登校問題ですが、これまで文部科学省は、不登校問題に対してどちらかというと消極的だという印象を私持っておりました。確かに、不登校を認めてそれに対して特別な対応をとるということは、ある意味では学校へ来ることが原則の社会の中にあってなかなか認めにくいことだったというのはよく理解できるわけですけれども、現実には、平成十三年度において不登校の小中学生は約十三万九千人ということでございまして、この十年間で倍増しております。
 何らかの現実的な施策を講ずる必要があると私は思いますけれども、今回、幾つかの地方公共団体から不登校対策の特区も提案されております。こうした提案について、特区を活用してどのような対応をしていくおつもりか、この点についてお伺いします。
矢野政府参考人 不登校問題につきましては、委員先ほど御紹介いただきましたように、平成十三年度の不登校児童生徒数が約十三万九千人と過去最高となるなど、極めて憂慮すべき状況にございまして、私ども、深刻な問題として受けとめているところでございます。
 今回、地方公共団体からの構造改革特区の計画に関しまして、東京都八王子市を初めとする複数の自治体から、不登校問題への対応にかかわる提案が幾つかあったところでございます。
 このため、文部科学省といたしましては、教育の機会均等等を配慮しながら、不登校問題にかかわる特区における特例措置を検討いたしました。その結果、要望を踏まえて、特例措置の内容でございますが、一つには、不登校児童生徒を対象とした新しいタイプの学校の設置による教育課程の弾力化ということが一つでございますし、また、もう一つは、引きこもり状態にある不登校児童生徒を対象といたしまして、IT等を活用した学習活動を可能とするということを特例措置として考えたところでございます。
 文部科学省といたしましては、構造改革特区制度の趣旨にかんがみまして、各特区における地方自治体の多様な不登校対策に係るこうした制度を活用した取り組みを期待いたしますとともに、今後とも、私ども、既存の学校における不登校問題の解決に向けた取り組みの一層の充実に努めていかなければならない、かように考えているところでございます。
斉藤(鉄)委員 いろいろな地方公共団体の知恵を活用しながら、国としても文部科学省としても、これまで法制度上の学校というものの存在がある以上なかなか出せなかったところに、これからどんどん対応していくというお答えというふうに認識をしましたけれども、そういう認識でよろしいですね。――はい。それは大変重要なことだと思います。
 しかし、不登校の問題は、八王子だけに限らず、全国の問題でございます。そして、国が一律にこうせよと言うことは、いわゆる教育の世界では確かに不適切かと思いますけれども、地域と連携をとりながら、しかし、ある地域で有効だった方策については、それを全国の地方自治体に、また教育委員会に知らせていくというふうな努力も必要かと思います。
 そのときに、お金は出さないということでは、今回、特区の問題とそれから不登校の問題、お金を出さないということについては二つの別な意味がありますけれども、やはり、この不登校問題については、文部科学省が責任を持って財政的な支援もしながら不登校対策をやっていくということが必要かと思いますが、この不登校対策への財政の援助ということについてはどのようにお考えでしょうか。
矢野政府参考人 不登校の問題は、御指摘のように、これは一部の地域に限る問題ではないわけでございまして、先ほど来御紹介申し上げておりますように、十三年度の統計を見ますれば、過去最高になるといったような極めて憂慮すべき状況にあるわけでございまして、そういう意味で、不登校の問題はまさに全国的な問題であるというふうに考えているわけでございまして、国として、この問題について責任を持って対応しなければならないと考えているところでございます。
 不登校問題についての基本的な対応でございますが、基本的には、これはすべての児童生徒が楽しい学校生活を送ることができるようにするということが基本であるわけでございまして、こうした基本的な考え方に立って、不登校児童生徒の学校復帰を目指してきめ細かな指導や支援を充実させていくことが重要であるわけでございます。
 こういう観点から、私ども、従来より、スクールカウンセラーの配置など教育相談体制の充実、あるいは適応指導教室への予算の支援といったような各種の施策を講じてまいったところでございますけれども、平成十五年度概算要求におきましては、特に早期の対応が必要であるということと、それから、家庭にいる児童生徒についての学校復帰の支援ということが必要である、そういう観点に立ちまして、新たに地域ぐるみのネットワークを整備するための経費を盛り込んでいるところであるわけでございます。
 さらに、この九月からでございますけれども、専門家による協力者会議を発足させまして、不登校施策につきまして、この時点で改めて幅広い視点、観点から検討を行っているところでございまして、年内を目途に学校関係者等の取り組みの強化に資するような報告を取りまとめたいと考えているわけでございます。私ども、その報告を受けて、不登校への取り組みの予算的なそういう支援も含めて一層の充実を図ってまいりたいと考えているところでございます。
斉藤(鉄)委員 この不登校の問題、この特区という制度を使ったいろいろな実験と言ってはちょっと語弊があるかもしれませんけれども、試みというのは非常に重要になってくると思いますので、ぜひ文部科学省としても重要視をして力を入れていただきたいと思いますし、財政的な支援もぜひ必要だと申し添えたいと思います。
 それから、子育て支援、ちょっと年代が若くなりますけれども、幼稚園、保育園の問題について質問したいと思います。
 今回、本当に安心して子育てをしながら働くことができる、こうした面からも、特区の活用を検討していくべきであるという提案、子育て支援の充実についての地方公共団体からの提案も非常に多かった、このように聞いております。
 そこで、幼児教育特区でございますけれども、法案第十一条では、「学校教育法の特例」として、満三歳からと決められている幼稚園の入園資格について、特区に限って、学年途中で満三歳になる子供にも認めるということになりました。九月二十七日付の朝日新聞の記事によりますと、これは埼玉県北本市の、私立幼稚園で三歳未満の子でも受け入れられるようにという提案に基づいたこの特区、これがきっかけになった、こういうふうに書いてございましたけれども、北本市の方に考え方を調査しましたところ、幼稚園経営者の柔軟な発想をもとに、経営者の創意工夫により、幼児教育を進め、また、幼稚園経営を活性化するために、三歳未満ということではなくて、あくまでも年齢制限を外すことが必要である、こういう提案だったようでございます。
 今回の三歳未満の子供の受け入れは一歩前進であるとしましても、入園年齢の制限を外すべきという強い意見、これは子育て支援、幼保一元化というふうなこととも関連いたしますけれども、私も同感でございます。今回の三歳未満ということに加えて、年齢制限を将来的には外すということについての文部科学省の見解をお伺いいたします。
矢野政府参考人 今回の幼稚園にかかわる特区についての私どもの考え方を改めて申し上げたいと思うわけでございます。
 幼稚園教育の目的は、これは、同年代の幼児との集団生活の中で主体的な活動でございます遊びを通して総合的な指導を行う点にあるわけでございまして、その中で、発達段階に応じて基本的な生活習慣や社会性を身につけさせていく、そういうところに幼稚園教育のそもそもの目的があるわけでございます。
 今回の、満三歳になる年のその四月から幼稚園受け入れを可能としようといたしますのは、これは、少子化や過疎化等によりまして幼児が同年齢帯の子供とともに活動する機会が減少している地域では幼児が社会性を涵養することが困難となっているわけでございまして、そのような地域におきましては、幼児が他の人間との関係を結ぶことができるようになる二歳から三歳の段階から幼稚園に受け入れることで幼児の社会性の涵養に資すると考え、このような特例措置を設けることにいたしたところでございます。これが今回、幼稚園にかかわる特例の考え方であるわけでございます。
 一方、御指摘のございましたゼロ歳や一歳の幼児についてでございますが、これは、幼児の発達段階、ゼロ歳とか一歳という発達段階を考えますと、先ほど来申し上げてございます集団活動を基本とする幼稚園教育、その幼稚園教育の対象とすることは、これは教育論あるいは教育学上適切ではないというふうに私ども考えているわけでございまして、そういう意味におきまして、特区においても特例措置の対象とすることは困難であるというふうに私どもは考えているところでございます。
斉藤(鉄)委員 これ以上下げることは困難だと。これは、ただ我々の感覚だけではなくて、幼児教育学というふうな専門家の知識や議論も踏まえて考慮しなくてはいけないことかと思いますけれども、保育園の方では、もちろんゼロ歳児からの保育があって、その中でも教育的な要素というのは含まれてきているわけでございますので、これは特区の話から大きくなりますけれども、幼保一元化を目指しての何らかの幼稚園の側からのアプローチということも今後考えていかなくてはならない、このように思っておりますので、引き続き研究をしっかりやっていただきたいと思います。
 それから、北本市にそういうことで問い合わせをいたしましたところ、ちょっと幼児教育から離れますけれども、同じく北本市では公民館住民管理特区という提案もされているということでございました。
 これは今回取り上げられておりませんけれども、お話を聞きますと、社会教育法、これは文部科学省の所管する法律ですね。この社会教育法に公民館が行う事業が掲げられているんだそうです。したがって、ここに掲げられている以外の事業を行うことが非常に難しい状況にある。今後、住民ニーズも多様化する。そういう中で、住民ニーズに対応した事業が行えるように社会教育法の制限を撤廃すべきではないか、こういう意見もありましたけれども、この点についてお伺いいたします。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 先生御案内のとおり、公民館は地域におきます社会教育の中心的な機能を担う施設でありまして、社会教育法におきましてその目的を定めるとともに、その目的の達成のために、講座の開設ですとか講習会の開催等、公民館が行うべき事業について定めているところでございます。
 ただ、社会教育法に掲げられております事業はおおむねのものを例示したものでございまして、それ以外の事業を行ってはならないということではございません。したがいまして、時代の変化に合わせて、公民館の目的を妨げない限度において、地域の実情に応じたさまざまな事業を展開することは可能だと考えておりますし、地域におきましては、住民ニーズに対応いたしまして、公民館に子供たちの交流の場としてオープンスペースを設けたり、地域の民生委員の参加のもと、公民館に保育所を開放する、いろいろな取り組みも現在なされているところでございます。
 今後、私ども、こうした事例あるいはその趣旨をいろいろな会議等を通じまして周知徹底し、地域の実情に応じた事業がより一層展開されるように努めてまいりたいと考えております。
斉藤(鉄)委員 何でもできますよというお答えだったかと思いますが、現実に地方自治体から、こういう制限があって制約を受けているという声もありますので、ぜひ今後PR等努めていただきたいと思います。
 公民館の話が出ましたので、きょうは若松総務副大臣が来られておりますが、お聞きしたいんですけれども、公民館など公の施設の管理受託者の範囲を拡大するよう地方自治法等の規定の整備を行う、こういうふうに総務省はおっしゃっているようでございますけれども、住民ニーズに対応した事業を行うことにも関連しますけれども、公民館の管理については、住民で構成されるNPO等による管理の実現ということも今後必要になってくるのではないかと思います。
 公民館は住民福祉の向上のために活用されるべきでありまして、住民で構成される団体に管理運営のすべてを委託する時期に来ているのではないか、このように考えますけれども、総務省の見解はいかがでしょうか。
若松副大臣 このたび、北本市の構造改革特区の提案であります幼児教育特区そして公民館住民管理特区につきましては、実は私も八月二十三日、北本市の加藤市長に、ぜひこれは大事な機会ですので構造改革特区を申請してください、そう申し上げたところでございまして、御指摘、心から感謝申し上げます。
 今委員御指摘の公の施設、いわゆる公民館でございますが、これにつきましては地方自治法第二百四十四条の二におきまして、公共団体、公共的団体または一定の要件を満たす出資法人に対してその管理を委託することができる旨が規定されております。そして、御指摘の住民で構成される団体が公共的な活動を営む公共的団体に該当するものであれば、現行においても公民館の管理をこれらの団体に委託することが自治法上可能となっておりまして、私どもは、北本市をお伺いしますと、コミュニティー、いわゆる地域づくりというものを大変住民参加型で行っておりまして、そういったものはこの公共的団体にかなり合致するものではないかと理解しております。
 なお、公の施設の管理受託者の範囲の拡大についてでありますが、本年八月二十八日に経済財政諮問会議におきまして片山大臣から発表されました「総務省 制度・政策改革ビジョン」というものにおきまして、積極的に検討する旨を明らかにしたところでございまして、現在、次期通常国会を念頭に、さらなる規制緩和の観点から地方自治法等の規定の整備を行うべく鋭意検討しているところでありまして、九月九日の経済財政諮問会議でも、私はその場で、今回経済特区に参加できない自治体もありましたので、さらに申請の受理を受け付ける機会を拡大してほしい、そのように申し入れまして、結果的に、来年の一月十五日、再度申請も可能となっておりまして、既にこのような構造改革特区の申請をしている自治体も、北本市も含め新たな提案をぜひこちらも期待しているところでございます。
斉藤(鉄)委員 住民参加ということが公の施設をより活用することにつながりますので、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。
 次に、科学技術関係ですけれども、まず、産学官連携について、これは、私も広島ですが、産学官連携、やらなきゃいけないというかけ声は非常によくわかるんだけれども、なかなか何をやっていいかわからない。しかし、これからの日本を活力化していくためには、地域の大学、そして官、そして民、これが連携して技術開発に取り組んでいかなきゃいけない、新しい技術を起こしていかなきゃいけない、こういう意識でございます。
 こういうことに対して、今回の特区法において、この地元の要望がどのような形で取り入れられているのか、措置がとられているのか、これをお聞きいたします。
石川政府参考人 大学と産業界とのいわゆる産学連携の重要性についての御指摘でございます。
 先生御指摘のとおり、我が国の経済発展、あるいは大学における研究活動の振興という観点から、地域における科学技術の振興、あるいは今お話のありました産学連携の促進ということが大変大切であると私ども考えております。
 そういったことから、これまでも、大学における共同研究センターの整備ですとかあるいは技術移転機関、いわゆるTLOでございますけれども、こういったものの承認を含めまして、私どもとしても積極的に関連施策を展開してきたところでございます。こういった施策に対する期待とか、あるいは産学官連携への熱意というのは大変強くなってきているところでございまして、今回の特区構想に関しましても、地域におけるさらなる科学技術の推進のための要望といったものが非常に多く寄せられてきておりました。
 そこで、今回の構造改革特別区域法におきましては、さらにこういった産学連携を推進するという観点から、具体的には、例えば大学等の国有の敷地の廉価使用に関しまして、従来ですと国立大学と企業との共同研究施設に限っていたようなものを、対象を広げまして、大学の研究成果を活用して企業が行うような応用研究施設にまで広げるというようなことをすることとしておりますし、また、その使用の条件につきましても、従来ですと、当該施設及び敷地を利用した研究に係る全データ等の提供を求めておりました。これを研究成果の報告だけに緩和するといったような措置を講じることとしております。
 我が省といたしましても、これらの措置によりまして、大学と企業との共同研究の促進、あるいは大学発ベンチャーの創出など、積極的に進むものと期待しておりまして、これらが地域経済のさらなる活性化と大学の活性化につながっていくもの、こんなふうに考えておるところでございます。
斉藤(鉄)委員 その際、地方では大学といいますと国立大学、各地域にあるわけですが、この国立の大学の先生が地域の企業と共同研究をしていく。その際の企業等との兼業ですけれども、かなり厳しい規制がございます。これを緩和していく方向に行かなくてはいけないかと思いますが、これに対して、文部科学省と人事院、どのように考えておるか、お聞きします。
結城政府参考人 産学官連携を推進するために、大学教員の兼業規制を緩和するということは大変重要であるというふうに思っております。
 平成九年度以降、さまざまな兼業規制の緩和を措置してきておりまして、平成十二年度には、国立大学の教員が、技術移転事業者、いわゆるTLOや大学発のベンチャー企業の役員兼業を勤務時間外で行うことができるように制度が整備されたところでございます。
 今回の構造改革特区推進のためのプログラムにおきましては、さらに二つのことが加えられておるわけでございます。これまでは勤務時間外の兼業でございましたけれども、これに加えまして、一つは、構造改革特区におきましては、TLO及び大学発ベンチャーの役員兼業を勤務時間内で行うことができることとされております。また、もう一つは、これは全国的な措置でございますけれども、産学官連携活動のための非役員兼業、役員でない兼業でございますが、これを勤務時間内に行うことができることとされたところでございます。
 現在、平成十五年度からの実施に向けまして、関係省庁と具体的な基準等について今検討を進めているところでございます。
佐藤政府参考人 今先生御指摘がございましたように、大学等には非常に貴重な知的財産、特許とかいろいろなノウハウとか、そういう研究成果が蓄積されているわけでございまして、これを積極的に社会に還元して日本経済の活性化につなげる、これは今や社会全体の要請だと思いますし、人事院といたしましても、その重要性につきましては深く認識しているところでございます。
 しかしながら、一方で、国立大学の場合は、先生は国家公務員でございまして、そのために営利企業との人的交流に関してはさまざまな規制が現在あるということでございます。そのうち、人事院が関係するものといたしましては、役員の兼業がございます。国家公務員法上は国家公務員が営利企業の役員を兼業することは原則禁止になっておりまして、ただし、人事院が承認する場合については、これを認めるということになっております。
 そういうことから、平成十二年の四月に、先ほど文科省の方からお答えがあったことと同じでございますけれども、技術移転事業者、それから研究成果活用企業の役員、それから株式会社等の監査役、これにつきましては原則的に役員の兼業ができるというふうに道を開いたわけでございます。
 それから、今回の構造改革特別区につきましても、これも文科省のお答えと同じようになろうかと思いますけれども、技術移転事業者、いわゆるTLO、それから研究成果活用企業の役員については勤務時間内の役員兼業も認めるということにしております。
 それから、もう一点つけ加えさせていただきますと、役員兼業の承認につきましては、従来人事院が直接やっていたわけでございますけれども、ことしの十月から所轄庁の長、各省庁の長でございますけれども、それにこれを委任する。さらに、所轄庁の長はその承認権限を各大学の長、学長さんに委任できるようにいたしました。これによって承認手続もかなり簡素化されたというふうに思っております。
斉藤(鉄)委員 産学官連携のためにぜひ人事院の方もその制度設計を考えていただきたいと思います。
 次に、総務省にお伺いしますが、いわゆる地方公共団体から地元の国立大学にぜひ寄附をしたい、国立大学は地域の知の中心ということもあって、そこをぜひ整備したい、寄附したい、しかし今それは禁止されているということで、今後これが柔軟にというか、一部は可能になったということも聞いておりますけれども、これを取り入れてこの制度を拡大していく、柔軟に運用していくということが必要かと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
若松副大臣 まず、地方公共団体から国立大学を含めた国等への寄附金等の支出についてでございますが、これまで国と地方との財政秩序を維持するために地方財政再建促進特別措置法に基づきまして、実質的交換や原因者負担など、一定の場合に限って認められることとされてきたところでございます。この規定につきましては、十一月一日、政令改正によりまして、地方公共団体の要請に基づいた国立大学等が行う地域の産業振興等に寄与する科学技術に関する研究開発等に対して、一定の要件のもとで地方公共団体が経費を負担できるようにしたところでございます。
 今回の改正が我が国の最重要政策課題の一つであります科学技術の振興に資するとともに、喫緊の課題である地域経済の活性化にもつながるということを期待しているところでございまして、その運用に当たっても、御指摘のとおり、地方公共団体の意向を尊重するとともに、今回の改正に至った経緯も十分に踏まえながら、その趣旨が生かされるよう、今後適切にかつ前向きに検討してまいる所存でございます。
斉藤(鉄)委員 法務省にお伺いします。
 優秀な研究者は全部アメリカに行くと言われております。これから日本が知の部分でも先端を行くためには、世界から優秀な人材を集めなくてはいけない。しかし、その大きな障壁に、日本の非常に障壁の高い在留資格があると言われております。優秀な人材、研究者が日本に集まってくるような、今回の特区制度を使ってそういうことをする必要があると思いますけれども、この点についていかがでしょうか。
増田政府参考人 今般の特区法におきましては、入管法の特例を受ける事業として外国人研究者受け入れ促進事業を規定いたしまして、産学連携により、研究推進や産業活性化の高いポテンシャルを有する地域として地方自治体が設定した特区内に所在する研究施設等において研究活動を行おうとする外国人研究者等に対しまして、入管法の特例措置をとりたいと考えているところでございます。
 具体的には、特区におきまして研究活動を行う外国人研究者につきまして、これまで三年であった最長の在留期間を五年に延長いたしますほか、資格外活動許可を受けることなく研究活動とあわせて事業の経営活動を行うことも可能とするなどの特例措置をとることとしたいと考えております。
 これらによりまして、特区の研究推進、産業発展に資する外国人研究者の受け入れが図られるものと考えております。
斉藤(鉄)委員 いわゆる留学生もいよいよ、十万人計画といってやってきましたけれども、十万人に近づいてきました。そういう中で、特に優秀な研究者についてはそのまま日本に残って日本の産業発展のために頑張ってほしいと思うわけですが、ぜひそれができるようにしていただきたいと思います。
 大臣にお聞きするつもりでしたが、時間が終了しましたか。最後に一言。
 やはり財政的な措置というのは今回特区についても必要なのではないか。特に、教育、科学技術ということについては、やはりそれを後押しするために財政的な措置が必要だと思いますが、この点についていかがでしょうか。
鴻池国務大臣 たびたびそういう御意見、御提案をちょうだいしているわけでありますけれども、今回のこの特区構想につきましては、地域の独自の御提案によるものを可能な限り規制を外すという趣旨、目的でありますので、従来の財政的な措置につきましてはただいまのところ考えておりません。
斉藤(鉄)委員 ぜひまた次の段階で考えていただきたいと思います。
 終わります。
佐々木委員長 以上で斉藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、鮫島宗明君。
鮫島委員 何となく緊張感のない委員会ですが、定足数は足りているのでしょうか。
佐々木委員長 定足数は今のところ足りているようです。
鮫島委員 民主党の鮫島宗明ですが、特区法案、主に農業分野についてきょうは質問させていただきます。ただ、正直に申し上げて、我が民主党の農林部会で検討いたしましたが、こんなもの意味ないなというのが結論です。ですから、そういう調子になりますが、お許しください。
 そもそも、農業関係に限らず、さまざまな開発困難地域とか問題地域については既にさまざまな特例がとられていて、重立ったものだけでも、離島振興法とか沖縄振興開発特別措置法とか奄美群島振興開発特別措置法、豪雪地帯特別措置法、山村振興法、半島振興法、それからこれは特区みたいな感じで、過疎地域自立促進特別措置法とか、あとおもしろいのでは、成田の関係で、空港周辺の国の財政上の特別措置に関する法律とか、こういう地域限定してさまざまな特例措置というのはとられているわけですし、恐らく農林水産省もこれまで、特に農村整備の関係で、パイロット的、モデル的な、先行的なプロジェクトというのをさんざんやっているんだと思いますが、なぜこういう構造改革特区というのを、特に農業分野に限ってですが、農業分野で設ける必要があるのか、その必要性について、今既にこういうのがいろいろあるのに、何でこれが必要なんですかということです。
北村副大臣 ただいま鮫島委員から、なぜ特区が必要か、その前段に、それぞれ特別な法律をつくって、そして財源的な措置をしてきた、そういうものがあるのではないか、そういう指摘がございました。
 委員御承知のとおり、先ほど委員が申された離島振興法ですとか沖縄振興開発特別措置法、こういったものについては、その時代時代で法律をつくっていただいて、そしてそれに財源措置をして、いわばどちらかというと、地域からのいろいろな御要請はありましたけれども、国として、政府として、逆に、言葉が適切かどうかわかりませんが、中央から指導をしていくというのでしょうか、そういう意味で法律の整備をして、それに財源措置をしてきた。しかし、今回はそういう、ある面では、画一的というよりも、中央からのそういう指導ではなくて、それぞれの地域で、どうしても自分たちでこういうことをやってみたい、そういう自立的な発想というものを一つの目的として、その地域で、その住民の皆さんが、制度的にこういう緩和をしていただければ自分たちの力でやってみようではないか、やれるのではないか、これを一つの特区として今回の特区法に我が省も積極的に取り組んできた、こういうことでございます。
鮫島委員 ちょっと期待していた答えと違うんです。これまでも建前としては、農林水産省のさまざまな補助事業は、一応、地元からの要請があって、それで、手が挙がってきたことに対応するということではなかったかと思いますよ。それがなくて、いきなり上からということではないんだと思いますが。
 きのう、実は衆議院の方で有明法案が通りましたけれども、有明の周辺に対してさまざまな補助事業をやって補助率をかさ上げする、あれも特区みたいな話です。ですから、そういうのがたくさんあるはずですし、特に農業分野などというのはある意味では普遍性というのがなくてはいけなくて、特に特定の地域だけで差別化を図るということはこれまでの農業政策の考え方と私は矛盾するんじゃないかということが気がかりです。もちろん、一村一品みたいなのは大いにやっていただいて結構で、北海道でハスカップをつくっていただいてもいいし、小豆島のオリーブとかいろいろあるのはそれは結構ですが、何もそれは法律を変える必要もない、現行法でできる話だから、わざわざ特区を指定してやる意味がどうもわからぬというのが我が党での議論なんです。
 ただ、今まではどちらかというと補助金で対応してきて、この規制緩和というメニューを使うのが初めてというところに特徴があるということでいいんでしょうか。
北村副大臣 先生に私の真意が伝わらなかったとするならば改めて申し上げますが、今までの制度は、どちらかというと国の財源をもとに補助率のかさ上げ等々。今回の特区というのは、規制緩和によって、国からの財源は伴わない。そういう面では、先ほど申したとおり、その地域地域によってみずから自立していく、そういう面では規制を緩和をする、これが今回の特区の目的であります。
鮫島委員 そうすると、金がないから補助金というわけにいかなくて、規制緩和はただですから、ふるさと創生資金から資金を抜いたようなことというふうに考えればいいのかなと思います。
 農水省の二本出ている法律の立法趣旨が二本とも同じ書き出しになっていまして、「担い手不足、農地の遊休化が深刻で、農業内部での対応ではこれらの問題が解決できないような地域」という書き出しになっているんですが、これはほとんど日本じゅうの農村がこれに該当するんじゃないか。担い手が不足、農地の遊休化が深刻、農業内部ではこれらの問題が解決できない、これはほとんどじゃないですか、日本の農業地域。
北村副大臣 ほとんどと言われてしまうと、これは大変しっかりやっている地域もあるわけでありまして、また、担い手がしっかり担ってやっておられる町村もあるという意味では、今回の特区における、遊休地が多い、あるいは担い手がいない、そういう地域が、この株式会社の参入ということで、農業、その地域全般の経済効果を上げていく、そしてまた、日本の食糧をきちっとつくっていただけるという意味では、私は決して、今回のこの特区、我が省が考えてきたというよりも、地域から上がってきたことに対して、規制緩和をしてそれに果敢に取り組んでいこうということは、非常に前向きな考え方であるというふうに認識をしております。
鮫島委員 では、ちょっと別の聞き方をしますけれども、担い手がたっぷりいて農地の遊休化もない、非常に隆々とした農業をやっていますという地域、例えば北海道でいえばどこでしょうか。
北村副大臣 私の生まれた鶴居村なんというのは、これは酪農一本ですけれども、確かに離農をされた方もおいでになります。私が社会人として、共済の家畜診療所の獣医師として診療業務に携わったときからすれば、今の農家戸数はそれは減ってはおりますけれども、しかし、その面、農地を取得していただいて、草地あるいは飼料の作付等々でその全体が、やはり酪農、畜産というのは担い手がいないとなかなかできていかないというところがありますから、そういう面では、北海道道東地域というのは、全国の中でも担い手がいて、そして遊休地はそんなに多くない。どうしても牧草地等々に、非常に傾斜地等々で難しい、土地改良はしてみたけれども難しいというところは遊休地として残っていることはありますけれども、例えばということで挙げさせていただきました。
鮫島委員 何で私がこんな変な質問をしているかといいますと、例えば、過疎地域自立促進特別措置法とか、それから特定農山村の基盤整備の促進に関する法律とか、山村振興法とか、これの書き出しも同じなんですね。担い手不足、農地の遊休化が深刻で、農業の産業としての自立が不十分だと。だからいっぱいあるわけでして、これは特区ですから、こういう地域はめったにありませんよと。担い手不足、農地の遊休化が深刻で、農業内部での対応ではこれらの問題が解決できないような地域を特定して特例的に支援するというのは、過半数がこれでは特区でも何でもないんじゃないか、だから普通の振興策としておやりになった方がいいんじゃないかというのが基本的な考え方です。
 それで、日本の農業者の払っている所得税の総額は五百億円と言われているんですね。農林予算が三兆円。そうすると、ここで六十倍に膨らむわけです。だから非常に還元率が高い。一方で、中小企業で働いておられる方々の所得税の総額が四兆円、中小企業庁の予算が四千億、十分の一。片っ方は六十倍でこっちは十分の一だ。六百倍の還元率の格差がある。
 そういう行政が行われていることを、特にサラリーマンなり都会の人たちにやはり納得していただきながらやらないと、妙な対立が生じかねませんし、これからWTOとかいろいろな厳しい環境の中で、やはり消費者と生産者の信頼関係なり連携が大事なときに、余りいいかげんな法律でまた都市住民の税金を使おうということが通らないんじゃないか。やるならやるで農業全体が活性化するような策をとるのが王道でしょう。こんなふるさと創生資金の資金抜きみたいな話はやめてくださいというのが我が党の基本的な考え方です。
 だから、そういう意味からいうと、農業分野は農業分野で構造的な大変な問題を抱えていると思います。きょうは文部科学副大臣にも来てもらっていますのでちょっとお伺いしますけれども、日本の全国の大学に農学部というのがあるんですね。国立大学はほとんどあると思いますし、私立大学でもある。毎年農学部の卒業者数というのは何人ぐらいいるのか、そのうち農業分野に就職する人がどのぐらいのパーセントいるのか。むしろもっと数字として知りたいのは、直接農業に従事する人が全国の大学の農学部卒業者のうちどのぐらいいるのかというこの数字を、慶応大学には農学部はないと思いますが、お知らせいただけませんでしょうか。
河村副大臣 確かに慶応大学には農学部はございません。
 確かに、今農学部の卒業生がそのまま農業従事者になっていないという現況があるようでございます。私もこの数字をお聞きいたしまして、その回答を見て、これはやはりもっと何とかする必要があるんじゃないかと思いましたが、数字としては、今国立大学で卒業生が七千五百七十三人、公立大学が五百十八人、私立大学は八千百九十四人が農学関係学部だそうで、全体で一万六千二百八十五人です。農業従事者は四百六十二人、二・八四、これに林業が二十人、漁業が五十人、これは農業と言えるかですが、そういうものを加えても第一次産業が五百三十二人で三・二七、さらに食料品等製造従事者といいますか、農業関連事業を含めて二千二百十二人の一三・五八%でございます。
 ただ、これは、農学部で学んだ知識を生かして農協に入るとか、それから公務員になるとか、そういう方々もやはり農業に間接的かもしれませんが関係しておられますから、そういうデータは残念ながらございません。それから、さらに食品流通とかそういうのもあろうと思いますが、それについてきちっとした数字はございませんが、いずれにしても、その程度であるということが現実にあるわけでございます。
鮫島委員 一万六千二百八十五人で四百六十二人、三%ぐらいの数なわけですが、農学部というのはそもそも何のためにあるのか。多分、戦後だあっとできたときは、みずからも農業に従事し、かつその地域の農業の中で指導的な役割を果たす人ということがあったんではないかと思いますが、今でも農学部の存在意義の中にそういう目的はあるんでしょうか、優秀な農業者を育てるという。
河村副大臣 委員今御指摘なさいましたとおりであろうと私も思いますが、大学の農学部ということになりますと、いわゆる農学を学ぶ最高学府になるわけでございまして、そういう面では、まさに重要な役割を担っていただきたいということがあるわけでございます。
 ただ、現在の農学部の中には、まさにバイオであるとか、かなりそういう部分も出ておりまして、地球環境保全の問題に入っていくとか、かなり広い範囲に農学部の農学を学んだ方々が行かれている。あるいは、試験研究機関であるとか、それから食品加工の農業関連における技術者、研究者、こういう形で進んでおるというふうに思っておりまして、基本的には、いわゆる農学そして魅力ある農学教育をやっていくことによってまさに農業の繁栄に寄与していただきたい、そのために学んでいただいておるというふうに考えております。
鮫島委員 いや、ちょっと私の質問が悪かったのかもしれません。別の聞き方をしますが、一万六千二百八十五人から四百六十人しか行かない、その理由は何なんだ、どうしてそんなに少ないのか。つまり、それはいろいろな参入障壁があるのかもしれないし、あるいは教育目的自身に、そういうことが全然カリキュラムに入っていないということかもしれません。
 私の体験からいうと、担い手がいない、担い手がいないと全国で言っているものですから、私は農協に、では、一度でもいいから大学の就職説明会に行ったことがありますか、園芸家になってください、我が村ではこういう措置をしますとか、一度でもあるかと言ったら、全然農協はそんなことをやっていないんですよね。それは、就職説明会にも行かなきゃ来るわけないので、当たり前だと思います。
 もう十年以上前なんですが、当時日本で一番大きかったのが宮崎県の都城農協、一万四千人ぐらい組合員がいて、そこもやはり担い手がいないと騒いでいるものですから、では、私が紹介してあげるから東京農大で就職説明会をやってくれと言ったら、それをやったんですよ。そうしたら、まず就職説明会をやってくれと学部長に言ったら、大変大学の先生たちが困って、そんな話があるとは思わなかった、そういうふうに育てていない、学生に、新たに農業をやるというような教育はしていない、そんな話があるのならカリキュラムを変えなくちゃいかぬなと言っていましたが、とにかく見切り発車でやったら、学生たちが八十人来ましたよ。いずれもサラリーマンの子弟。そのうち三人が入って、今二人残って、その二人はリーダーになっています。
 だから、そんなことも何もしないで、担い手がいない、担い手がいないと騒いでいるというのはおかしいし、文部科学省の方も、農学部教育の中にやはり、そういうことを目指せ、クラーク博士じゃないけれども、農業というのはこれから考えようによっては新しい産業とも言える要素もたくさんありますから、少しそういう教育観が必要ではないかというふうに思います。
 今、大体どういうふうに世間から思われているかというと、大学には行きたいけれども頭が悪い、そのために農学部はありますというふうにも思われかねないですよ、この一万六千二百八十五人で一次産業従事者が五百人ぐらいというと。ですから、ひとつその辺は、何のために農学部があるのか、今いろいろ、バイオとか名前を変えてごまかしたりしているところもありますが、やはり何のためにあるのかというのをもう一度ちゃんと考えていただきたいと思います。
河村副大臣 いいサジェスチョンをいただいたと思いますが、やはり、農業受け入れ側もそうした努力をしていただく必要がありましょうし、いわゆる教育としても、やはり農業の重要性といいますか、そういうものをきちっととらえた教育が必要であろうと思いますし、また実際に、今現実には農場等の付設設備に行かせるとか、いわゆるインターンシップなんて言っておりますが、そういうことを積極的にやって農業の魅力というものを学生のうちに感じてもらう。
 さらに言えば、小学校、中学校段階のいわゆる総合学習の時間等もあります、体験学習もありますが、そうした中で、やはり農業というものがこういう重要な役割を担っているんだということを、そういう子供のころから教育の中にきちっと位置づけていくということも非常に大事なことではないだろうかというふうに思います。
 自然と触れ合うことのすばらしさというものをやはり小さいときにしっかり感じさせるような教育からスタートして、そして最高学府を学んだ人たちが農業現場で活躍できるような教育をやっていくということをこれからも文部科学省としても重要視していかなければならぬ、そのように思います。
鮫島委員 これは農林水産省と文部科学省でちょっとよく御検討いただきたいと思うんですが、理科系の学部の中で卒業しても資格がないというのが農学部の特徴なんですよね。薬学部を出れば薬剤師とか、医学部を出れば医者になれる。ところが、農学部は何もないんですよ。例えば農業生態系管理技術士という国家認定の資格で、地域営農計画を立てるときはその農業生態系管理技術士の判こがなければいけません、あるいは、その資格を持っていればいつでも農業に参入できる、農地取得できるというようなことでも考えないと、なかなか学問と産業とがつながらないんじゃないかという気がいたします。
 例えばサラリーマンの息子、私も実はサラリーマンの息子で農学部出身なんですが、私は若者じゃないですが、そういう若者が学校を出て就農しよう、就農したい、ロマンもあるし、私は農業をやりたいといった場合に、まず農地が買えるのか。農学部出身ということのメリットというのは、そういう新規参入する場合に何かメリットは保証されているんでしょうか。
川村政府参考人 農学部を卒業された方につきましても、もちろん農地の取得は可能でございます。農地法の規定がありまして、その要件を満たすことは必要でございますが、可能でございます。ただ、農学部の出身の方であるからといって特別に優遇するといったような規定にはなっておりません。
鮫島委員 では、別に何学部でもいいんですが、個人が農業目的で農地を取得する場合の要件というのが農地法で決められていると思いますが、短く説明してもらえますか。
川村政府参考人 農地法の規定に基づいて許可を与えるわけでございますが、農地法の考え方は、農地を適正かつ効率的に耕作する方に農地の権利取得を認める、いわゆる耕作者主義というものをとっております。
 具体的に申し上げますと、四つほどございます。一つは、農地のすべてを耕作するということがまず第一点でございます。それから二点目といたしましては、取得後において必要な農作業に常時従事するということが一つでございます。それから三番目は、その農地を効率的に利用するということで、例えば居住地からの農地への距離が、通作距離と言っておりますが、合理的であることとか、それから四点目といたしましては、やはり余り零細なものでは困りますので、取得後の経営面積が下限面積以上というような、この四つを要件としております。
鮫島委員 今言った四つ、要するに、全面使わなければいけません、使い方も効率的に利用しなければいけません、農作業に常時従事してください、それから地域ごとに定められている一定面積以上じゃなければいけませんよということだと思いますが、現実はほとんどこの要件は満たされていないのですよ。もう空洞化しているんじゃないかというふうに思います。
 例えば、では今の四つそれぞれでいいですが、農作業に常時従事という条件が満たされている農家のパーセントがどのぐらいか、農地全面を利用しているのは何%ぐらいか、効率的に利用しているのがどのぐらいか、それからちゃんと一定面積以上ということが守られているのが何%ぐらいか、それぞれこの四つについて、現況がどうなっているかという数字、わかりますか。
川村政府参考人 お答えいたします。
 農地法の規定に基づきまして、農地の権利を取得する場合には、先ほど申し上げました四つの要件というものを満たすことが必要なわけでございます。
 率直に申し上げまして、この農地法の規制は入り口での規制になっておりまして、その後、その四つの要件を満たしているかどうかというチェックをする法律的な規定にはなっておりません。したがいまして、今申し上げました四つの要件ごとの状況というものは、数字的に、統計的に把握をしておらないところでございます。ただ、効率的な利用等あるいは面積がちゃんと確保されているか等は、非常に重要なことでございますので、農業委員会等の日常活動の中での監視等はしているという実情でございます。
鮫島委員 今の四つの中で、多分一つだけはわかっているのだと思いますよ。全面使っているかということについては、耕作放棄地の面積は、農水省、二十一万ヘクタールとか出しているから、この項目だけは多分数字があるんでしょう。
 ほかについては数字がないというのは、だから実態的に農地法が空洞化していると思います。こういうことについては常時監視するといいますか、食糧検査官は八千五百人いると思いますが、何しているのかよくわかりませんけれども、このことについては常時監視する行政としての責務があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
川村政府参考人 ただいまも説明いたしましたように、農地法の規定というのは、その権利を取得する段階での規制ということになっております。
 ただ、先生御指摘のとおり、確かに農地が効率的に利用されまして、まさに究極的には食糧の自給率の向上等に資すということでなければならないというわけでございますので、やはり日ごろの農業委員会とかあるいは市町村の現場での監視なり勧告、あるいはそういうものを通じての指導ということはしておるところでございます。
鮫島委員 今の話は、三流大学みたいな話で、入り口だけきつい。入学試験だけ受かれば、あとは何しようが、監視もしなきゃほっときっ放し、月謝だけ取って教育しないみたいな話だと思いますが、北村副大臣、いかがでしょうか。
 入り口だけ規制して、あとは効率的利用していなくても、常時従事しないで耕作委託しちゃっても許されちゃう。そうすると、ある意味では、入り口と実態とをもうちょっとそろえる必要がある。つまり、このことが先ほど言った農学部出身者を初めとする農業やってみたいなという若者たちにとっての非常に強い入り口規制になっていて、ところが、実態を見てみたらこんなもの守られていない、何で新規参入者にだけきついこと言うのか。これは、ある意味では、日本の農家の八割は第二種兼業農家、主たる収入源は農業以外というのが八割ですが、新規で入ろうとすると専業農家的な入り口しかないのです。これも実態と大いに離れている。
 バブルのころ、一時、サラリーマンの田舎暮らしみたいなのがはやって、大分Iターン、脱サラ農業とかという試みがありましたが、大体三年でほとんどくたびれてみんな帰ってきちゃう。それは、新規参入者にだけまじめな農業をやることを要求する。実際、その村の実態は、いいかげんな農業で、耕作委託している人もいる。そういうことが担い手不足、農業の沈滞、新陳代謝の不足ということにもつながっているんじゃないかと思いますけれども、こういうことこそこの特区でむしろ検討すべき話で、今度の特区でも、株式会社の農地取得、農業参入については若干緩めているようですが、個人の農業参入については何も言及していないのですね。それは、副大臣はいかがお考えでしょうか。
川村政府参考人 まさに個人につきましては、先ほど申し上げました四つの要件ということでございます。
 ただ、法人につきましてはさらに厳しい要件になっておりまして、四つほどございます。法人形態につきましてもありますし、その事業の内容についても過半が農業でなければならない、また、役員につきましても過半が農業に従事しなくちゃいけない等々、さらに厳しくなっております。
 そういう法人についての要件がかなり厳格になっておりますので、その参入をよりこの特区においては緩和すべきであるということで、要件を緩和させたということでございますので、個人については従来どおりということで対応しているということでございます。
北村副大臣 鮫島委員の御提言、私も現場で、そして農業をやってきた者からすると身につまされる思いがあります。
 ただ、先生、全部ではありませんけれども、私の育ったところ、北海道の東部の方、先ほど言ったように酪農地帯の例えば浜中町という町がございます。そこではたしか十七組か八組の新規就農者があった。一番喜んでいるのは町長さんだ。つまり、新規就農で入ってくると御夫婦で入ってきますから、そうすると御家族も一緒だ、そのうちに、こんな空気のいいところなら、おじいちゃん、おばあちゃんも大阪から呼ぼうじゃないかと。それで、たしか十七組が、今もう六十人以上の方が、町の人口がふえたということで、大変そういう面では、決して農業者の二世、三世でなければ農業がやれないというわけではない、サラリーマンの方々がそれに入っていく、そのためには新規就農のセンターがあって、そこで一定の研修さえ受けて、本当にやる気があって、地域の人方が、この方とならこの町で、村で一生懸命やっていくという思いがあれば、みんな受け入れていただける、そういうのが一つ事例としてあります。
 そういう面では、確かに、入る入り口と途中も出口も一緒であるというのが法律の趣旨だとは思うんですね。ただ、私も、北村農場、北村農事法人の一員でした。そういう面では、片っ方で家畜の診療をしていて、農協の総会になると、北村直人は百五十日間働いてないじゃないか、こういう固有名詞を挙げて隣の農家の人が指摘をする。しかし、総会の中では、いやいや、そう言ったって百日近くはやっているじゃないか、朝晩乳搾りだけはやっているじゃないか、こう言ってそこを認めてもらえるということなんですね。
 ということは、これからも、新規参入される方あるいは株式会社の方々も、地域の人方とどう溶け合うかということによって、株式会社の方々が新たな面で農業の分野に入っていってその地域と一体となったやり方というのはある、それが今回のこの特区の本当にすぐれた一面である、私はこのように認識をしております。
鮫島委員 ちょっと聞いた相手が悪かった。北海道はやはりちょっと違うんですよね、ほかの地域と。明治になってから人が入っていったということもあって、非常におおらかに受け入れるというところがありますので、多分、ほかのけち臭い地域に比べると農地法の適用が緩いのですね。だから、今のような、北村副大臣のような答弁になるんでしょう。
 むしろ、入り口をきつくする思想のもとは何かというと、農地というのはそれだけの公共財だし、大事なものだから、多目的に使われては困る、安易に転用されては困るということが、多分、農業立国というような考え方から出てきたのだと思います。そこさえきちっとすれば、参入のところは、やる気のある人、技術のある人なら、個人だろうが団体だろうが株式会社だろうが、どうぞと言って本当はいいはずなんですよね。
 ところが、農水省はおもしろい理屈があって、鴻池大臣はよく御存じだと思いますが、大体、株式会社の設立目的は利益を上げることだと。ところが、農業なんというのはもともともうからない産業だ、だから、もうかることを設立目的にしている株式会社がもうからない農業に入るということは、よこしまな動機があるに違いない、だから株式会社は入れないと。
 本当は転用規制さえしっかりしておけば、株式会社の参入、役員一人が農業専門ということでもいいですが、それで、こんな特区なんということじゃなくて、普通の農業政策のメニューとして全国展開していいんじゃないかと私は思いますが、どうして全国展開しないで、特区という特例的にしか認めないのか。むしろ、転用規制さえしっかり強化すれば、参入は、もっと北海道のように大らかにしていいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
川村政府参考人 お答えいたします。
 確かに先生が御指摘のようなお考えもあるわけでございますが、ただ、農業の現場におきましては、農業生産というものは、水利用にしても土地利用にしても、地域運営で行われているということから、やはりその地域との調和が必要であるということで、投機的な取得でありますとか、地域内の農業生産に支障があるではないかという強い懸念もございまして、基本的には、そういう地域との調和が確保されるといったような仕組みをとるというもとで今回の特区の制度も認めたということでございます。
鮫島委員 地域との調和ということですが、では、今度のこの特区で、どこでもいいんですが、ある地域が株式会社の農業参入を認めたい、これを我が地域で適用したいといったときに、どういう審査をするんですか。例えばキリンビールが農業として入ってきても、この地域は調和しそうだとか、この地域は調和しそうもないとか、そんなことはどうやって判断するんですか。
川村政府参考人 地域との調和を確保するという趣旨で、今回幾つかの仕組みをとっております。
 一つは、地方公共団体と協定を締結していただくということで、その協定の中で地域の農業者との役割分担等も書いていただきます。それから、万が一いろいろな調和が図られない場合に、原状回復のしやすい貸し付け方式といったようなこともとっておりますし、また、法人の役員の一人以上は農業担当ということで、現場との調整に当たれる責任者を置くといった仕組みとしておるところでございます。
鮫島委員 ちょっとよくわからない。地域との調和が図られないケースも想定しているようですが、それはどこの会社だって、別に農業に限らず、みんな地域社会との調和というのは、会社の経営にとっても存在にとっても大変大事なわけですから、株式会社は地域との調和が図られない性質のものだ、あるいは、それが壊れやすい、地域との調和という意味で疑義があるというか、問題が生じるケースがあるというのは、別にそんなことは、個人だって、変人というか、総理もそうですが、たくさんいるわけでして、余りこういう縛りというのは私は意味がない。むしろ一般メニュー化してもいいんではないか。
 ですから、転用が心配なんでしょうから、そこを厳密にすることが大事だ。バブルのころ、随分日本の不動産会社がパリの郊外の森を買ったんです。それで、日本と同じように考えていて、もうすぐ、商業地域の外縁部分だから、恐らくしかるべき要請をすれば外してくれる、この森にリゾートホテルが建てられるんじゃないかというのを期待して、みんなへりだけだあっと日本の業者が買った。それで、申請したら、開発してここにホテルを建てたいと言ったら、あなた方、何をばかなことを言っているんだ、この森は今後百年間、森以外の形態はいけないということを承知で買ったんでしょうと言われて、結局、金だけ払って何も使えないで、今でも多分そうなっていると思いますよ。
 だから、転用規制というのはそのぐらい、やはりゾーニングはきちっとやらないと、これは本当はある意味では、自民党の歴史の悪い産物かなという気がするんですね。つまり、後援会の有力者、農協の理事とか何かのお持ちの農地を転用させてあげる、転用しやすくする、いろいろな仕掛けがありますが、転用のノウハウというのはあるんですけれども、そういうことで一気に資産が十倍になるとかということを変な意味のサービスとしてやってきた歴史があるんじゃないかと私は思います。
 例えば、私がいたつくば研究学園都市は、研究学園都市構想ができる前は、あそこは非常に空っ風が吹いて悪いところで、農地が反三十万ぐらいだったんですよね。それが、全部転用されて宅地になって売られたら、坪三十万。そこで三百倍ぐらいにバブルアップしているというか、つまり、そのぐらい転用メリットというのは非常にあるものですから、非常に日本の転用がルーズになっている、この縛りが。だから、そのことがある意味では、そっちが緩んじゃうものだから参入の方だけきつくするという、どうもバランスが悪いなという気がします。
 特区の話に戻りますが、ですから、株式会社の農業参入というのは全国一律で認めるべきだし、ただし、その場合は、転用規制は今より強化する、そのかわり参入は緩めるという方が農業振興上いいんじゃないか、地域限定の特区とする必要はないというのが私どもの考えですが、百歩譲って特区とした場合に、地域の連続性というのは、これは必要条件なんでしょうか。
 それから、広がりですね。例えば北海道全体というようなことも特区の対象になる、あるいは、二つの県、和歌山と奈良と一緒にやりたいとか、二つの県が一緒ということも許されるのか。飛び地でもよいか。例えば北海道の牧場だけを対象にしたような特区という考え方、そういう飛び地でもいいのかというのと、それから広さに上限があるのか。
 それから三番目が、認定件数の上限というのがあるのか。例えば市民農園法にしても、三十件程度なら特区と言えるけれども、三百になったらこれは特例とは言えないとか、こういう数の限定というのがあるのか。この三つについての条件をお伺いしたいんです。
中城政府参考人 農業に限らず、全体のことについて申し上げますが、まずエリアの連続性につきましては、構造改革特区が飛び地になっている場合も可能ということでございまして、その地域の活性化に向けて共通の目的とか事業等によって計画を作成する場合にそういったケースもあるというふうに考えております。
 また、エリアの広さでございますけれども、構造改革特区の範囲は市町村の範囲とすることを基本とは考えておりますけれども、計画の内容によってはそれを超える場合も想定されるわけでございまして、制度上、特区の地域の範囲というものに制限は考えておりません。
 それから最後に、認定の件数でございますが、これについてはあらかじめ数を限って認定するものではございません。
鮫島委員 わかりました。数を限って限定するものではない、広さも別に、市町村が基本だけれども、それ以上を妨げるものではないということがわかりました。
 そもそも、特区自身が、いきなり全国展開するにはややリスクが多いとかどういう問題が起きるかわからないから、まず特定の地域で先行的、試行的に走らせて、数年後に、もしそれがうまくいけば全国展開していくというのがこの法律の趣旨だと思いますが、鴻池大臣、そういう趣旨でよろしいんでしょうか。
鴻池国務大臣 まさにそのとおりでございます。
鮫島委員 そうすると、農業の場合も、株式会社の農業参入をまず幾つかの地域で認める、数年様子を見て、これで特段の支障はないなということだったら全国メニューにする。日本全国、株式会社の農業参入、特区で既に経験済みですからいいですよというふうに、そこも当然そうなるというふうに考えてよろしいんでしょうか。
北村副大臣 鴻池大臣がおっしゃったことに尽きると思います。我が省として将来の対応を予断することではありませんけれども、この特区の評価体制のもとできちっと検証されていくということがあると思いますので、そのように考えております。
鮫島委員 ぜひ、その方向でやっていただきたいと思います。
 多分、株式会社の農業参入を幾つかの特区で認めると、うまくいったところもあるけれども失敗したところもあるという結果になるに決まっているわけです。
 私はずっとバイオテクノロジーの分野で研究開発の仕事をしていましたが、一九八五年が日本のバイオ元年と言われて、わっといろいろな企業が手を挙げてバイオを始めたんです。いろいろな人が来ましたけれども、新日鉄もそう、日立造船もそう、キリンビールもサッポロビールも、いろいろな企業がバイオ事業部を立ち上げてばっとやり始めたけれども、十年たって残ったのは、結局バイオと関係のある企業だけが残ったんです。だから、新日鉄とか日立造船とか、みんなそういうところは、結局企業理念、企業風土と合わないんですね。ですから、株式会社の農業参入を認めた場合に、生物系の産業なり食品産業に関係していたところは恐らくうまくいくでしょう。だけれども、自動車会社とか全然関係ないところ、私はトヨタのベトナムのプロジェクトも失敗すると思いますが、そういう風土を持っていないところはうまくいかないはずですよ。
 ですから、数年間やってみてそういうことがわかったら、そういう食品関係なりバイオ関係、生物系の企業はよろしいと、せめてそういうメニューに進化するようにこの特区の精神を生かしていただければ、あえて反対はいたしません。
 以上で質問を終わります。
佐々木委員長 以上で鮫島君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 株式会社参入問題と構造改革特区の問題について最初に伺いたいと思います。
 先日の終わりの方の続きから始まります。医療福祉の分野での株式会社参入についてですけれども、医療法七条五項で、医療法人に営利を目的とした法人の参入を禁止しておりますが、その理念はどういうところにあるのか、これは、最初に政府参考人の方からお伺いしたいと思います。
篠崎政府参考人 医療法の第七条第五項では、先生御指摘のように、営利を目的として病院などを開設しようとする者に対しましては、都道府県知事は開設の許可を与えないことができるという規定がございまして、これは、そもそも、生命や身体にかかわる医療は営利を目的とすべきではない、そういう基本的な考えによるものでございます。
    〔委員長退席、細野委員長代理着席〕
吉井委員 それは、七月二十三日の総合規制改革会議の中間取りまとめを見ておりましても、厚生労働省の意見で、利益の最大化を目的として医療提供をゆがめやすい構造になるというのが株式会社参入についての見解であったというふうに思います。これは、商法の方では、会社というのは商行為をなすを業とする目的を持って設立された社団であり、そして、営利を目的とする社団については必ずしも商行為をやらなくてもこれを会社とみなすと定められているのに対して、医療法の五十四条ですと、医療法人は剰余金の配当はしてはならないということで、要するに営利追求を目的とするものであってはならないということで、そこはきちんとしているというふうに思うんですが、この総合規制改革会議で、医療分野に株式会社参入を認めない積極的な理由は存在しないということも言っていますね。
 その理由について、現行医療法人でも金融機関から借入返済圧力などを受けて増収行動をとる場合があるとか、あるいは、米国では株式会社は非営利法人より医療の質の向上に寄与していないとの主張については、非営利法人が納税面や資金調達面で極めて有利な制度下に置かれていることに原因があるというふうに改革会議の方は言っているわけですが、厚労省の方は、この規制改革会議の主張については、この点についてどういう見解を持っているか伺います。
篠崎政府参考人 私ども厚生労働省の考え方を申し上げますと、現在の我が国の医療制度につきましては、これは、平均寿命あるいは健康寿命をとりましても、WHOからも世界一あるいは世界トップレベルという評価をいただいておるわけでございます。
 こういう状況の中で、株式会社が医療に参入するということについての考えを申し上げますと、まず、株式会社は、先生ただいま御指摘になりましたように、できる限り多くの利潤を追求することをその本質としておりますので、これを実現するためには経費の減少、人件費の削減などでございましょうか、あるいは売り上げの増大による利益確保、ともすれば過剰診療など、そういうインセンティブが働きまして適正な医療を提供できなくなるおそれがあるのではないかということが一つございます。また、その営利動機を持つ株式会社が収益性の高い医療分野に集中することによりまして医療費の高騰を招きかねないのではないか。
 さらには、我が国では、全国的に見ますと必要病床の整備が既になされておりまして、特に、現在、病院数、約九千三百余りございますが、そのうち、設置主体の八割は既に民間病院でございますし、また、ベッド数の七割も民間病床が占めておるというような状況でございますれば、私どもとしては、これ以上ベッド数がふえるというのはいかがなものかというようなところが考え方でございます。
 ただ、中間取りまとめで御指摘をいただいておりますが、医業経営の近代化、効率化については、これはやはり必要なことであるというような認識を持っております。ただ、それには、株式会社の参入による資本や経営面での競争というものによって実現するのではなくて、むしろ、医療法人制度の改革を初めといたしまして、広告規制の大幅な緩和などによりまして、患者の選択を通じて医療機関の質の競争、そういうような環境を整備することによってそういう近代化、効率化というものも実現すべきなのではないか、このように考えておるわけでございます。
吉井委員 改革会議の中間取りまとめに対する意見の中でも今言われた趣旨のことを、それから、アメリカの営利法人の問題については、米国営利法人経営の病院については、高配当を求めて利益の上がる患者のみを選択したり、組織的な不正請求を行う等、地域による医療供給体制をゆがめた事例が報告をされている。医療機関は地域に密着し永続的に活動することを前提として、利益を求め、目的達成で事業廃止の可能性もある株式会社の論理となじまないということを指摘しておられることなど、私は、これは非常に正当な指摘だというふうに読ませていただきました。
 ところで、アメリカの通商代表部からたしか十月二十三日ごろでしたか、それから在日米国商工会議所から十一月一日だったと思うんですが、医療法人経営への株式会社参入の実現を求める提言なり要望が出されていたと思うんですが、少し御説明いただきたいと思います。
篠崎政府参考人 その要望のことでなく、アメリカの株式会社病院の実情について等の御質問だと思いまして、そちらをちょっと用意してきたんですが、よろしいでしょうか。(吉井委員「はい」と呼ぶ)
 確かについせんだって、そういう要望が参ったようでございますけれども、アメリカの医療制度につきまして、先生の御指摘の株式会社病院がどういう状況になっているかというのを若干御紹介させていただきます。
 これは一九九七年、約五年ほど前の時点でのことでございますけれども、ハーバード大学の助教授の李博士という方の、「市場原理に揺れるアメリカの医療」というテーマでの調査報告でございます。
 アメリカで株式会社を運営しております大手のチェーンの例でございますが、初め二つの病院を買収して、七年間で三百三十二の病院の規模になりまして、従業員二十四万人、従業員数からすれば全米十位の大企業でございまして、もちろん世界一の営利医療企業ということになるわけでございます。
 そこでのことでございますけれども、各病院の経営責任者に対して営業ノルマを課しておる。医師への病院所有権の分配によって入院患者の獲得をするようにしておる。精神科医療などの採算性の悪い部門を切り捨てるということをしておる。それから看護師などのスタッフの人員の大幅な削減をしている。メディケアという公的な保険がございますが、患者の実際の病状よりも払い戻し額の高い病名の方に組織的な不正請求をした疑いがあるというようなことで調べが入っているようでございますが、そういうような弊害も生じているという事例があるというふうに承知をいたしております。
吉井委員 アメリカの営利法人の参入による問題の報告も今聞かせていただいたんですが、政府の方に十月に、通商代表部から、小泉首相直轄の協議会を新たに設置し、外国企業も交える形で医療制度改革についての議論を行うようという要望が出されているようでありますし、在日米国商工会議所の方からは、医療法人経営への株式会社参入の実現をという提言をまとめて、求めてきているようであります。
 先週、大店法廃止に至る経過のとき、アメリカは、ヨーロッパについては日本以上にきちんとした規制のルールをつくっていたんですが、しかし、大型店の無秩序な進出とか撤退についてのヨーロッパの規制を撤廃しろという要求は出していなかったというのが、私がかつて衆議院本会議でも質問いたしましたときに、当時小渕外務大臣でしたが、ヨーロッパに対してはそういう要求はしていないと。しかし、日本に対してはしてきていたんですね。今回もまた医療分野への株式会社参入ということをアメリカから言ってきているわけですが、外圧という形で医療の分野にまで株式会社が入っていく、こういうことはやはり考えてはならないと思うんですが、これは大臣にちょっと聞いておきたいと思います。
鴻池国務大臣 先ほど来の御議論で、医療の分野に株式会社が参入をするかどうかということは、私は大臣就任以来、これは特区の構想として、一カ所、株式会社をもって医療分野に参入することは決して悪いことではない、逆にメリットとしては、患者の選択を通じて、医療機関は質を争う環境になるんではないか、あるいは、資金調達が多様化し、ゆえに一つは高級機材あるいは効率的な経営というものが可能ではないかという観点から、賛成の意見を強く申しておるところでございます。
 今の外国人参入はいかがかという御質問に対しましては、まずは、特区の構想に対して、株式会社が参入したいという優秀な医療機関の提案を継続して進めさせていただきたい、あるいは厚生労働省と調整を図っていきたい、このように考えておるところでございますので、外国人の参入については、ただいまのところ念頭にはございません。
    〔細野委員長代理退席、委員長着席〕
吉井委員 もともと日本の医療機関は医療法人ですから、ちゃんと適正な手続をとって病院経営ができるわけですから、今最後におっしゃった参入の問題は、もともと関係ない話なんですね。要するに、株式会社が、営利を追求するところが医療の分野に参入することについての問題ですから、そういう分野で、どこかのところでも一点突破して全面展開という発想というのはやはりよくありませんから、特に外国からの圧力によって、こういう医療分野への株式会社の参入という方向へ日本の医療政策全体がゆがめられるようなことがあってはならないので、これはそういう外圧というものをまず排除して考えるということでやってもらわぬといかぬと思うんです。
 それから、効率的云々のお話がありましたが、実は、ニュージーランドで、九〇年代のちょうど前半ぐらいに、随分規制緩和万能の話がどんどん国会でも議論になったころですが、ニュージーランドの規制改革の成功とかいろいろ言われました。
 あのニュージーランドは、当時、効率化の話で行革を進めたわけです、規制緩和をやったわけですが、この行革前は病院はほとんど国有であったのが、行革、規制改革で市場原理を導入した結果、いかに利益を上げるかということから、手術を行う場合には、安く請け負ってくれる下請の手術人を探すなども行われるようになってきたという問題なども指摘されています。また、地方の小さな病院は閉鎖されてしまって、人々は何百キロも離れた病院に通わなければならなくなった例もあり、お金のない人は、手術を受けるのに何年も待たされなければならない。すべての面で、お金のない人は大変な思いになってきたというのがニュージーランドの例としても紹介されています。
 そこで、次に、特養老人ホームへの株式会社参入についても伺っておきます。
 規制緩和の進んでいるアメリカでは、有料のナーシングホームという老人ホームがありますが、その介護の内容というのはすべてが金、金というのが実態で、例えば、お年寄りに化粧をしてあげるにも料金を取る。ですから、言ってみれば、サービスに松か竹か梅かを相手の所得や資力に応じて選ばせる、何でも金次第ということになってくる。病気になれば系列のチェーン病院に入院させるという状況が生まれておりますが、それは結局、利潤追求、株主利益の保証という株式会社の経営からすれば当然の話なんですね。
 そこで、政府参考人の方に最初に伺っておきますが、特養についての株式会社の全面参入についてはどういうふうに考えておられるかを伺いたいと思います。
中村政府参考人 ただいま先生の方からアメリカのナーシングホームのお話がございました。確かに、アメリカのナーシングホームは、日本の特別養護老人ホームとちょっと違いまして、むしろ医療施設的なものと分類されると思いますが、三分の二以上いわゆる営利法人が運営しているということで、アメリカの医療問題の一つとしてナーシングホームが非常に問題だということはかねて指摘されており、アメリカ医療の恥部だと言う人もいると思いますので、そういった意味で、医療における株式会社参入問題を考える場合に、アメリカのナーシングホームのあり方ということは考える必要があると思います。
 そこで、特別養護老人ホームについての株式会社参入問題について、私ども厚生労働省の基本的な考え方は、先ほど医療とお話がありましたけれども、株式会社の目的と社会福祉事業であります介護というものと本当に整合性がとれるのかという点はかなり懸念しておりまして、かねてから、株式会社に対しましては、特別養護老人ホームを設置する場合にも、憲法上の制約もあり、施設整備費を交付できないという事情にあること、それから、既に現行制度でも、有料老人ホーム、これは株式会社で運営できるわけですが、有料老人ホームとして参入されることは認められており、基準に合った有料老人ホーム、きちんとした介護をされている有料老人ホームについては、現に公的介護保険からも介護報酬を受け取ることが可能になっているということから、私どもは、資金調達力のある株式会社には、特別養護老人ホームではなく、こういった有料老人ホームとか民間の創意工夫が生かせる分野に参入を期待しているということを申し上げてきたところでございます。
 そういった意味で、私ども、今回、特区で、利用者の保護に配慮し、公設民営またはPFIという、自治体が十分関与できる方式に限ってこれを実験的に認めることとしたものでありますので、特別養護老人ホーム経営への株式会社の全面的な参入というお話でございましたけれども、今回の特例措置の効果、影響等を評価した上で、今後検討していくべき課題と考えております。
吉井委員 私、先ほど大臣のおっしゃった、質のいい医療機関をいろいろ競争しながらつくるとか、その質のいい医療機関というのは、これは大事なことだと思っているんです。これは株式会社の参入の話とは全然違う次元の話としまして、別に株式会社じゃなくても、参入しなくていけるわけなんです。
 実際、実は、これも中間取りまとめの中での厚労省意見を見ていまして、過去に、営利を目的に多数の患者に健康被害を生じさせ社会的非難を受けた病院の事例、あるいは、株式会社が衛生規則に違反する事件が最近再三にわたり報道されていること等を踏まえれば、生命、健康にかかわる医療分野においては、営利重視の結果生ずる患者の事故の未然防止の考え方に特段の配慮を払うべきであるという意見、これは非常に重要だと思っていますのは、実は、医療法人の場合だからこういうことがないということでもなくて、私も過去に随分いろいろ経験しました。
 例えば、六〇年代、七〇年代のころに急成長した民間病院の中には、こういう事例もありました。余り地域を挙げますと、ああ、あの病院かとなりますから、ちょっとおいておきますけれども、評判の悪い救急病院がありました。評判が悪いものですから、入院患者はすぐ別な病院へ出ていくわけですね、転院していくわけですよ。そうすると、いつも空きベッドがあるものですから、救急車は一番行きやすい病院になるんですね。何しろ空きベッドがありますから、救急患者を運んでも大丈夫なわけですね。受け入れ可能だから行くんですが、この救急病院の方は、救急患者で一番もうかる三日間はおっていてもらえるわけですね。評判が悪いから、三日もすれば、痛みが少し軽くなったらいい病院へ転退院していってくれますと、病院の方は回転が非常によくなるわけですね。
 ですから、これは非常に都合のいいということにはなるわけで、だから、株式会社としての企業利益第一の追求ということになりますと、結局、採算のいい、このような方向の病院が株価が高くて配当が高いという病院で評価されるようになってくると、一方では、地域の住民が必要とする医療機関が経営困難に追い込まれるという問題があります。
 医療、福祉への株式会社参入というのは、国民の医療や福祉は金次第の社会にほうり込むだけじゃなしに、採算のとれる病院は確かに生まれるが、非常に高採算性のところですね、一方、地方では精神科や小児科など、採算のとりにくい病院は姿を消す、こういう問題も出てきます。
 医療法第一条の「目的」では、「医療を提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする。」ということで、効率よくもうけることや企業利益第一が主たる目的とならないよう、医療法人という形をとっていると思うわけです。
 そこで、こういうふうな、一方では高採算性の病院、しかしその一方で、特に地方では精神科とか小児科など、採算のとりにくい病院の方が姿を消していくということになりますと、その状況というのは、憲法二十五条で規定している、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」二項の「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」という、この国の責務をあいまいにしてしまうということになってくると思うのですね。
 ですから、やはり大臣は、医療分野への株式会社参入について、先ほどそういう話はありましたが、本来のあり方としてこの分野は考えないということ、特区の話など、医療の分野への株式会社参入という考えは持たないということをきちっとされることが必要だと思うんです。これは大臣に伺っておきます。
鴻池国務大臣 委員のただいまのお説、お説として承っておりますけれども、私とというか、この特区構想の本来の意味、目的とただいまの御主張とは随分離れておるところがあると思います。
 ただいまの御主張を聞いておりましたら、全国津々浦々まで、北海道から沖縄の八重山諸島まで株式会社の病院ができる、そういう発想のもとに御意見が出ておると思います。
 そうではありません。そうではないんです。最先端医療でもって、一カ所でもそういう株式会社参入をさせて、そして、例えば東京の丸の内でそれを仕上げていく。そうすれば、先ほども随分勘違いの御反対のお話がございましたけれども、この東京都内に、この日本経済の中にいかに外国人がおられるか、その外国人の診療一つとっても大変便利のいいことになる。全国津々浦々の話じゃないんです。一カ所だ。まず先行して、一遍やってみようじゃないか。これがなぜ、全国津々浦々、日本の医療制度をひっくり返すような話になるかということを逆に私はお尋ねしたいと思います。
吉井委員 高度最先端医療というのは、株式会社じゃなくてできるんです、医療法人で。特に、もともと、高度専門医療とかそういう分野で採算はとりにくいけれども国民にとって必要な分野というのは、その分野を国立病院が引き受けていくとか公立病院が引き受けていくとかやってきたわけでして、ですから、高度専門あるいは先端医療を開くから株式会社というのは、全くそれは当たらない話であります。そして、大事なことは、外国人の方が来られるから株式会社の病院、これは全然話が違うわけですから、日本の病院できちんとそういう医療機関があれば行けるわけですから。
 そして、私、さっき言いましたのは、アメリカの通商代表部にしても、そういう要望を日本の政府に持ってきているという話をしていることであって、これはホームページその他にも出ておりますから、私はそれを見て言っていますからね。
 ですから、そういう全国一律の話とは別にという話があるけれども、そうじゃなくて、一点突破してこの分野での病院経営への株式会社参入という全面展開を図るような、こういう特区のやり方というのはやめるべきだということを申し上げまして、厚生労働省の方、何か御都合がおありとかいうことですから、次のテーマに移りますから、退室していただいて結構です。
 次に、構造改革特区で農業、農村の危機を救うことができるのかという、このテーマに入っていきたいと思います。
 農業特区として、株式会社の農地の権利取得に道を開く農地法の規制緩和を行おうとしていることについて伺います。
 地方自治体から農業への株式会社参入という要望が出されるのは、これは、高齢化、担い手不足などで耕作放棄に歯どめがかからず、地域農業の崩壊を何とかしたいという思いから、地域農業維持のために特区に活路を見出そうと考えておられる、そういう自治体の気持ちの方は私はよくわかるんです。
 実際、生産者が耕作できずに市町村農業公社が借り受けた農地のうち、貸すことのできない未貸付地、これは二〇〇〇年に四百二十ヘクタールに及び、この五年間で倍増しています。その結果、自治体の財政負担がかなり重くなってきているという問題がありますが、深刻な耕作放棄地は企業が農地の権利を取得できるという今度の特区法で解消できるのかどうか、これは農水委員会での議論もあるようですから、政府参考人の方に伺っておきたいと思います。
川村政府参考人 今回、農業関係での特区の一つに農業生産法人以外の株式会社等の法人の農業参入を可能とする構造改革特区を設けておるところでございます。
 この対象となります特区の地域は、耕作放棄地や低利用農地が地区の相当程度存在すると認められる地域を対象としておりまして、特区において、こういう地域に株式会社等、その形態を問いませんが、入ることによって、地区内の農地を活用して農業経営をしていただいて、少しでもこの遊休農地等の解消につながるということを期待しておるところでございます。
吉井委員 期待しているというお話はあったんですが、これは参議院の農水委員会の議論で御存じのように、大島農水大臣が、この企業の参入、これは、耕作放棄地に入っていくこと、耕作放棄地を何とかしようということの広い目的の一つなんだが、とてもじゃないが、この耕作放棄地の解消というのは困難だということを農水大臣自身が認めておられます。だから、大臣も、耕作放棄地の解消に期待は持てないということを農水委員会で認めておりましたが、耕作放棄地の現状そのものは非常に深刻だと思っているんです。
 二〇〇〇年の耕作放棄地は二十一万ヘクタール、それが、九五年の十六万ヘクタールから比べると、三割さらにふえているんですね。さらに、この期間の不作付地は十五万ヘクタールから二十八万ヘクタールへと激増しているわけですから、この問題の解消が期待できないというのであれば、これは何のための農業特区つくっての規制緩和なのか、こういうことになってこようかと思うんですが、これは、現場の方で検討してはる農水省の方で、農業特区つくって耕作放棄地の解消は期待できないんだったら、何のための規制緩和なのか、その問題についてはどんな検討をしてはるんですか。
川村政府参考人 お答えいたします。
 ただいま耕作放棄地の状況について先生の方から御指摘ございました。確かに、全国二十一万ヘクタール、平成十二年の農業センサスでそうなっております。これは増加をしていることも御指摘のとおりでございます。
 ただ、その耕作放棄地の発生の要因等は、高齢化、労働力の不足、また、地域に担い手がいないとの、アンケートにおきまして高い回答となっております。特区も、特区だけでこういった全国各地の耕作放棄地が解消するものではもちろんございませんけれども、農業外のノウハウなりいろいろな資本、そういうものを活用して農業経営が展開されるということで、これは非常に有効な方策であるというふうに考えておるところでございます。
吉井委員 北海道の千歳市ですが、オムロンがトマト生産に参入しましたが、採算が合わないからということで二年八カ月で撤退ですね。こだわり野菜の日本たばこ、JTも、来年六月でアグリビジネスから撤退と。ですから、利潤追求が至上命題の株式会社が参入すればうまくいくという証明はないわけですね。それどころか、これらの企業は、優良農地になるところを大体、大量、まとめて活用するわけですから、そこが撤退すると、企業に集中した広大な農地は一層、丸ごと荒廃してしまう、こういう問題が出てくると思うんです。
 耕作放棄地の解消に役立たないし、市町村農業公社の未貸付地の八割に当たる三百四十五ヘクタールが中山間地であるというこの事実を見れば、そもそも耕作継続は困難になっている農地というのは、大体飛び地や条件不利な農地が多いわけですから、このような悪条件の農地を利益最優先の企業が借りないのは当たり前の話じゃないかと思うんですね。
 これは大臣、どうですか。普通に考えたら、営利追求の企業は条件の悪いところを借りるということにはなかなかならないと思うんですよ。大臣はどんなふうにお考えになりますか。
鴻池国務大臣 この特区構想は、何度も申し上げておりますように、地域のニーズ、地方公共団体が一生懸命考えて、そして、こういうことをしていただければとにかく頑張るぞ、とにかく活性化が生まれるかもしれぬという大いなる期待を持ってこの構想の基本といたしているところであります。
 今回の、農業に株式会社が参入するという件に関しましても、私どもの方からこうしてはどうかと言ったことは一切ございません。逆に、地方公共団体あるいは地域の懸命の思考の後、この特区構想について、株式会社が農業参入をしたいという御希望にどのようにこたえられるか、農水省も知恵を出し、汗を出しながら考えていただいた結果でございます。
吉井委員 しかし、地元の方から、例えば北海道の場合ですと投機対象で苦い経験を持っている。原野商法の切り売りですね。そういう問題など、さまざまな指摘もあって、これはみんなが期待を持ってということじゃありませんから。期待する方もおられるだろうし、期待する背景には、とことん本当に日本の農業がもう大変なところへ追い込まれてきたから、ちょっとでもという期待があるという、その気持ちは私もよくわかっているんです。しかし、同時に、かつての原野商法の例だとか、いろいろなことがありますから、本当にそれでいいのかという疑問や不安を持っておる方もおられるので、だからこそ、今きちんと解明をしていくことが必要だというふうに思います。
 もうけを優先する企業が借りたい農地というのは、結局、平地で一定規模まとまっているなど、耕作条件がよくて経済性を追求できる農地だと思うんですね。そうなると、地域の優良農地がねらわれるということになると思うんです。
 これは政府参考人に伺いますが、そのことに対する何か歯どめはかかることになるんですか。
川村政府参考人 お答えいたします。
 今回の農業関係の特区を検討するに当たりましては、さまざまな御意見がございまして、先生の御指摘のような事項についての懸念する声も当然あったわけでございます。そういう懸念も十分踏まえまして、適正な農地利用を確保するための仕組みというものを考えたところでございます。
 その第一点といたしましては、地域の農政の主体であります地方公共団体でありますとか、あるいは担い手への農地集積等の農地保有の合理化を行っております農地保有合理化法人、こういうものを主体とするというのがまず一点でございます。
 それから二点目は、参入される企業とこうした公的主体との間で協定を結んでいただきまして、そこで行われる農業でありますとか対象地でありますとか、それからまた、農業の場合は、防除にしましても地域ぐるみで行われている、また水利用も、上流、下流の関係等、なかなか難しいものがございますので、そういうものを円滑にやるための取り決めでありますとか合意といったようなものをその協定の中に盛り込んでいただく、また、企業の農業担当の責任者も一人以上は置いていただくといったようなことで、今申し上げましたような、大きくは三点の中で適正な農地利用をしていただくということでございます。
 また、方式といたしましても、貸し付けのみを認めるということでございますので、不適正な利用等がございますれば契約を解除するということで原状回復もできるということでの担保措置をとったところでございます。
吉井委員 たくさんしゃべっていただいたんだけれども、要するに、地方公共団体と農地合理化法人、貸し付けを受け付ける側がそこですから、結局、地方にお任せしましょうということで、法的な歯どめというのはないわけですよ。農業に企業が参入した場合、その影響というのは特区内だけにとどまらない激しい価格競争が生まれてきます。
 例えば、株式会社カゴメは、和歌山県で四十ヘクタールの土地を借り受けて、アジア最大の二十ヘクタールのトマト温室二棟をつくる計画を進めていますが、カゴメはこの計画実現により、十カ月連続収穫が可能、生食用トマトをフル稼働時には年間六千トン生産、三十億円の売り上げを目指しています。カゴメは既に、茨城、広島、高知などで大型ガラス温室による生鮮トマト契約栽培を行っており、カゴメの戦略目標というのは、生鮮トマトの年間売り上げ百億円、施設トマトのナショナルブランドを確立することだとされています。目標が達成されると、日本国内の粗生産額千九百億円の五%以上に相当するトマトをカゴメ一社が生産するということになってきて、農業生産者は、このような大規模で効率を優先した企業経営との価格競争が強いられることになります。
 そうなったときに、家族経営の維持が可能なんだろうか、家族経営の維持というのは困難になってくることは明白じゃないかと思うんですが、この点、農水省の方はどういうふうに見ているんですか。
川村政府参考人 昨年の三月に農地法の改正をいたしまして、一部株式会社形態の参入も認められるようになっております。既に二十七社ほどが参入をされております。その実態を見ますと、食品産業とか、農業に関連する方々ももちろん参入されておりますし、それ以外の方も参入されておりますが、現状のところでは非常に円滑な参入ができております。
 確かに、今申されたように、大企業の参入も今回のこの特区の関係では可能でございますが、先ほど言いましたような仕組みのもとで、十分その地域との調和を確保するという仕組みのもとで認めるものでございますので、その点の歯どめは十分にきくというふうに考えております。
吉井委員 ちょっと大臣に伺っておきたいんですけれども、農業に参入した今のカゴメのような例、物すごく売り上げも伸ばした、利益も上げた、そこは確かによくもうかったと。しかし、他方で既存の家族農業が破綻に追い込まれた場合、それは特区として見た場合に成功と見るのか、失敗と見るのか。一体その成功、失敗はだれが判断するのかということが出てこようかと思うんですが、この点について大臣にちょっと伺っておきたいと思います。
鴻池国務大臣 私はカゴメの関係者でもありませんし、ただいまカゴメのすごさというのを聞かせてもらって初めて大したものだなと思っております。しかし、共産主義社会と違いまして、自由主義社会というのは自由主義経済のもとで動いておるところでありますので、その企業が成功することに足を引っ張る必要もないというふうに思っております。
 さて、ただいまのお尋ねの、トマトをつくっている生産者農家がそれによってつぶれるとどうするのか、それは特区の成功か失敗か、こういうお尋ねでございますが、これは全く次元の違う話でございまして、特区そしてその地域が活性化してくれば大変成功であると思いますし、そのトマト一筋につくっておられる農家というのは、それは、ジュースにしないでその実のまま食べられる人々にとって大変すばらしい収穫であるというふうに思っております。
吉井委員 共産主義云々の話はありますが、大体、二十世紀にも、これまでこの地上に共産主義社会なんてありませんからね。存在してないんです。旧ソ連で、一九一七年からしばらくの間社会主義を目指した時代はあっても、そのソ連は、スターリン以降完全な官僚独裁の体制で、あれは共産主義でもなければ社会主義でもないわけですから、そういうものをイメージしておられたら全然当てはまらないわけで、それだけ申し上げておきます。
 農地の対策というのであれば、農地のとりあえずの受け手になって農地荒廃を防いでいる市町村が出資している農地保有合理化法人は、農地の中間保有が長期化しており、今随分大変になってきていますから、やはり自治体からの助成がままならず解散という事態も発生している。こうしたところへの財政援助をやはり考えていくということが、これは日本の農政を考えた上で必要なんじゃないか。
 カゴメがおいしいトマトをつくったからというのも、それはそれでいいでしょう。しかし、本来、農薬を使わないで有機で、そして文字どおりおいしいトマトができれば一番安全でいいわけですし、薬品をどんどん薬液にして流してつくるのがどうかという問題もやはりあるわけで、ですから、問題は、そのできたトマトの云々もさることながら、片方は大規模化して商売はようもうかった、しかしその中で農家経営が破綻に追い込まれたというふうなことになっては、やはりそれは成功とみなすことはできないし、まして、そういう中で今苦しんでいる地方自治体の農地対策ということを本当に考えていくんだったら、今言いましたような財政的な支援をどうするのかということを、これは農水省としてもやはり私は真剣に考えなければいけない課題だと思っているんですが、この点はどういうふうに考えてはるんですか。
川村政府参考人 お答え申し上げます。
 農地保有合理化法人というのは、都道府県がやっている場合と、それから市町村がやっている場合とがございます。
 先生の御指摘では、市町村が大分農地を抱えているような御指摘がございましたが、私どもの調査によりますと、百四十三の市町村公社がございますが、そのうち七公社が四十ヘクタールを保有しているという実態はございますが、その保有期間もまだ五年未満ということで、余り長期でもないというふうに伺っておりますし、現時点で具体的な要望等は出ておりません。
吉井委員 現時点の話は私もわかって聞いていますけれども、しかし、財政的にはなかなか大変なことになってきますから、これは真剣によく、この財政援助をどう進めるか。要するに、農地対策という角度から考えるならば、やはりこれは耕作して農地が守られるわけであり、環境も守られ、農地の荒廃を防いでいるわけですから。そのことに一生懸命市町村が出資して頑張っているんだけれども、なかなか大変だ、その受け手が出てこないということなどについては、受け手が安心して出てくるような農業環境をつくらなければいけないわけで、その間の支援も含めて真剣に考えていただきたいというふうに思います。
 耕作放棄地をふやして農業を疲弊させた原因は何なんだろうか、やはりそこを大きな流れの中で見ておくことが大事だと思うんですね。これは、農産物輸入の自由化があり、価格支持政策の廃止による農産物価格の暴落がありましたし、減反政策の押しつけもありました。さらに、今日ですと、大商社などの開発輸入で農業経営の基盤が破壊されてきているという問題もあります。さらに、農業規模の拡大など、市場原理の徹底と効率化などいわゆる新政策を進めたわけですが、しかし、これも破綻して、農村からは農業後継者が大きな借金を背負って締め出されていった、そういう状況をつくったという問題もあります。
 だから、やはり、これまでの政府が進めてきた農業政策のどこに誤りがあったかとか、誤りと認めはらへんにしても、どこに問題があったのか、そこをきちんと根本原因にさかのぼって、今度はその根本原因をどう取り除いて、日本の農業をヨーロッパの農業のように、ヨーロッパでも一時的には自給率がどんと落ち込んでも、やはり国内での自給率を高めていった、そういう方向をどう実現していくのかということを今本当に真剣に考えなきゃいけないときだと思うんです。
 株式会社の農地の権利取得というのは、こうしたこれまでやってきたことの、破綻した路線の拡大ということにつながっていく問題を持っています。ですから、これまでの農業政策の根本的な誤りはやはり反省してそれを正すということ、そのことなしに農村地域の活性化がどうして実現できるのか、私は今こそ農業の分野ではそのことを本当に真剣に考えなきゃいけないというふうに思うわけです。
 小泉首相はさきの本会議で、農地法の根幹である耕作者主義を否定するものではないと答弁されました。農地法第一条に「農地はその耕作者みずからが所有する」と規定して、耕作者主義の考え方を示しています。この規定というのは、戦後、農地改革の成果を反映したもので、戦前は地主、今度は大企業が大土地所有者になるということではやはり問題があるわけで、こうした耕作者主義の否定ということになりますと、権利転用規制の根拠を失うことにもなりますし、農地荒廃の危険性を持つものになります。そして、それは農地法をなし崩しにしてしまう危険を持っています。
 今度の特区というものが農地法をなし崩しにしてしまうということにはならないという保証があるのかどうか、この点は大臣に聞いておきたいと思います。
鴻池国務大臣 私は、なし崩しにはならないものである、このように思っております。
 ただいま委員のいろいろな御指摘がございました。これは、農林行政だけに限らずいろいろな分野で、今までの国家としてのあり方として反省すべき点が多々ある、そのうちに、この分野、この分野、あの分野というところがだんだんあぶり出されてまいりまして、そしてこれをいかに日本の活力につなげていくかというところで規制改革という話が出てまいり、そしてなかなか難しい分野もあるので、特区という構想が出てきて、一点集中、突破口をつくろうではないかというのが今回の特区構想であるということをぜひとも御認識をちょうだいして、今後の御指導をいただきたいと思います。
 いろいろ御指導をちょうだいいたしましたけれども、共産主義につきましても御指導をちょうだいしました。ただ、私の観念といたしますれば、テーゼの問題、また綱領の問題について、いかに変わったかということをまだ承知をいたしておりませんので、日本共産党につきまして、今後私も勉強したいと思っております。
吉井委員 日本共産党は本当に開かれた党ですから、全部文献も皆出しておりますので、しっかりまた読んで御理解を深めていただきたいというふうに思います。
 時間が参りましたので、やはり食糧を安全、安定的に国民に供給するということは、これは国の責務なんですね。そして、農業というのは、農地と結びついて国民の生命と健康を維持する、食糧生産を担うという点で非常に重要な役割を果たしております。その農業が安定して成り立つには、地域農業の担い手である家族経営の再建を基本とするべきでありますし、経営安定の基礎には、大商社の開発輸入などへの有効な規制、米など主要農産物に対する欧米並みの価格支持政策の復活など、農政の根本的転換がやはり必要だと思っているんです。そういう根本的な転換をやらないで、農業特区などの逆立ちした方向というのは私は撤回をするべきだ、このことを申し上げまして、残念ながら時間が参りましたので、国土交通省の人には大変申しわけないんですが、また次回に質問したいと思いますので、きょうはこれで終わりたいと思います。
佐々木委員長 以上で吉井英勝君の質疑は終了いたしました。
 次に、北川れん子君。
北川委員 社会民主党・市民連合の北川れん子といいます。
 先ほども、農地の飛び地やそれからエリアの拡大、連続性の問題が出ておりました。そして、午前中にも、人に属するのか、そしてまた土地に属するのかという問題点を指摘された委員の方もいらっしゃいました。私は、それプラス移動の問題など、人間が動くということもあわせて、前回少しお伺いをしておりました外国人労働者の受け入れ体制の問題にまつわりながらお伺いをしていきたいと思うんです。
 まず、厚生労働省は、特にKSDの問題などで外国人実習生、研修生の問題がいっとき本当に大きな話題になり、多くの日本人に、まあこんなにたくさんの外国の方が日本で働いていらっしゃるのかといったことが逆に宣伝された面もあったと思うんですけれども、近年の外国人の単純労働への就業に対する見解というものはどのようにお持ちなのかをまずお伺いしたいと思います。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 我が国の外国人労働者の受け入れ方針でございますけれども、第九次の雇用対策基本計画、これは平成十一年八月閣議決定されたものでございますけれども、この計画に示されておるところでございます。その内容は、専門的、技術的分野の外国人労働者につきましては受け入れをより積極的に推進する、ただし、いわゆる単純労働者の受け入れについては国民のコンセンサスを踏まえつつ十分慎重に対応する、こういうことでございます。
北川委員 ということであるということで、ことしの統計を教えていただいたら、不法就労の方は、推測でしかないわけですからアルファがついたりするわけですけれども、現在、約七十一万人の方がいらっしゃるということなんですけれども、単純か複雑かという問題というのはなかなか難しい。
 それで、前回港湾労働者の問題でお伺いしたときに、世界の現象として起こっているのが、外国人船員として来られた方が今は外国人港湾労働者としても働くというような、船員でありながら他国へ行ったときに労働者として働くという現象が起きていて、これがどこの国でも問題になっているんだということを聞かせていただいたものですから、一人の人が両面持つ場合がある、船に乗っていらっしゃって無線とかそういう単純労働ではない業務としての資格を持っていながら、港湾におりてきたときには港湾労働者としての仕事もせざるを得ない。だから、どこの国も今は人の倍ほど働く時間というものが押しつけられているという点では日本とも似ていると思いますので、日本の中にもそういう状況が持ち込まれるのではないかといった点で前回少しお伺いをしていたわけなんです。
 そして、先ほどの御答弁の中には出てこなかったんですが、日本人の多くの人たちのコンセンサスがまず大事であるというふうに教えていただいたんですけれども、その厚生労働省の見解にもう一つ突っ込んだ形で、今の日本の状況の中で日本の人たちはどういうコンセンサスを、この三年ほどの経過の中で、外国人労働者に対して、就業に対して持っているというふうに厚生労働省は思っていらっしゃるんでしょうか。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 平成十一年に閣議決定されました雇用対策基本計画、これがつくられました背景といいますか考え方について若干御説明申し上げたいと思います。
 単純労働者の受け入れについては十分慎重に対応するということでございますけれども、このような考え方をとっておりますのは、失業率、御案内のとおり非常に高水準でございます。こういう厳しい雇用失業情勢に配慮するということももちろんございますけれども、それ以外にも四点ほど考えなければならない点があるんじゃないかと思っております。
 その第一点が、国内で不足しております高齢者の雇用機会がなお一層狭められるんじゃないかというふうなおそれがあるんじゃないかということ。それから、日本人がつきたがらない職種に外国人労働者が集中する、いわゆる労働市場の二重構造化、こういうことが起こるんではないか。それから三番目として、単純労働者の方はどうしても賃金が安い、労働条件が劣悪である、こういうことになりますと、労働生産性の阻害を通じました産業構造の高度化を阻害するおそれがあるんじゃないかというふうな点。最後に、このような方々に対する医療あるいは教育、こういうものについての社会的コストをどうするか、こういうふうな問題。
 このような四点などにつきまして、国民のコンセンサスを踏まえつつ十分慎重に対応することが必要じゃないか、こう考えておる次第でございます。
北川委員 ことしの七月五日に外国人雇用問題研究会報告書というのをまとめたんだということもあわせて聞かせていただきました。そして、人口の減少の点においては、ピークの人口を維持するためには年平均三十八万人、生産年齢人口を維持するためには年平均六十一万人の移民の受け入れをしなければいけない、そういうことなども、国連の人口部の推計ということも書かれておりました。ということになると、先ほど、七十一万人プラスアルファということになると、様子からいくとそんなに日本に多く入っているという、需要と供給がそれほど損なわれているという形ではないのではないかというふうにも思うんです。
 例えば、きょうは農業の問題での質問が多かったわけですが、農民といいましょうか百姓といいましょうか、お百姓仕事は単純労働というふうに規定されるのかどうなのか。その辺、少し教えていただけますか。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども、直接厚生労働省の所管というわけではございませんけれども、外国の方々が日本に在留するためには在留資格というものが必要になるわけでございます。その在留資格に基づきまして就労が可能になるということでございます。
 専門的、技術的な在留資格というものとして、さまざまなものがあるわけでございますけれども、例えば外国系企業の経営者とか管理者とか、あるいは弁護士とか公認会計士、そのようなものがございます。
 今、農業がそれに当たるかどうかというお尋ねでございますけれども、私ども、直接在留資格の管理をやっておりませんので、ちょっとお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
北川委員 農業というのは、どこの国籍の方とかであっても本当に、少し前の時代、例えば五十年ぐらい前は多くの人が農業体験を持っているといったぐあいに、資格制度や認定制度にはなじまない職種として見られていた点もあります。
 そして、肉体を使うといった面においての部分が多く取り上げられる点が多いわけですけれども、昨今は、やはり知的な面で農業というものを見詰める、そういう知的作業的な部分の農業といった面も取り上げられてきておりますし、もともと百姓という言葉にあらわされているように、すべての仕事がオールマイティーにできる。
 例えば、道路も自分たちでつくる、それから物置小屋、資材小屋、そういうこともできる、大工も左官もできるということや、管理ができる、堆肥の温度の調整ができるとか、それから動植物、気象状況、そういうものにも精通しなければいけないということで、農業仕事、百姓仕事というものはトータル的にすべてのことをこなさなければ本当にやれない仕事だということで、こういう仕事をどう厚生労働省も見ていくかというのはこれからの時代にとても大きなポイントとなります。
 そして、単純労働かそうじゃないのかというのは、何か研究者と専門家というような簡単な区分で分ける労働という見方というものはできるだけ避けて、一つの労働の中にもいろいろな多面性があるという点から、農業の労働をどういう質として見るかといった点においてこれから深めていただきたい。
 なぜならば、外国人労働者は農業現場、第一次産業現場に多いわけなんですね。水産加工の現場においても、それから牧畜現場においても多いといった点で、ぜひこの点などを、どういうコンセンサスを日本の人たちが共有できるかといったことで具体的な検討をしていただきたいと思うわけなんです。
 そこでお伺いしたいわけですけれども、特定地域に労働者を入れるわけですね。労働者と言ったら失礼になるのか、専門家、研究者というふうにこの特区のことには言わないといけないのかもわかりませんけれども、そういうことはなじむというふうに厚生労働省は思っていらっしゃいますでしょうか。特定地域に限定をしたのが特区である。幾ばくか農地の飛び地とか拡大というのはあるんだということが先ほどの議論でわかりましたけれども、労働者を受け入れるときの特区は特別地域だというふうに思っておりますものですから、ここのところは厚生労働省の御見解をお伺いしたいと思います。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 現在、本委員会で御審議いただいております特区法案によりますと、この構造改革特区と申しますのは、教育、物流、農業、社会福祉、研究開発等の分野における経済社会の構造改革の推進及び地域の活性化を図る、こういう目的で構造改革特区が設けられる、こういうふうに承知しているところでございます。
 したがいまして、このような構造改革特区におきまして単純労働者を受け入れた場合、先ほど四つの検討すべき課題があると申しましたけれども、そういう状況のもとで受け入れた場合、特区内で働く他の労働者の雇用機会あるいは労働条件に大きな影響を与えることになるんじゃないか、それからまた産業構造の進展、そういう面でもいろいろな問題が出てくるんじゃないかというふうに考えているところでございます。さらに、その影響は、単にその特区という狭い地域じゃなく、それ以外の労働力需給にも大きな影響を及ぼすことが予想されるのではないか、こういうふうに懸念しているところでございます。
 したがいまして、私どもとしては、構造改革特区、これは先ほど申しましたように、経済社会の構造改革の推進と地域の活性化を図る、こういう目的で設けられておるものでございますから、そこに単純労働者の受け入れということを直ちに考えるということにつきましては慎重な検討を要するものと考えている次第でございます。
北川委員 いや、すごくたくさん言ってくださったんですが、少し質問からずれていたと思うんです。
 では、鴻池大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、単純労働者の受け入れというものは、特区では実現することに今回なっているんでしょうか。
鴻池国務大臣 地方から、地域からそういう単純労働者特区をつくりたいという御提言があれば、これに対して検討するところでございますので、余地はございます。これだけ申し上げておきたいと思います。
北川委員 ということは、それは第二次募集以降のことですよね。既に今ある、今回、今法案審議をしている特区においては単純労働者の項目というものはなかったというふうに認識しているんですが、いかがでしょうか。
鴻池国務大臣 ございません。
北川委員 だけれども、次から地域からの要望があれば考える余地はやはりあるんだと。ということは、国民のコンセンサスをその点でも、開けているというのが御見解だろうというふうにちょっと受けとめさせていただきます。
 先ほど、人間は移住の自由とか住居をどこに決めるかという自由があるといった点で、移動の問題と人間というのをくっつけてきょうお話しした点において、厚生労働省にあえてもう一度お伺いしたいんです。
 私は、特区という中にだけ、例えばつくばだったらつくば、京都だったら京都に、研究施設があるから、特区構想ができたから行くとしたとしても、研究している二年目になったときに、いや、つくばより京都のあの大学で勉強したい、でも京都は特区になっていなかったとか、そういうことがあるわけですよね。ですから、人にまつわる労働の、専門家、研究者の意味においての土地が限定される特区というものは、認識上かみ合うのかどうかということをお伺いしたかったので、再度御答弁いただけますでしょうか。
増田政府参考人 ただいまお尋ねの点は、入管局の関係するところがあろうかと思いますので、まず私の方からお答えいたします。
 今回の特区制度が設けられたとして、そこに入ってくる外国人研究者が、その研究の過程で、在留期間内に他の地域に行って研究したいという望みを持った場合、そして、それがお尋ねの特区になっていない地域での施設で研究したいという場合は、特区なるがゆえに特例措置を講じられるという立場を失いますから、その場合には、それでも我が国のどこかにとどまって研究したいというのであれば、別途在留資格を変更していただくということになります。したがって、その場合は御本人から在留資格変更申請を出していただいて、それでそれが適当であるかどうかを判断して許可するかどうかを決めるということになります。
北川委員 では、その研究者は、いろいろまた申請用紙を出さないといけないということの負荷を負うとか、また、自分は何らかの基準に合っているかどうかの認定を受けなければいけないとかということになるわけです。
 でも、法務省は、見ましたら、自治体からの提案事項、「外国人の在留資格で可能な活動範囲の拡大(「研究」資格での投資・経営等)」の部分の回答において、「特区内における研究活動及び特区内の事業を運営する活動とする。ただし、地方公共団体の職員が代理人として」ということで、特区内ということをあえて法務省は、これはホームページでいろいろな文を紹介されている中で見たんですけれども、今何かオプションをつける、何か簡単につくんだよというような言い方をされたわけですけれども、そうじゃないと思うんですね。
 特区の構想は、あくまでもそこに研究施設があるところがあるという特色があるから、自治体から特区の申請が出て、今回の条文と合えば、そしてまた、その地域がベターだと小泉総理大臣が、時の大臣が認定すればそこが特区になるといったただそれだけのことであって、オプションが何個も何個も何個もつきますよなんということはどこの条文にも書いてなくて、法務省自身今言っていらっしゃるのは、特区内の事業であり、特区内であるということを明言されているので、今私が抽象で、事前に起こる予見として聞いているので今のお答えになったのではないかと思うのですけれども、そうではないですか。
増田政府参考人 あるいは私の説明の仕方が不十分であったために誤解をなさっているかもしれませんが、特区内において他の施設に移るような場合は、特区において特例措置を認められている外国人研究者は、その後もその特区内で他の施設に移動することは差し支えがございません。
 ただ、先ほどの御質問について私が理解したのは、特区に入っている研究者がその後特区外で研究したいという場合どうなるかということでございますから、これは言ってみれば、今回のこの法律で認められる特区内に入ってくる研究者のための特例措置からは外れるということで、先ほど申し上げたとおり、それは通常の入管法の規定に従って在留資格の変更が必要になってくる、つまり今回の法律の適用外になっていく、そういう趣旨でお答えしたつもりでございます。
北川委員 わかりました。
 ということで、この五千二百番の管理コードで、大分がまさにそこのところを聞いていらっしゃるんですよね。「特例措置の下で入国・在留許可を受けた外国人が他の地域に移動することを規制する必要はない。」と大分県は言ったんですが、法務省の回答は、「特区内に限って規制を緩和することにより、地域活性化の起爆剤とすることにあるものと理解している。」だから、「特例措置の下で入国・在留許可を受けた外国人が他の地域に移動することを規制する必要はないということであれば、特区制度の趣旨と適合しない。」と言っていらっしゃるんです。
 では、ある人は、特区のことで入ってきた者だけれども、一年目でもう、自分の意思とか判断が働いた段階で特区外で研究したいと思えば、その人はその時点から特区の恩恵というものは受けないんだということになるんだということですね。
増田政府参考人 そのとおりでございます。
北川委員 先ほどはちょっとそういう方に対しても柔軟なオプションをつけるんだというふうに聞こえたものですから、では、厳密にそれはないんだということをここで聞かせていただいたということにしたいと思います。
 そしてまた、こういうのが岡山市から出ておりました。「農業全般を技能実習の対象としていただきたい。」「技能実習生については、最低賃金の適用を除外していただきたい。」というのが出ているわけなんです。これに対しての法務省の御回答は、御自身がお書きになったので覚えていらっしゃると思うんですけれども、要望的にはこういうもう本音の要望が地域から出ているわけですね、外国人には最低賃金は適用しないでと。それに対して、どうなんでしょうか、法務省はどういうふうに言われたのか、少し教えてください。
増田政府参考人 ただいまお尋ねの件、岡山市から出た件についての私どもの回答でございますが、この
 要望は、要するに研修から技能実習への移行手続をなくし、かつ、労働者として最低賃金の適用を受ける権利を認めることなく外国人を就労活動に従事させようとするものであると解される。まず、技能実習制度は、研修によって一定の技術レベルに達したことを条件として雇用関係の下での技術等の向上を図ることを目的とするものであり、この制度の趣旨から、研修から技能実習へ移行する際に技術レベルを確認するプロセスを廃止することはできない。また、外国人の権利保護の観点から、雇用関係にある外国人に、最低賃金を含め正当な労働者としての権利を認めることは当然のことであり、こうした労働者としての権利を認めないような形で外国人を就労活動に従事させることは極めて不適当である。
まだございますけれども、おおむね以上のような回答をしております。
北川委員 例えば、厚生労働省にお伺いしても、そういう観点で、労働者の観点というのは日本人であれ外国人であれ同じだという御回答をいただけると思うのです。
 そこで鴻池大臣にお伺いしたいんですが、第一次募集は終わって、きょうこの法案をしているのですが、進んで第二次募集がもうすぐ近々、一月十五日締め切りで迫っております。ですから、二次はもっと本音ですよね、こうすれば経済は活性するんだという本音が聞こえてくるアイデアが多くなると思うんですけれども、こういうせめぎ合いにおいて、大臣はどういう視点といいますか、大臣の座右の銘といいましょうか、こういうことの見境をどうするかということを決めていくときに何を規範としてお持ちになろうとしているのか、そこもお伺いしておきたいと思います。
鴻池国務大臣 御存じのとおり、一月十五日を締め切りといたしまして第二次募集をいたしております。この件につきましても、第一次と同じ立場、態度で私たちはおるわけでございまして、せめぎ合いとかそういったことは一切なく、地方のあるいは民間のすばらしい活力がきらりと光って提案されることを期待しているのみでございます。
北川委員 そのきらりと光ったものを一枚はがすと本音は露骨であるということですよ。やはり、安い、そしてもうすぐに即戦力として使える労働者が欲しいんだというのが地域から出ている声であるがゆえに、その辺は、これから国際化に向かう日本の中でどういうせめぎ合いをしようというふうな心構えをぜひ持って、せめぎ合いになるのは決まっているんですよ。ですから、ぜひその点においての大臣のポリシーというものを深めていただくということを要望しておきたいと思います。
鴻池国務大臣 何かよくわからぬですね。何か安い外国人労働者を提案してくるのに関してどう考えるか、そういう意味ですか。
北川委員 安いというのは賃金がということにおいてなんですけれども、賃金が安い人を自分たちが欲しいときに、要るときに入国してもらいたいというのが本音であるということを幾ばくかの事例で御紹介したので、今ちょっと大臣は、安い外国人という言い方は、安い賃金の労働者という意味においてはそうです。
鴻池国務大臣 四百二十六の提案をいただきました。その中には、今委員がおっしゃった意味の提案は全くございません。
北川委員 ちょっと、きょうはもうかみ合わなくなって、第二次募集からはそういうものが出てくる可能性があるという点で伝えたということで御理解いただけたらと思います。
 では、次にお伺いしたいのですが、最初にアイデアを出した自治体の利益保護というものはどうなっていくのか。一番我が先と言った人への保護というのが常に、特許とか知的財産とか昨今言われておりますので、そういうものは何か保障していくというふうに立てていらっしゃるのか。燎原の火のように広がるといった意味においては、それもなしよ、後から出てきた人のも一緒ということなのか、その辺をお伺いしておきたいと思います。
鴻池国務大臣 ただいまのお問い合わせでありますけれども、これもよく御存じのとおり、内閣総理大臣が地方公共団体の計画を認定するに当たっての基準として、円滑かつ確実に実施されると見込まれることというものが法案の第四条第八項に規定されているわけであります。御存じのとおりでございます。これは、例えば、参入する企業がある程度めどがついていることなど、計画の熟度を見るものであります。これも御存じのとおりでございます。
 このような基準を設けることによって、今おっしゃった、他の地方公共団体のまねをして、思いつきで提案するようなことは排除されますし、みずから知恵を絞り、民間事業者等からも十分に意見を聞いた上で、実現性の高い計画を作成した地方公共団体が認定を受けるということになるわけでございます。
北川委員 強いて言う利益保護というものは別にとらないんだということをおっしゃったというふうに理解しておきたいと思うのです。
 多分、今、推進室は二十七名の方でお働きだと聞いたのですが、その人たちが首相のかわりに認定ということで、練ったものがどうかというのが敏感にわかるというのが必要であろうというふうには思います。でも、アイデアを出した自治体の利益保護というのはこれから必ず問われてくると思いますので、この辺などもぜひ、どういうものが必要かというのも、これから検討課題として見ていただけたらと思うのです。
 それと、先ほども失敗例、成功例というのが議論されておりましたけれども、どういうものを失敗と言い、また、どういうものを成功と言うのかというのが私などにもわからなかったわけですが、構造改革特区提案書というのを見せていただきました。そして、神戸市のを教えていただいて、神戸市はたまたますべて公開していいということだったので送ってくださったと聞きましたけれども、その中に、どれぐらいの経済活性効果が見込まれるかといった中で、例えば二十年後、雇用者を神戸で一万八千人、関西圏で二万三千人、そして生産誘発額を三千三百億円、関西圏で五千三百億円の経済効果が推計されている。これは、そうなっていくのだったら成功ということになると思うのです。
 この経済活性効果のところも、具体的にこういう数字を入れている自治体もあるし、全然それはないところもあったということで、その割合はどうだったのかなということがわかれば教えていただきたいのと、木村政務官の方に、経済波及効果、社会的波及効果をどのように判断するのか、また、どのような効果があると考えていらっしゃるのかというのと、そしてまた、この経済波及効果を数字で出したものを合計した算定というものはおありになるのでしょうか。その辺などをちょっとお伺いしてみたいと思います。
木村大臣政務官 今、経済的、社会的効果を定量化して提案しているのはどれぐらいあるんだというようなお話、後でまた細かいことは室長から御報告をさせますけれども、ただ、先生、経済財政諮問会議そして総合規制改革会議等々の議論を踏まえて、七月二十六日に本部が立ち上げで、約一カ月間という短期間での提案でございましたので、それまでいろいろなことを温めている自治体の中で定量化してきたところもありますし、間に合わずに、とりあえずこういうことをやりたいんだという提案をしてきているところもある。また、教育の分野なんというのは、定量化するにはなかなかなじまないものもございまして、今回は数値を挙げての提案というのは非常に少なかったと聞いております。
 ただ、先生おっしゃられました神戸は、恐らく前から、そうあったらいいなということでしておられたのだろうと思いますけれども、しっかりと数値を挙げてきておられますし、挙げてきた中で、やはり算出根拠までしっかりとしてというところまで今回は至っていないという状況であります。
 ただ、御案内のとおり、今回の法律の中にも、基本計画ではちゃんと経済、社会的効果のところはしっかりしなさいよということが明文化しておりますので、四月以降、計画を申請する段階では、多くのところがそういうしっかりとした数値を出しながら提案を申請してくれるものと期待をしております。
中城政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど政務官からお話がありましたように、経済効果について定量的な記載のあるものというのは一部でございまして、茨城県の鹿島経済特区とか、横須賀の情報フロンティア都市特区、東京都の東京湾岸地域における経済特区、東京都世田谷区のエコマネー・NPO特区、先ほど言われました神戸市の先端医療産業特区、それから北九州市の国際物流特区、こういうようなところでは数値を挙げた記載がございます。
 ただ、政務官が申し上げましたように、いずれも厳密な算出根拠というものまで示したものではございません。
北川委員 ということになりますと、申請の段階で算出の根拠は、とりあえず書けるものは書けというような欄を設けるような申請用紙にしようと思っていらっしゃるのか、別にそういう欄はないものにしようと思っていらっしゃるのか。その辺などは具体的にどう考えていらっしゃるのか、教えていただけますか。
中城政府参考人 具体的な様式までは決めておりませんが、社会的、経済的効果というところを記入するようなものを求める予定でございます。
北川委員 申請の段階で書かせるようにするんですかね。ごめんなさい、お顔を見なかったもので、済みません。
中城政府参考人 要するに、様式は決まっておりませんが、経済的、社会的効果について記入する欄を設けるということを考えております。それは、特区の計画によりまして、数値で出せるものと出せないものがあるかと思いますが、その効果は書いてもらうということでございます。
北川委員 どうもありがとうございます。
 ということになりますと、次にお伺いしたいのが、やはり定量、計量であらわせないものがあるというのは、それはもちろんわかるんですけれども、失敗か成功かというのをどういう基準で、あえて言えば取り消しの基準とは一体何なのかというのをお伺いしたいと思います。
鴻池国務大臣 これも委員よく御存じのように、今回の特区の構想というのは、経済的なものもあり、社会福祉的なものもあり、また農業もあり、教育の中の特区というのもございますので、一律、これの基準というものは設けられないということを御承知をいただきたいと思います。
 ただいまの御質問でございますけれども、特に、計画というものが提出されて、それがスムーズに実施されないで効果が上がっていないな、こういう場合は、認定した基準というものを満たしていないんじゃないか、こういう観点から、その計画の一部または全部の取り消しを行うことができることになっております。
 ただし、取り消しを直ちに行うことは実際には想定をしておりませんで、総理は、認定を受けた地方公共団体に対して必要な指導を行うように、そういった措置を講ずるように求める、こういうことになっております。
北川委員 前段の、ほかの委員の皆さんの中での議論のときに、大臣は、自由社会の競争なんだからというのを強調されていたように私は思うんです。その大臣のお言葉からすると、今のはすごく甘いな、大甘の感じをとても受けたんです。自由な競争であるがゆえに、失敗と成功も見きわめは早い、瞬時にこれはもう失敗だということをしないと、ずるずると、それは地方自治体が責任を持つからいいんだといえばそうだと思いますが、その辺は、自由競争であるがゆえに、今の御答弁は私は少し納得がいかないんですけれども、大臣の中では整合性がとれるわけですか。
鴻池国務大臣 整合性をとっております。
北川委員 それは、どちらかというと日本の入試制度に似ているというのか、入るときはとても厳しい。競争して、があっと、もう寝る時間を削った人でないと勝てない、勝ち組になれない。でも、入った後はすごく遊んで、ブランドのお名前をいただければあとはという、そういう時代も終わりに来たと言われていますけれども、それに似ているんじゃないですか。どこかそこのバランスは私はすごく悪いように思うんですけれども、その点、本当にそれでよろしいのでしょうか。やはり何らかの取り消し基準というものは必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
鴻池国務大臣 まず、寝ないで勉強した者が細い小さな門を通って上がってくるという発想ではございません。地方が、また民がその提案をすることによって規制を緩和する、規制を外すということによって活性化をする、そういう意見であれば、できることから、あるいはできないことをどうやってできるようにしようかというのが私たちの役目でありますから、狭き門でも何でもないということの御理解をいただきたいと思います。
 そして、先ほど申し上げましたように、その計画を総理が認定をして、市町村がそれを受けてその計画を実行するに当たって、これはうまくいかない、どうにもならない、だめになったということになれば、これは取り消すことができる、こういうことであります。
北川委員 逆に言えば、よくわかったのは、入り口も大甘であるという面がちょっと出てきたのが、何だかとても私は逆に心配になってきたんですけれども、それはまた後日の議論にちょっと反映させていきたいと思います。
 では、であるがゆえになんですけれども、住民の意思の反映というものについてどうお考えになるのかといったことで、ほかの委員の方も初日のときにもおっしゃっていましたが、憲法の九十五条の問題や住民投票が必要ではないかといった提案もお出しになっていた面もあったと思うんです。
 これは日本経団連の二〇〇二年十月、「二〇〇二年度日本経団連規制改革要望」ということで各分野においてすごい要望を出していらっしゃるというのを教えていただいたんですけれども、その中でも、新規に、例えば申し立て制度の導入とか、パブリックコメント手続の対象等の見直しとかを提案されているんですね。経団連といえども、かなりいろいろ細かく、こういう制度は必要じゃないかという提案を出していらっしゃって、私ははあっと思って、そうなんだと思って見せていただいたんですけれども、この申し立て制度というのは、国民、企業等が既存の制度、政策などの見直しについて直接行政に要望でき、これに対して行政が一定期間内に回答、公表することを義務づけた申し立て制度を導入してほしい、そういうペティション制度の導入というものを訴えていらっしゃいます。
 これと同じで、私は、やはり成功と失敗の基準が私にはわからないし、取り消しの基準もわからないということになると、その地域住民に及ぼす影響の範囲において、地域住民が何らか、それを創設するときからその中間段階、そしてこれをもっと豊かにしていくというときでもいいし、失敗だとみなす、そういう意見の反映できる場所の確保なんですけれども、それはこの今回の特区構想の中でどういうふうに確立しようとしていらっしゃるのか。
 ある条文の中にありましたよ。公告、縦覧に供さなければいけないとかといって、港湾の部分とかにあったとか、国土交通分野にはあったとか、その条文の中にはありますけれども、すべての段階においてこの特区構想の中で住民の意思の反映というものを、どこかで確立しようと思っていらっしゃるのか、それは場面的にはもう取り上げないというふうに進んでいこうと思っていらっしゃるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
鴻池国務大臣 既に一度二度の同じ趣旨の御質問が出ておりますので、極めて簡単に申し上げたいと思いますが、この特区構想を実際に提案をされてくる段階において、既に地方公共団体はそれぞれの提案者、事業者なり、あるいは地域住民の意見を十分聞き、反映して出してくるものと想定をいたしております。これが一つであります。
 二つ目は、どうしても住民の意見を聞くべきだという御意見がその地域で多数を占めれば、それは地方公共団体がその意見を聞く方法をお決めになることであると私は思っております。
北川委員 ということは、政省令で地方自治体の判断に任せるということと理解してよろしいんでしょうか。
中城政府参考人 お答え申し上げます。
 大臣も申し上げましたように、この法律の中では四条の三項というところに、地方公共団体は、構造改革特別区域計画の案を作成しようとするときは、その実施主体の意見を聞くとともに、都道府県にあっては関係市町村の意見を聞かなければならないということでございまして、特定事業の実施主体から意見を聞いたり、民間事業者からの提案を受けたりすることになっております。
 計画の内容がその地域住民の意見を十分に反映したものになることが望ましいわけですが、その具体的な方法というのは、住民の意見を聞くかどうかというのは、各地方公共団体の判断に任せたいというのが大臣の答弁でございます。
北川委員 今教えていただいて、確かに見ましたらありましたけれども、あえて言うならば、今環境アセスとかの面においても、地方自治体の意見というのが市議会の意見ということや首長の意見に集約されていて、個々一般、普通に生きている個々の市民といったところを指すものではないというのがだんだん市民にはわかってきていまして、それで今住民投票とかそういう意見が出てきていると思うんです。その辺は各市町村の取り扱い方に任せるとはおっしゃっているんですが、そこの辺をきっちりしておけば大きなトラブルとかにならないというふうに思うんですけれども、国の方はそれは任せっ放しでいいと思っていらっしゃるでしょうか。あえてお伺いしたいと思います。
 なぜならば、例えば今、先ほど教えていただいた北九州が考える国際物流特区構想というものがあります。その規制緩和は通関、検疫の二十四時間化といったものであり、やはり多くの緩和事例というものは、港湾労働者、港湾の面でもそうだったんですが、三百六十五日、二十四時間動いています、どこかのドリンク剤の宣伝に昔はやったのがありましたけれども、そういう構想なわけなんですね。
 やはり、そこにおいて、各一人一人の市民の意見といったものは、またいろいろな主張やいろいろな生き方をしていらっしゃる方がいると思いますので、いろいろな意見が出ると思うんですが、それの集約に対してもう少し踏み込んだ御見解というものがあれば教えていただきたいと思うんです。
中城政府参考人 基本的には、そういったものについてはどのような方法で住民の意見を聞くかというのは各地方公共団体の判断によるというふうに考えております。個別の法律において、住民の意見を聞く縦覧とかそういうものを決めているところは個別法にはあります。
 以上でございます。
北川委員 その辺は、やはり進むときですので、余り今、そこまで考えて進んでいるわけじゃないよ、走りながら考えているんだという御意見も伺いましたので……(鴻池国務大臣「別にそんなことないよ」と呼ぶ)そんなことないですか。何か、走りながら考えていますという御意見をくださった方もあったんですけれども、そうじゃないんですか。
佐々木委員長 不規則発言しないでください。
北川委員 済みません、大臣の声がマイクから通したようにきれいに聞こえてきたものですから答えてしまいました。
 では、大臣は今、ゆっくり泰然と座って、特区構想を受けて立つよといった状況にあるんだということをお伝えになりたかったのかどうか、あえてお伺いしたいと思います。
鴻池国務大臣 大変失礼申し上げました。ひとり言が大きなものですから、失礼いたしました。
 泰然自若と座っておるわけにはまいりません。今回の四百二十六の提案を精査いたしまして、先ほど大変ありがたい数字もお示しいただきました。二十七人が必死に頑張って、御提案をできるものから、そして、できないものはどうすればいいかということをまだ各省庁と交渉をいたしておるところでもございます。懸案のものについては、できるだけひとつ調整を早めてできるようにしていただきたいということもお願いをしておるさなかでございます。
 そしてまた、第二次募集、提案をいただきたいということで、一月十五日締め切りのためにその作業にも入っておりますし、私自身も時間のある限りPRに努め、そして、本来の目的どおり、日本列島のどこかで活力が生まれるように努力を怠らないつもりでございます。どうぞよろしく御指導ください。
北川委員 ありがとうございます。
 ぜひ頑張っていただきたいと思うんですけれども、では、先ほどおっしゃったように、いろいろな点において各省庁間の議論が活発に行われているということでありますので、入管法について法務省とどういうような議論を行ったのか。
 というのは、ちょっと話が飛んでしまったように思われるかもわかりませんけれども、住民の意見の反映というものに関しては措置を市町村にお任せになるというお答えをいただいたものですから、入管法について、私はやはり、かなり危惧を抱いている立場をとった者の一人なものですから、この推進室と法務省はどのようなシビアな議論をされたのか。法務省側からでもいいですし、推進室側からでもいいですので、どういう議論を行ったかを教えてください。
中城政府参考人 お答え申し上げます。
 鴻池大臣と森山法務大臣と、十月九日に協議を行ったというふうに伺っております。
 森山法務大臣からは、人の移動というのは可能なので、研究者に対しての特例措置について慎重に検討するということが必要だという御意見もあったようでございますけれども、鴻池大臣からは、地方自治体や研究機関が推薦する研究者であり、問題が発生する懸念は少ないというようなこと、それから、特区制度は地方公共団体の計画に基づくもので、地方自治体の協力も得られるという説明を行って、法務省としても今回の特例を設けることにしたというふうに理解しております。
佐々木委員長 増田入管局長はそれでいいですか。では一言だけ。もう時間が来ていますから。
増田政府参考人 ただいま審議官からお話があったとおりと承知しております。
北川委員 時間が参りましたので、どうもありがとうございました。
佐々木委員長 以上で北川君の質疑は終了いたしました。
 次回は、来る十九日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十四分散会


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