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第5号 平成15年4月9日(水曜日)

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平成十五年四月九日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 佐々木秀典君
   理事 逢沢 一郎君 理事 小野 晋也君
   理事 星野 行男君 理事 渡辺 博道君
   理事 山内  功君 理事 遠藤 和良君
   理事 西村 眞悟君
      大村 秀章君    奥山 茂彦君
      金子 恭之君    亀井 久興君
      木村 隆秀君    菅  義偉君
      高橋 一郎君    谷川 和穗君
      谷本 龍哉君    近岡理一郎君
      林 省之介君    松島みどり君
      井上 和雄君    石毛えい子君
      平岡 秀夫君    平野 博文君
      横路 孝弘君    太田 昭宏君
      中林よし子君    吉井 英勝君
      北川れん子君    江崎洋一郎君
    …………………………………
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   参考人
   (女子栄養大学大学院客員
   教授)          高橋 正郎君
   参考人
   (雪印乳業株式会社社外取
   締役)
   (全国消費者団体連絡会前
   事務局長)        日和佐信子君
   参考人
   (明治大学客員教授)
   (元NHK解説委員)   中村 靖彦君
   参考人
   (弁護士)        神山美智子君
   内閣委員会専門員     小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月三日
 辞任         補欠選任
  仙谷 由人君     釘宮  磐君
同月九日
 辞任         補欠選任
  嘉数 知賢君     松島みどり君
  大畠 章宏君     平岡 秀夫君
  吉井 英勝君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  松島みどり君     嘉数 知賢君
  平岡 秀夫君     井上 和雄君
  中林よし子君     吉井 英勝君
同日
 辞任         補欠選任
  井上 和雄君     大畠 章宏君
    ―――――――――――――
四月七日
 非核法の早期制定に関する請願(重野安正君紹介)(第一四五六号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 食品安全基本法案(内閣提出第二七号)


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     ――――◇―――――
佐々木委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、食品安全基本法案を議題といたします。
 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま審査中の本案に対し、厚生労働委員会及び農林水産委員会から連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 また、連合審査会において、政府参考人及び参考人から説明または意見を聴取する必要が生じました場合には、出席を求め、説明等を聴取することとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、関係委員会委員長間で協議の上、公報をもってお知らせいたしますので、御了承願います。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 本日は、本案審査のため、参考人として、女子栄養大学大学院客員教授高橋正郎君、雪印乳業株式会社社外取締役・全国消費者団体連絡会前事務局長日和佐信子君、明治大学客員教授・元NHK解説委員中村靖彦君、弁護士神山美智子君、以上四名の方々から御意見を承ることといたしております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
 おはようございます。本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 高橋参考人、日和佐参考人、中村参考人、神山参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、参考人の方々に申し上げますが、御発言の際には、恐縮ですが、その都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、御了承をお願い申し上げます。
 それでは、高橋参考人にお願いを申し上げます。
高橋参考人 おはようございます。ただいま紹介いただきました女子栄養大学の高橋でございます。まずは、このような場で意見を開陳できることの機会を与えていただいた内閣委員会並びに佐々木委員長に感謝を表したいと思います。
 私は、昨年四月二日に、厚生労働大臣、農林水産大臣にBSEに関する調査検討委員会の報告、これを手交させていただきました。その委員会の委員長を務めさせていただいた関係できょうお招きいただいたものと思っております。そういう意味で、BSEに関する調査検討委員会の元委員長の立場から、食品安全基本法について若干の評価と意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、評価でございますが、私ども四カ月かけて、国民の注目のもとに、BSEに関する調査検討委員会の検討をいたしました。大きく分けて三部ございますが、一部、二部はBSEに対する政府あるいは農林水産省等の行政対応、これの問題点を、第三部では新たな食品安全政策についての提言をさせていただきました。
 まず、評価させていただきたい第一点は、私どもが報告を提出して、政府の対応が非常に早かったということでございます。三日目の五日には内閣で閣僚会議が組織され、それから二カ月後には基本方針が出された。非常に速いテンポで対応していただき今日に至ったということを、まず評価したいと思います。
 もう一点は、私どもが提起しました報告の第三部、実はこれの起草は次の参考人の日和佐さんが起草していただいたものでございますが、その内容がほぼ、骨子の面で、今回の食品安全基本法並びにそのもとで設立される食品安全委員会の内容になっているということで、高く評価したいと思っております。
 幾つか、私どもが提案した内容がどのような形で法案に盛られているかということを若干説明させていただきたいと思います。
 まず第一点は、報告では最後の部分に具体的な提案をしております。そこでは、新しい消費者の保護を基本とした包括的な食品の安全を確保するための法律の制定並びにそのための新しい行政組織を構築するという二点の提案をしております。この前者が食品安全基本法、それから後者が食品安全委員会という形で具体化されております。
 それから、報告では、新たな食品安全行政には消費者保護を最優先とすべきであるということを強く主張しております。これが本法案の第三条、「食品の安全性の確保は、このために必要な措置が国民の健康の保護が最も重要であるという基本認識の下に講じられることにより、」云々という形で採用されております。基本理念にかかわるところでございます。
 第三には、リスク分析を導入すべきであるということを報告では提案しておりますが、まさにこの基本法はリスク分析に基づくものでございます。
 第四は、リスク評価は独立性の観点から関係省庁から独立した行政機関で行うべきであるということも提案しております。その点につきましては、いわゆるリスク管理を行う農林水産省や厚生労働省とは別に、内閣府に食品安全委員会を置くということで具体化されております。
 五番目は、そういったリスク評価を行う上で、客観的な科学的評価を行い得る専門家、科学者がそのリスク評価を行うべきであるということを報告では提案しております。それからもう一点、リスク評価をする機関は、常勤のメンバーの中に科学者がいる機関とするということを提案しておりますが、本法案でも、「委員は、食品の安全性の確保に関して優れた識見を有する者」、ほかの説明では、専門家がそれぞれ委員になる、それから委員のうちの三名は非常勤、四名が常勤ということで、我々の主張が生かされているというふうに思います。
 そのような形で骨格が、この食品安全委員会並びに食品安全基本法においてできたものと思います。その面では非常に大きな成果が、皆さん方の努力あるいは事務方の努力によって今日に至っているというふうに思うんですが、さて、これをもう少し具体化していく場合に、いろいろな問題が出てくると思います。それを具体化していく上においてぜひ配慮していただきたい点を幾つか意見として述べさせていただきたいと思います。
 この食品安全委員会、これはリスク分析手法を導入するということでございますが、このリスク分析の導入については、ヨーロッパの国々あるいはEUにおいて既に具体化されております。そのEU委員会で出しております食品安全白書というものが二〇〇〇年の一月に出されております。そこでは、非常に重要な論点が幾つか出されておりますが、特に、リスク評価を行う機関については、三つの要件が不可欠であるということが述べられております。その三つとは、独立性、卓越性、透明性、この三つの原則が貫徹されることが不可欠であるということでございます。
 今審議いただいております食品安全委員会、これはリスク評価を行うところでございますが、そこにおいても、この独立性、卓越性、透明性という三つの原則は貫徹すべきことだというふうに考えます。
 事実、法案の十一条三項では、リスク評価を行う場合に、客観的かつ中立公正に行われなければならないだとか、あるいは、三十二条には、委員は、在任中、政党その他政治団体の役員となることはできないだとか、あるいは報酬を得て他の職務に従事してはならないという規定がございます。これはまさに独立性を確保するものだろうというふうに思います。
 さて、二番目は、この食品安全委員会の人選、七名の人選がこれから非常に重要なことになろうと思っております。
 まずは、卓越性ということでは、日本の最高権威、その筋の最高権威の方々が務められるということは当然のことだろうと思います。ただ、その場合に、専門性の高さだけを基準にして考えますと、やや視野の狭い科学万能主義者、いわゆる専門ばかと言われるような方がこの委員になるようでございましたら、これはこの任にはふさわしくないのではないかと考える次第でございます。深い専門性を持つと同時に、幅広い識見を持つということが選ばれる条件だろうというふうに思います。委員の中には複数の女性も含まれることは当然のことでございましょう。それからまた、自然科学の専門家だけではなく、社会科学の専門家もこの中に含められることが期待されるところでございます。
 さらに、この食品安全委員会の独立性を確保する上で非常に重要なことでございますが、政治からも行政からも、あるいは特定企業、あるいは業界、さらには各種の利益団体からも独立したものでなければなりません。特定企業や特定業界から研究費を集中的に受けているような人は、必ずしもこの中立性においてふさわしくないのではないかというふうに考える次第でございます。したがいまして、委員の人選に当たっては、業績はもちろん、所属団体、研究費の調達状況など、これを公表することが必要ではないかというふうに考えます。
 三番目は、これは報告でも書いてあるんですが、食品の安全性については、白か黒かという、峻別するような論議では不可能になってきた。白と黒の間にグレーゾーンがたくさんあるような事態がたくさん出てまいります。今の科学においても、完全に白、完全に黒というようなことで断定するものがすべてであるとは言えないと思います。
 そういう意味から、我々の報告の中では、ゼロリスクというものは存在しないというふうに考えて進めてまいりました。そういう意味で、これから、そういった白と黒ではない、限りなく白、限りなく黒ということではこれは判定がつくんですが、そうじゃなくて、グレーゾーンに入っているようなものをどう判断するのか、これが極めて難しいと思います。そこで、委員の中で意見が対立した場合、法律では多数決で決めるようになっておりますが、少数意見も必ず公表していただきたいというふうに思っております。
 四番目は、消費者の参加でございます。
 消費者代表が委員に入るべきであるというふうには私は思っておりません。この辺は、また後で機会がありましたら考えを述べたいと思っておりますが、ただ消費者が、例えば企画をする企画委員会というものができますが、そこに入るということは当然だろうと思います。どのような順番で評価を行うかというようなことの判定もそこで行うと思いますが、そういった企画委員会に消費者が参加するということは、これは積極的な意味があると思います。
 なお、もう一つ、私、非常に重要視したいのは、どのような食品が危険性があるか、それを食品安全委員会に評価を付託する、そのリクエストをする権限がどこにあるのかということでございます。
 いろいろ文章を読んでみますと、関係大臣の諮問に応じ、また、みずから食品健康影響評価を行うということで、関係大臣とそれから食品安全委員会自体がやるということになっておりますが、フランスでは、さらにそこに消費者からのエントリーも認める、リクエストを認める。あるいは、アメリカのFDAの食品リコール制では、積極的に消費者がそれに参加して問題提起をする。もちろん、それは第一次的な接近でございますが、リクエストでございますが、そういうことがある。
 そういう意味で、今後、実際の運用の面で、消費者が危険な食品と思ったものをエントリーできるようなシステムをぜひ構築していただきたいと思います。農林水産省では、食品表示問題について一一〇番制度を持っております。ぜひ、今度の食品安全委員会では、食品安全一一〇番というようなものを制度として組み入れていただければというふうに考えております。
 時間が参りましたので、以上で意見の開陳を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
佐々木委員長 ありがとうございました。
 次に、日和佐参考人、お願いいたします。
日和佐参考人 御紹介をいただきました日和佐でございます。
 きょうは、食品安全基本法案について意見を述べる機会をいただきました。そのことを大変うれしく感謝申し上げます。
 きょう、私は、大きく二つ申し上げたいと思います。
 初めに、その二つのことを申し上げておきますと、一つは、食品安全基本法案を高く評価する立場でございます。したがって、全会派一致でぜひ可決していただきたいと願っております。第二番目、高く評価いたしますけれども、なお懸念として残る点がございます。その点について確認をしたい、していただきたいと思っておりまして、その一つは、なお一層の公開性と透明性の確保でありまして、もう一つは、消費者の参画であります。
 それでは、以上のことにつきまして、詳しく申し上げたいと思います。
 まず最初の第一点、食品安全基本法案の評価であります。
 BSE問題に関する調査検討委員会報告をもとにいたしまして、その第三部「今後の食品安全行政のあり方」で提示いたしましたことが非常に誠実に取り上げられているということと、迅速にこの食品安全基本法案の準備がなされたこと、そのことについて大変高く評価し、第三部を執筆いたしました者としては、非常に感慨深いものがございます。
 それから、二番目なんですが、食品の安全の確保に関する包括的な法律がやっとできたということでの評価、高い評価であります。
 今まで、食品安全行政に関しては、食品衛生法を初めとする個別法で行われていました。したがって、個別法それぞれを理解しなければ、どのような仕組みになっているのかということが消費者としてはよくわからない、非常に複雑な仕組みでもあったわけです。食品安全に関する包括的な法律がぜひ必要であるということをかねがね主張してまいりました。そのことが実現するということでありまして、このことも非常に高く評価できる点でございます。
 その次に、基本理念として、国民の健康の保護が最も重要であるという基本認識のもとに、食品の安全性の確保のために必要な措置が行われなければならないと明記されたことです。
 これは、ちょっと考えますと、まさに非常に常識的なことで、当たり前なことなのでありますけれども、今までの法体系が個別法、事業者取締法によって行われておりましたので、どの食品安全に関する法律の中にも、国民の健康の保護を最優先として施策が行われなければならないということを明記したものはありませんでした。したがって、まさに、言ってみれば常識的なことではありますけれども、この文言が明記されたことは非常に大きいと私は思っております。
 また同時に、今までの食品安全行政においては、消費者、国民は、先ほど申し上げました法体系の中では直接の当事者ではありませんでした。要するに、事業者を規制して、それによって消費者、国民が守られるという法体系だったわけです。それですから、今までの食品安全関連法案の中には、消費者、国民という言葉はどこにもなかったということであります。ですけれども、食品を最終消費して口に入れるのは消費者でありまして、直接の当事者が消費者、国民であるということがはっきりと明記されたこと、このことも非常に高く評価したい点でございます。
 それからもう一つ、消費者の役割。その他の地方公共団体初め事業者団体等の役割も責務として明記されたわけですけれども、消費者の役割が明記されたこと、このことも高く評価できると思います。その中身ですね、消費者は意見を表明し、食品安全行政に対して積極的な役割を果たすと書かれています。ですから、その前に理解をしというのがあるわけですけれども、積極的に意見を言いなさい、積極的に食品安全行政に参加してきてください、こう言っているわけですから、まさに、消費者の位置づけが明確になり、なおかつ積極的な参加が期待されている、そのことに対しても高く評価ができると思います。
 最後ですが、リスク分析の考え方が導入されました。このリスク分析の考え方は公開性と透明性を担保するシステムでありまして、このことについても評価できることであります。
 以上が評価できる点でありますが、次に、懸念として残る点について申し上げます。
 その第一番目、一層の公開性と透明性の確保であります。
 食品安全委員会におけるいわゆる七名の専門家による委員会、この委員会の会議を初め専門調査会が設けられることになっておりますけれども、双方とも公開とすることを確認していただきたいというように思っております。
 また、より多くの国民の意見を反映させるという意味合いで、七名の専門家による委員会による公聴会の開催を、年に一回などということではなく年に数回開いて、国民の意見を入れて食品安全行政が執行されるように、ぜひそのような形で公聴会の開催を行っていただきたいと思います。
 それからもう一つ、公開性、透明性を担保するためには、リスク評価に関して、安全性に関する調査、検査結果等の資料は、原則としては事業者から提供されることになろうと思われます。したがって、この公開がどうなるかということが一つ大きな観点になってくると思うわけなんですが、ここで、リスク評価に関してどのようなデータによって評価が行われたのかということが公開されなければ、そのリスク評価に関する信頼性というものをかち得ることはかなり難しくなってくると私は思っております。
 ですが、一方では、事業者による資料提供ということで、知的所有権という問題も生じてきます。したがって、これは可能な限り提出者、事業者による公開が要請されるということですので、ぜひ事業者の方もその要請に積極的にこたえていただきたい、そのことをぜひ強く申し上げておきたいというふうに思っております。
 それから、この公開性、透明性は、リスク評価を行う食品安全委員会のみではなく、リスク管理を行う農林水産省、厚生労働省についても求められることであるということも、ぜひ心にとめておいていただきたいと思っております。
 リスクコミュニケーションについてなんですが、このリスクコミュニケーションは、国レベルで行うだけではなく、重層的にさまざまな形で行われなければならないと思っております。例えば、地方公共団体において、あるいは消費者団体において、あるいはNPOなどにおいて、リスクコミュニケーションの場を設定し、重層的に広くリスクコミュニケーションが行われるようなシステムを構築していただきたいと思っております。
 二番目の、消費者の参画です。
 食品安全委員会委員の選任、この七名の選任に当たっては、消費者、国民の納得のいく人選が必須であると思います。ここで納得のいく人選が行われなかった場合には、食品安全委員会に対する信頼性というものに強い影響を及ぼすであろうと私は思っております。殊に、消費者の思い、国民が食の安全に対してどのような思いを持っているのか、その思いを確実に反映できる人選が切望されるところです。
 それと、消費者意識、消費者行動の専門家という項がございますけれども、それを広く解釈、運用していただきまして、消費者分野からの人選が行われることを強く期待したいところであります。
 それから、企画、リスクコミュニケーション、危機管理について専門調査会を設けることになっておりますけれども、ここには消費者が複数で参加できるような配慮が必要であると思っておりますので、そのことをつけ加えたいと思います。
 最後になりますけれども、非常に高く評価をできる形で食品安全行政の枠組みはできたと思います。これから食品安全行政への信頼を築いていくためには、新しく改革された食品安全委員会及びリスク管理を行う厚生労働省、農林水産省の今後の運用がどのようにこの食品安全基本法にのっとって行われるか、そのことが非常に重要なことだと思っております。運用に関してはまだ明確にされていない部分も散見できますので、ぜひそのところを審議の中で明確にしていただいて、この法律を成立させていただきたいと思っております。
 新しい食品安全行政を育てていくのは、食をめぐるステークホルダーであると思っております。その中で、消費者もその大きな柱として積極的な役割を果たしていきたいと思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
佐々木委員長 ありがとうございました。
 それでは次に、中村参考人、お願いいたします。
中村参考人 きょう、このような場で食品安全基本法案についての意見を述べさせていただく機会を与えられたことを大変にうれしく思います。よろしくお願いいたします。
 まず最初に、考えてみると、おととしの九月に最初のBSEが発生してから、今日までいろいろな対策が講じられてまいりましたけれども、ここに安全基本法案が成立直前という段取りになったことを私は大変評価したいと思います。ぜひこの法案を全会一致で可決していただきたいというふうに思います。
 そういった全体的な評価の中で、私がこの法案を読んで感じたこと、それから、これからの運用についてこういったことに留意をしていただきたいというようなことを若干申し上げたいと思います。
 まず第一に、消費者の役割です。消費者に軸足を置いた行政ということで、消費者の問題というのは大変重要でありますが、今回のBSE以来の一連の食の安全を脅かす事件の中で、消費者の力といいますか、これは非常に大きいということがわかりました。つまり、消費者がそっぽを向けば、大きな食品企業であってもつぶれてしまうということがわかったわけです。
 したがいまして、その力が大変に強いということがわかった以上、それはもう重要な消費者の権利ではありますが、同時に、この条文にあるように、その知識と理解を深める責任と義務がある、それが消費者の役割である、私はそういうふうにこの条文については理解をして、そういう文脈でとらえて、この第九条のところを読みました。実際にそういう形の考え方が貫かれることを期待したいと思います。
 それから、食品安全委員会でございますけれども、委員の構成につきましては、この案でいいのではないかというふうに思います。消費者代表を加えるべきとかいう御意見はございます。それは承知しておりますが、例えば、従来の審議会的な構成ではなくて、消費者代表だけではなくて、例えば食品産業関係者であるとか、あるいは農業生産者団体の代表であるとか、そういう方々もこの食品安全委員会にはメンバーとして入る必要はないのではないか。むしろ、その下にあるいろいろな専門委員会の方にその方々が入っていただく方が、その中立性、独立性を高める上ではいいのではないかというふうに考えております。
 それから、リスク評価ですけれども、これは大変重要なテーマなんですけれども、だれがそのリスクアセスメントを求めるのかという点をやはり多角的に考えておく必要があるのではないかと思います。言ってみれば、発議を多角的にするといいましょうか、従来の行政の方々が、例えば農林水産省、厚生労働省、そういう方々のリスク評価の要求というのはもちろんあり得るわけでありますけれども、それだけではなくて、民間からのいろいろなリスクアセスメントのリクエストということは当然あるわけであります。
 去年の中国産の冷凍ホウレンソウにクロルピリホスが残留していたというあの事件は、最初にこれを発見したのは民間団体でありまして、そういう意味からいいますと、リスクアセスメントをだれが求めるのか、これは幅広くその可能性を開いておくということが必要ではないかと思います。例えば、食品安全委員会ホットライン的なものも考慮していいのではないかというふうに思います。
 それから、リスクコミュニケーションのあり方でありますけれども、これについては、政府とかあるいは事業者からの情報開示が前提です。それから、消費者からの開示要求というのも確保しておく必要があると思います。
 例えばワークショップのような形の会合を開いて、いろいろな立場の人たちがそこで意見を述べる。すべてを食品安全委員会が受け取って、それでその中で調整をするというのではなくて、そういった開かれた場でコミュニケーションを図るというようなことが必要になってくるのではないかというふうに思います。
 それから、リスクコミュニケーションに当たっては、やはりメディアの役割を考えなければいけないというふうに思います。
 このメディアの役割というのは、おととしのBSE第一号の発生のとき以来、全体が大変混乱をいたしまして、メディアの役割というのが本当にそこできちんと位置づけられたのかどうかというのは、疑問な点なしとしないところがあります。ここはやはりメディアに対しての、率直にその役割を重視して、いたずらに警戒感を持つのではなくて、風評被害的なものを避けるためにも、やはり正しい情報提供ということが必要なのではないかというふうに思います。
 それから、リスクマネジメントですけれども、リスクマネジメントを従来の行政機関が行うということは、これは確かに現実的な選択ではあろうというふうに思います。ただ、この場合に、従来とかく言われました縦割り行政の弊害というのは、ここでやはり完全に払拭される必要があるのではないかというふうに思います。
 払拭するためには、やはり透明性の確保といいますか、リスクマネジメントをやっていく上で、その内容がすべての人たちにわかる、そしてリスクアセスメントを提案した人たちにもわかるというようなことで、縦割り行政をやろうとしてもやれない、そういった形をつくっていくことが必要なのではないかというふうに思います。
 これが実は、食品安全委員会関連の、一部運用も含めた私のお願いでございます。
 それから、そのほかの条文について気がついたことを幾つか申し上げます。
 第十八条に「表示制度の適切な運用」という条項がございました。この条項はもちろん大変結構なことだと思いますけれども、その条項に私が感じたことは、同時にやはり監視体制をきちんとしていくということがこの条項を生かす道ではないかというふうに思います。いまだに一連の表示違反事件などが後を絶たないわけでありますけれども、そういうことを考えるにつけても、この監視体制をどうやってきちんと構築していくのかということがやはり私は大事なのではないかというふうに思います。
 それからもう一つ、第二十七条に、関係する試験研究機関への調査、分析依頼という条文がございます。これは当然ですけれども、実は、いろいろ関係する試験研究機関などを回って取材をしていた経験を申し上げると、平時においてそういった研究機関の方々は実に地道に、地味な研究努力をしておられるということがわかりました。ただし、残念ながら、その研究あるいは分析の結果が行政に反映されていない。それは、平時ですから非常に行政担当者の方々は忙しい、日常的な業務で忙しくて、なかなか、そういった調査結果であるとか、あるいは海外に行って調べてきたそういった内容などについて、ちょっと日常業務から離れてそれを子細に見るというようなあれがございません。なかなかそういった暇がないのが実情でありますけれども、何とか平時においてもそういった研究機関の調査実績あるいは分析実績などを行政に生かす仕組みをつくることはできないのか、それが第二十七条を見た私の感想であります。
 最後に申し上げたいことは、食品安全基本法の成立がこれからの日本の食のあり方について考えるきっかけになることを期待したいということでございます。
 最近、御承知のとおり、飽食と言われますけれども、私は、飽食ではなくてむしろ貧食ではないかというふうに考え始めております。
 現在の食事情は、まさに簡便さが主流を占めております。例えば、魚も骨を抜いて消費者に販売をするとか、あるいはカット野菜、それから中食、それが別に全部悪いというわけでは毛頭ございません。それは、もちろん、一つ一つの食品として、食材としてそれが非常に劣悪なものであるとか、そういうことを申し上げるつもりはありませんが、非常に簡便性のみが表に出てきているという食事情にいささか私は不安を覚えるわけです。そして、今度は栄養的に心配になるとサプリメントである、栄養補助食品がやがて一兆円市場になるのではないかというような実は現実であります。若い奥さんとか子供たちも、食材の名前を知りません。したがいまして、子供のうちから食とかあるいは農を知ってもらう、そういった食育が私は必要だと思います。
 食品安全基本法は理念法だというふうに思いますけれども、より具体的に、法案はもちろん法案として重要なんですけれども、より具体的に日本の食事情をいろいろな角度から点検する、そういったきっかけをつくる役割をこの法案に期待したい、これが私の最後のお願いでございます。
 どうもありがとうございました。(拍手)
佐々木委員長 ありがとうございました。
 それでは次に、神山参考人、お願いいたします。
神山参考人 おはようございます。
 ただいま御紹介いただきました神山でございます。本日、このような席にお招きいただきまして意見を述べさせていただくことを大変光栄に思っております。ありがとうございます。
 御存じの先生方もいらっしゃるかもしれませんが、私が所属しております東京弁護士会では、一九八一年、およそ二十二年ほど前でございますが、食品安全基本法の提言というものを発表いたしました。このたびも、お手元にお届けしてあると思いますが、昨年の十二月の十二日に食品安全基本法についての意見書というものを発表いたしました。
 その冒頭部分で、大変手前みそでございますが、八一年に「「食品安全基本法」制定の提言を行なった。同提言では、立法により、消費者たる国民には、食品の安全について1安全な食品の供給を受ける権利、2安全な食品を選択する権利、3食品安全行政に参加する権利などの「諸権利」があることを明確にし、食品安全委員会や情報公開制度の設置を盛り込むなど、先見的な内容をもつもので、この提言が当時の立法や行政に生かされていれば、いま社会を揺るがしている食品安全問題も、相当程度回避できた筈である。」などという自分を褒めているような意見書を出しておりますけれども、私は、二十年を経て今この国会で同じ名前の食品安全基本法というものが審議され、また、その中に私どもが提案いたしました食品安全委員会というものを盛り込まれるということを、大変感無量の面持ちで受け取っております。
 私も、この法案につきましては、二十一世紀にふさわしい画期的なすばらしい法律だと存じておりますけれども、なおさらに二十一世紀的な、画期的な歴史に名を残す法律にしていただくために、三点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。
 一点目は、まず消費者の権利についてです。二点目は、措置請求権というものについてです。三点目が、予防原則についてであります。
 今も読ませていただきましたが、東京弁護士会が提言いたしました食品安全基本法の最大の骨子は、消費者の権利を確立するということでした。
 消費者の権利といいますと、御承知のとおり、ケネディ大統領が消費者の利益保護に関する特別教書演説というものを議会でいたしましたが、これが一九六二年のことでございます。今から四十年も前のことだったんです。四十年もたって、今、国会に食品安全基本法、消費者保護に軸足を移したすばらしい法律がつくられようとしているときに、なお消費者の権利という言葉が入らない、消費者の役割にすぎないということを大変残念に思っております。
 ケネディ大統領の四つの権利というのは、消費者には、安全を求める権利、知らされる権利、選ぶ権利、意見を聞かれる権利、この四つでございますが、一九六二年にこれが高らかに宣言されましてから後、我が国では、一九六八年に被害者一万四千人以上も出すカネミ油症という悲惨な食品事故が発生しております。さらに、DDTなどの有機塩素系農薬が販売禁止されたのは、一九七一年です。その後も、O157食中毒事件ですとか雪印加工乳食中毒事件、あるいは今回の食品安全基本法の発端になりましたBSE発生など、食品に関する事故は相次いでおります。
 私は、今こそ、新しい食品安全基本法をつくるのであれば、この中に国の責務、自治体の責務、事業者の責務に対する形で、消費者の権利というものを明文でぜひ盛り込んでいただきたい。消費者には安全を求める権利があり、それから情報を得て選択する権利があり、食品安全行政に参加する権利があるということを明文をもって入れていただきたいということをお願いしたいと思います。
 ちなみに、一九七五年に制定されました東京都の消費生活条例では、制定当初から消費者の権利というものが明文化されております。条例でできることが国権の最高機関たる国会でできないはずがないと私は確信しております。
 二番目に、措置請求についてでありますが、消費者は食品安全行政に参画する権利があるはずでありますが、それを明文化したものとして、措置請求権あるいは申し出権というものをぜひこの法律の中に入れていただきたい。運用の問題ではなく、条文の中に明文で入れていただきたい。
 私どもの東京弁護士会の昨年の十二月の意見書の二ページから、ここに措置請求権を規定することが必要だという意見を述べておりますが、現行法の中でも、例えば消費生活用製品安全法あるいは家庭用品品質表示法といったような法律の中に、担当大臣に対する申し出という条文がございます。
 消費生活用製品安全法ですと、「何人も、消費生活用製品による一般消費者の生命又は身体に対する危害の発生を防止するために必要な措置がとられていないため一般消費者の生命又は身体について危害が発生するおそれがあると認めるときは、主務大臣に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。」という条文がございます。
 こういった条文を食品安全基本法、あるいは実際にリスク管理を行います食品衛生法とか農薬取締法、あるいはJAS法などのそれぞれの条文の中に入れていただくということによって、この食品安全基本法がメーンに据えておりますリスクコミュニケーションというものが実のあるものになろうかと思います。
 先ほども各参考人からも御意見が出ておりましたけれども、これまで、例えば未承認の遺伝子組み換え食品でありますスターリンク事件にいたしましても、こういったことがあるよということを発表しているのは行政側ではなくて消費者側なわけですから、こういった情報を吸い上げて、それを政策に生かすという道が、運用ではなく条文として必要ではないかというふうに考えております。
 この点につきまして、例えば法案の十三条には「食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、当該施策の策定に国民の意見を反映し、並びにその過程の公正性及び透明性を確保するため、当該施策に関する情報の提供、当該施策について意見を述べる機会の付与その他の関係者相互間の情報及び意見の交換の促進を図るために必要な措置が講じられなければならない。」とされております。
 この条文を見る限り、国側が施策を策定しようとするときに意見を聞かれるだけでありますが、そうではなくて、一般消費者、一般国民が求めておりますのは、こういう新しい施策が必要だよ、あるいは施策の変更が必要だ、こういう意見を積極的に述べて食品安全行政に参画したいという強い意思でございますので、今私が申し上げましたような措置請求権あるいは申し出権、それから公聴会の開催要求というようなことも含めまして、法律の条文の中に消費者の参画の手段を明確にしていただきたいと思います。
 最後に、予防原則についてでございますが、この食品安全基本法の中では、リスク分析の手法を取り入れるということが言われております。非常に耳なれない、私どもが使いなれていないリスク分析という言葉でございますけれども、食品の安全性、国民の健康に対する影響あるいは環境に対する影響等、科学的にそのリスクを分析しようということですけれども、この世の中には、リスクを分析するための科学的データが十分そろっていないものもございます。例えば、環境ホルモン物質のように、一つの物質と一つの結果との間の一対一対応の因果関係は明確にできないというものもたくさんあります。
 このような科学的なデータが不十分な場合であっても、例えば、胎児、乳児のときに受けた暴露が思春期になってからあるいは成人してからあらわれて、しかもその結果はもう取り返しがつかないというような、こういう重大なリスクを、被害を生むということも十分予測されるわけでして、その場合には、科学的なデータが不十分であっても予防的な取り組みをするのだ、こういう原則、予防原則をリスク分析の手法の中に明文として入れていただきたいというふうに思っております。
 予防原則というのは、食品安全委員会が行うリスク評価ではなくて、むしろ各省庁が行うリスク管理の問題であるという意見もありますけれども、リスク評価とリスク管理両方含めてリスク分析手法と言うわけですから、食品安全基本法の中に、リスク分析の手法を取り入れる、その場合には、科学的にデータが不十分であっても、その結果その物質によってもたらされる被害が重大であってしかも対策がとれるという場合には、予防的に対策をとる。
 例えば、乳幼児用のおもちゃの中に環境ホルモン作用があると疑われる物質が入っているというときに、その乳幼児用のおもちゃにそういう物質を加えることを禁止するということは簡単にとれる措置であり、そのものによって、そのおもちゃの中の物質にさらされた乳幼児が成人してから被害を受ける、あるいは、たくさん言われておりますように、生殖毒性があるとか、あるいは精子が減るですとか、あるいは精神的な問題を起こすというようないろいろなことが言われておりますから、そういったことを避けるためには予防的な取り組みをしなければならないのだということを、明文をもってぜひ入れていただきたい。
 EUの、欧州共同体の委員会では、EU加盟国の中で予防原則について恣意的な解釈がなされない、貿易の障壁にならないようにというようなことから、予防原則に関する文書というものを出して、予防原則の内容をできるだけ明確にして、これを施策に取り入れていこうということを既に二〇〇〇年に打ち出しております。
 ですから、これからこの国会で審議されて成立されようとしております食品安全基本法の中には、ぜひそういった視点を明確にしていただきたいということをお願いしたいと思います。
 日本国憲法十三条には、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と明確にうたわれております。この憲法十三条あるいは憲法二十五条の趣旨にのっとって、すばらしい食品安全基本法を制定していただきたいとお願いして、私の意見を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
佐々木委員長 ありがとうございました。
 以上で四人の参考人の方々からの御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥山茂彦君。
奥山委員 おはようございます。自由民主党の奥山でございます。
 きょうは、四名の参考人の皆さん、本当にお忙しい中、御苦労さまでございます。
 忘れもしませんが、ちょうど二年前ですか、アメリカの同時多発テロの直前に、前日に日本にBSEが入ってきたということで、非常に大きいニュースとして取り上げられるべきところが、あのテロ問題でこの問題が少しかすんでしまったような当時の状況がありました。しかしながら、我が国におきましては、このBSEが、日本の食の安全について改めて目覚めさせてくれたのではないか、そのような日本の食の安全行政にとっても非常に大きな曲がり角になったのではないかと思います。
 雪印あるいは協和香料、そしてまた農協等の食肉をめぐるいろいろな問題とか、あるいは添加物の問題とか、そういった一連の問題が次々と出てきて、まさに国民の食の安全行政について、もう大変な信頼低下という事態に至ったわけであります。
 しかしながら、国会におきましても、そういった事態を踏まえて、厚生労働省あるいはまた農水省とも連携しながら、今ここで国民の信頼を取り戻すということについてどうすべきかということで随分論議が交わされたわけでありますが、その中で、やはり食の安全を根本的に見直して、そして安全基本法というものをここできちっと制定していくということになって、今日を迎えたわけでありました。
 そこで、私も質問項目の関係で、すべての参考人の皆さん方に御質問ができないかもしれませんが、最初に、高橋参考人にお尋ねを申し上げたいと思います。
 食品安全基本法は、BSEの反省を踏まえた中において、安全行政というものはいかにあるべきかということで出されてきたわけでありますが、安全を速やかに生かせるというか、特に勧告が十分生かせるような体制でなければならないわけでありますが、当面、今後の運用について、高橋参考人は、どういったことを主にしながら期待されてこの基本法を制定すべきかということで、基本的な考え方を聞かせてもらえたらと思います。
高橋参考人 今奥山委員の御発言のように、一昨年BSEが発生しまして、昨年にかけて、日本の畜産界あるいは食肉業界は大きな授業料を払ったように思います。その授業料に対応した成果が、今回の食品安全委員会あるいは食品安全基本法ということになろうかと思っております。
 さて、私は、今の御質問に対して二つの点を常に考えております。
 一つは危機管理ということでございます。これは食品安全委員会だけではなくて、リスク管理を行うそれぞれの省庁がどれだけの危機管理を行うのかということが一つでございます。
 例えば、BSEの調査検討委員会でアンケート調査を行いました。それは、ちょうど問題の時期に畜産行政に携わった、といいますと、一九八六年にイギリスで発生しておりますが、それから農林水産省の畜産行政に携わった人たちを対象にしたアンケート調査。その一項目に、発生する前に、日本で発生する可能性についてどのように考えたのかという質問がございます。発生する可能性があると答えた人が、課長、室長クラスで二〇%、その下のクラスで二五%。要するに、四人に一人、五人に一人がそういうふうに危険に思っていたんですね。ところが、それが省全体の中で、万一発生した場合にどう対応するかというような危機管理の手段の構築に至らなかった。これは、少なくともその当時はマイナス意見だったと思います。そういったマイナス意見も吸収して対策をつくるようなことがない限り問題は解決できないというふうに思います。
 それから、二番目の大きなものは、これは、官主導だけで食品安全行政ができるということでは決してないと思います。あくまでもフードチェーンといいますか、農家から始まって、食品製造業それから最終的に消費者、その全体の中でそれぞれが責任を持たなければいけない。その中で、消費者もそれなりの責任を持たなければいかぬ。その全体の責任ということにしっかり対応していくことが大切ではないか。
 以上です。
奥山委員 ありがとうございます。
 そこで、この食品基本法というものができるわけでありますが、安全委員会がこのもとでつくられるわけであります。そこで、いろいろ論議されている中で、安全委員会が、リスク評価というものを主にしていろいろと議論をしようということになっておるわけでありますが、そのリスク評価が、専門家、どっちかというと学者の先生方を中心にしながら構成されるわけであります。
 先日もJAから、生産者側の意見というものはどのように入れてもらうのかというような話があったり、特に生産者の切迫した声や立場というのはどのように反映されるのか。逆に、特に消費者の意見というものが本当にその中に入っていくのかどうか。いわゆるリスク評価ということ、知見ということを中心にされるわけでありますから、どちらかというと、幅広い生産者、消費者の意見というものが本当に反映されるのかどうかという懸念があるのですが、もう一回高橋参考人にお願いしたいと思います。
高橋参考人 リスク評価というものとリスク管理というもの、これはしっかり分けなければいけない。
 リスク評価というのは、あくまでも客観的な形で科学的に判断する。もちろん、狭い科学じゃないということは先ほど申し上げました。それを受けてどう対処するかというのがリスク管理だと思いますが、客観的な判断をする、あるいは中立公正で判断をするといった場合に、いわゆる生産者団体だとか消費者団体だとか利害を持っている人たちが加わるということは、独立性をもとにした判断が十分できないというふうに思いまして、私は、それは排除すべきだろうと。
奥山委員 わかりました。
 日和佐参考人にお尋ねを申し上げたいんですけれども、この安全委員会、それからリスク評価、管理も行う、いろいろな食の総合的な安全行政を行うに当たって、かつてフランスでは食品安全庁というのがつくられているわけであります。イギリスでは食品基準庁というものがつくられて、その他の国々にもそういうものがつくられているわけでありますが、日本は、今回は安全委員会というケースにとどめられているわけであります。この点がいかがかと思います。私たちも、初めは食品安全庁をつくるべきだと考えてきたわけでありましたが、その辺のことは少し中途半端にならないかということが一つ。
 それからもう一点お尋ねをしますと、食品の安全白書をつくってはどうか、そういう義務づけをすべきでないかということもありますが、そのあたりはいかがお考えでしょうか。
日和佐参考人 まず最初に、食品安全庁のことなんですが、食品安全庁という形で、一つの行政機関で食品安全行政を行うということは、私は理想的な形であろうというふうには思っておりました。
 ですけれども、今回、食品安全行政を改革するに至った一つの大きな原因は、食品安全行政で行われている重要な政策が透明性がない形で、要するに公開されないで、役所の中で明確な理由もわからずに重要な政策が決定されていたという件が幾つか出てきたということであります。ですから、より一層公開性と透明性が必要になってくる。
 ということになりますと、食品安全委員会、リスク評価をするところと、リスク管理をする厚生労働省と農林水産省、その機能を二つに分けた方が、リスク評価の結果について、食品安全委員会でやりますので、どうしても、そこで一たん結果が公表されます。同じ省庁の中でリスク評価とリスク管理は同時にできないわけですから、リスク評価がなされた結果について、一たん、そこは当然公開がされるわけです。その公開されたリスク評価について、どう管理するかということを決めるのが次のといいますか、リスク管理を行う厚生労働省であり、農林水産省であるわけですね。ですから、そこを切り離すことによって、より情報の公開をせざるを得なくなるような仕組みになっていく、それを非常に強くねらったという経過があります。
 ですから、透明性と公開性をより一層強くするために分けたということです。理想的には一緒であろう。ですから、日本の現状に沿った仕組みで行政はつくっていかざるを得ないというふうに思っておりまして、そういうことだと御理解いただきたいと思います。
 それから、食品安全白書については、私もつくられるべきだと思いますけれども、ただ単に、白書でなくても、年に二回ほどのまとめたリポートとか報告書等でもいいのではないかなというふうに思っておりますけれども、何らか、年間どのようなことをし、どのような結果に至ったかというまとめの公表は必要であろうと思っております。
奥山委員 ありがとうございました。
 ちょっと質問項目が多いので、続けてまいります。
 かつてカイワレ大根という問題があって、O157の問題があって、結局、これは原因がわからずじまいで風評被害だけが拡大して、カイワレ大根が全く売れなくなってしまったというような問題がありました。BSEにいたしましても、その発生源がなかなか特定できなかったということがありながら、一方において、どんどん風評被害が拡大していって、牛肉の消費が格段に低下したというような苦い経験が我々はあったわけであります。
 そこで、科学的な評価をされるに当たりまして、その評価の結論が出るまでにどんどん被害が広がっていくおそれがあるわけであります。そうなってまいりますと、報道のあり方、そういうものをどうすべきかということもこれは同時に考えなければ、生産者はわけのわからぬままに大変な打撃を受ける、こういうことになるんじゃないかと思います。
 それともう一点、これは中村参考人に、今のことも一緒ですが、もう一点お尋ねしたいんですけれども、いわゆる食育を進める上において、国民が食の安全に関する知識と理解を深めて、日ごろから食の安全について考える習慣というものを身につけておく、いわゆるリスクコミュニケーションを徹底させ、この質を高めていかなければならないと思いますが、こういったいわゆる食育という点でどのように進めていかれるか、聞かせてもらいたいと思います。
中村参考人 お尋ねの風評被害というのは本当に難しいものでありまして、私も、おととしのBSE発生の後、地方に参りまして、盛んに風評被害について、特に生産者の方あるいは焼き肉の営業者の方からいろいろな御意見をいただきました。
 私は、風評被害というのは、事実でないものを事実であるかのように報道する、これが風評被害だというふうに思っています。ですから、おととしのBSE発生直後にNHKで放送した「狂牛病」、そのときはまだ狂牛病という名前が使われておりましたが、「狂牛病」という番組が非常に強い批判を受けました。私は別にその番組に携わっておりませんでしたが、何を批判されたかというと、牛がよろめいて倒れるようなシーン、それから、人間に感染したいわゆる変異型ヤコブ病の女の子の非常に哀れな状況、これは、二つが牛肉の消費を減退したんだ、それはもうNHKの責任であるということを言われました。
 私は当事者ではなかったんですけれども、そのときに申し上げたのは、私の考えでは、これは風評被害ではないだろう。つまり、両方とも事実なんですね。事実を取材して放送している。若干問題があったとすれば、タイミングの問題、つまり、放送した時期の問題であろうというふうに思いました。
 ですから、そういう意味でいいますと、風評被害がどんどん広がっていくというのを避けるためには、きちんとした情報をとにかく開示するということが私は大前提ではないかというふうに思います。とかく、ちょっとここまで言ってしまうとこれは波紋が大き過ぎるとか、何かそういうような配慮がどうもあって、全部の情報開示が行われない場合が間々あります。そうではなくて、それはもうとにかく全部開示をする。対応はどうなんですか、対策はどうなんですかと言われたときには、対策はこういうスケジュールでやります、今はまだ全部、最終ゴールまで言えないけれども、こういう対応の段取りでやっていきますというようなところまで開示をするということが大切なのではないかというふうに思います。
 ただし、メディアのあり方は、やはり平時、日ごろから行政の方なりなんなりがメディアの方とおつき合いをして、何か大騒ぎがあったときにまず前面に出てくるのは、我々の部内の言葉で言えば、社会部的な方が出てきちゃうわけですね。その社会部的な役割というのは私はもう大いに尊重しますけれども、そうすると、どうしても受け身になっちゃう。受け身になって、その都度その都度の対応になってしまう。日ごろからやはりメディアの方々とつき合いをしていただいて、情報交換をしていくということが大事なんだろうと思います。
 それから、食育については、簡単に申し上げますが、いろいろな形の食育の形というのがございます。例えば農業体験、あるいは子供たちのいろいろな食の現場への訪問とか何かによって知識を得る、いろいろな形がございますが、私は、日本はこれをやはりシステム化していくべきだというふうに思います。今は散発的にそういう例はふえておりますけれども、あくまで散発的に行われているだけで、国としてシステム化されておりません。例えばフランスの教育ファーム、あるいはドイツの教育ファーム的なものを、日本でもそういった個々の実例を束ねるような形でシステム化していくことがこれからの課題ではないかというふうに思っております。
奥山委員 もう時間が参りましたので、済みません、神山参考人にも一言聞きたかったんですけれども、もう時間がございませんので、失礼しました。どうもありがとうございました。
佐々木委員長 以上で奥山君の質疑は終了いたしました。
 次に、石毛えい子君。
石毛委員 参考人の皆様におかれましては、早朝から本当に御苦労さまでございます。ありがとうございます。
 参考人の皆様、食品安全基本法を成立させるということにつきましては基本的に御評価、御賛成をいただいたと私も受けとめさせていただきました。その上で、よりよい法律にするためにもっと努力をという御要請もこの委員会審議にいただいたというふうに認識をしております。そういう観点と申しましょうか、気持ちで何点か御質問をさせていただきたいと思います。
 私自身も食品安全基本法を成立させるということについては異論はございませんけれども、総じて、私自身は、この法案は弱いという、あるいは、言ってしまえば甘いところが多々あるというふうに受けとめている、そういう立場性というものも最初に申し上げておきたいというふうに思います。
 それで、まず日和佐参考人、それから神山参考人にお尋ねしたいと思います。
 先ほど神山参考人はケネディ大統領の消費者の権利についてお触れになられましたけれども、やはり選ぶ権利ということを考えた場合、情報公開というのは、どちらの参考人の皆様も御指摘くださいましたけれども、大変重要だというふうに思っているわけです。いろいろなディメンションで情報公開とか公表とかというふうには触れられておりますけれども、私は、日和佐参考人が御指摘になられました事業者の皆さんが要請に積極的におこたえいただきたい、これは、長年の消費者運動に携わられていらっしゃいました日和佐参考人の御経験からも、強いお気持ちを込めて御発言になられた点だと思います。
 その事業者の責務ということが、例えば法案第八条の二項は「正確かつ適切な情報の提供に努めなければならない。」というふうになっていて、これは努力規定、そういう構成になっておりまして、ここはもう少し強める必要があるのではないかというふうに私自身は思っているところなのですけれども、そこのあたりをもう少し御経験に即して御説明いただけたらというふうに思います。
 そして、神山参考人にも、先ほど日和佐参考人が知的所有権のことを少し触れられました。そこのあたりとの相関も含めて、この情報公開に対する事業者の責務をどのように考えたらいいかということをお教えいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
日和佐参考人 最初の、事業者の情報公開が努力義務になっているという点でありますけれども、ただ、この法律の性格上、食品安全基本法という、基本法という性格でありますので、罰則等についてまで規定することは難しい、法律の性格上難しいのではないかと私は思っておりまして、努力義務ではありますが、かなり強い努力義務で表現をしてほしいと思っております。
 先ほど申し上げました件は、リスク評価に関しての具体的なことでありまして、リスク評価に関して、その申請は主に事業者からなされるという形に当然なると思います。その結果、事業者が提出したデータによってリスク評価をするということが基本であろう。それが不十分な場合には、さらに検査それからテスト等の要請はできると思いますけれども、基本はそうであろうというふうに思うわけですね。
 ですから、提出されるデータ等は、事業者が何らかの研究機関や自己の研究機関によって調査したデータになるわけですので、その所有権というのは基本的には事業者にあると思っています。ですから、これは事業者に強く要請をしたい。自主的に事業者が公開をしてもいいということになれば、それは当然公開できるわけです。その公開がなければ、リスク評価の結果に対して信頼性はなかなか得られにくくなるわけですね。そのことを事業者は強く自覚してほしいということでして、自主的に事業者の方から公開してくれるような仕組みにぜひしていただきたいということです。
 ただ、法的な責務としてそれを規定することはかなり難しいのではないか。現実には、遺伝子組み換え食品の安全性に関するデータ等は、かなりの部分、事業者が自主的に公開をしています。そして、私たちは見ることができる。そういう意味合いでも、事業者は、食品安全行政、食品の安全に関して信頼を得るような立場での努力、それも一つ事業者の責務であろうと思っています。
石毛委員 ありがとうございます。
佐々木委員長 では、続いて神山参考人、お願いします。
神山参考人 今の八条の二項につきましては、この法律で罰則がかかるわけではありませんので、食品その他のものに関する正確かつ適切な情報を提供する責務を有するというふうに直していただいて、事業者の方にも別に何ら差し支えはないのではないか。そういう正確かつ適切な情報を提供する責務があるということを疑う人はいないのではないかというふうに思います。
 ただ、非常に零細企業も多うございますので、情報を提供する手段を持っていないという場合もあるでしょうし、過大な要求になるということもあるだろうということで、努めるという言葉が入ったんだとは思いますが、少なくとも、基本的な責務があるということの、基本法の役割としては、それは必要ではないかというふうに思います。
 それから、知的所有権等との関係でございますが、中国産の健康茶に農薬が残留していたというデータの公開を求める裁判というものを東京都に対してやったことがございます。このときに、東京都側は、そういうものを公表すると風評被害が生ずるということで情報公開を拒否したわけですが、裁判所の判断は、流通している商品の品質に関する情報というものは、これはだれでも自分でテストでもしようと思えばできることであって、拒否、それを秘匿することはできない、これは事業者がみずから甘受すべきものであるという明確な判決を下しております。
 それからもう一つ、農薬残留基準の取り消しを求める裁判というのをいたしまして、この中で、東京高等裁判所が農薬メーカーに対して毒性情報生データを裁判所に提出するようにという命令を出してくれたことがございます。
 ただし、このときには、これは知的所有権の問題もありますので、すべての情報を外に公開するということは裁判所が認めませんでした。ただし、その裁判の中で使う範囲内ですべての生情報を提出を受けることができまして、消費者側で専門家をお願いして、それを検討した結果、その農薬について、ADI、一日摂取許容量といいますが、これを設定する審議過程が非常に不明確で非科学的であるということを証明いたしました。
 そして、そのことについて高等裁判所は、そういった審議過程が不明確であるということについて、消費者、一般国民が不安や不信を持つことは当然理解できるけれども、ただしかし、だからといって、国に損害賠償請求までは求められるものではないという判断になりましたけれども、こういった手段において情報が出てくるということは大変重要だと思います。
 ただし、知的所有権との関係、農薬は登録がないとだめという問題もあるわけですけれども、かなりの部分、農薬の毒性データというのは学会誌等で公表されているものもありまして、そういったものも含めてすべて秘匿する必要はないわけで、生データを原則公開する。これは、ここの情報の提供と意見の交換の促進というようなところにも書いてありますけれども、食品安全委員会が集めてリスク評価をした生データは原則公開する、ただし、その中で本当に知的所有権にかかわる部分は保護するという、原則と例外をひっくり返すという方向にしていかないと、先ほど日和佐参考人も言われましたように、リスク分析の、リスク評価の結果が信頼が持てないということになるのでは、せっかくのリスク評価が何にもならないと思いますので、情報公開ということは非常に重要だと思っております。
石毛委員 先ほど日和佐参考人がお述べいただきました御意見の中にも、リスク評価に関して、安全性に関する調査、検査結果の資料等は可能な限り公開がというふうにお述べいただきました。やはり、この法案もそこのあたりを総括的に記載してございますので、バックデータの公開ということもきちっとしていかなければならないというふうに私もとらえているところでございます。
 中村参考人にお尋ねいたします。
 御意見の中で、リスクマネジメントを従来の行政機関が行うことは現実的であるとしても、縦割り行政と縄張り意識を払拭する何らかの知恵が必要という御意見で、透明性を確保するということが一つの重要な方法というふうに御指摘くださいました。その透明性確保の方法として、もう少し具体的に御指摘いただける点がございましたら、お教えいただきたいという点。
 それから、これも委員会の質疑のところで既に質問でもされているところなのですが、食品安全委員会の機能を規定している第二十三条が、関係各大臣に勧告することとか実施状況を監視することとかというふうには記載してありますけれども、委員会に対する報告の規定の仕方が、しぶりが弱さがあるとか、それから、食品安全委員会が国家行政組織法の三条委員会ではなくて八条委員会として設置されるというような事柄も相関しまして、縦割り行政が本当に克服されていくのかどうか、実効性が上がるのかどうかというような点で懸念が残るところもあるというふうに認識しております。
 御著作も拝見いたしまして、GAOとFDAの関係などにもお触れいただいておりますので、この点で有効な御意見を賜れればと思います。よろしくお願いいたします。
中村参考人 先ほど、透明性の確保が一番大前提だというふうに申し上げましたのは、リスクマネジメントのいろいろな作業の過程あるいは結果について、例えば、ある省庁からの情報の開示がなされるといったときに、それがきちんと行われているのであれば、例えばそこにもう一つの省庁が何か口を挟んでも、それは一向構わないわけですね。そういう形でお互いの持ち分からリスクマネジメントの作業が行われていけば、それは全然問題はないわけであって、それが隠された中で作業が行われていて、結局それが国民の目に見えないというところに、やはり縦割り行政の弊害が出てくるのであろうというふうに思います。そこのところが私が実は先ほど申し上げたかったところでございます。
 それから、第二十三条の件でございますけれども、これはかなり、大臣はもちろん報告をしなければならない、それから、委員会の、いろいろな独自に情報を集めて、それをさらに結果に基づいて関係各大臣に勧告をするというようなことが決められているということは、ある程度、ここに方向性をきちんと出すことができるということが明記されているのではないかというふうに私は実は理解をしたわけです。
 それで、ただし、そのときに、リスコミに大事なことは、食品安全委員会はいろいろなところから入ってくる要望なり意見を調整するという仕事はもちろん大事なんですけれども、それを食品安全委員会だけが一手に引き受けてやっていくというのでは、これは作業としても大変なわけで、できればそれを開かれた場で、先ほど私はワークショップということを申し上げたんですが、問題点を洗い出して、それで情報交換をして、そのワークショップの主催者はいろいろであって構わないと思うんですね。行政がやっても構わないし、あるいは別の団体が、民間団体がやっても構わない。そういう形の意見交換をしていけば、そこに食品の安全性を確保するという一つの方向が見失わないで進められるのではないかなというふうに私は実は理解をしたのでございます。
石毛委員 ありがとうございました。
 御意見を承っておりまして、先ほど高橋参考人もお述べになっていらっしゃったと思いますけれども、官だけではなくて、消費者、市民、民間団体、さまざまな食にかかわる方々が、いろいろな場で公開性を求めるとかあるいは活動するとか発言をしていくとかということが、この法律の有効性を高めるベースになるということを私も受けとめさせていただきました。
 時間がもう少なくなってきてしまいましたけれども、日和佐参考人にお尋ねいたします。
 先ほど、食品安全委員会の委員の選任に当たりまして、消費者分野からの人選を強く期待したいという、これも今までの御活動の上での御発言だというふうに私は受けとめさせていただきました。委員の選考に関しましては、若干参考人の皆様の間でお考えがお違いがあるようにも思いましたので、あえて消費者運動をなさってこられたお立場からこの御意見をお述べになられましたことに、もう少しお触れいただきたいと思います。
日和佐参考人 ありがとうございます。
 この食品安全委員会は、リスク評価をすることがメーンの仕事ではありますけれども、それだけではないと私は思っております。リスク評価を実際に行う方たちはもちろん専門家で、独立性を保った専門家によって行われるわけですけれども、食品安全委員会の委員会、七名で構成される委員会は、食品安全委員会の最高意思決定機関ということになるわけですね。
 ここで議論されることは、例えば、リスク評価をする対象の物質はどういうものを優先的にやろうかとか、年間計画はどのような年間計画でそのことを行おうかとか、それから事業者等からの要請によってリスク評価を行う物質を決めるだけではなくて、公聴会等、それから消費者、国民、それからステークホルダー、生産者の方、加工メーカーの方、いろいろな方の要請をも受け付けながら、その中で、どのような方針で食品安全行政全体を行っていこうかという、単なるリスク評価を行うだけの委員会ではない、総合的な食品安全行政をどのように行っていこうかという、総合的なことについても検討する委員会であると私は思っています。でなければ、それをやるところはどこにも今ないわけですね、ほかでは。ですから、やはり、その任は食品安全委員会が負わなければいけない。
 なおかつ、七名の委員会は、最高意思決定機関ですから、そこには当然、専門家の意見だけではなく、最終消費者、最終の食品を消費する消費者の意見が反映されなければいけない、それは当然なことだと思います。それが今まで余りにもなかったわけです。ですから、消費者無視というのか、消費者は除外されて、蚊帳の外で食品安全行政が今まで行われてきた。
 それがせっかく今回改革されるわけですから、食品安全委員会の委員の中に、ボードメンバーの中に、消費者の思いをきちんと代弁できる消費者分野からの人をぜひぜひ選出していただきたい、それが非常に大きな課題だと思います。お願いいたします。
石毛委員 ありがとうございました。
 時間が参りましたけれども、一言だけ。
 四人の参考人の皆様が消費者の側から意見を出していく何らかの仕組みが必要だと御指摘いただきましたことを大変重く受けとめさせていただきました。
 終わります。どうもありがとうございました。
佐々木委員長 以上で石毛えい子君の質疑は終了いたしました。
 次に、遠藤和良君。
    〔委員長退席、山内(功)委員長代理着席〕
遠藤(和)委員 公明党の遠藤和良でございます。
 きょうは四人の参考人の先生方、本当にありがとうございます。私、ここで、若干、論点を整理するという意味も込めまして、既に御答弁いただいている部分もあるんですけれども、同じ質問を四人の方にさせていただきたいと思います。
 最初は、食品安全委員会の人選の問題ですけれども、いわゆる食品安全基本法自体が消費者の皆さんのための法律であるから、その法律の趣旨を明確にする意味でも、食品安全委員会の中に、七人の中に消費者の代表を入れるべきである、その方が法律がより明確になるのではないか、こういうふうな意見がありますけれども、この意見に対して簡単にコメントしていただきたいと思います。
高橋参考人 消費者の代表というものについては、私は賛成しておりません。ただ、すべての人は消費者であるということを考えますと、当然、消費者としての立場の発言は、いかなる科学者であっても、専門家であっても、一方で消費者でございますので、ただ、消費者代表という形のものではないというふうに考えております。
日和佐参考人 利害調整をする場でないということが随分言われております。ですから、利害代表ということではないような形は必要かとは思いますけれども、消費者団体代表であるとか消費者分野からということに余りこだわらなくてもいいと私は思っておりまして、消費者団体代表が消費者利益を代表してどうして悪いのかしらと実は思うわけです。やはり最終消費するのは消費者なわけですから、そこに余りこだわらなくてもいいのではないかということと、基本的には消費者分野からぜひ人選をしていただきたいと思っております。
中村参考人 食品安全委員会は、リスク評価をするという第一義的な目的でつくられるわけでありますから、私は、その中に必ずしも、消費者団体であるとか、あるいは農業者団体であるとか、食品関連企業の工業界の代表であるとか、そういう方はむしろ入らない方がいいのではないかというふうに思っております。
神山参考人 私は、食品安全委員会の七人の委員の中に、消費者の意見を代表する者は入るべきだと思っております。二十年前に東京弁護士会が出しました意見書の中では、食品安全委員会の委員の半数以上を消費者代表にすべきであるという意見すら出しておりますが、それは今回の法律の中に求めることは無理だと思いますが、少なくとも、この二十九条の条文の中で「優れた識見を有する者」というところに、消費者の意見を代表する者というような文言を入れていただければいいのではないか。
 消費者と事業者を対立した形で考えて、消費者を入れるんだったら事業者代表も入れなければならないということはあり得ないと思っております。事業者であれ、行政担当者であれ、科学者であれ、すべての人は消費者なわけですから、ぜひ、消費者の意見を代表する者を委員の中に入れるという条文にしていただきたいと思っております。
遠藤(和)委員 次の質問ですけれども、食品安全委員会と消費者をつなぐパイプとして、先ほど、高橋参考人からは食品安全一一〇番の提言がありまして、中村参考人の方からも食品安全ホットラインという話がありました。これは非常に貴重な提案だと思うんですけれども、この構想について、日和佐参考人、それから神山参考人、お二人の御意見を聞きたいと思います。
日和佐参考人 基本的な考え方は、いかに消費者、国民の声を反映して政策がつくられるかという観点ですから、そのためにあらゆることはやるべきだと思っておりまして、そういう意味合いで、ホットラインも一一〇番も重要だと思っています。
 それから、私は、食品安全委員会の委員会による公聴会の開催をぜひ、年間一、二回などというようなことではなく、イギリス等では年間八回ぐらいやっているということですので、そのくらいのペースで意見を聞く会を、それも東京だけではなく各地域で開催して、より広く意見を集めるということを基本にして、さまざまな仕組みがつくられるべきであるというふうに思っております。
神山参考人 私も、一一〇番、ホットライン、そういうものを設置すること自体は大変いいことだと思っております。
 ただし、今行われておりますさまざまなパブリックコメントなどもいわばホットラインみたいなものですけれども、そういった消費者側、一般国民側の意見が聞き入れられるという素地がございません。ですから、制度も必要ですけれども、制度だけではなくて、それを担当する側が一般国民の心配に謙虚に耳を傾けて、それを受け入れるという体制をつくる。人の心の問題でもありますので難しいことですけれども、危機意識を持って、そして謙虚に耳を傾けて取り入れるという姿勢をこそ求めたいと思っております。
遠藤(和)委員 では、これも四人の参考人に同じ質問をしますけれども、いわゆる食品安全の確保というものに対する消費者の立場ですけれども、消費者には権利こそあれ、これに対して義務はないんだ、したがって、権利を具体的に条文に書くべきであって、この法案のように役割とかそういう形で義務を法律に書くというのではないのではないか、こういう意見があるわけですけれども、これに対する四人の皆さんの御意見を承りたいと思います。
高橋参考人 私、法律の専門家ではございませんので、どういう文言が適当かということは判断できかねます。ただ、消費者の役割ということで言うことの意味に、ゼロリスクが存在しないんだ、消費者もあるリスク負担、自己責任を持たなきゃいかぬ局面があるんだということが、私はこの背後に入っているのではないかというふうに考えます。
日和佐参考人 消費者の権利が明記されないことの問題点について、少し申し上げたいと思います。
 消費関連法、さまざまにできました、PL法だとか消費者契約法等、情報公開法も。その各法の中で、常に常に消費者の権利について規定してほしいということを言い続けてきたわけですけれども、それは実現しませんでした。なぜかといいますと、我が国では消費者の権利がどこにも、言ってみれば、地方条例等にはあるわけですけれども、国の法制度の中でどこにも明確に規定されていないわけですね。要するに、消費者保護基本法にすら消費者の権利が規定されていない。したがって、これらの法律に、消費者の権利、明確に概念がされていない消費者の権利を規定することはできないと言われ続けてきました。
 それで、突出して、この食品安全基本法に消費者の権利が明記されるということは、今までのことからいって、無理であろうと私は思っています。ですから、むしろ消費者保護基本法を改正して、その中できちんと消費者の権利を規定していただきたい。その討議が既に始まっておりますけれども、そちらの方でもぜひ先生方の御努力をお願いしたいというように思っております。
 消費者の役割として、今回は、消費者も知識と理解を深め、と同時に、食品の安全性の確保について積極的な役割を果たすとなっております。結局、これは読みかえれば、権利と義務ということと読みかえることもできると思っております。
中村参考人 確かに、第九条をそのまま素直に見ますと、まず、消費者は食品の安全性について勉強しなさい、理解を深めなさい、こう書いてありまして、そんなに消費者は勉強不足なのかというような印象を実は持たれかねないという気はいたします。
 私は、先ほど意見陳述のときに申し上げたように、これはその前段に、消費者は今、去年以来の一連の食品に関する不正事件の中で、安全な食品を選ぶという非常に強い力を持った。それをまず大前提として、それであれば、それだけの強い力を持った以上は、やはり片方では勉強もしなきゃいけないという文脈だと思うんですね。そういうふうに私は解釈をして、消費者の権利という、その権利という言葉が法律上果たしてどうかということもこれあり、そこまでは私は先ほどは申し上げずに、私の読み方を申し上げたわけでございます。
神山参考人 先ほど、消費者の権利を明文で入れるべきだと申し上げましたけれども、では、消費者には何の役割もないのかといえば、そうは思っておりません。やはり、食品の安全について学習したり、表示を見たり、意見を言う役割があるということは間違いありませんが、この条文に書いてありますように、意見表明の機会を活用する役割があると書かれるのでしたら、意見表明の機会ではなく、意見表明の権利が与えられていなければ、これは整合性がとれないというふうに思っております。
    〔山内(功)委員長代理退席、委員長着席〕
遠藤(和)委員 BSE問題とか食品の表示の問題とか、いろいろと食の安全ということとともに、安心というものが国民の中に本当に、食品行政に対する安心もあるし、食品の流通に対する安心、そうした安堵感といいますか、そういうものをつくっていくというのが大変重要な役割だと思うんですね。
 リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーション、こういうふうな概念の中でこの法律をつくっているわけですけれども、最後に、リスクコミュニケーション、この分野について、これは、物をつくる人も、それからそれを食べる人も、生産者も消費者も、それから中にあるお役所も、あるいはマスコミの方々もこの中に入っていって、公開された場で正確なことをお互いに話し合っていくという風土というものが本当は一番大切なものではないのかなと思うんですね。
 ですから、リスクコミュニケーションのあり方、これに対して、最後に四人の皆さんにお伺いしたい。それから、メディアとのかかわり、そういうことも踏まえて御意見を賜りたいと思います。
高橋参考人 最初の、食品の安心、安全の安心の部分でございますね。これは、どちらかと言えば、リスク管理、あるいは厚生労働省や農林水産省がしっかりやることによって安心が出てくるんですが、食品安全委員会についても、先ほど申しました独立性、卓越性それから透明性、これがちゃんと公開しておれば、要するに食品安全委員会そのものの信頼をどのように確保できるかという、公開ということが私は安心につながることではないかと思います。
 コミュニケーションにつきましては、一つは、やはりその専門官といいますか、やはりプロのコミュニケートをやる人がいないと、いろいろな仕事をして、片手間でやってみえる、それから担当者がまた違ってきて別のことを言うというようなことが今まで繰り返されていたんですが、それをやはり省くことではないかというふうに考えます。
日和佐参考人 リスクコミュニケーションについては、今高橋先生もおっしゃいましたように、専門家の養成が必要であろうと思います。でも、ともかく走り出すのがまず重要なわけでして、今回その専門の事務局が設定されたということは、各省庁を見ても初めてではないかと思いまして、そこできちんと取り組む体制はできたというふうに思っています。
 ただ、リスクコミュニケーションと言った場合に、まだまだその概念についてよく理解がされていないところがありまして、丁寧に丁寧に説明するのがリスクコミュニケーションととられがちなんですが、そうではありませんで、それは意見の行ったり来たりです。ですから、説明を聞くだけがコミュニケーションではありません。意見をお互いに言って、そして合意点を見つけていく、それがコミュニケーションで、リスクに関してそれをやっていこうというわけですので、リスクコミュニケーションを行う場合に、どちらかが説明役、どちらかが聞き役ではありません。双方が対等の立場に立ってコミュニケーションを行っていく、そういうことを基本にして、ともかく取り組んでいくということが大切だと思っております。
 それと同時に、これは先ほども申し上げましたけれども、国レベルだけで行われたのでは意味がないわけですので、各地で重層的に行われる、地方公共団体でもNPOでも消費者団体でもということだと思うんです。
 それから、メディアに関してなんですが、メディアが及ぼす影響は非常に強いです。先ほどもお話がありましたが、社会部ではなく、担当を科学部に置いて、正確な科学的な記事をもっと頻繁に出していただくということを努力していただきたいと思っております。
中村参考人 リスクコミュニケーションの中で、メディアの役割についてもうちょっと補足的に申し上げたいと思います。
 おととしのBSE発生以来、牛肉は安全だ、大丈夫だ、牛乳は大丈夫だというようなことが行政から伝えられましたけれども、そのときに、なぜ安全なんですかということの説明が、メディアを通して必ずしもきちんと伝えられなかったというふうに私は思っております。
 それはなぜかというと、実は、そういう情報をきちんと消化して伝えるべき才能を持っている人たちも、各メディアの中にはいるわけです。具体的に言えば、家畜の病気についてあるいは食品についてある程度蓄積のある人たちもいる。ところが、そういう人たちがその情報伝達の前線に出ていくような余地がなかった。つまり、それはメディア側の責任でもありますが、働きかけてくださる方の努力も私は必要なのではないか。これは平時から、つまりそういった大騒ぎが起きてしまう前に、そういう人たちを大事にしておつき合いいただいて、そして絶えず情報交換をしていくということがやはり基礎にならないといけないのではないかというふうに思っています。
神山参考人 安心の問題につきましては、高橋参考人がおっしゃられたとおり、正しいことをきちんとやっていて、それを公表していくということによってしか安心は得られないと思っております。
 リスクコミュニケーションにつきましては、私は事務局の役割が非常に重要であると考えております。これまで日本のお役所ではリスクコミュニケーション的なものは一切なかったと言ってもいいと思いますので、全く新しいことを導入するときに、その事務局の担当者がどのような姿勢を持つかということと、たくさんの人数がどれだけ用意できるかということが非常に大きいのではないかというふうに思っております。
 各省庁に広報という窓口がございますけれども、私はそこで非常にひどい目に遭ったこともございます。ですから、広報の窓口のような、今あるような広報ではなくて、もっと積極的に打って出るようなリスクコミュニケーションを担う、そういう意欲を持った事務局を備えることができるかどうかが重大ではないかと思いますし、また、メディアに関しましては、例えば個人情報保護法案についてはテレビのニュースでもやっておりますけれども、食品安全基本法の審議がやっているということは報道されておりません。私は、それではだめなのではないかと。やはりメディアがもっと食品の安全の問題に関心を持って、食品安全委員会ができましたら食品安全委員会担当者を配置する、それくらいの意欲を持ってもらいたいものだと思っております。
遠藤(和)委員 ちょうど時間が参りました。どうもありがとうございました。
佐々木委員長 以上で遠藤和良君の質疑は終了いたしました。
 次に、西村眞悟君。
西村委員 自由党の西村でございます。
 基本的なことから御質問いたしますが、私は、この基本法案に大いに不満がございます。なぜなら、国の責務は定めておりますが、それがいかによって立つ、いかなる原因によって国の責務が発生するのかという根本の問題をあやふやにしているからであります。
 すなわち、我が国においては国の責務は、国民が安全に生活することができるという基本的権利が存在するので国の責務が生ずるわけでございます。封建時代の民のように、お上の恩寵のもとに安全に生活させてもらえる臣民ではなくて、国民が基本的に安全に生活できる権利を有しているので国の責務が生ずるわけであります。我が国においては常にこの点が無視されております。
 突拍子もないことを言うようでありますが、北朝鮮による日本人拉致問題が二十五年間放置されたのも、そしてそれに政治が責任を感じないのも、結局、この国においては、国民自身が安全に生活する基本的権利を持っており、国また政治がそれに奉仕する責務を負っているという根本の原則が我が国で明確になっていないから、だれも責任をとらないんです。
 その観点で、神山参考人は、明確に、消費者の権利というものを中心として基本法を構成しなければならないと述べられましたですが、他の三名の御参考人の皆さんは、安全基本法という限りは、国民の安全を基本的に守るという基本法である限りは、国民の権利、基本的人権を中心にしてこの法案は構成されねばならないという考え方に関しては、いかなる所見をお持ちか、お聞かせいただきたいと存じます。
高橋参考人 国民の権利ということでございますが、私の考えていますのは、やはり全体に規制緩和の時代でございますので、強力な管理機構をここでつくるということについては極めて消極的な意見を持っております。むしろ、最低限できることは何かということは、やはり、科学的な分析をもとにした公平公正な、しかも情報公開をするリスク管理、これが今まで全くなかったわけでございますので、これを再構築するというか、新たに打ち立てるということによって、私は大きな前進になるのではないかというふうに考えております。
日和佐参考人 先ほど申し上げたことの繰り返しになってしまうんですけれども、おっしゃるように、私も、国民の権利、消費者の権利を根底にして構築されるのが基本であろう、それはそう思っております。ですけれども、現実、消費者の権利というものの概念が明確ではないということで、いわゆる消費者関連法については、消費者の権利というものを明確にすることが、文言として入れ込むことができませんでした。
 ですから、先ほども申し上げましたけれども、消費者保護基本法、その保護基本法がそもそも問題なわけですよね。保護ではなくて消費者の権利法であるべきなわけですけれども、まずその根本的なところを改革していただきたい。そこにきちんと消費者の権利を明確に規定していただきたい。そうすると問題は一挙に解決するわけです。今、議論がもう既に国生審で開始されております。ぜひ先生方も、そのことに、消費者の権利の確立のために御努力をいただきたいと思います。
中村参考人 先ほど申し上げたように、第九条で述べられている消費者の役割というのは、消費者が今、かつてはなかったような非常に強い食品を選ぶ力を持っていることの裏腹だというふうに申し上げます。それを権利という言葉でその条文の中に入れるのかどうかということについては、権利という言葉が持ついろいろな多様的な意味合いを考えて、恐らくそこに入っていないのであろうというふうに私はそんたくをいたしました。
 それから、もう一つは、消費者の役割ももちろんですけれども、それから責務ということですが、国の責務というのは、国には全体の食品の安全性を確保する責任があるということはもちろんだと思います。しかし、個々の食品の安全を確保するいろいろな立場というのは、私は、やはり事業者がまず第一に負うべきことであって、事業者がきちんとしたモラルを持って対処すべきなのが第一義的、国はその上でそれを全体を統括して見るというのが順序ではないか。国がとにかく全部、すべてのことを取り仕切るというようなニュアンスをやはり与えない方がいいのではないかというふうに私は思います。
西村委員 私は、国民の権利を中心に据えて法案を構成することが、強力な国の管理機構を構築することでは全くないと思いますがね。それは、お上の恩寵によって国民は安全に生活できる、その体制をつくってやるという方がよっぽど複雑で、かつあいまいだと思います。今お聞きしていたら、我々の法文化は明らかに大陸法系にいまだにマインドコントロールされて、権利の概念、定義が明確にならなければ、そこからいかなる請求権を出すかということについては全く踏み込めないという前提で御答弁されたんじゃないかなと思っております。
 さて、そうではなくて、権利の概念、それを明確にするんじゃなくて、国民は、消費者はこういう請求権を持つだろう、こういうふうな異議申し立て権は持つだろう、この集積が内容なんだという、何か英米法系な概念でこれを構築すれば極めて単純ではないかなと私は思って、今御質問したわけでございます。
 さて、神山参考人にお聞きしますが、神山参考人が唯一、国民の権利というものから立論されましたので、今定義がこうだというよりも、この基本法においては、今この法案にはない国民の、先ほども触れられましたけれども、いかなる請求権、いかなる措置申し立て権が採用されれば、国民の権利を中心とした基本法にふさわしいのかということについて、概略、少々お教えいただけませんでしょうか。
神山参考人 理想論を言わせていただきますと、アメリカの食品医薬品化粧品法にありますような行政手続規定があって、何人も異議が述べられる、異議が入れられなかったときには法的な再評価が受けられるというような制度であるべきだとは思いますが、そこまでは今一挙に行くことは無理かとも思いますので、私ども東京弁護士会では、少なくとも現行法にあるくらいの条文は入れられるはずであろうと。現行法にないものならともかく、現行法の中に担当大臣に対する申し出という条文があるわけですから、それを入れることができないということが考えられない。こういう措置請求、そしてそれに対する担当大臣の応答義務ですね。それから、どういう請求があったかということに対しての調査義務とか、あるいはその結果の公表といったようなことがあれば、少なくともその条文があれば何らかのアクションがとれるし、それに対して必要な措置を担当大臣がとらなかったというようなときには、例えば何らかの行政訴訟も工夫次第では起こせるのではないかというふうに思っております。
 行政訴訟のことまでこの法律に書くのは、行政訴訟法との関係もありますので無理でございますから、少なくとも措置請求のような手続だけは必要ではないかと思います。
西村委員 おおよそはわかりました。
 それで、ちょっと話題が違うんですが、アメリカは肉骨粉をヨーロッパから輸入しなかった。日本はアメリカが輸入を禁止しても十万トン入れ続けた。サリドマイドのときも同じことが起こっておったわけであります。なぜアメリカができて、日本がいつも後手に回るのか。
 この法案は、先ほどの高橋先生のお話では、このまさにBSE問題に関する調査から生み出されたものであるというお答えでした。では、この法案ができれば、肉骨粉は一グラムも輸入できない体制が生まれるのかということについては、高橋先生から御答弁いただけますか。
高橋参考人 現在、肉骨粉は輸入あるいは製造もしておりません。したがいまして、最近の新聞では、何か、解除するか、解除しないことを決めたというようなニュースが入っておりました。
 いずれにしましても、これは食品安全委員会でしっかり検討する課題になろうと思います。その結論あるいは審議過程が国民あるいは畜産農家にも含めて公表されることによって安全性が確保されれば、輸入も可能になるのではないかというふうに考えます。
西村委員 いや、高橋先生、先ほどの私の質問に真正面からお答えにならなかった、だけれども、重要なことですからお答えください。
 肉骨粉を輸入してBSEが発生したという一連の教訓の中でこの基本法がつくられている、だから一グラムも入らないのかどうか。これが一グラムでもだめだと認定できれば、一グラムも入らないのかどうか、この体制があるのかどうかですよ。
高橋参考人 一頭目が発生しましてそういう体制をとったことはそのとおりだと思います。しかし、肉骨粉を輸入して、そして輸入したときに農林水産省では処理条件を厳しくして、百三十三度、三気圧、二十分でしたですかね、そういう基準のものだけを輸入しようという形で対応したようでございます。ただ、それが正確ではなかった、厳密ではなかったこと。
 それからもう一つは、WHOからの指摘があって、すべての国は牛に肉骨粉を給与すべきではないという判断があったわけですが、それを行政指導にとどめていたというところが大きな問題で、私どもは重大な失政という形で指弾しました。
 ただ、肉骨粉がすべて悪であって、肉骨粉を食べればすべてBSEになるというふうなことは科学的には正確でない、異常プリオンが残っている肉骨粉を食べた場合にそういうことが伝達されるというふうに、私は科学の専門でございませんが、聞いております。
西村委員 しかし、草食動物に自分を共食いさせるというすさまじいことをやって、予防的措置からすればこれは直ちにとめるべきだ、ヨーロッパであれだけの問題が起こっているわけですから。しかれども、まだ高橋先生は科学的な云々で言われる。我が国には入ってくるわけですから、後で被害が出てからわかる。
 そして、今重要なことを言われたのは、強制力がない、勧告にとどまる。だったら、この基本法も勧告にとどまっているということについては御意見ございませんか。
 御家庭のと言ったら悪いですけれども、二十歳の子でも、免許を持って車を運転して不注意で目の前にいる人をひけば、業務上過失致死傷なんですよ。全国民に惨害を与えかねない食品を入れるときに、罰則もないわ何もないわ、それで、今現実に入れた人は退職金をもらってどっかに行っていてないわ。こういう教訓を前提にしてできてきた基本法にしては、罰則もないことについては私は不満である。責任を明確にしろ、それほど食品の安全が重要ならと思うんですが、この点については、時間ですから、四人の先生方の御意見を順次聞いて、私の質問を終わらせていただきます。
高橋参考人 罰則については、それぞれのリスク管理にかかわる法律が食品安全基本法、今回も関連八法案で出ているようでございますが、そういうところで罰則が規定されていると思います。そこで厳しく対処していくということで、基本法そのものに罰則を盛ることが適当であるというふうに私は思っておりません。
日和佐参考人 肉骨粉の問題なんですけれども、当時の問題を今の食品安全委員会に置きかえて考えますと、当時、WHOの勧告文が、本文が当該委員会に開示されなかったという経過がありました。要するに情報公開が不十分だったわけです。したがって、行政指導にとどまってしまったという経過があると私は思っております。
 今回、WHOの勧告文がきちんと公開されることになるはずです、今度の食品安全委員会では。その公開されたことによってどう判断するかということになると思いますので、恐らく、希望的観測でもあるわけですけれども、法的な禁止という措置をとるという結論になると思います。
 今度は、それを具体的にやるのはリスク管理をする農林水産省なわけですから、農林水産省に対して勧告が行われるわけですね。その勧告を農水省が受け入れない、なかなか実行しないということが問題になるのではないかというように御心配になられていると思います。この勧告は、行われなければ行われないということが公表されます。そしてまた、それでもなお行われなければさらに勧告が行われ、そして勧告が実行されなかった場合はそのことが公表されるということが繰り返されます。世の中にそのことが情報として出ていくわけですね。その中でも、なおかつ農林水産省がやらないで済ますだけの、そのような対応をとり続けることができるであろうか、そういう仕組みに今回はなるということで御理解いただきたいと思います。(西村委員「法的責任が明確になるのかということを聞いているのです」と呼ぶ)
中村参考人 肉骨粉の件でございますけれども、現在は、高橋参考人がおっしゃったように一グラムも外国からは入っておりませんというふうに理解しています。
 それから、国内で、自然にどうしても肉骨粉用のくず肉とかあるいは骨というのは出てくるわけですけれども、それは、肉骨粉に製造されても全部焼却されているというのが現実です。
 これから先どうなのかということについては、私は、これはもう食品安全委員会が、本当に今は全部焼却しているけれども、例えば豚、鶏からつくった肉骨粉ならば使用してもいい、ただ牛にはだめだよとか、そういうことは食品安全委員会がリスク評価をする役割を担うんだろうというふうに思います。
 そして、それはそれでそういう形で動いていくと思いますが、それとは別に、やはり今委員がおっしゃったように、反すう動物にそういった消化のいい肉骨粉を効率化のために与えてきた。これは日本だけではなくて、イギリス、フランス、そういった国々の例も参考にしながら、日本における畜産のあり方について議論をするというのは、私は必要なことではないかというふうに思います。
 罰則につきましては、私はこれは基本法でありまして、理念法だというふうに理解しておりますから、ここに罰則までというのはちょっとなじまないかなというふうに私自身は考えます。
神山参考人 ここ半世紀ほど見ましても、我が国ではたくさんの食品事故が相次いでおります。
 例えば、一九五五年、森永ドライミルク事件から始まって、水俣病、カネミ油症あるいは雪印加工乳食中毒、O157中毒、それからBSEあるいは中国産野菜の農薬問題、さまざまなものが起きてきておりまして、これらについてすべて指摘されておりますのは、後手後手である、後追い行政であるということです。ですから、今回の食品安全基本法の中でどうしても必要なものは、予防的な措置をとるという原則を明確にするということだと思います。
 罰則は、私は効果がないと思います。罰則ではなくて、むしろ国家賠償法において公務員個人の責任が免責されていること、このことをもう少し見直していただいて、誤った判断をした、あるいはやるべきときにやらなかったということについて、国家公務員個人の責任も追及されるのだということがあった方が、これは異論も非常に大きいのでございますけれども、私はそういう見直しが必要ではないかと思っております。
西村委員 ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で西村眞悟君の質疑は終了いたしました。
 次に、中林よし子君。
中林委員 日本共産党の中林よし子でございます。きょうは、参考人の皆様方には、大変貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございます。
 まず、日和佐参考人にお伺いしたいと思うのですけれども、昨年、十月号でしたか、「世界」という雑誌のインタビューにお答えになっているんですけれども、そこで、食品安全委員会の位置づけについて、私たちは、食品安全に関する総合的な政策について議論する場にすべきだ、このように主張したんだけれども、関係閣僚会議の結論では、リスク評価だけすればということになっている。このことに関して、日和佐さん自身が関係閣僚会議に出席してかなり追及をしたんだけれども、これが取り入れられなかったと、非常に残念なことを述べておられます。
 それからまた、先ほどからも言われているんですけれども、委員には、専門家だけではなくして、消費者や生産者も含めて十名程度の委員の構成にすべきだ、こういうことも言われておりまして、全く私も同感で、ずっと消費者運動をなさっていらっしゃっただけに、とても残念な思いがにじみ出てきているのではないかというふうに思っているんですね。
 それだけに、今回の政府提出の基本法案に消費者の声というものが条文上やはり明記されていないということが、私としても非常に残念で仕方がないということです。
 先ほどの陳述の中でも、消費者の参画の問題、今後懸念される問題ということで指摘をされているわけですけれども、希望するということであって、それがなかなか担保できるかどうか、保証できるかどうかということ。ぜひその中に、委員の七名の中に入れてほしいんだということを希望的には述べていらっしゃるんですけれども、日和佐さん自身の消費者の参画の思いと、それが本当に担保できるためにはどうすればいいのかというそのあり方などについて、御意見があれば、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
日和佐参考人 ありがとうございます。
 議員おっしゃるように、この食品安全委員会は単にリスク評価をするだけの委員会ではない。そのことについては、BSE問題に関する調査検討委員会の報告書においても記述してあるところであります。もちろんリスク評価が中心の委員会であろうとは思いますけれども、総合的な食品安全政策についても議論する場が食品安全委員会であろうと思っています。
 なぜならば、そのようなことについて議論をする場がほかでは一切ないわけです。ですから、食品安全委員会で総合的な食品安全政策について議論をせざるを得ないと私は思っておりまして、そうであるならば、やはり七名の専門委員で構成されるボード、委員会という名前になっていますけれども、委員会の中に、消費者の考え方、思いを反映できる人が必ず人選されるべきであると思っております。
 具体的には、七名の委員の、下から二番目だったと思いますが、消費者行動、消費者意識に関する専門家という記述がございます。ここを解釈すれば、ここに消費者分野から人選をすることは可能なわけですので、ぜひそのようなことで、既にこの七名の中には消費者分野からの人選が可能なように規定されていると解釈をしたいと思っております。
 以上です。
中林委員 次に、神山参考人にお伺いしたいと思うんですが、私は、東京弁護士会が二十二年前に既に食品安全基本法の提言を行っておられたということに大変感銘を受けております。こういうものがあったら、さまざまな食品事故は起きなかっただろう、このようにもおっしゃっているわけですが、私は、この間、この提言を取り入れるチャンスはあったんだろうというふうには本当は思っているんです。
 一九九五年に食品衛生法の改正が行われました、私どもは大変な改悪だというふうに思っているんですけれども。その作業のときに、厚生省が各界の意見を聞くことを目的に開催した食と健康を考える懇談会というのがあったんですけれども、本来もう既に法曹界がこういう提言を行っているにもかかわらず、法曹界の委員をここには入れていないという問題がございました。
 それから、今回の基本法提出に当たっても、私は、法曹界の意見というのが、意見書を求めるわけでもなかったんだろうというふうに聞いているんですね、取り込まれていないと。その結果、非常に強く求めておられる消費者の権利、これが入り込んでいないということが、私は本当に、食品、国民の食の安全をしっかり担保するという法律であるならば、当然それは入り込む必要があったというふうに思うんです。
 だから、この二十数年にわたる東京弁護士会としての運動をなさったその思いだとか、それから、それを今後、日本の食品安全行政に対してどうあってほしいか、特に食品安全委員会のあり方、先ほどの意見陳述の中ではそこのところはお述べにならなかったものですから、その点、これでは懸念があるということがあれば、諸外国の例も踏まえて御披露いただければというふうに思います。
神山参考人 ありがとうございます。
 弁護士会というところが運動団体ではないものですから、意見書を出した後、それを実行に移させる運動をするということがほとんどございません。ただ、裁判制度などに関するもの、司法制度に関するようなものですと運動を始めますけれども、今も一生懸命やっておりますが、食品の安全問題で弁護士会として長年にわたって運動するということはなかなか不可能な状況にありまして、問題が起こる都度、意見書を出すというようなことにとどまっているという残念な状況にあります。
 ただ、私個人といたしましては、そのころからずっと食品の安全問題にかかわってまいりまして、各地で条例制定の運動ですとか、あるいは、さっき申し上げましたが、幾つか食品の安全にかかわる裁判にかかわってまいりました。
 そういった中で常に感じてきましたのは、消費者の意見は聞かない、正しくても聞かない、そういう姿勢です。残留農薬の基準の取り消しを求める裁判のときに、裁判長が厚生省側に対して、国民と役所の間でこういったことについて意見のやりとりをする場があるのか、あるとしたらどういうところにあるのか、ないんだとしたらなくてもいいのかということを法廷でお聞きになりました。それに対して役所側では、そういう場はない、なくてもやむを得ない。それはなぜかといえば、食品衛生調査会というところが科学的に慎重に緻密に審議しているので、それを信頼してくれればいいのだ、こういうことにとどまっておりました。
 ですから、私は、これからできる食品安全委員会が、科学的に慎重に緻密におやりくださるとは思いますけれども、それでも間違うということはあります。私は、そこには消費者の意見、つまり、長年、食品の安全問題にかかわってきた消費者団体あるいは消費者運動をやってきた人たちは、普通の学者の方あるいは役所の担当者よりはるかに専門家なので、そういう消費者側の専門家の意見が取り入れられるような体制ができていかない限り、今後も食品安全委員会は間違い続けるだろうと危惧しております。
中林委員 少し諸外国の例がわかればと思ったんですけれども……。
神山参考人 申しわけありません。
 私、諸外国の例は余り詳しくありませんが、先日いただきましたイギリスの食品基準庁が出した五年間の戦略的計画というものがございましたけれども、それを見ると、その表紙には、プッティング・コンシューマーズ・ファースト、消費者を第一に置くと書いてありますし、消費者を第一に置くという章もあります。
 ですから、やはりそういった、今度新しく食品安全委員会ができたら、消費者を最優先ということを明確にペーパーにも掲げて、それをまず前面に出して姿勢を示していくということが最初に必要ではないかというふうに思います。それから、できれば、大陸系なのか英米法系なのかということはありますけれども、アメリカのように、一般の人々と議論をしながら行政を進めていく方がはるかに合理的で間違わない、こういう考え方に立ってやっていただきたいと思っております。
中林委員 私もBSE問題が起きてからすぐにイギリスだとかフランスのそれぞれの機関に行って勉強させていただいたんですけれども、やはりフランスでも消費者代表がちゃんと入っているし、それからEUも十四人中四人は消費者代表ということになっているわけですね。
 だから、全体にそういうBSEの発生の先例地でもそういうことが入っていて、先ほどから利害関係者はというお話があるんですが、私は消費者というのは利益だけ受ければいいんじゃないかなと思っているんです。安全な食べ物をちゃんと食べられる利益、それ以外は要らない。だから、利害関係者というよりも、当たり前の行為のその願いがしっかり反映、私が意見を述べる場でないんですけれども、そう思っているところなんです。
 そこで、高橋参考人にお伺いしたいというふうに思います。
 BSEの調査検討委員会の報告、本当に普通の時間を超えるオーバーペースで、とても熱心にやっていただいたことに私どもも感謝を申し上げているところです。
 今回、その報告に基づいて法案が提出された背景があるわけです。その中で、リスク評価ということが今回非常に大きな目玉になっていて、私も、それは科学的な評価というのは当然大切な問題だというふうに思っているんです。ただ、リスク管理ということも極めて重要な問題ではないか。大失政だとか政策判断の誤りというふうにされたのも、やはりリスク管理の方に非常に大きな問題があったということだろうというふうに思っております。
 日本のように食料の四割しか自給できていなくて六割を輸入食料に頼っている、こういう状況の中で、特に輸入食品の安全性の問題、これが重大だというふうに思っているんです。この輸入食品の安全性について、高橋参考人の方で、国が何をすべきなのかというお考えがあればぜひ教えていただきたいというふうに思います。
 私は、水際の検疫体制の問題、これが極めてお粗末なのではないかというふうに思うんです。今、食品衛生監視員、これが実に二百六十八人しかいなくて、今年度若干ふえるんですけれども、しかし、政府がモニタリング検査をやっているんですが、届け出のわずか二・四%しか検査されていないということでは、わかったときにはもう既に私たちは食べてしまっている後だということが往々にしてあっております。だから、ぜひ、六割を輸入に頼っているこの事態での安全性の確保の問題についての先生の御見解、今のままでいいのか、それとも何かということをお聞かせいただければというふうに思います。
高橋参考人 リスク管理が非常に重要であるということは私も全く同感でございます。
 特に、農林水産省の場合、同じように、私どもBSEに関する調査検討委員会の報告を出した一週間後に、「消費者に軸足を移した農林水産行政を進めます。」という副題の食と農の再生プランというものを出しました。そこで、鋭意消費者に軸足を置いた政策に転換し、そこでリスク管理が行われる。
 私は、常日ごろ、それならば名前を思い切って食料・農林水産省にすべきじゃないのかということを個人的に言ってきているわけでございますが、それはそれとして、リスク管理というのは非常に重要であり、しかもそこが消費者に軸足を置いたものでなければならない。
 それから、輸入品についての問題でございます。
 おっしゃるとおりでございます。そこで、これからやるべきことは、海外に駐在員を置いてそれを調査するというわけにはいきませんが、農林水産省あるいは厚生労働省の担当者が各外国の大使館に詰めております。そこに当然それぞれの国の食品安全体制について情報収集を義務づける必要があるんではないか。それを一元的に今度の食品安全委員会に集めるというようなことが、まず情報収集が一つだ。もう一つは、やはり何といっても水際での防御だと思います。おっしゃるとおり、まだまだその担当職員が少ないというのは私どもも感じております。
中林委員 引き続き高橋参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、BSEの教訓、それは、輸入飼料による食の安全、これが問われたというふうに思うんですね。
 輸入飼料のチェック、これは今独立行政法人肥飼料検査所というところが一手に引き受けてやっているわけですけれども、この職員数が百三十八人しかいないんですね。二〇〇三年に十五人ふえるんですけれども、それでも極めて少ないという状況で、検査率は、先ほど言いました食品検疫の実に四十分の一しかないんですね。
 だから、飼料の残留農薬、これが今非常に重要になっておりまして、アフラトキシンB1に汚染された飼料を食べた牛が牛乳を出す、その牛乳から史上最強の発がん物質のアフラトキシンM1が検査するたびに検出されているんですね。だから、私は、この肥飼料検査所の人員もさることながら、やはり人員体制だとかそれから予算だとか、そういう体制強化、もちろん諸外国の情報を集めることも大切だと思うんですけれども、この点について、BSE検討委員会の責任者をおやりになった立場からも、言いにくいのかもわからないんですけれども、ぜひその点についてのお話があれば聞かせていただければと思います。
高橋参考人 残念ながら、そこまでBSEの調査検討委員会は論議を詰めておりません。それから、私自身、その領域で余り詳しい情報を持っておりませんが、検査体制が非常に薄いというようなことは何となく感じております。
 ただ、BSEに関連してちょっと発言させていただきますと、BSEが発生したことが問題だったのか、あるいはBSEが発生した後、あれを大きな問題にしたのが問題であったのか、私は両方だと思うんです。
 これだけグローバル化が進んできた場合には、いろいろな食品に対する危害が入ってくる可能性がある。それを未然に防ぐということも大切ですが、入ってきた場合に大きなトラブルにしない。事故は必ず起きる、事故を事件にしないというのが危機管理だと思うんですが、農林水産省はBSEに対して全くそれができていなかったということを私どもは痛切に感じて、今度の食品安全委員会もそのような姿勢で、完璧に防ぐということは、私はそれはちょっと無理なことだろうというふうに考えております。
中林委員 今度の検討委員会の報告で、農水省も消費者に軸足を置いてということになっているわけですけれども、それを聞いた生産者の方から、今まで決して生産者の方に軸足を置いてもらったことはない、こういう反論の声も出てきているわけですね。それだけ今日本の農業というのは追い込まれている状況だというふうに思います。
 そういう中でも、実は安全な食料を生産したいというのが農家の皆さんの率直な今の努力なんですね。そういう意味では、今度の基本法の中に実は生産者に寄り添った条項がないというのがなかなか心配なんですけれども、有機農法など一生懸命やっていらっしゃる方々に対して、そういう思い、それが、この基本法の中にも生産者サイドから安全な食料を供給するということがあってもいいんじゃないかというふうに思うんですが、最後に日和佐参考人の御意見を聞かせていただければと思います。
日和佐参考人 確かに、明確には書いていないわけですけれども、食品関連事業者の責務という中にもちろん生産者も入っているわけで、ですけれども、ここは、安全性を確保するためにきちんと生産者サイドも責任を果たしてほしいという意味合いでの規定のされ方であると思っています。
 日本の農業が非常に難しい状況を抱えているということはそのとおりでございまして、消費者も、生産者がどのような状況に置かれていて、そしてその状況によって私たち消費者は生産物を得ているんだというそこの情報がやはりないわけですね。ですから、そのようなことについて基本法で詳しく規定するというのはいささか無理かなという感じがしておりまして、むしろ、生産者に寄り添ったという条項については個別法のところで規定するのが適切かなというふうには思っておりますけれども、考え方が必要であるということについては全く同じでございます。
中林委員 時間が参りましたので終わりますけれども、中村参考人、申しわけございませんでした。
 どうもありがとうございました。
佐々木委員長 以上で中林よし子君の質疑は終了しました。
 次に、北川れん子君。
北川委員 社民党・市民連合の北川れん子と申します。本日はどうもありがとうございました。
 私は、人類というのは食品や食料を食べないと生き続けることができないということと、種の保存といいますか種の伝達といいますか、そういう面からも、今回の食品安全基本法はとても大きな意味を持っていると思うんですけれども、その割には、実効性の担保も権利、責任の範囲の明確な限定もないというところが気残りになっているんです。
 まず初めに、全参考人にお伺いしたいんですけれども、高橋参考人のお言葉の中にゼロリスクはないというお話もありましたが、前回の委員会での議論のときに、リスクというのは日本語に直せば危険という意味だという議論も出ていたんですけれども、リスクを下げるという意味ですね、リスクを下げるという点についてのお考えをどのような範囲でお持ちなのかというのを全参考人にお伺いしたいんです。
 それで、先ほどの中林議員からも出ましたけれども、例えば生産現場での有機農業の推進とか、そういう点においても二つの面から、リスクを下げるという面と、第一次産業における、有機農業や、薬品やそういうものを使わない漁業もございますが、そういう点についてのお考えをまずお伺いしたいと思います。
高橋参考人 ゼロリスクはないということ、これは食品だけじゃなくて、道路を歩いていてもいつ交通事故に遭うかわからない、そういったリスクの中に我々は生きているわけで、それをできるだけ少なくしよう、しかもそれを全体の法体系の中でつくっていこうというのが今回の食品安全基本法だろうというふうに考えております。
 リスクを減らすということについての御質問ですが、何を答えていいのかちょっとすぐ頭の整理がつかないんですが、白と黒というのがあって、その間にグレーゾーンがある。そして限りなく白のものを安全なものだというふうに言い、ただ、この部分は少し注意しなきゃいけないよ、そういった情報をしっかり消費者に伝えること、これが非常に大切ではないかというふうに考えます。
日和佐参考人 リスクの考え方なんですけれども、リスクは危険ではありません。危害の影響と発生確率の相関というわけで、リスクがあるとかないということではなくて、リスクは多いか少ないかという議論になってきます。ですから、ある物質のリスクを少なくするということは、基本的にできないわけです。ある物質のリスクをどう管理するかというのがリスク管理で、そのリスクについてどう管理していくか。
 ですから、一定のリスクがあると判定されたものについてどう管理していくかというのは、それが食品添加物であったならば、認可するかしないかという問題になってきます。それで、リスクが多ければ認可をしない、リスクが低ければ条件をつけて認可をするというような形で、リスク判定は多いか少ないかであって、それをどう管理していくかというのはリスク管理の分野になる、そういう考え方だと私は認識しております。
 それと、有機農業等については、私は、むしろ品質の問題であるというふうに思っておりまして、より高い品質のものを提供する、有機農業等はそういう手法であるという理解をしております。ただ、トータルとして、有機農業を広めれば広めるだけ環境に対する農薬の影響というのは少なくなるというわけですから、そういう意味で考えるという側面もあるのではないかということは思いますけれども。
中村参考人 リスクを下げるということ、あるいは少なくするということについては、一般的なことしか私自身は申し上げられませんが、食を供給する事業者のモラル、それから検査体制の完備、そして消費者に対するきちんとした情報の提供というようなことが複合的に行われてリスクを少なくすることは可能ではないかというふうに思います。
 もう一つ、おっしゃった中で大変重要だと思いましたのは、生産現場において、有機農業を代表的な例としておっしゃいましたが、そういう農業のあり方が、実は今日本で問われているのではないかというふうに思います。そして、実はBSE問題というのは、もちろん食の安全、そして、これはBSEですから家畜のことが第一義的に表に出ているわけですけれども、それだけではなくて、このBSE問題をきっかけにして、日本で一体どんな農業がいいんだろうか、営まれるべきなんだろうかという議論を高めていくことが私は必要なんではないかと思います。
 それが、ただ有機農業だけなのか。つまり、有機農業というのは、今特に第三者機関の認証がないと有機JASマークというのはつけられませんから、極めて供給量が減っています。減っているということは理由がないわけではなくて、やはり、日本のような非常に高温多湿な国の中でなかなか生産者が取り組みにくいという事情があります。それならば、有機農業までいかなくても、もうちょっと次の段階で安全な農産物が供給できないのかというようなそういった議論を、今この時期に、BSE問題などをきっかけにしてそれからあるいは食品安全基本法案が成立したときに、そういった成立をきっかけにして国民の間で起こすべきではないかというふうに思います。
神山参考人 ゼロリスク主義についてですが、私は、消費者がゼロリスクを求めるのは、あって当然だと思っております。
 ゼロリスクはないんだよということは、それは科学的にはそうかもしれませんが、消費者の感覚としては、あくまでもゼロリスクを求めたい。一方、事業者側は、これは厚生労働省が認めたものだから安全ですというような宣伝をなさいます。ですから、そうではなくて、ゼロリスクはない、リスクがあるんだということを事業者側がむしろ認識するべきであるというふうに思っております。
 それから、リスクを下げるという部分につきましては、何度も申し上げますが、予防的な取り組み、予防原則が最も大事であるというふうに思っております。
 これは、八〇年代の終わりごろにアメリカではやった発がん物質の規制についてのデ・ミニミス理論というのがありまして、百万分の一のリスクであれば無視してもいいということがはやりました。そのとき、ある方が非常におもしろいことをおっしゃって、百万分の一ならいいということを一方的に政府が決めるというのは、言ってみれば、二人の子供がけんかしているときに、あんたはこっちを二発殴っていいよと第三者が決めるようなものであると。それはそうではなくて、どのようなリスクなら受け入れ可能かというのは消費者が決めるべきことであるという議論がございました。ですから、リスクを下げて、どこまでなら我慢できるのかということを、消費者を交えた議論が必要であると思います。
 それから、有機農業につきましては、十年ほど前になるかと思いますが、食の安全と農業者の健康保護と環境保護の観点から、日本弁護士連合会が有機農業促進基本法要綱というものを発表しております。今はJAS法という表示の法律で有機農業が取り入れられておりますけれども、そうではなくて、有機農業を促進するという法律をぜひつくっていただきたい。現在、昨年の臨時国会で農薬取締法が改正されて、特定農薬という変な制度が入りまして、むしろ有機農業を圧迫するような法改正が行われておりますので、こういうようなことも踏まえて、再度御検討いただきたいと思います。
北川委員 ありがとうございました。
 それで、これは基本法であるがゆえに、自給率なんですけれども、私は皆様の御意見を聞いておりまして、基本的に、自給率の向上ということに関しての皆様の御意見は、どの立場をお持ちなのかということ。
 リスクの問題で、科学的知見が必要ではない食べ物なんですが、それを象徴的に言うときに有機農業という言い方をしますけれども、減農薬であれ省農薬であれ、科学的知見というものが必要ではない食べ物のありようというものも、基本法であるがゆえに盛り込まなければいけないのではないかという御提言をされている方たちがいらっしゃるんです。この、基本法であるがゆえにそのことを一緒に、同時に盛り込み、国の責務として置くという御意見に対して、どのような御見解をお持ちなのかを全員の方にお伺いしたいと思います。
佐々木委員長 よろしいですか。各参考人、皆さんにお聞きしたいそうですから。高橋参考人。
高橋参考人 ちょっとよく質問の意図が、まことに申しわけございませんが、わからなかったんですが。恐れ入ります。
佐々木委員長 北川さん、もう一回、ちょっと質問の趣旨を明確にしてください。
北川委員 自給率の向上、先ほど輸入食品の問題もあったんですけれども、食を日本の環境の風土に合った状況の中で、第一次産業的に自給率が向上するという問題に対しての立場のありよう。
 それともう一つは、科学的知見に基づかなくてもよい食べ物の供給ということも国の責務であるとするならば、この基本法の中にもその面を盛り込む必要があるのではないか、そういう提案に対してのお考えはいかがかということなんです。
高橋参考人 自給率についての考え方ということでございますが、これだけ人口が多い国あるいは先進国の中で、自給率がこれだけ低いということについては、極めて重要な問題だし、農業経済を勉強してきた私自身に責任の一端があるというふうに考えております。
 ただ、これは一番大きなのは、やはり食生活の変化が大きいわけですね。ですから、これはちょっとここの主題ではないんですが、食育というのは、リスクコミュニケーションだけじゃなくていろいろな局面で出てくることだろうと思うんですが、食育を含めた形で問題に対処していかざるを得ないんではないのかというふうに思っております。自給率を向上させようという気持ちは多分にございます。
 それからもう一つの、リスク評価をしなくても流通する食品、これはたくさんあると思います。それについては、もしそこのところで問題が出てくれば、リスク評価にもう一度リクエストするということもあるんですが、基本的な大部分の食品は、リスク評価を一々しなければならないという食品は極めて少ないんではないのかというふうに考えております。
日和佐参考人 自給率は、当然もっと引き上げられなければいけないというふうに思っています。
 ですけれども、これは非常に矛盾に満ちた議論を展開せざるを得ないという側面もあるわけですね。かなり大きく国民の食生活にもかかわっているということです。なぜかといいますと、食生活が洋風化、西欧化してきていますので、畜産物の消費がふえているわけです。畜産物の飼料、えさはほとんど輸入でしかない、したがって自給率には一切貢献しないということになるわけですね。そういう矛盾。
 もう一つ言いますと、日本の得意とする農産物であります米の消費が減少の一途をたどっているということでありまして、単純に言いますと、国民がみんな朝御飯に御飯を食べてもらえば、米を食べてもらえば一挙に自給率は向上するという非常に矛盾した側面もあるわけです。ですから、何を食べよというようなことを強制することはできないという側面もまたありというわけで、自給率の向上は非常に重要な問題でありますけれども、さまざまの要因を抱えているということでありまして、どういう要因でこのようになっているかについて、もっともっと一人一人が知る必要があると私は思っています。
 それから、リスクのない食品とおっしゃいましたね。(北川委員「科学的知見を必要としない食品」と呼ぶ)科学的知見を必要としない。ただ、私はちょっと納得ができないのは、すべての食品というのはリスクを抱えているというふうに思っています、食べ方によってはリスクを発生させるわけですから。そういう意味合いで、どのようにお答えしていいのかというふうに思うわけです。
中村参考人 食料自給率につきましては、あるいはこの法案に関連してお尋ねであれば、食料自給率の向上については、ちょっと前に成立した新しい農業基本法の中に、これを引き上げようということはきちんと盛り込んであります。二〇一〇年にカロリーベースで、今四〇%を四五にしようという、わずか五ポイントではないかという声もありますが、そういうことは盛り込んでありますので、それは、国の基本的な姿勢がそこにきちんと位置づけられているというふうに私は思います。
 それから、科学的知見でリスクのない農産物とかあるいは水産物というのは、有機農業ということを念頭に置いておられるんだろうと思いますけれども、科学的知見ということからいえば、やはり極めて限定されてしまうのではないかというふうに私は思いますので、法案でそれを扱うということについては、やや慎重な姿勢が必要なのではないかなというふうに思います。
神山参考人 食べ物というのは、おいしくて栄養があって、できるだけ安全で、そして地産地消というのが基本ではないかと思います。
 それを法律に書く必要というか、書いてもどうしようもないことだと思いますけれども、今中村参考人も言われたように、自給率の問題というのは、食料・農業・農村基本法の中で自給率を上げる基本計画というものが定められておりますが、拝見いたしましても、どうやって自給率を上げていくのかという具体的な方策がわかりません。これはもう、みんなわからないんだろうと思うんです。
 食事が欧風化したから自給率が下がったとは私はちょっと思っておりません。むしろ和食ほど、お節料理はほとんど外国の輸入品と言われているぐらいですから、むしろ、加工食品の比率が高まったということの方が自給率を下げている可能性があるような気もいたしますけれども、やはりこれはみんなで創意工夫を出し合って、どうやって自給率を高めるのかという具体的なことをやっていくしかないと思いますし、これから一番大事なのは、学校給食で今、米飯給食が余り普及していないということも言われておりますので、そういう具体的な現場から知恵を出し合って改善していくということが必要ではないでしょうか。
北川委員 次は、神山参考人にお伺いしたいんですが、食品公害のことに尽力をされているということで、カネミ油症問題も、今なお二世、三世の問題も解決をされず、救済の手も差し伸べられていないということなんですが、この食品安全基本法が通った暁には、そういう食品公害という面において、なくなっていくといいますか、そういうふうに寄与する法律だというふうに思われているんでしょうか。
 そして、先ほどから、従来おっしゃっておりました三つの消費者の権利、措置請求権、予防原則、これは確かにここの法律には盛り込まれていないわけですが、盛り込まれていなくともこの食品安全基本法というものは成立した方がいいとお思いになるのか。その辺もあわせて、ちょっと時間がなくなってしまったので、端的にというか、ぜひ御見解を述べていただきたいと思います。
佐々木委員長 神山参考人、では、簡単にお願いをいたします。
神山参考人 実は、極端なことを申しますと、私は、食品安全基本法は要らないと思っております。というのは、食品安全基本法があるから食品事故が防げるのではなくて、ここで出てきておりますリスク管理、リスク管理を担当しております各担当省庁の担当者が、縦割り行政の弊害をなくし、あるいは危機管理をきちんとする、危機意識を持つ、これは危ないなと思ったらとめるということをきちんとやっていれば事故は防げたはずですから、食品安全基本法ができたから事故が防げるということにはならないと思います。新しい法律が必要なのではなくて、担当者の頭の切りかえが必要だと思っております。
北川委員 では、時間が参りましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。
佐々木委員長 以上で北川れん子君の質疑は終了いたしました。
 次に、江崎洋一郎君。
江崎委員 保守新党の江崎洋一郎でございます。
 本日は、高橋先生、日和佐先生、また、中村先生、神山先生、大変お忙しい中、当委員会にお越しいただきまして、また、貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。
 まず、高橋先生にお伺い申し上げたいと思います。
 先生は、BSE問題に関する調査検討委員会報告におきまして、専門家の意見を適切に反映しない行政がBSE問題の原因の一つであったという御指摘をされておられます。また、報告書を提出してからの政府における今回の食品安全基本法や食品安全委員会の検討状況を見て、先ほど、冒頭御意見を承った際にも、専門家の意見を大変反映した体制になってきたという御評価をいただきまして、レジュメの一面にあるとおりでございます。
 このいわゆる食品安全基本法あるいは食品安全委員会というのは、まず第一歩であるのではないかというふうに考えております。これから委員会が具体的に立ち上がってさらに機能を充実し、さらには、もう既に何人かの皆さんから御質問があったように、諸外国の事例も踏まえながら日本型の食品安全管理というのを行っていくのではないかと思っておりますが、先生におかれまして、具体的な将来にわたる展望という点につきまして、どこまで何をやっていくべきなのかということにつきまして、まず御意見をいただきたいと思います。
高橋参考人 BSE調査検討委員会で、研究者の意見を反映しないというのは、これはいろいろな省庁であったと思います。いろいろな審議会が、私的諮問機関が開催されますが、そのときの発言が、政策決定のためではなくて、既に準備した政策について認知してもらうというような性格の会議が非常に多かったやに、私自身いろいろ経験しておりました。そういうようなことで、肉骨粉を牛に与えないということを行政指導にするのか、法的に禁止するのか、これを二つの委員会でやりましたが、そのいずれでも二名か三名の方が禁止すべきだということを非常に強く主張しておりました。しかし、そうならなかったというようなことから、そういうことを発言したわけでございます。
 少なくとも今回は、この食品安全委員会はそういうことがない、まさに火山予知連絡会のように、三宅島が噴火したときにまず動き出したあの科学的な分析を行う、これを常設の機関として、しかも常勤の委員の方々が四人おられて常に目を光らせているということが、まさに従来とは逆転した、専門家の意見を尊重するような体制だろうというふうに思っております。
 展望につきましては、もう少し、大枠はできたと思います。先ほどの参考人が言われましたように、実際に動かすのは人間なんですね。この人間が本当にこの意を体していくのか、これは国民が十分見定めなきゃいけない。いわゆるオンブズマンみたいな形でチェック機能を持っていかないと、これができたからあとはもう安全だというふうにはいかないということで私は考えております。
江崎委員 先生がおっしゃられるように、まさしく入り口論で終わってしまっては元も子もないわけでありまして、この委員会発足後、機能充実に努めていくことを私も切に願う次第でございます。
 次に、高橋先生にまたお伺いいたしますが、BSE問題に関する調査検討委員会報告におきまして、国際機関、主要国などからの情報収集体制の特段の強化が必要ということをまたおっしゃられております。また、食中毒による被害の拡大の防止などの観点からも、食品の安全にかかわる情報の収集、整理、活用、また提供は極めて重要であると思われるわけでございますが、この点につきまして、どのようなことを留意していけばよろしいのか。先生のレジュメの中にも、食品安全一一〇番の制度化とございます。後ほどまた中村先生にもお伺いもしますが、中村先生も食品ホットラインということを提唱されておられます。この辺を踏まえて、どのような御意見をお持ちか、教えてください。
高橋参考人 海外の情報につきましては、先ほども言いましたように、各省庁から大使館にアタッシェが行っているわけですが、その情報がインフォーマルに各省庁に来る、フォーマルには外務省を通すというところのギャップがございまして、インフォーマルの情報でありながら重要な情報は、ちゃんとそれをチェックする、あるいは対応をとるというようなことが必要ではないかということを痛感します。
 それから、食品安全一一〇番というのは、やはり消費者が参加をしていくということの重要性、もっと身近にこの食品安全委員会というものを考えてもらうということ、それから、食品の安全性について、やはり自分たちも一つの役を持っているんだ、役割を持っているんだということを自覚してもらうためには、ぜひやっていただきたいことだと思います。
江崎委員 その食品安全一一〇番については、どこの組織に具体的に設置を御提唱されておられますでしょうか。
高橋参考人 これは当然、食品安全委員会の事務局に置かれることになろうと思います。
江崎委員 どうもありがとうございました。
 関連しまして、中村先生にもぜひ、このホットラインのあり方、情報収集あるいは提供のあり方につきまして、御意見をいただきたいと思います。
中村参考人 私も、ホットラインというのは食品安全委員会の中に置くべきだというふうに思います。
 それから、ホットラインの意義というのは、一般の消費者からも、そういったリスク評価をしてもらいたいというような連絡がオープンでできる。もちろん、それを、どういう形のものかというのをきちんと調査するのは食品安全委員会の仕事ですけれども、とにかくそういうパイプをつくっておくということが大事だというふうに思いました。
 それから、情報収集で、海外の件ですけれども、これはコーデックス委員会の情報もありますし、それから在外公館の情報もあります。
 ただ、私は先ほど冒頭に、意見開陳のときにも申し上げましたように、日本のリスクマネジメントをこれからやっていく機関というのは、たくさんの研究機関を実は持っているわけですね。その人たちはBSEが発生して一体どうだったのかというのを調べてみますと、例えば、九六年にWHOが全世界に対して肉骨粉の牛への投与をやめなさい、やめた方がいいという勧告をしたりしたときも、調査に行っている機関はあるわけです。
 ただ、そういうのは行政に反映されない。報告書がどこか偉い人の机の上にぽんと置かれたまま、とにかく緊急の用件ではないから読まれないとか、そういうことがあるものですから、そういう何か仕組みをきちんとするのがまず第一なのではないか。その上で、情報収集という、これはもう既にやっていることを大事にすることから出発することが大事なのではないかというふうに思っています。
江崎委員 どうもありがとうございました。
 次に、日和佐先生にお伺いしたいと思うんです。
 この食品安全基本法案では、国民の健康保護が最も重要であるという基本的認識や、食品関連事業者、安全性の確保について第一義的責任を有する者に対して認識をさせ、また、必要な措置を食品供給段階で適切に講ずるということではないか、これを責務として明記しているということではないかと思います。
 食品関連事業者が、この趣旨を真摯に受けとめて企業モラルを向上させ、食品安全確保に万全を期すということを我々は切に期待しておるわけでございますが、現在、雪印乳業の社外取締役をされておられる立場でどうお考えか、お伺いしたいと思います。
日和佐参考人 一連の起こりました食品をめぐる不祥事がございます。その中で、今までになかった特徴的なこととして私が取り上げておりますのが、その企業が世の中に提供している食品そのものの安全性が問われたわけではなくて、企業倫理が非常に厳しく問われた。それは、個別の事業者名を挙げますけれども、雪印食品であり、日本ハムでありということでありました。そして、その厳しく問われる問われ方が、解散せざるを得なくなるとか、多大な損失額を計上せざるを得なくなったというように、一様なものではなく、大変、非常に非常に厳しいものであったということが今までになかった特徴であるというふうに思っております。
 ですから、この食品安全基本法が制定されることもそうなんですけれども、それ以前に、企業としては、今横文字でよく言われておりますコンプライアンス、法令遵守を徹底して守ることを、それぞれの企業が企業内でどう浸透させていくか、それが今非常に大きな課題として取り上げられてきていると思っています。
 ですから、企業はみずからの企業内にどうコンプライアンスを徹底させるか。コンプライアンスは法令遵守という日本語の訳がついていますけれども、法令を守るだけではだめなんですね。でも、現実はその法令も守れていなかったということなんですけれども、法令を守るだけではなくて、それよりも一歩も二歩も上の基準をみずから課して、そしてそれを社内に徹底させていく、そのことをきちんとやりなさい、やるべきであると私は思っております。
 そして、そのやったことに関して、そういうガイドラインをつくり、システムをつくり、そのことについて世の中に公表していくべきであるというふうに思っておりまして、それが企業としての責任であろう。ここに書かれております食品関連事業者の責務の中でも、一番大きな責務として今要求されていることではないかというふうに思っております。
江崎委員 ありがとうございました。
 次に、中村先生にお伺いしたいんですが、中村先生はマスコミの御出身でいらっしゃいます。
 BSE問題に関する調査検討委員会報告におきましても、興味本位で不正確な一部メディアが存在するのは事実であり、正確でわかりやすい解説記事の充実が今後の課題とされているという指摘がやはりございます。
 マスコミの報道というものを規制していくというのは大変難しいわけでございますが、しかし、事実というか真実を努めて報道していただかないと、この食品安全に関する問題というのは非常にデリケートな問題がございますので、深長なテーマであるというふうに思っております。このマスコミ報道のあり方について、先生の御見解をいただきたいと思います。
中村参考人 現在のメディアの内情をごく一般的に申し上げますと、先ほどどなたかが食品安全基本法がここで審議されているというようなことさえ報道がないというような御指摘がありましたけれども、まさに、一般的に言えば、農業とかあるいは食料生産のことについて勉強して、そしてある程度蓄積を持っている職員が極めて少なくなっているというのは事実でございます。したがいまして、蓄積がありませんから、一たん何か大きな出来事が起きたときに、それを正確にとらえて、それを伝えるという力がなかなかありません。
 ただし、おととしの例のように、最初の初動態勢の不手際があった、そういう問題については、これは批判しやすい、だからそれは徹底的に批判します。ただし、そのあらしが一たんおさまってしまいますと、今度はその次のステップで、正しい、安全の問題であるとか、あるいはプリオンの仕組みであるとか、そういうことについて報道する、そういった場が極めて少なくなるというのは事実でございます。
 ただ、これはどうしたらいいかというのは、一朝一夕にはなかなか進まないことでありまして、日本全体の中で農業とか食料についての関心が深まれば、メディアの中でもやはりそういうことを勉強しようとする人が出てまいります。やはり、長い目でそういった人たちといいますか力を育てていくというか、そういうことぐらいしか、ちょっと、特効薬は見つからないというのが実情だと思います。
江崎委員 やはり、企業モラルと同様に、マスコミのモラル向上というものを感じる次第でございます。
 続きまして、中村先生にもう一つ、トレーサビリティーの制度の問題をお伺いしたいんです。
 食品の安全上、問題が起きた場合の原因究明や被害の拡大防止という意味では、このトレーサビリティーは大変大事だというふうに思います。しかし、反面、正確な情報が伝えられるようにするためには、当然費用もかかるわけですし、また、これが価格に転嫁されたり、また中小事業者の方々の対応が難しいとか、いろいろ問題があると思います。
 牛肉につきましては、具体的にBSEという問題もございましたので、当然のこととは思いますが、すべての食品まで拡大するというのは物理的になかなか困難ではないかというふうに考えるわけでございますが、今後どのように推進すべきかということにつきまして、御意見をいただきたいと思います。
中村参考人 牛肉については、議員御指摘のとおり、特別措置法案ができて、トレーサビリティーシステムが導入されたということですけれども、ほかの食品にこれを拡大するということになると、非常に難しい食品もございます。
 例えば、米とかあるいは魚とか。米などというのは、一体どこまでさかのぼるのか。こういった小袋に入って消費者が買ったものが一体どこまでさかのぼれるのかというと、農家の栽培したところまでさかのぼることが求められるとすれば、これは大変なことでありまして、そうではなくて、あるいは出荷した農協単位までさかのぼれればいいとするのかとか、そういうことがあります。魚にも同様な問題がございます。
 ですから、私は、トレーサビリティーというのは、食品の素性を、そのものの素性を消費者が知りたいというところになるたけこたえていくということをまず一義的にして、全部が全部牛肉のようなトレーサビリティーを法制度の中で処理していくというのは、現実問題としては大変難しい。ただ、要するに、消費者の必要な、欲しがっている情報をいろいろな形で提供する、それは別に法案によらずとも私はできることだと思いますので、それは大事なことだというふうに思っています。
江崎委員 ありがとうございました。
 最後に、日和佐先生にもう一度御質問なんでございますが、このレジュメの中で、今回、食品安全委員会がリスク評価をする、その中での一つのポイントで、リスクコミュニケーションは国レベルのみではなく、重層的に行われなければならないということで、国、中央には食品安全委員会ができたけれども、果たして出先の中で、出先というか、むしろ、各行政単位の中でどういう扱いをしていくかという御指摘ではないかと思うんですが、先生のお考えとして、重層的というイメージ、また、いつまでにどれだけ具体化したものを必要とされているかということにつきまして、最後に御意見を伺って、私からの質問を終わらせていただきたいと思います。
日和佐参考人 リスクコミュニケーションを食品安全委員会一カ所でだけやるのでは不十分であるというふうに思っておりまして、全国民的な形で実は展開されるのが理想的だと思っています。したがって、すべてを食品安全委員会が取り仕切って行うというのは難しいと思います。そういう意味合いで、重層的という言葉を使いました。
 でも、食品安全委員会も、一カ所ではなく、食品安全委員会として十カ所でも十二カ所でも、地方に出ていってリスクコミュニケーションの場をつくるということは努力していただきたい。それと同時に、リスクコミュニケーションの場を提供するものとして、ここに書いてありますように、地方公共団体、消費者団体、NPO等もあると思います。それらの団体が、組織がリスクコミュニケーションの場を設定して、そして重層的に幅広くコミュニケーションが行われるというような形で進行していくというのが非常に望ましいことであろうと思います。
 ただ、リスク評価がされたものについて一つ一つやっていくということはなかなか大変であろうと思いますので、一定のまとまった時点でという形になるかと思いますし、また、緊急を要するものについては緊急にやらざるを得ない。その場合は、食品安全委員会主催の、全国、例えば十二カ所だけでいいというように、テーマによってその重層の形もさまざまにしていけばいいと思っています。単なる一定の形ではなくて、そのテーマに応じて多様な形で重層的に行われるような工夫が必要であると思っています。
江崎委員 ありがとうございました。
 神山先生には、申しわけございません、御質問なくて失礼いたしましたが、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
佐々木委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 参考人各位には、貴重な時間を割いていただいて当委員会に御出席いただき、貴重な御意見を長時間にわたってちょうだいいたしましたこと、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、私から厚く御礼申し上げます。御苦労さまでした。ありがとうございます。(拍手)
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十四分散会


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