衆議院

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第5号 平成19年3月16日(金曜日)

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平成十九年三月十六日(金曜日)

    午前九時三十八分開議

 出席委員

   委員長 河本 三郎君

   理事 木村  勉君 理事 後藤田正純君

   理事 戸井田とおる君 理事 西村 康稔君

   理事 平井たくや君 理事 泉  健太君

   理事 松原  仁君 理事 田端 正広君

      赤澤 亮正君    井澤 京子君

      上野賢一郎君    遠藤 武彦君

      遠藤 宣彦君    越智 隆雄君

      岡下 信子君    嘉数 知賢君

      木原 誠二君    関  芳弘君

      谷本 龍哉君    寺田  稔君

      土井  亨君    中森ふくよ君

      萩原 誠司君    林田  彪君

      松浪 健太君    村上誠一郎君

      吉野 正芳君    市村浩一郎君

      小川 淳也君    小宮山洋子君

      佐々木隆博君    西村智奈美君

      鷲尾英一郎君    渡辺  周君

      石井 啓一君    吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 溝手 顕正君

   国務大臣         渡辺 喜美君

   内閣府副大臣       平沢 勝栄君

   内閣府副大臣       林  芳正君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   内閣府大臣政務官     谷本 龍哉君

   政府参考人

   (内閣官房構造改革特区推進室長)

   (内閣官房地域再生推進室長)

   (内閣府構造改革特区担当室長)

   (内閣府地域再生事業推進室長)          大前  忠君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 古谷 一之君

   政府参考人

   (国税庁調査査察部長)  鈴木 勝康君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           布村 幸彦君

   内閣委員会専門員     堤  貞雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     上野賢一郎君

  遠藤 宣彦君     越智 隆雄君

  嘉数 知賢君     吉野 正芳君

  市村浩一郎君     鷲尾英一郎君

  横光 克彦君     西村智奈美君

同日

 辞任         補欠選任

  上野賢一郎君     関  芳弘君

  越智 隆雄君     萩原 誠司君

  吉野 正芳君     嘉数 知賢君

  西村智奈美君     横光 克彦君

  鷲尾英一郎君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  関  芳弘君     赤澤 亮正君

  萩原 誠司君     井澤 京子君

同日

 辞任         補欠選任

  井澤 京子君     遠藤 宣彦君

    ―――――――――――――

三月十五日

 犯罪による収益の移転防止に関する法律案(内閣提出第二九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地域再生法の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 犯罪による収益の移転防止に関する法律案(内閣提出第二九号)


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     ――――◇―――――

河本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地域再生法の一部を改正する法律案及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房構造改革特区推進室長・地域再生推進室長・内閣府構造改革特区担当室長・地域再生事業推進室長大前忠君、総務省自治行政局長藤井昭夫君、財務省大臣官房審議官古谷一之君及び文部科学省大臣官房審議官布村幸彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小宮山洋子君。

小宮山(洋)委員 民主党の小宮山洋子でございます。

 先日に引き続きまして、構造改革特区の問題について、特に、規制の全国展開のうち学校教育法の特例、満三歳に達する年度の当初から幼稚園に入園する、いわゆる二歳児を幼稚園に入れることについての特例を削除して全国展開をする、この問題になぜこだわっているかといいますと、これは今回の全国展開の一つの大きなテーマだということと、特区で行ったものを全国展開する際に、その弊害がないかどうかとか、そういうことをきちんと精査されているのかどうかのよい例だと思いますので、この例をもって、構造改革特区について本日も質問をさせていただきたいと思っております。先日の質疑のときには渡辺節を大分聞かせていただきましたが、本日は用意が万端整っていると思いますので、しっかりと実のある質疑をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 そしてまた、文部科学省の方ときのうもいろいろ話をしたんですけれども、どうも文科省と話しているだけではらちが明かない部分がございますので、急遽、少子化担当でいつも前向きな御発言をいただいております平沢副大臣にお越しをいただきましたので、子供の視点からぜひ御答弁をお願いしたいというふうに思っております。

 では、仕切り直しで渡辺大臣にまず入り口の質問をさせていただきますが、今回、特区を外して全国展開を決めるというときに、何を基準に全国展開を決定したのか、そこに問題はなかったのかを、特にこの二歳児の幼稚園入園ということを例にとりながら、わかりやすく簡潔に御説明をいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 何を基準にというお尋ねでございますが、前回も申し上げたかとは思いますが、まず構造改革特区推進本部に設置されています評価委員会において、文部省からも意見を聴取し、評価を実施いたしたわけでございます。非常に多くの成果を上げておる特区がございまして、これは全国展開してもいいのではないかという判断に至りました。

 ついでながら、アンケート調査も実施をいたしております。これは、たしか前回もお話ししたのではないかと思いますが、例えば二歳児の受け入れについて、お子さんにとって、基本的な生活習慣や自立心、思いやりというものが身についた、あるいは言葉などの成長が促進された、また保護者にとっては、子育て不安が解消した、あるいは選択肢が拡大してよかった、幼稚園にとっては、継続的な保育を行いやすくなった、教員の研究心が高まったというような評価があるわけでございます。

 私も、自分の経験からいたしまして、二歳児の段階、つまりお子さんが言葉をしゃべるようになる。うちなんかは、もう年子みたいに三人できちゃったものですから、私の家内の苦労たるや大変なものがありまして、いや、こういう制度があったらよかったのになと思った次第でございます。

小宮山(洋)委員 アンケートの結果で、今いい点ばかりおっしゃいましたけれども、私も持っておりますので、後ほど問題点についてまた伺いたいと思いますが、ということは、今の御説明ですと、どうもその全国展開を評価委員会で決めるものと、各省庁がみずから決定するものの区別が、これまでの質疑でも余りないようでございますが、全国展開を決定するのに、評価委員会による決定だったということだと思います。その評価委員会というのはどういうメンバーか。

 今回、幼稚園を二歳児に広げるということは、各保育所でも保育に欠ける子供以外に子育て支援の拠点としてやっているので、そこと競合する部分があると思うんですが、そのあたりの厚生労働省との話し合いとか調整が行われたのか、あわせて大臣に伺いたいと思います。

渡辺国務大臣 評価委員会の委員は十名ほどで構成されております。例えば、東京大学の井堀先生とか、慶応義塾幼稚舎の舎長などもやっておられた金子郁容先生とか、それから三鷹市長の清原慶子さんとか、東洋大学の白石真澄さんとか、愛知みずほ大学教授の薬師寺道代さんとか、国際基督教大学の八代尚宏さんとか、そういった方々十名で構成されております。

 いずれも御専門の皆様方ばかりでございますが、教育部会の評価委員としては、先ほど申し上げた井堀先生、金子先生、白石先生と、それからこれはエコノミストでございますが、島本幸治さんがいらっしゃいます。

 専門委員としては、江川雅子さん、金子元久さん、葉養正明さん、藤原和博さん、この方は最近よくテレビに出てこられる和田中学校の校長先生でございます。

 以上のようなメンバーでございます。(小宮山(洋)委員「調整したか」と呼ぶ)

 当然、関係役所とは調整をしたと聞いております、文科省とですね。厚生省と調整したのかという点については、済みません、手元に資料がございませんので、よくわかっておりません。

小宮山(洋)委員 よくわからないということですが、うちの部屋でヒアリングをしたところ、評価委員会では厚労省からのヒアリングとか意見交換はしていないと。ただし、推進本部には厚労省も構成員として参加しているので厚労省も合意したものと考えている、うちで聞きましたらそういう答えでしたが、その程度のことでよろしいんでしょうかね、子供の置かれた立場ということからして。

渡辺国務大臣 当然これは構造改革特区基本方針に基づいてやっていることでございまして、閣議決定という手続がございます。閣議決定をするには、我々週二回、閣議で一種のサイン大会みたいな作業をやるんですけれども、前日だったでしょうか、たしか事務次官会議というのをやるんですね。この事務次官会議に通ったものでないと閣議にかからないという、いい悪いは別として、そういう手続になっているわけでございますから、閣議決定というプロセスを経るものについては当然のことながら各省協議をやっているわけでございます。厚生労働省とも、そういう点では協議が行われているということでございます。

小宮山(洋)委員 確かに、構造改革特区で本当に成果を上げて全国展開をした方がいいものがたくさんあるのもよく存じています。ただ、一つ一つのことが詳細にきちんとチェックされて全国展開されているかというと、特にこの二歳児の問題に関しては、余りそこがきちんとされていないのではないかということを、再三申し上げるように、子供の立場から心配をしているということなんです。

 先ほど、アンケート調査の結果のいい部分だけを大臣がおっしゃいましたけれども、懸念の部分というのもたくさん出ておりまして、例えば、おむつがとれていないとか、体力的な差が大きいので個別対応が必要だ、発達において差があるので集団による一斉指導ができない、園行事への対応が難しいなど、集団生活に支障を来すケースの発生というのも報告をされているはずです。それから、まだきちんとおむつがとれていなかったりすることもあって、トイレに時間がかかるとか、成長のぐあいが異なって個別の対応が必要で、人数が少ないとクラス編制ができないとか、その時間配分が園の計画に合わない。

 特に、幼児教育という形の幼稚園を延長するということですけれども、二歳児は幼稚園教育を受けるには早いことがわかったと。学校教育へのステップとして幼稚園で何ができるか考えていかなければいけないというようなことがあるのに、こういう段階で全国展開をするというのはいかがなものかと思うのですが。

渡辺国務大臣 いずれにしても、こういった二歳児受け入れの特区がかなり行われまして、ここにおいて、今御指摘のような否定的な評価もわかってはおりますが、それを上回る肯定的な評価があったものと理解をしております。

 例えば、今、幼稚園の教諭、新しく入ってこられる方々の九割以上が保育士の資格をお持ちになっているんですね。したがって、こういう人材を活用しながら、二歳児のお子さんを預かるにふさわしい体制づくりについて指導しているところでございまして、一〇〇%、完璧に近づくような努力をあわせてこの全国展開では行ってまいりたいと考えております。

小宮山(洋)委員 何回か渡辺大臣の御答弁の中でも、そのことによって現場の教諭の皆さんが訓練をするみたいなお話もあったかと思うんですけれども、その訓練の材料にされる子供はたまったものじゃないというふうに私などは思います。

 あと、文科省の方は、やはり二歳児が幼稚園教育を受けるには早いことがわかったので、親子登園などをするように、親がついてくるように、そういう方策も出すというふうにも聞いておりますが、そうまでしてそこへ広げる意味がどうあるのか。大臣と、それからあと政府委員の方からも明確な御答弁があるのでしたら伺いたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 特区における幼稚園の二歳児の受け入れにつきまして、幼稚園の教育が前提としている集団的な教育にはなかなかなじみにくいという面がございました。また一方で、基本的な生活習慣や自立心が身につくなどの子供の成長が見られたり、親の育児不安軽減の効果があるという積極的な評価があったところでございます。そういうような保護者の方々の多様なニーズにこたえる意味で、今回、集団的な教育という幼稚園教育そのものではございませんけれども、子育て支援としての受け入れという形に変更して全国にその普及を図ることとさせていただこうと考えております。

 その際に、二歳児の受け入れに係る留意点などを通知で発出することによりまして、二歳児の受け入れの適正な普及が図られるように努めてまいりたいと考えております。その際の内容として、親子登園などの方策を示すことも考えられるのではないかというふうに今検討しているところでございます。

小宮山(洋)委員 どうしても私は、二歳児を全国展開するだけの理由よりも、そこは弊害の方が懸念をされると思うんです。

 例えば、先ほどの調査報告の中に、実施幼稚園においては、保育所で行っている職員配置や保育内容を取り入れて、子育て支援に準ずる形で適切に受け入れる工夫を行っていくということなんですが、先ほどお話があったように、今、若い人たちは、九割かどうかわかりません、八割ぐらいは恐らく資格を両方持っていると思いますが、ベテランのキャリアを積んだ方ほど片方しか持っていないわけですよね。そういう中で、工夫という余地でできるのかどうか。

 先ほど、大変メリットもあったというお話ですけれども、二歳児に広げることによってどれぐらいのニーズにこたえられるのか、そこもあわせてお答えください。大臣、お答えいただけるんでしたら、どうぞ。

渡辺国務大臣 先ほども私の体験を踏まえてお答えさせていただきましたが、うちみたいに、かみさんが主婦で、三人立て続けにできちゃったんですね。そうすると、保育所に行って、当時は断られちゃうんですよ。そうすると、上の子が行っている幼稚園にできれば下の子も早いうちから面倒を見てもらえるといいななんという思いはございました。しかし、当時はこういう制度が全くなくて、もう本当に悪戦苦闘しながら三人、年子みたいな子育てをした経験がございます。

 したがって、そういうニーズというのは非常に多様に分布をしているような気がいたします。ですから、二歳児の受け入れがお子さんのためになるような、そういう努力は万全の体制をしいて、全国展開を決めたところでございます。

小宮山(洋)委員 大臣の御答弁ではなかなか中身が詰まっていかないので政府委員の方に重ねて同じことを伺いたいと思いますが、大臣のお子さんのときは、今お幾つかわかりませんけれども、今既に多くの保育園で、保育に欠ける子だけではなくて子育て支援ということをかなりの保育園がやっているわけですよ。保育園の保育士さんは、ゼロ歳からちゃんと見るように日ごろからやっているわけです。そこがやっているのに、人数が足りなかったり、いろいろほかへの影響もあるのに、なぜそれをあえて全国展開するかというのが私はまだ納得がいかないのです。その体制が本当にとれるのかどうかも含めて、政府委員の方から的確に答えていただきたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 今回の二歳児特区の全国展開の閣議決定に当たりましても、厚生労働省と十分事前に相談をさせていただいております。認定こども園の設置の際に設けました幼保連携推進室におきまして、よく連携を図っているところでございます。

 そして、二歳児を受け入れることのニーズについてでございますが、特区におきましては、六百園の幼稚園で三千人の子供たちを受け入れたという実績でございました。そういう面とともに、客観的な、そのものの数字ではございませんけれども、一五・七%の専業主婦の方々が育児の面で悩んでいらっしゃるというデータですとか、あるいは負担感が非常に大きいという方々の割合が高い。そういった面で、二歳のお子さんをお持ちの保護者の方々が子育て支援を幼稚園で受けられるという面での期待感は強いと思いますし、また、幼稚園と保育所、全国に存在してございますけれども、地域的な偏りもございますので、こういうニーズにこたえられる上での一つの選択肢として大きな役割を果たせるのではないかというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 今、ちょうど認定こども園のお話が出ました。これも先日の質疑でも聞かせていただきましたが、本当に認定こども園は、私ども民主党が考えている考え方からすると、拙速でわかりにくい。何か第三のものを、幼稚園、保育所のほかに認定こども園をつくったという印象がぬぐえないんですね。

 今おっしゃったように、中央の方ではその連携推進室をつくっているけれども、地方へ行くと、窓口はやはり文科系と厚労系に分かれちゃうわけですよ。そうすると、補助金などの申請も二倍手間がかかる。だから、この間申し上げたように、これを審議したときも文部科学の当時の大臣も副大臣も、民主党が言っているような一本化の方がベターだと個人的には思うとおっしゃったような状況。

 その中で、これも先日申し上げたように、四つの複雑な形のうち、幼稚園が見る時間を拡大する幼稚園型と、当初から幼保が一体になるという幼保一体型、今まで十三園は全部そうである。これから先、ほかの、保育所型で、保育所が核になる部分は幼稚園型のこともするというのも出てくるし、これは補助金がつかないのでなかなか地方裁量型といってもそこが手が挙がらないという状況だと思うんですけれども、それもやや出てくるというのですけれども、どうもやはり幼稚園の方が拡大をする、そちらの方向の手の挙げ方が、実態からしてもそうですし、認定こども園の中では強いように思うんです。

 そのあたりは、今まだ定着していない、しかも幼稚園に偏った手の挙げ方しかない中でこういう新たなものを導入するのは、現場の混乱とか保護者の混乱、特に子供たちにとっていかがなものかと思うのですけれども、それは政府委員と大臣と両方から伺いたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 最初に認定こども園についてでございますが、先生御指摘のとおり、現在十三園が認可されています。その内訳は、幼保連携型が八園、幼稚園型が五園でございますけれども、現在申請中のところを含めまして八百六十件の申請が今後見込まれているところでございます。その中では、保育所型あるいは地方裁量型の申請も行われているところでございます。

 そして、本年の四月一日付で認可予定の中に、保育所型が一園、それから地方裁量型が一園、認定こども園として認定される見込みがあるというふうに報告をいただいているところでございます。

 そして、この認定こども園については、昨年の国会で法案をお認めいただきましたけれども、幼児教育機能、保育機能、そして子育て支援機能というものをあわせ持った施設として、保護者の方々の多様なニーズにおこたえできるように、今後とも、厚生労働省ともまたよく連携しながら、保護者の方々のニーズにしっかりこたえられるような取り組みを進めてまいりたい。

 また、市町村の段階でも、少子化の段階でございますので、幼稚園と保育所の持つそれぞれの機能、そしてこども園というものを活用して、できるだけ連携を図りながら保護者の方々のニーズに適切にこたえられるような体制を組んでいきたい、そのように厚生労働省とも連携して指導をさせていただきたいと思っております。

渡辺国務大臣 委員が御指摘になられますように、お子さんの立場から考えるという視点はやはり非常に大事だと思うんですね。お子さんから見ると、幼稚園と保育所と一体どう違うのか、そんなことはまるでわからないし、考えもしないわけですね。

 ですから、お子さんの立場に立って、例えば二歳児というのは、おむつがとれるお子さんもいれば、言葉がぺらぺらしゃべれるお子さんもいれば、非常に多様で、なかなかきっちり区別がつかない、グルーピングが難しい、そういう存在だと思うんですね。ですから、これはやはりお子さんのことを一番わかっている保護者にとって多様な選択肢があると本当にいいなと、私自身の体験から見てもそういうことが言えるのではないでしょうか。

小宮山(洋)委員 先ほど政府委員から御答弁があったように、全体で八百六十件申請がある。四月から保育園型は一園、地方裁量型も一園というと、圧倒的にやはり幼稚園型、幼稚園が主体のものが多いわけですよ、現実問題として。

 せっかくお越しいただいた平沢副大臣に伺いたいと思いますけれども、この間御答弁いただいた放課後子どもプランも、学童保育に対して週にちょっとしかやっていない放課後教室の方が、権益をふやすと言うと言い方は悪いですけれども、かなりそういう傾向が見える気がいたしまして、今回の認定こども園でも、もちろん教育も大事です、だけれども、小さい子供たちの福祉とか生活の面がちょっとないがしろにされ過ぎているんじゃないかと思うんです。少子化担当大臣としては、今までこの質疑をお聞きになってどういうふうに思われますか。

平沢副大臣 これからいよいよ卒業式、入学式のシーズンなんですけれども、小宮山先生もいろいろ行かれると思うんですけれども、保育園や幼稚園の卒業式、入学式に行きますと、関係者からいろいろな御注文を受けるわけです。その中に、もうちょっと国の対応をしっかりしてほしい、こういうことでございまして、その辺は、私たちは改善すべき点はしっかり改善していかなければならないなと思っております。

 とりわけ、保育園とか幼稚園、今渡辺大臣からもありましたけれども、一番大事なことは、お子さん方の視点、それから保護者の視点、それから実際に運営しておられる保育所や幼稚園の立場に立ってどういうあり方が一番望ましいか、こういうことだろうと思いますけれども、そういう観点から見れば、確かに改善すべき点が全くないわけではないわけでございます。

 今御指摘ありましたように、認定こども園制度、まだスタートしたばかりでございまして、これからでございます。これも、厚生労働省と文科省のいわばやり方を一体的にやる、そういうことで、子育て支援もしっかりとやっていくということなんですが、今後の推移を見なければわからないわけでございますけれども、これは先生御心配されているようなことのないように見ていかなければなりません。放課後子どもプランについても、問題が全くないかどうか、これも今後の推移を見てみなきゃわかりませんけれども、いずれにしましても、役所の縦割りの弊害が現場に出ないように、これから私たちはしっかりと検討すべき点は検討していきたい、このように考えております。

小宮山(洋)委員 少子化担当の平沢副大臣においでいただいたのは、要は、就学前の子供たちについてどういうような居場所を用意するかのビジョンがないわけです。そういう中で認定こども園をつくってみたり、それで、今、幼稚園と保育所を合わせると三万五千カ所ぐらいあると思うんですが、では全部認定こども園の形に集約していくのかというと、そうでもない。この質疑の中でも、全国一千カ所ぐらいつくればいいというお話がありました。それはなぜかというと、今そういう形でやっているところが一千カ所ぐらいあると思うからと、そういう答弁だったんですね。そうすると、何か非常に場当たり的というか、そのあたりのビジョンがなさ過ぎると思うんですよ。

 また、戦略会議もつくられていろいろなさるんですけれども、子供を安心して生み育てられない一つに、特にこれから働き方を見直すにしても、仕事をしている人、そうでない人、それはいろいろ多様なニーズがありますが、就学前の子供たちをどういうふうにするかは、虐待の問題も含めまして、かなり大きいと思うんです。

 認定こども園をつくってみたり、いろいろと不都合な点も子供の生活の面からはあるけれども、そのあたりの精査が不十分だと私は思うんですけれども、今回は幼稚園で幼児教育の延長として二歳児を受け入れるとか、何か余りにも場当たり的過ぎるという感じがあるんですが、責任者のお一人として、その辺、これからどう取り組むかも含めまして平沢副大臣に伺いたいと思います。

平沢副大臣 御指摘の点は全く私もよくわかりまして、現場でいろいろお話を伺ってみますと、例えば就学前の子供さんからすれば、要するに、保育所といったって、やっていることは幼稚園と同じことをやっているわけで、では幼稚園の方で子育て支援やっていないかというと、就学前の子供さんたちをやっているわけで、ただ、どこが違うかというと監督官庁が違うんです。そして、監督官庁に基づいて現場のいろいろな規制だとか何かが違うわけでございまして、やっていることは、教材も含めてほぼ同じことをやっているわけでございます。

 そういう観点からしますと、先ほど申し上げましたように、子供さんたちにとって、そして保育所あるいは幼稚園の方々にとって、あるいは保護者にとって本当に一番いいのはどういうことなのか。一番大事なのは子供さん方にとってでございまして、今のやり方も含めて、私たちはしっかりと改善すべき点は改善していきたい、このように考えております。

小宮山(洋)委員 省庁のいろいろな権益のはざまに子供が落ちないように、少子化担当の大臣もなかなか実際に動ける部下の方がいらっしゃるわけでもないので大変だと思いますけれども、総合調整の機能がせっかく内閣府にあるわけですから、おっしゃったように、子供の視点、それから保護者が混乱しないように、現場も混乱しないように、そういう視点でぜひやっていただきたいというふうに思っています。

 この点については、そうしたことも例えば附帯決議に盛り込むとか、きちんとフォローできる体制をとっていただきたいと思いますし、今回これを例にとりましたが、構造改革特区をどう全国展開にするかということについては、やはり問題がありそうなものについてはしっかりしたチェックをしたということが国民にわかるようにしていただきたい、そのことを申し上げまして、私の質問を終わります。

河本委員長 次に、泉健太君。

泉委員 民主党の泉健太でございます。

 きょうは、二法案について法案質疑ということで質問させていただきたいと思います。大臣もぜひ答弁は簡潔にお願いをいたします。

 まず、大臣にちょっとお伺いをしたいんですが、東京市政調査会という団体、今回、「特区制度の運用における法律上の疑義について」というような提言を、前向きな提言なんですが、出されている団体なんですが、御存じでしょうか。率直に、今知ったのだったら今知ったで結構ですので、言ってください。

渡辺国務大臣 それほど詳しく知っているわけでは正直ございませんが、たしか、ことしの一月ですか……(泉委員「知っているように言わないでください」と呼ぶ)正直、余り知りません。一月にこの調査会から報告ですかが公表された際に、私も、さらっとですけれども読んだ記憶がございます。中身は余り詳しく知りません。

泉委員 変に意地悪をして質問するわけじゃないので。

 その中身に、この特区制度の中身が徐々に変容してきているんじゃないかというような懸念が寄せられてきております。それは、例えば自治体による提案数、その実現率が大きく低下をしてきている。大臣も再三答弁でおわかりのように、数字がやはり落ちてきているということ。これは出尽くした感があるというふうに言ってもいいかもしれません。そしてもう一つは、特区構想が、大抵のものは出てしまいましたので、どんどん小規模化をしてきているんじゃないかというような懸念が寄せられていること。そしてまた、政府の方でメニュー化がかなり進んできまして、メニュー化によって、逆にそのメニューを使ったものしか出てこないという現状があるんじゃないか。

 そういう中で、今回、この特区制度を延長しようということなんですが、その趣旨、なぜこういう課題がありながら今後もこの制度を続けていくのか、これが一つと、今後どれほどの特区申請を見込まれているのか、これをお答えいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 御指摘のように、特区が小粒になっているのではないかとか、件数が減っているじゃないか、何でこれ以上続けるんだ、こういう御批判があるのは承知をいたしております。

 ただ、この特区が果たしてきた役割というのも結構すごいものがあると思うんですね。オール・ジャパンで展開をしていったものがたくさんございますし、逆に、特区にする前に、提案が出てきたら規制官庁が、ではこれはもうオール・ジャパンで展開しちゃいましょう、そういうルートが開けてきたものですから、特区の申請数が逆に減っちゃったということがあると思うんですね。

 ですから、特区のもう一つのミッションであります地域再生、こっちの方も大いにこれは今後威力を発揮してもらう必要がございまして、例えばどぶろく特区なんというのは、どこが一番最初にやり始めたか忘れましたけれども、今いろいろなところで活用されていまして、都市と農村の体制、交流に大変威力を発揮しているなんという例もあるわけでございますから、こういったいろいろな観点からこの問題は詰めていく必要があろうかと考えております。

泉委員 そこで、大臣にお伺いをしたいんですが、特区制度という特性からしましても、出だしは恐らく多くの構想が出てくる。そして、今回五年延長するという中で、その後さらにということを想像していただいたときに、窓口というか、特区という一つのスキームはやはりこれからもずっと残し続けていく方向がいいのか。それとも、今大臣がおっしゃったように、まさに省庁の意識も大分変わってきて、直接規制緩和ということが可能になってきている時代に、変容しているということで考えたときに大臣は、この法律を例えば今回は延長するけれども、今後はもう必要のない時代というのが望ましいんだという御発想か、それともやはり窓口は残しておくべきなのかという、これはどちらというふうに考えたらよろしいでしょうか。

渡辺国務大臣 よく私が申し上げるように、昔のような金太郎あめ型発展モデルではいけないと思うんですね。やはり個性ある発展モデルを追求していく。そういう視点から、政府がやるべきことは、個性ある地域を目指す、そのそれぞれのやる気を支援する、あるいはやる気の出ないところはやる気を掘り起こすサポートをしていくということが大事でございまして、特区というのは一種の、知的所有権まではいかないけれども、独自性発揮なんですね。ですから、この独自性を発揮するという部分は支援をしていっていいのではないかと思います。

 したがって、特区制度がもう役割を終えたんだということにはならないのではないでしょうか。今後も特区は残していいと思います。

泉委員 わかりました。今、その認識をお伺いしたいと思いましたので、そういった質問をさせていただきました。

 なかなかお時間もないでしょうから、大臣に読んでいただくといっても難しいと思いましたので、きょうはあえてこの東京市政調査会ということに関する質問をさせていただいたわけですけれども、ここがさらに提言というか問題点を指摘されておりまして、特区が全国展開をするに当たっては、やはり規制がかかっているものを緩和して、まず特区を認め、それを全国展開していこうというような話なんですね。

 では、規制とは何なのかというようなお話に今度はなってくると思います。それはもちろん、法律、政省令というところはよくわかる話なんですが、場合によっては、外部の社会に対しては法的拘束力のないいわゆる通知、こういったものを事実上の規制とみなして、そしてその規制を解除するための特区構想みたいなものが出てきているケースがあるわけですね。

 東京市政調査会の方で調べたものでいいますと、例えば、厚生労働省の特区構想の中で公立保育所における給食の外部搬入方式の容認事業。公立保育所における給食、今まで中でしかできないという通知があったんですね。それを特区構想で外部委託もオーケーにしよう、ありにしようということでこの特区が提案をされ、認定をされたわけですけれども、これはそもそも厚生労働省の通知という扱いでありまして、では、果たして通知がそもそも法的に拘束されているという前提でこういう特区の認定が行われるのがよいのだろうかということで問題が浮上してきております。

 そのことについての御見解をいただければと思います。

渡辺国務大臣 日本の今の仕組みを見るときに、残念ながら、昔ながらの中央集権的な岩盤のような体制が依然として残っている分野がやはりまだあるんですね。したがって、こういうものに風穴をあけようと思って、私も四苦八苦しているわけであります。

 今おっしゃったような、通知のレベルで閉まっちゃっているなんというのは、やはりそれぞれの地域の個性ある選択にできるだけ任せていくという方向性が大事だと思います。したがって、そういう方向性については、法制度的な側面からも大いに研究をしていきたいと思っております。

泉委員 今の実例でいきますと、仮に、現段階で市町村が特区を使わずにまさにこの事業をやったとしても、これが直ちに違法だということには、多分直ちにはならないと思うんですね。そういうことからしましても、では、何で特区でせなあかんのかという話になるわけです。

 そういう意味では、今大臣は研究というふうに言っていただきましたが、先ほど言ったように、特区構想は、出た当初はかなり大柄なもの、目立ったもの、こういうものがどんどん提案をされる、しかし、より専門的にというか、より細かいところに特区構想が広がっていっていると今思うんですね。そういう状況でいうと、細かいところまでいくと、法律では縛っていないものまで無理やり、通知があるからそれを撤廃するために特区を持ってこなきゃならないみたいな、そういう使われ方は私はやはりおかしいというふうに思いますので、大臣もそこの認識はぜひ持っていただきたいというふうに私の方からは要望をさせていただきたいと思います。うなずいていただいていますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 次に、地域再生の方に移らせていただきたいと思います。前回も質問をさせていただいたんですけれども、時間が余りなかったということもあり、不十分だった点を幾つか質問させていただきたいと思います。

 地域再生協議会ということについて改めて質問させていただきたいんですが、これを提案するに至った理由として、やはり各地で地域再生協議会的なものが活発に行われているところもあり、それが非常に有効だったこともあったということだと思います。そういう意味で、把握されていれば改めてお伺いをしたいんですが、現在、全国に八百二の地域再生計画がございますけれども、この中で、名称は別にして、いわゆる協議会的なものをつくって地域再生に取り組まれている実例は幾つあるかということがおわかりになれば、教えていただけますでしょうか。

渡辺国務大臣 たしか前回も申し上げた記憶があるんですが、北海道の倶知安町の例、それから熊本の荒尾市の例、豊後高田の例など、こういった地域提案型雇用促進事業を活用しているところは地域再生計画で七十八計画ございます。

泉委員 そうですか。私の印象としては意外と少ないんだなという気がいたしました。大臣は、印象としてはいかがお持ちですか。

渡辺国務大臣 これも役所がくっつけた名前だけれども、地域提案型雇用創造促進事業というところに限定して今数字を申し上げたわけでございまして、こういうことがもうちょっと広がりを見せるようになるといいなと思います。

泉委員 先日も私はお話をさせていただいたんですが、この地域再生協議会、基本的には私も、こういう協議会があれば、より連携をして地域の活性化にもつながるというふうに思っております。

 ただ、懸念というか、どうしてなんだろうと思うのは、法律の条文には、「地方公共団体は、」という形の文章で始まって、地方公共団体は地域再生計画に記載する事項について同協議会で協議しなければならずというふうになっておりまして、いわゆる発議的なものが建前が、この法律では地方公共団体がというところが先に来ている。

 私は、地域のどこが提案をしようが、どこが協議を開始しようが、確かに最終的には事務局は地方公共団体になるのかもしれないんですけれども、やはり今の時代は行政主導というのは、これは中央であっても地方であっても、そうあるべきではないというふうに思っておりまして、あえて地方公共団体は同協議会で協議しなければならずと書くのではなく、あくまで、協議会は協議を行わなければならずとか、そういう書きぶりでもいいんじゃないのかなというふうに思いますが、いかがですか。

渡辺国務大臣 確かに法案の書きっぷりはそういうぐあいになっているかと思いますが、実際に地域の担い手となる方々、ソーシャルキャピタルなどといいますが、これは林副大臣の得意分野でありますけれども、こういう地域の担い手がまさに個性ある発展を目指して創意工夫、連携ができる、そういう運用を大いにやっていくべきだと考えております。

泉委員 今の答弁を政府の皆さんも聞いていただいたと思いますので、その趣旨を踏まえてぜひやっていただきたいと思います。

 もう一つは、地域再生計画認定申請の際には、その協議の内容を添付しなければならない。これも、確かに協議した中身を添付された方が認定計画としてはいいんですけれども、一方で、きょうこれは大臣にはぜひ知っていただきたいんですが、政府がこの地域再生計画についてのアンケート調査ということをされております。きっと御存じのはずだとは思うんですけれども、そのアンケート調査の中には、事務作業が大変多い、書類作成の事務作業が大変負担であるという声が各地域から寄せられている。せっかくいい制度にもかかわらず、また書類の添付かという話なんですね。

 これは、今までの認定計画も、ある意味、地域再生協議会の書類の添付はなしでやっていたところも、あるいは自主的にくっつけたぐらいだと思うんですが、やってきているわけですし、中身がわかれば、これはいけそうだなと政府が認定できれば、余り要件をふやすべきではないというふうに私は思っているんですね。そういう意味では、ぜひ大臣、ここは、しなければならないということは緩めていただきたいなと思いますが、いかがですか。

林副大臣 大臣からもちょっと名前が出ましたから。

 今お話があったような地域再生協議会、まさに我々も、その担い手の方にぜひ入っていただきたいということで、地方公共団体は形だけ置いて、しかし担い手の人と話をせずにつくって出しましたということがないように、協議をしなければいけないという義務を地方公共団体にまず課して、そして、それをちゃんとやりましたというのをやはり添付してもらって、そうすることによって、我々も担い手の方がどういうことをおっしゃっているかということもその書類によってわかるようになる。

 こういうように理解をしておりまして、まさに委員のおっしゃるような方向で考えておるところでございます。

泉委員 まさに平成十七年度の内閣府の委託調査で各地域から上がってきた声としては、事務負担というのが非常に多いという声が事実上げられております。それに対しての対策は何か講じようと今なされていますか。

林副大臣 今おっしゃったとおりのことを我々も考えておりまして、なるべくそれは、今私が申し上げたように、趣旨がわかればいいわけでございますから、いたずらに書類をたくさん出せということにならないように運用してまいりたいと思っております。

泉委員 大臣、この法律が変わる前の申請書類と変わった後の申請書類、実物をぜひ一度副大臣と一緒に見てください。一度そういう実物を見ると事務負担の大変さというのがわかると思います。これは全国各地の声だというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 時間ももうすぐ来ますので最後の確認事項なんですが、前回、我々の松原筆頭が質問で伺いました支援対象範囲というものがございました。税制の関係ですね。そこで直接型、間接型というのがあって、「再チャレンジ支援寄附金税制の創設について」という平成十八年十二月十九日の文書では、1、2、3、1、2、3というふうに二つに分けて、直接型、間接型と書いてあるんですね。ですから、確かに間接型の方には最後に「等」とついていますという話で、その「等」ということが前回お話で出てきたわけです。

 もう一回確認をしたいんですが、間接型にはもともと三つ、フリーターと次世代育成支援と若者の職業的自立というのがあるわけですから、それにこの直接型の三つをプラスして六つというふうに考えてよろしいですか。それとも、それ以外も何か「等」に含まれるのかどうか。確認をしたいと思います。

林副大臣 今、これはいろいろと府令で定めようと思って検討しておりますが、この直接型の三つを含むもの。ですから、直接型でできるものは、直接型であるから間接型でやっちゃいけないというわけではないわけでございますので、これを含む広いものをなるべくこちらの方はやっていきたいと考えておるところでございます。

泉委員 これで終わりますけれども、私は、閣法で常に思うことは、やはり委員会での質疑の成果がなかなか反映されにくいというのを大変残念に思っておりまして、修正すべき点、検討すべき点は、持ち帰って検討しますではなく、この委員会という質疑の場で、それぞれいい提案もあるかもしれませんので、ぜひこれからは閣法についても、修正というものは決して何か問題があったり恥ずかしいということではなくて、よりよいものをつくっていくんだということで積極的に取り組んでいただくことを大臣、副大臣、政務官にお願いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

河本委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 市村でございます。

 四十五分いただきまして、議論、またきょうは確認をさせていただきたいと存じます。と申しますのは、きょうは地域再生法そして構造改革特区法の採決が行われるということでありますので、これまで議論をしてきたことの確認を含めて議論をさせていただきたいと存じます。

 まずは、ちょっと構造改革特区の中で、小宮山委員もかなり議論されておりますけれども、やはり三歳未満の子供の受け入れということにつきまして、私もちょうど六歳、三歳、一歳の子供を持つ親、大臣もさっき、三人の子供を立て続けにということだったんでしょうけれども、うちもそうでありまして、まさに私の場合、現在進行形であります。そういう観点から、実際自分も時間のあるときは幼稚園にできるだけ送っていったりとかしていますので、そのことから考えての観点で少し確認をさせていただきたいと存じます。

 それで、今回、三歳未満ということなんですが、大臣じゃなくて事務方で構わないんですが、今二歳、二歳と言っていますが、三歳未満ということは、つまり一歳、ゼロ歳というのも入るということなんでしょうか、ちょっと確認をさせていただきたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 特区におきましては二歳児の幼稚園の受け入れを行ったところでございまして、ゼロ歳児や一歳児の受け入れは行っていないという特区事業でございました。

 そして、今回の全国展開におきましても、二歳児の受け入れの取り組みという形で進めていく予定でございます。そして、この二歳児の受け入れの支援の一つとして、ガイドラインなども示しながら全国の普及を図るという取り組みにさせていただきたいと思っております。

市村委員 それならば、二歳児の受け入れということになぜ限定して言わないで三歳未満という言い方にされるのか、ちょっと教えてください。素朴な疑問です。

布村政府参考人 お答えいたします。

 今回の特区事業としては、現在、幼稚園が三歳の子供を受け入れるという学校教育法上の規定がありますので、それより下の三歳未満の子供を受け入れるという形でスタートいたしたところでございます。その際に、三歳未満ということを申し上げておりますけれども、実際に今後受け入れていく、全国的な普及を図ろうとするのは二歳の子供になります。

林副大臣 わかりやすく申し上げますと、向こうの方の教育法は、幼稚園に入園することができるのは満三歳から、こういうふうに書いております。我々の方の特別区域法、特区法で、満二歳になった後の初めての四月から幼稚園に入園可能とした、これが特区でございます。

 これを全国に展開するわけでございますので、市村先生の例ですと、一歳のお子様が二歳になって、その学年で三歳になるけれども、三歳の誕生日が来るまでは幼稚園に行けないわけでございます。しかし、同じ学年の子供さんで四月に生まれた方はもう既に入っていく。そういう方と同じようなときから入っていただいていいのではないかというのがそもそもの特区の成り立ちだ、そういうことでございます。

市村委員 私の場合はもっと素朴で、三歳未満ということは、ではゼロ歳でも一歳でも、幼稚園が受け入れたいということになればこれからは受け入れていいのかということなんですね。もちろんそれは受け入れ体制がしっかりしていないといけませんけれども、幼稚園が、いや、私たちは、いわゆる子育て支援という枠をつくってもらったんだから、今回、枠というか規制が緩和されて結局三歳未満であればいいということになると、ではゼロ歳でも一歳でも、幼稚園が取り組みたいというのであればやっていけないということではないということでしょうか。それだけ確認させてください。やってもいいんでしょうか、それとも、やはり幼稚園というのは二歳からということになるんでしょうか。

林副大臣 まさに先ほど小宮山先生と大臣の御議論がございましたように、特区でも、まず二歳になって、三歳になる学年のお子様に何カ月か早く入っていただくということで幼稚園でもできるのではないかというのが特区の趣旨でございますので、それをさらにその前の学年、前の学年というのは特区も想定していなかったところでございます。三歳になる学年の頭から一緒に入っていただくということを今度全国展開しよう、こういう考え方でございます。

市村委員 済みません、ちょっと私ののみ込みが悪いのか。ですから、端的に、つまりゼロ歳、一歳は幼稚園ではまだだめということですね。それを確認させてください。よろしいですね。ゼロ歳、一歳はだめということですね。

布村政府参考人 補足をさせていただきます。

 現在幼稚園は、学校教育法で三歳になった子供を受け入れるという制度になっております。そして、幼稚園の幼児教育機能あるいは教職員の機能を生かして子育て支援をする、そういう意味合いで、未就園児、三歳未満の子供たちを、親子登園という形あるいは子育て相談という形で、ゼロ歳、一歳、二歳のお子さん、そして保護者の方々に幼稚園に来ていただいて相談にあずかったり親子登園という取り組みをする、そういう活動はやられておりまして、それは問題なくできるわけでございます。

市村委員 やはりちょっとわからなくなったんですが、ということは、特区上は二歳だったから特区を解除することによって二歳以上ですけれども、今のお話だと、今でもゼロ歳児からでも幼稚園によっては相談業務とか子育て支援をやっているという理解でよろしいんでしょうか。済みません、ちょっとそれだけ教えてください。

布村政府参考人 現在、先生御指摘のとおり、幼稚園の判断として、子育て相談あるいは親子登園という形で保護者の方への支援事業を行ってきております。

 今回の全国展開をさせていただくに当たっては、ガイドラインというものをお示しして、三歳未満の子供たちの受け入れについて適切に実施いただけるよう国としても取り組んでいきたい、そういう制度になると思います。

市村委員 ちょっと済みません、もう一度、林副大臣。今のお話をお聞きすると、ちょっとこんがらがるんですね。もう一遍確認させていただきたいんですが、では、今おっしゃったゼロ歳、一歳の子育て相談とかいうのと今回特区が解除されて二歳以上の場合行われるものとは、何が違ってくるんでしょうか。何が特別なんでしょうか。

林副大臣 今文科省の方から御説明があったように、今までもやってきたことであります。そこは変わらないということで、今度変わりますのは、特区で今までやっていました、二歳で、この学年で三歳になる方が四月から入るという部分、これを特区ではなくて全国でできるようにするというのが新たに変わるという御説明をいたしましたが、それ以前から特区と全く別に全国で文科省がおやりになっていたことは変わらずにやる、こういう御理解をいただければと思います。

市村委員 実は、きのうちょっと文科省の方にもお聞きしたんですが、要するに、今回の二歳児については幼稚園教育じゃないんだ、子育て支援なんだということを聞いたんですね。お伺いしたんです。ということは、これまで幼稚園としてゼロ歳児からに関しても親子相談ということでやってきたことと、今回の三歳未満ということで特に二歳児を対象にしたということは、具体的にどこがどう違うのか、もう一回ちょっと明確に教えていただけませんか。どこがどう違うのか、今回。

布村政府参考人 御説明いたします。

 これまで幼稚園が幼稚園の判断としてやってきておりました親子登園などの子育て支援事業というものが一つございます。今回は、全国の特区として、三歳になる前の学年の四月から受け入れて、それは幼稚園の教育活動として受け入れる特区事業をやってきておりました。それを今回評価させていただいて、今後は、同じ三歳未満の子供たちを子育て支援事業として受け入れる、それを国としてガイドラインを示すなどを通じて推進するという意味合いで、幼稚園独自の判断の子育て支援事業と、今回は三歳未満の園児を国として子育て支援事業として受け入れていただく、そういう違いを持ってございます。

 それで、今回は、先ほど先生にお話しした中で補足をさせていただきますが、ゼロ歳児の子供、一歳児の子供は、今回の特区の関係では受け入れておりませんので。今回は、特区の評価の上で行います事業は、三歳未満児というか、二歳児のみを子育て支援事業として受け入れる、それを国として推進を図らせていただく、そういう事業でございます。

市村委員 いや、だから、同じ子育て支援という言葉を使われているわけですね。これを大臣、お聞きになられて、僕は、ちょっと済みません、本当に正直、今のを理解できません。だから、もっと具体的に、今までのものと今回の特区を削除したときに起こる子育て支援と一体何が違うのか。今回は二歳児だけだ、今まではゼロ歳児を対象にもやってきたんだ、これは一体、具体的にどう違うんでしょうか。それとも同じなんでしょうか。

林副大臣 もう少し詳しく聞いていただきたいと思いますが、今文科省がおっしゃっておられたように、今までは幼稚園の独自の判断として親子登園等のことをやっていた。それが今度は、国の子育て支援事業として特区の全国展開の二歳からの部分をやっていこうということになった、こういうことでありますので、消費者というか、親御さんの、我々の側から見ますと、うちも今、下の子が年中でございますが、今までやっていたことと具体的にどこが変わるのかというのがわかりにくいというのは委員がおっしゃっておられるとおりでございまして、そこは国として、きちっと子育て事業の中で位置づけるということであると私も聞いておりましたので、具体的にでは現場でどうなるのかというのは、文科省の方から再度聞いていただければと思います。

市村委員 私は、ここで実はひっかかるとは思ってもいなかったことなんです。要するに、ゼロ歳、一歳は対象じゃないということだけ確認できればよかったわけですけれども、どうもそれがあいまいでありますので。ただ、ちょっとこれに余り時間をかけておきたくありません。実はもっと指摘したいことがございますから、とにかく非常にわかりにくいということだけ、私も今、改めて認識しましたので、恐らく、皆さんも聞いていて、委員長もお聞きになられていて何だろうなと思ったと思われますが、これはちょっとここでやめさせていただきます。

 それで、実は、私が今、子供のことで考えたときに、どうも今教育産業界で行われていることは子供の抱え込みじゃないかという気がしてならないんですね。すなわち、なるべくちっちゃいころから自分たちの範疇に子供を置いておきたい。昔は、大学受験、高校受験、中学受験、小学校受験、最近は、もうなるべく早目に子供を自分たちの範疇に抱え込む、そのためにはゼロ歳児からでもお預かりします。一回自分たちの世界に入り込んでおけば、その後、その世界で生きてくれる、どうもそういう状況があるんではないかということを、実は私、感じているんですね。

 どうもその状況の中で子供たちに、早くから集団生活になじめ、もっと早く覚えろ、だんだんおおらかさがなくなってきて、ちっちゃいころからそういうものになじめないと、ちょっとおかしいぞとか、何かこういうふうにレッテル張りが進められるような状況があるような気がしてならないんです、物すごく。

 だから、そういう中で、やはりだんだん、幼稚園もこうやって三歳、二歳となってきて、ゼロ歳、一歳となってきて、ひょっとして、もしそういう観点からこういう低年齢化が行われるとすれば、これはゆゆしき問題じゃないかと思っているんですね。

 実は、二歳児になってくれて大変うれしいのは、私もその一人なんです。今、一歳児の子供がいますから、妻と三歳になるまであと一年半待たなければいかぬねと言っていたんです。ところが、二歳になってくれると、来年からうちの子供はまた幼稚園に行かせていただける。どっちにしても、今、子供の送り迎えに一緒に連れていっているわけですから、では、その子もちょっと用事があるので一緒にお願いしますと、子育て支援でぽんと預けていければ、妻もその間一人になれて、子育てから少しでも解放されるということで、それはうれしいと思います。だから、個人的にはいいことだと思うんです。

 しかし一方で、小宮山委員もおっしゃったように、子供の観点じゃなくて業者の観点、いわゆる幼稚園の観点、保育園の観点とかいうことで、何とか早く抱え込んで自分たちの世界で生きてもらおう、こういう発想であった場合、すなわち、受け入れ体制もないまま、これは申請主義なんですが、しかし、ほかがやっていてうまくいっているのを見ると、やらなければいかぬという気にさせられるわけですね。そうすると、無理にでもやろう、無理にでも何か受け入れようとし始めたときに、無理がだんだん職員の方にも圧力になってきて、何とかしなくちゃいけないということの中で行われていく教育の場、また保育の場となると、それは子供にとって果たしていい場なのかというふうに大変心配をしている部分があります。

 大臣、いかがですか。私はそうならないようにしていただきたいんです。だから、はっきり言って、抱え込む、つまり子供の観点じゃなくて、何とか抱え込みたいという観点から、何か現場に圧力がかかって、無理が入ってくるようなことだけにはしてほしくないと思っているんですが、大臣、御所見をいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 これは利用者といいますか、お子さんの観点、保護者の観点、やはりこれを忘れてはいけないと思うんですね。確かに、子供の数が少なくなってきていますから、囲い込みというんでしょうか、お子さんのとり合いみたいなことがもしかしたらあるのかもしれませんけれども、子育て支援という観点からお子様をお預かりする以上は、やはりそれにふさわしい体制を整えてほしいと思います。

市村委員 あと一つ、この点について申し上げたいのは、やはり情報提供をしっかりとしていかなければいかぬということだと思うんですね。

 今、うちの妻とかまたそのお友達たちの会話とかいろいろ聞いていますと、どこがいいかとか、一生懸命、本当に子供のことを考えて、いろいろ情報収集はしているんです。でも、その業者といいますか、園からすれば、これは保育園でも幼稚園でも、やはりいいところしか見せないわけですね。ぜひうちに来てくれというのに、いや、うちはこういう悪いところがありますなんということは言わないわけで、いいところだけ見せていく。

 そうすると、非常に少ない情報の中で判断をしなくちゃいけないということになってきます。だから、私は大臣がおっしゃるように選択肢の多いことは大変いいことだと思うんですが、しかし、その選択をする際の情報提供がないと、やはりこれは誤った選択をしてしまうことになりかねないわけですね。それは本当に子供にとって、誤った選択というのは大変大きな影響を、はかり知れない影響を将来与えてしまう可能性だってあると私は思います。

 ですから、やはり親の側からすると、別に保育園だろうと幼稚園だろうと認定こども園だろうと、何でもいいんです、はっきり言って。要するに、ちゃんと子供を預かっていただいて、ある種しっかりとした自立できる人間、本当にちゃんと礼儀正しい人間に育てる。もちろん親が、家庭がその最も初歩的なというか、一番の責任を負っているのは間違いないんですが、やはり家庭で幾らしつけても外に行くと全然違う話になっていると、幾ら家庭で言っても外ではそんなあいさつもしないような中で、幾ら家でやれといったって、これはなかなか難しいわけです。

 だから、そういうきちっとした場所にまずしてほしいし、そういうことがちゃんと情報提供されて、親の選択肢を本当の意味で広げていく、こういう状況にぜひともなっていただきたいし、そうしていただきたいし、そういうふうに政府としてもしっかりと取り組んでいただきたい、こう思うわけでありますけれども、また大臣のお言葉を一言いただきたいと思います。

渡辺国務大臣 情報提供をするというのは極めて大事なことだと思います。そこで、多様な選択肢の中で選んでいただくためにも、これは正確な情報を提供する必要がございます。特区の成果や国会での御審議などを踏まえて、政府、文部科学省より都道府県に対して、子育て支援としての二歳児を受け入れることについて、いろいろな留意点をきちんと通知しております。その上で地域のニーズに対応して受け入れ体制を整備してもらうということでございますから、保護者に対して自治体、幼稚園、この両方から適切な情報提供が行われるということが極めて大事なことであり、そういう体制が整備されているものと理解をしております。

市村委員 最後に、これは指摘だけにとどめますが、小宮山委員もおっしゃっていましたけれども、これまで努力されてきた保育園また幼稚園の方はもちろんそうですし、認定こども園の方もそうです、その方たちがフェアな条件の中で情報提供して選んでいただけるというような状況にしていただきたいというふうに、これはお願いということにさせていただきます。

 それでは、地域再生法の方に議論を移してまいります。

 これはもうこれまでもこの場でも大臣と議論をさせていただいているわけでありますが、きょうは採決ということであります。私が御指摘申し上げた直接型の方、いわゆる民間私企業から民間私企業への寄附に対して税制上の優遇措置、寄附優遇を与えるということについて、あれから御検討いただいたのか、いただいていないのか。御検討いただいたとした場合、結局どうなったのか。また大臣の方からお言葉をいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 直接型の税制は、確かに、日本の現状にかんがみた苦心の策なんですね。ですから、この税制がほかにないじゃないかと言われれば、そのとおりかもしれません。とにかく格差を固定化させないためにありとあらゆる政策手段を発動しながら支援をしていこう、一方において、租税回避行為があったのでは困りますよ、そういう両方の観点から制度設計をしたわけでございまして、確かにオーソドックスな税制ではないかもしれませんけれども、こういうニーズもあるのだということもあわせて御理解を賜りたいと思います。

市村委員 大臣は天下り規制についても大変頑張られている。本当に、私もマスコミ報道だけの判断でありますけれども、まさに岩盤に風穴をあけようということでやっていらっしゃる大臣として、そういった意味では高く評価をさせていただいております。私のような若輩が大変失礼なことでございますけれども。その大臣であればこそ、私は、今のお言葉というのは何か寂しい思いを持ってお聞きしたわけであります。

 だから、そこまで本当に国民のためにしっかりと政治をよくしていこう、行政対応をよくしていこう、こういう思いの大臣であれば、苦心をされたのは、苦心というか努力の跡ということについては頭が下がる思いなんですが、とってはいけないものをとっちゃいけないということを何回もここで申し上げておりますけれども、大臣、この法律、本当は喜んで通したい、私は賛成したいんですけれども、こういう状況だと賛同しかねるような状況になるんですね。

 どうでしょうか、大臣、大臣が大臣になる前に多分決まったことかもしれないけれども、この間申し上げたように、大臣がサインをしたものでありますから責任があるわけです。だから、責任ある立場の方として、やはりここは問題があるんじゃないかということを、苦心のことはよくわかるんですが、問題ありというふうにはお思いになられませんでしょうか。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

渡辺国務大臣 今後の議論として、やはり日本の寄附税制は残念ながら非常に不十分であると思います。したがって、もっと民間が公益を担う、そのために資金の手当てがより円滑にできるようにする、そういうための税制改正は大いに議論をしていくべきだと考えております。ことしの秋以降、税制の抜本的な見直しが行われるわけでありますから、我々としては、大いに、日本のNPOを初めとした民間で公を担う人々がより円滑に資金調達ができる、そういう方向性を目指していきたいと考えております。

市村委員 まさに今の最後の言葉は我が意を得たりという思いでありますので、それをやっていただきたい。

 ただ、その前に、私企業から私企業への寄附ということについて、やはりやってはならない。間接型の方でも、これには「等」がついていますから、いわゆる直接型でやろうとしている政策目的を十分やれるんですね。間接型の方はあるんです。これはあるんです、こういうことが。ただ、やはりこの直接型、問題があると思います。

 それで、きょうは財務省の方にも来ていただいています。財務省さんにもちょっと私はお伺いしたいんですけれども、これは、まさにさっきの議論にもありましたように、閣議決定されている。閣議決定の前に事務次官会議があるわけですね。ということは、財務省の事務次官もオーケーを出したということだと思いますが、これは本当に財務省はオーケーでよろしいんでしょうか。

古谷政府参考人 お答えをさせていただきます。

 渡辺大臣の御答弁を補足する格好になろうかと思いますけれども、税制を担当するサイドからの御答弁ということで、よろしくお願いいたします。

 税制上、寄附金につきましては、公益性の高い主体に対して支出される場合に優遇措置の対象にされるというのが基本でございまして、主要先進国においてはいずれもこのような取り扱いになっておると承知をしてございます。我が国の税制におきましても、基本的には同様の考え方で、所得税や法人税などの寄附金優遇税制が仕組まれております。

 ただ、御承知のように、法人の場合には、事業活動を目的とする機関でございます法人企業、ここが支出をいたします寄附金につきましては、事業活動との関連性を有する場合もあるということで、一定の費用性を否認し得ないものもあります。そういうことで、我が国の法人税法におきましては、一般的な制度といたしまして、民間企業同士の寄附金も含めて、一定の金額の範囲内で損金算入を認めるという仕組みがございます。この仕組み自体が、諸外国にない我が国独自のものでございます。

 今回は、こうした現行の法人税制の考え方を踏まえました上で、再チャレンジ支援事業を実施する会社に対して直接支出をされる、いわゆる直接型の寄附金につきまして、法律上、租税回避に利用されないことなどがきちんと担保されているということを確認いたしました上で、政策的な特例措置としまして、法人税に限ってこの寄附金優遇措置を設けさせていただいたということでございます。

市村委員 大分これで問題点がまた出てきたんですね。結局、今おっしゃっていただいたように、企業の、いわゆる法人の一般寄附金枠のことも出てきたんですね。これ自体、世界にないんです。今それを質問しようと思ったんですが、もう言っていただきましたのであれですが、ないんですね。

 では、お聞きしたいんですけれども、今回の制度は、直接型はその一般寄附金枠を活用するということでしょうか、そうじゃないんでしょうか。

古谷政府参考人 お答えいたします。

 現在の法人税の寄附金控除と申しますのは、まず、一般枠につきまして、資本金と所得の一定割合を損金算入するという一階部分がございます。これに加えまして、公益的な寄附金につきましては、この一般寄附金と同じ額の枠を別枠で設けるという格好にしてございまして、今回の直接型の再チャレンジ寄附金につきましても、その二階部分の別枠の中で損金算入ができるという仕組みをつくらせていただいております。

市村委員 もう一回お聞きします。ということは、やはり本来は法人の一般寄附金枠を使うということですか。それがイエスかノーかだけ、お聞かせください。

古谷政府参考人 お答えいたします。

 仕組みとして、別枠が一つ二階に乗っているわけでございますが、再チャレンジ寄附金を直接型で出される場合を想定いたしますと、実質的に一般寄附金の枠が倍になっているというふうに御理解いただいてよろしいと思います。

市村委員 なるほど、つまり一般寄附金枠を使うと。もう一回確認させてください、それでいいんですね。

古谷政府参考人 一般寄附金枠は法人税の基本的な制度でございまして、今回の寄附金優遇といたしましては、一つ別枠というものが設けられております。その中で、この再チャレンジ寄附金を入れるということでございますが、仮に再チャレンジ寄附金だけをする企業を想定いたしますと、その別枠をまず使われて、別枠の額よりも再チャレンジ寄附金の額が多くなりますと一般寄附金枠も使えますので、実質的に倍になるということでございます。

市村委員 大体、いわゆる一般寄附金枠は大変ちゃんとした定義があって、普通の企業だったら年間数万円ですよね、まあ数十万。これは大企業だったら何百万と出せる場合もありますけれども、数十万です。ということは、今回の再チャレンジ支援の、そうしたいわゆる雇用のための資金も、では一企業当たり数万円の寄附ということを想定されているんですか。

古谷政府参考人 一般寄附金枠は、当該企業の所得金額の二・五%プラス資本の金額の〇・二五%、その半分が一般枠ということでございますので、企業の大きさによって枠は区々であろうかと思います。

市村委員 いや、だから、その枠のことは今申し上げているとおり、さらに小さいわけですから、つまり、数万円とか数十万でそんな雇用のための支援金が出るのかということを私は確認させていただいているんです。今、その枠の別枠でとおっしゃったから。つまり、その程度の寄附額しか考えていないなら、政策目的は達成できないと私は思いますよ。いかがでしょうか。

古谷政府参考人 金額について一概にお答えするのは困難かと存じますけれども、対象となる、いわゆる再チャレンジ事業を行われる企業がどのくらいの雇用を予定しておられるかということによっても変わってこようかと思いますけれども、先ほど申し上げました、一般枠の倍まで再チャレンジ寄附金が法人税制上経費にできるということでございます。

市村委員 ということは、これはやはり大企業を対象にしているとしか考えられないですね。大企業以上でないと出せませんから。普通、出せませんよ、枠というのは普通数万円ですからね。それを倍にしたって数万円から数十万ですよ。それで、ちょっと待ってください、林副大臣。

 もう一回確認しますけれども、つまり、一般寄附金枠ではなくて別枠をつくるというのは、一般寄附金といかにも関連性があるようにお答えになられたけれども、違うということですね。これは再チャレンジ支援としての制度であるから一般寄附金とは違うということで、もう一回確認させてください。そこは違うんですね。

古谷政府参考人 今回の再チャレンジ寄附金の直接型のいわゆる寄附金優遇税制といたしましては、別枠の部分がそうでございますが、たくさん寄附をされた場合には一般枠もお使いになれるということでございます。

市村委員 もちろん、それは一般枠があるわけですから、当然のごとく使えるわけです。だから結局、もう一回確認させてください。つまり、違うということですね。これは確認なんです、一般寄附金枠とは違うという。

 では、林副大臣、お答えください。

林副大臣 なかなか財務省は言いにくいと思いますので。

 例えば、今委員がおっしゃったように、所得金額の二・五%プラス資本等の金額〇・二五%、この二分の一ですから、その金額は、例えば二十万円の企業があったとしますと、今までは二十万円の一般の枠があるわけですね。今度、再チャレンジの枠が二十万円、もう一個乗りますから、全部で四十万円の枠を持っていますが、二十五万円寄附したいというときは、二十万円がまず再チャレンジ枠でいって、残りの五万が、残りの二十万のうち、ここは何でもいいわけですね、一般ですから。そういうことだと思います。ですから、二つの枠で、リャンファン目は高いということですね。要件、縛りがかかっている、そういうことであろうと思います。

市村委員 今、副大臣おっしゃっていることはわかっているんです。その上でお聞きしているんですね。

 つまり、世界に例のない法人の一般寄附金枠を持っているんです。アメリカは個人の一般寄附金枠なんですね、千ドルまで。だから、アメリカの場合は、それをNPOに皆さんは寄附しているわけですね。それで千ドルまで所得控除をしているわけです。だから、法人の一般寄附金枠を持っている国というのも極めて珍しいというか、日本ぐらいしかないということですね。これもこれでいろいろ問題があるから議論しなくちゃいけないことなんですが、きょうはおいておきます。

 ただ、今回の再チャレンジ支援の直接型の税制は、これとはまた別枠なんですよね、別物なんです。そこを確認させていただきたかったんです。それで、別物ということを確認した上で、では今回の別枠を設けるだけの理由づけは何でしょうかということなんです。

 もう一度確認させてください。別枠を設けて、なぜ寄附優遇を与えるのかということについての理由づけを、大臣からもう一度確認させていただきたいと思います。

渡辺国務大臣 安倍内閣においては、再チャレンジ支援のための政策を、ありとあらゆる手だてを尽くして用意をしていこう、その一環としてこの税制を設計したわけでございます。

 したがって、高齢者とか障害者、子育て中の母子家庭のお母さん、こういった方々には、今までにないような税制を苦心惨たんしてつくっても支援をしていこうという意気込みでございまして、ぜひこの意気込みを御理解いただきたいと思います。

市村委員 意気込みは大変いいと思いますが、私の質問は、今回こうした税制を入れられる理由をもう一度教えていただきたいということです。

 済みません、では財務省の方からちょっと一言、今回なぜこういう税制が可能なのか。財務省さんはオーケーを出されたわけですから、その理由づけを教えてください。

古谷政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますが、先ほど申し上げましたような、我が国の法人税制の仕組みを踏まえた上で、今回、直接型につきまして、法律で、当該寄附金が再チャレンジ支援事業に確実に充てられるということや、租税回避に利用されないことが担保されておるということを確認いたしまして、政策的な特例措置といたしまして法人税の寄附金優遇措置を設けさせていただいたということでございます。

渡辺国務大臣 要するに、一般寄附金の枠ですと相手先が限定されないわけですね。しかし、今回の再チャレンジ税制は相手先を限定して、高齢者、障害者、子育て中の母子家庭のお母さん、そういう目標を絞って、そこに支援の手段を施していこうということでございます。

市村委員 また後で確認させていただきます。

 では、これから日本の税制上、政策目的がはっきりしていて、かつ、チェックがちゃんと行き届くという前提であれば、今回のような税制はあり得るというふうに、この国はこれから税制上考えていくということでよろしゅうございますか。これだけ確認させてください。

渡辺国務大臣 税制の抜本見直しの必要性があるわけであります。その抜本見直しは、まさしくことしの秋、いろいろなレベルで始まっていくわけでございますから、当然、寄附税制についても、あるべき姿を目指しての議論が行われるものと理解をいたしております。

市村委員 では、その寄附税制の抜本的見直しのときに、今回のように政策目的がはっきりしている場合、チェックも行き届くということが、僕はチェックが行き届くというのは大変困難なことを自分の経験からも知っていますので、なかなかこれは、私もある基金のプログラムオフィサーをやっていましたから、助成した先がいかにその資金をちゃんと使っているかどうか、これをチェックするのは並大抵ではありません。一つの組織をチェックするだけでもです。

 それは、乗り込んでいって、ほら、見せろということじゃだめなわけですね。それは当然相手もしっかり頑張っている団体なわけですから、乱暴に見せなさいということじゃいけません。やはりそれなりに人間関係をつくっていって、どうですかということでやらないと、信頼関係は築けないわけですね。お金を出しているんだから何でもやっていいんだという話じゃないです。そうしないと長続きしない、関係は。だから、チェックなんというのは極めて難しい。

 前回、公益認定等委員会のときも週三十件とか言っていましたけれども、はっきり言って、できるはずないんです、とてもとても。だから、結局チェックは難しいんですよ。でも、前提としてその難しいチェックがきくという前提に立って、政策目的もはっきりしているということであれば、今後の税制の抜本的見直しのときにこうしたこともあり得るというふうに、もう御決断をされたということでよろしいかどうかだけちょっと確認をさせていただきたいと思います。

林副大臣 税制の一般的な議論にもかかわりますから財務省に補足していただいてもいいんですが、ぜひ私も議論に参戦させていただきたいと思います。

 まさに税制でございますから、例えば憲法ですとか民法の一般則ですとか、こういうものであらかじめこれはだめだ、例えば公序良俗のような話ですね、そういうことでない限りは、まさに議会においてこの租税の制度というのは設計される、それが議会の成り立ちであったわけでございますので、ここで御承認をいただければいろいろな租税のシステムというのはできるんだろう、こういうふうに承知しておるわけでございます。

 まさにそういう観点で、今委員が御指摘になっているように、きちっと回避行為ができるのかとかチェックができるのかというのを議会で御議論いただいた上でやっていこうということでございまして、諸外国に例がないのでできないんだというだけでは、やはり我々は議論するつもりはございません。

 それからもう一つは、この間御議論を聞いておりまして、ある政策をやるために例えば補助金を出すとかいうのはあるわけでございますので、補助金の対象が、例えば非営利か営利かにかかわらず、政策を誘導していくためにやってくださる方には、その慫慂をしていくという意味でこういう税制も位置づけられてしかるべきものだ、こういうふうに考えておるところでございます。

市村委員 この間、渡辺大臣も、松原委員に対する答弁の中で、やはり寄附という言葉は使われてなかったんです。無意識かもしれませんけれども、融資という言葉を使われていたんですね、融資という言葉を。寄附のことを松原委員は聞いているのに、融資だというふうに。多分、そっちの方が極めて正しい認識なんですね。だから、今回も、何で融資とか出資とかいう話じゃなくて寄附なのかということなんですね。

 もちろん何事もタブーを設けちゃいけないというのは私もそう思っています。だから、別に諸外国がやっていないから日本がやる必要はないなんという議論はしているつもりは一切ありません。諸外国がやらなくても日本が先駆けてやるべきことだってたくさんあります。しかしながら、私企業から私企業への寄附に対して、なぜ税制優遇措置を入れていないかというのは、やはり理由があるからなんですね。理由があるからなんです。

 だから、もう時間が来ましたので最後に指摘だけにとどめますが、すなわち、日本における営利企業とは何かということをもう一回議論をしっかりしないと、このことは安易にやってはならないと私は思っているんです。そこをしっかり踏まえないと、結局、諸外国の民民の寄附というのは、つまりNPOに対する寄附なんですね。これは広範に、NPOがやる公益的な存在の部分もありますから、そういうところに対して寄附をした場合、その分の税の優遇措置があるというのは、これはもう広く認識されているところであります。

 しかし、今、日本がやろうとしている私企業から私企業への寄附について税制優遇を与えるということについては、きょう、今回のこの委員会の場でも議論させていただいたように、これは本当はとってはならない。もし、とるんだったら、きちっと、日本における営利企業というのはどういう存在なのか、すなわち、これからもう日本においてはNPOと営利企業には垣根はないんですよ、日本においては株式会社というのは上場を目指さなくてもいい、また、配当も出さなくてもいい、ある意味で、もう極めてNPOに近い存在としての株式会社も存在しているということを前提に、ちゃんと深い議論をした上で、前提にした上で、では、こういうふうな税制上の優遇措置をとるというならば理解はできるということでありますから、そのことを最後に指摘しまして、大臣から一言だけいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

渡辺国務大臣 今後、大いに議論をしていきたいと思います。

市村委員 ありがとうございます。

 では、終わります。

河本委員長 次に、小川淳也君。

小川(淳)委員 民主党の小川淳也でございます。

 先日はありがとうございました。その後、一昨日、与野党大幹部のもとで国会が正常化をいたしまして大変喜んでおりました。その小一時間後、憲法特の方でまた職権によって委員会立てが行われまして、昨日、公聴会の日程が強行採決ということで、非常に不本意ではございますが、こうした状態が続いております。その上で、きょう質疑に臨ませていただきます。

 まず、構造改革特区についてお尋ねを申し上げますが、先日の質疑の中で実績等についてお尋ねをさせていただきました。それらを踏まえて、今回の改正案、特に自治法の改正案について、その内容、趣旨、お答えをいただきたいと思うんです。自治法の特例について。

渡辺国務大臣 地方自治法は小川委員の専門分野かと思いますが、私のような素人が答えるのもなんでございますが、今回の特例の趣旨、その期待される効果であります。

 都道府県は、地方自治法による事務処理特例制度によって、その権限に属する事務を市町村に移譲することができます。その場合であっても、移譲後に市町村が国と行う協議や国への申請については、都道府県を経由して行うこととされております。

 今回の特例は、都道府県が特定の事務のすべてを市町村に移譲した場合には、都道府県が経由を行わないことを認めるものであります。経由を認めた一切の関係事務を行う必要がなくなることによって、都道府県における事務の合理化効果が期待できるということでございます。

 なお、事務処理特例制度による事務移譲が進めば本特例の適用の対象となることから、今回の特例の存在は地方分権の観点からも大いに意義のあることであると考えております。

小川(淳)委員 ふだん非常にスピード感のあられる大臣の御答弁、十分御自身のペースでやっていただいて聞き取ることは可能でございますので、スピーディーにお願いを申し上げたいと思います。

 この自治法の特例なんですが、私は過去に都道府県にもおりました、そして市町村にもおりました。そうしますと、国と県の関係、あるいは国と市の関係も難しい面があるんですが、県と市町村の関係というのも意外と難しいものなんですよね。

 この特例の趣旨はよくわかります。もう移譲した事務については都道府県はできるだけ関与しないんだと。ところが、うまくいっているときはこれでいいんですが、何かトラブルが起きたりとかあるいは問題が発生した場合に、都道府県の側としては、そういうやりとりを管下の市町村と国との間でやっていたことを全く聞いておりませんということでは、その後の対処においてスムーズにこれを、場合によっては調整役等で入らないといけないわけですね。

 そこで、この法律改正の趣旨はよくわかりますが、きょう大臣の御答弁でぜひいただきたいんですが、この特例が適用された後であっても、市町村が国との間で何か協議を行う、あるいは調整を行う必要があるときには、都道府県に対して積極的な情報提供なり、事前の断りなり調整なり、これに努力する必要がやはりあると私は思いますが、大臣の御答弁をいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 調整の必要についてでございます。すべての事務を市町村において処理するというのは厳し過ぎるのではないか、こういう御指摘もございます。

 都道府県のある事務について、事務処理特例条例によってそのすべてを市町村において処理するという場合に、都道府県がその事務に係る協議の経由を行わないということにすれば、経由を含めた一切の事務を行う必要がなくなります。この場合、都道府県においては大変な事務の合理化が期待されます。

 一方、事務処理特例制度において国の行政機関の便宜を図ることを初めとする国や都道府県、市町村を通じた事務の適正な遂行を図るという都道府県経由の一般的な必要性は引き続きあると考えられますので、まずは特区において、特に合理化効果が大きいと考えられるケースについて特例を適用させていただきたいというのが今回の趣旨でございます。

小川(淳)委員 改正の趣旨もよくわかります。ただ、我々、仕事を進める上でもよく連絡とか報告とか相談とか、これはもうどこの組織であるにかかわらずよく言われることでありまして、そういう意味では、そういうことも念頭に置いた上でのこの法律の運用というのは、特にトラブルとか問題が発生したときに備えて非常に大事なんだろうなと、この特例を拝見してそう思いましたので、御指摘をさせていただきたいと思います。

 続きまして、地域再生法に関連してお尋ねをさせていただきますが、やはり焦点は税制特例だと思います。

 この中で、少し大臣の御所感をいただきたいんですが、企業が企業に寄附をする、しかも相手先企業は、例えば高齢者の雇用、あるいは母子家庭でおられるお母さん方の雇用、そして場合によっては若年者の雇用といったこともあるんだと思いますが、非常に立派なことをしているな、今の社会にとって必要なことをしているなとよその会社を見て思ったときに、自分の会社がその会社に対して寄附をするということは、私は実感として想像しにくいんですね。

 例えば、どこでもいいです、トヨタと日産でも結構です、ソニーと松下でも結構です、相手さんが立派な社会的な政策をやっているから、私がそれに対して寄附をする。大臣が社長だったとしたらという前提で想像していただきたいんですが、私が社長なら、寄附をする余裕があれば自分の会社でやりたい、これが私の実感的感想でありますが、大臣、いかがですか。

渡辺国務大臣 片っ方が非常にもうかっておって、キャッシュフローが潤沢である、一方の会社は、とても志の高い経営者がいて、でも残念ながらもうかっていない。片っ方のもうかっている方は、実は余り人を使わない、一方、片っ方のもうかっていない方は、もうとにかく人手が必要だ、でももうかっていないというようなケースにおいては、まさしく今回の直接型の税制が発動されるようなケースとしてあり得るのではなかろうかと思います。

小川(淳)委員 もちろん法制的にそういう御答弁、お答えをしないと、今回のこの提案というのは持ちこたえられないわけでありますが、やはり実感といいますか、想像の上ですけれども、この実感からいうと非常に、一体どんなケースでそれがあり得るんだろうということを思うわけです。

 なぜこういうことを申し上げるかといいますと、私自身も、ちょうど旧自治省の税務局でこの税制特例を担当していたことがあります。大臣御存じかどうかあれなんですが、いわゆる所得税法、法人税法の本法と言われる法律、これは非常によくできた法律ですけれども、そんな大部の法案ではありません。そして、私が担当していた地方税法もそうですね、本法。

 ところが、これにおんぶしているといいますか、まつわりついているといいますか、いわゆる租税特別措置法というのは大変な大部にわたっております。地方税法の附則特例、これもそうなんですね。この数々の、今まで本当にいろいろな法案がありましたけれども、経済立法、地域再生立法に関連した税制特例、それに限らず、さまざまな租税特別措置がなければ、主税局も旧自治省税務局もそんなに人は要らないと言われたぐらい大変な大部にわたっております。

 もっと突っ込んで申し上げないといけないのは、では、それが本当に効いているか、世の中で。世の中では、本当にそれが効き目をもってある方向へ社会を誘導しているかというと、これが非常に寂しい結果に終わっているのが大半であります。私自身がそれを担当していたときの実感から申し上げてですね。

 そこで、お尋ね申し上げたいんですが、今回の税制特例を編み出される以前に、この地域再生法ができた段階で、当初の地域再生税制というものを特例措置として仕組んでおられます。二年たっておりますが、これは実際にどのぐらい使われていますか。

渡辺国務大臣 たしかこの前の審議でもお答えしたかと思いますが、この地域再生支援税制は、特定の事業を行う会社が、この税制優遇措置を受けてお金を集めて、資本的な投資をする、こういう想定でたしかでき上がっていたかと思います。ここでたしか三件ほどこの税制が使われていたかと記憶をいたしておりますが、設立事業会社としては、ゼロでしょうか、そんな現状かと思います。

小川(淳)委員 大変答えづらいことをお聞きしているわけでありますが、つまりそういうことでございまして、そのことは、恐らく最初に申し上げた、そんな、人様に上げるお金があれば、世の中から高い評価を受けることですから、自分の会社でやりたいというのが本音じゃないかと思います。そういうこととこの企業の特例との関係、やはりよく整理をしていただきたいなというのが率直な感想であります。

 あわせて、もう時間も限られていますので、単刀直入にお伺いをさせていただきますが、この直接型の特例措置において、なぜ個人寄附は対象にならないんですか。企業と企業だけ。間接型は公益法人に対する個人の寄附を特例措置の対象にしています。むしろ個人を入れた方がいいと思いますが、いかがですか。

渡辺国務大臣 法人税の方に限られているのはなぜかということでございますが、これは対象を限定しております、先ほど来の議論のように。そして、一方において租税回避的なことは抑制をしなければいけないということでございますから、余り手間暇かかり過ぎるような税制になっても困りますので、そのような限定をさせていただいているということであります。

小川(淳)委員 これは余り区別する必要はないような気がしますね。社会政策であれば、企業に個人が寄附してもいいんだと思います。

 公益法人を使った間接型、これは罰則が想定されていないようですが、それは事実でしょうか、正しいでしょうか。ないとすれば、それはなぜでしょうか。

渡辺国務大臣 直接型においては、今回、罰則規定を設けてあります。間接型においては設けておりませんが、それは公益法人の一般的な規定においてサンクションがかけられるという前提で、罰則は設けておりません。

小川(淳)委員 公益法人そのものの税制にかかわることでしたらそうでしょうが、それに寄附をした側の個人と、はかった場合の、所得税法、それぞれの罰則措置はあるんでしょうけれども、寄附をした側の個人に対しても、何らかの不正、虚偽等があった場合は、所得税法による罰則はもちろんのこと、この法制においても一応それを想定した定めを私は持つべきだと思いますし、あるいは、公益法人だから、もしかして余りそうした違法な事態というのは想定しないという議論があり得るのかもわかりませんが、今は中央官庁そして都道府県を初めとした、むしろ官、公の側のいろいろな不正等が社会問題化しているときですから、そこにも念を入れた定めを私は持つべきだと思います。指摘だけさせていただきます。

 最後のお尋ねです。

 直接型の支援スキームで若者、フリーター、ニート対策、若者支援がなぜ想定されていないのか、お答えをいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 直接型で限定しておりますのは、高齢者とか障害者とか母子家庭のお母さん、こういう方々は、例えば障害者の皆さんは障害者手帳というのがございます。母子家庭のお母さんは、やはり似たような手帳をお持ちですね。一方、フリーターと言われる若者はフリーター手帳というのがございませんで、なかなかこれは限定するのが難しいという状況がございまして、このような設計にしてあるところであります。

小川(淳)委員 これはよく厚生労働省さんなんかとも調整が必要なんだと思いますが、例えば今回の法律の五条の改正で、「安定した職業に就くことが困難な状況にある青年」という法律的な定義を置かれたわけであります。法的な定義を置いたのに、そこをターゲットにした、税制を含めた、何でもいいわけですけれども、支援措置というのが講じにくいという御見解は、今後さまざまな雇用法制を含めたいろいろな社会政策を打ち出していく上で影響を及ぼす可能性が私はあるような気がします。

 ですから、これは手帳があるなしとかなんとかいうよりも、ならばどうするのかということをむしろ考えていくべきであると、もう時間もございませんから御指摘をさせていただきます。

 この税制全般なんですが、最初に申し上げたように、とにかくなかなか実績を上げていくのが難しいのがこの税制特例です。中身が伴うのかどうか。これは、やったふりになる可能性、一方で、やったふりをするには非常に便利なんですね、この税制特例というのは。法律の改正もしますし、こうした支援税制ができましたと。やったふりをするには非常に便利ですが、実際にそれが成果を上げる、果実をとっていくのが非常に難しいというのがこの税制特例ですので……

河本委員長 小川君、持ち時間が過ぎております。簡潔にお願いします。

小川(淳)委員 ぜひ、その点にも御配慮をいただいた今後の運営、成立すればですけれども、お願いを申し上げたいと思います。

 ありがとうございました。

河本委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、先ほども質問ありました、ことし一月十七日の、財団法人東京市政調査会から「構造改革特区制度の改善に向けた提言」というのが発表されておりますけれども、このことについては先ほどの答弁で大臣は知っていますということですから、この理事長の西尾勝さん、この方が、通達、通知による特例措置が全体の三割以上に及んでいることを発見した、特区制度運用に異議ありということを言っておられますが、まず、これを読まれての大臣の感想を端的に伺いたいと思います。

渡辺国務大臣 私も、こういう通知で岩盤のような規制になっている、そこに風穴をあけようとしたケースが結構確認されているというのを見まして、いささか驚きました。

吉井委員 お読みになってどう理解していただいたかということが、いまいちよくわからないんですが、この調査会の提言の中で、「この間、提案から認定までの流れを一貫して通観できる独自のデータベースを構築した上で量的な分析を行うとともに、物流、福祉、教育、農業などの特区の現地調査や全自治体に対するアンケート調査を行った結果、かえって規制強化につながり、地方分権改革の障害となっている事例をはじめ、いくつかの問題が判明しました。」というふうにここでは指摘されているんですね。

 それで、提言が四つ示されておりますが、その提言の一の中では、「自治体の自治事務に対する「通達・通知」をあたかも法令に準じる規制根拠をもつものであるかのように取り扱い、特例措置を設けるケースが多数確認されている。」というふうに指摘されております。その問題点是正のための四つの提言の中で、あたかも法令に準ずる規制根拠を持つものであるかのように取り扱い、特例措置を設けるケースが多数確認されるということなんですが、そこで、私は内閣府の政府参考人に伺っておきたいと思うんですが、具体の事例を挙げての指摘があるんですが、この指摘について内閣府はどう考えているのか、伺っておきたいと思います。

大前政府参考人 これまで四年余り特区の取り組みを行ってまいりました。

 これまでの特区の取り組みの内容でございますけれども、自治体に対して行われている通知でございましても、国の補助金等の交付基準に対応してその通知が出されているケースや、国の地方支分部局に対する通達とあわせて発出されておりまして、それに準じて運用されているケースなどもございます。こうしたことを踏まえまして、地方公共団体からの御提案、地方公共団体からの求めに応じてそうした特例措置を講じてきているものでございます。

吉井委員 要するに、機関委任事務というのをなくして法定受託事務と自治事務にしたわけですね。総務省に聞いておきたいと思いますが、この自治事務に対する通達、通知というものは一体どういうものなのかということです。

 地方自治法二百四十五条のところでこのことが述べられているんですが、二百四十五条の二に関与の法定主義ということ、二百四十五条の三に関与の基本原則で、必要最小限の原則というのも示されております。それで、要するに、二百四十五条の国の自治体に対する関与の類型の中では、助言または勧告とされ、二百四十五条の四で各大臣による技術的な助言及び勧告に該当するもので、これは法的拘束力は持たない、そういう性格のものだと思うんですね。これは政府参考人に聞いておきます。

藤井政府参考人 お答えします。

 御指摘のとおりでございますが、平成十一年、地方分権改革の流れの中で分権一括法が制定されたわけですが、従前は機関委任事務という制度がございまして、それにつきましては、旧地方自治法百五十条でいわば包括的な指揮監督権があった、そういう包括的指揮監督権に基づく通達等が多数出されていたというふうに把握しております。それが平成十一年の改正で、御指摘のとおり、機関委任事務という制度が廃止され、自治事務と法定受託事務ということになったわけでございますが、自治事務につきましては、これは御指摘の中にもあったかと思いますが、むしろ、新しい地方自治法二百五十四条の四ですかによりまして、要は、原則的に国の関与は助言、勧告しかできないということになっております。

 したがいまして、仮に、現在の自治事務につきまして通知等の名称の文書があるとしても、その法的効果とはと問われますと、それはやはり原則的に助言、勧告の効果の範囲内にとどまらなければいけないというふうに理解しております。

吉井委員 何か、国の関与とか規制があるから特定の地域を限定して規制緩和をする、これは特区だという話なんですよね。

 今のお話のように、もともと自治事務に関しては、これは助言、勧告ということでやって、法的拘束力はない、そういうものだということですが、ここは大事なところなのでもう一度確認しておきたいんですが、要するに、助言、勧告というのは、非権力的関与の形態として法律で認める限りで行うことができる、地方公共団体に対する法的尊重義務を課したり法的拘束力を有するものではないということですね。

 これは一九九九年七月七日の参議院の行財政改革及び税制等に関する特別委員会で、当時の野田自治大臣が、特にこの自治事務については助言、勧告というような形で法的拘束力を持たないものですときちっと答弁をしておられますが、改めて確認をしておきます。

藤井政府参考人 お答えします。

 もともと、自治事務については根拠となる法令で、直接地方公共団体がその法令に基づく事務を施行する責任とか権限があるわけでございます。それに加えて、主務官庁と申しますか法律所管省庁がいろいろな関与をなされるということはそれはあるとは思いますけれども、それぞれの関与は、今申し上げましたように助言、勧告の効果にとどまるものであり、むしろ受ける側の、地方公共団体として、法令は遵守しなければいけませんけれども所管大臣からの関与というようなのは、おっしゃったようにあくまでそれは助言にとどまるものでありますし、勧告ということで、そのとおりやらなきゃいかぬというものではないというふうに理解しております。

吉井委員 だから、これは技術的助言または勧告の法的効果ということについて、これに対する地方自治体の不服従を理由とする不利益扱いをしてはならないということがきちっとされているように、もともとこれは法的拘束力はないんですよ、助言、勧告というのは。

 そうすると、提言に言われているように、自治体の自治事務に対する通達、通知は、助言または勧告にすぎないもので、法的拘束力を持つものではないため、特区制度の対象となる規制には該当しないということになると思うんですね。本来、規制でないものを規制であるかのようにして、特区として認める、これは地方自治法の規定からしても容認できないことだと思うんですよ。特区法の趣旨に反していると思うんですが、これについての考え方を内閣府の政府参考人に聞いておきたいと思います。

大前政府参考人 特区制度の取り組みにおきましては、規制につきましては国の許認可などによります具体的な制限のみを指すのではなく、広く社会的、経済的活動一般に関して何らかの事項を規律するものすべてを想定して取り組みを進めているところでございます。

 このような観点から、これは先ほども申し上げたとおりでございますが、自治体に対する通知でございましても、国の補助金などの交付基準に対応しているものや、国の地方支分部局に対する通達とあわせて発出されて、それに準じて運用されているものなど、事実上の規律になっていると考えられるものがございます。こうした場合には、法令と同様に特例措置を講じてきたところでございます。

 なお、一般論として申しますと、自治事務に対する通知は法的拘束力を持つものではなく、自治体が自主的に判断できることは当然のことと考えております。

吉井委員 当然のことと考えると言いながら、これが構造改革特区で、これを特区にしました、しましたというお話なんですが、西尾さんが、通達、通知による特例措置が全体の三割に及んでいることを発見したと言っておられるんですね。

 公立保育所における給食の外部搬入方式の容認事業であるとか、住民票写しの自動交付機の設置場所拡大事業だとか、印鑑登録証明書の自動交付機の設置場所拡大事業だとか、農家民宿における簡易な消防用設備等の容認事業、学校設置非営利法人が不登校児童等の教育を行う学校を設置する場合における教員配置の弾力化事業だとか、いろいろな事例が幾つもありますが、大臣、要するに、通達、通知に係る特例措置を特区として認められた、こういう特例措置は特区として認められた事例の三割以上に及んでいるというのを西尾さんが調べられたら発見したというわけですね。全体としてかなりの数に上ります。

 今後、こうした運用がなされないようにすることは当然の前提ですが、過去に特区として認めた事例についてやはり総点検して、該当する事例については是正措置を早急にとるべきだと思いますし、そもそも、自治事務で、助言、勧告だといったって、そういうのは出ておってもそれは法的には拘束力がないんですから、地方でもともと自由にできるものを、何かあたかも規制がかかっているからこれは特区に認定しないとだめだというふうな発想というのは、そもそもおかしいわけです。

 これは、全面的にきちんと点検をする、そして必要なものは是正措置をとるということをやるべきだと私は思うんですが、大臣。

渡辺国務大臣 通達行政というようなものが相当見直しをされてきていると思っておりましたが、いまだにこういう通知、通達のたぐいでがちがちに縛っている分野があるんですね。したがって、こういうものに日ごろ我々は余り気がつかないけれども、自治体の現場にあっては、こういう通知、通達は風穴をあけないとだめですよ、そういう御提案をいただいたものが特区になっているわけでございます。

 したがって、オール・ジャパンの展開をしていくルートもあるでしょう。特区として風穴をあけてオール・ジャパンにつなげていこうというルートもあるでしょう。いずれにいたしましても、不合理な規制についてはこれを改めていくというのが安倍内閣の方針でございます。

吉井委員 要するに、通達とか勧告というのは、自治事務に関しては法的拘束力を持たないわけなんですよ。持たないものを、何かあたかも規制がかかっているかのようにマインドコントロールされた状態を解かなきゃいけないんですよね。だから、それは拘束力を持たないんだから自治体でどんどんおやりなさいと。あたかもそれに規制がかかっているから特区に認定して外すんだというふうな形でやっていく、そのやり方がおかしいということを言っているんです。

 どうも大臣はそこのところをよく御理解いただいていないようですが、ですから、この種のものについては全面的にきちっと調べ上げて総点検をやって、もともとそういう特区に認定するまでもなくできるものについては、どんどんやりなさいということで済むわけですから、そういうところを改められるべきだ、このことを指摘して、時間が参りましたので、質問を終わります。

河本委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河本委員長 まず、内閣提出、地域再生法の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。泉健太君。

泉委員 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました地域再生法の一部を改正する法律案につきまして、反対の立場から討論を行います。

 反対の第一の理由は、このたび地域再生法の一部を改正する法律案で新たに規定される再チャレンジ支援寄附金税制が、世界的にも例を見ない極めて特異な制度であり、租税回避などさまざまな混乱を招くおそれがあることであります。

 主要先進国においても、営利企業から営利企業に対する寄附について、税制上の優遇措置を設けている例は存在いたしません。仮にこのような制度を設けるのであれば、寄附を受ける企業と寄附者との間で、租税回避、いわゆる脱税など何らかの意図がないのか、厳密な要件を定めて厳格なチェックをすることが求められています。これには事務量の増大、人員の配置が伴い、果たして現在の地方公共団体等にそのようなことが可能なのか、疑問を感じざるを得ません。

 反対の第二の理由は、このたびの優遇税制の対象が再チャレンジに取り組む企業等に対する寄附とされていますが、地域の公益法人を利用した、いわゆる間接型寄附のスキームにおいての地域の公益法人の具体像が明らかではなく、その担い手がどれほどあるのか、どれほどの体制があれば地域の公益法人として役割を果たせるのかが不明なままであることです。

 また、直接型においては、高齢者の常時雇用すべき数、特例の適用がある寄附の総額を明らかにするとしながら、間接型においては、若者やフリーターの自立支援、採用拡大に取り組む企業、団体への助成要件が明確でなく、結果的に、行った助成が適切かどうか、助成を受けた側の事業に効果があったかを客観的にチェックすることが極めて困難であります。税の優遇措置が設けられる以上、これらがあいまいなままで制度を設けることは許されることではありません。

 以上、反対の理由を申し上げて、私の討論を終わります。(拍手)

河本委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河本委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、地域再生法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 次に、内閣提出、構造改革特別区域法の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、構造改革特別区域法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。

 反対の第一の理由は、ことし三月三十一日で切れる特区計画の認定申請期限を、本法案によってさらに五年間延長しようとするものだからです。

 構造改革特区制度は、地方公共団体からの特区申請と国の認定により、地域を限定して特例的に規制の緩和や撤廃を行い、それを全国に広げていこうとする制度です。これは規制緩和万能主義の立場からの施策であり、特に、国民の福祉や環境、安全を守る規制緩和は容認できないものであります。

 反対の第二の理由は、本法案で学校施設の管理と整備の権限を教育委員会から地方自治体の首長に移すことが可能となるよう、地方教育行政法に特例措置を設けることです。

 教育方針、内容と教育施設の整備は、本来ならば一体のものとして行わなければならないものです。しかし、自治体の長に施設管理と整備の権限をゆだねることは、条件整備の軽視や条件整備を口実に教育内容に対する介入につながりかねません。本法案第二十九条第二項で、特区認定を受けた地方公共団体の長は、あらかじめ教育委員会の意見を聞かなければならないと定められていますが、単に意見を聞くだけではこの問題の歯どめになりません。

 特区による株式会社の教育への参入は、株式会社が設立したLECリーガルマインド大学に文部科学省が改善勧告を出したように、教育と営利が両立しないことをはっきり示したものになりました。株式会社の教育への参入を認める特区制度は直ちに廃止することを求め、反対討論を終わります。

河本委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河本委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、構造改革特別区域法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、後藤田正純君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。小宮山洋子君。

小宮山(洋)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、趣旨を説明いたします。

 その趣旨は案文に尽きていますので、案文を朗読いたします。

    構造改革特別区域法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 一 「三歳未満児に係る幼稚園入園事業」の全国展開に当たっては、特別区域事業の評価において、満三歳児以上と同様の集団的な教育が二歳児についてはなじまないとの結論が得られたことにかんがみ、一人一人の園児の発達段階に応じた受入れが適切に行われるよう、十分に配慮をすること。

 二 三歳未満児に係る幼稚園での子育て支援としての受入れ形態について、保育所等における子育て支援機能と重複する面が存在することにかんがみ、保育所・認定こども園との関係で保護者や現場に混乱を生じさせないよう、適切な措置を講じること。

以上です。

 何とぞ委員の皆様の御賛同をお願いいたします。(拍手)

河本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河本委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。渡辺国務大臣。

渡辺国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

河本委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

河本委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時三分開議

河本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、犯罪による収益の移転防止に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。溝手国家公安委員会委員長。

    ―――――――――――――

 犯罪による収益の移転防止に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

溝手国務大臣 ただいま議題となりました犯罪による収益の移転防止に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。

 この法律案は、最近における犯罪による収益の移転の状況及びその防止対策に関する国際的動向にかんがみ、特定事業者による顧客等の本人確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届け出等の措置を定めるとともに、国家公安委員会が疑わしい取引に関する情報の集約、整理及び分析並びに関係機関に対する提供を行うこととすること等により、犯罪による収益の移転防止を図り、あわせてテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約等の的確な実施を確保することをその内容としております。

 以下、項目ごとにその概要を御説明いたします。

 第一は、特定事業者の定義についてであります。特定事業者とは、金融機関、ファイナンスリース業者、クレジットカード業者、宅地建物取引業者、貴金属等取引業者、郵便物受取・電話受付サービス業者、弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士等をいうこととするものであります。

 第二は、特定事業者による措置に係る規定の整備であります。

 その一は、特定事業者は、一定の取引について顧客等の本人特定事項の確認を行うとともに、その記録及び取引記録を七年間保存しなければならないこととするものであります。

 その二は、司法書士等を除く特定事業者は、その業務において収受した財産が犯罪による収益である疑いがある場合等には、一定の事項を当該事業を監督する行政庁に届け出なければならないこととするとともに、当該行政庁等は、当該届け出に係る事項を国家公安委員会に通知するものとするものであります。

 その三は、業として為替取引を行う特定事業者は、外国為替取引を行うときは、顧客の本人特定事項等を通知して行わなければならないこととするものであります。

 第三は、弁護士及び弁護士法人による本人確認等に相当する措置については、本法に定める司法書士等の例に準じて日本弁護士連合会の会則の定めるところによるものとするものであります。

 第四は、疑わしい取引の届け出に関する情報の提供に係る規定の整備であります。

 国家公安委員会は、捜査機関等及び外国の資金情報機関に対し、疑わしい取引の届け出に関する情報を提供することとするものであります。

 第五は、その他の規定の整備であります。これは、特定事業者に対する監督、罰則その他所要の規定を整備するものであります。

 なお、この法律の施行期日は、一部を除き、平成十九年四月一日としております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同賜らんことをお願いいたします。

河本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

河本委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局組織犯罪対策部長米田壯君及び国税庁調査査察部長鈴木勝康君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田端正広君。

田端委員 公明党の田端でございます。

 この法案、マネーロンダリング対策法といいますか、あるいはゲートキーパー法、そういう略称でも言われているわけでありますが、つまり、マネーロンダリングあるいはテロ資金に対する対策としてこれは大変大事な法律であると思いますし、また、いろいろな意味でも、今後、日本の安全保障という立場からも大事な問題だ、こういう認識をしております。

 そこで、これまで暴力団あるいはテロ対策等で犯罪組織や収益の追跡といったことはいろいろな形で行われていたと思いますが、特にこの問題に関しては、今までは金融庁の方でずっと担当されてやっていた、それが今回、国家公安委員会あるいは警察庁という形で、所管がかわったといいますか、移ることになったわけでありますが、この経緯、背景といいますか、なぜこういうことになってきたのか。そして、警察庁が担当されることによって、今までと違ってどういうふうな広がりといいますか、膨らみが出てくるのか。まず、その辺のところを明確にお答えいただきたいと思います。

米田政府参考人 この問題につきましては、平成十五年に、マネーロンダリング、テロ資金対策のための国際基準でありますFATFの勧告、これが改定をされました。そこで、金融機関のみならず、非金融機関、そして職業的な法律、会計の専門家も対象にすべきであるという勧告が決定をされておったわけでございます。これを受けまして、政府としましては、翌平成十六年、この勧告を実施しようということを国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部において決定いたしました。その枠組みについて検討してまいりましたが、平成十七年十一月に内閣官房の調整によりまして、国家公安委員会、警察庁において立法作業を行う、そして、その情報の中心であるFIUについては、国家公安委員会、警察庁の方に移管をするということが決定をされたわけでございます。

 これは、今までは金融機関ということが対象でございまして、金融監督を受け持っている金融庁においてこれを見ていただきまして、そして、いろいろ実績を上げてこられたわけでありますが、非金融機関が入ってくるということ、そして、組織犯罪あるいはテロというものの知見はやはり警察の方で持っておりますので、その知見を生かした、より高度な分析ができるであろうというようなことから、このような判断がなされたものというふうに考えてございます。

田端委員 そこで、国際関係ということになってきますと、直ちに考えられることは、北朝鮮が関与したマネーロンダリングに対する対策ですけれども、例えば北朝鮮問題に関して、では、金融庁からこちらに移ったことによって、それは何らかの影響があるんですか。大きく対応することが可能というんですか、できるようになった、そういうような認識なんでしょうか。この点についてまず伺いたいと思います。

米田政府参考人 先ほども言いましたように、組織犯罪あるいはテロに関する知見を活用した、より高度な分析が、私どもが今度所管をするということで期待をされておるわけでございます。

 北朝鮮の関係につきましても、それはさまざまな犯罪が北朝鮮関係でも摘発され、あるいは情報があるわけでございますから、そのようなものも利用いたしまして、私どもといたしましては、マネーロンダリングあるいはテロ対策について、より強力に推進をしてまいりたいというふうに考えてございます。

田端委員 諸外国の状況というものと、それからFIUの各国との関係、そして、今後いろいろな意味で情報交換とか、特に国際的な犯罪に対しての対応の仕方とかいろいろあるんだと思いますが、各国FIUと、今回、日本国FIUになる国家公安委員会とのこれからの対応の姿勢といいますか、どういうことでどういういうふうに臨んでいくのか、そこら辺のところは大変大事な点になっていくのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

米田政府参考人 各国のFIUの中で、いわゆる捜査機関がFIUとなっているものは大体半数程度ございます。私どもとしましては、今までは捜査機関同士の情報交換というものはかなり行ってきておるわけでございますが、今後はFIUとしての情報交換というものをより積極的に進めてまいりたい。そのためには、現在の金融庁に置かれている体制ではやはりなかなか不十分な点もございます。そこで、増員も今度の予算でお願いをいたしまして、それなりの体制を整えまして、より積極的に各国FIUと交流をしてまいりたいというふうに考えてございます。

田端委員 そこで、ちょっと提案といいますか、犯罪収益を徹底的に追及していくという場合に、国際問題に必ず私はぶつかっていく、こう思います。それで、この点を今伺っているわけでありますが、今回は、そういう中で、本人確認、取引記録の保存、あるいは疑わしい取引に対する届け出義務、こういう大きな点があるわけでありまして、そして、金融機関等の特定事業者を特定して、そこから情報をきちっといただいて対応する、こういう流れになっていくんだと思いますが、この中で、今現実に起こっている問題として、例えば地下銀行という組織が既に発生しています。

 先月の初めだったと思いますが、パキスタン国籍の食品店経営のアスガルという人と、それからムハンマドという二人が銀行法違反で逮捕されておりますが、〇二年から今日に至るまで、両容疑者は七億七千万、パキスタンに送金していた、こういうことが報道されていたわけであります。つまり、これは一つの事例でありまして、地下銀行を使った犯罪というのは年々広がっている、そういう感じがしております。

 例えば、送金先に仲間がいて、こちらに、国内に銀行口座を開設していれば、簡単にといいますか、スムーズに送金できるというシステムであって、現に、中国、韓国、フィリピン、ネパール、タイ、イラン、台湾、ミャンマー、ペルー、パキスタン等々、多くの国の地下銀行が既に今までも摘発されてきたところであります。

 こういうことが厳然と日本で行われているということになれば、これはまさに、法律がどういうふうになろうと現実に今抜け穴になっているわけでありまして、そういう状況をさらに推測していけば、本人確認もなくて、送金目的を明かす必要もないというこの地下銀行というもの、ここからいろいろな犯罪とつながった、不法就労とかということが一番現実にあるわけですが、薬物とかあるいは強盗とか窃盗とか、そういうこととも絡み合わせて、そしてテロ組織にこれが流れるとか、イスラム原理主義政党にこれが流れるとか、そういったことが既に危惧されているわけで、現実にひょっとしたらそれも起こっているのではないか、こう考えられます。

 そこで、ここ数年、これらの地下銀行を使って不正送金した事例というのは、警察の方ではつかんでおられるのかどうか。どのぐらいの金額、例えばこの五年間、この十年でこのぐらいあったとか、何かそういうことも御報告いただければいいと思うんですが、それが、この法律が施行されれば、果たしてこういった事件に対応できるのか、抑止効果があるのか、その点についてはどんなものでしょうか。

米田政府参考人 地下銀行につきましては、これは、各種の証明書の偽造とか偽装結婚などとともに、来日外国人組織犯罪等によります犯罪の、いわばインフラとなっておると認識をしております。また、テロ関係者による海外送金を容易ならしめるという問題もございまして、警察としては、これは看過できないものという認識でございます。

 件数でございますけれども、大体、年間十件前後の事件を検挙しております。推定される送金額でございますけれども、年間、少ない年でやはり二、三百億、多い年では一千億を超えるというような実態がございます。

 これに対しましては、地下銀行といえども全く金融機関が絡まないというわけではございません。したがいまして、送金の頻度とか、送金の金額、態様等々、これは余り詳しく申し上げるわけにいきませんが、ある種の特徴がございますので、これは現在でも、疑わしい取引の届け出が摘発に有効に働く分野ではなかろうかと考えてございます。

 この法律案が成立、施行いたしましたならば、FIUが国家公安委員会、警察庁の方に移管をされるわけでございまして、組織犯罪、テロ関連情報と照らし合わせ、これを活用してより有効な取り締まりを実施いたしますとともに、また事業者の方にも、この手口に関する情報を提供するということがこの法律案に規定されておりますけれども、事業者の方にもそういうものを提供いたしまして、地下銀行の発見、検挙に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

田端委員 その場合、相手国といいますか、そちらの関係当局と連携をとりながら対応ということも、これはぜひ、大事な点ではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。

米田政府参考人 国際刑事警察機構、いわゆるICPOを通じ、あるいは相手国捜査機関とバイの関係において、さまざまな協力をしながら摘発に努めてまいりたいと考えております。

田端委員 そこで、実はこの法律が今国会に上程になるまでの間、警察庁当局も大変、各方面にいろいろ御努力をされて今日に至ったと思いますが、ことしの初めでしたか、日本弁護士連合会、日弁連の方々から大変な陳情もありまして、そういった意味で、この法律の重要性とともに、いかに国民の皆さんに信頼されるような仕組みとして成立させるかという意味で、中身について、特にこの日弁連の方々からいろいろな陳情がありました。

 中でも、「私たちは、「犯罪収益の資金洗浄、いわゆるマネー・ロンダリング対策や、テロ資金対策」には反対していません。」「私たちは、「その手段として、弁護士が依頼者の信頼を裏切って、”疑わしい取引”を”疑わしい”というだけで警察に密告する制度」には反対します。」という意見広告まで各紙に出されたりして、各県の弁護士会の会長さんの写真、名前等を入れたこういうもの、大変目立ったりして我々もびっくりしたわけでありました。

 そういう中で、日弁連の方々とも担当の警察庁の所管の方々とも話し合いが続けられて、今回、本人確認と取引記録の保存ということについてはマルとして、疑わしき取引の届けについては、弁護士関係のところはそれはしなくていい。そういうことで、特に、これらのことについて最終的には弁護士会の会則の中できちっとどう対応するかをゆだねていただくということで、先日、総会も日弁連の方で開かれたという話も聞いておりますが、こういうことで非常に私は、円満にといいますか、話し合いがついてよかった、こう思っているわけであります。

 それで、要するに弁護士並びに士業の方々のところを別扱いといいますか、そういうふうにした理由はどういうことなのか。そしてそれが、そういうふうにはしたけれども実際の運用面といいますか、現実にはその履行に対してどういうふうに担保されているのか、そこのところを国民の皆さんにはしっかりと説明していただくことが大事ではないかと思います。

 つまり、弁護士会というのは非常に高度な自治権といいますか、自治を持っている方々でありますから、そこは大切にしなきゃなりません。しかし、だからといってこの法律は、変な、バランスを崩しているわけではありませんというメッセージをしっかりとしていただく必要があると思いますが、疑わしき取引の届け出義務を対象外にしているという点について、特に御説明をお願いしたいと思います。

米田政府参考人 弁護士による疑わしい取引の届け出につきましては、私ども、法務省と協力をし、日本弁護士連合会とも交渉を重ねながら案をつくってまいったところでございます。

 その際、守秘義務の範囲は届け出事項から除外をするとか、あるいは、対象業務は不動産取引、会社設立、資産管理といったものの代理代行に限るとか、それから、届け出をする場合を、他の事業者と異なりまして、その収受した資産が犯罪収益である場合、つまり、法的助言とか相談とかの段階ではかからないということをはっきりさせるというような案をつくってまいりました。また、届け出は日本弁護士連合会に対して行って、監督も日弁連にやっていただく、こういう案をつくってまいったわけでございますが、依頼者との関係に与える影響につきましては、日本弁護士連合会からなお懸念が示されているということ等を踏まえまして、この点につきましては、引き続き検討を行う必要があると判断し、本法案からは除外をすることといたしたものでございます。

 しかしながら、弁護士その他の士業者は、この法案の特定事業者として位置づけられておりまして、本人確認と取引記録等の保存の措置は行っていただくということになっております。これによりまして、例えば偽名を用いてこれら士業者を利用した取引を行うことにより犯罪収益の隠匿等を図るということはかなり困難になってまいりますし、一定の取引記録等が保存されることによりまして、より効果的な犯罪収益の追跡、剥奪、さらに被害回復ということが可能となるわけでございます。この辺は、金融機関その他の特定事業者による措置とも相まって、かなり実効的な犯罪収益対策が確保されるものと考えてございます。

 それから、日弁連におきましては、別途自主的なマネロン防止の取り組みも進めていただいていると承知をしております。したがいまして、政府としましては、日弁連あるいはその他の士業者の団体との協力、それから関係省庁間の相互の協力によりまして、マネーロンダリング及びテロ資金対策の実効性をさらに上げてまいりたいというふうに考えてございます。

田端委員 そういう意味では、日弁連の皆さん、弁護士の皆さんの理解といいますか、そしてまた協力も得られる体制ということで、非常にそれは最終的にはよかったと思います。

 よかったんですが、では、それはFATFの国際的な勧告との絡みでいけば、それはそれでいいんですかということにもなるわけでありまして、他国、諸外国の中で弁護士の扱いはどうなっているのか、そういうことでFATFの勧告と整合性がとれているならいいんだろうと思いますが、その点について、どういうふうなお考えなんでしょうか。

米田政府参考人 弁護士に関しまして、疑わしい取引の届け出の義務を法制化している国というのは、FATFのメンバーは三十一カ国・地域でございますが、そのうち二十四カ国でございます。それから、現在、その義務の法制化を検討している国は四カ国あるというように承知をしております。

 なお、この義務の法制化を今のところ予定していない主要な国として米国及びカナダがあるわけでございますが、米国につきましては、弁護士を含むすべての者に一定額以上の現金受領の場合の届け出を義務づけていると聞いております。

 それから、平成十五年に改定されましたFATF勧告におきましては、こういう弁護士等の法律、会計の専門家、さらには、ファイナンスリース、クレジット、宝石、貴金属商、それから、トラスト・アンド・カンパニー・サービスプロバイダーといった事業者にも、本人確認、取引記録保存、そして疑わしい取引の届け出を義務づけるということが勧告の内容として入ってございます。

 今回の法案は、一応、勧告が言っております対象事業者で日本の法制度上可能なものはすべて対象に入れまして、ただ、法律、会計専門家につきましては、疑わしい取引の届け出を除外しているということでございます。したがいまして、これによりまして我が国のマネーロンダリング対策は大幅に前進をするということで、国際的にもそれなりに評価を受けるのではないかと考えてございます。

田端委員 そうしますと、こういうことなんですか、とりあえず、とりあえずと言うと失礼かもわかりませんが、日弁連の皆さんに納得していただくように一歩下がって、しかし、やがては時間をかけながら話し合って、今後は法律の改正も視野に入れて進めていこう、こういう考えになるんでしょうか。

米田政府参考人 弁護士その他の士業者に対する疑わしい取引の届け出につきましては、引き続き検討するということでございまして、この辺は、それらの団体の御理解、それから関係省庁間での議論も踏まえなければなりませんし、また国際的な動向も見きわめなければならないということで、今後精力的に検討を進めてまいりたいというように考えてございます。

田端委員 ぜひ、これはやはり話し合ってきちっと、今うまく了解いただいたわけでありますが、さらにまた今後どうするかについては、確かにおっしゃるとおり、まだまだ問題も多いかと思いますが、また国際的な関係もあるかと思いますので、そこはしっかりと御判断いただいて、引き続き粘り強くお願いしたいと思います。

 さて、現実の問題として、テロもテロなんですが、暴力団の関係も多々あるんだろう、こう思っております。特に、暴力団の最近の構成員数を見ますと、構成員数は約四万一千で、準構成員が四万三千というふうに聞いておりますが、つまり逆転しているわけですね。準構成員の方が多くなってきているという意味では、これはつまり、表向きは企業か何かにカムフラージュしていて、そしてフロント企業といいますか、そういう形でやっているんですが、しかし実態は暴力団の資金源になっている、こういうことなんだろうと思います。そういうふうにだんだん巧妙化して、そして資金集め、あるいはいろいろな形で犯罪の源になるようなことになっていっている、こういうことがたくさん考えられるのではないか、こう思います。

 そういう暴力団の犯罪による収益、そして資金を集めるというこのやり方に対して、いろいろな、今までもあったわけでありますが、ここで特定事業者に入っているファイナンスリース業者とかクレジットカード業者とか、あるいは土地関係ですね、宅地建物取引業者とか、あるいは貴金属等々、これはまさにそういう対象といいますか、そういうところになるんだろうと思います。

 それで、おれおれ詐欺みたいなものが過去にもあって、そういう意味では非常に巧妙に今はなってきているんだというふうにも聞いておりますけれども、例えば私設私書箱というのがあって、そしてここに現金を送れ、そういう指定をする。こういうことは過去には、今までは、この法律の前はそれはそれで通るかもわかりませんが、しかしこれは、私設私書箱を置いている業者が本人確認をしなければ私設私書箱を貸すわけにいかなくなってくるわけでありますから、そういう意味では大きな前進だと思います。

 また、電話の受付サービス業者というのがあって、東京都千代田区のど真ん中に住所があって、そこに電話を置いている。まあ秘書の代行だと思いますが、こういうことをきちっと、今度これも対象になっていくとなれば、本人確認が必要だ、こういうふうになって、それぞれこれらの業者がちゃんとしてくれれば、そういう意味ではカムフラージュしてそういう指示があったり、あるいは電話を通してのやりとりとかということは、非常に対策としては、うまくいってくれればいいな、うまくいくんじゃないかな、こう期待をしているわけです。

 今までそういう犯罪に利用されていたものが、これで大きく抑止効果が出てくる、こういうふうに考えていいんだと思いますが、その点、いかがでしょうか。

米田政府参考人 いわゆる私設私書箱あるいは電話秘書、あるいはこれらを兼業するバーチャルオフィス、こういうもの、この法律では郵便物受取サービス業者及び電話受付サービス業者でございますけれども、現在のところ、本人確認とか契約書類の保存などに関する規制が存在をしていないわけでございまして、事業者の方も、身分証不要とか会社登記可能、現金書留受け取り可能などの点を宣伝、アピールをしている、そういう事業者もあるわけでございます。

 最近のいわゆるおれおれ詐欺と申しますか振り込め詐欺の中には、こういう郵便物受取サービス業者に現金を送付させるという手口も目立っております。これは、金融機関本人確認法が平成十六年に改正をされまして口座売買が禁止をされたということで、金融機関向けの対策が進んだということも背景にあるのではなかろうかと考えておるところでございます。

 この法案で、こういう業者に対しまして、契約時において顧客の本人確認、法人顧客の場合は登記事項証明書の確認、それから契約書類の保存などが義務づけられるわけでございまして、こういう業者、あるいはこういうところを拠点としますペーパーカンパニーを利用しました詐欺事件の防止、あるいは被害が拡大する以前の早期の検挙ということが可能になるのではなかろうかと考えてございます。

田端委員 これは、関係事業者に対してぜひ丁寧にしっかりと広報活動をしていただいて、そしてこの法律に合った対応ができるように、それでなければせっかく仕組みをつくっても情報提供にはならないと思いますから、ぜひお願いしたいと思います。

 最後に大臣、これは大変大事な法律だと思いますので、さっきもお話しいただきましたが、今までの質疑を通して、大臣の御決意を一言いただければと思います。

溝手国務大臣 今までいろいろ紆余曲折もありまして皆さんに御心配をいただいたんですが、先ほどから御議論いただいたように、このような要請に対応するものとして速やかにその成立を図り、また、国家公安委員会として法の趣旨を的確につかんでその責任を果たしていきたい、このように思っております。よろしくお願い申し上げます。

田端委員 以上で終わります。ありがとうございました。

河本委員長 次に、木原誠二君。

木原(誠)委員 自由民主党の木原誠二でございます。

 本日は、一時間お時間をちょうだいしております。国家公安委員長にもおつき合いをいただきます。どうもありがとうございます。

 きょうは、いわゆるマネロン法あるいはゲートキーパー法と言われる、今田端委員のお話もございました。大変重要な法案である、私もこんなふうに思っております。

 このマネロン対策は、これまでは、本人確認法あるいは組犯法といったことでいろいろなところに規定があった、こういうことでございますけれども、今回こうして一本の法律として規定をされる、そういう意味でも大変重要かな、こう思っております。

 とりわけ今、犯罪は、非常に複雑化、国際化、多様化あるいは大規模化、こういう状況にございます。その背景にあるのは、まさしく組織化している、こういうことであろうかというふうに思っております。組織化をしているということは、組織を維持する必要がある、こういうことであろうというふうに思います。そういう意味では、常に犯罪によって収益を上げていくということが組織を維持していく上では大変重要である。逆に言えば、その収益源を断っていくという意味において非常に重要な法案である、こう思っております。

 とかくこれまでは、組織のトップあるいは構成員を捕まえる、こういうところに重点があったように思いますけれども、組織ですから、先ほども、暴力団の構成員が四万人を超える、こういう状況ですから、どんなに捕まえても捕まえても幾らでも構成員は出てくる、トップはどんどん変わってくる、こういう状況だろうというふうに思います。

 そういう意味では、構成員も大変重要ではありますけれども、その犯罪の収益、あるいはその組織を維持する源を断っていくということが今非常に大切かな、こういうふうに思います。

 と同時に、悪貨が良貨を駆逐する、こういうことも言われております。やはり、やみ経済。先ほど、アンダーグラウンドバンクというか地下銀行の話もございましたけれども、地下銀行があるがゆえに正規の金融が正常に機能しないという面もあるわけでございまして、そういう意味でも、しっかりとこの部分をたたいていくという意味で大変重要かな、こう思っております。

 かつてはマネロンに対して余り日本国内の意識も高くなかったかな、こう思うんですけれども、おかげさまで昨今、とりわけ金融機関においてはこの取り組みが重点化されてきている。昨年は十一万件を超える疑わしい取引の届け出があったというふうに伺っておりますし、警察当局においても、そのうちの百件ぐらいをまさに捜査につなげていただいた、こういうような状況だろうと思います。

 そういう状況を踏まえながら、今回の法案、最初に、恐縮ですけれども趣旨あるいはその背景といったことの概略を御説明いただければというふうに思います。

溝手国務大臣 近年、暴力団等の経済活動への介入とか、金融機関による本人確認の強化に伴いまして金融機関以外の事業者を利用して犯罪を行って収益を隠匿したりする、いわゆるマネーロンダリングの手口が見られるようになってきております。また、マネーロンダリング及びテロ資金対策の国際基準とされておりますFATF勧告においても、本人確認等の措置を講ずべき事業者の範囲を金融機関以外の、外に拡大することが求められておりまして、我が国もこれに対して対応しなくてはいけないという面がございます。

 本法案は、このような犯罪による収益をめぐる内外の動向に対応するため、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部という、ややこしい名前があるんですが、ここで決定されました方針に基づいて国会に提出するものでございます。本人確認、取引記録等の保存及び疑わしい取引の届け出の義務対象事業者の範囲を拡大するということ、それからもう一つは、これに伴いFIUを金融庁から国家公安委員会に移管することなどを主な内容とするものであります。

 本法の施行により、マネーロンダリング及びテロ資金対策における我が国としての責務を果たし、国内にテロの脅威を呼び込むことを防止するとともに、暴力団等の犯罪組織が振り込め詐欺ややみ金などにより得た犯罪による収益を追跡、その剥奪を図り、これを被害者に回復する等、手続が一段と促進されることを期待いたしております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 ちょっと確認をしたいというふうに思いますけれども、こういう法律を新たにつくっていくという場合には、やはり敵を知るということが大変重要かな、こういうふうに思います。

 先ほど、国家公安委員長の提案理由説明の中にも、最近における犯罪による収益の移転の状況にかんがみ、こういうふうに書いてございました。なかなか把握は難しい、こういうふうに思いますけれども、犯罪収益というものが今どの程度あるのか。統計があれば教えていただきたいと思いますし、統計がない場合、何らかの具体例をいただきながら少しイメージをいただければというふうに思います。

米田政府参考人 犯罪収益全体の規模というのは、これはまさにアンダーグラウンドの世界のことでありますので、残念ながら、その全貌というのは私どもにも把握はできておりません。

 ただ、幾つか手がかりになる数字を申し上げたいと思いますが、平成十七年中の刑法上の財産犯、窃盗、詐欺、横領等でございますが、これの被害額の合計は約二千八百五億円であります。

 幾つか類型別に各種犯罪の被害額を申し上げますと、いわゆる振り込め詐欺、詐欺か恐喝かというような、振り込め詐欺または振り込め恐喝でございますが、この被害額が大体約二百五十億円でございます。やみ金事犯の被害額が約二百億円。ネズミ講とか未公開株売買などによります、私どもはこれを資産形成事犯と呼んでいますが、これが大体四百三十七億円ぐらい。それから、資格商法、点検商法などによる特定商取引等事犯の被害額が約三百七億円というようなことでございます。

 これらは被害者のある犯罪でございますけれども、被害者のない犯罪、典型としては賭博、それから薬物事犯でございますけれども、これらは、ちょっと数字はございませんけれども、かなりの多額に及ぶのであろうというように考えてございます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 今伺った金額というのは恐らく極めて氷山の一角だろう、こういうふうに思います。今、最後の方におっしゃっていただいた被害者のない犯罪、ここの部分が恐らく大変に大きい、こういうふうに思います。

 冒頭おっしゃったとおり、これはまさに地下に潜っている部分でございますから、なかなか正確な数字が出ない、こういうことだろうと思いますが、最近はマネロンに関するさまざまな本も出ていまして、私がこの間読んだ門倉さんという方の日本地下経済白書というところでは、例えば地下経済の規模というのは日本のGDPの四から五%ぐらいあるんだ、こんなことも書いてありました。だとすれば大変な大きな規模だろう、こう思います。

 実は、私はイギリスの大蔵省で仕事をした経験がございます。そのとき、マネロンの担当をしておりまして、FATFにも出ておりました。そのときに、まさにこの規模を世界的に把握しようじゃないか、そういうことを随分やったわけですけれども、そのときも、世界的に見て世界の経済規模の大体四、五%というのはやはり地下経済だろう、こういうことが言われていたわけでございます。

 そういう意味では、実は、この地下に潜ってしまった経済あるいは犯罪による収益というものが払拭をされれば経済にも非常にいい影響が出てくる、こういうことだろう。そういう意味でも、このマネロン対策というものにしっかり取り組んでいかなければいけない、こう思うところでございます。

 そこで、今、大変大きな規模、例えば二千八百幾らとか、振り込め詐欺で二、三百億、こういう話も出たわけでございますけれども、今回の法案が成立することによって捜査の現場ではどんな効果が出てくるのか、少し具体的にお話しいただければというふうに思います。

米田政府参考人 こういういわゆるブラックマネーというものが犯罪組織に流れ、そしてそれがまた再投資をされる。再投資をされることによってこれがまた治安に対する脅威となるということでございますので、犯罪組織の取り締まりとともに、お金の取り締まりは大変重要でございます。

 この法案によりまして、一つは、本人確認措置を義務づけるということは犯罪収益の移転には相当な支障になるであろう。その対象事業者が拡大をするということは、そういう意味では、彼らにとってはかなり打撃になるのではなかろうか。そして、疑わしい取引の届け出、さらには取引記録保存ということで、犯罪収益の追跡、そして剥奪ということが可能になるわけでございまして、これがやはり地下経済の縮小、さらには犯罪組織の弱体化ということにつながるものではないかと考えてございます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 今、まさに本人確認が入るということ、そしてまた、いわば追跡が可能になる、こういう御趣旨だったかというふうに思います。

 まさに、このマネロンの一番重要なところは三つかな、私はこう思っていまして、一つは、守秘義務との関係をどこまで打破していくことができるかということが一点、二点目は、情報をどれだけ集めてこられるかということが二点目、そして三点目は、まさに追跡をする、ネットワーク化できるかどうか、この三点だろう、こう思っております。

 まだかなり時間が残っていますから順次この三点についてお伺いをしたい、こう思うんですけれども、きょうは実は国税庁にお越しいただいていますので、国税庁の方にここでお伺いをしたいというふうに思います。

 今回の法案の中に、法案の十一条だったというふうに記憶をしていますけれども、FIUで得た情報、疑わしい取引の届け出によって得られた情報というものを徴税官、国税当局にも提供できるという規定が入っております。実際には、附則の方で適用が当分の間というか停止をされているというような状況になっているわけでございますけれども、本則の方は、提供できる、こういう状況になっているというふうに承知をしております。

 私は、犯罪の捜査それから犯罪収益の剥奪という面において国税当局が果たす役割あるいは果たせる機能というのはかなり高い、こういうふうに認識をしておりますけれども、今回のこの法案、国税当局から見て十一条というところをどのように評価し、そして今後どうされていくか、御見解を伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 今、委員から情報の重要性につきまして御指摘をいただいております。

 国税当局といたしましては、適正公平な課税の実現を図るというために、さまざまな機会を通じまして資料情報の収集に努めております。今まさに御指摘いただきましたように、収税官吏に提供される情報、これにつきましては、脱税事件の犯則調査のための資料情報の一つということで、適切に活用してまいりたいと考えております。

木原(誠)委員 だれでも知っている例を挙げれば、まさにアル・カポネは徴税権によって投獄された、十一年牢屋に入った、一九三〇年代のことですね。

 そういう意味では、今国税庁の部長から御答弁いただきました。なかなかそれ以上のお答えはない、そう思いますので、その点についてはこれ以上答弁を求めたいというふうに思いませんけれども、公平課税というは当然のことでございますけれども、そのことがひいては地下経済をあぶり出していく一つの大きな手段にもなるんだということはぜひ思っていただきたいな、こんなふうに思います。

 その点で、これはどちらにお答えいただいた方がいいのかちょっとわかりませんけれども、諸外国において、FIUと国税当局との情報交換、どんな状況になっているのか、教えていただければというふうに思います。

米田政府参考人 詳細はわかりませんけれども、諸外国においては、大体、国税当局とFIUは情報を交換し合っているのではないかと思います。

木原(誠)委員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりで、諸外国はかなり頻繁に実は情報交換が密接にやられておりますし、同一の当局でやられているということも間々例があるところでございますから、附則は附則として、本則に戻った暁にはぜひ積極的に取り組んでいただきたいな、このことだけお願いをしておきたい、このように思います。

 それでは、少しまた戻って、この法案の中の個別の論点についてお伺いをしていきたい、このように思います。

 まず、対象事業者が今回かなり広がった、特定事業者ということでかなり広がりまして、宅建業者、貴金属業者、あるいは電話受付サービス業者といったようなところまで、かなり幅広く入ってきた、こういうことでございます。

 我々、注意しなければいけないのは、本人確認の義務を入れる、あるいは本人確認記録を七年間保存させる、こういうことは、やはりかなり各業者にとってはコストの負担になるんだろう。ここはバランスをよくしっかりとっていかなきゃいけないわけですけれども、各業態、業者との関係で、どの程度調整をこれまでされてきたのか、その調整の経緯等々を御説明いただきたいというふうに思います。

米田政府参考人 今回、金融機関等に加えまして、新たに規制対象となるという事業者が幾つかございます。これにつきましては、平成十七年十一月に、国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部の決定を踏まえまして、枠組みとしては、基本的には、それぞれの事業の事業所管官庁において責任を持って各業界調整を行うということとしたところでございまして、それぞれの省庁が所管業者に対して説明、調整を行い、理解を得る努力をしてまいったということでございます。

 警察庁といたしましても、各所管省庁からの要請に応じまして、あるいは所管省庁と協力して、業界に対する説明会等々を行ったところであります。

 ただ、郵便物受取・電話受付代行業につきましては、これは業界というものが存在をいたしませんので、パブリックコメントを実施いたし、そして業者説明会というものを公表して行いまして、そういう調整を行ったというところでございます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 そうすると、仮にこの法案を多少改正する、あるいは義務をもう少し、負荷を重くするあるいは軽くする、こういったことは、基本的には今後も各所管省庁、主務大臣でやっていくというふうに理解すればよろしいでしょうか。

米田政府参考人 それぞれの事業への監督というのは各所管省庁がまず第一義的にやる、全体の取りまとめは国家公安委員会、警察庁において行うということでございますので、連携しながら、特に事業者に対する調整等は各所管省庁が責任を持って行うこととなろうと思います。

木原(誠)委員 委員長、済みません、もう国税庁には特段質問しませんので、もしあれでしたら、どうぞお引き取りください。ありがとうございました。

 今、十分な調整を所管省庁を通じてしっかりやっていくんだ、こういうことでございました。やはり経済は生き物ですから、余りコストが過重にならないように、そこは十分留意をしていただきたいな、こう思います。

 他方で、事業者と同時に反対側には顧客がそれぞれおります。いつだったか、ちょっと私もしっかり記憶をしておりませんけれども、例えば金融機関の送金に対する本人確認というのは、今随分と閾値が下がってしまいまして、しまいましてという言い方は不適切かもしれませんが下がりまして、十万円、こういうことになっていると思います。

 十万円というと、ほとんどの送金が実はかかってきてしまう。もちろん、既に本人確認が終わっている口座というのは外れているわけですけれども、一見の場合、あるいは現金でATMで送金をする等々の場合というのは、この十万円というのは相当低い、正直申し上げて低い、こう思います。

 それでもなお今これを導入するということについては、このマネロン対策の重要性、あるいはテロ対策という意味でも大変重要だ、こういうことでございまして、十万円に引き下げる過程においては、金融機関においても随分と、店頭あるいはATM機械の横、さまざまな場面で周知徹底がなされていた、このように承知をしております。

 今回、対象事業者がかなり拡大をして、国民もさまざまな場面でマネロンの対策というものに接する機会が飛躍的に多分増大する、こういうふうに思いますけれども、そういう意味では、国民一般、あるいはそれぞれの対象顧客に対する周知徹底といったようなものはどういうふうに行われるのか、あるいはもう既に行われているのか、御答弁をいただければと思います。

米田政府参考人 特にこの法案の枠組みの中では、本人確認というものが一般国民にとりましては、ある種御協力をいただくといいますか、負担になる部分があるわけでございまして、この法案の作成に当たりましては、もちろん法案概要を公表したり、新たな事業者に関する制度の考え方については、先ほど申しましたように、パブリックコメントを付すなどしまして、国民の理解が得られるように努めてまいったところでございます。

 本法案におきましては、犯罪収益の移転防止の重要性について国民の理解を深めることというのが国家公安委員会の責務となってございまして、私どもといたしましても、意識して、国民の理解が得られるように努めてまいりたい、このように考えてございます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 以上で、少し対象事業者の範囲の拡大というところから離れていきたい、こう思います。

 というよりも、この対象事業者の中で、先ほども田端委員の方から御質問がございました、いわゆる士業と言われる部分が抜けているというふうには申しませんけれども、異なる取り扱いをされている、こういうことでございます。その点は、さまざまな経緯もあったでしょうし、またその中に、経緯と同時に理論的な武装というものも十分なされている、このように承知をいたしますけれども、その中でもとりわけ弁護士については異なった取り扱いがなされているということでございます。

 ちょっと弁護士に特化して外国の状況を、先ほども御説明がございましたけれども、もう一回、繰り返しで恐縮ですけれども御答弁いただきたいと思います。

米田政府参考人 FATFのメンバー三十一カ国・地域のうち、弁護士に対しまして疑わしい取引の届け出の義務を法制化している国というのは、これは先ほどもお答えいたしましたが二十四カ国でございます。これはことしの一月現在で把握している数字でございます。それから、今後この義務の法制化を検討している国がほかに四カ国あるということでございます。

 なお、主要な国としては、米国及びカナダが弁護士についての届け出義務の法制化を現在しておりませんし、また予定もないということでございますが、米国に関しましては、弁護士云々ではなくて、すべての者に一定額以上の現金受領の際の届け出を義務づけていると承知をしております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 今の御説明ですと、大半の国は弁護士にもマネロン対策の義務づけをしているというふうに理解をしたいと思います。

 それと、アメリカについて、今、一定の規模以上というお話でございましたけれども、これはいわば疑わしい取引の届け出をしているというふうに解釈をしていいのかどうか、確認をしておきたいと思います。

米田政府参考人 FATFの相互審査におきましては、アメリカのこの制度は、疑わしい取引の届け出とは認められていないというように承知をしてございます。

木原(誠)委員 ありがとうございます。

 まさに今御説明いただいたように、弁護士、特に司法にかかわる部分というのは、それぞれの国の慣行も、慣例も、そしてまた伝統もある、そういう意味では異なる取り扱いがなされている、こういうことだろうと思います。とりわけアメリカの場合は、金融機関についても、ある程度の額を決めてすべて届け出をさせるといったようなことが行われているわけで、これは、疑わしいということにかかわらず一定規模以上のものはすべて報告をさせる、こういう制度だというふうに承知をしております。

 そういう意味では、慣行が違えば取り扱いも違う、あってしかるべきだろうというふうに思いますし、とりわけ、守秘義務がどの程度それぞれの国において強いか強くないか、あるいは歴史的な経緯、あるいは依頼者との信頼関係をどこまで重要視するかしないか、多くの論点があるんだろうというように思いますけれども、我が国において、今回、弁護士について疑わしい取引の届け出は除外をする、措置をしない、本人確認等々についても、これは法律上の措置というよりはいわば内規的にやっていただくということになった、その経緯というよりも考え方を整理していただきたいと思います。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

米田政府参考人 経緯につきましては先ほど田端委員にもお答えをいたしましたけれども、基本的な考え方としては、私どもは、マネーロンダリング対策、テロ資金対策は大変重要でありますが、こういう弁護士等の依頼者との関係というのも重視をしております。当初つくりました案も、そういう考え方に基づいて案をつくったわけでございます。

 では、この後どうしていくのかということでございますけれども、日弁連においても、先ほど田端委員が御紹介ありましたように、やはりマネーロンダリング対策は重要であると。ただ、依頼者との関係についてなお懸念があって、その懸念の払拭の方法について、まだ意見としては私どもと一致をしていないということでございますので、その辺を踏まえて、双方で検討して、よりよい方策を見つけてまいりたいというふうに考えてございます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 今の部分は、疑わしい取引の届け出についてというふうに理解してよろしいでしょうか。

米田政府参考人 さようでございます。

 それで、若干答弁漏れがございましたので追加をさせていただきますが、弁護士につきましては、他の士業者とまたさらに異なりまして、その具体的な規範を会則で定めるということにしております。監督も日本弁護士連合会が行うということになるわけでございますが、これは、弁護士につきましては、日弁連を監督するという機関はございませんで、極めて高度の自治が既に認められております。その点を配慮いたしまして、弁護士会における自治にそこはゆだねまして、そしてその義務を十分に履行していないということになれば、それは弁護士会における懲戒等の監督に任される、そのような仕組みをとったものでございます。

木原(誠)委員 少し整理をしたいと思いますけれども、今お答えいただいたことは、届け出あるいは本人確認ということについては、会規、会則というんでしょうか規約がもう既に日弁連の中に制定をされて、それに基づいて運用がなされていく、それに違反するようなことがあれば、これは日弁連の中でしっかりと取り組んでいきます、こういう御趣旨かというふうに思います。

 一方で、疑わしい取引の届け出については、現状、まだそういう意味ではルールも存在をしないという状況だろうというふうに思いますけれども、補足をしていただく前の答弁の中で、そういう意味では日弁連の中で何ができるかということについてまだ十分な検討がなされていないので、これからしていきますというようなお話があったように思います。これは、疑わしい取引の届け出については、今、いわば白地の状態にあるわけですけれども、これを今後どういうふうに取り扱っていくのかということについて、政府側とこれからしっかり協議をしていく、こういうことと理解してよろしいか、御答弁いただきたいと思います。

米田政府参考人 弁護士に関しましては、一応その担当というのは法務省ということになるわけでございまして、私ども、法務省と連携しながら日本弁護士連合会を含む関係者と引き続き協議、検討をしてまいりたいというように考えてございます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 私、実はこの部分はかなりやはり真剣に議論をした方がいいだろうな、こういうように思います。というのは、冒頭申し上げたように、やはりマネロンの真髄は情報の部分、それと守秘義務の部分、そしてネットワークの部分、こういうものだと思います。

 とりわけ、守秘義務がある、あるいは秘密が守られるという世界は、犯罪者にとっては非常に居心地のいい世界であろうというふうに思います。かつては銀行は非常に強い守秘義務を持って、匿名口座もできますし、借名口座もできた。それがだんだん守秘義務が外れていった。今なお例えばルクセンブルクとかスイスは、まあスイスはちょっと状況が変わってきたというふうに承知をしますけれども、守秘義務が強い国もあるわけでして、やはりこの守秘義務の高さというところが一つのキーワードになってくるんだろうというふうに思います。

 そういう中にあって、一方で、司法の高度な自治あるいは弁護士の高度な自治ということとのバランスをどうとっていくのかということについては、せっかく今こうやって法案が出て、一つの機が熟してきているんだろうというふうに思いますから、先ほど田端委員から、反対の広告が出されたというお話もございました。私のところも実は多くの陳情をいただきましたけれども、しかし、それはそれとして、前向きに、今の御答弁はそういう御答弁だというふうに理解をしておりますけれども、しっかりと協議を進めていっていただきたいな、こう思います。

 それと、話が前後になって大変恐縮ですけれども、確認ですけれども、弁護士がかかわった、あるいは、弁護士に限りません、士業と言われる方々がかかわったマネーロンダリングの案件というものにどんな形態のものがある、あるいはどんな事例があるのかということについて、国内にあった例があるのかどうか、あるいは海外において何らかの報告があったかどうか、少し具体的に御教示いただきたいと思います。

米田政府参考人 例えば、これは弁護士自体が検挙されたわけではありませんけれども、IC機器の製造会社の代表取締役らが架空増資を行った事件がありまして、昨年の二月に検挙されておるんですけれども、これが、一たんその架空増資用の見せ金が弁護士の口座に入りまして、それが海外のタックスヘイブンに所在するとされている会社名義でその払込取扱銀行に入金されたというような事例。あるいは、賭博での収益を隠匿したいということで相談を受けた弁護士が、これは架空の債権債務をこしらえまして、裁判所からその差し押さえをさせるということで、免れようとして、これは弁護士も含めて検挙されたというような事例。あるいは、裏ビデオ店のわいせつDVDの販売収益、これを弁護士名義の金融機関口座に隠しておったということで検挙されたというような事例もございます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 そういう事例も既にあるわけでございますから、そんなことも踏まえながらしっかり御検討いただきたいな、こう思います。

 弁護士というか士業を含めて最後の御質問ですけれども、先ほどもございましたFATFとの相互審査の関係ですね、年内にもあるんではないかというふうに伺っております。私の経験でいきますと、FATFの審査というのは非常に厳しい。FATFメンバー各国から五、六人ないしはもうちょっとの人たちがメンバーに加わって、関係する当局をかなり綿密に回って情報収集をしていくということでございます。

 先ほどアメリカの例を伺ったのは、一万ドルを超える部分についてすべて報告をしていてもなお、これはFATFが求める疑わしい取引の届け出には該当しないということを相互審査では言われているということだとすると、今、現状、白地であるという状況を見ると、かなり我々にとっては厳しい相互審査になるんではないかというふうに思いますけれども、見込み、見通しというものについて御見解をいただきたいと思います。

米田政府参考人 平成十五年に改定をされましたFATF勧告におきましては、非金融機関としまして、不動産、宝石、貴金属、それからトラスト・アンド・カンパニー・サービスプロバイダー等、それと独立法律専門家等、ここに、本人確認、取引記録保存、そして疑わしい取引の届け出の措置を行わせるということを求めておるわけでございますが、本法案によりまして、一応対象事業者としてはすべて網羅できる。ただ、独立法律専門家等と言われている者に係る疑わしい取引の届け出のところが除外をされているということでございます。

 私どもとしましては、本法案の成立、施行によりまして、我が国のマネーロンダリング対策は大幅に前進するというように考えてございます。ただ、FATFの相互審査におきましては、弁護士その他の士業者が届け出義務の対象外となっていること、これは何らかの指摘を受けることは恐らくそうであろうと思います。ただ、その届け出にかわる日弁連の例えば自主的な取り組みの状況といったようなことも含めまして、我が国のマネーロンダリング対策、テロ資金対策が前進した面についてはよく説明をし、理解を求めて対応していきたいと思っております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 もう一点だけ確認したいのですが、FATFの相互審査、これはどういうランクづけがあるのかよく承知をしませんけれども、何かを指摘されたときというのは、法的な効果はないんでしょうけれども、FATF、OECDから、何かそれに対するサンクションというか罰みたいなものがあるのかないのか、その点を確認しておきたいと思います。

米田政府参考人 最初は、二年たてばフォローアップというようなことがありまして、だんだんそれではなかなか看過できないということになってきますと議長からのレターの発出等々ありまして、今まで最後そこまでいった例はないと聞いておりますけれども、除名ということも一応仕組みとしてはあると承知しております。

木原(誠)委員 日本はG7の主要国でございますし、FATFにおいて除名ということはまずないだろう、こういうふうに私も思います。ただ、FATFの中には、非協力地域あるいは非協力国に該当するという仕組みもございます。そういう意味では、先ほどしっかりと日弁連と政府との間で協議を進めていくということがございましたので、FATFのことも念頭に入れていただきながら精力的に御議論を進めていただきたいな、こう思うところでございます。

 ちょっと弁護士というか士業あるいは法律職といったことを離れまして、次の課題を少しお尋ねしたいというふうに思います。

 それは、今まさに弁護士のところでも議論があったことは、いわば国家権力と国民の権利、それをまさに守るべき弁護士という職業との間の緊張関係をどういうふうに我々が整理をするかということだろうというふうに思っております。

 そういう意味で、いわば国家権力との緊張関係ということで申し上げますと、今回の法案の中に、国家公安委員長なのか国家公安委員会なのか、広がった、あるいは広がった以外の部分ももちろん含めて、この対象事業者に対して報告の徴収権あるいはまた立入検査権、立入検査権自体は都道府県警が行うというように承知をしておりますけれども、いわば行政的なかなりの強い権限を持つというふうな規定がございます。

 まず、こういう規定あるいは権限が国家公安委員会に付与されるその背景というか、その趣旨を御説明いただきたいと思います。

米田政府参考人 この法案では、事業者に対する監督、これはそれぞれ事業の所管官庁が行う、こういう枠組みにしております。しかしながら、マネーロンダリングというのは、異なる種類の事業者をまたがって行われる、特に取り組みとか監督の緩やかな事業者が利用されるということがあるわけでございます。一方、所管行政庁の方は、所管外の事業者のことはなかなか精通をしていない、それぞれの監督下にある事業者を見ていただいておるということでございますので、こういう事態には十分対応できないというおそれがございます。

 そこで、本法案では、この点を補完するために、FIUとして全般の情勢、情報を把握している国家公安委員会が各事業所管行政庁に対して行政処分に関して意見を述べる、こういう手続を置いておるわけでございます。その際、意見を述べるためには当然確実な根拠資料に基づかなければならないわけでありまして、具体的問題を把握したとしても、本当に意見を述べるというまでにはまだまだいろいろな調査をしなければならない。それを各所管行政庁で調査をしてもらうということになると、先ほど述べたと同じように、やはり所管が分かれているというような問題も生じまして、時間と手間がかえってかかって、これは事業者にとってもかえって負担になりかねないという問題があるわけでございます。

 そういうことで、本法案では、所管行政庁による報告徴収とか調査を補完するものとして、意見陳述に必要な限度において、ということは、意見陳述を行う必要があると判断されるような具体的な問題を国家公安委員会において把握している場合において、国家公安委員会が報告徴収とか調査を行うことができる旨の規定を設けたわけでございます。

 なお、そのうち立入検査につきましては、国家公安委員会の事前承認を必要といたしまして、なおかつ、その承認をしようとするときは、所管行政庁に通知をして、その求めに応じて協議をしなければならないというようにしております。

 そういうことによって、慎重かつ客観的な判断を担保するということにしております。

木原(誠)委員 ありがとうございます。

 確認ですけれども、これは、各所管省庁、事業者の所管行政庁が行政処分をするときに国家公安委員会として意見陳述をする場合がある、意見陳述の規定が入っているわけですけれども、その場合に、正確な意見陳述をするためにみずから報告を求め、立入検査ができる。あくまでも意見陳述のための措置だということでよろしいかどうか、もう一度確認をしたいと思います。

米田政府参考人 法案にも明確に書いてございますように、意見陳述に必要な限度においてということでございますので、そのためだけでございます。

木原(誠)委員 まさに法案の中に、意見陳述をするための限度においてという言葉がございます。そういう意味では、これが一定の歯どめになるというか、目的は全く違う、こういうことで理解をいたしたい、こう思いますけれども、ただ、とかく国民の側は、警察権というものが過大にみずからの生活にかかわってくるということについてかなりの懸念というのがあるのも、これはいたし方ないことかなというふうに思います。私のところにも、そういう意味では若干の懸念の声というものが届いております。

 もう一点確認をしたいことは、今回の、とりわけ都道府県警による立入検査というものが、立入調査というんですかね、犯罪の捜査目的にかえって活用されるということがないのかどうか、一体どんな担保措置がとられているのかということについて、少し詳しく教えていただきたい、このように思います。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

米田政府参考人 立入検査は、犯罪捜査目的ではなくて行政上の目的である、これはもう当然のことでございます。

 先ほども申し上げましたように、そもそも、国家公安委員会の調査は意見陳述に必要な限度において行う、そして、その調査の中で、特に立入検査につきましては都道府県警察に指示をして行わせる、こういうことでございますので、当然、行政上の目的でございます。これは当然のことなんですけれども、特に本法案の場合は、事業者の義務に罰則がついておりません。したがって、そもそも捜査目的ということがおよそもともと考えられないという仕組みでございます。

 なお、当然のことでありますけれども、法案に書いてありますように、立入検査は犯罪捜査のために認められたものではないという旨を明記しておりますし、先ほど申しましたような、慎重かつ客観性を担保するような手続も置いておるわけでございます。もちろん、私どもとしても、これが適正に運用されるように、よくそのルールを決めてやってまいりたいと考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 今の御説明の中で、事業者の義務違反には罰則がついていない、したがって、これは犯罪捜査目的にはならないんだと。それはそうかなとも思いますけれども、ただ、我々が、あるいは国民が最もやはり懸念をするのは、いかなる形であれ、都道府県警を通じて事業者に立ち入りの調査が入り、そこでまた情報が得られたという状況になったときに、この情報が犯罪のために流用されるということがないのかどうかということなんだろうというふうに思います。

 立ち入りの目的はしっかり法案上にも書いてある、そしてまた、立ち入りの対象となる事業者には罰則がそもそもない、それはそれで十分理解をいたしますけれども、もう一度確認の御答弁をいただきたいと思いますけれども、この得られた情報について、あるいは得られたさまざまな資料について、犯罪の捜査目的には使われないということについてどのような担保措置がとられるのか。法案上の担保措置があるのか、あるいは警察内の何らかの担保措置があるのか、御答弁いただきたいと思います。

米田政府参考人 特に都道府県公安委員会というものはいろいろな行政権限を持っておりまして、都道府県警察の職員に立入検査をさせるということも、これは制度上いろいろあるわけでございます。中には、事業者の義務について罰則がついているものもある。しかしながら、それは行政上の目的でございまして、厳然と峻別をしておるわけでございます。

 私どもとしては、例えば、他の役所が同じようなことをやって、仮に行政上の目的で立ち入ってその場で例えば覚せい剤の粉末を見つけてしまったらどうするのか。それは一切知らぬふりをするのかといえば、そんなことはないわけでございまして、私どもとしては、みだりに捜査に流用されることがないように、中でルールはちゃんと決めていきたいということは考えてございますが、およそ、本当に偶然にそういうことがあったことに何もしないのかというと、それはかえって私どもの責務を果たすことにはならないと思いますので、そこのところは適切に対応してまいりたいと考えております。

木原(誠)委員 今、中でルールを何らか定めてというお話もございました。そして、それで適切に運用していくと。そこはしっかり信頼をして、まさにお願いをしたいな、こう思う次第でございます。まさにおっしゃったとおりで、たまたま入って、そこに犯罪の端緒を見つけたときに目をつぶるということはあり得ないことだろうというふうに思いますので、そこはしっかりとしたルールをつくっていただきたいとお願いをしておきたいというふうに思います。

 残りあと十分ぐらいですので、最後に実施体制について少しお伺いをしておきたい、このように思います。

 せっかくこうして、マネロンに関して一本の新法がしっかりと成立をし、FATFの改定された四十の勧告に沿って対象事業者もふやし、警察庁の行政権限といったものも少し付与しながら新しい体制ができるわけですけれども、私が危惧しますことは、今でも十一万余を超える疑わしい取引の届け出がある、こういう状況の中で、これだけ対象事業者をふやしていったときに本当に今の体制で間に合うのかなということを思うわけでございます。

 まず最初に、これも諸外国のことから入って恐縮ですけれども、諸外国において幾つかの国を挙げながら、このいわゆるFIUの組織というものについて御説明いただきたいというふうに思います。

米田政府参考人 主要国について申し上げますと、体制でよろしゅうございますか。(木原(誠)委員「はい」と呼ぶ)例えばイギリス、これは重大組織犯罪対策庁にFIUがございますが、これで約二百名、アメリカは、いわゆるFinCENと言われております、経済犯罪法執行ネットワークでありますが、これが二百九十人等々、大体百人を超えるもの、ちょっとドイツが例外的に少ないんですけれども、日本に比べれば大変大きな体制を持っております。

 ちなみに、現在、金融庁に置かれております特定金融情報室は十七人ということでございます。

木原(誠)委員 御説明いただいたように、諸外国というのは基本的に百名を超えるかなりの規模の体制をとっているというふうに承知をしております。また、今御答弁いただいた中にもあるように、そういった中で今の金融庁にある特定情報室は十七名の体制でございます。やはりちょっと少ないな、こう思うわけです。

 今度、この金融庁にあるFIUが警察庁の方に移管をされるということになっておりますけれども、体制はどんな体制で、つまりこの十七人がそのまま同じ数で移行するのか、どういうことになっているのか御説明いただきたいと思います。

米田政府参考人 来年度、私どもがお願いをしております予算では、この国家公安委員会FIUの移管初年度約四十人の体制で、そのトップとしては政令職の課長級を予定してございます。これを将来、三けた単位の他の外国と比べてどうするのかという問題があるわけでございますが、その辺の諸外国の例も参考にしながら、また移管後の状況を踏まえながら、検討をさらに進めてまいりたいと考えております。

木原(誠)委員 今、四十人ということだとすると、倍を超える増員ということだろうというふうに思います。まだまだ少ないような気もしますけれども、それはそれで歓迎をいたしたい、こう思いますけれども、四十人体制について、これは、今回いろいろな意味で法案の中で事業者というものが対象拡大をされた。四十人も、例えば各省からそれぞれ人を持ってくるのか、あるいはこれはもう基本的に警察庁としてしっかりやっていくということなのか、そこら辺の見込みも御教示いただければと思います。

米田政府参考人 これは人事ということも絡みますので余りはっきりは言えないんですけれども、私どもとしては、金融庁からの定員の移管の部分がございます。これだと約十人ぐらいなんですけれども、それは単に定員枠だけではなくて、それ相応の専門的な知識を持って現在やっていらっしゃる方に来ていただきたいというように希望しているところでございます。

木原(誠)委員 それをお伺いしたのは、先ほど国税庁お帰りいただいたんですけれども、多くの諸外国では、税関そしてまた国税庁といったようなところを中心に、警察だけではなくてかなりの専門家を集めて情報の収集、分析をさせる、こういう体制になっておりますので、人員の増強というのは大変重要ではありますけれども、その中身ということについても十分に御配慮いただきたいな、こう思います。

 一点確認をしておきたいと思いますけれども、そもそも、今回警察庁にかわるということについて警察庁としてどう評価を、要するに、FIUが警察庁に来るということによって、警察庁として犯罪の捜査等々の関係でどんな効果が出てくるか。特に、組織犯罪という観点からいうとどんな効果が出てくると考えているか、その部分を御答弁いただきたいと思います。

米田政府参考人 これはFIUが金融庁から国家公安委員会、警察庁へ移管されるというだけではなくて、それを契機として分析の体制を強化する。そして、対象事業者もふえるという中で、私どもとしては、今から本格的にマネーロンダリング対策、特に、地下資金といいますかブラックマネーの流れをより強力に追跡し、摘発を進め、そして組織犯罪に打撃を与えてまいりたいと考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 ここはちょっと国家公安委員長にお伺いしたいと思いますけれども、私は今いろいろお話を伺っていて特に実施体制のところ、今回四十名になる、こういうことですけれども、諸外国の例を見ると、御答弁いただいたとおり、百名というよりもむしろ二百名を超えるというのが通常の体制だろうというふうに思います。とりわけ日本は、経済規模で見ると世界第二位の経済だ、こういうことですから、いろいろな意味で犯罪資金が流れ込みやすい状況もございますし、テロ資金が流れ込みやすい状況もあるんだろう。金融マーケットも非常に大きい、こういう状況でございます。

 ぜひこの四十名というのを、今行政官の定員というのは非常に厳しい枠がかぶさっておりますし、五年で五・何%の削減というものもかかっているわけでございますけれども、人員増強に向けてぜひ御尽力いただきたい、こう思いますけれども、一言御決意をいただければありがたいと思います。

溝手国務大臣 実は、行政合理化の波が動いている中で、今回の予算づけも大変苦労したところでございます。今回、約九億弱の予算づけをしておりますが、これから、すぐふやせというのはなかなか言いづらい環境にあることは御理解いただきたい。しかし、この法律の趣旨の目的達成のために最大の努力をしてまいりたい、次年度に対応したい、このように思っているところでございます。

木原(誠)委員 次年度にまた努力をしていただけると思いますし、ぜひ頑張っていただきたい、こういうふうに思います。

 冒頭申し上げましたように、本当に今犯罪は組織化して、国際化、複雑化をしている。しかも、そういう犯罪が我々の生活のすぐ身近にあるということだろうというふうに思います。つい最近も、東京の繁華街の利権をめぐって大きな組織が抗争し合うといったような状況もございます。あるいはまた、アフガニスタンあるいはタリバンといったところの口座が日本国内にあるんじゃないかといったようなことも一時期言われたこともございます。

 そういう意味では、この法案を通じて、ぜひマネロン対策というものに日本国政府を挙げてしっかり取り組んでいただきたい。とりわけ、マネロンというのは、ネットワークというふうに申し上げましたけれども、ネットワークのどこかに脆弱な部分がありますと、その部分が集中的にねらわれるということがございます。やはり国際社会の本当に責任ある一員としてしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思いますけれども、最後に、国家公安委員長から、この法案の成立に向けて、また、その後のマネーロンダリング対策ということについての御決意をいただきたい、このように思います。

溝手国務大臣 きょう趣旨説明をさせていただいて、議論が開始いたしたところでございます。いろいろな意味で問題の御指摘をいただいて、我々もさらに勉強してまいりたいと思いますし、また、皆さんのお力をいただいてできるだけ早く成立できるように努力してまいりたい、このように考えております。

木原(誠)委員 少し早いですけれども、二、三分残りましたけれども、私の質疑をこれで終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

河本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十六分散会


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