衆議院

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第4号 平成18年4月21日(金曜日)

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平成十八年四月二十一日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 佐藤 剛男君

   理事 木村  勉君 理事 戸井田とおる君

   理事 西村 康稔君 理事 林田  彪君

   理事 山本  拓君 理事 泉  健太君

   理事 大島  敦君 理事 田端 正広君

      赤澤 亮正君    新井 悦二君

      遠藤 宣彦君    小野 次郎君

      小渕 優子君    大野 松茂君

      木原 誠二君    後藤田正純君

      土屋 品子君    土井  亨君

      中森ふくよ君    並木 正芳君

      平井たくや君    牧原 秀樹君

      村上誠一郎君    村田 吉隆君

      市村浩一郎君    枝野 幸男君

      大畠 章宏君    川内 博史君

      小宮山洋子君    鉢呂 吉雄君

      太田 昭宏君    石井 郁子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           枝野 幸男君

   議員           小宮山洋子君

   国務大臣

   (少子化・男女共同参画担当)           猪口 邦子君

   内閣府副大臣       山口 泰明君

   内閣府大臣政務官     後藤田正純君

   内閣府大臣政務官     平井たくや君

   内閣府大臣政務官     山谷えり子君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   政府参考人

   (内閣府国民生活局長)  田口 義明君

   内閣委員会専門員     堤  貞雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  大野 松茂君     新井 悦二君

  土屋 品子君     並木 正芳君

  大畠 章宏君     枝野 幸男君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     牧原 秀樹君

  並木 正芳君     土屋 品子君

  枝野 幸男君     大畠 章宏君

同日

 辞任         補欠選任

  牧原 秀樹君     大野 松茂君

    ―――――――――――――

四月十八日

 憲法改悪に関する請願(仙谷由人君紹介)(第一四九四号)

 同(金田誠一君紹介)(第一五〇六号)

 同(保坂展人君紹介)(第一五〇七号)

 同(阿部知子君紹介)(第一五五七号)

 憲法の改悪に反対し、憲法九条を守ることに関する請願(保坂展人君紹介)(第一五〇五号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一五五二号)

 同(石井郁子君紹介)(第一五五三号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五五四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五五五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一五五六号)

 憲法の改悪反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第一五二一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五二二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五二三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一五二四号)

 憲法九条を守ることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五二五号)

 同(石井郁子君紹介)(第一五二六号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五二七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五二八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一五二九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五三〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五三一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五三二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一五三三号)

 憲法改悪反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五三四号)

 同(石井郁子君紹介)(第一五三五号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五三六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五三七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一五三八号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五三九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五四〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五四一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一五四二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一六四四号)

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五四三号)

 同(石井郁子君紹介)(第一五四四号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五四五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五四六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一五四七号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五四八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五四九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五五〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一五五一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一六四五号)

 憲法の改悪反対することに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一六四三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 消費者契約法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)

 消費者契約法の一部を改正する法律案(菊田真紀子君外三名提出、衆法第一九号)


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、消費者契約法の一部を改正する法律案及び菊田真紀子君外三名提出、消費者契約法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、来る二十六日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣府国民生活局長田口義明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本拓君。

山本(拓)委員 どうも、山本です。

 きょうは、議員立法として民主党が出されました法案につきまして、敬意を表して質問をさせていただこうということでございまして、よろしくお願いします。

 基本的に、消費者契約法というのは、これは大変大切な法律で、うまく機能しているところがあると思うんですが、全国に四百五十万ぐらいの事業主が、今少し減っているかもしれませんが、おるんだろうと思うんですね。

 私、個人的に言うと、もともとメーカー業をやっていまして、選挙を離れたときも少しメーカーに携わっていたものですから、そういうメーカーの立場、中小のメーカーの立場から考えますと非常に、消費者というのは国内に一億二千万人おるんですね。いろいろな人がいるわけですよ。そして、どこのメーカーも最近はコンプライアンス経営で、お客様相談室というものをしっかりつけていて、そこに入ってくる要求というのはどうしようもないのも結構あるんですね。

 また、選挙もそうですけれども、どこも、企業、ライバル会社がありまして、そのライバル会社もまた消費者になるんですよ。

 例えば直近の話で、シートベルトが義務化になりまして、特にチャイルドシートなんかが義務化になりましたね。あのときに、国交省が認可をするということで数社が認可を受けて、そしてまた、国の認可基準というのはある程度一律に決まっているんですが、使い勝手とか、またその基準もいろいろありますから、それに対して、あるとき突然、子供の安全を守る会という任意団体が、雑誌上で、市場に市販されている認可品を全部買い集めて、そして実際にぶつけテストをやっているんですね。それを雑誌に載せたわけですよ。その雑誌というのも、メジャーじゃなしに、こんな、よく本屋なんかでちょっと置いてある種本みたいなものなんです。

 それが、ああ、そうかと。そこに参加したというか、一方的に引きずり込まれた各メーカーの成績表が出るわけですね。A社のものはバツ、A社のものは三角、A社のものは問題外とか二重マルとか、これが一方的に実験させられて、要するに誌上に載っかって、市販された。

 結果的にそれがどのように使われたかというと、二重マルのを扱っている業者は各バイヤーのところを、うちの商品は二重マルでしたよ、ライバル会社のものはペケ品でしたよと一生懸命回っているんですね。各バイヤーから、おたくのはちょっと遠慮しておくわとか、大分仕入れが入れかわった事例があるんですね。

 そういう被害を受けたメーカーがみんな、おかしい、おかしいと。それを主催した団体は単なる任意団体です。しかし、実際、例えばつくばにあるシミュレーションのぶつけテストでも、ワンショット三十五万かかるんですね。実際にばんとぶつけているわけですよ。どう考えても、この実験経費というのが一千万を出ているんですね。こんな一千万以上の経費をかけて、何で、だれが金を出したんだろうといって、後でわかったことですが、その二重マルを得たメーカーの子会社がお金を出していたんですね。だから、これは逆に、純粋に考えると、その後、国の方でアセスメントという正式なものをつけていただいて、今はもう公平にやっていただいていますが。

 だから、絶えず、消費者団体を名乗る人を一皮めくると、みんなが善良者じゃなしに、変なのがいる。だから、変なのがいたとき、みんながみんな変だとは言いませんが、大手なんかは意外としっかり弁護士団をつけて逐一やるんですが、中小企業とか、そういうところに手薄なところがあかん。

 そしてもう一つ、消費者もいろいろいまして、先日、たまたまテレビを見ておったら、ある番組ですが、あるレストランで試しに全部髪の毛をあえて入れておいてお客さんがどう反応するかという、トリビアの泉でやっていたんですが、そうしたら三種類に分かれるんですね。

 スパゲッティの上に乗っていた。一つは、ああ、こんな髪の毛が入っていたって、自分でぽっとよけて無視して食べる人。もう一つは、さりげなく店員を呼んで、これは髪の毛が入っていたよ、かえてちょうだいという普通の対応をする人。もう一つは、呼んで、これ、入っているじゃないか、かえますと言ったら、かえただけで済むと思っているのか、何とか落とし前をつけろとごねる人、要するに料金をただにしろとごねる人。大きく分けるとこの三種類やっていたんですよ。だから、それはどれが正しいというわけじゃないですが、これは一般の消費者を代表するあらわれだと思うんですね。

 余り一人で演説していたらあきませんので、民主党さんの、消費者の団体というか、登録制にしまして、そして詐欺なり公序良俗違反、これも非常にあいまいでありますが、そういう団体は、すべて国内の中小企業も含めて全部それにかぶってくるわけでありますから、そこらあたりが弊害が起こらないように、そういう悪用、濫用されない、要するにそういう団体は悪人がいないということを前提とした歯どめ策というか、そういう考慮は何かなされていますか。

枝野議員 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 先生御指摘をされましたように、消費者団体を装うとか、あるいはいわゆるクレーマーのような人たち、こういう人たちが存在をするということは、大部分の本当の意味での消費者団体の皆さん、あるいは本当の意味での消費者の利害をちゃんと守ろうという皆さんにとっても、大変迷惑な話だと思っております。

 私たちも今回の法案で、適格消費者団体を政府案とは違って登録制にいたしました。だからといって、消費者団体を装う人たちがそこに登録をされるということがあってはならないというふうに考えておりまして、登録制でございますが、もちろんその登録の基準というものを明確にしております。

 今、同業他社が消費者の立場を装ってというような例を出されておりましたが、そうしたことがないように、役員の構成について、特定の事業者の関係者あるいは同一業界関係者が一定割合以下であることを登録要件といたしております。それから、もちろん暴力団関係者は役員に含んではいけないというようなことも入れております。

 それから、実際に登録を受けても、その適格消費者団体が、自己または第三者の不正な利益を図ることを目的として、差しとめ請求権を行使してはならないことをきちっと責務規定として置いておりますし、財務諸表等の定期的な公開等を義務づけております。そして、こうしたことがきちっと担保をされるように、内閣総理大臣による報告徴収や立入検査、改善命令、登録の取り消しなどというきちっとした手当てを設けております。

 さらにいえば、そうした消費者団体を装うような人たちが適格消費者団体の登録をしたとしても、例えば、訴訟等の場合において、相手方から、金銭その他の財産上の利益を受けてはいけないとしておりまして、しかも、それには罰則を設けております。

 したがいまして、登録制であるということでありますけれども、この適格消費者団体の登録を、何というんでしょう、悪意を持って受けようとしてもなかなか受けられませんし、そして、その立場を利用して何かをしようとしてもできないという仕組みはしっかりと担保してございまして、先生御指摘のような危惧は排除できるというふうに考えております。

山本(拓)委員 担保できるとおっしゃるわけですから、それ以上議論しても、我々、私としては、ちょっとできないんじゃないかなと。とにかく、申請者をみんな、書類上、大体要件が合ったら認めちゃうということですから。

 昔、NPO法人のときに、認定を厳しくしろとかいろいろあったときに、NPO法人は、ボランティアをする人はそう悪い人はいない、だから大体オープンにしようということで一回やって、今でもやっていますが、あのときの議論はよく私も存じ上げているんですが、最近、新聞なんかを見ていますと、NPO法人やまびこ会がかたって取り消された、そして、暴力団関係者もNPOを名乗ってとか、NPO法人の不祥事件が新聞をにぎわしている。

 これはなかなか、事件を起こして取り消すのは当たり前なんですが、確かに、事業者にとってみれば、大体政治家に対してもそうですけれども、普通、事業所として利益を上げると、必ず変なのが来るんですよね。赤字の会社には余り来ぬのです。

 だから、それが弱ったことで、というのは、訴えるぞと言われただけで、大概、お客様相談室に来るのは、何だったらこれ訴えるぞと、おどしでもないけれどもおどしであるという、これも非常に、そこが実際に裁判にかけられたら正々堂々と戦いますから、これは別に恐れることはないんですが、うわさに出るだけで大変迷惑。新聞にどんと、書かれ方によってはそれで株価が上下したりする場合もありますし、やはりそこらの未然防止策というものが大変求められるのが今の問題点ではないかなというふうに考えているところでございます。

 これはもう、本当にこれだけの法案を仕上げるというのは大変な、僕は敬意を表して、きょうは大臣が午前中三十分いないというものだから、では民主党にしっかりと勉強させてもらおうということだったんです。大変よく勉強というと失礼ですが、これは本当に悪人一人いない、いい人たちの集まりが前提だったら、こんなにすばらしい民主党案はないと思うんですが、時々変なのがいる世の中だから。政治家だって、ほとんどの政治家がみんなまじめにやっているのに、たまに変なのがいると、みんな政治家はばかたれと言われるのと一緒で。

 それは、たまにの被害が、特に最近は、企業側にいうと、定年延長せにゃいかぬのです。実際、私も五十を過ぎましたけれども、老眼鏡が必要になる人は、今はもう正直な話、企業では本当は余り必要ないんですよ。しかし、それを雇えと。そしてまた、障害者福祉の授産施設も、結構メーカーは使っているんですよ。やはり福祉政策で、そういうものを使えば使うほど、どうしても不良品率が高くなっちゃうんですよ。それが、要するに故意犯じゃなしに出ると、どうしてもそこらあたりが、消費者によっては、これはおかしいなと。

 これはもう、裁判自体も非常に、アメリカなんかは、熱いコーヒーで被害を受けたら、物まねして日本でも結構そういう動きがありましたし、ひどい話でいくと、日本のメーカーが、テキサスでトラックの事故が起きて、それでシートベルトが切れちゃって、ドライバーがけがして、そしてそのドライバーが、アメリカ人ですが、トラック会社を訴えるんじゃなしに、このシートベルトメーカーを訴えてきたんです、アメリカで。

 その人は葉巻を吸ってぼろぼろこぼしているから、シートベルトが穴だらけだったんですね。だから当然、日本側のメーカーとしては、こんなシートベルト、きちっと、穴があいていたから切れたので、悪くないと。ところが、向こうは陪審員制度ですから、一流の言い回しのうまい枝野さんみたいな弁護士にかかっちゃうと、有罪になっちゃったんですよ。なぜかというと、データによると、テキサス州のトラックを運転している六割、七割は、みんな葉巻を吸って運転しているらしい。そういうところで発売するシートベルトは、それに耐えるシートベルトにしないメーカーが悪いんだ、もちろん、これは日本のメーカーだということで特に感情論でいっちゃったみたいなんですが。

 とにかく、とかく消費者の言い方というのは、一般的に想定されるような弱い消費者というか、だまされたとか、それは確かにかわいそうですから助けなきゃいかぬですが、そうだからといって、性善説などと違う、一律にやっちゃうとかわいそうなものが、企業犯罪絡みの悪質と、悪徳弁護士もひどいのもいますから、やられちゃう可能性が現実的にある。

 だから、先ほど登録だからいいという話でしたが、国の場合は、認定でさえきちっと行政裁量権でマル・バツつけますけれども、登録制は、要件で行政裁量権を排除していますよね。行政裁量権を排除しているということは、それでは、だれがグレーのところか。例えば、生協はいいんですよね。書いてあったからね、消費者団体だっけ、生協はいい。生協がいいんなら、農協はいいんですか。生協と農協と一緒のことをやっていますよね。

枝野議員 お褒めをいただきまして、ありがとうございます。

 先生御指摘のとおり、世の中すべて性善説で見ることはできない、だからこそ法やルールというものがあるんだと私も思っております。

 ただ、この場合、特に御党の総裁もそうでないかと思いますけれども、今までのお上という意識を変えていくというのがこれからの日本のあり方ではないのか。つまり、悪意を持っておかしなことをするのは、民間だけではない。むしろ、実態として、公務員の中で、違法、不当な行為をしている公務員というのも日々摘発をされておりまして、そういう意味では、民間の中にもおかしな人はいるけれども、裁量権を行使する公務員の側にもおかしな人がいる可能性がある。

 そうした裁量で、当事者の恣意的な判断で物事が決まっていくというのはおかしい。ルールを明確に決めて、そのルールに沿っていれば認める、ルールに沿っていなければ認めないということで、裁量の余地をいかに小さくするかということが、官から民へという時代に求められている立法府の役割であるというふうに思っております。

 今御指摘がありましたとおり、私どもは、適格消費者団体の範囲をできるだけ広くと思っております。したがって、例えば消費生活協同組合なども対象になり得るといたしておりますが、その登録の要件としては、消費者の利益の擁護を主たる目的としているということを挙げております。

 したがいまして、他の目的が主にあって、なおかつ、その一部として消費者にかかわるようなことをしている、例えば、私が判断します限りでは、農業協同組合は、消費者という立場で協同して物事を進めるというのではなくて、農業という業を行う人たちの協同して行う中間法人であるというふうに思っておりますので、主たる目的が消費者の利益ではないと判断をされるというふうに考えております。

山本(拓)委員 その主たるという判断は、だれが。それはいろいろ枝野氏のおっしゃることはよくわかります。しかし、実態的に、では農協だって、経済連で生産者側と切り分けして、全く生協と一緒なことをやっている組織もだめなんですか。

枝野議員 それは本法の問題というよりも、むしろ法人格を取得している各根拠法によって、例えばこの目的のためにこういった形の、一般的ではない法人格の取得ができるというようなことの根拠法がそれぞれあるはずでございます。したがいまして、その根拠法に基づくと、消費者の利益の擁護というのが主たる目的と認め得るのか、あるいは入るのかということが、むしろその各根拠法のところで判断できるというふうに考えております。

 例えば、今、農協のような組織が別法人にしてというようなお話がありましたけれども、そこが明確に別法人で、その別法人としての根拠法とか、その主たる目的のところが消費者の利益の擁護ということであるならば、それこそ行政改革の委員会で業界団体と政治連盟の話について、もし別の組織でちゃんと仕分けができていれば、公益法人としての業界団体は、自民党に対する、自民党に限らないですが、政治献金は禁止だけれども、しかし、別組織で、別の根拠法に基づいて別の政治団体をつくっていて、別会計でちゃんとやっているならば、それは公益法人としての政治献金禁止はかぶらないという説明を政府がなさっておりましたが、似たような話で、根拠法がどこにあるか、そしてそれがちゃんと組織として別組織になっているか、こういったところで実質的に判断できるというふうに思っております。

山本(拓)委員 私が知りたかったのは、根拠法には、ある意味では広く、複数書いてある場合があります。例えば、企業でも、今よくお話しの主たる営業種目とか主たる項目とか、NPO法人でも主たる業務とか、そこに一つではなしに十でも二十でも並んでいることがあります。要するに、税務署的にも法務局的にも、主たるという欄に、極端な話、百書いてあっても一つ書いてあれば、それは主たるとみなすという扱いもすることがあります。だから、そういうことを考えますと、消費者に寄与するということを言葉の一部分に書いてあるだけでそれを排除する理由が見当たらないだろう。

 だから、私がちょっと確認したかったのは、行政の裁量権を省いて根拠法によるという、これは例えば民主党の提案者がそこの総責任者になってジャッジをするんなら安心していいんですが、要するに裁量権をそれは省くということですから、私はこう思う、農協の担当者の人は、いや、生協だけ認めて、することは一緒なのにうちだけ認めないのはおかしいじゃないかと。それをだめだといったら、これは行政権ですから。客観的に見て、だれでもがなるほどなというものを一つ担保しておかないと、あれがよくてあれがだめだという話ではトラブルのもとになるし、どこかで、えいやと。

 ましてや、これは裁判が起きて、何で認定しないという訴訟の対象になる可能性も非常に強いなという懸念を一つ持ったものですから、ここらは一つ明確に、行政権の排除というのは理想的でありますから、そして最近では、役人が嫌がらせとか、それを不作為の行為でしない場合には、行政手続法で請求とかきちっとやれるようになってきていますし、だから、違った方向で。

 だから、要は、自由裁量はいいんだけれども、くれぐれも私がお願いしたかったのは、例えば、中間法人でチェーンストア協会とかいろいろあるんですよ。それは業者の集まりです。またパチンコ屋さんでも、チェーンストア業界で、一つのグループでみんな中間法人を取り始めたり、そうすると、結局ライバルでけんかし合っているんですよ。そういう団体を取っちゃうと幾らでもというおそれがあるから、いっぱいできちゃうのは困るかなと。

 それと、先ほど登録制をされましたが、これは提出したものをきちっとやれば、むしろ行政の場合は届け出制、登録制、認可制の幾つかありますよね、一般的に。これは、そういう趣旨なら、あえて登録にしなくたって届け出制でよかったのかなとも思うんです。

 なぜかというと、政府登録という話になると、英語で言うとオーソライズされた、こうなるんですね。昔、ある経済産業省の認可団体というか登録団体で、協業組合とか、そういう組合があるんですよ。これが、ビッグサイトなんかで世界防災展というのがあって、世界じゅうから外国バイヤーがいっぱい来ます、日本の一流上場企業も並んでいますよ。そこに、あるとき頼まれて名前だけ、名前だけというとあれですが、下請として展示するときに、日本語じゃわからないということで、向こうの翻訳家が英語入りのパネルをつくった。

 そうすると、要するに普通に言う政府登録というのは、オーソライズド・バイ・ジャパニーズ・ガバメント組合、こうなる。英語で書くと、オーソライズド・バイ。そうすると、世界じゅうのバイヤーが、三井造船よりも一流の企業よりも、オーソライズド・バイ・ジャパニーズ・ガバメントの表のあるところに名刺をぼんと積んでいく。

 だから、我々、普通、認可団体だ何だといっても、どこにでもあるおっさんかと思うんだけれども、よく考えてみたら、政府登録とか政府がレジストしたということは、客観的に見て物すごく信用が強いんですね。

 だから、私が恐れるのは、要件が満たされれば、はいどうぞどうぞと認めますよというと、大体、考える人は、まず政府登録団体という名刺を印刷して、それでずっと歩かれて商売をやる人がいるだろうなと。我々、頭に浮かぶだけでいかがわしい何社かは必ずいると確信をしてもいいと思っているんですね。だから、あそこらにかかっちゃかなわぬなと。

 そうすると、恐らくこれが通ると、自己防衛で、ふだんから弁護士事務所との顧問契約をみんなせなあかんようになって、田舎の方では弁護士事務所は大はやりだと思うんです。

 だから、そういうおそれが一般の中小企業者のレベルでいくとちょっとありますので、そこらをきちっと、性善説とそうでない人、たまに変なのがちょっと、一〇〇%純粋な飲み水でも、一滴ポイズンやっただけで全部がおかしくなる、そういうようなことにならないように、こういう消費者の名をかたってやる人を排除する、それをぜひとも確認させていただきたいなというふうにも考えております。

 それと、民主党案の損害賠償についてですけれども、除外申し出の仕組みを講じるということをうたっておりますが、除外申し出をしない人の中には、公告や被害に気づいていない人なども大勢いるわけですね。適格団体敗訴の場合、逆に知らぬ間に訴えて、気がついたときにはもうそれは負けていたといったときに、逆にそういう人たちの損害賠償権まで奪われてしまうんじゃないかなという懸念を持つんですが、その点はいかがですか。

枝野議員 先生の御指摘は幾つかうなずけるところもございまして、先ほどの登録のことで、裁量があってはいけないよねと。

 ただ、私たちは、裁量はゼロには絶対できない、人間のやることですから。ですから、登録制という形でできるだけ裁量の幅を小さくするということをした。実は、政府案の認可の場合は基準はもっとあいまいでございますので、ぜひ政府案を、最低、修正することについて御協力をいただければというふうに思っております。

 それから、今の除外の申し出の話でありますが、もちろん一〇〇%、公告にすべての人が気がつくと言えない可能性があるということは間違いないと思います。

 ただ、それこそ事業者側の立場も考えてみますと、同じような損害賠償請求訴訟が繰り返し行われるということも、せっかく団体訴権を認めて一括でやりましょうということを考えたときには、なかなかこれもしんどいところがあるだろうというようなところのバランスを考えたときに、私たちは、公告を行うこと、それに気がついて、おれはこの裁判に一緒に加わるのは嫌だという人は除外の申し出をするという手続をとることで、ある団体に代表されるのは嫌だという人の利害と、それから、事業者側の利害というものの調整を図ったつもりでおります。

 実は、この広報の仕方は、もちろん官報というのも法案の中に入れておりますが、日刊の新聞紙であるとかインターネット等、さまざまなケースに応じて裁判所がきちっと周知ができるやり方を判断するということにしております。これはケース・バイ・ケースと思っておりますが、だからこそ裁判所の裁量にゆだねざるを得ないと思っているんです。

 例えば、本当に世の中に周知をされているような大型被害であるならば、逆に言ったら、社会面的に報道が先行しているとか、そういったいろいろなケース、事情があり得るわけだと思っています。

 あるいは、被害者のいる地域が限定されているケースと全国に広がっているケースとさまざまなケースがあって、それに応じてきちっと公告をするということで、私は、十分に被害者の皆さんの利害は確保できる。特に、気づいていない人たちは、いずれにしろ権利行使ができない。だからこそ、こういった手続を決めて、公告などもして、気づいていない人も、ああそうか、こうやっておれたちのかわりに訴訟を起こして権利を擁護してくれる人がいるんだということの余地をむしろ広げているということでは、被害者の救済には厚くなるというふうに確信をいたしております。

山本(拓)委員 そういう一方のお考え方ということで理解をさせていただきます。しかしながら、一般的に……。

 時間が来ちゃいました、やめておきます。

 いろいろと中小企業四百五十万ぐらい、これから起業する人、ちょっとそこはみんなライバルがいて、ライバルがうちに帰ったら消費者になって、そこが資金源となって裏で糸を引いていじめをしている実例が、結構もうかっている企業のやり方、政治家と一緒ですよね、必ず足を引っ張られるようなそういうところがありますので、ひとつ、そこらの配慮を含めた法案づくりでお願いいたします。

 ありがとうございます。

佐藤委員長 次に、川内博史君。

川内委員 おはようございます。民主党の川内博史と申します。よろしくお願いを申し上げます。

 大臣は昨日は松戸に行かれたようで、お疲れのところ恐縮でございます。朝ニュースに出ていましたけれども、きのうじゃないんですか、まあ、どうでもいいですけれども。

 まず、今回のこの消費者契約法の一部を改正する法律案について、その前提となる、平成十七年六月二十三日、国民生活審議会消費者政策部会消費者団体訴訟制度検討委員会の作成した「消費者団体訴訟制度の在り方について」という報告書がございます。

 これの四十ページに、「資料二」として、「消費生活に関する苦情・相談件数及び契約・解約、販売方法に係る苦情・相談の割合の推移」ということで二つのグラフが出ておりまして、一つが「消費生活に関する苦情・相談件数の推移」というグラフでございます。

 こちらの方は、一九九四年から二〇〇四年までの間に、苦情の件数が年間二十三万四千件から百七十七万五千件にふえている、物すごい勢いで消費生活に関する苦情相談がふえているということが報告をされておりますが、この中身、どういう苦情相談があるのかという具体の中身について、政府の方から、この法案を検討する前提になる事実になろうかと思いますので、御説明をいただきたいと思います。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 全国の消費生活センターに寄せられます苦情相談でございますが、近年、このグラフにございますように、大変急増しております。

 最近二、三年は、特に二〇〇三年度、二〇〇四年度、この伸びのテンポが非常に大きいわけでございますが、二〇〇三年度、二〇〇四年度は少し特殊要因がございまして、備考の二にございますように、架空請求、不当請求関係のものが二〇〇三年度から二〇〇四年度にかけて大変急増しております。

 三年度は五十万件近く、四年度は六十五万件ぐらいということで、この要因を除きますとトレンドとしてはもう少し緩やかでございますが、苦情相談が全体の傾向として非常にふえているということは否定できない、これは最近の顕著な傾向でございます。

 この主要なものでございますが、この特殊要因を除いた主要なものといたしまして、その下にグラフがございますが、苦情相談のうち、契約、解約あるいは販売方法に関するもの、これが最近年は九割以上を占めているということで、消費者と事業者の契約に関するトラブル、特に販売方法あるいは契約、解約に関するもの、これが大宗を占めているという状況でございます。

 したがいまして、この契約に関するトラブルを何とかしなければいけないということで、このたびの消費者団体訴訟制度という話も問題、課題として出てまいったわけでございます。

川内委員 いや、今の御説明は、契約に関するトラブルが多い、それは私も見ればわかる話で、どんな契約なのか、何の販売に関する契約、具体的なことを教えてくださいというふうに申し上げているわけでございまして、もう少しこのグラフをブレークダウンして、こういう事実がふえているからこの消費者契約法を改正しなければならないんだという、その具体の立法事実についてお述べをいただきたいというふうに思います。(発言する者あり)

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 この百数十万件でございますが、大きな傾向といたしましては勧誘の問題でございますが、不当な勧誘についての問題、例えば、虚偽の事実を伝えて契約をさせるとか、断定的判断の提供、価額が変動するものについて、絶対値上がりしますとかいうことで勧誘をする、あるいはその勧誘の仕方が、消費者のお宅に上がり込んで、深夜まで帰らずにサインをするまで居座る、あるいは、事務所に連れ込んで、そこでサインをするまで帰さない、そういうような契約の締結過程のトラブルが非常に多くなってございます。

 そういうものが業種を問わずかなりふえておりまして、最近年でございますと、その中でも特に、悪質な住宅リフォームの問題でございますとか金融商品の販売方法に関するもの、そういったものが非常にふえてございます。

川内委員 今、後藤田先生が、サラ金だよ、サラ金とおっしゃっていらっしゃったんですが、今、局長の御説明で業種という言葉が出ましたけれども、業種でいえば、この苦情あるいは相談件数の中でどの業種が一番多いのか、あるいは、ベストスリーと言っちゃいけない、ワーストスリーぐらいまでをちょっと御回答いただきたいというふうに思います。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 この百八十万件ぐらいの苦情相談でございますが、分類といたしましては、各地の消費生活センターで相談カードを記入していただきまして、その中のキーワードを中心に、幾つかキーワードを選んで、それに合致するものを分類としてピックアップするということでやってございまして、業種別に何々業が何%というような形では出してございません。

 主に、消費者の方がどういう点でお困りになられて消費生活センターに苦情を持ち込まれたか、そういうときの苦情のキーワードをベースに集計しておりますので、その主要な内容は、先ほど御説明申し上げましたような、不実告知でありますとか断定的判断の提供とか、そういうものが中心を占めている状況でございます。

川内委員 ちょっと私には御説明がよく理解をできないんですけれども、そうすると、政府が今回、国会に提案をされたこの消費者契約法の改正案というものは、例えば、特殊事例というふうに御説明をされた架空請求事案等に対しても対応できる、さらには、消費者が今抱えているさまざまな問題についてすべて対応できる、消費者が団体をつくり認定をもらえば訴訟を起こすことができるというふうな理解でよろしいんですか。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 苦情相談につきましては、まず、消費者のお申し出に基づいて内容を整理してございますので、基本的に、消費生活センターで受け付けた内容、これがベースになっておりますので、消費者契約法の具体的に何条にどういうふうに抵触するかといったようなことで必ずしも十分分類しているわけではございません。

 ただ、消費者契約法は、業種等にかかわりなく、すべての消費者契約に適用される横断的な基本的ルールでございますので、先ほど申し上げましたように、消費者苦情が販売方法とか契約、解約に関するものが中心を占めているという状況でございますので、この消費者契約法をベースとして今回の消費者団体訴訟制度を設計してございますが、そういうことの結果といたしまして、苦情相談については横断的に対象になり得るという状況でございます。

川内委員 それでは、後藤田先生がさっきおっしゃられたサラ金なんかの被害にも対応できるんですか。

田口政府参考人 消費者金融の問題につきましては、基本的に、利息制限法あるいは出資法、さらには貸金業規制法、こういったもので規律がなされてございます。消費者契約法で直接このサラ金等の問題について何らかの行政的な規制等がかかってくるというものではございませんので、サラ金被害の問題についてこの消費者契約法が直接的な規制の根拠になってくるというものではございません。

 消費者契約法は、基本的に私人間の民事ルールになってございますので、そういう中でこの消費者契約法が直接的にルールとして適用される場合に、団体訴訟制度のカバレッジに入ってくるということでございます。

川内委員 それでは、実際に生活をしている中で、そのときそのときの流行というか、最近の小泉先生の改革というのは、確かに改革ではあるが、しかしそれは、はしなくもホリエモンさんがみずから体現したように、法律の中の抜け穴というか、すれすれのところで金をもうける、それが何が悪いんだという考え方の中で、お金持ちになる方はどんどんお金持ちになられるんでしょうが、他方、そういうごく一部のお金持ちがふえるということは、どこかから富が移転しているわけで、その被害を受けるのが消費者であるということになろうかというふうに思います。

 そういう意味で、そのときそのときで、この架空請求事案というのは多分振り込め詐欺のことなんかだろうというふうに思うんですけれども、そういう、お金をむしり取ろう、あるいは消費者からもうけさせてもらおう、あるいは、事業者の中ではもうけさせていただこうと丁寧に考える方もいるかもしれないが、そういう方たちがもうかるところをずっと転々としていく傾向があるというふうに思うんですね。

 そういう意味では、まず業種としての把握をしっかりとされるべきではないかということを申し上げておきたいというふうに思いますし、さらには、他の法律で規制をされているから、消費者のための権利を創設する消費者契約法でその権利をカバーする必要はないんだという考え方は、私はいかにも不十分であるというふうに、これは私の評価であります。

 それでは、今回提案をされている政府案と民主党案、どちらが消費者のための法律であるか。消費者契約法というのは、消費者が、自己責任原則の中で、市場原理の荒波の中でみずからの身をしっかりと守る、そしてまた権利を主張していくという意味で、大きな武器にしていただかなければならない法律であるというふうに思います。そういう意味で、どちらが消費者にとってのより大きな武器になるのかということの比較を少しさせていただきたいというふうに思います。

 民主党の方は、民主党の方はというか、私も民主党ですから、他人事のように言うのはちょっとあれなんですが、きょうは質疑でございますから。

 民主党は、昨年の総選挙のマニフェストにおいて、消費者団体訴訟制度を創設する法案を提出いたしますというふうに宣言をしております。そして、今回、提案者の枝野先生や小宮山先生の御努力によりまして、小宮山さんの御努力によりまして、百円払わなきゃいけないんですけれども、法案が提出されたわけでございますが、まず、本法案の提出に先立って、民主党として、消費者問題に関してどのような取り組みをしていらっしゃったのかということを教えていただきたいというふうに思います。

小宮山(洋)議員 御質問ありがとうございます。

 今、川内委員が御指摘ありましたように、民主党はずっと、生活者、納税者、消費者の立場から政策をつくるということの努力をしてまいりました。日本の消費者行政というのは、一九六八年の消費者保護基本法、これは二〇〇四年に消費者基本法に変えられましたけれども、消費者を守る法制度ということでずっと進んでまいりました。

 けれども、消費者というのは、みずから主体的、積極的な選択で行動をする、ただ、必要な情報を入手したりすることがなかなか困難であるので、そこで私たちは、消費者団体が市場をしっかり監視して消費者の救済のための支援が行えるように、そのためには、情報格差を埋めるための情報を提供するとか消費者教育をするとか、そうした消費者政策への関与といったような活動を通じまして、消費者の権利をみずから実現することができるようにという考え方で取り組んできております。

 特に、二〇〇〇年の消費者契約法制定のときには、民主党は独自の法案を提出しておりまして、この中で、消費者団体訴訟制度導入の検討ということを明記しております。

 その後、マニフェストにおきましても同様の提言をしておりまして、今回の消費者契約法の見直しは、当初、昨年の通常国会に提出をされる予定でございましたので、私たちは二年ぐらい前からワーキングチームをつくりまして、消費者団体の皆さんや弁護士の皆さん、一人一人の生活者の皆さんから、伺えるだけいろいろな御意見を伺って、少しでも広く消費者の皆様がこの制度を活用できるようにという視点から、予防のための差しとめ請求だけではなくて、被害救済の損害賠償の制度も盛り込んだ形で、主体的に、消費者を代表して消費者団体が取り組めるような制度をつくってきたつもりでございます。

川内委員 それでは、今回の消費者契約法の一部を改正する法律案の政府案におきましては、適格消費者団体について、内閣総理大臣による認定制を採用しております。しかし、先ほどの質問で、枝野議員からも政府の認定基準というのはあいまいであるというふうな御指摘があったかと思いますが、政府側にとって都合のよい団体しか認定されないのではないかという懸念も指摘をされているわけでございます。

 この政府案への懸念に対して民主党案はどのようにこたえているのか、そして、民主党案ではどのような仕組みを盛り込んでいらっしゃるのかということを伺わせていただきます。

小宮山(洋)議員 御指摘のとおり、政府案では、適格消費者団体に関しまして政府の裁量の余地が非常に多くございまして、中立公正な立場からこの制度が運用されることについての疑念が生じかねないと考えております。

 適格消費者団体に関する私どもの法案と政府案との主な相違点としましては、第一に、適格性の判断の仕組みについて、政府案が内閣総理大臣による認定制を採用しているのに対しまして、民主党案におきましては登録制を採用していることは、先ほどから枝野議員も御紹介をしたとおりです。

 したがいまして、民主党案におきましては、消費者団体は、法令で明確に規定されている一定の登録拒否事由に該当する場合を除きまして適格消費者団体として登録がなされることとなっておりまして、行政による裁量の余地を広く認めている政府案とは異なっていると考えています。

川内委員 消費者団体訴訟制度が消費者の利益のために有効に機能するには、一定数以上の適格消費者団体が必要であるというふうに私は思います。しかし、政府案では、対象となる団体の数がわずかなものになるのではないかというふうに言われております。

 この政府案への懸念について民主党案の提案者はどのようにお考えになられるか、そしてまた、適格消費者団体の数をふやしていくためにどのような仕組みを盛り込んでいらっしゃるのかということについて教えていただきたいと思います。

小宮山(洋)議員 御指摘のように、せっかく消費者が待ち望んでおりました消費者団体訴訟制度がうまく機能するためには、広く認めなければなりませんが、政府案の場合、非常にその要件が厳しくなっておりまして、また後ほど質疑で明らかになるとは思いますが、九つぐらいしかできないのではないかというようにも聞いております。

 私ども民主党の法案では、できるだけ適格性を広く認めるという観点から、登録の対象となる消費者団体につきまして、民法上の公益法人や特定非営利活動法人に限定することなく、営利を目的としない法人を広く対象に含めることとしております。これによりまして、消費生活協同組合、中間法人など、構成員の相互扶助などを目的とする法人でありましても、消費者の利益の擁護を目的としているという以上、適格消費者団体として登録を受けられることになります。

 また、現在の日本での消費者団体の実情を踏まえまして、消費生活に関する事項の専門家や、弁護士、司法書士などの法律の専門家の意見を求めるための体制が整備をされていることなど、非常に厳しい要件を政府案の場合は設けているんですが、私どもはそうした形のものは設けておりません。

 また、一定の財産的基礎や人的構成を有することも登録の要件としておりますけれども、その具体的内容につきましても、現在の消費者団体の実情を踏まえまして、業務を適正に遂行するために真に必要と認められる範囲内で政令で基準を明記することと民主党案ではしております。

川内委員 適格消費者団体による差しとめ請求権について、今回提出された民主党案は、差しとめ請求の対象となる行為の範囲を広くとることなど、政府案と大きく異なっているというふうに思いますが、その理由と相違点について提案者に御説明をいただきたいと思います。

枝野議員 お答えさせていただきます。

 差しとめ請求に関する政府案と本法案との違いは、差しとめ請求の対象となる事業者等の行為について、政府案が消費者契約法に規定する不当行為に限定しているのに対して、我々は、詐欺行為、強迫行為あるいは民法上の公序良俗違反あるいはモデル約款等の推奨行為と、幅広く認めております。

 実は、消費者契約法に列挙されている不当行為というのは、本来、民法の詐欺あるいは強迫、公序良俗に違反する行為だけでは現実の消費者被害というものを食いとめることができないということで、幾つかの類型化されたものについて、ある意味では詐欺、強迫等の範囲を広げて消費者を保護する、あるいは一定の類型化されたものについて消費者の側の立証責任を事実上軽減する、このために消費者契約法の各列挙されている項目が存在をしているわけであります。

 そこに該当しないけれども、民法上の詐欺、強迫、公序良俗違反に該当するということは、どちらがより悪質ということは一概には言いにくいんですけれども、こうした立証責任の事実上の緩和であるとか類型化というところに入らないけれども、それでも詐欺が立証できる、あるいは公序良俗違反が立証できるケースというのは、相当悪質なケースでありまして、もし政府案のままですと、一番悪質なケースが実は保護されないことになりかねないことになってしまうということなんです。

 もちろん、訴訟を起こす消費者団体の立場からすれば、詐欺、強迫、公序良俗違反を裁判で立証するということは、消費者契約法の列挙事項違反を立証することよりも何倍も困難である。にもかかわらず、それを根拠に訴訟を提起せざるを得ないというような事象に限ってこうしたものが使われるということでありまして、逆にこれがなかったときのアンバランスということを考えると、欠かせない規定ではないかと考えております。

 それからもう一つは、政府案は、当該事業者の不当行為が不特定かつ多数の消費者の利益に影響を及ぼす可能性がある場合と、差しとめ請求の要件を限定しています。

 あえて申し上げれば、実質的にこういったことがあるから、ありそうだから、差しとめ請求という制度を認めるわけでありますが、このことを要件としてしまいますと、消費者団体の側で不特定かつ多数の消費者の利益に影響を及ぼす可能性ということを裁判において主張、立証しなければならないということになりかねません。

 この不特定かつ多数の消費者の利益に影響を及ぼす可能性というのは、どの程度、例えば違法なチラシ等をまこうとしていたのかとか、違法な営業活動を展開しようとしていたのかという、ひとえに事業者側の事情ということを主張、立証するということになりまして、そのことを強いるというのはむしろアンバランスではないかというふうに思っております。

 したがいまして、私どもの案ではこうしたことを要件とはしておりませんが、そもそもが、消費者契約法あるいは民法の強行規定に反する行為ということが前提として存在しているわけですから、そのことが立証されれば十分差しとめ判決をして、不当ではない事業者に過度の負担を強いるものではない、こういうふうに判断をしております。

川内委員 民主党案の方が幅広い、幅広いというか、本当に消費者として戦わなければならない、あるいは消費者を保護しなければならないケースについても対応できるんだという御説明だったわけです。

 もう一つ、今回の民主党案の大きな特徴である、適格消費者団体による損害賠償請求の訴訟制度を盛り込まれたというところが大きな特徴であるというふうに思うんですけれども、そこで、民主党提出者に、政府案では盛り込まれていない損害賠償請求権について法案に盛り込まれた理由、そしてその効果を御説明いただきたいと思います。

小宮山(洋)議員 先ほども申し上げましたように、消費者団体訴訟制度というのは、本当に、消費者団体、消費者が待ち望んでいた制度なわけなんですね。ですから、スタートするときには、予防のための差しとめだけではなくて、被害を救済することができる損害賠償制度をあわせて盛り込むべきだと私たちは考えております。

 消費者被害の多くというのは、非常に広い範囲で多数の被害者に及びますが、一人一人の被害額というとわずかなものが多いので、訴訟まで起こしてと考える人は非常に少なく、被害が救済されないままのことが多いのが現状です。

 それで、諸外国を見ましても、例えばドイツなどでは、消費者団体が損害賠償訴訟を提起することを認められておりますし、アメリカでは、いわゆるクラスアクション制度が導入されまして、代表原告が、被害をこうむったほかの消費者を代表して、一括して訴えを起こすということが認められております。日本でも、選定当事者制度など、司法アクセスの改善が進められてはいますが、まだまだ十分に活用されていないというのが現状です。

 一方で、そのデータもお示しくださったように、多くの消費者トラブル、ますます高度化したというか、巧妙に仕組まれたものが急増をしておりますので、適格消費者団体が消費者団体にかわって事業者に対して損害賠償等の裁判を請求しまして、支払われた金銭を一人一人の消費者に配当できるように損害賠償制度を盛り込むことが必要だと考えました。

 なお、民主党案の場合は、濫訴のおそれがないように、差しとめ請求では適格消費者団体が登録制なのに対しまして、損害賠償では裁判所に申請して許可を得ることとしております。

 昨今の消費者トラブルの状況からいたしまして、この損害賠償制度を設けることによって被害の救済の実効性を確保するとともに、悪質な事業者に不当に得た利益を吐き出させて、事後の不当な行為を抑制することがぜひ必要だと考えて、損害賠償制度も盛り込む形にいたしました。

川内委員 損害賠償請求の制度にいたしましても、先ほど枝野さんから説明をいただいた差しとめ請求権について、広くその権利の行使ができるようにしていらっしゃることなど、民主党案というのは消費者サイドに立っている。

 しかし、政府案は、この審議会の中で議論はされているわけですね、損害賠償請求権に関してはこのように記述をしていらっしゃいます。

 「このように、消費者団体が損害賠償等を請求する制度の導入については、」「手法の展開を十分に注視し、その上で、同制度の必要性も含めて、慎重に検討されるべきである。」さらには、もう一つの大きな論点である推奨行為については、「いわゆる「推奨行為」を差止めの対象とすることについては慎重に検討する必要がある。」というふうに書いてございます。

 この報告書の中で慎重に検討をすることが必要であると書いてあるものは大体今回の政府案の改正案には採用されていないというおもしろい書き方なんですけれども、なぜこういうことになるのか。

 消費者サイドに立つならば、私は審議会の議論も読ませていただきましたけれども、法律の専門家あるいは消費者団体の代表、ほとんどすべての方々、損害賠償請求に関しても、さらには推奨行為を差しとめ請求の対象にするということに関しても多数意見であったというふうに思うんですが、では、なぜこれが採用されなかったのかということを論証していきたいと思います。

 まず、猪口大臣に伺わせていただきますが、平成十七年六月二十三日の国民生活審議会消費者政策部会の消費者団体訴訟制度検討委員会の中で、十八人の委員の中に経済界代表の委員が三名いらっしゃいます。この方たちが、濫訴を防止してくれ、適格消費者団体の要件を厳しくするべきだ、あるいは訴訟の範囲は狭くするべきだということを一貫して御主張していらっしゃいます。結果としてその主張が通っている。あたかも、この経済界の代表の方たちがある種の拒否権を持っていて、経済界の許す範囲で消費者団体訴訟制度を創設していくというような印象を、この議事録を読ませていただくと、強く私は持ちました。

 そもそも政府案の目的というのは、この消費者契約法の改正に関して、政府案が何を目的にしているのか。消費者に市場で戦う武器を与えることを目的にしているのか、それとも、とりあえず形だけはつくるが、なるべく消費者にその武器を使わせないように、経済界に対して気を使ったのか。消費者団体濫訴防止法案になっているんじゃないか、消費者団体訴訟防止法案というか、なるべく動くな、おとなしくしていろという結果になっているんじゃないかというふうに思うんですが、ちょっとその辺についての評価を、いや、政府案はすばらしいんだと持論を展開していただきたいと思いますが、どうぞ。

猪口国務大臣 川内先生にお答え申し上げます。

 まず、国民生活審議会のメンバーにつきまして御指摘がございましたので申し上げますけれども、審議会の運営に当たっては、当然ながら、公正で透明性の高い運営を図っております。また、この構成員の割合につきましてでございますけれども、消費者団体も三名参加しております。また、学者八名その他弁護士の方、消費生活のジャーナリストの方などで構成しておりますので、御理解いただきたいところでございます。

 我が国におきまして新しい制度を立ち上げるに当たりまして、関係各方面の意見が最大限集約されたものと考えております。

 次に、この制度でございますけれども、これは、消費者の被害の発生や拡大の防止を非常に重視した制度でございます。画期的な制度であることは御理解いただいているとおりでございまして、要するに、直接の被害者でない第三者たる消費者団体に請求権を付与するという点において画期的であるわけです。

 さらに、差しとめ請求権の行使でございますが、そもそも、行使されるそのような請求権、差しとめ請求権なんですけれども、社会的にも経済的にも非常に影響が大きいということをまず考えているわけです。ですから、堅実な制度設計をする必要がある。広く国民から信頼される制度の中で、適格消費者団体が消費者全体のために請求権を行使することによって消費者被害の発生や拡大の防止が図られるというところがポイントではないかと考えます。社会的にも経済的にも影響が大きいので堅実な制度設計にしているというのが政府案の趣旨でございます。

川内委員 行政改革推進基本法の中には、政府は「簡素で効率的な政府」を目指すという基本方針を示していらっしゃる。

 この「簡素で効率的な政府」というのは、私は委員会の中で政府に確認をいたしましたが、「小さくて効率的な政府」という、昨年十二月二十四日に発表された行政改革の重要方針、閣議決定文書ですが、これと全く同じ意味であるというふうに政府はおっしゃっていらっしゃる、「小さくて効率的な政府」と「簡素で効率的な政府」というのは同じ意味だと。

 そうすると、それは小さな政府を目指すということと同じだということも確認をしておりますが、小さな政府を目指すということは、まさしく、自己責任原則に基づいてそれぞれがそれぞれの責任のもとで人生を生きていく、行政サービスは最大限に縮小されるということを意味するわけであります。

 そういう中で、消費者に対して、市場の荒波の中で、資本主義の論理がむき出しになっていく中で戦う武器をどう付与していくかということについては、これは、経済界は経済界としてさまざまな武器を持っているわけですから、それに対する消費者にも最大限の武器を付与することによって、それこそ公平公正な戦いが展開をされる。私は、何も消費者を弱者だとは言っていませんよ。事業者も消費者も対等な立場で戦うんですよ。何かあったときには戦うんです、それが本来の民主主義のあり方だと私は思いますよ。

 そういう中で、では、今回の政府案が本当に消費者のために戦う武器を与えているのかということを議論したいわけでありますが、公正で透明な審議会の運営にお努めになられていらっしゃるというふうに御答弁をされました。私は、公正でない、透明でないとは言っていませんからね。公正さが疑われるのではないかということをこれから申し上げようとするわけで、透明性については、すべての資料、すべての議事録が公開をされているわけですから、ある種の透明性については確保されているというふうに思います。

 では、公正さにおいて疑わしい、要するに、消費者に付与されるべき権利が付与されなかったではないかということについて具体的に御指摘を申し上げていきたいというふうに思いますが、先ほども申し上げた、推奨行為が慎重に検討する必要があるとされて本法案に採用されないことになったのはなぜなのかということについて、簡単に御説明をいただきたいと思います。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 国民生活審議会の検討委員会の報告書におきましては、推奨行為に関しまして、効果的な差しとめという観点から、対象とすべきという考え方があるということをまず述べた上で、他方、推奨行為といいますのは、主体でありますとか推奨の程度、これが大変種々さまざまであるということ、あるいは、事業者団体による自主的なルールづくり等への萎縮効果をもたらすおそれもある、さらには、推奨された不当な契約条項を実際に使用する事業者に対して差しとめ請求をすることが可能である、こういう要因を挙げまして、結論といたしましては、差しとめの対象とすることについては慎重に検討する必要があるという結論に至ったわけでございます。

川内委員 それでは、今御説明になられた結論に至った経緯の中で、私が議事録を読ませていただいた中では、推奨行為を差しとめの対象とすることに関して反対をしているのは三人の経済界代表の委員の方たちだけであるというふうに思います。思いますというか、これは事実ですね。あとの消費者代表の方々、法律の専門家の学者の先生方すべて、推奨行為も対象にすべきであるというふうにお述べになっていらっしゃると思います。

 例えば平成十七年二月一日の第十回の委員会で、全国商工会連合会専務理事である寺田委員は、推奨行為を対象にするのは、ちょっと行き過ぎではないかという感じがいたしますので、私はどちらかというと、今後慎重に検討すべきだと思いますと御発言をされ、三菱商事株式会社理事の大村委員は、純然たる、もう本当に独立性のある企業が推奨によって云々というのは、確かに必要性が余りないのではないかというふうに発言をされ、もう一人、松下電器産業株式会社法務本部の齋藤委員は、平成十七年六月二十三日、第十五回会合で、推奨行為は、萎縮的な効果を生ずるようなものについては、それこそ慎重に取り扱っていただきたいと思うわけですと発言をされたわけであります。

 この方たちだけですよね、反対したのは。まずその事実について、そうなのかどうか。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 推奨行為につきましては、委員が今御指摘になられました二月一日の第十回会合それから五月の第十三回会合というところで主に議論がされております。この両会合におきまして、それぞれ両論が出てございます。

 今御指摘ございました経済界の方が慎重な御意見をお述べになられたということはそのとおりでございますが、個々にどなたということを申し上げるのは控えさせていただきますが、推奨行為を差しとめの対象とすることについて慎重なニュアンスの御意見をお述べになられる方々もおられたということでございます。

川内委員 いや、それは局長、ちょっと、推奨行為を対象とすることをどのように議論するか、推奨行為の対象をどうしていくのかということに関して意見を述べられた方は学者の中にも何人かいらっしゃるが、経済界の方々以外は、すべての委員が推奨行為を対象にするということに関しては賛成であるという趣旨の発言をしているわけです。

 だから、私は、経済界の人たちが反対するのは当然なんですから、それを悪いなんて言っていないんですよ、それは。そんなことは、経済界の人たちにしてみたら、自分たちの業に影響の出るようなことはなるべくしてくれるなと主張するのはある意味当然のことですからね、それを私は悪いなんて言っていないんです。

 だから、お互いが対等な立場でどう議論をしていくかというときに、経済界の方たちが反対する。しかし、多数は推奨行為を差しとめ請求の対象にすることには賛成の意見を述べているのであれば、多数が賛成意見なのだから、あとは、では、推奨行為を対象とすることに関して、どのように対象にするのかということに関しての経済界からの意見をまた聞いていくという、段階を踏んでいかなければならないというふうに思うんですね。

 そういう意味では、この報告書の書きぶりでは、推奨行為について、「いわゆる「推奨行為」を差止めの対象とすることについては慎重に検討する必要がある。」ということしか結論として書いていらっしゃらない。

 私は、これは報告書としては公正さを欠く書き方であって、委員会の審議を誠実に公正に反映するとすれば、推奨行為を差しとめの対象とすることは、賛成の意見が多数であったが、他方、経済界から慎重な意見が提案をされ、取りまとめに至らなかったので、今後の検討課題であるというぐらいはしっかり正直に書かないと、それこそ公正さを欠くというふうに言われてもしようがないんじゃないかなと思いますが、大臣、そのように書き方をしっかりするということぐらいは言わなきゃだめですよ。

猪口国務大臣 私といたしましては、国民生活審議会のこの報告書の取りまとめにおきましては、座長が公正な取りまとめを行ったと考えております。

川内委員 いやいや、公正な取りまとめを行ったと考えているとお考えになるのは自由なんだが、私は、先ほど大臣が公正で透明な審議会運営をしていると断定されたので、していると考えているとおっしゃられたのではなく、公正で透明な審議会運営をしていると断定されたので、公正だと断定をされるのであれば、この書き方は公正さを欠くという指摘を申し上げたわけであります。

 ここで猪口大臣と余りやりとりしてもあれなので、次の論点に移らせていただきます。私は優しいものですから、済みません。

 もう一つ、具体的な事例を挙げさせていただきますが、検討委員会の報告では、消費者団体による損害賠償請求制度の導入についても、「同制度の必要性も含めて、慎重に検討されるべきである。」というふうに取りまとめられているわけであります。この取りまとめの経緯について御説明をいただきたいと思います。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 国民生活審議会の検討委員会におきましては、平成十六年の八月の第四回会合におきまして、訴権の種類について議論がなされたところでございます。

 損害賠償請求権につきましては、いろいろな意見が出されたところでございますが、消費者の集団的被害の救済が十分かどうか、仮に十分でないとして、この被害の救済に消費者団体訴訟制度を活用すべきか否か、こういった点につきましていろいろな御意見が出され、委員間の意見に相違が見られたということで、報告書におきましては、御指摘のように、その「必要性も含めて、慎重に検討」ということで整理された次第でございます。

川内委員 抽象的な御説明なわけですけれども、この損害賠償請求権についても、検討委員会の平成十六年八月十三日の第四回会合で議論をされておりまして、松下電器の齋藤委員は、損害賠償請求について、「不当利得の徴収というような考え方については、よほど確固たる議論が行われて整理されていないと、なかなか導入は困難だろうと思っています。」というふうに御発言をされ、三菱商事の大村委員は「団体に特別の権利を創設しようという議論が延長線にイコール損害賠償だと、団体が当然できるんだと持っていくべきだというふうには全く論理上もつながらないし、それから過去の経緯からいっても、そういうようなことがこの委員会の課題にもなっていないというのが私の理解」というふうに御発言をされていらっしゃいます。

 全国商工会連合会の寺田委員は「必要最小限、非常にかたく、マイナスの影響も余り想定されないというような範囲に限って」検討していく、「この方向性については基本的には妥当なものだというふうに思っております。」商工会連合会の人だけは、方向性についてはいいが、もうかたく、かたくやってくれというふうにおっしゃっていらっしゃるわけでございますね。この辺も、先ほど局長が御説明をされた、損害賠償請求権について、必要性を含めて、慎重に検討を要するという取りまとめにつながっているわけでございます。

 ほかの委員の方々は、大体の委員の方々が、損害賠償請求権については、しっかりと議論をし、盛り込んでいくべきである、あるいは、今回は議論の対象ではないが、報告書の中には次回への検討課題として位置づけるべきであるというふうな御意見をおっしゃっていらっしゃるわけでございます。

 そういう意味で、今後、政府として、損害賠償請求権に関してどのようなお考えを持っていらっしゃるのか。取りまとめについては、必要性を含めて検討するというふうに取りまとめていらっしゃるわけでありますが、少なくとも、審議会の意見の多数は、損害賠償請求に関しても制度をつくっていくべきであるという意見の方が多数であったわけで、そしてまた、消費者のための法律であるとすれば、今後何らかの検討の場を設けるということはしていかなければならないというふうに思います。

 民主党案ではもう既に法案の中に盛り込んであるわけですけれども、大臣としてどのようにお考えになられるかということを御答弁いただきたいと思います。

猪口国務大臣 川内先生が御指摘されましたとおり、例えば、少額の被害を受けて、その損害賠償の裁判をすることにつきまして、大変だと思う方々がたくさんいらっしゃると思います。そういう損害賠償につきまして私どもが考えましたことは、まず、それはそもそも個々人の消費者に請求権はありまして、損害賠償については事後的な救済の手段であります。今回の目的は、被害の発生や拡大を防ぐというところに、この消費者契約法を改正したいというところが政府案の趣旨でございますので、まずそこを御理解、お認めいただければ、私として大変ありがたいんですね。

 それで、少額ではあるので、その裁判を今までの体制の中で大変だなというような場合におきまして、今後の検討としては、その少額の多数被害救済のための手法、これは司法アクセスの改善、これとの関係も踏まえて私は考えていく必要があるのではないかと思っております。(発言する者あり)済みません。

 少額多数被害救済のための手法につきまして、そういう手法も含めて司法アクセス改善をしなければならないと考えております。そのような司法アクセス改善との関係も踏まえた上で、国民生活審議会におきまして指摘されました取りまとめの内容、その必要性も含めて慎重に検討ということにつきまして、対応していく、踏まえて考えていく必要があると思っております。

川内委員 踏まえて、踏まえてがいっぱい出てきて、よく御答弁の御趣旨が理解をできなかったのですが、政府としての検討課題であるという認識は持っているということでよろしいですか。

猪口国務大臣 今お願いしております、消費者契約法を改正します政府案といたしましては、被害の拡大を防ぐことに重点を置きまして、そのための差しとめ請求権を適格消費者団体に付与するという考えでございます。(発言する者あり)今後の検討につきましての御質問でございますけれども、司法アクセス改善との関係を踏まえて考えていく必要があると考えております。

川内委員 もうちょっと時間があるようですから、まだたくさん質問が残っているので、また理事にお願いして質問させていただこうというふうに思いますが、最後に一つだけ、先ほどのサラ金の問題なんです。

 サラ金の被害というのは消費者被害としては最も大きな被害であろうというふうに思うし、相手は、最近はサラ金も、消費者金融も大銀行がバックについている強大な組織であり、まさに適格消費者団体による団体訴訟制度が最も期待される事例だというふうに思うんです。

 先ほど局長の御説明では、ほかの法律があるからこの消費者契約法では対象ではないというふうにおっしゃられたんですが、少なくとも、法定利息、利息制限法を超えた利息の部分については本法の対象だぐらいは言ってもいいんじゃないかなというふうにも思ったりするんですが、いかがでしょうか。

田口政府参考人 金銭消費貸借の金利につきましては、利息制限法、出資法、貸金業規制法で規制されておりますので、そちらの方の規定にゆだねられるということでございます。

 消費者契約法は、消費者と事業者との契約ということで、消費者契約に着目して規定がつくられておりますので、金利について直接ルールを定めたというものではございません。

川内委員 また次の機会に譲ります。ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、田端正広君。

田端委員 公明党の田端でございます。

 この消費者団体訴訟制度の導入ということは、長年検討されて、また大変期待されてきたことでありまして、今国会でこういう形で具体的になったということについては、非常に私も感無量のものがございます。我が党においても、この問題については、マニフェスト等で掲げて、二〇〇六年導入ということを目指してきたわけでありまして、そういう意味では、非常に具体的になってきたことを喜んでいる一人でございます。

 今日、消費者問題に関するトラブルが大変たくさん起こっているわけでありまして、そういう中で、不特定多数の消費者を守る、そして団体訴権によって差しとめ請求を認める、そういう公益性といいますか、これが非常に意味のあるところだと思っておりまして、まさに画期的な、今までになかった制度の導入である、こう評価しているわけでございます。

 この法案の制定に際して、私も、消費者団体の皆さんとか、弁護士の方とか、あるいは専門職の方とか、いろいろな方と意見交換をさせていただきました。その中で、できるだけ皆さんの意見をということで、いろいろな形でこの法案の中にも入れさせていただくような努力をさせていただきました。

 例えば、不当契約条項だけではなくて、不当勧誘行為についても対象に加えたとか、裁判の管轄については、事業者の本社所在地だけではなくて、それはもちろんですが、営業所の所在地も加えたとか、団体間の情報共有、そういう意味で、共通サイトの電子掲示板を整備していただくようにしたとか、あるいは、濫訴を防ぐという意味で、同一事件については制限がありますけれども、適格消費者団体間での相互連携といいますか情報の共有、交換、そういった意味で、なれ合いというものを防いでいく、そういう事前の通知義務というものを明確にしているということ、そういうこともできるようになりました。

 それから、もし、余りよくない和解、不当なといいますか、そういう和解をしたときには、後で、後訴の方で認める例外措置というものも規定しているという意味では、非常に、皆さんのいろいろな心配をこの法案の中に入れ込むことができたな、こう思います。

 きょうは、その審議の中で、なおまだ至らない点について一つ一つまた御確認させていただいて、より有効な運用ができるようにしていきたい、こんなことでございますが、まず、大臣に、今回の消費者団体訴訟制度の導入という、これは大変画期的な、意義のあることだと思いますが、このことについて大臣はどういうふうにお考えになっているんでしょうか。

猪口国務大臣 田端先生にお答え申し上げます。

 消費者、事業者間には情報力、交渉力の格差がありますので、そのことにかんがみまして、平成十三年から消費者契約法が施行され、被害に遭った消費者の救済が個別的、事後的に図られることにはなりました。

 しかし、同種の被害が発生したり、また拡大することを防止することには限界があるわけでございます。このため、一定の消費者団体が事業者の不当行為そのものの差しとめを請求できるよう、消費者団体訴訟制度を導入する必要性が高いわけでございます。このような制度は既にEU諸国でも定着しているものでありますので、長年その必要性が消費者からも要望されてきたものでございます。

 本制度が消費者被害の発生や拡大の防止に果たす役割は非常に大きく、先生御指摘のとおり、直接の被害者でない第三者たる消費者団体に請求権を付与する画期的なものであると考えております。

田端委員 適格消費者団体が差しとめ請求をするということによって消費者の被害の発生を防ぐ、あるいは拡大を防ぐ、これは大変な、すぐれた仕組みになると思いますが、では、具体的に、どのような事例、どのような事件が対象になるのか、具体的な点で御説明いただければと思います。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 この消費者契約法で差しとめ対象となりますのは事業者の不当な行為でございますが、端的には二つございまして、一つが不当な勧誘行為でございます。もう一つが不当な契約条項の使用でございます。これらが不特定かつ多数の消費者に広がる可能性がある場合に差しとめ対象となるということでございます。

 その不当な行為の例を挙げさせていただきますと、まず、不当な勧誘行為の例といたしましては、例えば、悪質な住宅リフォーム会社が、この換気扇を取りつければ床下は腐らないというような説明をして、そのような機能のない換気扇を販売する、いわゆる不実告知の事例でありますとか、また、消費者の自宅に上がり込んで、消費者から帰ってくれと何度も言われても、契約をするまで長時間居座って帰らない、そういった方法で勧誘を行う、いわゆる不退去による勧誘の事例にも対応できるかと思います。

 また、不当な契約条項の使用の例といたしまして、あるサービスの利用を予約した際に、キャンセルする場合には、何日前かを問わず支払い済みの予約金は返還いたしませんというような条項を含んだ契約を締結するもの、こういったものが差しとめの対象になり得るということでございます。

田端委員 それで、この差しとめ請求の要件の規定でありますが、十二条一項からあるわけでありますが、不特定かつ多数の消費者に対して事業者が不当な行為を行ったときとなっているわけでありますけれども、この不特定かつ多数という文言、これが変に解釈されると限定的なものになってしまうという危惧があります。

 例えば、クレジットカードの会員に対して不当な勧誘行為があったとか、あるいは会員制のスポーツクラブでその会員との契約の中に不当な契約条項があったとか、こういう場合に、会員だから差しとめ請求の対象にはならないんだ、こういうことにはならないんだろうと思いますが、この点について明確に御答弁をお願いしたいと思います。

田口政府参考人 差しとめ請求の要件としての不特定かつ多数といいますのは、特定されていない相当数という意味でございます。

 お尋ねの例でございますが、いずれも会員を対象として不当な行為がなされた場合の例でございますが、こういった場合にありましても、容易に会員になることができるといったような当該不当な行為の拡散性、外への広がりの傾向でございますが、この拡散性が認められる限り、不特定かつ多数の要件を満たすものというふうに考えております。

田端委員 それから、この十二条にただし書きがありまして、「民法及び商法以外の他の法律の規定によれば当該行為を理由として当該消費者契約を取り消すことができないときは、この限りでない。」こういう規定が第一項にありますし、また第三項にも同じ趣旨のただし書きがあります。

 これは、消費者契約法による取り消し事由となる行為について、民法及び商法以外の他の法律が特別に取り消し事由にならないことを規定している場合を指しているんだ、こう理解していいのかどうかについてお伺いしたいと思います。

田口政府参考人 この法案の第十二条第一項ただし書きでございますが、消費者契約法上の不当勧誘行為に該当する行為でありましても、民法及び商法以外の他の法律、いわゆる個別の業法等におきまして特別に取り消し事由にならないということが規定されている場合は、それは当該業種等の特性を踏まえたものであるということで、本制度における差しとめ請求の対象とはしないとする趣旨でございます。

 同条の第三項ただし書きの不当契約条項の場合につきましても同様でございます。

田端委員 消費者団体の皆さんとか日弁連の方々とか、非常にそういった意味で、せっかくいい法律なんだから、ぜひ運用面でもいいものにしてもらいたい、こういう思いでいろいろな御質問もいただいているわけでございます。

 そういう質問の中で、もう一つ申し上げますが、この法律では、他の適格消費者団体による確定判決等がある場合、原則として同一事件の請求はできない、こういうことになっているわけでありますが、消費者全体の利益擁護のためには適格団体が差しとめ請求を行使するという、この制度の公益性ということからこれは規定されているものだと我々は理解しているわけです。しかし、同一事件の請求が例外的に認められた場合も明記されています。

 その一つとして、十二条の六項のところに、前の訴訟の口頭弁論終結後に生じた事由に基づく場合が挙げられているわけであります。

 これは、例えて言えば、関東で、ある事業者の勧誘行為についての確定判決、消費者が敗訴するか、そういうことがあった。そして、その口頭弁論の終結以後に、今度は関西で、その同じ事業者が同じような勧誘行為をしていた。少し時差があって、場所を変えて、そういう事業者の不当な勧誘行為、こういうことについて起こった場合、これは、同一事件ではあるけれども、例外として明らかに差しとめ請求できる、こういうふうに考えていいのかどうか、この点について確認したいと思います。

田口政府参考人 法案の第十二条第六項は、確定判決等に係る訴訟の口頭弁論終結後等に生じました事由につきましては、当該訴訟では主張を立証することがおよそ不可能でございます。したがいまして、一般に、確定判決等の既判力によっても遮断されないということにかんがみまして、当該新たな事由に基づく差しとめ請求権の行使は制約されないとしたものでございます。

 口頭弁論終結後に生じました事由に該当するかどうかは、個々の事案に即して個別具体的に判断する必要がございますが、規定の趣旨にかんがみまして、一般的に申し上げれば、お尋ねの例では、例えば、不当な行為がなされるおそれがないとして前の訴訟では請求が棄却される。その訴訟の口頭弁論終結後に新たに行われました関西地域での事業者の行為というのは、確定判決に係る訴訟で主張を立証することがおよそ不可能でございます。一般に、このような事由は、確定判決の既判力によっても遮断されないことにかんがみまして、当該行為について別途差しとめ請求権を行使することは認められるというふうに考えております。

田端委員 ありがとうございました。

 次に、二十八条一項から三項に、適格消費者団体による財産上の利益の受領の禁止について規定されております。

 差しとめ請求権の行使に関して、「金銭その他の財産上の利益を受けてはならない。」こう規定されているわけでありますが、例えば、不退去によるリフォーム契約の締結を繰り返していた事業者が、こういう不当な勧誘行為を停止するよう求められた。そして、事業者との話し合い、和解が実現した、その結果、不当な勧誘行為を今後は行いませんと合意して、これまでのリフォーム契約で得た代金相当額を個別に被害者に返還する、こういう合意をすることは、これは可能なのかどうか、ここで言う金銭の授受とこれとはどういう関係になるのかということについて御答弁をお願いしたいと思います。

田口政府参考人 法案の第二十八条第一項から第三項までにおきまして、適格消費者団体による財産上の利益の受領を禁止しておりますのは、適格消費者団体による差しとめ請求権の行使の適正性を確保し、制度の信頼性を維持するという目的のためでございます。差しとめの対象となる財産上の利益の受領は、あくまでも、その差しとめ請求権の行使に関してなされた場合というふうに規定されております。

 こうした趣旨にかんがみますと、お尋ねの例では、不当な勧誘行為をしていた事業者が、消費者側の要求を全面的に受け入れて、不当な勧誘行為の差しとめを応諾するとともに、それによって不当に得た利得を被害者に返還するというものでございますので、差しとめ請求権の行使の適正性及び制度の信頼性を損なうものではなく、消費者の利益に適合しない差しとめ請求権の行使または不行使の対価として金銭の授受がなされたものではないということでありますので、その差しとめ請求権の行使に関してなされた場合には該当せず、第二十八条の規定によりまして禁止されるものではないというふうに考えられます。

田端委員 大変よくわかりました。

 大臣にちょっと確認させていただきますが、三十六条で、「適格消費者団体は、これを政党又は政治的目的のために利用してはならない。」こう規定されています。つまり、適格消費者団体というのは大変大事な立場になるわけで、また、公益的な役割は非常に大きい、こう思うわけであります。

 この団体が特定の公職の候補者の応援をするということはもちろん禁止だとは思いますが、しかし、消費者団体というのは、やはり消費者政策に関してのいろいろな意見を持っているわけであります。そういう意味で、政策提言とかあるいは具体的に陳情するとか、そういったことも活動としてあろうかと思うんですが、ここのところの線引きといいますか、どこまでがどうでというその辺のところについては明確にしておく必要があると思いますので、大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

猪口国務大臣 お答え申し上げます。

 第三十六条の規定につきましては、適格団体が政治色を強めたり、業務の公正性、信頼性を損なうことがあってはならないという趣旨を踏まえて運用する必要がございます。

 したがって、消費者政策に関する提言や意見表明などがありますけれども、その提言や意見表明を超えて、特定の政党や候補者の支援と同視できるような場合には、同条の制限規定に該当し得るものと考えられます。

 しかし、消費者政策に関する一般的な提言や意見表明までも制限されるものではないと考えております。

田端委員 もう一点、この適格消費者団体に関することでお伺いしたいと思います。

 そういう意味では、適切に業務を遂行していただくことが大事なことでありまして、その担保として、内閣総理大臣が、この適格団体の認定、監督、認定の取り消し、こういったことの措置が規定されているわけであります。

 これらの規定の運用が適格団体の自主的な活動を制約してしまうということが逆にあってはならない、そう思うわけでありますが、公平性を保つということと、そして活動をしっかりやっていただくということのこのバランスですけれども、そこのところについては明確にしておいていただくことが大事かと思いますので、よろしくお願いします。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 この法案におきましては、適格要件をできる限り詳細に法文上明記いたしますとともに、認定事務の実施に当たりましては、申請内容を国民に公告縦覧するなど、透明性の高い手続をとることとしております。

 また、認定や監督、あるいは認定取り消し等につきましては、具体的な審査の基準あるいは処分の基準を定めまして公表いたしますとともに、不認定とするなどの場合におきましては、申請者に対して理由を示すなど、行政手続法にのっとり適切に実施することとしておりまして、認定、監督等によって適格消費者団体の自主的な活動を過度に制約することはないものと考えております。

田端委員 この法律では、内閣府令に定めることとするというところが幾つかあるわけでありますけれども、この内閣府令の策定の手順、例えばパブコメとか、そういった意味で、関係者の意見をきちっと反映することができるのかどうか、そこのところを政府はどういうふうにお考えになっているのか、よろしくお願いしたいと思います。

田口政府参考人 この法案におきましては、「公布の日から起算して一年を経過した日から施行する。」ということにいたしておりまして、法案成立後、制度の細部を内閣府令等の形でなるべく早くお示ししたいというふうに考えております。

 その際には、パブリックコメントを行うなど、透明性を確保しながら検討を進めてまいる考えでございます。

田端委員 大臣、これは非常に新しい仕組みといいますか制度だと思うわけでありますが、それだけに、うまく機能させることが大事だと思うんです。

 消費者団体というのは、環境整備といいますか活動できるような条件、例えば具体的に言えば、はっきり言えば資金面とか、そういった意味ではなかなか大変なものがあろうと思います。しかし、ヨーロッパ等では、そういう消費者団体にまである種サポートするような仕組みもきちっとあるようでありますが、今、こういう消費者団体の活動に対してどういうふうなことを、支援のあり方をお考えになっているのか、その辺についてはいかがでしょうか。

猪口国務大臣 田端先生にお答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、適格消費者団体は、差しとめ請求権を適切に行使するために、例えば情報収集力、人材、そして十分な財政基盤を備えている必要があるわけです。これらの適格要件の要素でありますさまざまな基盤を備えるためには、まずは自主的な取り組みを行う必要があると考えております。

 このような適格団体の自主的な取り組みを基本としつつも、行政といたしましても、適格団体が業務を円滑に実施できるよう、環境整備を図っていくこととしております。このため、制度の意義や適格団体の活動について国民の理解が深まるよう、制度全般の周知、そして広報に努めてまいりたいと思っております。

 また、適格団体が請求権を行使するに当たっては、広く消費者から被害情報を収集したり、また、訴訟結果の周知を図ることが重要であると考えております。このため、行政といたしましては、国民生活センター等の有する消費生活の相談情報の提供、また、差しとめ訴訟の結果得られた判決内容の公表、周知など、このようなことを通じまして、適格団体の情報面での負担軽減を図っていきたいと考えております。

田端委員 その点ですけれども、情報提供がどれだけ消費者団体の皆さんにサポートすることができるのか。お話ではわかるんですけれども、具体的に、全国で八つか七つか九つかわかりませんが、適格消費者団体と認定される団体というのはそれなりにしっかりとした団体だと思いますが、しかしまた、やっていただく仕事も公益性の高い仕事でありますから、その点についてもう少し踏み込んだサポートというのはないんだろうか、こう思うわけです。

 それともう一つは、各自治体、国民生活センター、それから消費者センター等に入ってくる情報、ここのところと消費者団体の皆さんとのネットワークといいますか、そういったことも必要ではないかと思っているんですが、もう少し踏み込んだサポートのあり方をお考えでございましたら、御答弁をお願いしたいと思います。

田口政府参考人 適格消費者団体が十分活動していくためには、多くの消費者の方々から活動について理解をいただき、また、消費者の方々からの寄附等が広く集まっていくような仕組みにしていく必要があると思います。

 そういう意味で、適格団体というのはこういう立場の性格の団体なんですよ、消費者に対してもこういう効果があるものなんです、今般こういう新しいシステムができて、それが個々の消費者に対して直接非常に大きな意味を持つものでもあるんだということを、広報、普及に当たっては努力していきたいと思っております。

 また、そういう際には、適格団体の方々と消費生活センターあるいは国民生活センター等と情報面でのネットワークを有機的につくりながら、活動がうまくお互いに支え合っていけるような、いろいろな工夫を図っていきたいというふうに考えております。

田端委員 公布の日から一年を経過した日から施行、こうなっておりますが、その間、今申し上げたような点がたくさん、まだいろいろと詰めていく必要があろうかと思います。すばらしい制度だけに、しっかりとこの一年間、意見交換等も含めてやっていただいて、ぜひいい制度がスタートできるようにお願いしたいと思います。

 以上で終わります。

佐藤委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 民主党・無所属クラブの枝野でございます。

 私からは、民主党提案法案は提出者でございますので、政府案に絞ってお尋ねをさせていただきます。

 まず、俗に政府案で言われている後訴の遮断、政府案の法案の十二条五項二号についてお尋ねをいたしたいと思います。

 民事訴訟の大原則は、裁判の効力は裁判の当事者にしか及ばないということでありますが、本規定によりまして、他の適格消費者団体を当事者とする確定判決等についても効力が及ぶということになっています。こうした例外を設けている法的な根拠をどのように説明するのか、お願いいたします。

猪口国務大臣 枝野先生にお答え申し上げます。

 この制度は、通常の個別訴訟とは異なります。これは、消費者全体の利益を擁護するため、直接被害を受けていない第三者たる適格消費者団体に政策的に差しとめ請求権を付与するものでございます。

 適格消費者団体によります真摯な訴訟追行の結果、確定判決等が得られたにもかかわらず、同一の事案について他の適格消費者団体が差しとめ請求権を行使できることとすると、どういう問題が発生するかということについてちょっと議論させていただきます。

 まず、消費者全体のための訴訟であるにもかかわらず、矛盾する判決が併存する、そして、相手方事業者に際限ない応訴負担がかかる可能性がある、あとは、訴訟不経済という表現が使われますけれども、訴訟経済に反する、そして、紛争の蒸し返しによって、違法か否か、不安定な状況が長引く等の弊害が生じ得るということでございます。

 この制度は、消費者全体の利益擁護を目的とするものでございまして、このような弊害を排除し、できる限り紛争の一回的解決を図る必要があるということを踏まえまして、ある適格消費者団体による確定判決等が獲得されました場合に、それが存在する場合には、同一事件の請求は原則としてできないこととしております。

枝野委員 今お話のあった紛争の一回的解決の必要性というのは、それは民事訴訟法的にも認められている考え方だと私も思いますので、そこの必要性は認めます。

 しかし、適格消費者団体は、少なくとも複数存在をすることが前提になっています。その中で、適格消費者団体が、誠実かつ十分な権利行使といいますか訴訟遂行が行われるという保証はないわけです。逆に、その保証があれば実は裁判は要らないので、すべての適格消費者団体が適切な判断をして適切な行動をするんだったら、適格消費者団体そのものに差しとめ権を認めちゃえばいいわけでありまして、そうではないから裁判所において適切であるかどうかという審査が行われるわけであります。

 したがいまして、ある適格消費者団体が訴訟遂行をしている、その遂行の仕方が適切ではないと考える第三者としての他の適格消費者団体が、例えば訴訟参加をする等して、こいつらのやり方じゃだめだ、おれたちのやり方でやらないといかぬということのできる余地を残さなければ、紛争の一回的解決という要請があるにしても、アンバランスだというふうに思います。そのあたりの担保はどのようにされるんでしょうか。

猪口国務大臣 先ほど申し上げましたように、通常の民事訴訟とは異なる、これは第三者たる適格消費者団体に政策的に差しとめ請求権を付与するものであるということをまず申し述べた上で、先生御指摘のようなことにつきまして、この制度では、他の適格消費者団体に対する手続保障の観点から、まず訴訟の進行状況等に関しまして、適格消費者団体間で情報を共有できるようにしております。また、適格消費者団体相互の連携協力の規定がございます。また、弁論及び裁判の必要的併合規定がございます。このようなさまざまな手当てを講じておりまして、他の適格消費者団体による差しとめ請求権の行使に十分に配慮しているところでございます。

 特に、本制度におきましては、同一事件における複数の差しとめ請求に係る訴訟でございますけれども、同一の裁判所に係属する限り、さきに申し述べましたような弁論及び裁判の必要的併合の規定に服するため、同一の事件について他の適格消費者団体を当事者とする差しとめ請求に係る訴訟が既に係属している場合において、適格消費者団体は共同訴訟人の地位につくことができるわけでございます。

 適格消費者団体としましては、みずから当事者として同一の裁判所に訴えを提起して、共同原告、共同訴訟人と同じですが、共同原告となることによりまして、当該他の適格消費者団体の訴訟行為と抵触する訴訟行為も何ら制約を受けずに行うことができるという形になっております。

枝野委員 複数の消費者団体が訴訟を起こせば、必要的併合の規定を置かなくても裁判所は併合するだろうと思いますので、そこはないよりあった方がいいというだけの話なんです。

 問題は、訴訟を起こす余地が確保されるかどうかということだと思っています。これは、民主党案にも同じような規定がありますので確認的ですが、政府案でいいますと、二十三条四項で、訴訟遂行、進行の状況についての通知を、「電磁的方法を利用して同一の情報を閲覧することができる状態に置く措置であって内閣府令で定めるものを講じたときは、」通知にかえられるというふうに書いてあるんですが、法律の書き方というのは、こういう面倒くさいことをなぜするんだろうなと思いますけれども、要するに、これは何ですか。

猪口国務大臣 これは、まず内閣総理大臣が管理する電子掲示板、これは内閣総理大臣によりその利用権限を設定されたすべての適格消費者団体及び内閣総理大臣が読み書きできるものでございますが、そのようなもの、または内閣総理大臣が管理するメーリングリスト、これは、リストにメールアドレスを登録したすべての適格消費者団体及び内閣総理大臣を利用者とするもの、このような手法を用意することを想定しております。

枝野委員 電子掲示板とメーリングリストはちょっと意味が違うと思っています。

 電子掲示板は、積極的にアクセスをしてのぞきに行かなきゃいけないんだと思いますね。メーリングリストであれば、自動的にメールが送信をされて受け取った、もちろん、パソコンをあけなきゃ見られないということは一緒かもしれませんが、それは、一般的に届いた郵便物を封をあけて中を見ないと届いても意味ないよねという話と一緒で、届いてさえいれば、あとは本人があけるかどうかという話だというふうに思います。

 特に政府案の場合は、民主党案にも同じような規定はあるんですが、政府案の場合は後訴の遮断という効果につながる話でありますから、確実に訴訟進行の状況について、他の訴訟を起こし得る適格消費者団体に通知がなされていないといけないというふうに思いますので、したがって、この点については、いわゆるメーリングリストのように、相手の手元まで届くということが担保されるべきであるというふうに思います。

 内閣府令でそこまできちっと担保をしていただきたいと思うんですが、それをお約束ください。

猪口国務大臣 電子掲示板の場合、毎日クリックすれば同じ効果が得られると思います。

枝野委員 違うじゃないですか。メールというのは、少なくとも受け取る側のところに届いているんです。しかし、電子掲示板というのは、積極的にそこにアクセスをしなければ見られないんです。ホームページに載っけてあるから、ここに掲示をしてあるからいいじゃないかという話じゃないんです。

 これは、IT技術ですからわかりにくくなっていますけれども、役所の前に紙を張り出して公告してありますから見に来なさいというのと、郵便で通知をするのは、本質的に意味が違います。そういう意味で、最低限メールとしてきちっと送るということをしないといけないんじゃないか、こう申し上げているんです。

猪口国務大臣 張り出しと電子掲示板は、実際の使いやすさ、利用者にとっての情報共有性についてやや違うものがあるのではないかと思います。電子掲示板の場合、まず、今申し上げましたとおり、自分でクリックすることによって、それは封をあけるというのと似ていると思いますけれども、そのような作業によって必ず共時的に情報が得られるわけでございます。また、電子掲示板の場合は、書き込みもできる、そしてみんながそれを見ることができるという意味において、非常に、排除すべき方法ではない方法であると考えております。

枝野委員 大臣は、この差しとめ請求訴訟が一年間に二百件も三百件もたくさん起きるということを想定しているんですか。適格消費者団体としても、本当に連日のように、あるいは週に一遍とか二週に一遍とかこういう訴訟が提起をされるんだということであるならば、毎日そこをクリックして見ておかなきゃいけないねということになると思いますが、それはむしろ想定していないんじゃないですか。

 本当に差しとめが必要だという大きな問題になっていて、適格消費者団体が全体の公益のためにこれはやらなきゃならないんだなという裁判が、そう週に一遍とか二週に一遍とか、年に百件も二百件も起こるということを想定していない、むしろ一年に数件というレベルじゃないんでしょうか。一年に数件というようなレベルの訴訟が起きているかどうかというのを毎日クリックしろというのは、それはむちゃなんじゃないですか、大臣。

猪口国務大臣 まず、今御指摘いただいておりますところは、訴訟が起きているという状況の中ですね。ですから、訴訟係属中の中で一定の訴訟上の行為について情報を共有していくことが特に重要でございますので、訴訟係属中の問題につきまして情報を共有していくということを考えれば、電子掲示板という方法が十分ではないということは、なかなか私としてそのように考えることはできないのです。ここの二十三条四項のところをごらんいただきますとおり、「同一の情報を閲覧することができる状態に置く措置」ということですので、これはまさに電子的な手法を使うことが非常に合理的であり、そのことを排除するべきではないと考えております。

枝野委員 でき上がった法律の解釈の話をしているのじゃなくて、この法律でいいのかと。あなたがそういう解釈をするのだったら、これは変えなきゃいけないと私は言わなきゃならないんですよ。

 せっかくここの解釈として電子メールということもあるのだと言ってくれたので、ならば法律まで変えなくたって、内閣府令の中で電子メールでちゃんとやりますと言ってくれれば、まあ、条文まで変えなくてもいいのかな、運用でちゃんとやってもらえるのかなという話をしているんですよ。

 ここの条文で、確かにホームページに載っければこれでオーケーですよ、条文の読み方とすれば。でも、それでは不十分だと思っていたので聞いたら、メールということも含まれるというから、では、メールでちゃんとやってくださいと言ったんです。

 しかも、今、大臣自身、自分で出している法案、間違っていませんか。訴訟の提起自体も通知の対象なんですよ。訴訟が起きていることについてだったら、その電子掲示板というんですか、そういうところで日々の動きを示しますということも百歩譲ってあるかもしれない。でも、そもそも、訴訟が起きているのか、あるいは裁判外において事業者等について差しとめ請求をしたのか、そういう最初のファーストアクセスのところについては、まさにいつ起こっているのかわからない、三百六十五日いつ起こるかわからない。しかも、それが年に何百件もあるというケースだったら毎日見ろということもわかるけれども、そういうことなんですか。年に何百件もある、毎日見なきゃならないほどたくさん訴訟が起こるということを想定している制度なんですね、大臣。イエスと答えてください。

猪口国務大臣 私、冒頭にお答え申し上げましたとおり、メーリングリストのことも、そういう手法を用意することを想定しているとお伝えしたわけです。ですから、電子掲示板またはメーリングリストの手法を用意することを想定しており、これは、いろいろ意見をよく聞き、進めてまいりたいと思っております。

枝野委員 最初に戻らないでください、時間の無駄ですから。そういうお答えがあった、だから、まさに意見を申し上げて、そうすべきじゃないですかと言っているんですよ。

 つまり、裁判が年に何百件も起こりますということを想定しているならば、今のお答えでいいですよ。電子掲示板を毎日クリックしてくださいでいいですから、そこの裁量はお任せしますという話ですよ。でも、どうやら政府が考えておられるのは、適格消費者団体の数も一けたぐらいということのようですし、年に数件起こるかどうかという訴訟を想定しているんじゃないんですかと聞いているんですよ。

 まず、そこはそうなんでしょう。

猪口国務大臣 訴訟の数を私として予断することはできません。

枝野委員 そうですよね。

 では、何百件も、つまり毎日のぞかなきゃならないほど裁判がたくさん起こるということを想定しているんですか、大臣。

猪口国務大臣 ですから、その数につきまして予断することができません。

 また、今、問題として先生が御指摘されていますことにつきましては、いろいろな意見がございます。消費者団体は電子掲示板の方がいいと言っている部分もございますので、これは、電子掲示板かメーリングリストか、そのような手法を用意することを想定していると答弁してございます。

枝野委員 ちゃんと話を聞いてくださいね。電子掲示板を僕は否定していないんです。先ほど言ったとおり、裁判のプロセスにおいては電子掲示板ということに合理性があるかもしれませんねと申し上げているんですよ。

 ただし、裁判が起こりましたとかいうような、まさに後訴を遮断することとの関係で重要なアクセスについては、これは毎日クリックしてくださいという話は酷じゃないですか。少なくとも、ああ、訴訟が起こったんだなというのは黙っていても伝わる。それで、その訴訟の中身について進行状況などをきちっと知りたいということだったら、毎日のようにクリックしていくとかそういうことの選択肢の余地を残すべきであって、ですから、訴訟の提起とか、ある最低限の部分のところについては、メーリングリストも少なくとも併用してくださいよ。

 電子掲示板がだめだと言っているんじゃなくて、電子掲示板の便利さもあるから、電子掲示板に掲示すると同時に、この四項の一号から十一号まである号の中の重要な部分については、メールでも送りますというようなことを、大臣、今は結論を言えないんだったら、せめて、そういう方向の検討をしますというお答えをしていただいたら、それでいいんですよ。(発言する者あり)

猪口国務大臣 枝野先生からの御議論ございました。最初に答弁したとおりではございますけれども、メーリングリストを実施する方向で私として検討してまいりたいと考えております。

枝野委員 ぜひお願いをいたします。私は、そもそもこの後訴の遮断自体をやめろという立場なんですが、もしどうしてもやるんだったら、最低限そういうことはするべきだと申し上げます。

 もう一つ、十二条五項に戻りますが、ここに「確定判決等」とあるんですね。この「等」の具体的中身を説明してください。

猪口国務大臣 これは、「等」でございますので、確定判決と同一の効力を有するものを言います。先生御存じでいらっしゃいますけれども、裁判上の和解それから請求の放棄あるいは認諾及び調停合意あるいは仲裁裁判所等が該当するものと言えると思います。

枝野委員 このうち、請求の認諾は勝訴判決のようなものですからいいんでしょう、差しとめが効果をもたらすんですから。

 問題は、和解とか請求の放棄、あるいは上訴の断念をして確定した場合等が問題なんですけれども、ある適格消費者団体が裁判を起こしました。ほかの適格消費者団体が、いや、まだ証拠の収集から考えてちょっと早いな、もうちょっとちゃんと証拠を収集してから裁判を起こさないといけないな。危ないから、おれたちはちゃんと自分たちでもっと証拠を収集して勝てる状況になったら追っかけて裁判を提起して、共同、併合してもらって、それなら勝訴判決が得られるななどということで準備をして、まだ訴訟提起まで至っていないなんていうケースは現実的にあり得るわけですね。

 そこで、一応、請求の放棄とか和解、上訴の取り下げ等の手続をしようとする場合は、する前に、先ほどお話のあった二十三条で通知をするということになっておるんですが、法文上を見ますと、「しようとするとき。」としか書いていないんですよ。この二十三条四項十号には「しようとするとき。」としか書いていなくて、少なくとも文理上は、法律の条文上は、あした和解します、あした請求を放棄しますという前日にそのことを通知してもオーケーということに、これは規定上は読めてしまうんですね。

 これでは、おい、ちょっと待ってくれ、請求の放棄なんかされたら、おれたち、せっかく後から追っかけて裁判を起こして請求を併合してもらおうと思っていた人たちが手を打てなくなるわけですから、その「しようとするとき。」の通知は、少なくとも何日前にというような規定を置かなければ本来はいけないというふうに思うんですが、いかがですか。

猪口国務大臣 そのようなことにつきまして、内閣府令で基準を定めることといたしたいと思います。

枝野委員 また、優しいなと後ろから怒られそうですが、本来はやはり法律事項だと思いますよ、これは。何日前までにとか、せめて、他の団体が対応可能な期間の余裕を持ってというような趣旨のことを法律事項で書いておいて、具体的な日数については、例えば政省令ということはあり得るかもしれないけれども。

 ということを申し上げた上で、しかし、ちゃんと一定のゆとりを持って何日か前にしろということを、確認ですが、内閣府令にきちっと書いていただけますね。

猪口国務大臣 枝野先生の御指摘でございますので、内閣府令におきましてそのような方向で基準を定めたいと考えております。

枝野委員 私の指摘だからじゃなくて、筋を申し上げたからであります。

 次に、四十三条の民事訴訟法の例外についてお尋ねをいたします。

 一般的な法律行為の差しとめ請求訴訟を考えたときに、この政府案の四十三条の規定がない場合、民事訴訟法の原則による裁判管轄はどうなりますか。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 差しとめ請求訴訟の管轄につきましては、民事訴訟法の原則によることになりますと、まず第四条により、被告の普通裁判籍の所在地、例えば被告が法人であれば、その主たる事務所または営業所の所在地を管轄する裁判所に訴えを提起することができます。

 これに加えまして、民事訴訟法では第五条各号において各種の特別裁判籍による管轄を認めておりますので、差しとめ請求訴訟についても、これらの規定に基づく管轄が認められることになります。さらに、当事者の合意や被告の応訴による管轄も認められております。

枝野委員 これが、四十三条があることでどう変わるんですか。

猪口国務大臣 民訴の第五条の特別裁判籍による管轄につきまして、第五号を除き適用しないこととしております。

枝野委員 それは条文を読めばわかるので、その結果として、この規定がなければ存在しているはずの裁判管轄が、どれがなくなるんですかということを聞いているんです。

猪口国務大臣 例えば、財産権上の訴えあるいは不法行為に関する訴え等でございます。

枝野委員 財産権上の訴えでいいんですね。差しとめ請求も、財産権上の訴えや不法行為上の訴えとして、不法行為地やその法律行為の行われた地が、四十三条がなければ特別裁判籍として裁判管轄があるはずなのに、四十三条で排除した、こういう解釈でいいですね。

猪口国務大臣 そのとおりでございます。

枝野委員 三ッ林大臣政務官にお尋ねするべきだと思いますが、そもそも、民事訴訟法の裁判籍、裁判管轄というのはどういう考え方に基づいてこのルールがつくられているのか、御説明ください。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 民事訴訟法が定めております管轄にはそれぞれの根拠がありますが、一般的に申し上げますと、当事者間の公平、当事者の便宜、証拠資料の収集の便宜等の理念に基づくものであります。具体的にはよろしいですか。(枝野委員「いいです」と呼ぶ)はい。

枝野委員 四十三条も、その民事訴訟法の考え方そのものは変更していないという理解でいいんでしょうか。それとも変更しているんでしょうか。

猪口国務大臣 変更していないということでございます。

枝野委員 では、三ッ林大臣政務官がおっしゃられた理念に基づいて、どうしてその法律行為の行為地であるとか不法行為の行為地というのを管轄から外したのか、それがどうして当事者間の公平にかなうのか、説明ください。

猪口国務大臣 これは、先ほども議論いたしました、判決の矛盾等の弊害を排除する観点から、審理の統一化を図るため、ある程度管轄裁判所を集中させた方が好ましいと考えます。また、被告事業者の予測可能性を害することなく事業者と適格消費者団体が公平に攻撃防御を尽くせること、このようなことから、民訴五条で規定されている特別裁判籍につきまして、第五号を除いて、先ほどお伝えしましたように、適用しないこととしたものでございます。

枝野委員 統一的解決のために管轄を一カ所にしなきゃならないという話は、内閣府さん、それはちょっとむちゃな話じゃないですか。

 つまり、同じような消費者被害で、例えば政府案だとしても、個別の消費者は、日本全国の被害を受けた地で、同じ消費者被害についていろいろな裁判所に裁判を起こせるんですよ、沖縄に住んでいる人は那覇地裁に、札幌に住んでいれば札幌地裁に。

 でも、そういうケースであっても、必要性と合理性があれば、移送手続をして、どこか一カ所にまとめて一括して処理をするということもあり得ますし、しかし、それは被害者側の、特に原告側の便宜その他を考えて幾つかにまとめよう。

 私の知っている限りでも、例えば薬害エイズの被害者の皆さんは日本全国にいらっしゃって、日本全国の裁判所で裁判を起こせるけれども、東京と大阪その他数カ所に集約をして裁判を起こしました。これは、被害者の立場、原告の立場、いろいろと考えると、東京と大阪まで併合してしまう、移送してしまうのはということがあったんだろうと思いますので、東京と大阪で別々に訴訟進行しましたが、和解勧告とか和解とか、事実上一体的な解決がちゃんとできていますので、別に、管轄そのものを初めから一カ所にしなければいけないだなんという話には全然ならないんですけれども、どうですか。

猪口国務大臣 まず、この制度は、個別の事件を離れた不特定多数の消費者全体の利益擁護を目的とする制度でございます。ですから、個々の消費者の被害地に着目するのは適当でないと考えて設計されております。

枝野委員 ということは、先ほどの答弁は訂正されたんですね。その統一的解決とかという話は、とりあえずは変えられたんですね。一番の主眼は全体の公益のためのことだから、被害発生地ということでなくていいと。ちょっとごちゃごちゃしましたが、先のところでもうちょっと今のところを詰めます。

 では、逆にこう聞きましょう。民事訴訟法五条五号で、要するに、被告となった事業者の事務所所在地、営業所の所在地が裁判管轄地となる、裁判籍の所在地となる。これは実質的に判断するんでしょうか、形式的に判断するんでしょうか。これはどちらでも結構です。

三ッ林大臣政務官 御指摘の条項の事務所、営業所に該当するか否かは、一般に、登記の有無や名称のいかんを問わず、その実質を判断して決定されるものと解されております。

枝野委員 そうすると、登記の所在地や、パンフレットなど宣伝、要するに、消費者契約をさせようとしたときのパンフレットとかに書いてあるような事務所の所在地が実体と異なっている場合には、その登記の所在地とかパンフレット上の事務所所在地と関係なく、実体的な事務所の存在しているところで裁判を起こせる、こういう理解でよろしいんですね。どちらでも結構です。

三ッ林大臣政務官 事業者が法人であるときには、民事訴訟法第四条第四項により、まず、その主たる事務所または営業所の所在地の裁判所に管轄が認められますが、この主たる事務所等は、その実質を備えているか否かによって定まるものと解されております。したがいまして、実体としての事務所所在地等が明らかでない場合には、次の基準にある、その代表者その他の主たる業務担当者の所在地の裁判所に管轄権が認められることになります。

枝野委員 民事訴訟のルールとしてまさにそのとおりなんですが、この差しとめ請求を初めとして、この消費者契約法で問題にしなきゃならないというのは、いわゆる悪徳商法なんですよね。普通にまじめに事業をやっている人たちには全然関係のない話なんですよ。こういうところというのは、登記簿上の登記の所在地には何もなくて、パンフレットに書いてある住所のところにも何もなくて、代表者がだれかわからなくて、どこに裁判を起こすんですか。

三ッ林大臣政務官 判例によりますと、登記や定款上の事務所所在地等にそのような実体が存在しないことを知らない者は、登記や定款上の主たる事務所の所在地の管轄裁判所に訴えを提起することができるとされております。

枝野委員 そうなんですね。

 そうすると、私がもし悪徳業者で、そういうことをやろうとこの法律を見ていたら、こうします。

 どことは言いませんが、遠くの、できるだけ交通の便の悪いところの地方裁判所の管轄のところに登記を置きます。営業活動は人のたくさん住んでいるところでやります。そして、事務所の実体などは転々とさせて、どこに事務所の所在地があるのかわからないようにします。

 当然のことながら、悪徳商法をやる人は、代表者などがだれであるのかということをわからないように、隠してやります。そうすると、被害の大多数は例えば東京で起こっている、事件は東京で起こっているんだけれども、裁判管轄は非常に東京から交通の便の悪い地方裁判所で行われる、こういう結論になりますね。

猪口国務大臣 先生御指摘のようなケースであれば、そのようなことになります。

枝野委員 そうですね。公平ですか、今の結果が。

猪口国務大臣 まず、仮に、事業者の不当な行為がなされた地あるいはそのおそれがあるような地において管轄を認めた場合、多数の消費者を相手方とする消費者取引の特性にかんがみますと、結果的に、全国津々浦々、あらゆる地において提訴可能となります。ですから、事業者の予測可能性を著しく害するおそれがありますので、そのように規定しております。

枝野委員 自分でお出しになっている法律の中身をわかっていないんじゃないですか。これは、裁判を起こすのはだれですか。訴訟の提起の当事者、原告はだれですか、大臣。

猪口国務大臣 消費者の全体の利益を擁護するために適格消費者団体が機能するわけでございます。

枝野委員 いいですか、適格消費者団体が原告なんですよ。適格消費者団体の事務所所在地を裁判管轄に入れろと言っているんじゃないんですよ。適格消費者団体は、どこかに事務所を持っていて、どこかで活動しているんです。事件は日本全国いろいろなところで起きているかもしれません。だからといって、日本全国で裁判を起こすだなんという、コストの悪い、ばかなことを起こしませんよ。一番その証拠関係とか実際の被害の発生しているところを選んでやらなければ、適格消費者団体の方が割に合わないというか、そんなコストに合わないことをやりませんよ。違いますか。

猪口国務大臣 裁判を起こされる事業者の方についても配慮しなければならないのではないでしょうか。事業者といっても、大企業ばかりではなく、中小零細企業に至るまでいろいろあると思いますので、行為地等を管轄として認めるのは、私としては適切でないと考えております。

枝野委員 被害者は加害者を選べないんです。加害者は被害者を選べるんです。被害者は、北海道で住んでいようと沖縄で住んでいようと、営業マンがやってきて押し売りされたり詐欺的商法をされたり、その押し売りとか詐欺的商法をやってきた事業者は、どこに本店を置いて、どこに営業所を置いているかなんて関係なく、日本じゅうどこに営業所を持っていようが、日本じゅうどこにでも営業活動に行けるんです。どこに営業に行くのかというのは事業者が決めるんです。

 事業者は、中小零細企業で小規模であれば、全国展開でなんかそんな商売できませんし、しませんよ。日本全国どこでも裁判管轄があり得るということは、日本全国に悪徳商法を展開している業者なんですよ。何でそこが、自分が勝手に選んだ裁判所の裁判ができる、明らかに不合理じゃないですか。

猪口国務大臣 まず、制度の基本設計の考え方として、個別の事件に着目したといいますよりは、個別の事件を離れた不特定多数、消費者全体の利益擁護を目的としているのがこの制度設計の基本にありますので、そこはどうか御理解いただきたいんですね。

 ですから、個々の消費者の被害地に着目したり、そのことに着目するというよりも、そこからさらに拡大し、発生し、類似の複数の被害が波及していくということを防ぐために、消費者全体の利益擁護を目的としている制度でございます。

枝野委員 だから、まさにその全体の公益のことを考えたときに、こんな制度じゃおかしいでしょう。

 例えば、本店の登記を那覇市なら那覇市に置いておく、本店の登記は那覇市にあるけれども、全国キャラバンしながら悪徳商法をやっている、そういう業者がありました。だけれども、それは関東地方をキャラバンしながらやっていました。でも、本店所在登記地は那覇市ですといったら、被害は関東地方でしか発生していないのに、那覇地方裁判所で裁判を起こせ、それが世の中全体のためだ、大臣はそうおっしゃっているんですよ。

猪口国務大臣 制度を設計いたしますときは、事業者と適格消費者団体が公平に攻撃防御を尽くせるという仕組みにしておく必要があると考えます。そして、先ほどから何度も枝野先生に何とかわかっていただこうと思いまして説明している、これは、消費者全体の利益擁護であって、個別の、個々のという着目点とは違う制度設計の基本の考え方をとっております。

枝野委員 いいですか、個別の被害者の救済じゃないというのはよくわかりましたよ。個別の被害者の救済だったら、被害者の被害行為が起こったところで、その事業者がどこに本店があろうが、本社があろうが、日本全国の裁判所で裁判を起こせるんです。

 特に、消費者団体訴訟損害賠償請求を政府は認めないんですから、我々の案のように団体訴権を認めれば、そうした損害賠償請求訴訟についても一カ所で集約してできるんですが、ところが、政府案のように、それを認めていないから、日本全国の裁判所で、むしろ個別に裁判を起こすんです、北海道から沖縄まで自分の住んでいるところで、損害賠償については。

 ところが、まさにこれは個々の被害者のためではなくて、消費者全体、被害の拡大を防止するという公益的な目的のためにやるんです。だから、最もその公益的な目的を果たし得る場所で裁判をやればいいんです。

 例えば、先ほど申しましたとおり、実際の悪徳商法は関東地方一円でやっております。でも、ほかの地域ではやっておりません。だけれども、事務所、事業所だなんというものを置くと危ないからといって、本店は例えば沖縄に登記上は置いています。そうすると、沖縄地方裁判所で裁判を起こしても、そこでは、例えば証人を呼ぶにしても証拠の収集をするにしても、何するにしても全く合理性がないんですよ、被害が生じているのは関東地方だけなんですから。

 とすれば、公益のためにも、その被害の生じているところのどこかの裁判所でやれば、被告にとっても原告にとっても、まじめに攻撃防御をするということであれば、一番合理的じゃないですか。何でそのことを認めないんですか。

猪口国務大臣 まず、裁判の過程におきまして、その被害の拡大の範囲ということも明らかになるのではないかと思います。

 そして、やはり先ほどからお伝えしていますとおり、個別の事件を離れた消費者全体の利益擁護のための制度でございますので、また、事業者と適格消費者団体の間での公平な攻撃防御の機会ということを考えますと、今お伝えしたような制度設計になるのでございます。

枝野委員 何が公平なんですか。つまり、事業者の側は、自分の都合のいいように、裁判をやりにくいように、幾らでも自分で勝手に裁判所を選べるんですよ。

 ちなみに、大臣、わかっていますか。これは、法務政務官はわかっているでしょうから、大臣に聞きますけれども、この民事訴訟法五条五号の営業所、事務所の所在地は、いつの時点の営業所、事業所所在地なのか御存じですか、大臣。

猪口国務大臣 訴えの提起時でございます。

枝野委員 わかっていらっしゃるんだったら、いいですか、もっと極端な例を言いましょう。

 関東地方で悪徳商法をさんざんやりました。そろそろ、何か適格消費者団体も気づいてきたみたいだし、裁判を起こされそうだ。危ないといって、では九州に移して、今度は九州で同じことをやりましょう。現実にたくさんあるケースですよ。このときに裁判所はどこですか。

猪口国務大臣 営業所でございます。

枝野委員 いつの、どこですかと聞いているんですよ。

 いいですか、東京で、関東で悪徳商法をやっていました。ところが、裁判が起こされそうだというので、そこは引き払って、今度は福岡か何かに事務所を置いて、そこでじわじわと悪徳商法を始めましたという時点で、さあ、裁判を起こそうと思ったら、福岡地方裁判所じゃないですか。

三ッ林大臣政務官 九州になると思います。

枝野委員 それが、当事者間の公平という観点からも、それから、ここは個々の被害者の救済ではない、つまり公益的な見地から差しとめなきゃならない。そのために、本当に差しとめが必要なのかどうかという、その証拠関係とか、ほとんど関東にあるじゃないですか。それを何で福岡地裁でやることが合理的なんですか、説明してくださいよ。

猪口国務大臣 先ほども議論いたしましたけれども、事業者にとってのことも考えなければいけない。そして、それは大企業ばかりではなく、さまざまな企業があるということでございます。

 また、いずれにしましても、個別の事件を離れた消費者全体のための設計でございます。そして、先ほどからお伝えしていますように、事業者と適格団体との間におきます攻撃防御を公正に尽くせるという観点から考えますと、このような設計にならざるを得ないと思います。

枝野委員 今のように、東京で悪徳商法をがんがん展開して、それで、そろそろやばい、裁判を起こされそうだからといって、今度は九州だとか、今度は北海道だといって、そっちに全部移してしまった、その事業者の便宜のために東京では裁判を起こせない、これが正しいことだと大臣はおっしゃっているんですよ。いいんですね。

猪口国務大臣 先生は悪徳なる行為をしているという前提でお話しになっていらっしゃいますけれども、裁判の過程においてしか本来はそれは明らかにならないことではないかと思います。

枝野委員 また詭弁が出てきましたね。

 いいですか、例えば事業者に対する嫌がらせで、全然事業者と関係ないところで裁判を起こそうと思ったら、こんな消費者団体訴訟なんて使わなくても簡単に起こせるんですよ。勝ち目のない裁判でも、とにかく裁判を起こすという嫌がらせをやろうと思ったら、日本の裁判制度というのは、裁判を起こすこと自体は、日本全国どこでも自由に起こせるんです。そこに裁判管轄があるかどうか、裁判所が判断をして、そこではねのけられるケースがたくさんある、たくさんでしょう。

 でも、少なくとも、例えば、ここで不法行為を受けました、ここで契約を締結しましたといって、損害賠償請求訴訟を起こせば、日本全国どこでも裁判を起こせるんですよ。嫌がらせとして、つまり、本当は、善良な事業者に対して嫌がらせ的に裁判を起こすということだったら、こんな面倒くさい裁判なんか起こす必要全然ないんだから、この制度をどうつくろうと、それは日本じゅうのどこかの裁判所で勝手に起こせるんですよ。そのことをわかっていますか。

猪口国務大臣 先生の御議論されていますことは個別のことでございます。

 この制度設計は、消費者全体の利益擁護のために差しとめ請求権を適格消費者団体に認める、そういう制度設計の基本の考え方の違いを御理解いただければありがたいです。

枝野委員 いいですか、政府案では、裁判を起こす原告は、皆さんが大丈夫だと認可をした人たちしか裁判を起こさないんですよ。

 いいですか、本当は関東地方で一万件の悪徳商法をやっていて、福岡でたまたま一件だけありましたから、福岡で裁判を起こすだなんということをする適格消費者団体をあなた方は認可するんですか。

猪口国務大臣 私、やはり自分のここまでやってきました答弁に戻るしかないと思うんですね。

 やはり、事業者と適格消費者団体の間の公平性を確保するということから、このような制度設計となっています。

枝野委員 最後にしますけれども、もう一回、ちゃんと聞いてくださいね。いいですか、ちゃんと聞いてくださいね。ちょっと、聞いてから、時計とめて、後ろから説明聞いた方がいいですよ。ちゃんと聞いてくださいね。いいですか。

 確かに、被告になる事業者と裁判を起こす側との公平公正を保たなければいけないです。ですから、被告の側としても、全然予測可能性もない、とんでもないところで裁判を起こされたら、それは事業者は困るでしょう。だけれども、事業者は、どこで営業するのかということを自分で選択しているんです。

 うちは中小零細企業だから、何とか町のエリアでしかやらない、その周辺でしかやらないという選択をするのか、それとも全国展開をして商売するのかということは、事業者の側が自分で選択をしているんです。中小零細企業であれば、全国展開しませんから、行為の行われた地を裁判管轄にしても、それとも事業所の所在地を裁判管轄にしても、基本的には一緒になるだけなんですよ。

 それで、自分の事業所のないところで裁判を起こされるかもしれないということは、自分の事業所のないところまで営業を幅広く展開している業者だけなんですよ。だから、それは、自分が判断して営業展開をした範囲のところにおいて裁判を起こされるというリスクは、当然負っていただかないといけないんですよ。

 さあ、その上で、裁判を起こす適格消費者団体の立場から見てみましょうということで、先ほどの話なわけですよ。

 今の政府案では、関東地方で悪徳商法を展開したけれども、危ないと思って、さっさとトンズラをして、別のところで同じことをやっているという業者がいたときに、裁判はその移った先でないと起こせないんですよ、わざわざ。アンフェアじゃないですか。

 公平ということだったら、基本的に、一番悪徳商法が最も中心になって行われた地の裁判所で裁判するのが、それが悪徳商法だ、消費者契約法違反だということを訴えて、それを裁判所で証明する側にとっても、いや、そんなことないんですよ、私たちはまじめに真っ当な商売をしていたんですよという反証する側にとっても、その営業活動が行われていた地域が、一番公平に、的確に証拠の判断ができる、収集ができる地じゃないですか。違いますか。

猪口国務大臣 先ほども、そのような場合においては、全国津々浦々、あらゆる地において提訴が可能になるわけですよ。ですから、行為地の管轄という考え方をとりますと、やはり予測可能性が著しくなくなるわけでございますから、そのような問題を、事業者と適格消費者団体間の公平性ということを考えるときに考えなければならない。

 それから、中小企業の活動について先生御議論されましたけれども、今日の時代ですと、インターネットなどを通じて、一定の地域だけということではない可能性もございます。

枝野委員 いいですか、全国展開しちゃったら、全国のどこで裁判を起こされるかもしれない。それは、この法とは違う個別の被害救済のためでありますけれども、個別の被害救済のための裁判は、日本全国に営業していれば、日本全国どこの裁判所で起こされるかわからない、初めから事業者はそういうリスクを負って商売をやるんですよ。違いますか。

 インターネットで物を売りますという商売をやっている人は、例えば悪徳商法じゃなかったとしても、例えば瑕疵担保責任に基づく賠償請求なんかにしても、日本全国どこの裁判所で起こされるかもわからないというリスクは初めから負って、全国展開で営業しているんですよ。だから、どこの裁判所で裁判を起こされるかわからないということは、実は説得力が全くないんです、初めから別の裁判を起こされるんですから。

 さあ、これで、本件は個別の被害の救済じゃありませんと何度も繰り返していらっしゃる。個別の被害の救済じゃありません、まさに公益的な見地からです。公益的な見地からやるんだから、政府は、裁判を起こせる原告適格を、適格消費者団体を、しかも認可制にして、本当に皆さん自身が、政府自身が中立公正にきちっとやりますということを認めたところにしか裁判を起こせないようにしているんですよ。そのところが、嫌がらせのように、実は件数は余りないんだけれども、被告にとってここは不便そうだからここの裁判所で起こしましょうかなんてばかなことやったら、認可を取り消せばいいじゃないですか。

 基本的には、一番被害者の多い、一番事件の中心になったところの裁判所で起こすに決まっているじゃないですか。認可制じゃなくたって、登録制だってそうしますよ。もし、嫌がらせのように、事件とはほとんど関係ないんだけれども、たった一件被害者がいましたなんてところで裁判を起こしたら、多分、我々の登録制だとしても、登録取り消し事由になるんじゃないかと思いますよ。まして、皆さんの認可制だったら認可取り消しですよ。そういうことでちゃんと担保できているんですよ。

 ところが、政府案では、事件の中心になった裁判所ではできない、そういう仕組みをつくっちゃっているんですよ。おかしいと思いませんか。

猪口国務大臣 まず、営業所あるいは事務所、問題とされるそういう勧誘行為を行う場合、そういう従業員等もそこに所在するでありましょうし、あるいは約款でありますとか契約書、そういうものも存在するのが通常であります。

 そして、やはり私は基本に戻らないとなりません。それは、個別の消費者あるいは事件ということに対応しようとしている、そのような制度ではなく、これは、そういう意味では画期的な、消費者全体の利益擁護をするために、まさに直接の被害者ではない第三者である適格消費者団体が差しとめ請求をできる、そういう制度にしているわけでございます。

 先生の御議論は、特定の被害あるいは被害の発生しているところというところに着眼されています。そういうことではなく、この政府案におきまして志している制度とは、不特定多数、消費者全体の利益擁護を目的とし、また被害の拡大を制度全体として防げることをねらいとしているのでございます。

枝野委員 話をちゃんと聞いてください。私は、例えば日本全国津々浦々で被害が発生する、そういうケースはあるでしょう、日本全国津々浦々で発生するから、たまたま被害者が一人いましたという裁判所で裁判を起こせなんて言っていないんですよ。いいですか、ちゃんと聞いてください。

 私は、被害者が全国津々浦々にいるから、だから、被害者がたまたま一人いました、そこの裁判所でも裁判を起こせるようにするのがいいことだなんて言っていないんですよ。政府案では、被害者の九九%が東京にいても、事務所の所在地が沖縄だったら那覇地裁でやらなきゃならなくなるんですよ。それがおかしくないですかと言っているんですよ。違いますか。

 事件の九九%、営業活動の九九%が東京で行われているのに、那覇地方裁判所でないと裁判が起こせません、この制度が合理的だというんだったら、そう答えてください。

猪口国務大臣 被害者の九九%が一定の地域におられるということは、裁判の過程においてしかわからないことだと思います。

枝野委員 今の話じゃ話にならないですよ、民事訴訟法の基本のイロハのところからやり直さないと。民事訴訟法をどう考えているのか。

 当たり前じゃないですか、被害者が被害者であるかどうかを確定するのが裁判なんですよ。だけれども、裁判を訴えるときに、被害者はこういう人たちですということについて主張をした、その人たちのところで裁判を起こしましょうと言っていることが何でおかしいんですか。それだったら、まさに民事訴訟の基本原則を全部変えなきゃいけないですよ。被害者であるかどうかは裁判で確定されるんだけれども、被害者であると訴える人は、被害を受けた地で裁判を起こせるというのは民事訴訟の基本原則ですよ。だから、今の答えは答えになっていないじゃないですか。

 被害者の九九%が東京でしたというのは、裁判の結果確定されるかもしれません。しかしながら、事件の実態として申し上げているんですよ。

 では、正確に言いましょう。いいですか、ちゃんと聞いてくださいね。事件の実態として、当該問題となっている法律行為の九九%が東京で行われていても、例えば那覇地方裁判所でないと裁判が起こせないというこの制度が合理的ですか。合理的だとあなたは言っているんですよ、いいんですか。

猪口国務大臣 先生がおっしゃるような、そういう不合理なことをやっていることではございません。それは、個別の訴訟とは考え方として非常に違うものを制度設計しているので、画期的な制度であるわけでございます。

枝野委員 ちょっと整理をしてください。いいですか、今の答弁はどういうことか。私が申し上げている、問題となっている、差しとめが必要であると訴えの対象になっているような法律行為の九九%が東京で行われていても、東京では裁判が起こせず、那覇地方裁判所でないと裁判が起こせない、こういうケースがあり得るということを認めているんですよ。そのことについて、それは仕方がないとあなたはおっしゃっているんですよ。それでいいんですねと聞いているのに答えがない。どうでしょうか。

佐藤委員長 枝野委員に申し上げます。質疑時間が終了しておりますので、御理解を願います。

枝野委員 では委員長、これはもう一回質疑に立たせていただきますので、きちっと、大臣のところ、役所で話を整理してください。

 それから、これは本当に民事訴訟の基本中の基本原則にかかわる話なので、きょう政務官に来ていただいて、大変有意義な御答弁をいただきましたが、もし今のような答弁の線で物事を進められるんだったら、これは民事訴訟法の問題ですよ。ですから、ぜひ法務委員会と合同審査していただいて、法務大臣と並べて、きちっと、そんな民事訴訟の原則でいいのかどうか、ちゃんと議論をさせる時間を二時間ぐらいみっちりとらせていただきたい、そのことを申し上げて、きょうはこれだけにしておきます。

佐藤委員長 ただいまの御意見は承らせていただきますが、午後の審議の中におきましても続くならば、やるように。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時六分開議

佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。枝野幸男君。

枝野委員 整理をされてこられたんだと思いますので、もう一度お尋ねをします。

 今の政府案ですと、先ほども例に挙げました、例えば東京周辺、首都圏で法律行為を行った、ほとんど九九%、いや、一〇〇%首都圏で法律行為を行ったというケースであっても、何かの事情でその業者が拠点を全部、例えば九州なら九州に移してしまって、東京にはもう事業所は残っていませんということになれば、これは東京地方裁判所で裁判を起こしたくても起こせない、こういう法制度になっていますね。まず、このことを確認します。これで間違いないですね。

猪口国務大臣 そのとおりです。

枝野委員 大臣は、これが公平であり、あるいは、公益的見地から差しとめ請求訴訟をやるそのやり方として適切である、こういう価値判断に立っておられる、こういうことになるわけです。それでよろしいんですね。

猪口国務大臣 午前中も答弁いたしましたけれども、管轄裁判所については、事業者と適格消費者団体が公平に攻撃防御を尽くせるという観点から、被告事業者の普通裁判籍所在地を管轄する裁判所を基本としつつ、あわせて、実体を伴う営業所所在地等による管轄を認めるのが適当であると考えます。

 また、個別の事案において、実体を伴う営業所の所在がどこにあるかにつきましては、これは適格消費者団体によって訴えが提起された裁判所で判断されることでございます。

枝野委員 助け船的に少し申し上げますが、先ほども申しましたとおり、被告の営業所所在地というのは、裁判を起こす時点の営業所所在地なんですよ。行為が行われたときの営業所所在地じゃないんです。そして、大部分の普通の業者は、そもそもこの法律の対象外なので関係ないんですよ。

 悪徳商法を行うような業者は、まさに一カ所でやり続けていると、いろいろぼろが出る、足がつくということもあって、転々と拠点を移していくということが当たり前に存在しているんですよ。それで、例えば東京なら東京を拠点に、半年なら半年わっと悪さをして、いや、別に悪さじゃなくてもいいんです、悪さかどうか決めるのは裁判所ですから、一定の営業活動をして、もうこの辺は食い尽くしたから、では、そこの事業所を完全に閉じてしまって、今度は大阪だ、今度は福岡だということが現実にあるんですよ。

 にもかかわらず、裁判を起こす時点での営業所所在地ということになると、事件が起こったところでは裁判が起こせないという不合理なことになるんじゃないんですか、このことを申し上げているんです。

 それでも仕方がないと大臣はおっしゃるんですね。

猪口国務大臣 枝野先生御指摘のような事例もあるかもしれませんが、いわゆる悪徳事業者だけを対象にしている制度設計をやっているわけではございません。また、もう繰り返しませんけれども、個別事例のことではないという議論は午前中もし尽くしましたので、それは繰り返しませんが、個別の事案において、実体を伴う営業所の所在がどこにあるのか、これを判断するのは、適格消費者団体の訴えが提起されたところにおいて、その裁判所で判断されるわけですから、その適格消費者団体が訴えを起こすというときにその判断があるということです。

枝野委員 後段の方、何をおっしゃっていたかよくわからないんですが、前段の方の話ですけれども、確かに、悪徳業者以外の人たちも被告にされる可能性はあります。でも、この人たちにとっては、つまり、普通の事業者というのは、事業所の所在地が固定していて、そして、そこを拠点にして営業活動をやっているということなので、普通に考えたら、法律行為の行われた地と営業所所在地というのが一致するのが一般的なんです。

 ところが、まさにそういうケースもあるかもしれませんがと大臣がおっしゃられた最も悪質であることが疑われるケース、それが転々と営業拠点、営業所を移しながら次々と悪徳商法を展開していくという、最も悪質で最も差しとめ請求でしっかりと被害の拡大を防止しなきゃならないケースこそが、そういうケースもあるかもしれませんがと言ったケースなんです。

 その一番厳しく対応しなきゃならないところがすり抜けることができるというこの中身になっていても、仕方がないということを大臣はおっしゃっているんです。だけれども、そういうケースもあるかもしれませんがと、あるかもしれません、では、そのケースにどう対応するんですか。

猪口国務大臣 すり抜けるということでは決してありませんで、適格消費者団体は、そのような行為を行っている事業者に対する消費者全体の利益を擁護し、さらなる被害の拡散を防ぐための訴訟を起こすのでございます。

枝野委員 裁判管轄の話をしているんです。どこで裁判を起こせるのか。

 つまり、東京で消費者被害が発生している、それは、被害というのは先ほどの話だと裁判で確定するというんだったら、一定の法律行為や営業活動がなされている。大丈夫ですか、聞いていなくて。

 東京で営業活動が行われていました、ところがその事業者は転々と事務所の所在地を変えて営業している。例えば、東京を中心にして大規模な被害があるということで、拡大を防がなきゃということで適格消費者団体が裁判を起こそうとしたら、もう東京は全部引き払ってしまって、今度は那覇で同じようなことをやっているといったときには、那覇地方裁判所でないと裁判が起こせないんです。いいですか。

 那覇地方裁判所で裁判も起こせるかもしれませんが、それでいいかというと違うんです。裁判を起こしたら、こんなふうにおかしな営業活動をしていましたということを裁判所で立証しなきゃいけないんです。その証人はほとんど東京近辺にいるんです。それを、みんな沖縄まで足を運んで裁判所で証人に立てということを大臣は迫っているんです。それでも構わないというんだったら、構わないと答えてください。どうぞ。

猪口国務大臣 まず、適格消費者団体は全国的な規模で活動する団体が生まれてくる可能性も十分にございます。

 また、先ほどお伝えしましたように、実体を伴う営業所の所在地がどこにあるかについては、適格消費者団体によって訴えが提起されるわけですから、その段階で判断されます。

枝野委員 延長までしてやってきましたが、話がわかっていないんじゃないですか。あなたがつくっている、提出している法律なんですよ。

 適格消費者団体が東京地方裁判所に裁判を起こしても、あなたのつくった法律で、そこに裁判を起こした時点での営業所、事業所がなければ、その訴訟は、これは却下ですかね、されるんですよ。実体審理に入らないで飛ばされるんですよ。違いますか。それでいいんですか。いいんですね。

猪口国務大臣 午前中から答弁申し上げているのですけれども、そもそもの制度設計の基本が、個別の事案に即してあるいはそれに着目して行うといいますよりは、消費者全体の利益擁護の観点から、そして被害の拡大を防ぐという観点からですので、個別の事件、事案あるいは個別の被害の発生した地、そういうところに注目しながら設計することは適当でないと考えているわけです。

枝野委員 この法律のどこに全国規模の被害しかやらないなんて書いてあるんですか。地域的な、限定的な被害の拡大を防止することもこの法律の対象でしょう。北海道でも沖縄でも被害が起きている事件しか扱わないというんだったら今の話はわかりますよ。ところが、この法律は違うんです。ある特定地域だけで問題が起こっているというケースも対象にしているんですよ。ところが、その問題が起こっている地域じゃないところで裁判を起こせとあなたは言っているんですよ。そうでしょう。認めますね、それは。

 例えば、東京だと例が悪いかもしれない、例えば埼玉で起こっています。例えば埼玉限定で悪徳商法的なものが行われている。でも、その裁判を起こすのに、それが地域限定の悪徳商法だとしても、例えば営業所在地が大阪に移っていたら、大阪地裁じゃないと裁判を起こせない、あなたの出している法律はそういう法律なんです。わかっているんですか、それを。

猪口国務大臣 原告が主張する場合には、被告はその管轄裁判所で応訴せざるを得なくなります。なりますので、この場合、大量の消費者を相手方とする消費者取引の特性にかんがみますと、管轄裁判所の主張が無限定に拡張されるおそれがあるということでございます。

 ですから、被告となる事業者にとって、その負担についても予測可能性を考えなければなりませんので、その予測可能性を害することから、これを認めることが適当でないと考えているわけです。

枝野委員 何度繰り返しても、それはしようがないんですねというお答えがいただけないんですよ。しようがないんですねというんだったら、しようがないのでと答えていただければいいだけです。

 そういう悪徳業者が自分たちの都合のいいところで裁判できるようにしても、するのは仕方がないんだというなら、仕方がないで結構なんですが、今の答弁なんかむちゃくちゃじゃないですか。

 それは相手が応訴すれば、応訴してくれればどこの裁判所でもいいんですよ。応訴してくれないから問題なんですよ。だから、わざわざ何でこんな遠くで裁判を起こさなきゃいけないんだ、こういう話になるわけですよ。

 もうきょうはこれだけにしますので、よく検討してきてください、副大臣はよく御理解をいただいているように思いますので。

 必ずしも、一般的な民事訴訟の管轄の原則に戻せと私も言うつもりはありません。いろいろ知恵はあるんだろうと思います。

 これは、それこそ法務省とよく御協議いただかないといけないと思いますが、例えば当該差しとめ請求の対象となる行為が中心的に行われたような地域に限定する。例えば、八割は埼玉県で行われているけれども、ごく一部、北海道や沖縄でもやっています、それが北海道や沖縄の裁判所でできるというのは、それはちょっとしんどいかなというのはあるかもしれない。だけれども、やはり八割埼玉で行われているのを差しとめるんだったら、大阪地裁とか青森地裁というのはおかしいですよね。そこは原則に戻せと言うつもりはありませんから、そういった方法を来週の質疑までにしっかりと御検討をいただきたいということを申し上げて、後の仲間の質疑者に譲りたいと思います。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 引き続きまして、民主党の市村でございます。

 今の枝野委員の討論がありましたので、一つ具体的にお聞きしたいと思います。

 例えば、催眠商法なんですけれども、いろいろなところを転々としながら全国各地で、しかも一つではなくていろいろな地域の、ある団体がその地域地域で催眠商法を行っている。最初は何か物を安く売ったり渡したりして客を呼んでおいて、そして、それこそ監禁に近い行為を行って高いものを売りつける、そういうことをやっている事業者があったとして、それも一つじゃありません、幾つかの事業者が全国で同じことをやっていたとしまして、その場合は、では、適格消費者団体はどこで裁判を起こせばよろしいんでしょうか。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 催眠商法のような事業者でございますと、比較的転々とやっていることがございます。そういう場合の営業の拠点というのがどこになるかという問題になるかと思います。

 そういったときに、例えば、東北地方で集中的にやっているときには、それは沖縄から通うということはあり得ないわけで、東北地方で拠点としてやっているときに、営業の拠点としてどこかにあるわけですね。そこから販売員が動き回っている。

 そういうところが具体的にどこになるのかということを判断して適格団体は訴訟を提起するということになりますが、仮にそれが、当初手がけていた適格団体の所在する中心地とは違うような場合には、その活動が行われている地域を中心として活動している適格団体、そちらと連携をしてやっていただくということが最も有効な方策ではないかと思います。

市村委員 適格団体の方はまだ聞いておりません。適格団体が複数あるかというのもわかりませんよね、後で議論します、それは。

 だから、まずどこで訴えるかということにつきまして、例えば、これは私が今別の観点で手がけているケースですけれども、ある社団法人がありまして、その社団法人の支部があるわけです。その支部がその社団法人の名前を使って、その社団法人の名前も使いながら、実はWHOという国連機関のロゴマークまで使いながら、信用させながら、そういう催眠商法をやっているというケースがあるというふうに国民生活センターにも苦情が上げられています。

 そういう場合、大元締めは社団法人となるのかどうか。これは非常に興味ある論点ですが、これはきょう論議しません。しかし、その支部がその社団法人の、親玉のところからロゴ使用を認められながらやってきたというケースがあったときに、それが催眠商法を行っている、こういう場合は一体どこで訴えればいいんでしょうかね。ちょっと大臣、お答えください。

田口政府参考人 その場合には、催眠商法をやっている営業区域というのをまず特定して、そこの営業拠点がどこにあるか、そこに応じてやるということになります。

市村委員 だから、営業区域が複数にある場合、業者が違うといったら支部なんですね。でも、大元締めは一つなんですよ。こういう場合はどうなるのかとお聞きしているんです。

 だから、一業者で同一事件はもう一回訴えられないと言っていますけれども、大元締めは一つだけれども支部があって、幾つかの支部がやっている場合は一体どうするのかということなんです。これは大臣お答えください。済みません、委員長、大臣にお願いします。

田口政府参考人 裁判管轄の基準になります営業所と申しますのは、本社には限りません。支部のようなものでも、営業の実質的拠点であれば、そこで裁判を起こせるということでございます。(市村委員「もう一回」と呼ぶ)支部のようなところでも、営業の実質的拠点であれば、そこで裁判を、訴えを提起することができるということでございます。

市村委員 ということは、全国で幾つもの裁判が同時に適格消費者団体は起こせる、全国で同時に起こせるということですか。これは大臣でいいでしょう。これは委員長、大臣にお願いします。

佐藤委員長 田口局長、答えなさい、引き続いて。私が采配しているのだから。

市村委員 委員長、私、参考人は基本的に質問しないということを前提に呼んでいるんです。だから、これからもそうだったら呼びませんよ。いいですか。内閣府、一切、私、呼びません。いいですね。それを前提に答えてくださいね。

佐藤委員長 注意します。そういう発言は慎んでください。

市村委員 何ですか、委員長、それが前提で呼んでいるんですよ。私は大臣だけと言った、でも呼んでくださいと内閣府が。前提から言っているんですよ、私。それはおかしいですよ。

佐藤委員長 おかしいって、慎んで。今、まず、来ているんだからちゃんと、呼んだ人が。

市村委員 いや、だから、前提があるんですよ、前提が。

佐藤委員長 だから、それをいかにするかは私がやるんですから。

市村委員 それはちょっと違うんじゃないですか。内閣府、これから一切参考人呼びませんよ、いいですね。ルールが守られないじゃないですか、約束が。

佐藤委員長 猪口国務大臣。

猪口国務大臣 支部がたくさんあるという場合のことのお尋ねでございますか。そうですね。

 その場合は、民事訴訟法の五条に言います事務所あるいは営業所で、そこで提起できるということだと思います。

市村委員 今回、差しとめ請求、だから拡大を防ごうということですね。催眠商法、全国で同じようなことをやっているんです。たまたま幾つかの地点で同じようなケースが出てきたとした場合に、それは申し上げておきますが、もう一回だけ確認しておきます。適格消費者団体は複数の地域で同種のものを訴えられる、同時に訴えられる、これは大丈夫ですね。これだけ確認させてください。

猪口国務大臣 基本的には訴えはできると思いますけれども、その場合、併合されて裁判がとり行われると思います。

市村委員 そうすると、併合される場所はどこになるんでしょうか。

猪口国務大臣 併合される裁判所につきましては、それは裁判所の裁量であります。

市村委員 ということは、先ほどの枝野委員の質問といいますか疑問に戻りますから、では来週までにそのことをきちっと確定させて、またお答えいただきたいと思います。

 それでは、きょうの最初の質問に私戻りたいと思いますが、実は、業界団体とかが推奨行為ということを行っているんですね。例えば、老人ホーム協会があったとした場合、各老人ホームに、このように書きなさいねということを推奨する場合があります。

 実は、今回のこの改正、また消費者契約法からは、この推奨行為というのは、外しているというか、ないんですね。実は、ドイツやイギリスというのは、この推奨行為すらも訴訟の対象になるんです、なっています。どうしてこれは外したんですかね、盛り込まなかったんですかね、この理由をお答えください。

猪口国務大臣 まず、推奨行為につきましては、消費者、事業者間の契約を直接規定するものではありません。そして、推奨行為の主体あるいは程度、さまざまなものがございます。ですから、もし推奨行為をも差しとめ対象とする場合には、これは事業者団体による取引の適正化のための正当な活動まで萎縮させるおそれがありますので、対象とはしていないということでございます。

 そして、差しとめ対象にはしていないんですけれども、推奨された不当な契約条項を個々の事業者が消費者に対して使用するという段階では差しとめることは可能であります。

市村委員 例えば、イギリス、ドイツというのは推奨行為を盛り込んでいるということなんですが、推奨行為をもその対象にできるということを盛り込んでいるということなんですが、なぜ盛り込んでいると思いますか。

猪口国務大臣 先生御指摘のとおり、ドイツ、イギリスでは差しとめ対象になっています。フランスの場合はそうではない。ですから、各国それぞれの事情を反映した法制度となっていると理解しております。(発言する者あり)

市村委員 ですから、今、委員からもありましたけれども、フランスは盛り込まないのはいいんです、ドイツやイギリスは何で盛り込んだんですかということを私はお聞きしているんです。

田口政府参考人 消費者団体訴訟制度と申しますのは、各国それぞれ、法律が違います。また、各国それぞれの国の中でも、個別の法律が幾つか、複数あったりいたします。そのそれぞれの法の体系によって差しとめの対象等も決まってくるということでございますので、推奨行為的なものを規制対象に加えているというような国においては差しとめ対象になり得る。しかしながら、我が国では、そういうものは、消費者契約を対象としておりますので。

猪口国務大臣 今、局長が答弁いたしましたとおり、各国それぞれの、今までの法体系も違いますし、法事情が異なりますので、イギリス、ドイツにおきましては先生の御指摘のとおり、また、その他のヨーロッパの国々で推奨行為を差しとめの対象としていないところはあります。

市村委員 いや、ですから、各国それぞれの事情があるのは当然踏まえた上で、だから、ドイツやイギリスでは推奨行為は対象に入っているんですから、なぜ入っているのかということをお聞きしているだけなんです。だから、各国それぞれの事情があるということは当然わかった上でお聞きしているわけです。

猪口国務大臣 責任ある答弁をいたしたいと思いますので、ドイツ及びイギリスの法体系の理由につきまして、私からその答弁をいたすことは適切でないと思います。

市村委員 私はちゃんと事前に話をしていますので、改めて、きちっと調べて、また資料でもください。

 それで、あと五分ぐらいですから、もう一点。

 実は、私もこの内閣委員会でも大分議論させていただきました、去年の六月には当時の竹中大臣とも議論させていただきましたが、有料老人ホームの問題なんですね。

 これは、相変わらず消費者センターの苦情も多いんです。何が多いかというと、一時金に関する苦情なんですね。公正取引委員会も、四条一項三の方で、消費者に伝えるべき事項というのを定めています。これによりまして、十二の不当な広告が指定されまして、この十二の一つでも違反すると排除命令を受けて、広告ができなくなり、募集もできなくなるということでございます。

 だから、そういう点からしますと、公取によりまして、不当な広告の規制という形で、消費者保護のための体制がつくられているということなんですけれども、この間、日経ビジネスの記事もありますけれども、いまだに、やはり一時金の問題が結構問題だということで取り上げられているんです。

 これは、消費者契約法で言うところの不利益事実の不告知があったための結果としてこうなっていると私は思うんですが、この辺の実態から考えて、どうですか。

 大臣、これはもちろん事前通告しています。では、このようなケース、例えばこうした一時金について不利益の事実があることを告知しなかったということは、消費者契約法が適用されて、契約の取り消しとなるんでしょうか。また、実際にそのようなケースはありますでしょうか。

佐藤委員長 田口国民生活局長。(市村委員「いや、大臣にお願いします」と呼ぶ)田口君に、まず答えさせなさい。

 あなたが仕切るんじゃないんだ。発言者、注意します。

田口政府参考人 有料老人ホームの一時金の問題というのは、ケースによって内容もかなり異なります。

 したがいまして、個別の事案に即して判断する必要があるわけでございますが、一般論といたしまして、入居期間にかかわらず、今問題になっております契約解除の際に一時金を一切返還しないという取り扱いでございますが、これにつきましては、消費者契約法上は、不利益事実の不告知というよりも、むしろ、契約解除に伴う損害賠償の額の予定または違約金条項の無効を定める同法第九条の観点から無効になり得る案件だと思っております。

猪口国務大臣 今、局長から答弁したとおりでございまして、詳細の個別内容がわからなければなかなか断定できませんけれども、入居期間にかかわらず、契約解除の際の一時金を一切返還しないというようなことにつきましては、これは消費者契約の解除に伴う損害賠償額の予定または違約金条項の無効を定める消費者契約法第九条第一号に該当するものと考えます。

市村委員 済みません、もう一回、今のところを具体的に。何に該当するということをもっと具体的におっしゃっていただけませんか。消費者契約法上、何に該当するかということをもう一度具体的に。

猪口国務大臣 消費者契約法第九条第一号に該当する。

市村委員 それを具体的にということを私は申し上げているんです、そこは。どういうものを、どういう条項ですか、内容ですかということです。

猪口国務大臣 これは損害賠償額の予定に関する条項なのでございますが、読み上げなくてもよろしいでしょうか、先生よく御存じのとおりの条項でございます。

市村委員 個別具体的な話と今おっしゃいましたけれども、まさに、これは何を議論しているかというと、個別具体的でないもので、不特定多数の消費者が損害をこうむる場合のための消費者契約法の改正案を今ここで議論しているわけですね。

 例えば、老人ホームの一時金の問題というのは、特定のことじゃないんですね。これからまさに、今、老人ホームはどんどんウナギ登りにふえています。この問題は、これから消費者問題として浮上してくる、また、もう既に浮上しているんですよ。

 だから、こういうことこそ、事前に手を打って被害防止をする、また被害の拡大を防止するということがあるわけでありますから、まさにこういうものが入るか入らないかということを今お聞きしているわけであって、こういうことに明確に答えられないなら、一体何のための改正案なのか、何のためにここで議論しているのかわからなくなりますから、明確にお答えいただきたいんです。

猪口国務大臣 済みません。ですから、まさに第九条一号に該当し得ると答えております。

田口政府参考人 消費者契約法第九条第一号に該当し得るものですから、契約条項を使った有料老人ホームに対して、その条項を使わないようにという差しとめの訴えを提起できる、推奨行為ではなくて、その条項を使った契約の段階で差しとめができるということでございます。

市村委員 あえて推奨行為ではないということで強調されましたけれども、まさにこれは推奨しているんですね。だから、さっき推奨行為のことを問題にしたんです。

 ですから、これから本当に、もう結局、有料老人ホームしかないんです。高齢者の方の介護とか、いわゆる施設介護の場所は有料老人ホームしかないんですよ。しかも、当時の竹中大臣もおっしゃったように、全財産をはたいてそこに移るんですよ。それで、では何かふぐあいがあった、やめたい、一時金返しません。今、ほとんどゼロの場合もありますけれども、二千万、三千万という一時金を取って、返しません、それで出るに出られない、こういうケースもあります。今あるんです。またふえてくると思います。

 だから、そうしたことも踏まえて、まさに、消費者契約法を改正するわけですから、そうした事例も踏まえて、しっかりとこの改正をやっていかなければいかぬと思いますし、また議論もしたいと思いますので、きょうは、ここで私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、小宮山洋子君。

小宮山(洋)委員 民主党の小宮山洋子でございます。

 私の持ち時間は、一部枝野さんに差し上げましたので一時間をちょっと切りますけれども、今回の消費者契約法、先ほど答弁席でも申し上げましたが、本当に消費者の皆さん、消費者団体の皆さんが待ちに待った制度でございます。少しでもよい制度でつくり上げなければいけないということで、消費者団体の皆さんがパブリックコメントなどでもお寄せくださったことやらヒアリングをさせていただいた中身から、実質的な中身の議論をしたいと思っておりますので、政府委員にももちろん御答弁をいただきたいと思いますが、やはり大臣が責任を持って提出をしていらっしゃる法案でございますので、必要なところは政治家として、提出者として、きちんとお答えいただきたいということをまず最初にお願いをしておきます。

 まず第一点は、今回、改正の大きなねらいと、なぜそこで損害賠償制度が見送られたのか。私たちは、やはり両輪といいましょうか、予防と、ちゃんと被害を救済すること、両方が整う必要があると思っておりますので、何点か伺わせていただきたいと思います。

 消費者団体訴訟制度の必要性につきましては、先ほどから議論があるように、二〇〇〇年に消費者契約法ができたときから課題として指摘をされてまいりました。そして、昨年には国会に政府案が提出されると消費者団体の皆さんも待っていらしたわけですけれども、それがことしになりました。

 二〇〇四年に国民生活審議会に消費者団体訴訟制度検討委員会がつくられて、具体的な検討が進められてまいりましたけれども、どういう論点が煮詰まらなくて昨年見送られたのか、その論点を簡潔に整理してお話しをいただきたいと思います。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 国民生活審議会の検討委員会におきましては、損害賠償のあり方につきましても議論いたしたわけでございますが、さまざまな議論がございました。

 早期に団体訴訟制度を導入すべきであるという御意見ももちろんございましたが、同時に、消費者被害の発生なり拡大を防ぐことが今最も重要であるという観点から、差しとめ請求を早急に制度化すべきであるということで、損害賠償については将来的課題にすべきであるという御意見もございましたし、また、損害賠償制度につきましては、被害を受けた個人に権利がございますので、その権利との調整をどうするかというような点で検討すべき点もある。さらには、司法制度改革、司法アクセスの改善の進展状況もよく見きわめなければいけないという御意見もございまして、検討委員会の中ではコンセンサスに至らなかったということで、その必要性も含め慎重に検討という結論になったわけでございまして、それを踏まえて今回の法案の内容にさせていただいたということでございます。

小宮山(洋)委員 午前中に川内委員も質問をいたしましたけれども、消費者団体あるいは学識経験者の側からは、損害賠償制度は必要だという意見もかなり出ていたのだと思います。

 諸外国でも、消費者団体訴訟制度に損害賠償を導入している国、さまざま、答弁でこれも申し上げましたが、クラスアクションの制度とか、いろいろな制度がありますよね。私ども民主党案では盛り込みましたが、こういうようなやり方もあるということも具体的に資料として提示をされて、具体的な検討をこの検討委員会の中でされたんでしょうか。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 国民生活審議会に設置されましたこの検討委員会におきましては、二〇〇四年五月の第一回会合におきまして、諸外国における消費者団体訴訟制度の概要という資料を提出いたしました。また、同年八月の第四回会合におきまして、私ども内閣府の国民生活局が行いました、諸外国における消費者団体訴訟制度の実地調査の概要、これも配付するなど、諸外国の状況について議論の素材としてきたところでございます。

小宮山(洋)委員 それでやはり慎重に取り扱う方がよいという結論に報告としてはなっているのだと思うんですけれども、猪口大臣に伺います。

 民主党の法案では、クラスアクション型で損害賠償を盛り込んでおります。確かにやり方がいろいろ難しいということはわかりますが、例えば犯罪収益の吐き出しにつきましても、政府は二月に法案を参議院法務委員会の方に提出されていますよね。ですから、そういうこともあわせて、政府の方も、そういうやり方、方法論も提示をしていらっしゃるわけですから、当初から損害賠償を導入するということが可能なのではないかと思いますが、大臣はどのようにお考えですか。

猪口国務大臣 この制度の設計は、被害の発生や拡大を防ぐ、そのために差しとめ請求権を適格消費者団体に付与する、これが基本でございます。そして、社会的また経済的な影響は非常に大きいわけですから、差しとめ請求権としているというところでございます。

 損害賠償につきましては、事後救済の手段でありますから、午前中も議論いたしましたとおり、司法アクセス改善等との関係も踏まえながら考えていく必要があると考えております。

 また、クラスアクション等につきまして、私もよく存じておりますが、それはそれでまた、アメリカにおきまして、まださまざまな問題指摘をする意見もございます。

小宮山(洋)委員 先ほどから大臣の御答弁を伺っていますと、社会的影響が大きいから今回はこの程度にとどめておいたというニュアンスに聞こえてまいります。

 今回の改正は、とにかく消費者の立場に立って、少しでも、少額のものでなかなか訴えが起こせない、それでどんどん悪徳商法を含めて消費者被害が絶えない、そのために消費者の立場から今回導入したんじゃないんですか、先ほどからの御答弁を伺っていますと、どうも事業者にとってそこのところは不都合だというお答えが多過ぎるように思いますけれども。

猪口国務大臣 決してそんなことなく、消費者と事業者との間におきます例えば情報力、交渉力の差でありますとか、さまざまなことを踏まえまして、消費者全体の利益を擁護するためにこの法律改正を行いたいと考えているわけでございます。

 この団体訴権の制度は、民間団体であります適格消費者団体に一定の請求権を付与するということでございますので、もう既に局長からも答弁があったんですけれども、損害賠償につきましては個々の消費者にまず請求権があるわけですね。消費者被害に関する損害賠償請求につきまして、消費者利益の侵害の有無につき刑事訴訟手続において裁判が確定しているわけではなく、また、個別の消費者が有する損害賠償請求権があるわけですから、それとの関係等、いろいろと解決しなければならない問題が多いのではないでしょうか。

小宮山(洋)委員 できれば私がお尋ねしていることへのお答えをいただきたいんです。

 私がお尋ねをしたのは、私もこの制度を二年以上勉強しておりますので制度の仕組みはよくわかっているつもりなんですが、より事業者の立場にお立ちになっているような御答弁に聞こえますが、今回の制度改正は消費者の立場から行われていますかと伺いました。

猪口国務大臣 明確に、消費者の立場からこの制度を導入しようとしているわけでございます。

 これは、被害の拡大を未然に防ぐという最も根本的な目的を掲げているわけでございます。そしてさらに、政策的に、被害者ではない第三者である適格消費者団体に差しとめ請求権を認めるという非常に画期的な、新しい法律の考え方をもって消費者の全体の利益を擁護しようとしているものでございます。

小宮山(洋)委員 もちろん、今までにない形を導入するということはよくわかっております。これは、私たちは、そういう消費者契約法をつくるときからそういう形を提案しておりましたけれども、今回、差しとめ請求権を団体訴訟で認めたということは本当に大きな意義のあることなんです。

 ただし、その範囲が狭いことについてはこの後議論をさせていただきますが、私どもの考え方と違うのは、もちろん予防も大事です、けれども、被害に遭った人を救済する方も大事なんじゃないですかということを申し上げておりまして、ですから、政府の方は、今回は差しとめで予防をして、これからその後で、そこがスタートした後で、それでは損害賠償、救済もしようと考えていらっしゃるわけですか。

猪口国務大臣 午前中も答弁いたしたんですが、司法アクセス改善との関係も踏まえなければならないと思います。

小宮山(洋)委員 また聞いていることにお答えいただいていないんですが、これから将来はその損害賠償制度をお考えになるんですかと伺っているんですね。

 司法アクセスにつきましても、私もちょっと、素人ではございましたが、司法制度改革のときに法務の責任者をさせていただきまして、司法ネットとかいろいろなものをつくることに一翼を担わせていただきましたけれども、司法アクセスも、本当に今からそういう制度をつくってやり出すところですので、今起こっていることに即対応できるようにはまだまだなっておりません。

 ですから、ぜひここで、消費者団体に団体訴訟の権利を認めてきちんとした制度にしたい、そのときに、私たちは予防と救済を同時にスタートさせたいけれども、政府は、まず予防からスタートして、それが定着してから賠償の制度をというふうにお考えなのですかと伺っておりますので、伺ったことに正確にお答えをいただきたいと思います。

猪口国務大臣 先生の御指摘のことにつきまして、この段階で特段決まったスケジュールでそれを検討するということはございません。また、重ねて答弁申し上げているとおりですが、まずは、今般、差しとめ請求に関します法制度を社会に定着させていくことが私としては非常に重要であると考えております。

 損害賠償請求権は、個人の請求権との関係においてどうするのかということも考えなければなりませんし、先ほどからお伝えしていますとおり、司法アクセスの改善、例えば法曹人口をどう拡大していくのか、あるいは少額の訴訟制度はどういうふうに拡大できるのかなど、さまざまな諸施策を展開しつつあるところでございます。ですから、十分にその動向も注視する必要があるのではないかと考えております。

 国民生活審議会の報告書におきまして、もう既に午前中からも御指摘ありますとおり、その必要性も含めて慎重に検討されるべきとされているところでございますので、この指摘を踏まえて対応してまいりたいと思っております。

小宮山(洋)委員 何か、余り同じところでずっととまっていたくはないんですけれども、どうもまだちょっと納得いかないところがあります。

 検討委員会の中で検討されていたこと、それから消費者団体の皆さんが説明を受けていらっしゃることも、とにかく新しい制度をスタートさせるのだから、当面はその予防の差しとめからスタートをしましょう、その後損害賠償を考えましょうという話だと言われていると聞いております。

 慎重にであろうと何であろうと、検討されるべきだということが報告書にあるわけですから、これからそれは検討なさるんですね。今具体的なスケジュールはないと言われると、検討されないというふうにも聞こえてしまうのですが、副大臣、お答えいただいても結構ですよ。先ほどからずっといろいろと副大臣がお答えになりたそうなこともございますので、どうぞ副大臣、お答えください。

山口副大臣 今の小宮山委員の御指摘のとおり、しっかりと、これは何といっても、先ほどの繰り返しになりますけれども、まず消費者ということは、これはもう与野党共通のことでございまして、それをまず御認識いただければと。

 それともう一点は、今の答申にあるように、必要も含めて慎重に検討されるべきというふうに書いてありますので、これは当然、委員のお考えと同じでございます。

小宮山(洋)委員 前回も、二〇〇〇年に消費者契約法ができたときから、この消費者団体訴訟制度は懸案で、附帯決議にも盛り込まれているわけですが、具体的な検討が、二〇〇四年、四年後に直接今回の改正についての検討が行われているわけですね。

 これでいきますと、損害賠償は一体いつになったらできるんだろうという思いもあるわけなんですが、これは、今回政府としては差しとめだけでスタートをさせたい、私たちは両輪として両方スタートさせたいということで今審議をさせていただいているわけです。これは、やはり検討することが必要だということを審議会も言っているわけですから、早急に検討を始めていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

山口副大臣 その方向でやっていきたいと思います。

猪口国務大臣 国民生活審議会の報告書においては、その必要性も含めて慎重に検討されるべきとまとめられているところでありますから、その指摘を踏まえて対応してまいりたい。

小宮山(洋)委員 また、いろいろ含めてとか言われると、では、しないの、しないことも何か、またそこがあいまいになってしまうんですよね。先ほどの副大臣の御答弁のとおり、早急に進めていただきたいというふうに思っております。

 では、次に進ませていただきますが、次に、適格消費者団体について何点か実務的に伺っていきたいと思います。

 今回、民主党では、なるべく広く認めたいということで、これは消費者のサイドに立って登録制にしているんですが、認定制にされたのはなぜでしょうか、大臣。

猪口国務大臣 適格消費者団体の対応といいますか、その活動内容等、状況等、体制も含めて多様なものが想定されると思います。ですから、適格要件は、具体的な数値基準等で一律に想定し得るものではなく、やはり、活動実績、業務体制、それから業務の企画等に関する要件に関して、適格団体としてまさに適切に業務を実施し得るそういう実体を備えているかどうか、ここがポイントになると思います。ですから、申請団体ごとに実質的な実体を備えているかの観点からの判断を行う、そういう認定制度にしております。

小宮山(洋)委員 やはり、認定になりますとかなり政府の裁量が入るわけですよね。パブリックコメントの中には、もし認定制にするにしても、総理大臣ではなくて行政から独立した第三者機関が行うべきという意見が政府案へのパブリックコメントにも民主党案へのパブリックコメントにもございましたけれども、こういう点については検討されたんでしょうか。

田口政府参考人 政府の法案では認定制ということでございますが、認定制と申しましても、すべて裁量で決めるということでは全くございませんで、この法案では、適格要件をできる限り詳細に法文上明記しております。

 また、申請内容も、透明性の高い手続をとるということで、その具体的な審査基準等を定めて公表する。さらに、不認証とする場合にはその理由を示すというようなことを含めまして、行政手続法にのっとって適切に実施するということにしてございます。

 それから、委員御質問のございました第三者機関の問題でございますが、この問題につきましても、検討委員会で議論のあったところでございます。

 ただ、第三者機関につきましては、この制度におきましては、認定のところだけを判断するものでは必ずしもなくて、割と一連の流れと申しますか、適格性を認められた団体については、その以後の事後的な担保措置というか、適正性が確保されているかどうか、それを確認しなければいけない。そこは、行政として責任を持って監督の対応をしなければいけないとか、あるいは第三者機関がよいという御主張の中には、透明性でありますとか専門的な意見を聞けるというメリットを強調されることが多いわけなんですが、認定制にいたしましても、内閣府だけで判断をするということではなくて、例えば警察庁長官からの意見聴取、暴力団関係の問題でありますと警察庁長官からの意見照会というようなこともございますし、例えばNPO法人でございますと知事の御意見を聞くとか、いろいろな照会のシステム等もございます。

 そういう専門的知見を得ながら認定するということであれば、第三者機関を主張される場合の透明性とか専門性というものもカバーされ得るということで、検討委員会におきましては、行政において判断をするのが適当であるという結論に至ったわけでございます。

小宮山(洋)委員 今、事細かにいろいろ要件が書いてあると言われたんですけれども、その要件が厳し過ぎるというふうに私たちは思います。

 この要件でいきますと全国で幾つぐらいの消費者団体が認定されると考えていらっしゃるのか、それで十分だとお考えですか。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 適格消費者団体につきましては、消費者全体の利益擁護という役割を担うにふさわしい実質を備えている必要があるということで、そういう観点から適格団体の要件を定めているわけでございます。

 現在、この制度導入を見通しまして、全国で既に十程度の団体が適格団体になることを目指して準備を進めていると聞いておりますが、今後、この法案が成立し、制度の内容でありますとか施行日が確定してくれば、適格団体を目指す動きがより一層広まっていくのではないかというふうに考えているところでございます。

小宮山(洋)委員 以前ヒアリングをしたときはたしか九つぐらいと言われたので、それから一個ふえたのかと思いますけれども、この後、これが出て、本当に広がっていく必要があると思っているんですね。

 また、後ほど、先ほどの裁判管轄の話を私からも少し伺いたいと思いますが、先ほど大臣が事業所のある地域の適格消費者団体が窓口になって受ければいいというニュアンスのことをお答えになったんですけれども、九つとか十で、本当に必要な全国津々浦々の方々が活用できる制度になるかというと、私は、この後、これが二個、三個ふえても、まだまだそれは厳し過ぎるのではないか、やはりもっと使い勝手よくしてこそ団体訴訟制度を入れたという消費者の側からの意義があるのではないかというふうに思っているんですね。ですから、そのあたりはまた経過を見ながら、この要件についても検討を加えていただきたいというふうに思います。

 それからあと、消費者団体の方から、ここに書かれている文言の中身が明確ではないという指摘が幾つかあります。

 例えば、相当期間の継続的な活動実績という相当期間というのはどれぐらいで、なぜそれはそれぐらいの期間が必要なのかということ、それから特定事業者とか同一業界関係者、この定義をもっと明確にしてほしいという声がありますが、あわせてお答えください。

田口政府参考人 活動実績の相当期間の長さでございますが、これにつきましては、申請団体の活動実績が複数年あることを原則としながら、その専門性でありますとか構成団体の活動実績などを勘案いたしまして、一定の期間の幅を認める予定でございます。

 また、特定事業者と同一業界関係者の定義を明確にという御指摘でございますが、法案の第十三条第三項第四号ロにおきましては、特定事業者というのはいわゆる企業グループのようなものを想定しておりまして、具体的には、ある一つの事業者に加えまして、その周辺と申しますか、当該事業者との間に発行済み株式の総数の二分の一以上の株式の数を保有する関係のある事業者、資本的に、資本関係的なものが非常に強い事業者ですね。あるいは、出資というような観点から、当該事業者との間に出資金額の二分の一以上保有する関係のある事業者といったような事業者グループ、企業グループを一体として特定事業者というふうにとらえることといたしております。

 それから同一業界でございますが、これにつきましては、内閣府令におきまして、日本標準産業分類を参考としながら業界の区分を規定することといたしております。例えば、食品製造業でありますとか、通信業とか、航空運輸業とか、そういうレベルの分類で判断をしていくこととしております。

小宮山(洋)委員 それから、これは私たちは外しているんですけれども、「専門的な知識経験を有する者」「法律に関する専門的な知識経験を有する者」、これは「専門委員」というとされていますが、その専門委員が「必要な助言を行い又は意見を述べる体制が整備されていること」とあるんですが、体制が整備されているということは常駐していないといけないのか、専門委員はどういう人を指しているのか、これを具体的に提示してほしいという意見が多く寄せられておりますが、この点はどうでしょうか。

田口政府参考人 専門委員でございますが、大きく二つのグループに分かれるかと思います。一つは消費生活の専門家ということで、具体的には消費生活相談員の有資格者などの方々でございます。もう一つのグループは法律専門家ということで、弁護士でありますとか司法書士、あるいは大学の法律学の先生など、こういう方々を想定しております。

 それから「必要な助言を行い又は意見を述べる体制」ということでございますが、これは専門委員の方々が差しとめ請求の中身、どういう案件を取り上げるかという差しとめ請求に関する検討部門に参画して、専門的知識に基づいて必要な助言を行い、あるいは意見を述べる、そういう体制が整備されていることを要件化したものでございます。そういう点で、適格団体に雇用されているなど、常駐化していることまで求めるものではございません。

小宮山(洋)委員 常駐化していなくてもいいということですね。そのことは消費者団体にもきちんとわかりやすく説明をしていただきたいというふうに思います。

 次に、差しとめ請求の対象について伺いたいんですが、大臣、消費者契約法に違反する不当な行為、ここに対象を限定したのはどうしてなのか。これは範囲が狭過ぎるという指摘がパブリックコメントでも大変多く寄せられています。この点はいかがでしょうか。

猪口国務大臣 消費者契約法の規定は、消費者契約における事業者の不当行為をできるだけ明確な形で類型化したものでございます。どのような行為が差しとめ請求の対象となるのか、その予見可能性が高いことが重要であると考え、そのようなものを対象にして設計してございます。

小宮山(洋)委員 ちょっとよくわからなかったんですけれども、予見可能性が高い、そうすると、詐欺的行為とか公序良俗違反というのは予見性は高くないんですか。

猪口国務大臣 民法九十条と九十六条のことでございますが、抽象的な規定であると考えてございます。消費者契約法は、まさに今お伝えしましたとおり、非常にはっきりと明確な形で類型化したものであり、その差しとめ請求の対象となるわけですから、それがどのような具体的な行為なのか、その予見可能性はこの制度が社会の中で着実に定着していくために必要であると考えました。

小宮山(洋)委員 今、詐欺的行為とか公序良俗違反というのは抽象的で、消費者契約法に違反する行為は予見可能性が高いとおっしゃったんですが、ちょっと私にはなかなかぴんとこないんです。もう少しかみ砕いて、大臣御自身の言葉で、私にわかるように、なぜ消費者契約法に違反する不当行為に限定したのかをお答えいただけないでしょうか。

猪口国務大臣 民法は一般法で、その九十条、九十六条は、十分に具体的、個別的に理解されるものかということにつきましては、抽象的な概念であるという考え方はとり得るものだと思います。

 第三者に付与された差しとめ請求の権利、これが政策的に付与されるわけですから、その対象は極めて具体的、明確である必要があるという考え方に基づいて消費者契約法は構成されているわけでありまして、今回の差しとめ請求は、消費者契約法をベースにしておりまして、抽象的な概念と考えられます民法九十条、九十六条に基づくものではないということでございます。

小宮山(洋)委員 では、局長の方に伺いたいと思いますが、民主党案では、詐欺的行為、人を詐欺しまたは強迫する行為や、民法九十条の公序良俗違反により無効とされる勧誘行為も加えて対象を広げているんですが、政府案ではなぜ狭くしているんでしょうか。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 消費者契約法で規定されている不当な行為というのは、そもそもどういう形でつくられたかと申しますと、今、現実に消費者苦情相談の中で起こっているものの非常に多いもの、その問題となる、被害を受けている人が非常に多い、こういうものを類型化して、消費者契約法で規定をした。例えば、不当な勧誘でありますと、勧誘をするに際して、どういう時点で、だれがどういう言い方をしたときにそれは取り消しができるということを事細かに規定しているわけです。また、不当条項につきましても、どういうものが無効になるかをかなり詳細に規定しているわけでございます。

 これに対しまして、民法の方の公序良俗は、御案内のとおり、「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」まさに一行なわけですね。詐欺または強迫につきましても、詐欺、強迫による意思表示は、取り消すことができる、そういうように、要するに一行書いただけで、人によって、その該当性というのがかなり幅を持って受け取られるおそれがある。

 そうなりますと、差しとめ請求を受ける行為というのはどういうものかという、人の考え方に幅があるときに非常に混乱も起こり得る。差しとめ請求というのは社会的、経済的に大きな意味を持ち得るものですから、できるだけ、だれしも大体この辺のものが差しとめ請求になるんだということがわかるような規定が望ましい。

 そういう観点から考えると、消費者契約法に規定されている不当な勧誘行為あるいは不当な契約条項、これを差し止め対象にするのが最も合理的ではないかということで、検討委員会でもそういう結論になったわけでございます。

小宮山(洋)委員 もう一つ、「不特定かつ多数の消費者の利益のために」とすると、さらに対象が狭くなるんですよね。その不特定かつ多数というのは、不特定であって多数でなきゃいけない、多数というのは一体どれぐらいをいうのかとか、なぜこのような規定を置かれたんでしょうか。

田口政府参考人 この制度は、消費者被害の発生拡大を防止するための制度だということで、差しとめの対象となる事業者の不当行為というのは、ある程度被害が拡散するおそれがあるものということでとらえているわけでございます。そうした被害の拡散性を認めるに足りる、いわば集団的な消費者の概念として、不特定かつ多数という要件を規定したものでございます。

小宮山(洋)委員 私たちは、やはり余り狭く限定をすると、せっかくの制度が使われることが本当に少なくなってしまうのではないかということを危惧しております。そういう意味では、やはり広くとるという形で私たちは法案を出させていただいております。

 次に、適格消費者団体の業務について幾つか伺いたいことがあるんですが、この適格消費者団体の更新期間を三年とされているのは、これは短過ぎるという声が消費者団体から非常に多く上がっております。五年とすべきという御意見をいただいて、私どもの法案も、そこは消費者の皆さんの声を取り入れて五年とさせていただいたんですが、なぜ三年なんでしょうか。

猪口国務大臣 認定の有効期間につきまして、三年としております。これは、適格消費者団体の業務の適正な運営、これを確保しなければなりません。また、制度の信頼性を維持するという観点から三年と考えております。

小宮山(洋)委員 これもやはり消費者団体から非常に御意見の多かったところでございますので、また全体の動きを見ながら、本当に三年がふさわしいのかどうか、さらなる御検討もいただければと思っております。

 それから、財産的利益受領の禁止規定、これもあいまいだということを御指摘を多くいただいています。

 訴訟費用、間接強制金などを除いて、相手方から金銭等の財産上の利益を受けてはならない、受領した間接強制金等は差し止め関係業務に充てるとされているんですが、この点を具体的に説明していただきたいと思います。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 この制度の差しとめ請求権というのは、あくまでも不特定かつ多数の消費者の利益擁護、そういう観点から行使されるべきものでございまして、適格団体自身の利益獲得のために使われるというようなことがあってはならないわけでございます。

 適格団体が差しとめ請求権の行使に関して不当な財産上の利益を受け取るというようなことは、まさに差し止め関係業務の適切性、あるいはこの制度の信頼性を損ねるおそれがあるということでもありますし、また、場合によっては企業恐喝等の違法行為の温床ともなりかねないということで、適格団体は、差しとめ請求権の行使に関して、正当な理由のあるもの以外、名目のいかんを問わず、財産上の利益を受けてはならないというふうに規定しているわけでございます。

 ただ、この規定につきましては、「差止請求権の行使に関し、」という限定がついておりまして、この規定は、差しとめ請求の個別事案とは関係のない、適格団体の活動一般に対する寄附金の収受、そういったようなものについてまで禁止するものではございません。

小宮山(洋)委員 ちょっと具体的に伺いますと、例えば、適格団体が、和解内容として、中立機関である消費者支援基金への寄附を条件とする場合、これは訴権行使の費用としての援助ということですが、その場合はどうなるのか。また、適格団体に情報提供をしてくれた被害者に対して補償をすることを条件とする和解を行うこと、これはこの条項に該当するのかどうか。

 政府案には損害賠償が規定されていないために、和解の内容として、わかる範囲の被害者へ補償を求めるということが考えられますけれども、それがこの条項に抵触するということになりますと、被害者から適格団体が支援を得て情報を得るための一つのやり方ができなくなってしまうという危惧がございます。金銭授受というのは罰則をもって禁止されているので、厳格な要件を定めておくことが不可欠だと思います。それがないと、適格団体は対応が後ろ向きになってしまう、そういう声をいただいていますが、こういうことについてはどうですか。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 禁止の対象となります財産上の利益の受領でございますが、これはただいま申し上げましたとおり、あくまでも差しとめ請求権の行使に関してなされた場合というふうに規定しております。

 こうした趣旨にかんがみますと、御質問にございました、不当な行為をしていた事業者が適格団体側の要求を全面的に受け入れて不当な行為の差しとめを応諾する、それと同時に、それによって不当に得た利益を消費者支援のための活動を行う基金のようなところに寄附をしたり、あるいは被害者に返還する、そういうものであれば、差しとめ請求権の行使の適切性及び制度の信頼性を損なうものではなく、消費者の利益に適合しない差しとめ請求権の行使または不行使の対価として金銭の授受がなされたものというものではございませんので、差しとめ請求権の行使に関してなされた場合には該当しないというふうに考えられます。

小宮山(洋)委員 この禁止規定については、最後のところで申し上げましたように、要件をきちんと定めてわかりやすくしていただければ、今回のこういうような心配がなくなると思いますので、そこのところはぜひよろしくお願いしたいと思います。

 それから、業務や経理の状況について学識経験者による調査が義務づけられているんですが、この場合の学識経験者というのはどういう方たちを指すんでしょうか。

田口政府参考人 学識経験者といたしましては、弁護士、司法書士等の資格を持っている方々だけではなくて、法律学、会計学、経営学などの大学教授の方でありますとか、あるいは検査事務等に従事した経験のある方々、こういう方々を含むものと考えております。

小宮山(洋)委員 それから、これは大臣に伺いたいんですが、「政党又は政治的目的のために利用してはならない。」とされています。この政治的目的というのは、どこまでを政治的目的というのかが非常に難しいのではないかと思うんですね。

 民主党案では、政党のために利用してはいけないということのみにしているんですが、この政治的目的というのは、どこまでの範囲でこれが必要なのでしょうか。

猪口国務大臣 適格団体が政治色を強めたり、あるいは業務の公正性、信頼性を損なうようなことがあってはならないと考えます。例えば、適格団体が総会等で、特定の公職の候補者の支持を決議したり、その人への投票を会員に促すこと等は禁止されている。一方、制度の改善を求める政策提言あるいは陳情を行うということまでも禁止されるものではないということです。

 このほか、消費者政策に関する提言や意見表明を行うことにつきましては、その提言や意見表明を超えて特定の政党や候補者の支援と同視できるような場合におきまして、これは法案の第三十六条なんですけれども、その制限規定に該当し得るものと考えられますけれども、今お伝えしましたように、消費者政策に関する一般的な提言や意見表明までも制限されるものではないと考えております。

小宮山(洋)委員 今おっしゃいました、例えば特定の政党の候補者を支援するとかいうことは、政党のために利用してはいけないということで十分なのではないですか。それに加えて政治的目的がいけないというのはどうしてでしょう。

猪口国務大臣 この制度が社会的に着実に定着していくということが大変重要であるとまず考えまして、いささかでも業務の公正性、信頼性を損なうことがあってはならないと考えるわけでございます。

 ですから、事実上、その提言や意見表明が明らかに特定の政党あるいは候補者の支援と同視できるような場合については、これは制限規定に該当すると考えられますけれども、一般的な消費者政策につきましての提言あるいは意見表明まで制限されるものではないとしかお答えしようがないのでありますが、その同視されるというところがポイントであると思います。

小宮山(洋)委員 ちょっとまだわからないので、局長、何かもう少し詳しく答えていただけるなら、お願いします。

田口政府参考人 補足をさせていただきます。

 政党または政治的目的に使ってはいけないという、法律の中には大分いろいろございます。その中で、政党のために使ってはいけない、利用してはいけないというのは、まさに政党の御主張を適格団体が主張する、消費者政策を言っていても、それが特定政党の主張とほとんどイコールというようなものですと、これは政党の目的なんですが、通常そういうものはなかなか想定しにくい。ただ、政党だけではなくて、選挙の候補者のトレードマークになっているような政策、それを適格団体が主張するというような場合ですと、これは、政党のためにということではなくて、「政治的目的のために利用してはならない。」ここの部分に該当してくるということで、政党、政治目的のために利用してはならないというのは、いわばそういう補い合う形で規定をされているところでございます。

小宮山(洋)委員 そこのところも、候補者といっても、候補者は政党の候補者であることが多い、まあ、無所属もあるということもありますけれども。どうも、政治的目的というふうに言われてしまうと、先ほど、こういう場合はいいですよという幾つかのことを大臣がおっしゃいましたけれども、そこのところも、きちんとわかりやすく、もう少し限定をしないと、これも政治的目的、あれも政治的目的というふうになりかねない。そういう意味でも、使える幅が狭くなることを心配する声が大変多いので、ここのところもきちんとわかりやすくしていただく必要があるというふうに思っています。

 それから、内閣総理大臣は、差しとめ請求に係る判決または裁判外の和解の概要を公表するとされているんですが、これはどのように公表するんでしょうか。もちろん、公表は結構なんですけれども、裁判外の和解も含むとすると、かえって公表があることでちゅうちょをするという逆の方からの心配の声もあるのですが。

田口政府参考人 この制度におきます差しとめ請求権は、何度も申し上げておりますが、同種の被害の発生なり拡大を防ぐため、そういう政策目的で適格団体に認められているということでございます。したがって、この差しとめ請求権の行使によって判決等の結果が得られた場合には、判決に限らず和解も含めて、その結果を広く消費者一般に還元する必要があると考えておりまして、この公表措置によりまして個別事件の解決の促進にも役立っていくのではないかというふうに考えております。

 その具体的なやり方でございますが、この公表は、内閣府及び国民生活センターのホームページに載せるというようなこと、さらに、その他適切な方法により行うこととしております。国民が容易に情報にアクセスできるようにする予定としております。

 なお、消費者契約の適正化を図るためには、社会全体として広くこの制度を受け入れていくということが重要かと考えておりまして、契約の適正化にかかわる部分については、裁判外の和解も含めまして公表する必要があるのではないかというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 それから、国民生活センターや地方公共団体が、必要な限度において、適格消費者団体に消費生活相談の情報を提供することができるとしてありますけれども、この必要な限度ということを入れたのはどういうことからですか。

田口政府参考人 差しとめ請求権というのは、消費者全体の利益を守るにふさわしい団体に付与をする。一方、適格団体が被害事案の分析を進める中で、国民生活センターでありますとか各地の消費生活センターの持っております消費生活相談情報、こういうものが必要となる。全国的にはどんな状況になっているのか、そういったような情報の提供を求めることも十分想定されるわけでございます。

 このため、適格団体が差しとめ請求権をより行使しやすくするために、その環境整備を図る観点から、必要な限度において、センターの保有する消費生活相談情報について情報を提供することができるとしたものでございます。

 この情報提供のあり方につきましては、被害情報を適時適切に把握するためには、消費者の視点に立って適格団体が自主性を発揮していくということが重要でございますが、センターが保有する相談情報というのは、被害の広がりぐあいを把握する上で有益でございます。

 一方で、消費者の苦情相談という特性から、PIO―NETというシステムに情報が集約されておりまして、そこの中では、相談情報が生で入りますので、未確認情報でありますとか個人を識別できる情報が含まれ得るということで、必要な限度で提供するということとされたところでございます。

小宮山(洋)委員 残りが五分を切りましたので、訴訟関係のことについてはまた次回に回すといたしまして、山口副大臣に何点かお答えいただくものがあると思いますので、そこへ飛んでいきたいと思います。

 今の情報提供に関連するところなので続けて伺いたいんですが、この消費者団体訴訟制度が機能するためには、やはり、情報の格差が非常に事業者と消費者の間にあるということからこの制度が有効ということもありますので、その機能させるためには、情報の援助、情報提供ということが重要だと思いますが、その点についてはどのようにしていくおつもりですか。

山口副大臣 お答えいたします。

 適格消費者団体が消費者被害に関する情報収集力を備え、また判決内容等の差しとめ請求の結果を消費者に広く提供することは適格要件の重要な要素でありまして、適格団体のまずは自主的な取り組みが必要でございます。

 そして、この適格団体自身による情報収集、情報提供を補完し、制度をより円滑にするよう、行政といたしましては、先ほども述べられましたけれども、国民生活センター等の有する消費生活相談情報、PIO―NET情報を必要に応じて提供いたし、また差しとめ訴訟の結果得られた判決内容等をインターネット等を活用して公表、周知することにしております。また、制度そのものの意義や概要が広く国民に理解されるよう、行政としても周知、広報に努めることは言うまでもございません。

小宮山(洋)委員 もう一点お答えいただきたいと思いましたのは、民主党に寄せられたパブリックコメントでも、政府へも非常に多かったのが財政支援なんですね。民主党案では国と地方公共団体が必要な資金の確保に努めることということを入れておりますが、政府としては消費者団体への財政支援ということは考えられていないんでしょうか。

山口副大臣 適格消費者団体は、差しとめ請求権を適切に行使するために、情報収集力、人材のほか、十分な財政基盤を備えている必要がまずございます。これは適格要件の重要な要素でありまして、適格団体は、基盤を備えるために、まずは自主的に取り組むことが第一でございます。

 また、消費者基本法では、消費者団体は消費者被害の防止、救済のための活動その他消費生活の安定、向上を図るための健全かつ自主的な活動に努めることとされており、本制度は、こうした役割を担う能力を有し、自主的活動を現に行っている消費者団体の取り組みをいわば後押しするものでありまして、適格団体に対して行政が直接資金援助をするのは適切ではないと考えております。

 なお、行政としては、先ほど申し上げた情報提供ですとか広報ですとか、そういったことをして、間接的に、適格消費者団体に負担の実質的な軽減になるかと考えております。

小宮山(洋)委員 もちろん、ある程度の財政基盤は必要ですが、やはり新たなことをするためには適格消費者団体もいろいろと財政支援を必要とすることもあると思いますので、そこはまた柔軟に考えていっていただければというふうに思っております。

 私の持ち時間、ほぼ終わりましたが、午前中から枝野議員が議論をいたしました。皆様方も恐らくお聞きになっていて、政府が認定した適格消費者団体なのですから、やはり被害が起こった地域で訴訟ができるのは当たり前だというふうに思うので、ここの点については、これは政治的な判断で、ぜひそこのところは修正ができるような検討をしていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を本日は終わらせていただきます。

佐藤委員長 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 法案の団体訴権について質問をさせていただきます。

 今回、消費者団体訴訟制度が導入される。消費者団体が長年にわたってその実現を要求してきた制度でございまして、我が党も消費者基本法大綱などでその実現を要求したところでございます。私は、法案の問題点をただしつつ、この制度を発展させていく、そういうスタンスできょうは質問させていただきたいと思っております。

 初めに、大臣に伺います。

 この消費者団体訴訟制度の目的は消費者被害を防止することにあります。消費者団体が積極的にこの制度を活用していく、そういうことが消費者の被害を防止することになるわけですから、そういう立場に立つということが大事だ、そうしないと制度をつくった意味がないということがあると思うんですね。

 そこで、消費者団体に積極的に有効に活用してもらうというために、やはりこの法律の実効性というものを確保する必要があると思うんですが、その点はどのようにお考えでしょうか。

猪口国務大臣 石井先生にお答え申し上げます。

 先生おっしゃいますとおり、この制度が円滑に実施されるためには環境整備を図っていくことが必要であると考えます。したがいまして、まず、この制度の意義や適格団体の活動について国民の理解が深まるよう、制度全般の周知、広報に努めてまいりたいと思っています。

 また、適格団体が社会から広く認知されますように、また、されるようになれば、寄附金や会費の収入などを確保しやすい環境、消費者から被害情報が円滑に集まるような環境につながっていくものと考えておりますので、そのような自主的な取り組みを基本と考えております。

 また、適格団体が請求権を行使するに当たりましては、広く消費者から被害情報を収集したり、訴訟結果の周知を図ることが重要であると考えております。このため、行政といたしましては、先ほどから答弁しておりますとおり、国民生活センター等の有する消費者生活の相談情報の提供や、差しとめ訴訟の結果得られた判決内容の公表そして周知などを通じ、適格団体の情報面での負担軽減を図ってまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 いろいろ御丁寧に御答弁いただきました。やはり新しい制度ですから、そのスタートに当たって、本当に国民にこれが使われるようにというか、有効に活用されるようにという、そこが非常に大事だというふうに思うんですね。その点を申し上げたいと思います。

 次は、この制度が消費者行政全体の中でどういう位置にあるのか、どういうふうに位置づけられるのかということをちょっと確認したいと思うんですね。

 消費者基本法の第八条が消費者団体の役割ということを規定しております。その中では「消費者の被害の防止及び救済のための活動」ということが規定されております。また、消費者基本法に基づいて策定された消費者基本計画では、本法案を今国会に提出するということが決められていたわけですね。

 つまり、この団体訴権制度というのは、消費者基本法に基づいて、消費者団体の活動を強化するという位置づけの中で出てきている制度だ、このように理解してよろしいでしょうか。

田口政府参考人 一昨年、議員立法により制定されました消費者基本法でございますが、消費者の権利の尊重と自立支援、これを基本理念として、これからの消費者政策の方向性を示しているわけでございます。

 その中で、そういう基本理念を踏まえて、消費者基本法には、ただいま委員御指摘のございました八条で、新たに消費者団体に関する規定が設けられまして、消費者団体の活動の一つとして、「消費者の被害の防止及び救済のための活動」、こういう規定が盛り込まれたわけでございます。いわばこれを一つの具体化するものというような位置づけもできようかと思いますが、消費者団体に期待されるこういう役割を踏まえて、このたび、この法案で消費者団体訴訟制度の制度化を図る、そういう位置づけができるのではないかというふうに思っております。

石井(郁)委員 それでは次に、損害賠償請求問題でございまして、若干論点が重なりますけれども、今回の制度で、差しとめ請求に限定されました。少額で多数の消費者の権利を消費者団体が行使する損害賠償制度というのが見送られたわけですね。私は大変残念に思うわけでございますが、この損害賠償制度を見送った理由を改めてお聞かせください。

田口政府参考人 最近、消費者被害が非常に多く発生しております。現在、この被害の発生あるいはその拡大を防ぐというのが消費者の置かれた状況からしてまず何よりも重要であって、そのための差しとめ請求権を適格団体に付与するという必要性が大変高いというふうに考えております。

 これに対しまして、損害賠償というのは事後救済のための手段ということで、被害を受けた個々の消費者にまず請求権がございます。被害当事者ではない第三者である団体にその権利を付与するということについては、より広く、少額多数被害救済のための司法アクセス改善、この脈絡との関係も踏まえて考える必要があると考えております。こういうことから、損害賠償請求については、今回の制度化の対象にはしないこととしたところでございます。

石井(郁)委員 確かに、国民生活審議会報告では、損害賠償請求について、司法アクセスの一つの方法として選定当事者制度ということも取り上げられているわけです。つまり、集団の利益のために、原告として数人を選定するやり方ですね。

 消費者問題に詳しい弁護士の方にお聞きしますと、この選定当事者制度というのは、委任状をもらってやる通常の訴訟と余り変わらないために、ほとんど使われていないということでした。

 いずれにせよ、差しとめ請求だけでは、不当行為を行った事業者の手元には不当な利益、利得が残ってしまう、つまり、事業者はやり得だということになるわけです。この不当な利得を吐き出させない限り、不当行為はなくならないんではないでしょうか。この点はいかがでしょう。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 事業者が不当な利益を得た場合に、その不当な利得を剥奪するシステムを制度化できないかという議論は、承知しております。

 例えば、ドイツの不正競争防止法などですと、利益剥奪請求というようなことで、被害を受けた個々の消費者の損害を回復するためではなくて、いわば事業者の得た不当な利得を剥奪するために一定の消費者団体に請求権を付与する、こういう考え方があることは承知しております。

 しかしながら、こうした考え方につきましては、ヨーロッパの国々におきましても一般的なものとはなかなか言いがたいところがございまして、我が国の法制度になじむものかどうか、そこは十分慎重に検討する必要があるのではないかというふうに考えております。

石井(郁)委員 いろいろな角度からの検討は要るかとは思うんですけれども、やり得を根絶する、不当利益を吐き出させるということと、それから、消費者の少額多数の被害を真に救済していく、これは先ほどからの議論もありますけれども、やはり検討すべき大きな課題だというふうに思うんですね。

 この点では、大臣として、今回見送っているわけですけれども、今後検討の課題にしていくということについての御見解を伺っておきたいと思います。

猪口国務大臣 既に局長からも答弁しておりますけれども、今回は、被害の拡大、これを防ぐことを何よりも優先して、差しとめ請求権を直接の被害者ではない第三者である適格消費者団体に付与する、こういう画期的な制度を導入しており、まずこの定着をしっかりと確実なものにしていきたいと考えております。

 損害賠償の制度は、これは、まず事後救済であります。そして、被害を受けた個々人にその請求権がございます。その司法アクセス改善などとの関係も踏まえながら、少額多数被害の救済のための手法についてはまた考える必要があると思いますが、今回はこの制度の対象とはしていない。そしてまた、国民生活審議会で、その必要性も含めて慎重に検討するとされていますので、今回の制度の対象とはしていませんけれども、その必要性も含めて慎重に検討するというその御指摘は踏まえながら、取り進めてまいりたいと思っております。

石井(郁)委員 それでは、次の論点でございますけれども、消費者団体の後訴の原則禁止問題、このことでお伺いしたいと思います。

 確定判決等があった場合には、原則、後訴が禁止される、こういう問題でございまして、法案の十二条五項、六項の関係なんですね。法案は、他の適格消費者団体による確定判決等がある場合は、適格消費者団体は同一事件の請求が原則としてできないということとされております。

 この問題は、制度を議論してきた国民生活審議会の最終報告では、消費者団体に対して民事実体法上の請求権を認めるものとされていました。つまり、民事訴訟法の原則どおりとすることが基本とされていたんじゃないでしょうか。いかがでしょう。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 国民生活審議会の検討委員会でございますが、昨年の六月に最終報告書をおまとめいただいたわけでございます。この検討委員会の報告書におきましては、消費者団体訴訟制度における訴訟手続のあり方の点で、既判力の範囲については、当該事件の当事者限りとして、いわゆる同時複数提訴の可否についても特段制限されないとするのが民事訴訟法の基本原則に整合的であるということをまず言った上で、その上で、このような民事訴訟法の基本原則によった場合には、紛争の蒸し返しや事業者に過重な負担が生じ得る懸念があるというようなことから、結論といたしましては、一定の不適切な訴えの提起自体を認めない仕組みを導入するなど、所要の措置について検討する必要があるという結論になっているわけでございます。

 今回の法案におきましては、この同一事件の取り扱いでございますが、これは検討委員会報告書の指摘を踏まえまして、複数の適格消費者団体が同一事件について差しとめ請求をする場合に生じ得る弊害、こういったようなものを除去する観点、あるいは紛争の蒸し返しを防ぐというような観点から差しとめ請求権に制限を設けたもので、既判力を他に及ぼすというものではございません。検討委員会の報告書を踏まえて、こういう形で具体化をさせていただいたということでございます。

石井(郁)委員 検討委員会の報告書というふうにおっしゃいますけれども、今述べられたように、「消費者団体訴訟制度における訴訟手続については、本制度が民事訴訟の枠組みを利用するものであることから、原則として民事訴訟法の規定に従うべきである。」ここは大前提ですよね。そこは認めつつ、しかしということで今のような御答弁なんですが、私は、この審議会報告の基本というのを今回は逸脱していると言わざるを得ないわけですね。

 つまり、後訴が原則禁止されるということになりますと、やはり消費者利益を阻害することになるわけであります。裁判の判決というのは、言うまでもなく、訴訟活動や提出する証拠によって判決内容というのは大きく変わる。また、時代によって価値観も変わる、そういう問題もあるでしょう。またさらに、当初は被害が軽微で、差しとめの必要が認められなくても、その後被害が多発して、差しとめの必要性が満たされるということもある。にもかかわらず、今回、一度確定判決が出されれば後訴ができないということでは、消費者の利益は守られないと言わなければなりません。

 だから、制度の実効性と私最初に申し上げましたけれども、やはり制度の実効性というのはこれでは確保されないことになりませんか。その点はどのように御答弁されるでしょうか。

田口政府参考人 この消費者団体訴訟制度は、通常の個別訴訟と異なりまして、消費者全体の利益を擁護するといういわば公益的な目的のために、直接被害を受けていない第三者である適格団体に政策的に権利を付与する、そういうものでございます。

 そういう公益的観点から、できる限り紛争の一回的解決を図る必要があるということがございまして、そういう要請を踏まえて、同一事件の取り扱いについては、確定判決等が既にある場合には請求できないという取り扱いとさせていただいたものでございます。

石井(郁)委員 私は、訴訟の例として実際に起こり得る、そんな問題として考えているわけでございまして、ぜひ、今のようにまた公益性という一般的な制度の枠組みというか考え方ということに戻らずに、訴訟の実際として起こり得ることとしてお考えいただければというふうに思うんですね。

 例えば、ある消費者団体が訴訟を起こした、そこでは結果的に有利な証拠が入手できないために不十分な和解しかできなかったということがありますよね。他の団体が訴訟中でも、これは棄却されることになる、こういうふうな事例というのは起こってくるんじゃないでしょうか。棄却されるなら、通常の民事訴訟による損害賠償にした方がよいというようなことにもなりかねない。だから、ちょっとその事例として、訴訟の実際としてこういうことになるんじゃないかということなんですが、この点はいかがでございますか。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 同一事件について確定判決等があった場合には、後の訴訟が制限されるということでございますが、例外事由を必要に応じて入れておりまして、まず一つは、前訴が、前の訴訟が却下されて、いわば門前払いということで実質審理に入っていない、あるいは、不正な目的で前の訴訟が行われて、それを理由に棄却されたというようなことがございますと、後の訴訟も制限されない。あるいは、前の訴訟がなれ合い訴訟等で行われて適格団体の適格性が取り消される、そういうような場合にも後の訴訟は可能になるというようなことで、必要な例外事項については規定をさせていただいております。

 さらに、新しい事情が生じてくるというものもございますので、確定判決に係る訴訟の口頭弁論終結後に生じた事由、これに基づく請求である場合は後の訴訟も妨げられない、そういうような形で、現実の不都合は手当てをされているのではないかというふうに私どもは考えております。

石井(郁)委員 いろいろな場合を考えなきゃいけないんですけれども、一見明白な紛争の蒸し返しというような不適切な提訴がなされたという場合には、それは民事訴訟の一般的な原則で棄却がなされれば足るわけですけれども、後訴を原則禁止というようなことになりますと、やはり消費者の利益にとってはいろいろ弊害が大きいということを考えざるを得ません。

 それから、次の問題、濫訴の防止というようなことも言われるわけですけれども、濫訴防止の観点から、提訴できる適格消費者団体の要件を厳しくしたということも、これは実は本会議の答弁で伺いました。

 だから、そういう適格消費者団体の要件を厳しくしている、その上に後訴の原則禁止というような措置もかかるということになりますと、二重三重の濫訴防止という枠がかかっているんじゃないか。だから、こういう措置というのは、消費者団体訴訟制度を既に採用している諸外国でもここまではとられていないという点でも大変問題だというふうに私は思うんですね。

 もうそろそろ時間なんですが、十二条六項の問題で伺います。

 訴訟の口頭弁論終結後に確定判決と同じ効力が成立した後に生じた事由ということに基づいて後訴ができるという規定がございますよね。この成立後に生じた事由ですが、これは、不当勧誘マニュアルなど新たな事実が見つかった場合はその事由に該当するのかどうか、いかがでしょう。

田口政府参考人 口頭弁論終結後に生じた事由に該当するかどうかは個々の事案に即して個別具体的に判断する必要がございますが、一般的な例として申し上げれば、前の訴訟においては、ある勧誘行為が不特定多数の消費者に対して被害を与えている、または与えるおそれがあるとは認められなかったような場合に、その後同じ勧誘行為を他の地域で行うようになった場合、こういうものが典型的な事例かと考えます。

 それから、その後、マニュアルのようなものが発見された、いわば新しい証拠資料が得られたような場合にそれがどう扱われるのかという御質問かと思いますが、基本的には、適格団体の差しとめ請求権というのは政策的に特別に付与された権利でございますので、そういうことを考えますと、差しとめ請求権を行使する際にも、やはり十分な証拠資料を収集した上で行うべきものでございます。

 中途半端な証拠資料しかないにもかかわらず、チャレンジ的に訴えを提起するというようなことがあってはいけないのかなというふうに考えておりますが、同時に、新しい証拠が出てきた場合にそれをどう評価するかという問題になってくるかと思います。その証拠が、前の訴訟の口頭弁論終結後の事由に関する証拠として位置づけられるかどうか。そういう口頭弁論終結後の新しい事由に基づく証拠だということで位置づけられる限りにおいて、後の訴訟が制限されることはないというふうに考えております。

石井(郁)委員 いずれにしても、法文の解釈に当たるわけですから、少し丁寧にお聞かせいただきたいと思ったわけでございまして、ここで言う確定判決と同じ効力が成立した後に生じた事由、この生じた事由とはどういうケースがあるのか。今、少し抽象的にはお話しになりましたけれども、何か具体的なケースで二、三お示しいただけないでしょうか。

田口政府参考人 個別具体の例を申し上げるのは少し控えさせていただきたいと思いますが、典型的な事例は、先ほど申し上げましたように、営業区域といいますか販売地域が、前の訴訟の確定した後に他の地域に拡大された、そういうものが一つ新しい事由に該当するかと思います。

 また、そのほかでは、前の訴訟におきましては、ある契約条項、勧誘ではなくて契約条項の問題について考えますと、当該条項が消費者の利益を一方的に害するものとは認められなかった、消費者契約法に違反するものとは前の訴訟では認められなかったけれども、その後、例えば当該契約条項に関する業界の慣行等が変化するなどの社会的な事情の変化によりまして新たな事実が発生したということで、消費者利益を一方的に害すると認められるに至るような場合、こういうものは口頭弁論終了後の新しい事由というふうに位置づけることはできるかと思います。

石井(郁)委員 この新しい制度は、理解するのもなかなかいろいろな問題もありますし、また不十分な仕組みもいろいろと散見するわけでございまして、やはり消費者の被害を防止する上でマイナスに働くような仕組みというのはきちんと正していかなきゃいけないというふうに思うんですが、この背景にある問題がこの制度の濫用、悪用論だというふうに思うんですね。

 団体訴権制度をつくる上でいろいろな団体からの抵抗があったという。私は、はやりの抵抗勢力という言葉をかりれば、やはりこの制度の抵抗勢力は経団連など企業サイドではないのかというふうに思うわけでございます。

 それで、最後に大臣に伺いたいと思いますが、ここでは、企業サイドの主張というのは、健全な事業活動を阻害するからだというものかと思いますが、しかし、健全な事業活動は消費者の被害はもたらしません。ですから、訴訟の対象にもならない、何ら事業を阻害することにならない。だから、過度に濫用、悪用のおそれを振りまくというやり方は、団体訴権制度の活用を阻害するものと言わざるを得ないと思うんですね。

 そういう点で、政府は、やはり消費者被害の防止を徹底するんだ、消費者被害のための法律だということであるならば、そういう立場で法の運用に当たるべきだというふうに思いますが、最後にこの点での大臣の御見解を伺いたいと思います。

猪口国務大臣 制度の実効性を考え、そして濫用などを防ぐ、そのバランスの中で制度を設計したと考えております。

石井(郁)委員 この点では、もう少し大臣から突っ込んだ御答弁もいただきたかったんですけれども、きょうのところは以上で終わりたいと思います。

佐藤委員長 次回は、来る二十六日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三分散会


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