衆議院

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第4号 平成17年10月19日(水曜日)

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平成十七年十月十九日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 佐藤 剛男君

   理事 河本 三郎君 理事 戸井田 徹君

   理事 西村 康稔君 理事 山本  拓君

   理事 吉川 貴盛君 理事 泉  健太君

   理事 大島  敦君 理事 田端 正広君

      赤澤 亮正君    江渡 聡徳君

      遠藤 利明君    遠藤 宣彦君

      小渕 優子君    近江屋信広君

      木原 誠二君    木村  勉君

      佐藤  錬君    土屋 品子君

      中森ふくよ君    宮澤 洋一君

      盛山 正仁君    山内 康一君

      若宮 健嗣君    市村浩一郎君

      大畠 章宏君    川内 博史君

      小宮山洋子君    鉢呂 吉雄君

      太田 昭宏君    吉井 英勝君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 村田 吉隆君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   竹中 平蔵君

   国務大臣         村上誠一郎君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)   棚橋 泰文君

   内閣府大臣政務官     江渡 聡徳君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中藤  泉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山浦 耕志君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   榊  正剛君

   政府参考人

   (内閣府国民生活局長)  田口 義明君

   政府参考人

   (内閣府遺棄化学兵器処理担当室長)        高松  明君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         齊藤  登君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡島 敦子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           黒川 達夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房参事官)           藤井  充君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           伊地知俊一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        近藤 賢二君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      安達 健祐君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     広瀬 研吉君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            鈴木 正徳君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房総括審議官)         鈴木 久泰君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  梅田 春実君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長代理)          鈴木 篤之君

   参考人

   (食品安全委員会委員長) 寺田 雅昭君

   参考人

   (食品安全委員会プリオン専門調査会座長)     吉川 泰弘君

   内閣委員会専門員     堤  貞雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十九日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     近江屋信広君

  桜井 郁三君     遠藤 利明君

  土井  亨君     盛山 正仁君

同日

 辞任         補欠選任

  遠藤 利明君     桜井 郁三君

  近江屋信広君     若宮 健嗣君

  盛山 正仁君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  山内 康一君     土井  亨君

  若宮 健嗣君     小野 次郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、参考人として食品安全委員会委員長寺田雅昭君、食品安全委員会プリオン専門調査会座長吉川泰弘君及び原子力安全委員会委員長代理鈴木篤之君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官中藤泉君、山浦耕志君、内閣府政策統括官榊正剛君、国民生活局長田口義明君、食品安全委員会事務局長齊藤登君、大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長高松明君、外務省大臣官房参事官梅田邦夫君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、厚生労働省大臣官房審議官岡島敦子君、黒川達夫君、大臣官房参事官藤井充君、農林水産省大臣官房参事官伊地知俊一君、資源エネルギー庁資源・燃料部長近藤賢二君、電力・ガス事業部長安達健祐君、原子力安全・保安院長広瀬研吉君、中小企業庁事業環境部長鈴木正徳君、国土交通省大臣官房総括審議官鈴木久泰君及び鉄道局長梅田春実君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田昭宏君。

太田(昭)委員 おはようございます。

 最近続発しているエアガンの発砲事件、きのうもあったようでありますけれども、これに対しまして、十月十一日に警察庁から改造エアガンに対する取り締まりの強化策について通達を出したということでございます。私は、この通達を本当にしっかり徹底する、こういう問題が起きたそのときにがちっと手を打つことが非常に大事だというふうに思っておりまして、まず通達をしっかり徹底して、万全な体制をさらに強化するということを、国家公安委員長の方からさらに指令を出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

村田国務大臣 改造エアガンによりまして、通りすがりあるいは追いすがって対向車両等に発砲するという事件が相次ぎまして、その意味で、警察庁におきまして、今委員の御指摘のように十月十一日に通達を出しまして、取り締まりを強化するようにという指示を発出したところでございます。

 内容は、検挙に努めるということはもちろんでございますが、その場合に、改造エアガンあるいは部品の入手経路についても解明を図ることということでございますし、それ以外にサイバーパトロール、インターネットを通じましていろいろな改造したエアガンの販売をしたり、あるいは部品を売ったりなんかする、そういうようなサイトがあるようでございますので、それについてもしっかりと見張るように、こういう指示の内容でございまして、住民を不安に陥れる改造ガンによる事件が続発しないように、なお一層努力をして検挙、取り締まりに努めたいと思っております。

太田(昭)委員 私がさらにそうしたことのメッセージを発してほしいと言ったのは、十一日のその通達の後に、十二日にも、ヤフーが安全性の確認できないエアガンの出品を自主規制するということを発表したということがあるものですから、繰り返しとは申しませんが、何回かそういうことのメッセージを発するということが私は大事だというふうに思っております。

 同時に、エアガン自体は違反ではないわけでありますけれども、青少年の保護育成関係の条例などによって、販売店への指導や取り締まりなどを強化するべきだと私は思います。エアガンは危険であるということを社会全体がよく認識していく、そういうことが取り締まりと同時に私は大事だと思いますが、これについての取り組みをお願いしたいと思います。

村田国務大臣 玩具でありますエアガン自体は、所持をすることも違法ではないわけでございますけれども、使い方によっては大変危険なケース、危険な事態を招きかねないということもあるわけでございます。

 国家公安委員会といたしましても、一つは、エアガンによる事件、事故の未然防止に努めるということのほかに、業界団体も自主的に、これは経済産業省の担当になるわけでございますが、改造については、日本遊戯銃協同組合というのがこういうもので、改造はいけませんよというようなことを、自主規制したりなどいたしております。経済産業省あるいは関連の団体とも協力し合いながら、あるいは学校にも知らせまして、これは大阪府警が保護者の皆さんへというので、子供たちにエアガンを持っているお子さんはいませんかとか、そういうようなことを保護者に広報しているとか、最近の事件の続発を踏まえまして、警察も、関連業界、プロバイダーも含めてでございますけれども、一緒になって事故の再発防止に一生懸命努力してまいりたいというふうに思っております。

太田(昭)委員 町を歩きますと、非常に二年ほど前まではピッキングが多かったんですね。それで、我々対応しなくちゃいけないと、私もその乗り出した一人でありましたし、今荒川区長になっております西川太一郎先生などもそうだったんですが、一生懸命これを推進し、政府も推進してピッキング対策ということで法制化をいたしました。

 最近ちょっとそういう話を聞かないなということで、この法律が効いたのかどうかとか、このピッキングというのが一体どういうことになっているのかというようなことは、日中関係の中でも私は話題にしたことがあったりして、大事なことでありますから、この辺の状況、そしてまた法律が効いたのかどうかというピッキングの現状について報告をお願いしたいと思います。

村田国務大臣 今の委員が御指摘なさいました特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律ということで、ピッキングが大変はやりまして、この委員会でこうした法律を成立させていただきましたけれども、十五年の九月一日にこの法律が施行されたわけでございます。

 ピッキングとかドリルサムターン回しによる侵入窃盗とかほかにいろいろあるわけでございますが、ピッキングだけ見ますと、平成十四年には認知件数だけ見まして一万九千百二十一件。それから平成十五年、これは九月から施行ですから途中からですが、それでも前年比で九千七百七十件、五一・一%減少しまして、九千三百五十一件の認知件数。平成十六年になりますと、さらに減りまして四千三百五十件。

 平成十四年の一万九千件から四千件台に落ちたということであります、ピッキングだけで見まして。だから、この法律の効果というのは相当なものであったというふうに私ども考えているわけでございまして、委員の皆さん方の御努力に対して心から敬意を表したいというふうに思っております。

 ただ、この侵入盗もやや全般的に減っております。これは要するに、街頭犯罪抑止ということでパトロールをふやしたりなんかもしましたし、今のピッキング等の減った数字ももちろん入っているわけでございますが、全体的に侵入犯罪というものも減らしていかなきゃいけないというこの情勢の中で、なお警察庁を督励して、犯罪の減少に努力をしていきたいというふうに思っております。

太田(昭)委員 きょうは竹中大臣にも出席をいただいているわけですが、選挙中もマイクを握ってお話をしたことがありまして、全体的には、確かに景気の上昇ということはあるし、これは足取りもかなりかたくなってきていると私は思います。

 しかし、やはり中小企業ということについては非常にまだら模様でもありますし、またそのまだら模様の中にも、中国に行った物づくりというものが、今度は逆に質の高いものは戻ってくるというようなことの現象があって、そこをバックアップしなくちゃならない。一つ一つ、そういうことのさま変わりが年ごとに違ってきているという様相があろうというふうに思います。

 私は、ここのところはぜひとも、中小企業の現状把握というものは一体どういうものであるのか、まず竹中大臣に認識を伺いたいし、これは質問通告もしておりませんが、私は、日本という国というもの、思想的な国柄という問題ではありませんで、強い者が引っ張っていくというトップランナー的な競争原理社会ということで、トップランナーはもっと伸ばすということは必要でありましょう。

 しかし、日本は、どちらかというと中小企業や、もっと一人一人の個人ということからいきまして、教育力が非常にある。そこのところの膨らみというものが日本の社会で一番の力であり、エンジンであった。トップランナーがエンジンというよりも、中小企業や、そしてそこを担う一人一人の日本人の教育というものを踏まえた人間力というものがあって、そこを膨らませていくという日本の社会にしていかなくてはいけないという、これからの日本の社会をどう牽引するのかという観点からいっても、この中小企業ということは私は非常に大事な観点ではないかというふうに思っております。

 竹中大臣は、どちらかというと、マスコミによりますと、トップランナーを伸ばして競争原理でという、アメリカナイズというようなことを言われるわけですが、その辺の弁明もあるでしょうから、そういうことも含めて、どういう国にしたらいいかということの中小企業を中心にした位置づけ、方向性、そして現在の中小企業の現況についての認識をお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 弁明の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 本当に、太田委員の中小企業に対する、及び生活者に対する熱い思い、熱意、そのような点についても常々敬意を表しているところでございます。

 二つお尋ねがございましたけれども、後の方の、日本全体を本当にどのようにしていくのかという観点から、基本的な考え方でございますが、これも以前委員に申し上げたことがあるかもしれませんが、私自身、実は地方都市の、中小企業ではなくて零細商店を経営している父親、母親に育てられて、そういう普通に商売をしている方々が普通に子供を教育して、そういう中で日本全体がこれだけ経済的にも繁栄して、そして本当に世界の中でもまれに見る住みやすさといいますか安全、そういうものを実現した国であると思っています。したがいまして、日本のよさ、強さというのはまさにそういう点にあるわけで、決して一部の人たちが頑張って経済社会をよくすることはできません。

 日本という社会は、一億を超えている人口を持っている。先進工業国の中で人口が一億を超えるというような大きな国は、日本とアメリカしかありません。そういう一億を超える五百兆経済を一部の企業、一部の分野でリードするということは、これはもう絶対あり得ないわけで、まさに、皆さん一人一人が頑張って、そして一人一人がよい成果を出して、そして同時に生活水準も享受していく、そういうような社会であらなければならないと、心に強く、私自身そのように思っております。

 そうした中で、政府の中では当然のことながらいろいろな部署があります。私はたまたまマクロ経済を見る部署であった。中小企業を見る経済産業省、中小企業庁、そして農林水産省、それぞれの部署がありますので、我々が景気の報告を行います月例経済報告におきましては、当然のことながら日本全体の動向、マクロ的な動向を御報告させていただいているわけでございます。

 実は、二番目の中小企業の現状把握の点に入ってまいりますけれども、先般の月例経済報告におきましても、やはり与党の皆様方から、経済の全体の動向に加えて、中小企業と地域の動向をもう少し詳しく報告してくれという御要望をいただきまして、かなりそういうことに時間を割いた報告をさせていただいております。中小企業のデータ等々は経済産業省の方が当然たくさん持っているわけでありまして、各省協力をして、データの提供もいただいて、詳細な報告をさせていただいたところでございます。

 その点、現状認識に関して申し上げますと、マクロ経済といいますか、経済全体は全体として緩やかに回復をして、そして委員も御指摘してくださったように、足取りもしっかりしてきているという面があると思います。やはり、この好調の背景には、企業の業況感の改善が続いて設備投資が増加する。そして、この企業部門の好調さが、ようやくですけれども、雇用の改善を通して個人消費も緩やかに増加するという形で家計にも及ぶようになりつつある。やはりこの足取りをしっかりと確実なものにしていくということが今の重要な課題だと思っております。

 その一方で、中小企業の景況感は、改善しているという、緩やかな改善の方向は見られております。しかし、環境そのものについては、大企業に比べて依然として厳しいものがあるというふうに認識をしております。そして、この後また御質問もあるかもしれませんが、現下の原油価格の高騰等々、仕入れ価格が上昇している。価格転嫁が困難である。原油の価格が上がっているのに消費者物価が上がらない。その点、消費者はそんなに困っていないということがよく言われますけれども、それはしかしとりもなおさず、その中間で利益に苦しんでいる業界群、特に中小企業があるということだと思っております。

 政府としては、こうした経済全体がよくなっているという成果をぜひ中小企業に、地方に浸透させたい。そして、そのために現状をしっかりと把握することが何よりも重要でございますので、先般の月例経済報告で行いましたように、各省よく連携をしまして、しっかりと経済の全体の姿、そして中小企業の姿、地域の姿、落ち度のないようにフォローをしてまいりたいと思っております。

太田(昭)委員 中小企業に大事なのは、まさに資金繰りということだと思います。よく中小企業対策費が一千七百億円で少ないということを商工会、商工会議所の方でおっしゃる方がいらっしゃるんですが、私は、それはいろいろな計算の仕方すべてにかかわるわけですから、そういうことではなくて、むしろこの金融というものが実際に働いているかどうかということが非常に大事で、政府系金融機関がそこをバックアップしてやる、それを受けて仕事をする、そして返していく機能というものの中に非常に大事な要素があるというふうに思っています。全部予算をつけて、差し上げましょうというのではなくて、回転させるまさに潤滑油としての、金融機関というのはそれゆえに大事である。

 政府系金融機関の統合とか整理という問題が今出ているわけですが、現実には、銀行はなかなか中小企業には貸さない。しかし、そこには私は目ききの問題等もあったり、さまざまな問題があるということを認識して、固まった形で、その年ごとにそうした目ききのいる機関をつくったらどうだとかいうようなことを提案したこともあるわけです。

 しかし、この中小企業の金融分野というものは、まさに政府系金融機関の働きというのは極めて大きい。今後の政府の政策金融改革の議論の中で、中小企業政策の柱は中小企業金融であり、民では賄えない部分を公が補完し、中小企業への円滑な資金繰りをしっかり支えるという切り口からの議論というものが私は非常に大事だ。統合するんだとか切るんだとかいうことではない、本来のものに立っての議論が必要であるということで、ぜひともそこを留意していただきたいと思いますが、見解を伺います。

竹中国務大臣 中小企業の活動の中で金融面、それを政府が政府系金融機関という形で支えてきたその功績というのはやはり極めて大きいものがあったというふうに思います。

 先ほど私の個人的なことを少しお話をさせていただきましたが、私の父親のような零細な営業者でも、当時の国民金融公庫からやはり融資を受けて助かった、そのような話はやはり周りからもしょっちゅう聞こえてきたところでございます。

 同時に我々は、これから人口減少社会で、簡素で効率的な政府をつくっていかなければいけない。そのときに、この政策金融機関の改革も行っていかなければいけない、これもまた重要な事実であろうかと思います。そうしないと、簡素で効率的な政府でないと、結局、またその負担、重みは国民にのしかかってくるということに相なろうかと思います。

 そうした観点から、既に平成十四年に経済財政諮問会議で、この政策金融機関の改革についての集中した議論を行っております。その議論を行った上で、実は、平成十六年度末までは民間金融機関が不良債権の集中的な処理をしなければいけない、その間、従来以上にやはり政策金融の役割は大きいということで、具体的な処方せんそのものは、その集中調整期間が終わってから行おうということで、いわば先に延ばしていたわけでございます。それを今、改めてその問題に取り組まなければいけないという状況になっています。

 私自身、やはり中小企業における政策金融の役割は極めて重要であると思っております。そして、諸外国におきましても、政府は何らかの形で中小企業に対してそのような施策を続けてきていると認識をしております。

 ただ、日本の場合、やはり問題なのは、それにしても、数字で見てみますと、政策金融の、これは中小企業だけではなくてすべての政策金融でありますけれども、直接融資の残高がいかにも諸外国に比べて大きくなってしまっている。

 これは日本の数字でございますけれども、GDPの一八%ぐらい政府系金融機関の融資残高がございます。アメリカは当然少ないわけでございますが、イギリスでもこの比率は日本の一八に対して三・六%、ドイツでも三・一%、フランスでも七・五%ということで、この一八%という突出した数字もやはり参考にしながら、本当に政府がやらなければいけないこと、本当に必要なことに政府は特化すべきである、まさに委員おっしゃったように、民の補完に特化すべきであるということであろうかと思っております。

 そうした観点から、我々としては、こういう話をするとマスコミはすぐ組織論にいくわけでありますが、あくまでも機能である。中小企業に対して果たさなければいけない機能、より長期のリスクを完補するための機能、そういう機能をしっかりと把握するということで、実は明日から諮問会議におきましても関係者を呼んだヒアリングを行うことにしております。その中で機能を改めてしっかりと把握をする。

 ちなみに、このヒアリングはオープンに、公開にしておりますので、国民の皆様にもぜひ聞いていただきたい。先生方ももしよろしければ、先生はお忙しいでしょうからスタッフをお送りいただくなり、そういうプロセスもぜひしっかりと踏まえて、納得のいく改革をしたいと思っております。

 いずれにしましても政策金融の改革をぜひとも行わなければなりませんが、その中で政府が果たすべき役割として、やはり中小企業に対する金融というのは当然大きいと思います。これは諸外国においてもやはり重要な役割を果たしている、そういうことを参考にしながら、納得していただけるような改革を進めたいと思っております。

太田(昭)委員 私が一問目で中小企業の日本における位置づけということを言ったのは、諸外国と比べるという前に、日本の中小企業の位置づけ、それから現在の日本の中小企業の置かれている状況、物づくりへの展開、そういう現実というものをしっかり踏まえたり、銀行との関係ということをよく踏まえた上での議論というものをして、足元をしっかりと見た上での議論でこれは対処しなくてはいけないと思いますので、その点はぜひとも、物の考え方の基本のところを踏まえた論議をお願いしたいというふうに思っております。

 一昨日、政府・与党首脳会議で、私は原油価格の高騰について一言申し上げて、いろいろ意見を聞かせていただいたわけです。状況については時間がありませんから申し上げませんが、エネルギー消費削減努力ということが当然必要なんですが、OPEC諸国の余剰生産能力の減少ということがまず一つの大きな原因であります。そういうことからいきますと、この辺の産油国側に働きかけがなされているのかどうかということについては強い働きかけが必要だ、私はこう思いますが、いかがでしょうか。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘のとおりでございまして、一つには、中国やインドを初めといたしまして世界の需要が急速に増大しているということ、もう一方で、OPEC各国に原油の供給余力が非常に少なくなってきている、こういうことがございます。また、アメリカを中心に精製能力に余裕がないといったような構造的な要因がございまして、また最近ではハリケーンの影響とか投機的な動きといった要因から原油価格は高騰しているわけでございます。

 今御指摘のように、中東諸国への働きかけということについて少し絞って申し上げますと、御指摘のとおりの考え方のもとで、私ども、外交ルートを通じまして、増産等の適切な措置を要請しておるところでございます。

 私自身も九月の末に、ラマダンに入ります直前でございます、今ちょうど断食月に入っておりますがその直前に、最大の産油国でございますサウジアラビア、それからOPECの議長国のクウェート、それから我が国への最大原油供給国の一つであるアラブ首長国連邦を回りまして、直接、石油供給能力の増大に向けたアクションをとってほしいという要請をしたところでございます。

 また、我が国は従来から産油国と消費国の対話というのも非常に重視をしておりまして、これを今、国際的には国際エネルギーフォーラム、IEFと呼んでおりますが、そういったところも通じて対話をしております。また、来年の四月にカタールで閣僚ベースの会議もございます。

 さらには、消費国のサイドでの集まりでございますIEAなどの場においても、消費国側も省エネの努力をする、こういったことも含めて働きかけをしておるところでございますし、まさにきょう、APECのエネルギー大臣会合が韓国で開かれております。そこでも、今おっしゃったような点を含めて、産油国に対する増産の要請、それから消費国の省エネ努力、こういったこともしっかりと働きかけていきたい、こんなふうに考えているところでございます。

太田(昭)委員 マクロ的に見まして、竹中大臣、私は一昨日のときも言ったわけですが、一過性ではないし、各国の戦略性がある。ところが、我が国の戦略ということがなかなか見えない。そういうことからいくと、長期のエネルギーということも踏まえた上での戦略性が非常に大事だというように私は思いますが、この原油高に対して政府としてどういう対応をするかという、強い取り組みをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 日本の戦略的な対応、これは全内閣で取り組むべき課題でございますし、とりわけこれは経済産業大臣にエネルギー戦略としてお答えいただかなければいけない問題だと思いますが、当面の短期的な戦略ということについて私の方から申し上げますと、やはり当面、二つのことに注意をしていく必要があると思っております。

 一つは、とりわけトラック輸送業とかトラック業とか、それとか漁業でございますね、エネルギー、ガソリン等への依存度が高い業界で、やはり深刻な影響が出つつあるということであります。その業界の動向に対してしっかりとした対応をしなければいけない、これがやはり当面の対応だと思います。

 これにつきましては、十月四日に、関係閣僚による打ち合わせを行っておりまして、対応の方向性というのを取りまとめております。中小企業については、中小企業庁が特別相談窓口を設置する等々、幾つかの当面の対応を取りまとめておりますので、やはりこれをしっかりと実行していくことが重要だと思っております。

 二つあると申し上げたうちのもう一つは、実は家計への影響でございます。これは当然のことながら、これから冬を迎えて、特に北海道地域等々、灯油への支出ウエートが高い地域について、今までに一万円払っていたものを二万円払うということになりますと、同じものに一万円の追加を払うということになりますと、家計の制約から考えて、何らかの形で中期的には一万円の支出を別のところで減らさなければいけない、そういうメカニズムが生じてしまいます。これはまさに消費、ようやくよい動きが出つつある個人消費にまた悪い動きを、結果をもたらしかねないわけでございます。

 ちょっと理屈をこねて申し上げれば、日本が持っている購買力が、原油の値段が上がったことによって購買力が産油国に移転されてしまう、こういうショックが実は石油危機のときにもあったわけで、これについてはやはり十分注意をしなければいけないと思っております。

 特に八月の原油輸入に対する支払いが月次で一兆円近い金額になっておりまして、こういう状況が続くないしは拡大していくということになりますと、今申し上げた購買力の海外への移転、それによる消費への影響というのはやはり懸念されるところでございますので、この点は来年の経済見通し等々を立てるに当たりましても十二分に配意をして、しっかりと状況を見ながら適切な判断を行っていかなければいけないと思っております。

太田(昭)委員 今、魚の関連とか漁業関連あるいは運送の関連ということで、ぜひとも力を入れていただきたいというふうに思いますし、思わぬところで、はんぺん業者がはんぺんを少し小さくしなくちゃならないみたいな話があったり、おふろ屋さんが非常に困っているというような話があったり、いろいろなことに目配りをきかせた対応というものが必要だというふうに思っております。

 最後になりますが、中小企業への影響と対応、それから、特に冬場を迎えますから、灯油の値段が高くなるということが懸念されますから、灯油の安定供給への対応ということについて、最後にお聞きしたいと思います。

鈴木(正)政府参考人 ただいま委員御指摘の中小企業に対します原油価格上昇の影響でございますけれども、私ども、五月、七月、九月と定期的に調査を行っております。

 九月に行いました調査では、約六割の企業が収益を下げまして、約九割の企業で価格転嫁が困難になっているという調査結果が出ております。また、業種別に見ますと、委員御指摘のとおり、運輸業、漁業、石油製品製造業、プラスチック製品製造業、またクリーニング業、これらの業種に大きな影響が出たところでございます。

 このため、九月二十日でございますけれども、政府系金融機関、また信用保証協会に特別相談窓口を設置いたしましてきめ細かく御相談に応じるとともに、政府系金融機関によりますセーフティーネット融資できめ細かく機動的に今対応させていただいているところでございます。とりわけ運輸業また小売業で運転資金が非常にきつくなっておりまして、これらの業種の方々からの御相談が多いところでございます。

 あわせまして、下請中小企業振興法に基づきます振興基準がございますが、この振興基準におきましては、取引対価は材料費、運送費等の要素を考慮した合理的な算定方法に基づきまして下請事業者と親事業者が協議して決定するということにされております。私ども、この振興基準の周知徹底を図るなど適切な措置を講じていただきたいということで、百七の関係の親事業者団体に対しまして要請文書を発したところでございます。

 私ども、今後も引き続ききめ細かな実態把握が必要と考えておりまして、またしっかりとフォローアップをいたしまして、適切に対応してまいりたいと考えております。(太田(昭)委員「時間になっているから、短く。灯油、灯油」と呼ぶ)

近藤政府参考人 では、手短に御報告をさせていただきます。

 今御指摘のとおり、灯油についてでございますけれども、灯油は非常に国民生活に欠かせない必需品でございます。私どもも非常に関心を持って今対応をしております。

 一言だけ申し上げますと、現時点、十月の初めの段階で、通常の年に比べまして五十万キロリットルほど上回る水準で既に積み上げをしております。そういう意味で、灯油の供給不足ということはない方向でいけるかな、こんなふうに思っておるところでございます。

 また、価格につきましても、私どももいろいろなデータを通じて監視をしておりますし、また消費者、石油業界、行政が一堂に会しまして灯油懇談会というのを開いていろいろと理解を共通にしていく、こういったことをやっているわけでございます。

 いずれにいたしましても、ちゃんと供給する、それから価格をきちっと見ていくといったこと、消費者に理解をしていただく、そういったことを通じまして万全な対策をしていきたい、こんなふうに考えておるところでございます。

太田(昭)委員 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。きょう私は、棚橋大臣の担当していらっしゃる中の原子力政策を中心に質問するようにしたいと思います。

 それで、最初に、これは原子力安全委員長さんの方に伺いたいと思います。

 今、原発はもう随分、二十五年以上だとか三十年以上とか、老朽化してくる中で、これまで日本の原発は多重防護で大丈夫としてきたわけですが、そこには、例えば何かトラブったときにはECCSが作動するとか、これはあくまでもECCSがきちっと正常に動くということが前提です。

 例えば、中国電力島根原発一号機で九月二十一日に、ECCS系の一つで高圧注水ポンプを駆動するタービンの配管付近に貫通孔が、穴があいてしまうとか、それから九九年五月に、私も日本原電の東海第二へ行きましたけれども、ECCSを作動させるときに、低圧炉心注入系であけるべき、いざというときにあけなきゃいけない弁が、あけようと思ったら、当然正常な弁でないとだめなんですが、弁棒が折れてしまっていた問題とか、いざというときに動かないわけですね。

 同じ九九年五月に日本原電第二発電所で、半数の制御棒でガイドローラーが腐食しているというのが見つかりましたけれども、ひび割れによって緊急時に制御棒がうまく動かないということがあり得るという問題が発生しました。

 それから、二〇〇二年八月には、ちょうどこれは東電の不正問題の公表があった日でしたが、私はこの日、東電の福島第一原発三号機の調査に行ったんですが、制御棒を駆動する水圧をかける配管が腐食して穴があいて水が漏れるという問題ですね。だから、制御棒を動かそうと思ったら、水圧をかけて、かからなきゃだめなんですが、穴があいて漏れてしまったら圧力がかからないということになってしまうわけです。さっきの東電福島の場合、結局調べてみたら最後は制御棒配管の八五%が損傷していたというかなり深刻な問題でしたけれども、何よりも昨年八月の美浜原発三号機の配管事故ですね。

 あれは減肉がどんどん進んでいるという問題で、あのとき関電が定期安全レビューを出しておりますが、かつて関電自身が出したものの中にTMIのことを引いていて、二次系といえども大量に漏えいした場合、これはTMI事故にそれでつながったわけですけれども、やはり、安全系が幾つもあって大丈夫と言ってきた、この安全系が正常であっての話で、老朽化によっていろいろな問題が出てくると、原子力の安全というものが本当に脅かされてくるということになってまいります。

 これはほんの一例ですが、三十年たった老朽化した原発も多いわけですから、経年劣化という問題は、原発についての考え方はいろいろあったとしても、この問題というのは国民の安全にとって極めて大きな重要な問題だ、これは安全委員会として全力を挙げてこの問題に取り組んでいただかなきゃいけない問題だと私は思いますが、これを最初に伺います。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 委員お尋ねの件につきましては、私が思いますに二つ重要なポイントがあろうかと思います。

 一点は、今例をいろいろ挙げてくださいましたが、そういう例にもございますように、機器類ですから、運転しているときにいろいろなことが起きて故障ということはあり得るんだと思っています。そういう場合に、やはりそれをできるだけ大きな事故につながらないようにすることが基本でありまして、そのためにはやはり保全計画、運転段階の原子炉の保全計画を今後とも徹底してやっていくということが非常に重要じゃないかと。

 この点は、運転段階の原子炉の安全規制は規制行政庁が担っているわけですが、規制行政庁においても、この八月に「実用発電用原子炉施設における高経年化対策の充実について」というような報告書を出していまして、その中でそのような新たな取り組みも提言されています。そういうことは非常に重要なことの一つであります。

 もう一つは、いろいろな事象、今委員がおっしゃったようなことが起きたときに、それが果たして大きな事故につながる可能性が実際はどのくらいなのかということを、これはできるだけ定量的に把握して、そしてそのリスクの大きさに応じて、保全計画における重点を置くべきところとそうでもないところをきちんと仕分けしていく。

 それを我々はリスク情報を活用した規制と呼んでおりますが、これは安全委員会もそれをぜひやるべしというふうにここ数年言い続けているんですが、でもこれは諸外国で、特にアメリカがそういうことで非常に成果を上げていますので、そういうアメリカ等の先例を勉強しつつ、日本においてもこれをできるだけ進めていくべきではないか、このように思います。

 ありがとうございました。

吉井委員 何か保全計画が立ったら大丈夫みたいな発想になったらこれはまた全然違う話で、それは当然の話だと思っているんです。その当然のことを前提とした上なんですね。

 可能性について考えるのもこれまた当然なんですが、現実にそれが両方ともきちんとなされていない中で関電では五人の方が犠牲になられた。あれも単なる火力発電所と同様というふうに考えてはとんでもない話で、二次系といえどもTMIの問題を持っているんだということは、関電自身がかつて定期安全レビューで書いていたことですから。

 だからこそ私は、安全というものは、今後こうすればいいということじゃなくて、その話は全部当然なんですが、しかし現実はそうじゃないから、やり切らせるということだけじゃなしに、本当に一つ一つの安全チェックが、最初の書類審査だけじゃなしに、きちんと安全委員会としても取り組んでいく方向をやはり考えていかれないことには、国民の安全というものを守っていくことにはつながらないというふうに申し上げておきたいと思います。

 次に保安院の方に、ことし八月十六日に発生した宮城県沖の地震のときに、東北電力や東京電力などでどんなトラブルがあったのか、簡潔にお答えください。

広瀬政府参考人 八月十六日に発生した宮城県沖の地震におきまして、東北電力女川原子力発電所は地震の揺れを感知して三基とも自動停止しました。その後、東北電力において発電所各設備を点検した結果、安全上問題となる損傷は認められないとの報告を受けております。この自動停止による環境への放射能の影響はありませんでした。

 また、現地に常駐しております国の原子力検査官も、プラントのデータに異常がないことを確認するとともに、現場の巡視点検により建屋等に問題がないことを確認しております。

 なお、同発電所内の環境放射能測定センターにおいて希硫酸の漏えい等が発生しましたが、適切に処理された旨、事業者から報告を受けております。

 なお、東京電力の福島第二発電所四号機、福島第一発電所二号機、六号機におきまして、原子炉建屋の使用済み燃料のプールの水面が揺れまして、水面近くに設置してある換気口に流入をし、空調ダクトの継ぎ目から水が滴下したものという報告を受けております。これも環境への影響はございません。

吉井委員 私は、そこのとらえ方が物すごく大事だと思うんです。関電の美浜にしても、その一カ月前に関電でやはり配管減肉が見つかっておっても、割と軽く見ておったんですね。どの問題も、大きな事故が起こる前に予兆となるものはいろいろな形で出てくるんです。

 今、東電の方では、福島では放射能を含む水漏れの話、それから女川の方では希硫酸が漏れたという話です。それ自体はあなたがおっしゃったように本体に直接関係があるように見えないけれども、しかし、最初、地震の日の、これは明らかにされたところでは、S1二百五十に対して二百五十一ガルを観測するほどあったというぐらいだったんですが、しかしその後、解析をされたりすると、S2の方は六百七十三ガルに対して実際には八百八十八ガルというのが九月の分科会でも明らかになってくるなど、これはなかなか深刻な問題なんですね。

 問題は、見かけは確かに大丈夫だ、しかし実は、その見かけとは別に、構造物の破損の状況がどれぐらい進んでいるのかというのは見かけだけじゃわからない部分があるんですね。それをどうチェックするかということが必要なわけであります。

 例えば、外見でわからないものは、大型試験施設装置などで実証試験を行って、可能な限り解明していくということが大事ですね。三十年ほど経た、実際の老朽化した原発の重要な機器類や配管類等、かなり大きなものを実験しようと思ったら、これは多度津の起震台ぐらいしかありません。

 そういうところで、見かけ上の安全とは、大丈夫というのとは別に、きちんと当初設計したものが三十年たってどうなのかとか、これはやはりやっていかないことには、解明しないことには、安全というのは簡単に言える話じゃないので、私は、この点では原発の老朽化というものと巨大地震と重なったときにどうなのか、これは改めてきちんとした解明を安全委員会としても取り組んでいく、このお考えを持っていただくことが大事じゃないかと思うんです。理論解析だけじゃなしに実証ですね。

 その一言だけ、ちょっと安全委員長代理に伺っておきます。

鈴木参考人 お答えを申し上げます。

 確かに、できるだけ実際の機器に近いものを試験してみるということは大事なことだと思うんです。しかしながら、やはり資金といいますか資源にも限りがあって、我々としては、与えられた資源の中で最も適切な実証計画といいますか試験をやっていくというのがやはり現実的なのかなと思っております。

 しかし、試験できないものについても確認が必要ですから、そういうものについてはできるだけ解析等を駆使して、安全をいろいろな角度から確認する、こういうことではないかと思っております。

吉井委員 資源に限りがあるといっても、現に多度津に起震台があるわけなんです。それを使うことによって、実際に理論解析と、そしてそれが実証されるかどうか実験によって確認するということは、安全にとって物すごく大事なことですね。私は、それをやらないことには、日本の原子力政策とか原子力の安全というものは、とても国民の皆さんから信頼されるものにはなっていかないと思うんですよ。私は、そこのところは原子力安全委員会の考え方というものをやはりきちんと改めてもらわないといかぬと思うんです。

 保安院にこの点で伺っておきますが、S2地震というのは実際に起きたら無事では済まない大地震なんですね。これに耐えられる原発としてS2をクリアするようにつくってきたわけですね。これを超えたわけですよね、今度は。見かけ上は大丈夫なように見えても、機器の損傷というのは深いところで進んでいるという可能性も高いわけです。

 だから、この点ではS2までは耐えられるとしたんですが、これを超えたら耐えられないわけですから、保安院としてはどのような検査を実際に保安院としてやってこられたのか。これは保安院の方に伺っておきます。

広瀬政府参考人 先ほどお答え申し上げましたように、今回の地震で東北電力において発電所各設備を点検した結果、安全上問題となる損傷は認められておりません。

 しかし一方、先生御指摘のように、地震時に観測されたデータを分析した結果、女川原子力発電所における揺れは、原子力発電所の耐震設計の際に想定する最大基準地震動を一部の周期で超えていることが判明をいたしました。これを受けまして原子力安全・保安院は、東北電力に対してデータのより詳細な分析、評価を行うよう指示をしたところでございます。

 原子力安全・保安院としましては、今後、東北電力の分析、評価の結果を踏まえて詳細な検討を行うことにより、原子力発電所の耐震安全性確保に万全を期していきたいと考えております。

吉井委員 要するに、保安院としては、現場へ行って目で眺められたかもしれないけれども、検査していないわけですよ。実際に老朽化してきた原発が設計どおりちゃんと巨大地震に耐えられるかどうかというものは、それは、多度津の試験装置がせっかくあるんですから、生かすのが大事だと思うんですね。

 ところが、経済産業省の方は、この多度津については、ここは原子力発電機構、一応国の委託という形でやっておりますが、委託を打ち切るということで、原発の重要な機器類の耐震試験が終わって役目を終えたということで、実は、三十年たったまさにこれからちょうどいい素材があるわけですよ。起震台にかけて、老朽化した原発で巨大地震に耐えられるかどうかという実験をする素材が生まれているときに、これをつぶしてしまおうというわけですね。何でつぶすんだと言ったら、文部省のE―ディフェンスができたからだとか、あるいは、維持費が年十億かかるのは高過ぎるとか、電力の方もそれを負担するのは嫌だとか、経産省が委託を打ち切ったからだということなんです。

 私、本当にまじめに原発の安全ということを考えるならば、E―ディフェンスで置きかえることのできない装置なんですから、もともと目的が違うわけだから、原発の機器類の巨大地震に対するチェックのためにつくっているものですから、これは捨ててしまうんじゃなくて、まさにこういうものを使って、これから老朽化してくる原発について、その重要機器類を、巨大なものを持っていって、巨大といっても分解しないと全部は調べられないんですけれども、やはりこれをきちっと調べるという姿勢を、私はこれは国の方でとるべきだと思うんですが、これは一言で結構ですから、ちょっと時間があるから、簡単に答えてください。

広瀬政府参考人 多度津工学試験所の大型高性能振動台を用いた振動試験につきましては、安全上重要な大型設備のデータの取得を終えましたので、平成十六年度で終了したところです。

 今後は、必ずしも実物大の試験体を用いずとも、他の研究機関の試験設備による小型のモデルを使った振動試験とコンピューター解析によって、地震時の挙動を把握することが可能であると考えております。この実試験と解析の効果的、効率的な組み合わせにより、引き続き原子力発電所の耐震安全性の確保に万全を期してまいります。

吉井委員 今、小型モデルというのを聞いて、委員長、びっくりしはったと思う。

 大型の原発で三十年たって老朽化してきたものを実際の起振動、地震を起こす装置に載せて、構造上あるいは機器の安全上どうなのかということをチェックしなきゃいけないときに、何か分割して新しいもののモデルでもって事足れりと。とんでもない発想だと思うんです。

 そこで、最後に大臣、私、なぜこういうことを聞いてもらったかというと、今度、原子力政策大綱を出したわけですけれども、名前がかつての原子力長計が政策大綱と変わっているだけで、結局、プルトニウムを循環して使うという原発推進の政策は変わらないわけですよ。

 しかし、まさに問われているのは、今まで以上に、プルトニウムの危険ということを考えても、安全対策をもっと真剣に考えなきゃいけないときに、それにかかわるものはどんどん切って捨ててしまう、そんなやり方でいいのかということが問われているときなんです。

 これは、原子力安全委員長として、政策大綱は私はネーミングを変えただけのものだと思うんですけれども、今原子力について考えなきゃいけないのは、考え方はいろいろあっても、この原発の老朽化してくる中、巨大地震が進む中で、どう国民の安全を守るかということをもっと考えたことを大臣として打ち出してもらう必要があると思うんです。最後に大臣に伺って、質問を終わりにしたいと思います。

棚橋国務大臣 お答えをいたします。

 吉井先生も、特に原子力の分野は大変お詳しくて、お世辞抜きで専門家でいらっしゃいますので、今般の原子力政策大綱についても重々御存じの上での御質問をいただきました。

 これは、先生御承知のように、原子力に関する私どものスタンスは、まず安全性が大前提である、この基本原則を絶対に外してはいけない。このスタンスは、先生と思いが共通しているんではないかと思います。

 それで、今般の原子力政策大綱ですが、原子力委員会が、ある意味では、ちょっと言葉が言い過ぎかもしれませんが、独立的あるいは第三者的な立場になって、そして今までのような科学技術庁長官がという形ではなくて、今のような形になって原子力政策大綱を大変熱心な議論の中で決定していただきました。

 今般の原子力政策大綱の中には、国あるいは電気事業者等に一層の安全確保あるいは国民の信頼回復に向けた努力、これが求められているということを現状認識として深く認識した上で、例えば、最新の知見を踏まえた科学的かつ合理的規制の実施、あるいは今お話にございました高経年化対策の充実を含む安全の確保の一層の改良、改善を重視する方針、こういったものを提示しております。

 また、同じように、今先生の問題意識の中でございました、国内外において大きな地震が相次いでおりましたので、そういう観点からも、原子力施設の地震リスクについての国民の関心が高まっていることに留意すべきということも明記させていただきまして、こういった安全の観点からも、原子力政策大綱として中身を充実していただいているんではないかと思っております。

 私どもとしては、これを基本方針として尊重し、と同時に、何よりも安全の確保が大前提である、そしてその大前提をきちんとした上で原子力の研究、開発、利用、これをやっていくというスタンスを大事にしながら頑張ってまいりたいと思います。

吉井委員 時間が参りましたので終わりますけれども、大臣、よくお聞きいただいたように、安全といいながら装置切り捨てというのは逆ですからね。そういうところを含めてきちっとやってもらいたい。

 終わります。

佐藤委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 民主党の市村でございます。

 本日は、五十分いただいて、これから提案と議論をさせていただきたいと思っています。

 何を私が本日提案いたしたいかといいますと、災害に遭われた方が援助されるのは当然、当たり前なんですが、災害に遭われた方々の御家族をどう援助していくか、こういう視点が、日本もないとは言いませんが、非常に欠けている、また、統合的に総括的にそれをやることがないということがあると私は思っています。

 特に、後から詳しく議論しますが、一九九六年航空災害家族援助法というのがアメリカにあるんですが、この法律も参考にしながら、日本における災害に遭われた方の御家族の援助について、きょうは提案をし、議論をさせていただきたい、また、それから派生する問題についても、さまざま議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 なぜ私がこうしたことに関心を持つというか、今取り組んでいるかといいますと、それは、皆さん御存じの、ことしの四月二十五日にJRの福知山線、実は、福知山線といいましても、私たちの地元ではJR宝塚線と呼ばれているところで起きました列車の脱線転覆事故というものがあるわけであります。

 あの電車がとまった駅は私が選挙区としておりましたところの駅でありまして、事故はたまたま選挙区外で起きましたけれども、本当に多くの犠牲者、私の選挙区からもたくさんの犠牲者が出ました。

 私も、毎朝駅に立って皆さんにごあいさつをし、お訴えしてきた人間として、本当に、私を御支援いただいた方がたくさん犠牲になられたというような自覚を大変持っておりまして、その事故現場にも参りまして、最後の方がその場を離れられるまで、その場で事故の現状、ありさまというものを見、また、御遺体が運ばれた安否確認所にも参りまして、さまざまな私ができると思ったことをやってきたということがあります。

 そういうことがありまして、そのときの経験がありまして、きょうのこのような提案と議論をさせていただきたいと思うわけでございます。

 では、そのときに私が何をまず見たかということで、今議題にしたいのは、被害に遭われた御家族への援助なんですね。

 そのときに、私が安否確認所に参りました。安否確認所は、そのときは御遺体の安置所にもなっていました、あの尼崎の体育館です。一部が、地下の部屋が安否確認所として使われて、二階の体育館が御遺体の安置所、検視をし、安置をする場所として使われておったわけでございます。

 そのときに、実は私が事故当日の午後六時ごろに安否確認所に参りましたところ、大変な混乱というよりも、あきらめの気持ちがあるのか、もう本当に安否確認に来た方、御家族の方が大変に憔悴した状態で、時の流れといいますか時の推移を見守るというか、そうせざるを得ない状況に追い込まれているわけですね。

 この御家族の援助を考えるときに、アメリカの法律はそこまで言っていないんですが、私は、実は安否確認のところからもう既に御家族へのケアは始まっている、また、始めなければならない、このように自分の体験から思うわけであります。

 ですから、安否確認ですから、実は、そこに来られた方全員が事故の犠牲者の御家族とは限らないんです。全く関係なく、ああ、よかった、自分の家族は巻き込まれていなかった、関係なかったと、ほっとして帰られる方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうところに来られる方は、やはりかなりの可能性が高く、その方の御家族なり知人が事故に巻き込まれているという方が集まっていらっしゃる。そこに対する、結局、まず物の言い方一つでその後のことも全然違ってくるんじゃないかなと私は思っております。

 では、そのときに私が見た光景は何かといいますと、非常に憔悴し切った安否確認の方がいらっしゃった。その方たちが私が入ってきたときに私におっしゃっていただいたことは、もう既に何時間もここで待っている、待っているのに情報が入ってこないということなんですね。

 確かに、一方で、例えば当時、安否確認所にいらっしゃった方は警察と関係者、事故当事者であるJRの方が主でありました。もう皆さん必死で頑張っていらっしゃったと私は思っています。その方たちが別に手を抜いていたとかいうことを申し上げているわけではありません。

 ただ、警察の方も、一生懸命検視をし、どんどん、次々に運ばれてくる御遺体の検視をし、大変悲惨な御遺体でありました。私もちょっと、一部、体育館の中でそうした御遺体と対面させていただいて、本当にもう悲惨な光景というのが今でもフラッシュバックするようなことがあります。だから、ああした御遺体は、本当に警察の方も一生懸命検視をし、そしてきれいにして、御家族になるべくきれいな御遺体でお引き渡しをしたいという思いでやっていらっしゃったと思います。だから、時間がかかるのは仕方がないとは思います。

 しかしながら、その時間がかかることすらも、きちっと、今状況はこういう状況であって、もうちょっと時間がかかります、皆さんのお気持ちはわかるけれども、もう少し時間をいただけないだろうか、こうした言い方といいますか、そういうことでやはり安否確認に来られた方にしっかりと情報提供をしていれば、少なくとも、私があの午後六時前の時点で安否確認所に参ったときの状況は全然違っていたと思うんです。同じ、時間、待ってくれという言い方一つでも違うんですね。

 多分警察の方も、後刻確認したところ、確かにそういう情報は伝えておったはずなんだがということなんです。ただ、やはり受け取った側が伝えられていないと思っていれば、これは幾らこっちが一方的に伝えたと言っても、残念ながら、それは伝わっていないというふうに認識をせざるを得ないと私は思います。

 ですから、後でまたアメリカの方の法律も参考にいたしますが、結局、この法律にも書かれていますけれども、そういった御家族には、やはりきちっとした専門家が当たらなくちゃいけないということが書いてあるわけです。

 やはり物の言い方一つ、つまり、相手の立場にしっかり立って、この安否確認に来られている方が今どういう気持ちで来ていらっしゃるのか、どういう状況で来ていらっしゃるのか、そうしたことも既に頭の中に、シミュレーションといいますか、ちゃんと想像して、相手の立場に立って言葉一つも発せられるような専門家なりが、そうした人たちが、そういうことをわかっている人たちがしっかり対応しなければならないということなんです。

 そういうことで、僕は安否確認のところから始まるのではないかと思いますが、きょう警察庁の方からもいらっしゃっていただいていますが、当日の状況を警察庁としてどうとらえておったのか、ちょっと皆さんの御意見もお聞かせいただきたいと思います。

佐藤委員長 だれが答えますか。警察庁、来ていますか。

市村委員 では、大臣、お願いします。

村田国務大臣 大変痛ましい列車事故でございまして、私も、後、時間がたちましてから事故の現場あるいは警察署まで参ったわけでございますが、救援を支援してくれた警察署員自体も、余りのむごたらしい事件の現場を見まして、本当に精神的なショックを受けているということも担当の警察幹部からも聞きました。ましてや、とうとい肉親を失われた家族の皆さん方にとりましては、事安否情報の一刻も早い確認という事態についても、本当に時間がたって、なかなか詳しい情報がもたらされないという状況にいら立ちの気持ちを抑えられなかったんだろうなということは私も推察をいたします。

 ただ、またこれから改善の余地はいろいろあろうかと思いますが、ああいう事故のさなかに、かつまた、委員が訪れていたその時刻はまだ救出作業をしていた時刻だったと思いますので、現場も相当混乱していたのではないかというふうに思います。

 警察では、そうした救護の任に当たる専門部署というものを指定しておりまして、平素からいろいろな訓練といいますか研修も重ねておるわけでございますが、なお、御遺族あるいは被害者の御家族の気持ちを体しまして、改善するところがあれば改善を不断にしていかなければいけないというふうに考えております。

 今回の場合はJR西が表に立ってということでありましたけれども、検視を担当する警察も、今申しましたようなこれからの改善方法について、なお努力をしなければいけないと国家公安委員長としても考えております。

市村委員 今委員長もおっしゃっていただいたように、現場の警察官の方もあんな悲惨な場面は、ある種本当にショックだと思います。だから、そういった警察官の方の心のケアというのも大切だと思います。

 そして今、兵庫県警は、その後、心のケアということで独自の取り組みもしていただいているということで、私は高く評価をしています。ただ、そうはいっても、やはり今委員長もおっしゃっていただいたように、改善の余地は私はあると思います。

 ですので、今回私は、そうした家族を援助する法律を日本でも制定すべきじゃないかという提案をさせていただこうと思うんですが、その中で、やはり現場が混乱しているというのはもう当然なんですね。だから、当然混乱している現場の中で、冷静に、どのように対応できるかということをあらかじめしっかりと手続を踏まえておこう、とっておこうということがやはり必要だと思うんです。

 これは、今、いろいろな意味で、テロに対してもそうですし、あと自然災害についても同じなんですね。やはり、いざ起こったときに、大混乱する、そのときになって初めて、いや、どうしようかという話だったら、これは話にならないわけですね。緊急事態対処法なんというのも同じ趣旨でできているものだと思いますから、その中でなかなか見落とされがちなのがやはり御家族への配慮ということでありますので、そこをぜひとも警察としても今後とも御配慮いただきたい。

 特に、最初の安否確認では、今後変わらないとすれば、どんな法律ができても、恐らく最初に安否確認所にいらっしゃるのは、自然災害の場合は別ですけれども、事故当事者と警察なんだろうと思います。特に死傷者がたくさん出た場合はそうなんだろうと思います。

 であれば、そこで、ほかの専門家というよりも、僕は、警察の方が特にそういったことも想定して訓練を積んでいただいて、そういうときに、やはり物の言い方一つなんです。そこのところをすごく配慮していただければ大分変わるんじゃないかな、こういうふうに思っています。

 その点、委員長、いかがでしょうか。さっき改善するとおっしゃっていただきましたけれども、また具体的なところで、ちょっと委員長の御意見をお聞かせいただけたらと思います。

村田国務大臣 今回の事故の反省も含めまして、御家族に対しまする御配慮等も含めまして、改善しなければいけないところは改善していきたい、こういうふうに考えております。

 これは事故に限らず、犯罪被害者一般につきましても、私は犯罪被害者基本法の担当もしておりますけれども、警察がそうした犯罪被害者に対して真っ先に深くかかわるがゆえに、家族への配慮ということについては不断に研さんをして、まさに心のケアも含めまして、家族に対して温かい応接ができるようでなければいけないというふうに考えております。

市村委員 ぜひともそういったことを、私、今、国会でこれまでも警察のことでいろいろ議論させていただく中で、どうもこの辺の議論がまだなかなか各都道府県警察まで行き渡っていないなという印象もちょっと個人的に受けているところもあります。

 ここで幾らそうやって議論しても、やはり現場にそれが伝わっていないと意味がないわけであります。現場は現場で、それはもう数少ない中で、僕も現場の方たちとも話をすることもありますが、それこそ本当に大変な思いをして、警察というのは毎日二十四時間体制ですから、三百六十五日二十四時間体制、いっときたりとも休めない中で御苦労されている。

 だから、そこにまた新たなものをぼんと持っていくのは大変きついんだろうなというのは思いますが、ただ、この場合は、新たというよりも、日ごろからの心がけなりを、これはなかなか一朝一夕にできるものではないと思いますけれども、やはり大切なんだということが国会で議論され、それが各都道府県警察から各署まで、きちっと現場まで伝わっていただきたいな、こういう思いでおります。

 あと、持ち場持ち場でやっていらっしゃると思うんですけれども、例えば今回のJRの事故の件でいうと、前もこの場でも御指摘したんですが、安否確認所を統括していただく方がいらっしゃらなかったんですね。持ち場持ち場なんです。みんな、検死官は検死官、JRはJRだったんです、残念ながら。

 みんなそれぞれは頑張っているんですけれども、何か、ぼんと一番トップにいてというか、リーダーシップを発揮して、では、あなたはこれをやってください、あなたはこれをやってください、あなたはこの情報をちゃんと収集して私にすぐ伝えてくださいというようなことをやっていらっしゃる方が残念ながらあの場にはいなかったんですね。

 私は、やはり警察の方がそれを、実は、一遍どこかのマニュアルを、どこかというか政府が出しているマニュアルを見ると、一応リーダーは警察じゃなくて事故当事者だ、当該会社だということで書いてあったんです。今回の例でいえばJR西日本なんです。

 でも、考えていただきたいのは、警察というのは、一般市民には大変怖い存在なんですね。警察が来られただけで、たとえ物言いが優しくても何かびびるという警察の存在がある中で、JRの人たちが警察をそんな、では、この緊急事態の場で、現場が混乱している中で、警察の方へ、あれをしてください、これをしてくださいと言えるかというと、自分は、やはり一般市民感覚からいって、多分なかなか言えないだろうな、こう思うんですね。

 そうすると、やはりこういう場合は、警察が安否確認所でもリーダーシップをとって家族への対応に当たるとか、安否確認に来られた方への対応に当たるとか、情報をちゃんと把握して、情報をしっかり伝えて、安否確認に来られた方への情報を伝達するとか、こういう仕組みを日ごろからつくっておく、いざとなったらこうなんだということですね。

 そういうことも含めて、法律というものをぜひとも制定していただきたいと思っているんですけれども、そういうことをふだんからちゃんと担当を決めて訓練をしておくということがやはり必要だと私は思うんですが、委員長、この点についても、ちょっと国家公安委員長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

村田国務大臣 警察庁にその確認をしますと、今委員がおっしゃるように、今回のような大規模列車事故の場合には、最終的に、御遺族あるいは被害者の御家族と接していろいろな情報を提供する役割を担うのはJR西である。したがって、できるだけそういう体制を整備してくださいよということは兵庫県警察もJR西に申し上げて、その整備方をお願いしている。その上で、できるだけスピーディーに情報を提供する、そういうことは警察がしなければいけない。

 その前提に、粗相があってはもちろんいかぬわけでございますけれども、検視等の作業につきましてはできるだけスピーディーにして、かつまた、確認に御家族の立ち会いの必要がある場合には、御家族の御心情を傷つけないように、そうした配慮をしながらやっていくということになろうか、こういうふうに思います。

 今後、今までのやり方がいいのかどうかにつきましては、不断に関係者とも検討をしなければいけないんだろうというふうに思いますが、あの事故に際しては、そういう手順で兵庫県警察は対応してきたというふうに私は報告を受けているところでございます。

市村委員 今委員長がおっしゃっていただいたように、本当に今後の手順なんです。だからこそ、後からまた議論したいんですが、この法律を制定すべきじゃないかなと思うんですね。

 本当であれば、実は、緊急事態に対しては、僕が先ほどから申し上げているように、この場合はJRですけれども、やはりJRがそのときに、この混乱の中で、マニュアルに従って、では、警察さんこれをやってください、消防さんこれをやってくださいと言えるかというと、多分僕は無理だと思うんですね。

 では、いわゆる事故が起こると想定できる、例えば航空会社や、鉄道事故や、大規模事故を起こすと想定されるところと、日ごろからの連携ももちろん必要なんですが、そこまで細かなことはちょっとなかなか難しいかもしれません。となると、やはりそのときに出ていく、そういうしっかりとした日ごろからの訓練を受けたものがないとだめじゃないか。

 そういった意味では、アメリカでは、よく出てくるのがFEMAなんですね。連邦政府危機管理庁、今はちょっと変わっていますけれども、当時の連邦政府危機管理庁、FEMAですね。

 ですから、本当はそういうものがあって、非常事態にはそういうFEMAなり危機管理庁などが出ていって、当座の対応はする。そのときに、例えば警察であったり、消防であったり、事故当事者であったり、被害者であったり、御家族であったり、自治体であったりというもの、または、アメリカの場合、後からこれも議論しますが、NPOであったりというものがかかわってくるわけですね。

 そういうものをちゃんと統括する役目を持つものが必要だろうと思いますが、それについては、後ほど官房長官がいらっしゃるので、FEMAについては官房長官がいらっしゃってから再度質問いたします。

 ですから、そういうものがやはり必要なんですね。だから、緊急事態はそういうものが対応してやっていくということの中で、いろいろな各関係部局がそれに協力していくというのが必要なのかなと思います。後でそれはお話をします。

 今はとにかく、大切なのは御家族への配慮、こういうことでありまして、今、特に私の経験から、安否確認のところから始まるんじゃないかと私は思ったものですから、きょう、委員長にもちょっとお時間いただいて、この議論をさせていただいたわけであります。

 特に今、そうした法律ができるまでの間、できたとしても、恐らく最初の安否確認所での対応は警察の方かなと思います。幾ら日本版FEMAができたとしても、多分、最初の安否確認所の対応は警察が一番ふさわしい部署ではないかなと私は思いますので、そういう警察の方でも、これから、いや、言っていたつもりなんだけれどもじゃなくて、やはり相手がそう受け取っていないのであれば言っていないということでありますから、ぜひとも相手がそう受け取っていただけるように、言い方に心がけていただくとか、また情報伝達に心がけていただく。

 また、御遺体の引き渡しのときも、私きょうは具体的に申し上げませんが、ちょっとそれはないぞということがあったんです。でも、最終的には私の提言を受け入れてくれて、御遺体の引き渡しについてもちゃんとやってくれましたけれども、悲嘆に暮れている御家族に対して、やはりちゃんとした配慮を持って御遺体の引き渡し等々もなされるべきだ、こんなふうに思っていますので、ぜひともその辺のところはこれから改善をいただきたい、こう思う次第であります。

 では次に、安否確認所のことは今議論させていただきましたが、いよいよこの援助法なわけであります。

 これは、なぜアメリカでできたかというと、日本でも、先ほど国家公安委員長が犯罪被害者等基本法ですかについての御言及もいただきましたけれども、まさにそこのところでも議論されたように、例えば犯罪で被害を受けた方は当然なんですが、その御家族、今回の場合は災害で被害を受けた方の御家族、そこに対する配慮がないということが前提にあったわけでありまして、実は、アメリカもこの法律が一九九六年にできたのは、やはりそういう配慮のなさが問題になったということらしいんですね。

 例えば、アメリカの場合は航空機事故における災害家族援助法なんです。だから、私は、いろいろ議論した結果、アメリカと同じ航空だけでいい、やはり日本は鉄道を含めよう、いや、日本は、台風、津波、自然災害を全部含めた被害者の家族にしよう、これはいろいろこれからぜひとも議論させていただきたいと思っているんですが、きょうはそこまでいかないと思います。

 ここで御指摘申し上げたいのは、やはりアメリカもそういうことがあった。例えば、一九九六年九月十七日付の運輸・インフラストラクチャー委員会の連邦議会に対する報告という中でも、「航空機事故の犠牲者の家族と友人は、政府機関、関係する航空会社、マスコミおよび弁護士による彼らに対する振る舞いについて、これまで非常に落胆しており、怒りすら表わしている。」どこかで聞いたような話だということでありまして、当時もやはり日本と同じだったわけですね。だからこそ、これはいかぬということで、この家族援助法というのができているんです。

 日本も、やはり二十年前の日航の御巣鷹山の墜落事故、また九一年の信楽高原鉄道での事故、今回のJR福知山線、宝塚線の脱線事故、もちろんこれだけじゃありません、たまたま今三つ例を挙げましたけれども、それ以外にもやはりいろいろな運輸関係の事故が起こっているわけでありまして、では、そのときにどういう対応が御家族になされたかというと、恐らく私は、今この報告書にもあるような状況があったんじゃないか、あるんだろうと思います。

 だからこそ、今御家族の方も、結局、この間、私もシンポジウムに出てまいりましたけれども、鉄道安全推進会議、TASKという団体をつくっていらっしゃって、いろいろな調査またシンポジウム活動等をやっていらっしゃるわけです。ぜひともそうした家族への配慮をしっかりしてほしいということをやっていらっしゃるわけですね。

 ですから、ぜひとも、日本の場合、別にアメリカが九六年で十年前だったから、日本は遅いとは言いません。そういうのはちょっとおかしいと思う。ただ、日本でも同じような問題が起こったのであれば、それをなあなあとないがしろにするんじゃなくて、起こった段階でしっかりと議論し、やはり次につなげていくということが大切だ。

 今回、JRの脱線事故、JR福知山線、宝塚線の脱線事故があったということを受けて、それ以外にも、当然、先ほど国家公安委員長からも御言及がありましたように、犯罪被害者等基本法もできているという流れの中で、私は、ぜひとも家族に焦点を当てたものをつくらなければいけないと思うわけであります。

 それで、この中でいろいろな示唆があるんです。私は、この場じゃなくて別の場でも議論させていただいているんですが、今回のことで非常に疑問に思うのは、当事者であるJR西日本が社内調査をしていないんですね。これは不思議だと思いませんか、皆さん。一番の責任を持っているJR西日本が、社内調査はしないという決断を出されているんです。

 なぜかというと、いや、何か置き石のことで最初出て、いろいろ御批判を受けたから、我々が何かあるとだめだから、いろいろ御批判も受けるので、今事故調査委員会があるし、警察でもいろいろ捜査にも御協力していますから、我が方では、JR西日本では事故の調査をしない、こういうことをおっしゃっているわけでございます。

 これにつきましては、大臣とも一遍これは議論したんですが、きょうは国土交通省の局長いらっしゃっていると思いますが、どうですか、その後、やはりその態度は変わっていないんでしょうか。JR西日本の方の態度は変わっていないんでしょうか。

梅田(春)政府参考人 今回の事故につきましては、先生今御指摘のとおり、事故調査委員会が独立した中立的な立場で、科学的、客観的に原因究明に向けた調査を徹底的に行うということで、私どもも、そのように委員会の方にお願いしておりますし、その必要があるというふうに考えております。

 今御指摘のように、JR西日本は、去る五月三十一日に、安全性向上計画というものを私どもの方に提出いたしました。そこの中で、今回の事故に関しまして、今まで、弾力性に欠けるダイヤの設定、あるいは安全設備のおくれ、あるいは安全最優先の意識の不徹底、あるいは社内での事故の報告体制の不備、こういう点につきましては、会社として反省すべき点があるということで、安全性向上計画のこの中で、そうした反省を踏まえまして、現在改善の努力をしていると思っております。

 今御指摘の点でございますが、こうした社内の安全の意識あるいは体制等に係る事項につきましては、事故調査委員会が進めている調査も踏まえながら、さらに、JR西日本として、みずからできる範囲で事故の背景を検討し、必要な対策を講じていくことも重要であるというふうに認識しているところでございます。

 国土交通省といたしましては、今後も、JR西日本に対し、重点的に監査を行ってまいりますが、必要な指導も行ってまいりたいと思っております。

市村委員 今の認識は国土交通省の認識ですよね。局長、済みません、国土交通省の認識ですね。(梅田(春)政府参考人「はい」と呼ぶ)ということは、国土交通省がそう認識していても、JR西日本さんが認識していない可能性はありますよね。自分のところでちゃんとしかるべき調査をしてということ、どうでしょうか、そこのところを明確にお願いします。そこを明確にしていただきたいんです。

梅田(春)政府参考人 国土交通省といたしましては、今申し上げたような認識に従いまして必要な指導を行ってまいります。

市村委員 だから、私がお聞きしたいのは、指導は行っていただきたいんですけれども、JR西日本はその指導について、しっかりそれを踏まえて、では自分のところでやりますと、今まで、きょう現在の段階でおっしゃっていただいているかどうかということをお聞きしたいんです。きょう現在の段階で、言っていないなら言っていない、おっしゃっていないならおっしゃっていないでいいんです。

梅田(春)政府参考人 現在の時点では、JR西日本は対外的にそういうような意思を表明してはおりません。

市村委員 そうなんです。まだ意見を表明していただいていないんです。私も、再三JR西日本の方にお電話もし、担当者の方に言いましたが、いや、私の方では調査しないと社内決定をしております、こういうことなんですね。私はこの間別の委員会でも言いましたけれども、これは非常におかしいんです。

 例えば、私が万が一事故を起こしたとしますね。それで、何か聞かれました、マスコミが来られました。いや、私は申し上げることはございません。何でですか。いや、うちの事務所でもう調査しないと決めたんです、警察が捜査してくれるでしょう、だからうちの事務所では捜査しないと決めました、だから申し上げることはございませんと、もし私が言ったとしたら、もうその瞬間に私の次の落選は決まる、恐らくそう思います。何を言っているんだ、あなたはというふうにとられるんじゃないでしょうか。

 それと同じことを僕はJR西日本は言っているとしか聞こえないんです、この話については。だから、当然、当たり前なんですよ。事故調査委員会がしようが警察がしようが、JR西日本がするのは当たり前なんですね、私からすれば。

 それで、ちょっと私、国土交通省にお聞きしたいのは、今回のJR脱線事故において五十八世帯の遺族の方々が連携している四・二五ネットワークというのがあるんですが、これは、存在はしっかりと承知されていますでしょうか。政府の方でお願いします。

梅田(春)政府参考人 御指摘の四・二五ネットワークにつきましては、十月四日に私どもの北側大臣がお会いしておりますし、私もその場に同席しておりましたから、その存在は存じ上げております。

市村委員 十月四日、まだ今月です、その四・二五ネットワークのメンバーの九名の方が実は北側一雄大臣に面会をされています。

 そして、航空・鉄道事故調査委員会による原因究明の徹底、同調査委員会による説明会の開催、事故原因の説明に応じないJR西日本への監督指導、遺族、負傷者への支援策の四項目を要請しているということなんですが、このときに、大臣は、事故調査委員会に説明の機会を設けるように働きかけると約束されていますけれども、その後どうなっているんでしょうか。

 また、遺族や負傷者への政府としての対応、支援策についてはどうなっているのかということについても、ちょっとこの場をかりてお聞かせいただきたいと思います。

佐藤委員長 官房長官が御出席ですから、明快に答えてください。梅田鉄道局長。

梅田(春)政府参考人 四・二五ネットワークの要望は四点ございます。

 一つは、事故原因の徹底的な究明でございます。

 この点につきましては、御要望にあるような事項についても、事故調において解明に向けた調査がなされるというものと考えております。これはダイヤその他背景の説明でございました。

 それから二点目は、事故調査委員会の調査の中間的な取りまとめと遺族への説明でございます。

 この点につきましては、今後、事故調査の進展を踏まえながら、新たに明らかになった事実があれば、できるだけ情報を公開するよう事故調に対してお願いしてまいりたいということでございます。

 それから三点目は、JR西日本の説明責任等に関する適切な指導監督でございます。

 この事故を起こした当事者として、JR西日本に被害者に対する一定の説明責任があることは当然のことであります。JR西日本に対しましては、引き続き被害者の御要望を真摯に受けとめ、会社としてできる限りの誠意ある対応を求めてまいりたいということでございます。これが先ほどの認識でございます。

 それから四点目は、遺族、負傷者への支援策でございます。

 これは心のケア等の問題でございますが、引き続き、厚生労働省や地方自治体と連携して適切に対処してまいりたいということで、このネットワークの方々に対しまして、大臣の方から回答をしております。

市村委員 今、官房長官、お越しいただきましてありがとうございます。

 今、局長のお話の中にも連携という言葉がありました。まさに今の日本の体制は連携合議体制なんです、こういったときの体制は。

 私は、実は、きょう官房長官がいらっしゃってぜひともお聞きしたかったのは、日本版FEMAをぜひともつくらなくちゃいけない、そして、そういう連携合議の体制から、やはりそういう一つのFEMAのようなものをつくって、いざというときにすぐ対応できるような体制をつくらなければいかぬ、このように思っています。

 一方、アメリカの方ではFEMAが今問題になっていて、いざ、あのカトリーナのときに結局役に立たなかったというような議論になっていたわけでありますから、決して、つくったからといって結局はすぐ動くとは限らないんですが、やはり何事も人を得ないといけないなとあのとき思ったわけでございます。

 しかしながら、やはりないとあるのでは全然違うわけでありまして、ぜひともその件について官房長官の御見解をいただきたい。ぜひともこれは、そうした危機管理庁みたいなものをしっかりと日本に設けていくべきだ、このように思っていますが、いかがでしょうか。

細田国務大臣 日本の危機管理問題で最近最大の問題に直面しましたのが、御承知の阪神・淡路大震災のときでありました。

 当時はやはり、縦割りで対応する、責任の大臣もはっきりしない、したがって小里大臣が急遽発令になったんですが、一カ所に集まって常時検討する場がない。防衛庁だ、警察だ、あるいは消防その他さまざまな組織も縦割りで、相互の連絡が十分でない。

 あのときに大きな反省をいたしまして、こういう大きな事態に対応するのは政府の当然の責務であるということで、我が国なりに対応してきたのは、やはり関係省庁というものも専門的な立場で取り組んでおりますから、何かが生じたときには、一カ所に三十分以内に集まって、そこで直ちに合議ができる、その結論を各省に指示を出せる、そしてそのトップに総理大臣、官房長官がいる、そして防災の場合は防災担当大臣もいて迅速に対応できるという今の体制を組み上げてきたわけであります。

 二十四時間体制で情報を収集する内閣情報集約センターを設けておりまして、総理官邸に危機管理センターを設けまして、そこを整備して、そこで対応する。関係省庁局長級から成る緊急参集チームの設置をする。これも大きなオペレーションルームがあって、そこに各省の代表が全員座る、局長クラスの場合は局長クラスが座って会議ができるというような体制をとっております。

 そして、内閣危機管理監を設置して、各省庁の連携で対応がとれるような体制をとる。これも試行錯誤をいろいろやってきておりまして、えひめ丸のときがあったり、あるいは中越の地震があったり、人質事件があったり、それによって規模が違いますし、それぞれの対応ぶりが違うのでございますが、非常に洗練された組織形態になりつつあると私は認識しております。

 他方、アメリカ型のFEMAという組織をつくるというのも一つの考え方であります。これはまた、逆に、いろいろな組織から独立して、みんなを呼び集めて何千人というような世帯の役所をつくってしまおうということで、これは長所もあれば短所もあるわけです。

 アメリカがスリーマイル島事故のときに、カーター大統領が設置をしたのが一九七九年でありますし、ハリケーン・アンドリューが来た九二年には、対応がおくれたというので大変な批判を浴びてクリントン大統領の指示で改革をしたり、ノースリッジ地震、カリフォルニア地震のときは非常に評価が高かった。それから国土安全保障省が発足して、そしてこの今の形のFEMAの基礎がまたあるわけでございますが、今回のハリケーンの関係では、きちっとした指示がなかなか行き届かない、大統領と間遠になってしまうというようなこともあって、反省が加えられている。

 したがって、率直に申しますと、この危機管理というのは、さまざまな体験によって、組織を別途の組織として確立するのがいいのか、それぞれの機能を活用するために機動的な体制を組み上げるのがいいのか、この試行錯誤の歴史の連続であると思いますが、我が政府としては、先ほど申し上げたようなことで、今最善の努力をしているところでございます。

市村委員 官房長官、本当にありがとうございます。これはまた、ぜひとも議論をさせてください。

 きょうは、新しい家族援助法をつくろうという観点からお話をしているんですが、この中で、結局、やはり家族への対応に当たる専門の方を養成しなくちゃいけないということと、そのときに家族支援サービスのディレクターを置こうということ等もこれは書かれているんですね。

 もう一つきょう議論したいのは、さらにそうした事故及び家族に対するトラウマについてのケアの経験を有する独立の非営利組織を指定するということも書いてあります。つまり、この法律の中で、非常に独立な非営利組織、私がずっとこの委員会で申し上げているところのNPOがやはり大切な役割を担うということが法律に書かれているわけです。

 私、いつも申し上げています、この間も竹中大臣と議論したばかりですが、また村上大臣とも議論したばかりですが、結局、そうした民の公益セクター、民間の公益セクターというものを日本で確立させていかないと、これからの政策論議が非常に浅薄になったり選択肢が狭まったりするということをこの前申し上げました。

 そこで、僕は、やはりどうしても、きょう村上大臣にお越しいただいていますが、この公益法人改革というのは、もう再三申し上げている、もう村上大臣も嫌だというふうに、耳にたこができるほどお聞きだということもあるかもしれませんが、この公益法人改革というのは非常に重要なんですね。つまり、民間の公益セクターを日本につくっていくということで非常に大切、その大切さも大臣はおっしゃっていただいている。

 私は、そのときに、竹中大臣、僕はやはりこれは、一般的な非営利法人制度をつくるということであれば、包括的な非営利法人制度という観点もぜひとも持っていただきたいんですね。

 そのときに、何でやはり特定非営利活動法人だけ外すのか。またそれ以外は、宗教法人も含めて、宗教法人とか例えば学校法人、社会福祉法人、こういうものも少し含めて、やはり民間の公益セクターをつくっていこうという観点から僕はこの公益法人改革というのはなされなければならない、このように思っていますが、村上大臣、いかがでしょうか。いつも聞いていますが、よろしくお願いします。

村上国務大臣 委員のおっしゃりたい意味はよくわかると思うんです。委員がおっしゃりたいのは、今回の福知山線脱線事件において、結局被害者及びその家族に対する精神的ケアをもっと当事者の立場に立ってやるべきじゃないか。それに関係して、アメリカには一九九六年航空災害家族援助法なるものがあって、結局、我が国でもこのような仕組みを早急に投入すべきじゃないか。

 先ほど来委員言われているのは、そういうアメリカの同法には、被害者及びその家族に対する精神的ケア等を行う非営利法人を法定するのがあるんだけれども、日本にはない。

 そこのところが市村さんと我々とのちょっと違うところで、流れはわかるんですけれども、そこが、最後の段階でちょっと飛躍し過ぎているんじゃないのかなと。

 要するに、きょうは初めてこの議論に参加する方もいらっしゃるので、ちょっとほかの方にも御説明したいんですが、この公益法人制度を改革する有識者会議というのは平成十五年十一月から始まっていまして、去年私が大臣に就任して二日後に、平成十六年九月二十九日に私が座長の福原さんに、有識者会議にも出席して、十一月目途に報告書を取りまとめるように要請しました。そして、去年の平成十六年十一月十九日に有識者会議で報告書を取りまとめたわけです。

 御承知のように、この考え方については、我が自民党は、去年の十一月段階で党内議論も経て、こういう形で決定しているわけです。

 その市村さんのお考えはお考えでよくわかるんですが、何回も申し上げているように、市村ワールドをやはり何とか民主党案として、これから前原党首はすべての法案に対案を出されるということでありますから、そういう考えは考えとして私もよくわかるんですが、我々が明治から続いている、百年ぶりのこの公益法人改革においての法体系においては、こういうことはNPOはNPOでやればいいし、またこっちのは公益法人は公益法人で、両輪のごとくやろうという考え方でありますので、そこら辺は、残念ながら、最後のホップ、ステップ、ジャンプの段階における市村委員のその発想には我が方は残念ながら賛同しかねる、そういうことであります。

市村委員 大変明確に言っていただきまして、今後の議論がまた大変楽しくなったと思います。

 きょうは時間がないので、この議論は踏み込みませんが、多分私の申し上げていること、まだちょっと大臣、意味を認識していただけないかと思うんですね。

 僕は、だから、それは自民党は自民党案ということでいいので、またぜひとも対案を出させてください。今回、私、民主党の公益法人、NPO制度改革の担当者になりましたから、喜んでやらせていただきますので、対案を出させていただきますので、そのときにまた議論させていただきたいんです。

 私が申し上げているのは、要するに、結局、政策論議をする際に、やはり民間の公益セクターというものも頭に入れてこれからは議論していかないと、やはり議論が浅薄になったり、選択肢が狭まりますということなんですね。

 だから、アメリカを見てください。この法律にもあるように、ちゃんと独立の非営利セクターというものが重要な役割を持つものとして入っていますよということなんです。だから、こういう社会にするためには、そもそものところの部分、つまりNPOの制度、NPOと公益法人というものの概念関係は、NPOの中に公益法人が含まれている概念関係ですので、ちょっとそこはぜひともお間違えのないようにお願いしたいんです。

 そこで、竹中大臣、私は、村上大臣の言っていらっしゃるNPOというのは、すなわち特定非営利活動法人のことをおっしゃっていると認識しておりますが、やはりこれはどう考えても分けるのはおかしいんです。だって、百年ぶりの大改革をしようというわけですよ。しかも、自民党はこれはいわゆる自民新党ということで、これから大改革に乗り出そう、大改革をやるということで御宣言されて、まさに竹中大臣はそういったものの先兵に立っていらっしゃると私は思うんです。

 大改革をやるなら、本格的、本質的改革をやはり志していただかないと、私は、では、どこかのだれかのように、やはりそれはまやかしの改革ですかと皮肉一つ言わなくちゃいけなくなるんですよ。言いたくないです、こんなこと。言いたくないですよ、私、こんなことは。やはり大改革をやるのなら、ちゃんと大改革をやるとおっしゃっているのなら、やってほしいんですよ、私は。これは大改革なんですよ、公益法人改革、百年ぶり。

 ちょっと、竹中大臣済みません、村上大臣にお願いします。

村上国務大臣 市村委員、そういうことはわかったので、英米法と我が日本の民法とは体系が違って、こういうようないろいろなアクシデントが起こったときに、先ほど官房長官も言われたように、現体制の組織がそういうものを幅広く活用して穴埋めができるのであればそれでいいという考え方でもあるわけでありますから、そこは発想の違いなんで、そこら辺は最初から理解していただきたいと思います。

市村委員 今の大臣がおっしゃっていただいた趣旨はちゃんと私も認識しています。だから、これは法律ということできょう議論しているんですが、法律ではなくて、通達でも別にいいんですよ。とりあえずちゃんと目的は達成されるのなら何でもいいんです。ちゃんと家族が守られる、家族援助されるなら、法律だろうと通達だろうと何でもいいんです。

 竹中大臣、ちょっと最後に、私は、どうしてもこの特定非営利活動法人を外すことについては、何としてでもこれはおかしいと。やはり非常にロジカルな竹中大臣としては、前も申し上げたように、非常にここだけイロジカルなんですよ、これだけが何かロジックが外れていると私は思います。何か非常に政治的配慮をされているような気がしてなりません。

 そうじゃなくて、僕は、ロジカルに考えて、やはりこれは含めて考えるべきだと思っておりますが、最後にぜひともこの部分を、何回も言っていますが、お考えをお聞かせください。

竹中国務大臣 前回極めてロジカルに御答弁させていただいたつもりなのでございますけれども、基本的にこれは制度を、白地のところに新しい制度をつくっていくのか、現実に走り出している制度を、それを尊重しながらしっかりとした体系をつくっていくのか、私はそういうアプローチの違いであろうかと思っております。

 ですから、長期的に、私も村上大臣と全く同じ意見でございますけれども、市村委員が言っておられるような体系に収れんしていくということを私たち何も否定はしておりません。

 しかし、今既にあるものは、これはやはり大事にしていかないと、これは現実に大変困る方も出てくるものですから、そういう形で、しっかりと改革を加えながらよりよいものを目指していきたい、そのアプローチをとっているという点をぜひ御理解いただきたいと思います。

市村委員 最後に、三十秒ください、現実を踏まえるならば、公益法人改革の方がよほどいろいろな利害関係者がいて大変なはずですよ。公益法人ですら百年ぶりに改革するのであれば、なぜ七、八年前にできた制度を改革できないんですか。だから僕はロジカルじゃないと言っているんですよ。

 だって、最も複雑なものを改革しようという志を持って取り組んでいらっしゃるんじゃないんですか。私は、だから、それは何回も言いますように、再三言うように、評価しているんです、百年ぶりの大改革すばらしいと。なれば、ちゃんと根本的な改革をやってほしいという思いでございます。

 また議論させてください、対案出しますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、泉健太君。

 時間内で御質問願います。

泉委員 民主党の泉健太でございます。

 きょうは、内閣府には遺棄化学兵器処理担当室というものがございます。この遺棄化学兵器処理担当室というのは、いわゆるさきの大戦で、日本軍が主に中国大陸に遺棄をしたと言われております化学兵器、いわゆる毒ガス兵器、この兵器を処理する担当という部屋がございまして、きょうはこのことについて質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 これは、我々の旧軍が使用していた、あるいは持ち込んだ化学兵器が、当時いろいろな時代背景があって、これは後でお伺いをしたいと思うんですが、いまだに現地に残されているという実情があるというわけでございます。

 これは、いろいろな調査の報告等がありまして、中国側はその総量は二百万発だという話もあれば、我々日本側としては七十万発だという論もあり、最新の調査では三十万発だというような話もあって、この事業費も、この約六十年間埋まっていた化学兵器の処理というのは大変難しい技術が、あるいは先進事例がないものですから、必要でして、そういった中でいいますと、事業費は総額一兆円にもなるのではないかというような話もされております。

 現に平成十一年からは、既にもう我が国の予算を一千億円ほど消化をしているという状況もございまして、今後この事業がどのように進展をするのか、非常に注目をしているところであります。

 そういった中で、まずは事実確認をさせていただきたいと思っておりまして、諸説あるわけです。中国政府が二百万発の日本軍が遺棄した砲弾があると言い、我が国は三十万ないしは七十万と言っている。

 まず、官房長官にお伺いしたいんですが、我が国の公式な見解として、現状として推定をされている現地に残された砲弾の総数、これは何発だというふうに御認識でしょうか。

細田国務大臣 我が国は、化学兵器禁止条約の規定に従いまして、一九九七年、化学兵器禁止機関に対しまして、それまでの現地調査を通じて判明した事実に基づきまして、遺棄化学兵器として中国に残置されている化学兵器は約七十万発あり、そのうち六十七万発余りが吉林省のハルバ嶺にある等の申告を行っております。

 ただ、さまざまな地点で新たに発見される場合もありますし、旧日本軍の中国全土における活動等も不明な点も多いわけですから、我が国としては、あくまでも日中の双方の覚書、これはいわゆる化学兵器の開発、生産、貯蔵、使用の禁止並びに廃棄に関する条約に基づいて、我が国がこの廃棄について誠実に履行するという国際約束をしておりますし、まさに旧陸軍の責任であるという観点から、この化学兵器の処理に対する責任を持って取り組んでおるわけでございます。

泉委員 国会質問というのはなかなか言ったことに率直な答えが返ってこないものですが、今答弁の中で唯一あった数字は七十万という数だったわけですが、それが現在の見解ということでよろしいんですか。

高松政府参考人 お答え申し上げます。

 今、ただいまの官房長官の方からお答えしました調査の後に、二〇〇二年にハルバ嶺におきまして日中共同で砲弾埋設地の探査を行っております。その際の結果を踏まえまして、私どもとしては、砲弾埋設数は三十万発から四十万発であると推定しているところでございます。

泉委員 大臣、これはまずいんじゃないですか、今のは。大臣が七十万と言って、こっちの担当の方が三十万から四十万とおっしゃられている。これは、済みません、どっちなんですか、大臣。

細田国務大臣 当時の日本の申告は、六十七万発余りであるということを申告したわけでございます。

 それから、ハルバ嶺における実際上の確認された、まあ、推定値でありまして未確認なんですが、三、四十万発ではなかろうか。というのは、全く埋まっておっていじることすら危ない状況で、土中にあるわけですから、それを掘り出して、本当に何万発あるかというところは推定にすぎないわけです。

 したがって、私が先ほど言った後の方の答弁が大事なんであって、何万発あるかという事実は必ずしも明確でないから、日本としてはそれが何万発であれ、これに取り組む、処理に取り組む責務を負っていると理解している、そこが大事なんでございます。何万発という数字の問題ではない。

泉委員 いや、とはいえ、やはり最新の調査で前回の調査よりも数が減っていることが予想されるということを、やはり一部では出ているわけですね、三十万から四十万と。

 これは、三十万から四十万にしたって十万発の開きがあるわけですから、私も下一けたまで出せなんてことを言っていないわけでして、ただ、政府としてどの数字を今持っているのか、これを私はある程度ははっきりさせるべきだというふうに思っているんです。最新の調査の結果としては三十万から四十万だというのであれば、それはやはり示さなきゃならないですよ。

 私は、なぜこんなことを言うかといいますと、この担当室のホームページを見させていただくと、最近の動向というところで、平成十五年四月二十五日の最近の動向という文章を読むと、第一回の探査よりも減少することが判明したということが書いてあるわけです。

 ここに三十万から四十万という数字は書いてありませんが、しかし一方で、平成十六年七月の担当室の「中国遺棄化学兵器問題について」というホームページの中には、「これまでの現地調査の結果、推定約七十万発の旧日本軍の化学兵器が中国国内に存在するとして、化学兵器禁止機関に対し申告を行った。」と書いてある。

 確かに、申告を行った時点は七十万発でいいんでしょう。しかし、その数字を残したまま、政府の機関のホームページにこういう情報が、三十万、四十万という数字が出ずに、残っているということは、これは公式見解ととられても仕方がないと私は思うんです。

 それをいろいろな市民団体やあるいは中国政府も、やはり公式な我が国の立場としては七十万発という、ここに数字が載っているのはこれが唯一ですから、そうとしかとらえられない。それで構わないという現状ですか。

高松政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもとしては、実際上最も蓋然性の高い埋設数は三十万発から四十万発であろうということを考えております。

 ただし、これは、先ほども官房長官から御答弁申し上げましたとおり、確定的に確認されている数字ではございませんで、可能性としては、今までの小規模発掘等の事例をかんがみれば、相当上下の幅があると考えております。

 ただ、いろいろハルバ嶺におきましてこれから大きな事業をやっていく際の私どもの現実の想定数としては、三十から四十をとりあえず考えている、こういう状況でございます。

細田国務大臣 本年十月に、内閣府の江利川事務次官が武大偉外交部副部長と会談をいたしました。

 先方からの発言の中で若干、会談ですから余り先方がどう言ったということを確定的に言うことは望ましくない場合もありますが、これまで十五の省、五十数カ所で約四十万発が確認されており、最終的にはこれを超えるであろう、これは先方の認識でございます。

 したがって、これは土中に埋まっておるということ、戦前、戦時中の軍の活動が中国全土にかなり幅広く及んでおりますから、チチハル等でも出ましたし、ちょっと近くでも気がつかずに埋まっている例もありますので、余り何万発であることを確定してそれを処理するというまではなかなかいかないということでございますので、御理解をいただきたいと思います。

 しかし、何十万発出ても処理できるようなオーダーの処理施設をつくろう、これは処理施設としてはハルバ嶺につくろうということで、建設を進めておることを御理解いただきたいと思います。

泉委員 そこはぜひ精査をお願いしたいというふうに思います。そして、もちろん、我が国が遺棄をした化学兵器であれば、それは当然我が国が処理をしなければならない。

 ここでちょっと質問の方向を変えたいんですが、中国、当時の国民党軍あるいは共産党軍、どちらでも結構です、そしてあるいはソ連、ここは、この地域で化学兵器を遺棄したという事実、それは日本政府としては確認をされていますか。

梅田(邦)政府参考人 お答えいたします。

 日本政府としまして、中国並びに当時のソ連から、遺棄化学兵器を処理した等の確認はできておりません。

 以上でございます。

泉委員 そうしますと、日本政府としては、現在中国の大陸で見つかっている化学兵器、遺棄化学兵器については、これはすべて日本製だという認識をお持ちなんでしょうか。それとも、毎回確認、エックス線の確認になるとは思うんですが、それを確認している、そういうことだということですね。わかりました。

 さらにお伺いをしたいんです。

 この中国に残された化学兵器の処理ということについては、これはもう一回見解をお伺いしたいんですが、一九七二年の日中共同声明、これをもって戦時賠償的なものというのは終結をしたということになるわけです。

 現在行っている事業というものは、化学兵器禁止条約そして日中間の覚書、この二つがこの事業の実現につながっているというふうに認識をしているわけですけれども、覚書が締結をされたのが九九年なわけです。化学兵器禁止条約を日本が批准をした一九九七年から、この条約に縛られた形で十年間というカウントの仕方、処理の年限ですが、それと覚書が締結をされたのがたしか九九年だと思うんですが、それからこの事業が実施をされるというふうにこの覚書には書いているわけなんですけれども、この条約に基づくと、処理年限は一九九九年から十年間という認識ではないんでしょうか。

中根政府参考人 化学兵器禁止条約の規定上は、条約が発効してから十年間に廃棄をするということになっておりますので、化学兵器禁止条約の発効は九七年の四月二十九日でございますから、それから十年間ということでございます。

泉委員 発効しても、相手国、地域、当該国というんですか、そこがこの条約に入っていなければそれは処理は不可能なわけですよね。中国がこの条約に入ったのは九九年でしたか、そうしますと、とにかく、覚書の時期ではなく、この条約に日本が入ってからが廃棄義務というものが伴っているというような考え方になるんだと思います。

 ちょっと、済みません、二十分ではとても足らない質問なので、駆け足で行かなければならないんです、本当はいろいろと確認をしたいところがあるんですけれども。

 実は、こういったいろいろな化学兵器によって中国の一般の住民が被害に遭われているという実態があるわけです。この被害について、日中間では、例えば被害者の認定というものを行っているのかいないのか、行っているのであれば、それは何名なのか、官房長官、お答えください。

梅田(邦)政府参考人 お答えいたします。

 日中間では被害者の認定ということは行っておりません。また、被害者の総数につきましても、全体を把握するのは困難な状況でございます。

泉委員 中国側からは、例えばそういった被害者の確定ということについての要望、申し出、具体的提案があるのかないのか、まずこれが一点。

 そして、我が国としては、チチハルで起こった毒ガス被害、これはもう、被害者が来日をして、逢沢外務副大臣にも会って話をしていますけれども、こういった被害者に対する協力金ですか、これは引き続き、被害者があって、そしてそれが日本製の毒ガスによるものであるとなった場合には、今後もこういったスキームで協力金が支払われることになるんでしょうか。

梅田(邦)政府参考人 お答えいたします。

 中国側から何らかの要望があったかどうかにつきましては、要望がないということでございます。

 それから、協力費等につきましては、御承知のとおり、我が国の立場は、請求権の問題につきましては、七二年の国交正常化の時点で解決されておるという立場でございますので、その趣旨を踏まえて今後とも対応していかざるを得ないというふうに考えております。

 以上でございます。

泉委員 ですから、その協力金というものは、既に一度出されているわけですね。もちろん、個人補償はできないという前提に基づきながら、それぞれの政府間でやりとりをするということになると思うんですが、二〇〇五年の九月二十七日に、被害者の方々あるいは代理人の弁護士の方が外務省の方と交渉を行っております。

 そういった中で、実は遺棄化学兵器の処理事業基本計画書というのがあるわけですが、その中に、現地医療体制というものがございます。もちろん、当然、危険な作業ですから、現地の要員の医療支援というものはしっかり行っていかなければならない。緊急、もし毒ガスを浴びた場合に、その救済を、救援、救助、そして医療体制をつくっていかなきゃならないということになっているわけですが、この事業そのものは非常に事例が少ない事業ということでありますから、私は、あらかじめいろいろな毒ガス被害におけるデータというものを集めながら、医療体制に生かしていくべきじゃないのかなというふうに思っております。

 その意味で、もう既に現地で被害に遭われてしまっている方々が多いわけですが、彼らには中国政府からは一時金という形でお金が渡されているようなんですけれども、そうではなくて、例えば、我が国としては、そういった被害者の方々の健康被害、そのデータ収集という形でこういった方々の実態調査を行う。それはイコール健診ですとか、ある程度の医療ケアも含まれるわけですが、名目としては、我が国としてはやはりデータ収集ということを重点に置いた形でこの被害者に対してもしっかりとケア、アプローチを行っていくべきではないかというふうに考えているわけですが、大臣、そこはいかがでしょうか。

細田国務大臣 これは双方の条約上の問題といいますか、請求権についての問題、それから、事実上、うっかりどこか穴を掘ってみたらそこに兵器があったということで死者が出たり、あるいはやけどを負われたりする方がおられる、こういう問題とをどのように一つ一つ解決していくかというときに、チチハルのような例ではそれなりの両国間での話し合いが行われるという形をとっておるものと承知しております。

 しかしながら、当然ながら、この条約に基づく遺棄化学兵器の廃棄処理については全面的な責任を負っているわけですから、例えばハルバ嶺で実際の発掘処理をする段階で、万一のことがないようにするんですが、医療的な問題等は責任を持って対処するということにしておるわけでございます。

泉委員 もうこれで最後にしますけれども、私からの要望としては、やはりこういった危険な作業に従事する上では、いろいろな医療のデータ、これを事前に集めておく必要があるというふうに思います。

 その意味では、この外務省と代理人の弁護士とのやりとりの中では、こういったデータ収集という観点であれば内閣府主導であるというような発言も外務省の方からなされているようですし、医療ケアの問題であっても、それは内閣府の担当になるであろうということでお話があったようです。

 ここはぜひ、押しつけ合いということではなくして、やはりこういった、現に、要員だけではなく、一般の方々の被害が既に出ている。しかも、それはやはり日本政府、旧日本軍の化学兵器によるものだということで、人道的な観点からも、即時に、なるべく早い時期にこの被害者の医療データの収集ということをぜひとも行っていただきたいということを最後に要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

佐藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 先週に引き続きまして、米国産牛肉の輸入再開問題について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 また、先週に引き続き、寺田委員長、ありがとうございます。さらに、きょうはプリオン専門調査会の吉川座長にもお運びをいただきました。何かお疲れのところだと思いますが、本当に御出席をいただきましてありがとうございます。心から感謝を申し上げさせていただきたいと思います。

 前回、質問の最後の部分で触れさせていただきました、食品安全委員会専門委員で、リスクコミュニケーションの専門調査会座長代理を務めていらっしゃる唐木英明東大名誉教授が、米国食肉輸出連合会の作成したパンフレットの監修をし、みずからそのパンフレットに顔写真つきで対談にも応じている。さらにその中で、食品安全委員会のこれまでの審議の経過とは違う見解をお述べになっていらっしゃるということについて、もちろん、唐木先生が食品安全委員会の外で学者として自由に発言をされることについては私もそのとおりであろうというふうに思いますが、しかし、食品安全行政の中立公正あるいは審議の公平さというものから見ると、若干の、若干のというか大分問題があるのではないかということを問題提起させていただいたわけであります。

 まず、寺田食品安全委員長にお伺いをいたしますが、先週十二日の本委員会での答弁で、委員長は唐木先生の言動について、もう少し気をつけてくださったらいいのになというようなことをおっしゃっていらっしゃいました。さらに、国民がそういうふうに思われる、誤解をするということもあるかもしれないので、もう一度確かめておきますというふうにおっしゃっていただきました。

 私とのやりとりの後、一週間がたったわけでございますが、寺田委員長、唐木先生にどのようにお話をされたか、またそのときの唐木先生の御反応をお聞かせいただきたいというふうに思います。

寺田参考人 お答えいたします。

 先生がおっしゃいましたことを、十月の十二日、あの会の後で、委員会の中で、肥料・飼料専門調査会の合同委員会、薬剤耐性のことの会がございまして、たまたま唐木先生が出席されておりましたので、その会の後に来ていただきまして、こういうこと、パンフレットのことが国会で取り上げられたということをお話ししまして、注意を、誤解のないようにやってくださいと。

 今先生が言われたとおり、自由に御意見を言ってくださることは非常に大切なことだと思っているんですけれども、一方、あのパンフレットの中で、肩書は先生は名誉教授と学術会議ということで出しておられるんですが、履歴のところにはやはり食品安全委員会専門調査会委員というのが入っているんですね。だから、そういうこともありますので、誤解のないように気をつけてくださいと。

 先生も、よくわかりました、大変御迷惑をかけましたというふうにお話をされておりました。

 それから、その後、十七日の日にリスク専門調査会がございまして、そのときに私はあいさつで、個人の意見を言う場合、それは全く御自由でやってもらって結構なんですが、意見を言う場合には、自分がどういう立場で言っているか、あるいは食品安全委員会の専門調査会の委員として言っているのかということを、立場をはっきりした形でおっしゃってくださるように、これはリスクコミュニケーション専門調査会の皆さんにお願いをしておきました。

 以上でございます。

川内委員 寺田委員長、唐木先生は大変著名な、日本学術会議の委員でもいらっしゃる。そしてまた、唐木先生がリスクコミュニケーション調査会の専門委員、さらには座長代理に選出をされたときのリスクコミュニケーション調査会の第一回の議事録を拝見いたしますと、唐木先生が自己紹介の中で、「現在は日本学術会議の会員をしておりまして、そちらの方でBSEと食品の安全の特別委員会の委員長を務めておりました。そんなことでここにお呼びをいただいたんだと思います。よろしくお願いいたします。」というふうに、自分はBSEと食品の安全の特別委員会の委員長だったんだということをお述べになっていらっしゃる。

 私どもからすれば、こういう発言を聞いていると、唐木先生というのはBSEと食の安全についての専門家であるというふうなとらえ方をするわけですね。

 そういう方が、もちろんプリオン専門調査会の委員ではないが、しかし、食品安全委員会の専門委員として肥料・飼料等調査会の座長をし、リスクコミュニケーション調査会の座長代理として、さまざまな場面で学者として自由な発言をされていらっしゃる。

 私は、もう一つ議論を深めたいというふうに思うんですが、そこで、農水省、厚生労働省にお尋ねをいたします。

 今、食品安全委員会に対して、米国産、カナダ産の牛肉と日本の牛肉の安全性の同等性というんですか、について諮問されているわけですが、この諮問について米国食肉輸出連合会は利害関係団体ですか。

伊地知政府参考人 お答えいたします。

 米国の輸出関係団体ということで、利害関係がないとは言えないとは思います。

川内委員 利害関係がないとは言えないというのはどういうことですか。利害関係団体なんでしょう。利害関係者でしょう。きのう、利害関係者だと言いましたよ。

伊地知政府参考人 輸出をするということでの関係があるということで、それが直接利害かどうかということだけ明確にお答えするのはちょっと難しいかなというふうに思います。

川内委員 米国食肉輸出連合会が本諮問の利害関係が直接あるのかどうかわからないということですか、利害関係者じゃないということですか、利害関係があるのかないのか答えてください。

佐藤委員長 伊地知大臣官房参事官、はっきりと答えてください。

伊地知政府参考人 輸出をしているという観点で、輸出業者という会員を持っているという意味では関係があるというふうに思っています。

川内委員 その利害関係を持つ米国食肉輸出連合会が作成をしたパンフレット、「知って安心 BSEのホント」というパンフレットの監修をしている唐木先生という方は、利害関係があると思われる団体のパンフレットを監修したわけですから、利害関係者ですか、どうですか。利害関係者と思われますか。

伊地知政府参考人 唐木先生が利害関係があるかどうかというのは、私はちょっと承知をしておりません、わかりません。

川内委員 それでは、米国食肉輸出連合会、これは立派なパンフレットなんですよ。すばらしい立派なパンフレットで、一万部つくられたそうです。さらに、この唐木先生は、御自分で発起人になられて、食の安心と安全を考える会というような名前の団体を発起人として立ち上げて、ホテルで大集会を開いたりもしていらっしゃいますよね。これにも米国食肉輸出連合会は関与をしているわけでございます。

 では、今唐木先生が米国食肉輸出連合会と利害関係があるかどうかわからないということでございますから、監修料というような名目で報酬をもらっていらっしゃったのかどうか、あるいは、この食肉連合会から唐木先生はどのようなサポートを受けていらっしゃるのかというようなことについて、お調べをいただけますか。わからないと言ったわけですから、わからないということは調べなきゃいけないということですよね。

伊地知政府参考人 お答えいたします。

 唐木先生自体と私ども、直接関係ございませんので、私どもが調べる事柄かどうかということについて、ちょっと私も疑問といいますか、そう思っております。

佐藤委員長 だから、調べるか調べないかと言っているんだから。

伊地知政府参考人 現時点で私どもで調べる必要はないのではないかというふうに思っております。

川内委員 私も聞く人をちょっと間違えました、米国食肉輸出連合会が本諮問と利害関係がある、利害関係がないとは言えないとおっしゃったのでちょっと聞いたのですが。

 では、寺田委員長、諮問を受けて実際に今審議を進めているわけですね。管理側としては、米国食肉輸出連合会は利害関係がないとは言えないというふうにおっしゃっていらっしゃる。

 食品安全委員会に諮問しているわけですからね。食品安全委員会の中にさまざまな専門委員もいるし本委員もいるということですから、そういう関係の中で唐木先生が米国食肉輸出連合会から報酬を受けているかどうかというのは、これは大きな問題である。

 報酬がなくて、学者としてただ単に自由に発言されるというのは、これは自由です。しかし、利害関係団体から報酬を受けているとすれば、これはまた違う議論になるのではないかというふうに思われます。

 寺田委員長、唐木先生にこの米国食肉輸出連合会との関係、報酬の有無等について、私はお尋ねをされるべきであるというふうに思いますが、御見解をお聞かせいただけますか。

寺田参考人 この前もお話しいたしましたように、私どものところで利害関係者は評価の審議には加わらないということを平成十五年の十月に決まりをつくっております。

 その場合には、これは評価ということでございまして、先生十分御存じだと思いますが、リスクコミュニケーションの専門調査会というのは、一般公募の方、それから消費者団体、流通者、マスメディア、科学者が、いわゆるステークホルダー、これは日本語で関係者といいますから、やはりある程度、利益団体者のいろいろな方が入って、それぞれの立場から意見を、どういうふうにしたら、みんな、ステークホルダーはわかっていただけるか、あるいは双方向にリスクのコミュニケーションをやるかという場でございます。

 その場に唐木先生がいらして、それが利益があるかどうかということは、ちょっと私自身、それは判断できないんじゃなくて明らかに違うと思いますので、したがいまして、大変申しわけございませんけれども、お金のやりとりとかそういうことに関して、唐木先生にお聞きするとか調べるとかという気はございません。

川内委員 寺田委員長、今寺田委員長がおっしゃった平成十五年十月二日の「食品安全委員会における調査審議方法等について」という文書でございますが、この中にはこのように書いてあるんです。「審議の公平さに疑念を生じさせると考えられる特別の利害関係を有する委員又は専門委員は、委員長又は専門調査会の座長に申し出るものとする。この場合の審議及び議決については、1の(2)と同様とする。」1の(2)ということは、審議に参加できないというふうに書いてあるんですね。

 もちろん、当該調査会、プリオン専門調査会の委員ではないですよ。しかし、この書き方は、「審議の公平さに疑念を生じさせると考えられる特別の利害関係を有する委員又は専門委員」という、当該専門委員とかは書いていないんですね。専門委員という漠たる、専門委員すべてを総称して書いてあるわけですから、私は、プリオン専門調査会で行われている審議の公平さに疑念を生じさせると考えられる特別の利害関係者というものに唐木先生は当たるのではないかというふうに思われる。

 また、食品安全行政の中立公正、さらには、食品安全委員会の審議の中立公正を保つためにも、李下に冠を正さずではないですが、それは学者として外で自由に発言されるのは一向に構わない。しかし、食品安全委員会というくくりの中で、今重大な問題が議論をされているわけですよね。

 吉川座長のところでは、牛から人への感染のリスクを評価していらっしゃる。リスクというのは、言葉が片仮名になっていますから非常にあいまいもことした言葉ですが、端的に言えば、リスクというのは何人死ぬかという意味ですね、早く言えば。感染して何人死ぬかというのがリスクという言葉の定義ですよ。

 さらには、吉川座長のところでは、牛から人への感染までです。しかし、人が一人でも感染すれば、今イギリスで大きな問題になっているように、その方が感染中に、発症する前に、例えば献血をする、あるいは歯医者さんに行く、そのような形で何千人、何万人という方に、公衆衛生上の大問題に発展するようなリスクが今度は発生してくるわけですよ。

 そういう意味において、今食品安全委員会で議論をされていることというのは十分に慎重でなければならないし、いささかも中立性を疑われることがあってはならないというふうに思います。

 ですから、私は、唐木先生の御主張に反論しているわけではなくて、その御主張がいけないと言っているわけではなくて、主張するのであれば、食品安全委員会の外で、専門委員という肩書を持たずにやられるべきである。

 それは御自分は、いや、きょうのこの発言は私は一学者として申し述べておりますといろいろなところでおっしゃるでしょう。しかし、世間の人は、あの人は食品安全委員会の専門委員だ、さらには日本学術会議のBSEと食の安全を考える委員会の委員長だったというふうな見方をするわけじゃないですか。

 そういう世の中の見方を考えるならば、唐木先生に対して寺田委員長は、少なくとも、あなた、報酬をもらっているのかということぐらいは聞いて、それは本当を答えるかどうかはわかりませんよ、唐木先生が本当のことをおっしゃるかどうかわかりませんが、しかし、そのくらいのことは委員長としておやりになられたらどうかなと思います。

 もう一度、今までの私の長々とした演説を聞いて気持ちが変わったかどうか、ちょっとお答えいただけますか。

寺田参考人 お怒りを買うことは重々承知の上で、報酬があったかどうかということはお聞きいたしません。

 といいますのは、先生によく御理解願いたいのは、リスクコミュニケーションの中にいろいろなステークホルダーの方がいらっしゃるわけですね。それぞれいろいろなところで、みんな非常勤でございますから、いろいろな活動をされるわけです。多分どこかでセミナーをしても報酬を伴っておると思います。

 そういうことまで全部ブロックしちゃうと、結局、国民全体をあらわす人は集まってこれなくなっちゃいますので、そういうことで、僕はぎりぎりだけれどもお許し願いたいと前に申し上げましたし、その旨、唐木先生にも、きちっと誤解を招かないようにやってくださいよと、そこが精いっぱいでございますので、これが私の答えでございます。

川内委員 今、いろいろなところでいろいろな方がさまざまな報酬を受け取っているであろうということはおっしゃっていただいたわけでございますが、唐木先生のように、ちょっと余りにも、たびごとの講演の報酬とかであれば問題ないでしょうが、パンフレットの監修をし、さらには御自分で、食の安心、安全を考えるというような形で団体を立ち上げて、ホテルで大々的にシンポジウムを開いていらっしゃるわけですね。

 そのバックには、日本フードサービス協会とか、米国食肉輸出連合会はもちろん、吉野家さんとか、すかいらーくさんとか、さまざまな米国の牛肉の輸入再開を願う、希望している人たちがその後ろにいらっしゃるということのようでございますので、私は、であれば、唐木先生をリスクコミュニケーションの座長代理あるいは専門委員にされるのであれば、業界代表として、業界代表とはっきりと銘打った上でお選びになられたらどうか、その方がわかりやすいですよ。

 学者として選んだというふうに聞いております。評価の専門家であるというふうにして選んだと聞いておりますが、唐木先生の行動は明らかに業界に寄った行動であって、であれば、業界の利益を代表する委員だ、専門委員だということで、国民の皆さんにもわかりやすくされた方がいいのではないかということを、これは私の意見として申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 それでは、吉川座長にお伺いをさせていただきます。

 まず、先ほどの農水委員会、私も傍聴させていただいておりまして、山田正彦議員への答弁で、牛脂を牛の飼料とすることに関しては米国では既に規制されているというふうに御答弁をされたやに私は受け取りました。

 前回、私がこの内閣委員会で金子座長代理に御質問をさせていただいた御答弁では、牛脂に関しては牛の飼料として規制はされていない、それが大問題なんだ、だから資料請求をしているというふうに金子座長代理はおっしゃったんですが、吉川座長の先ほどの答弁を訂正されるのであれば訂正していただきたいというふうに思います。

吉川参考人 済みません、勘違いをしました。

 肉骨粉の規制とちょっと混乱をしていたので、今確かめたところ、日本もある一定量の夾雑物以下であれば、どちらも飼料として動物性油脂を使っている、日本もアメリカも使っているという現状です。そのとおりです。

川内委員 さらに、牛脂については日本は厳しい規制をしているようですが、米国の牛脂については不純物の規制についてほとんど基準がないというふうに聞いております。この点について、吉川座長、いかがでしょうか。

吉川参考人 そのとおりだと思います。

 今そこで言われている動物性油脂というのは、ファンシータローとイエローグリース、二種類あるわけですけれども、多分、肉骨粉のときに副産物としてできるイエローグリースのことをおっしゃっているんだと思いますけれども、そこにはSRM由来のものが入ってくる可能性は十分あるというふうに思います。

川内委員 そこで、SRM由来のものが入ってくる可能性があると今吉川座長はおっしゃいましたが、先週、私が本委員会で御指摘を申し上げたナショナル・レンダラーズ・アソシエーションという米国のレンダリング業界の公表資料によれば、SRM由来の牛脂が年間十六万トン生産をされておる、そしてこれが牛の飼料に使われているというふうに聞いております。

 これらの数字について、吉川座長は、今の御答弁ではSRMが入ってくる可能性があるということだけお答えになられたが、私が申し上げたSRM由来の牛脂が十六万トン、牛の飼料として使われているという事実をまだ把握していなかったということでよろしいでしょうか。

吉川参考人 動物性油脂については、そこのたたき台にあるように、輸入、オランダのを含めて各国から、日本の事情もあってオランダのは先に調査をしたんです、他の国からどのぐらい輸入しているかということに関しても今問い合わせているところです。

 ただ、一言断っておかなければいけないのは、SRMを含む可能性があると言いましたけれども、肉骨粉をつくる過程を見ればわかるとおり、アメリカの場合、SRMはそこに入ってくるわけですけれども、大体、プリオンはたんぱくですから、肉骨粉が一頭の牛から六十五キロくらいつくられるわけで、そのうちの八割以上はたんぱく質。脂の場合、ファンシータローは十三キロくらいつくられるわけですけれども、そこの中に入ってくるたんぱくの不純物というのは大体一%かそれ以下です。

 したがって、そこには千倍以上のたんぱくの量の違いがあるので、そういう意味では、もし動物性油脂で一頭発症するとすれば、肉骨粉の方には千頭分の汚染が行くという重さの違いがあるということは理解しておいていただきたいというふうに思います。

川内委員 その違いは私も十分に理解をしておりますが、牛―牛の感染の場合には、一ミリグラムの摂取量でも、私は素人ですからあれですけれども、一ミリグラムでも感染するんだ。要するに、牛―牛の感染の場合には、ごくごく微量で感染するんだというふうに私ども素人は理解をするわけです。

 そうなると、牛脂の問題というのは、プリオン専門調査会の中においてもしっかりと御議論をいただかなければならない問題ではないかというふうに思っているんですね。委員の先生方も、そのように御認識をしていらっしゃる先生方がいて、資料請求をしたというふうに先日の委員会でお聞きしました。

 金子座長代理と御相談をいただいて、この牛脂の問題についてはしっかりと議論をするということでよろしいでしょうか。

吉川参考人 はい。やらせていただきます。

川内委員 さらにもう一つ、たたき台の二次案の中で、レンダリングの過程で感染価が百分の一になるという吉川座長のたたき台案が示されているわけであります。

 これについて、百分の一という数字に科学的な根拠はありますかということを金子座長代理にお尋ねをいたしましたところ、百分の一という数字に関しては、十分な科学的評価があるとはちょっと申しにくい、しかし、何らかの前提を設けなければリスクの評価が前進しないので、あえて百分の一という数字を使わせていただいた、定性的な評価である、科学に基づいた定量的な数字ではなくて、定性的な数字であるというふうにおっしゃっていらっしゃいました。

 この件について、吉川座長の御見解をお尋ねしたいと思います。

吉川参考人 それは、金子副座長のおっしゃるとおりだと思います。

 そこの項目を見ていただければわかると思うんですけれども、アメリカでこういう格好での飼料規制であった場合、不幸なシナリオでは回転がとまらないというシナリオを検証するために数字をそういう格好で置いたものであって、現実的に、科学的にレンダリングの過程でスパイキングでどこまで落ちるかということに基づいた数字ではありません。

 だから、そこで、一〇%、一〇%で守られなかった場合には、規模は変わらないというのも一つのシナリオとして書いたものであって、アメリカに対して、飼料規制を徹底的にやらない限り、交差汚染を残せば、こういう格好での回転があり得るんだという一つのモデルとして出したものであります。

 強いて言えば、かつてイギリスで規制のなかったときのレンダリングでの、一頭の牛から五年後に増幅する計数が大体四十倍から六十倍です。高汚染国のヨーロッパが大体四倍から五倍。もし、牛の感染価が普通に言われるように八千単位と仮定すれば、多分、最大でレンダリングの過程では百分の一くらいには疫学的には落ちるというふうに考えられますけれども、それがレンダリングの工程そのもので落ちているのか、別の要因も含めて落ちているのかはわかりません。

川内委員 一つの仮定として置かれた数字であるということであるならば、吉川座長は複数の議論をまとめていかなければならないお立場でいらっしゃいますでしょうから、なるべく同等性を証明するような数字にされたのかもしれないですが、私どもとすれば、最悪はこういう場合もあり得るんだというシナリオもお示しいただきたいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

吉川参考人 そこを読んでいただけるとわかると思うんですけれども、モデルなので、百単位まで落ちたところが一〇%と、十回に一回という形で回転すれば減らない、それ以上であれば増幅する、それ以下であれば縮小する、そこは数字はそういうことなので、どういうふうにでも変えることは事実上可能です。ただ、最もありそうなシナリオで考えた場合に、決して減りませんよということを言いたくてそこのモデルを書いたので、そのように理解していただければありがたいというふうに思います。

川内委員 私は専門家じゃないので、何となく、吉川さんに言われると、そんなものかなと、つい言いくるめられそうになってしまうんです。

 では、さらにもう一つ申し上げさせていただくと、鶏ふんの問題ですね。牛の肉骨粉が鶏や豚に与えられている、その鶏がしたふんを今度は牛が飼料として食べているというか使われているということでございます。これは、米国においてはもともと牛の肉骨粉にはSRMが入っているわけでございますが、それを鶏が食べて、ふんを牛が食べる。

 インターネットでいろいろ情報を検索しますと、この鶏ふんの中に牛の肉骨粉が三〇%程度含まれているという情報などもあったりするんですけれども、これは、鶏のふんを床からかき集めるときに、散らばっている肉骨粉が三〇%ある。さらに、ふんの中には当然たんぱくが残留しているというふうに思われるわけですね。

 そういう鶏がしたふんが牛の飼料になっているということについてのリスク評価というのは、このたたき台案の中ではされていないように思いますが、いかがですか。

吉川参考人 確かに、個々の全部のシナリオを考えて、一番そこで言いたかったのは、肉骨粉というものを日本の場合は全部焼却するという格好で回転をとめているわけですけれども、健康な牛のみならず、異常牛あるいは食用に供しなかった牛のSRMも、レンダリングの後、肉骨粉として今言われたように鶏、豚に利用されて、それがまた交差汚染として返ってくるシナリオが成り立つということの重要性をここでは評価したのであって、それぞれのケースに何%というのは、そこで一つのシナリオのモデルにしたように、大まかに十回に一回、そのときの戻ってくる確率が一〇%とすれば減りませんというモデルとして示したのであって、多分、そのシナリオをいろいろな通りで全部のデータを出して総合すれば、それはそれだけ正確になるのかもしれないし、逆に発散してしまうのかもしれません。

 我々のできる範囲とすれば、ある程度の幅で、こういうシナリオとすれば、このくらいのリスクとして問題が残りますという評価で限界というか、それ以上の個々の農家でどういうシナリオが成り立って、こういうケースの場合は何が成り立って、そのときには何%返ってきて、それがアメリカ全体ですればどのぐらいの割合の率でというような複雑な方程式を解くほどの実力は残念ながら我々にはないので、もう少し大きな枠で、このくらいのリスク、このくらいのリスクということを総合して、答申に答えられるか答えられないか、今そこを詰めているところですけれども、そういうアプローチで、そこに書いてあるように、一部定性的に評価せざるを得ないというような一つの限界があるということを前提にやっているわけです。

川内委員 現在得られている科学的知見に基づいて評価を行うということが食品安全基本法に書いてありますよね。今私が申し上げているさまざまなデータは、米国の公式な資料、公表資料に基づくものであります。したがって、非常に複雑な方程式になるのかもしれませんが、先ほど私が申し上げたとおり、この問題は公衆衛生の大きな問題にまで発展をし得る問題でありますから、さまざまなデータを総合して複雑な方程式を解いていただきたいんですね。

 だから、そういう意味では、今私が申し上げたSRM由来の肉骨粉がどのくらいあるのか、鶏に年間何万トン与えられているのか、そして鶏ふんはどのくらい牛に与えられているのか、その中に肉骨粉がどのくらい含まれているのかということについて、私はやはり、米国に、これは一体どうなっているんだということを資料照会すべきではないかというふうに思いますが、どうですか、される気はないですか。

吉川参考人 動物性油脂及び肉骨粉の総生産量に関しては、既に統計があると思います。ただ、個々のケース、豚が食べた場合に、残飯を含めて、肉骨粉が戻ってくる確率がどのくらい、量がどのくらい、鶏の場合がどのくらい、あるいはネバダ州の鶏だとどのぐらい、アイオワ州だとどのくらいというような、あるいは飼育規模によって多分また、あるいは産卵鶏、肉用鶏はまた違うわけで、それを全部リストアップして、それぞれについての平均的なものをとって、母集団をそこに掛け合わせてという回転シナリオを全部書いて、そこに変数を入れていくというのは、確かにサイエンティフィックではあるんですけれども、正直言って、かなり荷が重い。

 それよりは、どのぐらいの規模の汚染であって、そのうちどのぐらいのものを含めて、肉骨粉の方に入っていっているわけですから、それがもしこのくらいの規模で返ってくるとすれば、そこでは増幅がとまっていないのか、それとも、ハーバードの言うように消えていくというシナリオが本当に正しいのか、そういう検証はある程度可能かと思うんですけれども、個々のシナリオの重みづけの評価をするというのは、ちょっと我々委員会としては、実質上かなり厳しいという答えにならざるを得ない気がします。

川内委員 吉川座長、先ほどのレンダリングのこともそうですけれども、EFSA、欧州食品安全庁という組織がございますが、このEFSAが米国のレンダリングシステムを評価して、米国のレンダリングシステムでは、大気圧のもとで加工しているから、BSE感染性が工程に入れば、これを大きく減らすとは考えられないという評価をしているわけですね。

 レンダリング産業は、したがって最終評価としては不合格というような評価なんだそうです。

 私たちは、こういうネット上の情報を見て、先ほどの百分の一という定性的な数字、百分の一という数字を使えば、我々素人から見れば定量的な評価をしているように一瞬思えるんですが、実は百分の一という数字は定性的な数字なんですよね、お認めになられたように。

 しかし、他方、レンダリングの評価は感染性を減らすとは考えられないと、欧州食品安全庁は米国のレンダリングシステムを評価して言っている。さまざまな矛盾を感じるんですね。

 そういう中で、今吉川座長が、私がさまざまなことを申し上げた中で、いや、そこまでぎりぎりやるのは私には荷が重いとおっしゃるわけですが、しかし、後ろに、さまざまな計算をしてくれる優秀な役所の人たちや、手伝ってくれる学者の先生方もいらっしゃるわけですから、私はぜひそれをやっていただきたいというふうに思うんですね。そうでなければ、やはり国民の皆さんに対する安心とか安全というものが保証できないのではないかというふうに思うんです。

 金子座長代理が先週、ミンク脳症のミンクのことや狂シカ病のシカのこと、レンダリングの過程にこれらのミンクやシカが大量に混入しているのではないかという私の指摘に対して、吉川座長と相談して、安全に軸足を置いた方向で検討したいと思いますとお答えになられていらっしゃいます。

 これらのミンクやシカのことについては、プリオン専門調査会で米国に資料請求をした上で議論すべきであるというふうに私は思いますが、金子座長代理ともう既に御相談をされていらっしゃると思いますので、御見解をいただきたいというふうに思います。

吉川参考人 確かに、アメリカには以前から、特にウィスコンシンを初めとして、ミンク脳症が何回か流行を起こしております。かなり不定期的に流行を起こしています。また一方、北部を含めて、シカの、CWDと言っていますけれども、慢性消耗性疾患としたプリオン病があって、これもアメリカに存在するということは、プリオン専門委員皆承知しております。

 実際に、ミンクのそれぞれの流行期に本当に罹患したミンクがレンダリングをされて飼料になったのかどうなのかというのは、余り、資料を見てもよくわかりません。その辺は事務局に問い合わせていただきたいと思います。

 それから、シカについても、そういう事実があることは、スクレーピーも含めて、皆さん、専門家はよく知っています。実際に幾つかの感染実験はシカについてはありますけれども、それがどの程度自然感染として、レンダリングされていて、また牛に来るのか、牛から人に来得るのか、その辺については、専門委員会として資料に基づいて議論したいというふうに考えております。

川内委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 さらにもう一点、先週の委員会で金子座長代理に私がお伺いをした件で、宿題になっている件がございまして、畜産システム研究会報という、飼料の専門家あるいは飼料の統計学の専門家の先生方などの論文集でありますが、金子座長代理は、この畜産システム研究会報を読んだというふうにおっしゃっていらっしゃいました。吉川先生はお読みになられましたか。

吉川参考人 はい。畜産システム研究会から直接議事録と論文集を送っていただいて、読みました。

川内委員 この中で、広島大学の三谷先生、日本獣医畜産大学の木村先生が、日本のBSEの感染源は代用乳ではないのかと、農水省のBSE検討会の報告書が肉骨粉の交差汚染であるというふうに結論づけていることを批判していらっしゃるわけであります。

 私もここでちょっとおわびと訂正をさせていただきます。

 私は、先週の本委員会で、代用乳が日本のBSEの感染源ではない、代用乳が感染源ではない確率が五十五兆五千億分の一というふうに申し上げたわけでありますが、これは私の間違いでございまして、この畜産システム研究会報とは別な論文でその数字を見たものですから、つい申し上げてしまったんですけれども、正しくは、その論文に書いてある数字は二兆分の一、代用乳が原因ではない確率が二兆分の一。

 五十五兆分の一も二兆分の一も、天文学的な数字という意味ではほとんど変わらないんじゃないのかなと私は思うんですけれども、そのくらい代用乳が原因ではないかというふうに三谷先生や木村先生はおっしゃっていらっしゃるわけであります。

 かつて農林水産委員会で武部農水大臣が、感染源は何が何でも突きとめる、原因は絶対解明するというふうに御答弁になられて、そしてまた、農水大臣、厚生労働大臣が基本計画を立案されて、その基本計画の中にも原因は必ず解明するという政府の方針が示されているわけであります。

 そういう意味において、何が原因だったのかということについては、三谷先生や木村先生の御意見というのは非常に貴重な意見であるというふうに私は思います。

 そういう中で、金子座長代理は、これも吉川座長と相談をさせていただいて、プリオン専門調査会で話を聞くかどうか検討したいというふうに先週おっしゃいました。

 これは、あらゆる問題の出発点になる話だと思うんですね、原因を特定していくという話は。そういう意味においては、三谷先生、木村先生をプリオン専門調査会にお呼びになられて、ぜひ話を聞いていただきたい、その折は私も傍聴させていただきたいというふうに思いますが、座長の御見解はいかがでございましょう。

吉川参考人 読ませていただいて、私も実はあのときの農水省のBSEの疫学調査班の一人で、僕の場合は、すべてのシナリオを等分に考えた上で評価しようという、やや従来の疫学調査とは違う視点で分析をした。動物性油脂も否定はできないけれども、肉骨粉の交差汚染も否定できないという、ちょっと複雑なシナリオに僕の場合はならざるを得なかったんです。

 当時、七頭まですべて、おっしゃるとおり代用乳を、特に某工場でつくられた代用乳をみんな共通に飲んでいましたので、当然、すべての牛が、特に関東以北の牛はすべてあそこのロットを使っていますから全部ヒットするもので、それを否定するというのは非常に難しいけれども、逆に言うと、肯定するのも、全部の牛が飲んじゃっているわけですから、飲まない牛と飲んだ牛で、そこでBSEが出る出ないという差が出れば、統計学的にカイ自乗検定でも何でも使えるんですけれども、非常に専門の先生も結構苦しんで、あのときの結論としては、肉骨粉の交差汚染の方が可能性が高いという結論になったと記憶しております。ただ、代用乳の重要性というのは決して否定できないと思いますし、参考にできれば聞いてみたいと思います。

 ただ、先ほど言ったように、もし、先ほどのたんぱく量にこだわるわけではないですけれども、動物性油脂に入ってくるたんぱく量と肉骨粉のたんぱく量というものの比を考えたときに、千倍近い開きがあるとすれば、あのときの汚染は、その後の調査で死亡牛のはかれなかったものもあるわけですけれども、国内見直しのときに大体四十頭くらいの汚染があっただろうというふうに考えられるわけです。

 それが輸入した脂だとすると、残った肉骨粉はオランダでその千倍規模の汚染をしたとすると、四万頭のBSEをオランダでつくるわけですけれども、それから六年後の二〇〇一年に至っても、オランダではまだ三十カ月以上の全頭検査で十数頭しか出てこないということを考えると、そのシナリオもどこかで何かの説明できない問題があるというふうに、どっちも問題がある問題なんですけれども、そういうふうに私は個人的には思っています。

 ただ、委員会にはできれば来て、その辺の説明、私の今の疑問に対しても答えていただけるとありがたいというふうに思います。

川内委員 ぜひ、三谷先生、木村先生をこの結論を出す前に呼んで、議論をしていただいて、さまざまな問題点について解明をしていただきたいというふうに思います。

 要するに、BSEとか異常プリオンについてはわからないことが多過ぎると思うんですね。そういう中で、寺田委員長や吉川座長は、管理側から言われた諮問に対して、本当に四苦八苦されている。情報も十分ではない、資料も十分ではないということを先ほどから繰り返し繰り返し吉川座長もおっしゃっていらっしゃるわけでございます。

 私は、本当に、日本は、実質的には全頭検査が継続する、さらには飼料規制、SRMの除去、トレーサビリティー、この四本柱で安心と安全を守っているわけですよね。安心と安全を守っている。安全だけではなくて安心も守っているわけですね。

 しかし、米国の飼料規制は相当に劣っている。SRMの除去についても、完全に除去できればいいかもしれないが、年間三千五百万頭も屠畜する米国において、SRMの除去が完全にできるとはとても思えない。完全にできるという方が非科学的だ。さらには、トレーサビリティーのシステムもない。検査も、サーベイランスで、抜き取りで調査をしているだけだ。これは、同等性を諮問するのが間違っておると私は思うんですね。

 だから、全然複雑な方程式が解けないわけです、先ほど吉川座長がおっしゃるように。あらゆる資料を、あらゆる数字を整えて複雑な方程式を解いて、日本とアメリカはイコールだというふうに言えるのであれば、それこそが科学的知見でありますが、先ほど吉川座長が図らずもお認めになられたように、ちょっといろいろわからぬことはあるが、大体こんな感じなんだということで結論をまとめて、しかし、それは、牛から人へのリスクはそうかもしれないけれども、一人でもヤコブ病にかかり、その潜伏中に輸血などをされる方がいるとすれば、その後、何千人、何万人という公衆衛生の問題に発展をするわけであります。

 これは、ただ単に牛どんとか牛タンの問題ではなくて、人間の命、公衆衛生すべてにかかわる問題であるという観点から考えれば、私は、この諮問はちょっと検討するには情報が少な過ぎるということで、諮問を突き返すべきだ、もうちょっとちゃんと情報を提供してくれたら検討しますよというふうにされるべきであるというふうに思いますが、座長の御見解はいかがでしょうかね、そんなことは、はい、わかりましたとは言えないですけれども。

吉川参考人 おっしゃる部分、多少わかるというか、本当は最初に受けたときに、そういう悩みを持ちました、多分、とても難しい、アンノウンのことが多過ぎて。

 ただ、この諮問の内容を見ると、実に、結構うまくできているという感じも、もう片方でするんですね。

 何を比較しろと言っているかというふうに見ると、日本は、国内で流通している全年齢の牛です。二〇〇一年の飼料規制をする前、今のアメリカに近い状態で、SRMをレンダリングで回していた牛も全部含めて、屠畜場に来る牛のリスク、これを何で除いているかというと、BSEの検査とSRMの除去で除いているわけです。当然、検出限界以下の牛については安全性が保証できませんから、SRMの除去で対応するという措置をとっているわけです。

 アメリカは、当然、全部を比べたら、今言われたように、これは規制は全然いっていませんし、トレーサビリティーはごく一部の若い牛を除けばほとんどできていませんし、飼料規制もそういう意味では二〇〇一年前の日本の状態が続いているわけですから、当然、比較するべくもない。

 だから、当然、ダブルスタンダードをアメリカはとったわけですよね。二十カ月以下、基本的には検査しても出てこないだろうというところで、リスクの同等性の一つを保証しようという考えだと思うんです。もう一つは、SRMの除去という格好で同等性を保証しよう。そのときにリスクの同等性はどういうことになるんだという評価をしろという問いなんです。

 だから、先ほど言われたように、現在のアメリカと現在の日本のリスクの大きさを比較しろというなら、これは同等でないという結論は初めからあったんだと思います。

 だから、輸出規制条件を設けて、こういう条件でやったらそこのリスクの大きさというものは同じ範疇に入るんだろうか、入らないんだろうかという評価をしてくれという問い合わせだろうと思って分析しているところです。

 十分に答えになったかどうかは私も自信はありませんけれども、そういう努力をしているというところです。

川内委員 時間が来てしまいましたので、本当は厚生労働省にはクロイツフェルト・ヤコブ病の米国における集団発生の状況等についてお尋ねをするつもりでありましたが、ちょっと時間がなくて質問できません。済みません。

 さらに、寺田委員長、吉川座長、ありがとうございます。

 今、規制を設ければその同等性が証明される、非常に諮問がうまくできているという吉川座長の御評価でありましたが、しかし、私は実は食品の偽装表示の問題にずっと取り組んできておりまして、食品業界、さまざまな偽装表示がまだまだ続いているし、これは書類上で大丈夫だからオーケーだというふうにはなかなかいかない状況ではないか。

 そういう状況の中で、今、食品安全委員会の議論が、プリオン専門調査会の議論がされているわけですから、きょう座長が、それはやりたいとか、やりますとおっしゃったことについては、結論を出す前にぜひやっていただいて、結論を国民の前にお示しいただきたいということをお願いして、質問を終わらせていただきます。

 本当にありがとうございました。

佐藤委員長 次回は、来る二十六日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四分散会


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