第6号 平成18年4月28日(金曜日)
平成十八年四月二十八日(金曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 佐藤 剛男君
理事 木村 勉君 理事 戸井田とおる君
理事 西村 康稔君 理事 林田 彪君
理事 山本 拓君 理事 泉 健太君
理事 大島 敦君 理事 田端 正広君
赤澤 亮正君 遠藤 宣彦君
小野 次郎君 小渕 優子君
大野 松茂君 木原 誠二君
後藤田正純君 近藤 基彦君
土屋 品子君 土井 亨君
中森ふくよ君 村上誠一郎君
村田 吉隆君 枝野 幸男君
大畠 章宏君 川内 博史君
小宮山洋子君 佐々木隆博君
太田 昭宏君 石井 郁子君
糸川 正晃君
…………………………………
議員 枝野 幸男君
議員 小宮山洋子君
国務大臣
(少子化・男女共同参画担当) 猪口 邦子君
内閣府副大臣 山口 泰明君
内閣府大臣政務官 後藤田正純君
法務大臣政務官 三ッ林隆志君
政府参考人
(内閣府国民生活局長) 田口 義明君
政府参考人
(公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長) 舟橋 和幸君
政府参考人
(金融庁総務企画局審議官) 畑中龍太郎君
政府参考人
(経済産業省商務情報政策局消費経済部長) 谷 みどり君
内閣委員会専門員 堤 貞雄君
―――――――――――――
委員の異動
四月二十八日
辞任 補欠選任
平井たくや君 近藤 基彦君
市村浩一郎君 枝野 幸男君
鉢呂 吉雄君 佐々木隆博君
同日
辞任 補欠選任
近藤 基彦君 平井たくや君
枝野 幸男君 市村浩一郎君
佐々木隆博君 鉢呂 吉雄君
―――――――――――――
四月二十八日
憲法改悪反対に関する請願(笠井亮君紹介)(第一七四八号)
憲法の改悪に反対し、憲法九条を守ることに関する請願(志位和夫君紹介)(第一七四九号)
同(辻元清美君紹介)(第一七五〇号)
憲法の改悪反対することに関する請願(志位和夫君紹介)(第一七五一号)
憲法第九条を変えないことに関する請願(日森文尋君紹介)(第一八三〇号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
消費者契約法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)
消費者契約法の一部を改正する法律案(菊田真紀子君外三名提出、衆法第一九号)
――――◇―――――
○佐藤委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、消費者契約法の一部を改正する法律案及び菊田真紀子君外三名提出、消費者契約法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として内閣府国民生活局長田口義明君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長舟橋和幸君、金融庁総務企画局審議官畑中龍太郎君及び経済産業省商務情報政策局消費経済部長谷みどり君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。泉健太君。
○泉委員 おはようございます。民主党の泉健太でございます。
四月の十三日からこの消費者契約法改正の審議、本会議から始まりましてきょうに至っているわけですけれども、これまで、短いながら活発な議論がされてきたかというふうに思いますし、政府の方にもよいところは取り入れていただくということでこの審議の意味があるわけですので、そこを御認識いただきながらきょうまで審議をいただいているかというふうに思います。
その意味では、きょうこうしてさせていただいて、さらにはまた参議院というふうにも移っていくかと思うんですが、ぜひ、今後この法律が成立をしていく過程の中で、細かいことも含めて国民の声をこれからも引き続きよくよく聞いていくということは、改めて御確認をさせていただきたいというふうに思っております。
そういう中で、さらに詳しい点について幾つか確認をさせていただきたい、そんな意味できょうは質問をさせていただきたいと思います。
この消費者契約法、私たちは民主党案というものも提出をいたしました。そして、本会議でも、五つの穴をふさぐべきだという表現をさせていただきましたが、より消費者の立場に立った消費者契約法の改正に努めていただきたいということは、法案として私たちは表明をさせていただきました。
損害賠償の請求であったり、あるいは裁判管轄の問題であったり、そして、適格消費者団体の要件というものを少し我々は幅広に持ったりということを提案してまいったわけですけれども、そういった中で、特に今回議論されている適格消費者団体の位置づけというものが次第に明らかになってきたかと思うんです。
我々は、これまでの消費者団体の真摯な消費者活動というものを通じて見てまいったときに、例えば、言われているような濫訴であったり、その中立性、公平性が非常に疑われるということであったり、あるいは、この団体が焼け太りをするのではないかというようないろいろな懸念もあるように受け取る場面もありましたが、我々からすれば、これまでの消費者団体の活動を見れば、そういったことは余り想定をされないのではないのかなということを一方で思っております。
そういった中の一つとして、政府案の三十六条、この政治的目的については、これまでも各委員から指摘があったところです。
政治的目的または政党のために利用してはならないということが書いてあるわけですけれども、ここについて、これまでの答弁の中でこういった答弁がございました。例えば、局長からは、選挙の候補者のトレードマークとなっているような主張であれば、それはやはりこの条文に触れるのではないかというお話、そしてまた大臣の方からは、提言や意見表明を超えて特定の政党や候補者の支援と同視できるような場合ということは、これはやはり条文に触れるのではないかというような答弁がございました。ここをもう少し詳しくお伺いをしたいというふうに思っております。
まず一つは、選挙なりで各候補者あるいは政党が何らかの政策を出されるということは、これはもう当然のことなわけですけれども、その選挙の時期とかかわらず、日々の政策の中での各政党、各政治家、候補者も含めて現職の政治家の主張というものと、この適格消費者団体の意見表明、提言というものが時に重なるということが私は想定されると思うんですが、もう一度、この場合については、これは選挙のとき以外の場合、どういう判断をされるんでしょうか。
○猪口国務大臣 先生既にまとめてくださいましたとおり、法案第三十六条は、適格団体が政治色を強め、業務の公正性、信頼性を損なうことがあってはならないという趣旨でございます。既に私答弁申し上げておりますとおり、提言や意見表明を超えて特定の政党や候補者の支援と同視できるような場合には、同条に言います「政治的目的のために利用してはならない。」に該当するという説明を申し上げております。
先生の今質問されました、日々の政治家の活動の中での消費者政策に対する一般的な提言や意見表明と、場合によっては適格団体の主張が偶然的に一致するということは十分にあり得るという場面において、そのようなことは政治的目的のために利用してならないということに該当し得るかどうかという御質問であるかと思います。
これにつきましては、ケース・バイ・ケースにもよるかと思いますけれども、明白に同視できるような場合ではないということで考え、消費者政策について、それを充実させるべく、提言であり積極的な意見表明ということは差し支えないというふうに考えます。
○泉委員 今のお言葉をお伺いして大変安心をいたしましたけれども、前回の委員会では、例えば、団体が総会等で特定の候補者の支持を決議したり、その人への投票を会員に促すこと等は禁止されているというふうにおっしゃられましたので、これはよくわかる話なんですね。
こういった選挙のときの、あるいは選挙が近くなったときの団体としての具体的な政治的な動きというものについては、当然、そういったものまでは認められないということはわかるんですが、日々の政策提言、意見表明ということは、やはりこれは、当然、同じ専門性を持っていればそのときの提言が重なるということは考えられることですので、そういった意味では、選挙のとき以外のそういった日常については、ぜひ、こういった意見表明や提言をしていけるようにしていただきたいというふうに思います。
また、候補者というのはいろいろな候補者がおられます。その中で私が心配しますのは、団体が言っていることを、適格消費者団体が言っているから、この主張を使わせてもらおうという形で出てくる候補者が出てくると思うんですね。そういった場合に、逆に適格消費者団体の主張そのものが制限をされてしまうのかということになると思うんですが、この点についてはどうお考えでしょうか。
○猪口国務大臣 そもそも今回の法案の趣旨に常に立ち戻りまして、我が国におきます消費者政策を充実させていくということとの関係におきまして、積極的、建設的な活動を行う中で、その他政党候補者等がそれを利用するようなこともあるのではないかという場面の御指摘なんですけれども、これも場合場合によるかもしれませんが、法律の趣旨を考えますと、そもそも消費者政策の充実のために活動している適格団体のその活動は重要であり、一般的な提言また消費者政策を充実させるための意見表明などが、先生の今御指摘のような場合において、特に制約されるべきではないと考えます。
○泉委員 選挙候補者というのは、もちろん政治的な発言の自由もあるわけですけれども、絶対、どこどこの適格消費者団体も言っています、私の主張と同じですという候補者が出てきかねないというふうに私は思いますので、その点で、適格消費者団体が逆に制約を受けることがないようにということは改めてお願いをしたいと思います。
さらに、この適格消費者団体の主張について、選挙の候補者のトレードマークとなっているような主張ということで局長の答弁があったわけですけれども、全国津々浦々、いろいろな候補者がおられるわけですね。例えば、適格消費者団体が大阪にありましたという中で、青森で立候補をしている方がこういった全く同じ提言をしている場合、あるいは、青森の候補者とたまたま提言が、選挙のときの主張が完全に重なってしまった場合というようなケースについて、こういうものは、適格消費者団体に認定をされると、すべてに、全国に拘束力を持つことになるんでしょうか。
○猪口国務大臣 そのような場合、特に制限されないと考えてよろしいと思います。
○泉委員 さらに細かいお話なんですが、今、大変すばらしいことに、全国各地で公開討論会というものが行われるようになっております。これは、例えば農業団体やJCですとか、いろいろな第三者的な団体の企画、運営も含めて市民の側からも行われているわけですが、そういう中で、消費者団体もこういった選挙の際の公開討論会の実行委員会みたいなものに参画をするというケースも時にあります。
その中で、消費者政策について各候補者の見解を聞くというような形での参画をする可能性があるわけなんですが、例えば、適格消費者団体においても、こういった純粋に中立的に候補者の公開討論会を企画する、あるいはそれに参画をするということが可能かどうか、お願いをしたいと思います。
○猪口国務大臣 先生、今、純粋に中立にとおっしゃいましたので、その趣旨にかんがみ、制限されないと考えます。
○泉委員 ありがとうございます。
こういった形で、少し細かくお話をお伺いしましたけれども、この法律、制度への意見表明になるべく縛りをかけない、政治的活動、特定の政党に余りに傾斜するような発言が続けば、それはその団体そのものの中立性が疑われるということになりますけれども、基本においては、適格消費者団体であってもさまざまな提言、意見表明は幅広にできるということは、ぜひ再確認をさせていただきたいというふうに思っております。
もう少し、さらに詳しくお伺いをすると、この適格消費者団体は、いろいろな消費者団体が合同して設立をしているケースもあると思います。そういった中では、それぞれの消費者団体が持っている主張が適格消費者団体内で議論をされることというのも当然あると思いますし、そういった議論がまず許されなくはないというふうには思うんです。
そういった中で、例えば陳情や請願を行おうというふうになったときに、結果的には特定の政党しか受け付けてもらえなかったというケースがあり、かつ、そことの意見交換をしなければならない状況になるということもあると思うんです。こういったことは、例えば、政党要件を満たしているということがあるかもしれませんが、すべての党に対して請願や陳情というものは行わなければならないのか、それとも、そういったものは問わないということでよろしいのか、お答えいただきたいと思います。
○猪口国務大臣 もともと、私、特定の政党や候補者の支援と直接的に同視できるような場合ということを申し上げておりますので、今先生の御指摘のような場合においては、そもそも適格消費者団体が純粋に中立的な立場に立って真摯な取り組みをしているということを前提に、制限されないと考えてよろしいと思います。
○泉委員 ありがとうございます。
次に、政府案の五十条、これは罰則にかかわるところですけれども、今回、いろいろと違反をしますと罰金なども適用されるということで、その中で、五十条の二、「第二十五条の規定に違反して、差止請求関係業務に関して知り得た秘密を漏らした者」、これは罰則を受けるということになるわけですが、具体的に、この「差止請求関係業務に関して知り得た秘密」というものが何を指すのかということをまずお伺いしたいと思います。
○猪口国務大臣 まず、第五十条第二号の秘密でございますけれども、これは、第二十五条に規定されているとおり、適格消費者団体の役員あるいは職員などが差しとめ請求関係業務を遂行するに当たり、あるいはそのプロセスを通じて、知り得た秘密でございます。
具体的には、差しとめ請求権の行使に必要な消費者被害に関する情報収集等を行う過程で知り得た消費者の一身上の秘密、あるいは、家計、経済上の秘密等を想定することができると考えます。
○泉委員 それ以外には、何かありますか。
○猪口国務大臣 被害に遭っているという状態があるわけですね。そのことについて申し立て、救済、ないし、さらに被害が拡大しないような差しとめ請求が必要ではないかというような情報をまず寄せていて適格団体が活動するということです。そうすると、被害に遭っておられるわけですから、いろいろなケースが考えられるのではないでしょうか。
とっさにいろいろと思い浮かべることは難しいですけれども、例えば、健康食品の場合、全く効果がないのにそれを購入したというような場合を考えますと、そもそもその人は何らかの健康の不安を抱えているのではないか、そういうことについて適格団体が知り得ているというようなことも一身上の秘密の中に入ると思いますが、一身上の秘密という概念は非常に幅広い概念であると思います。さまざまな状況が考えられると思います。
○泉委員 そうしますと、二十四条にまず被害に関する情報の取り扱いというものがありまして、その次に二十五条、秘密保持義務ということになっているということからすると、この秘密というのは、消費者の被害の具体的な内容であったり、また消費者の背景であったりということの意味での消費者の秘密ということでよろしいですね。
○猪口国務大臣 そのように解釈して差し支えないと思います。
○泉委員 わかりました。これ以上は、ではちょっと聞かないようにしまして、消費者の秘密ということで確認がとれましたので、それで結構かと思います。
次に、二十四条でありますけれども、これもさらに少し詳しく聞きたいと思います。
「消費者を識別することができる方法で利用するに当たっては、あらかじめ、当該消費者の同意を得なければならない。」というふうに書いてございます。
これは、消費者を識別することができる方法、具体的に、どこまでを指すと考えるとよろしいでしょうか。例えば年齢、性別、氏名、いろいろとあると思うんですが、その範囲というものはどういうことで考えるとよろしいでしょうか。
○猪口国務大臣 識別できるということですので、同一性が認識できるということまでを意味すると考えます。
○泉委員 ケースによってそれはいろいろとあるということかもしれませんけれども、私が一つ心配をしますのは、例えば、報道でも全国に非常に広く伝えられたような消費者被害が仮にあるとします。最近の傾向ですと、そういった中で、特に特定の被害者がクローズアップをされ、それは第一被害者であったり、あるいは有名人であったり、あるいは何かしらのきっかけでテレビに出てきたりする方かもしれませんが、背景がほぼ全国に知れ渡っている方というのはおられると思うんですね。そういう方についても、改めて、適格消費者団体が情報として使用する際には同意をとらなくてはならないのか。これを確認したいと思います。
○猪口国務大臣 その識別された個人がどのような知名度であるかということは、このこととの関係において関係がないと考えます。それは、その個人に対しても同意を取りつけるという必要がございます。
○泉委員 その同意を取りつける方法、これは何か限定がございますでしょうか。
○猪口国務大臣 同意を取りつける方法はさまざまあると考えますけれども、一般消費者を対象とした場合、本人に直接確認をとる、そもそも苦情が寄せられた段階で同意をとっておくという方法でもよろしいと思います。つまり、情報の利用目的等を説明した上で、同意をその段階で、苦情を寄せている段階でとっておくということ、あるいは電話等で確認をしていく等、さまざまな方法があると考えます。
○泉委員 さらにお伺いをしますと、例えば、適格消費者団体自体は、いろいろと過去の事例も、時に全国の消費者に提供をしたり、こういった同様の被害を繰り返さないために注意を喚起したりということもございますし、また、研究調査ということや各団体との連携という意味でも情報のやりとりを行うと思います。そういったところにおいてのこの情報のやりとりについては、これは二十四条に書いてある「差止請求権の行使に関し、」というところに当たるのか当たらないのかということをお伺いしたいと思います。
○猪口国務大臣 差しとめ請求権の行使のために消費者から収集した情報である限りは、裁判後の事例公表であっても、この規定の対象になるということでございます。
○泉委員 そうすると、裁判後に資料として利用する際にも、これはすべて同意をとらなくてはならないということですか。
○猪口国務大臣 そのとおりでございます。
○泉委員 実際には同意は、例えば、今後継続して使用させていただきますという同意も含めてそれは可能なんですね、一回一回同意をとるということではなくして、今後使用してもよろしいですかということをもって、半永久的にというか、その情報の使用は構わないということで。はい、うなずいていただいていますので、もう答弁を求めず……(発言する者あり)では、大臣。
○猪口国務大臣 そのとおりでございます。
ですから、まず、苦情相談が寄せられた際に、適格消費者団体の活動の趣旨を十分に理解していただき、その情報の利用目的を説明した上で、そもそも同意を得ておく、あるいはその情報提供者の例えば名簿などを作成しておき、裁判などで利用する際に同意を得やすい状態にそもそもしておく等、いろいろな工夫が可能と思いますので、それはそのようによろしくお願いしたいと思います。
○泉委員 次に、もう余り時間もありませんけれども、推奨行為について改めてお伺いをしたいと思うわけです。
政府案では、大変残念ながら、推奨行為については差しとめ請求の対象とされておりません。我々は、民主党案で、この推奨行為の差しとめ請求を認める、対象にすべきだということを言っていたわけですけれども、大臣が前回の委員会審議の答弁の中で、推奨行為の主体あるいは程度、さまざまなものがある、だから、もし推奨行為も差しとめ対象とする場合には、これは事業者団体による取引の適正化のための正当な活動まで萎縮させるおそれがあるので対象としていないという話をしておりましたけれども、私は、そうではないんじゃないのかなというふうに思うわけです。
もし大臣がそのようにおっしゃられるのであれば、この主体をある程度明確にして、事業者団体あるいは事業者という形にすることもできるでしょうし、また、適正な活動を萎縮させるということも、私は、そういうケースというのは想定はされ得ないのではないのかなというふうに思うわけですけれども、例えば、その主体をある程度明確にしてということで案をつくっていただいて、そしてこの推奨行為も差しとめ請求に入れていくということは考えられませんでしょうか。
○猪口国務大臣 今、先生も私の前回の答弁を引用してくださいましたとおり、やはり自主的なルールづくりなども含めて萎縮させるおそれがあるのではないか。ですから、事業者の方の正当な活動までも害することがないようにここは考える必要があると整理してございます。
事業者が、不特定かつ多数の消費者に対して、消費者契約法上の不当行為のおそれがあるというだけで当該行為を差しとめることができるようになっておりますので、そこのところを御理解いただければと思います。
○泉委員 大臣が本会議でもお話しされたように、消費者と事業者には、情報ですとか資金、あらゆる格差があるということは大臣もおっしゃられたわけですね。それと同じように、業界内でも、例えば下請とその上の関係というものは上下関係は大変厳しいものがあったり、あるいは親会社と子会社、支店と本店、本部と支部、いろいろなケースにおいて、業界団体と一般事業者、やはりその上下関係というのは存在しているわけですね。
そういう中で、上部団体が推奨行為を行っているケースがあるというので、私もいろいろとその実例を見てきているわけですが、これは、消費者契約法の中で言うと不当条項として無効になるような契約書をつくるように推奨しているケースがやはり幾つも現にあるわけですね。その現にあるものに対して対応できないというのは、非常に今回の法改正、もったいないなというふうに思います。
逆に言えば、例えば不動産でいえば、個々の大家さんとか個々の賃貸会社が毎度毎度上から指示されて、上から推奨された契約書を使うばかりに、結局は自分たちが訴えられるというようなことになりかねない。これは中小の事業者にとって、まさに大変な苦労を強いることになるのではないのかなというふうに思いますが、これはぜひ、余り時間もありませんので、今後検討をしていただきたいということを改めて私は強く申し上げたいというふうに思います。
そして、次に移らせていただきたいと思いますけれども、これはちょっと質問通告しておりません、申しわけありません。
前回の小宮山委員の答弁の中で、十三条の活動実績についてお話がございました。原則として、複数年の活動実績があれば適格消費者団体にしていくということが答弁の中であったわけですけれども、これは、原則としてということが前回の田口参考人のお話でもありましたので、絶対条件じゃないということで考えてよろしいんでしょうか。
というのは、実際に適格消費者団体になりそうな団体を見ますと、過去、消費者団体として機能してきた多くの団体が集まってつくるケースが多い、新設されるケースも多いということです。その理由には、やはり、どうしても資金的に困難であったり、あるいは適格消費者団体の認定を受ける条件が厳しいということもあって、幾つかの団体が集まって、細々ながらも力を寄せ合って運営をしていこうというものが多いということから来ているわけですけれども、そういった意味で、これはあくまで原則ということで考えてよろしいでしょうか。
○猪口国務大臣 それぞれの団体の今までの実績を十分に考慮するということでございます。法の全体の趣旨に照らして、今後の活動への真摯な取り組みを期待するという観点から、実質を備えたという考え方にしておりますけれども、先生の御指摘のようなケースについて、個々の場合において判断はしなければなりませんが、一般的には差し支えないような取り扱いになるというふうに考えます。
○泉委員 これで最後にいたしますけれども、やはり、要は、今回の審議を通じて、消費者団体に対して、冒頭も申しましたが、濫訴のおそれがある、政治的中立を侵すんじゃないか、団体がちゃんと運営されるのかという数々の疑問が寄せられましたが、これまでの消費者運動というものを大臣には改めて見ていただいて、決してそういうことを起こす方々ではないんだということを改めて主張したいと思いますし、逆に言えば、事業者の方にいろいろと問題があるからこの法律ができているのであって、消費者側に問題があってこの法律ができたのではないということはぜひ知っていただきたいと思います。
その意味では、ぜひ適格消費者団体を訪問して話をしていただく機会を今後つくっていただきたいというふうに思っておりますので、大臣、副大臣あわせてこれはお願いをして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
○佐藤委員長 次に、川内博史君。
○川内委員 おはようございます。民主党の川内博史でございます。
最初に、民主党案に対して、民主党提案者にお伺いをさせていただきます。
民主党案では、差しとめ請求の対象となります事業者等の行為について、民法九十条に規定される公序良俗違反の条項を含む消費者契約の意思表示や、あるいは詐欺的行為に該当する勧誘行為、さらには不当な契約条項を含む消費者契約の意思表示を行うことを推奨、提案する行為も含むなど、政府案よりも広く差しとめ請求の対象がとらえられているわけでございます。
民主党案では、政府案よりも対象となる行為を広くとらえることによって、具体的に、どのような行為が政府案と異なり差しとめ請求の対象となってくるのか。例えばクレジット、サラ金などの消費者金融問題などは民主党案によって対応することができるのかという具体的なことまで含めて、御答弁をいただきたいと存じます。
○枝野議員 ありがとうございます。
御指摘のとおり、民主党案の方が、消費者契約法に列挙されている規定以外に、人を欺罔し強迫する行為等についても取り消しの対象になっております。
この件について、どこがどう変わってくるかといいますと、消費者契約法の列挙事項では、重要事項に関しということで、事実と違うことを話したという範囲が限定をされています。
しかし、消費者被害でよく見られる例ですと、例えば、電話を販売するのに、今あなたの使っている電話は使えなくなりますよとか、あるいは、これはリフォーム詐欺的なところであるんでしょうか、あなたの家はシロアリにむしばまれているので早く駆除しないといけませんよ、これが契約の重要事項に当たるのかというと、契約の前提事項に当たります。
こうしたケースについては、消費者契約法本体ではなかなか直接救いがたいんですけれども、しかし、民法そのものの詐欺等の場合においては適用される、もちろんこうした事案というのはケース・バイ・ケースでありますが、当たり得る場合があるということになっていくかと思います。
あるいは、公序良俗に反するものの中で典型的なものが消費者契約法第十条で列挙されているのかというふうに思いますけれども、これも今と同じようなケースで、実際の契約諸条項以外のところで全体で判断をしてとか、いろいろなケースがあり得ますので、そういった意味では、消費者契約法列挙事項ではこぼれているケースを救い得る。しかも、こぼれているケースの方が一般的には悪質なケースが多いのではないかと思われますので、念のためにそこは備えておいた方がいいというふうに思っております。
もう一つ、我々の方が広い推奨行為、これは先ほど泉委員が質問の方でされておりましたけれども、ここは、事業者団体等が不当な契約書、約款モデルみたいなものを配っているというようなケースを、時には、むしろ個々の事業者を相手に訴訟を起こすよりも、事業団体そのものを相手にする方が、実態としても、それは事業者側にとっても、合理的ではないかというふうに思っております。
川内委員が御関心をお持ちのクレジット、サラ金でございますが、クレジット、サラ金がそもそも消費者契約に当たるのかどうかという点については、借りる目的が事業のためでないこと、つまり、まさに個人のため、個人の消費のための借り入れであれば該当し得るというふうに考えております。
もちろん、あとは個々の条項に当てはまるかというふうなことになりますけれども、これは消費者契約法列挙事項に該当するようなケースでということもあり得ますが、特に、いわゆるサラ金問題等において、不当な勧誘というような場合は、典型的に消費者契約法に列挙されている重要事項についての事実と異なること以外のケースがあり得る、一番想定しやすいケースであるかなというふうに思っておりますので、そこをきちっととらえるためには民主党案のような形でやらせていただいた方がいいのではないか、こんなふうに思っております。
○川内委員 クレジット、サラ金などの消費者被害は、国民生活センターへの相談件数などでも毎年十万件を超える非常に大きな被害というか問題が起きているというふうに私は考えますが、このクレジットやサラ金の相談件数の多さについて、猪口大臣の御認識をお聞かせいただきたいと思います。
○猪口国務大臣 非常に残念な、重大な被害が発生していると認識しております。
これにつきまして、別の法律において特別の規定がございますので、これは、消費者契約法に規定される事業者の不当行為、すなわち不当な勧誘行為と不当な契約条項の使用に該当する、そして、不特定多数の消費者に被害の可能性がある場合には本法案の対象になり得ますけれども、例えば利息制限法でありますとか出資法でありますとか、さまざまな特別の規定がある場合は、今回の法改正及び消費者契約法の中に含まれないものという整理でございます。
○川内委員 大臣、クレジット、サラ金などの消費者金融の問題あるいは消費者被害というのは、一人一人は、まさしく消費者契約法が想定をする情報力あるいは交渉力において事業者に圧倒的に劣る消費者一人一人の被害でありまして、当然、サラ金、消費者金融にお金を借りるぐらいですから、財力もないわけでございまして、弁護士に相談することもできない人たちがたくさんいらっしゃるわけであります。この問題の深刻化によって、格差社会というものがますます拡大をし、自殺の増加あるいは犯罪の増加などの重要な要因になっているのではないかという指摘もあるわけでございます。
しつこいようですが、この分野については、適格消費者団体による団体訴訟制度が最も期待される事例であるというふうに私は思っているのですが、このサラ金問題、クレジット問題に関して、消費者政策を担当する大臣として、今後のお取り組みの決意まで含めて、もう一度御答弁をいただきたいというふうに思います。
○猪口国務大臣 今答弁申し上げましたとおり、特別の規定が既にある場合においては含まれないわけでございます。しかしながら、今後、そもそも、法の施行状況あるいは社会経済状況の変化等を常に見ながら、必要な対応あるいは見直しはとるもの、必要に応じて検討するものと考えておりますが、現在のところは、先生御指摘のケースにつきまして、貸金業の規制の法律がございますので、そのように整理してございます。
○川内委員 大臣、国民生活センターへの相談件数というものの、おれおれ詐欺とか振り込め詐欺とかああいうものを除くと、サラ金とかクレジット問題というのは一番、格段に相談件数が多いわけで、消費者契約法あるいはこの改正案にしても、最近そういう国民生活センターへの相談件数などが急激にふえているということを背景として改正案が、団体訴権制度というものが検討され、今国会に今審議をされているわけですから、一番相談件数の多いものに関して、別な規定があるからいいんだみたいなことではなく、まさしくその問題にどう対応するかというのが政府の責任であろうというふうに私は思いますので、大臣が今御答弁になられた後段の部分、必要があれば検討をする、検討しなければならないのではないかと考えているという後段の部分の御答弁だけでいいのではないかというふうに考えるんですね。
まさしくその必要はあるんだと、毎年十万件を超える相談件数が寄せられている、これにどう対応していくのかということに関して、消費者政策を担当される大臣として、まさしく必要があるという御判断をされて対応されることを、これは要望しておきます。
そこで、なぜこういうことを申し上げるかというと、本日は金融庁の方にも来ていただいておりますが、ちょうど一週間前に、四月二十一日に発表された貸金業制度等に関する懇談会の中間報告というものが出ております。
この貸金業制度等に関する懇談会には内閣府の国民生活局もオブザーバーというか、これは事務局になるんですか、いずれかにせよ出席をしていらっしゃるわけで、この消費者金融問題、クレジット問題については国民生活局としても重大な関心を持っていることの一つのあらわれであると思いますが、今後のこの中間整理以降の取り運びについて簡単に御説明をいただきたいと存じます。
○畑中政府参考人 お答えを申し上げます。
ただいま御指摘ございましたように、去る二十一日金曜日に貸金業等に関する懇談会におきまして座長の中間整理というものが発表されたわけでございます。
金融庁といたしましては、この内容をしっかり受けとめ、また、法務省など関係する当局の御意見あるいは引き続き行われる同懇談会でのさらなる検討についても十分留意する必要があると思いますが、与野党の関係者の皆様の御意見もよく伺って、どのような道筋が適切であるか検討してまいりたいと考えております。
○川内委員 今、畑中審議官が与野党の皆様のと、与だけではなく野も入れていただきましたので、ぜひそれは、今の御答弁を踏まえて、与野党の意見を踏まえて今後の対応方をとっていただきたいというふうに思います。
そこで、中間整理の最後のページに、七として「今後の検討課題・視点等」というところの2のところに、「消費者からの申立てに基づき行政が法令違反行為の調査を行い、然るべく対応する仕組みや、法令違反行為によって得た収益を被害者に返還する仕組みを検討していくべきとの意見があった。」というふうにその中間整理に記述がございます。
これは、具体的にはどのような仕組みを想定していらっしゃるのか、また、ここで言う「消費者からの申立て」の消費者という言葉の中には、消費者並びに消費者団体というものも想定をしているのかということについて、もう一度畑中審議官より御答弁をいただきたいと思います。
○畑中政府参考人 お答え申し上げます。
ただいま委員から御指摘ございましたように、本中間整理の一番最後の今後の検討課題・視点というところに、今後、懇談会として引き続き検討はしていくけれども、その場合の留意すべき視点ということで、幾つか意見が出されたところでございます。
その中に、御指摘ございましたように、「消費者からの申立てに基づき行政が法令違反行為の調査を行い、然るべく対応する仕組み」等について検討していくべきであるという意見があったということは事実でございます。
ただ、残念ながら、これは最終段階で示されました御意見でございましたので、余り突っ込んだ御議論は、これに関してはなかったように記憶しております。いずれにいたしましても、懇談会は今後とも継続して議論されていかれますので、その中で議論が行われていくものと思います。
ただ、そのときに聴取をしていた我々事務方としては、この消費者ということの中に、消費者団体ということを特に強調して発表されたということではなかったように記憶をいたしております。
○川内委員 消費者という言葉の中に消費者団体という言葉が含まれるのか含まれないのかということに関しては定かではないということではあるようですが、他方、排除はされていないというふうに理解をするとすれば、ぜひ、この消費者契約法の改正案の国会での議論の中で、貸金業のあり方に関する懇談会で使われる消費者という言葉の中に消費者団体という言葉の意味も含めて今後は議論をしていただきたいという国会からの要望があった、指摘があったということを懇談会にお伝えいただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○畑中政府参考人 重ねてのお答えになりますが、この貸金業等をめぐる懇談会は、引き続き検討をされますので、ただいまの御意見についても議論が行われていくものと思います。
したがいまして、ただいま委員から御指摘がございました御意見、御指摘についても、しかるべく懇談会に伝えさせていただきたいと思います。
○川内委員 それでは、次の論点について民主党提案者に伺わせていただきます。
消費者被害の多くは広域かつ多数人に被害が及ぶものでありますが、個々の被害額が僅少であり、訴訟を提起してまで被害回復を求める被害者はごく一部であると言われております。この点について、民主党案には損害賠償等団体訴権が盛り込まれたというふうに承知をしておりますし、また、私はそれを高く評価しておりますが、これが実現をすれば、政府案と異なり、どういった被害が救済されることになるのか、具体的な事例について、こういう事例について救済をされることになりますということを御説明いただきたいと存じます。
○小宮山(洋)議員 委員が御指摘のとおり、消費者被害の多くというのは、同じような種類の被害が多くの人に及びますが、一人一人が少額のために、訴訟を起こしてまで被害の回復をしようという人はほとんどいないと言ってもいいと思います。そのために、被害の救済がなされないままであるというのが実情である。
そのことを踏まえまして、せっかく導入をする消費者団体訴訟制度ですから、民主党案といたしましては、適格消費者団体に消費者を代表して損害賠償等団体訴訟を追行する権限を付与いたしまして、この結果として支払われた金銭をそれぞれの被害者に配当することで消費者被害の救済を図ることとしております。
御指摘のように、どのような例が救済されると考えるかということなんですが、例えば、入学金とか授業料などを入学時に納入する、全納するという場合がございます。そして、その学校ではなくてほかの学校に入学をしたという場合、適格消費者団体が、それぞれの消費者を代表して、一括して学校に対しまして返還請求を求める訴えを起こすことができると考えられます。
また、別のケースでは、あるメーカーの欠陥商品を買った消費者がそのメーカーに製造物責任法に基づいて損害賠償請求をする際に、適格消費者団体が一人一人の消費者が持つ請求権を代表して、一括して欠陥製品を製造したメーカーに訴えを起こすことができるということが考えられます。
このようにして起こされました損害賠償等団体訴訟の結果支払われた金銭から配当を受けることによりまして、消費者一人一人の救済が図られると考えております。
○川内委員 ありがとうございます。
私も、今、小宮山提案者が御説明になられたとおりに、この損害賠償等の団体訴権というものは適格消費者団体にとって非常に重要な武器になるというふうに思いますので、政府に対しては、次への検討課題として御検討をいただくようにしていただかなければならないわけでありますが、これを具体的にどのように検討していかれるのかということに関しては、またちょっと後に譲ります。
もう一つ、民主党案について重要な論点をお聞かせいただきたいのですが、消費者団体訴訟制度が真に定着をするかどうかについては、より多くの適格消費者団体が生まれ、そしてこれらの団体が力をつけていくことが重要であるというふうに思います。
この点、民主党案では、第四十条一項におきまして、適格消費者団体の業務遂行のための必要な資金の確保について、国及び地方公共団体に努力義務を課しております。努力義務でありますから微妙なところではありますが、この必要な資金確保のための具体策について教えていただきたいというふうに思います。
○小宮山(洋)議員 この点につきましては、お寄せいただいたパブリックコメントの中でも、支援が必要だという非常に多くの御意見をいただいております。
適格消費者団体は、消費者団体訴訟制度を実効性のあるものとして、消費者の利益のために積極的に活動をするということが期待されるわけですけれども、残念ながら、日本の消費者団体というのは比較的小規模なものが多くて、財政的制約などから、必ずしも十分な活動ができない団体もあると考えられます。
このため、適格消費者団体が行う差しとめ請求関係業務や、私どもが盛り込んだ損害賠償等請求関係業務の公益性にかんがみまして、適格消費者団体がこうした業務を行うことに伴う経済的負担の軽減が図られるように、国及び地方公共団体は、これらの業務のために必要な資金を確保するものとする旨の規定を設けております。
必要な資金の確保のための具体策といたしましては、例えば一つは、適格消費者団体に対し公的補助金を交付すること、また、総合法律支援法の改正によりまして、適格消費者団体が行う差しとめ請求の訴えなどにつきまして、日本司法支援センターが行う民事法律扶助事業の支援対象とすることなどが考えられると思います。
○川内委員 ありがとうございました。
続いて、政府案についてお伺いをさせていただきます。
私は、この審議の過程の中で、たくさんの方がこの検討委員会の報告の中での既判力の範囲についてのことをお尋ねになられていらっしゃり、そして、私も政府側のその答弁を聞かせていただいたりしながら、どうもまだすとんと落ちないところがあるので、もう一度自分自身の口から聞かせていただきたいというふうに思うんです。
検討委員会の報告では、確定判決の既判力の範囲について、当該事件の当事者限りとし、他の適格消費者団体には及ばないとしているわけであります。他方、紛争の蒸し返しの懸念があるので、一定の不適切な訴えの提起自体を認めない仕組みを導入するなど、所要の措置について検討する必要があると書かれているわけであります。
それで、法律案では、第十二条五項二号で、他の適格消費者団体の差しとめ請求ができないというふうに書いてあって、検討委員会の報告の内容と、この前、参考人質疑の中でも、弁護士の先生は検討委員会の報告と違うじゃないかということをおっしゃっていらっしゃったわけでありますが、この辺について、もうちょっと我々法律の素人にもわかりやすく御説明をいただきたいというふうに思います。
○田口政府参考人 お答えを申し上げます。
確定判決等があった場合の同一事件の取り扱いの制限の問題でございますが、これは通常の個別訴訟とは異なりまして、消費者団体訴訟制度というのは、消費者全体の利益を擁護するために、適格消費者団体に政策的に差しとめ請求権を付与するという性格のものでございます。いわば公益のための訴訟でございますので、そういう特性に根差した差しとめ請求権の制約が伴うというものでございます。
国民生活審議会の報告との関係について御指摘がございましたが、委員御指摘のように、国民生活審議会においては、一方で、既判力は他に及ばないという民事訴訟法の基本原則、判決の既判力は当事者限りとするというのが民事訴訟の基本原則には整合的であるということをまず一たん言った上で、他方、この原則によった場合には、こういう公益的な訴訟ということに伴ういろいろな懸念、問題点が出てきますと、紛争の蒸し返し等の問題を指摘しているわけでございます。
こういう点を踏まえて、消費者団体訴訟制度につきましては、一定の不適切な訴えの提起自体を認めない仕組みを導入するなど、所要の措置について検討する必要があるという指摘をいただいているわけでございまして、この指摘を踏まえて、今回の法案におきましては、紛争の一回的解決を図るために、一定の合理的な例外を認めつつ、同一事件の請求は確定判決等がある場合には原則としてできないという取り扱いをさせていただいた次第でございます。
○川内委員 原則としてできない。確定判決の既判力の範囲について、検討委員会の報告が出て法案が作成される過程の中で、検討委員会の報告を受けて内閣府の国民生活局が法案作成をされるわけですが、その作成過程の中で、与党やあるいは経済界から既判力の範囲について強烈に何か働きかけがあったのではないかというふうに思いますが、どうですか。
○田口政府参考人 法案の作成過程におきましては、まず骨子を取りまとめさせていただきました。この骨子を公表いたしまして、パブリックコメントに付したということでございます。十二月の半ばから一月の下旬にかけて、一カ月強ほどパブリックコメントを募ったわけでございますが、これに対しましては、各界から大変いろいろな御意見をいただいております。
その中で、一方で消費者団体あるいは弁護士会等からはこの取り扱いについて御疑問の声がございましたが、一方、経済界等においては、こういう公益のための仕組みであるということに伴って、また、新しい制度を我が国に初めて導入するということから考えると、堅実な制度として導入するために、一定の合理的な歯どめは必要ではないかという御指摘がございました。
○川内委員 私がお聞きしたのは、この委員会の報告が出て、その骨子案をまとめるまでの間、いわゆるパブリックコメント、世の中に公表するまでの間に、既判力の範囲などについて強烈に働きかけがあったのではないかということをお尋ねしたんですが、多分お答えになれないんだろうというふうに思います。
過去のことをいろいろ申し上げてもしようがないので、では、この法案の中で、差しとめ請求は認められなかった。しかし一方で、確定判決後の社会環境の変化によって、被害が拡大をした。新しい事実や新しい証拠がどんどん出てきて被害が拡大をしてしまったというような場合には、先ほど原則という言葉をお使いになられたわけですが、もう一度差しとめ請求をすることができるのかできないのかということに関して、そしてまた、どのような場合にはもう一度差しとめ請求をすることができるんだということを、条文の根拠もあわせてお示しをいただきながら、御説明いただきたいと存じます。
○田口政府参考人 お答え申し上げます。
まず、例外といたしまして、十二条の第六項でございますが、前の訴訟における確定判決に係る訴訟の口頭弁論の終結後に生じた事由に基づいて同号本文に掲げる場合の当該差しとめ請求をすることを妨げないという規定がございます。この規定に基づいて、口頭弁論終結後の事情につきましては、同一事件であっても、その後の訴訟が妨げられないということでございます。
例えば、一つの例といたしましては、前の訴訟の段階では、ある勧誘行為が不特定かつ多数の消費者に対して被害を与えている、また与えるおそれがあるとは認められなかったが、その後、同じ勧誘行為を他の地域で行うようになった場合というような形で、勧誘行為の地域的な広がりが前の訴訟の口頭弁論終結後行われたというような場合には、新しい事由ということで、後訴も制限をされないということになると考えております。
主要な例としてはこういうものかと思います。
○川内委員 済みません、ちょっと確認をさせていただきたいんですが、私は法律家じゃないものですからよくわからなかったんですが、別な地域で起きている事例については差しとめ請求をすることができるということなんですか。
○田口政府参考人 前の訴訟と後の訴訟で取り上げられている問題の関係でございます。
まず、例えば、前の訴訟で取り上げられた不当な勧誘行為があったといたしまして、それがA地域で行われていた。その訴訟におきまして残念ながら敗訴をしてしまったということがあったとして、その判決が確定してしまうと、A地域の問題をまた次の訴訟で取り上げることは、これはできないということでございます。
B地域の問題を取り上げるということでありますと、それは同じ事案というふうにみなされるかどうかということで、いわば勧誘行為の行われた地域の広がりの問題ということになろうかと思いますが、前の訴訟の確定判決が終了した後に、新たに勧誘地域を拡大して、他の地域にも手を広げた、そこで新しい被害が発生したというような場合におきましては、それは同じ事案というふうにはみなされなくて、後の訴訟が可能になる、こういう関係になります。
○川内委員 そうすると、局長、例えば、最初に差しとめ請求が起こされたA地域では差しとめ請求は認められなかった、しかしB地域で起こした差しとめ請求は認められた。その場合に、A地域で行われている行為についてはどうなるんですか、差しとめられるんですか、ちょっと僕は素人なので。
○田口政府参考人 同一事件のとらえ方の問題でございますが、同一事件と申しますのは、請求の内容及び相手方である事業者等が同一である事件のことということでございます。
請求の内容といいますのは、ある地域において不当な勧誘行為を行っていた、それが例えば不実告知に当たる、いわばうそを言って勧誘をしていた。それを、A地域で不実告知として差しとめ訴訟を提起した、それが残念ながら敗訴をして確定をしてしまった。その同じ事業者が今度、全く別のB地域で、それをいい機会に不当な勧誘行為を他の地域にも拡大して実施するようになる。こうなりますと、いわば事件が拡大しているわけでございまして、請求の内容及び相手方である事業者、これは後段の相手方事業者は同じでございますが、いわば請求の内容に当たる事案の拡大がございますので、それは同一事件とはとらえないということでございます。
○川内委員 いや、済みません、私が聞いているのは、では、B地域で差しとめ請求が認められた、適格消費者団体の側が勝った。そうすると、そのときもA地域での事業者の行為は続いているわけじゃないですか。そのA地域での事業者の行為もだめよということになるんでしょうかということを教えていただきたい。
○田口政府参考人 差しとめの対象は、不特定かつ多数の消費者に対する不当な勧誘行為を差しとめの対象とするということでございますので、B地域で勝訴する、差しとめ命令が出るというのは、不特定多数の消費者に対して今後一切そういう勧誘行為をしてはいけないという趣旨になりますので、A地域においてもそういう勧誘行為をしてはならないということになります。
○川内委員 そうすると、ちょっと整理しますと、請求の内容というのは、消費者契約法上の事業者の不当な行為のそれぞれの類型によって場合分けされる。さらには、相手方である事業者というのは、相手方の事業者が同一であるかどうか、さらには地域が変わるかどうかということによって訴訟を提起することができるということになるわけですね。ちょっと確認を、委員長、お願いします。
○田口政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど不実告知の例で申し上げましたが、不実告知で訴えるのと、例えば断定的判断の提供で訴えるのとは、請求の内容が違いますので、同一事件には当たらないということでございます。
○川内委員 最後に、大臣にお聞かせをいただきたいんですが、検討委員会の報告では、検討を要すると書かれている論点は法律事項になり、慎重に検討を要すると、慎重にという言葉がついた論点は法律にならなかったという違いがあるわけでございます。
検討委員会の報告では、推奨行為、損害賠償、確定判決の既判力、あるいは適格性の要件など、多くの課題が今後の検討課題ということになったわけでございます。今後の検討課題、慎重に検討を要するという論点は今後の検討課題という認識でよろしいでしょうか。
○猪口国務大臣 今回の改正案の趣旨をまず踏まえまして、施行後の状況を随時点検する必要があると考えております。
先生御指摘のとおり、検討委員会で慎重に検討とされ、今回の制度化の対象にはならなかった事項があるわけですけれども、そもそも、消費者政策にかかわりますこの制度をよりよいものに改善していくことは、これは今後の非常に重要な課題であると考えておりますので、そのような事項も含めまして、引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。
○川内委員 国民生活審議会の消費者政策部会において検討をされるということでよろしいですか。
○猪口国務大臣 検討の形態につきましては、まだここで決めているわけではございませんが、国民生活審議会は最も基本的に重要な審議会でございます。また、内閣府といたしましても、随時行政機関といたしまして検討をしてまいりたいと考えております。
○川内委員 ちょっとよくわからなかったんですが、国民生活審議会は重要な審議会でございますと。国民生活審議会の消費者政策部会、この消費者政策を担当する部門でも議論を進めていくという理解でよろしいですか。
○猪口国務大臣 国生審は一つの場でございますが、広く国民の意見を聞き、また、担当大臣といたしまして、必要な判断に基づき、検討が必要な場合において検討を進めるということでございます。
○川内委員 終わります。
○佐藤委員長 次に、枝野幸男君。
○枝野委員 きょうは、十二条と三十六条を質問させていただくということで通告をさせていただいています。どちらからやろうかなと思ったんですが、簡単な方から、三十六条の方から。
実は、これは我が党の法案にも同じような規定があるんですが、我が党の法案を含めて、自分で出しておいてなんですが、ちょっとわけのわからない条文になっているなという気がいたしますので認識を教えていただきたいんですが、まず三十六条、「適格消費者団体は、これを政党又は政治的目的のために利用してはならない。」と書いてある「これ」というのは何を指すんでありましょうか。
○山口副大臣 お答えをいたします。
「これ」とは、まさに適格消費者団体のことであります。
○枝野委員 もう一つ、「利用してはならない。」という、利用するというのはどういう意味を指しているのか、お願いいたします。
○山口副大臣 利用するとは、適格団体の活動として、政治色を強め、業務の公平性、信頼性を損なうような行為をするということでありまして、この規定ぶりは、いわゆる政治的利用の禁止の用例に、先生も御存じだと思いますが、国家公務員法ですとか民生委員法ですとか行政相談委員法ですとか人権擁護委員法等にも書かれている「政党又は政治的目的」という、これに倣ったものでございます。
○枝野委員 これは先ほどの泉委員の質問などのお答えでもあるんですが、しっかり確認をしておきたいので改めて御答弁いただきたいと思いますが、この規定があっても適格消費者団体は、いわゆる政治活動、政治的意思の表明、あるいはみずからの適格消費者団体としての判断に基づき政治的目的を達成するためのさまざまな行動、これは全く規制をされない、こういう理解でいいですね。
○山口副大臣 政治活動、それはいろいろパターンがあると思うんですが、くどいようでありますが、適格団体は、政治色を強め、業務の公平、信頼性を損なうことがあってはならないというのがこれは趣旨でございます。
そして、例えば消費者政策に関する提言や意見表明を行うことについては、その提言や意見表明を超えて特定の政党や候補者の支援と同視できるような場合には、三十六条に言う「政治的目的のために利用してはならない。」に該当すると考えておりますけれども、しかし他方、純粋な消費者政策に関する一般的な提言や意見表明まで制限されるものではないと考えております。
○枝野委員 民主党案では、これを「特定の政党のために利用してはならない。」としました。今の御答弁や泉委員とのやりとりを聞いておりますと、特定の政党の党勢拡大であるとか、あるいは特定の候補者の当選のためであるとか、こういうことのために適格消費者団体が利用されてはならない、こういう趣旨というふうに理解をしたんですが、これでよろしいんでしょうか。
○山口副大臣 そう考えてもらって結構でございます。
○枝野委員 その上で、そういう意味では、私どもの案も、実は、特定の政党だけではなくて、きちっと、特定の政党または公職の候補者またはこれになろうとする者のためにと書くべきであったかなというふうに思います、我が党案を可決していただけるなら修正をしたいと思いますけれども。
逆に言うと、今明確な御答弁をいただきましたので、今回はこれでしようがないかなと思いますが、初めてこの条文を読む一般の方の立場を考えれば、今のようなことを条文上はもうちょっと明確にした方が間違いはないのではないか。
それから、これももう一つ、我が党案もこうなっているんですが、適格消費者団体は適格消費者団体を○○のために利用してはならないというのは、日本語として明らかに変だなと。自分たちで提出しておいてなんなのですが、恐らくこれは、何人も適格消費者団体を特定の政党または公職の候補者等のために利用してはならないということではないのかなというふうに実は議論のやりとりを聞きながら考えております。
これは通告の範囲の中でもありませんので、今すぐどうこうということはいただかなくてもいいんですが、内閣法制局のレベルの仕事だと思うんですけれども、ちょっとこのあたりのところは整理をした方がいいんではないかと思いますので、検討するとは今の段階で答えられないでしょうが、そういう意見があったということを伝えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○山口副大臣 今後、この法案成立後も、委員の意見等も踏まえながら、しっかりと前向きに検討したいと思います。
○枝野委員 もう一つ、実はこの絡みで、これは御答弁結構です、私にしては珍しく委員会で演説をしたいと思うんですが、こういう規定があるのは、適格消費者団体の役割というのが、公益的見地に基づいて、おかしな取引等について差しとめ請求をする、したがってどこかに偏っていてはいけない、これは趣旨は非常によくわかります。
それで、今度、行革一括法の中で法律制度が改められますが、日本には公益法人という仕組みが従来までありました。当面、施行されるまで公益法人という制度は残ります。
実は、この公益法人というのは、法人のあり方自体が公の目的、公益のためにあるから公益法人と呼ばれるわけであります。この公益法人というのは、適格消費者団体と同じように、特定の政党や特定の候補者のために利用してはならないという、少なくとも、法律上規定があるかどうかは別として、趣旨は全く同じだと思うんですね、大臣もうなずいていただいているんですけれども。
だけれども、私は、個人的には非常に、時々違和感を持つことがあります。というのは、例えば日本経団連というのは公益法人なんですよ。ところが、公益法人のトップが、何か特定の政党に対して、しかもその公益法人の代表者として行っている記者会見等で物をおっしゃっているというのは、本法三十六条のような規定が置かれる、そのことは筋であるということとの裏返しでいえば、明らかにおかしいんじゃないか。特定の政党をその団体の長として記者会見などで応援するということであるならば、公益法人を返上して中間法人になるべきであるというふうに思っております。
どこかで言っておきたかったので、議事録に残しておきたいというふうに思っております。
それでは、十二条に入りたいというふうに思っております。
十二条で、政府案による差しとめ請求可能な範囲、これについては、四条の規定のところと、それから八条から十条のところに限定をされております。
まず、四条の一項一号についてお尋ねをいたします。
ここでは、意思表示の取り消しの対象、つまり、差しとめ請求が可能な範囲というものは、重要事項について事実と異なることを告げたこと、そのことによって告げられた内容が事実であると誤認をしたことでありますが、このことと、民法に規定されている詐欺行為との違いはどういうことになるんでしょうか。法務大臣政務官にも来ていただいておりますが、どちらからでも結構です。
○猪口国務大臣 枝野先生にお答え申し上げます。
不実告知のところでございます。
消費者契約法第四条第一項第一号につきまして、事業者が重要事項について事実と異なることを告げるという要件を満たす場合には、消費者による契約の取り消しの主張が認められ、要件が類型化されて、具体的、明確に規定されています。この要件に該当するか否かの判断それから予測は、これは容易であるというところでございます。
これに対しまして、民法の詐欺、九十六条一項でございますけれども、これにつきましては、事業者の欺罔行為が要件とされていますが、どのような行為が欺罔行為に該当するかは、契約の種類、個々の事案ごとに多種多様であり、しかも、欺罔行為に該当する行為が、当該事案の事実関係に照らして、社会通念上違法と評価された場合に初めて消費者による契約の取り消しの主張が認められる、このような形になっております。
ですから、民法の詐欺は、規定が抽象的であり、一般的であると考えられています。消費者契約法のように具体的、明確に類型化されてはいないために、どのような行為が民法の詐欺に該当するのかの判断、予測は複雑であり困難である、こういう違いがあると思います。
さらに、違いといたしまして、消費者契約法の四条一項一号につきましては、まず故意が要件とされていない、それから、相手方を錯誤に陥れるのでなく、誤認されることで足りる、こういう違いがあると考えております。
○枝野委員 今の御答弁を整理しますと、こういうことが言えるんです。つまり、民法における詐欺のある部分を類型化して、なおかつ、故意などの点を初めとして挙証立証責任を軽減しているのが四条一項一号である、これでいいですね。
○猪口国務大臣 結構でございます。
○枝野委員 同じことを伺います。
四条一項二号、目的となるものに関し、不確実な事項につき断定的判断を提供すること、そのことによって断定的判断の内容が確実であると誤認をしたこと、これと民法における詐欺との関係を御説明いただきたいと思います。
○猪口国務大臣 二号のところは、断定的判断の提供というところでございます。
同じように、要件が類型化され、具体的、明確に規定されている、この要件に該当するか否かの判断、予測は簡明であり、容易であるというところが消費者契約法の特徴であり、これに対して、民法の詐欺につきましては、先ほどと同じ答弁になりますけれども、事業者の欺罔行為が要件とされ、どのような行為が欺罔行為に該当するか種々多様である、かつ、この欺罔行為というものが社会通念上違法と評価された場合初めて消費者の取り消しの主張が認められるということでございますので、判断、予測は非常に複雑困難ということでございます。
同じように、故意が要件とされていない、また、相手を錯誤に陥れるのでなく、誤認されることで足りるなどの違いがあります。
○枝野委員 先ほどと同じことを聞きます。
この規定も、民法の詐欺の中の一類型を類型化して挙証立証責任などについて軽減をした、こういうことでよろしいでしょうか。
○猪口国務大臣 そのとおりでございます。
○枝野委員 同じようなことを四条二項についても伺います。
四条二項の要件といわゆる民法上の詐欺との違いということについて御説明ください。
○猪口国務大臣 二項のところ、これは不利益事実の不告知という部分でございます。
これは、事業者が重要事項について消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について消費者の不利益となる事実を故意に告げなかったことという要件を満たす場合、消費者による契約の取り消しの主張が認められ、要件がやはり類型化されて、具体的、明確に規定されている。この要件に該当するか否かの判断は容易である。
これに対して、民法の詐欺につきましては、事業者の欺罔行為が要件とされているが、どのような行為が欺罔行為であるかということについては多種多様であり、かつ、それが社会通念上違法と評価された場合に初めて消費者による契約の取り消しの主張が認められます。
ですから、民法の詐欺の規定は抽象的、一般的であり、消費者契約法のように具体的、明確に類型化されておらず、どのような行為が民法の詐欺に該当するかの判断、予測は複雑困難、こういう違いがあります。
さらに、消費者契約法四条二項についてでございますけれども、故意が要件とされているものの、これは、当該消費者の不利益となる事実を告げないということについてのみの故意であります。それから、相手方を錯誤に陥れるのでなく、誤認で足りるというところは、先ほどのところと同じでございます。
○枝野委員 済みません、大事なところは丁寧にやってきましたが、ここも同じでいいですか。つまり、民法の詐欺に当たるもののうち、特定のものを類型化して挙証立証責任を軽減しているものである。
○猪口国務大臣 枝野先生のおっしゃるとおりでございます。
○枝野委員 この場合、消費者契約法をつくった趣旨は、まさにその民法上の詐欺ということを実際に裁判上挙証立証するということはなかなか困難である、しかも、類型化されて大量の被害という現実があるということで、こうした形で類型化をしたというふうに、私自身も消費者契約法をつくるときからかかわっている者として理解をしています。
しかし、それはまさに類型化をされているということであって、なぜこうした行為がいけないのかといえば、今御説明のとおり、詐欺の中の一類型、この場合、三類型と言うべきかもしれませんが、類型化して整理をしたということでありますから、ここに含まれていないものであったとしても、いわゆる本法に言う消費者契約に該当する法律行為において詐欺に該当するような行為があれば、それは取り消されるべきであるという、法的価値の問題としては同じではないか。そのうち、この消費者契約法に規定された、典型的類型化されたものだけは差しとめ請求訴訟の対象になるけれども、それ以外のところは差しとめ請求訴訟の対象にならないということの根拠はどこにあるのかを丁寧に御説明いただきたい。
○猪口国務大臣 差しとめ請求権でございますが、民事上、相手方の一定の行為を間接強制の制裁をもって禁止するという非常に強力な効果を持つ権利でございます。
したがって、差しとめ請求権を法定する場合におきましては、仮に差しとめ請求の対象が抽象的、不明確でありますと、相手方としては、具体的にどのような行為が実際に禁止されているのか、このようなことを予測することが困難でありますため、本来は差しとめ請求の対象とならないような行為についてまで差しとめ請求を受けることを恐れて差し控えるという過度に萎縮的な効果が生ずるおそれがございます。
このため、相手方の予測可能性を確保する観点から、差しとめ請求の対象は具体的、明確に確定することが必要であると整理してございます。
ですから、この四条関連でございますけれども、消費者の利益擁護を目的とし、消費者契約に限定して、法律上禁止される事業者の不当関与行為を類型化し、具体的に、明確に規定したものでございます。予測可能性が高いことになりますので、相手方の活動を過度に萎縮させるおそれはない。
これに対しまして、民法の詐欺、強迫、また、消費者契約のみならず、対等な契約当事者間の契約全般に関する一般的、抽象的な規定となっていますので、具体的にどのような行為が民法の詐欺、強迫に該当するかは、個々の事案ごとに微妙な難しい判断を要する事柄が多いのではないかと考えます。
したがって、具体的、明確に類型化されていない民法の詐欺、強迫を仮に差しとめ請求の対象とした場合には、相手方として、具体的にどのような行為が差しとめの対象として禁止されているのか予測が困難であるため、過度に萎縮させるおそれがあって、適切ではないという整理でございます。
○枝野委員 優しくという御指示が出ておりますので丁寧に伺いますが、今、予測可能性というお話がありました。まさにそうなんだと思います。予測可能性がないといけないと思うんですが、今おっしゃられた予測可能性というのは、法律行為の時点における事業者の予測可能性なんでしょうか、それとも、差しとめ請求訴訟あるいは差しとめ請求判決がなされたときの予測可能性なんでしょうか。どちらでしょうか。
○猪口国務大臣 法律行為の方でございます。法律に明確に規定してございます。
○枝野委員 判決、つまり、差しとめ請求が起こされ、差しとめ判決がなされました。その差しとめられている範囲がどこであるのかということについて明確でなければ、事業者は確かに困ると思います。
ところが、法律行為のときには、事業者は、将来差しとめされるかどうかということが最大の関心事なんでしょうか。違うと思います。将来差しとめられるかどうかということの以前に、自分のやっている商売が消費者契約法に違反する、こういうことをやってはいけないよね、そこをまず予測するわけです。
さらにいえば、消費者契約法には違反しないけれども、これは民法の詐欺に当たる、裁判を起こされたら詐欺で取り消されるかもしれないということをまずは考える。そのことについて予測可能性がどれぐらいあるかということが問われるんだと思うんです。それで、差しとめ請求の訴訟の対象になるかどうかなんということは、ある意味、事業者にとっても、法律行為の時点ではどうでもいいことなんじゃないでしょうか。
つまり、差しとめ請求の対象にはならないけれども、民法上の詐欺で取り消されるということになったら、事業者としては、困るのは一緒というか、もっと大きいんですよね。だって、個別の取引は、団体訴訟を使わなくても、民法上の詐欺に当たる以上は、被害者は訴訟を起こして、詐欺取り消しで不当利得返還請求なのか損害賠償請求なのか、いずれにしても被害者に対して被害を弁償しなきゃならない。それは、民法上の詐欺に当たれば事業者はそういう義務を受けるわけですよ。
そのことこそが事業者側にとってはあらかじめ一番予見をしておきたいことなんであって、損害賠償請求訴訟で負けるというようなケースであれば、団体によって団体訴権で差しとめをしてもらった方がむしろいいぐらいであって、差しとめてくれれば、そこから先、詐欺で予見可能性が消費者契約法四条に規定する事項よりも類型化されていないから、事業者にとっても確かに予見可能性は低い。
予見可能性が低いんだけれども、どうも、グレーゾーン、危なそうだと言っている事業者にとっては、危なそうだとたくさん続けていって、たくさんたまってから損害賠償請求で、それは団体訴権じゃなくても、個々の被害者だって損害賠償請求できるわけですから、損害賠償請求訴訟を起こされてまとめて負けるよりも、途中で、これはグレーゾーンだけれども、やってはいけない、差しとめをしなきゃならないような行為なのかどうかと裁判所に御判断いただいた方が予見可能性が高まるじゃないですか。だから、むしろこれは事業者にとっても、詐欺まで入れておいた方が予見可能性という意味では高めるんです、少なくとも途中において。
将来の詐欺に当たって損害賠償請求を受けるのか受けないのかというようなことについて、少なくとも、商売を大々的にやって、おい、これは危ないんじゃないか、怪しいんじゃないかという声が上がったとき、最終的には裁判所があらかじめ判断をしてくれる、こんな予見可能性という観点から確実な予見はないわけでありまして、むしろ予見可能性という事業者の見地からも、詐欺まで広げた方がいいというふうに思うんですけれども、どなたでも結構ですが、どうでしょう。
○猪口国務大臣 まず、事業者にとりましては、そもそもどういう行為が許されているのか、差しとめ対象になり得るのかということがやはりわかった方が安心して事業を展開できると思いますので、今回の法律案は非常に有意義な内容となっていると思います。
さらに、民法で規定しています、そしてそれを抽象的、一般的であると私は議論したわけですけれども、そういう範囲の個々に類型化できる部分にまで広げて考えるべきかどうかというようなことにつきましては、これは、もし今後、社会経済情勢が大きく変化したり、あるいは法の実施状況、あるいは消費者被害の実態、状況、こういうことが大きく変わってきた場合に、この四条及び八条から十条のところにおきまして、さらに類型化できるか考えてみるということではないかと感じております。
○枝野委員 もう一度だけ丁寧に御説明させていただきますね。
消費者契約法で典型的なものを類型化して、この類型化されたものは挙証立証責任自体が軽減されているわけです。被害者の側が証明をしなきゃならないこと、そのこと自体が軽減をされているわけです。それは特定、明確な範囲にしなければ、まあ、明確にしたからこそ軽減できるわけですが、それはよくわかるんです。
ところが、事業者の側にとっては、この四条に当たって、これは簡単にという言い方が本当は適切じゃないですが、簡単に取り消しの対象になるということの範囲は四条で明確になります。その簡単に取り消しの対象になるものについては、差しとめの請求の対象になりますということで、イコールです。その二つの簡単さ、容易さというのはイコールですね、その限りにおいては。
一方で、この典型的なものに当たらない詐欺、これは挙証立証責任が軽減されていません。詐欺であるということを裁判所で認めてもらうためには、四条に当てはまるものに比べて、幾つかの余計なことを主張し、そのことを証明しなければなりません。しかし、そのことが証明をされれば、四条に該当するケースと同じように、取り消しという法律効果を発生させることができます。つまり、被害の救済を命ずることができる。
詐欺に当たるケースは、事業者の皆さんは、詐欺に当たって、詐欺だと裁判所が認定するケースについては、どうせ受け取った金を返さなきゃならないんです。そこについて、確かに四条該当よりも予見可能性は低いんですが、予見可能性が低い分だけなかなか証明されない。だけれども、それが証明されれば、どうせ金は払うんです。被害救済をするんです。
差しとめ請求の場合でも、金払えというケースと同じように、被害者側にとっての挙証立証責任のハードルは高いんです。四条に該当しているもののような立証では足りないんです。さらに二つも三つも要件を立証しないと金返せも言えない。
ただし、金返せと言えるケースについては、もうやるなと言ったって全然困らないじゃないですか、事業者の側にとっては。むしろ、金返せと言われる前に、どうせ金返せと言われたときに負けるようなケースについては、いや、負けるかどうか予見できないから、グレーゾーンだから事業者もやっているんでしょうから。将来、金返せという裁判で負けるかもしれないような商売をやっている側にとっては、もうやるなという判決なのか、やっていいよという判決なのか、早くどっちか出してもらった方が事業者としての予見可能性は高まるじゃないですかと私は思います。
もう一回だけ御答弁いただければと思います。
○猪口国務大臣 おっしゃることはわかるんですけれども、詐欺に当たるかどうか、これをあらかじめ予測することはやはり難しいのではないかということにおいて、消費者契約法でやろうとしていることと違うのではないかと思います。
ただし、先ほどもお伝えしたことと同じなのですけれども、いろいろな状況を検討し、法の実施状況もまた検討しながら、さらに類型化できると考えられるものが社会の実態との関係において必要であるという場合においては、今後の検討課題として対応するというところまで申し上げさせていただきます。
○枝野委員 局長も聞いていらっしゃるので、ぜひ、私は、四条の、類型化されて挙証立証責任が軽減されている、この対象を広げろと今言っているわけじゃないんです。これを広げろということは別の論点としてはあるんですが、そのことを申し上げているんじゃなくて、挙証立証責任が限定されているケースについては、挙証立証責任が軽減されている範囲で差しとめが認められる。詐欺のように、この典型例に当たらないからといって挙証立証責任が重たいケースについては、差しとめも同じイコールで挙証立証責任が重いんだから、事業者の予見可能性という観点で、四条に当たらない詐欺のケースを排除するということの理由に実はならないんじゃないかということを申し上げているので、これはぜひ今後検討をいただきたいと思います。
もう一点、実は似ているんですけれども、こっちは違うんですが、四条三項のいわゆる困惑させるケースなんですが、これと、民法の取り消し事由になる強迫との違いについて御説明をいただきたいと思います。
○猪口国務大臣 これは四条三項のところでございます。これは、事業者が消費者を困惑させるような不当な勧誘行為を行ったという場合ですね。
例えば、消費者の自宅に行って、帰ってほしいと言っているのに長時間その勧誘行為を行うなど、非常に消費者が困惑するような、そのような不当な勧誘行為を行ったという要件を満たす場合には、消費者による契約の取り消しの主張が認められ、要件がやはり類型化され、具体的、明確に規定されていますので、この要件に該当するか否かの判断の予測可能性はあります。また、それは容易でございます。
これに対しまして、民法では、これは九十六条一項、強迫について、事業者の強迫行為が要件とされているわけです。どのような行為が強迫行為に該当するかは、契約の種類、個々の事案ごと、やはり多種多様であると考えます。しかも、強迫行為に該当する行為が当該事案の事実関係に照らして、社会通念上やはり予防的と評価される場合に初めて消費者による契約の取り消しの主張が認められるわけであります。
先ほどと同じことなんですけれども、やはりこの民法の強迫規定も一般的、抽象的であるという考え方であり、消費者契約法は具体的、明確に類型化されていますので、どのような行為が民法の強迫に該当するかの判断の予測は、消費者契約法と比べますと非常に複雑困難という違いがございます。
消費者契約法の四条三項につきましては、やはり故意が要件とされていない、これは民法の場合の相手方を畏怖させるというのではなく、困惑させることで足りる、こういう違いがございます。
○枝野委員 先ほどと同じことを聞きますが、この三項の規定されているものというのは、民法上の強迫行為の一部分を類型化したものという理解なんでしょうか。
○猪口国務大臣 今枝野先生のおっしゃったとおりでございます。
○枝野委員 実は、一項や二項も若干同じような問題はあり得るんですけれども、ここが一番典型なんですけれども、少なくとも、ここは、実は強迫に当たらないものも取り消しの対象にしているんじゃないのかな。ここはいいですが、つまり、退去しないことで民法上の強迫には当たらないけれども、だけれどもということで、強迫より一部分広げているのかなというふうに思います。いいです、これは答弁を求めません。
そのことを前提に置いて、こちらは先ほどの一項や二項の話よりもっと深刻だと実は思っていまして、確かに、これは消費者にとってはひどい話です。帰ってくれというのに帰ってくれない、居座られるというのはひどい。だから、こういうケースは差しとめなきゃいけないという話はまさにそのとおりだと思うんですが、しかし、例えば報道されている最近の某金融業者の例などを見ても、実はもっとひどいことがたくさんあるんですね、困惑させる、強迫するという行為は。
つまり、要するに、事実上、殺すぞみたいな話で毎日毎日言われるとか、典型的な三項一号、二号には当たらない、だけれどももっと恐怖を感じるというようなケースが実は与党・政府案では差しとめできない。むしろ、命の危険を感じさせられるような取引は差しとめの対象にならないで、ここだけが差しとめの対象になるという結果に残念ながらなってしまうのではないか、こういうふうに考えるんですけれども、いかがでしょうか。
○猪口国務大臣 やはり、民法の場合は、類型化されているということではなく、抽象的な、一般的な規定であるという法の条項につきます特徴がございます。もちろん、先生が今おっしゃったような場合もあり得ると思いますけれども、九十六条一項の規定は、では、具体的にどういう行為としてそれを特定するのかという部分において、やはり解釈の部分が非常に強く出てくる可能性があります。また、先ほど申し上げましたとおり、社会通念上違法と評価された場合のみ消費者の契約の取り消しの主張が認められるということでございます。
やはり、消費者契約法の方は、きちっと類型化できている、そして、要件が明確であり、具体的であり、事業者にとっても予測可能性があるということにおいて、消費者を守り、また、そのような被害を未然に防止する社会的な効果が十分にあると考えております。しかし、今後の社会情勢の変化や、また被害の実態を常に注意深く見ながら、必要な対応をさらにしていくということではないかと考えております。
○枝野委員 今のお答えだと、今後検討していただきたいと思いますが、この政府案のままいきますと、例えば、三項の一号や二号に該当はしない、だけれども命の恐怖を感じさせるようなひどい勧誘行為を行っているという事業者がいる場合に、命の恐怖を感じさせるような、単なる不退去を超えたような事例について、消費者団体が、そういうのは差しとめだといって裁判を起こしても、負けてしまうということになるんですよ。
出ていかないよというケースであれば差しとめ請求で勝てるんだけれども、さらに、もっと踏み込んで命の恐怖を感じさせるようなことをすると差しとめの請求にならないというアンバランスが出てきてしまうということをぜひ御検討いただいて、早期に対応をしていただいた方が、私は、この法律や政府や裁判所に対する信頼という意味からもいいんじゃないかと申し上げておきたいと思います。
時間がほとんどなくなりました。
法務大臣政務官にも来ていただいているので、ちょっと私もよくわからないところがあるんですが、この法律の十条や十一条のところで、民法一条二項とか公の秩序に関しない規定の適用にとか、いろいろわからないことが書いてあるんです。
これはまとめて、民法一条二項の規定する基本原則に反する法律行為の効力はどうなるのか、それと、民法九十条の、これは無効になるというのは条文上明確ですが、その関係はどうなるのかということで通告をさせていただいているんですが、それをお答えいただけますか。
○三ッ林大臣政務官 お答えいたします。
民法第一条第二項は「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」旨を規定しております。この規定は、個別具体的な事案に応じて適切な効果を導くいわゆる一般条項ですので、この規定に反する場合の効果につきましては、一概に申し上げることは困難であります。一例として申し上げれば、契約当事者の一方に一定の義務を生じさせたり、契約の全部または一部を無効としたりする効果が認められるものと考えております。
次に、民法第九十条についてですが、公序良俗違反の法律行為を無効とする旨を規定している民法第九十条と、信義則について規定しております民法第一条第二項は、いずれも、一般条項として、個別具体的な事案に即して適用の有無が判断されるものであります。したがいまして、公序良俗違反として無効になる範囲と信義則違反として無効になる範囲とは重なり合っていることは確かでありますが、どちらが広いとか狭いとかということを一概にお答えすることは困難であります。
以上です。
○枝野委員 実は、本法八条から十条の規定と、九十条公序良俗違反、無効との関係、今詐欺、強迫についてお話しした話と同じ問題があるということだけ、時間がないので指摘しておいた上で、その上で、実は、十条、十一条というところの関係、一方的に申し上げますので、時間との関係もありますので、御感想があれば最後に言っていただければと思うんです。
まず、十条で、冒頭に、公の秩序に関係しない規定の適用による場合に比し、これで、つまり、民法九十条は公の秩序に関するものですから、民法九十条など以外の場合と比べて、消費者の権利を制限し義務を加重する消費者契約の条項であって、民法一条二項に規定する基本原則に反して、民法一条二項というのは公の秩序に関する規定だと思うんですが、に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効とすると。
公の秩序に関しない規定による場合に比してで、ここで一条二項が出てくる。十一条のところは、「この法律の規定によるほか、民法及び商法の規定による。」ということで、民法九十条が適用されることは肯定をされている。
どうも、何のために十条があって、何のために十一条の一項があるのか、この辺の関係がさっぱりよくわからないんです。恐らく独立して読むとそれぞれ何となく何を言いたいかわかるんですけれども、この法案のことをいろいろ検討しているうちに何かわけがわからなくなってきているんです。
時間でもありますので、ちょっと整理をしていただいた方が今後いいのではないかということを申し上げて、答弁なしでも私の方はいいんですが、よろしいですか。ぜひちょっと整理をしていただいた方がいいのではないか。
特に法務省などと検討して整理をしないと、どこがどこにどうかぶってというのが今の条文は読めば読むほどわからなくなっておりますので、御検討をいただければと思います。
終わります。ありがとうございます。
○佐藤委員長 次に、石井郁子君。
○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
この法案は、適格消費者団体に二重、三重の大変厳しい規律と負担を課しておりまして、私は、この負担が適格消費者団体の活動を萎縮させるのではないかと懸念します。
その点で、認定取り消し規定についてお聞きをいたします。
一昨日の参考人質疑でも、日弁連の佐々木参考人は、本来、消費者団体が活発に使うべき制度が、重い手続になる、消費者団体が萎縮し、制度の性格が変わってしまったという感さえあると述べていらっしゃいました。
まず確認させていただきますが、取り消し事由の一つである三十四条一項四号の前段部分ですね、このようにあります。「当該訴訟等の当事者である適格消費者団体が、事業者等と通謀して請求の放棄又は不特定かつ多数の消費者の利益を害する内容の和解をしたとき、」という規定ですが、事業者と通謀していない場合であっても、結果的に消費者利益を害する和解をすれば認定取り消しの事由になるのでしょうか。
○田口政府参考人 お答え申し上げます。
法案の第三十四条第一項第四号に言います通謀とは、適格団体が請求の放棄または不特定かつ多数の消費者の利益を害する内容の和解をするべく相手方である事業者等と意思を通じ合うことをいいます。
この規定の「事業者等と通謀して請求の放棄又は不特定かつ多数の消費者の利益を害する内容の和解をしたとき、」といいますのは、「不特定かつ多数の消費者の利益に著しく反する訴訟等の追行」という後段の方の取り消し事由の一つの例示でございまして、必ずしも、通謀しているということが適格性認定の取り消しの要件になっているわけではございません。
○石井(郁)委員 だから、通謀をしていなくても適格消費者団体の認定取り消しがあるということなんですね。
では、消費者利益を害するというのは、例えばどういう事態のことを指すのか、少し例示をしてお答えいただければと思います。
○田口政府参考人 ここの規定の中心的な部分は、後段の方の「その他」、ここがバスケットクローズになっておりまして、「不特定かつ多数の消費者の利益に著しく反する訴訟等の追行を行ったと認められるとき。」ここが中心的な規定で、前段で今委員の御指摘になられました部分はその一つの例示ということでございます。そういう意味で、通謀というのが必ずなければいけないという意味ではございませんということでございます。
そういたしますと、この「不特定かつ多数の消費者の利益に著しく反する訴訟等の追行」というのがどういう場合かということになるわけですが、前半で例示されております、事業者等と通謀して請求の放棄または不特定かつ多数の消費者の利益を害する内容の和解をすること、これに類するような場合を想定しておりますが、具体的には、例えば、消費者に明らかに有利で重要な証拠を意図的に改ざんして不利な証拠として提出するというような事例が想定されると考えられます。
〔委員長退席、木村(勉)委員長代理着席〕
○石井(郁)委員 適格消費者団体というのは、大変厳しい要件をクリアして認定されるわけであります。しかも、いろいろ議論にありましたように、差しとめ請求の要件も、第三者の不正利益を図り事業者に損害を与える目的の請求はできないと。だから、厳格に規定されているわけですね。その上で、消費者の利益に反する訴訟ということですから、私は、二重、三重のやはり縛りになっていると言えると思うんですね。
こういう規定は、消費者団体に萎縮をもたらすだけではなくて、制度の機動的で効果的な運用も欠くことになるのではないか、消費者団体は、認定取り消しが怖くて、和解、調停、即決和解等の話し合いに極めて消極的になりはしないかというふうに思われるわけです。また事業者も、裁判所等が関与した解決でないと再訴されるおそれがあるために、消費者団体との話し合いに応じないようになるおそれも出てきます。
こうして見ますと、これでは双方に負担ばかりがかかる、制度の実効性が危ぶまれるわけであります。国生審報告でも、事業者と消費者団体の交渉の充実ということが提言されておりますけれども、そういう趣旨からしても、事業者にとっても消費者団体にとっても、交渉がやりやすくなる、そういう方向での設計が必要ではないのかと思いますが、いかがでしょう。
○田口政府参考人 お答え申し上げます。
この規定により適格消費者団体が和解をしづらくなるのではないかという御質問でございますが、この法律における差しとめ請求権は、消費者全体の利益を擁護するために適格団体に特別に付与されるものでございますが、それにもかかわらず、消費者全体の利益に著しく反する形で差しとめ請求権を行使する適格団体というのは、差しとめ請求権を引き続き行使するにふさわしいものではないと言えることから、その適格性の認定を取り消すことができるとしているものでございます。
また、この第三十四条第一項第四号の認定の取り消しの対象となりますのは、例示しております、事業者等と通謀して不特定かつ多数の消費者の利益を害する内容の和解をしたときというような、消費者全体の利益に反する度合いが著しく高い例外的な場合に限られておりまして、通常の真摯な折衝を経た和解であれば、これに該当するおそれはないものと考えられます。
特に、ある適格団体が和解をしようとする際には、当該適格団体が他のすべての適格団体に対しまして和解の方針を事前に通知することによりまして、適格団体同士がその和解の方針の適否等について意見交換をする機会が確保されております。また、他の適格団体の意見に真摯に対応するなど、相互チェックの過程を適切に経た和解である限り、消費者全体の利益に著しく反する訴訟追行というように評価されるおそれは通常ないものと考えられるところでございまして、一般に、適格団体が認定取り消しを恐れて和解をしづらくなるという心配には及ばないのではないかというふうに考えております。
○石井(郁)委員 どうもいろいろ御丁寧にありがとうございます。
でも、やはりその中に、消費者全体の利益に反することを行う場合ということがずっとあるんですけれども、そもそも消費者の利益のために団体訴権を行使するというこの団体が何で消費者全体の利益に反することをするのかということが、一つは何か私は矛盾しているんじゃないかと思うわけですね。
そもそも、裁判所が関与して行った和解や判決の内容、また経過の妥当性について、今度は内閣総理大臣、具体的には内閣府ということでしょうけれども、そういう行政機関がその結果の妥当性を判断するということも出てきておりますので、非常にこれは困難で問題があるというふうに思うんですね。
いずれにしても、認定取り消しということですから、やはりこれは適格消費者団体の資格を剥奪するという重大な行政処分だというふうに思うわけでございます。この点ではぜひ大臣に御答弁をお願いしたいと思いますけれども、こういう行政処分ということにつきまして、慎重かつ抑制的に運用する必要があるのではないかと思いますが、御答弁ください。
○猪口国務大臣 先生がおっしゃるとおり、認定取り消しというのは非常に重いことでございます。ですから、これは極めて悪質な場合に限定されると考えてまいりたいと思っております。また、先生の本日の御指摘も踏まえまして、できるだけ認定の取り消しについては、これから運用の基準を明確化することを考えております。
まさに、適格団体が萎縮して本来の活動が損なわれるような懸念がないよう、環境整備に私としては努めてまいります。
○石井(郁)委員 ぜひ、やはりそのような方向で進めていただきたいというふうに思います。運用の基準も示されるということでしたね。それをお願いしたいと思います。
先ほどの御答弁に少しありましたけれども、適格消費者団体の事前通知制ということについても少し伺っておきたいと思います。
確認もしたいと思うんですけれども、後訴の原則禁止を回避するための制度として、適格消費者団体が和解等する場合に、他の適格消費者団体に事前の通知制度、これは二十三条四項十号ということで設けられているわけですけれども、しかし、その和解の内容というのは、期日によって違うことはあるし、代理人間の交渉等で刻々変わるんじゃないかということですね。だから、どの段階、どのところでこれを通知するのかという問題が出てくると思いますし、具体的にどの程度の内容を通知しなければならないのかということがわかりましたら、よろしくお願いします。
○田口政府参考人 お答え申し上げます。
この事前請求の規定でございますが、この法案では、相手方の事業者に対しまして、不当な行為があれば、まず、みずから是正するための機会を与えまして、紛争の早期解決と取引の適正化を図るという観点から、適格消費者団体に対しまして、書面による事前請求を義務づけているところでございます。この趣旨から、事前請求の書面に記載する内容を考えていくということで、どの程度の具体的なこと、通知を要することになるかということにつきましては、今後その細則を詰めまして、内閣府令で定めてまいりたいというふうに考えております。
○石井(郁)委員 では、これも今の段階ではまだはっきりお示しされないということで、ちょっと不安が残るわけですね。
例えば、他の適格消費者団体から事前に通知を受けても、和解を中止せよという権限は他の適格者団体にはないわけですよね。どうでしょうか、そういう場合、それが普通ではないのかと。通知を受けたとしても、その和解を中止せよという権限は持つんでしょうか。他の適格者団体が、それはやめてほしいというようなことにはならないんじゃないかと思うんです。
○田口政府参考人 お答え申し上げます。
他の適格団体への通知でございますが、これは、適格団体相互間で連携をいたしまして、それによってその事案に対して最も効果的に対応していく、そういう観点から、通知を受けました適格団体としては、必要な情報を提供するとか、その通知をいたしました適格団体の行動について不安があれば意見を述べて、適切な訴訟追行をやっていただくということになるかと考えます。
それで、通知を受けて意見を述べるときに、それが原告になっている適格団体の意思と反するというようなことがなきにしもあらずということかと思いますが、もしそういうことについて御懸念があるということであれば、それは、その通知を受けた適格団体としては、その同じ裁判所に対して同じ事案について差しとめ請求をするということをしていただきますと、両案が併合しなければならない、必要的併合ということになってまいります。その中で、いわば原告となる適格団体が共同で訴訟を起こすということになりますので、そういう形で、後の方から加わった適格団体の訴訟行為が、いわば当事者としての影響力を持ち得るということになろうかと考えております。
○石井(郁)委員 どうも、かなりいろいろと適格団体自身の連携というか協議というようなこともこの中では進められていくだろうと予測されているということもわかりましたけれども、なかなか難しい問題があるなということも、今お聞きして感じておりました。
私は、適格者団体が自主的にやはり判断するという、それぞれが団体自治権の問題というのもあるんじゃないかというふうにも思いまして、そういうことで、そこに関与する設計という点で、今お話しのあったように、いろいろと制度的にもなかなか硬直的になりはしないかということをちょっと感じたものですから、質問しているわけでございます。
それから、後訴遮断を含めてさまざまな不都合が出てきはしないかと、現に起きるだろうということで消費者団体からは強い反対意見がこの点でも出ておりまして、私は、こうした制度を設けること自体が極めて不合理で、制度の実効性を欠くのじゃないかということで質問をさせていただきまして、また、指摘もさせていただきます。
ちょっと時間がありますので、最後に、お話がありました適格消費者団体への環境整備の問題なんですけれども、一つ伺っておこうと思います。
適格消費者団体に提供される情報というのが、四十条一項、消費生活相談に関する情報で内閣府令で定めるものということになっておりますけれども、これも、具体的にはどういうようなものを指すのですか。
○田口政府参考人 お答え申し上げます。
この法案の第四十条第一項に規定しております消費生活相談情報といいますのは、国民生活センターで運営されておりますいわゆるPIO―NETによって収集された情報を想定しているところでございます。
このPIO―NET情報につきましては、差しとめ請求権の対象となっております事案に関して、同じような被害の広がりぐあいを分析、検討する上で大変有益でございます一方、被害を受けた個人が識別できない形で情報がオンライン化されておりまして、また、裁判所の調査嘱託でありますとか弁護士会照会等、法令に基づく照会への対応として情報提供のルールが既に確立しております。こうした点を踏まえまして、消費者団体訴訟制度におきましても、このPIO―NET情報の提供規定を整備したというところでございます。
○石井(郁)委員 今、いろいろお話しいただきました。私は、やはりそれだけでは紛争の具体的な状況がわからない、大変不十分じゃないかというふうに思っております。だから、もっと具体的に、消費生活センター等の約款の内容、具体的な勧誘事例等の情報、資料等々が提供されるべきではないかということを申し上げまして、きょうは大体時間でございますので、質問を終わりたいと思います。
どうもありがとうございました。
○木村(勉)委員長代理 次に、糸川正晃君。
○糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。
今回の消費者契約法改正により、一定の消費者団体が消費者全体のために事業者の行為を差しとめることができるようにする消費者団体訴訟制度を導入するということは大変重要なことであるというふうに考えます。
一昨日の参考人質疑におきましても、制度を早期に導入すべきだということについて、消費者団体や事業者、法曹界ともに一致している、これは実感をしたところでございます。
きょうは、それらも踏まえまして、改めて政府案の基本的な考え方を確認させていただきたいと思います。
まず、猪口大臣にお尋ねいたしますが、そもそも、今回、消費者団体を担い手として団体訴訟制度を導入する意義というものをお聞かせいただけますでしょうか。
〔木村(勉)委員長代理退席、委員長着席〕
○猪口国務大臣 糸川先生にお答え申し上げます。
消費者は事業者と比べて情報力や交渉力においてやはり差異があると考えまして、消費者団体が個々の消費者にかわって事業者の行為を監視するなど、消費者の視点に立った市場の監督者としての役割を担うことが重要になってきております。
ですから、消費者基本法においても、消費者の被害の防止及び救済のための活動が消費者団体の役割として盛り込まれているところでございます。また、消費者団体として組織化されることにより、個々の消費者の側の力量不足が補われまして、訴訟の追行能力も期待できるところでございます。
これらの点を踏まえまして、今回の制度化に当たっては、一定の要件を満たす適格消費者団体に差しとめ請求権を付与するとしたところでございます。
これにより、適格消費者団体が、いわば消費者に近い立場で、被害情報を適時適切に把握の上、差しとめ請求を行い、その結果も広く消費者に周知、公表されることが期待されるところでございまして、消費者の被害の未然防止また拡大防止につながるものと考えております。
○糸川委員 ただ一方で、一昨日の参考人の質問の中でも、今回の制度の濫訴ですとか濫用の懸念という言葉が何度か聞かれました。
そこで、制度の濫用ですとか悪用の懸念に対しまして、本法案ではどのような措置を講じていらっしゃるのか、お聞かせいただけますでしょうか。
○田口政府参考人 お答え申し上げます。
差しとめ請求権は、消費者全体の利益擁護のために適切に行使される必要がございまして、このため、制度の濫用、悪用がないような仕組みとしているところでございます。
具体的には、幾つかの点を盛り込んでございますが、一つには、内閣総理大臣が認定し監督する適格消費者団体のみに差しとめ請求権を認めるということ、二つ目に、徹底した情報公開によりまして適格団体の活動を国民に対しガラス張りにするということ、三つ目には、学識経験を有する第三者が適格団体の業務状況をチェックするという仕組みを盛り込んでいるということ、それから四つ目に、適格消費者団体は差しとめ請求権を濫用してはならないというような行為規範を法文に明記いたしまして、その違反は認定取り消し等の行政処分の対象とするということなどの措置でございます。
○糸川委員 ただ、過度に厳しい制約を課しているというような声も聞かれておりましたので、この点についてもお聞きしたいんですが、適格消費者団体の要件が厳しいんじゃないか、こういう声もございますので、まずこの一点は御見解をお聞かせいただきたい。
それから、今の答弁の中でも、内閣総理大臣による認定制をとるということでございましたので、内閣総理大臣による認定制をとることとした理由というものもあわせてお答えいただけますでしょうか。
○田口政府参考人 適格消費者団体につきましては、消費者全体の利益擁護の役割を担うにふさわしい実質を備えている必要がございまして、こういう観点から適格消費者団体の要件を定めているところでございます。こういう、実質を備えている団体かどうかを判断するということが必要なことから、内閣総理大臣による認定の仕組みを導入したということでございます。
現在、既に十程度の団体が適格消費者団体になることを目指して準備を進めていると聞いておりまして、今後、この法案が成立し、制度の内容でありますとか施行日が確定いたしますれば、適格団体を目指す動きがより一層広まっていくものと考えております。
○糸川委員 今、総理の認定制をとると。認定制をとるということにしても、認定基準というものを明確にする、それで手続の透明性を確保するということが重要なのかな、行政の裁量を極力少なくする、こういうことが必要ではないのかなと思いますが、政府の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。
○田口政府参考人 この法案におきましては、適格要件をできる限り詳細に法文上明記いたしますとともに、認定事務の実施に当たりましては、申請内容を国民に公告縦覧するといったような透明性の高い手続をとることとしております。
また、認定や監督あるいは認定取り消し等につきましては、具体的な審査あるいは処分の基準を定めて公表いたしますとともに、不認定とするなどの場合におきましては申請者に対して理由を示すというような、行政手続法にのっとりまして適切な対応を行っていくということにいたしております。
○糸川委員 ただ、適格消費者団体は、その活動の趣旨にかんがみますと、消費者から広く信頼されて支持される存在である、それでこそ、この新しい消費者団体訴訟制度というものが国に定着するものなのかなと考えます。そのためには、適格消費者団体みずからが、消費者に対して、団体に関する情報というものを積極的に公開しなくてはいけない。
本法案では、適格団体にどのような情報公開の措置というものを求めているのか、お聞かせいただけますでしょうか。
○田口政府参考人 適格消費者団体の業務の適正な運営を確保し、制度の信頼性を維持するためには、適格団体みずからが、差しとめ請求権の行使の状況でありますとか収支の状況、こういったものについて詳細を広く国民一般に対して情報公開を行うということが重要だと考えております。
このため、適格団体に関しましては、制度上、情報公開措置を徹底することといたしておりまして、一つには、適格団体の事務所には、定款、役職員等の名簿、財務諸表、事業報告書、寄附金明細などの所定の書類を備え置かなければならないということにいたしております。また、利害関係者だけではなくて、何人も、それらの書類について閲覧できるという規定を置いてございます。
二つ目に、学識経験を有する第三者から適格団体の業務状況の調査を受けまして、調査報告書を公開しなければならないという措置を盛り込んでおります。
さらに、三つ目といたしまして、判決内容等に関しまして、消費者に対する情報提供に努めなければならないということにいたしております。
こういう措置を通じて、情報公開を徹底するということにいたしております。
○糸川委員 消費者団体による情報公開だけではなくて、行政も本制度に関する情報を積極的に周知していただければなと思います。
次に、消費者トラブルは、その対象も形態も非常に多様でございます。消費者契約法では、あらゆる業種に分野横断的に関係するルールでございますが、消費者トラブルに政府全体で取り組んでいくためには、こういった団体訴訟制度自体をほかの消費者関連法に取り入れていく、こういうことも有益ではないかなと考えます。
消費者団体等からは、しばしば、独禁法ですとか景表法あるいは特定商取引法に団体訴訟制度を導入すべきだという声も聞かれます。昨年の四月の消費者基本計画では、独占禁止法ですとか景品表示法への団体訴権の導入について検討するということが盛り込まれておりますが、この検討状況につきまして公正取引委員会からお聞きしたいと思います。
○舟橋政府参考人 お答え申し上げます。
独禁法や景品表示法に団体訴権の導入をするということにつきましては、今委員御指摘のとおり、消費者基本計画にもうたわれておりますし、それから、昨年の春でございましたけれども、独禁法の改正のときの附帯決議にも書かれております。
そういったことを踏まえまして、不公正な取引方法に対する差しとめ請求、これをより効果的に行い得るようにするという観点から、私ども検討を進めてきておるところでございまして、これまでのところ、内閣府におけるそういう検討状況、これも勉強させていただいておりますし、それから団体訴権について知見のある法律学者などからのヒアリングも行っておりますし、この三月でございますけれども、海外に職員を派遣しまして、そういう団体訴権を実際に運用している、これはイギリスとドイツとフランス、それぞれ少しずつ違いがございまして、非常に参考になるわけでございますけれども、そういった調査も実施してきておるところでございます。
今後とも、こういった実態の把握や論点の整理を進めていきまして、十分な検討を行って、消費者基本計画にございますように、平成十九年までに結論を得たい、そういうふうに考えております。
○糸川委員 では、あわせまして、特定商取引法にも消費者団体訴訟制度を導入すべき、このような要望を聞いておりますが、この導入についての考え方というものも経済産業省から説明をお聞きしたいと思います。
○谷政府参考人 私どもといたしましても、悪質な事業者を市場から排除しまして、消費者の利益を保護するとともに、公正な取引の発展を促進するということは大変重要なことだと考えております。
この観点から、特定商取引法は十六年に改正されまして、その中で、行政規制が強化されますとともに、契約の取り消しあるいはクーリングオフなどに関する民事ルールが強化、整備されたところでございます。
私ども、今、この整備されたルールを全力で執行し、周知徹底をしているところでございまして、当面この改正された法律の成果を見きわめていくことが重要だと思っております。
例えば、行政規制については、行政処分などの法執行を大幅に強化しております。数も大変ふえております。また、民事ルールにつきましては、これを多くの方に知っていただくということが重要だと思っておりまして、普及、活用促進のための啓発に取り組んでおります。
今後とも、この成果を見きわめつつ、消費者トラブルの実態を踏まえまして、必要に応じて特定商取引法を見直していく所存でございまして、団体訴権の導入についても必要に応じて検討してまいりたいと考えております。
○糸川委員 今、検討という言葉がたくさんございました。消費者トラブルというのは、先ほどから申しますように、対象ですとか形態というものが本当に多種多様でございますので、あらゆるルールにすべて適合するということではないかもしれませんけれども、なるべく消費者トラブルに対しまして政府全体として取り組んでいただければなというふうに思います。
今般、消費者契約法というものを改正して、消費者団体訴訟制度を導入して、これを円滑に施行されていく。例えば、今御答弁いただきましたように、景品表示法ですとか、消費生活に密接に関連するほかの法律にとっても、これは大変よい先例となるんではないかなというふうに考えます。
そのためには、今般の消費者契約法改正法というものが円滑に導入、施行されること、これは重要だと考えております。円滑な導入、施行に当たりまして、どのような環境整備というものを進めていくお考えなのか、お聞かせいただけますでしょうか。
○田口政府参考人 お答え申し上げます。
適格消費者団体の自主的な取り組みを基本としつつ、行政といたしましても、適格団体が業務を円滑に実施できるよう、環境整備を図っていくことといたしております。このため、制度の意義や適格団体の活動につきまして国民の理解が深まりますよう、制度全般の周知、広報に努めてまいりたいと考えております。
このことによりまして、適格団体が社会から広く認知されるようになれば、寄附金でありますとか会費収入を確保しやすい環境、あるいは消費者から被害情報が円滑に集まる環境につながっていくものと考えられます。
また、適格団体が請求権を行使するに当たりましては、広く消費者から被害情報を収集したり、訴訟結果の周知を図るということが大変重要ではないかというふうに考えます。
このため、行政といたしましては、国民生活センターや地方の消費生活センターの有する消費生活相談情報の提供でありますとか、差しとめ訴訟の結果得られました判決内容の公表、周知などを通じまして、適格団体の情報面での負担軽減を図ってまいりたいと考えております。
○糸川委員 それでは、もうほとんど時間がございません。最後に大臣にお尋ねいたします。
私は最後の質問者でございますので、その辺も踏まえまして、我が国にこの新しい制度を導入するに当たって、大臣の所信というものをしっかりとお聞かせいただきたいなというふうに思います。
○猪口国務大臣 糸川先生にお答え申し上げます。
消費者団体訴訟制度の導入は、消費者被害の発生や拡大を防止し、国民生活の安心、安定の確保を図ることを目的とするものでございます。また、直接の被害者でない第三者たる消費者団体に差しとめ請求権を政策的に付与するという点におきまして画期的なものでございます。
政府といたしましては、本制度が社会に円滑に定着し、この法律の目的が着実に実現していくよう努力してまいります。
○糸川委員 今回の制度は非常にいいものであるというふうに考えますが、一部の、例えば大きな会社だから、ここはこういう団体訴訟をしてやろうじゃないかという形、では今度は小さいところだから、ここは戦ったとしても、いい結果が生まれたとしても、そんなに自分たち適格団体の広報活動というんでしょうかアピールにならないからやらないとか、この団体だからここをやる、ここだからやらないとか、そういうことのないように、しっかりとこれは政府として見ていただいて、本当に公正で、万人にとってこれはいいものであるというふうなことが周知されるように、しっかりと取り組んでいただければなというふうに思います。
終わります。ありがとうございました。
○佐藤委員長 ただいま議題となっております両案中、内閣提出、消費者契約法の一部を改正する法律案に対する質疑はこれにて終局いたしました。
―――――――――――――
○佐藤委員長 この際、本案に対し、山本拓君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党提案による修正案が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。大島敦君。
―――――――――――――
消費者契約法の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○大島(敦)委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党を代表いたしまして、その提案理由を御説明いたします。
本法律案では、管轄裁判所として、事業者等の普通裁判籍と営業所等の所在地を管轄する裁判所を認めることとしておりますが、修正案においては、消費者契約法に規定する不当な行為があった地を管轄する裁判所も管轄裁判所として認めることとしております。
本修正により、事業者等の行為の拠点であった営業所等が移転した場合などについても、消費者契約法に規定する不当な行為があった地を管轄する裁判所も管轄裁判所として認められることになり、制度の実効性がより確保されるものと考えております。
以上が修正案の趣旨及び内容であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○佐藤委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○佐藤委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
内閣提出、消費者契約法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
まず、山本拓君外二名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○佐藤委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○佐藤委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○佐藤委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、林田彪君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び国民新党・日本・無所属の会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。泉健太君。
○泉委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明いたします。
その趣旨は案文に尽きておりますので、案文を朗読いたします。
消費者契約法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法施行にあたり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一 国及び地方公共団体は、適格消費者団体の活動資金が円滑に確保されるよう、環境整備に努めること。また、その情報面における支援措置についても万全を期すること。
二 中小企業をはじめとする事業者が予想外の応訴負担を不当に負わされることのないよう、また、いやしくも制度が濫用・悪用されることのないよう、内閣総理大臣は適格消費者団体の認定及び監督を適切に行うこと。
三 消費者被害の救済の実効性を確保するため、適格消費者団体が損害賠償等を請求する制度について、司法アクセスの改善手法の展開を踏まえつつ、その必要性等を検討すること。また、特定商取引法、独占禁止法、景品表示法等の消費者関連諸法についても、消費者団体訴訟制度の導入について検討を進めること。
四 適格消費者団体の認定にあたっては、認定の基準を明確にするなど、その透明性確保に遺漏なきを期するとともに、より多くの団体が適格消費者団体の認定を受けられるよう配慮すること。また、その認定、監督等を行うに際して、適格消費者団体の自主的活動を過度に制約することのないよう留意すること。
五 消費者契約法に規定する不当な行為のみならず、詐欺・強迫行為を伴う勧誘行為や、民法の公序良俗に違反する条項を含む消費者契約の意思表示、さらには不当な契約条項を含む消費者契約の意思表示を行うことを推薦し提案する行為(いわゆる推奨行為)についても消費者被害の発生の防止に万全を尽くすとともに、本法の施行状況を踏まえつつ、差止請求権の対象範囲のあり方についても引き続き検討すること。
六 本法に基づく内閣府令、ガイドライン等の運用基準の策定にあたっては、国民生活審議会への適宜の報告を行うとともに、広く消費者の意見を聴き、その反映に努めること。
七 本法の運用にあたっては、本委員会における審議において明らかにされた解釈基準等について、消費者、事業者、地方公共団体の消費者行政担当者等をはじめとした関係者に対し十分周知徹底を行うこと。
八 本法の施行状況等については、その点検評価に努め、消費者被害の発生・拡大防止のため、消費者対策に万全を期するとともに、地方公共団体に対しても所要の措置をとるよう要請すること。また、本法施行後五年を目途として、運用状況の総合的な評価を行い、本法の見直しを行うこと。その場合において、法令、運用改正等の所要の措置を行う際には、国民生活審議会への適宜の報告を行うとともに、広く消費者の意見を聴き、その反映に努めること。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○佐藤委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。猪口国務大臣。
○猪口国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重して、適切な措置の実施に努めてまいります。
―――――――――――――
○佐藤委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――
○佐藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時四十七分散会