第5号 平成16年11月10日(水曜日)
平成十六年十一月十日(水曜日)午前十時開議
出席委員
委員長 松下 忠洋君
理事 木村 隆秀君 理事 河本 三郎君
理事 増田 敏男君 理事 山本 拓君
理事 宇佐美 登君 理事 須藤 浩君
理事 玉置 一弥君 理事 田端 正広君
伊藤信太郎君 大前 繁雄君
大村 秀章君 川上 義博君
木村 勉君 北川 知克君
桜井 郁三君 土屋 品子君
西村 康稔君 萩野 浩基君
早川 忠孝君 宮澤 洋一君
石毛えい子君 泉 房穂君
市村浩一郎君 小宮山洋子君
今野 東君 島田 久君
藤田 一枝君 牧野 聖修君
太田 昭宏君 吉井 英勝君
…………………………………
国務大臣 棚橋 泰文君
内閣府副大臣 七条 明君
内閣府大臣政務官 木村 勉君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 松井 英生君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 桜井 俊君
政府参考人
(財務省大臣官房審議官) 佐々木豊成君
政府参考人
(国税庁次長) 村上 喜堂君
政府参考人
(厚生労働省医政局長) 岩尾總一郎君
内閣委員会専門員 高木 孝雄君
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委員の異動
十一月十日
辞任 補欠選任
江渡 聡徳君 北川 知克君
佐藤 剛男君 大前 繁雄君
同日
辞任 補欠選任
大前 繁雄君 佐藤 剛男君
北川 知克君 伊藤信太郎君
同日
辞任 補欠選任
伊藤信太郎君 江渡 聡徳君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律案(内閣提出第九号)
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第一〇号)
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○松下委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律案及び民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官松井英生君、内閣官房内閣審議官桜井俊君、財務省大臣官房審議官佐々木豊成君、国税庁次長村上喜堂君及び厚生労働省医政局長岩尾總一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○松下委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川忠孝君。
○早川委員 自由民主党の早川忠孝であります。
初めに、棚橋大臣の御就任おめでとうございます。
今回、棚橋大臣が第二次小泉改造内閣でIT担当の国務大臣に御就任になったということは、大変大きな意義があると思います。特に、専門的な分野で能力を持ち、また、日本の政策決定の中で最も重要な最先端の部分を担う先進性を持っておられる、さらには、これは自民党の中の問題でありますけれども、旧来の派閥の枠を超えて人材を登用される、そういう意味で、棚橋大臣に対して大変大きな期待が寄せられるところであります。特に、第二次小泉改造内閣の中で棚橋大臣が、どのようにこれから羽を伸ばし活躍をいただくかということによって、小泉内閣の評価が大きく問われることになるだろうと思います。
そこで、四年前の平成十二年の十一月にIT基本法が成立をし、これを受けて政府にIT戦略本部が立ち上げられたわけであります。五年以内に世界最先端のIT国家となるということを目標に取り組んでこられているというふうに承知しておりますけれども、四年を経過した現時点において、その具体的成果というものがどういうことであるか、各分野において数字をもってお示しをいただきたいと思います。
○棚橋国務大臣 早川委員にお答えをいたします。
まず、冒頭、先生から大変温かいお言葉をいただきまして、本当にありがとうございます。
お尋ねの件でございますが、IT戦略本部、これは総理を本部長としておりますけれども、におきましては、平成十三年一月にe―Japan戦略におきまして、二〇〇五年までに世界最先端のIT国家となるとの目標を掲げております。
それ以来、官民総力を結集いたしまして、高速インターネットインフラの形成促進や行政手続オンライン化法の制定、あるいは、全公立学校へのインターネット接続の推進など、IT社会の形成に向けて総合的に施策を推進してまいりました。
特に、先生お尋ねの、数字を挙げてということでございますが、以上の結果、今日では、我が国の高速インターネットは、これまた先生大変お詳しゅうございますが、御承知のように、世界で最も速く、そしてまた安くなりまして、さらには携帯電話におけるインターネットの接続率、おおよそ九〇%でございますが、これも世界一でございます。
インフラ面を中心に、我が国のIT化は大変大きな進展を遂げております。その結果、また、国の行政機関への申請や届け出も、約九六%、ほぼすべてが家庭やあるいは企業のパソコンから行うことが可能となりましたし、公立学校のホームページ、この開設率も、この三年間で、二〇〇一年の三月には三割でございましたが、二〇〇四年の三月現在で七割にふえております。
また、経済活動の中で一番身近な分野の一つでございます株式取引におきましては、株式取引に占めるインターネット取引の割合が、同じく二〇〇一年三月には六%ぐらいでございましたのが、二〇〇四年三月では二三%に急成長するなど、ITの分野が大きく暮らしを変えつつございます。
私ども、このように多くの成果を上げているというふうに自負しておりますが、今後とも、先生の御指摘に従って、さらに政策を進めてまいりたいと思っております。
○早川委員 隔世の感があるという感じがいたします。
そこで、目標年次、残された一年間、どのような課題に取り組まれるのか、御説明をお願いしたいと思います。
○棚橋国務大臣 お答えをいたします。
今お話にございましたように、来年の二〇〇五年が先ほど申し上げました世界最先端のIT国家の実現の目標年でございます。この国家目標に向けて総仕上げを行うことが私どもとしては大変重要なことだというふうに理解しております。
二〇〇一年一月にはe―Japan戦略、あるいは二〇〇三年七月にはe―Japan戦略2などを決定いたしまして、国の迅速かつ重点的に推進する施策をまとめてまいりまして、政府一丸となってIT改革の実現に取り組んでまいりましたが、先ほど申し上げましたように、着実に成果は上がっておりますけれども、一方で、この目標を実現するには、さらに今後、利用者の視点に立った電子政府あるいは電子自治体を推進すること、あるいは、医療や教育など国民の身近な分野におけるIT利用の一層の促進、さらには、やはり情報セキュリティー対策の強化などなどの分野において、重点的かつ積極的に進めていく必要がIT政策においてはございますので、世界最先端のIT国家の実現を目指し、こういった政策を中心にさらに努力してまいりたいと思っております。
○早川委員 それでは、議題となっております民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律案、いわゆるe―文書法についてお伺いいたしますが、この法律が施行されることによって、ビジネスの現場では具体的にどのような変化があると見込まれるのでしょうか。
○七条副大臣 具体的にビジネスの現場でということでございますから、私の方からお答えをさせていただきます。
ビジネスの現場では、今、ペーパーレス化が急速に進展をしており、ネットワークを通じた情報へのアクセス、あるいは検索機能の活用、多数の職員、部局による情報の共有化というような、いろいろな面で合理的な情報利用、管理が実現をしておるところでございますが、今回のe―文書法案により、保存が義務づけられている書面についても電子化が容認をされる、あるいは、他の文書とも同様に電子的に一元管理できるようになる、これらによりまして、文書保存のコストの削減だけでなくして、業務や組織自体の合理化が進むというような期待がされる、そのように考えておるところでございます。
○早川委員 今回のe―文書法の成立によって恩恵をこうむるのは、専ら大手の保険業あるいは大手の流通業ではないか、これに反して、中小零細の事業者にはメリットが余りないのではないかと言われておりますけれども、いかがでしょうか。
○七条副大臣 今、中小企業、中小零細企業にとってはメリットがないというような話につきまして、これも選択制であるということもあるわけでありますけれども、本来、電子保存は書面による保存に伴ういわゆる倉庫費用等を軽減できるものである、あるいは、電子保存を実現するに当たっては、新たにパソコンだとかスキャナー等の設備を要することのために、初期投資を避ける観点から、当面はいわゆる電子保存を導入しない中小零細事業所もあるものと予測をしなければならないと考えております。
しかしながら、情報通信技術のこれからの進展というのは非常に速いものがあるのではないか。普及が進むに従って、電子保存に要する設備の費用が急速に安くなる、低廉化をしていくということも含めまして、より多くの中小零細事業所が電子保存を実施し、あるいは業務運営の効率化につなげていくような期待ができるものでないか。当然、今先生が言われます中小零細事業所の方々にとっては、これから中長期的に考えていただきますと、メリットを考える方が随分出てくるのではないか、こういうふうに考えておるところでございます。
○早川委員 ありがとうございます。
そこで、これはe―文書法によって、電子保存の対象とする文書については主務省令で定めることとされております。電子保存の対象とする文書と対象としない文書とを区別する基準はどうであるかお伺いいたします。
○松井政府参考人 お答えいたします。
今回のe―文書法は、民間事業者等に対する書面による保存義務について、原則すべて電子保存も可能とするものでございます。
しかしながら、制度によりましては、電子保存では書面による保存に代替できない場合がございます。例えば、安全のために船舶に備えつける書類等緊急時に即座に見ることを求められるもの、また、条約により保存が義務づけられており、現に書面で保存することが国際的に行われている書類、さらには、免許証、許可証など法的地位などを第三者に標章する書類などにつきましては、電子保存で代替できないことから、これらの書面につきましては電子保存の対象としないこととしております。
○早川委員 経済界からは、税務関係書類の電子保存化について特に強い要望があると伺っております。税務関係書類については、スキャナーによって読み取り、電子保存するという方法を認めることにより、これまでのように企業が大量の文書をそのまま保管しなければならないという負担が軽減される、ひいては産業界としてコストの削減になると思われます。
そこで、その経済効果というのがどの程度あるか、産業界全体でどの程度と見込まれているかについてお伺いいたします。
○七条副大臣 今先生からお話のありました経済効果ということでございますけれども、電子保存を行う際には、先ほども申し上げましたけれども、コンピューターの購入やらあるいは電子署名の利用などの初期的な投資経費を要することがございます。書類の保存に伴う倉庫費用あるいは輸送費用等が膨大になるものが考えられることもありますけれども、電子保存を行うことにより、これらの費用のほとんどが要らなくなる、全体として大幅なコスト削減になるものと思料してまいります。
なお、我が国経済全体で保存コストが年間約三千億円かかるというような民間の試算、これは日本経団連が十一社の方々にアンケートをとってそれを基本にして答えを出しておりますけれども、年間約三千億円ぐらいの費用、コストが民間で存在しております。
さらに、今後の技術の進歩を考えてみましたり、コンピューターを導入することによって電子保存のコストが安くなっていくことが予測されます関係も含めて、コスト削減効果はこれからは大きくなってくるものと考えているところでございます。
○早川委員 そこでお伺いしたいのでありますが、電子的に保存された文書については、これを改ざんすることが容易であり、特に作成年月日自体も偽ることも可能であると言われております。こういった改ざんについて、第三者が見破ることは技術的に困難だと思われますけれども、どのような対策を講じられるんでしょうか。
○松井政府参考人 お答えいたします。
電子的に保存した文書につきましては改ざんなどの懸念がございますが、現在の技術によって相当程度の抑止が可能と考えております。
作成された電子文書の内容やその作成年月日の改ざんを抑止するためには、具体的対策といたしまして、まず第一に作成者が作成した内容から改変されないことを確認できる電子署名、第二に特定時刻における文書の存在とそれ以降改変されていないことが確認できるタイムスタンプ、第三にその他文書の履歴管理や保存管理者の任命、保存管理マニュアルの作成などの運用上の措置などが挙げられます。
いかなる措置が必要かにつきましては、保存義務の課されている制度ごとに、その目的、罰則などによる抑止力の有無、虚偽記載がなされる危険性やその影響の程度などが異なっていることから、その具体的方法につきましては、各制度に関する主務省令などで適切に措置されるよう図っていくこととしております。
○早川委員 結果的には、電子署名あるいはタイムスタンプ等の信頼度をいかにして高めていくかということが重要だと思われます。具体的にどのような対策を講じられるんでしょうか。
○棚橋国務大臣 お答えをいたします。
今信頼度を高めるという先生の御指摘でございますが、全く同感でございまして、文書の電子的な保存に当たりましては、作成者あるいは作成時期あるいはその真正性、正しいかどうかということを確認するためには、今先生のお話にございましたように、電子署名あるいはタイムスタンプが重要なツールとなっております。
電子署名につきましては、電子署名法により電子署名の法的な位置づけを明確にするとともに、国が認証業務を認定するという制度を導入したところでございます。
また、タイムスタンプにつきましても、ことし六月に決定いたしましたe―Japan重点計画二〇〇四におきまして、一層の信頼性を付与する方策等について検討するということとしておりまして、これを受けて、今関係府省におきましてガイドラインの策定やあるいは標準化への取り組み等が行われているところでございます。
文書の電子的な保存に当たりましては、これらの取り組みを推進することが大変重要でございますので、先生の御指摘も踏まえ、今後とも、利用者の意識向上も図ってまいると同時に、これらの制度が幅広く利用されるよう普及に努めてまいりたいと思っております。
○早川委員 時間でありますが、IT国家の推進のためには、災害時等にも十分耐えられるような基盤整備、インフラ整備が極めて肝要であると私は考えております。
今回の新潟県中越地方に大きな地震が発生をして、大変多くの方が亡くなり、また、現在でも避難生活を送られている方が多い、心が痛む次第であります。
こういった場合に、携帯電話あるいは防災行政無線というのが非常に頼りになるというふうにこれまで言われておりましたが、残念ながら今回の地震の発生の際、携帯電話が使用不能あるいは防災行政無線も機能しなかったということが報道されております。
大規模災害あるいは非常時にも対応し得るIT国家を構築していくという大きな国家目標のためには、今後どのような施策を推進することが望まれるでしょうか。
○棚橋国務大臣 お答えいたします。
先生の御指摘のとおり、住民への迅速かつ的確な防災情報の伝達というのは非常に大事でございまして、まず、防災行政無線の整備が必要でございますが、その促進を図っております。
今般、大変残念なことではございましたが、新潟県で地震が発生いたしました。新潟県中越地震におきましては、まず、停電により一部の防災行政無線の機能が停止されましたので、自家発電設備の設置などを消防庁から市町村に要請をさせていただきました。
また、今後、今先生のお話にもございましたように、衛星携帯電話等の障害に強い情報連絡手段、これが確保されることが重要だというふうに私どもも認識しております。
さらに、自宅等を離れざるを得ない住民の方もいらっしゃいますので、その方々のよりどころである携帯電話、今回の地震でも災害伝言板のサービスが提供されるなど貴重な役割を果たしてまいりましたが、政府といたしましても、携帯電話を国民が広く利用できますように、過疎地域等の条件不利地域における携帯電話の基地局整備に対しての補助、これをきちんとやってまいると同時に、何よりも、二〇〇五年までに防災GIS、地理情報システムを整備するなど、ITを活用した災害時の住民等の避難あるいは復旧活動を支援する具体的な取り組みを関係府省連携して進めているところでございますが、こういったことも含めて、政府一体となって、災害に強いITの基盤整備を推進して、国民が安心して暮らすことができる社会の実現に向けて努力してまいります。
○早川委員 最後でありますが、改めて、今回のe―文書法の成立によって、企業のITの活用を促進するという大きな役割を果たすことになるのではないかと思います。大臣の御決意を改めてお伺いしたいと思います。
○棚橋国務大臣 お答えをいたします。
世界最先端のIT国家の実現に向けた取り組みの一環として、今般、e―文書法、御審議をいただいておりますが、企業の負担軽減、そして何よりも国民の利便性の向上が大きく図られるというふうに思っております。
私どもとしても、IT戦略本部等を通じまして、万全の取り組みを行って、今言った国民の利便性の向上あるいは国民の負担軽減、こういった観点から努力してまいりたいと思っております。
○早川委員 ありがとうございました。終わります。
○松下委員長 次に、今野東君。
○今野委員 民主党の今野東でございます。
このe―文書法案についてですけれども、この法律は、経済界の期待も非常に大きく、また、膨大な書類を保存管理するために三千億円とも言われる費用を削減し、企業活動の簡素化、効率化を推し進めるものと位置づけられております。
これは、電子化が進むことで、おおむねそういう方向でいいのだろうという思いはあるんですけれども、しかし、幾つか懸念もありまして、書類の偽造あるいはデータの改ざんを行う機会が増してはいけないと思っているわけであります。特に、この法案が実際にどのように運用されるかという重要な点については各省庁の省令にゆだねられるというところから、この委員会の中でできるだけ運用方針を細かくお聞かせいただきたいと思います。
まず、使ってきた機種が新しくなる場合、電子文書の移転をどういうふうにするのか、また、その際に、改ざんを防止する方法をどのように定めていくのかという点についてお尋ねをしたいと思います。
○棚橋国務大臣 今野委員にお答えをいたします。
今先生からの御質問の趣旨は、多分、使用しておりましたコンピューター、この機種を更新した場合どうするのかという御趣旨ではないかと思いますが、これはまた先生御承知のように、コンピューターシステム自身を更新するに当たりましては、電子保存されている文書につきましては、そのままの形でサーバーあるいはその他の媒体に一時的に保存することが可能でございます。それで、それをまた、再度その文書を旧システムとの互換性がある新しいシステムにそのまま移しかえるという形で必要な文書の移転を行うことが可能でございます。
この際、まさに先生がお話しになられたように、改ざんが懸念される文書についてはどうなるのかということでございますが、旧システムに、前の機種に保存する段階で署名等を付与することによって改ざん防止措置を講じてまいりますが、そこで、その段階で移転しても改ざんができなくなりますので、基本的には、古いシステムからサーバー等に保存いたしまして新しいシステムに移しかえる、その段階では改ざんは大変難しゅうございますので、最初に保存する段階できちんと電子署名等を利用して改ざん防止措置を行っておけば、先生の御懸念の点はクリアされるんではないかというふうに考えております。
○今野委員 データ改ざんがよりやりやすくなるのではないかというのは、このe―文書法案が出てきたときからよく言われていることですけれども、それでは、どのようにして、もともとの紙段階での偽造、データ化した後の改ざんを防いでいくんでしょうか。
○棚橋国務大臣 お答えをいたします。
電子的に保存した文書につきまして、今先生お話しになったように、改ざん等の懸念がある、これは私どもも十分認識しておりますが、現在の技術によって相当程度の抑止が可能であるというふうに思っております。
例えば、スキャナーで読み取る前に、改ざんを識別するための一定水準以上の解像度、多分、今先生がお話しになったイメージは、紙の方に改ざんをしてそのまま読み取ったらどうかということですが、そこは、解像度が上がれば電子保存されたデータの中で改ざんされたかどうかがわかるわけでございますので、そういった解像度をどこまで上げるか。あるいは、スキャナーした文書の内容から改変されていないことを確認できるいわゆる電子署名、あるいは特定時刻における文書の存在、それから、それ以降は改変されていないことが確認できるタイムスタンプ、こういったもの、あるいはその他文書のバージョン管理、あるいは保存管理者の任命、保存管理ポリシーの作成など、運用上の措置等々をきちんとしていくことによってこれに対応してまいりたいと思っております。
具体的にいかなる措置が必要かどうか。例えば、今先生のお話にございました紙の方が改ざんされたらどうなるかということにつきましては、スキャナーの解像度にかかってくるわけでございますけれども、それぞれ保存義務が課されている制度ごとに、御承知のように、今までの文書ですと具体的にどのような形で保存するかということは、その目的や罰則等による抑止力の有無あるいは虚偽記載がなされる危険性やその影響の程度等が異なりますので、そういう観点から、具体的な方法につきましては各制度を所管する主務大臣に決定がゆだねられておりますけれども、以上の観点も含めた上で、適切に判断され、適切に措置されるものと私どもは理解しております。
○今野委員 今のお話の中でちょっと確認をしたいところがあるんですが、利害関係者への開示に対するガイドラインというのはどのように整えていくんでしょうか、お尋ねします。
○棚橋国務大臣 ごめんなさい、利害関係者に対するガイドラインといいますと、具体的にはどのようなイメージの。ちょっと御質問の趣旨がいま一つ。申しわけございません。
○今野委員 通告をしておりません質問でしたので、ここのところ、関連してちょっと質問をさせていただいたんですけれども。
この文書をやりとりする場合に、利害関係が生じる、そこに開示をしていくという場合に、どういうふうな開示の仕方を整えていくのかという質問なんですが、これは、お調べいただいて、報告を後で教えていただくということで、それで結構でございます、通告しておりませんでしたので。
次に、これは先ほどもお話が出ておりましたが、電子化に対応するためのコストということを考えると、実際にこの法律を適用できる企業というのはやはり限られてくるわけですね。
電子化による書類の保存コスト削減が年間三千億円に上るという経団連の試算が出ておりますけれども、一方、この電子化で設けられた基準に見合う入力システムあるいはアクセス管理、それからシステム構築にかかる費用などを考えますと、大手保険業者等を除けば、中小企業などにはこれは負担としてのしかかってくるということもあるわけで、技術的進歩が幅広く企業活動に浸透するには、これは相当の時間がかかるのではないかと思われるわけです。
この法律の恩恵を受けるのは、そう考えると、結局は、物品受領書、検収書とか、あるいは入庫の報告書、定型的な約款がある契約申込書を大量に扱う企業、例えば大手保険業者あるいは流通大手に限定されるという見方があるんですけれども、この法律が成立することで、電子化に対応するのに必要なコストというのはどれぐらいというふうに把握をしていらっしゃるのか、お尋ねいたします。
○棚橋国務大臣 先ほどの御質問につきまして、ちょっと私の方から。
利害関係者にというのは、要は、行政庁に対する開示ではなくて、その文書に関して利害関係を有する人間がということではないかと理解いたしました。
その点につきましては、現在の文書における開示と基本的に同一だと理解しておりますが、先生の今のお言葉も踏まえて、一度改めて、別途議員の方に御報告をさせていただきたいと思います。
○桜井政府参考人 このe―文書法につきまして、その恩恵をこうむるのは大手の企業等に限定されるのではないか、こういう御質問でございます。
確かに、中小企業につきましては、保存すべき文書のコストと、電子保存を実施するためのパソコンですとかスキャナー、こういった初期投資のコストとを比較考量して、当面、電子保存を実施しないという場合も想定されるわけでございます。
ただ、情報通信技術、大変速く進展しておりますし、普及が進むことでこういった機器のコストというのも飛躍的に、急速に低廉化していくということも期待されるわけでございますので、私どもとしては、中小零細企業を含めまして広く電子保存というのが普及していくことを期待しております。
コストでございますけれども、現段階で、カラーのスキャナーでございますと、家庭用ですと数万円で購入できるということでございます。業務用ですといろいろな解像度等によって違いますけれども、五万円から五十万円程度。このほか、保存するためのパソコン、必要なソフトというものの値段ということになります。
○今野委員 例えば、大手保険会社とかそういうところで、これぐらい書類の保存にかかっているんだけれども、電子保存するとこういうふうになるそうですよというような試算はお持ちですか。
○桜井政府参考人 経団連の試算によりますと、税務関係書類を七年間保存する際に、保存を要する紙文書が年間六・五億枚あるという場合には、紙により保存した場合は七十億円、電子保存した場合五十億円ということで、七年間で要する保存コストの約三割、二十億円の削減が見込まれるという経団連の試算がございます。
それから、紙文書がそれほど多くない場合、年間十万から三十万枚、こういった場合ですと、現状の年間保存コストが百万円以上であれば、電子保存によってメリットが得られると見込まれております。
○今野委員 全体で三千億円がこれぐらいになるんだという数字は、なかなかわかりにくい、出しにくいデータでもあると思いますが、個別に出していただいて、これらをそれぞれの会社が考えて、企業が考えておやりになるんだろうと思います。
さて、文書の正確性あるいは確実性を高めるためには、電子文書と紙文書の同一性が保証できなければならない、同一性が保証できることが望ましいと思うわけですけれども、タイムスタンプの時刻を配信する業者をどう定めるかなど、第三者機関となる業者の要件はどのようにしていくんでしょうか。
○桜井政府参考人 ただいまのお話にございましたように、文書の真正性を確保するためには、タイムスタンプ、時刻認証というサービスが大変重要なわけでございます。
このタイムスタンプにつきましては、本年六月に決定されましたe―Japan重点計画二〇〇四におきまして、このサービスに一層の信頼性を付する方策について検討するということとしておりまして、これを受けまして、現在、関係府省におきまして、ガイドラインの策定でございますとか、あるいは標準化へ向けた取り組みが行われているところでございます。
○今野委員 タイムスタンプの時刻を配信する業者というのは、具体的にどういうところがありますか。
○桜井政府参考人 代表的な例ですと、NTTデータ、それから株式会社のアマノといったところでございます。
○今野委員 NTTデータ、アマノとおっしゃいましたか、アマノ。はい。今、ちょっと音の確認だけ。
この方策をきちんと定めているところだということでしたけれども、どこの業者でもタイムスタンプを配信するということになってはやはり困るわけで、ぜひ、信頼性の高い方策を考えていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。
私、このe―文書法案、電子化で保存ができるようになるという話を聞いたときに真っ先に思ったのは、カルテや何かはどうなんだろうなという、医療関係でございます。
医療関係書類の場合、プライバシー保護の問題あるいは医療過誤事件、それから、過誤ではなくとも、さまざまな医療のプロセスの中で、薬であるとかいろいろな医療事故というのが起きているわけですけれども、そうしたカルテ保存というのが非常に重要になってまいります。
再び手を入れることができないようにする、電子保存の場合だとコーティングをするとか、あるいはカルテを書く人の指紋認証をするシステムなどのアクセス制限システムであるとか、いろいろ考えなければならないと思うんですが、そうした技術水準をどのような要件で定めていくんでしょうか。
○岩尾政府参考人 お答えいたします。
e―文書法通則法案に対応いたしまして、診療録等の医療関係書類の電子保存を容認する場合のプライバシー保護、それから改ざん防止等の安全管理措置について、厚生労働省の医療情報ネットワーク基盤検討会にて検討を行い、ことしの九月に最終報告をまとめさせていただきました。
この報告では、個人情報保護法を踏まえた所要の取り扱いを講じることとあわせまして、診療録のスキャナーによる読み取り保存については、医療機関等の管理者は改ざん防止のために運用管理規程を定めること、それから作業責任者が電子署名を行って責任を明確にすることなど、必要な措置を講じることを提言しております。
これらを踏まえまして、ID、パスワードや生体認証などを組み合わせた作成責任者の識別及び認証を行うことや、書きかえ等の履歴が保存されることなど、適切な技術及び運用管理上の基準を担保することを検討し、今後、主務省令の制定や現在ある電子保存のガイドラインの見直しなど、e―文書法通則法の制定を受けた適切な個人情報保護、改ざん防止等の措置は講じてまいりたいと考えております。
○今野委員 今、お答えいただいたのかもしれませんが、こういうコーティングやアクセス制限システムを義務づける必要があるのではないか、これは恐らくこういう省令をお出しになるんだろうと思いますけれども、その省令はどういうふうにするつもりか、もう少し具体的にお話をいただければと思います。
○岩尾政府参考人 電子保存の安全性の担保をいかにするかという御質問だろうと思っておりますが、特にスキャナーなどで電子保存をするという場合には、先ほど言いましたように、書面の作成者や電子署名を行って責任を明確にすることとか、タイムスタンプの利用ということが有効であると思っております。過去に蓄積された紙媒体を電子保存する場合には、所要の実施計画や運用管理規程の事前作成とともに、スキャナーによる読み取り作業終了後の第三者による監査の確保などを検討しております。
将来的な話になるかもしれませんが、医療分野につきましては、公開かぎ基盤、印鑑証明のようなものと認識しておりますが、公開かぎ基盤を整備いたしまして、医師等の資格認証を含めて電子署名等を実現するというようなことで、電子保存の安全性は担保していきたいというふうに考えております。
○今野委員 それら、今、改ざんができないようにコーティングあるいは指紋認証システム等、いろいろその方策を考えていらっしゃると思うんですけれども、これで間違いなく、そのような改ざんが行われないような方策をつくることができるというふうにお答えをいただけますか。
○岩尾政府参考人 医療分野のIT化ということの進捗状況にもよるかと思いますが、私ども、平成十三年から、医療分野の情報化にむけてのグランドデザインということで、さまざまな推進をしてまいりましたので、そういうようなものの体制整備ができた暁には、今言ったような形の、理想と言うといけないんですが、そういうものをなるべく現実に近づけるようなことは努力していきたいというふうに考えております。
○今野委員 医療事故が起きて、その被害者となった方については、これらの医療関係書類というのが唯一その実態を明かすための大事な書類になってくるわけでありまして、そのあたりのところは本当に慎重に進めていただきたいと思うんですが、カルテあるいはレセプトなどの電子化の際に、だれがその書類を書いたのかを確認する本人認証とともに、書いた本人が本当にその医者であるということを確認する属性確認というんですか、そういうことも必要なのではないかと思うんですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。
○岩尾政府参考人 先ほども、ちょっと将来的な課題ということで申し上げさせていただきましたが、医療分野における公開かぎ基盤の整備と、それから、医師等の資格認証を含めた電子署名のシステムのようなものを将来実現したいということで、電子保存の安全性は担保したいというふうに考えております。
○今野委員 例えば、医療事故を受けた被害者がこの書類をきちんと自分のところで保存したいというようなときにはどういうふうになりますか。
○岩尾政府参考人 現在、個人情報保護法の中で、特に自分の健康その他に関する情報についての法制化の是非も含めて、検討会で検討しているところでございます。
患者からの情報の請求があった場合には、一定のルールのもとで患者に情報を提供するというようなことのルールを現在検討会で決めておりまして、現在のところパブリックコメントを求めているということですので、近々、そのルールについてはガイドラインができ上がるというふうに承知しております。
○今野委員 これはお答えいただけるかどうかちょっとわからないんですが、私は議員になる前、放送関係で、放送というのはブロードキャスティングの方の放送ですけれども、仕事をしておりまして、医療事故を受けた、医療事故の被害者の方を何度か取材をしたことがあります。
その方は、自分が手術を受けた、胃を全摘して、そこに全摘の後の高カロリー輸液、点滴液にビタミンが入っていなくて、結局、視覚障害、歩行困難、記憶が重ならなくなってしまったという被害を受けているんですけれども、その方の場合、裁判に訴えたんですが、訴えたのは、実はその病院の副院長なんです。しかし、実際に医療行為を行っていたのは、副院長ではなくて若い医師なんですね。カルテには、副院長が書いたかのように書かれているわけです。やむを得ず、その副院長を相手取って裁判を起こしたわけですけれども、実際にその医療行為を行った若い医師は、何の処分も受けず、今もどこかで医療行為を行っているんですね。
こういう場合、電子保存というところから少し離れるのかもしれませんが、その副院長が恐らく名前、カルテを書いていくのか、あるいは若い医師が書いていくのか、その辺のカルテ保存の仕方というか、カルテの書き方、蓄積の仕方というか、そのあたりは、そういうことがないように、本当にその医療を行った本人がカルテを書き、そして何かあった場合にはその責任をとっていただかなければならないということがあると思うんですけれども、その辺は、ちょっと難しい質問かもしれませんが、どういうふうにお考えでしょうか。
○岩尾政府参考人 医師がその医療行為の記録をするものが診療録等、カルテと通常言われているわけですが、特に、今議論されておりますような電子媒体で記録を保存するというようなものにつきましては、私ども一応、平成十一年の四月に、既に、当該医療機関の責任において一定の要件、つまり、正しいか、それから読み取りができるか、それから保存性が確保できるかというような三つの基準を担保した上で、電子保存というのはもう容認されております。
それで、こういう医療機関におきまして、先ほど言いました診療録等を電子保存する場合のガイドラインの技術とか運用上の基準を示しておりますので、実際にはきちんと実施、運用されているというふうに思っておりますが、カルテ自体、ここで問題になっている書きかえですとか追記とか消去などを防止するというような場合には、やはり作成責任者の識別及びID、パスワードなどをつけるとか、それから書きかえなどを行った場合には作成責任者の識別情報が記録情報に関連づけられるとか、それから書きかえなどの履歴というのが保存されるように、具体的な安全管理の措置は定めております。
したがいまして、こういう診療録の保存、特に電子媒体として診療録を保存するというようなときにでも、きちんとした安全管理措置を定めているということで、私どもとしては実効性が上がるんじゃないかと思っております。
なお、保存義務がある診療録というものを破棄した場合などは、医師法によるところの保存義務違反となって罰則適用がございますので、診療録を破棄するというようなことに対しては、この法律によって抑止力が働くのではないかというふうに考えております。
○今野委員 ぜひ、そうした形で、いろいろな方策が、またやってみると、ああ、こういうことも必要だったということが恐らく出てくるだろうと思うんですね。ぜひ、きちんとした、改ざんができない、プライバシーも保護できる、そういうシステムをつくっていただきたいと思います。
次に、税務書類関係についてお尋ねをしたいと思うんです。
税務関係書類等の電子保存を行う際の要件として、先ほども話が出ましたけれども、タイムスタンプ、現在、一般的に認知された技術基準が存在しないと言われておりまして、先ほど、具体的な配信の業者というのも名前を出していただきましたが、技術基準というのが存在しないと言われていて、サービス提供者や利用者の混乱を防ぎ、一層の信頼性の付与と利用促進のため、できる限り早期に、タイムスタンプに関するガイドライン整備を行う必要があるのではないか。ここのところが実は最も大事な根幹のところなんじゃないかと思うんですけれども、このガイドラインの整備を早急に行う必要があるのではないかと思いますけれども、どういうふうにお考えでしょうか。
○佐々木政府参考人 課税書類についてのスキャナー保存に関しまして、タイムスタンプの技術水準のガイドラインの設定等のお尋ねでございますが、先ほど内閣官房の方から、一般的なタイムスタンプの技術基準につきまして、今後、関係府省とともに検討を進めていくというお話がございましたが、税務書類につきましても、そのような検討、あるいは業界の検討を踏まえまして、現在詳細について検討中でございまして、今後、固まり次第、財務省令等で明らかにしていきたいと考えております。
○今野委員 それで、この法案の保管期間なんですけれども、七年とされておりますが、タイムスタンプの電子証明書の有効期間は恐らく一年から三年なんですよね。それで、電子証明書の有効期間を超えた場合に、データの真実性の保証というのはどういうふうに確保していくんでしょうか。
○佐々木政府参考人 まさに御指摘のとおり、税務書類の保存期間は、法人が七年、あるいは所得が五年とか、そういう期間でございますけれども、それと、現在のタイムスタンプの有効期限との関係をどのようにして、その信憑性、確実性を担保していくかというのは、まさに検討課題でございまして、それも含めて今検討中でございます。
○今野委員 これは検討中というけれども、実際に法案は審議しているわけでありまして、これはめどは立っているんですか。
○佐々木政府参考人 いろいろな方策は、内々、いろいろな選択肢を検討中でございますが、この法案自体、もしも成立いたしましたら来年四月一日から施行ということでございますので、それに十分間に合うようなタイミングで結論を出したいと考えております。
○今野委員 これは、検討していて間に合わなかったらどうするんですか。だって、法案審議しているんですから、もうここで、こういうシステムが何月何日に出ますとか、今月いっぱいに出ますとかいうことでないと困りますよね。
○佐々木政府参考人 繰り返しになりますが、何月何日までにということを確約することはできないんですけれども、できるだけ早く結論を出したいというふうに努力をしております。
○今野委員 これは、だって、この法案が通って施行される日にちも決まっているんですよ。それはいつ出るかわからないでは、これは審議できないじゃないですか。
○佐々木政府参考人 当然、間に合うように結論を出して、財務省令を定めます。
○今野委員 だから、それはいつできるんですかと聞いているわけです。それは間に合わなきゃ困りますよ。それで、その方法で大丈夫なのかというチェックだってしなきゃいけないわけです。だから、それはいつなんですかと聞いているんです。
○村上政府参考人 直接のお答えにはならないかもしれませんが、税務関係書類の電子化につきましては、やはり、税務行政の根幹である適正公平な課税を確保しつつ、電子化によるコスト削減をいかに図るかという観点から、いわゆる折衷案としてつくられたものであります。
したがいまして、原則として、特に重要な文書、これは決算関係書類とか帳簿をいいますが、さらにまた、決算書、領収書につきまして、一定の金額以上は依然として紙で保存をお願いいたしております。それ以外の文書についての電子保存ということになっております。
タイムスタンプにつきましては、今、どういうタイムスタンプを国税庁としては政府に要求していくかという問題があるわけでありますが、それにつきましては、総務省等々と相談して技術水準は考えていきたいと思っておりますが、期間の問題については、一つの案でありますが、措置として、再度、タイムスタンプをかけていただくとか、そういったことも検討していきたいと思っております。
○今野委員 結局、そのデータの真実性の保証をどう確保するかというのは、これからどうにか決めるんだということで、それだったら、これはそんなに急いで審議する必要ないんじゃないですか。何か急ぐ必要があるんですか。大手企業だけが得をするようなこのe―文書法案、なぜそんなに急ぐんですか。
○桜井政府参考人 このe―文書法案につきましては、産業界等から強い要望がございまして、できれば、できるだけ来年度当初からスタートできるようにということで、この国会で御審議をお願いしている次第です。
タイムスタンプについて一言お話ししたいと思いますけれども、通常、文書に電子署名をつけますと、その電子署名の効果というのは、今のサービスですと、一年とか二年とか三年という期間でございます。あわせてタイムスタンプをつけますと、いつその文書を電子保存したのかということが明らかになりますので、それ以降、改ざんがあった場合には明らかになるという意味で、タイムスタンプの効果というのは、そういう意味では、一年、二年、三年に限らないということになりますので、電子署名とあわせてタイムスタンプをつければ、その保存期間と電子署名の有効期間との関係というのはクリアできるというふうに考えております。
○今野委員 できるだけ速やかにやってほしいと思いますけれども、ちょっとここのところで滞っていてもしようがないので、次の質問をします。
紙の帳簿を電子化する場合、取得後、速やかに電子データとして入力するという運用ルールがありますね。入力の猶予期間は一週間以内となると言われているんですが、これはそうですか。
○佐々木政府参考人 保存要件として定めます入力の方式といたしましては、早期入力方式、今おっしゃいました、できるだけ速やかに、それは一週間程度ということを念頭に置いておりますけれども、そういう早期入力方式とともに、個々の業務の特性から、一連の業務サイクルがあって事務処理規程が中で定められているようなものにつきまして、そのサイクルごとに入力を行うという業務サイクル方式もございます。その選択ができますし、さらには、資金や物の流れに直結、連動しない書類につきましては、ある時期に一括して入力をするという方式を認めることも考えておりまして、個々の実態に応じまして好ましい入力方式を選択していただければと考えております。
○今野委員 最後の質問にしますが、脱税目的での改ざんには、ほかの書類との整合性をとる必要があるために、速やかに入力するという要件があれば、それを防げるという理由ですけれども、一方、行政機関が徴する領収書の保存について、受け取った領収書は会計検査院に原則翌月末までに提出することとあるわけですね。
民間は、原則一週間で、一定水準以上のスキャナーでコンピューターに記入してタイムスタンプをつけることとなっているわけなんですけれども、企業にとってコストの高い方法を課しているのに対して、領収書偽造問題のある警察などの行政機関には一カ月単位の猶予があるというのは、これはどうも不公平なんじゃないかと思うんですが、そのあたりはどうでしょうか。
○佐々木政府参考人 一週間程度の理由は、課税上の問題から来ているわけでございます。先ほど引用なされました会計検査院のケースと単純に比較するのはなかなか難しいと考えております。課税上の観点からいたしますと、民間の企業も行政機関の場合も、両者とも、保存義務を負う書類につきましては同様でございます。
○今野委員 時間が参りましたので終わりますが、できる限り、これは正確性、真実性、それから改ざんされない等、きちんと担保しなければならないポイントはたくさんあると思います。
大臣、ぜひここのところ、力を入れていただいて、速やかに措置をしていただきたいと思います。
質問を終わります。ありがとうございました。
○松下委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕
○松下委員長 それでは、速記を起こしてください。
次に、須藤浩君。
○須藤委員 民主党の須藤浩でございます。
今回のこのe―文書法案、e―文書といいますように電子化ということで、何といいましょうか、ちょっと取っつきにくい、そういったイメージのある法律の内容であるかと思います。現に、委員の皆さん方がなかなか集まらないところを見ると、法案としては少し軽んじられているのかなと心配をするところです。
このe―文書法案の提出に当たって、背景をいろいろと先ほどお聞きしましたけれども、その必要性といいますか、本当に、これを導入することによってどういう大きな効果といいますかメリットが出てくるか、そのことに関して大臣がどう認識をされているか、まず最初に伺いたいと思います。
○棚橋国務大臣 お答えをいたします。
このe―文書法案は、これは先生重々御承知のように、現在紙で保存している文書につきまして電磁的記録で保存できるという選択肢を広げるものでございまして、特に今、保存コストの大きな企業活動、あるいは国民生活の中で文書による保存が非常に煩わしい、しかしながら、関係法律で保存が義務づけられているという分野につきまして、電磁的記録でこれが保存できることになりまして、保存の経済的な面を中心としたコストが大きく削減されるということが第一のメリットではないかというふうに理解しております。
と同時に、このことによってまた新たなる道を開く可能性もあるものではないかと思いますが、まずもって先生にお答えさせていただくのは、そういう形の中で、保存の仕方が変わる、そのことが企業活動等に対して非常に大きなメリットをもたらすということでございます。
○須藤委員 そうしますと、基本的な視点としては、企業のいわゆる経済的な負担を軽くするというように今聞こえたんですけれども、この電子保存を希望している会社、企業というものは、いろいろお聞きするところは、やはり大きなところ、あるいは文書量を相当に抱えているところが恐らく選択をするであろうというふうに思います。
企業側から見たこの法案におけるメリットということが大きく感じられますが、他方では、先ほども出ましたけれども、このe―文書化に伴う改ざんであるとか情報の漏えいであるとか、あるいは犯罪、そういったことに使われてしまうというような大きな危険性があるかと思うんですが、その危険性の部分と企業の経済活動、コスト負担削減というものをはかりにかけられるのか、あるいはかけるとしたら、結果的に法案を通してコスト削減をとるというような判断をされているのか、この辺に対する考え方をお聞きしたいと思います。
○棚橋国務大臣 先生御指摘の視点は、大変重要な指摘だと思っております。
ただ、まず前提として申し上げるならば、御承知のように、これは文書であっても改ざんという危険はあるわけでございまして、あとはそれを見破ることができるかどうか。一方で、e―文書になりますと、それがより見破りにくくなるかどうかということも含めた視点ではないかと思っております。
この問題、特に各主務省令で具体的な保存方法については規定するという形にしておりますのは、一つは、各法におきまして保存が義務づけられている目的が当然違ってまいります。そして、その目的等に基づきまして、どのような形で保存をするのがベストなのかということをそれぞれの主務省令でまた規定しております。
そういう観点から、それと同程度の保存義務が、保存責任が果たされるという形でこのe―文書に代替するというのが多分本来の筋ではないかというふうに思っておりまして、まず、この法律によりまして保存を義務づけられているものが文書かあるいは文書以外、電磁的記録でも保存できるという選択肢を与えるということが重要なことではないかと思っております。
しかし一方で、先生の御指摘にあったように、では、改ざん等の危険が増すのではないか、これは私どももきちんと配慮をしなければいけないと思っております。
一つは、まず現在の技術でも相当程度改ざんは防止できるようになっておりますが、さらなる技術の進歩をやはり促してまいりたいと思っております。
と同時に、先ほども少し申し上げましたが、例えばスキャナーの解像度、これがどこまで高くなるかによって改ざん等を見破れる確率が高くなってまいりますので、どこまでのそういったものを求めていくかというのは、それぞれの法目的に従って、主務省令で適切に判断され、適切に規定されていくべきものだというふうに考えております。
○須藤委員 では、一つまた大臣にお尋ねしますけれども、大臣は日ごろパソコンは使われていますでしょうか。
○棚橋国務大臣 多少は使っております。ただ、最近は、パソコンよりも、正直に言いましてiモードを使う方が楽でございまして、こちらの方が多うございます。
○須藤委員 実は、私もパソコンは日ごろ使うんですけれども、これまでは、私たちがパソコンを使うというときは、紙の文書が専らであって、紙の文書をパソコンに入力していく、切りかえるといいますか、データを投入していくという作業、ワープロ機能ですね、そういった形で使うことが多かったんですが、今は、小中学校でもパソコンの授業が導入されていますから、考え方として、パソコンからデータ入力、つまり、フォーマットがあって、そこに文字あるいはデータを投入していく。つまり、紙の文書に一たん起こしてそれを再投入するという考え方ではなくて、最初からパソコンで物事を形成していく、こういった思考パターンに変わっていると思うんですね。
企業等では、下手をするとパソコンが使えない人はリストラの対象の一つだというふうに言われるくらい、今日のパーソナルコンピューターあるいは電子計算機等の普及度は非常に高くなっている。つまり、企業の中でもそういう位置づけをしっかりとしている。
ですから、そういう視点に立てば、パソコン、コンピューターでもってすべての書類を作成、管理していくことは、ある意味で当たり前だと思うんですね。
ところが、それに伴って現時点でも、データの流出、漏えい、こういったものが非常に大きくて、日本は情報漏えいの、天国じゃないですけれども、そういう状況にあるじゃないかと思われるぐらい、とめることができない状況で、しかも、情報が漏えいしていることもわからない、そういった状況、環境にあるのではないかと私はある意味で非常に危惧をしているわけですね。
そこで、行政機関等が行う場合は、当然、個人情報の管理というものを、保護をしっかりしていかなきゃならないということなんですが、民間における個人情報の蓄積というのは相当なものがありまして、事実、そういったものが名簿として売買をされているという実情があります。
今回、そういった文書類にかかわるものすべてが、すべてといいますか、対象になるものすべてが電子データに変換されるということになります。
そこで、先ほど申し上げたように、漏えいであり改ざんであり、悪意を持ってそれを使うような場合ということが考えられるんですが、法律を提案する省あるいは大臣としては当然これを進めていきたいというお考えなんですが、個人としてはどのように電子化といいますか、コンピューター社会に関してのお考えを持っているか、一度お聞きしたいと思うんです。
○棚橋国務大臣 まず、今法案は、これは先生重々御承知のように、現在紙で保存している文書につきまして電磁的な記録で保存することも可能にするものでございまして、もちろん、最初から紙でなくて保存されているものは当然でございますが、例えば受け取った領収書等をスキャナー等で読み込んで電磁的記録に保存できる、これは釈迦に説法でございますけれども、そういった選択の余地を広げるものでございまして、IT社会の中で、特に書類の保存という分野においてさらに利便性を増すものだと思っております。
ただ一方で、先生のお話にございましたように、特に個人情報の漏えい、これについてどういうふうに考えるかということですが、当然のことながら、やはりこの問題、私どもは非常に深刻にあるいは真剣に認識しなければいけないと思っております。
特に、私は弁護士もあれでございましたけれども、日本の法体系全般の中で、比較的物に対する侵害、窃盗等に関しては厳しいけれども、やはり個人情報に対する侵害、これに関してはまだまだ弱いんではないか。あるいは、国民の意識の中でも、被害者になられた方は非常に痛切に痛みを感じているけれども、まだまだ弱いんじゃないかというような御指摘もございます。
やはり、この部分の意識を高めていくと同時に、法体系も、個人情報の漏えいに関しては現行法でも十分に対応していると思っておりますが、また先生からの御指摘もいただきながら、さらにこれはきちんとやっていけるように、それから、こういった形でのIT関係の分野が進歩してくれば進歩してくるほど、残念ながら、テクニカルには個人情報の漏えいを行う機会、あるいはそういったものを唆すような者が個人情報の漏えいを容易にするケースもあり得ますので、それにはまたさらに適切に対応していく必要があるというふうに思っております。
○須藤委員 ということは、コンピューター社会は、これは現在の流れであって、そこにおけるIT社会の実現といいますか整備ということは必要だという認識にお立ちになっているということですよね。
それで、日本はいわゆる紙文化の社会もあるわけであって、私もコンピューターを使っていますと、自分で手紙を書こうと思いますと、字が出てこない、漢字が書けない、わかっているはずなのに出てこないというのがしょっちゅうありまして、コンピューター社会は本当に個人の私生活の部分においても有用なのかどうかというのはふと疑問に思うことも結構ありますけれども、大臣はいかがでしょうか。
○棚橋国務大臣 大変、ある意味では深遠な、哲学的な御質問でございますので、私もなかなかお答えしづらいところです。
ただ、先生のおっしゃる意味も非常によくわかります。例えば、同じ文明の利器でいうならば、今まで東京と大阪を日帰りするようなことができなかったのが、今はこれは当たり前になっておりますけれども、中には、ビジネスの側面からすると便利になった反面、昔の出張はよかったな、行ったら、よく来てくれたと。その上に、夜は宴会でまでもてなしてくれた、同じ社内でも。ところが今は、来たらすぐ仕事をして、すぐにまた東京に戻る、あるいは地方に戻るというような声もございます。
ただ、このIT化あるいはコンピューター社会というのは、私どもの生活の質を高くし、そして私どもの生活の利便性、これは企業活動だけではなくて私どもの生活の利便性を高める重要なツールであるというふうに私は思っております。
確かに、このツールに人が追われるようでは生活の質がかえって落ちるんではないか、あるいは時間的余裕がなくなるんではないかという部分もございますが、これはまさにこのツールの使いようだと思っておりまして、そういう観点から、私は前向きにとらえるべきだと思っております。
一方で、先生がおっしゃったように、個人情報の漏えいとか、あるいは残念ながら、時には犯罪ないし犯罪に類するような行為にこのツールが使われるケースもある。これに関しては、私どもは、適切かつ厳格に対応できるように政府一丸となってやってまいりたいというふうに思っている次第でございます。
私ごとを申し上げてあれですが、例えば、先ほどパソコンを使うかという話もございましたが、時々、大臣に就任する前は、出張するときなんかは、携帯電話から今航空券の予約ができますので、これなんかを使いまして非常に便利でございます。一方で、便利になればなるほど、確かにそれに追われていく側面があるんですが、そこはまさに心の持ちようと、あくまでITというのは、非常に大事な、重要な、しかしツールである、使うのは人間であるというその原則にきちんと戻るべきではないかと思っております。
○須藤委員 どうもありがとうございます。
事前にこういうことをお聞きしたのは、恐らく、電子化することによって急速にその流れは私は進んでいくんじゃないかというふうに思っております。そうしたときに、企業活動ですから、その意味ではツールとしての使用方法という考え方にのっとって行われるであろうと思いますけれども、逆に、それによってさまざまな危険性といいますか、そういったものも付随をしている。かつ、学校教育でもコンピューターが導入されていますから、当然のことながら、紙文書であり紙文化という側面が恐らく相対的に低くなっていくだろう。本なんかでも電子ブックがあるように、そういった紙を直接見ることもかなり少なくなってくるのかなという不安みたいなものもありまして、まず最初にお伺いをさせていただきました。
続いて、具体的に何点かお伺いをしますけれども、今回の電子保存対象文書の周知徹底について、まずお伺いをします。
これは既に質問が出ておりますけれども、この文書の種類であるとか、あるいはそのための要件、こういったものをどのような形で、どのような方法で周知徹底をしていくのか。ガイドラインということが先ほどから盛んに出ていますけれども、これからやりますということでは全く私たちにはわかりませんので、その辺のことがどうなっているのか、まずお伺いいたします。
○棚橋国務大臣 お答えをいたします。
電子保存の対象となる文書の周知徹底についての御質問でございますけれども、これは御承知のように、それぞれの法律によって保存義務が課せられている。その法目的にのっとって、主務省令で文書の場合も現実の保存方法について原則として規定されておりますが、本法案を通していただきました折には、文書と代替するe―文書としての保存の方法等につきましては、これまたできる限り早く主務省令で決めてまいります。
ただ、先生おっしゃるように、現実にそういう形で、紙ではなくて電磁的記録で保存することができるという法律、そしてそれに基づく主務省令ができたにもかかわらず、利用者がそれを知らないということでは意味がないわけでございまして、私どもとしては、この周知徹底に最大限また努力してまいりたいと思っております。
特に今、一番やはり効果的なのは、こういった電磁的記録によって保存するということに御関心とそれから御意欲がある方が特にユーザーとしてはこの分野では大きなものがあるのではないかと思いまして、我々といたしましては、制度を所管する各省庁、それから内閣官房において、インターネットを通じて国民への周知を図るなどということを考えておるところでございます。
○須藤委員 恐らく、この電子的な記録をしたいという考え方を持っている、いわゆる経団連の所属の企業の方々に関しては、当然自分たちがそう思っているわけですから、この法令ができることによって、さらにそのコスト、メリットを勘案した上、早速導入をしようという話になるんでしょうけれども、中小零細あるいは個人事業主にとっては、その辺のことがまずわからない。しかも、これを導入することのメリット、デメリットまでは、はたまたわからない。でも、法律は通って、周りも結構やっているんだよ、おたくやっていないのみたいなこともなきにしもあらずだと私は思うんですけれども、そういったところ、中小企業、零細あるいは個人事業主に対しての周知、徹底というよりも周知ですね、サービスの提供、情報提供ということをどのような形でやろうと考えておられるのか伺います。
○棚橋国務大臣 お答えをいたします。
今お話にございましたように、確かに大企業においては、保管する、保存する書類量が多いということでメリットも大きいんではないかという視点から、より以上に関心を持っている。一方で、中小企業においては、その部分のメリットが少し弱いんではないか。そういう観点から、関心を持っている中小企業や個人事業者が少ないんではないかという多分御意識からではないかと思っております。
私どもとしては、このe―文書で文書に代替して保存ができるという法案を通していただけるならば、このメリットを最大限、やはり中小企業や個人事業者の方々にとっても利用していただく必要がある。そして、その観点から、先生がおっしゃるように、周知徹底をしていかなければいけないと思っています。
もちろん、各法律によって、またはそれに基づく主務省令、現行の文書の保存の主務省令等によって保存の方法等が異なっているわけでございますが、それに多分符合するような形でe―文書での保存義務を定める主務省令ができるものと理解しておりますけれども、この部分をまず、先ほど申し上げたように、インターネット等できちんと国民の皆様方に周知徹底をしていく。
それから、これはそれぞれの所管省庁が中心になりますが、当然のことながら、その法律によって保存が義務づけられている重立った者、重立った方というのがいるわけでして、その方々に対して、また、特に中小企業や個人事業者を中心に、インターネットだけではなくて、別途周知徹底できるような方法がないか、これは私の方からまた検討させてみたいというふうに思っております。
○須藤委員 コンピューターを使っている方でしたらインターネットを見るということは容易に想像できるんですが、逆に、コンピューターを導入していない、会計経理でもそうなんですけれども、そういった方々も相当数、特に中小企業、零細では多くいらっしゃるわけですよね。そういう方たちに仮に周知をするということであると、何らかの組織、団体、そういったところを通して、宣伝といいますか、こういう法改正がありましたよということの周知徹底を図るというようになると想像はするんです。
そのことが、法的には選択可能性の中で今回これが使えるようになっていますが、実態としては、法律が改正をされました、こういうものがあります、使う方はどうぞ使ってください、そこから一歩進んで、使いましょう、あるいは使いなさいというようなことになってくると、逆に、かなり事務的にもその意味では煩雑さもありますし、コストもかかる。そして、その業界といいますか、それぞれの世界の中で、あそこはやっているけれども、ここはやっていないよ、特に税関係なんかでも結構多いと私は想定しているんですが、そういう流れが余り強くなると、これはまた一つ困ったことになるのではないかなと想像するんですけれども、この辺に関してはいかがお考えでしょうか。
○棚橋国務大臣 この法案は、もう須藤先生御承知のように、要は、文書で保存するか、それともe―文書、いわゆるe―文書で保存するか、どちらでもいいですよというのが一言で言うとこの法案の趣旨でございまして、国民のあるいは企業活動をするに当たっての文書の保存に関して、選択肢を与える、あるいは利便性を高めるものでございます。
特に、中小企業や個人事業者につきましては、法的に保存を義務づけられている文書が、書類があっても、実はそんなに多くないというケースがたくさんございます、例えば、失礼ですが、段ボール箱一つぐらいとか。であるならば、あえてこれを、特に書面になっているものをスキャナーで読み込んで電磁的に記録するメリットはないという御判断が当然あるものだと思っておりまして、だからといって、うちの企業は電磁的記録で保存している企業に比べてランクが下がるとか、そういうようなことは私は生じないというふうに思っておりますけれども、ただ、先生の御懸念の点も踏まえて、さらに私どもなりに検討してまいりたいと思っております。
○須藤委員 今大臣の方から、さしたる問題はないんじゃないかなというような部分をおっしゃられましたけれども、日本がある意味で国策として、IT国家、世界の中でトップクラスに位置づけようという考え方で行われている一つの電子化であるとすれば、国内におけるコンピューターにかかわるさまざまな部署といいますか企業等で、当然その流れが出てくるものだと私は思うわけですね。また逆に、全くそれがどこの企業もこれを使わないというのであれば、この法改正をする必要もないわけですし、また、IT国家として日本を一生懸命つくっていこうというその趣旨からもずれるわけですから、素直に考えれば、その流れというのは、必ず出てくるであろう。
また、電子化されることによって文書、文書といいますか中身を移動することも非常にやりやすいし、企業同士でも、今どこでもパソコンを同時に持ち寄って、コマーシャルでもやっていますけれども、そこでデータを見て、そこで契約なら契約を結ぶ、こういうところが圧倒的にふえてきているわけですから、そういったときにいつもバッグに紙をたくさん入れて持っていくとか、あそこは全部電子媒体で物事は進みませんよという話になってくると、恐らくそれは相対的に企業活動を信用の面でやりづらくなるだろう、これは容易に想像できるんじゃないかなと私は思うんですけれども、一応そういうことがあるということをお考えいただいて、周知徹底ということに関してもその意味でしっかりと対応していただきたい、このように思います。
続きまして、各省庁が省令をつくってこれから細かいことを定めていくということになりますけれども、内閣府の方で各省庁に対して何らかの基準を示すとか、こういうような形でここまではガイドラインをつくってくださいとか、そういうような考え方というのはあるのでしょうか。
○棚橋国務大臣 お答えをいたします。
まさに今須藤先生のおっしゃるとおりでございまして、具体的な主務省令の内容につきましては、何度か申し上げましたが、保存義務の課されている制度ごとに、制度趣旨にのっとって、要はなぜその文書が保存されているか、その目的、あるいは違反に対する罰則等による抑止力の有無、あるいは虚偽記載がなされる危険性が高いかそうでもないのか、あるいはその影響の程度、そういったものを勘案した上で、各制度を所管する主務大臣が主務省令で決定するということを私どもとしては基本的に想定しております。
しかし、一方で、せっかく今e―文書法案をお願いしている中で、政府全体としても、民間、特に企業活動や国民生活における保存コストの削減という観点から本法案をお願いしているわけでございますので、民間事業者などの御意見も伺いながら、それから民間の保存コストの削減と各法令で義務づけられている書面による保存の目的、これがともにバランスよく達成されるように考えていかなければいけないと思っております。
そういう観点から、IT戦略本部を中心に、各省庁の主務省令の規定の内容の整合性、整合を図るというような取り組み、そういう観点から一体的な取り組みを進めてまいりたいというふうに今考えております。
○須藤委員 では、次の質問に移りますが、電子化によります文書に係る保存コストの削減ですね。これは企業の方から三千億という数字が出ておりますが、この波及効果についてまず伺いたいと思います。
先ほど、これは質疑及び答弁がありました。その中で、三万円以上というようなことが示されておりますけれども、税務関係、契約書、領収書の適用対象外となっているというか考えられている、この三万円未満については電子化はいいだろう、それ以上になってきた場合は文書で従来どおり保存、この基準の根拠はどういうものになるか、まず伺いたいと思います。
○松井政府参考人 お答えいたします。
契約書、領収書、これは個々の取引の実態や金銭の授受を証明するための最も基本的な書類でございまして、これらを紙で保存させることによりまして、その他の書類の改ざんを抑制し、改ざんされてもその取引内容を検証することが可能ということでございますので、引き続き紙による保存を求めることとしております。
しかしながら、業界団体からの要望などによりまして、契約書、領収書のうち取引金額の少額なものにつきましてはぜひスキャナー保存の対象としてほしい、こういう強い要望があったところでございまして、取引金額の少ない領収書等につきましては、一定の要件のもとでスキャナー保存をさせても税務執行上支障が少ないということで、消費税の少額請求書等の保存義務の要件緩和基準や印紙税の金銭の受取書に係る非課税基準等の例を参考としつつ、三万円未満の領収書等につきましてはスキャナー保存を認めることとしたものでございます。
企業等に保存をされております領収書等は、タクシー代等の旅費、交通費、電話料金等の通信費及びその他の雑費に係るものが多く見込まれまして、業種、業態で多少の差があると考えられるものの、一般的には三万円未満のものが過半を占めているのが実態でございます。したがいまして、三万円未満の領収書等のスキャナー保存を認めることによりまして、領収書等のかなりの部分が対象となり、保存コストの軽減も図られることになると考えております。
○須藤委員 そうしますと、経済波及効果というのは、少なくともこの契約書類に限っては、三万円未満の文書類を電子化した場合に見られる波及効果であるというような調査といいますか数字が出ているというふうに考えてよろしいんでしょうか。
○棚橋国務大臣 これは、必ずしも明確なことをお答えできないかもしれませんが、例えば、日本経団連さんのサンプル調査では、三万円未満のものが四割から九割を占めるという結果がございます。しかも、この四割から九割というふうになぜずれるのかということですが、これは割合、企業の業務形態等にもよると思いますので一律に何割ということが、例えばこのデータでも申し上げられない。
ただ、今の御質問の趣旨の中で、私どもは、特に例えば三万円未満の領収書の保存が電磁的記録で保存できるようになるということで、やはり一つの大きなコスト削減にはつながると思いますし、また、これは関係官庁と相談をしながら進めてまいらなければいけませんが、本法案を通していただいて、これができた段階でさらにそういったものは実証的に考えていくべきだというふうに思っております。
○須藤委員 では、次に移りたいと思います。
紙の文書の情報を電子化する、つまり電子化してコンピューターの中に情報として入れるということに関して、文書管理体制をどう、強化だと思うんですが、充実強化していくかということについて伺いたいと思います。
先ほどさまざまな対応策があるんだということをおっしゃっていましたが、例えば、文書管理について、文書や情報を取り扱う責任者を企業内でも定めて、その人をあるいはそのセクションを通過しない限り、その文書を電子化することはだめだというようなことが考えられると思います。
そうしますと、当然それは、企業内における人件費等のコストであるとか、あるいはそれに伴うセクションの設置、大体あるとは思うんですけれども、さらにその辺を充実強化していくということになるとお考えなのでしょうか、伺いたいと思います。
○棚橋国務大臣 e―文書化したときの文書管理体制をどのように充実強化するかという趣旨の御質問ではないかと思いますが、先生のまさに御指摘にあったように、現在、文書に関しても、その保存管理に関して責任者を置いている企業もあるというふうに伺っております。
電子的に保存した文書につきましては、改ざんなどを抑止するために電子署名等の技術的措置とともに、今お話にございましたように、紙の文書以上に文書管理体制の強化等の運用上の措置が重要であるという点においては、私も全く同感でございます。
そういう観点から、保存管理者の任命あるいは文書の作成履歴の管理あるいは保存管理マニュアルの作成などということが考えられるのではないかと思います。そういったことにつきまして、具体的な方法について、各制度の主務省令等で適切に配慮されるように私どもは努力してまいりたいと思っております。
○須藤委員 恐らくこの点に関しましては、現在の紙文書での保存に対するセキュリティー、文書管理の対応の度合い、度合いといいますのは、つまり、重要なものだからきちっと管理をするというような考え方ですね。そういったものとほとんど変わらないと私は思う。技術的には、タイムスタンプや認証制とか、さまざまなものが必要になるでしょうけれども、考え方としてはそれほど変わらない。
そうすると、大事なのは、逆に電子化された情報というのは、いろいろ危惧されるような漏えい、改ざん等考えられますから、人的な側面での対応といいますか考え方をさらに充実させないと、今まで以上にそういった危惧されることが起こりやすくなるというふうに私は思いますが、この点はしっかりと主務省令あるいはガイドライン等で万全の対策をとっていただきたい、このように思います。
そこで、続いてさらに質問いたします。
文書の改ざんに関しては、文書段階での改ざんと電子化されて後の改ざんがあります。そこで、タイムスタンプあるいは認証あるいは本人確認ということも非常に重要になってくるんですが、そういった側面での対応はそれぞれ今考えられて、既に先進国であるアメリカ等でも相当程度に進んでいる。
私は、先ほど大臣の答弁ありましたが、スキャナーで文書を読み取るときに、大体、二百dpiから三百ぐらいであれば恐らく大丈夫であろう、また実験結果からも、この程度に写るのかなと、私も実際に見てきましたけれども。
そこで、一つお伺いしたいんですが、紙段階での文書を例えば改ざんする、改ざんをしたものを今度スキャナーで読み取る、その改ざんの仕方によっては二百、三百dpi程度では確認できないやり方が当然あると私は思うし、その辺に関してはどう御認識をされているか、まず伺いたいと思います。
○棚橋国務大臣 お答えいたします。
全く同感でございます。私も改めて、本法案の国会への提出の前に、現在のスキャナーの解像度がどれぐらいなのかというのを見てまいりましたけれども、現在、比較的安いコストで、例えば、紙が折れている状態とかあるいはホワイト等で直したような改ざん、こういう初歩的な改ざんに関しては、すべてこれは電磁的にわかるようになっております。
ただ一方で、細かいことを言うと、昔でいうとまさに砂消しで消して上になぞるとか、そういう話になると、確かに先生がおっしゃるように、相当解像度を上げないと難しい、あるいは、相当解像度を上げてもなかなか見破れないというケースは、当然のことながら技術的にはあり得ることだと思っています。
ただ、その部分について言うならば、紙においても、これは非常に巧妙に改ざんすれば、あるいは、そもそも紙自体をかえてしまえば起こり得ることでございますので、私どもは、そういったことを防止するために、刑事罰があるような法律であれば、当然、刑事罰の適用も含めて、政府としてはきちんと対応してまいります。
今回、文書をe―文書化することをお認めいただくこの法案が仮に通りましたときの改ざんの問題の中で、紙自体の改ざんをデータに読み込むときにどうなんだという御質問に関しては、やはり、それぞれの法律がどの程度の正確性をより求めているのか、あるいは、先ほど申し上げましたように、刑事罰の担保があるのか、あるいは、そもそもそういう改ざんが残念ながら比較的行われやすいケースなのかというようなことも含めて、総合的に判断して、主務省令で決めていくべきものだと思っております。
また、当然のことながら、スキャナーの精度等が上がってまいりましてコストも下がってくれば、また主務省令の中身も変わってくるのだと思いまして、そこはまさに、解像度と利便性、その部分のバランスを考えながら進めていくべきではないかと思っております。
○須藤委員 実は、この解像度なんですが、現在でも市販で大体千二百dpiぐらいのスキャナーが売っておりますよね。それも、値段も大体四万前後ぐらいで売っています。千二百クラスにしますと相当細かいところまでスキャンすることができるんですが、例えば記入をする用紙のフォーマットによってけい線があるようなもの、こういったものは当然黒でけい線が書かれていますから、そこをカッターでうまく切り抜いて、文字を書いて張りつける。これは多分ほとんど見分けられないかと思うんですね。
仮に、今業務用で使っているスキャナー、五十万円前後ぐらいしますから、そういったものでしたら、スピードとか、さまざまな機能が高いんです。しかも、カラーは当然できます。そういったものだったら確認することができるかもしれないけれども、同時に、コストが非常に高くなる。これが相当数出荷して廉価になってくるということは考えられますけれども、そこまでなかなか実際はいかないだろうと思います。
そうすると、先ほど大臣が言われましたけれども、紙段階でも改ざんする可能性はあるということが言われましたが、実は紙段階での改ざんというのは、やる方もよほど、最初から確信犯でやっていますけれども、かなり慎重に慎重にやっていると思うんですね。ところが、電子化されると、これは見方によって、非常に気軽に、しかも一挙に大量のデータ、あるいは、わからないだろうというような思いでやる場合も私は非常に強いんじゃないかと思います。
だから、その意味では、紙段階での改ざんに対する罰則であり周知であり、あるいは、そういうことがいけないという意味の、督励といいますか環境を、よほど注意をしていかないと、やはり情報の漏えいであり、一番大きく出てくるのが病院等における医療過誤であり、カルテや、あるいは診療報酬ですね、レセプトの不正請求でありというところに出てくるんじゃないか。これは、想像を容易にすることができるし、現在の紙段階でも相当行われておりますので、当然、電子化されることによってその量はふえてくるのではないか、このように思います。
この点に関しては、ぜひ十分な注意を持って、これまで以上の厳しさといいますか対応をしていただきたい、このように思います。
時間がなくなりましたけれども、最後あと一点、お伺いします。
地方公共団体に関しまして、同じようにe―文書化に関する努力規定と同時に、地方分権の流れの中で地方自治体の主体性を両方求めるような形になっておりますけれども、自治体については、そこで行政機関と契約を結んで文書保存が規定されているもの、条例等たくさんあると思います。そういったところでは、中小企業、零細、というよりも零細、個人企業の方々が結構多いんですね。
一番最初に申し上げましたように、そういったことが過度の押しつけのように当然ならないように、中央省庁から言われて、法律が施行されて、これはやはりやらなければいけないのかな、条例で規定して、市町村に関係する業者の方々にも皆さんやってください、これは相当な重荷になってくるのではないかなと私は危惧しますが、この点についてお考えをお聞きしたいと思います。
○棚橋国務大臣 お答えをいたします。
今御質問がございました件につきましては、まさに先生が御質問の趣旨の中でお話になられたとおりでございまして、今回のe―文書法案につきまして、自治体に関しては、自治体が保存義務を民間事業者等に負わせるものに関しては、地方自治を尊重するという観点から、本来、条例により保存を義務づけられているもの等についてはその対象とはしておりません。
ただ一方で、この法案の最大のメリットは、文書による保存か、あるいは電磁的記録による保存か、これを保存義務者の方が選べるということですので、地方自治の観点から自治体の地方自治というものは私ども十分に尊重しながらも、しかし地方公共団体がe―文書法の趣旨にのっとって必要な措置を講じていただきたい、そういう観点から努力義務をお願いしているところでございます。
問題の、今お話にあったように、政府が進めているんだから、すべての文書をe―文書にできるものはしろというようなことにならないかという御懸念でございます。
これは、私どもとしても、あくまでこれは、IT社会の中で、e―文書でも保存ができるようになったんです、選択肢を二つにしたんです、利便性を増したんですということをきちんと周知徹底していかなければいけませんし、その観点から、先生の御懸念の問題は払拭できるように努力してまいりたいと思っております。
○須藤委員 以上で終わります。
○松下委員長 次に、吉井英勝君。
○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
幾つか最初に確認をしておきたいと思いますが、電子技術の進歩、ペーパーレス化していく社会、その中で、書類の電子的保存というのは私は当然の流れだというふうに考えております。
そこで、法案では、電子化による保存も認めるというものであって、従来どおり書面による保存も認める、電子保存を義務づけたり強制したりはしないという、この選択の自由は将来にわたってその立場をきちっと守っていくんだ、貫いていくという、この点だけまず最初に確認しておきたいと思います。
○桜井政府参考人 本法案は、民間事業者等に対して、書面の保存等が法令上義務づけられている場合において電子保存を容認するものでございます。
したがいまして、保存を義務づけられている民間事業者等に電子保存を行うか否かについての選択肢を与えるというものでございます。
○吉井委員 だから、どっちを選ぶかという選択肢の自由ですね、これはこれからもきちんとそれを貫いていくという立場ですねという、この確認だけなんです。
○桜井政府参考人 法案は、先ほど申し上げましたように、電子保存を行うか否かに関して選択肢を与えるということでございます。引き続き、そういうことで法の執行というのを、成立していただければ、行ってまいりたいと思っております。
○吉井委員 次に、法案についての説明を伺ったときに、コスト削減効果についていろいろお話も伺いましたが、この点については否定的な見方をする方もおられるんですね。否定的という意味は、技術要件の高さがシステム構築費と維持費を押し上げていくという問題がありますし、一方では、入力にかかる人件費も無視できないではないか。つまり、そのバランスするところによって、必ずしもコストが下がるということにつながらない場合もあるわけです。
それで、政府の説明を伺っておりましたときには、書類の電子保存によって、経済界全体の現在の保存コスト年間三千億が、電子保存によって大体三割から四割のコスト削減になるというお話だったんですが、ただそれは、試算は経団連のものだということなんですね。ですから、政府自身として、効果を言っておられるわけですから、独自の試算はどういうふうになっているのか、これを次に伺いたいと思うんです。
○桜井政府参考人 御指摘のとおり、日本経団連によれば、税務関係書類の保存コストというものは我が国全体で約三千億円との試算でございます。
本法案の制定に当たりまして、国としてのこの種の試算というのは行っておりません。行っておりませんけれども、本法案によりまして、原則としてすべての書類の電子保存が可能になるということから、産業界全体で大幅なコスト削減になるというふうに考えているところでございます。
○吉井委員 法案の説明のときにコスト削減効果を言われる、しかし一方では、必ずしも削減効果は出ないのではないかという、さっき言ったような見方もあるわけですから、やはりそこのところはきちんと、もう少し説得的な答弁ができるような試算というのを独自に行って出さないことには、これは何か一方的な宣伝だけということになりますから、法律をつくるときには、そこまできちんとしたものにするべきだということを申し上げておきたいと思うんです。
次に、国税庁の方に伺います。
先ほどもスキャナーで読み込むときのお話、解像度の問題がありましたが、例えば、マル査の方が今ですと紙についている指紋からでも脱税についての追及をするとか、しかし、その解像度も特別高いものでないと指紋まで読み込むことはできないわけですから、そうすると、そういうことも含めた、データ改ざんを許さない、そういう取り組みをどうするかということは一つの課題になろうかと思うんです。
国税庁の場合は、e―文書法にかかわって、このデータ改ざんなどを、脱税を許さないという取り組みと、同時に一方では、それが行き過ぎといいますか、非常に強大な権力を持っている機関になりますから、権力の乱用によっては善意の納税者の人権を侵すという問題なんかも出てくる、そういうことにならないようにしなければいけないという、二つのことが大事だというふうに私は考えているんです。
特に、税務関係の書類の改ざんを防ぐためには、国税庁は、要件として、税務署長の事前承認とともに、一定の技術要件を満たすことを求めていますね。
そこで、少し税にかかわる保存文書の電子化について、では中小企業の場合には負担はどうなるのか、初期のコストとランニングコストを合わせて、どういうふうになるのかという試算を出しておられるならお聞きしたい。同時に、電子保存によるコスト削減効果がそのことによって幾ら出てくると見ておられるのか、これも伺っておきたいと思うんです。
○村上政府参考人 お答えいたします。
先生御案内のとおり、e―文書法というのはあくまで選択でありまして、強制されるものではなく、また国税庁にとりましても、もちろん今先生御指摘のとおり、税務行政の根幹であります適正公平な課税を確保しつつ、電子化に伴うコスト削減をいかに図るか、そういうものを総合勘案してこの法律がつくられたと思います。
したがって、我々、別にコスト削減効果を試算する立場にないと思いますし、また、中小企業はどういう文書を保存しておられるかというのは必ずしも我々は把握しているわけではありませんので、そういう推計をするのは困難だと思います。
○吉井委員 先ほども議論がありましたけれども、何かお話を伺っていると、結局、かなり大手のところには削減効果等があるんだけれども、中小零細にとっては、この法律というのは、別段特にコスト削減効果が出てくるとか、そういうものとは違うということになってこようかと思うんです。
そうすると、私は、この機会に少し伺っておきたいのは、納税者の権利を定めた法律とか憲章というものは日本にはないということが、経済の発達した国々の中では異例とも言える状態ですが、しかしその日本では、税務運営方針というのによって、国税庁は、各地の税務署の職員に、納税者の人権を尊重した税務調査を行うようにというふうに指示してきたと思います。現場で税務運営方針を知らない税務職員が、しかし結構最近見かけられるものを感じられますから、これは現場に徹底しているのかどうか、次にこれを伺っておきたいと思うんです。
○村上政府参考人 納税者の権利についてのお尋ねだと思いますが、我が国におきましては、租税法律主義のもと、国税通則法や各税法におきまして、更正の請求であるとか、不服申し立て、守秘義務など、具体的な規定が置かれております。その趣旨に従って税務行政を推進しておりまして、基本的にその保護が図られているというふうに我々は考えております。
それから、今、税務運営方針のお尋ねがございました。
これは、昭和五十一年に、実は国税庁長官が職員に対する訓示として示したものでありますが、現在は、行政改革がございまして、財務大臣から示された国税庁の事務の実施基準及び準則を受けて、その内容にかつ具体的な行動規範を加えて、国税庁の使命として職員に周知をしております。
なお、税務運営方針につきましても、昭和五十一年に制定したものでありますから、若干内容が古くなっている部分もあるんです、例えば消費税が入っていないとかですね。そういうものでございますが、税務行政を遂行する原則論を示したものでございますので、引き続き、その趣旨の徹底は図っているところでございます。
○吉井委員 税務運営方針、この考え方というのは今も非常によく生きてくる部分があります。生きているものがちゃんと示されておりますので、やはり現場で税務職員の方に税務運営方針のこの立場というものを徹底するということが大事なものだと考えております。
そこで、〇三年の消費税改正によって免税点が三千万円から一千万円に引き下げられました。そのときに、課税事業者となって簡易課税をとるか、本則課税でいくかというのは事業者が選択できるということですが、法律の改正後に初めて課税事業者となる場合、経過措置として来年中の提出でも可能となっていると思うんですが、これを次に確認しておきます。
○村上政府参考人 お答えいたします。
消費税の簡易課税制度の選択届け出につきましては、この簡易課税制度を十分理解していないまま提出されたというケースもございますので、そういった場合には、現在でも、簡易課税制度の適用を受けようとする最初の課税期間の開始の日の前日までであれば取り下げが可能という取り扱いになっております。
なお、今回、平成十五年の税制改正におきまして、新たに免税事業者がふえて、新たな課税事業者がたくさん出てくるわけでありますが、今回にかかわりまして、特別の経過措置といたしまして、平成十六年四月一日以降、法律施行されておりますが、以後、最初に開始する課税期間において、新たな課税事業者となる事業者につきましては簡易課税制度選択届出書の提出時期に関する経過措置が設けられておりまして、例えば平成十七年分から新たに課税事業者となる個人事業者の場合には、平成十七年十二月三十一日までに選択届出書を提出すれば、平成十七年度分から簡易課税制度の適用を受けることができることになっております。
したがいまして、今回の税制改正に伴い新たな課税事業者となる個人事業者につきましては、この経過措置期間中、すなわち平成十七年十二月三十一日までは取り下げが可能となっております。
○吉井委員 実は、この簡易課税、税の問題というのは国民的に非常に難しいんですね。簡易課税方式の届けを出した後、簡易課税をやめて原則どおり計算をして申告しようと届けの変更をしても、経過措置期間中であるにもかかわらず税務署で受け付けてもらえないで困っているという業者の方からの訴えが新潟の方でありました。
少しこの話を聞いてみると、新潟税務署からことし六月に「平成十五年分の課税売上高が一千万円を超えると平成十七年分の消費税の確定申告が必要になります!」、さっきの話ですね、そういう見出しで消費税課税事業者届出書提出の案内がまず来たわけですね。
その中に「消費税についてのお尋ね」を七月九日までに提出しなさいと書いてあって、しかし、そのままにしていたら新潟税務署の方から今度は九月十日付のもので、消費税の課税事業者に該当する、しないにかかわらず、九月二十一日までに提出するようにという期日を設けての督促が来たわけですよ。
そうすると、この業者の場合は、督促が来たから、これは大変だ、仕組みがわからないが、とにかく慌てて簡易課税選択届出書を提出した。しかし、届け出を出した後、計算をしてみると、簡易課税方式で計算すると消費税の払い過ぎ、つまりお客さんから実際もらっている消費税よりもたくさん払うということになってくることがわかったので、届けの変更をしたいと税務署に行ったら受け付けてもらえなくて困っているという話が出てきました。
来年十二月末まで、今お話があった経過措置があるんですね。その経過措置期間中は届けの取り下げを認めるのが普通だと思うんですね、この場合は。届けの取り下げを認めないという、何かそんな規定があるのかどうか伺いたいと思うんです。
○村上政府参考人 内容につきましては、先ほど御答弁をしたとおりでございます。
なお、ちょっと今先生御指摘の個別事案について承知しておりませんが、もし万が一、部内において取り扱いが違うということがあったら大変でございますので、それらの取り扱いにつきましては再度周知をさせていただきたいと思っています。
○吉井委員 つまり、取り下げができるということを周知徹底されるという今のお話で、私、そこは非常に大事なところだと思っているんです。
実は、税務運営方針を読んでおりましても、調査内容を納税者が納得するようによく説明しなさいとか、いやしくも一方的であるという批判を受けることがないように細心の注意を払いなさいとか、なかなか税務行政でちゃんとしたことを言っているわけですよね。
納税者の利益となる事項を進んで知らせる心構えが大事だということもあるんですが、つまり、簡易課税を選んだら、当然お客さんからもらった消費税を払うのは当たり前の話ですよね、それは払うんだけれども、逆にもらってもいない部分まで過払いになるようなことがあり得るわけで、その場合は本則できちんとやった方がいいのですよとか、やはり丁寧な説明をしてあげないことには、これはなかなか普通の納税者にはわからないということがあります。
納税者の正当な権利、利益の保護に欠けることがないように配慮しなさいというのが、もともと税務運営方針として皆さんの方は出してこられたことですが、なかなかそれが現場の段階になると税務職員の方に徹底されていないということがあります。
私は、今度の法案に関連して言いましたように、マル査の人の活動など、全く悪意を持って巨額脱税に走っている連中や犯罪、たくさんありますから、それをびしびしやるのは当たり前だと思うんですね。しかし、同時に、今の新潟の話と同様の例が全国であるわけで、新潟の話は、期日を限って督促されると、督促を受けた側、普通の市民というのはやはり強要されたように受け取ってしまって、とにかくその日までに届けを出さないかぬということになるんですが、後で税理士さんなんかに相談したら、実際は本則課税より税金を払い過ぎることになるから、それはあなたの場合はこうですよとか、プロの方から丁寧に、親切に教えてもらえるわけですね。
だから、普通の人の場合には、消費税課税事業者届出書の提出の案内とか、「消費税についてのお尋ね」が届けば、圧力ととらえてしまったりしますから、その結果、選択届けを出してしまうこともあるということを聞いています。
ですから、全国の税務署、納税業者に対して、選択届けの取り消しができるんだということ、その方法をやはり周知徹底して、あわせて、取り下げ手続が簡単にできるための様式や書類を考えるということ、こういうことが大事だと思うんですが、さっき御答弁ありましたけれども、その立場でぴしっとされますね。
○村上政府参考人 あくまで簡易課税というのは、これは主税局が答弁すべきかもしれませんが、事務負担の軽減の見地から設けられているものでありまして、納税額が有利、不利ではございません、御案内と思いますが。
現に、設備投資なんかをやられた場合、本則課税の方が結果的に有利になることもありますので、そういう二つの制度があるという、それは必ずしも有利、不利とは別問題でございますが、二つの制度があるという周知につきましては徹底してまいりたいと思っています。
○吉井委員 私、有利、不利の議論じゃなくて、やはりそのことはよくわからないで届け出を出したんだけれども、取り消そうと思ったらだめだと言われて困っている人が出ないようにやっていただきたい、こういう趣旨ですから。
実は、税務調査で、大阪の統括官の方が業者にうそをついていきなり反面調査を行ったために取引先からの取引が困難になったという事例が最近もありますが、うそをついたことを認めながら是正はしないということがあるんですね。税金を取る方は一生懸命なんだけれども、問題が出たときに是正する方はきちんとしない、これでは、納税者の権利を尊重するという欧米社会の水準に追いつかないということになると私は思うんですね。
税務運営方針をきちんと徹底した税務行政をやっていただきたい。それは、納税者の権利をしっかり守るということは近代社会にとって大事なことですから、それをやっていただきたいということを申し上げまして、時間があと一分弱になりましたので、大臣の方に。
きょうはe―文書法についての議論ですが、今、私申しましたが、法の執行には二面あるということですよ。つまり、この法についても、利便性と同時に、個人情報流出の問題とか、あるいは改ざんの問題だとか、そういう二面があるんですね。税についていえば、改ざんなど脱税を許さない対策と同時に、税務には強大な権力行使が伴うものですから、誤ると大きな弊害が生まれる。こういうものですから、このe―文書法についても、そのことを考えた公正な執行というものが非常に大事だと思うんです。
この点について、最後に大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
○棚橋国務大臣 吉井委員にお答えいたします。
おっしゃるとおりでございまして、やはり国民の利便性、選択肢を増すという観点からのこのe―文書法、私どもの立場としてできる限り使い勝手がいいものにしていくようにしてまいりたいと思っております。
ただ、一方で、今お話にございましたように、やはり改ざんという問題がございますので、書面の保存と比較して容易に改ざんが行われないようにという側面と、それから他方、必要以上に厳格な要件を課すということによって、民間事業者等が電子保存をできなくなったり、妨げてしまうということがないよう、この二つの要請、文書の内容や改ざんの危険性等に応じて、必要な技術基準や運用の要件等を主務省令で定めてまいることとなっておりますけれども、この制定に当たって、IT戦略本部等を通じて、技術等に関する情報の共有化、あるいは省令整備の進捗を管理した上で、保存の電子化を政府全体として適切に推進できるよう、e―文書法の適正な執行に努めてまいります。
○吉井委員 時間が参りましたので、終わります。
○松下委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○松下委員長 これより両案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
まず、内閣提出、民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○松下委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
次に、内閣提出、民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○松下委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○松下委員長 この際、ただいま議決いたしました両法律案に対し、山本拓君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び日本共産党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。須藤浩君。
○須藤委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し趣旨の説明といたします。
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律案及び民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、両法律の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一 両法律の施行に伴う主務省令等の制定及びその運用に当たっては、国会における議論及び民間事業者等の意見を十分に踏まえるとともに、経済社会情勢等の推移に応じて必要な見直しを行うこと。また、主務省令等の内容について、国民の経済活動等に支障のないよう、十分周知徹底すること。
二 情報の改ざん、漏えい、不正使用等が行われないよう、民間事業者等に対して、情報通信の技術革新に対応したセキュリティ対策及び個人情報の保護のための適切な措置が講じられるよう必要な助言等を行うこと。
三 税務関係書類の電子的な保存については、適正公平な課税及び電子化によるコスト削減等の観点を踏まえつつ、適宜その対象範囲の見直しを行うこと。
四 処方せんの電子的な作成・交付等については、患者等の利便性の向上、技術的実現可能性等を踏まえつつ、その可否について引き続き検討していくこと。
五 地方公共団体において両法律の趣旨にのっとり適切な措置が講じられるよう、情報提供その他必要な措置を講ずるものとすること。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○松下委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○松下委員長 起立総員。よって、両案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。棚橋国務大臣。
○棚橋国務大臣 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。
附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。
―――――――――――――
○松下委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――
○松下委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時十七分散会