衆議院

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第14号 平成16年5月14日(金曜日)

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平成十六年五月十四日(金曜日)

    午前九時十一分開議

 出席委員

   委員長 山本 公一君

   理事 今津  寛君 理事 大村 秀章君

   理事 河本 三郎君 理事 山本  拓君

   理事 宇佐美 登君 理事 鎌田さゆり君

   理事 中山 義活君 理事 大口 善徳君

      岩屋  毅君    江崎洋一郎君

      河井 克行君    西川 公也君

      西村 康稔君    西銘恒三郎君

      葉梨 康弘君    萩生田光一君

      早川 忠孝君    平田 耕一君

      平沼 赳夫君    宮腰 光寛君

      村上誠一郎君    石毛えい子君

      泉  健太君    市村浩一郎君

      大畠 章宏君    島田  久君

      中根 康浩君    原口 一博君

      村越 祐民君    山内おさむ君

      横路 孝弘君    若井 康彦君

      太田 昭宏君    吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   竹中 平蔵君

   内閣府大臣政務官     西川 公也君

   内閣府大臣政務官     宮腰 光寛君

   国土交通大臣政務官    斉藤 滋宣君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  森口 泰孝君

   政府参考人

   (内閣府国民生活局長)  永谷 安賢君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  増井喜一郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            中江 公人君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            西原 政雄君

   政府参考人

   (文化庁次長)      素川 富司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           岡島 敦子君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          豊田 正和君

   政府参考人

   (国土交通省土地・水資源局長)          伊藤 鎭樹君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局技術安全部長)      中山 寛治君

   参考人

   (都市基盤整備公団総裁) 伴   襄君

   内閣委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十四日

 辞任         補欠選任

  江崎洋一郎君     西銘恒三郎君

  西村 康稔君     萩生田光一君

  泉  健太君     若井 康彦君

同日

 辞任         補欠選任

  西銘恒三郎君     江崎洋一郎君

  萩生田光一君     西村 康稔君

  若井 康彦君     村越 祐民君

同日

 辞任         補欠選任

  村越 祐民君     中根 康浩君

同日

 辞任         補欠選任

  中根 康浩君     泉  健太君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 公益通報者保護法案(内閣提出第一一〇号)

 内閣の重要政策に関する件

 コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官森口泰孝君、文化庁次長素川富司君及び経済産業省商務情報政策局長豊田正和君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、山本拓君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおりのコンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案の草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。山本拓君。

山本(拓)委員 提出者を代表いたしまして、本起草案の趣旨及び内容について御説明申し上げます。

 まず、本起草案の趣旨について御説明申し上げます。

 我が国の映画、アニメ等のコンテンツは、総じて高い評価を得ているところでありますが、すぐれたその魅力をビジネスの世界等において十分生かし切れていないのが現状であります。

 コンテンツは、国民の生活に豊かさと潤いを与えるものであり、かつ、海外における我が国の文化等に対する理解の増進に資するものであるとともに、コンテンツビジネスは、将来において成長発展が期待される分野の事業であります。

 そこで、コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、本起草案を提案することとした次第であります。

 次に、本起草案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、基本理念として、コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する施策の推進は、国民生活の向上に寄与し、あわせて多様な文化の創造に資することを基本として行われなければならないこと等を定めることとしております。

 第二に、国、地方公共団体及びコンテンツ制作等を行う者の責務を定めるとともに、連携の強化及び法制上の措置等を定めることといたしております。

 第三に、基本的施策として、人材の育成、先端的な技術に関する研究開発の推進等について定めることといたしております。

 第四に、コンテンツ事業の振興に必要な施策等として、多様な方法により資金調達を図るための制度の構築、権利侵害への措置等について定めることといたしております。

 なお、この法律は、一部を除き、公布の日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ速やかに御賛同くださるようお願い申し上げます。

    ―――――――――――――

 コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 本件について発言を求められておりますので、順次これを許します。中山義活君。

中山(義)委員 おはようございます。

 一九八〇年代から、規制緩和と自由主義経済ということで、日本の国も今までの、物まねをして世界の技術をどんどんまねてどんどん新しいものをつくっていく、要するに、労働力が安いとか技術力で値段の安いものをどんどんつくって外国に売っていた、そういう時代から、この一九八〇年代後半から、プロパテント政策、いわゆる発明、発見という、この特許というものを主眼とした時代に変わってきたわけですね。

 この特許を侵害すると、大変大きな賠償を取られるということで、最近になってとんでもなく、三十億とか四十億とか、うっかりすると何千億という賠償を払わなきゃならない時代になってきた。そういう面では、自分たちが自分たちで発想した、クリエートしたものでなければ外国に通用しない時代になってきた。そういう面で、プロパテント政策がこの日本の中で一番貴重な新しい発想として考えられたわけですね。

 つまり、企業のイノベーションというのは、いわゆる特許がインフラであるというような段階になってきまして、特許というものをしっかり考えながらやっていかないと、日本の国はやっていけない。

 いわゆる工業生産ですと特許でありまして、さらに文化とか新しいソフトの段階になってきますとむしろ我々はコンテンツという名前を使っておりますが、このコンテンツの定義自身も私自身はよくわからないんですが、まず、このコンテンツの定義だけちょっと、そちらの参考人の方に、こういうものですよということを言ってください。

    〔委員長退席、大村委員長代理着席〕

森口政府参考人 お答え申し上げます。

 コンテンツといいますのは、いわゆる映画、音楽その他に代表されますように、御提出されておられます法案においてもございますように、いわゆる人間の創造活動によって生み出されたものであって、教養または娯楽の範囲ということを一応の理念としておりますけれども、内容的には、いろいろな図形でありますとか文字でありますとか色彩、音声、動作、そういったものを組み合わせたもので、最初に申し上げたような範囲のものになる、そういうふうに理解をしておるところでございます。

中山(義)委員 経済産業委員会でも特許の問題をやっておりまして、一つは職務発明の問題ですね、一つは、特許を申請してからいかに早く特許を認められるか、そういう時間的なものを促進していこう、そういう法律案なんですね。

 私たちは、特許のことを考えたときに、このコンテンツの問題も同じだと思うんです。だれが発明をして発見するか。つまり、クリエーター、例えばアニメでいえばアニメーターと言った方がいいかもしれませんね、こういうような、本当に物をつくる人たちが日本で果たして恵まれているだろうか。

 例えば、アニメーターの皆さん、御存じだと思う、アニメというのは絵をかくんですね。一枚一枚の絵をこうやって、ばらばらばらっとやっていくわけですよね、それでアニメをつくるわけでしょう。一枚の絵をかいても、三千円ぐらいにしかならないとか、または三百円ぐらいにしかならない、いろいろなあれがあるんですが、物によって余りにもその金額が低いために、アニメじゃ食えない。では食えなきゃどこへ行くかといったら、よし、では稼ぎにアメリカで一旗上げてやろうということで、アメリカの方へ行ってしまう。または、余り安いので、今度は中国や韓国に発注すると、それで日本の技術がどんどん流出していく。

 人はアメリカへ行っちゃう、技術はアジアの方へ行っちゃう、これじゃ日本のアニメーター、クリエーターは育たないわけですよ。こういうインフラをしっかりやらない限り、日本のコンテンツは発展していかないんです。

 しかし、皆さん、もう実は十一兆円という産業なんですね。大変大きな産業なんです。日本の鉄鋼なんかの産業よりもう大きいんですよ。さらにこれは伸びる可能性があるわけですから、こういうクリエーターのインフラというものをしっかりするために、どんなことを考えていますか。答弁してください。

森口政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、特にクリエーターを中心としたものも含めまして、コンテンツ産業というのは、我が国の経済を牽引することが期待される大変重要な産業でございます。

 政府といたしましては、本年四月に、知的財産戦略本部のコンテンツ専門調査会が、政府として強力に推進すべき施策を三つの目標と十の改革課題ということで提言しております。

 具体的に申し上げますと、業界の一層の近代化、合理化への支援でございますとか、特にこの業界は中小企業が多いということで、その面に必要とされます資金調達手段の多様化、あるいはエンターテインメントのローヤーを初めとする人材の育成、新技術の研究開発、海外展開、海賊版対策、あるいはブロードバンドでの事業展開の支援、そういったことが重要であると提言されております。

 そういうことで、政府といたしましても、コンテンツビジネスを国家戦略の柱として明確に位置づけまして、各府省あるいは知的財産戦略本部を中心に、密接な連携のもとで今申し上げた課題に積極的に取り組んでまいりたい、そのように思っております。

中山(義)委員 発明、発見、またはクリエーター、こういう人たちが、いいことをやっても、これは著作権の問題なんかもそうなんですが、コピーされる。つまり、著作権というのはコピーする権利なんですね、同じものをどんどんつくっていける権利なわけですよ。ところが、勝手にコピーされちゃうと、これは海賊版になるわけですね。

 著作権法の改正でも、CDの還流、要するに、日本の歌手が向こうへ行ってたまたま安くつくった、それが日本に入ってくるととんでもない安い値段だ、これは困るよと。やっぱりクリエーターが同じである以上は、日本の市場では日本の一定の価格でやる。

 これは、独占禁止法という法律と、いわゆる特許やこういう著作権でつくる寡占とは相対するものなんですね。そうでしょう。レコードだって、日本に入ってくるのは安ければ安いほどいいという消費者の方がいる。一方で、これは著作権というものがあって、著作権法でしっかり縛るべきである。特許もそうですね、特許によってある程度市場を寡占できるわけです、ひとり占めにできるわけです。一方、自由主義経済というのはそうじゃないんだ、自由に競争できる権利だ。

 そうすると、これは、今言った独占禁止法と、著作権や特許権というのはぶつかるんですが、この辺の調整をしっかりやれる認識を持っているかどうか、ちょっと説明してください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 著作権につきましては、作者の権利、利益を保護するという観点から万全の対策をとるようにいたしておるわけでございまして、特許につきましてはまた別の観点からの規制等があるわけでございますけれども、作者の権利を守るという観点から、制度上、著作権と特許というものはきちんと調整を図れるような制度になっているところでございます。

中山(義)委員 とにかく、この辺は、今の時代、特許というのは企業にとって最大の武器ですね。しかし、これが相手に渡ったときは、これはとんでもない危険なものなわけですよ。だから、自分たちで物を発明して、自分たちでクリエートしていく、自分たちでつくっていくということが一番大事なんですね。もう物まねができる時代じゃないんです。オンリーワン、つまり、自分でしかできないこと、これが大事だという時代になってきていることは間違いないんですね。それが創造、クリエートなんですよ。アニメーションもそうです。

 だから、アニメーターとかクリエーターとか言われる人が損のないように、一生懸命やった人が報われる社会をここでつくっていかないと、やっぱり発明、発見、またはクリエートする、新しいものをつくっていく、こういう人が育たないとこの産業は生きていけないということでございますので、その辺はしっかりやっていただきたい。

 それからもう一つ、物を創造する人たちに自由な発想を与えてもらいたいと思うんですね。初めから、青少年に対する問題が大き過ぎるから、こういうことをやっちゃいかぬ、ああいうことをやっちゃいかぬじゃなくて、自由な発想でいろんな小説や、漫画をかいていく。しかし、これは青少年に非常に影響があると思ったら、売る方が販売する場所をしっかり考えるべきであって、余りクリエーターにいろんな規制を加えてはいけないというふうに思うんですね。

 最後に申し上げますが、私たちは、発明でも発見でもそうなんです、クリエートでもそうなんです、自由な発想で新しいものをつくり上げていくことがここで一番大事なわけですね。ですから、職務発明の問題もそうですね、それが二百億円なのか三百億円なのか、これはやっぱり発明した人によってとんでもない価値を生む可能性があるわけですね。しかし、職務発明も、本来は、対価として、お金じゃなくて、それがすばらしいという評価が大事なんですね。

 ですから、私たちは、このコンテンツについても、文学や漫画や、こういういろんな創造物ですから、そういう評価もしっかりしていくようにしないと育っていかない、こういうふうに思います。

 そういう面でも、コンテンツに対する認識とか、それから、学校教育の中でも、こういう新しい分野に対して、多くの人があこがれて、自分もアニメーションをつくっていこうとか、クリエーターになろうとか、こういう気持ちを持つような、そういう世界をつくっていただきたいと要望して、質問を終わります。

    〔大村委員長代理退席、委員長着席〕

山本委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案についての意見を述べたいと思います。

 コンテンツの創造、保護及び活用を促進するために、基本理念、基本施策及びコンテンツ事業の振興に必要な事項を定めてこれを推進する法律に賛成するものです。その上で意見を述べます。

 一つは、コンテンツの持つ文化芸術的側面についてです。

 コンテンツの創造、保護、活用を考えるとき留意しなければならないことは、経済的効果、効率やコンテンツビジネスを強調する余り、コンテンツの持つ文化的な側面が軽視されがちになることです。政府のコンテンツ専門調査会の中でも、事業の量的拡大だけでなく文化的な側面をどう高めていくのかが非常に大事という意見も出ています。法案の基本理念では文化芸術振興基本法の基本理念の配慮を規定していますが、それだけで十分だろうかという懸念があります。文化芸術の多面的な発展にとって、芸術文化活動の表現の自由を守り、自主性、創造性の尊重、その保護及び支援措置、また国民が文化芸術を創造し享受する権利を守り発展させる方向での施策は重要であるということを指摘しておきたいと思います。

 二つ目は、中小企業や下請企業の問題です。

 我が国のコンテンツ事業の特徴は、プロダクションなどのコンテンツ制作部門が放送事業者などの下請になっており、中小零細企業が圧倒的多数だということであります。例えばアニメ産業にかかわる都内の三百六十社で見ると、株式会社が約四割、有限会社が約五割、資本金一千万円未満の企業が約五割と、圧倒的に中小零細企業です。

 法案では、「コンテンツ事業の成長発展において中小企業者が果たす役割の重要性にかんがみ、」「特別の配慮」を国の施策に求めていますが、経営が困難な中小企業が求めているのは、配慮にとどまらない、国の特別の支援措置が必要であると考えます。

 また、委託者が適正な制作費を保障することなしには、この分野の技術的蓄積と発展は困難です。この点、法案は、制作事業者の利益が適正に確保されるよう、国は「取引に関する指針の策定その他の必要な施策を講ずる」ことを義務づけています。こうした方向については同意するものですが、問題は、現行の独禁法に基づく下請等に対する優越的地位の濫用の禁止の定めに基づいて、しっかり規制をすることが重要だと考えます。

 三つ目は、制作従事者の処遇問題ですが、制作従事者の処遇問題は、人材育成と一体の関係にあります。

 制作従事者の労働実態はひどいものです。例えばアニメでは、原画を一枚百六十円から百八十円で描く場合もあり、収入は月六万から七万円、あとは出来高払いというような状態が当たり前になっています。そのため、アニメ制作従事者の離職率は八〇%で、三年ももてばいいと言われています。また、映画制作従事者の多くは、フリーのために労災保険や雇用保険にも加入できない状況です。

 法案は、コンテンツ事業者の講ずる措置について、「制作事業者は、そのコンテンツの制作の事業に従事する者の職務がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、制作事業従事者の適切な処遇の確保に努めるもの」としています。従事者の処遇改善は当然ですが、これを事業者の責務として課すだけでは解決しません。例えば東京都杉並区では、人材育成の観点から、アニメ従事者が入社して半年間、プロダクションなど制作事業者に区が助成しています。国でも最低賃金を下回らない賃金を確保できるような措置を検討する必要があると思います。

 四つ目は、制作者の権利保護の問題です。

 法案には、国内外の複製問題など違法な知的財産権の侵害に対して、コンテンツの事業者の利益が適正に確保されるよう、国内の侵害事犯の取り締まり、海外の侵害に対する体制整備の方向が打ち出されています。これは、増大し深刻化している海賊版などの知的財産権の侵害に対応するものと考えます。

 これらとあわせて、国内の制作者の権利保護を図ることも必要です。現在、著作権等は、多くの場合、放送局等の委託者が保有し、制作者は二次利用も制限されているのが圧倒的な実態です。映画やアニメなどは、つくり手には権利が保障されていません。制作者の権利を適正に保障する規定が必要だと考えます。

 五つ目は、資金調達の問題です。

 法案には多様な方法による資金調達制度の構築が規定されていますが、資金問題で重要なことは、国からの助成の充実と改善です。その際、行政介入があってはならないことは言うまでもありません。日本の映画製作への助成策は、イギリス、フランス、韓国など諸外国から見ても極めて貧弱であり、この充実が緊急の課題だと考えます。

 以上、コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案についての意見の表明といたします。

山本委員長 これにて発言は終わりました。

 お諮りいたします。

 コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律案起草の件につきましては、お手元に配付の草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山本委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、本法律案提出の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

山本委員長 次に、内閣提出、公益通報者保護法案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る十九日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として都市基盤整備公団総裁伴襄君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府国民生活局長永谷安賢君、金融庁総務企画局長増井喜一郎君、金融庁総務企画局審議官中江公人君、金融庁総務企画局参事官西原政雄君、農林水産省大臣官房審議官岡島敦子君、国土交通省土地・水資源局長伊藤鎭樹君及び国土交通省自動車交通局技術安全部長中山寛治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田久君。

島田委員 民主党・無所属クラブの島田久でございます。

 この法案は、公益という概念が通報者に重くのしかかって、もう一つは、使用者と労働者との力関係を考えたりしますと、通報者の公正な意思というものが十分発揮できないような法案の構成になっているような気がするんですね。それらの点について明確にしながら、この法案の重要性というものも理解しながら、十分に議論を進めていく必要があるだろうというふうに私は考えているわけであります。

 特に、多くの市民の生命、身体、健康、安全、多数の人の財産の公益が侵害された事実から出発をして、その規制、防止の手段の一つとして立法に至ったと理解をいたしております。

 制度の法制上の趣旨は、多くの消費者、市民等の公益をいかにして守ることができるか、そして、この法案そのものが、どちらかといったら、目的の規制法令そのものを遵守する立場ということで、法律そのものをただ列記をしている。それらのことについて、必ずしも、通報者そのものが十分にこの法令そのものを理解できるということは、なかなか大変なことだと思うんです。

 そういうことを考えながら通報をしていかなければならないという、社会の公正あるいは正義というようなものについて十分に発揮できるような法案であるべきだというふうに私は考えるんですけれども、まず、基本的なところを理解するために、所見をお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 言うまでもございませんけれども、企業の幾つかの不祥事といいますか、続いているというのは、これはもう大変遺憾なことであり、国民生活を守るという観点から、やはり何らかの対応が必要であるというふうに思います。しかも、こうした不祥事が、結果的には、企業の内部の方々ないしは関係する方々からのいわゆる内部通報によって発覚しているという事実がある。その意味では、公益、まさに広い意味での公益を守るという観点、しかし一方で、自由な事業活動等々の正当な利益を阻害されないような、そのバランスをとりながら図るということが、まさに今、私たちの社会の仕組みとして求められていることであろうと思います。

 その意味では、この法案は、一定の要件に該当する公益通報について保護されるんだということを明確にするという性格のものでございます。委員、冒頭で、公益というのが重くのしかかっているのではないか、より難しくなるのではないかという御指摘がございましたけれども、一定の要件に該当する公益通報について保護されることを明確にするということでございますので、該当する通報は今よりも通報が容易になるということなんだと思います。

 また、この法案の定める対象範囲、その要件に該当しない通報については、これは、従来と同様、一般法理に基づいて、個々の事案ごとに、通報の公益性等に応じて通報者の保護が図られる、ここは従来と変更がないわけでございます。この趣旨を明確にするためにも、この法案の第六条の第二項において、解雇権濫用の法理を定めた労働基準法第十八条の二の規定の適用を妨げるものではないという旨を明確に規定しているわけでございます。

 そういうことを勘案しますと、やはり、この法案の定める対象範囲や要件に該当するものについてはもちろん通報が容易になる、そうでないものについても今よりも通報がしにくくなるということはないわけで、その意味では、今我々が直面している問題に対するはっきりとした前進になるというふうに考えている次第でございます。

島田委員 今御答弁がありましたけれども、ただ、現実にいろいろある法律そのもの、挙げられている法律を理解して、そして通報者みずからが公益に対して通報する場合に、なかなか、一般的な労働者が、あるいはここで言う「労働者」という場合に、法律そのものを理解して公益的なことについての通報をした場合に、通報者そのものの公正さというものが今までのように自由に発揮されて通報がされなくなる傾向というようなものに対して、済みませんけれども、不十分さがあるのではないかという感じを今の答弁の中で私自身がするんですけれども、その辺は具体的にどういうお考えでしょうか。

 具体的な例の中でも、例えば浅田農産の場合なんかでも、育舎の中で相当の鳥が亡くなっているそういう事実、法令というよりも一般的にぱっとそういう事例が出てきた場合に、ある程度、通報する前に、通報がさっとしやすいような形の中で、この状況というものに対して、この法案そのものがどういう形で通報者を保護するという考えを持っておられるかをお聞かせ願いたいと思います。

永谷政府参考人 今先生がおっしゃっていますように、要は、通報の対象となる法律がどういうものであるかということについては、これはまた後ほどの議論になろうかと思いますけれども、そこは、労働者を含めてすべての当事者に非常にわかりやすい形で、こういう法令についての通報であれば保護されるんだよということをPRしていくのはぜひとも必要なことなんだろうと認識しております。

 それを一つ申し上げた上で、非常に通報しにくくなっているんじゃないかということを今おっしゃっていましたけれども、一応、私どもの今回の制度の設計に当たりましては、最大限、制度としての明確性を、制度として非常にわかりやすいものにして、予測可能性がつくようなものにしたいということに一番重きを置いて制度設計をしているということであります。

 もちろん、これはほかの先生方もおっしゃっていることでもあるんですけれども、規制というものを前提にしますと、どうしても行政側の規制というのは後追いになるということが多いわけであります。そういう意味で、明確に法令違反という形でなくても、人の生命とか身体に危害を及ぼすおそれがあるような場合、そういうような場合は通報の対象に含めなければ生活への被害を防止できないんじゃないかというような御意見もございましたし、それから片一方では、先生がおっしゃっていますような当不当にかかわるような問題まで含めて法令違反以外の通報を認めると、通報自体が非常に不明確になっていくんじゃないか、そういうような御議論もありまして、まさに、制度の運営に当たっての混乱をどうやって排除するかというところに、私どもは、審議会の御議論等を踏まえながら、先ほど来申していますように、通報の範囲の明確化、それから予測可能性を高めるということに配慮して制度化したということであります。

 恐らく、この制度に当不当にかかわるようなものを持ち込むという話にしたときに何が一番困るかというのは、人によって、何が当、何が不当であるかというのは判断が違ってきますよね。そういうことで、まさに、紛れを持ち込ませたら本当に円滑な施行ができなくなるということを私ども一番心配しておりまして、そういう意味で、明確で紛れのないようなもの、そういうような形の制度としてスタートをさせていくのがとりあえずは一番重要なんじゃないかなというふうに考えているということでございます。

島田委員 法令そのものとか何かで規制されているもの以外に、例えば、通報者は、必ずしも法律、法令そのものを十分に理解をし得ない中で、これは何としても、生命、財産、例えば食品安全とか、これは危険だというものを感じてどうしても通報したいと思う、それが素直に現実的に表に通報される。そういうことについて、本当の意味で通報そのものが素直に通報されるような仕組みというものがこの法律の中でどういうふうに規定されているんでしょうか。

永谷政府参考人 まさに、世の中に善意の通報と言われるたぐいのものはいろいろなケースがあるんだろうと思うんですね。確かに、おっしゃるように、善意の通報ということだけを考えれば、本当に、何でもかんでも通報できるようにすればいいじゃないかという議論は成り立ち得るんだろうと思うんですけれども、片一方では、いろいろなためにするような通報というのも当然のことながらあり得るということなんだろうと思います。

 したがいまして、私ども、通報することによって獲得できる公益と、事業者が正当に事業活動をやっていくことそれ自体もある意味では非常に重要な法益なんですけれども、そこのバランスをどうやってとっていくかということをこの制度設計に当たって非常に考えたということであります。

 そういう意味で、まさに、民法で言う信義誠実の原則でありますとか、そういうようなものにもとるような通報については、そこをどうやって排除していくかということがこの法律の一つのポイントなんだろうというふうに思っております。

島田委員 通報そのものの内容については真実であるかどうかということを考え、そして通報が現実に生命、財産、健康被害にかかわるいろいろな情報として、これは社会正義を含めて通報しなければならない、こう考えて通報しようとする、そこに意識を持って通報しようとしている。しかし、どちらかといえば、そういう的確な情報は企業なりあるいは使用者側の方が持っている。それに対して、正しい、公正な、通報する側の立場に立つと何としてもそのことによって通報したいんだという場合が多いわけですね、現実に今の社会のいろいろな社会的な行為から考えてみて。その場合に、この制度の中では、どういう形でそのものを素直に制度的に受け入れられる仕組みになっているんでしょうか。

永谷政府参考人 今回の制度というのは、事業者が違法行為をやる、法令違反行為をやるか犯罪行為をやるというのがあって、それをその事業者に所属している労働者が通報するというスキームです。

 労働者が通報するに当たっては、内部に通報するか、あるいは行政機関に通報するか、それ以外の外部に通報するかということで要件に若干の差があるんですけれども、基本的に、例えば内部に通報する場合には、そういう事業者サイドの法令違反行為があったということを自分が考えて通報すればそれでいいというスキームであります。

 他方、行政機関なりあるいはそれ以外の第三者に通報するときには、真実相当性と言っていますけれども、自分が通報した中身が、内容が真実であるということについてそれを自分が信じた、そこに過失がなかったということを証明できさえすれば、これは、このスキームにのっとった公益通報ということで保護されるということであります。

 先ほど来おっしゃっていますように、別にこれ以外の通報というのを受け付けないとかそういうことを申し上げているつもりは全くなくて、現実にはここで考えているような要件に乗っかってこない通報というのはいっぱいあるんだろうと思うんですね。それはそれで、先ほど大臣からの答弁もございましたけれども、労働基本法の一般法理、解雇権濫用の法理に基づいて判断されるということでありますので、別に、人がこういうことを通報したいということをこれでもって妨げるということでは全くない。つまり、こういうルールにのっとった通報であればそれは保護されますよという意味での予測可能性を与えた制度をつくろうとしているというふうに思っております。

島田委員 予測可能な制度というものでこの法案がある程度構造上成り立っている面が多いような気がしてならないんですね。

 その理由は、例えば、私どもが一番最初にぶち当たる場合に、守秘義務。例えば、いろいろな情報があって、それが社会に対する不正であり、犯罪行為的なあるいは事実に発展をしていくんではないかという、そのことを内包しながら、一番問題は、一般的に最初にぶち当たるのが、就業規則の中に必ず守秘義務というのが何でも大体規定されている、ほとんどの就業規則にはあるわけですね。

 では、就業規則に規定されている守秘義務というものに対して、今行われているあるいは通報しようとするその行為そのものが、守秘義務とのかかわりの中で、どうしてもそのことが完全に、この法案そのものでは通報者を保護するという形が、禁止規定は不十分な禁止規定であって、通報した場合に守秘義務に対して制限規定的な形にどうもなっていないような気がするんですけれども、その辺はどういうお考えでしょうか。

永谷政府参考人 先生おっしゃっていますように、労働者というのは企業に対して就業規則でもってたががはめられている。そういう中で、一般的な意味での秘密保持義務というのは課せられているということであります。今回提案申し上げているこの法律では、そういう労働者が労働契約上一般的に負っております秘密の保持義務を、公益通報、この要件に合致する公益通報の場合にはそこを解除するということを考えているということであります。

島田委員 就業規則の中の守秘義務そのものを解除して通報そのものを保護する、守秘義務というものを解除するということを今言われましたけれども、本来の解雇規定そのものを、通報したことによって解雇しない、その通報者に真実性が伴い、公正性というものが伴っている場合には守秘義務というものを外す、そして、そのことが適正であった場合にはその通報した行為によって解雇はしないということで、守秘義務を就業規則に適用しないということでしょうか。

永谷政府参考人 基本的には、先生がおっしゃるとおりのことだろうと思います。

 これは何回も繰り返しになるんですけれども、事業者の犯罪行為でありますとかあるいは法令違反行為というのがまずある、それを、そこの事業者に所属している労働者が通報するということであります。通報したがゆえに、通報を理由としてその労働者が解雇されるということがあったら、それは解雇を無効にしますという法律にしてあるわけですね。

 解雇の無効でありますので、要は、解雇という民事上の行為の効力を否定する、労働者の原状復帰を可能とするということを考えておりまして、まさに、公益通報した労働者というのはこの規定でもって十分に保護をされるというふうに私は理解しております。

島田委員 一般の使用者と労働者との間の契約に基づいて、その契約の前提、必ず就業規則を守ることを前提にして労働契約なり雇用契約をするわけですね。就業規則には今言われたような就業規則が必ず入っていて、ただ、一般の労働者そのものは、法律、法令というものを的確にまだ理解されていない。だけれども、一般的な、例えば雪印のいろいろな行為にしても、あるいはエイズの問題にしろ、いろいろな社会的な状況の中で、法律的なものはまだまだ高まっていないものもある。薬害エイズなんかでも、法律的に、あるいは研究段階で必ずしも十分に真実性が証明されていないものもあって、それがマスコミなりにどんどんどんどん通報されていく場合もあり得るわけですね。そういう場合に、就業規則から見た場合には、秘密なり就業規則上重視をしていかなきゃならない、これは外部に通報すべきではないということがあり得るわけですね。多分、あると思うんですね。

 これは研究者だから適用するかどうかなんといういろいろな問題点があるんでしょうけれども、そういう問題があったときに、今のお答えでは、保護する方が優先をして、法律上の優先権があって、就業規則そのものの中から守秘義務というものが外されて、法律ですから優先するんですから、そういう面で、保護規定としては、解雇をしてはいけないという制限規定という基本的な考え方でいいんでしょうか。

永谷政府参考人 幾つかの論点があろうかと思っております。

 まず、例えば、まだ国内で解禁されていないような薬品でありますとか、あるいは食品添加物でありますとか、そういうものが対象外になるのはおかしいんじゃないかとおっしゃっておりました。そこについては、これはまさに、国内の監督官庁、監督省庁で適切なリスク評価を行って、国内法上それを規制の対象にするのかどうか、そこを判断していただいた上で、実際に規制が必要であるということで規制されれば、この法案における通報対象事実に含まれ得るということだろうと思います。

 いずれにしても、事業者が行う法令違反をそこの労働者が通報するということでありますので、これは、全く関係のない一般人が何か通報するというスキームじゃ全くないわけですね。だから、まさに事業者内部の労働者であるがゆえに、当該事業者が遵守すべき法令というのはある程度の知識があるというのが前提であります。

 かつ、それは、人によっては全く知らなかったとかいうようなケースもあり得るんだろうと思うんですけれども、こういう通報をするに当たって、通報の前に、法令違反に該当するかどうか、所轄の省庁への、役所への問い合わせでありますとか、あるいは弁護士への事前相談とか、そういうふうなことをすることだってできるわけですね。現に、この制度の先進国でありますイギリスでは、パブリック・コンサーン・アット・ワークというまさに弁護士さんを中心とした民間団体がありまして、この制度の実際上の運用に当たっていろいろな相談業務をおやりになっているというふうに聞いております。

 そういう意味で、まさにこの制度のPRみたいなものも兼ねて、あるいは通報前の相談先という方をどういうふうにこれからつくっていけばいいのかというのを、この法律を通していただいた暁にはそこを重点的に考えていきたいというふうに思っております。

島田委員 それと同時に、最近、使用者と労働者の間の契約は、いろいろな契約形態が、例えば自由契約であったり、形態がどんどん進んでおりますし、例えば何かの制約を受けた場合でも、例えば孫請、下請とかいう形の契約状況というのが、社会の大きな変化があるわけですね。

 ですから、単純に使用者、労働者というそこだけの規定で、この法案全体の中で労働者が通報した場合には適正であり真実性があるならば保護されるという考え方から考えて、そういう中で、孫請とか下請なんかのどちらかといったら労働者を使っているという立場にあるような人の場合は、それは民事上の契約になるから別だと考えるのかどうか、その辺はどんなお考えでしょうか。

永谷政府参考人 今提案しておりますこの法律の中では、労働者であれば、正社員だけではなくて、パートとかアルバイトでありますとか、あるいは派遣労働者でありますとか、取引先の事業者の労働者なども、その通報者ということで考えております。要は、事業者の犯罪行為あるいは法令違反行為を知り得る立場にある、かつ、それを通報した場合にその事業者から不利益をこうむる可能性がある方を、広く公益通報者というふうに含めて考えているということであります。

 他方、会社の役員でありますとかあるいは取引事業者というのは、通報者の範囲としては入れていないという整理にさせていただいております。

 その理由でございますけれども、会社の取締役といった役員でありますと、まさに一般の労働者に比べて会社に強い忠実義務があるということと、事業者サイドで違法行為があるときには、当該違法行為をみずから是正すべき立場にある人であるということなんだろうと思います。

 それから、取引事業者でありますけれども、取引事業者を保護するということになりますと、事業者間の取引関係を保護するという結果になるものですから、それは片一方で契約自由の原則というのがあるわけですので、どうも、そことの関係で、なかなかそこまで飛び越しちゃうということにはならないんじゃないかと考えております。

 それから、先生おっしゃっていますように、雇用形態がいろいろな形で多様化してきているということであります。契約社員でありますとかあるいは独立の請負業者とか、いろいろな形の雇用形態があるということであります。これについても、先ほど来申し上げていますように、労働基準法に言う労働者、つまり「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」というふうに認定される人であれば、広くその通報をする人という形で考えております。

島田委員 時間が来ましたけれども、まだ私は国会に出たばかり、日が短いものですから、この法案全体の体系を理解するということについて不十分な点が多くて、必ずしも質問通告して十分な質問になっていないかもしれない。でも、しかし、公益通報者保護という法案のタイトルの中で、どうしてもこの法案、単純に考えた場合には、まだ、情報開示の問題とのかかわりや、あるいは個々の問題を情報開示していけばある面では解決するんではないかなという思いがしてみたり、それとの関係で、これを、社会の、反社会的な、あるいは真実、あるいは公正のための通報をしていくというようなことを考えてみると、今の社会状況の中、やはり情報開示との関連も重要じゃないだろうか。

 そして、そこに情報開示があって、それに対して適正な情報開示が行われなかったら通報をするということを含めて、これを徹底していくというような、もっと体系的なものの中で通報者を保護するという概念があった方が、これだけだと、どうも今までの社会通念的な中で何か通報者そのものが村八分的に、あるいは会社の中でも何か疎外されて、保護されたにしてもなかなか現場に今度は復帰すること自体も相当大変になるのではないかなというような今の社会状況にあるような感じがするんですね。

 そのためには、やはり何としてもそういう関連性、あるいはそういう体系的な中で通報者というものを保護することの方が理解をしやすいんではないかというような気がしてならないんですけれども、そういう点はこれから同僚議員から具体的な例を含めて質問が徹底されていくと思いますので、これで質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

山本委員長 次に、泉健太君。

泉(健)委員 きょうは、大臣、ありがとうございます。先日、代表質問の方をさせていただきまして、御答弁もありがとうございました。

 また、いろいろな分野を担当されている大臣でございますので、非常にいろいろ頭を切りかえていかなければならないかもしれませんが、国民は本当に、この法律、必要性を含めて、非常に注目をしておりますので、どうか、この審議を充実したものにしていきたいと思いますし、先日も、委員会審議の中では、いろいろなことについて、国会でやはりこの法案を議論していこうということが与党議員の方からも話がありましたので、継続してこれからもやっていけるものというふうに解釈をしておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いしたいというふうに思います。

 まず、この公益通報者保護法なんですけれども、やはり一般の国民の皆さんにとっては、自分自身が当事者になる機会というのはいつなんだろうかといっても、なかなかこれはイメージがつきづらいものだと思うんですね。しかし、目の前でそういう事態が起こったときに、正義感というものが日本人であればやはりあると思うんですね、日本に住む人であればあると思うんです。そういう正義感に基づいて公益通報しようと決意をするわけなんですけれども、ここで一つ、大臣御自身がこれまでの人生の中で公益通報を行いたくなるような場面に遭遇したことはあるかどうか、ちょっとお答えいただきたいと思います。今でも結構です。

竹中国務大臣 政策を考える場合に、常に我が身に置きかえて、しっかりと地に足をつけた議論をしていくということは大変重要だと思います。その意味で、私自身がどうだったか、大変よい視点から御指摘をいただいたと思っております。

 通告をいただきまして、つらつら振り返りまして、また、今はどうなんだというような声もございますけれども、振り返りまして、これは幸いにしてと言うべきか、私の周りで特に法令の違反とかそういうものがあって、これはいかぬぞ、そのような問題に直面したということは私の場合はございません。今まで、金融機関等、また大学、政府、研究所、いろいろなところで仕事をしてまいりましたけれども、まさに今回の法律の対象となっています労働者として私が仕事をしていた時期を通しまして、幸いにしてとあえて申し上げますが、そのようなことはございませんでした。

泉(健)委員 同様の質問を、政務官はいかがでしょうか。

西川大臣政務官 私も県庁の職員を長くやっておりまして、疑問の点も時々ありましたけれども、奮って名乗りを上げて申し上げる、こういう場面に遭遇したことはございません。

泉(健)委員 疑問に思われたケースもあったかもしれないというようなお話もございましたが、やはりそこの決断をするに当たっても、自分自身がどれだけ情報を持っているのか、そしてまたこの情報を本当にここで決断して出していいのかというのは、政治家の皆さんで、今こうしてされている皆さんですら疑問に思うぐらいですから、相当な決断が要るということを、まず私たち政治家自身もこれは心にとめておかなければならないと思うんですね。

 いろいろな内部告発の方々がおられるわけですけれども、ある方の御意見というか思いを吐露した文章もありまして、日本の社会風土は告発という行為を思いのほか受け入れてくれない、この実情をわかってほしいと。おもしろおかしく取り上げられる、自分の本当にやりたかったこと、本当は社会をよくしていきたいというふうに思ったことが、本人の利益ではないか、あるいは何か会社に恨みがあったのではないか、いろいろな言われ方をすることによって、外からその姿勢というものがねじ曲げられてしまう可能性が多分にあるということをやはり御理解いただきたいというふうに思います。

 代表質問で重要な論点は大体指摘をさせていただきましたので、きょうは、その答弁も含め、また前回のこの委員会の質疑の答弁も含めて、より突っ込んだ議論をしていきたいというふうに思っております。

 まず、この法案の前提について、背景についてお伺いをしたいというふうに思っております。

 公益通報者保護法、いろいろな社会的な事件等々があったかというふうに思いますけれども、この法が政府で初めて検討されたのはいつになりますでしょうか。

永谷政府参考人 平成十三年の十月から、国民生活審議会の消費者政策部会のもとに設置されました自主行動基準検討委員会、そういう場が設置されまして、その場におきまして、消費者の信頼を回復するための事業者による消費者対応のあり方などについて審議がなされております。そこでの審議というのが平成十四年の十二月に取りまとめられまして、その報告書の中で、公益通報者保護制度の整備が必要という提言がなされております。

 その後でありますけれども、昨年の一月に、同様に、国生審の消費者政策部会のもとに公益通報者保護制度検討委員会なるものを設置していただきまして、そこで制度の具体的な中身につきまして審議を重ねてきたということであります。

泉(健)委員 その理由となった具体的事件、もしありましたらお答えいただきたいと思います。簡単にで結構です。

永谷政府参考人 先生も多分記憶しておられるんじゃないかと思いますけれども、車のリコール隠しでありますとか、食品の偽装表示でありますとか、原子力発電所のトラブル隠し、あるいは医療ミス、そういう相次ぐ事業者の不祥事というのが引き金になって、それらのケースのほとんどが事業者内部の関係者からの通報によって明るみに出たということで、保護制度をすぐつくる必要があるんじゃないかというふうに認識してやったということであります。

泉(健)委員 政府から配付をしていただいた資料、「背景」というふうに書いてあるわけですけれども、「消費者の信頼を裏切る企業不祥事の続発」というふうに書いてあるわけですね。

 ただ、我々、これを見たときに少し違和感を覚えました。というのは、それ以前に行政の不祥事というものがあったはずではなかったのかなというふうに認識をしているところなんですね。外務省不祥事を初めとして公金の横領問題ですとかそういったことがあったにもかかわらず、いただいた資料には、確かに「労働者」という中に公務員が含まれている部分はございますけれども、「背景」に全くその行政不祥事ということが書かれていないわけですね。この理由について、お聞かせいただけますか。

永谷政府参考人 行政の不祥事について、私どもがそれを無視したということでは全くありません。要は、私どもでこの制度を考えた、その考えるきっかけがたまたまそういう企業の不祥事というものに端を発していたということで、そこについて、その通報した人が不利益をこうむらないようにしてやる必要があるんじゃないかということが引き金になってこの制度を考えたというだけの話であります。

泉(健)委員 いやいや、もしそれがきっかけでこの法案の検討がスタートしたというのであれば、それは少し足らない部分があるのではないかなと私は思いますね。やはり行政の不祥事というものも背景にあるはずなんですよ。たまたまこの法案の前後に、前後にというか、いろいろな民間の事件が起こったからそれを書くというのは確かにわかりますけれども、少しさかのぼって見てみれば、当然、行政の不祥事が出てくるわけですね。ですから我々は一昨年の五月に、民主党として、公益開示法というものを、公務員対象のものを、公金流用も含めた形のものを提出しているわけなんです。

 そういった意味から、行政の不祥事も背景にあるというふうにお認めをいただけないでしょうか。

永谷政府参考人 今回のこの公益通報者保護制度でありますけれども、官と民と同様に対象にして考えているということが物語っているのではないかなというふうに思います。

泉(健)委員 今のお答えでもう御認識をいただけたというふうに思います。

 実際、これはどのような機関で、何度ぐらいの検討を重ねられたんでしょうか。

永谷政府参考人 検討の場でありますけれども、これは、先ほども申し上げましたように、国民生活審議会の消費者政策部会のもとに設置されました公益通報者保護制度検討委員会であります。この委員会で、企業の不祥事が頻発している、そういう事態を踏まえて、昨年の一月から五月にかけて都合六回の会合を開いております。

泉(健)委員 その審議会のメンバーもいたかというふうに思うんですが、検討期間は十分だったというふうに、これは共通認識としてその審議会メンバーが持たれているというふうに考えていいでしょうか。

 そしてまた、この法案を作成するに当たって、各国同様のこれに類する法律というものがあると思いますけれども、どちらの国のものをイメージしておつくりになられたか、それをお伺いしたいと思います。

永谷政府参考人 検討の期間が十分であったかという御質問であります。

 この手の検討というのは、時間をかければいい、かければかけるほどいいのかといったら、そこは必ずしもそうではない。ある程度のスピード感を持ちながら事態への対応というのを考えていくのが本来あるべき姿なんだろうと私はかねがね思っております。

 そういう意味で、制度の必要性でありますとか通報者の保護でありますとか保護要件といった制度の基本的な考え方について、今申し上げました都合六回の会合で十分に議論を重ねて、おおむね合意を得ながら取りまとめているというふうに考えております。

泉(健)委員 非常にすばらしい御答弁をいただいたというふうに……(発言する者あり)

永谷政府参考人 済みません。もう一つ、どこの制度をモデルにしたかという質問、ちょっと忘れていまして、失礼いたしました。

 この公益通報者保護制度でありますけれども、イギリスに包括的な公益開示法というのがございます。それから、アメリカの連邦法、州法、それからオーストラリア、ニュージーランドといった、いわゆるアングロサクソンの国で法整備がなされているということであります。

泉(健)委員 いい御答弁をいただいたので、ついつい二つ目を聞くのを忘れてしまうところでした。

 今、時間がかかればいいものではない、スピードも大切だというふうに言っていただいたと思います。その思いを、ぜひ、この施行期日及び見直しの期日の前倒しというところにつなげていただきたいなというふうに思います。

 やはり、公布してから三年、そして見直しが五年ということでは、私は、それこそ今おっしゃったような、時間をかければいいものではないというふうに思いますし、周知徹底を図るという意味でも、やはりスピード感、そしてそれだけのプレッシャーみたいなものもなければならないというふうに思っておりますので、ぜひ今の思いで、この施行期日についても、これは大臣、政務官含めて、ぜひとも一年、三年という形でお認めをいただきたいというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

永谷政府参考人 この法案でありますけれども、営利企業、まあ営利企業といっても大企業もあれば中小企業ももちろんあるわけですけれども、そういう営利企業であるとか、行政機関、それから各種の非営利団体なども含めて、あらゆる事業者を対象とする制度であります。

 したがいまして、先ほど来お話が出ておりますけれども、制度の周知それから事業者の通報受け付け体制の整備というような部分に十分な準備期間を設ける必要があるというふうに片一方では考えておりまして、まさに、公布後二年以内の政令で定める日から施行するというふうに考えております。

泉(健)委員 ここは本来、少しさっと通り過ぎようかというふうに思っていたんですが、少し問題もあるような気がするんですね。

 国民の生命、身体、財産、やはりこういうものを守らなければならないということで今この法律の審議をしている。そしてもちろん、先ほどおっしゃったように、国民生活審議会の審議もスピードアップをして、国民のニーズにこたえるために頑張ったわけですね。

 とすると、これは、仮に公益通報をしようという人があらわれてきても、三年後まで保護をされないというふうになってしまうのではないかと思うわけですが、いかがでしょうか。

永谷政府参考人 施行後五年の見直しというのが問題ではないかという御質問であります。(泉(健)委員「違う、違う。三年後だと守られないんじゃないか」と呼ぶ)

 それは、先ほど来何回も申し上げていますように、今回のこのルールにのっとった通報であれば、当然その保護の対象になるわけですね。この要件に合致しない通報をするというのは、それはそれで、当然なされて構わない。それで、今までどおり、解雇権濫用に関する一般法理等で当該問題については判断されるということであります。

泉(健)委員 委員長も首をかしげております。

 だったら法律は要らないんですよ。三年というのは物すごい長い時間だと思うんです。千日以上なわけですね。京都で高僧が修行する千日回峰行というのがありますが、それが一回できるぐらいの長さですよ。それだけ公益通報する方々の苦しみが持続し、また、公益通報ができるかどうかという思い、悩みを持ち続けなければならない。あるいは、それによって公益に対する大きな被害、損害が出るかもしれないわけですね。

 でも、法律ですから、最低限の周知期間は私は必要だとは思います。しかし、今こうして国民のニーズがある中で、三年というのは余りにも長いのではないか。せめて施行期日を、今のところ公布から三年というふうになって……(発言する者あり)二年ですか。二年というふうになっているわけですけれども、やはりこれは一年以内というふうに変えていただくことが必要ではないのかなというふうに思っております。

 次の質問に移らせていただきます。

 パブリックコメントを政府がとられたというふうに思っておりますけれども、このパブリックコメントによって、当初の骨子から現在の政府案に、どこがどのように変わったのか、そしてまたその理由をお聞かせいただきたいというふうに思います。

永谷政府参考人 パブリックコメントの結果を踏まえました骨子案からの主な変更点であります。

 一つは、犯罪行為等が生ずるおそれについての通報は、その当事者間の事実関係の相違というか、紛れを生ずる可能性が高いということで、「生ずるおそれ」と言っていたものを、「まさに生じようとしている」というふうに修正しております。第二条第一項、あるいは第三条にかかわる部分であります。

 それから二つ目には、内部通報をしてから二週間を経過してもその調査の開始等がない場合に外部通報をできるというふうにしていた規定を、「二週間」ではなくて「二十日」というふうに修正し、社内手続等に要する期間に配慮をしたということであります。これが第三条の第三号にかかわる部分であります。

 それから、骨子に記述がなかった点で、パブコメの結果を踏まえて新しく規定を追加したものがございます。それが、本法案の対象とならない通報については現状どおり一般法理に基づいた保護が図られるとする点を明確にするという規定を置いておりまして、労働基準法第十八条の二が従前どおり適用されますという「解釈規定」を置いております。これが第六条の第二項にかかわる部分であります。

 それからもう一つが、仮に公益通報であっても、それに伴って例えば個人情報を漏らしちゃったとか国家の機密を漏らしちゃったとかいうような場合に、その刑事上、民事上の責任というのは免責されるものではないというふうに制度を考えておりまして、そこを明確にするという観点から、通報者の努力義務というものを第八条に設けさせていただいているということであります。

泉(健)委員 これは代表質問でも話をしましたけれども、消費者団体や弁護士会ですとかそういったところからは、パブリックコメントを受けてこの法案がどんどん後退をしていっているというふうに言われているわけですね。そういった御認識はございますか。

永谷政府参考人 制度自体をどうやって円滑に導入していくかということ、そういう配慮に基づく修正であろうと思っております。

 今申し上げましたような変更で、私どもが考えておりました政府案の骨格が変更されたものではないというふうに思っております。

泉(健)委員 でも、実際のところは、それだけ消費者団体ですとか弁護士会がこういう声を上げている、そのことは事実なわけですから、やはりそういった声に真摯に耳を傾けていただきたいと思います。それがそもそも国民生活審議会というものであったはずでしょうし、このパブリックコメントの本来の役割だというふうに思うんですね。パブリックコメントという名目でどこの声を聞いてしまったのかというところは、やはりしかし考えていかなければならないのかなというふうに思っております。

 でも、我々は希望を捨てずに、これはやはりできる限り修正をして、また、竹中大臣が代表質問のときの答弁で、今の時点で最良のものというおっしゃられ方をしましたが、恐らくそれは、今の答弁をお伺いしますと、円滑にというような、いろいろな妥協も含めて最大限頑張ったものだというようなことなんだろうなというふうに思います。我々野党もそういう意味では協力をいたしますので、もっと最良のものをつくっていきたいというふうに思っております。

 そして、またさらに進みますけれども、対象法令の部分についてお伺いをしたいというふうに思います。

 先ほど、イギリスを参考にして、もちろんアメリカ等々も入っておりますけれども、こういった公益通報者保護法をつくっていったというようなお話をいただきましたけれども、イギリスでは、対象法令ということで、法令だけではなくて、情報の隠匿ですとか環境の破壊というような一般的なそういった侵害についても対象としているというふうに認識をしておりますけれども、そういったものを含めるということは検討はなされていないんでしょうか。

永谷政府参考人 この法案では、国民生活審議会での議論を踏まえまして、保護される通報の範囲を明確化する、予測可能性を高める、そういう観点から、犯罪行為それから法令違反行為を通報の対象としております。

 今、泉先生おっしゃっておりました情報隠匿でありますとか環境破壊でありますけれども、例えば、その情報隠匿が刑法の証拠隠滅罪に該当する、あるいは環境破壊については大気汚染防止法とか廃棄物処理法とかいうような法律が対象になるというのは書いてございますけれども、そういうものに該当するものにつきましては対象となるというふうに考えております。

泉(健)委員 該当するものが対象になるのは当たり前の話でして、そう聞くと何か全部うまくいくように聞こえてしまうんですが、やはりそうではないと思うんですね。

 例えば、平成九年になりますけれども、シックハウス被害があって、そういった事例に基づいてこの法というものを検証してみますと、例えば、厚生省の指針値というのがあって、それに違反をしていた、化学物質の指針値、その基準をオーバーしていた、それで結果的に健康被害が出た、しかしこれは別に何か罰則があるようなものではなかったというケースもやはりあるわけでして、そういった意味で、やはり個人の健康に被害が出てきたりというケースは、法令違反にかかわらず、あるというふうに思うんですね。そういったものにもやはり対応できるような公益通報者保護法にしていくべきではないのかなというふうに私は思います。

 そして、この法律の中では七本の法律が別に書かれているというふうになっていますけれども、これは竹中大臣が代表質問でバランスよく例示をしたというふうにおっしゃられていましたが、バランスよくという、そういったものは、基準として明確なものというか、採用されるべきものなんでしょうか、大臣。

竹中国務大臣 先般の四月二十七日の答弁で、私そのように答弁をさせていただきました。その瞬間、議席で委員が首をかしげておられたのを私も記憶しておりますけれども。その趣旨は、まさにこの法案が対象とする国民の生命、身体、財産その他の利益。例示を振り返ってみますと、実は、財産等々に関連する、経済的な利益に直接関連するものが非常に多くなっている。その意味で、独禁法にかえて個人情報保護法を掲げることにした。まさに、バランスの意味は、国民の生命、身体、財産その他の利益、そういう幅広くできるだけ見るんだということを示す意味からも、個人情報保護法を掲げた、私はこれはやはり、まさにバランスをよく示すという意味ではよかったのではないかなというふうに思っております。

 その意味で、先般答弁させていただいたのはそのとおりでございまして、その趣旨を何とぞ御理解賜りたいと思います。

泉(健)委員 いろいろ憶測を呼ぶようなことをそもそもやらなければいいのではないのかなというふうに思うんですが、先日の委員会での答弁でも、まず、生命、身体、財産の保護が必要だというふうに言っているわけですね。それを例示するということで、生命、身体の保護にかかわる法令の代表例は刑法及び食品衛生法、消費者の利益擁護にかかわる法令の代表例は証取法及びJAS法、環境保全は大気汚染防止法及び廃棄物処理法、二本挙げていたりするわけですね。その他利益の保護にかかわる法令の代表は個人情報保護法。ここでは、明確に財産のと言っているのが実はないんですよね。ぼかした表現になっているわけです。何だか逆にバランスが悪いような気がするわけですね。生命、身体、財産と先に三つ挙げておきながら、一つ一つ説明したら財産という言葉がないというのは、やはりこれは何かおかしいなという気がいたします。

 ともかく、ここに書かないにしろ、当然独禁法は恐らく入ってくるというふうに認識をしておりますけれども、これは政令で定められるものの中にも含めて、そういう認識でよろしいでしょうか。

永谷政府参考人 法令上は、通報対象の分野というものも、七つの法令以外に分野という形で掲げておりまして、その中に「公正な競争の確保」というものを入れております。したがいまして、私ども、独禁法というのはその公正な競争の確保にかかわる法律であると認識しております。

 そういうような点を踏まえながら、国民生活への影響の大きさ等につきまして精査を行った上で、パブリックコメントなどにより各方面の意見も聞いて、判断していこうというふうに思っております。

泉(健)委員 実はここの部分を質問のために勉強するに当たって、大変残念なんですが、別表を資料としていただけないですかという話を事務所からさせていただいたんですね。そうしたら、拒否をされまして、それはそういうものなんだなと最初は思ったんです。そうしましたら、前回の委員会質問の中で大口委員が、「四百八十九本の法令が、一覧表を私もいただきました」というふうに言っておりまして、野党ですけれども、やはりそれは残念だなという思いがいたしてしようがないんですね。

 でも、やはりこれは、我々一人一人、同じ有権者の信託を受け、負託を受け、こういう仕事をさせていただいているわけですから、こういった資料の格差が出てきてしまっては国会でいい議論ができるわけがないと思うんですね。大臣、この状態についていかがお考えですか。

永谷政府参考人 泉先生からそういう要請があったのがいつの時点であろうかというのを私も今の段階でよく承知していないんですけれども、いずれにしましても、いろいろな時点でいろいろな案があったということであります。したがいまして、恐らく、御依頼を受けた時点で、政府として決定したものではないということで、まさに内容的にも暫定的なものであるということでもって、お渡ししなかったんじゃないかなというふうに思っております。

 それ自体、とても不愉快な思いをされたとすれば、謝りたいと思います。

竹中国務大臣 御依頼を受けた時点で、政府として、これは正式なものではなかったと。与党と相談する中でいろいろな議論をいたします、そうした中での資料等々、これは暫定的なものであり、そうした意味でお渡しをしなかったものであるというふうに認識をしております。

泉(健)委員 暫定的なものであれば、ほかの議員にとっても暫定的なものは変わらないわけですから、そっち側に渡ってこちらに渡ってこないというのはやはりおかしな話だと思うんですね。それをよくあることだというふうにそのまま見過ごしてしまっては、これはいい議論ができないわけですし、非常に残念なわけなんですね。(発言する者あり)

 資料の提出、お願いします。

山本委員長 何を要求しているんですか。

泉(健)委員 四百八十九本の別表です。

山本委員長 今お話がありました件につきましては、ちょっと理事会で協議させていただきたいと思います。

泉(健)委員 ぜひこの四百八十九本の法令、今の時点で決まっているわけがないはずなんですよ。これから一つ一つ吟味をしていく。しかも、先日の委員会の中では、国会の中での審議ということも含めてというような発言もあったと思っておりますので、当然これは、これからも委員会でこの法令についてどう書こうかということを話し合いをしていくものというふうに私たちは認識をしていますから、片一方の委員に出されていて片一方の委員に出されていないという状況はやはりおかしいというふうに思っておりますので、資料の提出を要求したいと思います。(発言する者あり)では、理事会でお願いいたします。

 次に質問をさせていただきます。

 改めてになりますが、政令で定める際の今後のスケジュールをちょっと教えてください。

永谷政府参考人 この法案の施行でありますけれども、先ほど来申しておりますが、制度の周知とか事業者及び行政機関の体制整備等の準備期間を考慮するということで、公布後二年以内の政令で定める日としております。附則の第一条にあるとおりであります。それを踏まえれば、対象法令を定める政令でありますけれども、今の法案が今国会で成立すれば、平成十六年度中には制定したいというふうに思っております。

泉(健)委員 先ほど資料の提出を要求しましたが、今後もいろいろとそういった新しい資料が作成されれば、これはもう当然資料を提出していただけるものというふうに思っておりますので、それも今後お願いをしたいというふうに思います。

 そこで、先日の委員会審議の中では、これは官報で周知をされるというようなお話をお伺いいたしました。官報以外に周知をされる手段というものはございますでしょうか。

永谷政府参考人 官報というのは一つの公示の手段であるというふうに認識しておりまして、ただ、それだけで足りるとは当然のことながら思っておりません。ではどうするのかということでありますけれども、まさに十分に周知を図っていくために、説明会を開催するとか、あるいはシンポジウムをやるとか、解釈指針とかガイドラインを作成する、あるいはパンフレットとかハンドブックを配布する。予算との相談もあるんですけれども、我々ででき得る限りのことを検討していこうというふうに思っております。

泉(健)委員 私は、先日の答弁を聞いていまして少し不安を感じました。それは、業種ごと、事業者団体等を通じて周知を図る、恐らくこの方法でいくと、肝心の労働者の方にまで情報が行かない可能性が十分にあるわけなんですね。事業者の方には行って、一生懸命対策を練る、ヘルプラインをつくる。そういうのも労働者にとってもありがたい一つの対策ではありますけれども、やはり労働者自身がどの法令があるんだということを理解しなければならないわけですので、もちろんインターネット等々を含めて、末端まで届く政令の周知というものをぜひお約束いただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、大村委員長代理着席〕

永谷政府参考人 おっしゃるとおり、労働者にその政令の中身が、あるいはその法律の中身が極力浸透するように広報活動に努めていきたいというふうに思います。

泉(健)委員 次の質問に行かせていただきます。

 私は、この間の代表質問と先日の委員会質疑をお伺いしていまして、少し疑問に感じたところがあります。それは、私の代表質問に対して、大臣はこう答弁をしております。労働者が一定の知識を有している、だからこそ、ちょっと読むと、本法律案の公益通報者といいますのは、事業者内部の、内部の労働者であるために、当該事業者が遵守すべき法律につきましては一定の知識を有しているというふうに考えられます、このため、対象法令の範囲が明確化されれば、当該事業者の法令違反行為が通報対象か否か判断できるものというふうに考えているわけでございますというふうにおっしゃられていますけれども、この御認識で今もよろしいでしょうか。

竹中国務大臣 基本的にはそのとおりでございます。

泉(健)委員 その労働者が、一方ではこうも言われています。労働者の主観による合理的でない思い込み等々があるから、やはり「おそれ」ではなくて、まさに生じようとしているときと。いろいろな理由のときに、こういう言われ方を労働者はされているわけですね。先日の葉梨議員の議論でも、警察官はプロであるし、それでも厳しいただし書きというか言葉があるから「おそれ」という言葉が使われているんだというふうにおっしゃっておられました。

 そう考えると、一番最初の代表質問の答弁からいくと、労働者は一定の知識を有している、まさにその業種業種ごとのそういった法令もよく知っているということであれば、これはまさにプロではないのかなというふうに私は思うんですね。ましてや、ましてやというか、お金をもらってお仕事をしているんであれば、これは当然、アマチュアだというふうには普通ならないはずですけれども、労働者とは素人なんでしょうか、プロなんでしょうか。大臣、お願いします。

竹中国務大臣 素人、プロ、明確な線引きがいろいろなところにあるわけではないと思っております。しかし、その職についている者は、一般的に、他の一般的な方々に比べればそれなりの知識を持って、経験を持ってお仕事をしておられる、そのような立場にあろうかと思います。しかし、誤解を避けるために申し上げますが、常に一〇〇%の知識を、非常に詳細な法律の条文にわたって知識を持っているかというと、現実問題としてそんなことはあり得ないわけでございます。その意味では、あくまでも私自身は相対的に申し上げているわけでございますけれども、正確な知識を一〇〇%持っているわけではない。その意味では、こうした制度の周知徹底を図るというのは、先ほど委員のお尋ねにもございましたけれども、やはり同時に行っていくことは法の円滑な執行上大変重要なことであるというふうに私たちは思っております。

 それから、委員、もう一点、私の答弁について御言及をいただきましたけれども、それは、事実の認識について、仕組みがどうかということではなくて、事実の認識等々について思い込みがあるような場合もあり得ると。

 例えば、ちょっと極端な例で大変恐縮でありますが、恐らく証券会社に働いている方は、多くの方々、資格も取っておられるということで、証券取引法等々、やはり枠組みについてはお詳しいのだと思います。一〇〇%知っているとは言いませんけれども、お詳しい。そこは前提にしてよろしいのではないかと思います。ただ、事実認識については、あの部長は悪い人だ、例えばそういう思い込みがあったもので何か誤解があってはならない。その意味では、事実認識に当たっては、まさにそれなりの要件を具備しているという慎重性が必要なのではないか、そのような趣旨の答弁をさせていただいたわけでございます。

泉(健)委員 そのところは、しかし、少々やはりダブルスタンダードのような気はいたします。確かに、今おっしゃったような事実認識の部分とそうでない部分というようなお話ではあると思うんですが。

 この法律をつくるに当たって考えなければならないのは、先日の委員会であった、消費者基本法をちょっと思い出していただきたいんですね。この消費者基本法においては、消費者と事業者の間には情報の質、量、交渉力の格差があるということを明確にうたっているわけですね。だからこそ消費者の利益というものを擁護していかなければならないというふうなわけなんですけれども、労働者と事業者において、情報の質、量、交渉力の格差はあるというふうに認識を持ってよろしいですか。

永谷政府参考人 労働者と事業者の間にも格差があるということだろうと思います。各種の労働規制等が存在しておりますけれども、それも、そうであるがゆえにということだろうと思っております。

泉(健)委員 格差があるのであれば、やはり少し労働者の方を幅広に守っていく必要があるのではないのかなというふうに思うんですね。

 そう考えたときに、この「生ずるおそれがある」という部分においては、事実認識の相違を生む可能性があるというふうに労働者の思い込みというものを想定し、一方では、法令を知っているか、知っていないかということでいえば、労働者は一定の知識を有している。さまざまな労働者がいるにもかかわらずですよ、そこを考えていただきたいんですね。

 やはり、社会を普通に、素直に見たときには、いろいろな労働者がいるはずですよ。そういう労働者を、今のこの二つの考え方で使い分けをしているようでは守ることにはならないのではないのかなというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 世の中、いろいろな方々がおられて、そうしたことに対するきめ細かな配慮が必要だという点では、私もそのとおりであろうかと思います。

 ただ、現実に、法律をつくる法技術としまして、詳しい人にはこの条文を適用する、詳しくない人には別の条文を適用するということは、現実には、法技術としては不可能なのではないかと思います。

 その意味では、労働者という一つのマスを想定して条文をつくった上で、我々としては、それが実効性を持ってうまく機能するように、しっかりとした、例えば先ほどから局長も答弁しておりますような法律相談のNPOのようなものがしっかりと立ち上がってくるようなものを現実としてつくっていきたい。

 そこは、やはり法律だけですべてが解決するわけではありませんので、法律の仕組みと、一方でそれをうまく円滑に活動ならしめる仕組みづくり、広報、周知徹底が入りますけれども、そのものをやはり両方しっかりやっていく。我々政策当局としては、その両方の責務を負っていると思っております。

泉(健)委員 先ほど、労働者と事業者については、やはり情報の質、量、交渉力の格差が存在するというふうにお認めいただいたわけです。やはり、そういったことを踏まえてこの労働者の保護については考えていただきたいというふうに思います。

 もう一点お伺いをしたいんですが、それでは、いわゆる下請の取引先と事業者について、情報の質、量、交渉力の格差、特に継続的な下請業者についてどうお考えになられますでしょうか。

永谷政府参考人 継続的な下請業者を保護すべきだという御趣旨、御主張だろうと思います。

 これは、先ほど来申し上げていますように、事業者と事業者の間の契約を保護するというのは、ある意味では契約自由の原則に反するということでありますので、そこについては今回の法律では対象に含めて考えていないということであります。

 現実に、下請等、いろいろな苦しい状況等に追い込まれているというのがあるのであるとすれば、それはそれで、下請企業に関する法律の中でそれなりの対応が図られるべきなのではないかなというふうに私は思っております。

泉(健)委員 忘れてはならないのは、この法律をつくって公益通報が促されるということが大切だと思うんですね。もちろん、労働者を守るということがあって、それによって公益通報が促されるということなんですけれども、どうもそういう趣旨が政府側から伝わってこないんですね。

 実際に、雪印のケース、西宮冷蔵のケースは、雪印本体がつぶれたということで、確かにそういう意味では契約がどうこうなったわけではないんですね。ただ、その前段階で西宮冷蔵の社長がどう思ったかといえば、これは御本人が明らかにしているように、当然、契約は打ち切られるだろう、それを覚悟してこの告発に臨んだということを言っておられるわけです。

 そういうことを考えると、取引自由の原則というものがあるから慎重に検討すべきと考えるというふうに答弁でもおっしゃられていましたけれども、私は、これはぜひ、慎重にでもいいので、やはり検討していただきたいというふうに思っております。はなから検討しないということは間違いだというふうに思いますので、今後、可能性として下請業者を含んでいくということが必要だというふうに考えますけれども、検討はしていただけますでしょうか。

永谷政府参考人 一応、今回の立法化の過程で、国生審の場でも、今先生がおっしゃいましたような議論というのは当然のことながらやっております。やった上で、今回、こういう形でコンセンサスとして出させていただいているということであります。また、これから先の法律の運営とか何かをにらみながら、どうしてもそこをやらなきゃいかぬという必要がもし仮に出てくるのであるとすれば、それはその時点で判断させていただければというふうに思います。

泉(健)委員 これも先日の議論の中でということになるんですけれども、法令違反を通報対象に必要だという要件にしているわけですけれども、例えば、葉梨議員の御指摘の中で、災害対策基本法とか道交法、こういったものが出てきておりました。

 しかし、私は、そもそも、例えば一般人が、そこら辺で道路交通法違反をしている事業者がいたからといって、それを通報することが公益通報だというふうに、今回のケースでどうのこうのなるものではないというふうに思うわけですね。当然、公益通報者を保護する法律であって、その身分、立場を保障するものですから、何も一般の方が通報したことがどうこうだということではないというふうに思うわけです。しかし、例えば道交法なんかでも、会社側が意図的に命令をして継続的に何か違反を強要していた場合、これはやはり公益通報になるのではないのかなというふうに考えるわけです。

 私の地元の京都でも、以前、会社側が意図的に社員にずっと違法駐車をさせているというケースがありまして、歩道をずっと占拠していたわけですね。それは最終的には捕まったわけなんですけれども。そういった場合というのは、もし会社側からそういう指示があれば、これは公益通報ということになると考えてよろしいでしょうか。

永谷政府参考人 今、泉先生がおっしゃいましたケースというのは、多分、道路交通法違反のケースなんだろうと思います。ちょっと私、今よくわからないんですけれども、道路交通法で罰則がついて担保されているということで、かつ、その道交法自体を政令の対象の中に入れるということになると、当然のことながら対象になり得るというふうに思っております。

    〔大村委員長代理退席、委員長着席〕

泉(健)委員 そういう一つ一つ、ほかにもいろいろと事例を用意はしているんですけれども、要は、政令で定めていくという部分で、今現在では、せっかくこうして国民の議論が盛り上がっているにもかかわらず、全く中身がはっきりしてこないわけなんですね。鳥インフルエンザしかり、車のリコールしかり、それが対象法令に含まれていくのかどうか、ここが今、国民には全く見えないという状況があるわけです。ぜひ国民に見える形で、しかも、より広く国民の通報が促されるような形での政令の定めということにお力を入れていただきたいというふうに思っております。

 次に行きますけれども、ヘルプラインについてお伺いをしたいというふうに思います。

 このヘルプライン、今政府が考えられている理想的なヘルプラインの姿、これはどういうものかを教えていただきたいと思います。

永谷政府参考人 まだ今の時点で理想的なヘルプラインというのがどういうものであるかということについて深く考えてはいない状況にありますけれども、いずれにしましても、きちっとした、違法行為とかを通報する、通報した暁にはその通報した人の秘密とか何かがきちっと保護されるというような形でつくらせていただければというふうに思っております。

 今、内閣府に法令遵守対応室というものをつくらせていただいております。これは、ここでどういうようなことをやっているかということでありますけれども、受け付ける情報の対象としましては、内閣府職員の行政上の行為の適法性に関するものというのを原則にしておりますけれども、そういう対象外の情報でありましても、通報がなされれば、それを真摯に受けとめて内閣府の適正な業務の推進に資するということにしておりまして、対象外だからといって、形式的に、一律的に排除するというようなことはやっていないというようなことであります。

 そういうような例等も見ながら、一番最適なヘルプラインというのはどうあるべきかというのを考えさせていただければというふうに思っております。

泉(健)委員 ぜひ、深く考えている方に御答弁をいただきたいと思いますけれども、どなたかいらっしゃいませんか。

竹中国務大臣 政府が、ないしは経済財政政策担当大臣が、日本全体に対してヘルプラインかくあるべしというようなことを一つの規範として言うべき立場では必ずしもないと思っておりますが、こうした問題に関しましては、既に専門家によっていろいろな議論がなされているというふうに思っております。

 一例として、日本経団連で企業行動憲章がありますけれども、その中でヘルプラインについて述べられているということは、やはり専門家が今考えている一つのあるべき姿を示しているというふうに思います。

 要件は幾つかあろうかと思いますが、私自身その中で特に重要だと思うことは二点ございまして、一つは、通常のルート、上司を経由したルートとか組織を経由したルートではなくて、そういうルートとは別に、直接、ダイレクトにしっかりと情報を伝える、かつそれが改善措置に結びつくような形になっているということ。もう一つは、相談者の秘密保持。秘密保持と同時に、それが不利益につながらないように、やはりそれが大変重要だと思います。

 実は、手前みそで恐縮ですが、金融庁は、役所の中で一番最初にコンプライアンス対応室をつくらせていただきました。そこにヘルプラインを置きました。ヘルプラインを置くに当たっても、このような考え方に基づいて、弁護士の方にこのヘルプラインの担当になっていただいて、通報先は役所の事務所、事務室ではなくて、この弁護士さんの事務所である、ダイレクトである。かつここは、秘密はしっかりと保持されて、直接その被害が通報者に及ばないようにする。

 私たちも、この行動憲章を見習いながら、いろいろ政府の中の仕組みをつくっていこうと思っておりますし、民間におかれては、まさにそのような方向に向かいつつあるのではないかと思っております。

泉(健)委員 そういうものを金融庁の方でつくられているというふうに思っていますけれども、内閣府の方の法令遵守対応室、先日も私聞いて思わず噴き出してしまったんですが、今もまだゼロ件なんでしょうかね。

永谷政府参考人 実質的にはゼロ件であります。

泉(健)委員 この内閣府のを見てみますと、「内閣府本府職員の行政上の行為の法令遵守に関する情報」を、「情報提供者の氏名(実名)及び住所等の連絡先が記載され、封筒の表面、メールの標題等に「法令遵守に関する情報である旨」が明記された書面に限ります。」と。

 一方で、雪印さんが、やはり企業として反省を踏まえて、「業務上での法令違反や、社会から非難を受けるおそれのある重大な行為が発生したときの連絡だけでなく、疑問・相談・提案なども制限しないで受け付けます。」と位置づけているヘルプラインもあるわけですね。

 とても内閣府が見本だというふうには思えないわけですが、これを改善するおつもりはございませんか。

永谷政府参考人 状況に応じて、適宜見直していこうと思っております。

泉(健)委員 やはり、まさにこの内閣委員会でこの議論をし、内閣府も私たちが先につくったと自慢をしているわけですから、もう少し役に立つ、何だかどうも、そもそも我々は外部通報を前提としているわけではないんですね、内部でどんどん働く者と雇う者のコミュニケーションが深まって、どんどんどんどん業務が改善をされていけばいいというふうに思っているわけでして、その意味から、何も公益通報、ここまで厳しく、こういう表題まで決めなければならないという理由はないのではないのかなというふうに思うわけですね。これはやはり、内閣府としてぜひすぐ変えていただきたいというふうに思っております。

 最後の質問になりますけれども、事業者団体、消費者団体との連携というものをこれまでの答弁で何回かお伺いをしました。しかし、私たちは、今の時点では、NPOやさまざまな団体との連携、労働組合ですとか消費者団体との連携というのは外部通報に当たるというふうに言われてきたわけですね。ですから、答弁の中で、通報前相談、通告前相談というんですか、そういったものでNPOやさまざまなところと連携をしていくというふうにおっしゃられていましたけれども、では、もうその件については外部通報とみなさないというふうなことでよろしいでしょうか。

永谷政府参考人 御指摘のとおりであります。

泉(健)委員 では、どうもありがとうございました。

山本委員長 次に、原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 本法案に対して幾つかの視点で質問を行いますが、竹中大臣、まず、競争政策、消費者保護政策の基本ということで少し議論を。この法案がだれのどのような公益を守ろうとしているのかということに関連して、共有できるところを共有させておきたいと思いますので。

 私は、民主党の規制改革の座長として、次のように考えています。

 規制は、公正中立の行政がつくって、そして執行する、民間はそれに従わなければならない、そういう共同幻想から一刻も早く脱すべきだ。ルールの作成自体は、民間も関与しながら、そして政治の正当性を得て行い、そのルールの執行は、これまで以上に厳格な倫理性、中立性、透明性を持った行政が行うことを原則とする。つまり、ルール作成自体への、そこの民主化、これが非常に必要である。ルールの執行を不透明な裁量で行うことが、規制やあるいは既得権益を生む今までの古い政治的な体質だった。そこをどう払拭していくかということが一点。

 したがって、制度、ルールの競争そのものがグローバリズム時代の国際競争の本質である。そういったことを踏まえて、多様な主体がルールの作成、改廃に関与できるように、国内でよりよきルールの作成競争を生むような環境をつくり上げること、このことが競争政策の中で最も重要なものであると私たちはとらえています。

 そして、消費者、国民についていえば、これは、保護の主体ではなくて権利の主体なんだ。消費者の権利というのは、だれかから与えられるものではなくて、もともとあっている権利だ。昨日、委員長提案で通過させていただきましたが、CI、世界消費機構の八つの権利を明記して、その権利を行使することが、これは経営側、消費者側あるいは労働側、そういったものではなくて、国民全体の利益なんだということで、消費者基本法の改正というところに至ったわけでございます。

 この認識について、共有できるところがありましたら、あるいは、いや、違うスタンスだということでありますれば、教えていただければというふうに思います。

竹中国務大臣 大変大きなお問いかけでございます。

 詳細の議論をしていくと、いろいろまた議論する点、あるかもしれませんが、今、お話を口頭でお伺いしている限り、基本的な認識は共有しているというふうに思っております。

 まず、ルールの作成に当たっては、これは、民主主義の原理原則からいっても、やはりすべての人が参加するというところに民主主義、政治的な意味がありますし、また、経済的にも、多くの人が参加してつくったルールというのは必ず守られる、これはまさにリナックス方式でありますから、そういうことを行っていくことが、政治的にも経済的にも、我々が目指す成熟した市民社会の方向であろうかと思います。

 消費者におきましても、その権利等々、まさにそうした先生のお考え等々も反映された消費者基本法の議論がなされてきたというふうに思っております。

原口委員 ここの認識が共有できたら、大きな進歩だと思います。

 つまり、世界の中のルール、この競争なんです。平沼大臣、前の大臣、この委員でございますが、あのときにはBIS規制のお話を大臣ともさせていただきました。この規制をどのようにするかというのは、我が国の金融にとっても、あるいは経済にとっても、とても大事なことであります。そのルールで勝つことが大事なんであって、そして、消費者政策でいうと、消費者がいかに守られているのか、あるいはいかに保護されているかというよりも、その権利がどのように行使されて、そしてその権利がどのようにしっかりと実行されているか、このことが大事だということで考えますと、私は、今回の公益開示法、私たちは公益開示法というのを出しましたが、皆さんがおっしゃるこの保護法、三つの修正が必要だというふうに考えています。

 一つは、何回もこの中で議論が今まで出ましたけれども、通報対象事実、これをもっと広げるべきである。それから、通報対象先についても限定をもっと外すべきである。あるいは、外部通報の保護要件が極めて限定的に挙げられていますが、先ほどの質疑の中で政府委員の方から、ほかの一般法で守られるのであれば何もこういう法をつくる必要も全くないわけで、後で具体的な事案については三つについて立証させていただきますが、この法律がもしこのまま通ったときにどのようにオペレートするのかしないのかということを。現実にいうと、たくさんの被害が起きているのは、行政と一部の事業者が一体となって不法あるいは不作為あるいは違法や犯罪行為を行ったときに、それが是正されないでたくさんの被害を生んでいるわけです。

 私は、競争政策の観点からも危機管理の観点からも、危機管理ということであれば、国民の生命、身体、財産、環境に対する危険ということであれば、やはりミニマックスの理論を使わなきゃいけない、つまり、考え得る最悪の危機を極小化するということでなければならない。その極小化するところの入り口がこの公益通報の保護法なんですよ。そこのところを狭くしていたら大きな危機から国民を守ることができるのか、そこの論点からきょう議論をさせていただきたいと思います。

 この論点について、竹中大臣いかがお考えか、二番目に質問をいたします。

竹中国務大臣 今、対象事実、対象となる事実について、これはこの後ぜひいろいろ御質疑を賜りたいと思いますけれども、やはり最悪の事態を避けなければいけない、それはおっしゃるとおりだと思います。

 しかし、その上で同時に、この問題の基本的な点、本質というのは、私たち自身、やはりまさに競争社会の中で、非常に自由な立場でいろんなビジネスを営み、いろんな消費活動を行っている。その競争の中で、自由度というのはどんどんどんどん増していく。この自由度を確保することは極めて重要である、それこそが私たちの社会の一つの活力の源泉である。しかし、自由を保障すればするほど、よいことをする自由と同時に、悪いことをする自由も同時にふえてしまうのではないだろうか、それがやはり今の一つの大きな課題になっているんだと思います。それに対しては、やはり何らかのチェック・アンド・バランスのシステムを社会としてつくっていかなければいけない、それがまさに今回このような法案が議論されている要因であろうかと思います。

 その意味では、自由を保障するという意味での一つの方向性と、同時に、被害を避けるという意味での一つの方向性、それをいかにバランスさせるかということが現実の制度設計ではやはり極めて重要になってくるというふうに思っております。

原口委員 恐らくそこのところが私と大臣との考え方の違いなんです。自由というのは正義の上に成り立つものであって、自由を保障したから悪いことをする自由がふえるなんということは、私たちの考え方にはありません。

 さあ、その上で、法案の手続について、私は、先ほど泉委員がお話をされましたけれども、消費者側、日弁連側からも、通報対象を法令違反行為に限定するのは狭いんだ、内部通報前置的な制度設計は問題があるということを指摘されてきました。この指摘は、実際に大きな指摘だったと思います。しかし、では、その意見がどこまでこの法案に反映されているのか。

 保護法案の骨子というのを内閣府から、昨年の暮れでしたかことしの初めでしたか、いただきましたが、そこに書かれていたものからしても、今回の審議会の意見書と比べて、通報対象が、法令違反行為から、別表記載の法令のうち最終的に罰則で担保される規定違反に限定されて、マスコミなどへの外部通報要件が、事業者内または行政機関に通報した後、相当の期間内に通報の対象となった行為について適当な措置がなされない場合というふうに、また限定がついてきておるわけですよ。行政機関が適当な対応をしないときに外部通報をする場合というのが削られるなど、保護される公益通報が限定されてしまっている。これは、さっきおっしゃったことと逆じゃないですか。

 骨子案はパブリックコメントに付されていますけれども、限定的過ぎるという反対意見の方が多かったんじゃないですか。違いますか。自由を広げろなんということは、正義がどれだけ守られているかということをきっちり担保することであって、私は、内閣府の骨子案と比べても、対象法令、さっきの四百八十九本ですか、これを政令なんかでやっていいんですか。政令でやるんだったら、この間答弁がありましたけれども、しっかりとここで議論しないといけない、一本一本の法律について。独禁法はどうか。

 これは竹中大臣とも財務金融委員会で何回も議論しましたね。大和都市管財事件というのがありました。これは、大和都市管財事件というのはどういう事件ですか。

 委員長、あらかじめ申し上げておきますが、指定したときだけ政府委員ということで、あとは国会改革の与野党合意に基づいて大臣で行いますので、細かいことは政府委員に聞きますが、それ以外は大臣にお願いします。

 この大和都市管財事件というのはどういう事件でしたか。金融庁の担当の方、いらっしゃったら、教えてください。

西原政府参考人 お答えいたします。

 大和都市管財の事件でございますが、大和都市管財は、近畿財務局長からの抵当証券業者としての登録を受けた業者でございます。抵当証券の販売等を行っていたものでございますけれども、平成十二年の十月から実施をいたしました立入検査等によりまして、登録の更新において必要な財産的な基礎を満たさないというふうに認められたことから、近畿財務局におきましては、同社の登録の更新申請を拒否するということで、平成十三年の四月に拒否をしたわけでございます。

 それと同時に、やはり抵当証券購入者の保護ということもこれは大事なことでございますので、その観点から、同社の財産的保全を図るために、大阪地裁に対しまして、会社整理の通告、これを行ったという事案でございます。

原口委員 これは事件化しているんですよ。しかし、事件化に至るまでは、私は、この質問を三回、国会でやりました。そして、これは今、平成十二年のお話をされましたが、実は一九九三年に、もう皆さんは、これが実質債務超過であるということを知っていたんですよ。警察の調べでそこはわかっている。その後も、金融監督に当たる近畿財務局、あるいは現在でいうと金融庁ですけれども、それを放置してきた。

 そして平成九年には、皆さんは、ここに、抵当証券業法の規制等に関する法律に基づく業務改善命令、これを出している。ここでも、皆さんが書いているんですよ、この企業というのは実質債務超過だ、子会社まで入れたら債務超過だということを言いながら、生き延びているんです。

 これは内部告発がありました。短い時間ですが、読みます。

 私は、大和都市管財グループの社員としてごく最近まで勤めていた者ですが、右のような理由で内部告発いたします。

 大阪府云々にある大和都市管財他十社は、すべて豊永浩という個人商店であります。大和都市管財は、傘下の会社に融資したかのようにして抵当証券を発行し、一般投資家に販売し、金を集めています。正常な行為ならそれで問題ないが、この会社は異常です。例えば、十億で買った不動産を七十億に鑑定してもらって、五十億の抵当証券を発行し、その五十億で買った不動産には二百億の抵当証券を発行、販売し、雪だるま式に金額がふえ続けています。集めた金から利息を支払うという行為を繰り返しているので、出金より入金が多いうちは被害は出ないが、このような自転車操業では、早晩行き詰まり、大変な被害が出ることでしょう。人数にして一万四千人ぐらい、金額にして約一千億円ぐらいの被害となるでしょう云々。あと細かいことが書いてあるわけです。

 これに基づいて、国政のさまざまな場で調査をし、追及をしてきました。しかし、これが出た、内部告発が出てからどれぐらいかかっていますか。皆さんは行政内部の不作為を覆い隠すことにきゅうきゅうとし、結果、ここでは一万四千人と書いてありますが、一万六千人の被害、一千百十一億円の被害総額ですよ。こういったことを今回の公益保護法で防げますか、保護できますか。

 当該行政機関に通報の先を一元化しているために、当該通報機関が、この通報していますよ、近畿財務局と金融庁に。ちゃんとそこのところも証拠があります。金融監督庁金融会社室長殿、近畿財務局長殿、大阪地方検察庁検事正殿、大阪府警警察本部生活安全課殿という形で内部告発をしている。しかし、何のオペレートもしないんですよ。私は、このことを重く見るべきだというふうに思っています。

 さっき、大変大きな問題であるという答弁がありましたので、大臣に確認をいたします。この通報対象者を一般法理で守られるのであれば、この法律で特段明記する理由は何ですか。

竹中国務大臣 まず、今の委員のお問いかけ、そのベースになっている事実の関係があろうかと思います。

 その事実については、これはもう既に委員が幾つかの委員会で、私の前任も含めていろいろ御議論いただいていると思います。委員よく御存じのように、こうしたものにつきましては、内部告発文書であるかどうかがわからない。文書はいずれも匿名であり、差出人は内部告発者、元社員とされ、封筒の差出人は正義の使者等々とされていた。いずれの文書も匿名であり、差出人を確認する方法もなかった。しかし、我々としては、常に検査監督の立場にございますから、そうしたものも含めて、あらゆる可能性を含めて、しっかりと検査を監督してきている。先ほど、既に早い時点で債務超過であるということがわかっていたというふうに断定をされましたですけれども、いずれにしても、その時点においては、近畿財務局は、同社が債務超過であったとの認識は持っておりません。

 したがって、まずこの事実の関係については、これは詳細、この場だけでどの程度私が御答弁できるかわかりませんですけれども、少し認識は違っているというふうに思います。

 その上で、今委員お尋ねは、仮にこのようなものがあった場合に、要するに、行政当局に言ってきたのではそれがうまく機能しないのではないだろうか、そういうお尋ねだと思います。それが一般法理で守られるのかということであろうかと思います。

 これは個別のケースでございますから個別で判断せざるを得ませんですけれども、もしこれが従業者、内部の者であって、そのトップが不正に何かを隠している、それによって被害が生じようとしている、そのような場合には、まさに今回の法令で、法律でしっかりと予見可能性もできるわけでありまして、そこはまさに、私は、今回の法律を通していただくということの非常に大きな意味があるのではないかというふうに思っております。

原口委員 法案提出者御自身がお認めになっているじゃないですか。この解釈について、事実の認定について、私と大臣との間にそごが今ありましたね。平成九年のときに金融庁は、実際に皆さんが経営改善計画の中に書いているじゃないですか、私はそれを素直に読んだだけですけれども、あなたは、そうではないとおっしゃった。つまり、事実の認定について争いがあるわけです。

 これは私は犯罪行為だと思うけれども、それは今法律で、警察が入って逮捕して、それを司法の手続の中でやっているけれども、今の事実認定だけでも違うんですよ。私のように、何回も皆さんから資料をいただいて、その資料に基づいて質問している人間でも、これが違法であるのか、あるいは事実がどうだったのかわからない。通報者がわかりますか。それを皆さん、立証責任を通報者に課しているんですよ。まことに、さっきの危機管理の、違法性あるいは刑事のことを立証する責任は通報者にあるんじゃないですか。

竹中国務大臣 事実は複雑でございますから、当然、事実を最終的に法廷の場で争わなければいけない、これは当然たくさんあるわけです。

 今問題になっているのは、通報者がそのような、最終的に裁判でどのようになるかというのは、これはその時点でだれにもわかりません、だれにもわからないわけでありますけれども、この法案では、真実相当性について、事業者内部への通報の場合には、「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する」ということを要件としているわけでありますので、その思料に足りるということであるならば、事実云々ではなくて、思料するということをもって通報できる要件にしているわけであります。

 行政機関及びその事業者外部への通報の場合には、「信ずるに足りる相当の理由」があるということでありますけれども、そこは段階をつけておりますけれども、そこは、その事実云々ではなくて、まさに真実相当性ということをもって通報できるという要件にしているわけでありますので、これは、個別にはケース・バイ・ケースでございますけれども、今委員がおっしゃったようなことが全部できない、そういうことではないと思っております。

原口委員 そこを明らかにしたいと思って質問しているわけですよ。真実相当性というものをどのように争うのか。だから、もともとの骨格案にあった、まさに生じようとする、そういうところを緩くやっておかないと通報者を萎縮させるんじゃないかということを言っているわけです。

 法案の手続論で、パブリックコメント、これのすべてを公表することはできますね。皆さん、パブリックコメントを募集されて、その結果について、概要はいただきましたけれども、生データはいただいていません。この生データはいただけますか。

竹中国務大臣 ちょっと、事務的に細部は確認させますが、これは個人の情報であるという側面がある。その点、生データとおっしゃいますけれども、どのように個人の立場を守るかという問題は一方であるかと思います。

 しかし、いずれにしても重要な法案でございますから、法案を審議していただくに足りるような、どういうことがあったかということに関してはできる限り詳細にお出しするということは、これは我々としてもそのつもりでおります。

原口委員 今おっしゃったとおり、だれがどのようなことをおっしゃったかという個人の情報に関するところは結構です。しかし、私が知る限りにおいては、制限的な今の内容をもっと拡大すべきだ、そういう意見の方が多かったんではないですか。いかがですか。

竹中国務大臣 申しわけありません。今、数がどちらが多いかというのは少し私確認できないのでございますけれども、これは、いろいろな御意見が当然のことながらございました。

 例えば、外部通報の要件を広げるといった修正が必要ではないかというような御意見もございました。これは、今まさに委員がおっしゃったとおりでございます。公益通報者を保護する観点から後退したものではないのか、そうならないようにする、公益のために意義ある通報を萎縮させることのないように考えてもらいたい、そういうような御意見がございました。一方で、企業のコンプライアンスの自主的な取り組みを尊重すべきなのではないか、明確で当事者の予見可能性が高く、また濫用されない制度にすべきなのではないか、そのような御意見もございました。また、当然のことながら、骨子に基本的に賛成する、一定の評価ができるという御意見もございました。

 御意見はさまざまでございます。

原口委員 いや、それはさまざまな意見があったでしょうけれども、消費者側あるいは日弁連の話を何でさっき泉議員もしたかというと、やはりそこに直結することだからですよ。

 今この法律をつくろうとしている意図はどこにあるのか。その意図からすると、皆さんは、審議会の意見書の中にあったものも、この法案の中では削除をされている。事業者または行政機関に通報した後、相当の期間内に通報の対象となった行為について適当な措置がされない場合、行政機関が適当な対応をしないときに外部通報する場合が削られているんじゃないですか。そこは大丈夫ですか。

 それから、私はルールの競争だということを先ほど申し上げましたけれども、ルールの競争からしても、英国開示法とどれだけ違いますか。保護される通報者、通報の範囲、内部行政機関への通報の保護要件、その他外部の通報の保護要件、保護の内容、それから立証責任、守秘義務の免除、免責事項、全然違うじゃないですか。

 私は、この法案がここで審議をされて、その立法の本当の趣旨に沿ったものができるんだったら、これは賛成です。しかし、これが、一般法理で守られるものをわざわざ限定することによって、その基準がひとり歩きをしてしまう。徹底するとおっしゃっているでしょう。このことについてはやるんだということが徹底して、これ以外は守られないんだということがあってはならないんじゃないですか。これ以外の通報も守るというんだったら、それをちゃんと法文に書くべきじゃないですか。

竹中国務大臣 今委員は、二点御指摘をされたと思います。

 まず第一は、いろいろ議論する過程でその内容が後退してしまったのではないか。それは、委員なりの一つの御意見であるというふうに思います。しかし、繰り返し申し上げますが、私自身、冒頭に申し上げましたように、今回の新たな法的な枠組みというのは、我々の自由で濶達な経済活動を保持しながら、一方で消費者の利益を守る、国民のまさに公益を守っていく、それを両立させるということだと思います。

 新たな枠組みを導入されるに当たって、私たちは、このスタートアップが混乱なく行えるようにしたいということを特に考えております。そうした意味では、そこのバランスをとる過程でさまざまな御意見を伺いながら、パブコメもいただきました、与党でも御審議をいただきました、その中で、いろいろな日本の実情も踏まえながら、我々としては最良なものにしているというつもりでございます。

 それから、二点目に委員がおっしゃいましたのは、今回の限定をすることによってかえってそれは萎縮するのではないのか、ディスカレッジするのではないか、こういう御発言であったかと存じます。

 これは、先ほども御答弁させていただきましたけれども、今までも、その意味では、一般の法理として、解雇権の濫用を禁止する法令等々がございました。その中で、しかし、今回範囲を定めて、これについては、より予見可能性で、その利益をしっかりと守るというものを上に乗せているわけでありますから、それによって全体がディスカレッジされるというのは、どうも私には理解できないわけでございます。

 繰り返し言いますけれども、この範囲をもっと広くしろという意見がございますでしょう。原口委員はそういう御意見だと思います。もっと狭くしろという意見もパブリックコメント等々ではあったように思います。そこは、やはり現実に照らして、また、このスタートアップをいかに容易にするかということに照らして、最終的には政策上の判断をしていかなければいけないと思っております。

 ただ、いずれにしても、そういう制度を上乗せすることによって今までよりもディスカレッジングになる、これは、私はちょっと、そういうことはないのではないかというふうに思っております。

原口委員 そうしたら、答弁で明確に答えてください。本制度の対象とならない通報についてです。「本制度の対象とならない通報については、一般法理に基づき、個々の事案ごとに、通報の公益性等に応じて通報者の保護が図られるべきであり、」そして「制度の導入により反対解釈がなされることがあってはならない。」これは、たしか国民生活審議会の意見書の中に入っていたと思います。これをここで担保することはできますか。

竹中国務大臣 今またちょっと口頭で言っていただきましたけれども、基本的には、そういう問題、反対解釈があって、それによってディスカレッジされてはならないという思いは我々も強く持っておりますので、例としては、解雇権の濫用等々の一般法令を妨げるものではない、それと矛盾するものではないということについては、法文の中でも明示しているというふうに思っております。

原口委員 いや、それは解釈であって、解釈規定を入れているんでしょう、今おっしゃった法文の中の、濫用云々を妨げるものではないと。それだけでは私は不十分だと思うんです。なぜならば、皆さんが、保護される範囲を明確化するんだ、将来の予見性を高めるんだとおっしゃっているけれども、ここに書かれている要件というのは、従来の一般法理によっても、だれが見たって保護される極めて限られたものを明確化したにすぎないので、それだったら、この法律は何のためにあるのか、無益じゃないかと思うわけです。

 そればかりじゃなくて、さっきから私が懸念して、あるいは消費者団体の皆さんも懸念されているのは、保護に値する公益通報を定めた基準としてひとり歩きする可能性があるわけです。あの年金改正だって、皆さん、私たち国会議員全体、どれだけ理解していたか、それが今責められているわけです。

 こういう基準ですよということで、基準がひとり歩きするということはありませんね。反対解釈はしませんね。もう一回答弁をお願いします。

竹中国務大臣 ちょっと、今の原口委員のお問いかけは、この法律ができたことによってほかの法律がどのようになるのか、どのように適用されるのか、そのような問いかけに私には聞こえましたけれども、これは先般、雇用の問題に関しては、労働省の担当者から次のように答弁があったと聞いております。公益通報に関する保護規定は、労働基準法第十八条の二の規定の適用を妨げるものではないとされておる、このことは公益通報者保護法案第六条二項にも明記されている、これは先ほども申し上げました。したがって、法案が成立したとしても、この適用関係については何ら変更がない、また、法案に規定する公益通報以外のケースであっても、個別の事案により労働基準法第十八条の二の適用もあるものと考えていると。

 これはちょっと私は誤解しておるかもしれませんですけれども、この法律は適用していただく、これはどのように適用されるか、これは我々法案をつくっている立場にございますけれども、それによってほかの法律に書いていることがどうこうなるということは、これは私の法律の常識から考えてそういうことはないと思っておりますし、まさに一般法理が適用されるんだということを明示的に示すために、この今回の規定を明確に置いているわけであります。

原口委員 だから、そこなんですよ。だから、一般法理でも、だれが見たって、これは今でも保護されるでしょう、違うんですか。皆さんがここに要件を書かれていること、これは保護されるでしょう、今おっしゃった労働基準法の中でも。保護されませんか。

竹中国務大臣 今回の法律は、今まで何か法律で決めてきたことと逆のことを決めるとか、そういうものではございません。今回の法律は、一定の要件に該当する公益通報について保護されるということを明確化することによって、そうすることによって今よりも通報を容易にするんだ、予見可能性を明確にするという意味合いを持っているわけです。

原口委員 これは、今でも一般法理によって明らかに守られていることなんですよ。それとはみ出たところがあるというんだったら今の答えですよ。しかし、今でも守られなきゃいけないことを、それ以外にも、例えば、わかりやすいように議論をしますが、刑事免責とか、独禁法の改正で私たちは措置減免措置を入れるべきだというふうに思っています、リーニエンシーですね。例えばそういったものを新たに入れて、もっとリスクヘッジを担保していくんだ、リスクをコントロールできるんだというんだったらここに書いていいですよ。しかし、今でも一般法理でこれは守られることでしょう、皆さんが基準の明確化とされているのは。そこを明らかにしてください。それはイエスですよ。

竹中国務大臣 一般法理は、それをゆがめるものではありません、当たり前の話だと思います。それに対して、しかし、極めて抽象的にしか明示されていないものに関しては、現実に公益を守るという観点からは、混乱もあるであろうし、通報する側の不安もあるであろう、それに対してその範囲を明確化して、それによって予見可能性を高める、これが法律の目指すところであります。

原口委員 それだったら逆に、さっきから何回も求めているとおり、一つの要件をつくれば、そこは強く守りますけれども、よそは知りませんよということにならないですね。つまり、反対解釈はしませんね。

 ほかの法律の適用が云々というのは、今のお答えでは答えになっていないですよ。今の一般法理の中でも守られるものをただ明文化しただけだったら、それは無益なんですよ。そのことを聞いているわけです。

竹中国務大臣 議論がちょっとかみ合っておらないようでございますけれども、一般法理というのは、これは個々の状況によって個別に法律によって解釈されていくものだと思います。この法律ができたことによって一般の法令が変質するとか、そういうことは、これは先ほど申し上げましたように、私が持っている法律の常識としてはあり得ないことだと思っております。

原口委員 一般の法律を変質させるなんて言っていないですよ。もう一般法理で守られていることをわざわざここに特記してやるその法益がどこにあるんですかということを聞いているんです。

 皆さんがここで守ると書かれているのは、今でも守られなきゃいけないわけでしょう。だから、ほかの、これ以外の通報者についても守られるんでしょう。そこが明らかにならないと、これが、日弁連の皆さんや多くの人たちが懸念しているように、公益通報の抑制になってしまうんじゃないか、その基準になってしまうんじゃないか、それ以外について反対解釈がされるんじゃないか、その不安は、どうぬぐうんですか。反対解釈、しませんね。

竹中国務大臣 反対解釈されることがないように、本法案第六条二項に規定を設けているわけであります。

原口委員 いやいや、これは、さっきから大臣が何回もおっしゃっている、この法律はほかの法律に及ぼさないという、それだけですよ、第三条に……(竹中国務大臣「それでいいじゃないですか」と呼ぶ)いやいや、それじゃだめなんですよ。それじゃだめでしょう、その規定を妨げないと言っているだけだから。

 反対解釈されないということでいいんですね。反対解釈、ないですね。この基準以外についてもちゃんと守りますね、公益通報者を。

竹中国務大臣 それを守りますねというのは、だれが守るということを言っているんですか。つまり、それぞれの法律があるわけで、それぞれの法律についてはそれぞれの法解釈が個別になされていくわけですよね。それは……(原口委員「さっきそういうふうに答弁したじゃないですか」と呼ぶ)いやいや、それは一般法理がちゃんと現に存在しているわけで、これは、同じような問題は、例えば個人情報保護法とか、そういうものに共通するのではないですか。個人情報保護法も、そんなにみだりにやってはいけないというのはわかっているわけですね。しかし、それをさらに個人情報は何かということを明確にして、それによって我々の社会をより秩序立って円滑に遂行するようにそのような法律はつくられているわけです。

 我々は、今委員御指摘のように、反対解釈がされることがあってはいけないと思います。だから、特にこの第六条第二項に、解雇権濫用の法理を定めた「労働基準法第十八条の二の規定の適用を妨げるものではない。」ということをわざわざ設けて、その点、我々の姿勢を明確にしているわけでございます。

原口委員 反対解釈が行われることがあってはならないという答弁をいただきましたので、もう一回具体的な事例に行きたいと思います。

 きょうは国交省の皆さんもお見えいただいていますが、これも内部通報でございました。都市整備公団が整備をされているところに、これは予算委員会で二月の十九日でしたか質疑をいたしました。どういう内部通報であったかというと、事もあろうに、その通報によるとですよ、都市整備公団の方と結託をして、そこの関連業者がここに産業廃棄物を捨てているということで、予算委員会で質疑をしたわけです。その後、国交省並びに都市整備公団はどのような対応をされたのか。

 きょうは総裁までまたお見えいただいて、ありがとうございます。あのとき、この広大な土地のかぎを管理しているのは、都市整備公団と、そして、その開発をしている、それに当たった業者の方でした。そのどっちも知らないと言いながら、産廃が入るというのはどういうことなんだということと、もう一つは、その調査を請け負った人にやらせてしまって、前回の予算委員会でも、総裁がおっしゃっている産業廃棄物の数と私が告発を受けた数では全く、十倍ぐらいの差があったわけです。

 その後、どのような対応をされたのか、お尋ねをいたします。

伴参考人 お答え申し上げます。

 先生お話しのように、私どもの方にも、私どもの大事な工事現場でありますけれども、そこに産廃が搬入されているという市民の方からの通報を受けまして、直ちに事実関係を解明するために工事を中止いたしまして、それから請負業者への事実確認とか現地の試掘調査を行ったところであります。

 現場の管理は、何といっても責任施工でありますから現場の業者がやるわけでございまして、しかも、この工事現場はフェンスで囲まれた中での工事でございますので、請負会社の関与あるいは協力なしではそういうことは絶対できないケースであります。

 そこで、その点を特に請負業者との関係では追及しましたけれども、現場管理の不備は認めたわけですけれども、自分が関与しているというのはずっと否認し続けておりまして、これ以上不法投棄者を特定できないので、これは司直の手にゆだねるしかないかなという段階、それが先生の御質問のときでございました。

 一方、前回先生の御質問でも、今お話があったように、公団の職員が何か関与しているんじゃないかとか、あるいは黙認しているんじゃないかといったようなお話がありましたので、実はその以前にもマスコミの取材でもそんな話がありました。そこで、私どもも、公団の人事担当者あるいは担当部長が、公団職員あるいは監督委託者を個別に呼びまして聴取いたしましたけれども、問題となるような事実は全く確認されませんでした。公団の大事な現場に不法投棄物を持ち込むというのに協力するというのは普通は考えられないわけなので、それでもきちんと聴取したところでございますが、その事実関係は見つかりませんでした。

 そんなことがありましたので、どうしても公団だけの調査では限界がありましたので、先生が御質問された直後でございましたけれども、平成十六年の二月二十五日に大阪府の和泉警察署に刑事告発を行ったところでございます。したがって、現在、警察の捜査に全面的に組織を挙げて協力しているところでございまして、職員が経緯だとかあるいは事情について聴取に応じたり、現場検証に立ち会ったり、それから、現場でそういう不法投棄物を取り出して別に保管しておりますので、その混入物の分離だとか計量なんかの手伝いをしている。全面的に捜査協力をしているということでございます。

原口委員 いや、今の経緯だけでは、やはり一方的だと思うんです。

 私は二月十九日の、これは石原大臣との議事録を持ってまいりましたけれども、まだまだ解明しなければならない、なるほどなというような調査結果にはなっていないと。私が、国交省、そして公団としての調査をし、そして、その調査を予算委員会に出してくれという求めに対してこのように答えているわけです、大臣は。

 皆さんは、公団内部での調査には限界があるということで警察に告発をされた、それは刑事的な手続をされたということですね。公団内部での調査をこれ以上続行するおつもりはないんですか。

伴参考人 先生の御質問などもございまして、そういうことを踏まえまして、公団内で本格的な調査体制を組もうということで、例えば現地で追加調査をするとか、あるいは、一応調べてありますけれども、再ヒアリング、関係者をヒアリングするとかということもやろうとしたわけでございますけれども、刑事告発をいたしましたので、実は顧問弁護士の意見も聞きました。

 その結果、目下のところ、みずからこれ以上の調査は、かえって警察の捜査の妨げになるんじゃないかというようなこととか、あるいは、内部のヒアリング調査では、内部同士でやることになると、口裏合わせをしまして、そういう疑いが持たれるんじゃないかというようなことも、調査することによってとられかねないところもありますので、当面その調査は差し控えまして、公団職員の関与があるかどうかということも大事なことでございますから、そういうことも含めて警察によって事実解明をしていただこう、司法の手で解明していただくということを考えたわけでございます。

 しかし、事態の推移に伴って、真相解明はぜひともやる必要がありますので、そのためには最大限積極的な努力をしたいと思っておりますし、それから、こういった経緯を踏まえて、再発防止策とかあるいはコンプライアンス体制をきちっとしくという意味で、今度七月一日に組織改正を用意しておりますけれども、専門の組織を設けるといったようなことで、積極的に取り組みたいというふうに考えております。

原口委員 竹中大臣、今の答弁をお聞きになってどうお考えになるのか。

 三年ぐらい前ですか、外務省不祥事のときも、あれも刑事告発されていますよ、外務省も。しかし、外務省は外務省で独自の調査をし、そして、自分らの組織をもう一回見直す、刷新検討委員会ですか、名前はちょっと正確ではありませんが、そういうものを開いて、そして、どのような調査だったかということをやっておられるわけです。

 こういう内部告発が出てきても、司法に、あるいは警察当局にゆだねるというだけであれば、今おっしゃったような、総裁はそれだけをやるとおっしゃっているとは思いませんけれども、私は独自の、皆さんが告発されたんだったら、自分らの組織の中はどうだったのかということを国会にちゃんと出すべきですし、その翌日、総裁はわざわざ私の部屋までお見えいただいて、私は内部告発の機微に触れる文書も総裁にお見せしました。

 そして、今のままこの工事が進んでいくと、逆に産廃の泥は広がっている、埋め戻されている、拡散している。普通の泥と一緒に拡散されていて、そして、それを知らない住宅を買った人あるいはそこに居住する人に深刻な危害が及ぶかもわからない。なぜならば、皆さんが検査をしたのは、検査をさせたのは、まさにその疑いがある当事者かもわからない人にさせているわけですよ。だからそうなりますよということを申し上げたので。

 大臣、私は、こういうときの行政のルールを決めておかないと、告発者は、ちゃんと自分の告発の意図が正確に伝わるか、つまり、警察に言ったからもう後は調べないんだということを総裁はおっしゃったんじゃないと思いますが、その辺のルール化についてどのようにお考えですか。

竹中国務大臣 今の産廃、公団の事例は、個別にはもちろん承知しておりませんが、一般論として、原口委員が御指摘になっている点は、私はやはり重要だと思います。

 すなわち、今回、通告をする、通報するという一人のプレーヤーが出てまいります。企業というプレーヤーが出てまいります。行政機関というプレーヤーが出てきます。マスコミというプレーヤーももちろん出てまいります。それぞれのプレーヤーがしっかりとしたガバナンスを発揮して、それぞれの機能を、浄化機能を果たしていかないと、仕組みだけでは解決できない問題が厳然とそこにあるということだと私も思います。

 特に、はっきり言いまして、先ほどコンプライアンス室の話をしましたけれども、今、大手企業、かなり、八割とか九割、コンプライアンス対応室を持っているわけですけれども、公的な機関でコンプライアンス対応室を持っているところは、やはりまだ非常に少ない。

 そういうことも含めて、こうした法律を審議いただく一方で、それぞれのプレーヤーの質的な向上というのは、これはしっかり、ぜひやっていかなければいけないと思います。制度を円滑に機能させるという意味で、そういった点に尽力をするのも我々当局の重要な役割だと認識をしています。

 当面、今回、行政機関に対する通報がございますので、当該通報に関する必要な調査、適切な、適当な措置を講ずる旨の規定をこの第十条で置いておりますけれども、それがうまく機能するようにするためには、行政機関の通報処理ガイドラインを作成するとか、通報を受けた行政機関におけるその調査、是正機能が有効に発揮されるように、我々としては、ガイドラインをつくるということが当面のことになろうかと思いますけれども、さまざまな働きかけをしていきたいと思っております。

原口委員 ガイドラインだけじゃなくて、私たち民主党は、この立法府の中にGAO、日本版GAOをつくって、そしてそれでチェックをちゃんと働かせていくという基本的な考え方を持っています。

 あるいは行政機構の中にも、今のように、私は、これは公団の協力なしに投棄ができなかった事例ではないかという疑いを持っています。そして、内部通報者も、すべて掘り返したと公団は説明していますが、ダンプ五十台分の産廃ガラなどがまじった土砂が見つかりました、しかし、告発者が言う土砂の量から比較すると一〇%にも満たない。余りに産廃と疑わしき土砂が出ると、公団の責任問題。それから、ここはもう具体的な建設会社の名前が書いてありますが、Aという建設会社、Bという建設会社、Cという建設会社との特別な関係が明かされることにもなりかねない。事実、前日、三社は何度も密会を開催して口裏合わせをしたり、あれだけ捨てたのに公団はどうしてダンプ五十台しか産廃としないのかと話しています。そして、公団にもしかるべきことをしたから、こっちの責任もほどほどにしか追及されないだろうという話がその三社の会議で出ましたということを言っているわけです。

 つまり、この制度の中では、当該監督官庁に通報するということになっている。しかし、今回のように、当該監督官庁も限りなく、監督官庁と言ってはいけませんね、監督官庁のもとにある公のところも、そこの出先が一緒にやっていたという疑いがあるときには、これは前に進んでいかないんですよ。つまり、国民の生命、財産あるいは環境といったところが長年にわたって毀損される危険性がある。

 今、総裁、ぜひちょっとこれだけは答弁いただきたいんですが、警察に告発をされた。しかし、この管理の責任は公団にあるでしょう、土地の管理の。開発の責任も公団がお持ちですね。告発者は、これでは危険が及ぶ、泥は一部しか掘り返していない、出ないようなところをわざと選んで掘り返したと言っているんですよ。こういうことに対して、どのような対応をとられるのか。あるいは、警察に告発をしたから自分の中の組織についてはもうこれ以上やりませんということでは済まないと思います。

 国土交通省にいつどのような報告をされましたか。そして、その聞き取り調査というのは私たちにお見せいただけるんでしょうか。

伴参考人 先生から盛んに、公団ぐるみというか公団とタイアップしてというような話がございましたけれども、先ほど申し上げたように、我々は被害者、最大の被害者であるわけです。我々の大事な工事現場に不法投棄物を持ち込まれたわけなんで、それを、職員が加担するということは通常はとても考えられないことなんです。私どもも、そういういろんな告発とか何かの話は、電話ではありましたけれども、今おっしゃったようなメモとか、この間ビデオテープの話がありましたが、そういうのは何も持っていないものですから、したがって、これ以上の調査はできないということでありますが。

 それから、先ほど、現場はほぼ全部掘り返しました。掘り返しまして、その結果がこの間の、トラック九十七台分の産廃物を別に取り出して、それをきちっと保管してあります。ほぼ全部調査を終わっております。

 それから、その調査を当該業者にさせたのは、重機でもって掘り返さなきゃいけませんですね。それで、もし別の業者にさせるとなると、いろいろな手続で二カ月ぐらいかかってしまいます。そこで、その当該業者の重機を使って、ただし、それは業者の言いなりじゃなくて、こちらはいつも絶えず監督して、ここを掘りなさいとかここをこうしなさいとか言ってやってきたものでございまして、決して不十分な調査になっていないと思いますけれども。

 しかし、そんなことも踏まえて、警察で、今司直の手でやっていただいているということでございまして、それは、今は警察の段階でございますが、一方、私どもとしては、決して、これで司直にゆだねたから何もしないということじゃなくて、体制づくりを先ほど申し上げましたし、それから我々が捜査の妨害にならないいろいろな調査、そういったことはきちっとやっていきたいと思うし、体制づくりもしていきたいというふうに思っております。

原口委員 いや、ちょっとよく答弁がわからないんですよ。だって、かぎを、それはもう前の予算委員会に戻る必要はないと思いますけれども、総裁がお答えになったんですよ、かぎを管理していたのは公団だ、それとその当該の人だと。その二人しかかぎの管理者がなくて、かぎは壊されていませんでしたと。大臣も言っているじゃないですか、ほかの人がどうやって入る余地があるんだろうかと。私も思うわけですよ。

 だから、内部の調査をしてください。それで、その調査結果について報告をしてください。信じられませんよ。だって、公団の管理の土地に産廃があること自体が信じられないわけで、信じられないことが起こったときにどのようなコンプライアンスを働かせて調査をするかということが問われているわけで、公団は被害者だから私のところは関係ありませんよと言うんだったらそのままですけれども、信じられないことが起こったことに対して、その調査結果を見せていただけるんですよね。いつ聞き取りされましたか。

伴参考人 冒頭お答えしましたけれども、かぎは我々土地の管理者が持っております。それから、ここは現場の管理責任は業者でございますので、業者に渡してあるわけです。

 そこで、我々がもちろん関与をするはずはないんだけれども、我々がしなかったら、それはあとは、請負業者が何かの形で手助けしたり補助したりすることで起こり得ることが大いに可能性があって、我々は限りなくそのことを疑っております。疑っておりますが、それはもうこれ以上我々の手ではどうしても調査が進まないので、そこで警察の方の関与をということでやっておるわけでございます。

 調査結果、あそこを掘り返した調査結果とかそういったものはお出しできます。

原口委員 いや、聞き取り調査を出してくださいと言っているんですよ。現場の責任者は四人だったはずです。そして、皆さんは、九月にこの告発があったその直後に、三日間の残業、いつもはしないような残業をなさって、そして証拠を隠滅したという告発まで来ているんですよ。こういったことが事実かどうかということをどのように調査されたのか。

 違えばそれが一番いいんですよ。違えばいいんですよ。私だって、公団の人がこれに絡んでいたなんていうことを思いたくない。しかし、告発者は何て言っているかというと、公団の協力なしに投棄はできない、その証拠に、公団の職員がいたときにトラックが入ってきても知らぬ顔をしていたと。皆さんは最初、これを言ったときに、そんな産業廃棄物なんかあるわけないじゃないですかと言っていたんですよ。産廃の泥が、自分らが、公団がこんな管理しているところに入るわけないじゃないかと最初言っていたじゃないですか。それで、結果、調べてみたら、産廃だった。今度は、公団の職員なんかがそれに携わるわけないじゃないかと。それは当たり前ですよ。事実、そうですよ。だけれども、信じられないことが起こっていて、その調査結果について、ぜひ出してください、聞き取り調査。

 きょうはもうこれ以上、法案にまた戻りますけれども、大臣政務官、わざわざお見えいただいてありがとうございます。これは政治の決断なんですよ。こういったことが起こったときに、どのように国民を守るか、あるいはどのように信頼を回復させるか。

 ベーカー大使とも前お話をさせていただいたことがありましたが、アメリカの政権も、あることが大っぴらになって困ったことがあった、立ち往生した、大統領がやめなきゃいけないような事態があった。まあ、具体名は言いませんけれども。そのときの最大の危機管理は、徹底して調査をして事実を言うことだったということをおっしゃっています。

 国交省として、いつどのような調査結果をこの公団からいただかれたのか。そして、私はそれは十分ではないと思いますから、国交省としても積極的な解明を。それは司直にゆだねられていますよ、だけれども、警察のどうのこうのということよりも、さっき総裁がおっしゃったように、公団の方が犯人だなんていうのは別にだれも疑っていないかもわからないから、中の調査をされて、委員会にその調査結果を出してください。そのことが国民の生命、財産を、この告発者のまさに願っているところでございますので、政治の決断としてお答えいただければと思います。

斉藤大臣政務官 まず一問目の、どういう報告を聞いたかでありますけれども、本件につきましては、昨年十月二日に、事案について調査実施中である旨の一報を受けました。そしてまた、十一月二十五日には、建設残土が不法に搬入された事実が判明した等の事実経緯についての報告を受けております。このように、本件についてはその都度報告を受け、国としても事実解明について最大限の努力を行うよう指導してきたところであります。

 また、本年二月には、本事案を契機に、現場の管理の徹底及び事業の的確な遂行について改めて指導をしたところであります。

 委員会の報告につきましてでありますけれども、先日の予算委員会のときにも委員からその御指摘があった旨聞いておりますけれども、正直申し上げまして、原口委員の疑問といいますか、それも、私どもも説明を聞きまして、同じように釈然としないものを持っているのも事実であります。

 ただ、委員会に提出するしないにつきましては、調査結果を踏まえまして、委員会の方とも、国会とも相談しながら検討させていただきたいというふうに思っております。

原口委員 ぜひ委員長にもお願いをいたします。

 これは公益通報にかかわる大変大きな事案なんですね。それで、まだ継続している事案だと思っています。ぜひ、今大臣政務官に御答弁いただきましたけれども、調査を求めて、それを本委員会に提示するように理事会で協議をいただきたいと思います。

山本委員長 理事会で協議させていただきたいと思います。

原口委員 ありがとうございます。

 それで、聞き取り調査というのについては、国交省は御存じですね、どういう聞き取り調査か。その報告はいつ出ましたか。

斉藤大臣政務官 十一月二十五日に聞き取り調査をしております。

原口委員 対象はどなたですか。

斉藤大臣政務官 公団から、土地・水資源局の土地政策課担当補佐に、報告を聞いております。

原口委員 それは報告をした人ですよね。報告をした人じゃなくて、その聞き取り調査をやった対象。現場に不法投棄をされた産業廃棄物があったわけですから、そのことについて、現場の管理者、私は四人ぐらいが現場に公団としていたというふうに聞いておりますが、そこには聞き取りされているんですね。

伴参考人 聞き取り調査は、聴取者の方が、職員関係で当該事務所の所長以下三名と、それから関係業者、請負の、監督をする、別の業者でやっておりますから、それがたしか二名だったと思います。その事情聴取をやっております。

原口委員 いや、私は、現場に、そこにいた方に全員に、四名と聞いていますから、そこにちゃんと聞き取り調査があって、その方々が、そんなものは入ってきたのも知らないし、産廃が入ってくるなんということはあり得ない、そういうことが聞かれたんだと思っていましたけれども、所長以下三名ということは、所長さんは現場にお出になっているわけないですよね。つまり、その責任者だけに聞いてという調査だったわけですね。

伴参考人 所長は、最高責任者でもありますが、もちろん現場にも参ります。現場を一番責任者として把握している立場でありますので、当然所長からも聞きますが、現場で監督をして回る人、それは全員聞いたつもりでおります。必ずそこに、現場に、毎日ではないかもしれませんが、そこに行く人については、関係者でございますから、特に、黙認していたのではないかとか、立ち会っていたんじゃないかとかというお話もありましたので、その関係者は全部事情聴取をしております。

原口委員 いや、だからそれを最初聞いたわけですよ。最初三人とおっしゃったんですよ。それだったら違うじゃないですか、対象者が。全員に聞いているわけですね。そうしたら、三人じゃないじゃないですか。少なくとも七人か八人か十人かいるわけでしょう。

伴参考人 違うとおっしゃったのは四名との関係でございますか。(原口委員「いやいや、三人とおっしゃったんですよね、最初」と呼ぶ)はい。(原口委員「ほかにも現場関係者がいると」と呼ぶ)だから、三名と、それから工事監督をやっている二名と、合わせて五名でありますけれども、それの聴取をやったということでございます。

 公団の職員、それが三名ですね。それから、監督をやる別会社がありまして、そこに監督の補助をさせておりますので、そこの関係者は二名。それを聴取したということであります。

原口委員 だから、だれにどうしたのかというのを文書で教えてください。現場の、業者の方というのは二名ですね。二名でしょう。それで、所長、それからあと二人。では、三人で現場監督をやっているわけですか。そうじゃないでしょう。

 だから、私が申し上げているのは、関係者。さっき総裁がおっしゃった、現場に向かわれて、現場にかかわる方全員に聞き取り調査をされたんですねということを伺っているんです。

伴参考人 まことに申しわけありません。ちょっと人数を間違えておりました。

 関係職員は、公団職員が六名、それから請負会社、監督を委託している会社が三名、合わせて九名でございます。失礼いたしました。

原口委員 限られた時間で質疑をしていますから。きのう、これはもうずうっと聞いていて、夜中の二時半まで資料を待っていた話で。本当に、聞き取り調査の結果を出してくださいよ。そして、私は、だれかが罪に陥るとか、そんなことを望んで言っているんじゃありません。大事な、公に対する、公益に対する信頼が奪われることが問題なんですよ。そこに産廃が埋まっているかもわからないなんという土地をだれが買いますか。その被害はだれが一番受けますか。そのことに真摯に対応しなきゃいけない。

 竹中大臣、この件について、コンプライアンスをしっかりと担保できるような仕組み、あるいは行政の中でこういう事件が起きたときには、刑事もやるけれども、中でも調査をし、そしてそれを国会に報告するというルールづくりをぜひお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 先ほど御答弁させていただきましたとおり、各プレーヤーがそれなりにしっかりした役割を果たさないと今回の法律は十分に機能しないと思っております。

 そのために、特に行政の機関の調査等々をどのように行うか。これは、最終的にはもちろん各省庁で御判断されることではございましょうが、我々としては、この法律の趣旨をきっちりと説明申し上げた上で、ガイドラインづくり等々で、いろんな協議の場で我々の考え方をしっかりとお示ししたい。それで委員御懸念のようなことがどんどん少なくなっていくように、我々としても意を尽くしたいと思います。

原口委員 前向きの答弁をいただいて、ありがとうございます。

 ですからこそ、国民、消費者に深刻な被害が発生する前に公益通報者が外部や内部に通報できるように、通報対象というのは、人の生命、身体、財産に対する危害、環境破壊、またはそのおそれ及び消費者利益等公益にかかわる違法行為一般とすべきなんですよ。そこを狭くしてしまうと、今のようなものについてなかなか救えない。だから、だれを、だれの利益を守ろうとしているのかということが一番大事だ。

 そこで、さっき少しお話をしましたが、英国の公益開示法。私がその企業の経営者だったり日本に投資をしようとしている投資家だったら、ここのところのルールがきっちりしているかしていないかによって随分、投資をするかしないかの判断にしますね。英国では、公益通報者保護の制度の一般法である開示法が制定されていますけれども、対象事実を犯罪事実に限定していないんですよ。もとより、民事法も含めた法的義務違反、個人の健康や安全に対する危険、環境破壊、さらにこれらの事項に関する情報の隠匿をも対象としているんですね。何で通報対象を広く定めているかというと、公益通報を狭くしてしまうと公益のために生かせないからです。

 我が国においても、通報対象に、広く一般人が公益にかかわる不正や違法と考えるところを盛り込むべきだと私は思うんです。

 小さく産んで、その運用について混乱がないようにというのも一つの考え方でしょう。しかし、先ほど私が申し上げたように、これは今の事件を、もう事件化するんでしょう、警察に告発をされているので。事件を見ていても、まさに、一歩おくれれば取り返しのつかないようなことになるんですね。ここのところを広くするというお考えはないのか。ぜひ大臣の基本的なお考えを伺っておきたいと思います。

竹中国務大臣 英国の事例等々、事務局におきましてもしっかりと勉強をいたしましたし、また審議会等々におきましても、それこそ、各分野の専門家によって非常に幅広く、議論、比較も含めて検討されたというふうに承知をしております。

 今回の国民生活審議会の提言でございますけれども、国民生活の安全や安心に資するという観点から、国民の生命、身体、財産等の利益の保護にかかわる法令違反を対象とするということ、これはさまざまな要因を考えてそういうふうに結論づけられたというふうに承知をしております。

 これらの分野については、違法行為によって実際に国民の生命、身体、財産等に被害が発生した場合には非常に広範囲に及ぶ回復しがたい被害が生ずる、事後的な救済はなかなか効果的ではない。そうした観点から、被害の未然防止、拡大防止の観点から違法行為を抑止していくというふうに考えているわけでございます。

 委員は、その他についてのより幅広いという御意見。審議会の中でさまざまな御意見があったというふうに賜っておりますけれども、制度を円滑にスタートアップさせるということを考えると、今回のような形が適切ではないかということが多くの専門家の御意見であったというふうに認識をしております。

 と同時に、これがやはり時代とともに進化していく必要があるというふうに考えておりますので、その見直しの規定も織り込んで、まさに幅広く国民的な議論を並行して進めていただく中で今後のあり方を進化させていく、そのような方式をぜひとらせていただきたいと思っております。

原口委員 だから、そこにある視点がやはり違うんですね。これを何とかしたいと思って通報する側に、国民の側にやはり視点を持たないと、一般人が公益にかかわる不正、違法と考えるということは、法令違反が行政処分を経て最終的に刑罰で強制される規定違反に該当するか否かの判断というのは、法律の専門家だってわからないんですよ。それは、真実相当性云々という話はあるけれども、そこまで求めてしまったら、逆に言うと本当に守りたい利益が守られないということを、ましてや労働者にとってその判断は至難のわざであるというふうに思います。

 もう時間が限られていますから、これは竹中大臣ともずっとやってきましたRCCの件について、では、このことが皆さんが言われている法令違反に当たるのか当たらないのか。これも予算委員会で質疑をしましたが、和泉のいわゆる不適切回収事案というもので、RCCの当時の社長はやめました。そして、内部告発者は東京地検に告発をし、捜査が入りました。結果は御案内のとおりです。

 金融庁にお伺いしますが、この事案というのはどういう事案でしたか。

西原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘のRCCによる朝日住建、この件に係ります不適切な回収事案ということでございます。

 この件について申し上げますと、いわゆる住専管理機構、現在はRCCということになっているわけですが、平成九年の暮れから翌年の三月にかけまして、大口債務者たるこの朝日住建、ここからの回収業務におきまして、担保物件の売却からの回収極大化を図る、その図る余りに、債務者が関係者に対して重要な事実を開示しなかったことをRCC自身が訂正をしなかったということ等による不適切な回収が行われたものというふうに承知しております。

 具体的に申しますと、今、堺市というお話でございましたが、隣接する二筆の担保物件、この土地について任意で一括売却交渉を行っていた。その過程におきまして、買い主と売り主、この売り主が朝日住建に当たるわけですが、その間で売却額、これについて事実上の合意があった。これは約四十三億円というような形で事実上の合意があったわけでございますが、それがあったにもかかわらず、他の債権者、これは片方の側の第一抵当権者ということでもあったわけですが、横浜銀行と明治生命でございます、そこがより安い価格、すなわち三十三億円程度と誤信しているというような状況であったにもかかわらず、これを訂正しようとしなかったことなどによりまして、関係債権者に不利な条件で担保の抹消の同意をさせたというようなこと等が問題になった事案でございます。

 以上の案件でございます。

原口委員 まさに今のような深刻な案件で、私は、RCCが検察やさまざまなところと手を結んで、やみと絶対に手をつながない、そして国民の負担を極小化するということでよく頑張っておられることは、これは大変評価しています。しかし一方で、本来自分らがそういうものを摘発し、そしてバブルに踊った人たち、土地転がしに踊った人たちのそれを回収する人が、それと同じ手口でこういうことをやるというのは、不適切を超えて違法だとその告発者は思ったわけです。

 告発者は東京地検にそういうことをやりましたけれども、しかし、現実に違法かどうかというのはまだ争われているわけですよ。いや、不起訴になったんですかね。その後の捜査の結果あるいは事実関係を伺いたいと思います。

西原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの件につきましては、確かに、まずは中で、内部でもってまず調査委員会を開いて、そこで検討をした。これは平成十二年の十二月でございます。それを踏まえまして、一月になりまして発表といいますか公表をしておるわけでございますが、その際に、いろいろ表現を見てまいりますと、回収については不適切であるけれども、法令違反とまでは言えないのではないかというような判断がその際にはあったようでございます。しかしながら、今御指摘のように告発というものがございました。その時点は平成十四年の十月になりまして、これが東京地検に告発されております。これは詐欺等の容疑で告発をされております。

 それで、現在でございますが、平成十五年の十月でございますが、東京地検において判決がおりまして、被告でありました中坊元社長らに対しまして、起訴猶予というような処分になってございます。

原口委員 起訴猶予なんですよ。ですから、この認定というのは非常に難しい。個人のお名前が出ましたから非常に質疑しにくいんですけれども、私も東京地検への告発についてまいりました。その翌日、これは偶然なんでしょうけれども、大きな真っ黒い車に、本当に命の危険を、たまたまなんでしょうね、そういう事態に遭いました。その人たちがやったなんという証拠はありませんし、ただ、その翌日でした。石井紘基氏が、一緒に国会Gメンとして追及をしていた石井紘基氏が亡くなったのは、その翌々日なんです、告発の。

 私は、やはり告発者の側からすると、大変なリスクを冒している。そして、この法律の中で、保護ということですけれども、しかし、公益を守ろう、自分の利益ではなくて公益を守ろうという人たちが本当にこういう形で社会の正義を貫くことができるのか。

 ぜひ大臣に、さっきの答弁ではないですけれども、自由というのはやはり正義のもとにあるんですよ。そのコンプライアンスをどのように確保するのか。RCCのコンプライアンスに関する監督について、これはたまたま同じ大臣でお伺いするわけですけれども、金融庁はどのように認識しておられるのか伺います。

竹中国務大臣 正義を実現するための努力は、まさに重要であると思います。

 RCCのコンプライアンスに関して金融庁はどのような立場にあるか、監督しているかというお尋ねですけれども、RCCというのは、我々から見ますと二つの側面を持っております。公的資金によって買い取りをした破綻金融機関や旧住専の貸付債権等を適正迅速に回収をしていく、それによって国民負担を最小化していく、そういう役割を担う、まさに公的機関としての側面を有しております。

 一方で、これは我々の銀行業としての監督、通常の監督の対象にもなる機関でございます。RCCの業務の遂行に当たりましては、これはRCCの全額の出資者でありまして、RCCの買い取り資産の回収を委託しているところの預保、預金保険機構が、RCCの業務が適切か、厳正に行われているかということを指導助言する立場にございます。その意味では、RCCの業務のコンプライアンスの確保に当たっては、RCCの業務の公的側面をも考慮に入れながら、預金保険機構とともに行政として適切に監督を行っているという立場にございます。

原口委員 しかし、現実にこういうことが起こっている。

 それから、これも財務金融委員会でたしか指摘をしていたと思いますが、自己競落の事実についても、ある地域である管理会社が頻繁に起こしている。これも内部告発だった。それも国会で指摘をさせていただいて、そしてRCCに対する預金保険機構の監督について、あるいはRCCに対する金融検査についてもずっと求めてきたわけです。

 銀行法に基づく金融検査も必要でしょう。あるいはコンプライアンスを担保するという意味においての検査も必要でしょう。しかし、日銀総裁は、私に、日銀考査をやりますというお約束をなさって、日銀考査は行われていますが、金融庁による検査というのはマンパワーの不足を理由に一回も行われていないんですよ。私はこのことはどうかと思うんです。直接さまざまな監督に当たるところが、私も法律をいろいろ見ました。かなり強い権限を金融庁は有している、これだけ権限を有しているということは、責任を有しているということですね。RCCに関する金融検査をなぜ行わないんですか。そのことについて大臣に答弁を求めておきたいと思います。

竹中国務大臣 今RCCの不祥事について二件目の例の御紹介をくださいましたが、ちょっと済みません、今時点で私は確認できないのでございますが、いずれにしても、他の問題も含めましてRCCでそのような不祥事が生じているというのは、大変遺憾なことであるというふうに思っております。

 今原口委員御指摘のように、RCCは銀行法上の銀行でもあります。したがって、この銀行法に基づく金融庁の検査権限が法的に存在をしています。我々は一方で、では検査というのはどのように行うか。非常に限られた検査人員で、御承知のように不良債権問題を抱える多くの銀行に対してどのように効果的に戦略的に検査が行えるかということに、これはこれで大変腐心をしております。そうした意味で、これまで検査を実施するには至っておりません。我々としては、当然のことながら、検査を行わない、そういう方針を持っているわけではありません。キャパシティーの制約、緊要性等々にかんがみて、我々として責任ある行動をとらなきゃいけないと思っております。

 ただ、日銀の例がございましたけれども、我々としては、ここの金融機関に今後いつ入るというようなことは、これは金融機関側に予断を与えることになりますので、どこということなく、これは公表を前もってはしておりません。そうしたことは御理解を賜りたいと思うのでございますが、これは繰り返し言いますが、我々としては、そういった必要な権限も持っておりますし、責任も負っておりますので、状況にかんがみまして、必要があると認めるときには所要の検査を行うつもりでございます。

原口委員 やはり個々の金融機関とこのRCCは、性質もあるいはできてきた経緯も違うんですね。預保の一〇〇%の出資の国策会社ですよ。その国策会社のコンプライアンスをどのように担保するかということで、前もっていついつ入るなんということを言ってくれと言っているわけじゃなくて、大臣に求めたいのは、これだけいろいろなものがありますから、そのバランスシートについては本当なのかと。今まで皆さんが特別検査も含めて検査に入られて、そして現実に出てきた中身については、破綻行については随分乖離があったものもあるやに聞いています。

 このRCCのバランスシートが御報告のところと大きく違ってきたときに、私は違わないんだと思いますけれども、しかし、これだけ例えば不適切な回収事案があったり、あるいは自己競落というようなことが行われているということであれば、あのバランスシートについても本当なのかと。これは直接国民負担になるわけですよ、税金を入れるわけですから。

 そのことについて、私はぜひRCCも例外ではないという答弁をいただいておきたい。そして、私の意図するところを早急に検討するということをお答えいただきたいと思います。

竹中国務大臣 先ほども御答弁させていただきましたとおり、これは銀行法上の銀行でございますので、銀行に検査をするのにRCCだけ検査をしないなどということはあり得ないことでございます。その意味では、必要に応じてしっかりと検査をやる必要があるときはやります。

 また、中身についてでございますけれども、今、法令遵守体制に加えてバランスシートについても御言及がございました。検査というのは、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するために行うものでありますから、当然のことながら、リスク管理体制、この中には信用リスク、流動性のリスク、そういった問題が入ってまいります。また、法令遵守体制についても適切に検証する必要がある、そのように考えております。

原口委員 もう一つ、法案にまた戻りますけれども、私は、外部通報要件についても、公益通報者の正当性が訴訟で争われた際に、通報者において、通報時に将来不利益取り扱いや証拠隠滅が行われたはずであると信ずるに足る相当の理由があったことを立証するということは極めて困難だと思います。

 今三つの事例を出しました。これは全部内部告発です。しかし、この告発をしたから証拠隠滅が行われたはずであると信ずるに足る相当の理由があったことを立証する、私はこれは非常に難しい要件だと思うし、きょう、もう時間が尽きてきましたが、ぜひ慎重にこれは審議をし、そして与党にもお願いですが、やはり修正すべきところは修正するということが必要であるというふうに思います。

 さて、対象法令の政令委任についても、私が見た感じは、さっきの四百八十幾つがどうかということよりも、むしろ、これはまた金融担当大臣として伺いますが、先ほど大和都市管財事件の話をしましたが、抵当証券業法そのものもやはり問題なんですよ。抵当証券業法が右肩上がりを予定しているために、そのためにこういうデフレの時代において起こることを予期していない。個々の消費者、個々の国民に対する保護がやはり不十分です。

 担当大臣ですからあえてお伺いしますが、この抵当証券業法あるいは金融関連の法律は、今回出されている公益通報者保護法の対象になるんですか、ならないんですか。

竹中国務大臣 我々としては、分野を例示して、具体的な七つの法律を例示して、その上で法案に示された保護法益の分野例示を踏まえて政令で定めるということになっている。今、抵当証券業の規制等に関する法律だと思いますが、これは国民の財産の保護にかかわる法律であることは間違いございません。具体的に、では今それで政令で定めるかどうかについては、これはまさにこれから検討させていただくというふうにしか申し上げようがないのでございますけれども、国民生活への影響の大きさがどうなのか、そうしたことをやはり他の法律とともに今後しっかりと精査した上で、また国会での審議もぜひ参考にさせていただくつもりでございますし、パブリックコメントなどにより各方面の意見も聞いた上で、政令の手続としてしっかりと判断をしていきたいと思っております。

原口委員 そこのところはやはりあんこの中身なんですよ、どういうものが入るか。私は、この一時間半の間に、やはり要件を非常に狭めている、しかも、対象法令までどれになるかわからない。昨日でしたか、政務官が協議の場というようなお話もされました。一つの見識だと思いますね。

 私は、少なくとも今の金融関係の法律、これは、一回被害が出てからでは、あともう回復不能なぐらいの大きな被害を出してしまう。あるいは、独禁法についてはどのようなお考えですか。独禁法について、まさにこの対象としてお認めになりますか。

竹中国務大臣 繰り返しになりますが、これから政令で定めることでございますので、今私の一存でこれこれを定めるということを申し上げるのは困難なわけでございますけれども、この法案の第二条で、生命、身体、消費者の利益云々と書いてありますけれども、「公正な競争の確保その他」国民の生命云々という表示がございます。独禁法は、その意味では、公正な競争の確保の中では中心的な法律になると思っております。

原口委員 ぜひ、そういった法令の中身についても一つ一つの精査が必要だし、外部通報の保護要件としてはイ―ホまで挙げていただいていますけれども、これに付加して、通報の対象となった事業者等の行為の内容、人の生命、身体、財産、環境、その他の保護法益の侵害、危険の程度、通報先、通報者がその外部通報先に通報するに至った事情等を考慮し、当該外部通報先への通報が相当であること、または通報時において相当であると信ずるに足る合理的理由がある場合というような一般的保護要件を設けるということが大事だと思います。

 要件を列挙するときには、先ほど、反対解釈はしないという御答弁でしたけれども、そういう丁寧な法律をつくって、実際にこの法律が機能しなければいけないわけですから、よりよい法律に向けて私たちも努力をしていきたいということを申し上げて、質疑を終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時四十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四十六分開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。

 まず最初に、今、国民年金の未納、未加入の問題が国会で議論をされておりますけれども、竹中大臣は未加入状況はどういうことなんでしょうか。

竹中国務大臣 記者会見及び他の委員会等々で何度か御報告させていただきましたが、私自身、十一カ月間の未加入がございました。

山内委員 それは、昭和六十一年に強制加入になってからの十一カ月間でしょうか。

竹中国務大臣 大学を出ましてから、社会人になりましてからいろんなところに勤めておりまして、その間ずっとしっかりと年金は切りかえてやってまいりましたんですが、大臣に就任しましたときに国家公務員共済に入るというふうに言われまして、そのとおりだというふうに思っておりましたが、短期の医療等には加入できたんだけれども、私の立場では、長期の共済、すなわち年金には加入できていなかったということを知りまして、急ぎ加入し、さかのぼって支払いましたが、結果的に、大臣になってから十一カ月間が未加入となりました。申しわけなく思っております。

山内委員 それを自分で記者会見で発表しようと思ったのはどういう気持ちですか。

竹中国務大臣 これは、私の個人の、どこまでさかのぼって個人のことをどこまで話したらよいのか。これも国会でずっと答弁させていただきましたですが、そうした情報につきましては、内閣の方針なり国会の方針なり、そういうのが示していただければ、公人でありますので必要なことは過去にさかのぼってお話をいたしますというふうに申し上げてまいりました。

 四月の二十八日でございましたか、国会を通じて内閣から発表するようにという指示がありましたので、そのようにさせていただきました。

山内委員 国会議員であり、かつ内閣の、いわゆる要人というか、大臣、副大臣、政務官は、すべて全員が未加入、未納状況については説明責任があるとは思われませんか。

竹中国務大臣 いろんなお考えがあろうかと思います。また、それぞれの党でもいろんな御協議をされて、いろんな御方針を決めておられると思います。そうした御方針を尊重したいと思います。

山内委員 政務官はどうでしょうか。

西川大臣政務官 私、事務所で調べさせましたところ、幸いすべて納めておった、こういうことでございます。

山内委員 それは褒められることでも何でもなくて、当然のことでございますので。

 それで、例えばの話、国会議員が未納かどうかということを今説明しろ、説明するのは個人情報で嫌だ、そういうことをよく毎日のように報道されますよね。例えば、国会議員の地元の事務所の事務員が、先生の納入状況はどうなんだろうかと地元の社会保険事務所に問い合わせをする、それで未納の期間があった、その国会議員は明らかにしたくない、ところが、社会保険事務所に問い合わせたその地元の事務所の事務員が外部に通報した。こういう場合は解雇されますか。両人にお聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 個別の事案につきましては、まさに先生は法律の御専門家でいらっしゃいますが、その個別でいろいろ御判断をしなければいけない。どういう要件を満たしているかというようなこと等々、いろいろ考えてその個別のケースが決まるのだと思います。

 ただ一方で、一般論としては、個人情報というのは保護されなければいけないものでございますから、そうしたこと等、そうした内部からの報告が、置かれた状況、目的等、その個別によって判断されるべき問題なのだと思います。

西川大臣政務官 雇用といいますか、お互いに助け合ってやっている仕事でありますので、年金の納入をしたかどうかだけで判断する、こういうことに私はしたくない、こう思っています。

 もし未納等の問題があれば、これは義務でありますので、早急に納めて、義務を果たすように努力をしていきたい、こう思っています。

山内委員 今の政務官の御発言だとすると、国民年金保険料が義務化された以降に義務の不履行をした国会議員は、地元の事務所の事務員が仮に自分の意思に反して外部通報してしまった場合でも、解雇することまでは考えないで、自分の責任があったと思って、とにかくさかのぼって、何年でもさかのぼって払えるような法律にしたいし、督促は、去年は未納でしたよというような通知、おととしも、三年間未納ですよというような、そういう通知もしっかりとして、年金保険料が払いやすい、滞納が生じないような年金制度をつくり上げるために国会活動を頑張る、そういうように政務官が言われるということでよろしいんでしょうか。

西川大臣政務官 議員として不備な点があれば改善するように努力をしていく、こういうことが当然だと思いますので、これからいろいろ検討して、できる限り現実に近く、そして国民の義務を果たす、こういうことにできますように私としては努めていきたい、こう考えています。

山内委員 できましたら竹中大臣が個人で、やはり自分のことはしっかりとみんなに説明責任を果たそうと思ったり、あるいは、幸いにという言葉を使われましたけれども、政務官も未納期間がなかったということでしたら、やはりそれを、今自民党はかたくなに、個人の判断だということで、総理と幹事長が、党としては絶対に公表をしない、そういう態度を持っておられますけれども、その党の中から、やはりだれも公表していった、ある意味ではそれによって役職も、国会の委員長ポストもすべて失ったという方もおられますし、みんながやはりそれ相応の自己責任を負っているわけですから、その党内でもっと声を拡大して言っていただきたいと思うんですけれども、政務官、そのお考えはどうでしょうか。

西川大臣政務官 できる限り率先して努力をしてまいりたいと思います。

山内委員 さて、車の軸が折れてタイヤが飛んでいってしまった、あるいは、ちっちゃな子供、身長の足りない子供は事故を起こすかもしれないというような回転扉をまだ設置していた、あるいは遊具についても、もう何年も前から子供たちの指が折れてしまうというような事故があったのに、その遊具の安全性について十分な検討をしないままに遊園地に置いていた。そういうような事件がここ最近立て続けて起きていると私は思っているんですが、こういう事例を見るにつけ、やはり一番被害に遭っているのは、例えば女性とか子供とか、弱い立場にいる人たちだと思うんです。

 とても残念に思うのは、何年も前からこういうことがわかっていた、事故の事例が起きていた、社内でそれを検討していた会社もあるし、検討していなかった会社もあるし、いろいろですけれども、しかし、何年か前にもっと真剣に考えてくれていたらよかったんじゃないか。あるいは、何年か前に、ある一人の勇気のある会社の従業員が、外部通報あるいは内部通報でしっかりとそういう危険性については指摘をする、そういうようなことをしてくれていたら、最近起きているようなタイヤや回転扉や遊具の事件についても起きなかったんじゃないかと私は残念でならないんですが、大臣、どうお考えでしょうか。

    〔委員長退席、今津委員長代理着席〕

竹中国務大臣 今委員おっしゃいましたように、挙げられましたどの事例も、思い返してもやはり大変痛ましいことばかりで、そうした問題について、これも御指摘のとおり、女性であるとかお子さんであるとか、弱い立場の方がその犠牲になっている。こうした事実を我々は直視して、それを防ぐさまざまな多様な仕組みを検討していかなければいけないということだと思っております。

 そのためにも、やはりまず当事者がしっかりとコンプライアンスを、法令を遵守して、しっかりとガバナンスを働かせていくような仕組み、それをしっかりと主体としてとっていただく。その上で、社会の仕組みとしてそういうようなものに問題があるような場合は、まさに今回の法案、法令がそうでございますけれども、そうしたものを、必要なものはしっかりと指摘をして、自助努力、自助浄化の作用を高めるような仕組みをやはりしっかりとつくっていく。これが政府としても大変重要な課題であるというふうに思います。

山内委員 表現がふさわしいのかどうかはわかりませんけれども、例えば、一方では密告社会をつくってしまう。本当に内部で自浄作用を促すための制度であればいいんだけれども、外部にどんどんこういう危険情報が通報されていってしまう、それによって企業の存立が危ぶまれるというような事態は極力避けるべきだ、法案についても限定的に解釈できるような法律をつくっていこうという立場と、先ほど指摘させていただきましたように、もっと広く、国民の安全、安心のために、そういう社会をつくるために、この公益開示法案についても、やっと新しくできる法律をより積極的に有効に、そして健全な社会をつくっていく、そういうような考えでこういう開示法をつくり上げていくのか。その二つの価値基準があるとすれば、例えば政務官はどちらに立たれているんですか。

西川大臣政務官 やはり国民生活を私は優先すべきだと思います。そして、余り制限を加えることによりまして通報がしにくくなる、こういうことがないように心がけていきたい、こう思っております。

 私は以前、経済産業の政務官でありましたので、原子力のときのあのスパナの問題でありましたが、非常に残念に思いましたし、後になって出てきた話でありますけれども、あれは申告、こういう形でけりをつけてきましたけれども、やはり通報してもらうことによって、社会全体、国民の安心、安全が守れる、こういうことを優先してやっていきたい、こう思っております。

山内委員 よかったです。政務官のお話を聞いて、考える方向性については私と同じ立場かなと思って、これから、細かい点にわたるかもしれませんけれども、お話を伺いたいと思っています。

 政府案では、目的を、「国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資する」と規定しておりますが、これはちょっと、何かすごく概括的な表現なものですから、特に「社会経済の健全な発展」ということを標榜すると、企業側の目から見れば、企業の売り上げが順調に伸びるように発展させることにも読み込めるんですが、そういうことではないですね、大臣。

竹中国務大臣 経済の全体を担当する大臣としても、経済というのは、決して企業の側、生産の側ではなくて、これはまず、企業はもちろん必要でございますけれども、我々が健全に経済生活を営む、しっかりと消費の側で我々自身の行為を高めていくということがやはり主たる意味であるというふうに思っております。その意味では、決して、企業のためにこういうことを書いている、そういうような趣旨ではございません。

山内委員 私も、もしそういうふうに読むとすれば、この法律は抑制的にしか使われることがないだろうと思うものですから、念のためにお聞きしました。よかったと思っています。

 私は、民主党の修正案、まだ政府の方にお示ししていないかもしれませんけれども、民主党の修正案を一応取りまとめた者ですので、修正案の内容等も絡めて、これからお聞きすることにしたいと思います。

 まず第一点として、通報者として保護される者の範囲について確認をとっていきたいと思っています。

 目的規定の中で、「国民生活の安定及び社会経済の健全な発展」となっておりますけれども、通報対象たる事業者は、我が国にある外国企業も想定しているのでしょうか。そして、労働者としては、外国人労働者も保護の対象になるかどうか、この点をお伺いします。

永谷政府参考人 日本に参入しておる外資系企業についても当然この法律の対象になりますし、そこで働いている外国人労働者についても、それが労働者である以上は対象になるというふうに考えております。

山内委員 そうしますと、海外にある我が国の企業の支店、支社も事業者として想定している、海外にある我が国の企業が出資している合弁会社も事業者として想定している、そういうことになりますかね。

永谷政府参考人 海外に進出している日本企業についてのその労使関係、どういうふうになるのかということでありますけれども、それは現地での労働法制において縛られるというのが基本だろうと思います。

山内委員 もちろん、だから、海外にあって我が国の資本が入っていない会社に勤務する日本人労働者が公益通報した場合には、日本にある公益開示法では救えないということになるわけですか。

永谷政府参考人 海外に進出している日系企業が不祥事をやっているというのを、それ自体を国内に通報するというケースをお考えでありますか。そのケースですか。

 そういうケースであれば、仮にその従業員が日本の本社の方に通報をして、あるいは日本の行政機関とか外部に通報して、彼が本社から解雇を受けるとかいうようなことがもしあるとすれば、それは当然のことながら、前提として、会社がやっている不祥事というのが政令の中に対象になっているというのが前提でありますけれども、それは、そういうケースであれば、この法案の対象になり得る余地はあるというふうに思います。

山内委員 私たちの勉強会で考えているのに、下請事業者が、不正の目的ではなくて、親事業者、その役員、従業員、代理人その他の者について通報対象事実が生じた、あるいは生ずるおそれがあるということを親事業者、行政機関、外部通報先に通報することも保護すべきではないかと考えているのですが、この点についてはどうでしょうか。

永谷政府参考人 午前中の質疑からも同じような質問が出ているかと思います。取引事業者について、取引事業者を保護するということは事業者間の取引関係そのものに保護を加えるということになっていくんだろうと思いますので、何回も同じことを繰り返して恐縮でありますけれども、まさに取引自由の原則からそこは慎重に考えるべきではないかということであります。

 したがいまして、取引事業者が公益通報者ということになるというのはないというふうに考えております。

山内委員 例えば、親会社が完全一〇〇%子会社をつくっていて、その子会社の例えば下請事業者、こういう場合も、例えば親会社の……(発言する者あり)従業員じゃなくて、今、事業者の話をしておりますので。親会社のそういう通報事実について、内部通報、外部通報した場合、保護されませんか。

永谷政府参考人 子会社の事業者が親会社を訴えるわけですね、それで、その契約関係を切られるということですよね。その場合には、先ほど来申し上げていますように、今回のこの法案での対象とは考えていないということであります。

山内委員 では、後で、従業員の点についてまた同じような議論をさせていただきます。

 犯罪行為をなした、メンバーの一人としてかかわった本人が、つまり共犯者が通報する。その場合にも保護されるんでしょうか。

永谷政府参考人 具体的なケースというのはいろいろなケースがあるんだろうと思いますもので、その具体的なケースをきちっと見ないとなかなか判断できない部分はあろうかと思います。ただ、その上で、一般論として申し上げれば、犯罪行為に加担したからといって、その人が公益通報を理由とする保護の対象から外れるわけではないということだろうと思います。

 ただ、いずれにしましても、今回のこの法案では、犯罪行為への加担を理由とした解雇であるとか、あるいは他の不利益な取り扱いから保護するということではないというふうに思っております。

山内委員 つまり、例えば取締役と一緒に犯罪行為をした従業員が、従業員は共犯者ですよね、会社の不正行為を外部通報、内部通報するということも、雇用の関係があれば保護されるけれども、刑事事件とか逮捕はまた別だということですかね、今の話は。

永谷政府参考人 当然のことながら、その刑事免責制度につきましても、まさに刑事政策全般の見地から多面的に検討していかなきゃいけない問題だろうというふうに思っております。

山内委員 会社として、自分のところの従業員が、会社の業務の内容を知っていたり、あるいはのれん先なんかもたくさん持っていたのに、やめてライバル他社に行ったときに一番腹が立つと経営者はよく言われるんですけれども、こういう公益通報を同業他社のライバル会社に対して行った場合、これは保護の対象になりますか。

西川大臣政務官 その行為を同業他社に伝えたら、犯罪的なというか、国民に迷惑をかける部分は非常に効果あるように取り除かれるんでしょうね。しかしながら、私どもの法案の中では、第二条の第一項でありますけれども、「当該労務提供先の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある者」を除外しておる、こういう考え方でございます。同業他社に通報することにつきましては、今申し上げたとおりでありまして、保護の対象から外れる、こう考えております。

山内委員 金融庁に来ていただいていますので、公益通報とインサイダー取引の関係について伺います。

 既にあった犯罪事実や違法行為の事実を公益通報する直前に、通報者が企業の株式を大量に売り抜けた後に通報をする、これはインサイダー取引として証券取引法違反になりますか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 証券取引法は、百六十六条で、上場会社等の役員等の会社関係者または当該会社関係者から当該上場会社等の業務等に関する重要事実の伝達を受けた者が、その上場会社等の業務等に関する重要事実を知りながら、重要事実が公表される前に上場会社等の株式等の売買等を行うことを、違法な取引、これをインサイダー取引というふうに申しておりますが、ということで禁止をしているわけでございます。

 したがいまして、一般論で申し上げますと、特定の会社が上場会社等であって、証券取引法に定めるその重要事実に関する事実を知った会社関係者などが、その事実の公表前に株式を売りつける行為がインサイダー取引の規制の対象となるということでございますので、幾つかの要件、例えばその問題が重要事実であるのかどうか、あるいは、公表ということにつきましては、今の外部通報自体だけで公表ということになるのかどうか。一般的に言えば、公表というのは、例えば報道機関に対してそういった事実を公開するというようなことでございますので、そういうことのいろいろな要件を考える必要があるというふうに考えております。

山内委員 そうすると、外部通報あるいは内部通報をしようとした人間が、雇用関係のある労働者で、かつ会社の株式を持っていて、通報する直前、あるいは通報しても公にいろいろなところに話が広まっていく前に株を売り抜けても、労働者だと責めを負わなくていいということですか。

永谷政府参考人 今、山内先生おっしゃっている事例でございますけれども、そもそも、不正の利益を得る目的ということでございますので、今回の法案の対象外ということであります。

山内委員 いや、私が今金融庁に聞いたのは、取締役とかじゃなくて労働者の場合はどうなのかと聞いたんです。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど私、御説明の中に、会社関係者等がという主体を申し上げましたが、その会社関係者等の中には、上場会社の役員あるいは代理人、使用人その他の従業員も入るということでございます。

山内委員 わかりました。

 それで、また内閣府の方に戻るんですけれども、売り抜けた、あるいは売り抜けて高値で売却できた、そういう労働者は、不正の利益を得る目的がある者に当たるんですか、当たらないんですか。

永谷政府参考人 「不正の利益を得る目的」に当たるというふうに思います。

山内委員 株を持っている人は、安く買って高く売りたい人、特別な経営者でもなければそういう人がほとんどだと思うんですが、それは「不正の利益」に当たるんですか。

永谷政府参考人 人の経済行為として、今山内先生がおっしゃっているような行為というのは、ある意味では自然のことなのかもしれません。そこはそうかもしれませんが、この法律として公益通報として保護する対象としては、今おっしゃったような者というのは、この法律の中では考えていないということでございます。

山内委員 先ほどから役員の問題が出ておりますけれども、通報した際に保護される労働者の中には、当該事業者の取締役は含まれないのでしょうか。

西川大臣政務官 取締役など事業者の役員は、労働者と比べて重い忠実義務があると午前中にも申し上げました。みずから法令違反を是正すべき立場にあることから、公益通報者には含めておりません。

山内委員 取締役という名前がついていても、例えば取締役、三人必要なところ、二人は見つかったんだけれども、どうしてももう一人が見つからずに、従業員に、名前だけ貸してくれと、取締役の人数合わせのために従業員を取締役にした場合の、その取締役はどうなんでしょうか。

永谷政府参考人 名目的に取締役という名前はついているけれども、実態的には労働者であるというふうに認められるのであれば、その場合にはこの法律の対象になるんだろうと思います。

山内委員 そうすると、名目的である、あるいは実質的に経営に参画させていただいていないというようなことを主張、立証できれば、保護の道があるということですか。

永谷政府参考人 労働者は、この法律の中では、労働基準法上の労働者であるというふうに言っております。したがいまして、労働者であるということは、労働基準法の第九条に定義がございますけれども、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」ということで、その労働者であるということであれば対象になる。

山内委員 そういう名目的な取締役で保護されるような人もいるわけですが、取締役については、いわゆる経営側の立場でいわば自助努力をすべき側の人間なんだからこの法律の適用外だという理屈でいけば、取締役について、コンプライアンスというんですかね、それこそ自己責任を感じる人はいいんですけれども、感じない人もいるわけですから。

 例えば、民主党の中での勉強会で、取締役等が違法、不当な行為を最も発見しやすい立場にあることにかんがみて、これらの者についてコンプライアンス経営に努めるべきこと、通報対象事実を発見したときは誠実に対応すべきことなどを法案の中に書き込むべきだと。私たちはそういう結論に至ったんですが、大臣、どう思われますか。

竹中国務大臣 どのような形で今それを取りまとめられようとしておられますのか、まだ全部のことをちょっと把握しておりませんので、その部分だけで軽々にお答えする立場にはないと思っておりますが、基本的なこの法律の考え方というのは、やはり使用者、使用関係にある人が、使用関係にあるというのは、指揮命令の系統の中に入っていて、まさに使用される側、そういう立場にある人の立場をしっかり守ろうではないかということがこの法律の基本的な考え方になっております。委員の言われたように、まさに取締役として、当事者としてしっかりとその不正を正していただく立場にある方とは、その意味では、やはり守られるべきもの、守られるべき立場というのが違うのではないのかなと思います。

 いずれにしましても、委員が中心になっておまとめになっておられるものを見せていただきましたら、また、それはそれで私自身も勉強したいと思います。

山内委員 その他の通報対象者として保護されるべきではないかという議論の中で、株主も労働者のほかに含めるべきじゃないかという議論がありますが、これについてはどうですか。

永谷政府参考人 株主が当該会社の利害関係人であるということはおっしゃるとおりでありますけれども、ただ、株主が会社の違法行為等を通報したときに、その株主がこうむる被害というのは、ここで想定しているような解雇等の不利益をこうむるというのはあり得ないわけでありますので、株主については、この法律で対象にするというのは考えておりません。

山内委員 公務員も保護対象になっていますけれども、これはすべての公務員を含むのでしょうか。

永谷政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、今回のこの法案の中での「労働者」というのは、労働基準法において定める労働者であります。先ほど申し上げましたことの繰り返しになりますが、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」というふうに定義されております。したがいまして、公務員の中では、例えば大臣はこういう労働者には含まれないというふうに思われます。

山内委員 さて、先ほど下請事業者について議論をしたんですが、今度は従業員の関係で聞きます。

 親会社があって、一〇〇%子会社があって、一〇〇%子会社の従業員。この人は、まず、雇用関係は一〇〇%子会社としかありません。この従業員が親会社の不正行為を、例えば一〇〇%子会社の役員に対して内部通報する。これは保護されますか。

永谷政府参考人 今先生がおっしゃったケースというのは、一〇〇%子会社の従業員が、その親会社の不正行為を通報するというケースでありますね。

 そのときに、この親会社が、例えば仮にその一〇〇%子会社に言って、通報した従業員を解雇しろとかいうような形で解雇が仮に行われたとしたら、それは、そういう意味での保護の対象たり得るというふうに考えております。(山内委員「含まれる」と呼ぶ)はい。

山内委員 一〇〇%子会社の従業員が、一〇〇%子会社の不正行為を親会社に言うのは保護されますか。

今津委員長代理 永谷国民生活局長。言ってから訂正するのではなくて、少しじっくり考えて、しっかり答弁してください。

永谷政府参考人 その従業員が親会社を通報するわけですね。親会社の不祥事を通報する、それでもってその従業員が解雇されてしまう、自分の雇い先である子会社から解雇されてしまう、そのケースですね。その場合には、申しわけございません、先ほど私、間違えましたけれども、その保護の対象にはならないということであります。(山内委員「後のケースの方が」と呼ぶ)はい。

 最初、先生、親会社への通報というふうにおっしゃっていましたよね。親会社へその子会社の従業員が通報して、それで、その親会社が子会社に圧力をかけてその人をやめさせる、その場合には保護の対象になります。その場合であれば保護の対象になります。

 それから、先生おっしゃっているのは、その人が、従業員が、親会社の不祥事を子会社に通報するというケースですよね。その場合には、保護の対象にはならないですね。(山内委員「ならないんですか」と呼ぶ)はい。(発言する者あり)

山内委員 では、これは、私も速記録をもう一遍読んで、もし来週時間があれば、もう一遍確認答弁をとらせてもらいたいと思います。

 つまり、今、一〇〇%子会社の話をしましたけれども、結局、同一視できる場合に、四角四面とこう分けて考えられるかというような問題提起もさせてもらったんですよね。だけれども、同じようなことは、最初のころ議論をした、例えばそれが子会社の従業員じゃなくて今度は子会社の孫請とか下請とかそういうときには全く保護されません、なぜならば雇用関係、労働関係じゃなくて契約関係だからですというと、なかなかちょっと使い勝手が悪いんじゃないかなと思うんですよ。

 ですから公益通報の定義を、もちろん、公益通報は、労働者が行う公益通報として法案の概念に含めていく、これは当然のことなんですが、下請等の事業者の公益通報という概念をもう一つつくって、下請事業者についてそういう公益について資するような通報をした場合には保護していこうじゃないか、こういう方向性については、今後、政府の方で検討してもらえないものなんでしょうか。

永谷政府参考人 今回、お出ししております法律でありますけれども、審議会でいろんな意見が出てきた結果として、こういう形で取りまとめを行わさせていただいたものであります。

 今、おっしゃるように、例えば中小下請等の場合にどういうような通報関係になるのかというのは、実際上どういうような紛争というか、どういうような係争案件があるのかとか、そのあたりもまた見ながら、もし必要があればそういうようなことも、場合によったら必要に応じて検討することも必要になってくるんじゃないかと思います。

    〔今津委員長代理退席、委員長着席〕

山内委員 会計事務所の職員から、当該事業所を管理する会社の社員、警備会社の社員、清掃会社の社員など、あるときその事業所の違法事実を知るということはやっぱり考えられると思うんです。

 もちろん、保護すべき対象の範囲について、不確かなものになると。だから、どこかで歯どめはしなければいけないかもしれません。しかし、いろんな人たちが、もしその当該事業所の本当に国民の安全、安心な生活を脅かすことを知ったときにはできるだけ広く保護していこうという最初の大臣のお話からすれば、今私が述べたような話のそういう従業者の人たちについても、今後一つずつ、まだ労働基準法上の労働者とそれから公務員ということに限定しないで、もっと広く対象者を考えていく、検討していくというような動きについては、やってもらえますでしょうか。

竹中国務大臣 委員おっしゃいましたように、現実の取引関係、資本関係というのは、もう極めて複雑であるということだと思います。そうした中で、どこを対象にするのか、どこを対象にしないのかというのは、これは現実の問題の中で、やはり現実をまず直視する中で、しっかりと変えるべきところは変えていくということなんだと思います。

 我々としては、その意味では、何度も申し上げておりますけれども、非常にスムーズにスタートアップをさせて、その後、見直しの期間も定めて、必要なことはしっかりとその時点で見直していこうということではないかと思います。

 特に、今、資本関係についておっしゃいましたけれども、ここのところやはり持ち株会社というのは急にふえている。今後どのような事業形態が出てくるのか、株式会社が主流でありますけれども、新たなパートナーシップ、インベストメントファンドのようなものも、投資組合のようなものも出てくる。そうしたことはなかなか、事前に成文で想定される以上のことが現実問題として多々出てくるというのが世の中の現実でございますので、そうしたことにつきましては、スムーズにスタートアップをさせた後に、一定の見直し期間を経て、しっかりとやはり国民的な議論をして見直していくということなのだと思っております。

山内委員 それでは、通報者の範囲の問題については、このあたりでひとまず終わりたいと思います。

 ただ、先ほど答弁が少し混乱をしましたので、政府の方でも整理してもらうために、私が最初に述べたケースをケース一とか、二番目をケース二とかして、表にしていただいて、わかりやすいものを理事会ででも出していただけるような方法を御検討願えますでしょうか、委員長。

山本委員長 理事会において協議させていただきたいと思います。

山内委員 ありがとうございます。

 次に、通報対象についての論点に入らせていただきます。

 国民生活審議会の意見書では、通報対象が法令違反行為とされていたにもかかわらず、政府案になったら、別表記載の法令のうち最終的に罰則で担保される規定違反に限定されています。

 これは、審議会の意見を尊重しないという点もですが、より何か狭く法律をつくってしまったということで腑に落ちないのですが、この点についての御見解を伺います。

永谷政府参考人 罰則のついていない法令等も通報の対象にするかどうかという話でありますけれども、これは、午前中も申し上げましたけれども、その構成要件等も非常に漠としておりますし、あるいは罰則をつけてでもそれを担保するんだという社会的なコンセンサスもないということでありますので、今回のこの制度設計に当たっては、そういう部分というのは対象外に考えております。

山内委員 国民生活審議会の意見書では対象法令も四百八十四本あったのに、七法と政令指定の法律というように、かなり限定されて考えられるようです。これも私としては腑に落ちないのですが、御見解を伺います。

永谷政府参考人 今、山内先生、国民生活審議会の報告書で四百数十本の法令を対象にするように書いてあるというふうにおっしゃいましたけれども、そこはそうではございません。(山内委員「いや、もっと説明してください」と呼ぶ)

 通報の対象の法令をどういうふうに決めていくのかというのは、そこは、私ども内部あるいは国生審の場でもいろいろ議論を重ねてきております。ある一時期において、今先生がおっしゃいましたように、四百数十本の法令を対象にしようかというような議論をしたこともありますが、それが国生審の場でそういう形でもって決められたということでは、そこはそうではありません。

山内委員 だとしたら、例えばAという法律があって、Bという法律はAという法律と同じほど違法性があると世の中で認知されている。ところが、政令の中にAという法律しか規定されなくて、しかし実際は、Bという事案について通報した人は、同じような利益状況であるにもかかわらず、政令に書き込まれていないからということで全く保護されないというのは酷ではないですか。

永谷政府参考人 いずれにしても、それは法律で定めようと政令で定めようと効果は同じでありますので、そのAという法律が今の段階で入って、Bという法律が今の段階で入っていないからということで不合理ということにはならない。

 つまり、私どもとして、政令の定め方として、先ほど来おっしゃっていますような四百数十本というのがそのプロセスでは出てきておりますけれども、そういうものを一つのメルクマールにしまして、その中で、一つ一つの法律が国民生活にどういう影響を及ぼすのかというのを精査していこう。精査していった結果がどうなるかというのは、また別途お示しする機会もあろうかと思います。

山内委員 とにかく、政令でどれだけのものを書き込まれようと、絶対に漏れがないと言えますか。

永谷政府参考人 絶対に漏れがないと言えるかというお問い合わせですけれども、一応、ある種のメルクマールを幾つか置いた上で、この法律は入る、この法律は入らないというふうな作業をこれからやるわけですから、それは、私ども、もちろん自分たちで原案はつくりますけれども、そのメルクマールに照らして、漏れがないような形で作業を進めていきたいというふうに思っております。

山内委員 そんな、二千もある法律の中で、何本書き込もうかということを一々やるよりも、例えば、公益通報の対象の中には、犯罪行為には限定しないんだと。法令違反一般、本当に国民の生活に、あるいは生命、身体に重大な影響を与えるような場合には、実質的な公益侵害にもっともっと拡大して、通報対象事実として保護していく。

 だから、もう政令とか、附則で七つ書いたり政令に落とし込むんじゃなくて、もっと、そもそも法案の中の「通報対象事実」について大きくとらえていけばそんな漏れもないし、少なくとも国生審で四百九十本もの法律を一つずつやったり、多分原口さんなんか一つの法律ごとに質疑したいかもしれませんよね。ですから、そういうようなことよりも、もっと法案の中で広く救っていくんだ、そういうような考え方になられませんか。

永谷政府参考人 世の中にある当不当の問題とか、いろんな問題があるんだろうと思うんですね。それすべてを一本の法律でもって対応していくというのは、それは、そういうことを考えるというのは余りにも現実的ではないし、適切でもないんじゃないかなという気がいたします。

 いずれにしても、これは事業者の事業活動あるいは消費者のいろんな物の考え方とか、そういう部分に非常に大きな影響を及ぼす要素があるものですから、とりあえずは要件をとにかく明確にする。公益通報というのはこういう通報をすれば保護されるのだよね、そこの予測可能性を極力高める形で制度を導入して、スタートさせていただければというのが私どもの基本的な考え方であります。

山内委員 質疑時間がなくなりましたので、残念ですけれども、きょうのところは最後の質問にさせてもらいますが、もし、今局長がおっしゃったように、自分たちも一生懸命漏れがないようにつくっていきますということをもし百歩譲って認めるとしたときに、この法律についても入れるべきじゃないかと、例えばいろんな団体の方、あるいは我々議員かもしれない、そういうことが、言ったらすぐ対応してもらえるような仕組みというか、聞く耳は持ってもらえるんでしょうね。これは大臣にお願いできますか。

竹中国務大臣 政令をしっかりとつくると思って、委員がおっしゃったように、これは入っているけれどもこれは入っていないのはおかしいじゃないかというふうな見方が国民の中で広がらないように、しっかりつくり込みをするという責任を政府は負っていると思います。

 その意味で、ここの場で議論をさせていただいたことは当然非常に重要な参考にさせていただきますし、また、我々が最終的に政令を決めるに当たりましては、パブリックコメントに付して、そのパブリックコメントの中で広く国民の皆様の意見を反映していただきたいというふうに思っております。

山内委員 最初にお話ししましたように、やっぱり国民はこの日本という国の中で安心して生活したいわけですから、特に危険な情報については明らかにしてもらいたいし、是正措置もすぐに会社にはとってもらいたい。特に、女性や子供の被害のことを思えば、この法律の制定については、私たちは本当にいい法案なら、いい法案で私たちが修正をお願いする部分について政府に採用を検討願えれば、私たちはこの法案についてぜひスタートを切らせたいと思っておりますので、後ほど、大臣、政務官にもお渡しさせていただきます。よろしく御検討をお願いします。

 きょうは終わります。ありがとうございました。

山本委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 民主党の市村でございます。これからお時間をいただきまして質問させていただきます。

 まず、どういう法律でもそうですが、少なくとも今よりはよくなるだろうということを当然のごとく考えて法律はつくられるべきものでありまして、今回のこの公益通報者保護法案というのが、私もいろいろ勉強させていただく中で、本当に今よりよくなるんだろうかということを素朴に、率直に思うところであります。

 例えば、ちょっとお聞きしたいんですが、今、一般法理による保護があるということで、昨年より労働基準法が改正され、十八条の二で解雇権の濫用をしてはいけないということであるんですが、これまで、お聞きしますところによりますと、十数件の裁判が行われて、大体勝ち負けは半々だというわけでございます。

 具体的に、では、この公益通報者保護法が成立した場合、例えば今よりも通報者が保護されて、より裁判でも勝てるということが想定されるんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。できれば大臣と、私、議論させていただきたいと思います。

竹中国務大臣 どのように裁判が起こってその結果がどうなるかというのをもちろんあらかじめ申し上げることは難しいわけでありますけれども、市村議員、冒頭におっしゃったように、今よりよくする、まさに我々はその思いで法律をつくっているつもりでございます。

 重ねて申し上げますけれども、一般法理に基づく保護というのは、解雇権の濫用の禁止等々、現実に存在している。しかし、今回の法律によって、それに加えて、分野を明記した上で、そうした分野については労働者が不当な扱いを受けることがないように明記して、労働者にとってもその予見可能性を高め、またその立場を明確にしたつもりでございますので、今の法理の上に乗ってさらにそれを明確化しているという意味で、これはやはり今よりも明らかによくなっていく。

 そうした意味では、もちろん裁判がたくさん起こることがいいことではございません、こういう制度があるからまたいろいろな事業者に対する抑止力になるということも重要な効果でございましょうから、そういうことも含めて、これはやはりよい方向に間違いなく向かっていくというふうに思っているところでございます。

市村委員 私ももちろん裁判がどんどん起こることを望んでいないんですが、具体的にはやはり裁判になると思います。現実に、やはり具体的に、解雇が行われたもしくは不当な扱いを受けたということによりまして法律の効果が出てくるわけでございますね。もしそれがなかったら法律の効果というのは、もちろん別のこともあるかもしれないけれども、少なくとも明確には裁判であらわれてくるわけであります。

 裁判で訴えて、しかもこの法律を見ていると非常に、労働者側、いわゆる保護の対象になるべき労働者がかなり、いや例えばこういう相当な理由があったみたいなことを、しかも、生じようとしていた、非常に緊急的な事態であったということをある種労働者が証明しなければならないということでありまして、そうしたことが行われたときに本当にこの法律がちゃんと守ってくれるのかどうかということがやはり大切な効果だと思っておるんです。

 その点で、しばらく具体的に、この公益通報者保護法の中身について少し時間をかけてお聞かせいただきたい。

 例えば、保護ということなんですが、解雇権の濫用は今労働基準法で定められているけれども、では、この法律による保護というのはそれを超えたものでなければならないはずですけれども、具体的には、一般解雇権の濫用と、今までとどう違うのかということを教えていただけますでしょうか。

永谷政府参考人 労働基準法の十八条の二で解雇権濫用の法理というのが定められております。これは先生御案内のとおりだと思いますけれども、要件を見ますと、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、」「無効とする。」という書き方になっております。そうしますと、この法理から、例えば通報を契機として解雇されちゃったとかいうような問題が起こったときの、ではどこにどういうふうなことを申し立てればいいかとか、そのあたりの手続的な問題も含めて明確でないわけですね。ここから一義的には出てこない。

 したがって、今回、この新しい法律で我々が何を意図したかというのは、まさに、こういう通報であれば公益通報ということで保護される、そこを明確にする、そこの予見可能性を高めるという形で制度設計をさせていただいたということであります。

市村委員 その先の公益通報のことにつきましては後ほどまた質問させていただきますが、まずもって、私は、保護という観点において、この解雇権濫用を防止するという意味での保護されている対象と、今回の公益通報で保護されているというものはどう違うのかということをお聞きしたかったんです。

永谷政府参考人 基本的に、今回のこの法律で公益通報というふうに認められたときの効果でありますけれども、これはまさに労使関係に対する民事ルールという形で定められているということであります。通報を理由とした解雇がなされたらそれは無効です、通報を理由とした不利益取り扱いというのは禁止します、あと、派遣の場合に通報を理由にして派遣契約が取り消されたらそれは無効ですということで、民事ルールを設定しているということであります。

 民事ルールでありますので、罰則を設けて担保するとか、あるいは行政が何らかの措置でそれを担保するということは全くやっていない。民事ルールでありますので、あくまで、そこをめぐって係争が起こったらそれは裁判の場で決着してください、そういう意味での非常にやわらかなスキームになっております。

市村委員 私が今お聞きしていることにお答えいただいていないと思います。私がお聞きしているのは、この公益通報者保護法で保護される場合と一般法理による保護というのは具体的にどう違うか教えていただきたいんですね。この公益通報者保護法ができたら一般法理では保護されない者がちゃんと保護されるんだということがあるかどうかなんです。

永谷政府参考人 一般法理による解雇無効も、今回のこの法律によります解雇の無効も、無効という意味では同じであります。

 何回も申し上げていますように、一般法理でもって、通報の場合にどういう通報をどこにすればいいか、そういうのが全然出てこないわけですね。そこを明確にしたという意味が非常に大きいんだろうと思います。

市村委員 だから、通報のあり方は後でまた議論します。それは議論しますから。まず、保護として、今までよりも保護されるようになるのかどうかなんです。少なくとも、一般法理による保護と、この公益通報者保護法案における保護というのは、これができたためにより保護は高まるということになるのかどうかをお聞きしたいんです。

永谷政府参考人 要件を明確に設定しておりまして、その要件に合致する通報であれば保護されるというのは明らかでありますので、そういう意味での保護のレベルというのは、ない場合に比べたら明らかに上がっているというふうに思います。

市村委員 いや、だから、今、要件というのは、より通報の方の議論なんですね。私は、要件とか通報のあり方は別として、効果として。保護されるときに、保護というものを言っているわけですね、一般法理による保護があるにもかかわらず、今度は公益通報者を保護しようという法律をつくっているわけですから、私たちが普通に素直に考えたら、そうか、一般法理ではとても保護されないんだから、今度はこれができればもっと保護していただけるんだろう、こう普通感じるんです。だから、どう違うのかということをお聞きしているんです。

 この一般法理による保護ではだめだったのなら、さっき一番最初に申し上げたように、よりよくしていくということですから、一般法理による保護ではだめだということを考えて恐らくこうだというふうに考えたのですから、そこはどういうことだとお聞きしているんです。

永谷政府参考人 先ほど判例についてのお話が出ておりましたけれども、一般法理でもってこの手のものを判断するよりも明確になりますよね。要は、こういう通報であれば保護されるんだというのが明確になるという意味で……

市村委員 委員長、よろしいですか。

山本委員長 市村君。

市村委員 私は通報のことは聞いていないんです。通報のことは後で議論します。こういう通報の場合にどうだということは議論しますけれども、だから、単純なことを聞いているんです。一般法理による保護以上の保護はされるんですかということを聞いているんです、今。

永谷政府参考人 解雇無効ということでは一般法理と同じでありますけれども、今回、不利益取り扱いを禁止している、あるいは派遣労働の無効というのも入れている。そういう意味では、そこの部分は追加になっております。

市村委員 今、二つ、不利益取り扱いの保護とかいうことが入ってきました。

 では、それはこの一般法理による保護ではできないことだったんでしょうか。今二つの例を出されましたけれども、一般法理による保護ではできないことなんですか、今改めて二つつけ加えられたことは。

永谷政府参考人 解雇権濫用の一般法理の中では、不利益取り扱いの禁止というのは明示的にはない。ただ、現実に、いろいろな係争になって裁判の場に持ち出されれば、それはそのときの、まさに信義誠実の原則とか、そういうような一般法理でもって裁かれる、結果的にそれが救われるというのは今までもあったということだろうと思います。

市村委員 まさにそのことを私はお聞きしたかったわけでございます。

 法律というものなんですけれども、やはりこれは社会常識の範囲を逸脱してはならないことだと思います。ですから、今、実際に民法であるわけですね。民法であって、ある種、今裁判に行けばこっちの方が広く判断されると私は思っているんです。では、それよりも、今民法であいまいになっていることよりも、今新しく法律をつくった方がより保護されるんだということが明確になるのであれば、これは法律をつくる意味があると思われるんですね。

 では、今度は保護じゃなくて通報ということでいきますが、まさにここが私は本当に、この法律の話をいろいろお聞きしたり読んでいたりして、こんな手続をしなきゃいけないのかなと思うわけです。

 つまり、同じ効果を得られる、さっき一番最初に議論させていただきましたが、ほとんど今までの一般法理と変わらない保護を受けるためにこんなややこしい手続を踏まなきゃいけないのかなというところが本当に素朴な印象であります。

 これは一般的なことですので竹中大臣に今度はお聞きしたいんですが、例えば、大臣が、何かどうもこれはおかしい、自分が勤めている会社の上層部が明らかに法令違反を犯しているというときに、まず竹中大臣だったらどう行動されますか、これを見たときに。

竹中国務大臣 一般的に申し上げるのはなかなか難しいのかなと思います。その問題の緊要性、違法性がどのぐらい強いか、その被害がどれだけ大きいか等々なんだと思います。

 しかし、先ほどから一般法理の話がいろいろ出ておりますけれども、一般法理というのは、私は法律の専門家ではありませんが、基本的には、不当なことをしてはいけないんだ、これはもう一般法理の根底にある問題だと思うんですね。

 これは不当だというふうな事実に遭った場合に、しかし、私が今、一方でこのことをここに言ったらどういう私自身の責任が問われるのだろうかなと、やはりそういうことは当然考えると思いますね。

 その意味では、非常に基準がクリアになっていれば、私は、その基準というものを活用して、その基準の範囲でしっかりと、これはやはりこうするのが私としての務めである、社会の一員としてやるべきことはやらなきゃいけない。しかし一方で、立ち入って何かやると別の何か権益を侵してしまうかもしれない。そうした場合に、一つのガイドライン的に条件が示されて、その上で、こういうものについては自分の立場は守られるんだというような、その範囲が明示されていれば、明らかに私の行動はしやすくなるということなのだと思います。

 いずれにしても、当然のことながら、要するに、不正に遭遇したときには、社会の一員として自分はどうすべきだということをしっかりと考えるんだと思います。その中で、自分の行動がとりやすいようなガイドラインがあると、これはやはり非常にありがたい。素朴に、一市民として、私もそのように思います。

市村委員 私ももちろん、竹中大臣と同じように、そういうふうに思うんです。

 では、その立場でこの公益通報者保護法を見たときに、私も、だから、いや、そうかと。ガイドラインが明確になれば、例えばこんなことをやったら解雇されるだろうなという覚悟でやるわけですね、しかし、この手続に沿えばそういうことは守られているということであれば、それはありがたいなとは思うんですが、どうもこの法律を見ていて、本当にこれが私たちのいわゆる常識にかなうようなガイドラインなのかなというのが非常に疑問なんです。

 例えば、民法だと、今、非常にあいまいなゆえに、何でも一応は議論の対象になると思います、裁判のときに。最後は社会常識的な判断で、裁判長によってはいろいろ判断が分かれるかもしれないけれども、さすがにこれは社会常識的にひどい話だ、これは確かに通報した人の方が正しいということで多分勝っていると思うんですね。いわゆる解雇権の濫用をしてはいけないということも明確になっていますから、それが理由で解雇してはいけないということでなってきていますから。

 それにもかかわらず、今これをつくろうとしていて、さて、これを読みます。

 まず、これはいただいた資料ですけれども、ここに「事業者」ということで、この法律に従いますと、意図が明確なんですね、この法律というのは。まず内部通報してくださいということなわけです、これはどう考えても。まず内部通報してくださいということなんですね。

 ちょっとお聞きしたいんですが、この資料によると、事業者の、何かいかにも上司的な人が腕を組んで聞こうとしているような絵がここに出ているんですけれども、内部通報をするといっても、具体的に一体どこに行くんでしょうか。まず、通報者はどこに行けばいいんでしょうか。

永谷政府参考人 この議論が始まりまして、最近、会社や企業では、ヘルプライン、相談窓口を設ける動きというのが非常に強まっております。したがいまして、内部に通報するときには、そういうヘルプラインに通報する。あるいは、ヘルプラインがないような場合には、上司でありますとか、あるいは秘密性を担保するという意味でしかるべきそういう担当の人に通報するとか、そういうようなことになるんだろうと思います。

市村委員 この守られる場合というのは、これは法令違反に限られていますよね。ちょっと確認です、お願いします。

永谷政府参考人 事業者がやる犯罪行為と法令違反行為を従業員が通報するというスキームであります。

市村委員 これは私の全く素朴な疑問なんですが、法令違反とか犯罪行為みたいな、これは、上司に言うんじゃなくて、警察に行くんじゃないでしょうか。

永谷政府参考人 先ほど先生、制度として内部通報が前置みたいなことを言われましたけれども、内部通報を前置しているということではございません。通報先としては、内部、あるいは今おっしゃったような行政機関、それから外部というふうに通報先を設けておりまして、その通報先に応じて公益通報と認められる要件を加重していくというような構成にしております。

市村委員 いや、だから、この法律は非常に狭いんですよね、通報して保護される範囲が。犯罪とか刑事罰に係る法令違反とかに限られているわけですね。しかし、それというのは、そもそも法令違反、刑罰を受ける行為なわけですから、それは内部通報じゃなくて、やはり問題なわけで、普通だったら、普通の常識的には、悪いことをしているのなら警察に行くというふうにとるのが一般常識的なんです。

 ということは、警察に行かないで内部通報して、それですんなり解決してしまったら、つまりこれは刑罰を受ける違法行為をもみ消すということになるんですか。いや、もみ消しをしてもいいということなんでしょうか、これは。

永谷政府参考人 もみ消しをしていいなんというつもりは毛頭ございません。それは、内部に必ず通報しなきゃいけないということではなくて、外部通報の要件が満足されれば、即外部にも出し得る、そういう構成にしてございます。

市村委員 ですから、いわゆる刑罰を伴う法令違反なわけですよね。それで、内部通告したら解決されてしまったということなわけですね。だけれども、本当であれば、刑罰を伴うような法令違反であれば、これは明らかに外に出して、普通、一般常識的には、警察に行って、おかしいですよ、大変大きな問題がありますよというふうに、やはり警察になるんじゃないでしょうか。

 だから、それをしないで、結局、では内部で、それは内々にしなさいよということを、奨励するとまでは言いませんけれども、結局そういうことをやってもいいということになるんでしょうか。

永谷政府参考人 当不当にかかわるような問題をこのスキームに持ち込むというのは、制度として物すごく透明性に欠けることになりますよね。だって、当不当にかかわる問題というのは、人によって何が不当であるかというのは全く違うわけです。そうしますと、ありとあらゆることがこのスキームの中に持ち込まれてくる可能性があるということであります。したがいまして、制度として一番必要最低限の透明性を確保するということに最大の意を用いているということであります。

市村委員 いや、だから、もし当不当というような、そういう大きな概念でここは保護されると。そうした当不当を判断できるような、不当だというようなこと、つまり法令違反ではなくて不当なんだということでこれを通報した場合に保護されるという法律ならば、僕は今の局長の答弁についてはなるほどなと思うんです。私もそれだったら聞きません、こんな質問は。けれども、これは明らかに刑罰を伴う犯罪行為を対象にしているとおっしゃるから、なっているから、それは、常識的には、普通は、こんなことをやっていますよと警察に行くのが我々国民の義務じゃないでしょうかということを私は申し上げているんです、そう思っているんです。

 当不当だったら、広い範囲になったら、それは、犯罪行為じゃないから、犯罪行為じゃないけれどもこれはおかしいな、社会的にちょっとおかしいなというのであれば、別に警察に行かなくても、上司か何かに言って、これはどうも社会的におかしいと思います、やはりこういうことはやらない方が会社のためになると思いますということならまだわかるんですよ。また、その生じるおそれがある場合は警察に行かなくてもいいわけです。

 ただ、生じている場合も入っているわけです、これは。生じていたら、これはもう、もはや内部通告どころか、外部通告どころか、明らかに刑罰を伴う法令違反というのは、まあ民事の場合は別です、民事の場合は。しかし、刑事罰を伴う場合であれば、当然警察に行くのが、常識的に、我々の常識は、国民の義務として。

 では、警察へ行かなくていいです、内々に話をして、もみ消しと言ったら失礼なのであれば、内々に話をして穏便にやったらどうですか、こういうことを言っている法律なんでしょうか、これは。

永谷政府参考人 もみ消すとかなんとかということは毛頭ないということであります。

 この法律自体、通報を促進することを目的としているんじゃなくて、違法行為が放置されて、それが人の生命、身体、財産に影響を及ぼす、そういう事態を解消するというのが直接的な、基本的な目的であります。

 したがいまして、では、そういう違法状態を除去できる人はだれかというふうに考えますと、会社の社長であり、取締役とかそういうような方々であり、あるいは監督権限のある行政官庁ということになっていくんだろうと思います。そういう意味で、そこへの通報というのは要件を軽くしてあるということであります。

市村委員 であれば、これは法律名が違うんじゃないでしょうか。ということは、この法律は、公益通報者を保護する法律ではなくて、事前に、何と言いますか、社会的不正が行われているものが発覚する前にと言ったらいわゆるマイナスな取り上げ方になるかもしれないけれども、未然に防止をしなさいという法律であって、これはむしろ、通報者を保護する法律ではなくて、事業者を保護する法律ではないかというふうに今私は局長の答弁を聞いていて思ったんですが、いかがですか。

永谷政府参考人 事業者サイドからも、この対象になっております法令というのはきちっと遵守しなきゃいけないんだなと、そういう意味での予測可能性というのは高まる、そこは否定しませんけれども、別に、まさにその通報者をもとりあえずは一義的には保護するという形で、企業経営に対して、その従業員まで含めて常にだれかの目が注がれているということでもって事業者の法令遵守を担保していく、そういうようなことを目指しているということでございます。

市村委員 先ほどの答弁においては、目的が実は違うというようなことが、ちょっと私も後で議事録を精査したいんですが、という話だったと思うので、では、私は、法律名が違うのではないかなというふうに。けれども、もしかしたら今はまた新たに、いや、保護は一義的な目的であるというふうに言い直されましたけれども、どっちなんですか、これは。

 公益通報者を保護するという法律だというから、僕はいろいろ質問し、疑問点を明らかにしようとしているわけなんです。いや、実はそうじゃないんだ、目的が実はそうじゃないとさっきおっしゃったので、それならば法律名が違うんじゃないですかということを申し上げたんですけれども。

永谷政府参考人 法案の第一条に書いてございますけれども、「公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令の規定の遵守を」図る。「もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資する」と。

市村委員 当然その法律の目的を読んで質問していますので、そういうことをまたここで読み返していただくことじゃなくて、私は、まさに議論をやりたいとずっとこの内閣委では常々言っておりますから。

 だから、先ほど局長さんが、いや、実は目的が違うんだということを、何か私の記憶だと聞いた。私の耳がおかしかったら後で御訂正いただきたいんですが。違うとおっしゃったから、それならば、何だ、私が今勉強してきて質問していることは、では違うんだったら違うスキームでちゃんとした法律をつくってやった方がいいんじゃないかということで思っているんです。

 これ、どうなんでしょうかね。だから、目的は今の、だから私は当然その目的を読んで、ああ、そういう目的なんだな、では中身を見てみたら、どうもそれはという思いで質問しているんですけれども。

 ちょっと明確に、もう一回。目的は何ですか、この法律の目的は。

永谷政府参考人 目的は、通報者の保護と、事業者の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令の規定の遵守ということであります。

市村委員 えらい根本的なところでひっかかっていますので、本当はいろいろ具体的に質問したいんですが、どうなんでしょうか。では、まあ、行きます。

 それで、私先ほどから申し上げていますが、結局、内部通報をまず一義的に、これを見ると、大体、内部通報をまずやりなさいというふうになっていますよね。条件が違うわけです、内部通報にする場合と、行政機関に行く場合と、いわゆる外部通報と言われるものに対して、要件が違うわけですから、どう見てもこれは、まず内部通報をしなさいということを制度的、政策的に誘導している法律だということになりますよね。だって、外部通報に行く場合の保護される要件には、まず内部通報したことを前提として……(発言する者あり)違うんですか。

 では、ちょっと教えてください。私の理解が正しくないということなので。つまり、すぐに外部通報はできるんですね、内部通報しなくて。

永谷政府参考人 先ほど来申し上げていますけれども、この公益通報でございますけれども、事業者内部に最初に通報しなければならないものではございません。真実相当性を満たす場合であれば行政機関に通報できますし、あるいは、真実相当性に加えて、内部通報では証拠隠滅のおそれがあるというような場合には、事業者外部に最初から出すことが可能であります。

市村委員 ということは、要するに、一、二、三と外部通報する場合の要件がありますけれども、これは別に、一、二、三すべてを満たすんじゃなくて、一、二、三いずれかに該当すればいいということになっているわけですか。確認です。お願いします。

永谷政府参考人 不正な目的の通報でないという要件と、それから通報内容に真実相当性があるという要件と、それから一定の要件ということで、内部通報だったら証拠隠滅されるおそれがあるとか、あるいは二十日たっても握りつぶされているとか、あるいは人の生命、身体への危害が発生する差し迫った危機がある、人の生命、身体への危害が発生する場合というような場合には外部通報。その三つ。(市村委員「いずれかに」と呼ぶ)その三点目が幾つか要件、五点あるんですけれども、そのうちのいずれかを満足すればできる、一、二、プラス、その五つのうちの一つ。

市村委員 待ってください、すると、もう単純にお聞きします。かつなんですか、またはなんですか、これは。一かつ二かつ三なのか、一または二または三なのか、どれなんですか。

永谷政府参考人 一かつ二かつ三であります。一かつ二かつ三、それで、三の中が幾つかある。

市村委員 かつということは、全部、一から三の要件を満たせばということですよね。では、やはり私が事前に聞いたのと同じなんです。

 ということは、やはり一かつ二かつ三なんだから、内部通報の場合は不正の目的の通報でないことだけでいいんですよ、ところが外部通報の場合はそれにプラス。不正の目的の通報でないこと、かつ通報内容に真実相当性があること、かつ一定の要件、すなわち云々かんぬんを満たすこと、こうなっているわけですね。

 となると、やはりこれを素直に読めば、外部通報する場合、例えば報道機関や消費者団体等に行く場合は、まず、内部通報では証拠隠滅のおそれがある場合、内部通報後二十日以内に調査を行う旨の通知がない場合ということは、つまり、内部通報を前提としているわけですから、まず内部通報がないとだめだということですよね。確認です、大臣にお願いします。

竹中国務大臣 三つのパターンに関して要件が違うというのは、まず御理解賜っていると思います。内部の場合と行政機関の場合と、それと第三者、報道機関等々の場合は、求められる要件、リクワイアメントが違っている。しかしそれは、必ずしも一を、まず内部通報を、内部に対して通報しないと外部に対して通報できないということではないということです。

 例えば、私がある時点でぱっといろいろなことを知った。そのときに、その初めて知った時点でこの一、二、三を満たしていれば、別に最初の内部をやらなくても、いきなり報道機関に行くことができるわけです。

 これは、当然のことながら、どこに行くかによってそのリクワイアメントに差を設けておりますけれども、それが前提条件になる、一のプロセスを経ることが二、三の前提条件になるということではありません。これはいきなり、その場に応じて、緊急に対応する必要があるときは対応していただければいい、そういう趣旨であります。

市村委員 すなわち、ここでいけば、内部通報では証拠隠滅のおそれがある場合という場合は別に内部通報を前提とはしていませんので、そういうことで一、二、三ということだと思います。

 いずれにしましても、何でこの要件を分ける必要があるのかというのが非常に疑問なんです。そのときに通報しようとする者がどこに行くかというのは、そのときの判断にした方がいいわけですね。内部でよければ内部に行くし、外部なら外部に行くし、行政機関がよければ行政機関に行くということであって、それについては別に要件に区別をつける必要はないはずなんですね。なぜこういう要件にしているか。

 要件を課しているということは、どうしても政策誘導的に、まず内部通報をしなさいね、その次には行政機関ですね、その次にはいわゆる報道機関や消費者団体ですねというようなことが、やはり素直に読めばそのようにとるわけですね、とられるわけですね。何でこんな、要件が違っているのか。私はやはり要件は等しくすべきだと思うんですが、どうですか。

永谷政府参考人 出てきます通報がすべて善意できちんとした通報であれば全く何にも問題ないんですけれども、現実的には、いろいろな悪意に基づく通報というのもあり得るということであります。

 まさに私どもは、今回、この制度設計に当たりましては、事実に反する通報が事業者の外に出ていく、それによって、こういう御時世ですから、事業者が風評被害を受けるということも他方では考えられるということであります。そういうことを配慮して、この法案では、まさに、法令違反を通報することによる公益の実現と、それから事業者の正当な利益の保護の、そのバランスを通報の保護要件に差を設ける形で図っているということであります。

市村委員 私、聞けば聞くほど、この法律はやはり事業者を保護する法律じゃないかということを思ってくるんですよ。聞けば聞くほど。

 だからさっき、あえて質問を続けていますけれども、これは公益通報者保護法ではなくて、法令違反を起こそうとしている、もしくは起こしている事業者を保護する法律じゃないか。言いかえた方がよっぽど素直に、ああ、なるほどなと。そっちの方が風評被害が起きないから助かるだろうし、社会的コストも低いだろうからいいのかなというようなもし説明だったら、ああ、なるほど、そういうことですかと一瞬うなずきますけれども、やはり法令違反はだめですよねというふうに、また思い返してそういうふうに言いたくなるようなことになるんですけれども。本当にお聞きをすればするほど、先ほどから局長の答弁だと、通報者の保護よりも、事業者が何かメリットがあるようなことばかりしかおっしゃらないんですね。

 ちょっとまた質問を続けますが、だんだん疑問が増してきながらの質問になりますので、質問する意味、これを続けて意味があるだろうかというのが本当はあるんですが。

 いずれにしても、通報の区別をつけているわけです。これは何でなんでしょうか。内部通報と行政機関への通報と報道機関等外部通報というのは、なぜこれは、どういう理由があってこうやって要件を違えているんでしょうか。

永谷政府参考人 内部への通報であれば、その通報の中身が外に出ていくというのは考えられないですよね。それから、行政機関に対する通報ということであれば、行政機関は守秘義務を負っていますので、その通報された中身が外に漏れるということはない。したがって、風評被害が生ずるおそれはない。ただ、それ以外の、全くの外部に出すということでありますと、先ほど申し上げましたように、まさに風評被害等が出てくる可能性がある。そこのバランスを図る意味で、こういう形で保護要件に差異を設けているということであります。

西川大臣政務官 議論の中でなかなか説明しにくかったので、説明が不十分かと思いますが、まさに起きてしまった犯罪行為、それから今起きておって続いているもの、またこれから起きそうなもの、こういう状況はたくさんケースがあると思うんですね。そのときに、これから起きようかなという予測がされるものが、外部に言ったらそこでとまるかというと、その保証もないと私は思うんです。

 そういう意味で、内部の方がむしろとめやすい、こういうことを考えていただければと思うんです。とまることによって、通報した人も守りますけれども、企業は大きな損害を出してしまってからやるわけでありませんので、事前ですから、損失は少なくて済む、結果的に企業も守られる、こういうことになろうかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

市村委員 だから、私は、そういう趣旨の法律であれば、その趣旨の法律でまたつくられればいいのじゃないかなと思うんです、そういう趣旨であれば。

 ただ、この法律は、例えばイギリスなんかの公益開示法、公益情報開示法を参考にしてつくられたと私は説明を受けています。けれども、今の話だと公益情報開示法の趣旨とは全然違う話でありまして。それはそれで私は否定しません。風評被害が起こる前に、もっと企業内部で、そうしたおそれがある、まさに生じようとしている、おそれがあるという段階でそういう情報が、企業だと上司が言うことははいと言わざるを得ない、なかなか怖くて言えない。しかしながら、勇気を奮って。起こっていたらまだ言いやすいんです、はっきり言えば。こんな、起こっているじゃないかと言えるから。しかし、起ころうとしている、またおそれがある段階ほど怖いわけですね。何言っているんだ、君はと。うちの会社をそんなことで批判するつもりなのかというようなことが言われるから、怖くて言えないですよね。

 だから、まさに今おっしゃられた趣旨のことであれば、また全然違う法律の趣旨であって、また違う法律が制定されるべきであるように、私は、今のお話を聞いても感じざるを得ないです。

 特に今回は、我が党民主党では、おそれもあるという部分を含めろ、含めた方がいいという提案をさせていただいているわけです。ただ、「おそれ」は加えられないと。「まさに生じようとしている」というところであるわけですね。もし今の御趣旨であれば、おそれがある場合も加えないと、また、そういった今の御趣旨であれば、この法律が維持される、この法律を改正する、修正するとすれば、おそれがある部分も含めておかないと、これはやはり話が違っておかしいなというふうに思わざるを得ません。

 それで、いろいろまた議論したかったことはあるんですが、もう時間がないので、もう一点ぐらいに絞って申し上げます。

 例えば、これは通報者が、例えば民事免責とか刑事免責というのはないんですね。例えば、ある事実を証明しようとするときに、会社から何か持ち出したとか書類を持ち出したとかというときに、いろいろな法律にその行為自体がいわゆる犯罪行為というふうに規定されていることを犯さざるを得ないようなことがあった場合に、結局それは保護されずに、おまえ、そんなものを持ち出して犯罪だと、逆に、通報したらかえって、確かに解雇は免れるかもしれないけれども、結局罪をかぶせられて、起訴されて、有罪判決を受けてしまったとかいったら、これは話にならないわけです。しかし、その部分はこれではどうも保護されていないというふうに私は聞いております。事実はどうでしょうか。

永谷政府参考人 本法案における通報の対象でありますけれども、犯罪行為でありますとか法令違反行為という反社会的な行為であります。したがいまして、この法律に定めるような公益通報であれば、そういう企業の犯罪行為、法令違反行為を通報したことによって刑事責任あるいは民事責任を問われることはないというのが基本的な原則であります。(市村委員「ないですね」と呼ぶ)はい。

 ただ、その場合に、第三者の個人情報みたいなものを漏らしちゃったとか、あるいは通報に際して恐喝というような形での他の犯罪行為を犯しているような場合とか、あるいは不正の目的で通報を行った場合といったような場合には、その通報者に刑事上、民事上の責任は当然発生するということでありまして、この公益通報者保護法でそういう刑事上の責任、民事上の責任を一律的に免責するというのは適当ではないというふうに考えております。

市村委員 もう時間がなくなりましたのでこれでやめますが、いろいろ本当に論点があります。ぜひとも、またお時間をいただければ質問させていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

山本委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 お疲れさまでございます。民主党の鎌田さゆりでございます。よろしくお願いします。

 きょうは朝からずっとこの法案の審議、やりとり。そろそろ論点も大分出てきまして、まだ突いていないところを突く役割かななどとも思いつつ、しかしながら、午前中からのやりとりを聞いていまして、特に局長は本当にこの問題を一生懸命なさってきたことは認めますし、そこについては敬意も表しますけれども、しかし、答弁を聞いていて非常に強く感じるのは、とりあえずとか、何回言ったか私は途中で数えようかなと思うくらい、とりあえずやっていますというのが随分あるんですよね。

 そして、今市村委員の最後の方でありましたけれども、やはり目線が、この法律はだれが使って、だれのために、そして最終的に、ひいては何の目的のためにというところの目線の置き方がやはり我々と違う。私たちは、地域で、市民の、国民の代表の、私も曲がりなりともそういう気持ちで来ているけれども、局長の答弁を聞いていると、やはり一定の力があり、権力があり、組織力があり、いわゆる経営者側、そういう空気がありありとこの委員会室に満ち足りるような感じで、大口先生なんかは非常に歯がゆい感じで応援の声をかけたりしていましたけれどもね。

 だから、この法案を政府側は政府側として自信を持って通すのであれば、曲がりなりにも、とりあえずなんていう言葉は使わないようにしていただきたいし、やはりもっと本当に気合いを入れてしていただきたいなと。いや、いいんです、答弁は。

 それで、おととい、この法案を審議するに当たっての一番初め、自民の葉梨委員から冒頭いろいろ格式高いお話を紹介されたりなどがありました。対抗するつもりじゃないんですけれども、私も、きょうは民主党の最後のバッターなものですから、初めに、ぜひ改めてみんなでこういう言葉を心にとめたいなと思って紹介をいたします。

 皆様もう篤と御存じだと思います。ガンジーが残した言葉で、二十世紀の資本主義七つの大罪の言葉がございます。それは、理念なき政治に始まりまして、労働なき富、良心なき快楽、人格なき格式、道徳なき商業、人間性なき科学、献身なき信仰。

 まさに、これから私たち、二十一世紀のこの日本、主権独立国としての日本のさまざまな仕組みを考えていく上で心にとめておかなくてはいけない言葉でありますし、特にこの中の一つなどは、きょうのこの審議をしている法案、これがどういうふうに役立って、そして最終的に社会がどういうふうにいい方向に行くのかということですから、冒頭、紹介をさせていただきました。

 それで、私が御質問するに当たって一番初めに伺いたいのは、大臣にまず伺います。

 午前中からの審議のやりとりをお聞きになりまして、大臣も適宜御答弁に立たれまして、御自身のお言葉で語られているというふうに私は思いました。答弁書を持ってはいらっしゃったけれども、でも、よその委員会でよその大臣の答弁を聞いているよりはずっと御自身の言葉かなと思いまして、顔つきも非常に真剣ですし、本当に真剣に考えているんだろうなというふうに見えました。

 大臣、そういう心をお持ちで、良心をお持ちで、そしてずっとこういうやりとりを聞いてきて、やはりちょっと手直しが必要なんじゃないかなというのをちらっとでも感じていらっしゃるんじゃないか。きょう一日議論を経て、もう夕方、あと二人の質問者を残すだけになりましたけれども、いかがな心境でこの法案を見ていらっしゃるか、所見をお願いします。

竹中国務大臣 政策の制度設計をする上で、極めて理想に近いものに持っていきたい、これは、私もそうでありますけれども、仕事をしている官僚諸君も常にそういうつもりで一生懸命仕事をしてくれているというふうに思っております。

 しかし同時に、すべての問題に対して、賛成する人もいれば反対する人もいる、これが民主主義であり、かつまた、今議論しているように時代のフロンティアを行くような政策については、これはやはりさまざまな意見があるというのも事実だと思います。

 午前中から繰り返し答弁しておりますように、時代の一歩を踏み出すという意味で、こうした公益者を保護する枠組みはぜひとも必要だというふうに私も思っておりますし、内閣府の諸君も思っている。同時に、これが今までの日本の風土の中できちっと定着をして、しっかりとスムーズにスタートアップさせる、混乱を避けてスタートアップさせるということが、やはり現実の政策当局に対しては常に求められることであるというふうに思っています。

 その意味では、今回の公益通報者の保護をするということと同時に、我々が常に求めている、より自由な方向に、これは、企業の自由もやはりきちっと保障していかなければいけないし、自由な活動を阻害すればまさに国際競争の中に生き残れないし、そういうところでどう折り合いをつけるかというのが制度設計上の一番難しいところなのであろうと思っております。

 その意味では、今回のような形でスタートをさせていただいて、それで経過期間を経て見直すということも十分その中には含めて、この問題に関して国民が非常に高い関心を一部で示しながらも、国民の間で本当にどのぐらいこの議論が広まっていくのか、国民的な問題意識の高まりをさらに誘ってお願いしながら制度をしっかりと進化させていくというのが現実の政策であろうかと思います。

鎌田委員 さすがに長々と御立派に御答弁をいただきまして、ありがとうございました。長々とは余計だったかもしれませんけれどもね。

 今回のような形でスムーズにスタートをさせていただきたいという、大臣としてのこの法案を成立させる意気込みというか決意だったと思いますけれども、お言葉を返すようで悪いんですけれども、今回のようなこんな形でスタートさせるわけにいかないんですよね、どうしたって。

 さまざまな委員が質問を続けてまいりましたけれども、政府は、この法案をつくり上げるに当たって、広く国民から意見を聴取してパブコメを募集した。それから、審議会の中でのこの法案をつくるがための部会もあって、そこで議論もしてきた。私たちには、その議論の経過というものが、情報公開の中で随時手にとるようにわかってきた。ああ、こういう形で進んでいくんだろうと思ってきました。

 ところが、もうこれも午前中からずっと出ているけれども、骨子案が出た段階であらっと首をかしげ、法案が閣議決定された段階でずっこけるぐらいのびっくり状態になっちゃって、これどうしたの、何かあったのと聞きたくなるくらいなんですよね。

 それで、通報対象事実のことについて伺っていきたいと思いますけれども、審議会案との整合性をいかに説明なさいますか。

 審議会の方の案では、通報対象事実を、「消費者利益の侵害、人の健康・安全への危険、環境への悪影響に関する規制違反や刑法犯などの法令違反」というふうにありましたよね。ところが法案では、皆様御承知のとおり。何でこんなに狭まっちゃったんですか。狭まっちゃった理由も含めて、審議会案との整合性をどう説明しますか。それは無視したんですか。生かしたらこうなったとは言わせませんよ。お願いします。

永谷政府参考人 いろいろな方面の御意見というのを伺いながらこの案を固めてきております。パブリックコメントにかけた案と今回最終的に提出しております案とは若干の部分で異なってきている、そこはおっしゃるとおりであります。ただ、そこがそういう形で変わったからといって、我々が考えていた骨格、政府案の骨格というのは全く従来どおり維持されているというふうに思っております。

 対象範囲がとても狭まったような言い方をされておられますけれども、これは法案の中に書いてございますように、分野としては全く同じですよね。それを今まで、例えば、一時期、全部別表の形で対象法令を書くというようなことをやったことももちろんあります。ありますけれども、最終的には、法律自体が新しくつくられたり、改正になったりするケースというのはあるわけですよね。そういうケースに弾力的に対応するということを考えれば、政令でもって書いていくということの方がより合理性があるんじゃないかということも考えております。

 いずれにしましても、先ほど来ずっと申していますけれども、政令の制定に当たっては、これまでいろいろ検討してきたものを一つのベースとして、そういう中から、各法律が個人の生命、身体、財産というところにどういうような重大な影響を及ぼすかというのを一つずつ精査していった上で、原案をお示しさせていただければというふうに思っております。

鎌田委員 今、政令のことも触れられたので、それはまたちょっと後にと思いますけれども、どう見たって、これはだれが見たって、当初四百八十を超える法令の列挙状態、それから法案になってきたら七つになっちゃったとなったら、私、決して自分の性格、うがった人間じゃないと思いますけれども、うがって見たくなるんですよね。何だ、役所は手抜きするのかと思いたくなるくらいに、何なのと。

 それで伺いますけれども、四百八十幾つの法令を列挙云々という議論をしていた状態から最終的に法案の七つに落ちつくまでの変遷、経過。これを時系列的に、日時あわせて、そして、どこのだれがどういう部署で会議をして、どういうふうに決まったのか、お知らせください。

永谷政府参考人 どこのだれがどういうふうに言ったかというのは、ちょっとそこは勘弁していただければと思いますけれども、いずれにしましても、対象法律をどうするかということについて、まさに政府部内での意思決定の過程で日々刻々と変化してきております。

 その中で若干頭に残っているというか、主要なものを今ここで御紹介申し上げますと、法案の骨子の段階で、代表例七本というのを、まさにパブリックコメントに付する案として、去年の十二月上旬に内閣府として意思決定をしてお示ししたというのが一つ目であります。その段階で代表例七本ということで対象法令を書いておりまして、実は「など」というのをつけておりまして、そのパブリックコメントに書いた七本に限定する趣旨とかいうことではなくて、その他の対象法令を政令もしくは法律で定める必要があるということを検討している段階で、そういう形でパブコメに付したということであります。

 それから、先ほど来出ております四百八十九本の対象法令でありますけれども、これは、代表例だけではなくて、すべての対象法律を別表に掲げる場合の案として、内閣府としてことしの二月の上旬に立案をしたということであります。

 現在お示ししてございます最終的な案でありますけれども、この三月の九日に、内閣として政令で定めることが適切という考え方のもとに法案を閣議決定していただいたということであります。

鎌田委員 これは、私、きのう打ち合わせで通告をしていますから、通告をして聞いたとおりに答えてほしいんですよ。私、今質問したのもそのとおり言ったつもりですし。

 四百八十というその数字が出てきたのは、何月何日、何の会議で、どういう審議会なのか検討部会なのか。そしてその後、何月何日の時点で、二百何ぼに減らそうと。そして最終的に、十二月九日、パブコメをあれするとき、骨子案だというときにはこうなったと。時系列でそれを教えてくださいと言ったんです。

 突如として四百何が百分の一にがんと減って、そして法案になってきて、この間の議論の経過をずっと見てきた消費者団体、日弁連、あるいはさまざまな人たちが納得できると思いますか。できないでしょう。

 だから、きちんと、この変遷の状態を時系列で、日時、会議。どこのだれが、何のだれべえが何を言ったなんて、それを言ってとは言っていませんよ。ただ、七つの法令に最終的に落ちついたところが、最後はどの会議なのか。この公益通報者保護制度検討部会、第三回の検討部会の十二月十日、ここの時点でなったのですか。

 時系列のと、最後のと、二つお答えください。

永谷政府参考人 「など」という形で、七本などという形でパブコメを開始したのが十二月、今おっしゃった十二月十日であります。それから、その後、二月の初め、二月の九日でございますけれども、通常の役所の意思決定のプロセスを経た上で、四百八十九本の別表を私どもの事務方の案として決めさせていただいたということであります。

 その後、最後に、今の案、つまり対象法令を七本プラス政令でもって指定する法律という形にしたものは、ことしの三月五日の自民党の総務会で了承していただいたものでございます。

鎌田委員 ちょっとごめんなさい、今の答弁の中で認識が及ばなかったんですけれども、二月九日、四百八十九の法令別表云々というところをもう一回御答弁いただけますか。

永谷政府参考人 二月の九日に四百八十九本の別表というのを一応私どもの事務方の内部でフィックスするという意思決定をしたというふうに申し上げました。

鎌田委員 ちなみに、この検討部会なんですけれども、ずっと一貫性のあるメンバーじゃないですよね、途中かわっていますよね。結構大幅に入れかえがあったのかなと思いますけれども、この間のメンバーの変更と、この公益通報者保護法案の検討内容状況との兼ね合いのようなものはありますか。

永谷政府参考人 お尋ねになっていることが、国民生活審議会の消費者政策部会のメンバーが十九次とその前の十八次でどれくらいかわったかということであります。そういう意味で、今手元にある資料で見ておりますけれども、十八次から十九次に継続された方が四人、それから新規で十八人という方を任命しております。

鎌田委員 私は、やはり、先ほど来続けて申し上げますけれども、この法案の必要性、理念、目的一致に共通の認識を持ちながら議論してきた方々が、昨年の五月で十八次が解散になって、今度九月に新たに十九次のメンバーが組まれて、そして継続された方は四名だけで、新規十八名、こういうふうにスタートをされているやに聞いております。今の御答弁とも重なりますのでそうだと思うんですけれども、そうすると、平成十五年、去年の九月二十九日、新メンバー、十九次のメンバーで発足をして、その後、第三回の部会の十二月十日がいわゆるパブコメになるわけですよね。

 だから私は、立法までの手続において、これは非常に重要な法律だし、国民の多くの人が注視をして見守っているにもかかわらず、この間の手続というものが非常に丁寧さを欠くし、そして、こういうふうにメンバーがかわったのであれば、そして当初議論されていた内容と違うものが変わった形でこういうふうに出てきたら、もっと広く国民から意見を聞き、そして聞いた意見というものを反映してやっていかないと。さっき午前中の審議の中ででしょうか、局長は、時間をかけたからといっていいものができるわけじゃないとおっしゃったけれども、しかし、かといって、丁寧さを欠いたら、絶対こういうふうな異論、反論、オブジェクションになっちゃうんですよ。

 本当に私たちは、この法律、公益通報者保護法というものは必要だと思っていますし、ただ、もちろん、参議院の方で出しています国の行政運営に関する法律の方もあります、それともう一つ、危険情報開示という、この三位一体。小泉さんのおっしゃる三位一体にはない我々の三位一体の法律、三本セットで臨まなきゃいけないという思いで、そのうちの一つですから、大事だし、成立させなきゃいけないと思っているけれども、こういうふうに、まず今、私、立法手続のところを対象事実に絡めて申し上げましたけれども、こんな状態では、とてもじゃないけれども、この原案のままで喜んで笑顔でもって賛成などということは非常に難しい。

 今、局長、首をかしげたけれども、それは局長の立場にすればかしげたいでしょうね。でも、多くの方たちが、国会は与党だけじゃない、自民党、公明党さん、与党だけじゃない。多くの国民の代表が与野党でもって議論をし、審議をし、そして持っていくわけですから、その間の立法手続の内容というものが多くの方から理解を得られるようなものじゃなければ、これは非常に難しいと思いますね。

 それで、通報対象事実のところで、また続けていきますけれども、先ほど、狭めた、決してそういうわけじゃないというふうな答弁もありましたが、私たちは狭めたというふうに思っている。そして、今、世間をにぎわせているさまざまな企業の不祥事の問題ですとか、あるいは、それが結局どんどん悪い方向に発展をしていってしまって、死亡事故まで出てしまっている、亡くなった方まで出てしまっている、そういうさまざまな事故も、あらかじめ公益通報があって、そしてその公益通報をした人が保護されて、そういう仕組み自体が国民の中に根づいていれば、最悪の事態を回避することも十分にできたんじゃないかという事故というものが今たくさん、この法案を審議するに当たって改めて見直されているわけなんです。

 例えば、一つ一つちょっと確認をしながら伺っていきたいと思いますけれども、雪印乳業事件、これで問題となりました総合衛生管理製造過程、この承認を受けた製造過程の無断変更。こういったものなんかは、今回の法案を照らし合わせた際、対象に当たりますでしょうか。

永谷政府参考人 鎌田先生おっしゃるように、いろいろな企業の不祥事というのがずっと続発している。だからこそ、こういう法律というのを早くつくっていただければというのが我々の切なる願いであります。

 そういうものを前提にした上ででありますけれども、雪印の件でありますけれども、今回の対象法令のたまたま七つある例の中に、食品衛生法というのが入っております。したがいまして、食品衛生法違反にかかわる部分であれば、当然のことながら今回のスキームの対象の中に入ってくるということであります。それから、今政務官から御示唆がございましたけれども、JAS法との関係とかいうふうな形で、何らかの形で関連づけるということも場合によっては可能だろうと思います。

鎌田委員 では、ちょっと続けて伺っていきます。

 それから、外国で危険性が認識されて禁止されている医薬品の使用、例えば、私たちの記憶では、薬害エイズ事件を発生させた非加熱血液製剤、こういったものはどうなのか。

 それから、総会対策として、株主でない暴力団やその関連企業への利益供与、これについてはどうなのか。

 それからまた、私たちの記憶に新しいところでは、六本木ヒルズの回転ドアで死亡事故がございましたけれども、この回転ドアの安全基準に関する法規制はその事故当時なかった、そして今現在でも。聞くところによると、七月の安全基準策定に向けて今準備がされているというふうに聞いていますけれども。

 今私が申し上げましたそれらについて、対象はいかなるようになるのか、お答えください。

永谷政府参考人 先ほど来申し上げていますように、政令でもって対象の範囲をどういうふうにやっていくかという作業をこれからやらせていただければというふうに思っております。私が今この場で、これはマル、これはペケとか、そういうようなことを言える立場には当然のことながらないんですけれども、ただ、いずれにしましても、ここで行われるいろいろな議論でありますとか、あるいは、先ほど来大臣も申しておりますけれども、パブリックコメントの結果等も踏まえて政令を定めていくということになるんだろうと思います。

鎌田委員 今、法案審議をしているんですから、法案に当てはめて答えていただいていいんですよ。政令は、さっきの答弁の中で、平成十六年度中をめどにとおっしゃったから、それはまた別な話として、今、法案審議をしているんだもの、私たち、この法案をよこされて。法案を当てはめて今言ったのを答えていただければいいんです。政令に何が入るかはまたこれから別な議論だと思います。

永谷政府参考人 いずれにしましても、仮定の話になりますので確たることは申し上げられないんですけれども、例えば、三菱自動車が法令違反、これは多分、道路運送車両法になるんだろうと思いますけれども、そういう法令違反を犯している。その道路運送車両法がこの対象法令に含まれる。三菱自動車の労働者が通報先に応じた要件に合致した通報をしておれば、当該通報者はこの法律の対象になるということであります。

 それから、先ほど来おっしゃっております未承認の医薬品でありますとか、あるいは回転ドアのお話もされていましたけれども、いずれも、それについてきちっと取り締まる法令というのは今の段階ではございません。未承認の医薬品であれば、まず、それを規制する必要があるのかどうかというのを規制当局に御判断していただいて、そういう法律ができて、そこに罰則とか何かがかかってくるという体系ができた後であれば、この法律の対象になってくる可能性はある。

 回転ドアの件についても、今の時点では取り締まる法令というのはございませんので、同じであります。そういうことであります。

鎌田委員 今、局長御自身の御答弁の中で、結局、要約すると、法律が後追いになるというふうなニュアンスの表現を使われました。つまり、何か最悪の事態が起きる、それが事件、事故化する、社会問題化する、そしてそれを企業側が容認して受け入れる、そうしてやっと初めて法律になる、後追いになる、これでいいんでしょうか。私は、それは決していいことではないと思うんですね。

 今、六本木ヒルズの話も、結局は対象外と。それから、そのほかに私が挙げました、過去の例で言えば薬害エイズのような、そういったものも当てはまらない。だって、薬害エイズのときに果たしてどれだけの方々が、結果として苦しみ、悩み、大変な被害を出した事件になりましたよね。そして、六本木ヒルズの問題も、まだまだ私たちの記憶に新しい。これから将来のある小さい男の子が被害に遭う。

 そういった日々の毎日の市民生活の中で、ああ、これはおかしい、これは危ない、結果としてどんな被害に、大きな被害になるか小さな被害になるかわからないけれども、そういう感覚で、このままじゃいけないという、純粋にそういうふうに思った気持ちというものがこの法律でしっかり担保されて、そういう声が社会に反映されていくかというと、私は、決してそうならないと思うんですね。

 とある方が言っていましたけれども、法律というのは、みんなが守るルールである、同時に、みんなを守るネットでなくちゃいけないんだと。私は、個人的にこの言葉をずっと心にとめながら自分は今仕事しているつもりですけれども。

 みんなで守らなきゃいけないルールですよ、確かに、これを見ると。しかし、そういう気持ちを持って、通報しよう、どこかにこれはお知らせしなくちゃいけないというふうに思った人たちの、人のそういう気持ちや行為というものをちゃんと後押しして守ってやれる法律になっていないでしょう。(発言する者あり)いや、いろいろな声が場内で聞こえていまして、つい反応したくなっちゃいますけれども、反応しないようにいきたいと思います。

 この法律の目的というのは、結局は、もうずっと言われ続けている、企業のコンプライアンス、そういったものを高めていくとか、ただしかし、この法律を使う人がだれなのかということを忘れないでいただきたいんですよ。だれが使うのか。その使う人にとって使い勝手が悪いのじゃつくる意味もないし。だから結局、さっきから、企業を守る、そちらの方の法律というふうな印象を受けるんじゃないですかというふうに言われているわけです。

 ですから、再度申し上げます。私たちは、これから先、修正案という形できっと皆様にお示しをしていくことになると思いますけれども、こういうふうに七法令プラス云々かんぬん、そしてその通報対象事実、第二条の三項のところにいろいろ規定を、三条三号のところにも規定を書いてありますけれども、そういうふうに限定をしないで立法化すべきじゃないかというふうに私たちは考えておりますので、ぜひこれから先、この法律を使う人の側に立って、使いやすい、そういう形に変えていくというところに賛同していただきたいというふうに思います。

 大臣、いかが感じられますか。

竹中国務大臣 あの六本木の事故等痛ましい事故を見て、本当に、何かやるべきことがあるのではないだろうかと、これは、この社会を支える善意の人間全員がそのような思いを持っているんだと思います。それに対して、やはり、政府の中の人間として、国会として何ができるだろうというのは真摯に常に前向きに検討すべき問題だと思います。

 ただ、今、法案を審議いただいておりますけれども、この法案だけでそういったすべての問題を解決するというのは、これは無理なわけでございます。どんどんどんどん新しい事象が出てきて、回転ドアに関してどういう法律があるのか私は存じ上げませんけれども、必要な法律はやはり現実に合わせてどんどん整備していかなければいけない。それはそれでやはり別の次元の努力が必要だという話であろうかと思います。

 その上で、この法律においては、やはり今までなかったことを一歩前進しようという枠組みでございますので、一方で法律は法律としてしっかりと整備していく、その中で、政令でこの範囲の適用を決めるときは、現実をしっかりと見ながら必要なものを必ず入れていくように努力をする、そうした努力を我々としても重ねていきたいと思います。

鎌田委員 私は、何もこれだけで解決しようなどという気持ちももちろん持っておりませんし、これもまた一つということ。ただし、この国の国家のシステムとしてつくり上げていく上においては、やはりいいものとして、ただお互いに、政府側と私たちとでそれぞれに絶対の自信を持っていいものだと言うのであれば平行線になっちゃいますけれども、しかし、そこで忘れないでいただきたいのは、この法案が日の目を見て、社会に出たときに、社会から返ってきた反応というもの、各論調、新聞論調、それからさまざまな消費者団体、そしてまた人権擁護で日々活動している日弁連、そういったところからのそういう意見というものを私はぜひ大切にしていただきたいというふうに思います。答弁はいいです。

 一つ、先ほどからも話が出ております三菱の、今回リコールの事件になりましたけれども、この例を取り上げながら、この法案が当てはまっていくのかということを考えていきたいと思うんですけれども、きょうは国土交通省の方にもおいでをいただいておりますので、ただ、こちらは国土交通委員会じゃないので御安心ください。

 ことしのリコール、二〇〇四年三月、ハブのリコール、ここに至るまでの経緯の中で、今からもうさかのぼること十年以上前、九二年に、一番初めの同じ原因とされる事故がありましたけれども、この九二年から、少し改めて皆様にも御存じおきいただきたくて御紹介いたします。

 九二年に、トラックの車軸とタイヤをつなぐハブと言われている金属製の帽子型の、部品と言っていいんでしょうね、それが根元からちぎれまして、当時の三菱の技術関係者の方々は、輪切り事故というふうに名づけ、そして、絶句というか、こんな事故があり得るのかというふうな形で、結局は品質管理部門で引き継がれまして、そしてその後もこのハブの破断というものがやみませんで、二年後、九四年、当時の開発本部長等幹部が社内で対策会議を開いて、これはユーザーの整備不良だというふうにその会議では結論づけたんですね。

 そして九九年、広島県内で、今度はバスですね、バス車両がハブの破断事故を起こしまして、このとき三菱は会社側に何と言ったかというと、原因不明ですというふうに通知をし、それでもって当時の運輸省には何と報告をしてきたかというと、整備不良と報告をしてきたんですね。バス会社に対して通知したものと運輸省に対して報告したものが全く違っている。

 そして二〇〇二年、これが、皆様最近でもニュース等で御存じのとおり、一月に横浜で、お母さんと子供の死傷事故につながってしまいました。再発防止策を求められて、ハブの交換というものを前提に自主点検を三菱は申し出て、ところが、その際もまた、このときにつくった報告書、これは資料も報告書も偽造されたものであったということですね。これはもう国土交通省も御承知おきだと思います。

 そして、結果、ことしの三月、ハブのリコール、回収、無償修理ということになって、国土交通省にそのリコールの届け出申請になったというわけなんです。

 大臣、この今審議している法案が適用になるのは、もちろん大きな会社だけじゃなくて、小さな会社も中小企業も当てはまりますよね。そうすると、そういうところの死活問題にも本当にかかわることですから、そこにも注意を払わなくちゃいけないということもわかります、わかりますけれども、今紹介をした三菱といったら、この間ちょっと会社の組織構成が変遷をしていますけれども、三菱の会社といったら、とんでもない国内でも有数の大きな企業ですね。しかし、この十二年間、十二年間ですよ、組織ぐるみ、会社ぐるみで自縄自縛。私から言わせたら、自縄自縛ではなく、本当に、言葉では余り言ってはいけないかもしれませんけれども、自業自得じゃないかと言いたくなっちゃうんですね。それで、結果として、三菱関連の車は、公のところでは、行政官庁ではもう使わないということも表明なされていますし、ほかの三菱関連の身内の会社においても同じように大変な被害になっていると思います。

 だから結局は、公益通報によって、もしかしたらこれももっと早い段階で明らかになって、それが三菱にとってその時点で大きな痛手になるかもしれないけれども、しかし、十二年間も苦しんだあげくに、とんでもないどつぼにはまって、再起不能な状態になるかもしれない今になる、これは回避できたはずなんですよね。そこもぜひ理解していただきたいんです。

 それで、内閣府に。九二年の、タイヤと車軸をつなぐハブ、これがちぎられた輪切り事故が起きたときに、これは公益通報のこの法案の立場から伺いますけれども、犯罪行為等の事実が生じ、または生ずるおそれ、これに該当すると言っていいでしょうか。

永谷政府参考人 仮定の話でありますので、これは正しくは道路運送車両法の話になるんだろうと思いますけれども、それが対象になり、三菱の労働者がその要件に合致した通報を行うということであれば、この法律の対象になるということであります。

 それから、済みません、もう一つ言わせていただければ、私どもが企業の方しか見ていないということであれば、もし仮にそういうことであるとすれば、こういう法律なんて絶対つくろうとは思わないですよ。そこだけ申し上げさせていただければと思います。

鎌田委員 そのほかにも聞きたいことがあったので進めたいんですけれども、企業の方しか見ていないのであればこんな法律はつくらないと。どうしたらそういうふうな発言が出るのか、私、わからないですね。企業の方だけしか見ていないとは言っていないんですよ。そっちだけ一〇〇%見て、公益通報をというところを見ていないと言っているのじゃないんです。

 しかし、公益通報をしようとする人にとって、しようと思うその時点で、ああどうしようとか、あるいは、これはどうなっているんだろう、これは犯罪行為に当たるんだろうか、これは何の法令になるんだろうか、そうやって思いあぐねて、しかも私がすごく気になったのは、「個人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合」という、これなんかは刑法の正当防衛の意味合いを持ち、こんな状態で公益通報かと。だから、何かちょっと視点が違うんじゃないかなというふうに思うんですね。

 続けます。いいですよ、意見が食い違うんでしょうね。しかし、私たちは私たちのこの目線というものに自信を持ってこれからも修正案を出していきますので。

 それから、開発本部長等、これが九四年に対策会議を開いていますけれども、当時、この開発本部長が、整備不良だというふうな結果を出した、会議の結果、それに対して、いや、おかしいと思い、この整備不良に異議を持って公益通報した場合は、この開発本部長というのは公益通報者として認められるでしょうか。

永谷政府参考人 開発本部長というのは恐らく労働者に該当するんだろうと思いますので、もしこれが労働者に該当するということであれば、対象になります。

鎌田委員 さっき私、開発本部長等幹部ということで、私の認識は、これは幹部ですから労働者ではない。だから私は、これは該当しないというふうに考えております。

 それから、九九年に広島でバスの事故がありました。このときに三菱は、バス会社に対して原因はわからないと、それから運輸省には整備不良というふうに、違う報告を出しているわけですけれども、このとき、ユーザーのバス会社が整備不良ということに納得をしないで品質不全を公益通報した場合、これは犯罪行為等の事実がまさに生じようとするに該当するのかどうか、そしてまた、公益通報者として保護の対象と考えられるかどうか。

永谷政府参考人 個々の事実関係につきまして私自身もよくわかっていない部分がありますので、確定的なことは申し上げられないんですが、いずれにしましても、事業者にいる労働者が、自分が所属しているその事業者の犯罪行為でありますとか法令違反行為を通報する、その通報したことが原因でこの労働者が解雇等の不利益をこうむった場合に、この通報のスキームが作動するというふうに考えております。

鎌田委員 いや、だから、バス会社は、私、今バス会社のを聞いたんですね。時間がないのでもうやめますけれども、バス会社は労働者じゃなくて、三菱のお客さんですから、ユーザーですよ。ユーザーと私申し上げましたけれども。

 だから、そのユーザーがそういうふうに、自分のところの商品を買った先のその会社からそういう報告が運輸省に出た、整備不良としたわけですよね。ところが、バス会社にすれば、何たることよと。うちはバス会社として何十人ものお客さんを毎日運んで、整備は万全を期してやっているのに、運輸省に、国の役所に対して整備不良だと三菱が報告した、そんなのありかということで公益通報した場合というのを聞いたわけですよ。労働者にも当たらないし、ですから……(発言する者あり)反応しないように。

 私は、今回の法律が、まだまだお互いに議論をし、そしていろいろな例を挙げながら、これがきちんとこの目的に資するものとして機能するのかどうかを確認してからでないと、法律として社会に出るべきではないという考えを最後に述べまして、終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、今度出してこられたこの法律のままでは現在の判例をも切り下げるものになってしまう、そういう点ではむしろ制度の改悪ということになっていくというふうに思います。やはり、きちんとしたものに正していくことでなければ、このままではこれは通すべきものじゃないと思います。きょうも午前中から皆さんからいろいろな議論がありましたが、やはりそういう内容のものだと考えるものであります。

 そこで、法案の第二条第三項で、通報対象事象ですね、「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律」として、保護の範囲を罰則のある犯罪行為に狭く限定しています。法案の別表で例示的に七法律が明記されておりますが、関係法は四百八十九本ということで、リストは一応いただきましたけれども。

 それで、この対象法律は政令で定める。政府は関係法を絞り込んで、さらに通報対象事実の範囲を狭めようというふうにしているわけですが、例えば、その四百八十九本の中に原子炉規制法がありますね。

 この原子炉規制法の議論というのは、実はジェー・シー・オー事故の後の原子炉規制法改正案のときに随分議論をして、あのとき、内部告発者保護について、民間企業の従業員は大臣にやってよろしい、これは六十六条の二で、主務大臣に対する申告というのでやったわけですが、その二項の方で、「使用者は、前項の申告をしたことを理由として、その従業者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」ということで、そのときの改正で、原子炉規制法についてあるんですが、ただ、このときに、民間企業の従業員が主務大臣だったんですね。それ以外の外部ルートが、今度の四百八十九本の中に入れたこの検討の中で、外部ルートについてもきちんと内部告発を認めるということになっているのかどうか。

 それから、このときは、ジェー・シー・オーならジェー・シー・オーの従業員だけの話ですね。だけれども、実はジェー・シー・オーから出てきた、これは原子炉規制法に基づく設工認ですね、設置工事認可図書、図書申請、申請書、出てきますが、それの審査の方は公務員が、当時は科学技術庁の役人の人がやりましたけれども、今ですと経済産業省の原子力安全・保安院の人であるとか、あるいは原子力安全委員会のスタッフですね、公務員が審査するわけですよ。

 審査して、とりあえず上に上げて、原子力安全委員会なら安全委員会がオーケーを出したとしても、しかし、これはやはりおかしいと思う公務員の方がいらっしゃったときに、その人が内部告発をやれば、これは民間企業からだけじゃなしに、公務員からの方も、重大な事故を招く前にきちんとこれを是正することもできる。

 しかし、それが今度の法律の中で、ジェー・シー・オー関係の原子炉規制法のことはきのう言っておきましたからね、だから、民間以外に公務員もちゃんと考えているのか。それから、大臣ルート以外に外部ルートも、きちんとこれはやりますということになっているのか。ここのところをまず伺いたいと思うんです。

永谷政府参考人 先生の御質問の趣旨がいま一つ、私、よく理解できなかったんですけれども、ジェー・シー・オーの事故等につきましては、原子炉等規制法の違反事実があるということでありますし、その原子炉等規制法が今回の公益通報者保護法の対象法令として政令で定められるということになると、当然のことながら、この法律に掲げる要件に合致した通報を行われた人は、民間企業に働く人であれ、公務員であれ、保護されるということであります。

吉井委員 あのときも大体、原子力安全委員会を通ったわけなんですよ。通った施設で事故を起こしているんですね。だから、それは民間の企業の労働者が内部告発すれば事前にきちんとやることもできたわけだけれども、しかし、その安全審査の段階では、そもそも原子力安全委員会の諸先生方はこれでよろしいということにしておるわけですから、安全だとお墨つきを与えてしまっているんだから。だから、あなたがおっしゃったように、法律違反になって安全が脅かされるかどうかということは、そもそもその段階では、専門とする先生方自体がこれをわかっていないんですね。

 それを今度の法律上はやってよろしいという判断をするならするで、私は、この原子炉規制法を含めて四百八十九本のこの法律について、どれぐらいきちんとした議論をやって考えておられるのか、そこのところがよくわからないんですね。そこのところをきちんと説明してもらわぬと困るんですよ。

永谷政府参考人 原子炉等規制法という法律が一連の経緯の中で改正されたというのは私どもも理解しております。そういうふうな事情でありますとかというようなことをにらみながら、きちっとその政令の策定作業に、今の先生の御意見等は踏まえて検討させていただければというふうに思っております。

吉井委員 これは法律出しているんだから、今から踏まえて検討じゃ困るんですね。

 つまり、以前の、これは九九年十一月ですが、原子炉規制法改正案の審議のときには、要するに、民間企業の従業員の内部告発について、これは入れたんですね。ただし、そのルートは大臣ルートだったんです。では、今度この法律をつくるときに、まだ明記はされていないんだけれども、四百八十九本の中に入るという、入る入ると一応リストをつくられて言っておられるんだけれども、そのときには、じゃ、従業員が、大臣ルート以外に、外部ルートにきちんと、国会議員であれマスコミであれ、外部ルートで内部告発をやっても保護されるんですかということが一つ、そこが開かれるかどうかということですね。

 もう一つは、そのジェー・シー・オーならジェー・シー・オーから出てきた設工認の図書について、設置工事認可の図書について、審査するのは国家公務員がかかわっているわけですね。原子力安全委員の諸先生方がぼっさりしておったと言ったら表現が悪いかどうかはともかくとして、失礼かもしれないけれども、要するに、よう見抜くことはできなかった。しかし、国家公務員の中に、技術屋さんの中に、非常によく鋭くそこを見抜く人がおって――例えば、あのときは、ジェー・シー・オーのときは硝酸ウラニルの臨界体積は十六・五リッターだったんですが、このラインの中に貯塔として容積八十リッターのものがあったんですよ、それを最終的にブレンド工程で使っているんですよね。これは臨界体積の五倍ものものを入れたらそもそも臨界事故が起こるのは当たり前の話なんですよ。

 私は、一人や二人ぐらい国家公務員の中に、技術屋さんにもそれぐらいのことがわかる人がおったと思うんだけれども、その人についての内部告発というのは、現在の原子炉規制法の中では認められていないんです。今度の法律では、国家公務員が、内部ルート、大臣ルートであれ、マスコミや国会議員など外部ルートであれ、これを内部告発をやったとしても、いいことになるんですかということを言っているんですよ。

永谷政府参考人 この法律の六条に、解釈規定がございます。「前三条の規定は、通報対象事実に係る通報をしたことを理由として労働者又は派遣労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることを禁止する他の法令の規定の適用を妨げるものではない。」という確認規定を置いてございます。したがいまして、外部通報の道が当然のことながら開かれるということであります。

 それから、公務員のケースについて、ちょっと先生がおっしゃっていることを理解していないんですけれども、公務員がだれに対して通報をするかということをもう一回おっしゃっていただければと思うんですが。

吉井委員 例えば、もうジェー・シー・オーはつぶれましたけれども、ジェー・シー・オーの審査をして、実際に審査してオーケーを出すのは原子力安全委員会の専門の委員の先生方なんですが、しかし、先生方はよく見抜くことができなかった。実際、それだから通ったんですよ、あの装置は。

 しかし、一人や二人ぐらい優秀な技術屋さんはおると思うんですよ、公務員の中に。だけれども、その人が意見を述べたかどうか知りませんが、しかし、この装置が通ってしまったとしても、その人が、このままやったら大変なんだということを原子力安全委員の人に言ったところでそもそももうだめだったんですから、そうすると、みずから、これは国会議員であるとかマスコミであるとか、要するに外部ルートにそれを内部告発を行う。その公務員の方は、きちんと守られるんですね。

永谷政府参考人 事実関係が定かでない部分があるんですけれども、審査委員会なるものがあって、その審査委員会がきちっと仕事をしていないじゃないかということを別の公務員がどこかに通報するわけですよね、ということをおっしゃっているんだろうと思うんですけれども、その審査委員会が何らかの形で違法行為とか法令違反行為をやっているんでしょうか。やってはいないような感じで今聞いておりましたけれども。

吉井委員 審査委員会の法令違反かどうかという議論になりますと、私は簡単にそれは言える話じゃないと思うんです。それはその人たちの、審査委員の方たちの能力水準にもかかわってくるわけですよ。だから見逃してしまっておったわけですよ。いかにその分野の専門の先生方といったって、そういうこともあるわけですね。

 実際にはそれでお墨つきが与えられて、原子炉関係のものを安全だ安全だということで、安全神話も振りまかれてきたわけですが、しかし、それは自分も意見を具申したんだけれども、専門家が言ったので通ってしまったとなった場合、実際に工事は進んで、原子力施設はできていくわけです。しかし、それは危ないということで、実際に臨界体積の五倍ものものを認めてしまったら臨界事故はあり得るんだということで言ったときに、そういう内部告発というものは本当は生かされなきゃいけないんです。

 私、これ以上、もともときょうここで原発とか原子力関係をやるつもりなかったですから、ここまでやるつもりなかったんですが、事ほどさように、これは四百八十九本のうちのたった一本の話なんです。

 だから、どの法律に基づいて、本当に、今までの法律ではこうだった、これは今度の法律の中では、内部ルートでもって結局内部告発を規制するようなことになるのかどうかということと、外部ルートがどれだけきちんと保障されるのかということが一つ一つ点検され、検証されていかないことには、どうも、法律を提案しながら、そういうことも余りきちっと検討をしないで出しておられるということがよくわかりましたので、次に進んでおきたいと思います。

 公益通報の対象が、犯罪行為等のうち「別表に掲げるもの」となっているわけですが、そうすると今度は、脱税とか公選法、政治資金規正法など、別表から除外されていますね。私もいただいて四百八十九本を見たんですが、ないんですね。

 そうすると、企業が、商法違反などで刑事罰に当たらない限り、何百万円、何千万円、あるいはそれ以上の自社の政治献金をやっているその事実を知って告発した労働者の場合は、これは保護されない。企業の中では村八分的なものを受けるなりなんなりすることになってしまう、実際に保護されるということにならないのではないかという問題があります。

 社員の場合は、自社のそういう問題を知ったときとか、あるいは税法の関係でいいますと、自社の脱税を知って内部告発した場合とか、税務職員の場合ですと、かつて大阪国税局で脱税指南事件というのがありましたが、企業と幹部がつるんだ脱税ですね、そういうものを内部告発したときに、後でこれが司直の手が入ったときはともかくとして、そうでないときは、それは守秘義務違反だとかあるいは昇給昇格差別だとかさまざまな報復を受けていますよ。

 今度の法律改正によって、それは、通報した労働者はきちんと保護されることになるんですか。

永谷政府参考人 この制度をつくることを構想したきっかけというのは、先ほど来申し上げていますけれども、食品偽装表示の問題でありますとか、その手の、例えば車のリコール隠しでありますとか、原子炉のひび割れ隠しとか、そういうようなまさに国民生活に直結する部分での企業の不祥事というのをきっかけにしてこういう制度をつくろうというふうに考えたということであります。

 したがいまして、国民生活審議会の議論でも、もっと対象を広げてもいいじゃないかという議論もあったんですけれども、国民生活の安全あるいは安心に資する観点から、国民の生命、身体、財産の利益の保護にかかわる法令違反というのを対象にしようというような結論になって、それに従って今回法案を出しているということであります。

 今、吉井先生おっしゃっていました税法違反など、それ以外の分野の法令違反、その重要性については、私も、今これで対象にしようとしている分野に比べて、そういうところに比べて劣るということは全く考えていない、非常に重要な部分ではあろうかと思いますけれども、要は、国民の生命、身体、財産に直接的な被害が及ぶかどうかということを一応メルクマールにしてこの対象法令というのを取捨選択させていただいているということであります。

吉井委員 直接かかわりのある原子炉規制法でも、六十六条の二が、九九年の改正から、ここはどうなるのかということもきちんと検討されていないんですが、税法などはまさに国民の財産にかかわってくる話ですね。財産その他の利益、国民の利益にかかわる話ですよ。それが除外されているんですね。

 あわせて伺っておきますが、例えばムネオハウスの問題ですね。鈴木前議員の外務省のODA資金の私物化や介入などの不正事件、これを公務員が名乗って告発した場合、その段階では直ちに犯罪にならない場合に、対象外にされてしまうんじゃないか、これで労働者は守られるんですか。

永谷政府参考人 明確に法令違反、罰則のついた法令違反を直接間接にやっている、直接間接に罰則のついた法令違反をやっているというのを一つのメルクマールにして、そういうものを通報させようという、今回の仕組みでは考えております。

 したがいまして、今先生がおっしゃっておりますムネオハウスというのは、本当に明確に法令違反をおやりになっていて、それを公務員が例えば通報する、公務員がどこに通報するのかよくわからないんですけれども、それは宗男先生と公務員との間での労使関係とか何か全くございませんので、そういうものをこのスキームでもって対象にして通報させるということは全く考えていないということであります。

吉井委員 ムネオハウスの場合なんかは、もう宗男さんの報復を恐れて、とてもじゃないが、大体普通じゃ内部告発できないようなものなんですよ。しかし、日本の政治の世界で、これは本当に国民の財産にかかわる、利益にかかわる問題で、この内部告発がやっぱり大きく国民全体にとって利益となっているわけですよ。しかし、それが、今のお話だったら全然その内部告発は保障されないんですね。私はおかしいと思いますね。

 では、通報対象事実の中で、これ、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令に限定して、保護の範囲を狭く限定しているわけですが、法律の別表に、例示的にさっきの七法律の明記ですね。法案は、税法、公選法、政治資金規正法などを除外するわけですから、これでいきますと、脱税や政治家への違法献金など、告発しても保護されない。

 こうしたことから、一つは、法令に違反し、または違反するおそれのある事実、二つ目に、人の生命または健康に重大な影響を与えるおそれのある事実とするなど、これだけ通報対象事実をやっていきますと、やはり別表を削除して、そのことを考えたらやはりすべての法律を対象にする。四百八十九法に限らないで、すべてを対象にして、内部告発をしても、広く国民の生命、健康や財産、国民の利益にかかわってくるものなんですから、狭く狭く絞らないですべてを対象にしていく。私は当たり前のことだと思うんですが、これは大臣、どうなんですか。

竹中国務大臣 先ほど局長からも答弁させていただきましたけれども、今回の法案、どのような問題意識でこれまで議論されてきたかということでありますけれども、これは、食品の偽装表示、近年の企業不祥事の発生状況、さらには、先ほどから何度も申し上げておりますような国民生活審議会の提言を踏まえて、国民生活の安全、安心に資するという観点から議論をさせていただいてきたわけであります。したがって、国民の生命、身体、財産等の利益の保護にかかわる法令違反を対象としようと。

 もちろん、その他、重要性は劣らない問題点、他の分野の法令違反というのはたくさんあるというふうに私も思います。しかし、今回、これまでの議論の経緯、非常に注意深く専門家に御議論いただいた上で、国民の生命、身体、財産等に直接被害が及ぶものというのを対象としようということで議論を煮詰めてきております。こうした問題についてのまず通報者の利益の保護ということを制度化させていただきたいというふうに考えているわけであります。

吉井委員 私、やっぱり、通報者をなぜ守るのか、それは、通報してもらうことがまさに国民の生命、身体、財産その他利益の保護にかかわる。やはり通報してもらうことによって、ムネオハウスの問題にしても、官房機密費の問題にしても、外務省機密費問題にしても、それは、国民の税が使われるということは、国民の財産が侵害されているものがあるからなんですよ。だから、そこを全部明らかにするということが、これはまさに国民の利益につながることであり、その告発をする人が守られてこそ事実が明らかになってくるんです。

 本来、この法律をつくろうと思ったら、一番のねらいとするところはそこでなきゃおかしいんですね。何かそれを、さっきも鎌田さんも言っておられたと思うんですけれども、それを明らかにされるのを嫌がる人が、明らかにされないために防波堤を築くような、そういう法律になったら、本当にそういうものはない方がましなんですよ。ない方がましというよりも、あっちゃならないんですよ。

 そこで、私さらに伺いますが、法案の三条三号で、マスコミや国会議員、労働組合、NGOなど外部への通報に非常に厳しい要件を設けています。いずれかの要件に該当しなければ通報しても保護されないということになっているわけですが、外部に通報する場合は、まず企業内や行政機関に通報するというその要件に加えて、事業者や行政機関に通報すれば不利益扱いを受ける、二つ目に証拠隠滅のおそれがある、三つ目に通報を口どめされた、四つ目に通報してから二十日間経過しても調査しない、五つ目に生命、身体に切迫した危険があるという、この五項目のどれかの要件に該当しないと保護されませんね。

 こうすると、結局、内部告発というものは非常にハードルが高くなってしまって、通報は企業内部や行政機関に閉じ込められて、マスコミや国会議員などを通じて国民の前に出てこない、外部通報が非常にしにくい、保護される通報が限定されてしまうという問題があると思うんですね。

 これは、大臣、是正することを考えぬと意味がないんじゃないですか。どうですか、大臣。

永谷政府参考人 法律の三条の外部通報の要件のお話でございます。

 外部通報の要件が非常に厳しいというふうな御指摘だったかと思いますけれども、例えば、これ、三号のイからホに掲げてございます要件でございますけれども、例えば、それぞれ、本人とかあるいは同僚がその事業者内部に通報したところ不利益な取り扱いをかつて受けたようなことがあるとか、あるいは事業者ぐるみで犯罪行為、法令違反行為が行われているというような場合、それからハでありますけれども、上司から事業者内部へのヘルプラインとかあるいは行政機関へ通報することを口どめされているというような場合、それからニでありますけれども……(吉井委員「それは読んだ。しまいの話は」と呼ぶ)はい。

 ですから、こういう話を通報者が立証するというのは、さほど困難は伴わないんじゃないか。これでもって致命的に外部通報が制限されるということではない。一番最後の、個人の生命、身体に危害が発生する、あるいは発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合には外にも出せるということでありますので、決して制限はしていない。

 これはもう先ほど来申し上げていますけれども、通報に伴って公益を達成するということと、自由な事業活動を濫用みたいな形で阻害しない、そのバランスを、まさにこういうような外部通報の要件を加重するという形で図っているということであります。

吉井委員 あのね、何かぐだぐだぐだぐだ言ったけれども、要するに、はっきりしているんですよ。内部告発というのは内部の道もあって、それは一つの道だと思うんですよ。しかし、その道にとらわれることなく直接外部に通報してもよろしい、その道を開かなかったら意味ないんですよ。

 あなたの場合はぐだぐだ言ったけれども、要するに五項目設けているんですよ。だけれども、だから言っているんですよ。

 例えば、さっきのジェー・シー・オーの例だってそうなんですよ。あれは事故があったから、生命、身体に切迫した危険があるということは事故があったからわかったんでしょう。専門家だったら、これは臨界体積の五倍、大体大ざっぱに言って臨界質量の五倍と思っていいんですけれども、そうしたら臨界事故が起こるのは当たり前だと思うわけですよ。ところが、企業の中の人はわからない、原子力安全委員会の安全委員の先生方もわからないというふうな中で、これは身体、生命に切迫した危険があるというふうにどうして評価できるんですか。本人は専門家の良心にかけてそれを告発しようとしても、何しろ安全委員会の先生がお墨つきを与えてしまっているんだから、できるわけないでしょう。

 そのときに、できるルートというのは、そういう五項目などハードルを高くしないで、やはり外部ルートを最初からきちっと開いておいて、本当に国民の利益のために、内部告発は、内部的にやろうと外部へやろうとよろしいという、その体系をつくらない限り、これは、安全の、この法律の意味を達することにはならないというふうに思うんです。

 時間が来たようですから、私は、そういう点で、大臣として、それ行けどんどんでやろうということじゃなくて、やはりこの法律については考えなきゃいけないと思うんです。最後に大臣にそのことだけ伺って、終わりたいと思います。

竹中国務大臣 公益を守るために内部からの告発が、いろんな報告があった場合に、その立場を守らなければいけない、それはやはり時代の要請であり、一つ今回進歩を踏み出したいところだと思います。

 しかし、こうした内部からの意見の表明というのは、一方で社会全体に一つのコストをもたらすということも事実なんだと思います。これが、例えばいろんなものが出てきて、それがいきなり新聞、雑誌にどんどん載る。これはまさに企業の風評リスクにもなります。したがって、そこは、風評というコスト、これをどのように調和させるかということは、これはやはり考えざるを得ないのだと思います。

 その意味では、当然のことながら、コストが一番大きくなるのは、一種の、マスコミ等々外部でございますから、それに対しては内部とは違うバリアを設けなければいけないというのは、これは立法の趣旨としてはあり得るのではないでしょうか。

 それが高過ぎる、低過ぎる、これはいろんな立場の御意見があろうかと思いますが、そこはやはり、そういった観点も踏まえて、現実的な、スムーズなスタートアップができるような制度でなければいけないと思っております。

吉井委員 ジェー・シー・オーは、倒産という最大のコストを払っているんです。だから、内部告発があれば、企業の中であれ、あるいは公務員からのルートであれ、外部ルートでどんどんやっておれば、事故を起こす前に事故を防いでおれば、多くの被害者も出なかったし、そういうむだなコストは要らなかった。

 だからこそ、そのために、内部告発についてはもっときちんとしたものにしなきゃいけないということを申し上げて、本日の質問は終わりたいと思います。

山本委員長 次回は、来る十九日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十一分散会


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