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第11号 平成15年5月16日(金曜日)

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平成十五年五月十六日(金曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 佐々木秀典君
   理事 逢沢 一郎君 理事 小野 晋也君
   理事 星野 行男君 理事 渡辺 博道君
   理事 中沢 健次君 理事 山内  功君
   理事 遠藤 和良君 理事 西村 眞悟君
      大村 秀章君    奥山 茂彦君
      嘉数 知賢君    金子 恭之君
      亀井 久興君    木村 隆秀君
      菅  義偉君    高橋 一郎君
      谷川 和穗君    谷本 龍哉君
      近岡理一郎君    林 省之介君
      福井  照君    石毛えい子君
      大畠 章宏君    平野 博文君
      横路 孝弘君    太田 昭宏君
      吉井 英勝君    北川れん子君
      江崎洋一郎君
    …………………………………
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長)
   (産業再生機構担当大臣) 谷垣 禎一君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   国務大臣
   (構造改革特区担当大臣) 鴻池 祥肇君
   内閣府副大臣       根本  匠君
   法務副大臣        増田 敏男君
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  春田  謙君
   政府参考人
   (内閣官房拉致被害者・家
   族支援室長)       小熊  博君
   政府参考人
   (人事官)        佐藤 壮郎君
   政府参考人
   (人事院事務総局勤務条件
   局長)          山野 岳義君
   政府参考人
   (人事院事務総局公平審査
   局長)          潮  明夫君
   政府参考人
   (内閣府賞勲局長)    佐藤 正紀君
   政府参考人
   (警察庁長官官房長)   吉村 博人君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  瀬川 勝久君
   政府参考人
   (防衛庁長官官房審議官) 渡部  厚君
   政府参考人
   (総務省大臣官房審議官) 戸谷 好秀君
   政府参考人
   (総務省人事・恩給局長) 久山 慎一君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 齋木 昭隆君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         長谷川真一君
   内閣委員会専門員     小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十六日
 辞任         補欠選任
  菅  義偉君     福井  照君
同日
 辞任         補欠選任
  福井  照君     菅  義偉君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一三号)
 内閣の重要政策に関する件
 栄典及び公式制度に関する件
 男女共同参画社会の形成の促進に関する件
 国民生活の安定及び向上に関する件
 警察に関する件


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     ――――◇―――――
佐々木委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、構造改革特別区域法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案に対する質疑は、去る十四日既に終局いたしております。
 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。吉井英勝君。
吉井委員 私は、日本共産党を代表して、構造改革特別区域法の一部改正案に対して反対の討論を行います。
 我が党は、官庁の利権を図るための規制や実情に合わない古い規制などを緩和し廃止することは当然と考えるものでありますが、国民の暮らしや福祉、安全、環境などを守る規制は、しっかり守り充実させることが必要だと考えています。
 本案は、七本の法律を一括して規制を緩和し、特区内でその特例を認めようとするものですが、農家の民宿などによるどぶろくの製造を認めた酒税法の特例以外の法案には多くの問題があります。
 教育への株式会社の参入を認めた学校教育法の特例は、教育に営利を求め、教育費の高額化など、教育の機会均等の原則を崩すことになります。そもそも営利を追求する株式会社は、教育の公共性とは両立し得ないものであり、株式会社の教育への参入は教育の公共性を崩しかねないものであります。
 臨時職員の任期を最長一年から三年に延長する地方公務員法の特例は、使用者に使い勝手のよい公務労働の仕組みをつくるものであり、公務部内に不安定雇用や劣悪な労働条件で働く職員をふやすものであり、これらは地方公共団体の公共的責務遂行に新たな障害を生み出すものとなります。また、特区内の雇用と労働条件にも悪影響を与えることも明らかであります。
 政府がこれまで進めてきた規制緩和は、失業の増大、福祉切り捨て、中小零細企業と農林水産業への大打撃、そして貧富の拡大をもたらしてきました。
 構造改革特区は、提案の形を変えただけで、基本的にはこの路線を一層進めるものであり、地域住民と地域経済に大きな打撃を与えるものであることを指摘して、反対討論を終わります。
佐々木委員長 次に、北川れん子君。
北川委員 私は、社会民主党・市民連合を代表し、ただいま議題となりました構造改革特別区域法の一部を改正する法律案につきまして、反対の立場で討論を行います。
 今回の法案には、自治体からの要望を受けとめたとして、七本の法律の特例措置が追加されています。その中には、特区として是認できるものや一定程度理解できるものも全くないわけではありませんが、社会的規制の観点から見て、決して看過できない重大な問題点が含まれるものとなっています。
 まず、学校教育法の特例についてです。
 株式会社の教育分野への参入は、株式会社が利益を第一と考えるため、株主配当を優先させ教育研究に十分再投資しないのではないか、収益が上がらなくなった場合、学校事業から撤退するのではないか、企業の理念に引きずられ中立公正な教育が保障されないのではないか、安易な認定が拡大すれば、やがて原則と例外が逆転し学校教育制度自体の崩壊につながるおそれがないかなど、多くの懸念があります。既に株式会社等が設置する通信制高校に通う生徒の学習を支援する施設では問題が生じている現実もあり、多くの課題を残したままの見切り発車は、特区だからといって認めることはできません。
 次に、地方公務員法の特例です。
 自治体で働く臨時・非常勤職員は、実際には常勤と同じような仕事を行っていながら、パート労働法も適用されず、不安定な雇用が継続され、諸手当が支給されない、昇給がない、休暇制度が不備など、均等待遇とはほど遠い条件のもとに置かれています。現行法の原則六カ月、一回更新は、不確定な身分の状態のまま余りに長期に継続するのは酷であること、長期的、継続的に任用すべき職員は本来正規の任用によるべきだとの趣旨に基づくものです。
 今回の改正案による三年以内への期間延長は、一見労働者の権利を拡大するように見えながら、実は、不安定雇用状態の継続、人件費削減、公務労働者の使い捨ての助長につながり、公務員法制の根幹にもかかわる問題をはらんでいます。民間企業でリストラや労働条件の悪化が続く中、自治体は公共団体であり、労働条件の維持、確保、労働者の権利保護のモデルとなるべきであり、まず必要なことは、雇いどめの阻止、賃金改善・昇給制度の導入、諸手当の支給、休暇制度の充実など、均等待遇実現であると考えます。
 これらに代表されるように、本改正案には、労働や教育、安全、環境、消費者保護などの社会的規制について、特区を突破口として全国的に規制緩和の拡大につながる内容が含まれており、本案には反対であることを申し上げ、討論を終わります。
佐々木委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、構造改革特別区域法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
佐々木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、渡辺博道君外三名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。渡辺博道君。
渡辺(博)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守新党の各会派を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    構造改革特別区域法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たっては、次の事項について十分配慮すべきである。
 一 特定埋立地に係る所有権移転制限期間等短縮事業に係る構造改革特別区域計画の認定は、公有水面の埋立てが極めて公益性の高いものであることを踏まえ、適正に行うこと。
 二 株式会社及び特定非営利法人による学校の設置・運営については、教育基本法の精神及び学校教育法の趣旨を尊重するものとし、特に、株式会社の経営の状況の悪化等により、学生、生徒等の適切な修学が損なわれることのないよう万全を期すこと。
 三 地方公共団体等から追加提案された規制の特例措置については、政府部内における調整状況等を公開し、規制の特例措置の可否の決定過程を明らかにすること。
以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
佐々木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
佐々木委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。鴻池構造改革特区担当大臣。
鴻池国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法案の実施に努めてまいりたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
佐々木委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
佐々木委員長 次に、内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官春田謙君、内閣官房拉致被害者・家族支援室長小熊博君、人事官佐藤壮郎君、人事院事務総局勤務条件局長山野岳義君、人事院事務総局公平審査局長潮明夫君、内閣府賞勲局長佐藤正紀君、警察庁長官官房長吉村博人君、警察庁生活安全局長瀬川勝久君、防衛庁人事教育局長宇田川新一君、総務省大臣官房審議官戸谷好秀君、外務省大臣官房参事官齋木昭隆君及び厚生労働省大臣官房総括審議官長谷川真一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中沢健次君。
中沢委員 おはようございます。
 私は、きょう五十分の時間をいただいておりますから、久しぶりに石原大臣と少しじっくり、いろいろな状況からいって、かなり大詰めを迎えている、こういう認識を私は持っておりますから、石原大臣と率直な意見交換をしながら、確認をするところは確認をしたいと思うんです。
 その前に、これは厚生労働省の方から長谷川さんにお越しをいただくことになっていますが、まだお見えでないようです。どうなんでしょうか、この質問を前提として石原さんとやらなければ、ちょっと中身が、事実関係も含めてはっきりしないと思いますから、ちょっと中断させてくれませんか。――ああ、お見えになった。
 それでは、厚生労働省の長谷川さんもお見えでありますから、まず、石原さんと質疑をする前に、大事な問題について幾つかお尋ねをしたいと思うんです。
 その前に、理事会の御了解もいただきまして、五月の一日、中央メーデー集会における坂口厚生労働大臣のあいさつの全文を、お互いに内閣委員会、党派を超えまして委員の共通認識を深めていただく、こういうことで、資料として配付をさせていただいています。同時に、厚生労働大臣は、来日をしておりましたILOのトロットマン理事ともお会いをされる、そして、四月の二十八日にはジュネーブを訪れてILOの事務局長と厚生労働大臣が会談をする、こういうことがありました。その辺が背景となりまして、五月一日のメーデーのあいさつ、こういうことに私はつながったと思うんです。
 そのことを一つの伏線として、具体的に厚生労働省の長谷川さんにお尋ねをしたいと思うのでありますが、実は、四月の二十八日の会談でいいますと、非常に、これからの国内における公務員制度の立法あるいは労働組合と政府側のさまざまな協議等々についていろいろな影響がある、そういう認識のもとに、厚生労働省に対しまして、この会談について、いわゆる詳細な議事録を、質問の参考にしたいので出してほしい、こういう話をしました。
 結果的に、厚生労働省側としては、その種の内容については、外務省の出先の大使から本省に対する公電として詳細な内容の報告がある、それをもって事実上の議事録的なことでひとつ考えていただきたいということになりまして、実はもう外務省といろいろ話をしました。途中経過は省略をしますが、結果的にこの案件に関する公電の全文が、取り扱いとしては秘密指定解除という扱いで、全文事前に私の手元に届けられました。
 異例ではないのかもしれませんけれども、もともと公電というのは部外には出さない、こういう外務省の基本方針からいうと、情報公開の時代でもあるし、この案件はこれからの国会議論についていうと非常に大事な資料だから出せと、当然といえば当然ですが、外務省がそういう判断をされまして、公電の全文を私の方にも提出をしていただいたんです。
 時間がありませんから、私なりに、坂口さんのメーデー大会のあいさつと、この公電で内容が具体的に示された事務局長との会談の内容、さわりの部分だけ、あえて申し上げたいと思うんですよ。
 坂口さんは、とにかくこの問題でいうと、つまり、公務員制度、なかんずく労働基本権の問題でいうと、まず日本国内で政府と労働組合がよく話し合いをする、そして二つ目にはそのことをILOに報告をして、そして三つ目にはILOと十分連携をとって、そして四つ目には我が国の政府として最終判断をして行う、これが日本政府の考え方であるので、これが大事なところですよ、そのことが日本政府の考え方であるので、ILOとしても理解をして対応をお願いしたい、こういう趣旨の坂口大臣の発言があるんです。そのことが背景としてメーデー大会でああいうあいさつがあった。
 これは非常に大事な問題ですから、改めて、厚生労働省の外交関係の事務方の責任者の長谷川さんの方から、私が要約をした内容はこの公電そのものでありますけれども、確認の意味で、しかも、事務局長がどういうお答えをしたかということも含めて、具体的に明らかにしていただきたいと思います。
長谷川政府参考人 先生御指摘のとおり、四月二十八日に坂口厚生労働大臣がジュネーブへ参りまして、ILOのソマビア事務局長と会見をした次第でございます。
 この際の会談におきましては、坂口厚生労働大臣から、公務員制度改革に関しては、国内において政府と労働組合が真剣に話し合いを重ねることが必要と考えており、その結果をILOに伝え、それに対するILOの意見も聞き、その上で政府としての判断をしたい旨の発言をするとともに、こうした日本政府の考え方についてILOの理解を求めたところであります。
 これに対しましてソマビア事務局長からは、この問題については、日本国内での労使の対話が重要であり、それに沿って改革が行われていくことを期待している旨の発言があったところであります。
中沢委員 お答えとしては非常に簡潔明快ということなんでしょう。もう公電も全くそのとおりなんです。
 後ほど石原大臣とこの問題も含めていろいろ議論したいと思うんですが、もう一問長谷川さんにぶつけておきたいと思いますが、いずれにしても、長谷川さん自身は、政府代表のメンバーとして、いろいろなILOの会議、これから、六月の総会、あるいは、場合によっては結社の自由委員会、これが五月、十一月に開かれる予定と聞いていますけれども、そういう場面に、政府代表として、政労使の政の代表として出席を、今までもやってきたし、これからもやっていくと思うんですよ。そうすると、国内の作業の進展にもよりますけれども、特に六月上旬のILOの総会、非常に国際舞台としては大事な場面になると私は思うんですね。そういう認識はもちろんお持ちだと思いますが、基本的な対応について、今現在どういうふうに考えていらっしゃるか、認識も含めてちょっと聞いておきたいと思うんです。
長谷川政府参考人 先生御発言のとおり、六月にILO総会が開催されるわけでございますが、ILOは政労使三者が話し合う場として重要な国際機関であると考えているところでありまして、この公務員制度改革問題につきましても、これまでもILOに対して政府として積極的な情報提供に努めてきたところでございます。
 今回のILO総会におきましては、ILOの予算あるいは能力開発や安全衛生の議題が議論されることとなっております。また、我が国の公務員問題が取り上げられるかどうかにつきましては、総会の条約勧告適用委員会の場において決めることとなっておりますけれども、仮に取り上げられた場合には、政府と労働組合の話し合いの状況を説明する等、適切に対応してまいりたいと考えておるところでございます。
中沢委員 それでは厚生労働省の方はもう結構ですから、退席されて御自由にやってください。
 さて、石原大臣、労働基本権問題あるいは公務員制度問題でいいますと、私も内閣委員会あるいは予算委員会などでも何回かやっています、ことしに入りまして余りそういう経験がないんですが。いろいろな意味で、ILOの舞台でもあるいは国内におきましても、事態はいろいろな進展があると思うんですよ。
 私自身は、歴史的な日本の公務員制度の改革ということは、具体的な内容でいうと天下りだとか能力給の導入だとか、つまり、国民から理解が得られるような、そういう制度改革ということについては全く同じ思いなんですよ。これは、恐らく政治家としては余り意見の違いはない。
 しかし、問題は、日本のやや特殊事情からいって、労働基本権が法律的にも保障されていない、その代償機関として人事院がある。さて、そうすると、本格的な歴史的な公務員制度の改革をやる以上は、労働基本権問題を素通りするわけには絶対いかない。私の表現で言えば、制度の改革と労働基本権問題はメダルでいえば表裏一体、車の両輪だ、こういうことを私なりに前提として今まで随分議論をしてきました。私の認識は、石原さんも若干立場が違ってもほとんど共有をするということがありましたから、そのことはもうあえて言いません。
 そこで、まず第一番目に聞いておきたいのは、四月の二十八日の厚生労働大臣とILOの事務局長との会談について、具体的に承知をしていたのかいないのか。そして、事実こういうことが国際舞台で話し合いがされたということは、非常に、いろいろな意味で一つのポイントだと思いますね。そうすると、少なくとも、労働組合と具体的な交渉の最高責任者としてあるいは立法作業の事実上の責任者として、この四月の二十八日の会談について、どういう認識を持って受けとめているか。
 特に、メーデー大会で坂口さんは、そういう四つの手順を踏むことが大事だ、そういうことを申し上げてきた。今、長谷川さんの方から、それは日本政府の考え方だ、そして公電にもそのことは明記されている、文章的にも。そこのところは非常に大事な問題だと私は思うんですね。ですから、あえてそのことをちょっと申し上げて、石原大臣、この二つの点についてはどういうふうに考えているか、お答えをいただきたいと思うんです。
石原国務大臣 前段の御質問の、坂口大臣のILOのジュネーブでの発言というものは、報道でまず私は承知をいたしました。
 それで、坂口大臣は、五月の連休、海外にずっと行っていらっしゃいまして、連休が明けまして、坂口大臣の方から、ILOの方で申し上げたのはいろいろ新聞等々に書かれているけれども、自分の意思は、組合の皆さん方と十分に話し合って、ILOの方々にはその話し合いを温かく見守っていただきたい、こういう趣旨であの発言をしたんですよと坂口大臣の方から私の方に、閣議の始まる前だったと思いますけれども、大臣の方からお話をしてきてくださいました。
 私としても、もう再三再四当委員会あるいは予算委員会等々でも話しておりますように、公務員制度改革は、ある意味では使用者としての政府と労働側との問題でありますので、十分に話し合いを持っていくということで、これまでも、連合の方の官公労部門でございますか、そちらの方が私を御指名いただきましたので、私が、それではどうぞいつでもお話があれば来てください、あるいは事務レベルでも、こんなことを考えているんですよという話もぜひ聞いてやってくださいということで、私たちの考えている能力等級の法案はまだ完全にでき上がっておりませんけれども、こんなものを考えているんですよというような話も実は事務局レベルでさせていただいた、そういう報告を受けております。
中沢委員 そこで、私の問題意識は余り見当違いでないと思うんです。しかも、公電でもこういう文章表現で外務省の本省に送られている。今、長谷川さんの方からもそういうお答えがあった。これは、直接、坂口大臣にこの委員会に来てもらって、本当はその辺の確認もすればいいんでしょうけれども、結局は坂口さんは、日本の厚生労働大臣、ILO担当大臣として事務局長と会って、いろいろお話をした。私が一番大きなポイントとしてあるのは、今、長谷川さんの答弁にもあったし、公電の中にもはっきりしているんですよ。
 具体的な中身は先ほど来やっていますからあれしますが、「したがって、ILOにおいても、こうした日本政府の考え方をご理解の上、対応をお願いしたい。」と、「こうした日本政府の考え方」ということを明確に言われている。だから長谷川さんもそういう答弁をした。事実上の議事録的な内容として言われている公電も、同じような表現であるわけなんですよね。
 ですから、ここのところは、坂口さんにお越しをいただくということも必要だし、もっと言うと、石原大臣としてそのことの重要性というか、つまり、ILOの事務局長というのは国連でいえば事務総長ですから、そういう方との正式な会談で、もう既にこれは日本政府の考え方ですとはっきり言われている、この事実を特にこの問題の担当大臣としてはやはり改めて重く受けとめる、こういう認識がなければ私はだめだと思うんですけれども、その一点についてはどうですか。
石原国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたとおり、坂口大臣の方から、ソマビアさんとの会談の自分の発言の趣旨は、いろいろ報道されているけれども、労使の話し合いというものが重要であるし、そういうものをILOとしても見守っていていただきたい、こういうものだ、そういうふうに私は承知しておりますし、今この公電も、私も昨日拝見したんですけれども、この文脈の話をさせていただくと、どこに「こうした」というものがかかるのかということは、私もこの文書の中からでは、どこを指しているかということは十分に明確には判断できません。
中沢委員 別にきょうは国語の教室でもないので、石原さんだってよくわかってそういうお答えをしているのかもしれませんが、「こうした」というのは前段で、五つの手順を踏むという、こういうこと全体としてこれが日本政府の考え方です、したがってILOも理解をして対応してくださいと明言しているんですよ。もっと厳しく言えば、国際舞台で日本政府を代表してそういうことを相手の事務局長に申し上げてきた、これは事実ですから、国際舞台と国内と使い分けをするということは私は許されないと思いますよ。
 この問題だけで堂々めぐりをやっていたら五十分はあっという間に過ぎますから、これは来週でも再来週でも、また一般質疑、時間をとりますから、やりたいと思うんです。
 これはやはり相手のある話で、しかも公電で文章的にも明確になっている。どう考えたって、四つの手順についてそういうことが日本政府の考え方である、これは間違いがないですよ、客観的に見て。僕は事務局長と会ったことはありませんが、相手側も額面どおり受けとめたと思いますよ。場合によっては、では私がILOへ行って事務局長に会って確認をしてもいいけれども、それはちょっと幾ら何でもどうかなと思いますから、そこまでは今のところはやるつもりはありません。
 しかし、これは大事な問題ですから、石原さん、改めて坂口さんとよく話をして、しかも公電の持っている重みというのは、私から言うまでもなく、外交通の石原さんはよく承知をされていると思うので、そこのところはよく重く受けとめていただきたい。それについてはどうですか。抽象的に、重くということしか言いません。残ればまた来週でも再来週でもやります。
石原国務大臣 先ほど来、五月の連休明けに坂口大臣から私に、いろいろ報道されておりますけれども、私はそういう趣旨で発言をしましたと坂口大臣の方からお話しされたことが私の知り得る坂口大臣のお考えでありますし、この公電の文書を私が読ませていただいて、「こうした」ということ、四段階、五段階ということは書いていなくて、こういうさまざまな手順が書いてあるようなふうに私は拝察するわけですけれども、そういうものの文脈から、どういう意思を持って坂口大臣が述べられたのかということは、くどいようですけれども、坂口大臣から私が聞かされておりますのは、労使の話し合いというものが大切である、そしてそれをILOとしても見守っていただきたい、こういう旨を私は話したんですよとしか坂口大臣から私は話を承っていないということもぜひ御理解いただきたいと思います。賢明なる中沢委員が、こんな話をしていて堂々めぐりになるからという御決断は私は多とさせていただきますし、私の方ももう一度、坂口大臣、どういう真意だったんですか、どういう意味なんですかということは、次の委員会のときまでに聞かせていただきたい、こんなふうに考えております。
中沢委員 石原さん、あえてこの委員会に、坂口さんがメーデー大会であいさつをされたこの四つの手順とか四つの順序ということも含めて、これは国民に向かってのメッセージですから、そこのところはこれ以上きょうはやりませんが、改めて坂口大臣と当事者間で、しかもILOの事務局長との会談で、公電でもこういうふうになっているということをしっかり重く受けとめて、大臣同士でよく話を、事実関係、よく話をしてほしいと思いますよ。それは先ほど、そういう話をするということですから。
 さて、観点を変えまして、二つ目になると思いますけれども、昨日の一部の新聞報道ですが、十四日に、つまり一昨日、石原大臣と自民党の公務員制度改革委員会の野中委員長などと会合を持っていろいろな意見交換をしたと。
 一つは、これは新聞報道だけですが、六月十八日の会期末ということを念頭に入れて、公務員制度改革の関連法案、法案のまとめあるいは閣議決定、そして国会提出という順序をもちろん踏む、これは当たり前といえば当たり前、もう会期末も迫っているので、今の通常国会、六月十八日までには法案の提出は困難である、こういうことで認識が一致をした。加えて、十二月中には何とか法案を出したい、そういう新聞記事がありました。
 これは非常に大事な一つの節目といいましょうか、ポイントだと思うんですね。この際ですから、できるだけ事実関係、具体的に明確に、その話し合いがあったことはもう事実だと思いますから、明確に、具体的にお示しをいただいておきたいと思うんです。
石原国務大臣 ただいま委員が御指摘されました会合は、自由民主党の党本部の方でございました。
 その中で議論をしましたことは、公務員制度改革大綱、野中委員長は、実は三年前の行革大綱を取りまとめた責任者でございますし、公務員制度改革にも、自治の実務の御経験がございますが、大変我が党の中でも造詣の深い先生でありますけれども、その先生方と、また太田本部長、林事務局長と私と今おります根本副大臣と忌憚のない意見の交換というものをさせていただきました。これは事実でございます。
 そんな中で、一部新聞に、法案の提出を断念という記事が、翌日でございますか、出まして、私はびっくり仰天して、そんなことは一切確認していないし、意見の交換をしただけなのにどうしてかなということでいろいろ調べてみました。そうしましたところ、ブリーフィングの中で、公務員制度改革大綱の中には今年度中に法案を提出する、こういうふうに書いてあるわけでございます、その方針に変更はないというブリーフィングがあったそうで、それを深読みされた方が、今年度中ということであるならば今国会でなくてもいいんじゃないかということであのような記事が書かれたのではないかというような話を私も聞かせていただいたわけでございます。
 そんな中で、きょうですけれども、閣議が終わりました後に、関係します官房長官、また坂口厚労大臣、片山総務大臣、そして私と、二、三分でございますけれども、立ち話をさせていただきまして、いろいろな報道が出ているけれども、これまでどおり労使の皆さん方との協議を通じて、できるだけいい案を、できるだけよく運営できるように、早期に取りまとめて今国会に提出しよう、そういう方針に変更がないということを確認したところでございます。
中沢委員 そういう関係者の会合があった、しかし内容としてはそこまで踏み込んではいない、そういうふうに受けとめてよろしいですね。
 さて、そうしますと、いずれにしても石原大臣としては、今まで以上に周囲の状況がいろいろな意味で緊迫をしているというか、この問題についての大詰めを迎えつつある、こういう印象はもちろんお持ちだと思いますよ。
 ごく最近のいろいろな、例えば国会における総理の答弁だとか、あるいは官房長官の答弁だとか石原さんの答弁だとか、あるいは記者会見に対するそれぞれの関係者の発言内容をトータルで考えると、私なりに整理すると、いずれにしても労働基本権問題は大事なんで、公務員制度全体の改革とあわせて、今、労働組合と政府側が誠心誠意協議をしている、これはもう言うまでもない。
 二つ目には、とにかく、福田官房長官なんかは、組合の納得がなければ閣議も決定できないし、あるいは法案の国会提出もできない、つまり組合の納得が大事だ、こういうことも言われている。総理自身も、協議が非常に大事ですということも委員会の答弁でも言われている。もっと言うと、今月、石原さん自身が記者会見をされて、その内容も、ほぼ同じような一つのトーンというか調子になっているんですね。つまり、労働組合と政府側の誠心誠意の交渉はもちろん大事だ、それからもう一歩踏み込んで、交渉するということは話し合いをするということ、協議をするということは、どういう中身かは別にして、合意をするということにつながって、それがあとは、関係法案の閣議決定、国会提出、国会議論、こういうふうにつながってくると思うんですよ。
 私は、ここの段階を、協議そのものも何となく大詰めを迎えているという、いろいろな状況判断からいってそういう印象ですけれども、まだしっかりとした、着地をするまでには状況的にもなっていないのかな、まだ話し合いの余地はいろいろ残っているんだな。しかし、大事なことは、誠心誠意、石原さんが前から言っているように、とにかく歴史的な大事業だし、国民から期待をされるような公務員制度にしなきゃならぬ、労働基本権問題も素通りできない。そういうことからいうと、いよいよ会期末に向かって、あるいは会期末を越えたにしても、この問題をもう棚上げにするなんというわけには絶対いかないわけですから、大事なことは、労働組合と政府側の誠実な、誠意ある交渉と、そして合意をしっかり取りつける、そういうことがまず最大の、大臣の仕事としては責任だと私は思うんですよね。
 この辺については、もちろんそうだという返事だと思うんですけれども、今後の対応ということも展望しながら、どのようにしようとしているか、協議と合意という観点で、大臣の考え方、改めて聞いておきたいと思います。
石原国務大臣 中沢委員も、私が連合の官公部門の方々とお話をしている内容というお話は連合の方々からもお聞きしていると思いますし、また私の提案で、もう少し事務レベルでも具体的に話をしてくださいといって、それもスタートしたということも御承知になっていると思います。それを私どもの誠意ととられているか、とられていないかということはわかりませんけれども、私としては、私なりにできる限りのことをさせていただいて、これは双方の主張があるわけでございますので、双方の主張、平行線のもの、全くそのとおりだというもの、できる限りの一致点を見出す努力をしていくということでは、委員の御指摘のとおり、やっているつもりでございます。
中沢委員 お互いに相手のある話ですから、しかも非常に重要な問題、もっと言えば、難しい問題もたくさんあるということは、私自身も承知をしています。だからこそ、本当に誠心誠意、しっかりと労働組合と政府側が協議をして、そして合意をしてやる、この必要があると思うんです。
 そこで、ちょっと角度を変えまして、これは今まで心配事としてはいろいろなところであったと思うんです。私は、そんなことはないというふうに関係者に言っていますが、例えば、話し合いを中断して、見切り発車をして法案の閣議決定をして国会へ出す、こんなことは少なくとも、国際感覚があるし、しかも行政改革、この法案の重要性を認識している石原さんはもちろん考えてはいないと思うんですけれども、念のためですけれども、そういう心配がちょっと、私はしていませんよ、率直に言って、お互いに信頼関係を持っているから、率直な意見交換を今までもずっとやってきたつもりだし、これからもやる必要があると思っているので、そういう杞憂というか不安を持っている人に対して、そんなことは絶対にないと、きょうちょっと明確に言っておいてくれませんかね。どうでしょうか。
石原国務大臣 先ほども御答弁をさせていただきましたように、両者の間に見解の相違があるということは事実だと思います。現時点に至りましても、特に労働基本権の問題をめぐって、労働基本権の付与というものを今すぐにという組合側の主張に対して、今回の公務員制度改革大綱の枠組みは、労働基本権の制約を維持しつつ、能力等級を導入する。
 もちろん、これも国会で再三再四、私、御答弁させていただいておりますように、この問題は古くて新しい、そして大変重要な問題であるから、切り離すなどということは一度も私申しておりません。両者ができる限りの一致点を見出す努力というものをこれからも続けていくということが、今回のこの問題についての重要なポイントであるということは、私も坂口大臣も、あるいは官房長官も片山総務大臣も一であるということは、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
中沢委員 まあ、私の指摘に対する歯切れのいいお答えがなかったと思います。
 改めて、少なくとも私の認識として、大臣とそこのところは基本的に共通すると思いますが、話し合いをする、それは合意をして、そして関係法案を閣議決定して国会に出す、当たり前といえば当たり前、しかし、そういう手順はしっかり踏むと。一方で、心配として残っている、杞憂だというふうに私は思いますが、そうはいっても、話し合いを中断して、見切り発車をするということはもうない、そんなことは少なくとも今の石原大臣は念頭にない、もう一回、そのことについてだけでいいですよ、そんなことは考えていないと言ってください。
石原国務大臣 これは非常に政治論だと思うんです。与党と野党との関係、また、小泉内閣がこれまでの、自由民主党、また今回は保守新党、公明党との連立政権ですけれども、与党の了解もないままで法案を提出しているということもございます。そして、これまでの通常の内閣というものは、与党の法案に対する御了解というものがない限りは法案を提出しませんでしたけれども、小泉内閣は内閣主導で、総理のリーダーシップのもと、政策を立法府におかけし、決断をする、そういう内閣であるということもぜひ御理解をいただきたいと思います。
中沢委員 一般論という、こういうことを言うとちょっと大臣は、失礼なという話になると思うんだけれども、一般論としてはそうだと思うんですよ。ただ、もうここまで来ているから、ILOということも含めて、国内の話し合いということも大詰めを迎える。そうすると、本当に誠心誠意、いよいよ、変な話、お互いに裸になるところは裸になって、もっと言えば、お互いに譲れるところは譲ってでも、この問題の決着を図る、そういう一つの場面に来ているから。
 そうすると、一方的に、もう話はまとまらないから打ち切って、与党とだけ話をして、僕らの言葉で言えばそういうのを見切り発車というんですが、話し合いを中断して、そして一方的に関係法案をとにかく政府の責任で、与党の責任で国会に出す、こういう乱暴なことは私は絶対やるべきではない。そのことは、少なくとも良識派の石原さんとしては考えていない。くどいようだけれども、これ、大臣、ちょっと、大事な点なんですよ、政治論として。もう少し踏み込んで、大臣の真意というのは、今私の指摘をした内容にしっかり答えて、答弁を欲しいと思うんです。
石原国務大臣 中沢委員が政治論とおっしゃりましたとおり、まさに政治論だと思います。政治論であるがゆえに、内閣として責任を持って、国民に負託された内閣でありますので、内閣の決断というものを私の一存で縛るということはできないという旨もあるということもぜひ御理解いただきたい。
 私は、ですから、高いハードルを両方が出したら、これは絶対に合意できません。絶対合意できない。中沢委員は裸になってというお話をされましたけれども、両者が本当に裸になる気持ちがない限りは、我々はこれを理想と考える、長年の夢であるんだから、権利であるんだから、いや、そうはいっても、それを導き出すには時間が必要なんだ、協議が必要なんだ、双方の主張がやはりあると思うんですね。
 ですから、先ほど何度も申しておりますように、できる限りの一致点というものを見出さなきゃいけない。そして、仮に今回、一致点が見出されなかったとしても、最悪の事態になったとしても、それで終わるような問題じゃありませんし、それで結論が出て数の力で物を決めていく話じゃないということは私は十分認識しておりますし、そこの点は中沢委員とのこれまでのさまざまお話の中でも共通しているんではないかと考えております。
中沢委員 私の印象でいえば、今のような一歩踏み込んだといいましょうか、政治家石原大臣として踏み込んだというか、そういう印象です。
 ただ、労働組合側も石原さんとの話ももちろん重視しています。もちろん、自民党の関係者の皆さんとの話も重視をする。連合レベルでいえば、官邸の官房長官との話も重視をする。厚生労働相はもちろん立場上、ILOとの対応について重視をする。ですから、僕は、ここまで来ましたら、石原さんを中心にして公務員制度改革の関係閣僚懇談会、これは私が言ったからやるということではなしに、ちょっと内部でも相談してほしいと思うんです。
 今言いました石原さんだとかあるいは厚生労働大臣だとか、もともと国家公務員の人事問題は今でいえば総務大臣、そして、この種の全体の政府のいろいろなまとめをやって、そしてしっかり着地をする意味では、やはり官房長官、この四者でもうそろそろ、非公式にはいろいろな連携をとったりしていることは聞いていますけれども、そういう意味での政府側のしっかりした関係者のいろいろな意味での情報交換、意思統一をする関係閣僚懇談会みたいのが私はもう必要な時期じゃないかと思うんですよ。野党の中沢に言われるまでもないということになれば、それはそれまででしょうけれども。
 僕は、この問題の着地ということは、そういう政府側のいろいろな配慮も含めて、そろそろ労働組合側と具体的な、そういうことも含めて、そして、裸になるということは言葉で言えば簡単だけれども、お互いの信頼関係がなければ、大事な問題でいうと、そうやすやすと最初からお互いに裸になるなんていかぬわけだから。だから、やはり、いろいろな話をよくすり合わせをしてこなしていくということも含めて、そうすると関係閣僚懇談会がもう必要な時期じゃないかと私は思うんですが。これはどうでしょう、今明確に答えられないにしても、関係者と相談するぐらいのお答え、ちょっといただいておきたいと思うんです。
石原国務大臣 ただいまの中沢委員の提案は、これまでのこの公務員制度改革の議論の中で初めて出てきた考えでございますし、傾聴に値するものだと思いますが、官房長官をもとに、公式、非公式問わず、風通しのいい内閣でございますので、しょっちゅう会いまして話をさせていただいているという事実もございますし、またそういう話も中沢委員御承知のことだと思います。
 委員が御指摘されましたように、省庁再編をやりまして、国公法を扱っております人恩局は総務省にございます。その責任者は総務大臣である。やはり、内閣府をつくった今回の行政改革の意味ということに照らして今の委員の御提案というものは考えていく話ではないか。今初めてお聞きいたしましたので、そんな印象を持たせていただきました。
中沢委員 そこで、実は官房長官、まだ記者会見をやっているものですから、ここにお見えではありませんので、本当は長官がお見えになってからと思ったんですけれども、時間的に無理でありますから、また改めて官房長官には直接お話をしようと思いますが、実は、二月の二十六日に連合の笹森会長以下関係者、官房長官とお会いをして、公務員制度問題について、つまりレベルは連合と恐らく官房長官という意味だと思うんですけれども、話し合いの場をつくってほしいと。官房長官は検討するということで、その後、いろいろ時の流れはありますが、具体的にまだ官房長官からの御返事をいただいていないと。トロットマンさんが来た折にも、四月の十五、十六ぐらいだと思いますが、お会いした折にも、まだ検討中だということなんです。
 今の関係閣僚懇談会の話もそうですが、一方は、大臣とはどちらかというと直接関係のある公務員連絡会等々との話し合い。連合との直の話というのはほとんどないと思います。そうすると、やはり、お互いに政治決断という、あるいは組織としての決断を行うということになってくると、私は、連合の笹森さんがおっしゃったように、官房長官との間でそういう話し合いの場をつくるということも一つの方法じゃないかと。
 ですから、くどいようですが、石原さん、そういうことについて官房長官に、どうなっているんですか、早くこの問題については検討して結論を出してほしい、国会でも中沢の方からそういう話があった、こんなことをぜひ石原大臣の口から直接官房長官にお伝えをいただいておきたいと思うんですが、そのことはいかがですか。
石原国務大臣 先ほども申しましたとおり、小泉内閣は大変風通しのいい内閣でございますので、民主党の中でもこの公務員制度改革に造詣が深い内閣委員会の中沢委員からこのような指摘もございましたし、ちょっと二月二十六日の笹森会長と官房長官、どういうニュアンスでどういう話をしたかというのは詳細には承知しておりませんので、そういうことが事実であるとするならば、先ほど来、時期が切迫しているという委員の御指摘のとおり、そこも私は共通認識を持っておりますので、新しい形の話し合いの場というものを、成案を得るべく、引き続いて検討して、結論を出すべきであるのではないかと考えております。
中沢委員 それでは、最後の質問になると思うんですけれども、いずれにしても、公務員制度改革の中身でいえば、今いろいろ話し合いをされているけれども、特に能力給の導入問題でいえば、一方ではやはり労働基本権の問題とどうしてもいろいろな意味で関係があるものですから、なかなか、事務レベルも含めて、話が進んでいるようで進んでいない。これは私だけの印象ではない。ほかの人もそういうふうに言っていますよ。
 そうすると、これから先、公務員制度改革担当の石原大臣としては、くどいようだけれども、公務員制度の改革という国民が期待をするような内容で仕上げるためには、その中身、天下りだとか能力等級の導入に象徴されるような新しい制度の導入だとか、それは、やはり行き着くところは、労働基本権問題についてどうしてもしっかりした協議をして、そして合意をして、そして閣議で決定して国会に出してくる、こういう非常にまだ、だんだん状況は切迫しているけれども、渡るべき川、越えるべき山というのは物すごくあると思いますよ。
 それだけに、ぜひひとつ、若手の石原さん、やはり新時代を切り開くんだというそんな政治家の思いで、この課題についての解決に向かって、これからも担当大臣として、私は党派は違いますが、やはり全力を挙げてもらわなかったら困る。そういう意味では歴史的な使命があなたにあるのではないか、そのことを申し上げておきたいんですが、決意のほどをちょっと最後に聞かせてください。
石原国務大臣 先輩であります中沢委員から、温かくもまた厳しい御叱責、御叱咤、また激励をお受けしたと拝聴しておりました。
 先ほど来申し述べておりますように、五十四年ぶり、半世紀ぶりの大きな改革でございます。公務の仕事をしていらっしゃる皆様方の意識を変え、これからの時代に見合った公務員制度とは何かということを模索している改革でありますので、しっかりと党派を超えても話すべきことは話し、どんな意見の対立があり、どんな事態があろうとも、運用、制度というものがよりよいものになるように、切れることのない信頼関係の構築というものの設立にこれからも努力をさせていただきたいと考えております。
中沢委員 時間が参りましたので、終わります。
佐々木委員長 以上で中沢健次君の質疑は終了いたしました。
 次に、山内功君。
山内(功)委員 私も公務員制度改革の問題についてお聞きをしたいと思っておりますが、公務員制度改革の問題と絡めて、大臣は、例えば鈴木宗男事件についてはどういうふうに考えておられるんでしょうか。
石原国務大臣 ちょっと突然の御質問でございますので、記憶をよみがえらせなければならないと思うんですけれども、この事件の本質はやはり、一議員が政治の世界で力を持って、行政、なかんずく外交の分野で特異な力を発揮し、特異な結果を導き出した、そこに刑事事件が発生し、現在鈴木代議士が勾留中である、こういう事件であると思います。
 この本質はやはり、政治と金、すなわち外交という行政の舞台を利用して、これはこれまで実はなかったんじゃないでしょうか、特にこの外交は、一般論ですけれども、票にも金にもならないという話が週刊誌に躍るように。そんなところで起こった特異な事件であり、政治と金、なかんずく政治家の権限と行政の癒着、こういうものを極端な形で体現した事件であり、こういう事件を二度と引き起こしてはならないという思いは全国会議員の共通の認識でありますし、私も強く大きな戒めとしなければならない事件であると、現在、今御質問を受けまして考えたところでございます。
山内(功)委員 今大臣が確かに政治と金という問題を言われましたけれども、実は政治と外務官僚との問題でもある。つまり、その透明性をいかに制度設計していくかということが今回の公務員制度改革に絶対問われている問題だと私は思っています。国民や住民本位のための行政を追求することはもちろんですけれども、不祥事を発生させないための制度設計をしていくこと、そして公務員自身がその中において生きがいを持って積極的に能力を発揮していくというような環境づくりが問われている、まさに鈴木宗男問題はそういう事件であったということで、政府や国会議員の意識改革がまずこの制度改革については私は問われてしかるべきだと思っています。
 この公務員制度をどういうものを持っているかということは、その国にとっては国のあり方を左右する大きな問題だと思いますので、国民的な視点からこれからいろいろと疑問に思っている点についてお聞きしたいと思います。
 まず、関心の第一点は、この改革は高級官僚の天下りについてはどういうふうに規制されていくんですか。国民が官僚のあり方について非常に問題視してきたことについて、どういうふうにその解決の道筋を国民の皆さんに示していくのか。まだできていませんけれども、これから法案と言って話を進めていきますけれども、法案の骨格についてただしたいと思います。
石原国務大臣 ただいま山内委員が御指摘されました点は、この委員会の前段に中沢委員と御議論をさせていただきました能力等級の公務の世界への導入と双璧の重要な関心事であるし、国民の皆様方の関心事であるし、重要なポイントであると私も認識しております。すなわち、今回、今法案を鋭意作成中でございますけれども、この公務員の方々の天下り問題、こういうものに対してどういう対処、国民の皆様方のさまざまな批判にどういう対処法を書くことができるのか、そういう問題を内包している意味でも重要であると認識しております。
 そして、前段に委員が御指摘された鈴木宗男代議士の問題につきましても、職員の方々の持っている行政の側の権限というものが一つのポイントになったわけですけれども、この再就職に当たっても、権限、予算を背景とした押しつけ的なものであったり、あるいは一般の民間会社ではない、特殊法人、これももう特殊法人はなくなりますけれども、独立行政法人やあるいは今現在もあるべき姿を検討中であります公益法人というものを、これまではどうも安易な受け皿にするようなことがあった。そういうものに対して是正をする適切なルールというものが必要であると私は考えております。
 若干長くなって恐縮なんでございますが、これは公務員制度改革大綱に基づきまして、すなわち、一般事業会社への再就職については、大臣承認について内閣が厳格かつ明確な承認基準を策定し、権限、予算を背景とした押しつけ的なことは一切認めない、再就職等に関する情報の公表、どんなところに行ったのか、あるいは再就職後の行為規範、これは、権威をかさに着て、これまでの人間関係をかさに着て仕事をとるというようなことがあったら刑事罰も処する、厳格かつ合理的な導入を目指しているところでもあるわけでございます。
 また、まだ特殊法人はあります。これはなくなりますけれども、こういう公的なパブリックカンパニーへの再就職については、先ほども申したように、安易な受け皿になってはいけない。特殊法人自体の改革を今行っているわけでございますので、特殊法人の役員給与、退職金の削減というものももう既に実施いたしましたし、退職公務員の役員の就任状況というものも公表するようにさせていただいたところでございます。
 そんな中で、いずれにしても、政府としては、今後とも信頼を得られるものにしなければならない。特に、当委員会あるいは予算委員会でお手盛りじゃないかというような批判がありました大臣承認制というものについては、一段厳しいものを考えていくという皆様方の主張というものに十分に耳を傾けて、よりよい案をつくるべく今努力をさせていただいているところでございます。
山内(功)委員 今、大臣承認制という問題を大臣みずからが不十分な制度であるかのように言われましたけれども、私もこれは大変問題があると思っています。
 まず一点目は、今まで人事院による事前審査という現行方式がとられていたわけですけれども、それによって、営利企業への再就職については、人事院の規制によりこの間減少していっている。これをなぜ変更する必要があるのか、今の現行方式よりも後退するものではないかという批判があるのですが、この点についてはいかがですか。
石原国務大臣 大臣承認制の仕組みについては、もし必要であるならば細かく事務当局から御説明をさせていただきますけれども、今回の改革のポイントというものは、やはり内閣が責任を持つ、すなわち、行政の執行者たる内閣がすべて責任を持つということが基本にあるわけです。そんな中で、内閣自身が厳格かつ明確な承認基準を定めて、この基準に基づいて、内閣の総合調整のもとに各大臣が承認を行うということに、制度をつくらせていただいたわけであります。
 内閣及び各大臣が基準の設定及び承認に直接責任を負うことによって、国民に対して、この問題、批判が出たときの問題の所在、責任の所在というものを明確にしよう、そういうところに着眼点があったわけでございます。
山内(功)委員 しかし、今までの答弁の仕方は、各省庁の各大臣が政治家として責任を持った承認をしていくということで、各大臣の承認と言われていたんじゃないんですか。
石原国務大臣 若干長くなって恐縮ですが、ちょっと細かく御説明をさせていただきたいと思いますけれども、内閣が承認基準を定めて、承認制度の運用について内閣の総合調整機能を行うことを加えまして、大臣が承認した案件について詳細に公表をする。そして人事院は、承認基準についての意見の申し出や承認事務の実施状況について改善勧告を行うこととし、さらに、新たに再就職後の行為規範、先ほど申しました刑事罰でございますけれども、違反行為に対しては罰則等々の制裁の導入を図る。
 二重、三重の仕組みでございますけれども、委員が御指摘のように、大臣が承認するということがお手盛りになるのではないかという強い批判があるということは私も重々承知しておりますし、その批判にこたえるものをつくっていかなければならないと考えております。
山内(功)委員 最後に内閣が総合調整を了解するならば内閣が責任を持つ、しかし、具体的な承認行為については各大臣がするということならば、例えば昨年、国土交通省の民間企業への天下り件数が三百五十人を超えている、財務省でいっても六十人近い。これを各大臣が承認審査していくということは、事実上不可能でしょう。つまりは、人事を握っているその役所の、いわゆる人事をつかさどるポストの高級官僚のもとで人事が行われていく、今までと変わらないんじゃないんですか。
石原国務大臣 この問題は、二つの問題が私はあると思うのですね。
 一つは、公務の世界で働いていた人が民間企業、すなわち民間と交わることは悪であるという考え方、すなわち、公務の部門で働いていた権限や権威や人間関係を利用して仕事を民間企業で行うことの問題。それと、公務員の皆さん方、これからの二十一世紀というこの新しい時代は、グローバルな競争の中で、国境を越えて経済が速いスピードで流動化していく、そんなときに、公務という部門だけにとどまって仕事をしていると新しい時代にマッチすることができない。
 これまでは、どちらかというと官民の交流というものは、やはり否定されていたんだと思います。しかし、これからは、官民の交流はよりスムーズに、スピードを持って行えるようにしなければならない。私の一つカウンターパートであります例えば規制改革の中で、こんなことがございました。
 非接触型のプリペイドカード、すなわちスイカでありますが、これは、日本の技術があるにもかかわらず、四年間、日本で実現できなかった。なぜか。規制があったわけであります。その規制は何かというと、非接触型プリペイドカードを受ける、電波を発信するものについては、電波法で無線局の申請をしなければならない。しかし、この電波法をつくったときには、この非接触型のプリペイドカードがこれだけ実用化するということが官の世界では考えられなかった。民の世界では当たり前のことが官の世界で非常識になっている、そういう事態を受けたときに、やはり官と民の交流というものは、これから私はあってしかるべきだと思っております。
 しかし、そんな中で、先ほど言ったような押しつけ型の天下りというものは、受ける側の民間企業にとりましても、大変厳しいリストラ等々を行っているから、それはできない。そこにどういうファイアウオールを置くのかというのが今回の改革であります。行政事務の執行に関する国民に対する責任は、先ほど来申しておりますように、やはり一義的には大臣が負うべきではないか。各府省の人事管理に責任を有する大臣が職員の再就職についても、山内委員はできないんじゃないか、同じではないかと言いますけれども、責任を持って行うということを前提に、制度をつくらせていただいているところでございます。
山内(功)委員 多忙をきわめる大臣が、国民から今大いに問題視されている天下りの問題について、役所の中で一人で大なたを振るえるのかということはとても疑問でありますし、先ほど述べたような、一つの役所でも数十人、数百人単位の案件について承認、不承認を与える、そういう作業をする時間があったら、もっと国政を一生懸命頑張ってほしいです。
 大臣承認制にする、内閣の総合調整を閣議で了解すれば、各大臣のということではなくて事実上の内閣承認制となるということを、今大臣は少し無理して言われていますけれども、人事院としてはどう考えていますか。
佐藤(壮)政府参考人 お答え申し上げます。
 従来、天下りというのは、民間企業に対する天下りが主な対象でございました。したがいまして、一律な基準をつくってそれを規制するということもある程度可能でございましたけれども、昨今は、いわゆる特殊法人や公益法人に対する再就職についても国民の批判が非常に強いということがございます。
 今御質問の大臣承認制あるいは内閣の承認制の問題でございますけれども、私どもも従来から、先ほど申し上げました民間への退職公務員の再就職、それから特殊法人や公益法人への再就職についても、あわせて内閣が責任を持って管理をしていただくということが適当でないかということを申し上げておりましたけれども、その前提として、やはり内閣御自身が独自の審査機能をお持ちになることが必要ではないかというふうに思います。内閣の最終的な判断というのが形式的になっては、やはりまずいのではないか。やはり実質的にかつ最終的に、内閣が個別の判断を含めて最終的な決定をしていただくというのが適当ではないかというふうに思っております。
山内(功)委員 先ほどからの大臣の話を聞いていますと、多分この法案には、天下りは禁止するということは全く盛り込まれないような感じですので、例えば、天下りは一回しか認めないとするとか、退職金の受け取りは、役所をやめたときに受け取ったら、それ以降の天下り先での退職金は受け取らないとか、あるいは、もっと実効ある改革にするために、今、省益を擁護、助長しているような早期退職慣行の見直しをする。そういうような、今挙げた三つのような点について制度設計する考えはないかどうか、お聞きしたいと思います。
石原国務大臣 ただいま委員が御指摘されました点は、非常に私も重要な点であると考えております。
 前後いたしますけれども、お話をさせていただきますと、早期勧奨退職によって、今大体平均で五十四歳で公務員の方々が退職しています。それで、年金が受給年齢が上がっておりますから、何か仕事をしなきゃいけないということで再就職を行うわけであります。
 パブリックカンパニーへ仮に行った場合は、退職金の二重取りというものをやめさせるべく、役員出向制等々の考えも今取りまとめて、問題の是正を図っているところでございますし、さらに退職年齢、今五十四歳ですけれども、これを平成十五年度から五年かけて、平成二十年でございますか、五十七歳に持っていく。これによりまして、平均退職年齢が五十七歳に上がる。もう一度これと同じ改革が行われますと、正規の定年である六十歳まで持っていくことができるわけであります。
 この点については、もう昨年末に政府として是正の基本方針を取りまとめたところでございます。
山内(功)委員 三点挙げたことについて、それぞれこうする、ああするという答えを本当は聞きたいんですけれども、またこれから一般質問の時間をとってもっと細かく聞いていきたいと思いますが、どうも大臣の発言のよりどころになっているのは、罰則を担保とした行為規制を課していくから、とにかくそこでちょっと制度を組み立てさせてほしいというようなニュアンスがうかがえます。
 しかし、その天下りで迎えた高級官僚自身に動いてもらわなくて、もともといた会社の部下なりあるいは代理人が、口ききからあるいは補助金獲得から工事の発注から、そういうことについてやみに隠れて動き回るということ自体もあるわけですし、そういう場合には、その天下った人間に行為規制をかけたとしても全く意味をなさないと思うんですけれども、どう考えられますか。
石原国務大臣 山内委員は弁護士の資格をお持ちでございまして、刑事罰について私よりも造詣が深いものと拝察をするところでございますが、ただいま言われたようなケースは、そこに刑事事件としての問題が発生すれば、警察あるいは司法が適切に対処をする問題であると思っておりますし、押しつけ形、あるいは先ほど申しておりますような権限を背景にした天下り、これは行為規範で縛る、行為規範には罰則を、今詳細を詰めている最中でございますけれども、罰則を設けるということで、これを犯してイリーガルな行為を行った場合は、その先は警察権の介入ということになるのではないかと考えております。
山内(功)委員 大臣、四十歳以下の人たちは、今かけているような年金でももらえないかもしれない時代が来るわけですよ。ところが、二十二、三歳のころに一発試験で入った後、それがもう例えば五十何歳で退職した後も七十数歳まで高額が保障されるというような一部の特権を持った人たちがいるということ自体、もう少し、こういう制度は国民から見ても全くおかしな制度であるというような意識が、今議論をしていても大臣からちょっと伝わってこないんですよ。
 だから、この天下りの問題については次回に回しますけれども、例えば、先ほど私が指摘したような疑問について次聞くときには、こうしますとか、あるいは局長級以上の高級公務員についてはもう国会ががちがちに議決をして政治任用していくとか、何か今までと違うキャリアシステムをつくり上げていくんだというような意欲を込めた回答を次回はお願いしたいと思います。
 天下りの問題と、もう一つ、大臣もおっしゃいましたけれども、能力等級制の問題が次の重要な論点だと思いますが、この能力基準というあいまいな要素を中心に置いて給与制度を構築するということになると思うんですが、適正に運用することには大変困難がつきまとうのではないかと思います。その点について、大臣の所見を伺いたいと思います。
春田政府参考人 能力等級制度のお尋ねでございましたので、お答え申し上げたいと思います。
 能力等級制度の一つのベースでありますところの能力評価、これにつきましては、能力評価の基準ということで、標準職務遂行能力ということで、どういうものを能力として発揮する必要があるかというような基準をつくっていく必要があるわけでございます。
 こういう基準に基づきまして職員の評価というのを適切に行うということになるわけでございますが、そういう場合には、例えば調整力だとか管理力だとか判断力、こういったような項目につきまして基準をつくりまして、そういう項目についての評価を行う。
 それから、評価制度につきましては、評価の公正性あるいは信頼性を確保するということが大変大事であると考えております。そのために、複数の評価者によるところの評価であるとか、評価者も訓練を受けるとか、評価をした結果をいわゆる評価を受けた人にフィードバックしていくという評価のフィードバック、あるいは職員の苦情、こういったものに対する適切な仕組みの整備というようなことを今の実情を踏まえて行う必要があるというように考えております。
 いずれにいたしましても、標準職務の遂行能力というようなもの、これは能力を評価するということが非常に重要でございますので、今後、その評価の試行などを通じまして、具体的な職務遂行能力の内容、あるいは評価制度の具体的な内容ということにつきまして、関係者の皆さんと十分意見交換を行いながら整理をしていくということが必要であると考えております。
 こういったものを通じまして、公務員制度、新しい制度を動かしていくときまでに具体的内容を確立いたしまして、適正な運用が行えるようにしていきたいというふうに考えております。
石原国務大臣 今細かく事務方から話をさせていただきましたが、私、一番重要なのは、評価制度が、いかに評価されているものが公正であり、信頼に当たるか、ここが一つ重要なポイントだと思っておりますし、この評価制度あるいは標準職務遂行能力等々は、実際に試してみる、その中で運用が適正にできる。幾らいい制度をつくっても絵にかいたもちで機能しないということであってはいけない、いかに適正に運用できるか、この二点が重要な問題であると考えております。
    〔委員長退席、中沢委員長代理着席〕
山内(功)委員 例えば、財務省の主税局では、税金をたくさん取れるように企画をしたり、実際に徴収した職員は能力があるということなんでしょうか。
春田政府参考人 これは、今先生お尋ねのような、いわゆるどれだけ税金を徴収できるかというような基準になるのかということだと思いますが、普通の民間の企業で、売り上げがどうであるとか、あるいは利益がどうであるということがまず、営利活動としてのどれだけ稼げたかという、あるいはどれだけ売り込めたかというような意味での基準として言われているようなものがそのまま公務の世界で当てはまるかというと、やはり公務の世界は、まさに仕事の内容も、いろいろな行政サービスを通じまして、例えば国民のニーズというものにこたえていくというような性格でございますので、税金をどれだけ取ったから優秀であるというような式の基準の設定というわけにはまいらないだろうというふうに思います。むしろ、適正にそういう仕事もこなしながら国民の信頼が十分得られるような、そういう基準にしていかなければならないというように考えております。
山内(功)委員 例えば財務省の主計局がありますね。キャリア組とノンキャリア組が、予算編成のときは一体となって徹夜でサービス残業をやっている。その場合に、予算編成でだれの業績が多く、だれの業績が少ないのかということを判定できるのですか。
春田政府参考人 これは、いわゆるどういう形で仕事に取り組み、いろいろな仕事の分担があると思いますが、それぞれの職員の仕事の中で、目標としてきた事柄をどれだけ達成できているかというようなことは、当然、それぞれの方につきまして、それぞれの方の努力あるいは業務に対する取り組みというようなものをきちんとそれぞれの人に応じて評価者の側で評価をいたしまして、本人との間でも、どういう目標でということに関しては、例えば自分の方から申告をして、この辺までやってみたいというようなことをベースにして積み上げていく。民間でもそういう考え方でやっているところでございまして、私どもも評価制度を具体的に検討していく中では、そういうそれぞれの人の、どういう仕事への取り組みをしていくかというような目標もベースにいたしまして評価をしていくことになろうと思います。
 それは、それぞれの仕事の役割というものもございますので、全般的に一律の形で何かそういうものを判断するということは、仕事のそれぞれの分担との関係ではやはり十分考慮して考えていく必要があるというふうに考えております。
山内(功)委員 つまり、だれの目から見て公正であり納得性のある評価だということが言えるのかが問題だと思うんですね。
 大臣、今聞いたのは、省益とか局益主義の業績ばかりが評価されるような仕組みであっては国民はたまったものじゃない。職業公務員に問われる職業倫理は、あくまで内閣を補助することであって、帰属している官庁に対しての忠誠心ではないと思うんですが、大臣、その点どう思われますか。
石原国務大臣 山内委員の問題意識の提起というもの、そしてまた所属する課、部、局、ひいては役所への忠誠心の評価であってはならないという御指摘は、まさに同感であります。国家国民に対する努力、奉仕の度合い、こういうものも十分に評価される、そうしませんと、評価する人間に対していいことを言う人間だけが上に上がってしまうといったようなよくある問題も提示されてくる。その点からいいましても、委員の御指摘はまさに正鵠を得たものであると考えております。
山内(功)委員 さらに加えて、これもまた大臣が関与するんですね。
 大臣は、派閥の順送りがあったり、あるいは不祥事でやめられたり、いろいろあって、短期間しかおられない方も多いですよね。反対に、長期間大臣の職におられる方も、例えば経済関係の大臣とか外務関係の大臣は、国会や国民から今最低の評価を受けています。
 そういうような大臣自身にも資質が問われるような問題があるんですけれども、それはおいておいても、多数の職員の昇格、降格、任用など、多忙な個々の大臣がみずからの判断と責任においてそういうことを行うことができるとは到底思えないんですね。だから、先ほども議論しましたけれども、官僚が作成した人事案とかそういう任用する案をただ追認するだけに終わると私は思えるんですけれども、どうなんでしょうか。
石原国務大臣 今の点も非常に重要な点なんですが、誤解のないように御理解をいただきたいのは、すなわち、能力等級を導入している事業会社、たくさんございます。責任をとるのは社長でありますけれども、人事の考察は人事部でありますし、現場の評価というものは課長であり部長である。そういうものを、行政の長である大臣がすべて責任を持つんだ。日本の社会というものは、今委員御指摘のように、大臣もころころかわりますし、役所のポストも一年でころころかわって、責任の所在が非常にあいまいです。
 これは民間会社も一緒だと思います。金融機関が破綻しても、破綻したときの頭取は刑事罰に問われるようなことがありますけれども、その路線を敷いた頭取が罪に問われるということはなかなか少ない。それと同じように、やはり責任を明確化する上にも、すべての責任は大臣にあるということを明確化する。
 それと、後段の御指摘も、先ほど私御答弁させていただきましたけれども、だれが見てもその評価というものが公正であり公平であり、そこが担保されていないものは運用が実際としては機能しない、この点には十分留意をしなければならないものと考えております。
山内(功)委員 能力基準あるいは評価制度については労働組合としっかりと協議を重ねていただいて、能力のある人を重要なポストにつけるというような仕組みについて私たちは反対しているわけじゃありませんので、しっかりとそういう制度を確立してもらいたいと思います。
 それから、採用試験についてお聞きしますけれども、採用試験については内閣総理大臣が企画する方向で検討していると聞いているのですけれども、採用試験の中立性、公正性の確保の観点からは問題があるのではないかと思うのですが、どうですか。
春田政府参考人 お答え申し上げます。
 いわゆる公務の部門におきまして、それぞれの行政に必要な人材というものを確保していくということにつきましては、やはり行政を担っている各省が、それぞれ取り組んでおりますところの行政の政策の企画立案でありますとか、あるいはサービスを提供していくというような立場で取り組んでいく重要な課題であるというように考えております。
 その場合に、具体的にどういう人材であれば公務の中で十分な能力を発揮していただけるのかというような判断でありますとか、あるいはそういう有為な人材というものをどういうマーケットから来ていただくということで確保できるのかというようなことにつきましては、実際に職員を採用いたしまして、その職員の方に行政課題に対応していただいているという立場で、内閣の側でそういう問題に関して取り組んでいくことが重要であるというふうに考えております。
 今回の改革では、第三者機関でありますところの人事院に現在採用試験の企画立案ということがゆだねられているわけでございますけれども、行政運営に責任を持つ内閣がこういった採用の問題に主体的に取り組んでいくということで、採用試験の企画立案につきましても内閣がみずから取り組んでいくということにすることとさせていただきたいというふうに思っております。
 もちろん、採用につきましては、中立公正性の確保ということは重要でございますので、内閣におきましてこのことに十分責任を果たしていくということが必要になります。
 また、第三者機関でありますところの人事院につきましては、必要に応じまして内閣に意見の申し出をすることができるというようなことで、中立性、公正性というものを十分確保していくことができるというふうに考えております。
山内(功)委員 例えば衆議院の解散・総選挙の時期を決めるという場合に、総理大臣は、政府に対して物すごく批判が高まっているけれども、その中でも、自分の政党あるいは与党にとって一番都合のいい時期を模索して日程を決めると思うんですよ。
 つまり、同じことかどうかはわかりませんけれども、試験制度についても、例えば試験委員というのも、私も、どういう人が国家試験の試験委員になるかによって、例えば、その人の教科書を買い込んだり、その人の講義がほかの大学であったら聞きに行ったり、受験生というのは多分そうすると思うんですよ。
 だから、試験委員をだれに決めるとか、それから、倍率が今何か人事院と内閣府とで争いになっているようですけれども、倍率をどうするとか、日程をいつごろに決めるか、そういうような問題について総理が決めるということになると、それはもう、総理というのは、政党あるいは自分の、みずからの政治信念に基づいて生きている人ですから、政治的な意図も間接的にはやはり押しつける形にもなると思うんですよ。
 だから、今まで人事院という第三者機関が、独立性、公正性ということを確保しなければならないということでそういう制度を担ってきたわけですけれども、それを、それではいけないんだということで内閣総理大臣の方に移すということについては、どういう考慮があったんですか。
春田政府参考人 先ほど、御答弁の終わりのところで、中立公正性の確保の点につきましては、やはり、採用の問題に関しましては、中立公正性の確保というのは非常に重要なことでございますので、内閣におきましてもこのことに責任を果たしていくということは当然のことだというふうに考えておりますし、その意味で、まず、内閣がそういう責任を果たすということ、それから、第三者機関である人事院が、必要に応じて意見の申し出等を通じましてチェックをする、チェック機能というようなことも果たすということで中立公正性が確保できるものと考えております。
 それから、今、試験委員をどういう方にとかというようなお話も出たところでございますが、いわゆる試験の企画立案につきましては、内閣側において行うということが必要だろうというふうに考えておりますが、例えば、試験の実施につきましては、今までの取り組みということの経験も踏まえて、人事院さんの方で実施をするというような体制をとっていくことが必要であるというように考えてございます。
 あと、倍率の点だとか、あるいは日程の点とかいうようなことがございました。
 私ども、いわゆる企画立案というのは内閣側で行っていく必要があるだろうという中では、どういうふうに試験を行い、その試験を行ったところをベースにいたしまして採用者を決めていくかというような点は、これは合格者数ということにも関係するところでございますが、やはり、全体、企画立案をしていく中で、日程的なことも、大まかな、どういう人材を確保していくかということでは、どういうタイミングで試験を行うことにするのかというようなことにつきましては、企画立案の中でやはり検討していくテーマになるのではないかというふうに考えております。
山内(功)委員 能力等級制を徹底していって人事評価システムを確立するというのが、政府が進めるこの制度改革の趣旨だと思うのですが、もしそうだとするならば、採用してから、その採用した職員、公務員の能力とか創造力、意欲、知識、そういうものを適正に評価して取り上げていきます、あるいは任用していきますということだったら、特定の人だけを幹部候補生とするキャリア制度自体がもう私は時代おくれだと思うんですね。だとすれば、1種、2種、3種の試験区分を廃止すべきだと思うし、公務員の士気を高め、本当にやる気のある職員だけを国で抱えていく、そういう抜本的なメスを入れるというような考えは、大臣、ないんでしょうか。
石原国務大臣 この点も大変重要な点であると思っております。
 公務員制度改革大綱、十三年の十二月に決定したものの中で、「本府省幹部候補職員を計画的に育成する仕組みの導入」ということを入れております。これまでのような、先ほど来委員が御指摘されたような、一回試験を通れば、まあそこそこ順調に課長、部長ぐらいまでなるみたいなシステムというものが機能をしていないということは十分承知しておりますし、そういうものは是正していかなければならない。
 その一方で、高度複雑化する国の行政にとって、幹部の職員を養成し、確保していくということは大切、重要ではありますし、合理性があると思っております。しかし、さっきも言いましたように、一度試験受かって、その後、処遇が特別で、渡り鳥で歩き回れるみたいなものはやはり絶対にやめていかなければならない。
 1種採用試験については、採用後に厳正な評価を行って、課長補佐の段階までは集中的な育成を行います、イギリスの方のファーストストリーマーという制度を参考にしているんですけれども。しかし、1種以外の職員の方々に対しても、集中育成の対象として道を開く。すなわち、課長補佐以上の部分は、この集中育成が終了した後は、1種、2種に関係なく、厳正な幹部登用を実施していく。こういう思い切った見直しを今回は考えているところでございます。
 新しい公務員制度においては、委員が御指摘されております能力等級制度の導入によって、職員の能力、実績を踏まえた適材適所の処遇というものを実現していきたいですし、入省時における採用試験の種類にとらわれない、すなわち、1種、2種、3種といったようなものにとらわれない能力重視の人事管理を推進していくのが非常に重要であると考えております。
山内(功)委員 能力主義を徹底させるということならば、各公務員についての労働条件を引き下げるケースも当然あり得ますね。
春田政府参考人 今御指摘の点は、いろいろな事情で勤務成績が非常に悪くなるというような場合には、いわゆる降任ということで、ポストが下のレベルの方に変わるということは、制度的に、これは現在でもそういう制度があるわけでございますが、能力等級制のもとにおきましては、まさに、その職員の能力の発揮というふうなものをきちんと仕事を通じて評価いたしまして、その場合に、いろいろな事情でその能力発揮が十分できないというふうなことが継続して生じるといったような場合には、いわゆる降任ということで、少し仕事が、より易しい方の仕事に変わる、そういう処遇が出てくるということは当然あり得ることだと考えております。
山内(功)委員 採用から人事、天下りまで大臣の承認制にする。評価基準は、帰属する官庁の方針や業務にいかに貢献したかということにならざるを得ない。能力主義が徹底される、つまり、帰属する官庁の方針や業務に反する意見を言う場合がある、労働条件が引き下げられる。もしそうなるとするならば、やはり労使の話し合いは欠かせないわけですし、それを担保するために労働基本権というものをバックにして交渉をするということは、当然、いわば交渉の相手として、有利、優越的地位に立っているいわゆる雇用の側である内閣あるいはそういう各大臣と交渉する場合には、労働基本権が担保されていないと、つまり、今のような制約を維持するという形では、やはり公務員制度改革というのは不備があっておかしいと私は思うんですけれども、大臣、ちょっと最後に、その点についてお伺いしたいと思います。
石原国務大臣 この点は、やはり公務の特殊性というものがあると思います。つぶれません、よっぽどのことにならない限り首になりません、そういう関係がない中で、そしてまた、つぶれない以上は、ストをしてもつぶれないわけであります。そういうことをどう考えるのか、重要な問題として検討に値すると思っております。
山内(功)委員 引き続き大臣とこれからも議論を続けたいと思います。
 ありがとうございました。
中沢委員長代理 次に、平野博文君。
平野委員 民主党の平野博文でございます。
 この委員会で初めて質問をさせていただきますので大変喜んでおりますし、日ごろ尊敬する谷垣大臣、石原大臣に質問ができるということは、大変うれしく思っています。何で尊敬しているかということを一言だけ申し上げますと、官僚の書いたペーパーではなくて自分の言葉で答弁されているということで、非常に私うれしく思っておりますので、私の質問に対してもそんな思いでお答えをいただきたいな、このように思うところでございます。
 さて、私、大きくは二点ございます。与えられました時間が限られておりますので、きのう御通告しておりますところまで十分に行くかどうかわかりませんが、その点はおわびをしながら、次回には必ず全部質問しますから、きょうはなくても次にやる、こういうふうに御理解をいただきたいな、このように思います。
 それでは、まず第一点でございますが、大変私にとっても不名誉なことでもございました。しかし、私にとっても不名誉なということは、国民生活の中において、国民の皆さんも私のような被害、災害を受けている方がたくさんあるのかな、こんな思いで、実は私、きょう質問に立ったのであります。特に今、情報社会と言われておりますし、情報社会の進展ということはいろいろな意味でこの社会にいい面をもたらすことも大きいわけでありますが、陰の面も必ずやはり出てくるわけであります。特に、そういうコンピューター技術を使って、犯罪の中にもしそういうツールが入っていくとしたら、目に見えないものですから、国民にとって大変不安な状態になる、こういうことでありますし、そこのすき間をつくのが犯罪者だというふうに私は思っています。
 特に、具体的事例で申し上げますが、きょうは委員長のお許しを得て理事会で委員の皆さんに私の被害の中身を配ろうかなと思ったんですが、配るのも恥ずかしいぐらいなものですから、あえて配らずに、きのう事前に大臣に、私に来たメールを見ておいてほしいということでお渡ししておりますから、大臣、これは見ていただきましたですか。
 では、具体的に申し上げます。
 端的にいきますと、架空請求詐欺メールと私は称しておりますが、実は、私のメールアドレスに一通のメールが届いたわけであります。日々たくさんメールが来ますから、余り気にとめていなかったんですが、うちの秘書から、代議士、アダルトコンテンツを使ったんですかと言われて、どういうことだと。こういうことで、再三請求が来て、まだ振り込みをしていないそうですねと、こういう請求が来たわけですよ。それでびっくりして、どういうことだということで、「最終通告」ということで参りました。
 簡単にちょっと読ませていただきますが、「前略、先日発送させて頂きました債権譲渡に関しての通知書はすでにご覧頂けたものと存じます。同通知書の書面でもお知らせしました通り、弊社は各サイトのインターネットコンテンツ事業者様より利用料金等の回収を委託されているものです。」と、こういう業者さんから来たわけであります。再三通知をしているけれどもなかなか入金をしておりません、こういうことなんですね。したがって、このたび、弊社の顧問法律事務所と協議の結果、以下のとおり事案を決定し、最終通知とさせていただきます、こういうことで来たわけであります。
 その詳細としては、アダルトコンテンツ使用料、さらには滞納金、合わせて五万何がしという金額請求があって、通知人という名前がありました。銀行口座も書いてありました。そういうことでありました。最後の末尾には、再三連絡したが入金がない、入金しなければ自宅や勤務先へ取り立てに来て、手数料をまたそのときには上乗せをする、法的手段もとる、こう書いて結んでいるんですね。
 それで、しようがないし、私のメールはあちこちに公開をしておりますからだれでもが使える状態にある、こういう立場でもあります。したがって、私、女性秘書から嫌らしい目で見られて言われたんですが、ひょっとしたらうちの男性秘書が私のメールを使ってやっているかもしれないから、男性秘書一人一人に全部、おまえやっていないだろうなという確認をした上で、きょう質問に入っておりますから、私どもの関係者ではしていないという前提に立ちますよ。
 そこで私、こういうメールが非常に最近多いんです。これはもう社会問題になっていますし、当事者だけが不安になったり、いろいろなっていますが、私は、この情報化社会の大きな社会病理の一角だと実は思っています。そういう意味で、恥ずかしいとは思いながらも質問に立つんですが。
 大体、アダルトコンテンツ利用料なんという、こういうことで来ますと、自分も妻子のある身ですから、そんな取り立て屋がうちの家に私のいない間に来て、女房に、おたくの主人がこういうのを使った、なぜ払わないんだと言われても、えらい不名誉なことになるし、まして一般のサラリーマンの方が、会社に来られて、こういうことをおまえはしているけれども、どうなんだと。そうしますと極めて不名誉でありますし、その本人は、そんなことだったら、金額が三万、四万だったら、そういうことが表ざたになる前に払った方がいいじゃないかという心の心理も働くものだと私は思うんですね。そこにつけ込んでいるのがこの犯罪だと私は思うんです。
 したがって、私は、この問題を一被害者という立場で警察庁にお願いしたわけでもなくて、国民の代表である私の立場から、こういうものは社会病理だ、氷山の大きな問題だ、内在していることが大きいということで、警察庁に、秘書を通じて、まずは、こういうことが来ているけれども敏速に対応してもらいたい、こういうことを実は投げかけたのであります。そのときに、警察庁は、私の届け出を受けてまずどのように対応されたのか。
 私はまた、秘書から、そういうことでやっておけということを言ったんですが、私も気になって、私みずからも警察庁の担当課に電話を入れました。これが四月の初めぐらいだったでしょうかね、日にちは忘れていますが、当然警察は記録しているでしょうからわかっておりますが。我が事務所の方からそういう連絡が行った、あるいは、私も改めて一日か二日おくれぐらいに、ぜひお願いをしたいということで言ったことに対して、警察は、まずどのように対応されましたでしょうか。
瀬川政府参考人 お答えいたします。
 まず、その架空請求メールでございますけれども、基本的に詐欺罪に該当するおそれのある事案である、こういうふうに認識をしておりますが、従前は請求書の送りつけなどの形で敢行されてきたものが、こういったネットワーク社会の進展に伴いまして、電子メールという形で最近急増してきている、こういう状況にあります。私どもといたしましても、こういった被害の未然防止と事件の早期摘発に向けて的確に対処していかなければいけない、こう認識しているところでございます。
 御質問の、委員から情報提供をいただきました事案でございますが、三月三十一日に情報提供をいただきました。私どもとしても、この問題を真剣に受けとめまして、その内容を精査の上、警視庁の方に、こういう情報があるということで提供させていただきました。現在、警視庁において所要の捜査を推進しているものと承知をしております。
平野委員 しかし、今そういうことを言われましたが、私どもの事務所がこのことを知って、第一報を秘書に入れさせました。そうしたら、警察庁の方から言われたのは、東京都の消費生活センターに通報してください、こういうのがまず第一報だったんですよ。だから、私本人がみずからやった。そのときの答えですよ。一定の数がセンターに集まったら警察に連絡来るから、そうしたら警察としても捜査に動ける、こういう答えだった。これはおかしいんじゃないかと思う。
 これは、当然、三万円、五万円、こういう問題だから、軽微な犯罪であるというふうに理解したのかもしれないけれども、私、先ほど申し上げましたように、これは目に見えていないけれども、大きな社会病理の一角だ、私はこういう認識をしたために、一被害者として連絡したわけではない。国会議員の名前も言いました。こういう問題、物すごくある、こういうことを含めて情報提供し、敏速に対応してもらいたい、状況を中間報告でもいいから報告をしてもらいたいということまで私申し上げました。捜査のことについて、だれだ犯人はということまで聞いたけれども、これは捜査中でありますからと、それはそのとおりだと思うからそこまで言及しませんでしたけれども、中間報告でも教えてもらいたいということも私申し上げました。それで、来なければ私委員会でこの問題を取り上げますというところまで私ははっきりと申し上げました。もう五月の中ごろであります。私、これ、きのう通告するまで、何ら当該のところから私に対してはございませんでした。
 今鋭意、重大な問題だと認識しておられるけれども、最初の取っかかりの相談窓口に出したときに、警察庁に持っていったときに、消費者センターに通報してください、このことはどういう意味なんでしょうか。
瀬川政府参考人 この種の事案につきましては、警察に相談に来られた場合に、例えばこの請求に対して、払っていいものか、払わなくてもいいものか、払わない場合にどういうことになるのかとか、あるいは同種の請求元といいますか、そこから、同種の事案があちこちあるのかどうかとか、そういった情報あるいはこういった問題に対しての対処の仕方等につきましては、消費者生活センターの方からこういった被害相談に応ずるという体制がしっかりできておりますので、そちらの方に御相談いただいてはと申し上げる例は多いわけでございます。
 ただ、御質問にありましたように、一つ一つの被害額はこの種事案の場合は小さいわけでありますけれども、大体電子メール等を使って大量にこういったことをやっているわけでございまして、多数の被害者から金銭をだまし取るということになりますと、被害総額というのは大変大きな額になるだろうというふうに考えられます。また、コンピューターネットワークそのものに対する安全、信頼を損なう犯罪であるということでございまして、たとえ一件数万円という被害であっても、御質問にありましたとおり、これは真摯に受けとめて、きちんと捜査に取り組む必要があるものというふうに考えております。
 中間報告の件でございますけれども、現在、警視庁の方には情報を回付いたしまして、警視庁において捜査をしているところでございまして、その捜査の進展に応じまして適宜今後御報告をさせていただきたいと考えております。
平野委員 いやいや、そういうことを言っておるのと違うのですよ。私が言ったときに、どういう認識を持って対処したか。これは軽いから相談センターでも言っておけや、こういう認識だったと私は思うから、これらの犯罪についての根本的な、やはり警察庁としての認識がわかっていないんじゃないか、こういうことを言いたいのでありますよ。今一生懸命やっていますとかそんなことを言いたいんじゃない。もともとの原点にありますことをしっかり認識してやっていただいたかどうかということであります。
 加えて、そういう電話でありますから、それだったらこういうところへ言ってくださいといって、事案の中身がわからなければよくわからないと思いますから、ファクスまで入れていると思いますよ。同じ文面を入れているんですよ。あの文面を見たら、犯罪は、まだ何の被害も受けていないんでしょう、こんな言い方はないんじゃないですか、警察とのやりとりの中で。
 私は明らかに、失礼ながら、私、法律を学んだ男ではありませんが、明らかにあの文面を見ると詐欺罪ですよ。被害がなかったら詐欺未遂罪に該当するんです。明らかに犯罪だと思うんです。何の犯罪ですか、電話であろうが、こういうやりとりはないと思うんだけれども、そんなやりとりをしたというふうに理解はしていませんか。
瀬川政府参考人 対応の中でそういった誤解が生じるような対応をしたとしますれば、これは大変遺憾なことだというふうに考えます。
 先ほど申し上げましたように、警察としては、たとえそういった小さい事案でも、これは真剣に受けとめてきちっと対応すべきものである、こういうふうに考えております。
平野委員 いや、もう言いわけ的な説明はいいんですよ。私も実際やりましたから、よくわかっているんです。では、私、五万円を振り込んでから被害届を出しましょうかまで言ったんだから。そうしないと警察は動かないのでしょうか、そこまで私は電話でやりとりしています。うそは言っていませんよ。記録見てください。必ずそう言っています。では五万円とりあえず振り込むか、それで詐欺罪が未遂から成立するのであればいいんですねとまでやりとりしているわけですから、いかに今幾ら言われても、私が当初、初期に御相談を申し上げたことに対する対応というのは余り――そんな、金額で見たのでしょうか、一件ぐらいだったらいいや、ほっとけや、相談センターへ回しておけばいいわ、こんなやすき判断をまずは初動のときにはされたのではないかと思うのであります。
 したがって、私はこういう場で警察を責めるとかそういうつもりはさらさらないんです。大変犯罪がふえていますから、物理的に警察官も、重大犯罪を含めてふえていますから、手が回らないということが、もし、手が回らないからこういうことはできないんだということであれば、大いにふやしてもらいたい、こう思うんです。
 こういう情報化社会というのは、たまたまこれは顕在化した部分でありますが、もっと隠れたところに内在している、我々国民生活にとって不安な問題があると思っていますから、私、これは一例だ。こんなのは一例です。たった一例ですよ。この一例だというけれども、これは三万、五万の領域じゃなくて、私また別途、私なりに調べました。そうしたら、大変な問題があったわけであります。
 最大の問題は、大体、大臣に認識を聞いたらいいと思いますが、こういう架空メールとかメール犯罪というのはどれぐらいの規模で今やられていると思いますか、メール通知をしておられると思いますか、大臣、数万の単位なのか。そういう意味では、どれだけこの社会で、インターネットなり通じてこういうものが送られるか、配信されるかという、数字、大体でいいです、通告していませんから、イメージでも結構ですから。
谷垣国務大臣 今、平野委員のおっしゃったのは、平野委員が大変困惑されているような事例に関してですか、それとも全体のメールのやりとりの数……(平野委員「いやいや、犯罪もどきの」と呼ぶ)私、今定かにはその数は把握しておりません。
 ただ、先ほどから伺っておりまして、それは委員は本当に困惑されたと思うんです。それと、この同種の事案が随分来ているという報告は聞いております。それからまた、いろいろな類型の、平野委員のお悩みのとはちょっと違うような事案でも次々と新しい手法が出てきて、対応になかなか、その都度新しい手法もまた考えなきゃならぬというような報告も聞いております。
平野委員 大臣はそういう認識していただいたら結構ですが、大体どのぐらいの件数があると思いますか、件数というか配信している数。
瀬川政府参考人 配信している数はちょっと私は承知しておりませんが、検挙した事例で御参考までに申し上げますと、例えば、これは愛知県の事案でございますが、平成十四年の四月から八月までの間に、インターネットで入手したアドレスを利用して、携帯電話のアダルト番組利用料金が未納であるので指定口座に振り込むように虚偽の電子メールを送信して請求したという事案がございます。このときの被害者は三千人、金額は約九千万ということでございますので、一人当たり三万円だと思います。ですから、振り込んだ者が三千人ということでございますので、恐らくこれを相当上回る相手にこういった虚偽のメールを押しつけているということではなかろうかと思います。
平野委員 では、私が大体言ってあげますわ。私は、非常に親切な業者さんがおられて、大体そういうデータを、それなりにしました。私も数万のオーダーかなと思っていたんですよ。一つのテーマで、先ほど言われましたけれども、数万のオーダーで大体ひっかかってくるのが三千ぐらいで上がってくるんだろうと思いますわ。それで、そんなのは序の口で、数百万のオーダーで配信されるんですよ。それぞれサイトがありますから、どのサイトを使うかによって物すごく、これは、自動的に配信するソフトまでできていますから、あらゆるところへ流れていっちゃうんですね。
 今おっしゃられましたけれども、その中で何%かの率で犯罪の被害に遭っている、その一例が今言われた例だと思うんですが、これは上がっていないんですけれども、確率統計からいくと、数万のオーダーでいったら今のレベルですよ。それを確率統計的にいくと、パーセンテージを掛けますと、何億というオーダーで顕在化していない被害額が出ている。これは、統計数字から見ても私は間違いなく出ると思うんです。したがって、数百万のオーダーでこれはインターネットなり通信領域を通じて出回っているというふうに、この問題点を認識していただきたいと思うんです。
 ただ、一件三万円とか五万円という、非常にやり口が、それが百万来ると何でやろう、何でやろうというふうになるんですが、三万で自分の不名誉が隠せるならばと、これは人間の心理としていかぬことですが、そこを巧みに突いた部分ですから、私は、これは少額であるということじゃなくて、もっと秘められたところが根深い。その資金はどこに流れるかということもぜひ見てもらいたいと思うんですね。ある意味では暴力団の資金源になっているかもしれません、これは私調べていませんからわかりませんが、ややもするとそういう業者さんが入ってやっている可能性もあります。これは可能性ですから、私が軽々に言っちゃいけませんが。したがって、被害に遭っているのは国民ですから、善良な国民ですから、この点を改めて認識をしてもらいたいと思うんですね。
 もう一つは、健全な、非常にまじめにやっている業者さんからも苦情が来ました。私は今架空メールの受取人としての問題点を言っているんですが、プロバイダー等々、扱っておられる事業者さんがおられます。事業者さんも自分のあれを使われるものですから、非常に、健全な事業者であるにもかかわらず、勝手にするものですから、同類的に扱われるということで、事業者さんも、こんな犯罪については何としても撲滅したいから協力しようと警察に言ったけれども、警察は取り上げてくれないというんですね。少なくとも、これは固有名詞は言いませんが、そういう事業者さんがおられることは事実であります。
 昨日も私のところへ来てもらいました。我々もこんな問題は大変な問題だと思うので、警察に協力したら、どの部分がだれが配信しているところぐらいまではコンピューターシステム上でわかってくる、それで協力しようというにもかかわらず警察はなかなか腰を上げてくれない、こういう声もありました。この点、そんな認識ございますか。
瀬川政府参考人 大変新しい形態の犯罪でございますので、やはりそういった関係業界の方からいろいろお話を聞きながらこういったものへの取り組みを検討していくということは非常に重要なことであるというふうに思いますので、どこに御相談に行かれてどういう対応をそのとき警察の者がしたのかという状況を私存じ上げませんけれども、そういう健全な業者の方がいろいろお知恵をかしていただく、あるいは問題意識等を御説明していただけるということであれば、ぜひお話を伺って対応してまいりたいと考えております。
平野委員 細かい話で、具体的なことで恐縮ですけれども、本当に、そういう真摯な業者がおられるにもかかわらず、警察はそういう対応をしていないと言い切れますか、大臣。
谷垣国務大臣 今、どの業者の方がどういう形で警察に相談に見えたのか、私把握しておりませんけれども、やはり、今治安が非常に悪くなっている、それから、何というんでしょうか、体感治安が非常に悪いと言われます中で、伝統的には、それぞれの地域に交番や派出所があってそこに駆け込めばお巡りさんが親切に対応してくれる、これがやはり警察と地域社会の信頼のきずなを考える上での基本だと私はこの仕事になりまして思ってまいりまして、そういう、警察が中には対応できないような御相談事もたくさんございますけれども、やはり犯罪、治安、みずからの責務に結びつくという場合には、そういう御相談に対して真摯に対応しなければ、警察と国民の信頼関係は結ばれないのではないか。こういうふうにお話を伺いながら思いますので、そして特に、先ほどからの御議論のように、ネットワークを利用した犯罪は次々と新しいのが生まれます。警察としても、必ずしも十分それに対応する手法をたくさん持っているわけではない面もあろうかと思います。いろいろ、立法等でもこの委員会にもお願いをしたりしているわけでありますが、その辺の対応も含めまして、国家公安委員会として警察を督励してまいりたい、こういうふうに思います。
平野委員 今大臣おっしゃったように、新しい手法、新しい方法がいろいろ出てくるものですから、従来型の発想ではなかなかこういうものを取り締まることはできかねるというところもあると思うんです。
 問い合わせをよくやりますと、啓蒙活動を一生懸命やっておりますという答えが返ってくるんですが、私、インターネットなりホームページで警察庁のネット犯罪のページを繰ってみたんですよ。そうしたら、ここ一、二年、こんな犯罪がたくさんふえているにもかかわらず、二年前の内容から更新されていない。この犯罪が出てきたのは大体この一年が一番ピークにもかかわらず、ネット犯罪のページは更新していないと私は思うんですが、どうですか。
瀬川政府参考人 御指摘のような状況がございますので、早急にホームページの更新に努めてまいりたいと思います。
平野委員 私が言わないと、きのうレクに来ていただいた人は、えっ、そんなことありませんよ、ちゃんと啓蒙活動していますからと。じゃ、あんたのところのあれ見てごらん、うちの事務所で開いてあげようかと。したがって、口ではそういうことを言っておるけれども、実態的にネット犯罪に対する本当に真摯な対応ができていない、このことをしっかりと大臣、認識していただきたいと私は思うんですね。これは国民のためですから。
 そこで、私、どういうふうにするかということを私なりに考えました。参考までに、どうやったらいいかということを、ちょっと知恵を授けますから、ぜひ、いや、それは無理だよということはあるかもしれませんが、実は私、単純に考えたんですね。
 口座番号があるんです、振り込みなさいという。そうすると、口座番号の代表者がだれかということがすぐわかるんですね。私、当該の銀行に電話しました。この人はだれだ、住所等教えてほしいということを言ったんです。そうしたら、これは守秘義務ですから教えられません、こういうことで、それはごもっともだと思うんです。
 ところが、この種の犯罪をどこで食いとめるかというと、被害が発生する初動の領域で食いとめるか、お金が入金されるところで食いとめるかしか方法はないと僕は思うんです。銀行は、銀行法の規則によって、おかしいと思うところについては口座停止することが今可能なんですね。調べたら、一部の銀行では口座停止しているところもございますわ。ところが、一般的にそういうことをしませんから、していないところはどんどんそこから入金される。あげくの果てには、入金されたお金をどこで取り出すかといったら、海外で、ATMで引き出しちゃう。したがって、日本にもういないんですよ、ばっとやって。したがって、総体的にこの犯罪というのは、初動態勢でしっかり敏感に反応してやらないと、十分に犯罪件数が高まってから捜査をしますわなんということを言っていたら、そのころにはもう日本にはいなくて、どこかでお金が引き出されて終わり、こういうことになるんです。
 したがって、私、ここで言いたいのは、火事と一緒ですよ。火事は初動の五分によって被害総額が決まるんです。初動消火によって被害がいかに少なく済むか、こういうことになる。ネット犯罪はまさに初動で、こういうものが出てきたぞといったときに敏感に反応する、こういうことが非常に重要な視点だと私は思うんです。
 もう一つは、怪しいと思ったところについては銀行の口座を即停止する。もし間違っていたらいけませんから、時限的措置で僕はいいと思うんですね。これを警察庁として行政指導はできないのでしょうか。
 この点は、大臣、どうですか。大臣、答えてください、一般的なことですから。
谷垣国務大臣 ちょっと私、十分検討しておりませんので、きちっとしたお答えになるかどうか自信がないのですが、金融機関の口座を閉鎖する、しないというのは、警察の立場からの行政指導というのはなかなか難しいのではないか。
 それに見合う法的な根拠というもの、先ほど金融庁とめられるのが、何でしょうか、何かの法律に書いてあるとおっしゃいましたけれども、多分、警察の方の指導でやるのは少し難しい点があるのじゃないかなと、今あれいたします。
 これは、もう少し私も研究してみますが、私の今の感じとしてはそんなふうに思います。
平野委員 確かに、そういうところは、グレーなところはあると思います。
 ただ、今、銀行法による全銀何とか、全銀行の規約に準じていますから、その規約には、口座を停止することはできるんですよ、銀行の独自の判断で。したがって、銀行が独自の判断でできるように、ところが銀行に、私のようにこの口座の人を教えてくれ、こういうことになったというのが、問い合わせが来れば、銀行の規約上では口座停止ができるんです。良識ある銀行はもう既に口座停止している銀行もあります。ただ、大多数はしていませんわ。
 したがって、こういう事案が起こってくる、当然振り込み口座は書いてあるわけですから、そういうものが警察の方に来る、銀行に照会をして、こういう問題が起こっているということを行政指導ということじゃなくて警告をして、銀行の主体的判断でやれるようなツールをつくってもらったらどうかな、こう思うんですが、どうでしょうか。
    〔中沢委員長代理退席、委員長着席〕
谷垣国務大臣 先ほど私、あのとき直観的に思った答弁をいたしましたけれども、その後ペーパーが回ってまいりまして、詐欺に利用されるような口座の利用停止については、今までも必要に応じて個別事件ごとに金融機関に要請して実施されている例があるので、御指摘のような事案についても、こういう手法を適切に使っていきたい、こういうことのようでございます。
 先ほどは至らぬ答弁をいたしまして、申しわけありません。
平野委員 その割には、検挙件数、事案に対する検挙件数はどうだと聞いたら、二件しかない。この間、出してくださいとお願いしたら、二件出てきましたわ。たくさんあるんですよ、こういうのは。
 今大臣おっしゃるように、そういうことができる、詐欺未遂、詐欺についての事案についてはそういう銀行の口座を停止させることができるということであれば、こんなに発生しているのに検挙した件数、確かに、九千万とか、一塊としては大きいんですが、そういうことに対して警察庁はやってこられましたか。
瀬川政府参考人 この種事案の検挙件数、二件ということでございますが、これはごく最近非常に急増してきている事案であるということで、警察としても鋭意取り締まりに努めているところでございまして、これからしっかり取り組んでまいりたい、こう思っております。
 それから、口座の停止のことについては、先ほど大臣から答弁申し上げたとおりでございますけれども、最終的には、口座を閉鎖するかどうかはあくまでも当該金融機関の判断ということでございますので、警察からは、この口座にこういう問題があるということを連絡し、とめていただくようにお願いはするということでございますが、口座の閉鎖は……(平野委員「何件お願いしましたか」と呼ぶ)
 何件金融機関の方に話をしたかという数字は持ち合わせてございませんけれども、個別事案ごとに連絡をとっておるものというふうに認識をしておりまして、現実に口座を停止した例もあるものと承知をしております。
平野委員 ほとんど大きな案件でしかそういう対応をしていないと思いますよ、想像で申しわけありませんが。
 そんな、一件三万円ぐらいの口座を一々停止しろ、停止しろなんて作業的にはできないと思うのですが、少なくとも銀行には、こういうことで被害が出ているからこの口座についてはどうだということは、日常の犯罪を防止するという視点においてもやはりもっと連携を密にしないと、このネット犯罪による詐欺罪の未遂を未遂で終わらせ、またさらにはこういうことをやると必ず捕まるということが、やはりしっかりと予防でき得る仕組みをつくってもらいたいと思うんですね。
 今まで、絶対こんな微量な犯罪だから軽視していましたよ、間違いなく。私が言った対応でも、生活相談センターへ言っておいてくださいという感じでしたから。一被害者として言ったんじゃないんです。私だけかなと思って、調べました。そうしたら、出てきましたよ。本当にあるんですね。
 それで、また非常にその事業者さんも、調査会社ですが、大事なことだということで、私に協力してくれました。三万件や四万件ぐらいであったら三時間で調査できる、しかし、犯罪性に問題、特に警察から言われたら積極的に協力します、こういう方もおられました。私のデータをちゃんとプリントアウトまでしてくれました。こういう格好で出してくれました。これだけもありましたけれども、実際払い込んだ人が何%まで出してくれました。個人のプライバシーの問題がありますから、数字で出してくれました。
 非常にそういうことに対して協力しようという業者さんもおられるのでありますし、また調査会社もおられました。固有名詞を出していいかどうかわかりませんが、アイシェアさんという調査会社でございました。非常に、今の時代に、何としても浄化をして、いい社会にしようということで、協力いただいた事業者さんであります。三十万件ぐらい持っているんです。こういう事案が出てくれば、テストプランとしてすぐわかります。氷山の一角かもわかりませんが、出ているということはすぐわかる、いつでも協力しよう、こういうことを申し出ていただきました。
 だから、警察庁もそんな思いで、こんな社会病理を一掃するためにはあらゆる方法を知恵を絞って、民間の方の協力を得て何としても、これは瞬時に、何か起こったら即そこで断つ、そういう犯罪を断ち切る、こんな思いでぜひやっていただきたいと思いますので、この件について、最後に大臣、そんな思いを含めて決意と、ぜひやってもらいたいと。
谷垣国務大臣 先ほどから委員の御議論を伺っておりまして、大変御迷惑を、この案件で困惑をされたということ、まず、私、心から御同情申し上げたいと思うんです。しかし、私の職責としましては、同情申し上げるだけではこれは済みませんので、全力を挙げてまた警察として対応するように、私としてもさらに叱咤激励をしなければならないと思っております。
 それで、こういう新しいタイプの犯罪に対処していくためには、先ほど委員がおっしゃいましたように、膨大な数のものが出てまいりますので、確かに我々としては、人員とかそういうようなものもやはり充実をさせなければならないという面があると思います。
 それからもう一つは、例えば私の地元の京都府警でも、かなりこういうインターネット犯罪には力を入れておりまして、私も京都府警でそこを実際見に行きました。しかし、こういう犯罪の特質は、京都府警で捜査をしたら京都府下の事案にとどまるということはないわけでございまして、沖縄から来るか、北海道から来るか、場合によれば香港や上海かもしれないということでありますので、要するに、今の警察というものは都道府県単位で成り立っているわけでありますけれども、やはり日本国の警察として、連携を密にするというようなことも恐らくもっと考えていかなきゃならないんじゃないかというふうに思います。
 それから、先ほど申し上げましたように、手法も、実はこの委員会あるいは今国会でも、前国会では古物営業法でインターネットオークション、ここでもいろいろ新しいタイプの犯罪が起きておりますし、今国会では出会い系サイトの法案をお願いしているわけでありますので、今後も、どういう手法が必要かというようなことも研究して、必要がありとすれば、国会にまた新規の手法をつくっていただくようにお願いしなきゃいかぬと思うんです。
 そういうときに、やはりなかなか難しいのは、警察としては、治安を守る、そして犯罪を抑止する、こういうことが第一の視点でございますけれども、このインターネットというのは新しく起きてきた領域でありますので、それの持つ可能性というのを全部つぶしてしまうような手法もなかなかつくりにくいということもございます。そして、今、インターネットの可能性が十全にまた我々に把握できているわけでもありませんので、そのあたりのバランスをとって、どこまで警察として踏み込むべきか、踏み込まざるを得ないか、こういう議論もよくしておかなければならないのではないか、そんなことを委員の御議論を伺いながら感じておりました。
 いずれにせよ、私どもとしましては、国民と警察の信頼のきずなというものがなくなりますと、いろいろな捜査をしても実効が上がらない、こういうことでございますので、いろいろな犯罪に関連して、困惑されている方の御相談というのにはきちっと対応するということをやはり肝に銘じてやる必要があるなということも感じた次第でございます。
平野委員 ぜひ、私、ネット捜査という、造語ですけれども、そういうところも含めてやらないと、今までのように令状捜査だけでやっておられる旧態依然の警察の今の捜査状況というのは、今の時代に適合した犯罪に対応でき得ることにならないんじゃないかと逆に思います。
 したがって、今回のこういう問題というのは、捜査権を持っている警察が第一義的にはやはり抑止をしてもらう、あるいは取り締まってもらうということですが、私は、少なくとも、対応した限りにおいてはほとんど捜査をしてもらえないということですから、逆の意味で、不作為の捜査権の乱用になるんじゃないか。捜査権があるということは、捜査をしなきゃならないということにもなるわけですが、しないということは、不作為の捜査権の乱用にもなっていくのじゃないかな。
 したがって、国民が困っていること、相談に乗ってもらう、犯罪がやはり芽生えている、あるいはこれを放置すれば犯罪になる、そうすると、犯罪を防止するための手法も当然啓蒙とかいろいろあります。捜査権が余り乱用されることも困ります。だけれども、不作為の捜査権の乱用ということになっても私は困ると思うものですから、大臣、私は大阪で、隣ですから、京都も大阪も犯罪ではつながりやすいですから、ぜひお願いをしておきたいとも思います。つながっているんですね。あれは県境でつながっておるんじゃなくて、ネットでつながっているわけです。
 それでは、二点目の大きなテーマであります。
 大臣、お待ち遠さまでございました。石原大臣、済みません、ちょっと時間が押しておりますが、私、きょうぜひ石原大臣に二つ目の大きな質問をしたかったのですが、同僚議員からも同じ公務員制度改革における質疑が実はございました。特に、総体として、私、党の立場でもこの政策のところにかかわっている一人として、やはり二十一世紀の日本の国のあるべき姿というものはしっかりして、それを支えていく公務員像というものをしっかりとさせていかなければならないと思うんですね。
 そういう中で、今回、特にいろいろな大きな課題があるわけでありますが、冒頭言いましたように、石原大臣というのは、私、非常に好感度が高いんです。自分流の言葉でしゃべりますし、後ろでおる官僚の皆さんのあれを持って、自分の言葉でしゃべられる、非常にすばらしい大臣だと、その点は思っているんです。
 この国会の議事録、大臣の御発言の議事録をずっと精査いたしました。ところが、よく考えると、言っていることが、この委員会ではこう言っているけれども、この委員会で別のことを言っているということも私なりに思いましたので、そのところを少し確認できたらなと。余り広範にやるわけにいきませんので、私も時間がなかったものですから、天下りというところだけを調べました。私、これはちょっとおかしいんじゃないかと思うところがありましたので、そういう視点で、残された時間、あと五分ですが、質疑をさせてもらいたいと思うんです。
 そもそも、天下り規制ということを今もやられているわけですが、天下りを規制するという本質というのは、大臣、一体どう考えますか。なぜ規制をするのか、この本質をまず大臣にお聞かせをいただきたいと思うんです。
石原国務大臣 この点につきましても、御同僚の議員の御答弁の中でいろいろ私の考えを申し述べさせていただいたと思うんですけれども、これからの世の中は、やはり公務員の方々が民と交わるということは悪ではないんだと思います。しかし、早期の肩たたき等々があって公務員の方々が早い年齢でやめられる結果、年金の受給までの間働かなきゃいけない。そんなときに、自分たちのやってきた仕事、行政でありますから、国家公務員であるならば国の政策でありますが、国の政策に関与していたことによって優越的な地位あるいは権限また人間関係を構築する、それによりまして、天下った民間企業等々でその企業に有為な活動、商行為を行う、こういうものに対する批判があるんだと思います。こういうものにはやはりこたえていかなければならない、そういうことが第一点でございます。
 それともう一つは、やはり、冒頭言いました早期勧奨退職によって、すなわちこれは公務員制度自体の抱える問題ですが、1種の方々が入って、同期の方々が次官になれば、そのとき、同期、正確には以上ですか、同期以上の方はやめてしまう。しかし、今の社会、民間企業はもう既にですけれども、同期の人が社長になっても部長でいたりあるいは課長でいたりして働いている。地方の公務員の世界でも実はそうでございます。こういうやはり今のスタンダードに制度を直していく、こういうことが根底にあると認識をしております。
平野委員 私は、大臣、そこがちょっと違うんですね。私は、天下りを規制するという本質は、一番の本質ですよ、行政がゆがめられて中立性が損なわれるからなんですよ。これが一番根幹なんですよ。そういうことがゆがめられないというんだったら、別に天下ってもいいんですよ。天下ることによって、その人が何らかの関係において本来中立でなきゃならぬ行政がゆがめられる、だから天下りの弊害というのが出るんですよ。
 二義的には今大臣がおっしゃったところだと思います。これはわからぬでもない。しかし、本質論は、天下りを規制する、なぜ規制するかというのは、政官業癒着をするからなんですよ。そのことによって本来侵しちゃいけない行政の中立性が損なわれるから規制をしようというのが、鈴木問題とかそんな問題じゃないんです。そこに何らかの関係ができ上がってくるから天下りを規制する、これが私は本質論だと思いますが、どうですか。
石原国務大臣 私は、現在する事象に沿って具体的に話して、押しつけ型、権限をかさに着るというような話をさせていただきましたが、本質論で言うならば、そういうことをしないで、その会社に入って、民間のルールにのっとって仕事をすれば、それは悪ではない。冒頭さっき申しましたように、官民の交流というものはこれからは善であるという意識に変えていかなければならない。その点に触れられまして委員が本質論を申し述べられた、全くそのとおりであるとお話を聞かせていただいておりました。
平野委員 そういう視点で次に申し上げます。
 実は、そういう視点で申し上げますと、昨年の四月の委員会でございました。同僚議員の山元議員に対する石原大臣の答弁、これを少し紹介しますと、現行制度で、昨年のことですよ、現行制度で六十九人と、三十人近くふえてしまった、こういう問題をどういうふうに是正していくのか、現行の人事院の基準で、基準を満たしていれば人事院は客観的に公正に判断しなければいけないから、現行の制度ではふえてしまう、こういう大臣の御答弁がございました。
 このように大臣は、過去の審議で再三、天下りのポイントをある意味では人数を減らすことに置かれているけれども、私は、人数を減らすというのは結果として減っていくことであり、これが本質でないと思うんですが、この当時の答弁のあれを見てみますとそういうふうに受けとめられたので、先ほどの本質論は何なのかということを聞いたんですが、この当時の大臣の御答弁と今もお考えは変わりませんか。
石原国務大臣 変わっておりません。
 そのときは、たしか議論の中で、これは出るんですね、数字として、天下った方が何人であるかと。それがたしか、正確じゃありませんが、十二年、十三年とふえてしまった、その前は減少傾向であったけれども。それは、客観的な基準があって、それをクリアしていれば、作為的に基準をふっと上げて、天下りの問題が例えばクローズアップされたから天下りの人数を減らすんだみたいなことをやってはいけないという意味においては、委員の御指摘のとおり、本質的ではないわけです、人数を減らせばいいというのは本質的ではないわけであって、そういう意味でその当時発言をしたと記憶しております。
平野委員 時間が終了で来ましたので、まだ今本当に入り口のところでございまして、あと二時間ぐらいはこの天下りで欲しいぐらいでございますが、いずれにしましても、私は非常に、やはり二十一世紀のこの国を、国民のために奉仕をしてもらう公務員というのはどういう公務員がいいのかということを、やはりいろいろな意味で評価であるとかあるいは労働基本権であるとか、いろいろな大きな問題が山積をしているわけであります。そういう意味で、次回の委員会でもぜひ、私は二時間分以上ありますのでまた御議論をさせていただきたいと思いますし、きょうは大臣、十分な議論の時間がとれなくて申しわけない、おわびを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で平野君の質疑は終了いたしました。
 次に、遠藤和良君。
遠藤(和)委員 きょう、私は政府参考人をお願いしてございません。三十分という短い時間ですから、お二人の大臣にそれぞれ二、三問ずつぐらい、ポイントを絞ってお伺いしたいと思います。
 最初に石原大臣にお伺いしたいんですけれども、公務員制度改革、これは新聞報道で、この国会提出を断念したというふうな報道があったんですけれども、先ほどそれを大臣は明確に否定されました。担当大臣としては責任を持ってこの国会に提出する、こういう決意である、このように理解してよろしゅうございますか。
石原国務大臣 先ほども御同僚の議員の中で御答弁させていただきましたように、何の方針の変更もございません。しかし、その中でしっかりと協議をしていくことが重要であると認識をしております。
遠藤(和)委員 さて、法案の作成作業は大変大詰めに来ていると思うんですけれども、先ほど大臣の言葉で、なおここに至っても主張に隔たりがあるというところが、そういう表現があったわけですけれども、それは具体的にどういうところでしょうか。
 例えば、公務員の採用とか研修を内閣が直接これを行う、あるいは先ほども話があった天下り、再就職問題ですね、それからあるいは能力等級制の導入、そういうところかなと私は思うんですけれども、大体の、大まかな、今まさに主張の隔たりがあって早急に詰めなければならない具体的な箇所というのはどういうところでしょう。
石原国務大臣 先ほど議論の中で、能力等級制の導入と天下り規制、この二つが大きなテーマである、重要課題であるというお話はさせていただきました。その中で、大きな対立が両方にやはりあると思うんです。
 その一つは、いわゆる労働基本権、団結権、交渉締結権そしてスト権、これを今回の改革の中で回復しろ、そういう強い御要望がございます。しかし、政府としては、公務員制度改革大綱を取りまとめた中で、人事院の代償機能というものを低下させることなく残した形において、この労働基本権の制約というものは当面そのままである、そういう中で審議をしてきました。そこの至る過程の中では、労働基本権の中でもやはりスト権は無理だろうな、しかし、じゃ協約締結権はこれからの課題として考えていくべきだろうな、そんな議論も実はありましたけれども、そういう議論が深まっていない段階で、これまでの日本の労働慣行あるいは日本の労働風土、こういうものを勘案して、代償機能を残したままで、労働基本権を復活することなく現在のこのプログラムというものができているわけであります。そこに大きな対立点があるんだと私は思います。しかし、この対立点も、議論を深めていけば必ず合意点を見出すことができる問題ではないかと考えております。
 そして、もう一つ大きな対立点というのは、やはりこれも御同僚議員の中で、今も平野委員がこれから二時間お話をしたいとおっしゃられておりました天下りの問題であります。
 天下りの問題の本質は、もう平野委員が的確に御答弁されましたので、私は割愛させていただきますけれども、この天下りをどういうふうに、平野委員のお言葉をおかりすると、行政の中立性をゆがめることなく、その中で、官民の交流というものは善であるという新しい発想のもとに制度をつくっていくのか。
 そして、この日本の政治風土。小泉内閣になりまして、私も二年間ほど大臣という要職をさせていただいておりますけれども、これまではやはり、平均をとりますと大臣の就任期間というのは一年未満なのではないでしょうか、そんな中で行政の責任者たる大臣がすべて責任を持つ。もちろん、責任を明確化する上では大臣がすべての責任を持つ、今もそうなんですけれども、天下りの点についても大臣が責任を持つ、そういうことによってこれだけ批判のあるものがもっと悪くなるんじゃないかという御批判があるわけであります。これには真摯に耳を傾けて、この委員会あるいは予算委員会で出た意見を拝聴させていただいて、内閣の総合調整機能、これをうまく使える仕組みが考えられないかなと今考えているところでございます。
 以上が大きな対立点ではないかと認識をしております。
遠藤(和)委員 労働基本権と人事院の基本権を代償する機能の関係、これは後で私も触れたいんですけれども、人事院にはもう一つ大きな役割がありますね。いわゆる公務員というのは全体の奉仕者でなければいけないですから、公務員の人事管理の中立公正性の担保、これを人事院という中立的な第三者機関にゆだねている、これが本来の人事院の役割だと思うんですね。今の労働基本権と制約との関係が出てきたのは、昭和二十三年以降の話ですからね。
 本来の話の、この人事院の役割というものが今回の公務員制度改革の中で一体維持されるのか、あるいは役割が低下するのではないか、こういうふうな懸念があるんですけれども、そこの部分、根本的な問題ですから、どのように認識をされているか。
石原国務大臣 ただいま遠藤委員が御指摘になりましたように、やはり、人事院のいた場所というのを私なりに考えますと、民間がありまして、行政がありまして、その間に中立的にあって、行政の側の採用とか給与の問題とかそういうものを、第三者として、民間を見ながらジャッジメントしてきた、そういう役割を持ってきたんだと私は思います。
 ここからが御質問へのお答えになると思うんですけれども、今回の公務員制度改革において、公務の能率的な運営を保持する観点から、公務員の人事行政について、言ってみるならば、この間にあったものにすべて依存してきた、大きく依存してきた、この枠組みを改めまして、もちろん、委員御指摘された人事行政の中立性あるいは公正性というものを確保するための存在としての人事院は残したままで、行政運営については、国会に対して責任を持っているのは各省庁の大臣でありますので、大臣並びに内閣が各府省の行政運営に責任を持つ主務大臣を中心に、行政を支える公務員の人事行政についても主体的に取り扱っていこう、こういうふうに大きく枠組みを切りかえよう。そういうことの中で人事院の役割の見直しというものが俎上に上がってきたものだと認識をしております。
遠藤(和)委員 ちょっと具体的な問題として、内閣と人事院の関係について、例えば、職員の採用という問題、その観点から見ますと、今度内閣が採用も直接行うというふうなことを考えているようですけれども、私は、内閣は採用方針を定めて、具体的な採用試験の企画とかを実施するというこの話は、やはり人事院がやった方がいいのではないかなと思っているんですけれども、この点についてはどう考えているか。
 あるいは、研修の問題があるんですけれども、研修というのは、任命権者が行う研修もあるし、それから内閣総理大臣が行う研修もあるし、あるいは人事院がやる研修もあっていいのではないかと思うんですね。それを内閣総理大臣だけがするというのもちょっとおかしい話ですから、例えば、任命権者が行う研修や各省の業務に必要な研修については任命権者がやる、あるいは内閣総理大臣は内閣の重要施策に関する研修を行い、あるいは、公務員は全体の奉仕者でなければいけないですから、そうした職業公務員としての育成とか研修については、やはり人事院がやる。こういうふうに、役割分担をきちっとするということがむしろいいのではないかなと思っていますけれども、どうでしょう。
石原国務大臣 ただいまの委員の御質問は、これからの公務員制度改革を進めていく上で人事院はどうあるべきかという御意見であったと思うんですけれども、私は、こんなふうに考えさせていただいているんです。
 先ほど来委員が御指摘されております中立性、公正性、特に採用なんかで政治がコミットメントをするようなことは絶対、極力避けなければならないわけですから、そういうものについての担保というものはぜひ必要でありますし、その点につきましても、内閣がしっかりと責任を持つということも当然だと思います。その一方で、内閣が所轄する人事院というものがあるわけです。
 第三者機関としての人事院は、やはりケース・バイ・ケースで、いろいろな政策、内閣が行うことに対しても意見を申し出て、政府がおかしいと思えば、おかしいと言っていただく。それが、さっき言いましたように、行政があり、人事院があり、民間があるというこの構図を崩さないポイントだと私は思っています。
 そこで、今度は、具体的な御提言、今遠藤委員が御指摘された点についてのこちらの考え方を若干御説明させていただきたいと思うんですけれども、これまでは、第三者機関であります人事院が採用試験の企画立案を行ってきたことは言うまでもございません。そんな中で、どういう弊害が生まれてきたのか。
 すなわち、試験に偏重していきますと、問題の対策と傾向みたいなものが出てくるのは当然でありますように、国家公務員の試験を受ける方々のアンケート調査をすると、九割ぐらいの方々が、大学あるいは高校を卒業しただけじゃなくて、予備校に通って専門的な試験対策をするようになった。そのことによりまして、この時代に必要な人材が採れなくなってしまったという、現場、すなわち行政のさまざまな現場を抱える各省庁からの大きな声というものが上がってきたんだと思います。
 そんな行政の現場の声を聞いて、まさに行政運営に責任を持つ内閣が主体的にこれからは取り組んでいって、人事院がこれまで行ってきた採用試験の企画立案を内閣みずからが担う。もちろん、試験の実施とかそういうものについては、人事の専門家集団、各役所には、民間企業と同じような人事部も労務部も、労務部はあるんですか、人事部というものがございませんので、そういうものは人事院が担っていっていただきますし、内閣が責任を持って主体的に取り組んでいくことに対して、間違いがあれば、人事院の側から意見を申し述べていただく。そういう権能というものはこれまでどおり維持をしていかなければならない、このような整理をさせていただいたところでございます。
遠藤(和)委員 ですから、全体の奉仕者としての職務の公正中立性の担保、こういう役割を人事院が担っているという、その役割は今後も大事にしていかなければいけない問題だと思うんですね。内閣の恣意的な採用というのはあってはならないわけですから、内閣がどう変わろうとも、やはり国家公務員は国民のために全体の奉仕者として仕事をする、こういうことをきちっと担保していくことが大事だと思うんですね。
 それからもう一点、労働基本権との絡みなんですけれども、先ほど大臣は、この公務員制度改革、五十四年ぶりの大改革だとおっしゃったわけですけれども、五十四年ぶりというのは、昭和二十三年に労働基本権が制約された公務員制度の改革がありましたよね、それ以来の改革だというふうな意味だと思うんですけれども。
 やはり労働基本権の議論というのは、ある意味では公務員制度改革の表玄関の議論ではないのかなと思うんですね。そこをきちっと議論しておく必要があるのではないかなと思うんです。そうすると、五十四年間、一部ですけれども労働基本権の制約をしてきた、それは現在の状況の中においてはいかなるものかという議論はぜひした方がいいのではないかなと思います。
 今、一般職の公務員の方には、団結権と団体交渉権はあるんですけれども、労働協約締結権と争議権はないですね。独立行政法人の公務員型の方は労働協約締結権はあるんですよね。ですから、議論するとすれば、先ほども大臣おっしゃったんですけれども、労働協約締結権の話だと思うんですね。
 団体交渉はしていいけれども、その交渉した結果をきちっと締結できるかできないかという話なんですけれども、私はここに絞って、交渉した以上はきちっとした労働協約ができるような角度で労働基本権の問題を整理した方がいいのではないか、それがILOの勧告に対する答えにもなるのではないかなと理解をするんですが、いかがでしょう。
石原国務大臣 遠藤委員が極めてクリアに整理をしていただきましたので、重複は避けたいと思うんですが、平成十三年の十二月に公務員制度改革を決定いたしました。三党の御同意を得て決定したわけですが、その中では、「公務の安定的・継続的な運営の確保の観点、国民生活へ与える影響の観点などを総合的に勘案し、公務員の労働基本権の制約については、今後もこれに代わる相応の措置を確保しつつ、現行の制約を維持することとする。」というふうに大綱では取りまとめさせていただいたわけであります。これはすなわち、先ほど来、その前の議論に出てきました人事院の公正中立性というものを維持して、この制約をそのまま、代償措置を残したまま残していこうという考えであります。
 しかし、先ほど申しましたように、二十三年は労働基本権が制約された年でもあり、人事院ができた年でもあるわけであります。この人事院にすべてを依存してきた労使の関係、こういうものも今の時代に合ったものに見直していかなければならない。そうしますと、当然、委員が御指摘された協約締結権を含む労働三権の問題、もちろんもっと細かく議論をいたしますと、例えば私どもの解釈では、消防は旧警察に属するわけですから、監獄も含めてこれは団結権はない、そのかわりにかわるものを、消防の場合は消防委員会をつくった、こういう各国の歴史的な経緯というものももう一回しっかりと認識する必要はあると思います。そんな中で、委員が御指摘になりました、労働者の基本的な権利であります協約締結権の話になってくるんだと私は思います。
 そういう議論は、では、労働三権、私はやはりこれはいつもお話しさせていただくんですけれども、今公務の世界に三権を返せということでスト権も返すということは、国民の皆さん方は、改革に逆行している、必ずこうおっしゃると思うんですね。そういう議論も、実は私が思うだけであって、正式な場で議論は実は深まっていない。一方的に私が言う、いやそうではない、いやそうなのかもしれない、両方の意見が委員会等々でも私は聞こえてくるような気がいたします。
 こういうものはやはりじっくり、じっくりいつまでも時間をかけてはいけませんけれども、労使の使用者側としての政府と組合の方々との信頼関係が構築された中で議論を深めていけば、ただいま委員が御指摘されましたようなこの協約締結権の問題に解決の糸口があるかもしれない。そういうものを私は全く否定しておりませんし、そういう議論に入っていける環境整備ということをするのが今の私の仕事なのではないか、こんなふうに考えております。
遠藤(和)委員 今、争議権の議論は、民間会社もそういう争議という具体的な事例はないですよね。大体もう協調路線で議論されていますし、公務員に争議権という話は全く出ないのではないかなと思いますね。それを国民も支持はしないんじゃないかなと思いますが、労働協約締結権ですか、これは議論していいのではないかなと思うんですね。
 それから、閣議決定があるからというお話があるんですけれども、それは一年五カ月ほど前の大綱の話ですから、新しい大綱を閣議決定すれば何にも問題ないので、それはやはり議論が成熟すればそうしたものを新しくつくって、その新しい閣議決定に応じた法案をつくればいいわけですから、一遍つくったものに縛られる必要はないのではないかな、こう思いますけれども、いかがでしょう。
石原国務大臣 与党の遠藤先生からの質問としては、大変質問に窮しているというのが率直な話でございますが。
 私は、先ほど来議論している中で、労働三権の回復の問題は否定もしていませんし、早く正常な、どういう枠組みがいいのかわかりませんけれども、旧公制審みたいな場をつくって意見を深めていく、議論を深めていけば、そんなに、今図らずも遠藤委員御指摘になりましたように、スト権をよこせというような声がマジョリティーになるとはちょっと考えられないと思うんです。
 そういう正式な議論をしていないということも事実ですし、もちろん、閣議決定したからといって時代の変化に対応できないということもおかしいと思いますし、閣議決定を変えるということはこれまでもあるわけですけれども、そういうことをどうするのかというような議論をするテーブルをやはり早くつくる、そこにはやはり使用者側と労働側の代表が必ず入る。そういうものがない中で、まして人事院のありよう、私は、行政があって民間があって、その間に公平性、中立にある人事院をどうするのか、これは労働基本権とやはり裏表になっておりますので、そういう議論を深める。それには、やはり一カ月や二カ月でこの話の結論は出ないのではないかという客観的な自分の分析を言いましたところ、ある委員からは、それではだめだとおしかりを受けて、早くやれというおしかりも受けましたが、そういうテーブルを、とりあえずはテーブルを早急につくるということが重要なのではないかと、今の遠藤委員の整理されましたお話を聞いていて感じたところでございます。
遠藤(和)委員 先ほどちょっと話が出ましたけれども、消防職員の団結権、これは私は総務省にいたときは否定的な答弁をしてきたわけですけれども、議論はしてもいいのではないかなと思いますけれども、大臣の個人的な見解で結構ですが、どういうふうな御意見をお持ちでしょう。
石原国務大臣 消防職員につきましては、消防委員会が団結権のかわりにできてまだ十年もたっていない、そういうものもやはり見守るということもまた一方で必要ですが、二十年見守る必要があるかといえば、そうでもない。やはりもう少し現場の声も私は聞かせていただきたいですし、消防委員会をつくるのに、遠藤委員の方が詳しいわけですが、二十五年ぐらいかかっているわけですよね。それまで払われた労力、そして議論の積み上げというものもやはり参考にする、過去の正しい認識というものも参考にしていく、そういうこともあわせて考えていく場がやはりどうしても必要なんじゃないかなという印象を私は持っております。
遠藤(和)委員 ありがとうございました。
 谷垣大臣、お待たせしました。
 産業再生機構、株式会社でスタートしたんですけれども、各都道府県にはいわゆる中小企業再生支援協議会がありますね、これとの連携というのは具体的に実務の中ではやっていかなければいけない問題だと思うんですね。最初に中小企業の皆さんは都道府県の方の支援協議会の方に行くでしょうけれども、そこではとても手術はできないということになれば、当然連携をとって産業再生機構の方に問題が持ち越される、そこできちっと具体的な処理が行われて再生ができる、こういうふうな仕組みになっていると理解していいんでしょうか。
谷垣国務大臣 遠藤委員のおっしゃるとおりだと思います。中小企業は、もう申し上げるまでもありませんが、数が極めて多いですし、それから地域のいろいろな実情等によって多種多様ということだろうと思います。
 そこで、これは経済産業省でやっておられる施策になるわけですが、地域の金融機関とかそれぞれの地域の専門家、多数の方々の参加を得て、それぞれの実情に応じたきめ細やかな支援というか相談といいますか、そういうものをするためにこの中小企業再生支援協議会が設置されているというふうに承知をしているわけです。
 他方、私どもの産業再生機構の方は、これはもちろん大企業の場合もあると思いますが、中小企業だってこれは利用していただくのは少しも差し支えないというか、むしろ来ていただきたいわけでありまして、要するに、関係金融機関とその企業で再生をさせようという意欲があって、また我々の方から見て十分この事業は再生できるということがあるならば、中小企業にも大きく門戸は開いているつもりであります。
 そこで、今委員がおっしゃいましたように、具体的にはそれぞれの地域の支援協議会で相談をなさって、その案件は産業再生機構に持ち込むともう少しうまいさばき方があるんじゃないかというようなことになれば、そこでいろいろ計画も立てて集約化して、私どもの方でその再生を具体的にやらせていただく、こういうことも十分にあり得るというふうに考えておりますので、今後とも、中小企業再生支援協議会、協議会だけではありませんけれども、関係機関とは十分な連携をとって、うまいぐあいにネットワークが組めたというふうに運びたい、こう思っております。
遠藤(和)委員 産業再生機構は債権買い取り機構を持っていますよね。各都道府県の方にはそれはないですよね。ここのところが大きな違いじゃないかと思いまして、やはり債権を買い取ることをしてあげないとなかなか再生が難しいというものが具体的な例としてあると思うんですね。それをきちっと処理をしていただく、こういうふうな理解でよろしいかと思いますけれども、どうでしょうか。
谷垣国務大臣 RCCとの関係ということになりますと、確かに違いは、産業再生機構はそれぞれの都道府県に手足を持っているわけではありませんけれども、RCCの方はそれぞれ、手足と言ってはいけないかもしれませんが、それぞれの地域にそれぞれパイプといいますか、それぞれの組織が動くようになっているわけですね。
 両方の組織の違いは今委員がおっしゃったことでございますけれども、RCCの方は、いわゆる破綻懸念先以下の債権を中心に買い取ってくる。だから、これは債権買い取り先行で、その中で、玉石、こういう言葉を使っていいかわかりませんが、いわば玉石混交で買い集めてこられた中から、なるほどこれはできるぞといういわば浜の真砂の中から真珠を拾うような作業をして、再生できるものは再生させていくということだろうと思います。我々の方は買い取り先行というわけではありませんで、これは再生できる、ではこれをやろうという、その企業や金融機関といわば御相談の上にやるという、その性格の違いがあるわけでございますから、それぞれの機能をうまく分け合うといいますか、場合によっては切磋琢磨で競争していくということもあると思いますけれども、この機能をうまく分け合うということが私は大事だろうと思っております。
遠藤(和)委員 私はRCCとの関連を聞いたんじゃなくて、先ほどの中小企業再生支援協議会との関連を聞いたのですけれども。(谷垣国務大臣「失礼しました」と呼ぶ)よくわかりました。三つあるわけですよね。まあ、お互いに連携をとり合ってやるということでしょう。
 それで、この産業再生ということは、本来は金融機関、なかんずくメーンバンクがやる仕事じゃないかと思うんですね。本当はメーンバンクが関係の金融機関を集めてリスク負担をどうするのか、まず自分が大きなリスクを負って、あとの関連の金融機関にも調停をする、そしてその企業を再生する、本来の務めだと思うんですけれども、その本来の務めをメーンバンクが果たせなくなっている。したがって、産業再生機構が誕生してその役割を果たすという仕組みになっているんじゃないかなと思うんですけれども、そういうことでよろしいでしょうか。
谷垣国務大臣 そのとおりだろうと思います。
 この産業再生機構の本質論は、本来民間でやるべきものをなぜ官が関与したような形でやらなければならないのか、ここをどう理解するかというのは一番の核の議論だろうと思います。
 それで、本来金融機関がやるべきことなんですが、多数金融機関が関与しておりますと、これはお互い余力のある間はうまくいったのかもしれませんが、何か話がうまく整理できない場合も随分実態を見ているとあるように思います。そうしてなかなか話ができない間にいわばどんどん劣化が進んでいくということが現実にある。
 それから、事業再生をしていこうとしますと、民間でやっても、やはりこれだけいろいろな案件が多くなりますと、一種の債権を処理していくマーケットとかそういうようなものがなければ、なかなか民間だけでは、民間でやるやるといっても、マーケットやいろいろ事業再生の専門家が育っていないという状況ではなかなか動かないということもあるように思います。
 それから、もう一つ言えますことは、確かに遠藤委員おっしゃるように、本来メーンバンクの仕事だったのではないか、しかし、今のような供給過剰の現状がありますと、メーンバンクを超えた、いわば合併とかそういうようなものを進めて、いわば過剰供給というものを乗り越えながら再生をしていかなきゃならないような事例も数多くあると思うんですが、メーンバンクが違うとなかなか話が進まないという現実があるように私は思います。
 したがいまして、そういうときに、公平中立と言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、それぞれの個々の金融機関に比べますと公平中立な立場の機構が乗り出していって、そこにどんと背中を押してやると言うと言葉は悪うございますが、そこでいろいろやりながらいわば人材も育て、マーケットも育てる仕事をしていくということかな、こんなふうに私は考えております。
遠藤(和)委員 最後に一問だけ。
 そうすると、産業再生機構が行う第一号の案件、初仕事というのでしょうか、その仕事ぶりというのは金融機関も注目するでしょうし、国民も注目するし、再生を期待する企業の方も、三者全部注目をしていると思うんですね。そこで成功すれば、それが一つの例になるわけですから、ある意味で金融機関の自発的な取り組みというものが進むというふうに思うんですけれども、この第一号をどう成功させるか、こういうことが非常にポイントだと思いますが、いかがでしょう。
谷垣国務大臣 おっしゃるとおりだと思うんです。
 それで、こういう委員会の公式な議論で余り変な例え話をしてもいけないんですが、私は、この産業再生機構をレストランに例えますと、腕ききのシェフを引き抜いてくることはできたと思っているんです。それから、このレストランでどういう料理を出すかというメニューも、やはり考えられる非常にいいメニューを盛り込むことができたと思うんですね。
 そうすると、あとはお客様に来ていただけるかということになるわけですが、やはり、あそこに行っておいしい料理を出すということになると、大事なお客様をあそこで接待しようということになるんだと思いますが、本当にうまい料理を出すんだろうかどうかというようなところが、今空気としてはあると思いますので、私は、私の立場からすれば利用していただきたい、こういうことですが、やはり第一号案件、第一号案件に限らず、最初の方に出す案件は、なるほど、こういうきちっとしたさばき方をするのかな、こういうふうに得心していただければ、なるほどあそこを利用していこう、あるいはあそこでさばいたいろいろな事例というものを参考にして、自分のところでも自律的にやってみようじゃないかということにもなるんだろうと思うんです。
 ですから、余りまたプレッシャーをかけてもいけないんですが、最初のころの案件は、特にきちっと丁寧に仕事をしなければならない、こう思っております。
遠藤(和)委員 ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で遠藤君の質疑は終了いたしました。
 この際、休憩いたします。
    午後零時二十分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二十二分開議
佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件調査のため、政府参考人として防衛庁長官官房審議官渡部厚君、総務省人事・恩給局長久山慎一君及び法務省矯正局長横田尤孝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 質疑を続行いたします。西村眞悟君。
西村委員 大臣がおろうがおるまいがの質問になりまして、変則的な委員会になりますが、委員長にお許しをいただいて、しかし、答弁される方はそれぞれ実務の中枢の方々でございますから、実りある答弁を期待して質問させていただきます。
 さて、日本人拉致問題のとらえ方でございますが、昨年十月十五日に我が国に五名の方が帰国されました。この五名の方をいかに我々が見るか。一つの視点としては、二十数年異国で生活し、突然日本に帰って生活し、そして生計を支えねばならない、こういう観点はもちろんございますが、もう一つ、この行方不明、拉致被害者の特異な点は、彼、彼女が謀略の中にあるという観点から支援をしなければならないという点であろうかと思います。
 奇妙きてれつなことに、帰国するときの我が政府専用機には立場等詳細不明な二人の北朝鮮の人員が乗っており、帰国した被害者五名はその者に報告をしなければならないし、かつその者に監視される立場で飛行機からおり立ってきたのであります。このような中で、五名は、ひとしく口をつぐむ中で、ただ横田さんだけとは会いたい、また横田めぐみさんに関する情報だけがこの五名の方々から流れたのであります。したがって、ここから北朝鮮は、帰国する五名に対して、拉致救出運動の象徴である横田家というものを分断し、北朝鮮に横田さんを訪問さすような仕掛けをつくったのではないかと強く推測されるわけであります。
 日本のマスコミを使って、横田めぐみさんの母親である早紀江さんとそっくりなキム・ヘギョンという方を、おじいちゃん、おばあちゃん、こちらに来てくださいと涙ながらに訴えさせたのを見れば、まさに謀略の中にある五人である。しかしながら、横田家はこの謀略を察知して、今、北に行くことはふさわしくないという決断をされ、横田さんが北朝鮮を訪問するということは見送られております。
 ここにおいて、私が見るに、ただ一人、配偶者と離れてたったひとりで日本に帰ってきた曽我ひとみさんに対する謀略、分断工作が開始されているのではないか。その証拠に、他の方々が自分の子供に書いた手紙は向こうに届かないのに、ただ一人曽我ひとみさんの手紙だけが向こうの夫であるジェンキンスさんに届き、そして返事まで来ているということ、なぜ曽我さんだけの手紙が向こうに行き、また返事も来るのか。独裁体制下の国家では、そこに向こうの意図があると解さざるを得ないのであります。
 そのような中で、曽我ひとみさんは、ここに来て親しくされる家族もなくひとりでいるわけでありますが、曽我ひとみさんが家族に会いたい一心で北に帰れば、かつての日本人妻がそうであったように、自分の意思で北に帰ったわけでありますから、もう二度と日本で消息がわかるとか日本にまた帰ってくるとかいうことはおぼつかないのではないか。
 このように考えれば、まさに謀略の中にある五人、そして、我々国家は、支援室というものを設けてその五人を支援するという国家としての意思を明らかにしたのでありますから、まさにこの謀略の中にある五人を支援するという観点から、単なる自立支援にとどまるものではなく、この五名の特殊性をもって支援の体制をしかねばならない、このように思います。
 そこで、先ほど、曽我ひとみさんを、一衣帯水の海を渡れば家族に会えるんだ、北朝鮮という国と日本という国は文通ができる普通の国家の関係なんだ、会うにはどうすればいいか、ただ一人曽我ひとみさんが北朝鮮に帰ることではないか、このようなことに追い込んでいけば、本当に曽我ひとみさんの運命どうなるやということなんですが、朝日新聞が、曽我ひとみさんに断りもなく、真野町の支援室に届いた曽我ひとみさんの夫の手紙を見て、そこに書いてある夫の手紙の住所、これは集合住宅の十六階の四号だというふうに細部まで記載して朝日新聞及びテレビ朝日が報道したわけであります。
 これは、曽我ひとみさんのプライバシーのみならず、今微妙な関係の中にあるこの曽我ひとみさんの立場を全くおもんぱからない報道であると思いますが、私は、この朝日新聞の報道、犯罪まがいの盗み見をして個人のプライバシーを報道するというこの姿勢は、先ほど申しました北朝鮮という国家が五名に仕掛けている謀略と無関係ではない、意外に根の深いものだという思いを持っておりますが、支援室としては、この問題はいかに対処すべきか、どう思っておられるのかということについて見解をお伺いするとともに、曽我ひとみさんは、朝日新聞に抗議文を送って、このようなことをされる朝日新聞の取材は以後お断りするというふうに当然のことを言っておるわけでありますから、朝日新聞が取材に来るということを拒否する曽我ひとみさんをいかにして支援するのかということについて、支援室の御見解をお伺いしたいと思います。
小熊政府参考人 お答えいたします。
 四月九日、曽我ひとみさんは、北朝鮮にいる夫、ジェンキンスさんからの手紙を受け取りましたが、五月十三日朝日新聞夕刊は、西村議員御指摘のように、手紙の差出人について、住所等を詳細に報じたところでございます。
 このことは、プライバシー保護上問題であるのみならず、曽我さんにとって、現在、唯一の御家族との連絡手段である国際郵便による方途を断たれる可能性がある等、極めて遺憾な行為であると考えております。したがいまして、支援室といたしましては、翌十四日、朝日新聞東京本社関係者を呼びまして、曽我さんの抗議文を手渡すとともに、責任ある報道機関としての対応を申し入れたところでございます。
 曽我ひとみさんにつきましては、御主人及びお子さんたちと別れ離れの状況が続いており、御本人にとりまして大変つらい状況であると承知しております。政府といたしましては、被害者の方と北朝鮮の御家族との連絡を実現すべく努力を重ねたいと思いますし、被害者の御家族の早期帰国の実現に向けまして、さらに引き続き力を注いでまいりたいと考えております。
西村委員 さらに力を尽くしていただく前提で、支援室の役割、これは、五名の、先ほど言いました、浦島太郎のように二十数年のブランクで帰ってきた人たちの自立の支援にとどまるのか、私が先ほど位置づけました、この人たちはある意味では謀略の中にいるんだ、監視の中にいるんだ、そして、もしこのことを我々が見なければ、我が国は世界最大のテロ支援国家になってしまう、こういうことであります。
 さて、支援室には再度確認させていただきますが、支援室の役割は、五名の自立の支援にとどまるのか、それともその他の五名の活動について支援する体制にあらねばならないのかということについてはいかがですか。
小熊政府参考人 内閣官房拉致被害者・家族支援室は、北朝鮮による拉致被害者や御家族に対する支援策の推進に係る事務を処理するとともに、被害者御家族への対応業務を行っております。
 具体的には、本年一月一日に施行されました北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律及び昨年十二月に決定されました政府の総合的支援策に基づく支援策等の実施に取り組んでいるところでございまして、帰国された被害者五人とともに、生存が確認されていない被害者の御家族に対する支援も行っているところでございます。
 帰国された被害者の方五人につきましては、自立を促進し、拉致によって失われた生活基盤の再建等に資するという支援法の趣旨に基づきまして、現在、滞在援助金等の支給が行われているところでございますが、その法律の趣旨にのっとり、自立を促進するという視点から、御本人の御意向を尊重するという考え方に基づいて、側面的な支援を行っているところでございます。
 なお、政府から上京をいただくようお願いする場合には、従来どおり、支援室が全面的に支援してまいりたいと考えております。
西村委員 この家族を分断させたもの、それで、この日本人の人生に二十数年の空白をこさえたものは、とりもなおさず、北朝鮮という国家の金正日独裁体制そのものであります。その犠牲者である家族と当の拉致の被害者を、今御説明をされたような形で支援する支援室は、一方において、北朝鮮に対峙していると言っても過言ではないわけであります。外務省と共同関係に立って北朝鮮と対峙していると言ってもいいのでございますから、人員、それから予算、体制について、何か金が足りないということがあれば、正直に御答弁いただけますか。
 いや、私は、本当に家族を支援するという形の中で、限られた、朝何時に来て、夕何時に帰るというふうな勤務ではない皆様方の状況を見て、差し出がましい質問でありますが、これでは、皆さんが自腹を切ってやる、自分のプライベートな時間を使ってやっているということではないのかなという感じも少々いたしますので、質問通告になかったことを聞いてみる必要もあるかな、このように思っているわけであります。お答えになるかならぬかは、余りしにくいですか。
 私は、ここに大臣もおられないんですが、当委員会の委員の皆さんに申しますが、体制としては、やはりもう少し充実せないかぬ、こう思っておりますね。
 また、ついでに申しますと、帰国した五名の方は、今申しました位置づけの中で、情報の宝を持っておる。この情報の宝をやはりある時期にはすべて聞き出して、我が国外交、我が国治安維持の一つの重大な資料にしなければならない、こういう役割も、支援室にもあり、外務省にもあり、警察にもあるんだ、こういうことを委員会の皆さんに申しておきたいと思います。
 それで、これは後の質問にも関係するんですが、支援室長は、今、私と同じ青のブルーリボンをつけております。これは支援室の室長に対する質問じゃないですね。日本の法廷では、裁判長の訴訟指揮で――東京国際フォーラムには、六千名が中に入り、四千名が入り切れないので外にあふれ、そのあふれている四千名を見てあきらめて帰った人が一万人、合計二万人が、拉致救出国民運動に詰めかけたのであります。したがって、私と同様、また室長と同様のブルーリボン、これは家族を隔てる日本海の青と家族をつなげる空の青をあらわしたブルーリボンなんですが、これをつけている人は東京には意外に多いんです。しかしながら、裁判長の訴訟指揮によって、この法廷に入るなら、このブルーリボンを外せと、外さなければ傍聴させない。
 また、アメリカのブッシュ大統領は、アメリカの星条旗をここにつけているわけですが、私は日本人ですから、このテロと闘うという意志を持って、ここに日章旗をつけておりますが、この日章旗とブルーリボンを外さなければ法廷に入れないというふうな裁判長もおるということは、後でお聞きしますとして、室長、どうもありがとうございました。室長に対する質問はこれで終わらせていただきます。
 次に、外務省の方に、外務省を通じて日本国の意思、政府の意思をお尋ねするわけですが、横田滋さん、この方は、横田めぐみさん、拉致された被害者のお父さんですが、この方を代表とする北朝鮮による拉致被害者家族連絡会、それから、佐藤勝巳、現代コリアの主宰者ですが、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長、それから、拉致された被害者の救出議員連盟、これら三つの団体は、ひとしく、北朝鮮に対する制裁措置を求めるという要求を表明、公表しているわけであります。
 すなわち、先ほど室長が言われた、我々の悲願である被害者の原状回復、家族と再会できること、家族と分断させられていないということ、この状態を北朝鮮は今、見て見ぬふりをするというか、拉致問題は存在しないという形で無視しておるわけでありますが、この独裁国家の意思を変更さすためには我が国としてできる手段がある。米を送って、百十八万トンでできなかったことが、反対に、人と物と金の流れを切断することによってできるんだ、だから今の三団体は、人と物と金の流れを切断する制裁措置を求めているわけであります。
 そこで、外務省及び政府は、表面上は話し合いを求めてもよろしい、しかし裏の腹では、もし話し合いに応じなければ人と物と金の流れを我が国は切断するぞという腹があるのかどうか。また、この流れだけではなく、麻薬を厳重に取り締まる政府の意思があるのか。にせ札を厳重に、犯人を捕まえる意思があるのか。それから、脱税による金の流れをとめるために、税務当局においては、税金を完全に捕捉するんだ、特にその筋の事業に関する税金は確実に捕捉するんだという意思があるかどうかでありますが、外務当局においては、表面上の話し合いの呼びかけはよろしいですけれども、裏の腹に制裁の意思ありやなしや、これをちょっとお聞きしたいと思います。
齋木政府参考人 初めに、拉致の問題、これは、人権じゅうりん行為ということにおいては、日本のみならず、もちろん御当人たちもそうでございますけれども、国際社会の規範に対する重大なる違反、挑戦行為であるというふうに思っております。また、拉致と核、両方とも国際社会に対する重大なる違反行為であるという認識で私どもはおります。したがって、この北朝鮮の核問題、拉致問題、いずれも国際社会として一致して対応していくということが極めて重要であろうというふうに認識しております。
 今、国際社会としてさまざまなレベル、さまざまな形での外交努力といったものが展開されておるわけでございます。米韓首脳会談、また来るべき日米首脳会談、それからまた種々のマルチの国際会議といったものがございます。そういう外交努力が継続しておる中で、いかにして日本国としての国益を守るか、また安全保障をきちっと踏まえた対応をするのかということを頭に入れながら、日本として可能なあらゆる政策オプションを検討しておくことは当然のことであろうというふうに思っております。
 おっしゃるような人、物、金、この流れを断ち切る、ないしは制約、制限をするといった、そういう政策的なオプションというものはいろいろなものが考えられるかと思います。それを具体的にアナウンスしてそういう措置をとるのが適切なのか、単独でやるのが適切なのか、あるいは、そういうアナウンスを行わずとも制約、制限をしていく、そういう方法が適切なのか、いろいろとやり方というのはあろうかと思いますが、究極的にはそこは政治の御判断だろうと私ども思っておりますけれども、いずれのやり方でそういう措置をとるにしても、とったからには、その措置はしっかりした成果、効果を上げるものでなければいけないというふうに考えております。私どもとしては、そういう決意、覚悟でもって北との問題に対応している状況でございます。
西村委員 答弁を承って、我々も、この問題は単に政府に私どもが質問して解決する問題ではなくて、この問題はまさに戦後憲法体制のすきをつかれた。なぜなら、憲法に書いてある人権、自由、平和というものを強調する人に限って最大の人権侵害であるこの拉致問題には無関心であったということは、この憲法秩序を、戦後日本のすきをつかれたものだと私ども思っておるわけでございます。
 その中で、前にも申し上げたように、我が国近代外交百三十年の中で、国民の期待が一番外交に集中している段階であります。したがって、外務当局としては死力を尽くしてこの敵と戦っていただきたい。あらゆる手段が動員できると思います。国民の民意はすべて外交の後押しをするでありましょう。これが私が外交に強く期待するゆえんでありますから、よろしくお願い申し上げます。
 さて、次の質問に移りますので、お二人、どうもありがとうございました。
 栄典の制度についてお聞きします。これも、戦後憲法体制の一つの片肺飛行がまだこの栄典の制度に続いておると思いますので、質問させていただくわけであります。
 叙勲制度の改正に着手していると聞こえておりますが、現状を教えていただけますか。
佐藤(正)政府参考人 お答えいたします。
 我が国の叙勲制度は、明治八年に制定されて以来、国家、公共に対する功労を顕彰する重要な制度として定着しているということではございますが、新しい世紀を迎えまして、社会経済情勢の変化に対応したものとするため見直しを行うことといたしまして、昨年の八月でございますが、「栄典制度の改革について」という閣議決定をさせていただきました。
 その主な内容は、勲一等、二等というような数字による表示を廃止することといたしまして、ランクを大幅に簡素化するということ、それから、旭日章、瑞宝章、このいずれも男女共通の勲章として運用するということ、それから、自己を犠牲にして社会に貢献した者への配慮をすることというようなことを柱としておるものでございます。
 これらの改革はことし、十五年秋の叙勲から実施することとされておりますので、現在、その審査の基準につきまして検討を進めておりまして、五月中には決定をいたしまして公表していきたい、そう考えておるところでございます。
西村委員 今この叙勲の検討をされている中で、叙勲決定基準に認証官であるか否かはどの程度に反映されるわけですか。
佐藤(正)政府参考人 お尋ねの決定は公務員に関するものかと思いますが、公務員に対します個々の叙勲の決定に際しましては、その人の最終官職が認証官であったかどうかということよりも、その方がどういうポストでどういう責任を果たしてきたかということ、それからどのぐらいの期間勤務されたかというようなことを参考にいたしまして、また先例と比較しながら決めているという状況でございます。
西村委員 お答えでは明治八年に始まったこの栄典の制度でありますが、私の質問の趣旨は、時代の変遷に即してという部分よりも、国家の体制に即した栄典の制度になっているかどうかであります。それが片肺であったと私は申し上げておる。
 言うまでもなく、戦前は勅任官というものがありまして、これが、軍人であれ特命全権大使であれ、いろいろなものに適用されておった。戦後は軍人というものがなくなった。だから軍人の栄典はない。これは当然。しかし、国家の体制として、戦前の軍人がなくなろうが、国家を守るために命を犠牲にして守るという体制、組織を我が国は持っているわけです。したがって、国家を命にかえて守るんだ、危険の中に飛び込んで守るんだという組織に対してなぜ栄典がないのかという点については、重大な欠点がある、こういうふうに私は思います。ようこれまで来たなと思います。さっきの立法の不作為が乱用に当たるという質問がありましたけれども、我が国各所に立法の不作為がありますなということ。
 この私が今申し上げたことについては、どのようにこの見直し作業であらわれておるのかということについてお尋ねいたします。
佐藤(正)政府参考人 先生の御質問の、国の安全を守る、それから国民の安全を守るという、そういう職につきましては、現在でもある程度重視をいたしておると考えております。自衛隊の方々につきましても、当然のことながら叙勲の対象となっておるわけでございますが、今回の改正の中でも、先ほど申しましたように、自己を犠牲にして社会に貢献した者への配慮という中には、特に、そういう危険な分野に従事いたしまして職務に精励した方々を優遇するということを考えまして、こういう方々につきましては、別枠で六千人の増を今回、十五年の秋から認められておるところでございまして、自衛隊の方々とか、警察の方々、消防官の方々、こういう方々につきましては特に重点的に配慮してまいりたいと考えておるところでございます。
西村委員 そのときに、従来からの反省がなかったらだめだと私は思います。
 先ほど、認証官はいかなる叙勲に影響を与えるのかというふうな質問に対して、別に、認証官という形式があるから自動的に出てくるのではないという趣旨のお答えがありましたけれども、統合幕僚会議議長が認証官なら、文句なしに勲一等なんです。しかし今、勲二等なんです。日本国国民のために国家の命令で命を犠牲にする部隊の長が、最高の地位にある者が勲二等なんです。この日本国のためにやる人が勲二等なんですよ。アメリカ国民のために最高位にあった者は勲一等なんです。我が国統合幕僚会議議長は勲二等で、アメリカのパウエル統合幕僚会議議長は勲一等なんです、日本では。この矛盾をなぜ放置してきたのか、この矛盾に即した叙勲制度が本当にあるのかという部分について、私は重大な関心を持って栄典の制度を見ておる。なぜなら、士はおのれを知る者のために死ぬんです。それは有事法制でも何でも、我が国に欠落するのは、現実に命を危険にさらす場所に突っ込んでいく人たちの意見なんです。これで個人の人権を考えて鉄砲を撃つかどうか、とっさのときにできるのかということを、こたえてくれる人がなくてやっておる。栄典もそうではないか。
 なぜ日本国のために命を的にしたおれたちの最高地位にある者が勲二等で、アメリカ国民のために戦った人がおれたちの国では勲一等なんだろうかということ、これについてはどういうふうに、栄典制度において、例えば勲一等、勲二等とかいろいろなのがあるんでしたら、最高位は勲一等にならぬものかということを聞いておるわけです。どうですか。
佐藤(正)政府参考人 先ほど先生、認証官であれば当然一等ということをおっしゃられましたが、現行でも、認証官でありましても三等クラスの方からいらっしゃることは間違いない。それが一つございます。それから、国内におきましては、今現在、先ほど申しましたように、ポストの重要性その他で、こう申し上げましたけれども、一応公務員の横並びを見ているところで、統幕議長も今二等という勲等が出ているところでございます。外国人につきましては、若干儀礼的な意味もあるということを御理解いただければと思いますが、先生の御意見は承りました上で、さらに検討を進めたいと思います。
西村委員 公務員一般ではだめです。かつて石田礼助国鉄総裁が、三公社五現業の人たちに、現実に国鉄という車両を運転して事故にも遭遇する人たちとたばこを巻いている人たちは違うではないかということを言ったら、たばこを巻いている人たちが石田総裁の部屋に押しかけて、たばこを巻いておるとは何事かと言ったときに、石田総裁は、だってたばこを巻いているじゃないと言った。同じ公務員ということでは違うんです。命を的にする、軍隊か軍隊でないかです、はっきり言ったら。こういうことを聞いている。
 軍隊に対する栄典から栄典の制度は発達したんです。つまり、国のために命を的にする集団に対する栄誉の授与から近代勲章制度は発達したんです。これがそれ以外にいったというだけの話で、今、日本で言うなら自衛隊の栄典制度はこの国でも主体であるべきだと私は思いますね。
 そこで、防衛庁にお聞きしますが、現在の自衛官に対する栄典について、さらに、新しい栄典制度における自衛官に対する処遇はいかにあるべきと考えておるのか、他人事ではなくて防衛庁自身、近代栄典制度が発達した軍人、つまり軍人と外国では言われている自衛隊の制度を預かる者としての御答弁をお願いいたします。
渡部政府参考人 お答えいたします。
 自衛官として任務に精励した者の功績が認められまして、その功績にふさわしい国家の栄典を受けられるということは、自衛官が誇りと名誉を感じる上で、先生が御指摘のように大変重要なことでありますし、また、自衛官が国民の尊敬を得るという点でも重要であると考えております。
 そのような意味におきまして、昨年八月の閣議決定、先ほど御答弁ございましたけれども、「栄典制度の改革について」におきまして、春秋叙勲とは別に、自衛官、警察官など著しく危険性の高い業務に精励した者を対象とする叙勲の種類を設け、これらの分野における受章者数をふやすということとされました。また、国際的な災害救助活動などに参加した者に対して、その事績を表彰するため、記章等を活用することについて検討するということとされましたことは、大変意義深いことと考えております。
 防衛庁といたしましても、この閣議決定を踏まえまして、叙勲を受けるにふさわしい功績のある者がより多く叙勲の栄に浴することができるよう、また、国際平和協力業務などに従事した者が国家の栄典たる記章等を授与される制度が早期に創設されますよう、関係機関とともに努力してまいりたいと考えております。
西村委員 きょうは事務方の責任者の方々に御答弁をいただきましたが、どうか頑張ってください。それで、我々は、政治の場としては我々の意見をさらに表明させていただきます。特に、防衛庁は栄典の制度については頑張っていただきますように、お願いします。
 さて、裁判長の法廷秩序維持の訴訟指揮に関して質問したきことこれありということでございます。
 言うまでもなく、三権分立の中で、我々は司法に対していかに対処するべきかという重大な問題でございますが、司法の裁判長としては、司法以外の世界で起こっている事態に対して、いかに秩序ある、節度ある法廷の秩序を維持すべきか、こういう問題であります。相互に無関心なのが三権分立ではありません。相互チェック・アンド・バランスであります。
 さて、法廷の秩序維持は裁判長の専権でありますが、何が秩序かという観については裁判官が独断で決めることができるのかどうか。独断で決めることはできません。裁判官が、和服がこの法廷の秩序だと思って、背広を着ている者に、それを脱いで和服に着がえてこい、そうでなければこの法廷に入れない、こういうことが秩序維持の専権だと思ってやり出したら、法廷が成り立たない。
 そして、今、内閣総理大臣が、拉致問題の解決は日朝国交回復の前提であるというドクトリンを発表し、国家の意思として拉致被害者を支援するという体制を国の中でつくり、そして、今御答弁いただいたその室長が私と同じこの拉致問題のシンボルを胸に飾っておる。そして、私は、さらに加えて、アメリカ・ブッシュ大統領と同じように日本の国旗をここにつけておる。この二つをとらなければ、法廷の秩序に反するのでこの法廷の傍聴を許さぬ。憲法には、日本国民は法廷を傍聴することができる。裁判の公開は憲法上の原則である。この裁判の公開を個々の国民に享受するか、享受しないか、このリボンがあるかないかで今裁判官が、裁判長が決めようとしている。このような法廷のあり方を我々は許すことができるのかどうか。
 東京高等裁判所七百二十五号法廷における河邉義正裁判長の訴訟指揮である。五月十三日のことでありました。これを司法の独立といって見過ごすことができるのか。裁判長の専権において、ブルーリボンではなくて赤旗つけてこいと言えば、それをつけねばならないのか、この問題があります。政府の御答弁をいただきたい。認めるのか認めないのかですよ。
増田副大臣 裁判所法は、裁判官に法廷の秩序を維持するために必要な事項を明示、また必要な措置をとることができる旨、規定いたしております。ある行為が法廷の秩序を乱すかどうかは、裁判官がその権限の範囲内において個別具体的に判断する事柄であります。政府としてコメントすることは差し控えたいと考えております。
西村委員 日本国家としては、このバッジは日本の国旗である。そして、政府の最高責任者である内閣総理大臣自身が、拉致問題は国家の問題であると言っている。この二つの問題でありますから、政府とは無関係の問題で裁判官が訴訟指揮しているのではないんです。まさに、政府と密接に関係する、また国のあり方と密接に関係する。日本国の国旗を外さなければ自分の法廷に入れないという裁判長を認めるなら、先ほど言いましたように、背広は気に食わぬから和服にかえてこいとか、チマチョゴリにかえてこいとかいう裁判官を認めることになる。これが許せるのか許せないのかです。
 これは、三権分立において不可欠の意見を求めておるんです。チェック・アンド・バランスなんですから。判決とは問題違いますよ、これは。訴訟指揮なんですから。いかがですか。もう一度。
増田副大臣 具体的な事案における裁判官の具体的な権限の行使のあり方につきましては、政府としてコメントすることは差し控えたいと考えております。西村先生も法曹の人ですから、その辺は十分御理解の上、いろいろと思いを込めて御発言なさったと考えております。
 なお、そこで、個別の事案や法律論を離れまして、私個人、一政治家として言わせていただけるならば、拉致された方々への支援の姿勢については、私としては理解すべきことという気持ちでおります。
西村委員 ありがとうございました。質問を終わります。
佐々木委員長 以上で西村君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。きょうは、公務員制度改革にかかわって質問をしたいと思います。
 昨日のマスコミ報道で、法案をまとめて閣議決定できる段階ではないということなどが紹介されておりましたが、大体、労働基本権の拡大という国際的流れに沿って労働組合と十分な話し合いが行われている、そういう様子は必ずしもうかがわれませんし、公務員制度改革というなら、最大の柱の一つとなる天下り規制や政官業癒着など汚職、腐敗の根絶の方向が広く示されなければならないと思うのですが、その方向は示されてはいない。
 そこで、政府参考人に伺いますが、今国会に提出予定とされてきた公務員制度改革関連法案について、作業の状況ですね、これは今どういう段階にありますか。
春田政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども、国家公務員法の関係の法律の国会提出に向けまして作業を現在行っているところでございますが、もちろん、関係の職員団体の皆さんを含めまして、あるいは関係各省、人事院さん、関係の行政機関もございます、そういったところとの御相談というものも行いながら法案の作業を進めているということでございます。
 その中で、先般来御議論もございますけれども、ILOの勧告が出たことを受けまして、職員団体の皆さんともいろいろな形での話し合いというようなことも重ねてきているところでございますが、いずれにいたしましても、そういった関係のところとの御相談を踏まえまして、私ども、法律の中身につきまして検討作業を深め、具体的に法案が出せるように、それに向けて鋭意作業を重ねている、こういう状況でございます。
吉井委員 最近、どういうふうに労働組合などと協議しておられるかというのは、組合のホームページ等でもよく紹介されておりますので、ILO勧告を含めた労働基本権問題の協議は何回ぐらいやっておられるかというのをホームページで見てみますと、協議、交渉の結果などについて出ているものを、例えば全労連加盟の国公労連のホームページで見てみますと、六回の交渉記録が掲載されています。交渉内容は、ILO勧告を踏まえた検討を求める労働組合側の主張と、大綱に基づく制度改正の内容論議、つまり大綱の枠内での交渉、協議を主張する推進事務局とのやりとりが非常に多くを占めているわけですね。
 この間の国会答弁でも、政府の方は、ILO条約遵守ということを言いつつ、勧告はこれまでのILOの見解と異なるなどとして、勧告を受け入れる姿勢を示していないという、その姿が見えます。
 ILOが求める内容については、実は昨年十一月に総務省見解で、「全ての関係者と十分、率直かつ有意義な協議が速やかに行われるよう要請したものと理解している。」、政府もそういう理解をしているんだということは言っているわけですが、そこで、石原大臣に伺っておきたいのですが、有意義な交渉、協議を行うために、大綱の具体化作業に先立って、ILO勧告を含めた公務員の労働基本権問題について広く関係者の意見を聞く、こういう姿勢はきちんと持って臨むのが大事だと思うのですが、この点を石原大臣に伺っておきたいと思います。
石原国務大臣 ILOの見解に対しての政府側の統一見解というものは、昨年の十一月に総務大臣がお示しし、ただいま委員が意見の御開陳の中で御披露されたものであるということは変わってございません。
 そんな中で、協議等々、説明等々行われているわけでございますが、当方としても、過去のILOの御主張の中で、これも何度も御答弁させていただいておりますので、簡潔に話させていただきたいですが、例えば消防職員の団結権等々について、こういうものについても、我が方の理解というもの、これまでの見解というものに相違があるのではないかということで、三月の下旬でございますけれども、ILOの側に、ILOの勧告を受けて、政府の追加情報という形で、和文、英文、両方でございますが、これを提出させていただいたところでございます。
 その後、ILOの労働側のスポークスマンのトロットマン氏が御来日されたとき、私もお会いさせていただきましたけれども、トロットマンさんのお話によりますと、今月末でございますか、五月に行われるであろう結社の自由委員会で、この日本政府の追加情報の話し合いというものも持たれるかもしれない、いずれにしても十分に情報の提供というものを今後ともお願い申し上げたいし、さらに、労使の問題であるので、国内で十分な話し合いを行っていただきたいという話をトロットマンさんから私も承ったところでございます。
吉井委員 それで、ILOに物を言うてはる、追加情報を出したというのは、これは私もよく知っているんですけれども、ILO勧告を含めた公務員の労働基本権問題についてよく意見を交わし合う、広く関係者の意見を聞く、この姿勢が非常に大事だと思うんですね。
 けさほど来も各委員からもいろいろな御意見、御議論ありましたが、今回のILO勧告は、連合と全労連という二つのナショナルセンターが提訴したという点では、一つの特徴があると思うのです。提訴した両当事者はいずれも交渉、協議の対象となる関係者なんですが、この両当事者から石原大臣は公務員の労働基本権問題についてよく話を聞いておられるのかどうか、これからも今言いましたILO勧告を含めた公務員の労働基本権問題について広く率直に意見を聞く、こういう立場で臨まれるのかどうか、このことを伺っておきたいと思います。
石原国務大臣 これもきょうの午前中の質疑の中で御答弁をさせていただいたところでございますけれども、一昨年の十二月に閣議決定をさせていただきました公務員制度改革大綱においては、公務の安定的そして継続的な運営の確保の視点、あるいは国民生活へ与える影響の観点などを総合的に勘案いたしまして、公務員の皆様方の労働基本権の制約については、今後ともこれにかわる相応の措置を確保しつつ、現行の制約を維持するという形で、今回の法案の準備に着手をしたところでございます。
 そして、昨年の十一月にILOの結社の自由委員会のお話が出てまいりまして、この労働基本権、基本権といいましても、団結権あるいは協約締結権、それとスト権だと思うのでございますけれども、私は、この労働基本権の議論自体を否定するというようなことは一切申しておりませんし、そのように答弁をしてきたつもりでございますが、いずれにいたしましても、この労働基本権の問題は、非常に古くて新しいホットな問題でございますし、労働者の方々の人権に関与する問題でございますので、職員団体の皆さんとはよく相談しながら公務員制度改革を進めてまいりたい、こんな希望を持っているところでございます。
吉井委員 大綱の話もありましたけれども、要するに、関係者との十分な協議、理解を得るための国内での努力、これが今回の問題のかなめだというふうに思うわけです。
 全労連と政府、行革推進事務局との交渉、協議というのは、四月十五日に行われたということも聞いていますが、ILO勧告から三カ月以上経過して、ようやくといいますか、一回だけの対応で。
 ILO八十七号条約第三条で、結社の自由というのは「公の機関は、この権利を制限し又はこの権利の合法的な行使を妨げるようないかなる干渉をも差し控えなければならない。」というふうにしているわけですね。これは、もう少しかみ砕いた意味は、登録を認める機関が裁量権を持つと、事前許可制を持つことに等しくなり、結社の自由を侵すことになるという意味を持っているわけですね。
 ですから、いろいろな団体に広く率直に意見を聞くということが大事で、特に今度の場合は、ナショナルセンターが現実に二つ存在して、二つが仲よくILOに提訴しているときに、政府はそれぞれの労働組合と均等に協議の場を設けて、公務員の労働基本権にかかわる問題について誠実に突っ込んだ話し合いを行う、このことがまさに、有意義な協議が速やかに行われるようにというILOの期待にもこたえることになりますし、協議の進め方でも、ILO条約の示すルールに沿った対応ということになってくると思うんです。
 そこで石原大臣に重ねて伺いますが、国際機関が関心を寄せている事項について、条約に沿ったルールで両当事者と十分突っ込んだ協議を行う、関係者からよく聞く気はあるというお話なんですが、実際によく突っ込んだ協議を行うということが非常に大事だと思うんですが、改めて確認しておきたいと思います。
石原国務大臣 ただいま吉井委員が御指摘をされましたいわゆる八十七号条約の第三条というものは、私も手に持っておりますので、承知をしております。
 そんな中で、先ほども御答弁をさせていただきましたように、我が方の追加情報、我が方の正式的な見解というものを三月の末に御提出させていただきまして、それが結社の自由委員会の議題にはまだ上がっていないわけであります。ですから、私どものこの追加情報に対しての御返答というものはちょうだいしておりません。
 そういうものも、やはり私どもの解釈、もちろん各国によりまして労使の関係というものにはさまざまなバリエーションがあるわけでございますので、そのバリエーションに対して行政当局また内閣が政府としてこういうふうに考えるというものに対して、ILOの側が、これはそういうことなんですか、あるいは、ああそうなんですね、そういう話をすることによって議論というものは深まっていくものであると考えているところでございます。
吉井委員 ILOに対して追加情報を出した、それはそれで政府としての説明をしたということなんですが、問題は、ILOの方から勧告が出され、そして総務省がまとめた見解を、大臣もよう知ってはるように、要するにすべての関係者と十分率直かつ有意義な協議が速やかに行われることを要請している、その要請にこたえて政府見解をILOに持っていって話をするというのは、それは、政府としておやりになるのはおやりになることとして、やはりILO勧告を含む労働基本権問題をILO条約に示すルールで関係者とよく協議する。これは、追加情報の話とは別に、実際にそれをやるべきでありますし、私はそのことを大臣としてやるべきだということを言っているわけです。
 まして、それが十分協議、交渉が尽くされないままに見切り発車で法案の閣議決定に持っていったり、国会提出などは行わないということは当然のことだろうと思うのですが、この点については担当大臣としてやはり明言をしておいてもらった方がいいと思いますので、伺います。
石原国務大臣 結社の自由委員会というのは、ILOの中にあっても割と特別な委員会であると私は承知しております。
 そして、ILOが日本国政府に対して、ILOの結社の自由委員会の報告というものの抜粋は私持っておりますけれども、正式にこれがILOとしての最終的な見解であるので云々というものを日本国政府としてはちょうだいしていない、あくまでも中間報告であるというのがこの総務省の見解の中でも述べられているわけであります。
 そういう中で、両方の、当方あるいは先方の御理解に、こちらが相違があると考えるような点についてのそごというものを埋めていく作業を行っていくということは重要でありますし、その過程の中で関係する皆様方とお話をしていく、こういう国内そして国外と二つの、両面があるということもぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
吉井委員 労働基本権問題について政府の考え方をILOに持っていく、それはそれでやってはるのは私も知っているわけです。
 しかし、その労働基本権問題について関係する当事者、関係者との交渉や協議をうんとよく尽くすということ、そして意見を交わし合うということは大事なことであって、そういうことなしに、まだそういう段階におられるという、段階は段階として今わかったわけです、お聞きしたわけですが、国会での慎重な審議が必要なものでもありますし、法案準備というのもまだできているわけのものでもないし、関係者との協議もできていないという段階ですから、今から閣議決定して、会期末まで一カ月しかないのに法案を慌てて国会に提出などということがないように、私は、大臣としては、今国会への法案提出ははっきり、しないということを明言されることが今大事だと思うのですが、この点、私も伺っておきたいと思います。
石原国務大臣 ただいま吉井委員がお尋ねの件につきましては、午前中の質疑にもございましたように、そしてまた吉井委員への御答弁の中でもう既に説明をさせていただきましたので、簡潔にさせていただきたいと思うのですが、一昨年の十二月に閣議決定をいたしました公務員制度改革大綱にのっとって今回の法案作成作業をしているということは、御理解をいただきたいと思うわけでございます。
 その中では、「労働基本権の制約については、今後もこれに代わる相応の措置を確保しつつ、現行の制約を維持する」と明言、閣議決定しておりますので、その線にのっとって、現在法案の準備をしているところでございます。
 けさも、官房長官、私、また片山総務大臣、坂口厚生労働大臣が閣議の後に残りまして、さまざまな意見交換を行った中で、引き続き公務員制度関係に関する関係者の理解を求めつつ、今国会への法案提出を目指して努力するという方針に変更はないということで、四大臣が一致したところでございます。
吉井委員 理解を求めるというのは、関係者に政府の考え方を押しつけるというものであってはならないわけで、あくまでもこれは協議として進めていくべきものであり、それができていない段階で法案提出などははっきり断念をするべきものだということを申し上げまして、次に、これは総務省の方の政府参考人に伺っておきたいと思うんですが、国家の行政に従事する職員の範囲について伺いたいと思います。
 勧告では、国家の行政に従事しない公務員に結社の自由原則に従って団体交渉権及びストライキ権を付与することについて、有意義な交渉を行うよう求めているわけですが、これに対して、三月三十一日付の追加情報では、勤務条件を享受する一般非現業国家公務員は、国家の行政に従事する公務員と実質的に重なると主張しているわけですね。二〇〇二年四月一日現在で、地方公務員約三百十四万人のうち最大の教育公務員が百十三万人で、三七・六%を占めています。政府は、一般の地方公務員を国の補助的職員として国家の行政に従事する公務員だと言ってきているわけですが、地方の教育公務員がどの点で国家の行政に従事する公務員と言えるのか、これは政府参考人の方から伺っておきたいと思います。
久山政府参考人 総務省の人事・恩給局長でございますが、ただいま先生の御質問に係る部分につきましては、私ども、総務省人事・恩給局の担当ではございませんので、御答弁は差し控えさせていただきます。
吉井委員 地方公務員の問題でお聞きするということで、それで内閣府の方は、推進室の方は、私のところはちょっと答えにくいから総務省お願いしますということで、急遽、来てもらうことになっているんですけれども。しかし、一緒に仕事してはるからよく御存じと思うんですが、推進室の方でもわかるならわかるで結構なんですけれども、昨年十一月の結社の自由委員会報告で、六月の第三百二十八次報告で、岡山県高等学校教職員組合提出の訴えにかかわる勧告が出されまして、これに対する日本政府の申し立てに対する審議も行われています。
 そこでは、ILO第九十八号条約の適用から除外される公務員の範囲について、法定の勤務条件による利益を得ているかどうかで判断するという主張は基本的な誤解が存在すると指摘して、第九十八号条約第六条の例外は、公立、私立の学校に雇用される教員には適用されないと、明確に指摘しています。そして、公立学校の教員について団体協約による雇用条件の規定を目的とする自主的交渉のための仕組みの十分な発達及び省令、促進のための適切な措置を再要請しているというのがILOの方からの示されているものです。ですから、少なくとも、地方公務員の三分の一強を占める教育公務員については、国家の行政に従事する公務員ではないということをILOは一貫して指摘しているんじゃないかと思うんですが、これは、ILOの問題について、推進室の方もずっと、内閣審議官の方ですね、取り組んでおられて、お答えいただいていますから、総務省の方が答えられないというんだったら、内閣審議官の方から、今の点、ILOがこの点を指摘しているということは当然読んでおられると思いますので、確認しておきたいと思います。
春田政府参考人 ただいまの件につきましては、私どもも事柄的には承知をしておるのでございますけれども、事実関係あるいはそれにかかわる判断に関しましては、総務省の公務員部の方が、地方公務員制度の関係でございますが、そちらの方で担当されておるものですから、申しわけございませんが、私の方からは答弁を差し控えさせていただきます。
吉井委員 内容的に把握しているということですから、結局、今のILOのこの一貫した指摘というのは御存じだったということになるわけですね。
 次に、法務省の方の政府参考人に伺っておきますが、監獄職員の団結権問題ですね。
 三月三十一日付の政府のILOに対する追加情報では、監獄職員は、ILO第八十七号条約九条の趣旨にかんがみ、同条に言う警察に含まれるとして、団結権制約の正当性を主張してきたというのが政府見解だというふうに思います。
 一方、ILO八十七号条約第九条は、その条文からも明確であるように、軍隊、警察の構成員の団結権の制約を当然としているものではなく、各国の立法政策にゆだねている。
 そこで伺うんですが、この警察の範囲に刑務所も含むか否かということですね。これは各国の立法政策にゆだねられているということになっているんじゃないかと思いますが、これは確認しておきたいと思います。
横田政府参考人 法務省といたしましては、そのように考えております。
吉井委員 それでは、刑務所職員について、国際的に見て、団結権を制約している国というのは何カ国ぐらいありますか。
横田政府参考人 お答えいたします。
 現在、情報の収集に努めておりまして、現段階におきましては網羅的に把握しているとは申し上げられませんけれども、大韓民国におきましては監獄職員に団結権が付与されていないと承知しております。
吉井委員 大韓民国の話をされたんですけれども、あなたは専門家だから、七カ国、ほかに、カメルーン、マレーシア、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、スリランカ、スワジランド、そして日本と、よく御存じのところだと思うんですよね。
 二〇〇二年十二月の総合規制会議第二次答申では、民間参入を検討する国等の事務事業には、刑務所、少年刑務所、拘置所等も含まれていますね。あくまでも検討課題ではあるわけですが、仮に民間参入となりますと、民間ですから、労働三権を保障する監獄職員を想定するということになってきます。一方で労働基本権回復を伴う施策を検討し、つまり民間ですね、他方では刑務所職員には団結権制約を主張するということは、これはダブルスタンダードになってくるわけですね。政策的な一貫性に欠けてくるわけです。
 追加情報では、監獄職員は、任務の特殊性にかんがみ、特に強固な統制と厳正な規律に服させる必要があるから団結権制約は必要だとしているわけなんですが、労働組合の存在が統制と規律を緩める原因になると考えるとすれば、それは近代的な労使関係を理解せず、公務員の基本的人権をないがしろにする暴論だということを言わざるを得ないと思うわけです。
 国際的には、団結権とストライキ権は別に考えられているんですね。八十七号では、消防職員と刑務所職員にストライキ権を与えないことは違反しないということも言っているわけですね。
 ですから、そこまでの議論だったら総務省、政府参考人の方の議論になるんですが、そこで石原大臣に伺っておきたいんですが、やはり、国際的な労働基準への適合を真剣に検討する、それが今日本政府に求められているんじゃないかというふうに思うんですが、この点は大臣に伺っておきたいと思います。
石原国務大臣 大筋ではそのとおりだと思っております。
吉井委員 そこで、勧告が指摘する六点の改革事項すべて受け入れないという姿勢じゃなくて、私、今、地方公務員問題と監獄職員の問題を取り上げましたが、六点の、勧告が指摘する改革事項の個別の検討というのがやはり求められると思うんですね。労働組合と、そういう立場で突っ込んだ、率直な検討や協議を行うということが今大事じゃないかと思うんですが、石原大臣に、そういう個別の協議を行う、こういう姿勢というものをお持ちじゃないのか、石原大臣も個別の協議をやろうという気を持ってはるんと違うかと思うんだけれども、ここを伺っておきたいと思います。
石原国務大臣 先ほど来、国内問題と国外問題とがこの問題をめぐってある、そして、ILOの結社の自由委員会の勧告は、日本国政府としてはあくまでも中間報告であるというふうに理解をしているんであります。
 そんな中で、その一方で、この労働基本権の問題を議論するということを私は否定しているつもりは全くございませんし、労使の健全な信頼関係が醸成された後に、この問題についてこれまでの経緯、そして日本国のこれまでの歴史等々にあわせて議論をしていくということは十分に必要なことであると、先ほども御同僚の遠藤議員の御質問の中でお答えをさせていただいたところでもございます。
吉井委員 国際的な動向、流れはよう知ってはると思うんですね。ILO勧告に対して追加情報を送ったという話をしておられるのも、それは私も見ていますから、わかっているわけです。
 しかし、大事なことは、国内で労働団体の皆さんと率直に意見を交換し合う。勧告が指摘する六点の改革事項について、政府は、ILOに対してはこういう追加情報というのを送っていますというのは送っていますとして、しかし、個別の検討を、率直に意見を交わし合う、そういうことは何も避けていく必要はないわけで、私は、政府はILOが見解を変えたと主張して勧告に背を向ける姿勢をとっているのはわかっているわけですが、むしろ、ILOからの繰り返しの問題指摘を無視して、五十年前の一九五三年に九十八号条約を批准した際の状況に固執しているだけではだめだということをやはり考えなきゃいけないと思うんです。
 それで、政府は、ILOの従来の見解との相違や国内事情などから、勧告を承服しがたいとして、公務員の労働基本権制約の現状を維持するとする日本政府の立場への理解をILOに求めるという、そっちが中心になっているんですが、そういう立場ではなくて、勧告にこたえる立場での法整備など、国内での必要な努力を、やはりそっちに切りかえていくべきだ。このことを申し上げまして、次に能力等級制問題について、二月二十六日の質問でも行いましたが、次に聞きたいと思います。
 人事院に来ていただいておりますので伺いますが、まず、片山総務大臣は予算委員会答弁で、能力等級制度について勤務条件性はあるという答弁もしておりますし、人事院総裁は勤務条件だと明確に言っております。能力の評価というのは極めて難しいことなんですが、能力等級が給料に直結するとなると、それは給料の支給に深くかかわるから勤務条件となる、これは人事院としての考え方であるというふうに思うんですが、ここを参考人の方に伺っておきます。
佐藤(壮)政府参考人 前回の議論のときにもお答えしたと思うんですが、勤務条件がどうかというのは、最も重要な勤務条件である給料にどれだけ関連しているかということでやはり判断されるべきではないかというふうに思います。
 そこで、能力等級制度なんですが、今考えられている能力等級制度のもとでは、能力等級というものが俸給表とほぼイコール、全くイコールと言ってもいいかもしれません。したがいまして、公務員職員が、自分がどれだけ給料をもらえるかということは、能力等級のどこに位置づけられるかということによって決まるわけでございますので、それからまた昇格の場合にも、昇格したときにどれだけ給料がふえるかというのも能力等級の設計次第ということになるわけでございまして、したがいまして、この能力等級制度というのはやはり勤務条件に非常に深くかかわっているというふうに私どもも思っております。
吉井委員 勤務条件というのは、労働組合と労使間の交渉事項となるわけですが、公務員の場合はストライキ権を背景とする交渉はできませんから、そこで憲法で保障された労働基本権の制約を受けるということになっておりますね。その代償措置として人事院制度があり、人事院勧告によって一方的な不利な給与等の支給条件が改善される、これが現行制度となっておりますが、民間の労使関係ですと、労働者が人たるに値する生活を営む上で必要な労働条件について、労働者と使用者が対等の立場で決定する。労使自治の原則というのが労働基準法第一条、二条でそのことを示し、求めているわけですが、一方、公務員には労働基準法のこの部分は適用されない。
 そこで、民間の労働条件と公務員の勤務条件とはどう異なるのか、民間の労働条件と公務員の勤務条件とはどこが一致して、どこが異なるのか、人事院としてはそれをどういうふうに考えておられるのかをお聞かせいただきたいと思います。
佐藤(壮)政府参考人 大変難しい御質問で、適切な答えができるかどうかわかりませんけれども、民間労働者の勤務条件と公務員労働者の勤務条件というのは、やはり基本的には同じものではないかというふうに思っております。ただ、公務員の場合には人事院という代償措置がございますし、それから基本的に給与その他は法定主義をとっております。そういう面で、運用の面で民間とは違った部分が出てくるというのは、これまた当然のことだろうと思いますけれども、冒頭に申し上げましたように、やはり基本的には同じものと考えていただいていいんではないかというふうに思います。
吉井委員 憲法二十七条では、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」として、民間労働者については最低労働基準を定める労働基準法があり、公務員については、今おっしゃった勤務条件法定主義のもとに詳細に労働条件が法定もしくは人事院規則で規定されているというのが現状ですね。そのことからして、決定の方法は異なる、これはわかるんですが、労働条件と勤務条件の範囲に違いはないのではないか。違いはない、基本的には同じだというお答えですから、それに尽きるのかもしれませんが、決定の方法は違っても、要するに、一言で言えば、労働条件と勤務条件の範囲に違いはない、こういうふうに理解していいかと思うんですが、改めてちょっとここを伺っておきたいと思います。
佐藤(壮)政府参考人 先ほどは基本的には違いがないというふうにお答えしたんですが、もう一つ留意しなきゃいけないのは、公務員というのは、やはり公務員独特の責任とか、それから国民に対する義務、それから職務の違い等が民間と比べるとございますので、やはりそこのところを考慮して、個別に、どの勤務条件については民間と全く同じでいいのか、あるいは多少違ったふうに解釈した方がいいのかというのは判断すべきではないかというふうに思っております。
吉井委員 次に、特定独立行政法人等の労働関係にかかわる特労法第八条ですね、ここで、賃金その他給与等のほかに、昇職、降職等の基準も「団体交渉の範囲」と明記しております。
 労働協約締結権が保障される公務員であることから、勤務条件法定との調整の観点で交渉の範囲が明示されているというふうに思うんですが、ここで言う昇職等の基準と能力等級制の違いはあるのか、能力等級制は、昇任等の基準となる職務遂行能力基準を設け、予算との関係で級ごとの定数を設けることにしているのではないかという点について、政府参考人に伺っておきたいと思います。
春田政府参考人 お答え申し上げます。
 今、能力等級制の問題と、それから、いわゆる昇任の基準との関係、あるいは能力等級との関係での定数のことについてお尋ねがございました。
 まず、能力等級制度に関しましては、先般、この委員会で御議論がありましたときにも、いわゆる官職、ポストを仕事の難しさに応じまして能力等級に分類をする、それから、職員につきましても、仕事を通じて実際に発揮をしている能力というのを適切に評価をして能力等級に位置づけるということ、いわゆるポストとそれからそれに的確に対応できる人材というのを、能力等級を通じて適切に対応させるという制度でございます。この能力等級制の導入によりまして、組織全体の人材資源というのを有効に活用する、能率的な公務の運営を実現していくということでございます。
 その意味では、能力等級制自体につきましては、組織編成あるいは管理といったものと表裏一体の関係にある制度ということで、勤務条件そのものではないというように考えてございます。
 それから、あわせまして、級別定数のところについての御質問をいただきましたが、私ども、いわゆる公務員制度改革大綱におきまして、適正な給与管理あるいは人件費管理を行うという観点から、各府省の機構あるいは人員構成を踏まえまして、等級別に人員枠を設定するということで、能力等級ごとの定数を設定するということにしております。この定数の決定プロセスにつきましては、大綱におきまして、内閣が、等級ごとの人員数を含めた政府予算案を確定して国会に提出をする、国会による人件費予算の決定により、等級ごとの人員数を人員枠とするということで、人事院が、あらかじめ定められた明確な基準に基づきまして、等級ごとの人員数について、国会、内閣に対して意見の申し出を行うという形で整理をさせていただいております。
 こういう考え方に沿いまして、制度の検討を進めているところでございます。
吉井委員 最後に、これは石原大臣に伺っておきたいんですけれども、片山大臣は、参議院の総務委員会で、級別定数の労働条件性を認める答弁を、これは二年前ですが、しております。
 現在は、級別の定数など労働条件について、公務員は労働基本権が制約されているもとで、その労使交渉の代償として、人事院が勤務条件の変更に関するようなことに関して意見を申し述べる、勧告するというふうになっているわけですが、もともと、法律ですべてを決めることができるわけではありませんし、結局、今度の検討中の政府案でいくと、個別官職の能力等級への格付は、各省大臣が基準に基づいて行うことになるのではないか、しかも、その格付に当たって、人事院の関与は予定されていないのではないかということが大きな問題であります。そうすると、公務員には労働基本権も代償措置もないということになるわけですね。
 それで、石原大臣に伺っておきたいのは、こういうことになってはいけないから、労働団体との協議、人事院の意見を求める、このことは非常に当然のことであり、大事なことだと思うんです。この点を伺っておきたいと思います。――いや、大臣に聞いています。
佐々木委員長 春田審議官、時間が来ておりますので、簡単に。
春田政府参考人 能力等級制度導入によりまして、私ども、先ほど申しましたような人材資源の有効活用、あるいは能率的な公務の運営ということで取り組んでいきたいということで、いわゆる能力等級制自体は、組織編成、管理と表裏一体のもので、勤務条件そのものではないと考えております。
 ただ、能力等級制の立案に当たりましては、人事院あるいは職員団体等と十分に意見交換を行いながら検討作業を進めていく必要があるというふうに考えております。
石原国務大臣 ただいま春田室長から御答弁をさせていただいたように、私も、勤務条件そのものではないと考えておりますし、片山大臣もこのような答弁をしております。そうしますと、人事院の佐藤人事官の答弁と若干相違があるのかな、こんな感じを持っております。
吉井委員 もう時間が参りましたので、一言だけ。
 能力等級制の勤務条件性をやはり確認するという方向で政府の見解を改めるべきだ、それをやらないことには根本的な解決の道は開かれない、こういうことを申し上げまして、質問を終わります。
佐々木委員長 以上で吉井君の質疑は終了いたしました。
 次に、北川れん子君。
北川委員 社民党・市民連合の北川れん子です。
 今、参議院の方では、八八年法の全面改定ということで、行政機関の個人情報保護法が議論されているんですが、きょうは、警察庁や都道府県警がお持ちの個人情報について少しお伺いをしてみたいと思います。よろしくお願いします。
 都道府県の方では、個人情報保護条例の対象となっている例があるのか。四十七都道府県があるんですけれども、四十七都道府県に個人情報保護条例があるのかという点もあわせてお伺いしてもいいかと思うんですが、これの対象機関に各都道府県警が入っているかどうかをまず最初にお伺いしたいと思います。
吉村政府参考人 お尋ねの個人情報保護条例でございますが、全国の府県で制定をされていると承知をしておりますけれども、いずれの都道府県警察も、現時点では実施機関とはなっておりません。
北川委員 ということで、国の方は二〇〇一年から施行されたので、警察庁のものが対象となっているということで、お伺いしましたら、十のファイルが事前届け出を総務相にしなければいけないというのが、二輪車の防犯登録ファイルから、例えば古物商、質屋さん等々といきまして、留置情報ファイルまで十はあるというふうにお伺いしたんです。今聞いていると、四十七都道府県では、都道府県警の個人情報というものは保護の対象になっていないということなんですが、一九九〇年には、「警察の保有する電子計算機処理に係る個人情報の取扱いに関する規則の施行について」ということで、八八年法ができてから以降、規則が通達されているわけです。
 その十一条の中には、都道府県警察は、電子計算機処理に係る個人情報について、当該都道府県に即した特別の取り扱いをすることができるとしています。当該規則の施行についての通達では、当該規則と異なる取り扱いをする必要が生ずることが見込まれる場合には、当該異なる取り扱いの内容について警察庁長官の承認を得ることとされているわけですね。
 規則の中には、一部、自分たちの方で個人情報保護の取り扱いについて自由な動きをしてもいいよというような文言が書かれたものがあるわけなんですが、現実に、各都道府県警においては条例の対象機関になっていないということなんですが、もしくは、こういう規則なんですけれども、では、都道府県警の方にこういう規則はあるのかといった点も含めて、ぜひ、独自の取り扱いをこの個人情報保護に関しまして、今対象機関になっていないということなので、どういう形で、やれている面はこれで、やれていない面はこれというのがありましたら、教えていただきたいと思います。
吉村政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたとおり、個人情報保護条例で都道府県警察は現時点では実施機関には入っていないわけでありますが、この実施機関に入るかどうかということにつきましては、基本的には、各都道府県あるいは都道府県議会で判断をされるべき問題ではないかというふうに思います。
 今御指摘のあった、警察の保有する電子計算機処理に係る個人情報の取扱いに関する規則、これは実は、国家公安委員会規則でありまして、これを国家公安委員会規則として定めておりますゆえんは、都道府県警も含めてこの公安委員会規則などの趣旨にのっとって個人情報の取り扱いについて適正にやるべしということでございますので、国家公安委員会規則でありますから、これは何も国だけではなくて、都道府県にももちろん、都道府県警察にも適用をされているというものであります。
北川委員 では、この十一条の文言も含めて各当該の都道府県警の方では規則として運用されているということなんですが、なかなかよく見てみると、では、警察というのはどういう個人情報を持っているのかなというのが気になるところであるわけなんですね。都道府県警の所管の中にある個人情報の方が逆に言うと多いんではないかなというふうに思うんですけれども、例えば、では警察というのは大体どんなものをお持ちなのか、もしよければ御開陳いただけるとありがたいですけれども、よろしくお願いします。
吉村政府参考人 警察の保有する個人情報のうち現行法の個人情報保護法、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律でありますが、この現行法に基づきまして総務大臣に通知をしておりますのは、先ほどお話があったかと思いますけれども、十ほどあります。順次申し上げますと、留置情報ファイル、それから古物商及び古物市場主管理ファイル、質屋管理ファイル、警備業資格者等ファイル、それから選任警備員指導教育責任者及び選任機械警備業務管理者ファイル、二輪車防犯登録ファイル、家出人ファイル、風俗営業等管理ファイル、猟銃・空気銃管理ファイル、運転者管理ファイルの十ファイルであります。
 その他、犯罪捜査のために作成する個人情報ファイルにつきましては、これはもちろん業務の必要上保有をしておるわけでありますが、秘匿性が高いということから、現行法のもとにおきましても、総務大臣への通知が不要とされております。
 したがいまして、ここで個別にこのようなものを持っているということを申し上げることは適当ではないと思いますが、いろいろ各種の捜査、警察各般の業務を行うに当たりまして、当然個人情報ということで扱いは十分に慎重にする必要があろうかと思いますが、警察として有効に活用して仕事をしているということでございます。
北川委員 今、十挙げられたのは、各都道府県警から国の警察庁の方に上げられているファイルの中で、それもまず総務相に事前通知をするもののファイルでこういうようなものがありますということで教えていただいたんですけれども、では、捜査にどんなものがあるのかなとかいろいろ思いをめぐらせてみました。
 一体警察というのはどういう情報が行き渡るようになるのかなと個人の頭で思ったときには、先ほども交番所というお話も出ていましたけれども、お巡りさんが巡回するような、パトロールを一軒一軒、一戸一戸訪ねて歩いて聞き取りをされるというのも見かける中では、こういうこともされているかなとか、例えば落とし物の受け付けで来られた部分はきっと記録されているんだろうなとか、何カ月か後にまで見つからなかったらあなたに一割とか、あなたに差し上げるというのもありますので、そういうのもあるかなとか、考え得るところがあったんですよね。
 それで、捜査にかかわるものは秘匿性が高いので申し上げることができないというふうに言われたんですが、実は新聞でこれは二〇〇〇年に割と集中していろいろな事件というか、警察の不祥事というものが報道されております。例えば、京都府警警部補犯歴情報漏えい、これは愛知、東京と続くんですけれども、犯歴情報、こういうのがあるんだなと何かわかりますよね。神奈川県警の場合、窃盗事件の証拠品のネガ、押収したネガフィルムを使って元女子大生をおどしていた事件。ああ、そうかそうか、こういう押収品というのも、どの事件のだれのものを押収したかということでは、個人情報としてこういうのもあるんだなとかわかりました。それから、埼玉県警女子大生告訴調書改ざん容疑というのがあって、ああ、そうだ、こういうので調書というのもあるなというふうにもわかる。それから、交通情報なんかでは、違反をもみ消していた、交通事犯にかかわるいろいろな個人情報というのもお持ちだなというのもわかるといったところで、一つ一つ見ていきますと、私なんかが頭で考えたのは余り多くのことは想像できなかったんですけれども、こういう情報から、では、新聞から出ている中で、例えば被害届や調書や告訴状や違反歴や犯歴、懲戒記録等々、こういうものが多分都道府県警の記録、個人情報としておさめられているんだろうなと想像がつくところがあるんですね。
 先ほど、規則で十一条を運用しているということなんですけれども、やはり今の時代、八八年法は電子ファイルされたものという定義がありましたけれども、今回はその定義もなくなっていく時代に入って、殊に個人の秘匿性の高いもの、センシティブ情報も含めて、警察に集まる情報というのは、その性質上センシティブ情報であろうということも予測もされます。ですから、その取り扱いがどうなっているかということを今やはり関心を持っている人がふえているし、もし私の個人情報が警察にあるならば、それを開示してもらいたい、道を開いてほしいと。
 逆に言うと、国に上がっている個人情報というのは少なくて、都道府県にある個人情報の方が今の一つ一つの新聞記事からの事例で見ても多いというのは、谷垣大臣の方も想像し得る範囲であろうと思うんですけれども、いかがでしょうか。
 もちろんそうなんですよね。その首長判断といいますか都道府県知事の判断で情報公開条例もできました、それに合わせて大体個人情報保護法というものがつくられていくわけで、それに何を対象機関としていくかというのももちろん首長判断ではあるんですけれども、こういう時代になりまして、今参議院で全面改定される個人情報保護法が議論されている時代になって、都道府県警が持っているものをも各県の個人情報保護条例の対象機関としてもいいよという判断を大臣としてされるとさあっと行き渡るということもあるんですけれども、その点において、首長が判断し得る材料として持つポイントは、こういうことに関して警察はどう思っているんだろう、対象機関にしていいのかな、どう思っているんだろうというのは聞きたいところであると思うんです。
 その辺で、ぜひ谷垣大臣、先ほど御紹介した、何か二〇〇〇年に集中しているというケースが多かったんですけれども、個人情報というものが割とずさんに扱われているからこそ事件として新聞に報道されるという結果になっていると思うんですね。やはり、きっちりしたもの、規則ではちょっと物足りないというところがあって、各都道府県警のこういう漏えい事件等々が二〇〇〇年にスポットを浴びたという点もあろうかと思うんですけれども、いかがでしょうか。都道府県警が持っている個人情報を各県の個人情報保護条例の対象とするというようなお考えについて、いかがかというところをお伺いしたいと思います。
    〔委員長退席、中沢委員長代理着席〕
谷垣国務大臣 今、北川委員いろいろなことを含めておっしゃったと思いますので、手短に御答弁できるかどうかわかりませんが、まず第一に、都道府県の個人情報保護条例の対象に警察の持っている個人情報も含めるべきではないかということですね。
 これは、先ほど官房長もお答えしましたけれども、基本的にやはり条例をどう決めるかという内容ですから、私は今、国の行政、内閣にいるわけですから、私の方から、何々県、こういう条例を中身どうしろというのは、やや行き過ぎかなというふうに思います。
 それから、それでは、警察全体として個人情報はどう管理しているかというのは、先ほど委員もお引きになりました国家公安委員会規則、警察の保有する電子計算機処理に係る個人情報の取扱いに関する規則、これで定めておりますので、これは、先ほど官房長も御答弁をしましたように、警察庁だけではなくて各都道府県警みんなこれはかかってくる、各都道府県警察でこの趣旨にのっとって対応してもらう、こういうことだろうと思います。
 それから、西暦二〇〇〇年ですか、いろいろ個人情報漏えいの不祥事があった。この点に関しましては、いろいろな不祥事が警察もございまして、そういう中で警察改革を進めてまいりまして、私もそれを進めていく職責を負っているわけですけれども、今なお個人情報の漏えいというものが間々あるのはまことに申しわけないことだというふうに思っておりまして、これについてはやはり今後とも厳格な管理というものをしていかなきゃいけない、こんなふうに思っております。
北川委員 出過ぎた行為になってはという御発言もあったんですけれども、実は、二〇〇〇年、こういうふうに割と表立った個人情報の漏えいや改ざんといったものが出されたからだろうと思うんですが、二〇〇〇年の十二月七日には、「個人照会業務等に係る個人情報の適正な取扱いの徹底について」という通達を出していらっしゃるんですね。警察庁刑事局長ということでお出しになっていらっしゃいます。個人情報の適正な取り扱いに関する指導や管理の徹底をしなさいよ、照会センターへのアクセスの仕方は厳密にすること、アクセスが本当に警察官かどうかもきっちりと運用が図られるようにしなさいよという通達もお出しになっていらっしゃるんです。だから、一部やはりこうやって警察の中でも機敏に対応していらっしゃるなというのは、よくわかるんですよ。
 けれども、やはりその後も事例を見ていくと、だんだん今度はまた結構えぐいやり方になっていく事件とかが報道されるのが、二〇〇二年十二月七日に、これは裁判ざたにまでなったものです。捜査を装って携帯電話番号六十九件の契約者の住所、氏名を電話会社に警察官が照会して贈賄、それを相手の方に、調査事務所の経営者の方に知らせた、見返りにこの方は百三十八万円を受け取ったというふうにも載っていた事件とかが出ております。これは割とセンセーショナルにも報道されたので、御記憶に新しいと思うんですよね。
 中で一生懸命個人情報の取り扱いやそういうことに関して機敏に対応されているというのは、よくわかります。けれども、その後もやはり後を絶たない形で行われています。どうしてこういう感じになるのかなという一つのこととしまして、先ほど、捜査だから、解決に向けて動いているところであるからということで、割と行政機関同士の中ででも、警察がちょっと見せてください、例えば戸籍係に見せてくださいとか言ったら、ああ、どうぞどうぞ、ではお入りくださいとか、ちょっと住民票台帳を見せてねと言ったら、どうぞどうぞ、いいですよという、割とお互い行政機関同士内でも警察だということで安心して見せちゃう。
 こういう事例も載っていました。職員が立ち会わずに警官が戸籍を閲覧できたという部分が熊本でありまして、これは逆に言えば熊本の市の方も問題があるわけですね。そういう所管庫の方にどうぞ入って見てくださいということで、自分たち行政マンは立ち会わなかったということですから、その中で警察官が何をどうしていたかということも確認もしないでやられていたというケースで、謝罪ということにもなっているんです。
 やはり大臣、みんなそうだと思うんです。民間、普通の市民も、警察だといったら、捜査に協力しよう、早く事件を解決してもらいたい、だから、私たちが知っていることは何か必要であればしゃべりますよ、お話ししますよということも含めて、どうしても協力的になっていくということもあろうかと思います。それを悪質に悪用するという事件なども出てきているというところにおいては、どうでしょうか、出過ぎたというふうにおっしゃるんですけれども。
 では、ちょっと次にお伺いしてみたいと思うんですが、情報公開制度というのが、二〇〇一年国の部分が対象になって、これは本当に国の情報をそんな情報公開なんかの制度に乗せていいのかというけんけんがくがくの議論が長い間あって、やっとできて、二〇〇一年施行されて三年目に入るわけですけれども、では、各都道府県の情報公開条例ではどうなっているか。例えば各都道府県警の機関は対象になっているかいないか、その辺を御紹介いただけますでしょうか。
吉村政府参考人 情報公開条例についてのお尋ねでございますが、結論的には、全府県におきまして、現在、全国の都道府県警察が実施機関となっているところでございます。
 それから、恐縮ですが、いろいろ今不適切事例のお話があったところでございますけれども、大臣からもお話がありましたとおり、国家公安委員会規則を定めまして、きちんと個人情報を含めて捜査情報等を適正に扱うようにということを指示しているところでもありますし、この趣旨を徹底していきませんとまさに警察に対する信頼を失いかねないということで、それは引き続き趣旨の徹底を図ってまいりたいと思いますが、それにもかかわらず、いわば職務上知り得た秘密を漏らすというようなことで問擬をしなければならない場合もありまして、後ほどお尋ねがあるのかもしれませんが、警察庁で懲戒処分の指針もきちんと決めまして、この種のものについては厳しく対応していくということでやっておりますので、御理解を賜りたいと思います。
北川委員 何か先取りして言われてしまって、だんだん私の質問の最後のところまでページが行っちゃったみたいなんですが、ちょっとぐぐっと戻していただいて、実は今、情報公開条例のときどうだったというのをお伺いしましたら、全四十七都道府県は都道府県警も対象になっているんです。
 これは、なぜなったのかなというのを調べていると、二〇〇〇年の九月十四日、警察庁長官官房長ということで、「都道府県警察における情報公開の推進について」という通達をやはり出していらっしゃるんですね。情報公開条例の実施機関となることについては望ましいものでありますよというふうに出していらっしゃいます。そのときには、内部でのガイドラインもこのぐらいはちゃんとつくっておくんですよ、もう情報公開していいものはどんどんホームページに載せて多くの人に見てもらっていいんですよというような感じで、やはり通達を出したがゆえに、ぴたっとその後、四十七の情報公開条例の中に都道府県警の情報というものも対象になるというふうないきさつがあったというのがわかりました。
 だから、大臣は先ほど、出過ぎた行為になったら県知事さんに申しわけないからとかというような感じで、少し引きぎみに言われたんですけれども、そういうことではなくて、やはりこちらの意思はこう持っていますよ、これをとるかとらないかはあなたたちつくる側の首長の判断ですよというふうに見せていくことが、時代の流れに合って、二〇〇〇年にはこういうふうに各都道府県の情報公開条例の中の対象機関に都道府県警がなったということがありましたという話につながっていくんです。
 いかがでしょうか、大臣、やはりここは、とるかとらないかの判断をするのは各首長さんだというふうにはいかないものでしょうか。どうでしょうか。
    〔中沢委員長代理退席、委員長着席〕
谷垣国務大臣 警察としての姿勢ですね。それは、先ほど申し上げたように、国家公安委員会規則でつくっておりますし、それをもとに全国の警察がいろいろやっておるということです。
 それともう一つは、警察の事務にはやはり特殊性があるということは御理解をいただかなきゃならないわけでして、犯罪捜査に係る情報というようなものはその扱いがなかなかデリケートなところがあります。現行法においても、そういうことのゆえに扱いの特殊性が認められているということがございまして、私どもとしては、この特殊性ということはやはり御理解をいただかなきゃならないなというふうに思うんですね。
 ただその上で、先ほど申し上げましたように、国家公安委員会の規則もつくっておりますけれども、我々としても、きちっとした厳正な取り扱いをしていきたいと思います。
北川委員 なかなか前向きな答弁は今ので逆に言うとちょっとまた引いちゃったという感じで、いただけなくなってしまっていっているんですけれども。
 わかりますよ。だから、私がお話ししているのは、何もかもすべて、おもちゃ箱がひっくり返るようにばあっと出してやりなさいということを言っているのではなくて、こういうふうに第三者から見てもきっちりしたものをやっているんだよということをあえて言うためにも、皆さんが情報公開制度のときにお示しになった態度というのはすぐれて立派であったわけでありまして、個人情報保護法というのは、逆に言うと各地域の方が、市町村の方がすぐれて高いものができているケースももちろんあるわけなんですね。今、国の行政の方の個人情報保護法包括法も議論になっているんですが、この行政の方の個人情報保護法については、野党四党案で自己情報コントロール権まで盛り込んで、関与ができるといったところまで何とか目的の中に入れたいということで頑張ってつくった野党案というのは今、衆議院では否決されましたけれども、あるわけで、もうそれを先取りして各県や市町村ではつくっているわけです。大体、情報公開制度と個人情報の保護というのは対なんですよ、大臣。大体、対でできているわけでありまして、四十七都道府県に情報公開条例があって、個人情報保護法もあるわけなんですね。だけれども、こっちは四十七すべて対象機関になっている、でもこっちはゼロというのは余りにもいびつな状態に置かれているというふうにも思いますし、対象機関にした方がいろいろなことがクリアになってきて、何を個人情報保護として、どういうふうな扱いをした方がいいかということも、逆に言うと、皆様が示唆を受けられる点も含めて、高いというふうにも思います。
 何も、すべてを何だかんだといってやりなさいということではなくて、きっちりすぐれたものにお互いしていこうではないかという意味においてお伺いしておりますので、ちょっと二歩も引っ込んだふうになってしまいましたので、ぜひ前へ出てきていただくことをお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 何も後ろに引っ込んでいったつもりはないんですが、我々がよるべきものはやはり法でございますので、今御審議をいただいている個人情報保護関連法案の趣旨も踏まえて、警察として、もちろん都道府県警察、警察庁、どういうふうにしていくかということは、この審議の動向も我々は十分意識しながら、それをにらみながら考えていかなければならないなと思っております。
 今後、そういう今の法案の審議状況もにらみながら、それぞれ各都道府県で関連の条例を改正されるというような動きも出てくるかもしれません。その場合には、我々はやはり犯罪捜査ということを任務としているわけでありますので、もちろん個人情報保護をどうするかという場合でも、犯罪情報の特殊性、またそういう任務にあること、こういうことはやはり我々としては御理解を求めなければなりませんし、それから、私どもが犯罪捜査をします場合に、やはり全国である程度の斉一性といいますか、あちこちで余りばらばらな取り扱いというのも確かにぐあいが悪いということがございますので、そういう法案審議の動向もにらみながら我々としても十分考えていきたい、こう思っております。
北川委員 今の分が、何度も申していますように、八八年法の分の全面改定ということで、電子ファイルデータになったものだけではなくて、あと散逸しているものやマニュアル、書式になったものとかも全部含めて今審議しているところであります。今の政府の法案に野党の部分が幾ばくか本当に入ってもらいたいと思って参議院の方での粘り強い議論を私も聞いているわけなんですけれども、その成立の行方を見守ってということを今御答弁いただいたと思うんです。
 おっしゃったようにゼロか一〇〇かという話なので、一気にいく方がいいんだというふうになると、情報公開条例のときにやられたように促す通達をお出しになるということもちょっとは頭の中に入れていただけたかなというふうにもこちらは解釈をさせていただきまして、では、今般の参議院での議論の行方の見守りながら、成立までの議論の過程で、大臣、ぜひ都道府県警の個人情報を都道府県の個人情報保護条例の対象にしていただくようにまたよろしくお願いをしたいと思います。なぜこだわるかというと、やはり都道府県警の方が国が持っているものよりももっとたくさんの個人情報があるということがわかっておりますので、ぜひその辺を理解していただきたいと思います。
 次は、先ほど警察の不祥事、不適切なというふうな事例を御紹介して、警察の中にも指針はあるというふうにおっしゃったんですけども、では、個人情報の漏えいに対する警察の処分の指針というものがおありになるんでしょうか。もしおありになるんでしたら、具体的にどんな条例のケースだとあるんだとかいうものがありましたら、お示しをいただきたいと思います。
吉村政府参考人 警察庁では、平成十二年の九月に懲戒処分の指針というものを決めております。これは、警察改革の一環として、刷新会議の提言を受けてアクションを起こしたものでありますが、この懲戒処分の指針で今お尋ねの個人情報を不適切に取り扱った場合というものがどれに当たるかを探しますと「職務上知り得た秘密を漏らすこと」、これに当たると思いますが、職務上知り得た秘密を漏らすことにつきましては、重大なものについては免職または停職、それ以外のものについては減給または戒告という指針を決めているところであります。
北川委員 先ほど、調書の捏造とか押収した証拠品を使っておどすとか、知り得た個人情報を有利に、自分の都合のいいように使ったケースもあるというふうに思います。公務員に課せられている守秘義務ではなくて、知り得た秘密を漏らすことでは、重大と、上記以外のもので減給とか、そういうふうに決めていらっしゃるというのは見ているんですけれども、個々、もう少し個人情報の扱いについての指針というものは、では、逆に言うとこれ以外にはないというふうに思ってよろしいんでしょうか。
吉村政府参考人 今御答弁申し上げましたのは、非違事案があった場合に懲戒処分を行う、その際の指針を申し上げたわけでありますので、警察職員として、個人情報を含めて、各種のセンシティブな情報をどのように扱うべきかということにつきましては、先ほど来からお話が出ておりますように、国家公安委員会規則が定められておりますし、それぞれのいろいろな情報分野ごとに通達なり内部規定をつくりまして、扱いを適正に行うべしということで各種規定を制定しているところであります。
北川委員 同じ中に、「セクシャル・ハラスメントをすること」というのも減給、戒告ということで同じ項に載っているんですね。
 これを見ていきますと、セクシュアルハラスメントというのは、この言葉さえもまだ生まれないときには、なかなか、被害に遭う可能性が高い女性側からすると、これを何と言って訴えたらいいのかと悩んでいた時代もあるんですけれども、セクシュアルハラスメントという、外来語ではありますが、これができてからは、具体的に見ていきますと、二〇〇一年七月には、これは人事院の事務総長の方から、懲戒処分の指針についての一部改正ということで、一つの概念ができたと。例えば、秘密の漏えいをするという、これも一つの概念であろうと思うんです。セクシュアルハラスメントという概念はつくられて、指針はできているんですけれども、では、中で徐々に、例えばこういう具体的な行為の態様とか悪質性等の個々の事案の内容に十分な考慮を払うようにお願いしますということで、だんだん厳密に、こういう場合、こういう場合、こういう場合という感じで、通達が人事院の方からも出ています。
 なので、個人情報の保護に関しては、今やはり大きな枠でのもの、秘密を漏らすことというぐらいの範疇でしかないと思うんですけれども、やはり、これは、今のこういう時代に入って、個人情報を警察の中で有利に使う人もいるといった場合においては、細かく決める必要がある分野に入ってきたのではないかと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
吉村政府参考人 先ほど御紹介いたしました懲戒処分の指針は、大きく、職務遂行上の行為、職権絡みのもの、それからプライベートなもの、私生活上の行為、それと、いわば監督者として管理監督上の行為というふうに三つに分けまして、職務遂行上の行為として、捜査一般に関するものあるいは留置業務に関するもの、交通指導取締まりに関するもの、装備品に関するもの等々中区分を設けまして、今御指摘がありましたが、規律違反行為ということで、それをさらに細分化して、このようなことをやったらこういう懲戒処分を受けることを基準とするということを定めているわけであります。
 したがって、今、個人情報を漏えいして、加えてそれをネタにしておどかすとかあるいはお金をもらうとか、あってはならないと思いますが、贈収賄に発展するというようなことになりました場合には、それは職務遂行上の行為なり私生活上の行為の贈収賄を行ったという区分になって、懲戒処分を受けるわけであります。
 御紹介しましたのは、単に守秘義務に反して情報を漏らす、そのことだけをとらえても、今御紹介したような懲戒処分を受けるということでありますから、もちろんそれに加えていろいろな悪いことをすれば、いわば加算する形で重い懲戒処分を受けることにはなろうかと思います。
北川委員 そこを、今やはり茫漠とし過ぎているのではないかというふうにお話ししているわけでありまして、例えば、セクシュアルハラスメントも、魂の殺人だとかという言い方をするぐらい、範疇的には殺人という、魂ですから見えない、魂といったらその人の人間としての尊厳というものに対して侵されてしまったという話等含めて、魂の殺人であるという言い方をして警告を発するということを女性たち側はやってきました。
 これと同じように、個人情報というと、あたかもそんなに、氏名、住所、生年月日、性別というこの四情報、それぐらいいいんじゃないのとか言う人もいます。それに今プラス住基コードという、住民基本台帳法の改正からネットワークが今回八月から稼働するわけですが、それに住基コードと転籍履歴、あとまた、六情報、プラスが住民基本台帳に載っているというぐらいに、一つのことが特定されるとだんだんだんだんひもつきでわかってくるというのが個人の情報の持つ意味の大きさであり、ましてや、やはり目に見えない情報であるがゆえに秘匿性が高いとおっしゃった部分がどう守られて、本人たちの関与がどれぐらいできるかということが問われる時代になったということであろうと思うんですよ。
 だから、この辺のことは特にセンシティブなものを、現代社会の中で犯罪がなぜ起こるかということも含めて、一面的な面からだけなぜ起こるのかということが検証できないぐらい犯罪というのはいろいろな要素が固まった中で生まれてくるので、このこと自身をどうなくしていくかということも物すごく難しくて、今いろいろ御苦労されていると思うんです。
 だから、そういう社会の実態のありようが凝縮されたようなところでいろいろ日々動いていらっしゃる方たちのところに集まる個人情報であるがゆえに、私は、個人情報というものが、果てはその人のいろいろな意味での命や財産の侵害にまで当たることにもつながっていくこととしての第一歩の要素として、やはり発信をするものとしてはとてもいい、逆に言えばここをきっちり押さえていればそこにまでは至らないというふうになりますので、ここをどう守り、どう市民がアクセスすることを警察は認めていくのかということの議論がやはり必要であろうと思います。
 そういう意味では、きのうの参議院の委員会の方で、民主党の内藤議員が質問をされています。
 懲戒処分制度について、個人情報保護法を意識して懲戒処分の指針の見直しを早急にするべきだと思うがいかがかと言われていたら、人事院の方はこういうふうに御答弁……
佐々木委員長 北川さん、時間が来ていますから簡単に。
北川委員 済みません。ということで、内藤委員の方には、行政機関における個人情報保護法の重要性を踏まえまして、懲戒処分の指針に個人情報の違法な取り扱いに係る標準例を追加することを検討することなど、懲戒処分を一層厳正に行われるよう必要な対応を行ってまいりたいと考えておるところでございますというふうにお答えになっているんです。
 ぜひ、そういう意味では、この点において、警察の独自の本当の動きというものをつけていただきたいということを最後に御質問しておきたいと思います。
佐々木委員長 簡単に、吉村官房長。
吉村政府参考人 委員御指摘のとおり、個人情報は非常に大切なものであるということはよくわかっておりますし、警察業務を遂行していく上で、しかしながら個人情報に数多くタッチせざるを得ないという立場にもあります。
 したがいまして、一番私どもがやらなければならないと思っておりますのは、個人情報を不用意に漏らさないようにする、その仕組みづくりをするということに尽きると思いますし、その次に、変なことをした人たちについては懲戒処分をきちんと科していくということでありますから、むしろ懲戒処分の区分けを細かくつくるよりかは、やはり適正に、まずは漏らさないように、そういう悪いことになった場合には、これは厳しく処断をしていくということに尽きようかと思います。
北川委員 では、これからもぜひよろしくお願いをいたします。
 きょうはどうもありがとうございました。
佐々木委員長 以上で北川君の質疑は終了いたしました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時二十八分散会


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