衆議院

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第6号 平成19年3月22日(木曜日)

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平成十九年三月二十二日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 河本 三郎君

   理事 木村  勉君 理事 後藤田正純君

   理事 戸井田とおる君 理事 西村 康稔君

   理事 平井たくや君 理事 泉  健太君

   理事 松原  仁君 理事 田端 正広君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      遠藤 武彦君    小里 泰弘君

      岡下 信子君    木原 誠二君

      谷本 龍哉君    寺田  稔君

      土井  亨君    中森ふくよ君

      長島 忠美君    西銘恒三郎君

      林田  彪君    馬渡 龍治君

      松浪 健太君    御法川信英君

      村上誠一郎君    市村浩一郎君

      小川 淳也君    川内 博史君

      小宮山洋子君    佐々木隆博君

      横光 克彦君    渡辺  周君

      石井 啓一君    吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 溝手 顕正君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   内閣府大臣政務官     谷本 龍哉君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 竹林 義久君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁情報通信局長)  武市 一幸君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            畑中龍太郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            山崎 穰一君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     桜井  俊君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           石黒 憲彦君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           川本正一郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           大森 雅夫君

   内閣委員会専門員     堤  貞雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十二日

 辞任         補欠選任

  遠藤 宣彦君     小里 泰弘君

  嘉数 知賢君     西銘恒三郎君

  木原 誠二君     稲田 朋美君

  谷本 龍哉君     御法川信英君

  市村浩一郎君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     木原 誠二君

  小里 泰弘君     長島 忠美君

  西銘恒三郎君     嘉数 知賢君

  御法川信英君     谷本 龍哉君

  川内 博史君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  長島 忠美君     赤池 誠章君

同日

 辞任         補欠選任

  赤池 誠章君     馬渡 龍治君

同日

 辞任         補欠選任

  馬渡 龍治君     遠藤 宣彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 犯罪による収益の移転防止に関する法律案(内閣提出第二九号)


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     ――――◇―――――

河本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、犯罪による収益の移転防止に関する法律案を議題といたします。

 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま審査中の本案に対し、法務委員会から連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 また、連合審査会において、政府参考人及び参考人から説明または意見を聴取する必要が生じました場合には、出席を求め、説明等を聴取することとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、最高裁判所から出席説明の要求がありました場合には、これを承認することとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、本連合審査会は、本日午後一時から本委員室において開会いたしますので、御了承をお願いいたします。

    ―――――――――――――

河本委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、明二十三日金曜日午前九時から、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官竹林義久君、警察庁刑事局長縄田修君、組織犯罪対策部長米田壯君、金融庁総務企画局審議官畑中龍太郎君、総務企画局参事官山崎穰一君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長桜井俊君、法務省大臣官房審議官三浦守君、経済産業省大臣官房審議官石黒憲彦君及び国土交通省大臣官房審議官川本正一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。寺田稔君。

寺田(稔)委員 自由民主党の寺田でございます。

 きょうは知事選の告示日ではございますが、こうしてこの内閣委員会、多くの先生方、御精励になっておられます。大変にすばらしいことだというふうに思います。ぜひとも、きょうのこの内閣委員会、実り多き審議となることを期待するものでございますし、また、午後には連合審査も法務委員会と行われるわけでございます。ぜひとも中身のある審議を展開いたしたいというふうに思います。

 なお冒頭、質問に入ります前に、本日、これから約一時間後の午前十時、いよいよきょうは東京裁判の日でございます。被爆から六十二年を迎え、多くの被爆者が、今現在、なおかつ原爆症の後遺症に苦しんでいる。しかし、厚生労働省の行政の不作為によって、わずか一%未満しか救済をされていない。これは行政の不作為どころか、意図的なサボタージュであるというふうに我々は認識をしております。

 多くの与野党議員、同志を得まして、きょうはこの東京裁判、私も被爆二世として、また溝手大臣も広島出身でございます。また、きょうの東京裁判には、きょうお越しの内閣委員の東京選出の多くの議員の方々も御賛同をいただいておるところでございまして、ぜひとも、この東京裁判、私も勝利を確信いたしておりますが、被爆者の救済を進めることができればというふうに思っております。先生方の御支援のほどよろしくお願い申し上げます。(拍手)ありがとうございます。

 さて、付託になりました犯罪の収益の移転防止に関する法律案、先週の金曜日に趣旨説明も行われました。これは、マネロンを防止して、テロリストのばっこを防ぐ国際的な枠組み、アルシュ・サミット以来の枠組みの中で、我が国も国際社会の中で応分の負担を果たそうとするものであり、その意味で大変意義深いものであるというふうに考えておりますが、まず、この法律の御説明をいただきます前に、若干の二、三の前提となります事実、ファクトの部分についてお伺いをしなければなりません。

 我が国におけますこれまでのマネロンの件数、そしてまたマネーロンダリングに起因をします犯罪収益額、実は既に我々の同僚議員からも前回、同様の質問がなされまして、なかなか定量的なお答えをいただいておらなかったところでありますが、ぜひともこれは審議の前提として、わかる範囲で、この件数そしてまた額について、把握をされている数値を御教示いただきたいと思います。

米田政府参考人 警察が検挙をいたしました平成十八年中のマネーロンダリング犯罪、すなわち犯罪収益の隠匿、収受等でございますが、これは百三十七件ございました。同じ平成十八年の我が国全体におきます組織的犯罪処罰法あるいは麻薬特例法に基づきます没収、追徴額、合計いたしまして六十億円でございます。

 マネーロンダリングに起因する犯罪収益という形では把握しておりませんで、そもそも犯罪収益の全体像というのはなかなかつかみがたいものでございますが、御参考までに申し上げますと、平成十七年中の刑法上の財産犯の被害額の合計は約二千八百五億円、あるいは典型的な最近の被害であります振り込め詐欺あるいは振り込め恐喝の被害額が約二百五十億円、あるいはやみ金融事犯の被害額が約二百億円等となってございます。

寺田(稔)委員 今、米田部長の方からもお答えがございましたが、百三十七件、やはり大変な件数でございます。私が役所よりいただいたデータによりますと、実際に検挙につなげた件数も、例えば平成十八年中は五十件というふうなことでありますし、今言われた被害額二千八百億、これは恐らく、いろいろな金融事案、特に昨年は非常に大きなやみ金事件、あるいはまた融資詐欺事件も起きております。こうしたような、特に融資保証金名目で銀行口座に振り込み詐欺の入金をさせるというふうな、いわゆる詐欺事件も多発をしているわけでございまして、ぜひともそういったような犯罪を抑止するためにも今回のこの法案の中身を見ていかなければならないわけであります。

 その中身に入ります前に、もう一点、これはデータの点でございますが、仮に、我が国において今言われたような百三十七件、そういうふうな状況であった場合、全世界ベースで見たマネロンの件数、そしてまた把握し得る範囲での犯罪収益額、これについては警察当局は一体どのように把握をされているのか、お伺いをしたいと思います。

米田政府参考人 全世界となりますと、なお犯罪の収益額を試算するのは困難でございますけれども、かつて平成二年、FATFの報告によりますと、薬物によります収益というのが年間およそ千二百二十億ドル、つまり約十五兆円でございました。そのうち年間およそ八百五十億ドル、約十兆円が資金洗浄されている、当時はそのように試算をされておりました。

 それから、マネーロンダリングの検挙件数でございますけれども、例えばアメリカにおきましては、マネーロンダリング罪により有罪となった人員というのは毎年千人以上に上っていると承知をしております。

寺田(稔)委員 今、やや古いというか、平成二年と言われましたが、麻薬において十五兆円の収益、資金洗浄部分がその三分の二に当たる十兆円というふうなお話もございました。大変な額であります。

 今回、六者協議におきます合意を受けまして、アメリカの米朝直接協議の結果も受けてでございますが、北朝鮮に対する金融制裁が解除されんとしているわけですが、マカオの銀行、バンコ・デルタ・アジアにおいてやはり不正と見られる残高があるというふうなことで、今回この差し押さえがなされたわけでございます。

 こういう北朝鮮に起因をします、あるいはまた何らかの形でもって北朝鮮の関与しているところのマネロン件数については、一体どれだけと把握をされているでしょうか。

米田政府参考人 もとより、北朝鮮が関与するあるいは関係する事案についても、そのような事案があれば厳正に対処することといたしておりますけれども、現在までのところ、北朝鮮が関与するマネーロンダリングとして検挙に至ったものはないと承知をしております。

寺田(稔)委員 北朝鮮絡みのものは、現在、警察当局としては残念ながら把握をされていないということでございますが、実はこれまで、アルシュ・サミットの合意を受けて、金融庁においてFIUがマネロンの監視を行ってきたわけです。

 金融庁において、これまでいわゆる疑わしき取引の集約と分析、そしてまた捜査機関への提供を行ってきたわけですが、警察当局からごらんになって、これまで金融庁が行ってきたところのそうした活動、FIUとしての活動を一体どういうふうに評価をされているか。すなわち、金融機関に対する報告徴求の形でもって、これまで金融庁のFIUにおいて把握をしてきたそうした疑わしき取引、マネロンも含むそうした取引については、警察当局は一体どのような御報告を受けて、それに対してどのような評価をされているか、お伺いをしたいと思います。

米田政府参考人 金融庁におかれましては、平成十二年にFIUが発足をいたしまして以来、現在の組織的犯罪処罰法の規定によりまして、疑わしい取引の届け出を受け、そして分析し、警察を初め捜査機関に提供するという業務を行ってこられました。この間、情報の届け出件数は年々増加をいたしまして、また、警察といたしましても、これを活用して事件の検挙につなげてきたところでございます。金融庁の果たしてきた役割は、私どもとしても大きく評価をしております。

 今回、事業者の拡大に伴いまして金融庁から私どもが移管を受けることになるわけでございますけれども、組織犯罪対策あるいはテロ対策を担当する警察としてのいわばその利点を生かしまして、金融庁がやってこられたこと以上に、この業務につきまして的確に遂行するように努めてまいりたいと考えております。

寺田(稔)委員 今回、このFIUの組織が金融庁から警察当局に移るわけですが、これまで金融庁は、これは金融庁ですから、当然金融機関に対する監督権限を有する金融監督当局として、金融機関から報告徴求を行ってきているわけでして、これは極めて私は信頼に足るものなんだろうというふうに思います。

 もちろん、その相手先は、金融庁ですから、直の監督当局である金融機関からしか情報徴求ができないという点がございますが、しかし、およそ、この物の流れの反対給付としてお金が流れる。AからBへ物が流れると、反対給付としてBからAにお金の反対給付があるわけです。それは、ほとんど一〇〇%銀行口座、すなわち金融機関あるいは金融機関間のトランスファー、取引というふうな形でもって把握をされるわけでありまして、今回の六者協議でも大きなトピックスになっておりますバンコ・デルタ・アジアの北朝鮮の不正口座についても、実はそうした金融当局間のやりとり、これはFATFの場も含む金融当局者の会合によって把握をされたというふうなことにかんがみますと、当然、警察当局としても、これからFIUの組織が警察庁に移っても、金融当局のそうした貴重な情報を、ぜひとも、全面的な協力要請をすることによって必要な情報を徴求していく、すなわち、金融庁の力を全面的にかりることによって、そうした国際的な金融のネットワークを警察当局としても生かしていただきたいというふうに思うわけであります。

 このように、犯罪収益が北朝鮮及びテロ国家に渡ることによって、重大な国際犯罪行為、テロを含む犯罪行為が惹起されることになるわけですが、そうしたテロ行為防止のため、このような国際的な枠組みの中での監視、そしてまた収益の移転防止をしていく上で、我が国として応分の負担と責任を負わなければならないことは、私は当然のことだろうというふうに思っております。

 この点については、私も所属をしておりましたテロ特の方でも同様の質疑をさせていただいたわけでございます。一昨年のグレンイーグルスの事案についても、当時のテロ特でこの質疑をさせていただいたわけですが、そうした国際的な枠組みの中で我が国が活動を行っていく上で、我が国として一体どういうふうなそうした活動に対する貢献があり得るのか、溝手大臣にお伺いをいたします。

溝手国務大臣 犯罪組織やテロ組織は、犯罪による収益を国境を越えて移転させまして、これを隠匿したり、犯罪に再投資することを企図するわけでございますが、これを阻止するためには、国際社会が足並みをそろえまして、不正な資金の移動を防止するための対策を講じていくことが必要かと考えております。

 その意味におきまして、我が国が本法案により国際基準であるFATF勧告を履行することで、諸外国と協調したマネーロンダリング及びテロ資金対策が可能になってくると考えており、我が国の金融機関等の事業者の国際社会における信用度も高めることになり、この分野における国際的な責務を果たしていくことになるのではないか、このように考えております。

寺田(稔)委員 当然、我が国としても、テロ行為の抑止については、さまざまな機関あるいはレベルにおいてこれまでも国際協調を行ってきたわけですが、ぜひ警察当局が、特にFIUが金融庁の方から移管をされるわけでございますから、そういう国際的な場においても主導的な役割を果たしていただきたいと思います。

 と申しますのも、金融庁にこのFIUがあったときも、我が国の金融庁がイニシアチブをとる形でいろいろな金融の取り組みを行っております。特に、九・一一テロを受けた後の外為法の改正、あるいはまた、国際的なそうしたマネーの流れに対する銀行間の監視のネットワークの強化については、専らアメリカの金融当局と我が国の金融当局、両者が主導権をとる形でもってそうしたネットワークの構築を行った。そして、多くの情報がもたらされてきております。そういったような意味からいっても、FIUが今度移ります警察当局の責任は極めて重いものというふうに考えております。

 いよいよこの法案の中身に入ってまいりたいと思います。

 今回、犯罪による収益移転防止に関する法案の提出がなされたということでございますが、これまで金融庁が果たしてきた役割、これまでも同様の活動を行ってきたわけですが、今回のこの法案によって、さらに我々はレベルアップを当然図る。レベルアップを図るために今回の法案を成立させたいわけですけれども、今回の法律自体のねらい、そしてまた、今回の法律が仮に成立をした場合、このマネロン行為、資金洗浄行為、あるいはテロ行為そのものに対して、一体どれだけの抑止効果を持つのか。

 ここは当然提出者である大臣にお伺いをしておかなければならないわけですが、そうした抑止効果について、溝手大臣にお伺いをいたします。

溝手国務大臣 御指摘がありましたように、従来からのFIUが果たしてきた機能、その存在価値というのは十分尊重しなくてはいけないし、これを引き継いでいかなくてはいけないし、その機能をこれからも発展させていかなくてはいけないだろうと思います。それに加えまして、本法案を提出いたしまして、国家公安委員会がその任に当たるという立場になりますと、それに加えて何か付加されるものといいますかメリットが出てくるというのは、当然期待されるところであろうと思います。

 そんな意味で考えてみますと、特定事業者という概念が入ってまいりまして、本人確認等の措置を講じることにより、暴力団、テロ組織等が関与する犯罪の組織や犯罪による収益の追跡に資することになりまして、いわゆる犯罪収益の剥奪、被害者への回復、あるいは犯罪組織の弱体化ということに対しては大きな効果があるものだと考えております。

 また、さらに国際基準でありますFATF勧告を履行することによりまして、我が国の金融機関あるいはその他の業者の国際社会における信用度というのが高まってくるものだと考えております。テロや犯罪社会、組織犯罪の侵入を食いとめるためには、この分野における国際的責務を果たすという観点から、また一つの効果が期待されるのではないか、このように考えております。

 特定事業者が犯罪などの収益移転に悪用されることをいかにして抑止していくか、いかに健全な経済活動の発展に資することができるかというのが今回の法律の大きなねらいであるとも言えると思います。

寺田(稔)委員 今、大臣から、新たにFIUが金融庁から警察当局に移ることによって、今回の法案でも明定をされておりますいわゆる新規対象事業者、すなわち、金融庁であったら当然監督対象である金融機関しか相手にできなかったものが、より範囲が広がることによって、犯罪の抑止あるいは情報の徴求においてプラスの効果がある。そしてまた国際的な枠組み、まさに今回の法案の成立というのは、そういう国際的な枠組みに我が国が加わっていくための一つの前提条件をなすわけですから、そういった点でもメリットがあるものというふうに考えられるわけです。

 実は、今回、新規対象事業者が非常に膨らむというふうなことで、いろいろな事業者あるいは事業者団体、そしてまた、例えば私書箱に至るまで情報徴求ができることは私も大きなメリットであるというふうに考えておるわけです。

 実は、今回のこの法案の提出過程において、警察庁は日弁連との調整を行ったというふうに理解をしておりますが、日弁連に対し、当初言われていたいわゆるゲートキーパー制、すなわち届け出の義務化、報告の義務化を行わないというふうになったわけでございます。義務化は行わない。そのことにより、情報をとるスコープがやや狭まってしまったのではないか。すなわち、義務化を行わないことにより、犯罪把握において支障を生ずることがないのかどうかという点が実は懸念をされるわけですが、この点についての大臣の御見解をお伺いいたします。

溝手国務大臣 御承知のように、FATF勧告は、独立法律専門家等のほかに、指定非金融機関として不動産業者、宝石商、貴金属商、トラスト・アンド・カンパニー・サービスプロバイダー等に疑わしい取引の届け出義務を課すことを求めております。

 本法案は、独立法律専門家等を除きその要請にこたえたものとなっております。御指摘の点もございますが、この法案が成立、施行したということで大きな観点で見ますと、我が国のマネーロンダリング及びテロ資金対策は大きく前進するものだと評価をしているところでございます。

 また、士業者に対しまして本人確認及び取引記録等の作成、保存の措置を求めることで、これらのものがマネーロンダリング行為に利用されることを防止する上で相当の効果があるものと考えております。

寺田(稔)委員 今、義務化を行わない点についての評価及び御認識についてのお答えをいただいたわけですが、実は私、大変重視しておりますのが、最後に大臣が言われた本人確認義務、ここは一応義務化であります。また取引記録作成義務も義務化である。

 実は、いろいろなお金、マネーフローを行う取引の上でそういうふうなさまざまな事業者が関与する、こうした中で本人確認をきちっと行うことは非常に重要でございまして、例えば金券屋における本人確認によって不正な企業犯罪が明らかになる、あるいは詐欺事件が明らかになるというふうなことが現実に起きているわけですね。したがって、この本人確認義務化というのは私は非常に高く評価をいたしたいというふうに思うわけであります。

 したがって、今回の対象業種の拡大、そしてそれに伴います本人確認義務と取引記録の作成義務、この点については、犯罪の把握あるいはマネロンのお金の流れの把握において一つ前進を見ることができるというふうに認識をしておるわけでありますが、そういうふうになった場合、実は、先ほど申しましたような北朝鮮のようなケース、仮に本法案が実施、施行されたものと仮定をして、北朝鮮が関与するような、あるいはし得るようなマネロン案件に対して、一体どれほどの効果を発揮するのかということが当然重要な、とりあえず、我が国にとりまして喫緊の脅威となっております北朝鮮問題の対処という意味で非常に関心があるわけでございますが、そういう北朝鮮が関与するマネロン対策に本法律案が一体どのように役立つのか、大臣にお伺いをいたしたいと思います。

溝手国務大臣 本法律案の対象となる事業者が把握し届け出を行った取引に北朝鮮の関与が疑われるものがあった場合という想定と思われますが、適切な対応に結びつけていけることにはなろうかと思いますが、そういった本人確認、取引記録の保存ということがこの種の事案の収益の追跡に対して極めて効果を発揮してくるものと考えております。FIUが金融庁から国家公安委員会に移管されることに伴い、この種の情報の分析機能というというのに一層の向上を図っていくことができるものだとも考えております。

 したがいまして、このことによって直接何か効果があるわけではありませんが、純粋技術的には、我々の国家公安委員会として今まで積み重ねたいろいろなデータとうまく組み合わせて北朝鮮問題解決に寄与できれば非常にありがたい、このように思っておるところです。

寺田(稔)委員 さまざまな国家機関がいろいろなレベルで情報収集を行うべきことは当然でありまして、当然、警察当局、公安当局、また内調あるいは公安調査庁あるいは防衛省の情本、情報本部を初めとするさまざまな機関がいろいろな情報を収集していて、その情報収集のところの統合、そしてまた適切にそれを生かすべきことは現在内閣官房でも検討が進められているわけであります。

 また今回、安倍総理によって提案をされております日本版NSCも、実は情報の流れを特に四大臣を中心として構築していくというふうな点で、情報の集約、分析、まさに今大臣が言われた点でございますが、そしてさらに調査というふうな点で、一体となってそれを行うことで初めて相乗効果も増すものというふうに思うわけですが、一点、それとの関連で、追加でお伺いしたい点がございます。

 と申しますのも、先ほど申し上げました対象事業者の問題に絡みまして、国家公安委員会によります報告徴収と立入検査の仕組みというのが今回の法律によって新たに設けられているわけであります。国家公安委員会による事業者に対する義務づけを課しているわけですけれども、恐らく義務違反が行われた場合に発動要件となろうかというふうに思うわけですけれども、そういう国家公安委員会による報告徴収と、そして立入検査の仕組みを設けた趣旨について、これは事務方で結構でございます、お願いをいたします。

米田政府参考人 この法律案では、各事業の所管官庁、ここにそれぞれ特定事業者の監督を行っていただく、こういう仕組みにしております。それは、非常に日ごろからなじみの深い業界と意思疎通を通じながら有効なガイドラインをつくっていただく、あるいは監督していただくということでありますが、マネーロンダリングというものはいろいろな業種の間をお金がぐるぐる回るわけでございますので、個々を、それぞれの事業者を見る所管官庁だけではなかなか対応ができないということがございます。

 したがいまして、国家公安委員会が、例えばこれは是正命令を発動した方がいいだろうというような場合に、意見陳述をするという仕組みを設けてございます。その意見陳述をするためには事実関係を確定しなければなりませんけれども、非常に多業種にまたがるというマネーロンダリングの性質からいたしまして、これをそれぞれの所管行政庁の調査にだけ任せているということは、かえって手間と時間がかかって特定事業者に負担を生ずるということにもなりかねないということで、これはあくまで各所管官庁の調査を補完するものでありますが、そういう報告徴収あるいは立入検査を含みます調査という規定を設けたものでございます。

寺田(稔)委員 今、米田部長より、報告徴収、立入検査規定についての趣旨の御説明があったわけでございます。

 実は、この意見陳述規定の前提としてこの報告徴収あるいは立入検査の仕組みというのは当然必要となってくるわけでございます。

 具体のいろいろな情報入手ルートがあるわけでございますけれども、これは、今、実は金融庁が実施をしておりますFIUにおいても生じている問題として、外国のFIU、海外のFIUや海外の捜査機関から情報を得たような場合、これは当然国際間のネットワークに入ったときそういうふうなケースが多発をするわけですが、このときにはいわゆる情報源の秘匿の問題が相手先との関係でかかってくるということでございますので、そういうふうなときに、資料を直接入手することについてやはり制約が生じてくる。そういうふうなときに、私は、やはりこの報告徴収、立入検査の必要性が極めて高まってくるんだろうと思っております。

 したがって、極めて重要なことは、この規定を決して死文にすることなく、ぜひともこの規定を実際に非常に数多く活用していただくことによってさまざまな事案の解明につなげていただければというふうに思います。

 あと若干お聞きをしたかったこともあるわけでございますが、質疑時間が参りました。ここで終了させていただきます。

河本委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 民主党の横光克彦でございます。質問をさせていただきます。

 まず、この法案とは直接関係はございませんが、しかし、関連としては大変大きな問題で関連しているわけでございますので、現在の警察のありようについてちょっとお尋ねをいたしたいと思います。

 まず、みずからの命を顧みず他人の命を救おうとして、宮本巡査部長、殉職後は二階級特進して警部になられたんですが、この方が殉職をされました。これは本当に、国民から見て大変勇気ある行動であり、大きな感動を広げた、警察に対する信頼というものを一挙に高めたと私は思っております。そういった宮本さんのような思いでほとんどの警察官は日夜勤務に励んでおられると思うんですね。

 しかし、その一方で、やはりこのところ警察の不祥事が多発いたしております。ことしになってからの分を紹介させていただきますけれども、ちょっと大臣には頭の痛い、耳の痛い事例を挙げますけれども、聞いてください。

 宮本さんのようにすばらしい行動をとる警察官がいる一方で、ことしの一月に富山県警で誤認逮捕がはっきりしましたね。三年間も無実の罪で服役していた。しかも、その判決の前には、うんかはい以外には言うなというような非常に強制的な自白を迫られた結果、とうとう自白してしまって、服役までした。後に真犯人が出た。三年間を奪われたわけですね。こういったことが富山で起きた。

 また、二月には、鹿児島地裁で、鹿児島県議選で被告となった十二人、この方たちが全員無罪を言い渡された。これもまた、警察では大変な自白を取り調べの段階で強制した。これもちょっと異常ですね。長時間に及んだきつい取り調べに耐え切れずに告白した人がほとんどだと。

 その中で、ちょっと、こんなことがあるのかというのは、こんな人間に育てた覚えはないなどとする父親ら親族の署名を捏造した上、それを足で踏ませて自白を迫ったという踏み字事件ですね。それも、その文章は勝手につくって、それを踏ませた、そこまでやってしまったんです。これは現在ですよ、全く。こういった鹿児島県警での強制的な自白誘導があった。

 そして、この三月には、佐賀の北方事件で三女性殺害も一審、二審無罪だと。この裁判長の判決内容で、決定的な客観証拠は皆無であり、この程度の情況証拠で被告を有罪とするのは刑事裁判の鉄則に照らしてできない、ここまで非常に厳しいことを言っておる。

 そして、きのうの報道では、山口県警で、何と取り調べ室で容疑者に暴行を与えて重傷を与えてしまった。こんなことが現在でも平気で行われておるんですね。

 片や、宮本さんのようにすばらしい方、こういったことがほとんど。しかし、一方で、こういった事例の不祥事が発生すれば、国民の警察に対する信頼というのがどうしても落ちていかざるを得ないんですね。やはり、このところ警察内への風当たりは強いわけでございます。批判は高まるばかりだと思うんですね。

 職業などに対する信頼意識という調査でも、残念ながら警察官は余り上位ではございません、医師や消防士等に比べたら。もっとも、もっと低いのは国会議員でございますが、これは、ほとんどの国会議員も一生懸命職務に専念してはいるんですが、やはり一部の国会議員の不祥事によって全体の国会議員の評価は物すごく下がっている。

 こういったことで、この問題を冒頭大臣に、今の警察の状況、ありようというものをどのように認識しているかということをまずお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。

溝手国務大臣 御指摘をいただきました。大変胸が痛むわけでございますが、警察の任務の遂行のことを考えますと、警察に対する国民の理解と協力というのは不可欠でございます。これら国民の信頼を基礎として得られるものである、そう考えておりますが、先ほど御指摘のさまざまな不祥事が、ことしに入って表面化してきております。大変憂慮いたしております。

 国家公安委員会並びに警察庁におきましては、警察刷新会議の提言を受けまして、既に、平成十二年以来、警察改革の要綱を策定し、警察改革に取り組んできたところでございます。施策については、私のチェックした限りにおいては、すべてのところで実行に移され、各部門において皆努力をいたしているところでございますが、依然として被疑事件が発生しているというのも事実でございまして、改革は道半ばにあると判断せざるを得ないと思っております。

 私の責任として、警察改革のさらなる推進のためにこれからも努力をしてまいりたい、このように考えております。

横光委員 改革に取り組んでいると言われましたが、当然のことであり、道半ばなんて許される問題じゃないんですよ、正直言って。これからだって、道半ばということは、まだまだ半分そういった余地が残っているということは、こういうことがこれからも起き得るということを今言われたようなもので、大変あっちゃならないことがこのところ連続して起きているものですから、やはり信頼というのが一番大事なんですね。

 我々は、警察官を信頼しているからこそ、けん銃の携帯まで許しているわけでしょう。そこが裏切られていくということは大変不安になってくる。その不安があるから、私は冒頭これを聞いたんです。この法案も、やはりこれからFIUが金融庁から国家公安委員会になるわけです。警察庁になるわけです。ですから、冒頭、直接の関連はないにしても、お聞きしたわけでございます。

 本法律案の最大のポイントは、私は、ただいま申し上げたように、FIUを金融庁から国家公安委員会、つまり警察に移管したことにあると思っておるんですね。そうしましたら、まず、移管した理由を端的にお答えください。

米田政府参考人 この国家公安委員会、警察庁の方にFIUを移管するという判断は、内閣官房が中心となりまして政府として行ったものでございます。

 これまでFIU機能は金融庁が担ってこられたわけでありますが、これは金融機関を所管するということで、金融監督行政ということで持っておられたわけであります。

 ところが、今回の法案によりまして、金融機関以外の業種も多々入ってまいります。そういうことを契機といたしまして、暴力団その他の組織犯罪対策、それからテロ対策等に我が国の政府の中では中心的な役割を担っております国家公安委員会、警察庁にその機能を移管することが適当である、それによって、こういった分野での高い分析を期待するというものでございまして、こういうような趣旨で移管がなされたものと承知をしております。

横光委員 今御答弁がありましたように、凶悪犯罪を未然に防ぐ、取り締まる、そういった本法の目的、この辺に関して反対する人はいないと思うんですよね。それはいない。

 しかし、凶悪犯罪とは全く無縁の善良な多くの国民の個人情報、そして、疑わしい取引の届け出に関する情報がこれから一挙に国家公安委員会に集約されることになるわけでございます。実質的には、事務を担っている警察庁に集約されることになる。実質的に捜査機関に情報が、しかも、犯罪と関係のない情報までが集約されることになるこの法案について、私は非常に危ういものを感じている一人なんですよ。ですから、国家公安委員会の運用に対して、私は、しっかりと一定の歯どめをかける必要があるんじゃないかという気がいたしております。

 そこで、疑わしい取引の届け出の範囲、判断基準の開示がどうしても必要となってくるわけですね。本人確認を行わなければならない業務、取引の内容、これは第四条ですが、それと、取引記録の作成義務から除かれる取引、第七条、これらについては政令で定めることとしております。

 それでは、お尋ねをいたしますが、どのような業務や取引が本人確認や取引記録作成義務の対象となるかは、本法律案の核心部分なんですね。すなわち、どこまでの取引金額が本人確認を必要としない取引であるのか、これを開示すべきであると思いますが、現在の政令の策定状況をお示しいただきたいと思います。

米田政府参考人 政令あるいは主務大臣の省令、こういったもので具体的なものが定まっていくわけでございますけれども、現在までも、各所管省庁、それぞれの業の所管省庁と業界との間でいろいろな話し合いが行われておると承知をしておりますが、この法案成立後に、具体的にそういったところを策定していく。そして、当然、下位法令ですからパブリックコメントの対象にもなりますので、そのような手続を踏んでいくものと承知をしております。

 いずれにいたしましても、事業者に一定の負担をかけるということは、これはそういうものでございますので、その際、本法の趣旨、目的が達せられるようという要請以外に、各事業者間の負担が余りにいびつにならないように、公平になるように、それから、そうはいっても、各事業者の特色といいますか、それぞれの事情を踏まえてということで、各所管行政庁を中心にそういったものが策定されていくものであろうというふうに承知をしております。

横光委員 これから策定するということですけれども、先ほど言いましたように、私は、どこまでの取引金額が本人確認を必要としない取引であるか等々は、この法案の核心部分であると言いましたけれども、ここがこれからというのでは、やはりすべてを白紙委任してくれというようなもので、なかなか認められるものじゃないんじゃないか。やはり、できるだけこの委員会で議論して明確にすべきだ。でなければ、今言われたように、新たな特定事業者の人たちには、政令いかんによっては大変な負担増あるいは事務量の増大等が加わってくるわけですよ。

 ですから、確かに細かいことまでは無理でしょう。これからでしょう。しかし、ある程度の目安とか範囲とか、これは考えていると思うんですね。何のイメージもなく政令で決められるわけはないわけですので、もう一度お尋ねいたします。どうかもうちょっと具体的に、どの程度まで今進んでいるのか、お聞かせください。

米田政府参考人 金融機関につきましては、これは現行のものを引き継ぐ。もちろん、事情の変更に応じて、またそれは将来変えていくかもしれませんが、例えば、少額の取引その他政令で定める取引として除かれるものは、二百万円以下の本邦通貨間の両替であるとか、二百万円以下の本邦通貨と外国通貨の両替……(横光委員「ちょっとよく聞こえないです」と呼ぶ)失礼しました。「二百万円以下の本邦通貨と外国通貨の両替又は旅行小切手の販売若しくは買取」といったような……

河本委員長 米田さん、ゆっくりしゃべりなさい。

米田政府参考人 失礼しました。

 というような政令を定めております。これは現行の金融機関でございます。

 新しく加わる業者については、それぞれ所管省庁といろいろな話し合いがされておりまして、例えば宝石につきましては、二百万円、そして現金といったような、そういったところで切ろうかというようなお話し合いが既にかなり所管の経済産業省と業界との間で進んでいるというように聞いてはおります。

 このように、それぞれの事業者とそれぞれの所管の行政庁との間でそのような話し合いも進んでいるものと承知をしております。

横光委員 今言われた、金融庁で現行もう政令で定められておりますが、では、この法案が施行された後も現在の金融関係の政令はそのまま残るということですね。そして、その他の新たな業種、事業者に関しては業態別にやるということなんですか。ちょっとお聞かせください。

米田政府参考人 法形式として、政令をそれぞれ業態別に別々にするのか、それとも、一つにまとまった、例えばこの法案の施行令という形でやるのかということは、ちょっとこれは今の段階ではっきりしたことは申し上げられません。

 ただ、いずれにいたしましても、それぞれ所管の業界があり、所管の行政庁がいるわけでございますから、それらが中心になって立案し、また私どもも加わって共同で政令を閣議にかける、こういうことになろうかと思います。

横光委員 恐らくそれは、政令は一本にしても、それぞれ業界、業態によって態様、規模が違うわけですから、やはり省令等がそれに加わってくるんじゃなかろうかと思うんです。

 今、一部言われました、宝石等、貴金属の売買を業として行う者に対しては二百万、現金ぐらいのラインにしようかという話もある、それぞれ協議しているということですが、非常に業界によっては大小あるわけですよね。ですから、現在の金融機関で決められている取引、その届け出が十万というラインで一律にいくわけにはいかないと思います。

 では、今、宝石の分野では御説明がございましたが、不動産あるいはファイナンスリース、クレジットカード、このあたりの分野での協議状況、どの程度までいかれているか、もうちょっと具体的に説明できませんか。

米田政府参考人 これらの点について、それぞれ所管省庁が話し合っておられると思いますけれども、ちょっと私どもでは、そこの詳細は把握してございません。

横光委員 やはり、先ほども言いましたけれども、どこまでの取引金額が本人確認を必要としないのかとか、そういったことがわからなければ新たな特定事業者の不安は非常に大きいと思いますし、負担増等も伴うわけですので、政令は一年以内ということになっているでしょうけれども、一年と言わず、早急にこういったものは開示して、理解を得て協力を得なければならない、このように思っております。

 次に、先ほどもちょっと質問がございましたが、FATFの四十の勧告では、弁護士等の専門家についても、疑わしい取引の届け出を行うよう義務づけるべきであるとしております。

 しかし、警察庁は、当初、弁護士等に疑わしい取引の届け出を義務づけることを考えていたと思うわけですが、この点はこの法案では見送られておりますね。弁護士に対する疑わしい取引の届け出の義務づけを見送った理由についてお聞かせいただきたいと思います。

米田政府参考人 弁護士その他の士業者につきましては、その依頼人との信頼関係に与える影響というものを考慮いたしまして、私ども、立案の段階で、守秘義務に係る部分は届け出からは除外をする、あるいは、弁護士につきましては、弁護士会、日本弁護士連合会が自治的な団体であるという点を考慮して、その実際の規範については会則で定める、あるいは、その監督は日弁連が行う、このような仕組みを考えておったわけでありますが、それでもなお日本弁護士連合会からは依頼者との関係に与える影響についてやはり懸念があるということが示されましたので、引き続きこの点につきましては検討を行う必要があるということで、弁護士その他の士業者につきましては、本人確認と取引記録保存は行っていただいて、届け出についてはこの法案からは除外することとしたものでございます。

横光委員 そういった理由で届け出の方は除外したということですが、その除外した理由が、やはり依頼者との信頼関係に影響を与えるということを言われましたけれども、これからもそれはずっと変わらないんですよね、弁護士サイドとしては。当然のごとく、依頼者からの信頼問題にこういったことをやられたら影響を与えるということは変わらないわけで、だったら、弁護士等については業界団体の自主的な取り組みを尊重して、今後も疑わしい取引の届け出は義務づけない、このように考えてよろしいんですね。

米田政府参考人 この問題につきましては、弁護士会の意向、それから依頼者の意向、そして、関係省庁であります、担当省庁であります法務省、そして私ども、それから国際的な関係もございます。そういったことで、さまざまな要素を総合的に勘案しながら、一言で申せば、いい知恵をどういうふうにして出していくかということでございます。そのような方向で今後検討をしてまいりたいと考えております。

横光委員 では、これから協議して、いい知恵が果たして出るかどうか、これは知恵だけではどうしようもないと思いますよ。やはり相当大きな問題だと思うんですね。

 また、アメリカでは、弁護士を含むすべての者に一万ドル以上の現金受領の届け出を義務づけておりますが、弁護士に対して疑わしい取引の届け出義務は課しておりませんよね。この分野ではアメリカもFATFの勧告を十分に満たしているわけではないわけでございます。

 では、アメリカがこのようにFATFの勧告を十分遵守していないとして何らかの不利益な取り扱いを受けているのかどうか、御説明いただきたいと思います。

米田政府参考人 アメリカの制度につきましては、昨年の六月にFATFのいわゆる相互審査が行われました。そして、このアメリカの制度はFATFの勧告を満たしていないという評価、非常に厳しい評価を受けたと聞いております。

 この後どうなるかということは、直ちに何か明確なことがわかるわけではございませんけれども、まず、この指摘を受けた部分については二年ごとのフォローアップというのが行われまして、改善を求められていくということでございます。

 なお、それはケースによって違いますので、一般論として申し上げますと、FATF勧告の中では、この勧告の不履行、履行しなかった、しないということに関しましては、これが重大な欠陥であるということであると、勧告を履行していない旨の議長の声明、あるいは非協力国の金融機関等に対する各国による対抗措置といったものが発動をされて、最後はメンバーシップの停止、そして除名という、その流れの手続は定められております。

 ただ、この問題が今後どのようになっていくかということは、現段階では不明でございます。

横光委員 今、アメリカがこれを遵守しないことに厳しい評価を受けた、そしてまた、これはこのままいけば、重大な欠陥として、非協力国という指定を受ける可能性もあるみたいなお話でしたよね。

 しかし、これからの方向はそういったことですが、現在は現実には遵守していない。それは、それぞれの国の特性というものがやはりこの場合は柔軟に対応した一つではなかろうかと思うわけですね。アメリカは、確かに経済では世界一ですよ、マネロンの問題では一番対策が必要な国であるにもかかわらず、こういった状況になっている。そして、いわゆるこれといった具体的な不利益は今のところ説明されていなかった。

 となりますと、これは日本の場合ももっと柔軟に、アメリカでさえそういう状況であるなら、この日本の弁護士等に対する義務づけというのも、絶対に必要なんだという理由にはならないと思うんですが、いかがですか。

米田政府参考人 実際に履行していないことについての不利益というものがどの段階でかかってくるかということでございますが、アメリカにつきましては、先ほど申し上げましたように、昨年の六月に相互審査を受けたばかりでございます。それから二年たって、そのフォローアップ、そのときに改善されているか、されていないか、こうなるわけでございまして、これはまだまだ、かなり長いスパンの中で決まることでございますので、現在のところは、その後どのように展開したかということは不明であるということでございます。

横光委員 これからのフォローアップの状況次第でまた日本の場合も対応するということだと思います。

 次に、この組織的犯罪処罰法に基づく金融庁への疑わしい取引の届け出、これは先ほどお話がございましたように、年々増加しておりますね。平成十八年は十一万件を超えている。本法律案によって新たな特定事業者が対象となるわけですから、これまで以上の膨大な情報、疑わしい取引の届け出に関する情報が国家公安委員会に集約されることになる。

 私が非常に心配しているのは、こうした情報が漏えいした場合、これはあり得ないことじゃないんですよ、漏えいした場合、特定事業者や顧客等に、疑わしい取引の情報としてインターネットなどにより全地球的規模でこれは広がって、重大な事態が生じるわけでございます。

 ですから、国家公安委員会が収集した情報についてどのような保護策を講じていくか、御説明いただきたいと思います。

米田政府参考人 確かに、御指摘のように、こういう情報を扱うというのは、大変そのセキュリティーには気を使わなければならないことでございまして、今回FIUが国家公安委員会に移管されるということを受けまして、私どももいろいろなセキュリティーのシステムを準備しております。具体的に申しますと、物理的なセキュリティー、それから人的なセキュリティー、そして技術的なセキュリティーであろうかと思います。

 物理的なセキュリティーでいいますと、これは、厳重に管理されました別の場所にありますデータセンターにサーバーを設置いたしまして、また、端末の置かれている場所についても生体認証による確実な出入り管理を行う、さらにシステムと外部ネットワークは完全に物理的に遮断をする、こういったことをしたいと考えております。

 それから、人的なセキュリティーでは、運用管理者を、このFIUであります、課長級の者を置くことにしていますが、それを責任者として、役割、責任の明確化を図りたい。

 それから、技術的なセキュリティーといたしましては、使用者はあらかじめ限定をして登録をさせて、それ以外のアクセスは禁止をする。さらに、アクセス記録は保管をして、事後にそのアクセスの正当性を検証できるようにいたしたいと考えております。

 もちろん、情報セキュリティー監査を実施いたしまして、万全を期してまいりたいと考えております。

横光委員 確かに、万全を期してもらいたいわけですが、とはいいましても、ウィニーの情報漏れという事件もございましたし、住所、名前ぐらいならまだしも、疑わしい取引の届け出となると、本人にとってはこれは致命的な信用問題になるわけでございますので、しかも、これは本人が知らない間に事業者の判断で届け出されるわけで、非常にこのところはしっかりと対応して万全の対応をしていただきたい。

 もう一つ聞きますが、この情報を、こんなことは絶対あってはならないんですが、別な、他のことに利用するおそれはないんでしょうね。

米田政府参考人 他のことというのが何か、ちょっと直ちに思い浮かびませんけれども、この情報は、FIUにおいて分析を加え、そしてそれを捜査機関あるいは犯則調査を行う機関に提供する、その目的に使うものでございます。

横光委員 犯罪による収益の移転防止、これは図らなければなりません、テロ資金供与も撲滅しなければなりません、マネーロンダリング対策も必要でございます。しかし、これらはあくまでも特定事業者の理解とか協力等が必要である上に、何よりも国民に負担、不安を与えないということが大前提でなければならないと思っております。

 こういったことを踏まえながら、大臣、これを踏まえた上で、FIUの業務をどのようにしっかりと対応していくおつもりなのか、最後にお聞かせいただきたいと思います。

溝手国務大臣 御指摘のように、FIUに集積されたデータがしっかりと管理されるかどうかというのは大きな関心事であろうと思います。私も、このデータの漏えい問題を含めて、警察の業務の信頼回復のためにも大いに意を払ってやっていかなくてはいけないと思っております。

 御参考までに申し上げますが、この前のウィニーの問題につきましても、先般の国家公安委員会で決定いたしたところですが、警察のパソコン情報はすべて暗号化をしようというようなことも含めて、二度と繰り返さないように万全を尽くしてまいりたいと考えているところでございます。

横光委員 終わります。

河本委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 市村でございます。一時間賜りまして、質問をさせていただきます。

 今回のこの犯罪収益の移転等に関するという法律の目的については大変賛同するところでありますが、やはり今横光委員も議論させていただきましたように、いろいろと詰めておかなくちゃいけないことがたくさんあると思われますので、かなり細かい点にわたってもこれからいろいろと質問させていただきたいと存じます。

 まずは、そもそも論でちょっとお聞きしたいことがございます。

 今現在も金融庁がこうした役割をやっているということでありますが、今回、国家公安委員会ということになりました。ということは、現状では足りないということが前提になければ当然改正案は出てこないわけでありますから、現状ではだめだということだと思いますが、現状はどこが今問題があるのか、そのことをまずお聞きしたいと思います。

米田政府参考人 金融庁は金融監督を主たる任務とする機関でございまして、現在、この制度発足以来、金融庁がFIUとして情報を分析し、捜査機関、犯則調査機関に提供をされてきたわけでございます。大変その努力は多とするわけでございますけれども、ただ、金融機関以外の業種を今度の改正で対象とするということになりますと、必ずしも金融監督ということだけで割り切れるものではなくなるということがございます。

 したがいまして、それを契機といたしまして、テロ対策あるいは組織犯罪対策の中核を担っております国家公安委員会にFIUを移して、そして非金融機関も含めた情報の分析、治安機関としての知見を生かした高度な分析を行うということにしたものでございます。

市村委員 諸外国では、いわゆる捜査機関以外、つまり今の日本の現状のような金融庁がやっているケースと、捜査機関がやっているケースというのは、どのような状況になっているんでしょうか。

米田政府参考人 捜査機関と言えるような機関に設置されておりますものは、現在、FATFのメンバーは三十一カ国・地域でございますけれども、そのうちの十七、これが捜査機関と言えるような機関に設置されてございます。あとは、金融監督を担うような機関、あるいは全く独立の機関といったようなものに設置をされていると承知をしております。

市村委員 今、三十一のうち十七がいわゆる捜査機関と言えるような機関だと。ということは、引き算しますと、十四の国については金融庁、金融機関を統括する官庁もしくは独立機関だというような話だったと思いますが、では、その十四の国におきましては、いわゆる金融関係以外の、例えば今回いろいろ議論になっています弁護士会等とか、士業については入っていないということなんでしょうか。それとも、そういうものも含めて金融関係の省庁というか官庁がやっているということなんでしょうか。

米田政府参考人 個々の国がどの事業者を対象としているかというその対象をすべて把握しているわけではございませんけれども、財政金融当局がFIUを行って、そして非金融機関も含めて全体を見ているという国ももちろんあろうかと思います。

 我が国でも、別にそれが理論上絶対できないというわけではなくて、多々ある事業者の所管省庁のうちの一番メーンのものが金融であれば、そこを取りまとめにするということも、それは不可能なことではないんですが、ただ、テロ対策、組織犯罪対策の持っている知見を生かして高度な分析をするというもう一つの政策目的、それも踏まえまして、国家公安委員会の方に移管されたものと承知をしております。

市村委員 決して私、今回のことに反対をしている立場で話を聞いているわけじゃない。ただ、総じて、私は一般的に申し上げて、現状を変えるということはそれなりに大きな変革、特にこういうのは大きな変革、改革ですから、やはりちゃんとした理由づけがないといけない、こう思うわけであります。

 それで、諸外国でも財務当局等々金融当局がやっているというのにもかかわらず、今回、いわゆる国家公安委員会ということになるということについて、もうちょっと、テロ対策とか暴力団対策というのもあるのかもしれませんけれども、もっと何か深いところで、例えば本当に警察関係でいいのかとかいうこと。当委員会でもかなり警察の皆さんに対しては私も厳しい質問をしてきたつもりでありますが、そうした警察そのもののあり方等々も含めて、やはりきちっとした議論がなされなければならないと思っております。

 そうしたことについて、例えば、国家公安委員会ということにつきましても、この内閣委員会ではかなり議論をしてきたと思います。きょうは国家公安委員長もお見えですが、つまり、国家公安委員会に独自の事務局がないということも実はこの内閣委員会でかなり議論してきたところであります。しかも、警察庁は国家公安委員会に置かれるわけでありまして、国家公安委員会の中に警察庁があるというのが法律であります。にもかかわらず、国家公安委員会の実態というのはむしろ逆で、警察庁に国家公安委員会が置かれているかのような実態になってしまっているという流れがあるんですね。だから、実態は、今回の場合は、いわゆる警察庁に今回のこのFIUを置くということになっていると思います。

 そうしたことについて、警察内部で自分みずからのことを顧みてということはないのかもしれませんが、いわゆる今の省庁、つまり金融庁との間で、そうしたことについて懸念とか問題意識とか、こういうことはあったんでしょうか。そういう議論の中でそういうことはあったんでしょうか。

溝手国務大臣 私の方からまずお答えします。

 本法案の業務主体ですが、これを警察庁長官なのか国家公安委員長、国家公安委員会なのかということも一つの議論であろうとは思います。内閣の中で組織犯罪、テロ等に関する資金源対策を中心になって進めていく上で、国務大臣を長とする国家公安委員会がその責務を有するというように明らかにする方が適当であろう、このように最終的に判断したところでございます。

 今後は、犯罪対策閣僚会議あるいは国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部、こういう政府の機関があるわけですが、こういうところを通じて、与えられた役割を積極的に展開してまいりたいと思っております。

 また、本法により国家公安委員会に与えられました権限につきましては、重要なものについては、警察庁の大綱を管理するというところにとどまらず、みずから法の施行に当たるということを明らかにして、必要な措置もとっていかなくてはいけない、このように考えておるところでございます。

市村委員 国家公安委員長、最後をもう少し具体的に説明いただきたいんですが、要するに、今回、国家公安委員会はこれまでのあり方とちょっと違ってきて、国家公安委員会としての本来果たすべき、また私たち国民が期待すべき役割をもっと担うという方向性でもこのことは考えているんだということで私は理解してよろしいんでしょうか、最後の今の部分ですけれども。

溝手国務大臣 警察法の規定にさかのぼるわけですが、警察庁の行う業務を総合的に管理していくというのが委員会に与えられた仕事になっております。それに加えまして、同じ法律の第三項には、固有の業務として国家公安委員会がやっていく仕事が書き込めるようになっておるわけでございます。

 今回の本件に関しての整理は、その部分として、我々が、国家公安委員会がこの業務を積極的に推進していこう、そして警察庁はその補佐をしていただこう、こういう整理を明確にして提案をさせていただいた、こういうところでございます。

市村委員 国家公安委員会というと、例えば免許の発行とかこういうのを思い浮かべるわけですけれども、ではそれと比べても、それが比較できる問題じゃないかもしれませんが、極めてこの問題は大きな問題だということでありますし、例えば事務局体制については、何人ぐらいの規模でこれを行っていくのかということについてもう明確な姿は出ているんでしょうか。大体何人ぐらいでこの体制をとっていくか。

米田政府参考人 この事務を行うために、国家公安委員会を補佐する警察庁におきまして、約四十人の課長級を長とする組織を現在予算でお願いしているというところでございます。

 ちなみに、金融庁の特定金融情報室は十七人でございますので、かなり大幅な体制の強化になろうかと考えております。

市村委員 四十人ということでありますけれども、例えば、これがアメリカの場合というのは何人ぐらいか把握されていますでしょうか。

米田政府参考人 アメリカのFIU、いわゆるFinCENでございますが、約二百九十名と承知をしております。

市村委員 確かに、人口、経済規模等、二倍、三倍のアメリカでありますので、単純に比較できませんけれども、この四十というのでは、いかがでしょうか。いつも申し上げているんですが、私は必要なものは必要だということでありまして、何か、最初からなかなか大きくできないから最初はまず小さくねとかいうことではなくて、必要なものは例えば一挙にふやしても構わないと思っているんですが、本当に四十名で足りるというふうにお考えでいらっしゃいますか。

米田政府参考人 これは主要国、例えば今アメリカのことを申し上げましたが、イギリスのFIU、SOCA、重大組織犯罪対策庁では、このFIUの関係で約二百人と聞いておりますし、ドイツを除きます主要国、大体三けたの人員を持っているところが多いわけでございます。

 先ほど言いましたように、金融庁が現在十七名、それを四十人にふやすわけでありますが、私どもとしましては、移管を受けました後の業務実態を見ながら、もちろん必要なものは要求をしてまいりたいと考えております。

市村委員 もう少し現状認識を伺いたいと思いますが、日本というのは、そういった意味ではマネーロンダリングが盛んな国というふうにとらえられるべき国なんでしょうか。それとも、いや、そうでもないというお考えでしょうか。

米田政府参考人 これは、ちょっと直ちに判断がつきません。

 ただ、一つ言えますのは、日本というのは、諸外国に比べて現金、キャッシュでかなり多額の取引もいまだできますので、マネーロンダリングをしようと思う者たちにとってはやりやすい環境にあるのではないかと考えております。

市村委員 このことは極めて重要だと思っておるんですね。というのも、今まで金融庁は十七名でやってきた。つまり、十七名で日本全体の状況を見てきたわけですね。私は、多分ほとんど無理だな、十七名が一生懸命やられたんだと仮定しても、とてもこれはやり切れるものではないと。一方の方はいかにごまかすかということを考えてやっている集団なわけですね。それこそ、目の前に証拠を突きつけられても、そんなの知らぬと恐らくしらを切るような集団相手に十七名でやれるのか。しかも、今度四十名になったとしても、私はこれは本当にやれるのかなと。

 やはり実態が大切だ、単に勧告があるから形だけつくったというのでやった気になっていたのではだめだと思うんですね。本当にマネーロンダリングを防止したい、犯罪収益の移転を防止したい、そして、そもそもそうした犯罪が起きないようにしていきたいということであれば、本当にこれは四十でいいのかということは、これはやはり真剣に考えなくちゃいけないことだと思うんですね。

 十七名でやってきたという今までの金融庁の状況からすると、恐らくかなり日本は、私はよく実態把握していませんが、だから教えていただきたかったんですが、多分、マネーロンダリングをやりやすい国と認識されているのではないか。恐らくそうだからこそ今回のこのようなこともあると私は思っていたので、お聞きして、いや、実はそうだからこうだというふうに御説明があるのかと思ったんですが、言いにくいのかもしれませんけれども、それでもキャッシュ社会だということでやりやすいという御答弁がありました。

 やはりこの日本の中では、ここははっきりと、実は大変問題が大きくなっているんだ、年々、そういえば疑わしい取引についての届け出もふえているというようなことで、だからこそ今回もっと体制強化をする、体制強化をする意味で国家公安委員会なんだ、こういうことかなと私は思っておったんですが、いかがなんでしょうか。私の認識は間違っておりますでしょうか、これは。

米田政府参考人 私どもから見ましても、金融庁は少ない人数で大変よくやってこられたと思います。ただ、例えば、これは三年前でございますが、IMFが我が国を調査した結果があるんですが、やはりIMFもFATFの勧告を基準として使っております。ここでやはり体制の不足、それから分析能力の不足といったようなものも指摘をされておりまして、国家公安委員会、警察庁といたしましては、FIUの移管を受けましたならば、それはその業務を遂行するに十分な体制を整えるべく努めてまいりたいと考えております。

市村委員 これからということになるのかもしれません。やはりどうも、日本は昔から、スパイ天国だとか、いろいろこういう話もありまして、国際的には、どうもあの国は、情報漏えいとか資金流出とか、いろいろな意味でどうも信用ならないんではないかと一部思われている可能性があると思いますが、この認識についてはいかがでございますか。やはりそういうふうに思われているという認識が正しいんでしょうか。それとも、いやいや、そんなことない、言われているだけで、さほどそうじゃない。結構日本はちゃんとやっているぞ、情報漏えいとか資金流出とかについては、実は一般的認識ほどではないんだというふうに言っていいんでしょうか。その辺、ちょっとまた教えていただきたいと思います。

米田政府参考人 大変お答えしにくい御質問でございますけれども、結構、日本の企業も役所も、しっかりしているといえばしっかりしているところもございまして、そういう意味では、私どもも、例えば捜査機関同士の国際的ないろいろな連携の中でいろいろな国とおつき合いをさせていただく中で、これは別に意図的というわけではないんですが、伝統が違うがために、ああ、ここまで情報開示してしまうんだとかいうようなこともございまして、そういう意味では、かなり一般的にはかたい国ではないかというようには印象は持っております。

市村委員 それは、そう聞けて私はうれしいと思います。やはり信用というのは一番大切でありまして、信用がなかったら、幾ら口で言ってもそもそも信用がないわけですから、何も理解していただけないということになっていきます。

 だから、今回こうして国家公安委員会に移すということにおいて、やはりより信用が高まらないと意味がないということだと思いますが、その意味でも、どうでしょうか、今回、このことによってより国際的な信用が増す、もともとかたい国であるけれどももっと増すんだというふうに思っているということでよろしゅうございますでしょうか。

 これは国家公安委員長の方から、済みません、よろしいでしょうか。

溝手国務大臣 そのとおりでございます。国際的な我が国に対する信頼を深めるために努力をしていると思っております。

市村委員 今そうやって、そのとおりだとおっしゃっていただいたので、心強く思います。

 では、具体的なところにもう少しまた戻って質問させていただきたいんですが、そもそも、このFATFに入るメリットというのはあるんでしょうか。例えば先ほど、いわゆる除名までできるんだということもあったんですが、しかし、ここに入っているメリットがなければ、別に除名されたって痛くもかゆくもないわけでありますよね。むしろ除名されてほっとしたということになってはいけないわけでありますけれども、どうでしょうか、このFATFに入るメリットというものについて教えていただきたいと存じます。

米田政府参考人 もともと、FATFが設置されましたのは一九八九年のアルシュ・サミットで、もちろん我が国もその生みの親の一人でございます。

 このFATFというのは、事実上、金融機関等に対する国際的な基準を定めておりまして、それに反する国とか金融機関に対しましては、共同して制裁的な措置をとられかねないというものでございます。

 そういった意味で、我が国として、あるいは我が国の金融機関等にとりましては、FATFから脱退をするというのはちょっと、現実的な選択肢としては、それはあり得ないんじゃなかろうかと思います。

 なおまた、国際的な信用という点からいきましても、やはりFATFの、しかもその中心的なメンバーであるというのは大変大きなことであろうかと思っております。

市村委員 例えば、今でも三十三カ国だけが入っているわけですから、世界に今百七十か百八十ぐらいの国と地域があるとかいう話でありますけれども、入っていない方が多い。ただ、主要国は入っているようでありますが。

 例えば、今現在の非協力国といいますか、FATFに入っていないから非協力国とは言い切れないのかもしれませんが、FATFに入っていない国というのは、では何かしらのデメリットを受けているというふうに考えてよろしいんでしょうか。

米田政府参考人 FATFそのものは、いわば先進国を中心とする、OECDのメンバーを中心とする三十一カ国・地域プラス二国際機関なんですけれども、各地域にFATF準メンバーというのがございます。例えばアジア太平洋では、APGと呼ばれております、これで三十二カ国ございます。そういったことで、アジア、ヨーロッパ、南アメリカ、中東・北アフリカ、ユーラシア、カリブ、東南アフリカ、西アフリカ等々で、これに準メンバーを合わせますと、ほとんど世界じゅうの国をカバーしているという状況でございます。

市村委員 済みません、教えていただきたいんですが、メンバーと準メンバー、正規メンバーと準メンバーはどこがどう違うんでしょうか。

米田政府参考人 準メンバーもFATF勧告を基準として動いている。ただ、これは事実上の問題なんでしょうが、FATFの勧告を満たす程度というのは、やはりそこには差があるようでございます。

 なお、現在、中国とそれから韓国とインドがFATFそのものへの加盟を申請していると承知しております。

市村委員 例えば北朝鮮はFATFのメンバーなんでしょうか。

米田政府参考人 北朝鮮はFATFのメンバーではございません。先ほど言いました準メンバーでもございません。

市村委員 となると、例えば、日本は一部に北朝鮮との関係も深いところもあるようでありますけれども、北朝鮮との関係において、日本から資金が逃げるということは考えられるんでしょうか。つまり、こういうのは風穴があると、全部が網羅されているといいんですが網羅されていないと、結局そこに行くわけですね、多分、恐らく。

 たまたま今北朝鮮という名前を挙げましたけれども、どうも準メンバーでもないとなると、特に今日本は経済的には北朝鮮と関係があるわけでありますから、国交がないにしてもあるわけでありますから、そことの関係において、一体今までどうなってきたのか、また、これからどうなっていくのかということは、具体的には一番考えておかなくちゃいけないことだと思うんですが、それについては、今、警察庁、今回のことだけじゃなくて今までいろいろ警察庁が動いてこられていると思いますが、どうなんでしょうか、その辺の関係について。

米田政府参考人 事は金融問題そのものでございまして、この法案によりまして国家公安委員会、警察庁がFIU機能を担うとはいえ、やはり例えば金融制裁でありますとか、国際的な金融の関係については、なかなかちょっと私どもでもお答えできない部分もあるわけですが、FATFに関して申しますと、メンバーに入っていない国でも、FATFの基準からして非協力国であるということになりまして、その遵守を促す、働きかけるということはあると聞いております。

市村委員 ということは、つまり入っていないイコール非協力国ということになるんですかね、その非協力国であっても、いわゆる道義的にお願いするんでしょうか、いろいろなルートでお願いするんでしょうか、協力は得られている可能性があるという認識でよろしいんでしょうか、今の話は。

米田政府参考人 国際的な金融ネットワークに北朝鮮が一体どの程度組み込まれているのかということによって、どういう措置をとるのかにも大分違いが出てくるんではないかと思いますけれども、いずれにしても、FATF勧告の基準を満たすようにさまざまな働きかけは行われているものと思います。

市村委員 先ほども申し上げましたが、やはりこういうのは一つでも抜け道があるとそこに行くんですね。特に日本は北朝鮮との関係が深い国の一つだろうと思います。外交がどうであれ、実態上はそうとらえざるを得ない、とらえるべき国だろうと思います。ですから、そういうところに、特にこれから具体的にそういうふうな話になってくると思いますので、そうしないと、結局、幾ら勧告に沿って強化した、人もふやしてきた、ふやしていくといっても、具体的なところで抜け道があれば、皆さんそれを使うわけでありますので、そこのところできちっとやはり穴をふさいでいくという努力が求められると思いますが、国家公安委員長、いかがでしょうか、今の北朝鮮のことについても。

 私、北朝鮮をたまたま挙げましたけれども、要するに、多分穴があいていると思うんですね、どこかに。その穴をどう埋めていくかということが必要だ。そうしないと実態上意味をなさない。幾らやった気持ちになっても、実態上は流れ続けるとなると意味がないと思いますが、国家公安委員長の御答弁をいただきたいと思います。

溝手国務大臣 先ほど来部長の方から説明しておりますように、FATFがほぼ全国際的な組織に広がりつつあるという中で、我々としては、やはりこのFATFを活用して北朝鮮にも対応していかなくてはいけないだろうと思います。

 現在の状態は制裁に入っているわけでございますから、我々としては金融関係的にその最大限のできることをやっている。日本としては対北朝鮮に対して金融制裁を行っているわけですから、金融関係においてはとり得るであろうほとんどの手を打って北朝鮮に対処していると申し上げていいんじゃないかと思います。

市村委員 今、特に提携国じゃないところについての話をさせていただいたんですが、例えばタックスヘイブンと言われるところがありますよね。犯罪じゃないと思われるけれども租税回避措置で使われているということ、こういうことについてもやはりしっかりとした目を向けるべきだと私は思うんですが、こういうことは、今回はこのFIUでは対象としないということなんでしょうか。これは疑わしい取引に入っていないということなんでしょうか。

米田政府参考人 タックスヘイブンである国あるいはそこに置いてあります金融機関、これをどうするかといった問題は、FIUの問題というより、もっと大きい金融行政の問題ではなかろうかと思います。

 FIUとしては、いろいろな疑わしい取引の届け出を集約、分析をするわけでありまして、その過程で、これは現在でもあるわけでありますが、お金の流れとして、一たんタックスヘイブンに流れてまた戻って来るというような、そういう情報というのはあるわけでございまして、そういうものは今後の、タックスヘイブンにある国に対してどうするかとか、いろいろなFATFの議論の中で活用されていくことはあろうかと思います。

市村委員 ということは、今から議論の中で考えていくということになるんでしょうか。

 ちょっと済みません、もう一度もっと明確にお願いいたします。

米田政府参考人 済みません、当のFATF全体の話、金融行政全体の話になりますと、ちょっと私どもから非常にお答えしにくい部分もございまして、こちらが承知している限り、過去も、タックスヘイブン、バージン諸島とかクック諸島とか、こういったところに対しまして、FATF勧告の遵守をFATFとして促してきたというように承知をしております。

市村委員 そうしたことも含めてやはり考えておかないと、こうした犯罪というか、こうしたことに思いをいたす方はなかなかの知恵者でありますので、法律には違反しないけれどもというところをすれすれで行く可能性が高いんですよね。もちろん法律違反もあるでしょうけれども。表向きはそうしておいて、実はもっと莫大なお金は全然違うところに流すとかいうことも恐らくやるでしょう。

 だから、そうしたものに対して、やられているとは思うんですが、そうしたこともやはりきちっとやっていかないと、私さっきから申し上げているように、形だけつくっても実態は全然じゃじゃ漏れというか、日本からどんどんどんどん出ていって、そこで資金洗浄されて、また戻ってきて犯罪に再利用されるとか、そういうことになってしまうことになるわけですね。

 特に、犯罪に使われなくても、ある程度資金をためますと、それをまた運用してどんどん資金をふやして、それでまた太っていく、それで犯罪組織がまた肥えていくということだって今できるんですよね、ある程度金融の知恵があれば。実はもうそうなっていると私は思っているんですね。だから、単にテロ、暴力団という目に見えるところだけの話じゃなくて、本当に隠れて、いわゆる普通の市民の顔をし、国民の顔をしながら、実はそういうところがふえているということもやはりあると思います。そういうところに対してきちっと思いをいたさない限り、これは形だけやってもいけない、私はこう思っております。

 だから、そうしたことも含めて、国家公安委員会が意を決して、今回金融庁の既にやっていたことをもっと拡大してやるんだという志があると私は信じて質問をしているんですが、国家公安委員長、いかがでしょうか。こういう思いでよろしいわけでございますか。

溝手国務大臣 御指摘のとおりだと思います。

 我々、この責任を引き受けたからには、金融庁でやっていたFIUの段階から、さらに一歩、国際的な信頼をかち得るステップを踏み出すんだというつもりで取り組んでおるところでございます。

市村委員 ぜひとも、日本の信頼をかち得る意味でも、ただ、世の中というのは一筋縄でいかないと思うのは、日本はくそまじめに、生まじめにやっても、ほかのところで実はそうじゃなかった、表向きはやっていてもそうじゃないというところもひょっとしたらあるかもしれませんので、現実というのはなかなか大変だなというのは思っているつもりなんです。だから、そういった意味では、現場で御苦労されている皆さんはもっと大変なわけでありまして、日々理屈では割り切れない現実の中に身を置かれていると思います。

 そういうことでありますけれども、私としては、やはり日本が国際的に信頼され、日本国民がもっと国際的な尊敬をかち得る、そういう国にしたいと思っておりますので、国際的に取り決めがあるのであればそれに従って、それをしっかり履行していくということだと私は思います。

 これから細かいことをまたお聞きしていきたいと思いますが、今回、そもそも弁護士会の皆さん、ゲートキーパー法というふうに何か私は最初にお聞きしたんですが、このゲートキーパー法という意味合いと今回の犯罪による収益の移転防止に関する法律案というので、もちろん名称が違っていても別にいいんですけれども、このゲートキーパー法という弁護士さんたちが使っていた言葉は、当たるんでしょうか、当たらないんでしょうか。この法律を称するにふさわしかったんでしょうか、ふさわしくなかったんでしょうか、教えていただきたいと思います。

米田政府参考人 ゲートキーパー立法とか世上そのように言われておりましたが、私どもはそういう言葉を余り使ったことはなかったのでございますが、資金の流れの中で場面場面でチェックをしていただく方がゲートキーパー、本人確認とか宅地取引の届け出をしていただくような方がゲートキーパーということで呼ばれていたんだと思います。

 法案の名前のつけ方は、あくまで日本の立法の伝統に従いまして、法案の中身が一番端的にわかるような、正確性と簡潔性を考慮して定められたものと思っております。

市村委員 これで私のところにもかなり弁護士会の皆さんもいらっしゃって、大分議論させていただきました。何で弁護士の皆さんはそもそもこれに反対していたのか、一度また教えていただきたいと思います。それで、実際に今回、弁護士の皆さんは届け出義務から除外されたわけですね。この経過についても、先ほど横光委員もお聞きされていましたけれども、もう一度改めて教えてください。

米田政府参考人 弁護士の取り扱いにつきましては、私どもも、マネーロンダリング防止というのは大変重要なものである、しかしながら、弁護士その他の士業者と依頼人の関係というのも重視をしなければならない、こういう考えで、守秘義務の範囲は届け出事項からは除外をする、あるいは対象業務の範囲も絞りまして、法的助言とか法律相談といったものが入らないようにする、それから、弁護士については、特に自主的な性格、どこの官庁の監督も受けていないという性格を重視いたしまして、届け出は弁護士会に行っていただいて、監督も日弁連、弁護士会の方から行っていただく、このような仕組みで考えておったわけでありますが、なお、依頼人との信頼関係に及ぼす影響についてはまだ懸念があるということも表明をされましたので、そのようなことを受けまして、私どもとしましては、今回の立法ではこれを見送ることといたしまして、引き続き検討をするということにいたしたわけでございます。

市村委員 弁護士以外の士業者の方たちとの議論もあったとは思うんですが、同じ特定事業者でありながら、弁護士の皆さんだけは義務からは除外された、済みません、義務はほかの士業の方も除外されているんですね、保存義務について弁護士の方だけは除外されたのかな。

 ほかの士業の方というのは、反対はない、これで受けとめていただいているということでよろしいんでしょうか。

米田政府参考人 この問題について業界として強く懸念を表明されてきたのは日本弁護士連合会でありまして、その他の士業の団体、これは各所管行政庁がございますので、そこが中心となっていろいろな話し合いを持たれておりましたけれども、これに対して目立った反対ということはないというように、私どもは所管行政庁からそのように聞いております。

 それから、先ほど委員おっしゃいました取引記録保存につきましても、行っていただく措置は、弁護士もそれから他の士業も今回の法案では同じであります。本人確認と取引記録の作成、保存をやっていただいて、そして疑わしい取引の届け出は除外をされる、こういうことでございます。

市村委員 恐らく弁護士の皆さんは、弁護士でありますし、また、弁護士会という力強い組織を持っていらっしゃいまして、声を上げることができる力を持っていらっしゃるということであります。もちろん、弁護士の皆さんがおっしゃったことは大変的を射ていると僕は思います。大きな懸念があるということであります。だから今回はとりあえずは除外されたということだと思いますが、では、ほかのところがないかというと、私はないわけじゃないと思うんですね。恐らく、思っていても言えない、もしくは言っても声にならなかった、こういうことではないかと思うところもあります。

 だから、そうした声なき声というか、聞こえてこないようだけれども実はあるような声というものについても思いをいたしていただきたいな、私はこういうふうに思うわけであります。決してもろ手を挙げてこれに協力をしようということだけでもないなというのが、私もいろいろお聞きしていて、正直思っているところであります。

 ただ、先ほどから申し上げているように、この国のことを考えたり、業界のことも、ある意味では業界も結果的には守られるわけですから、そうした方たちに利用されないようになるわけですから、それはそれで業界にとってもメリットはあると思いますから、そのことも考えてのことだと思います。

 しかし、やはりいろいろな業務が発生してくるわけですね。もし届け出しなかった場合、一体どうなのか。うっかりとか、ちょっと面倒くさいとかいうこともあると思うんですね。言った方がいいに決まっているけれども、でも一々また言っていくのは面倒くさいなとか。届け出については今回義務化されたんですけれども。

 でも、そういった気持ちに対してもやはり思いをいたしていただいて、もちろん数少ない四十人でやられるということもあるんですが、もっと現場の、それこそゲートキーパー、まさにゲートをキープしていただいている皆さんはもっとつらい思いをされるかもしれませんね。ひょっとしたらこれまで友人関係だったかもしれない、知り合いだったかもしれない、その人たちに対して、どうもちょっとおかしい、社会のことを考えたらこれはやはり訴えなければいかぬのだ、届け出をしなくちゃいけないんだ、特に義務化にもなったしな、こうなってくるとなると、すごいプレッシャーもかかると思います。現場で相対していると、目の前の人が暴力団と思って届け出る、届け出ると、どうもすぐに動き始めた、だれがこんなのを漏らしたんやとなると、おまえやろ、こういうふうに大体わかってしまうケースだってあるかもしれません。

 そういうことも含めて、これを届け出るというのは、幾ら義務とはいってもなかなか勇気の要ることではないかと私は思うんです。

 だから、ぜひともそうしたことについてもやはり私は思いをいたしてほしいな、こう思うわけでありますが、国家公安委員長、いかがでございますか。

    〔委員長退席、平井委員長代理着席〕

溝手国務大臣 気持ちはわかるんですが、ただ、恣意的に、ああ、そうですかとばかりは言っておられない面もあろうと思います。業者あるいは業界の立場に十分配慮しつつ、やはりしっかりした方針で対応しなくちゃいけないんだろうと私は思っております。

市村委員 それでは、また弁護士会に戻るんですが、やはり弁護士会の皆さんが提案されたことというのは重要な論点を含んでいると思います。

 それで、今回はいわゆる届け出義務からの除外ということになったわけでありますけれども、先ほど横光委員も質問されていましたが、では今後どうするのかということも含めて、やはりこれはしっかりとしておかないといけないと思います。

 弁護士会の皆さんのおっしゃっていることが何か一時的なことだったらば、ではまた次も様子を見てという話になるんでしょうけれども、弁護士会の皆さんがおっしゃっていることはもっと本質的な問題であって、時間の問題じゃないことをおっしゃっていると僕は思うんですね。だから、時間がたてばそれでいいんだとかいう話ではなくて、時間がたとうがたつまいが、だめなものはだめというか、しっかりと踏まえておかなければならないことは踏まえておかなければならない、こういうことだと思うんですね。

 だから、それについて今後の課題ということになると、それだといかがかなと思うんです。今回の弁護士会の皆さんの御意見は聞かれていると思いますが、やはり今後もこれは検討課題なのか、それとも、いや、これはもう決着がついていることなので、届け出義務に関してはやはりもうここで一つの議論は終えて、それについては今後とも課すことがない、弁護士会の自主的な自治の中でしっかりとやっていただけるということでよろしいんでしょうか。そのことをちょっと確認をさせていただきたいと思います。

米田政府参考人 弁護士会につきましては、今までいろいろ話し合ってまいりまして、私ども、基本的な考えにそんなに差があるとは思っておりません。日本弁護士連合会におかれましても、マネロン対策というのは大変重要であるというように認識をされておりますし、私どもも、立案に当たっては依頼者との関係というのを大変重視をしたわけでございます。

 ただ、最終的に、なかなかそこで、届け出の措置を行うということについてはまだ懸念があるということでございました。この問題につきましては、やはり難しい問題としては、どうしても国際的な動向というのは横目でにらみながらやるしかございません。

 もちろん、弁護士の意向、それから依頼者の意向というのは大変重視しなければならないわけでございまして、私どもは、弁護士会の担当は法務省でございますので法務省とよく連携をしながら、日本弁護士連合会等と十分に話し合って検討してまいりたいと考えております。

市村委員 ですので、検討するということは、つまり検討の余地があるということですから、これからまだ義務化については話し合いを続けていくということに素直にとるとなるわけですけれども、いや、だから、別にそれをここで議論をするとかしないとかということがいいとか悪いとかいうことを言っているんじゃないんです。するかしないかなんですね。だから、やはり検討はしたいんですというのか、いや、届け出の義務化についてはもう議論は終えているとするのかというのをちょっとお聞きしたいんですね。いい悪いは私は判断はしていませんので、そのことを教えていただきたいと思うんですが。

米田政府参考人 届け出の義務化を以後一切しないというのは、これはさすがに国際的にそこまで思い切った決断は今の時点でできないと思います。

 ただ、国際的な動向もにらみながら、ですから、この問題について、国際的にいってどの程度評価されるのかとか、あるいは違うようなやり方でどこまでいけるのかとか、いろいろなことも考えながら、そして弁護士会の懸念というものも、こういうことであれば一体どの程度なのかとか、いろいろなパターンがあり得まして、先ほども申しましたように、私どもや法務省もそうですし、弁護士会の方としてもやはりいろいろ知恵も出していただいて、何とかよりよい方向に進んでまいりたいと思っています。

 ただ、これで今、何か最初に結論ありきのような、そのような議論の仕方をするつもりはございません。

市村委員 先ほども申し上げましたように、弁護士会さんの指摘というのは、もうよくわかっていらっしゃるとおり、別に時間がたったから変わるということではないと思います。ただ、国際的情勢も踏まえて、全くそれをこれから一切議論をしないということではないということだったと思いますが、しかしながら、今回のことは踏まえた上で、しっかりとその辺は考えていくということだという御答弁だというふうに私は認識しておりますので、ぜひとも今お話しされたことをしっかりと踏まえていただきまして、これからまた事に当たっていただけたらなと思うわけであります。

 やはり依頼者との信頼関係というのは、これは弁護士さんだけじゃなくて、多分、ここにいる皆さん全員そうだと思います。だから、もちろんその中に、先ほど申し上げたように、確かに知人だし友人だけれども、どうもこれはおかしいなと、なぜか知らなくても、相談に来られた方がどうもこれはやはりおかしいぞということはあるわけですよね。やはり個人的には大変悩むと思います、先ほども申し上げたように。ただ、悪いものは悪い、ここで思い切ってやらないかぬということで、やはりこれは決意が要るわけですね。これが知人とかであったりすると特にその決意は要るわけでありまして、やはりこれは人の情というのもありますから、こういうところにも思いをいたしておかないと、なかなかぎごちない社会にもなっていきます。

 だから、この辺のバランスをどうとっていくかというのは非常に難しいところではありますが、ぜひともそういうところも踏まえながら、またいろいろと議論をしていただきたいなと思うわけであります。

 それで、あと、もう少し細かいところを詰めていきたいと思いますが、今回、立入検査というものができるようになるわけですね、都道府県警が。そうなると、警察というのはまさに捜査機関ということでありますから、犯罪捜査との混同が生じないかという問題が出てくると思いますが、これについての対策というのはいかがされていますでしょうか。

米田政府参考人 過去、犯罪捜査あるいは犯則調査といった令状主義に係るような行政機関の活動とこういう行政調査との混同というのがよく議論には上っておりましたが、それは、一つの制度の中で、罰則あるいは罰則適用を前提とした告発というのがなされるような手続と行政調査が混在をしているというような場面でございます。

 今回の制度につきましては、事業者の義務違反に対して罰則はもともとついておりませんので、行政調査をして行政処分をする、そのルートしかございません。もちろん、警察は捜査機関でございますので、それはいろいろ意地悪い目で見ていただければ、それとは全然関係ない犯罪捜査に利用するんじゃないかみたいなことを言われると、これはもうそこまで信用されないと何もできなくなってしまうわけでありますけれども、制度上そのようになっておりますし、私どもも、その運用にはもちろん慎重を期してまいりたいと考えてございます。

市村委員 まさに今おっしゃっていただいたように、警察に対する信頼の問題というのもあって、また別件で何かやるんじゃないかという懸念もやはり持たれている部分もあるわけですね。これで立入検査して何かやったらいろいろ出てきて、ほら見ろ、こんなことをやっていたのかといってやられるんじゃないかという、その一つの理由づけにされるんじゃないかというおそれをやはり持っておられる方もいらっしゃるわけでありまして、いわゆる捜査ということでは、別件捜査ということでいろいろ問題になる場合もありますが、そうしたことにならないようにしていただきたい。

 そのためには、やはり確固たる情報収集が必要だと思われるわけでありますが、その体制というのはいかがなんでしょうか。やはり確固たる情報を知った上で、この件について立ち入りということになるわけですね。その辺の情報収集のあり方についてはどういうような体制をとろうとされているんでしょうか。

米田政府参考人 この制度で、国家公安委員会において、事業者に直接その報告を求めたり、あるいは都道府県警察に指示をして調査させたりということのためには、まず要件として、所管行政庁に対して意見陳述をする場合といいますか、その意見陳述に必要な限度においてそういう調査ができるというわけでございます。したがいまして、意見陳述をしようと思わなければならぬわけでありますから、そのためには、当然、意見陳述をしようとするだけの具体的な問題を国家公安委員会において把握している場合に初めてこういうことが行われるということでございます。

 具体的な問題はどういう場合に把握するかということは、これはいろいろあろうかと思いますけれども、一つは犯罪捜査の過程で、これは大マネロン事件で、しかし、特にどうもここの事業者のところで余りにチェックが甘過ぎてこうなったんじゃないかみたいなことが判明するという場合もございます。それから、外国が絡むマネーロンダリングというのもよくあると思うんですけれども、それは外国FIUからの通報でわかるというようなこともあろうかと思います。

 そういうことで、具体的な問題が把握されて、ただ、意見を言うためには事実関係を確定しなきゃいけませんで、そこで、他の行政機関の行政調査を補完するという意味でこのような調査を行うということでございます。

市村委員 あと、この届け出義務については罰則がないということをさっきおっしゃいました。

 罰則がないということになりますと、義務とはいえ、ここは先ほどもちょっといろいろ申し上げているんですが、情において忍びない場合があった場合、これは情の方を優先して届けない、罰則もないし君と僕との関係だから、こうなってしまった場合について、ではこれを、なぜ言わなかったんだといっても、いや、言わなかった、これは事実だ、しかし、どうでもしてくれといってもどうにもしようがないということになるわけでありまして、これについては、諸外国の場合は届け出義務については罰則を科していないのでしょうか、どの国も。ちょっと教えていただけますでしょうか。

米田政府参考人 例えば、イギリスは刑事罰を科しておりますし、アメリカは、刑事罰と民事罰と、何か故意か過失かによって区別するそうですが、そのようなものが科されております。我が国の場合は、これはいろいろ法体系によって違いますけれども、こういう届け出義務に直接罰則を科するというのは、構成要件の明確性からしてなかなかそこまでできるものではございませんで、むしろ、事業者と監督行政機関とのキャッチボールの中でだんだんとある意味では精度を上げていくというようなことが期待されているものと考えております。

市村委員 すなわち、刑罰の対象じゃないけれども行政的手段でこれを解決する方向に向かわせる、こういう話だと思います。

 一般的に、日本はそういった意味では司法によらず、これまで行政的に物事を解決してきた国だったと思いますが、しかし今の現状の流れは、そうではなくて、やはり何かあった場合は司法にゆだねようという流れになっているのかなと私は思っていますし、そうあるべきなのかなと思っています。

 これだけ社会が複雑化してきますと、昔みたいにある種行政的にまあまあ、なあなあでやっていた時代も、僕はノスタルジック的にはすごく懐かしいというか、そうあってほしいなと本当は思うところもありますけれども、なかなか難しいのかなと思います。そうすると、やはり罰則がないということについてこれから検討が必要だと私は思いますが、そのことを最後に国家公安委員長の方から伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いします。

溝手国務大臣 先ほど来、いろいろ議論が行われましたが、一番は、犯罪捜査のために認められた調査ではないということは明らかにしておかなくてはいけないだろうと思いますし、国家公安委員会に対して事前承認を求めることが前提になっております。当然、我々サイドとしては、十分その重大性を認識して対応しなくちゃいけないと思います。

 そして、この処分自体が行政措置でございますので、我々がたとえ立入調査をいたしましても、効力というのですか、その波及するのは各省庁の指導のところ、そして、その次のステップとして是正ということにつながるんだろうと思います。基本的人権に匹敵する問題だと考えるべきだと思っておりまして、そういう意味で、業者の取引を阻害することがあってはならないと考えているところでございます。

市村委員 最後に一言だけ。

 恐らく、罰則があったらこの問題、もうちょっといろいろ議論が必要だったのかもしれません。ですから、この辺は極めて難しいかもしれませんが、また今後、このことについては議論を続けるべきだと思いますので、そのことを指摘申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

平井委員長代理 次に、小宮山洋子君。

小宮山(洋)委員 民主党の小宮山洋子でございます。

 マネーロンダリングへの対策は当然必要だと思いますが、この法案についてはかなり懸念される部分も多くございますので、一時間の質疑ですが、しっかりといろいろな点を確認させていただきたいと思っています。

 まず、この法案は、FATF、ファタフともいっておりますが、ファイナンシャル・アクション・タスク・フォース、八九年のアルシュ・サミットでマネーロンダリング対策推進のためにつくられた国際的な枠組みですね。これの二〇〇三年六月に行われた見直しによる四十の勧告を国内で法制化するためにつくられる、その目的の法案ということでよろしいでしょうか。

 これを確認いたしますのは、この勧告が要請していることと今回の法案の内容について、これから幾つか伺いたいと思っていますので、確認をさせていただきたいと思います。大臣、よろしくお願いします。

溝手国務大臣 二〇〇三年六月のマネーロンダリング及びテロ資金対策の国際基準であるFATF勧告が改定されまして、本人確認等の措置を講ずべき事業者の範囲が金融機関以外に拡大されたということが一番大きなきっかけで、本法律案は、このような犯罪に対する収益をめぐる内外の情勢に対応するために、政府において国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部というところで決定された方針に基づいて提案をいたしたところでございます。

小宮山(洋)委員 このFATFのメンバーですけれども、参加メンバーは、OECDの加盟国を中心に三十一カ国・地域と二つの国際機関なわけですけれども、それぞれの法整備には各国によって違いがあります。そういう点から、日本の今回の対応の特徴を大臣に伺いたいと思います。

溝手国務大臣 おっしゃるとおり、FATF参加国のうち、EU諸国については、EUの指令に従っておりまして、おおむねFATFの勧告の要請に応じた法整備を行っているものと承知いたしております。

 しかしながら、アメリカ、カナダにおいては、弁護士を疑わしい取引の届け出義務の対象から除外をしているものの、その余の部分についてはおおむねこのEUの国と同様な措置を講じているなど、いずれにせよ、各国は、それぞれの国の法制度、実情に応じて適切な対処をされている、このように受けとめております。

 本法律案については、指導、助言、勧告や是正命令といった行政による誘導的な措置を導入しております。弁護士については、弁護士法上、高度の自治が認められていること等にかんがみ、その講ずべき措置について、具体的な内容につきましてはその会則にゆだねるということにいたしまして、我が国の法制度及び我が国の実情に即したものとしていると考えております。

小宮山(洋)委員 ちょっと、特徴がいまいちよくわからなかったんですけれども。

 行政による誘導的な措置ということは、法律で定めるのではなくて、行政庁がいろいろ考えて、裁量と言うとあれかもしれませんけれども、そういう形で進めることを主にしていくのが日本の特徴ということですか。

米田政府参考人 先ほどの大臣の答弁を若干補足させていただきますと、この法案の中で、何か違反があると直ちにその事業者に対して是正命令か何かがかかるようにするのではなくて、その前段の措置として、指導とか助言とか勧告という規定を設けておりまして、まずはそちらの規定をなるべく優先をしていただく、このような仕組みにしているということでございます。

小宮山(洋)委員 そういうような方法をとっている国はほかにはなくて、日本のこれまでのやり方の中でやっている、これは日本の特徴だということでよろしいですか、大臣。

溝手国務大臣 三十数カ国全部存じ上げているわけではないですけれども、日本の今回の立法に当たっての大きな留意点としてはそれが挙げられると思います。

小宮山(洋)委員 今回のこの法案のもとになっているのは、二〇〇二年に制定をされました金融機関本人確認法と一九九九年制定の組織犯罪処罰法に定められている金融機関の疑わしい取引の届け出制度だと伺っておりますけれども、これまで金融機関のみに課されていた顧客管理、記録保存、疑わしい取引の届け出義務が、今回はほかの業種にも拡大されているわけですね。

 その中で、郵便物受取・電話受付サービス業というのはFATFの勧告では対象の事業者とされていないのではないかと思いますが、いかがでしょう。

米田政府参考人 二〇〇三年に改定されましたFATF四十の勧告の中にトラスト・アンド・カンパニー・サービスプロバイダーというのがございまして、これに当たると考えております。

 このトラスト・アンド・カンパニー・サービスプロバイダーといいますものは、勧告の用語集によりますと次のようなサービスを提供する者ということになっておりまして、法人設立の仲介者であるとか企業の取締役や秘書として行動することとか、それから、登録された事務所の提供、事業上の住所、設備、通信手段等を提供すること、あるいは信託の受託者として行動すること、他人の株券の名義人として行動すること、こういったことであります。

 ところが、我が国の制度の中では、人の株券を人の名前にするだとか、それから、信託の受託も、業としてやる場合は、大概、既に信託会社などもこの対象に入っている業でございますし、法人設立の仲介といっても、登記までやるのであれば、これはもう司法書士とバッティングをいたしますし、多くはもう既にそもそも禁止されておるか、あるいは既に手当てがされているもの。それで、残っているものが、事務所、事業上の住所とか通信手段とかを提供するといったこと、あるいは秘書として行動するといったこと、郵便物受取あるいは電話受付代行業がこれに当たると考えて、この対象にしたものでございます。

小宮山(洋)委員 その郵便物受取・電話受付サービス業がトラスト・アンド・カンパニー・サービスプロバイダーに当たるということは、FATFの方に何か確認をされたり、そういうことというのはされているんですか。

米田政府参考人 なかなか、FATFの仕組みの中で、しっかりした大きな事務局があるような組織ではございませんので、そういう意味では、どこそこに照会をすればそれに対して何か有権解釈のようなものがなされるとか、そういった仕組みではございません。ただ、相互審査などにこちらも職員を派遣していろいろ聞いておるところでは、やはりこれはトラスト・アンド・カンパニー・サービスプロバイダーに該当するであろうというようにこちらも判断をしているわけでございます。

小宮山(洋)委員 先ほどからも議論になっておりますけれども、今回、金融庁に置かれていたFIU、特定金融情報室を国家公安委員会に移管することになっているわけです。

 こうした重要な法案を予算の関係で、予算関連法案ということでこのように急いで審議をするというのもいかがなものかと思っておりますが、このような措置がFATF勧告で義務づけられているのでしょうか。先ほどからのお話でも、FATF参加国のうち、捜査機関にFIUを設置している国・地域が十七、そうでない国が十四カ国ということは、必ずしも捜査機関に置かなくてもいいということではないかと思うんですが、それなのになぜ日本では捜査機関に置くのか。その理由とあわせて、明確にお答えをいただきたいと思います。

米田政府参考人 FIUをどこに置くかというのは、それはもう各国に任されていることでございまして、各国、おのおのその実情あるいはその法制度等を勘案して、適切な部署をFIUとしているわけでございます。

 我が国において、今回FIUを金融庁から国家公安委員会の方へ移管をするというのは、一つは、非金融機関が対象事業者になる、これを契機といたしまして、テロ対策、組織犯罪対策の中心となっており、また、その知見、情報も持っておる国家公安委員会にFIU機能を移管するということによりまして、より高度な分析、その結果によるマネーロンダリング防止、組織犯罪、テロの活動防止に役立てよう、そういう判断で内閣官房において調整されたわけでございます。

小宮山(洋)委員 これも先ほどから議論になっておりますけれども、国家公安委員会の事務局を警察がやっていること、置かれている場所の問題、そのことなどについて、今の警察のさまざまな問題も含めて、やはりきちんと運用されるのかという懸念がどうしてもあるわけですね。

 国家公安委員会のあり方について、そのあたりを見直していこうというような話し合いとか機運とかいうのは全くないんでしょうか。大臣、いかがですか。

溝手国務大臣 私は十分その気持ちを持っておりまして、庁内ではよく議論を申しておりますが、今回の問題に際しましても、国家公安委員会と警察庁を便宜的に使い分けられるということで都合よく名前をかたるのはよろしくないんじゃないか、しっかり整理をしようということで、警察法の中の解釈を内部でしっかり整理をしようじゃないかという議論はいたしました。

 その中において、国家公安委員会が責任を持ってみずからの業務としてやるのが、何条だったかの第三項なんですが、そこの業務として仕事を位置づけよう。あと、その他全般の業務、いろいろありますが、これは監督管理するという立場でございますが、みずからの業務としてそれを位置づけよう、こういう整理をいたしたところであります。

小宮山(洋)委員 その辺はしっかりとけじめをつけていきたいという大臣の御発言かと思いますので、その点については、この委員会でいろいろな場面でまた伺っていきたいと思っています。

 この法案の中の、法律専門職について疑わしい取引の届け出義務が除外されたことについて、これも前の二人の委員からも質問がございましたが、改めて幾つか伺っていきたいと思います。

 当初警察庁が考えていた法案では、弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士も疑わしい取引の届け出義務を課されることになっていたわけですが、これはどういう経過でこの適用を除外することになったのか、先ほどもございましたが、改めてもう少し詳しく伺えますか。

米田政府参考人 私どもが当初考えておりましたのは、このような法律、会計の専門家につきましては、まず、守秘義務の範囲には影響を及ぼさない、つまり、守秘義務の範囲の事項は届け出から除外をするということ、あるいは、その対象業務というのは不動産取引とか会社設立、資産管理の事務の代理、代行に限りまして、そもそも法的な助言だとかそういったものが入らないようにするとか、あるいは届け出のタイミング、いつ届け出るのか、届け出る場合いつかというのが一般の事業者と異なりまして、犯罪収益の疑いのある財産を収受したときに初めてかかるというような、そういう規定を準備いたしました。

 なお、弁護士につきましては、その独立性、自治を考慮いたしまして、規範につきましては会則に委任をする、それから届け出は役所ではなくて日弁連に対して行っていただく、そして監督も弁護士会の中で行っていただく、こういう案を準備しておったわけでありますが、それでもなおかつ、日本弁護士連合会においてはまだ依頼者との関係に与える影響について懸念が示されているということで、これについては今後引き続き検討を行う必要があるということで、今回の法案では、弁護士、またそれと理屈としては同じでございますので、特に強い意見が出たわけではございませんが、他の士業者につきましても今回は届け出からは除外をいたした、そういう案にしたというものでございます。

小宮山(洋)委員 ところが、このFATFの勧告では、こうした法律専門家への疑わしい取引の届け出義務というのを定めてあるわけですよね。ですから、この部分につきまして、ことし秋にも予定されている勧告の相互審査、ここでその勧告を遵守していないという評価を受ける可能性はないんでしょうか。

米田政府参考人 FATFの相互審査におきましては、確かに、この届け出の業務の対象外となっているということに関しましては、何らかの指摘を受けるのではないかと思っております。

 ただ、今度の法案によりまして、二〇〇三年の改定後のFATF勧告で定められておりますいわゆる指定非金融機関、つまり、不動産、宝石、貴金属、トラスト・アンド・カンパニー・サービスプロバイダー等、それと独立法律専門家であります各士業、これにつきましては、一応その範囲内に対象事業ということで入りまして、ただ、独立法律専門家等の届け出というところがこの法案では除外されているということでございますので、本法案の成立、施行によりまして、我が国のマネーロンダリング及びテロ資金対策は大きく前進をするということであろうと思います。

 その辺をよく訴えて、そしてまた、日本弁護士連合会におかれては、届け出はしませんが、自主的な取り組みもされる、その辺の状況もいろいろ御説明をして、FATFの相互審査に対しては理解を求めてまいりたいというように考えております。

小宮山(洋)委員 FATFの勧告を尊重しなければならないとされておりますOECD諸国の中でも、アメリカやカナダなどは、弁護士などに対する疑わしい取引の届け出義務を制度化していない。これも先ほど質疑にありましたように、御答弁に、アメリカは遵守していないということで厳しい評価を受けたというお話もありましたけれども、こうした国ではそういう制度をつくる動きもないのではないでしょうか。どうですか。

米田政府参考人 アメリカは、弁護士を含むすべての者に一定額以上のキャッシュの受け取りの届け出を義務づけるという、なかなかちょっと日本ではまねのできないような、えらく厳しい制度をとっておるわけでございます。

 カナダは、疑わしい取引の届け出も含む弁護士への義務づけを法律を制定いたしました。ただ、いわゆる弁護士会といいますか法律家協会からいろいろ反対もございまして、違憲訴訟なども起こされたということで、また改正をいたしまして、そこの届け出の部分だけを削除したというように聞いております。

 それからオーストラリアにつきましては、やはりいろいろな配慮から弁護士の疑わしい取引の届け出という制度を設けなくて、ちょっとアメリカによく似ているんですが、閾値を設けて、それを超えれば届け出るというような、そういう制度にしておりました。ただ、これもFATFから指摘を受けまして、これは昨年末からでありますが、二段階に分けた立法で、弁護士の届け出の義務化も含めて改正をする動きになっているというように聞いております。

小宮山(洋)委員 この制度を実施しているEU諸国の中でも、ベルギーやポーランド、この両国の弁護士会が、疑わしい取引の届け出制度が憲法に違反するとして訴訟を提起していると聞いているんですが、これは現在どうなっているか、把握しているでしょうか。

米田政府参考人 ベルギーにつきましては、弁護士会が、疑わしい取引の届け出義務はベルギー憲法等に違反するということで訴訟を提起していると聞いております。ただ、この訴訟は現在、欧州司法裁判所に係属をして、そこで審理をされているところでありまして、まだ判決は出されていないものと承知をしております。

 ポーランドにつきましても、弁護士に対する疑わしい取引の届け出義務について違憲訴訟が提起されていることは承知しておりますけれども、現在の状況については、ちょっと詳しく把握はしてございません。

小宮山(洋)委員 そして、この法律専門職への届け出の義務づけをどうするかという将来に向かっての話も先ほどからも出ていますが、御答弁では、いい知恵を出すとか、あるいは引き続き検討をする、それからまた国際的動向を見ながらというようなお話がございましたけれども、今申し上げたように、国際的にもいろいろな形で今動いているわけですよね。

 義務づけないという御答弁はなかったと思うんですが、一部の報道によりますと、警察庁の中には、再度、法律専門職も疑わしい取引の届け出を義務づけるという計画をお持ちだとも、これは事実は伺いたいと思いますが、そういう報道もされています。制度は小さく産んで大きく育てるという見解だというふうに報道されておりますが、他方で、そのような改正は行うべきではないという新聞の社説なども出されております。

 疑わしい取引の届け出、これは職業上の守秘義務を負う法律専門職の役割と根本的に両立しないものだと思っておりますので、一部には、選挙が終わったらまた出てくるのではないかというような懸念もあるようですが、こういうこそくな改正は行うべきではないというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。これは政府委員と大臣と、両方からお答えをいただきたいと思います。

米田政府参考人 一言で言って、こそくなことは考えてございません。はっきり申し上げて、どのような方向にするかということはまだ白紙でございます。

 ただ、国際的な動向、先ほど委員御指摘のとおりでありまして、さまざまな動きがあるということも事実であります。ただ、しかしながら、多数派はそういった届け出の制度を設けている。こういう中で、こういう国際的な動向をやはりにらみながら、しかしながら、よく話し合って、先ほどから申し上げていますように、いい知恵を出していきたいというように考えてございます。

溝手国務大臣 アメリカのように、一万ドルだったですか、全部報告しなくちゃいけない、これはもう評価をせずに全部取引を届けるというような制度をとっているところもあります。イギリスやEUと、法体系として非常に対照的だろうと思います。

 日本は真ん中にいて、今、はざまで悩んでいるというのが実情だと思います。決して予断を持って今後の審議をするということはないと思いますし、少なくとも私がやっている間はそんなことはさせません。

小宮山(洋)委員 ありがとうございます。

 検討されることがいけないとは申しませんが、その検討をどういう検討をしているかということがきちんと皆さんに情報が公開をされて、法律専門職の皆さんも国民も納得のいくような形で検討をしていっていただきたいと思いますし、私は、先ほど申し上げたように、この疑わしい取引の届け出は、職業上の守秘義務を負う法律専門職の役割と根本的にはやはり両立しないものだと考えているということだけ申し上げまして、次の質問に行きたいというふうに思います。

 次に、金融機関やほかの取引業者に課される疑わしい取引の届け出義務について、幾つか確認をさせていただきたいと思います。

 これまでは、金融機関の本人確認、記録保存の義務について、金融機関本人確認法によりまして、金融庁などが実施する報告徴収、立入検査、是正命令、是正命令違反の場合の罰則制度というものが規定されておりました。

 今回の法案では、金融機関だけではなくて、リース業、クレジットカード業、宅地建物取引業、貴金属宝石業、郵便物受取代行業、これは私書箱ですね、それから電話受付サービス業につきましても、すべての義務、すなわち十三条にあります担当行政庁による報告徴収、十四条にある立入検査、十五条にある指導、勧告、十六条にある是正命令の制度が設けられているわけです。

 としますと、今回の法案によりまして、新たに疑わしい取引の届け出を欠いたこと自体、これは犯罪とはされないけれども、是正命令を出された後にもう一度疑わしい取引の届け出を欠くと、これは行政処分だけではなくて刑事罰の対象にもなるということでよろしいですか。

米田政府参考人 刑事罰の対象は是正命令違反でございますので、是正命令の内容として、例えば、その事業者が全く従業員教育をしていないがために疑わしい取引の届け出がなかなかなされないという状況があるということで、従業員教育をしっかりしなさい、そういう是正命令であれば、従業員教育をやっておるならば、それでその是正命令を満たすということになります。

 したがって、是正命令を受けた後またその届け出をしなかったということは、是正命令の内容そのものに対する違反ではありませんので、それで直ちに刑事罰がかかるということにはなりません。それはまた別の問題でありまして、是正命令は守っているのに、また届け出がやはりここらは全然出てこない、おかしいね、それは調べてみるとまた別の原因があって、またそこで指導、勧告なのか是正命令なのか知りませんけれども、それは行政庁においてまたそれなりの改善の措置をとられるということであろうと思います。つまり、是正命令が行われ、その後で届け出が行われない、イコール罰則ということでは全然違うということでございます。

小宮山(洋)委員 確認させていただきますが、そうすると、是正命令が出された内容のみについて、そこに違反をしたら刑事罰ということなので、新たな要素で届け出を欠いてもそこは入らない、その是正命令に含まれた範囲だけということでよろしいですね。

米田政府参考人 罰則の構成要件が是正命令に反した場合ということになっておりますので、是正命令の内容によって、それに違反した場合ということになるわけでございます。

小宮山(洋)委員 これまで行われていた金融機関による疑わしい取引の届け出、これは年を追って増加しておりまして、二〇〇六年には十一万三千八百六十件にも達しているわけです。この二〇〇六年、十一万三千八百六十件のうち事件として立件されたものは五十件と聞いています。その内訳は詐欺が三十四件、不法残留が十二件ということで、マネーロンダリング対策といいますけれども、こうした犯罪は普通に考えるとマネーロンダリング犯罪とは違うように思います。

 このような一般犯罪の摘発のために金融機関や今回対象が拡大されるほかの事業者が莫大な時間と労力を費やすことになるのではないか、この届け出制度が必要な切実な事実が本当にあるのだろうかと思わざるを得ません。そして、まして是正命令や刑事罰の対象にする必要が、どこに今回の法律の立法事実があるのかということをわかりやすく御説明いただきたいと思います。

米田政府参考人 まず、数字の説明をさせていただきたいんですが、私どもが発表しております五十件というものは、疑わしい取引の届け出を直接の端緒として、かつ立件まで至った事件の数、それが平成十八年中五十件でございます。

 ところが、こういう疑わしい取引の届け出情報、これは今、金融庁から提供を受けておるわけでありますけれども、これの使い道というのは、まだ全く警察が何も把握していないときに、直接それを端緒として捜査に入るというものだけではございませんで、特に、被害者のあるような犯罪、詐欺とかああいったものは、もともと被害届が出されるということが一番最初になるということが往々にしてあります。したがって、使われているその数というのは非常に多いものでございますけれども、ただ、それをなかなか統計上とることができない。したがって、大体、疑わしい取引の届け出がどういうふうにだんだん使われるようになっているのかという推移を明らかにするために、そのうちの、何も警察が知らないところでまず最初にこれが直接の端緒になった事件で、なおかつ検挙まで至った事件というものの数で各年の推移を見たというのがこの数字の意味でございます。

 したがいまして、疑わしい取引の届け出が事件の検挙に役立っているという数は非常に多いわけでございまして、マネーロンダリング犯罪の検挙というのも年々ふえているということでございます。

 もちろん、この五十件の中にも、前提犯罪の検挙で終わったものもございますけれども、中にはマネーロンダリング罪まで至ったというものもあるわけでございます。

    〔平井委員長代理退席、委員長着席〕

小宮山(洋)委員 一般的な犯罪の中からマネーロンダリングに至ったものもあるということですが、それはこの五十件のうち何件ぐらいあるんですか。

米田政府参考人 これは、そういうものもあると聞いておりますけれども、何件とかそういうふうに統計はとってございません。先ほどから申し上げているように、五十件がすべてではなくて、これはもう極めてごく一部であります。疑わしい取引の届け出が捜査に活用されたものというのは大変多うございます。そういう中でマネーロンダリング犯罪というのも年々検挙がふえてきている、こういうことでございます。

小宮山(洋)委員 今の御答弁を伺いましても、どうも、十一万三千八百六十件も届け出があって、その中からの五十件の立件、しかも、その中でマネーロンダリング犯罪にかかわったものが幾つあるかわからないということでは、今回拡大するのがちょっといかがなものかと思わざるを得ません。

 この疑わしい取引につきましては、これまでの金融機関の届け出件数を見ましても、組織犯罪処罰法では罰則はなくて、届け出件数は限られておりました。これは、各金融機関の業法による行政処分のみであったわけですね。ですから、一九九七年には九件だったものが、二〇〇三年には四万三千七百六十八件、二〇〇四年に九万五千三百十五件、そして先ほど申し上げた二〇〇六年には十一万三千八百六十件と激増をしているんですけれども、これを見ましても、二〇〇三年の金融機関本人確認法によりまして、行政庁の是正命令に従わない金融機関に二年以下の懲役か罰金となってから、刑罰がこういう形であるようになってから激増しているのだと思います。

 今回、対象の範囲、事業者を広げたわけですから、消費者との円滑な業務への支障、これを最小限にするためにも、疑わしい取引の内容を、犯罪が行われたと疑うに足る相当な根拠のある場合といったように、もう少し限定をしていく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょう。

米田政府参考人 現在、金融機関等にかかっております疑わしい取引の届け出、これにつきましては、事業者が保有している当該取引に関する具体的な情報、顧客の属性とか取引時の状況等々でございますけれども、そして事業者において総合的に判断する必要があるというものでございまして、この運用は現在定着をしているということであろうと思います。

 いずれにしましても、業界関係者の知見を十分に活用して、そして、いろいろな取引実態等もよく踏まえている、そういう業界の知見の活用、経験の活用ということが重要でございます。これを絞って何か厳しい処分をするというより、幅広く見ていただいて、ですから、その違反というのも、それはすぐに何か処分がかかるというのではなくて、さっきも言いましたように、指導、助言、勧告、それから是正命令というのも、何か届け出をしないということではなくて、これこれこういう措置をとってください、こういうような仕組みにするというのが適当ではないだろうかというふうに考えているところでございます。

小宮山(洋)委員 新しく対象になる事業者の全国宅地建物取引業協会連合会、それから日本金地金流通協会、日本ジュエリー協会、日本テレマーケティング協会、リース事業協会などから、私ども民主党でもヒアリングをいたしました。その結果、皆さんが口をそろえて言われるのは、やはり疑わしい取引とは何かをぜひ明確にしてほしいということなんですね。

 もう既にこの法案が通ることを前提に、各行政庁ごとにガイドラインづくりの話し合いを業界とされていると聞いていますが、とにかく業種ごとの詳細なガイドラインが必要だと考えます。そのガイドラインはどんなものを考えているのか、また、業界団体に加盟していない業者がいますし、それから業界団体が全くない郵便受け取りというようなものもあります。そこにどうやって徹底されるのか。

 その二点を、それぞれの行政庁、宅建については国土交通省、貴金属、郵便受け取り、リース、これについては経済産業省、電話受付については総務省と伺っておりますので、各省の担当からこの二点について明確にお答えをいただきたいと思います。

川本政府参考人 委員御指摘のとおり、この法案につきましては、疑わしい取引、この事例というものをきっちり詰めるということが法の運用上非常に重要になるというふうに私どもも考えております。既に、警察庁にも犯罪収益移転の実例等に対していろいろ協力を得たいということでお願いいたしておりますし、金融庁が金融機関等を対象にいたしました参考事例というものもつくっております。

 こういったものをもとにしまして、私ども国土交通省としましてもガイドラインを作成いたしまして、法の施行までには公表したいというふうに考えております。その際には、業界団体の意見も十分聞いていきたい。その上で、不動産取引につきましての実態に即したガイドラインというものをつくりたいと思っておりまして、具体的に考えますと、短期間のうちに頻繁に現金取引が行われる場合でありますとか、取引の秘密というのを不自然に強調する場合等々、いろいろあろうかと思っております。

 そういった事例を、できるだけわかりやすい形でガイドラインを作成いたしまして、業界団体等を通じまして、あるいはネット等も活用しながら、このガイドラインにつきましても公表していきたい、このように考えております。

桜井政府参考人 お答えいたします。

 総務省におきましては、電話受付代行業にかかわる取引の届け出について明確化するガイドラインというものを作成するということにしているわけでございますけれども、これに当たりましては、現在運用されております金融庁のガイドラインといったものも参考にし、また、規制対象となります業界の実態等を踏まえて、適切に対応してまいりたいと思っております。また、ガイドラインの作成に当たりましては、パブリックコメントを実施して、業界を含め、広く意見を募集してまいりたいというふうに考えております。

 また、業界への周知でございますけれども、この法案の作成過程におきまして、昨年八月でございますけれども、警察庁及び経済産業省と連名で、本法律案の義務対象事業にこの電話受付代行業を加えるということについてパブリックコメントを実施しておりまして、また、九月には事業者向け説明会を開催してきているところでございます。引き続き、周知徹底に努めてまいりたいというふうに思っております。

石黒政府参考人 経済産業省関係でございますけれども、貴金属取引業、ファイナンスリース、クレジット、郵便物受取業の四業種が対象になっております。各特定事業者ごとに業務実態に応じまして、今二省庁からも御説明がございましたけれども、関係業界とも調整をして、できるだけわかりやすい形で疑わしい取引の内容を明確化してまいりたいというふうに思っております。例えば、短期間で頻繁に多額の現金取引を行うといったような形で、行為類型を明確化していくというようなことで明確化してまいりたいというふうに思っております。

 また、周知徹底の件でございますけれども、事業者及び顧客間での取引に混乱が生じることのないように、警察庁とも連携をさせていただきまして、事業者への説明会、リーフレットの配布、それからまたホームページを活用いたしました普及啓蒙といったようなことを周知徹底してまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

小宮山(洋)委員 今伺いましたが、やはり疑わしい取引については義務づけられる報告の範囲、内容が極めてあいまいで、結果として、犯罪収益の移転にかかわったとされる事例が報告でなされなかった場合には事後的に行政処分の対象とされてきたわけですが、これに加えて、是正命令と違反の際の刑事罰を科すということになりますと、対象になる事業者は、これまでの金融機関の九件が十一万件余りになったことを見てもわかりますように、やはり罰則を恐れて、疑わしい取引かどうか迷ったときはすべて通報するという事態になりかねないのではないか。そうすると、かなり密告監視社会になるのではないかという心配をする声もございます。

 やはり、是正命令の対象からは疑わしい取引の届け出を除外して、疑わしい取引の届け出を欠いた場合の措置は行政処分にとどめて、刑事罰の対象から外すべきではないかと思いますが、いかがでしょう。

米田政府参考人 是正命令と行政処分は私どもは同じものであると考えておったのですけれども、何か違うものなんでしょうか。是正命令というのは行政処分なんですが、そのような理解でよろしゅうございましょうか。

 私どもは是正命令は行政処分であるという理解でおりますので、ちょっとそれを前提にしてお答えさせていただきますけれども、罰則を恐れて、疑わしい取引に該当するかどうかということも余りチェックもしないでどんどん報告をされるというのは、確かに委員のおっしゃるような御懸念もありますでしょうし、それを受ける所管行政庁側あるいはFIUである国家公安委員会としても、それは必ずしも望ましい事態ではございませんで、やはりなるべく疑わしい、精度の高い情報をいただくということがこの制度としては趣旨であろうと思います。したがいまして、まず、そのガイドラインをなるべく詳細につくっていただく。

 それから、国家公安委員会の責務として、今度の法案で、疑わしい犯罪収益の移転に関する手口の情報を事業者へ提供する、あるいは国家公安委員会と関係省庁との協力、政府と日弁連との協力といったようなことを定めておりまして、そういうキャッチボールを通じて、届け出るべきものは届け出ていただかなければなりませんが、そうでないものは届け出なくてよい。その辺の仕切りを、意思疎通、キャッチボールを通じてだんだん精度を高めてまいりたいというように考えております。

 是正命令及びそれに違反する刑事罰というのは、これはあくまでも最後の手段でございますけれども、これがないとやはり制度としては完結をいたしませんし、中には悪質な事業者というのも、今の金融機関以上に、新しく入ってくる事業者の中にはそういうものがあるわけでございます。業界を通じてのコントロールというものもきかない、業界自体がないような事業者もあるわけでございますので、ここのところはぜひ必要であるというように考えております。

小宮山(洋)委員 その刑事罰が重過ぎるのではないかという指摘も多くされています。

 是正命令の違反は、二年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金と二十三条でされています。疑わしい取引の届け出を欠いて是正命令を受けていた金融機関などの事業者が再び届け出を欠いた場合、これは指摘を受けた内容ということでしたけれども、その内容で届け出を欠いた場合は、この構成要件に該当することになりかねないということですね。これまでの業法では罰金で済んだのに、人の疑わしい取引を見逃したという業務上の過失とも言えることへの刑罰としてはこれは重過ぎるのではないでしょうか。

米田政府参考人 先ほども申し上げましたように、是正命令後の再度の届け出がされないということに対して罰則がかかるわけではございませんで、是正命令違反に対して罰則がかかる。是正命令の内容として、例えば職員の研修をちゃんとやりなさいと言って、職員の研修をしているならば、それは是正命令を満たしたことになるということでございます。

 罰則の重さにつきましては、現行本人確認法が、是正命令違反で二年以下の懲役または三百万円以下の罰金、両罰規定で三億円以下、こう定めておりまして、また報告、検査に関する罰則も本人確認法と今回の法案は合わせてございます。

 なお、疑わしい取引の届け出に関しましては、現在の組織的犯罪処罰法におきましては、それぞれの業法による処分にゆだねております。例えば銀行法であるとかそういった業法でありますが、そういった業法の命令違反の罰則も本人確認法と同じであるということで、この辺の並びで合わせておるわけでございます。

小宮山(洋)委員 また、二十四条に、対象となる事業者が顧客の利益を守ろうとして、第十三条の調査を拒否したり、第十四条の立入検査を拒否したり虚偽の答弁をしたりした者は一年以下の懲役、三百万円以下の罰金が科される。それからまた、二十七条に、司法書士、公認会計士、税理士などが所属する法人には最大二億円、三億円の罰金が科されるということになっていますが、これも余りに過重ではないかと思うんですが、いかがでしょう。

米田政府参考人 罰則につきましてはいろいろな並びの中で定められているわけでございまして、この体系では現行の本人確認法と同一であるということは御理解をいただきたいと思います。

 同じ制度の中で、相手によって罰則を変えるというのも、平等原則の関係で、なかなかしにくいことでもございます。もちろん、業種ごとにいろいろな事情が違いますので、それは罰則の適用の際に当然いろいろ考慮されるべきものであろうかと思いますし、そもそも罰則の前提になります是正命令の内容そのものが、それぞれ事業者の事情によって、規模とか何かによって相当違うであろうと思いますけれども、そういった個別の事情として考慮されるべきものであろうかと思います。

小宮山(洋)委員 このような取り締まり規定の違反につきまして懲役刑を設けるというのは行き過ぎなのではないかというふうに考えます。法案の第二十三条、二十四条から懲役刑の規定を削除するべきではないか、また二十六条の罰金刑の金額を引き下げるべきではないかというふうに考えますが、重ねて伺います。

米田政府参考人 繰り返し御答弁をいたしますけれども、現行の本人確認法と同一である、それから周辺にある制度、例えば届け出に関する現在の事業者に対する業法の罰則等々を勘案いたしましてこのような罰則にさせていただいているものでございます。

小宮山(洋)委員 繰り返し同じ御答弁をいただいていますけれども、今回、本当に対象の事業者が非常に拡大をされるわけです。

 ですから、宝石業などといっても、結婚の場合にエンゲージリングを買うということもあるでしょうし、特に宅建業者の場合はかなりの部分が大きな金額の取引になるわけですから、そのことに際して、やはり刑罰を重くして、先ほどから再三言っているように、金融庁のあれを見ても、やはり罰則が重くなった途端に物すごく届け出件数が高くなっている。だから、もしかすると疑わしいものかもしれないということが、刑罰が重いことによってどんどん届け出をされていくとなりますと、これは事業者の方の業務に支障を来すということと、やはりそれを知らないうちに届けられる国民の側にすごく密告社会になっていくという心配とがあるので、そのあたりで伺っているんですけれども、そういう心配は全くないとお考えでしょうか。

米田政府参考人 金融庁への届け出が非常にふえてきたという要因につきましては、私どもは、必ずしも罰則の強化によるものとは考えてございません。そちらは本人確認法の話でございまして、届け出とは直ちに結びつかないということと、もう一つは、やはり届け出ということに関しまして、行政庁側それから事業者側がだんだん習熟をしてきたという点があろうかと思います。

 それから、一般的な犯罪情勢として、いわゆる振り込め詐欺というのが非常にふえたときは、やはり口座の動きとして特有の動きを示しますので、それはもう怪しいということで届け出られた件数も相当にふえたのではなかろうかというように考えてございます。

小宮山(洋)委員 次に、立入検査について何点か伺いたいと思いますが、それぞれの対象業種の行政庁は事業者に対して報告徴収、立入検査ができることとされております。こうした規制は、疑わしい取引の届け出から除外された司法書士、行政書士、公認会計士、税理士についても適用されるということでよろしいですか。

米田政府参考人 さようでございます。適用されるということでございます。

小宮山(洋)委員 こうした金融機関などの取引機関と専門職の事務所が、本人確認や記録保存がきちんとなされていない疑いがあるということだけで行政庁の立入検査の対象とされるということになるんでしょうか。

米田政府参考人 疑いがあるとかどうとかいうより、これは、先ほどちょっとお話に出ていました国家公安委員会による行政調査と違いまして、この法律の施行に必要な限度においてということで各所管行政庁の行政調査がなされるものでございますから、いわば定期的に報告を求めるといったようなこともあろうかと思います。

小宮山(洋)委員 この法案の第十七条三項では、「前項の指示を受けた都道府県警察の警視総監又は道府県警察本部長は、同項の調査を行うため特に必要があると認められるときは、あらかじめ国家公安委員会の承認を得て、当該職員に、特定事業者の営業所その他の施設に立ち入らせ、帳簿書類その他の物件を検査させ、又はその業務に関し関係人に質問させることができる。」とされております。

 この十七条では、行政庁に対して行政処分を行うべきという意見を述べる前提として、警察機関によって報告の徴収、立入検査が実施できることとされているわけです。行政処分の必要があるかどうかを判断しなければならないと考えたときは、裁判所の令状などもない状態で特定事業者に対して立入検査ができるということですか。

米田政府参考人 まず警察も、都道府県公安委員会というのはさまざまな行政権限、行政処分権限を持っておりまして、その行政処分の可否を判断する、あるいは施行のために必要な場合に立入検査を含む行政調査を行う、こういう制度というのは現在もいろいろございます。

 今回の制度は、例えば、例としてはいわゆるサービサー法などがそうなんですが、これは国家公安委員会ではなくて警察庁長官にしておりますけれども、法務大臣に対しまして、許可をするしない、あるいは許可の取り消しをする、そういう処分をするべきであるという意見陳述を行う前提として報告徴収、立入検査を事業者に対して行う、こういうものでございます。

 このような規定でやっておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、これは行政上の必要、この場合は直接行政処分をするわけではなくて、行政処分をした方がいいのではないか、すなわち意見陳述をするべきであろうという具体的な問題を把握した場合において事実関係を確定するためにこのような調査を行うというものでございます。

小宮山(洋)委員 このような令状なしで警察機関による立入検査、これは海外では例がありますか。もしあるとすれば、具体的にお示しください。

米田政府参考人 犯罪捜査でも令状がなくてもよい場合があるような、例えばイギリスとかアメリカのような国があるぐらいですから、普通、行政処分というもののためにその行政上の立ち入りをするという仕組みをとっている国は多々あろうかと思います。

 それが、そういう行政上のいろいろな役割を警察機関が果たしているかどうかというのは国によって多分違うと思いまして、例えばスウェーデンは国家警察がFIUであるわけですけれども、これはもちろん事業者のそういう義務の遵守を確保するために立入検査権限まで認められているというふうに承知をしておりますし、また、オーストラリアのFIU、これも司法省、司法長官のもとに置かれているわけでありますが、やはりそのような立入検査権限があるというように聞いております。

小宮山(洋)委員 監督行政庁を飛び越えて、警察が特定事業者の事務所に令状なしで報告と資料提出を求めたり立入検査のために踏み込むことを可能にする制度というのは、これはやはり憲法三十五条の定める令状主義を否定することにつながるもので、これは法案から削除するべきではないかと思いますが、これがないとFATFの要請にこたえられないということなんですか。

米田政府参考人 まず、過去、その憲法三十五条の問題となった問題というのは、一つの制度の中で義務違反があって、それが犯罪捜査あるいは犯則調査の対象にも、それから行政処分の対象にもなる、そこで罰則で間接的に、間接強制されている行政調査と、令状主義によるべき犯則調査や犯罪捜査と混同が起こるんじゃないかということでいろいろ問題になったわけでありますが、これも、過去の最高裁も含めます裁判例におきまして、それぞれ別のものであるということで確立をしているものと承知をしておりまして、この法案につきましては、特に義務違反に対して罰則がかかっておりませんので、なおさらそういう問題にはならないと思います。

 ただ、いずれにいたしましても、慎重な取り扱いというのは大切でございまして、あくまで私どもとしては意見陳述を行うために必要な調査でございまして、得られた資料も当然意見陳述のために用いるというようにしていきたい、慎重な取り扱いに努めてまいりたいと考えております。

小宮山(洋)委員 最後に大臣に伺う前に、もう一度だけ、ちょっと先ほどのあの法律専門職のところをもう一点だけ確認させていただきたいと思います。

 今、日弁連の会則で弁護士については準用をするというふうに法律にも言われていますが、その会則で本当にこのFATFの要請にこたえていないという指摘もあるかもしれない、それは検討すると言われたんですが、どれぐらい時間をかけて検討されていくのか、その検討の見通しをちょっともう一度伺っておきたいというふうに思います。

米田政府参考人 要するに、弁護士等の届け出義務が入っていないということについてFATFから指摘を受けるかもしれないということでございますね。その検討につきましては早急に始めたいと思っております。法務省と連携をいたしまして、なるべく、その協議の段取り、日程を定めて、早期に開始をしたいというように考えております。

小宮山(洋)委員 それは検討してみないとどれぐらいかかるかわからないとおっしゃるのかもしれませんけれども、とにかく今反対が多いからとりあえずやめておいたけれども、割と近いうちにまた義務が課されるのではないかという心配があるわけですね。だから、それはやはり、先ほど申し上げたように、情報も開示をしながら、相当な期間をかけて納得いく形で行われないといけないと思うんですが、そのあたりはいかがですか。

米田政府参考人 ちょっと時間については申し上げられませんけれども、ともかく、精力的に検討を重ねて、お互いの意見を交換しながら進めてまいりたいと思っております。

小宮山(洋)委員 ずっと質疑をしてまいりましたが、多くの懸念材料がございます。

 大臣に最後に伺いたいんですが、マネーロンダリング対策が必要なことはもちろん理解をするわけです。しかし、対象となった事業者が通常の業務に支障を来すほど過度な負担になったり、あるいは市民生活に支障を来したりすることがないようにする必要があるということがまずございます。

 明確に規定をしたガイドラインを対象事業者には漏れなく徹底をしてほしい、また、先ほども質疑がございましたけれども、警察に入った情報の扱いには十分な注意が必要だということ等々、とにかくくれぐれも行き過ぎがないようにしていただかないといけないと思うんですが、大臣、いかがでしょう。

溝手国務大臣 暴力団あるいはテロ組織など、犯罪組織への資金提供の面から対策が極めて重要であるということは御理解をいただいていると思いますが、その対策が事業活動や国民生活に過度な負担を与えてはならないという御指摘ももっともでございます。これは十分認識して当たらなくてはいけないだろうと思っております。

 今般、指導、助言、勧告や検査に当たりまして、監督の当該行政庁と国家公安委員会の間の協議システムをつくったのもその証左の一つであるというように考えておりまして、十分慎重にやってまいりたいと考えております。

小宮山(洋)委員 こうした多くの懸念があることを、非常に短時間の質疑で法案を通すということのようでございますが、こうした懸念がないということがはっきりわかるように、附帯決議などでしっかりそういうことは申し合わせをしておく必要があるということを申し上げまして、私の質問を終わります。

河本委員長 委員各位に申し上げます。

 内閣委員会法務委員会連合審査会は、午後一時から本委員室にて開会いたします。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時十三分開議

河本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁情報通信局長武市一幸君及び国土交通省大臣官房審議官大森雅夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 質疑を続行いたします。渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 朝から内閣委員会、そしてつい今し方までの法務委員会との合同審査ということで、この法案に対する問題点がさまざまな角度から指摘をされました。大分、私自身の用意していた質問と重なった部分もありますけれども、私なりの視点でまた質問をさせていただきたいと思います。

 午前中の我が党の横光委員の質問の中にもありました。この法案を審議する前提条件といいましょうか、まず警察庁に対する、あるいは警察に対する信頼、この点について横光委員からも最初に御指摘がございました。

 横光委員はかつて刑事をやっていた方でございまして、御本人はいらっしゃいませんけれども、ドラマの中ですが、大変な熱血刑事の役をずっと演じていらっしゃいました。私もかつて新聞社の記者を短い間したことがございまして、駆け出しのころというのは地方支局の記者をやっておりました。いわゆるサツ回りをしていたんですけれども、そのときに、東京の多摩地区の方を担当していまして、毎日いわゆる夜討ち朝駆けという、記者の最初にやるトレーニングといいましょうか、イロハのイから始めたわけでありまして、大勢の警察官の方とも御縁を持ちまして、大変、記者として見てきた部分もあります。

 大方の警察の方々は、職務に忠実で、使命感に燃えて、そして大変にハードな仕事を本当に一生懸命、暑い中も寒い中もされている。やはり警察官を志した動機というのは皆さん方、同じでございまして、正義の実現、あるいは悪に対しての憎しみ、法と秩序を守るんだ、そんな純粋な使命感の中から皆さん方が警察官を選んで、職務に精励をされております。

 しかし、残念ながら、けさの指摘にもありましたように、ここのところ警察官の不祥事が相次いでおりまして、もう何度も言うには及びませんけれども、鹿児島の県警の例の県会議員選挙をめぐる逮捕、取り調べ、そして起訴、その後、最終的には無罪であった。もうその手の話には枚挙にいとまがないわけでありますし、また、昨日だったでしょうか、けさの新聞等で報道されておりますけれども、同僚の警察官のデータを盗んでいたというような事案まで発生しました。

 まさに警察に対する市民の絶対的な信頼がなければ、今回のこの法案というものは、たとえ施行されたにせよ、信頼関係は成り立たないわけでございます。その点につきまして、重ねてになりますけれども、まずは警察の信頼回復ということにつきまして国家公安委員長、現状どのように取り組んでいらっしゃるのか、そして今後どのようにしていくのか、改めて伺いたいと思います。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 FIUとしての業務を初め、警察の任務を遂行するためには、警察に対する国民の理解と協力が不可欠でございます。これらは国民の信頼を基礎として得られるものであると認識いたしております。

 国家公安委員会及び警察庁におきましては、警察刷新会議の警察刷新に関する緊急提言を重く受けとめまして、平成十二年八月以来、警察改革要綱を策定し、警察の改革に取り組んでいるところでございます。

 警察改革要綱に掲げる施策はすべて実行していると考えておりますが、非違事案が依然として発生していることも重く受けとめております。警察に対する国民の信頼を回復するため、今後とも警察改革の持続と断行を行う覚悟でいるところでございます。

渡辺(周)委員 ですので、具体的にどう改革をして、どう意識づけをしていくのかということについて、国家公安委員長のお考えを伺いたいんです。

 私の義理の父親、家内の父親は、もう七十後半になりますけれども、静岡県警の警察官でありました。いまだに車を運転するときは制限速度で、いらいらするぐらい、ハンドルを握ったら法を守るわけですね。制限速度四十キロのところは、どんなにすいていたって四十キロで走る。交通畑をずっとやっていたものですから、交通警察官としての、しみついた遵法精神というのか、やはりそうした骨身にしみ込んだ使命感のようなものはなかなか抜けないわけであります。

 当時の方々と違いまして、今の方々は、特に若い方々は、思っていた世界とは違うからということでやめてしまう人もいる。何となく一般のサラリーマンや、一般のと言ったらおかしいですけれども、普通の勤め人とはもっと違う、やはり高い使命感とそれなりの責任があるんだ。また、警察官の不祥事ということは、あるいは法を逸脱するということは、ほかの方と比べては申しわけないんですけれども、ほかの方がすることに比べれば何倍も世間からの指弾を浴びるし、また、警察全体の信用を揺るがしかねない、こういう思いがあるから、いまだにやめた後でもそういう考え方がしみついているんです。

 時代の流れの中で、警察官の方々、どういうふうに改革をしていくのか、どういうふうに意識づけをしていくのか。その点について今、刷新を、改革をと言いますけれども、具体的にどうされるのか、そういう意味での教育も含めてどうお考えか、その点をまずお聞かせいただきたいと思います。

溝手国務大臣 先ほどお話をさせてもらいました警察刷新に関する緊急提言では、警察が持つ問題点として、閉鎖性とか、国民の批判を受けにくい体質がある等の指摘がなされたところでございます。

 そこで、警察行政の透明性を確保するとともに自浄機能を強化するため、警察では、情報公開の推進、警察職員の職務執行に対する苦情の適正な処理、警察における厳正な監察の実施、公安委員会の管理機能の充実と活性化等を進めてきたところでございます。また、国民の要望や意見を的確に把握するとともに、これらに対して誠実に対応するため、警察安全相談の充実、告訴、告発への取り組みの強化、職務執行における責任の明確化、警察署協議会の設置等を進めてきたところでございます。

 国家公安委員会としては、警察に対する国民の信頼を回復するため、今後とも警察改革の持続的断行を図ることが重要と考えております。

渡辺(周)委員 これから法案の中身について議論するわけでありますから、この問題についての議論はまた改めてさせていただきたいというふうに思います。

 しかし、先ほど申し上げました、警察官の方というのは、当たり前ですけれども、ほかの方以上に遵法精神、遵法をとにかく一般の人間以上に厳しく常に持っていなければいけませんし、その使命感というものがやはり信頼につながるわけでありまして、その点について、これから教育、そしてそうしたモチベーションを持ってもらう。そのことについて今後どう改善していくかについて、ぜひ私なりの提言をしながらまた改めて議論をさせていただきたいと思います。

 さて、それでは法案の中身に入ります。

 けさからの質問を聞いておりまして、同じことの繰り返しとおっしゃるかもしれませんけれども、幾つかどうしてもわからないところがある。それはまず、疑わしいという点についてだれがどう判断するのか。その点について先ほど来ずっと議論がありました。納得のいく回答というのは閣僚席、答弁席からなかなか聞こえてこないんですけれども、疑わしいをだれが判断するのか、まずその点、お答えください。

米田政府参考人 これは、届け出を行っていただく事業者の方が判断をされるということでございます。これは法文上そのようになってございます。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

河本委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

河本委員長 速記を起こして。

 渡辺周君。

渡辺(周)委員 今、この法案に書かれているとおりに、届けをする人間が判断するということでございますけれども、これまで金融機関は疑わしい案件について届け出をしてきた。しかし、今回四十三の業種に届け出が特定業者が広がることによって、いわば、今までそのようなことを考えたこともなかった方が今度は疑わしいと判断するわけですね。この点についてもう少し詳しく聞きたいんですけれども、こうした方々が判断するに至る根拠というのは、どのような形で何を根拠に疑わしいというふうに今お考えですか。

米田政府参考人 現在金融機関等が行っております疑わしい取引につきましては、その事業者の業務を経て知り得た経験であるとか知識であるとか、そういったものが背景にありまして、そしてそれぞれ顧客の状況、取引の状況等を総合的に勘案して決めておるわけでございます。これは、一応その手がかりとなるものでガイドラインといったものが定められております。

 ガイドラインはあくまで目安でございますので、これはガイドラインの最初の文章のところに書いてございますが、形式的にそれに当たるからといって疑わしいわけでもないし、それに当たらないからといって疑わしくないわけでもない、あくまで目安であるということでありますが、それぞれの事業者のいわば経験と知見によりまして、まずその辺を手がかりにして判断をしていただくということで現在はやっております。

 今度、新しい事業者がふえます。これにつきましては、一つは、それぞれの所管行政庁を中心に、もちろん私どもも協力いたしますが、詳細なガイドラインをつくってまいりたいということ。それから、この法案では、国家公安委員会が犯罪による収益の移転の手口に関する情報を特定事業者に提供する、あるいは国民に周知をするということが定められておりまして、そのようなフィードバックを通じまして、各事業者がそのような疑わしい取引を見抜きやすくするというようなことに努めてまいりたいと思っております。

渡辺(周)委員 では、一つ例に挙げて伺いたいんですけれども、例えば電話や郵便の代行業者、いわゆる私設秘書サービスとか電話代行サービスとか電話秘書サービスというビジネスがあります、あるいは私書箱というような制度がありますけれども、例えばこういう方々。

 金融機関の場合は、これまでの経験で総合的に勘案して、これは疑わしいと。そのためのガイドラインもあって、ある程度金の出入りが非常に多い、あるいは、例えばですけれども特定国に向けての送金が異常に多いということになれば、これはおかしいなと思うかもしれませんけれども、例えばこういう代行業者のような方々というのは、正直言って、そんなに何十年と根づいてやってきた仕事ではないし、ましてや、そこに勤めている方や使われる方々、お得意さんというか取引先も非常に匿名性が高い、だからこそこういうビジネスが成り立つんですけれども。

 こういう方々に、例えば何をもって疑わしいとするかということは、どういう形で指導されるんでしょうか。

米田政府参考人 確かに、今まで対象になっていなかった、それで、その業全体を仕切るような業法もない、業界もない、そういう業種でございますので、やはりそれはある程度時間をかけて、順々にそういった疑わしい取引の届け出の充実を図っていくということではなかろうかと思います。

 まずもって、例えば現金書留が頻繁に送付されるような私設私書箱、これはいかにも怪しいわけでございますので、そういったことは一つの基準になろうかと思います。

 それから、疑わしい取引というのは、何も犯罪の端緒になるだけではございませんで、既に犯罪として検挙がされたもの、そして新聞か何かに載ります。その犯人が実は契約者である私設私書箱などというのは、そういう犯罪の収益をそっちに隠匿しているという可能性もあるわけですから、これはまあ業界といろいろ話し合いながら進めていくにしても、そういったような基準を決めていきながら、疑わしい取引の届け出の励行に努めてまいりたいというふうに考えております。

渡辺(周)委員 今、現金書留が頻繁に来ると。でも、私書箱というのは、私も子供のころに、少年雑誌、漫画雑誌の裏の方に、例えばここに切手何百円分を送れば何かカタログを送る、あるいは何か、わいせつな本じゃないですよ、例えば犯罪の収益になりそうなものというのは、大体いわゆる法で禁じられているもので、わいせつなものが一般的にはよく売買されたりするわけですよ。例えば、違法なDVDであるとか海賊版であるとか、最近はネットでそういうものが取り扱われたりしますけれども、かつてはそういう私書箱で、何とか私書箱何号で出せたんですね。例えば封筒に五十円切手を十枚入れて送れだとか、あるいは現金書留で幾ら幾ら送れだとか、当たり前ですが、そういうことのために私書箱というのはほとんど開設されてきたと思うんです。現金書留が頻繁に来るということだけで疑わしいとするのでは、あらゆるものが、私書箱を開設している人たちにしてみますと、これはみんな疑わしくなってしまうのではないんだろうかと思います。

 では、ちょっと聞き方を変えますけれども、実際にこういうことから犯罪検挙の端緒となっているような例はあるんでしょうかね。私書箱なりあるいは秘書サービスなりから犯罪捜査の足がついたといいましょうか、それはあるんですか。

米田政府参考人 最初にちょっとお話ししておかぬといけませんのは、ここに言う私書箱は、委員がおっしゃっている私書箱ではございません。委員のおっしゃっている私書箱は、郵便局に設置しております公設私書箱でございます。

 これは私設私書箱で、その私設私書箱の名義を自由に設定することができるわけであります。したがって、自分の名前を偽り、自分の住所を偽り、そこの私設私書箱に物が届けられる、こういうものでございまして、そこで犯罪の一種のインフラになり得るものでございまして、そこから、犯罪に特徴的な状況をよく抽出して、それを届け出の一つのガイドラインにしたいというふうに考えております。

 現在、私設私書箱につきましては、いわゆる振り込め詐欺、これが、いわばいろいろな金融機関によるこういう犯罪防止というのがだんだん行き届いてきたこともあるせいか、私設私書箱を利用するというものがここ最近ちょっと目立っております。そういったことで検挙に至っている例もございまして、まさに現金書留あるいは電信為替を私設私書箱あてに送らせる、こういうのが頻繁に詐欺としてありますと、あちこちからそういう現金書留が届く。

 ですから、その辺は、犯罪の実態、こちらが知っている実態も主管省庁にお知らせをしながら、ガイドラインをつくっていくということになろうかと思います。

渡辺(周)委員 では、一つ具体的に聞きたいんですけれども、例えば電話の応答サービスというのか秘書サービスというような電話代行、これというのは、業者は日本じゅうに今どれぐらいの数あるものなのでしょうか。おおよそでいいですよ。

米田政府参考人 これはちょっと、主管の総務省でもどの程度把握しているかわかりませんけれども、ただ、それの広告というのは私ども、よく見ております。

渡辺(周)委員 いや、広告を見ているか見ていないかじゃなくて、そんなの、私もタクシーに乗ったら、助手席の背もたれに載っているんですよ。それで、はがきか何かありまして、あなたのビジネスチャンスが飛躍的に広がる、私もそういうのは知っていますけれども、問題は、これからそうやって特定業種に指定をしたということは、ある程度把握していなきゃおかしいわけですよ、法案の提出者ですから。せめて、一万件あるとか一万五千件あるとか、こういうのが年間どれぐらいできているとか、大体どんなサービスをしているということは把握していないんですか。

 その点の、まずは数字。それから、もしそういう電話の代行サービスというか秘書サービスなりを開設したいといった場合は、どういう手続をしたら開設できるんですか、契約できるんですか。その辺、御存じですか。

米田政府参考人 数字については把握してございません。したがいまして、私どもは、この業界に対する説明の仕方を、パブリックコメント及び一般に公開をして集まっていただいた業者説明会によって行ったわけでございます。業界というものがないものですから、全体の数というのはわかりません。

渡辺(周)委員 それではもう一つ、例えばどういうふうな手続をしたらそういうサービスを受けられるのかとかは御存じですか。

米田政府参考人 何か特別な手続が要るとは聞いておりません。普通に契約をすれば、そして何々商事だとか何々会社と名乗ってくれということとすれば、それで料金を払えば契約ができるというふうに聞いておりますが。

渡辺(周)委員 だとすると、例えば、私がそういうところへ行って、何か商売をやりたいけれども少し名刺に刷り込まなきゃいかぬ。例えば、私が渡辺商店という何かよくわからない架空の商売をやる、電話番号は、代行秘書サービスの電話が鳴ったら、はい、こちら渡辺商店でございます、社長は今不在にしておりますが、お取り次ぎいたしますみたいなことをしてくれるわけですね、応対を。

 実際、そこにかなりの匿名性があるからこそこういうビジネスが成り立っているというふうに私は申し上げたんですけれども、例えば、どうやってその契約をするかということは、警察庁、御存じですか。それを教えていただきたいんです。つまり、本人確認なりが今までは必要だったのか不要だったのか。何らかの用紙に申し込んだら、そのままあしたからでもそういうふうなサービスをしてくれるのかどうなのか。その辺は、実態がどうなっているのか御存じですか。実態を把握していらっしゃいますか。

米田政府参考人 業者の実態につきましては、まず所管行政庁において把握をされ、それを私どもが取りまとめて法案にしているということでございますけれども、この事業者は、本人確認不要、会社登記可能、現金書留受け取り可能といったようなそういう広告を出しているというものも間々あると承知をしております。

 したがいまして、私もそれで契約しに行ったことがあるわけじゃありませんので、具体的によくは知りませんが、多分、本人の身分を偽って自由な名義で契約ができるものというふうに考えております。

渡辺(周)委員 念のために申し上げますけれども、私も、マネーロンダリングとかテロ対策に対しての国際社会の要請に対して、日本はやはりこたえるべきだろうと思うんです。先ほどどなたかも質問をしていましたけれども、我が国はマネロン大国なのか否かは、非常にずさんで、今までそういうことが非常にやりやすい国だった、どうかということについての質問もありましたけれども、こういう問題に対して、我々はやはり国際協調をしていく、国際社会と足並みをそろえて取り組んでいくべきだろうということは同感なんです。

 ただしかし、この答弁を聞いていますと、正直言って、せっかくこういう法案を出しても、今聞いたら、いや、所管じゃないからわからない、それは総務省なんだとか言われたり、手続をどうしてやっているのかもよくわからないと言われると、みんなこれからなんですよ。せめてこの法案を出すに至っては、月並みな言い方ですけれども、もっと省庁の縦割りのような中を超えて、やはりある程度答弁にたえ得るようなことを引き出しとして用意していただきたいなというふうに思うんです。

 ですから、私もよく知りませんけれども、例えばこういう電話秘書サービスのようなサービスがあって、実際のところは多分そんなに難しい審査は要らないでしょう。例えば、あなたが言う会社の戸籍なりあるいは登記簿を持ってこいとか、あるいはあなたの身分証明はと言われたって、ひょっとしたら、そんなことを言ったらほかに行くからといって商売が成り立たない可能性もあるんですよね。どちらかというと、匿名の社会だからこそ成り立つビジネスの人たちにしてみると余りせんさくしてほしくないということを考えれば、今度の法律というのは、実際の実効性の担保というのはかなり難しいんじゃないだろうかというふうに思っているんです。

 ここで、例えば、電話代行の業者というのがわからないのであれば少し類推して聞きたいと思いますけれども、平成十八年で十一万三千八百六十件の情報が金融庁FIUに上げられている。これは年々ふえているというふうに言われているわけでございますけれども、では、業種を拡大した場合はどれぐらいの扱い件数になるのか。類推をしてある程度の想定される数、どれぐらいの情報が寄せられるかということについて、どれぐらいの数を想定していらっしゃいますか。

米田政府参考人 類推は大変難しゅうございます。金融機関につきましても、発足当初は数件から始まりまして現在十一万件ということでございまして、それは、それぞれの事業者がどの程度マネーロンダリングに利用されるかといったような、そういうマネロンリスクが今後どのように推移するかによっても変わりますし、特に現在、そういう数字を類推するということはちょっとできないと考えております。

渡辺(周)委員 では、FIUを金融庁から国家公安委員会に移管するわけですよね。そうしますと、人員はどれぐらいの方々が必要か、その点はどうなっていますか。

米田政府参考人 現在、金融庁のFIU、つまり金融庁の特定金融情報室に十七名おります。今度、私どもは、国家公安委員会、警察庁に移管するに当たりまして、課長級を長とする四十名の体制、これを今予算でお願いしているところでございます。

渡辺(周)委員 四十名の根拠というのは、それは、ある程度類推してこれぐらいの情報が上げられてくるだろう、その前提のもとに四十名という数字が出ているわけですよね。そうでないと、なぜ四十名なのか。先ほど聞いたら、類推するのは難しい、特定業者が対象が広がることによってどれぐらいかというと、それについては類推できない、しかし、十七名から四十名の陣容で対応するんだとおっしゃいましたけれども、その四十名の根拠というのは、ある程度類推しているからじゃないですか。これぐらいの情報が上げられるだろう、これぐらいの事務量が、あるいは捜査にブツ読みも含めてこれだけ必要だということでこういう数が出てきたんじゃないんですか。

米田政府参考人 まずは、現在の金融庁に置かれているFIUの分析体制というのが非常にやはり人員的にも不足であるということがございます。したがいまして、新しい業者がふえなくても、どちらにしても分析体制の充実強化というのが必要であること。それから、国際的な連携という点に関してもかなりの人を食いますので、その点も必要であるということ。それから、諸外国におきましては、FIUというのは普通の主要国なら大体三けた単位、多くて三百近いという体制を持っておりますので、その辺も参考にしておるわけでございます。

渡辺(周)委員 そうすると、今、金融庁にいらっしゃる方々はそのまま引き続き国家公安委員会に出向するというふうに考えてよろしいでしょうか。

米田政府参考人 金融庁から定員枠として約十名、こちらに、警察庁に移管になります。ただ、具体的なメンツはどうするのかという点、これは人事の問題でございますのでちょっとお答えしがたいのですが、私どもとしては、現在そういう業務に携わっている専門的知識のある方にそのまま来ていただきたいというように希望しております。

渡辺(周)委員 当然のことながら、これまでの経験でやってきた方々に引き続きやはり専門性を持ってやっていただきたいというふうに私も思うわけでありますけれども、では、これは金融庁に伺いますが、十八年には十一万三千八百六十件という疑わしい取引の届け出、これを情報分析するのに一件当たりどれぐらいの時間がかかるものなんですか。もっと言えば、十一万三千八百六十件のうち、黒ということであったものはどれぐらいあるのか、その点はお答えできますでしょうか。

畑中政府参考人 どれぐらい一件当たり時間がかかるかというのは、それぞれ個別の事案に影響されますので、ちょっとお答えは控えさせていただきたいと思います。

 それから、どれぐらい黒かということでございますが、黒白というよりも、犯罪捜査に資するかどうかということで捜査当局に提供いたしますので、十一万件金融機関から出てまいりました中の七万件余りを捜査当局に提供しているということでございます。

渡辺(周)委員 今度は警察の方でその点に対して七万件をまた分析するわけですね。そうしますと、これは膨大な情報の中から金融関係だけでも仕分けをしていかなきゃいけない。

 この点については、実はSWIFTという組織がブリュッセルにあって、ザ・ソサエティー・ワールドワイド・インターバンク・ファイナンシャル・テレコミュニケーション、頭文字をとってSWIFTという組織がある。これはベルギーの首都ブリュッセルにありまして、世界七千八百の金融機関が加盟をしていて、一日に六兆ドル、一千百万件の国際金融取引を動かしている。これが実はアメリカのテロ以降の捜査当局に情報提供していたということでスクープをされたことがあるわけですけれども、いわば世界のお金の流れについて把握をしている部署がある。

 ここが非常に、今度のマカオのあの銀行、BDA、バンコ・デルタ・アジアの経済制裁、いわゆる金融制裁の端緒にもなった情報が当然アメリカにも寄せられているから、マカオを管轄する中国もこの点についてはどうにも言えなかった。それだけ客観的な情報を持っていた。それがアメリカから寄せられたことによって、ある意味では、金融機関同士の金の流れについてはある程度怪しいものと怪しくないものについての仕分けがかなりできた、宝の山だというふうに言った方の話が載っておりましたけれども。国際連携をする上において、金融機関同士のやりとりであるならば、こうした証拠がある国に残っていれば、あるいはマークされた、情報提供されたある組織に対して例えば頻繁にお金が送金されているということで、ある意味では当たりをつけられるんでしょう。

 話は戻りますけれども、金融機関以外の分野について、果たしてマネーロンダリングの取っかかりというものを本当にどうやってこれからやっていくのか、まさに疑わしいということをどのような形で当たりをつけていくのか。しかも、それは金融機関じゃないわけですね。金融機関だったら証拠が残ります。送金の記録が残ります。しかし、いわゆる市井の人たちに疑わしいということに対してどのような意識を持ってもらうかについて、これはかなり時間がかかることだと思うんですけれども、その点に対しての具体的なガイドラインはいつまでに、どのようなボリュームでやるおつもりなのか。ちょっと話は戻りますが、その点について改めて伺いたいと思います。

米田政府参考人 ガイドラインにつきましては、既に所管行政庁とその所管の業界との間で話し合いがなされているものもあると承知しておりますけれども、それはなるべく早期にそれぞれの所管行政庁において定めていただくことになろうと思います。私どももできるだけそれを後押ししたいと考えております。

 それから、ボリュームにつきましては、やはりそれぞれの業界ごとにいろいろあろうと思います。直ちにこれぐらいということはちょっと今は言えないのではないかと思っております。

渡辺(周)委員 それでは、ともかく迷ったら通報する、迷ったら届け出るということになりやしないかと思うわけですね、素人が判断するわけですから。迷ったらそれを届け出るということをすると、これは私は、今までの金融機関などと違ってかなり事務量が膨大になると思うわけですから、四十名で果たして対応できるのかなというところも伺いたかったんですけれども、そうはいったってどれぐらい来るかわからないという答えになると、これ以上質問できないわけでありますけれども。

 では、実際、届け出者という方は届け出て終わりなんですか。つまり、ちょっとイメージできないんですけれども、届け出た方、例えば、これはおかしいな、これから作成されるガイドラインにのっとって見たらどうもこれはちょっと怪しい、では念のために警察に通報するかといった場合は、どこの警察にどういうふうに通報して、どのような形で届け出ることになるんでしょうか。その辺はどうなっていますでしょうか。

米田政府参考人 届け出るのは所管行政庁に届け出ますので、警察はその限りにおいては全く出ません。それが所管の行政庁から国家公安委員会のFIUに通知がされてくる。そこで分析が行われて、捜査機関、これも警察とは限りませんで、検察かもしれませんし税関かもしれませんが、そういったところに提供がされて、そこで何らかの事件になるといったようなことがあろうかと思います。

 原則として、他の機関のことはちょっとコメントできませんが、警察といたしましては、これはどこから届け出られた情報であるかということは秘匿をして、そして捜査書類であるとか裁判資料などに出てこないようにしております。それは届け出者の保護という点からいって極めて大事なことであろうと思います。原則として、その届け出た方にまた接触をして何かお聞きするということは、恐らく実務上はほとんどないのではないかと考えております。

渡辺(周)委員 私自身、ちょっとドラマ仕立てでイメージしてみたいんですけれども、例えば、宝石店に高価な宝石を何度も買いに来る人がいる、今までのお得意さんじゃないんだけれども頻繁に買いに来る、どうも何かおかしいな、随分金払いもいいし、キャッシュでどんどん買っていくんだというようなことがあって、宝石商が、どうも最近羽ぶりのいいお客さんがいるけれども何かおかしいということで、例えばそれを所管官庁なりに言ったとして、では、しばらくその店でウオッチしてくれないか、このお客さんがこれから頻繁にあらわれるかもしれないから、人相、風体も含めてちょっとしばらくの間ウオッチしてくれないかというような依頼が犯罪捜査のためには当然あるように思うんですね。

 そうなった場合に、ある意味では警察の協力者としてなってしまう可能性は全くないわけではない。これは常識的には、一般的に考えれば、またそのお客が来たら悪いけれども通報してくれ、今度は直接ここに電話してくれないかと当然やりたいわけですよね。私が警察だったらそうします。多分お願いします。

 実際、電話の代行業もあるいは先ほどの郵便の代行業もそうでありますけれども、頻繁に利用する人間を悪いけれどもしばらくウオッチしてくれないか、何らかの形で捜査に協力してくれということは当然あると思うんですけれども、その辺は当然想定をされているわけでしょうか。

米田政府参考人 この法律の世界、この法律の枠組みの中ではちょっとそこまでは入りません。ただ、実際、捜査の実務の中では、いろいろな方に協力をいただくわけですから、そういったこともあるいはあるかもしれません。

 ただ、届け出られてから、それが捜査機関に提供されて、FIUで、あるいは各捜査機関で分析がされて、実際に物事が何らかの具体的な事件捜査で何か使われるというのはかなりタイムラグもある話でございまして、その間に犯人が同じ宝石店にずっと続いて何度も出入りするというようなことも果たしてあるのかということを考えますと、実際問題としてそうあるケースではないような気がいたします。

渡辺(周)委員 だけれども、そういう可能性があるからこの四十三の業者の中に入っている、なっているわけであります。それを考えますと、届け出た人のことを当然守らなければならないというのは、これはもう言うまでもありません。

 犯罪組織の、テロ組織の、ひょっとしたら何らかの反政府組織のような勢力のマネーロンダリングもしくは資金源を断つわけですから、断たれた方は、組織の壊滅につながるわけですので、当然何らかの暴力を使ってくることだってあり得るわけです。そうしますと、協力したいけれどもおっかなくて協力できない、本当に警察は秘密を守れるのだろうかと。先ほども同僚の議員から発言がありましたけれども、そうした情報が流出をしていることがもう決して珍しいことではなくなってきた。何らかの形で足がついたことによって、要は、どこから漏れたんだ、あそこの業者からこんなことになっちゃったとなれば、見せしめのために何らかの暴力を使っておどしに来ることだってある。

 そうなれば、これは何らかの形で市井の人を守るためには、警察は当然情報の出どころを徹底して守ることは当たり前ですけれども、実際、どうやってこういう方々を守る、あるいは安心してもらうのか。警察は今どうお考えでしょう。実際は捜査に協力することにもなりかねないわけですから、そうなったときに、向こうは組織を壊滅させられたら困るということで、当然何らかの有形無形の圧力をかけてくることだってあるわけでして、そうした方をどう守るか、どうお考えですか。

米田政府参考人 先ほどもお答えしましたように、この届け出者を守るということは大変重要でございまして、したがって、これに関する例えば捜査書類であるとかいろいろな裁判上の証拠であるとかということに、原則としてはそういうところには出ないようにするということをやっておりますし、もちろん、こういう人たちとの接触というのはよほど気をつけてやらなければいけないというように考えております。

 それから、届け出情報を今度はFIUとして国家公安委員会が一元的に管理をするということになるわけでございますが、その情報管理といたしましては、一つは物理的なセキュリティーで、サーバーは完全に別の建物に置いて、しかも端末装置は指紋認証、生体認証のできる部屋で管理をし、そして外部ネットワークとは完全に物理的に遮断をする。それから、人的にはもちろん責任関係をはっきりいたしまして、なお技術的には、アクセス権を制限いたしましてアクセス記録は全部残るようにする、当然セキュリティー監査もするということで、その情報の扱いについては万全を期してまいりたいと思っております。

 私どもも、通報者の保護というのは大変重要なことであると考えております。

渡辺(周)委員 マネーロンダリングの本も幾つか出ていまして、さまざまなマネーロンダリングの手法によって、独裁者あるいは国際テロ組織、あるいはそういういろいろなマネーロンダリングの手法だけじゃなくて、なぜマネーロンダリングが起きたかというようなことがフィクション、ノンフィクション含めていろいろ世に出ているわけでございます。その中で、マネーロンダリングを暴こうとした人間が例えば遺体で発見される、それが非常に位の高い人間で、地位の高い人間であっても暗殺される。

 つまり、こうしたアンタッチャブルな部分に対して手をつけるということは、それは警察であるとか国家であるとかそうしたものが背景にある方にとってはこれはまだ対峙できる話でしょうけれども、実際、市井の人間にとってみて、一般の人が国際犯罪組織、日本でいえば暴力団の資金源にメスを入れることに片棒を担いだなんていったら、こんなのはおっかなくて、おれは本当にこの町で商売できるのかということになるわけですよね。そこのところが私はある意味では、今回指定された業者の中には、警察に協力をするよりも知らぬ顔をしていた方がいいんじゃないのか、これは当たり前のことですけれども、普通の人はみんなそう思います、残念ながら。

 やはり自分の身を考えたときには、本当に自分を守ってくれるのだろうかとなれば、見て見ぬふりをした方がいい、知らない顔をしていた方がいいということを考えれば、この法律の実効性というもののこれからというのは、やはり業者の協力がどこまで本当に得られるかだと思うんですけれども、その点について、ちょっとくどいようですけれども、どういうふうに実効性を高めるのか、実効性あるものにするにはどうしたらいいのかということについて、どういうふうに今お考えですか。

米田政府参考人 実効性を高めるというのは、いろいろな観点から実効性を高めるということがあろうかと思います。今委員御指摘の、届け出る事業者の方が不安に思う、相手は組織犯罪であるということをどうやっていくかということですが、最も重要なことは、届け出たという事実が完全に秘匿されているということがまず第一ではなかろうかと思います。

 第二には、もし万が一、それが何らかの形で相手方に、相手方犯罪組織に知られるというようなことが、それは絶対ないとは言えませんけれども、その場合は、実は現在でも、暴力団からの被害に遭われて警察に申告した方、あるいは暴力団相手に訴訟を起こされている方などなど、全国でいいますと二千人前後の人たちに対しまして、警察といたしましては、これを守るために保護対策というのを実施しておりますけれども、そのような組織犯罪から身を守るためのそのような措置にやはり入れていかなければならない場合も、これはあろうかと思います。

 ただ、この制度に関して言えば、まずはだれがどんなことを届け出たかということが外に出ないように、したがって、犯罪捜査としてもその情報をそのまま使うとかいうのではなくて、それはどこからそういう端緒を使ってやったかわからないような形をとって、ともかくそういう届け出た事業者の方に迷惑がかからないように最大限配慮してまいりたいと考えております。

渡辺(周)委員 どちらにしても、疑わしいというものをだれがどう判断するかというのはこれから、そしてまた、警察としては何らかの形で協力をお願いすることも当然あるだろうけれども、その方の身を守ること、あるいはその方の情報を守ること、これ、何か聞いていて、まだ今検討中なのか、これからの話なのかなということで、やはり心もとない思いがするわけなんであります。

 時間がありませんので、質問をまた別の議員にもしていただくことにしまして、ちょっと違う観点から幾つか質問したいと思うんですが、この中で、今ちょっと私思いついたんですけれども、マネーロンダリングというのは、よく錬金術の中でいろいろ例を聞くんです。有名な話では、例えば絵を買って、百万円で買った絵が隣の店に持っていくと一千万円になったりなんかして、絵の価値なんというのは全然わかりませんから。ある意味ではよくこういうことを、かつて古い政治家が、そういう錬金術がある。お宅にいい絵がありますね、これを一千万で買いますよ、ある画家が百万円の絵だといって持ってきた絵を、次の日になったら一千万円で引き取りに来て、そこに利益が生まれるとか。

 もっと言いますと、私、驚くのは、何で神田とかあの辺へ行くと金券ショップが山のようにあるのかな。切手やらはがきやら、あるいは新幹線の回数券やら高速道路のカードやら、いろいろなものを売っていますけれども、一体どうやってこれは商売が成り立っているんだろうか。関係する人に聞いたら、あれはとにかく切手を大量に買い込んできて、切手を買い込んだら、今度はそれを金券ショップに持っていって、要は九二%で売って、業者は九二%で買って九五%で売る。それで、企業にしてみると、大量に切手を買ったことは、これは当然支出として、お客さんにDMを出すのに一万通出した、二万通出したといって、要は使っちゃった、その売った切手なりはこれは現金とかにして、ある意味では、民間企業だから裏金とは言いませんけれども税逃れをできる。もっと言うと、いわゆる裏金づくりの中にも、各地の地方自治体の裏金づくりの中にはこうやって裏金をつくっていたという例も聞くわけでございます。実際、こういうところも実はマネーロンダリングの非常にできやすいところなのかなというふうに思うんです。

 いわゆるデパートの商品券だってそうです。一万円券の商品券を買うのに身分証明は要りませんし、十万円買ったって別にこれは贈答品だと言えば別に文句は言われない。これを例えば一千万円、二千万円単位で買っちゃえば、金券屋へ持っていっちゃえば文句は言われない、こういう場合に対してはどうなるんですか。ちょっとこれをひとつ聞きたいと思っているんです。

 こういういわゆるマネーロンダリングというのか錬金術というのか、こういう形で金をつくるということについては、この法律でいうと適用するか、届け出の対象になるかならないのかということが一つ。

 それともう一つは、この届け出制でいろいろな情報が集まった中で、明らかにこれは脱税だな、法律にうたわれているような犯罪による収益の移転ではないけれども、これは脱税目的でやっているんだなという事実が例えば濃厚だった場合、ある意味では広義の意味でのマネーロンダリングですけれども、その所得の移転というのは税逃れのためにやる、例えばこういう場合に対して、そうした情報を国税なりに伝えるということはあるんでしょうか。あくまでも犯罪の収益に限定するんでしょうか。

 ちょっと二点、時間がないので、あわせてお答えいただければと思います。

米田政府参考人 まず絵画につきましては、一応この法律は、国際的にマネロンリスクがある事業者で国内にも実体があるものというのをとりあえず対象にしてございます。したがって、それ以外に、もちろんこれは国内法でございますから、実体とかリスクが高いというようなものが出てくれば、今後その対象に加えるということは検討する必要があろうかと思います。

 それから、金券ショップは、これは今、古物営業法の規制がかかってございまして、少なくとも多額のものを持ち込んだりした場合には本人確認の義務がある、あるいは記録を作成するということが定まっておりまして、それなりの対策はとられているものと考えております。これも、国際的には大規模なマネロン、高いマネロンリスクということではないと考えております。

 それから、脱税につきましては、現在、いわゆる条約刑法の御審議がずっと国会でなされておりまして、今の政府原案のまま成立をすれば、脱税がマネーロンダリング罪の対象犯罪に入ってまいります。したがって、税務官吏に対してFIUから、今のところは警察、検察、税関等でありますが、収税官吏に対しても情報が提供されるということになります。

渡辺(周)委員 この点について、時間もあと数分しかありませんので、時間があれば、機会があれば一般質疑等の中でも改めて質問したいと思います。

 今は脱税というか税逃れの手法が、例えば先ほど申し上げましたアメリカのテロ対策で、ブリュッセルにありますSWIFTというところから寄せられた情報を解析する中で、明らかにこれはテロ資金ではないけれども非常に違法性の高い、あるいは脱税的なものだという場合でも、実はこれは黙認している。つまり、非常に道徳的に問題がある、あるいは法律的にも問題がある、税法上も問題があるけれども、テロ資金でないとなれば、それは仕分けしているというような事例があるわけであります。そこには、それ以外のことには使わないということで情報提供を受けているというアメリカ国内での議論があって、あくまでもテロ資金の根絶ということに目標を置いているから、それ以上のことについてはしないという取り決めがあるようであります。

 その辺のことも含めて、日本の中でもこれからさまざまな情報が入ってくる。先ほど、十一万三千八百六十件の中の約六割に当たる大体七万件ぐらいがFIUから警察庁の方に情報として寄せられた。つまり、それ以外の情報はある意味では、黒白という言い方をしてはどうかと思いますが、白である、問題ない、グレーではないということになるわけでありまして、そうしますと、それでさまざまな情報が警察に集中するわけですね。その気になれば、その人間の、そのことも含めてあらゆる履歴を全部積み上げることができるわけであります。

 これに対して、やはり先ほどから懸念されているのが、例えば税務状況もそうだし、貯金口座残高から何から全部警察に握られてしまう。そうしますと、これは丸裸にされるんじゃないだろうかということを非常に我々としては危惧するわけなんです。確認ですけれども、この集められた個人情報、蓄積されたいわゆる個人のファイル、データ、これをどのような形で本当に守るのかという決意を、最後、国家公安委員長にも伺いたいと思います。

 それから、もう一つまとめて聞くと、いわゆる弁護士等が今回は外されました。それに対して、弁護士における守秘義務と自治に任せるんだということもありますが、ただ、そうはいっても、先ほど申し上げたように、犯罪の非常に極めて濃厚な、反社会的な気配がする話がある。これは密告でもなければ届け出でもないけれども、極めてそういう可能性が濃厚である場合には、警察としてどういうふうに、弁護士会の方々の意見を取り入れた形で今回の法案提出になりましたけれども、今後まさにそういう方々に対して、カナダやほかの国では除外をされて、違憲の裁判が起きていることも知っておりますけれども、そうした弁護士あるいはそれ以外の司法書士や税理士のような士業の方々、今後何らかの形でさらにもう一度この点について、当然秋の勧告もありますけれども、対象を拡大していくことがありやなしや。

 そのことについて二点お尋ねをして、持ち時間が終わりましたので、質問を終わりたいと思います。

溝手国務大臣 まず、情報セキュリティーの問題でございますが、これは、先ほど部長の方からお答え申し上げましたように、厳重にとにかく情報を管理していかなくちゃいけないという気持ちでいろいろ準備をしておるところでございます。

 サーバーを厳重に管理されたデータセンターというのを設置して、端末装置にいわゆる生体認証による出入管理を行うような区画をつくっていこう、システムと外部ネットワークを物理的に遮断しよう、物理的な対応をしっかりやっていこうということ。

 それから、運用管理者の役割、責任の明確化など人的なセキュリティーもしっかり対策をしていこう。それ以外に、登録者以外のアクセスの禁止、アクセス記録の保管、正当性の事後的検証など、技術的なセキュリティー対策も講じてまいりたいと思っております。

 また、情報セキュリティー監査を実施して、これらの対策が適正に実施されているかどうかも今後チェックをしていきたい、このように考えているところでございます。

 それから、もう一点の大きな問題は、弁護士連合会との調整の問題でございますが、今回の法案によりまして、我が国のマネーロンダリング及びテロ資金対策については、かなり有効な効果が発揮できるのではないかと考えております。しかしながら、先ほどのFATFの問題は完全に解決された問題ではございません。日本弁護士連合会との関係をこれからどうやってうまくやっていくかというのは、大きな課題だと考えております。先ほども申し上げましたけれども、すぐにどうするとかこうするとか、小さく産んで大きく育てようとか、そんな次元の問題ではない。しっかりまず実施することから、予断を持たずこの法律を施行してまいりたい、このように考えております。

渡辺(周)委員 小さく産んで大きく育てるようなつもりはないと言いますけれども、実際、これから当然対象が広がってくる可能性というのは十分あり得るんですね。弁護士会の方々以外にも士業の方々がいらっしゃるわけでありまして、当然その人たちの協力を求めるということになれば、実際これから対象を拡大するのではないのかなというふうに思ったりもするわけなんです。

 最後に、大臣がそうおっしゃいましたので、とにかくこの問題については、これからこの法律がいかなる形で施行されるにせよ、これはどういう状況かということは途中途中で当然何らかの形でレビュー、検証しなきゃいけない問題だと思っているんですけれども、その点についてはどう考えているか。最後に部長、例えばこの法案をつくって、どれぐらいの形でどういう情報が寄せられて、もちろんつまびらかにせよとは言いませんけれども、今後、どのような効果があったということについては何らかの形で途中中間報告なりするような予定はありますでしょうか。

米田政府参考人 この法案で、国家公安委員会の責務としても、国民への周知、広報、啓発といったことをうたっております。私どもとしましては、マネーロンダリングの状況、そしてそれを取り扱っている私どもの業務の状況といったことをできるだけ国民に還元して、そして皆様によく知っていただきながら、国全体としてマネーロンダリングへのレベルが上がるようにしてまいりたいというふうに考えております。

渡辺(周)委員 終わります。

河本委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。よろしくお願いいたします。

 早速質問に入らせていただきます。

 今回の犯罪による収益の移転防止に関する法律案が成立をすると、組織的犯罪処罰法の第五章が削除、さらに、いわゆる本人確認法は廃止、FIUが、FIUというのはマネーロンダリング及びテロ資金供与に関する情報の受理、分析、提供を行う単一の政府機関が、金融庁から国家公安委員会、すなわち警察庁に移行をする。本人確認、取引記録等の義務づけ、疑わしい取引の届け出の義務づけの対象事業者が金融機関等から非金融業者、職業専門家等にも拡大をするということを聞いております。

 これは、国民生活に非常に重大な影響を及ぼす重要な法律案である、しっかりと議論をしなければならないというふうに思います。いわゆる日切れ扱いとなるような法案では全くなくて、しっかりと議論をしなければならない法律だというふうに思いますが、そもそも、きょうの質疑では、この法律案のもととなる立法事実が我が国に本当に存在をするのかという観点から、まず質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、本法律案の前身である本人確認法について、現在この本人確認法が動いているわけでございますが、金融庁にお伺いをさせていただきます。ことし一月四日から、本人確認法施行令の改正によって、十万円を超える現金によるATM、現金自動受け払い機での送金というものができなくなった、十万円を超える現金振り込みができなくなった。これは、本人確認を窓口でしてくださいということでございますが、この政令改正の目的は、テロ資金供与や麻薬犯罪などのマネーロンダリング対策のためであるということでよろしいでしょうか。

畑中政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘にありましたように、本年の一月四日から、十万円を超える現金送金などを行う際に、金融機関に対し、送金人の本人確認等を義務づける施行令の改正が施行されたところでございます。

 この改正は、御指摘にありましたように、マネーロンダリング、テロ資金対策のために、FATF勧告という国際的な要請を受けて行われたものでございまして、御理解、御協力をお願いしたいと考えているところでございます。

川内委員 その国際的な要請に法的拘束力はありますか。

畑中政府参考人 このFATF勧告の法的拘束力につきましては、先ほどの御質疑でも御答弁があったと思いますけれども、この勧告には条約としての拘束力はございませんが、FATFメンバー間の相互審査により、その履行状況が確認され、不履行の評価を受けた項目については、その後二年ごとにフォローアップ審査を受け、改善状況について説明を求められることになるということでございます。

 いろいろな制裁手続が規定されているわけでございますが、こうした制裁手続に至らずとも、我が国の金融機関や企業に対する国際的な信用に影響を及ぼすこともあり得るわけでございます。また、国際連携が不可欠なマネーロンダリング及びテロ資金対策の阻害要因との批判も懸念されるところでございまして、我が国としては、この勧告に従って適切に履行していく必要があると考えております。

川内委員 私が聞いているのは、国際的な要請に法的拘束力がありますかということを聞いております。法的拘束力があるのかないのかということをお答えください。

畑中政府参考人 お答えいたします。

 FATF勧告には条約としての法的拘束力はないと理解しております。

川内委員 テロ対策あるいはマネーロンダリング対策として、法的拘束力のない国際的な要請に従って本人確認法の規制の強化が行われた。

 それでは、今まで、平成十八年の一年間で、現金によるATM送金は何件あったのか、そのうち十万円以上あるいは十万円以下が何件あったのか、それぞれ御説明をいただきたいというふうに思います。

畑中政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十八年一年間というきちっとした期間で把握をした計数は持ち合わせておりませんが、銀行における振り込み件数の概数について申し述べさせていただきたいと存じます。

 月間では、ATMからの振り込みが約三千八百万件、うち御指摘のありました十万円超の現金振り込みについては約二百七十万件程度あったものと承知をしております。

川内委員 十万円超の現金によるATMでの振り込みが毎月約二百七十万件行われている。これに十二を掛けると三千万件を超える十万円超のATMによる振り込みが今までは行われていた。しかし、ことしの一月四日からは、十万円を超えるATMでの現金の振り込みは受け付けないということになった。これは、国民の皆さんに大変な不便をおかけしているわけですね。大変な不便をおかけしている。それは、テロ対策のためである、マネーロンダリング対策のためであるというふうに当局はおっしゃっていらっしゃる。

 それでは、今まで本人確認法にのっとって、疑わしい取引の届け出に関して、テロ対策あるいはマネロン対策につながったのかということについてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 政府の資料によれば、平成十八年一年間で金融庁に届けられた疑わしい取引が十一万三千八百六十件、そのうち警察庁が金融庁から提供を受けた件数は七万一千二百四十一件ということであります。このうち、今まで議論の中で出てきておりますが、立件をされた件数が平成十八年で五十件、うち三十四件が詐欺だということでございます。

 この立件をされた五十件のうち、テロ資金であった、あるいはマネロン資金であったということで立件をされた件数は何件ありますか。

米田政府参考人 先ほども一度御答弁したことがあるんですが、七万件余りを通知を受けて、そのうち五十件を立件したというわけではございませんで、これは、疑わしい取引の届け出が直接の端緒となって立件に至ったものが五十件でございます。それ以外に、捜査に非常に幅広くそこは活用をされておりまして、早い話が、例えば詐欺事件でございますと、どうしても直接端緒で……(川内委員「聞いたことに答えていただくようにしていただきたい。たくさん聞くものですから、手短にお願いします」と呼ぶ)わかりました、済みません。そういったことで五十件でございます。

 その中で、テロの関係はなかったと記憶をしております。それから、マネーロンダリング罪でございますが、要するに直接端緒の中ではなかったということでございます。

川内委員 いや、局長さん、私も昔銀行員だったので、私が銀行の窓口で入出金を一生懸命やっている裏側で、警察の方がいらっしゃって過去の入出金の記録を一生懸命お調べになっていらっしゃることとか、よくありました。それはもう過去二十年ぐらい前の話ですけれども、別に本人確認法があろうがなかろうが、警察の方は日々捜査のためにさまざまな御努力をされていらっしゃるということはよくわかります。

 私が聞いているのは、疑わしい取引に関する情報を端緒として約五十件が立件をされた、疑わしい取引に関する情報を端緒として五十件が立件されたんでしょう。違うんですか。ちょっと説明してください。

米田政府参考人 先ほどから御説明しておりますように、疑わしい取引を直接の端緒として立件に至ったのは五十件なんですが、例えば、さっきちょっと説明しようとして、時間がないと言われてとめられたんですが、詐欺だと、まず、だれだか全くわからないけれども詐欺グループの振り込め詐欺か何かに遭いましたという被害申告が来るわけです。そこで、もし一件でもそういう話があると、後、幾ら疑わしい取引の届け出で当たろうが、それで疑わしい取引の届け出が立件につながろうが、これはその五十件に入らないんです。あるいは、そういうグループの詐欺のようなものだったら、同じグループに対する情報というのは物すごい数があります。それで一件なんですね。

 そういうことで、先ほどからこの五十件の数字がひとり歩きをして、非常に私も戸惑っておるんですが、この疑わしい取引の届け出が活用されて捜査に役立った件数というのは、実はこれは出していないからわかりませんけれども、それだと非常に多くあります。もちろん、マネロン罪もあれば薬物罪もある、それはいろいろあります。ただ、警察がまだどこの被害届も何も受けていなくて初めてこれで直接の端緒となったということが五十件でありますので、そこのところは誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。

川内委員 私が申し上げているのは、「平成十八年の組織犯罪の情勢」という警察庁組織犯罪対策部企画分析課がお出しになられた資料の五十二ページに「疑わしい取引に関する情報を端緒とした事件内容」ということで表が出ておりますので、これを見ながら質問させていただいておるわけでございますが、いや、実際にはたくさんあるんですということになると、もう議論そのものが成り立たなくなるわけですよ。

 七万数千件の警察庁に寄せられた情報の中で、立件につながったものは五十件である。要するに、立件された件数が五十件である。違うんですか。(米田政府参考人「ちょっと一言御説明を」と呼ぶ)いやいや、私は誤解していないですよ。複数の情報も合わせて五十件なんでしょう。(米田政府参考人「違います」と呼ぶ)では、この表は間違っているんですか。

米田政府参考人 本当に申しわけございません。

 五十一ページに書いてございますように、直接の端緒として事件検挙に至ったケースが五十件でございます。平成十二年の三件から始まって平成十八年が五十件になっている、この表を何で載せているかといいますと、実は、そういうふうに捜査のどの段階で使うかというのはいろいろさまざまでございまして、これが役立って立件に至ったケースというのはいっぱいあるんですが、それはなかなか統計上とれない。これは今後の課題として、何とか役立ったものをとらなきゃいけないんですが……(川内委員「いや、役立ったというか、端緒としてと書いてあるじゃないですか」と呼ぶ)端緒というのは、まだ何も知らなくて、初めて知ったのがこれだったということです。そうじゃなくて、被害届が先にあって、それでこの届け出情報があるから立件に至ったというのはこれに入らないんです。そういうことで、検挙にはいっぱい役立っているということでございます。

川内委員 無駄なことで時間を使わないようにしていただきたい。

 私もさっきから言っているじゃないですか、私も昔銀行員だったころ、警察の方が銀行にいらっしゃって一生懸命調べていることを知っていますと。被害届があってそういうものを調べることは、別に本人確認法がなくたってできるわけですよ。本人確認法をつくっているのはなぜですか、それに基づいて規制を強化したのはなぜですかということを聞いているわけで、それに対する合理的な説明を求めているわけです。

 では、もう一点聞かせていただきますが、とにかく、この五十件の中に、テロ対策もなければマネロン犯罪もないということは御答弁になられたわけですね。ちょっと確認します。それはそうですということですよね。

米田政府参考人 そうでございます。過去にはございますが、昨年中はマネロン犯罪はありませんでした。

川内委員 過去にはあったのかもしれませんが、それは私はちょっと聞いておりませんので。

 とにかく、昨年の五十件でいえば、テロ対策資金なりあるいはマネロン犯罪であるというものの立件は、この本人確認法に基づく疑わしい取引の届け出を端緒とするものからはなかった。さらに、国際的な要請にも法的拘束力はない。

 では、何でこんな、国民の皆さんに、年間三千万件ですよ、三千万件を超える、約三千万件の十万円以上の現金振り込みについて本人確認を求める、これは全く立法事実がない中で規制が強化されたということはお認めになられますか。立法事実はないでしょう。こういう規制を強化する立法事実がありますか。これは金融庁ですよ、金融庁がやったんですから。

畑中政府参考人 お答えを申し上げます。

 FATFの勧告におきましては、FATF参加国に対しまして、金融機関が行う一千米ドルあるいは一千ユーロ相当額を超える電信送金について、本人確認の強化等を二〇〇六年末までに実施することを求めているところでございます。この勧告を適切に履行するためには、現金で十万円を超える振り込みを行う際には送金人の本人確認を一律に行う必要があるということで、この施行令の改正をしたところでございます。

川内委員 いやいや、その勧告には法的拘束力はないということをさっき確認したんですよ。さらに、そういうことをやる国内においての立法事実がありますかということを今聞いたんですよ。立法事実はありませんということを言わないといけないですよ。だって、ないんだから。

畑中政府参考人 私がお答えしておりますのは、一月の施行令の改正の経緯でございますとか理由をお答えしておりまして、今回の新法の立法事実について言及しているわけではございません。

 ただ、この小口取引、十万円ということでございましょう、そういう小口について、テロリストや犯罪者による金融機関の利用、悪用といいますか、こういったものはあるのかどうかということでありますれば、大口の取引に限らず、例えば数十万円といった小口の取引も存在し得るものと考えられるところでございます。

 したがいまして、今回の施行令によります本人確認の強化、十万円超でございますが、これにつきましては、疑わしい取引として届け出が行われる情報の正確性あるいは精度の向上を含めまして、マネロンあるいはテロ資金供与の防止に効果があるものと考えているところでございます。

川内委員 今、立法事実はあるのだという御答弁だったと思いますが、疑わしい取引の届け出に関する情報を端緒とした事件としては、平成十八年に五十件を立件した。先ほど警察の局長さんも、端緒となったものの中にはテロ対策もマネロン犯罪もなかったが、情報の中にはテロ対策なりマネロン犯罪に関する届け出があったのだというふうに御答弁されています。

 それではお聞きいたしますが、平成十八年の七万一千二百四十一件警察庁に寄せられた情報のうち、テロ資金供与と麻薬などのマネーロンダリングに係るものが何件あったのかということを具体的に数字でお答えください。

米田政府参考人 ちょっとその数字はございません。また、そのお金がテロ関係、麻薬関係というようになかなか明確に分けられることもないと思いますので、なかなかそれはお答えが難しいのではなかろうかと思います。

川内委員 そもそも、あるんだというんだったら、件数ぐらい国会で聞かれたら答弁していただくのが私は本当ではないかなというふうに思います。

 きょうは、ほかにもちょっとお聞きしたい論点があるので、最後に、この問題については大臣の御見解をお尋ねしたいんです。

 大臣、年間を通すと三千万件を超える十万円超の現金による振り込みがATMで行われている。しかし、今、質疑をお聞きいただいていても、それらのものが、テロ対策であったり、あるいはマネロン犯罪にかかわっているというような立件はなされていない。国際的な勧告も、それは単なる要請であって、国際約束ではない。さらに言えば、このFATFの四十の勧告は、一定の基準額を超える一見取引ということで、金額については、国外送金については千ユーロという数字が出ていますが、国内的な為替については数字は私は出ていないというふうに思いますし、大臣、法律がもし今回成立すれば、本人確認法が廃止されて、この今審議している法案に吸収される、ということは、本人確認法の施行令も新たに書きかえられるということになっていくんだろうというふうに思います。

 私は、大多数の国民の皆さんは健全な金融取引をされていらっしゃるわけですから、余りに細かい基準を設けることは、逆に経済の円滑化、金融取引の円滑化あるいは個人の自由というものを侵害するのではないかというふうに思いますが、大臣の御見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。

溝手国務大臣 川内先生のおっしゃる気持ちはよくわかりました。私も、もうちょっと金額は大きくてもいいんじゃないかと思ったりしております。

 ただ、私、定かではないんですが、この話は、もちろん、そのFATFの勧告の中を敷衍した動きであることは間違いないと思いますが、具体的な法的な根拠は、恐らく金融庁のものとして今後も残るのではないかと思いますので、私がどうこうは言えないのではなかろうかなと今は思っております。ただ、もう少し色がついてもいいなという感じは持っております。

川内委員 大変すばらしい御答弁をいただいたというふうに思います。

 国家公安委員長、今後は、この新しい法律案を金融庁とともに所管する大臣が、もうちょっと金額については考えた方がいいのではないかということを御発言されたということで、また警察庁、金融庁でしっかり御議論をいただきたいというふうに思います。

 もう一点、疑わしい取引というのは、実は、みんな疑わしい取引、疑わしい取引と言うんですが、金融庁が出している「マネー・ローンダリング対策」という、これはホームページに、サイトにアップされている文章なんですけれども、その中には、「疑わしい取引の届出の対象となる犯罪を従来の「薬物犯罪」から「一定の重大犯罪」に拡大する」というふうに書いてあるくだりがあるんですね。一定の重大な犯罪につながる疑わしい取引の届け出ということだろうというふうに思うんですが、私の理解でよろしいかどうか、金融庁に教えていただきたいと思います。

畑中政府参考人 お答え申し上げます。

 疑わしい取引の届け出の対象となる犯罪につきましては、組織的犯罪処罰法、これは法務省の所管でございますが、この法律におきまして、犯罪収益の仮装、隠匿の罪、いわゆるマネロン罪のほか、例えば殺人罪、強盗、詐欺、横領等の財産罪、そして覚せい剤等に関連する薬物犯罪等、一定の重大犯罪が規定されているものと承知しております。

川内委員 だから、今後は金融機関に対して、疑わしい取引の事例集という書き方ではなくて、ガイドラインではなくて、一定の重大犯罪につながる疑わしい取引の事例集という形でガイドラインを示さなければ、これは疑わしいといえば何でもかんでも疑わしくなるわけで、一定の重大犯罪につながるという言葉が、私は、国民の皆さんの生活の自由あるいは安全を守る意味では非常に大事なことであるというふうに思いますが、今後は警察庁がガイドラインをおつくりになられると思うので、局長さんに、一定の重大犯罪につながる、あるいはそれに類する言葉を疑わしい取引の前に入れるということを御答弁いただきたいと思います。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

米田政府参考人 重大な犯罪というのは、組織的犯罪処罰法でその前提犯罪の収益の隠匿、仮装が処罰の対象となっているものでございまして、これに係る疑わしいものを法令上も疑わしい取引と呼んでいるので、疑わしい取引と書いてあるんでしょうけれども、そのガイドラインにつきましては、それぞれ所管行政庁が一応表に立ってつくられると思いますけれども、先生おっしゃったこともちょっと頭に入れながら検討してまいりたいと思っております。

川内委員 よろしくお願いいたします。

 何でもかんでも疑わしいとなると、ほんのちょっとしたことが疑わしいということになっていきますので、それは多分、警察庁としても望ましいこととは思っていらっしゃらないと思いますので、今の御答弁を踏まえて、大臣からもどうぞ。

 答弁を訂正されるんですか。では、訂正されるのであれば、今どうぞ。

溝手国務大臣 済みません、権限がないと言ったのが間違っておりましたので、これから金融庁と一緒に我々が協議をしていくんですが、そのときには当然そういう御意見も申し上げたいと思っております。

川内委員 さらにすばらしい答弁になりました。ありがとうございます。

 それでは、次の論点に移らせていただきます。

 そもそも、こういう国民全体に対して規制を強化するというのではなく、やはり私は、マネロン対策、テロ対策あるいは薬物事犯対策ということであれば、反社会的な勢力あるいは組織犯罪に対してしっかりとした対応をとっていく必要があるのではないかというふうに考えます。

 そういう中では、「平成十八年の組織犯罪の情勢」という警察庁のレポートがございますが、きょうはその中の一節をちょっと読ませていただきますと、「暴力団が暴力団関係企業等を利用して多額の資金を獲得している例として、不動産・証券取引等に係る犯罪の他に、公共工事への暴力団の介入が挙げられる。従前から、公共工事の中には、受注額の一部が何らかの形で暴力団に流れているものがあるとみられていたが、近年、暴力団関係企業や暴力団と結託した企業等が、国、地方公共団体等が発注する公共工事に着目し、暴力団の威力や影響力を背景として談合するなどして工事を受注し、その対価として暴力団に資金を提供するシステムが構築されていることが明らかになった例がみられる。」というふうに警察庁のレポートに出ております。

 実は私も、暴力団と公共工事とのかかわりについて、従来より警察の皆さんと議論をさせていただいているわけでございますが、昨年五月の本委員会で、平成十七年六月の国土交通省の通知、「公共工事をめぐる暴力団対策及び建設業からの暴力団排除について」という通知の中の「発注工事等において指名を行わない業者の対象を明確化」という部分で、「暴力団員が実質的に経営を支配する建設業者又はこれに準ずるもの」という形で「暴力団員」という言葉を使っていらっしゃいます。

 私は、この言葉を暴力団員等にして、等の中に準構成員も含めるべきであるというふうに提案をしています。警察は、構成員も準構成員も名簿としてしっかり把握をしていらっしゃるわけであります。そういう反社会的な勢力を税金を使う公共工事から排除をしていくということについて、私はしっかりとすべきであるというふうに考えておりますが、国土交通省からは、そのときの答弁では、そういう周辺事態の問題についても積極的に検討してまいりたいという御答弁をいただいております。

 さらに、警察庁の先ほどのレポートの中には、暴力団関係企業という言葉の定義に関して、「暴力団構成員が実質的にその経営に関与している企業、暴力団準構成員若しくは元暴力団構成員が経営する企業で暴力団に資金提供を行うなど暴力団の維持若しくは運営に積極的に協力し若しくは関与する企業又は業務の遂行等において積極的に暴力団を利用し暴力団の維持若しくは運営に協力している企業をいう。以下同じ。」というふうに暴力団関係企業を定義しています。

 そこで、質問させていただきますが、公共工事から暴力団関係企業を排除していくというのは政府の方針であるということでよろしいでしょうか。

溝手国務大臣 年末の犯罪対策閣僚会議においてもその旨を決定しており、政府の方針と考えてもらってよろしいかと思います。

川内委員 溝手大臣、私のような者が大臣に答弁ぶりをお願いするのは大変恐縮なんでございますが、大事なところでございますので、暴力団関係企業を公共工事から排除していくことは政府の方針であるというふうに正確に御答弁いただけますか。

溝手国務大臣 そのとおりでございます。

川内委員 ありがとうございます。

 となると、実は、ことしの三月二日に出されております、暴力団資金源等総合対策に関するワーキングチーム、これは犯罪対策閣僚会議のもとに設置をされている各省課長級の皆さん方によってつくられている作業チームでございますが、そこには、実は「暴力団員等による不当介入に対する通報報告制度の導入」ということが施策として出ておりまして、ここでは「暴力団員等」という言葉を使われているんです。これは暴力団員等が不当介入した場合に排除するというわけであって、暴力団員等が公共工事にかかわっていることそのものを排除することを意味していないわけでございまして、私は、この対策は一歩前進だと評価いたしますが、まだまだ不十分なところがあるのではないかというふうに考えております。

 したがって、このワーキングチームはことしの六月に向けてさらに報告をおまとめになられるというふうに聞いておりますが、今大臣が御答弁になられた、暴力団関係企業を公共工事から排除していくことは政府の方針であるということをそのとおりだとおっしゃった答弁を踏まえて、六月に向けてさらに対策をこのワーキングチームで検討していくのかどうかということを、警察と国土交通省からも来ていただいていますので、御答弁いただきたいと思います。

米田政府参考人 公共工事から、暴力団はもとより、準構成員あるいは暴力団関係企業等も含めまして、いわゆる反社会的勢力を排除したいというのが私どもの施策の基本でございます。

 ただ、個別の施策につきましては、例えば属性によって区別をしようということになりますと、暴力団というのは法律上の概念でございますので、暴力団というのをまず中心に置いて、それとどういう関係にあるかということを排除していったのが平成十七年六月通達でございます。ことしの三月の通達の方は、これは行為の方に着目をしておりますので、「暴力団員等」ということでも比較的通りやすかったという面もございます。

 いずれにいたしましても、私どもも工夫を重ねながら反社会的勢力をこの分野から排除してまいりたいというふうに考えてございます。

大森政府参考人 お答え申し上げます。

 公共工事から暴力団関係業者の排除ということについては、国土交通省としてもその方向で懸命に行っているところでございます。

 先ほど先生御指摘の本年三月のことでございますが、受注者に対し、暴力団等からの不当介入があった場合における発注者への報告及び警察への届け出を契約の特記事項で義務づけ、これに反した業者には指名除外等のペナルティーを科すということも通達できちっと整理をさせていただいているところでございます。

川内委員 ありがとうございます。それでは、さらなる対策の強化を私の方からも要請しておきたいというふうに思います。

 それに関しては、今警察の局長さんから御答弁がございましたけれども、準構成員、元構成員については、法律上に定義づけられているものではないので、総合的に判断していかなければならないということでございました。しかし、総合的に判断するにしても、行政の文書の中に暴力団員としか書いていなければ、あるいは暴力団としか書いていなければ、各都道府県警あるいは各出先の地方整備局などは、暴力団あるいは暴力団員だけでいいのだというような解釈をしがちである。したがって、暴力団等とか暴力団関係企業とか暴力団員等と書くことによって、私は、総合的な判断のしやすさあるいは総合的判断の後押しというものを各出先においてやりやすい形をつくっていく必要があるというふうに思いますので、ぜひ御検討方を申し上げておきたいというふうに思います。

 最後に、今の問題に関して、国土交通省から出ている通知で、一昨年、平成十七年の六月二日に出ている通知があるんでございますけれども、「発注工事等において指名を行わない業者の対象を明確化」ということで、これは全部言葉が暴力団員になっているんですが、これを暴力団員等に変えて、もう一度各地方整備局なりに発注をされたらいかがかというふうに思いますが、警察としっかり御検討をいただけますでしょうか。

大森政府参考人 御答弁申し上げます。

 先生御指摘の平成十七年六月二日付通達では、「暴力団員が実質的に経営を支配する建設業者又はこれに準ずるもの」を指名から排除するということをうたっておりまして、また、「これに準ずるもの」というものを定義づけているところでございます。

 先生の御指摘であります準構成員などにつきましても、これに準ずるものとしてその対象になるものも多いと考えられますが、今後、先生の御指摘を踏まえ、実態にも留意しながら、警察庁とも連携の上、さらなる対策を検討していきたいというように思っております。

川内委員 ありがとうございます。

 それでは、最後の論点でございますが、私の地元鹿児島の志布志事件についてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 志布志事件については、大きく報道されておりますので、内閣委員会の委員の先生方もよくよく御案内のところであろうというふうに思いますが、鹿児島地方裁判所において被告十二名全員が無罪判決を受け、検察当局は控訴しないということになり、無罪判決が確定をいたしております。この判決の理由の中では、そもそも犯罪事実の証明がないということも言われておりまして、犯罪そのものがなかったのだ、選挙違反そのものが、買収会合はなかったのだということが言われております。

 溝手大臣、無罪判決確定という現在の状況を踏まえて、改めて志布志事件に対する大臣の率直な御見解を承りたいと存じます。

溝手国務大臣 御指摘の事件につきましては、無罪判決が下され、それが確定したわけでございまして、私どもとしても、これは極めて重く受けとめなくてはいけないと思っております。

 また、警察におきましても、判決で示されました捜査上の問題点については、これを真摯に受けとめ、今後の捜査に生かすべきところは生かしていくという姿勢、実行が必要と考えております。

 国家公安委員会といたしましても、警察庁に対し、今回の判決を重く受けとめ、各都道府県警察への指導を確実に実施して、その効果が上がるように努めるべきだということを督励して見解を示したところでございます。

川内委員 続いて、検察を所管する法務省にもきょうお運びをいただいておりますので、法務省からも、無罪判決の確定を受けての見解をお願いしたいと存じます。

三浦政府参考人 御指摘の事件につきましては、鹿児島地方裁判所におきまして、公訴事実に掲げられました会合の一部について被告人にアリバイが成立するとしたこと、したがって、その自白調書について信用ができないといったことなどを理由といたしまして無罪判決が言い渡されたものであり、検察側の不控訴によりまして確定したものと承知しているところでございます。

 この事件につきましては、自白供述、否認供述、双方の信用性の慎重な吟味やそれぞれに対する裏づけ捜査の徹底に十分でない面があったと承知しているところでございます。検察当局におきましては、今回の無罪判決を重く受けとめ、今後の捜査、公判の糧としていくものと思います。

川内委員 溝手大臣からは、今後かかることがないように、各都道府県公安委員会、警察、あるいは警察庁に対して、管理する立場として意見を言ったと、検察、法務省は、今後かかることのないように糧としていきたいということを御答弁いただきました。

 それでは、今後このようなことが発生しないようにというためには、なぜこのようなことになったのかということの原因が明らかにされなければならないというふうに思います。

 国家公安委員会には、警察法第五条二項二十三号において、事務を遂行するために必要な監察に関する権限が与えられており、そして、この監察とは一体何なんだろうと思ってずっと見ていきますと、第十二条の二の一のところに、国家公安委員会は、警察庁に対する指示を具体的または個別的な事項にわたるものとすることができるというふうに書いてございます。個別的、具体的な事項について調査をすべきであるということを指示することができるという趣旨かと、私、法律の素人でございますが、そのように理解をするわけでございます。

 警察庁は、溝手大臣の先ほどの答弁を受けて、今回なぜこのようなことになったのかということについてどのような体制で調査を行っていらっしゃるのか、また、その報告は、民主警察として今後に生かされるために我々国民にもお知らせをいただけるものなのかどうかということを御答弁いただきたいと思います。

縄田政府参考人 お尋ねの事案につきましては、まずは鹿児島県警の方でしっかりと検討、検証がなされる、委員御案内のとおりでございますけれども、公判の過程から検証し、かつ無罪判決が出た以降につきましても、関係者について事情聴取する、あるいは公判記録等を再度精査するなど、検討しておったところでございます。

 警察庁におきましては、まさにこの鹿児島県警察における検討の結果あるいは状況等も報告も受けながら、私どもといたしましても、その判決文を精査し、また、鹿児島県警察から寄せられた報告等も聞いておるところでございますけれども、私の指示のもとといいますか、刑事局におきまして、捜査一般に関する、特に適正捜査の関係を所管しております刑事企画課と、それから選挙違反捜査を所管いたします捜査二課、これのスタッフをもって、今申し上げたような事案について一つ一つ精査をいたしておるところでございます。

 一つは、鹿児島県の捜査の指揮の問題とか、あるいは判決等でも指摘されております取り調べのあり方、捜査の内容、これは、どういう端緒で、かつ、どういう時点で令状請求をしておるのか等々、そういった問題につきましても個別に協議をさせていただいたところでございます。

 総括的なものについていかがかということでございますけれども、通達等にそこら辺のエキスの部分といいますか、根幹の部分はしたためまして、先般、各都道府県に通知をしたところでございます。これをもとに、私どもといたしましては、通達、会議はもとよりでございますけれども、個別の管区ごとの指導の教養を別途やってまいりたいと思いますし、幹部による巡回もやりたいと思っています。

 それからもう一つは、ことしの三・四半期といいますか、十月から十二月にかけて、長官監察、いわゆる業務の方の長官監察の一つのテーマといたしております。

 もう一つは、適正捜査、緻密な捜査の推進という過程におきましては、警察大学校でことし四月から教養してまいりますが、その中で、基本課程あるいは刑事の課程のものにつきまして、こういった緻密、適正捜査の推進ということで、二時間、四時間ということで別途新しい科目を設けまして、まさにこの鹿児島の事案、あるいは先般富山の事案もございました、こういったもののエキスを抜き出して、別途しっかりと教養する。各捜査の指揮官あるいは捜査員一人一人に至るまで十分しっかりと浸透させて、対応してまいりたい、こういうふうに考えております。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

川内委員 法務省というか、最高検の方の対応というのはいかがでしょうか。

三浦政府参考人 御指摘の事件につきましては、現在、最高検察庁におきまして、本件を今後の捜査の教訓とするために、当時の捜査、公判の問題点等につきまして精査を行っているというふうに承知しております。

 あわせて、最高検察庁から、この事件の主任検察官に対しまして、証拠関係全体の吟味、精査が不十分であった点について指導がなされるというふうに承知しております。

 検察当局といたしましては、今回の無罪判決を非常に重く受けとめているというところでございまして、本件の精査を通じて得られる教訓につきましては、今後の捜査、公判の糧としていくというふうに考えているところでございます。

川内委員 それでは、時間もあと五分ほどでございますけれども、今回、このようなことが起きて、裁判員制度の導入を控えて、警察に対する信頼あるいは検察に対する国民の皆さんの信頼というものが大変重要になるというふうに思います。

 大部分の、大部分のというか、すべての警察の皆さんやあるいは検察の皆さんというのは、熱心に仕事をしていただいている、国民の生命財産あるいは自由を守るためにお仕事をしていただいている。しかし、時に組織としてこういうことが起きてしまうことに対して、幾つか抑止をしていかなければならないというふうに思うんですけれども、その大きなツールが取り調べの録音、録画の問題ではないだろうかというふうに私は思います。

 法務省は、今、取り調べの録音、録画について試行をしている。しかし、警察庁は、絶対反対というか、取り調べの録音、録画をすると被疑者との信頼関係が築けない、あるいはその他の幾つかの問題があると。

 御主張については私もよく理解をいたします。しかし、被疑者から取り調べを録音、録画してくれという強い要望があった場合には、その要望については聞かざるを得ないのではないか、あるいは聞いてもいいのではないかというふうに思いますが、要望があった場合ということについての警察庁の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

縄田政府参考人 事案の真相を解明していくためには、被疑者の取り調べというのは大変大きな役割を果たしておることは御案内のとおりでございます。

 その過程で、私どもといたしましては、被疑者から本当に真実を話していただく、一番事案を知っている者から真実を話していただくためには、やはり取り調べ官と被疑者との間での信頼関係といいますか、こういったのは会話を通じながら醸成をしていく。その会話というのも、単に日常的な話じゃなしに、本当に腹を割って、人間と人間がお互いに知り合うといいますか、そういう形の会話が必要であろう、こういうふうに考えています。そういった会話というのは、自分の過去の経験とか周辺のもの、こういったことも含めていろいろ議論がされるわけで、プライバシーにかかわる言動も非常に多くなるわけであります。

 そういったことを経ながら、本当に追及をし、かつ場合によっては説諭をしということで供述を得ていくわけでございますけれども、これは、被疑者の方からぜひとってくれとおっしゃられましても、それをもって今私が申し上げたような要素がなくなるわけでもございません。取り調べにやはり支障が出るのは変わりないことでございまして、その部分は御理解をいただきたいと思います。

 また、私どもでいろいろ申し上げさせていただいておる中には、やはり組織犯罪の捜査の中では、組長の話とか他の組の話等々、非常に話しづらい部分がある。場合によっては、話してしまえば制裁を受けることがあるということが指摘されますが、これなどは逆に、組の幹部の方、組長の方から、こういう申し出をすることによって自供をさせないような一つの手段にもなってしまうということもあり得ようか、こういうふうに思っております。

 いずれにいたしましても、録音、録画ということになりますと、取り調べ機能が低下することは否めないところでありまして、捜査上大きな支障が生ずるものと私どもは考えております。

川内委員 それでは、検察の方から、取り調べの録音、録画について試行をされていらっしゃるということでございますけれども、その試行についての現在の状況等について教えていただきたいというふうに思います。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 検察庁におけます取り調べの録音、録画の試行につきましては、昨年の七月から実施をしているものでございます。検察当局におきまして、裁判員裁判において自白の任意性について迅速かつ効果的な立証を行うための方策の一つとして試行をしているものと承知しております。

 具体的には、裁判員裁判対象事件のうち、被告人の自白の任意性を迅速かつ効果的に立証するのにこれを実施する必要性が認められる事件につきまして、取り調べの機能を損なわない範囲内で相当と判断された部分の録音、録画を実施しているというふうに承知しております。

川内委員 私ども民主党は、取り調べの録音、録画の法案を出させていただいております。さまざまな問題はあるにせよ、試行錯誤をしながら、少しでも今回の志布志事件のようなことがないようにしていく、あるいは富山の事件のようなことがないようにしていくためにまた今後議論を続けさせていただきたいというふうに思います。

 溝手大臣におかれましては、今後とも、民主的な警察組織を管理されるお立場として、しっかり頑張っていかれることを御祈念申し上げて、終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございます。

河本委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 私は、まず最初に大臣に伺っておきたいと思いますが、先ほど法務大臣の方に伺いましたけれども、マネロン対策とかテロ対策を国際的に連携して行う場合、その対策というのは、国際人権基準とか国際人権法、日本国憲法などに合致しているということが前提にならなきゃいけないと思うんですが、この点についての国家公安委員長の考え方というものを最初に伺います。

溝手国務大臣 今の御質問に対しては、まさに同感であると申し上げるところでございます。

吉井委員 各国の憲法が違うように、各国の法制度については、実態も違えば、国民感情とか文化、各国さまざまに、その国ごとに実情があるわけですね。やはりそうした実情に即した対応というものを考えていかなきゃいけないと思うんです。例えば、弁護士の自治権の強さというのは日本独自の制度と言えますが、そこには日本の司法制度の歴史と実績があるわけですね。

 ですから、この点では政府参考人に伺っておきますが、FATFの勧告は、各国の実情を無視してすべての加盟国を一律に縛るものにはなっていないと思うんです。改めて、FATFの勧告には法的拘束力はないということを確認しておきたいと思います。

米田政府参考人 FATF勧告は、現在、事実上の国際的な基準ではございますけれども、条約ではございません。したがいまして、法的な拘束力はございません。

吉井委員 その拘束力はないという理由はどこにありますか。

米田政府参考人 そもそも、条約として法的に拘束するような性格のものではございません。ただし、これは事実上国際的な基準になっておりまして、なかなかこれに真っ向から反するということもこれまた難しい、事実としてはそういうことがございます。

吉井委員 そこで、国際的に連携してマネロン対策を進めるというのは当然のことだと思いますが、だからといって国民の権利を過剰に制限することは許されないということが大事な点だと思うんです。

 まず、FATFの勧告には法的拘束力はないということを確認したわけですが、次に、FATFは、勧告の実施状況を各国相互で審査して、勧告が未実施の国や地域は非協力国・地域として公表することにしていますね。非協力国に対して勧告の履行まで加盟身分の一時停止あるいは除名処分をできるとしているわけですが、これまでにFATFがこうした制裁措置をとったことはありますか。

米田政府参考人 除名処分まで至ったわけではございませんけれども、過去に、オーストリアが一九九七年に相互審査を受けまして、匿名口座制度があるということで改善を指摘されました。これに対しましては、これは非常に重大な違反であるということで、議長から懸念を表明するレターが発出され、ハイレベル使節団が派遣をされ、ついに平成十二年、FATF全体会合におきまして、オーストリアが改善措置をとらない場合はメンバーシップを停止するということまで合意をされました。ただ、その後、オーストリア政府は直ちに法改正を行いまして、それ以上の事態に至っていないと承知をしております。

吉井委員 このFATFの勧告には法的拘束力がないことと、勧告を一〇〇%全面実施しないからといって除名された例はないということです。

 では、例えば、弁護士に対する疑わしい取引の届け出の義務化ということについては、先ほどの連合審査のときにも御紹介しましたように、世界の主な弁護士会が、FATFの招待で集まった二〇〇六年の十一月七日に、弁護士に報告義務を課すことには反対であるということを決めて共同声明を出しているわけでありますが、アメリカ、カナダでは法制化は未実施ですし、三十一のメンバー国・地域の中で七つが未実施なんですが、だから除名されたなどというようなことはまずないわけですね。確認しておきます。

米田政府参考人 弁護士をこの制度の対象に含めるかどうかということが一体どの程度重大な不履行というふうに認識をされるかということは、いまだこれ、まだ行方はどうなるかわかりません。

 いずれにいたしましても、この勧告の改定が行われましたのは二〇〇三年でございまして、まだごく最近のことでございます。したがって、これに対する相互審査というのも始まったばかりでございますので、もう少し推移を見ないと、届け出の制度をとらないことがどの程度の重大なことになるのかということはまだわからないということでございます。

吉井委員 マネロン対策で国際連携をとって一緒にやっていくということは必要なことなんですよ。ただ、同時に、各国の判断が尊重されるべきものだということもまた大事なところで、まして、国民の人権にかかわってくる問題ですね。

 これは、先ほども大臣は同感だとおっしゃったように、人権侵害とか侵害するおそれがある、そういうことになってきた場合には、留保する権利というものが当該国にあるのはやはり当然だ、その部分について国際的に意見が合わなくて留保もあれば、そのことによって除名ということはないというものだと思いますが、これも確認しておきたいと思います。

米田政府参考人 条約ではございませんで、留保ということもない。したがって、各国がどのような法制度をとるかは自由でありますけれども、そこはその後、相互審査によっていろいろ指摘を受け、いろいろな対抗措置をとられることはあるということでございます。

吉井委員 次に、特定事業者について聞きたいと思います。

 法案第二条は、四十三号にわたって特定事業者規定というべきもの、四十三職種についてこれを特定事業者と規定しております。法案は、新たに特定事業者として不動産業者、弁護士、司法書士等十職種を拡大していますが、この四十三の特定事業者の企業数あるいは事業者の実数は全国でどのくらいになるのか、その数を伺いたいと思います。

米田政府参考人 まず、現在対象となっております金融機関等、法案でいいますとその項の第一号から第三十三号になるわけでございますが、これが約二万五千ございます。

 あと、全部言っていますと時間がかかりますので、大口だけ申し上げますと、宅建業者、第三十六号でございますが、十三万件、貴金属等取引業者約六万件、それから弁護士は二万三千人余り、司法書士一万八千五百、行政書士三万九千、公認会計士一万七千、税理士七万といったようなところでございます。合計しますと約三十九万ということになろうかと思います。

吉井委員 監督官庁から集めれば数字は出てくるわけですが、各省の数字を合計しますと、今、特定事業者数は約三十九万、三十八万五千八百九十の企業、個人ということになりますが、事業所数では幾らになってきますか。

米田政府参考人 今、事業者数で申し上げたつもりだったんですけれども、何か別のあれでございましょうか。(吉井委員「団体、企業数でしょう。事業所数でいったらちょっと違うでしょう」と呼ぶ)事業者数で約三十九万でございます。

吉井委員 各省から報告を求めて集計をしてみれば、団体、企業数でいったら三十八万五千八百九十、これは重なってくるものも当然あるわけですが、事業所数ということで見れば四十八万一千四十九、こういうことになってくるんじゃないですか。

米田政府参考人 事業所数につきましては、ちょっと手元に数字がありませんので、お答えはできません。

吉井委員 立法をされていく中で、これは私たちの方でも各省庁別にお聞きしていけば、もちろん、一部重複しているところもあれば、こういう数字自身を把握するのがなかなか難しいという省庁もありますが、大体集めるとそれぐらい出てくるんですね。四十八万ぐらいの事業所数というのは出てくるわけです。ですから、そういうことをきちっとつかんで取り組むことがまず警察庁には求められてくると私は思うんです。

 総務省の企業統計調査を見ると、二〇〇四年の全企業数が百五十三万ということになりますから、今おっしゃった約三十九万、三十八万六千というこの数字でいったとしても、全企業の二五%、四企業に一企業という割合ですね。それで、疑わしい取引の届け出義務のかかる企業というのは、今も幾つか例を挙げられた、宅地建物取引業者の十三万一千、貴金属取引業者の六万、貸金業者の一万四千など、これは数の多いところの話ですが、そのほか合わせると約二十二万ということで、全体の一四%に相当するかと思うんです。中には監督官庁が全く把握できていない特定事業者がありますね。

 総務省に伺っておきますが、電話受付サービス業、電話代行業の監督官庁ということになるんですが、事業者数を把握できない理由はどういうところにありますか。

桜井政府参考人 お答えいたします。

 電話受付代行業は、総務省が所管する電気通信事業には該当いたしますけれども、電気通信事業法上の登録または届け出というものが不要な電気通信事業とされております。また、事業者団体も存在していないということもございまして、このため事業者数の数字を把握できていないものでございます。

吉井委員 事業所数の数も把握できない、事業所も把握できない。しかし、今度、この法律で課せられた義務を守らせなきゃいけないわけですね。

 では、その所管の総務省としては、どうやってここに対して指導するとか啓蒙するとか、それをやっていくことになるんですか。

桜井政府参考人 お答えいたします。

 総務省では、法案の作成過程におきまして、電話受付代行業への義務の導入に当たりまして、昨年八月、警察庁及び経済産業省と連名で、この義務対象に電話受付代行業を追加するということについてパブリックコメントを実施しております。また、九月には事業者向けの説明会も開催しておりまして、こういった周知というのをこれからもやっていく必要があると思っております。

 特に、この法律施行までの間に、それぞれ疑わしき取引の届け出の義務の内容を明確化したガイドラインを作成するというふうにされているということでございますので、その際にも、パブリックコメントを聴取する、あるいは説明会を開催するなどの周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。

吉井委員 何とも頼りない話なんですね。そもそもどういう業者がおるかがわからないから、数もつかめていない。これは総務省所管の話ですが、このほかにも登録や届け出が必要ない企業というのはたくさんあるわけですね。

 つまり、監督官庁ということには一応なっているんだけれども、その監督官庁が掌握するのがなかなか難しい事業者、こういう業種の事業者に法律で課せられた義務を守らせるためにどうやって指導や啓蒙をしていくのかということについて、これは法案の所管の警察庁の方に伺っておきたいと思います。

米田政府参考人 確かに、事前の登録とか届け出があれば業者の把握はしやすいわけでありますけれども、それは所管の省庁で電話帳あるいはネット上でも、私ども、その種の業者は大体二百ぐらいは確認しておりますけれども、そういったものを把握しながら事業者に幅広く呼びかけて、いろいろ啓蒙活動をやっていかれるのであろうと考えております。

 もちろん警察としても、例えば事件捜査等々でこれらの事業者に関する事案を把握するということはありますので、所管省庁とよく連携をとり合って、法の施行に努めてまいりたいと考えております。

吉井委員 マネロンとかそういうことで一番危ないというか利用しよるような連中が、実はその電話代行業者のところを使ってくるとか、あるいは、監督省庁は一応あるんだけれども、つかみ切れていない事業所、そういう事務所を使ったりしてやってきよるわけですね。

 そうすると、そこに対してこの法律で課せられた義務を守らせるということについては、どういうふうにきちっとやっていくのかということをもう少し明確にしないと、ちゃんとしているところだけは監視が厳しくなって、一番問題のある連中が、そこがマネロンで一番問題になるというところは穴だらけというんだったら、これはこの法律がそもそも穴だらけの法律ということになってしまいますから、こういう業種の事業者に法律で課せられた義務を守らせるためにどうやって指導、啓蒙するのか、もう少し、なるほどと思うような説明をしてください。

米田政府参考人 本来、登録や届け出の制度をつくればよろしいんでしょうが、これはこの法案とはまた別途の議論ということで、将来そういうことはあり得ると思います。

 先ほども申しましたように、そういう事前の規制の仕組みがなくても、それはもちろん規制、仕組みがあった方が把握はしやすいわけでありますが、仕組みがなくても、そこは所管省庁でよく努力をされ、そして警察といたしましても、それを支援するという形でこれらの業者の監督に努めてまいりたいというふうに考えております。

吉井委員 そうすると、この法案十三条ですね、「行政庁は、この法律の施行に必要な限度において、特定事業者に対しその業務に関して報告又は資料の提出を求めることができる。」としているわけですが、特定事業者がそもそもどこにいるかわからないのですから、報告を求めることはできないというふうになってきますね。

 疑わしい取引の届け出をしなくてもわからない、法案を作成した警察庁がこの場合どういうふうに対応していくのか、そこをきっちりしておく必要があると思うんですが、これはどういうふうにしていくんですか。

米田政府参考人 行政庁は、この法律の施行に必要な限度におきまして、報告聴取、資料提出を求めることになろうと思います。その際は、できる限り把握した業者についてということになろうと思います。

 警察の場合、これに御支援するとすれば、事件捜査の過程でマネーロンダリング事件に利用された事業者というようなことがありますれば、では、その事業者はちゃんと守っておったのかというようなことで、その事業者の監督省庁と連携をして、そしてそこの業の適正に努める、こういうことはあろうかと思います。

吉井委員 できる限り把握と、それはそうだとしても、問題は、この把握できないところが一番問題を起こしよるところなんですよ。できる限り把握できるようなところは、大体、全部が全部じゃないにしても、おおむねまともに問題を起こさぬとやるようなところだと思うんですね。その把握できないところの問題なのに、警察庁の方は、こういう監督官庁が把握できない業種を特定事業者として届け出義務をこの法律では課しているわけですから、その意味はどこにあるんですか。

米田政府参考人 確かに、その事業者の実態が把握できる仕組み、事前規制の仕組みがあれば、それはもちろん業者の把握という点では望ましいわけでありますが、それはまた別途の議論で、またそこまで規制していいかというお話はあろうかと思います。

 いずれにしましても、その事業者は、今のところは、例えば本人確認不要、身分証不要、そこのバーチャルオフィスで会社登記ができますといったようなことを宣伝しているようなわけであります。そういうふうに表に出ているものは、これは全部把握ができるわけでありますから、もちろんそれで完全とは言わないまでも、相当、そういうマネーロンダリングに利用されるというような実態は防止できるものと考えております。

吉井委員 よく言われる振り込め詐欺の事件例などに見られるように、要するに、犯罪者集団に知らしめて抑止する、そういう意味がある、そこに期待をしている、今のお話は大体そういうことですね。

米田政府参考人 その業の実態が、犯罪者集団だけではなくて個人の犯罪者もいるかもしれませんけれども、そういういわば犯罪に利用されかねない、犯罪のインフラになるような、そういう宣伝をしているということが防がれるというのは、大変治安上も大きな効果ではあろうと考えております。

吉井委員 要するに、抑止効果ということなんですよね。届け出義務を課すことによって抑止効果があるということなんですが、ということは、監督官庁も把握できない業種、特定業者でも抑止効果ありなんですから、監督官庁が把握できる特定業者ならなおのこと効果ありということになってきて、要するに、別に警察じゃなくて、監督する特定行政庁への届け出義務を課すことでも同じ効果があるということになってくるんじゃないですか。

米田政府参考人 ちょっと御質問の趣旨がいま一つよくわかっておりませんが、郵便物受取・電話受付代行業につきましては、現在のところ、すべての業者がそうだとは言いませんけれども、まさに犯罪インフラになり得ると言わんばかりの宣伝の仕方をしているものもある。そういったものが今まで全く何の規制もかかっていないわけでございまして、今回の立法によりまして、それは相当に効果があるだろうというように考えております。

 しかし、それは事業者ごとにいろいろ事情は違うわけでございまして、今申し上げたのと同じような効果があるというわけではございません。しかしながら、このマネーロンダリング防止のいろいろな法律上の措置をとっていただくということは、これはその事業者がマネーロンダリングに利用されにくくなるという意味での防止効果はあろうかと思います。

吉井委員 どういう業者があるか、実数も実態もなかなかつかめないというものも含めて、要するに、今度届け出義務化するというこの目的は、抑止効果を考えていると。抑止効果があるというのであれば、特定事業者への罰則が必要なのか、こういう問題が出てくると思うんです。届け出事項は疑わしい取引であって、疑わしい取引というのは犯罪ではないわけですね。

 ここで金融庁に聞いておきますが、銀行法、本人確認法など、現行法には本人確認等には罰則はついているんですが、疑わしい取引の届け出には罰則がありません。この間、疑わしい取引の届け出には罰則がないけれども、金融庁への疑わしい取引の届け出件数は随分ふえてきている。つまり、そういう点では抑止効果は出ているということになっているんじゃないですか。

畑中政府参考人 これは先ほどもお答え申し上げましたように、米国における同時テロ事件を契機に、いろいろな国際的なマネロン対策というものが大きな課題になったわけでございまして、本人確認法の制定ということもございました。こういった中で、金融機関においても、疑わしい取引の届け出ということについて、今まで以上に認識といいますか意識が高まったということが一つあろうかと思います。

 それから、私どもも全力を挙げて、この法律の趣旨等について、いわゆる指導といいますか啓蒙活動をやっておりますので、この辺が効果が出て届け出件数が急速に増加しているということかと考えております。

吉井委員 要するに、抑止効果があったということですが、現行法では、銀行などの本人確認には罰則はついているが、疑わしい取引の届け出には罰則がない。現行法で、疑わしい取引の届け出に罰則をつけない理由がやはりあるわけですね。

 これまで、政府の国会答弁を読み返してみますと、「その届け出が何が疑わしい取引に該当するかという、それが具体的な事情によるところが多い場合がございまして、金融機関がケース・バイ・ケースで判断をするといったようなことになりますことから、」これは一九九一年十月の参議院厚生委員会での答弁ですが、ケース・バイ・ケースで判断するという疑わしい取引というのは、その基準があいまいだから罰則をつけないとしてきたのがこれまでの立場であったと思うんです。今回は、この疑わしい取引の定義には変化はないわけですよね。変わりはないのだけれども罰則をつけたということですね。

 これまでは、疑わしい取引はその基準があいまいだから罰則をつけない。今度は、その疑わしい取引の定義は変わらないのだけれども罰則をつけたということですから、これは、これまでの政府答弁から見ておかしいと思うんですね。変わっていると思うんですが、これはどうしてこういうことになってくるんですか。

米田政府参考人 今まで罰則がつけられていない理由は、委員御指摘のとおりでございます。今度の法案でも罰則はつけられておりません。そこには何の変更もございません。

 何が変更があるかというと、現在は各業法、銀行法等による行政処分の規定で担保をされ、その行政処分の違反に対して罰則がつけられている。今回は、この法案の中での是正命令によって担保され、その是正命令の違反に対して罰則がついているという、そこに違いがあるだけでございます。

吉井委員 確かに、制度的には直罰ではない。しかし、これは実質的には直罰なんですね。十三条で、行政庁は特定事業者に対しその業務に関して報告、資料提出を求めることができる、十七条の二項で、公安委員会は報告、資料の提出を求めることができるとした上で、二十四条で、その十三条と十七条二項の報告、資料提出をしない者に対して一年以下の懲役、三百万円以下の罰金または併科という罰則がついているんですね。つまり、その行為は、届け出を出さないという行為に対して行われるという点で直罰と実質的には変わらないということになってくるんじゃないですか。

米田政府参考人 今委員おっしゃいましたのは、行政調査に対する罰則であると思いますけれども、それは行政調査によって得た資料というのは、行政調査の目的である、例えば、所管行政庁であれば行政処分のため、そして国家公安委員会であれば行政処分の発動を促すための意見陳述のためのみに用いられるものでございまして、今議論になっておりますのは、疑わしい取引の届け出でございます。

 疑わしい取引の届け出は、疑わしい取引の届け出として所管行政庁に届け出をされ、そこからFIUである国家公安委員会に通知をされ、そして捜査に使用される。ここのルートはここのルートでありまして、その行政調査の資料とは全く別のものでございます。

吉井委員 疑わしい取引というのは、これは犯罪ではないわけですよね。民民間の契約取引というのはプライバシー情報なんですが、これを罰則をもって届け出を強制するということは、プライバシー情報の強制収集ということになってくるんじゃないですか。

米田政府参考人 罰則は、直に罰則をつけておるわけではございませんが、疑わしい取引の届け出は、単に任意というわけではございませんで、各特定事業者の義務でございます。そういう意味では、強制と言われれば強制的なものでございます。

吉井委員 これは単なる行政処分、行政措置の範囲じゃないんですね。民民間の契約取引というプライバシーにかかわるものについても罰則をもって届け出を強制する、実質的にこれは直罰があるよということでもって強制するという形になっている。犯罪を犯しているわけじゃないのに、疑わしいというだけであり、しかも罰則はある、そしてプライバシーの侵害の強要が行われていくというところが、私はこの法律の非常に問題のあるところだと思います。

 次に、こうした莫大な取引情報とか個人情報全部が捜査機関である警察の監視下に置かれるという問題が次に出てくると思います。FIUを金融庁から警察庁に移管するという理由なんですが、どうも伺っておってよくわからないんですが、警察庁が所管しないとFATFの勧告に反するということになってくるんですか。そうじゃないと思うんですが。

米田政府参考人 FATFの勧告では、各国がそういう届け出情報の集約、分析を行う機関を設けなさいということでございまして、それは各国の実情、法制度によって決められるべきものでございます。それは各国ばらばらでございまして、先ほども御答弁したと思いますが、現在、三十一の国・地域のFATF加盟国の中で、捜査機関と言えるものにFIUを置いている国は十七あるということでございます。

吉井委員 警察庁への移管は勧告の内容に関係なく行っていくというもので、不動産業や貴金属商が対象になったからといって警察がFIUを所管する理由にはならないと思うんですね。だから、これは例えば第三者機関をつくってもいいし、法務省なりなんなりのところで考えてもいいわけですが、金融庁がやっても何ら問題ない。専門的な分野の職員が必要だったら、国土交通省、経済産業省、この法案提出に関係している各省庁の専門的な分野の職員がそれぞれの省から出向すれば、これはやっていけるというものじゃないですか。それじゃまずいんですか。やっていこうと思ったらやっていける話ですね。

米田政府参考人 これは、一つは政策判断でありまして、どこの省庁よりもテロ、組織犯罪の知見を有する国家公安委員会が適当であろうということで、内閣官房の方で調整をされた。私どもの方としては、それをお受けしたということでございます。

 出向させて対応するという選択肢、これはなかなか、私どももできるだけ実はそういう選択肢をとりたいと思っておるんですけれども、やはり専門的知見を持った職員に集まっていただくというのは重要なことであろうと思います。ただ、FIUたる機関が例えば国家公安委員会なら国家公安委員会についておらないと、そこの持っている情報、そこのデータベースとのリンクといったようなことはなかなかやはりやりがたいわけでありまして、人の面では出向職員というのは大変魅力的なことでございまして私ども活用したいと思っておりますけれども、それはそういう任務を持っている機関にFIUをつけるというのがやはり適当ではなかろうかと思うわけでございます。

吉井委員 これは国家公安委員会、警察庁の方に移さなくてもやっていける、今の話からしてもそういうものなんですよ。

 法案十七条では、国家公安委員会に強力な権限が与えられておりますが、まず第一項で、国家公安委員会は、特定事業者が規定に違反していると認めるときは、行政庁に是正命令や業務停止処分を行うよう意見を述べることができるとしていますね。すなわち、国家公安委員会は、本人の確認記録の保存、取引記録の保存、疑わしい取引の届け出等に違反していると認めるときに行政庁に意見を言うことができるとしているわけですが、この具体的なケースとして、どういう状況を考えて規定しているわけですか。

米田政府参考人 マネーロンダリングというものが非常にいろいろな業種を使う、匿名口座に入り、そこからまた送金をされ、そこから不動産に投資をされ、不動産からまた現金になってというように、転々と流通をするというようなことを考えますと、何か例えば警察で大きなマネロン事件を摘発した、それで、どうしてこれが今までわからなかったんだろうということで問題意識を持つ、どうもここかここの事業者がそういう意味では届け出義務あるいは本人確認といったようなことを全くしていただいていないのではないか、そういう具体的な問題を把握した場合に、その所管の行政庁に対して意見を述べるということを考えておるわけでございます。

 これは、それぞれの事業者をそれぞれの所管行政庁によって監督をしていただく、その方が、日ごろからなじみもありますし、業の実態もよく御存じであるということできめの細かい指導ができるということで、そういう仕組みをとっておるわけでございますが、片や、マネーロンダリングというのは多数の事業者にわたるという可能性がありますので、全体を見るためにそれを補完するというシステムがどうしても必要である、そこがこの意見陳述の規定でございます。

吉井委員 この十七条、「国家公安委員会は、特定事業者がその業務に関して前条に規定する規定に違反していると認めるときは、」ということなんですが、この「違反している」、要するに規定違反を確信したときの話ですね。これは、一〇〇%規定違反とみなすことができたときなのか、それとも、規定違反の疑いありと見たときもこれに入ってくるのか、これはどういうふうになるんですか。

米田政府参考人 これはやはり確定的に規定違反であると認めたときでございます。そのために、事実関係を確定しなければなりませんので、行政調査の規定が設けられているわけでございます。

吉井委員 いや、逆に、調査をしてこれは確定的に規定違反となるわけでしょう。調査をしなかったらそれはまだ疑いの段階なんですね。規定違反の疑いありということで、それで調査をするということですね。

米田政府参考人 もともと行政調査というのはそういうものでございまして、この場合は、何らか具体的な問題を把握した、しかしながら、事実関係を確定しなければ意見陳述までは至らない、その事実関係の確定のために調査を行うというものでございます。

吉井委員 今おっしゃったように、一〇〇%規定違反ということになっているわけじゃないんです。しかし、疑いありということで、この十七条の二項でまた、「国家公安委員会は、前項の規定により意見を述べるため必要な限度において、」と。つまり、疑いありなんですが、疑いありで意見を言うためにかなり規定違反の確信を持たなきゃいけない。そのために、「特定事業者に対しその業務に関して報告若しくは資料の提出を求め、又は相当と認める都道府県警察に必要な調査を行うことを指示する」と。

 つまり、疑いの段階で意見を述べることはできないから、だから、疑いの段階なんだけれども意見を述べるためにということで警察に調査をさせる、こういう仕組みになっているんですね。

米田政府参考人 先ほども申し上げましたように、国家公安委員会がどこかの特定事業者に関して具体的な問題を把握した、そしてそれを意見陳述しようと思う場合は、事実関係を確定しなければなりませんので、その限りにおいて、意見陳述に必要な限度において調査を行うというものでございます。

吉井委員 だから、疑いありということで、確定するために警察に調査をさせる、そしてその調査ということについては、これは二十四条で、この二項は警察に調査させることができるというものなんですが、二十四条で、十七条二項違反については一年以下の懲役、三百万円以下の罰金、または併科。つまり、直罰で警察調査ができる、こういう形になっているんですね。

米田政府参考人 これは一般の行政調査の規定と全く同じでございます。調査権限があり、それに違反をされればそこで罰則ということになるわけでございます。

吉井委員 一般の行政調査とはおっしゃるんですが、要するに警察の調査なんですよ。

 それで、この調査の結果何もないとき、違反がないということになったときに、これは公安委員会には何か、責任なりなんなり問われることになるんですか。

米田政府参考人 ちょっと問題設定がよくわかりませんが、調査の結果問題なし、具体的に問題を把握したのだが調査の結果はそこまで確定に至らないということは、これは間々あることでございまして、責任問題ということには直ちに、普通のケースではならないものであろうと考えております。

吉井委員 いや、先ほども鹿児島県志布志の話が川内さんからもあったわけですけれども、あの場合は捜査の手法その他、皆問題なんですけれども、要するに今度の場合は、疑いありということで、一般の行政調査と同じだといって警察の警察権力による調査というものが入るわけですね。このときに、しかもこれは直罰がありますよということでもって警察調査をやるわけなんですが、これは令状は要しないんですね。

米田政府参考人 これは一般の行政調査の一つでございます。当然、令状は必要はございません。

吉井委員 通常、犯罪捜査の過程でわかった特定事業者の違反行為を監督官庁に言って処分を求めるということなんですが、国家公安委員会は、特定事業者が本人確認、本人確認記録の保存、取引記録の保存、疑わしい取引の届け出等に違反していると認めるときはと、認めるときはといっても、最初は要するに疑いの段階なんですから、それで二項で都道府県警に調査を行うことを指示できるということで、三項で、都道府県警は、特定事業者の施設に立ち入らせ、帳簿書類その他物件を検査、関係人に質問させることができるとしているわけですが、この調査の対象は、弁護士及び弁護士法人以外の特定事業者すべてがその対象になりますね。

米田政府参考人 さようでございます。条文上そのようになってございます。

吉井委員 司法書士、税理士、公認会計士、行政書士及びこれらの事務所も調査対象ということになってきますね。

米田政府参考人 そうでございます。もちろん、補完的な調査ですからめったに行われることはありませんけれども、条文上そうなってございます。

吉井委員 この調査は拒否できないんでしょう。

米田政府参考人 この手の行政調査は直接強制の権限はないとされておりますので、拒否されるのであれば、それは拒否されるということは可能かと思います。

 ただ、そうなると今度は罰則がかかりまして、その罰則につきましても、何か正当な理由があるということであれば罰則の適用もない、あるいは立件の価値がないということになろうかと思います。

吉井委員 今おっしゃったように、正当な理由がなければ拒否できないという、つまり強制力を伴う調査なんですね。これは事実上の捜査と同じということになってくるんです。

 憲法が令状主義をとっているのは、人権の侵害を犯さないように裁判所がチェックする、そのためであり、しかし、こっちの今の調査は令状が要らないんですよ。しかも強制調査なんですね、拒否はできない。これは大変重大な問題だと私は思うんですよ。この調査は行政庁に意見を言うための補完的な調査だ、意見を言うための補完的な調査だと言っておったはずなのに、ところが、この特定事業者への是正命令や業務停止処分などは、これはもともとこの法律にあるように監督官庁が行うことになっているんですね。言われるまでもなくやるわけですよ。ところが、ここで言っている調査というのは、行政庁に意見を言うための補完的調査だということでもってやっていくわけですね。

 警察は必要な情報を監督官庁に提供し、提供しておればそれはそれでいいんですが、そのための補完的調査の必要があれば、監督官庁が行うもので、処分を行う監督官庁が調査内容も責任を持って把握するということは、これは処分官庁としては当然やっているわけですよ。ところが、あなたのところへは、今度は国家公安委員会として、特定事業者がその業務に関し前条に規定する規定に違反していると認めるんだ、認めるからということで意見を述べる、述べるために国家公安委員会が警察を使って調査をさせる。そして、その調査というのは令状を要しない。令状を要しないし、これを拒否したら、その拒否というのは、司法書士であれ、税理士であれ、公認会計士であれ、行政書士であれ、それらの事務所はすべて警察の調査、実質的な捜査の対象となって、これは拒否できない。こういう仕組みになっているわけですね。

米田政府参考人 まず前提として、警察はこの種の行政権限というのをいろいろ持ってございます。その行政権限ごとに行政調査権がございまして、そしてそれについては、罰則でその調査権限は担保をされているというわけでございます。それの一つの一環でございます。

 先ほど申しましたように、これは各所管の行政庁が適切に指導あるいは是正命令をしていただければ、特に国家公安委員会の出る幕はないわけでございます。ただ、幾つもの事業者をまたがるというようなことであれば、なかなか所管の行政庁は自分の縄張りしか見られませんので、これは全体を見る国家公安委員会において見る必要があるということでございます。

 そういう意味で、この意見陳述そのものがまず補完的である。その意見陳述をするために事実関係を確定するというのも、これはそれぞれの所管行政庁がやっていただければそれはそれで結構なんですが、なかなかそこは、やはり所管が分かれているということでかえって手間と暇がかかるだろうというようなことで、これはかえって特定事業者に負担をかけることになりかねない、それで国家公安委員会による調査というのを書いてあるわけでございます。

 その際、この十七条の第四項、第五項に書いてございますように、この行政調査のうち、立入検査につきましては個別に国家公安委員会の決裁をいただく、そして国家公安委員会がその承認をしようとするときは、その所管の行政庁に対してその旨を通知して、通知を受けた行政庁は国家公安委員会に対して協議を求めることができるということで、その一つの事業者に対して幾つも、きょうは所管の行政庁が来て、あしたは何かどこかの警察が来るというようなことはないように、非常に慎重に、かつ客観性を担保するような仕組みにしておるわけでございます。

吉井委員 いや、要するに、意見を申し述べることができる、その意見を述べるために調査を国家公安委員会が警察にさせることができる。そしてその国家公安委員会に、今おっしゃったけれども、いろいろ国家公安委員会をきちんと開いてというんだけれども、その事務局は警察庁なんですよ、実質的に。警察庁が段取りをして、国家公安委員会がこれを指示して、そして警察による調査が入っていく、そこには実質的に直罰がある、そういう体系のもとで捜査令状なくこの調査をやっていくことができるという仕組み、これは間違いないんじゃないですか。

米田政府参考人 この調査というのは、意見を陳述する必要の限度においてということで、これはまさに意見を述べるのみのための調査でございまして、もう捜査とは全く関係がないわけでございます。

 ましてや、この法体系の中では、普通はこの手のことが問題になるのは、事業者の義務違反に対して罰則もついている、行政処分の対象にもなる、両方がある、そうすると、その行政調査と捜査の関係はどうなのかということが過去問題になったわけでございますが、この法体系においては、事業者の義務違反に対して罰則がそもそもついておりません。したがって、捜査との混同ということも本来問題にならないというものでございます。

吉井委員 もともと、この十三条、報告、十四条、立入検査、それから十五条の行政指導、十六条の是正勧告というふうに、普通の行政庁にもちゃんとこれがあって、それに従わないときにはちゃんと罰則もついているわけですね。それに対して警察の場合は、これまでから、疑わしいということだけで簡単に警察権力を行使して捜査ということはないわけですよ。これは、やはり警察権力というものが非常に強大になった場合のこともいろいろな問題がありますから、ですから、憲法上、令状主義というものがきちっとされているわけですね。

 ところが今度は、その今までの体系とは違う体系を持ち込んできているんですね。なかなか頭のいい人がよく考え出したなと思うんですけれども、この十七条一項、二項、三項、そして罰則の規定の二十四条、これらを組み合わせることによって、実質的には直罰は加わりますよと。直罰の加わる、そして令状の要らない警察の捜査の仕組みというものをつくってきているというところは、私は、これまでの法律の体系とは随分違うものになってきていると思うんですよ。

 それで大臣、法律の枠組みを変えてしまうという問題なんですけれども、弁護士等五士業に対する疑わしい取引の届け出義務を、当面これは見送ったわけですよ。しかし、これまでのこの委員会での議論の中でも、弁護士を加えるかどうかは引き続き検討する、こういう答弁が繰り返し行われておりました。当面見送ったんですが、五士業を特定事業者と規定したわけですね。規定の方では、特定事業者として弁護士を含めて五士業入っているわけですよ。

 これは、一つは特定事業者を密告制度の大枠に乗せてきているものと言わざるを得ないと思うんですが、今回は弁護士を外しても、FATFのことし秋と言われている日本の勧告の履行状況審査によって、弁護士も加えようという発言があったからということでもって、将来的にこれが追加されるかもしれない。一度密告制度の枠組みができると、そういう問題が出てくるということをやはり考えなきゃいけないと思うんですね。

 だから、これは大臣は本来国家公安委員会の委員長であって、事務局の警察庁とは違うところに本来あなたはいなきゃおかしい人だから、大臣としては、やはり警察権限のこれまでにない拡大とか密告制度の導入というものについて、あるいは憲法の令状主義に穴をあけるやり方については、やはりこういう枠組みでいいのかということをきちんと考えなきゃいけないと思うんですね。

 大臣の考えを伺いたいと思います。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 私は、今回の法律が密告制度だとは全く考えておりませんし、警察が捜索するような中身になっているとも思っておりません。これはいわゆる一般の行政調査でございまして、先ほど来より部長から説明いたしましたように、所管をどこにするかという議論の中で新しい所管場所として国家公安委員会というものが選ばれたという中での動きでございます。

 それともう一つは、国家公安委員会が所管をする、その補佐として警察庁が動くということは、従来のいろいろな便宜的な方法をとるのではなくて、しっかりと警察法の解釈に基づいた役割分担の中で決めていこうということで、警察法五条三項の仕事として国家公安委員会としてこれを考えていこうという中での動きでございます。決して、密告を助長するためとか、あるいは警察の権力を拡大するためにこういう法律をつくったものではないということは強調しておきたいと思います。

吉井委員 届け出をして、届け出をしたことを漏らしちゃいけないわけですから、これは密告なんですよ。

 それで、マネーロンダリング対策を国際的に連携してやっていくのは、これは必要なことだと思っているんですよ。ただ、マネーロンダリング対策だということを理由にして警察権限の拡大ということになっていったら、これはやはり筋が違う。先ほど川内議員からも紹介ありましたように、鹿児島の例とか、警察権限の拡大の中でいろいろな問題が出てきて、現に取り返しのつかない人権侵害が行われた事例なども幾つもあるわけですから。だから、警察権限の異常な拡大というものは国民の権利と自由を制限することになってきます。

 国民の権利や自由が制限されるという問題については必要最小限でなければならないというのが憲法の原則です。新しい立法を行うときにはこのことを最大限尊重しなきゃならないというのが憲法十三条なんですが、それを、法案の二十四条では一年以下の懲役、三百万円以下の罰金またはこれを併科するという罰則つきで、十七条二項の指示を受けた警察が令状なしに強制調査をする。これはもともと、立法に当たって考えなきゃいけない国民の人権の最大限尊重という憲法の規定からしてもそうですが、憲法の令状主義の立場からしても、やはりこういう法律の組み立て方というものについては、大臣、私は根本的に考え直す必要があると思うんです。

 もう一度、大臣のお考えを聞いておきたいと思います。

溝手国務大臣 まず冒頭に、吉井委員とお互いに確認したように、人権を尊重し、国民に対して犠牲を強いるような法律であってはならない。そういう立場には立たないということは申し上げたところですが、今回の法案というのは、先ほど申し上げましたように、いわゆる警察の権限を拡大しようというものではなく、国際犯罪に対してしっかり立ち向かっていこうという趣旨の法律でございます。

 そして、令状の問題を御指摘でございますが、今までもいろいろなケースで、令状がなくて調査に入るということはさまざま法律でもあったことでございまして、特に今回、これを利用して警察の捜査権を拡大していこうという何物もないということははっきり申し上げておきたいと思います。

吉井委員 冒頭に確認したはずのことと大分違うところへ行っているから私は言っているんです。マネーロンダリング対策を国際的に連携してやっていくのは当たり前の話なんですよ。しかし、そのことが日本国憲法や国際的な人権を守る基準に照らして、そこと食い違うようなものになっちゃいけないし、だからこそ、これはこれまでの金融庁から警察庁に移さなくても、金融庁のままでやっても、あるいは法務省でやっても、必要な人々を集めて体制をとることによってやっていけるわけなんです。

 それを、そうじゃなくて、今私が問題にしました十七条の一項、二項、三項、そして二十四条のこの仕組みの中で、今度の新しい、令状なしで捜査できる、直罰を背景にして捜査できる、こういう仕組みを導入するということは大変問題がある、このことを指摘いたしまして、時間が参りましたので、きょうの質問は終わりたいと思います。

河本委員長 次回は、明二十三日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時二十一分散会


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