第9号 平成18年5月19日(金曜日)
平成十八年五月十九日(金曜日)午前九時一分開議
出席委員
委員長 佐藤 剛男君
理事 木村 勉君 理事 戸井田とおる君
理事 西村 康稔君 理事 林田 彪君
理事 山本 拓君 理事 泉 健太君
理事 大島 敦君 理事 田端 正広君
赤澤 亮正君 遠藤 宣彦君
小野 次郎君 小渕 優子君
大野 松茂君 木原 誠二君
後藤田正純君 土屋 品子君
土井 亨君 中森ふくよ君
平井たくや君 村上誠一郎君
村田 吉隆君 市村浩一郎君
川内 博史君 小宮山洋子君
鉢呂 吉雄君 鷲尾英一郎君
太田 昭宏君 吉井 英勝君
糸川 正晃君
…………………………………
内閣府大臣政務官 後藤田正純君
内閣府大臣政務官 平井たくや君
参考人
(独立行政法人国民生活センター審議役) 島野 康君
内閣委員会専門員 堤 貞雄君
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委員の異動
五月十八日
辞任 補欠選任
大畠 章宏君 鷲尾英一郎君
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五月十八日
遺失物法案(内閣提出第五五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
警察に関する件
探偵業の業務の適正化に関する法律案起草の件
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○佐藤委員長 これより会議を開きます。
警察に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人国民生活センター審議役島野康君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○佐藤委員長 探偵業の業務の適正化に関する法律案起草の件について議事を進めます。
本件につきましては、山本拓君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び国民新党・日本・無所属の会の四派共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおりの探偵業の業務の適正化に関する法律案の草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。山本拓君。
○山本(拓)委員 探偵業の業務の適正化に関する法律案の起草案につきまして、提案者を代表して、提案の趣旨及び内容について御説明申し上げます。
まず、本起草案の趣旨について御説明申し上げます。
探偵業は、個人情報に密接にかかわる業務でありますが、現在、業としては、何らの法的規制もなされておりません。近年、業者の数が急激に増加いたしておりますが、それとともに、料金トラブル等契約に関する苦情、調査対象者の秘密を利用した恐喝事件、違法な手段による調査等も急増いたしております。
このような状況にかんがみ、探偵業について必要な規制を定め、その業務の運営の適正を図り、もって個人の権利利益の保護に資することとするため、本起草案を提案することといたした次第であります。
次に、本起草案の主な内容について御説明いたします。
第一に、この法律において、探偵業務とは、他人の依頼を受けて、特定人の所在または行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞き込み、尾行、張り込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいうことといたしております。また、探偵業とは、探偵業務を行う営業をいうこととし、専ら、報道機関の依頼を受けて、その報道の用に供する目的で行われるものを除いております。
第二に、探偵業を営もうとする者について、営業所ごとに、都道府県公安委員会に届け出を行わなければならないこととするとともに、成年被後見人、暴力団員、営業停止命令に違反した者等一定の事由に該当する者について、探偵業を営むことを禁止しております。
第三に、探偵業務の実施の原則として、この法律により他の法令において禁止または制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならないことを明確にいたしております。このほか、探偵業務の実施の適正を確保するため、重要事項の説明等契約における義務、探偵業務の実施に関する規制、秘密の保持等について定めております。
第四に、都道府県公安委員会は、探偵業者に対し、報告の徴収、立入検査、指示、営業停止命令、営業廃止命令を行うことができることといたしております。
その他、罰則、検討条項など、所要の規定を設けることといたしております。
なお、この法律の施行日は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日としております。
以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。
何とぞ速やかに御賛同いただきますようお願いをいたします。
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探偵業の業務の適正化に関する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
本件について発言を求められておりますので、順次これを許します。大島敦君。
○大島(敦)委員 民主党の大島です。
何点か、今回の法案の提案者に対して伺いたいことがございます。
まず、このたび探偵業法案を提出することとなった経緯はどのようなものか、御説明ください。
○田端委員 この法案で言うところの探偵業者というのは、いわゆる調査業者のうち、他人の依頼を受けて、特定人の所在調査、行動調査等を行うことを業として営むところの者を探偵業者と言っているわけでございます。
かかる探偵業者については、個人情報に密接にかかわる職種であり、また近年、業者数の増加に伴い、料金等に関するトラブル、また調査対象者の秘密を利用した恐喝等の犯罪が急増しているにもかかわらず、現在、何らの法的規制もなされていない状況にあるわけでございます。
本法案は、このような状況にかんがみ、平成十七年四月の個人情報保護法の完全施行を契機として、届け出制を設けて、その業態の把握に努めるとともに、暴力団員等の不適格者を探偵業者から排除するための欠格事由、違法目的調査の禁止、守秘義務、契約に係る重要事項の説明、監督、罰則等、所要の規定を設け、この業務の運営を適正に図り、もって個人の権利利益の保護に資することを目的とした法律でございます。
○大島(敦)委員 現在、政府が把握している探偵業者の実態はどのようなものか、探偵業をめぐる問題事例としては具体的にどのようなものがあるのか、御説明ください。
○島野参考人 全体で何社あるか、その辺は十分把握できません。
というのは、社団法人日本調査業協会とか、そういったところがあると思いますけれども、今、提案者の方々がおっしゃったように、やや暴力団的なところもあるだろうし、いろいろなところがあるわけであります。ということで、その辺はきちんと把握はできていません。
ただ、件数でございます。国民生活センターのPIO―NETというものがあるんですが、全国の消費生活センターから寄せられた探偵業とかあるいは興信所のようなものにかかわる苦情でございますが、その苦情は年々ふえております。十三年度は九百七十四件、十四年度は千三百件というふうにふえておりまして、十六年度は千六百件を超えて、十七年度も同じような数字でございます。
ただ、この数字は、ややセンシティブな問題でもありますし、申し出が全部されるわけではありません。ですから、消費生活センターというのは四・六%とか五・三%の申し出なものですから、その裏には相当な数のトラブルがあるのではないかというふうに思料いたします。
○大島(敦)委員 ありがとうございます。
提案者に対して質問をいたします。
この法案は、業界振興のための法律なのか、それとも消費者保護または人権擁護の観点からの法律と認識すべきか、お答えください。
○田端委員 法律の第一条に目的が示されているとおりでございますが、この法律案は、探偵業の業務の運営の状況等にかんがみ、届け出制を設けて、その業態の把握に努めるということと同時に、暴力団員等の不適格者を探偵業者から排除するための欠格事由、違法目的調査の禁止、守秘義務、契約に係る重要事項の説明、監督、処罰等、所要の規定を設けてその業務の運営の適正を図り、もって個人の権利利益の保護に資することを目的とするものであり、業界の振興を目的とするものではございません。
提案者としては、本法の成立により、調査の依頼者、調査対象者の権利利益の保護に一定程度資するものと認識しているところでございます。
○大島(敦)委員 探偵業は個人情報に深くかかわるものであり、問題もあると思われるが、このような法律をつくることは探偵業にお墨つきを与えることになるのではないか。
○田端委員 この法律は、近年、探偵業者が増加するに伴って、探偵業に係るトラブル等が急増していることを踏まえ、現在、何らの法的規制もなされていないために、警察当局においてもその実態が十分把握できていない探偵業について、まず、その実態の把握に努めるべき届け出制を設けるとともに、必要な規制を行うものであり、探偵業者にお墨つきを与えるということを目的としているわけではございません。
また、探偵業者が法令を遵守し、探偵業があくまでも法令の範囲内で行われなくてはならないことは当然であり、この法律は、探偵業者が不法侵入や盗聴等、法令で禁止されている行為を行ったり、個人のプライバシー等の権利利益を侵害することを何ら正当化するものではありません。
このことはもとより当然のことでありますが、本法案は、この点についての誤解を防止するため、念には念を入れて、第六条で、「探偵業者及び探偵業者の業務に従事する者は、探偵業務を行うに当たっては、この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。」と規定しているわけでございまして、その趣旨を明確にしているところであります。
○大島(敦)委員 実地の調査の方法について、「その他これらに類する方法」とあるが、具体的にどのような方法が含まれるのか。
○泉委員 本法案については、これまで何の法的な規制も設けられていなかったということでありますけれども、実地調査の方法について、例えば聞き込み、尾行、張り込みということを我々は法案の中に書き込ませていただきましたけれども、「これらに類する方法」というのは、本来違法性の強い行為なものですから、具体的には明記をしなかったんですが、例えば盗撮であったり、あるいは盗聴であったり、あるいは壁越しに隣室の様子をのぞくというような行為については、やはりこれは面接による聞き込み、尾行、張り込みと同様また同程度に個人の権利利益を侵害する危険性が特に高いというふうに考えております。
○大島(敦)委員 探偵業法における報道関係者の扱いはどのようになっているか。
○泉委員 大変重要な観点なわけなんですけれども、そもそも、この法案は報道関係者に対して探偵業者として規制をすることを私たちは意図しているものではありません。
というのは、この法案は、まず一つ、「他人の依頼を受けて、」ということがありますし、そして「特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として」実地の調査を行い、そしてその結果を当該依頼者に報告する業務を探偵業務として定義をしているというふうに、かなりいろいろと限定をつけております。
そういった意味では、報道関係者の報道活動においては、特定人の所在または行動についての情報を収集することを目的として、聞き込み等の手段により実地の調査を行うことが考えられますけれども、みずからの報道活動のために行う調査は、そもそも他人の依頼を受けて行うものではないということで、探偵業務には該当いたしません。
そして、フリーのジャーナリストにおいては、依頼を受けて調査を行うことも確かに考えられます。その場合も、調査した事実について情報を取捨選択して、そしてまた分析を加えるなどして記事やレポートの形に変えて提出をするという場合については、これは特定人の所在または行動についての情報の収集について依頼を受けているものではなく、また依頼に係る調査の結果を報告しているというものではないということで、これも探偵業務に該当しないという考え方を持っております。
ただ、やはり境界線が非常に難しくて、いわゆる自称何々という形で、本来やっていることと自称何々という業務が違うケースというのは当然出てくると思います。そういった意味では、フリージャーナリスト等の報道関係者の中で、その業務がどうしても探偵業務と同一視されるものも中にはあると思いますけれども、そういったものについても、やはりこれら報道関係者を探偵業として本法の規制のもとに置くのは我々は適当でないというふうに考えております。
そこで、この法案では、探偵業務を業として行う場合であっても、専ら、報道機関の依頼を受けて、その報道の用に供する目的で行われるものについては探偵業から除外をするというふうにしております。
○大島(敦)委員 その他の報道機関には、書籍、雑誌などを中心とする出版社は含まれるのか。また、インターネットや携帯電話などのウエブメディアはどうか。
○泉委員 今の時代、大変多様なメディアが誕生しております。
やはり、そういったものを我々は規制するという意図を持っておらないということは先ほどもお話をしましたけれども、その意味では、インターネットや携帯電話などのウエブメディアというものも報道機関に含まれるというふうに考えておりますし、出版ということについても、我々も非常に検討を重ねてまいりましたけれども、出版というものの場合には、いわゆる雑誌、写真週刊誌というものもあれば、一方で、教科書を出版する、あるいは絵本を出版するという会社の出版会社もございます。
そういった意味では、かなり幅が広いということでありますので、すべてを含む形での表現というのはなかなか難しいということで出版という言葉は入っておりませんけれども、しかし、これは、報道を行っている出版社ということについては、我々は当然報道機関に含まれるというふうに解釈をしております。
○大島(敦)委員 ウエブメディアについてはいかがでしょうか。再度お願いをいたします。
○泉委員 最初に、ちょっと順番を先に持ってきて話をしたんですが、ウエブメディア等についても、これは報道機関というふうに解釈しております。
○大島(敦)委員 除外規定の中に出版社が挙げられていないのはなぜか。
○泉委員 先ほども少しお話をしたんですが、個人情報保護法の議論の中でも、やはりそういった出版社を含むべきかどうかという論点がありました。
ただ、やはり、先ほども申しましたけれども、出版そのものは、多様な出版会社がありまして、形態がありまして、これは報道に限らない分野も含んでおります。その意味では、報道機関の典型例としては例示しなかったわけですけれども、およそその出版社が報道機関に該当しないというものではありません。
ですから、この個人情報保護法の第五十条の適用除外規定においても、同様の趣旨から、出版社は報道機関として例示はしていませんけれども、この出版社が報道機関に該当する場合は、専らその出版社の依頼を受けて、その報道の用に供する目的で行われるものについては探偵業から除外をされるということになります。
○大島(敦)委員 個人のフリーランスジャーナリスト、フリーランスライター、ビデオジャーナリストなどを報道機関と表現するのは日本語として無理があるとの意見もあろうが、いかがか。
○山本(拓)委員 本法案においては、第二条第二項ただし書きにおいて、報道機関には報道を業として行う個人を含む旨を明確に規定いたしております。なお、この点において、個人情報保護法においても同様に規定されていると承知いたしておりますので、無理があるということではございません。
○大島(敦)委員 個人のフリーランスジャーナリスト等の依頼を受けたもの、さらにその本人みずからの意思で行う取材活動がこの法律によって規制されたり縛られたりすることはないのか。
○山本(拓)委員 専ら、フリーランスジャーナリスト等の依頼を受けて、その報道の用に供する目的で行われるものについては、第二条第二項ただし書きにおいて探偵業から除外をいたしております。また、みずからの意思により行う活動においても、第二条第一項において他人の依頼を受けて行うものを探偵業務ということにいたしておりまして、探偵業務からは除外をいたしております。したがって、そのようなものについては本法の規制の対象外であります。
○大島(敦)委員 除外の要件が報道に限定されているが、コラム、エッセー、ノンフィクション、ドキュメンタリー、小説、風刺画、コミックなどの作品群の用に供する目的の場合は除外されるのか。
○山本(拓)委員 本法案は、専ら、報道機関の依頼を受けて、その報道の用に供する目的で行われるものを探偵業から除外いたしております。この除外事由は、これまで何らの法的規制のなかった探偵業について初めて法的な規制を設けるに当たり、その対象を通常探偵として考えられるものに限定をする趣旨でございます。
ところで、本法案において報道とは、「不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせることをいい、これに基づいて意見又は見解を述べることを含む。」と定義いたしております。
このような報道としては多種多様なものが考えられますが、本法案の趣旨に照らすと、提案者といたしましては、社会的な出来事を広く一般的に知らせることを目的としていると言えるものであれば、どのような形であっても報道に該当すると言ってよいのではないかと考えております。
したがって、そのようなものであれば、記事等に限られることなく、事実に基づくものとして執筆されたコラム、エッセー、小説等であっても報道に当たると考えております。
したがって、お尋ねの作品群については、何らかの形で社会的な出来事を広く一般的に知らせることを目的としていると言えるものであれば、不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせるものとして、第二条第二項の報道に該当し、その用に供する目的で行われる事実調査を業として営んでも除外事由に該当すると考えております。
○大島(敦)委員 学術調査活動、弁護士活動など一般的に社会的公共性が自明のものと認められる諸活動は適用除外とされるのか。
○糸川委員 本法案に言う探偵業務は、特定人の所在または行動についての情報を収集することについて依頼を受け、実地の調査を行い、その結果をそのまま報告する業務のみを対象としております。
したがって、学術調査活動のように、調査結果をそのまま報告するのではなく、何らかの分析、評価を加えることが前提とされているものや、法律事務について依頼を受けている弁護士活動のように、特定人の所在または行動についての情報を収集することについて依頼を受けているとは言えないものについては、そもそも探偵業務に該当しません。
○大島(敦)委員 この法律では探偵業者に対しどのような規制を設けているのか。
○泉委員 本法案においては、探偵業者について、まず営業所ごとの届け出制を設けております。そして、欠格事由を設けて、暴力団員等を排除する。また、名義貸しの禁止、そして契約締結の際の依頼者に対する重要事項の説明及び契約書の交付の義務、そして違法目的調査の禁止、また再委託の禁止、そして秘密保持の義務等の必要な規制を設けております。
また、この法案については、都道府県公安委員会において、探偵業者が本法に違反した場合や、探偵業務に関し他の法令の規定に違反した場合において、探偵業の業務の適正な運営が害されるおそれがあると認められたときには、当該探偵業者に対し、必要な措置をとるべきことも指示することができるとしております。
法令や公安委員会の指示に違反した探偵業者に対し、六月以内の営業停止を命じることができるとしておりますし、最終的には営業廃止を命ずることもできるというふうにしております。さらに、都道府県公安委員会の指示や営業停止命令に違反した者等に対しては、懲役または罰金の刑に処するということを考えております。
○大島(敦)委員 欠格事由はどのような基準で定めたのか。暴力団員のみならず準構成員も含めるべきではないか。
○泉委員 この法案は、やはり近年探偵業者が増加をするということに伴って起こっている探偵業のトラブルということに対処をするものでありますけれども、そもそもこの探偵業、これまで何の法的規制もなかったということで、実は警察の方でもその実態というのがわかっていないという現状があります。
そういった意味では、この法案は、このような状況で探偵業の実態をまず把握するということでの届け出制をとります。そして、一般的に届け出制が届け出を行う者の適格性について実質的な審査を行うものではないことを考慮すると、本法施行後の円滑な運用を確保するためには、欠格事由について、探偵業務を営むことが不適当であると一見して明らかであり、かつ、届け出を行う者と届け出を受ける公安委員会の双方において該当するか否かが容易に判断できるものであることが望ましく、このような観点から、本法案のとおり欠格事由を定めております。
ところで、本法案については、欠格事由の一つとして、いわゆる暴対法に規定をする暴力団員または暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者であることを挙げているところですけれども、暴力団対策法、暴対法に規定のないこの準構成員ということについては、先日も別な議論の中で川内委員からの指摘がありました。これは、現在のところはこの法律に準構成員という規定がないものですから、全く、今回の法律でも欠格事由とすることができないという状況にもあります。
この法案は、まず実態の把握に努めるという意味では、その立法趣旨を踏まえて、また施行後三年で検討条項を置いているところでもありますので、この欠格事由のあり方ですとか、また、この暴力団の関与ということについてもしっかりとチェックをしていって、その実態把握をした中で、より検討を進めていきたいというふうに考えております。
○大島(敦)委員 営業の届け出に関して内閣府令で定める事項は、具体的には何を想定しているのか。
○泉委員 これは、内閣府令で定める事項ということでありますけれども、警備業法等でも同じような規定が設けられているとおり、例えば内閣府令で定める事項としては、具体的には届け出書の様式、提出先の警察署、また提出期限といった手続的な事項を想定しております。
そして、内閣府令で定める添付書類というのは、例えば、探偵業を営もうとする個人または法人の役員の履歴書及び住民票の写し、欠格事由に該当しないことを誓約する書面といったものを想定しております。
○大島(敦)委員 届け出の単位を営業所ごととしたのはなぜか。
○泉委員 この探偵業者、現状でも、複数の都道府県にまたがる大きな業者から、一つの営業所だけで行っている、個人宅で行っている業務も含めて、さまざまな形態が現在認められております。その実態を十分に今把握できていないということでありまして、顧客獲得のために、業者の中には複数の名称を使用したり、数多くの支店を設けているように装って広告を出しているケースも見受けられます。
こういった状況を見ると、主たる営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会に支店等も含めて届け出を行わせるのでは、どこまで探偵業者の業務形態を正しく把握できるかということについてやはり疑いが残るというふうに思っておりまして、現実に所在をする営業所ごとに、その所在地の都道府県公安委員会に個別に届け出を行わせる方が、よりこの探偵業務の実態を適切に把握し、実効性のある監督をできるというふうに考えております。そういった意味で、この届け出を営業所ごとという形にしております。
○大島(敦)委員 「人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害する」とは、具体的にはどういうことか。
○泉委員 これは法案の六条の部分なんですけれども、探偵業者等が探偵業務を行うに当たっての原則を定めた規定でありまして、「人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害する」ということは、例えば不法侵入、そしてまた盗聴、つきまとい、プライバシーの侵害等の刑事上、民事上の違法な行為を行うことを言います。
そしてまた、ここで言う「人の生活」の人というものは、その調査対象者だけではなくして、例えば近隣の住民に迷惑をかける行為であったり、あるいはその調査対象者の家族に迷惑をかける行為、こういったものも含めて我々は定義をしております。
○大島(敦)委員 違法な差別的取り扱いとはどのようなものか。
○泉委員 探偵業者が探偵業務を行うに当たり他人の権利を侵害してはならないことは当然のことです。また、他人の権利を侵害するなど違法と評価される行為に加担をしてはならないというのも当然のことでありまして、第七条、第九条の部分で、違法な行為の例として、違法な差別的取り扱い、これを挙げております。
ここで言う違法というのは、労働関係法規等において明文の規定で禁止されているものに限られず、民事上の不法行為その他法的に違法と評価されるすべての差別的取り扱いを意味するものであります。したがって、身元調査また経歴調査等についても、このように違法と評価される差別的取り扱いのために行われる探偵業務であるときは、これらの規定における違法な差別的取り扱いというものに該当し、そういった探偵業務は禁止をされているというふうにお考えいただきたいと思います。
○大島(敦)委員 業務上作成、取得した資料等について、個人の情報の不正または不当な利用を防止するために必要な措置とは、具体的にどのような措置を指すのか。
○泉委員 これは十条で規定をしておりますけれども、探偵業者に対して、やはり情報の管理を徹底していただくということは、我々は大変大切なことだと考えておりまして、ここで言う必要な措置というのは、第一義的には依頼者と探偵業者の合意によって定められるものでありますけれども、従業員に対する守秘の徹底等秘密の漏示を防止するための適正な情報管理、そして調査終了後の資料の廃棄ですとか抹消、また、依頼者が逆に資料の保存を望むというケースもあると思いますけれども、そういった場合の資料の安全な保存ということを措置として念頭に置いております。
○大島(敦)委員 名簿の備えつけに関して内閣府令で定める事項とは、具体的には何を想定しているのか。
○泉委員 名簿に記載すべき事項、名簿を備えておくべき期間等の名簿の備えつけに関する細目的な事項、これは、従業員の写真であったり、氏名、本籍、住所、生年月日というようなことについて、そういった事項を想定しております。
○大島(敦)委員 営業停止期間を六月以内と定めた理由は何か。
○泉委員 本法における営業停止期間は、探偵業の業務の適正化という本法の目的を達成するために必要な期間として、他の法律における営業停止に関する規定も参考に定められました。
ちなみに、例えば警備業法であれば六月以内、風営法のうち、風俗営業は六月を超えない範囲内、性風俗関連特殊営業は八月を超えない範囲内、古物営業法は六月を超えない範囲内、質屋営業法は一年以内というような規定をしておるところです。
○大島(敦)委員 三年後の検討条項を置いたのはなぜか。
○泉委員 やはり、これまで探偵業というのは何らの法的規制もありませんでしたので、警察当局もその業務実態というのは全くこれまで把握を、全くというわけじゃないんですが、完全な把握ができなかったという状況がありました。一方で、探偵業をめぐるトラブルが大変多く出てきているところでありますので、この法案については届け出制をとり、その実態把握を行う、そしてまた必要最小限の規制を行うというふうにしております。
そうしますと、この法律の施行後、業態の把握が進むにつれ、より実態に即した効果的な規制に改める必要性も考えられますので、本法の施行状況や探偵業の実態把握の結果を踏まえて、新たな規制のあり方については検討を加えられる必要があると考えております。それを法文上も明らかにするべく、この施行から三年後を目途として検討を加える旨の規定を設けております。
ただ、特に報道の自由との関係については、やはり非常にセンシティブな問題だというふうに考えておりますので、報道の自由が侵害されないようにというところは特に気をつけてこれからも対処していきたいと思っております。
○大島(敦)委員 探偵業者の従業員等に暴力団関係者が含まれていることが想定されるが、本法の施行後、警察当局にはどのような対応を期待するのか。
○泉委員 本法案は、現在、業として何らの法的な規制が行われていない探偵業につき届け出制を設けるということでありますけれども、この法律の施行後、警察当局においては、その業務実態の把握に鋭意努力をしていくことになると思います。
その中で、従業員等に暴力団関係者が含まれているということが判明をした業者については、十三条の方に規定がありまして、例えば報告徴収、また営業所への立入検査等を活用させていただいて、その業務の実態の把握に十分な注意を払っていきたいと考えております。
また、仮に違法行為がこういった従業員によって行われるということが発覚をした場合には、営業停止命令等、強力に監督を行うということもやはり望まれるのではないかなというふうに考えております。
また、先ほども話をしましたけれども、三年後の見直しという検討条項が置かれておりますので、業務実態の把握に努めた結果、従業員等に暴力団関係者が多く含まれており、それに起因する問題が多く発生をするというような事情が判明した場合には、役員のみならず従業員等からも暴力団関係者を排除するための措置について検討を行い、必要な措置を講ずることが望ましいと考えております。
○大島(敦)委員 以上をもちまして質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○佐藤委員長 次に、吉井英勝君。
○吉井委員 私は、探偵業の業務の適正化に関する法律案の起草案に賛成するとともに、意見の表明をこの機会に行っておきたいと思います。
第一は、探偵業、興信所等の法的規制の必要性についてです。
近年、探偵業、興信所等に関係する消費者被害、また事業者やその従事者の犯罪などの増加が顕著です。これは、探偵業が他人が秘密にしている事柄を調査する業でありながら、これを直接規制する法律が全くないということが大きな要因となっています。
探偵業は一定の社会的需要があり、正当な目的の調査依頼で、かつ、調査方法が違法にわたらない限り、許容されるべき業務であると考えます。例えば、依頼者に請求する権利があるものの、相手方の財産や所在が不明なために権利の行使ができない場合などは、正当な目的を持つ調査と言えます。
悪質業者を排除し、消費者被害を防止するために、探偵業を法律上認知した上で、資格制限、契約条件の明確化など、法的規制を設けることによって探偵業全体の質的向上を図ることが必要だと考えます。
第二は、探偵業及びその業務の規制についてです。
法案は、探偵業そのものの規制として、都道府県公安委員会への届け出を義務づけ、これを怠った違反者には、六カ月以下の懲役、三十万円以下の罰金を科しています。また、欠格事由には、暴力団員等及びこの法律の規定に違反する者などが規定されています。
届け出制は、古物営業の許可制、貸金業の登録制などと比べて緩やかな規制となっていますが、この制度によって悪徳業者の排除が可能となると考えます。
探偵業の業務の規制としては、基本原則の明定、違法目的調査の禁止、守秘義務などが設けられていますが、不法行為を規制することになります。
基本原則では、「この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないこと」「人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。」としています。
この規定は、探偵業務の行為が「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」とする刑法第三十五条の正当業務行為に該当しないことを明示し、違法な尾行、張り込み等を行えば処罰されることを明記したものと解します。
探偵の業務は、個人情報にかかわる調査を多く手がけ、調査対象だけでなく、調査依頼者の秘密をも知ることになります。既にプライバシー情報を利用した探偵業従事者の犯罪が起きていることを踏まえれば、一般法の事後的な責任追及だけでは、実効性のある防止策としては不十分と言わざるを得ません。
例えば、無届けの探偵業の営業禁止規定の欠落、暴力団員が事業活動を支配しているものを欠格事由から欠落させていること、守秘義務規定に直罰がないことなどは、不十分と言わざるを得ません。
さらに、探偵業者に多くの警察退職者が再就職していること、現職警官と共謀して犯歴情報漏えい事件を起こしていることなどからして、監督官庁の警察との癒着や犯罪が懸念されますが、これを防止する行為規範的規定がないことも問題であります。
第三は、契約締結問題です。
契約締結問題は、消費者を保護するポイントになります。法案は、探偵業者に、契約締結に当たって、依頼者に重要事項を説明すること等書面による契約の締結を義務づけています。これに違反すると三十万円以下の罰金が科せられるとしています。この規定は、契約条件の事前明示、あいまいな契約内容を改善する上で一定の役割を果たすものと考えます。
ただし、罰金が三十万円以下というのは、特定商取引法による学習塾や語学教室などの特定継続的役務提供事業者の書面交付違反等の罰金百万円以下と比較すると、不十分と言わざるを得ません。また、クーリングオフが欠落していることも問題です。
第四に、報道機関等の適用除外です。
本来、報道機関等は法の適用除外であると解します。法案は、放送機関、新聞社、通信社、報道機関、フリーライターなどからの調査依頼は法の適用を除外するとしていますが、当然の措置と考えます。この規定には出版社が明記されていませんが、出版社を含め、取材、報道の自由を守るという立場から適用除外されていると理解しています。
以上、法案には不十分な点がありますが、今後の見直しの機会に譲り、今急ぎ求められている、悪質業者を排除して消費者被害を防ぐために探偵業に法的規制を設ける本案に賛成することを重ねて表明して、発言を終わります。
○佐藤委員長 これにて発言は終わりました。
お諮りいたします。
探偵業の業務の適正化に関する法律案起草の件につきましては、お手元に配付の草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○佐藤委員長 起立総員。よって、そのように決しました。
なお、本法律案提出の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前九時四十八分散会