衆議院

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第12号 平成17年6月8日(水曜日)

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平成十七年六月八日(水曜日)

    午前十時三分開議

 出席委員

   委員長 松下 忠洋君

   理事 木村 隆秀君 理事 河本 三郎君

   理事 増田 敏男君 理事 山本  拓君

   理事 宇佐美 登君 理事 須藤  浩君

   理事 玉置 一弥君 理事 田端 正広君

      江渡 聡徳君    大村 秀章君

      川上 義博君    木村  勉君

      佐藤 剛男君    桜井 郁三君

      土屋 品子君    西村 康稔君

      萩野 浩基君    早川 忠孝君

      御法川信英君    宮澤 洋一君

      柳本 卓治君    石毛えい子君

      市村浩一郎君    島田  久君

      田島 一成君    藤田 一枝君

      藤田 幸久君    牧野 聖修君

      太田 昭宏君    高木美智代君

      吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣         村上誠一郎君

   内閣府副大臣       林田  彪君

   内閣府大臣政務官     江渡 聡徳君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   政府参考人

   (内閣官房構造改革特区推進室長)

   (内閣府構造改革特区担当室長)          滑川 雅士君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           樋口 修資君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         金森 越哉君

   参考人

   (聖ウルスラ学院英智小・中学校校長)       伊藤 宣子君

   参考人

   (遠野市長)       本田 敏秋君

   参考人

   (社団法人行革国民会議事務局長)         並河 信乃君

   参考人

   (弁護士)

   (日本弁護士連合会刑事拘禁制度改革実現本部事務局長代行)         海渡 雄一君

   内閣委員会専門員     高木 孝雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月八日

 辞任         補欠選任

  木村  勉君     柳本 卓治君

  宮澤 洋一君     御法川信英君

  小宮山洋子君     田島 一成君

  太田 昭宏君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  御法川信英君     宮澤 洋一君

  柳本 卓治君     木村  勉君

  田島 一成君     小宮山洋子君

  高木美智代君     太田 昭宏君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

松下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、構造改革特別区域法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、聖ウルスラ学院英智小・中学校校長伊藤宣子君、遠野市長本田敏秋君、社団法人行革国民会議事務局長並河信乃君、弁護士・日本弁護士連合会刑事拘禁制度改革実現本部事務局長代行海渡雄一君、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 伊藤参考人、本田参考人、並河参考人、海渡参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、御了承をお願い申し上げます。

 今国会からノーネクタイでやっておりますので、皆さん方もどうぞ、許可いたしますので、お願いいたします。

 それでは、伊藤参考人にお願いいたします。

伊藤参考人 おはようございます。

 構造改革特別区域法に基づき、宮城県のみやぎ私立学校教育特区に対しまして、学校法人聖ウルスラ学院は、本計画の意義を、学校が抱える諸問題の解決の一策となるよう小学校と中学校の教育内容を高密度に連携させ、児童生徒の自己実現を目指す新しいタイプの小中一貫教育を展開し、個性豊かな人材の育成を実現するための特区計画作成の提案を申請し、特定事業八〇二、八一九をお認めいただきました。

 本日は、参考人として、構造改革特別区域研究開発学校聖ウルスラ学院英智小中学校の教育課程を中心として述べさせていただくと同時に、新しいタイプの学校教育のスタートによる成果を、現段階においてということになりますが、報告させていただきたいと思います。

 なお、本日提出させていただきました資料等にお目通しいただければありがたく思います。

 最初に、教育課程を展開するベースとして、小中一貫教育の基本構想をお話し申し上げます。

 子供たちの発達段階に応じて、小中学校九年間を四年間のファーストステージ、三年間のセカンドステージ、二年間のサードステージに分け、一人一人の多様な個性を十分に伸ばすためのきめ細かな指導を行う計画を立てました。教育課程も統合再編して、心身を健全にはぐくむ時間をふやすとともに、基礎、基本の定着から応用、発展力の養成までを無理なく実現することを目指しております。

 具体的な内容として、六つの点を挙げさせていただきます。

 児童生徒の実態に応じたカリキュラムの編成、実施により、ファーストステージの基礎学力の定着と学び方の基礎を定着させようと思います。セカンドステージ五年生から七年生、及びサードステージ八年生から九年生においては、難易度の急激な変化の対応や習熟度に応じた指導ができ、基礎学力のみならず、応用、発展的学力の向上が期待できます。

 二つ目に、教科を五つの分野に統合し、総合的に各分野の学習を行うことによって、教科の枠を超えたより深い学習が可能になるように考えました。分野の中に、いわゆる教科内容のみならず人間教育を組み込むことで、すべての学習が人間教育であることを明示でき、人間の成長を可能にできるように工夫しました。

 三つ目、セカンドステージから教科担当制をとることにより、より高い専門性を背景とした、よりわかりやすい授業が展開できることを実現したいと思います。中学校の教員による学力の高い生徒児童の指導や、小学校教員による遅進児童への対応など、きめ細かな児童生徒のニーズに合った一貫した指導ができ、個人の学習能力に応じた学習がしやすくなることを期待しております。小中学校の教師間連携を密にしながら、相互の研修を盛んにし、教育力を教員の中にも高めていきたいと願っております。

 五番目に、学校行事、総合的な学習など、すべて継続、連続的に目標を設定し、教育目標が十分に達成されると同時に、幅広い異なる年齢集団の形成による人間関係の醸成が可能となることを実現したいと願っております。

 小中教育の基本構想によって、小中一貫教育の目標を私たちは持ちました。聖ウルスラ学院の四百七十年の伝統と、仙台における五十年の伝統、教育、これを生かしながら、児童生徒にとっても、また保護者から見ても、学力向上が実感できる学校、人間としての成長が実感できる学校、充実して楽しいと感じる学校を実現したいと願っております。

 教育課程を構築するに当たって、教科を五分野に統合し、横断的に学習を行うことで、教科の枠を超え、より深い発展的な学習ができるように教育課程を組み上げました。こちらは学校要覧をごらんいただければありがたいと思います。

 五分野、これはまず最初に、価値と規範の教育。宗教的情操教育、社会的規範教育、道徳的実践力を養う教育をこの分野で実現いたします。

 人間分野。こちらは、豊かな創造性をはぐくみ、調和のとれた生活、体を土台に、周囲の世界と調和のとれた交流のできる人間の育成を目指したいものと考え、統合いたしました。

 言語と国際性です。こちらは、世界の人々とともに生きる真の国際性を目指すとき最も大切なことということで、言語の世界を分析し、言語の力、これをもって真の国際性を目指したいというふうに、この分野を組みかえました。

 科学の分野です。自然の中で生まれ、人間社会の中で育つ子供たち。この子供たちが、自分以外の世界と向き合って生きているということを実感し、主観の目で曇らない客観的、総合的な見方、科学的追求心、真理を求める心、これをはぐくみたいと思いました。

 最後に、数と量の分野です。こちらも、人間が理解する内容は、数や量を伴うことによって具体化され、明瞭になっていくという観点から、この分野を構築し直してみました。点から直線、直線から立体へと広がっていくように、具体から抽象へと理解の度合いを拡大する方向へと学習を展開し、人間の理解とのかかわり合いを重視した教育を行いたいとの願いからの、数と量の分野でございます。

 これらの五分野を、ステージの特性を考えて、各ステージに教育課程を構築いたしました。この教育課程を実施するために、関連事業として、週六日制の実施、教科担当制、習熟度別学習の導入、到達目標の設定、転入生などに対する補充的な授業の実施等々につきまして、関連事業として展開しております。

 本事業の開始による成果と思われるものをここで最後に御紹介して、終わりたいと思います。

 まず、入学児童生徒数は、私たちの予想を超えるほどの反応がございました。図表にしておりますので、ごらんください。そしてまた、教育への関心度の高い保護者層が集まってきたということも成果として見ております。小中学校のみならず、幼稚園、高等学校へもこの影響が広がっております。また、保護者の学校行事、父母教師会行事への参加率も見事に向上しております。

 ステージ環境による子供たちの生活力の向上は、この二カ月で目をみはるものがございます。その中で学ぶ児童生徒たちの愛校心、ロイヤルティーの上昇も確認できます。

 また、地域社会、教育機関、報道機関の本校への関心度も上昇しております。また、この動きによる影響が多少あるのではと考えております、受け入れ長期留学生の増加が挙げられます。

 高校生の求人率、これも昨年度からの教育改革の流れが社会に出まして、高校生の求人企業がふえたというふうなこともはっきりと申し上げることができます。

 帰国子女家庭からの問い合わせも出てきております。また、転入生の問い合わせや、転入生の数もふえております。また、子供たちには自学の時間が確保され、みずから学ぶその時間の確保ができ上がってきているように思います。

 教師間の研修心も高まり、今後の十一月十七日の公開研究会に向けて、教員たちは日々研さんに汗を流しているというのが実態でございます。新しい教育ということで、日々、毎日、生徒たちとともに新しい問題を見出し、それに立ち向かっていく教師たちの姿ということで、報告をさせていただきたいというふうに思います。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

松下委員長 次に、本田参考人にお願いいたします。

本田参考人 おはようございます。

 ただいま紹介いただきました、遠野市長の本田と申します。本日は、衆議院の内閣委員会の参考人としてお招きをいただきまして、こうした立場で意見を述べる機会をいただきまして、大変感激いたしております。また、委員の皆様には、日ごろより地方における地域振興へ格別のお力添えをいただいておりまして、心から感謝を申し上げたいというように思っております。

 それでは、構造改革特別区域法の一部を改正する法律案ということで、この構造改革特区の認定を受けた地方公共団体、地方における地域経営の中におけるこの特区に係る取り組みにつきまして、私の立場から意見を述べさせていただきたいというように思っております。

 お手元には、パワーポイントで用意いたしました六ページほどの当市における地域経営戦略の粗筋を委員の皆様にお届けいたしているところでございます。これに沿っての意見ということになろうかというように思っております。

 まず、遠野市は、四国四県とも言われます岩手県を縦断する北上高地のほぼ中央に位置しておる場所にございます。約六百六十平方キロと、琵琶湖の大きさが遠野市の大きさということにもなってございますけれども、非常に大きな面積に二万七千人という市民が住んでおるということになってございます。

 この十月には、お隣の宮守村と合併をするということで新遠野市がスタートすることになってございますけれども、合併をいたしましても、三万三千人、面積は八百二十五平方キロを超えるという形になってまいりますので、非常に広大な面積に少ない人口の中での地域経営という部分における、いろいろな形での課題が山積しておるということになろうかと思っております。

 また、典型的な盆地でございます。標高三百から七百メートルの山々が周囲を囲んでございまして、寒暖の差も激しく四季の推移もはっきりしておるということでございまして、豊かな自然環境、あるいは先人たちが長年培ってまいりました生活や文化が、柳田国男先生の「遠野物語」といったようなもの、あるいはグリーンツーリズムといったような今日的な課題の中での一つの地域資源という形で位置づけられるのじゃないかなというように思っているところでもございます。

 我々といたしましては、こうした自然条件を生かしながら、いうところの農林業、あるいは乗用馬の生産など、こういった畜産業の一次産業を中心に、商工業、観光業一体となった相乗効果を発揮できるような産業体系を目指したいというように思っております。

 委員の先生方、六ページ、一番最後のところをちょっとお開きいただければと思うわけでございますけれども、「遠野市の新たな「志」」といたしまして、「「遠野スタイル」の基本姿勢」ということで、均衡横並びの、ない物ねだりの行政から脱却しようということで、こういった特区やあるいは地域再生といったような新たな切り口を一つ持ち込んで、市役所の中における行政の価値観というものを変えていこうじゃないかということで、今取り組んでいるところでございます。

 予算不足であれば英知を結集しよう、知恵を結集しよう。人が足りないというのであれば、市民とパートナーでそれを組み立てようじゃないか。なかなか、広大な面積の中で、少ない人口で、いうところの進まない近代化というのであれば、これを逆に武器にしながら、グリーンツーリズムといったような一つの先進地域になろうじゃないか。

 それから人口減少、なかなかこれは歯どめがかかりません。したがって、この部分におけることに手をこまねいているだけじゃなくして、交流人口の拡大といった中から、それぞれの切り口を新たな特区あるいは地域再生の中から見出しながら、我々の行政に対する取り組みといったものを変え、公平であり公正であり、そして公開といったことの中から、遠野らしさというものにこだわった町づくりをしようじゃないかということで今取り組んでいるところでございます。

 それで、そういった中におきまして、私がこういった地域経営を担うようになりましたのは、平成十四年の四月でございました。ちょうどそのころ、構造改革特区の議論が政府の中においていろいろ本格化してきたというように記憶してございまして、こういう構想がありますよというようなお話もお聞きしたのが、ちょうど平成十四年の就任間もないころでございました。

 そのころは構造改革特区は、大規模な工業団地やあるいは物流基地といったような経済的にも大きなインパクトを与えることを想定しておるのではないか、我々地方はそういった部分においてはちょっと土俵が違うんじゃないかというような認識でも受けとめておったわけでございますけれども、遠野のような中山間地でも活用できるもでのはないだろうかというような思いと、また雰囲気も、市役所の中においていろいろ議論する中に出てまいりました。

 そこで、これまでできなかったことができるようになるんだというのがこの特区ではないだろうかというような形での受けとめ方をいたしまして、遠野ができることは何かあるはずだということでいろいろ庁内議論を行った結果、その一つとして遠野ツーリズムというような形での切り口はどうだろうかという話が出てまいったわけでございます。

 地域づくりは人というものにかかっている。実は、二十年来、人口が減り続けております。合併した五十年前は三万七千人で合併がスタートしたわけでございますけれども、五十年経て、新たな平成の合併の場合は、一万人減っていまして二万七千人でスタートするということになるわけでございますから、この人口減少はなかなかこれも歯どめがかからない。高齢化も進行しておる。

 地域づくりを担う人の減少をカバーすべく、交流人口の拡大という中から、遠野の歴史、自然あるいは産業、暮らし、文化といったものの中で、今四つの言葉でいろいろ市民との間では語り合っているわけでございますけれども、ぬくもりともてなしであり、おもしろさとやる気だ。この四つの言葉の中から地域経営の一つの戦略を見出したいものだというように思っているわけでございます。その農村らしいもてなしという部分、あるいは食文化という地域資源の中で、一つのどぶろくといったものが着目されたということでございます。

 実は、議会でこのお話を申し上げましたところ、どぶろくというのは余りいいイメージじゃない、非衛生的というイメージでもある、遠野のイメージがますます悪くなるんじゃないかというような議論もございました。そこで、いや、これは違う、まさに伝統文化であり、米というものを通じての食文化でもある、それから、もてなしという部分と、遠野が今一つの切り口として持っておるふるさとといったものを多くの国民の皆様に体感していただくという部分においても、どぶろくというのは地域活性化の切り口にはなり得るんじゃないかというようなことで、これに着目し挑戦をしたということでございます。

 それからもう一つは、建設業の他分野への進出を促すという趣旨で、その選択肢の一つといたしまして、建設業の農業への参入といったものに着目させていただきました。

 この特区制度そのものは、提案と申請という二つの仕組みから成り立っておりますので、まずどぶろくをつくりたいという内容で、国に提案を申し上げたわけでございます。平成十四年の夏の一次提案では、特区としての対応は不可能だということでございました。

 そこで、再度いろいろ議論いたしまして、平成十五年の一月の二次提案で、どぶろくの製造を認めていただきたい旨の再提案を申し上げましたところ、農家民宿や農家レストランなど、一定の条件つきではあるが、どぶろくの製造を認めるという方針が示されたわけでございます。

 そこで、通称どぶろく特区ということになりましたけれども、本当は日本のふるさと再生特区ということでの特区構想でもあったわけでございます。農家民宿のどぶろくづくりのほか、企業の農業参入、そしてその中における交流人口の拡大、そしておもしろさとやる気といったものをそこで感じるような新たな挑戦の気概を応援しようということで、日本のふるさとと呼ばれる遠野からひとつ元気を発信しようじゃないかというような意味を込めて、日本のふるさと再生特区というくくりになったわけでございます。

 この間、内閣府という組織が、我々、地方における地域にありましては、霞が関そのものが大変遠い存在であったわけでございます。県の出先から県の本庁に行き、県の本庁から国の出先である仙台に行き、仙台から霞が関にたどり着くという部分におきましては大変距離が遠かったわけでございますけれども、この特区の中におきまして、内閣府という組織ができ、我々の提案をきちんと受けとめ、そしてまた道案内をしてくれる組織ができたという部分におきましては、大変近い存在になったという部分で、我々市職員の意識の改革にも本当につながりました。

 小さな地域のそういった挑戦という気概を国も認め、そしてまた応援もしてくれるんだというような一つの新たな仕組みがその中で出てきたという部分におきましては、いろいろな経済効果であるとか、あるいはいろいろな交流人口の拡大における人数の拡大といったような数字的な効果ももちろんあったわけでございますけれども、そういった部分における意識の改革におきましても大変大きなインパクトがあったんではないかというように私自身は受けとめているところでもございます。

 いずれ、こういったような形で、遠野市内でもそれぞれ農家民宿がどぶろくをつくりたい。あるいは、いろいろな農業参入でも、まだ二社ほどでございますけれども建設業が二社ほど今農業に取り組んでございます。建設業という業と農業という業では全く異なる業種なわけでございますけれども、懸命にこれにも取り組んでいるというようなことも、今新たな挑戦が始まっております。

 決してビッグなプロジェクトではない、しかし市民レベルで地道にこつこつと取り組む中において新たな一定の成果も得ることができたということで、どぶろくの製造でもって遠野が情報発信されたことによりまして、観光客の増加のもたらす波及効果で、平成十年の産業連関表で試算いたしましたところ、二億三千万ほどの、遠野のような小さな地域にとっては、大きな成果もまたその中で得られたということになってございます。

 ただいま申し上げましたとおり、市民一人一人の意識も変わってきておるということでございます。どぶろくというものにしろ、あるいは企業の新規就農にしろ、市民レベルでの新しいチャレンジといったものがその中に生まれてきておるということになってございます。

 ただ、この事業着手に至るまでの許可、あるいは免許等の審査や事務手続の煩雑さといったものは依然として残っております。したがって、私どもは、官と民とのすみ分けの中にあって、民の足らざるところは官がきちんとフォローすると。

 このどぶろくの製造の第一号の免許が取れたのも、民宿の江川さんという開拓農家の方でございましたけれども、書類を八十枚ほど用意して税務署に届け出なければ許可を得られない。農家で、酪農をやり、いろいろな農業をやっている方に八十枚もの書類をつくれと言っても無理なんで、市の総合産業振興センターのスタッフが全面的にそれをフォローしたという中にあって、全国第一号ということになったわけでございます。

 私自身は、官と民、これは官だ、これは民だじゃなくして、我々のような小さな地域にあっては、官と民がいかにその足らざるところを補いながら対応していくかというような仕組みこそ大事ではないかというように、今回の特区構想の一連の挑戦の中で、そのことを実感として感じたところでもございます。

 また、この制度を取り巻く諸制度、我々自身がいろいろな形で判断できるだけの審査基準あるいは手続に関する情報といったものが、インターネット等で、ホームページ等でいろいろ公開はされておりますけれども、なかなかそこを消化できないという部分でのいら立ちも、また我々自身も持っているところでもございます。

 最後になりますけれども、この特区制度は、たとえ遠野のような小さな地域であっても、また、どぶろくづくりのような小さな事業でも、国が応援をしてくれるという一つの形として、手ごたえを感じることができました。

 この制度は、我々地方で暮らす者にとって大きな励みになるというように信じておりますし、また、そのような形で、これからもチャレンジ、挑戦という中において、一層地方の活性化のために取り組んでいく一つの切り口にしたいものだというように考えておりますので、そのことを申し上げまして、意見とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

松下委員長 次に、並河参考人にお願いいたします。

並河参考人 並河と申します。

 私ども、社団法人行革国民会議の事務局をやっておりますが、一昨年の八月に、全国の市町村の方々に呼びかけまして、構造改革特区推進会議というものを立ち上げました。今御発言いただいた遠野の本田市長さんもメンバーであります。

 自治体の首長の方々あるいはスタッフの方々と、せっかくのこの制度をどうやったらもうちょっとうまく活用できるのかというような立場で議論をしているということでございまして、きょうのお話もそういう立場で、今までの議論の中で出てきたことを少し御紹介申し上げたいというふうに思っております。

 私ごとになって恐縮なんですが、実は私、十数年前ですけれども、一九九一年の第三次行革審というのがございまして、そのところの豊かなくらし部会というものの専門委員をしておりましたが、そこでパイロット自治体制度、最終的には地方分権特例制度という大げさな名前になりましたが、パイロット自治体制度というものを提唱いたしました。

 その意味は、地方分権を一気に進めるといってもなかなか難しい、だけれども、どこか地域限定で実験をして、そこでうまくいくのならそれを全国的に広めていくというような戦略がとれないかということでパイロット自治体制度というものを提唱し、これは実現したわけでございます。実際には法律の範囲内で、運用のレベルで少し弾力的なものをやりましょうというレベルに非常に小さくとどまったものでございますから、はっきり言って十分な成果をおさめずに終わった。

 九四年から九九年にかけて、五年間の時限措置ということでパイロット自治体制度は行われました。最初の一、二年は幾つか提案がございましたけれども、三年目、四年目ということになりますと提案がなくなり、五年の終わったときにはだれも注目しないで、新聞には一行も書かれないで静かに制度が終わったという非常に悔しい思いをしておるものでございますから、今回の構造改革特区制度というものを見まして、これは我々が十年以上前に考えたものをもう一遍復活というか実現できる有力な手段ではないかということで、先ほど申しましたような推進会議というものを立ち上げたということでございます。

 全般的な印象でございますけれども、パイロット自治体制度は非常にマイナーな制度でございましたけれども、今回の特区は、自治体の数でいいますと、一回でも提案したということを数えますと、全国の五百五十近くの自治体が手を挙げて参加しているということでございまして、その広がりとかいうことから考えると比べ物にならない。

 特に、パイロットのときには、法律の範囲内で、法改正ができないということでございましたけれども、今度は特区法ができ、きょうの御審議もそうだと思いますが、逐次必要な改正をしていくということになっておりますので、パイロットの限界というものをクリアした。そういう意味では、我々が十年以上前に考えていた、悔しい思いをした難点が今度の特区制度では大体クリアされているんじゃないのかなというふうに思っております。

 特に、さっき遠野の市長さんもお話しされましたけれども、大きいところだけではなくて、小さな村とか町とかいうところもこの特区制度というものに参加して、認められているものも随分あるわけでございますから、そういう意味では随分いい制度ではないのかなというふうに思っております。

 それからもう一つ、自治体の担当者の方々からよく出ることでございますけれども、先ほども市長さんのお話にもありましたけれども、特に政令市とかあるいは都道府県の方々であれば大体国といろいろ意見の交換というものはしょっちゅう行われておりますけれども、一般の市町村の方々は必ずしもそうではない。

 ところが、今度の特区制度ですと、提案すると、それに対してイエス、ノーの返事が必ず文書で来る。それが一回、二回、三回と行き来して、それが全部ホームページでオープンになってということでございますから、今までやみからやみに葬られていたそういった自治体からの提案が、実現するかしないかはいろいろでございますけれども、少なくともみんなの目にオープンになったというところで、非常に透明性、しかも今後の議論の参考になるということで評価している向きが非常に多いということでございます。

 ただ、惜しむらくは、膨大な数でございますので、それのデータベース化というものはなかなか難しくて、我々もいろいろ試みておりますけれども、十分今までの、第六次までの提案がもう既に蓄積されておりますけれども、それの活用というものはまだこれからの課題として今残っているということでございます。

 それから、特区制度は別に自治体の職員の研修のための制度ではございませんけれども、首長さん方のお話を聞きますと、やはりこれに積極的に取り組むところと取り組まないところとの差がどんどん出てきているということでございまして、だめでも、とにもかくにもチャレンジしていくというところの力が、繰り返し繰り返し提案することによって大分伸びてきているんじゃないのかなというふうに思っております。

 これは五年の時限措置ということでございますが、皆さん方の御意見を聞きますと、やはり市の、あるいは市町村の中に定着する、あるいは地元のNPOの方とか企業の方とかとコンタクトを深めて、そこからの吸い上げをして提案するというシステムをきちっとするにはまだもう少し時間がかかるということでございますので、五年たったからはい終わりということではなくて、恒久法とは申しませんけれども、さらに引き続き続けて、せっかくの努力が無にならないようにしてもらいたいという意見が非常に強いということを御紹介申し上げておきます。

 ただ、そういうことで、この制度に対して全般的に非常に評価は高いわけでございますけれども、やはり幾つか問題点というか、あるいは多少気がかりなところも幾つかございます。

 一つは、特区制度が始まりまして、第一次、第二次、非常に多くの提案が行われた。しかも、その中で特区として認めるというものもかなりの数が出たわけでございますけれども、回を進めるに従いましてだんだん提案が少し減ってきた。しかも、特区として認めるというものが急に少なくなってきたということで、何か今一種の、階段の踊り場と言っていいかどうかわかりませんが、やや中だるみというか一服ぎみという感が漂ってきた。これを一体どうしたらいいかということでございます。

 市町村の方々といろいろ議論しましても、大体特区制度はわかった、こんな程度だなということで、今まではばんばん提案したけれども、ちょっと様子を見ようというところが出だしております。これは、やはり攻める側からすれば本当はそういうことではいけないのでありまして、だめでもだめでもどんどん出さなくちゃいけないんですけれども、幾ら提案しても全然実現しないというようなことがどんどん積み重なってきますと、やはりこの特区制度全体がちょっと下降ぎみになる。パイロットのようにとは申しませんけれども、その二の舞にならないようにということを我々は非常に苦にしているということでございます。それが第一点。

 それから、それと関連いたしますけれども、やはり特区として認める案件がだんだん少なくなってきた、いわゆる没案件ということがふえてきたということでございますが、これを一体どう考えたらいいか。経済財政諮問会議でも議論が行われ、今度の四月から有識者会議でその洗い直しというものが始まったということは承知しておりますけれども、十本集めて議論するのでは今までの膨大な数からしますと非常に少ないわけでございまして、そういう今までの没の中にむしろいろいろこれからの議論の玉というものがあるわけですから、さてそれを一体どうやって拾い上げ、新しい政策体系としてつくり上げていくかという作業をやはりやっていかなくちゃいけない。

 どうしても規制改革とか、今度の特区もそうですけれども、個別具体的な話が中心であるために、やはりもっと骨太の政策をばんと打ち出すということはなかなかなじまない、そういういら立ちが多少あるわけでございます。ですから、規制改革とか特区でもしそれが入らないのならば、それをまた別途拾い集めて、いろいろ提案のあるものを骨太の政策として一つにまとめてそれを実現していくという作業をどこかでやっていただければ非常にありがたいなと。

 各省の審議会があるわけでございますけれども、そう言ってはなんですけれども、なかなか各省の審議会にそれを期待するということも難しいとするならば、せっかくの自治体からの、現場からの提案というものを生かす工夫というものをぜひやっていただきたいなというふうに思っております。

 それからもう一つは、お答えの中に、現行制度で実施可能であるというものが随分ございます。都市計画関係、いろいろありますけれども、分権一括法でかなりのものが自治事務になった。都道府県に権限がおりている。だから、幾ら提案しても、それはあなた方都道府県と市町村との間で議論してください、中央省庁は知りませんという答えが随分あるわけです。では、実際にそれぞれ交渉するかということになりますと、なかなかこれは難しいわけでありまして、地方分権の時代に、お国に都道府県をしかってやってくださいと言うのはいかがかと思います。

 しかし、現行制度で可能である、だけれども、都道府県が権限を握っているというところをどうやってクリアするか。法律で都道府県の権限と書いてある以上、国も何がしかの責任があるわけでございますから、それを一体これからどうやって対処していくかということが次の課題かなというふうに思っております。

 それから、時間がないので簡単に申しますが、全国展開、これももちろん制度のそもそもの目的でございますから結構なんですが、何でもかんでも全国展開するのが本当にいいのかな。むしろ、特区として地域の特色あるプロジェクトということで定着させていく。本当に全国的に急がなくちゃいけないというものは全国展開の議論にのせるのはいいんですが、時間がたったから機械的に全国展開ということになりますと、中央省庁も、どうせすぐ全国展開されるなら悪い芽は最初から摘んでおこうということで、みんなC、C、対応不可ということになる可能性もあるわけでございますから、全国展開のやり方についても少し今後御工夫が必要なのかなというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、いろいろ問題点はあります。しかし、せっかくのこの制度でございますし、それから自治体がみんな少なくとも今まではかなり積極的に参加してきたということでございますから、その努力が無にならないように、ぜひ国の方でも何がしかの対応をお考えいただければ非常にありがたい、そういう議論を我々内部でしているところでございます。

 簡単でございますけれども、今の議論の状況を御報告申し上げました。

 以上です。(拍手)

    〔委員長退席、木村(隆)委員長代理着席〕

木村(隆)委員長代理 次に、海渡参考人にお願いいたします。

海渡参考人 皆さん、おはようございます。

 私は、日本弁護士連合会を代表しまして、今回提案されております構造改革特別区域法の一部を改正する法律案、その中のとりわけてPFI手法による刑務所の整備、運営事業の導入に関して、基本的に賛同する立場から若干の問題点を指摘したいというふうに思います。

 今回指摘されておりますPFI手法による刑務所の整備というのは、イギリス、アメリカ等で実施されております刑務所の民営化というものとは根本的に様相の異なるものであります。

 イギリス、アメリカで行われております民営刑務所というのは、すべてのスタッフを民間企業が担い、公権力の行使そのものを民間会社にゆだねてしまう、こういうスキームになっております。それに対して、今回日本で導入されようとしておりますPFI手法による刑務所の整備、運営事業、以下PFI刑務所と言わせていただきますが、ここでPFI事業者が行う業務というのは、資金の調達、それから刑務所の運営業務に関連しては非権力的部分を運営するということに限定されております。

 現実の刑務所の運営は公務員と民間職員が混合して運営するという方式になっておりまして、職員全体の中に公務員はかなりの程度を占めるというふうに言われております。そういう意味で、我々としては、この制度は十分容認できるというふうに考えているわけです。

 日弁連のまとめました、これは二〇〇三年九月、行刑改革会議が活発に議論をしていた段階での意見書、私のペーパーに括弧で囲って重要部分だけは抜き出しておきましたが、これが現状も変わっておらない基本的な立場というふうに考えていただきたいんですが、過剰拘禁の緊急対策として、刑事拘禁施設のある程度の新設は避けられない、しかし長期的には拘禁者数の抑制を基本とした政策をとるべきである。

 新しい刑事施設の建設に当たっては、広い共用スペースがある、夜間は独房で過ごす方式、これは美祢でも実現するようですが、そういうものにすべきである。

 刑務所の運営そのものを民営化することについては、財政的なメリットがはっきりしない上に、大きな弊害が予測されるので反対である。この点に関しては、参議院で審議されましたときの議事録を拝見しておりますと、横田矯正局長御自身が、公権力の行使について民間にゆだねることは法制上できないという立場を表明されております。この立場を私どもも歓迎して、今後ともこういう立場を堅持していただきたいというふうに考えているわけです。

 それから、刑務所建設のPFI方式について、問題点は少ないけれども、施設そのものを所有する刑務所産業というものが生まれていきますと、運営そのものの民営化、刑務所をどんどん建設していく、そういうドライブがかかって、被拘禁者数を減らすという方向よりも、どんどん刑務所の定員をふやしていくというような方向になりかねないということで、その導入にも慎重な検討が必要である。

 刑務所の中の非権力的な作用を行う部門、例えば教育部門、作業指導、食事の供給、図書館などを外部にアウトソーシングするということは、弊害も少ないし、むしろメリットが見込めるということで賛成である、こういう意見をまとめております。

 本法案についてもことしの四月に日弁連として見解をまとめておりますが、次の二ページに載っております。今回、PFI刑務所は刑務所業務の全体の民営化でなく一部業務の民間委託であるということで、これに賛同するということです。

 民間委託される業務については権力的な業務を含まない、公権力の行使にかかわる部分は公務員の権限に留保されるべきである。これも、この間の国会の質疑などを見ておりますと、そういうスタンスで法務省は考えておられるようです。

 それから、PFI企業は受刑者の労働から利益を得てはならないということです。この点に関しては、注をつけてILOの二十九号条約の二条の二項の(c)というところを引用しておきましたが、簡単に言いますと、民間企業が刑務所労働から利益を導き出すことはILO条約で否定されているということです。

 ところが、これはもう既に変更されておりますけれども、当初、法務省がお出しになった美祢の刑務所の運営プランには、民間企業であるPFI企業が刑務所で生産された物品を保有してそれの売却収入を得られるというスキームがありました。これは確定する前のプランですけれども、それについて日弁連として緊急に、こういう問題点があるということを指摘して、それを削除していただいたという経緯がございます。

 削除されているということ自身は歓迎するわけですが、今後ともこういうことが実施されないように、この点は法案の十一条の十項で法務省令の中で定めることになっておりまして、法案自身では触れない部分なんですけれども、この法務省令の中で、受刑者の労働からPFI企業が利益を得ないということを明記していただきたいというふうに考えております。

 それから、確認すべき事項の、二項を今説明してしまいましたが、一項について、公権力の行使にかかわる業務が含まれないことを確認する必要があるということで、この点も、この間の国会審議などを見ると、かなり細かい点まで御議論が進んでいるようですけれども、あくまで実際に被拘禁者と接触して公権力を行使するような場面については公務員が中心になってやる、民間の職員はその補助的業務をやるというふうに整理されているようでございます。

 これで結構かと思いますが、現実の運用の中では、実際に民間の職員が刑務所の受刑者と接する場面もあるわけで、そこでトラブルが起こったときなどどうするかといったことをかなり子細に検討して、事前にマニュアルをつくるなり、そういう対応が必要かと思われます。

 三ページ目の刑務所の全面的な民営化の持つ問題点については、きょうは時間もありませんので簡単に済ませたいと思いますが、刑務所の全体を民営化したアメリカでは、むしろ民営化が失敗に終わったということで、民営化刑務所の被拘禁者数が減少を始めている、そういう実態があります。

 イギリスにおいても、一定の成果があったというような報告もありますが、むしろ、イギリスの場合は刑務所に労働組合があります。非常に強い労働組合で、この労働組合が改革の障害になっているというふうに政府が考えておられて、ある意味、民営刑務所をつくることによって労働組合に対する牽制をすることで効果が上がっているというようなレポートがあって、公営刑務所の効率が上がった、民営刑務所を一個つくることによって他の公営刑務所の効率が上がっているから成果があったというような報告になっております。

 本当に民営会社が全体を運営するといったことになれば、利潤の追求によって処遇の質が低下してしまうといった問題も避けられないかと思われます。また、責任の所在が不明確になってしまう。今回の法務省さんが立てられているスキームでは、あくまで公権力の行使にかかわる部分は公務員がやられるということですから、こういう問題点は一応回避されているというふうに考えます。

 最後のページですけれども、「PFI刑務所に期待する条件」としましては、今回のPFI刑務所は、国家財政が逼迫している中で新たな予算化が難しい中で、刑務所新設の予算の捻出のためのプランとして考えられたものと理解しております。苦肉の策であるとはいえ、新たな刑務所の設置にこぎつけるためにはこういう財政手段しかなかったという意味では十分理解できるというふうに考えております。

 しかし、過剰拘禁対策というものの軸足としては、今もうあふれてしまっているわけですから、それを入れるための箱をつくることは当然必要ですが、基本は被拘禁者数自体を減少させることに置くべきだ。今後、新たな施設を次々につくって施設の定員をふやし続けるということは避けるべきだと考えます。

 この点に関しては、きょうの資料の中に、英文のものですけれども、各国の刑務所の拘禁人口がどの程度のレベルかという資料を入れておきました。センテンシングプロジェクトというようなもののペーパーで、グラフになっているのでわかりやすいと思いますが、人口十万人当たりの被拘禁者数がアメリカは七百二十六人、日本は五十八人です。日本は過剰拘禁、過剰拘禁と言われていますが、アメリカの十分の一以下なんですね、被拘禁者数の比率としては。インドよりは少し多いですが、日本は世界でも最低のランク。過剰拘禁だと言われていますが、現状はそのようなレベルで、厳罰化を進めてどんどん刑務所をつくっていくとアメリカのようになってしまう。民営刑務所を一生懸命つくっているところというのは過剰拘禁がむしろひどくなっているということを御理解いただきたいと思います。

 それから二番目に、PFI刑務所においても、刑務作業の管理と監督に当たる職員は刑務官である公務員であるべきであって、刑務所労働は、ILO条約に従って名実ともに公の機関の監督、運営のもとに置かれることを今後とも実質的に確保していただきたいというふうに思います。

 とりわけて強制労働から民間企業が利益を得ることがないように、この点は今回の美祢の刑務所でもこういうスキームになっておりますけれども、このことを法制上も明確にしていただきたい。そのためには、先ほど申し上げた省令の中にそのことをきちんと織り込むことを国会の審議の中で御確認いただきたいというふうに思います。

 医療や教育、炊事、洗濯など、非権力的な業務については民営化するということについては、当連合会としては賛成でございます。そのことによってこういったサービスのレベルアップが図られる、民間の知識経験を生かすことができるということで、評価できるものと考えております。

 ただ、教育の分野についてですが、ここにも書きましたが、実は、民間の方々が刑務所の教育にかかわるということは既に今までの公営刑務所でも相当幅広く実施されてきておる。民間の篤志面接委員といった方々が相当かかわってこられた。これはボランティアワークとしてかかわってきていただいているわけですが、そういった部分。さらには、アルコール問題とか薬物問題などについてはNGOの関与みたいなものも進んでおるわけでありまして、こういった教育部分を企業化するということも、まあ反対はしませんけれども、むしろこういった個人の方や民間のNGO、教育機関などを巻き込んでいく、共同していくといったことも今後とも追求されるべきかと思われます。

 とりわけて、きょうはちょっと注目したいと思っておりますのは医療の問題であります。

 医療については、今次の行刑改革で、刑務所医療を厚生労働省に移管してほしいということを日弁連は強く申し上げてきたわけですが、なかなかこの点は実現いたしませんでした。行刑改革会議の提言の中では、この点は諸外国の状況を見ながら今後も検討していくという形になっております。実際に、フランス、イギリスなどでは刑務所医療を厚生労働省所管にするということが現に実現しております。そして、刑務所医療を改善するという大きな成果を上げておるわけです。

 今回のPFI刑務所では、全体の公営の刑務所では実現しなかった民間の医療との連携ということが実現しております。地域医療機関との連携ということが実現しておりまして、市立病院への管理委託という形で、公営刑務所に先駆けて、厚生労働省の所管する医療機関で受刑者が医療を受けられるという制度が発足するわけです。これはむしろ弁護士会としては大賛成です。

 このことによって、医療水準がアップする、刑務所の医療が刑務所の保安体制の中に組み込まれてそれに従属しているといった状態を脱却できる、受刑者の刑務所医療への不信感を払拭できる、また刑務所の医療自身が魅力のある職場となって、今非常に深刻な医師不足なんですが、医師不足を解消するといった効果が期待されます。これが成功するかどうか、日弁連としても非常に注目しているところであります。

 今回、山口県の美祢市に計画されております美祢社会復帰促進センターの構想、これを読ませていただきましたが、開放的な処遇を取り入れる、自立的な生活体制、集団でのカウンセリングをするとか、遮へいのない面会室をオプションとして取り入れるとか、ヨーロッパ式と言っていいと思うんですが、新しい刑務所体制をここで実験的にやってみようという、非常に意欲的な計画となっております。

 もちろん、日弁連の立場からいいますと、こういうことは大賛成なんですが、別に公営でも同じことをやっていただいていいはずで、PFIでなければできないというものではないんですけれども、ただ、既存の刑務所を一気に変えることが難しい中で、こういう新しい種類の刑務所をつくって、そこで実験をして成功させて、これを公営の刑務所にも広めていこう、そういう意欲を感じているということで、この意欲的な実験についてはぜひとも成功させていただきたいという観点から意見を述べさせていただきます。

 以上です。(拍手)

木村(隆)委員長代理 以上で各参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

木村(隆)委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村康稔君。

西村(康)委員 おはようございます。自由民主党の西村康稔でございます。

 参考人の皆様方におかれましては、お忙しいところ、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。時間もございませんので、早速質問に入らせていただこうと思います。

 この特区制度、これまで非常に各地域あるいは各企業で使っていただいて、相当広がりを見せてきておりますし、地域の活性化にも非常に効果を持っているものと思いますけれども、今後の課題を中心にぜひ御意見をいただければというふうに思います。

 まず、遠野市長本田参考人にお伺いをしたいのでありますけれども、非常にうまくこの特区を使われて、どぶろく特区ということで全国的にも有名になって、観光客も非常にふえているということで頑張っておられるわけであります。先ほど何点か、議会との当初のやりとりとか、あるいは農家の方が八十枚も書類をつくらなきゃいけないとか、幾つか御指摘をいただきましたけれども、一番大きなことは、この特区制度の効果として、市役所の職員の方々の意識がどの程度変わったのか。

 これまでは、役場仕事、お役所仕事というか、先ほどおっしゃっておられましたけれども、国との関係が非常に遠い中で、与えられた事務だけを淡々とこなしていくというのがお役所仕事じゃなかったかと思うんですけれども、市役所の職員の方々が、この特区制度でいろいろなことができるんだ、自分たちの発想でいろいろなことができるんだというところが一番モチベーションになれば、市役所行政が相当変わってくるんじゃないかと思うんですけれども、そのあたりのことを。

 それから、あわせて、住民の意識もどんなふうに変わってきておられるのか。住民も、大体、規制があって余りいろいろなことができないなというのが、普通の方はそう思うわけでありますけれども、こういうのを申請してやればいろいろなことができるんだということがわかれば、相当、地域地域で、いろいろなアイデアを出し合って、地域の活性化に取り組んでいこうという動きが出てくるんじゃないかと思います。そのあたりの、まず市役所の職員の意識変化、住民の方々の意識変化にどんなふうなものがあるのか、お伺いしたいと思います。

    〔木村(隆)委員長代理退席、委員長着席〕

本田参考人 ただいまの御質問にお答えしたいと思います。

 まず一つ、行政をつかさどる職員の意識改革の問題につきましては、文字どおり、これまでは我々の行政の仕組みは、国が、あるいは県がという中にあって、県が言ってきた、あるいは国がこうしてきたと。またあるいは、県からこういう指導があったのでこれはだめなんだと。住民に対する答えも、いや、我々はやりたいんだけれども県がだめだと言っている、あるいは国の法律がこうなので無理なんだということが一つの答えとして成り立っておった。

 この特区の中で、国の方が話を聞いてくれた。何だ、どぶろくって、密造酒が飲めるように、つくれるようになったのかという部分の中で、小さな町の挑戦で一つ国がそれを聞いてくれたという部分で、職員の意識の部分ではいろいろな情報がはんらんしております。それが職員の方から、いや、これはおもしろそうだ、ある市町村ではこういうことをやっているそうだ、いや、国の方ではこのようなことを今打ち出してきた、インターネットのホームページを見たらこういうことを言っているというようなことが、職員の方から自発的に上がってくるようになった。

 今まではほとんどそういうことがなかったわけでございますけれども、これが繰り返し繰り返し、こういった形でやっておった中で、職員の文字どおりモチベーションといったものがそこの中で高まってきたということは、これは特区の大きな、職員の意識改革という部分です。

 我々、意識改革といえば、講師を招いて研修会をやって、公務員はこうあらねばならぬぞというようなことをいろいろやっているわけでございますけれども、一晩寝てしまえば忘れてしまうという中で繰り返しやってきたという部分が、今回のこれによって、やればできるというものが我々の小さな役所の中にも芽生え、それが一つの手ごたえとして出てきたという部分は、これは私は大きな成果ではなかったか。

 それからまた、国の職員と文字どおり対等でやりとりができるというような部分も、大変な自信にもつながったというふうに受けとめているところでもございます。

 それから、市民の意識がどのように変わったかという部分の中で、きょうお配りした資料の中にも示してございますけれども、いろいろな提案が、遠野を元気にするプロジェクトチームというのが立ち上がりまして、市民が自発的に、こういうアイデアもあるぞ、こういうようなことをやってみてはどうかということで、三百五十を超えるアイデアが寄せられた。

 その遠野を元気にするプロジェクトチームを立ち上げるといったときに、これまでの我々の発想であれば、委員として委嘱をし、日当を出し、旅費も出しというような仕組みにしておったわけでございますけれども、市民の方からは、そんなのは要らない、そんなのをもらってしまうと結果的には縛られてしまう、会議をする場所だけ貸してほしい、それも五時過ぎの会議をする場所を貸してもらえればそれでいいんだというような形で委員会が立ち上がりました。

 三百五十以上もの提案が出てきたということで、それを市民に対し、言うなればプレゼンテーションをするというような場も設けながら、これまで全くなかった、市役所主導じゃなくして文字どおり市民主導の動きがこの特区の動きの中から出てきたという部分も、これもまた大きな一つの効果ではなかったのかなというふうに受けとめております。

 以上でございます。

西村(康)委員 この特区の効果の最も大きいところは、おっしゃられた、御指摘のあった市役所の職員の意識の変化、これでいろいろなことをやっていこうというところが一番大事じゃないかなと思うわけであります。

 その点について伊藤参考人に少しお伺いしたいんですが、カリキュラムを非常にユニークな取り組みをされて、特例を使われて意欲的な取り組みをしておられる。

 特に私立学校の場合、特徴を出していくのに非常に有効な手段だと思いますし、さまざまなニーズにこたえていく、世の中の多様なニーズにこたえていく、学校として非常にユニークに取り組んでおられると思うんですけれども、特区を出すときに、自治体といろいろやりとりをしなければいけませんね。そのとき、自治体の首長の意識もそうですし、担当者の意識によってこれが全然変わってくるんだと思うんですね。そのあたり、やりとりをされて、地元の自治体との関係でどんなふうに感じておられたか。

 特に、今回の法律改正は、私立学校法の特例で、地方公共団体、自治体が学校に協力をして施設整備などを支援するということを条件に、資産要件の審査を行わないということでありますので、ある種、自治体が今度は学校に支援をするということは口を出す可能性もあるわけです。

 特区制度、私は基本的に推進すべきだと思いますけれども、自治体の方々がもし意地悪であったり、あるいは意識がなければ、これを奇貨として口を出してくるようなこともあり得ますし、そんなことも含めて、自治体とのやりとりでお感じになった点がありましたら、教えていただければと思います。

伊藤参考人 宮城県では、私立学校は知事部局に所属いたしますので、総務部の私学文書課というところが私学との窓口になっております。この私学文書課とのやりとりは、これは日常的に行われているところでございます。いろいろな私立学校の問題等々につきましても御指導を仰ぐというふうなことが行われておりますので、十五歳人口が激減していく宮城県の現状の中では、私学の経営につきましてもいろいろと示唆をいただいているというふうなところでございます。

 そういう中にあって、今回の提案につきましては、県の方が非常に前向きに動いてくれたということは非常に私どもにとってはありがたいことだったというふうに思っております。宮城県の地域振興課の方で、私へのインタビューの記事を出しておりますけれども、そこをごらんいただけると、宮城県の教育行政がいかに私学に温かく支援してくれたかということがわかろうかと思います。

 それから、私学といえども公教育を担うものというふうに私どもは理解しておりますので、その面では、やはり県の教育行政というものは我々私学にとっては非常に大きな力であるというふうに思っております。

 以上で回答になりましたでしょうか。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 自治体の方針によって大分雰囲気が変わると思いますけれども、宮城県の場合は非常に熱心に前向きに取り組んでいただいたということでありましたので、ぜひ引き続き、特区を使っていろいろ実行しているうちにまた別の新しいニーズも出てくるかもしれませんから、またうまく活用していただければと思います。

 続きまして、並河参考人にお伺いをしたいと思いますが、特区の数が減ってきている、踊り場の状態であるという御指摘もいただきました。

 その理由でありますけれども、一つは、民間が提案できるというところをまだ知らない人が多いですね。私も地元なりいろいろなところで特区制度を使ったらどうかというお話もしてさしあげるんですけれども、民間でそんなことを提案できるんですかという、これはPRが不足しているんじゃないかという点が一つ。

 それから、自治体の意識として、二番せんじになることをやや恐れるというか、遠野市がどぶろく特区をやったら、ほかのところはなかなかどぶろく特区をやらないですね。まあ、そうですよね。どぶろくはもう遠野のものだという感じでありますから。そうすると、結構いい規制緩和をある自治体がやっても、これは自治体の意識として、そこのものだからということで続かない可能性があるんじゃないか、そんな気もします。

 それからもう一つ、これは決定的じゃないかと思うんですけれども、諸外国の特区と違って、日本の場合は税の措置がありません。規制の緩和ということで特区をやっておりますけれども、大体いろいろな国の特区というのは、税制の優遇措置があって大胆にやっているわけです。この点、財政難の折でもありますし、なかなか難しい課題ではありますけれども、税についても、将来いろいろな形での取り組みを考えなきゃいけないんじゃないかという気がいたしますけれども、そのあたりの点について、御意見を伺えればと思います。

並河参考人 民間で知らないかどうか。これは知っているところもあれば知らないところもある。かなり我々もPRはしたいと思っておりますが、例えば経団連とかそういう経済団体でもかなりこの問題に熱心に取り組んでいるところもございますので、これはそれぞれさまざまなのかなという感じがして、我々は民間が全然知らないという認識は余り持っておりません。

 それから、二番せんじの話も両面ありまして、遠野市さんがどうお考えかは別ですが、せっかくかなり苦労して提案したのに、すぐぱっとパクられて同じようなものがどんどんできちゃう。もう今どぶろく特区は全国にいっぱいあります。という意味で逆の御意見もあるわけで、むしろ何か、特許料とは言わないけれども、少なくとも提案したところにはやはりしばらく特権を認めていただきたいという意見もこれまたあるわけでございますから、まあ両方かなという感じがしております。

 それから、問題は税の話ですが、そもそもこれは規制改革の方から出てきた話でありまして、規制改革は、我々が見ている限りにおいては、金を使わない地域振興策というような大前提で組み立てられておりますから、ちょっとそこら辺が問題なのかなと。

 確かに、先ほどちょっとお話がありましたけれども、農業分野に建設業が参画するときに、では一体、制度金融が使えるのかとか、あるいは私学のお話もそうですけれども、私学助成が使えるのかとか、税もありますし金融もありますし、そういった金目の話がどうもこの特区制度の中では完全に最初から除外視されている。

 イコールフッティング論で推進室が御議論されていることは承知しておりますけれども、実際に実っていないということですから、もしそれがだめならば、では少なくとも地域再生計画の方でうまく救えるか。あるいは、それがだめならば、これは都道府県によっていろいろ取り組みがありますけれども、都道府県版の構造改革特区制度というものをやり出しているところもありますから、では都道府県が独自にそういったものに対してサポートをする、それに対してまた何らかの措置をとるというような形でクリアできないのかな。いろいろ我々も、そういった御意見もありますので、注目しているところであります。

 以上です。

西村(康)委員 ありがとうございます。貴重な御意見をいただきました。

 海渡参考人に、時間がなくなってまいりましたので手短にお答えいただければと思いますが、PFIの手法による刑務所をつくっていくという、私も基本的に推進すべきだと思いますし、御指摘の公権力の部分については留保する部分がある、これも全くそのとおりだと思うんですが、一点だけ、今回の美祢の事例も、結局、受注をしているのは大手の企業なんですね。セコムであり、大手のゼネコンでありというところのグループである。

 もちろん、全体に税金を使う額が減っていきますから、これはこれでいいんですけれども、中小企業はなかなか受注しにくいんじゃないか、ノウハウがとれないんじゃないかというところが懸念されるんですが、この点についてだけ一点、御意見がありましたらお伺いできればと思います。

海渡参考人 おっしゃるとおりで、せっかく美祢という地域につくるんですから、地場の産業の方々が一生懸命受注のために企業グループなどをつくってやられたというふうなことも聞きますけれども、やはり大手企業に競り負けているという実態があるようです。

 何か具体的な、どういう手法をとればそういうことが実現できるのかわかりませんけれども、せっかくその地域につくるのであれば、その地域の企業に何らかの優先度があってもいいかもしれませんが、基本的には、そこで提供されるサービスの質によって選ばざるを得ないんだと思いますけれども、その点は今後の課題かなと思いました。

西村(康)委員 ありがとうございました。

 クールビズということで、上着をとらせて質問させていただきましたことに御理解をいただきまして、大変貴重な御意見、ありがとうございました。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

松下委員長 次に、田端正広君。

田端委員 公明党の田端正広でございます。

 四人の参考人の先生方には、大変に朝早くから御苦労さまでございます。

 早速ですが、伊藤参考人から順次お伺いしたいと思います。

 大変ユニークな小中一貫教育ということで、第一ステージが四年、そして第二ステージが三年、そして第三ステージが二年、こういう新しい取り組みをなさっているという意味で、そしてまた、第二ステージから英語の教育にも大変力を入れておられるということでございますが、そういったいろいろな特色を生かしながら、非常に生徒数もふえているということでございますから、大変評判がいいのかな、こういうふうに思っております。

 そういう意味でいきますと、きょうは伊藤先生は民間の代表のような形で、直接の当事者として御出席いただいておりますが、民間の立場から、この特区制度をどういうふうに今実感としてお考えになっているのか。

 それからもう一点は、今、学力の問題等いろいろなことで議論になっておりますが、人間力といいますか、政府でも人間力という表現を何回かいろいろな形で使っております。そういう人間力の向上という意味で、トータルとしての教育というものが今問われていると思います。

 そういうことがこちらの伊藤先生の方ではどういうふうに生かされているのか。そして、今回のこのユニークなシステムによって成果が出てきているのか。そういったこともあわせてお伺いしたいと思いますが、その二点についてどうぞよろしくお願いします。

伊藤参考人 お答えいたします。

 私立学校の立場でこの構造改革特別区域法というふうなところでございますが、先ほども申し上げましたように、私立学校といえども公的機関を担うものということで、私立学校法、教育基本法、そういう法の規制の中で、私どもは私学の独自性を展開しながら今日まで努めてまいりました。これを、大きく教育課程を変えることでもって、本学院が今まで培ってきたもの、これをさらに向上させることができるのではないかというふうな観点から取り組んでみたところでございます。

 今回取り組みましたこの内容も、実は構造改革特別区域法というふうなものの前に、私学の独自性というふうな形で教育課程を展開する上に当たって、どこまで工夫できるのかというふうなことも大分時間をかけて検討し続けて、実際の教育界の中にも生かしてきた経緯がございます。そういうことが今回の特区をとる大きな力になったのではないかなというふうに思います。ゼロからのスタートでは、とてもこういうふうなものはできなかったと思います。

 ということで、私学の独自性を生かしつつ今まで教育を展開してきたからこそ、この特区も活用させていただくことができたのではないかというふうに考えております。

 それから、人間力の問題でございますが、本学院創立の自来から、人間力のトータル的な教育、これが本学院の教育理念であったと私は思っております。やはり私学は、創立者のやむにやまれぬ教育の理念の実現のために教育を展開しているというふうなところでございますので、これも時代に合った不易なる教育理念を、時代に合った子供たちの成長過程の中に生かしていきたいというふうなところで、ここのところも大きく焦点を合わせて今教育課程を組み上げたというふうにお答え申し上げたいと思います。

    〔委員長退席、木村(隆)委員長代理着席〕

田端委員 続いて、本田参考人にお伺いしたいと思います。

 町おこしといいますか、大変御努力いただいて、非常にユニークないろいろな実績を残しておられるようでございます。つまり、やる気とかおもしろさとか、自治体の皆さんの中にも町の皆さんの中にも、そういったことの意欲が満ちてきた。大変すばらしいことだと思います。

 それがふるさと再生という大変大きな事業になっているわけでありますけれども、私は、ここ二、三年非常にうまくいった、観光客もふえた、経済効果も二億三千万ですか、波及効果もあった。それはそれで大変いいことなんですが、ここから先が非常に難しいのではないかといいますか、どう維持していくか、持続していくか、発展させていくか。これがやはり市長さんの手腕にかかっているんじゃないかな、こんな思いがします。

 だから、今までの経過はそれはそれでいいことだと思いますが、ここから先の展開、方針、どういう御決意で皆さん方と今話し合われているのか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。

本田参考人 お答えいたします。

 ただいまの、これからどのような形での地域経営戦略を考えているのか、一過性で終わってしまう可能性はないかというようなことでございますけれども、実はそのことを大変心配いたしております。

 どぶろくという形で、仮にも情報発信も成ったものでございますから、これまで私どもの地域はなかなか滞在型になっていなかった。そこで、どぶろくをぜひ飲みたい、曲がり家で飲みたいという形でのお客さんが首都圏の方から参りまして、十五年度、十六年度と一〇%ずつ宿泊客がふえたということでの手ごたえがあったわけでございますけれども、これを確実なものにするという部分における一つの大きな経営戦略を持たなきゃならないかというふうに思っておりまして、日本のふるさと再生特区という形で切り込んだのも、そのような思いからです。

 ただ、どぶろく特区ですと、どぶろくが飲みたい、昔懐かしいどぶろくが遠野へ行けば飲めるぞというだけで終わってしまったのでは、本当の地域の活性化にはつながらない。そこで、ふるさとという四文字にこだわった町づくりを行いたいということで、今、遠野山・里・暮らしネットワークというNPOが確実に活動を活発化してきております。

 この遠野山・里・暮らしネットワークというのは、遠野の地域資源を生かしながら、我々民間も市民も行政と一体となって地域の活性化につなげるんだ、どぶろくばかりじゃない、いろいろなすばらしい地域資源があるじゃないか、足元にいっぱいあるじゃないか、それを生かしながら町づくりをしようじゃないかというようなことになってきています。

 これからの大きな課題は、これまでの特区は行政主導で来た部分は確かにございました。したがって、こういったNPO、山・里・暮らしネットワークのようなものが我々の地域にも芽生えて育ってきておりますので、そこでいかに連携をとりながら一つの確実な仕組みにするのかということが、これは私の課題ではないかというふうに思っているところでございます。

田端委員 ぜひ御健闘といいますか、頑張っていただきたい、こう思います。

 並河参考人にお尋ねしたいと思いますが、先生のパイロット自治体制度の一つの大きな試みが今大きく花を咲かせて、全国五百以上の特区ということで実績を残しているということに評価をいただいて、非常にいい流れはできたのかな、こう思います。

 それで、先ほど並河参考人の方から、この特区は五年で打ち切らず恒久法的にした方がいいのではないか、そして骨太の政策というものを打ち出した方がいいのではないか、こういうお話がございました。それはそれで確かにそうだと思いますが、その前に、私は、小回りがきくところに特区のよさがあるのではないかな、こういうふうに思っております。

 したがって、先ほど来、行政手続が大変だというお話がたくさんありましたが、そういう意味では、受ける側の政府の側に窓口をしっかりとして、そして対応する仕組みをきちっとまずつくっておいて、各自治体なり民間なり、いろいろな形でのやりとりができる、そういう仕組みの方が先ではないのかなと。

 そこがまだちょっとはっきりしていない点がまだまだ、数字が落ちてきているとかいろいろなことになっているのではないかなという感じがするわけでありまして、もっともっと全国的にいろいろな知恵が出てくるように、そういったことを我々としても考えなきゃならないのかな、こんな思いがしているんですが、その点についてはいかがでございましょう。

並河参考人 御指摘のように、特区そのものは、やはりどうしても個別的な話が多いわけですから、骨太の大政策を大上段に振りかざすのにはなかなかなじまないということだと思います。自治体の中にも、政策もいいけれども、日常の中で本当に困ったことがともかく提案できる、それだけでも相当の進歩なんだという御意見もございますから、両方かなというふうに思っております。

 それから、今までの、特区推進室を中心として自治体側の提案を受けて各省と交渉していただいているということに対しても、自治体の方々は、やはり初めて自治体の側に立って各省と交渉していただけるということで評価していることは事実です。

 ただ、どうしても文書のやりとりとか、もちろん事前の相談、相対の相談もございますけれども、何か本当の意味が伝わっていないなという意見もないわけではございません。ですから、そこら辺をもう少し今後工夫していく。ただ、膨大な件数を双方で処理しているわけですから、なかなか難しいとは思いますけれども、やはり時には、これは重要だというものについては少し絞りをかけて、その本来の趣旨を聞く、あるいはほかの類似の提案とまとめて一つに一本化していくというような、何かそういう仕組みがもう一つ必要なのかなというふうなことを我々は内部でも議論しておりますし、特区推進室の方ともまた今後いろいろ相談してみたいなというところでございます。

 以上です。

田端委員 大変ありがとうございます。せっかくいい流れですから、それをさらにまた強化していく、そういうことで我々も努力していきたいと思います。

 海渡参考人にお尋ねいたしたいと思いますが、山口県のPFIを中心にお話しいただきました。このPFIは五年前、議員立法で立ち上げた法律でありまして、一回改正したと思います。しかし、この間、まだ百九十件程度しか実際には対応されていないという意味では、まだ非常に使い勝手が悪いのかなと。そういう意味では、もっと柔軟な使い勝手のいいような法改正が必要だろうということで、今我々も与党の中で議論しているところでございます。

 そういうことからいきますと、例えばサービス面ではもっとアウトソーシングができるようにとか、あるいは民間との使い勝手がもっといいように、さらにサービス面が充実するような民間に対しての柔軟な対応のあり方というものを考慮に入れないと、やはりなかなか進まないというふうに思っているわけです。

 刑務所とか拘置所とかそういうことも、これは建物としては必要ですけれども、そういう議論と同時に、しかし、そういうサービス面をもっと充実したPFIのあり方ということについてどうお考えでしょうか。御意見があればお願いしたいと思います。

海渡参考人 ありがとうございます。

 先ほども申し上げましたけれども、民間が得意とする分野、非権力的分野というふうに先ほども申し上げたんですが、医療であるとか教育であるとか、あと食事の準備とか、いろいろな分野でこれは民間にしていいのではないかという部分がありまして、今回の場合はPFI事業者というところが単一でやらなければいけないという形になっていて、もちろん医療の部分は市立病院に別にアウトソーシングに出すというふうになっているわけですが、もう少し細切れにしてもいいのかもしれませんね。

 先ほども御質問がありましたけれども、地元の業者などが入りにくいというお話がありました。例えば、賄いだったら賄いだけやる業者ならできるわけですけれども、PFI事業者という中に統合されていて一つの企業コングロマリットになっていないと受注できないような構造になっていて、純粋な官民混合でやっていくのであれば、官が主体であるということをはっきりさせれば、事業ごとにその得意としている小回りのきく中小企業に発注する。それももちろん、サービスの質がそれで低下しては困りますけれども、そういう選択もあり得るかなと思います。

田端委員 ありがとうございました。時間が参りましたので、終わります。

木村(隆)委員長代理 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 四人の参考人の皆さんには、きょうは大変御苦労さまでございます。

 私は、最初に海渡参考人に伺いたいと思います。

 日弁連の方でアメリカの刑務所民営化について調査を行っておられますが、刑務所民営化のアメリカの実例を見ると、やはりいろいろな問題が起きているということは、報告にもうたっておられるし、私たちもそう思っております。このアメリカの民営化も、当初は業務委託から始まって、だんだんこじあけてといいますか、もともと構造改革の考え方が、ある意味では規制緩和の一点突破、全面展開という発想があります。ですから、その点をやはりよく見ておくことが大事だと思うんです。

 アメリカが業務委託から始まって、その後、受刑者の過剰拘禁、政府の財政支出削減の問題などを契機に、企業のビジネスチャンスということで民営化がどんどん進んでいったということでありますが、このアメリカの民営化について、どんな状況なのかとか、それから今どんな問題が生まれているのかとか、冒頭に若干お聞きしましたけれども、少し詳しく伺いたいと思います。

    〔木村(隆)委員長代理退席、委員長着席〕

海渡参考人 ありがとうございます。

 私のきょう準備しましたペーパーで、先ほどは省略したんですが、最後に二枚、六ページ、七ページに「アメリカにおける民営刑務所の実情」というペーパーをつけておきました。ここにまとめたとおりなんですけれども、簡単に言いますと、アメリカの場合は本当に一つの刑務所を丸ごと民営企業が運営する。公務員がいなくなってしまうんですね。

 そういう実情になっていて、その中でさまざまな、処遇のレベルが低下してしまうとか、ひどい場合であれば受刑者と刑務官との間が非常に険悪な関係になってしまって暴動みたいなことが起きるとか、そういうことが現実に起きまして、一たん民営にしたものを公営に戻した、契約を打ち切ったというようなケースもふえてきています。

 ここにもデータを入れておきましたが、二〇〇一年に六・八%あったものが二〇〇二年の六月には六・一%に減少した。全体では、連邦がまた民営政策を強めているので、州では減っているんですが、連邦でふえて全体の産業としてはバランスをとっているというようなことも出ておりますけれども、非常に大きな問題が生じている。

 私どもの見るところ、やはりアメリカの刑務所民営化の大きな問題点は、もう官が完全に引いてしまったわけですね。もう完全に丸投げしてしまっているということで、しかも民間企業の場合には企業秘密だということで中身がかえって公営よりも見にくくなってしまう。

 官と民が協働でやるという今回の方式の中ではそういうことは避けられると思うんですけれども、こういう民営に全面的に委託してしまうというやり方については、イギリスは別ですけれども、ヨーロッパ大陸では一切行われていないということで、今後とも日本でもそういう政策はとられないことを日弁連としては願っております。

吉井委員 刑務所の民営化、業務委託という形での民間委託、そこがどれぐらいの範囲まで広がるかということは、刑務所民営化と行刑政策との関係で、やはりどこまでがきちっと歯どめをかけておかなきゃいけないところかとか、その点についてもいろいろ御検討しておられると思うんですが、そこも伺っておきたいと思います。

海渡参考人 今回の国会の答弁の中で矯正局長が繰り返し言われていることなんですが、公権力の行使に係る部分については矯正行政の中に留保するというふうに言われておりまして、具体的な答弁などを伺っていると、例えば、指紋をとるといった作業も公務員がやります、しかし、とった指紋の整理は民間でやっても構いません。身体検査も、服を脱がせるところは公務員です、しかし、その記録をとったりする部分については民間職員がやれますという、非常に細かい分け方をされていて、考え方は考え方として非常によくわかります。それでいいと思うんですが。

 先ほども申し上げましたように、現実の場面で、例えば民間の職員と受刑者の間でトラブルが起こったときに、即座に対応しないで刑務官を呼びに行くというふうに一応答弁されているんですけれども、それで済まない場合も起こり得る。その場合に、もちろん正当防衛はできると思うんですけれども、民間人でもできるわけですから。

 そういった場合にどういう行動パターンをとるのかということですね。現実の処遇の場面でそういうトラブルが起きたときのことについては、もう少し詰めていただきたい。基本的な考え方は間違っていないと思っていますけれども、トラブルが起きないように、そして民間と公務員の両方の職員に対して十分研修を行っておくといったことが求められるのではないかなと思っております。

吉井委員 ことし三月のパブリックビジネス・リポートの中で、法務省の矯正局総務課西田博国際企画官の話として、PFI刑務所では、受刑者の生命財産を直接侵害する行為以外何でも民間化するという趣旨の発言を伝えております。だから、公権力の行使の範囲が今も少しあいまいな部分があるわけですよね。

 どこまできっちりできるかということももちろんあるわけですが、公権力行使の範囲がなし崩し的に狭められてきたりすると、その限りなく民営化に接近していくということが、やはりPFI刑務所、大幅な民間委託というところから、民営化刑務所への一歩となることも懸念されるわけですね。

 「自由と正義」の昨年四月号で、ちょうど海渡参考人が二〇〇四年一月の民営刑務所のプランには疑問を呈したいと述べておられますが、もちろん今回のはそこまでいかないという御判断の上なんですが、疑問を呈したいとおっしゃっておられるところをもう少し具体的に、どういう点での疑問点をお持ちなのか、今までの御答弁ともかなり重なる部分もあるかと思うんですが、伺っておきたいと思うんです。

海渡参考人 おっしゃるとおりで、民間に委託できる業務の部分がどんどん拡大していってしまう、先ほどの西田さんが書かれているものは僕も読んでいないので、ちょっと我々の理解と違うなという印象ですが、少なくともこの国会における答弁の中では、法務省の姿勢としては、公権力の行使にかかわる物理的に受刑者と接触する場面はすべて公務員に留保するというふうにはっきり答えられていますので、その線を堅持していただきたい。そこが崩れてくると、吉井議員お尋ねのような問題点が起こってくる可能性があると思います。

 それからもう一点は、民間企業が刑務所の運営を部分的であれ担うことになると、刑務所の定員を確保しようとする行動に出る可能性があります。要するに、何人収容するかによって委託収入が決まってくるわけですから。

 今は過剰拘禁ですから、お得意さんがいなくなる、受刑者がいなくなるということはないんですけれども、もし今後拘禁者数が減った場合に、やはり刑を厳罰化して受刑者数を確保しろというような形で法務行政に圧力を加えたり、現実にアメリカでは民間刑務所企業がつくっているロビー団体が活動して、三振バッターアウト法、三回目の重大犯罪で無期懲役になるという法律なんですが、そういう法律を推進したりしているといったレポートなどもあるということで、私のペーパーの中で指摘しておきました。そういった二つの点で懸念があるということです。

吉井委員 海渡参考人に最後の質問で、ヨーロッパの話がありましたけれども、イギリスの刑務所民営化の経過と実情、これを伺いたいと思うんです。

海渡参考人 イギリスの刑務所の民営化の点に関しましては、二〇〇三年九月十九日付の日弁連の提言の十四ページの部分に書いておきました。アメリカよりは少しおくれて出発しているわけですけれども、サッチャー政権の時代に導入されました。ただ、先ほども申し上げましたが、イギリスの場合は、労働組合対策として公営刑務所の効率を高めるための当て馬的な要素が強くて、そんなに大きくは拡大しておりません。

 現実に政府のレポートなどで効果があったとされているのも、民営刑務所ができたことによって公営刑務所における刑務官が危機感を募らせてよく働くようになった、よってこれは非常に成功だったというような評価になっております。あと、このレポートによりますと、最善の民営刑務所は最善の公営刑務所とほとんど同レベル、しかし最悪の民営刑務所というのは安全性とセキュリティーの面では最悪の公営刑務所をさらに下回っている、そういった実態も報告されております。

 ですから、民営も公営もいいものも悪いものもあるわけですけれども、民営の場合には、悪くなるときはとことん悪くなってしまう可能性がある。もちろん、民営が全部だめというわけじゃないんですけれども、そういう実態が報告されております。

吉井委員 次に、並河参考人に伺いたいと思います。

 たしかもう十年近く前になりますか、規制緩和特別委員会か何かのときに来ていただいて伺ったような記憶もあるんですが、特区というものには規制緩和を一点突破して全面展開していくという発想がありますけれども、この点でやはり改めて、当時十年ほど前は、もう規制緩和万能論とでもいうべき、何でも規制緩和というのが横行しましたが、明治以来の本当に実態に合わない古ぼけた規制を廃止するとか緩和するのは当然の話です。

 同時に、やはり人類がずっと経験を通じてとか英知の蓄積の中から生まれてきた規制もあればルールもあるわけで、それは維持するのは当たり前の話です。ヨーロッパに比べて、逆に日本の場合、基準が非常に甘いとか、そういうものについてもっと新たに規制やルールをきちんとしていくということは当然大事だと思うんです。

 当時の議論というのは、要するに、規制緩和すれば価格は安くなって消費者利益につながるとか、あるいは官がやめて民にすることでビジネスチャンスが生まれるというビジネスチャンス論とか、それから大量失業者は発生するんだけれども新たな雇用の拡大でカバーできるんだとか、随分いろいろな議論がありました。

 しかし、今幾つかの分野で問題が出ていると思うんです。例えば、安全基準とか安全を守る体制が随分緩和されたり後退してしまって、結果として、この間のJR西日本の事故もそうですし、昨年の関西電力美浜原発の事故のときにも感じましたし、それから最近の航空機の事故です。飛んでいる飛行機から部品がいろいろ落ちてくるとか整備不良とか、整備部門まで規制緩和だといって下請に移され派遣労働に置きかえられていくとか。やはり、規制緩和と言ってきたものが、今検証しなきゃいけないいろいろな問題が出てきていると思うんですね。

 ですから、特区で一点突破ということもあれなんですけれども、まず基本のところで、今改めて、規制緩和と言ってきたものについてどういうふうに考えていくかというところを、長くこの分野にかかわってこられたと思いますので、伺っていきたいと思うんです。

並河参考人 ただいまの件でございますけれども、十年ぐらい前の時代は、要するに規制の中でもいわゆる経済的規制と社会的規制と二つありまして、経済的規制の話がずっと割合前面に出されてきた。だから、経済分野の話はかなり民間企業の自主性に任せればいいんじゃないかと。問題は、社会的規制の議論は、過剰な規制はおかしいけれども、やはりそれなりに合理化しなくちゃいけない、そういう議論だったと思います。

 これからの問題でございますけれども、社会的な規制、あるいは安全基準だとかそういった問題は、要するに国が全部コントロールするのか、あるいは、これからの地方分権の時代でございますから、その地域地域に応じた規制をその地域の人たちと一緒につくり上げていくという形が望ましいのか。

 そこら辺は物によっていろいろ違うと思いますけれども、そういう仕分けをした議論をしていかなくちゃいけないのかな。規制は何でもなくなるのがいいんだ、そう言われる方もいらっしゃいますけれども、そうではなくて、地域が参加して自分たちのルールをつくっていくという形がこれからの一つの、特に社会的規制の分野については必要なのかな。

 そうなりますと、これは多少神学論争になりますけれども、地方分権と規制緩和と、重なる部分もございますけれども少し違う部分もある。そうしますと、これからの特区の話は規制緩和で出てきた話でありますけれども、自治体の方々がかなり参加して提案しているというならば、もう少し地方分権的な、地域が自主的に自分たちのルールを決めるという形にもうちょっとシフトしたようなやり方があってもいいんじゃないのかな。そこら辺は、もう少しこちらも具体的な個別個別の問題に即して議論していきたい、そういうふうに考えているところです。

 以上です。

吉井委員 次に、本田参考人に伺いたいと思うんですが、どぶろく特区のこととか、非常にユニークな発想といいますか、いろいろ取り組んでこられた中で、グリーンツーリズムについて、百五十万人ぐらい観光客が来られて、中でも宿泊客が約七万人ぐらいぐっとふえてきたというのをいただいた資料で読ませていただきました。

 このときにリピーターを、長期滞在もそうなんですけれども、やはり繰り返し来られるような魅力をどう付加していくか。リピーターをどうふやすかということと、その中から定住しようかなという方が出てきたときに、やはりその地域の持てる力を生かした内発的発展といいますか、その力を生かした経済とか産業を農業とともにどう生み出していくかというところで、そこのところに市長としても随分御苦労いただいているかと思うんですが、そこのお話を伺いたいと思うんです。

本田参考人 お答えいたします。

 ただいまのグリーンツーリズムということで、私ども、グリーンツーリズムですと全国一律グリーンツーリズムということで、遠野ツーリズムということを、あえてそういう言葉を使っているわけでございますけれども、これもまたリピーターをふやしたいというような思い。そして、言葉として適切かどうかはあれでございますけれども、外貨を稼ぎたいんだと。

 二万七千、三万三千人のパイの中でいろいろそれを奪い合ってもだめなので、言うなれば首都圏を中心としたところの交流人口をふやした中から外貨をひとつ得ていく、それでそれを地域の産業、経済の活性化に生かしていくんだという部分での戦略を持ちたいというふうに思っていますけれども、それの大きな切り口がグリーンツーリズムであろうかというふうに思っております。

 特にこれからの二〇〇七年ショック、いうところの大量退職時代を迎えるという中にあって、地方の生き残りの中にあって、これを交流人口から定住に持っていける地域資源を我々は持っているんじゃないのかなというふうに思っておりまして、それが農業の振興にもつながる、あるいは商工業の振興にもつながる。

 特に農業の振興の部分につきましては、かなり疲弊してございますので、それを、いうところの交流人口の方々の中から一定の定住人口を見出して、少しでもいいから、農業をやりながら、安定したといいますか、スローライフというような人生を遠野のような地域で楽しみませんか、そういう形のアプローチをしていきたい。

 そのために、やはり我々自身が自分らの住んでいるところに誇りを持たなきゃならない、いいところなんだということを言わなければならない、そのために市民の意識を変えていかなきゃならない。

 そうしますと、首都圏を中心とした都市住民の方々の我々に対する見方、あるいは我々の持っている地域資源といったものも魅力が増してくるんじゃないのかなと思っていまして、そのような形での市民意識の改革とともに地域資源を改めて見直そうということでのグリーンツーリズムに持っていきたいものだなというふうに思っております。

吉井委員 それでは、多分これは最後になると思いますが、伊藤参考人に伺いたいと思います。

 学校法人として経営されて、学院長、校長先生を務めていただいておりますが、やはり学校法人ですから、企業利益追求に走ったりはもちろんしないわけですから、経営していて利益が生まれてきたときにそれを子供の教育へ還元していく、そこが多分一番神経を使っておられるところだろうと思っておるんです。

 これが学校法人じゃなくて株式会社等企業利益追求型になってしまうと、これは利益が出ないとか経営が傾くと簡単に解散したり売却だということで、子供に被害が及ぶわけですね。そういう点では、教育の内容とともに、やはり子供の教育に利益は還元する、そして安定した経営で将来的に子供の教育に責任を負っていく、多分そういうお考えで臨んでおられるんだろうと思うんですが、この点だけ伺っておきたいと思います。

伊藤参考人 お答えいたします。

 今の考え方ですが、安定した教育、やはりこれが私どもの今回の特区に踏み切った最大の理由でございます。私学の経営というのは非常に厳しい状況の中にございますので、やはり二十一世紀を担う子供たちに教育をいかに安定した形で継続的に行っていくかというふうなことを考えたところにこの踏み切り方がございました。

 以上、お答えいたします。

吉井委員 ありがとうございました。

松下委員長 次に、石毛えい子君。

石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。

 参考人の皆様方、どうもありがとうございました。私の質問時間は四十分でございまして、最後の質問者が少し長い時間をいただいておりますので、もしかしたらお疲れでいらっしゃるかもしれませんけれども、もう少しどうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、伊藤参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 大変深くお考えになられて、新しい領域設定、ユニークな分野設定もされながら、四・三・二制という、ここのところがある意味で今日の教育制度のあり方と強く切り結んでいるところというふうに思いますけれども、この点をめぐりまして二点ほどお尋ねしたいと思います。

 この点といいますか、直接に四・三・二だけということではないのですけれども、宮城県の教育特区でことし三年目でいらっしゃるわけですよね。(伊藤参考人「ことしが初年度です」と呼ぶ)特区としては初年度ですか。初年度の成果として、先ほどの大変志望の人数がふえているというようなこと。

 それでは、まだこれからということなのかもしれませんけれども、一つは地域の教育、小学校、中学校あるいはもしくは高等学校等々とどのような出会いといいますか関係といいますか、あるいは所管が私学の場合は県ですから、なかなか行政の所管として、市と県等がダブるというかイコールフッティングにはならないから、地域の小中学校との連携なんというのもちょっと行政的には難しい部分もあるのかなというふうに推察させていただきながら、しかしながら、大変大きな意味を持つ実践をなさっていらっしゃいますので、地域の小学校、中学校、ひいては高等学校にどのようなインパクトを及ぼしていて、どのようなリアクションがあるのか、そのあたりの実情をひとつお聞かせいただきたいということと、それからもう一つ、やはり四・三・二制というのは、今の文部科学行政にとってはとても大きな大きな課題として浮上していることだと思います。

 きょういただきました資料をちょっと拝見しますと、これは予定というふうに記載されてございますのでこれからのことかもしれませんけれども、シンポジウムのパネリストとして文部省の初等中等教育局教育課程課長のお名前が記載されてございますので、文部省からはどのようなアプローチがあり、あるいはどのようなことを期待され求められているのか。

 ここのあたりが、少し期間があるのかとも思いますけれども、もしかしたら特区から全国展開へ、制度の全面展開へという道筋の端緒のところにいらっしゃるのかもしれませんというようなことを思いながら、文部科学省とどのようなやりとりがなされているかということをお尋ねさせていただきたいと思います。

伊藤参考人 お答えさせていただきます。

 地域との関連ということでございますが、私どものこの新しい教育制度の発表に対しましては、小学校の校長先生方、中学校の校長先生方、それから高等学校の、県立高等学校、仙台市立高等学校、校長先生方から大きな関心を寄せられているというふうに私は思っております。

 私ども、私立学校ということで、特に私は公立中学校の校長先生方と話を交える機会がございます。中学校、高等学校の校長会、連絡会ということがございますので、そこでも大分この本校の教育改革については関心を持たれ、いろいろと質問していただいているところでございます。

 それから、高等学校の校長先生等は私立、公立区別なく校長会がございますので、その出会いでの話も校長先生方からの関心を寄せていただいているというところが現状でございます。特に、高等学校では近年の子供たちの学力低下というふうなことが各校長たちの大きな問題点というふうな形で出ておりますので、そういう中にあって、本学院の新しい教育改革に対する関心事かなというふうに思っております。

 二番目の質問でございますけれども、こちらの方は、私ども学院といたしまして公開研究講演会というものを三年ほど前から開いております。そういう中にあって、なかなか私学の方には学びの会が、機会が少のうございます。

 そういうことで、やはり問題点を、我々がどうここを乗り越えていくかが我々学院の法人としての課題であろうということで、我々が問題を抱えているならばその問題を解決するための手法を考えようということで、学院が主催して教育講演会を開催するというふうな形で、全国のやはり我々が教えていただきたい先生方の方にお声をおかけいたしまして、ぜひ御指導を仰ぎたいというふうなところで来ていただいていることは本当に感謝しております。

 今回も、予定としてでございますけれども、文科省の方からも御指導を仰ぎたいというところで参加をお願いしているというふうなところでございます。

 以上でございます。

石毛委員 今の御答弁で、文部省の側から積極的なアプローチがなされているわけではないというふうに伺わせていただきました。むしろ、新しい四・三・二制という取り組みがどういう中身で、どういう成果を期待しつつ今教育実践をなさっていらっしゃるのかということを文部科学省にも十分に情報をお伝えしたい意思というふうにお伺いさせていただきましたので、もう一つ、このことが日本の教育制度とどう連関していくかということはまた、総体的には独自の歩みをとられるのかなというふうに伺わせていただきました。ありがとうございました。

 並河参考人、そしてまた本田参考人に、似たようなことですけれども、ちょっと御答弁の具体性のところで違うかなというふうに思いつつ、御質問させていただきたいと思います。

 構造改革特区は、特区を申請する自治体あるいは主体によりまして、それぞれ思いとか期待とかが違うのかなと。例えば、特区を起点にして全国展開で、全面展開で規制緩和、規制をなくしていくというようなこともございますでしょうし、どぶろく特区あるいはその他特区特区でその自治体の個性、固有性を全国に発信して、ある意味で、全国特区フェスティバルみたいなものを開かれるとするとすごくユニークな地域が私ども市民の前に披瀝されて、日本はなかなか楽しい国なんだということが実感できる。だから、特区のねらいはそれぞれの主体によって違う部分があるのかなと。

 あっても、それはそれでいいのかもしれませんけれども、どうやらそのあたりのそれぞれの特区の個性とか独自性とかというようなことが、この間の規制改革会議や何かの動きを見ますと、若干私見ではトーンが違ってきているような感じもして、もしもそれぞれの自治体の個性を発揮していくのが特区の大きな目的だというふうに位置づけるとしますと、何かウエートのかかり方が違ってきているのではないかなというような、そういう感覚が私はしております。

 今回の美祢社会復帰促進センターに関しましても、これは前段に委員の方が御指摘されていましたけれども、本当に大きな企業が受託をされているということで、地域の民力を生かすのにはちょっと間接的になっているというようなこともあります。

 それから、この通常国会では地域再生法が制定されていますけれども、あれも、見方はいろいろあるかもしれませんけれども、下水道などの敷設に対して補助金が省庁割りに、縦割りになっていたのを統合して使えるようになるということで、そのことはそれで一つの使い勝手のよさかもしれませんけれども、今、地域の方の実態から見ますと、大手ゼネコンがどんどん地方に進出している中で、必ずしも地域再生が、では本当に地元の個々の零細の事業者さんやそこで暮らしている方々にとってプラス効果を生むかというとどうなのかなという思いもしないではない。

 そんなことを思い浮かべますと、特区の初発の意思と申しましょうか、それが生かされる方向で規制改革がどんどん動いているというよりは、少し違って、マーケットメカニズムがどんどん全国化していくというような、そのような空気を私は感じているのですけれども、そのあたりを並河参考人にまずお答えいただきたいと思います。

 本田参考人に、もうちょっとつけ加えまして、後ほど質問させていただきたいと思います。

並河参考人 ただいまの件でございますけれども、私どもの理解としましては、この特区制度というものは規制改革の方から生まれたもので、当初から、全国展開のための第一歩、一角破りという認識だった。ただ、実際にやっていくと、だんだんそうではなくて、特に自治体からの提案が非常に多いということで、かなり分権的な色彩が出てきました。

 ですから、規制改革の立場からすれば当然全国展開ということになりますけれども、分権の立場からすれば一国多制度でいいじゃないか、いろいろな地域によっていろいろなルールがある、何も全国で一斉にべた一色にする必要はないじゃないか。そこら辺の二つのせめぎ合いが今行われているんじゃないのかなという理解をしております。

 ですから、例えば、有識者会議で没案件になっているものの見直しを今やっておりますけれども、それもできれば、そういう個別の、具体的ではありますけれども、やや小さい話ではなくて、例えば全国あちこちで農地が荒廃しているということに対して、今まで出てきた提案を全部まとめてみると何かこんなようなことができないか、そういうような全国展開をするのならば、やや骨太の政策で全国展開していく、地域によってそれぞれやるものは異なっているというような仕分けができないのかなという感じを実は持っているわけであります。

 ただ、特区そのものはどうしても、我々の理解からしますと規制改革から出てきておりますから、個別具体的ではあるけれども、極めてそれぞれの持ち分ははっきりして、短冊と我々は言っていますけれども、短冊の幅が極めて狭いところを今後どうやってクリアしていくかというところが我々の課題になっている、そういう理解でありますので、石毛先生の最初の理解とちょっと違うのかなというふうに思っております。

 以上です。

石毛委員 私が特区に関して期待することというのと、制度、政策の展開というのはおのずと一致するわけではございませんので、並河参考人が最後に御指摘なされたことは、それはそのとおりかもしれないと思いますけれども、ただ、一国多制度というのは大変示唆に富むお話として今聞かせていただきました。

 本田参考人へのお尋ねでございますけれども、ちょっと私事にわたって恐縮ですが、私は、この立場をいただく前に、遠野市には、保健、医療、福祉のネットワークのシステムに全国的に大変早く取り組まれたところでいらっしゃいまして、三度ぐらいお訪ねさせていただいて、遠野物語の民話館にも訪ねさせていただきまして、非常に懐かしく思い出しました。遠野ツーリズムの中に、全国からお話の語り部の方たちが寄り集まって、宿泊されて交流されているというようなプログラムも入っているのかしらなんということを思いながらお話を伺わせていただきました。

 それは前置きでございますけれども、今の並河参考人にお尋ねしたこととかかわりまして、今のいろいろな規制改革の動きの中で、自治体の方の立場あるいは遠野市民の立場から見て、この特区制度に対する期待というようなものあるいは要請というようなことがございましたら、具体的に少し御指摘いただければと思います。

本田参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げたいと思っております。

 まず、保健、医療、福祉の仕組みについて先進的に取り組んでいるという形でのお話をいただきまして、大変ありがとうございます。今、「地域が家族 いつまでも元気ネットワーク構想」ということで、地域というものを大事にしながら、それぞれの集落、コミュニティーを大事にしながら、住みなれた地域でいつまでも元気でいられるような高齢化社会の仕組みをつくりたいものだなということで、これも何か特区をうまく生かせないのかなというような形での議論をいたしているところでもございます。

 ただいまお話ございましたとおり、この特区、文字どおり規制緩和の中から出てきたわけでございまして、どぶろくも、明治以来、つくっちゃならない自家製濁酒を、この規制緩和の中からということで切り込んだ結果が、量制限の撤廃ということではございますけれども、酒税法の一部改正という中で実現をしたということになるわけでございます。

 私どもは、これはいろいろ議論もしてございますし、先ほど並河参考人の方からも御発言がございましたとおり、いわゆる規制緩和の中から全国展開という部分と、それから、やはり地域地域の特性、あるいは地域の自立、さらには地方分権という流れの中の土俵がもう一つあってもいいんじゃないのかなというふうに実は思っております。

 それは、まだ部分においては、規制緩和の中から全国展開という一つの切り口だったわけでございますけれども、例えば私どものどぶろく、大都市でどぶろくを飲んで、果たしてそれがおいしいだろうかというような例えでよく話をしておるんです。やはり、うちのようなところで飲んでこそ昔懐かしいふるさとの味じゃないだろうか。であれば、これはやはり遠野のようなロケーション、あるいは遠野のような地方の、類似するような地域においての一つの権利として残すというのも、また一つの地域の活性化につながるんじゃないのかなと。

 今そこの部分が混在されている部分を全国展開、例えば農業の問題などは全国展開でいいんじゃないかなというふうに私は思っておりますけれども、どぶろくというのは、そこの地域固有のものについてはやはり大事にしてくれと。それが一つの地域の自立、あるいは、大げさに言いますと地方分権の流れにも沿う一つの態様ではないのかなというふうに思っておりますので、特にこの自家製濁酒、どぶろく特区につきましては、余り全国展開しないようにしていただければなということも思っている次第でございます。

石毛委員 私どももさまざまな場で発言を続けなければというふうに改めて今思わせていただきましたけれども、推進室の職員の皆様が、きょうきっとモニターされていらっしゃると思いますので、ぜひぜひ御要望に沿うような仕事の仕方というのも期待したいと思います。

 海渡参考人にお尋ねさせていただきたいと思います。

 私も参議院での今回のこの特区法案に関しまして質疑をさらっと見させていただきまして、答弁では先ほど、公権力の行使にかかわる部分はきっちりと公務員がというふうにされているということなんですが、この図を見ますと、刑務所PFI特区の概要で、権力的な事務の中で委託可能なところと委託不可なところ、だから権力性の強弱によって今回仕分けがされている法文だということを改めて再認識しまして、もう少し権力性、公権力の行使につきましてきちっと確認をしていかないと、運用の中で危うくなってしまうなというような思いを改めて強くしております。

 そこで、まず第一点、かなり抽象的な質問になりますけれども、日本の今回のこのPFI活用の特区は、公権力の行使に関してはかなり規制的にというか、本質的に規制的にというふうに仕組まれているんだと思いますけれども、先ほど来のお話で、アメリカですとかイギリスの場合には公権力の行使も含めて民営化されているという、それは何か、アメリカやイギリスと日本の公権力の監視に関する法理が違うんでしょうか。

 アメリカやイギリスは行け行けどんどんでやったのかどうかわかりませんけれども、できて、日本は今のところ非常に自制的に進められている。これの一番のベースになるところ、ここが何が違って、私は、やはり公権力の行使というのは人権にかかわることですから、きちっと公的にというふうには考えるものですけれども、そこのあたり、まずお聞かせいただければと思います。

海渡参考人 大変難しい御質問ですけれども、私も、アメリカ、イギリスでどうしてこれだけ全面的な民営化ができるのかということについて、いろいろな文献等を調べてみました。

 ある意味で、サッチャー政権とかレーガン政権が出てきたときに、やれるんだといってやってしまったというだけで、もちろんアメリカ、イギリスでも、原理的にこういうことはできないはずであるという反対論が当時議会の中にもありましたし、現実に、これだけアメリカ、イギリスでは民営化政策がとられたわけですが、それが国境をまたいだヨーロッパ大陸には一切波及していない。

 ドイツはまだ全然やっていませんし、フランスは民間の委託、今回の日本でやろうとしているものはフランス・モデルがきっと原型だろうと思うんですが、そういうところにとどめておりまして、公権力の行使にかかわる刑務所運営を民間の手に完全にゆだねてしまうということはできないんだという観点にヨーロッパ諸国は立っているというふうにはっきり思われるわけです。

 ですから、イギリス、アメリカになぜできたのかという質問にはちょっと十分お答えできないんですけれども、それは、そういう政策をとった首相なり大統領がおられて強力に進められたために、反対の声もあったけれども、やってしまったというふうに理解するしかないかなと。

 日本でもこういう民間委託ということについて今回始まるわけですけれども、これが全面民営化に進まないように、きちっとした形で、国会審議の中でどこが限界なのかということを見きわめた議論をしておいていただきたいなと思います。

石毛委員 立法府にいる者の責任重大ということを改めて今の御答弁で感じた次第でございますけれども、行政府の方がどのようにお考えになるかということもさりながら、やはり立法府にいる人間の責任の重さというのを改めて感じさせていただきました。

 そこで、先ほどの吉井委員の質問と重なる部分がございますけれども、今回、特区法案の中で第十一条一項の一号から九号まで、「全部又は一部を委託して行う」ということで具体的な事項が列挙されてございます。十号が「その他前各号に掲げる事務に準ずる」というふうに書いてあるわけです。

 これがまさに説明された委託可能の部分になって、これの行使の仕方が容易に公権力の行使であるかもしれないし、それに伴う単なる事務になるのかもしれませんしということで、例えば、着衣、所持品及び監房の検査等々、健康診断の実施でも、どこまでを公務員がやってどこからを民間員がやるのかという切り分けというのは、例えば、これは法文ですけれども、切り分けをある意味で原理的に明らかにしておくということは重要だと思うんです。

 先ほどは正当防衛に関することというようなことで若干御答弁があったと思いますけれども、これはさらにマニュアルみたいなものが必要という理解でいいんでしょうか。そのあたりはどうでしょうか。

海渡参考人 現状で、十一条の一項の一号から十号までを拝見して、全く問題のない部分、例えば作業の技術上の指導監督とか、文書や図画の閲読の許否の処分をするための必要な検査の補助とか、こういったところ、いろいろほかにもありますけれども、これは民間がやっても問題ないなというふうに思える部分も多々あるんですが、この中で特に気になりますのは、第一号の着衣、所持品の検査や指紋の採取、それから三号の行動の監視と施設の警備、四号の着衣、所持品及び監房の検査と健康診断の実施、こういった部分については、全体を民間がやるとすれば当然公権力の行使にかかわってくるというふうに思います。

 法文の中ではこういう書き方をされているわけですけれども、この間の国会答弁の中では、こういった事務についても、被収容者と接触する場面は公務員がやります、あくまで補助的業務を民間の職員がやるんですというふうに御答弁になっているわけですね。

 ですから、本来はそのことを明確化した形で法案の中に書き込んだ方がよかったのかもしれませんが、今後とも、公権力の行使にかかわる部分というものの定義をできるだけ政省令のレベルないしはマニュアルのレベル、そういったものの中で明確化していく。現実の行動場面ごとに、こういう事態が起こったときには公務員である刑務官はこういう行動をとるべきである、同じ状況の中では民間職員はこういう行動をとらなければならないという形で、かなり細かく規定をしておかないと必ず混乱が起きるのではないかなという感じがいたします。

 なかなか複雑で、初めての体験で、法務当局としてもこれから細かいところを詰められるんだと思いますけれども、原理原則は、公権力の行使にかかわる部分、被収容者と接触する部分、権力的に接触する部分については公務員の権限に留保していただきたいというのが日弁連の見解です。

石毛委員 ありがとうございました。

 きょうの参考人のお示しくださいましたレジュメの中で、日弁連として行刑改革会議に提出した意見書の第一番目ですけれども、過剰拘禁、まだ日本はアメリカ等々に比べれば低いというふうに先ほど御説明くださいましたけれども、この文書の中に、長期的には拘禁者数の抑制を基本とした政策をとるべきとございます。

 完全民営化になれば、拘禁者数が多ければ多いほどマーケットが大きくなるわけですから、そこは日本は歯どめはかけられていると思うんですけれども、長期的に抑制を基本とした政策ということで、具体的にはどのようなことが構想されるかということをお聞かせいただければと思います。

海渡参考人 大変重要な御指摘をいただきました。きょう配付している行刑改革会議に提案しました提言、本文がございますが、これの九ページをごらんいただきますと、今申し上げたところの具体的なことが書かれております。

 具体的には、宣告刑が長期化している傾向を見直す。実際に統計データなど見ますと、同じような犯罪行為に対する刑罰がどんどん重くなっております。これは、検察官の求刑がだんだん重くなっていることを反映して、求刑の大体八掛けが判決ということになっていて、どんどん刑が重くなっている。

 それから、再犯防止のための教育を充実する。これがなぜ過剰拘禁対策になるかと申し上げれば、このことによって再犯が減る、したがって刑務所に入ってくる人の数が減る。かなり迂遠のように思われるかもしれませんが、これが最も重要な根本的対策で、まさしく今回の監獄法改正、新受刑者処遇法案で再犯防止のための教育、職業訓練などを充実していくということが叫ばれているわけですが、これを充実させていただく。これはかなりお金がかかる事業になるわけですが、このことが過剰拘禁対策のメーンであるべきである。

 それから、さらに言いますと、薬物犯罪に対する短期の治療プログラムというのを書いておきました。これは諸外国で導入されておるんですが、日本の場合は、薬物犯罪、例えば覚せい剤の自己使用案件であれば一回目は執行猶予ですけれども、執行猶予になった方のかなりの数の方が再犯を犯して、結局、ダブルの刑期、二つの刑を同時に受けるということで、かなり長期に刑務所に行くことになっていて、それが過剰拘禁の原因にもなっているというふうに実感するわけです。

 一回目の自己使用の段階で、執行猶予で済ませてしまうのではなくて、一定の治療プログラムを受けなさい、受ければ刑務所に行かなくて済みますという、少し執行猶予より重いように思われるかもしれませんが、再犯をさせないということを通じて本人の利益にもつながりますし、そういうものを導入していくということが考えられます。

 それから軽微な犯罪、窃盗とか、そういったものに関して、執行猶予と実刑の中間的な新たな刑罰、具体的に言いますと公園の掃除をするとか。私が一度見たものでは、オランダに行ったときに、やはり犯罪を犯した少年たちが中心でしたが、公園の森の整備、そういう作業を命じてやらせる。

 そのことを通じて、地域社会の中で非行少年が汗を流して働いているという姿を一般市民にも見てもらうということが非常に大きな処遇効果を上げているということで、社会奉仕命令、コミュニティーサービスといった言い方もするんですが、そういう制度を導入していく。これによっても過剰拘禁状態になっている刑務所を少しでも減らしていくという、受刑者を減らしていくことができると思います。

 それから仮釈放制度、これは保護観察制度の充実とあわせてやらないと難しいと思いますが、仮釈放制度をもっと活用して、多くの受刑者を早目に地域社会に戻していく。もちろん、その場合に十分な保護観察制度とセットで戻していって社会復帰を図る。こういったことが考えられております。まだこの点は日弁連として、ここに項目が挙がっている程度で、具体的な政策提言とまでまとまっておりませんけれども、大体そんなことが考えられるかと思われます。

石毛委員 これからの行刑施設のあり方として、刑を受けられた方がどれだけやはりもう一度リハビリテーションをされていくかという、そのプログラムを非常に豊富にする必要があるという、ソフトの部分を伺ったと思います。

 今は刑を受けた方の方ですけれども、今度、行刑施設の運営に携わる方たちに関しまして、これまで名古屋の事件ですとかさまざまな暴力的な事件がございましたけれども、今公務員の方の人権教育はどんなふうになっているのかということと、それから、これから民間委託をしていくわけですから、その方たちもきちっと人権教育について認識をすることが、あるいは実践をすることが必要だと思いますけれども、そのあたりはどのように考えたらいいかをお聞かせください。

海渡参考人 この点は、私が法務省の代弁をするとおかしいのですが、非常に政策が積極的にとられているかと思います。名古屋事件の反省ということで、今回の受刑者処遇法案について、石毛先生が所属されております民主党の修正案で、人権教育を刑務官に義務づけるという修正が入っております。それを法務省側ものんだということは、それを本当に義務づけてやるという姿勢のあらわれだと思います。

 この法律が施行される前ではありますけれども、現実に各刑務所で人権教育に取り組まれていますけれども、今までは人権教育というと、人権に関する専門家、大学の先生を呼んできて、人権に関する規定はこんなものがありますというような、そういう人権教育が多かったのですが、これは余り実にならない。難しい話を聞いたなということで終わってしまうわけです。

 最近はそれが少し改善されてきておりまして、具体的に受刑者と刑務官の立場を逆転させて、一部の刑務官は受刑者役になって、実際に刑務所の中で起こりそうな場面を再現して、ここでどういう行動をとってはいけないのか、どういう行動をとらなければいけないのかといったことをロールプレーイングでやるとか、刑務官同士が討論をしていくとか、そういう非常に実践的な人権教育のプログラムが開発されて実施されているといったことが、矯正協会が発行されております「刑政」という雑誌などに逐次報告されております。

 そういった意味では、二度とこういう名古屋事件のようなものを起こさないという法務省トップの決意はあるわけですが、現場で本当にそれが全部浸透したかどうかの点については、まだまだこれから本当に努力をいただかなければいけないと思っておりますけれども、施策の方向としてはそういう非常に前向きの姿勢がとられているというふうに当連合会としても認識しております。

 済みません。民間のを忘れました。民間の職員の方に対する人権教育も非常に重要だと思います。これは、本職の刑務官の方の人権教育と同じものだけでは済まない。民間の職員としての人権教育というのは、刑務官とコンビネーションを組んで、どういう役割分担にするか、先ほど申し上げた部分ですね。それを本当に、マニュアルをつくってそれを読んでおけというだけではなくて、それを現実にその場で実践してみるような、そういう人権教育というのが必要になるかというふうに考えます。

 以上です。

石毛委員 時間がなくなってまいりました。あと一点、お尋ねしたいと思います。

 先ほどの御意見の中で、PFI企業は受刑者の労働から利益を上げてはならない、このことをきちっとこの法文の中で担保するようにということで、法務省令で規定ということを御指摘になられたと思いますけれども、そこのところをもう少し御指摘いただければと思います。

 もう時間がございませんので、ILO条約の関連に関しましては、このレジュメの中で拝読しておりますので、よろしくお願いいたします。

海渡参考人 この今回提出されている法案の十一条の十項に、委託業務についての細かいことは法務省令にゆだねるという規定がございます。この規定に基づく法務省令の中で、例えばPFI企業は受刑者が生産した物品を保有してそれを販売して収益を上げてはならないとか、現実に生産された物品が国庫に帰属するということを決めるのでもいいと思うんです。

 いろいろな定め方があると思いますが、今までの刑務作業のスキームを変えるものではないということをはっきり省令の中にうたっていただきたいというふうに思います。

石毛委員 もうそろそろ時間が終わりに近づいてまいりました。先ほどの人権教育に関する部分とも絡むと思いますけれども、今度の法改正、これではございませんけれども、法改正で、刑務所の第三者評価の仕組みがスタートするというふうに伺っております。今回は民営化するということを含むわけですけれども、民営化する刑務所に関しましても当然それは行われるというふうに考えてよろしいか、あるいは考えるべきなのか、そこのあたりを御答弁いただければと思います。

海渡参考人 今回の受刑者処遇法案の最大の目玉というのは、刑事施設視察委員会という外部の第三者機関をつくって、この機関が刑務所を視察し、受刑者から意見を聞き、実情を見た上で刑務所長に意見を述べるという制度ができております。これは、日弁連が長らく法務省に実現するようにお願いしてきたものが、名古屋事件という不幸な経緯がありましたけれども、実現したということで大変高く評価しているわけです。

 この制度は各刑務所ごとにそういう委員会をつくるということになっておりまして、当然、このPFI手法で運営される美祢の刑務所についても刑事施設視察委員会が設けられるということになると思います。

 問題は、こういう私企業がかかわりますと、その経理上の秘密といった問題が起きて、なかなか施設の内容が明らかにならないというような面がありますので、こういうPFI型の刑務所について、視察委員会がそのパフォーマンスをきちっとチェックする、そしてレポートを提出していくということは、公営の刑務所以上に重要なテーマになるかなというふうに思います。

 現実に、イギリスの民営刑務所について、イギリスにも同じような各刑務所の独立モニタリング機関というのがあるんですが、非常に厳しいレポートを提出したりして、そのことによってその刑務所の運営が変えられたといった事例もありますので、民営刑務所、美祢のそのPFI型の刑務所についても刑事施設視察委員会の活躍が期待されるというふうに考えます。

石毛委員 やはりこれは公契約に属する部分だと思いますから、情報公開は、どこで線引きするかということはあるのかもしれませんけれども、きちっとされるべきことではないかと思いますし、一般論としましても地域経済の活性化、雇用の増大というふうに言われていますけれども、それが雇用の流動化と表裏一体というような問題もございますので、どのように評価するかというのは大変重要な課題だということを再認識いたしました。

 きょうは、参考人の皆様、本当に貴重な御意見を承らせていただきましてありがとうございました。構造改革特区というこの命題の、興味深さと言ったら表現はいささか穏当性を欠くのかもしれませんけれども、それぞれの個性と、それから全国展開と、そのバランスで私どももきちっと考えなければいけないということを改めて私自身は再確認させていただいたという感想を申し上げまして、御礼にかえさせていただきたいと思います。

 どうも御苦労さまでございました。ありがとうございました。

松下委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をちょうだいいたしました。まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四分開議

松下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房構造改革特区推進室長・内閣府構造改革特区担当室長滑川雅士君、法務省矯正局長横田尤孝君、文部科学省大臣官房審議官樋口修資君及び高等教育局私学部長金森越哉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤田一枝君。

藤田(一)委員 民主党の藤田一枝でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 本日は、監獄法等の特例についてお尋ねをしてまいりたいと思います。

 今回、特例措置によって、行刑施設の業務の民間委託が特区の目的である雇用機会の拡大や地域経済の活性化に資するということで提案をされております。

 総論としては否定するものではございませんけれども、内容を見ておりますと、あるいは、本日午前中に行われました参考人の方々の御意見等も伺っておりますと、いわゆる民間委託の推進、行政の効率化の方が強い感じがするのではないか、そんな印象を持ったところでございます。

 大臣は、初めてのPFI刑務所で、しかも警備の一部を民間委託するということについて、どのような効果を期待されているのか、まずその点からお尋ねをいたします。

村上国務大臣 お答え申し上げます。

 今回の特区の改正というのは、御承知のように、特区制度は地域の特性に応じた規制の特例措置で、規制緩和の突破口となるわけでありまして、そういう意味で、構造改革の推進を図るとともに、地域の活性化を図ることを目的としております。

 特に、今回の監獄法の改正におきましては、人口約一万八千人の美祢市においてその提案があったものでございまして、官製市場の民間開放の推進を図ることを考えております。

 特に、先ほどお話がございますように、警備等の業務が民間委託も可能になりまして、周辺地域における雇用が、大体二百五十名ぐらい警備に要りますから、その半数以上ぐらいが雇ってもらえるんじゃないかなということで、雇用が増加するんじゃないかな、また二番目に、刑務所内の診療所の周辺住民の利用が可能になって、地方の医療のサービスが拡充される、そういった効果が期待されるんじゃないかな、そういうふうに考えております。

 以上であります。

藤田(一)委員 官製市場の開放であるとか、私は、特に刑務所のようなところ、閉ざされた世界に民間人が入っていくということは、風通しがよくなるということも含めて、大変いいことだというふうに思ってはおります。ただ、問題は、やはり役割であり、業務の内容ではないかというふうに思います。

 今回の警備の一部民間委託ということは、最も民営化になじみにくい刑罰権の行使にかかわる領域の問題であるわけでありまして、単なる民間委託の推進ということでは、やはり特区の名が泣いてしまうんではないか。事行刑施設の問題でありますし、そういった意味で慎重な検討と適切な判断というものが必要になってくるんだろう、こんなふうに思っております。

 特に、行刑施設の問題ですけれども、この間、大変施設不足であるとか、過剰収容、あるいは職員の負担増であるとか、そのことによる受刑者の処遇悪化といった問題がかねてから指摘をされてまいりました。塀の中のこととしてなかなか改善をされてこなかったという経緯もございますし、その間に名古屋刑務所の事件なども発生をいたしました。そしてまた、矯正プログラムということも叫ばれてはきましたけれども、なかなか実現していかない、社会復帰に向けた対応のおくれということも目立っていたわけです。

 そういう中で、今回やっと、監獄法の改正、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の改正ということに至ったわけであります。

 今回のPFIの刑務所というのも当然その流れの中に位置づけられているというふうに思うわけであります。新設される男女五百人ずつの刑務所、別名社会復帰促進センターというふうに言われるようでございますけれども、特に初犯受刑者の収容ということでありますから、再犯率をいかに下げるのか、更生ということに着目をして運営するということが大変大事だというふうに思っています。

 そういった意味で、その点についてどういう構想を持っていらっしゃるのか、簡単に御説明をいただきたいと思います。

横田政府参考人 お答えいたします。

 この美祢社会復帰促進センターの整備運営事業は、官民協働によりまして刑務所の運営を行う事業でございまして、民間のノウハウ等を活用することにより、受刑者の社会復帰に向けて効果的な処遇を実施したいと考えています。

 具体的には、まず、職業訓練としては、介護技能者の養成や高度なパソコン技術の習得など、労働需要に合致した多様な訓練や、それから点字翻訳作業などの社会奉仕的な訓練を実施する予定でございます。

 また、矯正教育といたしましても、臨床心理士やソーシャルワーカーなどを活用しつつ、海外で実績のある教育プログラムを導入することなどを予定しておりまして、これによりまして、充実した矯正教育を行うことができるものと考えております。

藤田(一)委員 今御説明をいただいた中身でありますけれども、これは具体的に、今回の十一条の関係の中で含まれている部分というのが、どの部分が含まれてどの部分が含まれていないのかということをちょっとお伺いしたいと思うんです。

 私は先日、佐世保の刑務所に伺う機会がありました。ここは御承知のとおり、類型YBということで、二十六歳未満で犯罪傾向が進んでいる人たちが収容されているということになっていますけれども、大変問題が多岐にわたっていまして、刑務官の方々というのが御苦労されています。特に矯正プログラムの問題では、職員の配置であるとかあるいは専門性の問題ということで、とにかくやりたいし、やれば効果が上がるんだけれども、なかなかやれないという、非常に苦しい問題があるというお話を伺ったところであります。

 そういった意味では、そうした分野にこそ、専門的な分野、専門性を持った民間人の活用であるとか、あるいはNGOとの連携であるとか、こういったことをしっかりと行っていくことが必要なのではないかというふうに思いますけれども、既に今刑務所の中では、そういった分野について一部民間の方々の協力をいただいていることもあろうかと思うんです。

 今回のこの新設刑務所の場合には、特に十一条の一から十という形で具体的な委託の中身というか業務が記載をされているわけですけれども、先ほど御説明をいただいた中身のどの部分がどこに含まれるのかということについて、もう少しわかりやすく御説明いただきたいと思います。

横田政府参考人 お答えいたします。

 今申し上げたさまざまなことといいますのは、この十一条の第五項の規定に基づくものであります。条文としては極めて抽象的ですけれども、その具体化としてこういうものを行うことにしているということでございます。

藤田(一)委員 ちょっと確認です。

 臨床心理士というお話も先ほどございましたけれども、そういう臨床心理士の方もその五項の中で規定されるということになるんですか。

横田政府参考人 臨床心理士による一種のカウンセリングとかそういうものを予定しておりますが、それも、広い意味ではただいま申し上げた中に入ります。

藤田(一)委員 今回出されている一から十という部分がかなり抽象的な表現になっているものですから、なかなか中身が見えにくいという問題があるのではないかと思っています。

 それで、少し具体的にお尋ねをしてまいりたいと思っていますけれども、この一つ一つを見ていきますと、特に、刑罰権行使の関係から、委託業務の内容というのが刑務官の補助的役割に位置づけられているのではないかというふうに読み取れるわけです。

 そこでお尋ねなんですけれども、まず一つは、受刑者は刑務官と委託事務従事者の官民の違いというものを識別できるのかどうか、それから、十一条の特に一から四の部分ですけれども、これは公権力の行使にかかわる業務ではないというこの間の参議院での質疑等々のお答えもあるわけですけれども、その点についてどのように担保をしていくのかということ、そして、そうしたことをした場合に、刑務官一人当たりの受刑者数、負担率というのはどの程度軽減されるものなのか、お答えをいただきたいと思います。

横田政府参考人 お答えいたします。

 まず、受刑者から見て、刑務官と民間委託による従業者との区別がつくかということですが、端的に申し上げますと、まず制服を完全に変えますので、そこによって一見して区別がつくような形になります。

 それから、業務の内容でございますけれども、これはいろいろな機会に再三申し上げておりますように、あくまでも、委託をしようとして考えておりますのは、例えば十一条の一項の一号から九号まで具体的に列挙しておりますけれども、いずれも、これらは行刑施設の長または刑務官による権限の行使の補助的なもの、あるいは準備段階としての事実的な行為を委託しようというものでございまして、端的な権力的な事務と申しますか、そういう直接の受刑者の権利を制限し、あるいは義務を課しといったようなこと、あるいは財産、身体に侵害を加えるような行為、そんなふうな行為につきましては委託する考えはございません。

 それから、このような民間委託をする上で、それが適正に行われるような措置としてはどのようなものがあるかということにつきましては、これはまず一番は、やはり何といいましても、このような委託をしようという行為につきまして、法律にその根拠の規定を設けるということでございます。それから、この条文の中にございますけれども、いわゆる守秘義務、秘密を守る義務、それからみなし公務員規定、それから国による監督規定などを設けております。これによりまして、事務の円滑かつ適正な実施を確保するための担保がとられていると思っております。

 それから、さらに、十一条の四項、五項になりますけれども、一つは、行刑施設の長は、この委託を受けた事業者に対しまして、実施の基準その他必要な事項を示すものとするとしておりまして、これによって、業務を行う上での一定の基準というものが明確にされます。それから、五項におきまして、不適当と考える民間職員につきましては、行刑施設の長が委託事務に従事させない措置その他必要な措置をとることができるというふうに定めておりまして、これらそれぞれの規定によりまして、民間に委託した場合にその業務が適正に行われる担保がとられているというふうに考えております。

藤田(一)委員 何となくわかるようなわからないような話なんですけれども、つまり、一条の一から四、公権力の行使にかかわる業務には従事をさせないんだという部分、一番そこが問題になってくるところだと思いますけれども、それは何によって担保するのかということです。

 さっき、具体的な中身を示すというお話がありましたけれども、示すというのはどこで示していくのか。委託契約の中で具体的な仕様書みたいなところで確認をするのか、あるいは、きょう、参考人のお話ですと、政令等で担保というお話もありましたけれども、そういう形できちっと位置づけていくのか。つまり、ここの区別が非常に大事になってくる。今回、この民間委託ということを成功させるという観点から見ても、この峻別というものをしっかりとやっておくということがまず大前提なんだろうと思います。

 そのことが何となくわからなくて、いや別に、とにかく補助的業務ですよとか、公権力の行使にかかわるような部分には従事をさせませんというお話ですけれども、十一の一とか二とかいうのを読んでいくと、補助的作業といったって、やはり受刑者と接さざるを得ない部分があるわけですので、そういったところをどういうふうに整理するかということを、もうちょっと具体的にわかりやすく、そしてきちっと根拠というか形を示していただきたいと思います。

横田政府参考人 済みません。先ほど、質問に対して一点漏らしていたような、負担が軽くなるかどうかというお尋ねが入っておりまして、申しわけございませんでした。

 これについて簡単に申し上げますけれども、美祢社会復帰促進センターにおきましては、従来の行刑施設では国の職員が行うこととしておりました業務を民間事業者に大幅に委託することとしておりますことから、従来のような職員負担率、そういう数字を用いて比較することは困難だと思いますが、いずれにいたしましても、この社会復帰促進センターは、例えば、受刑者の職業訓練や教育など、PFI手法を用い、民間の専門的知見やノウハウを活用することが有効であると考えられる業務については民間に委託することによって、官民協働による効率的かつ効果的な施設運営が可能であることから、これらによりまして国の職員の業務負担は軽減されるものと考えております。

 それから、補助的な業務あるいは事実的な行為であると言っているんだけれども、それは何によって担保されるのかというお尋ねでございますけれども、これはまさに第十一条の一項で、委託できる事務といいますか、これをそれぞれ特定して列挙して定めているわけでございまして、つまり、これ以外のものは委託できないということでありますので、この一号ないし九号の各条項があることによって不当に委託部分が広がるということがないというふうに考えております。

藤田(一)委員 何となくやはりわからないんですけれども、参議院の質疑のときに、一項の身体検査をめぐる問題でいろいろと質疑がありました。議事録を私も読ませていただきましたけれども、命令をすることは刑務官が行うけれども、衣類の検査については委託事務従事者が行う、指紋を採取することについても、指紋をとるということの指示はするけれども、実際のとるところは委託事務従事者であるという、こんなお話が、やりとりがずっと続いているんですね。

 今、そのことをもう少し簡略におっしゃっていただいたんだというふうに思うんですけれども、やはりそこは、受刑者と直接に接することはさせないんだという話ですけれども、接するんですよね。接しないことは絶対ないわけですよね。そういうところでの線引きの問題というのが非常に問題になるだろう。

 逆に、この委託事務従事者というのは、これは後でちょっと触れようと思っていましたけれども、委託事務従事者に対する妨害行為に対しては公務執行妨害というのが適用されるということでありますから、そういうことも含めて、そこの協力関係というのは非常に問題になるんだろうと思います。

 多分、ここの峻別の区分けのところというのは、これからやりながらじゃないと細かくは規定できない部分もあるのかもしれませんけれども、一番民間委託で問われているところであろうと思いますので、ぜひきちっと整理をして、そしてそれがただ単に今回の条文に書かれているということではなくて、あれだけではやはりわからないわけですから、あれを具体的にきちっとマニュアル化するというか、あるいはもっと細かい指示書として整理をするかとかいうようなことが絶対に必要だというふうに思いますし、そのことによって全体が見えてくるということだと思いますので、その点、ぜひお願いをしたいと思います。いかがでしょうか。

横田政府参考人 この点につきましては、先ほど法律の条文に書いてありますということを申し上げましたけれども、さらに、これはあくまでも法律でございますので、抽象的、一般的な規定でありますけれども、具体的なPFI事業というものを見てみますと、それはそれぞれ、先ほども一部触れましたけれども、刑務所長があらかじめ事務処理要領というものを決めまして、これをPFI事業者に示しますし、それから、これは条文で言うと事務の実施上の基準というふうに言っていますけれども、そういうものを示します。

 それから、事業を行おうとする者も、事前にどのようなことを行うかという私どもの要求水準というものがございますけれども、それに従って、業者の方でも今後どのようなものを行うかということについて具体的な計画を出して、それに基づいて評価をして、そして最終的に業者選定、落札ということをやっておりますので、そういった点では、どのようなことをするかということについてはかなり具体的に定まっていくものと考えております。

 それから、指揮命令のことに絡みますけれども、確かに、民間の職員といいますか、民間の委託を受けた事業者の従業者が、先ほど申し上げましたように、一部現実論としては受刑者のすぐそばにいるということはあり得るし、それを接するというふうに言ってもいい場面もあろうかと思いますけれども、それはそれとして、やはり、だからといって、それによって直接身体に何らかの有形力の行使をしたり、あるいは直接的に義務を課したり制裁を科したりということ、これは民間の者はしないわけですので、そこのあたりは厳密に峻別して執行していくということでございます。

 したがって、先生が御懸念になっていらっしゃるようなことは、現実論としては起こり得ないようなシステムをつくってまいります。

藤田(一)委員 そうしますと、さっき刑務官の方の負担率のお話をちょっと伺いましたけれども、実際に何か不測の事態が起きたときに、それに対応する刑務官の方々の数、つまり対応するための人手というものが、民間事務従事者の方はやらないわけですから、そういったときにどれだけの対応がきちっとできるのかという問題もちょっとあるのではないかなという心配が一つあります。

 それから、時間がありませんからまとめていろいろお尋ねをいたしますけれども、今局長がお触れになった指揮命令の話で、具体的な話として、委託事務従事者の使用者というのは当然にして受託者ということになって、刑務所長ではないわけであります。そうなったときに、委託事務従事者の人たちは、職員である刑務官の指揮命令下に入るのか、それとも受託者の指揮命令下に入るのかという問題が出てくると思いますけれども、この辺の御説明をお願いしたいと思います。

横田政府参考人 まず、刑務官の数は大丈夫なのかということなんですけれども、確かに民間に委託する事務というのは、これは限定をしているわけで、それについては当然民間にやっていただくわけです。それに伴う、それを十分に担保する、あるいは民間でし切れない部分については、これは当然刑務官が行うわけですので、それについては、個々のPFI刑務所事業ごとに具体的に私どもの方で細かくその業務の内容等を勘案して数を出しておりますので、決して、国の職員が不足することによって、民間の受託者の従業者の業務の執行が十分でなくなる、あるいは不適切になってしまうというようなことはないと考えております。

 それからもう一点、指揮命令のことでございますけれども、これは今委員もおっしゃいましたように、あくまでも民間の職員はPFI事業者の職員でございますので、指揮命令関係はそのPFI事業者と民間職員との関係でございまして、国の方、つまり刑務所長はPFI事業者に必要な事項を指示する。これは契約上もございますし、それから特区法上のこともございますけれども、いずれにしても、指示をして、後はその指示に従って、PFI事業者の総括業務責任者という者がございますけれども、この人が具体的に従業者である民間職員に個別の指揮命令をするということでございます。

藤田(一)委員 今、指揮命令の話で、直接の指揮命令というものは全部受託者が行うんだというお話なんですね。建前は多分そうだと思うし、そうしかならないんですよね。法律的にもならないんだと思うんですけれども、しかし、実際の業務というのはやはり混然一体としてやっているということなんだと思うんですね。

 いろいろな場面というのが、全く独立したところで業務をやっているならば、それはそれで問題はないかもしれませんけれども、刑務官の補助的業務という形で動いているときには、やはり混然一体となって仕事をしている。そのときにどういう事態が起きるかわからないし、当然、刑務官が委託事務従事者の人に対して直接指示を出すということは避けられないことだというふうに思うんですね。この辺の整理がとても難しいのではないかなというふうに思います。明確な区分をしていくということが非常に難しいのではないかというふうに思いまして、その整理はやはり要るんじゃないかなと思っています。

 法的な規制もあるからだと思いますけれども、先ほど局長もおっしゃっていましたけれども、五項の特定行刑施設長による排除命令の問題であるとか、これは受託者に対してきちっと行うというふうになっていますし、それから人権教育の問題、これも参議院の御答弁ですけれども、業務要求水準書で要求して受託者と共同で行うというような形でやはりされているわけです。

 そういうところでは気を使っていらっしゃるわけですけれども、逆に、そういうことについて気にしていると現実の仕事が動かないという部分もなきにしもあらずという、それは、実際に警備の仕事をしているところでそういうことも起こり得るのではないかなというふうに私はちょっと心配をしています。

 それで、委託事務従事者の方々の位置づけというか、姿というのがなかなか見えてこないものですから、ちょっと細かいことをぱっぱっと伺いたいと思うんです。

 例えば、委託事務従事者の人が、何か業務上、仕事上改善をしなければいけない点があるんじゃないかとか、あるいは苦情ということもあるかもしれません。そういうことは受託者に言うのか、所長に言うのか、この点はどうなのか。

 あるいは、先ほど、委託事務従事者の行為については公務執行妨害が認められているということで申し上げましたけれども、それであれば、委託事務従事者の行為というのは国家賠償の対象になるのかどうかということ。

 あるいは、委託事務従事者が、これは一般企業でもこういう派遣とか委託のときに特に問題になると思いますけれども、内部告発と守秘義務の関係の問題は、どう担保され、保護されていくのかというような問題。

 あるいは、委託事務従事者というのは当然民間人でありますから、労働二権、団結権、団体交渉権、こういうものは付与されるのかどうか。

 こんな点について、ざっとお尋ねをいたしましたので、お答えいただければと思います。

横田政府参考人 簡潔にお答えさせていただきます。

 まず、混然一体ということですが、確かに、民間の従業者と国の職員である刑務官が、場面によっては、混然一体という言葉がいいのかどうかわかりませんけれども、とにかく、一緒の場所で一緒に仕事をしている、そういう場面が生ずること、これは当然ございます。

 しかし、その場合でも、あくまでも、民間委託を受けた者、そこの従業者が行える事務というのは限定されていますし、それから刑務官が行わなければならない行為もまた限定されるわけで、当然にそこらあたりの峻別は必要です。

 それにつきましては、それぞれの事務の特性に応じた詳細なマニュアルといいますか、そういうものをつくりまして、いずれにいたしましても、そこのあたりの区別がわからないとかで混乱するといったことのないような措置は十分にとる考えでおります。

 それから、苦情などはどうするのかということですけれども、これは、当然民間の受託者の従業者が何らかの苦情すべきことを感じた場合には、上司といいますか、使用者であるPFI事業者あるいは総括業務責任者等の上司にまず言うのが普通の形ではないかなというふうに思っています。

 一方、いわゆる内部告発の問題があり得るわけですけれども、これについては、まだ施行されておりませんけれども、何といいましたか、内部告発者、公益通報者保護法のあれがありますけれども、当然その法律の適用を受けるわけですし、それは可能であることは当然であります。

 それから、国賠の対象になるのかどうかということでございますけれども、これにつきましても、国家賠償法の解釈の問題に絡んでまいりますけれども、結論的に言うならば、委託事務従事者の行為につきましては国家賠償法の適用はあると考えております。

 それから、団結権の問題でございます。団結権でございますけれども、民間の労働者につきましては労働基本権が認められております。したがって、行刑施設の業務を民間委託する場合における委託先の民間事業者の職員は、当然に団結権等を享有するものというふうに考えております。

藤田(一)委員 細かい点をお尋ねして、いろいろお答えいただいてありがとうございました。

 それから、これは確認で、私の勘違いかもしれないんですけれども、先日のこの委員会の質疑で、雇用拡大につながるのかどうかというような点について、下請、孫請的なこともあり得るというようなニュアンスの御発言があったやに記憶をしているんです。そういうことは到底あり得ないというふうに思っておりますけれども、確認だけさせていただきたいと思います。

横田政府参考人 お答えいたします。

 今回の件でいいますと、事業者の選定に当たりまして、事業者の方から、こういう運営をします、こういうことをやりますという業務の概要というものが出されております。その中に、地域経済への貢献ということが入っておりまして、地域企業の起用、地域雇用、地元産品の購買を推進するというふうなことが入っております。

 したがいまして、これがまさに、今回の落札業者、これからPFI事業を行っていく事業者が約束したことでありますので、当然、これは契約内容になるわけですので、それが履行されるということになります。

藤田(一)委員 いろいろとまだお尋ねをしなければいけない、あるいは明らかにしなければいけない問題がたくさんあるんではないかというふうに思いますけれども、時間が参りました。

 いずれにしても、受刑者による籠絡防止であるとか、人権意識の確立だとか、そのための従事者の質の確保の問題とか、あるいは企業の営利性の追求との兼ね合いの問題だとか、PFI方式といっても整理しなければいけない問題というのが本当にたくさんあるんではないかなというふうに思っておりますので、ぜひ、そういった問題、新しい試みを成功させるためにも、一つ一つきちっと整理をしていっていただきたいというふうに思っています。

 そして、刑務官というのは大変高い職業倫理というものを求められているわけでありますけれども、その割にはなかなか報われない厳しい職業であるというふうにも言えるだろうと思っています。

 今回の措置というのが、受刑者の更生、あるいは円滑な社会復帰を目的とする受刑者の処遇ということに支障が生じないように、十分な対応をしていただきたいということを強くお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

松下委員長 次に、牧野聖修君。

牧野委員 民主党の牧野聖修です。

 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案、その中の監獄法等の特例、私立学校法の特例、そして地域通貨につきまして、三点にわたりまして質問をさせていただきたい、こういうふうに思っております。

 最初に、私が今度のこの法案を手にしたときに一番最初に感じましたのは、PFIの手法によって刑務所の運営形態が変わってくる。いよいよ時代もここまで来ているのかなということも感じたわけでございますが、果たして、変わっていい部分と変わらない方がいい部分と世の中にはあるわけでございまして、私はその点について若干の疑問を感じたんです。

 特に、我が国の国家を構成している要素は、俗に、立憲君主制と議会制民主主義と自由主義経済体制、こんなことを言いますが、そこをすべて貫いている考え方は、法治国家の法治主義ですよね。その法治主義というものが、今度監獄法の一部を改正して民間に一部をゆだねていくということによって、もしかすると、今法案の審議をしているこのことが、将来から今日を振り返ったときに、日本の法治制度というものがぐらつき始めた一番の発端のことになるんではないかな。もし、そういうときが来たら非常に重要なことになりますので、真剣にこのことは話し合っておかなければいけない、こう思ったわけでございます。

 そこで、最初にこの法案を審議するに当たって、採決するに当たって、私は、法務省の覚悟というか、そのことをはっきり聞いておかなければいけないと思うんですよ。

 それで、最近、内閣の中で法務大臣の存在といいますか、今の現政府の中の法務省の存在といいますか、そういうものが非常に薄らいできているような、そういう感じが私はしている。

 きょうは、法務大臣にお越しをいただいてその辺のことをどういうふうに考えているかを聞かせてもらいたい、こう思っておりましたところ、忙しくてこっちには来れないということで、政務官にお越しをいただきまして、でも、政府を代表して先生にお越しいただきましたので、ありがたいと思っていますが、まず、私の素朴な質問に対してどういう見解を持っておられるか、お答えいただきたいと思います。

富田大臣政務官 牧野先生の方から、法務大臣、法務省の存在が薄らいでいるんではないかというお尋ねですが、大臣は法曹出身ではありませんので法律関係には確かにプロではありませんけれども、今治安が大変国民の間でも問題になっております、その治安対策を初めとして、大臣のリーダーシップのもと、法務省は数々の課題に今果敢に挑戦している。

 私は弁護士出身ですけれども、弁護士出身の私から見ましても、法務省一体となって大臣中心に取り組んでいるということは、これはもうここで明言していいというふうに思っております。

牧野委員 歴代の法務大臣の名簿を取り寄せてみました。片山哲さん、吉田茂さん、中村梅吉さん、植木庚子郎さん、田中伊三次さん、小林武治さん、前尾繁三郎さん、倉石忠雄さん、奥野誠亮さん、坂田道太さん、秦野章さん、最近では梶山静六さん、後藤田正晴さん等々のすばらしい重鎮の皆さんのメンバーがここには歴代の法務大臣として並んでいる。

 それから、本会議を開いたとき、大体、内閣総理大臣の隣には歴代、法務、外務、大蔵、農林とずっと座ってきたんですよ。首席に法務大臣がずっと座ってきた。それは法治国家として一番重要な大臣、私は大臣に優劣があるとは思っていないけれども、国家の意思として、政権の意思として、法治国家を法律を中心としてやっていくんだ、法治主義で国家を治めていくんだ、そのあらわれは首席に法務大臣が座っているというところにあると思うんですよ。

 ところが、今は法務大臣は見えない。総理大臣の横には座っていない。そのことを私はいいとか悪いとか言っているんじゃなくて、国家政権の意思として法治国家への強いあれが感じられないということを言いたいんですけれども、その点についてはどうですか。

富田大臣政務官 私の方が答弁にふさわしいのかどうかちょっと疑問なんですが、今の大臣の壇上での序列というのは当選回数とかで総理がお決めになっているというふうに伺っておりますので、南野大臣は参議院出身でもございますし、衆議院で何期も当選を重ねられた大臣がいらっしゃるということを考えると、今の序列で、牧野先生がおっしゃるように軽んじられているというふうには思っておりません。

牧野委員 今の法務大臣が軽んじられているということは私も口が裂けても言えませんので、そういうことは言いませんが、ただ政権の意思として、法治国家をやっていくんだという意思が、今までは営々として内閣総理大臣の隣の首席として法務大臣が座っていた、そこに私は感じるんですけれども、最近は経済閣僚とかいろいろな人たちが前へ出てきて、その意味では国家における法務省あるいは法務大臣の地位というものは完全に低下しているんだろうと私は思うんですよ。

 であるからゆえに、とうとう十年前から、少なくともこの日本の刑務所には、もう満杯で入れなくなってくる、そういう状況がずっと出てきているわけですね。法務省にそれだけの尊敬と強い力とがありましたら、十年前から、こんな問題はPFIに頼らずに国家として解決できるべき、すべき問題なんですよ。私はそのことを言いたいんです。その点については、政務官、どうですか。

富田大臣政務官 その点は、先生と全く同意見であります。

 たしか平成五年に先生と一緒に当選させていただきましたけれども、当時に今の過剰収容の問題というのはもう明確になっていましたので、本来だったら法務省の予算としてきちんとやるべきではなかったかなと政治家としては思いますが、なかなか法務省はそこまでの力が当時からなかった。予算を獲得するという意味でもなかなか厳しいものがありましたけれども、昨年の補正予算等、今過剰収容に対してきちんと予算をつけておりますので、政府の意気込みというのもそこでわかっていただけるというふうに思っております。

牧野委員 私も、一九九三年の選挙で初めて当選をさせてもらった翌九四年、当時一期生でした、当選して九カ月目でございましたけれども、法務政務次官を羽田政権のとき拝命いたしまして、短い期間ではありますが務めさせていただきました。

 あのとき私も当選したばかりの若輩者でしたが、毎週木曜日は官房長官主催の政務次官を中心とした会議がありましたが、官房長官の隣が副官房長官、その隣に、私首席として座らせていただいて、一生懸命仕事をさせていただいた覚えがあります。

 そのときのことを考えますと、私は、法務省は正直言って力が低下している、閣議の中における位置関係も弱くなっている。であるからして、今本当に重要な問題が民間の手をかりなければやっていけないようなところまで来てしまったんだなと思っておりますから、これからも大臣を中心に、私だけじゃなくて一般国民がそういう思いを持っていると思いますので、ぜひ法務省頑張っていただきたい、そのことをお願いしながら、次の質問に入らせていただきます。

 ところで、民間に委託をした場合、法務省としての考え方は、犯罪の抑止力になるのか、あるいは矯正力がその中でさらにアップしていくのか、その点はどういうふうに考えているんですか。

富田大臣政務官 過剰収容の状況はもう先生も御存じだと思いますし、民主党の先生方、特に法務委員の先生方を中心に刑務所の御視察をしていただきました。もうこの過剰収容対策をどうにかしなければならない。また、過剰収容に対応して、当然、刑務官を初めとする職員の負担というのも本当に過重になっております。これを両方何とか解決したいということで、今回民間の方に、PFIを利用して山口県の美祢でやっていただこうというふうになったわけです。

 では、これが犯罪の抑止力としてどうなのか、矯正力としてどうなのかというふうになりますが、矯正関係に、現場で実際に矯正の実務に携わるのはやはり刑務官が中心に行いますので、刑務官や行政施設の長たちが行う本体的な行為の準備行為あるいは事実上の執行行為の部分を民間に委託しようということですから、民間に委託したことによって抑止力あるいは矯正力にすぐ影響が出てくるかといったら、それはちょっと、簡単にはここでは御説明できないんじゃないかなというふうに考えております。

牧野委員 刑務所があるということは、地域にとっては非常に重たいことですね。

 僕は、静岡の小学校、中学校、隣に刑務所があったんですよ。小さいとき、校庭で遊んでいたり学校の帰りには、頭を坊主にした囚人が五、六人、いつも綱で引っ張られて歩いてくる。そこを僕らは毎日見ていたんですよ。それで、運動している横には高い塀があって、その向こうには囚人がいるんだということをずっと知っているわけですね。それは大きくなったら悪いことをしちゃいけないという、やはり子供ながらに抑止になっているんですよ。

 それは正直言って、親しまれていく、明るい、開かれた刑務所なんというのは私の頭の中にない。そんなことを言っているのは迎合し過ぎだね。やはり厳粛とした中で、法律を守らないとこういうところへ入れられちゃうんだ、それが社会をよくしていく約束事なんだ、そういう一種の恐れられて敬遠されるような、やはりそういう厳粛さというものを私は刑務所は持っていてほしいと思います。

 ですから、参議院から既にこちらに送付されてきておりますので結論は見えているとは思いますけれども、私は、若干皆さんと違う見解を持っているんですが、自分の意見だけ言いながら質問をさせてもらいたいと思います。

 政務次官のときに、大臣が予算委員会で抜けられないから、すぐに法務省の地下にある大会議室へ来てくれということで行きましたよ。法務省得意の大会同というものですね。

 大臣にかわって訓辞を言ってくれということで原稿を渡されて、その場へ行ったとき、私は、静かで非常に紳士的な雰囲気だったんですけれども、何とも言えない圧力を感じました。そのとき、演壇へ行くとき、一瞬ちゅうちょするような気迫を感じた。昔の言葉で言うと、殺気みたいなものを感じたんですね。ところが、皆さんは紳士で静かなんですよ。

 それで、僕は大臣訓話をたしか朗読して引き下がってきて、でも、あのときの印象は、とても言葉では言いあらわすことのできない強いものだったものですから、法務省の方に聞いたら、ふだん、武器を持たないで囚人の中に入っていって、指導をしたり、生活をしている。だから、普通の人とは違った人格と精神力を持っていないと、その仕事はできないということを言われまして、私は、あのときに感じた無言の圧力というかその強さを、本当に、ああ、そういうことなんだということで理解した。

 そして、たまたま、EUか何かの代表が日本へ来て、弁護士の何か解禁のことでお願いに来たとき、余談で話しに来たときに、日本の刑務所における刑務官の仕事ぶりは、これは法曹界では一つの文化だと言われていますよということを聞いて、僕は本当にあのとき、日本の法務政務次官としてうれしかったんですよ。それは、ただ単に、あの中に入っていって、威張って武器を持ってやっているというのと日本の刑務官は違いまして、人格と精神力によって中をちゃんと指導していく、そういう物すごい、民間人には考えられないような精神的訓練をしながらやっているんですよ。

 それから、もう一つ僕が言いたいのは、私のおやじは八百屋で、私も八百屋をやったんだけれども、毎日端正な奥さんがずっと買いに来てくれた。ある日、その人が刑務所で働いているというのを聞いたんですよ。それは、業者が不始末をしたから八百屋さんをかえたいから、おたくでやってくれないかと言われたんです。それで、私どもは刑務所へ野菜とか果物を持っていく仕事をそのとき受けたんです。

 そのとき以来、その奥さんはうちに買いに来なかったんですよ。なぜかと聞いたんです。そうしたら、刑務所で働いている者が毎日そこでお世話になる取引業者のお宅に物を買いに行っていたら、何かあったときに私は疑われるし、それでは日本の法治国家としての基礎が揺らぎますから、牧野さんのお宅へ行きたいけれども行かないと言ったんですよ。

 僕はそのとき、ああ、法治国家を根底で支えている人たちの生き方というのはこういうことだなと思ったんですよ。そこにやはり尊敬すべき生き方というのがあると思う。

 何ですか、今度のは。一年の経験があれば、それができるんですか。一年以上の経験があれば、そのことができるようになると。さっき矯正局長は、重大なことについては国の職員がやるので、民間委託の人に任せないからいいんだと言うけれども、もらった資料を見れば、百人のうち、処遇部、九十五人が国家公務員、国の職員に対して、五十九人が民間委託でしょう。作業部は、五人の公務員に対して、民間十六人でしょう。そうすると、百人対七十五人なんです。これはかなり入っていますよ。本当にこれで刑務所の中のあれができるんですか。

横田政府参考人 お答えいたします。

 今の御質問ですが、基本的には、法務省としては、この美祢社会復帰促進センターにおいて必要とされる職員について、そのように想定しているということでございまして、具体的な問題としましては、今後、関係当局でまた協議をしていくことになります。

 相対でいいますと、先生、資料をお持ちだと思いますが、民間の職員が合計で百十六人という数字が出ているわけですけれども、これは、PFI事業として民間に委託する業務について、国の職員で行うとすれば、それは百十六人分に相当する、そういう趣旨でございます。

牧野委員 今の説明で了解しました。一部誤解しておりましたから、あれですが、いずれにいたしましても、私が言いたいのは、一年以上の経験のあるぐらいな人が刑務所の中に入って国の刑務官と同じような仕事をできるとはとても思えないので、矯正局長、その点は失敗のないように、真剣にそこは取り組んでもらいたい、こういうふうに思います。

 それから、よく、ギャング映画を見ると、刑務所の中にいる囚人の方が看守より威張っている映画が多いんですよ。それはなぜかというと、裏で手を回しているわけですね。そこで働いている人の家族とかいろいろな人がおどかされているから、刑務所の中で力関係が逆になっている。

 僕が言いたいのは、さっき言ったように、刑務官の人は、本当にふだん近所づき合いもなるべくしないで、そういうことのないように、自分の家族の中から弱みにつけ込まれる余地を出さないようにと苦労しているわけでしょう。それは、民間の人は毎日のように外で同じようなことをしているわけだ。その人たちは、どこにどういうことがあるかわからない。いつか知らないうちに、それは魔の手が及ぶのは当たり前なんですよ。そういうことのないように、ぜひお願いをしたい。

 それからもう一度、聞かずもがなのことを言わせてもらいますけれども、午前中の参考人質疑の中で海渡さんからいみじくもありましたけれども、今度の法案は、相反する価値観がぶつかっているね。そうでしょう。

 法務省の方は、そういう犯罪を抑えて囚人とかそういうものをできるだけなくしたい、少なくしたいということですよ。地域活性化だったら、できるだけ最終的にはそこへ来る人が多い方がいいんですよ。そうでしょう。

 今度は二千人の施設にすると言っているわけでしょう。千人から、既に次は、もう二千人の施設にするんだという話が出ているわけですよ。ということは、さらに大きくして、地域の活性化のために何とかこの刑務所という制度を利用したいというのがありありじゃないですか。そうでしょう。

 そのことと、法務省の基本的な価値観とは全く逆さでぶつかり合っている。それをこの法案では一緒くたに解決しようとしているところに私は無理があると思っている。しかし、ここまで来ている話だから、後は、その問題をクリアしていくように、本当に現場で真剣にやらないと私はできないと思っているので、そのことを矯正局長には心からお願いしておきます。

 それから、一つ、この地域は、山口県は昔から教育の盛んなところだね。河村文部大臣の地元でもあるし、昔、何とかという文部大臣が出たところですね。大学法案のところで頑張った、高見三郎さんという文部大臣が出た地域でもありますね。ですから、教育熱心なところだと思うんです。

 刑務所を持ってきて、それでもって地域活性化に資するんだという考え方が、僕は子供に影響を与えないはずはないと思うんですね。病院とか工場を誘致するのとわけが違うんですよ。少なからずとも、私は、地域の住民に何らかの精神的な影響はあるだろうし、子供たちにもその考え方とかその生き方は必ず悪い影響が出ると思うんですよ。その点については、どういうふうに考えますか。

横田政府参考人 そのことなんですが、これはかなり抽象的なお答えになりますけれども、行刑とか矯正をどのように見るか、刑務所という施設をどのようなものと考えるかのお考えの違いではないかなというふうに私は思っております。

 私ども、やはり矯正というものにつきましては、これは確かに、犯罪を犯した者に対する行為、刑罰、刑罰執行、違法行為に対する制裁行為、サンクションとしての刑罰を執行する場であります。したがって、そこで、いろいろな意味での先ほど先生おっしゃったような厳しさとか、そういうものをもちろん要求されるでしょうし、規律も必要です。

 しかし、その一方で、犯罪を犯した者とはいえ、それはいろいろな事情で犯罪を犯しているわけでして、その人たちはいずれ社会に帰るわけですから、施設の中できちんと矯正教育というものを行って、そしてまた作業などによって生活していく手段というものを身につけさせて、そしてやはり社会に戻していく、どう言ったらいいんでしょうか、そういう人間の再生の場だというふうな考え方をしております。

 したがって、そのようなものだというふうに考えるならば、それは決して刑務所の存在が社会に対して悪影響を与えるものではないというふうに私は考えております、失礼ですけれども。

牧野委員 その辺は私と違うね。長期に入っていく人とかいろいろな人が、その中でたまには民間とかそういう人と接触したい、そういうことならそれはいいと思う。今度の場合には初犯でしょう。軽い人でしょう。その人たちはその短い期間ぐらい静かに自分を省みる、そういう状況があって私はいいと思うんですよ。そういうふうなことを目的とした刑務所だったら、それは民間が行ってわいわいしない方がいい。静かに反省してもらって、一刻も早く反省してやはり社会へ復帰していく、そういうことを進めてやるのが法の執行をする者の温かさだと私は思うんです。

 いろいろな問題がありますが、その点をよく考えていただいて、これからぜひ、運営もされると思いますが、もう一度最初に戻りますけれども、もしかすると法治国家の一角がきょうを境に崩れていく可能性もないとは言えないので、意識してこの運営に当たってもらいたいということを申し添えて、次の質問に入らせていただきます。

 簡単に質問をいたしますので、答えていただければいいと思います。私立学校法の特例の件について質問させてもらいます。

 公私協力学校の授業料について、北九州市と野田市のケースについて、現在、幾らぐらいの授業料を予定しているのか、わかったら教えてほしいと思います。

 それから、これだけの公的資金を提供することになっているわけですから、私立学校の授業料より安くなるのは当然だと私は思っているんですが、県立で月額九千円、私立で四万円という状況でございます。授業料が高過ぎては一部の人しかこの制度を利用できないことになりますので、多くの人が利用できる授業料の設定をお願いしたいと思いますが、その点についてはどういうふうになっているか、お答えください。

下村大臣政務官 お答えさせていただきたいと思います。

 現在のところ、二カ所において、授業料等はまだ全く決まってございません。

 それから、先生の御指摘でございまして、当然、私立学校より高くなっては、地域の方々の何のための公私協力学校かということになるわけでございますし、また、今回の設定においては、毎年度の授業料等の額については、必ず地方の自治体の長の認可を通じて行うということで、チェックが入るということでございます。

 また、授業料そのものが不足をするという場合においては、個々の特区地方公共団体がその不足分を補わなければならないということになっておりますので、そのような観点から、適正な授業料水準の確保を図っていくことになるかと思います。

牧野委員 今のことは納得しましたので、またよろしくお願いします。

 それから、二点目ですけれども、教育は百年の大計とよく言われますので、簡単に一つ一つの政策の評価を一年とか二年の短いスパンの中で決めていくというのは、私は問題があると思いますね。

 今度の場合も、株式会社、NPOなんかでつくった公私協力学校、これも高等学校の場合には、一年から三年、卒業した段階で初めてそのことがよかったかどうかというのは見えると私は思うんですよ。だから、それを簡単に評価して、これをいとも簡単に全国展開をしていけば、それがいいというふうなことは、私はもう少し慎重に考えてほしいなという立場なんです。

 悪い言い方をすると、国家百年の大計じゃなくて、最近の文科省は国家三年の大計だ、そういう悪口を言う人がいるんですよ、私もそう言っていますけれども。ぜひ拙速を避けてほしいと思いますが、その点、どうでしょう。

下村大臣政務官 御指摘のように、構造改革特区は、本来、特段の問題がなければできるだけ速やかに全国展開をすべきものであるわけでございますが、御指摘のように、教育におきましては、高等学校は卒業に三年かかるということでございまして、教育成果をきちっと一方でやはり実証を行って、そして、学校の卒業生がどういうふうな状況になったかということもあわせて把握をしながら、この公私協力学校制度の全国展開ということを、その教育の特性とあわせて考えていくことは御指摘のとおりだというふうに考えております。

牧野委員 答弁ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。

 村上大臣には地域通貨のことで質問通告をさせていただきましたが、この間、地域再生の法案のときに私の考え方も言わせていただきましたし、大臣の気持ちもあのとき聞かせていただきましたので、期待をしております。

 本当はもっと細かいところをいろいろと議論させてもらいたいと思いましたが、また後日改めてお時間をいただくことにして、要望だけさせていただいて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

松下委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

松下委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、構造改革特別区域法の一部改正案に対し、反対の討論を行います。

 初めに、監獄法等の特例についてです。

 今回の特例による民間委託の刑務所業務は、従来、法務省が公権力と一体不可分のものとして民間に移管できない事務事業としてきたものです。こうした事務をなし崩しに委託することは、国の責任を後退させるものと言わざるを得ません。

 今回の大幅な業務委託は、いわゆるPFI刑務所と表裏一体です。官から民へを標榜する小泉内閣のもとでのPFI刑務所や民間委託の拡大は、民営化への第一歩です。

 次に、私立学校法の特例についてであります。

 特例によって設けられる公私協力学校法人は、学校運営を株式会社等にゆだねるものであります。株式会社の目的は、利潤の追求、株主利益の追求であり、公的サービスの理念とは相入れません。だからこそ、教育基本法第六条では「法律に定める学校は、公の性質をもつもの」と規定しているのであります。

 今回の高校、幼稚園への公設民営方式導入は、義務教育への導入の布石となることを指摘し、討論を終わります。

松下委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

松下委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、構造改革特別区域法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松下委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

松下委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、山本拓君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。須藤浩君。

須藤委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し趣旨の説明といたします。

    構造改革特別区域法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の事項の実施のため、適切な措置を講ずべきである。

 一 被収容者の人権の保障に資するため、法案第十一条第一項各号の事務の内容を具体的に明示するとともに、今後における行刑施設の事業の民間開放に係る特例措置の検討に当たっては、実力行使を伴う業務や被収容者の権利を制限し、義務を課する業務は刑務官が実施すべきとの観点に立って、真に公務員が実施しなければならないものか民間に開放できるものか十分精査のうえ対処すること。

 二 刑務所で事務を民間委託するに当たっては、委託事務従事者に対する人権教育の徹底を図るとともに、刑務所長等の裁量によって受刑者等の人権が不必要に制約されないよう十分に配慮すること。

   また、受刑者等の個人情報の保護に万全を期すること。

 三 矯正処遇の充実を図る行刑制度の抜本的な改革がなされつつある現状にかんがみ、刑務所での事務の民間委託に伴う人員の再配置は、受刑者の改善更生に資することを基本として行うこと。

 四 民間事業者の選定に当たっては、価格以外の要素も十分考慮し、被収容者に対する処遇の質を低下させないこと。また、適正に業務が実施されるよう、刑事施設視察委員会を活用するなど、履行状況の確認を行うこと。

 五 強制労働禁止条約の趣旨を十分踏まえ、刑務作業に係る業務を適正に実施すること。

 六 地方公共団体が公私協力学校を設置するに当たっては、ひとしく能力に応じて教育を受ける機会を保障する国及び地方公共団体の責務を踏まえ、授業料負担等の経済的な面、あるいは地理的な面等の教育条件において生徒及び幼稚園児が不利益を被らないよう十分配慮すること。

 七 公私協力学校が公の財産を用いることにかんがみ、策定される公私協力基本計画により、協力学校法人の指定を厳格に行い、かつ、公私協力学校の運営を継続的かつ安定的に行うことを担保するとともに、指定された協力学校法人に対して当該指定をなした地方公共団体の長が当該学校の運営について適切な監督を行うことができるようにすること。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

松下委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松下委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。村上国務大臣。

村上国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法案の実施に努めてまいりたいと考えております。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

松下委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

松下委員長 次回は、来る十日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十三分散会


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