衆議院

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第3号 平成19年3月9日(金曜日)

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平成十九年三月九日(金曜日)

    午前十一時十二分開議

 出席委員

   委員長 河本 三郎君

   理事 木村  勉君 理事 後藤田正純君

   理事 戸井田とおる君 理事 西村 康稔君

   理事 平井たくや君 理事 泉  健太君

   理事 松原  仁君 理事 田端 正広君

      赤澤 亮正君    稲田 朋美君

      遠藤 武彦君    遠藤 宣彦君

      岡下 信子君    嘉数 知賢君

      金子 恭之君    木原 誠二君

      北村 茂男君    近藤 基彦君

      鈴木 馨祐君    寺田  稔君

      土井  亨君    中森ふくよ君

      林田  彪君    広津 素子君

      牧原 秀樹君    松浪 健太君

      村上誠一郎君    市村浩一郎君

      小川 淳也君    小宮山洋子君

      佐々木隆博君    横光 克彦君

      渡辺  周君    石井 啓一君

      吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (イノベーション担当)

   (少子化・男女共同参画担当)

   (食品安全担当)     高市 早苗君

   国務大臣         渡辺 喜美君

   内閣府副大臣       林  芳正君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   政府参考人

   (内閣官房構造改革特区推進室長)

   (内閣官房地域再生推進室長)

   (内閣府構造改革特区担当室長)

   (内閣府地域再生事業推進室長)          大前  忠君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           村田 直樹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       松井 英生君

   内閣委員会専門員     堤  貞雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月九日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     広津 素子君

  嘉数 知賢君     稲田 朋美君

  木原 誠二君     牧原 秀樹君

  谷本 龍哉君     金子 恭之君

  中森ふくよ君     鈴木 馨祐君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     嘉数 知賢君

  金子 恭之君     近藤 基彦君

  鈴木 馨祐君     中森ふくよ君

  広津 素子君     北村 茂男君

  牧原 秀樹君     木原 誠二君

同日

 辞任         補欠選任

  北村 茂男君     赤澤 亮正君

  近藤 基彦君     谷本 龍哉君

    ―――――――――――――

三月九日

 地域再生法の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

同月二日

 憲法を守り生かすことに関する請願(穀田恵二君紹介)(第一六八号)

 同(保坂展人君紹介)(第一六九号)

 レッド・パージ犠牲者の名誉回復と正当な国家賠償に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一七〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第一七一号)

 同(笠井亮君紹介)(第一七二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一七三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一七四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一七五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一七六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一七七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一七八号)

 憲法改悪反対に関する請願(石井郁子君紹介)(第一七九号)

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一八〇号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二四九号)

 同(石井郁子君紹介)(第二五〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第二五一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二五二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二五三号)

 同(志位和夫君紹介)(第二五四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二五五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二五六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二五七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地域再生法の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 内閣の重要政策に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

河本委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田端正広君。

田端委員 公明党の田端でございます。

 きょうは、また仕切り直して高市大臣に少子化対策等についてお尋ねするということで、トップバッターとしてやらせていただきたいと思います。

 今回、政府の方で子どもと家族を応援する日本戦略会議というのがつくられるということでありまして、つまり、すべての子供、家族に対してどういうふうにサポートしていくかという少子化対策に対しての政府の考えをここに反映させよう、こういうことだと思いますが、これを、いつまでに、どういうふうに策定するのか、そしてどういう形で実施をしていくかということは、大変大事な、今後日本の将来に向かっての本当に基本的な政策になるのではないかと思っております。

 それで、ことし以降、団塊ジュニアの世代も女性が非常に減ってきているということであります。ジュニア世代が、ちょうど七一年生まれ等が三十代後半に入ってくるということでありまして、一層少子化が加速するということが心配されているわけでありますが、そういう中で、先般、厚生労働省の発表によりますと、二〇〇六年の人口動態統計を見てみると、出生率が一・三に回復したということが記事として出ておりました。四年ぶりに一・三台に戻ったということでありまして、非常にいいニュースだなと思っております。

 これは、どうもやはり景気の回復ということと関係しているのではないか、雇用の安定とかそういうことが大きな要因ではないかと言われているだけに、今後の対策というのは非常に大事だなと思っておりますが、大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。

高市国務大臣 冒頭に当たりまして、私の体調管理が十分でなかったばかりに、委員長初め与野党理事の皆様、委員の皆様に御迷惑をおかけしました。今回改めて貴重なお時間をいただくことになり、済みません、ありがとうございました。

 田端委員の御質問でございますけれども、確かに御指摘のとおり、第二次ベビーブーム世代が三十代である残り五年程度に速やかな対応が必要であるという状況になっております。そして、今般立ち上げました重点戦略の検討会議でございますけれども、最初にお尋ねになりました今後の日程でございますが、六月には基本的な考え方を取りまとめて、本年中には全体像を提示するという段取りでございます。

 これは、過去に、九〇年代半ばから、エンゼルプラン、第二次エンゼルプラン、子ども・子育て応援プラン、そして昨年六月に新しい少子化対策についてと、累次にわたりましてさまざまな対策が打ち出され、そして、昨年の新しい少子化対策を今御審議いただいております平成十九年度の予算案に反映されているということなんですが、今回の重点戦略は、今までも提案されていたけれども、それでもまだ掘り下げが足りない分野については十分に議論していくということになると思います。

 特に働き方ですね、働き方を変えていこう、それから、国民挙げて家族と子供を応援する空気、社会の空気づくり、流れ、潮流をつくっていく、こういったところと、これまで打ってこられた施策の点検評価、ここにも力を入れていきたいと思っておりますので、委員の御指摘のとおり、しっかりとこれは戦略を練り上げてまいりたいと思っております。

田端委員 そこで、ちょっと具体的なことでお尋ねしたいのは、この子どもと家族を応援する日本重点戦略の策定の会議、これは第一回会議が既に二月九日に開かれて、官房長官が議長になって、関係大臣と有識者の皆さんというメンバーで構成されています。一方、今大臣がおっしゃった、働き方ということが非常に大事だ、そういうことで、ワーク・ライフ・バランスに関する専門調査会というものが、これは大臣のもとにあるんだと思いますが、この関係ですね。大きな会議が、しかも専門委員にまた有識者の方がたくさん入っておられて、この二つの関係性というのは非常に大事だと思います。

 ここがどういうふうにつながっているのか、連携しているのか、ここのところがちょっと見えづらいのですが、その点、いかがでしょうか。

高市国務大臣 まず、働き方の改革分科会、これは少子化の方でございますけれども、こちらは主に少子化対策の観点から、仕事と子育ての両立支援とあわせて、子供さんと過ごしていただく時間を十分に確保できるようにワーク・ライフ・バランスを推進しよう、その方策を検討しようというものです。

 一方で、男女共同参画会議の方のワーク・ライフ・バランス専門調査会ですが、これは少子化対策とはまた別の観点で、男性も女性も、子育て期だけではなくて生涯を通じてさまざまな活動に従事でき、豊かさを実感できる社会環境づくりの観点、これが主になります。

 この二つの会議は、密接に連携をし合いながら、双方とも大体五月末ぐらいまでに取りまとめをして、六月に骨太の方針に反映させていくといった形で連携をとり合っております。

 とにかく、ワーク・ライフ・バランスは大きな波を起こさなきゃいけない重大テーマですので、あらゆる方々のお知恵を結集して幅広に議論をしたい、こう思っております。

田端委員 ワーク・ライフ・バランスの問題は、ここ一、二年で急にといいますか、また新しい言葉として出てきたテーマでありまして、昨年五月でしたか、我が党で少子社会トータルプランというのを発表いたしました。その中に、公式的には初めてこのワーク・ライフ・バランスという言葉を採用し、織り込んだわけであります。私も、ワーク・ライフ・バランスというのをもっと日本語的にいい言葉がないのかなといろいろ検討したんですが、結局はそこに落ちついたわけでありまして、それが政府においてもそういう形で採用されているということでは、徐々に定着しつつあると思います。

 おっしゃるように、女性の働く問題についての、家事、育児とのバランス、そういったことで、今後のこの少子化問題には、大変大きな、子育ての問題にかかわったことになっていくんだと思うわけでありまして、私は、一つのモデルは、先進国としてはフランスだろうと思います。女性の八割の方が働かれているとか、あるいはそうした働いている家庭に対する国のサポート、あるいは家族手当とか児童手当とか、そういったものが本当にきめ細かく施策としてできていて、そしてフランスにおいては、特に、子だくさんの家庭は得をするといいますか、子だくさんがいいんだというシステムになっているんだなと思うわけであります。

 そこで、仕事と育児の両立という意味において、日本はそこが非常に難しいことになっているわけでありますが、このワーク・ライフ・バランスに関する専門調査会で、この問題に対して、どういうことを今どういう視点で対策をお考えになっているのか、ここが大変大事な点ではないかなと思っておりますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

高市国務大臣 ワーク・ライフ・バランス専門調査会、これは男女共同参画会議の方でございますけれども、まさにこれから議論を始めていくという段階にございます。ですから、具体的に何と何が提言として取りまとめられるかはわかりませんけれども、フランスも含めて、諸外国の制度も十分に参考にしながら議論を進めてまいりたいと思っております。

田端委員 これは三月八日付の新聞でございましたが、妻が正社員なら、非正社員に対して、子供があるという家庭は二倍多くなっているというデータが、最近三年間に結婚した家庭を調査した結果、厚生労働省の調べでそういうことがわかった、こういうことであります。

 まさに、働く中身、パートじゃなくて正社員という安定した経済的な状況、それがそういう形になるわけでありまして、ワーク・ライフ・バランスということは、まさに少子化対策にも大変大きく影響している、こういうことが言えると思いますので、その点をぜひ重々お考えいただいて、今後御議論いただいて、方向性というものをぜひ検討していただきたい、こう思います。

 そのことを最後にお尋ねして、終わりたいと思います。

高市国務大臣 今委員が御指摘になりましたのは、厚生労働省が発表された二十一世紀成年縦断調査の結果だと思います。確かに、妻が正社員の場合、子供が生まれた割合が約二倍、出産後も同一就業を継続している割合が二倍以上ということでございます。

 これは、やはり正社員は、育児休業制度を初め会社で用意されたいろいろな支援策を使いやすい、生み育てやすい環境が整備されているということ、それから経済的な安定だと思います。

 これは、妻にしろ夫にしろ、会社でもっともっと育児支援、子育て支援策、十分に各企業が整備をして、なおかつ法律を守っていただく、もう既に国の方でこうしてほしいと決めている法律についても、まだまだ十分に労働者の権利が私は確立されていないと思いますので、守っていただくということが大事かと思いますが、とにかく、正社員になりたいと希望される方が一人でも多く正社員雇用されること、これは非常に私は大事な問題だ、大事な視点だと思っております。

田端委員 時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

河本委員長 次に、泉健太君。

泉委員 民主党の泉健太でございます。

 まず、冒頭になんですが、前回大臣所信の中で高市大臣が体調を崩されたということで、これはもちろん人道的な配慮として、我々もその質疑は別途とるということで与野党合意をさせていただきました。しかしながら、こういう不正常な状態の中で委員会を開催して、きょうこの場でということについては、我々は理事会の中ではそれは合意できないということを申しましたが、大変残念ながら、きょうこの日にそういった形でこの委員会が開催をされているということ、これは我々は大変遺憾に思っているところであります。そのことについては、私たちは、大変残念だ、抗議をしたいということをまず冒頭申し上げながら、質疑に入らせていただきたいと思います。

 大臣所信ですから、さまざまな点を大臣は述べられていたというふうに思います。それについて幾つか質問をさせていただきたいと思います。大臣が所信でおっしゃっていたことが前提にあるということで、御答弁をいただけるものと信じております。

 まず一つ目なんですが、ちょうど大臣が退席をされた先日の委員会のときにも、各大臣に実はお伺いしたんです。今、内閣、内閣官房に大臣が随分ふえていますね、これはどうするんだということをお話をさせていただきました。そしてまた、その大臣も、無任所大臣もあれば、特命担当大臣もあれば、また、特命じゃないけれども重要事項を担当する大臣がある。かなりややこしいという問題がありまして、例えば科学技術とイノベーション、これは高市大臣、どういう違いがあると今考えておりますでしょうか。

高市国務大臣 科学技術は、科学技術という案件に限って施策を展開しているものでございますけれども、イノベーションは、技術革新だけではなくて社会制度の刷新、人材育成等々も含めて、その取り組みによってその成果が国民に還元できる、その仕組みをつくっていくという仕事でございますので、技術の部分については関連いたしますけれども、相互に連携し合いながら、さらに社会制度の改革についての提言を主にしていっている、こうお考えいただいたらいいと思います。

泉委員 そこは、実際には中で行われていることはかなり重複する部分もあるのではないのかなというふうに思っておりまして、我々としては、大臣の乱造じゃないかということも今指摘をさせていただいているところです。

 そしてさらに、きょうは時間が余りありませんので、次の問題に移らせていただきますけれども、今ちまたでは、世間では、民法七百七十二条の問題が大変問題として指摘をされております。大臣は、この、生まれてきた子供が、前の夫と離婚して三百日以内であれば前の夫の子という扱いになってしまうということについて、民法を改正するべきだとお考えでしょうか。

高市国務大臣 この問題は、法律上の父子関係をどのように設定するかという身分法上の本当に根幹となる重要な問題でございます。現在、法務省において、実情についてつぶさに調査を行った上で検討するということになっているかと思います。

 私自身は、現在の規定によって法的に守られている子供というのも存在すると思います。これは例えば、妊娠をしている、その後にお父さんが亡くなってしまわれたような場合に身分関係を確定するということなどがあると思うんですね。

 ただ、現在、昔と違って変わってきているのは、医療技術の進歩でかなり早い段階でもお子さんがお生まれになるということ、それからまた、男女関係、婚姻関係も、社会的な風潮というのは変わってきているんじゃないかなと思います。昔でしたら、離婚をして、次は半年待って婚姻関係、その後に子づくりをしてといったような前提で現行法があるかと思うんですが、医療制度の進歩や現在の社会の男女関係の変化ですとか、それから割と離婚の手続が長引いて時間がたってしまうというようなさまざまな細かい点に配慮をしながら、十分にその実態を把握して検討していただきたいと思いますね。

泉委員 では、大臣自身は前向きに検討をしていくべきだというようなお答えでよろしいでしょうか。

 もう一つ話をしますと、やはり全国の市町村の窓口で、住民票がないということで結果的には児童手当を受けられない、受けられたとしても、トラブルというか、窓口でかなり時間を使ってようやく理解してもらってというケースが多々あります。こういうことについては、ぜひやはり少子化担当というかそういった立場からも、窓口で健康保険そして児童手当をしっかり受けられるようにということを、高市大臣の方も何かアクションを起こすべきだというふうに考えていますが、いかがですか。

高市国務大臣 現在、私個人がこうすべきだという考え方は、やはりこれは、政府として、内閣として、責任を持って、国民の代表であられます国会議員の皆様に答弁できるものとしては申し上げられないと思います。ここはあくまでも政府の見解を皆様にお伝えする場ですから、実現可能性も含めて、ある程度私が責任を持てる状況にならないと発言はできないかと思います。

 ただ、一般論として、私は、時代に合った見直しや現状の把握というのは、その都度、どの法律に関しても必要なことだと考えております。法務大臣とはまだ公式には議論をしていない状態ですけれども、閣僚懇の前後等の時間を利用して個人的な意見交換はいたしております。

泉委員 そこは、厚生労働大臣、法務大臣、あるいは全国の窓口ということでいえば総務省ということもかかわってくると思うんですけれども、ぜひやはり提言をしていただきたいというふうに思います。

 そしてさらに、児童手当についてちょっと考え方をお聞かせいただきたいんですが、児童手当、今また乳幼児加算ということで増額もなされていこうとしている状況ですが、高市大臣は、児童手当というものはどういう位置づけなのか。例えば、それは最終的には政府としてすべての児童に児童手当を給付すべきという考え方なのか、それとも、ある一定の条件の児童に児童手当というものを給付すべきなのか、どちらでしょうか。

高市国務大臣 乳幼児加算の創設の考え方というのは、やはり子育て期の親というのは平均的には経済力がまだまだ十分じゃない、自分たちの生活プラスお子さんにかかる費用でいっぱいいっぱいの状態だ、だから若い世代の親をできるだけ経済的に応援したいという思いから、前大臣がリーダーシップをとられて乳幼児加算の創設ということを決められた。そのために、後任者である私は、昨年十二月の予算編成の段階で、一つでも多くやれることは全部やろうよという安倍総理の御指示のもとで、財源の問題も含めて走り回りました。

 今後、では、児童手当の対象について条件を限定せずにできるだけ広くという考え方につきましては、財源が許せば私はできるだけ幅広に、今でしたら、子育て支援のいろいろな経済的支援の中でも所得制限等ございますし、年齢についても、乳幼児の医療費などでも、三歳未満で二割の自己負担というような考え方があります。だから、幅広のいろいろな皆様のお声を聞きながら、しかし、財源との相談というのはイコール納税者の皆様の負担、国民の負担率が上がっていくという可能性もありますので、そういったことも勘案しながら進めていきたいなと思います。

 それは子育てをされている親御さんにとってみれば、子育て期は大変お金がかかります。大きくなっても学費なんかで負担が結構大変ですから、少しでも多くというお声はよくわかります。できる範囲でやっていきたいなと思っております。

泉委員 財源が一つネックである、しかし、考え方としてはできるだけ幅広にとお伺いしましたけれども、もう一回はっきり聞きたいんですが、大臣としては、そうしますと、財源さえ許せば所得制限というものはなくしていっても構わないというお考えですか。

高市国務大臣 これも、厚生労働省が主になっている施策ですから、必ずこうなるという形での答弁はできませんけれども、少子化担当大臣として総合調整役をしている私の立場からいいますと、事子育てに関しましては、所得制限で微妙なところで全く手当が受けられないというような方もたくさんいらっしゃって、国を挙げて少子化を応援するんだったら、余りにもちょっと今所得制限が、これではあんまりなんじゃないのというお声もたくさんいただいております。

 これは少子化だけじゃなくてほかの施策についても、たくさん税金を払っているのに不公平だというお声もいただいておりますので、これは財務省、厚生労働省、私どもも一緒になって検討しなきゃいけない今後の一つの課題だと思っております。

泉委員 それは課題ではなくて、しっかりと方針を持っていただきたいというふうに思います。

 もう一つ、今の児童手当の話でいえば、やはり児童手当というのは、子供一人一人の、国からのメッセージというか、それはすべての子供に対してのメッセージだ、あるいは生活保障だというふうに私は考えておりますので、そこはやはり一〇〇%ということを大臣にもしっかりと持っていただきたいというふうに思います。

 もう一つ、最後の問題になりますけれども、公益通報者保護法に関してです。

 今、政府部内、各省庁でかなり窓口の設置がおくれているんじゃないかということが大変問題になっております。大臣、この各省庁の現状については、満足、不満足、どちらでしょうか。

高市国務大臣 不満足でございます。

泉委員 このような現状に至ったには内閣府に責任があるんじゃないかと思いますが、いかがですか。

高市国務大臣 公益通報者保護法は昨年四月に施行されました。内閣府は、この法施行一年をことしの四月に迎えるわけですから、国の行政機関そして地方の公共団体に対しましても、内部の職員からの通報件数をも含めた全国規模での施行状況の調査を予定いたしております。この取りまとめ後は、速やかに結果を公表して実態把握に努めますし、それからまた改善すべき点は改善をしてまいります。

 特に、国の行政機関におきまして、弁護士ら第三者を配置した外部窓口の設置、これが少ないという状況について私は不満足だということを申し上げたんですけれども、既にこれは各省庁連絡会議でしっかりと窓口を設置して対応するようにという要請を行っておりますし、この施行状況の調査を踏まえて、実効ある制度の整備が進むように私自身しっかりと努力をしてまいります。

泉委員 今、その各省庁連絡会議の中身が守られていないわけですね。それをまたもう一回申し入れするだけで本当に物事が動くとお考えなんですか。私は、そこに何らかの確証があれば別ですが、ただ単に申し入れをするというものではそれはないと思います。大臣、確実に物事を進めるために次にどんな対策をお考えですか。

 ぜひ一年の中で、来年度中にはすべての省庁にこういう窓口を置くべきだというふうに私は思いますよ。しかも、これは国が率先してやらなきゃならないことです。国が率先しなきゃならない。でも、まず、その国が窓口を三つの省庁しか置いていないという現状、公開をしていないとか外部窓口をちゃんとつくっていない、これはやはり問題だと思うんです。大臣、それは来年度中にすべてに置くんだということを言っていただいてしかるべきだと思います。そうじゃないと物事は進まないんじゃないですか。そこだけはっきりしてください。

高市国務大臣 窓口の設置の要否も含めて各行政機関で判断をし、なおかつ国の行政機関の通報処理のガイドラインを作成して、これはもう各省庁で申し合わせをしているんですね。このガイドラインでは、外部窓口の設置に努めるという表現になっておりますけれども、幹部を責任者として部署間で横断的に通報を処理する仕組みを整備するということを定めております。

 連絡の会議もございますので、また、新聞報道等でもこれは問題だということで、申し入れをこちらもしているわけですから、各省庁に対してしっかりと取り組んでいるかどうかのフォローアップは私は続けてまいります。

泉委員 質問を終わります。

河本委員長 次に、小宮山洋子君。

小宮山(洋)委員 民主党の小宮山洋子でございます。

 先日、予定をしていました質疑のときに体調不良でいらしたので、この後またぜひ質疑をしたいというふうに大臣の方からも言っていただきました。そのときに用意をしておりました、少子化への対応の中の柱とされている学童と全児童を一緒にした放課後子どもプランを中心にお話を伺いたいというふうに思っています。

 昨年出されました少子化対策、これは猪口大臣がそのころは担当大臣でいらっしゃいましたけれども、放課後子どもプラン、先日もその議論をしたんですけれども、ちょっと復習の意味で繰り返しますと、空き教室を利用した全児童対策と、保護者が見ることができない放課後の子供を福祉的な観点から預かる放課後児童クラブ、いわゆる学童保育を当初は統合するというふうにメディアでも発表されまして、保護者から大変心配の声が上がって、その後、ある程度軌道修正はされ、四月スタートをするわけですけれども、まだまだそれぞれの部分で心配がいろいろあるわけですね。

 特に学童の方は、私も自分の子供のことも含めてずっとかかわってきておりますけれども、やはりこれは家庭にかわって子供を見る、そういう充実した場でなければいけないということで、それぞれが拡充をしていって、必要なところで連携を図ってほしいということを申し上げてきているんですけれども、大臣はそのあたりの、二つの事業を一緒にして今回やることについてどんな位置づけで考えていらっしゃるのか。基本的な考え方をまず伺いたいと思います。

高市国務大臣 今回のプランのメリットといたしましては、子供の放課後の安全性が確保できるということのほかに、両方の事業の関係者、福祉部局の職員ですとか教職を目指す大学生の方ですとか、また退職教員やボランティアの方々などの連携によって、子供の様子の変化ですとか、それから健康状態、また下校時間の変更などの情報交換を促進できるという意味では、一緒にやっていくメリットというのはあるかと思います。あと、子供さんの活動の幅を広げる。学習であり、またスポーツであり、文化ですとか体験活動、それからまた、違った年齢の大人や子供との交流促進、そういう幅を広げられるというメリットはあると思います。それから、余裕教室を初め学校の諸施設、体育館も校庭も保健室も、そういったところを積極的に活用できる、こういったところがメリットかと思っております。

小宮山(洋)委員 確かに、子供の安全という意味からも、空き教室を使っていい形で連携をとること自体はいいと思うんですが、今回の事業で心配をしているのは、一貫して文部科学省が主導をしているんです。

 今回の事業、この概要を見ましても「各市町村において教育委員会が主導して、」となっているんですね。ですから、あくまでも今までの空き教室を利用してきた文部科学省の事業が主体となって、最初御説明をいただいたときには福祉部局というのはほかのいろいろ連携するところと並んだうちの一つでしかなかった。ところが、最終的には「教育委員会が主導して、福祉部局と連携を図り、」と、格上げはされたんですけれども、あくまで主導が教育委員会だというところで、福祉的な、家庭にかわるという学童保育のあり方自体が変わるのではないかという心配があります。

 私は、これはやはり主導ではなくて、そこが両方ともそれぞれの事業を拡充する、それで対等な立場で連携を図るということが一番望ましいのではないかと思うんですけれども、この「教育委員会が主導して、」というところへの危惧にはどういうふうにお答えになるでしょうか。

高市国務大臣 これは、ちょっと周知徹底不足なのかもしれません。

 確かに、文部科学省が平成十六年度から民間団体に委託して行ってきた地域子ども教室事業、これは平成十八年度までの時限措置でございますが、やはり民間でやっていきたい、いろいろ知恵を集めてやっていきたいということで、その継続を望む多くのお声に配慮いたしまして、平成十九年度から地方公共団体向けの補助金として、放課後子ども教室の推進事業を新設して、地方公共団体に対しては所要の地方財政措置というのが講じられる予定なんですね。そういう意味で、教育委員会主導でという御懸念があるのかもしれませんが、実施主体は確かに市町村ということになるんですけれども、市町村からNPO法人を初めとして民間教育団体に事業委託するということは平成十九年度においても可能であるという予定になっております。

 ですから、私はもっと文部科学省が、今でも地方公共団体や民間教育団体に説明をされているんですけれども、もっともっとさまざまな機会をとらえて周知をしていただきたいですし、また使う場所も、平成十九年度においても別に学校の空き教室だけじゃなくて、公民館ですとか、割と小学校以外の場所でもオーケーですよということになっておりますので、この辺も御懸念が薄れるようにもっと説明をされるべきだと思っております。

小宮山(洋)委員 大臣は青少年問題特別委員会の担当大臣でもいらして、青少年特では学童のことを集中審議したり、以前、まだなられる前ですけれども、ずっと取り組んできておりまして、御承知かと思うんですけれども空き教室を利用した、これももちろん私はあっていいと思うんですね、拡充すればいいと思うんですが、こちらの方は、全国的に見ますと週に一回数時間やっているというところが一番多いんですね。地域のボランティアの方も含めて皆さんで見ていく、それはもちろん大事なんです。

 ただ、学童とは全く違って、学童の場合は、とにかく小学校低学年の場合は、学校で過ごす時間は年間千百時間、ところが学童保育では、二〇〇三年から安全面から学童保育の終了時刻が延びたこともございまして、今は千七百時間以上。ですから、小学校低学年の子供たちは千百時間学校で過ごす以上、その一・五倍ぐらいの千七百時間を学童保育の場で過ごすわけなんです。だから、どうしても専用のスペースとか専用に見るスタッフとかが必ず必要になってくるわけなんですね。それと全児童が来たいときに来て遊ぶ場とは全く基本的にあり方が違うということをぜひ担当の高市大臣にも強く御認識いただきたいと思っています。

 それで、低学年の子供を持つ六割の母親が今働いているわけです。そうすると、本当に働きながら安心して子育てができるという意味で、いわゆる学童保育を拡充していくということは非常に喫緊の、本当に大きなテーマだと思っているんですね。特に、御承知のように、広島とか栃木などで子供が被害に遭うような事件が相次ぎ、栃木はまだ逮捕もされておりません。そういう中で、そういう事件があった地域では、従来の四割増しの人たちが学童に入りたいと言っているという現状があるわけなんですね。

 そして今、学童に入りたくても入れない待機児童がやはりたくさんいるというような実情もございまして、そういう意味で、それぞれの専用のスペースでやると言っていたあたりがどうも何か、連携しながらと一緒に、一体化してという言葉が必ず出てくるものですから、そのあたりが心配されている。もちろん、子供たちのために共通でできるところはすればいいと私も思っているんですけれども、決して今の学童の実情を低下させないということはぜひ大臣にお約束をいただきたいと思っています。

高市国務大臣 今、内閣府のホームページで昨年の十月から、私の希望によりまして毎月二つずつテーマを設定させていただいて、全国の皆さんからの運用改善上、そして既に実施されている政策についての御意見をいただいています。ちょうど先月、この放課後子どもプランについても、現状、学童保育を使っていらっしゃる皆さんからも、現状と今後のプランについての懸念、そしてまた御注文を伺いたいなと思って、テーマを設定しまして、きょうその結果の集計、けさまとまったんですね。そうすると、例えば、もうキャパシティーがいっぱいいっぱいであるというようなお声ですとか、できたら小学校六年生まで見てほしいなというお声ですとか、それから質の確保、これに対するお声、こういったことがたくさん寄せられました。

 今後、今先生が御指摘になりましたこととあわせて、今回集めました意見について厚生労働省と私で協議を行い、改善できる点を改善するということでございます。

小宮山(洋)委員 心強いお言葉をいただいたと思っています。

 それで、今、ニーズが多いのに受け入れの状況がよくないために、一カ所で九十人も百人もというところがあったりしまして、そこについてのガイドラインづくりは先日の質疑でも厚生労働省、検討しているということでしたので、そのあたりもぜひバックアップをしていただきたいと思います。

 先日、これについては平沢副大臣から力強いお答えをいただいたと思っているんですが、先ほどおっしゃった空き教室をやっていた方の事業で、民間の人たちがせっかく協力をしていたのに、今回、委託から補助事業になったために、補助事業だと都道府県と市町村が三分の一ずつ負担しないと継続できない、非常にひどいところでは全く継続ができなくなっているという現状もあるということがありまして、そちらも支障を来しているということがあるんですね。

 副大臣は、ぜひ補助金とかいろいろな面で継続できるように努めていくというふうにこの間お答えいただいたんですが、大臣はどのようにお考えですか。

高市国務大臣 これは、放課後子どもプランに移行して今までのサービスよりも低下した、受けられるべきサービスが受けられないということになったら大変ですから、副大臣答弁のとおり、しっかりと私もフォローアップをして、支援をしていきたいと思っております。

小宮山(洋)委員 ぜひ担当大臣としてそこの実情も詳しく聞いていただきたいんです。これは先日も質疑をさせていただきましたが、放課後子ども教室、十八年度、九千カ所のうち三千カ所で民間団体が直接委託を受けて行ってきたわけなんですね。ところが、補助事業に戻って、余り地方が意欲がなくて、例えばこの間も例に引いたんですが、奈良県では民間のNPOが行ってきた五十六カ所がゼロになる、そういうことが実際にあるわけなんです。

 これはかなりの後退だと思いますので、やはり政府だけではできないのはもう御承知のとおりですから、意欲を持ってやってきた人たちが仕組みが変わったために継続できないということは、もう四月間際ですから、早急にやっていただきたいと思うんですが、重ねて、よろしいでしょうか。

高市国務大臣 これも後退させないために、先ほど申し上げました周知徹底が必要だと思います。これは早急に行わせていただきます。

小宮山(洋)委員 ちょっとしつこいようですけれども、大臣の御認識としては、学童は学童でしっかりと充実をさせていく、それで空き教室事業の方の部分も、そちらもしっかりと民間の力も使いながらやっていく。それぞれを拡充した上で必要なところを連携を図るということでよろしいですか。

高市国務大臣 一体化で十分に両方の機能を発揮できるところはそういった形で進めていただいて、地域によってかなりこれは差があると思います。先ほども私の出身県である奈良県のお話もいただきましたけれども、確かに、民間に委託して十分に能力を生かしていくということについてまだ認識が十分じゃないところもありますので、広報、周知徹底を改めまして厚労省にも、文部科学省にもお伝えをいたしますし、とにかく、新しい仕組みになって後退したと言われることのないようなフォローアップだけはしっかりやっていきます。

小宮山(洋)委員 ありがとうございます。

 ぜひまたこの件はフォローさせていただきたいというふうに思っています。

 それで、残りが少なくなりましたけれども、今、少子化担当大臣という形で、前任者の猪口大臣、そして高市大臣と頑張っていらっしゃると思うんですけれども、この点は、やはり特に厚生労働省がやっているところが八割から九割ぐらいなわけですよね。ですから、少子化への対応を政府がやり出してもう十七年ぐらいになるんですけれども、それぞれタイミングがずれ、小出しで、なかなか子供を政策の中心に置いて政府全体で取り組んでいるという姿勢がまだまだ足りないことが、出生率がどんどん下がっていることのもとにあるのではないかと思っています。

 そういう意味で、私たち民主党は子ども家庭省という、やはり中心となってできるところがないとできないのではないかと考えているんです。そうでなければ、少子化担当と言われる内閣府の大臣として、すべて権限をそこに集めて、厚生労働大臣よりも上に立ってできる、内閣府全体が目指しているように総合調整ができる立場になられないと、なかなか一致して無駄なく効果的にやるということができないと思うんです。今その任にあって苦労もされていると思うんですけれども、そのあたりの国としての取り組みのあり方についてはどういうふうにお考えですか。

高市国務大臣 確かに苦労はいたしております。案件によりましては、私どもと厚生労働省の考え方、対立がありまして、最終的に皆様に結果をお出しするときには当然政府は一体としてやるわけですけれども、議論の過程ではさまざまな激しいやりとりもございます。

 ただ、総合調整役がたまたま私ではございますけれども、政府の中に全閣僚がメンバーとなった少子化対策のための会議もあり、昨年の新しい少子化対策についてもすべての閣僚が了解をしたものでございます。だからこそ、骨太の方針、そしてまた予算案に盛り込まれていったという経緯もありますし、私の場合でしたら、例えばIT担当もやっております、そうすると、少子化対策を担当し、障害者施策も見ながら、IT担当もやって、男女共同参画もやっている、こういうメリットもあるんですね。

 例えばテレワークの問題を一つとりましても、これは障害者の方も自分の持っている能力で働ける環境づくり、そしてまた少子化対策ということに関しましても、大いにテレワークで子育てをしながら収入を得る環境をつくるということはメリットがある。ただ、IT担当大臣としては、その阻害要因となっているセキュリティーの問題を今何とかクリアしようと思っています。厚生労働大臣の方には、とにかく働き方の評価、これ、おうちでテレワークをするといったら、労働時間だけでははかれませんから、ある程度成果主義的な評価方法というのも出てこなきゃいけない、このシステムがまだまだでございますし、経済産業大臣の方では、企業の方のIT化が進んでいなかったらテレワークもできません。

 やはり、あらゆる役所が直接予算措置の権限を持っているものを活用しながら総合調整していく、いろいろな視点で総合調整していく、そういう意味では私は今の形でも十分にやっていけるんじゃないかなと思っております。特に、少子化だけじゃなくて、ほかのいろいろな施策に通ずるところというのが随分多いなというのが私の感想でございます。

小宮山(洋)委員 毎年、骨太の方針が骨が細くなってしまっているのは、やはり内閣府で総合調整ということが実態としてなかなかまだうまくいっていないということなんじゃないかと思うんですね。今回はまた戦略会議もつくられるわけですので、そういう意味では、やはり今少子化担当大臣で、確かにいろいろな業務があって大変な部分もあると思うんですけれども、そこはやはり子供たちのためにぜひ全体をまとめていくことをやっていただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

河本委員長 この際、暫時休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

河本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 本日付託になりました内閣提出、地域再生法の一部を改正する法律案及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。渡辺国務大臣。

    ―――――――――――――

 地域再生法の一部を改正する法律案

 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

渡辺国務大臣 このたび、政府から提出いたしました地域再生法の一部を改正する法律案及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案の二法案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 初めに、地域再生法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 地域再生は、地域の知恵を生かした自主的・自立的な取り組みを国が支援することにより、我が国の活力の源泉である地域の活力を再生しようとするものであります。地域再生法の施行後二年にわたり、八百十件の地域再生計画が認定され、全国各地で創意工夫にあふれるさまざまな取り組みが行われてまいりました。

 今般、地域再生計画の作成及び実施に当たり、広く関係者の意見を集約するため、所要の措置を講ずるとともに、再チャレンジする人を支援する地域の民間会社等の取り組みを促進する税制上の措置を講ずることにより、地域のさまざまな関係者が連携し地域全体で再チャレンジ可能な社会の実現に取り組むことを通じ、地域再生をさらに推進するため、この法律案を提出する次第であります。

 次に、この法律案の概要を申し上げますと、

 第一に、地方公共団体が地域再生計画を作成し、地域再生法に基づく内閣総理大臣の認定を受けた場合において、当該計画に記載された、高年齢者の定年を引き上げ、積極的に雇用する事業等を実施する企業であって当該地方公共団体が指定したものに対し、法人が寄附をした場合において、報告書等に基づき地方公共団体が寄附の公益性を確認したときは、課税の特例の適用があるものといたしております。

 第二に、地方公共団体が地域再生計画を作成し、地域再生法に基づく内閣総理大臣の認定を受けた場合において、当該計画に記載された、若者の採用機会の拡大等に取り組む企業等に対して助成を行う事業を実施する公益法人であって当該地方公共団体が指定したものに対し、個人または法人が寄附または贈与をしたときは、課税の特例の適用があるものといたしております。

 第三に、地方公共団体は、作成しようとする地域再生計画並びに認定地域再生計画及びその実施に関し必要な事項その他地域再生の総合的かつ効果的な推進に関し必要な事項について協議するため、地域再生協議会を組織することができるものといたしております。

 次に、構造改革特別区域法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 構造改革特区は、地方や民間が自発的に構想を立案し、それぞれの地域の特性に応じた規制の特例を導入することにより、構造改革をさらに加速させるための突破口となるものであり、同時に、地域の活性化の手段となるものであります。これまで、構造改革特区推進本部においては、全国から提案募集を行い、規制の特例措置を決定してまいりました。さらに、構造改革特区法が施行されてから五年目を迎えることから、同法附則第二条を踏まえ、所要の検討を行ってまいりました。

 今般、この検討結果に基づき、構造改革特区法の改正が必要なものについて所要の措置を講ずるとともに、昨年六月に実施した提案募集等を踏まえ、新たに、地方自治法の特例及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の特例を追加すること等を通じ、経済社会の構造改革を推進するとともに地域の活性化を図るため、この法律案を提出する次第であります。

 この法律案の概要を申し上げますと、

 第一に、内閣総理大臣は、定期的に、新たな規制の特例措置の整備等に係る提案を募集することを、法律に位置づけることといたしております。

 第二に、構造改革特区計画の認定申請期限とされている平成十九年三月三十一日を、平成二十四年三月三十一日まで延長することといたしております。

 第三に、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長等は、内閣総理大臣の認定を受けた構造改革特区計画に係る事業の実施に関し、許可等の処分を求められたときは、その事業が円滑かつ迅速に実施されるよう、適切な配慮をするものといたしております。

 第四に、政府は、この法律の施行後五年以内に、この法律による改正後の構造改革特区法の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものといたしております。

 第五に、地方自治法の特例として、内閣総理大臣の認定を受けた構造改革特区においては、都道府県が、条例による事務処理の特例により市町村が処理することとした事務に関し、市町村と国とが行う協議等については、都道府県を経由せず行うことができることとしております。

 第六に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の特例として、内閣総理大臣の認定を受けた構造改革特区においては、地方公共団体の教育委員会が管理し、及び執行している学校施設の管理及び整備に関する事務を、地方公共団体の長が行うことができることとしております。

 以上が、地域再生法の一部を改正する法律案及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いを申し上げます。

河本委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

河本委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房構造改革特区推進室長・地域再生推進室長・内閣府構造改革特区担当室長・地域再生事業推進室長大前忠君、文部科学省大臣官房審議官村田直樹君及び経済産業省大臣官房商務流通審議官松井英生君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中森ふくよ君。

中森委員 自由民主党の中森ふくよでございます。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。渡辺行政改革担当大臣、また林副大臣初め関係省庁の皆様にもおいでをいただいております。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、本日議題となりました地域再生法の一部を改正する法律案について、これをどう血の通ったものにするかという角度から、幾つかお伺いしたいと思います。

 シャッター通りという言葉が生まれて久しくなっておりますけれども、今多くの商店街で、廃業、休業でシャッターが閉まったままというところがふえてきております。

 このシャッター通りを返上したいとだれよりも願っておりますのが、地域の商店街でございます。その地域商店街から寄せられている課題の主なものは、一つ、大店法の撤廃によって大型ショッピングセンターが大量に出店いたしました。駅とそして大店法の間に挟まれたショッピングセンターの影響が大であるということが一つ。また、鉄道駅舎の改修に合わせたエキュート、いわゆる駅ナカ店舗の拡大による影響であります。三つ目は、地域商店街、地域住民の方から申しますと、どうも置き去りにされたという感がございまして地方行政の開発計画が進められてしまっている、そういった輪に入れないという影響も大きいと寄せられております。

 こうした中で、二つの問題を懸念しております。一つは、地域コミュニティーの崩壊であります。もう一つは、商店街のスラム化でございます。

 一つの、地域コミュニティーの崩壊につきましては、年々高齢者人口がふえる中で、消防団や防犯ボランティアのほか、こういったコミュニティーを一度壊しますと再構築できにくくなるということでございまして、これから地域を支えていくのが地域住民であり商店街であるということを踏まえますと、大変懸念をいたしているところでございます。

 また、商店街のスラム化ということに関しましては、暗がりが点在する商店街となりますと、人影もまばらとなりますので犯罪の温床となりやすい、こういう点でございます。

 今回の地域再生法の一部を改正する法律案というのは、そこに住む地域住民が望む町の姿、この構築ではなかろうかと考えるわけでございますが、その地域住民が望む町の姿をお手伝いするのが国また地方公共団体の役割だと思うわけでございます。地域再生室長にお伺いいたしますが、御見解はいかがでございましょうか。

 もし地方公共団体がお手伝いする役割を理解し、実行していたら、後で申し上げますけれども、滋賀県の栗東市というところが進めていた計画そのものに地域住民の意見が反映されていたのかどうかというところで疑問が残るところでございます。

林副大臣 今委員から御指摘のありましたシャッター通りというのは、私の地元にもいろいろと例がありまして、何とかしなければいけないというのは政府・与党また野党の皆さんを問わず考えていらっしゃることであろう、こういうふうに思います。

 今、再生法の一部を改正する法律案というのはそこに住む地域住民が望む姿の構築であり、それをお手伝いするのが国と地方公共団体の役割ではないか、こういう委員の御指摘がございましたが、まさに地域再生の取り組みにおいては、そこにいらっしゃる地域住民の方、そして商店街、企業、NPOなど、さまざまな担い手が連携して取り組んでいくということが何よりも重要である、我々は基本的にそういうふうに考えておるところでございます。まさに国はそれをお手伝いしなければいけないという基本的な精神で、今回この法律を改正させていただくわけでございます。

 しかしながら、地方公共団体は、むしろお手伝いをするというよりも、町づくり、またこの法律で言いますと地域再生計画の作成主体ということで、地域の皆様の多様な意見を集約しながら、住民の皆さんとともにまさに取り組みを進めていく主体としてその責任を負っているのではないかというふうに考えられるわけでございます。

 御提案いたしました改正法案におきましても、地域再生協議会というものを法律上きちっと位置づけようということにいたしましたのは、多様な意見を集約するために、現行ございますいわゆる地方議会といったものに加えまして、今先生が御指摘になったように、いろいろな方の意見をきちっと加えて町づくりの意見を集約してもらおうという意味で法律に位置づけたわけでございまして、今御指摘のあったようなことを十分生かしていっていただくように全国の各地域に周知をしてまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

中森委員 林副大臣、ありがとうございます。

 今副大臣からお話をいただきましたけれども、地方公共団体の一部では、今この滋賀県の栗東市の問題でございますが、こういった例を読みますと、どうも地域の住民や商店街が不在だったのではないかというふうに思うわけでございます。そして、住民からの提訴がございまして、市が資金調達として進めていた栗東市の市債の発行が虚偽の計画というふうに裁判所から言われまして、一審に次いで、三月一日には高等裁判所も控訴を却下して同等の判決を下したわけでございます。こういった判決例に見ますように、地域住民のやはり参画がないと、地方公共団体であるこういった市が住民を代表したものでなかったという典型例ではないかと思うわけでございます。

 また、もう一部お手元に配付させていただきました「もう市議いらねえ」と書いた新聞でございますけれども、夕張市の破綻でも、三十年という長期政権下で、市議会のチェック機能が十分に果たされないで住民の怒りの声が上がったということではないかと思いますので、ぜひとも地域密着型の地域再生法が十分に生かされるように願っているわけでございます。

 そこで、これから必要なのは、住民の声を反映した開発計画、すなわち、そこに住む人の代表が参加する開発計画でございまして、もう一押しいたしますと、その合意のもとに進めることが求められるのではないかと思うのでございます。ここに申し上げる合意というのは、単に地域や住民が参加するというのではなくて、実際に全員というのは不可能でございますから、七割とか八割とかという同意が必要と考えるわけでございます。その意味で、このたびの地域再生法の改正が、地域の再生協議会を持つことに大きな前進があると思います。夕張市や滋賀県の例を繰り返さないためにも、このたびの改正となる再生協議会が健全な形で機能することが必要であります。

 せっかく改正する再生法でございますので、重ねて渡辺大臣にお伺いをいたしますけれども、開発行為の企画等、中心市街地とかいろいろなメニューがございますが、すべてのメニューが地方公共団体となっております。市が不動産株式会社とならぬよう、地域開発に当たっては、商店街や地域住民を加えることをマニュアル等でしっかりと明記していただきたいと考えるわけでございますが、この点について、その実効性の担保をとれるのかどうか、お伺いをしたいと思います。

渡辺国務大臣 中森委員は、かねてより地域活動に積極的に御参画してこられた豊富な御経験がございます。そういった御経験から先ほどのような御質問になったものと思いますが、既に都市計画決定などにおいては、地域住民参加の枠組みができているわけでございます。今回の地域再生法の改正に当たりましては、委員御指摘の地域再生協議会を新たに設置することといたしております。

 この地域再生協議会においては、まさに中森委員のような地域活動を積極的に行ってこられた担い手の皆様に広く参加をしていただこう、そういう制度設計になっているわけでございます。ソーシャルキャピタルなどと林副大臣がかねて提案をしておられました地域の担い手のネットワークを活用していこうというコンセプトが、今回の改正案には反映をされているわけであります。

 この地域再生協議会は、地域再生の取り組みを検討、実施するに当たり、広く関係者の意見を集約する場と考えております。例えば、地域住民あるいは商店街の皆様も、あるいはNPOとか地域のさまざまな運動をやっておられる方々も構成員として想定をいたしております。

 また、協議会の構成員の構成につきましては、地域再生計画に関する多様な意見が適切に反映されるよう配慮する義務を地方公共団体に課しております。これらの内容を地方公共団体に的確に伝えるため、その旨をマニュアルにおいて明確にすることを考えております。

 今後、私も先頭に立って今回の改正の趣旨を地方公共団体や地域の皆様方に周知し、全国のさまざまな地域において地方公共団体が地域のさまざまな担い手の皆様と連携した取り組みが進展できるよう、全力で取り組んでまいります。

中森委員 大臣、ありがとうございます。

 先ほどちょっと触れましたけれども、この地域再生法というメニューに今大臣お返事いただきました協議会がございますけれども、大臣、私は、すべての開発行為のメニューに対して、こういった地域商店街や住民参加の義務づけの再生協議会が必要だと考えるわけでございますけれども、この点はいかがでございましょうか。

大前政府参考人 お答えいたします。

 今回改正をお願いしております地域再生法のみならず、中心市街地活性化法や都市再生特別措置法など、協議会を設けまして、幅広い地域の主体の参加を確保する仕組みが整いつつあると承知しております。

 私どもといたしましては、地域再生の事務を担当する立場で、今後とも、地域再生への取り組みが幅広い担い手の連携によって進められますように、引き続き制度の改善に努めてまいりたいと考えております。

中森委員 ありがとうございます。

 これから地域分権という形でどんどんいろいろな権限とか財源移譲が市町村になされると思うわけでございますが、私ももちろん地方分権の推進を望んでいるわけでございます。ただ、権限と財源だけが移譲されるというようなことがあってはならないと考えます。義務と責任が伴うというのが民主主義の原則でございますので、どうかしっかりと後追いをお願いしたいと思います。

 次に、第二に、JRに対する商店街の問題についてお尋ねをしたいと思います。

 東京都の商店街連合会では、固定資産税の不公平化の是正について、都また区あるいはJRに要望書が出ているというふうにお聞きをしております。また、都知事は、JRの固定資産税の発言なども三年ぐらい前から繰り返されております。同様に埼玉県も、多くの商店街からJRや県、市に、こういった公平な土壌での商売ができるようにしてほしいという要望書が出されておりまして、私も実は地元に帰りますと、シャッター通りが大変多くなっておりますので、いろいろと懸案を言われます。

 そこで、これについては総務省の方で固定資産税の見直しが検討されているというふうに伺っておりますけれども、地方公共団体が固定資産税の実施に自由裁量権が与えられることがないようにということで、ぜひ公平化を図っていただきたいと思うわけでございます。むしろ、中途半端に裁量が与えられるようであるならば、課税しないという大義名分をつくって、きちっと商売上で割り振りをするというような思い切った改革も必要ではないかと思いますが、これはちょっと通告をしておりませんので、触れさせていただくだけにしたいと思います。

 また、駅ナカ店舗については、町づくり三法の中の市街地活性化協議会の中で協議事項として、地域との連携のもとに行いまして、摩擦のないようにすべきだと思っております。

 最後の質問をさせていただきたいと思います。

 大規模小売店舗法が撤廃はされました。ですが、この撤廃の中で地域で多少混乱をしておりまして、地域の商店街は、市の方で、営業地域になったので駐車場の設置義務は要らないというようなことが言われたりとか、そういったその他の開発条件とされた義務も守らなくてもよいという解釈があるように伺っておりまして、現実、これに立ち向かっている商店街もおります。

 ただし、平成十二年に大規模小売店立地法が制定されまして、駐車場の設置が義務づけられました。これは、やはり駐車場がないと、開発行為を幾らやっても路上に車があふれるということで大変不便を来します。十二年以前の大規模小売店舗法の施行時のときの駐車場の設置義務があるのかどうか、その点についてお伺いをしたいと思います。

松井政府参考人 お答えいたします。

 経済産業省におきましては、大規模小売店舗立地法におきまして、大規模小売店舗を設置する者に対しまして、周辺の地域の生活環境の保持に配慮するよう、駐車場の確保、騒音の抑制などなどに関します指針を定めております。

 この指針に基づきまして、大規模小売店舗を設置する者は、駐車場の確保、騒音の抑制などにつきまして、法運用主体であります都道府県、政令指定都市への届け出を行うことが義務づけられております。

 さらに、届け出内容につきまして、法運用主体、すなわち都道府県、政令指定都市が、地元の市町村や地元住民の意見を踏まえて、必要に応じまして設置者に対して意見を表明することができることとなっております。また、設置者がその意見に従わない場合には勧告を行うこととしております。

 大規模小売店舗立地法に基づきますこれらの措置によりまして、周辺の地域の生活環境の保持のため、大規模小売店舗の設置者が、駐車場の確保を初めとする施設の配置及び運営方法につきまして適正な配慮がなされることを確保しているところでございます。

中森委員 ありがとうございます。

 そうしますと、駐車場の設置義務の解釈は、都道府県にゆだねられていないということでよろしいわけですよね。ちょっとそこだけお願いいたします。

松井政府参考人 経済産業省が公表いたしました指針に基づきましてやることになっておりますので、都道府県に完全にゆだねられているということではございません。

中森委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間が余ってしまったようなので、通告しておりませんけれども、お尋ねをしたいと思います。

 本日、地域の再生法案改正ということでございますけれども、今まで参加した住民、商店街の人々の声なき声を受け取る場所がないんですね。今、滋賀県の例を持ってきましたのは、裁判でしかそれぞれが訴えることができないというところに私はかねがね非常な不合理を感じておりまして、どこかのレベルでよろしいのでございますけれども、こういった意見が言える場、受け取る場というのを、何とか風穴をあけたい、裁判に訴えなくてもこういった会話ができる場というのを何とか設置したいというふうに考えているわけでございますが、もしお差し支えなければ、その点についてお答えいただければありがたいのでございます。

渡辺国務大臣 栗東市の例は、今回の地域再生協議会ができる前に、今回の法案が通る前にもう起こってしまっておるわけでございますが、こうした地域の非常に大事な問題、それも大規模な開発を伴うというような問題も、やはり委員御指摘のように、地域住民の同意ということは大変重要な要件であろうと思うんです。

 私たちが今回、地域再生協議会の中で地域の担い手の皆様に幅広く御参加をいただこうというのは、とりもなおさず、地域が、もっと多くの住民が同じ方向へ向かって活性化をしていこう、やる気と情熱を持ってまとまっていこう、そういうことのためにも必要ではないかと考えた次第でございます。したがって、不幸にして住民の世論が分裂したりすることのないように、こうした協議会も使っていただけるものと考えております。

 多くの地域で大変おもしろい取り組みが報告をされています。私が今回、地域活性化総合体系の中で地域活性化応援隊というものを組織いたしまして、もう既に熊本や宮城に派遣をいたしております。また、地域活性化伝道師も認定をいたしまして、いろいろなレベルのカリスマを派遣要員としてもう既に登録して始めているんですね。

 ですから、そういう取り組みの中で、まさしく地域の皆さんの同意であったり一致団結であったりということは欠かせないことでございますので、その点は委員の御指摘を踏まえて今後の政策を展開してまいりたいと考えております。

中森委員 ありがとうございます。

 どうか、地域が生きる形でこの法改正が使われますことを祈念いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

河本委員長 次に、市村浩一郎君。(発言する者あり)

市村委員 市村でございます。

 私は、常にいい議論をしたい、こういう思いでこの委員会にも臨んでおるところでありますが、きょうのこの委員会でございますけれども、どうやら、我が党だけじゃないですね、野党の方の希望としては、この委員会は、きょうではなくて、きちっと趣旨説明をいただいた上で、そして私たちがその法案の趣旨をちゃんと理解し、中身を理解した上で質問をさせていただきたいということだと私は思っております。

 確かに今、我々は数が少ないということではありますが、やはり議会においては、少数派をきちっと尊重する、少数党をちゃんと尊重するということが大切だと思いますし、この委員会のあり方そのものが今問われているということでありまして、その中で、本当にこの地域再生及び構造改革特区は大変重要な法案だと思います。だから、私も、本当は議論したいんです。でも、やはりこの委員会のあり方自体が正常でないということであれば、先ほどから理事の皆さんも御協議されておるわけですから、ちょっと委員長、ぜひとももう一度この委員会のあり方について、四党といいますか、各党の理事できちっと御検討をいただけないでしょうか。委員長、いかがでしょうか。(発言する者あり)

河本委員長 市村君、質問を続けてください。

市村委員 ですから、私としては、委員長が職権で立てられたというのは正しいんですけれども、野党の方としては、この委員会のあり方についてこれでいいのかという疑問があるということを申し上げておりまして、だから、まずこの委員会のあり方について疑問がありますので、委員長に対して、私として、まず委員会の今のこの状況を正常化してほしいということを今申し上げておるんです。

 確かに、委員長には委員会を開く権能があると思いますが、ただ、やはり職権を濫用しちゃいけないと思います。だから、ぜひともまた私たちの意見も踏まえて、この委員会のあり方についてもう一度検討を加えていただけないかというお願いをまずさせていただきたいと思います。(発言する者あり)

河本委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

河本委員長 速記を起こしてください。

 市村浩一郎君。

市村委員 どうやら、まだ理事間の協議がまとまっていないということだと思いますので、もう一度委員長に申し上げたいのですが、確かに委員長は職権を持っていらっしゃると思いますけれども、やはり少数党の意見をまずは尊重していただきたいということで、この委員会の運営について、委員長に、ぜひとももう一度この状態をしっかりと正常なものにするためにお力をいただきたいということを冒頭から申し上げておるわけでございます。

 それで、今協議をされたと思いますが、どうなったんでしょうか、協議は。

河本委員長 市村委員の御意見はお聞きしました。質問を続けてください。

市村委員 それでは、引き続きぜひとも正常化に向けて御努力をいただきたいと思いますが、せっかく貴重な機会でありますので、質問をさせていただきたいと存じます。

 まず、地域再生法の方でございますけれども、私は、この中にとてもとても不可思議なスキームがあることを事前に説明いただきましたときに発見いたしました。再チャレンジ支援寄附金税制というものを今回お考えになられているようでありますけれども、この中で、民間から民間への直接型寄附というものがあるというふうにお聞きしております。

 大臣、これは、簡単に言えばいわゆる私企業から私企業への寄附に対して税制の優遇措置、しかもこれは寄附優遇を与えようというスキームだというふうに私は理解しておりますが、まず、私の理解でよろしいでしょうか。

渡辺国務大臣 御指摘のように、民間企業から民間企業への寄附に対する優遇税制というのは今まで存在をしておりませんでした。しかし、今回、地域再生の枠組みの中でいわば苦肉の策として、日本の税制の体系の中で苦心の策というべきものかもしれませんが創設をしようというものでございます。

市村委員 大臣、これ、民間の営利企業、私企業から民間の営利企業、私企業に対して寄附をするという、まずこの営利企業から営利企業への寄附ということすら、普通は投資をするとか出資をするとかいうのが通常の概念ですね。寄附をする、まずこれ自体が極めて僕は珍しいと思います。民間企業から民間企業に寄附するということですね。まあ、ないとは言いません、その部分については。しかし、それに税制優遇措置、しかも寄附優遇を与えるということ、世界にこのような例がありますでしょうか。

渡辺国務大臣 大変珍しいものだと思います。

市村委員 珍しいということとないということは全然違いますが、ある。では、珍しいのなら、どこにあるんでしょうか。珍しいということであれば、どの国がやっていますでしょうか。

渡辺国務大臣 ほかにあるという事例が私自身はよくわかりませんので、珍しいと申し上げたのでございます。

市村委員 大臣、僕は、これは閣議決定をする前に、こういう制度があるかないかということは当然調べられていると思うんですが、今大臣は御存じないということでありますから、副大臣、いかがですか。

林副大臣 私も、全世界じゅうの国の税制を調べたわけではございませんが、今委員が御指摘になったような、私企業から私企業といいますか、民間の営利企業から営利企業という御趣旨だと思いますが、よく我々が議論するときに使っております、例えばアメリカ、イギリス、これはイングランドやウェールズでございますが、それからドイツ、フランス、この主要国の例を見ますと、そういうところにはそういうものはない、こういうふうに承知をしておるところでございます。

市村委員 なぜないのか。大臣、ぜひとも御説明いただけますでしょうか。

渡辺国務大臣 そのあたりは市村委員の方が私よりはるかに詳しいでしょうから、ぜひお教えをいただきたいと思います。

市村委員 いや、私がここで教えるというよりも、まず、これは法律なんですね。これが法律以前の問題として、いや、実はこういうことを考えているんだけれどもということであったのならいいんですけれども、これはもう法律になって、しかも閣議決定されて、しかも、この正常か不正常かわからないような委員会でこれをやらざるを得ない状況なんですが、大臣、ちょっとこれは考えていただきたいんです。

 いわゆる営利企業から営利企業に寄附をする者に対して税制優遇措置を与えるということ、これは、たとえ背景も知らずに、これまで何もそのことを知らなくても、ちょっと考えておかしいなと大臣は思われませんでしょうか。

渡辺国務大臣 例えば、政策の手段といたしまして、こういった民間企業、すなわち、高齢者の定年を引き上げ、積極的に雇用する企業、あるいは障害者を積極的に雇用する企業、母子家庭の母を積極的に雇用する企業に対して、財政支出をもって政策を展開することはあり得ると思うんですね。一方、歳出による政策支援でなくて、寄附税制の拡大という形で民間の自主性にインセンティブを与えるという政策支援のやり方もあるのではないかと思います。

 したがって、今回の寄附税制の苦心の策は、まさしくこういった民間のインセンティブを活用する、そういう仕掛けになっているものと理解をいたしております。

市村委員 この政策目的、例えば、高齢者の方の雇用、障害者の方の雇用、母子家庭のお母様方を雇用する、私、これに別に反対しているつもりはありません、これを全然だめだと言っているつもりはありません。これはいいんです、政策目的はいいんです。ただ、手段がとんでもない手段だと私は言わざるを得ないんですね。

 だって、私企業から私企業に寄附するということすら、えっ、そんなことかと思う。普通は出資、投資ですよね。その寄附に、しかも優遇措置を与えるなんというのは、ないんです。なぜないか。あってはならないからなんですね、こういうことが。こういう手段は、幾ら政策目的が正しいから、だからお金を出すべきだ、お金はある、出したい、けれども、どう考えてもそれはおかしくなる。営利企業なんですよね。

 だから、普通はどうかというと、いつも私がここでも申し上げておりますが、民間というのは、株式会社だけじゃなくてNPOもありますよ。だから、政府の民営化、小泉民営化のときも、小泉民営化はイコール株式会社化だったんです。そうじゃない。NPOというのを視野に入れて民営化を考えなきゃいけない。すなわち、この部分、私がいつもここで議論申し上げている、民の公のセクターを育てていないことがここに如実にあらわれてきているわけですね。普通であれば、NPOをかますのです。

 だから、こっち側のもう一個の方、地域の公益法人を利用した間接型寄附、こっちは百歩譲ってあり得るんです。これもいろいろ問題あります、後で時間があったら議論したいと思いますが、こういうふうに、この場合は公益法人というNPOをかますわけですね、これならばあり得るんですよ。でも、私企業から私企業へという寄附は、これはやはりあってはならないことなんですね。

 例えば、昔の旧財閥系の銀行が関連会社に寄附すること、これはオーケーなんでしょうか。幾ら事業目的が正しいからといって、では、昔のどこかの財閥銀行が関連会社に寄附するのは可能なんでしょうか。

渡辺国務大臣 今御指摘のケースは、これはビジネスの世界の話だろうと思うんですね。今回は、先ほど来申し上げておりますように、積極的に高齢者の定年を引き上げる企業、障害者を積極的に雇用する企業、母子家庭の母を積極的に雇用する企業、こういう企業に対する支援措置なんですね。

 ですから、この支援の手段として寄附税制を拡大するという方策をとったわけでございますが、寄附のチェックのシステムも同時に組み込んでございまして、御案内のように、地方公共団体が地域再生計画を作成し、これを内閣総理大臣が認定する、そして地方公共団体による寄附のチェックを行う、こういう縛りをかけているわけでございまして、この寄附の公益性、ビジネスではない公益性についてのチェックはきいているものと考えております。

市村委員 大臣、これは、大臣がまだ大臣になられる前に閣議決定されたんでしょうか。ちょっとそれを教えてください。

渡辺国務大臣 見てきたような口をきいておりますが、私が大臣になる前でございます。

 失礼しました。二月六日の閣議決定でございますので、私は大臣になっておりました。訂正いたします。

市村委員 もし前の大臣で渡辺大臣のときじゃなかったら、多少は仕方ないかと思いましたけれども、しかし、大臣が閣議に出て判こを押した法律ですね、これは。ということは、これは責任があるということだと思いますから、そういう思いで私はこれからまた質問を続けます。

 大臣がおっしゃること、つまり、事業はいいんです、事業は。高齢者の方の雇用をもっとふやしていきたい、母子家庭で苦労されているお母さん方の雇用をふやしていきたい、できるだけいい職についてしっかりと家計を回していけるように、できるようにすることは望ましいわけですから、これを別にだめだと言っているわけじゃないんです。

 ただ、寄附税制をこういうものに入れるということは、なぜ世界がやっていないかというと、つまり私企業から私企業への寄附ということ自体がまず想定されないんですね。普通は出資とか投資なんです、さっきから何度も申し上げているように。

 そして、あるとすれば、ある企業が例えば障害者の方を雇用したい、そのために給与を払わなくちゃいけない、その分を、もともと給与は損金算入できるわけですけれども、特に例えば二倍枠、マッチングファンドみたいな形で、いわゆる高齢者の方もしくは障害者の方、または母子家庭のお母さん方の給与の二倍を損金算入させてあげるとか、こういうふうなスキームならあり得るんです。もしくは、そういう取り組む企業に投資をした側に、投資した分を何とかでの税制優遇措置を与える。寄附じゃないですよ、投資をしたとかいう場合に与えるとか、まだそれならわかるんです。ただ、幾ら事業が正しくても、そこに寄附をしたからそれを税制上まけてやるというのは、これはやはり想定されていないんです、考え方の中に営利企業から営利企業というのは。

 普通は、もう一個の間接型に近い部分、そうした事業を行ういわゆる助成財団とかに寄附をして、その助成財団がきちっとしたプログラムを持ってそうした取り組みに対して助成をしていくということは、これはあり得ます。ただ、ここもですけれども、実は助成の対象が営利企業ということはまずほとんどありません。普通はNPOなんですね、これを引き受けてやるのは。だから、安倍内閣は美しい国と、僕は美しかろうが何だろうがいい国になればいいと思っていますから、この間も申し上げましたように。でも、こういうことをやっちゃうと、それこそ、こういうのが前例になっちゃうと私は大変恥ずかしい国になると思うんです。

 だから、閣議決定のとき判こを押されたと思いますけれども、渡辺大臣、多分なられてすぐで、まだこの中身を余り理解されずにひょっとしたら判こを押されたかもしれませんけれども、もう一回ここは考えていただいて、なぜ世界でこうした私企業から私企業への寄附に対して税制優遇措置を与えていないか、まず政府部内、もしくは閣議でも、もう一回検討いただくことはできないでしょうか。私は、これは大変問題をはらんだスキームだというふうに思います。大臣、いかがでしょうか。

渡辺国務大臣 まず、閣議は判こを押すんじゃなくて花押というのを書くんですね。毎回大部の書類が回ってきまして、墨で一々チェックするものですから、この書類が何のと見過ごしてしまうケースがないとは言えません。

 それはさておいて、日本の寄附税制でございますが、市村委員がかねて御主張されていますように、余り充実していない現実がございます。日本の伝統的な体質といいますか、民間の寄附に任せるよりは、お上が税として集めてお上がそれを配る、歳出という形で面倒を見ていくということだったのでありましょうけれども、やはり我々の目指す方向性は、お上が面倒を見るということから、より民間同士で助け合いのメカニズムをつくっていく、こっちの世界をもっと広げていく、こういうことを目指しているわけでございます。ただ、御指摘のように、まだ寄附税制そのものが、頭ではわかっているけれども体がついていかない、そういう側面があるのは事実だと思います。

 そこで、今回の再チャレンジ施策の一つとして、苦心の策として、例えば、高齢者をもっと雇用したい、母子家庭のお母さんをもっと雇用したい、そういう志の高い中小企業があったといたします。しかし、残念ながらここは余りもうかっていない、キャッシュフローも高くない。一方において、そういう雇用を拡大する必要の余りないような企業があって、こっちの方は非常にもうかっていてキャッシュフローも高い。では、こっちの社長さんが、困っているけれども志の高い中小企業に寄附を何とかできないだろうか、そういうケースも想定をいたしまして、きちんと公益性の認定でチェックがかかるような枠組みをつくって、今回の法案に仕立てたところでございます。

市村委員 今大臣がおっしゃったことの目的はいいんです。ただ、普通その場合だったら、例えば、もうかっている企業、お金がある企業からその会社に対して出資してもらって、その出資分を企業が損金算入をもっと、今でも通常できているんでしょうから、その分をまたさらに倍増して、二倍にして、二倍分を損金算入させてあげるとか、そういうのならわかるんですよ。でも、寄附をして、そこに寄附優遇を与えるということは、やはりこれはやっちゃいけないことなんです。だから、幾ら目的が正しくても、手段としてとっていけないことをとろうとしているわけですね。とろうとしているんです、この場合。本当は林副大臣にも私は質問したい、よく御存じだと思うけれども。

 とっちゃいけない手段をとっちゃならないんですね。そういうことを始めると、では一体、営利企業とは何なのということになるわけですよ。やはり、もうからない営利企業はある意味で淘汰されなくちゃいけないんです、今のお話をすると。やはりビジネスの世界というのは厳しいですよね。確かにいい目的でやっていてももうからない、なぜもうからないかを考えていただかなくちゃいけないんです、営利企業というものは。そして、もうかって、そうした余裕を持って、いわゆる社会的に還元したいという部分を持たれたときに、そうしたお考えを持っていただきたい。

 もしくは、もっと積極的に雇用して、今対象になっているような方を積極的に雇用したからといって別に私はもうからないということでもないと思うし、いい事業計画を立てれば、そうした皆さんを雇用した上で、かつ、もうかって、サービスを受けた側も喜ぶ、提供した側も喜ぶ、会社ももうかるということだってあり得るんですよ。

 だから、そういう発想に立ってもらうのが普通でありまして、何か余りもうかっていないけれどもいいことをやるんだからというのでは、これはちょっと話が違うんですね。しかも、これが永遠に続くならいいですよ。二、三年雇っておいて、申しわけない、ちょっとやはりお金が入ってこなかったから、あなたたちやめてください、こういう話になるんですか、このままやってしまうと。

 だから、大臣がおっしゃるように、目的はいいんです、それは私もいいと思います。どんどんそういう目的を持った事業はやった方がいい、再チャレンジとして。僕は再チャレンジも別に反対していません。ただ、やはり手段として、何回も繰り返して申しわけないんですが、私企業から私企業への寄附に税制優遇を与える、もしくは寄附の先を私企業にする、営利企業にする、少なくとも、政府としてそういうことを想定して、しかも法律までつくるというのは、私は、申しわけないけれども、大きな恥をかくことになるのでやめた方がいいと。

 大臣、今からでも遅くないと思います、一遍、本当に虚心坦懐といいますか、素直な目でもう一回このスキームを見直していただいて、改めるべきは改めていただきたいと私は思いますが、いかがでしょうか。

渡辺国務大臣 資本という形態のお金の使い方もあるかと存じます。例えば、地域再生の支援策の一環として、個人の投資家が特定地域再生事業会社に出資をする際の税の恩典としてエンゼル税制のようなものがあることは御案内のとおりでございます。

 確かに、この税でいきますと、投資時点では、投資額につき他の株式譲渡益、要するに、ほかのキャピタルゲインがあった場合に、そこからその投資額を引ける、こういうような税制でございますけれども、今回我々が考えておりますのは、そういった、資本としてお金を集める、そしてこれを何か設備投資に使うという形態ではないんですね。つまり、高齢者を雇う、母子家庭のお母さんを雇う。これによって設備投資をする、お金は資本的な支出として使うということではないわけでございまして、要するに人件費というような経常的なコストを出すわけでございますから、資本的な支出を念頭に置いたエンゼル税制なんかとは違う枠組みが必要ではないかと考えたわけでございます。

 そこで、先ほどから苦心の策と申し上げているのはそういうことなんでございますけれども、民間企業から民間企業への寄附なんて世界じゅうにないじゃないかと言われればそうではありますが、とにかく、我々が今最優先の課題の一つとして考えております、格差を固定させない、再チャレンジを容易にする、そういう観点から、ありとあらゆる施策を導入してやろうじゃないかというので苦心の税制をつくり上げたのが事実でございまして、ぜひそのあたりは御理解をいただきたいと思います。

市村委員 いや、大臣、例えば私が理解した、ここの皆さんが理解したとしても、常識的に国際的に見たときに、日本はこんな制度を入れている国かということになるわけです。だから、今おっしゃった、例えば格差を固定させない、再チャレンジを支援していく、これは賛成なんですよ。これはやはりやっていかなくちゃいけないわけです。ただ、何度も申し上げておりますように、世界のどこにもないんですよ、こんな制度を持っているのは。なぜないかなんですよね。

 つまり、やっちゃいけないわけです、そういうことを。では、営利企業というのは何なのという世界になるわけですね。株式会社というのは何なのという話なんですね。営利企業というと、やはりもうからなければ淘汰されていかなくちゃいけないんです。そうですね、これは残念ながら。だから、もうかってもらうように、もうかるような仕組みづくりをするというのがまずやるべきことであって、もうかっていただいて、そして雇用、もっとどんどん人を雇っていただきたい、そういうのが当たり前なんです。そのために、例えば増資をしてもらうとかいうことでその支援をするとか、今おっしゃったように、新しい企業を立ち上げて、そこに積極的に障害者の方を雇うとか母子家庭の母親を雇うとか、そういう企業が生まれてくるのは、それは大賛成なんですね、大賛成。

 ところが、何回も申し上げますが、私企業から私企業への寄附、しかもそれに税制優遇措置を与えるということは、たとえここのみんなが納得して、いいことだからいいかなと思って納得したとしても、これは将来に禍根を残すスキームですということを私は申し上げているんです。だから、何といっても、これはやはりもう一度考え直していただくべきことだと私は思っています。

 もう本当に、これは、私がどうのこうのとかここはどうのこうのとかいう話じゃないんです。やはりとっちゃいけない手段はとっちゃいけないわけですね、幾ら目的が正しくても。そのことを申し上げているんです。大臣。

渡辺国務大臣 この税は確かにオーソドックスなものではないのかもしれません。また、委員が常々御指摘される、NPOが非常に社会活動の大きな部分を担っているという段階にも、残念ながら我が国は達していないという現実がございます。

 そこで、再チャレンジをもっと可能にする、チャンスを広げるにはどうしたらいいだろうか、必死で思いをめぐらせました。その中で、我が国にあっては、NPOではなくて、中小企業がオール・ジャパンで非常に多くの人々の雇用を担っている現実がございます。この中小企業の中には本当に志の高い経営者がいるのも委員御案内のとおりでございます。こういう人たちがその思いを遂げるのに何か政策的な手段、方法はないのか。政府が税金を集めてきて、それを補助金という形で支出をして支援をしていくということにかわる、もっと何か方法はないのか。いろいろ考えた結果、苦心の策として出てきたものでございます。

市村委員 苦心とはいっても、やはりとっちゃいけない手段なんですね。幾ら苦心をされても、心を砕かれても、やはりとっちゃいけない手段はとっちゃいけないんですよ。だから、それはやはり大臣、何回も申し上げますけれども、将来、この日本という国が、何という国なんだ、この国はというふうに言われますよ、こういう手段をとっていると。では、日本において株式会社というのは一体どういうものなんですかということになりますよね。

 日本を支えているのは中小企業だというのも、それはもうおっしゃるとおりです。本当にすばらしい人格者の方、経営者がいらっしゃって、何とか社会に貢献したいんだ、自分はもうけだけじゃないという思いで常に頑張っていらっしゃる中小企業の社長さんの方、また経営者の方々、もしくは従業員の方々がいらっしゃるのもそのとおりだと思います。まさに、それがあるからこそ、今日の日本が繁栄しているわけですから。まあ、これも将来どうなるかわかりませんが。しかし、だからといって私企業から私企業への寄附に税制優遇というのは、やはりこれはとってはいけない手段なんです。

 確かに、大臣が御指摘されたとおり、この国はNPOが育っていません、残念ながら。まさにそれこそがこの公益法人改革をやる大きな理由になっているわけですから、これからだとも思います。だからといって、では民間の私企業に対して、営利企業に対して寄附をする、これに税制優遇措置を与える、これはやはりおかしいと思う。

 だから、さっきから申し上げているように、出資をしてもらうとか投資をしてもらうとかいう中で、投資をした側に何かしらのインセンティブを与えるような税制ならば、これはあり得るんですよ。実際今までやってきているわけですね。もしくは、一遍政府が税としてお預かりしたものをそういう政策目的のために使っていく、これも今までやってきた。やってきているんです。だから、そういうことをもっと充実させるとかいうなら、これはまだ理解できます。

 でも、まず理念的にもあっちゃいけないものをやろうとされているし、では、これは実際チェックが働くかというと、なかなか難しいです。例えば、ホールディングの会社が関連会社に出す、これはちょっと、さすがにどう見ても明らかにだめだというのは言えますけれども、さっき申し上げたように、旧財閥系、昔関係のあったような企業、今おつき合いの企業、出資している企業、この出資先に、企業は今もうかっている、どうも自民党さんは寄附をお断りになられたようですが、どうも金の行き先ないぞ、どこかに寄附したいなというときに、では、せっかくだから、いい目的で頑張っているんだからそこに寄附しようよ、しかも寄附してあげたら税制優遇までついてくるぞといったら、これは確かに喜ぶところはあると思いますよ。あると思いますよ、それは。しかし……(発言する者あり)いや、よくないよ、それは。それをやって、いいからといって、では私企業から私企業への寄附をいいというのは、これはあっちゃならないことなんです。あっちゃならないことなんです。

 これをやり始めたら、日本における株式会社とは何なのかということに、これはそういう根本的な考え方に入っていきますから、一体日本における株式会社というのがどういう、だから、社会的責任はいいんです、社会的責任はいいんですよ。だから、そのためには、例えば助成するようなNPOに対して、そこに寄附する、それに税制優遇措置を与える。だから、間接型についてはまだ百歩譲っていいと言っている、私はあるだろうとも思っているんです。けれども、直接はないんですよね。だから、やはりここはよくよく、将来に禍根を残さないように、もう一度政府部内で御検討をいただきたい、いや、検討すべきだと私は思います。大臣、いかがでしょうか。

渡辺国務大臣 この直接型の寄附税制においても、まず、地方公共団体が地域再生計画をつくります。その中でこうした志の高い企業の指定を行っていくわけであります。次に、この地域再生計画に基づいて地方公共団体が寄附のチェックを一件一件やるんですね。ですから、委員御指摘のような一種の租税回避的な行動に出た企業などは、ここでチェックをされるものと思います。また、こうした税制が、これは見直し規定というのもございまして、もし万が一、我々はこれがうまく機能すると思っておりますけれども、うまく機能しない場合には、きちんと見直し規定の中で将来見直しがなされていくということでございます。

市村委員 大臣、いかに志が高かろうが、いかにチェックが行き届こうが、それ以前の問題なんです、これは。志が高いからやっていいのか、チェックが行き届くからやっていいのかという問題じゃないんです。それ以前の問題なんです。理念として、考え方として、あってはならないんです。

 それで、もしそれがあるとすれば、では日本における株式会社、つまり中小企業、株式会社形態をとる、昔で言う有限会社形態をとる企業とは一体何なのかというところをもう少ししっかりと考えて検討を加えないと、志がいいから、ちゃんとチェックがやれるはずだからいいという話ではないんですよ。もっと根本的な話になるんです、この話は。

 その背景としては、日本にNPOが育っていないというのがあるんです、最初におっしゃったとおり。民間というと、もう営利企業しか思い浮かばないというこの日本の寂しさもあるわけです、悲しさもあるわけです。民営化というと、イコール株式会社という根本があるんです。

 あるんですけれども、しかし、やはり将来のことも考えて、営利企業が営利企業に寄附する、それに税制優遇措置を与えるという、世界どこでもなぜ乗っていないか、なぜ世界がこういう考え方を採用しないのか、もう一回思いをめぐらせていただいて、そして、いかに志が正しかろうがチェックが行き届こうが、それは違うんだということに、もう一度私は、渡辺大臣ならそういうことについてわかったとおっしゃっていただける大臣だと思って私はこういう議論をさせていただいておりますので、ぜひとも御検討いただきたいと思いますが、いかがでございますか。

渡辺国務大臣 ソーシャルキャピタルというのは、私より林副大臣の方が詳しい概念でございますが、地域のいろいろな担い手がいらっしゃいます。例えば、地域の中でボランティア活動をやる、お祭りをやる、そのためにいろいろな寄附集めをしたりする。そういった中の一つとして地域の営利企業があっても、これは決しておかしくはないんだろうと思うんですね。

 ですから、そういった企業の中で、再チャレンジを目指して高齢者や母子家庭のお母さんを支援していくんだ、こういう志の高い企業にいろいろな手法を使って支援をしていく中の一つとして、まあちょっとヘテロドックスかもしれないけれども、こういう税制があっても、これは今の段階では許されるのではないか。ぜひ御理解をいただきたいと思います。

市村委員 大臣、お祭りの寄附集めと営利企業が集める寄附というのは全然別物というか、違うと思いますよ。お祭りの主体はNPOです、広い意味で言えばNPOなんですね。NPOに寄附するのはありなんです。だから、民間といっても、民間のNPOに寄附することはたくさんあるわけです、世界じゅうどこでもあるわけです。だから、民間から民間への寄附というのはあるんです。つまり、民間の営利企業から民間のNPOに寄附するということは普通にあって、それに税制優遇措置があることはそれでいいんです。

 しかし、何回も繰り返しますが、幾らヘテロドックスだとかなんとかと言われても、やはりその主体が、受ける主体が営利企業ということは、まずこれは想定されていないんですね。しかも、それに寄附税制優遇を与えるなんていうことは、ましてやないわけです、これは。あってはならないんですね。だから、幾ら企業が変わったところで、すばらしい社会的意思を持った企業がふえたからといって、やはり営利企業なんですよ。それに寄附とかいう概念を出すとか、そしてそれに税制優遇を与えるというのは、これはやはりやってはいけないことだと私は思います。幾ら事業目的が正しかろうが何だろうがですね。

 では、そもそも営利企業とは一体何なのかというところに対して、何回もさっきから申し上げているように、もう一回そこまでのところを掘り下げて議論しない限り、いや、まあ今の時代だけでもというようなことではならない。やはりもうちょっと、政府というものはしっかりと理屈を通して、筋を通して、理を通していただきたいと私は思います。

 大臣、やってはいけないんです。大臣ならわかっていただけると思います。大臣、いかがでしょうか。

渡辺国務大臣 我が国のあるべき姿について、市村委員と私とは、前回の議論でもそう大差がないということがわかりました。問題は、そこに到達するプロセスの中で、どれだけ現実的な手段を受け入れながら到達していくかというプロセスの手段、方法の違いではなかろうかと思います。

 委員のように、あるべき姿のイメージを非常に明確に持たれていて、その原理原則があって、そういうお立場からすると、今回の直接型税制というのは、これはあってはならないことだという結論に至るのかもしれません。一方、我々のように、現実の今の日本のありようを見ておりまして、NPOが余りにも発展途上段階にあるよね、一方、地域の担い手の一つとして地域の企業というものがあって、その中には障害者雇用にとても熱心な企業があったり、高齢者や母子家庭のお母さんの雇用に熱心な企業があったり、こういうところに直接補助金を出すというだけしか手段、方法がないというのも、余りにもこれは芸のない話だと思うんですね。

 したがって、民間同士の助け合いのチャンスをより広げていくという観点から、今回は、税のあり方としてはヘテロドックスだけれどもこういうことをやってみようぜ、こういうことで始まったわけでございまして、未来永劫これをどんどん広げていくということでは決してなくて、過渡期のあり方の一つとしてお認めいただけないだろうかということでございます。

市村委員 ですので、これは認める認めないの問題ではないということは、もうわかっていただいていると思います。では、認めたからいいという問題でもないんですね。だれが認めるか、それは別にわかりませんが、だれが認めたからといって、いいという問題じゃないです。これは総理大臣が認めようとだれが認めようと、いいという問題じゃないんです。認めようが認めまいが、だめなものはだめだということなんですね。

 もちろん、今おっしゃったとおり、いわゆる私企業といえども地域のために貢献したいという思いの経営者の方はいらっしゃると思います。それはそれでとうといお考えです。ただしかし、その前提としては、やはり営利企業である以上は、しっかりとした営利事業を行ってもうけていただいて、従業員も、そしてその家族も、また経営者も喜ぶ、またそのサービスを受けた方も喜ぶ、その中で余力があればまた助け合いのためにも使っていただく、NPOに寄附していただく。

 もしくは、今想定されているようななかなか雇用を得られない方々でも、実は大変大きな能力を持っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃると思います。そういう方の能力を生かしてもうけていこうというような発想を持ってやっていらっしゃる企業の方もいらっしゃるはずですね。いらっしゃるんです。それでちゃんと企業が雇用もふやして、そしてその皆さんの生活、御家族の生活もしっかりと確保できる、そうしたところだってあるわけですよね。だから、それはそれで、そういうものをもっと支援していく。その考え方は、頑張っているものはもうそのまま邪魔しない方がいいし、ちょっと手助けをしてほしい人には手助けをした方がいい。

 でも、それはやはり寄附という手段ではなくて、幾らでも今でもやっていらっしゃるように補助金でもいいだろうし、もしくは、今いわゆる再チャレンジ支援の中でもあるような間接型、間接型だったらまだあるということを申し上げているんですね。間接型だったらまだ理解できるということを申し上げているんです。もちろん間接型の方も、地域の公益法人をどうやって認定するのか、指定するのか、まだこのことも極めて議論が必要な話だと私は思いますけれども、営利企業から営利企業への寄附に対して税制優遇措置はないということ。

 これはやはり大臣、だれが認めるとか認めないとか、志が高いとか高くないとか、そういう問題じゃないんです。これは大臣、この場だからこうかもしれないけれども、本当に一個人に戻ってもらって、なるほどなと感じていただければ、多分わかっていただけるはずなんですね、おかしいな、やはりさすがにそうだなと。

 だから、何度も申し上げるように、この直接型についてはぜひとも御再考願わないといけない。僕は、後から日本が、幾らあのとき過渡期だといってもこんなことをやっていたのというようなことになりはしないかと大変心配しているんです。だから、ぜひとももう一度政府部内で検討を加えていただきたい、こういう思いであります。

 大臣がおっしゃっている目的については、何ら異存ありません。現状認識とか目的については何ら異存ありません。ただ、こういう手段については、これはまずいですということを申し上げております。大臣、いかがですか。

    〔委員長退席、平井委員長代理着席〕

渡辺国務大臣 地域再生のための支援策の一つとして、エンゼル税制を導入しておるのは御案内のとおりでございます。個人の投資家が特定地域再生事業会社に出資を行った場合の優遇税制でございます。

 今回、我々が想定しておりますのは、こうした資本という形でお金を集め、それを地域再生のために使うということでは実はないわけであります。お金を集めてそれを設備投資に回して雇用を拡大するというイメージではなくて、志の高い企業が、高齢者、障害者、母子家庭の母親、こうした人の雇用をとにかくふやそう、こういう人たちに再チャレンジの機会を与えようということで、その人件費を払う、その経常的なコスト負担を賄うキャッシュの出せる人の方を、優遇措置として寄附税制の枠組みを使って、なおかつ地域再生計画でチェックをしながらその公益性を図っていこう、こういう仕組みなんですね。

 したがって、おっしゃる意味はもう十二分にわかるのでございますが、我が国の現状に照らした場合に、やはりこういう制度もあってもいいのではないかと思うのでございます。

市村委員 ですから、何回も申し上げますが、現状に照らそうが照らすまいが、やはりやってはいけないことはやってはいけないということだと思うんです、これは。これはぜひとももう一度御検討いただきたい、このように思います。やはりこれは将来、何やっていたのかなということになりますので。いや、それは、日本において営利企業という概念とかNPOという概念をもう一回根底から考え直して覆すというぐらいの御覚悟なら、私はもっと議論をできると思いますが、その御覚悟があるかどうかもわからない段階で、しかも将来これがどうなるかもわからない段階で、これはどうかというのは私は思います。これについては、また改めてやらせてください。

 それで、ちょっと一点御指摘を申し上げておきたいと思います。

 今回、政府からいろいろペーパーが回ってきた中で、私何回も申し上げているように、NPO法人という言葉はないんですね。NPO法人という言葉は政府用語でないんです、行政用語でないんです。

 実は、この地域再生法が平成十七年三月十八日にこの衆議院内閣委員会を通過したときに、これは私もかかわっておりましたが、その附帯決議の第六番に、「地域再生計画の作成に当たっては、特定非営利活動法人等をはじめとするNPOや地域住民、関係団体、民間事業者等からの意見等を十分反映されるよう配慮すること。」とあります。この使い方のNPOは正しいんです。つまり、「特定非営利活動法人等をはじめとするNPO」という使い方が極めて正しい使い方なんですね。NPOという言葉を使うのに極めて正しいんです。

 これは閣議決定でも、この附帯決議の趣旨を生かした上で平成十八年二月十七日の閣議決定、地域再生基本方針の「抜粋」の中の三の2の1のところに、ちゃんと「特定非営利活動法人等を始めとするNPO」というふうに、極めて正しく閣議でもNPOという言葉は使っていただいているんです。これは閣議決定されています。附帯決議だけじゃありません、閣議決定もされています。ですから、これからやはりNPOという言葉は、特定非営利活動法人を初めとするNPO、こういう正しい使い方、言葉遣いをしていただきたい。

 これは実は、私がNPO法人という言葉を使っているのを御指摘申し上げて、前の小泉内閣のときも、わざわざ次に言う機会には、特定非営利活動法人とちゃんと改めていただいているんですね。つまり、これは閣議決定されているんです、この意味でも。

 だから、これからはきちっと正しく、NPO法人という言葉とか認定NPO法人ではなくて、認定特定非営利活動法人もしくは特定非営利活動法人という言葉遣いをしていただいて、NPOというのは公益法人を含む広い概念の言葉だということで、まさに閣議決定もしていただき、附帯決議でもあったような言葉遣いに改めていただきたいと思いますが、大臣、お願いいたします。

渡辺国務大臣 よく頭に入れておきます。

市村委員 ありがとうございます。

 それで、あと五分ほどありますが、本当はほかにも議論したいことがありましたが、ではもう一点だけ。この間接型の方なんですが、これにつきましても、やはり助成先が企業なんですね。

 実は、先ほどもちょっと申し上げましたが、これすらも、百歩譲ってこれもあるかと申し上げているんですが、普通はNPOがこういうのを担うんです。だから、大臣がおっしゃられたように、NPOが育っていないから仕方ないんだという部分については、この間接型については、私は百歩譲って、まあ何かこれはしゃあないなと思う部分はあるんですね。

 だから、私は、ぜひとももう一度検討を加えていただきたいということをさっき申し上げましたが、この間接型の方をより生かす方向で、ぜひともこの再チャレンジ支援寄附金税制について御検討を加えていただけたらなと思います。そうすると、これはあり得るんです。

 ただ、助成先が企業というのは、なかなかこれも厳しいんですね。企業に助成するかということがあるんですね。ただ、これもなきにしもあらずなんです。NPOだったらもっといいんですけれども。

 だから、さっき大臣が強調されたように、志を持ってやっている営利企業がある、中小企業がある、そこに対して間接的に、一遍どこかの公益法人に寄附した分がこういうところにお金が助成として入っていく、これはあり得ると私は思います。これについても、いろいろ思うところはあるけれども、あり得るんです。

 だから、やるんだったらこの間接型の方にぜひとももっと重きを置いて、こっち側を指定のときのチェックをきちっとするとか、いわゆるなあなあで指定されないとか、こういったことに政府としては力を入れて取り組んでいただきたい、こう私は思うわけでありますが、大臣、いかがでございますか。

渡辺国務大臣 間接型の想定しているケースは、再チャレンジ支援に取り組む地域の企業でございますが、フリーターなど若者の採用機会を拡大しよう、あるいは、若者の職業的自立を支援する特定非営利活動法人、これも含まれております。次世代育成支援対策、例えば育児など退職者の再雇用などに取り組む企業なども含まれております。

 したがって、この対象が先ほどの直接型とはちょっと違う対象になっているわけでございますが、こうした再チャレンジに取り組む企業に対する支援というのはやはり日本の現状にかんがみれば非常に貴重な企業だと思いますので、ぜひ、今回の間接型の寄附もお認めをいただいて、大々的に使われるようにしていただければと思っております。

市村委員 間接型の寄附の方は、百歩譲ってあり得るという思いでございます。

 大臣、まさにこの間ここで議論させていただきました。大臣は所信表明の中で、立ちはだかる岩盤は大変厚いということをおっしゃったわけですね。私はその言葉を信じております。だから、そういうことをおっしゃった大臣が、やはりやっちゃいけないことをやってはならないと僕は思います。たとえ大臣が議論に加わっていなかったとしても、花押を押してしまったということであれば、これはやはり大臣が責任を持ってこの法律を出されたということでありますから、もう一度、自分は実はこの議論に加わっていなかった、押してしまったけれどもちょっとやはり議論があったから考えてみようということで、ぜひとも御検討ください。

 そうしないと、立ちはだかる岩盤には僕は絶対抵抗できないと思います。ここでこういうことをやってしまっては、やはりちゃんと打ち砕くことはできませんので、ぜひとも大臣、期待しておりますので、よろしくお願いいたします。

 こういうことを述べまして、質問を終わります。ありがとうございます。

    〔平井委員長代理退席、委員長着席〕

河本委員長 次に、小川淳也君。

小川(淳)委員 民主党の小川淳也でございます。

 まず冒頭、こういう不正常な形で委員会の進行が進んでおりますことに強く抗議を申し上げたいと思います。

 どうぞ副大臣、政務官、国会外の御公務にお戻りをいただけたらと思います。

 委員長、お取り計らいをお願いいたします。

河本委員長 何。

小川(淳)委員 副大臣と政務官には、国会外の御公務にお戻りをいただけたらと思いますので。

 どうぞ。

河本委員長 小川君、質問を続けてください。

小川(淳)委員 あわせまして、大臣、それなりに、やはりこういう形で審議が進むということは私どもも不本意であります。大臣もある種のリスクをとってここにお見えだと思いますし、私ども質疑をする側にも、こういう不正常な形での質疑はそれなりのリスクが多いな、そのことを強く感じました。

 その意味では、これはお互いにとって非常に不幸な形ではありますけれども、事の経過から申し上げまして、きょう御答弁いただく内容等、後に簡単に訂正の署名に応じるということもいたしかねますので、その意味では慎重に御答弁をいただけたらと思います。

 まず、構造改革特区法案についてお尋ねをいたしますが、今、全国に何件、特区がございますか。

渡辺国務大臣 現在、構造改革特区計画の認定を行ったものは九百十ございます。特区の全国化に伴い、オール・ジャパンで規制改革を実現できたというのがこのうち幾つかございますので、現在の特区は六百四件でございます。

小川(淳)委員 九百十件承認をされて六百四件残っている、その残りについてはどういう事情ですか。その差というのは何ですか。

渡辺国務大臣 先ほども申し上げましたように、全国展開をした結果特区の必要性がなくなったというのが、九百十マイナス六百四の差ですね。

小川(淳)委員 その差というのは、すべて全国展開したということでよろしいんですか。

渡辺国務大臣 大半がそうでございます。

小川(淳)委員 それ以外に事情があれば、ここでお教えいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 事業の進捗がはかばかしくなく、取り消されたものが何件かございます。

小川(淳)委員 事業の進捗がはかばかしくないというのは、どういう事例についてですか。

渡辺国務大臣 例えば、第六回、平成十六年十二月認定のもので一件ございます。それから、第十回、平成十八年三月認定のもので取り消しが一件ございます。第十一回、平成十八年七月認定のもので取り消しが一件ございます。

 手元の資料ですとこれらが取り消し対象となっておりますが、その内容は、手元に資料がございませんのでお答えいたしかねます。

小川(淳)委員 五年に一回の見直しの機会でございます。どういった事情でそれは取り消されたものがあるのか、あるいは、こちらの認定そのものに問題があったのかなかったのか、そうした事情についてお答えをいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 先ほど申し上げましたように、概括的に申し上げますと、事業者の方が予定していた事業がはかばかしく進まないがゆえに取り消されたということでございます。

小川(淳)委員 いや、個別にお聞きしております、個別に。

河本委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

河本委員長 速記を起こして。

 渡辺国務大臣。

渡辺国務大臣 この三件のうち一件は、県や市町村の役割が変わったことなどによって取り消されたものがございます。あとの二件につきましては、委員の質問時間中にきっちりお答えをさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

小川(淳)委員 その一件目の県、市というのは、どちらの事例ですか。

渡辺国務大臣 間違って修正にならないように今調べているところでございますので、質問時間中にきちんとお答えをさせていただきます。

小川(淳)委員 委員長に要望申し上げますが、五年に一回の構造改革特区法案の見直しでございまして、九百十件が承認をされて六百四件が現在も生き残っている。その差については、全国に展開したものもあれば、各般の事情により取り消されたものもあるということでございます。

 そこで、その各般の事情により取り消されたものについては、個別にその事例、そしてその事情についてよく検証をした上で、今回の五年間に一回の見直し、きちんと審議の上で明らかにさせていただきたい、いい見直しにつなげていただきたいという趣旨でございますので、それをお調べいただいた上で大臣の御回答をいただきたいと思います。

河本委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

    〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕

    〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕

河本委員長 速記を起こしてください。

 渡辺国務大臣。

渡辺国務大臣 先ほどの取り消しの三件でございますが、一つは、鹿児島県鹿屋市の特区、これは、ごめんなさい、これから行きますか、では、その鹿屋市の例から行きます。これは、市町村費負担教職員任用事業と称するものでございます。三十五人以上の学級に対し市が独自で講師を配置する予定だったものでございます。なぜこれが取り消しになったかといいますと、鹿児島県が三十人学級を実施したために必要性がなくなり取り消しになったという事例でございます。これが第十回であります。

 それから、第六回は、神奈川県藤野市、藤野町ですか、ここの申請したものでございます。不登校児童生徒等を対象とした学校設置に係る教育課程弾力化特区でございます。これは、残念なことに、小学校の統廃合計画があって、統廃合の中でこうした不登校児童を対象とした学校を設置していこうということだったのでございますが、地元が反対をしたために特区が取り消しになったという事例でございます。統合後の小学校で実施予定であったため、実施が不可能となってしまったという理由でございます。

 第十一回申請の中での取り消しは、長野市でございます。これは大学の特区なんですけれども、校地校舎の自己所有を要しない大学設置の事業であります。インターネットを使った大学として特区に認定されたのでございますが、この大学の設置認可が文科省によって不認可となってしまったということでございます。これは、今後も事業者の方が実施される予定が見込まれないということから特区取り消しになったものでございます。

小川(淳)委員 大臣には早速お調べをいただきましての御回答、ありがとうございました。

 一件目につきましては、問題がないものと判断をいたしたいと思います。

 二件目については、地元の反対ということでございますが、この点については、今回の見直しに直ちに反映すべきものかどうかは別として、御検討を要する。こうした特区の認定に当たって、地元の協力も得ながら、これは国が認定するわけですから、十分円滑に進められるものかどうか、よく調整を要する課題だと思います。

 三点目につきましては、一方で特区と銘打って進めようとするのに、一方で文部科学大臣の学校設置の認可がおりない、これは大変、政府内では本来一致した対応を求められるはずであります。

 この二点目については、どういう観点から不登校に関する特区、地元が反対をしたのか。三点目については、大学の設置をなぜ文科省は認可しなかったのか。これが直接かどうかわかりません、今回五年に一回の見直しですから、九百十件のうちわずか三件しかなかった取り消しの事例ですから、この残り二件については少し事情を御説明いただき、今回の見直しに反映すべき点があるのかどうか御見解をお聞きしたいと思います。

渡辺国務大臣 これも私、詳しく存じてはおりませんけれども、想像をたくましくするに、地元の小学校の統廃合計画、これに地元が反対をしたということなんですね。したがって、統合後の小学校で不登校児童を対象とした学校を設置し、不登校児対象の教育を行っていこうということが実施不可能となってしまったということでございます。

 御案内のように、特区計画というのは市町村が出してまいります。したがって、市町村の計画に対して認定の是か非かを見るわけでございます。この認定に当たっては、恐らく、神奈川県藤野市が非常に情熱を持って出してこられたんだと思いますが、統廃合計画が頓挫するというところまでは予測できなかったものと思われます。

 次に、長野市のインターネット大学の件でございます。大学の設置認可というのは、御案内のように文科省が行うものであります。昔は、大学の設置となりますと、山のような書類を積み上げていって、文科省のOBでもいないととても設置審査が通らないなどと言われた時代もあったのでございますが、御案内のように、設置基準が随分規制緩和をされまして、いつごろだったか忘れましたけれども、相当大学設置が、盛んに申請が行われるようになったわけでございます。そういう中で、一方において大学の倒産という事態も出てきているわけでありますが、特区は長野市が出したわけでございます。

 しかし、このインターネット大学の設置の認可というものは文科省が行うわけでございまして、手続としては、まず特区を長野市が申請し、それを認定する、この認定を受けた後で文科省が設置認可の可否を下す、こういうことだったと思いますが、どういう理由で不認可となったかは文科省にお聞きをいただきたいと思います。

小川(淳)委員 大臣、非常に長時間の御答弁というのはこのケースにおいては有効な手だてだと思いますが、文部科学省とのやりとり、確かにあるんでしょう。しかし、認定を受けた市町村の立場に立って考えていただきたいんです。

 一方で特区の認定をいただきながら、一方で学校の設置そのものが認可されない、これは大変な落胆でしょうし、大変な痛手だと思います。また、構造改革特区を認定する側の信頼感にとっても大きな問題だと思いますので、以後、やはり各省庁との連携、事業内容等の調整には十分な配意をお願い申し上げたいと思いますし、それが何より、期待感を持って申請してくる市町村に対する誠意ではないかという気がいたします。

 あわせて、今、渡辺大臣は、押しつけ的な天下りについて大変な御苦心をされておる。きょう直接このことについてはお聞きするつもりはありません。しかしながら、さきの報道でも、大臣は、いかに中央官庁の抵抗が強いものであるか、それはそのお身をもって思い知らされたのではないかと思います。

 そういう意味で、今、実現した特区の概要についてはお聞きをいたしましたが、実は、この構造改革特区、誕生した五年前は、非常に鳴り物入りといいますか、大きな注目を集めたわけであります。しかし、今となっては、これまた五年間延長されるということですが、小粒感だとか、あるいは期待薄だとかいうことが言われているわけですね。

 これについてはいろいろな事情があろうかと思いますが、その事情をうかがい知るためにも、中央官庁の抵抗との関係でいえば、実現した特区、これはこれでいいんです。問題は、申請があったのに実現しなかった特区に一体どういう事情があったか。どんな事例を勉強されたか、どういう問題点があったか。市町村の側からすればどういう期待が裏切られたのか。そこをよく分析される必要があると私は思いますが、大臣、この実現しなかった特区は、実現した九百十件に対して一体どのくらいあったんですか。

渡辺国務大臣 第十次提案までの数字でございますが、対応不可となったものが二千七百五十五項目ございます。この中には、さらなる提案等によってその後実現した項目も含まれております。全体の大体五割ぐらいになります。次に、現行制度で対応可能ですということで特区に至らなかったものが千九百六十三項目ございます。これが大体、全体の四割弱であります。残りの一割強のものでございますが、特区として対応したものが二百十一項目ございます。それから、特区ではなくて全国的に対応したものが三百七十項目ございます。この中にはその他の支援措置が三項目含まれております。そして、残りの四十一項目は、今後検討するものという位置づけになっております。

 特区として対応した二百十一項目については、今まで十回にわたる提案がなされております。

 第一次の平成十四年十月においては九十三項目ございました。この中には、教育課程の弾力化あるいは株式会社等による農業参入なども含まれております。建設会社がリースホールド方式で農地を借りて農業分野に参入するというようなものも、このときに出ていたかと記憶をいたしております。

 第二次の提案、これは四十七ございまして、かなり有名になりましたどぶろく特区などというものもございます。これはもう一つ二つではなくて、相当広く全国的に有名になったものでございます。株式会社立の学校、病院などの提案もこのときに出てきております。

 第三次の提案は、平成十五年九月でございますが、十九件ございます。公立保育所の給食の外部搬入などの提案がなされております。

 第四次の提案は平成十六年の二月でございます。十七件ございますが、NPO等による福祉有償運送、いわゆる福祉タクシーというものですね、これなどが入っております。

 第五次の提案は平成十六年九月で十二件ございます。刑務所事務の一部民間委託などが入っております。

 第六次は六件、公設民営学校の設置、これはいわゆるチャータースクールとはちょっと違った種類のものでございまして、日本版チャータースクールと言えるかどうかわかりませんが、公設民営学校の設置などが含まれております。

 第七次は八件……(小川(淳)委員「大臣、もう結構です」と呼ぶ)はい、わかりました。

小川(淳)委員 本当に不幸な事態ですね。私も、こういうことはやはり事前に政府の御担当にしっかり実情をお聞きしてここに臨みたいと思いますし、大臣には要所だけ、本当に大臣としてお述べになる価値判断だけをここで、またそれが得意な方ですから、ぜひそれをお願いすべきだと思います。

 苦渋の思いでお互いここに寄っているわけですが、変な話、私は三人兄弟の長男なんですけれども父親によく言われたんです。兄弟げんかの責任は兄貴にあると言うんですよね。やはり力のある方、強い方。自民党の国対の大先輩から個人的に党派を超えて御教授をいただきました。国会なんというのは野党に花を持たせる場だと。七割野党の言うことを聞いて、野党は骨まで食えないんですから、皮ぐらい、肉ぐらい、野党に食わせてという器量というか度量が昔はあったんじゃないですかね。

 だから、このわずか三十分のお時間をいただきましたが、もっと本当は我々は国民にとって実り多い時間にしなきゃいけないんですよ、ここを。国会の時間をとめられたって国民の時間はとめられないんだ。そういう、やはり、ぜひ閣僚のお一人として、現在の与党の国会運営に対して苦言を、おれもやりにくいぞという苦言をぜひ呈していただくようにお願い申し上げまして、ひとまず質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

河本委員長 次に、泉健太君。

泉委員 民主党の泉健太でございます。

 私からも、本日午前中も質疑はありました。この午前中の質疑については、まだ正常だった当時の積み残しの高市大臣への質疑ということで、我々もそこには質疑をさせていただきましたけれども、しかし、この今私たちがいる状況も、強行での質疑ということになっております。大変残念です。こういう質疑が正常に行えないということを我々も強く抗議をしたいというふうに思います。

 その上で、きょうは大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 まず一つ、地域再生法でありますけれども、今回は、地域再生協議会というものを設置するということが法律に書かれております。今回、私が省庁から以前レクのときにお話を聞きましたら、地域再生協議会で成功している例が数多くあるのでこれを設置するんだというお話でしたが、それは今どれぐらいあるんでしょうか。

渡辺国務大臣 数は把握いたしておりませんが、こういった枠組みを設けて、大変成功的に地域再生を行っている事例があるようだということから、今回の地域再生協議会の法案化を考えたわけでございます。

泉委員 今、数は把握していませんがというのがありましたが、私はこれも大変問題だというふうに思います。把握をしていただきたいと思います。

 さらに、大変成功した、それは何をもって大変成功だというふうにおっしゃられていますか。

渡辺国務大臣 例えば、「三丁目の夕日」という映画がございます。昭和三十年代の……(泉委員「この法案の実例の話ですか」と呼ぶ)いや、ここから法案の実例につながっていく導入部分でございますけれども、昭和三十年代の、日本経済が大変活気があった時代、我々よりもうちょっと上の人たちには、あの時代へのノスタルジーを持った方がたくさんいらっしゃるんですね。そこで、昭和三十年代を町並みの中で実現しちゃったらどうか、こういう事例が生まれてまいりました。それは、大分県の豊後高田市でございます。

 ここでは、地元の商工会議所や豊後高田市などをメンバーとして、豊後高田市観光まちづくり会社というものを立ち上げたわけでございます。観光サービスを企画、提供する人材の育成などに取り組んで、中心市街地の町並みを、古さを逆手にとって、逆に昭和三十年代にしちゃおうじゃないか、こういうおもしろい発想を考えたわけですね。これがまさしく、先ほど私が申し上げた成功事例、地域再生協議会という発想につながっていった一つでございます。

 もっと申し上げましょうか。

泉委員 会社をつくられたというふうにお伺いしておりますが、その例をもって地域再生協議会をつくられるという発想に至ったということでよろしいですか。

渡辺国務大臣 これは一つの事例として申し上げたわけでございまして、もっとたくさん実例があるわけでございます。例えば岐阜県……(泉委員「数だけ言ってください」と呼ぶ)数は、手元にその数を把握した資料がないというだけで、きちんと役所サイドでは数はわかっておりますが、手元にないというだけでございます。

泉委員 では、例えばその豊後高田でいえば、観光客二百万人、消費額六十四億円というのが平成二十六年の目標だそうです。ですから、今まさに取り組まれているところであって、成功ということでまだ結論が出ていないというふうに私は逆にお話を伺っているわけですが、もう成功し終わってしまったんでしょうか、これは。今、まだこれは続いているものじゃないのかなというふうに思うわけです。

 その意味でいいますと、地域再生の計画の認定事例ということで政府が幾つも挙げられている、この中で数多く成功された事例があるというふうにおっしゃられましたので、それを具体的に、幾つ、どういう成功をしたのか。それは数字で、それぞれ目標があるわけですから、お答えをいただきたいというふうに思います。

渡辺国務大臣 先ほど成功したと過去形で言ってしまったのは別のところでございます。

 豊後高田市は、目標として観光客数二百万人……(泉委員「もう言いました」と呼ぶ)御指摘のように、こういう目標を掲げておって、こういうコンセプトでやっているわけでございます。

 成功した事例として挙げられるうちに入れてもいいのではないかと思うのは、滋賀県の長浜市、これは黒壁というものですね、黒壁銀行というのがございまして……(泉委員「中身は結構です」と呼ぶ)はい。ここも、最初は失敗ばかりしていたのでありますけれども、まさに地域のネットワークを結集することによって、今では観光客数が二百万人に達しているという事例でございまして、これなどは私は成功事例に入れていいのではないかなと思うのでございます。

泉委員 例えば、パンフレットに載っております「国際リゾート都市「くっちゃん」の確立」、これは成功はなされていますでしょうか。

渡辺国務大臣 ニセコスキーリゾートというのは、これは……(泉委員「成功しているかどうかです」と呼ぶ)成功事例と言ってよろしいのではないでしょうか。(泉委員「何を根拠に」と呼ぶ)これはオーストラリア人を中心に外国人観光客がふえたんですね。北海道はいまだに資産デフレという状況の中で、何とこの倶知安では地価が上がっちゃっているという事例でございますから、これも、外国資本は嫌だといっても、オーストラリア人は、向こうは季節が逆ですからね、やはりリッチなオーストラリア人は、オーストラリアが夏のときに、冬、雪を見たいといってこちらに来るんですね。そうすると、こういうオーストラリア人相手のオーストラリアレストランとかがはやって、まさにこれは成功事例と言っていいのではないかと思います。

泉委員 それでは、お伺いをいたしますが、現在の外国人宿泊客は何名ですか。これは、目標にちゃんと八万人、十九年度と書いてあります。成功と言った以上は、そういう実績があってのことだと思います。いかがですか。

渡辺国務大臣 宿泊客まで手元に資料はございませんけれども、地価が上がったというエピソード一つをもってしてでも、これは成功事例ということが言えるのではないかと思います。

泉委員 いいですか、これは地域再生のために推進室がちゃんとつくっている資料ですよ。それで十九年度八万人と書いているじゃないですか。これは明確に目標八万人と書いている。それをもって成功か不成功と言うんだったらわかりますよ。全く違う観点じゃないですか。しかも、これで成否がわかるんじゃないですか。だから、私はこれが成功しているんですかと聞いた。そうしたら、成功していると言った。でも、これはわからないというんだったら、何にも成功の根拠がないじゃないですか。それを教えてくださいよ。わからないんだったら、できませんよ。

渡辺国務大臣 宿泊客は、確かにそこに数値が書いてございます。現在、宿泊客が一体統計上どれぐらいあるかというのは、手元に資料がないだけのことでございまして、こうした倶知安町の事例、これはとても有名な事例でありまして、オーストラリア人が大挙してここの倶知安にスキーに来る、そして地価まで上がっちゃっている、この北海道においてこうしたスポットがあるということは、成功以外の何物でもないと思います。

泉委員 先ほど、この地域再生協議会をつくるというのは、成功事例があるから、こういうスキームをつくれば、よりそういうところがふえるからとおっしゃった。では、成功事例はどこですかと言った。そうしたら、豊後高田ですか、こちらの方を挙げられた。しかし、これは、にぎわっているという全く抽象的な、印象の話であります。しかも、目標は平成二十六年の目標ですから、これからですよね。では、倶知安はということでお話を聞いてみたら、もう平成十九年度でという目標が書かれているにもかかわらず、その宿泊客数がわからない。なのに、成功したとおっしゃるわけです、大臣は。

 では、もう一つ、このパンフレットが言っています熊本県荒尾市、こっちの方で聞いてみましょう。「地場産業と住民の共生対流による起業創造と雇用機会の増大」、これは目標が新規起業法人七社、新規雇用百四十六名、平成十九年度というふうになっておりますが、こちらの方の実績はいかがですか。

渡辺国務大臣 熊本県荒尾市、これはどなたの選挙区かわかりませんが、地域提案型雇用創造促進事業、パッケージ事業というものですね。これは、商店街の空き店舗を活用し、地域の特産品である、ナシ、牛乳、ノリを使った発酵食品の製造販売業を中心とした食に関連した産業を創出するための人材育成を行う。地域住民が生産、消費を行う地域循環型スモールビジネスを創出し、その集積により地域の再生を図るということでございまして、目標は、新規起業法人が七社、そして平成十九年度の新規雇用は百四十六名となっております。

泉委員 私は実績と言いましたよね。そのことは御存じですよね。

 今の倶知安、そしてこの荒尾市、例として挙げられていますけれども、すべて成功しているかどうかわからない状況ですよ、これは。(渡辺国務大臣「委員長」と呼ぶ)いや、私はまだ質問は終わっていません。数字を出していただかないと、我々にも伝わる、成功かどうかがわからないんです。数字を出してください。お願いします。

河本委員長 渡辺国務大臣、簡潔に答弁してください。

渡辺国務大臣 これは、十九年度が終わったところで数字は把握することにしております。

泉委員 そうしますと、現状を全く把握せずに今までやっているということですか。これはそれぞれの目標年度がありますけれども、追いかけていない、その年にならないと評価をしない。にもかかわらず、成功している事例があるから地域再生協議会をつくる。この協議会をつくる根拠は、事例が成功しているからでしょう。事例が成功しているという実績が、数字が全く見えてきていないのに、何でこういうことができるんですか。これはやはり数字を出していただかないと、議論の大前提です。できません。

渡辺国務大臣 これは荒尾町のことをもって成功したから地域再生協議会をつくるという発想にはなっておりませんで、一般的に、地域で、先ほど来申し上げていますように、いろいろなネットワークが参加をし、地域でまとまって、やる気と情熱を持ってやっていこうとするところはうまくいくケースが多い。そういうことから、地域再生協議会というものを法定していこうという発想になっているわけでございます。

泉委員 大変残念なんですが、やはり、この地域再生協議会、私もこれはどうしようかというところで大変迷っています。そういう中で、どれだけの事例のどれだけの目標達成ができたのか、現状はどうなのか、この資料をまず出していただきたいと思います。これをまず私たちは見て、それからしっかりと審議をしていきたいと思います。

 ということで、それまで待ちたいと思います。

渡辺国務大臣 各地域でいろいろな取り組みが行われておりまして、地域再生協議会という名前で集まっているわけではないわけですね。例えば、先ほどのどこかの事例でありますと、いろいろな人たちが会社をつくるとか、それぞれの地域でさまざまな形態がございます。そういった事例の中で、こういった地域再生協議会というものを法定して、こういうところを核にやっていけばより地域再生が進んでいくではないか、そういう発想で申し上げているわけでございます。

泉委員 だめですよ。数字を出していただかないとだめです。十九年度ですよ。

渡辺国務大臣 先ほどの倶知安町の外国人宿泊数の事例でございますが、平成十五年、二万七千人。平成十六年、このころからオーストラリア人がふえ始めるわけでございますが、五万五千三百二十名、うちオーストラリアからいらっしゃった方が四万四千八百十三人。外国人五万五千人のうち、何とオーストラリアから来られた方が四万四千八百十三人もいる。平成十七年、何と七万六千六十七人、うちオーストラリア人六万七千二百四十人という形で、もうこれはオーストラリア様々ではないかということでございまして、平成十九年の目標は八万人ということでございます。

泉委員 では、荒尾市の方もお願いいたします。(発言する者あり)

河本委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

河本委員長 速記を起こして。

 渡辺国務大臣。

渡辺国務大臣 熊本県荒尾市の件でございますが、目標新規起業法人七社のところ、平成十七年で三件、平成十八年で一件、平成十九年は現在進行中でございます。

 新規雇用、平成十九年度目標で百四十六名となっておりますが、実績、二百一名でございます。

泉委員 ありがとうございます。やはりそういう数字があるとわかりやすいですね。

 地域再生協議会、今、これをつくるかどうかというところの話をしているわけですけれども、この地域再生協議会、実は、できる規定になっている、任意でつくれるということなんですが、先ほど大臣がおっしゃったように、実はもうほとんどのところでやっているケースもたくさんあるわけですね。

 では、何でわざわざ法律に書かなければならないのかなというのが私は大変疑問です。逆に、法律に書いたおかげで、これは、その自治体の長が内閣の方に申請をするときに、その協議の結果を報告までしなければならない。逆に足かせをつくっていただいてしまっているんですね。地方分権の観点からいえば、今のままこれを明記せずに、各地域で自由にやっていただく方がよっぽどいい。なのにもかかわらず、わざわざこういう地域再生協議会を法律に書き込む、そのメリットが私は実はよくわからないというところが大変残念なところではあります。

 そういった意味で、私は、なぜこの地域再生協議会をわざわざ書き込む必要があるのか、これをぜひ知りたいということで、合理的な説明をお願いいたします。

渡辺国務大臣 各地の取り組みを研究してこうした制度を法定化するものでございますが、こういうものは必要ないというところは、つくる必要はございません。(泉委員「それは今もそう」と呼ぶ)これからもそうでございます。この法案においては、こういうことをつくった方が効果的だというところはぜひつくってくださいということで、この地域再生協議会を法律に位置づけております。

 もともと、地域再生計画というのは地方公共団体のつくるものでございます。しかし、実際の担い手というのは地方公共団体そのものではないわけですね。先ほどから申し上げているように、それぞれの地域のいろいろな担い手がいらっしゃって、その人たちがやる気と情熱を持って地域再生に取り組んでいく、自治体と連携をしていくということが大事なことでございます。

 したがって、現行制度においても、これは平成十七年の四月二十二日の閣議決定でございますが、地域再生基本方針を定めております。ここでは、地方公共団体が地域再生計画を作成する際には、特定非営利活動法人等を初めとするNPO、それから地域住民、関係団体、民間事業者等を通じて地域のニーズを十分把握し、反映するよう努めることが望ましいと平成十七年に閣議決定をいたしたところでございます。

 今回法定をいたします地域再生協議会は、地域再生の取り組みについて、それをいろいろ検討したり実行するに当たって広く関係者の意見を集約する場として新たに設けてはどうかということなんですね。要するに、法定して、こういうものができますよというお墨つきを法律でやっているわけなんですね。したがって、これによって地域のさまざまな担い手の連携がさらに深まっていく、そういう効果を期待しているわけでございます。

 これまでのさまざまな担い手の連携の促進策としては……(泉委員「もういいですよ、さっき答弁短くするように言われたでしょう」と呼ぶ)短くやります。市民参加による地域再生の推進のための特定非営利法人等の市民活動団体の活動支援とか、あるいは大学と地域が連携した地域再生の取り組みを支援するための地域の知の拠点再生プログラムとか、こうした取りまとめがこれまでの連携促進策としては挙げられております。

泉委員 この地域再生協議会なんですが、先ほどの繰り返しになりますけれども、地方公共団体は、この協議会で地域再生計画に記載する事項について協議しなければならないんです。そしてまた、その協議の内容を申請書の中に添付しなきゃならない、そういう新たな義務が課せられたわけなんです。つくることはできるけれども、つくった以上はそういう義務が発生するんです。

 それが、地方分権と今おっしゃったように、地域で今だったら自由にできるんですよ。幾らでも自由にできるものを、なぜこんな義務を課すわけですか。そこがわからないんです。そこだけ、本当にちゃんとしたやりとりをやりたいですから、ちゃんと答えてください。

河本委員長 渡辺国務大臣、簡潔に答弁してください。

渡辺国務大臣 これは、つくってもいいし、つくらなくてもいいということでございます。ですから、こんな煩わしいものをつくる必要はないと思うんだったらつくらなくて済む話なんです。いいですか。

 ですから、つくればこれはお墨つき効果がありますから、そういう手続は複雑でも、とにかくお墨つきを持った法定の協議会だぞ、こういうことになって、さらに連携が深まっていくではないかと先ほどから申し上げているわけでございます。

泉委員 では、今まではお墨つきはいいかげんだったということですか。それは違うでしょう。

 今までもお墨つきは出していたわけですよ、認定をして。今までのはいいかげんだったわけじゃないわけですから、つくれる、つくれない、両方可能だったら、わざわざ書いて、その中に義務を入れることないじゃないですか。今だってできるんだから。今だって、地域再生協議会という名前で地域に幾らでもつくれるわけですよ。こんなものは、多分、皆さんがパンフレットで事例紹介さえしてしまえばそれでおしまいじゃないですか。なぜ法律に書き込むんですか。

 もう一つ、きょうはお伺いをしたいと思います。

 十八条の部分ですけれども、今回、報告及び検査ということで、認定地方公共団体の長は「当該特定地域雇用会社に対して報告をさせ、」云々ということで、立入検査ですとかもできるようになっております。これは私は、業法でもないのに立入検査までできるというのはすごいなというふうに感じたわけですが、ここまでできるというのは、ほかの法律で何かありますでしょうか。

渡辺国務大臣 立入検査までできる法律が何かあるかとのお尋ねでございます。

 今回の法案では、例えば、これは民間会社から民間会社への寄附について定めている部分がございますが、寄附を一件ごとに地方公共団体による確認を受けることを要件とするとか、あるいは対象とする取り組みの範囲を地方公共団体が確認できるものに限定するとか、寄附を受ける民間会社に対する地方公共団体の検査監督権限を法定化するとか、違反行為等にある場合には罰則を適用するとか、定めております。

 検査できる法律がほかに何かあるのかということでございますが、例えば補助金適正化法などにおいては検査という規定があると……(泉委員「立入検査」と呼ぶ)ええ、立入検査ができると記憶いたしております。

泉委員 それは今回も同じ仕組みだというふうに考えてよろしいですか。

渡辺国務大臣 基本的には同じでございます。

泉委員 しかしながら、なぜ今回それを採用したんでしょうか。

渡辺国務大臣 先ほど申し上げましたように、今回の法案の中に寄附金税制を設計してございます。この寄附金税制が、先ほどの議論のように、租税回避に使われたりとかいうことはとっても困る話であります。何といっても再チャレンジ支援を広げていこうというための税制でございますから、こうした寄附に対するいろいろな制度設計は、既存の特定公益増進法人あるいは認定特定非営利活動法人に対する寄附税制に比べ、厳しいものになっております。

 なぜかといいますと、我が国の税制に例を見ない民間から民間会社への寄附に対する税制上の措置である、これは先ほど来申し上げていることですね。それから、不適切な所得移転による租税回避を防止するためである。こうしたことから立入検査等の権限を規定しているものでございまして、こうした趣旨を地域の民間会社や地方公共団体によく説明をして、この制度の利用の促進を図ってまいりたいと考えております。

泉委員 時間が来たので、終わります。

河本委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、地域再生は次回に質問するとして、きょうは特区制度について聞きたいと思います。

 二〇〇三年六月の特区法改正によって、株式会社東京リーガルマインドの設置した大学、LEC東京リーガルマインド大学に対して、ことし一月二十五日、文科大臣より学校教育法第十五条第一項の規定に基づく勧告を出しておりますが、どういう内容か、そのポイントをまず政府参考人より具体的に説明を聞いておきたいと思います。

村田政府参考人 お答え申し上げます。

 LEC大学につきましては、平成十八年度の設置計画履行状況調査によりまして、大学固有の授業計画や教材が存在せず、専ら資格を取得させることを目的とする資格試験予備校の開設科目が充てられ、LEC大学の学生と当該予備校の学生とが同一の教室において教育指導を受けているなど、資格試験予備校と事実上同一化しており、学校教育法第五十二条に規定する大学の目的に照らし疑義がある状況が明らかとなりました。

 また、専任教員につきまして、授業を初めとする大学の業務に全く従事しないなど、専任教員としての勤務実態のない者がいること、ビデオ授業につきまして、毎回の授業の実施に当たって双方向型の指導を行っていない状況については、法令違反に当たることから、一月二十五日付で学校教育法に基づく勧告を行ったところでございます。

    〔委員長退席、後藤田委員長代理着席〕

吉井委員 私もその勧告文書を見まして、本当にびっくりしたんですけれども、百七十三人の専任教員のうち、勤務実態のない者が六割の百六人ですね。残る六十七人も、資格試験予備校の教員と兼務が四十人、LEC大学から報酬を受けていない教員もいる。これは一体どんな学校なんですかね。

 勧告にはこう書いていますね。「これまで再三にわたり留意事項の内容を通知すること等により、大学における教育研究や学校設置会社の運営に係る問題点について改善に向けた指導を行ってきたにもかかわらず、未だ十分な是正がなされていないことは極めて遺憾である。」というんですね。

 「特に教育課程に関し、大学固有の授業計画や教材が存在せず、」これははなから大学と言えないものですよね。「専ら資格を取得させることを目的とする資格試験予備校の開設科目群が充てられ、LEC大学の学生と当該予備校の学生とが同一の教室において教育指導を受けている状況については、未だ完全には解消されていない。このような、LEC大学と当該予備校とが多くの部分で事実上同一化した形態で運営されている」というんでしょう。

 「大学の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を開設し体系的な教育課程を編成することを求めた大学設置基準第十九条ひいては学校教育法第五十二条に規定する大学の目的に照らし疑義がある」、ひどいものですよね。「疑義がある状況と指摘せざるを得ず、大学運営全般にわたってさらに改善に努めることが必要である。」としておりますが、実は、今回だけの話じゃないんですね。

 この大学は、できてほどないころですが、二〇〇五年二月十日には公正取引委員会から排除命令も受けていますね。次から次へと問題を起こしている。今回、ようやく勧告なんですが、勧告に沿って是正される見込みはあるんですか。

村田政府参考人 先ほど御説明いたしました勧告事項等につきまして、これに対する改善策につきまして、二月二十三日付でLEC大学から報告がございました。

 その内容は、資格試験予備校と事実上同一化している現状を改め、大学としての自主的、自律的な教育研究体制を確立する観点から、平成十九年四月以降は、大学固有の教育課程を編成し、全学年に適用すること。施設について、建物、フロア等ごとに明確に区分することを行う。

 また、勧告事項への対応といたしまして、専任教員については、既に百七十三名から三十五名に再編成し、全専任教員が授業科目を担当するとともに、予備校との兼務は行わないこと、ビデオ授業につきましても、授業科目数を大幅に削減するとともに、双方向性を確保する観点から、各キャンパスに三名以上の補助教員を配置し、すべてのビデオ授業に質疑応答が実施可能となるよう整備することとしております。さらに、特区自治体との協議を経て、現在十四あるキャンパスの数を縮小することとしてございます。

 文部科学省といたしましては、今後、報告書の内容を精査し、追加資料の提出を求め、実地調査を行うなど、本勧告に沿った改善措置が確実に実施されているか、確認をしてまいりたいと考えております。

吉井委員 実は、国会議員の方々へという文書が、これまで国会でLECの件を取り上げてくださった先生方に対しお送りしますということで来ておりますが、このファクスの中で、「私は、構造改革特区に設けられたLEC東京リーガルマインド大学の学生の保護者です。文部科学省からの改善勧告を受け、大学の存立に不安を抱いておりましたが、一月及び三月に大学側が開催した説明会に参加し、益々絶望的な思いになりました。一月の説明会では、LEC大学の学長である反町社長が説明に立ちました。しかし、その内容は、自らの経営理念の正しさを宣伝するものであって、勧告を行った文部科学省への不満を口にするなど、真摯に大学の在り方を見直していくという姿勢は全くうかがえませんでした。」「三月の説明会に至っては、保護者側には発言させず、質問を封ずる有様です。勧告に対する報告の内容も、私たちに希望を与えるものではなく、きちんとそれが実行されるかも信じられません。息子からも、予想と異なる内情や不満を聞いておりましたが、今回の件で、学費をどぶに捨ててしまったかと思うと、悔やまれてなりません。このような時期、来期の授業料請求書が送られてきました。保護者の間では、被害者の会を組織して、訴訟を起こそうかという話も出ています。」私も、そうした選択肢を考えている一人ですという、この手紙の一部分ですが、非常に深刻だと思うんですね。

 今のようなお話は、とても是正される見込みはないと思うんですが、保証はありますか。

    〔後藤田委員長代理退席、委員長着席〕

村田政府参考人 先ほど申し上げましたように、現在、提出されました報告書の内容を精査しております。また、追加資料の提出も求めているところでございまして、これらが出てきたところをよく分析いたしまして、実地調査を行うなど、実際にこの報告が確実に履行されるかどうかということをしっかりと確認してまいりたいと考えております。

吉井委員 そんなちんたらちんたらした話じゃだめだと思うんですね。昨年の四月十日の参議院行政監視委員会で、我が党の吉川議員の質問に、文部科学省副大臣の馳浩さんがどう言っておられるか。「看板に偽りありというふうな印象を持たざるを得ません。」要するに、まさしく看板に偽りありのような運営を確信犯的にやっていたとするならば、これはもうまさしく言語道断でありますと副大臣が言っていたんですよね。副大臣が言っても文科省がさっぱり動かないというのは、これはどういうことなんですか。

 私は、一昨年から問題になったマンションとかホテルの耐震偽装がありましたが、最近は電力会社のデータ偽装ですけれども、こんなことを放置して、事実上黙認しているような実態が続いているということは、私はこれは行革担当大臣と文科省の大学偽装と言われても仕方がないと思いますよ。それぐらい深刻な問題だという受けとめ方が必要だと思うんですよ。

 それで、株式会社立大学に対する文科省の対応の甘さというのは、何でこんなことが出てくるのかということで思ったんですが、LECの広報誌で「法律文化」というのが出ていますが、この広報誌を見ると、文部科学省の官僚が登場して、LECとのつながりが非常に深いということがわかりました。

 二〇〇五年の十一月号に出てくるのは、銭谷初等中等教育局長が株式会社東京リーガルマインド代表取締役の反町勝夫さんとの対談を行って、「地方分権の時代における義務教育のあるべきかたち」、これは大きく掲載されていますよね。こういうのが幾つも出てくるわけでありますが、今度は、「法律文化」二〇〇六年一月号では前川さんが出てきますけれども、要するに、前川初等中等教育企画課長は、「わが国における教育委員会制度の変遷と課題」と題して掲載されております。

 大体こんなことで、是正勧告どころか文科省公認の会社じゃないかと言われても仕方がないような、癒着と見られてもしようのない、こういうかかわり方というものは、これは直ちにやめるべきじゃありませんか。

村田政府参考人 大学の設置認可につきましては、大学設置・学校法人審議会におきまして、専門的な見地から、大学設置基準等の法令の適合性を審査するという観点から審査を行いまして、この答申に基づいて大臣が認可するという手続をとってございまして、今回のLEC大学につきましても、当時の法令に基づいて審査が行われて認可に至ったということでございまして、手続的にはそうした適法な手続で認可をされたと考えております。

吉井委員 私は、やはり、事前チェックをやめて事後チェックだと言ってわあわあ騒いでいましたけれども、事前チェックがそもそも甘いし、事後チェックはさっぱりやられていない、それが実態だと思うんですよ。

 だから、百七十三人専任教員がいるはずなんでしょう、大学だから大学の教官がおって授業があって、研究室があって研究活動もやるわけですよ。ところが、その専任教員というのがほとんど見当たらない、勤務実態のない教員と称する人は六割おる、予備校とのかけ持ちがあとの多くだというのでは、これはもう全然話にならない。

 二〇〇三年六月の特区法改正で教育改革特区というのをやってから株式会社が学校教育に乗り出す、それで翌年四月からLEC大学を設立して、三年間こんなことをずっとやっておるわけでしょう。何にも是正されていない。勧告を読むと、「これまで再三にわたり留意事項の内容を通知すること等により、」「改善に向けた指導を行ってきたにもかかわらず、」と言っているんですね。改善に向けた指導をやっておって、何で直らないんですか。指導をやっていないということでしょう。

 ほかの株式会社立大学の状況についても、毎年、設置計画履行状況調査というのをやっていますね。それぞれの大学ごとに留意事項を指摘しておりますが、二〇〇六年度、平成十八年度調査のときの指摘内容を、グロービス経営大学院大学、日本教育大学院大学、LCA大学院大学、デジタルハリウッド大学、ビジネス・ブレークスルー大学、これらについて、どんな留意事項が指摘されているのか、聞かせてください。

村田政府参考人 LEC大学以外の株式会社立大学についての今年度の設置計画履行状況調査に基づく留意事項でございますけれども、次のような問題点が明らかになっているところでございます。

 専任教員のうち、大学以外の業務に従事しており、教育研究上の役割、責任の面で専任教員としての位置づけに疑義がある教員がいること、授業内容や方法の改善を図るための教員の組織的な研修が十分に実施されていないこと、大学院専用の施設が狭いことや図書や設備が充実していないなど教育研究のための環境が不十分であることといったような事柄が留意事項として指摘をされてございます。

吉井委員 大学をつくりますと言って、適当な計画を出してきたんでしょうけれども、実態は本当に、これは大学偽装と言われても仕方がないものじゃありませんか。耐震偽装もデータ偽装もひどいけれども、大学偽装というのは、そこに学ぶ学生とか子供たちにとって将来にわたってどれだけ深刻な問題を及ぼすのかということをもっとまじめに考えなきゃいかぬと思うんですよ。大学偽装なんて許されませんよ。

 毎年ひどい実態をつかまれていて、是正せよと一応指摘してきたわけですね。大学に教官がいない、LECでは百七十三人中勤務実態がないのが六割ということですが、デジタルハリウッド大学では、「専任教員について、週当たり勤務日数も少なく、月額報酬が低い教員が多数を占めており、また、大学以外にも業務を持っている者がほとんどである」、つまり、大学の教員だ、教官だといいながら、大学で教えることが仕事じゃないんですよ。ほとんどよそへ行って仕事するのが、そっちが専門なんですよ。これは本当に、株式会社で学校をつくるというのはどんなにひどいものになるか、よくあらわれていると思いますよ。

 それで、「教育研究上の責任体制、管理運営への参画、勤務形態・処遇などの面で、専任教員としての位置付けに疑義を生じさせないようにすること。」ここまで言っているわけですよ。つまり、こんなものはもう教育研究上も体をなしていない、管理運営に教官が参加しなかったらそもそも大学になりませんから。勤務形態、処遇など、まともに給料も払われないような話じゃ、報酬も出ない、全くひどいというのが実態だということを、これは文科省自身が指摘しているわけでしょう。これはグロービス経営大学院大学とかLCA大学院大学、ビジネス・ブレークスルー大学など共通して指摘されているんですよ。

 留意事項の中では、株式会社立大学は、設置されて以降こういうことが毎年指摘されているんじゃありませんか。

村田政府参考人 株式会社立の大学を含めまして、新しく設置されました大学や大学院あるいは学部等につきまして、認可後完成年度までの間、原則としてアフターケア、設置計画履行状況調査を実施しているところでございます。

 御指摘の株式会社立大学につきましては、認可時から多数の留意事項を付してそのフォローアップに努めているところでございますけれども、我々といたしましては、今後ともその留意事項に対する改善状況というものを実地で調査するなどして、しっかりと見守って指導してまいりたいと考えております。

 なお、LEC大学の経験を踏まえまして、認可時の申請資料で疑義がある教員につきましては、大学以外の業務状況や授業以外の業務への参画などを確認するなど、工夫、改善を加えまして、認可時により的確に把握できるように努めているところでございます。また、今後、設置計画履行状況調査において、大学新設につきましては初年度から実地に調査を行うなど、よりきめ細やかな対応を行うことにより迅速な問題点の把握に努めてまいりたいと考えております。

吉井委員 きめ細やかなというのはいい言葉ですね。しかし、大学として設置するときからきちっとチェックするのは当たり前の話であって、それで、初年度からきめ細やかですか、そんなものは、きちんきちんとやるのは当たり前の話で、それでやったところが、留意事項は株式会社立大学が設置されて以降毎年出ているんでしょう。少しもまじめに改善しようとしないというのが実態じゃありませんか。そうしたら、ここに学ぶ学生の諸君の学問や勉学にかける情熱もうせてしまうし、そもそも若者の将来はどうなるんですか、こんないいかげんなことで。

 だから、お役所仕事で、何かきめ細やかという言葉で、きょうのこの委員会が済んだら終わりと思っているのかもしれないけれども、そんなことを毎年毎年繰り返してきているでしょう。

 私は、本当にひどい話だと思うんですよ。本来、授業と研究活動を通して学生を育てていくというのが大学というものなんじゃないんですか。

村田政府参考人 LEC大学の認可後のアフターケアの運用を通じまして、先ほど来のさまざまな問題の把握あるいはその是正のための対応がおくれましたことについて、そのために学生に対する十分な大学教育や適切な情報が提供できなかったということについては反省をしているところでございます。

 また、情報が必ずしも得にくいLEC大学を含めました新設、全くの新しい大学につきましては、履行状況調査とその留意事項を取りまとめまして、文部科学省のホームページに逐次登載をし、その仕組みを高等学校関係者に周知するといったことも実施をしているところでございまして、御指摘の点をよく踏まえて、今後しっかりと対応してまいりたいと考えております。

吉井委員 これは、あなたは反省で終わるかもしれないけれども、この大学に大学だと思って行った学生の皆さん、その将来の仕事につくことから人生にかかわるまで、本当に私は大きく傷つけられていると思うんですよ。そんな一片の反省の言葉ぐらいで済むような話じゃないと思うんですよ。

 それで、大学の理念を持っていない大学なんですが、留意事項を指摘しても改善されていない。そうすると、改めて構造改革特区申請をしている自治体、このリーガルマインド大学については、札幌市はビジネスフロンティア育成特区という名前で特区にしているでしょう。国はこの特区を認めたわけですよね。それから、宇都宮キャリア人材育成特区、これも認めたわけです。千葉市ではキャリア人材育成特区、千代田区はキャリア教育推進特区、新宿区は専門職育成特区、八王子市は情報産業人材育成特区、横浜市は都市型大学推進特区と、ずっとあります。

 何とか特区、何とか特区と適当な名前はついていますけれども、では、その特区を、自治体は特区申請を出して認めてもらってやっているわけだけれども、地域の特性を生かした教育を行うためという地域の特性と全く関係なく行われているわけですけれども、大学は、学校教育法上、どういう位置づけになっていますか。

村田政府参考人 大学の目的につきましては、教育と研究を行う場という位置づけで学校教育法上の規定がなされております。

吉井委員 では、その位置づけに基づいて、自治体の方は、こういう事実を把握して、自治体は自治体として、特区で認められたところは是正指導をしているんですか。そういうことをちゃんと把握していますか。

村田政府参考人 私ども、今回の勧告を出しました際に、関係自治体の方にも文部科学省としてこうした勧告をLEC大学に対して出したということを連絡しておりますし、特区担当の関係省庁にも連携をとったところでございます。

吉井委員 文科省もそういう態度だし、自治体の方は連絡をもらったというだけで、実態そのものも、特区申請をして認めてはもらったけれども、実際にはこのLEC大学について是正指導等はやった形跡はない、だれも責任をとらないという実態じゃありませんか。

 「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。」となっていますね。教授もいない、研究室も不十分、予備校の学生と授業が一緒などというとんでもない事態が続いているわけですが、学校教育法上の大学と余りにも乖離がひど過ぎますよ。被害者は学生なんです。そして、学生の人生や将来が大きく傷つけられているんですよ。余りにも無責任だと思いませんか。

 このままずるずる株式会社立大学を続けるべきじゃないと思うんです。教育は営利を目的とした株式会社とは両立しない。株価を上げて利益を上げるというのは株式会社にとっては基本であっても、大学設置を認める特区制度そのもの、ここは大臣に私はきちんと答えてもらいたいけれども、こういう大学偽装がまかり通っているような、大学設置を株式会社に認めるというこの特区制度そのものに私は問題があると思う。どう思われますか。

渡辺国務大臣 御指摘のようなお行儀の悪いところが出てきているのは、非常に残念ですね。やはり特区制度の恩典をよくわかっていないのではないかという気がいたします。

 私が学生のころも、こういった予備校みたいなところはありましたよ。大体、そこで教えている先生は大学の先生でしたね。大学の授業と予備校の授業は違うかというと、そのころは同じでしたね。だから、全く同じような授業をやっていました。中には、刑事訴訟法の先生で、私もよく覚えていますけれども、非常に哲学を語る先生がいましたね。これにはもう予備校だけれども感激した覚えがありますよ。今はどうなっているのかよくわかりませんけれども。

 せっかくこうした非常に厳格な大学設置基準の中で、学生のことを考えてこういう特区制度というのをつくったわけですね。業者のためにつくったわけじゃないんです、これは。ですから、そういう特区制度の趣旨がよくわかっていなくてこういうお行儀の悪いところが出てきてしまったということについては、反省はいたしておりますが、特区そのものが悪いとは考えておりません。

吉井委員 株式会社により学校を設置されている特区計画の大学、これは、ほとんどみんな、留意事項を受けてずっと続いているんですよ。

 ですから、そのお行儀の悪いのは、たまたま幾つかあるというような話じゃないんです。それは、学校法人だって問題を起こすのはありますけれども、株式会社立の大学というのは、ほとんどすべてといったら、いや、おれのところだけは違うというところが一つか二つあるかもしれないけれども、しかし、これを見る限り、同じのが各地でやっているんだから。

 予備校だったら衛星通信でやるんだけれども、ここは生授業のビデオをあちこちへ運んでいて、ビデオを見せるというやり方ですから、本当に安上がりでいいかげんなことをやられている。だから私は、株式会社立の、つまりもうけをねらったこういう大学というものは特区制度をやめるべきだし、ましてそれを全国化するというふうな考え方はやめるべきだ、全国化は廃止するべきだと思います。もう一遍聞いておきます。

渡辺国務大臣 御案内のように、特区制度というのは二つの方向性を持っております。一つは、御指摘の、全国展開をしていこう、規制改革においてオール・ジャパンの対応をしていこうということがございます。もう一つは、地域再生に貢献をする、地域活性化を図る、そういう側面がございます。

 したがって、すべてが全国展開を目指しているわけではございません。特区制度を利用して、こうした規制の中での特例が認められたケースのそれぞれの事業者は、やはりその責任を考えた事業運営をやっていただきたいと思っております。

吉井委員 株式会社による大学偽装のオール・ジャパン化、全国化などというものは認めちゃならぬ、そんなことは許しちゃならない、そのことを指摘して、時間が参りましたので質問を終わります。

河本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十分散会


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