衆議院

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第12号 平成16年5月7日(金曜日)

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平成十六年五月七日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 山本 公一君

   理事 大村 秀章君 理事 河本 三郎君

   理事 山本  拓君 理事 宇佐美 登君

   理事 鎌田さゆり君 理事 中山 義活君

   理事 大口 善徳君

      岩屋  毅君    江崎洋一郎君

      木村  勉君    菅原 一秀君

      西川 公也君    西村 康稔君

      葉梨 康弘君    早川 忠孝君

      平田 耕一君    平沼 赳夫君

      宮腰 光寛君    村上誠一郎君

      石毛えい子君    泉  健太君

      市村浩一郎君    大畠 章宏君

      島田  久君    原口 一博君

      馬淵 澄夫君    山内おさむ君

      横路 孝弘君    太田 昭宏君

      吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 小野 清子君

   内閣府大臣政務官     西川 公也君

   内閣府大臣政務官     宮腰 光寛君

   政府参考人

   (内閣府国民生活局長)  永谷 安賢君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 米村 敏朗君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    人見 信男君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           松原 文雄君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  石川 裕己君

   内閣委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月七日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     菅原 一秀君

  市村浩一郎君     馬淵 澄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     木村  勉君

  馬淵 澄夫君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  木村  勉君     河井 克行君

    ―――――――――――――

五月七日

 憲法の改悪反対に関する請願(土井たか子君紹介)(第一七八一号)

 同(山本喜代宏君紹介)(第一七八二号)

 同(土井たか子君紹介)(第一七九六号)

 同(阿部知子君紹介)(第一八〇八号)

 同(阿部知子君紹介)(第一八二六号)

 同(阿部知子君紹介)(第一八六八号)

 同(阿部知子君紹介)(第一八七六号)

 同(阿部知子君紹介)(第一八八六号)

 同(阿部知子君紹介)(第一九二五号)

 憲法改悪反対に関する請願(吉井英勝君紹介)(第一八八五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一九二四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 警備業法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇六号)


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、警備業法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府国民生活局長永谷安賢君、警察庁長官官房審議官米村敏朗君、警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、警察庁交通局長人見信男君、国土交通省大臣官房審議官松原文雄君及び国土交通省航空局長石川裕己君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村康稔君。

西村(康)委員 おはようございます。自由民主党の西村康稔でございます。

 審議に先立ちまして、年金法案の取り扱いにつきまして与党と民主党との合意が成立をしまして、国会審議が正常化しました。我々の任務は、やはり国会でしっかりと政策を議論し、審議することでありますので、きょうもまた、警備業法の改正法案につきましてしっかりと審議をしていきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず最初に、実は私の地元明石で、二〇〇一年、三年前の七月に、市民夏祭りの花火大会で大変な惨事がありました。十歳未満の子供九人を含む十一人の方が、子供たちが亡くなり、そしてまた負傷者二百四十七人という大変な惨事で、亡くなられた方々には本当に心から御冥福をお祈りする次第でありますけれども、この事故につきまして、まず御質問をしたいと思います。

 花火大会のピーク時に、八万人を超える人たちが滞留をして、何と一平米当たり七人、密度七人もの、最高ピーク時はそんなぎゅうぎゅう詰めの大雑踏でありまして、その中でこの惨事が起きたわけであります。過去、日比谷公園、この近くの日比谷公会堂でも、昭和六十二年に死亡事故、コンサートの途中に雑踏で起こったりしておりますし、過去幾つかの、全国各地でそんな事例もございます。警察として、このような雑踏事故、特にこの明石の事故は大惨事になったわけですけれども、どんなふうにこの事件をとらえ、反省し、その後対応しているか、その点につきましてまず小野大臣にお聞きをしたいと思います。

小野国務大臣 平成十三年七月二十一日に、兵庫県明石市内におきまして明石市民祭りが開催をされまして、その際に発生いたしました雑踏事故につきましては、亡くなられた皆様方に心からお悔やみを申し上げたい、そのように考えております。

 この事故につきましては、主催者であります明石市、それからその委託を受けました警備会社及び明石警察署の関係三者に雑踏事故の危険性に対する認識の甘さがあったのではないか、そのように考えられ、警備計画、警備措置それから関係者間による連携において、それぞれ不十分な点があったものと認識をしているところでございます。

 警察庁では、この事故を重く受けとめまして、全国警察に対しまして、雑踏事故防止の基本的考え方及び留意事項を再確認いたしますとともに、雑踏事故防止に関する体制を確立するために通達を発出するなど指導を徹底しているところでございまして、適正な雑踏警備業務の実施につきましては、警備業者に対する指導を徹底する旨の通達も出させていただいているところでございます。

 今後とも、警察におきましては、行事の主催者、その委託を受けた警備業者と十分に連携をとりまして、この種の事故の再発を防止するための施策を講ずるように督励してまいる所存でございます。

西村(康)委員 ぜひしっかりと反省もしていただいて、もちろん、これは裁判中の事例でもありますし、個別の損害賠償の交渉もしておられると思いますので、立ち入ってはお話しできないと思いますけれども、ぜひこんな事故のないよう、しっかりと対応をしていただければと思います。

 この雑踏の警備なんですけれども、いろいろ調べてみますと、過去、いろいろな事件があるわけですが、雑踏の警備の指導要領についてというもの、マニュアル的なものを各県警なりでつくっているようでありますけれども、そもそも、警察庁として、本庁としてしっかりとした指針がなかったのではないか。この事故を踏まえて、こういう雑踏事故について、雑踏の警備についてどういうふうな指針、方針をつくって対応しているのか、その点についてお聞きしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 警察庁におきましては、明石の事故を踏まえまして、事故発生の翌年でございますけれども、平成十四年五月に、全国の警察に対しまして、「雑踏事故の防止について」と題します生活安全局長名の通達を発出したところであります。

 その中で、まず、基本的な雑踏事故に対する考え方、さらに、行事の主催者に対する指導あるいは現場での実地等調査、そして、関係機関との協力、さらには、実施計画の作成等の事前措置について示したところでありますし、また、雑踏事故発生時の措置につきましても示しまして、雑踏警備の責任者を警察におきましてもしっかりと指定するなどの体制を確立して、雑踏事故防止の徹底を図っているところでございます。

 なお、雑踏警備の責任者に対しましては、警察庁主催による研修会等を毎年開催しておりまして、雑踏事故防止に関する指導、教養の徹底を図っているところでございます。

西村(康)委員 ぜひ徹底した周知をしていただいて、また、講習、研修会等をしっかりと実施していただきたいと思います。

 今回の明石のこの事件でも見られたんですけれども、警備会社が主催者から受注を受けて、それを協力下請企業に丸投げをしたり、あるいは、広いエリアですから、この地区はA社、この地区はB社、この地区はC社と幾つかに分けて再委託、発注をするケースもよくあるようでして、そのときに、もうばらばらな対応になって、一元的な管理、一元的な責任がとれない。そんな状況も過去に見られるようでありますけれども、これは、警備会社と主催者との慣例というか、そんなようなやり方をやっている。あるいは、主催者と警備会社との間で契約もそもそもないようなケースも多々あるというふうに見られております。

 この警備業界、警備会社、警備業におけるこういう慣例についてどんなふうに考えるのか。もっと一元的な責任を明確にして、あるいは契約をしっかり結ぶ、そんなような対応をしなければいけないと思うんですけれども、この点についてはどうお考えですか。

伊藤政府参考人 明石市民夏祭りにおきます雑踏警備に見られますように、大規模な警備業務におきましては、警備業者が依頼を受けた警備業務の一部を他の警備業者に委託する形態、あるいは、複数の警備業者が共同企業体を構成して警備業務の依頼を受け警備業務を実施する形態など、複数の警備業者により実施される場合があるわけでございます。このように、警備業務が複数の警備業者により実施される場合には、現場における警備業者の連携や警備員に対する指導監督が適切に行われますように、警備業者の責任関係及び指導監督関係の明確化等を図ることが必要であるというふうに考えております。

 このため、警察庁におきましては、明石市民夏祭りにおきます雑踏事故を踏まえまして、複数の警備業者が連携して警備業務を行う場合の業務の実施のあり方につきまして、これも、先ほどの指針とはまた別の指針でございますけれども、指針を定めまして、これらの方針を踏まえた適正な警備業務が実施されますように、警備業者に対する指導を徹底しているところでございます。

西村(康)委員 これまで慣例で、契約もなく、あるいは丸投げしたり部分に分けて発注するということがあるようですけれども、ぜひ責任関係を明確にして、一元的な管理ができるようにしっかりと指導していただければと思います。

 このような事故あるいは過去のいろいろな慣例等々を踏まえて今回の警備業法の改正があるというふうに認識をしておりますけれども、その中で、警備員の方々の資質、能力を上げていく、そのために検定制度というもので一定の能力のある人を認定をしていく、検定をしていくという制度があるんだと思います。

 今回、この検定制度についても改正されるということですけれども、この明石の事故なども踏まえて、よりきめ細かな検定内容、より雑踏にも対応できる、あるいは、いろいろな警備があると思います、施設警備もあれば運搬物に対する警備もある、いろいろなものがあると思いますけれども、よりきめ細かにこの検定を行う制度に変えるべきだと考えますけれども、いかがですか。

伊藤政府参考人 検定についてのお尋ねでございますけれども、現在、検定を行っております警備業務の種別といたしましては、空港保安警備、常駐警備、交通誘導警備、そして核燃料物質等運搬警備、さらには貴重品運搬警備等が考えられるわけでございますけれども、今お話のございました雑踏警備は、人の雑踏する場所における事故の発生を警戒し防止する業務でございまして、適切な人の誘導を行うとともに、一たん雑踏事故が発生した場合には被害拡大防止のために的確な措置を講ずる必要があります。このため、これに従事する警備員には、いわゆる交通誘導警備とは異なる専門的知識及び能力が求められるところであります。

 また、雑踏警備は、明石市の市民夏祭りの雑踏事故に見られますように、これが不適正に実施された場合には多くの方の生命もしくは身体に危険を生ずるおそれがありますことから、専門的な知識及び能力を有する警備員を配置することによりまして、その実施の適正を図る必要性が高いというふうに考えられます。

 このため、雑踏警備につきましては、現在は検定の種別というふうにしては行っておりませんけれども、新たな種別の検定を実施する方向で検討を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

西村(康)委員 過去、幾つものこういう事故が起きておりますので、ぜひ、この雑踏警備についても検定を実施していただいて、一定の能力、警備員の方の能力向上を図るというふうに努めていただければと思います。

 この検定制度も、一回受ければもうそれで後はいいというものではなくて、いろいろな世の中の事情も変わってきます、あるいは警備の手法も変わってくると思いますので、本来ですと何年か置きに検定を実施して、さらなるブラッシュアップを図っていくということが必要だと思うんです。

 確かに、警備業界に過度の負担をかけてもいけない面もありますので、今回の改正であります警備員指導教育責任者制度の改正、警備員の方々を統括管理して責任を持って警備を行う責任者の方の制度についても改正を行われるということですけれども、警備員指導教育責任者、この責任者については、より重い責任があると思いますし、常にその能力アップ、いろいろな新しい警備の手法なり世の中の変化に応じて警備の能力を高めていく、そんな必要があると思うんです。よりきめ細かな、責任者の能力向上あるいは責任分担体制、しっかりとそこをつくっていくべきだと思いますけれども、今回の法改正で、その部分はきちっと対応しておられますか。

伊藤政府参考人 最近の治安情勢の変化を受けまして、警備業務を取り巻く環境も厳しさを増してきております。警備員に対する指導教育につきましても、警備業務の専門別に最新の知識を身につけた警備員指導教育責任者により行われる必要があると考えております。そこで、警備業者の専門的な指導教育体制を高めるために、今回、新たに次の点について改正を行いたいと考えているところでございます。

 一つは、警備員を現場で指導します警備員指導教育責任者につきましては、これまで、営業所ごとに選任することとされておりましたけれども、これを、営業所で行う警備業務の区分ごとに選任することといたしたいと考えているところでございます。それと、二つ目でございますけれども、警備員指導教育責任者に選任されている方々に対しまして、定期的な講習を公安委員会によりまして行っていくということを新たに導入していきたいというふうに考えております。

 こうした改正によりまして、警備員に対し、現場の実態に即した実践的な指導教育が可能になってくるものというふうに考えております。

西村(康)委員 定期的に講習なりを行ってブラッシュアップしていく、それから、業務ごとに責任者を置くということですね、ぜひしっかりと対応していただければと思います。

 今回のこういう明石の事故のように、警備会社が、どういう責任があるか、まだ裁判で争っている内容でありますので細かい話はコメントできないと思いますけれども、こういう一定の事故なり事件なりを引き起こした、これは何らかの責任があることは間違いないと思うんですが、このような会社に対してどのような処分なり対応をとるのか、法律上の手当てを教えていただければと思います。

伊藤政府参考人 警備業者が、あるいは警備員が警備業法等の規定に違反したような場合におきまして、都道府県公安委員会といたしましては、警備業法に基づきまして、一定の要件に該当するというときには、当該警備業者に対しまして必要な措置をとるべきことを指示したり、あるいは営業の全部または一部の停止を命ずることとしておるわけでございます。

 平成十四年中でございますけれども、こうした指示あるいは営業の停止等につきまして、警備業者に対しまして総件数百四十六件の行政処分を実施したところであります。内訳を申しますと、指示が百二十七件、営業停止が十六件、認定の取り消しが三件というふうになっております。

西村(康)委員 ぜひ、信頼できる警備業を育てていくという意味でもしっかりと指導をしていただいて、体制ができていないところは適切な行政処分をするということで対応をしていただいて、警備業界、一定の雇用の受け皿ともなっておりますので、信頼できる警備業界を育てるという観点からもしっかりとした指導をお願いしたいと思います。

 関連で、最後に一つ。先般、四月二十八日の夜だと思いますが、羽田空港に、フェンスを突っ切って不審車、車が侵入し、危うく大きな事件になりかけたことがありました。テロのいろいろな危険も今言われておりますし、連休前の人が集まる、たくさん集まる時期にこのような事故が起きてしまった。何の抵抗もなく、障害もなく入っていったということですけれども、空港の安全、警備についてはどんなふうになっているのか、あるいは、この事件を踏まえて、その後どういうふうに対応しているのか、国土交通省からお伺いをしたいと思います。

石川政府参考人 御指摘がありましたように、現在、空港において保安体制の強化が求められている中で、四月二十八日のような事案が発生いたしましたことはまことに遺憾でございまして、航空局としても、事態を重く受けとめているところでございます。

 空港の警備でございますが、空港については、周辺に強固なさくを設けておりまして、さくの上部には有刺鉄線を張るというふうなことで侵入防止措置を講じております。さらには、モニターカメラあるいは赤外線センサー等により、不法侵入が発生した場合でも事態が即座に把握できるようにしているところでございます。

 さらに、ゲートにおきましても、モニターカメラあるいは赤外線センサー等により不法侵入を即時に把握できるようにしているほか、通常使用するゲートにおきましては、強固な扉を設置する、あるいは警備員を配置するというふうな形で不法侵入を防止しているところでございます。

 今回の事件の発生したゲートでございますが、これは仮設ゲートでございまして、国際ターミナルの増設工事というものを行う、これに伴いまして本来の第七ゲートというものを一時的に閉鎖する、これに伴いまして代替として近くの場所に仮設をされたゲートでございまして、短期間で閉鎖されるというものでございましたので、常設のゲート等に比べまして簡易な形でできておりまして、さらにモニターカメラでありますとかセンサー等も設置していなかったというふうなことがございました。さらには、実はこの五月七日からこれを使用するという予定であったものでございますので、当日は警備員も配置していなかったというようなことがございまして、結果として自動車の侵入を許すことになってしまったわけでございます。

 今後の問題でございますが、私どもとして、この仮設ゲートにつきましては事件発生直後から二十四時間の警備員配置というものを行いましたが、四月の三十日には空港管理者、警察、航空会社等から成る東京国際空港保安委員会というものを開催いたしまして、羽田空港における保安体制のあり方について関係者で協議をいたしまして、再発防止のための連携強化というものを確認したものでございますし、さらには、今後、同様の事案が発生することのないように、空港管理者、警察等との間の連携連絡体制の強化、あるいは防護フェンス、ゲートの構造を含めた空港施設の強化、巡回警備の強化、不法侵入対策事案の対応訓練の実施などの諸施策を進めてまいる所存でございます。

西村(康)委員 ぜひ、すき間のないように徹底した安全の管理をお願いしたいと思いますし、国土交通省と警察庁の連携もぜひしっかりととっていただければと思います。

 時間が来ましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

山本委員長 次に、太田昭宏君。

太田委員 おはようございます。

 治安の悪化ということが非常に大きな問題となっている中で、民間の防犯システムということについての警備業の役割については非常に大事なことだというふうに思うんです。

 ですから、きちっと制度としてやらなくてはいけないということはわかるんですが、私は、大臣、非常に大事なことは、今治安が悪い、警察を増員するということも行われた、空き交番をなくすように前進する、さまざまなことがあって、この人たちにも治安ということについて協力をしていただくということになると、単に何か制度をきちっと上から見て厳しくするというよりも、一人一人のこういう仕事に従事している人の仕事の状況というのは僕は現場に行ってよくわかるわけですが、決して安定した収入があったりという状況ではないわけですね。そうしたことも含めて、厳しくする、すっきりするというだけでなくて、やはりバックアップをしてあげるとか、あるいは地位が向上をしていくとか、あるステータスを持たせてあげるというようなことをもって初めて治安というものが私は回復できるんではないかというふうに思っております。

 そういう意味では、ぜひともそうした観点に立って御答弁をお願いしたいし、私はそういう観点に立って質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 非常にふえてきているというこの業者、この状況について、どのくらいの数の業者、また警備員という方がどういう数なのかという概略についてまずお聞きをしたいと思います。

伊藤政府参考人 平成十四年十二月末現在の警備業者数でございますけれども、九千四百六十三業者、警備員数が四十三万六千八百十人に達しておりまして、警備業法の大幅改正が行われました昭和五十七年十二月末現在と比べますと、業者数で二・六七倍、警備員数で三・二六倍となっております。

 しかし、警備業は零細企業が多く、平成十四年十二月末現在の数字でも、警備員が五人以下という業者が二千五百九十六社、全体の約二七%を占めておりまして、百人未満の中小業者は八千六百八十二社ということで、全体の九一・七%に達している状況でございます。

太田委員 零細のところが多いということでありますけれども、その辺の、泥棒を捕らえてみると我が子なりというのがあったりして、最近、えっと思うような事件が発生したりということがあるわけですが、それはそれとして私は特殊な例でいいと思うんですが、チームワークとかいろいろなことが大事なわけですから、そうした観点でいくと、頼んだ方とそして請け負った方ということの中でのさまざまな苦情とかそういうものの内容について、ちょっと、こんな事件がありましたというんじゃなくて、現場の中でどういう苦情があって、何が一番そこの苦情というものをなくすには大事なのかという観点についてお聞きしたいと思います。

伊藤政府参考人 警備業に対する苦情についてでございますけれども、平成十年四月一日から平成十五年八月十七日までに国民生活センターに登録されました警備業務の実施に関する苦情は七百四十件ございます。これらの苦情は年々増加しておりまして、平成十四年度は三百二十三件ということで、平成十年度と比べまして約四倍に達しているという状況にございます。

 その苦情の内容でございますけれども、警備業務を行う契約に関して事前説明が不十分であったというような事例や、必要な書面を交付しないといった事例、さらには契約書面に不備があってという苦情といったことで、適正な契約の締結に関するものが大半を占めていたという状況でございます。

太田委員 新聞ネタになるような事件というよりも、そこの契約とか書面とかそういうことの中にトラブルの因があるということですね、今言ったのは。

 ということからいうと、そうしたことが、この警備業法という今回の改正によってどういう効果というものが期待できるのか、そして、そこのねらいに的確に対応ができているのかということについてお聞きしたいと思います。

伊藤政府参考人 今回の改正におきましては、警備員に対します専門的な指導教育体制が充実されることとなりますので、警備業務の依頼者からの需要に応じた、より適正な、かつ充実した警備業務の実施が期待されるわけでございます。また、社会の安全上重要な特定の種別の警備業務につきましては、専門的な知識及び能力を有する検定合格者の配置が義務づけられることによりまして、より適正かつ充実した警備業務の実施が期待されるところでございます。

 さらに、苦情に関してでございますけれども、警備業者に対しまして契約の際の書面交付義務や苦情の解決の努力義務が課せられることになりますので、警備業務の内容の説明不足に起因する苦情の減少が見込まれますほか、警備業務に関する契約内容の明確化を通じた紛議の抑止が図られるなど、警備業務の依頼者の保護が充実される効果が期待されるところでございます。

太田委員 警備員指導教育責任者の選任を警備業務の区分ごとにしますと、中小の業者の負担というのが重くなるとか、そんなに配置できないよということは常にあるわけですね。そうしたことについて私も心配しまして、あちこちに、きのうも業者の方に聞いたりいろいろしてきているわけですが、意外と、大丈夫ですと言うんですが、なぜ大丈夫かなということが僕はもう一つよくわからなくて、その辺、中小の業者の負担が重くなるのではないのかなと。

 交通誘導等についても、それはかなり、それだけのメンバーをそろえて体制を整えるというのは大変なことじゃないかというふうに思うんですが、その辺の配慮といいますか、それは一体どういうふうになっているのか、また、その辺のことについて十分考えを及ぼして法改正ということをしているのかということについてお聞きしたいと思います。

伊藤政府参考人 まず、警備員指導教育責任者を警備業務の区分ごとに選任することの意味でございますけれども、これによりまして警備員に対する的確な指導や教育が実施されることになりまして、適正な警備業務が確保されることになります。これによりまして、業務災害などの減少が期待されますので、結果的には警備業者の負担を超える効果があるんではないかというふうに考えております。

 また、小さな中小業者等に関してでございますけれども、全体的に警備業者は大変小さなものが多いというふうに申し上げましたが、警察庁において調べましたところ、一つの業者で二つ以上の区分について警備業務を実施している営業所というものが全体の二割に満たないという状況でございまして、約八割の営業所が、一つの営業所で一つの区分の業務しか行っていないという実態がございます。

 ですから、ほとんどの小規模業者につきましては、一つの区分の警備業務を行っているという状況がありますので、そうした小規模の警備業者につきましては、現在行っている、例えば交通誘導警備というものが多いと思いますけれども、そうした警備に係る区分の警備員指導教育責任者を選任すれば足りますので、新たな負担がふえるということにはならないというふうに考えているところでございます。

 また、警備員指導教育責任者の専門性を高めるということにつきましても、警備業界からもその必要性を広く御理解いただいているというふうに認識しているところでございます。

太田委員 二割というふうに今お話がありましたが、その辺については、きめ細かくお話を聞いたりということは丁寧にしていますか。

伊藤政府参考人 これは私どもの方で、実際の各県の実態、すべての県じゃございませんけれども、抽出して調査した結果、一つの営業所で二つ以上の区分の業務をやっているというものは二割に満たないという状況でございます。

 また、警備業協会等の警備業の団体等からもいろいろお話を聞きながら、こうした問題点についてもお聞きしているところでございます。

太田委員 その辺は、法改正後であってもよくウオッチをして、丁寧な対応をしていただきたい、このように思います。

 警備員等の検定について、具体的にどのような改正を行うというふうに考えているのか、お聞きしたいと思います。

伊藤政府参考人 警備員の検定についての改正についてでございますけれども、二つの点について改正を行うというふうに考えております。

 一つは、社会の安全の上で重要な一定の警備業務について検定合格者の配置を警備業者に義務づけるということでございますが、例えば、原子力発電所の警備といった、一度事故が発生した場合に国民の生命、身体、財産に重大な影響を与える社会の安全の上で重要な一定の警備については、その適正な実施が社会的にも要請されているということがございますので、そうしたところに検定合格者の配置を義務づけるということが一つでございます。

 もう一つは、都道府県公安委員会によります検定の実施を義務づけることによりまして、検定の確実な実施を図るということとともに、検定に係る講習につきまして、登録講習機関制度を導入するための規定の整備も行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

太田委員 この登録講習機関制度の果たす役割というのは重要であるというふうに思いますが、こうしたことの制度をつくると必ず、天下りだとかそういうようなことの受け皿になるんだというようなことがあらゆるものによく指摘をされるわけですが、それについては、そういうことはないということについて担保ができているかどうか、お聞きしたいと思います。

伊藤政府参考人 今回の改正によりまして、現行の公益法人による指定講習というものを、公益法人改革に関する閣議決定を踏まえましてこれを廃止しまして、新たに登録講習機関に関する規定を設けるというふうにしております。登録講習機関の登録につきましては、行政の裁量の余地のない形で国家公安委員会の登録を行うこととしておりまして、講習の修了者につきましては、検定の学科試験または技能試験を免除することができることとしております。

 その登録についての基準でございますけれども、科目に関する基準、あるいは施設設備に関する基準、さらには講師に関する基準等を定めておりますし、また、登録講習機関の公正性に関する基準として、登録申請者が株式会社または有限会社である場合は警備業者の商法上の小会社でないことなどを定めているところでございますけれども、こうした登録講習機関というものにつきましては、これらの基準を満たす者はだれでも広く門戸が開放されているということになりますので、こういったところに民間活力を導入して、十分な数の検定合格者の輩出というものが期待されるわけでございます。

 そういった意味で、非常に、法律に書かれました基準に合致しておればだれでもそうした登録講習機関となることができるという趣旨でございますので、そうした意味での確保というものができるのではないかというふうに考えておるところでございます。

太田委員 冒頭で私が申し上げたのですが、警備業の労務単価とか警備料金の現状は、かなり競争も激しくて、下落しているという傾向があるわけですね。そうした観点からいきますと、その下落自体が警備業の中身ということについて信頼性を損なうというようなことになりかねないということだと、今回、こういう制度を整えるということは、あるステータスといいますか、ある信頼性を確保するということでバックアップすることにもなるわけで、そこは非常に大事な分水嶺だというふうに思うんです。

 そういう意味からいきますと、労務単価や、あるいは警備料金の現状ということや、あるいは今回こういう改正によってむしろ単価の下落等を防ぐことになるというふうに持っていってもらいたいと一つは思うこと。

 同時に、警備業務の依頼者の方も、そうしたことをよく理解してやるということが必要だというふうに思うので、今度は警備業者だけでなくて依頼者の方について、何らかのそうした、こういうことをしてという、この趣旨を伝えるということは非常に大事だと私は思いますが、いかがでしょうか。

伊藤政府参考人 警備員の労務単価を見る上で参考となりますのは、公共工事設計労務単価でございまして、この基準額によりますと、交通誘導警備業務に従事する交通誘導員に係る職種の平成十六年度の労務単価の全国平均は七千九百六十円で、平成十五年度の基準額から比べまして二百二十九円、約二・八%減少しているところでございます。

 また、いわゆる警備会社の警備料金は、これに諸経費を加え、労務単価のおおむね二倍程度の金額となっておりますけれども、一方、その警備業務の依頼者の方から見ますと、警備員の検定等の資格や勤務経験に応じてその労務単価等に差異を設ける動きが見られることも事実でございます。

 例えば、建築保全業務共通仕様書の積算基準では、平成十五年度より、警備員の検定等を指標といたしまして、警備員の技能、実務経験等によりまして警備員A、警備員B及び警備員Cといった技能区分を設けております。東京地域を見ますと、警備員Aにつきましては、警備員Cと比べましておおむね約一・六倍の単価が積算されているということでございまして、こうした検定合格者、技能のある方につきましては、ただの警備員といった者と比べましても単価がたくさん高くなっているという状況が見られるところでございます。

 今回の改正では、こうした検定合格者の配置の促進によりまして、当該警備業務につきまして一定の水準を確保するとともに、労務単価や警備料金の適正化を図ることにも資するものというふうに考えているところでございます。

 それともう一点、依頼者の方の問題でございますけれども、警備料金につきましては、警備業者と依頼者との間の契約において定めるものではございますけれども、警備業者の提供する役務の内容に応じてその金額が適切に評価されることが望ましいというふうに考えられます。

 このため、警備業を所管する警察庁といたしましては、今後、警備員の検定が技能区分として労務単価や警備料金の積算基準に適切に反映されますよう、例えば交通誘導警備であれば、工事の発注を行っている道路管理者を監督する国土交通省など関係省庁等にも働きかけを行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

太田委員 最後になりますが、大臣、この警備業に携わる人が四十四万人ということになりますと、警察の二倍になるわけですね。非常に、今西村先生からの羽田空港のお話もありましたが、すべてを警察でやったりとかいうようなことができないわけですから、それについても、検定を受けたり、さまざまなことの中で協力をする体制というものは極めて重要なことだし、治安ということになると、情報だけでも非常に大事なことですね。

 我々も町を歩くと、いろんなお話で、ここをこうした方がいいとか、交通はこうした方がいいとか、ここには狭くて渋滞が発生するというような現場の話もいろいろあるわけで、私は、治安ということが今非常に大事な問題になっている中で、ぜひとも治安という面で、この四十四万人に及ぶ人たちが国のためにも貢献をしていただく、そのためにも、警察との連携を初めとするそうした対応をするということは非常に大事なことではないかというふうに思いますが、最後にその辺の答弁をお願いしたいと思います。

小野国務大臣 警察といたしましては、警備業務を適正に実施させる観点からこれまでも警備業務者を指導してまいりましたけれども、今先生おっしゃってくださいましたように、今後は、厳しさを増します治安情勢を踏まえまして、治安を守る、いわゆる国民生活の安全を守るという観点から、国民自主防犯活動を補完しまたは代行する生活安全産業として警備業を積極的に位置づけまして、督励してまいりたい、そのように考えているところでございます。

太田委員 終わります。

山本委員長 次に、山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。本日は、警備業法の改正案について質疑をさせていただきます。

 今回の警備業法の改正によりまして、警備業の信頼を高める、そういう立法趣旨でいろんな諸手当てがなされるようでございますけれども、そもそも刑法犯が増加するなどして我が国全体の治安が相当悪化しております。治安の安定を、治安を守るという、その一翼を警備業に負わせる、担わせるということに今回の警備業法の改正の趣旨があると理解してよろしいんでしょうか。まずその点からお聞きしたいと思います。

伊藤政府参考人 警備業というものにつきましては、国民の自主防犯活動を補完したりあるいは代行したりするものでございまして、あくまでも警備業というものは国民が行う活動というものを補完するものでありますので、一翼を守るというのがどういう意味かちょっとわかりませんけれども、国民が行うそれぞれの防犯活動というものの一端を担うという意味では、そのとおりであろうかと思います。

山内委員 私は、治安を守るという仕事を警備業にも担わせる趣旨なのかどうかということをお伺いしたんですけれども。しかしながら、治安を守る事業そのものは、本来、警察の仕事ではないかと思うんですが、その点は間違いないんでしょうか。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 警察の責務として国の治安を守るということがその大きな使命であることは、そのとおりであろうかと思います。

山内委員 守るというのが使命であるということを聞いているんじゃなくて、そもそもの治安を守るということは、本来、本来的に警察の仕事ではないかと聞いているんです。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 治安を守るという仕事は本来的に警察の仕事であるというふうに考えております。

山内委員 大臣、だとすると、例えば、イベント会場などの雑踏事故があった場合に、主催者が悪い、あるいはプロデューサーが悪いというように、ほかに責任を押しつけるというようなことはないということだと思うんですけれども、そのとおりでしょうか。

小野国務大臣 主催者であります都道府県のいずれかとそれから開催者であります市区町村も当たるかと思います、それと依頼をいたします警備会社、そしてまた私ども警察、その三位が一体となりまして、そういう事案に対しましては遺漏なきようにということを考えていくべきものだ、そのように思っております。

山内委員 質問通告をしたのが明石の花火祭りでのことなんですが、ちょっと先取って言っておられるのかもしれませんが、私が最初からお聞きしているのは、まず、警察が第一義的に治安についての責任を負う、そういう役職なんだということを確認しているんですけれども、大臣、どうなんですか。

小野国務大臣 先生おっしゃるとおりだと思います。

山内委員 だとすると、主催者が悪い、プロデューサーにも責任がある、そこと市が雇った警備会社にも責任があるんじゃないかというような、他に責任を転嫁するような主張はされないでしょうねという確認をとっているんです。

小野国務大臣 理屈の上では、先生、そうなるかもしれませんけれども、やはり主催者にも責任があるだろうと思いますし、そしてまた私ども警察にも責任はもちろんございますし、あわせて、警備会社に依頼したのであれば、その三位が連携をとりながらやはりやっていくべきものである、そのように考えております。

山内委員 そうすると、連携をとる、その連携の責任者はだれなんですか。

伊藤政府参考人 雑踏警備におきましては、まずそうした行事の主催者、そしてその主催者から依頼を受けた警備業者、そして警察、そういったものが連携をして行事の安全を図っていくということは当然のことでございまして、連携というのはそれぞれが連携をするということであると考えております。

山内委員 では、だれがその連携をとる、連携の場を持とうと言うその責任者はだれになるんですか。だれが呼びかけてその連携の場で話し合いを持って、こういうふうに、例えば警備をしっかりしようというような、その主たる責任者はだれなんですか。

伊藤政府参考人 警察庁では、大規模イベントを含め、雑踏事故防止に係る行事等の主催者及び警察の責務に関する考え方といたしましては、行事等が行われる場合におきまして、行事の規模のいかんを問わず、主催者は、行事の開催により雑踏を生じさせる原因者としての自主警備というものはまずやっていく必要があるだろうということでございますし、警察は、警察法第二条に定められました責務を果たすために、主催者に対して必要な指導を行いますとともに、警察部隊の投入が必要と判断される場合におきましては、事前に必要な準備の上、雑踏警備計画を作成し、主催者と連携して必要な事故防止対策を講ずることにより雑踏事故の防止を図るべきというふうに考えているところでございます。

山内委員 そうすると、治安を守るということは警察の主たる仕事ではなくて、主催者あるいはそこが雇った警備業者にも治安の維持をやらせるということにつながるんですか。

伊藤政府参考人 私が申し上げておりますのは、行事の主催者というものはまず行事の安全を図るという責任があるということでございますし、警察といたしましては、そうした行事というものが雑踏事故につながるおそれがあるというふうに考えますときには、主催者に対して必要な指導を行う必要がありますし、また、大きな行事でございまして警察部隊の投入が必要だというときには、主催者と連携を図りながらそうした雑踏事故の防止に努めていかなければならないということを申し上げておるのでございます。

山内委員 だとしたら、例えば明石の事故の後に、例えば県警本部内に雑踏警備実施指導官を置く、あるいは各警察署の中に雑踏警備実施主任者を置く、一定規模以上の行事については県警本部で把握する、一警察署ではなくて県警本部でも把握する、こういうような指導を徹底されたということと今の発言は一致しますか。

伊藤政府参考人 行事と申しましてもいろいろな規模がございます。極めて小さな規模の行事であれば、主催者が安全管理を行うだけで雑踏事故等が防げるものもございますし、やはり大きな行事になりますと、警察と一緒になって連携しながら事故の防止のために努めていくというものもございますので、そうした意味では、規模の大小等によりまして、極めて大きいものにつきましては県警本部においてもしっかり把握しておく必要があるということでありますので、先ほどのお話とは特に矛盾はないと考えております。

山内委員 主催者の自主警備が原則であるとまでは言われないんですか。

伊藤政府参考人 行事の主催者というものは行事を実行する人でございますので、その行事の安全あるいはそういったものに対して当然責任があることは事実でございます。

山内委員 いや、原則かと聞いているんですよ。

伊藤政府参考人 原則というちょっと意味がわかりませんけれども、行事の主催者が行事の安全について責任を持つということは、これは原則でございます。警察が治安に責任を持つということもまた原則でございます。

山内委員 警察官が刑事訴追を受けているこの明石の花火大会の事件で、主催者の自主警備が原則であり、警察は補充的な職務であるとか、あるいは民事事件でもそういうような主張をしているんじゃないですか。

伊藤政府参考人 現在、兵庫県明石市内におきまして起きました、明石市民夏祭りが開催された際に発生しました雑踏事故につきましては、平成十四年十月三十日、死亡者の遺族から、兵庫県、明石市及び警備業者に対して損害賠償を求めて訴訟が提起されているところでございます。兵庫県警察が当事者となっている事案でもございますし、また現在係争中の事案でもあり、その内容については答弁は差し控えたいと考えておりますけれども、その内容については今現在裁判上でいろいろな議論が行われているというふうに聞いております。

山内委員 主催者や警備会社にも警備についての責任があるという主張をするとするならば、警備会社に何らかの法的な権限が与えられているのですか。

伊藤政府参考人 法的な権限というか、警備業者というものにつきましては、依頼者からの依頼を受けて警備業務を行うというものでございますので、主催者から依頼を受けて今回警備業務を行ったというものでございますけれども、そうした意味で、依頼を受けて業務を行っているという限りにおいての責任はあろうかと思います。

山内委員 いや、私が聞いているのは、警備会社に治安の維持とかあるいは警備についての法的な権利があるのかと聞いているんですよ。

伊藤政府参考人 治安の維持あるいは治安の責任という意味での、いわゆる公権力の行使という意味での法的な責任をお尋ねかと思いますけれども、公権力の行使という意味では、警備会社は、一切そうしたものは、権限は持っておりません。

山内委員 そうすると、例えば、たくさん人が来たからとまれと言う、あるいは迂回をさせる、あるいはこの駐車場は使ってはいけない、あるいは逆方向にでも車をその状況に応じて逆進させる、そういうような権限は警備会社には一切ないということでしょう。

伊藤政府参考人 警備会社は、主催者の依頼を受けて業務を行っているわけでございます。そういった意味で、主催者が……(山内委員「いや、今言ったような権限を具体的に聞いているんですから、あるかないか」と呼ぶ)ですから、警備会社が、主催者が例えばその地域の管理者としますと、管理権限というものは主催者は持っておりますけれども、その管理権限の一部を実際に主催者に成りかわって行使するということはあると思います。

山内委員 例えば、どういうことですか。公権力の行使は法的な権限がないということと、今おっしゃったことはどう関係するんですか。

伊藤政府参考人 具体的に申しますと、例えば、ある敷地を警備業者が警備しているということがございます。その際に、警備業者はその敷地の管理者から実際に依頼を受けて警備業務を行っておるわけでございますので、そこにやってくる人たちに対して、いろいろと話を聞いたり、ここから先は行ってはいけないというようなことにつきましては、いわゆるその事物の管理者の管理権に基づいて行うということがあるわけでございます。

山内委員 それはだから、私有地とか私有の管理駐車場の件でしょう、例えば明石市が頼んだ場合でも。

伊藤政府参考人 もちろんそうでございますけれども、例えばそういった行事において行う場合においては、主催者としては参加者に対していろいろな協力を求めるということは当然あるわけでございまして、そうした協力を求める中におきまして、こちらの方に行ってほしいとか、こちらの方に進んでほしいとか、こちらから先は危険なので行かないでくださいというようなことは、現実に行われているところでございます。

山内委員 そんなお願いとか協力とかの問題じゃなくて、警備会社にそういうふうに、群衆が来たら群集心理が起きないように何か規制をしたり、違う道路を通ってもらうとか、一般の国道、国道二号線が走っているわけですね、国道については明石市がどうこう言うことはできないでしょう。そういう具体的なことを聞いているんですよ。法的な権限ですよ、協力とかじゃなくて。

伊藤政府参考人 国道における交通規制の権限というものは、これはまさに警察の方でその権限を持っているわけでございますので、車について、進入してはならない、あるいはこちらの方に通行しろというような指示は警察官が行うものでございます。

山内委員 もう一つ言わせていただくと、雑踏警備実施要領というのがありまして、警察は主催者に、これは危ないなとか、これは指導した方がいいなと思えば、積極的にそういう指導、勧告を行う義務が規定されているんじゃないんですか。

伊藤政府参考人 警察としましては、いわゆる主催者が……(山内委員「あるかないかでいいんですよ。一時間しかないから」と呼ぶ)はい。

 そうした主催者に対して指導を行うことは当然警察の仕事であるというふうに考えております。(山内委員「いや、書いてあるし義務があるでしょうと聞いたんですから、それに答えてください」と呼ぶ)警察としては、治安の責任を維持する義務がございます。

山内委員 その言葉を聞きたかったんですけれども。

 そうすると、警備業に治安を守ることについて一翼を担っていただくという最初の発言というのがどうも怪しくなりますし、今、大臣、ちょっと細かい議論までしたんですけれども、治安を維持するという責任について、やはり警察として、自分たちが責任を持ってやります、そういう警察の自覚が、例えば検挙率などを見てもちょっと今薄らいでいるんじゃないかと私は思うんですけれども、大臣はどう思われますか。

小野国務大臣 警備業のお話と治安の問題とが絡んできたわけでございますけれども、検挙率の問題等々は、御案内のとおり、昨年は二百七十九万件の刑法犯認知件数、こういう非常に多発しております現状から、先生も御心配いただいておりますように、警察官の人員の問題等も絡んでくるわけでございまして、そしてまた、犯罪も、国内はもとより来日外国人の問題等々も起こっておりますし、まさに我々警察の方といたしましては全力を挙げて取り組んでいるわけでございますけれども、多発いたします事案に正直申しまして追いつかないというのも現状でございます。

 そういった中におきまして、今後の対策を考えながらも、警備業務の方々につきましては、それはそれなりの、それぞれの地域の業態の中において御協力をいただくということは、警察にとりましても大変ありがたいことであると認識をいたしております。

山内委員 だから、警備業について、協力を願うという存在、確かに警察から見ればそういう存在だろうと思うんですが、現行警備業法の第一条に、警備業の規制を定め、「警備業務の実施の適正を図る」という書き方がしてございまして、警備業という業界が、警察にとっては規制を定める、つまり警察に取り締まられるものだというような規定の発想で法文ができていると思うんですが、この点についてはどういうふうに考えたらいいんでしょうか。

伊藤政府参考人 警備業法の第一条に、御指摘のように、「この法律は、警備業について必要な規制を定め、もつて警備業務の実施の適正を図ることを目的とする。」というふうに書いてございますけれども、この「警備業務」というのは、本来、国民の自主防犯活動というものを補完したり代行したりする業務でございます。

 そういった中で、やはり、この警備業法の第八条にございますけれども、「警備業者及び警備員は、警備業務を行なうにあたつては、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意するとともに、他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない。」というふうに書いてありますように、その警備業務を行うに当たりまして、ややもすれば他人の権利及び自由を侵害する場面もあるかもしれないということも含めまして、こうした警備業務の「実施の適正を図ることを目的とする。」ということがこの法律の第一条に書いてあるということでございます。

山内委員 ですから、警備業というのは、まず警備業者あるいは警備員に対しての規制を定めることが警備業法の第一条に規定してある趣旨であるし、今たまたまおっしゃったように、八条にも、特別な権限は警備員さんや警備会社には一切与えられていないんですよと念を押した規定になっているんですね。これじゃ、先ほどからお話をしているように、警備員あるいは警備会社に治安を守ることについての責任を持ってくださいよと言うのは、この条文の書き方からしてもなかなか困難なものがあるんじゃないでしょうか。

伊藤政府参考人 私、最初に御答弁申し上げましたときに、治安の一翼を担うというふうには申し上げませんでした。国民の自主防犯活動を補完しあるいは代行するという意味で、国民の自主防犯組織の一端を担っているというふうに申し上げたと考えておりますけれども、治安の一翼を担うといいましょうか、治安責任というものは、先ほども申し上げましたとおり警察がその多くを負っているところでございますので、そうした意味では、警備業者というものは、あくまで国民の自主防犯活動の補完あるいは代行を行うものというふうに考えております。

山内委員 治安について、多くの責任じゃなくて、第一義の責任ですよ。

 私は、この第一条の規定ぶりなんかにしても、例えばクリーニング業法には「その経営を公共の福祉に適合させることを目的とする。」という書き方がありますし、NPO法人法には「健全な発展を促進」するというような文句があるんですが、今回のように、教育を十分にしてほしい、あるいは契約をしっかりとしてほしいというような規定をしてどんどん警備業界の質の向上を図るというような改正の趣旨だと思うので、そういうような、今まで、警備業者の皆さんには一切権限を与えません、あなたたちがまだ国民に認知もされていないし、どんな活動をするかもわからないので規制を加えますよ、特別な権限は一切与えないというのをまた八条にも念を押していますよというような書き方ではなくて、もう少し、警備業務をしっかりやってくださいというのが、警備業者の皆さんもわくわくするような規定ぶりというのは考えないんですかね。

伊藤政府参考人 今御指摘のありましたような法文の規定ぶりというものにつきましては、いろいろ警備業界の置かれている現状、あるいは国民のさまざまな警備業に対する認識等々、多方面からの御議論等をいただきながら、そしてまた多面的に検討しながら考えていくべきものだというふうに考えております。

山内委員 さて、先ほどから出ています明石の夏祭り花火大会の件ですが、二〇〇一年七月二十一日、雑踏事故が起きまして、十一名が死亡、重軽傷者二百四十七名。

 このような事件は、一九五四年の二重橋事件が死者十六名、重傷者三十名、一九八七年、日比谷野外音楽堂でのラフィンノーズ事件、これが死者三名、重軽傷二十名など、過去に何度もありますし、当該の明石においても、その半年前の年末のカウントダウンライブでも雑踏事件が起きている。もう二度と雑踏事件を起こさないためにかなり周到な警備計画がこの花火大会のときにもまず必要だったと私は思うんですが、この事件は、雑踏事故で初めて警察官が刑事事件に問われるということになりました。

 まず、その事故が起こった直後の国会でも少し議論はあっていますけれども、改めて、大臣、この事件についてはどう思っておられますでしょうか。

小野国務大臣 先生からいろいろ御指摘をいただいて、これまでの数々の事案が生かされていないのではないか、そういう思いで御質問いただいたと思いますけれども、先ほども申し上げましたけれども、まさに、亡くなられた皆様方には改めて哀悼の意を表したいと思いますし、この件で明石市あるいは警備会社あるいは警察の三位一体としての連絡が密に至らなかったという点が大変大きな反省事項としてまずございます。

 それと同時に、そういうことを受けながら、警察の方といたしましては、雑踏事故防止に対しまして、るる留意事項を再確認いたしますとともに、雑踏事故防止に対する体制を確立する、その通達を発出するなど、いろいろと努力をさせていただいたところでございますし、こうしたことにおきましても、今後、この種の事故の再発を防止するための施策をるる講ずるように、私自身も警察を督励してまいりたい、そのように考えているところでございます。

山内委員 先ほど「雑踏事故の防止について」の通達をお読みしたんですけれども、前の年の七月の二十一日に起きた事故で翌年の五月九日に通達が出ているんですけれども、これはどう考えたらいいんですか。

伊藤政府参考人 確かに、兵庫県明石市におきまして発生しました雑踏事故を受けての通達は翌年の五月ということでございますけれども、これは、当該雑踏事故につきましてのさまざまな検証というものを行っていたわけでございます。また、事件捜査というものも同時並行的に行われておったわけでございまして、そうしたものが一段落した、そして検証が終わったということで、平成十四年五月に通達を発出したものでございまして、確かに時間はかかっておりますけれども、その間、そうした事故の状況についての詳細な検証を行った期間であったというふうに考えております。

山内委員 大臣、これは通達を出していると大臣が今言われましたけれども、本当に十カ月もたってからの通達なんですよ。こんな大きな、十一人死亡、二百四十七人重軽傷ですよ。こういう事件が起きていて、警察としてどこに問題があったのかというのをすぐに検討しておられたら、前の年の七月二十一日に花火大会があったわけですから、それから何日か、何週間かたって通達が出ているんならまだわかるんですよ。ところが、翌年の、だから十カ月もたってから通達が、それも一回しか出ていないんですよ。

 今何で十カ月もおくれたのかと聞けば、刑事事件で送致された日に合わせて通達を出したというんでしょう。これなども、例えば七人、刑事事件として挙がって、そのうちの五人、つまり幹部の二人だけは免れて、五人だけ事件になりそうだ、そういうような方向性がわかってから通達を出した。これは余りにも遅くないですか。

伊藤政府参考人 先ほど申し上げました「雑踏事故の防止について」という局長通達は平成十四年五月に発出されたわけでございますけれども、これにつきましては先ほど申しましたような事情でこの時期になったわけでございます。

 いわゆる明石の事故が起きまして後の警察庁の対応といたしましては、「夏祭り等における雑踏事故の防止について」という形で七月二十三日、これは事故の直後でございますけれども、全国の都道府県警察に対しまして、こうした夏祭りにおいての事故というものに対する考え方について通達を発出したところでございますし、その後も、十三年の十一月でございますけれども、「年末年始における雑踏事故の防止について」という形での、時々に応じた通達を出したということでございます。

 これらはいずれも課長通達でございますけれども、全国の都道府県警察に対する指導という意味においては局長通達とも同等の意味を持つというふうに考えております。

山内委員 大臣、この事件で警察署長が最初不起訴になっているんですが、警察署長は責任がないんですか。

小野国務大臣 その処置に関しましては、私からコメントする立場にはないと思います。

山内委員 十数万人が一挙に、本当に百メートルほどの狭い歩道橋に何万人と押しかけていく、それでこういう事件が起きたわけですけれども、それでは、こういう事故が起きるかもしれないと把握している警察署の署長としては、どういうことをすべきだったと思われますか。

伊藤政府参考人 警察署長としては、こうした大きなイベントがあって雑踏が予想されるというときには、まずやはり事前から主催者あるいは主催者の依頼を受けて行う警備業者とよく連携をとりまして、そうした雑踏事故防止対策というものをとるべきでありましょうし、また、必要に応じて部隊を投入するに当たりましては、全体の雑踏警備計画というものも策定する責任がございましょうし、また、こうした行事の当日におきましては、全体の責任者としてこうした雑踏事故の防止のためにさまざまな指揮というものを行う必要があるというふうに考えております。

山内委員 しかし、当該の警察署長は、記者会見でもそれから民事の裁判でも、自分は警察署内にいて現場にいなかったから現場の動静について十分把握できなかったので責任はないと言っているんじゃないんですか。

伊藤政府参考人 当該警察署長が具体的にどのような発言をなされておるかということについては、申しわけございませんが、詳しくは承知しておりませんけれども、基本的には、警察署長のやるべき仕事というものは先ほど申したようなことであろうかというふうに考えております。

山内委員 大臣は、この警察署長と副署長が起訴されなかったということで被害者の人たちが怒られまして、検察審査会に、こういう人たちこそ起訴されるべきだ、そういう申し出をされて、検察審査会で明石警察署の署長と副署長については起訴すべきだというような判断が下されたことについては、まず、御存じでしょうか。

小野国務大臣 存じております。

山内委員 一般論でいいんですけれども、この議決についてはどういうふうに思っておられるでしょうか。

小野国務大臣 一般論と申しましても、私は今、国家公安委員長という立場でございまして、検察審査会の決定自体につきましては私の立場ではコメントすべき立場にはないということを申し上げたいと思います。

山内委員 この事件で警備業者についても刑事事件が問われているんですけれども、警備業者はこの明石の花火大会ではどういうふうにすべきだったんでしょうか。

伊藤政府参考人 明石市民夏祭りにおきます雑踏事故におきましては、主催者である明石市、またその委託を受けた警備会社及び明石警察署の、関係三者の雑踏事故の危険性に対する認識の甘さがあったというふうに考えられますし、警備計画、警備措置あるいは関係者間による連携等におきましてそれぞれ不十分な点があったものと認識しております。

 この明石市民夏祭りにおきます花火大会事故調査報告書によりますと、警備業者の問題点としましては、一つとして、安全への配慮の欠如ということで、事前の警備に関する協議、準備の内容が、警備員の数の確保とその配置というみずからの警備体制の編成や指揮命令系統の徹底化など警備体制内部に向けた協議に偏っており、雑踏に対する安全への配慮は欠いたままであったということでありますとか、不十分な警備計画ということで、警備業者作成の警備計画書は、半年前のカウントダウンイベントの際の警備計画書と酷似する部分があり、事故現場である朝霧歩道橋付近に関する雑踏警備対策部分は特に顕著であって、丸写しの疑いが濃厚である。また、混乱が起これば対処するとか、臨機応変に警察の援助を得て対処すればよいとの考え以上に出ることなく、警備業務のなれも手伝い、いわば出たとこ勝負で対処して切り抜けようという安易な考え方に終始していたもので、無為無策であったという二点が挙げられておるというふうに承知しております。

山内委員 だとすると、最初から、つまり警備計画の段階から、警察は警備会社としっかりと警備計画を作成する、そういうことができていなかったということになるわけですか。

伊藤政府参考人 この雑踏事故といいますのは、先ほど申しましたとおり、三者の雑踏事故の危険性に対する認識の甘さがあったということで、警備計画、警備措置あるいは関係者間における連携というものについてそれぞれ不十分な点があったというふうに考えております。

山内委員 しかし、警備計画を立案する最初の段階から警察と明石市が話し合う場に警備会社が来る法的な義務というのは、どういう条文から出てくるんですか。

伊藤政府参考人 警備会社は、主催者の依頼を受けて警備計画を策定しているわけでございます。そういった意味で、警察と主催者が事前の計画について話し合い等をする場合におきましては、いわゆる警備計画を策定しております警備会社もそうした主催者の一員として警察と話し合うということは、よく行われていることでございます。

山内委員 よく行われているんじゃなくて、最初、警備会社にも責任がある、三者三様の責任があるとさっきからおっしゃっているわけですから、その警備会社は警備計画を作成するときに、どういう法律上の根拠に基づいてそういう警備計画案を作成する場に出向いてこなくちゃいけないんですかと聞いているんです。

伊藤政府参考人 警備会社が法律に基づいて出向いてこなければならないということではございません。あくまで、主催者の依頼を受けて警備計画を策定するわけでございます、主催者としての警備計画を。そうしたときに、警察と主催者が事前に打ち合わせ等を行う場合におきまして、その警備計画を策定したいわゆる担当者としてその場に出席するわけでございます。

山内委員 現場で警察官から指示を受けて警備業者が、例えば、警察官が行っていろいろな指示ができないところに警備会社の者を行かせて、警察官のかわりに指示をさせるというようなことも現場でなされるわけですか。

伊藤政府参考人 警備員が警察官のかわりの仕事を行うことは、警察官は公権力の行使というものを行うことができるわけでございますが、警備員には公権力の行使ということは行うことはできませんので、かわりを務めることはできませんけれども、あくまで主催者側の一員として、その警備に際しまして安全の確保のためにさまざまな活動をするということは当然考えられることでございます。

山内委員 それでは次に、空き交番の問題についてお聞きしたいと思います。

 空き交番が発生する原因についてはいろいろあると思いますけれども、大きく言うとどういう点なんでしょうか。

伊藤政府参考人 空き交番が発生する原因というお尋ねでございますけれども、近年、事件、事故等が急増いたしまして、交番勤務員がその対応に追われているということ、あるいは、悪化する治安情勢に対応して交番勤務員によるパトロールを強化しているということ、さらには、夜間における警戒力強化等のため交番を増設してきたことなどの要因によりまして、交番勤務員が交番に不在になることが多くなってきておりまして、いわゆる空き交番問題が生じているところでございます。

山内委員 報道で、空き交番に警備会社の警備員を駐在させるという記事を見ました。五月一日から神奈川県警伊勢佐木署の空き交番に警備会社の警備員を駐在させる制度、名前が安全・安心サポート隊と言うそうなんですが、そもそも、空き交番対策は警察官の人員増で賄うべきではないかと思うのですが、どうでしょうか。

伊藤政府参考人 まず、神奈川の伊勢佐木警察署において行われております安全・安心サポート隊というものについてお答えをしたいと考えますけれども、これは、安全、安心な町づくりを目指しまして神奈川県伊勢佐木警察署と神奈川県の警備業者三社が協定書を締結したものでございまして、警備業者が、勤務中かどうかを問わず、犯罪等を発見した場合には警察署に提供する、あるいは地域安全パトロールを行うというものだというふうに聞いております。そうした、警備業者が把握した情報の提供あるいは安全パトロールというものを行っているものでございまして、空き交番対策として警備員を交番に常駐させているというものではないというふうに聞いております。

 そしてまた、空き交番対策の一番のかなめは何かということでございますけれども、やはり、警察官の増員というものがそうした意味では大変大きなかなめになるというふうに考えているところでございます。

山内委員 そうすると、空き交番に警備会社の警備員が毎日正午から午後五時まで、二人一組で交番六カ所を巡回する、この記事は間違っているんですか。

伊藤政府参考人 私もこの記事を拝見いたしましたけれども、必ずしも正確ではないというふうに思います。私の方も神奈川県警の方に尋ねてみましたところ、基本的には、先ほど申し上げましたように、警備業者が把握した犯罪等の情報の通報、あるいは地域安全パトロール等を行うものでありまして、その際に交番等に立ち寄るということはあるというふうには聞いております。

山内委員 警備業者三社を頼むということなんですが、この三社の選び方はどういう基準があるんですか。

伊藤政府参考人 警察といたしましては、地域の安全確保のために、各地域の防犯ボランティアの活動を支援することとしておりまして、警備業者につきましても、警備業者に特別な負担をかけない限度におきまして連携を図っていくということでございます。

 どういった形でこの三警備業者がこうした地域の自主的な防犯活動に参加しておるかは承知しておりませんけれども、それぞれが行われておる地域の自主的な防犯活動の一環であろうというふうに考えております。

山内委員 自主的な防犯活動の一環であっても、交番を利用するわけですよね。ですから、もちろん、地理を尋ねてきた人には案内をするでしょうし、事件や事故がその交番の周囲で発生した場合には警察署などへの連絡もするでしょうし、地域の人たちがちょっとした相談に来るかもしれません。そういうことを考えると、単なる、地域の人が交番を六カ所寄るというのとは全く違うと思うんです。だから、例えば、その人たちは、その交番に五分でも二十分でも一時間でもいたときに、今言ったような仕事をしたときには、何か業務日報みたいなものも書くんですか。

伊藤政府参考人 警備業者の方でどのような記録を作成しているかにつきましては承知しておりませんけれども、パトロールの際に自主ボランティアあるいは地元の自主防犯組織の方が交番に立ち寄るということについては、通常も行われていることだと思います。

 なお、警察職員でない者ではございましても、交番に立ち寄った際に地理案内や事件、事故発生時の警察官への連絡等を行っていただくことは問題ないというふうに考えておりまして、伊勢佐木署におきましても、そうした範囲内で協力をお願いしているというふうに聞いております。

山内委員 今のお話だと、警備員が交番に例えば何分間でも何時間でもいて交番で見聞したことの報告は、では、警察署には上がらないということになるんですか。

伊藤政府参考人 いえ、警備員が交番に立ち寄った際に地理案内を行ったり、あるいは事件、事故発生時に警察官へ連絡等を行っていただくということはあると思いますので、そうした際には、こうした事件、事故の発生の情報につきまして警察の方に連絡していただけるものというふうに考えております。

山内委員 空き交番に警備員がいたときに、交番の襲撃で死傷したときなどには、その補償はどうなるんですか。

伊藤政府参考人 補償ということでございますけれども、いろいろなケースが考えられるのではないかというふうに考えます。

 それぞれ、その会社にとってその警備員の業務というものが果たして会社の業務であるのかどうかということが一つあると思いますし、そうした場合においては、会社との関係においてどういった補償がなされるのかということもございましょうし、また、一般的に、地域住民の方がボランティアとして防犯活動を行われるというようなときには、ボランティア保険等に加入されている場合もございます。そうしたときにはそうしたボランティア保険といったものが適用されるということも考えられますし、また、警察官に協力援助した人がいろいろな意味で障害、死傷の事故を負ったというような場合におきましては、警察協力援助者給付金という制度もございますので、こうしたケース、ケースに応じてそれぞれの対応がとられるのではないかというふうに考えております。

山内委員 さて、大臣、私も大手の警備会社から小さな警備会社まで何社か聞き取りをさせていただきました。特に小さな、数十人単位でやっている警備業者が今一番困っていることは何だと思われますか。

伊藤政府参考人 中小の警備業者の方の声をお伺いいたしますと、やはり、警備料金といったものが大変最近は低下してきておるというようなことが一つの大きな問題ではないかというふうに考えておるところでございます。

山内委員 私もそういう声をたくさん聞きまして、警備業者が不況のあおりを受けて、単価の切り下げで大変困っているという状況なんですね。

 今回、何日もかけてしっかり教育しなさいよとか、講習や検定試験を受けに行かせなさいよというような改正があるわけですけれども、警察庁が大きな負担をこういうふうに与え続けて、果たして、特に地方の中小の警備業者がもつのかなということも考えます。

 教育課程を今よりふやすんじゃなくて、今ぐらいの教育課程に維持していても、検定を受けているしっかりとした社員が現場で具体的に指示をすれば事故や問題は防げるんじゃないかと考えるんですが、今回の法改正というのはどうして必要なのかなと思うんですけれども。

伊藤政府参考人 今回の法改正の趣旨、大きく申しまして二つございます。

 一つは、警備員の質の向上と申しましょうか、知識、能力の向上ということでございまして、そのための警備員指導教育責任者の充実と、あわせまして、警備員検定制度の充実ということでございます。

 もう一つが警備業務の依頼者の保護ということでございまして、依頼者に対しまして契約の事前、事後におきまして書面の交付を義務づけたり、あるいは警備業者に対しまして、さまざまな苦情の解決義務といったものについて書いたものが今回の内容となっているわけでございます。

 そうした意味で、今回どの点が、負担を押しつけるのかとおっしゃいましたでしょうか、ちょっとわかりませんけれども、負担についてでございますけれども、検定を受けた警備員がふえることによりまして、警備現場におきます警備業務に従事します警備員に対する指導、教育というものは充実していくものというふうに考えております。

山内委員 道路交通法の改正が参議院で議論されているようですけれども、駐車禁止の取り締まり業務の一部を警備業者に任せようという法改正、警備業者に任せるということは書いていないんですけれども、一番最適なのは多分警備業者でしょう。だから、警備業者に任せるような法改正がなされているようですけれども、これなども、駐車違反といっても、今、罰金刑なわけですから、刑事事件です。だから、警察あるいは交通巡視員を積極的に雇用するという方向で賄うべき論点じゃないかと思うんですが、どうですか。

人見政府参考人 今回の改正案では、放置された違法駐車車両がある事実の確認と、この事実を確認した旨を記載した標章の取りつけを民間に委託できることとしております。

 これらの活動は、車両の使用者に対する責任追及の準備行為にすぎず、私人の権利を制限し、または義務を課すような公権力の行使でもなければ、犯罪捜査の一部でもございません。

 したがいまして、放置車両確認機関による確認事実に基づく使用者の責任追及手続においては、納付命令の要件の存否を認定し納付命令を課すという公権力の行使については、これは公安委員会により行うものでございます。

 また、放置駐車違反をした運転者が出頭した場合などにおいては、刑事事件として犯罪事実を認定し、被疑者を特定し、立件するといった犯罪捜査、これは今後とも警察により行われるものでございます。

山内委員 それじゃ、交通巡視員を雇う費用と、それから警備会社へそういう駐車違反などの取り締まりについて委託をする費用とは、どう計算して、どちらが安くなるとか試算しているんですか。

人見政府参考人 一般的に申し上げまして、比較的単純、定型的な業務については、民間に委託する方が警察職員を雇用するよりもコストの面では低くなるものと思います。また、民間委託であれば駐車違反の実態に応じて委託する業務量を柔軟に設定できること、こういったことから、確認事務につきましては、警察官等の増員ではなくて民間委託を行う方が費用対効果、効率性がよい、こう考えておるところでございます。

山内委員 そんな一般論を聞いているんじゃなくて、どういうふうに費用が安くて済むようになるんですかと聞いているんですよ。

人見政府参考人 まだ法案の審議中でございますので、具体的数字をもってお答えすることはちょっとできませんが、今後検討してまいります。

 ただし、一般論として申し上げますと、先ほどお答え申し上げましたように、低コスト、効率性はいいのではないか、こう考えておるところでございます。

山内委員 大臣、最初にお話しさせていただきましたけれども、凶悪犯罪の検挙率が、このたった五年間で八四%から四八%に落ちているんですね。この落ちた原因は先ほど言われたような問題点があるかもしれませんが、しかし、原因としてはいろいろ考えるにしても、私はやはり、この五年前の八四%に検挙率を回復させること、このことをまず警察庁として一番の努力目標とすべきだと考えるのですが、例えば大臣はこういう目標値について何か御見解がありますか。

小野国務大臣 この問題につきましては、私も就任させていただいて以来いろいろと考えさせていただきましたけれども、役所の方では、先ほども申し上げましたように、二百七十九万件ですか、前の年は二百八十何万件、そういう大変大きな刑法犯認知件数に、現在の警察官の人数では対応が非常に、事案の対象が、一つの問題にかかわっておりますと、次から次と事案が生まれてまいりますものですから、一人の人間、罪を犯した者が余罪を持っているということの、余罪の調査ができないままに次の事案に取り組んでしまう。

 そうしたことで、いわゆる検挙率というのか、事案の解決というものが、数字の上では出てきておりませんけれども、それぞれに非常に熱心に一生懸命取り組んでいただいているということは私なりにも理解をさせていただきましたけれども、事案も、来日外国人の問題等々もございますし、そうしますと、言葉の問題やら習慣の問題等で時間がかかるだとか、一人に関する時間に対する余裕が非常になくなっている。

 だからといいまして、警察官を増員するということはこれは一気になかなか難しゅうございまして、それにしても、平成十三年に数値を出させていただきまして、平成十四年が四千五百、十五年が四千、十六年が三千百五十と人員を増加させていただき、およそ交番を中心に配置をさせていただいているところでもございます。

 そういうふうに、できるだけ検挙率を上げて国民の皆様に安心をしていただくということが私に課せられた、あるいは警察に課せられた大きな任務である、その認識は十分持っておりますけれども、その件と具体的な検挙率というものとの向上に対しましてどのようにしていくかということが、私自身も、数字を挙げてということは非常に難しいと思いますけれども、とにかく全力を挙げてその件に関しては取り組ませていただきたい、そのような決意でおりますことを申し上げさせていただきます。

山内委員 大臣に誤解していただくと困るんですけれども、明石事件で被害者側の人たちとか弁護士と交流があって、何か答弁を引き出したいということでやっているわけじゃないということだけはわかっていただきたいと思うんですが、その明石の問題にしても、例えば何が問題になっているかというと、第一義的にというのを議論して、やっと警察庁が認める。つまり、明石市も悪い、警備会社も悪いというふうな論法を強く言えば言うほど、例えば人一人が死んで一億円の損害金になったときに、三者同じ額だとか、あっちが悪いこっちが悪い、過失相殺というんですけれども、こういうような主張が出てきたり、なかなか、とにかく一義的に警察が悪いんだという意識をもっと持ってもらっていると、警備会社が悪いとか云々ということが、そういう何かごたごたした訴訟にならなくて済むと私は思っているんです。

 それから、空き交番の問題にしても、何か、警備業者との間でどんな話し合いがなされているのかわからない。警察庁としても、伊勢佐木署の問題をもっと広く普及させるとか、そういうようなビジョンもうかがえない。

 それから、最後に言いました駐車違反の問題にしても、もっとやはり公平な立場で、公益を守る公務員とか巡視員の皆さんで今までも一生懸命やってこられた、これを、自分たちの仕事じゃなくて警備会社とかに任せようとする、そういう法改正をもくろむということは、何か、日本の安全とか安心、それは絶対私たちに任せてください、そういう確固たる決意が私はないような気がするんですけれども、そんなことはないですよね、大臣。どうでしょうか。

山本委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

小野国務大臣 今おっしゃられたような、警察が決して逃げ腰ではないということははっきりと申し上げさせていただきますし、やはり事案のありようにおいてはルールというものがあり、その中におきまして私たちの果たすべき役割をしっかりとやっていきたい、そのように考えております。

山内委員 治安を守ることは警察の仕事であって警備業の仕事ではないということです。警察が責任を持って、事故や事件のないように、そういう世の中にしていくことが何より大事だと思います。

 何ら権限を与えられていない民間人でしかない警備員が、研修や検定を経たにせよ、警察官と同じようなことをするわけにはいかないという今法律の構造にもなっています。責任の所在は警察にあるとはっきりと自覚した上で、警察官の増員等をもって治安の回復に当たること、そこに努めることこそ検挙率の増加にもつながる正しい処方せんだと考えていることを最後に申し上げまして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、泉健太君。

泉(健)委員 本日も警備業法の改正に関する質問の機会をいただきました。大臣、いつもお忙しい中、また、多分野にわたっての担当をされている中で、ありがとうございます。

 今山内委員からもお話があったところです。まさに警察として日本の治安にどう取り組むのか、国民の治安、国民の安全というものにだれが責任を持つのかというところをやはり考えていかなければなりません。

 まず、一番最初に、大臣に質問させていただきますけれども、今山内委員からも指摘があったとおり、治安を担うのはだれなのかということです。改めて大臣にお伺いをしたいと思います。

    〔委員長退席、大村委員長代理着席〕

小野国務大臣 国の最も基本的な責務は、安心、安全、これが警察に課せられた国民に対する最も大事な点だと思いますし、そしてその安全な社会というものが自由な生活あるいは自由な経済活動の前提であると私自身もそのように考えております。

 しかしながら、近年、刑法犯認知件数、御案内のとおりで増加を続け、中でもいわゆる街頭犯罪や侵入犯罪、あるいは少年犯罪の増加、あるいは来日犯罪等々、暴力団による組織犯罪も国民に大変大きな不安を与えているというのも、これも事実でございます。

 犯罪対策閣僚会議が、昨年の十五年十二月に、犯罪に強い社会の実現のための行動計画、こういうものを決定するなど、治安に対する対策が大きな政策課題として挙げられているということも先生御案内のとおりでございます。

 国家公安委員といたしましては、警察の取り組みを十分強化することはもとよりでございますけれども、犯罪に強い社会の環境の整備のために、国の他の機関や地方公共団体あるいは国民等との連携の強化、あるいは国民の自主的な取り組み、こういうものの促進によりまして犯罪の発生を抑止いたしまして、いわゆる一刻も早い治安の回復と安全で安心できる社会の実現というものにたどり着きたい、そんな決意でいるところでございます。

泉(健)委員 長い説明をいただきましたが、やはり治安というものは国がまず第一番に取り組まなければならない、政府が取り組まなければならないということだと思いますし、一方で、警備業というものがこれまで、よくも悪くも、あいまいさというものを持ってきた仕事だというふうに私は思っているわけです。そのいい意味でのあいまいさとは、警察というふうにも勘違いをされるという意味での犯罪抑止効果というのももちろんあったでしょうし、あるいはそういった人がしっかりといることだけでも、さまざまな効果、雑踏整理も含めて、効果があったと思います。

 しかし、一方では、あいまいであるがゆえに、例えば労働条件が今までしっかりと定められてこなかったというところもあります。また、この警備業そのものの地位が向上したとは言えない状況が続いてきたのも事実であります。

 そういった中で、これまでもずっと法律の改正等を含めて取り組んでいただいたわけですけれども、例えば今のお話の中でいいますと、警備を、よく最近なんかでは自治体のパトロールなんかを警備業に委託をするという話をしていった場合に、やはり格差が出てくるんじゃないのかなという気がしているわけですね。

 治安が悪ければ悪いほどもちろんそういう警備が本来必要になってくるわけなんですけれども、警備にはあるいは治安にはお金が必要だということになってきますと、これは国民の自発的な治安の補完というものではなくして、お金を持っているいないによって治安の格差が出てきてしまうのではないのかな。しかも、お金を持っていない地域というのは、一概には言えませんけれども、例えば、生活が不安定な方々が多ければ、そこが犯罪の発生が予想されるということも考えられるわけでして、民間に任せることと治安の格差というもの、それについて御心配はないのかなというふうに私も思うわけです。

 ぜひここは、民間に委託をする部分があったとしても、やはり格差が出ないということを第一番にお考えいただいて、これからの民間委託については取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 そういう中で、平成十五年の警察白書で、警察による警備業者に対する指導監督等は、主に警備業務を適正に実施させる観点からこれまでは行われてきた、しかし、警備業が犯罪に強い社会を構築する上で不可欠な存在となっている状況を踏まえ、今後、警備業を警察が立案する犯罪対策体系の中に積極的に位置づけていくことが検討の課題となっているというふうに書いてあります。ここがちょっと不安を感じるところなんですね。

 今現在、警備業というのは一号から四号まであるわけなんですけれども、その四割以上は、雑踏ですとか交通誘導の警備業であります。そしてまた、そのさらに四割近く、ですから合計八割ぐらいが、こういった犯罪抑止そのものというよりか、どちらかといえば、雑踏を整理したりですとか日常の円滑な市民生活に資するという意味での、言ってみれば、防犯というよりかは防災的な要素が強い警備員なのではないのかなというふうに思うんですね、現在の構成でいうと。

 例えば、防犯にかかわるところでいえば、現金輸送ですとか身辺警護。こういったものは、現金輸送や核燃料の輸送に関する人たちは警備員の中で三・二%、身辺警護ですと〇・三%という状況でいいますと、果たして犯罪対策体系の中に積極的に位置づけていくということで考えていいのかなというふうに思うわけですけれども、このところの御認識をいただきたいと思います。

伊藤政府参考人 警備業というものは、国民の自主防犯活動を補完しあるいは代行する業務でございます。そういった意味で、警察といたしましても、最近の治安情勢の深刻化を受けまして、さまざまな対策に取り組んでいるところでございますけれども、その中で、国民が行います自主防犯活動というものに対しても、これを支援していきたいというふうに考えておりますし、また、警備業というものがそうした自主防犯活動の一端を担うというものであるということであれば、こうしたものにつきましても、さまざまな犯罪防止のために活動していただきたいというふうに考えているところでございます。

泉(健)委員 この警察白書に書いています文章がやはり気になっていまして、「警備業を警察が立案する犯罪対策体系の中に積極的に位置付けていく」ということになりますと、国民の自主防犯活動というものをこの犯罪対策体系の中に積極的に位置づけられているのかどうかはちょっとわかりませんけれども、警備業だけをこの中に積極的に位置づけていくということが正しいのかなというところは少し不安を感じているところです。やはり警察そのものの役割というのもあるでしょうし、一端を担っていくという考え方であれば、そこはよく理解をするものなんですが、余り中核的な位置づけにこれが変わっていきますと、じゃ、警察の役割は何なのかという話にもなっていきますので、ここは、その位置づけ、どこに警備業というものが置かれているのかというのは、もう一度認識を改めていただきたいというふうに思っております。

 私も海外幾つか国を回らせていただくわけですけれども、日本における警備業というのは非常に問題もなく、それぞれが一生懸命職務に邁進をされているところですけれども、例えば海外でいいますと、警備業というものが発達をしている国が果たしてすばらしい国なのかというところは、やはり考えていかなければならないんですね。

 対策、対策というところで、我々はどうしても厚着をしがちになるわけです。こういう治安の状況だから、こうしなければならない、ああしなければならないと言っているうちに、本来必要な倫理観ですとか防犯意識、多分基礎体力というものでしょうね、人間本来の肌身で感じなければならない、持っていなければならないものが失われて、厚着ばかりをしてしまうような格好になってはこれはいけないというふうに思うわけです。

 その意味では、日本の警備業が、いずれそれぞれが銃まで持たなきゃならないなんていう状況はやはりこれはおかしいわけでして、そんなことがきっと起きないというふうに信じてはおりますけれども、昨今、こうして警備業がこの二十年ほどふえ続けているという状況を見ますと、業界の発展という意味ではこれは一ついいことかもしれませんけれども、やはり警察としては、警備業がふえるということは警察そのものが問われているというふうにも御認識を持っていただきたいと思いますし、警備業がない社会、警察がない社会というものも、ある意味一番すばらしい理想の社会、それは不可能でありますけれども、そういうことを根本の部分を忘れずにこの警備業なり警察行政というものを見ていただきたいというふうに思っております。

 今回の実際の警備業法の改正の中身についてちょっと触れていきたいと思います。

 まず、今回の改正の目的、これは先ほどからお話をいただいているところですけれども、現状の認識、「治安情勢の深刻化と警備業に対する需要の増大」「苦情の多発」そして「不適正な警備業務の実施による事件・事故の発生」というふうに書いてあります。しかし、この現状の認識が私はこれで本当に間違っていないんだろうか。やはり、現状の認識があって、その認識からニーズが生まれ、そのニーズを満たすために今回の改正が行われるわけですね、それは間違いないですね。では、現状認識はどうでしょうかというところを少し考えてみたいと思います。

 治安情勢の深刻化、これはおっしゃるとおりですね。ただ、治安情勢の深刻化というものも、これは本来警察が解決をしなければならない問題ですし、だからといって、警備業法を改正するということに簡単につながっていいものかどうかという話もあります。

 警備業に対する需要の増大というふうにして、いただいた資料では、グラフがずっと警備業者のニーズが伸びている、そういう表があります。しかし、おととしから去年にかけていきますと、一万人警備業の従事者が減っているという状況になっておりますけれども、これまでふえ続けてきた、そして昨年減ったという事情について、理由がもしわかれば御説明をいただきたいと思います。

伊藤政府参考人 昨年の警備員の数が前年と比べまして減ったということは聞いておりますけれども、具体的な原因というのは一つではないのかもしれませんけれども、一つには、警備業者が行っている業務の中に交通誘導警備というものがございます。これは主として、公共工事でありますとかあるいは建設工事等に伴いまして、周辺の道路における安全を確保するために警備員が工事現場におきまして誘導を行っているというものでございますけれども、全般的に見ますと、そうした工事というものは前年と比べて減ってきているという状況がございますので、そうしたこともやはり全体としての警備員の数が減ってきた大きな要因ではないかというふうに考えているところでございます。

泉(健)委員 そして、次の苦情の多発というところなんですけれども、苦情の件数。業者が約一万ぐらいあって警備員が四十万人いるわけですね。例えば平成十四年でいうと約三百件ぐらいでしょうか、苦情があるわけですが、これを多いというふうに御認識をされていますでしょうか。

伊藤政府参考人 警備業に関する苦情についてでございますけれども、平成十年四月一日から平成十五年八月十七日までに国民生活センターに登録されました警備業務の実施に関する苦情は七百四十件でございますけれども、こうした苦情というものは年々増加をいたしておりまして、平成十四年度には三百二十三件となっております。これは、平成十年度と比較いたしまして約四倍に達しているところでございます。

 平成十四年度における主な、いわゆるサービス業種に関する苦情等を見ますと、タクシー、ハイヤーが二百五件、あるいは、保育百三十一件、理髪サービス百件でございまして、こうした業種と比較しましても、警備業務の実施に関する苦情が多いというふうに考えております。また、警備業務が国民の生命、身体、財産に重大な影響を与える業務であるということの重要性にかんがみまして、大きな問題であるというふうに認識しております。

泉(健)委員 いつも資料をつくって、こちらへいただくときは、何だか改正の内容が最初にあって、そのために理由づけをされているのかなというふうに思うところもあるわけですね。

 というのは、これもまさにこの法律に関する資料ということで内閣調査室からいただいたものですけれども、じゃ、この苦情のグラフがあるわけですが、この中身を分析してみると、七百四十件のうち六百二十八件は適正な契約の締結に関するものということなんですね。

 ということで、今回の改正の中身の一つとして、警備業務の依頼者を保護するための改正を行います、契約の際の書面交付を義務づけ等々があるわけですけれども、これは私理解できるわけです。これだけで、もう苦情のうちの八五%はそのニーズにこたえている状況なわけですね。大半のニーズにはこたえている。

 実際、警備の指導教育や知識、技能に関する苦情というのは、五年間で二十六件しかないわけでありますね。二十六件しかない。そういう状況で、実は今回の改正でいいますと、検定制度にかかわる部分が一番大きいわけですね。この二十六件の件数をもってこれだけ大きな検定制度の改定を行われるという理由を教えていただけますでしょうか。

伊藤政府参考人 まず、苦情の件数についてでございますけれども、警備員の指導や知識、技能に関するものは二十六件であるというのは御指摘のとおりかと思いますけれども、今回の改正案の一つの柱といたしましては、警備業務の依頼者を保護するために警備業務の依頼者に対する書面交付に関する規定や苦情の解決の努力義務に関する規定を新設しているところでございまして、こうした苦情は大変多くなっているものでございます。

 一方、検定合格者の配置義務につきましては、空港保安警備や核燃料物質等運搬警備など、専門的知識及び能力を要し、かつ、これが不適切に実施された場合に多数の者の生命、身体または財産に危険を生ずるおそれがあるものにつきまして、検定合格者の配置を義務づけることとしたものでございます。

 こうした意味で検定合格者の配置を義務づけたということにつきましては、一たん不適正な警備が行われますと、多数の方の生命、身体あるいは財産に危険を生ずるおそれがあるということでございますし、最近の治安情勢あるいはテロ情勢等をかんがみますと、そうした件数というものもありましょうけれども、やはり一たん事が起こったときの重大さといったものも勘案して、こうした検定を義務づけていくように考えておるところでございます。

泉(健)委員 先ほど山内委員からも話がありましたが、例えば明石の雑踏の事件にしても、警備員の一人一人の質が問題であった事件なのかなというところはやはりあると思うのですね。それだけでは決してないというか、それはやはり小さな部分でして、計画そのもののまずさですとか、市と会社、業者ですね、そしてまた警察との連携の悪さというものが本来問題だったはずだと思うんです。

 そうすると、何だか最初に検定制度というものを充実させるというか、一級検定については、一級警備員については平成三年に導入されてから今まで一%しか取得率がないという状況もあるようですから、恐らくそちらの方の、もっともっと活性化というかが前提にあって、こういった理由づけになったのかなというふうに思わざるを得ないわけなんですね。

 ですから、苦情のニーズもそんなにない、苦情もそんなに件数としてはない。今おっしゃったような、一つ何か起こればこれは大問題になるからということで言えば、検定を受けた警備員一人一人の資質の問題というよりは、これは恐らく連携の問題であったり計画そのものの問題であったりするわけでして、ここは御説明としてはちょっと納得できないわけなんですけれども、それはそういう説明なんでしょうか。

伊藤政府参考人 検定に合格した警備員というものは確かにまだまだ数は少のうございますけれども、逆に、そうした検定に合格した警備員というものは、警備現場におきまして、やはりチームをまとめるリーダー的な役割を果たしている場面が多いわけでございます。そうした意味で、いろいろな警備計画を策定したり、あるいは他と連携を行うような場合におきましても、そうした連絡の責任者となったり、あるいは計画作成の責任者となったりすることも多いわけでございまして、そうした検定に合格した人の数がふえていくことによりまして、一人一人の警備員の指導というものも期待されるところでございますので、全体としての警備業あるいは警備員の質の向上につながっていくものと考えているところでございます。

泉(健)委員 それぞれ四区分の中で責任者もこれから定めていく、選任をしていかなければならないということになるわけですけれども、その四区分の、一号から四号までの警備員のそれぞれの推移というものを今度どのように予想されていますでしょうか。

伊藤政府参考人 それぞれの区分ごとの警備員数が今後どのように変わっていくかという御質問でございますけれども、最初の施設警備につきましては、テロ対策によります警備強化といったことに伴います警備員の増大、あるいはホームセキュリティーの増大等が考えられると思います。

 一方、交通誘導警備では、先ほど申しましたように、道路、建設等におきます公共工事の減少や建築現場の減少といったようなことが考えられるのではないかと思います。

 運搬警備におきましては、貴重品運搬警備といったものが、やはり最近の治安情勢の悪化等も反映して増大していくのではないかというふうに考えます。

 そして、最後の身辺警備でございますけれども、最近はストーカー犯罪の増加や子供に対する危害といったものがふえてきているわけでございまして、こうした危害の防止対策に伴います需要というものも最近出てきているということがございますので、そうしたところについてはふえていくのではないかというふうに考えております。

 こうした需要に応じて警備員数も推移していくのではないかというふうに考えているところでございます。

泉(健)委員 政府は、ずっと以前ですけれども、五百三十万人の雇用プログラムなんというのを出しておられましたけれども、警備業の関係で言うと、もうその予測は外れてしまっているわけでして、昨年、警備業が一万人減った。予想ではずっとふえ続けて、二〇一〇年ぐらいまででしたでしょうか、たしか五十万人を超えるなんという予想がされていたわけですが、そういった雇用対策も外れてしまっている。

 一級検定取得者が、指定講習における一級講習というものの制度も平成三年に開始をしていったわけですが、一級でいうと一・〇%、二級でいうと一九・三%というふうになっております。

 この取得率に関しては、警察の方としては、これは所定の考えられていた目的を達成されている状況と言えるのか、それとも、これぐらいを目指していたけれども実際には取得率が余り及んでいないようだという状況なのか、これについての現在の御見解をお聞かせください。

伊藤政府参考人 検定合格者につきましては、基本的には、警備員自身がみずからの能力、知識を高めるために検定にチャレンジして、さらにもう一つ上の資格を取っていこうとするものでございまして、警察の方で具体的な目標値を定めて、ここまで育成していこうという形で行っているものでは必ずしもございません。

 そういった意味で、私どもが具体的な目標値を持って、これに到達しているあるいは到達していないというふうに考えているところではございませんけれども、現実に、重要な警備というものを行う上に当たりましては、やはり知識、能力のすぐれた警備員というものが多く輩出されることは大変重要なことだというふうに考えておりますので、そうした検定合格者が今後ふえていくということについては大いに期待をしているところでございます。

泉(健)委員 しかし、制度をつくって一%の取得率ということになると、制度の、試験なり講習をするところばかりが組織として大きくなっていて、実際には全然それが利用されていないという状況なわけです。今回、責任者を四区分それぞれに選任するですとか、一定期間で講習の制度を導入するとかやっていくわけなんですけれども、どうもイメージとして、警備員そのもののニーズというよりかは、制度をとにかくたくさんつくる、検定のさまざまな枠を先につくって、そして言ってみればそこにどうしても元警察の方々、退職者の方々が入っていくという状況もやはり少なからずあるわけですね、ゼロではないわけなんです。

 そういう状況ですから、なかなか我々も賛成しにくいというものでして、警備業に従事をされている方々が、この資格を取りたい、これを取って社会の中でやっていけるんだというものを実感できるような資格に変えていかなければならないと思うんですね。もう十年も二十年もたつような状況の中で取得率がこれだけ低いというのは、やはり何か制度の方に、あるいはこの検定の過程の中に問題があるのではないのかなというふうにも感じざるを得ません。

 時間がないので先に進みますけれども、質問通告では行っていなかったんですが、わかる範囲でお答えをいただきたいと思います。

 以前警察の方で御検討いただいていたことがあったかもしれないんですが、警備業の欠格条項のことに関してなんですけれども、精神病者にという書き方になっていますけれども、この警備業者の欠格事由ですとか責任者の欠格ですとか、あるいは警備員として就業することということでの行動制限等々、これまで精神機能に障害がある方についてはなかなか入っていくことが難しかったということがあるわけですけれども、警察の方でここについて改正をなさるおつもりがありますでしょうか。

    〔大村委員長代理退席、委員長着席〕

伊藤政府参考人 現在の欠格条項に関する警備業の要件というものは第三条にございますけれども、その第七号におきまして、「心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの」というものが欠格要件に該当することとなっております。

 この条項につきましては、平成十四年の改正におきましてノーマライゼーションの一環としてこうした条文に書き改められたものでございまして、ちょうど改正したばかりのものであるというふうに思います。

泉(健)委員 ありがとうございます。

 私、幾つかの共同作業所ですとか障害者団体に聞いてみたんですが、これは改正をされたということが実はまだ余り認知をされていないという状況もあるみたいですので、ぜひこの告知も積極的に行っていただきたいというふうに思っております。

 そしてまた、国土交通省の方にも来ていただいていたわけなんですが、ちょっと時間がないのであれなんですけれども、実際、現場の警備業の業者さんからお話をお伺いすると、警備業そのものには派遣ですとかが許されていないということなわけですね。しかしながら、一方で、例えば公共事業でいいますと、下請、孫請というのはやはり当然出てきているわけなんです。そういう中で、大手の土建業者、ゼネコン業者が警備員を雇う場合には、その警備業の範囲内での業務だけをさせてもらえる。

 しかし、もう下請、孫請の世界になってくると、何だか一人の作業員と同じような認識で活動させられることがある。本当は、道路にコーンを立てたりするのは土建業者のやるべき仕事ですし、自分の立ち位置を決めるのは警備業者のやる仕事なわけなんですけれども、実際のところ、あんたはここに立て、あんたはこれもやってくれ、あれもやってくれという形で、そのルールが守られていないという現状もあります。

 これは警察が所管をする警備業ということですから、警備業に従事をされているそれぞれの警備員の方々の安全確保というものもあります、非常に大切だと思いますので、この方々の安全確保のためにも、ぜひ国土交通省なり厚生労働省と密接に連携をとっていただいて、その安全対策づくり、こういったものにも努めていただきたいというふうに思います。

 以上で質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

山本委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 最初に内閣府の方に質問しますが、今回の法改正は、警備業務の依頼者の保護についての規定の整備があります。この背景には警備業務に対する依頼者の苦情が増加しているという問題があると思いますが、そこで、警備業務の依頼者から国民生活センターなどへの苦情件数の推移と、苦情内容はどういうものが多いのか、これを簡潔に最初に伺いたいと思います。

永谷政府参考人 私どもの国民生活センターのPIO―NETで収集しております警備業に関する苦情相談件数であります。

 まず件数について申し上げますと、平成十一年度から十五年度、過去五年間でありますけれども、順次、百十一件、それから二百十五件、二百七十五件、三百二十三件、それから十五年度が三百七十九件という状況になっています。

 それから、具体的な相談内容でありますけれども、例えば、警備会社と契約したけれども、月額サービス料とは別に電話代や通信費がかかることが判明した、契約時にはそうした説明がなかった。あるいは、業者にガス漏れ警報器をつけないといけないと言われて仕方なく契約したんだけれども、後で警報器をつけるのは任意であったということがわかったので解約したいというような、まさに契約とか解約に関するものが多うございます。それから、それ以外には、警備サービスを申し込んだが、その業者の信用性を知りたいというような形での、業者の信頼性に関するものなどがあるという状況になっております。

吉井委員 今の話で、要するに、六年間で四倍に苦情がふえているわけですね。ですから、警察庁としては、その原因は何なのか、どう見ているかということについて伺っておきたいと思います。

伊藤政府参考人 警備業者に対する苦情が増加した原因についてのお尋ねでございます。

 一つは、やはり警備業者あるいは警備員の数が増加したということで、新たな需要ができてきたということもございます。そういった意味で、新たな需要が出てきたことに伴いまして警備業者もふえたということになりますと、こうしたふえた業者に対してしっかりとした指導、教育というものが行われておれば、そうした苦情というものも必ずしもふえるものではなかったのかもしれませんけれども、一つには、やはり需要が増大したということがあります。

 もう一つは、いろいろな治安情勢の変化等に伴いまして、一般の家庭の方が警備業者に警備業務を依頼するというような場面も出てきておりまして、そうした方々が国民生活センター等に対して苦情をおっしゃってこられるというケースもふえているんではないかというふうに思います。

吉井委員 あの法案の審議をしたのは二〇〇〇年か二〇〇一年ごろだったかなと思うんですが、消費者契約法ですね。依頼者である消費者保護対策について、この間の経過を見ますと、二〇〇〇年九月、警備業界がガイドラインを決定したわけですが、この消費者契約法が、いろいろ議論して成立して、二〇〇二年の四月から施行されることになったと思うんですね。

 そうすると、これらの消費者保護対策というのは、警備業法の苦情件数で見ると、消費者契約法をつくったんだが、この効果がなかなかなかったというふうに思われますが、内閣府としてはこれをどういうふうに考えていますか。

永谷政府参考人 消費者契約法について、その実効性があるのかどうかということだろうと思います。

 起こっている消費者トラブル、特に、今回ありますような説明不足とかその手のものについての消費者契約法の中身というのは、それなりにきちっとした規定になって、実効性もそれなりに上がっているというふうに私どもは認識しております。

吉井委員 法の実効性があった、なかったじゃなくて、法がこの効果を発揮するように、どうしてそこがきちんとできていないのかというところが問われてくると思うんです。

 警備業に対する苦情が、九八年度以降、七百四十件ですね。国民生活センターの分類によると、適正な契約の締結に関するものが六百二十八件、全体の九割を占めるわけですね。そうすると、この適正な契約の締結に関するものについて、事前説明が不十分だった、契約書面に不満があるという、書面不交付を含めての話ですが、要するに、そういう問題が出てきているということは、全部こうしたことは消費者契約法の議論のときにやったと思うんですね。

 苦情の内容をもう少し具体的に、なぜこういうことが出てきているのか、なぜ事前説明が不十分だったり、法がつくられたのにうまくいっていないのか、そこのところを説明してほしいと思います。

永谷政府参考人 先生御案内のとおり、消費者契約法附帯決議の中で、施行後五年の見直し規定が置かれております。それに向けた作業というのにそろそろ手をつけていかざるを得ないというような状況も片一方にございます。

 そういう中で、今先生がおっしゃいましたような、まさに実効性をどうやって高めていくのかというところも含めてこれから検討させていただければというふうに思っております。

吉井委員 何か、せっかく消費者契約法をつくりながら、今のお話を聞いていますと頼りない話で、ぐあいが悪いと思うんですが。

 苦情の中で多いのがホームセキュリティーサービスだと思うんですね。ある大手の警備会社から聞いた話なんですが、依頼者との文書の交付は以前からやっているが、それでも苦情はかなりあると言っています。

 ホームセキュリティーサービスで、依頼者と業者の間で契約書の書面交付の実態はどのぐらいありますか。これは警察庁の方に伺っておきます。

伊藤政府参考人 いわゆるホームセキュリティーと申しますのは、いわゆる機械警備のものが多いと思いますけれども、これにつきましてはガイドラインを定めまして、こうしたホームセキュリティーの契約者に対しましては書面交付を行うように警察庁としても指導しているところでございます。

吉井委員 指導はしているのだが、どうも実態がわからないみたいで、頼りない話なんですが。

 国民生活センターが、二〇〇〇年十月から十一月にかけて、大手七社とグループ会社七十八社、合わせて八十五社のアンケート調査をやっていますね。その結果によれば、全部の会社が契約書を交付していると回答しているわけです。また、全国警備業協会は、ガイドラインをつくって傘下の企業に書面交付を義務化させているというふうに言っています。

 こういう状況から見ると、現状は、契約書の書面交付はかなりやられているのが実態じゃないかと思うんですが、これは内閣府の方はどうなんですか。

永谷政府参考人 警備業の中で、書面交付でありますとか、あるいは書面の内容に関する苦情相談件数の実情がどうかという御質問だろうと思います。

 件数的に申し上げますと、先ほど警備業全体に関する苦情相談件数というものを申し上げたのですけれども、同じ期間で、平成十一年度の九件、十二年度の二十二件、十三年度の十九件、十四年度の三十六件、十五年度の五十一件ということであります。レベルとしてはそれほど多い水準ではございませんけれども、若干の増加は見られるという状況であります。

 それから、具体的な相談内容でございますけれども、例えば、市の福祉の人だと思って家に上げたら、長時間帰ってくれない、断っているのに緊急通報サービスの機械を設置された、書面はないけれども解約を希望したいということであります。それから、警報機器を設置した後で業者が契約書を置いて帰ったけれども、契約書を読むと、その業者が説明した中身とは全く異なっているというふうな中身でありますとか、あるいは、解約を申し出ているけれども業者が応じてくれない、契約書の契約期間が五年間になっており、中途解約に関する記載がなく、業者が、五年分の料金を支払わなければ解約に応じないというような苦情が寄せられているというふうなことであります。

吉井委員 要するに、契約書の書面交付は、やられていないわけじゃなくて、一応やられてはいるわけなんですよね。そこは消費者契約法をつくって書面交付をきちんとやらせるようにしてきたはずなんですから。

 書面交付を法的に義務化することは当然必要なんですが、今回の法改正で、書面交付をしないと百万円以下の罰金というふうになっています。それ自体、効果は多分あるだろうと思うんですが、しかし、大部分の契約は、現に書面交付されている実態のもとで、法的に契約の書面交付を義務づけ、苦情が解消され、依頼者保護の実効が上がるのかということが今問われているところだと思うんです。

 契約書の書面交付の法的義務化が、実際に依頼者保護という立場から苦情解決にどういう効果をもたらしていくことになるというふうに今度の法改正に当たって警察庁は考えているのか、伺います。

伊藤政府参考人 今回の改正におきまして書面交付を義務づけることとしておるわけでございますけれども、これは、契約の締結前及び締結後に、二度にわたって書面交付をすることを義務づけておるわけでございます。

 また、契約後の書面交付をする内容についてでございますけれども、それにつきましては、改正法の第十九条第二項各号にありますとおり、警備業務の内容として内閣府令で定める事項、あるいは警備業務の対価等依頼者が支払わなければならない金銭の額、金銭の支払い時期及び方法、警備業務を行う期間、契約の解除に関する事項、このほか内閣府令で定める事項を記載することとなっているわけでございますが、この内閣府令につきましても、第一号の、警備業務の内容として内閣府令で定める事項といたしましては、警備業務の対象となる施設、場所、物品または人物、警備業務の態様、警備員の勤務配置や事故発生時の措置等の警備業務の実施方法等について記載することを想定しているわけでございます。

 また、第十九条第二項六号の内閣府令で定める事項としましては、損害賠償に関する事項、契約の更新に関する事項、契約の再委託に関する事項、警備業務に係る苦情を受け付けるための窓口などについて記載することを想定しております。

 こうした事項については、現在、警備業者等の関係者の意見を聞きながら検討しているところでございますけれども、そうした細部にわたっての事項について記載された書面というものが事前そして事後に交付されることになりますと、契約の前から警備業務の内容についても理解できますし、また、ほぼそれと同様の内容の契約書というものが締結されるわけでございますので、苦情というものは大幅に減ってくるのではないかというふうに期待しているところでございます。

吉井委員 若干、具体的な事例を挙げて聞いておきたいと思うのですけれども、例えば、マンションに設置してある警報機を間違って鳴らしてしまった、誤って鳴らしてしまった、それで駆けつけたガードマンに出張費を請求される、こうしたことは契約書に書かれていなかったという苦情があります。

 それから、中小零細警備業者の中には、地域密着で介護サービスに取り組みを始めている業者もおります。例えば、痴呆が少し出てきているから、うちのおじいちゃんに、外へ出ると自分がどこにいるかわからなくなるときがあるからというので、GPS機能を持ったポケベルを持って出てもらうようにする。そうすると、家族が探すことができるし、警備会社の人に見つけてきてもらうことが可能なわけですね。ただ、そのときに持っている御本人が誤って押してしまう、そうすると、それで出張費が請求されたりするということとか。

 そういう苦情という問題があるのですが、法律の改正では、書面に依頼者が支払わなければならない金銭の額を記入するということになっていますが、当然、今言った苦情のような場合は書面に書かなくてはならなくなるわけだと思うのですね。つまり、依頼者が払わなければならない金額は、いろいろなケースが考えられるわけですが、これら一切を契約書の書面に書く、書いていないものは払わなくてもいい、そういうふうにきちっとしたものになるんだな、そういう理解でいいんでしょうねということで、警察庁に確認しておきます。

伊藤政府参考人 今回、依頼者に交付すべき書面の内容につきましては、改正法の第十九条第二項各号にありますように、かなり詳細に記載しておりますし、さらに、内閣府令で定める事項という形で、先ほど申したような詳細な部分についても内閣府令で定めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 そうした意味で、要は、両契約者の間で紛議が生じないような形で書面を交付することが期待されるところでございますので、こうした形での紛議というものが減ってくることを大いに期待しているものでございます。

吉井委員 苦情の解決というものについては、早期に受け付けて適切に処理するということが大事になりますが、単に苦情を取り次ぐだけじゃなくて、依頼者と事業者の苦情のあっせんについてもきちんとした体制を業者団体としてつくっていくことが依頼者保護の立場から必要になってくると思うのです。

 その点について、警察庁は、業界にやはり指導していかなきゃいけないんじゃないかと思いますが、この点、どうですか。

伊藤政府参考人 現在、警備業界の業界団体でございます全国警備業協会では、消費者契約に関するガイドラインを定めまして、同協会及び各都道府県の警備業協会において、業界団体として自主的に警備業務に関する苦情の解決を実施しているという状況がございます。そういった意味で、こうした全国警備業協会及び都道府県の警備業協会がそうした役割を果たしておるものと承知しております。

吉井委員 それは、きちっとやはり進むように取り組みはなされなきゃいかぬと思います。

 今国会に与党が提出している衆法の消費者保護基本法改正案ですね、ここで、国民生活審議会の答申に基づいて消費者の六つの権利を明確化し、この権利に沿って、事業者の責務を、これまでの抽象的な規定から、一定、具体化しているわけですが、例えば、事業者は消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること、消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮することなどが規定されております。

 この今回出されている警備業法改正案で、こちらにはこれらは明記されていないわけですが、この今度の本改正案と、それから、今、衆法として与党がお出しになっておられる消費者保護基本法改正案との対応といいますか、整合性を図るということが必要だと思うのですが、この点について、提案している警察庁の方はどう考えておられるのか、伺っておきたいと思います。

伊藤政府参考人 現在提案されております消費者保護関連の法案について、申しわけございませんけれども、詳細について承知しておりませんけれども、この法の運用に当たりましては、そうした法律とも十分整合性をとりながら運用を図ってまいりたいというふうに考えております。

吉井委員 時間が参りましたので終わりますけれども、政府・与党、やはりよく連絡して本来法律を出してこられると思うのですね。その点が、与党の出しておられる衆法と政府の出しておられるものとで、やはりきちんとした整合性を図るといいますか、そこをやっておかないと、私は、同じ国会の中で、違う国会だったらわかるのですよ、別な国会にまた出してくるというのは。やはり、そこはきちっと本来されなきゃいけないということを申しておきたいと思います。

 そして、登録講習機関等は、もう時間がなくなりましたから質問できませんが、やはり天下りをさせないようにどのように対応していくのかということが非常に大事なことで、委員長のお許しをいただければ、その点だけ最後に大臣に伺って終わりたいと思うのですが。

小野国務大臣 そのようなことのないように、職業の自由ということもありますけれども、対応してまいりたいと思います。

吉井委員 終わります。

山本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。泉健太君。

泉(健)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、警備業法の一部を改正する法律案につきまして、反対の立場から討論を行います。

 反対の第一の理由は、本案の目的として「警備員の知識及び能力の向上」が掲げられている一方で、その背後には、警察の影響力強化の意図が隠されていることであります。検定合格者の配置基準、検定及び講習制度など、検定に係る詳細は公安委員会に委任をされているなど、警察の実質的関与の拡大が想定され、極めて問題であります。

 反対の第二の理由は、警備業界及び警備員が直面をしている厳しい経営状況並びに労働条件について考慮がされていない点であります。本案によって検定が法定化されると、費用の面で中小業者を中心に警備業界の負担が大きくなることは明らかであり、サービスの質の低下、また労働条件の低下など、予期せぬ問題が生じかねません。

 反対の第三の理由は、警察庁が警備業法を所管することの矛盾についてであります。取り締まる立場にある警察がこの種の業法を所管することは、天下りの問題を初めとして、業界との癒着など不適切な関係を招きかねず、本来果たすべきチェック機能が働かないおそれがあります。この点につき、見直しが必要だと考えますが、本案からはその片りんさえうかがえないのであります。

 よって、本案は、地域社会における警備業の能力と質の向上を図るという本来の目的は理解できるものの、警備業界の置かれている厳しい現状が考慮されておらず、警察職員の天下り先の確保のためとの懸念が払拭できません。

 昨今の警察の不正経理疑惑に対する警察庁及び公安委員会の取り組みを考慮しても、まず襟を正し、信頼を回復させるのは警察そのものの責務であり、果たして本案が国民生活に大きな利益をもたらすか極めて疑問であります。

 以上の理由から本案に反対することを表明して、討論を終わります。(拍手)

山本委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、警備業法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

山本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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