衆議院

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第2号 平成19年2月21日(水曜日)

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平成十九年二月二十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 河本 三郎君

   理事 木村  勉君 理事 後藤田正純君

   理事 戸井田とおる君 理事 西村 康稔君

   理事 平井たくや君 理事 泉  健太君

   理事 松原  仁君 理事 田端 正広君

      赤澤 亮正君    遠藤 武彦君

      遠藤 宣彦君    岡下 信子君

      嘉数 知賢君    木原 誠二君

      谷本 龍哉君    寺田  稔君

      土井  亨君    中森ふくよ君

      萩原 誠司君    林田  彪君

      松浪 健太君    村上誠一郎君

      市村浩一郎君    小川 淳也君

      小宮山洋子君    佐々木隆博君

      津村 啓介君    横光 克彦君

      渡辺  周君    石井 啓一君

      吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   菅  義偉君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 溝手 顕正君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (イノベーション担当)

   (少子化・男女共同参画担当)

   (食品安全担当)     高市 早苗君

   国務大臣         山本 有二君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   国務大臣

   (規制改革担当)     渡辺 喜美君

   内閣府副大臣       大村 秀章君

   内閣府副大臣       平沢 勝栄君

   総務副大臣        大野 松茂君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   内閣府大臣政務官     谷本 龍哉君

   内閣府大臣政務官     田村耕太郎君

   国立国会図書館長     黒澤 隆雄君

   会計検査院事務総局第一局長            諸澤 治郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  原  勝則君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  鈴木 敏郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  戸塚  誠君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  原  雅彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  原山 保人君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  伊奈川秀和君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房長)   山本信一郎君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房政府広報室長)          高井 康行君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 雅人君

   政府参考人

   (内閣府賞勲局長)    福下 雄二君

   政府参考人

   (内閣府国民生活局長)  西  達男君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   安藤 隆春君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  片桐  裕君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    矢代 隆義君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 後藤  博君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊藤 秀樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        山本 忠通君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           中田  徹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         宮島 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           村木 厚子君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         内藤 邦男君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     広瀬 研吉君

   政府参考人

   (環境省大臣官房長)   小林  光君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   西川 徹矢君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 道明  昇君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房参事官) 岡  真臣君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大古 和雄君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長)            鈴木 篤之君

   内閣委員会専門員     堤  貞雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十一日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     萩原 誠司君

  小川 淳也君     津村 啓介君

同日

 辞任         補欠選任

  萩原 誠司君     木原 誠二君

  津村 啓介君     小川 淳也君

    ―――――――――――――

二月二十日

 憲法九条を守り、世界の平和に生かすことに関する請願(志位和夫君紹介)(第一号)

 憲法改悪反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第一二号)

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一三号)

 憲法の改悪反対することに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一四号)

 憲法九条の改悪に反対することに関する請願(阿部知子君紹介)(第四五号)

 憲法理念の実現に関する請願(佐々木隆博君紹介)(第八四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

河本委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員長鈴木篤之君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官原勝則君、鈴木敏郎君、戸塚誠君、原雅彦君、原山保人君、内閣参事官伊奈川秀和君、内閣府大臣官房長山本信一郎君、大臣官房政府広報室長高井康行君、賞勲局長福下雄二君、国民生活局長西達男君、警察庁長官官房長安藤隆春君、生活安全局長片桐裕君、刑事局組織犯罪対策部長米田壯君、交通局長矢代隆義君、法務省大臣官房審議官後藤博君、三浦守君、外務省大臣官房参事官伊原純一君、伊藤秀樹君、大臣官房広報文化交流部長山本忠通君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、文部科学省大臣官房審議官中田徹君、厚生労働省大臣官房総括審議官宮島俊彦君、大臣官房審議官村木厚子君、農林水産省大臣官房総括審議官内藤邦男君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長広瀬研吉君、環境省大臣官房長小林光君、防衛省大臣官房長西川徹矢君、大臣官房審議官道明昇君、大臣官房参事官岡真臣君及び防衛政策局長大古和雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸井田とおる君。

戸井田委員 自由民主党の戸井田とおるです。

 仲間の了解を得て、三十分の時間をいただきました。

 塩崎官房長官の所信表明を拝聴いたしまして、全く同感であり、国会議員としての責務を痛感いたしました。戦後レジームを大胆に見直し、「美しい国、日本」の実現に向け、スピード感を持って全力で取り組む決意を表明されました。また、我が国の理念、目指すべき方向、日本らしさについて、我が国の英知を集め、日本のみでなく世界じゅうにわかりやすく理解されるよう、戦略的に内外に発信してまいりますと述べられました。

 実は先日、私は、自由民主党の日本の前途と歴史教育を考える議員の会という議員連盟の南京問題小委員会小委員長を仰せつかりました。国立国会図書館などで資料を集めていますと、ある問題に直面したわけであります。

 昨年の十月二十七日の当委員会でやはり同じような質問をしたんですけれども、資料一を見ていただきたいと思うんです。このカラー版のものです。一番最初のは、アイリス・チャンの「レイプ・オブ・南京」の表紙と、その中に入っている写真です。この上の写真なんですけれども、それは、日本人は数千人の女性を駆り集めた、ほとんどの者は集団暴行され、軍の売春婦に強制的にさせられたと。官房長官は英語がよくわかるんですから、このキャプションを読んでいただいたらわかると思うんですけれども。この二枚目の左上の写真ですね。

 それと同じのがこのアサヒグラフに出ているんですけれども、アサヒグラフの方の三枚目です、これが初出の写真なんですね。(十月十四日 熊崎特派員撮影)と、写真の左横ですか、そこに書いてあります。このキャプションの違いにも驚くんですけれども、大事なのは、この(十月十四日 熊崎特派員撮影)と、日付と撮影者が書かれているということなんですね。そういうことでこの写真の信憑性というものもわかるし、同時に、これを追跡調査しようと思ったら、きちっとその事実をつかめるし、原版も突き当たることができるわけであります。

 昨年の本委員会でもって、国会図書館というのは、国会議員が国政調査のための資料をそこに集めてあるわけでありますから、そこで調べていくと、間違った資料をもとに間違った考えを頭に植えつけて、結果的に間違った法律をつくるというようなことになると国民に迷惑がかかるし、ここらのことは非常にスピード感を持って解決していただきたいなと。

 前回は、日本国全部の税金を使った図書館ということを申し上げたんですけれども、私は国会議員として、国会議員が調査に当たる、その中心の場である国会図書館の資料に、明らかに間違いだ、一次資料で確認できる、そういうものについてはきちっと訂正をしていただきたい。前回は、富田メモのように、写真だけでも上に張りつけたらどうだというようなことを申し上げましたけれども、今はなかなか難しいようでありますから、それだったら、インターネットでホームページでもつくって、そういう間違いの訂正というか、そういうものをきちっと出せるようにしていただきたいな。そのことをぜひお願いしたいと思うんですけれども、まず、国会図書館長ですか。

黒澤国立国会図書館長 お答え申し上げます。

 当館は、設置の根拠であります国立国会図書館法の規定に基づいて、収集した資料を最大限に国会、行政・司法、並びに国民の利用に供する任務を有していることは、先生御存じのとおりでございます。この任務は、憲法第二十一条の保障する表現の自由にかかわるものでございます。

 これらの考えから見まして、当館がみずからの判断に基づいて資料の利用を制限したり、誤りであると判断することは、国民の人権の侵害につながるようなことになるのではないかなと思います。

 先生のおっしゃるように、注意書を添付、貼付するだけであるといたしましても、当館がその資料に対して価値判断を行ったに等しいと受け取られるのではないかなと思います。

 当館は、資料が明らかに間違いであることを判断する権限を持っておりません。むしろ、資料の内容に価値判断を加えず、多様な意見を国民に提供することが当館の役割であると私は認識いたしております。

 御指摘のような資料については、研究者による議論等の言論活動を通じて適切な評価が与えられていくものと私は考えております。

 以上でございます。

戸井田委員 想像した答えなんですけれども、今、これからネット社会というのが広がっていくと、大変なことが起きてくる可能性があるわけです。中国でも、ネット人口一億四千万人、日本の国民以上、そのネットに関係する人間がいるということですね。そんな人らが集中攻撃を浴びせてくる、そういうようなことになったときに、日本はどうやって対抗していくんだという思いもあるし、確かに、言論の自由、いろいろありますよ。そういうことには慎重にならなきゃならないのはよくわかります。しかし、それで本当に正義は守っていけるのかなという思いもあるんですね。

 私自身も非常に迷う部分ではありますけれども、今後とも何らかの形で、明らかに間違いだということが証明されている、逆に言ったら、これは人の写真を横取りしたということですよね。盗作にも匹敵するんじゃないかな、そういうことも思うわけですから、ぜひそんなところも対応していただきたいと思います。

 では、次に移りますけれども、ことしは、南京攻略戦から七十周年になります。ことし、世界じゅうで、天皇の軍隊が組織的にホロコーストをしたとの宣伝映画が七本以上もつくられると報道されています。

 十九日の予算委員会でも、我が党の稲田議員が従軍慰安婦の問題を取り上げておられましたけれども、慰安婦非難決議が米国の下院議会で採決されると日米同盟に少なからず悪影響を及ぼすことになると考えるんですけれども、慰安婦問題に関しては、強制連行を示す一次資料がないにもかかわらず日本人的心情で政府が謝罪したことに端を発している、私はそういうふうに思っております。これらの問題に関して、真相を戦略的に内外に発信してこなかったという政府の責任は重大だと思うわけであります。

 実は、その調査をしていて、早急に、ペロシ米下院議長、マイク・ホンダ議員に翻訳して差し上げてもらいたいような資料が出てきました。

 資料二を見ていただきたいと思うんですけれども、これは官報号外、昭和二十八年二月二十七日に載った第十五回国会の社会党の藤原道子議員の質問の議事録です。

 二ページ目の上段に線が引いてありますけれども、そこにはこのように書かれてあります。「米軍の暴行事件は、昨年十二月まで独立後」独立後ですよ、「八カ月間におきまして千八百七十八件を数え、なお泣き寝入りになつておりまする件数は厖大な数であろうと想像されております。」

 次に、三段目の線のところを見ていただきたいと思いますけれども、またこうも述べておられます。

 私は、米軍の日本進駐に対し、この尊い母に代つて青年の純潔と健康と堕落から青年を守つた米軍をこそ、信頼し、期待していたのであります。併しこの期待はみごとに裏切られました。基地附近の百鬼夜行の有様は、学童の勉学する所まで荒らされ、幼児さえ米兵の行為の真似をして遊ぶ状態は、ひとり日本の母を悲しませるのみならず、遠く我が子の上を思うアメリカの妻が、母たちが、若しこの実情を知りましたならば、その歎きと、当局に対する不信と憤りは、どのような結果を招くでありましようか。それとも、アメリカの婦人尊重、正義人道とは、アメリカ国内だけであつて、ヨーロッパではそれは紳士道を守るが、アジアの国々においては、その国内法を無視し、何をしてもよい、軍紀も何も通用しないことになつているのでございましようか。

 アメリカの若き兵士の妻、母の立場をもおもんぱかった格調高い日本女性議員の訴えは、読んでいて心を打つものがあると思うんですね。私は、戦後失われたものの一つに、正当な抗議をしなくてはならないときにしてこなかったことがあると思うんです。

 官房長官、戦略的に内外に発信するということは、まさに時をとらえて発信することではないんだろうか。タイミングを外したらだめだということであります。逃してはならない時があると思うんですね。私は、まさに今がそのときではないかな、そう思うわけであります。

 今、アイリス・チャン氏の「レイプ・オブ・南京」を題材にした映画が制作されておりますけれども、米国議会からは慰安婦問題の決議案が提出され、中国では、南京虐殺記念館は展示面積が三倍に拡張される、多くの抗日記念館が北京オリンピックを目指して新たに建設されるなど、海外に向けて反日運動をこれでもかとばかり繰り広げているわけですよ。その状態を放置していていいんだろうか。

 南京問題にしても、七十年もの間、あったなかったと論争があるにもかかわらず、国は何も調査をしてこなかった。何もと言ったら言い過ぎかもわかりませんけれども、調査をしてこなかったというその不作為は無視することができないな、私は調べれば調べるほどそう思うわけであります。

 中国が言うところの国際的に認められた事実なのか。国際連盟の一次資料を取り寄せてみてびっくりしました。

 これは、外務省も非常に協力してくれればいいんですけれども、持ってきた国連の決議文、これなんかでも読めないようなコピーで持ってくるんですね。読めるようになっていても、私もすべて理解できるかといったらそうじゃないから、ちゃんと訳文をつけてくれと言ったら、その訳文がついてきたのがけさ方の四時です。二時まで待っていたけれども来なかったということで、知り合いに頼んで決議文の全文を訳してもらったんです。

 一九三八年の二月二日、国際連盟理事会第百会期第六会議、支那問題に関する決議が採択されているんですけれども、中国代表が採択に当たって行ったとされる南京攻略戦での日本軍非難演説の内容は、決議文に取り入れられていないと承知しておりますけれども、いかがでしょうか。

伊原政府参考人 今先生御指摘の国際連盟理事会の決議でございますが、これは、一九三八年の二月二日、国際連盟理事会の第百会期の第六会議において、支那問題に関する決議という名前のものが採択されております。

 まさに先生御指摘のとおり、同決議の採択に当たり、中国代表の顧維鈞という人物が、日本の侵略の事実、旧日本軍の暴行、第三国に対する権益侵害等を述べた上で、連盟の行動を要求する趣旨の演説を行い、その中で、中国の代表は、第三国の新聞記事等を引用する形で、南京における旧日本軍兵士による殺害や略奪行為について言及したというふうに承知しております。

 一方、決議においては、南京事件について明示的な言及はございません。中国における戦闘行為の継続、激化に遺憾の意が示されるとともに、極東に直接の利害関係を有する諸国間において紛争を解決する機会につき検討することを期待するといったようなことが、その決議の中では表明されているというふうに承知しております。

戸井田委員 今言われたように、国際連盟の理事会は、中国の一方的な政治宣伝との認識を持っていたことにほかならないと思うんですね。それだけの演説をしながら、しかし、それは、今言われているような数の、三十万人の虐殺と二万人の暴行が、その当時、中国の代表が二万人と数千ということを言っているわけです。だけれども、それでも理事会はその中国の演説に対して動かずにいたということ。これはどういうことなのか、どういう意味を持っているのかということを考えたら、まさに国際連盟は相手にしていなかったということなんだろうと思うんですね。

 こういう資料をずっと当たっていくと、やはり一次資料、第三者がだれでも確認できる資料を当たっていって、それを積み上げていく、そのことをやはり政府はきちっと発信していく必要があるんじゃないかなというふうに思うんです。

 それ以外にも、やはり世の中には、そういうことに奮起して、一人で黙々と、何の利益にならなくても調べ回っている人というのは実はいるわけであります。

 資料四を見ていただきたいんですけれども、一九八四年に、南京問題一筋に研究している阿羅健一さんが、南京攻略戦に従軍した外国新聞社の記事を調査したものがあるわけであります。今一般に言われているようなことなど、当時、第三国の新聞記事には載っていない。ニューヨーク・タイムズとかロンドン・タイムズだとか、そういう海外の特派員が当時、南京にいたわけですよね。しかし、本国に送った記事の中に、三十万の虐殺であるとか二万人のレイプだとか、そんなものは出ていないわけであります。

 それは、今から訂正するわけにいきませんし、その当時の記録として残っているそのものを丹念に当たっていくことによって、それが証明されてくるんだ、私はそういうふうに思っております。

 そして、お手元に資料の五をお配りしておりますけれども、これは、一九九八年に雑誌に掲載された南京虐殺派の第一人者であります笠原十九司都留文科大学教授も、そのページの中に線を引いておりますけれども、「南京城内では、数千、万単位の死体が横たわるような虐殺はおこなわれていない。」というふうに明確に書いております。

 もう一つ、手元に配付しております資料六の中には、水間政憲氏が朝日新聞と毎日新聞に公式見解を問い合わせたものがあります。朝日、毎日も、南京での虐殺は特定していませんと明確に回答しているわけであります。

 次に、資料七も見ていただきたいと思うんですけれども、これは阿羅健一氏が南京に従軍した新聞記者、軍人などから聞き書きした「「南京事件」 日本人四十八人の証言」の一部であります。当時の支局長の中には、我々の政治の先輩であります橋本登美三郎さんも当時おられた。その人の証言もその本の中には入っております。朝日新聞の山本治上海支局員は、「事件と言うようなものはなかったと思います。」「朝日でも話題になってません。」とはっきり答えているんですね。

 そこで、外交問題になっているこのような歴史認識問題に関して、一切の日本側の解釈を加えない形にして重要な一次資料だけでも、外務省のホームページというのはアクセス数が世界で二番目とかいうことを言っておられるわけですから、そのホームページに掲載して、日本のみならず世界にわかりやすく理解されるよう、内外に発信していく必要があると思うんですけれども、官房長官、どうでしょうか。

塩崎国務大臣 先生の党での活動について、いろいろと今、御教示をいただきました。

 ホームページに掲載してはどうだ、こういうお話でありますが、歴史認識に関連する資料を含めて、戦前戦中の日本外交に関する資料については、外交史料館というところで個々のファイルごとに保管をいたしまして、一般に供覧に供しているという形に今なっているところでございます。

 それから、内閣府所管のアジア歴史資料センターというところがありますが、国立公文書館、外務省外交史料館、防衛省防衛研究所図書館が所蔵をいたします、明治初期から終戦までのアジア関係資料を電子データベース化する作業を今進めておりまして、作業が終了したものから順次インターネットを通じて既に国内外に情報を提供しているというところでございます。

 今、一次資料については解釈を入れない客観的な形でというお話がありましたが、現状、今御説明申し上げたような形で供覧に供しているというところでございます。

戸井田委員 大体そういう答弁が来るんだろうなと思いながら待っておりましたけれども、しかし、内外に発信する、わかりやすく発信するということはどういうことなのか。特にこの南京問題に関しては、あったことを又聞きとか、そんなうわさ話がどんどん膨れ上がっていくわけですよ。だけれども、日本としてもあったかなかったか判断はしない、しかし第三者が確認できる、そういう資料だけを集めていったときに、さあそれで皆さんどう思いますかというのが民主主義だというふうに思うんですね。

 私も南京の現場を見ていないわけですよ。今ここにいる人はすべて見ていないと言ってもいいほどだと思います。ほとんどの人がそれを知らない。知らない中に、そういう宣伝のプロパガンダがぼんぼこぼんぼこ入ってきたときに、その人たちはどうなるかということを考えたときに、やはりそこは大人として正しく、一次資料はこうなんですよ、それを見て考えてくださいというようなことは、わかりやすく発信することになるんじゃないでしょうか。

 これは言うだけでありますけれども、あえて返事をしてくれとは言いませんけれども、だけれども、やってほしいですね。それをやらなかったら我々はもっと別の行動をします。そのことを言っておきます。

 何でも……(発言する者あり)もう時間がないので、次にもう一つやっておきたいことがあるものですから。

 次に、栄典行政について質問をさせていただきます。

 政府は旭日章を叙賜する場合に、公共の福祉に貢献したことを前提にしていると解釈しております。考えられないことではあると思うんですけれども、刑事被告人及び刑事罰を受けた者も対象にしているのかどうか。

福下政府参考人 お答え申し上げます。

 栄典は、その受章者が広く国民から祝福されるものでなければならないという事柄の性格から、刑事罰を受けるなど、栄典を授与するにふさわしくないと判断されるような行為があった者につきましては、栄典の授与を差し控えているところでございます。

 栄典の授与を差し控えるかどうかにつきましては、その犯罪の内容、適用される法令、刑の軽重等により、個別具体的に判断しているところでございます。

戸井田委員 私の手元に、中国の南京軍事法廷で、通称百人切り競争の実行犯として、たった一回の公判で死刑になった向井敏明少尉に叙賜されたことを証明する文書があります。昭和四十五年の六月二十七日、政府は向井少尉に勲四等旭日章を叙賜したことになっています。そして、毎日新聞なんかでは、現在でも大武勲の事実報道をしていたとしていますが、当時、大武勲があれば必ずや逆に授与されたはずの金鵄勲章が、向井、野田両少尉には叙賜されていません。この事実は、日本政府が毎日新聞の記事が創作だったと判断していることになるわけでありますけれども。

 現在、南京大虐殺記念館などに展示されていて、毎日新聞に掲載された両少尉の写真を撮った、元東京日日新聞カメラマンの佐藤振寿さんは、九十歳を過ぎていますが、まだお元気なんです。佐藤さんは、平成十六年の東京地裁に百人切り競争の裁判の証人として出廷したのでありますが、そのとき供述書で、百人切りはうそである、浅海はうそを書いたと同僚だった記者を批判して、百人切りはうそと断言しているのであります。それもこれも、当時の軍隊がどれだけ軍紀に厳しかったか知らないからこんなことになるんだというふうに思うんですね。

 お手元に、軍事刑罰令の一部をコピーしたものがありますから、見ていただきたいと思います。強姦、捕虜を死亡させたら、七年とか死刑とかなんですよね。これは原本を見てもらったらわかるんですけれども、これは靖国神社からお借りしてきたんですね。こういうポケットタイプのものをみんな軍服のポケットに入れているわけです。僕もこれは初めて見ましたよ、こういう小型の。軍人手帳というのはよく恩給なんかのあれでもって見ることはありましたけれども。こういうものがあって、みんな軍人一人一人が持ってしているんですね。その中に全部そのことが書かれているわけであります。

 そのことをすべて承知して、向井敏明少尉は犯罪者でないと認定したことになると思うんですけれども、福下さん、間違いないでしょうか。

福下政府参考人 お答えいたします。

 賞勲局の保管している資料には、向井敏明さんに金鵄勲章が授与されたという記録はございません。一方、昭和四十五年六月二十七日に、戦没者叙勲といたしまして勲四等旭日小綬章が授与されておられます。

 ただ、賞勲局といたしまして、その向井敏明さんが犯罪者であったかどうかということをお答えする立場にはございませんので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

戸井田委員 やはりそういうあいまいなことなんですね。明確に発信されていない、これが日本の、日本人の性質なのかなというふうに思うんですけれども。

 もう時間も参りましたけれども、私は、このたびのこういう従軍慰安婦問題、同時に南京問題も含めて、中国という国は映画一つつくろうと思っても検閲の入る国であります。先ほどいろいろ言っていました言論の自由、出版の自由、そんなものもない国なんですね。その国がやりたいようにやってくる。

 同時に、日本というのはやはり自由の国であり、民主主義の国である。国会に携わる、政治に携わっていく人間は、自由と民主主義というものをやはり大切にしていかなきゃならないということは、だれもが肝に銘じていることだと思うんです。しかし、そのことを守っていく、そのことを言うべきときに主張することは主張していく、そういうことをしていかない限り、この自由と民主主義というものは守り切れないと私は思うんです。なあなあでやっていて本当にそれが守っていけるんだろうか。

 かつてのまじめにやってきた日本人たちが、主張したくても主張できる立場に今ない、既に亡くなってしまっている。代議士という言葉は、だれかの代弁をするのであるとしたら、もう既に亡くなった人たちのその心情もおもんぱかって、主張すべきことは、その時期、時を逃さずに主張すべき責任があるんじゃないか、私はそういうふうに思っております。

 最後に、官房長官、どう思いますか。それだけお聞きして、終わります。

塩崎国務大臣 代議士というのは、代わって議論する士、こう書くわけでありますので、国民にかわって議論をしていくというのが我々の使命だと思っております。

 今いろいろと御指摘がございましたが、個別の事実関係はともかく、我々としては、過去について事実に反するようなことがあれば、やはり物申していかなければいけないということでもあろうかと思います。今先生が御指摘になった点を踏まえて、また、行政のやり方についても御指摘がございましたが、今の御意見を聞いて、またこちらでも検討してまいりたい、このように思います。

戸井田委員 最後に、これは言わなかったですけれども、この資料を官房長官にお渡しして、質問を終わります。

河本委員長 次に、田端正広君。

田端委員 公明党の田端でございます。

 今まで質問を何回かさせていただいておりますが、官房長官に質問できるというのは私も初めてでありまして、大変きょうは喜んでおります。というのは、今まで、どちらかといいますと縦割り的な形で議論というのはあるわけですが、最近は、縦割りじゃなくて省庁を幾つもまたいだ、三つも四つもの省庁にかかわるテーマが多くなっておりますし、また、官邸の方が主導するテーマがたくさん出てきているわけでありまして、そういう意味では、官房長官の役割といいますか、今までと違って大変大きくなっているという意味で、きょうは官房長官に御出席いただいているということは非常にありがたいことだと思っております。

 きょう、私は、世界一安全な日本の復活ということについてはぜひ内閣を挙げてお願いしたいと思いますが、そのことを中心にさせていただきます。

 去年一年をあらわす漢字が、命という言葉が昨年暮れに選ばれました。なぜ命かということは、御承知のとおり、去年一年間、いろいろな事件、悲惨な事件、子供さんが犠牲になる事件等々、そういう意味では本当に命が大事なんだということを改めて私たちも感じさせられる一年であった、そういうことから去年はそういうことになったんだと思う。逆に言うと、それだけ事件が多かったということでありますから、これは大変な問題でございます。

 もう一つは、内閣府の社会意識に関する調査で、財政よりも外交よりも雇用よりも、治安が一番心配だという人が三八・三%、これはナンバーワンでありました。世論もこの治安問題について非常に不安を持っている、そういう意味では、いかにこの問題に国が、国民のためにこれからどういうふうに対応していくかということは大問題だと思うわけであります。

 特に、子供が犠牲になる、あるいはいじめの問題等々、そういう犯罪事件がたくさん起こっているわけでありますが、溝手国家公安委員長にまずお伺いいたします。これは内閣府の方だと思いますが、子ども安全・安心加速化プランに基づいて対応していくと、この前、所信でもお述べになりました。しかし、ここに書かれていることは、なかなかいいことは書いているんですが、もうひとつはっきりしたことが浮かんでこない。

 それは、地域の力でとか、地域で支援するとか、あるいは地域ではぐくむとか、そういう地域という言葉はたくさん使っていられるんですが、その地域に対してどうするかということについて、そこがもうひとつはっきり見えてこない。私の印象ですけれども、そう感じるわけでありまして、本当の意味の、地域の皆さんに協力してもらう、一緒になって町づくり、安心、安全な町をどうつくっていくかということについてのイメージがもうひとつはっきりしてこないと思いますので、改めて具体的に方針をお伺いしたい、こう思います。

溝手国務大臣 先生御指摘のとおりでございまして、子供の非行とか犯罪被害を防ぐためには、警察のみならず、学校等の関係機関や地域住民、家庭等、地域社会が一体になって取り組むことが重要である、こういうことはかねてから言われているところでございまして、子ども安全・安心加速化プランにおいても、このような考え方に立ちまして、子供の安全を守るために、関係機関との連携あるいは地域のボランティア活動の支援などが求められております。

 それでは、具体的にどういうことかということになると、確かに、なかなかイメージがわきにくいことがあるというのは御指摘のとおりだろうと思います。

 例えば、地域の力で子供を非行や犯罪被害から守るという一つの柱がございます。この中には、地域住民の協力も得ながら不審者情報の共有ネットワークの活用を進めるというのが入っております。また、自主防犯ボランティアによる通学路のパトロール活動の支援ということもこのテーマに入っているところでございます。

 また二番目として、子供が非行や犯罪被害に巻き込まれない力を地域ではぐくむというのも一つの柱になっております。この項目におきましては、警察も積極的に学校に協力をして、PTAや地域住民の参加も得ながら、効果的な非行防止教室の開催、実施等も進めているところでもございます。

 また、困難を抱える子供の立ち直り等を地域で支援する、こういうフレーズもございます。この項目におきましては、非行などの問題を抱えた少年の立ち直りを支援するために、地域の関係機関やボランティア等が連携して少年サポートチームを構築して、地域全体で取り組みが進むように対策を進めているということを含んでおります。

 詳細に申し上げますと、いろいろな項目でいろいろな形で実施をしております。また、地域によってもその対応は違います。

 いずれにしても、地域の子供は地域で守り育てるんだという視点に立って、地域力といいますか、地域全体で子供の非行や犯罪被害の防止を図るため警察を督励してまいりたい、このように考えております。

田端委員 今の大臣のお答えのとおりでありまして、まさに地域力をどう高めていくかということが大変大事なことなんです。

 それで、官房長官、今もお話があったように、つまり、警察だけでは治安対策といってもなかなか難しい。学校も必要だし、PTAとか地域の皆さんとか、とにかくいろいろな形で総合力が必要だ、こう思います。

 実は、官房長官に昨年暮れに、私、公明党の治安・学校の安全PTということで、緊急に申し入れをさせていただきました。

 そのときに申し入れたことは、犯罪を許さない地域づくりに向けて、例えばGPSを活用した子供見守りシステムを導入してほしいとか、あるいはスクールガードリーダーを全小学校に配置できるようにしてほしいとか、住民ボランティアを支援する地域安全安心ステーション、これをもっとふやしてほしいというふうなことを申し入れの中で述べさせていただきました。そして早速、補正予算に地域児童見守りシステムというもの、これは総務省の予算の関係でありますが、十二億円ばかり計上していただいて、全国でモデル事業をこれから展開していく。つまり、携帯電話とか電子タグとかを使って子供の安全を確保していく、こういう事業を展開していただくことになっております。

 例えば関西の私鉄でもやっていますし、東京でも小田急なんかは、子供の定期の中に電子タグを入れて、例えば新宿駅をあれしますと、お母さんにメールで、新宿改札口を通過しました、学校のある駅に着くと、それがまた入る。それから今度、帰り、塾の方の駅のところに行くと、それがまたお母さんのメールに入るということで、そういうシステムは既にもうできていて、民間でもそこまで協力していただいているわけであります。

 こういった総合力をいかに使って子供の安全、安心を担保していくかということがこれから大事だと思いますが、官房長官、御所見をお伺いしたいと思います。

塩崎国務大臣 昨年の十二月に先生から、公明党治安・学校の安全対策プロジェクトチーム、先生が座長をお務めでございますが、この御要望をいただきました。

 今御指摘の地域児童見守りモデル事業でありますけれども、平成十八年度の補正予算で十二億二千万ほど、約二十件程度のモデルの構築、運用を委託する事業を措置したところでございます。まさに先生おっしゃったように、こういったリアルタイムで居場所がわかるようなということで、高齢者にも使えるだろうと思いますけれども、徘回などありますから。子供の安全、見守りということで大変大事な取り組みということになってきていると思います。

 また、ボランティアの御指摘がございましたけれども、これについても、地域安全安心ステーションモデル事業の拡充ということで、あるいは不審者情報の効果的な共有への情報提供等々、それから、パトロールの際の防犯ボランティアへの用具を貸与するというようなことで予算を組んでいるわけでございますけれども、いずれにしても、地域ぐるみで子供を守っていくという仕組みを今構築しつつある、公明党の皆様方からの御提言も生かさせていただいてやっているところでございます。

 もっとも、かつて安心、安全などと言わないでも十分安心、安全であった日本の社会がこうなったこと自体、我々は深く考えなければいけないところだろうと思いますが、当面、やはり地域ぐるみで、あるいは社会総がかりで子供を守っていくということが大変大事だと思っております。

田端委員 各自治体に地域安全安心条例とか、都道府県でも、四十七のうち三十幾つかの都道府県でそういう条例もつくられています。つまり、それぞれに安心、安全を確保するために、都道府県、市町村、頑張っていこうとそういう条例をつくってやっていられるところがたくさんあるんですが、全くやっていないところもたくさんありまして、半々ぐらいかなと思います。そういう意味では、これはこのまま自治体に任せてほっておくということではなくて、これだけ事件が起こっているわけですから、やはり私は、少しそこを整備していく必要があるんではないか、こう思っております。

 それで、うれしいことに、ここ一、二年の間にボランティア組織が、学校の安全を中心に今、全国で二万六千ぐらいのボランティアができ上がりました。このボランティアを少しサポートする、ちょっと押し出していくという、これが大事だと思います。

 それで、地域安全安心ステーションなんかを拠点にするとか、空き交番を使ってもらうとか、そういったいろいろな工夫をしていけば、いろいろな形でボランティアの方々が頑張っていただける弾みになるんではないかなという思いをしておりまして、このボランティア組織に、町会とか自治会とかPTAとか、あるいは場合によっては消防団の方等々、そういう方が一緒になってまざり合ってやっていただければ、まさに地域のいろいろな活動にプラスになっていくんではないかという思いをしております。

 さっき国家公安委員長からも地域力ということをおっしゃっていただいたんですが、この地域力というものを高めるためには、ボランティアの方々をサポートすることが非常に大事ではないかな、こう思っておりますが、官房長官、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今御指摘のように、また先ほども私の方からも少し申し上げましたけれども、地域を構成するいろいろな関係者がいるわけで、学校、家庭、今おっしゃった消防団、それから警察等々がネットワークを張りながら、お互いの力を生かしながら子供を安心、安全な環境の中で育て上げていく、そういう仕組みをつくることは大変大事だと思っております。

 生活安全条例を制定している自治体がふえてきているという御指摘もございました。地域にばらつきがあるということも御指摘がありましたけれども、これは各地域で、全国でそういった温かい見守りの仕組みというものが地域を構成する各関係者ででき上がっていくことは大変重要だと思っておりますので、私どもの方としても問題意識を持ちながら政策づくりに当たっていきたい、このように思っております。

田端委員 このボランティア、今、約二万六千あると言われておりますが、小学校の数が二万四千ぐらいなんですね。だから、一小学校に一つのボランティアが既にでき上がりつつあるんだなという思いがいたします。

 したがって、私の言いたいことは、そういう意味で、地域の皆さんが結束する一つのきっかけになるような、地域安全安心推進法みたいな法律をつくって、そして基本方針なりそういったものを定めてきちっと全国にやっていく、その流れができればいいなと思って、今、与党の先生方とも話しながら、特にこれは省庁をまたぐものですから、議員立法でしかできないな、こんな思いをしております。

 安倍総理も先般来、きのうも、地方の活力なくして国の活力はないということもおっしゃっておりますし、また地域の発展なくして国の発展はないというような表現もされております等々、地域とか地元とか地方とか、そこにやはりベースを置くんだという姿勢を明確に示されているわけですから、地域、そこが安心、安全であるということが一番今後大事なことなんだろう、こういう思いをしております。

 言われているような地域格差も、これが整備されれば格差是正にもつながるんだと思います。一つの切り口として治安という形から、安心、安全という形から、その地域にそういう安心、安全のボランティア組織を中心にしたグループができれば、例えば台風とか地震とか、災害、火災とか、あるいは社会福祉関係の、お年寄りが一人で住んでいるとか何かあった場合、駆けつけるとかといったことにも、いろいろな意味で、構成している人たちが大体同じようなメンバーで構成しているわけですから、非常に地域力が高まっていくんではないかな、こんな思いをしているのです。

 つまり、厚生労働省だとか文科省だとかという縦割りではなくて、地域という一つの横の編成でグループをつくって、そしてそこをサポートしていく、こういうことをぜひ一つの考え方として私も頑張っていきたいと思いますが、官房長官の御意見を伺っておきたいと思います。

塩崎国務大臣 今御指摘の問題、いろいろな役所がかかわっている問題をまとめ上げなければいけないということで、今、議員立法を目指して御努力いただいているというお話を聞きました。

 各関係省庁も御協力をさせていただきながら、今、その検討が進んでいるというふうに我々も承知をしているところでございまして、確かに、子供という観点から安心、安全な地域づくりにボランティアを含めて関係者が相協力していく、そういう仕組みを法律でもってつくれるということであれば、その議論をぜひ深めていただいて、各関係省庁にもそれにしっかりと協力をするように私の方からも言っておきたい、このように思いますので、先生方の御努力に大いに期待を申し上げたい、こう思います。

田端委員 話は今度は大田大臣に移りたいと思います。

 経済財政担当の大臣として大変に頑張っていただいているわけでございますが、先日発表になったGDP速報を見ても、非常に流れはよくなってきたなという思いをしております。去年の十―十二月期で実質一・二%増、年率換算で四・八%増ということで、予想を上回る伸びということが感じられますし、また、プラス成長が八期連続というのは非常にいい傾向だ、こういうように思います。また、名目GDPも一・二%増ということでありまして、名実の逆転が解消したな、こういうことも感じます。

 そういう流れの中で、きょう日銀政策委員会での議論がなされているんだ、こう思いますが、担当大臣として、きょうそんなことを言うのはなかなか言いにくいことなんだろうとは思いますが、しかし私は、流れはよくなっているんですが、個人消費という点からいくと、数字は出ているかもわかりませんが、実感が国民の皆さんにまだ伴っていないし、家庭あるいは家計といいますか、そこにまだ至っていない、そんな思いもしているわけでございます。

 そういう意味では、利上げという問題は、タイミングとかその辺が難しいんだろうと思いますが、私はもうちょっと我慢すべきかなという感じも今、正直持っている一人でございますが、この金融政策を含めて、今日の経済状況について担当大臣として今どういうお考えをお持ちなのか、お伺いしたいと思います。

大田国務大臣 先生御指摘のように、十―十二月期のGDPはよい数字が出ました。それから、昨年の夏以降消費が懸念されておりましたけれども、十―十二月期の消費につきましては一・一%増とプラスでありました。ただ、七―九月期に下がった消費が戻ったということで、夏以降、やはり消費についてはやや弱い、横ばいだと思っております。

 この背景といたしまして、賃金が横ばいになっているということがございまして、これが今先生のおっしゃった家計の実感の乏しさにつながっていると考えております。今回の回復は、期間は長いんですが平均成長率が二%と低くなっております。これが実感の乏しさになっているとは思いますが、五年間の長きにわたって成長したということ、これは意義があることですので、この成長を長く続けていくということが重要である、これが家計の実感につながっていくと考えております。

 それから、具体的な金融政策運営につきましては、日本銀行の専管事項です。経済、物価上昇を丹念に点検されて日本銀行が判断されるものと考えております。

田端委員 確かに、今は物を言いづらいと思いますので、それはいいんですが。

 それで、大臣、実感がまだ伴わないというのは、中小企業がもうひとつ、特に私なんかは大阪ですから、そこのところにまだ波及していない、だから生活実感としてまだまだ厳しいなということを感じているわけであります。

 先日来の大臣の御所見の中でも、あるいはまた政府の方でも示されている成長力底上げ戦略という考え方でありますが、これはそれで非常に大きなテーマで頑張っていただいているということで、わかります。特に、人材能力戦略とか就労支援戦略とか、あるいは中小企業底上げ戦略、こういう三つの矢になっているわけでありますが、その中で、この中小企業の底上げ戦略について、ここのところが私は実際問題としては一番大事ではないかなという思いをしているのです。

 この中小企業底上げ戦略の中身、これを見させていただいてなかなかちょっとわかりづらいので、手順としてどういう手順で、何から、いつどういうふうに始めるんだというところをもう少し踏み込んでいただけたらいいのになという思いをしております。

 それで、大臣の方で、今、そういう気持ちでお話しできる点について御決意をいただければ、大変ありがたいと思いますが、いかがでしょうか。

大田国務大臣 成長力底上げ戦略の中で、中小企業の生産性につきましては、生産性の上昇と賃金の底上げをセットで行っていきたいとするものです。

 具体的な取り組みとしましては、下請取引の適正化によって成果配分をしていくということ。それから、IT化、機械化などの経営改善のサポートをしていくということ。三番目に、特にサービス業で生産性が低くなっておりますので、例えば中小サービス業へ製造業のノウハウをうまく移転できないか、あるいは資金提供の取り組みができないかという支援。それから四番目に、人材能力の向上を行っていくということです。

 具体的な取り組みといたしましては、官民一体となった円卓会議というのをなるべく早く立ち上げます。これは、地域にも円卓会議をつくっていきまして、それぞれの地域でこの成長力底上げのための政労使の話し合いの機会を持っていただく。十九年度には、できるところから進めていく、先行的な取り組みをいたしまして、平成二十年度から本格実施に入ることとしております。

田端委員 ありがとうございました。

 高市大臣、お急ぎだということなので、ちょっと一問先に。

 この「子どもと家族を応援する日本」という、官房長官のもとで開催されている、議長になっている検討会議と、それからワーク・ライフ・バランスに関する専門調査会、大臣の方で主宰されている。それで、大臣はこの「子どもと家族を応援する日本」戦略会議のメンバーでもある。しかし、実際の担当大臣として、少子化の一番問題であるワーク・ライフ・バランス、私の言いたいのは、会議は何かすごく大きい会議がたくさんあり過ぎて、うまく連携をとって連動しているのかどうか。ここがしっかりしていないと、特にこれからの一番の問題である女性の雇用の問題、働くということ、そことの絡みで子育てということになってくるわけでありますので、この辺は連動しているんでしょうか。連動しなきゃならないんですが、その辺のところ、大臣としてどういうお考えなのか、ちょっとお伺いしたいと思います。

高市国務大臣 「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議の方なんですけれども、こちらは、やはり子育て支援、子供を育てている家族、そしてまた子供を持ちたいと思っている多くの人を支援するという意味でのワーク・ライフ・バランスの検討でございます。ですから、どちらかといえば、企業の中で、例えば育児休暇ですとか産休をきちっと権利として取得できるとか、短時間労働、こういったものも検討する、テレワークの充実、こういった観点での御議論が多くなるんじゃないかと思っております。

 それから、男女共同参画会議の方では、これは子育て、少子化対策に限らず、非常に幅広く、男性であれ女性であれ、例えば地域の活動ですとか、みずからを高めていくさまざまな学びの場ですとか、そういったことも含めて取り組んでいく。

 つまり、ワーク・ライフ・バランスというのは、職場での取り組み以外のこともあるわけですね。あらゆる世の中の活動の中でバランスをとりながらということになりますので、もう少し幅広い御議論があると思います。当然、職場の問題にも委員の皆さんは触れられると思うんですけれども、そういう意味で少し領域が広いということになるんですが、そこでなされました御議論に関しましては、もちろん、官邸の方で開きます重点戦略の検討会議の方とも十分に連携をしながら、それぞれの成果を生かしていきたい、このように考えております。

田端委員 大臣、どうも済みません。

 官房長官、今も大臣からお話がございました。それで、もう一つ大きい立場から、この検討会議、「子どもと家族を応援する日本」戦略会議の座長といいますか議長になられて、ここは関係閣僚と、それから有識者七人が入っていて、そして、四つの分科会に分かれているようでありますが、この中に、働き方改革の分科会、これがワーク・ライフ・バランスとの関係で非常に大事になると思うんです。もう一つは、地域・家族の再生分科会。ここでも地域と、子育ての問題と同時に子供の問題に関してさっきから議論している地域の問題としてやはり出てくるわけであります。

 これもまた非常に地域ということが重なってきますので、そういう意味で、私、何となくちょっと今感じていることは、会議はたくさんあって、しかもすごい会議がいっぱいあるんですが、やはり本気で政策としてこういうことをやるぞということをお示しになることが一番大事で、この少子化の問題について、いつまでに、どこで、どういう形で方向を示されるのか、そこのところを御決意をお伺いして終わりたいと思いますが、よろしくお願いします。

塩崎国務大臣 今御指摘のように、今回つくらせていただきました「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議というのは、私が議長ではございますけれども、関係閣僚、特に高市少子化担当大臣と柳澤厚労大臣を中心に九名の大臣と、それから有識者七名で構成をしているわけでございます。

 今まで累次にわたっていろいろな対策を打ってまいりました。しかしながら、昨年末の人口推計のようにどうも芳しくないということで、ここでもう一回、これまでのものも振り返りながら、特に分科会は、基本戦略と働き方の改革と地域・家族の再生、そして、点検・評価というのは今までやってきたものをもう一回フォローアップしていこうじゃないか、こういうことでやろうということにしているわけでございます。

 この検討会議では、本年六月をめどに基本的な考え方をまとめて、骨太に反映をさせて、その後、税制改正など予算関係の議論を深めていこう、こういうふうに思っているわけでございます。

 いずれにしても、先ほど来先生がおっしゃっているように、地域、それから家庭、あるいはこれは企業の理解というものもなければうまくいかないわけでありますけれども、まさに社会総がかり。これまでは、保育園をどれだけつくるかとかそういうような直接的なものが多かったわけでありますけれども、これまでにも増して、働き方とかあるいは地域のあり方とか、そういうようなものを含めて、社会全体が子育てに優しい社会になっていくことを我々としては条件整備をし、結婚をしたい、子供をつくりたいという方々がその希望に応じていけるような政策づくりをやっていきたいと思っておりますので、また先生方の御協力をお願いできたらと思います。

田端委員 標準世帯よりひとり暮らし世帯の方がふえたということでありまして、非常に残念な流れだと思いますが、私は、子だくさんほど得をする、そういう社会をひとつぜひ目指していただいて、骨太の方針じゃなくて骨太の政策を六月には打ち出せるように頑張っていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

河本委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 民主党の市村でございます。

 これから一時間十五分をいただきまして、質問をさせていただきます。議論をさせていただきます。

 まず最初の一時間は、昨日も同意人事がありましたけれども、公益認定等委員会について実のある議論を闘わせたいと思うんです。

 しかし、その公益認定等委員会の同意人事以前の問題として、やはりこの国をどうしていくかという観点からこの問題は議論しなくちゃいけないということで、私は、この内閣委員会でも再三にわたりましてNPOのことについて議論させていただいたわけでありますが、本日もまた、そういった根本的な問題から今回の公益認定等委員会について一遍考える機会になればというふうに思っております。

 それで、これからの国を考えていこうという議論でありますから、私は楽しい議論をしたい。私は一切、追及型の議論はしませんので、一緒に考えていこうという議論でありますので、ぜひとも官房長官、また渡辺大臣もよろしくお願いします。

 また、後ほどちょっと国家公安委員長にもお出ましいただきますが、一時間後ぐらいでございますので、またよろしくお願いします。

 それで、まず、私が何を主張しているかといいますと、一言で申し上げると、いつもこのフリップを使わせていただいていますが、民が公を担うセクターをどうつくっていくかということが非常に重要だということ、こういう社会を目指すべきではないかというのが私のビジョンであります。

 今までは官が公を税金で担ってきたというところが主だったわけですけれども、そうじゃなくて、民も公を担う時代が必要だ。しかも、そのために、かけ声だけじゃなくて、きちっと制度を整備すべきだろうということが必要だ。制度でいえば例えば法律とかが必要だろうということで、ずっと主張をしてきまして、このフリップ、座標軸も十年以上使っておるわけでございますけれども、なかなかこのところがあれですけれども、皆さんとこうやって議論をしていきながらも、少しずつでございますけれども皆さんにも御理解をいただいているというところであります。

 それで、官房長官、官房長官はたしかアメリカのハーバード大学を出られていると思いますが、ハーバード大学がNPOだという認識というのはお持ちでいらっしゃいますか。

塩崎国務大臣 不勉強で、どういう組織であるのかという法的なステータスについては存じ上げておりません。日本でいえば学校法人なんでしょうが、それも公益法人の一つであるのは日本のあり方でありますけれども、ちょっと不勉強で、ハーバードがどうなっているのかよくわかりません。

市村委員 実はハーバード大学は、アメリカの、法的ステータスで言えばノンプロフィットオーガナイゼーションです。NPOです、まさに。しかも、官房長官が行かれたケネディ・スクールは、まさに寄附で、先ほどちょっとメモをもらいましたけれども、一九三六年に開設されています。多額の寄附でいわゆるスクールが開設されているわけです。

 すなわち、そういうふうな形で、アメリカというのは非常に、NPOが社会の基盤となっているような社会構造、システムを持っています。今、くしくも官房長官も、学校法人、これも公益法人とおっしゃいましたが、まさに公益法人そのものがいわゆるノンプロフィットオーガナイゼーション、NPOなわけですね。

 そういう認識が、この国はどうもまだないんです。つまり、NPOはNPOであって、NGOはNGOであって、公益法人が別物としてあって、学校法人がまた別物としてある。さらに言えば、政党も別物だし、宗教法人も別物ということで、何かばらばらに存在するかのような認識なんですが、そうじゃなくて、やはりNPOというのは、まさに今、公益法人改革の議論もされておるところでございますけれども、公益法人も含んだ概念であるということが非常にここは重要なところだと私は思っているんですね。

 そこで、渡辺大臣に、まさに規制緩和担当大臣なんですが、私、このNPOというのはまさに公の規制緩和だと思っているんです。公を民間も担う時代をつくっていくための、今まで官が公を握っていた時代から、民も公をやるんだという時代だと思うんですね。そう思って、この間の大臣の所信表明を聞いておりますと、「立ちはだかる岩盤は依然として強固なものがあります」ということを述べていらっしゃいますが、この思いについて、もう少し具体的に渡辺大臣の御所見をいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 これは安倍総理がよく使われる表現なのでありますが、この国の成功体験を生み出してきた戦後レジーム、これがどうもやはり岩盤になっているような気がするんですね、歴史的にはもうちょっと古くから形成されてきたのかもしれませんけれども。いずれにしても、各省ごとの縦割り、タコつぼ型システムというのは厳然として残っておりますし、年功序列というものもございまして、そういった、表の制度というよりは、言ってみれば車を走らせる内燃機関のようなところが岩盤のように変わってきていないのではないか、そういう思いでございます。

市村委員 なぜ今そういう状況になっているかということの一つの説明として、特に戦後、高度経済成長期にやはり税収が伸びたんです。それは、私たち国民もある種問題を抱えていると思いますが、結局、住民、国民が、当時は公害問題とかいろいろあって、行政に対して、何かしろ、何かしろ、こういうメッセージを送り続けたと思います。特に公害問題とか、とても個人の力でどうにもできる問題じゃないということで、もちろん、そういうものは行政がやるべきことだったと思いますが、そういったことで、何でもかんでも行政に言えば何か物事が進むかのような幻想にこの国は陥ってしまったというふうに私は思っているんですね。どうもそれが、そのまま習い性になって、慣性になって現在にも続いてしまう。だから、何か税金でやればいいんだ、そのために税金を払っているんじゃないかということ。

 もちろん、税金としてやるべきことはあります。私は、教育とか医療とか、そうしたものは当然税金で賄われるべきだと思っているところなんですが、しかしながら、税収が伸びているから何でもかんでも、ある意味では行政の方としても、税収が伸びているし、住民とかのそういったいろいろな声に対して対応できる時代もあったと思います。

 ただ、そういう時代は実はもう二十年も前に終わっているわけでありまして、しかし、そのシステムを改善できないまま、改革できないまま今日に至ったことに大きな問題があると私は思っているんです。ですから、単に税金だけで公が担われる時代は一時的にはあったかもしれないけれども、実は、長い歴史を見ると、そういう時代というのは本当にごく一部であって、ほとんどの時代は、自分たちのことは自分たちでやってきたし、みんなのことはみんなでやってきた時代の方がよっぽど、はるかに長いわけであります。

 つまり、そういう仕組み、当たり前のことが当たり前になっていく社会の仕組みというものをやはりもう一度考え直さなくちゃいけない。そうしないと、幾ら今、例えば規制緩和とか行政改革をやっても、結局、どこかでそれを担わなくちゃいけないサービスというのがあるわけですね。

 しかし、もうこれを行政には任せられない、税金もないぞ、少ないぞということになってくると、やはり自分たちのことは自分たちでする、みんなのことはみんなでするという当たり前の仕組みにもう一度思いをいたして、じゃ、そういうものをどうやってサポートしていくかという仕組みづくりを考えなくちゃいけない時代だと私は思っているんです。そのために、やはりNPOとかNGO、言葉は何でもいいんです、要するに、民で公を担う存在というものをもっときちっと日本でつくっていく仕組みづくりをしなくちゃいけないということを私は思っているわけですね。

 その中で、いろいろありまして、昨年の公益法人改革というものがあったわけであります。このときに、民法三十四条というのがありましたが、これは削除されています。民法三十四条というのは何かといいますと、いつも申し上げているんですが、今現在もありますから、民法三十四条は。この日本という国で法人格をとって公益活動をやりたいならば、いわゆる主務官庁という名のお上の許可を得なさい、こう書いてあるわけですね。許可というのは、もう御存じだと思いますが、原則禁止なわけです。つまり、民法三十四条を厳密に読むと、この国において民間が公益活動をやるというのは、これはだめだと書いてあったわけですね。ただしかし、主務官庁という名のお上がいいと言ったらいいんだよということで、この国の公益法人の仕組みがなっていたのです。

 だから、なぜ公益法人が天下り先になったか。もし私がちょっと気がきく官僚だったら、これはいいなと思いますよ。なぜならば、自分たちがいいと言ったらいいんですから。自分たちがいいと言ったらつくれるんです。ほかは規制していますから。まさに規制しているわけです。一般国民にはそんな公益法人なんかつくらせちゃいけない、我々がいいと言ったらいいんだという仕組みだったわけですから、これはどんどんつくっていくわけですよ。

 今はさすがにありませんけれども、今、予算案の審議をしていますけれども、昔は予算案の一括審議、一括採決ですから、法律の中に、ちょっと一文に、こういう財団法人、何々をつくる、こう入れているわけです。だから、私たちが知らないうちに、国民が知らないうちに、また代議士が、国会議員が知らないうちに、いつこんなのできたの、いや、先生方に認めていただいています、あのとき予算案の中に入っていました、こういう形でどんどん財団法人ができた時代もあったんです。さすがに今はないと私は信じていますが。

 そういうことで、どんどん財団法人をつくっていった時代はあるんですね、一括審議、一括採決の中に入れ込んで。そして、いつの間にか、退職した後そこに行って、そしてそこに予算がつくという仕組みをつくっていったわけです。その根拠法が民法三十四条だったわけですね。

 ある意味でいえば、この間の政府も、私はこれは大変評価しています。今はもうやめた、削除したんです。実態も大分変わっていましたから、削除したのは実態と合わせたということもありますけれども、それはそれで大変評価をしています。ところが、じゃ、やった、いわゆる国家公益独占主義をなしていた根拠法である民法三十四条がこれで終わって、さあ民間に、民に公が担えるそういう社会づくりが始まったか。そうなれば非常にハッピーエンドで、私もここで一々また議論を続ける必要はないわけでありまして、それでオーケー。ところが、ここにまたいろいろ問題があるわけであります。

 何が問題だったか。それは、じゃ、そういった時代をつくるためにどういうことが必要なのか。民が公を担う、それはそれでいいね、それはすばらしいことだ。しかし、これはもうおわかりかと思いますが、NPOがNPOで成り立つ社会というのはないわけですね。

 例えば、先ほど冒頭に私は官房長官にお聞きしました。ハーバード大学は別にNPOという意識がなくてもハーバード大学なんですね。百万を超えるようなNPOがアメリカにあるわけです。税制優遇を受けた、いわゆる寄附税制を持っているようなNPOが百万を超えるんです。いろいろな団体があるわけです。すなわち、NPOということで成り立っているわけじゃないのです。例えばハーバード大学とか何々大学とか、またはいろいろな研究所とかシンクタンクとか、そうした具体名においてみんな勝負をしているわけですね。具体名において勝負しながら、しかも、先ほど冒頭に申し上げましたように、例えばケネディ・スクールも寄附によって成り立っているわけですね。

 すなわち、何か事を起こそうとする、何か事業を起こそうとすると、当然お金が要るわけです。金融が要るわけです、ファイナンスが要るわけです。では、これをどうするかというのが重要な問題なんですね。つまり、お金がないのに、だって行政は税金というすばらしいファイナンスの手段を持っているわけですね。今、税制改正の議論を国会でしていますけれども、すばらしいファイナンスの手段を持っているわけです。法律を変えれば出てくるわけですね。それは、税制は国会が決めることですから、まさに我々国会議員が決めていることなんですけれども。

 では、NPOはどうやって金を持ってくるの、どうやってファイナンスするの。つまり、この重要な議論がないままに話が、物事が進もうとしているのが、今の現状なわけです。それで公益法人改革なわけですね。

 公益法人改革、私は大変重要だと思います。しかし、今私が申し上げてきたような流れで公益法人改革が行われているならば私も黙っていればいいんですけれども、実は今回の公益法人改革というのはそうじゃないんですね。流れが違うんです。流れが違うからだめだと言っているわけじゃないです。いいんです。すなわち、先ほど申し上げたように、どうも公益法人、おかしくなっているぞ、これを何とかしなくちゃいけない、これは大変重要なことでありまして、まさに行政改革ということで、これの一環で行うということでやってきたんです。

 でも、これはあえてきょうお聞きしようと思ったんですけれども、もう私の方から申し上げますが、公益法人というのは、先ほど申し上げたように、民法三十四条法人なんです。民法法人ということは何かというと、公益法人というのはそもそも民の機関なんです。それをなぜ行政改革で行うかというのは、不思議に思われませんでしょうか、大臣。ちょっと一言だけ、官房長官と渡辺大臣。つまり、民の組織であるはずの公益法人改革を行政改革で行うと言っているんですね。僕は大変おかしいと思っているんですが、一言ずつ御見解をお聞かせください。

    〔委員長退席、後藤田委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 極めて本質的な問題で、明治二十九年から民法三十四条というのはできて、財団、社団については、お上が公益であると言ったものだけが公益であるということになっていました。

 しかしながら、今御指摘のように、公益法人というのはやはり民なんですね、おっしゃるとおりであります。一方で、行政の裁量でもって公益というものが何だということを定義してきた。その裁量性に関して、この官の許可権限というものをやめようじゃないかということをやろうと。

 NPOというのはノンプロフィットオーガニゼーションですから、営利企業でないものは全部入っちゃうという意味において、今おっしゃったように、学校とかなんとかも全部入っちゃうわけでありますけれども、今申し上げたように、官がこの公益というものを定義してきたという意味において、官の方を直さないといけない、そういう意味において行政改革なんだということだろうと私は思っています。

 やはり、民が公を担うということは極めて大事で、私も、実は自民党の中で長らくNGO小委員長というのをやってまいりまして、外務省に、これは税制が肝ですから税制改正要望を担げというので、外務省では担いだことのないこの税制改正要望を担いで、今の先生のような問題意識を一緒に持ってもらってやったことがございますが、今言ったように、官がやはりその裁量性を手放すという意味において行政改革なんだろうと思います。

渡辺国務大臣 今、官房長官がおっしゃられたように、許可をそれぞれの主務官庁が行って公益というものを決めていたんですね。許可というのは、私の理解だと、それまで禁止されているものを解禁してやるぞ、こういうことでございます。したがって、各省割拠主義でやるわけでありますから、各省ごとに公益の基準が違ってきているわけですね。それはちょっと今の時代にふさわしくないんだろうということで、この前の改正でもって各省の許可主義を廃止し、民間有識者による委員会、後ほど御議論になると思いますが、この公益認定の委員会は主務官庁から切り離したわけでございます。

 したがって、これはやはり行政改革と言えるのではないかと思います。

市村委員 委員会のことは後ほど。まず、そこまでいくまでに重要なことがありますので、議論させていただきたいのです。

 すなわち、今おっしゃったように、行革だということもそのとおり、いや、そのとおりというか、それでも言わざるを得ないような状況になっていたということなんですね。つまり、民のものが行政の一部に組み込まれたということにほかならないわけです。だから、これをしっかりしていこうと。

 この流れを私は全然否定するものではありません。これはこれでしっかりとやっていかなくちゃいけない。例えば、下世話な言葉で言えば天下り防止、天下りをどう考えていくかという大変重要な問題にもつながる問題でありますから、これについてしっかりとこの公益法人を見直していくというのは当たり前であるし、これはこれでやっていただいていいんです。いや、やるべきなんです。

 ところが、この問題、その観点からの公益法人改革と、今冒頭から私がぜひともいい議論をしたいといって申し上げているような民の公をつくるということとの関連、ここが実は非常にあいまいなんです。関連がないというんならそれはそれで、公益法人改革としてやるんであって、しかし、こういった大きな国の流れをつくっていく議論はまた別にある、こうなら、私は別にこの公益認定等委員会に強くこだわる必要はないと思っていますが、どうも法律のつくり方とかを見ていると、そうでもないんですね。

 やはり、民の公をどうするかというところでかかわらせながらこの公益法人改革をやろうということなので、この辺が非常にわかりにくくなって、かつ、これはきちっと議論しておかないと、今大臣は、これで規制緩和とか行政改革が進むんだというふうにもし認識をされているとすると、後になって、いや、まさかこうなるとは思わなかったなというふうになるようなことも危惧されるということもありますので、実はきょう議論をさせていただいておるんです。

 では、具体的に何が問題なのかな、こうなってくるわけですね。後から委員会のことは議論しますが、委員会のことについて言っても、例えば公益を認定するといっても、ではこの公益とは何かということも実はまだちゃんと議論していないんですね。議論していない。こうしたことも実は積み残しているんです。

 大切なのは、この委員会がどうのこうのという前に、もっと非営利法人そのものについて、すなわち、公益法人を含む非営利法人そのものについてこの国が一体どうしていくのかという、そうした議論がやはりまず先行してなければならないと私は思っているんです。民の公ですね。どうもそこが抜け落ちているんですね。

 私も、実は去年の行革委員会の場に出させていただいて、ちょっときょう高市大臣は帰られたんですが、せっかくこうやって公益法人のことを見直すんであれば、しかも、最後は政府の案は一般財団、一般社団法人法とかになりましたけれども、そもそも何を議論したかというと、政府の出していたペーパーでも、一般的非営利法人制度をつくるんだという観点でこの議論を進めておられたと思います。

 そのとき、私は大変いいことだというふうにこの場でも申し上げておったんです。一般的非営利法人制度をつくる議論、ぜひとも進めていただきたい、もうこんなものは与党だ野党だ政府だとかやっておる場合じゃなくて、とにかく重要な社会システムですから、だれがやってもいいから早くやりましょうということで申し上げたんです。ただ、私は、一般的ということにあえてつけ加えるなら包括的と。例えば学校法人とか特定非営利活動法人とか、または、いわゆる共益法人というカテゴリーに入っていくだろう同窓会とか、例えば労働組合もそうなんですが、いわゆる会員型の組織も含めて、全部ひっくるめた、まさにそれこそが政府が当時おっしゃっていた一般的な非営利法人制度だ、私はこう思っていたんですね。

 ところが、そういうのが全部どこかに、一部、やはりこれはちょっと外そう、こっちは外そうといって、結局残ったのは、民法三十四条法人と中間法人だけを対象にした制度づくりになったわけです。私、そもそも何でそうなったのかということに大変疑問を持っているわけですね。

 当時はお二方とも大臣ではなかったわけですけれども、今いかがでしょうか。官房長官、私が今申し上げたことについて官房長官としてどうお考えになるか。また、渡辺大臣もちょっとお言葉をいただければと思います。

    〔後藤田委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 恐らく、市村先生と私はほとんど同じような考えを持っているんだろうと思います。

 そもそもこの議論は、もちろん行革ということで政府でもやっていましたが、むしろ自民党の中で先行してやっておりました。私も、その中でほとんど、必ず出て議論をしてきたわけであります。

 当初は、おっしゃるように、営利法人、非営利法人というふうにまず分ける。営利は当然会社とかですね。それから中間法人というのは、前にもう法律ができていましたが、それは課税をするということですけれども、その中に場合によっては非営利法人もあるということで今回対象にしたわけでありますが、我々の当初の発想は先生と同じで、いわばシビルソサエティーといいますが、市民社会をどうやって日本につくっていくのかという発想でありました。

 しかし、よくよく考えてみると、明治二十九年から営々と官が公をすべて定義するという奇怪なことをやってきたということから、すべてをやはり見直すべきじゃないかということで我々は議論を始めました。

 ところが、ちょっとこの議論の前に、NPO法人、特定非営利活動法人というのが、これは与野党一緒になって、議連もつくって、それで一緒につくったという法律であるわけでありますし、また税制も後からくっついてきたということでやってきたものですから、これはこれで非常に使い勝手もいいということで、これと、社団、財団と、今言われているものとの、同じ扱いをするということについて、かなりNPO関係者からもいろいろな御意見が出ました。

 それから、学校法人、宗教法人、社会福祉法人、これらについても、原則は同じように扱うべきじゃないか。ところが、やはりそれなりの歴史もあって、それぞれの御意見があるということで、何もやらないで、全部一切合財やるという法律を十年、二十年かけてつくるよりは、まずはこの財団、社団から風穴をあけていこうじゃないか、少なくとも官が公益を定義するというのをやめよう、これが先に行くべきだろうということだったんですね。

 ですから、特別法の世界は、まだややそういうところが残っているわけでありますけれども、一方で、やはりNPOを大事にしたい、育てていきたい。そこで、我々自民党の中での議論も、やはり将来的には、この公益法人改革をやった後、NPOについてもその時点で少しまた考えようじゃないかと。それで、これに合わせるのがいいのか、それとも今のままがいいのか、それはまたNPOの皆さんとの意見交換もしながらやっていかなきゃいけない。今回のことをやることによって、学校法人、宗教法人、社会福祉法人にも同じようにやるべきだという意見が皆さんから出てくるならば、やはりそれはやろう。

 ですから、もとの発想は、先生と私も多分同じで、自民党の中でもそういうことで、とりあえずということでそれを整理したというのが自民党の中の議論でありました。政府は多分それを受けてやっているんだろうと思いますが、今の先生の問題意識は、極めて重要な、シビルソサエティーを日本でどう育てていくんだということでありますので、また御一緒に考えさせていただきたいと思います。

渡辺国務大臣 官と民のあり方の見直しというのは、言ってみれば永久革命みたいなものだと思うんですね。今回、先生にとっては御不満が残るかもしれませんが、我々としては、先ほど申し上げたような、立ちはだかる岩盤を少しでもこじあけたという思いはあるのでございます。

 今、官房長官述べられましたように、歴史的に、各省割拠主義の中で、例えば学校法人も社会福祉法人も、会計基準が違うんですね。もうそれぞれの歴史、それから所管を背景にしております。

 一方、NPOというのは、言ってみれば発展途上の担い手でございますから、これはできてどれぐらいたつでしょうかね、まだ十年たっていないんじゃないんでしょうか。しかし、数においては、今ある公益法人と同じくらいの数がもう既にできてしまっているわけでございます。中にはお行儀の悪いところもあったりして、新聞の社会面をにぎわしたりするところも残念ながらいるわけでございまして、そういう発展途上の状態は、今しばらくちょっと注意を払いながら見ていく方がいいのかなという判断があったのは確かでございます。

 いずれにしましても、今回の公益法人改革の中で、主務大臣の許可権限を剥奪しちゃったということは、これはもう大変な前進でございまして、一般社団、財団というのは登記だけで設立できちゃうというのも、私は大変な前進だと思っております。

市村委員 今両大臣におっしゃっていただいたことについては、私も評価している部分ではあるんです。

 ただ、ちょっと一点申し上げたいのは、これは極めて重要だと思っているんですが、NPOというのは特定非営利活動法人のことを日本で言っていますけれども、僕はこれも一つ大きな問題があると思っているんですね。NPOというのは、先ほど冒頭から申し上げているように、公益法人も含む概念なんです。これはNGOでも構いません、どっちでもいいんです。そういった意味での言葉にこだわるつもりはありませんけれども、やはり、日本で特定非営利活動法人だけがNPOとなっちゃうと、後からの議論にちょっと差しさわりが私は出てくると思いますので、公益法人を含んだ概念としてNPOというのはぜひとも使っていただきたいな、こういう思いであります。

 このNPOということ、私の言葉でございますので、ご存じのように、アメリカへ行ってもNPOでは通じません。ホワッツNPOと言われます。日本ほど、NPOという言葉がこれだけある種通じてしまっている国というのはないんですね、これは。だから、それだけに、非常にあいまいなものがひとり歩きしてしまっている部分があるので、より明確に使っていただくためには、公益法人も含む概念ということで、私はそういう思いでここでNPOという言葉は使っておりますので、ぜひともそれでお願いいたしたいと思います。

 それで、そういった意味で、今、両大臣からおっしゃっていただいた自民党の議論についても、どこかへ行かれましたけれども前の村上大臣も、これは自民党ワールドなんだから、あとは民主党ワールド、市村ワールドをつくれよ、つくればいいんじゃないかということもここで議論した覚えもありますけれども、私は、そういう何とかワールドじゃなくて、やはりせっかくそうやって自民党でもそういう議論があったのであれば、何でそこで特定非営利活動法人とか、またいわゆる学校法人とか社会福祉法人を外したのか、ちょっと残念な気持ちで今お聞きしておったんですね。

 特に、特定非営利活動法人の法制定については、私も、表へ出ていませんけれども大変絡んでいたこともありますので、あのときの議論を考えると、今回みたいにまさに準則主義的に、法人格を取りたいというところがまずあったわけです、法人格については。

 ただ、私は、法人格の議論はもちろん大切だけれども、まず税制の議論といいますか、先ほど申し上げたように、まず資金、事業資金をどうするかという議論がないと、幾らNPO頑張ってくれ、法人格を取ってくれ、どうぞ取ってくださいといったって、事業できないじゃないですか、まずはファイナンスをどうするのかという議論が最初に来なくちゃいけないんじゃないですかとずっと私は議論していまして、法人格だけとなると、かえってまたおかしなことになりませんかということは申し上げていたわけです。

 どういうことかというと、今の特定非営利活動法人も、実態を見ていただくと、ある種、一部プチ天下り先に化していると私は思っています。いわゆる政治家である、また自民党の諸先生方が議論されたようなことにはなっていない、実は。結局は、それは頑張っているんだからといって見ていると、実はプチ天下り先としてこの特定非営利活動法人が使われているという実態もあるわけですね。かつ、まじめに法人格を取ってやろうとした方たちは、何か法人格を取ればいいことが起こると思って取ってみたら、何も起こらないじゃないか、お金どうするんだ、こう言っているわけですね。

 恐らく、皆さんがおつき合いになっていらっしゃる方というのはもう本当にごく一部の方であって、だから僕は、そのごく一部の方の御意見だけを大切にしてはいけないと。やはり、本当の実態を見ていただきたい、現場を見ていただきたいんですね。現場を見ていただければ、みんな困っているわけです。特定非営利活動法人格を取ったものの、どうすればいいんですかと、私のところにも相談に来るわけですね。どうにもこうにもなりませんと。だって、お金ないんですからね、事業資金がないんだから。

 だから、せいぜい私がアドバイスしているのは、私はこれを申し上げるのは大変悔しいけれども、はっきり言って、特定非営利活動法人を支えるお金は、一般的には税金とか社会保険料しかないんだから、もう自治体に行くしかないんじゃないですかと私はアドバイスを申し上げています。つまり、そこしかないんです。すなわち、税金に頼らないで、自分たちのことは自分たちでやろう、みんなのことはみんなでやっていこうという思いでつくっていたものが、結局は、税金に頼らざるを得ないような状況になっている。税金もしくは社会保険料ですね、介護保険料に頼らざるを得ないような現状になっているということ。ここを、やはり僕は実態をしっかり見ていかなくちゃいけないと思うんですね。

 すなわち、大切なことは、やはり、民の公の世界を支えるための民の資金をどうつくっていくかという、やはりここの問題に戻ってこなくちゃいけないんです。この問題に戻らないかぬのです。先ほどからも何回も申し上げているように、ハーバード大学のケネディ・スクールも、結局寄附でやっているわけですね。寄附をするためには、税制優遇があるわけです。だから、そういった仕組みをやはり日本は広範にもっと認めていくような、そういう発想にまず立たなくちゃいけないんじゃないか、こう思っております。

 ところが、大変私、おもしろいと思っていますのは、今再チャレンジ支援というのでやっていらっしゃる中で、実は今度、民間企業に寄附をする仕組みをつくってあげるということを今政府はやられようとしているんですね。

 これは、特に雇用ですね、例えば障害者の方の雇用、あと母子家庭のお母さん方の雇用とか、そうしたいわゆる社会的に弱者と言われている方々の雇用を促進するために、税金を使わないで民間から寄附を集めて、その集めたものを営利企業に寄附をしようというスキームなんですね。これは政府がやっていることですから。これは極めてユニーク、本当にユニークだと思います。多分、世界を探してもどこにもないです。営利企業に寄附をするという仕組みをつくるということは世界を探してもないと思いますが、それをやられようとしています。

 私は、どんなことであれ、お金がそこに回る、つまり税金でないものが回っていくというスキームをつくるのはいいとは思っていますが、ただ、結局、寄附でやろうとするわけですね。つまり、こういうところに、何というか、日本の今、欠けているものというか、センスですね。つまり、そういうことをしていいのというのがあるわけですね。

 営利企業に寄附をするというようなことが、しかもそれを税制優遇するということについて、こういうことがあるとすれば、やはりこれはおかしいな、もうちょっと細かくというか、もっと物事を深く考えなくちゃいけないんじゃないかなと、極めてそういうふうに思うわけであります。

 決してお金が出ることをだめと言っているわけじゃないです。事業に対してお金が出ることはいいと思います。税金以外のものを何とか回していこう、その発想がまさにこの民の公へつながりますから、それはいいんです。いいけれども、どうも、そういうところには税制優遇を認めていくという、非常に部分的に開放していくという姿勢なんですね。私は、こういう姿勢じゃなくて、政府としてはことしの秋に税制改正をやるということで、多分もう与党の皆さんの中でも議論されていると思いますが、そういう抑制的な寄附税制ではなくて、もっと広範に寄附税制を認めていくというような、そうした流れをぜひともつくっていく必要があると思っていますが、両大臣からのお言葉をいただきたい。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、市民社会をつくるというときの決め手は税だというふうに思います。とりあえず準則主義で今回の財団、社団もつくれるようにしようということで、もともと、いわゆる特定非営利活動法人、いわゆる日本でいうNPO、これについても準則主義でやるようになっているわけでありますが、そういうことでありまして、要は、民の公益的な活動については、民のお金が行くときにはそれを税で推進をしよう、バックアップをしてあげましょう、これが基本だろうと思うんですね。

 ですから、認定NPO制度で寄附についての税制をなるべくやりやすいようにということで、私もNGO小委員長としては本当に随分苦労してやってきて、まだ私も、個人的な思いとしては、全く、これはもっとやれることがあるな、こう思っているわけであります。いろいろな議論があるので、そう一朝一夕にはいかないわけでありますけれども。

 これからも財政も厳しき中にあって、それから、民の活動を中心でいく国の形というものを考えてみると、やはり今申し上げたように、民民の活動を税でサポートしていく、そういう税制をどんどんやっていくことが、実は市民社会をつくって民間の世界が元気になる、一方で、官が余計なことをやらない中でいけるという、税金の節約にもむしろなるのかなということを考えてみれば、この部分での税制のあり方というのはもっともっと考えていかなければいけないと私も思っているところであります。

渡辺国務大臣 いわゆる官尊民卑のカルチャーを残そうと思えば、とにかく税を使ってたくさん集めてそれを配分するという仕組みがいいのかもしれませんが、我々は、当たり前の自由社会を目指すわけでありますから、やはり簡素で効率的な政府を目指していこう、そのためには民間が公を担う場面をもっとふやしていこうという発想は同じでございます。

 NPOが活動するには実際資金がなければうまくいかない、これもよくわかっております。ですから、今回は、先ほど申し上げましたようにNPOは発展途上の段階にありますので、残念ながら手はついておりません。しかし、公益法人改革の方では、公益認定、これを主務大臣から取り上げちゃうわけでありますから、これは大きな前進であると考えております。

 また、再チャレンジ税制は、これは今の過渡期の中にあっての苦肉の策だと御理解をいただければありがたいと思うんですね。とにかく、高齢者の定年引き上げ、積極的に雇用する企業とか、障害者を積極的に雇用する企業とか、母子家庭の母を積極的に雇用する企業とか、そういうところには地域再生計画を絡めて税制の優遇措置をやっていこうじゃないかという、今の制度でできる苦肉の策をやってみようということでございます。

市村委員 まさに苦肉の策だとは思いますが、ただ、やはり将来に禍根を残さないように、営利企業に寄附をするということは、これはどうも問題があるだろう、かなり問題があると思いますので、そこはやはり将来に禍根を残さないように、寄附という言葉を使わなくて、もっといろいろ考えたらあると思います。営利企業に寄附という、これはやはり、だから世界にもどこにもないようなユニークな話になってしまいますので、それでもやるというのであれば、それはそれでいいですけれども、ただ、将来何かあったときに前例主義になって、ほら、日本という国は営利企業にだって寄附するんだよ、どんどん寄附しましょう、こういうことでいいのかどうかというのは、ちょっとまた考えなくちゃいけないと思います。

 それで、官房長官が記者会見でいらっしゃらないので、渡辺大臣と議論を進めたいと思いますが、いよいよここで公益認定なんです。本当はこれ、官房長官と議論をしなくちゃいけないことだと思うんですけれども。

 先ほどから申し上げているように、今回の行政改革の中で公益法人改革をやることについて、それが本当に今両大臣からおっしゃっていただいたような観点のみでやるのであれば別に私はいいと思いますが、ただ、将来に向けたいわゆるシビルソサエティーをつくろうとか規制緩和をやっていこう、つまり官尊民卑の社会をどうかしていこうという観点でやる場合において、本当にこの今回の公益認定委員会という制度がいいのかどうかということは疑問を持っています。先ほども申し上げましたけれども、やはり公益認定というものを軽々に考えちゃいけないと私は思っております。

 これはそうじゃないということもきのうお伺いしたんですが、恐らくこのひな形としては、例えばイギリスのチャリティーコミッションを一つの参考にされている可能性があるんですね。しかし、このチャリティーコミッションと今回の公益認定委員会は明らかに違う組織であります。

 チャリティーコミッションは、日本で例えて言うならば会計検査院とか公取のような存在なんです、イギリスにおいては。まさに、今回は内閣府に置きますけれども、それとはもう全然独立したものとしてなければならないわけですね。ところが、今回は内閣府の委員会という形になっている。

 あと、チャリティーコミッションというのは、まさに三百年以上の歴史にわたって、いろいろなことを経験則的に積み上げてきた組織なんですね。つまり、これは公益なのか、これは公益として認めていいのかどうかですね。やはり税制優遇を与えていくわけですから、税制優遇を与えるということは、それだけの公のものでないといけないわけですね。税をまけるということでありますから。それを営々と議論して積み上げてきている組織なんです。そういうものとして今存在するわけですね。特に、イギリスの場合はいわゆる王室社会ですから、王室との絡みもこれはあるんです、やはり。

 だから、そういったものと、この今回の場合、公益認定委員会はおのずと違うということでもありますし、だから私は、あくまでも公益法人を整理するため、公益法人についてそれを改善していくための委員会というならば、これはそれでいいんだろうなと思うけれども、公益認定をする、こうなってくると、まさに、公益とは何ぞやとか、将来どういう社会をつくるのかとかというような、もっと根本となる前提の議論がないと、私は、公益認定というのを一省庁の、一省庁といっても内閣府ですから統括省庁だとは思いますが、内閣府の一委員会として存在ならしめることが本当にいいのかどうか。

 これもやはり将来に禍根を残しちゃいけないという思いでありますが、渡辺大臣はどうお考えになりますか。

渡辺国務大臣 公益認定の方でございますが、公益とは何ぞやということについて、今までは、御案内のように、各省ごとの裁量でこれを決めていたわけでございます。しかし、今回は法の中で明確な定義を置いております。二条四号「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する」、これでは明確ではないではないかという御指摘もあるかもしれませんが、確かに、こういった不特定かつ多数の者の利益増進というのは森羅万象、多岐にわたるのがこの世の常でございます。

 したがって、せんだって国会の同意人事でお認めをいただきました七人の委員の有識者に加えまして、さらに六分野数十名の有識者にお集まりをいただいて、やはりもうちょっと具体的なガイドラインは決めていく必要があるかなとは思います。

 いずれにいたしましても、イギリスのチャリティーコミッション、まあ日本版チャリティーコミッションというわけではございませんけれども、それをモデルにしたというよりは参考にして、日本に合った公益認定の体制を図ってまいりたいと考えております。

市村委員 ですから、きょう両大臣とも議論をさせていただいて、思いの方向は別にそう違っているとは思っていないんです。ただ、これをやるときに、やはりしっかり考えておくべきことを考えておかないといけないと私は思っているんですね。

 だから、あるものをひな形にしたり参考にするということでやるのはいいんですけれども、では、例えばチャリティーコミッションがなぜそこにあるのかとか、アメリカであれば、なぜIRSに税制優遇の判断を任せているのかとか、それはそれなりのいろいろな積み重ねがあって、そこに至っているわけですね。どうもそうした議論がないまま、また、そういったことが、国会の審議をして、そして賛成、反対をしていく国会議員の中で共有されていないままに物事が進んでいることに、私は大きな問題を一つ感じるんですね。

 とにかく、これは極めて将来の日本にとって重要なことだということは、これは渡辺大臣も、恐らく塩崎官房長官もわかっていただいている。特に塩崎さんは、自民党の中でそれをやってこられたとおっしゃっているわけですから。ですから、やはりそうしたことについてもう少し深い議論をしておかないと、はい、公益認定を七人の委員会の委員に任せますよということで進んでいいものではないと私は思っておるんです。

 それで私は、同意人事については、人がどうのこうのという以前の問題があると思いましたので、きのうはちょっと棄権させていただきました。判断がつきません。いいか悪いかという判断する前の問題がありますから。

 だから、そうしたもっと根本的なことを、やはり僕は、政府部内でも、特に渡辺大臣におかれては公の規制緩和という観点から、ぜひとももっと議論を深めていただきたいなと。そして、この公益認定委員会というものが本当に今の段階で、こうした議論がまだ深まっていない段階で公益認定なるものを名乗るような委員会を本当に設けていいかどうか、このことはぜひとも僕はもう少し思いを持っていただきたい、こういう思いであるんです。

 それで、実は、きのうの総理に対するいろいろな質疑の中で僕が大変おもしろいと思ったのは、我が党の池田議員がいわゆる認定特定非営利活動法人についての質問をさせていただいたときに、結局、国税庁が税の優遇をまとめてやっているんですね。それに対して、それはいいのかという観点から質問した中で、池田さんも、だから第三者機関をつくるべきじゃないかということなので、当然そのとき政府としては、いや今回の公益認定等委員会がありますとおっしゃるのかと私思ったら、何と総理は、「また、認定NPO法人」、私はこの認定NPO法人という言葉は使ってほしくなかったんですが、認定特定非営利活動法人の認定は、「国税の優遇措置について全国一律の基準で認定するものであることから、諸外国における実態等を踏まえ、国税庁長官が認定する制度としております。認定に当たっては、客観、明確な数値基準によるものとしており、国税庁が認定権限を持っていることに無理があるとの御指摘は当たらない」と。

 すなわち、国税庁がやるということについては、税制認定をするということについては、政府もこれはいいというふうに思っていらっしゃるということを改めて認識しまして、なかなかこれはいいなと。私も、同意見を持っていますから。国税庁でいいんじゃないかという意見を持っているものですから。

 だから、そういった意味では、本当にイギリスのチャリティーコミッションのようなしっかりとした知恵が詰まった組織を独立委員会として、つまり公取や会計検査院と同じような組織として日本が持つんだ、こういう意識でつくられているなら私はいいんですけれども、今回のような、申しわけないけれども中途半端な組織をつくってしまったことは、僕は将来に禍根を残すと思っているんです。

 ならば、まだ税制にかかわる議論をことしされるなら、国税庁でいいというふうに、政府もそうだと言い切っていらっしゃるわけですから、国税庁に税制優遇については認定を任せる。アメリカでいえばIRS、すなわち、国税庁と日本でいう社会保険庁を合体したような組織ですけれども、歳入についてはすべてそこが賄う。そうしたIRSに専門スタッフを数百人と置いて頑張っているんですね、やっているわけです。だから、そういう仕組みの方がいいんじゃないかと私は思っておるんですけれども、渡辺大臣、御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

渡辺国務大臣 御案内のように、税の優遇措置の制度設計はこれからでございます。恐らく、ことしの秋以降、寄附税制の抜本見直し等々の課題も含めて、そういった税優遇の公益認定の世界における制度設計も行われるものと承知いたしております。

市村委員 その設計をされるときに、政府も国税庁でいいんだという、総理大臣がそういう御発言をされているわけでありますから、ぜひとも、特に税が大切なんです。本当は税の議論を一番最初にやらなくちゃいけないんですけれども、もう逆転しちゃっているんですね。

 それで、これも大臣にぜひともわかっていただきたいのは、まさに官の皆さんの思いがあるということをぜひともわかっていただいて、まさにこれこそ大臣がおっしゃる、立ちはだかる岩盤は依然として強固なものがある、私はそういう思いで大臣の御発言を聞かせていただいておりましたので、これについて、官は官の方で皆さんうまいことをおっしゃいますから、ぜひともそれに負けないで、立ちはだかる岩盤に立ち向かっていただきたい。私はこのことを強くお願いしまして、また、与党の議論もそうした思いの中で、ぜひとも税制優遇については広範に認めていくという立場からこの税制改正議論を進めていただきたいな、これしかないと私は思っております。

 きょうはこの件についてはここで終わりたいと思いますが、ぜひともこのことを最後にまた強くお願いしまして、一言いただきまして、これについては終わりたいと思います。

渡辺国務大臣 委員の御見識をきょう初めて私もお伺いをしたわけでございますが、私が事前のブリーフで聞いていたよりは非常に親しみを感じたのでございます。話し合っても全くギャップが埋まらないという人ではないな、こういう感じを受けた次第でございまして、これから御指摘のような公益認定、大変な作業が始まります。適切な御提言をいただくと同時に、応援の方もどうぞよろしくお願いいたします。

市村委員 そこの公益認定については、ちょっとまだ議論が必要だと思います。

 最後に、これは答弁を求めませんが、例えば、毎週三十件をいろいろと検査していく、それで結論を出していくというペースでやらなくちゃいけないということはブリーフィングで受けているわけですけれども、私は、前職、国会に送っていただく前は何をやっていたかといいますと、NPOに対する支援をする基金の運営をやっておりました。これで年間三十件ぐらい、本当に真剣にやると。どこにどういうお金を出していくかというのは、これは大変なことなんです。単にお金をぽんぽん上げればいい、出せばいいというわけじゃないです。

 やはり本当に有効な事業なのかどうかというのをまず見定めながら、現地、現場に足を運んで、皆さんとも何回も議論を重ねた上で、皆さんに、じゃ、このお金を有効に役立ててくださいということで、それも数十万単位ですよ、多くても数百万単位のお金なんですけれども。それでも一つの助成案件を審議し、決めていくのにどれだけの時間がかかるかなんですね。

 それを三十件も、特にこれだけ歴史がある公益法人を毎週三十件見るなんて、僕は物理的に絶対に不可能だと思っておりまして、これについては私も一応一案あるわけでございますけれども、それはまた改めてこの委員会の場を通して議論させていただきたいと思います。きょうはその指摘だけにとどめさせていただきまして、これについての議論は終わりたいと思います。どうも本当にありがとうございます。

 では、溝手国家公安委員長、お待たせしました。

 あと残りの十五分につきましては、まさにここの場でも何度も申し上げさせていただいておりますが、ひき逃げ、飲酒ひき逃げ等を含めました、いわゆる自動車運転事故の厳罰化についてちょっと議論を進めさせていただきたい、このように思っています。

 それで、今回、まだ閣議決定はされていないと思います。ですから、まだ閣議決定される前に私はこれは議論をさせていただきたいと思って、きょうあえてお時間をとっていただいた次第でありますけれども、今政府が一つの案として持っているものによりますと、今までは最高七年六カ月であったものを、端的に申し上げると十五年まで引き上げられるような制度をお考えだということで伺っています。

 私は、今回の政府の取り組みについては、一部高く評価しているところもあるわけであります。と申しますのも、これまでは、とにかく事故を起こして、酔っていても、逃げても、結局七年六カ月というのが最高ということだったんですね。それを今回は、逃げたら十五年ですから、酔っていても酔っていなくても、逃げたら十五年ということに今回変わっているんですね。すなわち、逃げなかったらば最高十年六カ月もしくは十年なんですが、逃げると十五年ということで、そういった意味では、今回の法改正では、逃げると損だということにはなっています。

 これまでは、逃げなくたって、酒に酔っぱらって事故を起こしたら七年六カ月でしたし、酒を飲んでいなくてもとにかく事故を起こして逃げたら七年六カ月でありましたが、逃げなくても七年六カ月だったんですね。逃げる、逃げないは関係なかったんです。

 ところが今回は、逃げると罪が重くなる。それについては、確かに、逃げることに対する抑止効果、いわゆる救護義務違反についての、それを怠ることについての一定の抑止効果はあると私は見ています。

 ただ、その話と、私がまだ国会に来させていただく前、二〇〇一年でしたでしょうか、まさに国会の先輩方が御議論されてつくられた危険運転致死傷罪、これが最高刑、いわゆる危険運転してかつ逃げちゃうと、最高二十五年なんですね。

 恐らく、このときにも、こんな量刑、ここだけ重くしていいのかという議論は多分あったんだと思います。あったけれども、やはり社会の、国民の意識、国民の思いというのを踏まえて、国権の最高機関たる国会は、量刑のバランスとかいうことよりもまず国民が今求めているもの、やはり国民感情に沿ったものということで危険運転致死傷罪をつくられたんだと、そのとき、私はいませんでしたけれども、恐らくそういう議論があってできたんだろうなと私は思います。

 つまり、この思い、やはり国会が国権の最高機関、全国民の代表である国会議員がそろって決めたこの危険運転致死傷罪は、危険運転をして逃げたら二十五年だという、ここまで重い、極めて重い量刑を科してもいいということをしているわけですね。

 この二十五年と今回の十五年の間には十年の開きがまだ残っているんですね。これについてどう考えるかということについて、やはりもう一度、閣議決定をされる前に私は国家公安委員長及び局長に御意見を賜りたいという思いで、きょう質問させていただきます。いかがでしょうか。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 前回、十二月の休会中の議論であったと思いますが、逃げ得の問題が生じないように、その当時はだれの責任だということがあったわけです。やっと我々、国会の御判断を仰ごうというステップになったわけでございますが、お互いに理解をし合って、ひき逃げ犯に対するいい結果が出ることを期待いたしております。

 御承知のように、警察庁において検討をしておりますが、現在の法定刑の上限を五年から十年にするということを検討しているわけでございます。我々、現在までの検討の中では、かなりひき逃げを抑止する効果があるものと考えているところでございます。

 特に、後から極めて専門的な意見もまた出るかと思いますが、先生のせっかくの議論でございますので私の見解を申し上げたいのですが、業務上過失犯というのが最近は非常に多岐にわたっております。いわゆる従来からあった古い考え方の業務上過失致死に加えて、医療の問題にも出てきておりますし、交通事故の問題にもぶち当たって、これを何とかしなくちゃいけないという動きが出ておるわけですね。

 これは、ある意味では非常に革命的なことであるし、今回の、業務上過失という一つの範疇の中から道路交通、いわゆる自動車運転に関する問題をピックアップして先行してやろうということになったのは、今ここで皆さんと議論してきたことが非常に大きく影響しているし、先生が今まで頑張ってこられたことが大変効果としてあらわれているんじゃないかと思います。

 あと、さらにどうしようかということになるといろいろな議論があろうかと思いますが、我々としては、庁内では精いっぱい、この辺ではなかろうかなというところで取りまとめていきたいという考え方を持っているところでございます。

矢代政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の点について、これは御理解いただきたいと思うのですが、事故とひき逃げとは行為として一応別のものでございます。つまり、事故は業務上過失致死傷罪ないしは危険運転致死傷罪ということになります。それで、通称ひき逃げと言っておりますが、これは正確には救護義務違反で、その後に救護の義務を果たさないということでございまして、それぞれの責任を問う対象は別なのでございます。

 そこで、御指摘の危険運転致死傷罪とひき逃げの後の捜査の結果でございますが、処断刑について差があるではないかということについての格差ですが、御指摘の点について一つの角度から、仮に、ひき逃げの原因となった交通事故を後で検挙いたしまして、その中に危険運転致死傷罪に該当する場合が潜在する可能性があるので、ひき逃げの法定刑も危険運転致死傷罪が成立した場合と同等にすべきであるというような趣旨であるとしますと、これは法制上、そのようなのは困難であると思います。といいますのは、行為者の責任、行為に対して責任を問うわけでございますので、したがって危険運転致死傷罪があったかないかわからないままに同等の刑を考えるというのは、これはそのような法定刑を定めるのは困難であると思います。

 それからもう一つ、委員の御指摘を伺いながら、では、ひき逃げをした行為を考えたときに、ひき逃げをした人が、危険運転致死傷罪を免れようということで逃げたということが仮にあるといたしまして、そういったものを防ぐために救護義務違反、つまりひき逃げの刑を重くすべきである、そういう御指摘であるとしますと、危険運転致死傷罪といわゆるひき逃げとの法定刑に差があるためにひき逃げを誘発するかどうか、これはちょっとまた別の議論でございますので、もしそうであればまた御説明したいと思うんです。

 それはともかくといたしまして、今申し上げましたように、個々の犯罪の法定刑はその行為のそれぞれの悪質性に即して判断すべきものでございますので、他の犯罪の隠ぺいを防止するために他の方の法定刑を加重するということも、これも通常はなかなか考えにくいことでございまして、したがいまして、私ども、今回御提案しようとして今検討しておりますけれども、ひき逃げに対する悪質性は何か、それに対してどこまで処断刑を引き上げることができるのか、ほかの刑とのバランスを考えながら検討しておるわけでございます。

市村委員 よくわからないところもありまして、ただ、さっきおっしゃっていただいた中で、とにかくもし危険運転致死傷罪に自分がかかると思っている人間がいて、その人が事故を起こして、これはまずいぞ、酒を飲んでしまって運転した、ぱっと気づいたら事故を起こしちゃった、さあどうするか、どうも自分は危険運転致死傷罪になるのかもしれないと思った人がいた場合、逃げたら十五年なんですけれども、とにかく危険運転致死傷罪、まず酒を飲んでいるというのは結構大きなポイントになってくると思いますから、やはり酒に酔って事故を起こして、どうもこれは危険運転致死傷罪になられたら嫌だなと思ったら、多分逃げる余地を残しちゃうんですね、今のままだと。二十五年より十五年の方がまだましですから。二十五年になっちゃう可能性があるわけですね、特に相手が死んでしまった場合は。だから、まだここで逃げ得の余地が残っているのではないかということを御指摘申し上げているところなんです。

 だから、警察庁も今回、五年から十年に道路交通法を改正されて、ひき逃げをした場合は十五年になるということにしたことについては、先ほど申し上げたように、逃げたら十五年、逃げなかったら最高十年六カ月ですから、これについては、この比較においては逃げ得はないんですけれども、自分が危険運転致死傷罪を適用される可能性があるな、特に危険運転致死罪を適用される可能性があると踏んだときに、逃げると、やはり逃げた方が十年下がるぞ、十五年よりは二十五年の方がまだ嫌だなといった場合に、まだ逃げ得を心に持たせてさらに逃げるという、それでもやはり逃げるという余地を残してはいないかということをある意味申し上げています。それに対してきちっと考えておかないと、やはり依然として逃げ得という余地があるんじゃないかということを私は申し上げているんですね。

 それともう一点、ついでに一緒に教えていただきますが、川口で幼稚園の児童の列に車が突っ込んで四人の幼い命が失われたという事件がありました。あれも結局、今の法律でいくと五年なんですね。つまり、酒に酔っていない、別に逃げたわけでもない、そしてスピード違反も、あそこは六十キロだといって、そうかと思うけれども、六十キロ規制だったので六十キロ台ぐらいで走っていたということでこれも問えないということで、最高五年ということで、今、業務上過失致死傷罪ということで五年だということです。

 これ自体もやはり、私も小さい子供を持つ親の身とすれば、これはたまらないなと。窃盗犯ですら十年ですよ。窃盗ですら最高十年まであって、後は司法が決めることなんですね。一カ月から十年までの間で司法が決めることであって、今の状況だと、我々立法府が五年まででいいというふうにしてしまっているわけですから、結局五年なんですね。

 私は、司法にこれは任せる意味でも、今回、自動車運転致死傷罪が七年、過失致死傷罪が七年ということになっているようでありますけれども、これが七年というのも、四人もの命が失われているにもかかわらず七年でいいのかというのは、やはりあると思います。だから、こうしたことも含めてこの自動車運転過失致死傷罪を、例えばこれが十五年になると、ある意味で言えばそれで逃げた場合は、合併罪というんですか併合罪というんですか、二十年を超えるような刑期を与えることができるような状況になるということもあります。

 ですから、そういったことで、やはり自動車運転過失致死傷罪をもっと量刑を重くするとか、例えばひき逃げを十年をもうちょっと重くするとかすれば、ある意味では今のいわゆる危険運転致死傷罪の量刑の範囲に近づいていくような話になるということでありますので、ぜひともこうしたことでもう一段の検討を僕は警察庁及び法務省で加えていただきたい、こういう思いであります。

 きょうは法務省からも局長さんがいらっしゃっていますので、まず大臣からお話しいただいて、後、両局長から明確にお答えをいただけたらと思います。

溝手国務大臣 御指摘の御意見は理解をいたしたところでございますが、今回の改正で、道路交通法の面ではこれが精いっぱいのところではないかという感じを持って対応しているところでございます。

三浦政府参考人 一つは逃げ得の問題の御指摘がございましたが、もとより、ひき逃げをした方が得をするということがあってはならないということは当然のことでありますが、一点申し上げておきたいのは、事故を起こした後、逃げた場合に常にそれが軽くなるというわけではありませんで、その場合でも危険運転致死傷の罪を適用するということは当然あるわけでございまして、現実にそのような形で処理をされた事例も多いということを御承知いただければというふうに思います。

 それから法改正の点でございますが、現在、法制審議会におきまして、自動車運転による過失致死傷事犯についての罰則のあり方について御審議いただいております。先生の御意見のような御指摘、御意見もその法制審議会の中で被害者、遺族の方々から意見としてちょうだいしているところもございまして、そういった御意見を踏まえつつ、また、刑法の中の故意犯、過失犯の法定刑のあり方等、さまざまな観点から御審議をしていただいているというところでございます。

矢代政府参考人 今の御説明と重なった御説明になりますが、一点目の、昨年、危険運転致死傷罪で警察では三百七十九件検挙しております。そのうちの百十二件はひき逃げでございます。これをアルコールの影響、飲酒の危険運転致死傷罪だけに限りますと百五十九件検挙しておりますけれども、そのうちの四十二件は実はひき逃げでございます。

 したがいまして、事故の捜査をやりましてその事実を立証するというのが原則でございまして、そこで、ひき逃げの際どこまで判断して逃げるかということでございますけれども、通常、やはりとっさの場合の判断で、まずいということで逃げるわけでございまして、自分の量刑はどうなるかということではないのが通常だろうと思います。現実に、飲酒によりますひき逃げ事故というのは、罰則強化の後、このところ累年減少しておるわけでございます。

市村委員 もちろん、逃げたら捕まる、逃げても捕まるケースがあると思います。そのことをおっしゃっているんだと思います。だからといって、では逃げないかというと、やはり逃げるんですね。リスクは冒すんです。だから、一〇〇%捕まらないならみんな逃げると思います。逃げても捕まる。だけれども、逃げたらひょっとしたら得になることがあるかもしれないと思うから逃げるんです。

 いろいろ報道もされていて、特に酒を飲んで酔っぱらって運転する可能性が高い人ほど、どうも真剣にこの議論を見てテレビもチェックしているようなんですね。どうもそういうことらしいです、いろいろお聞きしますと。ですから、極めてここで話されていることというのは、なるほど、やはりそれでいいんだ、そういうことかというふうにして、まだ逃げたら得だなというような意識が幾らかでもそういう人たちに芽生えているとすれば、大変大きな問題だと私は思います。

 だから、逃げても捕まるよということはあるんでしょうけれども、しかし、逃げたら得することもあるよということが残っていることが逃げ得の意味でありますので、やはり逃げても得するようなことがないように制度をしっかりとつくっていくということが必要だと思います。ですから、法制審議会でも今議論されているんであれば、やはりこの間の川口のケースも考えて、自分の子供が巻き込まれた、自分の親族が巻き込まれた、友人が巻き込まれたという観点から考えれば、人の心があれば当然どうすべきかというのはわかるわけです。

 最後に申し上げますが、危険運転致死傷罪が出てきたとき、私はここにいませんでしたけれども、国会の諸先輩方はそういう議論を経た上で量刑を重くしたということ、国会の意思はそこで示されているということだと私は思いますので、そのことをきちっと踏まえた上でやはり行政府の方では対応していただくことが必要だろうと思います。そのことを最後に申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

河本委員長 次に、泉健太君。

泉委員 民主党の泉健太でございます。引き続き質問をさせていただきたいと思います。

 この内閣委員会、いよいよ大臣所信に続いての一般質疑がスタートしたわけですけれども、非常に、日に日にというか年々、この内閣委員会が所管をする事務というか分野が多くなっているというふうに思います。きょうも、あえてと言うとなんですが、多くの大臣の皆様にお集まりをいただきました。高市大臣にもお越しをいただくということであったんですけれども、体調不良ということで、きょうは平沢副大臣の方にお越しをいただきましたが、こうして内閣委員会に勢ぞろいをしていただいて審議をするというのが私は本来の姿であるということで、きょう、まずお越しをいただきました。

 一方で、後ほど触れますけれども、内閣機能の強化に伴って大臣あるいは所管をする分野が大変ふえているんですが、院の方の内閣委員会というのは一回も増員というのはなされておりません。そういうことから考えますと、今審議が大変きつい状況になっておりまして、例えば一大臣当たりにおいての質疑時間ということでいうと、その辺というのはなかなかとりにくくなっている現状がございます。そういったことも、これはあくまで院の問題ではありますが、各大臣にも御認識をいただければというふうに思っております。

 それでは、質問に入らせていただきたいというふうに思います。

 まず、やはり内閣を構成されている皆様ということで、改めてですけれども御認識、御見解を。私は、内閣委員ということでありますけれども、ずっと国会では少子化担当もさせていただいてきております。そういったことからも、皆さんには改めてですがお伺いをしたいというふうに思っております。それは、あの柳澤大臣の発言の問題であります。

 女性は産む機械、装置というところの発言だけが殊さら取り上げられてひとり歩きをしているという感も、これは私も感じているところであります。しかし、その発言に端を発して、非常に大臣としての認識、見解がどうなんだということが多くの方から問われている状況にあったんだと思います。

 そして、私は、その発言について、各大臣がまずどのような御認識を持っておられるのか。具体的に言えば、あれは柳澤大臣が本来言おうと思っていたことと違うことをついつい表現で言ってしまったものだというような御認識なのか、いや、やはり年齢的にも、もしかしたら過去の自分の成長の中でそういう経験を持たれてそういう認識でおられたけれども、やはり問題だということがわかって、今それを改めるというところに至っているのか。その辺のことについて、改めてそれぞれの大臣にお伺いをしたいと思います。

 では、溝手公安委員長の方からお願いいたします。

溝手国務大臣 私は、柳澤大臣とは同じグループに属しておりますし、長い間つき合っておりますが、大変心の優しい、いい人だと思っております。

菅国務大臣 柳澤大臣がなぜあのようなことを言ったかというのは、私はわかりません。しかし、その後に表現として、御自身も、講演の途中と私は聞いていますけれども、すぐ、ごめんなさいねという形で表現された。しかし、不適切な表現であった、こう思っています。

山本国務大臣 配慮を欠いた、女性を初め多くの方々の心を傷つける極めて不適切な発言であったと思っています。

大田国務大臣 同じ内閣のメンバーとして一緒に仕事をさせていただいていて、柳澤大臣のお人柄も存じ上げているつもりです。なぜ柳澤大臣がああいう発言をされたのか、私もわかりかねます。極めて不適切な表現であったと感じております。

渡辺国務大臣 私のおやじも、実は失言語録というのがあるくらいに失言の多かった政治家でございます。

 考えてみると、二通りあったような気がするんですね。一つは、確信を持って、失言の体裁をとってアピール効果をねらったものがございました。ここで何とは言いません。もう一つは、明らかに自分の本意でない言葉を発してしまったというケースであります。

 例えば、前の日にNHK特集か何かを見ていて、アメリカの破産制度、これが、チャプターサーティーンというもので、日本もそうなっているわけでございますが、簡単に破産ができる。実は、レーガノミクスの三つ子の赤字の解説をしている中で、その場面を思い出しちゃったんですね。そこで、まあアメリカではいろいろな人がいてね、あっけらかんのかあだと言って怒られたわけでございますけれども。

 これは、黒人差別を言うつもりは全然なかったんですが、たった一言、いろいろな人がいてね、黒人とかねと言っちゃったんですね。これは、差別とは本人は思っていなかったけれども、ああ、しまったなというので大変反省をして撤回をし、その後、ナッシュビルにあります黒人専門の医学校、メハリーカレッジというところにたしか五年間連続して寄附をした。私のおやじが死んだときに、そのミッチー奨学金を使って卒業した学生さんから大変なお手紙をいただいた記憶がございます。

 いずれにしても、政治家の口から出た言葉が政治家の本意でない場合はあるわけでございまして、柳澤大臣のケースはそういうケースではなかったかと存じます。

平沢副大臣 私もよく講演しますけれども、講演の途中で、一時間とか三十分とか話しますと、たまたまついつい本意でないことを言ってしまうということもありまして、その場で取り消すこともあります。

 今回の柳澤大臣の場合も、その場で例えが不適切だということを言われているということで聞いておりまして、今渡辺大臣が言われたように、これは本意ではなかったのではないかなと思っております。

泉委員 官房長官も今そろわれましたけれども、今柳澤大臣の発言のことについてお伺いをしております。

 引き続き質問を続けますが、今いろいろと不適切であったというようなお話がございました。これはどうしてこういう発言をしたのかわからないということではありましたが、大臣である以上は、それは人それぞれ性格、考え方はあるでしょうけれども、やはり改めていただかなければならないところは改めていただかなければなりませんし、わからないでは済まされないところもあるというふうに思います。同じ内閣を構成する皆様でありますから、そこはぜひ改めていただくことも、大臣同士で御進言という表現も変かもしれませんが、やはり今の時代、大臣、ここはこうなんですよということは、今こうして御認識を持たれている皆様はぜひそういうことを言っていただきたいというふうに思うんです。

 といいますのも、その産む機械、装置の話だけではなくて、例えば、一人頭頑張ってもらいたいというような言葉であったり、あるいは二人持ちたいという健全なというフレーズであったり、その後も、こういった認識の中に、どこかにやはり気負いというふうに私は百歩譲って表現をさせていただきますけれども、厚生労働の少子化、子育て支援に携わる大臣として、何とか結果を残さなければならないという思いも多少あるのかもしれないなというふうにも思っているわけですが、少子化対策ということの考え方そのものを、柳澤大臣は、もしかしたら勘違いをなされているのではないのかなというふうに私は心配をしております。

 その意味で、少子化対策というのは、まず一つ、少子化に対応した社会システムをどうつくるのかということが少子化対策であって、産めよということではないということですね。産む目標、出生率の目標を設定することではまずないということを、各大臣、どういうふうに御認識を持たれているかということをお伺いしたい。少子化対策は、子供をふやすということではなく、少子化に対応した社会をつくる、これがまず一つ。

 そしてもう一つは、今いる子供たち、虐待やいじめ、いろいろな問題に直面をしている子供たちをいかに大切に育てていくかという観点であったり、今子供をまさに産もう、そしてこれから産もうとしている、その産もうと思っている人たちが産みやすい社会をつくるにはどうしたらいいかということを考えるのが少子化対策だというふうに私は思うわけですが、それについて、また各大臣になりますが、御意見をいただきたいというふうに思います。

塩崎国務大臣 出生率を目標にするのはおかしいじゃないか、こういう話ですね。

 今、私どもも新しい少子化の会議を立ち上げました。戦略検討会議をつくったわけでありますが、やはり基本的には、結婚をしよう、あるいは子供を持ちたい、こういう人たちがその思いを遂げられるようなそういう社会にしていくべきではないのか。これは恐らく、かなり社会の根っこからいろいろ考えなきゃいけないことだと思います。企業もそうですし、そういうようなことを幅広く検討していく中で、それぞれの生き方というものが全うできるようにしていかなきゃいけない、こういうことだと思います。

溝手国務大臣 先生のおっしゃるとおり、子供の数とか、余りそんなことにこだわる必要はないと思います。とにかく、豊かな生活が送れるようにいろいろな知恵を出していこうということではないかと思います。

菅国務大臣 一番大事なのは、安心して子供を生み育てることのできる環境整備というものを私どもがやることが大事だと思っています。

山本国務大臣 この少子化時代にあるというもとでの話であれば、私は、将来計画に目安としての出生に対するある程度の目標というのはあり得べし、またあらまほしい考え方であろうということでございますが、ただ、少子化時代であろうがなかろうが、出産、育児、子育て、そういったものに対しての家族的な意味からすると、母子に対して、身体や精神、あるいは経済社会、就労等について大変な困難が過去あったわけでありまして、その一つ一つを片づけていくということが政策的な直近の課題であろうというように考えております。

大田国務大臣 先生の御指摘に全く賛成です。

 子供を産みたい人が安心して子供を産むことができる、社会全体で子供を大事にすることによって、子供を持つことが喜びになって、仕事をしながらでも安心して子育てできるという社会にすることが何より大事だと考えております。

渡辺国務大臣 実は私、子供が三人おります、かみさんは一人しかおりませんけれども。うちのかみさんを見ておりまして、いや、子育てというのは本当に大変だなとつくづく思いますね。したがって、我が家では、ああ、済まないなと私が思った瞬間に権力構造がそこで確定をするわけでございますけれども、そういった個人的な経験からいきますと、やはり産む方の母親が、先ほどから皆さん指摘されていますように、安心して産んで子育てができる環境づくりが必要かと存じます。

平沢副大臣 今いろいろとお話がありましたように、若い人たちがぜひ結婚したい、ぜひ子供を産みたい、そして子供をぜひ育てたい、そう思っていただけるような社会環境を整備すれば、結果として出生率が上がっていくんではないかなと思っています。

泉委員 先ほどの質問の中に戻りますが、溝手公安委員長、確かに、柳澤さん御本人の御性格ということについては私は何も否定をするものではありませんが、こういったときの質問においては、優しくていい人ということでは余り答弁にならないのではないのかなというふうに私は思っておりますので、やはりしっかりと認識を持って、政策は政策、そして考え方、価値観というものは、直さなければならないところは直さなければならないということはぜひ御主張をしていただきたいというふうに、まずお願いをしたいと思います。

 そして、山本大臣には、やはりもう一回お伺いをしたいんですが、目安、目標はあり得るというようなお話がございました。これは、もう少しその理由を詳しく聞かせていただけませんか。

山本国務大臣 少子化における重大性というのは、各方面、いろいろな指摘がございます。例えばヨーロッパ諸国の中、特にフランス等でもそうした目標がある程度は設定されているということを聞きます。また、その実効性におきましても、かなり成果を上げているという高い評価も、こちらもしておるわけでございます。

 そういった観点が一つと、もう一つは、何らかの政策、少子化という問題意識の中で、子供出産数が去年で百六万人、死亡者が百八万人、結果として人口が減っていく、その幾何級数的な段階がさらに将来来るというようなことの中で、やはり問題提起の中から、我々は税金を使っている、予算を使っている。予算を使うときに、政策目標を設定して、またその予算の執行における決算も考えなければなりません。政策判断の目標があり得た方が、しかも数値的なものがあり得た方が、より評価が厳正になって規律が正しくなるというような考え方をとれば、やはりそこに数値目標というのは、完全な目標でなくてもいいけれども、ある程度の目安としての問題が把握されていた方がお互い共通認識がしやすい。しかも、国際的な目で見て明らかであるということにおいてのすぐれた点があるだろうというように思っております。

泉委員 そこは、国際的にはそういう数値を設定する国もあるかもしれません。しかし、我が国でお考えをいただいたときに、出生率ないしは出生数というものを数値で目標にする、しかし、それは多くの国民にとって通じるものだろうか。その出生率、目標を達成するためにまさか国民が子を産むわけではないわけですね。そうすると、それはあくまで政府部内の、非常に内部の目標になることは場合によってはあるかもしれないけれども、国民に対して呼びかけるような目標にはやはりなり得ないというふうに私は思うわけです。

 そして、その目標が、いわゆる政府からのメッセージとしては、とにかくそこまで産まなければ世の中、年金も社会制度ももたないんだ、あるいは経済が縮小するんだというような政府の方の思いがあるわけですけれども、しかし、その経済の縮小ですとか、あるいは年金制度が続かない、これは、だからといって出生率、出生数に目標を持たそうということにはやはりならないんじゃないのかなというふうに私は思えるんですね。

 年金制度が仮に続かないのであれば、やはりそれは年金制度を調整していく話であるし、日本の経済全体のパイが下がるということであれば、それは一人当たりの生産性ですとかを上げていくという話になるんでしょうし、それはある程度人口規模が減れば、経済の全体のパイだって当然減ることが前提だということも受け入れなければならないというふうに思うんですが、そういうものを受け入れずに、やはり目標を設定すべきだというふうにお考えでしょうか。

    〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕

山本国務大臣 先々週、私の地元大月町で町制施行五十周年がございました。昭和三十二年に小学校には二千人の生徒がいた、しかし現在は二百人足らずという評価を冒頭助役がなさいました。そうした数字で物をとらえていくことにおける正確性というのは、私はそのときも認識したわけでございます。また、中土佐町という合併する地域があったわけでございますが、その旧大野見村、小さな寒村、三千人ぐらいの人口でございますが、そこではおととし、五十人のお葬式、たった一人の出生者というような、そういう数字で村長さんから町の事情を私は聞かされるわけでございます。

 そうした感銘力におきます私の姿勢というのは、こうした過疎や過密の状況に対して臨む意識がより変わってきたというように思っておりますので、数字的な評価というのは大変大事なことだろうというように思っています。

泉委員 もちろん、過疎地における人口減少、そして日本の国土の均衡な発展ということにおいては、そういう考え方というのはあり得るのかもしれない。しかし、恐らく最盛期のころの人数を先ほどおっしゃられましたけれども、そこは、私なんかも第二次ベビーブームの時代の人間ですけれども、我々のころというのは、学校もプレハブ建てをしないと追いつかないぐらいに生徒がふえていた。しかし、必ずしもそこで行われていた教育が、世界から比べれば恵まれていますけれども、しかし、今振り返ってみて、果たして本当によかったのかどうか、少人数教育の方がよかったんじゃないかという声も多数あるわけですね。

 ですから、人が多ければそれで物事がうまく進んで、すばらしい世の中だということの前提そのものも、私は、やはり再検討していただく必要があるんじゃないか。そこを考え直していただくということが、今我々若い世代の方からは実は持ち上がっているんじゃないかということをきょうは指摘させていただきたいと思っておりますので、ぜひ山本大臣におきましては、その辺のこともよく、今の若い世代が、もう子供をたくさんふやして高度成長にこれからまた乗っていこうというようなことばかりを追っている時代ではないんだということの御認識を持っていただきたいというふうに思います。

 それでは、続いて治安問題についてお話をさせていただきたいと思います。

 今、刑法犯の認知件数が四年連続で減少をしております。もちろん、この間、警察官の増員あるいは警察の御努力、これは大変なものもありますし、民間ボランティアの活性化というものも挙げられておりますが、警察として、増員計画はことしまでで一応、政府が言っていた一万人増員計画というものが達成をされるわけですけれども、この認知件数が四年連続で減少している要因というものを公安委員長、どう考えられていますでしょうか。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、刑法犯の認知件数は平成十五年から十八年まで四年連続して減少しており、警察庁としては、治安再生の曙光が見え始めているというように感じているところでございます。

 今まで、犯罪対策閣僚会議等を踏まえて、政府挙げての各種の対策や、全国の警察が取り組んできた街頭犯罪等の抑止総合対策、あるいは各地の自治体や関係諸団体によるさまざまな取り組みなどが功を奏したものであるとともに、特に私としては、防犯ボランティアを初めとする地域の住民の方々の安全、安心のまちづくりに向けた熱意と尽力のたまものである、このように考えております。

 しかしながら、刑法犯の認知件数は、まだ昭和四十年代、これはゴールデンエージと言ってもいいんだろうと思いますが、このころに比べるとやはり一・五倍を超える水準にある。依然として子供が被害に遭う等、厳しい治安情勢が変わったというようには認識しておりません。したがいまして、国民の強い期待にこたえるべく、昨年取りまとめました治安再生に向けた七つの重点等に基づく取り組みをさらに強力に推進していく必要がある、このように考えております。

泉委員 これは確認なんですが、いろいろな治安問題を研究する方々の中には、やはり警察の統計上のさまざまな見え方というか、それも要因になっているんじゃないかということもおっしゃられる方がおられます。例えば、治安が非常に悪くなったと言われていましたけれども、それは認知件数、警察の認知方針が大きく変わったからだ、それによって認知件数が膨大にふえ、そして、その反動として検挙率が相対的に下がるというような現象が起きて、それで治安が悪いという評価が、国民的にも体感治安も悪いという評価が植えつけられたというような言われ方がされました。

 その後、その認知件数もようやく今落ちつきを見せているというところだとは思うんですが、この減少ということについては、統計上のものの何か変更ですとか解釈の変更というものはないと考えてよろしいでしょうか。

溝手国務大臣 いろいろな御意見があるということは承知していますが、警察としては、そういう変更をしたということは承知しておりません。

 問題はむしろ、さらに保守的に、そういうそしりを受けるようなことがあってはならないということで、非常にコンサーバティブにやっているものと心得ております。

    〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕

泉委員 今ほど、昭和四十年代に比べてもまだ一・五倍の刑法犯の認知件数があるというふうにおっしゃられました。先進的な、たしか警視庁だったでしょうか、特定の犯罪についての検挙率の目標を掲げていくということが最近なされているやに聞いております。

 そういった意味も含めて、警察としては、今、とりあえず減少はしてきているけれどもまだ四十年代の一・五倍あるという状況を踏まえて、今後どのあたりにまでこの刑法犯の認知件数というものを下げていきたいというふうに考えているのか、具体的なものがあればお聞かせください。

溝手国務大臣 特別に具体的な目標を刑法犯全体で取り上げてやっているわけではございません。具体的な、例えば交通事故の死亡者を減らしていこうとか、そういうところはございますが、特に具体的に考えているわけではございません。

泉委員 そこはぜひ、私は具体的に定めていただく状況に今なってきているんじゃないのかなというふうに思います。

 先ほどの山本大臣との話ではないですが、そこの部分は数値目標は私はあってもいいのではないかなというふうに思っておりまして、といいますのも、警察官一万人増員をいたしました。警察における二〇〇七年問題ということでも、それにも対応するという趣旨もあったというふうに思いますけれども、今後警察の中で人員の配置計画についてどうお考えになるのかということにおいては、やはり治安の動向というのが非常に左右をしてくるというふうに思います。

 その意味では、もちろん治安回復には日々取り組んでおられるとは思いますけれども、今後も、刑法犯の認知件数を例えばこれぐらいにする、凶悪犯をこれぐらいにする、暴力団をこれぐらいに減らす、そういう明確な目標があればあるほど、皆さんは警察官の増員ということについては理解をしていただくということになると思うんですね。とにかく頑張るから人をふやしてくれというのは、この三年間の一万人増員計画の中で、ほぼ第一弾としては達成できたというふうに私は認識をしておりますので、そういった意味で、この増員計画を今どのようにお考えになられているか、お聞かせください。

溝手国務大臣 世の中、合理化ということが随分、行革行革という声が大きい中で、警察の事情を御理解いただいて、一万人増員計画を今日まで進めてこられたということは大変感謝をしております。内部的には絶えず防犯力の強化という声が上がっているのは事実ですが、人間だけで防犯が可能なわけではございません。技術も機械化もシステム化もいろいろあると思いますので、なるべく人間をふやすという方向に安易に流れないように心してやっていく必要があろうかと思っております。

 犯罪のない町をつくっていくために、いたずらに警察だけが大きくなっても困るなという思いも私個人としては持っているところでございます。

泉委員 さらに公安委員長に二点お伺いしたいんですが、まず増員の問題で、二〇〇七年度の予算の復活折衝において、警察官三千人増員の三億四千五百万というものが認められたということになっております。この一万人増員計画の中で、年間三千人なり三千五百人ずつふやしていくということは以前から言われていたわけですが、なぜ復活折衝で認められるという厳しい歩みを、経過を踏まなければならなかったのかということは、私は個人的には大変疑問を感じております。

 政府部内で、もう治安は四年連続下がってきているから、こんな増員要らないじゃないか、何とか警察の中で努力しろという話があったということなんでしょうか。

溝手国務大臣 治安の問題についてはいろいろな受けとめ方がございますが、先生が冒頭に御指摘があったように、体感治安の問題に行くと、むしろ国民世論的には物騒な世の中になったということがまだ払拭されているわけではないし、それは、その辺の世論の受けとめ方というのはいろいろあろうかと思います。

 やはり今回の復活に持ち込まざるを得なかったということは、政府を挙げての行革の合理化、それから財政問題の立て直しの渦中において、すべての定員がマイナス方向で動いているときに警察の問題を取り上げたということで、その辺に、何とも言えない取り扱いになったんだなと私は思っております。

泉委員 ここは、あえて国民にPRをされるためにこういうやり方をしたのかもしれないというふうに私は思っているわけですけれども、やはりそれはそうであってはいけないというふうに思っておりますので、そんなことがないのであれば、それこそちゃんと、復活折衝ではなく、もともとこういったものは予算に盛り込むべきだということを私は主張したいというふうに思います。

 先ほど、犯罪の減少の中で、刑法犯が減少しているということについては統計上何も変更はないということでしたが、もう一つ公安委員長の御認識をいただきたいのは、そもそも治安が悪化をしていく過程の中で、やはり認知件数の取り扱いの仕方、これに変化があって、そして微罪、例えば自転車盗なんかも含めて、すべて認知をしていく方向になったから認知件数が膨大にふえて、結果的に検挙率が下がったんだ、こういう統計から物を見るいわゆる神話派というんですか、そういうような論陣を張っていられる方もおられます。

 そもそも、治安の悪化という状況において、そういった側面もあったというふうに御認識はおありでしょうか。

溝手国務大臣 世論の動向がさまざまに変動しますから、それに対して全く影響がなかったということは言えないんだろうと思います。これは何においてもそうだろうと思いますが、やはり時々の世論に影響されたことはあり得ると思うんです。

泉委員 大臣、もう少しはっきりとお答えいただきたいんですけれども、今のお答えだとちょっとわからないですね。要は、認知件数がふえる過程で、それは警察の認知方針に変化があったかなかったか、そして、その変化によって認知件数がふえたという要因があるかということです。それについてお願いします。

溝手国務大臣 基本的には全く変更はない、先ほど申し上げたとおりですが、ただ、去年の話も御記憶に新しいと思いますが、いたいけない子供三人を酔っぱらいの追突で水の中に落としてしまったというような事件が起きますと、それは世論の動きも相当激しいものがありますし、それに対する取り締まりというのはやはり厳しくなった、そういう意味で私は申し上げているわけでございます。

泉委員 ですから、もう少しはっきり言っていただきたいんですが、そういう意味でというのは、では、今福岡の事件のことをおっしゃられましたが、そうではなくて、この認知件数のとり方を変えるときにそういうことがあったということをおっしゃられたいということですか。

 例えば、私は、たしか桶川のストーカー事件があってからは、積極的に認知件数、認知をしていこうという方向に警察が変わったというようなことも聞いたことがございますけれども、そういうことを指していられるんでしょうか。

溝手国務大臣 取り締まりの方針というか、認知の方針の基本的なものが変わったわけではございません。しかし、国民の要望というか世論というのは、その時々の発生した事件によって変化をするということは否定できない事実であろう。そういう意味で、力点の置き方が変化をしてくるということはあり得ると思っております。

泉委員 わかりました。理解します。

 それで、さらになんですが、暴力団の構成員、準構成員が、最近、とうとう構成員よりも準構成員が上回ったという状況になってまいりました。これは、平沢副大臣も確かに専門家ではあると思うんですが、公安委員長にお伺いしたいと思います。

 これは、私は前回も、以前この内閣委員会の方で質問したことがあるんですが、準構成員という扱いで、その準構成員がどんどんふえているという状況は、既に暴力団が今の暴対法に対応して組織をどんどん地下に潜らせている、そのかわりすそ野をどんどん広げているという状況がある、明白なその事実がこの統計にはあらわれているんじゃないのかなというふうに思います。

 そういう中で、この暴力団の構成員、準構成員という仕切り方をこれまでどおり続けていくのか、そして、その準構成員対策というものを警察はどのように考えているのか、これをお伺いしたいと思います。

溝手国務大臣 あなたの御指摘は全く同感するところが多いんですが、準構成員ということは定義がないんですね、たしか。暴対法の中で暴力団の団員というんですか、これについては、取り締まりをするために必要な範囲というのは割と厳しく限定的に解釈をしてやろうということで今までやってきましたが、準構成員というのは、実はかなり便宜的に範囲を定めてきたということは事実であろうと思います。

 問題は、正社員か準社員かよくわかりませんけれども、とにかく悪いことをするのは根を絶とうということが本意でございまして、どっちであろうと根を絶っていくということは頑張っていかなくちゃいけないんだろうと思います。

 御指摘の点については、今後やはり考えるべき課題であろう。犯罪の態様も随分変わってきておりますし、これはほっておくわけにはいかないな、我々内部ではそういう議論もしているところでございます。

泉委員 大臣は、全国二十数万人の警察の職員が頑張っているということで、もう少し熱を持って頑張っていただきたいというふうに私は思います。大臣、スポーツマンでありますから、ぜひそこはしっかりと。

 といいますのは、禁酒法のときには、密造酒がそのかわり膨大にふえたわけですよね。それと同じように、今、例えばおれおれ詐欺、いわゆる振り込み詐欺、こういったものを含めて、どんどん犯罪の質が変わっております。そこには暴力団がやはり裏に表に絡んでいるんじゃないかということも指摘をされているわけですね。

 要は、昔のように、発砲事件だ、けんかだ、そしてお互いの組事務所に押し入るんだ、討ち入るんだなんという時代ではないわけですね。あるいは、木札を部屋に並べて我々の組員だなんという時代ではもうなくなっているわけです。その表に目に見える小さい暴力団組織を支える大きな大きな、今、準構成員という、定義はないんだけれどもとおっしゃった、でも人数は出ている不思議な人たちが非常にふえているという現状は、やはり強く、これは改める、何とかしなければならない、そういうことを明快に言っていただきたいというふうに私は思います。

 もう一度お願いします。

溝手国務大臣 とにかく、悪いことをするやつは徹底的に逮捕しなくてはいけないということで、今おっしゃった構成員と非構成員の問題が、そのことに非常に大きく影響するということは全くあなたのおっしゃるとおりですが、それだけではない。ですから、根源、根を絶つためにはいろいろな方法があろうかと思います。気合いだけではなくて、やはり頭も使っていろいろ頑張ってまいらないといけない。張り切ってやっておりますので、どうぞ御安心いただきたいと思います。

泉委員 その大臣の御答弁から、頭を使った答えがもっと出てほしいんですよ。そこはやはり具体的に、反論というか答弁をしてくださいよ、大臣。我々はこうこうこうしますということをぜひ……(発言する者あり)いや、張り切ってと、まさに勢いだけじゃないですか、大臣も張り切ってとおっしゃったわけですから。

 そうではなくて、私は以前も提言しましたけれども、では、この暴力団対策、交通安全と一緒で、私は交通安全対策については小泉政権のころから非常にすばらしいというふうに言っているんです。これは私は、数少ないと言うと怒られるかもしれませんが、小泉政権の中で評価をしていることなんです。同じように、暴力団対策についても、計画をつくっていただきたいということを我々は以前から申し上げておりました。これも数値目標の話ですが、ぜひそういった計画はつくっていただきたいというふうに思います。

 さらに、警察のことでもう一点なんです。

 先日、大変残念な、今、宮本警部ですけれども、死亡事故、殉職がございました。私もその御葬儀には参加をさせていただきましたけれども、きょうはそのことに哀悼の意を表しながら、しかし、その問題ではなくして、その警部がおられた駅のちょうど反対側の南口に民間交番がございます。これは昨年の十二月から各種報道で報道がされていたんですが、千葉県の野田市ですとか、たしか南常盤台駅でしたでしょうか、そこの南口にはこういった民間交番が最近次々と設置をされている。

 防犯ボランティアの活性化によって、今後もさらにそういう傾向は出てくるだろうなというふうに思っておりますが、今、二通りあると思うんですね。もともと警察におられたOBの方が、警察がまだ所有をしている空き交番に入って業務を行う、いわゆる交番相談員という方々。そして、今こうして新しく民間交番が出てきたときに、例えば市がその警察OBなんかを雇用あるいは集めて、そういった民間交番に入っていただくやり方。こういった形で、純粋には交番相談員とは呼べないというところもあるとは思うんですが、そういういろいろな形式が今出てきております。

 ただ、せっかくそういうものがありながら、例えば遺失物の取り扱い、落とし物を拾ったときにそれを受理する、あるいは被害届を受理する、あるいは代書をさせてもらう、そういった行為がでは今果たしてどこまでできるだろうかというと、恐らく民間交番では難しい部分がまだあるんじゃないのかなというふうに思います。

 せっかく民間交番を設置して、地域の防犯、お目付役だけではなくて、ある程度軽い業務、これは警察の業務が今大変多忙になっているということも踏まえて、分権というか、こういった交番相談員、あるいはそれに準ずる、市などがしっかりと役所としてその立場を認めた職員というか方々については、こういったものもぜひ検討していただけないかというふうに思うわけですが、いかがでしょうか。

溝手国務大臣 建前としては非常にはっきりしているわけですが、いわゆる空き交番であれ、警察の施設で警察の業務としてやるときには、遺失物にしても拾得物の問題、それはしっかりやらせていただきたいし、空き交番に届け出があれば、いろいろな態勢をとってそれは対応したいと思います。

 民間交番に関しましては、いろいろな態様もございますし、必ずしも警察の基準に合致しているかどうかもわかりませんし、特に交番というのは、そういう便宜を図るとともに重大な権力行使をする場所でもあるので、民間交番に対しては限定的に考えていくのが私は普通の考え方で、特にプライバシーにかかわる問題、これは拾得物とか金品について余計なトラブルがあるのもどうかと思いますし、現在ではそういう区別はしっかりすべきだろうと思います。

 さらに、将来の問題としてどうかということになりますと、どっちの方向でいくか。交番業務をもっと民間との連携をしっかりさせて、交番をもっと機動的に動かせれば、先生御指摘の話についてもかなり対応ができるのではないかということも考えられますし、通信のやり方も考えると、いろいろな工夫は可能だろうと思いますし、検討の必要はあろうか、このように思っております。

泉委員 例えば被害届なんかでいいますと、行政書士も代書ができますし、そういった意味で、代書ということそのものは可能だというふうに思うんですね。

 ですから、この被害届なり遺失物取り扱いということについては、今後、だれでもというわけにはいきませんけれども、一定の役割を公的な部分から委任された方々については、そのあたりまではぜひ認めていただきたいということを私から最後にお願い申し上げます。

 これで午前の部の質問は終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

河本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

河本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官柴田雅人君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第一局長諸澤治郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 質疑を続行いたします。泉健太君。

泉委員 午前に引き続き質疑をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、ちょっと予定外だったんですけれども大田大臣の方に、今ちょうど日銀の金融政策会合が行われていますけれども、追加利上げの是非の判断について、もう既に報告は届いておりますでしょうか。

大田国務大臣 日銀の金融政策決定会合、まさに今開かれておりまして、まだ私の方には何の連絡も来ておりません。まだ会合が続いているものと考えております。

泉委員 総裁が利上げを提案したという報道もなされているようでして、もし報告が届いていないなら報告が入り次第、この委員会の中で、おられればですけれども、ぜひ御報告をしていただきたいということがまず一点ございます。

 報告が届いて、利上げということになれば、中川幹事長なんかは利上げに反対する発言を繰り返していたわけですので、これは与党と日銀が一体で金融政策に当たっていると言えるのかということにもなりますし、利上げをしないということであれば、これは与党幹部の方針に従ったということなのかもしれないですが、それはやはり日銀の独立性ということからはおかしな話になりますので、とにかく早く、もし報告が届けば、それはぜひ教えていただきたいということを冒頭に申し上げておきたいと思います。

 予定をしていた質問に戻らせていただきますけれども、冒頭、まず格差の問題についてであります。

 この格差についても、安倍総理が、もし格差があれば、そこには光を当てていくというような言い方で表現をなされました。我々としては、この格差ということは、所得格差、世代間格差あるいは地域間格差、明確に存在をしているというふうには思っておりますけれども、やはりもう一度、それぞれ、何かこの質問をつくって政府に投げるときに、格差という言葉がついたら全部大田大臣が答えることになっているんだというような話も一部、私の方には届きました。しかし、やはりそれぞれ担当がございますので、私はその観点からお答えをいただきたいというふうに思います。

 まず、やはり再チャレンジの担当として、世代間格差というものが今のこの日本、どれぐらい存在をしているのかということで、山本大臣、お願いします。

山本国務大臣 まず、一世帯当たりの人数ということを申し上げたいと思います。一九八五年には三・一人ございました。二〇〇五年には二・六人まで減っております。つまり、家族の人数が減っていること、そして、高齢者にとっては独居が多くなっているという傾向がございます。それをして何が言えるかということでございますが、いわゆる若者の世代と高齢者の世代では、一つの孤独感における意識の格差みたいなものが随分あるのではないかと想像しております。

 また引き続き、それと同じことでございますが、世帯主年齢階級別の世帯収入のジニ係数というのがあります。これは二十歳から二十四歳までは〇・二一七、極めてフラットでございまして、この年齢層における格差は極めて少のうございます。しかし、六十歳を超えますと〇・三を超えてしまいます。つまり、高齢化世帯における世帯主収入というものについては、かなり格差があるというように見ております。

 また、さらに申し上げれば、フリーターの面でございます。フリーターにおいては、年長フリーターと、年少フリーター、十五歳から二十四歳までの格差がございまして、直近のデータで、二〇〇四年から二〇〇五年のことを特に申し上げますと、年長フリーターは二万人ふえております。ところが、年少フリーター、十五歳から二十四歳までは逆に減っております。十一万人減っております。ですから、その意味においては、フリーターといえども、若年層のフリーターは減って、高齢的な三十前後のフリーターはふえているという格差がございます。

 ニートにおきましても同様のことが言えまして、二十五歳で完全に分水嶺がございます。つまり、二十五歳以下ではニートは減っております。去年からことし、二十歳から二十四歳までで二万人減りました。そしてまた、十五歳から十九歳では一万人減りました。ところが、二十五から二十九では一万人ふえ、また、三十から三十四までは一万人ふえております。

 ですから、そうした意味におきます、ある程度の年齢階層でそれぞれやはり格差が出てきており、特に、もっとストレートに言えることは、ハローワークにおいて六十歳以上の雇用というのはほとんどございません。やはりそこは三十歳前後が一番、逆に求職してくる人に対する就業機会というのが多い。しかし、六十歳以上の方々にとってはほとんど就業機会というのはないに等しいという格差がございます。

 以上でございます。

泉委員 時間がございませんので、次に渡辺大臣の方に、地域間格差、この実感をどうとらえているか、お伺いしたいと思います。

渡辺国務大臣 これは大田大臣の方のお話かもしれませんが、領空侵犯的に許されている立場でございますので、私の方からお答えをさせていただきます。

 この数年間、景気回復のアンバランスというものは確かにあったと思うんですね。輸出型製造業がある地域とない地域とでは、全然景気のぐあいが違います。例えば、毎月出てきます有効求人倍率なんというのを見ておりますと、私の地元栃木県でも、宇都宮周辺と、那須烏山市という私の選挙区なんですけれども、全然新規の倍率も有効も違います。そういうことが恐らく全国的に分布しているんだろうと思うんですね。

 昔ですと、そういうときには公共事業を追加する、あるいは交付税で何とかするということだったんだと思いますが、これを減らしてきているわけでございますから、その点、景気回復の跛行性がさらにきいているということは言えようかと思います。では、昔のような金太郎あめ発展モデルでもう一回やれるのかといったら、それはもう難しいと考えております。

 したがって、これは地方分権を進めていく中で、それぞれの地域がそれぞれの地域の独自性を発揮していただく、個性ある発展モデルを模索していくということが大事なことではないんでしょうか。

 したがって、それぞれの地域の中で埋もれた宝物、これをぜひ掘り起こしをやることを政府としても全面的に応援していこうということで、地域活性化応援隊というものをつくりました。カリスマ的な応援隊のメンバーには伝道師の称号を出しまして、さまざまなデータベース、成功事例、失敗事例を引き合いに出しながら、それぞれの地域の御相談に応じていくという体制をつくったところでございます。

泉委員 今渡辺大臣にお伺いをしたのは、今本当に内閣府の業務が入り組んでおりまして、地方再生とか地方活性化ということについては渡辺大臣ということで、地方にお詳しいという観点からお伺いをさせていただきました。

 今、山本大臣や渡辺大臣から格差の問題についてのお話がありましたけれども、今こうして、例えば、山本大臣の再チャレンジということについても、高市大臣の所信の中に、女性の再チャレンジというものが出てきたり、若者の自立支援という項目が出てきていたりしております。そういうところからも、かなり重複があるなという感じが否めません。

 例えば、女性の再チャレンジ、そして若者の自立支援、今この政策における大臣というのは、トップはだれだということで考えたらよろしいんでしょうか。山本大臣、お願いします。

山本国務大臣 トップとか、指揮命令系統の中にお互いがあるわけではなくて、内閣ですから、あくまで総理を中心として閣僚が協議をしながらやっていくというスタイルでございますので、御了解ください。

泉委員 そこで、内閣府の機能強化が今ずっとされているわけですが、数点お伺いをしたいと思います。

 まず官房長官にお伺いをしたいんですけれども、かつて小泉内閣の際に、例えば構造改革特区なんかでは、鴻池大臣が、特命事項を担当する大臣ということで、特命担当事項大臣ですか、ややこしいですけれども、特命担当事項大臣として就任をされた。それが、二〇〇三年の四月一日からは、これは特命担当大臣という位置づけになされました。これは違うんですよね。特命担当事項の大臣と特命大臣というのは、これは別になるわけですね。内閣府に位置づけられる大臣と、そうでない大臣ということになるわけです。そしてまた、二〇〇三年の九月には、もう一回特命担当事項の大臣ということになっているわけです。

 構造改革特区の大臣の位置づけがこういうふうに変わっていった理由というのは何なんでしょうか。

塩崎国務大臣 今の担当事項というのがついている、つかないという話については、私も余り認識をしていなかったものですから、今ちょっと、まさに担当と話をしたんですが、我々の理解では、特命担当大臣ということでやってきているというふうに理解をしております。

 もともと橋本行革で、総合調整をやらなければいけない。つまり、一つの役所では済まない問題がふえてきているものですから、それで横の連絡調整をしながら調整をする担当大臣というものを新設したということであるわけでございまして、経済財政とか科学技術とか沖縄、防災等々いろいろございますけれども、先ほど山本大臣も言っていましたが、総理のリーダーシップのもとで、特命事項についてまさに担当して、縦割り大臣に言ってみれば調整をかけていくという形で問題に取り組んでいくということだと思います。

泉委員 大前提の認識として、今の特命担当大臣というものと、内閣府以外の特命事項担当の大臣との違いというのは御承知ですか。それをわかっていなければ、ちょっと質問ができないんですけれども。

塩崎国務大臣 特命担当大臣というのは、内閣府の中に置かれる特命担当大臣であって、今の、事項というのがつくということについては、承知をしておりません。

泉委員 例えば、高市大臣なんかは、科学技術、イノベーション、少子化・男女共同参画、食品安全、これは特命担当大臣ですね。山本大臣なんかは、これは特命担当事項の大臣ですね。それとも、特命担当大臣ですか。山本大臣、いかがですか。

山本国務大臣 意識したことがありませんでした。

泉委員 これはちょっと皆さん、やはり一回勉強会をされた方がいいんじゃないかなというふうに思います。これは明確に違うようになっているんですね。

 内閣府の中に組織が置かれるということを前提にした内閣府特命担当大臣というものがありますし、そういう組織、外局がなくて、政府として重点政策に取り組むという意味での特命事項の大臣というのがありまして、ちょっと意外でした、十分認識をされているものかと思ったんですが、ほとんどの大臣の方が、もしかしたら、そこの区別がないという状況かもしれません。御自身がどの立場の特命大臣なのかということが、もしかしたらわかっておられないのかもしれない。そうすると、要は責任があいまいになる。

 例えば、内閣官房における地方分権推進室がございますが、これは、渡辺大臣、菅大臣、どちらが見ておられるんでしょうか。

菅国務大臣 私は、地方分権改革担当大臣ということで辞令を受けまして、これから四月に向けて組織を拡大していこう、今は準備室というところであります。

塩崎国務大臣 先生のお聞きをされようとしていることがいま一つよくわからないんですが、特命事項とおっしゃっているんですか。それは法的にどこに書いてあるか、ちょっと見せていただけますか。そうしたら答えます。

泉委員 逆に、法律に書いていないけれども任命をされている、辞令に載っていない、官報に載っていないものがそうなっているんじゃないんですか。逆にお伺いしたいと思いますけれども。

塩崎国務大臣 ひょっとしたら、先生、このことを指しているのかもわからないんですけれども、例えば地球環境問題担当とか、これは事項という言葉はどこにも出てこないものですから、先生が何をおっしゃりたいのかよくわからなかったので、大変失礼をしたわけでありますが。

 そういうことであるならば、いろいろございます。公務員制度改革担当というのもそうでありますし、拉致問題担当、私自身がそうですが、それを特命事項と言うのであるならばそうですが、内閣の担当大臣ということで、特定の分野における重要案件の推進のために置かれているというものはございます。特に事項という言葉は出てきません。

泉委員 出てこないとして、では、官房長官にお伺いをしますが、今も言いました地方分権推進室、これは、菅大臣、初めてこの内閣委員会に来られておりますけれども、渡辺大臣は地方活性化ですとか道州制ですとかをされていますね。そうすると、例えばこの地方分権推進室というのはどなたが見られているんでしょうか。

塩崎国務大臣 この推進室は内閣官房でありますが、担当は菅大臣でございます。それは菅大臣にそういう発令をしております。

泉委員 例えば、渡辺大臣は道州制を担当されていますが、これはどこの部署で行われているんでしょうか。何か下部組織はございますか。

渡辺国務大臣 これは副長官補のところで担当をいたしております。

 ちなみに、私の名刺は、内閣府特命担当大臣(規制改革)と書いてありまして、これが法律上の担当になります。そのほか、国・地方行政改革担当、地域活性化担当、公務員制度改革担当、道州制担当と書いてございますが、これらが今委員がおっしゃった事項の方でございます。

泉委員 溝手大臣にお伺いをしたいんですが、交通安全は高市大臣がなされているやに聞いていますが、これはどうなっているんでしょうか。

溝手国務大臣 そのようでございます。

泉委員 では、交通安全は溝手大臣は担当されていないということですか。

溝手国務大臣 いや、私は国家公安委員長でございますから、国家公安委員長は警察庁を監督しているわけでございますから、警察庁全般を担当しておるわけでございます。

泉委員 警察全般の中に、まさに交通安全対策、死亡者を五千人まで減らしていくということがあるわけですが、それを主導されているのはどなたですか。

溝手国務大臣 国家公安委員会の任命した警察庁長官がやっておるというのが現在の姿でございます。

泉委員 ですから、そうなりますと高市大臣の交通安全というのは何を指すわけですか。

塩崎国務大臣 先ほど来、省庁横断的に対応しなければいけない問題というのがふえているということを申し上げました。少子化もそのとおりでありますし、高齢化もそうでしょう。

 交通安全も実はそうでありまして、もちろん警察でやっておることは先生御指摘のとおりでございますが、それだけではなく、学校の問題もありますし高齢者の問題もあって、そういうことで、内閣府に交通安全というのを事務として設けてございまして、各省横断的に総合調整をしていくという形で、高市大臣が担当しているという意味でございます。現場は、それぞれの役所で、一番は警察が多いということは先生御指摘のとおりだと思います。

泉委員 ならば、高市大臣が交通安全を担当される理由、任命の理由というか、その分野を高市大臣に割り振られた理由というのは何かございますでしょうか。

塩崎国務大臣 これは総理の方針で決めているということでございますので、総理に聞いてください。

泉委員 わかりました。では、これは総理にまた聞かせていただきたいと思います。

 今、本当に時間がありませんから、きょうはちょっとこういった問題意識を皆さんにお届けさせていただきましたが、これはやはり全大臣が、特に内閣委員会では、御自身の特命担当の部分以外にいろいろな所掌を持たれているということだと思うんです。

 山本大臣も、金融だけれども再チャレンジ。しかし、今、例えば内閣委員会においても、金融の所信を聞く状況にはもちろんありません、それは財務金融委員会がありますから。そうなると、再チャレンジという担当になるわけですが、やはりそういうふうに分野がかなりふえておりまして、これまでも、例えば与謝野さんのころなんかでも、経済財政のことをこの委員会でお伺いするということがほとんどないままに任期が終わってしまったというケースも随分とあらわれております。

 確かに、官邸機能、内閣機能の強化は私は反対はいたしません。しかし、そういった意味で、院の方のチェックが今どうしても後ろを追っかけるような形になってしまっているということをぜひ知っていただきたいのと、余りにも数多くの担当大臣ができると、これまた国民に非常にわかりづらいということをぜひ知っていただきたいという思いで、きょうはこの質問をさせていただきました。

 あと、補佐官についても、補佐官は総理直属だけれども、常勤、非常勤の区別ですとか、あるいは補佐官が、例えば教育再生、そして拉致問題の事務局長という形になっていますが、首相の直属で補佐官がいながら、しかし拉致問題については事務局長、そしてトップは塩崎官房長官ということになっておりますので、その辺の意見調整というのはどうされているのか、まだまだ我々わからないことがたくさんございますので、ぜひ今後またその件については質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 最後の質問ですが、公益通報者保護法について、これは平沢副大臣になりますが、朝日新聞に記事が出ました。各省庁、委員会において、外部窓口をつくっているのが三府省庁しかなかったということですね。

 これはどういうことかといいますと、雪印の問題やさまざまな企業不祥事を教訓に、公益通報の窓口をしっかり組織の中につくっていこうということで、政府では、平成十七年に省庁申し合わせで、内閣府の方からちゃんと各省庁に申し合わせをして、窓口をつくりなさいと。内側に窓口があって、そして、内部の同じ立場の職員がただその窓口をやっているだけだと、ばれる可能性があるから通報なんか到底来ないよ、だから、なるべく外部につくるように求めるということに申し合わせではなっています。

 しかしながら、何と何と、全くほかの省庁が動いておりません。動いているのは内閣府と総務省と金融庁のみ、外部の窓口をつくったのはこの三つのみでありました。このことは大変問題だというふうに思っております。

 もう最後の質問にいたしますけれども、まず平沢副大臣にこういう状況があるということをお伝えして、きょうは厚労省と農水省、環境省、防衛省に来ていただいていたんですが、ちょっと代表してではありませんが、厚労省と防衛省から一言いただいた後に、副大臣の方に御答弁いただきたいんです。

 厚労省の方は、通報自体がゼロ件だから外部窓口は必要がないという言い方をしているんですね。でも、これは今は内部だから窓口が機能していないというふうに私たちは見ておりまして、やはり通報自体がないから要らないんだというのは理由に当たらないんじゃないか。

 そして、防衛省の方は、予算の関係で窓口を置かないと言っておられる。これも正しいかどうかは防衛省に判断していただいて、その上で、予算の関係といって年間一千万も五百万もかかる話ではないはずでありますから、なぜ外部窓口ができないのかということを、最後に平沢副大臣にお願いしたい。

宮島政府参考人 厚生労働省におきましては、十八年四月の法律の施行に伴って、厚生労働省の職員からの通報については、大臣官房の人事課と地方課に窓口をつくっています。これは外部ではないということです。

 どういういきさつであの朝日新聞の記事の書き方になったかはわかりませんが、事実として今のところ、この内部の関係では、職員からの通報の受理件数はゼロ件ということでございます。

 申し合わせにあるように、外部窓口の設置については今後の検討課題というふうに受けとめております。

西川政府参考人 お答えいたします。

 新聞には確かに予算云々と書いておりますが、どういう経緯でそうなったかは、ちょっと新聞の記事になった経緯、必ずしも明らかじゃないんですが、当方としては、先生御指摘のガイドラインには、窓口を設けるように努めること、こういうふうになっておりまして、現在検討中でございまして、当然、検討中でございますし結論は出ていませんので、予算もとっていないということでございます。

 当方も、実は今のところ、公益通報にかかわるものというのが今は一件もございませんので、そのニーズ、必要性、要否を含めて検討しておるというところでございまして、そういうことでございます。

平沢副大臣 今御指摘のとおり、平成十七年のガイドラインで、「行政機関内部の通報窓口に加えて、外部に弁護士等を配置した窓口を設けるよう努める。」こういうふうにしているわけでございますけれども、もちろん、御指摘のとおりまだ十八省庁のうち三省庁しかできていないということでございまして、内閣府としましては、関係省庁連絡会議等を通じまして、できるだけ設置するように要請しているところでございます。本年の四月はちょうど法施行後一年になるわけでございまして、全国の実態調査をやる予定でございます。

 そうした実態調査の結果も踏まえまして、これから、関係省庁連絡会議等の場を通じまして、各省庁において実効性のある制度の整備をするように要請していきたい、このように考えております。

塩崎国務大臣 話を乱して申しわけない、さっきの訂正を一カ所。

 さっき、内閣官房に地方分権の準備室があると言いましたが、今、実は内閣官房にあるのは地方分権推進室という前からあるもので、今度の準備室は内閣府にできます。済みません。

泉委員 きょうは、あえて全大臣にお越しをいただきまして、大臣所信という質疑の時間ですのでそういう形をとらせていただきました。

 公益通報の方は、ぜひ各省庁に徹底をお願いいたします。我々、また今後もチェックをしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

河本委員長 次に、松原仁君。

松原委員 先ほどの拉致特の委員会でも議論がありましたが、そのことを踏まえて、冒頭、拉致問題を若干官房長官にお伺いしたいと思っております。

 先ほどの委員会において、我が党の渡辺周委員の質問に対しても答弁があったと思いますが、北朝鮮が拉致担当の人間を日朝作業部会に出さない限りにおいて日朝作業部会は行われない、こういう認識でいいかどうか、官房長官、お伺いします。

塩崎国務大臣 拉致問題の解決なくして日朝の国交正常化なしということを私たちは大原則でやってまいりました。したがって、日朝の作業部会が始まって拉致問題の話ができないということであれば、国交正常化の話はできないということでありますから、必ず出てきてもらってこの問題から話をしてもらわなければならないというふうに我々は思っております。

松原委員 ということは、少なくとも、この日朝作業部会においては拉致担当者が来ない限り会合は行われないというふうな認識でよろしいということだと思います。

 続いて、私は、今回の六カ国協議というのは圧力と対話の対話の部分だろうと思っておりまして、個人的な見解を申し上げるならば、一九九四年のあのジュネーブの合意を考えても、北朝鮮が今回のこういったことを本当に遵守するのかどうか極めて疑問を持っておりまして、次の経済制裁へ行く当然のステップ、一里塚だという認識を持っております。

 実際に、今回の六カ国についての評価というのは、例えば、家族会、救う会と特定失踪者の会では全く相反する評価をしているわけでありますが、両方とも同一であることは何かといえば、これはあくまでも、今までの金正日のやり方から考えて、次の制裁に行くための圧力と対話、次にまた対話から圧力と、この振り子の原理の対話の部分であって、当然圧力に行くんだ、こういう認識を持っているのは、私がそれぞれ非常に親しく話を聞いてもそういうことであります。

 そこで、問題は、北側が時間稼ぎをしているのではないかというおそれは当初から我々は思っているわけであって、今始まったばかりだからなかなか答弁しづらいかもしれないけれども、どのタイミングでこの対話から次のステップに行くおつもりなのか。逆に、それがないならば北朝鮮の思惑どおりになってしまうと思うんですが、官房長官の認識をお伺いしたい。

塩崎国務大臣 先生がこの問題に深くかかわってこられて、いろいろな御提言をちょうだいしていることはよくわかっております。

 今回、五つの作業部会ができました。さっきの拉致特でも申し上げましたけれども、それぞれの作業部会はそれぞれのペースでやるということになっていて、それを担保しているわけであります。一方で、出口はやはり統一的に調整をされなければならないと書いてあるわけであって、それは何を意味するかというと、やはり、どこかの作業部会の問題だけ置いてきぼりにならないということでなければいけないということでこの六者が成り立っているということだと思います。

 したがって、次へのステップとおっしゃっているわけでありますが、我々のまず最初のステップは、それぞれの作業部会をスタートさせて、その中で中身のある議論をしていくことでありますから、今からその先を予見するというのはなかなか難しいことで、むしろ、北朝鮮側がここで話し合うことが自分たちのプラスになるんだということを思ってもらわなきゃいけない、こういうことで強く交渉に当たっていきたいというふうに思っております。

松原委員 ぜひ経済制裁、国連決議もまだ生きているわけでありますから、これを解除するということは、拉致問題の解決なくして解除なしということの徹底をしていただきたいと思っております。

 さて、ことしは南京の問題が大変にクローズアップされてくるわけでありますが、実は一つは、この南京の問題を議論する場合に、先ほど戸井田さんの参考の中にもありましたが、アイリス・チャンの「レイプ・オブ・南京」という書物がある。何か聞くところによると、いろいろな国際線の飛行場にはそのペーパーバック本が置いてあるというような話もありますが、このアイリス・チャンの胸像がスタンフォード大学に寄贈された。中国人権発展基金会、こういったところから寄贈されたということでありますが、外務省の方はこれを認識していますでしょうか。

山本(忠)政府参考人 先生御指摘のように、二月の一日に、中国の非政府団体であります中国人権発展基金会からアメリカのスタンフォード大学に対してアイリス・チャンの胸像が寄贈されたと承知しております。

松原委員 そのことでどこまで調べておられるのかということでありますが、スタンフォード大学というのはかなり有名な大学でありますが、そこにアイリス・チャンの胸像が寄贈された。スタンフォード大学は、このことに対しては、寄贈したいという申し出があったとき、いや、そういうのは要りませんよという話があったのか、いや、寄贈してほしいという話があったのか。その辺は把握していますか。

山本(忠)政府参考人 細かいところまでまだ詳しく調べたわけではありませんけれども、申し入れを受けたスタンフォード大学が受け入れを決めたということは聞いております。

松原委員 そうした中で、米国において、サンダンス映画祭において、これはユタ州のパークシティーにあるわけでありますが、ドキュメンタリー映画「南京」というものが上映されたということであります。

 これをつくったのは、インターネット接続大手AOLの元副会長のテッド・レオンシス氏。監督がビル・グッテンターグ、前にも一回私は外務委員会でこの質問をいたしましたが、ビル・グッテンターグ。中国の中央テレビの協力を得て制作され、今後同テレビでも放送予定だ、こういうことでありますが、このことについては外務省は承知をしているのかいないのか。

 さらに、当然このテーマは南京の、中国側が言う表現の虐殺ということを扱うと思われますが、このことについて、その映像資料を当然外務省は取り寄せて見ているのかどうか、確認をしたい。

山本(忠)政府参考人 御指摘の「南京」という映画につきましては、全くお話のとおり、サンダンス映画祭で上映されまして、内容については把握しております。この映画はまだ公開されるに至っておりませんので、通常の市場でこれを今入手することはできませんので、そのものはまだ入手しておりません。

松原委員 その内容について、どういう内容だったか、外務省が把握している限りをお話しいただきたい。

山本(忠)政府参考人 私どもは把握しておりまして、ストーリーを簡単に申しますと、ドイツ人のラーベという、当時南京に在住しておりました欧米人が、旧日本軍の南京入城に備えて国際安全区、安全地区を設置して、日本軍がいる中で同地区を守って、日本軍から中国人二十五万人を救ったというのが彼らのストーリーラインでございます。

松原委員 虐殺についてはどういうふうに触れていますか。

山本(忠)政府参考人 内容的には、彼らは、日本軍が中国人を約二十万人殺害して、二万人の女性を強姦したということを主張して映画をつくっておると承知しております。

松原委員 まず、これは官房長官にもぜひ御認識をしていただきたいわけでありますが、当時南京に恐らく十万人ぐらいしかいなかっただろうと通常言われているわけであります。実はこれ、人数を合わせますと二十万以上の犠牲者が発生したと。そうですね。二十五万人を助けたと。そうすると、四十五万人なんですよ。南京に四十五万人いたということはあり得ないと私は思っています、当然。

 前にも私はさまざまな委員会で質問しているのは、当時の南京に宣教師がおびただしく、おびただしくといってもせいぜい二十人ぐらいですかね、いて、彼らが、日本軍が迫ってくる中で南京を放棄しないで、彼らは神に仕える者として南京の無辜の命を守ろうということで安全区を設定した。

 彼らの表現は、私は十万人というふうな数字がどこかであったような気がするんですが、彼らがエール大学の神学校図書館に文書を持っている。持っているというよりは、エール大学の神学校が、要するに宣教師ですから、その神学校の図書館に彼らが自分の肉親にあてたような手紙が数多く残されているわけであります。

 その文章を、私も昨年外務委員会でも質問いたしましたが、例えば、我々は南京に安全区をつくり、無辜の市民の命、十万という数字があったような記憶がありますが、今ちょっとここに原文を持ってきていませんが、守ろうとしたと。そして、日本軍に対しては、南京の安全区には大砲の弾を撃ち込むなと我々は日本の将官と話をした。国民党軍に対しては、南京の安全区に大砲の砲台を設置するなと言った。なぜならば、大砲の砲台を設置すれば日本軍の標的になるからと。

 しかしながら、国民党軍は安全区の中に砲台を設置したというふうな記述があったり、十二月の半ばに日本軍が南京に進駐した後、一月の最初に、いわゆる中国の新年の中で、中国の南京の子供が日本軍から爆竹をもらって遊んでいるというような記述があったり、まさにその記述を見れば、虐殺はなかったということが明らかになるような記述がたくさんあるわけであります。

 そういうふうな記述をかなり歪曲した形で今回の映画をつくったのではないかというふうに私は思っておりますが、問題は、ここで中国の中央テレビが協力をしているということであります。先ほどの、スタンフォード大学にアイリス・チャンの胸像が寄贈された、中国人権発展基金会ということでありますが、実体は、共産主義の国家でありまして、当然ここにも中国の国の意向というものがいろいろな形で反映をしている、プロパガンダという点において。

 つまり、中国側は、南京に関して、アイリス・チャンが書いた「レイプ・オブ・南京」の中身に関しては、ほとんど事実と違うのではないかというふうに今言われているわけであります。先ほどの戸井田さんの質疑でもあったように、使われている写真は、違う写真を持ってきている。拡大して見ると、これから殺される婦子女というのはむしろにこやかに笑っていたりする、こういうふうな状況であります。まさに、アイリス・チャンの「レイプ・オブ・南京」というのは極めてためにする書物であるのではないかというふうに私は認識をしておりますが、その胸像が建つ。

 アイリス・チャンの銅像というのは中国国内にもどこかありますね。どこにありますか。

山本(忠)政府参考人 今、改修のために閉鎖されておりますけれども、南京の、彼らが言うところの虐殺記念館にございます。

松原委員 つまり、アイリス・チャンの、アメリカでは大変ブームになったこの書物が、これこそが日本のいわゆる国家の不名誉を世界に認識させるプロパガンダの最たる書物になったのは事実だと私は思っております。

 私は、塩崎官房長官に聞きたいわけでありますが、国家の不名誉、事実に基づかないプロパガンダによってそういった不名誉がなされたとき、その汚名を晴らすのは民間人の仕事ではなく、国家のするべき仕事だと思いますが、御所見をお伺いしたい。

塩崎国務大臣 当然、誤った考え方があれば、この事実誤認の訂正を含めて、必要に応じてしかるべく対応しなければならないというふうに思っております。

松原委員 時は今だと私は思っております。

 昨年、私の極めて親しいすぎやまこういちさんという作曲家が、アイリス・チャンの書物の写真で明らかに違う、この写真は実際はこの写真なのに、違うことでキャプションを加え、さっきの戸井田さんの質問にあったように、おかしいと。論評したらこれは否定されるかもしれないから、おかしいという事実だけを「THE FACT」ということで意見広告で出そうとしたら、ニューズウィークにおいて、一千万円のお金をけちったわけじゃなくて、一千万円の意見広告料を払いましょうと。しかしながら、それはニューズウィークは、我が社の、このことに対する我々の一つの流れと違うからという理由で却下された。私、大変遺憾だと思っております。

 事実を、例えばさっきアサヒグラフのことを戸井田さんの回であったけれども、アサヒグラフのこの写真をアイリス・チャンは転用していますよ、時系列はこっちが早いですよ、同じ写真ですよと。だから、アイリス・チャンの書いた「レイプ・オブ・南京」というのは極めて欺瞞性が高いということが結果としてその事実によってわかる。そのことをニューズウィークに意見広告で出そうとしたときに、それが却下された。

 このことに対して、官房長官はどういうふうな感想を持ちますか。

塩崎国務大臣 ニューズウィークという民間の会社の判断だと思いますので、今我が国政府としてコメントするような話ではないと思いますが、プレスとしてそういう判断をしたということだろうと思います。

松原委員 民間といいながら大変に影響を持ち、彼ら自身が、事実はどうであるかよりも、我々はそういう論調なんだと。その裏は何があるかわからないです。私は、かなりいろいろなどろどろとしたものがあると思う。どこかの大きなスポンサーがいるとか、恒常的に金を出しているスポンサーがいるとか、それはわからないですよ。しかし、我々は、そういったことに民間だけに頼ってやっていてはいけないというふうに思うわけであります。

 これはぜひ、アイリス・チャンの胸像がスタンフォード大学に建ったというのは、かなり致命的な日本に対するマイナスのプロパガンダの大きな橋頭堡ができたと私は思っておりますので、この辺も、政府としてはしかるべき対応ができるかどうか。民間の大学だからいいだろうというふうな議論でいってしまったら、ずるずるといってしまうんだろうなということも私は申し上げておきたい。

 次に、今、アメリカの下院の公聴会で慰安婦問題、これが二月十五日に行われました。北米時間の午後一時半から約三時間。この内容については、大体そういうことが言われるだろうということで、あえてここでは触れません。問題は、これに関して、これも国家の不名誉、事実と違う不名誉が明らかになっているのではないかな、それを非常に宣伝されているのではないかな、こういうふうに私は思っております。

 このことでお伺いしたいわけでありますが、これは外務省になるのか、石原信雄元官房副長官がこのことについて発言をしている、このことは承知していますか。

伊奈川政府参考人 お答えします。

 先生おっしゃっておられますのは、平成九年三月九日の産経新聞の記事でのインタビューのことでございましたら承知をして……(松原委員「では読んでください」と呼ぶ)はい。読ませていただきます。

 日本側に証拠はないが、韓国の当事者はあると証言する。河野談話に、慰安婦の募集、移送、管理などが総じて本人たちの意思に反して行われたとあるのは、両方の話を総体として見ればという意味。全体の状況から判断して強制にあるものと謝罪したというふうなくだりがございます。

松原委員 これは文芸春秋なんだな、ごめんなさい。文芸春秋に対して石原信雄さんが言っているのは、文書による証拠はなかったと。

 文書による証拠はあったということがあったかどうか、それだけお伺いしたい。

伊奈川政府参考人 お答えします。

 いわゆる従軍慰安婦問題について、当時、政府として全力を挙げて調査を行ったわけでございますけれども、発見された公文書等の政府発見資料の中には、軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接示すような記述は見出せなかったということでございます。

松原委員 当時の日本軍は極めて規律厳正でありますから、やったならば必ず証拠は残っている。

 きょうは時間がありませんから、石原信雄さんはこう言っている。本人を強制的に徴用したということが文書にどうしてもない、手を尽くしたけれども、国内では本人の意思に反して強制という一点では確認されない。さらに石原氏は言っていますね。それで証言者を探そうということになりました、でもそれがどうしてもいないんです、日本国内においてと。これは一つの事実であります。

 そこで、河野元官房長官はこのことに対して、強制連行を証明する資料はないとしながら、強制連行そのものはあったと言っているわけですね。これはある本を今代読しています。彼の表現ですね。「「政府が法律的な手続きを踏み、暴力的に女性を駆り出した」と書かれた文書があったかといえば、そういうことを示す文書はなかった」「直接強制連行の話はなかった。しかし、総合的に考えると「文書や軍人・軍属の証言がなかった、だから強制連行はなかった。集まった人はみんな公娼だった」というのは正しい論理の展開ではないと思う」、河野さんはこれを言っているわけであります。

 このことについて、私は、証拠がなかった、全く証拠がなかった、しかし、だからといって、なかったというのはおかしいからあったんだというのは、極めて論理性に欠ける官房長官としての、塩崎官房長官の何代か前の先輩の官房長官でありますが、発言であります。私はこれは極めて、こういうふうな考え方をなぜ彼がしたのか、なぜこういう表現をしたのか、その辺のことについて官房長官の御所見をお伺いしたい。

塩崎国務大臣 当時の石原官房副長官の、今のお話で、資料がないという中でどうしてこういう談話になったのか、こういう御質問だと思いますが、慰安婦の募集については、政府としてこれらの資料、なかなか書いたものではないというようなことで、政府発見資料の中には軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接示すような記述は見出せなかったということなんですね、今それを御指摘になったところだと思いますが。

 ただ、そのときに、その当時の政府として、さまざまな他の資料を含めて総合的に判断して、この談話のような表現になったというふうに私は聞いております。

松原委員 その他の資料がないわけであって、このことについて吉田清治という詐話師が著書を書いている。これも私、何回もこの質疑で言っております。その著書を書いた吉田何がしが、これは週刊新潮か何かに問い詰められて、おかしいじゃないかと言ったら、事実を書いて何がおもしろいか、事実を書いたって本は売れない、こう言っているわけでありまして、そういうふうな状況の中でつくり上げた虚構を、いいですよ、それは吉田何がしの詐話師のことはもう皆さん知っていることですからいいですが、河野元官房長官が、全く文書がなかった、文書がなかったら普通はないというんですよ。文書がなかった、証拠はなかった、ないですよ。

 恐らく、私は慰安婦の方々は被害者だと思います。しかし、それはいわゆる軍によってではなくて、当時の公娼制度という中における被害者だと私は思っているんです。それは日本の中にもいたんです。吉原に当時そういった被害者はたくさんいたと思います。冷害で米が売れなくなったら、東北の方々、ほかの地域もそうです、娘を女衒に安く売って、そういったことはあったかもしれない。被害者ですよ、彼女たちは。

 しかし、それと従軍、軍がそれに関与したかというのは全く別の議論だというのは当たり前でありまして、そういった文書が全くないのに、いや、強制連行だったというふうに言う方が正しいというのは、明らかに、だれが考えたって非論理的な展開だと思います。これは論理的な展開だと思いますか。官房長官、もう一回答弁をお願いします。

塩崎国務大臣 記述がなかったというのは先ほど申し上げたとおりでありますけれども、当時は、書いた資料、書き物としての資料だけではなくて、各種証言集とか証言とか、それから韓国にも出向いて証言を聴取していたわけでございまして、そういうところで総合的に判断をして、いわゆるこの談話にある、甘言、強圧による等、本人の意思に反して集められたケースもあったという心証を得た次第、こういうことだと思いますので、安倍総理も国会の中で答弁をしておりますけれども、強制性についての、広義、狭義の強制性があるということを踏まえて、河野談話を変更するものではないという答弁を安倍総理としてもしているところでございます。

松原委員 平成五年七月、日本政府は十六人の元慰安婦にヒアリングを実施した。非公開であります。この十六人を含む二十六人の元慰安婦の四種類の証言集がある。二十六人のうち強制連行されたと証言したのは八名。このうち二名は証言集による証言に食い違いがあり、その証言は信用できないとされた。また四人は、韓国人研究グループすら、話の前後のつじつまが合わず、調査が難しいと判断。残り二名は、慰安婦にされたのが戦地ではなく、遊郭で働いたものというふうに憶測されている。

 これは、一応そういうふうな内部資料が私はあったのではないかというふうに思っておりますが、私は、今回この慰安婦問題は、アメリカの下院で、これも恐らく中国のかなりの肝いりで公聴会に持っていって決議を上げようとしているんじゃないか。

 アイリス・チャンの胸像ができる。さっき言ったレトリックから考えて、南京大虐殺があったなら無辜の市民を宣教師が守ったという理屈は成り立たないんですよ。宣教師が無辜の市民を守ったのはこれは事実でしょう、恐らく。守ったというのは。彼らのエール大学神学校図書館の文書でも。であれば、南京大虐殺は否定されるんですよ。両方入れた映画がオンエアされているというのは、私に言わせれば信じられない話ですよ、それは。四十五万人いたというんだから。

 私は、そういった意味において、このことに対しては、くどいようでありますが、国の名誉にかかわる問題でありますから、それは民間人ではなく、国家としてぜひとも対応していただきたいというふうに思います。

 時間が余りなくなってきましたから、次に中国の偵察衛星を破壊したニュースについての話であります。

 このことに関して、防衛省、きょう来ていると思いますが、防衛省はMD構想にどういう影響があるか、御認識をお伺いしたい。

大古政府参考人 お答えいたします。

 我が国が整備を進めております弾道ミサイル防衛システムにつきましては、平成二十三年度ごろに所期の目標を整備されますけれども、このシステムにつきましては、我が国の独自のレーダーにより我が国に飛来する弾道ミサイルを探知、追尾を行うことを可能にするものでございます。そういう意味で、衛星からの情報がなければ必ずしも運用ができないというものではございません。しかしながら、一般的に画像衛星による情報につきましては、ミサイルが発射される前の事前の活動を察知するために有力な情報源でございます。

 それから、米国から提供される早期警戒衛星からの情報、これにつきましては、ミサイルが発射された直後にこれを探知する、いわゆる初期探知と申しておりますけれども、その上で重要なシステムでございまして、その意味で我が国のBMDシステムを補完する役割を果たしております。

 したがって、これらの衛星の情報が得られなくなる場合には、弾道ミサイルの対処に一定の影響が生じるというふうに認識しているところでございます。

松原委員 米国の航空宇宙専門誌に書いてあるところによりますと、この実験、衝突地点から全方向に時速約一千百キロメートルから二千二百キロメートルで宇宙ごみが放出された。実験が行われた高度には多くの人工衛星があり、実験によって生じた宇宙ごみによってこれらの衛星が被害を受けることが懸念される。それから、今回の実験は、中国が米国、日本、ロシア、イスラエル、欧州、台湾が保有している画像偵察衛星に、今お話があったことですね、脅威を与える。

 これはMDに対して、ミサイルディフェンスに対して影響はないはずがないのであって、例えばどこかのミサイルが、これから北朝鮮のミサイルがいよいよ、なかなかあそこは今燃料もないかもしれぬけれども、燃料を積み込んで、やるぞということなんかはこれでわかったりするわけで、これは極めて重要なんで、我々はこのことに対して危機感をかなり持つべきだと思うんです。

 このことに関して政府の認識でまず一点聞きたいのは、中国の胡錦濤主席はこのことを承知していたという御認識を持っているのか、彼がこのことを指示したという御認識を持っているのか、お伺いしたい。これは官房長官にお伺いします。

塩崎国務大臣 常識的に考えて、弾道ミサイルの発射のような事案が指導者に伝わらない、何も知らされないで行われるということは考えにくいと思われるのが正直なところであります。

 したがって、そういうことでありますが、しかし、そうはいいながら、他国の意思決定過程の話でありますので、政府としての考え方を述べるべきではないんだろうというふうに思います。

松原委員 冒頭の今の官房長官の御発言で、政府の認識としては、当然知らないはずがない、知っていた、胡錦濤さんは知っていて弾道ミサイルで偵察衛星を撃ち落としたと。

 私は、時間が終わっちゃったので、防衛省とちょっとねらいとかを話したかったのですが、要するに、中国が軍事技術を誇示しながら、まさに周りに対してさらなる無言の圧力を加えようとしていると思うんですね。

 私たちは、やはり中国とのつき合い方というのは考えなければいけないんだけれども、もちろん友好というのはベースにある、我々は友好はベースにあるけれども、こういった弾道ミサイルで宇宙衛星を撃ち落としたり、スタンフォード大学にアイリス・チャンの胸像をつくったり、また中国のテレビと一緒になって南京の虐殺の映画をつくったり、そして、慰安婦の問題で米国の下院の公聴会でこういうふうな戦略を練ったりするということを考えて、やはり我々は今、情報戦のただ中にある、情報戦に負けないようにこれから頑張っていかなければいけないと思うので、それに対する前向きな強い官房長官の御決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

塩崎国務大臣 先生の問題意識は私も全く同感でございまして、国家として、やはりその公の観点からも、しっかりとした発信をしていかなければいけないし、正しくないものが流されたときは、正しくないということをきちっと言える、そういう広報をしていかなければならない、こう思っております。

松原委員 終わります。ありがとうございました。

河本委員長 次に、小宮山洋子君。

小宮山(洋)委員 民主党の小宮山洋子でございます。

 今、ちょうどいろいろな契機で少子化の問題が焦点になってきておりますけれども、午前中も質疑にありましたが、少子化対策の戦略会議として、政府は、「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議、これをスタートされまして、塩崎官房長官がトップだと伺っておりますけれども、もともと少子化の話が出てきたのは、一九九〇年に一・五七というこれまでにない出生率の低下を見て、一・五七ショックと言われて、それからもう十六年もたっていると思うんですが、その間、政府がいろいろ対策を出すのに、ほぼ一貫して下がり続けている。

 これはやはり、腰が据わってないというか、やはり小手先で、量が足りないのか、タイミングがずれているのか、子供を持ちたいと思う人の要望にぴったりこたえてこなかったからではないかと思うのですが、今回、非常に大層な名前がついております戦略検討会議では、これから持ちたい人が安心して持てるような青写真が示されると期待をしてよろしいんでしょうか。官房長官に伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 一・五七ショック、一九九〇年、確かにこのときから特に少子化というものが大きなテーマになってきて、私も覚えておりますが、自社さ政権のときに、たしかエンゼルプランもつくられたものだと思っております。その後、新エンゼルプラン、子ども・子育て応援プラン、そして去年の猪口さんの新しい少子化対策ということでありますけれども、今御指摘のように、なかなか思うように事は進んでいないということで、今回、「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議という会議を、幅広い大臣と民間のメンバーを加えてスタートしたわけでございます。期待できるかどうかはこれからの我々の努力にかかっているので、期待にこたえられるようなものをつくっていかなければならないというふうに思っております。

 先ほど申し上げたように、当初、エンゼルプランを最初つくったときに、私も覚えておりますけれども、あのころはまだ待機児童ゼロ作戦みたいなことで、建物をつくったり何かいろいろなことをすれば何とかなるだろうと。しかし、OECDの統計を見てみても、お金をたくさん使えばいいというものでもない。そういうことを考えてみると、やはりこれは、社会が子育てに対してどういう接し方をする社会なのか、そういう根っこのところからの議論をしていかなきゃいけないなということがだんだんわかってきて、それに応じて名前がいろいろ変わってきたわけでございます。

 今回、それこそ、今度こそ何とか皆さん方のハートにきちっと打つような、そういう案がまとめられればと思っておりますので、ぜひ小宮山先生にも、いい意見がございましたら御提案をいただければ大変ありがたいと思っております。

小宮山(洋)委員 本当にしっかりと、骨が細くならない骨太の結論を出していただきたいというふうに思っております。

 それで、きょうは二点伺いたいんですが、最初は、昨年の少子化対策の柱とされました放課後子どもプランにつきまして、これは学童の側からと、双方からいろいろと問題があるのではないかとも言われております。四月からスタートなので、気にかかる点を幾つか伺わせていただきたいと思います。

 この放課後子どもプラン、当初は、空き教室を利用した全児童対策、それが放課後子ども教室ですね。それから、保護者が見ることができない放課後の子供を預かる、これは厚労省が担当しております放課後児童クラブ、いわゆる学童保育を統合するという報道が最初に行われまして、保護者から大変心配の声が上がりました。

 その後、そうではない、それぞれを拡充して、可能な形で連携を図っていくというふうにされているのだと思いますが、そのあたりの全体の姿勢。これは高市大臣に伺おうと思ったんですが、ちょっと体調不良ということで、またぜひ次の機会に質疑をしたいということを大臣もおっしゃっていますので、そういう機会はまた理事会の方でつくっていただければと思いますが、本日は平沢副大臣に急遽おいでいただいておりますので、まず、その全体の考え方について基本姿勢を伺いたいと思います。

平沢副大臣 御案内のとおり、昨年の六月に新しい少子化対策が決められたわけでございまして、総合的な放課後対策、これの推進を図るために、各市町村において文部科学省所管の地域子ども教室、これは平成十九年度からは放課後子ども教室と名前が変わりますけれども、それと厚生労働省所管の放課後児童クラブ、これを一体的に、あるいは連携して実施する放課後子どもプランというのを作成したわけでございます。

 これを踏まえまして、平成十九年度から放課後子どもプランを創設することとしまして、政府予算案においても、放課後子ども教室につきましては、新規事業として、平成十九年度、全国一万カ所の小学校区において実施する。それから、厚労省所管の放課後児童クラブにつきましては、平成二十一年度の目標値が一万七千五百カ所でありましたけれども、これを大幅に前倒ししまして、平成十九年度に二万カ所で行う、そして、必要なすべての小学校区において実施する、こういうことにしたわけでございまして、そのための必要な予算を計上しまして、原則としてすべての小学校区で放課後の子供の安全で健やかな活動場所を確保するということにしたわけでございます。

 いずれにしましても、これからやるわけでございまして、私たちは、具体的に、やって本当によかったと、それを子供たちにも親の方々にも喜ばれるような形で結果を出していきたい、このように考えております。

小宮山(洋)委員 現場で子供を預けている人たちも、それから実際にこういうことに携わっている方々も、それぞれを充実してくださいという要望が強いかと思うんですけれども、きょう、ちょっと図をお配りすればよかったんですが、今も同じような名前が出てきて、頭に入っていらっしゃらない方は何が何だかよくわからないかと思うんですが、今回、放課後子どもプラン推進事業という枠の中に、今までのいわゆる空き教室を使った全児童対策と、それからいわゆる学童保育と、これを一緒の傘の下にするということなんですよね。それぞれのやり方は自治体の中でいろいろやってくださいということなんだと思うんです。

 そこで、「教育委員会が主導して、福祉部局と連携を図り、」と。当初は、教育委員会が頭にあって、福祉部局は幾つかの連動するところの一つだったので、それは大分上がってはきたと思うんですけれども、当事者からすると、それはやはり対等な立場でやるんじゃないんですかということなので、教育委員会が主導してということが学童関係者からは大変気にかかるところなんですが、この位置づけはどういうふうになっているんでしょうか。

中田政府参考人 お答えいたします。

 放課後子どもプラン、今議員御指摘のように、教育委員会が主導して、福祉部局と連携を図って実施するということとしておりますけれども、この教育委員会が主導をするということについては、教育委員会が積極的な役割を果たすことによりまして、学校側の理解、協力が得られやすくなり、また学校と、それぞれ二つの事業が行われるわけでありますが、それぞれの事業を実施する関係者との間で緊密な情報交換が行える、さらに、学校の諸施設の広く多様な空間を個々の子供たちの活動の場として活用しやすくなる、こういう効果があるということで、教育委員会が主導する役割を負うというふうに考えてございます。

 なお、本プランのもとでは、放課後子ども教室推進事業と放課後児童クラブ、二つ事業が実施されるわけでございますので、それぞれの事業を担当する部局と十分連携を図ることは当然のことでございまして、それぞれの事業の機能が十分発揮されるよう、厚生労働省とも緊密に連携しながら推進してまいりたいというふうに考えてございます。

小宮山(洋)委員 三年間の空き教室を利用しての全児童を対象にしたものを調べてみますと、週に一日ぐらい行われているところが多かったんだと思うんです。一方で学童の方は、低学年の子供は、小学校にいる時間より長い、千六百時間以上を過ごす生活の場になっているわけですね。そこはもう基本的な違いがあるのだと思います。

 きちんとした生活の場の確保が必要ということで、当初は、この二つの事業は別々の場所で、あるいは同じ建物でも部屋を分けて実施すると言われていたのが、先日の説明会で、なぜか同じ部屋で一体的にという三つ目のケースが出てきたということが心配されているんですが、これはどういうことなんでしょうか、厚生労働省に伺います。

村木政府参考人 御答弁申し上げます。

 委員が今御指摘をされた資料は、地方自治体へ私どもが説明をいたしましたときの資料だろうと思いますが、これは、放課後子どもプランの実施場所ですとか実施形態としてどういう形があり得るかということで例をお示ししたものでございまして、放課後児童クラブそのものの国庫補助基準とか事業のあり方とはまた別のものでございます。

 その資料にも、実は、注釈をきちんとつけておりまして、放課後子どもプランにおきましても、放課後児童クラブについては現行と同様のサービスを提供することになるので、具体的な国庫補助対象となるかどうかにつきましては、専用スペースがあるかどうかとか、放課後児童指導員の配置があるかどうかとか、必要な開設日数が確保されているかどうか、こういった実施要項の補助要件、これはきちんと守っていただくということを前提に考えておりまして、具体的には、それぞれいろいろなやり方が出てまいりますので、しっかり個別に見て判断をしていくということでございます。この点は、自治体へもしっかりと徹底をしてまいりたいというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 それでは、同様の、今と同じようなサービスが行えるようにきちんとやるということで、この点は特に心配はないということだったかと思います。

 それで、学童保育については、今、さらにニーズが高まっていると思うんですが、おととしでしたか、青少年問題特別委員会で集中審議をした際に、これは大規模化が大変問題になっていると。厚生労働省の外郭のところで行われた調査でも、三十人からせいぜい三十五人ぐらいが適正規模と言われたのに、九十人とか百人のところがあって、とても見切れないし、安全面からいっても問題だと。そこで、基準をつくってほしいということを申し上げましたら、当時の北井局長が、基準はちょっと厳しいかもしれないけれども、ガイドラインぐらいは検討したいという大変心強い御答弁をいただいたんですが、その後、この学童の方のガイドラインづくりというのはどのように進んでいるのかを伺いたいと思います。

村木政府参考人 御指摘をいただきましたガイドラインづくりでございますが、放課後児童クラブ、各地域で非常に多様な形でやっておられますので、その地域の多様性とか柔軟な実施形態を尊重しながら、国としてどのような対応ができるかということで検討をしてまいりました。

 昨年度につきましては、自治体におけるガイドラインの設定状況の調査をいたしましたし、今年度につきましては、こども未来財団というところに放課後児童クラブの運営についての調査と研究をお願いしているところでございまして、間もなく、年度内には何とか取りまとめをということでお願いをしておりますので、この取りまとめ、研究結果を踏まえまして、しっかり検討したいというふうに思っております。

小宮山(洋)委員 今調査をしていて、これから検討ということですが、子供たちはもう既に、多くの子供が九十人、百人の中で学童を受けているわけですから、ガイドラインをつくりますと言われて一年半、遅いのではないかと思います。また改めて伺いますので、ぜひスピードアップをして、ガイドラインぐらいはつくっていただきたいというふうに思います。

 一方の、空き教室を利用した全児童対策の方なんですけれども、放課後子ども教室、三年度目の十八年度はおよそ九千カ所ぐらいで行われたと聞いておりますが、そのうちの三分の一、三千カ所ぐらいは、民間団体が直接委託を受けて行ってきたものだと聞いています。ところが、今回この新しい仕組みになって、直接委託ではなくて補助事業に戻ったために、県や市町村が三分の一ずつ負担しないとできない形になってしまった。先日ヒアリングで、実際にこれを担っていたNPOの方からお話をいろいろ伺いました。

 特に今、財政事情もあって、地方の意欲が余りなくて、例えば奈良県では、民間のNPOが五十六カ所行ってきたのに、今回、その奈良県か市町村か、とにかく地方の方でやると言わないので、それがゼロになるかもしれないというふうな話もあるんです。

 これでは明らかに後退ではないですか。

中田政府参考人 文部科学省が平成十六年度から行ってまいりました地域子ども教室推進事業は、国の委託事業として、民間団体に委託をして実施してきたところでございますが、これにつきましては、平成十八年度までの三年間の時限措置とされてきたところでございます。

 そこで、事業の継続を望む多くの声に配慮いたしまして、平成十九年度から、地域において教育力を高める、こういう観点から、地方公共団体向け補助金として、放課後子ども教室推進事業を新設したところでございます。これに伴いまして、地方公共団体に対しては、所要の地方財政措置が講じられる予定でございます。

 これによりまして、放課後子ども教室推進事業は、実施主体は市町村となるわけでございますが、具体的な実施に当たりましては、当該市町村から、これまで放課後子ども教室を担ってこられたようなNPO法人でありますとか、その他民間の教育団体、民間の団体に事業委託することが可能となるように、今予定をしてございます。

 これらの制度改正、制度の趣旨につきましては、これまでも、文部科学省より地方公共団体や民間の団体に説明に努めてまいったところでございますが、今委員御指摘のように、地方の中には、財政が非常に厳しくてこの補助制度を活用できないというような声もございますが、私どもとしては、それぞれの地方公共団体にこの趣旨をよく理解してもらって、ぜひこの事業を全国で展開できるようにしていただきたい、そういう努力をしているところでございます。

小宮山(洋)委員 今のお答えをお聞きになって、平沢副大臣、どう思われますか。今まで一生懸命、三分の一ぐらいは民間が担ってきたんですよ。今後ともやりたいと言っているのに、今度仕組みが変わって補助金で講じられるようにいたしましたと言われても、実際に市町村がやらない。そうなると、せっかく今までやってきたものができなくなっちゃっている。そこはやはりおかしくないですか。地方にやるように言っているんだから、やるように督促するといったって、現実問題、四月から新たに変わるというのに、三月までやっていた人たちができなくなっているんですよ。奈良などは一カ所もできなくなりそうだと言っているのに、やるように講じていますから、言うだけですというので、よろしいんですか。

平沢副大臣 今度から費用分担が、国が三分の一、都道府県が三分の一、そして市町村が三分の一となるわけですけれども、そのほかにもちろん保護者の負担がありますけれども、その市町村の分の三分の一につきまして、もしその負担が、市町村の財政上、過重であるからこういったことはできないということであれば、これは大変に大きな問題でございまして、これはいろいろと、財政上の措置を講じるなりなんなりしまして、確実にこの負担ができるように、そしてこの事業が実施できるように努めていきたい、このように考えております。

小宮山(洋)委員 今、副大臣から、心強いというか、民間からすれば当然やってくださいということだと思いますけれども、御答弁をいただきましたので、四月からですから急いでやっていただいて、ここの委員会でもしっかりとまた担当大臣ともやっていきたいと思いますし、与党の議員の方もうなずいていただいているので、そこはみんな同じ思いだと思いますので、ぜひ今のお約束を果たしていただきたいと思います。

 もう一点、もう一回最後にここの締めくくりで戻るわけですけれども、今年度、学童は五千九百カ所ふやして二万カ所に、そして放課後子ども教室は一万カ所を目指すということで、それぞれ予算が組まれていて、私が最初から申し上げているように、それぞれがやはり充実していって、必要なところで連携がとれればいいと思っているのですが、図を見ますと、先ほど副大臣が最初におっしゃったように、「原則としてすべての小学校区での実施を目指す」ということで、真ん中のところで一つの枠になっているんですね。

 ここが、先ほどの御答弁にも、一体的に、あるいは連携してと、連携してはいいんですが、一体的にと言われてしまうところで、またごちゃごちゃになってしまって、学童のケアが一層必要なところがないがしろになるのではないかという心配がかなり現場にございます。

 そこのところは、そうではないということを、うなずいていただいているので、平沢副大臣に確認をさせていただきたいと思います。

平沢副大臣 先ほど御説明しましたように、今回の事業は一体的あるいは連携してということなんですけれども、今先生御指摘のような心配があることも事実でございまして、四月からの実際の実施に移った後、そういった御心配がないように、私たちは全力で取り組んでいきたいと考えております。

小宮山(洋)委員 心強い御答弁をいただいて、ありがとうございます。

 これはこの委員会でも、それから私が委員長をしております青少年特でも、ずっとこの学童の問題、放課後の子供の居場所の問題に取り組んでおりますので、また私どももしっかりフォローさせていただいて、意見も言わせていただきたいと思っておりますので、大臣にもそのようにお伝えをいただいて、また建設的な質疑をぜひしていきたいと思っております。

 それでは、本日の時間の後半の方、もう一点目に移りたいと思うんですが、これは選択的夫婦別姓の問題でございます。

 先日、選択的夫婦別氏制度世論調査が行われたと思います。昨年の十一月から十二月にかけて、これは法務大臣も約束されたので、ぜひしていただきたいということを前回の内閣委員会でも官房長官に申し上げましたが、これが行われて、家族に関する法制度についての世論調査ということで、夫婦別姓につきましても結果が出た。ただ、この報道が各紙とも、別姓反対がじわりとふえたとか、賛否が並ぶといった見出しになっているんですね。

 まず、今回の調査の対象ですけれども、全体的に回収率が減っている。だからこの世論調査のあり方自体を検討しなければいけないと思うんですが、特に今回の問題については、これから結婚するであろう二十歳から二十九歳、二十代の回収率が、前回、五年前、十三年の調査では五八・一%だったものが三二・二%と、二六%も激減をしているんです。何でこのようにこの層が減ったのかを伺いたいと思います。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府におきましては、各種の調査の方法の中でも最も信頼性の高いとされる、調査員による訪問面接調査によって世論調査を実施しております。しかしながら、昨今、個人情報保護意識や防犯意識の高まり等を背景として調査環境の悪化が進んでおり、特に近年は回収率の低迷が続いているところでございます。

 今回の家族の法制に関する世論調査におきましても、こうした個人情報保護意識あるいは防犯意識の高まり等を背景として、調査拒否の数が高い水準にございます。このことが若年層の、二十歳代の回収率低下の大きな要因であると考えているところでございます。

小宮山(洋)委員 この回答者の年齢構成なんですけれども、比較的ずっとそういう考え方で過ごされてきたから反対派が多い熟年層の回収率というのはそれほど減っていない。一〇%も減らない、五、六%しか減っていないんですね。その結果、若い人たちが少ないから全体としては反対の割合がふえているのではないかということを、これは学者の方なども言っています。

 別姓が名乗れないという問題に直面したり、あるいは直面してきたりした二十代から四十代の女性では、選択的夫婦別姓に反対は二〇%弱で、賛成は四〇%を超えて、およそ二倍の人が賛成だと言っているんです。こうした年齢層の声をしっかり聞く必要もあると思うんですけれども、官房長官、どのようにお考えでしょうか。

塩崎国務大臣 細かな数字について今お話がございました。年齢階層別ということでありますけれども、確かにこれは婚姻制度や家族制度に大いに関係のある問題でございますので、それぞれの層が自分たちの意見というものをちゃんと出してもらって、今のような拒否が多いというのはゆゆしきことだと思いますが、そういう問題も乗り越えて、やはり各層の意見を聞いていかなければいけないというふうに思っております。

 何しろこれは国民全体にかかわることでありますから、大勢の人たちの賛同を得ないといけないということで、五年に一遍調査をしてきているわけでありますけれども、今先生御指摘のように、若い人たちを含めて、各層の意見をバランスよくとっていかなければいけないんじゃないかというふうに思います。

小宮山(洋)委員 内閣府の方にもう一問、この調査のことについて伺いたいんですけれども、結局、先ほど言われたように、抽出した中から訪問をして、お宅に伺って調査をするわけですよね。そうすると、昼間の時間にお宅にいる方たちが答えるということになります。ですから、高齢な方はお宅にいらっしゃるから答えられる、それから、やはり専業主婦で家にいれば答えられるということだと思うので、どうしても、ますます、特に若い人たちは働きたいという思いもあって外で働いている人も多いから、お宅を訪問したのじゃなかなか聞けないわけですよ。

 ですから、今回の回答者のいろいろな分析の資料もいただきましたけれども、これを見ますと、回答者の八六・六%が既婚者、既に結婚している人なんです。それで、回答者の九二・九%が既に子供もいる人なんです。そういう形だと、これは世論調査としていびつと言うと言い過ぎかもしれませんけれども、やはりすべての人のが聞けていない。これはもうすべての世論調査について、今の個人情報保護も含めてあると思うので、全体を考えなきゃいけませんけれども、特に、これから結婚をする若い層の人たちが直面をする問題なのに、その人の意見が、そこだけ多く聞けと言っているのじゃなくて、極端に、半分ぐらいに減っちゃっている。

 これは、この世論調査だけでいろいろ判断できないと思うし、世論調査の方法ももう一歩踏み込んでやらないといけない。職場まで行くのがいいかどうかはわかりませんけれども。そこのやり方がもっと工夫が要るんじゃないですか。いかがでしょう、内閣府は。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、若い層の回収率というのは、この世論調査だけじゃありませんで、すべての課題になっております。こういうことで、内閣府におきましても、事前にはがきを送りますとか、謝礼を改善するでありますとか、実施主体が内閣府であると示すとか、改善をしてきております。

 ただ、やはり先ほど申し上げましたように、近年の調査環境は悪化しておりますので、調査協力を得られない方が増加しているということでございますので、今後ともさまざまな方法によりまして改善していきたいと思っております。

小宮山(洋)委員 やはりぜひそのあたりの工夫をしていっていただかないと、世論調査がこうだからこうですというふうには言えないような状況になっているということをわかっていただくために、今幾つかの例をお示ししました。

 今回の調査結果について、あと残りの時間で伺いたいんですが、別姓を選択できるように法律を改めても構わないという意見が三六・六%、通称をどこでも使えるように法律を改めることは構わないというのが二五・一%。姓を変えることによる不都合をなくすために法改正をしても構わないという人が、合わせると六一・一%、六割以上に達しているんですね。夫婦は必ず同姓を名乗るべきで、法律を改める必要はないという意見は三五%なので、そういう意味では、法改正が必要かどうかというと、法改正容認という意見が圧倒的に多いという見方もできると思うんですが、この結果をもとに、政府見解として、法務省の民事局が直ちに民法改正案を提出すべき状況にないというコメントをしたと報じられているんですが、この点は塩崎官房長官、どうお考えですか。

塩崎国務大臣 アンケート調査の結果は、いろいろな読み方があると思います。結論的に、直ちに改正案を提出すべき状況にないとのようなことを政府見解として述べているわけではないというふうに思っています。

 いずれにしても、先ほど申し上げたように、国民の理解を得ていかなきゃいけないということで、今こういうことをやりながら法改正をどうするかということを考えているわけでありますけれども、とりあえず、今回の意見につきましては、前回五年前の結果より少し慎重なのかなという結果が読んでとれるということでありますので、法務省では、今回の調査を受けて民法の改正法案を提出する環境が改善したとは見られないというふうに言っていることでありますので、全く提出すべき状況にないと言っているわけではないと思います。

 アンケートだけがすべての判断基準であるわけはないわけで、まさに国会というのは国民の代表であるわけで、まさにアンケートをこの国会の中でとったっていいわけでありますから、そういうことで、これは一つの考え方ということでアンケート調査をやっているわけでありますから、国会が最終的に腹を決めて判断をすればいいことだというふうに思います。

小宮山(洋)委員 そうなんですよ。全体からすると多少慎重な方に振れたかなというのを、その背景に、若い人たちが答えなくなったということがあるんじゃないですかということを先ほど申し上げたので、その辺もぜひ御考慮いただきたいと思います。

 もう一つ。改姓、姓を変えることで不便を生じることがあると思うという意見が四六・三%、それから結婚しても仕事上不便を生じないようにした方がよいという意見が六二・七%、実家の名前を残すために結婚しにくくならないようにした方がよいという意見が五七・九%、それから名字が違っても家族の一体感には影響がないという意見が五六%などといった法改正以外の項目では、今申し上げたようなところは支持する意見が過去最高になっているんですね。

 ですから、私が言いたいのは、別姓を名乗る夫婦、事実婚とか通称使用なども含めまして、全体のあり方について、どちらかというと今までより寛容な、認めてもよいという意見が出ているということ、これは報道はほとんどされていないんですけれども、こうした意識の変化ということもやはり法改正を考える上の大事な要素ではないかと思いますが、官房長官はいかがでしょう。

塩崎国務大臣 事実婚を選ぶ夫婦のお話が今出ましたが、確かに、これは平成十三年の五七・〇から今回六二・一ということで、実質的には事実婚をされているということであるわけで、これをどう意味合いを酌み取るのかというところが難しいところだし、また大事なことではないかと思っています。

 今幾つかの点を具体的にお挙げいただいて、アンケート対象の皆さん方の心の中をお読みいただいているわけでありますが、確かにそういういろいろな角度から見た上で、最終的には、もちろん政府としてもこれは考えなきゃいけないことでありますが、議会の方でもぜひお考えをいただき、各党でまた議論いただければありがたいなというふうに思います。

小宮山(洋)委員 この民法改正の答申を法制審議会が出してから実に十一年たっているわけなんですね。これまで、政府の審議会が答申をすれば、大体政府が法案をつくって国会にかけて、国会で議論をするというのが通常の形だったと思っています。ところが、なかなか議員の皆様の賛成も得られない、与党の賛成も得られないとかいろいろな事情があって、これまで政府案という形では出されてきていない。

 私たち野党は、毎国会、衆参に、ずっとこの選択的夫婦別姓と非嫡出子の差別を撤廃する法案を提出し続けてきているわけです。この非嫡出子については、不利益な取り扱いをしてはならないという意見が今回ふえまして五八・三%に上っているということもございます。

 そして、この別姓の選択について諸外国を見ますと、これまで別姓が選択できなかったわずかな国のトルコでも、二〇〇一年に民法改正をいたしました。それから、最後に残っていたタイでも、二〇〇五年に姓名法を改正して、両国とも別姓を選択しようと思えば選択できるようになりました。ということは、選択の自由が全くないのは、世界広しといえども日本だけなんです。

 こういう実情やら、やはり姓が女性だけ変わることを、女性が大体九六、七%から、時によっては九七、八%改姓をしているわけですが、ずっと自分と一緒に過ごしてきた姓をとられる、アイデンティティー、同一性がなくなる、あるいは仕事上で社会的な不利益をこうむる。それから、先ほどちょっとありましたように、今一人っ子同士の結婚がふえて、家の名を継がないといけないということがあって結婚できない。いろいろな状況があるので、同姓がいい人に、しちゃいけないと言っているんではなくて、別姓を望む人の選択肢をふやしましょうということですので、ぜひこれは、もちろん野党の側からはずっと出しているんですけれども、政府・与党としても積極的な取り組みが必要な問題ではないか。

 結婚すれば姓が変わるから、先ほどの家の名のことも含めて結婚できない、だから子供を産めないという人も現実にいるわけです。私もたくさん当事者の声を聞いています。これは少子化への対応という意味でも、多様な選択を許すということ、認めるということが必要ではないかと思いますが、改めまして官房長官のその辺の御見解を伺いたいと思います。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 今、ちょうどこの法制審の答申から、平成八年の二月でありますから十年、十一年たった、こういう御指摘がございました。

 お話があったように、やはりこれは、我々も国民の意識を調査しながらということで、政府として検討してきているわけでございますが、最終的な国民意識といっても、これは議会制民主主義の中では議会にその民意は凝縮されているということだと思いますので、政府は政府として、一昨年の十二月に改定されました第二次の男女共同参画基本計画に基づいて今作業しておりますけれども、議会の方でも、各党でまた議論を賜った上で、議会の中でもそういう考え方を議論していただければありがたいなというふうに思っております。

小宮山(洋)委員 しつこいようでございますけれども、議会でももちろん審議をしますが、やはり政府の審議会が答申を出したら政府案を出すというのが今までの通例だったのではないかということと、今、図らずもおっしゃっていただきました男女共同参画の基本法、基本計画でも、やはりそのあたりの社会制度を見直すということは計画の中にあるわけですので、ぜひ政府としても積極的なお取り組みをお願いして、質問を終わりたいと思います。

河本委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 先ほど、二時間ほど前に拉致の特別委員会の場におきまして、塩崎官房長官にわずか五分という質問時間でございましたが、この内閣委員会で所信表明を受けての質疑でございます。

 この所信表明の中にも、拉致問題について、「拉致問題対策本部を中心に、引き続き政府一体となって総合的な対策に取り組んでまいります。」と先般も所信を述べられましたので、通告をしておりませんが、先ほどの特別委員会では私もやや不燃焼でございますので、若干の時間で質問をさせていただきたいと思うんです。

 それは、先般の六カ国協議を受けてでございます。六カ国協議を受けて、私が先ほど質問したのは、日本の言うこの日朝間の懸案事項というのは、日本からすれば拉致問題であるけれども、北朝鮮は、それについては果たして同じ認識を持っているのだろうかということで質問をいたしました。答弁は、日本側がこの問題で議論をしてきたんだから、当然北朝鮮も同じ認識であろうと。

 しかし、それは我々にしてみると、とにかく北朝鮮という国は常識の通用しない国ですから、我々が見ている景色と彼らの見ている景色が違う可能性がある、それを非常に我々は懸念をするわけです。日朝平壌宣言については、私は、もう正直言ってあの宣言自体が無効だというふうに言っても言い過ぎではないと思いますけれども。とにかく、こちらがほほ笑めば向こうもほほ笑む、こちらが心を開けば向こうも心を開く、こちらが笑顔を見せれば向こうも笑顔で返してくれる、そういう国じゃありませんで、性善説に立ってあの国と交渉するのはいかがなものかというのが私自身の一貫した思いでございます。

 そこで、重ねて官房長官にぜひ伺いたいんですけれども、我が国が北朝鮮に対して科している現在の制裁に対して、六カ国協議で、これは先ほど、六者会合における合意を受けた北朝鮮側の対応等を考慮しつつ今後の対応を検討するということを述べられました、我が国の対北朝鮮措置を発動しという中で。これについて、今後、六カ国協議の日朝間の協議によってこの制裁が緩むあるいは見直されることがあるのかどうか。もしあるとすれば、それはどういう状況において制裁の措置が変わるのかということにつきまして、どうお考えでしょうか。

塩崎国務大臣 今の制裁措置というのは、国連の方を指しているんですが、それとも独自のものを指しているんですか。(渡辺(周)委員「独自のものをお願いします」と呼ぶ)独自のものですか。

 まず第一に、国連の方は、国連決議の中に明記をしておりますけれども、変える場合には国連で決議をし直さないといけない、こういうふうになっております。したがって、したがってというか、この問題については、五カ国の間では当面これはこのままでいくということでございます。

 独自の制裁についても、何ら事態に進展がなければ、それをいじるということはあり得ないわけでありますから、制裁は制裁、そして今回の作業部会で話し合うことは話し合うこと、それは別の問題でありまして、当面、何か制裁を緩めるとかいうようなことは考えておりません。

渡辺(周)委員 といいますのは、この二カ国協議を設置する場面において、つまり万景峰号の入港禁止を初めとする、あるいは、北朝鮮に言わせれば共和国に対する敵視政策を日本は根強く持っている、だから二カ国協議に応じられないのだと、だからということを必ず条件に出してくるはずなんですね。このまま、何も得るものもない北朝鮮が、日本から何の譲歩も引き出さずして席に着くとはとても思えない。

 その場合、これはもうどちらが先かの話になりますけれども、二カ国協議を始めるについてはいかなる前提もないということで日本政府は臨むということで考えてよろしいんですか。つまり、北朝鮮から、ここで万景峰号の問題あるいは厳格な法による措置、こういうものを日本政府が緩めない限りは協議に応じられないと言ってきた場合にどうするかという意味でございますけれども、その点については、官房長官、どうお考えですか。

塩崎国務大臣 まだ話し合いも始まっていない段階で、何らかのことをアクションをとろうといったようなことは全く考えておりません。このまま話し合って、どういう進展があるのか、それを見なければわからないということでございます。

渡辺(周)委員 いや、何の前提もなく協議、席に着くことがお互いできるかということなんです。向こうが何を言おうと、とにかく座れ、それはもう六カ国協議の合意じゃないか、その中に入っていることじゃないかと。ここにある作業部会の設置については、もう既に、いかなる理由も挙げずに両国が協議をするということは、これは合意の中にある、もうこれ以上北朝鮮が何かごねてくることはないというふうに見てよろしいんでしょうか。

塩崎国務大臣 それは交渉事でございますから、向こうがどういうアクションに出てくるかわかりませんが、少なくとも、この作業部会を始めて、日朝間の国交正常化に向けた話し合いを始めるということを北朝鮮も認めたわけであって、おととしの九月の共同声明、この中でも既にそのことは彼らも一回は認めたわけでありまして、今回、それの完全実施ということで、これの合意を見たということでありますので、これはもう条件何もなしにスタートをして、その中で何ができるのかということを見ていかなければいけないということだと思います。

渡辺(周)委員 先ほどもどなたか委員の方が質問されていましたけれども、今回の六カ国協議の合意、いわゆるこの初期段階、そしてその後の九十五万トンをめぐる次の進展というプロセスの中で、日本と北朝鮮の話し合いが進展をしていかなければ、ほかの作業部会に対して、つまり、日本と北朝鮮の二国間協議が必要十分条件である。ここが進展していない限りは、ほかの作業部会がいかにどうなろうと、調整の結果、ある一部門、つまり日朝問題だけがデッドロックに乗り上げているということで、当然のことながら結論は出ないということで理解をしてよろしいんでしょうか。

 つまり、我々が一番恐れているのは、日本と北朝鮮のこの協議が、北朝鮮のごね得、ごねて先送りをされて、結果として、この問題は少し切り離して永遠のテーマで二国でやってくれ、それよりも、核の脅威を考えれば、あるいはアメリカにとっての脅威は核拡散であります。その問題について、もうある程度進展が見られたから、そこはそこで進めよう。九十五万トンのうちの何十万トンかは進んでいるところで、北朝鮮にもうエネルギー供与をしようではないか。悪いけれども、日本と北朝鮮のデッドロックに乗り上げた結論を待っているわけにいかないということの現実的な歯車が、外交の冷徹な歯車が動き始めてしまって、日本が実は二国間協議、今までも繰り返されてきたように先送りをされて結論が出ない、しかしほかはどんどん進んでいってしまうという懸念を持つわけです。

 その点について、これは政府部内の意思というのはどういうことになっているんでしょうか。

塩崎国務大臣 渡辺先生が御心配になられるお気持ちはよくわかりますし、また、拉致の問題に対する思いが深いがゆえにそういうことをおっしゃっていただいていると思っております。

 先ほどの拉致特でも申し上げたように、今回のこの措置の中に明確に書いてあるように、「五つの作業部会で策定された諸計画は、全体として、かつ、調整された方法で実施される」ということで、この五つの作業部会がばらばらに議論したとしても、最後はこれは調整されなきゃいけない、全体としてまとまらなければいけないということであって、核の問題が余り答えが出ないままに支援に走るとか、そんなことはあり得ないし、拉致の問題が何の進展もないままに核の問題も中途半端であったりするようなことはもちろんあり得ないし、要は、今申し上げたこの五つのことは、やはり最後は一緒にいかなければいけないということであって、我々はその枠組みでこれを決めたわけであります。

 したがって、この決めたとおりやらなきゃいけない。冷徹な外交の歯車が、こうおっしゃいましたが、これはもう冷厳なる言葉でみんな合意したことでありますから、これを守るのは六カ国の共通の義務だというふうに思っております。

渡辺(周)委員 この問題についてはまだまだ申し上げたいことがございます。一言言うのであれば、とにかくあの国は、これまでも繰り返し繰り返し危機を演出してはそのたびに交渉のテーブルにのせて、そして得るものを得て、あの国体を維持してきた、国家体制を維持してきた国であります。

 恐ろしいのは、本当に核の廃棄までいくのかどうか、それについては結果は玉虫色のまま。当面は封鎖をしてその無能力化をすると。しかし、実際、本当に完全な申告などが行われて、それをすべて把握するだけのことができるのかどうか。つまり、彼らは核を持っているという危機をほかの国に持たせることによって交渉を優位に進めたわけですから、すべてを廃棄してしまったら彼らの次なるカードがもうなくなるということを考えると、果たして本当にすべてを廃棄するのだろうかと、非常に私は疑わしいと思っているわけでございます。

 ぜひ諸国と連携をしながら、とにかく日本の断固たる姿勢を示していただきたい。そして、北朝鮮のさまざまな陽動作戦といいましょうか交渉に振り回されないように、我が国としての毅然とした姿勢だけは貫いていただきたい、そのことを冒頭にお願いしたいと思います。

 さて、それでは慰安婦の問題について内閣官房長官にお尋ねをしたいと思います。

 先ほど松原委員の方からも触れられたというふうに聞いておりますけれども、私、ちょうどその時間、それこそ委員会、拉致の特別委員会に出ておりまして、ちょっと聞いておりませんでしたけれども、アメリカの下院で日本政府に謝罪を求める従軍慰安婦の非難決議が今審議をされている。これまでも、過去八回にわたって提出をされてきた。そして今回は、アメリカ議会の構成が変わりまして、ひょっとしたら、拘束力がないとはいいながらも、この非難決議が可決されてしまうのではないかということを危惧しております。

 この点について、これはこれまでも裁判をアメリカで起こされておりました。それについては棄却をされているわけなんですけれども、中国のチャイナ・ロビーの方々が、リベラル派、人権派と呼ばれる方々のところに繰り返しロビー活動を行われて、当事者でないアメリカが、日米同盟と言いながら、日米はパートナーであると言いながら実は立法府において、議会においてはこのような決議案を今審議しているという中で、この背景について、これは官房長官、どのような御認識を持っていらっしゃいますでしょうか。

塩崎国務大臣 一月三十一日に、カリフォルニア州選出の民主党議員でありますマイク・ホンダ議員が慰安婦に関する決議案を下院に提出したわけであります。

 その背景ということでありますけれども、それは、このマイク・ホンダ議員がかねてよりこの問題に関心を示してきたということであり、また、公聴会を今月の十五日に開催して、元従軍慰安婦の方などが証言をしたというふうに聞いているわけでございますけれども、その背景は、今のように、このマイク・ホンダ議員自身の関心、並びに、これが可決されるかどうかというのはわかりませんが、人権問題に対する関心が背景になっているんだろうと思います。

 政府としては、当然のことながら、事実と合っていないこともありまして、私ども政府としての考え方は、大使並びに大使館員がさまざまなところに説明に事前に回っているというところでございます。

渡辺(周)委員 外務省が書簡を送ったり、現場の在米大使館がさまざまな説明をしているというふうにも報道されておりますけれども、今こうした審議の中で、二月十五日に公聴会が開催され、韓国及びオランダ人の元慰安婦を初めとする証人が呼ばれて発言を行った。日本側に反論の余地がないですね。事実でないなら事実でないということを、その証言のどの部分についても否定をするだけのチャンスが与えられない。つまり、これだけのことを、同盟国、友好国と言いながら一方的な慰安婦の証言を彼らは求めて、日本政府は書簡を送るだけ。

 今、補佐官が行っているようでございますけれども、日本政府として、やはりアメリカの政府に対してあるいは議会に対して、事実でないということを説明すべきではないか。そういうことをなぜ今まで怠ってきたのか。つまり、今回はどういう形で、可決されるのか、あるいは、反対派の発言も聞いておりますけれども、もう既にこの問題については終わっているではないかという良識派の議員の発言もございます。しかし、この問題について日本政府としての姿勢が全然見えてこない。

 この点について、これはやはり日本として、誤った点は正確でないと否定すべきだと思うんですよ。その点については何かアクションを起こすことはあり得るんでしょうか。外務省任せ、大使館任せなんでしょうか。官房長官、いかがですか。

塩崎国務大臣 大使館任せ、外務省任せとおっしゃいますけれども、対外的な発信や情報収集は、まず外務省、大使館がやるのは当然のことであります。

 その上でどうするかということでありますが、まずは、今御指摘のように、この決議案の中には客観的な事実に基づいていないというところもありますし、それから、政府のこれまでの対応についても不正確なところがあるということで、議会を中心に大使館が対応して回っているわけでございます。もちろん、プレスに対してもこれは当然やっていることでありますが。

 なお、これがどういう展開になるのか、これから我々としてもきちっと注視をしながら、日本政府としての対応というものを今後臨機応変に考えていきたいというふうに考えております。

 いずれにしても、我が国の対応についての誤った認識が仮に形になるようなことがあってはならないと思っておりますし、そのときはまた我々としても対応していかなきゃいけないと思っておりますので、そうならないように、私たちは努力を続けていくということだと思います。

渡辺(周)委員 この点について、別に私は政府を批判するつもりはないんですよ。ただ、いわれなき、事実でないことをアメリカの議会の中で言われて、結果的に日本としての対応がおくれている。おくれている、あるいはアメリカの議会に対して届かないということは、実はこれは認めたことと同義語になってしまうんじゃないだろうか。やはり毅然として、それこそ、これは間違いだと。

 例えば、この中に、これは決議案の仮訳の中にありますけれども、日本国政府による強制的軍買春である慰安婦制度は、輪姦、強制的中絶、屈辱的行為、性的暴力が含まれる、かつて例のないものであり、身体の損傷、死亡、結果としての自殺を伴う二十世紀最大の人身売買事案の一つであった云々とあるんですね。

 これは何の史実に基づいてこのように書かれているのか。逆に言うと、その事実を見せてくれ、何を根拠にこう書いたのかということをこのホンダ下院議員なりに、やはり日本政府として、これは我が国の、今生きている国民はもとより、当然我々の祖先に対して、まさに名誉のためにも、何を根拠にここまで書いたのかということに対しては当然抗議を、アクションを起こすべきだと思うんですけれども、それもすべて外務省としてやるんですか。それとも、窓口は外務省かもしれませんけれども、この問題について総理なり官房長官なりが、この決議に対して、やはり当然の反論を含めて対応しなければいけないと思いますが、その辺はいかがなんですか。

塩崎国務大臣 何が対応としてふさわしいか、けじめのある対応をしていきたいと思っております。

渡辺(周)委員 ぜひ史実についての、これはさまざまな研究に取り組んでいる方々が大勢国内にもいらっしゃいます。この点についても、ぜひ日本政府としてもバックアップして、あったことはあった、なかったことはなかったと。一証言にすぎない部分は、これはあくまでも証言の一つである、裏づけはとれていないということも含めて、やはり事実、真実を明らかにすることに我が国としては取り組むべきじゃないか。

 そのことはまた改めてこの委員会でも質疑したいと思いますが、今回どのような見通しを持っていらっしゃるか。通るのかもしれない。通った場合は当然、毅然とした、ちゃんとした対応をするということでございますが、我々にしてみると、なぜアメリカにこのようなことを我が国が今の時代になって言われなきゃならないのか。何回謝罪をしたら済むのか、一体何度同じことを言われるのか。

 当然、その背後には在米のチャイナのロビイストたちがいるわけでありまして、アメリカによって日本のイメージを損なうようなプロパガンダ作戦が行われることによって、日本は、直接言ってもだめだけれども、アメリカに言わせれば恐らく非を認め、謝るだろうと。だからこそ、アメリカの裁判所で何度も訴訟を起こし、そしてこのような決議を働きかけるために行動を起こしているわけでありますので、ぜひこの点については、ひるむことなく、そして我が国として、やはり論破できるだけの史実を明らかにするということを政府によって取り組んでいただきたいというふうに思います。

 さて、時間が半分ほど過ぎましたので、この後は渡辺行革大臣にも質問を用意しております。

 大臣が天下りのことについて御発言をされています。天下りと一言で言うとよくごっちゃにされるんですけれども、二つございます。一つは官製談合のような不正のもととなる天下りがある、民間に。それともう一つは、財政再建をしていく上で、もう御存じのとおりですけれども、公益法人がありまして、天下りを受け入れるためにこの公益法人というのが存在しているんじゃないか。これは実は昨年の行政改革特別委員会でも私も何回も質問に立ちました。

 一つは、ちょっと例に挙げて申し上げたいんですけれども、この公益法人というところが、おびただしい数がある。公益法人に委託費を払っている数をざっと挙げてみます。例えば、国土交通省の公園緑地課というところが所管をしている公益法人だけで五つあるんですね。多分言ってもわからないと思いますが、せっかくですので、ちょっとメモってきましたので挙げます。

 千代田区一番町にあります財団法人都市緑化基金、港区虎ノ門にございます財団法人都市緑化技術開発機構、港区赤坂にあります財団法人日本緑化センター、港区虎ノ門にあった財団法人公園緑地管理財団、千代田区平河町にあります社団法人日本公園緑地協会、これはメモしなくても、もうわからないと思います。これは五つあるんです。名前なんかもみんな一緒。しかも所管の課が公園緑地課。ここに全部、理事、役員が天下っている。もちろん無給の役員の方々もいらっしゃるということも承知でありますけれども、一等地にこれだけの公益法人があって、これは公園緑地課だけですからね。

 これ以外にも、例えば河川の環境課だとか、あるいは治水課、治水課だけでもダム関係の組織が四つあるんですね。驚きます。下水道なんかにいきますと、何と九つあるんです。こういうところに業務委託をするということで、中身は何をやるかといったら、啓発活動あるいは専門誌、情報誌を出す。

 別に一つにまとめてしまえばいいじゃないかと思うんですけれども、当然ここにもあるのは、公益法人の、一たんプール場所としてあるのだろうか。あるいは、やめた方々の受け皿としてこうした組織、類似の組織がこんな一等地にごまんとある。

 天下りといって民間に天下りすることは今議論されておりますけれども、この公益法人の天下りについて、これに対しても当然天下りさせるべきでない、規制すべきだということを大臣はインタビュー等でおっしゃっていますけれども、今、この公益法人への天下りについて渡辺大臣はどんな御認識を持っていらっしゃいますか。

渡辺国務大臣 私が安倍総理から指示を受けました使命、ミッションは、後世代にツケ回しをしないよう徹底した合理化と効率化を図ってほしい、こういうことだったんですね。

 したがって、もし天下りとセットで、お土産つきとか、予算と権限が背景になったような実態があるのであれば、これは根絶をしていかなければいけないということでございまして、現在、公務員制度改革の制度設計をやっているところでありますが、厳格な行為規制をかけるようにと総理から指示を受けておりますので、当然のことながら、公益法人についても厳格な行為規制の対象としていくつもりでございます。

渡辺(周)委員 大臣は、行革担当大臣になられて、こういうことの御認識というのはどうでしょうか。やはりこれはひどいな、こんなにあまたあるのかと。一体目的が何だかわからないような、今申し上げたように、とにかく役所の課単位でそれだけの公益法人がある。役員が十五人いて、職員は五人しかいないなんというところもあるんですね。これは、国会図書館へ行って公益法人の年鑑を見ると驚きます。役員の方が多くて、職員がわずかしかいない。

 この目的というのは一体何なんだろうかというふうな思いの中で、我々もずっとこれに取り組んできたんですけれども、民間への天下りというのは、官製談合を初めとする不正の温床、当然問題として表に出やすいんですけれども、こういう公益法人、ある意味では官から官への天下りというのは非常にわかりにくい、一般の方の目につかない問題なんです。それだけに、これはかなりゆるゆるのぬるま湯の中にあるいわゆる官のネットワーク、これに対して政治がメスを入れようとすると、当然官側の抵抗がある。

 これについて、どうやって大臣は政治の力で変えていけるのか。この点についてはどんな思いでいらっしゃいましょうか。

渡辺国務大臣 既に委員御案内のように、公益法人制度の大改革を行ったところでございます。きのうの国会同意人事をいただきましたので、二万数千ございます公益法人の公益認定委員会をつくります。

 その上で、従来、主務大臣が裁量的に決めていた公益の概念も、もう既に法律の第二条四号には書いてございますけれども、委員会の下に有識者を集めてガイドラインをつくって、さらに細かく詰めていくところでございます。

 それだけではなくて、例えば、一般競争入札に随契から変えようという話も既に進んでおります。数字は正確には覚えておりませんが、三兆数千億円あった随意契約を六割以上一般競争入札に変えるということになりますと、こうした無駄が自然と暴かれていくものと考えます。

 いずれにいたしましても、無駄ゼロを目指すというのが安倍内閣の方針でございますから、私は、その総理の指示に従って私のミッションを果たしてまいる所存でございます。これが私の総理に対する忠誠心であると考えております。

渡辺(周)委員 今あるものをなくすというのは物すごい抵抗があると思う。しかし、それをやらなきゃいけない。さっき申し上げたように、これだけ同じ課の中に同じような団体が、どう違うのかすらわからない。多分御本人たちも、どう違うのかもわからないんじゃないかと思うんですね。今あるものを本当に目標を持って整理しなきゃいけない。その点については我々も一生懸命後押ししますので、ぜひそれをやっていただきたいなというふうに思います。

 当初、北朝鮮問題について触れましたので、ちょっと時間がなくなりましたけれども、分権担当大臣、昨年の公務員人件費についてちょっとお尋ねをします。

 私たちも、一昨年、前原代表のもとで私もネクストキャビネットの総務大臣をしていましたときに、公務員人件費、今までの算定の仕方は大企業を中心に根拠となる金額を出していた、それが厚生労働省あるいは国税庁の調べた平均給与に比べて二百万円近く高く出る、だから中小企業も対象にすべきじゃないかという法案を出しました。この点については、我が党の中にもいろいろな意見があって、なかなか難航しました。しかし、そうはいっても、それこそ昭和四十年代からそのやり方が行われてきていた。これは、当時の池田内閣で、当時の総評議長との合意の上で行われてきたこと、聖域としてきたものについて、これを見直すという法案を出しました。

 その後、政府の方も、人事院勧告の給与の額を出すに当たって中小企業にも幅を広げるようになりましたけれども、地方公務員の給与の引き下げも、自民党として公約をするということを言われました。これを公約するということは、どうやって国として地方の公務員の人件費引き下げ、我々も現実に見合った額に引き下げるべきだと思いますけれども、どのようなプロセスでやっていくのか、その点についてお伺いをしたいと思います。

 その後、最後、国家公安委員長にお尋ねをしたいと思います。

大野副大臣 昨年の十二月に、今御指摘がございましたように、安倍総理から菅総務大臣に対しまして、地方公務員の給与に対する激しい意見を踏まえまして、地域の民間給与水準を上回ることのないように、その水準を引き下げる給与構造改革を強力に推進するように指示があったところでございます。

 この総理からの指示につきましては、地方分権を一層推進していくためにも、地方公務員の給与について国民や住民の理解と納得が得られるよう、不適切な制度やその運用についてはさらに適正化を進めるとともに、地域の民間企業の給与水準を適切に反映していくことが重要である、こう私どもも認識をしているところでございます。

 こうした観点から、地方公務員の給与水準を引き下げる給与構造改革を強力に推進して、平成十九年のできるだけ早い時期に給与構造改革がすべての地方公共団体で実行されることとなるよう、地域の民間企業の給与水準のより的確な反映について徹底を図ってまいりたい、こう考えているところでございます。

 また、給与情報の徹底した開示等によりまして、特殊勤務手当を初めとする諸手当の適正化についても推進していく、こういう考え方で取り組んでいるところでございます。

渡辺(周)委員 またこの問題は改めて伺いたいと思います。

 もう時間がなくなりました。

 最後、国家公安委員長に伺いたいんですが、いわゆる児童虐待について、警察としてどのように今後取り組んでいくか。児童虐待の数が年々ふえているというのが先般の白書の報告の中でも出ました。その点について、子供は親が守らなければいけない、しかし、その親から暴力を振るわれる、虐待をされる。もう逃げるすべがないんですね。社会が守らなければいけない。本来ならば自分を守ってくれる、かばうはずの親が、自分の子供の最大の敵になって、恐怖になって、脅威になっている。こんな社会があってはいけない。

 その中で、警察あるいは地域がどうするのか。今までは民事不介入の中で、例えば夫婦げんかには警察は口を挟まなかった。まあ、大人のけんかならとにかく、しかし、今の子供の、まさに弱い者、力のない者が虐待されるという現実において、社会が救わなければいけない中で、警察として今後どうされるのか。また、それなりのノウハウをどうつくっていくのか。その点について、最後、決意を伺いまして、終わりにしたいと思います。

溝手国務大臣 まず、ちょうど昨年の九月の二十六日、安倍内閣発足の日なんですが、この日に積極介入を求める通達を出したところでございます。これは厚生省も一緒に各県に出しております。我々としては、積極的に厚生省と連携をとりながら、介入について検討していく必要があると考えております。

 特に、警察庁のいわゆる動きとしましては、大阪府警や神奈川県警には児童虐待対策班を設けておりましたが、ごく最近では、警視庁の中においても、少年育成課というところの中に警察官や臨床心理士の資格を持つ職員など、児童虐待防止について対策強化の体制をとろう、このように考えているところでございます。

 それにつけましても、今非常に関心を持っておりますのは、与野党の国会議員でつくっていらっしゃる児童虐待防止法の見直し勉強会のことでございます。我々は非常にこれを注目しておりまして、この行方に関心を持って対応していきたい、このように思っているところでございます。

渡辺(周)委員 終わります。

河本委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 民主党の横光克彦でございます。

 塩崎官房長官にお尋ねいたしたいと思います。

 安倍内閣の支持率でございますが、発足当初は、中国、韓国を電撃的に訪問するというサプライズ、国民から見ると非常にすばらしい行動からスタートした。そして、安倍さんの持っている風貌、あるいはソフトなイメージ、こういったことから女性の支持も高く、六五から七〇ぐらいの支持率とともに順風満帆にスタートしたわけでございます。

 しかし、これがわずか五カ月にして急降下してしまっている。四〇%を切っているというのが最近の支持率でもあるんですね。これは朝日新聞でもそうでしたが、この前のNHKでもそうでしたし、共同通信でも、不支持率の方が高くなってしまっている。そういった大体のメディアが共通した形で急降下しておるんです。

 やはり何でこの短期間でこれほど民意が離れてしまったか。離れるには離れるだけの理由があると思うんですが、内閣のかなめであります官房長官、この急降下、内閣支持率がここまで下がった要因等をどのように認識されているのか、まずお聞きしたいと思います。

塩崎国務大臣 いつも記者会見などでも申し上げておりますけれども、支持率の動きについてはいつも謙虚に受けとめなければいけない、こう思っています。

 昨年の九月から、今御指摘をいただいたような、中国、韓国訪問を初め、臨時国会で重要法案を通し、小泉内閣でもできなかった道路特定財源、この問題に穴をあけ、そしてまた、施政方針演説でさまざまな政策を御提示して、そしてそれに向けて今、国会の中で努力をしているところでございます。

 にもかかわらずということでありまして、我々としても、引き続いて謙虚に、そしてまた正攻法で、やはり国民生活にぴったしくる政策をやっているということが一番国民にとっては大事なことでありますから、その我々の意図が十分伝わっていないとすれば、これは努力をさらに重ねていかなければいけないということで、正攻法でやっていきたい、このように思っております。

横光委員 ちょっとだけ下がったとかいうなら今のような説明でもいいでしょう。しかし、大幅な、信じられない程度の下がり方であるならば、今のような受けとめ方だとちょっと危機感がないのではないかと私はいたします。一喜一憂しないということをよく言われますが、ほとんどの内閣、政府の皆様方、与党の皆様方、一憂だけはしていると思うんですね。

 やはり私は、民意、先ほど民意が何で離れてしまったかと言いましたが、民意が離れてしまうには、民意をないがしろにした五カ月ではなかったかな、だから民意が離れたのではないかなという受けとめ方をしておるんですね。つまり、国民の思いと安倍内閣がやっていることがちょっとずれている。例えば、昨年末のあの郵政造反の人たちを復党させたこと、あれで一気に下がったわけですが、やはり国民からすると、自分たちの思いと全然違うことを簡単にやってしまった。まさに御都合主義そのものを目の前に見せられてしまったので、どんと下がりましたよね。それがやはり発端だと思います。

 また、いろいろな不祥事が続いた。国民に税の負担をお願いする政府税調の本間さんが、ほんまかいなというようなことで辞任してしまった。そして、佐田行革大臣が政治と金の疑惑で辞任してしまった。やはり、国民からすると一番嫌なこと、やってほしくないことを安倍内閣発足の大臣とか重要なポストにある人がやった。いろいろな閣僚の政治と金の疑惑も出ております。

 さらに、きわめつけと言っては失礼かと思うんですが、柳澤厚労大臣のあの発言。このことに対して、やはり国民は今なお、二日前の朝日新聞の世論調査で、今なお柳澤大臣の辞任を求めているのが五三%なんですね。今なおですよ。ということは、国民からするとやめてほしい人をかばい続けている、罷免することさえできない、そういうイメージをどうしても持ってしまうんですね。

 こういった、要するに、民意とちょっとずれたところが今の安倍内閣のやり方、あるいは施策にも出てきているのではないか、そういった気がしてならない。ですから、官房長官が先ほど説明したような形では、ちょっとこの下げどまりをするのも難しいんじゃないかという気さえ私は今したような次第でございます。

 また、そういった先ほど私が挙げましたことのほかにも、イラク政策に対する姿勢、いわゆる小泉内閣の対アメリカ・イラク政策と全くそのままの形を継続している。この四年間の状況を何ら総括することなく、それを引き継いでいる。これも、ある意味では私は支持率低下の要因の一つではないかという気がするんですが、このことについてちょっとお聞きいたしたいと思います。

 アメリカのイラク戦争を支持してスタートいたしました。そして、四年間経過しました。アメリカでは大きく状況が変わっております。しかし、アメリカも、ある意味では議会の議決、あるいは民意を無視して、無視してというか、議決権がありませんので、大統領の専権事項でございますので、増派をして、新政策を打ち出して、今イラク政策を行っております。こういった状況の中で、日本政府はなおアメリカのイラク政策そのものを支持するということなんでしょうか。官房長官、お聞かせください。

塩崎国務大臣 イラクでの戦争のスタート時の問題についてはもう言うまでもないわけで、国連の決議にのっとって行動をして、それを支持したということであるわけでございます。

 我が国は、我が国の独自の判断で、自衛隊、そしてまたODA、あるいはNGO、そういったものを通じてイラクの復興支援というものを今続けているわけでありまして、我が国独自のやり方でやっていくというのが政府の考え方でございます。

横光委員 この四年間のイラクの、いわゆるイラク攻撃から現在の約四年間の状況というものをちゃんと総括した上で、なお小泉内閣の方針を引き継ぐということは、総括をしたんですか、した上での判断なんですか。お聞かせください。

塩崎国務大臣 それは絶えず評価をしながら、政策は吟味をしているわけでありますので、当然のことながら、そういった評価の上で日々のこれからの政策についても考えているところでございます。

横光委員 総括をしたならば、そのような、これまでどおりの方針を続けるというのは非常に難しいのではなかろうかと普通なら考えますよ。

 アメリカでさえ、イラク攻撃したときには、上下院一人しか反対がいない、ほとんど総意、国民も総意、イラク攻撃することに。それぐらいの意識のもとでブッシュ大統領は攻撃を開始したわけですね。国民もバックアップした。しかし、四年間たった現状を見たときに、イラク国民、議会がどういう判断をしたか御存じでしょう。

 もちろん、当事者ですから、我々傍観者と違うもっともっと緊迫した思いで彼らは判断したんでしょう。やはりもう撤退すべきだと。この主張をした民主党が中間選挙で勝利したじゃないですか。これは国民がそういう判断をしたわけでしょう。四年前は、やってほしい、やるべきだ、みんなそう思っていた。しかし、この四年間の経過を見たら、到底もう、あのイラク攻撃はアメリカ側からしても間違いであった。そもそも武力行使する大義であった大量破壊兵器がなかったということ、大統領みずからこれを認めて謝っている。そういった状況変化にアメリカ国民はしっかりと反応して対応するんですね。

 ところが、私たちの国は、そういった状況があるにもかかわらず、何ら、同じように支持する、支持するということを続けている。

 例えば、小泉内閣のときにも、武力攻撃の一つの理由として大量破壊兵器の存在というのを言っていました。それがなかった。そのことに対してはどういうふうに今お考えですか。

塩崎国務大臣 大量破壊兵器については、過去に使った事実があるということとか、それから、国連の調査団の指摘している問題についてきちっとした答えを出さなかったということで、当時は、大量破壊兵器があるだろうという前提で国連が決議をして、ああいう行動に出ていったということであります。

 アメリカが大量破壊兵器がなかったという判断をしたということは聞いておりますけれども、アメリカ政府がイラク戦争開戦の判断自体が間違っていたということはもちろん言っていないわけでありますし、今、アメリカ民主党の撤退論の話がございましたが、きょう、ただいま、すぐに撤退しろと言っている民主党員は多分いないんではないかと思うんですね。最終的には、ずっと永遠にいると思っている人は一人もいないわけで、どのタイミングで、どういうふうに、どういうアクションをとるべきかというところで少し意見が違うということだろうと思うんです。

 したがって、今先生がおっしゃいましたが、我々日本の独自の判断は独自の判断として持っておりますし、私どもとしても、では、ODAも何もかも全部やめちまうのか、そんな選択肢はあり得ないわけで、私たちは私たちのやり方を続けていくということで、日々慎重に判断をしていかなければいけないというふうに思っているところでございます。

横光委員 私は、何もODAをやめろなんて言っているんじゃないんです。ただ、これまでの方針が四年間たって急転、急変している。むしろ戦争当時より混乱している、内戦状態にあるという現状を見たときに、陸自は撤退しました、しかし、まだ空自が残っています。

 そして今回、きょう、NHKニュースで流れましたが、イラクのイギリス軍がやはり順次撤退していくとブレア首相が発表しております。年内に約半分近くにするということですね。こういった、イギリス軍は徐々に撤退する、アメリカ軍は増派する、それは当事者国というのと我々の認識は全然違うと思うんですね。それでも同盟国ということで支持をした。しかし、結果からすると、なお支持するということが果たして国民から理解を得られるのかという問題があると思うんですね。

 ですから、空自にしても、やはりこれから、特措法は四年間の時限立法でございますので、七月末が限度でございます。もうあとわずかしかございません。この特措法の延長というものはお考えなんでしょうか。

塩崎国務大臣 まだ何ら決定をしているわけではございませんで、今、先ほど申し上げたように、日々これ評価をしながら検討しているというところでございます。

横光委員 まだ検討中ということですが、そんなことでよろしいんでしょうか。延長するかしないかも決めていないんでしょうか。

塩崎国務大臣 そのとおりでございます。

横光委員 では、仮に延長するとしても、何年するとかいうところも到底まだ決めていないということですね。

 今、イラクの空自はどのような活動をされているんですか。

塩崎国務大臣 空自の活動につきましては、今、二百十名の隊員で構成をされております。この部隊は、クウェートのアリ・アルサレム飛行場を拠点としまして、イラク国内のアリ、タリルとも言いますが、この飛行場、バグダッドの飛行場、それからエルビル、クルドの地域でありますが、これに対しまして、C130H機による物資、人員の輸送を継続しているということでございます。

 運航頻度は、おおむね週四、五便ぐらいでございまして、基本的にはバグダッドへの運航で、それから、これは昨年の七月三十一日から始まっておりますが、おおむね週一便程度、バグダッド経由のエルビルへの運航をしております。その他については、アリ飛行場への運航というふうになっております。

 昨年九月の国連支援開始以降の航空自衛隊の輸送実績は、月当たり十七回から二十回程度でございまして、このうち四、五便が国連支援ということになっております。

 また、派遣当初からの空輸実績を見ますと、本年二月八日までの間に合計四百六十回、約五百八・八トンの物資を輸送しております。それから、去年の七月十七日に陸自が撤収して以降の輸送については、合計で百十五回、三十二・九トンの輸送となっております。もちろん、武器の輸送については行わないということになっております。

 空自の活動は、我が国がいかなる物資を運ぶかにつき、あらかじめ米国を初めとした関係国軍と調整をすること、そしてまた、基本的に米軍を初めとする関係国との信頼関係に基づくことであることなどを踏まえて、実施を適切にしているところでございまして、これまでに武器の輸送を実施したことはございません。

横光委員 武器の輸送は当然のように禁止されております。イラク特措法には明記されておりませんが、実施要項で行わないということになっておりますので、これはできないでしょう。

 ただ、ちょっとお聞きしますが、米軍の人員の輸送を行っていますね、新任あるいは交代要員というものを。クウェートからバグダッドに行っている。米軍を送っていますよね。このときに、米軍の人たちは、ちょっと細かいことなんですが、手ぶらでC130に乗るんでしょうか。いかがですか。

道明政府参考人 米軍の輸送をしておりますけれども、通常、兵士は自分の身を守るために小銃あるいはけん銃等を携帯することが多うございます。当然ながら、そういう形で運んでおります。

 しかし、これは、ここで言う武器ということには当たらないということであります。

横光委員 その身を守る銃器は武器という概念には入っていないということですが、それ以外の、いわゆる武器と思われるグレーゾーン的な武器で、携帯をして運ばれるということはないんですね。例えば地対空ミサイルとかスティンガー、あのあたりを担いで乗るというようなことはないんですね。

 それと、報道によりますと、大使館員の人たちを送り迎えしておるということなんですが、これはもちろん安全のためにやっているということでしょうが、これは本来の目的にはありませんね。いかがですか。

伊藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 バグダッドの大使館に働いております我々同僚もイラクの復興支援に関与しているという観点から、このイラク特措法で人を運べるということになっております。

 先生まさにおっしゃいましたように、安全の観点から、そのような形で防衛省の方にお願いをして輸送していただいているところでございます。

横光委員 いや、私が聞いているのは、目的外使用ではないですかと言っておるんです。

伊藤政府参考人 ただいまお答えいたしましたように、バグダッドの大使館もイラクの復興支援に関与しているという観点で、特措法上のそういった人を運ぶということは適法であるというふうに考えております。

横光委員 もちろん身の安全が大事ですから、それはいいんですが、いわゆる法に書かれていない形でやるとなると、たとえ身の安全でも問題になると思う。別な形で身の安全を保ちながら、やはり赴任地に行き、あるいは帰る、こういった方策も、もしこれが目的外という形で、はっきりそういうことはできないというのなら、今はお互いに承認し合っている、防衛省も外務省も、そういった形で行われているんでしょうけれども、やはりアリの一穴ということもありますので、私はそういったことをちょっと心配しております。

 いずれにいたしましても、今聞きますと、そんなこれ以上継続する必要がほとんどあるのかな、大使館員を運んでいるというような状況で、さらに継続する必要があるのかなという気がいたしております。

 やはり多国籍軍の物資、人員の輸送、陸自がいたときには、それは相当サマワに向けて空自の活動は大きかったと思うんですが、今それがない、激減していると思うんですね。そして、先ほど何回も、週に一回か二回往復していると言いましたけれども、大使館員を乗せたりするぐらい、正直言って、実際は余り実のある活動をするような状況ではないのではないか。

 そうなりますと、先ほど言いましたように、四年間の状況を見たときに、あるいはイギリスの状況を見たときに、やはり日本という国も、しっかりとこの四年間の状況を総括した中で、ここは一たん撤退をして、違う形で人道復興支援の方策は幾らでもあるわけですから、そのあたりを私は強く求めたいと思っております。

 これは変なことですが、恐らく国民の関心も高い問題だと思うんです。ですから、私は、やはりある意味では国民の審判を仰ぐ政策の一つになるのではないか、このイラクの空自人道復興支援の撤退すべきか継続すべきかという課題は、参議院選挙の大きな争点になるのではなかろうかと思うんですね。

 戦争というのは、どのような戦争でも、罪のない子供たちが殺される、イラク戦争も随分そうでした。本当に罪のないイラク人民がたくさん亡くなった。アメリカ兵も亡くなった。子供を撃ったアメリカの若者もまた殺される。そういったことはもう私は、日本という国は、そういった意味ではもう加担すべきではない。十分これまでの復興支援で貢献した、もうこれが限界だということを当然、今チェイニーさんが来ておるんですから、そういうことぐらいちゃんと、真の日米同盟であるならば、それぐらいのことを言って、もうこれが私たちの国の貢献の限界ですということぐらい、私は言ってもいいのではないかという気がいたしております。

 ところで、きょうの、今チェイニー副大統領が見えていますが、久間防衛大臣と会談する予定はあるんでしょうか。

塩崎国務大臣 久間防衛大臣との面会は予定されていないというふうに聞いております。日程上の都合でそうなったと聞いております。

横光委員 これは何で、日程上でできないんですか。そんなばかなことがあるんですか。日程上でできないというのは理由にならないんじゃないですか。副大統領が来ているんですよ。今、日米同盟をある意味で確認し合いに来ておるんでしょう。その安全保障の担当でしょう。そして、いろいろな沖縄の問題あるいは拉致の問題、今のアメリカの決議の問題、イラクの問題、さまざまな課題を抱えているにもかかわらず、副大統領が来ていて防衛大臣と会わない、日程が合わないから会わない、そんなの理由にならないじゃないですか。

 これは、あの久間大臣の発言がある意味では原因になっておるんじゃないんですか。こういうことじゃだめだと私は思いますよ。こっちから行っているんじゃない、副大統領が来ておるんですから、十分でも時間とれるでしょう。では、政府の方から要求していないんですか。アメリカの都合だけなんですね。お聞かせください。何で要求しないんですか。

塩崎国務大臣 先生、だめだと言われても、こちらの問題ではありませんから、向こうが会うか会わないかを決めることでありますので、怒る相手が違うんじゃないでしょうか。

横光委員 確かに怒る相手が違いますけれども、政府としては弱腰過ぎると言うんですよ。防衛大臣が会いたいと、時間をとってくれと何で政府は要求しないんですかと言っておるんです。

塩崎国務大臣 防衛大臣のカウンターパートは国防長官でございます。副大統領がだれに会うのかは副大統領がお決めになることでございます。

横光委員 そんな狭っこしいことを言っておるからだめなんですよ。すべてのことを抱えておるんでしょう、副大統領といったら。専門職の人じゃないという理由なら、では、専門職でない方が何で日米安保のことを話し合うんですか。話し合うでしょう。同盟国の、沖縄のことも話し合うでしょう。だったら総括的な人なんですから、ここの専門分野じゃないから会わない、そんな狭っこい考えでいくからおかしくなってくるんですよ。やはり時間がないとか日程の都合だとか、そんなものは理由になりません。もうちょっとしっかりとした外交を、本当に日米同盟を大事にするのなら会うべきですよ。

 このことを申し上げて、終わります。

河本委員長 次に、赤澤亮正君。

赤澤委員 本日、質問の機会をいただきまして、感謝しております。

 冒頭五分だけ官房長官が御在席とのことですので、早速始めさせていただきます。

 最初の質問は、内閣が国民と対話することの必要性についてでございます。

 私は、一月二十六日の安倍総理の施政方針演説の内容や力強さを高く評価しております。また、現在進めておられる施策も、教育再生やあるいは底上げ戦略とか、骨太のものが多く、きちっと国民と対話をすれば理解を得られるものが多々あるというふうに理解をしております。

 施政方針演説の結びの冒頭において、「未来に向けた新しい日本のカントリーアイデンティティー、すなわち、我が国の理念、目指すべき方向、日本らしさについて、」「戦略的に内外に発信する新たなプロジェクトを立ち上げます。」とうたわれたところで、我が意を得たりというふうに思ったわけであります。

 安倍内閣の掲げる美しい日本については、私の地元の熱烈な自民党支持者、安倍政権支持者からも、せっかく応援したいのに、できれば安倍総理御自身の言葉で内容を丁寧に説明してほしいという指摘があります。私は、あたかも世界各国の中央銀行総裁が市場との対話の能力を問われ、この点で秀でた米国のグリーンスパン前FRB議長がマエストロの称号を奉られたように、国民はぶれない強い内閣を求めると同時に、国民と丁寧に対話する内閣を求めていると思います。

 そこで、塩崎官房長官にお伺いをいたします。

 安倍総理が施政方針演説でうたわれたカントリーアイデンティティーを戦略的に内外に発信する新たなプロジェクトの立ち上げの精神というのは、国民と安倍内閣の丁寧な対話を目指すということでよろしいでしょうか。

塩崎国務大臣 施政方針演説で、最後の方でカントリーアイデンティティーというのを訴えております安倍総理でございますが、我が国の理念とかあるいは目指すべき方向とか日本らしさ、これを日本人みずからが認識していくことがまず第一だろうと思います。

 ただし、今の日本がすべていいというわけではないし、今の日本がすべて美しいわけでもないということは、これは十分我々も認識をしているわけであって、もう一回美しい日本をつくり直さなきゃいけないという部門もたくさんあるわけでございます。

 そういうことで、まずは我が国の文化とか歴史とか伝統とか自然とか、さらには、自由で規律ある社会とか、あるいは人間のネットワークで、日本ならではの強さ、優しさあるいは美しさというものが読んでとれるものがあるんだろうと思うんです。そういうようなことを、もう一回自分の足元を見直しながら、そして未来志向で、日本が本当に世界に誇れるような国になるためにはどういう国であるべきなのかということを再認識しながら、広く対外的にそういった考え方を発信し、また、日本ならではのよさはまた知っていただくということを広くやっていきたいというふうに思っているところでございまして、このプロジェクト自体は今、大分もう最後の段階まで来ておりまして、早晩世の中に、また皆様方に御相談をして打ち出す機会を得たい、このように思っているところでございます。

赤澤委員 もう一点、お伺いをしたいと思います。同じように、安倍内閣と国民の対話というテーマであります。

 現在、安倍内閣が強力に推進をしている教育再生、特に公教育の再生というのは、都市と地方の教育格差がいわゆる勝ち組、負け組の格差を固定または拡大しないために最も必要な改革であると考えます。換言すれば、安倍内閣は、最も重要な格差問題である教育格差問題に真正面から取り組んでいるということになります。ぜひともこの改革を成功させなければいけません。成功のかぎは、信頼関係と子供に対する深い愛情を基礎とした両親、家庭と学校、教員の緊密な連携であると思います。

 そこで大変気がかりなのが、お手元の資料をちょっと見ていただきたいと思います。これは端的に言って、各国、アメリカ、イギリス、韓国、ドイツ、日本の五カ国で子供にアンケートをとった。「あなたは両親から次のようなことをよく言われていますか?」、左側に項目が出ております。どれも、家庭内の大事なしつけ、きちんとあいさつとか、友達と仲よく、いじめはいけない、こういったことをよく両親から言われているか。お子さんが答えて、パーセンテージで答えが出ているわけであります。例えば、きちんとあいさつ、友達と仲よく、弱い者いじめ、この辺は、日本の父親を見ていただくと、九%、七%、九%と、とにかく日本の父親は十人に一人も子供にきちっとしつけをしていない。

 その中で、特に気になるのが「先生の言うことをよく聞く」、二番目の項目であります。日本はやはり断トツのびりでありまして、アメリカ、イギリスでは親が六割近く、きちっと、先生の言うことをよく聞きなさいと言っているけれども、日本ではそのしつけがなされていない、こういったことで、先生の言うことをよく聞けというしつけがなされていない親がまた子供をつくり、再生産しているような、悪い循環にあるように思います。

 教員の質とも大いに関係しますので、我が国の両親だけの責任とはとても言えませんけれども、安倍内閣が教育再生を目指して、今後、例えば教員の質を幾ら向上させたとしても、家庭で親が先生の言うことをよく聞くように言い聞かせて学校に送り出さないと、期待した効果はほとんど上がらないというふうに思います。子供の教育の最大の責任者である学校と家庭が、相互信頼関係の欠如からか、連携をとれない現状を見ますと、私は、安倍内閣が家庭と対話することの必要性を見ます。

 そこで、官房長官にお尋ねします。

 今後、こういった状況では、国民と安倍内閣の対話の一環として、できれば総理または官房長官の口から直接我が国の家庭や両親に対して、これから教員の質をしっかり向上させるから、お子様に対し、物を教えてくれる人を敬うのは人としての基本であること、したがって、先生の言うことをよく聞くよう愛情を込めてしっかりしつけてくださいという強いメッセージを発すること、さらに言えば、家庭、両親と学校、教員の相互信頼関係が再構築されるまでの間、同種のメッセージを繰り返し発し続けることが肝要であると考えますけれども、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 このアンケート調査を今先生からいただいて、びっくりする数字でございます。ほかが高いというよりは、日本が低過ぎるというのが問題だと思いますが、私も若干外国に住んだことがある者として、こんなだったかなという気が実にするわけであります。

 今、教育再生会議というのを官邸でやっておりますけれども、そこでも、この間第一次報告が出まして、あらゆる手だてを総動員し、魅力的で尊敬できる先生を育てるということを言っておりますし、社会総がかりで教育の再生を行わなければならないということを強く訴えたところでございます。

 確かに、基本は家庭であって、その家庭の再生も行わなければならないわけで、学校の先生を尊敬することができるように子供をしつけるという、今先生がおっしゃった一番の基本をもう一回よみがえらせるということを総理みずからがメッセージとして発せよということでありますが、大変いい考えだと思います。総理にも伝えておきたいと思います。

 教員の質の向上というのは、この教育再生会議の一次報告でも強く打ち出して、これを具体化していくのを今度は法案の中で、今、入れ込んでいくべく中教審で御議論を賜っているところでございますので、家庭そして学校、さらにもう一つは、やはり地域というのがあると思うんです。この間の教育基本法でも、やはり家庭と学校と地域がいわば三位一体となって、子供を社会総がかりで育てていくということが一番大事なんだということを、これは与野党を問わず再認識したことだろうと思いますので、我々の将来である日本を担ってくれる子供たちにそういう教育が施せるように、今の先生のメッセージもきちっと総理にも伝えたいと思います。

 ありがとうございました。

赤澤委員 ありがとうございました。

 大変お忙しい中、どうもありがとうございました。若干超過して拘束してしまいまして、失礼いたしました。

 拉致問題についてもお伺いしたい点がございましたが、官房長官が御退席になりましたので次回に譲ることといたしまして、次の質問に移ります。

 安倍総理は施政方針演説の中で、「地方の活力なくして国の活力はありません。」とおっしゃいました。これを受けて、先週金曜日の当委員会において渡辺大臣も、「全国の各地域へ地域のやる気を支援していくという強いメッセージを発信してまいります。」と力強くおっしゃいました。

 その言葉よろしく、今月六日には、地域活性化に関する関係閣僚会議において了承されました地域活性化政策体系といったものの中で、企業の立地促進、あるいは地域雇用促進、中小企業支援、農山漁村活性化などを目指す合計十本もの法律案と、そして、地方にとって使い勝手のよいさまざまな地域再生、地域活性化のための交付金や、さらには、頑張る地方のみならず、やる気はあるが、頑張ろうとしてもなかなか頑張れない地方まで応援するような交付税措置などが含まれております。全体として、総合的かつ効果的な地域活性化政策体系が構築されつつあると認識をしております。

 地方にとっても私にとっても大いに期待するところでありますが、昨日の本会議において、野党を代表する質疑者から、頑張る地方応援プログラムは竹下内閣のふるさと創生のための一億円のばらまきと同じという誤解に基づく御指摘がございました。

 そこで、渡辺大臣にお尋ねをいたします。

 現在準備中の総合的な地域活性化政策体系は、単なるばらまきによる地域活性化を目指すものではもちろんなくて、地方分権を推進し、地方の自立を促しつつ地方を活性化することが目的であって、そのための多くの工夫が盛り込まれたものであると確信いたしますが、いかがでしょうか。

渡辺国務大臣 この政策体系は、御指摘のように、ばらまきの正反対にあるものと理解をしております。昔の日本の地方政策というのは、金太郎あめ発展モデルと私が呼んでいるものでございまして、この政策体系においては、まさに個性ある発展を目指していこうということであります。

 御指摘のように、やる気を出していただく。もうへろへろになっちゃってやる気が出ないんだというところには活性化応援隊を出しますから、埋もれた宝物の掘り起こしをやってくださいよ、そういう仕掛けがふんだんに盛り込まれているところでございます。

 例えば、これは鳥取県の江府町に南大山農業活性化ブルーベリー特区というのがあるんですね。これなどは、建設業をやっていた人が、この地域でブルーベリーがつくれるじゃないか、これはもうまさに観光と融和した、新たな産業で町おこしができるじゃないかということで、農地のリース方式による株式会社の農業経営参入を容認したものでございます。

 また、同じく鳥取県の米子、大山町、どなたの選挙区かわかりませんけれども、こういうところでも、安全・安心で持続可能な漁業環境を目指した港づくり計画ということで、地域活性化交付金を使った活性化策が行われているところでございます。

 こういうものはまさしく地方のやる気を支援するという観点から発動されているものでございまして、そういったことをこれから大々的に進めてまいりたいと考えております。

赤澤委員 私の地元の例を幾つも紹介していただき、まことに感激をいたしました。ありがとうございました。

 地方が期待する施策は必ずしも地域に着目した地域活性化の取り組みの中だけに含まれているわけではありません。人に着目したプロジェクトである再チャレンジ、この中にも地方の期待が大きい取り組みが多々含まれております。

 再チャレンジについては、私と同じ鳥取県選出の田村耕太郎大臣政務官が、山本大臣、大村副大臣の御指導のもと、しっかりと取り組んでおられますので、きょうは田村政務官にも御質問をさせていただきたいと思います。

 日本経済全体の景気は回復をいたしましたけれども、大田大臣がおっしゃったように、正規雇用の回復や地方経済の回復におくれが目立っているという現状であります。

 その中で、昨年末に取りまとめられた再チャレンジ支援総合プラン、大変時宜を得たものであります。特に地方の期待が高く、現実に地方主導で多くの取り組みが開始されているのは、複線型社会の実現といった中に含まれるUJIターン、あるいは人生二毛作、二地域居住などの関連であります。

 いわゆる団塊の世代と呼ばれる約七百万の方々、さらにはその後二年間に生まれた方まで含めると、今後、次々に一千百万人ぐらいの方が相次いで定年を迎えられます。これらの方は、定年後、きれいな水と空気といったキーワードで、あるいは就農希望をかなえるために、さまざまな形態でふるさとあるいは初めての土地で新しい人生を始める希望をお持ちでございます。

 シャッター通りの目立つ中心市街地を持つ地方都市や、あるいは人口減少に悩み過疎と向き合っている農業地帯にとって、近年これ以上の朗報はないわけでありまして、人口減少の歯どめや地域再生の切り札として団塊の世代の皆様の移住への期待が高まるのは当然のことでございます。

 そこで、まず田村政務官にお尋ねをいたします。

 再チャレンジ支援総合プランが目指す複線型社会の実現に含まれ、かつ、地方の定住人口、交流人口の増加につながるUJIターン、人生二毛作、二地域居住などの希望者の規模はどの程度あるんでしょうか。あわせて、鳥取県を含む全国の地方の期待が大きいこの施策にかける田村政務官の意気込みをお伺いいたします。

田村大臣政務官 今、赤澤先生から、人生二毛作、UJIターン、二地域間居住、これに対して、まず希望者の数の質問がありました。

 UJIターンに関しましては、農村、漁村への定住希望者の方々、これは去年の調査なんですけれども、約五百四十万人いらっしゃいます。人生二毛作に関しましては、団塊世代で農業を田舎で始めたいという方々、これは約三十万人、これも去年の調査でいらっしゃいます。二地域間居住に関しましては、二〇〇五年には約百万人程度ですが、二〇三〇年には約一千万人に達する、そういう推計をしております。

 これに対する意気込みなんですけれども、赤澤先生と私はたまたま同じ選挙区の選出になるんですけれども、鳥取県を初めまして、地方には大きなチャンスだと思うんですね。大量に団塊世代の方々が退職される、こういう中で、そういう方々が地方に来てくださる、これは農業の新たな担い手になると同時に、定住人口、交流人口をふやさなければいけない、こういうことに対しまして大きなチャンスでありますし、また、例えば大企業で販売とか製造のノウハウを持った方々、これが地方の中小企業の支援に参加されれば、それはそれで中小企業の生産性の向上にもなります。

 ということもありますので、鳥取県では赤澤先生と私が連携させていただきますし、また、ここにいらっしゃる各議員の方々、また全国の首長の方々、自治体の方々、民間の方々、全力で力を合わせて取り組んでまいりたいと思っております。

赤澤委員 力強い御答弁、ありがとうございました。

 UJIターン五百四十万人、人生二毛作三十万人、また地方定住希望者というのは将来的には一千万人ということでございました。

 それを促進するために、今後一気に花開かせるために、例えば空き家情報を提供するなどの住宅確保のための支援でありますとか、あるいは円滑な新規就農を実現するための、全く農業経験のない方の研修でありますとか農地の確保、さらには良質の医療サービスの提供の工夫など、地元自治体の多岐にわたるきめの細かい取り組みといったものが求められるところであります。

 私が承知しているだけでも、お隣の島根県、私の地元の隣の島根県の江津市、あるいは北海道の伊達市など、地方定住希望者のために、既に特色のあるすぐれた住宅確保のための支援や医療サービスの提供の工夫を行っています。そういう先進自治体が複数ございます。

 そこで、大村副大臣にお尋ねをいたします。

 再チャレンジ機運の高揚のため多大な効果が期待できる総理大臣表彰の活用はもちろんのこと、既にやる気のある自治体が開始したきめの細かいすぐれた取り組みのエッセンス、これを他の自治体にも体系的に紹介する仕組みをつくること、これによって、国全体として、地方の全体のやる気の底上げを図るべきであると考えますが、いかがでしょうか。

大村副大臣 赤澤委員御指摘のとおり、地域におきましては、複線型社会の実現を初めとする再チャレンジ支援に関しまして、もう既にすぐれた取り組みを行っているところがあると承知いたしております。先ほど渡辺大臣が御披露されたとおりだろうというふうに思っております。

 また、UJIターン等の個別の支援策につきましては、既に各省におきまして優良事例の紹介がされているところでございます。

 私どもといたしましては、現在、中国ブロックを皮切りにいたしまして、地方ブロックごとに再チャレンジ支援に関する説明会を開催しているところでございまして、説明会では、国からの支援の説明だけではなくて、地域における取り組み事例も発表させていただいております。

 今後、説明会で紹介をさせていただきました事例をもとにいたしまして、地域における優良事例を取りまとめて地方に周知をいたしまして、その地方の取り組みのレベルアップを支援してまいりたいと思います。

 ぜひ、赤澤委員、そしてまた私どもの田村政務官の御地元の鳥取からすばらしい事例を全国へ発信していただきまして、地方のレベルアップをしていただければというふうに思っております。また、私どももその支援をしていきたいと思います。

 以上です。

赤澤委員 委員会の開催前に、きょうは山本大臣と田村政務官に聞くので、聞けなくて済みませんと申し上げたら、質問できて大変よかったです。

 次の質問に移ります。

 私は、現在、平成五年の衆参両院の分権推進決議、これに端を発する地方分権の流れが若干難しい局面を迎えているかなと思っております。というのも、ここしばらく地方分権の名目で進められた三位一体改革が、本来、地方の裁量権や仕事量を拡大する、税財源の分権化を主たるねらいとするはずだったと理解しておりますけれども、財政再建に少々力の入り過ぎた国によって、地方財政の縮小の絶好の機会としてある意味使われてしまったかなと。税源移譲より補助金、交付税の大幅削減に傾いたために、国の進める地方分権改革に対する地方の期待や信頼感が少なからずしぼんだように感じられるからであります。

 このような現状を念頭に置けば、私としては、今後、道州制への移行を目指すのであれば、道州制の具体的な内容についての議論を国と自治体が開始する前に、まず、政治主導で地方分権を現在以上に推し進めることにより、国として地方分権にかける強い姿勢というのをメッセージとして発進して、地方との信頼関係を再度強化することが必要ではないかなと感じるところであります。その後、国と自治体の協議も経て、道州制の具体的内容がある程度煮詰まった段階で道州制の導入目標年次を衆参両院で決議する、そして、それとともに、制度の詳細設計とあわせて地方が元気の出る道州ビジョンの策定を行うといったような手順が現実的ではないかなと私個人としては思うところであります。

 そこで、渡辺大臣にお伺いをいたします。

 現時点における私の率直な感想として、道州制への道のりはまだ少々遠いかなと感じられますけれども、政府及び党で、現在それぞれ開始をされました道州制自体の検討とあわせて、今回の地域活性化政策体系や再チャレンジ支援総合プランなど、地方の元気が出る施策を、今後、地方分権を推進し、地方の自立を促すという明確な意図のもとに強力に推し進めることで、将来の道州制への円滑な移行の道筋が見えてくるのではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。

渡辺国務大臣 まさしく御指摘のように、地方分権改革の総仕上げとして道州制ビジョンはなければいけないと考えております。

 道州制を導入しないと分権ができないんだという発想では毛頭ございません。もう既に菅大臣の方で、きょうは大村副大臣が担当副大臣として来られていますが、分権改革へのスタートを切っているわけでございますから、私の方は、そういった分権改革をにらみながら、三年をめどに道州制ビジョンを策定したいと考えております。

 ついせんだって、第一回目のビジョン懇談会を開いたところでございまして、私も三年大臣をやっている自信もないものですから、一年を目途に中間取りまとめを行っていきたいと考えているところでございます。

赤澤委員 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 公務員制度改革については、天下り規制ということで罰則つきの事後行為規制を導入するとともに、現行のいわゆる二年、五年ルールを当分の間存続させるという方向であると承知をしているところであります。私自身としては、改革の方向としては妥当であろう、期待される効果が発揮されるといいなと望んでいるところでございます。

 一方で、気になるのは、私自身、国土交通省出身ということで、後輩やあるいは先輩、同僚と話をしていて気づくのは、最近の国家公務員の士気の低下であります。いろいろな意味で、就職希望者が大幅に減っている、あるいは、若い人、特にその中でも優秀な連中からやめていってしまうといったような現状が見受けられるようであります。

 私自身は、一部の例外を除いて、我が国の国家公務員は非常に優秀である、加えて、豊かな公共精神を保持して、大変な使命感で日夜仕事に励んでいると信じているものであります。その能力を最大限発揮してもらえるシステムの再構築というのが、私は我が国の将来にとって本当に重要なことであると確信をしております。

 そういう意味で、能力主義の導入、あるいはキャリアアップしていく上で自分たちが能力を身につけられると実感できるような研修制度の充実、そういったものによって国家公務員のやる気を引き出す、あるいは、魅力ある職場にすることで就職希望者がまた戻ってくるような、そういう改革こそがまさに求められているところではないかなと感じております。

 そこで、渡辺大臣にお伺いをいたします。

 公務員制度改革については、天下り規制ももちろん、これは世の中の関心も高い重要なものでありますけれども、それと同等かそれ以上に、一般職の非現業国家公務員だけでも三十万人を超える国家公務員がいます。そのやる気が出るような、あるいは国家公務員志望者がふえるような公務員制度の確立が重要であると考えますけれども、いかがでしょうか。

渡辺国務大臣 日本の国家公務員制度は、御案内のように、明治の初期に、身分、門地にかかわらず能力のある若者を登用しようという発想でスタートしたと承知いたしております。この国家公務員制度が、戦争、戦後の占領期を経て今日の形になっているわけでありますが、安倍総理がよくおっしゃるように、戦後の成功体験をもたらした戦後レジームというのが、どうも今の時代に合わなくなっているものがたくさんあるのではないかということであります。国家公務員制度もまさにそのうちの一つではなかろうかと考えております。

 委員御指摘のように、国家公務員に情熱とやる気を持って仕事をしてもらう、これはとても大事なことなんですね。そのために、では今のインセンティブをそのまま維持することがいいのかというと、やはり私は改革しなければならない点が多々あるのではないかと思うんですね。

 やはり公務員というのは、お金もうけをしたくてなる人はまずいないんだろうと思います。不景気の時代に安定しているからといって公務員を志望する人がふえるのはあるかと思いますけれども、今のような景気のいいときに公務員を志望するというのは、やはり、公のために尽くしたい、国家のために働きたい、こういう高い志を持って志望してくる人ばかりだと思うんですね。

 ですから、このモチベーションを維持し高めていくには、やはり何といっても国民の信頼ということが何より大切なことではなかろうかと思います。国民の信頼が失われるということがかりそめにもあるようなことがあると、やはり公務員制度の根幹にかかわってくるのではないかと考えております。

 したがって、公務員のやる気と情熱を持ってモチベーションを高めるということと国民の信頼性を高めるということは、これは相反する話では全くなくて、結局、コインの裏と表ではないかと考えておりまして、この二つの要請を同時に満たすことが公務員改革の肝ではないかと考えております。その両方を満たすのが政治家のわざではないかと考えております。

赤澤委員 きょう、本当に力強い答弁を多々いただきまして、渡辺大臣、大村副大臣、そして田村政務官、地方にとっては大変元気のあるお答えをいただけたと私自身感謝をしております。

 それで、大田大臣に来ていただいておりまして、私自身、実はお昼休みに、大田大臣、お忙しいでしょうから、予定はということをちょっと申し上げていたんですが、おられるので、ちょっとコメントを一言させていただきたいと思います。

 私自身は、一月二十六日の本会議における大田大臣の経済演説、本当に格調高く、自信に満ちておられて、大変頼もしく感じました。生産性向上、それからオープンな国づくり、そして人材の活用という成長のための三つのかぎについても、見事に的を射ているというふうに思います。全体として申し分なく、我が国経済の進むべき道というのを示していただいたと評価しているものでございます。

 質問もちょっと用意していたんですが、これは始めると長くなりますので、質疑時間が今終了いたしましたというのが参りましたので、きょうは、まことに申しわけございません、これで終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

    〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕

戸井田委員長代理 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 この内閣委員会は警察庁を所管する委員会ですので、私は冒頭に、女性保護に当たって電車事故に遭い、亡くなられた宮本邦彦巡査部長の御冥福をお祈りいたしたいと思います。

 そこで、きょうは最初に、原子炉の問題から入っていきたいと思います。

 「ふげん」補助建屋のコンクリート強度不足が今問題になっておりますが、私は、二〇〇四年の十月と十二月に、原発に使用しているコンクリートのアル骨反応について質問主意書を出しました。

 この中で取り上げた浜岡四号の試験成績書改ざん問題、それから試験サンプルのすりかえについて、中部電力は事実とこれを確認しました。東京電力も、福島第一のデータ改ざんを確認しております。それからまた、私は、伊方原発では、コンクリートの架台が三十二ミリ、三センチ以上亀裂が広がっているという問題とか、関西電力の三号機の場合には、コンクリートを打つときに水をじゃぶじゃぶ入れ過ぎて、シャブコンという問題を指摘いたしました。

 そこで、最初に保安院長に伺いますが、二〇〇四年の答弁書の中では、コンクリート試験体を採取し、長期的にアル骨、アルカリ骨材反応が起こる可能性を確認するための促進膨張試験及びコンクリート強度確認の圧縮強度試験を指示したというわけですが、私の取り上げた原発はもとより、すべての原発についてコンクリート試験体をきちんと採取してこうした試験を行わせておられるのかどうか、これをまず伺います。

広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、日本に五十五基の原子炉、実用発電炉が動いてございます。すべてではございませんが、ほとんどのプラントにつきまして、供用期間中に実際のコンクリートから試料をとって圧縮強度試験を行っておると承知をいたしております。

吉井委員 「ふげん」の場合は、二十四年間の運転の中での、実際にサンプル、試験体を取り出して破壊検査をやれば、強度が半分以下というものもあったわけですから、これはかなり深刻な問題だと思うんです。

 それで、私は、かなりのものにはやっておられるということですが、まず、促進膨張試験及びコンクリート強度確認の圧縮強度試験の試験成績表、結果ですね、これをデータとしてきちんと出してもらいたい。もともとそれは三年前の質問主意書で求めてきたものですが、こういう資料はきちんと出されますね。確認しておきます。

広瀬政府参考人 先生御質問の浜岡の発電所のアルカリ骨材反応のとき、また福島第一、第二発電所でも同様の問題が起こりまして、今先生御指摘の試験を行っております。この試験のデータ、結果については、私ども確認をしておりますので、取りまとめて御提出をさせていただきたいと思います。

 また、原子力発電所につきましては、運転開始後三十年を迎えた十二プラントにつきましては、試験結果はいずれも設計基準強度を十分上回っており、問題がないことを確認しております。これも整理をいたしまして御提出申し上げます。

吉井委員 よく確認確認と言うわけなんですが、これはデータをきちんと押さえてこそ確認できるものですから、今、データを提出するというお話ですので、速やかに出していただきたいと思います。

 この問題について、原子力安全委員長の方にも伺っておきたいんですが、コンクリートの構造物については、基本設計段階で耐震安全性を要求を満たすよう事業者に求め、考え方を確認しているということと、原子力安全委員会は、仕組み上、直接関与しないんだと。そこはわからないことはないんですけれども、二〇〇四年の十月に答弁をされていますが、日本のすべての原発について、やはり促進膨張試験及びコンクリート強度確認の圧縮試験を指示して、そしてセメントの中のアルカリ量、それから粗骨材、細骨材のアルカリ反応成分の組成とか、水セメント比の加水状況をきちんと調べさせる。

 つまり、現在の状態とともに、コンクリートを打つときの条件によってどう進行していくか。これは表面だけじゃなくて内部においても、膨張の問題とか、それによる鉄筋の破断の問題とか、腐食の問題があるわけですから、今「ふげん」であったのが、あれは「ふげん」の話ということじゃなくて、非常に深刻な問題が提起されたわけですから、きちっとそういうことを調査させるということを原子力安全委員長としても進めていただきたいと思うんですが、伺っておきます。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の点につきましては、原子力安全委員会といたしましても、いわゆるコンクリートの経年変化、経年劣化ですね、この問題は非常に重要な課題だというふうに考えておりまして、安全委員会の定めている重点安全研究の中でもこれをその中に入れております。今回の「ふげん」における測定も、私どもの理解としては、そういう研究の一環として事業者が行ったものというふうに理解しております。

 その制度等についてはなお十分検討しているというふうに聞いておりまして、そういう結果を踏まえまして、さらに安全委員会として必要であれば必要な対応策を講じていきたい。委員おっしゃるように、その点は非常に重要だというふうに認識しております。

 ありがとうございました。

吉井委員 次に、これにつきましては、コンクリートの専門家の小林一輔先生などからも私は数年前にアル骨反応についていろいろ御意見を伺ったりしたこともありまして、特にこれは関心を持っているんですけれども、コンクリートというのは、表面だけじゃなしに、原発本体のコンクリートの内部で膨張が進むとか、あるいは鉄筋が亀裂するとか、そういう非常に深刻な問題が経年劣化の中で生まれてきますので、今安全委員長がおっしゃったように、私が先ほど指摘した、素材の段階から、成分その他の調査も含めて、きちっとやっていただきたいというふうに思います。

 次に、東京電力の原発法定検査データの改ざんというのが一九七七年から二〇〇二年まで、国の検査の中で百九十九件の改ざんがあったということですが、とりわけ深刻なのは、やはりあの九二年の五月の、柏崎刈羽原発一号機のECCSの非常用ポンプの故障を偽装するために制御電源を操作して国の検査に合格してきたということが発表されたことだと思うんです。

 ここには、もともと、今まで原発は安全だ、安全だと言っているのは、多重防護が働きますと言ってきたわけですが、その多重防護と言ってきた機器の大事な一つがECCSですよね。実は、それが運転中に事故が発生したときに作動しない状況にあったというのが出てきた問題ですし、もう一つは、電力会社の検査や報告というのは信頼できないものだということが明らかになったということは非常に深刻な問題だというふうに思うんです。

 そこで、原子力安全・保安院長は、言ってみれば、だまされて検査合格を与えたということになるわけですから、そのことについてどう考えておられるかを伺います。

広瀬政府参考人 御指摘の柏崎刈羽発電所第一号機における不正につきましては、平成四年五月に行われたものでございます。国としては、平成十四年の東電問題を踏まえまして、自主点検を定期事業者検査として法定義務化すること、品質保証体制の確立を法令上求めること、罰則を大幅に強化すること、申告制度を拡充することなどを図っておりまして、事業者の不正の抑制につながる制度を導入してきたところでございます。

 また、二月十六日に、甘利経済産業大臣の指示を受けまして、現時点で各事業者が不正を許さない取り組みをしているかを確認することとしまして、直近の保安検査と定期検査を強化し、事業者の品質保証体制を確認することにいたしております。今後、三月末までに出される事業者の調査結果を含めまして、当院として厳正に対処することといたしております。

吉井委員 今後の話はよくわかるんです。しかし、大事なことは、原子力安全・保安院というのは、国の法定検査などできちんと、検査合格ですと合格を与える、つまりお墨つきを与えるわけですから、ところが、そのお墨つきを与えるときにだまされてしまっていた。実は、そのまま進んでいったときには重大な事故に直面することもあり得るわけだったんです。多重防護といいながら、その多重防護の大事な機能の一つが失われていた。その検査はだまされていた。私はこのこと自体が非常に深刻な問題だと思っているんです。原子力安全・保安院長として、だまされて検査合格を与えてしまっていたことをどう考えていらっしゃるか、ここのところを改めて伺います。

    〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕

広瀬政府参考人 原子力発電施設の安全確保のためには、事業者が運転管理、保守管理等に係るデータ等を偽りなく真正に取得、記録することがまず前提であり、これが事業者の第一義的な責任であるというふうに考えております。

 平成四年当時、改ざんがありましたことはまことに遺憾と受けとめておりますが、その後、先ほど申し上げましたように、体制を強化いたしまして、制度を変え、このような事業者の不正を抑制する制度を導入しております。

 今後は、このような制度によりまして、原子力施設の安全確保に万全を期していきたいと考えております。

吉井委員 今後の話はよくわかるんですよね。しかし、その今後の話にしても、だまされて検査合格を与えてしまった問題についてもっと深刻に受けとめていかないと、つまり、事業者の出してくる検査結果、こうですというその検査書そのものが正しいのかどうかとか、やはりきちんとそれをどう評価し確認するかという問題とか、それから、時には一緒に検査をやるということをやっていかなきゃ、事業者の責任だといっても、事業者はだますことを平気でやるし、百九十九回も平気でデータ改ざんをやってきているような状態なんですから、とてもそれを信頼してつき合っているというわけにいかないと思うんですね。

 そうすると、今度は、検査体制そのものをどう強化するかということも含めて考えていかないと、言葉は簡単なんですけれども、一片のおしかりの文書を渡せば済むというものじゃないと思うんですね。そういう点では、だまされて検査合格を与えていたということについてはもっと深刻な受けとめ方が必要だと私は思うんです。

 もう一遍伺っておきます。

広瀬政府参考人 平成四年当時の柏崎刈羽一号機の検査の状況を、その後よく確認をいたしました。そうしますと、当該検査につきましては、中央制御室で検査官がこの試験の状況を確認するということでございました。その後、私ども、やはり試験のプロセスまでしっかり見るということが重要であると考えまして、このような試験の場合には、中央制御室に検査官を置き、また現場に検査官を置き、それらが整合性を持って行われているかということを確認するようにいたしております。これは、その後、検査官の人数も充実をさせていただきまして、このようなことができるようになってまいりました。

 今後は、このような不正の抑制にできるだけ、最大限努めていきたいと考えております。

吉井委員 だました東京電力は物すごく悪いというのは、これははっきりしているんですよ。しかし、検査官の方が中央制御室におって、その人もだまされてしまった。つまり、検査官なんだけれども見抜く力がなかったのか、あるいは見抜く力を持った人さえだますほど相手はひどかったのかということにもなってきますが、私はそれぐらい深刻な問題だというふうに思っております。

 原子力安全委員長のコメントも見たんですが、ポンプの一つが故障していたにもかかわらず、あたかも健全であるかのように制御電源を操作して定期検査を合格していた不正行為は、この機器の安全上の重要性のみならず、それを認識した上での意図的行為と見受けられ、看過しがたいと、非常に厳しいコメントを見ました。

 改めて、この不正事件の持つ意味をどう考えておられるかを伺っておきたいと思います。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 今引用していただいたように、私、その件につきまして、委員会の方に規制行政庁から報告を受けた際にコメントをしたわけですが、私思いますには、まず、そういう行為そのものが大変残念だ、遺憾であるということと同時に、そのようなことがなぜ起きたのかということをよく考えておく必要があるということで、これは事業者の報告の中にあるわけですが、そのようなポンプが一時的に作動しなくても、これが運転中であれば三十日に限ってそれを運転を継続することができるという別の規定があったために、このような検査のときでも早期にそれを修理すればいいんだろう、そういう甘えがあったのではないかということも感じ取られます。

 そういうことで、規制はできるだけ厳しくやることはもちろん大事なんですが、同時に、停止中のものであり、検査中のものであり、あるいは運転中のものであっても、安全上の機能維持の要求というのは常に一貫していなきゃいけないということで、これは、保安院の方ではそのように検査制度そのものの全体を見渡しまして、より整合性のある制度に向けて今検討をしてくれているというふうに私どもは理解しておりまして、こういう検討をさらに加速して、より整合性のある規制及び安全確保がなされるようにしてほしい、このように思います。

 ありがとうございました。

吉井委員 データ偽造というのは、これは何も最近出てきただけじゃなくて、九〇年代も、使用済み核燃料の輸送キャスクの放射線遮へいデータの偽造だとか、原発の溶接データの偽造であるとか、それからもっと古くは分析化研のデータそのものの抜本的な書きかえ偽造とか、書きかえなんというようなものじゃなくてデータのでっち上げですね、そういうのはずっと歴史的にありました。それから、原子炉隔壁の損傷データの偽造やデータ隠しとか、配管減肉データの偽造とか、私、関電の和歌山の方、海南火力を前に調査に行ったとき、下請から出てきたデータの改ざんをするだけじゃなしに、基準に合わないとなると基準値の書きかえまでやられるというひどい例も見つけたわけですが、そういうデータ改ざんが繰り返されている。

 なぜ長期にわたって国はそれを見逃してきているのかということを昨年十二月の質問主意書でも問うたわけですが、法令に基づく審査、検査を厳正に行っています、こうした取り組みを通じて、今後とも原子力の安全確保に万全を期していきたいと言うんですが、法令に基づく審査、検査を厳正に行っていると言いながら、次々と起こっているんですよ。そこが非常に深刻なところで、なぜ国が行う定期検査でも偽造が見つからないのか。二〇〇二年八月のデータ改ざんが、東京電力のあれが問題になったそのときの総点検でも見つかっていないんですね。ずっと見つかっていない。

 そういう深刻な事態が続いておったのでは、原子力をやってきた者としてよくわかるんですが、原発には基本的にやはり危ない面があるんですよ。その原発の危険からどうして住民を守っていくかということを考えていかなきゃいけないときに、こういうデータ偽造が繰り返されるということでは、本当にもう信頼そのものが根底から崩れることになるということを言わざるを得ないと思うんです。

 昨年十二月に政府は、データ偽造がいつからいつまでの期間、どういう経過ですべての発電施設であったのかというのを聞きますと、調査や整理が膨大だからお答えは困難だという答弁だったんですが、しかし、あれから三カ月たちました。私は改めて、日本原電、電源開発、各電力会社の水力、火力、原発についてデータの改ざんの点検を求めてきた者として、電力会社ごとのデータ偽造件数、時期、その内容を明らかにしていただきたい。この場では大変ですから、整理してその資料を出していただきたい。ここではお約束いただいておきたいと思います。

広瀬政府参考人 いろいろな発電設備でデータ改ざん等が起こっておりますことを受けまして、昨年十一月の三十日に、すべての電力会社に対しまして、すべての発電設備についてデータ改ざん等をすべて洗い出して、取りまとめて報告をするようにという指示を出してございます。今年度末、すなわち三月末までにその報告を受け取ることになっておりますので、取りまとめまして御報告を申し上げます。

吉井委員 原発の最後に、東通原発一号機について、昨年九月二十九日に原子炉設置許可申請が出されておりますが、この原発で初めて沸騰遷移が想定されています。これは、要するに膜沸騰状態、直接冷却水によって冷やされない部分が生まれるということを想定したものですが、それは核燃料が壊れて放射性物質が放出する事態になる可能性がないのかどうか。これはやはり実験的に安全性を証明しておく必要があると思うんですが、実証実験の例はあるのかということについて、保安院長の方に伺っておきたいと思います。

広瀬政府参考人 燃料の沸騰遷移につきましては、原子力安全委員会の沸騰遷移後燃料健全性評価分科会におきまして、日本原子力学会標準委員会が策定をしました標準BWRにおける過渡的な沸騰遷移後の燃料健全性評価基準について検討され、平成十八年五月にその結果を報告書として取りまとめられております。

 この報告書の中では、原子力学会の基準が根拠としております炉内照射実験との比較検討、燃料破損等に関する工学的検討を行って、原子力学会の標準が提案しております燃料被覆管温度八百度C、液膜の消失状態、ドライアウト継続時間百秒よりさらに厳しく設定した六百五十度C以下、十秒程度の沸騰遷移を許容する内容となってございます。

 このように、原子力学会の検討での根拠におきまして炉内照射実験の比較検討がなされているものと承知をいたしております。

吉井委員 実証実験はないということなんですよ、いろいろ検討されたのは事実です。

 それで、私自身は、これは実験の失敗からではありましたけれども、実際に模擬燃料棒でバーンアウトさせてしまって焼け切れた経験も持っておりまして、この問題というのは非常に深刻な問題だというふうに考えておりますので、やはり実証実験をきちっとやらなきゃいけない問題だと思います。

 この点で原子力安全委員長に最後に伺っておきたいのは、やはり沸騰遷移というのはこのバーンアウトの問題とかかわってくる問題で、核燃料棒がバーンアウト、焼損してしまいますと、それが発生した場合には放射能汚染の規模の評価が問題になってきますし、しかし、評価を問うと、政府の方は評価していないという回答なんですが、原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期しているというのが、私が聞いたときの政府のお答え。これは十二月のことだったんですが。

 こんな状態で沸騰遷移を、今まで日本の原発では認めていないんですが、東通で新たにこれを認めるということは、私はこれは非常に危険な道に進むことになると思うんです。だから、安全委員長として、こういう状態で沸騰遷移を新しい日本の原発で認めるようなことはするべきではないと思うんです。もちろん、今の軽水炉方式でどんどん進めていくということ自身に私は賛成しておりませんけれども、さらに新たにこういう危ない方向へは行くべきじゃないと思うんですが、安全委員長のお考えを聞いておきたいと思います。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 基本的に、私もこういうことにつきましては非常に慎重であるべきだというふうに考えております。

 したがいまして、今、保安院長の方からもお話がありましたが、原子力安全委員会で検討した際には、もともと提案のあったものよりもさらに厳しい条件で、しかも一般的にこれを認めるのではなくて、申請に当たって個別によく吟味してこれを検討する、そういうことにいたしました。

 特に、今先生御指摘のように、そういう事態になった場合であっても電源系統その他防護系が十分信頼性を持って機能し得るかどうかについて、さらに詳しく審査に当たって検討すべきではないか、そのように考えております。

 ありがとうございました。

吉井委員 バックアップ電源の問題は既に昨年の秋の委員会で議論いたしましたけれども、これは要するに、北陸電力のあの鉄塔倒壊事故とか、バックアップ電源の方が切れる、内部電源の方が外国の例でも二系列損傷して機能しなかったりという問題、それから地震、津波の問題も昨年議論してまいりましたので、ここでは繰り返しませんけれども、やはり安全という問題を考えたときに、とてもじゃないが沸騰遷移へ進んでいけるような話じゃないということを私は申し上げます。

 やはり、原発についての考え方はいろいろあるにしても、原発が基本的に持っている危険から国民の安全を守るという立場で臨んでいかなきゃいけない。そういうことを抜きにして、プルサーマルだとか次々と進んでしまう危険な道へ入っていくことについては、それはやるべきじゃない。

 そして、東洋町で問題になっておりますような高レベル放射性廃棄物の埋立処分についても、これは九〇年代の終わりごろの法案審議のときにも議論しましたけれども、日本には安定した地層がないわけですから、そういうものを簡単に認めるようなことはやるべきじゃない。

 このことを申し上げまして、原子力問題についての質問は終わって、次のテーマに移りたいと思います。委員長、お忙しいところ、どうもありがとうございました。

 それでは、官房長官に来ていただきましたので伺いますが、まず最初に、タウンミーティングの問題からです。

 この運営については、二〇〇一年前半は株式会社電通との随意契約、同年後半は電通との企画競争による契約、企画競争というんですが実態は随契ということで、一般の常識からは非常に理解しがたい高い金額でした。これは、報告書自身が、疑問を抱かざるを得ない点が幾つか見られるということを報告書に書いているぐらいでありますが、電通にタウンミーティングの契約を随意契約でやった理由は何なのか、伺います。

高井政府参考人 随意契約の事実関係についてお答え申し上げます。

 タウンミーティング、先生御指摘のとおり、平成十三年五月七日の小泉総理の所信表明演説の中で、国民との対話として盛り込まれて、半年以内にすべての都道府県において実施する旨の表明を受けまして、急遽開催が決定されたものでございます。

 こうした方針が打ち出されましたことから、平成十三年六月から十一月までの間に全国でタウンミーティングを開催する、このための運営業務ができる業者を急遽選定する準備を開始する必要があった、こういう状況でございます。

 このため、一般競争入札を行う時間的余裕がなかった等の理由から、やむを得ず電通と随意契約としたものということでございます。

吉井委員 要するに、理由は緊急性だという話なんですが、二〇〇一年前半の随意契約にするしか方法がなかった、そういうものではありません。仮に随契をされるとしても、複数の業者から見積もりを集めなければならない、予算決算会計令の九十九条の六で定められていますね。

 では、二〇〇一年度前半に電通以外から見積もりを集めたのか、伺います。

高井政府参考人 十三年度前期でございます。

 今申し上げましたように、総理の所信表明演説によりまして、急遽タウンミーティングの開催が決定いたしまして、時間的余裕がなかったため、やむを得ず緊急の必要を理由に随意契約をいたしたものでございます。

 こういう状況のもとで、電通以外には見積価格を徴取していなかったという状況でございます。

吉井委員 これは他社から見積もりをとることは十分できるわけで、やっていなかった、これが事実です。

 ほかから見積もりをとっていないなら、電通が提示した金額は妥当かどうか判断できないわけです。電通以外にも類似した業務を行える企業はほかにもあるわけですよ。その後、朝日広告ですか、請け負ったりしているわけですが、それ以外にもあるわけですね。

 結局、この価格は電通の言いなりになったわけですが、そこで、会計検査院に伺っておきますが、予決令の目的は、複数者から見積もりを集めることで、客観的に見て見積価格が妥当かどうかを確かめることなんじゃありませんか。

 会計検査院には、その問題と、もう一つ伺っておきたいのは、幾ら緊急性があったからという理由をつけたとしても、同じような業務を請け負う企業がほかにも幾つもある場合、価格が高額になり過ぎているのに、ほかから見積もりをとって、妥当かどうかを確かめなかったような契約というのは、これは瑕疵のある契約ということになってくるんじゃありませんか、伺います。

諸澤会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 お尋ねが二つございましたが、まず第一点、予決令第九十九条の六の趣旨につきまして、私どもの検査に当たって、どのように考えているか、そういうお尋ねであろうと思いますが、一般論として申し上げますと、特段の事情のない限りは二人以上から見積書を徴しまして、それらの価格を比較検討し、最も有利な価格の見積者と契約すべきことを求めたものであるというふうに私どもは承知しているところでございます。

 また、もう一点お尋ねございました契約額のことでございますけれども、契約額の適否につきましては、個々の契約の内容などを精査する必要があると考えております。したがいまして、一概に申し上げることはできないのではないかというふうに考えているところでございます。

吉井委員 二〇〇一年前期の方は、一回当たりの契約額は二千百八十四万七千四百九十六円ですね。二〇〇一年、同じ年の後期は一回当たり千二百五十五万六千二百五円、だから半額近く減っているんですね。二倍も差があるというのは、これはどう考えてみても高過ぎるということは明白だと思うんですが、タウンミーティング調査報告書を読むと、二〇〇二年度になっても内閣府タウンミーティング室は引き続き随意契約での実施を要望し、会計課の方は一般競争契約導入を主張したとありますね。随契は競争原理が働かないで高価格になると。

 タウンミーティング室はなぜ随意契約での実施を要望したのか、その理由を伺っておきます。

高井政府参考人 この報告書においてもつまびらかになっておりませんけれども、当時の非常に回数の多い状況の中で、円滑にタウンミーティングを運営したいというふうに考えたのではないかと今私は考えております。

吉井委員 それは全く理由にならないと思います。

 二〇〇一年度後半から随意契約をやめて企画競争にしていますが、この企画競争というのは、仕様書や企画書を提出させるなどして、内容や業務遂行能力が最もすぐれたものを選定する方法ということで、結局随意契約の相手を選定する方法にしかすぎないものです。

 そこで、官房長官に伺っておきますが、あのタウンミーティング問題ではやらせ問題が随分問題になりましたが、このやらせやサクラを動員させるタウンミーティングのやり方は電通が提案した企画にあって、そのやり方でその後ずっと続けられてきたのではないのかと思うんですが、それともサクラややらせのやり方は内閣府が独自に決めたやり方なのか。これはどっちなんでしょうかね。

高井政府参考人 タウンミーティングの調査委員会の報告書におきましては、確認された事項としては、発言依頼あるいは発言内容依頼について、タウンミーティング室から行ったもの、あるいは関係の自治体、団体から行ったものとが指摘されておるところでございます。その中には電通といった業者の名前はないというところでございます。

吉井委員 私、これは、やらせ、サクラを含めて、契約したところからお金が出ていくわけですから、そのやり方は電通が提案した企画にあったものではないかという問題がやはりあると思うんです。

 そこで、二〇〇一年度後期の電通から出された仕様書とか企画書、一連のものをやはりこの委員会にきちんと提出させて、そして精査できるように、これは委員長の方で取り計らっていただきたいと思います。

河本委員長 理事会で協議します。

吉井委員 次に、公益法人契約の政府広報について伺います。

 資料をお手元に配らせていただいておりますが、内閣府の政府広報室から行っている政府広報について、特に公益法人と契約したものに限って聞きますが、去年から何度も過去の内閣府政府広報室の契約に関する資料の提出を求めてきました。しかし、出てこない、出してこないんです。二〇〇四年度と二〇〇五年度の資料しか出さないので、この二年間のものに限って聞きたいと思います。

 まず、配付した資料は、二〇〇四年度と二〇〇五年度に内閣府や政府広報室が発注した政府広報のうち、公益法人の契約を抜き出したものです。これは政府参考人に先に伺っておきますが、この七つの公益法人、一つは社団法人海外広報協会、これは外務省所管ですが、あとの六つの公益法人はいずれも内閣府所管の公益法人であることを、間違いないかということを確認しておきます。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、海外広報協会の所管は外務省でございます。それから、財団法人日本経済教育センターは文部科学省と内閣府の共管法人。その余の日本広報センター、中央調査社、日本広報協会、時事画報社、新情報センターは、内閣府の所管法人でございます。

吉井委員 これらの資料を見れば明白なように、契約方式というところでありますように、ほとんど随意契約なんですね。公益法人が政府との間で随意契約で結んでいるんです。全体で七十二件ですが、一般競争入札は十一件です。企画競争もあるんですが、これは随意契約をする相手を決める方法で、実質的に随意契約なんです。だから、随意契約というのは七十二件の中で六十一件ということになります。

 これだけのたくさんの契約を随意契約にしていることを、官房長官は適切だとお考えなのかどうかを伺います。

塩崎国務大臣 今、吉井先生御指摘のように、随意契約がずらっと並んでいるわけでございます。私も調べてみましたが、広報誌などの買い上げとか、テレビ番組とか海外向けテレビスポットの制作など、公益法人との契約について、どうも従来から業務慣行があって長年随意契約を続けてきたという経緯があったようでございます。

 これが適切かどうかということでありますが、当然のことながら、決して適切だとは思いませんので、血税をどう節約するかという観点からも、随意契約については見直しを徹底して、平成十九年度からは一般競争入札を原則とするという方針に転換をしたい、こう考えているところでございます。

吉井委員 随意契約にした理由について資料の提出を受けたんですが、例えば財団法人日本広報センターに発注したテレビ番組の制作というのは、これは、いろいろ言っても、唯一の事業者であるため、こうなっているだけなんですね。社団法人時事画報社に発注した「Cabiネット」の購入及びこん包発送とか、これらについては、市場価格よりも有利な価格が可能となるためと。可能ですよ。社団法人日本広報協会が発注した「時の動き」及び「官報資料版」の編集実務というのは、その業務遂行のための必要不可欠な要件はとして、政府の責任で編集する重要施策の有識者向け解説誌として正確な記事を執筆できることとか、ほとんど理由にならないことをずらずらと三つほど並べているだけなんです。特に公益法人に随意契約しなければならない理由というのは見当たらないものばかりでした。

 参考人に伺っておきますが、これら随意契約について、予決令の規定に基づいて他の企業から見積もりをとっているのかどうか、伺います。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 公益法人との随意契約でございますけれども、今先生御指摘のとおり、企画競争を行った、あるいは、提案のあった企画がすぐれているということで当該提案者、公益法人と契約を行っているということでございまして、相手方が事実上一人でございます。そういうことでございますので、相手方以外の者からの見積書は徴取する必要はないということで、とっておりません。

吉井委員 要するに、相見積もりも何もなくやっているということなんです。それが実態です。

 政府広報、これから一般競争という話がありました。一般競争入札の分もありますから、入札調書を調べさせてもらいました。そうすると、政府広報の一般競争入札というのは極めて不可解なんですね。配付資料にも書いておきましたとおり、一般競争といいながら、実は入札に応じたのは落札者だけのときというのがあります。それから、応札者が中央調査社か新情報センターのいずれか、あるいは、一般競争で入っているのがこの中央調査社と新情報センターの二つというときもありますが、この二つだけなんですね。

 だから、およそ一般競争入札といったら幾つかの企業が入って競争しているのかと思うんですが、たった二社とかあるいは一社だけ、これが実態です。

 公益法人の政府広報の契約は、随意契約とか一般競争とかいっても、どっちにするかの基準はどこにあるのかよくわからないんです。

 一般競争にしているのは、見てみると、世論調査というのがありますが、入札に応じているのがこれまた中央調査社と新情報センターの二つの公益法人しかないんです。極めて不可解ですが、世論調査を業として行えるのはこの二つの公益法人しかないというのが政府の判断なのかどうか、伺います。

高井政府参考人 世論調査でございますけれども、一般競争入札によって決定いたしております。その入札者につきましては、入札資格要件、参加資格を決めておりまして、幅広く入札を求めているということでございます。

 つけ加えますと、この世論調査につきましては、全国規模で同時期に調査をするという大変なものがございまして、結果的に二社になっている。もう一つ申し上げますと、一社とかになっていますのは、当時、もう一つの会社が不正を起こして指名停止になっている、こんな状況もあったというような状況もございます。

吉井委員 調べたところでは、この世論調査についても、電通、マーケティングセンター、ビデオリサーチ、インテージ、日本リサーチなど、民間企業も官庁の世論調査を請け負っています。一般競争の形式だけをとって実際は随意契約、二つの公益法人に独占的に受注させる仕組みなんじゃありませんか、これは。

高井政府参考人 これは、二カ年を見ますとこういうことでございますけれども、過去にさかのぼりますと、入札に応じている日経リサーチでありますとか、日経リサーチセンターも応札して入札をしている年度もございますので、二社に限っているということではございません。

吉井委員 それも調べました。それを見ると確かにずらずらと並んでいるんですが、全部、皆おりてしまって、最後いよいよ入札というときには一社だけしか残らないとか、そんな実態ですから、本当にひどいものですよ。

 こういうずさんな契約の中で、新情報センターの世論調査については、日銀、総務省、内閣府発注の世論調査の捏造事件が発生していったんじゃありませんか。

高井政府参考人 平成十七年の事件でございますけれども、原因につきましては、どういうことが行われたか当時調査をして、五カ月間の指名停止をいたしております。

 内容といたしましては、調査員が、実際やっていないのにやった、あるいは当該相手方の家族に聞いたというようなことがございまして、当時、調査環境が厳しい中でいろいろ行われたものというふうに認識しております。

吉井委員 そういうでたらめな状態が続いている背景には、随意契約で公益法人であれば幾らでも仕事をもらえる、調査の内容はばれさえしなければ何をやっておってもいい、それを根本的な問題として見ていかなきゃいけないと思うんです。

 その背景には、これら内閣府から政府広報の業務を請け負っている公益法人の多くは、この資料の最後のページ、三枚目に載せておきましたように、これは、高級官僚が役員として天下りをする、所管官庁との癒着がある。配付しておりますように、政府広報を受注している公益法人すべてに高級官僚が天下っている実態があります。こういう癒着のもとで、公益法人への政府広報の発注はすべからく談合の上で、スーパー談合とでもいうべきものですよ、成り立っているんじゃないか。

 これは官房長官、タウンミーティングのやらせの前に、政府広報の契約自体がやらせと言ってもいいんじゃないですか。やらせの契約に基づいて国の政策を広めて世論誘導しようなどということはもってのほかだと思うんですよ。この問題を官房長官としてどう改善をしていかれるのか、伺っておきます。

高井政府参考人 その前に二つ申し上げたいと思いますけれども、公益法人との随意契約でございますけれども、企画内容がすぐれている、あるいは、そこでしか直接買い上げることができないということで随意契約をしたものでございます。

 一方、各団体の役職員でございますけれども、その能力、経験を判断されて適材適所で登用されているというふうに認識しております。

塩崎国務大臣 李下に冠を正さずという言葉がありますが、今、一般競争入札でもどうも怪しいじゃないか、こういう御指摘でございました。

 今申し上げたように、十九年度から随意契約をできる限りやめるということで、一般競争入札にしようということでありますけれども、今お話しのように、そういう一般競争入札の中も少し精査をしなければいけないし、そもそも政府広報のやらせなどというようなことを我々は考えているわけでは決してないわけでありますが、タウンミーティングのときも、一般競争入札をやってもいろいろな問題が出てきたということがこの間の調査でわかったことであります。しからば、これは一般競争入札にすればいいということではないというのは先生今御指摘のとおりでありますから、中身を含めて、これから精査をしながら税金を節約していきたいと思っているわけでございます。

 広報は、価格のみならず、やはり企画内容というのも必要で、そういうものについては総合評価方式というものも導入していこうということになっておりますし、総合評価方式による一般競争入札における落札者の決定に当たっては、政府の職員だけではいかぬだろうということで、学識経験者等の第三者も審査に加わっていただくことにして透明性を高めていこうと考えているわけでございます。

 いずれにしても、この契約に当たっては細心の注意を図っていきたいというふうに思います。

吉井委員 世論調査の捏造をやるようなのが私はまともな能力とは思いません。そういうことをやっているようなところに企画内容にすぐれているなどということはとても言える話じゃなくて、やはり、随契がだめとなったら企画競争だ、何か企画競争だからまともかと思ったら実質は随契、では一般競争ですといったら、全部おろさせてしまって、一般競争で入ったはずなのに一社しか残っていなくて、そこと契約、こういう本当に形だけ取り繕って、そして政府高級官僚が天下った公益法人が政府広報をどんどんとっていくというのは、余りにも異常過ぎます。

 これはどんなことがあっても絶対改めなきゃいかぬ、このことを強く申し上げて、時間が参りましたので、質問を終わります。

河本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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