第16号 平成16年5月21日(金曜日)
平成十六年五月二十一日(金曜日)午後一時十五分開議
出席委員
委員長 山本 公一君
理事 今津 寛君 理事 大村 秀章君
理事 河本 三郎君 理事 山本 拓君
理事 宇佐美 登君 理事 鎌田さゆり君
理事 中山 義活君 理事 大口 善徳君
江崎洋一郎君 河井 克行君
鈴木 恒夫君 田中 英夫君
西川 公也君 西村 康稔君
能勢 和子君 葉梨 康弘君
早川 忠孝君 平田 耕一君
村上誠一郎君 石毛 えい子君
泉 健太君 市村浩一郎君
大畠 章宏君 島田 久君
原口 一博君 山内おさむ君
横路 孝弘君 太田 昭宏君
吉井 英勝君
…………………………………
国務大臣
(経済財政政策担当) 竹中 平蔵君
内閣府副大臣 伊藤 達也君
内閣府大臣政務官 西川 公也君
政府参考人
(内閣府国民生活局長) 永谷 安賢君
政府参考人
(公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長) 山木 康孝君
政府参考人
(警察庁長官官房長) 吉村 博人君
内閣委員会専門員 小菅 修一君
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委員の異動
五月二十一日
辞任 補欠選任
岩屋 毅君 鈴木 恒夫君
平沼 赳夫君 能勢 和子君
宮腰 光寛君 田中 英夫君
同日
辞任 補欠選任
鈴木 恒夫君 岩屋 毅君
田中 英夫君 宮腰 光寛君
能勢 和子君 平沼 赳夫君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
公益通報者保護法案(内閣提出第一一〇号)
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○山本委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、公益通報者保護法案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府国民生活局長永谷安賢君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長山木康孝君及び警察庁長官官房長吉村博人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。泉健太君。
○泉(健)委員 きょうも、公益通報者保護法案ということで議論をしていきたいと思います。
もう大分論点が明確になってまいりましたが、この公益通報に関連をして、五月十六日、大変残念なことですが、とうとう官邸が報道を統制するような、そんな問題が出てきております。皆さんもうしかめっ面をしていますが、御承知のことかというふうに思います。(発言する者あり)正しいなんという声もやはりあるわけですね。
まあひどいものだというふうに思います。十六日の夕方に日本テレビが、米支援に対する調整、それを報道したということで、その日の夜に飯島秘書官が、日本テレビの政治部長あてに対して、電話で三つのことを言っているわけですね。日朝交渉を妨害するために報道したのではないか、そして、報道の取り消しをすべきだ、さらには、応じない場合には北朝鮮への同行取材を認めない。これはもう明らかに圧力ということで受け取らざるを得ない話だというふうに思います。
さらには、次の日、日テレ側から連絡をとろうと思ったけれども、秘書官は全く電話もつながらずにそのままの状態が続き、さらに、情報源を明かせば同行を許可するというところまで言ったわけです。
これは結果的にはやはり大きな問題だということで白紙撤回をされましたが、きょう、通告をいたしましたが、官房長官、官房副長官、来ていただけないということでありますので、本格的なこの件に関しての話は二十六日、ぜひ御出席をいただいて、していきたいというふうに思っております。しかし、ここにやはり大きな問題があると思います。
そもそも、情報源の秘匿というものは、これは記者が守るべき職業倫理ですね。記者の内部でも、これは職業倫理として当然あるべきものだというふうに思います。そしてまた、それ自身は表現の自由や報道の自由にもかかわる問題です。要は、内部告発とは違いますが、ネタ元をばらせというようなことを国民の代表である官邸の側が言ったというのは、これは大きな問題だと思うんですね。この内部告発、公益通報者保護法案においても、もし会社側から、おまえ、これの情報はどこから来たんだ、ばらせばらせという圧力が来て、それをばらしてしまったら、それは通報者を全く保護することにはならないわけです。
さて、この件に関して、竹中大臣、このような、情報を明かせ、ネタ元をばらせというようなことを言った飯島秘書官のことについて、感想をお願いいたします。
○竹中国務大臣 今回の件、報道はもちろん承知をしておりますが、具体的に個別のイシューとして今回の問題がどういうことであったのかということを私は承知しておりません。したがいまして、極めて一般的なお話ということにならざるを得ませんですが、私自身、今、政府の中で仕事をしております。政府の中に入る前は、ニュース番組のコメンテーター等々もして、ニュースの側からの政府というものを見る機会もございました。だから、報道の自由というのは大変重要でありますし、報道をしている立場から見ると、政府というのはもっと情報を明らかにすべきではないかということをよく感じることもございます。同時に、政府の中から見ますと、やはり本当に規律のある、節度のある報道をしていただきたいものだというふうに感じることもこれ等々ございます。
そうした中で、我々は日々葛藤しながら、しかし、報道の自由、そういう大原則をやはり社会の欠かさざる一つの価値としてしっかりと守っていかなければいけない、そのような方向で小泉内閣全体は対処しているというふうに私は思っておりますし、個々の問題につきまして、繰り返しになりますが存じ上げないわけでございますけれども、これはそうした立場で官邸もしっかりと対応しておられるというふうに思っております。
○泉(健)委員 いや、官邸は対応していないからこういうことになったわけですよ。できていないんです。
これは御本人さんなりあるいは官房長官が来られたときに追及をしたいというふうに思いますが、どの時点でこの事態を首相や官房長官が知っていたのかということは、これから恐らく大きな問題になってくると思いますよ。やはり、このことを承知してリストから外すということをしたのか、それとも、承知をしていなかったというのであれば、こういったことを独断で秘書官が決めたということにもなりますから、いずれにせよ、私はこれは問題だというふうに思っております。
二十六日、その部分については誠実な御答弁をいただけるものと思っておりますけれども、しかし、きょうは公益通報者保護法の審議ですから、ぜひ大臣にお願いをしたいのは、こういった事実があったわけですね。この法案の担当の大臣として、やはりこういった言動があったことというのは重く受けとめなければならないと思うんです。
これは、ほかの大臣よりも、竹中大臣が、この今回の飯島秘書官の問題についてはやはりしっかりとした態度をあらわさなければだめだというふうに私は思います。その意味で、別にマスコミの目の前で言えというふうには思いませんけれども、やはり飯島秘書官に対して大臣の方から、私はこういう通報者保護を担当している、こういった形で情報源をばらせというような圧力がかかるような事態は決してあってはならないことなんだということはぜひ言っていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○竹中国務大臣 繰り返しになりますが、この個別の問題につきまして私は承知をしておりません。したがいまして、この問題に対してどうこうするということを言うことは、これはなかなかできないわけでございますけれども、常に閣僚の一員として、閣内で我々としてはしっかりと政策をしていく、また報道の自由、表現の自由、そうしたことについては改めてしっかりと確認しながらやっていこうではないか、そういうことは常に私なりに呼びかけていきたいと思います。
○泉(健)委員 私たちは、例えば官邸の皆さんも大臣も御存じかと思いますが、オフレコ取材というものが当然あるわけでして、そういったマスコミと我々議員の側の、あるいは官僚の側のモラル、良識でこの関係が成り立っているわけですね。そういう良識がないようであればやはり官邸を去っていただくべきだということを最後にお伝えして、この問題はきょうはこの辺で終わりたいというふうに思います。
もう時間も本当になくなってまいりましたが、でも、議論が尽くせなければ、この公益通報者保護法案、ぜひ、やはり細かく、なるべく公益通報が促されるように、我々はこの法律が制定されることを望んでおりますので、修正なり協議をこれから続けていきたいというふうに思っております。
この幾つかの論点について、きょうは再度質問させていただきたいと思います。
まず、通報者についてですけれども、現在、政府案では「労働者」のみが通報者ということになっております。我々民主党、昨日この公益通報者保護法案の修正案というものを発表させていただきました。もしかしたら、もう新聞報道なり事前の情報で御承知いただいているかもしれませんけれども、我々は、やはり「公益通報者保護」と言ったときに、この「公益通報者」は何を指すのかということをもう一回冷静に頭を冷やして考えるべきだと思うんですね。いろいろなケースがこれまで出てきました。さまざまな企業不祥事、出てきました。そういう中で、公益通報者が必ずしも労働者ではないケースがあるというふうに思っております。
労働者は当然保護されるべきものだというふうに思っておるわけですけれども、しかし、先日も御答弁でいただいておりました、例えば下請事業者。下請の労働者であればこれは対象者になるけれども、下請事業者そのものは対象にならないということがこれまでの議論の中で明らかになってきたわけです。
政府側の答弁では、契約自由の原則に基づくものだからそれは乗り越えられないんだということをおっしゃるわけですが、私はそうじゃないというふうに思うわけですね。これまでの答弁では、あの消費者基本法でもあったように、消費者は事業者に比べると情報の質、量、そういったものに格差があるということをお認めになられた。では、労働者はどうですかと聞いたときには、労働者にも同じように事業者との格差があるというふうにお認めになられた。では、下請事業者そのものはどうですかということについても、同様だったかというふうに思います。
やはり情報の質、あるいは会社の規模、情報の量、さまざまな格差がもう既に生じているわけですね。そういう中で、なぜ下請事業者を含めないのかということを改めて確認したいと思います。大臣。
○西川大臣政務官 下請事業者などの取引事業者の問題。確かに、通報者に含めるかどうか、こういう問題も、国民生活審議会においても各般の意見がありました。何らかの保護を加えるべし、こういう意見もありました一方で、事業者間の取引関係に保護を加えることは、今先生が御指摘のように取引自由の原則から慎重にすべきだ、こういう両論があったわけであります。意見の一致が得られなかった、こういうことで昨年の五月の提言には盛り込まなかった、こういう状況でございます。
本法案では、このような国民生活審議会での議論を踏まえて、慎重な検討が必要との判断から通報者に含めなかった、こういうことでございます。
○泉(健)委員 であればお伺いをいたしますけれども、しかしながら、一致した意見になるものと、審議会の中でも多数決でそこに書かれたもの、一致したもの、いろいろな形があると思うんです。そこについて、全部が一致をしなくても、こういった委員会の審議の中で十分にそれは変わっていく可能性があるものと考えますが、いかがでしょうか。
○西川大臣政務官 意見が一致されておれば、もうそれは間違いなく対象にしてくるわけでありますけれども、意見が分かれた場合どの辺をとるか、こういうことは、政府としても判断材料にいろいろな意見を取りまとめていかなきゃならない、こういうことでありまして、今回、当面今の案でいきたい、こういうことで私どもは判断した、こういうことでございます。
○泉(健)委員 いや、まだこうやって質疑が続いているわけですから、判断をしたといっても、ぜひそれは変えていただきたいという話を今しているわけですから、審議会で終わっているんだったらこの委員会は要らないわけですよ。そうですよね。当然ここで修正がなされる可能性があるから我々はこうして話をしているわけです。
もう一回言いますが、下請事業者というのは弱い立場であることは政府もお認めになっているわけですね、親事業者に比べて。この辺について、契約自由の原則があるから慎重にならなければならないというふうにおっしゃられましたので、きょうは公正取引委員会をお呼びしました。
まずお伺いをしたいんですが、公正取引委員会の中で、委員会の中でというか、下請代金支払遅延等防止法というのがございます。ここで言われているところの「親事業者」そして「下請事業者」の定義についてお答えいただきたいと思います。
○山木政府参考人 下請代金支払遅延等防止法におきまして、「親事業者」と申しますのは、この法律は物品等の製造等の委託取引を対象にしているところでございますけれども、そういう委託取引の発注者でございまして、取引上優位にある、相対的に優位にあるというふうな地位にあると認められる事業者を「親事業者」と考えているところでございます。(泉(健)委員「下請も。定義」と呼ぶ)
「下請事業者」につきましては、取引上劣位にあると考えられている事業者でございます。
○泉(健)委員 では、この法律がそもそも制定をされた理由についてお答えをいただきたいと思います。
○山木政府参考人 下請法につきましては、昭和三十一年に下請取引の公正化を図るということを目的に制定された法律でございまして、親事業者の優越的な地位の濫用を防止するということによりまして、下請取引の公正化を図るということを目的とした法律でございます。
○泉(健)委員 この法律を見ても、下請事業者というのはもう優位、劣位という関係にあるわけですね。
そして、独禁法の中にも、「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」と。その中には、「優越的地位の濫用」というものがありまして、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。」というのを禁止しているわけですね。いろいろな不利益を与えることについてのことが書かれているわけですが、こういうことがたくさん起こり得るからこそ、こういう法律が制定をされているわけですね。
きのう、公正取引委員会から資料をいただきましたけれども、こういった下請事業者がさまざまな不利益取り扱いを受けるケースが、一年間に千件から千五百件前後、もう現実にあるわけなんですよ。これは公益通報と関係ない話ですよ。いろいろな形で、しかし、下請事業者が弱い立場にあるということはもう明確にここでなっているわけなんです。
さらにまた、下請中小企業振興法という法律もあります。こういう法律の中でいいますと、「「下請事業者」とは、中小企業者のうち、法人にあつては」一部中略しますけれども「自己より大きい法人又は常時使用する従業員の数が自己より大きい個人から委託を受けて」業を行うものということで、やはり、日本の社会全体を見れば当然この方々が弱い立場ということは証明をされているわけです。
であるならば、労働者と区別をするということではなくして、当然これは弱い立場であり、また、契約自由の原則も調べさせていただいたら、必ずしも契約自由の原則がすべてまかり通るわけではないということは、もう皆さん、いろいろな学説ですとかこれまでのそういった専門書なんかでは御承知のことかと思うんですね。契約自由の原則とはいうものの、例えばそれは借地借家法、利息制限法あるいは労働基準法、さまざまな形で、自由競争に逆に弊害をもたらす場合があるというときには法律がちゃんと定められているわけなんですね。
という観点からすると、やはりこれは下請事業者を含めて当然ではないのかなというふうに思いますが、大臣、いかがですか。
○西川大臣政務官 委員から重ねての要請のような質問でありますけれども、何度も申し上げますけれども、私ども、両論あった、こういうことは十分理解をしております。しかしながら、意見の一致を見なかったし、この法案をつくるに当たりましては、意見の集約の中で、下請は、先ほどの取引自由の原則、これを優先して外した、こういうことでございまして、御理解をいただきたいと思います。
○泉(健)委員 ということは、政務官は、もし下請事業者が公益通報をして保護されなくてもそれは仕方がない、あるいは、保護されないから公益通報をしなかった、そして公益に大きな被害が出ても仕方がないということでよろしいでしょうか。
○西川大臣政務官 私、前職は経済産業大臣政務官でありまして、下請中小企業振興法、この改正のときも担当いたしました。そのときに、大変な意見がいろいろ出ました。日本の下請は元請に対して力が弱いのが大多数だ、こういう話がありまして、下請という言葉を使うのすら反対だ、こういう人も与党の中におりましたけれども、実態は実態として、支払いが正当に行われるとか、あとは権利を主張して元請に理解をしてもらうとか、こういうことを再度確認する、こういう意味でも中小企業の下請を振興しよう、こういうことでやりましたわけであります。
私は、中小企業の育成を大切にやっていくべきでありますし、日本の九九・七%が中小企業でありますので、この振興にこれからも意を尽くしていきたい、こう思っております。
○泉(健)委員 いや、今の御答弁は余り関係ないお話で、そのお気持ちはよくわかるんですが、そうではなくして、現実にこれは公益通報がなされるかなされないかによって大きな問題になるか。
まあ、三菱さんの場合はそれは大企業ですけれども、例えば公園の遊具の問題、これはもう皆さん御承知かと思いますが、必ずしも大きい会社じゃないわけですよ。例えば、いろいろなところから発注を受け、下請が実際には工場で遊具をつくるなんというケースはごまんとあるわけです。そういう状況があり、危険性が指摘をされながら、しかしそれが内部のままで改善をされない段階で、もしこの下請事業者そのものを含めなければ、これはやみに葬られてしまう。出てくるときには被害という形で、人命が失われたり環境被害があるという形でしか出てこないんですよ。それでいいんですか。
○西川大臣政務官 重ねての御質問でありますけれども、私どもは、対象は労働者に限定をしていきたい。そして、労働者は、自分の職場で自分が物づくりに当たっておるわけでありますから、十分、その危険性というのを把握するのに一番最初に把握できるはずでありますし、労働者からの通報を守っていく、こういうことにしてこの法案をこれからつくり上げていきたい、こう思っております。
○泉(健)委員 大臣は、西宮冷蔵のその後というのは御存じでしょうか。すべてというのはなかなか難しいかもしれませんが、再建の努力を今なされているんですね。もう一回いろいろな許可をとろうと思っているんですが、一部、営業の許可が出ないなんというところもあって。それは個別のケースですから、ほかにもいろいろな要因があるのかもしれません。しかし、一度内部告発というものをした人の中で、それは西宮冷蔵の場合でいえば再建ということでしょうが、個人的なレベルでいえば再就職であるかもしれません、いろいろな形で、立ち直りというのは非常に大変なわけなんです。
事業者というのは、下請の事業者ではありますけれども、従業員がおり、家族がいるわけですよ。再建をしていかなきゃならない、再起をしていかなきゃならないというときに保護をされない、契約が打ち切られる、あるいは入札から外される、こういう事例が次々と出てくるのがもう当たり前になっているわけですから、これはもう世の中だれが見たってそういう状態があるということはわかっているわけですから。
審議会の御議論はよくわかります。しかし、審議会の御議論をここで発表して、私たちは決定しましたといったのであれば、委員長、これはせっかく議論していても仕方のない話でありまして。これは今回どうしても御修正いただけないんですか。あるいは、今後、願うならば、私たち民主党は、ここは一致した思いとして、何としても下請事業者を入れていただきたいという思いがありますけれども、いかがでしょうか。
○西川大臣政務官 誤解をされてはいけませんのでもう一度申し上げますけれども、法案をつくるときに、社会的な要請があって、こういうものをつくりたいということになって初めて法案をつくっていくわけでありますけれども、そのときに、国民生活審議会、こういう場を用いて私どもは国民の意見を取りまとめ、聞いてきた、こういうことでありまして、これらの議論を踏まえながら、政府として考えてこの法案をつくり上げた、こういうことでございますので、審議会の意見そのものが法案になった、こういうことではございませんということを再度申し上げさせていただきます。
○泉(健)委員 それで、さらにそれを踏まえて、この委員会の議論を踏まえて御修正をいただくということですね。そういうことだというふうに思っておりますので、ぜひこの点については、今回どうしても入れられないというのであれば、我々は引き続き主張していきたいというふうに思います。
そもそも、この法の趣旨は、できるだけ幅広に、一番最初に公益を侵害する事象がある、それを防ぐために公益通報を促しましょうということであるんですね。公益の侵害、例えば生命や財産、環境の被害がないような社会だったら、別に公益通報者保護という話は本来出てこないわけですよ。では、なるべく通報対象者、これを広げた方がいいに決まっているわけですから、その点、きっとそう思っていただけるものと信じていますので、これから、なるべく通報者を広げていく努力、これをぜひしていただきたいと思いますし、我々は、もちろん、政権をとれば、この法律は修正をしたいというふうに思っております。
次に移りたいと思いますけれども、対象法令についてです。
今現在、政府案では、犯罪行為に限定をするという状況になっております。これもこれまでの議論の中で再三御答弁をいただきましたが、納得のいく答弁ではなかったというふうに思います。改めて、なぜ犯罪行為に限定をするのか、この理由についてお伺いしたいと思います。
○竹中国務大臣 これも、我々として、もちろん最終的に我々が判断したわけでございますけれども、そのベースになっているのは国民生活審議会での審議でございます。
この国民生活審議会の審議はどのようなものであったかということを申し上げますと、規制の制定は後追いになることが多い、法令違反だけではなくて被害のおそれ等を通報の対象に含めないと国民生活への被害が防止できないのではないかという意見が確かにございました。一方で、範囲の明確な、これは法令違反というのは範囲が明確なわけですけれども、それ以外の通報を対象に含めますと、その通報の対象が不明確になり、保護対象となると信じて行った通報が裁判の結果保護されない場合が生じるおそれがあるといったふうに、制度の運用に当たってやはり難しい問題、混乱が生ずるのではないかという意見もございました。そうした双方の意見があったということでございます。
こうした議論を踏まえまして、この国民生活審議会の報告書では、最終的にいろんな議論を集約する形で、制度の通報対象として保護される通報の範囲を明確にするという観点から、法令違反とすることが考えられるというふうに、これはこの報告書の中で提言がなされたところでございます。
本法案では、この国民生活審議会での提言も踏まえまして、保護される通報の範囲を明確化するという観点から、犯罪行為と法令違反行為を通報の対象としたということでございます。
○泉(健)委員 非常にありがたく、そういうふうに、裁判でもしかしたら対象法令にならないかもしれないから、それは明確に基準を設けたんだ、定めたんだと言っていただくことは、労働者にとってはありがたい、親切なお気持ちなんですけれども、しかし、労働者側としては余りそれは求めていないんですね。やはり幅広であった方がいいと思っているんです。
というのは、今回の法律、一番最初の代表質問を思い出していただきたいと思うんですね。密告増進法ではないですよ、名前も明らかにして公益にかかわる情報を提供したときに保護されるというものであって、例えば社内で、あの人が来社が遅いとか、会社のパソコンを使って何かやっているとか、そんな問題を公益通報の対象にするなんて話じゃないわけですよね、当然。公益なんですから。
では、その公益だと信じて通報した、あるいは実際に被害が出ている。これは、この議論の中でも明らかになりましたが、シックハウスの問題や、現在の六本木ヒルズの問題、法律がないですね。シックハウスはようやく法律が制定されて、それまでに何千人という患者が出てしまった。今回の六本木ヒルズも、実は、さまざまな省庁に問い合わせをしようと思ったら、まだ法律ができていないので所管がありませんなんという話を平気で政府はされているんです。でも、被害者はいるわけですよ。被害者はいるわけです。
そういう状況を考えると、やはり生命、身体、環境に重大な影響を与えるおそれがある事実そのものを含まなければ、これは適切な公益通報にならない、公益の通報にならないというふうに考えますが、大臣、いかがですか。
○竹中国務大臣 今、シックハウス等々の例を御提示くださいましたけれども、これはしかし、そういう意味での例えば環境基準とか健康安全基準の制度の不備があるということであるならば、まさにそのことこそをやはり問題にするというのが政策的な対応なのではないかというふうに思います。これをすべて公益のこの法案の対象の中で見るというのは、これはやはり私は少々無理があるというふうに思います。
今おっしゃったような問題、それは個々に社会の中のいろんな問題があると思います。しかし、それには、それの中での、そのそれぞれの問題についてしっかりと対処していくということが必要なのであって、それと今回の法案とをやはり直接結びつけて、すべてこの法案で読めるようにというのは、これはなかなか法律のあり方としては困難な問題なのではないかと思います。
その意味では、今回は、とにかく私たちには解雇権の濫用を規制する等々の一般的な法理がある、その上に成り立って、特にこうした分野については明確に基準を示すことによって予見可能性を高めて、それでその労働者の権利を守ろうではないか、利益を保護しようではないか、そういう立場に立っての法案でございますので、その意味では、罰則規定等々がついているようなものについては社会的に一種の、これはやはり防がなければいけない、ここはやはり公益を守るために防がなければいけないというコンセンサスがあるものであるわけであって、そうしたものに限定して、それを明確にすることによって予見可能性を高めたいというのが今回の法律の趣旨でございます。
○泉(健)委員 いや、ですから、そこは、明確にすることによって予見可能性を高めても、それ自体が何か社会にとって有益なものではないわけですよ。今求められているのは、公益通報をできるだけ幅広にできるようにするということが求められているわけですね。
この部分については、ぜひともこれも個人の生命、身体に重大な影響を及ぼすということを入れなければ、実際に法律というのはやはり後追いですから、例えばこの法にしたって、どうあったって公布から施行まで時間をかけなきゃならないわけですよね。その間にも残念ながら被害者というのは出てくる可能性はあるわけです。何だって法律は後追いなのはよくわかっています。わかっていますから、せめて、一本一本の法律の後追い、これを繰り返す、そしてその対応を待つというのではなくして、この公益通報者保護法の中で、やはりこういった実際に被害が起こっている場合については、公益通報を行うことによって、法律ができるできないじゃなくて、まず被害を食いとめることです。まず被害を食いとめる。そして、その通報した人間の立場を保護する。
立場の保護は一番最初じゃないですね。まず被害を先に食いとめなきゃならない。被害を食いとめるためには、だれかからの通報がなければならないわけです。その通報がちゅうちょされるような法律であれば、これは機能しないんです。そこをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。これも我々民主党は修正を求めております。
そしてさらに、これまで議論がありましたが、まさに生じようとするとき、これを我々は「おそれ」ということも含めるべきだというふうに考えておりますけれども、ここも、政府の答弁を見ていますと、何を怖がっているのかなという気がしてならないんですね。
それは、例えば、「おそれ」にした方が企業にとってもメリットだと私たちは思っているんです。早期発見、早期対応ができるわけですから。だって、まず最初に内部通報ありきなんですからね。いきなり外部に、マスコミにすぐばらすみたいな話じゃなくして、先に内部通報をするわけですから早期発見、早期対応ができる、いいことじゃないか。「おそれ」というふうにした方が、もしかしたらこんな話があるかもしれませんよ、気をつけてくださいね、そういうものがヘルプラインに投げ込まれた方が先に手を打てるじゃないですか。その方が会社にとったっていいはずなんです。なのにもかかわらず、何を恐れているのかなという気がしてなりません。
しかも、今回の法律というのは、実名の公益通報に対してその方そのものを保護するということですから、匿名の通報ではないということですから、その実名の通報があった方に対して期限内に返答をすればいいわけですよね。そうしたら、企業としてはさほど、前おっしゃられたような事業者のリスクだとかそんなことはないわけです。明確にわかっている人に対して返答をすればいいんですから、さほど難しい話じゃない。とすると、何を恐れているのか。
例えばそれは濫用ということを恐れられているのか。内部通報が同じ人から何十件も何百件も来て、会社の本来業務ができないというような濫用を恐れておられるのか。それとも、その濫用によってヘルプラインが煩雑化、業務が停滞することを恐れているのか。それとも、安易に外部通報される可能性があるということ、またそれに伴う企業リスクを恐れられているのか。あるいは、外部機関、例えばマスコミとかがモラルが低いから何でもばらしてしまう、そういう風評リスクを恐れられているのか。ここのところを明確にしていただきたいと思います。いかがですか。
○伊藤副大臣 委員からも今さまざまな御指摘がございました。また、この点については、パブリックコメントにおいても、この「生ずるおそれ」の表現についていろいろ御意見がございまして、その中で、当事者間の事実認識の相違を生む可能性がある、あるいは、通報によって事業者に損害が発生した場合に、おそれの蓋然性をめぐって争いとなる可能性がある、こうした意見が出てきたわけであります。
私どもとしましては、こうした意見を踏まえて慎重に検討した結果、やはり規定ぶりを明確化するために、「まさに生じようとしている」に修正をさせていただいたということでございます。
○泉(健)委員 先ほどから、明確化、明確化という話がありますが、明確化すると何がいいんですか。
○伊藤副大臣 一番重要な点は、その事実認識の差が生じないようにしていくということが重要な点であるということは御理解をいただけるんではないかというふうに思っております。
私どもとしましては、今回の法律の解釈に関連をして労働者と事業者の間に事実認識の差が生じてしまいますと、例えば労働者が本法の保護要件に満たしていると考えて通報した場合であっても、事業者は満たしていないと考えて当該労働者を解雇する、こういったことが考えられるわけであります。この場合に、裁判の結果、労働者側が敗訴する場合も考えられるほか、例えば最終的に裁判所で当該解雇は無効とされても、裁判が終了するまでの間は当該労働者は不安定な立場に置かれることになるわけでありますから、結果として、通報者保護の制度としてはやはり十分なものではないというふうに考えられるところがございます。
こうしたことから、労働者と事業者との間の事実認識の差を極力生じさせないようにしていく、そうした制度を構築していかなければいけないと考えたところでございます。
○泉(健)委員 もしかしたら、明らかになってきたかもしれないですね。
労働者は解雇や敗訴をこれまで怖がっていたと思いますよ。怖がっていたと思いますけれども、内部通報をした人たちはどういう思いか。僕は大臣にもお伺いしたことがありますけれども、公益通報をした人というのは、それでも公益通報が大切だから通報するわけですよ。敗訴とか自分の立場とか、もうそんなものをなげうってでも社会を何とかしなきゃならないと思うから通報するわけですよ。間違っているんじゃないですか、そこを。
労働者が、自分の言ったことが対象法令じゃないから、あるいは、まさに生じようとしていないから、おそれ等の関連で該当しないから、もちろんそういう労働者もいるかもしれませんけれども、しかし、本当に公益通報をしようとしている人は、こういうことを怖がっていては公益通報できないわけですよ。現に公益通報してきた人たちというのは、今、何にも法律がない状況でも、一生懸命勇気を振り絞って公益通報したわけですよ。
敗訴や対象法令で関係ないかもしれないから、あるいはその間は労働者の立場が不安定になるから、そういう理由で考えられているのであれば、例えば労働関係の団体からそういう御意見を出していただいて、私たちはその件に関しては心配をしていませんというような話であれば、そういうふうに修正をしていただけますか。
○伊藤副大臣 重ねての答弁になりますが、やはり私どもとして大切なことは、本法の解釈に関連をして事実認識に差が生じないようにしていかなければいけないというふうに思っているところでございます。
そのために、私どもとしての努力としても、事前に相談できるような窓口というものを整備していく、そうしたことに努めるとともに、労働審判手続などの個別の労働関係に関する紛争解決の仕組みや、あるいは相談機関を利用することが可能である、こうしたことも十分周知をして、そして、本法の枠組みというものが機能できるように努力をしていきたいと考えておるところでございます。
○泉(健)委員 事実認識に差が生じたっていいんですよ。差が生じて何がまずいんですか。差が生じるのは当たり前じゃないですか、違う人間同士なんですから。何で差が生じないようにしなきゃならないんですか。時には、いろいろな意図的な思いもあって、あえて差が生じることだってあるじゃないですか。なぜ、差が生じてはいけないんですか。
○伊藤副大臣 先ほども答弁をさせていただいたように、差が生じることによって労働者の側にやはり不利益が生じるケースも考えられるわけであります。ですから、そうしたことにも私どもとしては思いをはせて、そしてこうした差が生じないような制度を極力講じていく、そうしたことが非常に重要ではないか、そうした考え方から本制度を構築させていただいたというところでございます。
○泉(健)委員 わかりました。もう余り時間もありませんので、ぜひ、ここのところも我々は非常に注目をしてこれまでに取り組んできたところです。まさに生じようとしているときではカバーできない実例というものもたくさんあるんだと思います。
例えば六本木ヒルズのことで言ってみれば、一番最初の設計段階で回転ドアの問題について気づいた、それをもってまさに生じるとするのか。それとも、一件何か被害が起こった時点で、これがまさに生じようとしているときと見るのか。それとも数件起きた段階で、これは生命、身体に被害が起きるという確信をした時点でそういうものになるのか。非常にあいまいですよね。
どのみちこういう判断にかかわるものというのは、意見の相違、見解の相違があって当たり前なんです。だから、それを理由にして、明確化をする、そして明確化をするから限定をするということでは、公益通報を抑制してしまうということになるんだというふうに思います。
次に行きますけれども、この議論をしていく中で一つ気になったことがありました。
この内閣委員会では、小野大臣に来ていただいて、警察関係の不祥事についてもこれまでずっと取り組みをしてまいりました。残念なことに、委員会としてしっかりと議論の中で要求をした文書保全が十件近くなされずに廃棄をされてしまった。わざわざ、大臣から会計課長に行き、会計課長から全国の警察に要求をした文書保全がなされなかったという事態がありましたけれども、この文書保全に関してお伺いをしたいというふうに思います。
これまで、行政関係の文書保全のさまざまな訓令、規定というものがあると思うんですが、訴訟にかかわるものは期間を過ぎても保全をしますということになっております。しかし、こういう公益通報の証拠になるような文書について、保全の対象としていただけるかどうか、これは一つ大きな問題だと思うんですね。公益通報をしました、しかし、全部証拠隠滅されてしまったということでは、結局は、証拠がないんだから君の言ったことは公益通報じゃないよ、では、君は問題行動を起こしたから解雇だねということになりかねないわけなんです。
そこで、まず警察庁さんの方に、この件に関して今どのように対応されているか、お伺いしたいと思います。
○吉村政府参考人 文書の保存期間の延長についてのお尋ねかと思いますが、警察庁における文書の取り扱いにつきましては、警察庁における文書の管理に関する訓令にのっとって行っているところであります。
この規定によりますと、保存期間の延長については、文書管理者たる警察庁の課長等が、現に監査、検査等の対象になっているものについては当該監査、検査等が終了するまでの間保存期間を延長、また、職務の遂行上必要があると認めるときは一定の期間を定めて保存期間を延長することができるという定めがございます。
いずれにせよ、公益通報者保護法案に基づく通報に関連する文書の取り扱いにつきましては、法案の成立後に、内閣府その他の関係省庁と連携をしながら検討してまいりたいと思っております。
○泉(健)委員 内閣府さん、きょう来られておりますね。
内閣府の方では、この文書に関しては、公益通報にかかわる文書を今後どのようにされていくおつもりでしょうか。
○永谷政府参考人 私どもの文書管理規則の規定で、通報のあった情報にかかわる文書の保存期間、一応原則として五年間として、例外を認めることについて正当な理由がある場合にはその保存期間を延長することもあり得るとしているところであります。
したがいまして、当初寄せられた情報にかかわる文書の保存期間の五年が迫っていたとしても、それに関連する情報が寄せられた場合、保存期間を延長することもあり得るというふうに考えておりまして、それはこの法律の施行後も同様であるというふうに思っております。
○泉(健)委員 これは各省庁、訓令なり規定なりで出されていると思います。ここについては、確かに、幾つか項目を挙げている以外に、もし何か必要があれば保全をするように、延長するようにということが書いてありますけれども、大臣、ここはぜひ、そういう弱いものではなくて、これは今回公務員も対象者になっているわけですから、公務員から公益通報があった、まあ内閣府も金融庁も現在では実名の庁内の人間からの通報はゼロということで私はホームページで確認をしておりますけれども、金融庁はゼロじゃないですか、ゼロですね。まあ、いろいろな意味で公益通報はまだしにくい状況なんだろうな。
例えば、香川県では匿名通報でもいいと言っているにもかかわらず、内閣府は実名で書けとか、非常にヘルプラインとしてはまだおぼつかない状況ではないのかなということも思うわけですが、そういった行政内部からの公益通報があったときに、やはりちゃんと一つ項目を設けて、公益通報があった場合には関係資料はその公益通報が処理されるまで保全をされるということ、ぜひともこれは入れていただきたいと思います。そうでなければ、先ほど言ったような、証拠がないから君の言ったことは間違いだよ、だから保護しないよということになりかねないというふうに思っております。その意味では、この点もぜひ修正の中に含めていただきたいと思います。
それ以外にも我が党はいろいろと、九条、十条関係でも、努力義務を義務規定にすべきだ、あるいは見直し期間を五年から三年にすべきだ、いろいろなことを今回要求させていただきましたが、審議会の議論を経て、さらにこの委員会での議論を経て、いい案をまず出す。さらに修正も今後していくということだと思いますので、ぜひこの我々の出した修正案に基づいてさらに御協議をいただいて、真摯に受けとめていただいて、この公益通報者の声、そして被害に遭われている方々、被害者の声、ぜひそういったものをしっかりと聞いて、この法案、おつくりをいただきたいというふうに思います。
以上で失礼いたします。どうもありがとうございました。
○山本委員長 次に、原口一博君。
○原口委員 民主党の原口一博です。
冒頭、大変遺憾の意をあらわしておきます。
先日の質疑で求めた資料、この委員会質疑までに来ておりません。つまり、内部告発という大変重要な問題で、そして予算委員会で質疑をし、そして都市整備公団の総裁さえ調査をすると言ったものについて、その聞き取り調査さえなしに、つまり、具体的な事案がどうオペレートするかということもわからないままにこの審議をしなきゃいけないというのは、大変遺憾なことであります。
また、北朝鮮への総理訪朝に当たっての内閣の問題についても、これはもうあすの話でございますので、官房副長官お見えになれないということでございますが、こういったことはあってはならないということで、冒頭、抗議をしておきます。
さて、この法案の中身を見ますと、二本にわたっていますね。大きく柱は二つです、労働者の保護法制、事業者の自浄作用といったことなんですが、本来この枠に乗ったものとしても、やはりそのさまざまな要件が狭過ぎるということを、我が党の委員を中心にずっと議論をしてきたわけです。
皆さんがモデルにしたと言われている英国の法律は、事業者の自浄力に期待するだけという我が国の日本法に対して、公益開示による公益擁護を本質とするものだというふうに私は存じていますが、この理解で、大臣、よろしいでしょうか。
○竹中国務大臣 基本的にはそのように存じます。
○原口委員 ですから、私は、公益開示による公益擁護、私たちが出した法律もございます。これほど狭くするのであれば本来の意味での公益が守られないのではないかという多くの国民の心配はまさに的を射たものではないかと思いますし、審議経過からも、英国法を参考にしても、法令違反に限定する根拠というのは明らかになりませんでした。
審議会で、法令違反の有無を問わず生命、身体への危害のおそれのある場合を通報対象とする、最終報告書のこの意見が多数だったはずで、検討委員会で、法令違反だけを対象とする意見は一部の事業者と業界団体だけだった。まさにこの報告書自体の両論併記方法が不適切であったのではないかと私は思っています。
また、一部上場企業のアンケートについても、通報範囲については法令違反に限るというのはむしろ少数で、人の健康または安全が危険にさらされる場合や環境に悪影響がある場合ということで、法令違反に限定する意見ではございませんでした。また、国民生活モニター調査、内閣府が行われた調査でも、九六%以上の人が公益通報者保護制度が必要ということで、人の健康や安全が危険にさらされる場合を対象とする意見が九〇%で最多だったわけですね。私は、こういう意見をしっかりと踏まえた上で法案をつくるべきだというふうに思います。
私たちは、政府の枠の中で、労働者の保護法制あるいは事業者の自浄作用という、この枠に乗ったものとしても狭過ぎるということで、修正案をこの国会に提出させていただいています。
さて、質疑の中で、前回の質疑のときに竹中大臣とさまざまな観点から質問を、あるいは御答弁をいただきましたけれども、少し公共の福祉の概念について議論をしておきたいと思っています。
竹中大臣は、先日、私の質問に対して、自由を保障すればするほど、自由と同時に、悪いことをする自由もふえてしまうんではないだろうかというふうにお答えになりました。これは、自由に対する考え方が私たちと基本的に違うということはそのとき申し上げました。
また、自由を保障するという一つの方向性と同時に、被害を避けるという意味での一つの方向性、それをいかにバランスさせるかということが重要というふうに御答弁をなさいました。バランスさせる利益そのものが問題があることが、もうその質疑の中で明らかになっているわけです。
すなわち、政府案では、通報対象や要件を極めて限定化したために不整合が生じているんです。限定的に列挙される法律のうち犯罪行為となるもの及び行政処分を経て最終的に刑罰で強制される規定の違反のみが対象とされ、極めて狭い範囲に限定していることが大きな問題だというのは、この間も申し上げました。
生命、身体、財産の侵害という極めて重い事実を前に、公益開示による回避を真摯に悩んでいる国民の立場に立った法制が必要なのではないかということを、冒頭強く申し上げておきます。
国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令の遵守を図るということがこの法案の、閣法の目的としているにもかかわらず、これでは対象の範囲が狭過ぎて、被害の発生を本当に防止できるんだろうか、そのことを思うわけです。
先ほど、伊藤大臣は、我が党の泉議員の質問に対して、より事実を明確化するんだ、まさに生じようとしているときについてのお答えでございました。具体的にお聞きしますが、では、不正受給をしようとして犯罪行為を計画している、いわゆる犯罪行為の計画予備の段階。計画予備の段階は、この内部通報に当たりますか。当たらないでしょう、いかがですか。
○伊藤副大臣 まさに生じようとしていることでありますので、今の御質問に対しては、やはり当たらないということになろうかと思います。
○原口委員 大臣、おわかりでしょう。つまり、偽装表示をしたり、あるいは補助金の不正受給をしたり、そういうものを計画した段階。その計画をした人はとめられないんですよ。それを言ったときに、皆さんのこの法律はオペレートしないんです。いかがですか。
○伊藤副大臣 これは、漠然とした場合はとめられないということでありまして、蓋然性があった場合には、それは対象になっていくということでございます。
○原口委員 それをどうやって判断するんですか。そこは、内閣府の役人の方が伊藤さんに耳打ちされたのかもわからないけれども、だったら、まさに生じようとしているときなんて言わなきゃいいんですよ。「おそれ」でいいわけです。今あなたがお答えになったのは「おそれ」でも読める話で、まさに生じようとしているときという条文を入れた瞬間に、それは、今私が申し上げた計画予備の段階は抜けるんです。
計画予備の段階が抜けたら、命やさまざまな公益の保護に対するこの法律がオペレートしないんです。するんですか、しないんですか。
○伊藤副大臣 これはそれぞれのケースに応じて判断されることになろうかというふうに思います。
○原口委員 今私はケースを言っているんじゃないんです。ケースを言うんであれば、事実を明確化するためにこのことを書いたというのは、皆さんの答弁、矛盾するじゃないですか。つまり、事業者もあるいは通報者も、どういう事実だったら明確に守られるんだということを、皆さんは殊さら何回も何回もここで強調されてきたわけです。ケースによりますと言うんだったら、こういう法律は要らないじゃないですか。もう一回答弁をお願いします。
○伊藤副大臣 これは、「まさに」というのを入れさせていただいたのは、単純に生じようということだけではなくて、「まさに生じよう」ということで、その蓋然性をしっかりさせる。そうしたことによって労働者と事業者の事実誤認ができるだけ生じないようにしていく。そういう意味から、先ほど御答弁をさせていただいたように、このような規定を設けさせていただいたところでございます。
○原口委員 大臣に伺います。
だったら、「おそれ」でいいじゃないですか。犯罪行為を計画予備の段階でとめないといけないんですよ。その予備の段階でとめられるということを万人がわかるような法律にしておく必要があるんじゃないですか。いかがですか。
○竹中国務大臣 これは伊藤副大臣がお答えになったとおりだと思います。これは非常に多様な、いろいろなケースが、まさにこういう問題というのは常に限界的なケースでありますから、いろいろな場合がございますでしょう。しかし、その可能性があるとか、そうかもしれないとか、そういうことではなくて、その可能性が極めて高い、まさに生じようとしている。そういうときに、しっかりとその枠組みをつくって、これを防止していこう、これが本法案の趣旨でございます。
○原口委員 いや、全く答えがわかりません。計画予備というものが入るのか入らないのか。もう一回、大臣お答えください。
○竹中国務大臣 計画予備とはどのようなものでございますか。それをお教えいただいて、お答えをさせていただきます。
○原口委員 例えば補助金の不正受給という問題について、そういうことを計画しようとしている。どこどこに何を……(竹中国務大臣「計画しようとしてですか」と呼ぶ)いや、計画した、計画したんですよ。そして……(発言する者あり)ハンナンのケースでも結構ですよ、まさに偽装やあるいは補助金の不正受給ですね。あれは、だれにどのような工作をし、そしてどのようなネゴシエーションをし、そしてどのような理屈をつくればいいかという、その計画を立てた。では、この計画を立てたということは、これに入りますか。
○伊藤副大臣 要は、どうしてこの規定を設けたかというと、今委員が御質問されたように、いつ、だれが、どこでというものが、つまり蓋然性が明確になれば対象になります。しかし、私どもがこの「まさに」という文言を入れさせていただいたのは、漠然としたもの、これは排除をしていく。そのことによって事業者と労働者の事実認識の誤認というものを防いでいきたい。そういう思いでこうしたものを入れさせていただいたということでございます。
○原口委員 全然明確じゃないですよ。計画予備について具体的に説明しろと言ったから、私は具体的に説明しました。これが計画予備です。これは入るんですか、入らないんですか。
○竹中国務大臣 入る場合も入らない場合もあると思います。つまり、その人が非常に、例えばそういうことを行使する立場にあって、やるぞという強い意図を持って、それで綿密に計画を立てているのか、単に頭の体操としてそういうことをやっているのか、これはケース・バイ・ケースで、それを判断しないと何とも言えません。
○原口委員 いや、全然明快じゃありませんよ。
計画予備でしょう、まさに。計画予備については、では、入らないという意見ですね。それとも、それは判断をするということですか、ある場合には入ったり、ある場合には入らないということですか。では、そこの要件は何ですか。それを分かつ要件は何ですか。
○竹中国務大臣 今お話を伺っている限り、原口委員がおっしゃる計画予備というのは、非常に幅の広い、いろいろなケースがあり得ると思います。その中で、今おっしゃったような形で、私が申し上げたように蓋然性が極めて高い場合とそうでない場合でこれは判断が違ってくるというふうに思います。
○原口委員 蓋然性とは何ですか。つまり、計画が実行されるという蓋然性ですか。どういう意味ですか。
○竹中国務大臣 それの主体が持っている意図、計画の綿密性、実行可能性、そのようなものをさまざまに総合して判断されるのが蓋然性だと思います。
○原口委員 そうしたら、わざわざここに、まさに生じようとするなんということを入れる必要はないということを指摘しておきます。あなたがおっしゃっているのは「おそれ」なんですよ。蓋然性を示した言葉が「おそれ」という言葉になるわけです。違いますか。
○竹中国務大臣 ですから、蓋然性が高いかどうか、おそれが高いかどうかということを申し上げているわけでございます。
○原口委員 それはいい答弁ですよ。だったら、この解釈はおそれということでもできるということでよろしいですね。蓋然性が高いかどうか、おそれが高いかどうかということでしょう。
○竹中国務大臣 おそれ、蓋然性が低いような場合は当然含まれませんし、そういう事態が切迫しているかどうかということで、今まさに生じようとしているかどうか、そのような表現になっているわけでございます。
○原口委員 切迫しようかどうかというのは、計画段階ではまだ切迫じゃないわけですよ、だから計画予備の段階は何ですかということを聞いているわけで。つまり、ここのところが狭く狭く解釈されてしまえば……(発言する者あり)大事な議論をしているんだから黙れ。
ここのところが一番大事なんですよ。なぜかといったら、多くの人たちの命を守るためにオペレートさせなきゃいけない、まじめに通報をしようとしている人たちを保護しようということでしょう。だったら、今大臣がおっしゃるように、蓋然性が高ければこの保護の対象になるということでよろしいですね。
○竹中国務大臣 蓋然性が高いということは、繰り返しになりますけれども、そういうことを計画している人がそれを実行できるような立場にあり、そういう強い意図を持って、またそれが、まさに計画が実行に移されようとしている、そういう状況を私は申し上げているわけでございますので、そういう場合は当然のことながら対象になるわけでございます。
○原口委員 それが入るということを確認させていただきました。
契約自由の原則など自由な経済活動も、法の支配、公共の福祉が前提であります。だから、皆さんが、国民の生命、身体、財産の保護、しかもそれを侵す犯罪行為の防止と何をバランスさせようとしているのかということが、この法律の中では非常に不明なんです。
憲法第十三条、個人の尊重と公共の福祉にも、「すべて国民は個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする。」とあります。これは、個人が個人そのものとして価値あるものとされて、しかも人間社会における価値の根源とされる、個人主義の原理を言ったわけですが、一方では、個人を超えて価値を持つ全体のためと称して個人を犠牲にするところの全体主義を否定しているわけです、この条文は。もう一つ、他方では、すべての個人が個人としてひとしく尊重されることを要求するので、他人の犠牲において自己の利益を貫こうとするところの利己主義をも否定した条文だというふうに理解をしています。
一七八九年のフランス人権宣言、これには、自然にして時効によって消滅することのない権利をうたい、自由とは他人の権利を侵害しないすべてをなし得ることであるとしています。
この法案は、本来は国民の正義を貫徹する権利を保障する法案でなければいけない、公益を保護するための法案でなければならない。議論が混乱するのは、初めから権利あるいは自由と言うべきでない事柄に、例えば脅迫する権利なんというのはないわけです、権利という名前を与えて、したがってそのようなものを制約することの必要性について何人も争わないような事例について、その制約として公共の福祉を持ち出すということが往々にしてあります。このように、権利も公共の福祉も全く無規定に膨らませておいて、そして本当に権利を制約する段になると、実は初めから権利と言えないものを制約すると同じような気安さで、権利の制約を正当づけるのである。このように樋口陽一先生は基本法コンメンタールの中でお書きになっています。
私たち立法者は、ここを一番気をつけなきゃいけないんです。本来だったら絶対権利と言えないようなもの、そんなものの濫用まで頭に入れて、そして実際に守らなければいけない公益開示者、公益通報者の利益を損なうということを最も心配しなきゃいけないということを私は申し上げたいと思います。
さてそこで、今までの質疑の中で、制度の運用が混乱する、あるいは濫用が心配だというような答弁が幾つかありました。具体的にどのような混乱を想定しているんですか。それに対して、本法案ではどのように手当てしているんですか。そのことをお聞きしたいと思います。大臣。
○竹中国務大臣 前半、原口委員が、私たちの社会を支える重要な価値としての自由、それについて非常に格調高く樋口先生の言葉を引用されながらお話をされました。ここは、私たち、まさにそういう思いでこの法案をつくっておりますし、運用したいというふうに考えているところでございます。
今、委員のお尋ねがありました、具体的にどのような混乱があり、それに対してこの法案ではどのように手当てをしているのかという、その問いでございますけれども、私が、私のみならず答弁者が、制度の運用が混乱するとの答弁を行っている趣旨は、通報対象や要件が不明確であれば、通報者と通報を受ける事業者との間で事実確認に相違が生じる、その結果として制度の運用に混乱を来す、そういう趣旨で述べているものでございます。
具体的に申し上げますと、本法のこの解釈に関連しまして、労働者と事業者の間に事実認識の差が生じますと、例えば、労働者は本法の保護要件を満たしていると考えて通報した場合であっても、事業者は満たしていないと考えてこの当該労働者を解雇するということが、例えばでありますけれども考えられます。この場合、例えば最終的に裁判所でこの当該解雇は無効とされたとしても、それまで当該労働者は不安定な立場に置かれることになる。これは先ほど伊藤副大臣から答弁させていただいたことと重なる部分でございます。
こうしたことのために、制度の施行によってこのような混乱が生じることを極力避けるために、この法案ではどうしているかといいますと、通報対象を明確化する、通報対象を範囲が極めて明確な法令違反に限って限定するということや、具体的な通報者の保護要件を設定した。つまり、例えばですけれども、事業者、外部への通報の要件をこの第三条第三号イ―ホに具体的に列挙した。そういうふうに具体的に定めることによって、予見可能性を高めるための制度設計に努めている。もって、混乱を来すことを避けたいということでございます。
○原口委員 もともと法案の原案はそうだったはずなんです。ところが、明確化を理由に通報対象を一方で限定して、そして労基法十八条の二による解雇無効の矛盾というものを、皆さんの答弁によると六条で該当しない場合でもケース・バイ・ケースで労基法十八条の二の適用があると答えているので、事業者としてどう対応すべきかの議論はこの法案だけでは解決しないんですよ。
つまり、与党の修正で六条を後で加えたために、明確化の根拠が矛盾する。本来的な矛盾をここに抱えているわけです。そう思われませんか。
○竹中国務大臣 大変申しわけありません。今の委員の御趣旨がちょっと読み取れなかったものですから、もう一度御説明をお願い申し上げます。
○原口委員 つまり、今の竹中大臣の御答弁は、事業者もそれから労働者も同じ、つまり解釈にあって別々の解釈をしないように、そういう混乱をできるだけ少なくするように明確化するんですよという御答弁ですよね。明確化を理由に、だから通報対象を限定したんだということをずっとおっしゃっているわけですね。明確化するためには通報対象を限定する必要があると。
ところが、この法案には、労基法十八条の二による解雇無効、つまり六条で該当しない場合でも、この法案に該当しない場合でもケース・バイ・ケースで労基法十八条の二が適用しますよと言っているわけです。だから、反対解釈をしないでくださいということを私たちも言っていましたから、一般法理を云々しないというのは大事なことなんだけれども、しかし、この法六条を加えたことによって、明確化というベクトルと、それ以外についても適用はありますよというベクトルと、二つのベクトルができているわけです。
ということは、事業者は、あるいは労働者は、どこだったら一致するのかということがわからなくなるんじゃないですかということを言っているわけです。
○竹中国務大臣 私が今お伺いしている私の解釈が誤っていなければ、それが不明確ということではないのではないかと思います。
つまり、この範囲につきましては、通報対象とかいろいろなことを限定して、これについては今回の法案で適用されますよ、それ以外のところは、まさに委員おっしゃったように我々は反対解釈されないためにこの六条を入れているわけで、それについては今までどおりこの一般法理で解釈していただいたらいいですよということであります。
これは、まさに部分を明確にしたということに今回の法律の趣旨があるのであって、それがちょっと別のベクトルを向いて矛盾するということではないのではないかというふうに思います。
○原口委員 いや、少なくとも、事業者と労働者は、この一項が入ったことによって、また別のことでも保護されるわけですね。つまり、六条というものがあるわけだから。そのことを申し上げているんで、本法案の本来的な矛盾について指摘をしているというふうにとらえていただきたい。
ちょっと時間が限られているので、このことばかりを議論はできませんが、私たちはもう一つ明確にしておきたいと思います。
公益通報支援センター、労働組合は、外部通報先ではないという答弁でした。この解釈は、その答弁でよいんですね。公益通報支援センターは外部通報先ではありませんね。
○竹中国務大臣 申しわけございません、ちょっと、いつの、だれの答弁でそういうことがあったのかなんですが、私の理解では、今のセンターは外部通報先に当たるというふうに思います。
ただし、そこが単に弁護士さんが事前相談しているとかそういうことでありますとそれは少し違った意味になってこようかと思いますけれども、通常の解釈でいけば、それは外部通報先に当たるのではないかというふうに理解をいたしております。
○原口委員 いや、それは今までの局長の答弁とも違うんじゃないですか。局長は呼んでいませんのであれですけれども、そうすると、公益通報支援センターの弁護士に相談するのは、これはいいわけですか。大臣。
○竹中国務大臣 これは通報ではなくて相談だということだと思います。
○原口委員 そうすると、公益通報支援センターの弁護士であれば、相談ということで、外部通報にはならないという法解釈でよろしいですね。
○竹中国務大臣 弁護士への相談でございますれば、たとえ具体的な事実を指摘したとしましても、この当該相談によって通報者が事業者の秘密を漏らしたことにはならない。弁護士に相談したことを理由として事業者が通報者に対して解雇その他不利益な取り扱いをすることは、これは現在でも許されないことであるというふうに思います。
○原口委員 いや、だから、それは、公益通報支援センターの弁護士に相談というのが外部通報に当たるのか当たらないのか。当たらないんですか。
○竹中国務大臣 ちょっとこちらの答弁もややこしくて申しわけございませんが、私の理解では、法律相談であれば相談であるし、通報であれば通報である。その趣旨、中身によるということだと思います。
○原口委員 そうすると、公益通報支援センターでなくても、例えば国会議員にも弁護士がいますよね。その弁護士に相談しても、これは外部通報に当たらないんですね。――いやいや、指名していません。大臣に。
○西川大臣政務官 大臣にかわって答えます。
今の話でありますけれども、私どもは、国会議員、弁護士、それはもう対象になる、こう考えております。
○原口委員 いや、つまり外部通報の対象になるわけですか。
○西川大臣政務官 今申し上げました国会議員は、国政調査権等もありますから、相談を受けてその対応ができる、こういうことでありますので、相談先として適当な者に含まれる、こういう考えです。
○原口委員 では、確認します。
つまり、皆さんの法案で言う外部通報先でないということでよろしいですね。
○西川大臣政務官 外部か内部かという話になりますと、国会議員は、これは外部ですよね。しかし、事前の相談を受けることは、この通報をしたいんだけれどもどういうふうにしたらいいかとか、このやつは通報しても大丈夫かどうかとか、そういう下相談することは、それはあくまでも相談であって通報じゃない。
弁護士と相談するときも同じ考え方でありまして、弁護士の場合は、通報する場合もあるし、事前の相談をする場合もある、こういう解釈です。
○原口委員 よくわからない。
つまり、外部通報先に弁護士は当たるのか当たらないのか、国会議員は当たるのか当たらないのか。だって、そこを明確化している法律なんでしょう。
ぜひ、委員長、整理して答弁させてください。私は明確に聞いています。
国会議員である弁護士に相談をしました。これは外部通報先ですか。
○西川大臣政務官 なかなかそれが複雑でありますが、国会議員で弁護士の人がいますが、国会議員という立場でやれば外部通報になります。
弁護士は、なぜ外部になったり内部になったりするかといいますと、弁護士法そのもので守秘義務がかかっておりますので、その立場を判断しながら相談を受けてくださる。こういうことで私は、弁護士はどちらの対象にもなる、こういうことであります。
○原口委員 それは、私たち国会議員だって守秘義務はありますよ。守秘義務をもって外部通報先とするのか、しないのか。全くわからないんです。
つまり、私たちは日ごろ行政府に対するチェックを専らとしています。ですから、この通報者が犯罪事実、あるいはまさに生じようとしている、そういうものを認知した、そのことについて相談を受けた。この相談を受けた、どこに持っていったらいいだろうか。これは外部通報に当たりますか。
○西川大臣政務官 弁護士が相談を受けたとき、これは通報が主なのか、事前の相談が主なのか、話の内容によるわけでありまして、どちらにもとれる、こういう解釈であります。(発言する者あり)
○山本委員長 ちょっと速記をとめてもらえますか。
〔速記中止〕
○山本委員長 速記を始めてください。
議事を進めたいと思います。原口君。
○原口委員 整理して答弁してください。
○西川大臣政務官 私どももこの法案を策定するに当たって、いろいろ検討してきました。それで、原口委員が今言っておりました弁護士への相談、他の守秘義務を有する者への相談の取り扱い、こういうことで私どもは検討してきましたが、その統一的な見解をお知らせ申し上げます。
通報者が通報する前に、当該通報した場合本法案によって保護されるかどうか、こういうことを弁護士等に相談すること、これは大丈夫かどうかと相談しますね、これはあくまでも相談であって通報ではない。ここまではいいですね。そして、弁護士または他の守秘義務を有する者への相談であれば、当該相談によって通報者が事業者の秘密を漏らしたことにはならない。
こういう解釈でありまして、弁護士等に相談したことを理由として、事業者が通報者に対して解雇その他不利益な取り扱いをすることは現在でも許されておりませんが、その考え方で進めていくという考え方であります。
○原口委員 そうすると、五月十四日の泉委員の質問に対して、こう泉委員は質問されています。
「最後の質問になりますけれども、事業者団体、消費者団体との連携というものをこれまでの答弁で何回かお伺いをしました。しかし、私たちは、今の時点では、NPOやさまざまな団体との連携、労働組合ですとか消費者団体との連携というのは外部通報に当たるというふうに言われてきたわけですね。ですから、答弁の中で、通報前相談、通告前相談というんですか、そういったものでNPOやさまざまなところと連携をしていくというふうにおっしゃられていましたけれども、では、もうその件については外部通報とみなさないというふうなことでよろしいでしょうか。」という泉委員の質問に対して、永谷さんという政府参考人、これは局長ですね、「御指摘のとおりであります。」と答えているわけです。
このとおりですね。
本来は政治家の判断を求めるわけですけれども、御本人がいらっしゃいますか。では、これはどういうことですか。
○永谷政府参考人 泉先生のその質問というのは、通報前の相談をNPOとかそういうところにするというふうにおっしゃっていました。したがいまして、通報前の相談をそういうNPO団体でありますとかそういうところにするということは、これは通報でも何でもないですね。
○原口委員 つまり、そうすると、さっきの政務官の答弁と、それでは通報前であればNPOやNGOともさまざまな議論をやっていいわけですね。これは答弁に残りますからね。
大臣、この認識でよろしい、今局長が答えたわけですけれども、よろしいですね。
○西川大臣政務官 具体的にこれをどうするかということを考えて相談するんだと思いますけれども、通報を前提に相談しているかどうか。相談をしてみた結果、これは通報しても自分の身分が守られないということになるかもしれませんし、守られるかもしれません。これを相談することは、あくまでも相談だ、こういう解釈を私どもはしております。
それで、弁護士への相談ということになりますと、具体的な事実を提示して、私はこういうふうに告発をしていきたいんだけれどもどうだ、こういうことをやって、通報者が秘密を漏らしても、弁護士であれば、弁護士そのものが守秘義務がかかっておりますから、これは解雇あるいは不利益な取り扱いにならないように解釈できる、こういう解釈であります。
○原口委員 そうすると、NPO、NGOは弁護士のような強い守秘義務はかかっておらないと思いますが、そこと弁護士を分ける論理はどこにあるんですか。つまり、通報前事前相談であればだれにでもできますということですね。
○西川大臣政務官 それは、委員も物事を、世の中の問題で、私こうしたいんだけれどもどうでしょうかという相談は、どこでもする場合があるんじゃないでしょうか。その中で、企業の秘密を漏らしてしまって企業が非常に不利益をこうむる、こういうことになりますと、これは、守られるか守られないかという判断が一番働きますけれども、一般の相談事をすること自体は、私は相談でいいと思う。ただ、NPOやそういう団体に秘密を漏らすということになれば、これは外部団体への通報、こういう解釈になるということです。
○原口委員 いや、秘密を漏らすなんて一言も言っていないですよ。いわゆる通報事実を、NPOやNGOに、事実がどんなものかわからなきゃ相談のしようもないわけですよ、そこのところはどうなんですかと。だって、そこがはっきりしないとこの法案はオペレートしないんですよ。大臣、いかがですか。
○西川大臣政務官 今まで私が答えてきましたのでもう一度お答えしますけれども、相談をする内容の問題があります。
具体的な例を挙げながらも、中身の問題、深く掘り下げた話であれば、これはもう通報に値するわけでありますけれども、具体的な事実を示さずに、大体こんなことでこういうようなことを考えておるというもの、こういう相談はあくまでも相談であって、通報は内容による。具体的なものを、会社の秘密等を漏えいする、こういうような状況での相談であれば、これは外部通報に当たる、こういう解釈です。
○原口委員 では、そういう、相談は内容によりますよということをちゃんと国民に周知してくださいね。今みたいなのでこの法律が明確だなんというのは言えないんですよ。
私は、いい方の外部通報の要件についても、これが形式的要件に置きかえられていることに大変大きな危惧を感じています。
なぜかというと、この間、大臣お聞きになりましたよね、都市整備公団総裁との私の議論。調査をするというふうにおっしゃったわけです、大臣はそのとき。調査が始まっているだろうと思っていました。(竹中国務大臣「総裁」と呼ぶ)総裁が。いや、国交大臣もおっしゃっていたわけです、委員会で。ところが、御自身の手による調査は何もなさっていなかった。いや、その手前にはやっていましたよ。だけれども、私が調査をさらにしてくださいと言った後からはしていない。つまり、警察に告発をしたからしていないというおっしゃり方なんです。
皆さんの法律も、この形式的要件に置きかえられて、逃げられてしまうんですよ。逆に言うと、調査を二十日以内にしますよということさえ言えば、調査をしますよということを言えば、その内容がどうであったかということは、特に行政機関についてはわからないわけですよ。そのままネグレクトされてしまえば、公益通報者の思いというものは通っていかないわけです。
そこのところのリスクヘッジをどのように考えていらっしゃるのか。竹中大臣、お願いいたします。
○西川大臣政務官 非常に広範囲に及ぶ法律でありますし、当初の予定では、対象法令が非常に多い数を想定しながらこの法案をつくってきました。そういう中で、七本の代表的な法律を例示して、これから政令で二年間かけて決めていくわけでありますけれども、政令と同時に、これだけの法律を運用するわけでありますから、私どもも、しっかりしたガイドラインをつくる、あるいは関係団体にこの法案をよく周知徹底を図るようにやりますので、きょうの議論を踏まえながら、そのような対応を図っていきたいと考えております。
○原口委員 いや、議論ではなくて聞いているんですよ、質問をしているわけです。
二十日以内に形式的要件で調査をしますと言いさえすれば、外部に行けないんじゃないですか。調査をして是正をするとか、あるいは行政機関についても、その後どのようにするかというものをちゃんと決めておかないといけないんじゃないかということを言っているわけです。
委員長にお願いしますが、私は、副大臣、政務官は指示をしたときだけお願いしますということでお願いをしていますので、ぜひ大臣、政治家同士の責任ある、私もこの法案の民主党の責任者です、ですから責任ある答弁を大臣からいただきたいということでお願いをしておりますので、よろしくお願いします。
○竹中国務大臣 我々なりの分担でお答えをさせていただいておりますけれども、今の原口委員の御指摘に従いまして、行政機関に通報しても、当該行政機関が一体その後どう動くのか、その実効性をどのように担保できるのか、そこは確かに重要な点であるというふうに私も認識しております。
まず、この法案では、通報を受ける行政機関に対して、「必要な調査を行い、」「法令に基づく措置その他適当な措置」をとることを義務づけている、これは第十条の第一項でございます。これが一つの担保でございます。
それでもまだ不十分かもしれないという御指摘かもしれませんが、本制度の施行に当たりましては、まさにこの規定の実効性を担保するために、行政機関における通報処理ガイドラインを作成いたしまして、適正な通報の処理に我々としても万全を期したいというふうに思います。これは、内閣府として全体としてのガイドラインをつくりますし、また、それぞれの役所において、その役所の実情に合わせた個別のより詳細なガイドラインをつくっていただきたいと現時点では考えております。
○原口委員 そこは、本当に明記しないとオペレートしないんですよ。
つまり、行政はすべきことをするんだという行政性善説。今、葉梨先生が、信用しましょうと言っている。信用できたらそれが一番いいんですよ。しかし、どうですか。あの東電の事件もそうだし、さまざまな問題でそれがオペレートしなかったから被害が拡大した。大和都市管財の事件をなぜ出したかというと、あれは、もうとうの昔に内部通告があって、そして皆さんも、業務改善命令の中で、実質債務超過であるということを、その文書はちゃんと皆さんが出されているわけで、そこがオペレートしないときにどうするんだ。
内閣府の答弁では、行政はすべきことをすると言っているだけで、外部通報への道が開けているというお答えではないんですよ。東電原発の告発は二年余り放置されていて、その後刑罰の対象外となったために、もともと本法案の対象外となっているわけです。こういったことに対して、どのように公益を守るかという視点がないと、オペレートしない。
もう時間が限られてきましたから、またもう一つ大事な点をお聞きしますが、例えば、通報を受けた事業者が通報者の氏名などの個人情報を社内に流布する行為というのは、本法案では禁止しているんでしょうか。また、事業者や行政機関が通報者の氏名など個人情報を漏らさないように、本法案で担保しているんでしょうか。
これは所管が違いますけれども、行政機関の個人情報保護法では、行政機関が通報者の個人情報を漏らした場合の違反にはならない。あれは、データベースを五千件以上持っていて、そしてそれを外に出した云々という、数の要件があったというふうに思います。
通告をした人がその個人情報を外に漏らされるほど厳しい話はないわけです。名前を出しているわけです、今回の法案の場合は。実名ですよね。この点についてどのように担保しているのか、あるいは、この法案でカバーできているということであれば、大臣に御通告申し上げた問いの十と十一ですが、お答えをいただきたいと思います。
○竹中国務大臣 原口委員の今のお尋ねは、要は、通報を受けた事業者が通報者の氏名などの、具体的には名前だと思いますが、個人情報を社内に流布する行為、これは一体この中でどのように扱われるのか。
これもいろんなケースがあろうかと思いますので、極めて一般的なことになりますけれども、例えば、通報を受けた事業者が氏名などを社内に流して、その結果、通報者の就業環境を害したような場合には、そのような行為は、この法案で禁止している公益通報を理由とした不利益取り扱いに該当するというふうに思います。
その理由は、この法律の第五条で「不利益取扱いの禁止」というのが一般に規定をされています。「第三条に規定するもののほか、」云々「その他不利益な取扱いをしてはならない。」不利益な取り扱いの例としてはこういろいろ書いてございますけれども、まさにこれは内容次第ということになりますけれども、それによって不利益、まさに通報者の職場環境を害したような場合には、これは不利益取り扱いに該当するということになろうかと思います。
○原口委員 時間が参りましたけれども、この法案は、第三条、当該通報が被害の発生を未然に防止するために相当な通報先とはどのような内容かということ、これも示されていません。
さっき議論が混乱しました。後で議事録を精査しても、本当に国会議員は事前相談できるんだろうか、何なんだろうかというのはわからないですよ。議員が外部通報先として相当な場合とは何か。マスコミが外部通報先として相当な場合とは何を示すのか。
今申し上げた秘密保持。犯罪行為については守秘義務違反を問われない、しかし犯罪事実についてだけ、事実上外部通報を不能にする。通報者の秘密保持といったことについてもどのように考えればいいのか。
あるいは、少なくとも私たちは、労働者の保護法制、事業者の自浄作用というこの枠組みにのっとっても、このような状況では大変難し過ぎる。間違って別の省庁に通報したとき、これについてどのようにするのか。
私は、内閣府なりにワンストップのサービスを設けて、そこで整備をするようにしないと、一般の労働者や一般の国民に、どこどこに行ってくれなんというのは、阪口参考人でしたか、これでは支援センターの業務は一時停止せざるを得ないという証言あるいは参考人の御発言というのは重いと思いますよ。この発言を受けて、大臣は、どのように善処しようとされているのか。あるいは法案の修正をされようというのか、あるいは運用で担保しようとされるのか、最後にお聞きをしたいと思います。
○竹中国務大臣 我々の法案、我々としては、いろいろな制約条件の中で、これが最良のものであるということで提出をさせていただいております。
今の原口委員の御指摘、内閣府で一元的に受けるという方法はどうなのかという直接的な御指摘でございますが、これは私自身、内閣府で仕事をしておりますけれども、内閣府で一元的に受けても、しかし結局はその担当省庁に持っていかざるを得ないというようなことになります。そういう意味では、我々としては分権型でやらせていただきたい。それぞれの問題についてきちっと事態を把握して、またそれを解決する手段を持っている省庁で直接やっていただくことが一番円滑な方法なのではないかというふうに思っているわけでございます。
もちろん、その場合に、どこの省庁が適切であるのか、これは確かに難しい面がございます。そうした点に関しては、先ほどから議論をいただいておりますようないろいろなNPOとの連携とかそういうことも含めて、事前の法律相談等々も円滑に行えるようにして、この制度が実効あるものにしていきたいというふうに思っているところでございます。
○原口委員 それは、今まで皆さんがお考えになっていた、内閣府でさまざまな企画や立案をして、そしてさまざまな行政改革をやっていく、構造改革をやっていくという考え方からすると、必ずしもその方向性を向いているとは思いません。
ぜひ、一元的な、権限のない行政機関に権限があると誤信して通報した場合は外部通報に当たらないんだということを、はっきりこの法文で書くべきです。あるいは、行政機関に通報するも、相当の期間経過しても正当な理由なく調査しなかった場合、または調査しても正当な理由なく是正しなかった場合にどうするかということもちゃんとやっておかないと、公益は守られない。
私たちは、これは与野党対立法案だと思っていませんよ。どのように公益通報者を守る、あるいは公益を守るかという観点から、公共の福祉を守るという観点から議論をしているのであって、ぜひ、今まで議論をしてきたことを法案の中身に生かして修正に応じるように強く求めまして、質疑を終えたいと思います。
ありがとうございました。
○山本委員長 次に、吉井英勝君。
○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
私は、前回も前々回も取り上げました原子炉規制法の内部告発に係る規定に関連して、最初に伺っておきたいと思います。
原子炉規制法六十六条の二というのは、ずっと以前、告発、申告するというのは、鉱山保安法、船員災害防止活動の促進に関する法律とか、いろいろ若干あったわけですが、しかし、それが、九九年のジェー・シー・オー事故を受けた原子炉規制法改正の中で、内部告発というものが組み込まれてきたわけです。それを今度、公益通報者保護法として新しい法律をつくるからには、やはりまず原子炉規制法六十六条の二、この内部告発の仕組みが、道を開いたにしてもきちんと機能したのかどうか、それを新しい公益通報保護の法律にしようと思ったら、どこをどういうふうに発展させていかなければいけないかということについてきちんとした検討が大事だということを、この間も前々回も申し上げました。
そこで、東電不正事件の場合は、この法律があっても、内部告発はあったんだけれども、事実上、二年間放置されたということとか、告発した人をばらしてしまったこととか、告発者が不利益な取り扱いを受けた。外国の企業ということはあったにしても、そういうことがあったわけですね。
ですから、この間も申し上げておきましたけれども、この法律が東電不正事件で機能したのかということについて大臣として検討されたのかどうか、それを今度の法律でどう生かそうとしてこられたのか、そこのところを最初に伺っておきたいと思うんです。
〔委員長退席、大村委員長代理着席〕
○竹中国務大臣 先日の審議の中で、吉井委員から、原子炉等規制法を運用して、それの教訓をどのように学び、これをどのように本法案に生かしているのかという御質問をいただきました際に、我々の準備が不十分で、十分にお答えできなかったことはおわびを申し上げたいと思います。
この法案の立案に当たりましては、これは国民生活審議会の消費者部会のもとに設置をされました公益通報者保護制度検討委員会におきまして、この制度の具体的内容について御審議をいただいたわけであります。その際に、どのような保護制度を構築するかという、その枠組みの検討過程で、まず、行政機関への通報制度を設けまして、通報者に対する不利益取り扱いを禁止し、これを罰則によって担保するような、委員御指摘の原子炉等規制法の枠組み、これが一つある。一方で、英国公益開示法のような民事ルール的枠組みがある。この二つの枠組みについて御審議をいただきました。その結果として、民事ルール的枠組みを採用するという結論が得られた。
その意味では、繰り返しになりますが、民事ルール的な、英国公益開示法的な枠組みの選択を我々はまずそこでしているということでございます。
なお、委員御指摘の原子炉等規制法の申告制度に関しては、これはいろいろ問題があるではないかという御指摘、前回からいただいておりますが、申告者の個人情報の保護等を規定いたしました行政機関の通報処理のガイドライン、これは原子力施設安全情報申告制度運用要領という長い名前でございますけれども、これが策定されております。こうしたあれで、今、その制度そのものも進歩させようとしているわけでございますけれども、我々としても、このような例も参考にしながら、適切に制度を運用してまいりたいというふうに思っているところでございます。
○吉井委員 そこで、政府参考人に伺っておきますけれども、では、この原子炉規制法六十六条の二にかかわって、東電の不正事件の場合、二年間放置されたということとか、告発者名をばらしてしまったこととか、告発者が不利益な扱いを受けたということについて、だれかが何か責任をとるという形で処分というのはありましたか。
○永谷政府参考人 処分があったかどうかという点についてでありますけれども、今の時点で存じ上げませんので、お答えは差し控えさせていただきます。
○吉井委員 気楽な話だと思うんですね。私は、前々回も前回もこれを取り上げて、この間通告もしておいたんですけれどもね。
あのときはこういうことなんですね。原子力行政に対する信頼を大きく損なうことになったことを踏まえ関係者に反省を促しということで、要するに、国公法上の職務忠実義務、これを求めて、違反じゃなくて求めてですよ、戒告や訓告処分とか、担当大臣は給与の自主返納ということはありましたけれども、要するに、罰則を含めた法律はつくったんです、内部告発のルートを含めて内部告発の仕組みをつくったんだけれども、二年間放置され、告発者をばらしても、告発者が不利益な扱いを受けても、六十六条の二によっても、七十八条の四によっても、結局、二の一項、二項ともそうなんですが、要するに何もなかったわけですね。
つまり、内部告発をした人が、生命、財産とか国民の安全にかかわってくる問題で内部告発しても、不利益を受けても何もなかった、この法律上は何もなかったんです。国公法上の特に法律違反というわけでもないんですが、要するに原子力行政の信頼を取り戻すように精神的に何か半分訓示するような感じで一応のことはやったということであって、法律上は何もないんです。
そうすると、今度新しい法律で大臣ルートもあるわけですが、新しい法律になると、この間の局長の答弁では、そもそも別表の中で四百八十九本の中にこの原子炉規制法を入れるかどうか、一応いただいたリストの中に載っているんですが、これも入るかどうかはわからない話なんですけれども、仮に入ったとしても、大臣ルートで内部告発した場合に、それが二年間放置されたり、告発者名をばらしてしまったり、あるいは不利益な扱いを受けた場合に、そういう大臣ルートにかかわる人たちの責任というのは今度の法律ではどうなるんですか。
〔大村委員長代理退席、委員長着席〕
○永谷政府参考人 法律の九条で、事業者への通報がなされたときの対応として、通報事実の中止その他の是正のために必要と認める措置をとったときには、それを遅滞なく通報者に通知するという話がございます。それから、行政機関の場合にも、必要な調査を行って、適当な措置をとらなければならないというふうに義務が課されております。
そこに対して通報をして、その結果として何らの対応がなされないということは、そういうことがないようにガイドライン等でも措置していきたいと思いますし、あるいは、そこの行政機関の義務違反については国家公務員法上の服務規律違反で問われるということでありますので、通報が行政機関になされた上で、その上で何らの対応がとられないということはないものというふうに私は理解しております。
○吉井委員 いや、結局、東電に対して、六十六条の二に基づく処分とか、あるいは七十八条の四に基づく罰則等、この東電不正事件に関してはないわけです。
それで、今度の場合も、新しい法律はつくるんだけれども、大臣ルートで内部告発をやった場合に、二年間放置されても、告発者名をばらしたとしても、それは公益通報者保護の法律によっては結局何にもない。あくまでも、国家公務員法とか別な法律はあるにしても、この法律によっては、内部告発者はきちんと保護される、そういう仕組みというのはないわけですね。
○永谷政府参考人 いずれにしましても、ガイドライン等をきちっと設ける形で処理させていただければというふうに思っております。
○吉井委員 実態として、まず、原子炉規制法六十六条の二によっては罰則も設けたんだけれども、この法律そのものは使われていない。これが事実です。
先日も少し取り上げましたけれども、次に伺っておきたいのは、現在、外部へ告発した労働者、せんだっての奈良地裁の不正ごみ混入事件のことを取り上げました。
あのときは、本年一月二十一日に、公益通報者を解雇したのは解雇権の濫用として救済した判決ですが、この事案というのは、業者が市から家庭用ごみ収集を請け負い、家庭用ごみ焼却炉に搬入していたんですが、その焼却炉搬入ごみに、手数料を払わなければならない事業用のごみを混入させて手数料の支払いを逃れていた、こういう問題で、市議会議長に報告し、記者会見し、公表したというものだったんですが、それで解雇されたわけですね。しかし、これは会社の不利益を外に漏らした就業違反として解雇したわけですが、判決では、解雇権の濫用により無効だと、通報者が救済されたわけです。
この事案を政府案とよく比較してみると、通報者というのは、労務提供先に対し何らの改善も要求せずに突然マスコミに通報したものである。判決では、労務提供先から口どめされたかされていないかの事実を一切認否することもなく、そもそも、ごみ不正混入を回避すべき体制をつくってこなかった被告に責任ありと。この点を差しおいて原告らにのみ不利益をこうむらせることは不均衡、不合理だということでこういう判決が下ったわけです。
つまり、奈良の判決は、労働者が直接マスコミなどに公益情報を開示した、指摘の事実が明白に判決でも認定され、通報した労働者の解雇を無効として職場復帰できたわけですが、今度の政府案でいきますと、通報者がまず労務提供先に何らの改善も要求しないままに、五つの要件も立証する事実を把握しないまま外部ルートに通報した場合、直接報道機関などに通報した場合は、保護対象とならないというふうになるのではないかと思うんですね。この点はどうですか。
○永谷政府参考人 法文の第二条に外部通報を認める要件が書かれております。その要件に合致する外部通報がなされれば、当然のことながら、この法案の保護の対象になるということであります。
○吉井委員 だから、労務提供先に対し何らの改善も要求していないままに、そして五つの要件も立証する事実を把握しないまま外部に通報したという場合は、保護対象とはならないでしょう。これにちゃんと合っておればなるんだけれども、そうでない場合は対象とならないでしょう。
○永谷政府参考人 奈良の事件の件で引用されております。この判決自体が、私どもが今提案しております法案の定める要件の該当性ということで裁判でもって判定されているわけではありませんので、確定的なお答えをすることは困難であるということをまず御理解いただければと思います。
この判決においては、不正ごみの混入は毎日のように行われ、事業者は何ら具体的な方策を実行せず、混入の事実を認識しつつ有効な対処をとらず、これを黙認していた事実を認定しております。今申し上げましたような事実が認定されているケースにつきまして一般論として申し上げれば、事業者外部への通報の要件として第三条第三号ロに定める、事業者内部に通報すれば証拠隠滅等のおそれがあると信じるに足りる相当の理由がある場合に該当し得るのではないかというふうに考えております。
○吉井委員 現在の公益通報の保護される水準というのは、やはりこの判決が今の水準だと思うんですね。つまり、そもそもごみ不正混入はやってはならないわけで、そういう不正をやっているわけですから、そういう回避すべき体制をとってこなかった事業者側に責任があるわけですから、その点を差しおいて原告のみに不利益をこうむらせることは不均衡、不合理だということで解雇無効、こうきちっと、これは今の水準なんですね。
ところが、今度の政府案を見ると、これは、事業者の違法性の程度、公益通報の内容や公益通報の社会的役割を一切考慮することなく、ひたすら外部通報の要件が労働者側にあるかどうかだけを審査する対象とする。そういう不均衡、不合理で、外部通報の要件を厳しくしているという問題があります。これでいったら、企業内部や行政内部の通報をやはり閉じ込めて、通報者を萎縮させてしまうことになってしまう。
だから、この点では、外部通報への要件、ハードルを高くするということは、やはりこれはやってはならないということを言っておかなきゃならないと思います。
次に、法案の第八条で、他人の正当な利益の尊重を規定しています。これは通報者を萎縮させて通報しにくくなる要素があり、この規定も要らないわけですが、一方で、就業規則や労働契約及び公務員法の守秘義務規定を外すという、義務を解除するという法文の規定はないわけですね。だから、これは通報者を萎縮させ、そして、通報者が守秘義務からきちっと解き放たれて本当に安心して内部告発、公益通報ができるということに、やはりそこをきちっと法文上もしていかなきゃいけないと思うんです。
この点については、なぜそういうふうにしないのか、大臣に伺っておきたいと思います。
○竹中国務大臣 我々の基本的な考え方は、まさに今吉井委員が御紹介してくださいました奈良地裁の判決に見られるように、我々の社会には、そうした公益と自由をバランスさせる、そういう意味での一般法理が既にございます。この一般法理に基づいて解決されている問題というのも多々ございます。しかし、昨今のさまざまな企業不祥事というのが、そうした中で企業からの内部通報によって生じている。そうした場合に、予見可能性を高めて、そうすることによって内部通報する人たちの利益を守ろうではないか、そういうことを明確にしようではないかということを意図しているわけです。
したがいまして、今まであったことに対してこの部分を明確化する、明確化したことによって他の部分が萎縮をするということは、これは理屈の上で私は理解できないわけでございます。これによって明確になる分、やはり今より前進であるというふうに私は考えます。
一方で、さまざまな、吉井委員今幾つかお挙げいただきましたですけれども、これはやはり、他の法令は法令で守っていただかなければいけない、そういうことはやはりどこかで調整をしていかなければいけないわけで、そうしたことに関しましては、守るべき個人情報、そういったものについては当然のことながら遵守をしていただかなければいけない、そういうことを明確にしながら、しかし、今までよりはそういった公益のために通報する人たちの立場をしっかりと守ろうではないかという枠組みになっているわけであります。
○吉井委員 国民の生命とか財産とか安全にとって大事な公益通報をやるんだけれども、しかし、それが就業規則や公務員法の守秘義務規定によって縛られてしまっているということで、通報が非常にしにくくなったり、ましてや、他人の正当な利益等を尊重せいと言われて萎縮してしまうようなことになってしまったのでは、これは本当にこの法律は機能しないということをやはり考えなきゃいかぬ。こういうことは法律上きちっと明記して、そして公益通報が進むようにやらなきゃいかぬということを申し上げておきたいと思います。
次に、下請・協力事業者の保護の問題ですが、これは今、例えば建設業法でいきますと、元請責任というものがあって、下請が仮に逃げてもどうしても、孫請の方が契約上の請負金を元請から受け取ることができる。大手ゼネコンの場合などは、だから、元請と孫請との関係においてもきちんと責任をとるという形があるわけですね。
それから、独禁法による優越的地位の濫用の防止ということでは下請二法がありますし、そこには下請検査官がいて、公取であれ、中小企業庁であれ、優越的地位の濫用があるかどうかということをきちっと見るわけですね。そこには、力において優越的な立場にある者が、力において下位にある者を、契約上の圧倒的な力の差によって不利益を押しつけるようなことがないようにという、やはりそれは独禁法の規定からして生まれているわけですが、ですから、契約自由の原則だといって、何をやってもいいということにはならないんですよ、今の法律のもとでも。
それだけに、今、大企業の方ではリストラとかアウトソーシングがどんどん進んで、下請とか協力企業、請負企業として入っていることが多いわけですから、そこが、これは公益に反するという事実を見て内部通報を行う、それについては、労働者はもとより下請業者、協力事業者についても、その役員についても、やはりきちんと保護をする、このことを考えないことには今の時代には合っていないと思うんですね。これも大臣に伺っておきたいと思います。
○竹中国務大臣 下請事業者などの取引事業者を通報者に含めるかどうかにつきましては、きょうも随分御議論をいただいておりますし、言うまでもなく国民生活審議会での審議にもさまざまな議論がございました。やはり、これは確かに優越的な地位が濫用されないようにいろいろな観点から私たちの社会も仕組みをつくっているわけで、そうした点も含めて何らかの保護を加えるべきだという意見もございました。
しかし、事業者間の取引関係に保護を加えることは、取引自由の原則、何回も申し上げておりますけれども、具体的には、さらに言えば、下請の範囲を一体どうするんだ、取引というのは非常に幅広く多様なものであってそれをどう定義するのか、そうした観点から、慎重に検討すべきという意見もございました。
そうした双方の意見があり、意見の一致が得られなかったということで、昨年五月の提言には盛り込まれなかったわけでございます。この法案では、このような審議会での議論も踏まえまして、やはりこれは慎重な検討が必要という判断から通報者に含めなかったものでございます。
なお、参考までに、ここでも議論されました英国の公益通報者保護制度、米国の例におきましても、これはあくまで労働者が保護の対象となっておりまして、取引事業者は保護の対象にはなっていないと承知をしております。
○吉井委員 これはもう前回も挙げましたが、雪印の例を見ても、やはり、この法律によって公益通報した場合に、そういう冷凍倉庫の社長などを保護するということをきちっとやらないと、本当にこの法律が機能することにならないということを申しておきたいと思います。
最後に、立証責任の転換の問題です。
法案は、解雇や減給、通常労働者より悪い環境で働かせる、あるいは左遷などの不利益扱いを禁止しているわけですが、原状回復の規定がなくて、通報者は不利益取り扱いについて裁判でしか争うことができません。通報内容によって通報者が特定されるケースが非常に多いと考えられるわけですね、そういうところから、事実上の不利益扱い、いじめとか村八分とか昇給昇格差別、ありますが、それを許さないためには、事業者側に立証責任を課すなどの措置を設けておかないと実効性は出てこないと思うんです。
通報するに当たって、真実相当性だとか、外部通報の手続要件である通報をすることによって不利益扱いを受けるだとか、証拠隠滅のおそれがあるだとか、口どめされたとか、二十日経過しても調査しないとか、生命、身体に切迫した危険があるとか、裁判になったときにこの立証責任を労働者側に負わせると、裁判が事実上できなくなったり、あるいは裁判を企業側が起こしたときに負けてしまうということになるわけで、やはり、そういう立証責任を事業者側に課すなどの措置をきちっとしておかないと、これは本当に公益通報者が保護されることにはならないと思います。
これを、時間が来たようですから最後に大臣の考えを伺っておいて、終わりたいと思います。
○竹中国務大臣 冒頭で吉井委員に答弁させていただきましたように、今回の法律のそもそも論として、いわゆる民事ルール的枠組み、これに立脚すべきであるという立場に我々は立っております。
言うまでもありませんが、民事訴訟においては、一定の法律効果を主張する者が立証責任を負うというのが原則であります。したがって、本制度においてもこの原則に従って、保護要件等については、基本的には保護を受けようとする労働者が立証責任を負うことになるということになります。
なお、実際の労働関係の裁判におきましては、労働者と事業者との立証能力の格差、現実を踏まえまして、適切な立証責任の分配が行われているというふうに承知をしています。公益通報をめぐる裁判においても、同様の取り扱いがなされるものというふうに考えております。
○吉井委員 力の差のもとではとてもそういうふうにいきませんので、それだけ申し上げて、時間が参りましたので、質問を終わります。
○山本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○山本委員長 この際、本案に対し、宇佐美登君外三名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案、また、吉井英勝君から、日本共産党提案による修正案がそれぞれ提出されております。
提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。鎌田さゆり君。
―――――――――――――
公益通報者保護法案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○鎌田委員 ただいま議題となりました公益通報者保護法案に対する修正案につきまして、民主党・無所属クラブを代表し、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。
国民の信頼を裏切る公務員の不祥事や消費者の信頼を裏切る企業不祥事が続発しています。この多くは、内部関係者の告発により発覚しています。
不祥事はあってはならないことです。しかし、それが起こったときには、一番詳しい内部の関係者から声を上げてもらうことが、被害を最小限に食いとめる最善の方法の一つではないでしょうか。でも、解雇や減給など不利益な取り扱いを受けるのが怖くて、関係者がなかなか声を上げられないというのが現実であります。そこで、公益に資する通報に関しては、通報者を守る法律が必要であると民主党は考えてまいりました。
政府は、このような民主党や消費者団体などの声に押され、公益通報者を保護する旨の法案の作成に入りました。当初聞き及んでいた政府案ですら、対象や外部通報の要件が非常に限定されているなど、多くの問題を抱えていました。しかし、新聞報道によれば、自民党の政調審議会にて、一部議員から根強い反対があって修正を余儀なくされたとのことであり、今国会に提出されてきた法案は、通報の対象や外部通報の要件がさらに限定されるなど、大幅に後退した内容となっておりました。これでは、逆に公益通報を抑制してしまう可能性が高く、公益通報者保護法の名に値しません。
このような観点から、政府提出法案について、今般、民主党として修正案を提出したところであります。
修正案はお手元に配付したとおりであります。
以下、その概要を申し上げます。
第一に、労働者のみならず、弱い立場にある下請等事業者についても保護の対象に含め、契約の解除その他不利益な取り扱いを禁止することとしております。
第二に、通報対象事実を、特定の法律に規定する犯罪行為の事実に限定せず、法令違反一般、さらには実質的公益侵害に拡大することとしております。これは、国民の生命、身体及び財産の保護並びに公益の増進にかかわる通報は、何も犯罪行為や法令違反の事実に限るものではないとの考えからであります。また、政府案では、通報対象事実が「まさに生じようとしている旨」の通報を保護対象としていますが、これでは、要件が狭過ぎて、かえって公益通報を萎縮させる可能性があります。民主党案では、これを「生ずるおそれがある旨」の通報に拡大することとしております。
第三に、外部通報先の範囲を拡大するとともに、外部通報要件を緩和することとしております。
第四に、公益通報を萎縮させる可能性があるため、通報者に他人の正当な利益等の尊重を課す規定を削除するものとしております。
第五に、取締役等について、コンプライアンス経営に努めるべきこと、通報対象事実を発見したときは誠実に対応すべきこと等を規定しております。
第六に、施行期日を公布日から一年以内に前倒しするとともに、見直しの期日についても、施行後三年を目途とすることとしております。
以上が、これら修正案の概要であります。
委員各位におかれましては、本修正案の趣旨につき十分に御理解を賜り、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○山本委員長 次に、吉井英勝君。
―――――――――――――
公益通報者保護法案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○吉井委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっております公益通報者保護法案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。
修正案は、今お手元に配付されております案文のとおりです。
政府提出法案は、通報対象事実の範囲を極めて狭く限定した上、保護すべき公益通報の外部への通報要件を高くし、しかも、保護すべき通報者から下請業者などを除外しています。また、通報者の不利益禁止の実効性確保もありません。
これでは、現行の判例水準を切り下げ、通報者を萎縮させ、公益通報を企業内部や行政機関に閉じ込めるものとなります。
本修正案は、政府案を抜本修正し、公益通報者を保護しようとするものです。
以下、修正案の概要を御説明いたします。
第一は、保護される公益通報者の範囲を「下請等事業者」に拡大することです。労働者のみならず下請等事業者も保護の対象とし、親事業者による契約の解除その他不利益な取り扱いを禁止することとします。
第二は、通報対象事実の範囲の拡大です。政府案の別表を削除し、税法、公選法、政治資金規正法などを含めた法令違反一般に拡大します。さらに、個人の生命または身体に重大な影響を与えるおそれがある事実にも拡大することとします。また、政府案の対象事実が「まさに生じようとしている旨」を「生ずるおそれがある旨」に修正します。
第三は、外部通報要件の緩和です。政府案は外部通報を行った者が保護されるためのハードルが高く、外部に通報しにくい仕組みとなっています。政府案の外部通報の五つの要件を削除し、外部通報の要件を行政機関への通報と同等にし、外部通報をしやすくすることとします。
第四は、他人の正当な利益等の尊重の規定の削除です。政府案の八条の規定は、公益通報をすることを萎縮させるので削除することとします。
第五は、立証責任の転換です。公益通報を行った労働者に対する救済を実効性あるものとするため、解雇または不利益取り扱いを争う訴訟において、事業者側に主要な事実の立証責任を課すこととします。
以上が、日本共産党の修正案の提案理由及びその概要です。
委員各位の御賛同をお願いして、修正案の趣旨説明を終わります。
○山本委員長 これにて両修正案の趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○山本委員長 これより原案及び両修正案を一括して討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。鎌田さゆり君。
○鎌田委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出の公益通報者保護法案に反対し、共産党提出の公益通報者保護法案に対する修正案に反対し、民主党提出の公益通報者保護法案に対する修正案に賛成する立場から討論を行います。
国民の信頼を裏切る公務員の不祥事や、消費者の信頼を裏切る企業不祥事が続発しています。この多くは、内部関係者の告発により発覚しています。
不祥事が起こってしまったときには、被害を最小限に食いとめる必要があります。その手段の一つとして、関係者から声を上げてもらうことが考えられます。しかし、解雇や減給など不利益な取り扱いを受けるのが怖くて、関係者はなかなか声を上げられないというのが現実です。そこで、公益に資する通報に関しては、通報者を守る法律が必要であると民主党は考えてきました。
しかし、政府が今国会に提出してきた法案は、通報対象事実や外部通報の要件が極めて限定されているなど、数々の問題点を抱えております。
以下、具体的に申し述べます。
第一に、政府案では、保護される公益通報者の範囲を「労働者」に限定するとともに、その公益通報者に対する保護を、解雇、降格、減給等の禁止といった雇用上の不利益取り扱いの禁止に限定しております。これでは、例えば、雪印食品の牛肉偽装事件を告発した西宮冷蔵のような下請事業者からの通報を抑制しかねません。
これに対し、民主党案では、下請事業者からの通報も保護対象となっております。
第二に、政府案では、通報対象事実の範囲を別表に掲げるわずか七本の法律及び政令で指定する法律に限定をしており、余りにも不十分であります。
これに対し、民主党案では、法令違反一般、さらには実質的公益侵害まで通報対象事実の範囲を拡大しております。
また、政府案では、通報対象事実が「まさに生じようとしている旨」の通報を保護の対象としていますが、これでは、被害などが発生するぎりぎりの段階まで通報を抑制し、対処が間に合わない可能性が高いと言えます。
これに対し、民主党案では、「生ずるおそれがある旨」の通報も保護の対象としております。
第三に、政府案は、外部通報先の範囲についても、外部通報要件についても、限定され過ぎており、これも公益通報を抑制する要因になりかねません。
また、共産党案では、外部通報先の範囲が政府案同様限定されていること、外部通報要件を広げ過ぎているため、ささいなことに対する通報が大量になされ、無用な混乱を起こすおそれがあることなど、数々の問題点があります。
これに対し、民主党案では、外部通報先の範囲を拡大するとともに、外部通報要件を適切な範囲で拡大しております。
第四に、政府案は、公布から二年以内に施行、見直しは施行後五年後に行うこととなっており、見直しまでの時間が余りにも長過ぎます。
これに対し、民主党案は、公布から一年以内に施行、見直しは施行後三年以内に行うこととしております。
以上のように、政府案は、公益通報者保護法案ではなく、公益通報者抑制法案というべき内容となっております。
民主党は、国民の生命、身体及び財産の保護並びに公益の増進を目指し、真に公益の開示に資する制度を構築していく所存であることを申し述べ、私の討論を終わらせていただきます。
以上です。(拍手)
○山本委員長 次に、吉井英勝君。
○吉井委員 私は、日本共産党を代表して、公益通報者保護法案に対して反対の討論を行います。
近年、内部告発によって企業や行政の違法、不正行為が次々と明らかにされています。告発がもたらす社会的役割と社会的利益に照らせば、不正等を知った者が通報をしやすくし、十分法的保護を受けられる制度を設ける必要があることは言うまでもありません。
このように、本来あるべき内部通報者保護の制度から見るなら、この法案はむしろ通報をしにくくし、かつ法的保護を限定するなど、通報者を萎縮させ、通報を抑制するものと言わなければなりません。
以下、順次反対の理由を申し述べます。
反対する理由の第一は、法案は通報対象事実の範囲を狭くし、保護すべき通報を限定しているために、通報者の運用を複雑にし、通報者保護の実効性に乏しいことです。
法案は、保護する通報対象事実をいわゆる消費者利益擁護関連法案に限定し、別表で例示的に七法律を明記していますが、政令でさらに絞り込みが予想されています。その上で「罰則のある犯罪行為」と極めて狭く限定しています。
公益にとって重要で実際に通報事例の多い税金のむだ遣い、脱税、補助金不正受給、違法政治献金、談合などは、初めから保護の対象外です。このように、通報の内容によって法的保護があったりなかったりする法律では、運用を複雑にし、実効性は期待できません。
理由の第二は、外部通報の要件が厳しいために、通報者を萎縮させ、通報を企業や行政機関の内部に閉じ込めることになるからです。
法案で規定するマスコミなど外部への通報要件は、通報者に立証が困難で、高いハードルとなっていることが質疑の中でも明らかになりました。これでは通報が、企業や行政機関の内部に閉じ込められてしまいます。閉じ込められた通報は、これまでの事例が示しているように、うやむやにされ、もみ消され、やみに葬られてしまいます。
また、法案の外部通報要件は、現行の判例水準を切り下げるもので、これまで守られてきた通報者保護の権利が奪われるおそれさえあります。
第三は、通報者保護の対象から下請事業者を除外していることです。
法案は、通報者保護の対象を労働基準法の規定する労働者だけに限定し、下請事業者を除外しています。下請事業者は、事実上元請企業等の指揮監督下に置かれているのが実態で、労働者と同じような立場です。また、この間の内部告発の多くが、そうした関連下請事業者などが行っている実態からしても、下請事業者を除外していることは不当であります。
第四は、不利益取り扱い禁止の実効性を担保する措置がないことです。
法案は、通報者の不利益取り扱いを禁止しています。しかし実際には、通報者の不利益取り扱いを認める事業者は皆無に等しいでしょう。この不利益取り扱いを通報者が立証する困難性は、これまでの裁判事例が示しているところです。事業者側に立証責任を課すなどの措置がとられなければ、不利益取り扱い禁止の実効性は担保されません。
以上述べましたように、法案は、通報対象事実の範囲を狭くし、その運用を複雑かつ実効性の乏しいものにしているだけでなく、外部への通報要件を高くし、現行の判例水準さえ切り下げています。これでは公益通報者保護法というより、公益通報抑制法であるということを指摘し、反対討論といたします。
なお、日本共産党修正案につきましては、当然のことながら賛成するものであります。
以上、討論を終わります。(拍手)
○山本委員長 これにて討論は終局いたしました。
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○山本委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、公益通報者保護法案及びこれに対する両修正案について採決いたします。
まず、吉井英勝君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○山本委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
次に、宇佐美登君外三名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○山本委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
次に、原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○山本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○山本委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、山本拓君外一名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。大口善徳君。
○大口委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、自由民主党及び公明党を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
公益通報者保護法案に対する附帯決議(案)
政府は、本法施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一 本法の立法趣旨や各条項の解釈等について、労働者、事業者、地方公共団体等に十分周知徹底すること。
特に、本法の保護の対象とならない通報については、従来どおり一般法理が適用されるものであって、いやしくも本法の制定により反対解釈がなされてはならないとの趣旨及び本法によって通報者の保護が拡充・強化されるものであるとの趣旨を周知徹底すること。
二 公益通報を受けた事業者及び行政機関は、公益通報者の個人情報を漏らすことがあってはならないこと。
三 公益通報を受けた行政機関がとるべき対応について、ガイドラインの作成等により、公益通報者に対する調査結果の通知等適切な対応を確保すること。
四 他人の正当な利益等の尊重の規定が公益通報をする労働者を萎縮させることのないよう、十分留意すること。
五 公益通報をされた事業者の是正措置等の通知が公益通報者に対し確実になされるよう、事業者に対する指導等を行うこと。
六 いわゆるコンプライアンス経営についての事業者の取組を積極的に促進すること。
七 対象法律を定める政令の制定に際しては、本委員会での審議を踏まえ、国民の生命、身体、財産等に及ぼす被害の大きさ等を精査の上、パブリックコメントにより国民の意見を聴き、対象法律を適切に定めること。
八 本法の運用に当たっては、通報をしようとする者が事前に相談できる場が必要であることから、国、地方を通じて行政機関における通報・相談の受付窓口の整備・充実に努めること。
また、民間における相談窓口の充実に関し、日本弁護士連合会等に協力を要請すること。
九 附則第二条の規定に基づく本法の見直しは、通報対象事実の範囲、外部通報の要件及び外部通報先の範囲の再検討を含めて行うこと。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
○山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○山本委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。竹中内閣府特命担当大臣。
○竹中国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法案の実施に努めてまいりたいと考えております。
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○山本委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○山本委員長 次回は、来る二十六日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時四十四分散会