衆議院

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第11号 平成19年4月11日(水曜日)

会議録本文へ
平成十九年四月十一日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 河本 三郎君

   理事 木村  勉君 理事 戸井田とおる君

   理事 西村 康稔君 理事 平井たくや君

   理事 泉  健太君 理事 松原  仁君

   理事 田端 正広君

      あかま二郎君    赤澤 亮正君

      飯島 夕雁君    遠藤 武彦君

      遠藤 宣彦君    岡下 信子君

      木原 誠二君    桜井 郁三君

      高鳥 修一君    谷本 龍哉君

      寺田  稔君    土井  亨君

      長島 忠美君    丹羽 秀樹君

      西本 勝子君    林田  彪君

      原田 令嗣君    松浪 健太君

      小川 淳也君    小宮山洋子君

      佐々木隆博君    横光 克彦君

      鷲尾英一郎君    渡辺  周君

      石井 啓一君    佐々木憲昭君

      吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣         渡辺 喜美君

   内閣府副大臣       林  芳正君

   経済産業副大臣      渡辺 博道君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   内閣府大臣政務官     谷本 龍哉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大藤 俊行君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  鈴木 正徳君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   藤岡 文七君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  清水  治君

   政府参考人

   (財務省大臣官房参事官) 香川 俊介君

   政府参考人

   (財務省国際局次長)   玉木林太郎君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房政策評価審議官)       中尾 昭弘君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            近藤 賢二君

   参考人

   (株式会社日本総合研究所理事)          翁  百合君

   参考人

   (株式会社大和総研経営戦略研究所主任研究員)   中里 幸聖君

   参考人

   (全国中小企業団体中央会会長)          佐伯 昭雄君

   参考人

   (阪南大学流通学部教授) 桜田 照雄君

   内閣委員会専門員     堤  貞雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  嘉数 知賢君     鈴木 淳司君

  木原 誠二君     松本 洋平君

  谷本 龍哉君     金子 恭之君

  中森ふくよ君     並木 正芳君

  市村浩一郎君     河村たかし君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     谷本 龍哉君

  鈴木 淳司君     嘉数 知賢君

  並木 正芳君     関  芳弘君

  松本 洋平君     木原 誠二君

  河村たかし君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  関  芳弘君     中森ふくよ君

同月十一日

 辞任         補欠選任

  嘉数 知賢君     原田 令嗣君

  中森ふくよ君     飯島 夕雁君

  村上誠一郎君     西本 勝子君

  市村浩一郎君     鷲尾英一郎君

  吉井 英勝君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     高鳥 修一君

  西本 勝子君     丹羽 秀樹君

  原田 令嗣君     桜井 郁三君

  鷲尾英一郎君     市村浩一郎君

  佐々木憲昭君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  桜井 郁三君     長島 忠美君

  高鳥 修一君     あかま二郎君

  丹羽 秀樹君     村上誠一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     中森ふくよ君

  長島 忠美君     嘉数 知賢君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 株式会社日本政策金融公庫法案(内閣提出第四六号)

 株式会社日本政策金融公庫法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第四七号)


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     ――――◇―――――

河本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、株式会社日本政策金融公庫法案及び株式会社日本政策金融公庫法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、株式会社日本総合研究所理事翁百合君、株式会社大和総研経営戦略研究所主任研究員中里幸聖君、全国中小企業団体中央会会長佐伯昭雄君、阪南大学流通学部教授桜田照雄君、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。両案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 翁参考人、中里参考人、佐伯参考人、桜田参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、翁参考人にお願いいたします。

翁参考人 日本総合研究所の翁と申します。よろしくお願いいたします。

 本日は、日本政策金融公庫法案について意見を述べさせていただきます。

 一九九〇年代以降の不良債権問題は、バブル崩壊後十年以上の長い期間にわたって日本経済の大きなおもしになっていました。しかしながら、その長い困難な期間に多くの企業が、大手、中小を問わず、従来の右肩上がりの高度成長期の発想で行われていた経営を抜本的に見直しました。すなわち、人口が減少し、少子高齢化が進み、グローバル化した日本の経済環境にふさわしい企業となるべく、事業の選択と集中を図りました。日本企業の多くは、こうした抜本的な事業のリストラとそれに見合う財務リストラを行い、過剰債務を解消し、筋肉質の企業へと再生しました。

 その一方で、金融機関も不良債権を処理してまいりました。特にここ数年は、企業の再生を後押しし、金融機関自体の収益も回復し、リスクテーク能力も回復してまいりました。最近発表されました日本銀行の金融システムレポートでも、銀行の金融仲介機能は、資本制約が緩和したことによるリスクテーク能力の拡大を背景に引き続き向上している、銀行の貸出先や貸し出し形態の多様化も進み、金利や信用コスト変化への頑健性も引き続き向上していると評価しています。

 こうした環境の中で、このたび、長い間必要と言われてきた政策金融の改革が行われることは、日本の金融市場発展のためにも極めて重要なことだと考えております。

 従来、高度成長期においては、財政投融資は重要な役割を果たしてきましたが、その見直しはおくれていました。今回ようやく、その入り口であった郵便貯金が民営化され、財投の出口の大宗であった政策金融改革が行われることによって、成熟社会にふさわしい、スリム化した公的金融に変化する契機になると思います。また、行政改革という観点からも、小泉政権における特殊法人整理合理化計画において、金融危機において長く先延ばしになっていた最後の宿題に対する答えであるとも位置づけられると思っております。

 私は、今回の改革で、特に二つの点を評価しております。一つ目は、時代の変化に合った形で、政策目的の観点から見直しを実施し、政策金融の必要な分野を限定することとしたこと。二つ目は、民間にできることは民間にという官民活動分担の観点からも、証券化やデリバティブなど金融技術の発展によって可能となった、いわば今まで一緒になっていた金融機能の束を分解する、よくアンバンドリングというふうに言いますが、この発想を入れて、政策金融の手法自体を見直すという改革が行われようとしていることです。

 今回、新しく統合される新政策金融機関について、三つのことについて意見を述べたいと思います。第一は、的確に業務を実施し、効率的に運営されるということ、第二に、民間金融との補完関係を継続的に工夫していくということ、第三に、情報開示を徹底し、政策評価が着実に行われるということでございます。

 まず第一の、的確な業務の実施と効率的な運営についてでございます。

 今回、政策的に必要と考えられる分野についてのみ業務が継続実施されるということになりました。日本政策金融公庫につきましては、例えば、今後も零細企業や中小企業の特別貸し付けなど、政策目的の観点から必要と分類された分野については適切に機能していくことが求められると思います。そのためには、対象先の審査を厳密かつ的確に行い、適切なモニタリングを実施し続けるということが必要なことは言うまでもないと思っております。

 特に、今後は、貸出先が何らかの問題を抱えていたり、また、生産性が低く再生が必要と判断される場合には、そうした問題を先送りする融資対応ではなく、企業を早目に再生、自立させていく方向で支援することが求められると考えております。そのためには、新しい日本政策金融公庫の職員の方々が、企業に対する目ききの力を磨き、それを蓄えて、デットガバナンスをきかせることによって多くの中小零細企業の活性化を後押ししていただきたいというように思っております。

 効率的運営という観点では、今回は、ばらばらに経営されていた四つの機関が統合するわけです。政策金融機関が一つになるという好機を生かし、間接部門の徹底的なスリム化、給与体系の見直し、福利厚生施設などの資産の売却、支店の統廃合などを速やかに行うなどの効率化を図ったり、証券化ノウハウを共有するなど統合に伴うシナジー効果を上げていっていただきたいと思っております。この点、能力のある経営陣を選任し、ガバナンスを確保し、こうしたリストラ効果を公表して、国民に開示していくということが欠かせないと思っております。

 第二の、民間部門との補完関係のあり方についてでございます。

 今回の改革は、政府系金融機関による融資残高全体を半減していくという目標に加え、日本政策金融公庫については、証券化やデリバティブを活用して、公的部門が一部リスクを負担するということによって民間のリスクテークや資金提供を促そうという発想になっているようにうかがわれます。証券化や保証業務に関しましては、日本政策金融公庫の関与は部分保証とされていますが、官民の役割分担の観点から、その時点その時点で、民間がどうしても担えないリスクは何かということを常に検証し、政府系金融機関はその部分に限定してリスク負担をするということをしていただきたいというように思います。そうすることによって、今まで政府系金融機関がすべて負担していたリスクを民間プレーヤーにも開放し、民間のリスクテーク能力の向上を促す方向に働きかけていくことが必要だと思っております。

 また、従来、政府系金融機関は、農業など民間ではなかなか融資できない特殊性を持つと言われてきた産業について融資を実施してきました。しかし、すべての産業は、多かれ少なかれさまざまな特殊性を抱えているわけで、今やこうした産業にも、銀行や協同組織金融機関だけでなく、ファンドなどの民間プレーヤーも積極的に投融資をするようになってきていると思います。その意味でも、今後、政策金融公庫は、民間金融機関と対峙するというのではなく、民間に対してそうした産業に関する情報の提供やノウハウの移転などを図っていただき、民間のプレーヤーのリスクテーク能力を高め、市場を育成するという観点を欠かさないようにしていただきたいと思います。

 一方で、民間プレーヤーも、政策金融が撤退する分野について、積極的かつダイナミックにリスクテークをしていく姿勢が求められるということは言うまでもないと思っております。

 重要なことは、将来にわたって、その時点その時点での政府系金融機関の役割を固定的に考えるべきではなく、日本政策金融公庫は、民間のノウハウを高めて、民間のプレーヤーのリスクテーク能力を向上させるための触媒となる必要があるということだと思います。

 最後に、第三ですが、政策評価や情報開示の観点です。

 政策評価に関しては、各政策ごとに、各機関で培われた政策評価の手法をさらに充実させ、有効性などの観点から厳密に評価を行うことが重要だと思います。一方、金融技術は日進月歩でありますし、民間との役割分担という観点からの政策評価も重要です。対象分野や手法など、常に不断の見直しを継続的に実施していく体制をつくることが重要だと思います。

 日本政策金融公庫は民間と同様の開示を行いますが、市場の一プレーヤーとしての責務だけでなく、我が国唯一の政府系金融機関としての市場に対する説明責任の観点から考えても、民間並みの会計情報、リスク情報、そしてリスク管理手法についても情報開示を行い、透明度の高い経営を行うことが欠かせないと思っております。

 今回、本法案で、政策金融が民業補完と位置づけられましたが、今後、民間投資家や金融市場のプレーヤーの価格発見能力を高め、成長性のある分野、真に政策的に必要な分野に資金が提供され、我が国の経営資源の効率的な資金配分がなされていくことが求められていると思います。今回の改革を契機に、金融市場におけるよりよい官民の関係が構築され、日本経済全体が活性化していくことを望みたいと思っております。

 以上で終わらせていただきます。(拍手)

河本委員長 ありがとうございました。

 次に、中里参考人にお願いいたします。

中里参考人 大和総研経営戦略研究所の中里と申します。きょうはよろしくお願いします。

 私は、企業アナリスト、エコノミストを経て、官民の役割分担再構築という観点で今いろいろと調査をしております。きょうはそういった視点から、政策金融機関の独立性とガバナンスというテーマで御報告させていただきます。

 最初の方は経済学的な話なので、経済学を学んだ方にとっては復習になるような部分もあるかと思いますが、そうした観点で聞いていただければと思います。

 まず、経済学的に見て、経済活動に政府が介入することが正当化されるのは、市場の失敗が存在する場合です。市場の失敗としては、不完全競争、情報の非対称性、外部性、規模の経済性、不公平性が挙げられますが、特に政策金融という観点では、情報の非対称性が重要になります。

 一方、政府の方ですけれども、そうやって正当化できる介入を実施する政府自身は、やはり万能ではなく、政府の失敗というものが発生し得ます。政府の失敗としては、配分の非効率性、配分の不公平性、経営の非効率性などが挙げられます。

 政策金融機関は、戦後の復興や高度成長期には非常に日本経済に貢献したわけですけれども、経済の成熟化、あるいは金融市場安定化に寄与する各種の制度整備、また金融技術の進歩等によって市場の失敗の方が相対的に小さくなる一方で、社会経済環境変化への対応スピード等によって政府の失敗の問題が相対的に大きくなっているというのが、今回の政策金融改革が行われた背景にあると考えております。

 市場の失敗を補完するための政策的介入が政策金融機関の機能なわけですが、やはりコストは少ない方がいいわけで、政府の失敗を防止する必要があると思います。

 政策金融の目的は、政府が持つ徴税権や税収を用いた出資や補助などを通じて、先ほどの市場の失敗であらわれる情報の非対称性というものを解消するために情報生産活動を促して、そうでなければ融資がされなかったであろうような健全なプロジェクト、あるいは国民経済にとって重要なプロジェクト等に資金提供が行われるようにすることが、政策金融機関の役目というか目的だと思います。

 そういう役目がある一方で、政府の失敗が存在するわけですから、そこのところを何とか最小化しなければいけない。そういうことは、理論的には、情報開示や精査、あるいは経営責任の追及などにより可能というふうに考えられます。

 しかし、実際には、政策金融が果たしている役割というものを適切に評価するのはなかなか難しい。幾らかかったというコストは数値的に把握できるんですけれども、その政策金融によってどれだけ便益が発生したのか、こういうような部分は、なかなか適切な評価は難しいわけです。

 また、先ほど精査とか経営責任追及などの話をしましたけれども、国民による監視というのがなかなか行われにくい。国民一人一人は影響力がそんなに大きくないので、どうしても監視するインセンティブというのが持ちにくいという状況です。

 そういうような状況なので、そういう政府の失敗の問題が発生する構造等を改善して、政府活動の質を引き上げることが重要であるというふうに考えます。

 そういった場合にどういう方策が考えられるかというときに、政府からの一定の独立性と、その一方で、政策目的の的確な反映がほどよくバランスされるようなガバナンスの仕組みを構築することが重要と考えます。

 政府の失敗というのは、政策金融を実施する機関と政府との距離が近いゆえに起こる問題ではあるわけですけれども、一方で、政策金融の目的から考えますと、政策の一部であるわけですから、政府との距離は近くなければいけない。こういったジレンマを解消するような工夫というのが必要になります。

 政府による経済活動を実施する組織の独立性を高めることというのは、政府の失敗を緩和するための試みの一つであると考えます。ただし、実施組織に対し政府からの完全な独立性を与えてしまえば、これは単なる民間企業と一緒になってしまうので、政策金融という目的が無意味になる。だから、適切な距離を保つガバナンスが重要と考えます。

 そういった構築の概念としては、経済効率性とか専門性の発揮を追求するマネジメント機能と、そのマネジメント機能の部分を監視し政策目的との整合性を監督するガバナンス機能、これらを分離したシステムというのが一案ではないかというふうに考えられます。今回の法案の六条の中でも、「役員等」のところに取締役会、執行役員、監査役と書いてありますので、ある程度そういうことが想定されているのかと考えております。

 そういったいろいろな仕組みを考える場合に、諸外国の政策金融機関とか、あるいは広義の公的な金融関連組織、日銀なんかとかあるいは年金積立金管理運用独立行政法人等は政策金融とはまた目的が違うわけですけれども、金融を専門とする政府関連の組織であるというところのガバナンス体制の先行事例を参照すればよいのではないかと考えられます。その場合、例えばドイツ復興金融公庫というのは、監督部門である監事会には、財務大臣などの関係諸大臣のほか、連邦参議院、連邦議会、金融機関、産業界、労働組合など各種のステークホルダーが入っておりまして、そういった政策金融の目的を果たすための工夫がされていると思われます。

 最後、まとめになりますが、政策金融が期待される役割を効率的に果たすことができるようにするために、ガバナンス体制の工夫が重要である。そういったときに、意思決定や監督の面では、民間の関係機関、金融界もそうでしょうし、産業界もそうだと思いますし、いわゆる融資を受ける方々もそうだと思うんですけれども、そういった意見も踏まえながら、政府がどう役割を果たすかということの視点が重要となります。

 また、執行する場合、実際にどこに融資をするかとかどこに出資するかとか、そういうような執行部分については、政府による介入というのが最小限となるようにするとともに、非効率な経営を抑制するために、そういった経営者の経営責任が問えるような仕組みを導入することが、政府の失敗を最小化するのに役立つと思われます。

 なお、今回の法案では、予算、決算あるいは定款変更等について国の監督が規定されておりますけれども、これらに加えて、政策金融機関そのものの中に、そういった監督機能あるいは効率的な執行機能というのを埋め込むような工夫が必要と思われます。こちらは、今回の法案そのものというよりも、その後どういうふうに定款を定めるかとか、具体的なシステム構築の中で必要になってくる部分だと思います。

 また、一機関へ統合することによって、政策資金の配分に関する意思決定が集中的に行われるようになるであろう、またその意思決定プロセスを明確にすることができるようになるだろうというところを実現することが、この統合のメリットを生かす視点ではないかと考えております。

 私からは以上です。

 どうもありがとうございました。(拍手)

河本委員長 ありがとうございました。

 次に、佐伯参考人にお願いいたします。

佐伯参考人 全国中小企業団体中央会の会長の佐伯でございます。

 先生方には日ごろ中小企業の振興、発展のために一方ならぬ御尽力をいただきまして、厚く御礼を申し上げます。また、本日、意見を述べる機会をいただきましたことに対して、厚く御礼を申し上げる次第でございます。

 全国中小企業団体中央会のもとには、全国津々浦々、あらゆる業種がありまして、中小企業者が設立した多くの中小企業の組合がございます。現在、中央会の構成メンバーは約三万二千の中小企業の組合、それからその組合の傘下に三百五万の中小企業が参画しております。我が国中小企業の約七割が結集しているという中小企業の団体であります。

 私自身、昨年五月の行革推進法の審議の際にも、行政改革に関する特別委員会で意見を述べさせていただいたところでございますが、今回また、中小企業の立場から、政府系金融機関のユーザーの立場から意見を述べさせていただくということでございます。

 まず初めに、中小企業金融における政策金融の役割ということについて申し上げたいというふうに思います。

 我が国企業の九九・七%が中小企業であります。しかも、製造業の出荷の五割、卸売業の六割、小売販売額の七割のウエートを占めております。雇用の七割というのも中小企業であります。

 我が国経済を支える底力であり、雇用の担い手である中小企業の多くは、依然としてまだまだ厳しい状態であります。大企業との業績格差、それから地域間の格差、まだまだ拡大をしているということでございますが、このような状況の中で、経営の革新を目指してコスト削減に努め、従業員の雇用を守る日夜懸命な努力をしているというのが中小企業の現実の姿でございます。

 我々中小企業というのは、バブル崩壊後、民間金融機関から一夜にして手のひらを返すような仕打ちを受けて、民間金融機関に対する不信感はいまだに払拭し切れないというところでございます。このような苦しいときに我々に手を差し伸べてくれたのが、中小公庫、国民公庫あるいは商工中金等の中小企業向けの政府系金融機関でございました。中小企業を育てるという姿勢を持って、親身になって我々を支えてくれたおかげであると感謝をしているところでございます。

 今回の政策金融改革に当たって、私のところには、全国の中小企業の方々から、統合後も中小公庫及び国民公庫が担ってきた中小企業のための金融機能を継続してほしい、あるいは、統合後、新公庫において中小企業向けの金融機能の重要性が低下して、我々中小企業が切り捨てられるんじゃないかというような不安の声が多く寄せられております。先生方におかれましても、そういった中小企業の生の声に耳を傾けていただき、そのような不安を取り除いていただきたいというふうに思っております。

 第二に、財政支援一般について申し上げます。

 中小企業向け金融の維持のために、財政措置の確保が必要不可欠であると考えております。新公庫による中小企業向け貸し付けについては、行革推進法の衆議院及び参議院の附帯決議において、中小企業者の資金の、質、量ともに的確にこたえる旨が記載されております。これまでのとおり、質的にも量的にも十分な対応が可能であるよう、しっかりと財政支援をお願いしたいというふうに思っております。

 第三に、一般貸し付けの廃止についてでございます。

 今回の新公庫法案において、中小公庫の一般貸し付けが廃止され、中小企業に関する重要な施策の目的に従って貸し付けが行われる長期資金に限定するというふうなことになっております。この点に関しましては、行革推進法の附帯決議を踏まえて、今後の金融情勢に応じた、新たな政策分野に対して機動的な制度の創設とか拡充とかそういうことを行うことによって、中小企業者に対して必要な資金がしっかりと供給されるようにしていただきたいというふうに思うわけです。

 第四に、数値目標でございます。

 貸付残高の目標については、対GDP比半減を平成二十年度中に実現するということが行革推進法及び制度設計に決定されております。この達成に向けて、商工中金の民営化とか今回の政府系金融機関の統合等、政策金融改革に取り組んでいるところだと思っております。

 一方、この貸付残高については、新たな数値目標の設定についていろいろ議論があるように思われますけれども、経済は生き物でございまして、バブルのようなときもあれば、貸し渋り、貸しはがしが行われる時代もあります。あらかじめ機械的な数値目標を設定しますと、経済金融環境の変化とか資金のニーズに応じた機動的な資金調達に支障が生じかねないという懸念をしております。

 したがって、貸付残高の数値目標については、新たな目標をつくるのではなくて、行革推進法及び制度設計で決められた内容を着実に達成するということに注力していただきたいというふうに思っております。

 最後に、危機対応について申し上げます。

 新公庫による金融危機や災害、テロリズムなど危機時対応において、中小企業にとってはそういった苦しい状況における金融こそがまさに命の綱であります。これまでどおりセーフティーネットの機能が維持されることとなるよう、十分な配慮をお願いしたいというふうに思っております。

 新公庫自身がこれまでどおりの対応を行うことは当然のことと思いますけれども、さらに、今回の新公庫法案で新たに設けられる危機対応制度について懸念をしている点がございます。商工中金の完全民営化など、今回の政策金融改革によって縮小している部分があります。新公庫のみでは対応ができないんじゃないかという金融を危機対応体制の中で確保していただくという必要があると思います。

 そのため、まず第一に、危機の範囲について、取引企業の倒産、大雨の災害とか鳥インフルエンザ、貸し渋りなどにおいても、中小企業にとっては危機となりますので、危機の範囲を狭くすることなく危機対応の発動をお願いしたいというふうに考えております。

 第二に、申すまでもないことですけれども、危機時における迅速な資金の供給が必要でありまして、危機対応の発動の際に、政府内部での手続に時間がかかってしまい、中小企業向けの資金供給がおくれてしまうということがないような迅速な手続をお願いしたいというふうに思っております。

 第三に、危機対応制度を活用した指定金融機関による中小企業への資金供給が、商工中金等がこれまで行ってきた危機対応と同等の水準の条件や範囲で十分行われるよう、新公庫によるリスク補完措置のために必要な財政措置をしっかりと用意していただきたいというふうに思っております。

 以上、申し上げました意見について、ぜひとも御配慮いただきますようお願い申し上げて、私の発言を終わりたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

河本委員長 ありがとうございました。

 次に、桜田参考人にお願いいたします。

桜田参考人 おはようございます。阪南大学流通学部の桜田と申します。

 本日は、この委員会におきまして意見を述べさせていただく機会をちょうだいし、まことにありがとうございます。早速ですが、私の意見を述べさせていただきます。

 時間の制約もございますので、私は、この二つの法案について、主として中小企業向け、中でも小規模商工業者向け融資という観点から意見を述べさせていただきたいと思います。

 また、この法案は、国民生活金融公庫など四つの組織を解散して政策金融公庫に統合することとされておりますので、国民生活金融公庫が従前果たしてきた役割を顧みながら意見を申し述べたいと思います。

 御承知のように、従前の国民生活金融公庫法や中小金融公庫法は、それらの第一条において設立目的を明らかにしており、そこでは、必要とする資金について、「一般の金融機関からその融通を受けることを困難とする国民大衆」あるいは「一般の金融機関が供給することを困難とするもの」を対象に事業が営まれてきました。

 法案では、政策金融機能の限定が民業補完とともに設立目的にうたわれておりますが、そうした市場の原理や原則にのってこない困難を抱えた業者が排除されることがあってはならないと考えます。

 ところで、小規模商工業者は、一面では企業でありつつも、同時に、事業活動そのものがなりわいであって、生活そのものです。こうした地域に根差した事業を営む人々が地域経済を下支えし、この生活者たる事業者という二面性が、小規模商工業者の特徴を示しております。したがって、その対策においては、技術的なあるいは経営的な基盤をつくっていくための施策とともに、なりわいとして事業を営む以上、安定ということに十分配慮した施策が必要であろうと考えます。国民生活金融公庫は、幾つかの問題を含みつつも、全体として見れば、こうした小規模商工業者の安定に寄与してきたと思います。

 かつては、全国にあまねく広がった二万六千もの郵便局というネットワークを活用して集められた零細な資金が、財政投融資という仕組みを通じて、国民生活金融公庫法第一条に言う一般の金融機関から資金の融通を受けることを困難とする国民大衆に貸し付けられてきました。国民生活金融公庫の貸付実績を見れば、従業員数二十人未満の貸出先が全体の九五%を占めており、小口融資を通じて小規模な商工業者の経営等に寄与してきたことは事実であります。こうしたいわば民から民への金融ネットワークは国民共通の財産であったし、小規模商工業者にとっての国民生活金融公庫は最後のとりでともいうべき役割を果たしてきたと言ってよいと思います。

 今般の政府系金融機関の再編に見られた議論を振り返ってみますと、おおむね以下のような四つの理由から再編案がまとめられてきたように思います。

 一つは、国民の貯蓄を原資としている以上、事業収入によって元利返済を行うのが原則であるから、政府系金融機関は黒字経営でなければならないし、一般会計から収支差補給金を受けなければならない、事業を継続できないような金融機関は、もはや金融機関とは言えないという考えがあります。

 第二は、政府は政府系金融機関に出資を行っているが、この出資金の見返りに政府が配当、すなわち国庫納付金を受け取ったケースがまれだったこと。つまり、出資金とはいうものの返済期限の定めのない無利子融資と同じであるという考え。

 第三は、赤字になれば収支差補給金で穴埋めされるという経営構造では経営規律を欠くことになり、政府系金融機関はその歴史的な役割を終えたのだという考え。

 第四は、政府系金融機関が低利で相当規模に直接貸し出しを行うことが、場合によっては、民間金融機関がリスクに見合った適正な金利を設定できず、結果として市場における自由な金利形成を阻害する要因の一つとなっている可能性があるという考え。

 これら四つの考えは、いずれもそれぞれに一定の根拠を備えたものであるとはいえ、国民生活金融公庫を例にとれば、一九九〇年度から二〇〇四年度までの十五年間の一般会計から公庫への収支差補給金の合計額は約六千億円であります。一年間に引き直せば四百億円という数字になります。地域経済や小口融資への貢献という観点に照らして、こうした規模の補給金を今日の日本社会が、不合理なもの、不効率なもの、歴史的役割を終えたものとして処理しなければならないのだろうかという疑問が私にはあります。

 リスクに見合った適正な金利をという考え方についても、そこでのリスクというのは、貸し出しの個別的で具体的な諸条件、つまり、リスクの算定には担保評価額や回収可能額の算定が不可欠ですが、これらの算定に当たっては、個別的で具体的な諸条件が絡み合い、さきの銀行決算で業績が急回復した銀行の実態を見ると、引当金の過剰部分の戻り益が大きく利益を押し上げたケースが都銀大手行でも見られました。この事実は、いまだ日本の銀行が、リスクの算定やリスクの管理に習熟しなければならない部分を残していることの証左だと考えます。したがって、市場規律を過大に評価してはならないと思います。

 現場の貸し出し担当者のところで、リスクという定量的な計数に依存した貸し出し判断力が形成されていくことは、なるほど業務の効率化やコストの削減には役立つかもしれません。ですが、懸念すべき点があるようにも思います。

 それは、かつての銀行マンが備えていた、みずからが担当した貸し出しを最も確実に返済してもらう最大の保証は貸出先にきちんとした収益を上げてもらうことであって、そのために自分自身が培ってきた知識や経験をフルに活用し、貸出先をサポートしていくという、そうしたきめ細やかな営業活動を担う銀行マンの能力が損なわれはしないだろうかという懸念であります。

 今、日本のあちこちの地域で経済的な衰退が取りざたされています。地域経済を活性化させる上で、金融機関が果たす役割は極めて重要です。地域経済を活性化するには、地域内での付加価値額が増大するように産業の連関をつくり上げ、そこで生み出された社会的余剰を地域内に還元する仕組みが必要になります。

 その際、重要な役割を果たすであろう、生活者たる事業者との性格を備えた小規模商工業者を、金融面だけでなく、経営ノウハウの提供など経営面からもサポートする仕組みが必要だと考えたとき、この二つの法案が、従前の資金の融通ないしは供給という目的から資金調達の支援へと目的を変更したこと、並びに、法案化の過程で前提となった市場規律や民業補完という考え方が強調されればされるほど、そうした小規模商工業者が排除される懸念が払拭できないこと、また、小規模商工業者にはやはり独自の施策が必要との考え方から、私は、この法案に対して反対の意見表明をさせていただきます。

 以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

河本委員長 ありがとうございました。

 以上で各参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

河本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原誠二君。

木原(誠)委員 自由民主党の木原誠二でございます。

 本日は、参考人の皆さんに対する質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。そしてまた、四人の参考人の皆様には、大変お忙しい中、貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。

 大きく二つに分けて少し御意見を伺いたいな、このように思っております。前半は、今回の政策金融改革というのが、日本の経済にとって、とりわけマクロ経済という観点からどんな影響があるのかということについて、翁参考人あるいは中里参考人を中心にちょっとお伺いをしたいな、後半は、中小企業の点について、佐伯参考人そしてまた桜田参考人にお話を伺いたいな、こんなふうに思っております。

 翁参考人の方から、今回の政策金融改革、資金の流れを官から民へ流し、そしてまた行政改革にも資する、そういった意味で、とりわけ今、金融界が不良債権処理というものから脱却をした中で、恐らく時宜を得た、大変いいタイミングの、そしてまた日本経済にとっていい影響が出る改革、こういう評価だったのではないか、このように認識をしております。

 せっかく、まさに日本を代表する二大シンクタンクからきょうは御意見を伺っておるわけですので、よろしければ少し、日本のGDPに対して今回の政策金融改革というのがどの程度影響を与えるのか、プラスの効果をどんな程度与えるのか、あるいはどんな経路で与えるというふうに御認識をされているのか。定量的に分析がされているのであれば、教えていただきたいと思いますし、もし、されていない、まだこれからなんだということであれば、どんな経路が考えられるかということについて定性的な御説明でも結構です、翁参考人と中里参考人から、簡単に御紹介いただければというふうに思います。

翁参考人 今お尋ねのマクロ経済への影響ということでございますが、政策金融の改革は、短期的な話と中長期的な話と両方あると思います。

 短期的には、今回見直しをいたしましても、例えば分野の縮小とかそういうことをやりましても、それはいっときに、すぐに影響が出てくるものでもございません。先ほどお話をいたしましたように、民間の金融機関の状況が、十年前の不良債権の状況とはかなり異なって、積極的に中小企業とかそういったところにも融資しようという姿勢も見られてきておりますので、短期的にこの政策金融改革が例えばマイナスのインパクトを及ぼすとかそういうことについては、私は、そうではなくて、むしろ、民間がそれにダイナミックに対応することによって、継続的に政策金融の、例えば先ほどお話がございました中小零細企業とか、そういったところについてもきちんと対応がされていくものというように思っております。

 中長期的な観点からは、先ほど申し述べましたように、政策金融改革、今回、政府の役割を小さくしていって、民間の資金提供とか民間のリスク分担、負担ということを促すという方向に働いて、より政府と民間が協調的に金融市場において働いていく。そして、民間のリスクテーク能力が高まっていけば、自然と政府の役割というのは小さくなっていく。そういう形を通じて、民間の投資家も育っていくだろうし、また民間の金融機関の能力も高まっていくという形で、民間主体の金融機能の発揮ということを通じて、資金の需要にこたえたり、または企業の再生に対して適切なアドバイスをするということが、より官民の知恵を生かした形で発揮されていくものというように思っております。

 それから、以前問題になりました危機対応につきましても、今回新しい枠組みというものができましたので、ここでうまく対応していって、官民がうまく協調することによって危機に対しても対応していくというようなことで、マクロ的なショックに対してもうまく対応するような仕組みを機能させていくということが課題であるというように思っております。

中里参考人 先ほどの、GDPについて定量的にどの程度プラスかというのは、まだちょっと具体的な姿が見え切ってはいないので計測はしていませんので、御容赦いただければと思います。

 また、経路的な話については、今翁さんがもうほとんどしゃべられてしまったので私からは余りあれなんですけれども、やはり長期的に見たときに、かなりプラスの影響があるのではないかと思っております。

 かつて、高度成長が始まる前は、米国やヨーロッパなど先進モデルがあったので、そちらのいいところを取り入れていくことが非常に成長を高めるのに役立った。その場合、政策金融などの機能を使って、どこに重点的に投資すればいいかというのはある程度明らかであったと思います。ただ、今や日本は世界のトップランナーですから、かつての英国や今の米国と同じように、いろいろなところに試して、トライアル・アンド・エラーが必要になってくる。そういったときに、やはりそういうトライアル・アンド・エラーというのは政府系の機能よりも民間の方が向いている。そういう意味で、いろいろなところにやっていくために資金を民に流すというのは、トップランナーに入った日本には非常に必要なことだと思っています。

 一方で、危機とかもありますし、あるいは日本の今後の方向性としてどういうところに力点を入れていくか、そういったときには、規制とか補助金などによって誘導するという点ももちろんあるんですけれども、やはり政策金融という機能を政府が確保しておくということはいいと思います。それで、これが一つの機関にまとまることによって、より重点的に、どこに資金を投入するかとかそういうような判断というのが効率的に行われるようになると思います。

 そういう意味では、日本の成長力をさらに高めるために、今回の改革の方向性はいいのではないか。ただ、これを本当にうまく効率的にできるかは、どういうふうに運用していくかという部分かと思っております。

 以上です。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 今お伺いをしておりますと、今回の改革がマクロ経済にどの程度影響を与えるか、もちろん定量的になかなか出しがたいんだろうと思いますので、これから姿が見えたところでぜひ御検討いただきたいな、こう思いますけれども、要は、いわゆる政府系金融機関が抜けた後、どの程度民間の金融機関が本当にここを補っていってくれるのかということについて、後ほどこれは中小企業のところで議論したいと思いますけれども、恐らく、現場の感覚といわゆるエコノミストあるいは政策立案者との間に若干の温度差があるのかな、そんなような印象を持ちながら伺いました。

 私自身は、これも全く定量的ではありませんけれども、今回の改革は、結局のところ、まさに中里先生が書いておられましたけれども、市場の失敗と政府の失敗という、このバランス関係をどういうふうに見ていくのかということに最終的には尽きるんだろうな、こんなふうに思います。

 まさに、市場の失敗というのは、るる御説明いただいたように現に存在するわけでございますし、とりわけ、恐らく中小企業というところには、この市場の失敗というのが現場の感覚として残っている。そういう中にあって、補助金だとか税制優遇措置というよりは、やはり金融的な手法、まさに、お金を借りて、低利でもしっかり返していくんだ、そういう金融的手法というのは今後も残っていくんだろうな。そのことは四人の参考人の皆さんも共通の御認識なんじゃないかな、こういうふうに勝手に考えますけれども、その際に、我々が今回の法案で最も重要視しなければいけないのは、では、一方で政府の失敗をどうやって抑えていくのか。

 まさに中里参考人の方から御指摘いただいたように、あるいは翁参考人からも、明示的にはそういう御指摘ではなかったかと思いますけれども、御指摘いただいたように、例えば、証券化の手法あるいは間接金融的な手法を活用するというのも政府の失敗をミニマイズする一つの方法だと思いますし、あるいは、今回株式会社化したということを通じて、経営のガバナンスを高めるということもまた一つの手法なのかな、こんなように思います。

 ちょっとここで、技術的なことで大変恐縮ですけれども、中里参考人にお伺いをしたいのは、先ほど、ガバナンスを高めるという中にあって、内部に、いわば外部有識者というんでしょうか、それが入るような形が必要なのではないか、これは法案の問題ではなくて定款等々の問題だ、こういう御指摘でございました。

 今回の法案を読みますと、組織自体が会社法にのっとってまいりますし、経営者についても会社法に準じて役員等が選任をされる。他方で、その役員については主務大臣の認可等が及ぶ。あるいは、予算、決算等についても国会の議決が及んでいく。

 そういう意味でいうと、私自身は、ガバナンスということと、それから政策的な一体感というもの、今二点御指摘されたわけですけれども、十分ある程度進んでいるのかな。それに加えて、外部有識者による評価委員会というものも設置をされる、こういうことになっているわけですけれども、内部にもし外部有識者によるものを持たせるということになると、かなりの不効率性というか、監視体制が二重三重に生じるような感じを私自身は印象として受けるんですけれども、もう一度、確認的で恐縮ですけれども、その意義と、具体的にどんなものを想定されるのか、御意見をいただければと思います。

中里参考人 今の点ですけれども、普通の株式会社、いわゆる民間の株式会社でも、最近、委員会設置会社とか、あるいは、監査役会社のままでもそういう外部有識者を取締役に入れるという動きがかなりあります。これはどういうことかといいますと、株主の側から見れば、株主価値の最大化というのを株式会社に求めるわけですが、その代理人として外部の目を直接取り込む。

 そういう話を今回の政策金融等、あるいは政策金融に限らず公益事業を実施する主体について見ますと、本当の意味では、いわゆる一般企業になぞらえれば、株主に当たるのは国民であり、取締役というか監視する組織としては、政策金融であれば国会議員の皆さんとか、そういうことになるかとは思うんですけれども、議会にしてもあるいは政府そのものにしても、いろいろな利害関係と向かい合っておりまして、なおかつ、政策金融ばかり議論しているわけではない。いろいろなことをやらなきゃならない中で、やはり専門性を持って、その政策金融機関がしっかり政策を果たしているのか、国会とかあるいは政府とかが与えた使命というのをしっかり目的を効率的に果たしているのか、そういうふうに監視するような目、しかも、外部からそういう政策金融に利害関係がある人たちの意見が素早く取り込めて監視できるということがある方が、より効率的になるのではないか。

 つまり、確かに、ダブルチェック、トリプルチェックになる可能性もあるんですけれども、その接し方の頻度というのが、いわゆる議会あるいは行政と直接組織の中に入っているものでは違う。日々チェックすることによって効率性が上がるという効果が見込まれるのではないかと考えております。

 以上です。

木原(誠)委員 中里参考人、ありがとうございました。

 コストを考えてもなお、政府の失敗を防ぐためには二重、三重にもチェックがあった方がいい、こういう御意見だろうというふうに思いまして、そこは拝聴しておきたい、このように思います。

 同じく、経営のガバナンスという観点で申し上げますと、今回の法案、主要業務ごとに勘定分離をしております。この勘定分離についてはいろいろな立場がございまして、統合するからには一つにした方がいいという立場もございますし、分けることによってかえって不効率が高まるんじゃないかという意見もあります。

 私自身は、まさにおっしゃったように、政府の失敗を是正する中にあってガバナンスの強化というのは非常に重要だというふうに考えると、これだけ大きな機関ですし、それから業務も全く違う、質も、ある程度、金融という面では似ていますけれども、対象も違ってくるという中にあっては、勘定分離というのはいわばガバナンス強化のための一つの大きなツールだろう、こういうふうに思っているんですけれども、この点について、本当に簡単に、翁参考人とそして中里参考人から御意見をいただければというふうに思います。

翁参考人 勘定分離につきましては、やはり政策評価の観点からも政策ごとにきちんとその効果を把握していく、また、例えば中小企業についても保証業務と融資業務ではやはり質の違う業務でございますし、そういう業務ごとにきちんと区分経理をし、かつ政策評価をしていくという点からも必要だろうというふうに思っています。

 同時に、区分経理をいたしましても、統合するということに伴う間接部門のスリム化や、また、シナジー効果を働かせていくということについては、両立をしていくという工夫が必要だというふうに思っております。

中里参考人 事業会社においても、事業ごとに区分経理されて貸借対照表、財務諸表がつくられているわけですが、そういうことから考えても、どの分野でどういうふうな収益構造あるいは費用構造になっているかというのを把握できるというのは重要だと思います。

 ただ、ここで重要なことは、区分経理したことが、そのまま既得権益というか、常にその前年を踏襲するような姿勢ではなく、その時々で重点化を図れるような仕組みさえちゃんと構築していれば、区分経理というのはいろいろな意味で、情報開示とかそういう面でも非常に有効ではないかというふうに考えております。

 以上です。

木原(誠)委員 全体像の議論からいって、最後のあれにしたいと思います。

 翁参考人に、最後、お伺いをしたいんですけれども、証券化あるいは保証ということについて随分積極的な御指摘だったというふうに記憶をいたします。日本は随分長い間、この証券化が必要だという議論をずっとしてきて、なかなか進んでこなかった、こういうことだろうというふうに思いますけれども、今後、この証券化を進めるに当たって、法案には書かれた、しかし、現場の中で何が一番キーポイントになってくるとお考えか。簡潔に、一、二点御指摘いただければというふうに思います。

翁参考人 証券化に関しましては、政府系金融機関の方が積極的に進めようといたしましても、民間の金融機関の方の、例えば自己資本比率規制に対する対応とかオフバランス化するかどうかとか、そういったところが、金融機関の経営の状況とか戦略的な面からかなり濃淡の差があるという面があると思っております。

 そういったいろいろな民間の金融機関の状況や、それから中小企業の実際の証券化のニーズ、そういったものをうまく、どういうふうにしていけば最善の解が得られるのかということを工夫しながら、この証券化も進めていくということが必要になってくるというふうに思っております。

木原(誠)委員 済みません、何かしつこくて恐縮ですけれども、民間の金融機関にはかなりニーズがあるというふうに理解はしてよろしいでしょうか、現状において。

翁参考人 一番ニーズがあるのは、やはり中小企業とかそういったところが、証券化をして新たな資金調達のニーズを得たいというニーズがあると思っております。

 また、民間の金融機関については、例えば経営の健全性の観点から大きな問題がないというところについて、または新しいノウハウをどんどんやっていきたいというような銀行については、かなり積極的に証券化に取り組んでいる先もございます。

 ただ、例えば地方金融機関とかそういったところの中では、それほど積極的に取り組んでいないところも見られるということは事実だと思っております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 冒頭申し上げましたように、少し中小企業金融についてお伺いをいたしたい、このように思います。

 やはり、市場の失敗が最も顕著にあらわれる分野の一つが中小企業金融だろうというふうに思います。とりわけ、情報の非対称性あるいは不確実性というものが顕著にあらわれますし、とりわけ小口だということについて、コスト面でも大きな市場の失敗があるんだろう、このように認識をしております。そういう中にあって、民間金融機関、やはり、一番苦しいときに、あるいは、よく言われることですけれども、雨が降っているときに傘を閉じてしまう、こういうことがずっと言われてまいりました。

 きょうの参考人のトップでお話をいただいた翁参考人からは、今、金融環境は大分好転をしてきた、民間金融機関の貸し出し姿勢も大分積極化してきている、こういうような御指摘だったろうと思います。マクロ的にはまさにおっしゃるとおりだろうというふうに思いますけれども、現場の感覚として、佐伯参考人に、民間金融機関の今の貸し出しの状況、どんな感覚かということを表明いただければというふうに思います。

佐伯参考人 今、民間の金融機関がどんな貸し出し態度かという御質問だったと思うんですけれども、過去を振り返りますと、非常につらい時期、先ほど言ったように、貸し渋り、貸しはがしというふうな非常に大変なときに、政府系金融機関に我々は助けてもらったという実績なり、あるいは感謝の念があります。

 では、現在どうなのか。現在、中小企業は物すごく景気がいいというわけではないんですけれども、今の状態で、昔みたいな貸しはがしとか貸し渋りがあるということではないと思います。前よりは若干よくなってはいるんじゃないか。ただ、それでも中小企業に対してはかなり厳しい面がまだまだあるんじゃないかというふうに思っております。

 以上でございます。

木原(誠)委員 大分よくなってきた、しかしまだ十分ではない、しかも、かつてのいわばトラウマも多少残っている、こういうことかなというふうに拝聴いたしますけれども、そういう現状を見る中で、政策金融機関に望むものというのは、中小企業金融という観点から見ると何が一番か。

 というのは、いろいろ政策金融が果たす役割でも、例えば、新規の融資を出す、あるいは設備投資資金を出す、これも一つの役割だろうというふうに思いますけれども、資金繰りをやはり面倒見てもらうというのも、これも一つのありようだというふうに思いますし、あるいは、民間金融機関というのが上下動をしがちだという中にあって、一定のバッファーというか、常に安定的に資金を供給してくれる役割を担うというのも、これも重要な役割だろうというふうに思いますけれども、とりわけ、民業補完というのを徹底する中でも必ず維持しなければいけない機能というのは何だというふうにお考えか、佐伯参考人、そしてまた桜田参考人から御意見をいただければと思います。

佐伯参考人 政府系金融機関、新公庫の役割は非常に重要なことであるということは、皆さんもおわかりだろうと思います。その中で、今先生がおっしゃったいろいろな意見、みんな重要だと思うんです。

 その中で、一つは、危機管理の場合、何か起きた場合に対する対応ということが、やはり政府系金融機関として、今までも商工中金を含めてやっていたわけですけれども、そういう危機のときに頼りになるというのはやはり政府系金融機関じゃないかなということだろうと思います。

 もう一つは、我々中小企業として貸し出しを受ける側としては、貸し出し態度なり条件なりがしょっちゅう変わるというのは困るんですね、その時々によって、勝手にと言っては問題があるんですけれども。ある程度安定的な見方をしていただきたいな、そんなふうに思っております。

 以上です。

桜田参考人 佐伯さんの発言につけ加えてということになりますが、地元の中小企業の経営者や業者さんとのヒアリングを通じて考えてみますと、政府系金融機関に一番求めているものというのは、意外だと思われるかもしれませんが、公平な立場、あるいは、要するに公という立場で自分の事業についてコメントを出してくれる、意見を言ってくれる、アドバイスをしてくれる。例えば民間の金融機関だと、その背後には必ずその銀行さんのもうけ、あるいはもうけの対象としていろいろな話を伺う、いろいろな話をする、こういう関係がございますけれども、旧来の、公の立場、国金の担当者との面談では、そういう利害関係から少し離れたところでいろいろな経営の問題点を指摘される。そういうものが、面倒見がいい、あるいは旧来の政府系金融機関の信頼へとつながってきたのではないか、このように考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 佐伯参考人がおっしゃったように、まさに危機対応というのは大変重要なことでございまして、冒頭の意見陳述の中にも、商工中金が抜ける中で本当に十分なのかねという御指摘がございました。この点は、しっかりとこれからも取り組んでまいりたいなと正直思うところでございます。

 最後にいたしたいと思いますけれども、その関係で、残高目標ということ、いわゆる貸付残高の目標。今回の法案では、二十年度末までに半減をさせるということまでは決まっているわけですけれども、この先に何か決めるべきという意見とそれは決めるべきでないという意見、両方あるんだろうというように思います。翁参考人の方からは、継続的にこれはじっくり見ていく必要がある、こういうことでございましたけれども、最後に四人の先生方から、一言で結構です、残高目標というもの、新たな二十年度以降の目標を設けるべきか設けるべきでないかということを一言ずつ御意見をいただければというように思います。

翁参考人 私は、残高目標を新たに設定するというのは一つの考え方だと思っておりますが、やはりこの点、新しい残高目標を考えるに当たっては、例えば数値目標がひとり歩きしないかとか、経済実態に合わない、例えば先ほどの、金融危機のときに、民間がリスク制約があるときにそういったものが難しくなってしまうのではないかとか、いろいろ考えなければならない論点があるので、そこは今後きちんと検討をしていく必要があるのではないかというふうに思っております。

中里参考人 今回、残高目標を設定したことというのは、今後の方向性という意味では意味があるとは思うんですけれども、今回の改革を通じてあるべき姿というものがしっかりなされるようになってくれば、自然に適正な水準というものに落ちつくのではないか。そのときの経済状況等にもよりますし、やはりそのときになってみないと、決めるべきか決めないべきかというのは今の時点で言う話ではないのかなと思っています。

佐伯参考人 先ほど申し上げましたように、経済というのは生き物でございますので、バブルのようなときもありますし、あるいは貸しはがしとか貸し渋りのときもある、いろいろな山谷があるわけでございまして、そういう中で不断に見直しを行うということは必要ですけれども、新たに数値目標をつくって硬直化するということは防いだ方がいいんじゃないかというふうに思うので、新たに目標を決めるという必要はないんじゃないかというふうに思っております。

桜田参考人 数字のひとり歩きを避けるということにあわせて、残高目標の数字、なぜその数字がそのように出てきたのかという、意思決定過程の何か一言が必要なのではないかというふうに考えています。むしろ、そのことが数値目標の意味あるいは意義を徹底させる上でも重要なのではないかと考えます。

木原(誠)委員 これで終わりにいたします。

 ありがとうございました。

河本委員長 次に、泉健太君。

泉委員 民主党の泉健太です。引き続き参考人の先生の皆様に御質問させていただきたいと思います。

 大変貴重な御意見をありがとうございました。我々民主党も、基本的には、政策金融の改革ということについては、その改革を進めていくべきという考え方ではありますが、やはりそこには、セーフティーネットの充実を図っていかなくてはならないということを現在考えているところでございます。

 そしてまた、ここから質問に入らせていただきますが、第一に、我が党も昨年来、政策金融の改革ということについては我が党案というのをつくってきたわけですが、その中で、一つ今政府との違いは、きょうは言及がございませんでしたけれども、国際協力銀行、この国際金融をこれまでの国内の金融機関と統合するという中における懸念なんですね。

 先ほど翁参考人の方からは、政策金融が撤退する分野に積極的に民間が参入すれば、それは機能をしっかりと補完できていくんだというお話がございましたが、例えば、国際金融がこの四つの国内の金融機関と統合することによって、どうしてもやはり国際会計基準、これが導入をされざるを得ないのではないか。そうなると、これまでこの四つの国内の金融機関が続けてきたいわゆる貸付業務の方に、やはりどうしてもこれまでの貸し付けの基準というのは相当水準を変えざるを得ないのではないかという懸念もあるわけです。

 まず、翁参考人の方に、新しくできるこの政策金融公庫の方のサービス基準が予想以上に厳しくなってしまうのではないかという懸念についてはいかがお考えか、お聞かせいただけますか。

翁参考人 国際金融と統合することに伴いまして、恐らくやはり国際的に要請される部分はあると思うんですけれども、ある程度、国際金融については国際協力銀行という独立性を一方で少し保ちつつ業務を行っていくということでございますので、やはり今までの国内向けの金融については、必要な資金需要についてはきちんとこたえていくという工夫をすることによって、統合金融機関の中でうまくマネジメントをしていくということが必要になっていくというように思っております。

泉委員 同じ質問ですが、中里参考人にも、この国際会計基準、今、翁参考人の方からは、それでもやはり国内と国際、独自性を持ってというお話がありましたが、海外の投資家からは、一つになった日本政策金融公庫というものを見られたときに、そのそれぞれの独立、独自性というのはどこまで保てるのか。あるいは、国内の中では、やはり特別な役割があるということで、これまでのような貸し付けに近い形のサービスが提供できるのかというところがやはり懸念だと思うんですが、そのことについての御意見はいかがでしょうか。

中里参考人 この点については、資金調達面等でも国際金融部分に関しては、違うと言ったら変ですけれども、それ用の債券を発行して資金調達するような方向で今制度設計されていると思うんですけれども、そういうところをしっかりやって、しっかり情報公開していけば、そういう海外投資家の懸念等にはこたえられるのではないかと思われます。

 なおかつ、民間金融機関ではなくてあくまで政府の金融機関というポジションですから、政府の信用力が落ちちゃえば別ですけれども、そうでない限りは大丈夫なのではないかというふうに考えております。

泉委員 ありがとうございます。

 続いて、先ほど中里参考人の方からも、ドイツ復興銀行の例、大変いい例を挙げていただいたと思うんですが、翁参考人の方からは、能力ある経営陣、これが選ばれることが非常に重要だというようなお話がございました。

 このドイツのような形、さまざまなステークホルダーが集合して経営体をつくるという形、今回のこの政府法案の中でどこまで実現をするだろうかということは私たちも注目をしているわけですが、ドイツ復興銀行のような、本当にさまざまな分野の方々を、今回の政策金融公庫、この中でも実現をしていくべきだと考えるか、それとも、日本の場合は、やはり官出身の方、あるいはその中に民間の方、学識者ぐらいがまざるようなものを想定すべきと考えるべきか。その点について、お二方から御意見をいただきたいと思います。

翁参考人 どの程度の幅を認めるかということについてはいろいろ意見があると思うんですけれども、やはり民間の方、学識経験者、利用者、そういったさまざまな観点から経営に対して意見を述べられるというような方々を取締役会とかガバナンスのボードに入れていくということが考えられるのではないかというように思っております。

 官出身の方ということもございましたけれども、今の天下りのいろいろな状況にかんがみましても、そこについては、やはり経営陣、中の方々のインセンティブとか経営の自主性の観点からも、それから、もともと制度設計の段階で、特定の公務の経歴を有する者を固定的に選任されないようにするという制度設計における約束事がございますので、そういった点を配慮して決めていく必要があるのではないかと思っております。

中里参考人 先ほど申し上げた点と重なる部分もあるんですが、今後、我が国経済というのは先行モデルがない時代に入った。そういう状況にあっては、やはり多様な意見が反映されることというのが、よりよい政策金融機能を発揮するために重要ではないかと思っております。

 したがいまして、どの程度の範囲というのは、やはり実際にどういう業務をしていくのかにもよる部分があるんですけれども、ある程度の多様性を持つようなボードにした方がよいのではないかと考えております。

泉委員 続いて、全国中小企業団体中央会佐伯会長にもお越しをいただきましたけれども、私は改めて認識をしたのは、昨年の五月に参議院の行政改革に関する特別委員会で参考人で御陳述をいただきました。そのときにいただいたお話の中では、三万二千の中小企業組合の傘下に三百十一万の中小企業が参画しておりと。本日お伺いすると、それが三百五万という形で、この一年間足らずの中に、既に六万社が減少しているというこの厳しい実態。そしてまた、我が国の企業の九九・七%が中小企業でありというところから始まる文脈でも、小売販売業では、その当時は八割のウエートという表現をなされていたんですが、今回は七割のウエートというお話がございました。

 もちろん、依然として中小企業がこの日本の経済活動の中枢を占めているということの事実は変わらない、経済活動というか、より広く言えば国民生活を支えているというその状況は変わらないわけですが、この一年間でも大変厳しい状況があったのではないかというふうに思います。

 そのときに、改めて、先週この委員会での質疑の中でも大臣にも質問させていただいたんですが、翁参考人の方からは最後の宿題への答えというような御表現がございましたが、財政投融資、これを郵政民営化によってまず入り口の改革を行った。私たちは、それについても基本的には、改革そのものはするべきだ、財政投融資の無駄を省くべきだという観点ではありました。ただしそれは、多くの国民が望んでいた財政投融資の改革というのは、ビッグプロジェクトに対する過大な投資、その無駄の解消であったり、天下り、こういった行政、政府の無駄の解消に、本来国民の願いというのはあったのではないかという気がしております。

 本来的に、もう一つの財政投融資の大切な機能である、民から集めた官のお金をもう一度民に戻すような、ある意味、官から民へ、官から民へという流れで今表現されていますが、実は、そもそも民の大切なお金をもう一回民に細かく戻していくという、いわゆるこういった貸し付け機能というものまでも改革しなければならない状況に本当にあったのかというところを、もう一回再確認する必要があるのではないかというふうに思います。

 その点について、まず、これは四先生の方々にお伺いをしたいと思います。翁先生からお願いをいたします。

翁参考人 財政投融資、まさに先生おっしゃったように、例えば道路や橋、こういったものに高度成長期非常に使われておりまして、これについて改革が必要だという国民の声は非常に強いです。

 私は、政策金融について、例えば零細とか、本当に民間が貸し出せないような、特に国民金融公庫のようなところですが、こういったところについては引き続き重要な政策金融としての役割があるというように思っておりますけれども、中小企業につきましても、すべて中小企業は政府がやらなければならないという時代はもう終わってきていて、やはり中小企業も、例えばいろいろな金融技術も発展していきますし、中小、中堅企業では民間からいろいろな支援を得て大きくなっている企業もたくさんございます。

 そういう意味で、貸し付けの部分についても、いろいろな分野で官民の役割の分担を見直さなければならない分野というのはあったというように思っておりますので、やはり貸し付けと十把一からげにはできない。貸し付けの中にもいろいろな分野があって、やはり官民の役割分担を見直さなければならない分野というのはかなりあるというように思っております。

中里参考人 財投改革等が無駄の解消を期待して行われた、それの効果というのはある程度上がっているという部分は、そのとおりだと思います。一方、政府というのは、ケインズが言うごとく、民間で計算できないリスクを担えるのはやはり政府という公的存在しかない。そういう意味では、やはり政策金融という機能は引き続き、どういうやり方をするにせよ、必要であることは間違いないと思っています。

 その場合、今先生おっしゃられたように、単純に官から民ではなく、民、官、民とか、それぞれうまく流れていくことが重要である。ただ、そういったときに、やはり中小といってもいろいろな場合があるわけで、それは絶えず見直しをしなきゃいけない。

 最初の私の報告にもありましたように、本当は必要な中小の有望な事業でも、民ではリターンという意味で、いまいち情報生産活動が過小になってしまう、そういう危険性があるので、そういうところにやはり政策金融の役割はあると思っております。

 ただ、今までのやり方というのが適切だったかどうかというのは、いろいろと見直す必要があると思いまして、今回新たに改革が行われるわけですから、抜本的に、より無駄が少なく、なおかつ効果的なやり方を追求していくべきではないかなと考えております。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

佐伯参考人 先ほど来いろいろな発言、御意見がありますけれども、民にできることは民にやる、これは当然だと思うんですけれども、民間ができないのは官がやらなきゃならない。その役割の一つが政府系金融機関、中小企業に対する先ほど言った危機管理も含めた融資であろうというふうに思っております。

 行政改革推進法の衆参両院からの附帯決議で、「資金需要に質量ともに的確に応える」というふうなことがされておりますので、財政措置を含めてしっかりとした御支援をお願いしたいというのが私の意見でございます。

 以上でございます。

桜田参考人 官を仲立ちにした民から民への金融システムというもの、泉議員のお考えに基本的に同感します。

 私は、地域の金融機関、特に地方銀行だとか信用金庫というのは、地域経済の中でのやはりシンクタンクの役割を積極的に果たすべきだと考えています。また、そこに地方自治体がかかわって、そういう地域ぐるみでの新しい金融システム、あるいは民から民への金融システム、こういうものをつくり上げていくことが今後の課題ではないか、我々にとっての課題ではないかと考えております。

 以上です。

泉委員 桜田参考人の御陳述の中でおっしゃられた、これまで中小企業の収益を上げる方策を考えてきたのは銀行マンなんだ、いかにそれをつぶさずに、ともにサポートをしていきながらというようなお話は、私も大変、ああ、現場の実態に基づいた御発言だなという気がしたわけですが、中小企業の再生というところに対して、アプローチの仕方がいろいろあると思うんです。

 大変強い、金融的な厳格な市場のルールなりを中小企業に知らしめることによって、自助努力というか自立再生をしていただくという方法もありますし、温かく見守っていく方法もありますしというところなんですが、翁参考人、それぞれの参考人の御意見というのは尊重をもちろん私は前提としておるわけですが、例えば今、桜田参考人がおっしゃられたような、地域の中で、それぞれの中で地域ぐるみの金融システムというものをつくっていくべきなんだ、あるいは、いわゆる大手のコンサルティングやそういったところ以外にも、これまで地域の中小企業を支えてきた、そういうコンサルティング的な役割を銀行マンなり地域の金融機関がやってきたんだということで、こういった地域の中での、窓口業務も含めて、しっかりとこういったものの質は落としちゃいけないという御意見があったわけですが、そういったことについての御意見はいかがでしょうか。

翁参考人 中小企業というのは、全国各地、地方でいろいろな問題を抱えていると思います。そういったところに対してきちんとサポートをする第一の役割をすべきなのは、やはりメーンバンク的な役割をしているコミュニティーバンクであり、その地域の金融機関だと思います。

 やはり、先ほどの御発言にもありましたけれども、その地域の金融機関の最先端の方が、目ききを生かして企業に対してどういうサポートをしていくのか。多分それは、事業のサポートだけでなくて、財務リストラクチャリングのサポート、それから、もしかしたらいろいろなネットワークというものも必要になってくると思います。その意味で、地域金融機関が、金融技術、目ききの力、そして地域、それから地域を超えたネットワークの力をつけて企業をサポートしていくというのが今後も非常に重要な役割ではないかというふうに私も思っております。

泉委員 そして、次の課題に移らせていただくんですが、経営者の経営責任ということが、特に今回は、それぞれの勘定ごとに明確にしていく、そういう法案になっておりますけれども、一方で、それぞれの既存のこれまでの金融機関が抱えてきた構造というものも私はあると思うわけです。例えば、中小企業金融公庫が構造的に抱えてきた信用保険等業務というものの中では、損失構造をずっと抱えてきているわけですね。

 こういったものを、今後それぞれの勘定ごとに責任をとっていくという場合に、やはりどうしても中小企業金融公庫の中のこの勘定の構造というものは変えがたい性質を持っているんではないのかなと思うんですね。その場合における経営責任とは果たしてどのようなものを指すのかということについて、私は、まだなかなか想像しにくいものがあるわけです。

 参考人の皆様が望まれる経営責任のあり方、例えば農林漁業金融公庫においても、政府補給金収入というのが非常に多い。これは、本来的な民間の株式会社でいけば、やはり姿としては適切な姿ではないという話にもなってしまうわけですが、それぞれの特性においてこれまで続いてきた構造ということもありますので、それぞれの勘定の中で経営責任、これをどうとらえていくのかということについてお話をいただければと思います。

翁参考人 経営責任については、やはり個々の勘定ごとに、今先生がおっしゃったようにかなり個別の事情がありまして、なかなか難しいところだと思いますが、ある程度経営者にきちんと規律を持って経営に当たっていただくためには、運営上の工夫として、例えば、一定の、今までの特性を踏まえた上で数値の目標などを定めて、明確に外にわかるような目標を掲げた上で、それに対してどう責任をとるかというような工夫をするとか、今後いろいろ工夫をしていって、経営者に対しても一定の規律が外から働くような仕組みというのを考えていってはどうかというように思っております。

中里参考人 私は、やはり政策金融としてやる以上は、政策目的を果たすために必要な資金投入というのはあっていいと思います。したがって、収益構造的に赤字だからだめということではない。そういうことではなく、その赤字が過大でないかとか、あるいはちゃんと政策目的を果たせていないんではないか、そういうところが評価基準になるかと思います。

 ただ、その具体的な数値に関しては、今までの過去の経験とか、そういうところから適正基準をいろいろ試算していく必要があるんですけれども、赤字だからだめというものではないと思います。基本的に政策目的をきちんと果たしている、これが一番重要なことではないかなと考えております。

佐伯参考人 政府系の金融機関ということで、新しい公庫でございますので、政府の施策によっていろいろなことをやるという意味で、それに伴っての赤字だからとかで責任をすぐとるというようなことはやめた方がいいんじゃないかというふうに思います。それはあくまでも政策にのっとってやったということだろうと思います。

 それはそれながら、やはり情報公開という意味では、中はある程度クリアにして、こんな政策で、こういうことをやって、このくらいの赤字が出たとか、あるいは資金が足りないとか、それで財政支援を必要とするとか、そういうような情報の公開というのは積極的にやっていただければというふうに思います。

 以上です。

桜田参考人 二つあると思います。

 一つは、区分経理に基づいて、セグメント別の、いわば経営責任を明確にするような情報開示を促すこと。そして、それらを総合した点での経営責任というものを明確化すること。

 それから、一つつけ加えておきたいのは、やはり経営意思決定過程といいますか、経営判断の根拠を示してこその責任ではないかというふうに私、考えますので、その経営判断の根拠を示すディスクロージャーを求めていく、これが必要ではないかと思います。

泉委員 今回のこの政策金融改革、冒頭にも申しましたけれども、我々は、基本的には賛成というか、その趣旨には賛成をするわけですが、しかし、まだまだ政府案の中には足りないところも、あるいは、最近の傾向としてどうしても法律の中では後ほど政令で定めるというようなことがかなり仕組みとして多いものですから、なかなかはっきりしない、不安な点が多いというのも事実でありまして、その辺をやはりはっきりさせていくことが必要ではないのかなというふうに思っております。

 先ほどの話に戻りますが、やはり財政投融資、根本的に、細かく国民の期待にこたえてきたこの政策金融の役割というのは我々は評価をしっかりとすべきではないか。そこを同じように十把一からげ、一把一からげですべて、不断の見直しは必要なんですが、そこをあたかもビッグプロジェクトの無駄と同等に扱ってしまうということにはやはり危険性があるということで、ぜひ参考人の先生の皆様にもこれからこの法案に注視をしていただきたいというふうに思っております。

 どうもありがとうございました。

西村(康)委員長代理 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一です。きょうは参考人の先生方、大変ありがとうございます。

 まず、四人の参考人それぞれにお伺いしたいと思います。

 これまでの質疑の中でも出てまいりましたが、私は、政策金融改革の目的は、民業補完に徹して、肥大化した政策金融を縮減するということが一つ目的としてあると思います。もう一つは、民間金融機関が及び腰な中小零細企業や個人事業主やあるいは農林水産業者、こういったところの資金需要に的確に対応する、このことがあると思います。これを両立させるということが非常に大きな目的だと思っております。

 中里先生の表現をおかりすれば、政府の失敗を防止することと市場の失敗を防止することをバランスよくやるということかと思いますが、それぞれの参考人の御意見を伺いたいと思います。

翁参考人 私も、先生おっしゃったとおり、政府の失敗、つまりこれは、肥大化とかそういった問題を縮減する。また、場合によっては非常に先送り的に作用している部分もあります。そういったところについてきちんと対応していく。同時に、やはり市場の失敗というのは確かにございます。民間だけに任せておいては資金需要を満たせないという分野については、しっかりと政策金融で対応していく。それを両立するということが重要だというふうに思っております。

中里参考人 市場の失敗の問題は、どんなに完璧な経済であっても必ず生じるものである。そういう意味では、引き続き政策金融等の役割はあるんだろうと思います。ただ、それが、時代や経済環境の変化によって常に変化している。その一方で、政府の失敗というのも確実に存在する。その両方を最小化、最適化するような仕組みが必要なわけで、そういう意味では、やはり不断の見直しというものが必要だと思います。

 今回改革が行われることになったのは、かつては有効であったものが、時代の変化というか経済の進歩によって余り必要がなくなってきたものもそのままずるずる来てしまったような部分があると思います。そういう意味で、今回の見直しというのは非常にいいタイミングであると思いますし、まあちょっと遅かったかもしれないんですけれども、やったことはいいことだと思いますので、この後も、不断の見直しをしつつ、必要なところに必要な政策を行っていくという姿勢が重要なのではないかと思います。

佐伯参考人 確かに、市場の失敗とか政府の失敗とかという話がありますけれども、いずれにせよ、市場でも政府でも、直接的というか、人間がやることなので、神様じゃないですから失敗は必ずあると思います。

 そういう中で、我々は臨機応変に、その失敗を反省の上に立ちながらすぐ軌道修正していくというふうなことが必要でありまして、特に中小企業にとっての金融というのは命綱でございますので、我々が円滑にそういうことができるように、これからも努力をしていただきたいなというふうに思っているところでございます。

 以上です。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

桜田参考人 肥大化の原因にはさまざまあって、肥大化したということと今回のこの法案のかかわりについては、よくわからないところが私にはあります。

 民間の金融機関が及び腰だというのは、恐らくは、やはり既存のコスト計算、貸し出しコストの計算をしたときに、そのコストにどうも合ってこないという形が根拠になっているのではないかと思います。

 そういった意味で、政府系金融機関が新しいコスト計算あるいは新しいコスト概念というものを編み出していく。それを通じて、視野を広げたといいますか、単に貸し付けの行為そのものだけではなくて、貸し付けにまつわるさまざまな経済的なプラスというものを織り込んだような、そういう新しい考え方も必要なのではないかというふうに考えています。

石井(啓)委員 ありがとうございました。

 続きまして、同じく四人の参考人にそれぞれお伺いしたいと思います。

 新しい公庫の融資残高の目標でございますけれども、そもそも、政策金融の融資残高については、現行の八つの政府系金融機関の合計の融資残高をGDP比で半減させるという目標が設定されていました。ただ、これは、政策投資銀行、商工中央金庫の民営化、それから公営企業公庫の廃止ということで事実上達成をされます。

 そこで、新たな目標として、新しい公庫の融資残高の削減目標を設定するかどうかということが課題になっておりまして、先日、私、渡辺行革大臣にこれを質問しましたところ、これにつきましては、政府の行政減量・効率化有識者会議、ここにワーキングチームを設置して、そこで検討する、そういう答弁でございました。

 ここから私の提案なんですけれども、仮に新しい公庫の融資残高の目標を設定する場合は、余り乱暴な目標の設定ではなくて、とかく何か、何年後に半分だとかそういう枠の設定のあり方がありますけれども、そういう乱暴なやり方ではなくて、丁寧な検討をやるべきだというふうに思っております。

 すなわち、中小零細企業等への資金需要に的確に対応しているかどうかという点だとか、また、民間金融機関の貸し付け動向がどうなっているのか、あるいは、新しい公庫で今度部分保証ですとか証券化などの新たな民業補完の手法を導入しますけれども、これによって民間の貸し付けがどれぐらい促されるのかとか、そういった動向を踏まえて丁寧に検討すべきだというふうに私は考えておりますが、それぞれの参考人の御意見を伺いたいと思います。

翁参考人 私も、丁寧な検討が必要だということ、本当にそのとおりだと思います。

 数値目標というのは一つの考え方だと思うんですが、やはり重要なことは、政府系金融の役割をすごく固定的に考えるのではなくて、徐々に民間に手渡していく、そういうための触媒になるというミッションを持っているということを職員がしっかりと共有することではないかと思っています。そういう姿勢をとっていけば、自然に、政策目的の妥当性をチェックしたり、または手法の妥当性を不断に内側からまずきめ細かく見ていくという姿勢になっていきますし、それを外側からモニタリングする、これが基本的に非常に重要なのではないかというふうに思っております。

 その上で、融資残高目標というのも一つの考え方ではあると思いますが、そこには、おっしゃられましたように丁寧な検討が必要ですし、例えばループホール的な動きが出てこないかとか、経済の実態は今どうなっているかとか、それから、本来、資金量ということで考えるのか、それともリスクの総体、リスク負担の総体はやはり重要でございますが、そういった点をどう考えるのかとか、そういったきめ細かい検討が必要になってくるというふうに思っております。

中里参考人 丁寧な検討が必要だというのは私も賛成です。

 今回の改革が始まるときに、そういう半減という最初の目標を立てた、これというのは、乱暴ではありますけれども、国民の世論を動かして改革を進めるという戦術的にはある意味有効であったのかなと思います。ただ、とりあえずというか、改革が法案的にはできてくるわけですから、では今後は本当にどうよりよくしていくかといったときに、丁寧に目標を掲げて経営をよりよくやっていただくということは重要です。

 その場合に前提になるのは、それぞれ、どういうことをちゃんとやって、どういう機能があるかという情報公開、これをやって、なおかつ、迅速に情報公開して、一般の国民はあれですけれども、専門家などが判断していろいろ意見を言えるような体制を築くことが重要ではないかと考えています。

 以上です。

佐伯参考人 先ほども申しましたように、経済というのは生き物でございますので、数値目標を決めて、そのときそのときの変化に対して変えていったらいいじゃないかという議論もあるかと思うんですけれども、そういうような対応をしている間に、変化の方がもっと速いんじゃないかと私は思うんです、経済というのは。

 ですから、数値目標をつくって、いろいろなものを会議で検討しながらなんて、そんなのんびりしたことは、中小企業にとっては命にかかわることだろうというふうに思うので、機動的な資金ニーズに応じられるように、目標を今固定的に決めるという必要はないんじゃないかなというのが私の考えでございます。

桜田参考人 やはり避けなければならないのは、数字のひとり歩きといいますか、数字が先にありき、そういう状況は避けなければならないと思います。

 したがいまして、議員おっしゃったように、丁寧さ、きめ細かさ、これは必要だと私も考えます。また、事後的な検証が可能になるような、そういう情報公開も必要ではないかと思います。

 以上です。

石井(啓)委員 次に、佐伯参考人に、今度は利用者の立場からお伺いしたいと思います。

 新しい公庫については支店の統廃合等の効率化を進める、これは当然やるべきことでございますけれども、それに際して、私ども公明党としては、利用者の利便性が維持されるように、維持だけではなくて向上されるようにということで政府に注文をつけておりまして、さきの附帯決議等でもその趣旨が盛り込まれているわけでございますけれども、利用者の代表として御要望、御意見があればぜひ承りたいと存じます。

佐伯参考人 今先生がおっしゃったように、我々利用者に不便が生じないようにという御趣旨、本当に私もそのように思っております。

 中小公庫と国民生活金融公庫は、同じ金融ですけれども、内容は本当に違うことだろうと思います、やっていることが。これが一緒になるということに対して、いろいろな問題がまた生じるかもしれませんが、今までやっていたそれぞれのいい利点、中小零細まで含めて、あるいは中小公庫はコンサルティング事業も含めて、いろいろな意味で我々中小企業を大から中堅から零細までみんな底上げをしてくれたという意味で、その機能は残していただきたいというふうに思っておりますので、今後とも、先生方の御支援をよろしくお願い申し上げたいと思います。

 以上です。

石井(啓)委員 続いて、翁参考人、中里参考人にお伺いしたいと思います。

 新しい公庫の機関設計、組織設計、いわゆるガバナンスの設計ということで、先ほど中里参考人から若干陳述で御紹介いただきましたけれども、どういう機関にするかということについては私も実は先日質問いたしましたのですが、これは会社法の規定に従って、主務大臣の認可を受けた上で、公庫の設立委員が作成する定款で定めるということで、ちょっと今の段階ではどうなるかまだわからない状況なんですね。

 そういった段階ではございますけれども、新しい公庫としてどういうガバナンスの機関設計が望ましいというふうにお考えなのか、アドバイスがあればぜひお伺いをいたしたいと存じます。

翁参考人 執行する経営者に対して、やはりさまざまな角度からきちんと、特に利用者の立場または民間との関係または政策目的をきちんと遂行できているか、そういったさまざまな観点からその執行をきちんとガバナンスできる、そういったメンバーを選び、かつ、そういったボードで活発な議論が交わされてそれが情報開示される、そういった体制をつくっていくということが重要だと思います。また、情報開示されたことが市場に対してもきちんと公開されて、それを国民がきちんと見ることができるというような体制をつくることが重要ではないかと思っております。

中里参考人 委員会設置会社でも監査役設置会社であっても、どちらにしても監督機能と執行機能を明確に分けて、それはどちらの場合でもできるわけですが、執行機能は効率的でなおかつ有効な経営執行に集中できる体制、そして、その執行している状況がちゃんと政策目的にかなっているかどうかをしっかり監督し、外れている場合にはちゃんと是正するような仕組みを構築することが重要だと思います。

 その場合に、今、翁参考人も言いましたけれども、結局、そういう監督機関がどういう議論をしているかというのをちゃんと情報公開して、誤った方向に行っていないかを行政なりあるいは議会なり国民なりがチェックできるような体制というのが必要なのじゃないかと考えます。

石井(啓)委員 それでは、時間的に最後の質問になろうかと思いますけれども、私は、民間も含めまして我が国の金融機関というのは、これまでとかく不動産担保に過度に依存をして、いわゆる目きき能力というのを磨いてこなかったという重大な欠陥があったと思うんですね。むしろ、国民生活金融公庫の窓口の職員の方がよほど民間の方より、中小零細の方を相手にしていますから、経営者の資質だとか事業性だとかをきちんと審査する能力を身につけていらっしゃると思うんですね。

 金融機関全体として、目きき能力を磨いて、過度に担保や保証人に依存しない、そういう融資を広げていくべきだというふうに考えておりますけれども、新しい公庫は、ぜひ民間の先導役になってそういうことを広げていくべき、進めていくべきだというふうに私は思っておりますが、最後、四人の参考人の御意見を伺いたいと存じます。

翁参考人 まさにおっしゃるとおりだと思います。不動産担保に過度に依存しているがゆえに、今回の不良債権問題なんかでも、いろいろ再生に手間取る一つの大きな要因がそういった融資慣行にあったと思います。

 事業を見ていくということが極めて重要で、その目きき能力を高めていくということが非常に重要だというように思っています。これは政府系、民間を問わず極めて重要ですし、日本の金融市場の慣行としてやはり変えていかなければならない重要な点だと思います。

中里参考人 私も同じ意見でありまして、基本的に目きき能力を高めていく必要がある。

 バブルの後処理のときは大分苦労はしていましたけれども、その間に、さすがに民間の方も反省したというか、常に事業を見ていく姿勢というのが大分養われてきたんじゃないか。アメリカとかに比べるとまだまだ物足りない部分もあるんですけれども、ベンチャー系のファンドとか、そういうような目きき、事業に注目して融資なり出資する姿勢というのは出てきていると思います。

 その点では、今回の新政策金融公庫もそうですが、日本政策投資銀行なんかもそういうような姿勢というのはかなり先端的なものを持っている。なので、いわゆる官民協力してそういう能力を育てていくことが、今後、少子高齢化が進む我が国では重要ではないかというふうに考えます。

 以上です。

佐伯参考人 今先生がおっしゃったような目ききの能力、これは非常に難しいですけれども、非常に大切なことだというふうに思います。特に金融機関にとっては非常に大切なことだろう。

 では、どうすればいいのか。これはまた非常に難しい問題なんですけれども、一つ私の考えとして言えますことは、中小企業の現場をよく見てほしいということが一つあるんです。現場を見ないで机の上だけで判断していてはやはり目ききにならないだろうということがあります。実際に現場へ出て、実際に製造の責任者なりあるいは経営者の考えを聞く、あるいはいろいろな中小企業の現場を見れば世の中の動向もわかってくるかもしれません。ぜひそういうふうな具体的な運営をやって目ききを養成していただきたいな、我々もそういうふうなことに協力をしていきたいというふうに思っております。

 以上です。

桜田参考人 石井議員のおっしゃることには基本的に賛同します。

 ただ、そのことを実務に移したときには、先ほど申し上げたリスクに見合った金利のリスク、あるいは、銀行のコストマネジメントの中になかなか機会利益であるとかあるいは期待利益というものが入ってくる余地が少ないということ、このことがやはり妨げになる、障害になる、こういうふうに思います。

石井(啓)委員 まだ若干時間がありますので、では、最後に翁参考人、中里参考人に伺います。

 新しい金融手法の保証、証券化に取り組むということなんですが、これは適切に新公庫側でリスクをとってやれば民間の融資を促すことができるということで、非常に有効な手法だと思うんですけれども、ただ、余りリスクをとり過ぎますと、逆に今度、民間のモラルハザードをもたらすというような微妙なところがございまして、非常に私はバランスが、よく注意してやらなきゃいけないなと思っていますが、この点について、お二方の御意見を最後に伺いたいと思います。

翁参考人 まさにおっしゃるとおりでして、特に保証、証券化の信用補完ということに関しましては、部分保証というのを徹底するということが極めて重要だと思っております。やはり一〇〇%に近いようなことになりますと、民間がきちんと審査をしない、モラルハザードをもたらす、そういう弊害をもたらす可能性が非常に高いですし、また、オフバランス化すればするほどリスク管理も非常に難しくなっていく面もあるということは確かだと思います。

 ですから、私は基本的に、証券化による信用補完、または保証業務の部分保証を進めていくことについては賛成なんですけれども、あくまでもそういった部分的なものにとどめる、その時点その時点で本当に必要なところに、検証しながら政府が関与していくというような姿勢をつくっていくことが重要だと思っております。

中里参考人 証券化や保証というのは、その時点では政府から直接お金が出ていかない、政策金融機関から出ていかないということで、いろいろと便利な手法ではあるんですけれども想定以上にリスクを膨らませて、最終的に負担が大きくなってしまうというリスクがあります。そういう意味では、今と同じ意見なんですけれども、民間にもちゃんとリスクを分かち合わせるというような姿勢が必要かと思います。それで、常にそういう保証した案件というのがちゃんと想定どおりにいっているかというチェックを働かせることが重要かと思っています。

石井(啓)委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

河本委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 きょうは四人の参考人の皆さんには大変お忙しいところをお願いいたしまして、貴重な御意見をありがとうございます。

 私は、最初、桜田参考人に伺っておきたいんですけれども、今回の政策金融の改革は、大手銀行、大銀行が主張する民業圧迫という考え方、これを理由にして、住宅金融公庫の廃止、それから郵政民営化に続いて、今度は商工中金などの民営化など、九〇年代、特に半ばぐらいから国会でも議論がうんと進んだんですけれども、規制緩和を万能とする考え方などと並んでの中で出てきたように私は感じているんですが、政策金融機関は政府の施策に基づく金融機関ですし、一方、金融市場のもとにある銀行とは本来別次元に置かれてきたものであり、別次元の話だというふうに思うわけです。

 今なぜ政策金融改革なのかということについて、桜田参考人はどのようにお考えになっておられるかを伺いたいと思います。

桜田参考人 従前、財政改革と申しますと、要するに予算、決算ベースでの改革だと思っていたんですけれども、二〇〇一年から始まった財政改革の新しい特徴は、国の歳出歳入という構造全体を大きく削減させる、そういう目的があったように思います。その点からいいますと、各議員から何度も出ましたが、特殊法人の改革であるとか天下りの防止であるとか、そういったレベルでの改革、いわゆる改革しなければならない問題と、それから今回のこの二つの法案に関していいますと、あえて改革する必要が本当にあるのだろうか、そういうレベルの改革が、どうも混然としているのではないかという印象を私は持っております。

吉井委員 次に、佐伯参考人と桜田参考人のお二人に伺っておきたいんですが、現在の国民生活金融公庫法を初め、中小企業それから農林漁業など、現行三公庫法の目的には、一般の金融機関からその融通を受けることを困難とする国民、中小零細企業、農林漁業者が必要とするものを供給するという趣旨を規定しております。ところが、今度はまず目的が変わってくるわけですね。一九五一年の日本開発銀行法のとき、あのときも目的に民業補完ということが掲げられているわけですけれども、新公庫法の目的は、一般金融機関が行う金融を補完することを旨としつつと。まず民業補完というところで、同じ政策金融といっても目的ががらりと変わってきているわけですね。

 それで、この目的の改定というのは単に字面の問題だけじゃないと思うんですね。この立場というのは新公庫法全体に貫かれていると思うんですけれども、今日、貧困と格差の拡大とか、それから地域経済をとってみても随分地域間格差が広がっている中で、国民生活、中小零細企業を支え、経済を発展させるためには政策金融機関は本来何をしなきゃいけないかとか、そこを考えたとき、本来の政策金融らしい独自性を発揮して国民とのパイプを太くしていく、地域経済の発展に貢献する、そういうことが非常に大事じゃないかと思うんです。

 それが、新公庫の民業補完の枠内での対応ということになってくると、これはかなり難しい話になってくるんじゃないか、十分機能を発揮できるんだろうかということが懸念されるんですが、この点について、佐伯参考人と桜田参考人にそれぞれお考えを伺いたいと思います。

佐伯参考人 中小企業、特に零細企業が国民生活金融公庫からいろいろな融資を受けて助かっているという例は多々あります。現実にもそうだろうというふうに思います。そういう意味で、政府系金融機関の役割という重要性は決して廃れてはいない、むしろ、新しく新公庫になってもこの役割は生かしておいてほしいというふうに思っております。

 それからまた、行革推進法の附帯決議でも、資金需要に質、量とも的確にこたえるというふうな附帯決議が衆参両院で行革法の中で言われておりますので、財政措置を含めて、そういうふうな支援をぜひしっかりしていただきたいというのが私の考えでございます。

 以上でございます。

桜田参考人 私の意見表明の一つの柱がまさにその点でありまして、融通あるいは供給という旧法の目的からいいますと、これは明らかに、国民生活金融公庫なりあるいは中小金融公庫なりがそうした対象に対してみずから貸し出しを行うというふうに解釈することができます。しかし、支援するということになりますと、必ずしもそれは直接的な貸し出しを意味するものではなくて、まして民業補完という形になりますと、あくまで主は民間であって政策金融は従なのだ、こういうような解釈も十分成り立つ余地があります。そうしますと、基本的な性格の大幅な転換ではないか。

 きょうの質問を伺っておりますと、必ずしも、その点での認識の一致があるのかなという疑問も改めて私は感じた次第です。

吉井委員 次に、また佐伯参考人と桜田参考人に引き続いて伺っておきたいんですけれども、新公庫法案は、一般金融機関が行う金融を補完するということ、この立場から、資金貸し付けの業務その他公庫の業務のあり方について検討を加え、必要があると認めるときは、業務の廃止その他所要の措置を講ずるものとすることを規定しているわけですね。また、新公庫の業務を、民間企業の入札で業務を請け負わすいわゆる市場化テスト法の対象にもしておりますが、いわゆる新公庫の業務の合理化ということが、国民への小口融資とか中小企業へのきめ細かな貸付業務の縮小、廃止につながっていくのではないか、こういうことが懸念されてきます。

 この点についてのお考えも引き続いて伺いたいと思います。

佐伯参考人 確かに、我々中小企業は、実際の経営をやっていますといろいろな問題が生じておりまして、そこを政府系の金融機関が的確にいろいろな融資なり指導していただくということは大いに助かるわけです。

 先ほどの発言にもちょっと戻るかもしれませんけれども、中小企業にとって短期的な、今すぐの問題、それは融資を受けることだと思うんです。それからもう一つ、中長期的に見れば、経営コンサルティングみたいな、将来この企業はどうしたらちゃんと発展していくのか、そういうような指導をやっていく、あるいはコンサルタントをやっていくというふうな、二つのことが、ただ、同時にじゃなくて時間的にちょっと違うだろうと思います。

 中小公庫は、今まで結構、その企業の何年か先、こうすべきだというふうな、ちゃんとした指導なりコンサルタントをやってくれたんです。国金は、もう今困っているのは、とりあえず、とにかくすぐに何か貸しましょうというふうな、これはどちらが正しいとかなんかじゃないと思うんです、両方必要だ。それで成り立ってきていたわけで、今後もその二つの面を、強化するといいますか、ぜひ維持していきたいなというふうに思っております。

 以上です。

桜田参考人 近々廃止するという話ではないとは思いますけれども、そういう縮小、廃止への動きといいますか、ベクトルといいますか、こういうものはやはり絶えず働く、そのように考えております。

吉井委員 次に、中里参考人に伺いたいと思うんです。

 「政策金融改革 展望と課題」というのを読ませていただきました。その中でも使っておられる資料、各政策金融機関の貸出残高対GDP比のグラフとか、これを見ておりまして、まず、このグラフでうかがわれるのは、四公庫の方ですね、こちらは大体、貸出残高、ずっと横ばいなんですね、八〇年代以降。八〇年代以降急拡大していったのは、住宅であるとか公営企業だとか、それから日本政策投資銀行の関係ですね。それは結局、ちょうどその時期というのは、マンションの大手が非常に大きく利益を上げた時期でもありましたし、それから、それとかかわって鉄道開発だとか、それからまた海外投資なども進んだ時期です。

 つまり、そういう点では、もともと、政策金融といっても二極化といいますか、二分化といいますか、全く異質なものであって、中小企業とか国民の暮らしにかかわる分野と、いわばマンション大手の利益の方でしたら、別に政策投資が首を突っ込まなくても、民業圧迫も何も関係ないわけで、民間銀行がやっておれば済むだけの話で、何かそれを、今度、政策金融を一くくりにして論じてしまっている。

 だから、その点では国際協力銀行と四公庫の統合とが、政策の中身が全く異なるものを一緒くたにしてしまう、こういう異質なものの統合というのは、政策金融ということを考える上からしても少しおかしいのではないかと思うんですが、この点についてのお考えを伺いたいと思います。

中里参考人 お手元にあるかわからないんですけれども、「政策金融機関の規模」というレポートを二〇〇五年九月八日に出しているんですけれども、この中でも私は述べさせていただいているんですが、やはり十把一からげに見るんじゃなくて中身を見て、どこが伸びているかということをちゃんと見た上で、ちゃんとした正確な議論をしなきゃいけないということを主張させていただいています。御指摘のとおり、政策金融と十把一からげに言っても、先ほどおっしゃいました旧開銀的なものとかあるいは国民公庫的なものとは、それぞれ政策の目的そのものが違うという意味では、御指摘のとおりだと思います。

 今回、日本政策投資銀行は民営化されることになる。公営企業金融公庫も、廃止して地方が担うことになる。そういう意味では、政策目的が違っていたものが違うものになるという意味ではいいんじゃないか。

 その一方で、国民公庫と中小公庫と農林公庫というのが、それぞれ目的は異なるんですけれども、では、明らかにかけ離れているかというと、私は、ある程度一つにして、さらに機能を強く発揮できるのではないかというふうに考えています。というのは、それらが一緒になることによって、信用力がさらに高まるような運営ができるのではないか。そういう意味では、効率的に信用力を高めて資金調達の有利性を発揮して、事細かに資金を必要とするところに出していけばいいのかな。

 そういう意味では、今回の統合は、比較的リーズナブルな形でくっついて、より政策金融の機能を高める方向に働かせることが可能なのではないかな。ただ、そうはいっても、これは運用の部分で失敗してしまう可能性もあるわけで、そこを今後は気をつけていかなきゃいけないというふうに考えております。

吉井委員 翁参考人にも同様のことを伺っておきたいんですけれども、四公庫の場合と、それから国際金融を中心とした国際協力銀行とは、これは目指す政策目的、もともと異質だったんですね。異質なものを、たまたま国の政策と、言葉を政策とくっつけるからといって、それで一くくりにしてしまうというのは、どう考えても、異質なものを追求するということになってしまって、これは少しおかしいんじゃないかと思うんですが、この点についての翁参考人のお考えを伺いたいと思うんです。

翁参考人 確かに、国際金融業務と中小零細、農業、かなり異質な印象もありまして、ここをどういうふうに統合効果を出していくのかというのは短期的にはなかなか難しい話だと思っております。

 ただ、中小、中堅を考えますと、これからますますグローバル化が進んでいきますので、そういう観点では、日本政策金融公庫といえども、中長期的には、グローバルな観点から中堅、中小企業をどういうふうに考えていくのかという視点もやはり考えていく必要があるということで、うまくそういったところのシナジーを働かせながらやはり考えていかなければならない問題ではないかというように思っています。

 それから、独立、独立というふうに言っておりまして、例えば間接部門を全く統合しないとかそういうことであると、全くそこは統合効果が出てこないということでございますので、ある程度独立性は保つということにはなっておりますけれども、やはり統合して効果を出さなければならないところについては積極的にやっていくということが必要なのではないかというように思っております。

吉井委員 日本開発銀行などの全体の流れは、これは民業補完ということを法目的からうたってやってきたんですね。国民生活金融公庫などの流れというのは、民業補完ということではなくて、まさに、中小企業とか国民生活とか地域経済を本当に支えるために、その政策目的を持ってやってきたから、民業補完という目的はなかったわけですね。

 それを今度、目的の変更ということは、一緒くたにしてしまうために、一くくりにするために民業補完を、国際金融の部門からその規定をとるんじゃなくて、片方の方にそれを入れて合わせるようにするというのは、そもそも少し逆立ちした考えじゃないかと思うんです。

 佐伯会長にまた伺いたいんですけれども、商工中金を株式会社化、民営化を目指していくということですが、そうなりますと、当然、先ほど来議論のありましたリスクテークという考え方で、そうすると引当金を積むか、それとも、それを積みながらも金利に、ここは大丈夫そうな中小企業とか、ここは危ないからとかで金利差とか貸し付けのときの融資条件の差、そういうものが出てくる可能性は十分あるわけです。それが経営を圧迫してしまうということになりますと、それ自身が、民営化だということでもって、もともと中小企業金融としての、本来、出発のときの政策目的からかなり離れたものになってしまうんじゃないかというふうに思うんですが、この点についてのお考えを伺いたいと思います。

佐伯参考人 商工中金の件につきましても、行政改革推進法の附帯決議の中で、中小企業に質、量ともに十分な措置を講じて困らないようにする、それから、中小企業が出資している、我々は中金に出資しているんですけれども、それについても十分な保護をするようにというようなことが規定されているように思っております。

 それで、中金そのものは、私ども中央会、すなわち協同組合のメーンバンクにほとんどなっているわけで、それなりに我々と密接に共存共栄といいますか、それでやってきているわけで、今後も、民営化になろうとも、やはり組合としての事業の発展に中金が尽くしていくというふうに思っております。

 金利云々というのは、これは中金だけじゃなくて一般銀行についても、金利が上がるということは我々中小企業にとっては非常に大変な問題でございますので、そこら辺は中金だけじゃなくて全般の問題として、金利の問題はまた別の問題だろうというふうに思っております。

 以上です。

吉井委員 民営化の中でリスクをとるということは、結局はそういうことにつながってくる問題だというふうに私は思っているんです。

 次に、佐伯参考人と桜田参考人のお二人に伺っておきたいんですけれども、これはちょうど一九九〇年代末に、中小企業基本法を変えるということで、あれは当時の商工委員会の方での議論でしたけれども、それまでは、日本の二重構造といいますか、大企業の方と中小企業の方に明白に格差があると。その格差の是正を図っていくということが、雇用の面もそうですけれども、格差是正を図る中で中小企業にやはり力をつけてもらわないと、幾ら大企業が物づくりで頑張れといっても、実際に腕のいい物づくりの現場といえば東大阪とか大田区、基盤的技術の集積地ですから、そこが枯れてしまったんじゃうまくいかないということで、もともと中小企業基本法の当初のものは格差是正ということでやってきたんです。しかし、あの基本法を変えるときに、中小企業でもベンチャーなど一部優良企業を支援へと、そちらに考え方がぐっと変わっていったというのがあのときの問題だったと思うんです。

 そうすると、それが政策金融の面でも、今の商工中金の株式会社化の問題もかかわってくると思うんですけれども、やはり現場で何万というすそ野の広い中小の町工場があって、そこにはでこぼこがありますけれども、うまくいくところもあれば落ち込むところも当然あるわけです。しかし、そういうところが、非常にいい腕を持った旋盤工やら溶接工やらそういった人たちも含めて、それが日本の技術開発に大きな貢献をしてきたことはもう間違いないし、また中小企業というのは、これは商店街を見てもそうですけれども、かつて大店法廃止前、商店街がシャッター通りになる前ですと、そこの商店主と従業員の方たちの雇用が生まれ、所得が生まれ、地域経済を支えたわけですね。

 しかし、今は、大手のショッピングセンターが進出して、しっかりもうけても、地域から吸い上げた所得をほとんど東京へみんな持っていってしまう、それでますます地域が経済的にも落ち込んでしまうという現実が生まれておりますから、中小企業基本法のもともとの考え方に立って最初の政策金融というのは出てきたと思うんですが、中小企業政策そして金融政策のあり方は、やはり今改めて考え直しをしないと日本の経済そのものがおかしくなるんじゃないか、地域経済そのものがこのままおかしくなるんじゃないかということを非常に懸念しているんですが、この点について二人の参考人の方の御意見を伺いたいと思います。

佐伯参考人 今先生がおっしゃったように、中小企業が実際の日本の経済を支えている、中小企業がなければ大企業も生き延びられないというのが現実でございます。それだからこそ新しい開発が必要であるというふうに思っております。

 ただ、ベンチャーが全部優良な企業かどうかというのはちょっと私には疑問が若干ありますけれども、そういう可能性はあると思います。だから、そういうものを育てていくという意味で、政府系金融機関、商工中金も含めて今までいろいろな意味であらゆる措置をとってきたというのは、国の政策でもありますし、それはそれなりに評価したいというふうに思っております。

 また、我々中小企業もそれにこたえて、製造業だけじゃなくて商業も含めて、いろいろな意味の、広い意味での開発あるいは自助努力をしていかなきゃならないというふうに思っております。

 以上です。

桜田参考人 中小企業政策と金融政策の関係は、銀行と中小企業あるいは小規模商工業との関係に置き直して考えてみますと、基本的には、恐らく二つは必ずしも対立するものじゃなくて、やはり相互補完の関係にあるものだ、こんなふうに考えています。

 ただ、その際、私自身の経験も含めてですけれども、今の日本の社会が生み出していかなければならないのは、収益性原理というものには必ず落とし穴がある、こういうことでありまして、例えば非常に業績のよい金融機関を育てようとして、その金融機関が非常に収益性の高い金融機関に生まれ変わった、こういう話があったとしても、そういう金融機関というのは地域経済のコアの部分を占めているものですから、そういう金融機関の収益を追求していくという事業活動そのものが、場合によってはかえって地域の経済を衰退させていく、そういうこともあり得るわけです。

 そうしますと、その地域経済の衰退を復興させる、あるいはさまざま手当てをする、そういうときにまたさまざまな地方財政の支出というものが要求されてくる。そういう現実を迎えている自治体も少なくないのではないかというふうに考えています。

 申し上げましたように、そういう中小企業政策と金融政策がまさに車の両輪となって地域経済を活性化して、居住環境の持続的発展という課題を達成するには、やはりまだまだ解決しなきゃならない課題が幾つか残っているのではないかというふうに考えています。

吉井委員 時間が参りました。四人の参考人の皆さん方には、きょうは貴重な御意見、大変ありがとうございました。

河本委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四分開議

河本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官大藤俊行君、鈴木正徳君、内閣府政策統括官藤岡文七君、沖縄振興局長清水治君、財務省大臣官房参事官香川俊介君、国際局次長玉木林太郎君、農林水産省大臣官房政策評価審議官中尾昭弘君及び中小企業庁事業環境部長近藤賢二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横光克彦君。

横光委員 民主党の横光克彦でございます。

 渡辺大臣には初めて質問させていただきますけれども、よろしくお願い申し上げます。

 まず、政府系金融機関、そして民間金融機関、この違いについてちょっと説明してください。小学生のような質問ですが、ここから入ります。

大藤政府参考人 政策金融機関と民間金融機関の相違ということでございまして、ごく大まかに整理をさせて御説明させていただきますと、政策金融機関は、一定の政策目的を達成するために民間金融のみでは適切な対応が困難な分野に対しまして資金供給を行うという点におきまして、基本的に営利を目的とする民間金融機関との違いがあるものと考えております。

 また、資金調達の面についても、政策金融機関は、政府からの借り入れや保証が可能であるなど公的な関与が認められているという点において、民間金融機関と異なっているというふうに考えております。

渡辺国務大臣 今の答えのように、民間金融機関は、国民の貯蓄を預かって信用創造をやっていくということだろうと思います。一方、政府系金融機関の方は、一定の政策目的を達成することを使命として、政府から主にお金を調達し、それを政策目的に沿った形で民間に流す、こういう役割であろうかと存じます。

横光委員 資金調達やその他いろいろの違いを今説明されました。

 今の説明の中にございましたように、私から見ると、一番端的な違いというのは、民間は、やはり営利を目的とする企業である、これはもう営利がなければ成り立たない存在である。片や、今大臣のお話のように、政府系金融機関というのは、いわゆる政府の政策の執行機関だということですよね。政策上必要な業務の的確な実施を図るためにある機関である、このように思っております。

 さらに、政府の執行機関であると同時に、民間では対応できない分野、そこを補ってきた。民間では大変リスク回避等を重視するわけですから、どうしてもそれに対象にならない人たちまで政府系金融機関は補ってきたわけでございます。例の数年前の金融危機のときには、当然のごとく貸し渋り、貸しはがし等、すさまじい状況が起きました。そして、中小零細企業の方々は大変な状況に陥ったわけですね。そのときに果たしたあの政府系金融機関の役割というのは非常に私は大きかったと思うんですね。つまり、いえば私は、日本経済の安全網、ここをしっかりとつかさどっているのが政府系金融機関ではなかろうか、このように思っております。

 その一方で、公的な役割ということを強調し過ぎる余り肥大化していった部分、あるいは公的なお金を焦げつかせた部分、こういった現実もございます。ですから、そういったことを踏まえて、今回の政府系金融改革というのは、規模をできるだけ縮小し、そして民間に任せる、できるだけ民間に任せて、しかも効率化を図る、こういうのが目的の一つであろうと思うんです。

 この委員会で今審議されておりますこの新公庫法案、ここでは、四つの機関が統合してその目的を達成しようとしているわけですが、統合によって新たに大きな政府系金融機関が生まれたという結果になってしまってはならない、このように思うんですね。そういった意味で、この法案には多くの課題あるいは疑問がございますので、順次お尋ねしたいと思うんです。

 まず、大前提として、私は改革は結構だと思いますし、行政改革は必要だと思っております。しかし、改革には痛みが伴うということは、小泉構造改革でもはっきりと実証されました。構造改革の結果、今や本当に国じゅうに大きなしわ寄せや痛みを受けている人たちがたくさんいらっしゃるわけですね。そういった意味からも、この改革の結果発生する痛みにも十分配慮した形で、この法案あるいは新たな公庫はスタートしなければならない、こういうことを大前提としてまず申し上げておきたいと思っております。

 午前中の参考人質疑でも、利用者サイドの中小企業団体の会長さんの方も、非常にこういったことで、この法案が今回できることに対する不安をお示しされていましたし、もちろんプラスもあるわけですが、マイナスもあるということを重々認識した上で取り組んでいただきたいと思います。

 それでは最初に、アメリカの政策金融機関についてお尋ねしたいんですが、アメリカでもこのような政策金融を行う政府あるいは州政府の銀行は存在するんでしょうか。

大藤政府参考人 米国の状況についてのお尋ねでございますけれども、平成十四年八月二日付の経済財政諮問会議において提出されました資料、「先進四カ国における政策金融について」というものによりますと、米国におきましては、政策金融は、教育、農業、中小企業、輸出支援などの各分野において行われておりますが、規模が総体的に小さく、米国輸出入銀行、それから海外民間投資公社という例を除きまして、いわゆる政策金融機関が実施するということではなくて、政府が行うプログラムの形で実施されているケースが多いということでございます。

横光委員 政府が関与したそういった銀行があるということでございます。規模は小さいけれども、教育や農業その他輸出にかかわってですね。

 この政策金融改革というのは、官に偏った資金を民へと流れを変えることとするものだと思いますし、いわゆる資金の出口の改革である。資金の入り口の改革は、郵政民営化で国会で審議されました。私もその特別委員会の委員だったんですが、よく承知しておるのです。その審議の中で、改革そのものがアメリカからの強い要請に基づくものである、そういった議論があったんですよ、この入り口の郵政改革のときに。今回のこの出口である政策金融改革についても、背景にアメリカからの要請というものがあるのではないかと思うんですが、そのあたり、いかがですか。

鈴木政府参考人 私ども、平成十四年以来、平成十七年の経済財政諮問会議におきましても、この政策金融改革を議論してまいりましたが、私どもの基準は、民間でできることは民間に、残す政策金融も、これはしっかり残すけれども効率を高める、その観点でこの政策金融改革を検討してまいりました。

横光委員 御答弁ではそのように答弁するのは、これはもう当然でしょう。

 しかし、年次改革要望書の基本的スタンス、ここには、官業が米国資本の進出業務に多大な障害となっている、このように年次改革要望書は主張しておるんですね、根底に。これがいろいろなところで日本に対する一つの圧力になっているだろう、私はこういうように思うわけですが、これは否定しないでしょうし、こういったところから、私は今ちょっと疑念を持ったところをお尋ねしたわけでございます。

 次に、国際協力銀行、この件についてちょっとお尋ねしたいんですが、新公庫に国際金融が統合されることになっております。この理由をお聞かせください。

大藤政府参考人 今般の政策金融改革におきましては、現行政策金融機関の担っている機能を抜本的に見直し、完全民営化、廃止される機関の機能を政策金融の外に切り出すとともに、政策金融として引き続き残すものとされた必要最小限の業務を、一つの新たな政策金融機関に担わせることとしたものでございます。これにつきましては、経済財政諮問会議等におきましても、政策金融として残す機能を担う組織のあり方につきまして議論が行われたということでございまして、一つの政策金融機関に統合するということが最も効率的であるというふうに議論がなされたものと承知しております。

 その上で、新たな政策金融機関の組織につきましては、国内部門、国際部門の性格の相違にも着目して、行政改革推進法第五条第四号におきまして、国内金融と国際金融の部門に大別をして、国内金融部門は、業務の態様に応じた区分を明確にして内部組織を編成し、国際金融部門は、JBICの外国における信用の維持と、業務の主体的遂行が可能な体制を整備するという規定を置いたものでございます。

横光委員 機能を残す機能を残すと、残す機能をさらに統合するということですけれども、国民あるいは農林漁業さらには中小企業、この三つの統合は私も理解できますよ、これは理解できるんです。しかし、これらの国内業務と、国内とは全く関係なく国際金融業務を担当する国際協力銀行の一部を、わざわざ分けて、そしてこちらの方に統合する、この意味が全くわからないんです。

 国際業務を担当する金融業務と、国内だけの中小零細あるいは国民や農業者の人たちのための業務と、統合する必要性というのをもう一回説明してください。どこにその必要性があったのか、理由じゃなくて必要性。

大藤政府参考人 先ほどもお話し申し上げましたように、経済財政諮問会議の議論におきましては、政策金融として残す機能をいかに効率的にするかということで、それにつきましては、一つの政策金融機関にした上で、管理部門の共通化でありますとか、そういったようなことを講じることによって、できる限りの効率化を図っていくという考え方によるものだと思います。

 一方、国内部門と国際部門の性格の違い等につきましては、国際金融部門につきまして、部門を設ける、あるいは独立の勘定を設けるといったようなことによって対応するということになったものと承知しております。

横光委員 新たに部門を設けるとか勘定は別にするとかいうんなら、統合する必要はないじゃないですか。今のままで十分やっていけるじゃないですか。水と油なんですよ、私が言いたいのは。統合に反対しているんじゃないんです。何でよりによって水と油が一緒にならなければならないのか。なったことによって、果たして統合された新しい機関がうまくいくのかということを心配しているから、私はこの質問をしておるんです。水と油なんですよ。

 今、あなたはこじつけのようにいろいろ理由はおっしゃいましたが、国際金融というのは、しかも、この経営方針は収支相償の原則に基づいてやっているわけでしょう。収支相償ということは損を出さないということなんですよ。現に、立派に黒字で経営していますよね。しかし、いま一方の三機関はどうなんですか。収支差補給金を受けながら経営してきている。私が先ほど言ったような政府系金融機関の任務を果たすためには、これはやむを得ないと私は思っているんですが、収支差補給金を受けながら経営してきている。

 目的も機能も内容も、まず第一に経営の仕方も全く違うというところが一つになっている。本当にこれでちゃんと新公庫は業務を果たすことができるんでしょうか。

大藤政府参考人 新公庫につきましては、国際部門を含めまして各政策分野ごとに勘定を設けまして、その中で、例えば国際部門につきましては収支相償といった性格を勘定の中で維持をしながら業務を行うということで対応していくことになっております。

横光委員 それは、勘定は別ごとにやるということでございますけれども、組織は一つなんですよね。

 いわゆる今度の新公庫のトップリーダーは、社長になるのか総裁になるのかわかりませんが、このトップは、考えてみれば、同じ自分の株式会社、特殊会社に二つの首を持つことになりますね。ということは、片一方ではある程度の赤字はやむを得ない経営、片一方では赤字を出さない経営、そういった経営方針のもとでやらなきゃいけないんでしょう。トップリーダーは、総裁は二つの首を持って経営しなきゃいけない。

 では、どちらにウエートを置いて経営されるんですか。まだ総裁は決まっていませんけれども、こういった問題もございます。お答えください。

大藤政府参考人 どちらにウエートを置くということではなくて、各政策分野ごとにやはり課せられた課題というものがあるわけでございまして、そういったものに必要に応じて財政支出等が行われる。そういったことを踏まえまして、的確に政策要請にこたえていくということで対応していかれるものと考えております。

横光委員 私は、だったら今までと全く違わないなという気がして、かえって新総裁は苦労する、二つの経営方針を牛耳っていかなきゃならないわけですからね。やろうと思えばできるでしょう、それは。しかし、新公庫の方針が全くわからなくなるんじゃないか。

 では、もう一つお聞きしますが、例えば統合後の国庫納付金はどうされるんですか。国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫、国庫納付金はありません。中小企業が十七年に三千九百万円ございますが、その他はほとんど国庫納付金はありません。片や国際協力銀行は、ずっと三百億から四百億、五百億の国庫納付金を行っておるんです。

 片一方は国庫納付金なんか一銭も払っていない、片一方は何百億も払っている、ここが一つの公庫になるんですね。この国庫納付金の件はどうなるんですか。

大藤政府参考人 今回の公庫法で、国庫納付の扱いにつきましても規定を設けているところでございまして、これにつきましては、政策分野ごとに設けられました勘定におきまして、一定の準備金を超える利益につきましては国庫納付をするということになっております。

横光委員 これまた全く統合した意味がありませんね。別々でも十分やれる。何か形だけあわせたという気がしてならない。もうとにかく統合する意味が、私からするとほとんど理解できないんです、今までの答弁を聞いていても。

 ですから、例えば新人事採用はどうするんですか。それも全部部門別。あるいは給与体系、こういうものはこれからどういう方向に持っていかれるんですか。新入社員の採用とかあるいは給与体系、これは統合になりますと、幾ら何でもばらばらというわけにいかないでしょう。別々に事業はできるにしても、職員の給与まで同じ組織の中がばらばらというわけにはいかぬでしょう。このあたりをちょっと説明してください。

大藤政府参考人 まず、新公庫におきます給与体系でございます。

 新公庫においてどのような給与体系とするかにつきましては、一義的には新公庫が決めていくことになるわけでございますけれども、その際には、一体化された組織であるということを踏まえまして、業務の内容、専門性あるいは各機関における現行の給与体系等を総合的に勘案して、対外的にきちんと説明できるものとすることが必要と考えております。

 政府といたしましても、こういった給与体系をどうするかということについてはしっかりとフォローしてまいりたいと考えております。

 それから、新公庫の職員の採用ということでございます。

 これも一義的に新公庫が決めていくことになりますけれども、その際には、業務の内容、専門性等を総合的に勘案するということで採用がなされていくものと思っております。

横光委員 新公庫で決めるということですけれども、例えば、給与体系のラスパイレス指数の資料をいただきましたけれども、これはかなり差がありますよ。国金、中小企業、農林と国際協力銀行の給与体系はかなり差がある。ちょっとの差ならどうにかなるでしょう。一三〇%あるいは一四七%、かなり差があるのを、これを統一することは統一するんですね、そこをまずお聞かせください。

大藤政府参考人 ここは、一つの政策金融機関ということでございますので、そういった方向で見直していくということでございます。

横光委員 統一する、それはそうでしょう。しかし、行革ですから上の方に上げるということは難しいでしょうから、下の方に下げるという方向性ですか、それもお示しください。

鈴木政府参考人 給与水準、これは一義的にまず新公庫の経営陣が決めることになると思いますので、今私どもの方から上か下かということは申し上げられませんけれども、当然、経営の効率化、それから、過去のいろいろな統合の例もございます。その統合の例も十分勘案していただいて、国民に説明できるような水準にしていただきたいと考えております。

横光委員 今いろいろ個別のことを聞きましたが、まだ支店の件、国際協力銀行には国内には支店はないですよね、そういったことのいろいろな問題等がございます。

 私は、この形での統合というものは非常に理解できない、かえって混乱をもたらす可能性があるんじゃないかという心配をしておるんですが、今回の国際金融の統合は、私から言うと、ちょっときつい言い方をすれば、政治的な理由でくっつけたというような印象をしておるんですよ。つまり、統合する、あるいは民営化する、いろいろな形で改革をアピールする一つの手段として、こういう形がとられたのではないか。もっと言えば、これは見かけ倒しの改革ではないかという気がしてなりません。

 この問題は、不良債権の件とかいろいろな問題を含めてまだまだ課題がございますけれども、これまた同僚議員が詳しく質問すると思いますので、私は、この問題はここで一応終わります。

 次に、主務大臣の役割についてお尋ねしたいんです。

 ここも、先ほど言いましたように、大変混乱をもたらす要素があるのではないか、そういう気がしております。現行四機関が一つの機関に統合することに伴って、公庫の主務大臣は、財務、農水、経済産業、厚生労働、四大臣が主務大臣となりますね。これは初めてのケースですよね、今までこんなことはなかったですよね。そうしますと、ただの寄せ集めになってしまっては問題があると思うんですね。

 新公庫は現行四機関のさまざまな業務を行うもので、しかもその上に四大臣がいるということで、この四大臣がしっかり調整していかなければ、私は、現場に混乱が生じるのではないか。混乱が生じないためにどのように連携をしたり、あるいは意思統一を図っていくのか、そのあたりをお示しいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 四つが統合されてシナジー効果が発揮できるようにならなければならぬと思います。零細事業者から国際金融まで多様な業務を行っているわけでございますので、それぞれの政策分野に責任を持つ主務大臣がきちんと業務実施を監督していくということであろうかと思います。

 ただし、縦割りの弊害が出てくるというのはシナジー効果が発揮されないことになりますので、新公庫の運営に当たっては、新公庫自身が取締役会による意思決定を行う、業務執行の監視などのガバナンス確保のために会社法上の仕組みを活用していく、また各勘定が縦割りの運営でない一体的な運営になるように努める、こういった努力が必要であろうかと思います。

 主務大臣においても、一体的な組織運営を妨げることのないように指導監督を行っていくということが大事であろうと思います。私、行革担当大臣の立場からも、このような弊害が出ないようにしっかりと監視をいたしてまいります。

横光委員 今、縦割りの行政が残らないようにしなければならないという御答弁でございます。

 それは非常に大事なことだと思います。今までの答弁で、たとえ統合したとはいっても施策ごとに勘定は区分するということを言われました。となると、私は、先ほどから、とりわけ国際金融のことは、では一緒になる必要はないじゃないかと言ってきたんですが、こういう勘定を区分ごとにやるとなると、実質的には旧機関の機能がそのまま動くわけで、これまでと同じ縦割りがそのまま残るということじゃないですか。もう一回お聞かせください。これは残りますよ。

林副大臣 委員御指摘のように、勘定は残す、しかし統合のメリットは出して縦割りにしないと大臣からも今答弁させていただいたところでございますが、一方で、この委員会の審議でも、例えば中小企業ですとか国民生活金融公庫がやっていた融資がこれを機会に減ってしまうのではないかという御危惧も一応あるわけでございます。そういったことに対して、勘定は勘定できちっと残して、それぞれの必要な政策金融についてはきちっとやっていく。その上で、今大臣から答弁がありましたように、縦割りの弊害はなくしていく。これを同時にやっていくということが大変大事である、こういうふうに思っておるところでございます。

横光委員 確かに、縦割りの弊害は言われてきましたし、この統合によってそれをなくすということは非常に大事なことだと私は申し上げました。しかし、私は、勘定区分ごとにやるんならば、どうしてもその旧組織の機能がそのまま残って縦割りが残るんじゃないか。本当にこれを一掃するんですね。

林副大臣 まさに委員御指摘の、大事な点でございます。

 まさに大臣から答弁がありましたように、そのために行革の担当の大臣というのがおりまして、実は先ほど主務大臣という御指摘がございましたけれども、今までもそれぞれの公庫が複数の主務大臣でやっておったケースがございます、委員御案内のとおりです。その場合のいろいろな縦割りの弊害というのが指摘される向きもあるわけでございますが、今回こういうふうに四大臣ということで少しふえましたので、まさに行革担当大臣の立場でそういったことがないようにきちっとやってまいりたい。委員の御指摘のとおりでございます。

横光委員 心配事が現実にならないように御努力をお願いしたいと思います。

 もう一つ、今渡辺大臣が大変御苦労されておりますが、天下りの問題ですね。現行の政策金融機関、ここの役員の半分ぐらいは、総裁、理事、理事長、天下りですね、このいただいた資料では。そういった形で、現在、現行の機関は運営をされております。

 そうなりますと、統合したとしても、こういった形が続けば、やはり各省庁が天下り先確保のために内部の組織づくり、あるいは経営の運営に関して発言権を奪い合うというようなことも生じかねないと思うんですが、まず、この新公庫に対して天下りということはどのようにお考えなのか、大臣、お聞かせください。

渡辺国務大臣 後ほど正確に政府委員の方から答弁させますが、新公庫法においても、自動的に天下りポストにならないような制度設計が行われております。

 一方、私が今大変苦労してこの国会に提出させていただこうとしている国家公務員法改正案の中では、各省のあっせんというものを全面的に禁止するということでございますから、今委員が御心配されましたような各省ひもつきの天下りポストになるということは、今後は、我々が今考えております国家公務員法改正が実現をいたしますと、そういうことはなくなるということでございます。

横光委員 確かにそのとおり実現したらすごいことだと思いますよ。ただ、本当に実現しない場合は、やはりこれまでのそういった内部の組織づくりや経営の運営に、今度は主務大臣が四大臣おるわけですから、いろいろな形でやはりちょっと混乱が、天下りの形では混乱が生じるんじゃないかという気がしております。こうなりますと、この目的であります効率化とかあるいはガバナンスの確保とか、こういったものは非常に難しくなりますので、ちょっと質問させていただきました。

 次に、今回のこの改革あるいは新公庫法ができることに、利用者の方がやはり相当不安を持っております。先ほど言いましたが、きょうの午前中の参考人の中で、とりわけ、日本の経済のほとんどを引っ張っている中小企業の団体の会長さんが非常に心配をされておりました。

 そこでちょっとお尋ねをするんですが、この公庫は会社法に基づく透明性の高い経営を目指すということになっておりますが、そうなりますと、貸付審査、これがこれまでより厳格になるということなんでしょうか。お答えください。

大藤政府参考人 ただいまお話しのように、新公庫の法人形態につきましては、強固なガバナンスを発揮しつつ効率的な事業運営の実現と政策上必要な業務の的確な実施を図るため、特殊会社としているところでございます。他方、新公庫は、引き続き政策金融として必要な機能をしっかりと担うこととしておりまして、業務を的確に実施していくために必要な財政支援については、国会の議決をいただいて、きちんと今後とも予算措置がなされることとなります。

 審査に当たりましては、基本的に、これまで政策金融機関としてそれぞれの政策分野において培ってきたノウハウや専門的知見、いわゆる目きき能力を生かしまして適切な審査を行い、融資判断をすることとなります。したがって、特殊会社になるからといって審査の姿勢が変化するという御心配には及ばないと考えております。

横光委員 わかりました。特殊会社になったとしても審査のやり方はこれまでと同様だ、貸し付けのスタンスが変更するということはない、こういうことですね。

 次に、現在、多数の方が現行の四機関から資金を借りております。統合する四機関の貸付残高は約二十七兆円となっておりますが、これらの借り手の方々は今度の新公庫への統合に伴って、今、貸し付けの審査は変わらないということですが、では、貸しはがしとか返済条件を変更するとか繰り上げ償還を要求するとか、そういうことはあり得ないということですね。

大藤政府参考人 現行政策金融機関の利用者の保護につきましては、行革推進法の第十三条に、その利益が不当に侵害されないようにすることという規定がございます。これによりまして、新公庫への統合を契機とする不適切な貸しはがしはもちろんのこと、利用者が不利益な扱いを受けることのないよう、現行四機関が現に行っている貸し付け等の契約条件の維持はしっかり行われるものと考えております。

 これに加えまして、新公庫法案においても、新公庫設立に伴いまして、現行政策金融機関の行う資金の貸し付け等の利用者が新公庫設立前に受けた申し込みについては、従前の条件により貸し付け等を実施することができるということや、現行政策金融機関が発行した債券の所有者の利益が不当に侵害されないよう、現行政策金融機関が発行した債券につきましては従前の政府保証や一般担保条件が維持されることを明確化することなどの所要の規定を置いているところでございます。

横光委員 わかりました。では、新公庫が特殊会社としてスタートしたとしても、これから新たな利用者に対しては貸付審査が厳しくなるとかスタンスが変わるとか、こういうことはないというお話でございます。

 ちょっとしつこいようですが、もう一つお聞きします。

 現在、各機関が貸し付けている貸付金、いわゆる債権については、これからは企業会計原則に基づいて中身の精査が行われると思うんですね。そうなると、今まで以上にかなり厳しく精査されるのではないかという気が私はしておるんですが、それでも、今私が心配しているような貸しはがしとか貸し付けの審査の変更とか、これから新たな企業会計原則に基づいて精査したとしてもそういうことはないんだということでよろしいですね。

 次に、各機関のリスク管理債権比率、いわば不良債権ですね、これは民間金融機関と比べて非常に高くなっております。国金が十七年度九・一%、農林漁業金融公庫が六・一二%、中小企業が一三・六五%と、いわば地方銀行の倍ぐらいありますね。非常に債権比率が高い。民間の採算ベースに乗らない分野に貸し付けていることから、リスク管理債権があること自体はやむを得ない、こういうふうに私は思っておりますが、しかし、これは度を過ぎちゃいかぬわけですね。

 特殊会社となる新公庫の場合は、健全な経営を維持していくことも重要でございます。不良債権をより少なくしていく方向をとられるのか。だから、そういった方向でリスク管理債権比率を下げていくよう処理を進めていくのか。それとも、政策金融という性格上、リスク管理債権はある程度はやむを得ないとして現行のままの対応をすることになるのか。経営方針をちょっとお示しいただきたいんです。

林副大臣 まさに大事な御指摘だと思います。

 基本的な考え方は、委員がまさに御指摘になったように、政策金融として必要なものを最低限残して、御議論があったところでございますが一つにまとめようということでございますので、まさに、最初に御議論があったような一般の営利の銀行とは違いまして、どんぶり勘定で収支差補給はしませんけれども、多少のコストはかかっても、政策ごとの補給も入れるということも含めて政策金融としての機能はきちっと残すということでございますから、委員の今のお尋ねであれば後者の方、こういうことになろうかというふうに考えておるところでございます。

横光委員 わかりました。それでも、これまでと違った、完全な政府系と違って特殊会社になるわけですから、ある程度の不良債権というのはやはりこれから経営努力で縮小することも考えていただかなければならないということです、政策金融を行いながら、大前提にしながら。

 次に、これまで三機関は、今私がお話ししたよに、どうしてもリスクを伴う分野までも政策的に融資をしてきたということもあるし、結局赤字経営になってきている。そのために、政策金融機関の収支差については、いわゆる収支差補給という形で政府が財政支援をしてきておりますね。この財政支援のあり方というのは、今の林副大臣の答弁によりますと、現行四機関の収支差、統合した後、同じような収支差補給金という形で財政支援は行うということですね。

林副大臣 先ほど申し上げましたように、全部通してやってみて、最後赤字が出たからその分を埋めるというような形の収支差補給金というのは、もうやめよう。そのかわり、先ほど申し上げましたのは、それぞれの政策金融に必要なものはそれぞれに補給をしていって、例えば民間よりも利子を安くしなければいけない分は何らかの手当てをしなければいけませんから、政策金融として必要なものはあらかじめ用意をして、そういう補給はやろう。しかし、最後にどんぶり勘定で補給しますと、経営をせっかく今度、委員が御指摘のように、株式会社にしてガバナンスもきかすということになるわけですけれども、結局赤字が出れば全部埋めてもらえるんだということになりますとそれはやはりよくないので、必要なところをきちっと、理由が立つところを補給はしていく。しかし、経営責任で、まじめに経営をやらないで赤字が出たものまで最後のどんぶり勘定としてやるという形はやめよう、こういう考え方でございます。

横光委員 必要なところを補給するということで、今回は収支差補給金という形ではない形で経営をやってもらう、それは結構なことですけれども、そのことによっていわゆる融資の額、あるいは先ほど言ったいろいろな、審査は厳しくならないけれども範囲が狭くなるとか、そういうことは起こり得ませんか。それは大丈夫なんですか。今のような形だと、どうしても融資の規模を圧縮せざるを得ませんよ。これをちょっと心配しておるんですが、どうなりますか。

林副大臣 大変大事なところでございまして、まさに今までそういう経営責任に帰するような、ありていに言うとサボっていたようなことがなかったとすると、今のようなやり方でそれぞれの政策に必要な補給金を積み上げていくと最後の帳じりが合う、こういうことであろう、こういうふうに思います。先ほど申し上げましたように政策金融は残すという考え方でございますので、きちっとした手当てをそれぞれの政策金融にしていくという考え方でございます。

横光委員 そうなりますと、やはりこれから経営というものは、これまでと違って非常に重要になってきますし、そこで、これまでの審議でも取り上げられております経営責任ですね。

 これは今度株式会社になるわけですから、特殊会社としていくわけですから、これまでと違った形での、これまでは、今言われたようにいわゆる収支差補給金で補ってもらうので、どうしても依存体質です。どうせ出してくれるわという形で、そういった運営であるがために経営責任ということは問題にならなかった。しかし、これからはやはりそうじゃなくなると思うんですね。

 昨年成立した行政改革推進法の政策金融改革の節で、第四条第三号において「現行政策金融機関の負債の総額が資産の総額を超える場合におけるその超過額又は新政策金融機関に生じた損失であって、これらの経営責任に帰すべきものを補てんするための補助金の交付その他の国の負担となる財政上の措置は、行わない」、こういうふうに行革推進法ではされております。この規定はこの法案には見当たらないんですが、新公庫についてもこの規定は適用されると認識してよろしいんですか。

林副大臣 まさに先ほど私から答弁させていただきましたように、新しい考え方ということでございますので、今御指摘のありました第四条第三号の規定は、当然、新公庫に適用されるということでございます。

横光委員 ここで今法律に書かれている「経営責任に帰すべきもの」ということなんですが、これはよくわからないんですね。経営者が裁量の判断を誤ったり、あるいは業務が限定されているのにこれを飛び越えて経営者が勝手な判断で貸し付けるとか、いろいろなことが起きた場合のこととか、私は勝手に想像しているんですが、経営責任に帰すべきもの、これはもう負担せぬぞ、こういうふうになっているんですが、これはどういう事例、具体的にもうちょっと、どういったときにはこういうことはもう補てんしませんよということになるんでしょうか。

林副大臣 委員が今まさに勝手にとおっしゃられましたけれども、そういうところでございまして、政策金融の適切な実施をやっていれば生じなかったようなことが生じた場合、こういう考え方でございまして、まさに委員が御指摘になったように、業務運営上の理由などを想定しております。

 具体的には、まさに委員が御指摘になったんですが、例えば、余りないことであろうと思いますけれども、経営者によって法令や融資等の基準に違反して運用した、こういう場合は、これはもう経営責任に帰すべき損失ということでございます。また、先ほど申し上げましたように、事前に必要な補給金は見積もるわけでございますが、裁量にゆだねた事項について重大な判断の誤りがあった、こういった場合はやはり経営責任に帰すべき明白な事例に当たる、こういうふうに考えておるところでございます。

横光委員 もう時間がなくなってきたのでお聞きしませんが、例えば、経営責任がこういうふうに法律に書かれている、そして、仮にそういった事例に当たるようなことが起きた場合は、どのような経営責任をとるということなんですか。そこまで考えていませんか。

林副大臣 これは会社の形態、先ほどガバナンス、ガバナンスと言っておりましたので、商法上の株式会社、ただ、全額出資の特殊会社ということでございますので、株主である政府の判断において経営責任を問うていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

横光委員 その会社なんですが、「主務大臣は、設立委員を命じ、公庫の設立に関して発起人の職務を行わせる。」とされております。「設立委員は、定款を作成して、主務大臣の認可を受けなければならない。」この新公庫の発足は、今のところ、来年の十月となっていますよね。そうすると、もう一年ちょっとしかありませんけれども、設立委員の役割というのは非常に大きいと私は思いますよ。これから定款も作成しなきゃいけませんし、時間がないんですが、設立委員の任命はいつ行う予定なのか。そのあたり、もう大体決まっているでしょうね。

大藤政府参考人 設立委員につきましては、主務大臣であります財務大臣、農林水産大臣、経済産業大臣が共同で任命することになっておりまして、設立委員の任命につきましては、平成二十年十月一日の円滑な発足に支障がないタイミングで行われるよう、主務大臣におきまして責任を持って取り進めていくことになると思っております。行政改革推進本部としても、重要な手続が適切になされるよう監視していく所存でございます。

 では、具体的に、設立委員の任命についていつごろになるのかということでございますけれども、設立委員の任命につきましては、新公庫の組織、業務等の詳細の検討、いわゆる基礎的な検討がある程度進んだ段階で行っているのが過去の特殊会社等の通例でございます。ということでございますので、その検討を踏まえた適切な時期に行っていくということになっております。

 ですから、過去の、例えば道路公団でありますとか東京地下鉄でありますとかいったものにつきましても、いずれにしても、法律を認めていただいた後に準備を進めていくことになりますので、いわゆる公庫法公布後、ある程度の期間を置いた後に任命されることになると思っております。

横光委員 終わります。

河本委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 民主党の佐々木でございます。

 ちょっと後ろが寂しくなっておりますけれども、大切な論議でありますので、やらせていただきます。

 三月二十九日の本会議で大臣とは議論をさせていただいたわけでありますが、きょう、借り手側といいますか利用者側といいますか、そういった立場について少し掘り下げて論議をさせていただきたいというふうに思います。午前中の参考人の皆さん方の御意見も、大変参考になる意見をたくさんいただきましたので、そんなことも含めて論議をさせていただきたいというふうに思います。

 最初に、平成十七年十一月二十九日、経済財政諮問会議の政策金融改革の基本方針というのが出されましたけれども、それについて三点ほど確認をさせていただきたいというふうに思います。

 そこで、まず政策金融は三つの機能に限定するとして、いわゆる政策金融から撤退するもの、残すもの、将来的には撤退するものというふうに分類をしたわけですが、先ほど来の説明を聞いていてもそうなんですが、どういう考え方に基づいてどういうふうに整理したのかということについて、経過を含めてお伺いをいたします。

藤岡政府参考人 経済財政諮問会議の政策金融改革の審議でございますが、まさに平成十七年の基本方針におきます、民業補完に徹することを基本とし、政策金融の手法を用いて真に行うべきものを厳選することが必要であるという認識のもとにおきまして、政策金融として残すべき機能の精査が行われたものと承知いたしてございます。

 具体的には、その基本方針におきまして、政策金融は、中小零細企業、個人の資金調達支援、それから国策上重要な海外資源確保、国際競争力確保に不可欠な金融、第三に円借款の機能に限定いたしまして、それ以外は撤退するということが基本原則とされたところでございます。その原則に基づきまして、現行政策金融の各機能が、政策金融から撤退するもの、政策金融として必要であり残すもの、また、当面必要だが将来的には撤退するものというふうに分類されたものと承知いたしてございます。

佐々木(隆)委員 今ありました民業補完というのが今回出てきた大きなテーマの一つだと思うんですが、それについては後ほどちょっと論議をさせていただきます。

 二つ目、確認をさせてください。

 その同じ基本方針において、小さくて効率的な政府の実現に向けて政策金融を半減するとして、いわゆる貸付残高目標と言われているものですが、貸付残高をGDPの半減、新たな財政負担を行わないというふうに整理をしているんですが、ここについて、なぜそういうラインというものをつくったのかということなどの経過を含めてお伺いをいたします。

藤岡政府参考人 お尋ねの、基本方針におきます議論でございます平成十七年の経済財政諮問会議でございますけれども、議事の展開を見てみますと、貸出残高対GDP比半減につきましては、国際比較をいたしまして、各国でいろいろな政策金融機関、機能がありますけれども、日本の場合、直接貸し付けが各国と比べて非常に突出していたという事情がございました。比較的高い国と比べても大体二倍半ぐらいであるということでございました。そこで、当面それを一つの目標にしようということで、半減という基本的な考え方が出てきたものと承知いたしてございます。

 また、新たな財政負担を行わないと整理されたことにつきましては、同じく十七年の諮問会議におきましての議論でございますが、その議論の中で、郵政改革後、最大の課題は財政構造改革であるとの考え方が示されまして、政策金融は、補助金や税に比べまして基本的に財政負担が小さい効率的な政策ツールだという側面がある、しかしなお一層国民負担の最小化を目指す必要があるということで、新たな財政負担はしないという方針がいいのではないかという議論がございまして、まさに基本方針として新たな財政負担を行わないというものが確立されたというふうに承知いたしてございます。

佐々木(隆)委員 実はこの二つ、三つの機能に限定をする、効率的な運営をする、目標を定めるというのは、この後ずっといろいろやっていくときの、この後展開をしていくときの非常に重たいかせになっていくのではないかという思いがあって、今お伺いをいたしました。

 もう一点、確認します。

 八つの政策金融機関を統合したり民営化したりするわけですが、完全民営化するものや廃止するもの、あるいはまた今度の新公庫のように、国がすべて出資する政策金融機関として統合するもの、いろいろあるわけですが、それぞれの改革の基本的な考え方などについてお伺いをいたします。

藤岡政府参考人 経済財政諮問会議の審議でございますが、まさに先ほど御説明申し上げました民業補完に徹することを基本として、政策金融の手法を用いて真に行うべきものを厳選するということが必要であるとの認識のもとで、政策金融として残すべき機能の精査から始めまして、その結果に基づきまして、政策金融として残す機能を担う新組織のあり方について検討が行われてございます。その中で、まさに新組織と申しますものは効率的な組織であるべきことという考え方のもとに、政策金融として残す機能を担う組織については、一つの政策金融機関に統合することを基本とすることが最も効率的であるとの判断が示されたものと承知いたしてございます。

 また、基本方針におきましては、政策金融として残す機能を担う機関の組織形態は「特殊会社又は独立行政法人に準じた法人とする。」とされてございます。

佐々木(隆)委員 今、基本的なことで経過を含めてお伺いをしてきたわけですが、以上のような経過をたどってきたということなんですが、これは平成十七年の話であります。現在行革を担当されている大臣としては、この今までの経過をどのように考えておられるか。当時そういう考え方で決めて今日に至っている、しかし、渡辺流、渡辺節はちょっと違うぞという思いもあるのではないかということも含めて、お伺いをいたします。

渡辺国務大臣 平成十七年当時、私は大臣ではございませんが、やはり政府には継続性がございます。私の行革大臣としてのミッションは、小泉内閣を引き継いだ安倍内閣においてもしっかりと引き継がれているわけでございます。

 基本的には、やはり余りにも官の方にシフトし過ぎた金融というものをもっと民間にゆだねていこうという流れがあるわけでございます。これは小泉内閣が初めてではございませんで、既に橋本内閣のときから財政投融資改革というのは行われてきているわけであります。

 先ほどの藤岡統括官のお話にもありましたように、日本は他の先進資本主義国と比べて非常に官の金融が巨大であるという特徴がございました。したがって、こういう官業ビジネスを残しておきますと、将来へのツケ回しがふえてしまうおそれを解消できないのと同時に、市場メカニズムを通した資金の流れが実現をしない、国民の富というものが非常に不正常な形で政府の資源配分にゆだねられるということになるわけでございますから、やはり基本的には民業補完を徹底していく、一方、政策的に必要な分野においては必要最小限の政策金融は残していく、そういう改革が行われてきたものと理解をいたしております。

佐々木(隆)委員 確かに、官に少し依存し過ぎていたというところは改革をしていかなければならないというふうに思っています。私も改革が不要だと思っておりませんし、改革は必要だというふうに思っているんですが、改革の仕方、中身というもの、先ほど来お話がありますが、そこにやはり我々がきちっと論議をしなければならないところがあるのではないかというふうに思っております。

 先ほど、国際協力銀行、これだけが違和感があるという話が横光委員からあったんですが、先ほどの説明を聞いていても、なぜこれだけが、あとの三つと比べるとどうも違和感がある。もう一度お聞きしても同じ答えになってくるんだと思うんですが、国民の皆さん方にわかりやすくということもこの委員会での論議の必要性だというふうに思いますので、例えば、三つの国内の公庫と国際協力銀行が一つになったときに、貸し付けの金利は一体どうなるんでしょうか。

大藤政府参考人 現行の貸し付けの金利につきましては、おのおのの政策分野における政策目的を達成する観点から、それぞれ、どの程度の金利で貸し付けを行うことが適当かということを政策的に判断して適切な水準に定められているものと理解しております。今後、新公庫に統合されることになるわけですけれども、この基本は変わらないものと考えております。

佐々木(隆)委員 これも先ほど来論議になっているんですが、おのおのでそれぞれだ、今度はまとめるんだ、ここのところがどうも国民の皆さん方にすっきりとわかる形になっていないわけですね。おのおの、それぞれ、しかし一つにする。一つにするのなら全部一つになるのかと思ったら、分野ごとに、勘定ごとに、こういうふうになっていく。

 例えば、午前中の参考人の話にもあったんですが、今までの国金並びに中小企業公庫などを含めて、一つであったときの、もちろん親身になって低利で長期のものを貸してくれるということもあるんですが、そのほかに、コンサル業務、将来にわたってのコンサルをしていただいたということも非常に我々としては信頼をし、頼りにしていたところなんだという話が午前中もあったわけですね。

 今度、経理、勘定は別にするけれども一つの建物の中に入ったときに、そういうことは一体どうなる。一体的にやると説明されているわけですから、一体的と別々に経理したり勘定したりするということの、そこのところはやはりわかりやすく国民に説明する必要性があるんだと思うんですね。

 それともう一つは、一つにして効率的にやると言っていて、執行機関であって、政策はそれぞれの所管庁がやるわけですよね。決めるところとやるところ、決める方が四つあって、やるところが一つあって、そしてそこで効率的にやる、こう言っているわけですから、この辺の説明がやはりどうも、僕もずっと論議を聞いていても、私が頭が悪いのかどうかよくわからないんですが、この点についてお願いをいたします。

林副大臣 大変大事なポイントでございまして、国内の三行の方は、先ほど大臣がおっしゃったように、シナジー効果というのは割とイメージがしやすいところがございます。私の地元でもお話をしておりますと、農林は別だからという方は随分最初おられましたけれども、やはり法人経営をしていこうという非常に前向きな方にとっては、中小公庫にある法人経営のノウハウというのを今度は農林公庫と一緒になってやっていこうと、こういうようなシナジー効果というのは現に我々も期待しておるところでございます。

 では、この国内三行と国際の部門のシナジー効果や統合の効果とは一体どういうところにあるのか。先ほどちょっと横光先生のときに私、手を挙げられなくて失礼したわけでございますが、党で議論をしていたときに出たのは、いろいろな金融機関を統合していくときに、そのリスクを、お互いに違ったリスクを持った金融を一つの金融機関にしていくということで、トータルとしてのリスクに対する抵抗力というものが増す、こういう議論がございました。

 例えば、国内で景気が悪くなるという事態がありますと、国内の貸し付けが大体全部同じような状況で悪化をする、こういうことが考えられるわけでございますが、一方、国際的にやっておりますと、こちらは別の理由でいろいろな作用が起こりますので、こういうものを一つに持っていますと、非常にそういう大きな金融機関としてのリスクに対する強化があるとか、こういういろいろな議論が、実は中でもございました。

 それからもう一つは、まさに行革の観点で、政策金融というものを残していくという意味では、やはり一つにする。まさに、総裁になるんでしょうか社長になるんでしょうか、今からの話でございますけれども、そういうことを初めとして、管理部門といったもので一緒にできるものはやはりきちっと一緒にしていこう、こういうような御議論もあったわけでございまして、両々相まって、残すものはきちっと一つにしていこうという方針が最終的に経済財政諮問会議で決まるに至った経過としては、そういう議論があった、こういうことでございます。

 そういうふうな形で一つに決まりましたけれども、その逆に出てきたのは、先ほど申し上げましたように、一緒になるとそれぞれの弱い部分のところが、だんだん押し込んで少なくなるんではないか、こういう御懸念が随分、環衛の方とか農林の方からございまして、そこはきちっと勘定を区分して、この勘定ではこれぐらいだ、生活衛生についてはきちっとそこの計画までつくるということにいたしましたけれども、そういうことをやって、今まで政策金融として果たしてきた役割そのものはきちっと守っていきますということを改めてはっきりさせていただいた。

 時系列的にいうとこういう議論がございまして、一つにまとめて言ってしまうと少しわかりにくくなるのでございますが、多少お時間をいただきまして今のように時系列的に御説明させていただくと、そういう議論の経過をたどってきた、こういうことでございます。

佐々木(隆)委員 実はそこのところだと思うんです。この先この公庫が動いていき始めたときも、国内三公庫はまあいいとして、私はそこはそれで理解できるんですけれども、リスクの違いをカバーできるという話を今、経過の中での話としてされたんですが、ということになると、公庫と言われていた今までの政策金融としての意義からかなり銀行に近いものに、今のリスクをカバーできるというお話を伺うと、近いものになっていくのではないか。そうすると、先ほど言われたように、今までそれを利用していた人たちにすごい不安が広がっていくという、そこのところの、やはりちょっと無理をなさったのかなと。どう考えても国際協力銀行というものだけが妙に違和感がやはりある。

 どっちにしても、一定の補給というものは、政策ですから国は考えているわけですから、であれば、無理してこれをくっつける必要は、私はなかったのではないか。そこに一定の、どんぶり勘定になってはいけないという物の考え方は入れるとしても、ここに国際を入れたという意味は、どうもちょっと違和感が依然として残ると言わざるを得ないというふうに私は思います。

 次に入らせていただきますが、中小企業の一般貸し付けとか個人の資金調達支援、教育資金貸し付けなどは今回の統合に当たって廃止縮減するものになっているわけです。今後民間金融機関で対応することになると思うんですけれども、民間金融機関が対応する場合に、金利が高くなったりあるいは審査が厳しくなったりするという、今言われたその不安の部分ですが、これまでどおりの資金調達の機会が奪われてしまうのではないかという不安が広がっているわけでありますが、この点についてお伺いをいたします。

    〔委員長退席、平井委員長代理着席〕

林副大臣 御指摘のあった中小企業の一般貸し付けや教育資金貸し付けの一部の部分につきましては、今回、廃止縮減する、こういうことでございますが、ここに至る経過で、民間金融機関と政策金融機関の機能、役割分担ということで相当議論をいたしまして、関係者からのヒアリングもいたしたところでございます。

 そういった検討の中で、この四機関の業務のうち廃止縮減される部分については民間でやっていただけるだろうという判断をしたということでございまして、まずもって民間金融機関にしっかりとやっていただくということが重要だ、こういうふうに考えておりますが、我々としましても、実際にそういうふうになるのか、融資の実績や、また融資の姿勢ですね、貸し出しのDI等ございますけれども、こういうものもよく状況を注視してまいりまして、結局民間がやってくれなくて、ぽてんヒットになったということにならないように、きちっと見てまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

佐々木(隆)委員 資料を配らせていただいたというふうに思うんです。裏表の一枚の紙でありますが、一つは、昨年、日本商工会議所が政府に対して要請をしたものであります。ローマ数字の三番目に「中小企業金融機能の維持・強化と中小企業の再生」ということで、このひし形の二番目と三番目のところに「政府金融改革における中小企業金融機能の維持・強化」と、かなり心配をされて、既にこのときにこういう要請。それと、「金融セーフティーネットの充実と資金調達手段の多様化」。この二つ、いわゆる金融改革が始まっていたことに対して反応されたんだというふうに思うんですが、この点、例えば商工会議所とか中小企業の団体の皆さん方とどういう話し合いをされてきたのかというのが一つ。

 もう一枚、裏側にあると思うんですが、出典をちょっと書いていなかったかもしれませんが、これは国民生活金融公庫総合研究所というところがとったものであります。毎年実施をされているようであります。私はホームページから引っ張らせていただきましたが、その七ページと書いてあるところに、「世帯の年収別にみた在学費用の負担」という右側の図十というところの表でありますが、要するに、所得の低い階層ほど学費の割合というのが、ウエートが非常に高くなって、二百万から四百万未満の方々にとっては学費が四九・二%も占めるというような数字なわけであります。これはちゃんとした機関がとった数字であります。

 要するに、今までこうした三つの公庫が果たしてきた役割というのは、まさにこういうところにあったのではないかというふうに私は思うんですね。その中にあって、いわゆる個人の資金調達だとか、あるいはとりわけ教育資金の貸し付けとかというものが、もし民間になることによって、民間に資金があることは渡辺大臣もきのうから力説されておられますのでそれは私も理解するんですが、しかし、金利が上がれば結局それは使いづらいお金ということになるわけでありまして、結局、借りづらい人がより借りづらくなるという現象が起きてくるのではないか。いわゆるセーフティーネットというものが壊れていくのではないかということの懸念があるんですが、これについてお答えをいただきたいと思います。

林副大臣 大変大事なところを御指摘いただいたというふうに思っております。

 先ほどちょっと、ぽてんヒットという言葉を使いましたが、やはり政策金融の果たすセーフティーネットの役割というものは非常に中心的な機能である、こういうふうに考えておりますので、先ほどの、団体とどういうお話をされたかというのは、もし必要があれば補足させますけれども、そういう方のニーズと、それからもう一つは、民間の金融機関の方の御意見も随分聞きまして、ここはむしろ民業とコンピートしている、こういうような御議論もあったわけでございます。

 それで先ほど申し上げたような仕切りをいたしましたが、それに加えて、ここから先は民間でやって我々は知らないというのではなくて、民間の金融機関がきちっとそういうことをやっていけるようにするために、政策金融は一歩退くんですが、例えば保証をするとか信用補完をするとか、そういうことをやっていくことによって、よりそういう民間金融機関の方がやっていく。しかも、そのような後ろに引いた補完機能を果たすことによって、お手ごろな金利でやれるような商品を仕組むのをお手伝いする、こういうことは積極的にやっていこう。そういうことが相まってセーフティーネットという機能がなくならないということにしようということでございます。

 教育についても、現行九百九十万ぐらいだったと思いますが、そういうラインを少し引き下げようということになっておりますけれども、その場合に、今まさに国金自体がおやりになっている調査をお示しいただきましたけれども、こういう方々がこの影響をこうむらないようにしていこうということを今検討しているところでございます。

佐々木(隆)委員 これから作業部会や何かでいろいろと煮詰まっていくんだと思うんですが、とりわけ三つの公庫を利用されていた皆さん方に今一番不安が広がっているところは、一つはそこだと思うんですね。やはり政府としては、始まる前にそこにきちっとこたえてあげる、あるいは説明するということの必要があるんだというふうに思います。

 ここからは少し意見が違うかもしれませんが、大臣はこの前、本会議での答弁の中で、戦後レジームに安住しない、だから改革が必要なんだ、ちょっと一部分だけ切り取ってお話をすればそういうお話をされたんです。

 私は先ほど、この改革は必要だと言ったんですが、改革をするときに、この六年間余りの改革の中でやはり一番忘れられてきたのは、セーフティーネットなしの改革をやってきた、なしと言ってはちょっと言い過ぎかもしれませんが、極めて網目の大きい改革をやってきたのではないか、ほとんどの方は漏れてしまうようなそういう改革をやってきたのではないか。だから、私は、改革は必要だと思っていますが、改革のときに同時にやらなければならなかったセーフティーネットを外してきた、外すことによって改革をしてきたというふうに思うわけですね。

 そのときに、戦後レジームに安住してはならないというんですが、じゃ、戦後のどこがよくてどこが悪かったのかというのは、実はもちろん安倍総理からもだれからも、戦後レジームを何とかしなければいけないという話は聞くんですが、どこは守らなきゃいけなくて、どこを壊さなきゃいけないんだという話を聞いたことがないんですが、内閣の一員として、大臣。

渡辺国務大臣 戦後の成功体験を検証してみれば明らかだと思うんですね。

 例えば、金融の世界においては、統制型金融、つまり、政府が金利を統制したり銀行免許をコントロールしたりしまして、金融の世界を操りながら資金供給をやってきた。それも重点的に、日本経済を高度成長路線で引っ張っていく産業に傾斜配分をしてやってきた世界があったかと思います。

 インフレの時代はそういうやり方でもよかったんでしょうね。日本が、資源がない、しかし、冷戦構造の中で、言ってみれば弱者の恐喝という形で、軍事費、安全保障費にお金を使わずに産業振興に相当の力を傾注してきた。また、世界じゅうから安い資源を輸入し、それを加工して、輸出主導型の経済成長を遂げてきた。まさに、こういった経済の相当大きな陰の役割を果たしてきたのが金融だったと思います。

 したがって、インフレの時代に金利を統制してくれるというのは、これは大変ありがたいことなんですね。行け行けどんどんで資金需要が出てくるわけでありますから、民間では、その資金需要に対応できないとなれば、当然金利は上がるわけですよね。マーケットメカニズムが働けば、金利は高くなるのが当然。しかし、統制金利でぎゅっとそれを押さえ込んで、郵便貯金を初めとした国民の貯蓄を政府が重点的にマーケットを通さずに配分していくやり方というのは、実は大変な威力を発揮したんだろうと思うんです。

 残念ながら、そういう時代が終わりました。まず、ベルリンの壁が崩壊をし、大体一九九〇年代半ばには世界経済がかなり一体化してきたわけですね。ついこの間まで、資本主義をやっている国は十億人そこそこだったのが、もう五十億人ぐらいの人たちが資本主義経済の中に参入をしてきてしまいました。したがって、日本だけが先進国の中で唯一デフレ経済というとんでもない経済に見舞われてしまったわけでございます。

 なぜデフレになったのかというのは、簡単なことなんですが、日本にじゃぶじゃぶ入ってきたお金が日本から出ていっちゃったわけですね。そうすると、小さな資本で大きな負債をレバレッジする日本型の資本主義というのがもろくも崩壊をしていったわけでございます。それが九〇年代からつい三、四年前まで続いた金融不安だったわけですね。

 したがって、こういう体験を我々はさせられてしまったわけであって、戦後レジームの成功体験に安住していると未来はないよな、そういう思いで我々は改革を進めているところでございます。

佐々木(隆)委員 もう少ししゃべりたかったのかもしれませんが、私の審議時間に協力をいただきましてありがとうございます。

 ただ、その中で、私がセーフティーネットと言ってきたのは、今言った、例えば少額資金を借りなければならないような人たちがかえって借りづらくなったり、結局、総中流と言われた日本の文化というのは、それはそれで私はすばらしい文化だったと思うんですよね。そこを何かどんどんどんどん今ひょうたん形にしていっているんだとすれば、これがその手助けになってはいけないというふうに私は思っているわけです。

 午前中の参考人の中小企業組合の人だったと思いますが、違いますね、大学の先生でした、要するに、中小企業というのは、業と一緒になりわいとしてやっていて、その地域の中の一員でもあると。要するに、地域も同時につくってきたんだ、そういうのが大切にされないで、経済という論理の中で、大きな企業が地域の中に入ってきて壊れていくというようなことになっては困る、そういう意味でも中小企業の公庫の果たしてきた役割は大きいんだというお話をされていました。今の国金だとか、とりわけ中小企業の公庫だとかというものはそういう役目を果たしてきたのではないかというふうに私は思うんです。

 先ほど副大臣から答弁いただきましたが、なお不安が残るので、そこのところをはっきりと、ここのところを守るんだというところをきちっとお答えいただきたいというふうに思います。

    〔平井委員長代理退席、委員長着席〕

林副大臣 まさに、これは阪南大学流通学部教授の桜田先生が御指摘になったところを今お引きになられての御質問でございました。収支差補給の点とか直接貸し出し云々、こういう御議論があったようでございますが、そういう政策金融の機能そのものについてどう見るかという大変深い御示唆だ、こういうふうに思います。

 そういう意味で、先ほど議論の経過を少し御説明したときに申し上げましたけれども、国民金融公庫が果たしている役割については、今のブロック別にいいますと全部残そう、こういうことでございます。先ほど来御議論がありますように、それを担保するためにガバナンスはきちっとやって、緩いことはいけませんけれども、一方で国が全額出資の特殊会社にするということで政策金融の機能はきちっと担保していこう、こういう考え方で今回の仕組みをつくった、こういうことでございます。

佐々木(隆)委員 それでは、もう一つのテーマで質問させていただきたいというふうに思います。

 今度の改革の中で、民間金融機関も活用した危機対応体制ということが言われているわけであります。急激な金融の不安とかあるいは災害とかいろいろなことが考えられるんですが、どのような仕組みを考えておられるのかということについて、まずお伺いをいたします。

林副大臣 ちょうどこの議論をしておりました二年、三年前ぐらいから、O157ですとか鳥インフルエンザのようなことが起きまして、そういった場合に何をするかということと通常のときにどういう仕切りをするのかということは、やはり別に考えなければならないだろう、こういう議論がございまして、こういう危機対応制度というのを今度仕組ませていただいたところでございます。

 もとより、アジア通貨危機のときのような、外からああいうことが起こるとか、昭和金融恐慌のようなことも当然議論の当初からあったわけでございますが、そういったような金融秩序の混乱とか大規模な災害、テロリズムや、今申し上げました感染症等による被害に対処する、こういったようなケースは政策金融として迅速かつ円滑な対応を実施することが必要であろうということになりまして、この法案では、政策金融として承継する機能に関しては、新公庫みずから貸し付け等を実施するということにしているほか、今御指摘のあった民間金融機関を活用した危機対応制度を盛り込んでおるところでございます。

 具体的には、主務大臣が、今申し上げましたような内外の金融秩序の混乱または大規模な災害、テロリズムもしくは感染症等による被害に対処するという必要性を認定した場合におきまして、新公庫によるリスクの一部補完や長期固定資金の貸し付け、利子補給といった措置を前提といたしまして、指定金融機関がみずからのリスク判断で危機時に必要な資金の貸し付け等の業務を行う、こういう仕組みにしたところでございます。

佐々木(隆)委員 いわゆる民間からの申請に基づいて指定金融機関を指定するという方式なわけですが、まず一つは手を挙げてくれる人がいるのかということがある、今、利子補給するというお話がありましたが。それと、その指定金融機関をどういうふうにして指定するのかという今度は指定する側のテーマ。もう一つは、先ほど来小さな政府とか改革とか言われている中で、危機の範囲というものを決めるのは新公庫の方になると思いますが、危機の範囲が狭められていくのではないかというような不安もあるんですが、そのような点についてはいかがでしょうか。

林副大臣 まず、民間の金融機関が手を挙げてくれるのかというところにつきましては、この制度の周知徹底を法案を成立させていただいた暁にはしていって、適切に申請をしてもらうようにしていきたいと考えておるところでございます。もとより、特に地域の金融機関はその地域の方とずっとおつき合いがあるわけでございますので、そういうときにできるだけ我々としては一緒になってやっていきたい、こういう基本的な考え方を持っておりますので、そういう考え方で周知徹底を図っていきたいと思っております。

 また、今回、商工中金と政投銀というのがいわゆる政策金融の外に出ますので、実は、この二つの完全民営化されることになっております機関を危機対応のときには活用いたしたいという観点で、この二つにつきましては自動的に指定をしたものとみなすという規定を置きまして、危機対応の枠でやっていただける、こういうことにしたわけでございますので、予定どおり二十年十月一日に新体制ということになりますれば、その段階で指定金融機関としての指定を受けたものとみなす、こういうことになっておるところでございます。

 何を危機とするかということは、先ほどちょっと申し上げましたように、内外の金融秩序の混乱云々ということの必要性を主務大臣が認定する、こういう格好になっておりますので、時々の主務大臣の判断、こういうことになっていくわけでございます。

佐々木(隆)委員 もう一点、この危機対応についてお伺いしたいんです。

 今、商工中金のお話が出ましたが、商工中金が完全民営化されるということも、ある種、完全民営化されることによる不安というのはあるわけですよね。狭まるのではないか、縮小されるのではないかというところへ今度こっちの方も縮小されるのではないかという、二重に狭められていくという不安、これが一つあると思うんです。もう一つは、今までは一応政府がかかわっていた、商工中金は外へ出た、そういう中で、これは危機管理ですから速さが求められるわけで、その迅速さというのは一体大丈夫なのか。この二つがやはり不安の材料としてあるんだというふうに思うんです。

 まさに政策金融ですから、そういうときに力を発揮しなければ政策金融の意味がないわけですから、そこの点についてのお考えをお示しいただきたいと思います。

大藤政府参考人 危機対応におきまして民間金融機関を活用するということで、いろいろな不安ということであろうかと思いますけれども、今回創設する危機対応制度というのは、内外の金融秩序の混乱等の危機時におきまして、今お話のありました、これまで商工中金でありますとか政策投資銀行が政策金融機関として担ってきた金融機能であります、手形割引による資金融通でありますとかその他の短期資金でありますとか社会基盤整備に係る資金等について、民間の指定金融機関を活用して供給していくというようなことが考えられるのだと思っております。

 そういったことでございまして、これらの金融機能につきましては、新公庫というのは決済機能とか顧客のネットワークというものがございません。そういったことについて必ずしも十分でないということから、むしろ民間金融機関、完全民営化する商工中金でありますとか政策投資銀行を含めまして、民間金融機関の決済機能でありますとか、地域的なネットワークとか、そういったようなものを活用して危機対応を行っていくということが有効であろうというふうに考えているところでございます。

 それから、迅速に対応できるのかということでございますけれども、これにつきましては、まさにそういうことで、あらかじめそういったときに対応していただけるという金融機関を指定しておきまして、今回の新公庫と指定機関の間であらかじめ協定みたいなものを結んでおきまして、認定された場合に迅速に危機対応が発動できるような準備を進めておくということでございます。

佐々木(隆)委員 終わらせていただきますが、きょう論議をさせていただいた中で、やはりどうもこの民業補完という新しい目標のもとに変換をされるということに、非常に、片や政策金融としての役割、そこのところの不安というのは私は必ずしもまだ払拭されているというふうには思えないし、そこのところは私自身もまだ不安に思っています。

 それともう一つは、例の国際協力銀行が、どう考えてもやはり違和感があって、これがここに一つになるということについての違和感、強いて言えば、政策という名前が同じだけで中身は全く違うものがくっついてしまったというような気がしてならないのですが、その辺についてはまだこれから私自身が論議をさせていただきたいという気持ちで、きょうは終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

河本委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 それでは、引き続きまして質問をさせていただきます。

 もう我が党の委員から随分質問が重ねてされておりますので、どうしても質問の内容が重複することもあろうと思いますが、しかし、私なりの視点で質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今回の法案で、やはり前提となりますのは、いわゆる行政改革、行革の基本法。我々も議論に参加をして、私も行革特の委員だったわけでございまして、その中で、大変な質疑時間の中で私も何度か質問に立ちました。出てくることが、この行革基本法の「目的」にありますように、「簡素で効率的な政府」ということを求めていくことは、これは当然我々も同じ認識でございまして、そのことについても質問をかつてさせていただきました。

 今回のこの関連法案の質疑の中で、やはり我々が一番気にしているのは、この簡素で効率的な政府。行政改革、行革だということが実は名ばかりで、四つの政府系金融機関を統合して、結果、一足す一足す一足す一が四になって名称が変わっただけと。役員数や職員数も結果的には変わらないで、今まで我々が再三指摘してきたように、中小企業や零細企業あるいは一般家庭の国民等々が、結果として利用者の選択肢が減って、最終的には、セーフティーネットとしての役割を低下させることによってユーザーというか利用者にしわ寄せが行ってしまうのではないだろうかということが懸念されるわけであります。

 そこで、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、これまでの政府系金融機関、総裁、副総裁、こうした方々が、資料をいただくと皆さん方、中央官庁の出身でございました。なぜ中央官庁出身の方でなければいけなかったのか、なぜ続いてきたのか。まずはその点につきましての質問をさせていただきたいと思います。

渡辺国務大臣 先ほども申し上げたことでございますが、戦後レジーム、特に金融の世界においては統制型の金融というのがずっと続いてまいりました。民間の金融機関も、金利の統制あるいは免許によるコントロールを通じて、護送船団方式という金融行政が行われてきたのは御案内のとおりであります。

 一方、官が配分する政府系金融においては、歴史的にいつごろからかは定かではありませんが、それぞれの所管官庁のトップが天下る、こういう慣行ができてきたわけでございます。言ってみれば、統制型のシステムの延長線上にこうした天下り慣行というのができたわけでございます。

 高度成長時代には大変こういったシステムは機能をしておったのでしょうけれども、先ほど来申し上げております、世界経済が一体化してしまった、その中で日本がとんでもないデフレに見舞われて、従来型のシステムが大変なダメージを受けた、そういう中ではこうした慣行を全面的に見直す必要があるのではないかというのが問題認識でございます。

渡辺(周)委員 問題意識は一緒なんですが、なぜ今まで来たのか。これはもう慣例的なものであったという中で、これがどう今後変わっていくのだろうかというふうに思うわけなんですが、先ほどから指摘されているように、実は役員の中でも官庁出身の方が、総裁、副総裁以外の理事も官庁から来ているわけであります。

 ここでちょっとお尋ねしたいんですけれども、それぞれの機関の総裁、副総裁、理事というのはどんな仕事をしているのか、それぞれお答えいただけますでしょうか。

香川政府参考人 財務省関係の機関についてまずお答えいたします。

 国民生活金融公庫でございますが、これは、中小企業の中でも信用力に乏しく経営基盤が脆弱な小規模企業を主な融資対象として、小口の資金を安定的に供給するという政策目的のもとで業務を行っております。

 また、国際協力銀行ですが、これは、重要資源の開発、輸入への支援、あるいは我が国企業の海外投資や輸出への支援、それから通貨危機への対応というような貸し付けを行うという政策目的がございます。

 こうした職責を担うに足る識見及び能力を有する人ということで、法律に定められた手続にのっとって総裁が選任されているわけでありますが、この両機関の総裁、副総裁は、これらの機関の代表者ということで、今申し上げましたような政策目的並びにその業務の運営を総括してやっているということでございます。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 私のところでは、中小企業関係のところで、中小企業金融公庫について御説明をさせていただきます。

 中小企業金融公庫は、国の中小企業金融政策の実施機関といたしまして、融資、信用保険、証券化支援等々さまざまな、多様な業務を実施しているところでございます。

 中小企業金融公庫法におきまして、総裁は、公庫を代表し、業務を総理するということになっておりまして、公庫の多様な業務の運営に係る重要な意思決定を行っているところでございます。国会の審議の場等でも、公庫を代表して説明責任を果たしてきておるところでございます。また、全国の融資先の経営者、信用保証協会の代表者、業界団体等との意見交換を積極的に行った上で、地域や中小企業の実情を公庫の業務運営方針に反映させているという状況でございます。

 それから、副総裁でございますけれども、副総裁は、公庫を代表し、総裁を補佐し業務を掌理するということになっておりまして、総裁とともに代表権を持ち、総裁を補佐しながら公庫の重要な意思決定を行っているところでございます。

 最後に、理事でございますけれども、総裁が定めるところにより、総裁及び副総裁を補佐して公庫の業務を掌理する、こういうことになっておりまして、それぞれ、例えば総務、総合企画担当でございますとか、人事、審査、経営情報担当でございますとか、こういうように担当業務を割り当てて、それぞれの担当業務の重要な意思決定を行っているところでございます。

中尾政府参考人 農林漁業金融公庫についてでございますけれども、農林漁業金融公庫は、農業の担い手の育成、確保などの農政改革の推進や、地球温暖化防止のための森林整備の推進などの政策目的を実現するため、民間金融機関では対応できない長期、低利の融資を行っております。

 それぞれの役員の仕事でございますけれども、総裁は、公庫を代表し、その業務全体を総括することとしております。

 副総裁は、総裁の定めるところにより、公庫を代表し、総裁を補佐して公庫の業務を掌理し、総裁に事故あるときにはその職務を代理し、総裁が欠員のときにはその職務を行うこととされております。特命として、例えば内部監査の適正な実施のため、検査部の指導監督を行うこととされております。

 理事は、それぞれ総裁の定めるところにより、担当部門ごとに公庫の業務を掌理することとしております。

清水政府参考人 沖縄振興開発金融公庫についてでございますが、公庫は、沖縄県におきまして本土公庫と見合いの業務と沖縄独自制度を一元的に実施する政策金融機関でございます。

 役員の職務につきましては、沖縄振興開発金融公庫法第九条に定められてございますが、理事長は、公庫を代表いたしまして、その業務を総理する。

 副理事長につきましては、公庫を代表し、理事長の定めるところにより、理事長を補佐して公庫の業務を掌理する。

 また、理事につきましては、理事長の定めるところにより、理事長及び副理事長を補佐して公庫の業務を掌理するとされているところでございます。

渡辺(周)委員 そうしますと、公庫を総理して総裁がその職責を果たされているということでございまして、それぞれの公庫の運営に対して、副総裁は総裁を補佐し、そして理事がそれぞれの担当で運営に当たっているということでございます。

 そうなりますと、今回の新しい政策公庫、日本政策金融公庫ができますと、今の総裁、副総裁、そして理事、こういう方々は、新機関の政策公庫を当然総理し、そして運営をしていくわけでありますけれども、どういう形での役員構成になるのかなというところは関心を持つところなんです。

 といいますのは、先ほど最初に申し上げましたとおり、行政改革でありますから、たくさんの省庁にまたがって、主務官庁が多岐にわたっているとこれまでも質問をしてまいりました。その中で、それぞれから正直言って天下りをしてきているという形で、統合される中で、役員構成であるとか、あるいは執行機関であります理事ですね、これはどういう形になるんでしょうか。その点については、大臣、お答えいただけますか。

渡辺国務大臣 今回の法案では、新公庫の役員数については、この法案を成立させていただいた後でありますが、組織の具体的な姿を固めていく過程において決めていくことになります。

 具体的には、設立委員が必要最小限の役員数を検討し、その上で、主務大臣が判断をし、役員数についても定款で定めることになります。その際、行政改革担当大臣としても、しっかりと見てまいります。

 なお、新公庫設立時の役員の選任については、創立総会の決議を経た後に、主務大臣の認可を受けることによって効力を生じることになります。

 なお、天下りの問題でございますが、今政府・与党の方で最終的な調整を行っております国家公務員法の改正案が、私どもの当初から考えている案ということに決まって、なおかつ、それが今国会で成立をした場合には、当然各省のあっせんというものが全面的に禁止をされることになってまいりますので、従来から続いてきております、各省のトップあるいはそれに準ずる人たちの固定的なポストという位置づけはなくなるものと考えております。

渡辺(周)委員 公務員制度改革については後ほどちょっと聞こうと思っていますが、先に今お答えをいただきました、言及されました。私がお尋ねをしたのには、新公庫の役員はこの法案が成立した後だと。

 ただ、大臣、当然のことながら、新公庫の総裁は一人ですね。そして、主務大臣、いろいろ勘定別にいるわけですね。そうしますと、各省庁から今までの、総裁は一人であっても副総裁が、またがる役所の分だけ例えば複数いるとか、実際は国民生活金融公庫なんかは副総裁が二人いらっしゃるわけでありますけれども、副総裁が、実は結局は足しただけと。それから、理事についても、理事の構成メンバーが膨大な数になる。

 そうしますと、これは結果として、本当に足しただけじゃないかということになりはしないか。そうしますと、簡素で効率的な政府といううたい文句の、行革の基本法の理念に果たして合致するんだろうかというふうに私なんかは懸念を持つわけであります。

 今回、その設立委員の方々がどのようにこれから設計されていくかということは今後でしょうけれども、大臣として、こうあるべきだというお考えについてはいかがですか。先ほどは答弁用のペーパーを読まれたようですけれども、どういう形でいくのが望ましいのかということについては、行革担当大臣の御意見をぜひ承りたいと思います。

渡辺国務大臣 正確さが必要でしたら政府委員の方から答弁させますが、今回の新公庫法の中でも、トップにふさわしい資質というものを規定しております。それは、各省の事務次官だから固定的に公庫の地位につけるということにはなっておりませんで、例えば金融についての識見を有するとか、そういった人を人事の際には配慮していこうということになっているわけでございます。

 したがって、そういった新しい時代の政策金融にふさわしい人選をしていくことになろうかと思います。

渡辺(周)委員 ふさわしい人選を設立委員がやるわけですね。設立委員を選ばれるのはどなたですか。

鈴木政府参考人 設立委員を任命いたしますのは主務大臣でございます。ただ、私ども行政改革推進本部といたしましても、このような重要な手続についてはしっかりと見守っていきたいと考えております。

渡辺(周)委員 主務大臣が設立委員を選任する、そこに専門的な識見を持った人間が選ばれるという中で、結果的には、官の方が官の方を選んで、すべて選ばれた理由は専門的な知識あるいは識見、そして経験を持っているんだという話だと、それはもうそれ以上のことを我々も言えなくなるわけですね。

 申し上げたいのは、役員、理事の規模も、結局は出身官庁から言われたとおりの足し算になって、結局一体どう効率的になったのか、結果的に天下り先が確保されたではないかということを非常に懸念するわけでございます。その点については、これからまだ、今この法案が成立してからの話だということで、我々も注意深く見守ってかかわっていきたいと思います。

 これ以上質問しても具体的な答弁はないでしょうけれども、現実問題として、今回、ちょっと見方を変えると、例えば人件費も含めてどれぐらいのコスト削減になるのかということについては具体的な金額を出せますでしょうか。

林副大臣 ちょっと手前に戻らせていただいて恐縮ですが、主務大臣が決めた人がやるときに、官房長官がそれぞれ口頭了解なり協議なりをすることになっております。二重に新公庫の役員については歯どめがかかる、そこに行革担当大臣としてもきちっと見守っていきたい、こういうことでございます。

 人件費は、まさに先ほど来の御議論があるように、共通する業務、総務部門が多いと思いますけれども、こういうところの一元化や、支店の数の御議論が随分ありましたけれども、同一地域に重複する支店の統合等によって統合効果を上げていかなきゃならない、こう思っております。

 人件費でございますが、これは行革推進法に定められております総人件費改革によりまして、五年間で五%以上の人員の純減または人件費の削減を行う、こういうふうに書いてございます。これに加えて、先ほど申し上げましたように、間接部門の一元化等によりまして、業務が滞ってはいけませんので必要な職員は確保しますけれども、さらに、五%に加えて縮減の努力を行っていただきたいと思っております。

 十八年度からの計画でございますので、国金、中小、農林漁業、国際協力銀行の方から既にそれぞれ五%に見合った数字を出していただいておるところでございます。既に十八年度からそれぞれの公庫で目標を出していただいている、それが今度は統合することによって、先ほど最後の方で申し上げましたように、統合のメリットをさらに上積みしていく、こういうことになろうかと思っております。

渡辺(周)委員 副大臣、それでは、これぐらいの額だということは、今はまだわからないということですか。

林副大臣 今これは、それぞれの公庫が出しておられるのは人数で五%ですから、おおむね人件費も五%ということになろうかとは思いますが、どの年齢層のところをどれぐらいやるのかとかいうところにつきまして、また、新しい公庫の新しい経営陣がどういう人件費の体系にされるのかという、それぞれの方の人件費の決まり方というのもあろうかと思います。数が五%減っていく、ここはもう既にそれぞれの公庫でやっておられますので、それに人件費は掛け算でございますから、単価と言うとちょっと恐縮でございますけれども、そういうものを掛け合わせて、おおむね五%に近い数字になろうか、こういうことでございます。

渡辺(周)委員 では、ちょっと店舗のことも先ほど来触れていますけれども、統合効果ですね。例えば、民間銀行のみずほグループですと、二〇〇六年度一年間で二割の店舗を減らした。それは民間の努力でありますけれども、実際、統合した新公庫で、今ある二百四十店舗ですか、一応私は二百四十と聞いていますが、これを統廃合して、当面一割ぐらい統廃合される。実際、予算計上もされまして、利用者の利便に資するようにするのだということでありますが、どれぐらいの期間で統合をして、統合したことによって売却する土地建物等も当然出てくると思いますが、それについてはどれぐらいの統合効果を金額的に見込んでいるんでしょうか。それについてお答えできますでしょうか。

鈴木政府参考人 まず、数字から申し上げますと、店舗でございますけれども、全部で二百三十三店舗ございます。六十地域におきまして約八十店舗、これは重複をしております。私ども、同一地域にございます店舗につきましては、これはできるだけ統合するという方針で臨んでおりまして、今先生がお触れになられましたけれども、十九年度予算におきましても、二十四店舗を減少するための予算を計上させていただいたところでございます。

 今先生の方から御指摘ございました、では、店舗を統合するとどの程度の効果が出るかということでございますけれども、私ども、不要な固定資産はできるだけ売却をするという方針で臨んでおりまして、例えば、十九年度の統合対象の店舗におきましても、一部店舗につきましては、店舗を売却する、今までは所有していたものを売却するというのもございます。

 ただ、まことに申しわけございませんけれども、これは不動産の価格でございますので、実際に売ってみませんとわからないところもございまして、どの程度の統合効果になるか、また累計いたしましてどの程度の金額になるのかは、現時点では精査できていないところでございます。

渡辺(周)委員 今、不要になった資産売却はするということで、ただ、不動産の価格ですし、また、売り出した場合どれぐらいの価値になるのかということも当然これからだとは思いますが、私は、具体的にどれぐらいの処分をしていくか、売却していくかということは、ある程度スケジュール的に立ててやっていくべきだと思うんですね。具体的な処分計画を策定すべきだと思っていますけれども、その辺はどうなんでしょうか。十九年度のみならず、今後どのようにしていくか、段階的にスケジュールを立てていくかということは、ある程度できているんでしょうか。考えていくべきだと思いますよ。いかがですか。もしあれでしたら、大臣、いかがですか。

鈴木政府参考人 私どもも、これは一つの公庫になるわけでございますから、できるだけ早期にこのような六十地域の店舗につきましては統合することが望ましいということで、地元の経済界また利用者の方々とも調整を行っております。

 ただ、残念ながら、例えば、一部の地域におきましては、ある経済団体が持っておりますビルにある公庫が既に入っておりますけれども、そこのスペースでは足りない、ただ、外に出ていくということを申し上げたときに、やはり地元からはより丁寧にしてほしいというような御要望もございまして、各店舗ごとに今調整をさせていただいております。ただ、気持ちといたしましては、できるだけ早期に統合を果たしたいというふうに考えております。

渡辺(周)委員 今の審議官の答弁につきまして、大臣、いかがですか。資産の売却について、行革担当大臣としてのお考えをお聞かせいただきたいと思うんですが。

渡辺国務大臣 不要な資産を売却するというのは当然のことだろうと思うんですね。あるいは、こうした資産のみならず、人件費、物件費、両面における統合後のコスト削減というのは、しんを食ってやっていかなければいけないと思います。

 後ほど議論になるのかもしれませんけれども、例えば、四つの金融機関が統合されますと、物件費の中でもかなりのコストを使っているのはIT関係だと思うんですね。そうすると、こうしたものはやはり、いずれ統合の議論は出てくるんだろうと思います。三つのメガバンクが一つになってITシステムがメカパンクしちゃったケースがございますけれども、そういうことにならないように、ありとあらゆる面からコスト縮減というのは考えていかなければならぬと思います。

 また、バランスシートを小さくしていくということであるならば、不動産や固定資産の不要なものを売却し、かつ証券化等によって資産部門の大幅な圧縮を図っていくということは必要であろうかと思います。

渡辺(周)委員 ぜひ統合効果が出るような形で、やはり検証を年度ごとにしていくべきじゃないか。そのことについては、もうこれまでも質問が出ていますし、またこれからも機会があれば質問をさせていただきたいというふうに思います。

 先ほど大臣から、いわゆる天下り規制についての言及がございました。いわゆる天下りについて、今政府と与党の中で調整が行われている。政府案に対して与党の実務者が昨日ボイコットされたとけさの新聞に出ていますけれども、実はこの政府系金融機関も、先ほどからお話ししているように、各省庁から事務次官経験者初め幹部が主要な役員を務めているということでございまして、もし新人材バンクの法案となると、この新公庫に対する天下りも当然その対象になるというふうに考えてよろしいでしょうか。

渡辺国務大臣 今現在、政府・与党で最終的な詰めを行っておりますので、私がそれに先走ってお答えをするのもなんでございますが、きょうは特別大サービスで申し上げますと、私どもの原案では、やはり営利企業に限らず、非営利企業についても対象とすべきであるということを申してきております。公益法人のみならず、独法、政府系金融機関、当然こうした特殊会社もその中に含まれるべきであると考えております。

渡辺(周)委員 例えばですけれども、今現存している政府系金融機関の総裁なり理事なりが、また独立行政法人でありますとか財団法人にも再就職しているということについては、行革大臣は実態は把握していらっしゃいますでしょうか。

渡辺国務大臣 今週中に、私の方から菅総務大臣にお願いをした天下りの実態調査の第二弾、いわゆるわたりについての調査結果が報告をされるものと思います。それが全体像を網羅したものかどうかは全くわかりませんけれども、そうした実態があることは承知をいたしております。

渡辺(周)委員 先日、私、十九年四月六日付で返事をいただいたんですが質問主意書を出させていただきました。「中央省庁退職者に対する再あっ旋に関する質問主意書」というのを出したんですけれども、わたりについてどうなっているんだと聞いたら、「調査を行うことは膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である。」の一言です。一行でありました。そしてまた、「再就職規制については、全体パッケージの中で、各府省等によるあっせんをなくして、機能する「新・人材バンク(仮称)」へ一元化していく方向で法案化を進めているところであるが、現在、これらの具体的な在り方等について検討しているところであり、お尋ねについてお答えすることは差し控えたい。」とても回答とは思えない答弁が参りました。まさに、このわたりの実態というのは、質問主意書を出しても、膨大な作業だといって答えが返ってこない。

 ですので、中央省庁から退職公務員として役職についている方のお名前から一生懸命検索をしまして、わかる限りで調べました。これは膨大な数なので、それこそ全部が全部まではできないんですが、例えば、中小企業金融公庫理事の梅村美明さんとおっしゃるんでしょうか、十六年六月に退任して、七月から独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構の理事になられました。そして、農林漁業金融公庫の副総裁でありました尾原さんという方は、国家公務員共済組合連合会の理事長に御就任。そしてまた、同じく農林漁業金融公庫の理事だった小高良彦さんは財団法人日本特産農産物協会の理事長に就任をしている。

 今お話がありました非営利法人も含めて、これはやはり制約しなきゃだめなんだということでいきますと、例えば、たとえ人材バンクができても例外をつくってしまいますと、この新公庫ができても、新公庫の役員、理事を経験して、結果的にまた独法なり公益法人なりに天下ってしまうということが許されてしまうわけですよね。しかも、この先はまだどうなるかわからない。中には、過去にはこうした団体以外に、銀行の頭取から会長になられた当時の大蔵省OBの方もいらっしゃいました。

 それを考えますと、我々が資料を要求した、政府系金融機関の現在の役員の中で、退職公務員はこの人たちですよ、前歴はこれですよというのですけれども、ここから先の、今いるこの方々が次にどこへ行くかについては、答えも返ってこない。そうすると、追跡と言ったら言葉は余りよくないですけれども、わたりがどこへどう行っているかということを調べるのは大変なんです。中には、どこかの公益法人の理事になった方の経歴を調べますと、その前の、実は政府系金融機関の理事を務めていたという経歴を書いていなかったりするんですよ。元何々省の何々局長だったというところで終わっていまして、これは名前から一生懸命検索していくしかないわけなんです。

 ちょっと長くなりました。今、総務大臣にわたりの実態をお願いして、今週中にはある程度わかるはずだということなので、この点についてはぜひわかるような形で公表していただきたいというふうに思うんです。当然、独立行政法人にも運営費交付金が出されていまして、非常に複雑に絡み合った先のところまでいきますと、正直言って我々も把握し切れません。

 この点について、人材バンクの法案については、当初の主張と変わらない、非営利法人も含めてすべて通すんだというお話がありましたけれども、そうしないと、結果としてあちこちに抜け道ができてしまって、そこ経由で行ってしまう。ぜひ当初の大臣の主張どおりに貫いていっていただきたいと思うんです。

 この問題の結びに、わたりの問題についてどうかもう一言、先ほどサービスとおっしゃいましたけれども、サービスじゃなくて、政治家としての強いメッセージをぜひ発していただきたいなというふうに思います。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

渡辺国務大臣 現在、政府・与党で協議継続中でございますので、私が出過ぎた発言をいたしますと、この協議が壊れてしまったりすることもなきにしもあらずということで、答弁は慎重にさせていただきたいと思いますけれども、いずれにしても、こうした人事の延長線として行われる再就職のあっせんがあるわけでございます。そうしたことが一体どれぐらいの規模で、どういうノウハウをもって行われているのかは、私としては大いに関心のあるところでございますが、一体どこまで出してくるかは、これは結果を見てみないと何ともわかりません。その結果を見て、また判断をさせていただきたいと思います。

渡辺(周)委員 残り時間が十五分足らずになってしまいました。

 この大きな政治テーマ、天下りの問題は、国民も大変注視しているところでございまして、結果的にここが骨抜きになってしまいますと、結局、公務員制度改革とは一体何なのかと。

 最終的には、今度の公庫の話もそうなんですけれども、最初に申し上げたように、利用者の選択肢が狭まって、我々が先ほど来一貫して申し上げているように、結局、官から民への民の市場原理やあるいは私企業の判断によって、本来お金の融通をしてもらうはずの人たちがしわ寄せを受けて、実は天下り機関は、天下りの実態は結果としてボリュームが同じままということに決してならないように、ぜひリーダーシップを発揮していただきたい。そうでなければ、きっと世論が許さないだろうと私たちは思うわけであります。

 長い質問になりましたので、ちょっと別に視点を変えまして、JBIC、国際協力銀行の部分について一つだけ伺いたいと思います。

 経済産業委員会で、これは一昨年だったでしょうか、私は当時の中川経済産業大臣に質問をしまして、中川大臣も遺憾であるという答弁がありましたけれども、かつて、東シナ海の平湖という油田の開発について、日本と中国側との境界線の部分をめぐって、実は中国が試掘に成功してこの油田から吸い上げているんではないかと。日本側にある、境界線がはっきりしない中で日本側の天然資源にまで中国側が侵食をして、地下でストローで吸い取られているんではないかということが、今もそうですが、大変政治問題化しました。

 その後、実は、このパイプラインが日本の融資によって延伸をしていた。上海の環境改善に貢献するという名目で中国に援助をして、当時、既に中国による相当程度の開発が明らかになっていたにもかかわらず、パイプラインの敷設に協力をしていた。

 中国側からすると、後になって何を言っているのか、だって、これは日本の政府系金融機関の融資で我々はパイプラインを引いているので、日本は了承していたんじゃないのかと。もちろん、そこまで言っていませんけれども、そういうお墨つきを与えたというふうに認識されても仕方のない事案がございました。

 このときのことを委員会で追及しましたところ、政府参考人の方からは、当時は、所管している省庁以外の、財務省以外の、例えば経産省であるとか外務省であるとか、ほかの省庁とは全然協議もしていなかったということで、ある意味ではこれは、我が国はみずからの政府系金融機関、日本の国の政府系金融機関によって我が国としての国益を損なったんだということを私は指摘させていただきました。

 こういうことが、もうよもやないとは思いますけれども、先ほど我が党の佐々木委員も指摘したように、実はJBICが個人融資、中小零細企業への融資と、ある意味では国策というべき大きな政府系金融と一緒になるということに関しては、まさに、マクロなのかミクロなのか、非常にわかりにくい統合ではあるんですけれども、その質問はさておきまして、こうした国益を損なうようなことがかつてあった。その点について、こういう融資ということについてはこの統合によってどうなるのか、あるいは、今までこういう問題の指摘を踏まえてどのように変わってきたのかということにつきまして、簡潔にお答えいただけますでしょうか。

玉木政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の融資は、アジア開銀との協調融資の形で行われておりまして、御指摘のとおり、融資決定に当たって当時の旧日本輸出入銀行は、旧大蔵省に対して一般的な協議を行いましたけれども、他の省庁とは調整していないというふうに前回もお答えしたかと思います。

 現在は、旧日本輸出入銀行の業務を引き継ぎました国際協力銀行の同種の融資について、外務省、経産省を含む関係省庁と密接に連絡調整をとらせていただいております。

 以上です。

渡辺(周)委員 この点については、やはり通常の融資と違いまして非常に政治的な問題、外交的な問題。これはまさに私はそのときの委員会で指摘したんですけれども、縦割り行政の本当の弊害が出て、ここの問題で、パイプラインを引こうという中国の融資について、当然、なぜエネルギーや外交の所管官庁と協議をしていなかったんだろうかと、まさに驚愕したわけであります。

 この点について、これはやはり新公庫になってからも、非ODA部門は新公庫として受け継ぐということでございますから、こういう政治的な問題について、これは当然のことながら国益を損ねることがないようにぜひ御判断をいただきたい、努めていただきたい。悔やんでも悔やみ切れない問題でありますけれども、そのことを強く申し入れておきたいと思います。

 さて、残りの時間があと五、六分になりました。この問題はまた改めて質問させていただくこととしまして、最後に、セーフティーネットの部分、特に国金の奨学金の部分についてお尋ねをしたいというふうに思います。中小企業の融資については、同僚議員からも再三指摘がありましたのでここでは割愛をさせていただきます。

 先日、資料として取り寄せた中に、たしか国民金融公庫が出している教育ローンの統計がございました。その中に、九百九十万円、自営業者の方で七百七十万円までの年収が条件だったでしょうか、今回ここを縮減する方向で変えていくということでございましたけれども、では、この部分についてどこまで、幾らの金額に引き下げるのかということについては、奨学金のいわゆる要件は今どのように協議されていますでしょうか。

香川政府参考人 教育資金貸し付けにつきましては、行政改革推進法等に基づきまして、低所得者の資金需要に配慮しつつ所得制限を引き下げることとしております。

 新公庫法案におきましては、政令でこれを定めることとしておりますけれども、見直しによって民間金融機関からも新しい公庫からも借り入れを受けられない層が生じてしまうことのないよう、先ほども言いましたように、低所得者の資金需要に配慮しつつ、今後十分考慮していくことが重要だと考えております。

渡辺(周)委員 そんなあっさりとした答弁じゃなくて、実際、実態、これは皆さん方の出された資料でございまして、国民生活金融公庫の総合研究所が昨年十月五日に、家計における教育費負担の実態調査というレポートを出しています。約一万二千件を対象に調べたんですが、有効回答数が二千六百ですから二二%。余り正確とは言えませんが、実際、自分のうちの教育ローンについて事細かに答えるのはなかなか抵抗があるだろうなと思う中での回答であります。

 この中で、世帯の年収が四百万円以上六百万円未満の方が二五・八%、六百万円以上八百万円未満の方が三二・七%、最も多い層が六百万円から八百万円の層でありまして、四百万円以上から八百万円未満で見ますと大体五八・五%、お答えになった方の約六割はこの年収層であります。

 そして、年収のうち在学の費用がどれぐらいかということで、ちょっと私、自分で計算して出したところ、この年収層で、年収のうちに子供の在学でかかる費用というのが二九・一%、三〇%でございました。その根拠は、やはりここに報告されていますように、四百万円以上六百万円未満の方の在学費用の占める割合が三一・九%で、六百万円以上八百万円未満の方が二六・三%、足して割ると二九・一%。大体、この年収層の方々の三〇%に当たる額、三〇%が在学費用ということで、大変な負担を強いられていることが読み取れるわけでございます。

 民間のローンやかつての育英会、今は学生支援機構でしょうか、こうしたところでも補完できるからということで、上限を九百九十万円以上、確かに九百九十万円といったらかなりの高収入であると思いますけれども、実際、どこまで引き下げるかによって、これまた、子供を抱えている、就学世代、学生を持っている家庭にとってみると、非常にまた選択肢が減ってしまうのではないかというふうに思うわけであります。これはいつごろまでにめどをつけて、どのような統計をもとにしてある程度の層として年収要件を決めていくのか、その辺についてもう一度御答弁願えますでしょうか。

香川政府参考人 教育資金貸し付けでございますが、民間の金融機関も教育ローンというようなものを出しておる中で、民業補完という観点で所得制限を引き下げるということになっているわけでございます。

 委員が今御指摘になったようないろいろな指標も参考にしながら、九百九十万を下げるにしても、どこまで下げるかというのは今後十分考慮していきたいと思いますが、いつまでにどれぐらいのというめどは、今の段階ではお答えすることはできません。

渡辺(周)委員 しかし、もう法案の中には、法律でこの教育貸し付けを縮減するということですから、ある程度具体的にめどをつけていかなければいけないんじゃないのかなというふうに思います。

 今は大学全入の時代でございまして、大学に入るということはもう当たり前になりました。御存じのとおり、十八歳人口と大学、短大の定員が同じなった。その中で、今や選ばなければどこかに入れるような現状でございますし、大学でも、慶応大学や武蔵工大が薬科大学やあるいは女子短大と統合するというような動きがありますし、西日本の方では幾つか短大が生徒が集まらずに大学として存在しなくなってしまったというような例も御存じのとおりあるわけでございます。

 そうなりますと、上級学校に行くということはもう当たり前のことになってくると、家計に占める在学費用というものがますます大変な負担になってくるわけでありますから、ぜひそこのところは、やはり民間と話し合って、本当にこの縮減されるサービスというか、貸し付けが縮減されることによって、やはり民間にやってもらうべき部分は民間と連携してもらわなきゃいけない。すべて民間に任せるというのでは、結果的にセーフティーネットにはならない、先ほどから指摘されているとおりであります。

 それ以外の貸し付けについても、これはもう民間でできるからいいんだと言われますけれども、やはり民間は私企業でありますから、当然のことながら、金融機関は、晴れているときには傘を差すけれども、雨が降ってくると傘を取り上げてしまうというようなことをよく中小企業の経営者たちから聞くんです。こういうことに対して、やはり不安を与えないように、懸念を持たれないように、今後この新公庫の発足に当たって、ぜひとも民間金融機関と十分なすり合わせといいますか協議なり、やはりそれぞれの役割分担をしていっていただきたいと思いますが、最後に、大臣にぜひその決意を伺いたいと思います。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

渡辺国務大臣 承知いたしました。

渡辺(周)委員 終わります。

河本委員長 次に、松原仁君。

松原委員 この法律は、私は、言葉をかえて言えば、その運用を下手すると、中小企業皆殺し法案になってしまう、それぐらいの危機を感じているわけであります。

 まず最初に、こういった今まで政府系金融機関が行ってきた部分を民間にゆだねましょう、こういうふうなお話でありましたが、民間は、今、渡辺周議員がお話しになったように、晴れているときに傘を貸し、雨が降ると傘をとるみたいなことがあった。バブル崩壊後、すさまじい貸し渋り、貸しはがしがあって、多くの中小企業は倒産した。これは一般論で、もう過去の事実ですから御存じだと思います。

 このことによって、先ほどの参考人質疑でも、中小企業は民間の金融機関に対して不信感を持っているというふうな話がありました。このことについて大臣はどういうふうにお考えか。バブル後の貸しはがし、貸し渋り。それまでは、同じ人が、金を借りてくれ借りてくれ、朝昼晩そんなに言うんだったら借りてやろう、借りたが最後、今度は早く返せと厳しくなってきた。こういった状況で、そういった民間の金融機関が、従来、政府系金融機関がやってきたことができるのかということも含めて、大臣に御答弁をまずお願いしたい。

渡辺国務大臣 この十数年間の民間の金融機関に起こりましたさまざまな出来事の中で、やはり特徴的だったことは、資本が傷んでしまったということなんだろうと思うんですね。その結果、リスクをとれなくなってしまった。貸し渋り、貸しはがしというとんでもないことが起こったわけであります。

 一方、借り手の方から見ますと、土地を担保にしてお金を借りる、右肩上がりの時代には大変有利な資金調達の手段だったと思います。小さな資本で大きな負債を支えるという非常に珍しい日本型資本主義がうまくいったのは、まさに資産インフレが背景にあったからだと思うんですね。

 したがって、こういったメカニズムが逆回転をし始めたという中で、民間金融機関が傷んだ資本の手当てをすべく貸しはがし、貸し渋りに走り、一方、民間金融機関は資産デフレと一般物価のデフレの中で債務が自己増殖をしていく、デットデフレーションに陥ってしまったということでございますから、こういう中でのセーフティーネットとしての政府系金融機関が果たした役割については私も高く評価をしておるところでございます。

松原委員 同じ質問を経済産業省の渡辺副大臣にしたいと思うわけでありますが、私は、冒頭言ったように、今回のこのことが中小企業に対して及ぼすマイナスの影響というのは極めて深刻にとらえなきゃいけない。それは民間がやりますよと、やるはずがないじゃないかと私はかなり思っているわけでありまして、同じ渡辺という名前ですから、大臣、副大臣という違いがあっても、正々堂々と本音をちょっと言ってほしいんですよ。お願いします。

渡辺(博)副大臣 経済産業省の大事な役割は、日本の経済をいかに発展させるかということであります。そして、その日本の経済を支えているのがまさに中小企業である、この実態を私どもはしっかりと見ていかなければならない。

 そういった中で、中小企業がしっかりと経営していくための一番の潤滑油はやはり金融であります。これをしっかりと私どもはバックアップしていく、そういったスタンスでありますので、決して渡辺大臣と考え方が違うわけではありません。日本の景気をしっかりと回復させるための原点、まさに元気になるのは、中小企業を元気にしない限り日本の景気回復はない、そういったスタンスで取り組んでいるところでございます。

松原委員 私も地元が大田区、品川区という中小企業のメッカでありまして、いろいろな話があるんですよ。この間の銀行、金融機関の統合で、例えば何とか信金がどこどこ信金と一緒になって、こういう新しい名前になった、そういう合併が次々と起こっていく。そこで起こる話は、既にその段階からして極めてシビアな話でして、例えば、渡辺産業は今までAという信用組合とつき合っていた、AとBで、Bが主導的な立場でAと合併しました。そうすると、渡辺産業は金を借りられないんですよ、従来どおり。極めて厳しい環境になる。そうやって資金調達ができなくてつぶれていった企業を私は何社も知っております。

 つまり、民間金融機関というのが信用できるか信用できないかという議論はそもそもあるんだけれども、やはりそれは営利を目的としている企業でありますから、全然政策金融とは状況が違う。今みたいな事例、つまり、今まで借りていた金融機関、それが違う金融機関が中心で合体したことによって資金ショートして倒産した事例を私は知っていますが、渡辺大臣は御存じですか、そういう事例を聞いたことがありますか。

渡辺国務大臣 似たようなケースはあるのかもしれませんが、具体的には存じ上げません。

松原委員 渡辺副大臣はそういった事実は御存じですよね。

渡辺(博)副大臣 中小企業の実態を私どもは常に注視しております。そういった実態のあることも私は認識しております。

松原委員 そうした中小企業に対する民間の金融機関、中小企業側は、何かといえば、今までは国金を頼りにしましょうとか政府系金融機関を頼りにしてきた。しかし、バブルのときの後遺症からも、これはどうも不信感を持っている。この統廃合でも、自分のところはまあ大丈夫だ、隣の山本何とか商店はおかしくなってしまったと。中小企業に対する民間の金融機関の信用をまず回復する必要があると思うんですけれども、どう思いますか。

渡辺国務大臣 危機モードが去って、今デフレ脱却が目前に迫っているわけであります。残念ながらまだデフレ脱却には至っていない。一般物価もゼロ近辺でうろちょろしているような状況なんですね。日本銀行が短期金利を引き上げても、貸出約定平均金利は余り上がらない。それどころか、ミクロ的には金利値下げ競争が行われている。そういう状況であろうかと思います。

 資金需要の動向などを見ておりますと、今は、先ほど申し上げた金融危機の時代とは相当違っておりまして、中小企業においても資金繰りが大変だという人は以前に比べれば相当減ってきているなという感じを受けるわけでございます。では、昔のように行け行けどんどんで融資が伸びているのかというと、そうでもないわけですね。要するに、全体として前向きの資金需要、つまり設備資金とかそういったものが順調に伸びているとはまだ言えないような状況ではなかろうかと思います。

 そういう中で、民間金融機関の信用が落ちたままではないかとの御認識かと存じます。民間金融機関も昔に比べると相当努力をしてきておると思います。特に協同組織や地方銀行などにおいては、リレーションシップバンキング、とにかく大銀行にはない地域密着型の金融を心がけているところが相当出ていますね。また、そうしないと生き残れないという実態があるのも事実だと思います。したがって、この金余り、資金余剰の中において、金融機関が、地域密着中小企業金融を真剣に取り組んでいかなければ金融機関自身の未来がないという危機感を多くのところが持っているのも事実でございまして、そういう真っ当な競争の中で信頼回復は行われていくものだろうと考えております。

松原委員 先ほどの参考人の質疑の中で、中小企業の民間金融機関に対する不信感は極めて強いという発言が中小企業の団体の代表者からありました。そういったことを踏まえて私は御質問させていただいたわけであります。

 実際問題、利益が出るところに金を出す、そして取りっぱぐれがないところに金を出す。民間であれば当然の論理的な帰結だろうと思っております。

 ちょっと経済産業省に、これは事前通告していないので、アバウトな数字でもあればと思うんですが、今、例えば土地担保なしの融資というのは全体でどれぐらいのパーセンテージがあるか、そういった数字は今出ますか。なければないでいいですが。

近藤政府参考人 今御指摘の数字が手元にないのでございますけれども、ちょっと全体の姿だけ簡単に申し上げますと、中小企業向けの貸し付けの全体の姿でございますけれども、大体二百八十兆円ほどございまして、民間金融機関から約二百五十七兆円、政府系金融機関から二十三兆五千億というのが、今現実問題として融資をされているところでございます。

 この民間のところの金融機関の貸し出しの中には、政府の方で保証している保証債務の方も三十兆ほどございますし、また、御指摘の土地等を担保にしないでもお金が借りられるようにということで、今、売り掛け債権を担保にした融資制度に加えまして、在庫を担保とした金融ができるように、こんなことも工夫をして、今御審議をいただこうとしているところでございます。

松原委員 この売り掛け債権担保というのは、経済産業委員会でもいろいろと議論したんですが、これはかなり拡大していますか。

近藤政府参考人 これはちょっと、事前にデータを持ってきていないので、私の記憶で恐縮でございますが、三年ほど前にそういう制度をつくっていただきました。ただ、まだこれが、実際には恐らく累積で一兆円ほどだったと思います、なかなか実行しにくい。例えば、売り掛け債権を担保にお金を借りるとき、一つ一つを特定しなきゃいけないといったような手続的な問題もございまして、なかなか難しいのが現状でございます。

 それは、今般私どもの方で、信用保険法の改正の中でも、在庫を担保にお金を貸すようにしようというものとあわせて、この売り掛け債権のところも運用を弾力化するようなことを御審議いただいて、また実行していきたい、こんなふうに考えているところでございます。

松原委員 実態としては、やはり土地担保でほとんどいっているんじゃないかというのが、私も、現地、現場、大田区、品川区を見る限り、土地あるの、土地担保ないの、あんたがないんだったら奥さんの親戚のマンションか何か一部屋あいていないの、こういう話ですよ。大体そういう話なんです。それがないと貸さない。

 私は、やはりそこの部分というのは、例えば町場の飲み屋さんとかそういったところが新規で仕事をやろうというときには、民間の金融機関というのはほとんど貸さないと思うんですよ、実態として、貸さない。貸すのは、最後のよりどころ、国金みたいな話でやってきている。

 もう一つ質問したいんだけれども、農林水産業に対する補助金というのは日本の国では極めて大きいわけでありまして、中小企業に対する補助金、農林水産業に対する補助金は、アバウト、ざくっとどんな数字なのか、教えてください。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 私どもの中小企業対策費、これは経済産業省だけではなくて財務省に計上したもの等々も含めてでございますけれども、十八年度千六百十六億円でございました。十九年度予算では千六百二十五億円ということで、ふやさせていただいているところでございます。

 それから、農業関係の予算のところは私がお答えするのが適当かどうかわかりませんけれども、予算書の主要経費別の項目で農業対策という数字を単純に拾わせていただきますと、十八年度で二兆一千百三十九億円、十九年度で二兆四百三十一億円であろうかと存じ上げるところでございます。

松原委員 この辺の数字を考えて、我々は、一つのトータルの国家運営の仕組みを考えなければいかぬ。

 つまり、確かに、この改革をするというときの前提条件として、何か緩ふんでどんどん貸してしまう、ずるずるで、それで随分赤字がたまったじゃないか、けしからぬ、こういう議論は、それは理屈としてはあるんですよ。しかしながら、そこを丸めて考えて、いわゆる農業の補助金は二兆円を超えている、中小企業は一千六百億。それは、農業の場合は食料安全保障という観点が当然必要になってきますから。しかしながら、いわゆる雇用効果であるとか他の効果を考えたときに、まあ中小企業頑張ってきたなと。その中で一定の赤字が、でも、さっきの話だと、赤字も国金でこの十年、十五年で六千億とか言っていたな。ちょっと、さっきだれかの質疑のとき答えていたの、いないの、その人。何か年間四百億ぐらいだという話をだれか言っていたけれども。今数字がわかったら、ちょっと教えてもらうとありがたい。

 つまり、そのレベルで赤字が推移するようであるならば、それはもう、別に農業をかたきに言うわけじゃないけれども、農業で二兆だ、片っ方は千六百億だ。赤字分を入れて二千億とか、いって三千億とか。グロスで見たら、日本の産業構造を考えれば、補助をしたところというのは大体だめになるんですよ。補助をした産業というのは大体厳しくなると言われている。私もそう認識しているけれども。補助しない方が頑張る。だから、補助金という形じゃないけれども、しかしながら二千六百は出して、それぞれの国金とかが年間で四百億ぐらい厳しくなる。この十年、十五年で、さっき累計でたしか六千億と言っていましたね。

 とすると、理屈として我々が考えなければいけないのは、これは国の政策として農業補助金を二兆円出しているんだったら、こういう表現はなかなか、では緩ふんでどこまでいってもいいのかという議論とは違うけれども、私は、従来のあり方が、特に民間がそれを出すかどうか非常に疑問を感じているがゆえに、やはりそういう発想でいくと、のめないような気はしないんだよね。のめるんじゃないかという気がするんだけれども、渡辺副大臣、どうですか。

渡辺(博)副大臣 できたら予算が確保できればそれが最高でありますが、現実的にはなかなか難しい、そのように思っております。

 のめる、のめないというお話でありますけれども、やはり中小企業というのが、要するに日本の経済の中で九九・七%を占めている、そしてまた雇用の七割を占めている、この実態に私どもとしてはしっかりと光を当てていく必要があるというふうに思っておりまして、予算的な観点からいったときに、それが多ければ多いにこしたことはありませんけれども、現実的には今、難しい部分であります。そしてまた、資金需要についてしっかりとバックアップしていくことが中小企業の場合は特に必要だというふうに思っております。

松原委員 渡辺副大臣はずばっと言いたいところを、渡辺大臣がおられるので遠慮しておっしゃったんだと思うんだよね。四百億の赤字でしょう。十五年で六千億とさっき僕は聞いていたから。六千億、それぐらいあって、日本の中小企業が頑張っていますと言うんだったら、農業の二兆に比べたらはるかにそれは……。

 ただ、確かに理屈としては、審査をまじめにやっていないのか、焼けつくとわかっておまえは貸しているのか、そういうふうな議論が一方にあるかもしれない。しかしながら、そうはいっても、十五年で六千億ということであるならば、さっき僕はそう聞いたので、間違って聞いていたらまた答弁いただきたいんだけれども、であるならば、僕は、その数字が仮にその十倍であっても、まあ十倍であってもというのは言い過ぎかもしれないけれども、それでも、ある意味では許容できる、国の施策としては許容していいんじゃないかというのをまず一点申し上げたいわけであります。

 数字、何かしっかりしたのが出ましたか、今の。お願いします。

鈴木政府参考人 今の先生がおっしゃいました十五年間で六千億は、先ほど午前中の参考人の御質疑の中で、参考人の方からか、一年間当たり大体四百億、トータルで六千億ということの御説明がございました。

 私ども、今、平成十年度以降の補給金、出資金、国民生活金融公庫でございますけれども、例えば平成十年度は、一年間に一千六十億ほど、出資金、補給金で出しております。それが十七年度実績ですと六十八億円。済みません、これはまだ全部集計しておりませんもので、あれでございますけれども、参考人の方々がおっしゃられましたのは、十五年間で六千億という数字でございます。

松原委員 そういう認識を持った上で、さらに議論を進めていかなければいけないと思っております。

 いろいろな議論があるんですが、まず、今回の合併において、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫、国民生活金融公庫というのは、言ってみれば民業補完を今までやってきた。ここでしっかりと認識をしていただかなきゃいけないのは、民業圧迫をやってきたと思うのか、民業補完をやってきたのか。少なくともこの三つの金融公庫は民業圧迫をやってきたのか、民業補完をやってきたのか。渡辺副大臣、どう思いますか。

渡辺(博)副大臣 今おっしゃった三つの機関、これについては民業補完ということで認識をしております。

松原委員 渡辺大臣はどう御認識ですか。

渡辺国務大臣 もともと、民業補完というのが政府系金融機関の位置づけであったろうと思います。昔はカウベル効果などといって、政策金融機関、今の政投銀などにおいて語られた理屈でございますが、牛を集めるときにチャラチャラチャラとかねを鳴らします、政投銀がお金を出すから民間も一緒についてきてくださいねなどという効果も言われたわけでございます。

 また、高度成長時代には、量的補完という理屈も非常に強く出されたものと思います。民間の資金需要が非常にたくさんあって、とても民間だけじゃ賄い切れない、政府の方としてもこの資金ニーズにこたえていこうじゃないか、統制型の金融の世界の中でそうした政策金融が行われてきたわけでございます。

 一方、考えてみますと、民間に本当にできないんだろうか。一番最初にこういう問題に直面したのが住宅金融公庫だったのではないでしょうか。昔は、住宅金融公庫のお金を借りないと住宅が建てられない、極論するとそういう時代もあったんですね。したがって、住金の融資の枠の中、例えば何平米以上は貸しませんよなんということがありましたね。ですから、そういう金融が行われていますと、これはやはり民間に任せた方がいいんじゃないか、こういうことになるんですね。

 したがって、民業補完という領域をちょっと超えてしまっていた分野があったのではないかというところから、今回の政策金融の大幅な見直しの議論が行われてきたものと思います。

松原委員 カウベル効果というのはあって、そのためには、政府系金融機関がまず行くわけですよ、こうやって。政府系金融が行く、そして民間が行くんですよ。

 民間はリスクをテークして、さっき女性の方が、翁さんが言っていたけれども、リスクをテークしてと。そういうことはあり得ないね。どこまで政府がそれをバックアップするかという議論もあるけれども。リスクをテークしてやって、リスクが初めからわかっていて、そこまで日本の金融機関は土地担保方式を脱却していないと思うね、僕は。だから、僕は彼女は現実を知らないと思う。おっしゃっている意味で、例えば住宅の場合は、それはその効果が役立った、建物が担保にもなるしね。大臣、僕はそれは全然認識が違うと思うんだな。

 では、民業圧迫をしたという証拠というかそういったものを、大臣は、いや、松原、何言っているんだ、民業を圧迫している、おれはここにこういう首根っこを押さえているぞと。幾つかあるのか、そのペーパーがあるのかもしれぬけれども、ちょっと教えてほしい。

渡辺国務大臣 先ほどから私が申し上げているのは、民間にできるものは民間にやってもらったらいいじゃないかと言っているだけなんですね。

 ですから、資金が足りない時代に統制型金融で政府がお金を流し続ける、そういうやり方が果たしていいのかどうかということをもう十年以上前から議論をしているわけですよ。そういう延長線の議論の中で、必要最小限のセーフティーネットとしての政策金融は残すけれども、それを超えた政策金融はないだろう、民間の市場メカニズムを通した金融の世界に任せる方が、国民の貯蓄を有効に経済活性化のために使うことになるのではないか、そういう議論だと思います。

松原委員 民間ができることは民間にやるというのは、それは正論ですよ、おっしゃるとおり。民間にできないことを今までこういった金融公庫がやってきたんです。彼らは民間にできることはやってこなかった。民間は貸さない。少なくとも、私は今まで大田区で東京都議会議員もやらせてもらいました、国会議員も今三期目に入っていますが、民間はそれは私が知る限りではほとんどやらない。

 だから、そこで問題は、きのうの連合審査について、渡辺大臣が、貸付残高について新たな数値目標を設定するというニュアンスをおっしゃいました。この御決意についてちょっとお伺いしたい。

渡辺国務大臣 これは、GDP目標で、半減をするという目標がございますけれども、これを達成した後どうするかという議論で申し上げているわけでございます。ですから、これは何度も繰り返しますが、そのときの民間金融機関の状況や経済状況、資金の過不足の状況等々、そういうことを総合的に勘案して、新たな数値目標を設定するかということについて検討しようということを言っているだけでございます。

松原委員 きのうの連合審査を聞く限りでは、極めてそういった意思を表明したというふうに私は見ていました。結論は、それをやられちゃ困ると。

 甘利大臣が、目標を設定して、それが目的になっちゃ困るというふうな答弁をしていましたが、はっきり言って私はそれが正論だと思う。渡辺副大臣、この甘利さんの答弁をちょっと詳しく説明してもらえますか。

渡辺(博)副大臣 昨日の連合審査で甘利大臣が答弁された内容でございますけれども、融資残高を減らすということ自身が政策目的でなく、民間で十分に対応できない政策的に必要な分野について資金供給を行うことが政策目的であると考えておりますということで答弁しています。

 その背景、それはすなわち、政策目的をかんがみますと、新たな数値目標を設定するかどうかということについては、三点にわたって前提があるというふうに思います。

 その一つは、まずは行革推進法の附帯決議、この中において、中小企業者等の資金需要に質、量ともに的確にこたえる旨定められている点。二番目として、経済は生き物でありますから、金融情勢の変化によって中小企業の資金ニーズは大きく変動する可能性がある、それに機動的に対応していく必要があること。第三点としまして、民間金融機関の中小企業向け貸し付けの動向。こういった点を踏まえまして、数値目標の設定に関しては慎重に議論する必要があるのではないかということでございます。

松原委員 極めて重要な部分の議論だと思いますが、この後、ちょっと前後しながら質問をいたします。

 危機対応体制、危機対応の制度の発動がされるというときに、今、敏速に対応ということですが、これはどういう手順で危機対応の対応があるのか、事務方にお伺いします。簡単にお願いします。

大藤政府参考人 民間金融機関を活用した危機対応制度におきましては、主務大臣が、一般の金融機関が通常の条件により貸し付け等を行うことが困難であること、それから指定金融機関が危機対応業務を行うことが必要であることを認定する場合に発動することとされております。

 主務大臣は、個々の危機に伴う被害の状況等を勘案して指定金融機関による危機対応の必要性を判断することとなるが、その際には、商工中金や政投銀等の現行政策金融機関のこれまでの対応の実績も参考にすることになると考えております。

松原委員 渡辺副大臣、これで危機対応ができますか。

渡辺(博)副大臣 危機対応の考え方でありますけれども、今言ったように、経済状況というのは常に動いていく。そういったときに、やはり経済に、特に中小企業に対して悪影響を及ぼすような金融不安、こういったときもきちっとした対応をしていかなければならないというふうに思います。さらには、地震やそのほかの災害、こういったことに対しても的確に中小企業に対応する金融政策をしていかなければならない、そのように思っています。

松原委員 先ほど事務方から答弁があった主務大臣はだれですか。

大藤政府参考人 この場合の主務大臣は、財務大臣、経産大臣、農水大臣でございます。

松原委員 一応その三人が合議をして、速やかにこれを行う、こういうことになるわけですね。

 その危機の認識、危機というのは、今想定されている危機はどういうものがあるのか、具体的にその危機の中身を教えてください。

大藤政府参考人 危機につきましてあらかじめ想定することはなかなか困難なことでございますけれども、危機におきましても、例えば局地的であってもその被害が広範囲に拡大するような場合、あるいは、危機のみならず被害も局地的であるけれども被害の程度が甚大である場合といったようなことについて、検討の対象になるものと考えております。

松原委員 バブル崩壊時の貸しはがし、貸し渋りは危機になりますか。

大藤政府参考人 いわゆる大型の企業倒産とか金融機関の破綻等の危機におきましても、今申し上げましたような要件に当たると考えられる場合には、対象になり得ると思います。

松原委員 そういう答弁じゃないんだよ。バブル崩壊後の貸し渋り、貸しはがしは危機となりますかと聞いているんです。渡辺大臣、いかがですか。

渡辺国務大臣 法律の解釈は政府委員に任せるとして、一般的に、平時と非常時という観点からいきますと、金融の非常時というのは、マーケットの失敗が広範囲に広がったときに起きるものではないでしょうか。例えば、金融機関において、その資本の健全性が相当危うい状況になってしまった、いわゆるシステミックリスクと言われるような不安の連鎖反応が起きているような場合は、まさに一般的にはこれは危機と言って過言ではなかろうと思います。そうした経験を、我々はこの十何年間の間に何度か経験をしてまいりました。

 したがって、そういった危機対応をどのような形でやってくるかということが大きな政策課題であったわけでございまして、民間金融機関における危機対応は、御案内のように、預金保険法などにおいて相当整備をされてきておるわけでございます。

 今回、政府系金融機関の新公庫法に当たっては、そうした金融危機のみならず、災害、テロ、大規模感染症、そういったことを念頭に置いて危機対応を行うものとしていると承知をいたしております。

松原委員 歯切れがいい渡辺大臣ですから、もう一回確認しますが、バブルの崩壊のときにすさまじい貸しはがし、貸し渋りがあったことは御認識をしていると思います。これはこの危機に入るかどうか。入るなら入る、入らないなら入らない、お答えいただきたい。

渡辺国務大臣 当時の状況が、先ほど私が申し上げたようなシステミックリスク、これに当たるような場合から惹起されたものであれば、それは当然危機に入るんだと思います。

 法律の解釈については政府委員に任せますけれども、一般的に、金融危機というのは、システミックリスクのような不安の連鎖反応が起こっていく場合を指すものと考えております。

松原委員 要するに、バブルは危機だ、貸し渋り、貸しはがしが起こったあの状況はここで言う危機だ、こういった結論だと思います。

 渡辺副大臣、バブルはここで言う危機に入りますか。主務大臣は別で、副大臣でありますが、お伺いしたい。

渡辺(博)副大臣 危機の状況ということについての概念でありますけれども、一般的には、金融危機というものは当然入ります。

 その金融危機の範囲でありますけれども、基本的には、先ほど渡辺大臣のお話がありました金融のシステミックリスク、こういったことも当然大前提だというふうに思っております。そういった中で金融がやはり機能しなくなってしまう、こういったときには対応をしっかりとしていかなければならない、そのように思っております。

松原委員 バブルの崩壊のときの貸し渋り、貸しはがしはすさまじいものがありました。自殺者も、私が知っている社長も何人か死にました。それはもう完全に危機だと思います。

 では、その場合、危機はどこまで危機かということです。この議論は極めて重要でありまして、日本の企業の中で、例えば何兆円の大企業がある、下請が富士山のてっぺんからすそ野に広がるようにたくさんいる。このてっぺんの企業が何らかのことで倒産した、すさまじい連鎖反応が発生する、そういうのも場合によっては危機に入る。それは実際その事例を見なきゃわからないけれども、それは、あるでかい企業が倒産して、その下請、孫請、ひ孫請から、大変な広範な影響を与えられたという場合は、当然危機に入る可能性は否定できないという認識でいくべきだと思うんですが、まず渡辺副大臣、いかがでしょうか。

渡辺(博)副大臣 危機という概念でありますけれども、やはり大企業といっても、どういう規模、そのときの状況をきちんと把握しなければならないというふうに思っております。その上で、やはり社会的な影響というものを考えていかなければならないというふうに思いますし、即どの程度の規模ということは、今の段階では仮定でございますので、それ以上のことはちょっと述べられないと思います。

松原委員 今まで日本政府も、大きな企業が倒産したとき助けることもあったわけですから、当然それは危機ですよね。渡辺大臣、いかがですか。

渡辺国務大臣 地域における危機というのも多分あるんでしょうね。今委員は企業のことをおっしゃられましたけれども、金融機関が例えば倒産をしたというケースで、地域に相当なシェアを持っている金融機関が破綻をする、その場合に、今のような破綻処理の法制度がなかった時代がございました。

 まさにこれは大変な状況をもたらすわけであって、私の記憶でいきますと、平成九年でしたでしょうか、山一証券、拓銀、どっちが先だったか忘れましたけれども、こういう相次ぐ連鎖破綻から起こったシステミックリスク、不安の連鎖反応というのはもうまさに危機であったと思いますし、その後に長銀が破綻をしたのが翌年でございますが、このときも、あわや世界的なシステミックリスクを惹起しかねない、そういう危機の一歩手前だったのではなかろうかと思います。

松原委員 要するに、危機をどうとらえるか。阪神大震災レベルのものだけを危機というのではなくて、当然ながら、バブル崩壊による貸しはがし、貸し渋りの横行も当然危機だし、もうちょっと局所的なものも当然危機に計上され、考えられることがあり得るというふうな御認識をいただいたと私は思っておりますし、そうでなければ危機という意味がない。

 先ほど話をいたしましたが、経済産業大臣甘利さんの御答弁が、渡辺副大臣からの御説明もありましたが、この数値目標は、私は設定するべきじゃない。これは、例えば効率化有識者会議ワーキングチームみたいなものをつくって、これは別に大臣が答弁しなくてもいいんですが、そういうことが議論になる可能性というのはあるのかないのか、お伺いしたい。

渡辺国務大臣 もう既にGDP比で半減目標というのが掲げられております。これを達成した後にどうするかという点につきましては、再三申し上げておりますように、民業補完が徹底されているかどうか、また、その時々の民間金融機関の動向がどうなのか、資金需要に民間金融機関がきちんとこたえられている状況なのかどうか、そういったことも踏まえて不断の見直しをやっていく必要があるというのが私の考えでございます。

松原委員 先ほど渡辺副大臣が言った中で、こういった国金、農金、中小企業金融公庫、補完をやっていた、今まで補完を逸脱したものは多少あったとしても微々たるものだと。基本は、彼らは民間の金融機関がお金を貸せない人たちに貸してきた、そこにカウベル効果もあったかもしれない、これが実態だと私は思っています。私は現場を見てきて、これはもう信仰でも何でもなく、事実であります。

 だから、そこをGDP比の半分とか、それは一部民営化したことによって達成されるという議論があるかもしれぬけれども、さらなる数値目標を設定するというのは、私はさっき農業に対する補助金の議論とこの議論を話をしましたが、私はそれはやってはいかぬだろうというふうに思っています。それをやれば、すさまじい貸し渋り、貸しはがしが再び中小企業に襲いかかることになるんだろうというふうに思っております。

 そうした中で、大臣としては、数値目標を既にGDP比半分と言っている。株式会社何とか公庫というのは、これも矛盾に満ちた名前なんだけれども、しかし、この組織がそういうさらなる数値目標を設定するというふうに言ってきたとき、大臣は、なるほどと思うのか、それはちょっと数値はいかぬと思うのか。ちょっと今の段階における直観的な御所見をお伺いしたい。

渡辺国務大臣 いずれにしても、数値目標の検討というのは、まず、行政減量・効率化有識者会議というのがもう既にございまして、こちらの方で積み上げてきた議論がございます。今回、この国会の議論なども踏まえ、法案が成立しましたら、ワーキングチームをつくりまして、そこで検討をしていただくと考えております。いずれにしても、適切に検討してまいります。

松原委員 この数値目標を設定するというのは、そもそも論として、この政府系金融機関は民業圧迫はしていない、補完をほとんどしてきた。仮に民業圧迫があるとしたらごく一部だ。私は民業圧迫しているという事実を知りませんけれども、ごく一部だというのが私の認識です。

 また、渡辺副大臣も似たような認識を持っておられる。その中で数値目標を設定するということは、その部分は民間の金融機関からお金が、きのうも甘利さんは非常に心配していましたよね、その空白に果たして入るのかと。

 では、逆に、経済産業副大臣の方に、こうやって数値目標を設定されたときに、その引き潮で引いてしまったこの間隙に、民間はお金を貸してくれることを渡辺副大臣は確信できますか、お伺いしたい。

渡辺(博)副大臣 実際にこれが、数値目標を設定したときにすき間になってしまうところ、これが民間で本当に貸してもらえるかどうか、これは全く私はちょっとわかりません。

 ただ、今回、数値目標というのは、行革法における数値目標の半減ということが規定されていることは一つの事実であります。したがって、その後の問題につきましては、先ほど申し上げたとおり、政策目標というのは、あくまでも中小企業をいかに支援していくか、これが大変重要な課題だというふうに思っております。政策金融機関の大きな目標はそこにあるというふうに私は思っておりまして、仮に設定するかどうかについて、これは中小企業に極めて大きな影響を及ぼすことは間違いないと私は思っております。

 したがって、これは大変重大な政治的また政策的判断にかかわる問題ではないか、そのように思っておりますので、ぜひともこれは慎重な対応をしていきたい、そのように思っています。

松原委員 要するに、冒頭言っているように、圧迫はなかった、補完である、この認識をまず私は基本的に持つべきだと思う。

 だから、この法案で何を意図しているのか。要するに、中小企業に甚大なるマイナス影響を与え、それぞれの企業を崩壊させ、営業させまいとする意思をなぜ日本政府が持つ必要があるんだと、極端なことを言えば。必ずそうなる。それは、民間はそこをリスクテークしてやりませんよ。数値目標を設定するというのは、バブルとは別の意味において、中小企業に対して貸しはがし、貸し渋りを設定することになる。したがって、その目指す部分、つまり、ここは行革をするべきテーマではないんですよ。

 私が冒頭るる申し上げたように、参考人の表現は、四百億で十五年で累計六千億と。農業に対する補助金、二兆を超えている。中小企業は一千五百億。五百億足したって二千億ですよ。その審査が甘くて流れた。それは、極端なことを言えば、のり代の部分だと。それは日本の、まさに雇用でも七割とか大きな雇用をしている、そして日本経済のまさに下支えをしている中小企業にとっては、この部分ののり代ぐらいは本当は政策的に見なきゃいけない、ある種の補助金と思って。私は、そういうレベルのものだと。

 渡辺大臣というか、今回のこの法律の骨子は、そこは民業を圧迫しているよと。いや、してないですけれどもね。だから、これは数値目標を設定して引かせましょうと、引いたときに、そこにできたところは民間がリスクをテークして入る、あり得ないですよ。

 だから、私は、この法律がこういった形で成立したら、おびただしい中小事業者のまさに怨嗟の声が渦巻くだろうというふうに思います。日本の経済に対してずっと貢献してきた、いいときに税金も払ってきた。それに対して、バブルのときに首つりをした人間もたくさんいる、今度はもう一回やらせるのか。仮に数値目標を設定すれば、私は必ずそうなると思う。絶対、数値目標はもうこれ以上設定するべきじゃない。それは、理屈として、民業を圧迫していない、補完していたんだ、その補完を民間は容易にやらぬだろう、こういうことであります。

 さらにお伺いしたいわけでありますが、新公庫の資金調達についてどういうふうな考え方を持っているのか、簡潔にお答えください。

大藤政府参考人 新公庫の担う業務は政策金融として国が責任を持って実施していく業務でございますので、業務の円滑な遂行に支障が生じないよう、これまでと同様に財政融資資金の借り入れや政府保証債の発行が可能となるよう、新公庫法案において所要の規定を措置しております。

 そういうことでございますので、新公庫におきましては、資産、負債の総合管理、ALMの観点を踏まえまして、資金調達コスト、期間、市場の状況等を勘案しつつ、財投機関債、政府保証債、財政融資資金の借り入れ等を適切に組み合わせ、予算、決算について国会での御審議をいただいた上で、できる限り効果的、効率的な資金調達を図っていくことが重要と考えております。

松原委員 これは、時間がないので細かく議論しませんが、きちっとそこの部分を担保していかなければいけないというふうに思います。JBICのような部分とこの三つの金融公庫が一緒になるというのは、論理矛盾も甚だしいわけですよ。何か知らぬけれども、本当にこれでもって行革が進んだというふうな認識は、それを言っちゃ一世一代の不覚になる。

 私は、渡辺大臣におかれましては、お父様は中小企業の味方で、旗を振っていた人でありますから、断固たる決意で数値目標の設定をしないで、本当に中小企業にとってたたえられる大臣としてこれからも頑張っていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質疑を終了いたします。

 ありがとうございました。

河本委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 提案されている政策金融公庫法案は、大きく分けて二つの内容を含んでおりまして、これを一本化したことがいいのかどうかという議論も先ほどもありました。第一は、国民一般、中小企業者、農林水産業者の資金調達を支援するための金融機能、第二は、海外における資源開発を促す金融の機能、この二つの内容を含んでおりますが、二点目については後日に回すとして、きょうは、第一点目の中小企業向け融資の問題をただしたいと思います。

 前提として、まず、日本の中小企業の実態を確認しておきたいと思います。経産省にお聞きしますが、中小企業で働いている人の数、それから中小企業が日本の生産に占める比率、まずこれを示していただきたいと思います。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、雇用の数字でございますけれども、中小企業で働く人の数が二千八百九万人でございます。企業に働く人の中の七一%というのを占めているところでございます。

 また、製造業に例をとりまして付加価値の数字をちょっと申し上げますと、製造業全体の付加価値が百二兆円ございます。その中で中小企業は五十八兆円を占めておりまして、シェアで申しますと五七%を占めているところでございます。

佐々木(憲)委員 従業員の七一%、それから、製造業の中で中小企業が占める比率は付加価値の五七%ということでありました。これは基礎的なことですけれども、中小企業が日本経済に占める役割、大変大きなものがあるというふうに思います。

 さてそこで、この中小企業がふえているのか減っているのかという問題です。もう一度経産省に確認したいんですが、二〇〇四年の中小企業の企業数、それから二年後、二〇〇六年の中小企業の企業数、どうなっていますか。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、中小企業の数でございますが、二〇〇四年の調査がございまして、これでとりますと四百三十三万社でございます。この調査は、事業所・企業統計調査という調査でございまして、全数の調査でございます。

 今、最新の数字はないのかという御指示でございますが、実はこの最新の数字は、したがいまして二〇〇七年まで待たないと出てこないわけでございます。

 ただ、ある程度動向を見るという点で申し上げますと、中小企業実態基本調査という調査がございまして、これは毎年やっております。ただ、これは十万社のサンプルからの推計になりますので、四百三十三万社との数字の差を申し上げると、やや誤解があろうかと思います。

 ただ、いずれにしても、最近の数字は、年間約十万件ぐらい企業数は減っている、こういう状況でございます。

佐々木(憲)委員 その二〇〇六年の推計の数字を示してください。

近藤政府参考人 今の中小企業実態基本調査の二〇〇四年からの三年間の数字を申し上げたいと思います。

 二〇〇四年で三百九十九万社、二〇〇五年が三百八十四万社、二〇〇六年が三百七十二万社でございます。

佐々木(憲)委員 二〇〇四年の中小企業の数が三百九十九万で、二年後、三百七十二万ですから、二十七万の減少ということですね。

 同じ時期に、二〇〇四年の従業員と二〇〇六年の従業員、これは数はどうなっていますか。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 今の同じ中小企業実態基本調査でございますが、二〇〇四年で三千百六十一万人、二〇〇五年で三千五十八万人、二〇〇六年で二千九百九十二万人というデータになっております。

佐々木(憲)委員 今示していただいたのは、私がお配りした一枚目、二枚目の、皆さんのお手元の資料の一番上の数字がそれに当たると思うんですが、この二年間だけをとりましても、中小企業の企業数が二十七万社も減り、百七十万人の雇用機会が失われた、これは極めて重大な事態だと思うんです。仮に五年間で見ると倍以上に数字が膨らむ、こういうことになるわけですね。渡辺大臣、これは景気が悪いから減少しているということではないんです、景気がよくなっても減少しているんですから。

 どうしてこういうふうに中小企業が減少するのか、その原因をどのように考えておられますか。

近藤政府参考人 事実関係だけ少し事前にお話をさせていただきたいと思います。

 一九九九年から二〇〇一年までの数字、それから二〇〇一年から二〇〇四年までの数字を少し申し上げますが、九九年から二〇〇一年までの平均で廃業率が四・五%、開業率が三・一%でございます。二〇〇一年から二〇〇四年のデータを見ますと、開業率が三・五%、廃業率が六・一%ということで、最新の数字では廃業が二・六%多いという実態がございます。

 この事実関係だけ申し上げますと、恐らく、自営業者の年収の水準の低下でございますとか経営者の高齢化といったことで、なかなか廃業率が高い水準のまま動いている、こういう状況だろうと理解をしているところでございます。

佐々木(憲)委員 つまり、開業するよりも廃業率の方が高いわけですね。なぜそういうことになっているのか、その認識をお聞きしたいと思います。大臣。

渡辺国務大臣 今の答弁にあるように、中小企業は個人経営的なものが多いというわけでありますから、経営者、オーナーが高齢化をして、後継者がいないというのが一つあるかと思います。また、後継者がいない背景には、先ほどの答弁のように、年収が低いということもあるんだろうと思うんですね。年収が低いというのは、残念ながら余りもうからない、こういうことだろうと思います。なぜもうからないのかというと、恐らく、需要と供給のミスマッチが生じてしまっているのではないかと思います。

 つまり、供給サイドがかつての需要の水準にあるけれども、今の需要はちょっと別の方面の需要が出てきてしまって、中小企業の供給サイドがその新たな需要についていけていないという問題も背景にはあるのではないでしょうか。

佐々木(憲)委員 そういう要因もあるかもしれませんが、私は、製造業の場合は、今大変な国際競争の中で下請単価が非常にたたかれておりまして、ぎりぎりの採算点でやっている、それがなかなか対応できなくて廃業する。あるいは、商業、流通の分野でいいますと、消費がずっと伸びない状況になっておりますが、それなのに大型店がどんと郊外に次々とできるわけですよ。そうなると、従来の駅前商店街が寂れていく。これは日常的に我々が目にする実態でございますが、やはりそういう状況があるのではないかと思います。

 それで、肝心の中小企業が成り立たない状況、前提が整わない、採算がとれない、したがって将来の展望もないから後継者も育たない、息子が後を継がない、こういう悪循環に陥っているのではないかというふうに思うんです。

 したがって、こういう中小企業に対して、これをどういうふうに成り立つような前提を整えていくかというのが本来の政府が果たすべき役割だろうというふうに思いますけれども、大臣、どのようにお考えでしょうか。

渡辺国務大臣 先ほど申し上げたように、中小企業が、かつての需要とのミスマッチが生じているとすれば、やはり、今の需要あるいは埋もれた需要の掘り起こし、そういうことがうまくできるようになる必要があるんだろうと思います。

 したがって、一つには、新たに起業、業を起こす人を支援する、あるいは、事業に失敗をしてしまったけれども再チャレンジしたいという人を支援する、それから中小企業の事業再生を支援する、こういう観点があろうかと思います。

 第一の、創業支援という観点からは、平成十五年から、資本金が一円でも会社が設立できるようになっております。これは会社法の特例でございます。さらに、昨年五月から、これを一般原則とする会社法を施行したところであります。ただ、未来永劫、一円のままでやっていっていいということではないと思いますので、企業としての持続可能性を追求するのであれば、やはりいつかの時点で資本は強化をしていくという政策は当然必要になろうかと思います。

 第二の、再チャレンジ支援でございますが、今年度より国民公庫、中小公庫において再チャレンジ融資制度を設けております。事業に失敗した者が新たに挑戦する場合に、これを金融面で支援をしていくということでございます。

 第三の、事業再生支援でございますが、中小企業再生支援協議会、これをバージョンアップする取り組みを行っていくことを経済産業省の方が中心になって考えているわけでございます。

 こうした総合的な観点から、新たに企業を起こす人たち、再チャレンジをする人たち、事業再生をする人たちを支援してまいりたいと考えております。

佐々木(憲)委員 新しく企業を起こす場合の支援ということについては、もうちょっと後でまた、もう一度触れたいと思います。

 雇用の問題、先ほども数字が出ましたけれども、二年間で百七十万人も中小企業が減ることによって雇用機会を失ってしまう、ゆゆしき事態でありまして、この数年間をとりますと何百万という数になると思うんです。

 小さな企業ほど雇用の創出率、つまり、つくり上げていく、雇用を拡大する率というものは非常に高いというふうに思いますけれども、それは、そういう認識はございますか。

大藤政府参考人 先生御指摘のとおり、中小企業の雇用創出率は、小規模事業所で高い水準となっていると承知しております。

 具体的には、二〇〇二年版の中小企業白書によりますと、いわゆる従業員の数の分類におきます一人から五人の事業所における雇用創出率が最も高くなっておりまして、次いで六から二十人、二十一人から五十人の事業所と続いて、規模が小さくなるにつれまして雇用創出率が高くなっていると言えると分析されているものと承知しております。

佐々木(憲)委員 私は別な資料ですけれども、次の三枚目を見ていただきたいんですが、これは国民生活金融公庫の資料ですが、左側に公庫利用先、一人から四人のところがプラスマイナスでプラス九・一、五人から十九人がプラス〇・三、それから二十人以上のところになりますとマイナス三・三。つまり、小さな企業ほど雇用をつくり出す率が高い。これは右側の事業所統計の創出率を見ましても、同じような傾向があるわけです。したがいまして、特に零細企業、これをどう支援するかというのが非常に大きな課題になるだろうと思います。

 したがって、私は、先ほど大臣が幾つかの中小企業支援策を触れましたけれども、やはり大事なことは、零細な企業の廃業や倒産をどう防ぐのかということ、それから、新しく会社を起こす企業を支援する、この両側面が大変大事だと思うわけです。そういうふうにやって初めて、全体として中小企業者がふえていくというふうに思うんです。

 その際に大事なことは、金融の役割であります。

 そこで、前提として、民間の金融機関とそれから政府系金融機関がどういう役割をそれぞれ果たすかということですけれども、実態をまず確認したい。

 民間銀行の中小企業向け貸出残高、これを一九九六年十二月末と二〇〇六年十二月末、この十年のそれぞれの数字を示していただきたい。それから、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫、政府系三機関の貸出残高、同じ期間の数字、それを示していただきたいと思います。

大藤政府参考人 民間金融機関の国内銀行の中小企業向け貸付残高は、一九九六年十二月末が三百六十・八兆円、それに対しまして、二〇〇六年十二月末が二百五十六・九兆円となっております。二〇〇六年末の数字は、一九九六年比で七一・二%という割合でございます。

 これに対しまして、まず、商工中金は、一九九六年十二月末が十一・五兆円に対しまして、二〇〇六年十二月末が九・四兆円となっておりまして、一九九六年比で八一・七%の割合になっております。それから、中小公庫は、一九九六年末が七・四兆円、二〇〇六年末が六・七兆円でございまして、一九九六年比が九〇・五%という数字になっております。国民公庫につきましては、一九九六年末が九・一兆円、二〇〇六年末が七・五兆円でございまして、一九九六年比が八二・四%になっております。

 ちなみに、商工中金、中小公庫、国民公庫を合わせました合計でいいますと、一九九六年末が二十八・〇兆円、二〇〇六年末が二十三・五兆円ということでございまして、一九九六年比では八四・二%という数字になっております。

佐々木(憲)委員 この間の民間銀行の貸出残高の減少というのは、十年で約百兆円近いわけであります。これはもう大変な激減なんですね。

 資料の四を見ていただきたいんですが、上の方が民間銀行の中小企業向け貸出残高の減り方であります。それから、下の方に政府系金融機関の貸出残高、今の三機関の数字をグラフで示しております。政府系金融機関の方は必死になってこれを下支えしている、こういう関係がこの数字を見るだけでも明らかであります。

 貸し渋りや貸しはがしというものが民間銀行で横行したときに、政府系金融機関が中小業者に非常に重要な資金を供給してきたわけです。次のグラフ、五ページをあけていただきたいんですが、例えば、この中小企業金融公庫の融資の伸びというのは、民間金融機関と逆相関の関係にあります。景気が悪くなると、民間金融機関の方は金融引き締めだということで資金を貸さなくなる、貸しはがしあるいは引き揚げていく。ところが、政府系金融機関はそういうときに出ていっているわけです。中小企業の資金を必死になって支えている。そういう逆相関の関係になっていることは、このグラフを見ても非常に明確になっているわけです。この役割こそ大事なわけであります。倒産の危機に瀕したときに手を差し伸べるという役割が求められていると思うんですね。

 渡辺大臣にお聞きしますけれども、先ほどもちょっと議論がありましたが、民業を圧迫しているという議論が銀行の側からよく言われるんですけれども、実際は、これを見てもわかるように、民業ができないこと、あるいは民業がやらないことを政府系金融機関が補完してきた、支えてきた、そういうことが言えるのではないかと思いますが、いかがでしょう。

渡辺国務大臣 平成九年から十年にかけての金融危機の際に貸し渋り、貸しはがしが起こったというのは、これは当時の金融機関の資本が相当傷んでしまっていたという背景がございます。残念ながら、当時、銀行は、破綻前処理、破綻処理のセーフティーネットがなかったという問題もございました。

 そこで、大型破綻を受けて、預金保険法などの抜本的な改正を行いました。その結果、金融危機対応として、預金保険法百二条で、一号措置から三号措置まで、破綻前処理、破綻処理の枠組みが整ったわけでございます。地域金融機関においてもそういったセーフティーネット整備が行われてきているわけでございまして、あのときのような貸し渋り、貸しはがしというのが再来するという状況にはないものと考えております。

 したがって、そういった非常時モードから平時モードへ大転換をしていく中で、民間金融機関にはもっとリスクをとる金融を行ってほしいと念願してやみません。例えば、無担保無保証融資の世界であれば、スコアリングモデル融資というのが最近では非常に盛んになりつつございます。これは御案内のように中小企業向けで、大体五千万ぐらいまででしょうか、三日ぐらいの審査で、保証人も要らない、担保も要らない、簡単審査でお金が借りられるという金融商品も誕生してきているわけでございまして、そういった民間がリスクをとっていくということが大事なことではなかろうかと思っております。

佐々木(憲)委員 民間がリスクをとるのは当然なんですね。これはもう、今までリスクをとらないことによっていかに被害が中小企業に及んだかということを見れば明らかであります。問題は、政府系金融機関がどうなるのかということでございます。

 ああいう危機は再来する状況にないと言いますけれども、一体これから何が起こるかまだわかりません。そういうときに、政府系金融機関を市場金融、金融市場任せで果たしていいのかどうかということが問われるわけですが、どうも今度の法案は、その公的な役割が後退するんじゃないかと非常に私は懸念をしているわけです。

 例えば、新しく会社を起こすというのが大事だと言われましたが、それを支える場合、なかなか民間銀行は貸さないんです、最初は。どういうときに貸すかというと、例えば、政府系金融機関の一つである国民生活金融公庫が最初融資をする、それを見て、ああ安心だというので民間銀行が貸し始めるわけです。最初の貸し出しは政府系金融機関がやるということになっているわけですね、現実に。

 それは、お配りした資料の六枚目に出ているわけでございますが、左下のところにグラフがあります。民間銀行は、国民生活金融公庫が融資をしている企業だということで貸し始めますが、最初は、開業時は、民間銀行の資金は一四・七%程度でありますが、その次になりますと二一・八%、その次になりますと三五・四、さらに四〇・一、四二・六というように、民間銀行からの借り入れのある企業がふえていくわけですね。

 そういう意味で、民間銀行の貸し出しをいわば誘導する、呼び水としての役割を果たしているわけでございます。これは大変大事な機能だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

渡辺国務大臣 今、佐々木委員、国民金融公庫の例えを持ち出されましたけれども、民間金融機関に、そういった目ききのできる機能がかつてはちょっと弱かったというのは事実だろうと思います。かつて政府系金融機関がそういった目きき、ノウハウを持っておって、政府系金融機関から資金を借りて、今、公開企業になったなどというケースも幾つか私も存じ上げております。

 民間金融機関がきちんとリスクをとり、リスク管理を行い、こうした目きき機能を持つというのは当然のことなのであって、今までそういうことが弱かったなどと言われないように、今後は、こういった積極的にリスクをとりに行く、なおかつ地域密着型の中小企業金融をやる、そういうことを期待したいと思います。

 また、政府系金融機関においては、セーフティーネットとしての機能は残すわけでございますから、必要最小限の政策金融は引き続ききちんと行っていくべきでございます。

佐々木(憲)委員 目ききの問題を今言われましたけれども、中小企業に対して民間銀行が貸し出す際に、不良債権になりそうなところに余り貸さないということで収益を最優先させるという原理が、この数年間、特に小泉内閣以後働きました。収益性第一主義ということで、どんどんどんどん自己の利益を求める反面、中小企業が非常に大きな被害を受けたというのが現状なので、そういうことをしりをたたいてきた政府の責任ということも、自覚をしてもらわなきゃならぬと私は思っております。

 それからもう一つは、政府系金融機関の役割は、中小企業の側からいっても非常に強いものがありまして、お配りした資料の七枚目、八枚目に、これは商工会議所に寄せられた中小業者の意見ですけれども、全部紹介する時間がございませんが、例えば最初の方に書いてありますが、「不況時、民間金融機関が厳しい貸し渋り、貸し剥がしを行なっている時、資金調達に応じてくれた。」「政府系金融機関が必要と実感したのは、民間の銀行が必要資金の半分しか融資してくれないとき、協調融資で対応してもらったときである。」あるいは、「民間金融機関は、強い立場にたって企業の力量を見透かしたように金利の上昇の要請が頻繁にある。政府系金融機関は、約定を確実に遂行し取引姿勢が安定している。」こういう評価をしているわけですね。

 それから、下の方に行きますと、民間金融機関では、資金を必要とするときは敬遠され、不要のときのみ資金の借り入れを勧められ非常に不快である。信用できないと。要するに、雨の降ったときに傘を取り上げる、晴れたときには傘を出すというような、よく言われることが実感としてここで書かれているわけです。

 それから、右の方には、「民間金融機関は、全体的に損得勘定が優先される為、目先の取引に忙殺されがちだ。政府系金融機関は、やる気のある・技術のある会社には育成する使命を持っているように見受けられる。」二枚目にも同様のことがるる書かれております。

 これは商工会議所が昨年まとめたものですけれども、やはり今、こういうことにしっかりこたえる体制が必要なんですね。今回の法案がそれに本当に対応するものになっているのかどうかというのが問題であります。

 きょうは入り口のところで三十分間、この前提の議論をさせていただきましたが、次回、時間をいただければ、法案の内容から見て果たして政府系金融機関がこの中小企業の要望にこたえることになるのかどうか、この法案がですね、この点についてただしていきたいと思います。

 ということで、きょうはこれで終わらせていただきます。

河本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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