第23号 平成19年5月29日(火曜日)
平成十九年五月二十九日(火曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 河本 三郎君
理事 木村 勉君 理事 後藤田正純君
理事 戸井田とおる君 理事 西村 康稔君
理事 平井たくや君 理事 泉 健太君
理事 松原 仁君 理事 田端 正広君
赤澤 亮正君 遠藤 武彦君
遠藤 宣彦君 岡下 信子君
嘉数 知賢君 木原 誠二君
谷本 龍哉君 寺田 稔君
土井 亨君 中森ふくよ君
林田 彪君 松浪 健太君
村上誠一郎君 市村浩一郎君
小川 淳也君 佐々木隆博君
細野 豪志君 馬淵 澄夫君
渡辺 周君 石井 啓一君
吉井 英勝君
…………………………………
内閣府大臣政務官 岡下 信子君
内閣府大臣政務官 谷本 龍哉君
参考人
(社団法人日本経済団体連合会専務理事) 立花 宏君
参考人
(ジャーナリスト・東北公益文科大学大学院教授) 北沢 栄君
参考人
(元拓殖大学政経学部教授) 田中 一昭君
参考人
(全国労働組合総連合事務局長) 小田川義和君
内閣委員会専門員 堤 貞雄君
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五月二十八日
憲法改悪反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇八五号)
同(石井郁子君紹介)(第一〇八六号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第一〇八七号)
同(吉井英勝君紹介)(第一〇八八号)
憲法の改悪反対することに関する請願(笠井亮君紹介)(第一〇八九号)
同(穀田恵二君紹介)(第一〇九〇号)
同(志位和夫君紹介)(第一〇九一号)
同(塩川鉄也君紹介)(第一〇九二号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇九三号)
憲法九条を守ることに関する請願(笠井亮君紹介)(第一〇九四号)
風営法施行規則の附則の改正を求めることに関する請願(丹羽秀樹君紹介)(第一一〇〇号)
同(村上誠一郎君紹介)(第一一〇一号)
韓国・朝鮮人元BC級戦犯者と遺族に対する立法措置に関する請願(阿部知子君紹介)(第一一二六号)
同(赤松広隆君紹介)(第一一二七号)
同(鳩山由紀夫君紹介)(第一一二八号)
同(大畠章宏君紹介)(第一一六七号)
同(仙谷由人君紹介)(第一一八三号)
同(土肥隆一君紹介)(第一一八四号)
ともに生きる社会のための公共サービス憲章の制定を求めることに関する請願(赤松広隆君紹介)(第一一四八号)
同(川内博史君紹介)(第一一四九号)
同(菅野哲雄君紹介)(第一一五〇号)
同(菊田真紀子君紹介)(第一一五一号)
同(後藤斎君紹介)(第一一五二号)
同(郡和子君紹介)(第一一五三号)
同(高井美穂君紹介)(第一一五四号)
同(高木義明君紹介)(第一一五五号)
同(辻元清美君紹介)(第一一五六号)
同(中川正春君紹介)(第一一五七号)
同(西村智奈美君紹介)(第一一五八号)
同(野田佳彦君紹介)(第一一五九号)
同(福田昭夫君紹介)(第一一六〇号)
同(藤村修君紹介)(第一一六一号)
同(細川律夫君紹介)(第一一六二号)
同(牧義夫君紹介)(第一一六三号)
同(松木謙公君紹介)(第一一六四号)
同(森本哲生君紹介)(第一一六五号)
同(山岡賢次君紹介)(第一一六六号)
同(阿部知子君紹介)(第一一八五号)
同(市村浩一郎君紹介)(第一一八六号)
同(岡本充功君紹介)(第一一八七号)
同(加藤公一君紹介)(第一一八八号)
同(佐々木隆博君紹介)(第一一八九号)
同(重野安正君紹介)(第一一九〇号)
同(仙谷由人君紹介)(第一一九一号)
同(照屋寛徳君紹介)(第一一九二号)
同(土肥隆一君紹介)(第一一九三号)
同(羽田孜君紹介)(第一一九四号)
同(鉢呂吉雄君紹介)(第一一九五号)
同(日森文尋君紹介)(第一一九六号)
同(三谷光男君紹介)(第一一九七号)
同(三井辨雄君紹介)(第一一九八号)
同(横光克彦君紹介)(第一一九九号)
同(金田誠一君紹介)(第一二一九号)
同(川端達夫君紹介)(第一二二〇号)
同(菅野哲雄君紹介)(第一二二一号)
同(保坂展人君紹介)(第一二二二号)
同(細野豪志君紹介)(第一二二三号)
同(松本剛明君紹介)(第一二二四号)
同(三日月大造君紹介)(第一二二五号)
憲法第九条を変えないことに関する請願(山井和則君紹介)(第一一八二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国家公務員法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九六号)
国家公務員の離職後の就職に係る制限の強化その他退職管理の適正化等のための国家公務員法等の一部を改正する法律案(馬淵澄夫君外四名提出、衆法第二七号)
特殊法人等の役職員の関係営利企業への就職の制限等に関する法律案(馬淵澄夫君外四名提出、衆法第二八号)
独立行政法人通則法の一部を改正する法律案(馬淵澄夫君外四名提出、衆法第三〇号)
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○河本委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、国家公務員法等の一部を改正する法律案並びに馬淵澄夫君外四名提出、国家公務員の離職後の就職に係る制限の強化その他退職管理の適正化等のための国家公務員法等の一部を改正する法律案、特殊法人等の役職員の関係営利企業への就職の制限等に関する法律案及び独立行政法人通則法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
本日は、各案審査のため、参考人として、社団法人日本経済団体連合会専務理事立花宏君、ジャーナリスト・東北公益文科大学大学院教授北沢栄君、元拓殖大学政経学部教授田中一昭君、全国労働組合総連合事務局長小田川義和君、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は、大変お忙しいところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。各案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。
次に、議事の順序について申し上げます。
立花参考人、北沢参考人、田中参考人、小田川参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、立花参考人にお願いいたします。
○立花参考人 日本経団連の専務理事を務めております立花でございます。
本日は、参考人として意見陳述を行う機会をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございます。
私は、経団連におきまして、日ごろ、規制改革あるいは公務員制度改革の問題を含む行政改革の問題を担当しております。そこで、本日は、内閣提出の国家公務員法等の一部を改正する法律案に賛成する立場から、公務員制度改革に対する私ども経団連の基本的な考え方を御説明申し上げ、本法案に対する意見を申し述べさせていただきたいと考えております。
まず、公務員制度改革そのものに対する私ども経団連の基本的な見解について御説明申し上げたいと思います。
公務員制度改革は、行政の関与を大幅に縮減して、市場メカニズムが有効に機能する分野を拡大して経済の活性化を図り、我が国の競争力を高めていく、そういった観点から、これまでの数々の構造改革のいわば総仕上げとなるものであるというふうに考えております。
現行の行政システムにつきましては、一九九八年の中央省庁等改革基本法ほか関連法の制定に伴いまして、中央省庁の再編あるいは内閣機能の強化等が実現いたしました。しかしながら、肥大化、硬直化して制度疲労のおびただしい、いわゆる戦後型行政システムの改革が、これをもってすべて終わったというわけではないと考えております。例えば、縦割り行政の弊害を是正するとともに、官僚組織及びその周辺の組織、団体の自己増殖、肥大化意欲に歯どめをかけ、内閣の重要政策についての総合調整機能の強化を図っていくことは、いわば待ったなしの課題になってきていると考えております。
国民や産業界から見まして、縦割り行政の弊害という面で直面している課題を幾つか例示して申し上げますと、例えば、海外とのEPAの締結の問題、あるいは輸出入、港湾の諸手続の改革の問題、あるいは外国人の受け入れ体制をめぐる問題、さらにはITS、高度道路交通システムの問題、さらには子育てという面では、幼稚園、保育園、認定こども園という、幼保一元化どころか幼保三元化という問題など、幾つもその事例を挙げることができるわけでございます。
こうした複数省庁にまたがる問題の解決には、内閣の総合調整機能の発揮が求められるわけでございますけれども、必ずしも十分実効が上がっているとは言えません。
考えてみますと、組織を支えるものは人であり、行政の組織及び運営を支える国家公務員制度の改革が伴わなければ、中央省庁の再編あるいは内閣機能の強化というせっかくの改革も、いわば画竜点睛を欠くことになると考えております。
そこで、こうした観点から経団連では、二〇〇五年の四月に、「さらなる行政改革の推進に向けて」と題する国家公務員制度改革に関する提言を発表させていただきました。この提言では、国家公務員制度改革の柱として、七項目を提言させていただいております。
一つは、総合的な人事評価制度の確立の問題。二つ目には、身分保障のあり方の見直しの問題。三番目に、処遇面における官民のイコールフッティングの確保の問題。四番目が、官僚組織の人事マネジメントのあり方の見直しの問題。五番目が、さらなる官民の交流促進の問題。六番目に、新たな人事行政担当部局の体制整備の問題。七番目が、非公務員化の推進と公務員の雇用・労働条件のあり方の検討。こういった七つを提案させていただいたわけでございます。
それで、中でも私どもが最も重要と考える施策は、人事マネジメントのあり方の見直しの問題でございます。それは、縦割り行政に基づく省益、局益優先の考え方のよって来る根源は何かということを考えた場合に、採用から異動、評価、昇進、さらには退職後の再就職の管理までを、各省の官房が一貫して人事権を持って、各省ごとにこれを行うことを基本とする現在の人事マネジメントの仕組みにあるというふうに認識しているからでございまして、なかんずく早急な見直しが求められる最重要の課題が、各省単位の、各省ごとの再就職支援システム、これをどう見直すかという問題であろうかと考えております。
その意味で、この内閣提出の国家公務員法等の一部を改正する法律案は、第一に、こうした各省ごとの再就職のあっせんを禁止し、新たに設置する官民人材交流センターに一元化することを明記しておると思います。これが実現することで、いわゆる省益、局益優先の考え方が払拭され、また、これに起因する縦割り行政の弊害も是正されていくものと考えております。
また、いわゆる押しつけ的な天下りが行われる背景には、各種業法に基づく許認可行政が民間の経済活動を監督し、業界を所管するという、いわば特殊日本的な規制監督行政が根強く存在していることもありますので、こうした各省ごとのあっせんが禁止され、内閣府のもとに置かれる官民人材交流センターが公正、透明な形で再就職のあっせんを一元的に行うことで、予算や権限を背景とした押しつけ的な天下りがなくなっていくものと期待されます。
さらに、本法案において別途規定されております現職職員の求職活動規制、さらには退職職員の働きかけ規制、また働きかけを受けた現職職員の規制、並びに再就職等監視委員会を通じた監視体制の整備が、こうした押しつけ的な天下り、再就職あっせんをなくすための規定として有効に機能することを期待しております。
なお、私ども経団連の提言では、いわゆるキャリア職員につきまして、内閣のもとで一括採用、人事・再就職管理の一元化を行うことを提案したわけでございます。再就職のあっせんはいわば出口部分の問題でございますが、入り口である採用、さらには異動を含めた人事管理まで全体として、これはキャリアについてですが、内閣で一元化すべきだというのが私どもの考え方でございます。
その意味で、入り口も含めた抜本的な改革につきましては、本法案とともに閣議決定されました「公務員制度改革について」という文書の中で、総理大臣のもとに有識者から成る検討の場が設けられ、総合的、整合的に検討を進めると明記されておりますので、そこでの検討に強く期待しております。
また第二に、本法案には、総合的な人事評価制度の確立についても、年功序列型の人事慣行を見直し能力本位の任用制度を確立すること、能力・実績主義による人事評価に基づき人事管理を行うことが明記されております。この能力・実績主義による人事評価とこれに基づく人事管理の実現は、公務の内部に競争原理を働かせることとなり、公務部門の生産性向上や行政サービスの質的向上にも役立つものであり、ぜひ実現していただきたいと考えております。
最後になりますが、私は、内閣提出の本法案の成立が、公務員制度の抜本的な改革への重要な橋頭堡になるもの、そういった観点から、改めて本案に賛意を表するとともに、本案の早期の成立を要望申し上げる次第でございます。
どうもありがとうございました。(拍手)
○河本委員長 ありがとうございました。
次に、北沢参考人にお願いいたします。
○北沢参考人 北沢栄でございます。
それでは申し述べます。政府案、民主党案の双方を比較検討したいと思います。
まず、政府案から取り上げます。お手元にお配りした資料をごらんください。
政府案の評価に当たって、政府案にどんな特色があるかというものを浮き彫りにしました。三つの特色があると思います。
一つは、各府省ごとに天下りをあっせんする現状のシステムを禁止する、そして、内閣府に新人材バンク、官民人材交流センターを設置して、そこで一元的に再就職をあっせんするということです。
四月の政府・与党合意によれば、再就職の公表などあっせんの透明化と、外部監視機関を設けて事後チェックを行うということになっています。各省ごとの天下りを禁止するということで、一見よさそうに見えますが、後述するように、早期退職慣行を廃止しないために骨抜きにされて、総理大臣の責任のもとで堂々と天下りが自由化される危険性が大きいと考えます。
さて、政府案の特色の第二ですけれども、天下り規制を現行の事前規制から事後規制に変えるということです。人事院の承認を得ずに離職後二年間は離職前五年間に密接な関係にあった民間営利企業の職務についてはならないという現行の人事院の事前承認制がありますが、これを撤廃するということですね。
それで、では現行の事前規制はどういう効果があったかといいますと、副作用も含めて、民間企業への天下りは全体の一割強に制限されてきたという抑制効果と、退職後二年間を待って腰かけに使った天下り先の公益法人から民間企業にわたりを行うという、これは防衛施設庁の談合事件などで明らかになっているわけですけれども、今回も緑資源機構の問題でこの種のものが出てきていますけれども、こういう官の工作を招くということだと思います。
政府案の規制内容は、事前規制をやめて公務員OBによる口きき行為、働きかけを退職後二年間は禁止というのを打ち出して、外部監視委員会による事後規制に切りかえています。これに伴い、民間企業への天下りは事実上解禁されるのではないか、そういうおそれが出てくると思います。事後規制といっても、密室で話したり、退職者が表に出ずに巧妙に接触したり、あるいは企業側から話を持ってくれば規制にひっかからない可能性が大であるということ。事後規制の二年間も短過ぎるのではないかと思います。
政府案の第三ですが、早期退職慣行を温存している、この点は非常に問題だと思います。
政府は、年功序列制をなくすことでこの慣行はなくなるとしていますけれども、新人事制度への移行に伴い同慣行が廃止となるとは法案に明記されていません。この早期退職慣行は、このところ毎年千二百人超の天下りを量産しているわけです。これは準課長の企画官ポスト以上ですね。この早期退職慣行が天下りの引き金になっているというところが非常に重要かと思います。
つまり、根本原因となっているこの慣行を温存することで、従来の特殊法人、独立行政法人、公益法人の主要天下り先、これは全体の九割弱を占めるんですが、これに加えて、民間企業への押し込み圧力がかかるおそれがある。政府・与党合意によれば、新人材バンクは退職勧奨を行う人事当局からの依頼も受け付けるとあります。これは骨抜き条項になり得るということで、そしてその結果、抜け道が生じるおそれが多分にある。それはすなわち、指定席型の天下り要求が通る道が開かれる、そういうおそれが出てくるわけです。したがって、民間企業に対しても、非営利法人同様に事実上の天下りの解禁が行われるのではないかと思われます。
これに対し、民主党案の検討に移ります。
民主党案には、三つの違いがあると思います。
一つは、事前規制を強化しています。これはもう一つの、表のポイント比較をごらんくださるとわかるかと思いますけれども、現行は非常に甘いんですね。
現行というのは、事前規制は五年間職務関与した営利企業への天下り二年間禁止。これに対して政府案は、事前規制を全く撤廃しちゃうわけですね。これに対して、民主党案は、天下りの規制対象に職務上密接な関係にあった民間の営利企業のほか、特殊法人、独立行政法人、公益法人などの非営利法人も加える。さらに、天下り禁止期間を現行の二年から五年間に、独立行政法人と特殊法人の職員に対しても関係営利企業への離職後五年間の天下り禁止。現行は二年間ですが、これを五年間に延長しています。国の機関だけじゃなくて、独立行政法人と特殊法人の職員に対しても規制を加え、さらに、地方公務員にも同様に五年間の天下り禁止を課そうとしています。
そして、事後規制も、退職職員による働きかけ行為を離職後十年間、これは随分長い期間ですけれども十年間禁止ということで、現行の規制に比べてはるかに厳しくなり、かつ政府案の事後規制、公務員OBによる働きかけ行為を離職後二年間禁止に対して、今度は十年間禁止ということになっています。
そして、第二の政府案との違いは、早期退職勧奨、いわゆる肩たたきを禁止している。天下り装置の引き金そのものを除去しちゃっているということですね。四十歳代後半から順次間引きされて、五十代半ばに幹部国家公務員の半分以上が天下る現行天下りシステムは維持が不能になります。緑資源機構のような官製談合の根絶が可能になる、そういうシナリオかと思います。
違いの第三に、人材バンクなど政府による再就職あっせんを全面禁止するということで、この両案を比べて見ますと、民主党案には抜け道なく、かなり徹底した内容、非常に徹底した内容だと思います。
国家公務員制度改革の出発点は、そもそも天下りの全面規制にあると思うんですね。これには天下り装置の引き金である早期退職慣行の廃止が不可欠である。そこに始まって、これは民主党案の大きな課題にもなると思いますが、天下りだけじゃなくて、現行の官のピラミッド形組織、制度の全体をどのような形に改革するか、定年まで働くことを前提とした場合の人件費をどのように柔軟化して抑え、削減するか、そのための給与を別体系とする専門職位制というものをつくり、かつ年功序列制にかわる能力・実績給の導入というのが求められると思いますが、そういう観点に立っての制度改革が重要かと思います。
私の個人的な見解なんですが、各省による天下りを禁止してもなお大量に出てくるであろう早期退職希望者、あるいは、潜在的に、どうしても何かここでもう一度第二の人生という方もいるでしょうから、恐らく数千人に上る可能性もあると思うんですけれども、そういう早期退職希望者に対して、第三者機関である人事院が民間企業や教育研究機関などに再就職をあっせんするオープンな仕組みづくりが重要じゃないかと考えます。
人事院が、各省が提供する退職希望者の人事・キャリア情報をデータベース化して、これは、そういう法律をつくって各省に求めて、各省からそういう人事情報がデータベースとなって人事院に蓄積されて、そしてそれをもとに経済団体とか大学など教育研究機関の人材要求にこたえていく。
非常にオープンなシステムで、しかも、総理大臣の責任のもとでは、総理も相当忙しい話ですよね、そこで、中立行政機関である第三者機関の人事院がやるのがいいと思うんですね。そして、それをオープンにやるということが重要かと思います。このオープンあっせんシステムの活用で、公務員数のスリム化も実現可能と考えます。
以上で終わります。(拍手)
○河本委員長 ありがとうございました。
次に、田中参考人にお願いいたします。
○田中参考人 田中一昭でございます。
本日は、国家公務員法の改正案等に対する意見を述べる機会を与えていただき、まことに光栄に存じております。
私は、三十七年間の長きにわたり、総務省の前身の総務庁及びその前身の行政管理庁で行政監察、今の政策評価とか行政評価・監視の前身でありますけれども、それと、各省の行政組織・定員管理、三公社の民営化、規制改革など、行政改革の仕事に従事してまいりました。それらの経験と大学に来てからの調査研究等に基づきまして、発言をさせていただきたいと存じます。
まず申し上げておきたいことは、御承知のとおり、公務員制度改革は、過去四十年以上にわたり、さまざまな角度から検討されてきたということであります。
昭和三十七年に始まった第一次臨時行政調査会では、公務員の政治的中立性の維持、人事管理の確立、信賞必罰の励行と能力本位の昇進、処遇の改善、人事運用の閉鎖性の排除などを答申いたしました。昭和五十六年に始まる第二次臨時行政調査会、会長の名前にちなんで土光臨調とも呼ばれておりますが、第二臨調の答申では、実現可能性を重視したためか、より各論的な議論がなされました。しかしながら、これらの答申はほとんど実現されておりません。
その後、先般の中央省庁再編に道筋をつけた行政改革会議が、平成九年十二月の最終報告におきまして、公務員に関する論点を提示いたしました。さらに、平成十二年の行政改革大綱で公務員制度改革が重要課題として取り上げられまして、具体的な制度設計が一年後に公務員制度改革大綱として結実しました。しかしながら、これまた実現に至りませんでした。
このように、いろいろな提言があり経緯はございますが、公務員制度改革はさしたる進展がなく今日に至っているのが現実であります。
今回の政府提出の改革案を見ますと、こうした過去の経緯の反省に立ってでありましょうか、去る四月二十四日、「公務員制度改革について」というのを閣議決定いたしまして、このたびの公務員制度改革の全体像を描きつつ、まず、能力・実績主義に基づく人事管理と再就職規制という今日的課題から着手し、しかる後に、引き続き公務員制度の総合的な改革を推進するため、基本方針を盛り込んだ、いわばプログラム法案を次期通常国会に提出することとしており、改革を計画的に段階的に実施していこうという実践的な手順を踏んでいるように見受けられます。
さて、言うまでもなく、公務員制度の改革には、採用から退職までの公務員の人事管理制度全般の課題について、総合的かつ整合的な検討が必要であります。政府提出の国家公務員法の改正法案と、先ほど申し上げた「公務員制度改革について」という閣議決定におきましては、先ほど申し上げたように、パッケージとしての改革を進めることが決定されており、政府・与党の責任でこうしたトータルな改革が第二弾、第三弾として実施に移されるのであれば、今回の法案はその突破口として画期をなすものと思われます。
若干立ち入って申し上げたいと思います。
再就職規制につきましては、官民人材交流センターが期待される役割を果たすかどうかがかぎとなります。せっかく各省のあっせんを禁止しましても、人材交流センターのあっせんが押しつけと国民に受け取られるようでは困ります。再就職あっせんを権限と予算を持つ各省から取り上げ、権限と予算から中立的な存在であるこの人材交流センターに移し、一元的にあっせんすることは、押しつけ的あっせんにはならないのであります。
この点につきましては、今回の改正法案の附則におきまして、内閣府の事務次官の監督権限がこの人材交流センターには及ばないこととするなど、周到に手当てがされているところではありますけれども、なお誤解を与えないため、人材交流センターの制度設計に当たっては、さきに申し上げた閣議決定にあるように、センターの担当者に出身府省の再就職は扱わせないこととすることはもちろん、センター長である官房長官の責任のもと、透明な運用となるよう配慮することが肝要であります。
国会での御審議を拝聴しておりますと、人材交流センターについて、詳細な設計については何もかも有識者懇談会に先送りしておるのではないかとの御議論があるようでありますが、政府提出法案の十八条の五ないし十八条の七におきまして、人材交流センターの基本的な任務や組織の骨格が規定されており、許容範囲ではないかと思われます。もう少し法案の段階で具体的にならなかったのかという議論もわからないわけではありませんけれども、これを余り言い募りますと、法案の政府部内における調整の過程で、各省が抵抗のために使ったと言われる論拠、つまり人材交流センターの細目がわからないと賛成できないとして改革をつぶそうとした議論と相通ずる面があると思われ、注意すべきであります。
さきの閣議決定で、人材交流センターを内閣府に平成二十年中に設置し、三年計画であっせん取り扱いを拡大する、このため、センター設置後、随時、効率性、実効性の観点から見直しを行い、必要な追加的措置を講ずることにより、再就職ニーズに十分対応できる体制、業務の仕組み等を整備するとしているのは、まことに実践的であると思います。その際、国会の議論を踏まえた効果的な運用となるよう制度設計がなされることを期待したいと存じます。
もう一点。国会における御審議では、天下り規制のみがクローズアップされておるようでありますが、政府提出法案にある能力・実績主義の人事管理も極めて重要であります。これまで、よほどの例外を除きまして、課長、部長、局長などのポストに任用するに当たって必要とされる能力が明確でなく、年功的、同期横並び的な人事管理に陥りがちでありました。このため、今回、それぞれの職制上の段階の標準的な官職に必要な標準職務遂行能力を定めることとし、また、職務を遂行するに当たり発揮した能力や業績を把握し評価する新たな人事評価制度を導入して、採用年次や試験の種類にとらわれない能力本位の任用制度の導入に踏み切ったことは、極めて意義深いものがあります。
既に、新しい人事評価制度は、昨年、平成十八年一月から試行段階にあると聞きます。このたびの能力・実績主義の導入は、人事評価制度が実効性のあるものになるかどうかにかかっております。政府においては、ぜひともしっかりした評価制度を確立してもらいたいと思います。
次に、民主党提出法案について一言申し上げます。
国民の批判にこたえて公務員のいわゆる天下りに伴う弊害を除去しようとする問題意識においては政府案と同じ方向性と認識しており、国会審議においてぜひ建設的な論議が行われることを期待しております。その上で、民主党の案について若干コメントするとすれば、民主党案は、天下り弊害除去の手段として、先ほどもお話がありましたけれども、一つ、いわゆる肩たたきの全面禁止と、二つ、事前の再就職制限の強化、すなわち、天下り禁止期間を二年から五年に延長する、天下り禁止対象を営利企業だけでなく非営利法人に拡大するということが中心になっているようであります。
まず第一点でありますが、肩たたき、つまり早期退職勧奨が天下りの大きな原因となっていることは事実であり、こうした勧奨をやめて、希望する職員は定年まで勤められるようにしていくことは望ましいことであります。しかし、勧奨退職の取り扱いは採用から退職までの人事管理全体に影響するところであり、これにどう対応していくかということがポイントであります。肩たたき自体を禁止することでは問題は解決しないのではないかと思われます。
第二点目。現行の国家公務員法百三条の規定に基づく人事院の事前規制は、私企業からの隔離を原則とした考え方であります。民主党案はこれを強化することを主眼としておられますが、官民間の人材やノウハウその他の交流という今日的な要請にかんがみますと、政府案のように、事前規制を三年間暫定的に存続させた後、廃止することにより、官民の垣根を低くしつつ、不正、不当な行為を禁止していくという、いわゆる行為規制の考え方をとる方に合理性があるのではないかと思われます。
もとより、談合や随意契約などの問題については、天下り規制のみで解決できるものではありませんで、官製談合そのものの防止対策、公共調達の改革、独立行政法人制度や公益法人制度の改革等の取り組みを着実に推進することにより、総合的に解決すべき問題であると考えます。
さて、冒頭にも申し上げたとおり、公務員制度改革は、議論百出で遅々として進まない課題であります。今回の政府案にもさらに詰めなければならない課題は残されておりますが、野党の主張されるように、天下り自由化法案であるというのであれば、霞が関から伝えられるような抵抗はなかったはずであります。ぜひとも今国会で成立させ、公務員制度改革の一歩を進めるというのが、国民にとって最もよい選択ではないかと考えます。
最後に、公務員制度を議論されるに当たってお願いしたいことは、公務員に、憲法に基づく公僕として、やる気を持って仕事をさせるということが、国民の立場からは最も重要であるということであります。私の思い過ごしでなければ幸いですし、また、こういうことを申し上げれば、委員各位のおしかりといいますか、お怒りを買うかもしれませんが、公務員をたたきさえすれば国民から喝采を受けるであろうという御発想ではなくて、ぜひとも、公務員が誇りを持って公務を担い、また、それにふさわしい処遇を得ているかということにも光を当てていただきたいと存じます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○河本委員長 ありがとうございました。
次に、小田川参考人にお願いいたします。
○小田川参考人 全国労働組合総連合の小田川と申します。
私は、昨年八月まで日本国家公務員労働組合連合会、国公労連の書記長についておりまして、二〇〇一年一月の公務員制度改革スタート時から一定のかかわりを持ってまいりました。その立場から、政府から提案されております国家公務員法改正法案への意見を、お手元にメモの配付をお願いいたしましたので、それに沿って申し上げたいと思います。
まず初めに、公務員制度改革は、二〇〇一年の中央省庁再編を契機にスタートしたというふうに思いますが、そのポイントは、官から民へ、国から地方への行政改革との整合性を強調する点で、幾つかの意見は同じ位置にあると理解をしております。
しかし、御案内のように、この改革論議は繰り返し頓挫をいたしておりますが、その背景として私が考えますに、政府案は、国の役割重点化という命題とかかわる政策の企画立案部門に焦点を置いた国家公務員制度改革論議であって、一般職、非現業国家公務員三十三万人中一割程度の本省勤務者の職員のみを視野に入れた改革だ、こういう批判を免れなかったのではないかと思います。
お手元には全労連の見解も参考までに配付をお願いいたしましたが、私ども労働組合サイドの主張は、実施部門の民間化や民営化に当たって労働条件改悪が一方的に行われる、こういう状況や、能力、実績反映の人事管理という民間的な労働条件決定システムの導入、これが改革論議の中心とされていることから、公務員労働者の労働基本権回復を位置づけた制度改革を強く求めたところであります。だれを対象に、何を目的に制度改革を行うのか、こういう点で関係者の意見の隔たりがあったと思いますが、今回の法案でもその点は未整備ではないかというふうに考えております。
その点で、労働基本権を棚上げした改正法案の提出には、この間の経緯に照らしても問題がある、こういうふうに思います。例えば、行政改革推進本部における専門調査会において労働基本権論議が開始をされているという経過からいたしましても、法案提出には幾つかの問題があり、個別の問題は後ほど申し上げますけれども、私は、反対の立場で意見を表明させていただきたいと思います。
法案を概括いたしまして、その問題点について、大きく分けて三点について述べたいと思います。
一つは、人事管理の改革に偏った法案、これでは公務の中立性への悪影響を懸念せざるを得ないという点であります。
公務員制度は二面性を持っておりまして、公務員の働くルールとしての制度という側面と、公務員の中立性の維持、全体の奉仕者の担保、こういう観点での公務員制度と、二つの観点から考えられることが必要だと思います。しかも、双方は一体の関係と理解をしております。
例えば、国家公務員の雇用関係は、契約関係とはされておりませんで、任用と位置づけられております。公務という特殊性から労働基準法は適用されず、職務への従属性が過度に強調されておりますが、同時に、全公務員の労働者性が確認をされておりまして、八時間労働による賃金で生活を維持する、こういう点での労働者性が確認されるという特異性を持っていると思います。このバランスが非常に重要だというふうに私は思います。
二つ目は、その点で法案は、公務の中立性よりも今日的な人事管理課題が重視をされている、こういうふうに思います。
例えば、再就職規制。第百三条で、現行の第二項が削除されるということになっております。いわゆる官と民の仕切りを低くするということだと思いますけれども、この官民の人事交流の拡大には官業癒着の懸念が絶えずつきまとっているわけでありまして、その点での議論が必要だと思います。あるいは、流動化前提の人事管理では、とりわけ実施部門での安定的、専門的な公務運営、例えば徴税公務員というのは非常に長い研修、人材育成の必要性があると思いますが、こういうことへの支障を懸念したいと思います。
あるいは、人事評価に基づく職員の処遇の決定は、ノルマ主義という問題を懸念せざるを得ません。公務は、現状では個々人の業務範囲の特定が必ずしも十分行われていないわけでありまして、能力を図る基準、成果指標をつくるというのは非常に難しいと思います。その結果、例えば社会保険庁における保険料免除問題や、あるいは、お手元の資料として参考までにつけさせていただきましたけれども、本省庁、霞が関を中心とする長時間過密労働、こういった労働条件への悪影響を懸念するという状況にあります。
大きな二つ目ですけれども、公務員制度の運用にかかわって、内閣、各府省、人事院、この相互の関係について、とりわけ人事院と内閣との関係について一定の変更が行われているように思います。これも、公務員の中立性や専門性への影響を懸念したいと思います。
現在、事前規制ではありますけれども人事院の所掌とされております再就職規制にかかわって、今回は事後規制に変わったこともあって、再就職等監視委員会を内閣府に設置し、これに権限を移すことになると思いますが、同委員会の委員長などの身分保障は行われておりますけれども、内閣からの独立性という点ではなお懸念が残るところであります。
あるいは、各府省との関係で、内閣総理大臣の採用昇任等基本方針と、各省大臣、任命権者の調整についても、なお議論が必要だと思います。職員の採用、育成、退職管理は、各府省の業務管理と一体でありまして、例えば刑務官の採用、昇任等について内閣総理大臣はどこまで責任を負うことができるのか、こういう議論は必要なのではないかと思います。
改正案二十七条の二を初めといたしまして、標準職務遂行能力を基準にした人事管理が強調されておりますが、それは、ゼネラリスト優先となることへの懸念が残っておると思います。
例えば、本省課長相当職は二〇〇六年度の予算ベースで千八百八十一ありますけれども、官房課長もあるいは業務担当課長も、また地方出先の相当職もポストとして存在をしているわけでありまして、そのすべてを網羅する課長の標準職務遂行能力、この策定というのは極めて困難性が伴うと思います。結局、課長らしい課長の能力、こういうことになって、ゼネラリストが優先をされ、プロフェッショナル軽視の人事管理を固定化する。それは結局、現状の1種キャリア特権制度を合法化するものにほかならないと私どもは考えるわけであります。
三つ目に、労働基本権の棚上げはこれ以上許されないというふうに思います。人事管理の原則が述べられておりますが、評価に基づく任用、給与などの決定が明記をされております。例えば、特定独立行政法人等の労働関係に関する法律では、団体交渉の範囲に、言葉は少し違いますけれども、昇任あるいは任用にかかわる基準についての交渉事項としての事項を規定しております。
改正法第七十条の三、二項で、標準職務評価にかかわる人事院の意見申し出の位置づけを行っておりますけれども、これ自体は労働基本権の代償機能とは異質なものと理解をしております。人事評価を任用や給与という勤務条件に反映させる以上、最低限、団体交渉権、現行国家公務員法百八条の五の整備を行うべきではないか、こういうふうに思います。
法案の個別的な問題点について何点か触れさせていただきたいと思います。
一つは、公務員制度は公務員法だけで論ずるべきではないというふうに思います。
公務員法上の制度ではありませんけれども、勧奨退職は、現行の総定員法や行政組織法による行政管理が行われるもとで、組織の新陳代謝、活性化を図るための運用でもあると思います。あるいは、退職管理は退職年金制度と密接に関連をいたしておりまして、年金支給開始年齢の引き上げが決定をされるもとで、雇用と年金の連携というのは公務員にとっても極めて深刻な問題であり、職務に専念をする前提でもあると考えます。こういう点での議論が少し不足をしているのではないか、こう考えざるを得ません。
二つ目に、行政改革が進むもとで公務の民間化が進行した、このことが天下りの深刻化にも影響していると思います。
例えば、お手元には、公益法人における行政委託型法人の推移について参考資料二としてつけさせていただきましたが、一九八〇年代、臨調行革以降にこれが増加をしていることがうかがえると思います。こういう点での問題整理も必要ではないか、こういうふうに思います。
三つ目に、現行法での私企業からの隔離は、職員の公務専念と公務の中立性維持という二つの目的を持っております。とりわけ、職員が安んじて公務に専念をするという観点から、在職中に就職活動を行うということの弊害が強く意識をされているのが国公法百三条だというふうに考えておりますが、改正法では、職員について利害関係企業等への在職中の求職の規制にとどまっておりまして、この点での問題がなお残っているのではないか、是非の議論が必要ではないかと思います。
あるいは、再就職者による依頼の規制が百六条の四で規定をされておりますけれども、それ自体は百六条の四第五項で広範な適用除外を規定しておりますので、法案自体の規制の緩さについても懸念を持つところであります。
大きな四つ目に、極めて細かい問題でありますけれども、法案の用語の定義のあいまいさや政令委任の事項が多く、また任用と給与制度との関係など公務員制度間の関係が不明確であります。その点では、各府省段階で運用する際の混乱を強く懸念するところであります。
例えば、改正法第百六条の三に規定をされております利害関係とはどういうことか、職員の職務とは現在ついている職務か、過去を含むのか、こういう点は必ずしも明らかではありません。標準的な職務の設定にかかわる政令策定に任命権者である各省大臣はどうかかわっていくのか、明確ではないと思います。
採用試験の内容、改正法第四十五条を表面的に読みますと、1種、2種、3種の試験区分は不要、こういうふうにも考えられますけれども、一方で、改正法第二十七条の二の人事管理の原則では、採用試験の種類にとらわれてはならずというふうにしておりまして、結果的には、1種、2種、3種という試験区分を前提にしているようにも考えられます。この矛盾はどう整理をしていくのか、こういう問題も残っていると思います。
あるいは、職員個々の処遇決定の基準と考えられます標準職務遂行能力と、給与の決定基準、改正法第六十三条でありますが、ここで言われています官職の職務と責任、すなわち、給与は官職の価値として支払われるということとの関係はどう整理をするのか、この点も非常に不明確だと思います。
細かい点はさらにありますけれども、全体として用語の定義などが極めてあいまいなのではないか、こういうふうに考えるところであります。
最後になりますが、公務員制度は国民の皆さんに提供する公務サービスの内容にもかかわる行政の基本的な制度の一つであります。私ども全労連は、仮に今国会の法案提出を行うとしても、再就職規制のあり方について議論をし、その範囲で法案を提出すべきであって、議論が未成熟な能力・実績主義の部分については切り離すよう、法案提出前に政府に要望いたしました。その立場は今も変わっておりません。本委員会におかれましても、慎重な審議をお願いいたしまして、私の意見の陳述にしたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)
○河本委員長 ありがとうございました。
以上で各参考人からの意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○河本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤澤亮正君。
○赤澤委員 おはようございます。自由民主党の赤澤でございます。
昨日は大変な一日でありまして、私自身、驚き、非常に残念であります。心から御冥福をお祈り申し上げると申し上げて、私の質問に入らせていただきたいと思います。
参考人の皆様におかれましては、本当に有意義な意見陳述、まことにありがとうございます。私自身の意見と一致するもの、しないもの、当然ございますけれども、論点の明確な対比が浮き彫りになったということで、大いに感謝させていただきたいと思います。本当にどうもありがとうございます。
そこで、私の質問は、まず国益についてということでさせていただきたいと思います。端的に申し上げれば、公務員制度改革によって実現すべき国益とは何かということであります。
当然のことながら、先ほどから御指摘が複数回出ておりますように、公務の政治的中立性でありますとかあるいは効率性、そしてまた有為な人材の有効活用といったようなことも指摘があったように思います。
私が特に御指名を申し上げて御意見を伺いたいと思うのは、公務の生産性向上、効率性というと何かちょっと非常に冷たい、ビジネスライクな感じがしますけれども、公務の生産性向上あるいは効率性といった、私はこれは大変重要な国益であると思いますけれども、その実現をどの程度重視するのかということであります。
いろいろな意味で、公務員の、例えば小田川参考人がおっしゃったように、労働基本権の回復の検討も非常に重要な課題でございますし、その検討を今後当然やっていかなきゃいけない、その是非も含めてということでありますけれどもやっていかなきゃいけないと思いますけれども、それと切り離してでも対応が可能であるならば、公務の生産性向上、これも直ちに実現すべき国益ではないかというふうに思うところであります。
僣越ながら、御質問の順番を指定させていただきます。まず、小田川参考人からお考えを伺いたいというふうに思います。公務の生産性向上といったことをどの程度重視するかについてのお考えをよろしくお願いいたします。
○小田川参考人 公務が税金で運営をされているということである以上、効率的な業務運営が求められるのは当然のことだというふうに私どもも考えております。
同時に、先ほども少し強調させていただきましたけれども、民主的という要素も重要でありまして、効率的な側面を優先する余り、結果的に、国民の皆さんの共同の利益を追求するという部分での公務運営に支障が出る。例えば、ノルマ主義のお話をさせていただきましたけれども、公務員におけるノルマ主義というのは国民全体の皆さんの利益にかなうものとは必ずしも考えられない部分もありますので、そういう点の弊害といいますか、これを吟味した上でバランスをとることが公務員制度としては必要なのではないかと考えております。
○赤澤委員 全く、御自身のお考え、本当に明確にお話しいただいたと思います。
私の方で一つコメントをさせていただきたいと思うのは、やはり国民の気持ちとして、失われた十年の間に、民間企業というのは、本当に自分たちの職員を守るために、あるいは企業の存続をかけて血のにじむような努力を過去十数年やってこられた。そういった中で、かなり官の生産性についての見る目が厳しいものがあるということは、ぜひ指摘をさせていただきたいと思います。
その上で、やはり今まさに小田川参考人がおっしゃったように、民主的という部分、当然公務員も労働者でありますので、その部分と、生産性の向上のバランスをとっていかなきゃいけないというところが一つの論点でありまして、御指摘のあった労働条件の改悪といったことばかりがちょっと強調されると、私からすると残念なことかなと。その辺、国民の目もしっかりと踏まえながら改革をやっていかなきゃいけないという思いを強くするところでございます。
そこで、全く同じ質問でありますけれども、公務員あるいは公務の生産性向上について、立花参考人のお考えをぜひ聞かせていただきたいというふうに思います。既存の事務事業の見直しによる公務の生産性向上といったことについては、経団連から非常に強い御要望があるように思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕
○立花参考人 赤澤先生の問題意識、私も全く同感でございます。大事な国益は何かということから説き明かされて、その国益の中には公務の生産性の向上あるいは効率性の向上も入るという御指摘、私も全くそのとおりだと思っています。
どうしても組織は、ほっておきますと、企業の場合には、競争という一つのふるいにかけられて、努力しない限りマーケットから相手にされない、消費者からも相手にされない、マーケットから撤退していくということなわけですが、行政の場合には、そういった物差しといいましょうか、ふるいがなかなかかけにくいわけでございます。
そういう意味で、私どもは、例えば公務の生産性向上という観点からいえば、歴代内閣が、簡素にして効率的な政府ということを標榜して、これを明記しながら絶えず改革に取り組んでこられたわけですが、私は行革にもやはりイノベーションが必要かなということで、最近では、例えば、いわゆる競争入札といいましょうか、官民競争入札ということで、官と民で競い合って、どちらが質の面でも効率の面でも仕事を国民のためにできるのかということで、こういった市場の競争を活用しながら刺激を与え合っていくというやり方は、まだまださまざまなやり方を導入しながら効率化を図っていく余地は残されているというふうに考えております。
以上でございます。
○赤澤委員 どうもありがとうございました。
先ほど申し上げたことに加えて、現在の危機的な国家、地方財政の状況でありますとか、あるいは官による税金の無駄遣いといった国民からの批判にかんがみれば、簡素で効率的な政府といったことを目指して公務の生産性の向上を重視していくべきである、非常に重要な実現すべき国益であると私は思うところでございます。
そういう意味で、与党の出している法案は、国民が公務の生産性向上を疑う大きな原因になっている天下り問題の解決とあわせて、やはり能力・実績主義で人事をやっていくことでこの生産性の向上が図れるんじゃないか、こういうものでありますので、しっかりと実現をして、国民の期待する国益の実現、公務の生産性の向上といったものを図っていくことが国際競争力の観点でも非常に重要になってくるというふうに思うところでございます。
この国益、公務の生産性向上といったことについての議論は以上にさせていただきまして、次に、官民交流についてお考えを伺っていきたいというふうに思います。
雇用の流動性が非常に高まってきている現状において、先ほど御指摘させていただきましたように、実現すべき非常に重要な国益の一部に、有為な人材の有効活用ということが含まれていると思います。この点は皆様、御異論がないところだと思います。そのときに、私は、官の領域だけでなく、官民における有効活用という視点が非常に重要になってくるだろうというふうに思うところでございます。
そこで、官民交流についての考え方を伺いたいと思いますけれども、現状の官民交流は十分か、不十分か、あるいは今後さらに促進すべきか、いかなる手段で促進すべきか、そして、官民の垣根を低くするにはハローワークで十分なのかどうかといったようなことについてお考えを伺いたいと思います。この点については、まず北沢参考人にお考えを伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
○北沢参考人 お答えいたします。
官民の人材交流というのはどんどんやっていくべきだと思います。人材だけじゃなくて、先ほど出ました競争入札のような経済的な面での効率を最大限に追求する上でも、民間の持つノウハウの公的なサービスへの導入、それからあと、人材については、特に、試験を一回で、一回ぽっきりでその後の身分を決めてしまうような今の公務員制度に非常に問題がある。つまり、キャリア制度ですね、こういうものを廃止しなきゃいけないと思っているんですけれども、その根本となっている一回限りの試験というのはぜひやめてもらって、途中下車を含む、途中入社を含む柔軟化をぜひ図るべきだと思うんですね。
ですから、途中から入れるようにする、それから途中から出られるようにするということですね。それをやっていくのが能力給、実績給の活用の道かと思います。
以上です。
○赤澤委員 ありがとうございました。
それでは、同じ質問を、順次、立花参考人と田中参考人にお願いをしたいと思います。
○立花参考人 赤澤先生の御質問の、官民交流の問題、現状で不十分なのかどうなのか、あるいはどう促進すべきなのか、この辺の御質問であろうかと思いますが、私も基本的には、ぜひ有為な人材の有効活用、これは非常に大事な国益という御指摘は、全くそのとおりでございます。同感でございます。
その意味で、現状において、私は、まだまだ不十分な面が多々あると思っております。確かに、公務の活性化の観点から、法律に基づいて、中途採用とか、あるいは任期つき任用とか、あるいは官民交流制度が相次いでここ数年導入されてきているわけですが、その実績を見ますと、必ずしもまだ十分成果を上げていないというのが現状であろうかと思います。
その意味で、民間の人材が政策の企画立案に積極的に関与できるように、一定の民間人の任用枠をつくるとか、あるいは中途採用を拡大するとか、そういったこともありましょうし、あるいは、政府案にございます官民人材交流センター、あれは単にいわゆる再就職支援という機能だけではなくて、官民交流の促進という機能もたしか持たせるということを法律案に書いてあったわけですから、ぜひあそこの機能を、単に各省単位ではなくて、内閣全体としてこれを仕組んでいくことも非常にこれからの大事な課題ではないかと思っております。
以上でございます。
○田中参考人 赤澤委員のお考え、基本的に私は賛成であります。最初申し上げた効率性の問題にもこれは絡む問題であります。単に垣根を低くして民の知恵をかりる、官も民に出ていってまたその知見を活用するということにとどまらず、効率性の面からも非常に重要である。
というのは、官ですべての能力を用意することは困難であります。また非効率であります。そういう面で、内閣の方でおっしゃっている公募制というのも、今後は大いに活用していくべきではないかというふうに思いますし、垣根を低くして、極力情報を公開して交流を進めていくということが、官の効率性と要するに税金の無駄遣いをなくしていく意味でも重要ですし、何しろ、時代の要請に合わせた行政をやるという点から非常に重要ではないか、かように考えております。
以上です。
○赤澤委員 ありがとうございました。官民交流を促進すべきであるということについては、今質問させていただいた三人の参考人は声がそろっているということだろうと思います。
私は、確かに官民交流、現状では非常に不十分であって、今後促進すべきであるというふうに思います。そのための専門機関、いわゆる新人材バンクを与党としては用意して、この設置で積極的に取り組んでいきたいということであります。
小田川参考人からは、先ほどちょっと癒着の心配があるんじゃないかと。これもバランスの問題であるという御指摘をぜひさせていただきたいと思います。公務員がいろいろな分野で知見を積むこと自体にはまた十分価値があることでありまして、制度の仕組み方によるものかなという理解をさせていただきたいと思います。
そこで、もう一つ北沢参考人にお話をいただきたいんですが、私の理解するところ、官民交流は促進すべきであって、与党案は新人材バンクというのを用意して、通称でありますけれども、その促進を図っていこうということでありますが、残念ながらと申しますか、民主党案の方では必ずしもそういうものを新しくつくるという考えではない。その中で、今、北沢参考人の御指摘は、人事院が民間企業や教育研究機関に再就職をあっせんするオープンな仕組みづくりということを指摘されております。これが恐らく官民交流の手段になると参考人はお考えなんだと思います。
一つ、ちょっとこの点、詳細にわたりますけれども質問させていただきたいのは、参考人が「静かな暴走 独立行政法人」という著作の中でこの部分の言及をされたときに、殊さらに、国会に出された資料の、民間企業や教育研究機関に再就職をあっせんするオープンな仕組みづくりの前に、職務権限の対象外だった民間企業や教育研究機関にあっせんするということをその本の方では書いておられたんですけれども、今回提出された資料もそういう御趣旨ということでよろしいでしょうか。念のため確認させていただきます。
○北沢参考人 そういう趣旨です。つまり、職務に関係のあったところには就職させてはいけないという、それは事前規制ですね。
○赤澤委員 まさにその点がちょっと確認のしたかったところでありまして、私自身は、後ほど、これからお話をする、各職員が積んできた知見といいますか、英語で言うとコンピテンシーと言うようですけれども、その人が積んできた有能さといったものの活用について次に議論させていただきたいと思っていまして、ちょっと先取りで申し上げます。
やはり民間企業も、これはその人の権限外で、わかりやすく言ってしまえばおよそ畑違いな分野の企業にしか公務員の再就職ということがなかなか認められないとなると、民間企業の側はこれを本当に欲するのか。現実的な解として、北沢参考人おっしゃったように、権限外であった民間企業への就職を人事院が世話するということで本当に官民交流が促進できるのかといった点については、私は大いに疑問を持っているところでありまして、その点についてはいかがでしょうか。
○北沢参考人 お答えします。
それは要するに、実際に許認可権限を持ってやっているような、そういう関与の仕方の場合には排除しなきゃいけないということです。例えば、経済産業省を例にとりますと、国際的に非常に有能な人がいて、アメリカでいろいろやってきたのを自動車会社なりエレクトロニックの会社へやるというのはいいことですね。ただし、直前まで許認可権限を持っていたり予算の権限を持って、それを許可できるような、認可できるような、そういう権限を持った人がそのまま天下りするのはよくない、そういう趣旨なんです。
○赤澤委員 ありがとうございました。今の答弁、大変有意義でありまして、次の項目で引き続きお話をさせていただきたいというふうに思うところでございます。
それは、天下りの中で根絶すべきものは何かというところであります。コンピテンシーについての議論をさせていただくと予告をさせていただいたところでありますけれども、まさにそのことでございます。
民間企業、あるいは企業に限らずいろいろな法人がありますけれども、私自身は、コンピテンシー、本人が今までの公務員生活で積んできた有能さと訳せばいいのかと思いますけれども、専門分野の知見、その有能さ、これに応じて再就職すること自体は、これはむしろ問題がないばかりか好ましいものであるというふうに思います。換言すれば、本人のコンピテンシーにかかわりなく、所管分野の法人に対して各役所が、我が省が望むのだから雇ってくれ、あるいは我が省人事課がお願いするのだから雇ってくれ、こういうのが問題でありまして、コンピテンシーに応じて再就職すること自体は、私は決して悪いことではないというふうに考えますけれども、この点について、まず北沢参考人と小田川参考人からお話を伺いたいというふうに思います。
○北沢参考人 そのとおりだと思いますよ。私、先ほど言いましたように、直接権限を握って関与している場合には、権限を行使して再就職すると天下りになりますから、これはよくないですね。そういうことを言っているのであって、有能な人を迎えるのは民間にとってもいいことですから、そういうキャリア情報、人事情報を中立行政機関である人事院に集めてはどうかというのが私の考えなんですね。
内閣というのも一つあり得るんですけれども、内閣の場合には、内閣官房につくるにしても内閣府につくるにしても、各省から人が集まりますね。その場合に、各省のいろいろな要望が伝えられて、影武者のように動くんじゃないかというおそれがあると思うんですね。ですから、第三者機関の人事院をここはひとつ活用すべきではないかと考えるんです。
○赤澤委員 そこで、これもまた先ほどから繰り返しておりますバランスの議論に戻るようなところがちょっとあるんですけれども、これは、公務員も当然のことながら職業選択の自由という憲法で保障された権利を持っていて、それの制約というのは極力最小限にしていくのが憲法の望むところだろうと私は思うわけであります。
しかも、今、北沢参考人御自身が、そういうコンピテンシーのあるところに、しかも我が省が頼むんだから雇ってくれというような話でなくて、むしろ企業の側から言ってくるようなものであれば、これは否定するようなものでないという御指摘であったんですけれども、参考人が賛成をされておられる民主党の法案だと、私が見るところ、非常にそこは、一言でくくってしまえば過剰な規制になっていないだろうか。
端的に言えば、私の評価としては、若干バランスを失して、天下り、あるいは権限を背景とした、我が省が頼むんだから雇ってくれ、コンピテンシーがあるかどうかにかかわらず雇ってくれというような事態を根絶するためであれば、職業選択の自由をかなり大幅に規制して、そうでないものも含めてとにかく当面やっちゃいかぬというような過剰規制になっているように見えますけれども、その辺のお考えはいかがでしょうか。
○北沢参考人 私は、天下り規制が最初にどんとなければ、今世間を騒がしている官製談合とか、もう絶えず起こっていますよ、これをとにかくぱっと根絶するには、この法律は非常に有効だと思うんですね。
ですけれども、課題として、天下りの次に、実際の組織体系とか制度を変えなきゃいけませんね。その場合に、例えば円錐台形というのが私のイメージにあるんですけれども、プリンの形ですね。今のはピラミッド状ですよ。一番てっぺんに次官がいて、徐々に退職させますね。そういう組織形態並びにそこに、背景にある年功序列制とか、それから1種合格の人を優遇して一回の試験でもう決めちゃう、キャリアパスを決めちゃう、そういうキャリア制度ですとか、そういうものを第二弾として民主党がやることを期待しているんです。
ですから、第一回目はいいと思うんですね、天下りをやって、次のラウンドで全体構造の設計が必要であるというのが私の考えです。
○赤澤委員 ここも、もう価値観の違いといいますか考え方の違いになってくると思いますけれども、私の理解するところは、与党はそれを一遍に、最後の第二段階まで今回のものでバランスをとってつくろうという考えでやっているということでありますので、今のお話でありますと、私自身は、その第二段階も組み込んでやっている与党案の方に分があるんではないかなと思うということだけ、ちょっと申し上げさせていただきたいと思います。
そして、同じ質問でございますけれども、コンピテンシーに応じて再就職すること自体が悪いかということについて、小田川参考人にもお考えを伺いたいと思います。
○小田川参考人 まず、天下りという問題、正すべきは何かというところから申し上げたいと思いますが、結局のところ、就職をし死亡されるまで人事当局が生涯の責任を負うというような現行の、俗に言う特権、優遇の仕組みを前提とする天下りあるいは再就職、これは正されるべきだとまず思っております。
二つ目に、職員が在職中に培った能力を活用するということは、それはそれとして否定されないと思いますが、その際に、冒頭のところで申し上げましたけれども、公務の中立性あるいは公平性、これとの関係のバランスをどうするかということだと思います。
一般的に申し上げまして、公務あるいは官と業の癒着という問題は、実質的な問題であると同時に、外形的な問題も含んでいると思います。形の上での問題があると思います。したがって、現行のような、十分かどうかというのはなお議論が必要かと思いますけれども、事前で規制をし、一定の制約を行うということは必要な仕組みではないか。コンピテンシーというお話がありましたけれども、能力を活用することを前提としても、なお必要な仕組みではないかと思っております。
あえてさらに申し上げれば、私ども組織をしております組合員のレベルでは、定年退職もしくは年金支給まで働きたいというのが基本的な要求でありますから、それができるシステムを同時に検討いただくようお願いをしたいと思っております。
○赤澤委員 与党においても、もちろん公務員の皆様に労働条件、きちっとふさわしいものを提供して、やる気を持って仕事をしていただきたいということでありますので、定年制の延長でありますとかスタッフ制の導入みたいなものというのは、きちっと答えを出していきたいというふうに思っているところでございます。
ちょっと時間の関係で、続きまして、立花参考人と田中参考人にも、コンピテンシーに応じて再就職することについてどのようにお考えになるかを、簡潔にお考えを述べていただけると大変ありがたく思います。よろしくお願いいたします。
○立花参考人 これまでの先生とほかの参考人とのやりとりを伺っていまして、赤澤先生のお考え、私は全く基本的に賛成でございます。
やはり基本的には、本人の能力がきちっと評価された上で所を得て働くというのは、これは人生にとって一番大事なことで、職業選択の自由、あるいは一方で働く権利というのも憲法で保障されているわけですから、先生おっしゃった、まさにそれとのバランスの問題だという、そういったとらえ方は私も同感でございます。
産業界におきましても、基本的には、私もここに伺う前に何社か企業の方々に、こういった規制による影響をどう見るかということで伺ってみたところ、従来のように、役所の方から監督官庁と所管業種という関係の中で頼まれて何とかこなしてきたけれども、これからはもうそういうぐあいにいかないということで、はっきり能力なり本人の適性なりをきちっと判断した上で、人によって、これからは自分たちの会社、企業としてとるかとらないかを決めていきたい、そういうことで、だんだん企業の方の発想も変わってくるんだろうと思っております。
以上でございます。
○田中参考人 赤澤委員のお考え、基本的に賛成であります。
私どもが現職にいるときに比べて、昨今では各省のOBたち、キャリア、ノンキャリ問わず、自分たちのいわゆるコンピテンシーといいますか能力を買われて、定年後もあるいはリタイア後も仕事をしておられる方がかなりふえておるように思います。非常にいい傾向ではないか。
せっかく公務員として、キャリア、ノンキャリ問わずしっかり実務を身につけ、あるいは研修を受け、時には外国でも勉強してきた人たちの能力を、民間であるいは非営利法人等で活用することは非常に有用であるし、大事なことである。もちろん、そこに天下りに伴う問題を排除するということを基本に置きつつやることは非常に重要である。そのためには、透明性というのを重視する必要があると思っております。
以上です。
〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕
○赤澤委員 私なりにまとめさせていただくと、コンピテンシーがないにもかかわらず、所管分野のよしみで雇ってもらうということだからこそ、見返りに仕事を発注するというような事態を招くわけであって、我が省が頼むのだから雇ってくれというたぐいの働きかけをきちっと封じることができれば、あるいは、すなわち言いかえれば、所管省庁や所管省庁職員のあっせんを排除の上、人材バンクにおいてコンピテンシーに応じた再就職をあっせんする仕組みをきちっと導入することができれば、まさにこれは与党案の目指しているところでありまして、目的に見合った合理的な手段を講じたことになり十分である、公務員の職業選択の自由にも十分目配りをしたバランスのとれた案になるというふうに私は思うところであります。
官から民への公務員の再就職を一定期間とはいえすべて禁止するといったような考え方、あるいはまさに北沢参考人おっしゃったような、コンピテンシーがない分野における再就職しか当面認めないというのだと、私は、官民交流の促進とか官民における有為な人材の有効活用といった観点からは問題かなと。総じて、これはもう繰り返しになりますけれども、バランスの問題でありますけれども、与党案と比べて民主党案は、ちょっと官民交流の阻害要因になりかねないぐらい天下りの根絶といったことにウエートを置き過ぎて、バランスを失しているものではないかというふうに思うことを申し上げまして、私の質問を終わります。
本日は、参考人の皆さん、本当にありがとうございました。
○河本委員長 次に、佐々木隆博君。
○佐々木(隆)委員 きょうは、参考人の皆さん、大変どうもありがとうございます。心からのお礼を申し上げたいというふうに思います。
昨日、痛ましいことが起きたわけでありますが、心からお悔やみを申し上げたいというふうに思います。こうした公務員制度の改革がきちっと進んできていれば、ひょっとしたらああいうことも避けられたのかもしれないという思いもありまして、より悔やまれるところであります。
私は、改革を否定するものでありませんし、改革は進めなければいけないというふうに思っておりますが、そのときに、先ほど参考人のどなたかもおっしゃっておられましたが、これから先どんなサービスにしていけばいいのか、それから、しかしその一方で、法律ができるということはその法律を適用される方々もおられるわけで、その人方にとってどうなのかということと、両面をやはりしっかり考えていかなきゃいけないのかなというふうに思っております。
それぞれの皆さん方にお伺いをしたいというふうに思うんですが、先ほど小田川参考人から少しありましたけれども、公務員制度改革、言われるまでもなく、九七年、それ以前もありますけれども、九七年の公務員制度調査会のところから数えても十年になるわけであります。この十年、公務員制度改革を何度かやってきていて、しかも、なおまだこうして、法を改正して直していかなければならないという事態を繰り返しているわけであります。
この間の十年の改革というものを、私は余り進んでいるというふうには思えませんけれども、参考人の皆さん方が、この十年間の改革の方法、手法なども含めてどう評価されているのか。進んでいないとすれば、それにはどんな原因があったのかなどについて、それぞれ、このことに言及されておられる皆さん方でありますので、四人それぞれにお伺いをしたいというふうに思います。立花参考人からお願いします。
○立花参考人 佐々木先生のおっしゃったとおり、橋本先生が総理のときにリーダーシップを発揮されたいわゆる橋本行革会議のときに、先ほど田中参考人からもこの間の御紹介がございましたとおり、基本的に私はこの公務員制度改革については、もちろん、小さな面の改革、例えば、小泉前総理のときに、いわゆる勧奨退職をできるだけ抑えて、その年齢を五十三、四歳から五十四、五歳まで引き上げるとか、あるいは能力評価をトライアルで試行してみるとか、いろいろ個々細かな点を取り上げれば一定の進歩はあったと思いますが、しからば制度の根幹そのものについてどうだったかというと、私は、佐々木先生のおっしゃったとおり、議論はされましたけれども、基本的には、こういった法律案の形できちっと国会での議論になって日の目を見ることはなかったのではないかというふうに感じております。
○北沢参考人 お答えいたします。
私は、この十年、実質的には進んでいないと思います。どういうことかといいますと、進んでいる点は、テクニカルな点は進んでいますね。例えば、公益法人にしても、特殊法人に比べての独立行政法人にしても、透明性は高まりましたね。ですけれども、もう一方、後退した点として、問題が隠れてきている。例えば、独立行政法人の場合は、非公務員型と公務員型が分かれてややこしくなった上に、問題が隠れちゃうんですね。例えば、人件費の問題でも、運営費交付金というところで賄っているんですけれども、それがよく実態がわかりにくかったりということで、実質的には進んでいるどころかおくれている面も多々あると思いますね。
それで、今言った独立行政法人、今度の緑資源機構も、それから、その前の一連の官製談合も、独立行政法人を舞台にしていますよね。独立行政法人の場合には、森内閣のときに特殊法人改革の一つの決め手としてやりました。つまり、民営化、廃止、もしくは、できない場合には独立行政法人といって、数の上では独法が一番多かったはずなんですね。その中で、改革の手法として行われた民営化は、ここに詳しい田中委員がおりますけれども、道路公団を見ても、利潤を認めない民営化なんてあり得ないですよ。本業から利潤を認めない、こういうまやかしの民営化がありましたね。
そのほか、独立行政法人という場合には、例えば、比較的自由に運営できるということを生かしたというか、そこをうまく利用して、給与を国家公務員よりも高目設定したとか、相当そういうやり方が、いいとこ取りしているというところがありますよ。ですから、独法についてはむしろおくれている面もある。必ずしも一方的に進んでいなくて、確かにちょっとこの面はよくなったけれども、基本的には後退している面すらあるというのが私の印象です。
特殊法人改革というのは行革の中心でしたね。ずっと中心でありながら、そのまた中心になっている、英国のエージェント制を取り入れたとされる独法において、今問題がいろいろあらわれて、それは特殊法人の衣がえですよ、多くは。多くというか全部と言っていいと思うんですね。事実上の衣がえになっていますから、いろいろと予算を使って、あるいは許認可権限を使っての天下り、プラス、配分表をもとに予算をとるなり、指名入札で、天下りをしているところに基づいてたくさん分配するとか、そういう問題が噴出してきたと思うんですね。ですから、基本的には進んでいないと思います。
○田中参考人 非常に重要な御質問だと思います。なぜ公務員制度改革が進まないのか、進まなかったのか。おっしゃるとおり、小手先の改革はあっても基本的な改革はなされていない。
先ほども私、冒頭申し上げたように、第一次臨調のとき、いわゆるテキスト的に非常にトータルな提言がなされておるわけです。ということはどういうことかというと、公務員制度というのは、組織が生きるか死ぬかということで、入り口から退職までトータルな話であります。とりわけ、労働基本権をどうするかという問題がそこに横たわっております。したがって、各省の公務員からすれば、一言で言うと、俗に言いますと、このままでいいよ、面倒なことはしたくないという気持ちがあるんだと思います。
いろいろ、情報公開とか透明性の確保あるいは定年延長等々、大分上がってきましたね、定年というかリタイアする年齢が上がってきました。そういうことはありましても、トータルにやろうとしますと非常に力仕事であります。そのことに対して、私は、本当に、自他ともに認める橋本龍太郎元総理、あるいは小泉総理もかなり力仕事のできる人であったと思いますけれども、彼ら自身、それをできなかったということであります。
何を言いたいかといえば、政治こそがこの問題を正面から取り上げない限り、霞が関に改革を求めても無理だということを申し上げておきます。
○小田川参考人 数年前の人事院の報告で、戦前の官吏の残滓という言葉が使われたことがありましたけれども、戦後六十年以上たちましても戦前型の公務員制度がなお生きているというふうに私どもは考えているところもあります。それはキャリア特権制という問題ですけれども、そのことにも見られますように、公務員制度というのはなかなか変えがたいというか変化しづらい部分を持っているということは事実だと思います。
対症療法的であることはそのとおりだと思いますけれども、しかし、行政の組織の変化だとか行政へのニーズの変化だとかIT化の問題だとか、そういう先行する課題に対して公務員制度改革をどう適応させていくかという、ある種受け身的な要素はどうしても残っているわけでありまして、そういう意味での議論なり改革の積み上げはそれなりにあるものと私は考えております。
しかし、根本的な改革につきましては、百家争鳴の状況にあって、関係者の議論が一致をしない。とりわけ、最初のところでも申し上げましたけれども、何を改革課題にするのかというところで一致をしないということがこの間続いてきたのではないか、こういうふうに考えておりまして、私ども労働組合の立場から申し上げれば、その中心的な問題は、公務員の労働者性の問題、労働基本権の問題に尽きるんだと考えております。
○佐々木(隆)委員 それぞれの立場から、大変貴重な御意見をいただきました。
私に与えられた時間が三十分しかありませんので、余り詳しく、全部お聞きすることはできませんことをお許しいただきたいというふうに思うんですが、四人の参考人の皆さん方から、今回の改正の大きなテーマの一つであります人材バンクについて、やはり勧奨退職の制度がいけないんだということは、皆さんの立場でそれぞれおっしゃっておられました。
確かにおっしゃられるように、これは出口だと私も思います。結局、入り口のところの1、2、3種という試験の制度だとか、それからいわゆるキャリア制度だとか、また採用年次別ローテーション人事と言われている人事制度とか、そういったものが総合的に見直されなければいけないんだということは、今の四人のお話の中からも私もそう感じているところでありますが、この話はちょっと後ほど時間があればさせていただきたいというふうに思うんです。
北沢参考人からは、対比の表で、今度の人材バンクのことについて表があったんですけれども、この改正案が本当に機能するのかということについて、それぞれ、北沢参考人はありましたので、それ以外の方にちょっとお伺いをしたいなと思うんですが、どういう制限をどういうふうに加えれば機能するのか。できたからいいんだというものではないと思うんですね。これは機能しなければ何にもならないわけでありまして、そういった意味では、事前の部分、事後の部分、あるいは報告の義務の問題だとか、どの程度の範囲までに適用させるのかとか、再々就職はどうするんだとか、あるいは監視機能ですとか、いろいろなことが考えられるというふうに思うんです。
それで、北沢参考人以外の皆さん方に、ちょっとその点について、このバンクがこのまま、今の提案の状況の中で、どこをどうしなければならないかという問題点や、どうやったら機能させていくことができるのかということについて、必ずしも今の改正案で十分ではないというふうに私は思いますし、改正するときには、徐々にというのはほとんどうまくいったためしがないので、この辺も含めてちょっとお伺いをしたいと思います。どなたからでも結構です。
○田中参考人 非常に重要な御質問であります。しかも現実的な話ですね。
私は、今のお話で、徐々にやったことで成功したためしがない、こういうお話でございますが、それはちょっと、事実、すべての改革がそうではないということを申し上げておきます。
御承知のとおり、私、規制改革をもう随分やってきました。あるいは三公社の民営化でも、タイムテーブルをつくって、例えば、規制改革でいえば、まずいつまでに考えを整理する。こうしてもらいたいけれども、まず政府でまとめてください、そうしたらいつの国会に出してくださいというふうに、タイムテーブルにのせて計画的にやるということは非常に重要なことだし、何でも一挙にしようと思うからいろいろ心配が出てきて進まない、一か八かという話になりがちなんです。
そうではなくて、今度の閣議決定、私、先ほど申し上げましたけれども、非常に周到に、段階的に順番が書いてあります。しかも、議論が出てくるなというふうな問題については、有識者懇談会というので一々検証しながら進めていくということでもありますから、そこら辺は、一挙にやらないとだめだ、こういうことには必ずしもならないじゃないか。
したがって、大事なことは、まずこの人材バンクをどういう組織にするのか、トップにどういう人、幹部にどういう人を持ってくるのか、どういう組織立てにして、仕事の運びにするのかということを、具体的にこれから考えていけばいい話である。三年間という猶予が置いてあるのはそういうことであろうと私は理解しております。
わたり、再々就職とおっしゃいましたけれども、わたりというのは私が現職のときにもありましたし、今でも多分あるんだろうと思います。実務を離れておりますから昔のことは申し上げませんけれども。国会でのいろいろなやりとりを聞いていますと、政府の案は、退職する際の人材バンクでありまして、その後のことはやらないよという話でありますから、そこは断ち切っている。非常に明確になっている部分と、これから有識者懇談会に任してある部分と両方ある。
任してあるところというのは、改革は生き物でありますから、それはそれなりの考え方であって、一歩前進ではないかな。そういうふうにこの問題は進めないと、また何年かたって、先ほど委員がおっしゃったように、また何もしない何年であったということにならないことを期待しております。
○佐々木(隆)委員 また後ほどお伺いさせていただきます。済みません。
今、田中参考人からお話をいただきました。経験を踏まえて、ぜひお伺いしたいなというふうに思うんです。
先ほども、省庁から一つにまとめたので、その抵抗をはねのけて今回つくったことにも大きな意味があるというお話をされましたが、ただ、逆に言うと、今回、かなり骨格の部分が出てきておりまして、ほとんどこれから決めるという部分がかなり多い。そのときに、ぜひ経験を踏まえて御意見をいただきたいなというふうに思うのは、結局、骨格の法律ができたんですが、結果、実際にやろうとするときに骨抜きになっていってしまう。そういうところで、やはりここはきちっと決めておかないと前へ進んでいかないよというようなところの御経験もきっとおありだと思うんですが、その辺、お伺いをさせていただきたいと思います。
○田中参考人 まことにおっしゃるとおりであります。御質問は大事だと思っております。
ただ、改革というのは、それぞれの改革によっていろいろ色彩が違ってくるのではないか。例えば三公社、国鉄一つとっても、当時の国会では自民党も社会党も大反対でした。とてもできない、会社を分割したりしたら東京から鹿児島へ行くのに線路が切れて行けなくなっちゃうというふうな議論さえもなされたわけであります。
ただ、そういうときにやはり大事なことは、政府の中で、これはやらなくちゃいけないという気持ちを持つ人たちが、今回のいろいろな事件をごらんになってもおわかりのとおり、このままでは、公務員が本当に国民のための公務員なのかと言われることにじくじたる思いを持っておる公務員はたくさんいるんだろうと思います。だから、霞が関自体が、今回のこういう公務員制度改革、せっかく提案されたことを何とか進めていこうという気持ちを持つことがまず第一に大事であります。それを後押ししていただく与野党の先生たちの御議論が非常に重要であろうということであります。
しかも、こういう改革というのは、ごめんなさい、ちょっと長くなって申しわけございません、継続して議論していくことが重要であります。そのためには、議論が透明性を持つこと。今度、有識者懇談会でも、いろいろ委員会でも行われると思いますが、秘密を守らなければいけないのは、個人のプライバシーとかそういうものが議論されるとき。具体的な事件が議論されるときは別ですけれども、できるだけ透明性を持って進めていく。当然、議会もそれにかかわっていくということが改革を進めていく上で非常に重要であると思っております。
○佐々木(隆)委員 立花参考人、申しわけございませんでした。
経団連の提言の中でも、先ほどもちょっと触れていただきましたが、キャリア制度とか勧奨とか、そういったものがすべてセットで改革されていかなければいけないんだということをおっしゃっておられるわけでありますが、そのことも含めて、人材バンクについてお伺いをしたいと思います。
○立花参考人 先生が冒頭おっしゃられた、人材バンクが果たしてワークするのかどうなのか、あるいはそのためにどうしたらいいんだという問題ですけれども、大体、今意見を述べられた田中参考人がおっしゃったとおり、私は基本的には政治が関心を失ったらこれはもうアウトだと思っていまして、従来のように、政治が枠組みをつくった、あとは細かな制度設計は役人に頼む、それではだめで、大枠の制度設計はもちろんのこと、小さな中身についてもぜひ政治が関心を失わずに、絶えず光を当てていくということがまず一番大事だと思います。
それから二つ目には、これも田中さんがおっしゃった情報のオープンといいましょうか、やはり議論している中身をわかりやすく絶えず国民にアピールしていく、そういったことが大事で、というのは、佐々木先生の冒頭の御質問に、なぜ進まなかったんだろうかな、評価はどうなんだという御質問に関連して、やはり公務員制度改革が一部の専門家集団で議論され過ぎた嫌いがあるんじゃないかなということを私自身、先ほどちょっと言い忘れただけに思っております。
それから、お隣の某大国のことわざに、上に政策があれば下に対策ありということを聞くんですね。ですから、今回の人材バンクをいかにしてワークさせるか、あるいはどういうように制度設計していくのかというところで、例えば、内閣提案の法案の中に、OBが直接現役に働きかけちゃいけないよということが書いてあるわけですが、だけれども民間からすれば、まさに上に政策があれば下に対策ありということで、本人を使うという明白な法律違反をするようなことはやらなくて、恐らく巧妙な迂回する手段というのはあり得るんだろうと思うんですね、別の人を介してそれとなく言わせるとか。
そういったことで、人材交流センターについても、制度設計してそれでおしまいというんじゃなくて、運用段階においていろいろ想定外のことも起こり得ると思いますので、そこは適宜、やはり発足した後も絶えず点検して実態を調べながら見直しをしていく、そういった対応も必要だろうと思っております。
以上でございます。
○佐々木(隆)委員 小田川参考人、済みません、あと五分しかなくなったものですから。
あと二問ほどお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
北沢参考人にお伺いをしたいというふうに思うんですが、能力・実績評価主義というのが今回改革のもう一つの目玉になっているわけでありますが、私は、能力・実績主義そのものを否定するものではないんです。これは必要だというふうに思うんですが、ただ、公務員の場合の評価基準。民間ですと、セールスの実績とか研究の成果とか、割とはっきりと成果というのは出てくるわけですね、そういう評価の仕方が。ところが、公務員の評価基準というのは一体何なんだというところが非常に難しいというのが一つある。
もう一つは、今ほどお二人からも話がありましたが、いわゆる公平、公正、透明というものがどうやって担保されるのかという問題があるというふうに思います。それと、評価された側が、ではどうやってその評価が正しいのかということを、もし苦情を言いたいとすればそれはどうすればいいんだとか、こういった、民間とはまたちょっと違った公務員であるがゆえの難しさがあると思うんですが、その点について北沢参考人にお伺いしたいと思います。
○北沢参考人 お答えします。
まず、ちょっとこれに関連して大きなことを言いますと、公務員制度改革が今までどうしてうまくいかなかったかの大きな原因は、先ほど参考人の方が述べたことだと思うんですね。透明性に欠けていたということが一つですね。ですから、オープンでなかった。それからもう一つは、専門家集団に任せていたのでよくわからないですよね。非常に詳細なところにばかり議論が行って、政治のえいやがなかったということが言えると思うんですね。ですから、オープン、ダイナミックというか、政治主導かつ透明性を高めてやるのが重要かと思います。
それで、先ほどの能力・実績給の評価ですけれども、これが非常に難しいと思うんですね。民間だったらセールスをこれだけやればとかありますけれども、公務の場合、それをそのままやってはまずいですね。ですから、ここがポイントになると思うんですけれども、こうやればいいというすぐの回答はだれもできないかと思うんですが、私の理解では、非常に難易度の高い職務とかありますね、職務に基づいての実績ということ、それからその職務に対応できるかという能力、この評価をやらなければいけないというのが基本にあるかと思います。あと、どういうふうにやるかというのは、これこそ実際に詰めていかないといけないテーマだと思うんです。
終わります。
○佐々木(隆)委員 参考人のどなたかがおっしゃっておられましたが、日本の場合にはどうしてもスペシャリストよりもゼネラリストを求めるという傾向が強くて、今北沢参考人が言われた部分についても、結局スペシャリストの評価とゼネラリストの評価がこれまた出てくるのかなという難しさ、これからそれは我々が論議をしていかなければならない課題だというふうに思います。
もう一つは、これも北沢参考人にお伺いしたいというふうに思うんですが、この新たな人事評価制度に基づいて、今言われたように、任用、つまり昇給とか給与に反映させていくということになるわけでありますが、大臣がそのことの権限が強くなるということは、先ほど来お話が出ています中立性とか公正性との関係が非常に危うくといいますか、そこをどう担保するのかという問題が今度出てくるというふうに思うんですね。とりわけ、今回の改正案の中でいわゆる人事院とのあり方の関係も際立ってきているわけでありまして、その辺を含めて、ぜひ参考人の御意見をお伺いしたいというふうに思います。
○北沢参考人 お答えします。
公務員は政治的に中立でなきゃいけませんよね。例えば時の政権のお助けばかりやっていちゃいけませんね。ですから政治的中立性と、今度、ダイナミックに動いている政治を助けなきゃいけないという、実際に補佐役というのも行政として当然出てきますから、その兼ね合いというのをどこで図るかだと思うんですね。ですから、これは中立性の問題と、それから例えば任用の場合には局長以上は政治的に任用するとか、そういう一つの線引きが必要かと思います。それはまさに政治の決断ですね。それは今後の課題だと思うんです。
○佐々木(隆)委員 時間が参りましたので終わらせていただきますが、政治任用と、評価して政治家が任用するのが今、話が何か一緒になってしまっているところがあって、この辺は、我々もこれから整理をしていかなければならないというふうに思っています。
皆さん方に大変貴重な御意見をいただきまして、今後の論議の参考にさせていただきたいというふうに思います。ありがとうございました。
○河本委員長 次に、田端正広君。
○田端委員 公明党の田端でございます。
本日は、四人の参考人の先生方、どうも大変にありがとうございます。
いろいろお話を伺いまして、本当にこの公務員改革というのは大変大事なテーマであるということを改めてまた確認させていただいた次第でございます。先ほど立花参考人でしたか、この公務員改革というのは構造改革の総仕上げに当たるんだという趣旨のことでいろいろお話がありまして、そういう意味では、縦割り行政の弊害ということが言われてきたこの問題に対して、本当にここで真正面からどこまで取り組んでいけるのかということが大きなテーマになっているんだなということを確認した次第でございます。
そこで、先ほどもお話ございましたが、立花参考人の方から、人事マネジメントで官民の交流を促進することが非常に大きな意味合いを持ってくるというお話でございます。私も、今回のこの官民人材交流センター、人材バンクがどこまで機能するのか、ここがもう最大のかなめであろうと思っているわけであります。つまり、各省ごとで今やっているそういうことを見直し、今後のいろいろな縦割り行政を乗り越えて、内閣府が本気になって能力を発揮して、そして新しい人事のあり方を確立していく、これが一番大事な点であると思いますが、その点について、立花参考人、どうお考えなのか。
特に私、心配しているのは、言葉では官民交流と言いますけれども、民から官というのはどの程度あるんだろう。現実問題、そんななかなか、いい人が、いい人材が民から官ということはどこまで考えられるんだろうということに非常に危惧を持ちながら、この官民交流センターの役割というのは物すごい大事なんだけれども、実態的にはそんなにうまくいくのかなという思いをしておりますが、いかがでございましょうか。
○立花参考人 田端先生がおっしゃったとおり、私も、そこはこれからの取り組み次第なものですから、先生のおっしゃったとおり、不安がないかといえば、本当に大丈夫かなと。また、それをそうならないように、懸念を払拭するためにどういうふうにやっていったらいいのかということをこれからまさにいろいろ知恵を絞っていかなければと思いますし、また、政府の方でも、このセンターが発足した後、これは平成二十年でしょうか、その後もいろいろ逐次改善を加えていくというのは、やはり初めての経験だけに、そういった柔軟な対応が必要だというところだろうと思っております。
それで、先生おっしゃった官と民の交流の問題で、私どもから見ていますと、これも公務員制度改革の一環といえば一環なんでしょうけれども、例えば特許庁が、特許の審査官が少ない、一方では、こういった競争の中で時間がかかってしまうというのは非常にハンディだということで、特許の審査官をふやす、だけれどもフルタイムではふやせないので、例えば任期つき任用でふやすとか、いろいろ工夫していただいて取り組んで、当然、民間からの中途採用的な感じになった取り組みがあるわけで、いろいろな面で、かつてのように全くもう中途採用ゼロという状況から、民間もそうですけれども、官の方も徐々にではありますけれども変わりつつあるのかなと思っております。
これは相対の問題、比較の問題ですけれども、民から官に行く人に比べれば、官から民に行く人は圧倒的に少ないですね。全体少ない中でも、官から民に行く人の方が圧倒的に少ないということで、この点については、今、ちょっと私も詳細はわかりませんが、たしか総務大臣のもとに、官民交流をどうやったら促進できるのかということで、恐らく菅大臣のもとだと思いますが、研究会といいましょうか懇談会といいましょうか、そういうものをつくられて、各界の御専門の方々、産業界の方も含めて参加されて、具体的にどうやってふやしていくのかということで検討が進んでいますので、そっちの方を私どもとしても期待したいと思っております。
以上でございます。
○田端委員 この点について、これは本当に難しいテーマだと思いますが、きょう伺っていて、北沢参考人には、非常にユニークというか、ちょっと視点の変わった、人事院にそういう役割を持たすような新しいお考えをさっきからいただきまして、これはそれなりにまた一つの大きな提案だと思います。しかし私は、どこがするにしても、どういう組織をつくるにしても、そこが本当に、その役割がどうなるのかということが一番の問題なんだろうと思います。
北沢参考人は、今回の法案については批判的な面があるのかもわかりませんが、しかしそれは、人事院が仮にやるにしても、ここはまたなかなか非常に難しい問題だろうと思いますが、その点、いかがでしょうか。
○北沢参考人 お答えいたします。
人材バンクは、仮にうまくいく条件は何かと問われましたら、私は、まず慣行の廃止ですね。まず慣行を廃止して、その上でデータベース。これは官庁の方から、各省の方から得ますね、人事的なデータベース。それから人事的な情報もしくはキャリア情報。それを、希望退職者本人の了解を得てデータベースをどかんと公開する。そういうことによって、物すごく、ああ、こういうキャリアがあったんだとか、こういう実績があった、あるいはこういう論文もあったとか、いろいろわかると思うんですね。そこから進み出すんじゃないかと思っています。
ですから、透明性と、それからデータ化による公開、それが重要だと思うんですね。そして、その前提になるのは、慣行の廃止によって各省ごとの天下り指定席をやめさせる、それに尽きるかと思います。
○田端委員 これは本当にそういう意味ではなかなか難しい問題でございます。先ほど田中参考人の方から、過去四十年の歴史にわたる今までの行政改革に対することをいろいろお話しいただきました。そういう長い歴史の中で、一番最後に残ってきたテーマである、こういう意味では、やはりそれだけ難しいことなんだろう。しかし、これは国の骨格、基本にかかわる大変大事な点でもあるだけに、そこは余り急いでもならないし、だけれども、今回は思い切ってということで、さっき先生の方から、まず第一歩を踏み出すんだ、こういうお話がございました。
これは私もそう思います。確かに大きなテーマで、難しい。しかし、いつまでも議論をしていて、このままでやっていても、ああだこうだと言っても、本当の意味の改革への第一歩が具体的にならなければならない。そういう意味では、今回、第一歩を踏み出したという意味ではこれは評価すべきじゃないか、私はこう思っております。
今のこの点で、田中参考人はどうお考えなんでしょうか。つまり、この新しい人材バンクといいますか官民交流センター、ここの役割、これはもうかなめだと私は思っておりますが、先生のお考えをお伺いしたいと思います。
○田中参考人 お答えいたします。
先生の問題意識は非常に重要でありますし、的を射ている議論だと思います。この人材バンクがどうやったらうまくいくか。今、北沢参考人がおっしゃったこともまことにそのとおりでありますし、一歩ずつ、透明性を確保しながら、整備しながら進めていくことも非常に重要であります。
私は、このバンクをどこに置くかということは非常に重要でありますが、人事権を持つ者、これはやはり内閣。今まで各省にあるわけで、それはくくっていえば内閣でありますけれども、そういう意味で、内閣が責任を持って退職者に対するお世話をするというのは非常に重要なことである。
ちょっと一言つけ加えますと、これは御承知のとおり一般に民間でも、いわゆる高齢者の雇用安定法といいましたか、これで、企業が勝手に首にするわけにいかないので、非常に就職について配慮するように義務づけております。これは基本的な考え方は公務員でも同じでありまして、そういう意味からいいましても、雇用主である内閣が責任を持って進めるということで始めるのは意味があることではないかと思っております。
○田端委員 重ねてお伺いしたいんですが、まず第一歩だということはわかるんですが、その場合、やはり見直すということが必ず出てくるんだろうと思うんですね。その点、これは実際には平成二十三年になりますが、どのぐらいのタイムラグといいますか、考えていけばいいんでしょうか。
○田中参考人 そこら辺は物の考え方でありますけれども、やはり一、二年というのはちょっと短いであろう。開設して三年という時間を置いておる。石の上にも三年といいますから、物事は三年たてば、どこがおかしいとか、どう直したらいいかということは見えてくるのではないか。その前提は、やはり先ほども申し上げたように、透明性を確保しながら、国民があるいは国会がきちんとフォローできる体制に、仕組みにしておくことが大事だと思っております。
○田端委員 もう一つの大きなテーマは能力・実績主義、これがまた公務員の皆さんの活力を生み出して、今後の日本の国にとっても非常に大きなプラスになる。そういう意味では、能力・実績主義というものを今回政府案の中に明記したことは、これは私は大変大きな点だと思いますし、民間でも、やはり大きな活力を得ているというのはここが大きなポイントになっているんだと思います。
それで、ここが民主党案との一つの違いの点でもあろうかと思いますけれども、立花参考人、私は、一方でそういうことをやり、しかし、あるいは定年制の問題もこれあり、スタッフ職の問題もこれありとか、いろいろなことが同時に絡んできます。つまり、能力主義ではいくけれども、しかし、公務員の皆さんにも安心して、やはりいい職場だ、頑張ろうと思ってもらわないことにはこれは改革にはならないんだろうと思いますから、その点、私は基本法を、全体像を早く提示することが大事だろう。それがなければ、能力主義だけが、ばっといっても非常に変なことになるのではないか。
だから、パッケージ改革と言われているわけですから、本当は同時ぐらいに法案を出すべきであったのではないかなと思いますが、これは時差が多少あったとしても、パッケージ改革としてのあるべき姿、公務員像というものを提示した上で能力・実績主義というものにならないといけないんだろうと思うんですが、立花参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
○立花参考人 田端先生のおっしゃった、全くそのとおりだろうと私も思っております。
先生の今のお話の中で、これは別に公務員に限らず、やはり組織で一生懸命働こうとすれば、先が見えて、自分がどう努力すればどうなるんだろうかなということが見えてこそ、安心、また、日々の研さんにも努めて、みんなのためになろう、あるいは外からも評価されようということも出てくるわけで、その意味で、なろうことならば、先生おっしゃったとおり、勧奨退職もできるだけ減らしていくといいましょうか、本人が働きたいのであれば、また能力もそれに伴ってあるのであれば、きちっと働けるように体制をつくっていくことも非常に大事な課題だろうと思っております。
それだけに、一応、四月二十四日の閣議決定で、残された課題ということで、公務員制度改革に絡んだいわゆる入り口から出口までの問題について、あっせんの問題が提起されていますので、これは総理のもとで懇談会をつくって、たしか来年の通常国会ということだったと思いますので、私ども、それに強く期待させていただいております。
○田端委員 この点について田中参考人はいかがお考えで、特に、実効性を高めるということは、これは法律というのはやはり現実問題ですから、どこまで実効性が高まるかということが大事だと思うんですが、いかがでございましょうか。
○田中参考人 望むらくは、公務員制度というのはトータルなものでありますから、一挙に全体像を示して、それから国会で審議していただいてというのがそれは筋だと思います。
しかしながら、過去の経緯、公務員制度の歴史をずっと見ますと、なぜこれができなかったかということに思いをいたしながら、今度の制度改革、しかも、現実に火がついている問題がたくさんあるということにまず手をつけて、それから、先ほども立花参考人がおっしゃいましたように、パッケージで、来年の通常国会には全体像を示して今後の改革に資するということになっておりますから、私は、非常に実践的な、当てにできる改革ではないかな。そういう意味で、今回の四月二十四日の閣議決定はそれなりに評価しておる次第であります。
○田端委員 北沢参考人にもお伺いしたいんですが、そういう意味では、天下り規制というのは絶対しなきゃならない大テーマである、だから、では、そこに向かってどうするかという議論の中でこういうことになってくるわけでありますが、私が少し懸念しているのは、つまり、肩たたき、早期退職勧奨について、これは人間ですから、そろそろおれも年だなという年齢に達すれば、自分は今後どうしようかという身の振りを、これは生身の公務員であっても考えていくのは当然で、では、どうしようか、ちょっと迂回作戦をとろうかとか、いろいろな作戦を考える人も出てくるんだろうと。だから、法律で幾ら規制しても、やはりそこは人間というのはそういうふうになると思います。
それから、この法律を実施する段階で、非常にいろいろな意味の矛盾が出てくるんじゃないかというふうに心配します。要するに、例えば六十歳までということになっていけば総人件費が膨らんでいくわけですから、そういった点をどうするかとか、さまざまそういうふうなことがいろいろ出てくるものですから、ここはなかなかしゃくし定規にはいかない。しかし、これは大事なことをやらなきゃならないんだからという、そこのせめぎ合いですね。
そういう意味で、だから私は官民人材交流センターがどう働くかがかなめになるというふうに思っているんですが、北沢参考人のお考えはいかがでございましょうか。
○北沢参考人 お答えします。
私は、かぎは二つあると思うんですね。これは政府案に限らず出てくると思うんですが、専門スタッフ制をどうやって導入して生かすかということが一つと、それから民間への出向制度、これを活発にさせる。
専門スタッフ制の場合には、例えば五十四とか五とか、ある一定年齢に達した場合に、何らかの技能と専門分野ができますよね、それをもとに割り振るような仕組み。それからもう一つ、例えば国土交通省の半分以上は技官ですよね、そういう非常に数多い技官の人を処遇する場合にも、専門スタッフ制というのが決め手になるかと思うんですね。
ですから、この専門スタッフ制と民間への出向制をうまく絡めて総人件費を抑制ないし削減する、そういうことが考えられると思います。
○田端委員 小田川参考人、現場でいろいろと御苦労なさっているかと思いますが、私は、今申し上げたように、公務員の皆さんにこの法案がすとんと胸に落ちていなければいけないんだろうと思うんですね。そこが、今議論の中でどこまで公務員の皆さんが胸に落ちているのかなという思いをしております。
しかし、第一歩を踏み出すんだ、こういうことでもありますから、なかなか理想的にはいきませんけれども、全体的にここは第一歩を踏み出して、そして、さっき田中参考人からあったように時間をかけながらやっていくんだ、こういうことなんですが、現場からの感覚として、その辺のところ、今の公務員の皆さんの気持ちはどんな感じかという点ではいかがでしょうか。
○小田川参考人 まず、今回の公務員制度改革関連法案の策定過程が非常に速いテンポで動いておりますので、職場の段階に必ずしも十分内容が伝わっているという状況ではないと思います。むしろ、マスコミ報道などでいろいろ流れているものに右往左往しているというのが本当のところではないかと思います。それが一つ目です。
二つ目は、内容にかかわって二点ほど申し上げたいと思うんですけれども、一つは能力、実績という問題なんですが、能力、実績というか成績主義というか、どう言うかは別にいたしまして、公務に一定の評価制度があるということは当然のことだと思いますけれども、問題はその活用の仕方の問題であります。私は、公務においては、基本的に人材の活用と人材の育成という問題で検討されるべきだと思いますが、そこのところで、給与だとかそういう処遇に直結するという考え方をとっているところに問題があると思います。
二つ目は、人材バンクの問題ですけれども、冒頭のところで申し上げましたが、総定員法とか定員管理という問題と退職管理という問題は密接不可分の課題でありまして、仮に人材バンクが動き始めたときに、求職と求人が不一致をした場合にどうするのか、その際にはどんな扱い、一致をしなかった方についてはどうするのか、ここのところがほとんど議論されておりませんので、使い方によれば、リストラのための使い方をされる危険性があるという懸念を強く持っているものと考えております。
○田端委員 その延長線上で労働基本権の問題等に入っていくんだろうと思うんですけれども、この問題は大変大事であり、私どもとしても、これは公務員の世界にあっても、グローバルスタンダード、労使協議という基本的なものはあるべきだ、こう思っております。
先ほどこの問題についても御指摘がございましたが、公務員の労使関係については、やはり改革の方向でいくべきだということは、これはそういう流れにはなりつつあるんだろうと思います。ただ、どこまで付与するかということについては、全部丸ごとというわけにはなかなかいかないんじゃないか。
そこで、団体権はともかくとして、協約締結権とか争議権とかということについては一定の枠を持って付与すべきではないかな、これは渡辺大臣もそういった趣旨の御発言もされているわけでありまして、私は、そういう意味では前向きに取り組む方向の流れは今起こりつつある、そういう考えを持っております。つまり、そういう意味では、パッケージ改革の基本法等の中にこれを入れるべきかどうかという議論ももう一つはあるんだろうと思います。
これは、どうなるか、そこのところは今後の課題だと思いますが、労働基本権の問題に対しての今の流れ、そして私は、大臣がそこまで言っているわけですから、そういう流れを大切にしながら一歩一歩進めるべきではないかな、こう思っていますが、小田川先生の御意見はいかがでございましょうか。
○小田川参考人 内容についての議論はこれからということを前提に申し上げれば、先生おっしゃるとおりでありまして、前に向けて議論を進める段階に来ていると私どもも思います。
あえて申し上げれば、労働基本権をすべて一括して議論しようということを申し上げているわけではなくて、お手元に配付をさせていただきました私どもの見解でも、団結権は団結権、団体交渉権は団体交渉権、争議権は争議権として、それぞれ公務員の職に着目をしながら議論をしていくことが必要ではないかというふうに考えているところであります。
○田端委員 それは基本法の中に次の段階でどこまで押し込めるかということになるんだろうと思っておりまして、そういう意味では、次の基本法というのは大変大事なことになるなと思います。
この点について、立花参考人、つまり経団連側としてどういうふうに御認識といいますかお考えになっているのか、そして今後どうあるべきというふうにお考えになっているのかについてお尋ねしたいと思います。
○立花参考人 ちょっと私、先生の御質問を誤解していたらおわび申し上げますが、いわゆる労働三権について経団連がどう考えているのかということなのか、それとも最後におっしゃった公務員制度改革の基本法案についての考えなのか、それはどっちなんでしょうか。(田端委員「そこに入れ込むぐらい前向きに考えるべきかどうか」と呼ぶ)この労働三権の問題は、私ども、今、東大の前総長の佐々木先生を座長に検討が進んでいますので、そこにいろいろな法律学者あるいは労使の関係の方々が参加されて議論していますので、その議論を静かに待っているわけで、私どもとしてもその議論を静かに見守って、経団連としてはこの問題については、もちろん中では検討しておりますけれども、正式な見解として外に発表できる、そういうような段階じゃございません。
○田端委員 これはなかなか、どこまで労働三権をどうするかということについては、もう少し世論といいますか、時間がかかるかなとは思います。だから、今の政府における諮問会議ですか、そこでの議論を見守りながら、そしてシミュレーションを重ねてやっていくということですので、そういったことに我々も注目しながら、しかし大臣はそこまで前向きにということをおっしゃっているわけですから、それはそれで私は評価をしたい。ただ、次の基本法の中にそういったことまで入れるかどうかということについては、私も少し時間的な疑問を感じているわけであります。
いずれにいたしましても、この問題は大変大事なテーマであり、また日本の国家の骨格にかかわる問題でございます。そういう意味では、さっき田中先生が四十年かけてやってきたというお話をいただきましたが、私は、まず第一歩を踏み出して、先生のおっしゃっているように、それは一遍に理想的にはいかない、しかし改革への第一歩、そしてまた見直しを重ねながら、若い人が公務員に手を挙げて志望する、喜んでいただけるような、そういう活力ある公務員像をつくる、それが大事だろうという思いで、今後もまた頑張って議論をさせていただきたいと思います。
きょうはどうもありがとうございました。
○河本委員長 次に、吉井英勝君。
○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
きょうは、四人の参考人の皆さん方には、大変お忙しい中を御出席いただき、貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。
それで、最初に私、四人の参考人の皆さんお一人お一人から伺いたいと思うんですが、安倍内閣はこの国家公務員改革については、戦後レジームからの脱却、あるいは戦後レジームの打破の一環として、そういう位置づけで臨んでいますけれども、この公務員制度というのを少し歴史的に見ていきますと、官吏から全体の奉仕者としての公務員へと変わってきた長い中で、戦後、国家公務員法が制定されたころは、労働基本権がもともとあったわけですね。それが非常に早い時期に奪われてしまったという経過があります。
ILO勧告の中では労働基本権の付与ということがずっと求められてきておりますし、ちょうど昨日の経済財政諮問会議の方では、民間四議員の方からもペーパーが出されて、「労働基本権については、行政改革推進本部専門調査会において、警察・消防等以外の現業と非現業の一般職公務員に対し一定範囲で協約締結権と争議権を付与する方向で、引き続き検討すべきである。」こういうことが主張されたりしております。
そこで私、四人の皆さんに最初に伺っておきたいのは、この労働基本権付与ということについてのお考えというものを伺っておきたいと思います。
○立花参考人 労働三権、労働基本権付与の問題については、対象の範囲ですとかあるいは財政民主主義との関係、あるいは当事者能力等のそういった課題の検討、これらも含めまして、目下、公務員制度の関係の専門調査会の方で議論が進んでいますので、その議論を私どもとしても待たせていただいている、そんな状況でございます。
○北沢参考人 お答えいたします。
私、労働三権の交渉権、妥結権というのは、そういう一定枠を認める方向でいくのが筋かと思うんですね。ですけれども、スト権について、これはやはり慎重にならざるを得ないんじゃないでしょうか。やはり、警察、消防とか自衛隊のような、そういう領域の職種の方に対してどういうふうに適用するかとかいうのが問題になると思います。
終わります。
○田中参考人 おおむね北沢参考人の意見と同じであります。
特に問題になるのは、当事者能力の問題が大きな問題になると思います。基本的には前向きに考えていくべきだと思っております。
○小田川参考人 議員おっしゃいました歴史的な経過と同時に、今日的に、公務の民間化が進むというような状況も踏まえれば、労働基本権の問題について検討すべきだというふうに思いますし、それは付与する方向であるべきだと思います。
しかも、先ほども申し上げましたけれども、個別内容に踏み込んで、争議権は争議権、団体交渉権は団体交渉権、団結権は団結権、それぞれについて議論すべきだと思いますし、その手がかりは、国際的な基準や他国の例も参考にされるべきだというふうに考えております。
○吉井委員 次に、歴史的に見たときのもう一つの視点といいますか、観点といいますか、それは戦前の高等文官制度の流れを引き継いで、そしてやはり慣習としてずっと続いてきているという問題に示されていることだと思うんです。
いわゆるキャリアシステム、これは人事院の報告の中でも、1種採用者のキャリアシステムについて、組織の活力の維持に支障を生じるなど弊害が目につくようになってきたということを人事院の方でも報告で言っておりますけれども、この公務員制度改革との関係で、キャリアシステムについてそれぞれ四人の方からお考えというものを順番に伺いたいと思います。
○立花参考人 吉井先生の御質問の、キャリアシステムについてどうなのかということでございますが、私どもは経団連の中で議論したときに、いわゆる1種、2種、3種の試験区分に基づいて、それが公務で働く限り一生つきまとっているというのは、非常に今日、学校を出た後、あるいは社会に出た後いろいろ努力して、資格を取ったり勉強したり、いろいろレベルアップする本人の努力もあるわけですから、学校を出て、それで受かった試験によって、ずっとそれで一生涯その人の人生を縛るというのは、非常にこれは私は基本的にはおかしな仕組みではないかなと思っていますし、やはり人生の途中でチャレンジするといいましょうか、現行の制度を一応前提としたとしても、もっとより柔軟に、2種なり3種なりの方がチャレンジできる状況をもっともっとつくっていくことが必要だと思っています。
とりわけ最近は、2種の方でもやはり大卒の方が非常に多くて、非常に優秀な方もふえているということも実際私ども聞いておりますので、そうであれば、なおさら垣根を低くして、チャレンジの機会をふやして、できるだけ公務で働く人たちが勤労意欲を失わないように、そういった仕組みにしていく、改善していくことが非常に大事ではないかなと思っております。
○北沢参考人 お答えします。
一回の試験で生涯決まっちゃうというのは、まず直さなきゃいけないと思うんですね。それで、1種と2種の試験をやめて、一つに統合してはどうかと考えています。というのは、かなり優秀な人がいますよね、2種合格で。その1種と2種を統合した試験がいいのかなと私は個人的に思います。
それから、敗者復活戦というか、キャリアパスを上っていく途中、あるいは勤務状況、いろいろ変わりますよね。そこで、実績に合わせて、実績に沿って昇給、昇進、昇格というものをやっていくというような、そういう柔軟性が重要ですよね。
今のままですと、1種合格じゃない人は課長どまりというのが多いですよね。せいぜい課長で終わっちゃう。それじゃまずいと思いますので、試験の改革とそれから敗者復活戦の導入というのがポイントかと思います。
○田中参考人 1種、2種、3種と今ございますが、先ほどもどなたかがおっしゃったように、1種と2種というのは皆、大卒でありまして、なかなか区分がつかないという問題があるので、これは今後基本的に検討していくべきだと思います。
ただ問題は、キャリア、私もその端くれであったわけでありますが、キャリアだからずっと生涯キャリアパスを持っているというところが問題であり、2種はノンキャリだからずっともう本省の課長どまりであるということが問題なので、今回の改革によって、試験の区分にかかわらず、とらわれないでということを言っておるということは、試験制度はそのままに一応置きながら、とらわれないでやるということですから、それは一歩前進であるなと思っております。
○小田川参考人 キャリアシステムと言われるもののとらえ方は、先ほど来ほかの参考人がおっしゃっていることと一緒ですけれども、採用試験別に昇進のコースが決まっている、そして退職後まで生涯、人事当局が面倒を見る、こういうシステムだと思っておりますので、これはなくすべきだと思っております。
問題は、その際に試験制度をどうするかということと、さらには、幹部公務員育成というんでしょうか、この国の政策企画立案を補助する公務員の育成をどういうシステムでするか、研修あるいは選抜の仕組み、こんなところはもっと民主的な議論が必要なのではないかというふうに思っておりますし、冒頭のところで申し上げましたけれども、ゼネラリスト型の人材育成だけではなくて、スペシャリストの処遇をどうするか、ゼネラリストとスペシャリストの処遇の均衡をどう図るか、こういうことも課題になるのではないかと考えています。
○吉井委員 今問題になっております天下りの背景には勧奨退職ということがありますから、そのことについても伺いたいんです。
1種採用者、いわゆるキャリア官僚の超スピード出世を維持していく、だから五十歳前後から退職勧奨が中心になってくるという問題なんですが、一部、1種採用者以外の職員についても退職勧奨が行われておりますけれども、勧奨を断れば、管理職から人事を乱す者とされてしまう、職場では窓際に置かれ、二度と再就職のあっせんはなかなかやってもらえない。このように、退職勧奨というのは結局退職強要となっているのが実態だと思うんですが、この退職勧奨は国公法上の法的根拠はありませんから、厳密には法律違反ということになってくると思うんです。
政府はこの法案で今後勧奨は自然となくなるということも言っておりますが、根拠はあいまいであって、専門職、スタッフをつくるといっても、大幅な定数削減が行われるもとでは、実際に、それで勧奨退職は自然となくなるといっても、なくなるようになるとは思えないものですから、こうしたことを考えると、退職を勧奨する、それはなくなるどころかますます激しくなってくるんじゃないかというふうに思われるわけです。
いずれにしても、1種採用者、キャリア官僚の超スピード出世を維持するというところから出てきた退職勧奨というものが天下りの背景にあり、結局、根本はキャリア制度を維持する慣習ですから、事実上の退職強要になっている勧奨退職というものはやめるべきじゃないか、やめるべきだと思うんですが、四人の参考人の方から、この退職勧奨についての御意見というものを伺っておきたいと思います。
○立花参考人 吉井先生から、勧奨退職の背景なりあるいは弊害とか、いろいろ御指摘いただきました。
私も基本的には、個人的には、勧奨退職というものについて、強要するという言い方もおかしいんですが、先生はそういう言い方でおっしゃいましたけれども、働く意欲がありながら、そういうことになるのは本人にとっても非常に不幸なことだし、なろうことならば、定年まで自分が希望する場所で能力が発揮できれば一番ハッピーだろうと思うんですね。ところが、ポストはそれだけないということですから、そのためにスタッフ職をつくるとか、あるいはそのための新しい給与の仕組みを考えるとかいうことです。
民間の場合も、やはり役職定年制というのがあって、五十歳以上の層の場合には、従来の、若いときと違って給料はもう自動的には上がらない、やはりラインから外れた場合にはスタッフとしての処遇を受けるということで、もちろん本人の働きぐあいにもよりますけれども、場合によっては現役のときの、四十歳代あるいは五十歳代前後のピークからむしろ下がっていくこともあり得るということで、やはり働きに応じてといいましょうか、スタッフとしての処遇、給与体系を一体どうつくっていくのか、私は、その辺との絡みもあるのかなという感じはいたしております。
以上でございます。
○北沢参考人 お答えいたします。
私は先ほどから、早期退職慣行が引き金になっているということを再三申し述べてきました。この廃止が天下り問題解消の前提ということは変わらないと思いますね。
ですから、政府が、年功序列になれば、自然になくなるという、自然になくなるんじゃなくて、時限的に何年後にはなくすということが明示されていれば、この人材バンクの評価が大分違ってくるかと思うんですね。これがないところが非常に不安なわけです。
では、勧奨退職をやめたときに、人がたまっちゃって、公務員がたくさんいて、コスト増に結びつかないかという心配が当然出てきますね。その場合には、公務員のコスト増というのは国民負担ですから、国民負担増になりますので、先ほど出ましたように民間のコスト削減努力を参考にして、例えば今、立花参考人から言われました役職の停止というのがありますね。それも含む、それから先ほどの専門スタッフ制、そういう新しい体系をつくらなきゃいけないと思うんですね。ですから、その場合には、能力・実績給の体系と並行してやる必要があるかと思います。
○田中参考人 勧奨することの必要性というのはそうすぐになくなるものではないなと、非常に個人的には、感想として持っております。
もちろん、年功序列、それと密接に結びつく勧奨退職制度、法律にはないけれども制度化している、そういうものがいろいろな問題を起こしておるということは吉井委員御指摘のとおりであります。
問題は、では勧奨を余りないようにしていくということだと思いますが、そのために専門職制、スタッフ制をとるとか、定年を延長するとかいうことはあると思いますし、それから、先ほど立花参考人が言いましたように、役所でも、もう二十年ぐらい前に私が総務庁の秘書課長をやっているときも、ノンキャリであっても一定のポスト、例えば管区の局長であるとか役職につくと、役職を何年やればみんなの合意で一応リタイアするというふうなことは、いいことか悪いことかと今考えるといろいろ問題があるかもわかりませんが、2種の人たちの合意のもとにそういうことをやってきた。地方の局長にノンキャリの人をどんどん充ててきましたから。そういうことはあると思います。
問題は、勧奨しないでおっても、例えばスタッフ職にするかどうかは人事です。人事で、あなたはスタッフですよと、スタッフになるにしても、能力がないと、専門性がないとだめですね。では、専門性のない人が年いったときに、まだ定年にならないという人をどうするかという問題なんです。
それは定年まで置いておくんだからというと、カバーするのは税金でありますから、それでいいのかねと。能力のない人を窓際でとにかく飼い殺しにするというよりも、その役所では役に立たないという言い方はちょっと問題でありますが、能力を十分発揮しなくても、民間に行けば、意外と能力を発揮できる場もあるかもわからない。したがって、今の人材バンクにもそういう人たちを登録することによって、本人にとっても民間にとっても非常に有用な活用の仕方はあるんではないか。非常に微妙な問題でございますけれども、大いに検討していく問題であります。
しかし、今言うようにスタッフ職を置いたり定年を延長したり、能力と実績ということで、徐々にそれを客観性のあるものに持っていけば、渡辺大臣のおっしゃることも私は可能であろうと思っております。
○小田川参考人 いわゆる天下り是正を最大の改革課題とするならば、勧奨制度はやめるという選択をすべきだというふうに思います。
しかし、現実は、先ほど来おっしゃっておりますけれども、ポストや定員、定数の制約があり、かつ現状では行政改革が進んでいる状況ですから、その枠の中で考えれば、勧奨退職、もしくは官民の人事交流の促進ということもありますけれども、退職の強要につながるような事案が懸念されるということは、冒頭のところでも申し上げたところであります。
○吉井委員 次に、立花参考人と小田川参考人のお二人から、同じ内容のことについて伺っておきたいんですが、能力・実績主義の問題です。
名前は能力・実績主義と言っているんですが、実質は、これは民間企業の多くで導入している成果主義というものです。この成果主義を企業調査なんかで見てみると、余りうまくいっていない、うまくいっている企業が少ないようです。
研究者の中には、成果主義は原理的にうまくいかないと。成果主義を振り回すと、長期にわたって研究開発等で新しい製品開発に取り組むとか、それは短期的な評価になって、そこで実績が上がらぬとうまく評価されないとか、そうすると本人のやる気が失われてくるとか意欲がそがれるとか、成果主義が原理的にうまくいかないという研究者の報告などもあります。実際、社会保険庁の保険料不正免除事件の背景に、幹部に対する成果主義の導入、成果でどんどんしりをたたいて保険料徴収、見かけ上の成績を上げさせようという中で不正免除事件が発生したこともありました。
ですから、公務の仕事というのは採算や効率だけでははかれないという問題があって、やはりそこには、客観的評価基準の設定を初めとして、実際の評価の問題も極めて大変な問題を抱えているというか、なかなか難しい問題を抱えていると思うんです。
この公務への能力・実績主義の導入について、立花、小田川両参考人からお考えを伺っておきたいと思います。
○立花参考人 私、必ずしも人事、能力評価の分野に明るいわけじゃないものですから、一般的に私が見聞きしている範囲内で、先生の御質問に対して御参考になる話ができればという感じです。
確かに、能力・実績主義といった場合に、それが成果主義、基本的には個人の能力なり実績を評価するとなると、先生まさに御指摘があったとおり、その弊害というのが、日本の場合にはこれは業種とか職種によってもちろん違いますから、全部押しなべてということは到底言えないわけですが、例えば、日本の製造業の強みであるチーム力とか、あるいは自分が取得したいろいろな経験、ノウハウを後輩にきちっと教えたからといって、極端な話、一銭の得になるかならないかということは別にして、やはり職人かたぎといいましょうか、まじめさといいましょうか、これまでそういう日本の勤労精神というのは非常に高く評価してきたわけです。それで、後輩にそれを時間をかけてでも非常に懇切丁寧に教え込んでいく。
個人の実績・能力評価という面だと、今申し上げたような、チーム全体として、いかにしてお互いにカバーし合って、全体としての能力を上げていくかとか、あるいは後輩をいかに育てるかとか、そういった面で不十分だったということで、確かに、そういった面で最近いろいろなところで見直しが進んでいることは事実だと思います。
そういった民間の失敗、成功の経験を、やはりこういった能力、実績を導入する場合、もちろん今でも恐らく検討は進めておられますけれども、今トライアルで取り組んでおられると思いますので、ぜひその辺は、率直に、やはり人間が人間を評価するというのは、これは言うべくして非常に難しい話だろうと思って、私どもも全く日ごろ痛感しておりますので、それは謙虚に取り組んでいくべき課題だろうというふうに私、個人的には思っております。
○小田川参考人 公務の成果とは何かという議論をいたしますと、ある種、神学的な議論にならざるを得ないということだと思います。なかなか答えの出ない問題であります。
したがって、そこで無理やり評価を成果主義的にやろうとすれば、ノルマ主義に陥る危険性が極めて高い。あるいは、この間の私どもの経験からいえば、評価を口実にする差別的な人事というものが時折起きるということだと思います。公務員制度調査会の最終報告でも、差をつける評価というのはやはり公務には適当ではないということを言っているかと思いますが、一つの至言だと考えております。
なお、今回の法案の中で、「官職の基準」という考え方から、「職員に適用される基準」というふうに、法案上、文言が変わっております。私の理解から申しますと、個々の官職に求められる職責や業務の範囲というのは行政組織法などで基本的に決まっておりまして、それにだれをつけるかというのがこれまでの人事管理であったと思いますけれども、今回の法案の内容は、職員個々の能力を前提に議論をするということですから、その意味で、ややノルマ主義的なといいますか、個々の能力に過重に負担をかける、個の責任に過重に負担をかけるようなノルマ主義の危険性を法案上も持っているのではないかと考えております。
○吉井委員 時間があと三、四分ということになってきましたから、最後の質問を四人の方にさせていただきたいと思います。それぞれ簡潔に、御感想といいますか御意見を伺っておきたいと思います。
それは、天下り、官製談合の頻発で、何か急にといいますか、どたばた的な感じで今この法案が出てきた感じがするんですが、現行国公法百三条二項の天下り規制を撤廃して、天下りのあっせんを官民人材交流センターに一本化するということですから、これは、天下りを原則禁止から原則自由に百八十度変えるものであると私は思うんですが、政府案では天下りや官製談合は抑制できるんだろうか、この点が一点です。
あわせて、百三条二項の撤廃ということになりますと、それで官民交流を進めるために垣根を低くするということだと言っていますが、官と民になぜ垣根がもともとあるのか。これは、憲法十五条では、「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」と規定しております。国公法第一条でまた、「国民に対し、公務の民主的且つ能率的な運営を保障することを目的とする。」と規定しているわけですが、だから、やはりこの点では、官と民の垣根を取り払っていく、あいまいにする、こういうことにつながる危険があると思うんですが、官民の垣根はどうあるべきか、このことを二つ目に伺いたいと思っているんです。
一つは天下りや官製談合はこの法案で抑制できるか、二つ目に官民の垣根はどうあるべきか、四人の方から伺って、質問を終わりにしたいと思います。
○河本委員長 簡潔にお願いします。
○立花参考人 まず一つ目の、政府提案の法律でもって果たして実効が上がるのか、天下りを抑制できるのか。これについては、もちろん楽観はしておりませんけれども、これからの運用次第という面がありましょうけれども、私はかなりきいてくるという面があるんだろうと思うんです。
つまり、この御議論でも官の方ばかりに目をつけておられますが、やはり民の方も、はっきり言ってそれほどメリットがない天下りをどの程度考えるかということで、恐らく民間の方は、財政再建の中でいろいろ官のお仕事も減っているわけですから、そうむやみやたらと、かつてのように、ある省のこういう肩書の人なら喜んでという状況ではもう到底ない。恐らく民の方の対応も変わってくるだろうと思っております。そういった点も、やはり、これからの一定の期間後に見直すということですから、その期間の見直しの対象に入れていくべきではないかなと思っております。
それから、官民の垣根の問題ですが、基本的には私は、垣根はどうあるべきかということを先生が最後におっしゃったので、私も正直言うとその辺は、ちょっと自分でもまだ考え方がよく整理できていなくて、先生に申し上げるほどの考え方は今この場からすぐに出てきませんので、ちょっと御容赦いただきたいと思います。
○北沢参考人 お答えいたします。
官製談合の件、これは三つ要因があると思うんですね。天下りが一つ、もう一つは官の側の規制権限、それからあと補助金などの予算、金、この三つが重なって官製談合が起こっていると思うんですけれども、天下りに関しては、先ほど言いましたように、引き金を温存してしまう結果、早期退職慣行を温存する限りでは、根絶はまず難しいばかりか、今のバンクでは天下り解禁のおそれも大いにあるわけですね。それが一つです。
それから、官民の垣根についてですけれども、一般的にはできるだけ少ない方がいいですよね。例えば、国家機密がどうのというような分野は特殊な分野だと思うんです。ですから、そのかぎも、透明性の確保をどういうふうにやるか。要するに、ホームページなどでどういう仕事をやっているかという実態がわかるというのがいいと思うんですね。それから、補助金の、金の流れがどうか。それに対して民間の対応が出てきますから、そうやることによって官の世界が身近にわかりやすくなるということが言えると思うんですね。ですから、透明性がかぎかと思います。
○田中参考人 天下りが問題にされるのは、本日の議論でも大分はっきりしておるんですが、要は、権限というのは各省大臣にあるんですね。補助金もそうです。それをバックに、いわゆる早期勧奨退職という問題があります。それが絡んでいろいろな問題が起きている。
今度の人材バンクというのは、非常に中立的、きょう冒頭にも申し上げましたけれども、内閣府には置かれますが内閣府次官の権限は及ばない。ということは、各省が今持っているような権限とか補助金は関係ないんです。内閣府に置かれますけれども中立性を保っておるというところに期待したいと思っております。
それでもなお、この三年間にいろいろ問題が出てくるかもわからない。それは段階的に整備していくということでありますから、そこを今度は国会でもきちんと見ていただきたい。したがって、その背景には、透明性を十分確保しながら運営してもらいたいということが一つあります。
それから、二番目の垣根の問題でありますが、これは垣根の定義になると思います。官と民は基本的に垣根があると思います。それは、仕事の性質からいって、官は国民全体のためであって、中立公正でなくちゃいけない。民が公正でなくていいということではないんですけれども、それは商売でありますから、そこは基本的に違う。その点を垣根というのであれば、垣根は基本的にある。
しかし、ここで問題にされている垣根というのは、人事の交流を極力積極的にして、行ったり来たり、官に行けば官の責任を持ってもらわなければいけないし、民に行ったときには、官として蓄積され、蓄えられ、磨かれた知恵なり知識なり技術を生かしていくということであろうと思います。そういう意味では、そういう意味での垣根は取っていきたい、こういうふうに理解しております。
○小田川参考人 今回の再就職規制にかかわって申し上げれば、職員が利害関係企業に人材バンクを通ずればあすでも再就職できる、こういう仕組みになっているわけでありまして、その点で申し上げれば、確信は持てませんけれども、談合がなくなるということではなくて、むしろ強まる懸念すら感ずるということであります。
二つ目の垣根の問題ですけれども、公務の範囲が随分変化をしておりまして、公務員と非公務員との垣根という問題なのか、公務と民間との垣根という問題なのか、なお少し議論が必要かと思いますが、税金を使って業務をしているところとそうでないところとの間には、一定の例えば服務上の違いなどがあるということは当然だと思いますし、コアにある、公務員と民間との垣根といいますか接触のあり方、倫理のあり方、服務のあり方については、おのずと違うものが考えられて当然だというふうに考えております。
○吉井委員 どうもありがとうございました。終わります。
○河本委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、一言ごあいさつ申し上げます。
参考人の皆さんにおかれましては、それぞれのお立場から貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時五十六分散会