第13号 平成16年5月12日(水曜日)
平成十六年五月十二日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 山本 公一君
理事 今津 寛君 理事 大村 秀章君
理事 河本 三郎君 理事 山本 拓君
理事 宇佐美 登君 理事 鎌田さゆり君
理事 中山 義活君 理事 大口 善徳君
石田 真敏君 岩屋 毅君
金子 恭之君 河井 克行君
谷 公一君 西川 公也君
西村 康稔君 西銘恒三郎君
葉梨 康弘君 早川 忠孝君
平田 耕一君 宮腰 光寛君
村上誠一郎君 八代 英太君
石毛えい子君 泉 健太君
市村浩一郎君 大畠 章宏君
島田 久君 原口 一博君
山内おさむ君 横路 孝弘君
古屋 範子君 吉井 英勝君
…………………………………
国務大臣
(内閣官房長官)
(男女共同参画担当) 細田 博之君
国務大臣
(経済財政政策担当) 竹中 平蔵君
内閣官房副長官 杉浦 正健君
内閣府大臣政務官 西川 公也君
内閣府大臣政務官 宮腰 光寛君
政府参考人
(内閣府政策統括官) 山本信一郎君
政府参考人
(内閣府国民生活局長) 永谷 安賢君
政府参考人
(総務省自治行政局長) 畠中誠二郎君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 深山 卓也君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 金森 越哉君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 大石 明君
内閣委員会専門員 小菅 修一君
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委員の異動
五月十二日
辞任 補欠選任
江崎洋一郎君 石田 真敏君
早川 忠孝君 八代 英太君
平沼 赳夫君 谷 公一君
太田 昭宏君 古屋 範子君
同日
辞任 補欠選任
石田 真敏君 金子 恭之君
谷 公一君 平沼 赳夫君
八代 英太君 西銘恒三郎君
古屋 範子君 太田 昭宏君
同日
辞任 補欠選任
金子 恭之君 江崎洋一郎君
西銘恒三郎君 早川 忠孝君
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五月十二日
憲法の改悪反対に関する請願(阿部知子君紹介)(第二〇二五号)
同(阿部知子君紹介)(第二一七六号)
憲法改悪反対に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二一七五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
公益通報者保護法案(内閣提出第一一〇号)
内閣の重要政策に関する件
国民生活の安定及び向上に関する件
障害者基本法の一部を改正する法律案起草の件
消費者保護基本法の一部を改正する法律案起草の件
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○山本委員長 これより会議を開きます。
この際、細田内閣官房長官・内閣府特命担当大臣及び杉浦内閣官房副長官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。細田国務大臣。
○細田国務大臣 このたび内閣官房長官を拝命することになりました細田博之でございます。
現在、小泉内閣は、構造改革なくして日本の再生と発展はないという方針のもと、改革を進めております。私は、小泉内閣総理大臣の強力なリーダーシップのもと、内閣官房及び内閣府の事務全般の責任者として、改革による日本の再生の歩みを確実なものとするべく全力を尽くす所存であります。
現在、郵政民営化、イラクへの人道復興支援、北朝鮮による拉致問題の解決、国内テロ対策などの各種の緊急事態への対応といった重要政策課題が山積しておりますが、政府一体となってこれらに強力に取り組んでまいります。
また、男女共同参画担当大臣として、男女がその個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現に向けて、総合的かつ計画的な施策の推進を図ってまいります。
山本委員長を初め理事、委員各位の格別の御指導を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。(拍手)
○山本委員長 次に、杉浦内閣官房副長官。
○杉浦内閣官房副長官 おはようございます。
このたび、図らずも内閣官房副長官を拝命いたしました杉浦正健でございます。
山本委員長を初め諸先生方の御指導をいただきながら、細田官房長官を補佐してまいりたいと思っております。
内閣委員会は、私が一期生の最後のころ、初めて理事を仰せつかった委員会でございます。格別思い入れのある委員会でございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手)
――――◇―――――
○山本委員長 内閣の重要政策に関する件及び国民生活の安定及び向上に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
両件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官山本信一郎君、内閣府国民生活局長永谷安賢君及び文部科学省大臣官房審議官金森越哉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○山本委員長 障害者基本法の一部を改正する法律案起草の件及び消費者保護基本法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。
両件につきましては、先般来理事会等において協議してまいりましたが、お手元に配付いたしましたとおりの起草案を得た次第であります。
まず、障害者基本法の一部を改正する法律案の起草案の趣旨及び内容について、私から御説明申し上げます。
昭和四十五年に制定された心身障害者対策基本法は、平成五年、障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野への参加を促進するため大幅に改正され、題名が障害者基本法に改められました。
しかしなお、障害者の社会への参加、参画を実質的なものとするためには、障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している諸要因を除去するとともに、障害者がみずからの能力を最大限発揮し、自己実現できるよう支援することが求められています。
最近の障害者を取り巻く社会経済情勢の変化等に対応し、障害者の自立と社会参加の一層の促進を図るため、障害者基本法の所要の規定を見直すことを内容とする本起草案を提案することとした次第であります。
次に、本起草案の主な内容について御説明申し上げます。
第一に、基本的理念として、何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない旨を追加することとしております。
第二に、都道府県及び市町村に障害者のための施策に関する基本的な計画の策定を義務づけることとしております。
第三に、障害者の福祉に関する基本的施策として、障害のある児童と障害のない児童との交流及び共同学習の積極的な推進、障害者の地域における作業活動の場の拡充のための必要な費用の助成、公共的施設のバリアフリー化、情報の利用におけるバリアフリー化等の規定を設けることとしております。
第四に、内閣府に、障害者基本計画の案の作成に際して意見を聞く等のため、中央障害者施策推進協議会を置くこととし、障害者の実情を踏まえた協議ができるよう委員構成に配慮しなければならないこととしております。
なお、この法律は、一部を除き、公布の日から施行することとしております。
以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。
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障害者基本法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○山本委員長 本件について発言を求められておりますので、順次これを許します。大口善徳君。
○大口委員 私は、自由民主党及び公明党を代表して、障害者基本法の改正に当たって発言をいたします。
本法律の改正については、昨年、通常国会において、八代英太先生を初めとする自由民主党の議員の方々と公明党も協議を進めさせていただき、一つ一つの条文について検討し、法案提出に至ったものの、衆議院総選挙で廃案となり、改めて今国会で提出された経緯を振り返りますと、ようやく当委員会で採決する運びとなったことに万感の思いを抱くものであります。同時に、関係者の方々の御努力に心より敬意を表する次第であります。
障害者の福祉施策は、平成十四年十二月に新たな障害者基本計画が策定され、十五年度から新障害者プランが進められております。また、措置から利用者の選択と権利を尊重する支援費制度が、社会福祉基礎構造改革として同時にスタートいたしました。
こうした大きな変化の目指すべき方向は、障害者の権利を明らかにし、自立と社会参加を一層推し進め、共生の社会、ユニバーサル社会を建設することであります。このような考えから、本改正案には障害者の差別禁止規定を盛り込み、障害者施策が自立と社会参加を目指すものであり、また、基本施策においては地域での自立した生活を目指すことが盛り込まれております。
こうした大きな方向を踏まえた上で、何点か指摘をいたしたいと思います。
第一は、地方分権であります。障害者施策は、地方分権の流れの中で、国が障害者施策を補助金によりその拡充を全国的に図っていくということから、地方自治体のみずからの判断で多くがゆだねられるようになってきております。支援費制度のスタートによって明らかになったことは、障害者福祉サービスの地域間の格差でありました。こうした格差を是正するためには、地域における障害者福祉サービスの提供について、住民の意向を反映した計画がすべての地域で進められることが必要であります。
今回の改正では、市町村における障害者プランの策定を義務づけることに改め、障害者福祉の地域間格差の是正を目指すものであり、各地域における真摯な取り組みが要請されます。
第二に、地域での生活であります。施設から地域の生活へという流れをより確実なものとすることが求められています。そのためには、地域での生活を支える福祉サービスの基盤の充実が不可欠であります。生活の場としてのグループホームの整備や公的住宅の活用、さらに、日常活動の場の確保のためには、大切な福祉資源として小規模作業所の一層の拡充を初めとする施策の推進が求められております。
本法案ではこのような地域での就労という視点も盛り込まれておりますが、その条文を現実のものとして展開する対応が必要であります。
第三は、就労であります。地域での生活は障害者の就労と密接にかかわっています。小規模作業所など、法定、法定外を問わず福祉就労の基盤の整備を進めるとともに、福祉就労から一般就労への移行を進めるための援護就労の体制の整備や在宅就労の推進など、なすべきことは多々あります。本改正の成立を一つのステップとして、障害者の就労に対しての支援が一層充実することが求められています。
第四は、当事者の参加であります。障害者の施策を考えるに当たって大切なことは、当事者の参加ということであります。
本法案では、国における施策の決定と同時に、地方自治体における施策の決定に当事者が関与する規定が明確に定められています。この規定に基づき、当事者参加の障害者福祉施策の推進が一層図られるように期待するものであります。
第五は、障害者の権利であります。障害者の権利を守るためには、その擁護の仕組みが重要であります。昨今、知的障害者の方々のさまざまな悪徳商法の被害が報告されています。こうした被害を防止するためにも、成年後見制度や地域福祉権利擁護事業などの仕組みは、広く活用されやすい、使いやすいものでなければなりません。
本法案においても一条を設け、権利の擁護について規定をいたしていますが、この規定が十分に機能するような取り組みが必要であります。
また、障害者の差別禁止の規定については、かねてから、障害者差別禁止法の制定が求められていましたが、本改正に引き続き、JDA、日本版障害者差別禁止法の制定に向けて党派を超えた取り組みが進められるよう、私どもも努力してまいりたいと思います。
以上、幾つかの点について述べさせていただきました。本法案の成立を大きな契機として、ユニバーサル社会の構築を目指し、引き続き全力で努力することをお誓いいたし、発言といたします。
ありがとうございました。
○山本委員長 次に、石毛えい子君。
○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。
先国会から持ち越しになっておりました障害者基本法の改正案、今国会におきまして、私ども野党民主党からは次の内閣の原口人権担当大臣、そして与党、八代先生、きょう御出席でいらっしゃいますけれども、中心になられまして、本当に真摯な協議、御努力を重ねていただきまして、この内閣委員会で委員長提出という形で成案の運びになりましたことに、私も委員の一人として敬意を表させていただきたいと思います。ありがとうございました。
そこで、この改正法案は議員立法でございますので、執行に携わります政府に向けまして、時間の関係で全面的にというわけにはいきませんけれども、法案の幾つかの中身につきまして、よりよく法を執行、推進していくという観点から、何点か確認的な質問をさせていただきたいと思います。
まず第一の点でございますけれども、法の第二条は障害者の定義を定めております。この定義は、身体障害、知的障害、精神障害を規定しておりますけれども、この三障害に該当しない方々で実際にさまざまな社会サービスを必要とされておられる方がたくさんおられます。そうした該当しないと思われる方についてどのように考えておられるのか、あるいは考えていくべきなのか、これは内閣府になろうかと思いますけれども、御答弁をお願いしたいと思います。
○山本政府参考人 お答えいたします。
今、石毛委員からお話がありましたように、改正後の障害者基本法の第二条におきまして、障害者の定義が定められております。「身体障害、知的障害又は精神障害があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」と規定されておるところでございます。
したがいまして、定義上は、原因を問題にしておりませんために、難病などに起因するものでございましても、身体、知的または精神上の障害であって、継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にあるということでございますれば障害者に該当するということになるわけでございます。
なお、一昨年末に策定をいたしました障害者基本計画におきましては、横断的な視点というところで、現在障害者施策の対象となっていない障害者などに対しても、必要性を踏まえ適切に対応する旨を規定いたしております。この横断的視点に基づきまして、それを踏まえまして、この計画の分野別の施策のところにおきまして、難病患者及びその家族に対し、地域における難病患者等支援対策の充実に努める、こういう旨を規定しておるところでございます。
したがいまして、難病患者及びその家族などにつきましても、必要な施策にはしっかりと取り組んでいくという方針が盛り込まれているというぐあいに理解をしているところでございます。
○石毛委員 御答弁いただきましたように、ぜひしっかりと取り組んでいただきたいと存じますけれども、今御指摘いただきました難病患者さん方々に、さらに、例えばてんかんをお持ちの方ですとか、近年ではユニークフェースと称される方々、あるいはいろいろな課題を負っていらっしゃる方がおられると思います。
そこで、統括官も今御答弁になられましたけれども、私どもは、この法案の中で、二条の後段の方の「継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」というこの普遍的な定義を定義として、今後、法の見直し等の際には採用して、確かな立法根拠を持っていただけるような、そうした方向性をぜひとも要請いたしたいと思います。
第二点でございます。
第三条、これは基本理念を定めている項目でございます。先ほど委員長の趣旨説明の中にも御指摘いただいておりますように、今回の改正法案の最も大きな積極面の一つとして、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。」という、差別をしてはならないというこのことを規定したということが大きな大きな前進面だというふうに認識をしているところでございます。
これは第三条の第三項でございますけれども、この基本理念の第二項は、すべての障害者はあらゆる分野の活動への参加という、その機会を持つというふうに規定をしております。社会、経済、文化、あらゆる活動分野への参加におきまして差別をされない、そういう規定であるというふうに理解をしてよろしいということだと私どもは受けとめておりますけれども、その確認をさせていただきたいと思います。
つまり、第三項の、差別をしてはいけない、権利侵害をしてはいけないということは、基本理念の第二項には当然貫いているとともに、この法律全体に貫く理念であるということを確認させていただきたいと思います。
○山本政府参考人 今回の議員立法で、三条の基本的理念という条項に差別禁止という条項が盛り込まれた、非常に意義が大きいものというぐあいに受けとめておるところでございます。
これは、基本的理念という部分について差別禁止という規定が盛り込まれているのでございますので、当然のことながら、この第三条の今委員御指摘がございました二項、あらゆる分野での活動に参加する機会、こういうこと、あるいは法律全体の関係におきましても今回差別の禁止ということが盛り込まれた、この理念というものは全体に通ずるものというぐあいに理解しております。
○石毛委員 ありがとうございました。大変重要な点を確認していただきました。
それでは、次の質問でございます。
この点に関しましても委員長が御説明くださいました趣旨の中に盛り込まれておりますけれども、第十四条は教育に関する規定でございます。この十四条では、障害がある児童と障害のない児童との交流及び共同学習の積極的な推進という規定が新たになされることになりました。
文部科学省からおいでいただいております。この交流及び共同学習の積極的な推進ということに関しまして、文部科学省としましてはどのように受けとめられ、どのように展開されていかれるのかということを御説明いただきたいと思います。
○金森政府参考人 お答え申し上げます。
障害のある児童生徒が地域社会の中で積極的に活動し、その一員として豊かに生きる上で、障害のある子供や地域の人々とともに活動することは、重要な意義を有すると考えております。
御指摘の第十四条第三項におきましては、「障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進しなければならない。」と規定されているところでございますが、例えば、特殊学級を設置する小中学校では、近年、実施方法を工夫しながら、日常の学校生活の中で通常の学級との交流が進められており、学校行事や給食などの時間における交流に限らず、児童生徒の実態に応じ、音楽や体育などの教科の時間においてともに学習する形態も多く行われているところでございます。
文部科学省では、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の相互理解を促進いたしますために、平成十四年度から実施されております小中学校の学習指導要領におきまして、交流の機会を設ける旨の記述を盛り込みますとともに、交流教育ハンドブックの作成や、国立特殊教育総合研究所における講習会の開催などを行っているところでございます。
今後とも、障害のある児童生徒の状況や学校、地域の実情に応じた、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の相互理解を促進してまいりたいと考えております。
○石毛委員 議論の場ですから、余り反論というようなことで申し上げる場ではないというふうに了解はしておりますけれども、今の御説明で、共同ということに関しては余り中身に踏み込んで御指摘いただかなかったのではないかというふうに思っております。
それで、その件に関しての御答弁はもう結構ですけれども、日本の政府も参加をいたしました一九九四年の国連のユネスコ会議で採択をされておりますサラマンカ宣言、これは当然御存じのことでございますけれども、その宣言は、障害のある子供の教育につきまして、特別な教育ニーズを有する人々は、そのニーズに見合った教育を行えるような子供中心の普通学校にアクセスしなければならない、こういう規定になっております。
子供中心の普通学校にアクセスできるということが、特別の教育ニーズを有する、例えば障害があるということによって支援を、いろいろな意味で、例えば補助教員だとかそういうような意味で支援を要するということだというふうに思いますが、支援を含みつつ、普通学校という規定の仕方になっております。
子供たちが分け隔てられることなく教育を受ける権利を有するというのは、国際的にはインクルーシブな教育、インクルーシブな学校ということでもう普遍化をしていることでございますから、ぜひその観点から積極的に受けとめていっていただきたいという要請を申し上げたいと思います。
この点は、一言申し添えますけれども、一番、私ども民主党とそれから八代先生との間で、最後の最後の最後まで、論点としてずっと課題となってきた点でございました。そして、最後に、共同交流教育の教育というところを削除し、共同学習という、この共同という文言を入れるということで議員立法として私どもも積極的に対応させていただいたという経緯がございます。これはぜひ記録に残させていただきたいというふうに思います。ここが立法者の意思でございますから、ぜひともその点は強く強く申し上げたいと思います。
最後でございます。
「検討」のところで、施行後五年をめどとして、障害者に関する施策のあり方について検討を求めて、その結果に基づいて必要な措置を講ずるというふうになっております。
現在、国連では、障害者の方々の権利条約の制定に向けまして急ピッチで作業が進んでいるその途上にございます。権利条約との絡み合いをどのように認識されておられますかということと、それから、恐縮です、質問通告しておりませんが、この法律による改正後の規定の実施状況。この規定の実施状況というのは、この改正法案の最も大きなポイントになっております差別の禁止ということに関しまして、差別の実情の検討ということを当然含んでおりますねということを確認させていただきたいと思います。
○山本政府参考人 今委員御発言ありましたように、今、国連の方では障害者権利条約というものを御検討中でございます。二〇〇一年十二月にそのための特別委員会というものが設置されまして、去年の六月にはワーキンググループというものが置かれまして、全部で二十七カ国ございますけれども、日本もそのメンバー国の一員となってこの条約の案の基礎となるたたき台の作成という作業に参加をしておるところでございます。今後、特別委員会において、条約策定に向けてこれから種々議論が行われていくわけでございますが、我が国としても積極的にこの議論に参加していきたい。
それで、今委員から今回の法改正の附則三条で「検討」という規定が設けられたということでございますが、こうした国際的な動向も含めまして、社会経済情勢の変化あるいは改正後の規定の実施状況というものを勘案しまして、障害者に関する施策のあり方について検討を加えて、その結果に基づいて必要な措置を講ずる趣旨だというぐあいに理解をしておりますので、後段の御質問も、今回の改正で盛り込まれたもの全体についてきっちりと実施状況を勘案して考えていく、検討していくということになるものと理解しております。
○石毛委員 立法府の意思といたしまして、先ほど大口委員からも御指摘がございましたけれども、障害者差別禁止法の制定に向けてさらなる努力を重ねさせていただきたいということを申し上げまして、私からの確認の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○山本委員長 次に、吉井英勝君。
○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
障害者基本法が一九九三年に制定されてから十年が経過しました。この間、障害者施策は、関係者の皆さんの努力で一定の前進が見られますが、障害者を取り巻く現実は依然として厳しい状況にあります。
国連では、障害者権利条約の制定作業が進められており、新たなアジア太平洋障害者の十年も始まりました。障害者の人権保障とノーマライゼーション実現のために、障害者基本法の改正を求める声が高まってまいりました。
本来、障害者基本法改正とあわせて、障害ごとに法律、施策体系、福祉施策等が設定されている現実を改め、障害者の範囲を拡大し、総合的な障害者福祉法を制定すべきものであります。また、国連で障害者の権利条約の検討が進められていますが、日本においても、障害者に対する人権侵害や差別のない社会を目指す障害者差別禁止法、これを制定することが必要だと考えております。
さて、昨年来、障害者基本法改正案が提起されてまいりました。差別禁止の明記、当事者、障害者団体代表が参加する審議会、中央障害者施策推進協議会の創設、自治体の障害者計画の義務化など、これまで我が党が主張してきた点も反映されており、基本的に賛成という立場をとってきました。今回、各党の一致する内容ということで、この法案で委員長提案することに賛同いたしました。
なお、少なくとも以下の二点について法律に盛り込むことが必要だと考え、一層充実したものにしていくよう、これからも引き続き障害者団体、患者団体の皆さんの意見を広く聴取し、そして反映していく努力を尽くしていきたいと考えております。
その第一は、障害者の定義についてです。制限列挙を改め、国連の障害者の権利宣言で述べている、障害者とは、先天的か否かにかかわらず、身体的または精神的能力の不全のために、通常の個人生活並びに社会生活に必要なことを自分自身では完全にまたは部分的にしかできない者をいうとの、この生活上の困難さに着目した考え方に基づいて範囲を拡大し、難病患者の皆さんを初め、対象外とされている障害者が含まれるようにするということです。
第二は、基本的理念について、「あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられる。」との規定を見直して、「参加する権利を有する」と改めることであります。
こうした点、さらに今後これが一層充実したものとなってまいりますよう、以上、障害者基本法改正に当たって、賛成する見解表明といたします。
○山本委員長 これにて発言は終わりました。
お諮りいたします。
本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○山本委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とすることに決しました。
―――――――――――――
○山本委員長 次に、消費者保護基本法の一部を改正する法律案の起草案の趣旨及び内容について、私から御説明申し上げます。
消費者保護基本法は、昭和四十三年、消費者利益を侵害する各種の問題の発生を背景に、消費者政策の基本的方向を明らかにし、もって国民の消費生活の安定及び向上を確保することを目的として、議員立法により制定されたものであります。
しかし、近年、消費者が商品及びサービスに関し事業者との間でトラブルに遭うケースが急増し、その内容も多様化、複雑化している等、消費者を取り巻く社会経済情勢は大きく変化しております。消費者政策を充実強化し、消費者が安全で安心できる消費生活を送ることができる環境を整備するため、本基本法を今日の経済社会にふさわしいものに見直すことを内容とする本起草案を提案することとした次第であります。
次に、本起草案の主な内容について御説明申し上げます。
第一に、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念を定めるとともに、国、地方公共団体及び事業者の責務等を明らかにすることとしております。
第二に、消費者契約の適正化を新たに規定する等、基本的な施策を充実強化することとしております。
第三に、消費者政策を計画的、一体的に推進するため、消費者基本計画を策定するとともに、現行の消費者保護会議を消費者政策会議とし、その機能を充実強化することとしております。
第四に、これらの改正に伴い、法律の題名を消費者基本法に改めることとしております。
なお、この法律は、交付の日から施行することとしております。
以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。
―――――――――――――
消費者保護基本法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○山本委員長 本件について発言を求められておりますので、順次これを許します。宇佐美登君。
○宇佐美委員 皆様、お疲れさまでございます。
この消費者保護基本法の一部改正案について、質問的発言というものがあるそうでございまして、いろいろな確認をさせていただきたいと思っております。
消費者政策の基本であります消費者保護基本法は、一九六八年、私が生まれたのは一九六七年ですからちょうど同じぐらいなんですけれども、今から三十六年前に議員立法により制定をされ、これを土台に消費者関係法の制定などが展開されてきたということで、民主党の基本スタンスとして、一九九八年の結党以来、消費者、生活者、納税者の立場を代表する政党として常に国民、消費者の視点に立った政策実現を目指してきたところでもあり、今回の見直しに当たって原口一博議員を中心に民主党が重視したことは、消費者保護の客体ではなく権利の主体であるということであり、消費者の権利が守られて、消費者の自立も成り立っていくんだということをうたうことが必要だと考え、民主党は、そうした考えをベースに、四月九日に民主党の独自の消費者保護基本法の改正案をまとめ、提出をさせていただいたところでもあります。
この問題では与党も三月十二日に独自案を提出されており、消費者関係団体初め国民各界各層から、三十六年ぶりの大改正に対していろいろな期待が、そして望みがかけられている中で、今回、全会派が内容に賛同する形で山本委員長提案として改正案が出されることになったということについて、すべての皆様の御努力に敬意を表するところでございます。
その上で、幾つか政府に確認をさせていただきたいというふうに思っております。
まず第一に、消費者と事業者との間には、情報の質及び量並びに交渉力等に大きな格差があり、どんなに消費者が努力してもこの溝は決して埋めることはできません。これは、私が十年前、衆議院に初当選をさせていただき、細川政権のもと、PL法を議員立法でつくるときにも大変な議論になったわけです。PL法は最終的には閣法になったんですけれども、議員間での議論のときにも、結局は消費者の皆さん方の情報というのは限界があるんだということでございます。
ここは、いずれにしてももう埋めることはできないわけでありますけれども、そういった事実状況を本改正案の一条でうたっているところでありますけれども、国及び地方自治体として、消費者が消費生活に必要な知識を収集するために、また収得するために、支援をしていくことが必要であると考えているわけでございます。十七条では、学校、地域、家庭、職域その他さまざまな場を通じた消費生活に関する教育の充実のための必要な施策を国の役割として位置づけています。
こうしたことを受けて、国として、今後どのように具体政策を講じようと考えているのか、まずは答弁を求めたいと思います。
○永谷政府参考人 宇佐美先生御指摘のとおりでございます。消費者と事業者との間の情報力等の構造的な格差、そこをどうやって埋めるかということを今回の改正法案ではかなり意識して、この案がつくられているというふうに理解しております。
具体的に情報提供というのを非常に重要視しているというのが今回の改正法案の一つの特色ではないかなと私は理解しておりますけれども、ふんだんに消費者に対して情報を提供する、その情報に基づいて消費者が適切に商品とかサービスを選択できるようにするということが極めて重要であるということであります。
そういう意味で、これまで、私どもとしまして、各省庁でありますとか自治体でありますとかあるいは国民生活センター等を通じて、定期刊行物それからテレビ、ラジオ、ホームページ等々さまざまな媒体を活用して、被害の情報でありますとか消費生活に関する知識等について情報提供を行ってきているということであります。
引き続きこれからも、そういうような情報提供等について拡充していくということと、それから、おっしゃっていますように、消費者教育あるいは啓発の充実ということもとても重要であるというふうに認識しております。ここも、これまで、学校における消費者教育の教材の作成でありますとか、あるいは地域における講習会、しかもこっちから出かけていって出前講座みたいな形で講習会をやるとかいうようなことをやってきておりますけれども、今後とも、消費者が生涯を通じて消費者教育を受けられる機会の拡充というのを図っていきたいというふうに思っております。
○宇佐美委員 ぜひ積極的な施策を講じていくことを期待したいと思います。
今回、特に、これまで法律の中でうたわれることのなかった消費者団体が、八条を筆頭に、初めて法律の中で書き込まれたわけでございます。そして同時に、今まで消費生活にかかわる問題に直接対応してきました、独立行政法人に先日なりました国民生活センターの果たしている役割は大変重要でありまして、この国民生活センターの役割がきちっとこの法案の中で位置づけられたということも評価ができるところであると思います。
国民生活センターを中心に、国及び地方自治体における消費者相談窓口、あるいは、きょうも傍聴にも来られていると思います消費者関係団体などとの連携をより一層高め、国民の消費生活の向上をしっかりと図っていっていただきたいと思っているところでございます。
今後の体制充実に向けた政府としての決意を伺いたいと思います。
○永谷政府参考人 今回の基本法改正の中で、国民生活センターを基本法の中に明確に位置づけていただいたということは、私どもも非常にありがたいことだというふうに理解しております。
今先生おっしゃいましたけれども、国民生活センターは、消費生活に関する情報の収集でありますとか提供、あるいは苦情処理のあっせんとか相談を主としてやる、そういうことの中核的な機関として積極的な役割を果たすというふうに位置づけられております。
私ども、この規定の趣旨を踏まえまして、国民生活センター、それから地方公共団体の機関であります消費生活センター、あるいは消費者団体などとの連携強化、いろんな意味で制約があるものですからそこをブレークする意味でもそういう各種関係団体のネットワーキングというのをきちっと拡大させながら、消費者への情報提供あるいは苦情処理、苦情相談の充実強化が図られるように努めていきたいというふうに思っております。
○宇佐美委員 ぜひ一生懸命今後ともやっていただきたいところですし、先ほどの消費者団体や国民生活センターの位置づけについては、石毛えい子議員や山内議員が本当に、与党の河野太郎議員や岸田文雄議員、そして公明党の大口先生と相談をさせていただく中で、さすが議員立法だと言われる本当に立法府としての機能を果たしている部分でもあり、政府としてもしっかりと活動をしていただきたいと思っているところであります。
さて、二十七条では、内閣府に消費者政策会議が設置されることとされました。これは現行の消費者保護会議にかわるものでありますが、まず、現在の消費者保護会議がこれまでの国の消費行政にどの程度の役割を果たしてきたのか、そして、今度の消費者政策会議が、政府によくある、年に数回しか開催されないような形だけの関係閣僚会議で終わらないためにどのように実効的に運用をしていくのか、政府の見解を伺いたいと思います。
同時にさらに、消費者政策の策定過程において透明性をきちんと確保することが大変重要であります。ある意味、徹底的に情報公開をしていくことが、消費者であり、そして政府であり、生産者、それぞれのお互いの信頼関係をつくっていく上で絶対に欠かすことのできないところであります。
この問題については、竹中大臣、わざわざお越しいただいております。大臣の方から見解、答弁をいただきたいと思います。
○竹中国務大臣 お答えをさせていただきます。
消費者政策会議の問題は大変重要であると認識をしております。
現在の消費者保護会議は、内閣総理大臣を会長としまして、全閣僚をメンバーとする会議でございます。これまでは基本的な消費者政策を決定、推進するという役割を担ってきたところでございますけれども、その一方で、必ずしもその実効性は十分に上がっていないのではないかという御指摘もいただいてきたと思っております。こうした状況を踏まえまして、今回の改正において、消費者保護会議が消費者政策会議として改組され、その機能の強化を図るというふうにされているところと承知をしております。
この消費者政策会議におきましては、新たに消費者基本計画の案の作成を行うということ、ここが一つの重要なポイントになるわけでございますけれども、その際は、消費者の代表を含む国民生活審議会の意見を聞くということとされております。
また、これに加えまして、消費者政策会議は、消費者政策の実施状況を検証して、評価して、監視する、まさにプラン・ドゥー・シーを一貫して行う、これらの役割を着実に果たしていく必要があるというふうに私自身も考えております。
また、この推進に当たりましては、パブリックコメントの実施等を通じまして広く国民の意見を反映させますとともに、政策の作成過程の透明性を確保していく。委員御指摘のとおり、ここが重要だと考えております。
そうした点も踏まえまして、政府としましては、この消費者政策会議の実効的な運用によりまして、ぜひ消費者政策を強力に推進していきたいと思っているところでございます。
○宇佐美委員 情報の公開という意味では、パブリックコメント、最近いろんな各省庁やっていただいているわけですけれども、そのやり方もぜひ御検討いただいて、例えば法案のときに、十二月二十六日とかもう年末に出て、それが一月の中旬ぐらいまでと、一番人が忙しいときに、通常会があるときなんかはそういうのが出てくるんですね。そういうことのないように、本当の意味で多くの国民の皆さんがパブリックコメントに参加をできるし、そしてそれぞれの審議過程、各審議会などが情報公開を徹底していくというのが今政府の方針でもあるはずでございます。大きな期待をするところでございます。
さて、最後に、この法案の第七条の二項で、これは与野党間の協議のときにも熱心な議論をしていただいたわけですけれども、知的財産権の保護をある意味うたっているわけでございますけれども、これが過度に保護されることによって、今例えば遺伝子組み換え食品などがありますけれども、遺伝子組み換え食品というのはまさにこれは知的財産権の及ぶときもあるわけでございます。しかし、その遺伝子組み換え食品がしっかりと情報公開されていなければ、消費者の皆さんがそれを口にするときにも大変心配があるし、それを売ること自体に疑問が及ぶときもあるわけでございます。
こういった意味で、知的財産権を保護するけれども、それが過度に及んで消費者が不利にならないようにすべきだということが非常に重要だと思いますけれども、政府の見解を大臣から伺いたいと思います。
○竹中国務大臣 御指摘のように、知的財産を有する者の立場、それと消費者の立場、これをバランスさせるということが我々の社会において大変今問われていることだと思っております。
この第七条の二項につきましては、健全な市場をつくるために、消費者が、にせブランド品でありますとか違法なコピー商品を購入することなどによって、結果としまして知的財産権の適正な保護を損なうことのないように行動すべきであるという旨の規定がなされたというふうに理解をしております。
したがいまして、この規定によりまして知的財産権が過度に保護されて、消費者に対する情報提供が妨げられるなど、消費者が不利になるとの懸念はないものと考えているところでございます。
○宇佐美委員 時間が来ましたので終了させていただきたいと思いますけれども、きょうこの法案審議、採決の後、公益通報者保護法案という法案が出てまいります。これはこの消費者基本法とある意味ペアになって大変重要な法案なんですけれども、残念ながら、最終的に政府提案がされたものについては、消費者保護という観点、消費者への情報公開という意味でまだまだ足りないところが多くあると我々民主党では考えているところであり、今後、この委員会でも議論をする中で、与党の皆様にも柔軟に修正についても対応をお願いしたいと思いつつ、この消費者基本法、これからは消費者基本法になるわけでございますけれども、まさに消費者の憲法であり、大臣もしっかりと御認識いただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
○山本委員長 次に、吉井英勝君。
○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
私は、消費者保護基本法の一部を改正する法律案の委員長提案について賛成し、あわせて日本共産党の見解を申し上げたいと思います。
近年、消費者被害はふえ続ける一方ですが、その被害は多方面にわたり深刻化しています。国民生活センターと全国各地の消費生活センターに寄せられた二〇〇一年度の相談件数は六十六万件に上り、十年前の約三・八倍に達しています。被害内容も、IT関連や詐欺まがいの不公正取引、金融・保険等の契約に関する被害など、複雑な案件がふえています。また、BSE汚染牛やO157、雪印の食中毒事件、食品偽装表示、三菱自動車リコール隠しなど、生命や健康にかかわる多種多様で重大な被害が続発しています。
ところが、国と地方自治体の消費者行政は、消費者被害を防止するための事業者に対する有効な措置を怠ってきた上に、被害情報を収集している国民生活センターの統合・独立行政法人化、被害相談を受けている消費生活センターの統廃合、業務の民間委託化、食品安全や危害防止安全基準の規制緩和など、大幅に後退しているのが実態です。
今日のこうした消費者を取り巻く現状を踏まえ、消費者の権利を実現する実効性ある改正をするために、日本共産党は三月二十日に修正案大綱を発表いたしました。
そのポイントは、一つは、法律の目的に消費者の権利の実現の確保を明記するとともに、基本理念に八つの消費者の権利を明記し、消費者の権利実現を図るために国、地方公共団体、事業者にその責務を有するということを明記することであります。
その部分の我が党の大綱でお示ししたものは、消費者の権利の明記として、一つは、法律の目的に消費者の権利実現を明記する。事業活動に伴う消費者の被害が増加し、多様化し、深刻化している状況にかんがみ、消費者の被害を防止し、消費者の利益の擁護及び増進を図るため、消費者政策の基本理念を定め、消費者施策を総合的に推進することにより、消費者の権利の実現を確保するということを法の目的とするということであります。二つ目に、消費者施策は、消費者の権利を保障する見地から策定、実施すべきことを基本理念に定め、三つ目に、消費者の権利として、安全が確保されること、必要な情報を得られること、適切な選択を行えること、公正な取引条件により消費者取引を行えること、被害の救済が受けられること、消費者教育を受けられること、消費者政策に意見が反映されること、消費者団体を組織し、行動できること、以上の八項目を明記するということであります。
二として、国、地方公共団体、事業者の責務として、一つは、国、地方公共団体が実効性のある施策を策定、実施することにより、消費者の権利の実現を確保する責務を有する。二つ目に、事業者の責務ということで、商品・役務の安全性の確保及び品質の向上、商品・役務に関する消費者への適正迅速な情報提供、商品・役務の品質等の内容の適切な表示、商品・役務の価格、取引条件、リスクの明示等取引における公正の確保、取引に関する苦情、紛争の公正迅速な解決、国、地方公共団体が実施する消費者の権利の実現を確保する施策への協力、上記を確保するための自主行動基準の策定、体制の整備、従業員教育、この七つのことなどを実施することにより、消費者の権利の実現を確保する責務を有する。さらに、三つ目に、事業者団体の責務を新たに規定して、事業者の責務が適切確実に果たされるよう事業者を支援する、消費者の苦情、紛争の公正迅速な解決の仕組みを整備する。このように、消費者の権利の実現を確保する具体的な内容でありました。
第二のポイントは、消費者参加の規定を整備し、消費者、消費者団体の役割を明確にしたことです。
消費者政策の策定への消費者、消費者団体代表参加の保障については、一つは、国、地方公共団体は、消費者政策の企画立案への消費者、消費者代表の参加、意見を述べる機会の保障、意見交換の場の設置など、消費者、消費者団体の意見の反映を保障する仕組みを整備する。二つ目に、消費者保護会議の改組、拡充を図って、名称を消費者会議と改め、委員に消費者代表を含む外部委員の参加を確保、消費者基本計画など消費者の権利を実現するための施策の企画、立案、推進の権限を付与すること、関係省庁の消費者施策を監視し、内閣総理大臣に意見を述べる権限を付与する、これを実施するに必要な専門的、継続的な担当部署を設けること。
さらに、第三に、消費者、消費者団体の役割についてですが、消費者は、自主的に情報を収集し、合理的に判断、選択し、必要に応じて意見表明するなど、みずからの権利実現のために積極的な役割を果たす。消費者団体の役割を新たに規定すること。そこでは、消費者を自主的に組織し行動する、消費者への情報提供、消費者教育、消費者施策への意見の表明、消費者の視点に立った市場の監視、消費者の権利を害する事業活動を是正させるための活動、団体訴訟制度の活用などによる消費者被害救済の支援等に努めるということ。こうして、消費者基本計画を策定し、総合的な消費者施策を推進することが重要だという考え方であります。
第四は、消費者施策の拡充強化です。
安全の確保では、安全を害するおそれのある商品の回収や危害・欠陥情報の収集、公表。消費者施策に関する情報の積極的な公開。消費者契約の適正化規定を新設し、不適正勧誘の規制の明示。また、苦情、紛争の迅速公正な解決の体制強化のために、地方公共団体のみならず、国や国民生活センターの苦情処理、紛争処理機能の強化を図ることなど、これを内容とするものでありました。
本修正案には、消費者運動が長年求めてきた消費者の権利が明記されました。しかし、各党の一致点という法案の性格がありますから、目的への消費者の権利確保や、国、地方公共団体、事業者の消費者の権利確保の責務、消費者政策の企画作成段階の消費者参加、国の紛争処理義務化や機能強化などが、取り入れることができませんでした。また、本来、消費者の役割とすべきものが、消費者の責務として残りました。
本案を足がかりにして、消費者の皆さんと引き続き協力して、これらの実現のために奮闘していきたいということを申し上げて、私の発言を終わりたいと思います。
○山本委員長 これにて発言は終わりました。
お諮りいたします。
本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○山本委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とすることに決しました。
なお、両法律案提出の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
――――◇―――――
○山本委員長 次に、内閣提出、公益通報者保護法案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。竹中内閣府特命担当大臣。
―――――――――――――
公益通報者保護法案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○竹中国務大臣 公益通報者保護法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
近年、食品の偽装表示事件を初め、国民の生命や身体の保護、消費者の利益の擁護等にかかわる事業者の犯罪行為や法令違反行為が相次いで発生しております。また、これら事業者の犯罪行為や法令違反行為は、その多くが、事業者内部の関係者からの通報を契機として明らかにされたところであります。
このような状況を踏まえ、事業者による法令遵守を確保して国民生活の安定等を図っていく上で、公益のために通報を行ったことを理由として労働者が解雇等の不利益な取り扱いを受けることのないよう公益通報に関する制度を整備していくことが緊要な課題となっております。
政府といたしましては、以上の認識のもと、公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令の規定の遵守を図るため、本法律案を提出した次第であります。
次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
この法律案は、公益通報者の解雇の無効等並びに公益通報に関し事業者及び行政機関がとるべき措置について定めております。
第一に、一定の要件に該当する公益通報をしたことを理由とする労働者の解雇を無効とし、労働者派遣契約の解除を無効とするとともに、降格、減給その他の不利益な取り扱いをしてはならないこととしております。
第二に、公益通報を受けた事業者は、是正措置を講じたときは、遅滞なく、通報者に通知するよう努めなければならないこととするとともに、公益通報を受けた行政機関は、必要な調査及び適切な措置をとらなければならない旨等を定めております。
その他、公益通報の範囲、一般職の国家公務員等に対する取り扱い、施行後五年を目途とする法律の施行状況についての検討等を規定しております。
以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○山本委員長 この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府国民生活局長永谷安賢君、総務省自治行政局長畠中誠二郎君、法務省大臣官房審議官深山卓也君及び厚生労働省大臣官房審議官大石明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○山本委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。葉梨康弘君。
○葉梨委員 おはようございます。自由民主党の葉梨康弘です。
きょうは、内閣提出の公益通報保護法案について質問をさせていただきます。
企業のコンプライアンス経営の促進というような片仮名語がよく言われることがあるんですけれども、我が国の資本主義の創始者とも言われます渋沢栄一先生が、こんなことを言われております。
一個人がいかに富んでも、社会全体が貧乏であったら、その人の幸福は保障されない。その事業が、個人を利するだけでなく、多数社会を利していくのでなければ、決して正しい商売とは言えない。仕事は公利公益だと思う。その人自身は自分のためにと思ってやったことが、実はそれがそのまま公益となる。これこそが本当の商業の姿だからだ。
明治の先達、本当に、まさにこういうことを言われている。こういうような、企業の利益、それから公益、それから消費者の利益、これは決して相反するものではなくて、みんなで利益を追求していく、その姿勢が、我が国の生き生きとした資本主義、これをつくってきたんじゃないか、そういうような感じを持っております。
ただ、残念ながら、今はそういうことがちょっと壊れつつある、そういう不祥事があるということは認めざるを得ません。
私は茨城県に住んでいますけれども、多くの住民を不安に陥れ、死者まで出してしまったジェー・シー・オーの臨界事故、あるいは雪印乳業、雪印食品の事件、さらに三菱自工それから三菱ふそうの事件、そういった不祥事が大変続発している状況にあります。
やはり私どもも、経営者自身が、企業の利益は社会の利益やあるいは消費者の利益と反するものであってはならないんだ、そのことを再認識していくことがひいては我が国の経済の再生にもつながるものだ、そういう認識を持ちながら、今課題となっている公益通報の問題についても、このような問題認識から、自民党の中でプロジェクトをつくって、そして徹底的に議論して、法案の早期の成立が非常に必要だと。そして、これは経済のためだけではなくて、消費者の利益のため、そして社会全体の利益のために、ぜひともこの制度の早期成立が必要だ、そういう観点から徹底的に議論をしてきたという経緯がございます。
ただ、残念ながら、この法案については、二つの方向からいろいろな批判が行われているというのが実情でございます。
一つの方向というのは、企業性善説原理主義、そういったような、そう名づけさせていただきますけれども、企業の利益の追求というのは善だ、だから労働者にも企業への忠誠が求められる、だから公益通報を外部に通報するなんというのはもってのほかである、そういうような考え方もかつてはあったように思います。
ただ、これについてはきょうちょっと議論するつもりはないんです。というのは、本会議でも、竹中大臣の方から、この法律というのは、いわゆる密告促進法、そういうようなものではないということを明確に答弁いただきました。そして、いろいろな誤解を解きほぐす、そういう作業をやりながら、我が党としてもあるいは政府としても、この法律の提案にこぎつけたというような経緯がございます。
もう一つの批判がございます。これについてきょう議論をさせていただきたいと思います。
これは企業性悪説原理主義とも名づけるべきものであると思います。というのは、企業の利益の追求はもともとが悪である、そして企業には自浄努力というのは期待できない、だから外部通報を徹底的に保護すべきである、だから今出てきている法案というのは極めて生ぬるいものである、そういうような批判です。
ただし、先ほど申し上げましたように、健全な資本主義の発展、これを図っていくためには、そういうような考え方で、生ぬるい、生ぬるいと批判を繰り返すことでこの制度の早期成立を阻害するということが果たしていいものだろうかどうか、私は非常に疑問に感じております。
実際に、生ぬるいという批判、いろいろな個別のケースについては、何となくもっともらしいケースを取り上げることがあるわけですけれども、法制度としてこの法案自体を、ある類型をこの公益通報の類型に加える、何をするということをやってまいりますと、きょうこれから議論をしていきますけれども、非常にその類型が不明確になる。そして、類型化が不明確になったおかげで、いろいろな形で国民的な議論をしていかなきゃいけない。議論をしていかねばならないということになりますと、この制度自体をつくるということがおくれてしまう、そういう結果にもなりかねないんじゃないかというような感じを持っております。
そこで、これから条文に沿って質問をさせていただきます。
生ぬるい、そういう意見が必ずしも現実的でない。やはりある程度議論が煮詰まって、要件も明確になっている、そういう内容についてまず制度を構築していくこと、これが必要であるという観点から質問させていただきます。
まず、法務省に対してお伺いいたします。
法律案の第二条関係で、この制度の保護対象には、通報者として、労働者だけじゃなくて、派遣事業者の役員あるいは請負事業者の役員を加えるべきだ、そういうような意見もございます。
ただ、役員を加えるということになりますと、そもそもそれは契約の当事者ということになってきます。当事者の一方が、例えばもう一方についての犯罪行為、これを通報したことを理由として契約が解除される、そういうことがもしもあったとしたら、このような契約の解除については無効あるいは損害賠償の対象になる場合もあるように考えますけれども、これは民法の話ですけれども、いかがでしょうか。一般論で結構ですので、御答弁をお願いいたします。
〔委員長退席、大村委員長代理着席〕
○深山政府参考人 お尋ねのように、契約の当事者の一方が他方当事者の犯罪行為等を通報したことを理由に契約を解除された場合、この場合に解除の効力が認められるかどうかといったような点につきましては、事案ごとの具体的な事情によりますので一概にお答えすることはなかなか難しいんですけれども、あくまで一般論ということで申し上げれば、委員御指摘のとおり、解除が無効になる場合というのも十分あり得るところですし、この場合に、契約の相手方が解除が有効であると主張して契約を履行しないといったような場合には、これによって生じた損害について損害賠償請求が認められるということもあり得ると思っております。
○葉梨委員 ありがとうございました。
契約の当事者については取引自由の原則というのがあるわけですけれども、必ずしも、今の御答弁のように、公益通報的なもの、これを理由とした契約の解除について救済されないということではなくて、やはり当事者間の民法上のいろいろな法理の中で救済されていく。それは、個々に契約の解除を無効とする、さかのぼって無効とするのか、あるいは損害賠償にするのかというのは、まさに当事者の話し合いの話じゃなかろうかなというような感じを持っております。私としては、今の現段階では、民法の一般法理においてその点を措置していくべきじゃないかというような考え方を持っております。
次に、第二条関係です。
公益通報について、通報対象事実がまさに生じようとしているときということが法案でうたわれております。これでは狭いんだ、生じるおそれがあるときというふうに変えるべきだという御意見がございます。
これは、生じるおそれがあるときに何かを通報すべきである、あるいはしなければならない、こういった法律があることは事実なんです。ただしそれは、例えば災害ですとか、災害が生じるおそれがある、これは災害対策基本法ですけれども、そういったように、ある程度客観的な判断要素があるということが通例でございます。
この通報対象事実が生じるおそれがある、通報対象事実というのは犯罪行為であることも多いんですけれども、犯罪が生じるおそれがあるといったときに何かをするというような法律が何があるか。ちょっとケースは違うんですけれども、警職法という法律があります。警察官が職務質問を行うときに、犯罪を起こしそうな場合に職務質問を行う、そういうときの要件は警職法ではどういうふうに書いてあるか。「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を」「犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」について職務質問を行うというのが警職法の規定でございます。ですから、プロである警察官についても、これだけの限定を付しているということになります。
実際、生ぬるいというような批判を受けているわけですけれども、その意見を入れまして、例えば、ここの通報対象事実、生じるおそれというふうに変えてしまいますと、例えば合理的でない思い込みの通報を繰り返す者、これについても保護しなければならないんじゃないかというような議論も引き起こすし、また、極めて要件が広くなり過ぎるんじゃないかというような感じを持っておりますけれども、そこのところの見解を簡潔にお答え願いたいと思います。
○永谷政府参考人 葉梨先生御指摘のとおりでございます。
通報対象事実が生ずるおそれでは、労働者の主観による合理的でない思い込みが含まれることなどによって、事業者と労働者の当事者間で事実認識に差異というか紛れが生ずる可能性があるということでありまして、そういう意味で、「まさに生じようとしている」というふうに規定したということであります。
○葉梨委員 ありがとうございました。
今、生じるおそれということで言いましたけれども、もちろん私自身も、生じようとしているとき以外に、本当にケース・バイ・ケースではありますけれども、これは保護してあげたらいいんじゃないかなというケースが全くないというふうには申し上げるつもりはありません。ただ、そこの点については別の形で、それに基づく契約の解除が無効となり得るということを、後でまた議論の中で申し上げたいと思います。
次に、第二条の第三項の関係でございます。通報対象事実。
これは、通報対象事実については、今の法案でも、いわゆる犯罪行為の事実に加えて、当該違反行為を根拠とする行政処分の違反、これについても、それに罰則がかかっている場合も含まれるということになっています。
実は、後者の部分というのは、法律ですから、法律用語で書いてありますので非常にわかりづらいんですけれども、極めてこれは広うございます。行政法的なもので、いろいろな違反行為がかけられていて、直罰になっていない、直接罰則になっていないという、以外の違反行為の態様というのは相当広い、ですから相当広範囲のものが救われてくるということになってまいります。
それではやはり生ぬるいんだ、そういうような罰則絡みということ、あるいは行政処分違反が罰則になるということ以外に、単なる罰則も何もかかっていない違反行為についても通報対象事実に加えなさいというような意見がございます。
ただし、そうなりますと、さっき災害対策基本法を引きましたけれども、災害が生じるおそれのあるときは、何人も市町村や警察に通報しなきゃいけない、そういったこと、あるいは、道路交通法にありますけれども、みだりに進路を変更してはいけない、そういったような違反行為、これについても公益通報の通報対象事実になるんだ。そうなりますと、やはり一般国民からすると、果たして法律でそこまでやるんだろうかというような議論が出てくる可能性があるんじゃなかろうかと思っております。
そもそも、私自身考えると、罰則に関係のないそういったような義務規定というのは、やはり一つには構成要件が明確じゃないということと、そこに罰則をかけるということ自体に国民的なコンセンサスがないというような感じがいたします。
そこで、もう一度確認的に伺いますけれども、いわゆる単なる法令違反を対象としなかった理由について、簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。
○永谷政府参考人 まさに、葉梨先生、今おっしゃいましたとおりだろうと思います。全く罰則と関連性のない義務規定でありますと、構成要件が非常に漠としておりますし、あるいは当該違法行為に罰則等を加えるべきというコンセンサスがないと考えられるものであります。したがいまして、公益通報、この制度の対象とすることについては、やはり現実的ではないんじゃないかというふうに考えております。
○葉梨委員 罰則に関係のないいろいろなものについて、これは法律ですので、どこまで類型化するかという問題だと思います。先ほども申し上げましたけれども、ケース・バイ・ケースの問題については、後でちょっと厚生労働省とまた議論させていただきたいと思います。
次も第二条第三項関係です。
通報対象事実、これは、罰則に関係があるという法令違反、その法律については、代表的なものを特記した上で政令で書くということになっております。後で、政令でどういったものを定めるかというような質問については、多分公明党の大口委員の方からも質問があると思いますので、私からは質問いたしません。
ただ、自民党の中での議論でも実はいろいろありまして、法律で全部列挙すべきという方も確かにいるんですけれども、法律の効果というのは、法律であろうと政令であろうと実は変わらないものですから、私なんかは、別に政令でも構わないんじゃないかなというような意見を最初から持っていた次第でございます。
ただ、法律でずっと列挙するんじゃなくて政令で書くということについては、意見として、これは事実とは違うと思うんですが、何か国民に隠しているんじゃないか、そういうような批判があるように伺っております。
そこの点について確認したいと思いますが、法律の公布というのは官報登載で行われます。政令の公布というのはどういう形式で行われるでしょうか。
〔大村委員長代理退席、委員長着席〕
○永谷政府参考人 政令の場合も、法律と同様に官報で公示されるということでございます。
○葉梨委員 まさに、効果、国民に対する広がりというか知らせ方は同じということです。ですから、法的効果は変わらないし、あとは要は周知徹底の話なんです。ですから、その周知徹底ということ。
ただ、官僚が勝手につくってしまうというような意見もあったんですが、政令というのは別に官僚が勝手につくるものではないというふうに私は思います。内閣において、政治的なコントロールで決めるんですけれども、この国会でいろいろとまさに議論するということになります。この国会の審議、議論、これを踏まえて政令の内容を検討していただけるものと思いますし、また、政令の内容についても、法律の周知徹底に合わせてしっかりと周知徹底を図っていただきたいと思いますが、これは政治主導ということで政務官に御答弁をお願いいたします。簡潔にお願いします。
○西川大臣政務官 お答えします。
効果については同じだということでありまして、今局長から答弁したとおりでございます。そして、これから政令をつくるわけですけれども、十分皆さんと御協議をしていい内容に仕上げていきたい、こう思っております。
法律、政令の内容につきましてでありますけれども、周知をしっかり図れ、こういうことでありますので、通常の広報活動のほか、業種ごとにそれぞれの事業者団体等を通じて周知を図るとか、そういう方法も取り入れて十分な周知徹底を図っていきたいと考えておりますので、御了解いただきたいと思います。
○葉梨委員 ありがとうございました。
次に、第三条の関係に移らせていただきます。
この法律についての多くの批判の中で、内部通報を原則にしていて、むしろ外部通報を規制することになるんじゃないか、あるいは、内部通報を先にやらなければ外部通報ができないんじゃないかというような意見があるようです。
法律の条文として、確かに内部通報が先に書いてあることは間違いないわけですけれども、当然、要件を満たせば並行してできることは、条文を読めば明らかだろうと思います。
例えば、通報対象事実がまさに生じようとしているときに、個人の生命、身体に危害が発生する急迫した危険がある、このときは直接マスコミなんかにも通報することができるというような形で資料をいただいております。
また、行政機関に通報したら行政機関が何のアクションも起こさなかったときには、永久に外部通報ができなくなるという意見もありますけれども、これについても、第三号ですか、外部通報の要件を満たせば、それと並行した形で、例えば、第一号、いわゆる内部での通報をした場合には証拠隠滅のおそれがあるとか、さっき言った個人の生命、身体に危害が発生する急迫した危険があるとかいった場合には、当然並行して外部通報ができるものと認識しております。
時間もありませんので、そういう理解でよろしいのでしたらよろしいとだけ御答弁願いたいと思います。
○永谷政府参考人 葉梨先生のおっしゃるとおりであります。
○葉梨委員 次に、厚生労働省について伺います。
もう一つの論点というのは、この法律ができたことによって、この法律で救えないような公益的な通報、これについてはばんばん解雇ができるようになるんだというようなことを言われている方がいます。でも、それはまさにこういう制度をつくることを阻害するために、私自身は、ためにする議論じゃなかろうかというふうに思っております。
第三条から第五条までの関係で、この法律での公益通報についていろいろな不利益の処分の禁止とか解雇の無効とか書いてあるわけですけれども、この法律ができたからといって、まず、客観的に合理的な理由を欠いて社会通念上相当と認められない解雇を無効とした改正労働基準法第十八条の二、これは昨年の改正ですけれども、その適用には何ら影響を与えるものではないと考えます。
この法律に規定する以外の何らかの通報、それについても、個別のケースによって労働基準法第十八条の二が適用される場合もあると思いますけれども、厚生労働省、端的にお答えを願いたいと思います。
○大石政府参考人 公益通報に関する保護規定は、労働基準法第十八条の二の規定の適用を妨げるものではない、このことは本法案の第六条第二項においても明記されているところでございます。したがいまして、法案が成立した場合、労働基準法第十八条の二の適用関係については何ら変更がないものというふうに認識いたしております。
委員御指摘の、法案に規定する公益通報に当たらないケース、こういった場合どうかということでございますけれども、個別の事案によってはこの労働基準法第十八条の二の適用もあり得るもの、こういうふうに考えております。
○葉梨委員 十八条の二の適用があり得る。そして、昨年の十八条の二の改正労働基準法の附帯決議においても、その立証責任については相当多くの部分が企業側にあるということで、この法律が決して、この法律以外の公益通報、公益的な通報とあえて言いましょうか、そういうものを別に規制するわけでもないし、そういったものがあればケース・バイ・ケースとして十八条の二の適用があるということだろうと思います。ですから、あくまでこの公益通報の保護法案というのは、類型化できるまとまったものを制度としてつくっていこうという趣旨であるというふうに私は考えております。
そして、もう一点です。時間がないので簡単にお答え願いたいと思いますけれども、視点を変えて――ちょっとこの質問は飛ばさせていただきます。時間的なものがあります。ごめんなさい。
次に、今ずっと議論してまいりました、この法律ができることによってかえって公益通報が制限されるという議論、これについては今も私は申し上げましたけれども、今度は大臣の方から、この法律が公益通報規制法である、そういう反論に明確かつ簡潔にお答えを願いたいと思います。
○竹中国務大臣 今、詳細を御議論いただいたように、この法律というのは、いわば一定の要件に該当する公益通報について保護されるということを特に明確にするという趣旨のものでございます。この要件に該当する通報は現状よりも通報が容易になるということは、これはもう明確であろうかと思っております。
一方で、この法案の保護の対象にならない通報については、これも御指摘のとおりでありまして、現状の一般法理による保護に変更を加えるものではない。これは法文にも明記しております。
したがいまして、この法案は、決して通報を抑制するものではなく、まさに正義を希求する通報者をエンカレッジするというような内容になっているというふうに御理解賜りたいと思います。
○葉梨委員 どういう形であっても、まさに前進であって後退ではないということは明確にしていただいたと思います。
よく西宮冷蔵の事件も引かれますけれども、西宮冷蔵、あれが不幸にして倒産してしまった、それのダメージというのは、雪印自体はもう倒れてしまったわけなので、むしろほかの会社がいろいろと契約をとめていったというようなことにあったというふうに聞いております。
実は、なかなかほかの会社についてまで、これは無効にするのはやめなさい、何をしなさいと言うのは今の法律の法体系上難しいのだけれども、まずこういう制度をつくることが、ほかの会社もなかなか契約の解除というのはしづらくなるということだろうと思います。もし、それでもするからだめだと言うのだったら、まさにそれは企業性悪説原理主義、それからの批判じゃないかなというような感じがいたします。
いずれにしても、何事も、新しい制度を組み立てていこうとしますと、当然いろいろな意見はあります。これは当然のことだと思います。ただ単純に生ぬるいよという批判を繰り返していますと、一見勇ましいけれども、かえって議論を混乱させて改革を停滞させる、そういう結果となることに私たちは気づかなければならないと思います。
昨日も、民主党さん、年金制度について、一元化をかけてにらんだ議論をしながら、多分心の中では政府案も相当生ぬるいと思っていると思うんです。だけれども、年金財政の問題とか少子高齢化の急激な進展に対応する、そういう必要な見直しを行うという私たちの改革案の衆院通過に応じる、そういう大人の対応をしていただいたわけでございます。
その意味でも、やはり消費者の基本法と相まって、公正で自由な競争を実現して、公共の利益、企業の利益、消費者の利益を三位一体で実現していこうというこの法案の目指す制度の構築についても、ぜひとも大人の対応を望みたいなというふうに思っております。
いずれにせよ、明治時代の先人たちの生き生きとした活力あるいは社会的責任を重視した経営感覚、これを取り戻して、あわせて公共、消費者の利益を考えていくことは、我が国が新しい時代を開いていくために非常に不可欠なことだと思います。早く制度を構築すること、これこそが必要である。
そして、この公益通報の保護という局面のみに議論を限定するだけじゃなくて、さっきの消費者基本法、その精神とも相まって、行政には、事業者団体あるいは消費者団体とも率直にいろいろな議論をしていただくということが求められるだろうと思います。
大臣には、この法律の早期の成立に向けた意気込みと、事業者団体、消費者団体との連携の強化についての決意をお伺いしたいと思います。
○竹中国務大臣 葉梨委員から、まさに我々の社会を律する一つの方向として、グローバル化が進んで、自由な競争がどんどん進んでいく。経済行為における、社会活動における自由がどんどん求められている。自由があるからこそ、しかし、その覊絆としての自制なり自覚なり社会的責任なり、そういうものが非常に求められている。そのバランスをやはり図っていくための制度をしっかりとつくっていくことが我々の強い責任である、職務であるというふうに考える次第でございます。この法案も、そうした非常に強い思いの中で、仕組みをつくる一つのステップとしてここに提出をさせていただいております。
いずれにしましても、そうしたことを実現するためには、幅広い協力が必要であるというふうに思っております。
最後に委員御指摘になられましたように、事業者団体、消費者団体、やはり連携が必要でありますし、お互いが自覚を高めていくことが必要であると考えております。その率直な意見交換、情報交換などによる連携強化を通じまして、事業者の法令遵守、コンプライアンスの確保に努めていきたいと思っておりますし、その重要なステップとして、この法案にぜひ御賛同を賜りたいというふうに思っておるところでございます。
○葉梨委員 ありがとうございました。
これまでの質疑で、この法案というのが現段階における大きな前進であるということが明らかになっただろうと思います。
先ほどの消費者基本法と相まって、それが成立する国会で、やはり一つ早期に制度を構築するということが極めて我々国会の責任として求められているのじゃなかろうか。
そして、今、与野党ともにこの制度の必要性を認識しています。そして、きょうもたくさんの方、傍聴に来られていますけれども、草の根の声もこれほど盛り上がっているときはありません。天の時、地の利がございます。あとは人の和でございます。野党の皆さんにもぜひとも先ほど申し上げました大人の対応をお願い申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○山本委員長 次に、大口善徳君。
○大口委員 公明党の大口でございます。
きょうは、本当に傍聴の方もたくさん来られておりまして、国民的な関心の高いこの公益通報者保護法案について、私、質問をさせていただきたい、こう思います。
今、葉梨議員からも質問がありました。できるだけ重複を避けて質問をさせていただきたいと思いますが、食品の偽装表示の問題でありますとか、自動車のリコールの問題でありますとか、非常に今まさにこの公益通報者保護法というものの成立が強く望まれる、この機を逃しちゃいけない、そういう思いでおります。
ただ、私ども、政府に対しましても、今回の立法に当たりまして要望をいたしました。一つは、今回の法案というのは一歩前進であって、完璧なものではない。ですから、やはりこれは五年間をめどとして、そして施行後の運用状況を踏まえつつ制度の見直しを行うべきである。こういうことを強く求めまして、附則の第二条にこの規定が置かれたということである、こういうように思っております。
そしてまた、もう一つ、今葉梨議員の方からもありましたが、この法案というものが公益通報の規制法になってはいけないということで、やはりこの六条の二項で、本法が労働基準法十八条の二の規定の適用を妨げるものではない、こういうことにつきましても、きちっと、これは消費者団体、日弁連、いろんな方々の要望がございましたので、今回の政府案に盛り込まれたということは、私は評価していいんではないかな、こう思っております。前進であって後退ではないということが、葉梨議員の質疑でも明らかになったわけでございます。
その上で、私もいろいろと今回勉強させていただいた中で、一橋大学の松本恒雄教授が、こういうお話を受けました。
この公益通報制度のイメージがある、イメージが二つの側面でとらえることができる。一つは、告発イメージともいえるもので、悪事については、個人的法益はもとより国家的法益や社会的法益を守る立場から、これを侵害する違法行為についての告発を奨励し、国民の知る権利にこたえ、透明性確保に努めることを目的とする、こういう告発イメージ。また、通報イメージとして、本制度が外部への告発を奨励することが目的であってはならず、内部に問題があれば、早い段階で経営トップによって是正措置が行われるよう、企業による自浄努力やコンプライアンス経営を奨励することが重要であって、本制度はそのためのインセンティブを与えようとするものであるべきと。こういう二つのスタンスというものがあるわけです。
これにつきまして、今回の法案提出者の描くこの制度のイメージというものについて大臣にお伺いしたいと思います。
○竹中国務大臣 今委員が御紹介してくださいました告発イメージ、通報イメージというのは、一つのやはりわかりやすい示し方だなというふうに私も思って伺いました。
この法案は、決して外部への告発を奨励するということを目的とするものではございません。公益のために通報を行った従業者が事業者から解雇等の不利益な取り扱いを受けないということを明確にするということをあくまでも目的としているわけでございます。
また、本来、事業者がコンプライアンスを図ることは当然のことであるわけですけれども、近年の規制緩和、市場メカニズムの活用の中で、市場の主体でありますそれぞれの事業者が、社会的責任を自覚してみずからコンプライアンスを高めていくという、これが何よりもやはり重要になっているわけでございます。
本法案はこのような変化にも対応して、事業者の自浄能力を高める、コンプライアンス件数を促すという意味でございますので、その意味では、あえて申し上げれば後者の通報イメージに近い、問題を荒立てることではなくて問題を解決することを目的としている、そのように認識をしております。
○大口委員 今回、この法案の対象法律についていろいろ議論もありました。
この本法案では、国民の生命、身体、財産等の利益の保護にかかわる法令のうち、代表的な七法律を挙げておるわけであります。その他の対象法案について政令にゆだねるということにしておるわけでございますが、この七法令を挙げた理由は何か。それから、その政令で定める法令について、どのような基準で対象法令を定めていくのか。また、七法令以外の、特に当初対象とされていた四百八十九本の法令が、一覧表を私もいただきました、これが政令で定める対象の中に入るのか。
この三点についてお伺いしたいと思います。
○竹中国務大臣 今委員が御説明してくださいましたように、この法案、対象の法令を国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令としております。
それで、別表におきまして、まず分野を例示している。個人の生命または身体の保護、消費者の利益の擁護等々、この分野を例示する。その上で、刑法、食品衛生法、証取法等々の法律の例示をしている。そうしたことを示しながら、その他の法律については政令に委任している、そういう構造、ストラクチャーになっております。
例示しました七つの法律についてお尋ねがございましたけれども、これは、生命、身体の保護にかかわる法令の代表例ということで刑法及び食品衛生法を挙げている。消費者の利益擁護にかかわる法令の代表例として証取法及びJAS法を挙げている。環境の保全にかかわる法令の代表例として大気汚染防止法及び廃棄物処理法を挙げている。そして、その他の利益の保護にかかわる法令の代表例として個人情報保護法を掲げているところでございます。
政令でございますけれども、政令ではこのような分野でありますとか法律の例示を踏まえながら、まさにこの法令違反行為が国民の生命、身体、財産等に及ぼす被害の大きさ等々、いかほどのものかということを精査した上で対象法令の範囲を定めていくという方針でございます。具体的な対象法令の範囲につきましては、この本委員会での法案審議等々も踏まえまして、我々としてもぜひ適切に定めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○大口委員 そうすると、その四百八十九の、当初出ておりました、このものについてはどうなんですか。
○竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、今までの法案の例示、それと範囲の例示、分野の例示等々を踏まえまして、またこの委員会での御審議も踏まえまして、その影響等々をしっかりと我々なりに判断をして、ぜひ幅広く適切に考えていきたいというふうに思っております。
○大口委員 次に、一般の労働者の労働契約上の義務として、秘密保持義務というのがありますね。また、公務員等に課せられる法律上の守秘義務というのがあります。こういう義務と公益通報の関係についてどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
○西川大臣政務官 本法案、解雇その他の不利益な取り扱いから労働者を保護するものだ、こういうことは御理解をいただいていると思います。労働者が労働契約上負っている秘密保持義務を解除する、こういうものであるわけであります。しかしながら、全体としては、公務員等が法律上負っている守秘義務につきましては、本法案はこれを解除するものではありません。こういう状況ですね。
そういう中で、本法案の公益通報の対象は、犯罪行為あるいは法令義務違反行為という反社会的な行為が明白な場合、こういうことになるわけでありますけれども、秘密として保護するに値しないと考えられる、こういうことから、通常これらの事実につきまして法案に定める公益通報をしても法律上の守秘義務違反を問われることはない、こう考えております。
なお、公益通報に当たって、第三者の個人情報あるいは営業秘密、国の安全にかかわる情報など、他人の正当な利益や公共の利益に当たる、保護に値する秘密をあわせて漏らした場合には、守秘義務違反に問われる場合が考えられる、こういう考え方でございます。
○大口委員 この法案の第三条の第二号に、行政機関への通報の保護要件として、当該通報対象事実について処分または勧告等をする権限を有する行政機関に対する通報であることが求められています。しかし、事業者と規制行政機関の癒着により公益通報が適切に処理されないおそれがないわけではない。これを防ぐためには、行政機関の相互チェックを働かせるため、関連行政機関も通報先に含めてはどうか、こういう考え方もあるわけですね。これにつきまして、大臣の答弁を。
○竹中国務大臣 大口委員の御指摘、まさにこの法案の三条の二号に「当該通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関に対する公益通報」と。まさに委員の御懸念は、その事業者と規制行政機関との間で何らかの関係がある場合に、それがうまく実効性があるのかという御懸念かと存じます。
ただ、この法律におきましては、この通報先を限定している理由としましては、何といいましても、当該行政機関が通報内容について法的な権限に基づく調査を行う、それで事実の有無を確認して、当該事実がある場合にはその是正を行うことが可能でなければいけない、そのように認識をしているわけでございます。したがいまして、調査権限でありますとか是正権限を有しない行政機関を通報先には含めなかった。この法律の実効性という観点からそのような判断をしているという点、御理解を賜りたいと思います。
○大口委員 次に、国の行政機関において、職員からの内部通報窓口としてヘルプラインの整備を進めていくべきであると私は思うわけでございます。そういう点で、今現状どうなっているのか。さらに、国家公務員の一元的な内部通報窓口の設置ということもアイデアとして考えられるわけですね。こういうことについてお伺いしたいと思います。
○西川大臣政務官 内閣府で、既にことしの二月に、弁護士を室長としまして、法令遵守対応室を設置いたしました。職員からの通報を受ける体制は整えました。まだ実績は、通報は来ておりませんけれども、抑止力になっているかと思っております。今後、このような内閣府の例を一つのモデルといたしまして、各省庁とも連携をしながら、職員からの内部通報窓口としてヘルプラインの整備を進めていきたい、こう考えております。
国家公務員の一元的な内部通報窓口を設置することにつきましては、行政改革などの観点から検討の必要な問題である、こう受けとめております。本法案の施行状況も見ながら、その必要性につきまして検討を重ねていきたいと考えております。
○大口委員 金融庁もコンプライアンス対応室というものを、まさしく竹中大臣のところでございますけれども、設置を昨年六月十三日からやっておるようでございますが、金融庁の職員からの行政上の行為の法令遵守に関する情報は、九十二件中一件であったようでございますが、いずれにしましても、しっかり整備をして、そして安心して通報できるような体制をきちっとすべきである、こういうふうに考えております。
また、行政機関の所掌事務について通報者が正確な知識を有していないことが考えられるわけでございます。当該通報対象事実について処分または勧告等をする権限を有する行政機関と異なる行政機関に対して通報した場合、この場合、通報者は私は保護されるべきではないかと。「教示」という条文もあるわけでございますけれども、そこら辺はどうでございましょうか。
○西川大臣政務官 御指摘いただきましたように、処分権限を有しない行政機関へ誤って通報される、こういうことも想定しましてこの法案を作成いたしました。本法案の第十一条でありますけれども、そのような場合には、通報者の処分等の権限を有する行政機関を教示しなければならない、こう定めたわけであります。この規定に基づきまして、権限を有する行政機関と異なる行政機関になされた通報も、御指摘のように、結果的には本法案の保護の対象となる、こう考えております。
○大口委員 次に、総務省にお伺いしたいんですが、地方自治体も、こういう内部通報制度といいますか、内閣府で設置したようなもの、その内部通報の窓口としてのヘルプラインの整備、そういうものをしていくべきである、こう思っておるんですが、全国自治体でそれはどういうふうになっているのか。そして、今後、やはりこういうものの整備というのは積極的にやっていくべきである、私はこう考えておるわけです。
そういうことで、総務省に、全国各自治体の中でこういうことを積極的にやっている事例、そして今後、この法案が成立をさせていただくとした場合、それを受けて総務省としてどう対応するのか、お伺いをしたいと思います。
○畠中政府参考人 お答えいたします。
まず、地方公共団体におけるヘルプライン制度などの内部通報制度の整備状況いかんという御質問でございますが、私ども、すべては承知しておりませんが、個別の地方公共団体の事例としましては、例えば、鳥取県では、既に業務改善ヘルプライン制度を導入されております。また、この千代田区では、千代田区職員等公益通報制度というのが条例で定められております。その他幾つかの県とか区で同じような制度が導入されているということは承知しております。
それから、この法律が制定されました後、地方公共団体の整備を推進すべきではないかという御質問でございますが、この内部通報制度と申しますのは、それぞれの団体が自主的、主体的に整備していくものというふうに承知しておりまして、総務省としましても、これらの取り組みを尊重しているところでございます。また、この法律、公益通報者保護法が成立し、施行されましたら、地方公共団体においても自主的、主体的な取り組みが行われることとなりますので、公益通報者の保護とか法令の遵守の促進につながるんじゃないかというふうに考えております。
○大口委員 次に、この第三条の第三号のニでは、労務提供先等に書面による内部通報があった日から二十日を経過しても調査を行う旨の通知がない場合、または正当な理由がなくて調査を行わない場合には、外部通報が認められているということでございます。
しかし、事業者が一応調査する旨の回答をして、その後調査を進めなかった場合では、調査の結果の通知義務は課されていないわけですから、調査を行っていないというその立証は難しい、こういうふうになります。そういうことで、公益通報者は結果的に外部通報ができないことになるんではないか、こう思うわけでございますが、この点についてはいかがでございましょうか。
○竹中国務大臣 まず、大口委員におかれましては、コンプライアンス対応、ヘルプライン等々について重要な問題を御指摘いただきまして、大変ありがとうございます。
今、恐らく日本の大きな企業でコンプライアンス対応室を持っていないところはもうないと思うんですけれども、そうした中で、実は、中央省庁というのはその整備がおくれておりまして、そういう観点から、昨年、金融庁が初めてコンプライアンス対応室を設置して、その中でヘルプラインを整備いたしました。そうした問題意識を受けて、我々も内閣としてしっかりと対応していきたいというふうに思っているところでございます。
お尋ねの第三条三号のニでございますけれども、要するに重要な点は、外部通報を行う一つの前提として、二つ示されている。公益通報をした日から二十日を経過しても調査を行う旨の通知がない場合、これが一つ、それと、現実に正当な理由がなく調査を行わない場合、この場合でありますけれども、委員のお尋ねは、調査をするよと言って調査をしない場合は一体どうなるんだ、一つの重要な御指摘かと思います。
この問題に関しましては、端的に申し上げますと、やはりそういう場合は正当な理由がなく調査を行わない場合に該当するということに尽きると思います。現実に調査を行う場合でございますので、調査を行ったかどうかについて説明を求めることは可能であるわけでございますので、その回答いかんによって、調査状況を把握することは私は困難ではないと思っております。調査状況が不明確な、不明の場合でも、行政機関への通報が保護される仕組みになっているというふうに御理解をいただきたいと思います。
○大口委員 次に、第五条では、公益通報者に対して、通報したことを理由とした降格、減給その他不利益な取り扱いをしてはならないとされているわけですが、内部通報窓口への通報があった場合に通報者に関する情報を現場の上司に伝えたり、あるいは行政機関への通報または外部通報があった場合に密告者探しをするような行為は、私は、絶対あってはいけないし、これは禁止すべきである、こういうふうに考えておるわけです。なぜならば、密告者探しの行為は、そのものが公益通報に対する不利益な取り扱いの端緒となる可能性が高いからであります。
また、この内部通報制度の整備に当たって、労働者に対し、通報者が特定されるおそれのある情報の秘密厳守や、それからまた、保護される通報の種類、行政機関への通報及び外部通報の要件等について、国民が容易に理解また判断できるようにする必要がある、こういうふうに思うわけです。これらの事項につきましては、ガイドラインの作成でありますとか解釈指針等で明確にすべきではないか、こう思うわけでございます。
原子力施設安全情報申告調査委員会運用要領、これは平成十四年十月三十日の改定で、原子力安全・保安院がこれをつくっておるわけですけれども、この中でも、「申告者の意図に反する形で申告者の個人情報が流出することのないよう、万全の注意を払う」こういうことが原子力安全・保安院の運用要領では定められているわけでございます。
また、本法案では通報先ごとに保護要件が異なるので、労働者は適切な通報先を選択することが難しく、通報を迷う場合があるわけですね。これを回避するため、労働者が通報先を選択する前の段階において、法律の専門家ですとかあるいはNPO等の、あるいはいろいろ消費者団体等の公益通報者支援団体などに相談できるような体制が必要ではないか、こういうふうにも考えるわけでございます。
各点につきまして、御答弁をお願いします。
○竹中国務大臣 今回御審議をお願いしています法案は、あくまでも、求められている制度の法律的な骨格をつくるということに相なります。しかし、当然のことながら、行政としては、それだけではなくて、その法律の仕組みがしっかりと現実問題として運用されるようにさまざまな仕組みを我々自身が考えていかなければいけない、そういう責任を負っているというふうに思います。
委員の御指摘、まさにその点だと思いますけれども、通報者の秘密の厳守、公益通報の範囲、保護の要件等について、事業者、従業員にやはりわかりやすくまず広報するということが大変重要な仕事になると思っております。
また、通報を受けた事業者、行政機関の対応指針などを盛り込みましたガイドラインの作成などによりまして、現実にこの制度が運用できるように万全を期したいというふうに思います。
また、公益通報者が通報前に相談できる体制をつくるということは、これは現実には極めて重要な意味を持ってくると思います。法案の円滑な施行を図る上での重要な措置、運用上の必要な措置を、これはNPO等とも連携してしっかりととりたいというふうに思っております。
○大口委員 ぜひとも運用におきましてきめ細かな対応をすべきである、こういうふうに思っております。
ちょっとその点につきまして、局長、通告していないんですが、もう少し具体的に答弁していただければと思います。
○永谷政府参考人 まさに大口先生がおっしゃっていますように、運用を円滑化、要は、制度を円滑にスタートさせるためのいろいろな仕掛けということで工夫をしていきたいというふうに思っております。
具体的に申し上げれば、既にもう、例えばでありますけれども、大阪に弁護士さんとか公認会計士を中心とする公益通報者支援センターみたいなものもできております。そういうところともタイアップをするとかいうような形もあるんだろうと思いますし、あるいは、実際、各種の措置をやっていくというようなことを考えております。
○大口委員 それと、ガイドライン等もどういう予定でつくっていくのかというような、そこら辺はどうでしょうか。
○永谷政府参考人 これは、法律をつくっていただきましたら、可及的速やかにガイドライン等にも着手していく。これは附則のところにございますように、公布後二年以内に施行するというふうに書いてございますけれども、前半の一年で、例えば政令をつくるとかあるいは今先生がおっしゃいますようなガイドラインをつくるとかいうような準備に要する期間というふうに認識しておりまして、その間に必要なガイドライン、政令等を上げて、準備に遺漏なきようにしていきたいというふうに思っております。
○大口委員 第十条の一項では、公益通報をされた行政機関は、必要な調査を行い、その結果に基づき適切な措置をとらなければならないとしております。
行政機関の調査及び措置について、氏名及び住所その他連絡先を明らかにしている公益通報者への通知をこのガイドラインでは明確に私はすべきであると思いますし、一定の期間内に調査が開示されない場合や調査結果が通報者に報告されない場合には、外部通報を可能とすべきである、こういうふうに考えますが、いかがでございましょうか。
○竹中国務大臣 法案の十条に関する具体的なお尋ねでございますけれども、通報を受けました行政機関に対し、公益通報への必要な調査、適切な、適当な措置を講ずる旨、これは確かに十条で規定をされております。
この制度の施行に際しましては、この運用上、行政機関の通報処理ガイドライン等々、これはしっかりと作成しまして、通報を受ける行政機関における適切な処理を図ることが、これは我々として必要な対応であると思っております。その際、行政機関による調査の実施と講じた措置の通報者への通知など、通報を受けた行政機関がとるべき具体的な措置について、これまたやはり適切な措置を講じていきたいというふうに思っております。
コンプライアンスの専門家であられます弁護士の久保利弁護士、著名な方でいらっしゃいますが、その方がよく、これは金融庁でいろいろ我々は御指導いただいておりますが、行政というのはやはりコンプライアンスの塊であるというふうに認識をすべきであると。今回、通報を受けた行政機関は大変大きな責任を負うわけでございますので、行政機関自身のコンプライアンスを拡充するという観点から、しっかりとした仕組みにしていきたいと思っております。
○大口委員 この委員会では、警察の不祥事等の議論もなされました。それで、内部通報というものは非常に大事であると。そして、コンプライアンスということについて、ただ、これは民間企業だけの問題じゃないんですね、やはり行政が手本を示していかなきゃいけない。大臣がおっしゃったとおりでございまして、この法案を一つの契機として、私は、内閣府として、あるいは全省庁が、この通報について、職員の通報についても、きちっと、安心して通報ができるような体制の整備をやっていくべきだ、全力を挙げていくべきだ、こういうふうに感じた次第でございます。
以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○山本委員長 次回は、来る十四日金曜日理事会及び委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時一分散会