第11号 平成14年12月4日(水曜日)
平成十四年十二月四日(水曜日)午前八時五十分開議
出席委員
委員長 佐々木秀典君
理事 逢沢 一郎君 理事 青山 丘君
理事 小野 晋也君 理事 渡辺 博道君
理事 伊藤 忠治君 理事 細野 豪志君
理事 河合 正智君
大村 秀章君 奥山 茂彦君
金子 恭之君 亀井 久興君
木村 太郎君 木村 隆秀君
熊代 昭彦君 菅 義偉君
高橋 一郎君 谷川 和穗君
谷本 龍哉君 林 省之介君
松野 博一君 石毛えい子君
岩國 哲人君 枝野 幸男君
大畠 章宏君 永田 寿康君
山花 郁夫君 山元 勉君
横路 孝弘君 太田 昭宏君
達増 拓也君 吉井 英勝君
北川れん子君
…………………………………
総務大臣 片山虎之助君
国務大臣
(内閣官房長官) 福田 康夫君
国務大臣 細田 博之君
内閣府副大臣 米田 建三君
総務副大臣 若松 謙維君
内閣府大臣政務官 大村 秀章君
内閣府大臣政務官 木村 隆秀君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 藤井 昭夫君
政府参考人
(総務省行政管理局長) 松田 隆利君
政府参考人
(総務省自治行政局長) 芳山 達郎君
内閣委員会専門員 小菅 修一君
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委員の異動
十一月二十六日
辞任 補欠選任
吉井 英勝君 塩川 鉄也君
同月二十七日
辞任 補欠選任
塩川 鉄也君 吉井 英勝君
十二月四日
辞任 補欠選任
嘉数 知賢君 松野 博一君
近岡理一郎君 熊代 昭彦君
岩國 哲人君 枝野 幸男君
山花 郁夫君 永田 寿康君
西村 眞悟君 達増 拓也君
同日
辞任 補欠選任
松野 博一君 木村 太郎君
枝野 幸男君 岩國 哲人君
永田 寿康君 山花 郁夫君
達増 拓也君 西村 眞悟君
同日
辞任 補欠選任
木村 太郎君 嘉数 知賢君
―――――――――――――
十一月二十八日
透明で民主的な公務員制度改革の実現に関する請願(岩國哲人君紹介)(第三二四号)
同(佐藤謙一郎君紹介)(第三二五号)
同(鈴木淑夫君紹介)(第三二六号)
同(山花郁夫君紹介)(第三二七号)
同(肥田美代子君紹介)(第三三四号)
同(藤井裕久君紹介)(第三三五号)
同(武山百合子君紹介)(第三三七号)
同(肥田美代子君紹介)(第三三八号)
同(菅野哲雄君紹介)(第三六八号)
同(吉田公一君紹介)(第三六九号)
同(奥田建君紹介)(第三八三号)
同(菅野哲雄君紹介)(第三八四号)
同(北橋健治君紹介)(第三八五号)
同(永田寿康君紹介)(第三八六号)
同(楢崎欣弥君紹介)(第三八七号)
同(堀込征雄君紹介)(第三八八号)
同(牧野聖修君紹介)(第三八九号)
同(山元勉君紹介)(第三九〇号)
同(阿部知子君紹介)(第四〇二号)
同(赤松広隆君紹介)(第四〇三号)
同(東祥三君紹介)(第四〇四号)
同(石毛えい子君紹介)(第四〇五号)
同(今川正美君紹介)(第四〇六号)
同(上田清司君紹介)(第四〇七号)
同(大出彰君紹介)(第四〇八号)
同(加藤公一君紹介)(第四〇九号)
同(鍵田節哉君紹介)(第四一〇号)
同(金子善次郎君紹介)(第四一一号)
同(金田誠一君紹介)(第四一二号)
同(川内博史君紹介)(第四一三号)
同(川端達夫君紹介)(第四一四号)
同(北川れん子君紹介)(第四一五号)
同(玄葉光一郎君紹介)(第四一六号)
同(後藤斎君紹介)(第四一七号)
同(今田保典君紹介)(第四一八号)
同(近藤昭一君紹介)(第四一九号)
同(佐藤敬夫君紹介)(第四二〇号)
同(重野安正君紹介)(第四二一号)
同(鈴木康友君紹介)(第四二二号)
同(津川祥吾君紹介)(第四二三号)
同(中津川博郷君紹介)(第四二四号)
同(中西績介君紹介)(第四二五号)
同(葉山峻君紹介)(第四二六号)
同(原陽子君紹介)(第四二七号)
同(平野博文君紹介)(第四二八号)
同(藤村修君紹介)(第四二九号)
同(細川律夫君紹介)(第四三〇号)
同(堀込征雄君紹介)(第四三一号)
同(牧野聖修君紹介)(第四三二号)
同(松原仁君紹介)(第四三三号)
同(松本龍君紹介)(第四三四号)
同(山村健君紹介)(第四三五号)
同(山元勉君紹介)(第四三六号)
同(横光克彦君紹介)(第四三七号)
同(米澤隆君紹介)(第四三八号)
慰安婦問題の戦後責任を果たすため、立法の早期制定に関する請願(川田悦子君紹介)
(第三六〇号)
同(土井たか子君紹介)(第三七〇号)
同(土井たか子君紹介)(第三九一号)
同(土井たか子君紹介)(第四三九号)
十二月三日
透明で民主的な公務員制度改革の実現に関する請願(伊藤英成君紹介)(第四八〇号)
同(家西悟君紹介)(第四八一号)
同(上田清司君紹介)(第四八二号)
同(大出彰君紹介)(第四八三号)
同(大谷信盛君紹介)(第四八四号)
同(金子善次郎君紹介)(第四八五号)
同(川内博史君紹介)(第四八六号)
同(川端達夫君紹介)(第四八七号)
同(菅直人君紹介)(第四八八号)
同(北川れん子君紹介)(第四八九号)
同(桑原豊君紹介)(第四九〇号)
同(今田保典君紹介)(第四九一号)
同(齋藤淳君紹介)(第四九二号)
同(城島正光君紹介)(第四九三号)
同(玉置一弥君紹介)(第四九四号)
同(津川祥吾君紹介)(第四九五号)
同(手塚仁雄君紹介)(第四九六号)
同(東門美津子君紹介)(第四九七号)
同(中村哲治君紹介)(第四九八号)
同(葉山峻君紹介)(第四九九号)
同(鳩山由紀夫君紹介)(第五〇〇号)
同(原陽子君紹介)(第五〇一号)
同(日森文尋君紹介)(第五〇二号)
同(藤村修君紹介)(第五〇三号)
同(細川律夫君紹介)(第五〇四号)
同(松崎公昭君紹介)(第五〇五号)
同(松本剛明君紹介)(第五〇六号)
同(三井辨雄君紹介)(第五〇七号)
同(山内功君紹介)(第五〇八号)
同(山内惠子君紹介)(第五〇九号)
同(山田敏雅君紹介)(第五一〇号)
同(横路孝弘君紹介)(第五一一号)
同(横光克彦君紹介)(第五一二号)
同(今川正美君紹介)(第五三六号)
同(大谷信盛君紹介)(第五三七号)
同(大畠章宏君紹介)(第五三八号)
同(桑原豊君紹介)(第五三九号)
同(小林憲司君紹介)(第五四〇号)
同(五島正規君紹介)(第五四一号)
同(高木義明君紹介)(第五四二号)
同(手塚仁雄君紹介)(第五四三号)
同(土井たか子君紹介)(第五四四号)
同(土肥隆一君紹介)(第五四五号)
同(中川智子君紹介)(第五四六号)
同(原口一博君紹介)(第五四七号)
同(伴野豊君紹介)(第五四八号)
同(日森文尋君紹介)(第五四九号)
同(肥田美代子君紹介)(第五五〇号)
同(三井辨雄君紹介)(第五五一号)
同(山内惠子君紹介)(第五五二号)
同(山口わか子君紹介)(第五五三号)
同(山花郁夫君紹介)(第五五四号)
同(横路孝弘君紹介)(第五五五号)
同(荒井聰君紹介)(第五七一号)
同(五十嵐文彦君紹介)(第五七二号)
同(大畠章宏君紹介)(第五七三号)
同(小林守君紹介)(第五七四号)
同(重野安正君紹介)(第五七五号)
同(高木義明君紹介)(第五七六号)
同(土井たか子君紹介)(第五七七号)
同(土肥隆一君紹介)(第五七八号)
同(長浜博行君紹介)(第五七九号)
同(羽田孜君紹介)(第五八〇号)
同(原口一博君紹介)(第五八一号)
同(伴野豊君紹介)(第五八二号)
同(肥田美代子君紹介)(第五八三号)
同(細野豪志君紹介)(第五八四号)
同(前田雄吉君紹介)(第五八五号)
同(松沢成文君紹介)(第五八六号)
同(横路孝弘君紹介)(第五八七号)
同月四日
透明で民主的な公務員制度改革の実現に関する請願(安住淳君紹介)(第六八三号)
同(阿部知子君紹介)(第六八四号)
同(五十嵐文彦君紹介)(第六八五号)
同(石井一君紹介)(第六八六号)
同(岩國哲人君紹介)(第六八七号)
同(金子哲夫君紹介)(第六八八号)
同(木下厚君紹介)(第六八九号)
同(小平忠正君紹介)(第六九〇号)
同(小林守君紹介)(第六九一号)
同(佐藤観樹君紹介)(第六九二号)
同(城島正光君紹介)(第六九三号)
同(中川正春君紹介)(第六九四号)
同(横路孝弘君紹介)(第六九五号)
同(植田至紀君紹介)(第七三七号)
同(江崎洋一郎君紹介)(第七三八号)
同(大石正光君紹介)(第七三九号)
同(海江田万里君紹介)(第七四〇号)
同(金子哲夫君紹介)(第七四一号)
同(小泉俊明君紹介)(第七四二号)
同(今野東君紹介)(第七四三号)
同(中沢健次君紹介)(第七四四号)
同(長浜博行君紹介)(第七四五号)
同(堀込征雄君紹介)(第七四六号)
同(前田雄吉君紹介)(第七四七号)
同(菅野哲雄君紹介)(第七九〇号)
同(小泉俊明君紹介)(第七九一号)
同(田並胤明君紹介)(第七九二号)
同(堀込征雄君紹介)(第七九三号)
同(水島広子君紹介)(第七九四号)
食の安全のための法律及び行政組織の整備等に関する請願(工藤堅太郎君紹介)(第七三五号)
同(菅野哲雄君紹介)(第七九五号)
レッド・パージ犠牲者に対する謝罪と国家賠償に関する請願(小沢和秋君紹介)(第七三六号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
個人情報の保護に関する法律案(内閣提出、第百五十一回国会閣法第九〇号)
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第七〇号)
独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第七一号)
情報公開・個人情報保護審査会設置法案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第七二号)
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第七三号)
国民生活の安定及び向上に関する件
特定非営利活動促進法の一部を改正する法律案起草の件
――――◇―――――
○佐々木委員長 これより会議を開きます。
第百五十一回国会、内閣提出、個人情報の保護に関する法律案並びに第百五十四回国会、内閣提出、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案及び行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
各案につきましては、前国会において既に趣旨説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
個人情報の保護に関する法律案
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案
独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案
情報公開・個人情報保護審査会設置法案
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○佐々木委員長 引き続き、お諮りいたします。
各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官藤井昭夫君、総務省行政管理局長松田隆利君及び総務省自治行政局長芳山達郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○佐々木委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝野幸男君。
○枝野委員 おはようございます。民主党の枝野でございます。
個人情報保護の法案について、前国会からさまざまな議論がなされてきておりますが、本日は、民主党としての基本的な考え方をお示ししながら政府の見解をお尋ねしてまいりたいというふうに思います。
私どもは、個人情報を保護するための法整備は大変重要であり、緊急に整備をする必要があるという立場に立っております。特に、前国会でもこの委員会で問題になりましたとおり、行政機関の持っている個人情報の漏えいなどの事件が多々起こっておりますし、また、民間においてもさまざまな形で個人情報の流出等による人権侵害、被害が出ているという中でありますから、あるべき個人情報保護法制の整備というものは急ぐべきであるという立場であります。
しかしながら、残念ながら、今回出されてまいりました政府提出の法案には大変大きな欠陥があると言わざるを得ません。
私の方からは、主に民間の個人情報保護法案について申し上げたいと思いますが、個人情報保護法制の本来の基礎となるのは、それぞれ自分に関する情報はみずからコントロールできるという、基本的人権の一部と言ってもいい自己情報コントロール権というものを基礎に置いて、そしてそこから何をきちんとコントロールできるのかというところで派生していかなければならないと考えておりますが、この点の認識、あるいは、そこから本来出てくるべき自己情報をコントロールするための規定がまず不十分である、このことをまず第一に申し上げなければならないというふうに思っています。
第二に、個人情報取扱事業者に対する主務大臣の権限が強大でありまして、公権力による民間に対する広範かつ過度の不当な介入を招くおそれがあるということを指摘せざるを得ません。
三点目に、義務規定の適用除外となる報道等の範囲があいまいな上に、基本原則はこういったところにも適用されることで、取材や報道活動の萎縮を招き、表現の自由を侵害するおそれがあるという、民主主義の根幹にかかわる問題点を抱えております。
したがいまして、私どもは、一刻も早くあるべき個人情報保護法を制定する見地からも、こうした欠陥の多い政府提出法案を撤回の上で、今の基本的な考え方に基づいてこれから述べるような手直しを加えた上で、この委員会に再提出をして審議に付するべきであるというふうに考えております。
そこで、具体的な問題点を指摘しながら、どう改めるべきかということを指摘してまいりたいと思いますが、まず何よりもこの法律が違和感を感じますのは、第二章の基本原則と第五章に主に書いてあります個人情報取扱事業者に対する規制の規定とが一つの法律の中に併存しているということであります。
本来、基本原則というものは、それはもちろん行政機関も含めて、どなたであっても守るべき基本原則があって、そのもとで、例えば民間だからこういう特徴の規制をしよう、行政機関だからこれだけより厳しくしようというような仕分けがなされていく、あるいは、場合によっては、その民間の中でも事業の業種などによって規制の仕方を変えていこう。まず、いずれにしても基本原則というものは、行政機関の個人情報の保護、民間に対する個人情報の保護、全体を覆うべき基本原則であるはずであって、この法律案の第二章でもそういうふうに規定されているわけであります。
ところが、行政にもかかわるべき基本原則が主に民間に対する規制を規定している条文と一緒くたになって一つの法律案になっているから、じゃ、規制を受ける事業者としては、結局、具体的な法律の規制法部分の適用に当たってこの基本原則部分がどの程度影響力を持ってかぶってくるのか、あるいは、規制法部分について適用除外がされていても基本原則は適用される、一方でこちらには、適用除外はされているけれども規制法が結びついている。こういう中では、受けとめる事業者としては、基本原則部分のところを読んで、それによる萎縮効果が生じざるを得ない。まずは、この基本原則と事業者に対する規制の部分とを二つに分けるべきである、別々の法律にするべきであるというふうに私どもは思っています。
今の指摘について、所管大臣の御見解を求めます。
○細田国務大臣 この問題は、いろいろ有識者も入れながら御意見を伺いながら、どういう法体系で検討したらいいかという御議論をいただいたわけでございますけれども、確かに枝野議員がおっしゃいますように、この法律は一種の二階建てのような形をしておって、どちらを一階と言うかわかりませんが、基本原則については、いわゆる官の部分も含めてカバーするような個人情報の保護に関する基本規定といいますか考え方を置いてあり、それがおっしゃいましたような基本原則でございますが、それに加えまして、今まで法律的に未整備であった部分、民間の部分については、より詳細に規定が行われておるということでございます。
しかしながら、この立法は、全体として個人情報保護に関しまして民間分野、公的分野、その他個別分野に体系的な制度を整備しようという非常に意欲的な取り組みで法制ができておりますために、ちょっとそのような違和感を覚えられるようなことがあるかとは思いますが、私どもとしましては、総論部分においても、あるいは個別の各論部分、民間における各論部分においても、特にどこの部分で過剰な規制があるというふうには考えておりません。これは一つの立法の考え方であると思って提出した次第でございます。
○枝野委員 まだ中身のところまで言っておりませんで、萎縮効果が働くんじゃないかということを申し上げたのであります。
一点だけ、今の御答弁、当然納得できませんが、指摘しておきたいんですが、意欲的、体系的に全体像のような形で基本原則も民間もとおっしゃるのでしたら、民間に対する法規制の部分を行政機関にも全部当てはめて、行政、民間問わず規制部分全部ぶち込んで、そのほかに特別法として、行政だからこれだけより厳しくなりますというのが別法で出てくる。これならまだ、基本原則と規制法部分が一緒にくっついていても、それなりの説得力はあるかもしれない。でも、民間だけは基本原則とくっつけて一体法にして、意欲的にやりましたと。行政は全然別の方で、部分的にはこの民間に対する規制よりもさらに緩やかだったりする、わけのわからない、バランスのとれない法案を出してきている。
これが今回の個人情報保護法制の整備に当たって混乱を呼んでいるまずは出発点であり、最初のボタンのかけ違いがありますから、今後申し上げる部分のところでもいろいろと問題が出てきている。まずは、この基本法部分を切り離すというところを最低限しなければならないということを重ねて指摘をしておきたいと思います。
次に、この基本原則、先ほどお話もしましたとおり、規制法部分については報道などに配慮した一定の適用除外がありますが、この基本原則についてはいわゆる適用除外は全くありません。それは、基本原則なんだからみんな考えてください、それは報道機関だろうと何だろうと別に規制をするわけではないんだからいいんじゃないかというお考えなのかもしれませんが、先ほど申しましたとおり、それは、報道機関あるいは報道機関から取材を受ける側、みんな人の子ですから、法律に書いてある、ちょっと遠慮しなきゃいけないんじゃないだろうか、いろいろ考えなきゃいけないんじゃないだろうかというような萎縮的効果はどうしても出てきてしまう。
報道機関には、例えば、紙媒体だけではなくて、国が免許を持っている報道機関などもありますから、この間、どこかの委員会で報道機関を呼んで、報道した中身について批判をするような審議がなされていたと聞いて私は唖然としたんですけれども、そういった免許を握られている報道機関にとっては、ますますその萎縮的な効果は大きいだろうというふうに思います。
これはそもそも、確かに、先ほど申しましたとおり、基本的人権とも言える自己情報コントロール権を守る、そのためには、皆さん、こういう基本原則を守ってください、それは当然だけれども、同時にそれが、表現の自由という、これまた大変重要な人権と矛盾、衝突する場合にはどうするのかということについては全く配慮がなされていないから、そういう萎縮的な効果が心配をされる。
やはり、表現の自由というのは、たとえ他の分野のところで、例えば政治、行政の失敗があったとしても、表現の自由が守られているからそれを訂正、改善する余地が残るという、人権の中でも最も重要な人権でありますから、個人情報の自己情報コントロール権と表現の自由とが衝突する場合は表現の自由を優先させるというのは、基本的な原則として当然のことである。そういった思想をきちんとこの基本原則のところに置いておいて、表現活動、報道活動に対する萎縮効果が働かないようにするということは不可欠であると思いますが、いかがでしょうか。
○細田国務大臣 枝野議員も大変法律にお詳しいわけですし、委員長初め皆様方、法律の専門家がおられますから釈迦に説法でありますけれども、この基本原則に書かれたことは、全く法的規制効果を持っておるものではありません。我が国のすべての法律について言えることでございますが、規制が法的にかかっていないものはすべて自由であるという原則によって我が法治国家は運営されているとは思っております。
そういった中で、しかし、こういう規定があると、何かあるのではないか、法律に基づかないようなある種の勢いや傾向が出て、それを根拠に何か新たな行為が出るのではないかという御心配をいただきますと、これは、法の本来の目的から相当離れて、法律論というよりは法社会学的な側面ではないかと思うわけでございまして、しかし、そういうことが社会的に存在する、あるいは歴史的にも存在してきたということもあるわけでございますから、そういったことは、また国会における御議論もいただきながら、適正なあり方で考えることが適当ではないかと思っております。
○枝野委員 お答えが十分に正面からお答えいただいていないんですが、まず、今お答えの中で、法的効果がないとおっしゃっています。法的効果のない法律を何で我々審議しなきゃいけないんですか。
○細田国務大臣 この第二章は、やはり、基本的な方針の宣明といいますか、日本国として個人の情報保護をするための考え方を書いてある条文だと理解しておりますので、あとの具体的な項目については他の章に譲られている。したがいまして、おっしゃるような心配がないということで今まではお答えしてきたわけでございますが、そのあとは先ほど申し上げたとおりでございます。
○枝野委員 私は、心配があるとか心配がないとかと今お尋ねをしたんじゃないんです。法的効果のないような法律をどうして我々はつくらなきゃならないんですか。基本的な考え方を全部、皆さん、法律にしていますか。法律にほとんどなっていないですよ。法律にしなくたって、政府としての基本的な考え方があって、だからこそ法律案が出てくるのであって、法的効果のない審議なんかしろというのは失礼な話じゃないですか。
○細田国務大臣 いろいろな法律を政府が提出しておりますが、その提出した法律の中に、いわゆる法律事項、国民の権利義務等に関連する以上、法律で制定しなければならない事項が盛り込まれているものでなければ法律にしても意味がない、こういう議論は当然あるわけでございますが、すべての条文がそういったものにかかわらなければならないということはないわけでございまして、基本的な、いろいろな基本法というものもありますし、法律の中で、この法律の目的とするところはこういう方針に基づいてやるというような立法例は極めて多いと承知しております。
○枝野委員 法律効果を持たない条文の法律があるということは別に全然否定しません。だけれども、なぜ法律効果がないのにこんな規定を置かなきゃならないのか、世の中の反発も強いのにということに対するお答えには全くなっていない。こういう法律を置くこともあり得るという説明にはなっているけれども、なぜ置かなきゃならないのか。問題が多いところなんだから、置く必要ないじゃないですか。
○細田国務大臣 これほど反発が多いとはちょっと予想されなかったんではないかと思いますけれども、中身は、個別に条文を虚心坦懐にごらんいただくと、いわば、先ほど枝野先生が言われましたように、規制がこれによって行われたり権利が抑制されたりする根拠となる条文はないわけでございます。
しかし、先ほど申しましたように、それが社会的に見ていろいろなおそれがあるという御議論は、これはいろいろな政治的御判断もあると思っております。
○枝野委員 報道等の萎縮効果のことを先ほど来申し上げております。大臣御自身が、報道機関等ですな、猛反発しているのは、こんな猛反発するとは予期していなかったと今お認めになっちゃっているわけです。萎縮効果だなんという、そんなことについても全然予測つかないはずですよね。だって、こんなに反発受けるということすら当初予想されていなかったぐらいですから、この法律ができたときにどういう萎縮効果が出るかなんて予想つくわけないですよね。違いますか。
○細田国務大臣 いや、そういうことを申し上げているわけではございません。一般的に、国会の議論においてもそういうことを問題提起される党が多いということも含めて申し上げております。
○枝野委員 皆さんとより近いところにいる国会の中ですら予想つかないのに、どうして外側にいる報道機関が、どれぐらい、この法律をどう受けとめるかと予想つくんですか。全然説得力ないですよ、今のお答えは。
○細田国務大臣 しかし、先ほど議員から、効果がない条文であれば削除せよということをおっしゃいましたように、これはやはり、基本原則として基本方針が定められておるということはお認めになっているのではないかと思うのですが。
○枝野委員 これ以上水かけ論してもしようがないので、時間もありますから、ほかに指摘をしておかなきゃならないところを申し上げておきます。
この基本原則部分のところにしても、それに基づいてつくられる規制の部分のところにしても、ここには一番大事なことが欠けている。
確かに、個人情報、いろいろな種類の個人情報があって、例えば、知らない人が住所を知っていたりするのは気持ち悪いな、いろいろなことがありますが、何よりも、それぞれの皆さんがこの情報を人に勝手に流通してもらっちゃ困るという、いわゆるセンシティブ情報というものがあります。例えば、思想、信条、人種、民族、門地、犯罪その他非行に関する事実や、あるいは健康に関することなど、病気に関することなど、あるいは性的嗜好や性生活に関すること、こういったいわゆるセンシティブな情報というのがあります。
このセンシティブな情報については、特にきちっと枠をはめて勝手に流通させないということが、何よりも、個人情報保護法を待っている、自分の情報のコントロール権をしっかりと持たなければならないと思っている立場からは一番重要なことです。
ところが、こういったことについては、基本原則の中の第五条で含まれるという説明もあるようですけれども、具体的には何も書いていない。規制の部分のところについても、わけのわからない幅広の網をばさっとはかけているけれども、こういうセンシティブな情報はしっかり守るんですという規制には全くなっていない。これはもう致命的な欠陥で、このセンシティブ情報の話がしっかりと出てこない法律をつくったって実質的な効果は全くない。これはもう最大限の欠陥であると言わざるを得ませんが、いかがですか。
○細田国務大臣 センシティブ情報というのは明確に定義することが非常に難しいわけでございまして、例えば、保険会社と契約するときに、あなたの病気の既往症は何であるかということは書かされますが、それはセンシティブであっても保険会社にとっては必要なことかもしれません。クレジットカード会社が、あなたは持ち家ですか、借家ですかなんて書かせていますね。ああいうことも本当はセンシティブかもしれませんし、やはり目的に即して、確かに個人の側から見るとセンシティブな情報がある。それが、実際にある契約等をする場合に、それをどのように考えていくかということは、個々に、個別の法制度、施策ごとにきめ細かく措置することが必要であって、その必要性を否定しているわけではございませんが、センシティブ情報ということで、具体的に、では、何なのか、病歴なのか財産なのか何なのかというようなことはなかなか言いがたいということを御理解いただきたいと思います。
○枝野委員 今の前段の御答弁は撤回していただかないと、これ以上審議できません。
何考えているんですか。生命保険会社に自分の健康状況がどうですかと報告する、個人情報保護法の対象の問題ですか、そんなことは。クレジット会社に自分の財産状況を説明しないと金を貸してくれない、説明する、この法律の対象の話ですか。そんな理解だったら、こんな大臣と話はできないです。
○細田国務大臣 それについて、もちろん法規制がございますし、いろいろな状態がございますが、いわゆるセンシティブ情報というものがいろいろな例があってなかなか確定できないということをちょっと例示として申し上げたわけでございまして、何々会社、何々会社ということは、余計なことを申しました。
○枝野委員 今のは説明になっていないですよ。
いいですか。センシティブ情報が何であるかということの定義づけは難しい、それはおっしゃるとおりです。それはそれできちんと議論しなきゃならない。だけれども、何で今、その例で、生命保険会社に健康情報を出します、あるいは金融会社に自分の財産状況を出します、任意で、当事者間で、バイで取引されている個人情報をその当事者がしっかりと持っている、当たり前のことであって、この法律の適用と全然関係ないじゃないですか。
そんな関係ない例を出して、何か、いかにもそんなことを規制しちゃったら生命保険できないじゃないかとか、金融できないじゃないかみたいな、そういうごまかしの答弁をしないでください。
○細田国務大臣 門地とかなんとかというような御質問をされましたものですから、一体、センシティブ情報というもの自体の収集、利用の原則禁止を明確にすべきだという御趣旨が何であるか、具体例が私にもちょっと理解できなかったんですが。
○枝野委員 いいですか。本当に時間がもったいないので、とめてほしいぐらいなんです。
この法律では、何らかの手段で、本人の任意の場合が多いでしょうけれども、何らかの手段で情報が入った、例えば、生命保険会社が当然病歴情報などを御本人からいただく、それは必要なことだし、本人の任意で出しているんですから、そんなもの、規制の対象にどこか入っているんですか。それを受け取った生命保険会社が横に流したらだめだという規制であって、生命保険会社に渡すこと自体については全然規制の対象になっていないじゃないですか。そのところを、意図的にごまかしのように、さっきそういった例を出してセンシティブ情報を規制の対象にできないとおっしゃったんだったら非常にひどいごまかしだし、わかっていないでおっしゃったのなら、そんな大臣を相手に質問してもしようがない。どっちなんですか。
○細田国務大臣 先ほど申し上げました例も、集めた情報を保護するということでは、この法案の対象になっていると存じます。
○枝野委員 だから、だったら、生命保険会社が例えば健康についての情報をとったって全然問題ないじゃないですか。全然問題にもなっていない。ちょっと整理してもらってください。(発言する者あり)
○佐々木委員長 ちょっと待ってください。
大臣、調整の必要あるとすれば、どうぞ調整してください。よろしいですか。
○細田国務大臣 それでは、もう一度お答えいたします。
ある情報がいわゆるセンシティブ情報であるかどうかにつきましては、個々の情報の種類や内容のほか、利用目的、利用方法によって大きく左右されるものであり、何がセンシティブ情報であるかを明確に定義することは非常に難しいと思っております。一九八〇年のOECD理事会勧告の解説メモランダムにおいても、センシティブと万人に認められるようなデータを定義づけることは不可能であるとされているところであります。
したがって、いわゆるセンシティブ情報の収集、利用を含む取り扱いについては、必要に応じて個別の法制度や施策ごとにきめ細かく措置することが適当であると考えております。
○枝野委員 先ほどの生命保険会社云々とかという答弁は、そうすると撤回していただいたと理解したいと思いますが、ぜひ理事会で後で議事録から削除しておいていただきたい。お願い申し上げます。
結局、センシティブ情報の定義が難しいということしかないんですよ。でも、難しいから、ではそんなことをやらなくていいのかという話にはならないわけで、確かに、万人がこれはセンシティブだ、人によってこれはセンシティブだと思う情報、そうでない情報、ありますよ。だから、法律できちっと定義をつけて、大方の人たちがこれはセンシティブ情報だと思っていることについてはきちんと守りますね。世の中の八割、九割の人がセンシティブと思っていない、だけれどもおれはセンシティブだと思っているものなら、それは法規制の対象にはならないでしょう。それはそのとおりです。だから、国会の中で、何がセンシティブかきちんと議論をするんだということであります。
時間がなくなりますので、実は、この後に申し上げる、本当はそこに時間をとりたかったんですが、いわゆる規制法部分のところなんですが、報道機関を適用除外にすると。だけれども、こんなのでは、ジャーナリスト、フリージャーナリストはどうするんだとかいろいろな議論が出ています。実はこれは、ばっと幅広に網をかけて、こことここだけはお目こぼししてあげますだなんという法律のつくり方をしたから、自分はお目こぼししていただく適用除外に入るのかどうかということが大変深刻な問題になる。
簡単なんです。個人情報を持つのは、みんな持ちます、個人だろうと何だろうと。だけれども、一般市民、消費者の立場から見て、今のそれこそ生命保険会社の健康情報のように、取引する上でこういう業者にはこういう情報がどうしても集まっちゃうね、そういう情報が漏れてしまうと困るよね。実際に、漏れてしまうことで迷惑を受けている、自己情報コントロール権の侵害になっているというようなケースというのは、ある一定の業種のところに特定されている。もちろん、今後ふえていくかもしれない。
その問題のところだけ抜き出して、その業種のところについて規制をしますという限定列挙で規制対象を決める、ポジティブリストにする。そうすれば、どこまでが報道の範囲だとか何だとかなどというややこしい話は全部すっ飛ぶんです。それで大方の、この法律をつくったとしても一〇〇%個人情報を守り切れるわけではないわけで、それが、今まで九〇%だったのが、ポジティブリストにすれば、それは九〇より小さくなるかもしれない、八八とか八九は大体カバーできますよ。これは明らかに、この法律の報道などのところについての問題点を解決するためには、ポジティブリスト化する以外にあり得ないと思いますが、いかがですか。
○細田国務大臣 ポジティブリストにいたしますと、例えばこれは業でポジティブリストにするということになると、金融業だホテル業だ地図作成業だ何だという新しいサービス業もございますし、どうも網羅性という意味では、なかなかやはり、一〇〇%カバーしようと思っても難しいのではないかと思いますので、実際に諸外国の例も勉強したようでございますが、ポジティブなリストで業種等を列記している例はないように聞いております。
○枝野委員 これまた政府の御答弁としては全く説得力がなくて、例えば訪問販売法の適用になる業種、一〇〇%じゃないですよ。新しい業種が次々と出てきて、そして問題にしていかなきゃならない。だから、やはりポジティブリストなんですよ。新しい問題が出てくるたびに法改正をしてその規制対象の業種に加えていっているんです。新しい業種が出てきて対象に加えなきゃならないという問題が出てきたら、毎年でも法改正して加えていきゃいいんです、ポジティブリストの中に。税法なんか毎年改正しているんですから。
というので、全く今のは説明にならない、理由にならない。リストは幾らでも我々はつくりますから、御心配なさらないで結構であります。
最後に、あと二問聞かなきゃならないので、簡単にお答えをいただきたいと思います。
もう一つ、幅広にばあんとかけていることの問題は、しかもばあんと規制をかけたその監督はだれがするのかというと、それぞれの業種の主務大臣がやる。これがまた根本的な間違いで、ただでさえ行政指導その他で各省庁の主務大臣は民間に対して影響力を持っている。そこにまた、この個人情報で、中の、持っている、調査ができるとかなんとかだなんという権限を与えたら、ますます、行政とそこに規制を受けている業者との間の力関係で、役所の言うことを聞かなきゃならなくなるな。
役所の言うことを聞いていると、日本の金融界のように、大蔵省の言うことを聞いていたからこんなめちゃくちゃなことになってしまったといって、日本経済全体をだめにするんですよ。経済政策的な問題点からいったって、所管大臣、主務大臣に権限をこれ以上ふやすだなんというばかみたいな、社会主義的な政策を自民党が出してくるというのはわけがわからない。
監督をする機関がどうしても必要であるならば、独立行政委員会方式でやるしかないと思っていますが、この点については、独立行政委員会でなぜだめなのか。主務大臣と、そして政府全体として、独立行政委員会を置けばいいじゃないかという、政府全体の行政機構の観点から官房長官と、お二人にお伺いします。
○福田国務大臣 本法案に定めますこの義務規定は、事業活動に伴う個人情報の取り扱いを規定する、こういうことでございます。したがいまして、各事業を所管している大臣等がこれに伴う個人情報の保護に関する事務についても一体的に行っていくことが合理的かつ実効的であるというように考えております。
それで、新たな第三者機関、これを設置いたしますと、既存の行政機関と事務が競合しまして責任関係が不明確になる、こういうおそれがあります。さらには、地方組織を含む膨大な組織の整備、これは行政改革の流れにも反する、言葉をかえれば屋上屋を架する、こういうことになるのではなかろうかと考えております。
○枝野委員 必ず行政改革に逆行すると言うんですが、基本的に、そこに何人の職員を置いてどれぐらいの給料を払うかということで国民の税金が使われるかどうかというのは変わるわけであって、独立行政委員会を置いたから自動的に行革に反するだなんというのは、見せかけの、表での、役所の数で行政改革だと言っている橋本行革以来のまやかしをお認めになっているとしか言いようがない。
総務大臣においでいただいているので、一点だけ最後に。
行政機関の個人情報保護法について、一番最初に申し上げた、基本法があってそれぞれにある、そういう構造になってないから、行政機関の個人情報保護法についても一緒に巻き込まれ、トラブルになっているんです。切り離すべきだと思いませんか。
○片山国務大臣 今回の個人情報保護法は、基本法の部分と一般法の部分とありますね。基本法の部分はすべてに、官民を通じる、一般法の方は主として民間で、こういう構成になっております。やはり特別法というのは、特別に決めることが多いものが特別法になるべきで、私は、今のこの法制が、基本法と一般法、民間の一般法と全体を通じる基本法が一緒になっている基本法制、それを受けて特別なものを相当決める行政機関の個人情報保護法、こういう構成は一つの適当な考え方ではないかと思っております。
○枝野委員 最後に、一点だけ指摘しておきます。
特別法と言うんだったら、民間に対する規制を政府、行政機関にも全部かぶせた上で、その例外あるいは上乗せ、横出しとして行政機関の、これだったら特別法だと言えますが、民間のところへの規制は政府には免除しているというのは全く説明になっていないということを指摘して、同僚議員とかわりたいと思います。ありがとうございました。
○佐々木委員長 以上で枝野幸男君の質疑は終了いたしますが、先ほど枝野君から御指摘のあった件につきましては、後ほど理事会で協議をしたいと思いますので、御了承ください。
次に、細野豪志君。
○細野委員 枝野議員に引き続きまして、民主党の立場を踏まえての質問をさせていただきたいというふうに思います。
細田大臣、先ほどから御答弁をされていて、今度の内閣の改造で新しく御担当になったということでございまして、個人情報保護法案担当はもうこれで大臣が三人目ということになります。正直言いまして、この法案を政府原案をベースに議論をされるというのは大変だな、お気の毒だなという思いすら持つわけですけれども、これはやはり原点に返って、もう少し法律全体の枠組みから議論すべきだと私は特に非常に強く思います。
先ほどの枝野議員の質問からも出ていましたけれども、きょう、政府がつくっているこの三角のいびつなピラミッドを皆さんの手元にも配らせていただいています。この図はどう見てもやはりいびつなんですよね。
先ほど細田大臣は、いろいろな有識者の方から話を聞いてこの法律ができたんだとおっしゃったけれども、ここ数日間の動きを見ておりますと、実は、個人情報保護検討部会というのが、これは一九九九年の十一月に中間報告を出していますが、個人情報のこの分野の大家である堀部先生、細田大臣、御存じですね、堀部先生が毎日新聞の取材に対して、基本原則の趣旨は義務規定で生かされているので、基本原則はかえって過剰な規制になるとはっきりお答えになっている。
堀部先生に関しては、民主党の部会にも出ていただきました。政府の中での検討過程において、御自身の考えているところ、知見が十分に生かされていなかったというような不満を述べられました。
先ほど大臣は、有識者の方々から意見を聞いてこういうのができたんだとおっしゃったんだけれども、一体、ではその有識者というのはだれなのか。堀部先生が、これは法制化の専門委員会にも出ておられる、そういう方が今こういうことをおっしゃっているということに関して、大臣はどのようにお考えになるのか。これは率直にぜひお答えをいただきたいと思います。
○細田国務大臣 平成十二年に法制化専門委員会の最終会合がございまして、最後のところで堀部座長からこういう御発言があったわけでございます。余り申すと、それこそ個人情報みたいになるかもしれませんが、ちょっと申しますと、「今回、こういう形でまとまりました大綱を見ますと、検討部会で構想をしていたものよりもはるかにレベルの高いものになったのではないかと思います。」中略、「是非この大綱を基に政府におかれましても一日も早く、我が国における個人情報保護法制化の作業を進め、来年の通常国会には是非提案していただきたいと思います。」という取りまとめをされました。
ただ、その前の段階からは、どういうあり方がいいだろうかという御意見はあったことは事実でございますが、最後はやはり、こういう委員会でございますから合意ベースで、皆さん、堀部先生も含めて御納得されたと思います。しかし、その後のいろいろな情勢変化もございますから、それ以上申し上げるのは失礼かと思いまして、私どもとしては、そういった作業をもとに、先ほど総務大臣からも御答弁ありましたけれども、こういう形での立法化の作業をしたわけでございます。
○細野委員 大臣、堀部先生がレベルが高いとおっしゃったのは、決して法律のレベルが高いということじゃないと思いますよ。規制のハードルが非常に高いので、この規制がほかの部分に、基本原則などを通じてメディアなどに萎縮効果をもたらす可能性が高い意味で規制のレベルが高いとおっしゃったんだというふうに思いますよ。
一点、ちょっと確認をしておきたいんですが、その後、個人情報保護検討部会の後に法制化専門委員会というのができていますね。そこにも堀部先生は参加されていますよね。その最後に、大綱が確かに出されているんですが、十月に出された大綱の直前、九月二十二日に、堀部先生は堀部試案というのを出されている。堀部試案はどういうものかというと、これは、もう基本原則は外そうとはっきり出されているんですね。このことについては、間違いなくそういう提案があったということはお認めになりますか。
○細田国務大臣 おっしゃいましたように、当初そういう御意見があって、非常に大きな議論が行われて、それで最終的な報告がまとまった。したがって、基本的には、後の御意見を伺っていると、個人的な御見解は余り変わっておられないのかなとは推察しております。
○細野委員 いや、当初ではなくて、大綱が出る直前に堀部試案が出てきたということについてはいかがですか。
○細田国務大臣 私は、今伺っているところでは、最終会合において堀部先生は、おまとめになるというお立場から、こういうことで提出していただきたいということをおっしゃったことで御納得されたのかなと。
これは書いたものを見ているだけでございますので、多分、堀部先生が今どうかとお尋ねすれば、ちょっと違う御意見らしいなということは承知しておりますが、ただ、経緯から見て、堀部先生の御意向を全く無視しながら法律をつくったとか法律案をつくったということでないことだけ御理解いただきたいと思います。
○細野委員 堀部先生が座長をされていた検討部会の方では、中間報告が出ていますね。その中では、基本原則について、ある程度法規制をきちっとしよう、法律としてつくろうというのが出ています。ただ、ここの三角の下の部分、民間事業者の義務規定の部分に関しては、信用情報と医療情報と電気通信分野に限って個別法を検討しようと出ているんですよ。検討部会の堀部先生が仕切られたときの状況から、法制化専門委員会に行って、堀部先生はそこで不満を持たれてこういう試案を出された。当初考えていたものと全然違う形になっているんですね。
これは、さっき大臣が答弁されたような有識者の意見を反映したのではなくて、個人情報をいかにつくるかというので、政府内でこの方針があったんでしょう。違うんですか。
○細田国務大臣 やはり委員会でございますので、最近もいろいろな委員会があって、意見がけんけんがくがく行われているようですが、やはり多様な御意見があると思います。その中で最終的に合意に達していただいたものだと理解して、それをもとに立法化作業をしたということでございます。
○細野委員 過去の経緯を、私、割と丹念に見たんですけれども、どう考えても、この検討部会から法制化の段階に向けて差があります。なぜこの三角印のこういう形になっているのかということが、どう考えても正当性がないんですね。そこを率直に大臣に考えていただいて、もしそういう考える余地があるというふうにお考えになるのであれば、堀部先生からも直接ぜひ話を聞いていただきたいと思います。与野党でもいろいろな話し合いがされることを期待しますが、そのことはこの場をかりてきちっと細田大臣に要求をしておきたいと思います。
もう一点、枝野大臣に関係する部分で、若干私の方で補足で聞きたいことがございます。基本原則のところですが、先ほどこれは法規範性がないというようなことをおっしゃった。(発言する者あり)細田大臣に対して、枝野委員の質問の追加で聞きたい。失礼しました。ちょっと半年ほど時期が早かったかなという感じがいたします。失礼いたしました。
この法規範性はないというような趣旨のことをおっしゃいましたけれども、私、いろいろな方と話をしていまして、どうしても出てくるのが、これは本当に裁判に持っていかれたときに、この基本原則の部分が趣旨として反映されて裁判規範性が出てくるんじゃないか、これは皆さん共通して心配しているんです。
過去の委員会でも何度かこのお話出ましたけれども、この部分に関して明確な答弁はいただいていないんですね。これが裁判規範性を持つ場合、適正な取得でないかどうかということがメディアにおいて判断の材料となる可能性がある。これは絶対ないと大臣答弁できるんですか。この部分、非常に重要だと思いますよ。お答えください。
○細田国務大臣 法文上はそのようなことはないと理解しておりますけれども、今出ている御議論あるいは細野議員の御議論は、こういった規定をベースに、例えば民事等において非常に実質的に大きな影響を与えるという社会基盤が日本にはあるのではないかと言われれば、私はそういう可能性を一〇〇%否定するものではありません。
しかし、日本は法律上決められた規定によりまして権利義務の創設あるいは規制を行っている法治国家でございますので、基本原則からいえばそのようなおそれはないと思っておりますが、ただ、そこで政治的、社会的な影響、心理的な影響、あるいは裁判への影響ということを御心配になる方も多いことは認識しております。
○細野委員 私が聞いているのは、社会的な影響とかということではなくて、その中の裁判規範性があるのかどうか、裁判でこの部分が引用される可能性がないと大臣が断言されるんですかということを聞いているんです。
○細田国務大臣 まず、基本原則の努力義務違反をもって裁判所に訴えることは困難であると考えますが、プライバシー保護を理由として民法上の損害賠償請求訴訟等が裁判所に提起されている場合、その違法性の判断要素の一つとして基本原則が活用されるという考え方はあると思います。
しかしながら、取材、報道活動についていえば、法目的において個人情報の有用性への配慮と個人の権利利益の保護という利用と保護のバランスを明確にしているところであり、基本原則の解釈に当たりまして、報道の重要性、公共性、取材の困難度、本人の権利利益保護の必要性等を考慮すべきことを求めているところであります。したがって、基本原則が違法性の判断要素とされたとしても、判例の考え方であるケース・バイ・ケースの利益衡量という基本的姿勢を変えることはないと考えております。
○細野委員 後段のバランスなんという話は当たり前ですよ。それは、報道の自由とプライバシーの問題は常にバランスの問題があるんですから。
ただ、大臣、前半で非常に重要な答弁をされましたね。この法律の基本原則の部分が裁判規範性を持つ可能性がある。これ自体で訴訟を起こすことはできないにしても、これは裁判規範性を持つ可能性があるという部分に関して、大臣、否定できないということでよろしいんですね。この部分だけ答弁ください。
○細田国務大臣 民法上の損害賠償請求訴訟等が裁判所に提起されている場合、その違法性の判断要素の一つとして基本原則が活用されるとの考え方はあるのではないかと思っております。
○細野委員 全く法規範性ない、法的効果はないとおっしゃったけれども、裁判所でこれがあるというのは、明らかに先ほどの枝野委員に対する答弁と異なりますね。
加えて言うなら、裁判規範性がないのに、なぜ萎縮効果がないと言えるのか、報道機関に対する萎縮効果がないと言えるのか。これは全くつじつまが合わないんですよ。
○細田国務大臣 基本原則の努力義務違反をもって裁判所に訴えることは困難である、これをもって権利と主張したり義務と主張することはできない。しかし、そのことがこの法律の条文の存在によって影響を与える可能性はあるということは否定できないというふうに思います。
○細野委員 裁判規範性があるということは法的効力があるということですね。それで訴えられる、訴えられないという話をしているんじゃないんです。法的効果はあるということですね。この部分、再度きちっと答弁してください。
○細田国務大臣 要するに、罰則の公権力行使の法的効力がないということを申し上げているわけでございまして、法文上、そういった効力がないということを申し上げております。(発言する者あり)
○佐々木委員長 大臣、その点いかがですか。調整の必要があるなら答弁調整してください。(発言する者あり)ちょっとお待ちください。
大臣、いいんですか。どうぞ調整してください。
速記をとめてください。
〔速記中止〕
○佐々木委員長 速記を起こしてください。
細田国務大臣。
○細田国務大臣 今申し上げましたように、基本原則の努力義務違反をもって裁判所に訴えるとか、それから例えば罰則等に結びつくような法的効果はないという意味での効果はないわけでございます。それに対して、このような規定があることが全く何の世の中に対する影響力がないかどうかということについては、民法上の損害賠償請求訴訟等におきまして何らかの判断がなされる可能性は否定できないということでございます。
○細野委員 いや大臣、罰則がないなんて法律、山ほどあるんですよ。それをもって法的効果と関連づけるのは全く矛盾していますよ。だから、要するに裁判でこれが利用される可能性がある、これが裁判規範として生きてくる可能性があるというのは法的効果があるという話でしょう。この部分は、先ほどの細田大臣の答弁と矛盾するんじゃないですかということを聞いているんですよ。
○細田国務大臣 いや、おわかりになっておっしゃっているのではないかと思うのでございますけれども、解釈原理として働くかどうかということについては、裁判所の自由心証主義のもとで考えることでございますが、その可能性については否定できないと申したわけでございます。ただ、法律上の効果としてはないということを申し上げているわけでございます。(発言する者あり)
○佐々木委員長 ちょっとお待ちください。
速記をとめてください。
〔速記中止〕
○佐々木委員長 では、速記を起こしてください。
では、改めて細田国務大臣、答弁。
○細田国務大臣 矛盾したことを言っているとは思っておりません。
基本原則というのは、基本的に、いわゆる法的な拘束力を持つものとして、これをもとに訴訟を提起したり権利義務が発生したり、そういうものでないということは申し上げておるわけでございまして、細野議員が御質問になりましたのは、例えば実際に民事訴訟等が起こった場合に、その場合においても全く影響がないような規定なのかということをより具体的にお尋ねになりましたので、これにつきましては心証の形成の上では働く可能性があるということを申し上げたわけでございます。(発言する者あり)
○佐々木委員長 ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕
○佐々木委員長 速記を起こしてください。
それでは、今の答弁に矛盾があるかどうかは、これは速記も起こしてみなければならないということですので、これはちょっと留保をしておいていただいて、後ほど理事会で協議をするということにしたいと思いますので、どうぞ、その点を御了承いただいて、質問を続行してください。
○細野委員 明らかに法的効果の中に解釈原理というのは含まれますね。解釈するのは法律しかないんですから。これは後で議事録を見ますが、大臣、きちっと確認してくださいよ。
加えて言うならば、基本原則の部分の効果がこれだけ大臣ですら答弁に困るんですよ。(発言する者あり)明らかに困っているじゃないですか。法的効果がないと言った後に、解釈原理があると。解釈原理というのはもろに法律の解釈でしょう。法律の解釈じゃないですか。この部分に関して、我々が聞いていてもよくわからない。大臣も混乱されている。やはり、この基本原則というのはまずいんですよ、特に下の義務規定とひっついているから。少なくともここをちょん切って、別に議論をして、義務規定は義務規定でどういうものがいいのか議論をして、基本原則は基本原則で、では必要があるのかどうかというところから議論をし直さないと、この法律はきちっとした議論、スタートできないんですよ。
大臣、この部分はもういいです。いいですが、この大臣の答弁に、私、この部分、象徴されていると思いますよ。ぜひそのことをお考えをいただきたいというふうに思います。
一つ、私、ちょっと確認をしておきたいんですが、ポジティブリストの部分で、時間もわずかになってきましたので伺います。
この個人情報の取扱事業者、これがほとんど例外を除いてネガティブリストになっていて、規制対象になってきている。この義務規定の部分もそうなっています。我々が心配しているのは、これは営利だろうが非営利だろうが規制対象になってくる。個人だろうが企業だろうが団体だろうが、これは規制対象になってくる。要するに、だれが規制対象になってどういう法規制を受けるのか、おまけに立派な罰則までついているんですね、これは。そこの部分を問題にしているんです。
先ほど枝野委員の方からは、ポジティブリストの方がきちっと明確なんじゃないかということを申し上げました。本当にこれは規制対象が明確になっているのかどうか、私は大いに疑問を持っていまして、藤井審議官は個人情報を五千件持っているぐらいのところかなというようなことを新聞でぽろっと言われています。そこはちゃんと固まっているんですか。この部分が非常に漠然としたまま法律が走ると、本当にこれはさまざまな問題が出てくる可能性がありますよ。大臣、ここはきちっと答えてください。
○細田国務大臣 五千件以上のデータを保有しているというのは、今事務方が持っている基本的な基準の一つではあります。
それは、一般的な中小企業、小売業とか卸業とか町のサービス業とか、そういうところで持っております情報量を調査したところではとりあえず五千件程度ではないかということでございますが、これはこれからも精査をする必要がありましょうし、要は余り小さな企業で経営上支障が及ぶようなことは避けたい。この法律の目的はやはり大規模なデータを持って処理するものであるから、どこかで線を引かなければならないんじゃないか。それは業によってではなくて、やはりそういうデータの量で考えるべきだと今は考えております。
○細野委員 五千件と決まっていないんですか。
○細田国務大臣 まだ法律自体が御審議いただいておるところでございますが、内々そのくらいがいいのではないかという事務的な積み上げはございます。それは調査によってそうなっております。
○細野委員 先ほど大臣は、ポジティブリスト、すなわちここの業界が対象になりますよということをすると、これは包括的にできないから問題だとおっしゃった。これを包括的にすることによって、だれが規制対象になるか、今の話では全然わからないんですよ。これを法律にも書かずに、国会答弁、お答えできない。これはもう出して二年たつんでしょう。いろいろな心配をしている人がある中で、こんないいかげんなことで本当にいいんですか。
○細田国務大臣 非常に最近はこの手の事件が多うございまして、ことしに入ってからも大きなもので二十二件あるんです。しかし、これを見てみますと、食品メーカーであったりあるいは流通メーカー、あるいは住宅メーカー、パソコン教室、結婚情報センター、お菓子の会社あるいは航空会社、製造業者、住宅業者とかエステサロンというふうに、やはり業種が非常に多岐にわたりますし、これからは皆産業が多様化しますので、私は、これは個別にポジティブリストでということは難しいのではないかと思っております。
○細野委員 今きちっと例示いただきましたので、そういうリストを我々の方でも用意しますので、ぜひ御検討いただきたい。
きょう、私、実は行政機関のを片山大臣に中心的に聞こうと思っていましたが、率直に言って、細田大臣、担当されて早々で恐縮ですが、大変答弁が不十分だと思います。それで、私なりに意見も申し上げましたけれども、やはりもう一度出直して、細田大臣にはせっかく新しく大臣になられたんだから、御自身の出身の通産省はもともとポジティブリストをつくっていたんですから、ぜひそこに、原点に立ち戻っていただいて御検討いただきたい、このことを細田大臣には最後に申し上げたいと思います。
それで、片山大臣に、済みません、もう時間がありませんので二点だけ聞きます。
一つは、この法案の最大の問題の一つが罰則の部分にありました。前、山花委員の質問に随分長く片山大臣とやりとりをしていただいたことがありましたけれども、もう一度同じ表を配りました。
もう時間がないので端的に聞きますが、この左の部分、民間の部分に関しては、大体、利用目的制限、適正取得、これはさまざまな義務規定がありますが、これに違反をした場合は、政府の助言があって、政府の勧告、命令があって、それに従わない場合は、これは懲役六カ月以下の罰則がありますね。これはいいですね、間違っていませんね。
では、右側の部分、今度、官僚の部分ですね。これは、きちっと公務員法などで罰則を担保しているということを何度か答弁されているけれども、例えば一番上の利用目的の制限、これは、防衛庁の情報公開のリストが諜報機関に回っていたというような話がありました。あれは幸いにして利用されなかったということですけれども、それが広範に利用されていれば、情報公開を申請した人にとっては、これは大変な損害、被害ですね。そういうものが現実に起こってしまった場合に、これは罰則を法律的に科すことは可能ですか。
これは私がつくったんじゃないですが、静岡新聞のこの記事によると、そこは法律的には罰則にはいかない仕組みになっている。私も国家公務員法も読みましたが、どう見てもここは罰則が科せられないんですね。この部分だけですよ。大臣、ばっと広げずにしゃべってください。お答えください。
○片山国務大臣 大変よくできた表でございますが、全体に、この表で右側の部分を見ていただければいいように、違反には懲戒処分をかけているんです。それから、国家公務員法上、守秘義務がございますので、これは罰則がかかる。これ以外に、犯罪として、例えば職権乱用罪だとか公文書毀棄罪だとか、あるいはこれによってお金を取ったりしたら収賄罪だとか……(細野委員「そんなことは聞いてないですよ」と呼ぶ)いやいや、だから、そういうものもかかるんですよ、総合的に。そういうことで担保していると我々は考えておりまして、全般的には懲戒処分になる、こういうことでございます。
○細野委員 聞いているのは、利用目的制限について、今言ったようなものもかかるんですか。利用目的制限ですよ。
○片山国務大臣 利用目的制限について、いろいろなケースがありますが、職権の乱用に当たるものがあれば、これは刑法の方で犯罪行為として罰則がある。国家公務員法の関係の罰則は、これは守秘義務違反だ、こういうことであります。
○細野委員 では、ぜひ具体的に、職権乱用、何がなるのか。もう時間がなくなりましたので、正直、私、もう少し本当は、途中で答弁が不正確だったという思いがありますが、大臣……(発言する者あり)これはやった方がいいかもしれないですね。罰則と懲戒、これは全然違いますよ、内部処分ですから。懲戒の効果がないなんというのは、ここ数年間、我々はもう幾らでも経験してきて、それで幾らでも平気で皆さん天下っているわけじゃないですか。罰則というのは、これは場合によっては牢屋に入るという話ですよ。罰金取られる、前科ですよ。全然違うじゃないですか。
さっき言われた、無責任な答弁されたけれども、利用目的制限で、では具体的にどういう事例の場合に罰則をかけられるのか、そのことをちゃんと答えてください。そうじゃないと、この部分に関しては官民格差が明らかにあるということを片山大臣が認められたことになるということを最後に申し上げて、お答えを聞いて、終わりたいと思います。
○片山国務大臣 職権乱用のケースはいろいろですから、一義的には申し上げられませんが、結局こういうことなんですよ。罰則というのは、具体の権利侵害があって、それとのバランスが一つあるのと、これは犯罪構成要件というものがきっちり確立されなければなりませんので、そこで我々は、全体は懲戒処分をかける、それからあとは守秘義務違反、その他は刑法の犯罪、こういう考え方でこの法律を構成したわけでございます。
○細野委員 時間が来ましたので終わりますが、では、紙で具体的に出してください、理事会でお待ちしていますので。このそれぞれについて、どういう形で罰則が科せられるのか、そこの部分に関して、明らかに官に甘い法律をつくっておいて、これは全部通してくださいという話は通りませんよ。もう両方きちっと出直していただきたい、このことを私の方でお願いして、私どもとしても提案する用意がございますので、御検討をぜひいただきたいと思います。
以上で終わります。
○佐々木委員長 以上で細野豪志君の質疑は終了いたしますが、先ほど御指摘のありました点、答弁に食い違いがあるかどうか、これはまた理事会で、速記録なども検証させていただいた上で協議をしたいと思いますので、御了承ください。
大臣の方も、その点もう一度よく精査をして、整合性が得られるようにしてください。
次に、小野晋也君。
○小野委員 この個人情報保護法案でございますけれども、第百五十一回国会提出でございますから、もうかれこれ一年半余り国会で審議俎上にのっているわけでありますが、私もずっと内閣委員会に所属する中で、この個人情報保護法の本質部分についての議論というのは、実はほとんど行われてこなかったような印象がございます。
もちろん、いろいろなこの個人情報保護法をめぐっての事件がありましたものですから、その事件の処理的な議論がたくさんあったということではあるわけでありますけれども、しかし一方では、この個人情報保護法の必要性というものにつきましては、先ほど細田大臣から既に随分たくさんの問題事例が実際起こっているんだというような御披露もございましたし、またきょうは消費者団体の方も傍聴席にお見えでございますけれども、消費者団体の皆さんにおかれましては、やはり個人の権利としてこの情報保護という問題をきちんと取り上げてほしいということで、非常に強い御要請もございます。
この法案、先ほど申しましたとおり、随分長い時間この委員会にかけられてきているわけでありますが、今後、内閣として法案成立に向けてどのような決意でおられるのか、まずこの部分からお尋ねしたいと思います。
○福田国務大臣 法案につきましては、早期成立を図る、そういう観点から、現在国会においてさまざまな御尽力をいただいておる、こういうように承知をいたしております。
ただ、法案の取り扱いにつきましては、これは国会の権能の問題でございますので、政府としてこの取り扱いについて申し上げるという立場にはございません。
ただ、この個人情報保護関係五法案は、これはIT社会における国民生活を守るための基盤整備として不可欠のものである、こういうことでございまして、例えば、IT社会の進展によりまして大量の個人情報が処理されるというようなことになっておりまして、国民が安心してIT社会の便益を受けられるようにする、そういう個人情報の取り扱いのルールを定める必要はどうしてもあるということがございますし、また、国際的に見ましても、EUのように、個人情報保護が十分でない国への個人情報の移転を判断する方針を出している、そういうことで、国際的にも整合性を保った国内法制の整備が必要であるといったようなこともございます。
そういうようなことで、政府といたしましては、ぜひともこの速やかな成立をお願いしてまいりたい、そのように思っております。
○小野委員 この個人情報保護法の議論を聞いていながら私どもが痛感をいたしましたのは、今回の場合は、例えば報道関係の皆さん方ですとか雑誌記者の皆さん等々が、非常にこの個人情報保護法案は問題があるという指摘をされて、強力な反対運動をされた。これは、新しい分野の法律をこれからつくろうということでございますから、もともと情報世界というものに対しては自由が基本であって、そこに拘束を与えること自身が問題があるというような極端な議論をされる方もおられる世界でございますから、恐らくこういう御意見が多様に出てくるというのは当然のことなんだろうというような認識を私自身としては持っております。
しかしながら、この個人情報保護法を一つの例として考えました場合に、国の基本方針をめぐって多くの懸案が、特に小泉内閣というのは改革内閣ということを言うものですから、いろいろな問題について新しい指針を示そうとする。しかし、古いものはだめだということを言っても、新しいものの何が正しいかということは必ずしも国民の合意が得られているわけではないわけですから、そのはざまにあって、改革はしなきゃいけないけれども、ではどう改革するのかというと、その具体案をめぐってはなかなかその方針が決められないという基本的な問題をはらんだ一つの事例だったんだろうというような気持ちがいたしております。
そこで、ちょっとお尋ねをさせていただきたい点は、価値観が多様化する、しかも変化の時代と言われる中において新しい道を模索しなければならないというところにあって、政府として、合意形成のシステムということについて、これから何らかの検討を加える必要があるのではなかろうか。その具体的なイメージ、私は持っているわけではございませんけれども、今までと同じ合意形成システムが十分機能し得るかどうかということについての検討がこれから必要ではなかろうかという気持ちを持つ点がございますが、御所見はいかがでございましょうか。
○福田国務大臣 委員のおっしゃるように、今まさに日本の置かれている立場を考えますと、いろいろな変革をしていかなければいけない、そういう時期にあるわけです。ですから、そういうことについての国民理解というものは当然必要なわけでございまして、そのためにどういう努力をすべきか、どういう方策をとるべきか、こういうことになろうかと思います。
それはそれで、政府としても、あらゆる機会をとらえてこの合意形成のための情報提供、またいろいろな議論の開示とかいったようなものをしてきておるつもりでございますけれども、そういうことについて、さらにいろいろな努力をすべきだろうというように思います。
そういう意味において、今、政府でタウンミーティングなどをいたしておりまして、これは昨年一年間、全国、全県で開催いたしましたけれども、ことしもテーマを絞っていろいろな市民との対話をするという努力もしておるわけであります。また、ホームページも官邸で開いておるということもございます。各官庁もホームページなどを、一生懸命努力して今充実に努めている、こういうこともございます。あらゆる機会をとらえてそういうことについての情報提供の場を持っていかなければいけないと思います。
しかし、それとあわせてというか、それよりも大事なのか、これはお考えいただきたいところでございますけれども、この国会において、ここでもって合意形成を図るということが、これは法律をつくるとか物事を前進させるために極めて大事なことであるというか、一番大事なことでございますので、この国会における合意形成をぜひ順調に図れるように、これはこれで国会の方に御尽力いただきたい、そのように思っております。
そういうことを総合して国民合意を形成していくということになろうかと思っております。
○小野委員 これも一つの事例として取り上げるべきものなのでございましょうけれども、私は、今の日本社会はいろいろな面で混乱が増し加わっているような気持ちがしてならないわけですね。
つまり、古来私たちの心情の中にずっと宿ってきたもの、日本の伝統といい、歴史といい、文化といい、こういう生き方をすればいいんだということが、日本人の体の中にしみついてきたものが一方にあると思うわけでありますが、それに対して急速に、アメリカを中心にしたところのスタンダード、俗にアメリカン・スタンダードだとか、場合によればグローバルスタンダードだとかいうことが多いわけでございますが、こういうものが不整合現象を今起こし始めているのではなかろうかというふうに見えるところがあってならないのですね。
例えば、アメリカ的価値観ということでいうならば、最近の動き等を見ていましても、非常に一神教的な考え方がいざとなると表に出てきてしまう。御存じのとおり、日本の社会では多神教の社会であり、いろいろな価値観が併存することをこの社会は許そうとする社会でありますが、一つの基本的価値にあくまでもこだわろうという考え方とは、なかなかこれは一つの一致した動きをやりにくい部分があるだろうと思うのですね。
それからまた、非常に過酷な競争主義みたいなものが礼賛される社会というのがアメリカ社会のように見えるわけでありますが、日本社会は、競争ももちろん大事だけれども、それ以外に調和的な部分というものも尊重しなければ社会はうまくやっていけない。これも大体、歴史、伝統を持つ社会の場合はそういう価値観が存在するというのが普通だと私どもは思うわけでありますけれども、こんな問題もあるわけでございます。
また、先ほど来、法律論の議論が随分たくさんありましたけれども、あくまで法律というところでの形式論みたいなもので物事を処理する傾向がアメリカ的社会には強いわけでありますが、私どもは、法律というものよりも、むしろ人間の内面において物事が処理されることをよしとする気風というものもあるような気持ちがしてならないわけであります。
ちょっと一例を挙げてみたわけでございますけれども、これらの、日本人が体質としてこれまで持ってきたものに対して、今急速にこの社会に流れ込んできている価値観というものが非常に対立的なものであるがゆえに、この日本社会が混乱し続けるのではないか、人々の心が迷って立ちどまってしまわざるを得ないという状況が生まれているのではないか、こんなふうな印象を持ってしまうところがあるわけであります。
かつて明治の世には、江戸時代から明治に移ったときには、海外のいろいろな知識、技術が導入されるときは、御存じのとおり和魂洋才ということで、日本人の魂は変えないけれども技術だとか知識だとかこういうものはどんどん取り入れていこうと。そこで調和させる知恵を日本人が持って、思想的な葛藤というものを乗り越えてきた部分があったような気持ちがするわけでありまして、この変化の時代に、非常に大きな議論になって恐縮ではございますけれども、私は、日本としてどういう基本的な考え方というものが考え得るのか。
強制するということは、思想、信条の自由ですから、なかなかこれは困難な話でございましょうから、そうではなくて、こう考えることができるのではないかということも一度整理して考えてみないと、技術や知識がどんどん入ってくるたびに、日本人の心がどんどん散り散りばらばらになって、その心が崩れ壊れていってしまう。こういうことになってしまうと、社会そのものも非常に混迷状態を脱することができないようなことになってしまわざるを得ないのではないか、こんな危惧を実は持っているわけでございます。
なかなかこういう答弁は難しい答弁だろうと思うわけでございますけれども、日本人の心という問題、それから新しい技術をどう取り入れるかというような問題、これらのことについて何か御所見をお持ちになっておられましたら、お聞かせいただければと存じます。
〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕
○福田国務大臣 委員のおっしゃることは、お気持ちはよくわかります。また、お考えもわかります。それで、決して委員の言葉に逆らうつもりはありません。そういう考えも、私もないわけではない。
しかし、翻って我が国の現状を見た場合に、これから我が国がどうやって生きていくのかということを考えた場合に、日本だけで生きていくわけにいかない、こういう時代になりましたね。ますますその傾向は強まってきている。弱くなることはない。そしてまた、そういう傾向が強まっていく中で日本の特色を発揮できるところがあるのではないかということは、やはり考えていくべきではないかと思っております。
これは経済だけの問題ではありません。ひいては国際的な平和にもつながってくる問題だというように考えておりますから、そのことについて私は、あえて申し上げれば、国際社会といかに協調していくかということは極めて大事であるというように思っております。そういう中で、我が国の特色をどういう面で生かしていくかということではないかと思います。
これは、我が国がこれからどうするかということをあわせ考えるべき問題であろうかと思いますので、いろいろな考え方というのはあるのだろうと思います、委員もお持ちであろうかと思いますので、私は、そういう考え方を一度整理する、そういうことも必要ではなかろうかというように思っております。アメリカのやり方ばかりを見習っていればいいというわけではないと思います。
ただ、日本は、戦前から、アメリカ的なやり方というものは随分勉強してきました。特に戦後はアメリカ式一辺倒、こういうような感じでございますけれども、その傾向は今でも続いていると思います。アメリカがそれだけ世界に対する影響力を持っているということであろうかと思いますし、それなりに世界的、国際的にも納得できるやり方をしているという部分もあるんだろうと思います。ですから、そのいいところはやはり日本として、これはもう憶することなく取り入れていくべきだろうと思います。
しかし、中にはそうでないというところがあるかもしれません。それは排除する、そういう考え方も当然必要でございますし、また逆に日本が持っているいいところをアメリカが取り入れるということも、アメリカはやっているんですね。お互いにいいところをとり合うということが大事なんだろうと思います。
いずれにしましても、世界あっての日本ということも言えますけれども、そういう立場の日本を間違いなくこれから運営していく、運営という言葉は適当でないかもしれませんけれども、そのために大いにいろいろな議論を闘わせていく、そしてまた一つの方向性を見出していく、そういうことが今求められていることだと思っております。
○小野委員 非常にいい御答弁をちょうだいいたしましたけれども、実は私は、この問題に関して、ちょっと個人情報保護法とはずれるような印象があるかもしれませんが、情報世界の秩序をどう形成するかという問題の基本部分の問題だろうという気持ちがしているところがあるんですね。
これまでは、アメリカにおいてコンピューターも開発をされれば、情報通信ネットワークもほとんどアメリカでその基準がつくられて、それが世界に広げられていくというふうなことがずっと繰り返されてくる中で、アメリカ的価値観までもこの情報社会の基本的価値観だというふうに思い違いしてきた部分があったのではないかということを危惧してしまっているんです。
世界は、御存じのとおり二百近い国と地域があり、それぞれの国の中においてもいろいろな文化がある、いろいろな民族がある、いろいろな思想や宗教がある。それらが一つの価値観のもとに統一されるのがいい国際社会をつくる道であるかということには、そろそろ疑問を呈していくべきときが来つつあるんじゃなかろうかと私は思えるんですね。
便利なコンピューターだとかネットワークは、これは活用すればいい。しかし、活用するやり方を決める思想だとか、それをどういうふうに活用する社会システムをつくるかというふうなことについては、それぞれの国家の考え方というのがあってしかるべきだ。それらを守るからこそ、世界は多元的な世界を守り続けることができると同時に、より可能性に満ちる社会にもなってくるに違いない。こんなふうな一つの思想的背景を持っているわけでございます。
そこで、細田大臣にちょっとお尋ねしたいんですが、情報社会の問題の担当大臣ということになるわけでございますけれども、この日本型情報社会という考え方、アメリカのシステムをただ無批判に取り入れていくということではなくて、むしろ日本の文化、伝統というようなものをもとにしながら、この日本ならばこういう情報社会をつくるべきじゃないかということをある意味では提唱すべきであると思うし、場合によれば、世界が二十一世紀になって非常に混迷を来すところが今見えているわけでありますが、むしろ多元的な価値観を併存させる情報社会ということは日本側から世界に提案できることなんではなかろうかというような思いすら私は持っているところがございまして、今後、この日本型情報社会というふうな視点での社会構築ということについて、御所見をお持ちの点がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
○細田国務大臣 小野議員から大変高邁な御質問というか御所見がございまして、私もそのとおりだと思います。
アメリカとヨーロッパのやりとりなんかを見ておりましても、微妙にいろいろな文化的な差異、そして映像のソフトやそういうものにおきましても取り扱いが微妙に違っておるとかいうことでも、ヨーロッパが自前の文化、伝統をできるだけ主張していきたいという姿を見るわけでございますが、日本にもそのような文化、伝統が長い年月を経てあるわけでございます。
ITの促進ということで、非常に社会資本の整備を行い、かついろいろな層、つまり学校の生徒からお年寄りまでIT教育を普及させるということが第一段階で行われ、そしてe―Japan計画で電子政府の実現ということでやっておりますが、要は、やはり日本国民一人一人が幸せといいますか、便利で、そして時間のロスのない、しかも情報の多い、しかも安全な社会を構築することが必要であるので、小野先生のおっしゃるようなことは絶えず追求していかなきゃならないと思っております。
○小野委員 実は、前段の話が随分長くなってしまったわけでありますが、私は、この個人情報保護法案というものは、情報社会における新しい世界を今つくってきているわけでありますから、その技術の進歩の速さに比べてなかなか社会の側の意識ないしは法律というのが対応できないところにこの必要性が生まれているというふうな認識を持っているものでございます。
今回の議論等を拝聴させていただきながら最も問題として認識をしてきたものは、自由、権利というものと義務、責任というもの、これはよく一体のものとして議論されるものでございます。自由があればそこには義務があり、そして権利があるというならばそこにまた責任があるというふうなこともよく言われるわけでありますが、どうもこの情報社会においては自由と権利の主張ばかりが非常に強い、その一方で、義務、責任を果たそうという要素が非常に弱いのではないだろうかというふうな印象を私は持ってならないところがあるわけであります。
例えば、適切な事例であるかどうかというのは皆さんいろいろな御意見あろうかと思いますが、ここしばらく、世界の中での投資家たちの振る舞いというのを見ておりますと、国際的な投資家の皆さん方は、もうとにかく自分たちが預託されたお金を特定の企業、特定の国等に集中的に投入する、そしてそれが危なくなってくれば、それを思い切り一気に引き抜いてしまう。その結果、企業が倒産しようが一国が混乱しようが、そこで失業者がたくさん出て、そしてそこに自殺者が出てこようが、しかし投資家たちは、もう完全に投資活動は自由なんだ、自由だから何やったっていいんだというふうなことで、その投資行動の結果、何が生まれるかという結果に対しては全く責任をとろうとしないんですね。
こういう関係というものは二十一世紀の時代に果たして許されるものなんだろうか。自由があれば、そこには当然ながらその自由を行使することに伴う責任というのはあるはずですよ。権利があるならば、その権利を行使することによって人々が豊かに、幸せにならなきゃいけない、そういうような義務というのはあるはずだ。これが私は世の中の基本ルールだと思うのでありますが、余りにもこの情報社会というのが急速に立ち上がり、それが一気に広がったがゆえに、この自由、権利と義務、責任というものが一致しない社会を情報世界の中でつくり上げてしまったのではないか、実はこういうふうな認識を持っているわけでございます。
そこで、この個人情報保護法というものも、いろいろな御批判はありましたけれども、やはり自由と権利というもので、もう全く何ら規制はかけちゃいけないんだという情報社会論を主張される学者たちも随分たくさんおりまして、そういう議論の延長線上にこの多様な議論がなされている部分があるような気持ちがしてならないところがあって、私は、自由というものだけが単独に存在し得るものではない。
かつて、インド独立の父といったらよろしいんでしょうか、ガンジーは、議論が混乱したときに、自分たちの自由や権利を主張するよりも、まず自分たちが何をなさねばならないか、その義務と責任の方をみんなの中で一致させて、そしてその上で自由と権利の議論をしたらあっという間に問題は解決しますよ、こういうことを言われた言葉があって、私はこれは非常に大事な言葉だなと思っているところがあるわけでありますが、私自身の問題認識としてはそういうものがございます。
ここの情報社会の義務、責任ということにつきましては、もういろいろな委員の皆さん方、特に民主党の委員の皆さん方も御主張されてこられましたが、この情報というのは世界の中で自由に行き来するものである以上、義務、責任ということについては基本的に国際的な共通のルールというものを確立する努力というのが今後求められざるを得ないのではないかという思いを持っているわけでございます。その種の取り組みないしは御協議というものをやっておられるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
○細田国務大臣 非常に示唆に富む御質問をいただきました。
このIT社会の到来で、特に五年前を思い出してみますと、コンピューターでプログラムした為替投機のプログラムでアジア諸国が壊滅的経済打撃を受けたというような大変な弊害をもたらした事実もございます。そして、今個人のプライバシーも含む違反事件といいますか、個人情報を保護しなければならないような事態もたくさん出ておるわけでございますが、その中で共通の原理原則は何であるかということは大いにこれからも議論していく必要があると思っております。
一九八〇年にプライバシー保護と個人データの国際流通についてのOECD理事会勧告が採択されておりまして、この中で、プライバシー保護と情報の自由な流通の確保という競合する価値を調和させることを目的としてOECD八原則を盛り込んだガイドラインを示し、詳細は避けますが、加盟各国に対し国内法制に反映させることを求められております。
さらに、IT社会の進展に伴って、こういった議論をより精緻にして、おっしゃるような目的に即して、また人類社会の発展に貢献すべきではないかと思っております。
〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕
○小野委員 さらに、ちょっと基本問題を御指摘しておきたいと思っているわけでございますけれども、私は、情報社会をきちんと機能させていこうとすると、単にこれは法律といった形で外部に明確に示されたルールだけではうまく機能しないのではないかという疑問を持っているわけですね。現実社会の中においても、私たちはすべてが法律によって決められる中を生きているわけではなくて、法律というのは、極端な何かを超えた場合にはそれはだめだよということは言っても、多くのものについては、むしろ社会一般、皆さん方の良識の中において判断をされて社会生活を動かしていこうという考え方があるわけです。
現実の社会がそういうことであるならば、情報社会、バーチャル社会というものにおいても同様にこの問題は考えるべきものがあるはずでございまして、そのルールをつくるというだけでなく、社会構成員における人間教育というようなものも同時に大事な課題になってくると思えてなりません。
情報社会における倫理教育と称するのが適切かどうかわかりませんが、何を是とし、何を非とするかということについての人間の内面における物差しを与えるということについて、これはどういう取り組みを今やっておられるのか、さらに、そのルールという問題と人間教育という問題のバランスについて、お考えの点があればお聞かせをいただきたいと思います。
○細田国務大臣 非常に難しい問題でございます。
一人一人のモラルを基本として情報化社会を築いていかなきゃいけませんので、やはりコンピューターを、ただキーボードをたたけば何が出てくるというような教育だけではいけないので、あくまでも国民生活の向上に資するようにこれを教育しつつも、どういうモラルでこの情報化社会に取り組んでいくべきかということも含めた人間教育、小野議員のおっしゃるような社会教育も含めた人間教育が必要ではないかと思っております。
○小野委員 現代の社会の問題を見ておりますと、まさにこの情報社会の到来というものが、それへの不適応によって社会的問題というのが次々と生み出されているところがあるような気がしてならないんですね。現代社会の中で、さまざまな教育界の問題もあれば青年たちの問題もある、経済の問題もある、いろいろな課題がもちろんあるわけでありますが、それらをずっと見ていきましたときに、私は三つの基本的問題があるような気がしてなりません。
一つは形式主義です。外面にあらわれるものの価値だけしか評価しないということによって、結局、人間の本質たるところの内面というものがどこかに失われてしまう。テレビに映る、その映り方がどういう映り方であるかということが大事なんであって、そのテレビに映る本人の心の中がどういうものであるかということは余り問われない、こういうふうな世相がありますね。
例えば成人式のときでも、もうとにかくびっくりするような格好をして出てくるような青年たちがいますけれども、それは、外見を飾って奇矯な格好をして、とにかく外見で人に評価されたらそれがすべてだと言わんばかりの青年の意識というものがそこに反映しているような気持ちが私はしてならないところがあるわけでありますが、この形式主義というものは、少なからず私は情報社会の産物だと思っているんです。つまり、情報界を通して流れる情報というのは外面に映るものしか流せない。人の内面というのはなかなかうまくこの情報社会で流通させることができないものだから、どうしても外面尊重という気風を生み育てざるを得なかったのではなかろうかと思えてなりません。
二つ目には競争主義、便宜主義とでもいうべきものでありまして、小さな努力で要領よく大きな成果を上げることが是とされ、とうといことであったとしても、大きな努力をあえてそこに注いで生きるような生き方というのはばかな生き方であると言わんばかりのこの世相というものが、どれほど若者たちにみずからの人間成長というものを忘れさせ、そしてその中で要領よく生きることばかりを推奨するような社会をつくってしまったかということも、改めて私たちは考えねばならない問題だと思います。
それから、三つ目には小市民主義。自分さえよければ、今さえよければという非常にちっぽけな、人間というのはもっともっと大きい可能性を持っているはずなのに、その人間存在の一番小さなところに自分が安住して、それでよしとする考え方。これも、この情報社会がいろいろと分断してきた人間関係というものの中に生まれてきた現象のような気持ちがしてならないわけであります。
ですから、私は、先ほど倫理の問題というふうなことを取り上げて御答弁をいただいたわけでございますけれども、この日本社会の基本問題を解決していこうとするならば、やはりこれらの課題というものを避けてはならないんじゃなかろうか。社会のあり方そのものがどういう社会のあり方であるのか、そして、当然それには個人の内面の話というものも一緒に考慮しながら、これは当然強制はできない種類のものでございますけれども、しかしそれを十分検討しながら、この国がいかにあるべきかということを問いかけていくということの必要性がある。
だから、人間教育というものを並行して行わなければ、恐らくこの個人情報保護という問題も、ただルールがこう決まったからそれで機能しますよという問題だけではない、こんなふうな印象を持ってならないところがございます。またこの点は御一考いただければありがたいと思います。
最後の質問になろうかと思いますけれども、個人情報保護法の中にある、先ほど来も随分議論がありました五つの理念、目的外の利用制限だとか、適法、適正な情報取得、正確性を担保すること、その情報の安全管理、本人の情報への関与性、これらのことを基本理念としてうたってこの個人情報保護法が構成されているわけでございます。
問題は、例外の部分になりますところの政治であり、報道であり、宗教であり、学問研究であり、これらのものが法的な意味では例外的に、だから刑罰の対象にならないとしても、しかし、個人が本来持つべき基本理念という面では、この五つの理念というものは極めて大事な理念ではなかろうかと私は考えております。この点についての御所見があればお聞かせいただきたいと思います。
○細田国務大臣 四つの分野において、個人情報の保護について例外規定、除外規定を設けておりますが、これは決して個人情報の保護の必要性がこの四つの分野において低いということで行っているわけではありません。むしろ、除外を受けたものについては、個人情報の適正な取り扱いを確保するために必要な措置をみずから講ずるよう努力すべきだということで規定しておりまして、我々政治の世界の者もこの除外の方に入っておるわけでございますけれども、ぜひ我々も心してこのことは対応していかなきゃなりませんし、他の分野についても同様だと思っております。
○小野委員 とにかく、この個人情報保護法案につきましては、冒頭にお話し申し上げましたとおり、百五十一国会から始まってもう一年半余り、この委員会に付託をされて、なかなかそれが進展してこなかった課題でございます。
いろいろなところでこの必要性が指摘をされながら、調整も行われながら、今後の取り組みをどうするかということに議論が進められていると聞いているところでございますけれども、これはもうとにかく一般の人たちを含めて最小に情報社会に対しての規制をかけようという、第一歩を記すのがなかなか難しいタイプの法律なんだろうというふうに思うわけでございますが、しかし一方では、先ほど申しましたとおり、現実にこの課題において問題を認識される方々がたくさんおられるわけであります。
ですから、国としても一面柔軟な対応を持ちながら、この個人情報保護法というのはあくまで国民生活の権利を守るものである、それには情報社会といえども義務が伴う、また責任が伴うというふうなことをきちんと位置づけてやっていくことが必要でありましょうし、また、見直し規定等を置くという提案もなされているところがあるようでございますけれども、こういうものは、とにかく動き始めてみたところが、いろいろな課題がそれに伴ってあらわれてくるということもございますでしょうから、ぜひこの法律が制定されました後も、その運用上の問題解決に加えて、法律自身も必要に応じて常に訂正し続けるというような柔軟性があっていいと思うんですね。法律は一回つくったらそれは絶対のものであるというふうに言われる方もおられますけれども、私はそれは大きな誤解だと思います。世の中がどんどん変わる、人々の心もどんどん移り変わる、そういう中にあって、法律というものがいつまでも同じものであっていいはずはない。
ここでいろいろな議論をするのは当然のことでございますけれども、その議論の大きな集約点をとって、とにかくこれは早くつくることだ、早くつくり上げて、実際に機能させていきながら、修正点を逆にそのプロセスの中で見出していくということを政府も大きな包容力で見ていただきたいと思いますし、また国会の場におきましても、今すべてを想定して法律をつくるということは恐らくできないと私は思います。
だから、いろいろなことがこれから起こってくるわけでありますから、各党協力しながらいい個人情報保護法をこれからつくっていくように、私どもも努力したいと考えていますので、何とぞよろしくお願い申し上げたいと思う次第です。
以上で質問を終えます。
○佐々木委員長 以上で小野晋也君の質疑は終了いたしました。
次に、達増拓也君。
○達増委員 きょうは私は、自由主義インターナショナル、リベラルインターナショナルのネクタイをしてまいりました。このリベラルインターナショナルというのは、世界各国の自由党が加盟する団体でありまして、我が国自由党も参加しております。ことし新しいデザインにしたのできょうはつけてきたのでありますが、世界の自由主義者にとって、情報通信技術の発達の中でいかにして自由を守っていくかというのは共通の課題であります。
情報通信技術の発達の中で、個人の情報がデータとして大量に、高速に処理され、そして一瞬にして世界のどこにでも行ってしまう、そういう新しい可能性が出てくる中で個人のプライバシーや人格を守っていこう、そういうOECD勧告が八〇年に出ました。それを受け、八〇年代、九〇年代、イギリス、ドイツ、フランス等で法制化が進み、またアメリカでも独特の法制化が行われ、そしてEU指令というものも出てきております。
自由を守る、自由を追求する我々の仲間も、各国であるいはEU議会でそういう活動に取り組んでいるわけでありますけれども、そういう各国の取り組みの成果、OECD勧告でありますとか欧米諸国の法律と比較した場合に、今私たちの目の前に出ている個人情報保護法案というのは一種異様なものであります。
どこが異様かといいますと、問題になっているのは、情報通信技術の発達の中でいかにして個人のプライバシー、人格を守るか、テクノロジーからいかにして個人の人格を守るか、プライバシーを守るかということであります。当然、問題になるのはデータとしての個人情報であります。コンピューターで高速処理され得るような、データファイルでありますとかデータベースでありますとか、そういう個人データをどうやって守るか、乱用を防ぐか、プライバシーや人格を傷つけることを防ぐかということがテーマでありまして、諸外国の法律のタイトルあるいはその目的、原則等々の中でも、あくまで対象はデータとしての個人情報、守るべきはテクノロジーから個人の人格やプライバシーを守るというふうな趣旨がはっきりあらわれるような法律になっておりますが、この個人情報保護法は、第二章、基本原則というところで、広く個人情報を取り扱う者全体を対象に基本原則を定めている。これはデータに限らずあらゆる個人情報が対象であります。コンピューター処理されるもの以外のものも含めあらゆる個人情報が対象、そしてすべての個人、団体、法人、機関が対象、個人もまた対象になっている。
なぜこのように諸外国に例を見ないような広範な基本原則を持つこういう法案を提案されたのでしょうか。
○細田国務大臣 個人情報は、いわゆるプライバシーを初めとする個人の権利利益に深くかかわり、個人の人格尊重の理念のもとに慎重に取り扱われるべきものであります。特に、IT社会では、あってはならないことでありますが、万人が被害者になりまた加害者になり得る社会でもあります。
このような観点から、法案では万人の自主的な努力義務として基本原則を定めておりますが、その趣旨は、官民を通じた立法指針としての役割を期待するとともに、本法第五章に定める具体的な義務が適用されない小規模事業者や個人的な利用などについても自主的な努力を求めることによりまして、社会全体としての個人情報の保護のレベルアップを図ることとしているものであります。
○達増委員 私は、このような包括的な基本原則を定めることは根本的に間違っていると思うんです。一言でなぜまずいかと言いますと、特に個人が他人の個人情報を取り扱う場合を考えてみればすぐわかると思うんですけれども、実は、他人の個人情報を取り扱うこと自体、その取り扱う側の個人にとっては、それ自体プライバシーの問題であったり自分の人格にかかわったりすることなんですね。ですから、そういう振る舞いに対しても法規範で縛ってしまうことによって、本来テクノロジーから守るものであったはずのプライバシーであるとか人格をかえって法律によって縛ってしまう、そういうそもそもの目的に矛盾したものとなってしまうおそれがあると考えるからであります。
具体的な例を出すとわかりやすいと思いますけれども、非常に個人的な、パーソナルな例を、身近な例を考えてみましょう。だれでも住所録とか電話帳というものをつくると思います。
確認しますけれども、これも個人情報を取り扱う者という基本原則の法規範性が適用されるものになるんでしょうか。個人が住所録や電話帳をつくって、その中にある特定個人の名前や電話番号や住所やその他いろいろ書き込んだりするようなこと、これは個人情報を取り扱うということになるんでしょうか。
○藤井政府参考人 住所録や電話帳が個人情報を取り扱うということの対象になるかどうかという御質問でございます。
住所録、電話帳であっても、個人識別性がある個人に関する情報ということであれば法律上は対象になるということでございます。
ただ、一言申し添えますが、基本原則の趣旨というのは、まさにそういう非常に広範な個人情報の取り扱いがあり得る、それぞれの個人情報、住所録なら住所録なりの個人情報の性質あるいは利用目的、それにふさわしいような取り扱いをするように努力していただきたいという趣旨のものでございます。
○達増委員 政府として努力してほしいという気持ちはわかります。政府がそういう気持ちを持つ分にはいいんですけれども、それを法規範として法律にして、それですべての個人を縛ってしまうことは、これは、講談社さんが出している日本歴史の本で「帝国の昭和」という本が最近出たんですけれども、大政翼賛会の本質は包摂することによる抑圧だったと書いていまして、つまり優しく包み込むことで抑圧する、包み込む側は親切だと思ってやっているわけです、こうした方がいいよ、ああした方がいいよと。ただ、そういうことでかえってそれは大きなお世話でありまして、個人の内心の領域に公的機関が入り込んでいく、そういう包摂による抑圧、それと同じようなものをこの基本原則に感じます。
例えば、基本原則の最初の利用目的による制限ですが、「個人情報は、その利用の目的が明確にされるとともに、」、目的をまず明確にしなきゃならない、そして「当該目的の達成に必要な範囲内で取り扱われなければならない。」。利用の目的を明確にしろ、そういう法規範ができたとします。個人が電話帳や住所録をつくったとしますと、これはサークルの電話連絡網として使わなければならないのか、これを年賀状のあて名書きに使ってはいけないのかとか、目的をはっきりさせなきゃならないとか思い込むと、まじめな人ほど日常生活が萎縮されてしまう。
普通の個人が他者の個人情報を取り扱う際には、むしろ目的をはっきりさせないところに相手方との交際を豊かにしていく可能性が広がるということもあります。あるいは、自分が就職したときに、ビジネス、営業マンになった場合に、営業の仕事のためにまず自分の知っている人からセールスに回ろうとしてそれを使うこともあるでありましょう。そういうふうに、個人が自由な主体性を持って生きていこうとするとき、他者の個人情報の取り扱いというのはかなり柔軟なものになってくるはずでありまして、およそ国家や何かがそういった営みに法規範をかぶせるということはあってはならないことだと思うんですけれども、この点、政府、いかがでしょうか。
○藤井政府参考人 委員御指摘のとおり、基本原則ということになりますと、万人の取り扱いに係るいわば努力義務ということになりますので、やはり柔軟な物の考え方で実施していただくということになろうかと思います。その意味で、特に基本原則は第五章に比べて極めて包括的、一般的、抽象的にしておりますのは、まさに先ほども申し上げましたが、個人情報の取り扱いの趣旨あるいは目的、それから当該個人情報の性質、そういったものを判断していただいて、みずから適切に努力していただきたいという趣旨でございます。
例えば、住所録を、サークルの目的を年賀状に使うということは、社会通念的には当然許されている範囲内だと考えられますので、そういった範囲内であれば、特段、もともと努力しなきゃいかぬということのほどのものでもないと考えております。
ただ、いずれにしても、果たしてそういうことを基本原則を読んだ方々がすべて的確に理解できるのかというような御指摘の意味があるということであれば、それはやはりそういうこともあろうということで、もしこの基本原則が実施されるということになれば、政府としても、やはりその趣旨の徹底というものは極めて重要だというふうに認識しているところでございます。
○達増委員 社会通念上大体わかるというのは全くそのとおりなんですけれども、そういう、社会通念はこうだということを法規範で、法律の形にしたり、あるいは法解釈の問題、今まさに法解釈の問題として社会通念上大丈夫ということだったんですが、社会通念が一々法解釈の対象になるようではいけないと思うんですね。それはまさに、ヘーゲル流に国家と社会を分けたとした場合、これは社会の中で自由に任せておくべき話であって、国家が法律で規制していく部分ではないはずであります。
先ほど小野委員が、情報化の問題は教育も重要だとおっしゃいましたけれども、この利用目的に関する制限の第四条について、もしこの法律が決まってしまったとすると、学校で、ここにこう書いているけれども、君たちは気にしないで自由に住所録とか電話帳をつくっていいよとかという教育をしなきゃならないとすれば、それは非常に矛盾した形だと思います。
教育の問題といえば、伺いますが、この法律の第三章、第四章というのは、国や地方公共団体の責務、そして国や地方公共団体の行うべき施策について規定しているのでありますが、これも第五章以下の個人情報取扱事業者の、まさにデータの世界ですね、個人データに関する個人情報保護のみについて国や公共団体の責務や施策を定めているのか。もし、そうでなく、基本原則に関する国や地方公共団体の責務や施策も定めているとすると、まさに公共団体としては、学校でちゃんとそういう基本原則を教えなきゃならないとか、あるいは、そういうことを教えることが行政として評価されるとか、そういうことになってしまうんですが、この三章、四章というのも、五章以下のみならず、二章、基本原則も含んだものなんでしょうか。
○藤井政府参考人 お答えいたします。
三章、四章と二章の関係ということであろうかと思うんですけれども、御指摘のとおり、三章も四章も、やはり基本原則を受けた形でそれを具体化する、そのためのいわば国の責務、地方の責務、それから総合的な施策を講ずるための基本方針等を策定するという形になってございます。
ただ、まさに先生御指摘のとおりでありまして、個人情報取扱事業者とか、個人情報を取り扱う方々にはさまざまな方々がいらっしゃいます。さまざまな分野があります。むしろ、そういったものを一律的なかたい制度で規律するということの方が問題だということで、そこはいろいろのバラエティーを設けながらつくっていかなきゃいかぬわけです。
ただ、いかにバラエティーを設けるといっても、国としての全体的な、総合的な体系性というものはやはり必要である。と申しますのは、やはり、分担管理体制の政府でございますので、それぞれ各省庁が、例えば所管業種で特に個人情報取り扱いに問題になるようなところについてはそれなりの施策をやっていただく必要がございますし、そうでないところについては、逆にむしろ規律しない方がいい。
そういうような、むしろ全体的な施策の体系をやはり国民の皆様方の目に見える形で展開するという意味でも四章の規定というものは重要なんだろう、こういうふうに認識しているところでございます。
○達増委員 日本は、欧米諸国に比べても、かつて公権力が個人の内心に立ち入ったり、個人の内心を深く規制しようとしていろいろトラブルを起こした歴史があるわけでありますから、むしろ、諸外国の法制度よりも抑制的に、個人データの保護固有の法律という形にしていく必要があるんだと思います。
住所録とか電話帳とかの話であれば、まだこれはかわいげがあるといいますか、例えばそれを、「目的の達成に必要な範囲内で正確かつ最新の内容に保たれなければならない。」とかいうのも、それも大きなお世話という感じでありましょうが、まじめな人ほどそういうのを意識すると日々暮らしにくくなってくる。
透明性の確保についても、「個人情報の取扱いに当たっては、本人が適切に関与し得るよう配慮されなければならない。」電話帳や住所録の相手側に時々見せて、これでいいですよねとか一々やらなきゃならないのかとか、まじめな人は考えるかもしれませんが、それも大きなお世話。
ただ、この辺はまだ笑い話的に聞いていることができるんですけれども、報道、取材とか、そうなってくると、だんだん笑い話では済まなくなってくる。取材の萎縮効果については、既に議論が多くなされております。
繰り返しますが、そもそも、個人が他者の個人情報を取り扱うこと自体、それは非常に内面にかかわる、プライバシーとか人格にかかわることであります。どういう人を自分の住所録に名前を入れていくかということは、その人自身のプライバシーや人格にかかわることでもあります。そういう、個人の人格、内面に深くかかわっているということが極端に出てくるケースが、報道、取材であったり、学術研究であったり、あるいは宗教、政治。この四つの分野は、個人が自由な主体性の発露として正義や真実を追求しようとするとき、個人として他者の個人情報に触れながら取材をしたり報道をしたり、あるいは学術研究をしたり、また、宗教、政治、そういった分野にかかわっていく。
例えば、宗教的指導者に関する個人情報というのもあると思うんです。今、ある宗教の宗教的指導者が生きている個人であるケースがあります。その宗教的指導者の生年月日から、どこに住んで、どういうことをして、いつどういう演説をしたとかいう、それもまた個人情報でありますけれども、そういう宗教的指導者の個人情報について個人がどう取り扱うかということを、国が法規範で決めてしまっていいものかどうか。
東京都知事が、まじめに、これは地方公共団体として、この基本原則を守るために努力しなきゃならないというとき、学校で、君はある宗教を信じて、その指導者の個人情報をこういうふうに扱っているようだが、それはよくないよとか、ちゃんと新しくしておきたまえとか、そういうふうに公権力が、そういう宗教に、宗教そのものにかかわっていくわけではなく、個人情報の取り扱いという名目で個人の内心に立ち入る危険性もあるわけです。
一応政府に聞いておきますと、個人が他者の個人情報を取り扱う場合、その他者は宗教的指導者でもあり得る、これは当然ですよね。
○藤井政府参考人 御指摘のとおりでございまして、宗教人の方であろうが、そういった方の識別性のある情報というようなものは個人に関する情報ということで、対象になります。
ただ、これも大臣等から既に御答弁申し上げているところですが、そういうセンシティブな情報の取り扱いの問題というようなものは、単に収集制限するというよりは、必要な場合は収集せざるを得ない場合はあるわけでございまして、むしろ、そういったものをより厳格な本来の目的の中で利用していただくとか、そういうようなことをこの法律が定めようとしているところでございます。
ただ、ちょっと誤解されるとあれなんですが、あくまで基本原則の部分については、そういった効果というのは努力義務でございますし、五章の方は、先ほど来御指摘のような、IT処理される個人データということでございます。
○達増委員 宗教的指導者に関する個人情報の取り扱いも、今の基本原則がカバーしてしまう。これはやはり法規範としてあってはならないことでありますから、およそOECD勧告も含めて諸外国の法律、法令というものは、こういう包括的な基本原則は置いていないんだと思います。
個人が他者の個人情報を取り扱うということの意味、さらには、人間が情報を取り扱うということの意味、それは、個人の自由な主体性の発揮として正義や真実の追求に連なっていく。そういう内面的な、非常に尊厳に満ちた活動であるからこそ、そう簡単に公権力で縛ってはならない、法規範性のもとに置いてはならない。宗教とか道徳とか、そういう世界につながっていき得る話でありますから、法規範性の中にだけ閉じ込めるわけにはいかないという、非常に基本的なことを諸外国の国会議員たちは当然わかっているわけでありますから、こういう法律はつくらないし、恐らく審議の対象にもしないのでありましょう。こういった法案が国会に提出されて審議の対象になっているということ自体、国際的な非常に恥ずかしいことだと思います。一分一秒でも早くこういう法案は撤回していただきたいということを強く思うものでございます。
さて、そもそも必要なのはテクノロジーから個人のプライバシーや人格を守ることであるという観点からいたしますと、個人情報保護に関する監督を主務大臣に縦割りで分けている体制について、この法案の後半の方で書かれているわけでありますけれども、これもいかがなものかと考えます。
諸外国でも、特別の第三者機関、データ保護の専門的な機関を設けまして、恐らく、データファイルでありますとかデータベースでありますとか、そういったものの機械的な専門的なことにも通じたスタッフを集めて、大量高速処理される個人データというものが国境をも越えてあっという間に世界の果てまで移動し得る、そういうものをチェックし、データの乱用につながったりしないような、哲学、思想はもちろんですけれども、そういう技術的な知識も持った人たちがきちんと監督することが適当なのでありましょう。
したがって、これも政府に伺いますけれども、こうした個人情報保護をやっていく場合には、やはり専門的な第三者機関が監督するのが適当と考えますが、いかがでしょうか。
○細田国務大臣 本法案に定めます義務規定は、事業活動に伴う個人情報の取り扱いを規律するものであります。したがいまして、各事業を所管している大臣等がこれに伴う個人情報の保護に関する事務についても一体的に行うことが合理的かつ実効的であると思っております。
新たな第三者機関の設置については、既存の行政機関と事務が競合し、屋上屋を架することになるのみならず、責任関係が不明確になるおそれがありまして、さらに、地方組織を含む膨大な組織の整備は行政改革の流れにも反するのではないかということから、このような法体系になっておるわけでございます。
○達増委員 テクノロジーから個人のプライバシーや人格を守ることが目的なんだということを徹底すれば、もう少し政府の中にも、そういう強力な体制、専門的な体制をつくって当たるべきではないかという発想になってしかるべきではないかと考えます。
では次に、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法案について伺いますけれども、罰則の問題であります。
テクノロジーから個人の人格、プライバシーを守る。二十世紀後半からの情報通信技術の急速な発達によって、今までできなかった個人データの大量処理、高速処理、そして瞬間的な移動ができるようになって、それで個人の法益が今までなかったような形で著しく害されるおそれが出てきている。それを食いとめ、それを行った者を罰していくに当たっては、これはやはり、既存の国家公務員法の枠組みの中の守秘義務違反というのとは質的に違うんじゃないかと思うんです。また、懲戒処分のような一般の行政処分の中で処理されるものでもなく、罰則としては、守秘義務違反というのは、職務上知り得たことをぽろっとしゃべってしまう、もちろん単にぽろっとしゃべるだけではなく、意図的に、かなり分厚いファイル、国家機密などをまとめてそれを漏えいしてしまうという、ただ、これは単なる守秘義務違反というよりは、これはこれでまた次元の違う、スパイ防止法的な、そういったもので罰せられるべきことなのでありましょうけれども。
話をもとに戻しますと、そういうデータファイルのような形になった個人情報の取り扱いを正しく行わなかったことについては、独自の罰則の対象として独自の罰則を科すのが適当と考えますが、いかがでしょうか。
○片山国務大臣 何度も当委員会でも御議論いただいておりますが、我々は、公務員は法令遵守義務があるわけですね。それからまた、公務員として知り得た秘密は、これは守秘義務というのがある。その守秘義務については、今の公務員法上罰則をかけております。それから、残りの法令遵守義務については、この違反は懲戒処分で対応する。基本的にはそういうことなんですね。ただ、先ほども細野委員にも申し上げましたように、守秘義務違反の罰則以外に、職権乱用罪だとか公文書毀棄罪だとか、その他ございまして、そういうもので総合的に対応すればこの担保はできるのではなかろうか。
これは、なかなか御議論があるところだと思いますけれども、我々は、そういうことでこの法律を構成しておるわけでございまして、そこのところは御理解を賜りたい、こういうふうに思っております。
○達増委員 守るべきものに対するより強い守ろうという気持ち、そして闘うべき相手に対するより強い闘おうという気持ちを持たないとだめだと思うんですね。そこが弱いゆえにこういう法案が出てくるんじゃないかというふうに思います。
きのうのアロヨ・フィリピン大統領の我が国国会での演説は非常に感動的な演説でしたが、締めくくりの言葉にもあったように、まさに守るべきものは自由であります。そして、アロヨ大統領の演説の中にありましたように、自由を守る我々の営みは大きく前進はしているけれども、新しい敵というものが常に登場してくる。国際的なテロが今一つのそういう自由に対する敵として出てきているわけでありますけれども、情報通信技術の乱用、テクノロジーの乱用というものもまた巨大な敵でありまして、要は、そういった敵をいかに倒すか、そういう敵から個人の人格やプライバシー、自由な主体性を発露し得る、そういう個人の内面というもののかけがえのなさをいかにきちっと国として守っていくか、そこが問われているんだと思います。
そういう意味で、政府提出法案は、そういう根本のところからまだまだ足りない。したがって、もし本気でやる気があるのなら、一たん撤回の上もう一度出し直すべきでありますし、やる気がないのであれば、下野していただいて、我々に政権をゆだねていただければ我々がやるということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○佐々木委員長 以上で達増拓也君の質疑は終了いたしました。
次に、河合正智君。
○河合委員 公明党の河合正智でございます。
本年十一月二十九日、衆議院本会議におきまして、憲法調査会の中間報告書の概要が報告されました。その中で、重要な観点として一つだけ指摘されました中に、次のような一節がございました。科学技術の発展、情報技術の革新は高度情報化社会をもたらしましたが、その反面、個人のプライバシーを大きく脅かす側面を有するようになり、このような変化は、憲法の骨格ともいうべき人権保障のあり方に大きな影響を与えるものでありますとの一節でございました。
まさに、当委員会に付託されております個人情報保護法案初め関連五法案、この可決成立をさせることは、時代の要請でございます。住基ネットの本格稼働を明年に控えた今日、多発する個人情報の漏えい事件は、国民の間に底知れぬ不安を抱かせております。本法案の早期成立は、国会に課せられた責務であると私は考えます。
そこで、御質問させていただきます。細田大臣にお伺いします。
個人情報保護法案の基本原則に関しましては、メディアからは、法的強制力はないとしましても、条文がひとり歩きして、基本原則があること自体が報道の自由を侵害するおそれがあるとの危惧が表明されておりますが、このような危惧が払拭されるようにすべきではないかと考えますが、いかがでございましょうか。
○細田国務大臣 先ほど来、いろいろな御議論がありましたけれども、過去のいろいろな歴史等を引かれまして、日本において、この基本原則について、こういう規定があると、何らかの規制、私権の制限、報道の自由、表現の自由に対する脅威になるのではないか、こういうような御議論をいただいていることも事実でございます。
もちろん、そのような意図は全くないわけでございますし、そのような明確な規定を置いているわけではなく、精神的なといいますか、基本の方針を示しておるのみでございますので、そのような危惧は存在しないと考えておりますけれども、やはり、この日本社会におきまして、あるいは国会におきまして、これは基本的にどのように考えたらいいかという非常に大きな議論が起きておりますので、河合議員おっしゃいましたように、虚心に、今後、この規定のあり方について、国会においても御検討いただきたい、こう思っております。
○河合委員 そもそも、我が国におきます個人情報保護法制を見直すべきだという議論の中心には、一九九五年のEU指令に基づきます第三国へのデータ提供の制限の問題があったはずでございます。つまり、EU構成国は、個人データの第三国への移転は、当該第三国が十分なレベルの保護を確保している場合に限って行うことができるとするものでございます。
その上で、一九九七年のEUの個人情報保護に関する特別委員会による勧告を受けまして、ヨーロッパ諸国はすべて、データのセキュリティーにつながる安全管理につきましては義務規定となっているとの本年七月二十四日の本委員会におきます藤原靜雄参考人の陳述は、まことに重要な指摘であり、十分留意すべきと考えます。つまり、データのセキュリティーにつながる部分におきましては、組織的または技術的に万全の措置をとることを求めないと、ホームページから大量の情報が流出してしまうことを防げないとの認識をヨーロッパの諸国はすべて共有しているとの趣旨でありました。このことを特に主張しておきたいと思います。
さて、細田大臣に重ねてお伺いさせていただきます。
メディア等からは、取材相手が個人情報取扱事業者の場合、主務大臣からの関与により、萎縮効果を生じているのではないか等の懸念が表明されているところでございます。公明党としましては、このような懸念を払拭するために、取材相手の情報提供行為につきましても主務大臣の権限を行使しない旨、法案に明記すべきと考えておりますが、この点について大臣はどのようにお考えでしょうか。
○細田国務大臣 取材相手が個人情報取扱事業者の場合、取材の相手方は報道機関ではないため、個人情報取扱事業者の義務の規定自体は適用される場合がございます。しかし、このような取材の相手方に主務大臣が勧告や命令を行うことにより、取材活動、ひいては報道活動に影響を及ぼすおそれのある場合も想定されることから、こうした懸念を払拭するため、主務大臣が表現の自由を妨げるような報告の徴収、助言、勧告及び命令を行わないこととし、その旨を、第四十条で配慮義務を規定しているところでございます。
そのような配慮をいたしたつもりでございますが、国会での諸議論あるいは与党間のいろいろな議論がございますので、また、いろいろなお知恵を今後とも賜りたいと思っております。
○河合委員 同じく、細田大臣にお伺いさせていただきます。
メディアから、さらに、政府案の第五十五条の適用除外の規定につきまして、不明確であるとの批判が出ております。したがって、公明党といたしましては、報道の定義、報道目的と他の目的の場合の取り扱い、それから個人ジャーナリストや小説家の除外について法案に明記すべきと考えておりますが、これらについて明記することにつきまして、大臣はいかがお考えでございましょうか。
○細田国務大臣 報道とは、不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること、または、客観的事実を知らせるとともに、これに基づいて意見もしくは見解を述べることと解されています。
報道目的につきましては、報道を一部でも目的としているか否かの事実に基づいて客観的に判断されるものと考えております。
個人のジャーナリストにつきましては、報道機関に該当し、義務規定の適用が除外されます。小説家については、報道を一部でも目的としている場合は、本法で規定される報道機関に該当し、適用除外となるほか、創作物であります小説などの表現物は、個人情報に該当せず、本法の対象外と解されます。
しかしながら、これも先ほども申し上げましたとおり、さまざまな議論が行われてきましたので、こういったこと、関係者その他、皆様方に納得のいくような方向でぜひ御検討もいただきたい、こう思っておるわけでございます。
○河合委員 総務大臣にお伺いさせていただきます。
政府提出法案につきましては、官民の間で罰則の格差があるとの指摘がございます。それぞれ、基盤となっている法制が異なっているわけでございますから、単純に比較するということは非常に難しい問題でございますが、私どもといたしましては、国民の個人情報を預かる行政機関の職員につきましては、少なくとも、不正な収集、利用、提供等の取り扱いにつきましては罰則を設けることも必要ではないかと考えておりますが、いかがでございましょうか。
○片山国務大臣 この官民の問題はしばしば当委員会でも取り上げられておりますが、民間の場合には、これはまず最初に自分で是正してくれということを助言しまして、それから勧告をして、命令して、それでも聞かない悪質なものだけ罰則の対象になるんですね。しかも、情報は、個人情報全部じゃありませんで、データベース化したものだけですよ。
官の方は、全体について法令遵守義務がありますから、これも法律になれば、この改正案が通れば新しい法律ですから、法令遵守義務が万般にかかっておりますので、もしそれに違反すれば、公務員法上の懲戒処分ということ。懲戒処分は、一番厳しいのは懲戒免職でございまして、これになりますと、退職金はもらえない、年金も大幅にカットされる。それ以外に、停職だとか減給だとか戒告だとかありますけれども、全体はそれで網をかける。それ以外に、守秘義務違反、知り得た秘密を漏らせば、これは罰則にかかる。それからまた、同じことを言いますけれども、刑法の方で、職権乱用罪だとか公文書毀棄罪だとか背任罪だとか収賄罪だとかいろいろありますから、そっちの方に該当するものはそっちでいけるんじゃなかろうか。
というのは、罰則をかけるということは、ある程度、権利利益侵害と罰則との間でバランスがとれなければいかぬという基本的な考え方がありますね。それからもう一つは、犯罪になるわけですから、構成要件該当性というものが一つ大きな要素になるわけでありまして、その辺のうまい説明ができるかどうかだと思います。
そこで、我々としては、先ほども答弁しましたけれども、懲戒処分と守秘義務違反とその他の刑罰との総体的な対応でちゃんとやれるんじゃなかろうか。官の方は個人情報全部ですから、官民比べて民の方がきつくて官の方が緩いなんということは考えておりませんで、私どもは、官の方がきつい、こういうふうに思っているわけであります。
○河合委員 従来の御説明を伺っているところでございますけれども、公務員の法体系はそれぞれあるわけでございますが、スウェーデンにおきましては、それでもさらに罰則の規定を設けております。我が党としましては、この点についても十分検討すべきだと考えております。
それでは、政府参考人にお伺いさせていただきます。
個人情報保護法案の四十条では、表現の自由に対する配慮義務が課せられております。主務大臣が、報道機関による個人情報の取り扱いが一部でも報道目的が含まれております場合には改善命令を課すことはないとは考えますけれども、もし過って改善命令を課してしまった場合の処分取り消し訴訟におきます立証責任、これは主務大臣にあるのでしょうか、報道機関にあるのでしょうか。どのようにお考えでしょうか。
○藤井政府参考人 お答えします。
改善命令に関連する立証責任の配分の問題ということなんでございますが、行政事件訴訟における立証責任の配分という問題については、どうも、学説でも結構さまざまな考え方があるというふうに聞いております。ただ、一般的に言われていますのは、行政がいわば私人の権利義務を侵害したりあるいは義務負担を課す、そういういわゆる侵害処分というような場合は、それは基本的に、行政機関側の方に要件事実を立証する責任があるというふうにされているところでございます。
したがいまして、今先生御指摘の、報道機関に対して過って改善命令が出されたということで、それに対する取り消し訴訟が行われたという場合にあっても、いわば行政機関側が出した改善命令というような行政処分、それの要件事実は行政機関側に立証責任があるというふうに考えているところでございます。
○河合委員 最後になりますが、通常国会におきまして、住基法改正の附則の解釈につきまして、当委員会におきまして大変な激論がございました。いわゆる「所要の措置を講ずる」という解釈をめぐってでございますが。政府は法案を提出した、後、法案を成立させるのはまさに国会の責務であると私たちは深く自覚しております。一日も早くこの法案が可決に向けて進みますよう念願いたしまして、質問とさせていただきます。ありがとうございました。
○佐々木委員長 以上で河合正智君の質疑は終了いたしました。
次に、吉井英勝君。
○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
これまで内閣委員会それから財務金融委員会などの方でも、金融分野における個人情報が漏えいしている、悪用されているという問題など、具体的に取り上げてまいりました。やはり、各業態、業界分野ごとにきちんと高度情報化に伴って個人情報保護法制を充実していくということは、これは必要なことだと考えております。
しかし、今出ております政府案の最大の問題は、やはり表現、報道の自由を規制しているというところにあると思います。
その一つは基本原則ですが、基本原則で、利用目的の明確化、適法かつ適正な方法での取得、本人が適切に関与することなどが求められています。これは一見当たり前のような原則なんですが、報道側、取材する立場からすれば大変な脅威となってきます。例えば、不祥事など疑惑を持つ政治家を取材する場合など、まず個人情報を集めることから始まるわけですが、基本原則の本人関与を守ろうとすれば、一々本人の了解をとっていたら情報収集はできない。
つまり、基本原則は、報道機関の情報収集を初め、報道に支障を及ぼすことになるというふうに思うんですが、この点について、細田大臣にまず最初に伺っておきたいと思います。
○細田国務大臣 本法案におきまして、報道分野は、事業者に対する義務規定、主務大臣の監督の適用から一切除外しているわけでございます。また、取材の相手方等に対しましても、主務大臣が表現の自由を妨げるような報告の徴収、助言、勧告及び命令を行わないことを条文上明確にするため、配慮義務を規定しておるわけでございます。メディアを含む万人を対象とする基本原則は、各人による努力義務規定であることを明記し、公権力による関与や罰則は一切ないわけでございます。
このように、本法案は、表現の自由を不当に阻害することのないよう条文化していると承知しております。
○吉井委員 そうおっしゃるんですが、この基本原則は、疑惑の政治家にとっては、不正を暴露させない、使える法律になっているという面があります。国民サイドからいえば、疑惑の政治家保護法というふうに言われたりもしております。
ジャーナリストの江川紹子さんは、みずからの経験から、オウム真理教を告発する本を出したとき、教団から出版差しとめ訴訟を起こされ、刑事告訴もされ、教団は使える法律は何でも使った、個人情報保護法案の基本原則も取材手法に難癖をつける武器として必ず使われる、私のような組織的基盤のない者にはこうした裁判は大変な脅威だということを言っておられますが、フリーのジャーナリストにしても作家の取材活動にしても、これはなかなか大変になってくるという問題をやはり持っているわけです。
今もおっしゃいましたが、この基本原則は努力義務だからそれを根拠に直接裁判に訴えることは困難、しかし、民事、刑事裁判の中で取材方法が争点になれば基本原則が解釈原理として働く可能性はあるが、プライバシー保護とのバランスが図られるので報道の必要性が不当に損なわれる判断が示されるおそれはないというのが、大体、これまでからの答弁のスタンスであったと思います。
しかし、プライバシーが、あるいは個人情報保護の問題で民事訴訟が起きた場合に、基本原則が裁判官の解釈基準となり得るかどうかを判断するのは、この点で、先ほども裁判規範ということでは細野議員の方からも議論がありましたが、裁判官の解釈基準になり得るかどうか判断するのは、あらかじめ法解釈として行政側の大臣や官僚が示すのでなく、これは司法の側の裁判官だと思うんですが、細田大臣、この点どうですか。
○細田国務大臣 基本的に、この基本原則は、民事法に影響を与えるように規定されているものでは全くございません。それは、先ほど答弁の中にもございましたし、本法案が表現の自由を阻害するものではないというふうにお答えしたときも申しておるわけでございます。
したがって、法律上の規定としてこういうことが規定されておる。この規定自体は非常に、ごく当たり前の規定が基本原則としては並んでおるわけでございますが、この問題について、社会的に、あるいは歴史的な経緯からこれを不安視する声等があることは承知しております。したがいまして、この問題は、また国会等におきましていろいろ御検討いただくように今申しておるところでございます。
○吉井委員 一見当たり前のような原則ということを私もさっき触れたわけですが、実際に民事訴訟が起きた場合の基本原則が裁判官の解釈基準となり得るかどうかの判断というのは、これは、あらかじめ法解釈として行政側の細田さんが担当大臣として、あるいは官僚の方が示すというものじゃないわけで、これはやはり司法の側の裁判官が判断するわけですよ。民事裁判で賠償の規範となれば法的効果が出てきます。基本原則は損害賠償や記事差しとめの裁判の根拠として利用される危険性は十分あるわけですから、取材、報道を萎縮させる効果を持ってくるということは明らかだということは言わなきゃならぬと思います。
次に、報道機関の取材だけでなく、取材を受ける側、内部告発者の側の問題もまた同じだと思うんです。これまでの事件の多くは、内部告発が発端となって、その契機となったことは宗男事件、原発の事故隠し、食肉にせ表示事件など数多くあります。例えばこの委員会でも、先日来、私、東電等の不正事件、あるいはそれにかかわる問題などを取り上げましたが、もともと、内部告発すれば、社内で不利益とか、あるいはそうでなくても、電力の場合ですと、社内で人権抑圧があったり、長期にわたる人権裁判がありました。電力の幹部が不正にデータを隠しておった事実を知って告発しても、その証拠資料の入手と公表が適切でないとか、取材を受けた人が基本原則に触れるとかされると、これはもう取材協力はできないことになってくるし、東電のような不正事件は隠ぺいされるということになります。ですから、基本原則はこの告発者にも圧力をかけることになってくる。
現在でさえ大変なプレッシャーの中で内部告発というのは行われているわけですが、これに基本原則があってさらにプレッシャーをかけるということになりますと、これは内部告発つぶしになってくるのではないか、こういう問題が出てくると思うんですが、この点についても細田大臣に伺っておきたいと思います。
○細田国務大臣 これまでも、法律上または契約上の守秘義務、会社に対する社員の契約上の諸義務、本人との信義則等が存在しているにもかかわらず、取材協力は相応に行われてきたところであります。その理由は、このような取材協力が情報提供者の正義感、取材する者に対する信頼感により支えられた本人の見識に基づいて行われるものであることによります。したがいまして、今般、第三者提供の原則禁止義務等が制度化されたとしても、取材協力として事業者が行う情報提供につきまして法的な制裁等が想定されないことから、従来以上に取材の協力が得られなくなるというふうには考えられないわけでございます。
○吉井委員 内部告発される方というのは、東電の場合でもそうですし、各電力会社の核燃料の関係の方たちから私の方に寄せられてこの委員会でも御紹介しました、あの七〇年代のナミビアからの国連決議、安保理決議違反のウラニウムの輸入問題など、こういうのは、本当に勇気ある告発とか資料提供というものはこれまでからあったわけですが、しかし、民事裁判で賠償の規範になってくるということになってくると法的効果が出てきて、これは取材、報道の萎縮あるいは協力の萎縮という効果を持ってくることは明らかです。この点で、今おっしゃったようなのんきな話じゃないということを言わなきゃならぬと思います。
五月にも報道され、最近の報道でも、先ほどもありました、政府の個人情報保護検討部会の座長を務めた中央大学の堀部政男先生が、基本原則は不要だという削除案を支持する考えを明らかにしておられます。その理由について堀部先生は、専門委員会でも、基本原則の趣旨は義務規定で生かされているので、基本原則はかえって過剰な規制になるおそれがあると主張してこられました。それで削除案を支持したというふうに言っておられるわけですが、制度をつくった中心人物が、基本原則は過剰規制になるから要らないということを言っておられるわけですね。
私たちは、報道機関や個人への基本原則からの適用を削除する、こういうことをやはりきちんと行うべきだと考えておりますが、この点についての細田大臣の考えを伺っておきたいと思います。
○細田国務大臣 堀部先生も御参画いただいて、また責任者としてお取りまとめいただいたときには御了解をいただいた。ただ、その前に、こうではないかという御意見もいただいたわけでございますが、全体としてはまとめられた方向に沿って立法案の作成に取り組んだわけでございます。
ただ、その後、先生がいろいろお考えになっていろいろな対応をしておられる、いろいろなところで御意見を開陳しておられることも事実のようでございますから、私どもとしてはそういった点もさまざま今後考慮していく必要はあると考えておりますが、いずれにしても、国会での御議論、各党での御議論を待ちたいと思っております。
○吉井委員 専門委員会の議事録でも、この基本原則の法的拘束力の問題が大きな議論になったり、そういうこともありまして、報道機関を適用除外にするかしないかも大議論になっているわけですね。努力義務、自主的義務とはいえ、取材者も取材を受ける側も萎縮効果が働き消極的になってくる、こういう問題がもともとあったわけですから、それを無理押しで強行してつくった法律案ということになっているわけですから、これはやはりこの機会に報道機関、個人への基本原則からの適用を削除する、このことをきちんと行うべきであるということを申し上げておきたいと思います。
次に、法案の報道規制にかかわる解釈について裁量権が広過ぎるという、この問題についてであります。
個人情報取扱事業の義務規定では、放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関が報道の用に供する目的で取り扱う個人情報の場合、義務規定が適用除外とされておりますが、その個人情報が報道の用に供する目的かどうかを決めるのは主務大臣の判断によるとしています。主務大臣が報道目的でないと判断すれば、大臣の命令や処罰を受けるということになります。また、主務大臣は、事業者に対し、報告の徴収、勧告、命令を行う場合、表現の自由に配慮しなくてはならないとしているわけですが、この配慮の程度も主務大臣の判断に任されております。つまり、主務大臣の判断次第であり、行政の権限乱用の歯どめをかけるという具体的な仕組みがない限り、これは何の保障もないということを言わなきゃならぬと思うんです。
そこで、主務大臣制というのは言論、報道の自由に対して行政が介入するおそれが強い制度でありますから、報告徴収などを通じて行政に個人情報が過度に集中できるという制度でもあります。イギリス、フランスなど欧州各国のように、やはりこの点では行政から独立した第三者機関で行うべきだと思うんです。個人情報の保護、言論、報道の自由を守るという民主政治の根幹、基本的人権にかかわる重要な事務を新たに所掌するというものですから、これは第三者機関の新設はもちろん可能であり、当然のことだと思うんですが、この点についても細田大臣の考えを伺っておきたいと思います。
○細田国務大臣 本法案に定める義務規定は、事業活動に伴う個人情報の取り扱いを規律するものであります。したがって、各事業を所管している大臣等がこれに伴う個人情報の保護に関する事務についても一体的に行うことが合理的かつ実効的であると思います。
政府から独立した新たな第三者機関を設立することにつきましては、既存の行政機関と事務が競合し、屋上屋を架することとなるのみならず、責任関係が不明確になるおそれがあり、さらに、地方組織も含む膨大な組織の整備が行政改革の流れにも反するものになり、むしろ規制について強化されるおそれすらあると思っております。
○吉井委員 大体、行革だとか財政危機だというこのことを口実にして民主主義を規制する行政介入というのは、まず許されないことですよ。
行革というのは本来、むだな公共事業などを進める機構の縮小、一方では、国民の消費生活とか安全を守ったりとか、あるいは民主主義を根幹の部分できちんと守っていく上で必要な分野については、そういう第三者機関の充実というのはまさに行革本来のあるべき姿なんです。行革というのは何でもかんでも全部削ればいいというものじゃありませんから、むだなものを削って必要なものはきちんと確立していく、そういう点では、行政から独立した第三者機関をきちんとつくるということは当然の道筋であって、そうしたことがなければ、報道の自由を規制しないということを幾ら口で言っても、その担保にはならないということを申し上げておきたいと思います。
次に、ITの発展で、今、行政機関、金融業界、情報通信産業などの民間企業に膨大に個人情報が集積されるようになってきております。個人情報の売買、漏えいという問題があり、プライバシーの侵害という事件が多発しております。これがそもそも個人情報保護の出発だと思うのですね。ところが政府案は、個人情報保護の法制度としても、これは極めて不十分だと思います。
まず、政府案が、今日のプライバシーの定義と言われる、自分の情報は自分でコントロールするという自己情報コントロール権の立場に立っていないという大きな欠陥を持っています。法案の目的には、「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」と規定しているわけですが、ここで言う個人の権利利益とは、政府の解説書によると、それはプライバシー全体を法律の具体的権利として設定しようとするものではないと説明しています。
個人情報には、プライバシーに深くかかわっている情報もあれば、それほどでもない情報もあるわけですが、個人情報保護の核心はプライバシー保護でなければならないと思うわけです。この法案は、国民の権利としてのプライバシーを守るという立場に立っていないんじゃありませんか。これは細田大臣に伺います。
○細田国務大臣 個人の自己情報コントロール権につきましては、プライバシーに関する最近の学説上の考え方の一つであるとは承知しておりますが、その具体的な内容、範囲及び法的性格に関しましては、さまざまな見解あるいは見解の相違があると承知しております。
本法案では自己情報コントロール権という文言は用いておりませんが、個人情報の保護を図るために、本人からの求めに対する開示、訂正、利用停止等の制度を盛り込んでおり、本人の関与について具体的に規定しておりますので、特に問題がないのではないかと思っております。
○吉井委員 学説にあれこれの見解があるという話のたぐいじゃなくて、やはり個人情報保護の核心というのはプライバシー保護ということですし、国民の権利としてのプライバシーを守るという立場に法律の中でどれだけきちんと立つかということ、当然そのことは、自己情報コントロール権というものをきちんとどういうふうに確立するかということにかかわってくるわけであります。
法案は、国民の権利よりも企業の都合を優先させているという面があります。例えば、自分の情報開示を求める請求があれば、情報を保有している企業は開示しなければならないということになってはいるんですが、しかし、例外規定がありますね。事業者の業務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある場合には開示しなくてもよいということになっています。
また、収集した個人情報を収集した目的以外に使う場合、第三者に提供する場合、これらの場合、原則は本人同意を得るということになっているんですが、当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある場合は本人同意の必要がない。これでは企業が個人情報を勝手気ままに使い放題ということになりますし、ここがざる法と言われているのは当然だと思うのです。
OECD勧告では、本人同意、個人の自己情報の存在開示、訂正、停止等の事業者への請求権などをきちんと示しているのですが、これを欠落させている。これでは、個人情報をできるだけ自由に使いたい、事業者負担を軽くしたいという経団連や銀行業界などの要求に沿ったものになってしまって、個人の権利より企業の都合を優先させたというものになっているんじゃありませんか。細田大臣に伺っておきます。
○藤井政府参考人 御指摘の点についてでございますが、この問題はよくメディアとの関係でも問題になるのですが、やはり個人情報に関する法律をつくる場合、個人情報の社会的有用性とかあるいは本人に対する有用性とか、そういうものもありますし、あとやはりこの法律の本旨は個人の権利利益を保護するための個人情報の保護ということにあると思いますが、そのあたりはまさに極めて重要な視点ということで、第一条の法目的において、「有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護する」、こういう位置づけにしているところでございます。
御指摘の、事業者の個人情報の取り扱いに関する利用制限とかあるいは提供制限とか、そういう基準をつくるに当たっても、まさに事業者側の有用性、あるいは、例えば顧客であれば、自分の情報を事業者に使っていただくことは顧客にとっての利便でもあるわけですから、そういう面での有用性、それから、何よりも忘れてはならないのは情報主体の権利利益の保護であろうと思うのですが、そのあたりのバランスというものを考えて基準をつくっているところでございます。
とりわけ、御指摘のあったところに触れますと、例えば、事業の遂行に支障があるからというような場合でも、「著しい」という文言をつけておるところでございますが、それは、こういう基準をつくる場合の一つのやり方として、普通の、均衡点である支障ではだめだ、むしろやはり、支障が著しくない限りにおいてはそれは保護すべきだというような基準になっておるわけでございまして、その部分はやはり、有用性に配慮しつつでありますが、権利利益の保護というものを重視した基準になっているというふうに御理解いただければと思います。
○細田国務大臣 ただいまお答えいたしましたように、できる限り例外的な不適用の範囲は狭くしようと努力して規定しておるわけでございまして、しかし、やはり例外は全くないというわけにもいかないというわけでございますので、御理解いただきたいと思います。
○吉井委員 藤井さんのさっきの配慮の話ですが、この配慮で、今、金融分野などでは個人情報使い放題、漏えい放題なんですよ。配慮ということでもって個人の情報についてひどい事態、みずからの自己情報コントロール権などに基づいてきちんと個人が個人で守っていくということには実態はなっていないということが非常に問題でありまして、やはりこういう例外規定によってそういうものが行われているということを指摘して、次にセンシティブ情報の方の問題に移りたいと思います。
思想、信条、人種、民族、門地、犯罪、その他非行に関する事実などに関する個人情報ですね。そうしたセンシティブな情報を収集したり蓄積したり利用することを禁止する法文というのは、今政府が提出中の個人情報保護法案には入っていません。
片山大臣、ちょっと地方自治体にかかわることで伺っておきたいのですが、かつて私、もう大分前になりますが、同和向け個人施策として、固定資産税や国民健康保険の同和減免を属地、属人主義で行うという部落解放同盟の要求で、大阪の堺市で、現代版のいわば壬申戸籍というのをつくったことがあります。それはなぜかといいますと、属人主義で同和向け施策をやろうと思ったら、同和地区出身者を、地区外であっても探さなければいけないですね。そういうところからこういうことになったわけですが、行政機関の個人情報保護法案にセンシティブ情報の収集禁止は入っているのかどうか、そしてこれについての考えというものを大臣に伺っておきたいと思います。
○片山国務大臣 先ほどの審議で細田大臣からもお答えがありましたが、センシティブ情報というものは定義が定かでないのですね。だから、今の行政機関の個人情報保護法は全部の個人情報を保護の対象にする、こういうことでございまして、利用目的がはっきりしている、それに限ってやる、まあ若干の例外はございますけれども、そういうことでやっておりまして、特にセンシティブ情報をどう扱うかについては、これから国民世論その他の成熟を待って対応していく。それで、どうしても特別な扱いが必要な特別の情報についてはそれぞれの法令で手当てをしていただく、こういうことではないかと考えております。
○吉井委員 要するに、センシティブ情報については収集禁止というのは入っていないということです。
時間が大分たってまいりましたから、福田官房長官に伺っておきたいと思いますが、政府案というのは、言論、報道の自由を規制するという重大な問題があります。また、個人情報保護の法制度としても極めて不十分という問題があります。ですから、法案はやはり撤回をして、本当に個人情報保護に役立つ法案として出し直すということが必要です。
そもそも本案は、当初から、五月に問題になりましたが、小泉総理が修正を指示するなど、欠陥法案でした。だからこそ、日本民間放送連盟全国二百三社、日本書籍出版協会四百九十二社、日本雑誌協会九十三社、日本新聞協会、新聞、放送、通信関係百五十四社、文字どおり全メディアがこの法案に反対をしています。
最近、与党の方でも法案を撤回して出し直すという方針を固めたとか、そういう動きがあるとか、いろいろ報道等では伝えられておりますが、議院内閣制のもとでは、当然与党と政府とよく連携をとってやっておられるはずですから、政府も承知しておられるはずだと思うんです。
そこで官房長官に、政府案を廃案にして新しい形で考え直す、こういう方向について、お考えというものを伺っておきたいと思います。
○福田国務大臣 法案につきましては、早期の成立を図るという観点から、現在国会においてさまざまな御尽力をいただいているところでございます。
廃案とかいうようなお話につきましては、そもそもこの法案の取り扱い、国会にお出ししておりまして、国会の権能でございますので、政府から廃案とかいった、そういうような取り扱いについて申し上げる、こういう立場にはございません。
ただ、この法案の趣旨というものは、IT社会における国民生活を守るための基盤整備、こういう観点から考えますと不可欠なものであるということでございますので、政府としては、ぜひとも速やかな成立をお願いしたい、こういうふうに考えております。
○吉井委員 個人情報保護というのは、冒頭にも申しましたように、そのことは必要なことです。被害の多い信用情報など、消費生活を送る上で、知らない間に個人情報が売買されているとか、さまざまな被害も出ています。
ですから、業態ごと、業界分野ごとに個人情報保護の必要な法整備を図っていくというのは当然必要なことだと思いますが、今出されておりますような政府案については、これは報道機関、個人の基本原則からの適用を削除するということや、主務大臣制でなく、やはりきちんと行政から独立した第三者機関というものを設けることとか、自己情報コントロール権をきちっとしていくことなど、多くの問題がありますから、やはりこれは速やかに撤回をして、抜本的に政府の方も考え直されることが必要だ。
もちろん私たちは、個人情報そのものについては従来より真剣な検討を行っておりますので、そういう立場で臨んでいきたい、このことを申し述べまして、時間が参りましたので終わりたいと思います。
○佐々木委員長 以上で吉井英勝君の質疑は終了いたしました。
次に、北川れん子君。
○北川委員 社会民主党・市民連合の北川れん子といいます。
きょうの議論を聞いておりまして、民間や地方、国に収集された個人情報が一体だれのものであるかといった点が、今の政府提案のものに対しての強固な廃案の意思を持つ者と、基盤整備であるから必要だという立場の政府との大きな違いになってくると思うんですが、政府の先ほどの答弁では、バランスの上において個人情報というものが収集した側にあるんだと言わんばかりの論調であったと思うんですけれども、その辺のことをまず藤井個人情報室長ですか、審議官でいらっしゃる藤井さんの方にお伺いしたいと思うんです。
「ストップ! 個人情報ホゴ法」という本が出ているんですが、その中で、個人情報保護担当室の担当者が、「個人情報には所有権が成立しない。例えば、ある人の家がどこにあるかは、客観的情報であって、その人のものではない」、つまり、個人情報は個人のものではないと明言されて説明をされたという一文があるんですけれども、こういう状況の場において、この点など、これが藤井さんだったかどうかわからないわけですけれども、今の一文を聞かれて、それから先ほどまでの議論と兼ね合わせて、藤井審議官は今どういうふうなお考えの立場に立っていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
○藤井政府参考人 まず、御引用の雑誌の件については、今は全く心当たりはありませんので、その問題とは別に一般論ということでお答えしたいと思うんですが、情報がだれのものかというのは、これは非常に難しい問題だろうと思います。御案内の知的所有権というような制度では、これは相当ある程度手続を持った上でだれの情報とか、そういうような制度になっておるわけですが、それ以外については、若干秘密保護法的な制度があるとか、そういうことで成り立っているわけでございます。
それで、今まさに新たにこういう個人情報保護法制というものをつくって個人情報の取り扱いというものを規律していこうということを試みているわけですが、その中でも、個人に関する情報がだれのものということは、率直に言って私どもの物の考え方ではなかなか結論が出ないと思っています。
今の法律は、個人情報がだれのものというよりは、むしろ個人情報のいろいろな取り扱いによって、その取り扱い次第で、いろいろ個人の権利利益に危険性が及ぶ可能性がある、個人のそういう権利に対する危険性を未然に防止するというような観点から制度をつくっておるわけでございます。これは、OECD八原則なんかも大体そういうような考え方でつくっておるわけですが、個人情報がだれのものかというようなことになると、なかなか私どもからはちょっとお答えすることは難しいかと思っています。
例えば、お医者さんのカルテなんかも、よく、書いたお医者さんの個人情報なのか、患者さんの個人情報なのか、あるいはメディアの関係でも、メディアが取材した結果の個人情報というのも、そのメディアのものなのか、あるいは取材された側のものなのか、いろいろな考え方があろうかと思うんですが、そこはちょっと率直に申し上げて、お答えする考えを持ち合わせていないということでございます。
○北川委員 ということは、これは雑誌ではなくて本なので、こういう説明を消費者団体にしたこと自身が間違いであったということだろうと思うんですけれども、では、その点は明確にしておきたいと思います。
日本には戸籍制度があって、何のために収集するのかという目的がないということで、国連などからも再三勧告を受けているというのが実態であるという点において、センシティブ情報の件が議論になりましたけれども、差別を生み出すおそれのある情報ということで、定義は明確な定義になっておりますので、その点なども後段の方でお伺いをしていきたいと思います。
「法律文化」の十一月号で、また藤井審議官がいろいろインタビューにお答えになっているんですが、きょうたまたま細野委員のときに配られた体系というものの図表がありますが、今回の「法律文化」に載っている中には、個別法という丸が入っているんですね。質問が、「今後、業種ごとの個別法を整備していく必要性は?」ということで藤井さんに聞かれたら、藤井さんは、「個人情報保護法案はあくまで最大公約数的なものです。」と。最後の結びには、「個別法の議論が進むことを願いたいと思います。」というふうに言われています。
これはちょっと新たな展開だなと思ってこれに着目したんですけれども、このいきさつと、では一体どの分野を最大公約数的なものとして今お考えなのか、御発言いただきたいと思います。
○藤井政府参考人 お答えいたします。
また雑誌の記載内容について直接お答えするというよりは、むしろ従来私どもの考えていた考え方を御説明したいと思うんですが、もともとこの基本法構想というのが、個人情報というのはさまざまな分野でいろいろな使われ方がされておるわけでして、そういうさまざまな分野にできるだけふさわしい制度をつくっていく、総合的につくっていくという構想に立っております。
その中で、今の法律というのは、普通の事業者、ある程度データベースで相当規模のものを事業の用に供しておられる方、どこにでもあるような、そういう普通の事業者の方々に対する規制という形でまずつくっておいて、それから、これは個人情報保護検討部会でも議論されていたんですが、特に、やはり取り扱い次第で個人の権利利益の侵害という面から非常に危険性の高い、そういう分野については個別法ということで御論議が進んでいたということです。
そういう個別法構想というのは引き続き今回の基本法制の中でもきちっと規定として入れているわけでございまして、特にどういう分野が考えられるかということになると、それはまさに今、各省庁が基本法が成立した段階から検討していただかなきゃいかぬという話だろうと思うんですが、ただ、いずれにしても、これも保護検討部会のときに話題になっていた、例えば、信用情報をどうするのかとか、あるいは通信事業関係をどうするのか、そういった分野についてはやはり重要な検討課題として引き続き残っているというような認識はございます。
○北川委員 でも、これは二〇〇二年十一月なものですから、新たにこの表に、これは内閣官房個人情報保護担当室による出典というふうになって体系イメージが出ているものですから、今信用情報云々とかといって語尾が消されていったんですが、これはポジティブリストの提案を政府が積極的にされたというふうに受けとめてよろしいんでしょうか。
○藤井政府参考人 お答えいたします。
けさほど来御指摘のあったポジティブリストは、むしろその雑誌では最大公約数を規律する法律、そこの対象範囲のつくり方として、普通の各国の法律というのは、大体一般的、包括的法律を出して、むしろネガティブリストで適用除外しているというのが多いんですが、そこはむしろ逆転して、ポジティブリストでそういう一般法的な制度がつくられないのかというような御指摘だったと思います。
個別法の問題は、むしろ、そういう一般法的なレベルではなくして、もっと厳格なきめ細かい制度、そういう面での規律が必要な分野という意味でございまして、先ほど申し上げましたように、信用情報なんか、売買事例の御紹介もございましたけれども、一たん悪用されると非常に重大な個人の権利利益の侵害のおそれがあるわけでございますから、そういったものについてはそれにふさわしい制度をつくるという、むしろそういう意味での特別法、上乗せ法と申しますか、そういう意味で申し上げているところでございます。
○北川委員 新たな展開になっていらっしゃる点を積極的に自己評価をされていないように受けとめるんですが、私たち社民党も、対案をつくった折にとても難しかったのが、非営利になぜこの法案がかけられるのか、また一般の、自然人と法律用語では言うらしいんですが、市民生活になぜこの法律をかける必要があるのかといった点でとても悩んだんですが、昨今は、梓澤弁護士等が提案されていたりほかの方もおっしゃっていますが、営利事業に限るべきだという提案があるんですね。
そういう意味で、個別法の業務の精査ということを政府自身されている点において、なぜ非営利にかける必要を積極的に今なお堅持されているのか、その点を少し御説明いただきたいと思います。
○藤井政府参考人 お答えいたします。
個人情報取扱事業者の定義にかかわる御質問かと思うんですが、なぜ個人情報取扱事業者というものを相当程度の個人データベースを事業の用に供している者としたのかと申しますと、それはやはり、そういった方々が、IT社会、言いかえるといわばネットワーク社会とコンピューター処理社会でございますが、そういった社会で、やはりそれの取り扱い次第で極めて大きな権利利益の侵害をもたらすおそれのある活動をしておられる方、そういう認識のもとでつくっているわけです。そういう見方からいたしますと、とにかく個人データをデータベースにたくさん蓄えておられてそれを事業の用に供しておられれば、それは、非営利事業であるか営利事業であるかにかかわらず、そういう目から見たら変わらないということでございます。
それと、御質問の趣旨を超えるかもしれませんけれども、非営利事業とかあるいは公益事業ということであれば個人情報取扱事業者が悪いことをしないというような意味で、そういった者は除外できるんじゃないかというような御指摘が、含まれているのかどうか知りませんけれども、もしそういうことであるとすれば、逆に、近年は営利事業であってもどんどん、メセナとかの公益事業とか、そういう分野で非常に社会に貢献するような活動をしておられますし、逆に公益事業であってもいろいろ批判のある法人もございますし、公益、非公益、あるいは営利、非営利というような基準では、IT社会における個人データの取り扱いに対する危険防止という基準と結びつけるのはなかなか難しいなというふうに考えておるところでございます。
○北川委員 そういった方々という中に個人情報を電子検索データでかなりたくさん集めることができる人という意味合いにおいて言われたんだろうと思うんですけれども、独立行政法人までの分はあるんですが公益法人がないとか、そういう点において私たちもすごく難しい点はあるんですが、一般市民社会に、今マスコミの方々がまさに懸念されていた表現の自由や言論の統制、監視対象に主務大臣がすべてつくといった点が、市民生活の中にこの法律ができたがゆえに入り込む可能性をもたらすといった点において、私はこの法案の廃案主張の主たるところに置いているわけです。
先ほど、民間事業者による個人情報の漏えい等の主な事例というのを教えていただいて、ことしは二十三件、十七万四千件ぐらい、そして去年が三十八万二千件、これは一件でなんですね。一件で三十八万二千件。九八年は、一件でこれは高島屋の顧客名簿ということで五十万件、九六年が全国信用情報センター連合会の八十五万件と、件数が、たまたま今回、十一月までで二十三件で十七万四千件。しかし、過去においては、情報収集をしている一社が八十五万とか五十万とか、かなり大量の部分の漏えいというのが事象として上がってきているんですけれども、では、今回の法律で、流出された情報、個人情報なんですが、これへの救済といった面においての法律の中での担保というものが条文の中にあるんでしょうか。
○藤井政府参考人 お答えいたします。
こういう漏えい事件が起きた後の救済というような御指摘だったかと思うんですが、一つお断り申し上げておきたいのは、この今の私どもが御提案申し上げている法律は、むしろ、実際のプライバシー事件が発生する前に、そういうプライバシー事件が発生しないように、いろいろな予防措置とか予防的なルール、そういったものをつくってそれを守っていただくということを主眼とした制度でございます。
ただ、そうはいっても、事後救済にかかわらないかというと、いろいろ、開示請求権の行使とか、訂正請求権の行使とか、利用停止請求とか、そういうことをやっていただくということで本人のいわば救済に資するものであるという認識はございますが、主眼は、むしろ、いろいろIT処理される個人データがみだりな取り扱いのされ方をする、そういったことのないようにすることによってプライバシー事件の発生を予防しようというところを考えているということでございます。
一たん個人データが漏えいしたりしてプライバシー侵害を初めとした被害が生じたということになりますと、これは、民法上の不法行為による損害賠償請求とか慰謝料請求とか、そういう制度が既にあるわけでございますし、あと、名誉毀損とか公然侮辱に当たるとかいうことであれば、それはまた既に刑法上のそういう制度があるわけでございまして、そういった制度を使って国民の権利利益が救済を図られる、そういう制度になっているということでございます。
○北川委員 まさに、事後救済はなくて、事後のことで何かトラブルがあるんだったら裁判しなさいということで、事前規制に重きを置いていらっしゃるというのをみずからおっしゃったんです。だからこそ、非営利や一般の、自然人という市民の方々への規制というのが、言論の統制や表現の自由への規制とともに根深く憲法に抵触するということで、この法案の廃案を求める根拠になるわけです。
では、個人情報の構成要件とは一体何なんでしょうか。
○藤井政府参考人 個人情報の定義に関する御質問でございましたが、これは法律上の定義がございまして、第二条でございますが、「「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」、いわゆる識別可能情報である個人情報というものを個人情報と称しているということでございます。
○北川委員 識別可能ということなんですけれども、じゃ、今回、防衛庁リストの問題でこの審議がまさにストップしたのは、例えば、名前一つだけでは幾ばくか検索がしにくい、でも、その名前についてのリストが他にあれば、それは識別可能であるし、ABCだけではわかりにくいけれども、Aは何を指すのかというのが他のリストで、四情報プラス二情報とか、よく今言われている本人確認情報ですね、住基ネットでの法文の中で規定されました本人確認情報というリストがAはこの人を指すというふうに出ていれば、まさにAであっても個人識別は可能だというふうに思うんですけれども、その点はどういうふうに理解されているんでしょうか。
○藤井政府参考人 お答えいたします。
実際に、その情報が識別可能情報かどうかということについては、やはりケース・バイ・ケース、いろいろ考えた上で判断する必要があると思っています。ただ、一般論として申し上げますならば、いわゆる氏名、住所、あと識別番号等もあるんですが、いずれにしても、そういった識別性を表示するような符号、文字、そういったものとその人の情報というものが一体的になっている。しかも、識別といったって、実在するその本人が識別される必要があると思っていまして、ただ、識別程度というのは、これは法律制度の通例なんですが、最終的な判断基準というのは、やはり社会通念とか一般的蓋然性で識別が可能かどうかという判断になろうかと思います。
防衛庁リスト問題での、御質問のようなアルファベットだけで識別可能かどうかというようなのは、ちょっと外からはなかなか判断できないところはあるんですけれども、ただ、アルファベット、AならAさんというようなのが何人もいるということであるならば、それは識別可能ということは難しいんじゃないかと思っております。
○北川委員 ケース・バイ・ケースということで、この辺などの詰めがとてもあいまいで、この法案は混乱をもたらす可能性はすごく高いと思うんですね。
氏名と住所だけといった場合に、これは個人情報なのでしょうか。
○藤井政府参考人 お答えいたします。
一般的には、氏名とか住所というのは特定の個人を識別する典型的な識別情報と言えると思いますので、その二つがそろっていれば識別性ありと言っていいかと思います。
○北川委員 では、個人の氏名一でも、識別はある一定程度の可能性はありますので一件となると思うんですが。
では、先ほど問題になった件数なんですが、これをまた件数で定義をするといったときに、私はじかに藤井審議官がいろいろなところで話していらっしゃるのを聞いて、それはまさに国会議員の審議が決める件数であるんだというふうにおっしゃっていました。けれども、きょう前段の議論を聞いていると、国会議員自身がその件数を決める当事者であるという認識があるのかといえば、それはなくて、じゃ、政府はどうなんだという御質問もあったんです。
この一件という件数の数え方についてなんですが、氏名が一でも一、氏名プラス住所でこれを二とするのか、その辺などは、どういう一件というものを具体的にカウントの一件とされるのかを御説明ください。
○藤井政府参考人 今の御質問は、個人情報取扱事業者というものの定義を定める場合に、その個人情報取扱事業者が取り扱うこととなる保有個人データですか、これのいわば範囲、これについては、けさほど来の大臣等からの、政令で定めるんだということになっていて、ただ、五千という目安の数字を申し上げたことに関連する御質問かと思うんですけれども、私自身、従来申し上げていますのは、まさに大臣等がお答えになったとおりでございまして、政令で定めることになるのであると。
ただ、政令で定めることになるんですけれども、国会で今法案を御審議いただいている、そういう御審議の参考のためには、やはり政府側としてはどの程度の目安を考えているかというようなのは、まだ政令制定前であってもやはり出すべきであるということで、法案審議の御論議のためという意味で、一応、五千人ぐらいがベースになっておりますということを申し上げているところでございます。
国会がお決めになるというような御質問に関連しては、これも私どもが申し上げているのは、政令は政府が策定することになるんですが、当然、国会での御論議、今回の場合は五千件が果たしていいのかどうか、そういう御論議があれば、そういった御論議をやはり参考にいたしましてその件数をやはり定めていくべきであるということを申し上げているわけでございます。
それに加えて、先ほど来大臣からも御答弁いただきましたけれども、いろいろな調査をするとか、あと、こういった基準についてはやはりパブリックコメントというものもやらなければいけないと思っていますので、そういうようないろいろな手続、各方面からの御意見あるいは調査、そういったものを行った上で、最終的に政令で決めたいということを申し上げているところでございます。
○北川委員 一つ答弁が抜けていたと思うんですけれども、五千件の御論議をされたのはまさに藤井審議官であって、あるとき五千件と言われたのは私も聞きましたけれども、あるときは一万件と言われていて、政令で落とすというのは官僚が決めるということだろうと思うんですが、その点をもう一度詰めてお伺いしたいと思います。
それと、一件というのをどういうカウントでやるかに対しては明確な御答弁がなかったので、つけ加えてください。
○藤井政府参考人 一件の勘定の仕方の問題でございますが、これは、データベースでは、大体個人名ごとに体系化できることになっておりまして、したがいまして、個人名ごとにファイル化された、データベースの中でのさらにはファイルということになりますけれども、個人名の数である。個人名ごとに属性情報というのはまた幾つかあるかと思いますけれども、その属性情報単位で五千とか言っているわけじゃなくて、あくまで、だれそれの個人データという場合のそのだれそれを一人という勘定の仕方、要は、名前と申しますか、氏名で勘定するということになります。個々の属性情報ごとのデータではありません。
○北川委員 じゃ、氏名が一で、それにプラス付加情報が三つけば、一プラス三で四、四件持っているというふうになるということですか。一に属性することの態様がすべてであれば、それはあくまでも一に帰着するということですか。
○藤井政府参考人 説明がお聞き取りにくかったかと思いますけれども、まさに逆でございまして、一人の人に四件の属性情報があったとすると、それはもう、一人の人で一件、一足す四というふうにはならなくて、それはあくまで一件、こういうカウントの仕方ということでございます。失礼しました。
○北川委員 それで、いろいろ、氏名とは何を指すかということになると思うんですが、まさに電子情報の中で、ハンドル名とかという使われ方とか、いろいろとそういう点においての問題点等々とか、一件に付随する情報において等では、五千件が適当とされた理由とかが私自身はよくわからないのです。
時間が迫ってきているんですけれども、識別可能性とは具体的に何かというのを具体的な例を挙げて説明していただけますか。
○藤井政府参考人 余りすぐには思い浮かばないんですが、先ほど委員の方から御指摘がありましたけれども、例えばいろいろな連絡先を記載したリスト、そういったものは当然対象になりますし、企業なんかの例をとってみますと、いろいろ最近は、顧客情報というような形で、大体、氏名、住所、それから家族構成とかそういったものをデータベースに入れておられる場合もあろうかと思いますけれども、そういったものは、まさに我が法案の対象としようとしている個人データであるということでございます。
○北川委員 次に、では福田官房長官にお伺いしたいんですけれども、やはり私は、今回の個人情報保護法というのは、まさに、国や民間が個人情報をいかにコントロールできるかという立場に立っての基盤整備の方に重点が置かれ過ぎているというふうに思うんです。
センシティブ情報において、片山大臣はまだ明確な定義づけができていないということなんですが、一九九〇年の国連の決議の状況におきまして、差別を引き起こす可能性のあるデータの収集という点において、スペシャルデータやセンシティブ情報というのは収集してはならないというふうに決議されたという点を御存じかどうかという点。
それと、先ほどほかの委員からも出ていたんですけれども、この間、十一月の末に、各紙が、廃案に向けて政府の方は方針を固めたというふうに言われています。与党の筆頭はそういうふうにおっしゃいませんけれども、政府の方が、個人情報保護法はもう廃案にする方針を固めたというふうにおっしゃっているわけです。これは、先ほどは、早期に基盤整備だからと。でも、偏りがどちらかにあり過ぎた法案を自分たちの都合のいいように基盤整備したいというふうにしか聞こえないわけです。
福田官房長官は、九〇年の国連決議の際に、日本は、自分たちの戸籍というものがあるがゆえに、それに対して反対の申し出をしたんですが、総会から一蹴されているわけですが、そういう事実があったという点、それで認めざるを得なかったという点を理解されているかという点と、廃案報道、廃案見直し報道をどのように受けとめられているかというのをお伺いしたいと思います。
○福田国務大臣 国連の決議というのは、私知りません。不勉強で申しわけありません。
それから、法案そのものについては、現在、成立を目指していろいろと国会において御尽力いただいておる、こういう状況でございます。
また、この法案のこれからどうするかといった取り扱いの問題、これは、政府としてどうこうと申し上げる、そういう立場にないわけでございますので、この早期成立に向けて国会で御尽力いただく、それを見守らせていただきたい、こう思っております。
○北川委員 ちょうど、きょうの審議を合わせて二十二時間十分というふうになるんですけれども、最後にお伺いしたいんですが、この一年半を超えて三度も継続審議になっているという状況を、小泉内閣の官房長官としてどのように認識されているんでしょうか。
○福田国務大臣 今申し上げたのでございますけれども、いずれにしても、この法案そのものは、国民生活を守る、国民が安心できるような社会のために必要な法案だ、こういう基本認識をしておりますので、ぜひ早期成立を目指して御尽力くださるようにお願いを申し上げます。
○北川委員 終わります。ありがとうございました。
○佐々木委員長 以上で北川君の質疑は終了いたしました。
――――◇―――――
○佐々木委員長 次に、国民生活の安定及び向上に関する件について調査を進めます。
特定非営利活動促進法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。
本件につきましては、先般来理事会等において協議いたしました結果、お手元に配付いたしましたとおりの起草案を得た次第であります。
この際、本起草案の趣旨及び内容について、私から御説明申し上げます。
まず、本起草案の趣旨について御説明申し上げます。
現在の我が国社会において、民間非営利団体、いわゆるNPOは、多様かつ先駆的でしかも人間味のあるサービスを提供することで、行政や企業では満たされない社会的ニーズにこたえ、重要な役割を果たしております。二十一世紀の我が国においては、行政、企業、NPOが相互に連携しながら活動を行い、安定的で活力のある社会を築くことが期待されております。
平成十年十二月に施行された特定非営利活動促進法は、社会貢献活動を行うNPOが法人格を取得する道を開きましたが、同法の附則において、特定非営利活動法人制度については、法施行の日から起算して三年以内に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとするとされております。
また、特定非営利活動を推進し支援する観点から、法をさらに幅広くかつ適切に活用できるようにすべきであるとの指摘がなされております。
そこで、今回、特定非営利活動の一層の発展を図るため、その活動の種類を追加し、設立及び合併の認証に係る申請手続を簡素化するとともに、暴力団を排除するための措置を強化する等の改正を行う本起草案を提案することとした次第であります。
次に、本起草案の主な内容について御説明申し上げます。
まず第一に、本法の別表に掲げる特定非営利活動の種類に、新たに「情報化社会の発展を図る活動」、「科学技術の振興を図る活動」、「経済活動の活性化を図る活動」、「職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動」及び「消費者の保護を図る活動」を追加することとしております。
第二に、特定非営利活動法人の設立及び合併の認証に係る申請書類の簡素化を図ることとしております。
第三に、暴力団等を排除するための措置の強化を図るため、特定非営利活動法人の設立及び合併の認証基準を強化し、役員の欠格事由を追加するとともに、所轄庁は、特定非営利活動法人が暴力団等であるとの疑いがあると認めるときは、警察庁長官または警察本部長の意見を聞くことができること等としております。
第四に、租税特別措置法に定める、いわゆる認定NPO法人に対する寄附または贈与を行った者に係る寄附金控除等の特例について、本法に明記することとしております。
第五に、特定非営利活動法人の理事等が、所轄庁に対して必要な報告をせず、もしくは虚偽の報告をし、または所轄庁による検査を拒んだ場合等の罰則規定を追加することとしております。
なお、本案は、平成十五年五月一日から施行することとしております。
以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。
―――――――――――――
特定非営利活動促進法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○佐々木委員長 お諮りいたします。
本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○佐々木委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とすることに決しました。
なお、本法律案提出の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時二十分散会